ラブライブ!Ω/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!!  (la55)
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邂逅編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第1話


ラブライブ!Ω/UC 外伝 ラブライブ!ISLAND STARS!! プロローグ

 ラブライブ!-スクールアイドルの甲子園。スクールアイドルとして青春を燃やす高校生たちの目指すべき頂点。それを決めるのがラブライブ!あるものは勝者という名の頂点に立つ。ただし、頂点に立つものは1つしかない。それ以外は敗者となる。
 では、勝者を決める要素は何なのか。努力?勝利?それともコネ?否。勝者を決める要素は別にある。それは意外なものかもしれない。はたして、彼女たちはそれに気づくことができるのだろうか。それを見届けるのはあなたかもしれない。



 

第1話 出会いとお酒と九龍献奉

 

カゥ カゥ カゥ カゥ

 外からカモメの鳴き声が聞こえてくる。フェリーのデッキではある女性がいた。

「あともう少しで着くんだね。私の第2幕はもうすぐ始まるんだね」

と、雪穂、高坂雪穂ははみかみながら言った。高坂雪穂は教員免許を持つ教師の卵である。これからあるところで教師として赴任するためフェリーに乗っていた。

「でも、これでも大学を卒業してから1年間はとても大変だったんだよ。でも、そのおかげで私は一番輝ける場所に降り立つことができるんだよ」

と、雪穂はつい最近のことを思い返していた。雪穂は熱血系教師を数多く輩出している日本橋女子大学教育学部を卒業したあと、1年間大学の系列校にて研修を受けてきた。そこでできる限り多くの教科の免許を取得することができた。

 そんな彼女のもとにある知らせが届いた。ぜひうちの高校で先生をしてくれないか。これを見た雪穂、二つ返事で、

「うん、私、この高校で教鞭をとる!!」

と、快諾してしまった。まったくあとさき考えていない雪穂だった。

それでも、雪穂にとって本当に輝ける場所になると思っていた。卒業してから1年間は研修中の身だったので、肩身のせまい気持ちだった。だが、これからは1人前の先生として多くの教え子を飛び立たせることができる。そう、雪穂にとってようやく1人前の社会人として輝けると思っているのだ。

 雪穂はフェリーのデッキで少しくつろいだ後、自分の客室に戻ろうとしていた。そんなとき。

「あそこはどう工事すべきだろうか」

と、2人の男性の話し声が聞こえてきた。雪穂は2人の男性をみつめると、体つきががっしりしていることがわかった。

「あれ、お嬢ちゃん。ここで何しているんだい」

と、2人の男性のうちの1人が雪穂に気づき、雪穂に声をかけてきた。

「いや~、ちょっと気になって~」

と雪穂、ちょっと戸惑うも、男性は、

「そうか。まっ、気になるのも仕方がない。だって、このフェリーに俺たちは不釣合いだもんな」

と言うと、雪穂、

「いや、そうでもないですけど…」

と遠慮そうに言う。すると、男性は、

「まっ、気にしないでくれ。と言っても、このフェリーに乗っているほとんどの客は俺たちと同じ工事関係者だからな」

と、豪快そうに言うと、雪穂、

「工事関係者?」

と、疑問に思う。これを見た男性は、

「まっ、島に着けば何もかもわかるってことだよ。それじゃ、じゃ~な」

と言って、雪穂のもとを去っていた。

 雪穂、

「工事関係者ばかり?それ、どういうこと?」

と、疑問に感じるも、

「まっ、いいか」

と、逆に気にすることもなく自分の客室に戻っていった。こうして、雪穂は何も気にすることもなく島に到着するまで、船旅をエンジョイするのであった。

 

「ご乗船ありがとうございました。まもなく九龍島に到着します」

「う~ん、あともう少しなのに…」

雪穂は少しの間寝ていたらしく、目をこすりながら目覚めようとしていた。

「まもなく九龍島に…」

「えっ、もうすぐ到着なの!!ちょっと待って~」

もうすぐ目的地に到着であることを知った雪穂は急いで降りる準備に取り掛かるも、

「到着まで時間がないよ~、誰か助けて~」

と、混乱していた。もちろん誰も助けにくるわけではない。

 そして、数分後、

ド~ン

と、フェリーが目的地である九龍島の岸壁に接岸する音が聞こえてきた。

「うわ~、到着したよ~。まだ降りる準備できていたいのに~」

と、雪穂が嘆く声がすると、すぐに、

「どうしましたか、お客様!!」

と、このフェリーの女性船員らしき人が雪穂の客室に入ってきた。

「あっ、助かった。ちょっと降りる準備を手伝って」

と、雪穂が泣きながら言うと、女性船員はすぐに雪穂が散らかしている化粧道具などを袋に入れるなどの手伝いをしていた。

 こうして、5分後には降りる準備ができると、雪穂はすぐに廊下に出て、車両甲板に向かおうとする。その際、雪穂は女性船員に向かって、

「どの方かわかりませんが、ありがとうございます」

と、お礼を言うと、女性船員も、

「いやあ、どうも」

と、軽く会釈をすると、雪穂は車両甲板に向かって走り出した。

 雪穂が走り抜けたあと、女性船員はすぐに雪穂の客室の掃除に入る。ものの2分で客室は綺麗になる。

「これで綺麗になった。それでは、次の部屋に行きますか」

と、女性船員は次の客室に移動した。その際、

「あれが私たちの先生か。なんか楽しいことになるかも」

と小声で言った。

 その女性船員に対して近づく人が1人。それは…。

「あっ、今日も頑張っているね。もう少しだからね、給与日まで」

と。同じ船員だった。すぐに女性船員は、

「いや~、なんかこのお仕事、楽しくて。やっぱ海はいいですね」

と言うと、その船員は、

「まっ、頑張れよ、ひろ子ちゃん」

と言えば、どっかに移動していった。

 

 雪穂は自分の車をすぐにフェリーから岸壁に下ろした。そんなとき、ある人が雪穂の車に寄ってきた。

「お~、ようやく到着したか。待ちわびたぞい」

「あれ、あなたが町長ですか?」

と、雪穂は驚きつつ車の窓を開けた。そう、近づいてきたのはこの町の町長だった。

「そうだ、この島を中心に形成する町、九龍町の天海町長である。わざわざ遠いところからきてくれたな。え~と、たしか、東京の秋ヶ原だったかな」

と、町長が言うと、つかさず雪穂、

「いやいや、秋葉原ですよ」

と、ツッコむ。すると、町長、

「そうだった、そうだった。秋葉原だった。たしか、萌えという亡霊がばっこはびこっている…」

と言えば、雪穂、

「秋葉原に亡霊は出ません!!」

と、つかさずツッコミをいれる。

 そんな町長だったがすぐに真面目モードにはいる。

「ところで、早速なのだが、実はお願いしたいことがある」

と、町長が真面目に言うと、雪穂、

「ゴクリ」

と、ツバを飲み込む。町長、それを見て、

「実は今日、我が家で歓迎会があるからきてほしいの☆」

と、おちゃめに、いや、最後に☆マークすらだして言った。

「どて~」

と、雪穂、大いにこける。真面目モードからおちゃめモードになる町長。これにはついていけない、雪穂はそう思った。

 そんな町長からすぐに次のお願いがでる。

「その際だが、車で来ないこと。お酒もでるからな」

「お酒…」

これには雪穂は絶句した。実は雪穂はお酒があまり飲めないのだった。

「それでは今夜、家で待っているからね」

町長はこう言い残すと、すごいスピードで去っていった。

「お酒…」

雪穂はただただ呆然としていた。

 

 そして、夜になった。歩きで町長の家に着いた雪穂は驚いていた。

「なんていう広さなんだ」

町長の家は東京の我が家10個分ほどの広さがあった。平屋建てであったが、まるで沖縄の昔の建物をいくつもつなげたような家造りであった。

 だが、雪穂が驚いたのはそれだけではなかった。

「なんちゅう広さなんだ…」

雪穂が絶句した光景、それは何十畳もの広さをもつ大広間、に何十人もの島のお偉いさんがぎっしりと座っていた。それだけではない。机の上にはビールが何十本、焼酎も何十本、鯛のお頭が十匹以上…。まるで町が一大イベントを開催しているがごとくだった。雪穂は開いた口が塞がなかった。そこに町長が近づく。

「これはあなたがここに赴任することを祝うための会ですぞ」

 これを聞いた雪穂、

「すべて私のために…」

と言えば、町長、

「そうですぞ。子どもは島の宝。それを教える先生は子どもにとって親も同然なんですぞ」

と答える。雪穂にとってただ驚くしかなかった。ただ呆然と立っている雪穂に対し、町長、

「さっ、ここにずっと立っていないで、こちらに座ってください」

と、雪穂を強引に大広間の上座へと移動させ座らせた。

 上座に座った雪穂を待っていたのは挨拶の嵐だった。

「まずは町長の天海である。以後お見知りおきを」

「漁業組合長の川畑です」

人が次々へと変わる。それに雪穂は混乱になりつつも対応していった。そして、最後にちょっと変わった人たちが挨拶にきた。

「あれ、これってちょっとかわった法被ですね」

雪穂が言った法被とはうしろに魚の絵に大漁と書かれたものだった。

「どうだい。驚いただろう」

その法被を着ていた男性はこう言うと、すぐに挨拶をした。

「俺はこの町ではハッピーと呼ばれているものだ。なぜかって。それは法被とハッピーをかけているのだからな」

これを聞いた雪穂、すこしこわばる。

 だが、個性的な人物はまだいた。

「ハッピーよ。これぐらいにしておけ。それより、俺たちの方が一番いいんだからな」

そう言った男はなぜか特攻服を着ていた。ただ、後ろには鯛の絵とこれまた大漁と書かれた大きな文字が刺繍されていた。

「俺たちは泣いた子すらも黙らせる、特攻野郎Sチームだ。よろしく~」

特攻服を着た男たちはこう言うと、雪穂はただただ唖然とするしかなかった。

 だが、これには町長が切れた。

「お前ら。だいたいこんな祝いの席でふざけたことをするな。これではご先祖様に大変失礼だろうが。だから今の若いものは…。まったく」

これを聞いた雪穂に対しハッピーが近づくと、

「町長をはじめ、島の多くの人たちは古い考えを持つ人が多いんだ。俺たちみたいな新しい考えを持つものは少ないんだ。でも、誤解しないでくれ。古い考え、新しい考え、どちらとも悪いわけじゃない。どちらの考えも一長一短。それをどう保つかが重要だと思えるんだけどね」

そして、ハッピーはこうも言った。

「特攻野郎Sチームは特攻服を着ているけど、これでも漁業としては右にでるものがいない実力者だ。そして、町の未来についても考えている。とてもいい人だよ」

これを聞いた雪穂、少しほっとした。

 

 なにはともあれ、長い挨拶は終わった。ほっとする雪穂。すると、町長はある人を呼んだ。

「星子や星子。例のやつやってくれ」

「はい、おじいさま」

呼ばれたのは高校生くらいの若い少女だった。星子と名乗る少女はすぐに三味線のような楽器を持ち、弾き始めた。

タタター タタタタータ タタ

「あれっ?これって島唄?」

雪穂が言うと、すぐに町長が言った。

「そうだ。これは島唄である」

すると、雪穂、すぐに、

「でも、島唄って沖縄の…」

と言うと、町長はすぐに言う。

「たしかに島唄は沖縄という人がほとんどだ。が、実はここ、奄美にも島唄が数多く残っている。本土の人たちはそれを知らないだけなのだ」

町長の話は続く。

「そして、星子が持っている楽器は三線(さんしん)という。三線は沖縄の楽器ともいわれているが、ここ、奄美にもある。もっとも、沖縄のものとは違うけどな」

星子の三線の音色は雪穂の心を優しくときほぐすような気持ちにさせるようなものだった。ただ聞き入る雪穂。

 だが、この時間も長く続かなかった。三線を引き終わると、雪穂ははっとした。強引に現実に引き戻ったようだった。

「すご~い」

三線の演奏に雪穂は感動した。だが、星子と言われた少女はすぐさま奥へと引っ込んでしまった。

これに雪穂はちょっとがっかりしていたとき、

「ところで、例のやつ、やりましょうか」

と、副町長が言うと、町長も、

「そうだな。それでは祝い事恒例の九龍献奉を始めようか」

と言うと、

「九龍献奉!?」

と、雪穂は驚いている。すると、町長がつかさず、

「九龍献奉とは、1人の親が自己紹介すると、お酒を飲み干し、隣の人に渡す。隣の人も自己紹介して、お酒を飲み干し、次の人にまわす。これを繰り返す歓迎儀式だ」

と言うと、すぐに、

「まずは私から。私は天海…」

と、自己紹介すると、すぐに杯の酒を飲み干し、隣にいる雪穂に渡した。驚いた雪穂だったが、すぐに「わ、私は…、高坂雪穂…、です」と言って、杯の酒をいっきに飲み干した。それをすぐに隣の副町長に渡した。ほっとする雪穂。これでもうお酒を飲まなくてすむ。

が、これは悪夢の序曲でしかなかった。すぐに1周して町長のもとに戻った杯。だが、すぐに副町長が手をあげると、

「次の親は私が行う」

と、すぐに杯の酒を飲み干すと、今度は雪穂のもとに杯を渡した。

「えっ、まだ飲むの~」

雪穂は驚いていたが、隣の町長は、

「これが九龍献奉じゃ。お祝いの杯をどんどんまわしていく。それを続けるのがこの九龍献奉のいいところじゃ」

これを聞いた雪穂、

「もうギブアップ」

と、倒れてしまった。

「高坂殿、高坂殿…」

町長の声がだんだん聞こえてこなくなった。

(注意!!:モデルとなったところにはこういった文化がありますが、実際はまわってくる杯の酒を飲むことを断ることができます。お酒をあまり飲み過ぎないようにお願いします。あと、飲酒運転は絶対させない、許さない)

 

チュンチュン

朝方、すずめが鳴く音が聞こえてくるとき、

「うるさい、頭がズキズキする」

と、雪穂が頭を抱えながら起きると、

「おはようございます、高坂先生!!」

「わっ」

そこには大きな少女が立っていた。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! OP 「アイランドスターズ!!」

 

すすみつづける あしたの方へ

 

明日へとすすむ わたしたち

帆をあげて   前進していく

わたしたちは  いつでもどこでも

永遠の     チャレンジャー

 

たとえ迷って  しまっても

心の中に    地図は持っている

だからこそ   前にすすむ

私たちは    絶対に

あきらめるものか!!

 

絶対に見つかる  私たちの宝

それは(それは) 私たちの(私たちの)

キズナという   1つだけの宝

どんなことでも  あきらない

私たちの宝は   永遠に光つづける

 

(アイランドスターズ!!)

 

未来へとすすむ 私たち

あの星に    むかってすすむさ

私たちは    どんなになっても

あきらめは   しないのさ

 

たとえくじけて しまっても

心の中は    いつもあたたかい

あきらめず   前にすすむ

私たちは    絶対に

突破してみせる!!

 

絶対にみつかる  私たちの夢

それは(それは) 私たちの(私たちの)

みらいという   1つだけの夢

どんなときでも  つかまえるさ

私たちの夢は   永遠に見つめ続ける

 

(アイランドスターズ!!)

 

私たちは9人で1つ

たとえ1人欠けてしまっては

完成しない永遠のパズル

だからこそ9人で1つ

いつでもどこでもどんなときでも

つなぎ続ける

キズナという固い結びで!!

 

(アイランドスターズ!!)

 

絶対に見つかる  私たちの宝

それは(それは) 私たちの(私たちの)

キズナという   1つだけの宝

どんなことでも  あきらない

私たちの宝は   永遠に光つづける

 

私たちの心は 永遠に光りつづける

 

次回

 

民宿と高校と転校生

 

 




あとがき

 みなさん、おひさしぶりです。La55です。単作としては7月に投稿しましたが、連作としては半年振りの投稿となります。この作品は過去に投稿した「ラブライブΩ」「ラブライブUC」の外伝作品になるのですが、この2作品の純粋な続編でもあります。なぜ外伝なのか?それはこれまでの作品の主人公が雪穂なのですが、この作品は雪穂の教え子である金城九という九龍高校の2年生が主人公となります。本格的な登場は第2話からなのですが、雪穂と九、そして、それを取り巻く仲間たちの物語となります。また、舞台も鹿児島県のある離島、九龍島となっております。この島を舞台に九たちの活躍が始まります。

 連作としては半年ぶりの投稿、これには理由、というのはありません。ごめんなさい。ただ、いろいろとほかのことで忙しく、「ラブライブΩ/UC」の最後の投稿から3ヶ月はプロットすらできず。あぁ。本当にすまない。そして、7月に単作の投稿をしたのですが、それは6月のオーガストコンサートに触発されて、2週間かけて超特急で書き上げたもの。そのあともなにもできず。本当にごめんなさい。でも、これではいけないと思い、7月後半でこの作品のプロットと人物設定を超特急で仕上げ、それをもとに8月9月で小説全編と歌全部を書き上げました。仕事が休みの日すらも書き上げる日々。とても大変でした。本当に待たせてごめんなさい。でも、全編すでに書き上げました。パソコンへの打ち込みも進んでおります。あとはなにも不吉なことがなければ毎週投稿できると思います。それまでお待ちください。

 で、今回は新しい試みをしております。
まず、1話の長さをこれまでの2/3ほどに短くしました。これまでは1話あたり1万字をこえることが多く、あまり読みやすいものではありませんでした。そこで、1話あたりの最適と言える5千~6千字を目標に短めにしました。そのかわり、話数が多くなってしまいました。これについてはごめんなさい。目安としてはこれまでの作品の2話分がこの作品では3話分に相当します。この小説は全21話となりますが、長さとしては「ラブライブΩ」本編と同じ長さになると思います。話数は増えますが、その分1回に読む分量が少なくなるので、気軽に読めるかと思います。お気軽に読んでくれたら幸いです。
さらに、これはこちらの都合という意味もあるのですが、これまで週1回、金曜に投稿していたのですが、これを週2回、月曜と金曜に投稿する予定です。これは話数が多いことも理由の一つなのですが、できれば今年中に全編を投稿したいと思っているため、週2回の投稿にしました。(あと、ラブライブ!サンシャイン!!の映画が来年の1/4から公開されることも少なからず影響しているかも?)間隔としては短めですが、できるだけ週2回の投稿に心がけるのでよろしくお願いします。ただし、全21話かつ週2回の投稿だと、あとがきをつくるのが大変なので、あとがきは今回を除いて3話に1回の割合で出すと思います。ご了承ください。(なぜ3話に1回の割合なのかというと、だいたい3話分で1章分のお話となっているためです)
その他、人物設定に関してはある試みをしているなどしておりますが、それはおいおい話すと思います。それまでお待ちください。(しなかったらごめんなさい)

 というわけで、ラブライブ!二次創作小説「ラブライブ!アイランドスターズ!!」ですが、プロローグ+全21回+いつものあれ、ピクシブでだいたい23回、ハーメルンはプロローグが文字数不足で投稿できないため、22回の投稿を予定しております。なお、投稿予定時間はいつもの通り、17時25分前後になります。週2回で投稿すると、大晦日の日に最終話を投稿する予定になります。短いお付き合いになると思いますが、できるかぎり投稿したいと思います。お楽しみにお待ちください。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。


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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第2話

第2話 民宿と高校と転校生

 

「おはようございます、高坂先生!!」

「わっ」

雪穂は驚いていた。そこには1人の大きな少女が立っていた。

「あなたは誰?」

雪穂が聞くと、その大きな少女は答えた。

「私は金城九。九ちゃんって呼んでね」

 

(OP 1番のみ)

 

「金城…、九…、ちゃん?どうしてここにいるの?」

と、雪穂が聞くと、すぐに九は答えた。

「私は高坂先生を起こしにきたの。もうすぐ朝ごはんだって」

「朝ごはん!?って、ここはどこ?」

と、雪穂は驚き続ける。これまた九、すぐに答える。

「ここはこれから高坂先生がお世話になる民宿「九龍荘」だよ。と言っても、ホテルや民宿といわれる類で、島で唯一の宿泊施設なんだけどね」

と、少し怒りながら答える。

 雪穂はすぐに窓を開ける。そこにはさとうきび畑が一面に広がっていた。民宿九龍荘はそんなさとうきび畑と集落の境に建っていた。なんでもさとうきび畑を一望できるので有名であると町のホームページに載っている。

雪穂が一面のさとうきび畑をみているまもなく、九のお母さんが、

「高坂さん、朝ごはん、できているよ~」

と、呼びにくると、雪穂、

「は、はい」

と、すぐにわれに返り、食卓に移動する。ただ、これには九、

「なんで私よりお母さんの声に反応するのかな」

と、少し怒り顔になっていた。

 

 雪穂は朝食をすませると、自分の部屋になる客室に移動した。雪穂は、民宿九龍荘の使われていない客室に住むことになっていた。その方が衣食住困らなくてすむから。九龍島は奄美に浮かぶ島の1つであり、コンビニなどがあるわけではない。おいそれと簡単に物を買いに行くことができないのである。そのため、民宿に住むことで衣食住困らないようにしたのである。

 本土から持ってきたものを片付ける雪穂。客室とはいえ、長期滞在者用の客室だったため、タンスやクローゼットは置いてあった。これから長い間ここに住む雪穂にとって1つの城を持ったような感覚だった。

 だが、その感覚も1人の侵入者によって崩されてしまった。

「先生、はいりますよ」

と、ノックせずに1人の少女が入ってきた。

「金城さん、どうしてここに」

雪穂がきまりながらに言うと、九はすぐに、

「先生、九ちゃんって呼んでって何度も言っているでしょ」

と、お願いを言う。

 すると、すぐに九は雪穂に迫ってこう言った。

「ところで、本土ってどういうところなの?」

この質問に雪穂、

「え~と、え~と」

と、言葉に窮すると、続けざまに、

「本土って鉄でできた線路を走る車があるけど、本当なの?」

と、九は雪穂に向かって次々に質問をぶつける。これには雪穂、

「え~と、え~と、え~と、え~と」

と、頭が混乱してきた。頭がくらくらする。もう倒れそうになる。いっそう倒れてしまおうか。そんなふうに雪穂が思った瞬間、

「九ちゃん、もうこれ以上先生を困らせるのはやめようよ」

と、質問攻めの九を抑えようとする少女が…。

「あれ、あれれ…」

と、雪穂はすぐに敷いていたふとんに倒れこむとそのまま、

ぐーぐー

と、寝てしまった。九の質問攻めに頭がパンクしたみたいだった。

「九ちゃんの悪い癖。少しは直しなさいよ」

と、少女の言葉に九、

「ごめんなさい、ひろ子ちゃん」

と、謝っていた。ひろ子と呼ばれる少女は、

「もう、まったく」

と、落胆していた。

 

 といった感じで雪穂は九の襲撃をくらいつつも自分の赴任する高校などについていろいろ調べていた。

 まず、九龍町についてだが、人口は1000人ほどのさとうきびと漁業、観光を主産業とする町である。九龍島を中心にいくつもの島で形成された町でもある。その中心となる島が九龍島で、人口は約500人。町の人口の半分くらいが住んでいる計算となっている。そんな町の悩み事が、若年者が少ないということだった。50年前、島には小中学校しかなく、高校に行くには町を出ないといけなかった。そういうことで、地元にも高校をというわけでできたのが町立九龍高校であった。ただ、最近は人口そのものが減少しているため、高校の生徒数も減少傾向である。と。

「ふう、こんなところか」

と、雪穂は高校の職員室で座って町史の本を読んでいた。けど、職員室としてはとても小さいものだった。あるのは机が6つくらいだった。

「まさか、こんなに小さいとはね。だから私みたいな全教科の免許を取得したが、若くて経験のない教師が呼ばれたというわけね」

この言葉はこの高校が持つ真実の1つを語っているのかもしれない。

 

 そして、4月。始業式の日を迎えた。始業式にでた雪穂は愕然した。けど、わかっていた。それでも現実をみると愕然するしかなかった。

 始業式が終わり、教室へと移動した雪穂。だが、その現実は雪穂を再び愕然とするには間違いなかった。

「私は高坂雪穂と言います。全教科を教えます。よろしくお願いします」

始業式でもしたが、再び雪穂は学生に向かって新任の挨拶をした。

 すると、生徒会長らしき生徒が席を立ち、

「それでは、みなさんの自己紹介をお願いします。まず、私から」

と言うと、生徒会長らしき学生から自己紹介を始めた。

「私は生徒会長で3年の天海星子といいます。以後お見知りおきを」

と言うと、雪穂は思い出したように、

「あっ、私の歓迎会で三線を弾いていた少女だ」

と言った。これを聞いた星子の隣にいた生徒が、

「そうだね。星子は三線だけでなく、花や琴までできる趣味が多い女だもんね」

と言うと、星子、

「それは恥ずかしいから、言うのはやめなさい」

と、恥ずかしそうに答えた。

 そして、星子の隣にいる生徒が自己紹介を始める。

「で、私が富永氷。こう見えても3年生で星子の幼馴染。親は副町長していま~す。ちなみに星子のおじいちゃんが町長していま~す」

と、フランクに答えていた。

「星子さんに氷さんね。で、あと3年は…」

と雪穂が言うと、氷の隣にいたまるで白衣を着ているような、いや、白衣を着ている生徒が手をあげ、自己紹介を始める。

「私は天王春、3年生です。こう見えても理系が得意なんだけど、みんなからはなぜかお母さんって言われてしまうの。どうしてかな?」

と、にっこりと笑いながら答える。その微笑みに雪穂、「ああ、お母さんって言われても仕方がないね」と思うほどだった。

「で、今度は1年ね」

と、雪穂が言うと、すぐに元気そうだが生徒の中で一番小さい生徒が手をあげ、自己紹介を始めた。

「私は池田小明、小明と書いてあかりって読むの。運動神経抜群。すごいでしょ」

と、突然上にジャンプしようとするも、

「小明ちゃん、ジャンプするとスカートがめくれてパンツが見えるからやめようね」

と、隣にいた生徒に注意を受けると、小明、

「大丈夫だよ。だってここは女性しかいないし、めくれてもスパッツはいているから、見えても大丈夫!!」

と、何も心配しないように答えた。

 そんな小明の隣にいる、何か不思議系の顔をしている生徒が突然自己紹介を始めた。

「私は林めい、1年生。不思議そうに見えて、実は芯の強い子、頑張る子」

と言うと、いきなり腕立て伏せを始める。すると、今度も小明の隣にいた生徒が、

「めいちゃん、やめて。パンツ見えちゃうから」

と注意する。めいは、

「大丈夫。私も下に体操服、着て…、いなかった」

と言うと、一同こけてしまう。

「で、小明ちゃんとめいちゃんを注意しようとしたのは…」

と、雪穂が言うと、その生徒が突然背をただして自己紹介を始めた。

「私は川畑たい子と申します。親は漁協で会長をしています。このたびは小明とめいが迷惑をおかして申し訳ございません」

と、謝ってしまう。これには雪穂、

「いや、大丈夫だから、顔をあげて」

と、たい子に言うと、たい子、

「本当にごめんなさい」

と、また謝っていた。

 そして、雪穂は2年生に顔を向けると、

「はいは~い。私は金城九。これでも2年生だよ。先生、どうかな」

と、九は元気よく言うと、雪穂は、

「はいはい。もうわかっているから。では、次の人」

と言うと、九、

「無視しないで」

と、怒りながら言う。

 すると、九の隣にいた生徒が九をあやめる。

「九ちゃん、どうどう。静かにしようね」

と言うと、九、

「うん、わかった」

と、突然静かになる。九が静かになったところで、その生徒が自己紹介を始めた。

「私の名前は水木ひろ子。九とは幼馴染です」

 すると、雪穂、突然、

「あれ、どこかで会わなかったけ。たしか…」

と、驚いたように言うと、ひろ子、

「そうですね。たしか一度お会いしましたね。たしか、フェリーの中で…」

と言うと、雪穂、

「そうだった。あのときは助かったよ。ありがとう」

と言うと、ひろ子も、

「いやいや。困っている人を助けるのは当たり前ですから」

と謙遜しつつ言うと、九、

「またバイトしていたでしょ。バイトはしちゃダメなんだよ」

と言うと、ひろ子、

「だって欲しかったものがあるんだからね」

と、おどけて答えていた。

 しかし、雪穂は気づいていた。九以外少し暗い顔をしていることを。それでもそれ以上に雪穂は心配していた。実はこの高校の生徒はこの8人しかいないことを。そのため、先生の数も雪穂を除くと、校長(兼教頭兼事務局長兼…)と養護教師、用務員しかいないのだ。

「これで高校としてよく成り立っているね」

と、雪穂の心の中で思っていた。だが、この心配は別の意味で高校に危機をもたらすことになる。

 8人の自己紹介がおわり、教科書の配布を始めようとしていたそのとき、突然大きな音が聞こえてきた。

「なんの音?」

と、雪穂が言って校庭に出てみると、1つの大きなヘリが降りてきた。そのヘリは校庭に降りるなり、1人の少女が降りてきた。

 そして、その少女は降りてくるなり、こう言い出した。

「この高校は来年の3月で閉校となります」

 

続く

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! ED 「夢ってなに?」

 

(ドリーミング イン ザ スカイ)

 

夢 だれもがもっている

夢 だれもがあこがれている

すべての人が 必ず叶える

夢にはそんな 力がある

 

けれど夢って 何だろう?

