緑谷出久、鼠と共にヒーローを目指します! (血糊)
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猫の恩返しならぬ鼠の恩返し

オールマイトに現実を見ろと言われたあとの帰り道、途中に最近新しく建てられたというコンビ二を見て、何か買おうかな、と思った緑谷。
原作とちがうのは両親が他界して、親戚に預けられていることと、かなり口が悪いこと。
著者にとって「ヒーロー」に対しての考えを言ってもらっています。


「またお越しくださいませ~」

途中ふらりと立ち寄ったコンビニで、僕が買ったのはコッペパンだけだった。

理由は単純。50円と、安かったから。

店員の棒読みの挨拶を聞き流して、僕はコンビ二を出る。そして帰り道を急ごうとしたときだった。

 

 

「ちゅー・・・」

 

 

弱々しく鳴きながら僕を見ている足元の鼠。

赤い布を羽織り、そのまま突っ伏しているのだけども、僕を見る目は爛々と光っていた。

「ちゅぅ・・・」

長く尖った爪のある枯れ枝のように細い手を一生懸命に伸ばす先には、先程買ったコッペパンが入ったポリ袋がある。

「欲しいなら、いいけど」

ポリ袋からコッペパンを取り出してパンの透明な包装を破く。

「はい」

しゃがみ込み、パンをそのまま差し出すと、鼠はぱくっと齧り付く。

「ちゅー!!」

その鼠の食べっぷりは凄まじく、とてもお腹が空いていたことが伺えた。自らの2.3倍も大きいパンがどんどん小さな腹の中に収まっていく。

あっという間に鼠はコッペパンを食べ切ってしまった。鼠はとても満足げに鳴いた。

「ちゅーちゅー!」

「どういたしまして。じゃあね」

僕は立ち上がって、帰路に戻った。

その後ろをなにかがついて来てるとも知らずに・・・

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

帰路を急ぐ途中、道を人だかりが塞いでいた。

「あの、何があったんですか」

「あ。あのね、この先にヴィランがいるのよ。それで、そのヴィランが男の子を人質にしていてね」

質問に答えてくれた40代くらいの主婦が言ったことに胸騒ぎがした。

「ありがとうございます!」

お礼を言って、僕は人だかりを掻き分ける。

前方へ出た先の光景は―――

 

 

「なにバカなことやってんのかっちゃん!?」

 

 

人質が居る為にヘドロのようなヴィランに近づけていないヒーロー達とそのヘドロヴィランに捕まり、助けを求めている人質―――幼馴染みの姿があった。

僕は叫んでからヘドロヴィランに向かって駆けて行く。

 

「バカヤロー!! 止まれー!!」

「うっさいわ!あんた等ヒーローなら人質助けろよ!」

「はぁ!?」

 

僕は止まれといったヒーローに向かって文句を叫ぶ。

ヒーローがヘドロヴィランの前に居たなら僕はそこへ向かおうとはしなかっただろう。

でも人質が死にかけているというのに一向に立ち向かわないヒーロー達に僕は痺れを切らしていた。

「殺られる前に殺ればいい!僕はできないけどね!」

さらっと自虐を入れる僕。

「人質が助け求めてんのになんで助けない!?そんなことしてたら人質死ぬだろうが!!」

僕のしていることはむしろ人質を早く死なせてしまうような行為だということは僕自身分かっている。でも、こうしてヴィランの気を周りから逸らせば、隙くらい出来るはず・・・!

バカなことだとは分かっている。どうせ僕がこんなことしても、ヒーローは攻撃なんて出来ない・・・いや、()()()だろう。僕と人質を巻き込むからとか理由をつけて。

人質と言うのは肉盾だ。それが無くなれば気兼ね無しに攻撃できる。

でも無くならなければ攻撃出来ない・・・そうヒーローは言いたいのか。

なんで出来ないと決め付けてる?それも()()()()が。

警察とかがどうにか出来ない時のために、ヒーロー(あんた等)が居るんじゃないのか。

僕は背負っていたリュックを開き、ヴィランめがけて投げつける。

ヴィランはヘドロの体を使い、かっちゃんの手のひらをこちらに向けている。

ああ、そっか。確かかっちゃんの個性は手のひらを使うんだっけ。

横に避けて、直撃を免れる。

「デク、てめえ…っ」

「かっちゃんってたまに災難なことに巻き込まれてたよね。因果応報って奴かな?」

「んだとテメェ!」

「うん。元気そうで何より」

しれっと悪口を零す。それにキレられる位なんだからまだ余裕はありそうだ。

かっちゃんの腕をつかんで、走り抜けるように引き抜こうとするが、出来なかった。

「テメェ助けるんだったらちゃんと助けろや!」

「そーゆーのは本業の人の方が向いてるんじゃないかな、ねぇ?」

ちらりと後ろのヒーロー達に目を向ける。

―――今がチャンスじゃないのか?

『ッ!!』

僕の言いたいことが伝わったようだ。

ヒーロー達が一斉攻撃を始める。

「あヤバッ!」

「人質が無いとまともに戦えないような奴がヴィランに向いてるとは思えないなぁ。あんたは臆病者かな?」

「ッ黙れ!!」

挑発したらすぐヴィランは激昂した。あれ、図星かな?

まあ、どっちでもいいか。

「あはは。チェックメイトだ」

「!しまっ―――」

ヒーロー達の攻撃をモロに喰らったヴィランは気絶した。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

「ごほっごほっ!」

僕は拘束から解かれたかっちゃんの背中をさする。

「全く・・・なにやってるんだ君は」

さっき僕に止まれと言ったヒーローが話しかけてきた。

「でもちゃんと解決しましたし、もういいじゃないですか。ちゃんとかっちゃんも助かったんですから」

「そういうことじゃないんだが・・・まあ、ある意味助けられたということは否定しない。だが、君はもう少し自分を大事にした方がいいぞ」

「死ぬことは怖くないです。僕が死ぬことで誰かが助かると言うのなら喜んで僕は死にます」

「・・・・・・」

ヒーローはなぜか絶句している。僕は本心を言っただけなのに。

「それに、僕は【無個性】ですよ?今時の世の中、【無個性】は死んだって悲しむ人なんてどこにも居ませんし。まあ身内なら悲しむ()()しれませんが」

僕が死んだって悲しむ身内はいませんけどね。

暗にそういう意味を込めて僕は【常識】を言った。ありゃ、また無意識に自虐挟んじゃった。同情してもらう気なんて全く無いのに。いや、同情されるはず無いか。

「かっちゃん、調子良くなった?」

「良くなるはずねえだろ・・・」

「あの、救急車は来てますか?」

「もう呼んでいるよ」

「そうですか・・・」

 

そのあとかっちゃんは救急車に運び込まれ、病院へ救急搬送された。僕はヒーロー達にめっちゃ叱られた。自業自得だからしょうがないが。

 

 

 

 

「・・・で、なんで君が居るの?」

そう、僕が言った相手は、足元のさっきコッペパンをあげた鼠だった。

「え、さっきのお礼をするためだが」

反射的に後ずさる。

「ね、鼠が・・・え??」

「そこまで驚かなくてもいいだろうに」

「いやいやいや、驚くに決まってるでしょ!TRPGならSANチェック案件だよ!?」

「個性って言う異能があるでしょうが。驚きすぎだ」

鼠が喋るという光景の混乱が落ち着くのには、かなりの時間を掛けた。

「・・・落ち着いたか?」

「うん・・・それで、君の言うお礼って何?」

「君じゃない、オレはドロッチェだ。お礼ってのはな、お前にオレの個性をやることだ」

10秒間の沈黙。

「はぁ!?個性を!?」

「そうだ」

「・・・本当に?」

「本当だ」

どうやら、本当に個性をくれるらしい。

「・・・ありがとう」

嬉しさのあまり、泣いてしまった。

やっと、僕は周りの人と対等になれるのか。

気軽に話せるようになれるのか。

「そんなに嬉しかったんだな」

「うん・・ひぐっ・・・やっと対等になれるから・・・」

「そうか。まあ、個性をやる前にまだしないといけないことがあるけどな」

「・・・しないといけないこと?」

ドロッチェが真剣な目で僕を見た。

 

 

 

 

「まずは、お前の歪んだ【常識】ってのを正すぞ」

「・・・は?」




いじめ+親戚のDVなどが緑谷を歪ませる。
緑谷らしくない悪口と失礼さは、只のハッタリで、本心からではありません。
ただし、ヒーローに言った事は、本心。心からの、緑谷にとっては疑いの無い常識。


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僕の人生を支えてくれた存在

緑谷のお父さんはヒーロやってます。そして関係は冷え切っております。
ごめんなさい、こういうドロドロ好きなんで。
アンテ要素、ぶちこむよ!


「ただいま」

「やっと帰ってきたの出久!?お父さん荒れてるから早く落ち着かせて!」

「また?職場のトラブルとかあったの?」

「違うわ。風俗が閉まっていたんですって。だからこんなことになってるのよ、ほら」

家の中はかなり酒臭い。ビールの空き缶が無数に転がり、ヒーロー活動用のコスチュームが乱暴に脱ぎ捨てられている。

「あー・・・明日二日酔い確定か。最悪じゃん」

「・・・明日私暇だから片付け手伝ってあげるわ。吐いたのはアンタがやって」

「ありがと。父さん、また自棄飲みしてるの。やめてっていってるでしょうが」

「うるせえよ出久ゥ。無個性の癖によォ偉そうに言うんじゃねえよ!!」

「あぶなっ!?だから父さんの個性って簡単に人殺せるんだから使わないでって言ってるでしょ!!」

「お前は死んでも誰も悲しまねえんだからいいだろうがぁ!」

「母さんが巻き添えになるかもしれないじゃないか!ちょっとは周り見なよ、だからいっつも外で面倒ごと起こすんだよ」

「ああん!?無個性の木偶の坊の癖に何一人前に強個性のプロヒーローに説教してんだ、ああ?!」

「・・・頭痛が痛い。母さん、ロキソニンある?」

「また言葉がおかしくなってるわよ。今日丁度ストック買ってきてたわ。はいこれ」

「あってよかった。最近これ無いと日常がまともに送れなくなってきてるから・・・」

瓶を僕はもらうと、父さんに歩み寄る。

「えいっ」

あぐらを掻いている父さんの頭を手でぎゅっと強引に下げて、首根っ子に手刀を食らわす。

「いでっ!?」

父さんはあっけなく気絶した。

「もう慣れっこね・・・」

「母さんが昔教えてくれたじゃん。もう慣れたよ」

「昔って言ったって一年前に教えたものなのよ?私が教えた武道の技術を出久はどんどん吸収して・・・結果的に私より上手くなったでしょうが」

「ええ?本当?」

上位プロヒーロー十人相手に武術のみで圧倒した奴が言うことじゃないわよ・・・」

「ああ、大会のこと?正直あのときは夢じゃないかって思ったなぁ。あ、そうだ。あのね、僕個性貰えたんだ!」

「個性もらえたってなにがあったのよ?」

「うん!あのね・・・」

僕は嬉々として経緯を話した。

「・・・不思議なこともあるものねぇ・・・」

「信じてくれるの?」

「信じるか信じないかって考える気力が無駄って私は

「部屋に戻ってなさい。疲れたでしょう」

「うん・・・」

僕は幻滅した父親(憧れのプロヒーロー)を尻目に、部屋へ向かった。

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

「ほんと、よく捻くれなかったな。お母さんがいい人だとしても」

「正直母さんは僕にとっての救いの一つだよ」

「救いの一つ?まだあるのか」

「うん」

僕は部屋の扉を開ける。

「ただいまー」

「お。お疲れさん」

「!?」

肩に乗っているドロッチェが露骨にびっくりしている。

「なんでスケルトンが居るんだよ、モンスターだぞ!?」

「昔からの付き合い」

「hehe、オイラは『サンズ』よろしくな」

「お、おう・・・オレはドロッチェだ」

ドロッチェのツッコミを聞き流して、僕はサンズに事情を話した。

「ほーお?面白い話じゃねえか。実話か?」

「現実離れした実話。キミは信じてくれる?」

「当たり前だ。お前の言葉から異常な興奮が感じ取れるんだからよ」

いつもどおりの変わった発言。僕の言葉からそこまで強い感情って感じ取れるものなのかな?

「それで、ドロッチェが個性を与える、と?」

「そ。ただ、色々下準備しなきゃいけないから出久が寝てるときにやるけどな」

下準備、か。なんなんだろう?

「heh。面白そうだな、そりゃ」

「そうか?やることはかなり地味だぞ」

「そういう意味じゃねえよ」

「???」

そのとき、母さんの声が聞こえた。

「分かった!先にお風呂、入っとくねー!んじゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

僕は着替えを持って浴室へ向かう。

 

それから、夕飯、勉強、寝る準備をしたが、その際の無数のアクシデントは割愛。

 

「ただいま・・・」

「・・・さっきよりも疲れきってないか?」

「ははっ、一ヶ月に一回のヴィランの襲撃さ・・・」

「なにがあった」

「サンズ、話しといて。僕はもう寝る」

「OK。任せろ」

「え、え、おい!?」

僕は布団にもぐる。今日はいつもの黒ずくめの人たちと一緒にパイプがたくさん付いた男の人が天井から襲撃してきて驚いたなあ。

 

『君の戦闘力は私達にとってとても有望だ。だから私達の所に来てくれないか?』

 

そう言われたけど、『煩い、消えろ』って一蹴しちゃったけど、言いすぎだったかな・・・

 

 

 

 

 

「・・・」

真っ暗闇の中、目を蒼色に光らせながら、眠っている出久の額に手を置いているのは、Sansだ。

「あいつだけじゃ、心配だからな。お前はヒーローになりたいんだろ?」

優しく、語り掛ける。

「お前の心は強くなった。だから、もう俺の存在は必要ないだろう」

出久の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「だけどな」

蒼い目がひときわ強く光る。

「お前の()()は制御しようも無いものだ。だから俺はまだお前のそばに居なきゃならねぇ」

そっと手を出久の額からどける。

「『lightpartner(表の相棒)』の席は取られちまったけど、まだ『darkpartner(影の相棒)』っつう席があるんだ。俺はそこに座らせてもらうぜ」

パチン、と肉の無い指を鳴らすと、彼の周りにガスターブラスターが現れた。

「そーゆーわけだ。俺はdarkpartnerとして、こいつを守らなきゃいけねえ。だからな、こいつのことは諦めてくれよ―――

Sansは後ろを向いた。そこには、夜の闇に溶けるような黒服を着て、その黒と対照的な白い頭部の生みの親(Gaster)がいた。

「ふむ。彼女はわたしにとって、とても興味深い存在なのだがね」

Sansは手のひらをGasterへ向ける。

「それ以上近づくと・・・心の底から後悔することになるぜ?」

「後悔か・・・それは、こちらの台詞だよ、Sans?」

こつりとかん高い音が鳴った。

「仕方ないな・・・ごめんよ、出久。だから約束は嫌いなんだ」

二者の緊張が極限まで張り詰めた。

 

 

 

 

 

「花が萎んで小鳥達が寝静まるこんな静かで良い夜に、家を土足で歩くお前みたいなヤツは・・・・・・ 地  獄  で  燃  え  て  し  ま  え  ば  良  い 

「ふむ。落ちぶれたものだね、最弱(最強)審判者(スケルトン)。それくらいで激昂するとは」

「うるせえ!!あれから俺は綺麗好きになったんじゃ!さっき綺麗にしたばっかなのになに汚してんだよ、ああ!?」

「おやおや。まるであの爆弾魔少年みたいな口調になったじゃないか、Sans。私は彼女との頭脳戦をしたいだけというのに」

 

 

 

 

 

とても静かで良い夜に、綺麗好きのスケルトンと研究好きの天才隠しキャラの大戦争(badtime)が始まった。




なんてしょうも無い理由でこんなシリアルに(badtime


パイプ男。誰のことか、分 か る よ な ?
雄英?受験はカット!それからの災難話じゃ!!


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命懸けの戦闘

ニコ動である動画を見てしまいました。
衝動的にクロスオーバーさせてしまいました。
反省はしている。だが後悔はしていない。
バイオハザード要素、投入じゃ!


「あああ・・・ぜっっっっったい落ちた・・・」

「すまん。本当にすまん。まさかあんなに強いとは思わなくて」

雄英試験後。僕は頭を抱えて帰っていた。

「ドロッチェは悪くない。悪いのは耐久力を甘く見積もりすぎた僕だよ」

まさか鉄ではなく、鋼鉄だとは思わなかった。っていうか、バカか僕は。相手は雄英高校、国立の高校だぞ?しかも実力者ヒーローを輩出した実績がある。そんな高校相手に油断なんて、自殺行為とも言えるじゃないか。

「爪の攻撃力の弱さ、ちゃんと分かっとかないといけなかった。この個性はスピードタイプなんだから、攻撃力は劣るって分かっていたはずだったのに・・・これじゃ、僕ヒーローになれない、いやむしろ資格すらないじゃないか・・・」

「・・・・・・」

肩に乗ったドロッチェがじとっとした目を向けていた。

ヒーローになるために個性をくれたと言うのに、こんなザマじゃ、彼に申し訳ない・・・

 

(最後にあの巨大ロボが倒れてきて爪で切り刻んで凌ごうとした結果、弾かれて下敷きになっちまったが、もしかしてそれまでやったことの自覚が無いのか?)

