バカと幼馴染と三姉妹の女神様 (白姫彼方)
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プロローグ

お久し振りの人はお久し振りです。
初めての方は初めまして♪
白姫彼方です♪
久し振りの新作です♪
それではどうぞ♪

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「ふぅ……。創造神様は一体何の用だろ?」

 

そう言って一人歩く女性………。否女神が居た、その女神は白銀に薄い蒼色が入った髪を、地面につかない所までぎりぎりまで伸ばしており、その髪と合う金色の瞳を宿していた。

 

「ここ……、ね」

 

女神は目的地である部屋に辿り着き、そのドアをノックする。

 

「開いておるよ」

「失礼します」

 

女神はそう言って入ると、そこには髭を伸ばした年齢が計り知れない老人が居た。

 

「お呼びですか? 創造神様」

「ふむ……、お主……。ここ最近300年ほど働き詰めだったそうじゃの?」

「えぇ、何せ私の娘達も頑張っているので……親の私も頑張らないといけないでしょう?」

 

女神がそう言うと老人………。創造神はその女神の言葉を受け、苦い顔をする。

 

「そう言う事なら……。じゃがどの神々も休暇を取っておるのに、お主等は休暇すら取ってないようじゃの……。じゃからこれから溜まった休暇分の13年分を親子揃って取るのじゃ、これはわし等議会全員の一致じゃ、文句など言わせんよ?」

「創造神様! それは横暴過ぎます! 私達が抜けたら滞るじゃないですか!」

 

女神はそう喚くが、その女神の回りに複数の人影が現れる。

 

「そう喚くんじゃないのぅ………。それにのぅ全神界から働きすぎだと苦情が出ておるんじゃ、なぁにお主等が抜けても代わりの者が既に頑張っておる………。じゃから安心して休暇を取りなさい」

 

「ですが!」

 

女神が反論しようとするが周りの人影がその女神の口を押さえ、鎖でその体をぐるぐる巻き………。所轄蓑虫状に巻く。

 

「ええぃ! さっさと休暇を取らんか馬鹿者! お主の友達も主のことを聞いて転生できぬと言っておるんじゃ! そのままじゃと転生の業務も滞るのじゃ! じゃからさっさと休暇にいかんか!」

 

創造神はそう言って周りの人影は女神を連れて行く。

 

「それと、休暇先はお主が居た世界に近い所じゃからの、くれぐれも気を付けるのじゃよ」

 

創造神の言葉と共に扉が閉まる。

 

 

                       ◆

 

 

「全く………。手荒く仕事を持っていくこともないですの……」

「あはは………。そう言わないの」

 

先程の女神とほぼ同じ容姿だが身長は二人ともやや低い。

 

「急に休暇を与えられても困るのですの」

 

彼女は腰ほどまで伸ばした髪をツーテールに纏めている。

 

「だよね……。お母さんは創造神様に呼ばれたって言うし」

 

彼女は先程の女神と同じ様にぎりぎりまで伸ばしてはいるが首の辺りで髪留めの輪をつけており、その髪を背にではなく胸の方に垂れさせている。

 

そして二人は魔法陣が敷かれてある場所に辿り着くと、そこには先程の女神が居た。

 

「お母さん!」

「お母様!」

 

彼女達は母と呼んだ女神に抱きつく。

 

「二人とも……。元気だった?」

「勿論だよ!」

「当然ですの!」

 

三人はそう言って抱き合うそこに一つの人影が近付く。

 

「貴女達に渡す物がありますよ」

 

そう言って渡したのは黒ローブ3つと3つの小さな袋だった。

 

「これは?」

「このローブは温度調整及び対魔法、対物理を編み込んだワルキューレ特製で、こちらは異空間を使った子袋です。この中に手を入れながら必要な物を念じると手の中に納まりますのでかなり便利に出来上がってると思います」

「宜しいんですの?その様な物を貰って」

 

ツーテールの彼女がそれを言うとその人影はくすくすと笑う。

 

「ふふ♪ それは構わないんですよ……。創造神様が作って渡せと言いましてね……。それとその子袋とローブは防犯処理をしてありますので心配は無用です……。あ~あ、私も今度休暇取ろうかなぁ……」

「あはは♪ 近いうちに貴女も取れますよ……。それじゃ、行って来るね」

「はい……よい休暇を……それと休暇中は好きな世界に行っても良いみたいなので(ついで)に挨拶もしてきたらどうです?」

「そうだね……。近くを通ったら挨拶でもするよ……。じゃね♪」

 

そう言って3人は魔法陣にて異世界に飛んだ。

 

 

                     ◆

 

 

「あれ? ここは?」

 

美緒はそう言って辺りを見回すが美沙と美紗は見当たらないどころか、どうやら自身の視点も低くなっているようだった。

 

「………ナニコレ?」

 

美緒はそう呟いて、元の姿に戻そうとするが、何故か戻らなかった。それに内心慌てる美緒だったが、とりあえず2人に念話で連絡を取る。

 

「(美紗、美沙聞こえる?)」

「(お母さん無事!?)」

「(お母様今どこにいますの!?)」

 

美緒はキョロキョロと見回して、目の引いた建造物を見る。

 

「(………わからない、けど目の前に大きな中学の校舎が見えるよ)」

「(なんて言う学校ですの?)」

「(長月中学校………。らしいよ?)」

「(解ったですの、今美紗を迎えに行かせるので待ってて欲しいですの)」

「(それはいいけど、2人はこの世界の事を知ってるの?)」

 

美緒の疑問は最もだ、美緒自身が今さっきここに来たばかりなのだ。それを同じ時間で来たはずの美紗と美沙が知るはずもないと美緒は思ったのだが………。

 

「(私達が来たのは3年前ですの、それまでお母様が来るのを待っていましたの。それで、私達………お母様も含めて親無しという状態ですの。一応は神の権限で私達の戸籍等を作りましたが、年齢は私と美紗、お母様が現在6歳と言う訳の分からない事になってますの)」

「(………何その無茶苦茶な設定………。思いっきり孤児院に入るべき状態だよね………。天使を呼んで親役やらしたほうがいいよね………。この状態)」

「(現在では天使を親役にしてあるので、大丈夫ですの。それと、厄介なことがあるのですが)」

「(美沙が厄介って言うと相当なことだね………。何があったの?)」

「(どうやら、下級神界の何処かの阿呆がこの世界に“生前の記憶を持った転生者”を何人かこの世界に送り込んでるみたいですの)」

 

美沙の報告を受けた美緒は米神を揉む、本来転生とは生前の罪と記憶を洗い流し、魂を真っ白な状態で次の生つまり来世に送ることを言い、今回美沙が言った生前の記憶を持った転生者とは真理に逆らった行為であり、許されざる行為でもあり、神界全域ではご法度、禁忌とされている。

 

「(また厄介なことを………、どうせ自分のミスで人を殺してしまったから、それを隠す為にやったんだろうね。目星はついてるの? その阿呆と転生者も)」

「(阿呆の方は粛清済みですの、仮にも私と美紗の本分である輪廻転生ですの。唯、転生者は3人いるのですが、巧妙に隠されていて、発見できていませんの………)」

 

美沙の言葉に美緒は溜息をつく、と、後方から聞き覚えのある声が聞こえたと同時に抱きしめられる。

 

「お姉~~ちゃ~~ん!!」

「美紗!?」

「久しぶりだね~♪」

 

美緒同様かなり小さくなった美紗を見て驚くが、美紗本人は対して気にしていないようだった。

 

「(一応お母さんは私達三子(みつご)の長女って設定だからね?)」

「(なるほど、そういうことなら仕方ないね)」

「それじゃ、お姉ちゃん。お家に帰ろ?」

「うん♪」

 

美緒は美紗と手を繋いで美沙が居るこの世界での、自宅を目指して歩き始めた。そして数十分ほどで美沙がいる自宅の近くに着く、だがその近くに少年が………大体今の美緒達と同じぐらいの年相応の男の子が居た。その男の子は美紗の姿を見つけてにぱっと微笑みながら2人に近付く。

 

「美紗ちゃん、こんにちわ!」

「あ、アキ君♪こんにちわ♪」

 

美紗にアキ君と呼ばれた男の子はふと美緒を見る。

 

「えっと君は………?」

「私のお姉ちゃんだよ♪」

「美紗ちゃんのお姉ちゃんなんだ♪僕は吉井明久って言います!」

「私は美緒だよ♪いつも妹達がお世話になってます♪」

「ううん!いつも僕の方がお世話になってるよ!」

 

美緒、明久はそう言い合って、互いに笑い合う。暫くすると、明久の両親と美緒達の親役である天使が迎えに来て、そのまま麻井家と吉井家は会食………友好を深めようと食べに行くのだが、親役の天使が深く酔ってしまい、色んな事がばれるのはまた別のお話。そして、この世界『バカとテストと召喚獣』での一日目の締め括りとなったのだった。




如何でしたか?また次回♪


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一日目

お待たせしました♪
第二話一日目です~♪


 

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美緒と明久が出会って約11年が経った四月、桜が満開の道を美緒、美紗、美沙、明久が並んで歩いていた。

 

「アキ君残念だったね………、あれだけ勉強したのに」

「そうだねぇ~、アキっちならAクラス間違いなかったのにね」

「あはは………、でも僕は後悔してないよ」

「明久さんがそう言うなら良いと思いますの、人なら誇れる行動だと思いますの」

「でも皆ごめんね、せっかく勉強を教えてくれたのに」

 

明久は少し落ち込む様に言うが、美緒達は全く気にしてない様に言う。

 

「私達にとってはあれぐらいの時間は気にする程でもないよ」

「そうですの、だから明久さんは気にしなくても良いですの」

「うんうん、時間に関してはアキっちもよくわかってるでしょ?」

「それは解ってるけどね………。美緒達が神様(・・)だからって事はね」

 