夢はいろいろ あるけれど

ただ1つだけ いえる

それは(それは) はてしない

パワーが ある

 

夢を必ず(必ず)叶える(叶える)

私たちには そんな力がある

夢をリンクして 1つの大きな(大きな)

でっかい夢を つくろう

(ドリーミング イン ザ スカイ)

 

夢 だれもが知っている

夢 だれもが気がついている

すべてのものが 必ずつながる

夢にはそんな 力がある

 

けれど夢って 何だろう?

人にはいろいろ いるけれど

ただかならず いえる

それは(それは) つながれば

大きく なる!!

 

夢は大きく(大きく)はばたく(はばたく)

私たちには そんな力がある

夢を信じあい 1つにつないで(つないで)

大きなつばさ つくろう

 

夢ははてしない なぞの1つ

でもかならず 1ついえる

人しかない無尽のパワー

私たちは夢をかなえて

大きな(大きな)ものをつくろう

 

夢を必ず(必ず)叶える(叶える)

私たちには そんな力がある

夢をリンクして 1つの大きな(大きな)

でっかい夢を つくろう

 

(さらに)

 

夢は大きく(大きく)はばたく(はばたく)

私たちには そんな力がある

夢を信じあい 1つにつないで(つないで)

大きなつばさ つくろう

 

(ドリーミング イン ザ スカイ)

 

私たちの大きなつばさ 大きくはばたく

 

次回 閉校とデモとイベント

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第3話

第3話 閉校とデモとイベント

 

 いきなりヘリが校庭に降りてきた。そこからあらわれた少女はいきなり言いだした。

「この高校は来年の3月で閉校となります」

これを聞いた雪穂は言った。

「あなたは誰だの?」

すると少女はこう答えた。

「私は土居多恵。この町を変革する者!!」

 

(OP 1番のみ)

 

 土居多恵はヘリを降りてくるなりすぐに体育館へと移動し、ステージへとあがった。そこには町長をはじめ、町のお偉いさんが並んでいた。

「お父さん!!」

たい子は父親である漁協の組合長を見つけるなり言う。

「たい子、静かにしなさい。今から発表がある」

 すると、星子が来るなり、

「ほら、並びなさい」

と、生徒たちを並ばせようとしていた。

 そして、生徒が並び終わるなり、多恵は言葉を発した。

「え~、忙しい中、集まってもらって申し訳ありません。でも、ここで発表させていただきます」

雪穂は校長と共に並んでいたが、まわりとも緊張していた。なかにはつばを飲み込む人もいた。多恵はそれを見るなり、重い口を開いた。

「私はここに宣言する。来年春をもってこの高校、九龍高校とこの町、九龍町を閉校、閉町させてもらう」

 これを聞いた雪穂はわけがわからず頭の中がぐちゃぐちゃとなった。

「私の未来はどうなるの?このままでいいの?閉校だけでなく閉町ってなに?」

 だが、多恵の話は続いた。

「そして、この地に大型リゾートを開発する。この島を中心としたリゾート開発。この地は私と私の父が経営する土居建設の手で再びよみがえるだろう」

これを聞いた雪穂は大型リゾート開発と聞いてびっくりした、この島が大型リゾート地に変わるということに。

 

 多恵の発表のあと、雪穂は生徒会長の星子に、

「いったいどういうことなの?」

と聞いた。星子のおじいさんは町長だからだった。星子は端的に説明を始めた。

「実はこの町だけでなく、この島は人口がどんどん減少している。特に、若者の減少率が高い。それを打開するために町長であるおじいさんは仕方なく土居建設の社長、土居建設とこの町でのリゾート開発をする契約を結んだの。リゾート開発すれば若い人を呼び寄せることもできるからね」

そして、星子は続けてこう言った。

「ただ、リゾート開発するためには広い土地が必要なの。ゴルフ場なども作らないといけないからね。けど、それをするための土地はこの島では限られているからね。そのため、この高校は来年春に閉校して取り潰すことになっているの」

雪穂はこれを聞いてふと思って言った。

「ところで、私の将来ってどうなるの?」

これにも星子は答えてくれた。

「おじいちゃ…、んん、町長は先生たちについてはほかの高校にも斡旋してくれる予定だとしているわ。特に高坂先生は全教科の免許持っているから、どの高校でも口から手が出るくらい欲しい人材だと思うわ」

これを聞いた雪穂はほっとした。

 

 が、多恵の発表により、静かだった町は大論争へと突入した。

「リゾート開発はいりません。この町から工事関係者は消えてください」

と言うメガホンからの声が毎日聞こえるようになった。そう、リゾート開発に反対する町民が町の役所めがけて行進しているのだ。

 だが、すんなりと通してくれないのが世の定めである。

「リゾート開発は町の発展のために必要だ」

と、これまたリゾート開発に賛成する町民もまた役所めがけて行進していた。

 賛成派と反対派の町民はそれぞれデモ隊を組織し、毎日役所の前の道で対立を繰り返していた。それでもまだ平和なほうかもしれない。なにせ言葉の応酬ぐらいしかないのだから。暴力沙汰にならないだけましなのかもしれない。

 

 それでも、ここ九龍高校はいつもの通り通常運転、にはいかなかった。土居多恵はリゾート開発の発表会のときに2つの発表を別にしていた。1つはこのリゾート開発の責任者としてこの島に乗り込んできたことだった。なぜなら、土居多恵の父親はこの島のリゾート開発をする会社土居建設の社長、土居建造だからであった。

 そして、もう1つは、

「私土居多恵はこの高校に転校します!!」

この言葉がこの冷たい雰囲気を作り出す元凶となってしまった。

「多恵さん、ちょっと一緒に遊ぼうよ」

と、九が多恵に声をかけても、

「ふんっ」

と、無視してどっかにいくことが多かった。

「なんとかならないかな」

と、星子も多恵の行動に心配することが多くなった。

 だが、多恵をめぐる動きはほかにもあった。

「私、あんな子嫌い。みんなと合わせようとしないから」

めいがこう言うと、小明も、

「私もなんか陰気くさいからきらい」

と言う。実は九と星子以外の生徒からは多恵を忌み嫌う言葉がでてきていた。多恵はそれについてはただ無視するようになった。

 そして、ついに昼食時、お弁当をひろげるときは多恵1人だけ、九と星子以外の7人で食事をする事態となった。もちろん、九と星子は多恵と一緒に食べようとするけど、

「私1人にして」

と、多恵に強く言われ、なくなく断念していた。

 これを見ていたのは雪穂だった。

「これではいけない。なんとか対策をたてないと」

と、思うようになっていた。

 

 多恵と九たち8人の生徒の間で深い溝ができてから6月を迎えようとしていた。九龍高校の恒例行事のプール開きが開催されようとしていた。場所は海の近くにある手作り感満載の海水プールだった。ここでは町の小中学校の生徒と一緒にプール開きをすることになっていた。

「ところで、これって全員参加なんですか?」

と、多恵は言っている。どうやらリゾート開発の準備で忙しく、今日は休みたそうだった。

「すいませんが全員参加ということです」

と、雪穂が断ると、

「そうですか」

と、多恵はしぶしぶ参加することを決めた。

 というわけで、町自慢の海水プールには先生の雪穂と九たち生徒9人、それに小中学校の生徒が参加していた。

「で、なんで、先生もスク水なの?」

と、ひろ子が雪穂にツッコむと、

「だって、これが学校の伝統だって校長が言うから」

と、雪穂、大いに言い訳する。

 それは置いといて、みんなで準備体操をしたあと、各自プールにはいることに。

「冷たい!!」

九はそう言うと、いきなりクロールを始める。小明もそれにつられて一緒にクロール、というより競争になっていた。九、小明に続けとばかり、小中学校の生徒の数人もクロール競争に加わった。

 こうして、クロール競争が終わると同時に雪穂からある提案があった。

「それじゃ、今からケイドロしましょうか」

というわけで、ケイドロが始まった。

「めいちゃん、そっち行ったよ」

と、たい子の言葉にめい、

「にげるのです~」

と逃げまくる。最初は高校生チームが犯人、小中学校チームが警察と分かれていた。が、まず最初に捕まったのはなにもしていない多恵だった。

「ちょっと、私を誰だと思っているの。土居多恵ですわ」

だが、そんなのお構いなしだった。やんちゃな小中学生にきくこともなく、あっさりと捕まってしまった。

「はやく多恵ちゃんを助けようよ」

だが、ほかの8人は、

「それはちょっと」

「あの土居さんには…」

と、ためらうほどに…。

 そんな8人を見て、九は決めた。

「それだったら私が助けに行く!!」

これには星子たち7人は驚いてしまう。

「九ちゃんだけで行くのは無謀だよ」

と、ひろ子が言うと、九、

「いや、みんないやでも私だけでも行く」

と言えば、仕方がないと思ったのか、

「それならば、私がおとりでひきつけますので、九はその間に土居さんを助けてください」

と、星子が言う。それに合わせるかのように、

「私、たい子も星子さんに加勢します。私も相手をひきつけます」

と、たい子も星子と合わせるように言った。

 星子とたい子、各学年を代表する2人が言ったのか、

「私も土居さんを…」

「私も私も」

と、われ先に星子とたい子に加勢することを決める。最後にひろ子も、

「私が最後になったけど、全員で土井さんを助けようよ」

と言えば、九は早速、

「よし、土居さん救出作戦、開始!!」

と、8人それぞれいろんな場所に散らばっていく。

「お~い、こちらだよ」

と、星子が言うと、小中学生の1人が気づき、

「星子姉ちゃんだ。1人だと捕まらない。3人でいくぞ!!」

と、3人で星子を追いかけ始める。もちろんプールでケイドロなので、星子のほうが体力は上だが、3人で襲い掛かるので捕まるのは時間の問題。

 だが、ここで、

「星子、私も混ぜて!!」

と、氷が小中学生3人をかく乱する。

 いろんなところで高校生と小中学生の追いかけっこをしている中で小中学生チームに隙ができる。九はそこを狙った。

「土居さん、助けにきたよ」

九が多恵のそばに行くと、

「別に助けに来なくてもよかったのに」

と、多恵は不機嫌になりつつも、

「でも、ありがとうございます」

と、一応お礼を言っていた。

 だが、この混乱作戦が小中学生の体力を大きくそぎ落とす結果となり、結果、高校生チームの圧勝で終わることになった。

 そして、みんなで着替えている最中、多恵は九たちみんなに、

「あのときは助けてくれてありがとう」

と言うと、たい子は、

「土居さんを別に救ったわけじゃない。けど、あの作戦のお陰で勝てたから別にいいんじゃないかな」

と恥ずかしそうに言うと、春も、

「町はいまやリゾート開発の賛否についていがみあっているけど、私たちは私たちでやっていけたらいいと思うよ」

と笑顔で答えていた。これを見た星子、

「私たちはまだ土居さんのことをあまり知らない。けど、これから少しずつ理解していけば、きっと友達になれると思うよ。ねっ、みんな」

とみんなに問いかけると、

「そうですね」

「これから理解していけばいいんだね」

と、九や星子たち8人は多恵のことを少しずつ理解することに同意した。

 一方、多恵も、

「仕方がないですね。私も少しずつあなたたちのことを理解していきますね」

と言ったが、心の中では、

「同じ高校生同士だけど、一応表面上の付き合いだからね」

と、たかをくくっていた。

 このとき、遠くから9人の様子を雪穂は見ていた。

「よかった、よかった」

と、ゲームを提案した雪穂からは涙がでていた。

 

 こうして、(表面上ではあるが)仲直りした9人だったが、時は7月にはいり、1学期が終わり、8月にはいったそのとき…。

 雪穂は島唯一の郵便配達人からある手紙を受け取る。

「そうかあ。ラブライブも10年目なのかなぁ」

と昔を懐かしむ雪穂。しかし、手紙を読んだ瞬間、顔がかわる。

「えっ、盛大なパーティーするのに、参加するのはこれだけ?」

 すると、雪穂はあるところに電話した。そして、雪穂はお盆休みを含めた長い休暇を取ると、そのままフェリーで本土へと帰っていった。

 

 雪穂が長い休暇をとって本土に帰っていったことはすぐに九たち9人の耳にもはいっていた。

「なんで長い休みを取っていったのだろう?」

と、星子は不思議そうに思うと、氷は、

「自宅に里帰りしているんじゃないかな。たしか、高坂先生の実家って東京の神田の有名な和菓子屋さんでしょ」

と言うと、一同納得する。

 が、そのとき、

「あれっ?ここに高坂先生が出ているよ」

と、スマホを見ていた小明が叫ぶ。

「えっ、高坂先生が!!」

と、たい子が小明のスマホをのぞくと、たしかに雪穂がでていた。

「うそでしょ!!」

と、星子ものぞく。いや、全員がのぞくが、スマホでは画面が小さい。というわけで、教室に備え付けのテレビに映すと、ほかの人と一緒に踊っている雪穂が映っていた。

「高坂、いや、雪穂先生ってすごい人だったんだね」

とひろ子が言うと、

「しかし、ちゃらちゃらしているんです。不潔です」

と、星子が叫ぶ。

 だが、目をキラキラさせている生徒が1人いた。

「なんて輝いているんだろう。高坂先生かっこいい」

九だった。九はすぐにライブ配信の際にでる題名を見る。

「ラブライブ!10年目記念パーティー」

「ラブライブ!って、たしかスクールアイドルの甲子園!!」

と九が言うと、あることを思いついた。

「私もスクールアイドルになりたい。そして、この高校を、この島を、この町を救いたい!!」

 

(ED 1番のみ)

 

次回 雪穂と九とスクールアイドル

 




あとがき

 みなさん、こんにちは。LA55です。今回のお話はどうでしたでしょうか。物語としては少し遅い展開であると感じているかもしれません。事実、主人公である九は第3回でようやくスクールアイドルを目指すようになりました。ラブライブ!やラブライブ!サンシャイン!!では1話目で主人公はすでにスクールアイドルを目指そうとしております。それと比較しても遅い展開…。ただ、これには理由がありまして、この物語でも根幹になるであろうことについて話しておく必要があったためでした。もし展開が遅いと感じた読者のかたがおりましたら、この場でお詫び申し上げます。ただし、次回以降、九はスクールアイドルを目指して動き始めます。どうぞご期待ください。

 ここで重要なお話が。今回の第3回、そして、次回の第4回にはサイドストーリーが存在しております。それはすでに投稿しております。そのサイドストーリーとは…、今年の4月1日に投稿した「ラブライブΩ・UC the final story 「スペシャルライブ」」です。これは雪穂が東京に戻り、昔の仲間たちとともに「ラブライブ!10年目記念パーティー」を盛り上げる物語であるとともに、前作「ラブライブΩ/UC」のファイナルストーリーでもあります。「アイランドスターズ!!」では雪穂の九龍島を出てからのストーリーがカットしておりますが、そのストーリーがこの「スペシャルライブ」にて語られております。「アイランドスターズ!!」をお読みの読者の方はぜひとも「スペシャルライブ」も読んでもらえたら物語はさらにひろがると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 で、曲の解説を少し。この物語のOP曲である「アイランドスターズ!!」ですが、これは主人公たちが大海原へ航海に出発、そして、お宝を目指して進んでいく、そんなときの思いを歌にしました。航海というのは1人ではできません。みんなの力を集めてはじめて成功するものだと思っております。みんなの力を、夢を1つにして全力前進(ヨーソロー、ではありません!!)していく、そんな思いがこの曲には込められております。
 そして、この物語のED「夢ってなに?」ですが、夢っていうのは果てしないパワーを持っている、夢があるからこそ前に進める、それをこの曲に込めました。そして、その夢をほかの人との夢とリンクすることで、さらに大きな夢へと発展し、それが大きな前進へとつながります。夢というのはそれほど無限のパワーをもっているものなのです。あなたにとって夢とはなんでしょうか。夢を大切にすることこそ大事だと思います。ただし、その夢が大きくなりすぎて野望となった場合、それがほかの人に対して犠牲をこうむることになることも…。野望が進むとどうなるのでしょうか。この物語はその行く先まで見せてくれるかもしれません。

 というわけで、今回の物語はどうでしたでしょうか。楽しかったでしょうか。次回、ついに九はスクールアイドルになるために動き始めます。その九の動きに対し、雪穂はどう動いていくのでしょうか。物語は急展開をむかえる、かもしれません。次回の投稿までお待ちいただけたら幸いです。それでは、今回はここまで。さよなら、さよなら、さよなら。



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誕生編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第4話


第4話 雪穂と九とスクールアイドル

 

「ふう、久しぶりの東京だったから、いろんなもの買いすぎちゃった」

と、東京から帰ってきた雪穂は両手に持ちきれないほどの荷物を持ってフェリーから降りてきた。

「でも、久しぶりにみんなと会えたから、今回の旅は大成功だったね」

と、雪穂は東京で行われた「ラブライブ!10周年記念パーティー」のことを思い返していた。

 そんなときだった。

「高坂先生。いや、雪穂先生!!」

と、突然雪穂を呼び止めたのは九だった。

「金城さん、どうしたの?」

と、雪穂が急に問いかけると、九は大きな声で言った。

「私、スクールアイドルになりたい!!雪穂先生、私もなれますか?」

 

(OP 1番のみ)

 

 その言葉に雪穂は、

「頑張ればなれるよ。そして、自分の輝きを見つければ、心から楽しむことができれば、それは自分だけのスクールアイドルになれるよ」

と、九に優しく言うと、九も、

「ハイッ」

と、元気よく返事した。

 そして、雪穂は荷物の中からあるものを取り出し、

「はい、これ、あげるね」

と、九にプレゼントしたもの、それは、

「羽、白い羽?」

「そう、白い羽」

雪穂が高校のときから大事にしていた白い羽であった。それは雪穂にとって高校のときはスクールアイドルの、そして、大学のときはユニドルの象徴として持っていた白い羽であった。そんな白い羽であるが、今の自分にはもう必要ない、それだけ成長したと雪穂は思った。それを引き継ぐのは今しかないと雪穂は考えた。そのために九に渡そうと思ったからおきた行動だった。

 だが、そんなとき、九はあることを言った。

「それでね、雪穂先生、私をスクールアイドルとして育ててくれませんか」

この言葉には雪穂、おもわず、

「!!!!!!」

とビックリしてしまった。

「ちょっとまって。私が金城さんをスクールアイドルとして育てるの?」

と、雪穂、思わず本音を言う。九はすぐに言い返す。

「もちろんだよ。だって、雪穂先生は伝説のスクールアイドルだったんでしょ」

これには雪穂、言葉に窮してしまう。雪穂は思った。

「私、スクールアイドルやユニドルはやったことあるけど、スクールアイドルを育てたことがないんだよ。どうしよう」

もちろん、これは雪穂に限らず1~2年の若い先生ならスクールアイドルを育てること自体まれである。特に雪穂の先生1年目は全教科の免許を取得したいために勉強などに頑張ってきたのだ。それがダンスの授業が義務化されているからであってもである。

 だが、それが通じる九ではなかった。九は雪穂に、

「はやく教えてください。私を一流のスクールアイドルにしてください」

と、どんどん迫りつつ言う。

「それはそれで…」

と、雪穂はあとずさりするも、九、そんなのおかまいなしに、

「きっと雪穂先生が教えてくれたら、私も立派なスクールアイドルになれるよ」

と、さらに迫ってくる。

 と、ここで雪穂はふとあることを…。

「ところで、どうしてスクールアイドルになりたいの?」

雪穂はこの言葉をそのまま発していた。そうである。なんで九はスクールアイドルになりたいのか、それがスクールアイドルになるためにどうしても必要である。どんなことをやるとしても動機は必要である。はたして雪穂が納得するような動機はあるのか、そんなことを知らず、九は目をキラキラさせながら言った。

「私はスクールアイドルとして成功して、この高校と、この島と、この町を救いたい。だって、スクールアイドルとして成功すれば、この高校の、島の、町の知名度があがるし、それによってお客さんも増えるしね」

 これを聞いた雪穂、カチンときていた。雪穂、キレつつ、

「それがスクールアイドルになりたい理由なの?」

と言うと、九、

「うん、そうだよ。スクールアイドル、なんていい響きなの」

と、ただたんに言うと、雪穂はついにキレた。

「金城さんはなにもわかっていない。スクールアイドルってそんなに甘いもんじゃない!!」

これを聞いた九、

「えっ!!」

と驚くしかなかった。

雪穂は続けて言った。

「スクールアイドルっていうのは何かを救うためにあるのではない。もっと大切なものがあるはずだ」

 そして、雪穂は九にこう言いつけた。

「金城さん!!スクールアイドルにとってもっと大切なもの、それに気づかない限り、一流のスクールアイドルにはなれません。それに気づくまで教えることはできません」

これには九、

「え~」

と言うしかなかった。

 がっかりする九を尻目に九の前から立ち去る雪穂。心の中では、

「ちょっと言い過ぎたかも。でも、これも九のため。スクールアイドルはただたんに何かを救うための道具ではない。もっと大切なものがあるはずだ」

と叫んでいた。

 

 これに懲りてもうスクールアイドルになるのを諦めるだろうと思っていた雪穂だったが、ちょっと心配になってきた。

「ちょっと言い過ぎたかな」

と、雪穂は思ったが、翌日、学校の裏にこっそり忍び込む。そこには九が1人立っていた。なにかをぶつぶつ言っていた。

「やっぱり昨日のことがショックだったのかな」

と、雪穂はこっそりのぞきこむと、九はスマホを持って何かを言っている。

「なにを見ているのかな?」

と、雪穂、もうちょっと首を延ばすと、

「ワンツー、ワンツー、ワンツー」

と、九が言いながら動き出した。

「えっ、えっ」

と驚く雪穂。突然のことだったのでビックリしたのだった。

 それから1分後、九はとまるなり、

「やっぱり、ここはこうした方がかっこいいかな」

と、スマホの動画と見比べながら踊りを確認していた。

 そして、確認を終えるなり、次の言葉を発する九。

「たしかに昨日は雪穂先生に悪いことをしちゃったな」

これを聞いた雪穂、

「もしかしてわかってくれたのかな?」

と、期待するも、九、

「きっとまだまだ足りないのかもしれない。もっと高校を救いたいという気持ちが」

と、まったく的外れのことを言う。

ドテッ

これには雪穂はこけるしかなかった。

「私がもっと頑張れば、雪穂先生、きっと振り返ってくれるよ」

まったく違うほうにギアがいっちゃった九。これには雪穂、

「どうしてこうなっちゃうのかな」

と、ただただ呆然となるしかなかった。

 実は九が他人の意図しない奉公に頑張るのは今回が初めてではなかった。九は楽天的な考えの持ち主であり、かつ、まったく違う方向にギアが進むことが多かった。今回もまったく同じ傾向だった。