じとっとした瞳が困惑の意味を表していたことを僕は後に知る。

 

 

 

「い~ず~く~?だからこんな裏道行くなっつったろうが!!」

「ごめん・・・本当に・・・」

ふらっと裏道を使った結果、ヴィランに絡まれました。

「うん?なんだその鼠?ひゃひゃひゃ!喋る鼠なんてまるでミッキーマ」

「比較しないで、その鼠と彼は違うから」

平和ボケした二足歩行のそれと数々の死線を潜り抜けたドロッチェは全く違うわ、と比較した大柄のヴィランの腹に回し蹴りを喰らわす。

「がっ・・・!?」

「何だ今のキックは!?」

「初動すら見えないくらい早い!」

「ま、まさかこのガキは・・・あの天下一武道会で最年少での優勝を挙げた、あの『デク』じゃねえか!?」

取り巻きのヴィランが口々に言う。それにしてもなんかこの人たち、妙に小物臭がするような・・・

「コール!援軍呼んで来い!」

「ラジャ!」

コール、と呼ばれた小柄な男が逃げていく。

「・・・不味くないか?」

「あはは。言っとくけど、もう詰んでるよ?後ろに幾十人は伏兵がいる。それもおそらく武装してる」

「・・・オレの耳が捉えた音はマジだったのかよ」

逃げたら射殺。元から逃げる選択は出来なかったようだ。

「ま、逃げる気も無いけどね!【ハンタークロー】!」

手始めに、近くに居たヴィランに【ハンタークロー】で接近して、軽く切り裂く。

「痛っ!?」

「こちとら命が掛かってるからね。手加減は出来ないよ」

心臓の位置に手のひらをあて、突き飛ばすように思い切り体重を掛ける。

「っっっ―――!!」

「・・・ごめんなさい」

発勁。喰らわせる場所によっては、人を『死に至らしめる』武術。

目を思い切り開き、一拍おいて崩れ落ちたそのヴィランにしゃがみ込んでその目を閉ざした。

「死ぬ覚悟は、出来てる?」

『ヒッ・・・!』

最初のヴィランにやったように、僕は他のヴィランにも同じ事をした。

 

「・・・・・・この感覚は何度やってもやっぱり慣れないな」

目頭が熱くなって視界がぼやける。犯した罪の恐怖が背筋を這い登る。

「もう嫌だ。人を殺したくない。僕のせいで人が死んじゃうのを見るのはもうまっぴらだ」

顔を手で覆う。目の前の罪から目を逸らすように。

「懺悔してるところで悪いが・・・来たぞ、援軍」

手を顔から離す。大勢の援軍が前方から、そして後方からも迫ってきていた。

「出久。流石に分が悪すぎる。オレも手伝うぞ」

ドロッチェが僕の肩から飛び降りて、地面に足を付くと、ぽふん、と音を立て、ドロッチェが僕の膝くらいの大きさへとなっていた。初めて見たときに着けていたぼろぼろの布切れは鮮やかな赤色のマントになっていて、赤く、つばの広いハットを被っていた。

「あ・・・二足歩行」

「これがオレの本当の姿なんだよ。普通の鼠の姿でも頑張れば出来るぞ。さあ、連戦だ。覚悟はいいか?」

「・・・もちろん」

彼らにとって、そして僕にとっての―――badtimeの始まりだ。

 

 

 

「おいおいおい!全く埒が開かないぞ!?」

「っち・・・どうやって打開すりゃあいいんだよ、この状況!!」

どこからか無限と思えるほど湧いて出てくるヴィランの大群に僕とドロッチェはへとへとになっていた。

誰でもいいから、誰か助けてほしかった。

 

「何だおまうぎゃっ!」

「何だぐほっ!」

「なんでお前があぐっ!」

後方の呻き声。

「良かったな、出久。援軍だぞ」

「うん・・・でも何でだろう、嫌な予感がする」

 

はい。予想通り。

ヴィランの亡骸の山から現れた黒いサングラスを掛け、黒いコートを着た男。

「やっぱりアンタか!」

「助けに来たと言うのにその言い草は無いだろう、緑谷出久」

むっとした声色で言い返してくるそのグラサン男は―――

「貴方に助けられるくらいなら、僕は誰の手も借りずに戦うだけだよ、アルバート・ウェスカー

アルバート・ウェスカー。ヒーロー協会本部の幹部クラスであり、実力はオールマイトとほぼ互角と言われている。

「そこまで毛嫌いしなくたっていいだろうに・・・っと!」

後ろから不意打ちしようとしたヴィランに、振り向きざまの手刀。残像すら残らない速さで振りぬかれた手刀は鋭利な刃物となって、生首と胴体を綺麗に切り離す。

「貴方のその無慈悲さが嫌いなんだよ。僕は」

「知ってるか?苦しめずに殺してやるのも慈悲なんだぞ?」

物騒な雑談(?)をしながらもヴィランをどんどん倒していく。ウェスカーさんのことは確かに嫌いだけど、正直、ありがたい援軍だ。だからこそ、今は雑談できるくらいの余裕が出来ている。

「そいつは知り合いか?」

「腐れ縁ってやつだよ。切っても切れない因縁があってね」

「被験者、研究者という縁だがな」

「まさか、実験に使われた・・・と?」

「・・・そのとーり。で、僕は成功例だったんだ」

「・・・名付けるとしたら、『もう一人のアルバート・ウェスカー』と言うべきか」

「名付けなくて良いから。そしてその名前は断固として却下だ。貴方みたいなイカれた研究者とは一緒にしないでほしい」

ウェスカーさんへの敬称?そんなのはとうの彼方に捨て去りましたが何か?

「イカれた研究者、か。ほめ言葉として受け取ろう。ああ、そうだ。出久、両腕に力を入れてみろ」

「?分かった」

ぐっ、力を入れる。何かが蠢くのを感じ取ったとき、服の袖のなかから触手が飛び出してきた!

「・・・・・・」

「一部の変異は出来るようだな。それの使い方くらいは分かるだろう?」

「っち・・・やっぱ仕込まれてたか・・・でも」

今のタイミングだと、心強い。

触手がヴィランたちをまとめて薙ぎ倒す。そして他のヴィランに巻きついて、薙ぎ倒したヴィランたちに頭から叩きつけた。

悲鳴とともに、紅い血や、脳漿が飛び散る。それはまさに地獄絵図というのが相応しい光景だ。

「前言撤回。無い方が良かった」

「いともたやすく行われるえげつない行為って、こういうことなんだな・・・」

・・・僕は今にも泣きそうだった。

 

 

 

「やっと終わったか」

私はため息を付いた。

今回は体が鈍っていたとはいえ、少しばかり危なかったかもしれない。

私と同じくウィルスへの抗体を持ち、なおかつ投与されてかなりの強さをもった彼女の存在があったからこそ勝てたのだろうが。

ちらり、と彼女の方を見る。

泣き崩れていた。ずっとごめんなさい、ごめんなさいと言っている。

やはり彼女にとっては辛いのだろう。良心があるからこそ、目の前の死体()は彼女の心を深く傷つけている。

(彼女の才能が彼女を苦しめている・・・皮肉なものだな)

彼女が個性の代わりにあった『戦闘』の才能が彼女を地獄の苦しみに陥れている。

(支えがあったとしても、性格がそこまで歪むことが無かったのが奇跡と思えるな)

そう思えるほど、彼女は歪んでいなかった。

「・・・出久」

「分かってます。そろそろ僕は帰ります」

「・・・そうか」

ほんとうにこの子は強いな。

そのとき、私はあることを思いつく。バックを漁り、あるものを取り出した。

「念のためだ。持っておけ」

「・・・いいんですか、こんなものをあげて」

「保身のために持ってて損はあまり無いだろう」

「・・・ありがとうございます」

赤い鼠が彼女の肩に飛び乗ると同時に、小さな鼠となった。それを彼女が確認すると、小走りで帰っていった。

さてと・・・

 

「逃げたヴィランの確保でお疲れでしょうが、これらの死体処理と生存者の拘束、手伝ってくださいね―――オールマイト」

 

「本当に君は人使いが荒いね・・・」

後ろにいた平和の象徴はため息をついた。




緑谷は13くらいの時からヴィランを殺害してしまっています。例え無個性で死んでも悲しまれないとしても、ヒーローの足手まといはごめんだ、という理由で。
そんで、ウェス化ーしています。彼のことが嫌いなのはウィルスを彼に投与されたことがあるからです。しかも対応してしまったという・・・
ウェスカーが投与した理由はかなり単純。まだ伏せて置きますが。
そして、緑谷のことは友人の子供みたいな感じに思ってます。緑谷自身はイカれた研究者と表していますが、それはウェスカーのやっている行為から。

ちなみにニコ動で見た動画のタグは、〈ヤマネメは俺の熱病ウィルス〉


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合否通知、そして襲撃の理由

気ままに書いたこれを読んでいる方々に問う。
次にクロスする物語の伏線、どこにあるか 知 っ て る か ?


「・・・・・・」

合否通知が届いた。

投影マシンがあったけど、その機械が何故か()()()()()()()()()()()()()()されてたので―――

 

「俺様は大体の修理は得意だ!特に機械はな!だから任せろ、これ位(中の部品も全て破損してる位)ならあっという間だ!」

 

サンズの弟さんが来てくれて、半日で修理してくれました。

「中のデータ絶対破損してる筈だよね・・・?」

「オイラの弟はな、データすら完全に復元できるほど腕が立つんだ。凄いだろ?」

「この腕前は銀河でも通用するくらい凄いぞ・・・」

ドロッチェすらも感心するほどの腕前だった。

そんで、3人と一匹で投影マシンでのビデオを閲覧。

『私が投影された!!』

「「「近い」」」「おお!凄いな!」

ドアップで投影されたのはオールマイトの顔。

そこからの話で、春から雄英に教師として働くことになったことを教えてくれた。

「・・・暑苦しくなりそう」「「確かに」」「でも№1からの教えはありがたいと思うぞ!」

『さて、少し早いが君の結果を話そうじゃないか』

「お!来るぞ」

全員静かに静聴する。

 

『筆記試験は数学以外が九十点以上で、英語が満点だった。そして実技試験のことだが・・・ヴィランポイントが五十ポイントで、それに加えてレスキューポイントという隠された項目があるのだが、キミ、周りの仮想ヴィランの攻撃から受験生たちを守ったと同時に女子を救うために0ポイント仮想ヴィランを倒しただろう?あとで下敷きになってしまったが・・・あれで八十ポイント。合計百三十ポイント・・・よって緑谷少女・・・キミは雄英試験トップ通過だ!』

 

「良かったな。合格して」

「・・・嘘じゃないよね?」

信じられるか?仮想ヴィランが繰り出す攻撃を受験生が喰らって、グロテスクな想像をしちゃったから防いだだけなのにそれで高得点って。

「んなわけあるか。これが事実なんだ」

・・・うん。確かに事実だね。現実離れした事実だけど。

「凄いなイズク!俺様も嬉しいぞ!!」

まるで自分のことの様に喜んでくれる弟さん、まさに『リアルスター』

母さんに報告した所、「ファミレスに行くわよ、出久!!」と二人+骨兄弟+一匹でガストに行きました。ハンバーグ美味しかった。

 

 

 

 

 

「さっきの様子からして、試験は合格したようだな。おめでとう」

「貴方に言われてもちっとも嬉しくありませんよ。というかなんで知ってるんですか」

砂浜で個性の練習中、なぜかバッタリあのパイプ男に会いました。

「こちらにはいろいろ人脈があるからね。それくらいの情報ならすぐに手に入るさ」

「・・・最悪」

それってつまり僕の個人情報がこの人に伝わるってことじゃないか。

「あ、そうだ。この際だから聞きたいんですが」

「なんだい?」

「あの大群、貴方の差し金ですか?」

もちろん、質問は以前の戦いのこと。今の所犯人の心当たりないし。

「あの大群?何のことだい?」

・・・嘘は言ってなさそうだ。

「外れ、ですか」

「・・・大群・・・もしかしたら()()()の勢力からの奴かもしれないね」

「あちら?」

「ああ。そのことを説明する前に、ヴィランにとっての君の存在を教えておこうか」

「ヴィランにとっての僕の存在・・・?」

「そう。君はね、ヴィランにとって、かなりの脅威なんだ。同時に、こちらに迎え入れたいほどに有力な存在でもある。君の力は過去に行われた、武道会で分かっているんだよ。大の大人をパンチだけで大きく吹っ飛ばす攻撃力、怒涛の連撃を耐え凌ぐ身体の丈夫さ、相手との距離をあっという間に縮められる速度。まるで生物兵器のような性能だ。それに、育った環境からも、こちらに引き入れられる可能性がある。ほかにも色々あるけど、まあ、君の存在で、ヴィランには派閥が出来ているんだ」

「へー」

「・・・予想通り、他人事みたいにしか反応しなかったね。それでその派閥は、大まかに分けると『保護派』『排除派』に分かれていて、『保護派』は君をヴィラン側に引き入れようとする側のことで僕達のことを指しているんだ。そして、首魁が居るれっきとした組織だよ。『排除派』は君を危険分子として、殺害しようとしている側のことだ。こちらには首魁はいないけど、僕たちよりも力は強くないけど人数がかなり多いから、おそらくそっちが襲撃したんじゃないかな」

「とても丁寧なご説明、どうも。というか僕ってそんなに脅威に見なされてたんですか。僕オールマイトやウェスカーよりは強くないですよ?」

「伸びしろのことだよ。まだ未熟だから、いつか成熟したらこちらでは歯がたたないほど強くなるだろうって考えられているから、まだ未熟なうちにどうしようかっていうこと」

「あ、そういうことですか」

なんとか理解はできた。

「それでなんでこんなに詳しく説明してくれた・・・・・・あ、そっか」

こんな愚問、分からないわけが無い。

「あ、あとなんでここにいるんですか」

「ちょっとしたリハビリさ。僕は目が見えなくてね。『赤外線』っていう個性と音や振動でなんとか行動出来るんだ。いつか、また平和の象徴と戦うときのためにね」

「リハビリ・・・」

そのとき、あることを思いついた。僕はズボンのポケットからあるものを取り出し、『瞬間移動』でパイプ男の目真上に移動した。

「なっ!?」

「あの情報を教えてくれたお礼としてですよ。動かないでくださいね」

もちろんパイプ男は僕の下敷きになった。動けないうちに爪で目を隠しているところをを切り裂く。

「何を!」

『あるもの』のキャップを外し、両目の部分に一滴ずつ垂らした。

「離れてくれ―――!?」

すぐに離れたと同時にパイプ男は絶句した。

「サンズ特製の目薬ですよ。本来は目を損傷した時の為のものですが、盲目の人でも三十分は見えるようになります。オールマイトと戦って、もしかしたら周りの風景が永遠に見ることが出来なくなるかも知れないんですし、せめて最後の風景は目に焼き付けたらどうですか?」

魔法の目薬を使って視力を一時的に回復させた。

僕ができるせめてものお礼だ。他の人が見たら、馬鹿だと嘲笑われるかも知れない。

でも、僕はこの人がそんなことするわけがないと、確信していた。たとえ『敵の首魁』だとしても。

「ぁ・・・・・・」

彼は夕焼けの海を見ていた。大粒の涙を零しながら。

僕も、その海を見ていた。

「完全に悪になれる人なんて、この世にいません。いるとしたら『生まれた時から悪だった』存在だけだと、僕は思います」

「・・・本当にそうかもしれないな。ありがとう、緑谷君。最後にこんなものを見せてくれて」

僕は、振り返る。そして微笑を浮かべた。

 

 

 

 

 

「この人にもう少しだけ、時間を与えてもらえないでしょうか?」

 

 

 

 

 

黒い霧の姿をした男はふっと笑みを見せて、そこから消え去った。




人間、心のどこかに必ず良心はあると思います。たとえ狂っていても。
ないとしたら、元から無い人や暗黒物質位なものじゃないでしょうか。


・・・本当は綺麗な彼を見たかっただけです。すいません。
ついに・・・・・・緑谷の雄英入学だ・・・・・・!

あ、ちなみに緑谷は原作とは性格がちょっと違います。相手の性格をちゃんと理解したうえでさらっと変わった行動を取るようになっています。

変な所あったら感想に書いてもらえたら嬉しいです。参考になるので。


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初見の雄英教員&クラスメイト達の緑谷の印象

出してほしいバイオキャラやアンテキャラ、カービィキャラがいたら遠慮なく感想に書いてください!