美緒達が神である事は明久は知っている。それは11年程前………、美緒が明久と出会ったあの日の夜にまで遡るのだが、今回は割愛する。

 

「それでも貴重な時間を割いてくれたからね」

「アキっちって変なところで律儀だね~」

「美紗ちゃん変なところってどういう事なのさ………」

「あはは………、まぁ、今年も同じクラスだから宜しくね?」

「え?美緒達はAクラスじゃないの?」

 

明久の疑問に答えようとした時、1人の男性が校門の前に立っていた。

 

「「御早う御座います。西村先生」」

「「鉄じ……じゃなくて西村先生御早う御座います」」

「麻井長女と三女おはよう、そして吉井と麻井次女、今、鉄人って呼ばなかったか?」

「「あははっ、気のせいですよ。西村先生」」

 

4人に西村先生と呼ばれた男性………、西村宗一(にしむらそういち)教諭で、趣味はトライアスロンで、アマチュアレスリングの心得を持ち、生徒指導の鬼と呼ばれている。真冬でも半袖で居る事から付いた渾名(あだな)は『鉄人』だ。

 

「ん?そうか」

 

西村教諭は特に気にした様子はなく、箱から4人分の封筒を取り出し、渡していく。

 

「それにしても、吉井は惜しかったな。折角Aクラスになれたのにな」

「あはは、それはさっき麻井さん達とも話しましたけど、僕は後悔してませんよ」

「まぁ、本人がそう言うなら別に構わんけどな?一応体調管理も試験のうちだからな」

「はい、解りました」

「そうか、ならいいんだが………、ところで麻井姉妹!どうして無記名で提出したんだ!」

 

そう、美緒達は明久が無得点扱いになったと知った時に、無記名で全てのテストを終えているからだ。明久もその事を今初めて知ったのだから驚いた。

 

「「「私達は吉井君と同じクラスになりたいからですよ?」」」

「どうやって知ったのかは敢えて聞かないが………今度やったら生徒指導室行きだからな?」

「「「解りました」」」

 

4人はそう言って渡された封筒の封を切り、中の用紙を取り出して広げる。

 

『吉井明久……Fクラス』

『麻井美緒……Fクラス』

『麻井美紗……Fクラス』

『麻井美沙……Fクラス』

こうして4人の新生活が始まった。

 

 

                     ◆

 

 

「流石Aクラス、かなり広いね」

「そうだね、でも僕はあまり興味は無いかなぁ」

「アキっちにしては珍しいね?と言いつつも私達もあまり興味はないけどね」

「弘法筆を選ばずではないですが、勉強に必要なのは場所ではないですの」

「あはは………美沙さんが言う事は最もだけどね」

 

4人がそう話していると、チャイムが鳴り、慌ててFクラスに向かう。

4人がたどり着いたFクラスは、見た目が廃屋に近い酷い状態であった。中も入らずにそれだけでも判断出来た訳は、壁には罅と穴があり磨ガラスにも罅と穴があって、ドアと呼べるものに至ってはあちこちに亀裂が入っていて襖紙に至っては全てに穴が空いていて、それを見た4人は顔を引き攣らせた。

 

「と、取り敢えず入ろうよ」

 

美紗はそう言って、ドアを開けて中にはいる。

 

「おはよ「早く座れ、この蛆虫野郎」う?」

「美紗を蛆虫呼ばわりするとはいい度胸だね? 坂本?」

 

坂本と呼ばれた男子生徒は美緒を見てかなり驚いた顔をする。

坂本雄二(さかもとゆうじ)。彼は去年、明久の級友だった男子生徒で、昔『神童』、『悪鬼羅刹』と呼ばれていた少年だ。

 

「げぇっ! 美緒!」

「覚悟は出来てますわよね? 坂本さん?」

「それは美紗に対してじゃなくて明久だと「私達の前で明久さんと美紗を蛆虫呼ばわりするなんて死にたいみたいですわね?」だぁぁぁぁ!」

「「さぁ逝こうか(ますの)」」

「ちょっ! あ、明久! 美紗! 言い過ぎた! た、助けてくれぇっ!!」

「美緒、美沙さん。そのぐらいにしといてあげて?」

「むぅ、アキ君がそう言うなら………」

「ですの、明久さんに感謝するですの」

 

美緒と美沙はそう言って、坂本から離れる。

 

「やるならあとでね?」

「あ、明久ぁぁぁぁ!?」

「解ったよ~♪」

 

助けたと思ったら実はそうでもないと言うある意味地味な仕返しをした明久は、再度坂本に目を向ける。

 

「ところで雄二、どうして教壇に立ってるの?」

「先生が遅れているらしいから、代わりに上がってみた」

「先生の代わりに雄二が?もしかしてこのクラスの代表?」

「ご明察だ、明久」

 

ニヤリと口の端を釣り上げて笑う。

 

「これでこのクラスの全員が俺の兵隊だな。徹底的に使うから覚悟しろよ? 明久」

「えーっと通してもらえますか?」

 

雄二の問いかけに答える前に、少し冴えない男性が入ってくる。どうやら彼がFクラスの担任の様だ。

 

「それと席についてもらえますか? HLを始めますので」

 

その男性がそう言うと美緒達は席に着くが、席自体は決まっていないので明久を中心に前に美緒、左隣が美沙、後ろが美紗だ。

 

「えー御早う御座います2年F組担任の福原慎(ふくはらしん)です。宜しくお願い致します」

 

そう言った福原教諭は、黒板に振り返って名前を書こうとしたがチョークが無かったので、生徒たちに振り返って続ける。

 

「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されていますか?不備があれば申し出て下さい」

「せんせー、俺の座布団に綿が殆ど入ってないですー」

「あー、はい。我慢してください」

「先生、俺の卓袱台の脚が折れてます」

「センセ、窓が割れていて風が寒いんですけど」

「自力で何とかしてください」

『無茶を言うなぁぁぁ!!!』

「必要な物は極力自自分で調達して下さい」

『無視ですかせんせぇぇぇぇ!?』

 

他のクラスメイトの遣り取りを見ていた美緒達はやれやれと頭を振った。

 

「(にしても予想以上に酷い有様だねアキ君)」

「(うん。僕の予想以上だったよ………)」

「(私も予想以上だよ~、どうしよう?アキっち?)」

「(流石に私も予想以上ですの、これでは明久さんの健康的にも悪い場所ですの)」

「(困ったなぁ………)」

「――――廊下側の人からお願いします」

 

どうやら4人が小声で話し合っている間に、自己紹介が始まった様だ。最初に自己紹介をする男子生徒は顔と髪型だけを見れば女子生徒と間違う程の美形で小柄な少年だ。

 

木下秀吉(きのしたひでよし)じゃ、演劇部に所属しておる――――と、言うわけじゃ。今年一年宜しく頼むのじゃ」

 

秀吉は去年、雄二と同じく明久とクラスメイトだった級友で、演技を得意としている男の娘だ。

 

「何か、不名誉な呼ばれ方をされた気がするのぅ?」

 

地の文を察知しないでください………。

 

「………土屋康太(つちやこうた)

 

康太も秀吉と同じく、去年明久とクラスメイトだった級友で、別名寡黙なる性識者(ムッツリーニ)と呼ばれている。諜報や情報収集のスペシャリストであり、『ムッツリーニ商会』の若き創始者だ。

余談だが『ムッツリーニ』と言う別名がかなり有名で、男子学生からは畏怖と畏敬を、女子からは軽蔑を以て挙げられるが、美緒達は特に気にしておらず。諜報と情報収集の技術を教えてもらう代わりに、『ムッツリーニ商会』の商品であるブロマイドや抱き枕カバーのポーズを撮らせている。公認しているし、美緒達に対する盗撮も黙認している。

 

「―――です。外国育ちで、日本語の会話は出来るけど読み書きは苦手です。あ、でも英語も苦手です。

育ちはドイツだったので、趣味は吉井明久を殴ることです☆」

 

『ビッ!』(美緒、美紗、美沙がククリを投げる音

『カカカッ!』(先程自己紹介した少女の両側頭部、頭頂部の近くにククリが刺さる音

 

「………え?」

「あ、麻井さん達!? なんて物を投げるんですか!!」

「………気にしないでください福原教諭、続けてください」

「後で説明してもらいますからね!!」

 

明久は呆れ顔で美緒、美紗、美沙を見るが3人は軽く顔を背けた。

因みにだが今自己紹介をしたのは島田美波(しまだみなみ)と言う少女で、明久に惚れているのだが、嫉妬からなのかその明久に暴力を振るうとして美緒達にマークされている。

美波が席に座ると同時に男子生徒が立ち上がる。その男子生徒は褐色の肌に白髪の髪を逆立てた不良っぽい男子生徒だった。

 

「俺の名前は衛宮裕次郎(えみやゆうじろう)。趣味は機械いじり、今年一年宜しく頼む」

「(美沙、今の子は………、もしかして?)」

「(違和感があったので調べたら、その人は転生者ですの)」

「(そう………。後で思考を読んで目的を調べてね)」

「(解ったですの)」

 

因みにだが、残り2人の転生者は美緒が来た次の年に引っ越してきたので、目的を聞いた所、下衆な理由だったのでその場で転生の取り消しをして、現在地獄で粛清中だ。

 

「では、次の人お願いします」

 

福原教諭の声を聞いてから美緒は立ち上がる。

 

「麻井美緒です。趣味は家事で、特技は運動と家事全般です。それとですが――――」

 

美緒は一旦言葉を区切ってから両手にダガーナイフを持つ。

 

「アキ君、後に自己紹介する妹に害を加える人には容赦しませんので」

 

美緒はそう言って座る。その次に明久が立つ。

 

「えっと、吉井明久です。趣味は料理とゲームです、呼び方は吉井でも明久でも良いです。宜しくお願いします」

 

明久がそう言って座ると、今度は美紗が立ち上がる。

 