「こりゃだめだな、こりゃ」

と、ただただあきれるしかない雪穂だった。

 

「いつかはあきらめてやめるでしょ」

と思っていた雪穂だったが、それは日がたつにつれてそれが間違いだと気づくのである。雪穂は毎日のように学校の裏をのぞきこんでいた。そこには、

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、真夏の暑い太陽の日差しのなか、汗をかきながらもくもくと練習する九の姿があった。

「もうあきらめておかしくないのに」

と、いつも思っている雪穂だったが、来る日も来る日も九はただ1人スクールアイドルの踊りの練習をしていた。

「1,2,3,4、1,2,3,4、タンターン」

と、九は踊り終わるとすぐに、

「あそこはもう少し早い方がよかったかな」

と、何度も何度も確認する。

「まるで高校のときの私みたい…」

と、雪穂は九の姿を見て、昔を思いだしていた。

 だが、九は最後に必ず、

「あともう少しで雪穂先生は振り向いてくれるはず。それまでは…」

と、まったく違った方法に考えてしまう九だった。

 

 といった感じで九がスクールアイドルの練習を始めて1週間が過ぎようとしていた。九はダンスだけ練習していたが、それでも朝から夕方までずっとスマホを見ながら練習していた。

 そんななか、雪穂とは別に心配している友達が1人いた。九の幼馴染であり、大親友のひろ子だった。

「毎日のように遊びに行くのに、まったくいない。どうしてこうなるの~」

と叫ぶひろ子。島中どこを探しても九はどこにもいなかった。ひろ子はちょっと不満があった。

「私はもっと九と遊びたい。でも、どこにもいない。いったいどこにいるの~」

そう、ひろ子にとって九は大事な存在であった。そんな九が自分と遊んでくれない、そんな不満があった。

 そして、ひろ子はある考えにたどり着く。

「もしかして、雪穂先生のせいじゃないのかな。きっとそうに違いない」

こうなると誰にも止められない。

「きっと悪いことが起きているに違いない。そこには雪穂先生が…」

あやうし、雪穂、ひろ子の魔の手が迫っている。どうなることになるのだろうか。次回に続く。

 

(ED 1番のみ)

 

次回 九とひろ子とスクールアイドル

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第5話

第5話 九とひろ子とスクールアイドル

 

「雪穂先生許すまじ…」

と、黒いオーラを出している女子学生1人、水木ひろ子。

「雪穂先生がいるお陰で私は九と遊ぶ時間がなくなっている」

別の意味で危ない方向へと進もうとしていた。

 

(OP 1番のみ)

 

 ここは高校の校門前。

「こんにちは。ところで雪…、こほん、高坂先生はどこにいますか」

と、ひろ子は笑顔で掃除をしている用務員さんに聞くと、

「おお、高坂先生なら職員室にいるよ」

と、雪穂がいる場所を教えてくれた。

「どうもありがとう」

と、お礼を言うひろ子。だが、心の中では、

「あともう少しで九の敵をとれる」

と考えていた。

 で、ひろ子、職員室に行くと、

「あれ、高坂先生がいない…」

と、職員室は校長以外誰もいないことに気づく。ということで、校長に聞くことに。

「校長先生、高坂先生はどこにいますか」

とひろ子が言うと、校長、

「それだったら学校の裏じゃないかな」

と教えてくれた。

 校長の教えられたとおりに高校の裏に進むひろ子。心の中では、

「雪穂先生、あともう少しで成敗しますからね」

と考えていた。雪穂への断罪までカウントダウンをしていたのかも…。

 そして、ひろ子は学校の裏に近づくと、そこにはこそこそ隠れているがひろ子から見たら丸見えの雪穂の姿があった。

「ようやく九の敵がとれる。待っていろ、雪穂先生」

と、ひろ子が言うと、雪穂めがけて、

「高坂先生、覚悟!!」

と、持っていた固いものを雪穂めがけて振りかざした。

「えっ、えっ!!」

と、雪穂、驚くばかり。ひろ子が持っていた固いものは雪穂にあたり、雪穂は大怪我…。

ピコッ

と、固いものから何かがなった。ひろ子は何度も振りかざして、そのたび、

ピコッ ピコッ ピコッ

と、かわいらしい音が聞こえてきた。

「水木(ひろ子)さん、何をしているのですか?」

と、雪穂が言うと、ひろ子、

「高坂先生を成敗しているのです。この必殺ピコピコハンマーで」

と、雪穂に言う。ひろ子が持っているのはピコピコハンマーだった。雪穂、これでは危ない?と、ひろ子からピコピコハンマーを取り上げる。

「ああ、九救出作戦が…」

と、ひろ子ががっかりした風に言うと、雪穂、

「九救出作戦?」

と、ひろ子に問いかける。

 ひろ子は雪穂に説明した。

「だって、高坂先生は九を束縛しているじゃないですか」

「束縛?」

と、雪穂、少し考えるも、九を束縛しているとは考えていなかった。

 ひろ子は雪穂に詰め寄る。

「九を解放してください」

とひろ子が懇願すると、雪穂、

「私は束縛していないよ。それに…」

と、雪穂を疑っているひろ子をある場所に連れて行く。

「九…」

と、ひろ子は九の光景を草葉の陰から見た。そこには…、

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、踊りの練習をしている九の姿があった。九はスマホを窓のふちに置き、ワイヤレスイヤホンをかけながら踊りの練習をしていた。

「水木さん、金城(九)さんはたった1人で練習していたんだ。それも朝から夕方まで。あの子はスクールアイドルになりたいために来る日も来る日も練習していたんだ」

と、雪穂が言うと、ひろ子、

「ではなんでそんなこと言わないのですか」

と、雪穂に迫ると、雪穂、

「私としてはこのことは黙っているべきと判断した。だって、誰でも教えたくない秘密があるからね」

と、優しく語った。雪穂は学校の裏で九が行っているのは誰にも教えたくない、あっと驚かせたいからだと思っていた。が、実際は九がただそこにした方が校舎の影で涼しくてやりやすいと思っていただけなのだが…。

「私、とんでもない間違いをしていました」

と、ひろ子、雪穂に謝る。

「?」

と、雪穂は不思議がるも、ひろ子、

「私、九のために何かをしたいから。高坂先生、ごきげんよう」

と言うと、すぐに九のもとへと駆け寄った。これを見た雪穂、

「どんな考えだったのかわからないけど、これはこれでよかったのかな」

と、納得した表情で言った。

 

「九!!」

と、ひろ子は九のそばに行くと、大きく叫びかけると同時に九を両手で押した。

「わっ!!ひろ子、どうしたの?」

と、九、驚いた表情でひろ子に言うと、ひろ子、

「私もまぜて。私もスクールアイドルになりたい!!」

と、自分を売り込もうとすると、九、

「それはいいけど、どうしてここにきたの?」

と聞き返す。ひろ子いわく、

「風の便りできたのかな?」

と、少しぼかして答える。それには九、

「風の便り?」

と不思議がるも、すぐに、

「よし。ひろ子も仲間だ。私たち2人でスクールアイドルになろう!!」

と言えば、ひろ子も、

「オー!!」

と叫んでいた。

 

 九とひろ子、一緒に練習する様子を見ていた雪穂。

「金城さん、水木さん、スクールアイドルに本当になりたいようだね」

と言うと、思わずスマホを手に持ってあるサイトを開いた。

「なぞの音楽屋さん」

雪穂はそのサイトに何かを書き込むとすぐにスマホをしまった。

 

 場所はかわってここはある田舎町。

「あっ…、雪穂…、さん…、から…、依頼…、きた…」

と、姉らしき女性がサイトの掲示板を見て言うと、

「あの雪穂さんから。珍しい。なんて」

と、妹らしき女性が珍しそうに言うと、姉、

「曲…、作って…、ください…、て…。教え子…、に…、あげたい…、って…」

と言うと、妹は、

「簡単そうな曲か。これは大至急作らないとね」

と言うと、早速作曲にはいった。

 

 それから数日後、雪穂のもとにとある音楽データが届いた。「なぞの音楽屋さん」からのものだった。これを早速学校の裏の窓枠のふちに置いた。

 朝、九とひろ子が学校の裏にくると、その音楽データのはいったSDカードを見つける。「あれ、これってなにかな?」

と、九が言うと、ひろ子、

「何か書いてある。スクールアイドルになるものを応援するものだって」

と元気よく言えば、九、

「えっ、本当に本当!!」

と叫ぶ。

 すぐにSDカードをスマホにセットする。すると、音が聞こえてきた。

「これって聞いたことがない曲だよ。私たちのための新曲かもしれないよ」

とひろ子が言えば、九、

「私たちの曲、私たちの曲だ!!」

と、元気よく飛び跳ねながら言った。

 九はすぐに踊りを考え出すと、

「これはこれでどうかな」

と、すぐにひろ子に問いかけると、

「いいんじゃないかな」

と九に同意した。

 こうして、九とひろ子は踊りを考えながら作っていき、1つの曲を作り上げた。そして、翌日からこの曲の練習を始めるのであった。

 一方、雪穂もこの様子を遠くから見ていた。

「これでいいのかな?」

と、自問自答を繰り返しながら。

 

 九とひろ子、2人は夏休みの終わりまで踊りの練習と歌の練習を一生懸命行った。

 そして、夏休みの最後の日…。

「いやぁ、これで夏休みは終わりだね」

と、九が汗を拭きながら言うと、

「本当にそうだね」

と、ひろ子も汗を拭きながら答える。

「でも、これで少しはさまになったかな」

と、九がちょっと心配そうに言うも、ひろ子、

「私はスクールアイドルぽくなっていると思うよ。まだトップレベルにはなっていないけど、私から見たらうまくなったと思うよ」

と答え、九も、

「それもそうだね」

と答えていた。

 だが、九とひろ子の心の中でかわったことはそれだけではなかった。練習の最後、九はひろ子にあることを言った。

「私、最初、スクールアイドルになってこの島を、町を、そして、高校を守ろうと思っていた。けど…」

「けど…」

とひろ子が言うと、九、

「でも、練習を続けることでなんかわかってきた。スクールアイドルってやること自体に意味があるんだって。やって、いろんなことを楽しんで、そして、それをお客様に伝える。スクールアイドルって楽しくやることがすべてだと思えるんだ」

とかっこよく言うと、ひろ子、

「それ、九にはあわないよ。もっと、「もっと楽しみたい~」て砕けて言えばいいのに」

と言うと、九、

「それ、ありえな~い」

と駄々をこねる。

 そして、練習が終わるとき、九はひろ子にあることを伝えた。

「明日、みんなの前で歌おう。そして、私たちの勇姿をみんなに見せるんだ!!」

「え~!!」

ひろ子は驚いてしまった。

 こうして、九とひろ子の怒涛の夏休みは終わった。だが、その九の決意が九の、高校の、島の、町の未来を変えることになろうとはこのとき、誰も知らなかった。

 

次回につづく。

 

(ED 1番のみ)

 

次回 九とひろ子と多恵

 

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第6話

第6話 九とひろ子と多恵

 

 九の決意から1日がたった。今日から2学期、ついに2学期が始まるのだった。

「お父さん、お母さん、おはよう」

と、九は元気に朝の挨拶をする。そして、

「雪穂先生、おはようございます」

と、一緒に食事をとる雪穂にも挨拶する。雪穂も、

「金城(九)さん、おはよう~。あ~」

と、あくびをしつつ九に挨拶。

 そんな雪穂に九はあることを言った。

「雪穂先生、始業式の後をお楽しみに」

「?」

これには雪穂もはてな顔にならざるをえなかった。

 

(OP 1番のみ)

 

「であるからして」

と、校長の長~いお話を聞いている九たち9人。

「あ~、もう眠いよ~」

と、めいはあくびをしながら言うと、たい子、

「ちょっとまじめに聞きなさい」

と注意するが、その横でも、

「グーグーグー」

と、小明は立ったまま寝てしまっていた。

「1年生はだらしない」

と星子が言うも、

「私だってつまらない話は眠りたいものだよ。げんに、今でも眠りたいね」

と、氷が言えば、春も、

「あともう少しでカフェイン入りの調剤をつくってあげるからね」

と、まじで話していると、星子、

「それは薬事法違反になるからやめなさい」

と、春に注意する。

「あともう少しで私たちの野望が叶うんだね、ひろ子」

と、九、ひろ子にこっそり言うも、

「野望とはちょっと違うけどね」

と、ひろ子はツッコむ。

 一方、多恵はうなっていた。

「うう、うう」

これを見ていた九、

「土居さんってなんかつらそう。大丈夫かな」

と心配そうに見ていた。

 

 そんな九の心配をよそに多恵は少し焦っていた。それは高校のことではなく、仕事の方からだった。多恵はリゾート開発の責任者として九龍島をはじめとする九龍町の島々でリゾート開発における説明会を毎日していた。しかし、どこに行っても必ずあるのは反対意見であった。

「この島をリゾート開発して、俺たちになにか得があるのか」

「この自然を壊してしまったら山の神様に迷惑だ」

「海で工事されたら俺たちの生活がめちゃくちゃになる。魚が捕れなくなるからな」

これに対して多恵は、

「リゾート開発をすれば若い人たちが戻ってきます」

「島の自然を活かしたリゾート開発ですので、心配しないでください」

「海まで工事がおよぶことはありませんので、心配しないでください」

と、いろいろ反論するも、いつもきまって、

「ここでリゾート開発するな~」

と、全員から言われる始末。

「どうして私の言うことを聞いてくれないのよ~」

多恵は苦しんでいた。どこに行っても自分の言うことを聞いてくれない、むしろ、自分の意見に反対ばかりしている、そんな感じだった。

 

「土居さん、土居さん、土居さん」

いろいろと考えを頭の中でめぐらましている多恵だったが、誰か自分を呼ぶ声が聞こえてきた。

「土居さん、しっかりして」

「は、はいっ」

と、多恵、まわりを見回すと、多恵をゆすっている星子の姿が見えた。

「土居さん、大丈夫?なんか苦しそうだったよ」

星子はぼうとしている多恵を起こしていたのだった。

 星子は多恵に心配そうに、

「もう始業式は終わったのよ。本当に大丈夫?」

と言うと、多恵、

「だ、大丈夫です」

と、星子のゆすった手をどかして言った。

「ならいいのだけど」

と、星子は少し心配そうに言った。

 

 始業式が終わり、各自教室に戻ろうとした、そのとき、

「ちょっと待って」

と叫ぶ声が聞こえた。言ったのは九だった。

「なにかあるのですか?」

と、星子が言うと、

「みんなに見せたいものがあるの」

と、九は元気そうに答えた。だが、星子は、

「教室に戻らないといけないのに、なにかあるのですか」

と怒りながら言うも、九、

「私にはみんなに絶対に見せたいものがあるの~」

と頑固に反抗する。

 すると、雪穂、

「それってとても重要なことなの?」

と九に問う。九は、

「とっても、とっても重要なことです」

と、はっきりと答える。そして、九、

「それは雪穂先生にも重要なことです」

と、もっと元気に答える。

 これを聞いた雪穂、

「それなら、その見せたいものをやってもらえるかな?」

と言うと、星子は、

「高坂先生、それだと授業が…」

と言うも、雪穂、

「このあとはホームルームだけだし、しょうもないものだったらあとできついお仕置きをすればいいから」

と、九を見ながら言う。これを聞いた九、

「ありがとうございます」

と、雪穂にお礼を言うとすぐに、

「ひろ子、ちょっと来て」

と、ひろ子を呼ぶと、ステージにあがり、なにか準備を始めた。

「なにか面白いことが起きるかな」

と、めいがわくわくすれば、小明も、

「あの九ちゃんのことだから、面白いこと間違いなしだね」

と、めいの言葉を誇張していた。

 一方、3年生の氷は、

「早く始まらないかな。わくわくするぞ」

と言えば、星子は、

「絶対に間違っています」

と怒るが、春にいたっては、

「もし失敗しても私が慰めてあげますからね、九」

と、なんか的外れなことを言っていた。

 そんなとき、九はステージから出てきて、多恵のところに立つと、

「土居さん、いや、多恵ちゃん、ちょっと来て」

と言うと、多恵、

「私にはそんな気持ちは…」

と言うも、九、

「そんなの関係ないない」

と、強引にステージへと引っ張っていった。

「これから土居さんにはこれをおぼえてもらいます」

と、ひろ子は多恵にイヤホンをつける。

「私はそんなことをしたくないのに」

と、拒否反応をみせるも、九、

「多恵ちゃんって見ているだけで辛そうにみえてくるの。もしかして、まわりの人たちからなにかいやなこと、あったんじゃないかな」

と、心配そうに言うと、多恵は、

「えっ!!」

と、少し驚いてしまう。多恵は夏休みのときのことを思い返していた。リゾート開発の責任者ということで、町のまわりの人たちは無視されることが多かったのだ。

「私は、私は…」

と、泣きはじめる多恵。それに対し、九、

「あまり無理しないでね」

と、多恵の頭をなでる。

 そして、九は多恵の顔に近づきこう言った。

「今からすることは仲間をつくるために行うこと。これをすれば誰とでも仲良くなれるよ」

この言葉に多恵は、

「うん」

とうなずくだけだった。

 

 九が多恵をステージ袖に連れて行ってから5分後…。九、ひろ子、多恵の3人がステージ上にあらわれた。九は前に出てきて元気にこう言った。

「今から私たちは歌を歌います。これは私たちがスクールアイドルとして踏み出す一歩になります」

これを聞いた星子、

「スクールアイドル…」

と言うと、まわりから、

「ここでスクールアイドルが見られるなんて」

「これは本当に面白いことになるぞ」

と、騒ぎだしていた。

 九はこれを見ると、すぐに準備にはいった。3人が横一列に並ぶ。

「それでは聞いてください」

ひろ子はラジカセのスイッチを押した。

 

2年生 挿入歌 「オータムウインド」

 

いつまでも待っています

 

秋のまど   あけていると

冷たい風が  通りすぎる

私の心    そのままの

状況     なのです

 

とおりすぎる 人の波に

わたしは   さらされて

きびしすぎる あなたに

いつまでも  待ち続ける

 

ああ 私の心には

大きな あながあいている

けれど それをふせぐのは

あなたを 待ち続けるだけ

 

秋の空    みあげてると

透明までに  すみとおてる

私の心    そのままの

状況     なのです

 

まっています 時の波に

私は     受け続け

まちかこがれ あなたが

くることを  願い続け

 

ああ あなたの心には

私の すがたあるのかな

けれど それをみることは

とても~ できないことです

 

秋風 通り過ぎる

あつい思い出をもっていく

あなたの思い出なくなってくる

あの楽しい日々を忘れていく

そんなこととてもしたくない

私の心 思い出をなくさないで

 

ああ 私の心には

大きな あながあいている

けれど それをふせぐのは

あなたを 待ち続けるだけ

 

あなたのことを 

いつまでも待っています

 

3人とも一糸乱れないダンスであった。

「すごいよ、すごいよ、九ちゃん」

と、小明はすごく感動しているみたいに言った。

「うそでしょ。私、そんなに練習していないのに…」

多恵もそうだと思っているほどだった。だが、それには理由があった。実はこの曲の振り付けは練習しなくてもできるほど簡単なものだったのだ。そして、曲はあらかじめ九とひろ子の歌が吹き込まれていたのだ。と、いうわけで、何も練習していない多恵であっても少しの振り付け練習と口パク(ちょっと失礼だけど)で上手に対応できたのだった。

「これがスクールアイドルなんだ」

と、たい子は目をパクチクリし、めいも、

「これはこれでありなのでは」

と、前向きで考えるほどだった。

 だが、これによしとしない人もいた。

「不潔ですわ」

これを言ったのは星子だった。

「スカートをひらひらさせて見えそうになるわ。少しは淑女らしく…」

と、怒りは頂点に達しようとしていた。

 これには九、

「それなら大丈夫!!スカートの下に体操服着ているもん!!」

と、スカートをひらひらさせながら言うも、

「それがダメなんです!!」

と、星子はカンカンに怒っている。

「どうどうどう」

と、星子の怒りをおさめようとする氷。

「これって私としてはありなのかな」

と、はにかむ春。

 九はこれを見て、

「やったね」

と、小さくガッツポーズをしていた。

 

 九たちの曲の披露が終わり、各自教室に戻る。

「まさか、みんなの前でスクールアイドルとして曲を披露するなんて…」

と、雪穂は九たちのダンスに驚いていた。自分の力なくてもあれだけやれるとはすごい執念、と雪穂は思った。そのとき、

「雪穂先生、どうでしたか」

と、聞き覚えのある声が後からした。

「あれ、金城(九)さん」

と、雪穂が言うとうしろを向いた。そこには九、ひろ子、そして、多恵がいた。

「私たちの曲、どうでしたか」

と聞くと、雪穂、

「簡単なダンスだったけど、とてもよかったよ」

と言えば、九は、

「それはよかった、よかった。で、先生」

と言うと、すぐに雪穂の前にでて、

「お願いがあります。私たち、スクールアイドル部の顧問になってください」

と、頭を下げてお願いした。

 雪穂は九に対して質問する。

「同じことを聞くけど、スクールアイドルになぜなりたいの?」

これを聞いた九ははっきりと答えた。

「これまでは高校などを助けたいという気持ちでした。けれど、今はそれ以上にみんなと一緒に楽しみたい。みんなと歌って踊って、それでみんなと一緒にスクールアイドルであることを楽しみたいと思っています」

 そして、ひろ子も、

「私も九と一緒にスクールアイドルとして楽しみたいと思っております」

と、はっきりと答える。

 これを聞いた雪穂は九とひろ子の言葉に、

「わかった。金城さん、水木さん、私が一流のスクールアイドルに育ててあげる」

と言うとともに、

「あと、その言葉を忘れないでね。それこそスクールアイドルとして大事な心構えだからね」

と、答えていた。

 が、そのとき、

「茶番につきあわせないでよ」

と、怒る人物が1人いた。多恵だった。

「私を茶番につきあわせないでよ」

と言うと、多恵はすぐにその場から走ってしまった。

「多恵ちゃん…」

と、九は多恵を走っていくのをただ見るだけしかなかった。

 

 九たちとは別のところでもストーリーが進行する。

「九ちゃんたちの曲、とてもよかったね」

「そうだね」

「どこで練習しているのかな?」

「たしか学校の裏らしいよ」

「それはいいね」

「なら、明日、行ってみようよ」

こそこそ話がすすむ。これから先、どのように展開するのだろうか。それは秘密である。

 

次回に続く

 

(ED  1番のみ)

 

次回 めいと小明とずる休み

 




あとがき

 みなさん、こんにちは。La55です。今回でついに第6話まできました。ここでようやく?九、多恵、ひろ子の2年生がみんなのまえで歌を発表するところまできました。といっても、多恵は抜けてしまうし、星子もスクールアイドルを嫌っているような…。これについては次回以降、怒涛の展開をしていくと思います。それまでお待ちください。しかし、九もようやくスクールアイドルに大切なものが見つかったかもしれない…、のかな?