あと投票してくれた人がいました・・・本当に感謝感激です!



相澤先生side

 

(登校初日から遅刻とは・・・全く)

静かな教室のなかの端の誰も居ない席を見る。

その席は学年でトップを取った生徒が座るはずの席。

「俺は相澤消太……このクラスの担任だ。よろしくな」

簡単な自己紹介を終えて―――

(無断欠席でもしたら除籍するべきか・・・)

そう考えた時だった。

いきなり教室のスライドドアが大きな音を立てて開いた。と同時に赤い何かがものすごい速さで滑り込んできた。

 

 

「すみません遅れました!!」

 

 

その正体は―――血塗れになった緑谷出久だった。

なんとスライディングという見たことの無い教室の入り方を見て俺は少し驚いてしまった。生徒達は全員絶句していたが。

いや、それよりも聞くことがある。

「・・・なんでそんなに血塗れなんだ?」

「ああ、20人位のヴィランが空から奇襲してきたので、色々手こずってしまいました。結構傷負ってしまってこんなことに・・・」

「一人でそんなに相手をしたのか?」

「ええ、まあ。幾人か遠距離から攻撃してきたので倒すのに時間がかかって」

嘘だと思いたい。だがその服が事実を証明してしまっている。

「・・・まず保健室に行って、傷をばあさんから見てもらえ。それから体操服に着替えてグラウンドに来い」

「あ、分かりました」

そういうと緑谷は袖の中からおぞましい色をした細長い触手を出して、学校のバッグに巻きつけ、自分の席の所に置く。そして早足で出て行った。

「あー・・・お前ら、早速だが体操服を着てすぐにグラウンドに集合だ。急げよ?時間はすぐに減っていくんだからな」

そういって教室を出る。

「・・・初っ端から面倒なことになりそうだ」

俺はため息をついた。

 

 

 

 

麗日side

 

さっきは本当にびっくりしたな・・・

まさか受験の時に助けた子が同じクラスだったとは思わなかった。

血塗れだったが。

着替え終わったウチは運動靴には着替えて、グラウンドに出る。

 

「あとちょっとだ!行くぞ!」

『応ッ!!』

「っ・・・学校にまで来やがって・・・!」

 

何人かの知らない人たちに囲まれた出久ちゃんがいた。

「どうしたの出久ちゃん!?」

「なっ!?なんでこのタイミングで・・・!」

「お?良い人質見つけたぞ!」

「ひっ!?」

凄い速さで知らない人達の中の一人がこちらに走ってきた。

逃げるべきだ。そう分かっていても、なぜか足が竦んで動かない。

(早く、早く逃げなきゃ―――)

「それ以上近づくな。一歩でも近づいたらその首掻っ切るよ?」

いつの間にか出久ちゃんがウチの前に居た。両手の鋭い爪を構えている。

「はっ、馬鹿だな。そこにいたら攻撃の良い的になるだろうが」

「そんなの分かってるさ」

「じゃあなんでそこにいる?そいつを守る為か?」

「そうだよ。僕個人のことに巻き込んで死んじゃったら取り返しがつかないからね・・・そろそろ不味そうだ。耳をしっかり塞いで。大丈夫、すぐに終わるから」

「あ、うん」

なにをする気だろうか・・・そう思った時だ。

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!!!」

 

まるで、怪物が上げるような咆哮が空気を震わせながら轟いた。

「あっ、に、逃げるぞ、逃げなきゃ、まだ俺は死にたくないんだ!」

「わああああ!!怖いよぉ!ママぁ~!」

「逃げるが勝ちだ、撤収ーーーッ!!」

さっきの態度はどこへやら、スタコラサッサと逃げていった。

塞ぐのをやめたウチは恐る恐る聞いてみた。

「今の大声、出久ちゃんの?」

「うん。あんまり怖くなかったかな?」

初めて死の恐怖を感じるほど怖かったよ。

狂気の叫び(マッドネスシャウト)っていうのだけど・・・あんまりインパクト無いよね、ふふ」

インパクトありすぎだよ!!

「お、やっと先生達来たみたいだ。放課後、また話そうか」

「う、うん・・・」

なんかいろいろ凄い人だったな。

というか、受験の時となんか性格が違うような?

 

そのあと体力テストが実施され出久ちゃんは案の定一位を獲った。

 

 

 

 

 

「やっぱりウチの個性戦闘には向いてないなぁ・・・テストも真ん中くらいだったし」

「何言ってるの?それ上手く使いこなせば人一人簡単に殺せるほど強いシロモノじゃないか」

「しれっと怖い事言わないでよデクちゃん」

放課後の帰り道、デクちゃんと話したら、普通に打ち解けた。さらっとえげつない事言うことあるけど。

あ、デクちゃんってのは爆豪君がデクって呼んでるのを教えてもらって、なんか頑張れって感じがしたからそう呼ぶようになった。呼ばれてる理由は出久がでくとも読めるかららしいけど・・・本当かなぁ?

「ねえ、デクちゃん。あの触手みたいなのって個性だよね?」

「違うよ。昔倒産した外国の大手製薬会社【アンブレラ】が開発したウィルスが投与されて、僕の体がそれに適応してしまった結果さ」

「・・・ウィルス?」

「話せばちょっと長くなるし、あんまり気持ちのいいものじゃないけど・・・聞く?」

「うん、教えて!」

「分かった。まずウィルスのことから話すね―――」

好奇心で聞いてしまったのだが、それはあんまりと言う言葉では収まらない、まさに吐き気を催すような話。

ただ、それは絶対に知っておかないと後で後悔する、とウチの勘が告げていたので、もう少し深くそのことを掘り下げた。

「聞きたいならいいけど、出来れば他言無用でお願い」

そう言われてから語られたのは、ウィルスによって変異する【クリーチャー】のことだった。

「・・・デクちゃんは本物見たの?」

「写真だけどね。見た時は正直ウィルスの恐ろしさを思い知ったよ」

ここまで聞いて分かったことは―――デクちゃんはその危険なウィルスを持っていて、適応しているということだ。

「ウィルスを投与したその人、なんでデクちゃんにやったんだろうね?」

「そこが全くわかんないんだよね・・・あの人の考えてることが分からないせいで意図が全く掴めないんだ」

「ふーん」

腕を組み、下の一点を見つめながらデクちゃんは考えている。

「害があるわけじゃないんだから、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな?」

「害はあるよ。朝のこと、覚えてるよね?下手をしたらウィルスがヴィランにわたるかも知れないんだよ。そんなことになったら・・・」

そんなことになったらどうなるか。デクちゃんの話を聞いたからこそ、その答えを想像するのは容易かった。

「麗日さんなら大丈夫だと思ったから話したけど、くれぐれも容易に人に話さないでくれるかな」

「もちろんだよ。笑い話じゃないしね」

本当に、笑い話にならない。それほど危険な秘密を知ったんだから。

「うん、お願いね。じゃ、また明日!」

「またねデクちゃん!」

遠のく背中を見送りながら、呟く。

 

 

「アルバート・ウェスカーって、あのヒーロー協会の【自由人幹部】って呼ばれてる人のことだよね・・・?」




麗日さんなら秘密を守ってくれる。そう踏んではなした緑谷。
B.O.W.のことや、タイラント(人類の切り札)のことも話したのは、知っていることで、麗日さんの個性を使った対応が出来るから。(投げ飛ばしたり、他のクリーチャーにぶつけたり)ほかにも理由諸々あるけど割愛。
今回はドロッチェの出番なかった・・・次は絶対出す。

おまけ・緑谷の保有するウィルス
始祖ウィルス・Tウィルス・Gウィルス・T-Veronicaウィルス・ウロボロスウィルス・強化型C-ウィルス
こんなとこでしょうか。ウェスカーが()()に色々投与したせいなのか、変異を自分で操れて、なんか自我も残ったという・・・体内でなんか融合とかなんとかしたんじゃないでしょうか。特性は変わってないけど。(テキトーですみません)


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BSAA隊員の見学、そして戦闘訓練

主人公キャラが来ましたよ。ウェスカーと同じくらい好きなキャラ。
今回短いです。


それはヒーロー基礎学の時間だった。

「わーたーしーが―――!!」

緑谷にとっては馴染みのある声が響いてくると共にオールマイトがドアを開けて突入してきた。

「普通にドアから来た―――!!」

そこは来たでいいのでは、と思考の片隅で思いながらもテンションが周りのクラスメイト達と共に高くなる。

原作と性格や言動が違っても緑谷は緑谷。オールマイトの大ファンなのは変わらないのだ。

オールマイトはこれからする行事を言う。

「これから君達には戦闘訓練を行ってもらう!!」

『おーーー!』

さらに緑谷たちは騒ぎ出す。

そして、専門の会社に頼んで作ってもらった戦闘服が出現した。

「それに着替えて順次グラウンド・βに集合だ! 待ってるぜ! とうっ!!」

急いで教室を出て行ったオールマイト。その身体からか細い白い煙が立ち上っていたのを緑谷は見逃さなかった。

(活動限界か・・・あんまり無理しないでほしいけども・・・)

あの様子だと力が完全に使えなくなるのも時間の問題だろう。

緑谷は戦闘服を持って更衣室に向かった。

 

 

特技の早着替えで誰よりも早く着替え終わると、緑谷は更衣室から出る。

「出久、ヴィランを相手にしてる時と同じように気を引き締めろよ」

緑谷の髪の中から顔を見せてきたのは、ドロッチェだ。学校では基本的にドロッチェの席は緑谷の髪の中となった。

「当たり前。たとえ訓練でも実戦のときのように油断しないようにしないとね」

グラウンドに出ると、オールマイトと、もう一人がいた。

「早いじゃないか、緑谷少女」

「・・・あの、その人は?」

「ああ、彼のことかい?彼は警察の特殊部隊の隊員でね、今回は見学として来てくれたんだ」

「俺はクリスだ。よろしく頼むぞ」

緑谷はすぐさま戦闘状態へと思考を切り替える。

「!?何を」

「貴方、何者ですか?ウェスカーとどこか似たような雰囲気を持ってますが」

「・・・何?ウェスカー、だと?それに、その触手・・・まるであのタイラントと同じような色をしているが」

クリスも、腰のホルスターに手を伸ばしている。

まさに一触即発の空気。オールマイトすら動けないような空気の中―――

それをぶち壊したのは、爆豪勝己だった。

「・・・あぁ?」

謎の雰囲気に首を傾げる爆豪をみて、緑谷は触手をひっこめた。

「敵じゃないなら、戦う理由も無いですね。突然すみません、クリスさん」

「あ、構わないぞ。敵じゃないと分かってもらえたのなら」

その様子を見たオールマイトは安堵した。

(戦いに発展しなくて良かった・・・!)

なぜなら、正直そんなことになったら自らでも止められる自信が無かったからだった。

 

全員集まった所で改めて、クリスの紹介をしてからヒーロー基礎学の時間が始まった。

内容は、屋内での対人戦闘訓練。

ヒーロー組とヴィラン組に二人ずつ分かれて2vs2の屋内戦をするというもの。

基礎訓練を踏まえて、一度全員の個性での戦い方を知っておく為だ。

「勝敗のシステムはどうなるのですか?」

「ぶっ飛ばしてもいいんスか?」

「また除籍とかないですよね?」

「分かれるというのはどういう分かれ方でいいのですか!?」

「このマントかっこよくない?」

「んんん~~聖徳太子ぃぃ!!??」

((それくらい聞き分けられるのでは・・・?))

一気に投げかけられた沢山の質問に戸惑うオールマイトを見ながら緑谷とクリス(人外二人)はそう思った。

 

班分け終了。

「デクちゃん! 一緒になれたね!」

「うん。麗日さん!」

なんと麗日と共に戦うことになった。

他の班分けも終わって、対戦相手を決める段階の時だった。

 

『緑谷・麗日 VS 爆豪・飯田』

 

緑谷は頭を抱えた。

「え、デクちゃん?」

「よりにもよってなんでこの組み合わせなんだよ・・・!!」

今まで爆豪に勝ったことなんて一度も無い緑谷にとってこの組み合わせは絶望的だった。もちろん対する爆豪は余裕顔。

「ハッ、今までみたいにちゃちゃっと叩き潰してやるよ、デク!」

 

 

今ここで、幾度と無く死線を乗り越えてきた少女と才能マンといわれた少年の壮絶な戦いが幕を開けようとしていた・・・!

 




ゴリスじゃなくてクリス相手に警戒心丸出しの緑谷。
今までの経験ゆえにクリスの実力をすぐに感じ取ったんだと思います。
さて、経験と才能。どちらが上なんでしょうかね? 次回、戦闘開始。

変なとこあったら報告お願いします。


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絶望しかない木偶の坊(緑谷出久)VS勝てる気がしないラスボス(爆豪勝己)

ヒーロー達(一部除いた)にとっては絶望しかない木偶の坊「だったはず」の緑谷出久
緑谷出久にとっては勝てる気がしないラスボスのような存在の爆豪勝己





本 当 の ラ ス ボ ス は ど っ ち な ん だ ろ う ね ?


「あああああどうしようこのままじゃ負けちゃう正面から戦ったらあっという間に丸焼きにされるかもどうしようどうしよう」

「デクちゃん。落ち着いて、まだ始まってないから」

スタート地点で恐慌状態になっているデクちゃんを何とか落ち着かせた。

「出久。落ち着いたか?」

「うん・・・かっちゃんと正面向いて戦うのは怖くて、久しぶりにトラウマ思い出しちゃった」

「ファッ!?」

だれ!?と思ったら、デクちゃんの髪の中から灰色の生き物が這い出てきた。

「わっ!ね、ネズミ・・・?」

「ザッツライト!オレはドロッチェ。よろしくな」

手をあげて挨拶するそのネズミを見ていた私は・・・

「デクちゃん。その子貸して」

「?いいよ」

デクちゃんからドロッチェを受け取ると、沢山なでなで

「ッ!?」

最初こそ抵抗してきたものの、すぐに抵抗しなくなって、数十秒後には顔を蕩けさせながら為すがままにされている。

「めっちゃ可愛い・・・!!」

「・・・・・・えーと、麗日さん?作戦あるから話してもいいかな?あんまり時間無いし」

「作戦?」

ドロッチェを愛でながら聞いた作戦は、まずデクちゃんが部屋の一部分を破壊し、瓦礫が散乱して素早く動けない部屋を作る。おそらく防御に回るという飯田君への対策らしい。そしてウチがヴィラン側チームの核がある部屋に着いたらすぐに瓦礫で飯田君が動けないうちに核を回収するというもの。

爆豪君が部屋を破壊する前に来た場合は無線で伝える為、どこかで隠れていてほしい、とのことだった。

「了解!あ、ドロッチェは持っていっていい?」

「いいよ。ドロッチェも嫌がってないみたいだし」

そのとき、丁度スタートの合図がなった。

 

 

麗日さんが敵陣地へと駆けて行った後、僕は床に手を付く。触手を伸ばして、コンクリートの床に突き通す。そして地面へ潜らせ、目的地を目指す。

(少なくともこれなら僕の姿を見られない限り妨害されない)

 

メタ話だがこれはタイラント【ネメシス-T型】の技。触手を地面に突き刺し、下から相手を奇襲するというものだ。

 

あと少しで目的地に着こうかと言う所で、予想通りかっちゃんが来た。

「やっぱり来たね、かっちゃん!」

「当ったり前だろうが!触手とか爪だなんだか知らねェけどよ・・・テメエは俺よりも弱いってことをもう一度教えてやるよ!!」

こりゃ壊す前に爆発が被弾するな、と判断した僕はすぐに刺していた触手を抜き取る。

「いやね?僕が君よりも下だって言うのは分かってるんだ。ただ組み合わせがこうだった訳で。僕だって今正直泣きたいさ。確実に負けるんだから。でもね」

触手と同時に金色の爪を生やす。

「今回からは抵抗する力があるんだ。例え負けると分かってても、最期まで足掻かせてもらうよ」

「それを無駄な足掻きっていうんだぜ」

「知ってるさ。それ位。それでも、君に怪我を与えられるっていうんなら、喜んでやるよ。この儚い命が散るとしても、ね」

「・・・あー・・・」

なぜか顔を俯かせるかっちゃん。僕の人生の目標の一つを話しただけなのに。

でも、好都合だ。

「敵の前で視線を外すのは自殺行為だよ?そらっ!」

【ハンタークロー】で接近して軽く胴体を切り裂き、【ひっかき】からの【ジャンピングクロー】で連撃。

「うおっ!?」

「これくらいじゃ怯みもしないか。なら!」

「デクの癖に調子に乗るんじゃねえよ!!」

かっちゃんが僕に向かって爆破する。その余波で僕との距離を取ろうとしたのだろう。

「甘い」

【瞬間移動】で避けて、かっちゃんの後ろをとる。

短距離しか移動出来ないし、一度使うとちょっとの間だけ使えなくなるから連続使用は出来ないけど、こういうときはとても便利だ。

「舐めんな!」

なんと、かっちゃんはもう一度爆破で飛んで、僕の後ろに着地した。

って背後取られた!?