「麻井美紗です♪ 趣味はウィンドウショッピングで、特技は運動と家事全般です♪ それとですが、姉の美緒と同じくアキっちと姉、妹に害を加えたり手を出す人には容赦しないので宜しくね♪」

 

美紗はそう言うと座った。その後何人か進んだ後に、美沙が立ち上がる。

 

「麻井美沙ですの。趣味は読書、特技は特にないですの。先程2人の姉が言った通り、私も容赦しませんので、肝に命じておいてくださいませ」

 

美沙はそう言うと、座る。それと同時に息を切らせた女子生徒が入ってくる。

 

「あの、遅れて、すいま、せん………」

「丁度よかったです。今自己紹介している所なので姫路さんもお願いします」

「は、はい!あの、姫路瑞希(ひめじみずき)といいます。宜しくお願いします………」

 

姫路瑞希は美緒達と明久を除く学年二位の実力者で明久とは小学校の時からの付き合いの長い幼馴染だ。

 

「はいっ質問です!」

「あっ、は、はいっ。なんですか?」

 

登校するなりいきなり質問されることに驚いたのか、瑞希は少し慌てた。

 

「麻井さん達もそうだけど何でこのクラスに?」

「そ、その………。振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして………」

「私達はその現場を目撃していて、無記名で提出したからだけどね」

 

それを聞いたクラスメイトは頷いた。

 

「そう言えば、俺も熱(の問題)が出たせいでFクラスに」

「ああ、化学だろ?あれは難しかったな」

「俺は弟が事故に遭ったと聞いて実力を出し切れなくて」

「黙れ一人っ子」

「前の晩、麻井さん達が寝かせてくれなくて」

『異端者には死を!!』

「「「ぶち殺すよ?(しますの)」」」

「ヒィっ! ごめんなさい! ちょーしくれてましたぁ!!」

「で、ではっ、一年間宜しくお願いしますっ!」

 

瑞希はそう言うと、逃げる様に明久と雄二に隣接する席に座った。

 

「き、緊張しましたぁ~………」

 

安堵の息をついて卓袱台に突っ伏す瑞希、余程緊張していたのだろうかほんのりと頬が赤くなっていた。

 

「あのさ瑞「姫路」」

「は、はいっ。何ですか?えーっと………」

「坂本だ。坂本雄二。よろしく頼む」

「あ、姫路です。宜しくお願いします」

 

瑞希はそう言って深々と頭を下げる。育ちの良さを伺わせる仕草だ。

 

「ところで、体調は未だに悪いのか?」

「あ、それは僕も気になる」

「私達もね?瑞希ちゃん?」

「あ、明久君!? それに美緒ちゃん達!?」

 

どうやら明久達がここにいることに驚いているようだ。

 

「姫路。明久がブ『ガシッ!(美緒が雄二の頭部を鷲掴んだ音』頭がわれるぅぅぅ!!」

「坂本君? 私言ったよねぇ?」

「ギブギブギブぅぅぅ!! 頭が割れてしまうぅぅぅ!!」

「み、美緒ちゃん!? 落ち着いて!!」

「美緒!! 流石に雄二が死んじゃう!!」

「はいはい。そこの人達、静かにしてくださいね」

 

福原教諭が教卓を叩きながら注意をすると、その教卓が音を立てて崩れてごみ屑と化した。

 

「え~………替えを用意してきます。少し待っててください」

 

福原教諭はそう言うと、教室を出た。それを見届けた明久は雄二を連れて外に出た。

 

「(美紗、美沙。私があの人と話してくるよ)」

「(解ったよ、お母さん)」

「(解りましたの。お母様)」

 

美緒はそう言って、裕次郎の所に行く。

 

「衛宮君、ちょっといいかな?」

「ん? 麻井さんか、いいぞ俺も話をしたかったしな」

 

美緒と裕次郎は教室を出て、少し歩いた所で止まる。

 

「単刀直入に言うよ。貴方が『この世界』に転生した理由は何」

「転生? 何だそりゃ?漫画の読みすぎだろ」

「シラを切っても無駄だよ。貴方……正確には、貴方達を転生させた神は粛清されたよ」

「はぁ? 神? 知らないな」

「シラを切っても無駄だというのに……しょうがないか」

 

美緒が右腕を前に出すと、幾何学模様の魔法陣が現れる。それを見た裕次郎は驚く。

 

「転生前の名前は佐藤幸治。年齢19歳、死亡原因は下級神の不手際による頭部損傷。鹿児島県に在住していて、当時は大学に通っていた。これに聞き覚えあるでしょう?」

「ったく、まぁバレちゃ仕方ない。それで?あんたは何者なんだ?俺が知る、『原作』ではあんた達はいなかったはずだ」

「私は上位神界が第二位、神殺しの狂い女神リヴェンティ。貴方の目的によっては貴方を抹殺する存在」

「なっ!?」

 

裕次郎は美緒の自己紹介を聞いて予想外の身分に驚いていた。

 

「まぁ、貴方の口から聞き出さなくても読み取れるんだけどね、それで?貴方がこの世界に転生した理由は?」

「何、簡単なことだ俺は」

 

裕次郎は一度言葉を区切ってと、ある写真を美緒に見せる。

 

「生の『アキちゃん』を見たいからだ!!」

 

その写真に写っていたのは、ウィッグを付け、化粧を施し、メイド服を来た明久だった。

 

「………はぁ?」

「生の『アキちゃん』を見たいからだ!!」

「二度も言わなくていいよ!! そんな理由で転生してきたの!?」

「そんな理由だと!! 麻井さんには解らないのか!! アキちゃんのこの可憐さを!」

 

裕次郎の転生理由が女装をした明久を見に来たと知り、頭を抱えた。

 

「………まぁ、今までの転生者と違って最低な理由じゃないだけましかなぁ………はぁ」

「む?そう言えば他の転生者はどうしたんだ?」

「あぁ、あの下衆達ならこの世界からご退場してもらったよ。理由が最悪だったし」

「そうなのか……。理由は聞かない方がいいか」

「うん。その方が身の為だよ。まぁ、そういう理由なら害は無いみたいだからこれからも宜しくね」

「あぁ、これからもよろしく頼む」

 

そう言って、美緒と裕次郎は握手をして教室に戻ると、丁度福原教諭が戻って来た。

 

「さて、それでは自己紹介の続きをお願いします」

 

福原教諭がそう言うと、自己紹介の続きが順調に行われ、最後の1人になる。

 

「坂本君はFクラスのクラス代表でしたよね?」

 

福原教諭に問われた、雄二は頷く。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。俺のことは代表でも坂本でも、好きなように呼んでくれ」

 

自信たっぷりに胸を張り、辺りを見渡す。

 

「さて、皆に一つ聞きたい」

 

雄二は全員の目を見る様に告げ、教室の各所を見る。そこに写っていたのはかび臭い教室、古く汚れた座布団、薄汚れた卓袱台だ。

 

「Aクラスは冷暖房完備の上、座席はリクライニングシートらしいが」

 

雄二は一呼吸おいて告げた。

 

「――――不満はないか?」

『大ありじゃあっ!!』

 

それは美緒、美紗、美沙、明久、瑞希以外の魂の叫びの様であった。

 

「だろう ?俺だってこの現状は大いに不満だ。代表として問題意識を抱いている」

「そうだそうだ!」

「いくら学費が安いからと言って、この設備はあんまりだ! 改善を要求する!」

「そもそもAクラスだって同じ学費だろ? あまりに差が大きすぎる!」

「皆の意見は最もだ。そこで」

 

自信が溢れた顔に不敵な笑みを浮かべ、見えないこれから起こる怒涛の戦乱の引き金に指を掛けた。

 

「これは代表としての提案なんだが、FクラスはAクラスに『試験召喚戦争』を仕掛けようと思う」

 

その言葉と共に、雄二は戦乱の引き金を引き放った。




如何でしたでしょうか?
それではまた次回♪


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二日目

お待たせしました♪
それでは第三話、二日目をどうぞ♪


 

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Aクラスへの宣戦布告、それは現状のFクラスでは不可能と呼べるほどの提案にしかFクラス一同(明久達5人を除く)は思えなかった。

 

「勝てるわけがない」

「これ以上設備を落とされるなんて嫌だ」

「姫路さんと麻井さん達がいたら何もいらない」

「そんなことはない。必ず勝てる。いや、俺が勝たせてみせる」

 

雄二は圧倒的な差を知りながらも、尚宣言する。

 

「何を馬鹿なことを」

「できるわけないだろう」

「何の根拠があってそんなことを」

 

否定的な意見が教室に響き渡る。確かに普通ならFクラスが、Aクラスに勝てる勝算など皆無に等しい。そう、普通ならばの話だ。

 

「根拠ならある。このクラスには試験召喚戦争で勝つことのできる要素(ファクター)が揃っている」

 

雄二はそう言って、不敵な笑みを零す。

 

「それを今から証明してやる」

 

そう言った後、とある人物を見る。

 

「おい、康太。畳に顔をつけて姫路と麻井姉妹のスカートを覗いてないで前に来い」

「………!!(ブンブン」

「は、はわっ!」

「土屋君、また覗いてたの?」

「………!!(ブンブン」

「仕方のない方ですの」

「………!!(ブンブン」

「因みに何色だったのかな?」

「姫路が水色、麻井長女が黒、麻井次女がスパ………なんでもない」

「あはは……、取り敢えず土屋君。前に行った方がいいと思うよ?」

 

因みにこの間に雄二の額に血管が浮かんだのはご愛嬌である。

 

「土屋康太。こいつが、あの有名な寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」

「………!!(ブンブン」

「そんなっ! 私達のあんな写真やこんな写真を撮ったのに!? 騙されたぁ!」

『なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!』

「………!!(ブンブン」

「美紗! 今は巫山戯るのをやめてくれっ!!」

「美緒ちゃん、美紗ちゃん、美沙ちゃん! ふしだらです!!」

「瑞希ちゃん。良い女になるには自分の容姿を理解してそれを武器にしなきゃダメだよ~?」

「人の話を聞きやがれぇぇぇぇぇぇ!! てめぇらぁぁぁぁ!!」

「「「あははは………」」」

 