 で、ここで第6回に出ていた曲の説明を少し。「オータムウインド」ですが、これから発表していく曲のシリーズ「Love Season」の1曲となります。このシリーズですが、春夏秋冬のそれぞれの季節にまつわる4つの恋の歌からなる歌のシリーズとなります。なぜこんなシリーズ、4つの曲を作ることになったのかというと、前作「ラブライブΩ/UC」には恋の歌は1曲ぐらいしかありませんでした。でも、「ラブライブ!」には恋の歌が多くあり、特にスノハレはとても有名です。そこで、自分も恋の歌を作ろうと思い、それならばと四季にまつわる4つの曲を作ってみました。
 で、今回の「オータムウインド」ですが、これは破局した少女の気持ちを歌った曲となります。「ラブライブ!」「ラブライブ!サンシャイン!!」では普通前に進む気持ちを歌った曲になるし、恋の歌のシリーズにしても最初は恋をする曲になると思いますが、ここは諸事情により、破局した少女の歌が最初になってしましました。申し訳ない。で、この曲は破局した少女が相手を待ち続けています。では、待ち続けていて結果は?これは次の曲、冬の曲で明らかになります。それまでお待ちください。

 と、いうわけで、今回のお話はいかがでしたでしょうか。九はスクールアイドルとして一歩を踏み出しました。どんどん仲間を増やしていくのでしょうか。それとも、ひろ子と2人だけでするのでしょうか。それは次回以降の物語で明らかになります。なお、本編についてはすでに全編ともパソコンへの打ち込みは終了いたしました。あとは投稿を残すのみとなっております。また、いつものあれも始動しております。楽しみにお待ちください。それでは、今回はここまで。さよなら、さよなら、さよなら。


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スピンオフ 第3.3~6.5話 九・ひろ子編 第1回

「えっ、盛大なるパーティーをするのに、参加するのはこれだけ?」

雪穂がある手紙をよんからこう叫ぶと、いろいろ準備してからフェリーに乗って東京に帰っていった。

その翌日…、場所は高校の図書館…。

「ごめんね、九にひろ子。私の手伝いしてもらって」

机で調べものをしていた星子は、一緒にいる九とひろ子に労をねぎらうと、

「いやいや、夏休みは暇ですから、どうてことないですよ」

と、ひろ子はただたんに照れていた。

「でも、九は民宿の、ひろ子は親のダイビングショップを手伝いしなくていいの?」

と、星子は九とひろ子につかぬ事を聞くと、ひろ子、

「私の場合、お客さんと素潜り競争、すぐにしてしまうので、親から手伝うなって言わ

れてしまうのです」

と、照れながら言うと、星子、

「それもそうだね。水泳の得意なひろ子だもんね。たしか、島の最高記録の…」

と言うと、すぐに九が、

「50メートルですよ」

と、よこやりをいれる。これにはひろ子、

「…」

と照れるしかなかった。

「で、九は…、と言わなくてもわかるわ」

と星子、九のほうを見てみると、

「?」

と、なんだかわからない顔をする。ひろ子はそれを見て、

(九ちゃんはいろんなことを知らないと気がすまないもんね。だから、民宿の手伝いをやると変な方向に進んでしまう。だから、九の両親は民宿の手伝い九ちゃんにさせたくないのよね)

と、納得していた。

 そのことを話してから10分後、

「でも、私としては九とひろ子が手伝ってくれたから、あともう少しで完成するよ」

と、星子は机の上にあるあるノートを見て言うと、ひろ子は、

「もうすぐ完成するのですね、高校の学校史が」

と言えば、星子、

「うん。あの土居(多恵)さんの閉校宣言を聞いて、私は決めたの、この高校の歴史をまとめようって。だって、この高校はおじいちゃんの、父や母の、そして、町のみんなの思い出が残っている高校だから」

と言うと、ひろ子も、

「そうですね。私の父や母もこの高校に思い出があります。たしか、開校が1953年でしたよね」

と言えば、星子も、

「そうだね。当時はアメリカ占領から解放されたばかりだからね。1953年12月25日、奄美は日本に復帰した。これについては奄美中が待ちあこがれていたからね」

と、自分が編さんした学校史が書かれたノートを読みつつ語ると、ひろ子もそれを見て、

「たしか、日本への復帰まで奄美中でハンガーストライキなどをしていたのよね。それほど奄美中で、そして、島中が一丸となって日本復帰を願っていた。そして、叶った…」

と言うと、星子は、

「そして、このことを忘れず、子どもたちのため、島のため、奄美の将来のためにこの高校、九龍高校が作られたのよね」

と、しみじみと言うと、ひろ子も、

「そうですね。そして、今の町長、星子先輩のおじいちゃんをはじめ、島中の人たちがこの高校からはばたいていったのですね」

と、こちらもしみじみと言う。

 そんな2人でしみじみしているなか、九、

「もう、2人でしみじみしないでよ。ひろ子ちゃん、もう手伝い終わったから遊びに行こうよ」

と、だだをこねると、ひろ子、

「はいはい、わかりました。星子先輩、ごめんなさい。この続きはまた明日しますので」

と言うと、星子、

「いいよ、そんな急ぎじゃないから。また明日ね。

と、言って九とひろ子を送っていった。

 

「ひろ子ちゃん、今日もビーチで遊ぼうよ」

と、九は歩きながらひろ子に言うと、ひろ子、

「そうだね。いつもの通りビーチで遊ぼう」

と言って、ビーチまで駆け足で行くと、九、

「負けないんだから」

と、九も駆け足でひろ子のあとを追った。

 

 それから2時間後…。

「ねぇ、今度は山の中に遊びに行こうよ」

と、九が言うと、ひろ子も、

「うん、わかった」

と、ビーチから山へダッシュする2人だった。

 

 と、いうふうに、九とひろ子は夏休みの最中、午前は高校の図書室で星子と学校史の編さんを、午後は海や山で遊びまくりの1日を繰り返していた。ちなみに、夏休みの宿題は夏休みにはいってからの1週間で終わらせていた。

「学校史の編さんのために宿題が終わりませんでした、なんてことになったら学校の恥ですから」

と、星子の説。宿題をしている最中、九が、

「もうこんなのいや」

と、弱音を吐いたとか吐かなかったとか…。

 

 だが、このサイクルがじょじょに崩れようとしていた。そのきっかけとなったのが、雪穂が東京に帰った次の日、そう、今日の夕食のときだった。

「ただいま~」

と、九は自宅の民宿の裏門からはいると、

ガヤガヤ

と、食堂のほうでなにやら騒いでいた。九はすぐに、

「誰かきているのかな?」

と言うと、食堂のほうへと駆け足で行く。すると、

「やあ、九ちゃん、ひさしぶり」

と、食堂の椅子に座っていた、九のよく知る人物が挨拶すると、九、

「こんばんは、ハッピーさん」

と、よく知る人物ことハッピーさんに挨拶する。

「九ちゃん、今日は新鮮な魚を持ってきたぞ」

と、ハッピーさんは新鮮な魚を見せると、

「やったー!!今日はお刺身だ~」

と喜んでいた。なお、ハッピーさん、知らない読者に説明する。いつも大きな魚が描かれた法被を着ているため、そして、いつもハッピーな顔でいるため、島の人たちからは親しみを込めて、ハッピーさんと呼んでいた。本名は不明(おいおい)。ちなみに、こう見えても漁師であり、漁協でも偉かったりする。ただし、いつも特攻服を着て漁をする特攻野郎Sチーム(こちらも漁師です!!)といがみ合っており、それがこの島の名物だったりする。

 九が家に帰ってきてから1時間後…。

「うわぁ、今日の夕食はお頭つきだ~」

と、九は目をキラキラとしていた。食卓にはよりもりみどりの魚料理、とくに近海で捕れた魚の刺身が目をひいていた。

「それでは、島の明るい未来にむけて、かんぱ~い!!」

九の父親が乾杯の音頭をとると、そのまわりにいる九の母親、ハッピーさん、九も、

「かんぱ~い!!」

と、続けて言った。ちなみに、九の両親、ハッピーさんは島で作られた芋焼酎、九はもちろん、ノンアルコ…、ではなく、ただの水で乾杯した。九いわく、

「少しでも雰囲気を味わいたい」

らしい。

 島の焼酎は魚料理によく合うなのか、食卓の皿は次々と空になっていく。もちろん、話もはずむ。雪穂先生のこと、島のこと、そして、漁のことも。

 そんななか、

「九ちゃん、たしか、星子ちゃんと一緒になにかしているんだってね」

と、ハッピーさんが酔いながらも言うと、九、

「うん、星子ちゃんとひろ子ちゃんと高校で学校史の編さんをしているんだよ」

と、笑いながらも言うと、九の父親は、

「学校史か。なんか凄いことしているんだな。えらいぞ」

と、九を褒めると、九、

「えっへん」

と、偉そうに言う。ただ、九がやっているのは、星子やひろ子が指定した本を持ってくることだけなのだが…。

 九が偉そうにしているそのとき、横から、

「学校史かぁ。いろんな歴史が詰まっているんだよね。懐かしいなぁ」

と、九の母親が懐かしそうに言うと、九の父親も、

「そうだね。私も妻も九龍高校出身だからね」

と言うと、ハッピーさんも、

「そうでしたか。私も九龍高校の出身なんですけどね」

と言うと、九、

「え~、九龍高校って女子高じゃなかったの~」

と驚く。これにはハッピーさん、

「九龍高校はもとから男女共立校だよ」

と、衝撃的?な言葉がでると、九、

「でも、今は女子ばっかりじゃ」

と言うと、九の父親は、

「それはただたんに男子が入学しなかったため。今の男子は高校卒業してから大学に進学するのが普通だからね。九龍高校だと、大学に進学するのは難しいから、島を出てほかの高校に進学するのが普通だよ」

と言うと、九、

「ガーン」

と、あごを開いて驚いていた。ちなみに、九龍高校が男女共立校であることは星子、ひろ子とも学校史の編さんを通して知っており、ただたんに史料を持ってくるだけの九は今の今まで知らなかったことだった。って、前の図書館での星子とひろ子の会話にもそれとなくでていたのだけどね、九。

 でもって、話の話題は…。

「いやあ、高校2年のときに釣り上げた魚が大きくて、高校の廊下で魚拓として展示されたときはみんな驚いていたよ」

と、ハッピーさんが自慢話をすると、九の父親も、

「それは凄い。私なんか、学校中に民宿の宣伝したら、先生から怒られていましたよ」

と、高校の思い出話に花咲かせていた。それを見た九、

(九龍高校って、島みんなにとって忘れられない思い出でいっぱいなんだね)

と、しみじみ感じていた。

 しかし、そんな話も突然終わる。

「ところで、九ちゃん、なんで学校史を作っているの?」

と、ハッピーさんが突然九に言うと、九、

「たしか、星子ちゃんは高校が閉校になるから、少しでも思い出として残していたいんだって。だって、私たちの高校は島の人たちにとっていい思い出でいっぱいだから」

と答える。これには九の父親は、

「そうか。もうすぐ閉校になるのか。少し寂しくなるな」

と言うと、九の母親も、

「そうですね。あそこは島の人たちから見たら思い出でいっぱいですものね」

と言うと、九、

「そうなんだ。やっぱり島の人たちにとって思い出の宝なんだね、九龍高校は…」

と、しみじみ答えた。と、同時に九の心の中に、

(そんな高校、存続できたらいいのに…)

という思いが生まれようとしていた。

 ところが、

「あっそうだ。閉校で思い出した。閉校寸前のところで、大逆転して存続を果たした高校があった」

と、ハッピーさんが突然あることを言い出すと、九、びっくりして、

「えっ、閉校をひっくり返したの?」

と、ハッピーさんに詰め寄ると、ハッピーさん、

「うん、そうだ。10年前、その高校は廃校寸前だった。けれど、ある女子高生が起こした行動によって、その状況がひっくり返されたのだ」

と、驚きながらも言った。これには九、九龍高校を存続できるヒントになるのではと思い、さらにハッピーさんに詰め寄り、

「そのこと、詳しく教えて!!」

と言うと、ハッピーさん、

「ごめん、詳しいことは知らないんだ」

と言うと、九、

「な~んだ」

と、ため息をついてしまう。これを見たハッピーさん、

「ごめん、力になれなくて。でも、これだけは知っているよ」

と言うと、九、

「なになに!!」

と、またもハッピーさんに詰め寄ると、ハッピーさん、

「たしか、その高校の名前は音ノ木坂学院で、そのとき、μ‘sというスクールアイドルっていう名のグループの活動によって状況が変わったらしいよ。そして、そのときのリーダーが高坂穂乃果という名前の人だったらしいよ。その人がたしか、スクールアイドルの甲子園「ラブライブ!」で活躍したから廃校がなくなったらしいよ」

と言うと、九、

「高坂…、なんか聞いた気があるような…」

と、何かを思い出そうとするも思い出せず、ただ悩むばかり。どこかで聞いたことがある名前なのだが、思い出せそうになかった。ただ、九には名前さえ思い返せば、きっと閉校から高校を救えるのではという、あわい思いに満ち溢れていた。

 

 こうして、九はそれ以降、「高坂~」という名前を思い返そうとしていた。でも、いくら待っても思い返せず、時間だけが過ぎていった。

 そして、九の両親とハッピーさんの夕食から1週間後…。

「あ~、あともう少しで思い出せるんだけどなあ。思い出したら高校を救えそうな気がするんだけど…」

と、九は登校中に思い出そうとすると、すぐに、

「もし高校が救えたら、そしたら、みんな褒めるかな。だって、みんなの思い出がいっぱい残っている大切なものだもんね」

と、思い出し笑い。これには一緒に登校しているひろ子から、

「なんかきもい…」

と、思わせるくらいに…。ただ、九の心の中はその繰り返しだった。

 

 で、九とひろ子はそのまま高校の教室へ。そこには終業式以来、全校生徒9人全員が集まっていた。今日は夏休みの中で数日ある登校日であった。この日は平和授業が行われるのだが、とうの先生、雪穂は東京に帰省中ということもあり、めずらしく校長自ら十行を行っていた。

「というわけで、戦争に負けた日本ですが、それにより、小笠原、奄美、沖縄などは本土とは別に占領され…」

と、校長は奄美のアメリカ占領時のことをいろいろ説明する。だが、九の頭の中は、

「だれだったかな、だれだったかな。もし思い出せたら、私は学校を救える…」

という押し問答でいっぱいだった。

 そして、放課後、九たちは夏休みの出来事などいろいろと話をしている最中、小明は自分のスマホでいろんな動画を見ていると、その横で星子が、

「なんで長い休みを取っていたのだろう?」

と、雪穂の長い休暇について言うと、氷は、

「実家に里帰りしているんじゃないかな」

と言うと、小明はすぐに動画サイトの検索窓に、

「高坂雪穂」

と、ただたんに入力して検索、するとすぐ一番上に、

「ラブライブ!10周年記念パーティー」

という項目が表示されるとともに、「LIVE中」という文字がでていた。小明は、

「なんだろう~?」

と、その項目を押すと、なんと、

「この日をどれだけ待っていたのか~♪」

と、ある人たちが大勢で歌っている映像が流れた。そして、小明はすぐに、

「あれっ、ここに高坂先生が出ているよ」

と叫ぶと、全員が小明のスマホの映像を見る。

「えっ、高坂先生が!!」

「うそでしょ!!」

いろいろと言葉がでる。でも、全員ではスマホの画面を見るのは小さすぎる、というわけで、すぐに教室に備え付けのテレビにスマホをつなぎ、その映像を見ると、

「スペシャルディ スペシャルソング~♪」

と、まわりにいう人たちと一緒に楽しんで踊る雪穂の姿が見えた。もちろん、雪穂の姉、穂乃果と一緒に。これにはひろ子、

「高坂、いや、雪穂先生って凄い人だったんだね」

と、驚嘆な声が。星子からは、

「ちゃらちゃらしているんです。不潔です」

と叫んでいた。

 だが、雪穂の踊っている姿を見た九は、

「なんて輝いているんだろう。高坂先生、かっこいい」

という言葉とともになにかぴんときた。

(高坂、あ、高坂って、高坂先生、いや、雪穂先生の苗字だったんだね。ということは、雪穂先生って、あの廃校から学校を救ったμ‘sというスクールアイドルグループのリーダー、高坂穂乃果さんの妹なのかな。なら、もしかすると…)

と思って、その映像の題名をもう一度確認する。

「ラブライブ!10周年記念パーティー」

この言葉を見て、九は叫んだ。

「ラブライブ!ラブライブ!ってたしかスクールアイドルの甲子園!!」

それとともに九はあることを思いついた。

(私も雪穂先生から教えてもらって、スクールアイドルになって、ラブライブ!で活躍できたら、この高校を救うことができるのでは。そうしたら、島中のみんなの思い出が残るこの高校を守れるのでは。私もμ‘sみたいに学校を守りたい!!)

 そして、九はすぐにあることを言った。

「私もスクールアイドルになりたい。そして、この高校を、この島を、この町を救いたい!!」

 

 思い立ったら吉日、そんなことを体現してしまう九はその日の夜、あまり使い慣れていないパソコンを使って高坂雪穂について調べていく。そして、

「えっ、雪穂先生って凄い人だったの!!」

と、九は驚いてしまう。そこにはラブライブ!で優勝したときの映像だけでなく、大学時代にユニライブ!に優勝したときの映像がずらりと並んでいた。そして、

「高坂雪穂…、高校時代、ラブライブ!で優勝し、姉穂乃果が率いるμ‘sにも勝利したグループ「オメガマックス」、そして、大学時代、ユニドルの祭典「ユニライブ!」でも、「HeaT」というグループで優勝した。どちらともリーダーとしてまわりを引っ張っていった」

というwikiの説明文もあった。

 これを見た九はすぐに思った。

(やっぱり私の考えは間違っていなかった。雪穂先生の教えを請えば、たとえ私でもスクールアイドルとして活躍できる。そして、ラブライブ!で優勝して、九龍高校を、島のみんなの思い出が残る高校を、いや、みんなのために、島を、町を、救うことができる!!)

 



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スピンオフ 第3.3~6.5話 九・ひろ子編 第2回

 そして、3日後、雪穂は島に帰ってきた。

「やっと帰りついたよ~」

フェリーのデッキから島の方を見る雪穂。フェリーが島に到着するなり、大量の荷物を持ってフェリーのタラップからおりてくると、すぐに、

「高坂先生、いや、雪穂先生!!」

と、突然呼び止められた。雪穂はすぐにその声がする方向を見ると、誰かがいた。九だった。

「金城(九)さん、どうしたの?」

と、雪穂が九に聞くと、九は突然大きな声で言った。

「私、スクールアイドルになりたい!!雪穂先生、私にもなれますか?」

この言葉に雪穂、

「頑張ればなれるよ。そして、自分の輝きを見つければ、心から楽しむことができれば、それは自分だけのスクールアイドルになれるよ」

と言うと、九も、

「ハイッ!!」

と、元気よく答えた。

 だが、雪穂と九の会話が進むうちに九が突然あることを言った。

「それでね、雪穂先生、私をスクールアイドルとして育ててくれませんか」

この言葉に雪穂は驚く。雪穂はスクールアイドルとして、ユニドルとして活躍をしたことはあるけど、スクールアイドル自体育てたことはなかった。急にたじろく雪穂。

「それはそれで…」

と、言葉に窮することも。

 だが、雪穂はあることを思い出した。

(そういえば、九がいる九龍高校ってたしか廃校するんだったよね。もしかして…)

これを思い出した雪穂は九にある疑問を投げつける。

「ところで、どうしてスクールアイドルになりたいの?」

これには九、すぐに、

「私はスクールアイドルとして成功して、この高校を、この島を、この町を救いたい!!」

と堂々と答えた。これを聞いた雪穂、

(こりゃ、いつものパターンだね。スクールアイドルとして活躍できたら廃校を阻止できる。そんな世の中は甘くない。そして、スクールアイドルは何かを救うために活動しているわけじゃない。もっと大切なものがあるのに…)

と思うと、いろいろいってくる九に対して、ついにキレた。

「金城さんはなにもわかっていない。スクールアイドルってそんなに甘くない」

続けて、

「スクールアイドルっていうのは何かを救うためにあるのではない。もっと大切なもんがあるはずだ」

そして、トドメで、

「スクールアイドルにとって大切なもの、それに気づかない限り、一流のスクールアイドルにはなれません!!それに気づくまで教えることはできません」

と、九を一刀両断した。

 これには九、

「えーーーーーー!!」

と、叫ぶしかなかった。

 だが、こんな様子を陰から見ていた少女がいた。

「高坂先生と九、なにかあったのかな。なんか言い争いになっていたけど、大丈夫かな?」

と、心配する少女、星子はなんだか不安になりつつその場を離れた。

 

「どうして雪穂先生は教えてくれないのかな」

と、帰り道ぶつぶつ言う九。

「あの場面だったら、「教えてもいいぜ」というはずなのに…」

と、ただたんにいろいろとぶつぶつ言う。

 だが、九はすぐに思った。

「きっと私のことをずらしているんだろう。もっと強く言えば、いや、もっと行動で示せば、きっと雪穂先生は私のことをふりむいてくれるはず」

ちょっとネジがおかしな方向に向いてしまった。九の悪い癖である。九はたとえ他人から反対されても、自分なりにその人の意見を自分にとって都合のいいように変に解釈してしまい、へんな方向に進んでしまうのだ。えっへん(って、威張るところじゃないでしょ!!)

 だが、九はこう思ってしまうと止まらなくなってしまう。九はすぐに、

「よぉし、明日からスクールアイドルの練習、はじめちゃおう。そしたら、絶対に雪穂先生、振り向いてくれるよ」

と、明日からのことを決めてしまった。あるいみ立派?である。

 

 というわけで、決めたら即実行するのが九のすごいところである。

「昨日見つけた動画をもとに練習しよう」

と、高校の校庭でスクールアイドルになるための練習を(ただし、自分だけ)をはじめるも、よく考えたら夏休みのまっ最中である。お日さまが一日中照ってる校庭でやっていたらすぐに…、

「あち~」

と、九がすぐに音をあげた。あまりにも暑すぎてすぐに汗が噴出してしまう。特に、南国である奄美にとって太陽からの熱射量は日本で随一である。

「これじゃやってられないよ~」

と、校庭で練習することを諦めた九だった。

 だが、九はこれで諦めなかった。学校のいろんなところを回る九、できるところを探すために。探している最中、九は思った、昨日調べた中で、μ‘s、オメガマックス、そして、Aqoursは校舎の屋上で練習していた。それなら、高校の屋上でやればいいのでは。だが、九はすぐに諦めた。九のいる九龍高校、実は平屋建てである。つまり、1階しかないのだ。そして、校舎は三角屋根で覆われていた。というわけで、校舎そのものに屋上というのは存在していない。

「なんで屋上はないんだよ、まったく」

と、九は悪口を言うも仕方がなかった。

 こうして、探していくうちに、九はあるところを見つけた。

「ここだったら1日中陰でいつも涼しい」

九はこう言うと、すぐに周りを見渡した。そこは校舎と大きな倉庫に囲まれた、いわば学校の裏だった。まわりを建物に囲まれているため、1日中太陽からの日射を遮ってくれる。そう、1日中日が当たらないため、幾分かは涼しいのである。

「よおし、ここで今日からスクールアイドルの練習だ~」

九はそう決めると、スマホを持って練習を始めた。

「ワンツー、ワンツー」

九はスマホの動画を見ながら声をあげ踊りの練習をしていた。ちなみに、その動画のタイトルはずばり、「サルでもわかるスクールアイドル講座第1回」…。九にしては一番いい動画かもしれない。ただ、「サルでもわかる…」の題名については九自体あまり気にせず選んだ気がするかもしれない。

 そんな中、

「あれって金城(九)さんじゃないかな?」

と、雪穂は学校裏で九を見つけるなり、物陰に隠れて九の様子を見る。

「ちょっと言い過ぎたかな」

と、昨日のことをちょっと心配する雪穂だったが、突然九が、

「ワンツー、ワンツー」

と言いながら動き出した。

「えっ、えっ」

と、驚く雪穂。そして、1分後、九は止まって、

「こうしたほうがかっこいいかな」

と、スマホの動画を見ながら踊りを確認していた。

 その後、九の口から、

「たしかに昨日は雪穂先生に悪いことしちゃったかな」

という言葉を聞くと、雪穂、

「もしかして…」

と、淡い期待をするも、すぐに、

「きっとまだまだ足りないかもしれない、もっと高校を救いたいという気持ちが」

と、九が言ったものだから、雪穂、

ドテッ

と、こけてしまった。これには雪穂、

「だめりゃこりゃ」

と、ただただ思うしかなかった。

 

「いつかは諦めてくれるでしょう」

雪穂はすぐに九がスクールアイドルの練習を諦めてくれると楽観視していた。なぜなら、たった1人しかいないこと、そして、学校裏とはいえ、暑い中ずっと練習するのは酷であること。そう、雪穂は九のことを舐めていた。

 しかし、九は諦めなかった。くる日もくる日も朝から夕方まで、学校裏でスクールアイドルになるための練習をしていた。

「1,2,3,4、2,2,3,4」

九はスマホの動画を何度も確認しながら、間違ったところはないか確認していた。

「もう諦めてもおかしくないのに…」

雪穂はいつもそう思っていた。だが、九は1つのことを決めると熱くなってしまう。九には諦めるという言葉はないのだ。これには雪穂、

(それなら、九に教えてあげても…)

と思うのだが、九は最後に必ず、

「きっと学校を救いたいという気持ちが雪穂先生に届くはず」

と言ってしまう九。まだまだスクールアイドルになって活躍すれば高校は救える、そんなことを思い続けていた。これには雪穂、

「やっぱりやめておこう」

と思ってしまうのだった。

 ただ、雪穂も毎日練習している九のことがどうしてもほっとけず、暇があれば必ず九のいる学校裏に来ては、「まだやっている…」と、草葉の陰から見守っていた、それも毎日…。

 

 と、ここで忘れてはいけない主人公がいた。九の友達、ひろ子である。

 物語の時間は九がスクールアイドルの練習を始めたその日に戻る。

「星子先輩、おはようございます」

と、高校の図書室でいつものどおり星子に挨拶するひろ子。

「ひろ子、おはよう」

と、星子もひろ子に挨拶すると、すぐにあることに気づく。

「ひろ子、そういえば、九は?」

星子はすぐにひろ子に尋ねると、ひろ子、

「九ちゃん、今日、家に迎えに行ってもいなかったから、仕方なく1人で来たんです」

と言うと、ひろ子、

「そうなの。それなら仕方がないね。ひろ子、学校史の編さん、手伝って」

と言うと、ひろ子、

「は~い。でも、九がいなくてもいいのですか?」

と、星子に逆質問。これには星子、

「別にいいよ。だって、ある程度史料は集まったから。だから、あとは参考資料をまとめるだけ。これなら私とひろ子だけでもできるよ」

と言うと、ひろ子、

「それならいいのですけど…」

と、少し不安に思いつつ、納得する。

 

 こうして、午前中は星子の手伝いをすると、午後になってすぐにこの前まで九とよく遊んでいたビーチに急行するひろ子。ビーチに着くなり、すぐに制服を脱ぐひろ子。まわりには地元の人だけでなく、観光客もおり、人前ですぐに脱いでしまうひろ子、まわりの人たちからは、

「えっ!まさか下着姿になるの!!」「恥ずかしくないの!!」

と驚くも、すぐに、

「あ~、よかった!!」

と安堵する姿が見られる。なぜなら、

「なぜなら、私はいつも水着を着ているからだよ」

と、ひろ子は答える。そう、ひろ子はいつでも泳げるように制服の下はいつも水着を着込んでいるのだ。ただときどき、替えの下着を忘れることもあり、水着のまま家に帰ることもしばしば。そんなひろ子だったが、まわりを見るも、いつもいるはずの九がいない。それならばと、ひろ子、

「どう、今日はいつもと違うよ。ちょっと大胆にビキニを選んでみました」

と言う。いつもワンピース水着を着ているひろ子、今日はいつもと違う水着で九と楽しもうとするも、その九がいない。

「…」

と、仕方なく1人で遊ぶも楽しくない…。

 そして、1時間後に1人で遊ぶのに飽きたひろ子は、九といつも行く山のほうなどに行っては遊ぶも、1人では楽しくない。すぐに諦めてほかの場所に移動しても、九はいない。仕方がなく遊ぶも楽しくない。その繰り返し。

 そして、夕方、九の家に行くひろ子だが、

「あら、ひろ子ちゃん、こんばんは。九はまだ帰ってきてないよ。ごめんね」

と、九の母親から言われる始末。これにはひろ子、

「九ちゃん、どこにいったの~」

と叫んでいた。

 翌日、星子のところで学校史の編さんの手伝いを、午後、ビーチに行き、

「どう、水着替えてみたんだ」

と、九がいないのに1人ファッションショーをして、ビーチで遊び、山などほかのところに行っては、九がいないため、1人で遊び、帰り、九の家に行くも九はいない。そんな生活を1週間続けてしまったひろ子。それはまるでエンドレスエイト、ではなく、¥どれセブンといってもおかしくないものだった(いや、アニメが違うでしょ!!)