もちろん思いっきり爆破された。僕は大きく吹っ飛ぶ。

「がっ・・・!?」

「全く、ちょっとヒヤッとしたじゃねえか」

・・・何?ヒヤッとした、だと?

「っ・・・かっちゃん。それって」

「言ってる場合じゃねえだろ」

個性を使った爆風で素早く接近してきた。這いつくばっている僕は横に転がりなんとか回避する。

「ッチ」

かっちゃんが本気を出してきた。これは・・・

「そろそろ触手も併用しようか」

触手が勢いよく伸びる。その先にいるのはもちろんかっちゃん。

「簡単に捕まるとでも」

「違うよ」

頭に伸びていた触手が突然急降下する。そして横に凪いだ。

「うぎゃっ」

足を引っ掛けられ綺麗にすっ転んだかっちゃん。それを見て何故か吹きかけた僕(本人には黙っておこう)

その隙を逃さないように、僕はかっちゃんの上に乗ってマウントを取る。捕縛用テープを触手に持たせながら。

「あとちょっと!」

両手+触手の実質的には四本の手でかっちゃんをテープで縛る。「離れろや!」と抵抗されるのでしっかりと。

そして、ついに・・・

 

 

「勝った、ついにかっちゃんに勝った~~~!!!!」

 

 

やっと、勝った。触手(兵器)を使ってしまったけど、それでも初めて、勝てた。

「・・・・・・」

かっちゃんは沈んだ顔つきをしているが僕はそれには気づかない。

「よーし、仕上げだ!」

そして、僕はもう一度触手を使い、敵陣地の核のある部屋の壁と床に大きな穴を開けて、そのあと麗日さんが核を回収してヒーロー陣営勝利!

かっちゃんは僕がおんぶしてモニター室へと運んだ。テープで捕縛したまま。

 

 

「さて、それでは今回のベストは誰だと思う!?」

モニター室にて反省会。

八百万が挙手をして、

「飯田さんだと思います」

と答える。

「その理由はなんだい?」

「はい。まず緑谷さんは妨害方法として、建物の壁と床を壊すという方法を使いました。その方法では実際の現場では使えませんし、なにより味方を巻き込みかねないです。そして、爆豪さんとの戦闘時。最初から触手を使えば無傷で倒せていたと思います」

「概ねその通りだな」

(うっ、やっぱり壊す作戦は減点対象か。分かってたけど。それに、触手は最終手段だし)

実は触手の使用時間には制限がある。最初から使って、それで時間内にかっちゃんを倒せなかった場合、詰みな為、使わなかった。

「次に飯田さんはヴィラン役としてしっかりと行動が出来ていましたので良かったと思います。麗日さんも緑谷さんの指示をしっかりと守って身を潜めていたのもいいですね。

最後に、逆に言わせてもらえば爆豪さんは私怨丸出しで飯田さんとの連携プレーも出来ていませんでした。もしもそれで大規模な攻撃まで放とうとしたらおそらく建物が瓦解し、下敷きになっていたかもしれません。その点では出来るだけ時間をかけずに戦闘を終わらせた緑谷さんの配慮は素晴らしいと思います」

八百万さんがかっちゃんの意図を見抜いていた。かっちゃん時間がかかったらなんか大規模な攻撃放とうとしただろうから決着を早めた僕の考えも。

「う、む・・・・・・まぁ大体正解だ。ありがとう!」

「いえ・・・・・・」

((あ、オールマイト絶対『思っていたより言われた・・・』なんて思ってるな。ドンマイ))

まーたクリスさんと思考が一致した僕だった。

 

 

「緑谷、だったか。少し話があるんだが」

「あ、特に大丈夫ですよ」

教室に戻る前、クリスに呼び出された。校舎裏に。

「それで、何でしょうか」

「その触手のことだ。それ、T-ウィルスによった変異のものだろう?」

「・・・なぜ、それを」

「さっき、ウェスカーと似ている、と言っていたが、ウェスカーが何かしたのか?」

「・・・その通りですよ。ウェスカーが僕に投与したんですよ。一週間ほど高熱出して寝込みましたが、その後すぐに復帰しました」

「なんで、あいつが・・・?それにやはりこの世界にも・・・どういうことだ・・・?」

この人、知り合いなのかな。まあ知る気もないけど。でもこの世界・・・って?

「まるで平行世界(パラレルワールド)から来たか、それとも前世の記憶を持って転生したような口振りじゃないですか。どういうことですか?」

「・・・!!」

え、なんで動揺してるの?

「・・・あまりそこには触れないでくれ。それで、まさかウロボロスウィルスや、T-Veronicaウィルスも存在してるんじゃあないだろうな?」

「あの人特殊部隊にもウィルスのこと教えてたんだ。あ、あとそれ僕の保有してるウィルスでもありますよ」

「何・・・だと・・・!?」

まさか、これ案外やばいやつか?結構重いような案件なのか?なんか怖いんだけど・・・

「・・・おい。意識が遠のいたり、身体がとても痒くなったり、猛烈な飢餓状態に陥ったりしたことはあるか?」

「意識が遠のいたりとかはないけど、投与された時の一週間めっちゃ身体痒かったことはありました。あとそれからなんか凄くお腹が空きやすくなったり」

「・・・・・・」

すっごい重そうな顔してるな。

「あの、今度はこっちから質問させてもらいますね。まさかそれって、世界規模の話だったり・・・」

「するぞ。それで世界が滅びるんだし」

しれっと言いのけたよ!?

「えっその言い方まるで実体験したような口ぶりですけど、シュミレーションでもあったんですか?」

「んなわけあるか。実体験さ。目の前で俺の仲間がゾンビ化したし噛まれて死んだやつだっていたんだ

悲しそうなまなざしがそれを嘘じゃないと教えてくれた。

でも可笑しい。

もしも本当に滅びたんなら、なんでこんなに今は平和になってるんだ?

「おっと。すまないな、少し長く時間を取ってしまったみたいだ。もう戻っていいぞ。答えてくれてありがとな」

クリスさんは踵を返して正門へ向かう。そのとき、一度だけ振り返って、一つ言い残していった。

 

 

「ウェスカーはそんな非人道的なことをする奴じゃない。もしかしたらあいつは何らかのものの影響を受けてるかもしれないから注意しておけ」

 

 

そう忠告を残してクリスさんは正門を抜けていった・・・




HAHAHA!これが私の戦闘の文章力だ!(泣)
周りの小説はもっと魅力的に描かれてるというのに私はなんだ、まるでレポートでも書いてるようなものじゃないか!!
くそう、次は非常口飯田の話なのに私の力で描けるのか・・・?
しかもなんかバイオ要素ノリで入れたのに重い話になりそうな予感がしてきた!
あとあるコメが目に入ったから答えさせてもらおう。
ラクーンシティは存在しています!そんで消滅してない!!そしてヒーロー協会は予想以上に黒い!!!
以上。
なんで黒いのかはきっといつか語ります。ウェスカーが。


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クラス委員長

感想で気づいた・・・バイオテロのこと全く懸念してなかった・・・この世界の人々は主人公達とは違って抗体ないんだった・・・!!



今日、登校したら正門付近に沢山の人だかりが出来ていた。服装からして雄英関係者ではないのは明白なのだが・・・

「えっと、どうしたんですか?」

「あ、君雄英高校の生徒かい?」

「そうですが」

「オールマイトについて聞きたいんだが」

「まだ本人来てないと思いますよ?」

「そうじゃなくて。オールマイトの授業の様子とか教えてほしいんだ」

「それなら構いませんけども・・・」

戦闘訓練のことを話した。あとちょっとだけクリスさんのことも。

「・・・マジか。あのBSAAエースが見学しに来たのか」

「エース?」

「ああそうさ。クリス・レッドフィールドは人間離れした武勇伝を数々残していてな。一度俺がその訓練所に訪問したんだが、あの身のこなしは凄かった。今まで見たことが無い様な速さだった。あれで無個性だというんだから凄いぞ」

「無個性!?」

「そうだ。俺も聞いた時嘘じゃないかと思ったからな。今でも疑ってる」

そんなに凄い人だったのか・・・

後に僕は、クリスさんの凄さというものを身を以って知ることとなる。

「それで、用はそれだけですか」

「いいや。ほんとは本人への取材のためにきたんだけどな。こんな立派な壁があるんじゃ無理か。知ってたけどね」

「・・・?こんなの、使ったりすればいけると思うけど・・・というかいけるよ?」

僕がバッグから取り出したのは―――

「・・・今時の高校生はそんなん持ってんのかよ。すげえな」

「そうですよね。お、それじゃそろそろ行かないと不味いので、これで」

「おう。頑張ってこい」

僕はダッシュで雄英高校の正門を潜った。

 

 

「昨日の戦闘訓練は、まぁお疲れ様だったなと言っておこうか。特に誰も怪我をせずにやりきったというのは教師側からしても楽できていいからな」

朝のホームルームの時間。

(それでいいのかイレイザー・ヘッド?)

A組全員の心の声(というよりツッコミ)が一致した。

「それじゃ今回のHRでの本題だが、急で悪いがお前らには―――」

ゴクリ・・・と全員が息を呑む音。

 

 

「学級委員長を決めてもらいたいと思う」

 

 

『学校っぽいのキター!!』

みんな次々手を上げている。ちなみに僕は上げてない。

「静粛にしたまえ!!」

飯田君の声で静まった。そして、説明してくれた。

周囲の信頼あってこその役目、だから等しく平等に決めるために多数決を取ろう、とのこと。

それで投票が行われた。そして結果は。

「・・・・・・なんでや」

一位緑谷出久 二位八百万百・・・

何で僕なん?僕基本的にリーダーとか向いてないよ!? 今までそんなことしたこと無かったし!!

しかしみんな納得している。なんでや。

「なんでデクに入ってんだこらぁ!?」

「まぁお前に入れるよりはマシだろ?」

「あー・・・・・・出久ちゃんならいいと思うぜ?遠近距離の攻撃手段持っててそれを使いこなせるくらい強いし、後先の予測ができるくらい落ち着きあるし」

そんな人別にも居ると思いますよ!?

ですが、結局僕が委員長することになった。なんでや。

ちなみに僕が投票したのは、飯田君。本人はたった1票だった。

 

 

それからお昼になって僕、お茶子ちゃん、飯田君の三人で食堂で昼食を摂っている時だった。

僕はカツ丼、お茶子ちゃんは魚定食、飯田君は日替わり定食を食べていた。

「僕に委員長が本当に務まるのかな・・・?」

正直怖い。みんなのまとめ役なんて僕には荷が重過ぎる・・・

「大丈夫だよ!デクちゃんはやるときはやる人なんだからさ!」

「麗日君の言う通りだよ緑谷君。君なら大丈夫さ。今までの君の行動を観察させてもらって大丈夫だと()が思ったのだから入れさせてもらった事だしな」

「「僕・・・?」」

「・・・あ」

「もしかして飯田君って坊ちゃん・・・?」

お茶子ちゃんの発言、ビンゴだったか。

それから飯田君は家の諸事情を話してくれた。

「インゲニウムを知っているかい? 俺の家族なんだ」

「知ってるよ!インゲニウムは―――」

出来るだけ長くしないで、最小限にまとめて話す。

あ、飯田君笑った。まあ身内のこと褒められたらそりゃあ嬉しいか。

「俺は兄さんのようになりたいと思って雄英に入った。だけどまだ委員長というのは荷が重いんだろう。だから緑谷君になら任せられるよ」

「あの時の大声、正直クラスまとめる役として適任だと僕は思うんだけど・・・」

僕の大声は狂気の叫びになりかねない。あれ普通の人が聞いて良くて発狂悪いと心臓発作起こして最悪死ぬよ。←経験済

「そうかい?」

「そうだよ」

「あー・・・そういうことか。飯田君。デクちゃんは個性の関係で大声とか出しにくいから異常事態が起こった時まとめるのが難しいんだよ」

良かったお茶子ちゃん察してくれた。

「うーむ・・・そうなのか・・・」

「あと、僕そんな経験ないから正直怖い。なにかあったときはドロッチェが手伝ってくれるけど、団結とかは絶対無理」

頭を抱えてしまった。胃が痛い・・・ストレスで・・・

「うん。もうちょい気楽に考えてもいいと思うよ?」

出来るはずが無い。昨日個性の練習中にまたパイプ男さんに会って近いうちにヴィラン大群との戦闘フラグが立てられてるもん。

半ば混乱した思考をフル回転させている、そんな時だった。

 

 

大音量の警報が突然鳴り響いたのは。

 

 

「――――――ッ?!」

 

 

僕は前からの癖でいつも周りを警戒している。つまり常に神経を尖らせているということだ。

高音の警報は僕の意識を一気に刈り取った。

 

 

「デクちゃん!?」

「緑谷君!?」

突然倒れてしまった緑谷。

二人は一時的にパニックになってしまったが、ヒーロー志望なだけあって、すぐに冷静になった。

「大丈夫だ、只気絶しただけみたいだから」

「良かった・・・!」

「お前ら、まだ安心すんな。まだ面倒ごと残ってるぞ」

「うわっ!?」

突然の声。飯田は驚くが

「ドロッチェ、どういうこと?」

「外に朝のマスコミ共が押しかけてきたみたいだ。生徒はさっきの警報で混乱してるようだな・・・おそらく警報の原因はマスコミ共だろう。このことを生徒達に教えれば落ち着くだろうが・・・麗日、飯田、お前らの個性なら出来るはずだ。作戦の内容を教えるからよく聞け」

色々聞きたいが飯田は後回しにすることにした。今するべきことはドロッチェの話をしっかり聞くことなのだから。

「麗日は個性で飯田を浮かばせろ。飯田は個性でどこか目立つところに張り付いて、マスコミの事を生徒達に教えるんだ、大声でな」

「なるほど、任せてくれたまえ!麗日君!」

「オッケー!いくよ!」

それでドロッチェの指示通りに二人は動いて飯田が大声で生徒たちに外の様子を教えるとなんとか沈静化した。

ちなみにマスコミは撤退。その後目覚めた緑谷がブチ切れて触手を展開し、右腕を変異させて「皆殺しにしてやる一人も逃がすものか」と特攻しかけたのをドロッチェが「やめろそれだけは絶対にやめろ!!」と押さえつけた。

 

 

帰りのHRにて。

「他の委員長を決めたいと思うんですけど、その前にやっぱりここは飯田君が適任だと思うんです」

昼休みのことを思い出していて右腕を震わせながら緑谷は言った。

飯田は「待った」をかける。

「緑谷君、気持ちは嬉しいが今回は指示があったからこそ動けただけで―――」

「でも君はあんなときでも冷静だっただろう?僕はそのときに気絶してしまった。僕は不測の事態のとき動けない可能性があるんだ。でも君ならなにかあっても冷静な判断が出来ると思う。だから、委員長になってくれないかな?」

緑谷は懇願した。

「・・・分かった。委員長の指名なら仕方ない!これからよろしく頼むよ!」

そんな感じで飯田が正式に委員長に決まった。




次、USJ!!
頑張れ緑谷!原作と転送ルートが違うぞ!
右手の変異はピアーズさんのやつです。(ピアアアアアァァァァァズ!!!!(泣))
みんなは個性かなと思って特に言及はしません。爆発さん太郎以外は。
ところで皆さん。
バイオで好きなキャラって誰ですか?
私の場合、男性陣ではウェスカーとクリスで、女性陣ではエイダとジルです。


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まさかのタッグ戦

そういえば委員長選出の理由あれで大丈夫だったんでしょうか・・・

ヴィランはウィルスのことは知っていて、一部はもってる。けど抗体は持ってない。ヴィラン全員。









ど う い う 意 味 か は 、 言 う ま で も な い よ な ?