Fクラス全体を巻き込んだコントに、明久、美沙、秀吉は乾いた笑いしか出なかった。余談だが、雄二はこの時半ば心が折れかけていたという。

 

「姫路と麻井達のことは説明する必要はないだろう。皆だってその力は知っているはずだ」

「えっ? 私ですかっ?」

「ああ。ウチの主戦力だ。期待している」

「私達は基本後方待機になるかなぁ~。前線に出たら一方的な虐殺にしかならないし」

「何を言ってるんだ。お前達は前線に出てもらうぞ?」

「私達じゃなくても良いんじゃない? 衛宮君だっているし」

「お、俺っ!?」

「ああ。衛宮だってウチの主戦力だぞ? 期待しているからな」

「お、おう。精一杯やらせてもらう」

「木下秀吉だっている」

 

秀吉の名前自体は有名ではないが、演劇のホープとして有名で、実際の戦場ではその演技力から敵戦力の攪乱に最適だ。

 

「おお………!」

「ああ。アイツ確か、木下優子の………」

「当然俺も全力を尽くす」

「確かにやってくれそうな奴だ」

「坂本って小学校の頃は神童とか呼ばれていなかったか?」

「実力はAクラスレベルが六人もいるってことだよな!」

「それに、吉井明久だっている」

 

順調に士気が上がっていたのにも関わらず、明久の名前が一気に下がった。

 

「ちょっと雄二! どうしてそこで僕の名前を呼ぶのさ! 全くそんな必要ないよね!」

「誰だよ、吉井明久って」

「聞いたことないぞ」

「ホラ!折角上がりかけてた士気に翳りが見えてるし! 僕は雄二たちと違って普通の人間なんだからって美緒、美紗ちゃん、美沙さん? なんで僕を見るの?」

「アキ君の何処が普通の人間なの?」

「そうだね~アキっちの能力が人間の括りに当て嵌ると思ってるの?」

「能力的には人外に入りますの」

「ああ、知らないやつに教えてやる。こいつは『観察処分者』だ」

「………それって、バカの『ビッ!!(美緒達が大鉈を投げる音』『ドガァッ!!(投げた大鉈が卓袱台を壊す音』うわぁっ!」

「言ったよね~? アキ君に害する事は容赦しないって」

「それにアキっちは訳あって『観察処分者』になっただけであって、学力は貴方達に到底及ばないよ?」

「そうですの。瑞希さんが倒れたから無得点扱いになっただけで、本来ならAクラス代表になってたはずですの」

「その証明を一つしてあげる。アキ君。TNTの正式名称と化学式、形状、消防法での分類を答えて」

「解ったよ。美緒。

TNTは正式名称トリニトロトルエン、通常は2,4,6-トリニトロトルエン (2,4,6-trinitrotoluene) で、別名はトリニトロトルオールだね。化学式はC7H5N3O6。燃焼の化学式は2C7H5N3O6 →3N2 + 5H2O + 7CO + 7Cだね。

形状は黄色の個体。消防法では危険物第五類の自己反応性物質ニトロ化合物に指定されている。尚、火薬類取締法第2条により「火薬類」に指定されているため、製造、所持には法律による制限を受ける。ただし、第4条で定めるように理化学上の実験目的で経済産業省令で定める数量以下のものを製造する場合はこの限りでないので、理化学の実験の目的で極少量を製造することは可能である。こんなところでいいかな?」

「うん♪ 正解だよ」

「ほ、本当なのか………?」

 

雄二はそう呟いて、福原教諭を見ると、肯定を示した。

 

「どう? これで分かったでしょ?」

「あ、ああ」

「これ以上アキ君を馬鹿にする様だったら………」

 

美緒は立ち上がって周りを見渡す。

 

「ワタシタチニモ、カンガエガアルカラネ?」

『!?』

 

美緒がその言葉を言い放った瞬間に、明久、美紗、美沙を除く全員に悪寒が走った。それを見ていた美緒は無言で座った。

 

「あー。とにかくだ。俺達の力の証明として、まずDクラスを征服しようと思う」

 

雄二は気を取り直して周りを見る。

 

「皆、この待遇は大いに不満だろう?」

『当然だ!』

「ならば全員(ペン)を取れ! 出陣の準備だ!」

『おおーっ!!』

「俺達に必要なのは卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」

『うおーっ!!』

「お、おー………」

 

瑞希は周りの勢いに乗せられる様に、だが小さく声を出しながら拳を上げた。

 

「明久にはDクラスへの宣戦布告の使者になってもらう。無事大役を果たせ!」

「下位勢力の死者って酷い目に会うのは知ってるからね? 雄二。僕は嫌だね」

「大丈夫だ。やつらがお前に危害を加えることはない。騙されたと思って行ってみろ」

 

雄二が自信満々に言うのに対して、明久はやれやれと苦笑しながらDクラスに向かった。

 

「あーあ、アキっち相当キてるねぇ~美緒お姉ちゃん?」

「それはもうしょうがないけど………『ガシッ(雄二の頭部を掴む音』」

「み、美緒!? 何を!!」

「お仕置きだよ? 『スッ(手を離して直ぐに太腿で雄二の頭部を固定して両脇に足を差し込む』」

「ま、前が見えねぇ!?」

「美緒ちゃん!? いくら何でもそれは破廉恥ですよぉ!!」

「せいやっ! 『ズガァンッ!(美緒が前に体を倒して雄二はそれに釣られる様に海老反りになって一回転して腹部から畳に叩きつけられる音』」

「がふぅっ!?」

「まだやられたいなら別のをやるけど、どうするの?坂本君?」

「ぐふっ。望むところだ………」

「美紗、美沙GO!」

「「はいさ~(ですの)」」

 

『タンッ(美紗と美沙がジャンプする音』

『ズダァンッ!(美紗と美沙が雄二の背骨にエルボー・ドロップをした音』

 

「おぉぉぉ………せ、背骨がぁぁぁぁぁ………」

「まぁ、こんなところかなぁ、それにそろそろ『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!(Dクラスからの悲鳴』っと終わったみたいだね」

 

美緒は畳に伏せた雄二を無視しつつ、明久の帰りはまだかな~と待っていた。

 

 

                     ◆

 

 

「ふぅ、戻ったよ」

明久(アキ)君。大丈夫ですか(だった)?」

「うん。全然問題なかったけど………、なんで雄二は寝てるの?」

「それはね~、アキっちを使者に向かわせた制裁をした結果だよ」

「あはは………」

「吉井、本当に大丈夫?」

 

美波はそう言って、明久に近づく。

 

「平気だよ。心配してくれてありがとう」

「そう、良かった………。ウチが殴る余地はまだあるんだ………」

「ああっ! もうダメ! 死にそう!」

「島田さん? 私達の忠告をもう忘れたんだね?『ガシッ!(美緒が美波の頭部を掴んで持ち上げる』」

「いたたたたたたっ! 痛い痛い!! 離して!!」

「これに懲りたら二度とアキ君に暴力を加えようとしないことだね」

 

美緒はそう言って、美波を投げ捨てる。

 

「それで坂本君? いつまで寝たフリをしてるのかな?」

「そういうわけじゃない………。あ~痛かった」

 

雄二はそう言って、立ち上がる。

 

「さてと、それじゃミーティングを行うぞ」

 

雄二はそう言い、教室から出る。

 

「明久君、美緒ちゃん、美紗ちゃん、美沙ちゃん。も一緒にですよ?」

 

瑞希はそう言って、明久と美緒の手を掴んで教室を出た。それを見てた美紗は、苦笑をしながら秀吉と康太の手を掴んで教室を出ると、美沙も苦笑しながら教室を出て、裕次郎は美波の肩を叩いて先に行くと行った後後を追い、美波は1人とぼとぼと後を追った。

そして明久達がたどり着いた場所は屋上だった。まだ春だからか、太陽光が程よい暖かさを与え、心地良い眠りを誘いそうだった。

 

「明久。宣戦布告はしてきたな?」

「一応今日の午後に開戦予定って伝えたよ」

「それじゃ、先にお昼ご飯ってことね?」

 

美波が言うと、各々(おのおの)は弁当を広げる。そして美緒は何処からか、4つの弁当箱を取り出す。

 

「それじゃ、はい♪ アキ君」

 

明久に弁当箱を渡した美緒は、美紗と美沙にも同じ弁当箱を渡す。

 

「いつも悪いね? 美緒」

「良いの良いの♪ いつも晩御飯作って貰ってるからね」

「いつも仲が良いですね~。明久君と美緒ちゃんは」

「まぁ、家が隣だからね~。今日終わったら瑞希ちゃんもくる?」

「えっ!? 良いんですか!?」

「勿論♪良いよね? 美紗、美沙?」

「勿論だよ(ですの)♪」

「有難うございま『ガシャンッ!(誰かの弁当箱が落ちる音』す?」

 

弁当箱が落ちる音のした方に美緒、美紗、美沙、瑞希が顔を向けると、そこには明久が弁当箱を落としたところであった。

 

「あ、アキ君!? 大丈夫!?」

「う、うん。僕は大丈夫だけどお弁当が………」

 

明久は落ちてしまった弁当箱と箸を拾う。

 

「なら、私のをあげるから。ちゃんと食べてね?」

「え、あ、うん………。美緒ごめん」

「いいから♪ 美紗、美沙ちょっとお願いね」

「解ったよ。お姉ちゃん」

「はいですの。美緒お姉様」

「坂本君、木下君、土屋君、島田さん、衛宮君ちょっと来て?」

 

美緒と呼ばれた5人は、明久達と少し離れた所に移動する。

 