 

 だが、こんな1週間続けていたら鈍感なひろ子であっても気づくものである。

「私、繰り返し同じ生活をおくってしまった。これって、もしかして…」

そう、ひろ子はようやく気づく…。

「もしかして、思春期症候群!!」

そうそう、何度も何度も同じ日を繰り返してしまう思春期症…、ではない。アニメ違うだろうが、こりゃ。ただひろ子が同じ生活を1週間繰り返していただけだろうが。と、ここで作者のツッコミはあとにして、ひろ子は叫んだ。

「毎日のように遊びに行くのに、九ちゃんがまったくいない。どうしてこうなるの~」

島中どこを探しても九はどこにもいない。ついには、

「私はもっと九ちゃんと遊びたい。でも、どこにもいない。いったいどこにいるの~」

と叫びまくる始末。

 そんななか、偶然ひろ子の前に星子があらわれた。

「ひろ子、どうしたの?」

と、星子が言うなり、ひろ子、

「どこに行っても九ちゃんがいないんです」

と言うと、星子、あることを思い出した。

「それなら、たしか、1週間前に港で九と高坂(雪穂)先生が言い争っているのを見たことあるよ。もしかすると…」

と言うと、ひろ子、

「わかりました。全ての元凶は高坂先生、いや、雪穂先生なんですね」

と、言ってすぐに家に戻っていった。これには星子、

「なんかいやなこと言ったかな」

と、自分の発言について心配していた。

 自宅に戻るひろ子、その口から、

「きっと悪いことが起きているに違いない。そこには雪穂先生が…」

と叫んでいた。

 

(九はきっと雪穂先生に捕まっている。1週間前に九ちゃんと雪穂先生が言い争っていた。雪穂先生はそのとこの恨みを晴らすために九ちゃんを拘束した。きっと今も雪穂先生が九ちゃんを監禁しているに違いない。助けられるのは九ちゃんと長い間過ごした私だけ。九ちゃん、待っててね。今助けに行くから)

ひろ子は九を助けるため、武器になるものを探しに家に帰っている最中、そう考えてしまった。もちろんそんなことはないのだが、ひろ子にとって、

「九を監禁している雪穂先生=悪の権現」

という構図ができてしまった。

 で、家に帰り着いたひろ子はすぐに昼食を作っているひろ子の母親の元に駆け寄り、こう言った。

「お母さん、なにか武器になるもの、ハンマーみたいなものってない?」

ひろ子の母親、ひろ子の言葉にビックリしつつ、あることを聞いてみる。

「どうして武器が必要なの?」

これにはひろ子、堂々と、

「九ちゃんを捕まえている雪穂先生を懲らしめるためです」

と言う。これにはひろ子の母親、

「…」

と無言。ただ、このとき、ひろ子の母親は、

(九ちゃんが雪…、高坂先生に捕まっている?もしかすると、成績の悪い九ちゃんに高坂先生が補習しているのかも。それをひろ子は助けようとしているんだね)

と、解釈してしまうと、すぐに、

「そうだったら、1番奥の倉庫に工具類はおいているよ」

と、ひろ子に言うと、ひろ子はすぐに、

「わかった。ありがとう、お母さん」

と言って、奥の倉庫めがけて走っていった。

 このとき、ひろ子の母親は、

(ひろ子、ごめんね。1番奥の倉庫はただのガラクタしかないのよね)

と思っていた。

 

 ひろ子の家の1番奥の倉庫に入ったひろ子は倉庫の中を物色するとも、出てくるのはガラクタばかり。

「お母さんのうそつきーーーーーー!!」

ひろ子はそう叫びつつ使えるものをを探しまくると、1つのものを手にした。

「これって…」

それは昔、九と一緒に遊んで使っていたピコピコハンマーだった。

「ピコピコハンマーか。でも、無いよりかは仕方がない。これでも雪穂先生を成敗できるね」

ひろ子はそう言うと、ピコピコハンマーを手に倉庫をあとにした。

 

 九が監禁されている場所は検討できていた。島中探してもいない、ただ1つを残して。その場所は九龍高校、ひろ子たちが通う高校でもあった。

「いざ学校へ」

と、ひろ子は息んで学校に向かったが、やっぱりピコピコハンマーではそんなに雪穂にダメージを与えられないことはひろ子でもわかっていた。ということで、

「どこか鉄板の1枚や2枚、落ちていないかな?」

と、ピコピコハンマーに鉄板をつけて攻撃力をアップさせようと鉄板が落ちていないか探すひろ子。でも、鉄板の1枚どころかネジの1本すら道端には落ちていなかった。

 そんなとき、

「あれ、ひろ子ちゃん、ピコピコハンマーなんか持ってどうしたの?」

と、ハッピーさんがひろ子を見つけるなり、声をかけてきた。

「あっ、ハッピーさん、おはようございます」

と、ひろ子はハッピーさんに挨拶するなり、続けて、

「今、ピコピコハンマーをパワーアップさせようと思って、その道具を探しているのです」

と答える。すると、ハッピーさん、

「それだったら、そのピコピコハンマーを黄金色に染めたらどうかな。黄金色のハンマーだったら、通常の数千倍以上の攻撃力になると思うよ」

と言うと、ひろ子、そのことをまにうけてしまう。

(黄金色に染め上げる。これだったら簡単だ。誰かにゴールドスプレー借りたらいいしね。それだけで、ゆきほ先生を懲らしめるほどのダメージを与えることができる。グッドアイディア)

そう思ったひろ子、すぐに、

「ハッピーさん、ありがとう。これで九ちゃんを救えるよ」

と言って、ハッピーさんのもとから去っていった。

 で、そのハッピーさん、

「って、ひろ子ちゃん、行っちゃったよ。でも、黄金色にハンマーを染めても、ピコピコハンマーだから、あんまり変わらないのよね。それってただの昔の勇者アニメのマネをしただけだから、気分がその分乗ってしまうだけなのにね。ごめんね」

と、ひろ子に対してただ謝るしかなかった。

 

「よ~し、完成だ。ピコピコハンマー改め、ひろディオンハンマー!!」

ひろ子は学校に着くなり、工作室でゴールドに染めることが色付けスプレーを見つけるなり、それをピコピコハンマー全体にスプレーを吹きかけた。吹きかけた20分後、ゴールドスプレーはからになるも、ピコピコハンマーは全身ゴールドハンマーに染め上げていた。

 途中、校門のところで雪穂は職員室にいると聞いていたひろ子はひろディオンハンマーを手に職員室に行くも空振り。でも、そこにいた校長先生から雪穂が学校の裏にいることを聞いたことで、学校裏に行くことにする。

「雪穂先生、あともう少しで成敗しますからね」

と、ひろ子、口にする。ひろ子は雪穂への断罪までのカウントダウンをしていた。

 そして、学校裏に行くと、こそこそ隠れて九を見ている雪穂を見つける。

「ついに見つけましたよ、雪穂先生」

と、ひろ子、小声で言うなり、雪穂のところへばれずにこそこそと移動する。ただ、ひろ子の頭の中では、

「ひろ ひろ ひろ ひろガイガー ひろ ひろ ひろ ひろガイガー」

と、雄大な、どこか聞いたことがあるようなBGMが流れていた。

 そして、雪穂が気づくことなく雪穂の後をとったひろ子は、

「高坂先生、覚悟!!光にな~れ!!」

と、言いながらひろディオンハンマーを振り下ろした。

「えっ、えっ」

と、驚く雪穂。にあにすることもできず、雪穂は光になる…わけでなく、ただたんに、

ピコッ

と鳴るだけであった。

「光になれ、光になれ」

と言って、ひろディオンハンマーを振るも、ただたんに、

ピコッ ピコッ ピコッ

と鳴るしかなかった。

「そんな~」

ひろ子、逆に精神的大ダメージを食らう。ひろディオンハンマーとはいえ、ただのピコピコハンマーである。でもある意味大ダメージを食らわせることができた、ひろ子に…。

「水木(ひろ子)さん、何をしているのですか?」

と、雪穂がひろ子に聞くと、ひろ子、

「高坂先生を成敗しているのです」

と、正直に言う。これには雪穂、いくら危なくなくてもいい心地がしないので、ひろ子からピコピコハンマー、もとい、ひろディオンハンマーを取り上げる。

「ああ、九救出作戦が…」

と、ひろ子はがっかりするも、

「九救出作戦?」

と、少し疑問に思うと、ひろ子、すぐに、

「九を拘束しているじゃないですか」

と言うと、雪穂は少し考えて、

「私は拘束してないよ」

と答え、ひろ子をある場所に連れて行く。そこにはスクールアイドルの練習をしている九の姿があった。

「九…」

ひろ子は驚いていた。ダンス練習をしている九の姿はひろ子にとってこれまで見たことのない光景だった。

 雪穂は驚いたひろ子に対して説明した。

「金城(九)さんはたった1人で練習していたんだ。それも朝から夕方まで。あの子はスクールアイドルになるためにくる日もくる日も練習していたんだ」 

 これにはひろ子、

(えっ、九ちゃんってスクールアイドルになるために毎日朝から夕方まで練習していたの!!私、てっきり雪穂先生が九ちゃんを拘束していると思っていたよ。でも、こんなこと、なんでしているの?私に言えば一緒にやるのに)

と思うと、すぐに、

「なんでそんなこと、言わないのですか?」

と、雪穂に聞く。それには雪穂、

「私としてはこのことは黙っているべきと判断した。だって、誰も教えたくない秘密があるからね」

と説明した。雪穂は九がひろ子にも黙っていたことについて、

(きっと学校裏でしてたのを誰にも教えたくなかったのね。やっぱ、九も恥ずかしがり屋なのかな?)

と思っていた。が、実は学校内で一番涼しいからとは誰もが知らない事実である。ただ、ひろ子にとって今の九の姿は心動かされるものがあったのは確かだった。

 そして、ひろ子はすぐに、

(なんてことしてしまったの。私、勘違いしていたよ。雪穂先生には悪いことをしちゃったよ。でも、私、こんな九の頑張る姿、見たことないよ。こんな私も九ちゃんと一緒に頑張ればスクールアイドルになれるかな。私も九ちゃんと一緒にスクールアイドルになりたい!!)

と、思うとすぐに、

「私、とんでもない間違いをしてしました。ごめんなさい」

と、雪穂に謝るとすぐに、

「私、九ちゃんのために何かをしたいから。高坂先生、ごきげんよう」

と、ひろ子は九のところに行ってしまった。これには雪穂、

「?」

と、ハテナ顔をするも、

「どんな考えだったのかわからないけど、これはこれでよかったのかな」

と、妙に納得していた。

 

「九ちゃん!!」

と、ひろ子は突然九のところにあらわれたため、九、

「わっ!!ひろ子ちゃん、どうしたの?」

と、驚きながら言うと、ひろ子は、

「私も混ぜて。私もスクールアイドルになりたい!!」

と言うと、九は、

(どうしてここにひろ子ちゃんがいるの?誰にも言っていないのに…)

と、一瞬思うが、どこから聞いたのかひろ子に聞くも、風のたよりとだけ言っただけで気にせず、

(ま、いっか)

と思ってすぐに、九は、

「よし、ひろ子ちゃんも仲間だ。私たち2人でスクールアイドルになろう!!」

と言った。こうして、ひろ子も仲間として加わることになった。

 



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スピンオフ 第3.3~6.5話 九・ひろ子編 第3回

 そして、九とひろ子、2人の練習が始まった。もちろん、2人でスマホの動画を見ながら踊りの練習をしている。その動画のタイトルは「サルでもわかるスクールアイドル講座」。でもって、2人で踊っていると、1人ではわからないところも出てくる。

「九ちゃん、腕はもっとあげたほうがいいよ」

「ひろ子ちゃん、うん、わかった」

2人で動画と違うところを指摘していく。これを雪穂が草葉の陰から見ていると、

「うん、なんか2人ともスクールアイドルに見えるね」

と、なんだか感激していた。

 だが、雪穂はこのとき、ある場面をフラッシュバックする。

「亜里沙、ここ、違うよ」

「雪穂、そうだね。ありがとう」

「みやこ、ここはこう肘をあげて」

「愛さん、そうですね」

雪穂は昔の高3のとき、スクールアイドルとしてみんなと練習したときのことと九とひろ子、2人の練習の様子を重ね合わせてみてしまった。

「あれ、なんか涙がでてきた」

雪穂は感じた、自然と涙がでていることを。スクールアイドルになるために頑張る2人に感動したのかもしれない。

 雪穂はそのとき、自然と自分のスマホを持ってあるサイトにアクセスした。そして、雪穂は一言。

「金城さん、水木(ひろ子)さん、スクールアイドルに本当になりたいようだね」

この言葉のあと、スマホにはあるサイトのホームページが表示されていた。

「なぞの音楽屋さん」

雪穂はそこに何かを書き込むと、すぐにサイトを閉じてその場をあとにした。

 

 九とひろ子が一緒意練習を始めて数日後。

「これでサルでもわかるスクールアイドル講座(最終回)を終わります」

という動画からの音声を耳にした九、

「やったよ、ひろ子ちゃん。私たち、講座を全部受講できたよ」

と言うと、ひろ子、

「うん、やったね、九ちゃん。私も全部受講できて嬉しいよ」

と言うと2人は喜んだ。動画は1回あたり10分なので、全10回で100分。それでも全部をやるのは大変なことである。それでも、2人はたった数日で全部受講してのだ。やり遂げたという達成感は2人にとって初めてだった。

「九ちゃん、私、九ちゃんと一緒にやり遂げたのって初めてだよね。2人でやり遂げたのがこんなに嬉しいことなんて始めて知ったよ」

と、ひろ子が言うと、九も、

「私も初めて。もっといろんなことをやり遂げたいよ」

と喜んで言った。

 だが、明日から何をするかまだ決めてなかった。

「九ちゃん、明日からほかのスクールアイドルの動画を使って練習する?」

と、ひろ子が九に聞くと、九、

「う~ん、それもそうだね。明日になればなんかいいことが起こりそうかも」

と、あっけらかんに言うと、ひろ子、

「九ちゃんがそう言うんだったら、明日決めよう」

と言って、2人はその場で解散した。

 

 そして、翌日。2人は仲良く学校裏に行くと、校舎の窓枠のふちにあるSDカードを見つける。

「あれ、これって何かな?」

九がそう言ってSDカードを持ち上げると、なにかSDカードと一緒にはさんでいた手紙が見つかる。ひろ子がそれを拾ってひろげると、

「スクールアイドルを応援する者だって」

と、紙に書いてある文字を読むと、九はいきなり、

「えっ、本当に本当!!」

と驚いてしまった。

 九はすぐに自分のスマホにSDカードをセット、音を鳴らしてみる。すると、

「秋のまど あけていると~♪」

と、聞いたことのない音とともに女性の歌声が聞こえてきた。

「これって聞いたことがない曲だよ。私たちのための新曲かもしれないよ」

と、ひろ子が言うと、九、

「私たちの曲、私たちの曲だ!!」

と、元気よく飛び跳ねながら言った。ちなみに、この曲、実は数日前、2人の練習に感動した雪穂が「なぞの音楽屋さん」に発注してできた曲である。そして、早朝、雪穂が2人のために学校裏の校舎の窓枠のふちに手紙とともにはさんでいたのだ。

 そんなことは2人は知らずでも、2人にとって初めての自分たちだけの曲だったので、2人はすぐに踊りを考えていく。

「これでどうかな」

と、九が自分で考えた踊りを披露すると、

「いいんじゃないかな。で、次はこんなふうにして」

と、ひろ子も九の続きの踊りを考えて披露する。すると、九は、

「うんうん、いいんじゃないかな」

と、ひろ子に同意する。

 こうして、その日一日は2人でこの曲の踊りをすべて考えて決めていった。もちろん、2人にとって一から踊りを考えていくのはじめてである。それでも、2人にとって自分たちだけの踊りを作り上げるのは楽しいことだった。ひとつも苦ではなかった。

 そして、夕方。

「ここをターンして終わり。で、どうかな、ひろ子ちゃん」

と、九が言うと、ひろ子も、

「もっと手をあげたほうがかっこよく見えるよ」

と、九に指摘すると、九、

「そうでね。で、これで終わり、でいいのかな?」

と、ひろ子に聞くと、ひろ子、

「そうだね。これで完成だね」

と、九に言うと、九、

「これで、私たちの、私たちだけの曲が完成したね」

と、喜びながら言うと、ひろ子も、

「うん、そうだね」

と、九と一緒に喜びあっていた。2人の初めての作業、2人で自分たちだけの曲の踊りをすべて考える、これについて、九はこのとき、

(2人だけの曲、2人だけの踊り、すべてが完成したんだ。自分たちだけの曲、それが完成したんだ。自分たちだけの力で完成したんだ。自分たちだけの努力でできるなんて、こんなに嬉しいことなんだね)

と思っていた。それはひろ子も同じ気持ちだった。

 

 この翌日、ひろ子は九より少し早く学校に登校していた。そして、まず最初に図書室を訪れた。そこには星子がいた。

「星子先輩!!」

と、ひろ子は挨拶する。早朝にもかかわらず星子は学校に来ていた。

「ひろ子、どうしたの?」

と、星子が聞くと、ひろ子、

「本当にごめんなさい。勝手に学校史の編さんをさぼってしまって」

と、星子に謝る。ただ、星子はそんなひろ子に対し、

「いや、いいんだよ。これは最初から私1人だけで行う予定だったからね」

と言うと、続けて、

「でも、九とひろ子のおかげで予定より早く進んだからね。あともう少しで完成だよ」

と答える。これにはひろ子、

「よかった~」

と安心すると、それを見た星子、

「だから、あとは私1人で大丈夫だよ。それより、ひろ子、九と一緒にやりたいこと、見つけたんじゃないかな?」

と、優しく接すると、ひろ子、

「うん」

と大きくうなずく。これに星子、

「それはよかったね。九と一緒に頑張ってね」

と優しく答え、ひろ子を送っていった。

 続けて、ひろ子が訪れたのは職員室にいる雪穂だった。

「雪穂先生、ついに私たちだけの曲が完成しました」

と、雪穂に報告するひろ子。ただ、雪穂はたんに、

「うん」

と、答えるだけであった。実は、雪穂は2人が自分たちの曲の踊りを完成するまでずっと草葉の陰から見守っていたのだった。なので、そのことは雪穂も知っていた。だが、それでもそのことは黙っていた。

 そして、ひろ子は雪穂に対して言った。

「自分たちだけの力で、自分たちだけの曲を完成させる、こんなに嬉しいことは今まで経験したことがありません。スクールアイドルって、自分たちの力でいろんなことをやり遂げる、そんな嬉しい経験をさせてくれるのですね」

と言うと、雪穂は、

「うん、そうだね。スクールアイドルって、今まで経験したことがないこと、今まで会えなかった自分たちが知らない人たちに出会える、いろんな経験をさせてくれる。そう、スクールアイドルって楽しいことばかりなんだよ」

と言うと、ひろ子、

「はいっ」

と、元気よく答えた。

 そして、雪穂はすぐにひろ子にあることを伝えた。

「スクールアイドルっていうのはね…」

 

「もう、ひろ子ちゃん、遅いよ!!」

と、九はひろ子に遅れてきたことを怒っていた。ひろ子が朝早く学校に来て、星子と雪穂に会っていたのだが、そのせいで九より遅れて学校裏に来てしまったのだ。

「九ちゃん、ごめん」

と謝るひろ子、そんなひろ子に対し、九、

「今日から昨日考えた踊りを人前でも踊れるように練習しないとね」

と言うと、ひろ子も、

「うん、そうだね」

とうなずいていた。

 

 そして、夏休み最終日までの残された時間、九とひろ子の2人は自分たちのための新曲、「オータムウインド」の練習に費やした。

「ひろ子ちゃん、ここ、もっと大声で歌ったらどう?」

と、九がひろ子に意見すると、ひろ子は、

「あんまり大声ださないほうがいいんじゃないかな。だって、これって失恋ソングだから」

と反対する。また、踊りに関しても、

「ここはもっと大きく、大きくあらわさないと」

と、九が言うと、ひろ子は、

「あんまり大きく表現しちゃうと、失恋ソングとかけ離れてしまうよ。それより、もっと小さく表現したら言いたいことがわかるんじゃないかな」

と言うと、九も、

「ひろ子ちゃんの言うならそれでいいと思うよ」

と同意する。こうして、2人で微調整しながら自分たちが納得するまで練習に明け暮れていった。そして、練習していくうちに九は思った。

「なんでかな?とてもキツイのに、ひろ子ちゃんと練習することが楽しく感じちゃうよ」

そう、九は練習するうちに気づく、2人で練習を重ねるごとに楽しくなっていくことに。

 

 そして、

「九ちゃん、ここはもっと小さく動かさないと」

と、ひろ子は九に注意すると、九も言う。

「ひろ子ちゃんもあまり小さくなりすぎているよ。もう少し大きく動いたほうがいいよ」

夏休み最終日。2人は朝から最終調整をしていた。たった5分間の曲に自分たちの思いをのせた新曲、「オータムウインド」は完成へと近づいていった。

 そして…。

「ターン、そして、終わり!!」

九の終わりの合図で2人は動きを止める。

「これでどうかな?」

と、九が言うと、ひろ子も、

「うん、そうだね」

と同意する。その瞬間、

「やったー!!これで私たちだけの曲が完全に完成したよ」

と、九が喜ぶと、ひろ子も、

「うん、そうだね。私たちだけの曲、私たちの初めての曲、完全完成だね!!」

と、九と向かい合って喜んでいた。

 そして、九はこのとき思った。

「私たちだけの曲、私たちの初めての曲、これでようやくみんなに見せることができる。きつかったなあ、練習の日々。それでも、この曲をみんなに見せられるれビルに仕上げた。なんてすがすがしいんだ。こんな達成感、もう味わえないよ。みんなに見せたいよ。でも、なんで私、スクールアイドルになろうとしたのかな。たしか…、学校を守ろうと…。でも…、今は…」

そんなとき、九はふと気づいた、恭賀夏休み最終日であることを。そして、こんなことを言った。

「いやぁ、これで夏休み最終日だね」

これにひろ子、

「本当にそうだね」

とうなずく。さらに、九、

「でも、これで少しはさまになったかな?」

と、自分たちの新曲についての出来を少し心配すると、ひろ子は、

「私はスクールアイドルぽくなっていると思うよ」

と答えると、九も、

「それもそうだね。でも、私はそれをみんなに見せたいかな」

と答え返した。

 そして、ひろ子は九にあることを聞いた。

「九ちゃん、ちょっと聞きたいことがあるけど。九ちゃんってなんでスクールアイドルになりたいの?」

これには九、

「私は…」

と、言葉を詰まらせる。対して、ひろ子、

「それって学校を、島を、町を守ること?」

と言うと、九、

「私、最初、スクールアイドルになって、この島を、町を、そして、高校を守ろうと思っていた。けど…」

と言うと、すぐに、

(私、今、ひろ子ちゃんと一緒に1つのことをやり遂げようとしている。スクールアイドル講座の受講、曲の踊りを考え、練習する。それはただ1つの小さな通過点にすぎないけど、その通過点をすぎていくごとに、私たちは少しずつレベルアップしている。その都度、自分たちはレベルアップしているという充実感が、達成感が味わえる、そして、それをみんなに披露する、それがいいんじゃないかな。そう思うと、学校を守ろうというのはなんか小さくみえてしまったのかもしれないね)

と思い、九はひろ子にあることを元気よく自分の思いを告げた。

「でも、練習を続けることでなんかわかってきた、スクールアイドルってやること自体に意味があるんだって。やって、いろんなことを楽しんで、それをお客さまに伝える。スクールアイドルって楽しくやることがすべてだと思えるんだよ」

 



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スピンオフ 第3.3~6.5話 九・ひろ子編 第4回

 九と、ひろ子はこのあと、明日の始業式でみんなに新曲を披露することを決め、家路に着く。そして、ひろ子は九と一緒に帰る最中、

「九ちゃん、実は雪穂先生からあることを聞いたんだ」

と言うと、これに九、

「なにを聞いたの?」

と聞き返すと、ひろ子はあることを伝えた。

「実は、スクールアイドルが廃校を救うのは幻想だったんだ」

これには九、

「えっ!!」

と驚く。ひろ子は続けてあることを言った。

「μ‘sは音ノ木坂の廃校を救ったのは実はラブライブ!に出場する前のことだったんだ。第1回ラブライブ!に出場するため、μ’sは頑張っていた。そして、それが音ノ木坂を盛り上げることになり、ラブライブ!出場を前に廃校しないことが決定したんだよ。でも、メンバーの病気がきっかけで第1回ラブライブ!には出場できなかったんだ」

これに対し、九、

「廃校を阻止したのに、ラブライブ!に出場できなかったなんて…」

とショックを受けるも、ひろ子は、

「でも、第2回ラブライブ!にむけてμ‘sは精一杯頑張って、精一杯楽しんだ結果、ライバルであり、第1回ラブライブ!で優勝したA-RISEを最終予選で破り、その勢いで第2回ラブライブ!で優勝を果たした」

と言うと、九は、

「やったんだね、やったんだね」

と喜ぶも、ひろ子はつらい表情で続きを言った。

「第2回ラブライブ!のμ‘sの優勝と、そのあとに行われたスクールアイドルフェスティバルの盛り上がりで、スクールアイドルは大いに盛り上がった。けど、その盛り上がりの中で、μ’sのサクセスストーリーが1人歩きし、結果、2つの悪い考えが広がった。1つはラブライブ!など有名な大会で優秀な成績を残したスクールアイドルが、下の成績のスクールアイドルを見下す、「スクールアイドル勝利至上主義」と、それに伴う「スクールアイドル特待生制度」、そして…」