先日のマスコミの雄英敷地内侵入に伴って、学校側は色々と警戒をしていた。

あんな厚い壁をぶち破れる位なんだから、警戒するのも無理ないだろう。

あれを破ったのはパイプ男さんなのかな?まあ僕も簡単に破れるけどね。

内通者がいたのかもしれないが、誰かと言うのが分かっていない為凄く警戒している。

そんな中で僕ら一年A組は午後の事、ヒーロー基礎学の時間のときに・・・

「えー・・・それでは本日のヒーロー基礎学は俺とオールマイト、そしてもう一人が見ることになったのでしっかりと学ぶんだぞ」

(もう一人、ねぇ・・・誰だろう。救助特化だとするとちょっと怖いな)

その理由は只一つ。妙な胸騒ぎがするのだ。なにかとても危険な予感がする。

「今回は災害水害なんでもござれの人命救助訓練だ」

場所が外なら、尚更だ。

「レスキューかー・・・俺はこういうの苦手かもな」

「ねー!」

限定的な個性を持っている上鳴君と芦戸ちゃんの二人が話していた。

上鳴君は放電。芦戸ちゃんは酸。どちらも攻撃の個性で救助には全く向いていない者同士、余計に拍車をかけている。

「ケロ。出久ちゃん、こういう時はあたし達の方が役立つかもしれないわね」

「・・・確かに。梅雨ちゃんの個性は救助に向いてるもんね。水難場なら尚更」

「出久ちゃんだと瓦礫が散らばってるような所とかで個性が役立ちそうよね」

「うん・・・僕の個性は水難場だと全く使えないしね・・・」

触手使ったら水中に居るヴィラン全員感染するし、最悪皆にも被害が及ぶし。

 

それで僕らは各自コスチュームに着替えて移動するバスへと向かっていく。

「バスの席順でスムーズにいくように番号順で二列で並ぶようにしよう!」

飯田君がさっそく委員長の仕事をしていたので任せた僕は安心した。

バスの中は縦に席が分かれているものではない方の構造だった。見たことの無い席の配置に僕は興味津々になった。

「おお・・・!」

「こんなバスもあるんだな!」

『!?』

突然僕の頭から声がしたせいで、皆とてもビックリしていた。

「な、何・・・?」

「・・・自己紹介」

「おう。オレの名前はドロッチェだ。よろしくな!」

顔だけ見せたドロッチェ。それを僕の頭から取ったのは意外にも相澤先生。

「何でこんな所にいるんだ」

「オレは出久のパートナーとしてここに居るだけだ、というか離せ!」

「・・・?」

そりゃ信じれないよね。ドロッチェは鼠。鼠がパートナーなんて普通信じるはずがない。

「あー!離せって言ってるだろ!!」

ドロッチェの手にステッキがあるのを視認した瞬間。

パシーン!

「痛ったぁ!?」

「暫く大人しくしてね」

触手で頭を叩いて、渾身の殺気をぶつける。

「はい・・・」

ドロッチェは相澤先生が回収した。最後までいやいやしてたがついに諦めて、項垂れていた。

 

「なんというか・・・可愛かったわね」

全員の感想が『可愛い』。よかったねドロッチェ。

 

それからバスで移動中のこと。

「出久ちゃん、アタシ何でも思ったことを口にしちゃうの。だから聞いていいかしら?」

「あ、梅雨ちゃんいいよ」

「それじゃ出久ちゃんの個性のことなんだけど・・・あの触手って本当に個性かしら」

「なわけないでしょ。実験の被検体にされた結果が触手なの」

『・・・え?』

「ああ、詳しくは踏み込まないでほしいな。下手したら情報の拡散防止のために抹消されるかもしれないから」

「え、言ってよかったの?」

「これくらいなら大丈夫。内容を話さなければいいだけだから」

どうして皆そんな深刻な顔してるの・・・・・・これ位でそんな顔しちゃだめだよ?

「いや、かなりやばいんじゃ・・・?」

「後の祭りさ。もう諦めてるから」

無意識に自身がうつむいていたということは、全く僕は気づかなかった。

 

 

気まずい空気のまま、着いた敷地に足を踏み入れると、そこに広がった風景は―――

「すっげーーーーー!!! USJかよ!!」

水難地、山岳地など、あらゆる災害現場が再現されているエリアだ。

そこにはスペースヒーロー『13号』の姿があった。

個性は『ブラックホール』相手を吸い込む個性だ。

「・・・リアルカービィか」

ドロッチェが呟く。

「ここは水難、土砂災害、火事その他の場所を再現した演習場・・・名付けて『USJ』(ウソの災害や事故ルーム)です」

『USJだったー!!』

安直すぎやしないか!?

だけど皆の関心は13号に向いていた。

僕はもちろん、お茶子ちゃんはファンだった。

「スペースヒーロー『13号』だ! 災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

「わー、うちの好きな13号!」

全員大興奮。そのなか、相澤先生が13号に尋ねる。

「13号、オールマイトは? ここで待ち合わせるはずだが・・・」

「それがですね、先輩。通勤時間に制限ギリギリまで活動したみたいで・・・」

13号はそう言いながら指を三本立てる。

「仮眠室で休んでいます」

「不合理の極みだな、オイ。・・・仕方ない、始めるか」

確かに不合理だけど、そういうところが平和の象徴と言われる理由なんだろうね。

それで13号がみんなの前に立って話をし出す。

「えー、始める前にお小言を一つ二つ・・・三つ・・・四つ・・・」

〈増える・・・〉

いくつ話すつもりなんだろう・・・

13号が話し始める。それを聞きながらも、僕は警戒を強めた。

(そろそろ来そうだ。奇襲に注意しなきゃ)

「・・・デク」

「なに?かっちゃん」

「何か来るのか?」

僕の様子で大体察したのか。流石だな。

「うん。そろそろだ・・・・・・」

触手を出して、爪を戦闘用の形へ変える。思考を臨戦状態に切り替えた。

先生が、後ろを向く。中央広場からなにやら黒い霧のようなものが出現してそこからたくさんの人が出てきた。

「一塊になって動くな! あれは・・・(ヴィラン)だ!!」

先生が叫ぶ。

(来た・・・)

ちらりと、先生がこちらを見る。

なにかを決意したようだ。

「やっぱり昨日のはあの人たちのせいか。おそらく先生か生徒がリークしたんだろう。ま、目的は大体分かるけど」

「あ?目的?」

オールマイトの抹殺。多分ね」

「はぁ!?」

だいたいヒントは貰ってたからね。推測だけどあんまり外れてないと思う。

そこに相澤先生が13号に生徒の避難と個性での通信を試みるように頼んだ後に、一人で戦いに行くと言った。

「先生の個性と戦い方だと無茶ですよ。危険すぎます」

「安心しろ・・・なにも死にに行くわけじゃねぇ。それに一芸だけじゃヒーローはやっていけねぇ。大人しく見ていろ」

そう言った後にヴィランの中へと飛び込んでいった。

13号が避難誘導をしようとしたときだ。

「逃がしませんよ」僕らの前に黒い霧が現れる。

「初めまして・・・いや、緑谷出久には始めましてではありませんが、我々は(ヴィラン連合)と名乗っています。僭越ながら本日はヒーローの巣窟である雄英高校に入らせていただきました目的は・・・平和の象徴オールマイトを亡き者にするために参りました」

「やっぱりですか!!」

全員に緊張が走る。

「ここにはオールマイトがいるという情報でしたが、なにか事情が変わったのでしょうか?」

「只の仮眠中。そのうち来ると思う」

「・・・・・・まあいいでしょう。私の目的は―――」 

黒霧さんがなにかを言う前に爆豪と切島が先制攻撃を仕掛けた。

「おらぁ! 死ねー!!」

「おおおおおーーー!!」

「かっちゃん! 切島君!その人に闇雲に攻撃してもダメージは―――!」

二人の攻撃は直撃した・・・ように見えて霧の様な体には一切ダメージが通っていなかった。

「怖い怖い・・・生徒とはいえ優秀な金の卵である事には変わりありません。ですので・・・」

「みんな、下がって!」

13号が何かをしようとする前に黒い霧が僕らの周囲を覆い尽す。あ、ゲートか!

「一人除いて全員嬲り殺しにします・・・!!」

 

 

一瞬意識が飛んで、はっと気づくと、そこは―――

 

 

「緑谷、なんでここに!?」

中央広場。つまり僕は沢山のヴィランがいるところに放り込まれたということ。

「緑谷出久。テストです。鍛錬の成果を、この実戦で見せてもらいますよ」

「ははは・・・つまりそれって・・・」

全員倒せ、ってことか。

「な・・・!?」

「分かりました。やってみせましょう」

相澤先生とのタッグ戦。面白そうだ!!




先生とのタッグ!やってみたかったんです。水難ゾーンだと水に触手つけるだけで終わっちゃいますので。
眠いので間違いあるかもしれないので、報告お願いします。


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触手?爪で十分だ

バイオハザードなんて起こす気は毛頭ない僕。
あの時はウェスカーさんがいたから触手が使えた。
でも、いまはいない。
感染者を出したくないと言うなら、触手は使えない。
それに、目の前に居るのはちょっとした小手先の技が使えるだけの一般人。
それくらいなら―――(凶器)で十分だ。

感覚が可笑しくなりはじめた緑谷である。




生徒達を守る為にヴィランをここで足止めしていると言うのに、まさかこのヴィランに囲まれた輪の中に守らなければならない生徒が放り込まれてしまうとは思わなかった。

俺はなぜかノリノリな緑谷に怒鳴る。

「あいつの言うことに耳を貸すな!俺が道を作るからそこから逃げろ!」

「・・・繰り返すだけですよ。黒霧さんが居る限り」

あのヴィランを知っているのだろうか。敵の前だというのに妙に冷静な緑谷。だがここにいると守りながら戦わないといけなくなる。元々俺の個性は戦闘に向いてない。ここから離れてもらわないと俺としてはかなりきつい。

「だが、そこにいると俺が戦いにくい!だから―――」

「戦いにくいんですね。分かりました、なら離れます」

戦闘用コスチュームの腰ポケットから何かを取り出した。

「なんで銃なんか持ってる!?」

「これはフックショット。ウェスカーから貰ったものなんです」

ウェスカーって、まさか協会幹部の!?

「それでは」

緑谷はそれを上に向けて、引き金を引いた。

パーン!

 

「上から来るぞ、気をつけろ!」

 

銃から放たれたワイヤーが骨組みに巻きつき、そのワイヤーを巻き取って高所に飛び上がる。どこか遠くに着地するのかと思ったら、あろうことかまた戻ってきた!

危機感の無い声で警告して着地したのは、ヴィランの塊の中。間違いなく誰か下敷きになっただろう・・・

「緑谷、離れると言ったはずだぞ!」

「はーいヴィランの皆さーん!これから皆さんのこんな大人数で来たんだから絶対勝てるなんて甘ったれた考えをぶち壊して差し上げまーす!逃げるなら今のうちですよー?」

俺の声を無視して、下敷きのヴィランから降りない緑谷は滅茶苦茶煽ってる・・・そんなことしたら、

「ああ!?テメェ舐めてんのかぁ!?いいぜ、ガキだから手加減してやろうって思ってたが仕方ねぇ!ぶっ殺してやるよ!」

「舐めてんのはどっちだか。やれるもんならやってみなよー♪」

「てっめぇ・・・ッ!!」

やはりぶち切れられた。てかこれ以上煽んな、手がつけられなくなるから。

「オラァッ!」

先程煽りに反応したヴィランが大きな牙を生やした猪の姿になって突進してきた。変異系の個性か。

しかしあんな突進をまともに食らえば只ではすまない。俺は捕縛しようとするが―――

「・・・・・・」

緑谷が無言で手を差し出す。その手には爆豪と戦ったときよりも鋭く、長い爪が生えていた。

その瞬間、俺は察してしまった。

しかし察した所でもうとっくに手遅れだった。ブレーキをかけたヴィランだったが、勢いをとめられずに、眉間のところに緑谷の爪が刺さってしまった。深々と。

爪が引き抜かれると、そこから緑谷にかかってしまう位勢いよく赤黒い血が噴出して、ヴィランは猪の姿のまま、倒れてしまう。

『・・・!』

ヴィラン共の周りに動揺が走った。

「・・・で?どうするの?」

ばっと、緑谷の周りに居たヴィラン共が素早く距離を取る。

「それだけ・・・か。分かった。ドロッチェ、ここは僕と先生だけで十分だ。皆の援護に回ってくれる?」

「了解。オレに任せろ」

俺の布に隠れていた鼠が飛び出し、ぽふん、と音を立てて煙に包まれる。

煙が晴れて、現れたのはまるで怪盗の様な赤い服装をした、緑谷の膝くらいの身長の大きな鼠。

「行ってくるぜ!」と言った途端、鼠はその場からふっと姿を消した。まるで瞬間移動でもしたかのように。

「それくらいの距離なら直に詰められるね。さ、始めようか。先生、ぼーっとしないで下さいね」

ちらりとこちらに目を向けてきた。光を失った瞳はこちらに向けられていないと知っていてもゾッとした。

「緑谷、絶対殺すなよ?」

「承知しています」

心なしか凄く不満そうな顔をしているように見える。しかし人を殺すなどあってはならない。

だが、俺は目の前のヴィランに意識を向ける。

今するべきことはこのヴィランどもを片付けることだ。

緑谷は・・・多分大丈夫だろうな。あの様子じゃあ危険の心配はしなくてよさそうだし、多分殺人はしないはずだ・・・なぜか俺はそう判断していた。

まだ実戦を知らないような生徒を守らずに背中を預けるなど言語道断だろう。

だが。

この目には、今の緑谷は、そんなヒヨっ子らとは違う、今の状況で唯一安心して後ろを任せられる存在へと写った。

それに、どちらにしても逃がすことは出来ないだろう。というより絶対逃げようとしないのだから、いっそ放っとこうと思ってしまった。

 

 

俺はヴィラン共を捕まえては投げて、捕まえては投げてを繰り返し緑谷は切り裂いては蹴って切り裂いては蹴ってを繰り返し・・・

 

ついに囲んでいたヴィランを殆ど倒した。

 

「っち、まさかこんなに早く倒されるとはな・・・」

「現役ヒーローの助けがあったとしても、かなり強いですね。テストは合格と先生に伝えておきましょうか」

残されたのは、体中に『手』を無数につけた、おそらくリーダー格であろう男と、先程緑谷をこちらに送り込んだ黒霧、とやらだけだ。

「そりゃどうも。ところで、ここに来たのってまさかオールマイトの抹殺ですか?」

オールマイトの―――抹殺だと!?

「その通り。私達ヴィラン連合は対オールマイト用の兵器を用意しています。緑谷出久、たとえ貴方が相手をしたとしても、一筋縄ではいきませんよ?」

「ほーう?そうですか、ならその兵器、僕が叩き潰してあげましょう」

緑谷は満面の笑顔を浮かべていながら驚くほど冷たい声でそう言った。

「その軽口、言えないようにしてやるよ」

リーダーの男からも殺気を感じるが、何故だろうか、緑谷のほうが怖かった。

その男の背後に黒いもやが現れる。

そこから現れたのは―――

 

「ッ!?なんでタイラントが・・・!!」

 

瞼の無いギョロ目の瞳に、脳が露出した頭部を持った巨体の大男。

「緑谷、知っているのか!?」

「見たことはありませんが、あんな異形は僕の知っている中では、それじゃないかと」

今の緑谷は笑顔が消えて、真剣な顔になっていた。

緑谷がこの様子だと、かなり危険な奴のようだな。

そのときだった。

「やれ、脳無」

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!!」

脳無、と呼ばれたそれは、その巨体に似合わぬ速さでこちらに殴りかかってきた。

「先生離れて!」

「分かっている!」

ばっとそこから飛びのき、その体から繰り出される豪腕の一撃を間一髪で避ける。その一撃は、地面のアスファルトに突き刺さった。

「・・・まさに暴君(タイラント)の名が似合うようなやつじゃないか」

暴君のように強く、危険な存在。確かにその通りだな。

「先生、僕に一つ策があるんですが、いいでしょうか?」

策、か・・・ある意味賭けになるが、今回は賭けるべきだろう。

「なんだって良い、やるんだ」

「分かりました!」

緑谷は突き刺さって抜けなくなった腕をするすると登っていく。

脳無の頭の所までくると、右手で口をこじ開け、そのまま左手を―――

「ッ!?やめろ!」

俺の制止も遅く、脳無の口の中に肘の所までまで突っ込んだ。

強引にこじ開けていた右手を離してしまうと、脳無はもちろん口をしっかりと閉じる。

入れっぱなしだった左腕はそのまま、噛み千切られた。

「うあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"っっっ・・・!!!!」

足場の腕から落ちて、肘から先の無い左腕の傷口を押さえながら蹲る緑谷を俺はすぐさま脳無から引き離す。

「なんでこんなことをした!?」

「っ・・・先生。あいつを少しの間だけ、押さえてください。大丈夫です、ちゃんと元に戻りますから」

「・・・・・・大丈夫なんだな?」

「はい、なので先生、お願いします」

「分かった」

先程よりも激しく暴れまわる脳無を布で拘束する。今までに無いような凄まじい馬鹿力でこっちが振り払われそうになりながらも、俺はなんとか足を踏ん張って耐え抜く。

そして、そろそろ力が限界になりかけたときだった。

「ア、アア、アアアアアアアアアアアア・・・!!」

脳無の様子がおかしい。そう思った直後。

「「なっ!?」」

リーダーの男と俺の声が綺麗に重なる。

脳無の体から赤いそれが大きく揺らめいた。

 

 

「チェックメイトだ。勉強不足だったね、ヴィラン連合!」

 

 

脳無の体が、激しく炎上していた。さっきまでの激しい動きとは逆に首を押さえて低く呻いていた。

「てめ、何をした!?」

「・・・!!そういうことですか!考えましたね・・・」

リーダーの男は意味が分からないと混乱しているが、黒霧は感心している。

「緑谷・・・お前何した」

「僕の血を体内に入れるために腕を入れてやりました」

「じゃあなんで血を体内に入れようとした?まさか血が大気に触れると燃えるとかじゃないだろうな」

「あれ、先生知ってたんですか」

左腕を見れば、喰われたはずの腕が戻っていた。

緑谷、一体お前は何をされたんだ・・・?