「それで?一体誰がアキ君の弁当箱を落としたのかな?」

「あ、明久が手を「………雄二がやった」康太!?」

「………麻井には嘘をつけない、俺個人としても、ムッツリーニ商会としても」

「そう………坂本君がやったんだ? 懲りてないみたいだね?」

 

美緒がそう言うと、雄二の頭部を掴む。

 

「ちょっ!? 美緒!!」

「ちょ~っとO☆HA☆NA☆SHIしようか」

「あ、明久!! た、助け!!」

「………雄二」

 

明久は雄二に顔を向けて親指を立てる。

 

「自業自得だよ☆」

 

明久はそう言って、立てていた親指を下に向けた。

 

「あ、あきひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『メコメコッ!(美緒が掴んでいる手に力を入れる音』

 

「あーあ………。お姉ちゃんを怒らせちゃった」

「み、美紗ちゃん!? 流石に坂本君が死んじゃいます!」

「問題無いですの瑞希さん。あのゴリラなら、あの程度では死にませんの」

「そ、そういう問題じゃないと思うんだが………」

「衛宮君も気にしない方がいいよ~?」

 

こうしてFクラス9人の昼休みは過ぎていった。余談だが、雄二はあの後、真っ白に燃え尽きた様に気絶をしていたと言う。




如何でしたでしょうか?
それではまた次回♪


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三日目

お待たせしました♪
それではどうぞ♪


 

【挿絵表示】

 

Fクラス対Dクラスの試験召喚戦争が始まって5分が経った。Dクラスの先攻隊は現在Fクラスへの渡り廊下を疾走している、構成人数は7人で、少なめだがFクラスには十分だろうとDクラス代表の平賀がそう言った為だ。だが、先攻隊部隊長の塚本は違和感を感じていた。

 

「(おかしい。いくら何でも今までFクラスのやつに会ってないぞ?)」

「隊長! 前方に敵影有り! 数は1!」

「1人!? ふざけてるのか!! Fクラスは!」

「巫山戯てなんてないよ~。貴方達程度なら私1人で十分だよ」

 

美紗はそう言って、隣にいた高橋教諭に声をかける。

 

「高橋教諭! Fクラス麻井美紗が今渡り廊下にいるDクラス全員に総合科目を申込みます! 試獣召喚(サモン)!」

 

言い終わると同時に、美沙の前に幾何学模様の魔法陣が現れて、デフォルメされた美紗にとんがった耳が付き、犬のフサフサとした尻尾を生やした物が現れる。服装は紅い外套を着て、その手には十字架を象った大剣が握られていた。

 

総合科目

Dクラス平均点1300点(7名)

VS

Fクラス麻井美紗

 

「さぁ、虐殺の始まりだよ♪」

「相手はたった1人だ! 一気に潰すぞ!」

『おおーっ!!』

 

先攻隊の内3人が美紗の召喚獣に襲いかかるが、瞬殺される。

 

Dクラス佐藤禮汰(さとうらいた)戦死

Dクラス江本絢太(えのもとけんた)戦死

Dクラス酒井奈緒(さかいなお)戦死

 

『なっ!?』

「小出しなんかせずにまとめておいでよ?」

 

Fクラス麻井美紗5000点(制限あり)

 

『はぁぁ!?』

「もう面倒でだから、さっさと終わらせるかな」

 

美紗はそう言って、召喚獣を走らせ、すれ違いざまに4人の召喚獣の首を切り落としていった。

 

Dクラス鈴木一郎(すずきいちろう)戦死

Dクラス笹島圭吾(ささじまけいご)戦死

Dクラス中野健太(なかのけんた)戦死

Dクラス塚本慶次(つかもとけいじ)戦死

VS

Fクラス麻井美紗2500点

 

「戦死者は補習!!」

 

何処からともなく西村教諭が現れ、戦死したDクラスの生徒を全員担いでいった。

 

「(はぁ………まぁ、良いかな。後は任せるよ、美沙、美緒お姉ちゃん)」

 

美紗はそう言って、Fクラスの教室に戻っていった。

 

 

                     ◆

 

 

DとBクラス前には警備隊と称して、20人近くの生徒が居た。そんな中、直ぐ近くの階段の踊り場から下の様子を伺う1人の少女がいた。

 

「(ひぃふぅみぃの………。この程度の数なら行けますの)」

 

美沙はそう言って、上の踊り場から美沙は飛び降りて着地をする。その時の物音に気付いた1人の女子生徒が驚いて声を上げた。

 

「きゃぁぁぁ!?」

「うぉっ!? なんだ!?」

「なっ!? 麻井さん!? どうしてここに!?」

「長谷川教諭! Fクラス麻井美沙がBクラス前の廊下までにいるDクラス全員に数学を申込みます! 試獣召喚(サモン)!」

 

数学

Dクラス平均100点(17名)

VS

Fクラス麻井美沙

 

「相手は1人だ! 流石にこの人数では勝てないだろ! 突っ込め!!」

『おぉ!!』

葬曲(そうきょく)第3番『(しるべ)』!」

 

美沙の召喚獣はチュニック型の白い衣装に身を包み、白いサンダルを履いていた。その手にはハープが握られておりそれをひと撫ですると、白い防壁が美沙の召喚獣を囲むように現れて、全ての攻撃を防ぐ。

 

Fクラス麻井美沙500点(制限あり)

 

『なっ!?』

『Ας παίξουμε το προβάδισμα που εξετάζουν《貴方を導く調べを奏でましょう》』

 

美沙の召喚獣の口からギリシャ語で歌詞が聞こえ、ハープから旋律が聞こえた瞬間にフィールドが改変され、風景が教会に変わった。

 

『Αυτό εξετάζεται Δεν ξέρω τι να σας οδηγήσει στον ουρανό ή την κόλαση στην καθοδήγηση《その調べは貴方を天国へ導くのか地獄に導くのかわたしにはわからない》』

 

Dクラスの生徒は嫌な予感がすると感じ、白い防壁の上から突撃を試みる。

 

『Οι άγγελοι ή διάβολοι ήταν πάντα στο πλευρό σας《貴方の背後に天使か悪魔が必ずいて》

 

だが、美沙の召喚獣の影からバフォメット型の悪魔と2対の翼を持った天使が、Dクラスの召喚獣を撥ね退ける。

 

『Θα σας οδηγήσει πάντα στον κάτω《貴方を必ず冥府へと導くでしょう》』

 

美沙の召喚獣がハープを引き終わると同時に、廊下にいるDクラス全員と同数の悪魔が床から現れ、天使も同じ数が天井から舞い降りて、その場にいたDクラス生徒に襲いかかる。

 

Dクラス17名戦死

VS

Fクラス麻井美沙200点

 

「つ、強すぎるっ!」

「こんなの勝てるわけがないじゃないっ!」

「戦死者は補習ぅぅぅ!」

 

時間法則を無視した短時間で西村教諭が現れ、戦死者を連行する。

 

「ほ、補習はいやだぁぁぁぁっ!」

「あんな拷問耐えれるわけがないっ!!」

「拷問? そんなことはしない。これは立派な教育だ」

 

西村教諭はそう言いながら、ニヒルに笑う。

 

「補習が終わる頃には趣味が勉強、尊敬するのは二宮金次郎、といった理想的な生徒に仕立て上げてやろう」

「それは悪質なせんのイヤァァァァァァッ!!『バタン、ガチャ(戦死者を補修室に入れる音』」

「………後はお願いしますの美緒お姉様」

「解ったよ、美沙」

 

美沙の言葉に返事をした美緒は、美沙の背後から出てくる。それを確認した美沙は、Fクラスへと向かった。

 

 

                     ◆

 

 

時は戻ってお昼休み、なんとか復帰した雄二が9人に声をかける。

 

「それじゃあ、今回の作戦を説明するぞ」

「あ、坂本君」

「どうした? 麻井次女」

「今回のDクラス戦。私達3人だけでやらせてくれない?」

『はぁっ!?』

「あ~なるほど」

 

何となく解っていた、明久以外の全員が声を上げる。それはそうだ、3対40など普通は勝てる訳がないのだ。普通の人(・・・・)であるならば、と言う前提条件は美緒、美紗、美沙には通用しない。

 

「何より瑞希ちゃん、康太君の情報は秘匿したほうがいいと思うよ?と言うか私達がAクラスにいない方が不自然だって思われてるからね~。そう言う意味で、私達3人で、出る方が良いと思う」

「まぁ、私達ならAクラス以外なら3人だけで殲滅出来ると思うし」

「それに、私達は召喚獣の操作に慣れたい部分もありますの。仮にFクラス内で『模擬試験召喚戦争』をやったとしても、終わらない可能性がありますの。なので、初陣であるDクラス戦だけは譲って欲しいですの」

 

雄二は3人に言われ、米神を揉みながら考える。本来、戦争とは個人だけの戦闘能力だけで、決まるわけではない。大多数の部隊による総合的な戦闘能力、チームワーク、練度、士気、そして指揮官の指揮能力に地形の活用で決まる。

だが、神話等では例外とも言える人物たちが居る。

一人軍隊(ワンマンアーミー)、一騎当千。大多数の敵を単騎或いは一部隊のみで追い返す、もしくは壊滅させる事が出来る人外達のことだ。雄二にとって美緒達の成績はAクラス級とは解っているが、詳しい情報がない為、判断することが出来ない。

 

「………解った。但し、3人には念の為康太から小型マイクとカメラを受け取ってくれ。3人のうち誰かがやられた時点で俺たちは動く、それが条件だ」

「了解♪でも不要だと思うけど、坂本君達には私達がどれぐらいの戦闘能力を持ってるか見てもらう為にはちょうどいいね」

 

美緒はそう言って、にこりと微笑むのだった。

そして時は戻り、Fクラスの教室内で美紗、美沙の戦いを見ていた雄二達は2人の非常識な戦いを見てド肝を抜かれていた。

 