これに九、

「そして…」

と言うと、ひろ子は続けて言った。

「「スクールアイドルは廃校を救う」、ラブライブ!などで活躍すれば廃校すら覆せる影響力を持っている、という幻想だった」

これには九、

「幻想…」

と言うと、ひろ子はその続きを言った。

「でも、「スクールアイドル勝利至上主義」と、「スクールアイドル特待生制度」については、雪穂先生たち、オメガマックスがラブライブ!を通じて打破したんだ。こうして、今では全国のスクールアイドルたちは心から楽しんで活動している。けれど、「スクールアイドルは廃校を救う」という幻想は残ってしまった」

これには九、

「なんで、なんで」

と言うと、ひろこはその理由と続きを言った。

「廃校を救う事例はあまりないんだよね。それがスクールアイドルに限ればもっと少ない。事例が少なければ、この幻想はまだ生き残ってしまう。もっと大きな事例があれば消えると思うんだけどね。けれど、そんな事例はあまり発生していない。幻想は生き残ったまま。これに雪穂先生のお姉さん、高坂穂乃果さんは危惧していた。もし、このまま音ノ木坂にスクールアイドルが残れば、なにかあったとき、スクールアイドルに頼ってしまう。みんなのお陰で音ノ木坂は昔以上に盛り上がっている。みんなのキズナで音ノ木坂は昔よりもよくなった。けれど、もしなにかがあってピンチになっちゃうと、またスクールアイドルに頼ってしまう。だからこそ、スクールアイドルに頼らないで、自分たちの力で、そして、キズナで乗り越えてもらおう、そう思って穂乃果さんたちは音ノ木坂にスクールアイドルを残さなかった。音ノ木坂のスクールアイドルは雪穂先生たち、オメガマックスで最後。でも、スクールアイドルがいない音ノ木坂は今でも元気にやっているよ、みんなのキズナで」

これには九、

「スクールアイドルのいない学校、それでやっていけるのか」

と感動するも、ひろ子の話は終わりではなかった。

「そんな少ない事例だけど、ないこともない。実は5年前、静岡県沼津にある小さな高校「浦の星女学院」にある9人のスクールアイドルがいたんだ。その9人は統廃合を阻止するため、一生懸命頑張っていたんだ」

と、ひろ子が言うと、九、

「誰のことかな?」

と言うと、ひろ子は続けて言った。

「最初は東京で行われたスクールアイドルの大会のファン投票があって、その投票数、「0」、つまり、だれも認めてくれなかった。けど、一生懸命頑張って、一生懸命楽しんだ。そして、最初のラブライブ!では東海予選まで進んだ。でも、結果はそこで敗退。それでも彼女たちは諦めなかった。「「0」から「1」へ、「1」から「10」へ、「10」から「100」へ、そして、「100」からその先へ」。自分たちの輝きを見つけるために、そして、学校を救うために一生懸命頑張って、一生懸命楽しんで、一生懸命もがき苦しんだ。そして、前回は果たせなかった東海予選を突破。しかし…」

と言うと、九は、

「しかし…」

と、つられて言うと、ひろ子は、

「しかし、あと一歩のところで夢は散った。あともう少しのところで統廃合は阻止できなかった」

と言うと、九、

「なんで、なんで」

と、ひろ子に追い詰めると、ひろ子はそれを無視して話を続けた。

「でも、彼女たちは諦めなかった。学校のみんなからの「ラブライブ!に優勝して、私たちの学校「浦の星女学院」の名を刻んできて」という声に答えるため、一生懸命頑張って、一生懸命楽しんで、そして、ラブライブ!で優勝した。自分たちだけの輝きを見つけてね」

と言うと、九、

「もしかして、Aqoursのこと?」

と言うと、ひろ子、

「そうだよ、Aqoursのことだよ。そしてね、九ちゃん、あの私たちが最初に受講した「サルでもわかるスクールアイドル講座」、あれをつくったのもAqoursなんだよ」

と言うと、九、

「えっ、あれってAqoursが作ったの!!」

と驚くと、ひろ子、

「あれね、Aqoursの3年生が卒業したあと、未来のスクールアイドルを目指す人たちのために何かを残したいという思いからメンバー全員が考えて作った映像らしいよ」

と言うと、九、

「未来のスクールアイドルのために…。へえ、そうなんだ。でも、なんで、映像の途中で黒魔術がでてきたり、「がんばルビィ」とか「未来ずら~」て聞こえてくるのかな?」

とひろ子に聞くと、ひろ子、

「それは…」

と、言葉に窮する。九、さらに、

「それにそれに、「ぶぶーですわ」や「シャイニー」、「ハグしよう」なんか聞こえてきたり、あと、「堕天使リリィー」とか呼ばれたりとか、さらにさらに、「全力前進ヨーソロー」といきなり言ったり、あと、みかん押しが強いというかさ…」

と言うと、ひろ子、これには、ただ、

「それはなんともいえません…」

というだけであった。

 と、ここでひろ子、軌道修正。

「でもね、彼女たちも「スクールアイドルは廃校を救う」という幻想にとりつかれながらも一生懸命頑張って、一生懸命楽しんで、自分たちだけの輝きを見つけたんだよ」

と答えた。九はこのとき、

(廃校を救う、スクールアイドルってそんな力を持っている、私はこれまでそれを信じていた。でも、Aqoursみたいに廃校を阻止できなかったこともある。本当に幻想だったんだね。でも、それ以上のものをAqoursは得たってことは…)

と思うと、ひろ子はそれを見て、締めにはいった。

「μ‘s、雪穂先生たちのオメガマックス、そして、Aqours。たとえダメなときがあっても、一生懸命頑張って、一生懸命心の底からスクールアイドルを楽しんだ結果、3組ともラブライブ!に優勝した。そして、μ’sは伝説となり、オメガマックスはスクールアイドルの楽しさを世界中に広げ、Aqoursはラブライブ!の歴史に自分たちの高校の名を刻み、自分たちだけの輝きを見つけた。そう思うと、スクールアイドルって楽しむことがすべてと思えるんだ」

ひろ子はこれを言うと、九の顔を見た。

「スクールアイドルを楽しむ、かぁ…」

九はそう言って、ひろ子を見つめ、自分の考えを言った。

「私、間違っていたよ。スクールアイドルは学校を救うためにあるんじゃないんだね。自分たちが楽しむことがとても大切なんだね。私、ひろ子ちゃんと一緒に練習して気づいた。2人で練習していくうちにとてもきつく感じるのに、どんどん楽しくなっていくことに、さらに、ひろ子ちゃんとともにスクールアイドル講座を受講し終えたとき、新曲の踊りをすべて考えたとき、その踊りをすべてマスターしたとき、このときの達成感はとても気持ちよくってすがすがしかった。私、ひろ子ちゃんとともっと楽しみたい。いろんなことを練習して、いろんなことをやり遂げていきたい。ねっ、ひろ子ちゃん、私と一緒にもっとスクールアイドルを楽しもう」

これにはひろ子、

「うん。私も九ちゃんと一緒に楽しみたい。もっと、もっと、スクールアイドルを九ちゃんと一緒に楽しみたい」

と言うと、九、

「そうだね。でもね、私にはまだ叶えたい野望があるの」

と言うと、ひろ子、

「なに?」

と訪ねる。九は少しためて、自分の野望を言う。

「私、みんなと、学校中のみんなと、スクールアイドル、やりたい!!星子ちゃんも、たい子ちゃんも、生徒全員でスクールアイドル、一緒にやりたい!!もちろん、土居ちゃん、いや、多恵ちゃんも一緒にね」

と言うと、ひろ子、

「それって凄いアイデアだね」

と言うと、九、

「だから、あしたの発表会では多恵ちゃんも誘おうと思うの」

と言うと、ひろ子も、

「そうだね。断られるかもしれないけど、あたって砕けろ、だね」

と答える。これには九、

「砕けたくないよ~」

と苦笑い。これにはひろ子も加わり、

ハハハハ

と笑って帰っていった。

 

 こうして、2学期の始業式のあと、九とひろ子は無理やり多恵を含めて3人で「オータムウインド」を披露し、大成功をおさめた。その中で、雪穂は自分の力がなくてもあれだけやれる、九、ひろ子、多恵の凄さ、執念の凄さに驚いていた。

 そんななか、

「雪穂先生、どうでしたか」「私たちの曲、どうですか?」

と、九から突然今日のことを聞かれると、雪穂、

「簡単なダンスだけど、とてもよかったよ」

と、九を褒める。それに九、

「それはよかった。で、先生」

と、尊厳のまなざしで雪穂を見つめ、

「お願いがあります。私たち、スクールアイドル部の顧問になってください」

と、頭を下げてお願いした。

 それに雪穂は再びあることを聞いた。

「スクールアイドルになぜなりたいの?」

これには九、すぐに、

「これまでは高校などを救いたいという気持ちでした。けれど、今はそれ以上にみんなと一緒にスクールアイドルを楽しみたい。みんなと歌って踊って、それで、みんなと一緒にスクールアイドルであることを楽しみたいと思っております」

と答え、その横にいたひろ子からも、

「私も九ちゃんと一緒にスクールアイドルとして楽しみたいと思っております」

と、はっきりと答えた。

 このとき、雪穂は一瞬フラッシュバックが起きた。

「私も練習、参加していいですか?」

「あなたのお名前は?」

「みやこ、京城みやこです!!」

雪穂が高3の春、きつい練習で新入生が誰もいなくなり、亜里沙と2人だけで練習しようとしたとき、突然あらわれた入部希望者、京城みやこ、そのみやこと九とひろ子、3人をなぜか重ね合わせるように思えてしまう、そんな感じだった。

「みやこ…」

今の九とひろ子ははいりたてのみやこと同じたまご。でも、みやこが雪穂たち、オメガマックスの精神的支柱になったように、九、そして、ひろ子もこれから生まれてくるスクールアイドルの大きな柱になるのかもしれない、そう雪穂は思ってしまった。

 そして、雪穂はある重大な決断を下す。

「わかったわ。金城(九)さん、水木(ひろ子)さん、私が一流のスクールアイドルに育ててあげる」

「ヤッター!!」

と、喜ぶ九とひろ子。それに雪穂、

「あと、この言葉を忘れないでね。それこそスクールアイドルとして大事な心構えだからね」

と、肝心なところはくぎをさしていた。

 その後、多恵には逃げられたものの、雪穂をスクールアイドル部の顧問として迎えいれることに成功した九とひろ子。そして、早速始業式の日から雪穂の特訓が始まった。

「ほら、もう少し顔を笑ってね」

と、雪穂が言うと、九とひろ子、

「「はいっ」」

と答える。2人にとっていきなり新曲の踊りという基本を吹っ飛ばしていきなり実践をしていたので、これではいけないと、ということで、雪穂はまず基本から教えることにした。

 ただ、基本というのはとても大切なことなのだが、基本ばかりしていると面白くなかったりする。それでも、九とひろ子は音をあげることなく、もくもくとこなしていた。

 そして、練習後、

「九、ひろ子、よくがんばったね。でも、基本だけしていて楽しくないかな?」

と、雪穂が九とひろ子に聞くと、ひろ子、

「ぜんぜんですよ。むしろ楽しいですよ」

と答えると九、

「私もです。だって、これから先、もっと凄いことを教えてくれるんですよね。もっと新しいことをしていくのですよね。私にとって、それは楽しむことがどんどん増えていくことだと考えてしまうのですよ。私、これから先、スクールアイドルをどんどん楽しもうと思います。どんなことがあっても忘れない、スクールアイドルっていうのは楽しんだもの勝ちってね。それに、これをどんどんみんなに伝えていこうと思います。私はもうくじけません。絶対に楽しもうという気持ちを貫いていきます」

と語ると、雪穂、

「その調子で頑張れ!!」

と、九を励ます。これに九、

「はいっ!!」

と答えた。

 このとき、雪穂は思った。九はこれからいろんな困難があろうとも、けしてくじけることはないだろう、だって、九は、これから先、九龍高校のスクールアイドルの精神的支柱に成長していくことができるから。そして、けして諦めない不屈の心でみんなを引っ張っていけるのだ、と。

 



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拡大編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第7話


第7話 めいと小明とずる休み

 

「雪穂先生、お願いがあるのだけど」

と、九は雪穂の前であるお願いをする。そのお願いとは…?

「私のこと、九ちゃんと呼んでね」

「九ちゃん!!」

と、驚く雪穂。その瞬間、雪穂、

「九ちゃん、九ちゃん、九ちゃん…」

と、連続して唱えると、

「九!!」

と、いきなり呼び捨てで言ってしまった。

「九!!ちゃんと呼んでよ~」

と、九が叫ぶも、

「九でいいや」

と、投げやりになる雪穂。その横では、

「では、私のことはひろ子と呼んでください」

と、ひろ子がしおらしく言う。それに九、

「ひろ子ちゃん、ずるい~。印象よくもってもらおうとしている」

と、悔しそうに言っていた。

 

(OP 1番のみ)

 

「あそこ、あそこ、九ちゃんたちが練習しているよ」

と、小さな少女が雪穂たち3人の様子をうしろから見ていた。

「小明ちゃん、練習している、ていうより、いちゃついているようにしか見えないよ」

と、これまた不思議っ子ぽい少女が言うと、

「めいちゃん。いちゃいちゃしている、ていうのはおかしいよ」

と、小さな、もとい、小明が言うと、

「でも、本当にいちゃいちゃしているとしか見えないだもの」

と、不思議っ子、もとい、めいが言う。

「これがスクールアイドルっていうのかな?」

と、小明が考えるように言うと、

「そうだよ。いちゃつくことがスクールアイドルなんだよ」

と、めいが決めつけるように言う。だが、この2人、なにかを忘れているようだった。

「それじゃ九、まずは準備体操ね」

と、雪穂が言うと、九も、

「はい!!」

と、準備体操を始める。

「もう少し腕を回して」

と、雪穂が言えば、九とひろ子は、

「は~い」

と、答えて腕を回し始める。

 これを見ていた小明とめい、

「そうだった。思い出した。私たち、スクールアイドルになりたいために来たんだった」

と、小明が言えば、

「そうだ、そうだ。一緒にやりたいために来たんだった」

と、めいも答える。そうである。小明とめいは九たちと一緒にスクールアイドルの練習をしたいために来ていたのである。

「ナレーターさん、なんで教えてくれなかったの?」

と、小明が言えば、めいも、

「そうだ、そうだ」

と言う。って、ここでナレーターという言葉自体この物語では禁句である。

「なんでナレーター、教えてくれないのかな?」

と、小明がぐずぐず言っていると、

「ナレーターって誰のことかな?」

と、小明、うしろからある少女がぬぼうとあらわれた。

「え~と、え~と、九ちゃん!!」

と、小明、うしろを見て九だとわかる。

「に、逃げろ。っね、めいちゃん」

と、小明、逃げようとする。そんでもってめいの方向を見ると、

「小明、私、捕まっちゃった」

と、雪穂とひろ子に捕まっているめいの姿があった。

「めいちゃん、あなたの犠牲は無駄にしないよ」

と、小明、逃げるも、

「あれ、あれ」

と、足が空回り。なぜなら、

「小明ちゃん、捕まえ~た」

と、九が小明の首元をしっかりつかんでいたからだった。

 

「どうしてそこにいたの?」

ひろ子の質問に、

「「…」」

と黙る小明とめい。

「黙っていたらわからないでしょ」

と、ひろ子は小明とめいに怒るも、2人は黙ったままだった。

 すると、九はあることを言い出す。

「もしかして、私たちと一緒にスクールアイドルになる練習をしたいんでしょ」

これを聞いた小明とめい、

「「!!」」

と、ビックリしたような表情になる。これを雪穂は見逃さなかった。

「九の言うとおり、一緒にやりたいのかぁ」

と、雪穂が言うと、小明、

「それは…」

と、歯切れが悪そうに言うと、めい、

「ごめんなさい。私たちは九ちゃんたちと一緒にやりたいの!!」

と、白状する。

「こら、めいちゃん。本当のことを話さないで」

と、小明が言うと、これを聞いた九、

「本当に恥ずかしがりやさんなんだから」

と、小明とめいをからかう。

「だから知られたくなかったのに」

と、小明が困りながら言う。

 そんな小明が嫌がるなか、めいはすぐに雪穂の方を向き、

「お願いがあります。私をスクールアイドルにしてください」

と、お願いをする。小明はというと、

「めいちゃんばかりずるい~。私もお願いします」

と、お願いされる。

 これを聞いた雪穂、

「これから大変になるけど、それでもいい」

と言うと、小明とめい、2人とも、

「「はい!!大丈夫です!!」」

と、元気よく答えた。

 

 こうして小明とめいはスクールアイドルとして九やひろ子と一緒に頑張っていく…、わけではなかった。

「よ~し、これからダンスの練習だ~」

と、小明が元気をだすも、

「ちょっとまって。まだ、柔軟が終わっていないでしょ」

と、雪穂から注意を受けるが、

「ダンス練習をたくさんしないとスクールアイドルにはなれないよ」

と、小明反論するも、雪穂、

「柔軟をしないと怪我になりやすくなるよ」

と注意する。

「は~い」

と、小明はようやく動く。

 また、めいに関してはちょっとした問題があった。

「さぁて、次は発声練習をしましょう」

と、雪穂が言うと、めいは、

「私はパス。発声練習っていやなものはいや」

と、勝手にサボることがあり、

「めいちゃん、ちゃんとやろうよ」

とひろ子が言うも、

「いやなものはいや。じゃあねえ」

と、発声練習のときだけ逃げてサボるようになった。

 さらに小明にも困ったことがおきた。

「これからダンス練習するよ~」

と、雪穂が言うと、小明、

「やったぁ。よ~し、ここをこうやって」

と、突然走り出すと、雪穂、

「危ない!!」

と注意をするが、

「よいっと、よいっと、そらっと」

と、突然アクロバットのような行動をとる。

スパッ トパッ ヒョイット

と、バク転などを成功させる。

「どう、かっこよかった?」

と、小明は自慢げに言うも、

「こらぁ、危ないでしょうが」

と、雪穂は小明に叱る。

「かっこよかったじゃない」

と、小明は反論するも、

「今はダンス練習の時間だからって勝手に行動したらダメ!!怪我のもとになるよ」

と、雪穂が注意するも、

「は~い」

と、あんまり反省していない様子。

 これがこの1週間続いてしまう。しまいには雪穂、ついにキレた。

「小明、めい、ちゃんとやりなさい!!」

これには小明とめいは黙るしかなかった。

 雪穂が小明とめいに怒った翌日、

「あれ、小明とめいは?」

と言うと、九、

「今日は急いで帰りましたよ」

と言うと、雪穂は、

「まさか、昨日のことに根を持っているのでは…」

と、心配そうに言った。

 

 それから1週間後。

「また小明とめいは来ていないのか」

と、雪穂が言うと、九も、

「たしかに。サボる2人じゃないのに」

と言うも、結局、2人は来なくなった。

 

 はたして小明とめいはスクールアイドルをやめてしまったのかだろうか。もう来ることはないのだろうか。次回にすすむ。

 

(ED 1番のみ)

 

次回 理由と生徒会長と禁止令

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第8話(その1)

第8話 理由と生徒会長と禁止令

 

「また、小明とめいは来ていないのかな」

と、雪穂が言うも、ひろ子、

「たしかに。サボる2人じゃないのに」

と言う。1週間ずっと来ていない小明とめい。

はたしてどうしてなのだろうか。このままスクールアイドルをやめるのだろうか。

 

(OP 1番のみ)

 

 その翌日、

「今日もまったく来ていない」

と、雪穂は小明とめいを心配そうに言うと、

「やっぱりサボりじゃないかな」

と、ひろ子がしゃれにもならない風に言う。

 そんなとき、

「あ、あの~」

と、どこからか小さな声が聞こえてくる。

「誰?」

と、まわりを見渡す雪穂。すると、

「あっ、たい子!!」

と、九は小さな声の聞こえる方向を向いて指を指し示した。

「は、はい、たい子です」

と、たい子がこっそりあらわれる。

「どうしたの、川畑(たい子)さん?」

と、雪穂が言うと、たい子、

「3人に見せたいものがあります」

と、雪穂たち3人を呼びかける。

「どこに行くの?」

と、九がたい子に訪ねると、

「めいと小明がなぜ来ていないのかを知らせるためです」

と、たい子は小さな声で答えた。

 

「ここってさとうきび畑だよね」

と、九がまわりを見渡しながら言う。

「でも、これっていつも見慣れているよね」

と雪穂が言う。そう、さとうきび畑は九龍島にとって当たり前の光景だった。九龍島の主産業の1つがさとうきびである。さとうきびは島を代表する特産品ともなっている。

「でも、なぜここなの?」

と、ひろ子が言うと、すぐにたい子は答えた。

「その答えはすぐにわかります」

 すると、さとうきびを植える2人の姿が見えてきた。

「へぇ、さとうきびって今、植えるんだね」

と、九が言うと、たい子は説明を始める。

「さとうきびは春に植えるものと夏に植えるものの2つの方法があります。今やっているのは夏に植えるものです。夏に植えて2年目の冬に収穫します」

「へぇ、そうなんだ」

と、雪穂が納得したそのとき、ひろ子はあることに気づいた。

「でも、あの2人って誰かに似ている。って、あれって、小明ちゃんとめいちゃん!!」

そう、さとうきびを植えていたのは小明とめいだった。

「でも、さとうきびって機械でも植えることができるのでは?」

と、雪穂が疑問に思うが、たい子はそれについても説明する。

「たしかに機械でも植えることができるのですが、いろんな理由から自らの手で植えるのがいいのです」

「でも、なんで小明ちゃんとめいちゃん、2人だけで植えているの?」

と九が言うと、たい子は、

「実は…」

と、実情を説明した。

「めいの両親はさとうきび農家を営んでいます。その父親が1週間前に大怪我をしてしまいました。普段は両親がさとうきびを植えて育てているのですが、大怪我のため、一番大事な時期にさとうきびを植えることができなくなりました。そこで、めいは大怪我しためいの父親のかわりにさとうきびを植えているのです」

 これを聞いた九、

「それじゃサボりじゃなかったのね」

と言うと、たい子、

「サボり!?」

と、ビックリするように言う。これには雪穂、

「サボりっていうわけじゃないけど、1週間前から練習に来ていなかったから?」

と言うと、たい子、

「練習!?めいと小明は何をしようとしていたのですか?」

と聞くと、ひろ子、

「スクールアイドルになるための練習をしていたのです」

と答えた。

 すると、たい子はあることを言い出す。

「だから、夜遅くまで一緒にいたんだね、あの2人」

これを聞いた九、すぐに、

「小明ちゃんとめいちゃん、夜遅くまで何をしていたんですか?」

と、聞き入るように言うと、たい子、

「実は小明の家から夜遅くまで音楽が流れていたのです。そこで、ちょっとのぞいてみると、2人でダンスの練習をしていたのです」

と言うと、雪穂、

「ということは、小明ちゃんとめいちゃん、私たちに内緒で練習していたんだ」

というと、九、

「このままじゃ納得できな~い」

と言うと、なんと、小明とめいの方へ駆け抜けていく。

「ちょっと待って、九」

と、雪穂の制止を聞かずに。

 

「えっ、九ちゃんがなぜここに!!」

と、小明はビックリしながら言うと、めいも、

「えっ、どうして!?」

と戸惑う。

 そんなことを気にせずに九はすぐに、

「めいちゃん、小明ちゃん、私もまぜて」

と言うと、めい、

「えっ、私たちがさとうきびを植えているのって秘密じゃなかったかしら」

と言うと、追いかけてきた雪穂から、

「それって秘密だったの?」

と、逆に言われる。小明はすぐに雪穂の隣にいるたい子に向かって、

「このことは秘密って言っていたよね、たい子」

と言うと、たい子、

「だってこのままじゃ2人がかわいそうじゃない」

と反論。

 そんなたい子、めい、小明に対し、雪穂が、

「でも、どうして秘密なの?」

と聞くと、めいは恥ずかしながら、

「だって、練習に行かなくなったことに対し、私、いや、めいは責任を感じているのです。でも、練習しないままじゃ足手まといになりやすいので、このままフェードアウトすればいいかなって」

と言うと、小明、

「でも、めいだけじゃ怪しまれると思って、私、いや、小明も一緒に抜けたのです。でも、フェードアウトしようと思う以上にまたみんなと頑張っていきたいと思うようになっていき…」

と言うと、たい子は、

「だから、夜遅くまで練習していたのですね」

と、まとめるように言った。

 これを聞いた雪穂、

「それじゃ、今からその練習の成果、見せてくれない」

と、めいと小明に対して言うと、めい、

「わかりました。それじゃ小明、それにたい子、一緒に踊ろう」

と、元気よく言うと、たい子、

「えっ、私も。私、やったことないよ」

と言うも、小明、

「いつもかげから練習を見ていたんでしょ。そのこと、小明が知らないって思っているの?」

と言うと、たい子、

「わかった、わかった」

と言って、たい子、めい、小明は横一列に並んで踊り始めた。

 

1年生 挿入歌 「ウィンターガーデン」

 

白い雪    落ちてくる

きれいな   結晶をみせて

あたり一面  まっしろの

じゅうたんが ひろがってる

 

そこにダイブ  してみたら

痕跡を     残せるかな

私がいたという 痕跡が

永遠に     残せるかな

 

まっしろの キャンパスに

私という  色を染めたい

一生のこる 私との

つながりを のこしたい

だからこそ わたしのこと

ぜったい  忘れないでね

 

とおい道    みえなくて

あたりは    まっしろな世界

どんなどこでも まっしろな

なにもない   世界がある

 

そこにいつも  つながって

存在を     残せるかな

私のこと忘れ  ないように

傷跡を     残せるかな

 

まっしろの キャンパスに

気持ちという 色を染めたい

心がはじけ 染め上げた

カラフルな キャンパスに

だからこそ 私のこと

ぜったい 覚えていてね

 

あなたのこと 忘れたくても

忘れられない なぜなら

とてもまっしろな 公園を

みていたら 思い出すの

思い出というカラーがキャンパスを

染め上げたことを

 

まっしろの キャンパスに

私という 色を染めたい

一生のこる 私との

つながりを 残したい

だからこそ 私のこと

ぜったい 忘れないでね

 