久しぶりに戦慄していると、そのうちこんがり焼かれた脳無は倒れた。

「チートが・・・!黒霧、撤退だ。・・・クソガキ、覚えてろよ絶対いつかぶっ殺してやるからな覚えてろよ!」

「やれるもんならやってみなよ♪ま、ぜーんぶ返り討ちにしてやるけどね」

「・・・やっぱここでぶっ殺してやる」

緑谷・・・また煽ってやがる。しかも乗って来てんじゃねえか・・・!

「言っておくが、これ以上は手助けはせんぞ」

「はい。こちらが撒いた種なんで、こちらでどうにかしますよ」

 

 

結果はどうなったのかって?もちろん緑谷が勝ったさ。敗北したリーダーの男―――死柄木弔は黒霧によって瞬く間に回収された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそぅ・・・ガキに負けたぁ・・・畜生・・・・」

カウンターに突っ伏して泣いている死柄木。

「こればかりは相手が悪かったです。彼女は下手したらオールマイトすら超えるほど強いんですから」

「・・・マジで?」

「マジです」

「ふざけんななんだよそのぶっ壊れた性能は」

黒霧が慰めの言葉をかけるが一向に立ち直る様子を見せない。

「あいつがこっち側ならよかったのに・・・なんでそっちなんだよ・・・寝返らせることなんて出来るのかよ・・・?」

「今の所は無理でしょうね。というか良い大人が子供みたいに何泣きじゃくってるんですか。この先これくらいで泣いてちゃ後が持ちませんよ」

「・・・・・・そうだな」

死柄木が持ち直し始めたのに気づいた黒霧は、

(緑谷出久によって少しは成長したようですね。やはりこの襲撃は正解でした。それにしても・・・彼女、今回なぜか微妙に戦闘狂っぽかったような・・・)

そう心の中で呟いた。

 

 

死柄木弔 目標

・オールマイトの抹殺

・緑谷出久を仲間に引き入れる

 

 

やったね緑谷!また厄介ごとが増えるよ!




緑谷の力に気づき始め、なにか危険なもう一つの悪意が蠢いてる事を感づきはじめる先生
オールマイトの対抗策として完全にロックオンしたヴィラン連合

緑谷は本気でかかってくるならこちらも本気で迎え撃つという信念みたいなのがあるようです。殺すの嫌なのに。
手加減したら相手に失礼だと、そう考えています。

おかしいところがあったら教えてください。
次は体育祭編。サンズたちを、暫く出さなかった分、体育祭で出番を増やす予定です。


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雄英体育祭と悪夢

デクのことが心配なかっちゃん。
タイムリミットは、刻々と迫ってきている・・・


ヴィラン連合の侵入のため、臨時休校となった雄英高校。

その翌日、僕は久しぶりにかっちゃんと登校していた。

「あー・・・きぶんがわるい。なんでこのタイミングであんなあくむをみちゃったんだろ・・・」

「デク、ほんとに無理すんなよ」

昨日はしっかり休んだというのに、今までに無い悪夢を見てしまった。

 

 

『いたい、いたい、誰か助けて』

 

『まだ死にたくない!来るな、来るな、うああああああっ!!』

 

『みんなここで死ぬのよ』

 

『私が創造主となり、新たな世界を築くのだ!』

 

『くそっ・・・まだ諦めるな!』

 

 

『すみません・・・隊・・・長 ・・・ BSAAを・・・未来を・・・』

 

 

「よちむじゃないといいな。あんなものがくりかえされるのは、みたくない」

疲れのあまり滑舌が甘くなっているが正直喋るのも億劫だ。

「どんな夢見たんだよオイ・・・」

「じごく、かな」

「・・・その地獄の光景と同じようなことにはなるんじゃねえよ?」

「ごめん・・・それはほしょうできないや」

少しずつだが、自分が自分じゃなくなり始めていることは分かっている。このペースでは時間の問題だろう。

少なくとも言えるのは、僕は『確実にヒーローになれない』ということだ。

「そろそろはしらないとおくれちゃう。いそごう」

「・・・おう」

 

 

そして朝のHRの時間。

いつもの通りに飯田がみんなに席に座るように促していた。本人が座っていないところには目を瞑ろう。

予鈴が鳴ると、いつも通りの相澤先生が入ってきた。

「先生無事だったんですか!?」

「なんとか、な・・・」

片足を捻挫した程度で済んだらしい。本当に無事でよかった。

「俺の心配はしなくてもいい・・・それよりお前たちの戦いはまだ終わってねえぞ?」

『ッ!?』

え、何!?予告状でも来たの!?

「雄英体育祭が迫っている・・・」

『クソ学校っぽいのキター!!』

・・・・・・え?

「一昨日襲撃ありましたよね!?そんなときにやっていいんですか!?」

思わず僕は突っ込んでいた。

「それもあるが、気にするな。逆に開催する事で雄英は体制が盤石だというところを見せるんだろうな。警備も例年に比べて5倍相当に増やすそうだからお前たちはただ勝利を勝ち取る精神だけを蓄えておけ。それにこの体育祭は・・・・・・お前たちにとっての最大のチャンスだろう?」

相澤先生は説明した。

個性が世の中に発現して以降、かつてのオリンピックという競技は公正を保つことが難しくなって次第に縮小していき形骸化した。

その代わりに個性使用ありでのいわゆるお祭り騒ぎ・・・オリンピックの代わりとなって誕生したのが雄英体育祭だという。

三年間の学生生活で三回しか行われないビッグな行事であるためにスカウト戦争も白熱する。

トップに近い成績を残した生徒はそのほとんどがトップヒーローの道を開いている。

No.1ヒーロー、オールマイトやNo.2ヒーロー、エンデヴァーもそれで上を目指して今の実力と名声を手に入れてきたそうだ。

 

うん。僕には全く関係ないな!

 

「だからな。ヒーローを目指すのなら必ず通っておいて損はねぇ催しだ。俺のクラスの生徒であるお前たちには立派に戦って戦果を上げてもらいたい。俺からは以上だ」

目指していても僕はもう叶わないけどね・・・でも、精一杯やろうか。

 

 

お昼休みにて。

「デクちゃん、飯田君・・・雄英体育祭、頑張ろうね!!」

いつもの顔とは違う、真剣な顔でお茶子ちゃんが言った。

「お茶子ちゃんには笑い事じゃないんだね」

僕がそういうと、お茶子ちゃんはその理由を語ってくれた。

お茶子ちゃんの家は建設業をしているのだけど最近仕事がなくて財政難を抱えてしまっている。

それでお茶子ちゃんはヒーローになってお金を沢山稼いで親達の暮らしを楽にしてあげたいんだという・・・

「だからね、このチャンスを逃したくないの」

「そっか。お茶子ちゃんにはそんな目標があるんだね」

目標を失った僕と違って。

でも、みんな理由は違っていても精一杯ヒーローになろうと努力している。

「・・・僕も頑張ろう。お茶子ちゃんみたいになにかを目指している人になりたいしね」

「おぉ!緑谷君も立派だな!それじゃみんなで頑張るとしようか!」

僕らはえいえいおー!と激励をした。

 

それにしてもかっちゃんは、どんな宣誓をするんだろうか。

まあ大体察しはついてるけどね。

 

 

「もうすぐ体育祭か。こちらも観客として見に行かせて貰おう」

「はぁ!?」

パイプ男―――オール・フォー・ワン率いるヴィラン連合も来ることになってしまったけど。




自分が自由で居られる時間はあまり無い。直感でそう分かっているオールフォーワンは少しでも思い出を作る為、あと好奇心で観客として見に来ることになりました。変装?博士に任せろ。
沢山の人が来ますが、実は私自身の願望で来る筈の無い人をこさせます。
でも原作の体育祭後の展開を改変する気はありませんので、タイミングが遅れるのみです。
ただし体育祭はたくさんのハプニングが・・・
予想しておいてください。
次、体育祭当日。

あと・・・出久のヒーロー名を募集させてもらいます。私のネーミングセンスは皆無なので。
遠慮なく感想に書いてください。


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雄英体育祭、START!!

アルカードさんをアルバートさんと読み間違えた私です。アルカードさんすみません。
宣誓と一回戦目を書きます。
あとしばらく一週間に一回のペースになります。リアルの忙しさ故、ご容赦を。


体育祭の開催が言い渡されて、早二週間。ついにその当日となった。

(サンズがあるサプライズを用意するとかなんとか言ってたけど、碌なことにならない気がする・・・)

出掛ける前にサンズに言われたことに緑谷はいやな予感を覚えていた。

会場内には今か今かと観客やプロヒーロー達が入り込んでいた。

この体育祭の今年の目玉は1年生の部だろう。

なぜならヴィラン侵入という災難に見舞われながらも、全員が挫折せずにこうして体育祭を迎えられたのだ。十分な研鑽をしないまま修羅場を一度潜り抜けたという実績が出来た故にいつもなら三年生の部に注目されるはずが、一年生の部へ注目が集まる結果となった。

 

 

そして生徒控え室にて。

体育祭ではコスチュームを着ない。サポート科や普通科などにそれが無い為だ。

着るのは体育服のみというのは緑谷にとって、かなりのペナルティだった。

(一時的な完全変異をしたら服が耐えられない。本気が十分に出せないから不利だな・・・)

言っておくが完全に変異したら体育祭が崩壊してしまう。自分の危険性は昔から理解しているはずなのに、緑谷はなぜかその日、そのことをまるっきり忘れていた。

「皆!準備は出来てるか!?もうじき入場だ!」

飯田の声を聞き、緑谷は気合を入れる。

そのとき、突然轟が緑谷に話しかけてきた。

「緑谷」

「轟君・・・何?」

「まだ戦ったことが無いからお前の強さは分からない。だが・・・絶対に勝つぞ」

いきなりの宣戦布告に緑谷は固まる。

「おぉ!?クラス最強が宣戦布告!!?」

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって・・・」

「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だって良いだろ」

切島の制止を轟が振り払う。

だが緑谷は。

「ええ・・・まじかぁ・・・」

「は?まじかって」

「僕今回コスチュームが使えないから本気で戦えないんだよね。だから君が満足できる戦いになるかどうかが・・・」

「コスチュームが使えないから本気で戦えない、だと?どういうことだ」

「体操服だと耐えられずに破れるからだよ」

「それがどうした・・・・・・あっ・・・」

「そういうこと。ホントにごめん。だけど僕が出せる全力で優勝を取りにいくよ」

「・・・ああ」

R-18展開(というより絶望の権化が君臨する)は流石に宜しくないので緑谷は謝っておく。

ついに、体育服を着て引き締めた顔で1年A組が競技場へ入場する。

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらあれだろ!?こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず!鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』

山田ひざし先生―――プレゼントマイクのビッグヴォイスが会場に響き渡る。

『ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?』

その声とともに緑谷達が、入場してくる。

「わあああ・・・人がすんごい・・・」

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか・・・!これもまたヒーローとしての素養を身に着ける一環なんだな」

「めっちゃ持ち上げられてんな・・・!なんか緊張すんな・・・!なぁ爆豪」

「しねぇよ。ただただアガるわ」

続いて別のクラスも入場してくるが、緑谷は目もくれずに観客席を見渡す。

・・・そして目的の人物らを発見した。

(いたよヴィラン連合!てか変装上手いな!?)

顔が見えず、そしてギリギリ不自然に見えないような服装をしていた。

その一人―――死柄木弔がこちらを見つけた緑谷に小さく手を振る。

「警備五倍に増えてんだよね?なのになんでこんなにガバガバなんだよ・・・」

「うわマジで居やがった。よく侵入できたな」

緑谷の髪の中から顔だけを出したドロッチェだが、すぐにヴィラン連合の存在を視認していた。

黒霧に個性があるとしても、なぜ観客席に警備を置かなかったのだろうか・・・

「ま、言う気も無いんだろ?」

「そりゃね。勘だけど多分イザコザは起こさないだろうし」

するんだったらまずあんな目立つ所いるはずがない。

「選手宣誓!!」

 ピシャン!と十八禁ヒーロー『ミッドナイト』が壇上に立ち、鞭を振って進行する。

彼女が一年性の進行役のようだ。

(ツッコミどころがありすぎてツッコミ切れない・・・)

言いたいことが多々ある緑谷。何を言いたいのかは大体察せるだろう。

代表は爆豪・・・もといかっちゃん。

どんな内容だったかって?かっちゃんらしい宣誓だったよ。だって1年全員に宣戦布告したからね。

そして二年生、三年生も入場してなんやかんや言っていたが、それは緑谷には聞こえていなかった。

 

 

(なんで貴方が居るんですかあああああっっっ!?!?)

 

 

しれっと司会がいる特等席ともいえるところにあのウェスカーが居たのだから。

仕事はどうした、なぜそこにいるのを許されているんだ、などといろんな疑問が頭の中で渦巻きながら、体育祭、開幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一種目は障害物競走。

「・・・出久」

「言いたい事はわかってる」

そういって、緑谷は今いるスタート地点から、モニター室の上にある巨大スクリーンの上にのった者達を見上げる。

 

「人間共オオオオオオォォォォォ!!!!この障害物競走とやら、私達が滅茶苦茶にしてやろうじゃないか!!!!!!!!」

「アフフフフ~♪蜘蛛ちゃんたちの朝食にしようかしら~?」

「わ、私も頑張ってロボを私が改良した改人間用の殺戮兵器に入れ替えておいたわ!」

「ニェーーー!!いい眺めだ!俺様思いっきり戦うぞ~!」

「ククッ、イズク。これがオイラの『サプライズ』さ。面白そうだろ?」

全身鎧を纏って青白い槍を持っている魚人。

赤いワンピースを着た二足で立つ蜘蛛。

白衣を着て丸眼鏡をかけた黄色い恐竜。

そして緑谷にとってすごく見覚えがある二体のスケルトン。

「ドロッチェ、全力で皆を守って。僕も全力でカバーするから」

「言われなくても、分かっている!!緑谷は落とし穴とかの落下阻止、頼むぞ」

「了解!」

会場に動揺が走っている中、緑谷とドロッチェだけが落ち着いて作戦会議していた。

 

 

「スタートだ、ニンゲン共。ボーンッとしてるとスパイダー共に骨になるまで喰われ尽くされちまうぜ?・・・骨、だけにな。HeHe」

サンズがいつの間にかもっていたピストルを撃つ。

最初は皆動揺していたけれども・・・

「ぎゃああああああああ!???!?蜘蛛がたくさん来たあああっ!?!!?」

「しかも目が光ってる―――!!」

「突っ立ってたらこれ絶対喰われちまうぞ、速く逃げるぞ!!!!」

全員死に物狂いで走り始める。

緑谷はこれはどうこう言ってられないと、身体を変異させた。

 

完全変異の姿は、巨大ヒルだ。しかし、只の巨大ヒルではない。

人型の形を取ったヒルというべき存在。

その体からは、形のおかしいヒルが寄り合わされた触手が無数に生えている。

 

《女王ヒル》

 

昔、マーカスが自らの意思で無数の変異ヒルを身体に取り込み変異した姿に付けられた名前だ。

「ミッションノ・・・・・・クリアジョウケン・・・シシャヲヒトリモダサナイコト・・・・・・!!」

いつものおぞましい色とは違う、アルビノの様に白いその触手が競争のコースに沿って素早く伸びる。

最初の障害物は入試試験での0P仮想ヴィランの大群。だが

「それにはたくさんの兵器を搭載してるのよ!ガトリングにチェーンソー、槍にクロスボウ、そして、たくさんのロケットランチャー!弾はたくさん詰め込んでるから弾切れはまず無い!そして表面はロンズデーライトを使ってるから耐久力は桁違いよ!!力も理論上オールマイト以上の馬鹿力!貴方達に止められるのかしら・・・?」

なんというぶっ壊れ性能なのだろうか。ろくに経験を積んでいない一年生、いやヒーロー達でもこんなのに勝てるはずが無い。

だが、こちらには対抗できる手段がある。

「どんなに硬くたって伝説の杖の前には紙と同等!『トリプルスター』!!」

ドロッチェが杖を振るえば、たちまち巨大な流れ星、いや流星群が空から降ってくる。

その流星群は巨大ロボに全て激突して、ロボは見るも無残な姿となった。

 

次は『ザ・フォール』。落ちたら失格というものなのだが、またしても

「アフフフフ~♪落ちたら最期、蜘蛛ちゃんたちのご飯になっちゃうワヨ?」

そこには目を赤く爛々と光らせる無数の蜘蛛たち。

何人もの選手達が足を止めれず落ちていく中―――

「ダイジョウブダ、オチタラボクガウケトメル!」

変異した緑谷に援護によって、全員落ちずにすんだ。

だが、その中の何十人かはすぐにリタイア―――

「したら俺様と遊んでもらうぞ?」

出来なかった。今にも泣きそうな顔の選手が所々見受けられるが、どうしようもない。

ちなみに先生方は謎の蔦によって拘束され、何も出来ない。

オールマイト?赤目のソウルレスによって足止めされてますけど何か問題でも?