「ありゃ、美紗ちゃん、美沙さんは随分と楽しんでるみたいだなぁ」

「あ、あれ楽しんでるのか!?」

 

明久の言葉に驚いた雄二は、明久の首を掴んで揺らす。

 

「うぐ、ぐるじ……」

「答えろ! あきひ『ガシッ!(雄二の後頭部が掴まれる音』いだだだだ!?」

「全く………。少しは待つことが出来ないのかなぁ?」

 

そう言って、雄二の後頭部を掴んでいるのは美紗だった。

 

「あ、美紗ちゃんお帰り~」

 

明久は掴まれている、雄二を敢えて無視をして美紗に帰ってきた時の挨拶をする。美紗は雄二を掴みながら挨拶を返してから雄二を解放する。

 

「あ~。痛い………、ところで麻井中姉」

「ん? 何かな?坂本君」

「何で点数が減っていたんだ? 映像を見る限りではダメージを受けてなかったし、『腕輪』を使ってなかったはずなんだが」

「ああ、それはね。学園長に言われて私達の召喚獣には、高速移動をしたり、特殊な攻撃………これは美沙とお姉ちゃんが当て嵌るけど。それをした場合、普通教科が10秒で100点、総合科目で10秒1000点、総合科目では毎秒100点消費されるようになってるんだよ」

「なるほどな、じゃあ『腕輪』の方はどうなるんだ?」

 

腕輪とは、総合科目以外の科目で400点以上を取ると付与される特殊能力で、個々の召喚獣によってその効果が変わり、その特徴が腕輪を付けているかどうかで解る為、文月学園の生徒は『腕輪』と言えば大体の生徒が召喚獣の特殊能力と解るのでそう呼ばれている。

 

「今回は腕輪を使う程でもなかったから、次回以降のお楽しみだね」

「へぇ~。美紗ちゃん達の召喚獣って凄いんですねぇ」

 

美紗の説明を受けて、瑞希は素直な感想を言うと、美紗は少し照れた仕草をする。

 

「それにしても、美沙ちゃんの召喚獣の歌声綺麗でしたぁ」

「本当よね~。ウチまた聞きたいな~」

「機会があればまた聞けるかもね。っとそろそろお姉ちゃんの戦闘が始まるね」

 

美紗がそう言うと、全員が映像の方に向いた。

 

 

                     ◆

 

 

美沙がDクラス前から去ったのを確認した美緒は、普通にDクラスのドアを開けようとしたが鍵がかかっているのか、開かなかった。反対側も試してみたが、同じ様に開かなかった。

 

「(仕方ないかな………。本当はしたくなかったけど)」

 

美緒は心の中で愚痴るとスッと左脚を上げる。その時、正面に居た生徒は、その時に美緒の黒い下着を見て鼻を押さえるのを見て、美緒は苦笑しながら蹴り飛ばした。

 

『ゴガァンッ!(美緒がドアを蹴り壊した音』

『ズゥン………!!(壊れたドアが倒れる音』

 

『はぁぁぁ!?』

 

Dクラス代表を含め、Dクラスの生徒全員が余りにも非常識な、現状に驚きを隠せなかった。それはそうだ、美緒の様なごく一般的な(?)女子生徒がアルミ等で構成されているドアを、蹴り破るなんて非常識が出来るわけがないのだ。

 

「福原教諭! Fクラス麻井美緒がこの教室内にいるDクラス全員に現代国語を申込みます! 試獣召喚(サモン)!」

 

現代国語

Dクラス代表平賀源二129点&Dクラス平均105点(15名)

VS

Fクラス麻井美緒500点(制限あり)

 

『なにぃっ!?』

「さぁ………、いくよっ!」

 

美緒の召喚獣は青白い外套を羽織っていて、その背後に8本の大剣がV字状に展開しており、手にも同型の大剣が握られていた。そして美緒の掛け声と同時に背後に展開されていた、6本の大剣が四方八方に展開、無作為(ランダム)戦場(フィールド)を駆け回る。

 

「全方位に包囲して攻めるんだ! そうすれば倒せるはずだ!」

 

平賀の指示に、8人のDクラスの生徒が美緒を包囲して突撃してくる。それを何もせずに見ていた美緒は、ニヤリと笑った(・・・)。平賀は何かをすると感じて、慌てて下がらせようと口を開けた瞬間に、6本の大剣が美緒に迫っていた6体の召喚獣の頭上に落ちて、両断した。

正面と右斜めから突撃してきた召喚獣は自身の召喚獣が持っている大剣で切り裂いた。

 

Dクラス8名戦死

VS

Fクラス麻井美緒300点

 

「なっ! 遅かったか!」

「もうちょっと早かったら8人を倒し損ねたよ。平賀君」

 

美緒はそう言って6本の大剣を背中に戻す。

 

「それに、大分点数も使っちゃったからね。一気に決めさせて貰うよっ!」

「くっ! 全員密集防御体制に!」

 

美緒の召喚獣が手に持っていた大剣を横に振るのと同時に、Dクラス全員が平賀の前で密集陣形をとって防御体勢に入る。

 

「せやぁっ!」

 

美緒が掛け声を出すと、大剣がガチャンッ!と音を立てて蛇腹剣に変形して、平賀ととある女子生徒以外のDクラスの生徒を薙ぎ払う。

 

Dクラス7名戦死

VS

Fクラス麻井美緒100点

 

「くっ………流石麻井さんだ。強い」

「あはは♪ 褒めてくれるのは嬉しいけど、私の召喚獣の能力を使っただけだから私自身の操作はそんなに巧くないよ」

「それならっ!」

「私も忘れないで欲しいですわ!! お姉様!」

 

美緒の事をお姉様と呼ぶのは、ツインテールを縦ロールにした女子生徒で名前は清水美春(しみずみはる)と言い、美緒の事を本当の姉の様に慕い、美緒も妹の様に慕っている。ちなみに清水は同性愛者(レズビアン)で、両性愛者(バイセクシャル)の美緒とも相性が良かったりする。

平賀はバスタードソードを構えながら、美緒に突撃してくる。美緒も、大剣を構えながら平賀に突撃する。

平賀は振り下ろし、美緒は振り上げて互いの得物を打ち付け合い、鍔迫り合いになる。

だが、その隙を狙う様にロリカ・セグメンタタを纏い、グラディウスで武装をした清水の召喚獣が追撃を放つが、美緒は紙一重でそれを避ける。

 

「やるねっ! 平賀君!美春ちゃん!」

「麻井さんこそっ! ぜぁぁっ!」

「お姉様! 覚悟!」

 

平賀は刃と刃を擦る様にスライドさせながら、美緒の召喚獣の頭部を狙う。美緒は召喚獣を仰け反らせることでそれを回避した後、バックステップで距離を取り、再度突撃しようとするが、清水も平賀の召喚獣を踏み台にしてグラディウスを振り下ろす。美緒をそれを受け流し、清水の召喚獣の背中を思いっきり蹴り、ダメージを与えると同時に平賀の召喚獣に突撃をする。

 

Dクラス清水美春10点

 

平賀も突撃をするが、途中で右回転を加えて回転しながら接近する。美緒もそれに乗り、召喚獣を飛び上がらせながら縦回転で突撃、2人の得物が当たると、ガリガリと金属が削れる音が響き、そして互いの召喚獣が交差すると回転が止まって、床に着地した瞬間、平賀の召喚獣が消滅する。

 

Dクラス代表平賀源二討死

VS

Fクラス麻井美緒9点

 

この瞬間、Fクラス対Dクラスの試験召喚戦争に決着がついたのだった。




如何でしたでしょうか?
それではまた次回♪


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四日目

少し遅くなりましたが、お届けします♪
それではどうぞ♪


 

【挿絵表示】

 

美緒達のみで、Dクラスを圧勝してから1時間ほど経った。あの後雄二はDクラス代表の平賀と戦後対談を行い、Bクラスの室外機を破壊することで、Dクラスとの設備交換を無しにした。

そして戦後対談を終えた美緒達は、教室に戻った。

 

「それじゃ、アキ君、瑞希ちゃん。いこっか♪」

「うん」

「はいっ」

 

美緒そう言うと、5人は歩き出す。暫く歩いて昇降口に着き、美緒、美紗、美沙が下駄箱のとを開けるとガサガサといくつかの封筒が落ちる。

それを見た3人は『はぁ………』と溜息をついた。その封筒を全て鞄の中に入れて靴を履き替える。

 

「美緒ちゃん達はまた人気者ですねぇ」

 

歩きながら瑞希は可笑しそうにコロコロと笑い、その反対に美緒はぶすぅと如何にも不機嫌ですといった表情になり、明久、美紗、美沙は苦笑する。

 

「私の事を好いてくれるのは嬉しいんだけどね………。ちゃんと私を見てくれた上でなら良いんだけど、そうじゃないなら、正直言って迷惑なだけだよ」

「それは私も同感だね~」

「私もですの」

「あはは。美緒ちゃんらしい意見ですね」

「僕はそういったのもらったことがないから解らないなぁ」

「あ、小学校、中学校と去年アキ君に届いたラブレターなら私が処分したよ♪」

「はぃぃっ!? なんてことしてくれるのさ!美緒!」

「有象無象の女の子より身近に居て、アキ君を想ってくれてる女の子の方がアキ君に良いと思ったからだよ?」

「えっ!?それどういうことなの?美緒」

「ふふ♪秘密だよアキ君♪」

「み、美緒ちゃんっ! 私にもその話を詳しくっ!」

 

美緒は瑞希の言葉を聞いてクスリと笑い、そのまま駆け出した。それを追うように瑞希と明久も駆け出し、美紗と美沙は苦笑しながらその後に続いた。

そして翌日、いつもの如く明久、美緒、美紗、美沙は仲良くFクラスに入る。そこに居たのは雄二で、不敵な笑みを浮かべながら自分の卓袱台の前に胡坐をかいていた。

 