私のこと 忘れないでね

 

「す、すごい」

と、九が言うと、ひろ子、

「これが1年の本気だね」

と、驚きながら言うと、雪穂、

「だけど、勝手に休んだ罰を与えないとね」

と、冷静に言う。

「罰、もしかして私も」

と、たい子が言うと、雪穂、

「川畑(たい子)さんもよ。で、罰は、私と九、ひろ子もさとうきびを植えるの手伝うこと」

と、元気よく言うと、

「それでいいんですか?」

と、めいが恐る恐る言うと、

「それでいいんです」

と、雪穂はで~んとしながら言う。

 そして、続けて雪穂は、

「そんでもって、さとうきび植え終わったら、川畑…、たい子、めい、小明はスクールアイドルの練習に参加すること!!」

と言うと、小明、

「それでいいんですか?」

と聞くと、雪穂、

「それでいいんです」

と答えた。

 これを聞いためいと小明、

「「ありがとうございます」」

と、雪穂に抱きつく。

 一方、たい子は、

「なんで私もなんですか?」

と、悲しそうに言えば、九、

「一蓮托生ってやつ」

と言われ、たい子、

「なんで~」

と泣いてしまった。

 

 



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スピンオフ 第7.3~8.5話 1年生編 第1回

「お父さん、お父さんが~」

小明とめいが九たちと一緒にスクールアイドルになる練習を始めてから1週間がたった9月のある日、めいが幼馴染のたい子のところに涙を流して飛び込んできた。

「ど、どうしたの、めい?」

たい子は泣いているめいを心配する。めいにとってたい子は唯一相談できる相手である。たい子は誰に対しても親切に対応してくれるので、めいにとってたい子は親友以上の中だと思っていた。

「お父さんが、お父さんが死んじゃうよ~」

と、めいは泣きながらも、たい子に抱きつこうとするも、たい子、

「お、落ち着いてね、めい。本当に落ち着いて」

と、抱きつこうとするめいをはなそうとしつつも、めいを落ち着かせようとしていた。

「本当に死んじゃうよ~」

と、めいはたい子に父親の現状?を伝えようとする。これにたい子、

「だったら、島の診療所にいきましょう。そこなら適切に処置してくれるし、ドクターヘリも手配してくれるからね」

と、めいにいろいろ言うも、めいはただたんに、

「お父さんが死んじゃうよ~」

と一点張り。

 たい子はこんなめいの反応にすぐにある場所に電話する。

「もしもし、小明。私、たい子」

電話したのはたい子とめいの幼馴染、小明だった。

「小明、今どこにいるの?ちょっと助けて欲しいけど」

と、たい子が言うと、小明、

「助けて欲しいの。わかった」

と、明るい表情で答える。それにたい子、

「で、今はどこにいるの?」

と、何度も言うと、小明、

「ん、今、町の診療所」

と言うと、たい子、

「ならよかった~。それならお医者さんをめいのお父さんのところに連れてきて」

と、たい子が小明にお願いすると、

「うん、わかった。でも…」

と、前置きを言うと、すぐに、

「でも、めいのお父さん、今、診療所にいるよ」

と答えると、たい子、ただたんに、

「えっ!!」

と、拍子抜けしてしまった。

 

「ごめんなさいね、たい子ちゃん。お父さんたっらただ屋根から落ちただけなのよ」

と、めいの母親から簡単に事情の説明を受けたたい子、

「はぁ~」

と、少しため息をする。

 ここは待ちの診療所。たい子は小明の電話のあと、めいを連れて町の診療所にやってきたのだった。

「で、足の骨を折る怪我、ですか。私はてっきり思い病気にかかったり、大事故にあったと思いました」

と、たい子は心配そうにめいの父親のほうを見ると、

「いやぁ~、屋根から落ちたときには死んじゃうんじゃないかと思いましたよ。でも、足の骨折だけですんでよかったですよ。はは」

と、めいの父親は笑って言うと、たい子、

「本当に足の骨折だけでよかったと思いますよ」

と安心する。

 そして、たい子は病室の床に正座しているめいと小明を見る。

「で、めいのお父さんが骨折した理由がめいと小明にあるんですよね!!」

たい子、めいと小明を怒るように見つめると、めいと小明、

「「はい」」

と、ただたんに返事をする。たい子は2人をにらみつつ、事実確認する。

「え~と、台風で被害を受けた屋根を修繕するため、めいのお父さんははしごで屋根に上って屋根の修繕をしていた」

これには2人とも、

「はいっ」

と追認する。たい子はそれを見て話を続ける。

「で、そのとき、その近くでめいと小明がボール遊びをしていた。で、そのボールがなんかの拍子ではしごに当たってしまい、倒してしまった」

これにはめい、

「だって、ボールが勝手にはしごに当たったんだよ」

と、言い訳を言うと、小明も、

「そうだよ。ボールが勝手に当たっただけだよ」

と、さらなる言い訳を言うも、たい子、

「そう、ボールに意思ってあるのかね」

と、2人をにらむと、2人とも、

「…」

と黙ってしまう。たい子はさらに話を続ける。

「で、めいのお父さんは、それに気づいて屋根のふちに行って助けを求めたものの、運悪く足を滑らしてしまったと」

これにはめい、

「そうだよ。運悪かっただけだよ」

と、言い訳を言うと、小明も、

「そうだよ」

と、めいに同意するも、たい子、

「もとはといえば、めいと小明がはしごを倒したことが原因でしょ。ただたんに運が悪いということだけで片付けられる問題じゃないの。わかる!!」」

と、めいと小明に怒るように言う。これには2人とも、

「「はい…」」

と、しゅんとなってしまう。

 そして、たい子はめいのほうを見るとすぐに、

「でも、めいにとって屋根から落ちたお父さんを見て、「もう死んじゃうんじゃないの。めいがはしごを倒したからだ。めいの責任だ~」と、自分を追い詰めた結果、パニックになって私のところに来た。それで間違いない」

と言うと、めい、

「うん」

とうなずく。一方、小明は、

「人は屋根から落ちても死なないよ。だって、小明は屋根から落ちても平気だったよ」

と言うと、たい子、

「それは小明が運動神経が抜群だからです。どこでも平気でバク転できる小明と普通の人のめいのお父さんじゃまったく違うのだからね」

と言うと、小明、

「そうかな」

と言う。小明は九と同じくらい楽天的な考えの持ち主なので、たとえ誰も屋根から落ちても小さな怪我ですむと簡単に考えていたのだった。

「もう、小明は…。はぁ~」

と、たい子は楽天的に考える小明を見てため息をするしかなかった。

 だが、ここでたい子はあることに気づいた。

「で、めいの家って屋根の修繕、終わったの?」

と、たい子が言うと、めいの父親から、

「それは大丈夫です。屋根の修繕を終えたあとでしたから、屋根から落ちたのは」

と言うと、たい子、

「それはよかった」

と安心する。奄美にある九龍島は8月が台風のシーズンである。で、運悪くめいの家はこのまえの台風で屋根にダメージをこうむったのだ。そのため、少しでも雨が降ると雨漏りが発生してしまう。それを防ぐため、屋根を修繕していたのだ。それが終わっているのであれば、もう雨漏りの心配はなくなった。

 だが、そこには新たなる問題が発生する。

「でもね…」

と、めいの母親はなにか悩んでいるふうに言うと、たい子、

「なにか問題でも?」

と、めいの母親に尋ねてみる。すると、めいの母親はため息をしつつ答えた。

「実はさとうきび、まだ植えていないのよ」

これにはまわりにいる人たちはみな、

「あっ」

とただたんに言うしかなかった。

 

 それから少し時間がたって、めいの家。

「どうしたらいいのかな」

と、たい子は悩んでいた。そして、

「たしかに死活問題ですね。だって、めいの家ってさとうきび農家だからね」

と、たい子が言うと、めい、

「めいの家、このままじゃ一文無しになっちゃうよ」

と、泣きそうな目でたい子を見ていた。

 たい子はそんなめいを見つつ暗そうに言う。

「今月中にはさとうきび全部植えないといけないもんね」

 では、なぜさとうきびを今月(9月)中に植えないといけないのだろうか。それにはさとうきびの育成時期にある。さとうきびは2つの育成時期がある。まず、1つ目は4月に植えて、その年の12月から3月にかけて収穫するもの(春植)、2つ目は9月に植えて、翌年の12月から3月に収穫するもの(夏植)である。めいの家族が今からおこなうのは夏植のほうである。春植は1年で収穫できるのだが、植えた直後に台風や干ばつなどの自然の影響を受けやすく、収穫量が少ないことがある。逆に、夏植は植えた直後には台風や干ばつなどの自然の影響が少なく、収穫量が春植より多い。ただし、2年間育成するので、土地活用率が低い。

 で、夏植をおこなう上でさとうきびの苗、というよりさとうきびの茎を植える時期が9月なのだ。夏植をおこなう農家は9月にはさとうきびの茎を植えてしまうのだ。なお、植え付けが遅れると、収穫量、品質(さとうきびの砂糖の量)がともに少なくなる。ちなみに、さとうきびを砂糖に製糖する工場は冬の時期しか稼動しないため、さとうきびを収穫する時期は必ず冬(12月~4月)になってしまうのだ。

 話をもとに戻そう。たい子は倉庫に眠る大量のさとうきびの苗を見て、

ハ~

と、ため息をすると、あることを言った。

「いっそうのこと、機械で植えればいいんじゃない」

すると、めいはさとうきび農家の娘らしく堂々と言う。

「それはだめ。だって、さとうきびを機械で植えると、手植えのものよりも多く苗が必要になるもん」

実は手植えの場合、前にとれたさとうきびを事前に発芽しやすいように切ってそれを苗にし、手で植えるのだが、機械だと長いままの苗(さとうきびそのもの?)をそのまま機械に通して切断してから植えるため、無作為に切断するので、発芽する本数が手植えより低下してしまうのだ。収穫量もその分少なくなるので、少し多めの苗が必要となる。

 だが、もう1つ機械ではできない理由があった。たい子はそれに気づく。

「それ以前に、私たちのなかでさとうきびを植える機械を扱える人、いる?」

と、たい子が言うと、めい、

「…」

と、黙るしかなかった。

 そんなとき、小明があることを言った。

「だったらさ、小明たちで植えたらいいんじゃない」

これにはめい、

「それです。それです。小明、いい考えじゃない。それじゃさっそく」

と言うと、たい子、あることを心配するように言う。

「ちょっと待って。なにか大切なこと、忘れてない」

これにはめい、

「なんか忘れてないよ」

と言うと、小明も、

「そうです、そうです」

と同意する。

 だが、たい子は大切なことを言う。

「めいに小明、たしか、九先輩とひろ子先輩と一緒にスクールアイドルになるための練習していたんじゃないかな」

これにはめい、

「あっ、そうでした、そうでした。ちょっと忘れていただけです」

と言うと、小明も、

「私はちっとも忘れていないのですから」

と、自慢げに話す。これにはたい子、

「本当かな?」

と、2人を疑いの目で見る。

 とはいえ、大量のさとうきびの苗を9月中に植えないといけない。たった3人で植えるには多すぎるのだ。

「これだけの量のさとうきびの苗を植えるのは大変だよ。それでもって、めいと小明がスクールアイドルの練習も一緒に行うのは無謀じゃないかな?」

と、たい子は心配そうに言うも、小明、

「大丈夫だよ。そんなの無問題(もうまんたい)!!」

と言うと、たい子、

「楽観しすぎ」

と、小明に注意する。

 そんななか、

「私としては2人にはスクールアイドルの練習にもでてほしいし」

と、たい子が言うと、めい、

「どうして?」

と、たい子に逆に聞く。するとたい子、

「だって、2人が1週間たってもまだ続けているから、いつもなら、「もう諦めた~」って言ってやめちゃうじゃない」

と言うと、小明、

「そんなことないもん」

と反論するも、めいは逆に、

「そ、そうかな」

と、動揺しすぎるくらい、そして、歯切れの悪い答え方。なにか隠そうとしていたのだろうか。

 が、そんなときだった。

「そ、そうだ」

と、めいはあることをひらめいた。

「な、なに」

と、たい子は驚くと、小明、

「なんかひらめいたの?」

と言うと、めい、

「それだったら、ある程度、さとうきびの苗を植えてから九先輩たちに少しのあいだ休むことを報告したらいいんじゃないかな」

と言うと、たい子、

「えっ、なんで少したってから休むことを言うの?それだったら植える前に休むことを言えばいいんじゃないかな」

と言うと、めい、

「さとうきびをいつも植えているめいだって、どのくらいかかるかわからないもん。それだったら、ある程度植えて、どれくらいかかるか予測してから言ったほうがいいもん」

と反論する。

 だが、そんなたい子にもある考えがでてきて、めいに言った。

「そうだ。ほかのさとうきび農家の人たちに手伝ってもらったら」

でも、めいの言葉からでてきたのは意外な言葉だった。

「それは一番最初にめいのお父さん、お母さんがやってくれたよ。でも、みんなさとうきびを植えるので忙しいって断られたの」

実は九龍島のさとうきびは台風シーズンを避けるため、夏植をする農家がほとんどだった。なので、この9月はどこも人手が足りないのだ。その結果、どこもめいのところを手伝うことはできなかった。実は、めいが少し時間をおいてから九たちにさとうきびの手植えのことを言うのもこれが原因だった。たい子、めい、小明の3人でやるとなるとどれくらいかかるかわからない。なので、ある程度植えて、その時間をもとにどれくらい練習を休むか決めようとしていたのだ。

「そうなの。それじゃ仕方がないね」

と、たい子が言うと、小明は、

「小明はすぐに終わると思うよ、さとうきび植え」

と、これまた楽観的な意見を言うと、めいも、

「うん。早く終わらせて九先輩たちとはやく合流しよう」

と言うと、たい子、

「なんか頼りないけど、わかったわ。私も全力で手伝ってあげる」

と、2人に同意した。

 



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スピンオフ 第7.3~8.5話 1年生編 第2回

 で、たい子、めい、小明はすぐにさとうきび畑に行き、さっそくさとうきびを植えていく。

「ひさしぶりにするけど、腰が痛くなるよう」

と、小明が腰を叩きながら言うと、めい、

「我慢して。これがずっと続くんだから」

と、小明を注意する。そんな2人を見て、たい子、

「そうだよ。どんどん植えていこう」

と、2人を励ます。

 そして、かれこれ2時間が経とうとしていた。空にはきれいな夕焼け空が続いていた。それでも3人はどんどんさとうきびを植えていく。

「次の苗はどれかな。どんどん植えていこうよ」

と、たい子が言うと、めい、

「ここにあった苗はある程度植えたから、少し休憩しよう」

と、休憩を提案。これには小明、

「賛成!!」

と、近くにあったブロックに腰掛けると、めいも、

「よいしょっと」

と、地面に座り込む。たい子も仕方なく、

「まったく、2人は。でも、ここで休憩とってからどんどん植えたほうが効率的にいいかも」

と、めいと小明の近くに座る。

 すると、たい子はこの機会だからと思い、2人にある質問をした。

「でも、なんで、めいと小明は九先輩たちとスクールアイドルになるための練習をしようと思ったの?」

これにまず答えたのが小明だった。

「小明はねぇ、自分の特技を活かせると思ったからだよ」

これにはたい子、

「たしか、アクロバットだよね」

と言うと、小明、

「うん」

と答えた。そして、やわらかい地面の上でバク転や側転を何度も行った。

「やっ、はっ、とわっ」

1度も失敗もせずにアクロバットを披露する小明。

「やっぱり何度見ても凄いね」

と、たい子は小明を褒めると、小明、すぐやめてあることを言った。

「九先輩たちが歌を披露して、小明、少し気になってスクールアイドルについて少し検索してみたの。そしたら、雪穂先生がスクールアイドルだったとき、同じグループ内にアクロバットが得意なメンバーがいたんだって。それがね…」

そして、小明はたい子にある映像を見せた。そこには…。

「ビースト?ビーストってあの…」

と、たい子は驚いた。あの人気アイドルグループの映像だった。小明は言った。

「ビースト。アクロバットとかわいさを融合させたアイドルグループ。メンバーはかわいい双子でおなじみの矢澤こころちゃん、ここあちゃん、通称こころあ。そして、アクロバットを得意とするもう1人のメンバー…、それが」

つられて、たい子も、

「それが…」

と言うと、小明はすぐにそのメンバーの名を言った。

「京城みやこさん。ガテン系の体系なんだけど、それにもかかわらず、バク転、側転など、ジャ○ーズアイドルも真っ青なアクロバットはお手の物。そんなみやこさんもスクールアイドルとして雪穂先生と一緒に活躍していたんだって」

これにはたい子、

「雪穂先生って何者なの?」

と言うと、小明、

「少なくともスクールアイドルとしては凄かったらしいよ」

と答え、続けて本心を話した。

「小明だってもっとアクロバットをみんなに見せたいよ。けれど、まわりかわは「やっちゃだめ」だって言われるもん。女性は淑女なれ、もっとおしとやかになれっていわれるもん。女性がアクロバットしちゃだめなの。もっとみせたいよ。もっとしたいよ。もう束縛されるの、いや!!」

 そして、めいも小明に続けて答えた。

「めいも小明の考えを聞いてわかったの。もう我慢したくない。もっとみんなといろんなことをやりたい。女性はなんでも我慢しろ、おしとやかになれ、静かにしろ、もういや。めいも小明と一緒にはじけたい!!」

これにはたい子、

「2人ともいろいろ我慢していたのね」

と、2人に同情していた。実は、たい子も思う節があった。この九龍島は保守的な考えが強かった。昔の考えが強いのだ。たとえば、「女性は淑女なれ」という言葉である。星子のおじいちゃんこと町長をはじめ、多くの人たちはこの考えには賛成だった。そのため、昔から女性は男性の一歩後ろを歩くべきだ、女性はおしとやかに、静かにしておくべきだ、と女性に教えていたのだ。けれど、そんな保守的な空気にめいと小明はいやがっていた。2人にとってその空気は苦痛しかなかった。

「もう我慢したくない」

と、めいが言うと、小明も、

「スクールアイドルになってもっとはじけたい!!」

と言うと、たい子、

「でも、めいの本心は別にあるんじゃないかな」

と、なにかめいがあることをたくらんでいることを見通すと、めい、

「あっ、ばれちゃった。実はスクールアイドルっていろいろ練習しないといけないでしょ。それって鍛錬になるんじゃないかなって」

と、笑いながら答えると、たい子、

「でた~、めいの鍛錬大好き症候群!!」

と言うと、めい、

「なんと言っても変わらないもん!!」

と答える。めい、こう見えて鍛錬という言葉が好きである。なので、もし、走るのであれば走り続ける、どんなことがあってもへこたれないのである。ただし、性格的にへんな責任感から自分を追い詰めたり、逆に大胆な策をとったりと、先がまったく読めない、むしろ、両極端にはいりやすい性格の持ち主である、めいは。

 このめいの言葉にたい子、

「もしかして、さとうきび植えも鍛錬?」

と言うと、めい、

「これはめいが生きていくために必要なことであす」

と答えると、たい子、

「はいはい」

と、ただたんに答える。それにめい、

「なに~」

と、たい子を叩くしぐさをする。

 が、こんなとき、ある人物が3人の前にあらわれる。

「あら、めいちゃんに小明ちゃん、こんばんは。どう、調子は?」

めいの家の近くに住むおばちゃんだった。めい、おばちゃんを見て、なぜか襟を正して一言。

「おばちゃん、私は調子いいよ」

これにそのおばちゃんの隣にいたおばちゃんの夫らきし男から、

「そうだな。めいちゃんのお父さんが怪我したと聞いたからびっくりしたが、めいちゃんと小明ちゃん、そして、たい子ちゃんがいるから大丈夫だな」

と言うと、小明から、

「私だって元気です。頑張っていますから」

と言うと、男から、

「そうだな。でも、女性というのはもっとおしとやかでいるべきだからな。もっと清楚に、もっと静かに、そして、もっとおしとやかに。これこそ男性がもっとも好む女性像である。はは」

と、大声で言うと、おばちゃんはそんな男に対し、

「こら、めいちゃんたちに迷惑でしょう。ほら、帰りますよ」

と言うと、男は、

「昔はもっとおしとやかだったのにな。どこで変わったのかな」

と言うと、おばちゃんは、

「そういうのはおうちで言いなさい。夫が迷惑なことをいったね。ごめんね。それじゃ、またね」

と、3人のもとを去っていった。

 おばちゃんたちが去ったあと、めいはすぐに、

「ふう、いつになったら「私」じゃなくて、「めい」って言えるのですか」

と言うと、小明も、

「そうです。私、私って言うのが嫌なんです。小明は小明と言いたいのです」

 

と言った。たい子はすぐにあることを思った。

(家族など身近な人たちには(主語に)めいや小明って自分の名前を言えるけど、ほかの人たちの前では(主語は)私と言わないといけない。それが2人にとって苦痛なのよね。良妻賢母、女性よ淑女なれ、って言って女性をがんじがらめにしていることをあの2人は嫌がっているのかもね)

と思ってしまい、少し考えてしまった。

 

 おばちゃんとの会話のあと、たい子、めい、小明の3人はもくもくとさとうきびを植えていく。こうなると、時間が進むのがはやく感じる。そうこうしているうちに夕日が落ち、あたりは暗くなっていた。

「もう暗くなってきたわ。今日はここまでしましょう」

と、たい子はまわりが暗いことを確認すると、めいと小明に植えるのをやめることを提案。

「そうですね」

と、めいが言うと、たい子、

「小明もいい?」

と、小明に聞くと、小明も、

「そうですね」

と答える。たい子はすぐにめいにあることを聞く。

「ところで、道具をなおすところはどこ?」

これにめい、

「そうですね」

と言うと、たい子、今度は小明に聞く。

「そうですね」

と、こちらも同じ回答。これにはたい子、なにか違和感を覚えると、

「それじゃ、今日のごはんはからし多め、わさび多めでだすからね」

と言うと、めい、小明、ともに、

「「そ、そうです…ね、じゃないです~。ごめんなさい~」」

と、たい子に謝ると、たい子、

「ふざけないでよ」

と、2人に怒る。これにはめい、

「ただ、タ○リさんゲームをしていただけなのに~」

と、言い訳じみたことを言うと、たい子、

「タ○リさんゲーム?」

と聞きなおす。これに小明、

「質問の答えはいつも「そうですね」と答えるの。で、質問をしている人が「そんなことがない」と言ったら負けのゲームなの」

と言うと、たい子、

「そんなくだらないゲームをしないで、もう帰る準備をするよ。あとでおいしいもの作ってあげるからね」

と言うと、めいと小明、

「やった~。今日はカレーだ~」

と言うと、たい子、

「そんなことない」

と、うっかり口を滑らすと、めいと小明、

「「やった~、たい子の負け~」」

と喜んでいた。

 

「なんで叩かれなきゃいけないの」

と、めいは泣いていた。たい子、

「ふざけすぎるからです」

と、理由を言うと、小明、

「横暴です~」

と泣け叫ぶ。

 と、ここで3人は今何をしているかというと、めいの家でたい子特性の夕食を食べていた。ちなみに、今日の夕食は魚好きのたい子特製シーフードカレーだった。結局、めいと小明に押し切れられたかたちとなってしまった。

「で、私、帰るけど、2人でこれからどうするの?」

と言うと、めい、

「何もすることないよ。だって、お父さんもお母さんも診療所にいるからね」

と言う。実は診療所といいつつも病院機能は持っていた(ただし、ベッド数は少ないだけ)。なので、足を怪我しためいの父親は大事をとって入院となった。母親も付き添い。なので、たい子や小明が帰るとめい1人になってしまう。

「それだったら、ここでスクールアイドルの練習、していく?」

と、突然めいは思いつきで言ってしまうと、たい子、

「それはやめていたほうがよくない。だって、きつい(さとうきびの)手植えのあとだし…」

と、心配そうに言うと、小明、

「小明、賛成!!」

と、元気よく答える。これにもたい子、

「小明、学校があるんだよ。練習してからだと、家に帰るの遅くなるよ」

と言うも、小明、あるところに電話。すると、

「あっ、お母さん、こうこうでこういうことだから。えっ、OK。ありがとう」

と、言って電話を切ると、小明、すぐに、

「めい1人だけだから心配って言ったら、めいのお父さん、お母さん、帰ってくるまでめいの家に泊まっていいんだって」

と、意外なことを言ってしまう。これにはたい子、

「ああ。小明の家族って小明に甘いってこと忘れていた…」

と、頭を抱えてしまう。

 たい子、そうしているうちに時間がもったいないと思い、めいにもう1度聞く。

「本当に大丈夫?朝昼は学校、夕はさとうきび植え、夜はスクールアイドルの練習。とても大変よ」

と言うと、めい、

「それって自分にとって鍛錬になるよね。やった~。ずっと鍛錬だ~」

と喜んでいた。これにはたい子も呆れるしかなかった。

 と、いうわけで、今から練習にはいろうとするめいと小明。これにたい子は、

「ちょっと待って」

と言うと、めいにあることを聞く。

「で、九先輩たちもいないのに、どんな練習をするの?」

これにはめい、あることを言う。

「実はすでに練習する曲は決めてあるんだ。この曲だよ」

と、めいのスマホにある動画が流れていた。あるスクールアイドルの投稿動画だった。

「これを練習するのかぁ。で、タイトルは「ウィンターガーデン」?」

と、たい子が言うと、めい、

「そう、「ウインターガーデン」なにょ」

と言うと、小明も、

「げまげま」

と言ってしまう。これにはたい子、

「なにょ?げま?」

と、不思議そうに思って復唱すると、

「あ~、しまった~。たい子が知らないものだった~」

と慌てると、小明も、

「ぱ~てぃ~レディ」

と、変なことを言ってしまった。

(注:この元ネタは18年前のアニメなのよね~。知らない人はwikiで「ウインターガーデン」で検索してみよう。ちなみに、ヒント。実は某アニメショップ某店看板娘に選ばれたヨハネちゃんはこのアニメにもでてくるキャラのぬいぐるみを持っているよ)