 

最期は地雷原。本場で使われてるものより威力は弱くされてるはずだが、それも

「サンズとガスター博士との合作よ!世界最強の地雷に改造したわ!当たれば大体の肉体は爆散!一番の難関よ!」

サンズの遊び心()とはいえ、本気で殺しにかかっている。

そこで一位を保持しながら氷で疾走する轟が凍らせようとするが―――

「対抗策を取っていないとでも?」

大爆発。とてつもない爆風が轟と近くに居た選手達をザ・フォールの崖っぷちまで吹き飛ばす。

「USJの件はもう見せてもらっていたんだからね。大体の個性を使ったら爆発するから、注意してね?」

どこで見てた!?とA組全員は思った。

(ハッキングかよ!畜生!!)

サンズには前科があるために直に分かった緑谷は、直に対抗策をとる。

「グアアアアアッ!」

触手を選手らに巻きつけて。

「デクちゃん!?何を」

「くそっ、振りほどけねぇ!」

「なにすんじゃデクゥ!離せや!!」

「アバレルナ!!!ナゲルカラウケミ、トレ!」

思い切り上に放り投げた。

「ハッ、さっさと片付けてやるよ、『極太レーザービーム』!」

ドロッチェがさっきとは別の杖から真白なレーザーが放たれる。

レーザーが地雷原を薙ぐとそこの地雷をまとめて爆破した。

それから緑谷がしっかりと全員受け止める。

「それくらいは察してたぜ!こっからが本番だ、全部まとめてBADTIMEだクソガキ共!」

襲撃してきたサンズ達モンスターが、なんとゴール前に飛び降りてきた!

「ナ・・・!?」

緑谷にも、正気の限界がある。これ以上異形のままだと正気を保てない。

「クソ・・・ドウシタライイ・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ・・・・先生。やっぱり手出ししちゃダメなのか?」

「気持ちは分かるが、ダメだ」

さっきから弔が何度も手出ししたいと言ってくる。

顔は見えなくとも、彼女はとても辛そうに見える。彼はきっと助けたいのだろう。

「でも、アイツとても辛そうだし・・・」

「だとしても、これは競技だ。手出しは許されない」

「それを無視するのがヴィランじゃないのか?」

「・・・確かのその通りだ。だがな、それは彼女が悲しむことになる」

「なんで」

「ヴィランが介入することによって体育祭が中止になるからだ。彼女はああまでして選手達を守ろうとしている。これにプロヒーローたちまで手を出せば間違いなく体育祭は終了してしまうだろう。だから彼女は生徒だけでこの事態を収めようとしているんだ。そうすれば、この催しはおそらく中止を免れるだろうからね」

「・・・そっか。でも、ほんの少し、感づかれない程度に手助けするのはダメなのか?多分先生の個性なら出来るはず」

・・・弔がこんな顔をするのは、初めてだな。

「確かに出来るが・・・」

「出来るなら、頼む。緑谷を・・・出久を助けたいんだ」

「そこまでいうのなら、分かった。やってみよう」

僕は手をかざす。

やるとしたら――――――『洗脳』だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ズキン。

「ッ!?」

突然、頭痛が僕を襲った。

意識がどんどん黒く塗りつぶされていく。

いけない。このタイミングで意識を失うなど、あってはならない。

―――緑谷。

な、んだ・・・この、声は・・・

―――これ以上無理をするな。あとは僕に任せてくれ。

・・・・・・貴方、だったか・・・・・・

「アト、ハ・・・タノミマ、ス・・・」

そういい残して、僕の意識は完全に黒く染まった。




サンズ達が大昔の恨みをちょびっとだけ向けてきました。
モンスターたちが本気で復讐してきたらどうなるかを想像して書きました。
どこぞのシモンズさんみたいにでっかくは無いからね、それに完全変異は初めてだからね。
弱めになってしまったわけです。でも感染はしない。
緑谷の意思が奪われるのなら、先に奪っておきゃあいいんだよ。
次は騎馬戦、のはずが緑谷は変異のせいで激しく動けないために、それを休んで、ヴィランとついでに観戦しに来た別のヴィランたちとお話です。


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ふざけるモンスター共、ブチ切れるオールフォーワン、満身創痍な緑谷、マッドハッターになったドロッチェ、メメタァなことを言う死柄木、ウェスカーとフランクに突っかかるトガと荼毘

前回言った事……見事に忘れて申し訳ありませんでした。
初っ端からふざけます。


体育祭会場の裏側にて。

 

突然だけどメリークリスマアアアアアアアアアアアアア「やかましわああああああああ!!!!」ドゴォ!ぐはああああああああああああっ!!!!!

 

 

 

「オールフォーワンが片手肥大化させてサンズ達をぶん殴ってる……」  

「なんだこれ」

「この世界は全く季節違いだけどこれの投稿日クリスマスイブだからって理由」

「今体育祭真っ只中、しかも騎馬戦だもんな」

「死柄木君、ドロッチェ、メタ発言だよそれ。確かに前書きの言うとおりふざけてるね……」

「全くだ」

原作ではオールマイトとの戦いの時に見せたあの管みたいなのが垣間見える巨大な腕を使って、オールフォーワンがサンズ達モンスターをまとめて殴り飛ばしているのを、黒いパーカーを着た死柄木と、応急処置をされながらも満身創痍な緑谷と、自慢のマントとハットをぼろぼろにしてまさにマッドハッターの如き姿をしたドロッチェが傍観していた。

 

「ふざけるな!障害物競走どれだけ手こずったか分かってんのか!!クリスマスイブだからってこれ以上ふざけるのは体育祭終わってからにしろ!!!」

すいませんでしたああああああああああ!!!!!

 

「先生が口調を変えて烈火の如く怒ってる……あんな姿は珍しいな」

「オールフォーワンって怒るにしても静かに怒るタイプに見えるよね」

「それな。まああんなことになったんだから仕方ないともいえるけど」

「BADTIME、だっけな?確かそのときイズクがマジで死に掛けたんだしそりゃそうか」

「僕そのときオールフォーワンに乗っ取って貰ってたから覚えてないんだよね……でも僕の体が今でもめっちゃ痛いから、かなり不味いことになってたんだろうっていうことは分かる」

これを読んでる読者方、死柄木はヴィランで緑谷とドロッチェは雄英生で敵同士だということを忘れるな。

仲良さそうに見えるかもしれないが敵同士だということを忘れるな。(大事なことだから2回言いました)

 

「……緑谷、傷開くだろうからそろそろお前は休んどけ」

「悪いけど、僕にはやらなければいけないことがあるんだ」

スッと、猫のように細められた緑谷の目からは強い決意を感じる。

「やらなきゃいけないこと……って何だ」

「ふふ。ドロッチェは分かるでしょう?」

「ああ。分かるぜ。そのやらなきゃいけないことには俺も賛成だ」

「そっか。それじゃあ、やろうか」

体育服の袖から、あのおぞましい色をした触手が這い出てくる。

それを見た死柄木は緑谷たちの思惑を悟った。

「おい、そこまでしなくても」

「止めないで死柄木君。僕、実はめちゃくちゃ怒ってるんだ」

「あ……そっか……うん……分かった」

放たれる殺気に気押された死柄木は黙り込む。そして巻き添えを食らわぬよう、そこから数歩下がる。

「オールフォーワン。下がってくれますか」

「?ああ」

すっと開けてくれた場所に彼女は立つ。

 

え……イズク……?

「さて。覚悟はいいか?」

ヒッ!?

「モンスター共は皆殺し(スレイ)だ」

どこぞの子鬼殺しと似たような台詞を吐いて、背後に蠢く触手たちをニッコリと嗤った彼女は思い切り振るった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体育祭の会場の廊下にて。

「よう、アルバート」

「……何の用で俺のところに来たんだ、フランク」

「そりゃこれに決まってんだろ(バリッ!)」

「い゛っ!?」

とあるジャーナリスト―――フランク・ウェストは、友人であるアルバート・ウェスカーの後ろに忍び寄り、彼の若干長いえり足に隠れた赤い機械の虫―――遠隔操作系マインドコントローラーを剥ぎ取った。

「な、にをするんだ、フランクッ!」

「そりゃ、お前が長い間苦しんでた悪い虫を取っ払っただろが。感謝しろ」

「うぐ……っ」

うなじに付いた痛々しい傷痕を押さえて蹲るその様子はいつも堂々としている彼らしくない。

まあ、その口の悪さは変わらないが。

「にしてもよー。この虫、あの子も気づかない位巧妙に隠されてんじゃねえか。ま、俺の目は欺けなかったが」

「その洞察力には度々(たびたび)助かってるが……もう少し、そっとしてほしかった」

「ちょっとやそっとの力じゃこれを剥がすことは出来ねえよ。大人の全力でなんとかってところだ。ガキ位の弱い力じゃ剥がせん。もちろんあの子は例外だがな」

「……あの例外なら気づくと思ったが……」

「感づいてはいたかもな」

「その程度か。まだ不完全だな……むう」

「……おーい、アルバート……まだ洗脳残ってんのか?」

「何言ってる?もう洗脳は」

「悪事からは足を洗うって、昔言ってたよな。お前の言ってること、まるでヴィランだぞ?」

「……え?」

「わーお……根本から変えられちまってんのか。こりゃ精神病院行きだな」

「はぁ!?」

精神病患者扱いにされたウェスカーはキレて、それを見たフランクはクククと押し殺した笑い声を上げる。

「そういう笑えんジョークはやめろ!」

「ふwwwはwwwマジになってやんのwwwwww」

「貴様ァ!」

殴りかかってくるウェスカーの拳をフランクは軽く受け流す。そしてその勢いを以って、背負い投げへと繋げた。

ウェスカーは冷静じゃなかったために受け身も取れず、あえなく床に叩きつけられた。

「グハァッ!」

「ふっ。前世で無数のゾンビと戦って身に付けた俺の格闘術を舐めんなよ?モツ抜きしないだけよっぽどマシだろ」

「あれマジでやったら俺も流石に死ぬぞ!?」

 

(はた)から見れば漫才のような二人のやり取り。

しかし、そのやり取りに乱入するものがいた。

 

「あははははっ!私はトガです。トガヒミコです!貴方達の名前ってアルバート・ウェスカー、フランク・ウェストで合ってますか?合ってますよね!?」

 

「おいトガ、落ち着け。あんた等はさっきこいつ(トガ)が言った名前の奴で違いないな?」

 

女子高生のような服装をした少女と火傷痕と正常なところの肌をを継ぎ接ぎされた顔の男。

「いったた……確かに俺たちはそうだが、何だ突然?」

強く打った後頭部を押さえながらウェスカーは起き上がり、答える。

「そっかー。貴方達がそうなんですね!ならよかったです!」

「良かった……?」

「!?アルバート、こいつらは―――」

少女の言葉に困惑するアルバートをよそに、フランクは気づいた。この二人組の正体を。

少女は屈託の無い笑顔を浮かべて、言い放った。

 

 

 

 

 

「私達は、貴方達を殺すために乗り込んできたヴィランです!というわけで、今から貴方達を、殺すね?」

 

 

 

 

 

それを聞いた二人は、瞬時に戦闘態勢へと入った。

「被害を最小限に抑えるためにも、ここで迎え撃つぞッ!」

「分かっている!」

フランクは拳闘の構えを取り、ウェスカーはサムライエッジ(ハンドガン)を構える。

「さ、始めよっか♪」

「さっさと終わらせるぞ」

少女はカッターナイフを構えて、男はその手に鬼火のような炎を灯した。

 

さあ、戦闘開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保健室にて。

「十分しか経ってないのに、治るの速いねぇ」

「自己回復能力は高いもんですので」

「その力、実験の被険体にされたから手に入れたんだったね?」

「ええ、まあ。その実験の責任者の人は無理やりやらされてましたが」

「その責任者のことは憎いのかい?」

「……まあ。でも、操られてましたし、仕方が無いというか……」

「操られてた?」

「あっ……」




デッドラのフランクさん登場。実は非常口飯田の話でも登場してくれました。
待ってた人、遅くなってすいません!
次は一ヵ月後になるかも……

あと、体育祭終了まで出久のヒーロー名募集してます。感想欄にお気軽に書いてください。非ユーザーでも書けますので。









オマケ

「ニェ?俺様助かった?」
ただ一人。初っ端に食らったオールフォーワンの一撃によって、遠くの山のなかに吹き飛ばされたパピルスは。
「え……誰?」
「おお!ニンゲンがいた!俺様はパピルスだ!君の名前は?」
「ぼ、ぼくは、洸汰(こうた)……」
「そうか!とってもいい名前だな!」
「ほ、ほんとう!?」
「ああ、ウソじゃないぞ!」
「あ、えっと、ありがとう」
「そうだ!どうして洸汰君はこんな山の中にいるんだ?ちなみに俺様は吹っ飛ばされた!」
「ふっとばされた……?あ、ぼくはそうなんして」
「そうか!なら俺様と一緒に親御さんを!」
「ううん。おとうさんとおかあさんは来てないよ」
「ニェ……もしかして一人でか?」
「う、うん……ひとりになりたかったから」
「ここに一人じゃ熊とかの動物に襲われちゃうぞ?俺様と一緒に行こうか!」
「わ、わかった」
洸汰君に出会い、共に下山し始めた。
戸惑いながらもパピルスと共に歩いていく洸汰君。その間に会話していくうち、(パピルス)のテンションに感化されて性格が若干変わってしまうことになるのだがそれはまた別の話。


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嗤う忍者にはクリーチャーきたる。

明けましておめでとうございます。血糊です。タイトルから不謹慎です。

三匹のおっさんというドラマを見ましたがめっちゃ面白かったです。

お昼と轟の昔話
あと謎の忍者と遭遇する出久の話。
そしてまたクロスオーバー追加。
5000字突破したぐだぐだ文章ですが楽しんでくれるとありがたいです。
はい、本編いきます。



油断してボロだしたために興味を引かれたリカバリーガールにより根掘り葉掘り事情を聞かれ、国家機密以外を吐き出すことになった緑谷。

言っちゃいけないことを言わなかっただろうかと食堂に向かう最中でありながら、今にも倒れるのではと誰もが思うような顔でいた。

「あ、おい緑、や・・・どうした、顔色が悪いぞ」

「ああいやヒーロー協会が裏で生物兵器作ってることとか賄賂とか密輸とかに関与してるとかいう情報をリカバリーガールに話さなかったか、な・・・あ」

「・・・なんだって」

「今のは忘れて。お願いだから聞かなかったことにして」

懲りずに油断して緑谷は話しかけてきた轟に国家機密をバラしてしまった。

突然のカミングアウトに轟は耳を疑った。賄賂とか密輸とかよりも、生物兵器という聞きなれない単語にどうしても注意が向いてしまっていた。

ただでさえ悪い顔色をもっと悪くして轟に詰め寄る。

「いや生物兵器ってどういうことだ・・・・・・ん?待てよ・・・?」

「考えないで!さっきの発言忘れて!情報知ってること本部に知られたらシャレにならない!!」

緑谷を実験台にしたのが何者なのか知られたらヒーローの夢がぶっ壊れかねないのである。

何が何でも聞かなかったことにしてもらわねばならない、もしくは麗日と同じく他言無用でいてもらうか・・・

「・・・緑谷」

「なに・・・」

「誰にも言わないから、そのこと話してくれ」

「・・・・・・うん。書類見てもらったほうが早そうだね。それで、轟くんは何か用があったの?」

「ああ、そうだったな。あんまり人には知られたくないから、出来れば人気の無い所でいいか」

「わかった。っと、その前に書類取りに行かせて」

緑谷と轟。珍しい組み合わせなので、周囲の目を引くことになるのだが、なぜか本人たちは気づく素振りすら見せなかった。

 

場所は変わって、裏の道に続く入り口で二人は向かい合っていた。

「それで・・・どうしたの?」

「ああ。こういう話はお前には少し重たい話になるが聞いてもらいたい。なぜかお前には話しておかないといけないって気がしたんだ・・・いや、そこまで深刻な話ってわけじゃないから、構えなくていいぞ」

緑谷が戦闘時と同じように目を細めるのを見て轟はその緊張をほぐそうと微笑を浮かべようとするものの、いかんせんこれから話そうとすることがアレなのでどうしても引きつってしまう。