「よう、明久、麻井姉妹」

「ん、おはよう雄二」

「「「おはよ~、坂本君」」」

 

雄二と挨拶を交わした4人は、各々の卓袱台に座り、美緒達3人は明久の卓袱台に集まる。

 

「ところで雄二、皆にあの事話したの?」

「ん? 何の事だ?」

「Dクラスの設備の事だよ」

 

雄二はそれを聞いて頷きながら、英語の教科書を読む。

 

「あぁ、その事なら既に話した。みんなの了解はとってある」

「なら、良いけどね。今度はBクラスを攻め込むみたいだけど、どんな戦略を組むのさ?」

「今回は麻井姉妹は俺の近衛兵として守備に付いて貰おうと思う、まぁ、最悪麻井姉妹を出したら一方的にしかならんし、なによりそれじゃあ意味がないからな。今回は明久、お前らを前線部隊に出そうと思ってる。今の所はそのぐらいだな、後はもう少し練りこんでからだな」

「ん、解った。美緒達もそれで良い?」

「私は構わないよ」

「私も~」

「右に同じ、ですの」

 

4人で雑談しているうちに、担任が来て、通常授業が終わり、昼休みになる。美緒が明久を屋上に誘い、美沙が瑞希を誘うと雄二や康太、秀吉、美波もぞろぞろと付いてきた。

 

「あ、あの! 明久君っ! 今日明久君の為に(・・・・・・)お弁当作ってみたんですけど、試食をお願いしても良いですか!?」

「ん? うん、姫路さんのお弁当って久し振りに食べるから楽しみだよ」

「お口に合うと良いのですけど……。感想は遠慮なく言ってくださいね?」

「うん、解ったよ。姫路さん」

 

明久は瑞希にそう返事をして、弁当箱の蓋を開けると、色鮮やかで栄養価的にも見た目的にもバランスが取れている内容だった。

少し大きめの男子高校生なら丁度良い位の御握り、見た目トロットロに見えるがしっかりと火が通っている出し巻き卵、サラダ風に纏められた緑黄野菜、カラっと揚げられて美味しそうな一口大の唐揚げが数個入っていた。

それを見た明久は美味しそうだと思いながら、唐揚げを一つ食べた。

 

「ど、どうですか? 明久君」

「……。うん、上手にできてるし、味もしっかり付いてて美味しいよ」

「ほ、本当ですか!? ……良かったぁ」

「ふふっ♪ 瑞希ちゃん、良かったね♪」

「はいっ! 美緒ちゃん達のおかげです!」

「吉井っ! 私のも食べなさいよ!」

 

ほんわかとした雰囲気の中、美波が手に持ったサンドイッチを無理矢理明久の口の中に入れる。

 

「ムゴォッ!?」

「島田!? 何してるのじゃ!!」

「その手を離しなさい!!」

 

美波の暴挙に逸早く気付いた秀吉と美緒は、美波を明久から引き離す。瑞希、美沙は明久の背中を叩いたり、お茶を飲ませたりして、嚥下させる。

その間に、美緒、美紗、雄二、康太は美波に詰め寄る。

 

「島田さん! 貴方は何を考えてやったの!!」

「そうだよ! アキっちが喉を詰まらせたら、どうするつもりだったの!?」

「五月蝿いわね!! 吉井が瑞希にデレデレしてるのが悪いのよ!!」

 

美波のその物言いに、雄二、康太は呆れ、何も言えなくなったが、美緒はつかつかと美波に近付くがそれを美紗は止めようとするも、それよりも早く美緒は美波の頬を拳握って殴り倒した。その出来事に雄二、康太、秀吉は予想はしていたがそれよりも上を行く事を美緒がした為に固まってしまった。その横で美紗は溜息をついた。

 

「何すんのよ!!」

「五月蝿い黙れ。貴様は何の権利があって明久君を殺そうとする? 貴様、何様のつもりだ? 普段から私達が警告しているにも拘らず、何度も暴力を振るおうとしたな? いいや、既に何度も振るったか、明久君は貴様の所有物か? 違うだろう? この際だから言っておこう、目障りだ。今すぐ死ね、この世から消えて貰いたい所だ。明久君に助けて貰いながらそれを仇で返すとは、恩知らずも良い所だな? それにだ、この前の自己紹介の時言っただろう? 明久君を害する者は容赦しないと、だから私は容赦しない。私達は容赦しない、そうだな………。貴様はこの学園から消えて貰うとしようか、傷害罪で起訴できるしな。微妙な所だが殺人未遂でも訴えれると思うぞ? 今までは甘く見てたがこれ以降は容赦しない、二度と明久君に近付くな不愉快だ。虫唾が走る。さっさと消えろ小娘」

 

美緒は美波の反論をさせる事無く言い放つと、屋上から出て行こうとしたが、明久に止められる。

 

「………。美緒」

「………。アキ君、大丈夫? 苦しい所はない?」

「僕は大丈夫だよ。それより、あまり島田さんに怒らないで? 僕は気にしないからさ」

「アキ君………」

 

そんな様子を見る美緒の顔は、何処となく子供を心配する様な母親の顔をしていた。自身の母親のそんな顔を久し振りに見る美紗と美沙は、なんとなく昔の自分を思い出していた。

 

「少し………、頭を冷やしてくるね」

 

美緒はそう言って、屋上から出て行った。

美緒が屋上を出てから数分間、無言で重い空気が流れていたが、それを打ち破ったのは意外にも秀吉だった。

 

「のぅ島田、お主………、明久の事をどう思ってるんじゃ?」

「な、何よ。急に………。ウチが吉井の事をどう思ってても、関係ないでしょ」

「(のぅ、雄二………)」

「(あぁ、島田は明久の事が好きなはずだ………。だが、あれを見るとなぁ)」

「(………。正直無理がある)」

 

雄二達3人は小声で話しながら、美波を蔑む様な疑問を抱いている眼差しを向けた。そんな中、美波は怒り心頭だった。

 

「(これも全部吉井が悪いのよ! 吉井!! 後で覚えてらっしゃい!!)」

 

美波の内心を覗いていた美紗、美沙は溜息をつく。そして、そんな重い雰囲気の中昼休みは過ぎていったのだった。

 

 

                     ◆

 

 

そして翌日の午後、Fクラス対Bクラスの試召戦争が始まった。

前日の雄二が言うとおり、美緒、美紗、美沙は雄二の近衛兵としてFクラスに居た。ちなみにだが、今回の使者は須川が向かったようで、雄二の予想通りにフルボッコの状態で戻ってきた。

 

「ところで坂本君」

「ん? どうしたんだ? 麻井中姉」

「今回の部隊員の配置なんだけど………。これしかなかったの?」

 

美紗が心配するのは今回の部隊員の配置に関することだった。雄二は前線部隊の隊長を瑞希、補佐として明久、秀吉を付け、以下Fクラス男子を19名、中堅兼後詰部隊の隊長を美波、補佐として横溝を付け、以下Fクラス男子を25名に分け、康太を斥候兼情報収集に向かわせたのだった。

美緒達4人が話をしている間に、瑞希が率いる前線部隊がBクラスの前線部隊と衝突していた。

 

「平田が戦死! こっちはBクラスの奴ら4人できてる! 増援を頼む!」

「4人の方は増援を6人送る! それで持ち堪えるんだ!」

「こちら山田! B小隊俺を残して壊滅! 至急応援「戦死者は補習ぅぅぅぅ!!」ギャァァァァァァ!!」

「B小隊が壊滅して開いた穴は、D小隊とR小隊で埋めるのじゃ! 急ぐのじゃ!」

『応!!』

「このままだときびしいですね、どうしたら………「えぇ!? 何で此処に姫路さんが!?」っ!?」

 

瑞希は戦略を立てようとしたが、運悪くBクラスの女子に見つかってしまう。

 

「長谷川先生! Bクラス岩下律子です。Fクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます!」

「律子! 私も手伝う!」

「あ、長谷川先生、姫路瑞希です。よろしくお願いします!」

「「「試獣召喚(サモン)!!」」」

 

数学

Fクラス姫路瑞希498点

VS

Bクラス岩下律子189点&菊入真由美151点

 

瑞希の召喚獣はドレス風のアーマー、所謂ドレスアーマーを纏い、その背部には、処女雪の様に白く、淡く仄かに青色が混じった天使を思わせる翼があり、両腕部にはフルプレートアーマー等に使われる篭手と手甲組み合わせ、両脚部には臑当(すねあて)甲懸(こうがけ)が組み合わさった物を付け、頭部にはハート型の髪飾りが添えられており、その両手にある獲物は召喚獣の背丈を軽く越し、召喚者の背丈とほぼ同じの巨剣を両腕で構えていた。

その瑞希の召喚獣と圧倒的な点数を見て、Bクラス女子は悲鳴をあげる。

 

「ちょっ! 何あの点数!? 勝てるわけがないよ!」

「私にはこうするしか………、ごめんなさい!」

 

瑞希はそういいながら、Bクラス女子の召喚獣2体をその手に持つ巨剣で薙ぎ払い、消滅させた。

数学

Fクラス姫路瑞希498点

VS

Bクラス岩下律子戦死&菊入真由美戦死

 

「い、岩下と菊入が戦死したぞ!」

 

とあるBクラス男子の驚愕の声と共に、Bクラスの前線部隊全員に動揺が広がる。それと同時に前線部隊を前進させ、Bクラスの部隊を後退させていく。

 

 

「明久、ワシらは教室に戻るぞ」

「ん? なんで?」

「Bクラスの代表じゃが、どうやらあの根本らしいのじゃ」

 

Bクラス代表の根本恭二とはおかっぱに似た髪型をしている素行が悪い男子生徒で、カンニングの常習犯、野球等の試合では相手チームに一服を盛る、喧嘩ではナイフ等の刃物は標準装備(デフォルト)などの悪い噂が絶えない生徒だ。