「・・・無理に笑わなくていいよ。その話、聞かせて」

「っ・・・わかった」

そうして轟が語り始めるのは、彼自身の昔の話。

親であるエンデヴァーはオールマイトを超えるヒーローを作るために金と実績で母親の個性を手に入れるために個性婚をしたこと。

それで複数の子供が生まれて二人の個性が同時に発現したのが自分だということ。

さらには左側の火傷は母親から「お前の左が醜い」と言われ煮え湯をかけられて出来た事も・・・

「それって・・・」

「ああ。酷い話さ。親父のただの自己満足だけで俺は生まれたんだからな・・・」

「マジか・・・にしても。まさかエンデヴァーがDVやってたとは。それで、お父さんとお母さんは離婚したの?」

「え?いやしてないが」

「む・・・ならそれの報復はできるね・・・そういえばウェスカーさんが友人の一人に記者がいるっていってたっけ」

「いやそうじゃないんだ。訴訟起こそうって話じゃない」

「あ、そうなの」

緑谷ってやろうと思えばそういうことも出来るのか・・・と思わず轟は感心してしまう。

地味な見た目して結構凄い人と縁を持ってたりするのだ。緑谷というこの少女は。

「俺は()()()()()は絶対に使わない。右の氷だけでトーナメントを勝ち進む。それだけをお前に知っておいてほしかったんだ」

「・・・・・・そう。あのさ轟くん。ひとつ、気になることがあるんだ」

「気になること?」

「うん。確か轟くんの個性は半冷半燃だったよね。エンデヴァーの個性を使わないって・・・つまりヘルフレイムも使えるの?」

「・・・それがどうした」

「つまり複数の個性を持ってるってこと?」

「ああ。俺の個性は母さんの個性と親父の個性を同時に受け継いでるヤツだから」

「それとヘルフレイムが・・・うーん。なんかおかしい・・・」

轟はそこで緑谷が自分とは認識が少し食い違っていることに気づいた。

「緑谷はなにが言いたいんだ?」

「いやさ、エンデヴァーの個性と轟くんの個性は確かに似てるけど・・・君のその炎は仮に引き継いだものだとしても、もうそれは君自身の力じゃないか。だからエンデヴァーの個性を使わないってことはプラスでヘルフレイムが使えるのかなって。でももう炎が使えるのに同じ炎の個性があるってのが変に感じるんだよ」

「・・・・・・・・・・・・」

緑谷は『半冷半燃=轟焦凍の個性』『ヘルフレイム=エンデヴァーの個性』と考えているということか。

「・・・いや、半燃がヘルフレイムっていうこと?」

今やっと緑谷は気づいたらしい。

「まさか今まで気づかなかったのか」

「・・・ハイ」

なぜ気づかなかったんだと頭を抱える緑谷。それを見ながら、轟はふと気づいた。

 

「(俺の炎と親父の炎は似ていても、違う・・・じゃあ今まで使わなかったのは・・・)」

 

親父の個性じゃなくて、自分の個性だった?

「ごめん。なんか僕、勘違いしてたみたい・・・」

「いや・・・少し一人で考えさせてくれ」

「あ、うん。それじゃこれは渡さなくていいね?」

「渡してくれ」

書類―――クリーチャー・BOWレポートと記されたそれを轟は貰うと、踵を返して会場へと向かっていった。

「・・・もしもこのことをかっちゃんにばらされたら、口封じになるかもね。これ以上洩らすのはご法度だ」

自分への戒めも含めた独り言を、緑谷は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり常に冷静でいるっていうのは大事なことなんだな・・・」

沈んだ面持ちでトボトボと食堂へと足を運ぶ。

そんな緑谷の後ろをういぃぃいぃぃぃん!!!!という異様な音を立てて追う者がいた。

「・・・あのさ。何でついてくるのよ」

「ヒマダカラ!!」

そいつはウィルスだという『T-abyss』とやらに感染したというクリーチャーのようなのだが、なぜかふらっとここに入ってきており、本人曰く暇だから、と緑谷のあとをついてきていた。

「いや見つかったらダメでしょ。あと自我あるんだ?」

「ナゼアルノカハシラン!ミツカッタラクチフウジ」

「それはダメ!!」

そのクリーチャーは一言で言うと、太った水死体みたいなやつだ。多少の衝撃や銃弾による攻撃くらいなら意にも介さず動けそう。宿主であったろう本来の人間の頭部の横には、新しく巨大な口を持つ頭部が出来ている。あと、右腕が巨大なチェーンソーのように変異していて、武装をしている人でも簡単に切り捨てられそうだ。

ちなみに喋ってるのは本来の人間の頭のほうだ。

「口封じはやめて。殺人事件起こすのは忍びない!」

「エー・・・」

「えーじゃない!」

水死体クリーチャーにビシッと指差して吠える緑谷は、まるで悪事を働いた子供を叱る母親にも見える。

はぁ、と大きな溜息をついた時だった。

「・・・・・・?」

「ドーシタ」

「しっ。静かに」

何か・・・聞こえる。

声ではなく、物音だ。水死体クリーチャーのチェーンソー音とは違う、この音は・・・

周りの小さな雑音が邪魔で、よく聞きとれない。

だが見失うな。これは聞き逃すべきではない。必要ない音を意識から追い出せ。極限まで耳を澄ませろ。

目的の音と雑音を切り離せ!!

 

 

 

トン、トン、トン、トン、トン・・・

 

 

 

足音―――上からだ!!

「ナンダー!」

水死体クリーチャーが半ば悲鳴のように叫んだ。

直後、天井のダクトがバン!と蹴り開けられた。

「誰だ!」

「俺は音速のソニック。用件は単刀直入に言おう。緑谷出久という女を殺しに来た」

「僕かよ!」

「む。その()()()()は・・・写真とは少し異なるが、本人なのは間違いな・・・」

「オオッ!メシダァ!」ぎゅぃいいいいいぃいいいいん!!!!

嬉々としてチェーンソーを振り上げ、メェエエエエエデェエエエエエエエエエエ!!!!!と叫びながら音速のソニックと名乗った忍者みたいな人に突進していった。

「うおわああああ!?」

「あ・・・」

なんというか、どうにかなった。

緑谷は水死体クリーチャーの『昼ご飯』を邪魔しないようにささっと立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして食堂に到着。

「あ、デクちゃん戻ってきた。轟君となにかあったの・・・? 」

「まぁね。でもこれは親しい人にも話せない内容だから」

「思いつめないでね? いつでも相談に乗るから」

「ありがとう、お茶子ちゃん・・・」

信じれる人が居るのは正直言ってありがたいものだ。

麗日は特にこちらの事情を知っているから尚更だ。

 

・・・本当に今更だが、あれほっといてもいいのだろうか。

・・・たぶんどうにかなるだろう。

今、音速のソニックが警備員とあの水死体クリーチャーに追い掛け回され、大ピンチに陥っているとは露知らず、緑谷は考えるのをやめた。

 

そこに峰田と上鳴がやってきた。

「おい緑谷に麗日! なんか相澤先生からとある話が来てんぞ!」

「そうそう。相澤先生を怒らせると怖いから従っておいた方がいいぜ」

「先生が・・・?話って何?」

断るとあの先生が怒るほどの話とはなんだろうか。緑谷は興味が湧いた。

途端、緑谷を除いた三人が目を丸くした。

「ちょ、緑谷!?なんだその耳と尻尾は!?」

「なんかドロッチェみたいだな。ていうか単純に可愛いじゃん!」

「デクちゃん何それ!?いつの間に新しい技習得してたの!?」

「へ?」

皆どうした?緑谷は首をかしげた。

「うっ・・・ん?もしかして緑谷、気づいてないのか?」

「何が」

「マジか・・・麗日、手鏡あるか?」

「手鏡は乙女の必需品だからね!ほらデクちゃんこれ見て」

「うん?・・・・・・!?」

元々の耳が無くなり、頭に従来の耳より大きく、丸いまるで鼠のような耳が生えている。

「足元もね」

「まさか・・・・・・いつの間に」

足元を見れば、床に着くぐらい長くて細い、これまた鼠のような尻尾が垂れているのが目に入った。

「ドロッチェはどこ」

「相澤先生のところにさっき向かってたよ」

「ちょっと話さないといけないなこれは」

「あ、そうだった!先生からの伝達!」

「そうだったね。それで、内容は?」

そしてその内容を聞いたのだが・・・

「・・・・・・・・・・・・」

見事に目が死後一日後の魚みたいになっていた。

そのまま緑谷は何も言わないものの、本人はどう思ってるのかは大体察せた。

何があったんですか、先生。

 

 

 

 

 

「ゥ"ゥ"ゥ"・・・(深く考えるな姫さん。それの深読みは無駄だぞ)」

緑谷たちの頭上。ダクト越しに見ている白い何者かが、呻いた。

しかし、先生の思惑について考え込んでいる緑谷へその声が届くことは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからお昼も終わりレクリエーションが始まった。が。

なんということだろう。1-A女子全員がチアガール姿で登場していた。

思わず相澤先生が呆れて「なにしてんだ、あいつら・・・」と呟く。

 

その傍らで、何事かを思いついた顔をしたドロッチェが居た。

「なあ先生。ちょいとあることをしたいんだが、いいか?」ドロッチェが言った。

「あること?」

「CD買ってて正解だったな。えーと、プレーヤーはどこだ」

そう言いながらなぜかマントのなかを漁っている。

「・・・まさか」

「あったあった。先生の予想通りだ。はいポチッとな!」

マントよりも明らかに大きいCDプレーヤーとコードとCDを取り出してきて、電源を繋げ、コードでアンプにつなげる。そしてなんらかのCDをプレーヤーに挿入して、再生ボタンをえいっと押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドロッチェによって流された曲を踊り、疲弊した女子達。特に八百万や葉隠は床に寝転んでしまうほどだった。

「とんだハプニングだけど、その前にトーナメント決めでもしましょうか!」

ミッドナイトがそう言ってくじ引きで決めようとしたのだが、そこで突然尾白とB組の生徒が辞退を申し出た。

なんでも、騎馬戦での出来事をほとんど覚えていないから出る権利がないんだそう。

皆もせっかく見てもらえる機会なんだから思い直せというけれど、プライドが許さないとの事。

それに主審のミッドナイトが「そう言う青臭いのは好み!!」とOKを出したので、二人は辞退となり、その代わりとしてB組の鉄哲徹鐵と塩崎茨が入る事となった。

「それじゃ決めるわよ!」

そして各自、くじを引いた結果、緑谷の一回戦目の対戦相手は心操人使になった。

そして二回戦にも進めれば轟か瀬呂のどちらかに当たる事になったため、緑谷はもし一回戦を勝ち抜いて、瀬呂が負けて轟と戦う事になったら、どう戦おうかと戦術を考えることにしたのだった。

 

こうして緑谷はそのあと、レクリエーションの間に心操対策として尾白にその話を聞いた。

 

 

最初から大波乱になるだろうトーナメント戦。さて、緑谷出久(クリーチャーの姫君)はどうやって掻い潜るのでしょうか?




なんだかんだで轟戦は変異使うらしい。そしてドロッチェの曲はカット。

ワンパンマンをクロスしました。まずは関節のパニックではなく音速のソニックから。
忍者を現代風にした感じの青年です。ちょっと出オチ感ができてしまいました。

ちなみにですが、アンプとはプレーヤーから来る微弱な音声信号を電力で増幅して実用に足るくらいの大きさに調整するものです。要はスピーカーとプレーヤーの仲立ち役。

次回は心操戦。そして出てきちゃイカンやつらが出てきます。

緑谷のヒーローネーム募集中です。非ユーザーも感想欄書けるようになってるのでそこに書いてくださいませ。





オマケ話・緑谷がヴィラン側だったら?





「・・・イズク?」

「どうしたの」

「もうかれこれ三時間くらい触手でなんかやってるけどさ。何する気だ?」

「あはは、決まってるじゃないか。日本の不条理を正すのさ」

「えっ」

「おーおー。面白いこと言い切ったなぁイズク。で、どうする?」

「世界を、リセットしようか」

「・・・どうやって」

「生物災害を起こす。そうだね、まずはヒーローからかな。この触手の分泌液はね、ウィルスを持ってるんだ。感染したらずうっと猛烈な飢餓感に苛まれるんだ。それはもう隣の大切な人だって食べちゃいたい、いや食べちゃうくらいね!早い話、ゾンビになるってこと。最初は誰かプロヒーロー・・・そうだ、Mt.レディからにしようか。あのヒーローは周りの人への配慮が疎かになってるからね。あれで人死んじゃってんだから!あ、でもゾンビになっちゃっても個性使えるのかな?まあ、使えなくてもいいか。どっちにしろウィルスをいろいろごっちゃにして変異させてそんじょそこらのヒーローではどうにもできないようにするしね」

「ワオ。死んだ目で言ってやがる」

「だって、もう僕は死んだも同然でしょう?人とは思えないような体になれるし、誰かのお嫁さんにだってなれないし、ヒーローも・・・ううん。ソレは違うか」

「ヒーローにはなれるはずだぞ」

「そうじゃないんだよドロッチェ。僕が世界をリセットしたいのはね、ヒーローが必要ない世界にしたいから。そうすれば無個性が迫害されることもなくなるし、ヴィランとかもいなくなる。個性というのが忘れ去られた世界にするんだ」

「おいちょっと前から言ってたことまるっきり忘れたのかよ?」

「まっさかぁ。そんなわけないじゃん。君がくれた個性じゃ世界を動かすにはやっぱり弱い。でもね、これ(ウィルス)なら世界を思いっきり揺るがせられる!個性があったって、抗体がないとどうにもならない。感染しちゃえばあっという間にゾンビになって、そのゾンビが近くの人を貪って死体になるかゾンビになる。その繰り返し、簡単にhellが創り上げられるんだ!」

「えげつねぇな。でもよ・・・」

「無個性だけは残すんだよ。見分け方は、サンズなら分かるよね?」

「おう。無個性は力が無い代わりに、ウィルスに強い。だから噛まれて感染しても生き残れる。しかも抗体が出来るから体が強くなる・・・まあ、対抗できるってわけだな」

「マジかよ!オレまっっったく知らんかったぞ!?」

「教えてないからね。ま、簡潔にまとめたら、個性にhellを、無個性にheavenを与えるってコトさ」

「無個性もある意味つらいだろうに・・・」

「言っとくけど君が思ってる以上に無個性の人は沢山居るんだよ。その人たちの為にも迫害社会をぶっ壊す。手っ取り早い方法でしょ?」

「ヒーローが必要ない世界を作る為に世界が滅ぼされかける・・・」

「もちろん日本のみ」

「哀れヒーロー・・・でも、それは、覚悟の上か」

「もちろんさ。あこがれてたオールマイトを殺さなきゃならない・・・母さんもそして、かっちゃんも・・・」

「・・・・・・」

「イズク。この世界を壊すか?」

「うん」

「ほんとうに?」

「うん」

「やってしまったら二度と戻らんぞ。後悔しても知らないぞ?」

「・・・後悔しない!」

「よし。そういうんだったら、俺も出来るだけ手を貸してやる。ただ、その代わり約束しろ」

「地下世界には影響を及ぼすな・・・でしょ?」

「そうだ。異国には行くなよ?」

「言うまでも無いよ」

「そうか。ドロッチェ。お前は?」

「・・・・・・すまない。俺は、お前らの敵だ」

「うん。そういうだろうって分かってた。ごめんね。君の期待を裏切っちゃって」

「全くだ!・・・それをやるんだったら、まずはオレを超えてみろ。話はそれからだ」

「・・・君だけは、殺さない。仲間がいるんでしょ?」

「だから、お前らには殺される気はない。イズク。お前に個性を与えた意味が、なくなったな」

「そのことは本当に申し訳ない。今までの願いが叶うかも知れない力を手に入れちゃったんだ。やるしかないって思ってる・・・」

「オレはその願いが叶えてはいけないやつだって思ってる。イズクのパートナーとして、最初で最後にやれることは・・・それを防ぐ、最後の防波堤だ!!」

「ッ・・・ありがとう、ドロッチェ。でも、僕はそれを決壊させる」

「やれるならやってみろ、ミドリヤイズクッ!」





ぶつかる二人の『正義』。





「・・・オレの負けか・・・・・・そんな顔してちゃあ、不条理なんて正せねえぞ。やるからには、前を向いてやり遂げろ」

「全てが終わったら、僕も死ぬよ」

「なぜだ?」

「僕も『個性』をもってるからさ。全てを平等にするために。特別はなしだ」

「・・・そうか・・・最後に、ちょっとした疑問があるんだ」

「なあに?」

「さっき言った誰かのお嫁さんになれない・・・それは、()なんだ?」

「・・・それ、分かった上で言ってるね?」

「やっぱりか」

一人のエゴで、世界はバイオハザードの恐怖に陥れられることとなる。


fin.



要望あれば続編も書く予定。


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