 

「なるほどね、それなら戻った方が得策だね」

 

明久はそう言うと、瑞希に説明して数人を引き連れて部隊を離れた。その後、Fクラスに戻り、戸を開けると、そこには見るも無残に破壊された卓袱台、シャーペン、消しゴムがそこら住に転がっていた。

 

「これは酷い………。やってくれたね」

「たしかにのぅ、予想以上じゃ」

「ん? なんだ明久と秀吉戻って…、ってなんだこりゃあ!?」

 

丁度、明久と秀吉が話しているとそこに美緒達を引き連れた雄二が戻ってきて、教室の惨状に驚く。明久は雄二に何故教室を放れていたのかと聞くと、Bクラスとの協定を結ぶ為だと説明した。

 

「なるほどね………。でも、あの根本なら、まだ他にも罠を仕掛けてるかもしれないね」

「あぁ、あの根本ならそうするだろうな」

「なら、僕は前線に戻るよ。何かされてるかもしれないからね」

「あ、なら私もいくよ。アキ君」

「なら私と美沙はこのまま坂本の護衛をしてるね、いいよね?美沙」

「勿論ですの、秀吉さんも明久さんも前線に戻ってくださいませ、此方は私達で十分ですから」

 

美紗、美沙の言葉を聴いた明久、美緒、秀吉は急いで前線に戻った。

 

「吉井! 戻ったか!」

 

明久達を出迎えたのは裕次郎だった、だが、その表情はかなり険しい。

 

「待たせたね! 状況は?」

「かなり不味い状況になった」

「え!? どうして!?」

「島田が人質にとられた」

「「「はぁっ!?」」」

 

裕次郎の報告を聞いた3人は、揃って驚きの声をあげた。

 

「おかげで相手は残り2人なのに攻めあぐんでいる、どうする?」

「とりあえず、状況を見せて、衛宮君。状況によっては私がやるよ」

「え、美緒それなら僕が」

「ううん、私がやるよ。いい加減あの小娘には頭にきてるからね」

 

明久と話す美緒は静かに怒り狂っていた。もし明久に対する暴行を行うなら………。と心に決め、裕次郎の案内に従い、3人が進んでいくと報告どおり、Bクラス男子2人に捕らえられた美波とその召喚獣が居た。

 

「島田さん!」

「よ、吉井!」

 

ドラマっぽく明久と美波を呼び合うが、美緒はそれを無視して、美波に問いかける。

 

「それで島田さん? 貴女はなんで捕まってるのかな?」

「コイツ、吉井明久、お前が怪我をしたって偽情報を流したら、部隊を離れて1人で保健室に向かったんだよ」

「そう………。まぁいいよ。とりあえず貴方達ごと始末するよ試獣召喚(サモン)!!」

 

英語W

Fクラス麻井美緒500点(制限あり)&島田美波63点

VS

Bクラス鈴木次郎33点&吉田卓夫18点

 

「理由はどうあれ、部隊を任せられたんなら単独行動はするな! 軍事行動の基本だ愚か者め!!」

 

美緒はそう言って、人質の美波もろともBクラスの召喚獣2体を両断した。

 

英語W

Fクラス麻井美緒500点(制限あり)&島田美波戦死

VS

Bクラス鈴木次郎戦死&吉田卓夫戦死

 

喚く美波を補習講師が連れて行く中、Bクラスを教室内に押し込めた所でその日の試召戦争は幕を閉じ、その後、明久達4人は教室に戻る。そこにやや遅れて康太が戻ってくると、雄二に先程あった事を話した。

雄二はその事に関しては美波の自業自得と言う事で納得したところで、康太が戻り、雄二に耳打ちをする。

 

「Cクラスの様子が怪しいだと?」

「………そうだ(コクリ)」

「漁夫の利を狙うつもりか………。或いは……」

 

雄二の言葉から察するに、Cクラスが戦争の用意をし始めている様だ。

CとAの戦力差を察してもAクラスに戦争を起こすメリットが無い為、BクラスかFクラスどちらかに仕掛ける方がメリットが高く、尚且つ疲弊しているBクラスかFクラスを攻め落とした方が安全だからだ。

しかし、布告のタイミングを誤れば三つ巴の泥沼な状況になり、必要以上に自軍が消耗してしまう可能性がある為に、このタイミングで他クラスに悟られると言うのも可笑しいと雄二は考えたが、現状を打破する為にこの場にいる全員に言った。

 

「Cクラスと協定を結ぼうと思う。Dクラスを攻め込ませると脅せば攻め込むことは無いと思う」

「それが最善だと私は思うよ。私達はそれに支持する」

 

雄二の言葉に美緒、美紗、美沙、明久、瑞希、秀吉、康太、裕次郎は頷く。

 

「それに、僕達が勝つなんて思ってないだろうしね」

「浅井姉妹や姫路達が居るから可能性はあると向こうは考えてるだろうな。まぁ、今から行くか、あぁ、秀吉はここに残ってくれ」

「ワシは、行かなくても良いのかの?」

「あぁ、この後次第では秀吉に頼むことがあるからな。その為だ」

「あいわかった。ではワシは留守番でもしておくのじゃ」

 

秀吉がそう言った後、雄二達はFクラスを出てCクラスに向かった。

 

 

                     ◆

 

 

雄二達8人がCクラスに着くなり、雄二がCクラスの扉を開ける。

 

「Fクラス代表の坂本雄二だ。Cクラスの代表はいるか?」

 

Cクラスの教室にはまだ大分生徒が残っていて、康太の情報通り漁夫の利を狙って試召戦争の準備を行っていた。

そんな中から黒髪をベリーショートにした気の強そうな一人の女子生徒が雄二達の前に出てきた。彼女の名前は小山友香(こやまゆうか)で、バレー部のホープを務めている。

 

「私がそうだけど、何か用かしら?」

「Fクラス代表としてクラス間こ「坂本君、待って」ん?美緒どうした?」

 

雄二の言葉を遮った美緒は、つかつかと歩き、教室の奥を睨み付ける。

 

「そこで隠れてる人達出ておいで? 隠れてるのは解ってるよ。出てこないなら、出ざるを得ないようにするよ」

 

美緒がそう言うも、奥から誰も出てこなかった。美緒は溜息をつくと両手を広げる、袖から片腕3本両手で6本の銃剣(バイオネット)が出てきてそれらを教室の奥に投擲し、穿つ音を立てながら突き刺さった。

それを見ていた美緒、美紗、美沙、明久以外全員が固まる。ちなみに明久は呆れながら頭を抱えていた。

 

「次は当てるよ? 早く出ておいで」

 

美緒の言葉で我に返った小山は、美緒に詰め寄ろうとした瞬間、慌てて出てきたのはBクラス代表の根本とその護衛の為か複数人の生徒と長谷川教諭だった。

 

「やっぱり居たんだ? Bクラス代表さん?」

 

美緒は不敵に笑い、その後ろから雄二が近づいてきた。

 

「良く解ったな?」

「当然、素人の気配なんて直ぐに判るよ」

 

雄二も美緒と同様に不敵に笑いながら言う。

 

「まぁ、向こうから協定違反をしたんだ。ここらで潰れてもらうか」

「……!! 長谷川先生!! Bクラス芳野が召喚を「させるか! Fクラス吉井がここにいる全Bクラスに対して数学を申し込みます! 召喚(サモン)!!」」

 

数学

Bクラス根本恭二250点&芳野孝之161点&Bクラス生徒平均170点(4人)

VS

Fクラス吉井明久490点

 

『はぁっ!?!?』

 

明久の点数を見たBクラスとCクラス全員が、驚きの声をあげる。明久の召喚獣は黒い馬革のハーフコートを羽織り、灰色のYシャツはINにして灰色のビンテージデニムを穿き、両腕には大太刀が握られていた。ちなみに、尻尾は爬虫類系である。

 

「ねぇ、雄二」

「な、なんだ? 明久」

 

明久は雄二に声をかけながら首を少し後ろに少し向けながら笑った。だが、その眼はギラギラと輝き、まるで獲物を見定めた肉食獣の様であった。

 

「ここで終わらせても良いんでしょ?」

「………!! あぁ!思いっきりやってやれ! 明久!!」

『舐めんじゃねぇ!!』

 

明久と雄二の受け答えを聞いていたBクラス生徒達はそう言いながら突進するが、明久は地面に大太刀を突き刺して腕輪を光らせる。すると、床が不自然に盛り上がり、その直後に爆音と共に盛り上がった床が破裂し、その衝撃で先端が鋭利になった岩がBクラスの召喚獣を串刺しにしていった。

 

Bクラス芳野孝之戦死&Bクラス生徒8名戦死

VS

Fクラス吉井明久350点

 

召喚獣が戦死した生徒全員を、西村教諭が担ぎ上げて行った。

そんな西村教諭が本当に人類かと問われる様な出来事を無視して、明久は根本に接近して逆袈裟懸けに切りつけ様とする。根本の召喚獣は両手に数珠で繋がった二対の鎌を持ち、陣羽織を羽織った武将風だ。

その根本の召喚獣は、両手の鎌で明久の大太刀を受け止めようとするが、元々の得点の差が倍近くあった為受け止めきれずに、鎌が真上に弾かれる。

 

「これで……!!」

 

逆袈裟懸けの勢いと遠心力を乗せる様に回転し、真正面を向く直前に踏み込み根本の召喚獣の腹部を切断した。

 

Bクラス根本恭二戦死

VS

Fクラス吉井明久350点

 

「Bクラス代表の戦死により、この試験召喚戦争はFクラスの勝利です!」

 

長谷川教諭の宣言により、Fクラス対Bクラスの試召戦争はFクラスの勝利となったのだった。




如何でしたでしょうか?
次回ですが、現在執筆中なので少しお待ちくださいませ
それではまた次回♪


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