 で、その動画を見ていたたい子が一言。

「なんか悲しい曲ね。失恋ソング?」

これにめい、

「失恋ソングといえばそうかな。彼女が昔付き合っていた彼氏に対して、自分のことを忘れないでください、って願う曲みたいなの」

と言うと、小明、

「なんか意外だね、めいが悲しい曲を選ぶなんて」

と、ビックリしながら言うと、めい、

「だって、九先輩たちは秋の歌を歌ったでしょ。なら、めいたちは冬の歌と思って検索したら、この歌が目に飛び込んできたんだもん」

と言うと、たい子、

「で、この曲練習して、どうするの?」

と言うと、めい、

「あとで九先輩たちに披露するんだよ。サプライズになるよ」

と、堂々と言うと、小明、

「それよりもはやく練習しよう」

と、練習を催促する。

 そして、めいは小明の言葉に触発されたのか、いきなり立ち上がってなにやら始める準備をすると、たい子、

「あれ、今からなにするの?」

と言うと、めい、

「踊る練習」

とただ答えると、たい子、

「歌う練習はしないの?」

と、逆にめいに聞く。これにはめい、

「それはちょっと…」

と、なにかごまかしているように見えてしまう。たい子、これを見逃さず、

「もしかして、九先輩たちとの練習のとき、歌の練習サボっていたでしょ」

と的確なことを言うと、めい、

「ギクギクギク」

と言ってしまう。そして、めい、ついに白状。

「だって~、めい、歌、そんなに得意じゃないもん。それよりも踊っていたいもん」

これにはたい子、

「めい、当分のあいだ、ダンス練習は禁止、歌の練習を行うこと」

と言うと、めい、

「いやなものはいやなの。ダンス練習させて~」

と泣き叫ぶも、たい子、

「わがままは言わないの。スクールアイドルは歌も大事。いやなものでもやるの」

としつけるようにめいに言うと、めい、

「は~い」

と、しょぼんと答えた。

 そんなめいを尻目に、小明、

「じゃ、小明はアクロバットを…」

と言うと、たい子、すぐに、

「この曲は失恋ソング。アクロバットはいりません」

と小明に注意すると、小明、

「アクロバットをいれたら面白いよ」

と意見を言うも、たい子、

「いらないものはいらない。小明がアクロバットをやりたがっているということは…、そうか。小明も九先輩たちの練習のときに勝手にアクロバットしていたな」

と、小明を疑いながらも言うと、小明、

「そうだよ。だって、小明、アクロバットしたくてスクールアイドルになったんだもん。アクロバット、したいんだもん」

と、わがままを言うと、たい子、

「小明、曲によってはアクロバットが不要なものもあるの。で、この曲は失恋ソング。アクロバットはいりません。小明も歌の練習を先にすること」

と言うと、小明、

「は~い」

と、がっかりしながら答えた。

 



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スピンオフ 第7.3~8.5話 1年生編 第3回

「あ~」

「あ~あ~あ~あ~」

と、めいと小明が歌の練習を始めたころ、たい子は、

「じゃ、私は帰るね~」

と言うと、めい、

「もう帰っちゃうの」

と、なにか言いたそうにたい子に言う。たい子、すぐに、

「私はスクールアイドルじゃないから練習しなくていいの。それじゃね。おやすみ」

とめいの家を出てしまう。これには小明、

「いけず~」

と、ただたんに言うしかなかった。

 が、たい子、家を出たのはいいのもの、

「ちゃんと2人、練習しているかな」

と、なんやら心配そうに言うと、すぐに、

「やっぱり、2人を見ないと」

と、方向転換、めいの家に戻ってきてしまう。

 だが、たい子はもう2人にはさよならを言ってしまっているので、戻ってきたことを2人にばれるとまずい、そう思ったのか、

「2人に会わずに陰からこそうと見よう」

と言って、2人には見えないように庭の草木に隠れながら2人を見る。

 そのこと、2人は、

「「あ~あ~あ~あ~あ~あ~」」

と、まだ歌の練習をしていた。ただ、たい子、

「私が見ていないとすぐにほかのことをしてしまうからね、ずっと見とこう」

と、草木に隠れたまま、2人を見つめていた。

 

 その翌日、たい子、めい、小明は学校が終わるとすぐにめいの家に行き、夕日が沈むまでさとうきびを植え、夕食後、たい子はいったんめいの家の外に出てはそのまま庭の草木に隠れては2人を見つめ、いや、監視していた。で、めいと小明は昨日と同じく歌の練習…。

「今日は歌の練習、や~めた。ダンス練習しちゃおう」

と、めいはたい子が見ていないと思ってダンス練習をしようとしたそのとき、

ピピピ

と、いきなりめいのスマホが鳴る。

「だれかにゃ」

と、めいはスマホをとり電話にでると、

「めい、ちゃんと歌の練習をしなさい!!」

と、たい子の怒る声がスマホ越しに聞こえてくる。これにはめい、

「わ、わかりました!!」

と言って、スマホを切り、歌の練習を始める。これにはめい、

(なぜたい子にばれたにゃ。どこかに防犯カメラや隠しカメラがあるかにゃ)

とびくびくしてしまう。

 一方、小明は、

「あ~あ~、つまらないよ、歌の練習。なら、アクロバットを磨こう」

と言って、アクロバットを始めようとすると、今度は小明のスマホから、

ピピピ

と、呼び出し音が聞こえてくる。小明、恐る恐るでると、

「小明、ちゃんと歌の練習をしなさい!!」

と、今度は小明にたい子からの怒りの声が降り注ぐ。これには小明、

「はい、わかりました」

と言って、歌の練習に戻る。

「ふう、やっぱり私が見ていないとサボっちゃうね」

と、たい子はそう言うと、自分のスマホをポケットにしまう。隠れながら2人を監視しているたい子。2人がサボろうとしているのになにもできない、そんなのはたい子は嫌だった。昔だったら紙を丸めてめいや小明にむけて投げるか矢文?を使うかなのだろう。でも、今は、

「今はスマホがあるから、隠れながら2人にいろいろといえるしね」

と、たい子は現代の武器スマホに感謝しつつ2人を監視していた。

 

 3日目、少しでも練習をサボろうとするめい、小明に対し、たい子は容赦なく、

「めい、サボらないの」

「小明、アクロバット禁止!!」

と、ことあるごとにスマホを使って激しいツッコミ。これにはめいと小明、

「「はい~」」

と、びくびくしながら応じていた。

 

 4日目、めいと小明、たい子からのスマホを通じての激しいツッコミに懲りたのか、

「白い雪~♪」

と、まじめに歌の練習をしていた。これにはたい子、

「よしよし。いい調子、いい調子」

と、2人のことを見つめ続けていた、まるで、なにかを楽しみ始めたように。

 

 5日目、歌もよくなってきたので、庭の草木に隠れていたたい子から、「ダンス練習解禁」というメールが届くと、めいと小明、「ヤッター!!」と言って、喜びながらダンス練習を始めた。2人は動画を見ながらダンス練習を始める。

「2人だったらちゃんとダンスできるかな。なにか楽しみ~」

と、たい子はただ2人をスマホでツッコミつつも楽しみながら2人を見ていた。

 

 6日目、ダンス練習は続く。が、たい子はふと思った。

「私ってなぜ2人の練習を見続けたのかな?」

最初は2人を監視する目的で隠れて2人を見ていた。が、スマホで2人をツッコミしていくうちに、いつもまにか自分も楽しみながら2人を見ていた。

「私、2人を見続けているうちに自分も楽しみながら2人を見るようになってきたな」

と、たい子は自分の気持ちを振り返るととおに、あることを考えていた。

「私、なんで2人と一緒にいるのかな?それはたしか…」

と言って、昔を思い返した。

「たしか、同じ年なのは、私、めい、小明の3人しかいないから、小さいときからいつも3人一緒に遊んでいたな」

これにはたい子、3人で遊んでいたことを思い返す。

「ほら、あともう少しだよ」

「めい、がんばるでしゅ」

「小明もだって」

3人でいつも一緒に遊んで、いつも一緒に勉強して、いつも一緒に楽しんでいく。なにをするのだって3人は一緒。失敗したときも、成功したときもいつも3人一緒。

「でも、今はめいと小明は私とは別のことをしている。私ははじめて2人とは別のことをしている。それでいいのかな?」

たい子はそう言うと、その場を離れて、自分の家に帰っていく。

 そして、自分の家の近くに行くと、なにを思ったのか、たい子、いきなり、

「白い雪~♪」

と、「ウインターガーデン」を歌い始めた。だが、初めてにもかかわらず、完全に間違えずに歌えた。

「え~と、踊りは…」

と、たい子、次にダンスを行う。これも間違えずにできてしまう。

「私、なぜ…」

と、たい子は驚く。実は2人を見ているうちに、たい子も曲をすべて覚えてしまったのだ。

「私、めいと小明と一緒になにかをしたい。2人がスクールアイドルになるなら、私も一緒にしたい。けど、私はそんな2人に対して「帰る」と言ってそのまま帰ってしまった。私だけ2人の練習に付き合わなかった。ただ2人を見つめていただけ。そんな私がなにもせずに2人の中にはいるのっておかしいよね」

と言うと、そのまま自分の家に入っていった。

 

 だが、めいと小明はこの日に限って何かに気づいていた。

「たい子からぜんぜん電話がこないね」

と、めいは夜のいつものスクールアイドルのダンス練習をしながら小明に言うと、

「そうだね。だって、庭の草木のほうから何も聞こえてないしね」

と、小明も何かに気づいたみたいに言うと、めい、

「たい子、めいたちを見捨てたのかな」

と、心配そうに言うと、小明、

「大丈夫じゃない。だって、小明たちっていつも3人一緒なんだし」

と、楽観的に言うと、めい、

「それもそうだね」

と答えていた。

 

 7日目、授業を受けていたたい子、

「なにか忘れているような…」

と、なにかを忘れていることを思い返そうとしていた。

 そして、

「あ~、すっかり忘れていた」

と、突然言いだすたい子。これには授業をしていた雪穂、

「なにかあったの?」

とビックリした。たい子はすぐに、

「なにもありません」

と言うと、雪穂、

「そう」

と、授業の続きをした。

 たい子、このとき、

「めいと小明ったら、九先輩たちに親の怪我で(九先輩たちとの)スクールアイドルの練習を休んでさとうきび植えをしていること、言ってない!!」

と、大事なことを思い出す。そして、

「このままじゃ2人がサボっていると勘違いされるじゃない。でも、2人は完全にそのことを忘れている。このままじゃ、2人の立場がまずい。ここは私が…」

と、たい子、放課後にめいと小明を先にさとうきび畑に行かせ、自分はそのまま九たちのところへとはせ参じようとする。そしたら、案の定、

「サボりじゃないかな」

と、ひろ子が言っているじゃないか。これではいけないと思い、急いで、

「あ、あの~」

と、たい子、九たちの前にあらわれる。

「たい子ちゃん!!」

と、九が言うと、たい子、

「は、はい、たい子です」

と答えた。そして、たい子は、

「3人(たい子の前にいる九、ひろ子、雪穂)に見せたいものがあります」

と言って、九、ひろ子、雪穂の3人をめいと小明がいるさとうきび畑へと連れていった。

 

 さとうきび畑にきたたい子と九、ひろ子、雪穂の4人。途中、たい子は九たち3人にさとうきびを植える時期を説明すると、ひろ子はとある少女2人を見つけて、

「って、あれって小明ちゃんにめいちゃん!!」

と、めいと小明であることに気づいた。そして、九はすぐに、

「なんで小明ちゃんとめいちゃん、2人だけで植えていたの?」

と、たい子に聞くと、たい子は事情を話した。めいの父親が1週間前に大怪我したこと、今(9月)がさとうきびを植える大事な時期なのに植えることができないこと、そして、めいと小明は怪我をしためいの父親のかわりにさとうきびを植えていることを。これに九は2人が九たちとの練習をサボっていたわけじゃないことに安心すると、たい子、

「サボり!!」

と、わざとびっくりすると、雪穂から1週間前から練習に来ていないことを聞く。これにもたい子、

「めいと小明は何をしていたのですか?」

と聞くと、ひろ子からスクールアイドルになるための練習をしていたことを聞く。もちろん、たい子は知っていたが、ここはわざと知らないふりをしながら、

「だから、夜遅くまで一緒にいたんだね」

と、わざとこの2人がこの1週間、夜一緒にいることを九たちに話す。これには九はすぐに飛びつき、

「夜遅くまで何をしていたんですか?」

と言うと、めいの家でダンス練習を2人でこっそりしていたことをたい子がこっそり言うと、雪穂の、

「小明ちゃんとめいちゃん、私たちに内緒で練習していたんだ」

という言葉とともに、九はめいと小明、2人の前に飛び込んでいった。

 

「えっ、九ちゃんがなぜここに!!」「えっ、どうして!!」

と、いきなりあらわれた九にびっくりするめいと小明。九はいきなり、

「私もまぜて!!」

と言うと、めい、

「さとうきびを植えているの秘密じゃ…」

と、なにかを示し合わせたように突然の設定を作って言うと、小明もすぐに、

「このことは秘密って言っていたよね」

と、たい子に同意を求めるも、たい子、とっさに、

「だって、このままじゃ2人がかわいそうだもん」

と、とっさに反論。これに雪穂、何を感じたのか、

「どうして秘密なの?」

と、3人に逆に質問。これにはたい子、めい、小明、ともに驚くと、とっさにめいはあわててうそをつく。

「だって、練習にいかなくなったことに対して、私…」

と、言葉を詰まらせてしまう。いつも外ではまわりにあわせるように「私」と言うめい。だが、このままだとうそだとばれてしまうと思い、とっさに、

「いや、めいは責任を感じているのです」

と、自分のことをめいと言うとともに、「練習しないと足手まといになり、フェードアウトできれば…」とうそを言い続ける。

 小明もそれを受けてか、さらなるうそを重ね塗り、そして、小明もあることを決断した。

(めいが雪穂先生たちに自分のことをめいと言った。なら、小明も雪穂先生たちの前なら自分のことを小明と言ってしまおう)

 こうして、小明は、

「めいだけじゃ怪しまれると思って、私、いや、小明も一緒に抜けたのです」

と言うと、すぐに、

「また、みんなと頑張っていきたいと思うようになっていき…」

と言うと、たい子も、この2人のうそを塗り固めるように、

「だから、夜遅くまで練習していたのです」

と、話をまとめてしまった。

 だが、年の功(失礼!!)の雪穂にはうそは見破られてしまった。

「それじゃ、今からその練習の成果、見せてくれない」

と、雪穂が言うと、すぐに雪穂はめいと小明のところに行き、

「今のうそを証明させてね」

と、小言でめいと小明に言う。これにはめい、

「雪穂先生って超能力者!!」

と言うと、小明も、

「なんでうそってばれちゃったの~」

と、驚くしかなかった。

 だが、これで怖気づくめいと小明じゃない。めいはすぐに、

「わかりました。それじゃ、小明、それにたい子、一緒に踊ろう」

と、元気よく言うと、たい子、突然めいたちと一緒にやることにびっくりする。

「えっ、私も。私、やったことないよ」

と、たい子はとっさに言うも、小明から、

「いつも陰から練習を見ていたんでしょ。そのこと、小明が知らないって思っているの?」

と、何かを知っているみたいに言うと、すぐに小明はたい子のところに行き、

「小明だけじゃなく、めいも知っているよ。めいと小明が夜に練習しているとき、たい子が庭の草木の陰から隠れて見ていたことを」

と、小声で言うと、たい子、

「なぜばれているの?」

と驚く。これに小明は一緒にいためいから、

「だって、練習のとき、たい子、いつもスマホを使ってめいや、小明にツッコミいれていたでしょ。それできるのってどこかにいなきゃできなよ。それに、昨日、たい子の家の近くでたい子が「ウインターガーデン」を歌って踊っていたの知っているよ。だって、たい子のお母さんからすべて聞いているもん」

と言われ、たい子、

「お母ちゃん…」

と、自分の母親を恨むたい子。それに対し、めいと小明、両方から、

「だからね、たい子。一緒に歌おう。だって、めい(小明)たちはいつも3人なんだから」」

と言われた。これにはたい子、

「わかった、わかった」

と言って、2人に降参。これを見ていためい、

「よし、めいたち3人の勇姿、九先輩たちにみせてやろう」

と言うと、たい子、小明とも、

「「オー」」

と言って、横一列に並び、「ウインターガーデン」を歌い始めた。

 

 そして、歌を歌い終わると、すぐに九、ひろ子はたい子たち1年を褒めるが、雪穂は違っていた。

「勝手に休んだ罰を与えないとね」

と、雪穂が言うと、たい子はおもわず、

「罰、もしかして、私も…」

と、たじろづく。これには雪穂、

「川畑(たい子)さんもよ」

と一刀両断。これにはたい子、

「がくし」

とがっかりする。が、その罰の内容が…。

「私(雪穂)、九、ひろ子もさとうきびを植えるのを手伝うこと」

そして、

「さとうきびが植え終わったら、川畑…、たい子、めい、小明はスクールアイドルの練習にさんかすること!!」

だった。これにはめい、

「やった~。これでさとうきびを9月中に植えることができる。それに、これからも小明とたい子、2人と一緒にスクールアイドルできる~」

と、内心喜んでいた。実はあまりにもさとうきびの苗が多すぎて、めいたち3人だけだと間に合わなかったのだ。それが、雪穂、九、ひろ子が加わることでその問題は解決するのだ。それに加えて、これからはめいたち1年生3人で一緒にスクールアイドルとして活動できる。その嬉しさがこみ上げていたのだ。小明も同じ心情だった。

「「ありがとうございます」」

と、御礼を言うめいと小明。

 が、その逆なのがたい子だった。

(なんで私、何も言っていないのに、めいと小明と一緒にスクールアイドルしないといけないの。私、まったく練習していないよ。それがいきなりスクールアイドルやりなさいって、本当なの?私、これからやっていけるの?)

と心配するたい子。

「なんで私もなんですか?」

と、悲しそうに言うたい子に、九、

「一蓮托生ってやつ」

と、あっけらかんに言うと、たい子、

「なんで~」

と泣いてしまう。

 そんなとき、雪穂がたい子のところに行き、こっそり、

「それが私たちにうそをついた罰だよ。それに、めいと小明、2人をまとめるにはたい子、あなたの力が必要だよ。だって、たい子、あなたしかめいと小明の手綱を握り締めることができないからね」

と言うと、続けて、

「それに、これから先、めいと小明と一緒にやっていく最良の形だよ」

とも言われると、たい子、

(雪穂先生の言うとおりだね。だって、私、めい、小明はいつも3人で1つ。3人一緒に行動し、3人一緒に楽しんで、3人一緒に頑張っていく。それを叶えるにはこれがベストだね)

と、逆に納得してしまった。

 

 それから数日後、

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、雪穂の掛け声とともに、たい子たち5人は一緒にダンス練習をしていた。

「たい子、もう少し早くね」

と、雪穂が言うと、たい子、

「はい」

と答えると、隣にいためい、

「や~い、怒られた~」

と、たい子に言うと、小明も、

「いい気味~」

と、めいと同調する。これにはたい子、

「うるさい!!」

と、2人に反抗する。

 しかし、このとき、3人は心でつながっていた。

(いつも3人でやってきた。それも、これからも、ずっと3人は一緒。これからもめいと小明と一緒に感じられる。こんなのずっと続けていきたい)

と、たい子が思うと、すぐにめいも、

(そうだね。たい子と小明、3人ずっと一緒。これ、永遠の法則)

と思うと、小明も、

(そんな永遠の法則、絶対に守っていきたいね)

と思っていた。

 3人一緒、これが続く未来、そうなってほしいとたい子、めい、小明の3人はせつに願っていたのでした。

 

参考資料 「アグリステーション鹿児島 HP サトウキビ苗」

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第8話(その2)

 こうして、嫌がる?たい子を含めて5人となった九たち九龍高校のスクールアイドル部だったが、ここで意外な生涯が生みだされようとしていた。

「なんですって。九たち5人がスクールアイドル続けているですって」

と言い出す人が1人…。

「それは本当のことですよ」

と、隣にいるもう1人の人物が答える。

「本当に本当ですの、氷」

と、何度もしつこく言うと、

「たしかに本当だって、星子」

と、もう1人の人物こと氷が答える。

「それは聞き捨てられないですね」

と、言い出す人物こと星子が怒りつつ言うも、氷、

「でも、いいんじゃないかな、ほっといても」

と、あっけらかんに言うが、星子の怒りのボルテージ…、

「あんな不潔なもの、やること自体不愉快ですわ」

と、だんだんあがっていく。

 そして、ついに星子はキレた。

「もうこれ以上ふしだらになるのはいけないことですわ」

ということで、

「どうして私たち呼ばれているの?」

と、九はなぜ呼ばれたのかわからずのうちに、九たち5人は星子のいる生徒会室に呼ばれた。

 九たち5人の前に星子が立ちはだかる。

「どうして呼ばれたのかわかりますか?」

と、星子が言うと、九、

「それはわかりません。だって、別に悪いこと、していないもん」

と、不愉快そうに言うと、星子は5人をにらみつつ、

「それをお教えいたしますわ」

と、大きな声で言えば、九たち5人は、

「ごくり」

とツバを飲む。

「それはですね、スクールアイドルといういかがわしいものをやっているからですわ」

と大きな声で叫ぶ星子。

「どこがいかがわしいのですか?」

と、九が反論すると、星子はつかさず言い返す。

「ひらひらしたスカートで踊る、それこそいかがわしい。女性というのは淑女なれという言葉があります。おしとやかに微笑む、これこそ日本の女性というものです」

 これには小明、

「小明はそんなおしとやかなのは嫌だ。もっと元気に遊びたい!!」

と言うも、星子、聞く耳持たず。

「もうこれ以上戯言は聞き飽きましたわ」

と大声で言うと、

「まだそんなに言っていないのに…」

と、九が少し反論すると、星子、

「黙ってなさい」

と大声で注意をする。

 そして、星子の口から大変なことを言い出す。

「いいですね。九、ひろ子、たい子、めい、小明の5人はスクールアイドルの活動をやめなさい。今後一切似たようなまねはしないこと!!」

 これを聞いた5人、

「「「「「え~!!」」」」」

と、一緒に叫んでしまう。

 

「私は特に固執していたわけじゃないけどね」

と、たい子は言うが、めいは、

「めいはもっとやりたいよ~」

と、ただごねていた。ここは学校の裏、いつも練習をするところ。だが、今はスクールアイドルになるための練習はできなかった。

「やりたい、やりたい、やりたいよ~」

と、九もだだをこねるが、

「でも、生徒会長である星子さんからの命令じゃどうしようもないよ」

と、ひろ子はただおとなしそうに言う。

「生徒会長の命令でも、やりたいものはやりたい」

と、九はどんどんだだをこねてしまう。

「だったらどうしたらいいの?」

と、ひろ子が困った表情で言うと、

「それなら、こうしたらどう」

と言う声がどこからか聞こえてきた。

「誰?」

と、九はまわりを見渡す。すると、

「ちゃおですわ」

と、ある少女があらわれた。

つづく

(ED 1番のみ)

 

次回 星子と氷と春と

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第9話

第9回 星子と氷と春と

 

「それならこうしたらどう?」

なぞの声に九、

「誰?」

と、まわりを見渡すと、

「ちゃおですわ」

と、ある少女が出てきた。

「春さん!!」

ひろ子はその少女、春を見るなり呼ぶと、

「そうだよ。私は春だよ」

と答えていた。

 

(OP 1番のみ)

 

「で、どうしたらいいのですか?」

と、たい子が言うと、春はいいアイデアを披露した。

「体力づくりですよ」

「「「「「体力づくり~!!」」」」」

九たち5人は驚いた。まさかの体力づくりとは…。

「どうして体力づくりなんですか?」

と、めいが言うと、春は、

「スクールアイドルとはいえ、全力でダンスなどするにしても体力は必要。だからこそ体力づくりは必要なんですよ」

と理由を言うも、小明は、

「もっとダンスの練習がしたい!!」

とだだをこねる。

 そんなとき、

「春さんの言うとおりだよ」

と、春の意見に賛成の声がくる。

「雪穂先生!!」

あらわれたのは雪穂だった。

「ごめんなさい。私も天海(星子)さんからスクールアイドル関連の練習をさせたらいけないって言われていたの。でも、体力づくりなら話は別。体力づくりなら言い訳もつくしね」

と、雪穂が言うと、九、

「それなら体力づくり頑張るぞ!!まずはマラソンだー!!」

と、1人張り切って走り始める。

「待ってください」

と、ひろ子が言うと、たい子ら1年生も一緒に九のあとを追った。

「春さんの言うとおりになったね。でも、あう意味ちょうどよかったのかもしれない。だって今、あの5人にとって1番大切なのは基礎体力ですもの。これまで体力づくりなしでダンスなど練習していたから。これからの大会に出るとき、体力がダンス技術に追いつけなくなるのは目に見えていたからね」

と、雪穂が言うと、春、

「そうですね」

とうなずいていた。

「ところで、なんで春さんがここにいるのかな?本当の理由を知りたいな」

と、雪穂は突然春に言うと、春、

「本当は私も九さんと一緒にスクールアイドルしたいんですよ」

と言うと、春は九たち5人に向かって、

「私も練習入れてください」

と、言いながら走っていった。

 

 体力づくりを始めてから1週間が経過した。体力づくりが終わるころ、

「なんか最近体力がついてきたかも」

と、九が言うと、ひろ子も、

「みんな体力があると思うけど、もっと体力がついてきたかもね」

と、元気にしゃべっている。

 一方、雪穂は、

「な、なんていう体力。私のほうがいつもへばってしまう…」

と、ぜえぜえ言いながら言うも、春、

「だって、遊ぶところといえば山に海だもの。ここは自然が遊び相手だよ」

と、小明が答えると、雪穂、

「昔、私がやっていた地獄の特訓以上にきつい」

と言えば、九、

「地獄の特訓、私、やってみたい」

と、目をキラキラさせながら言うも、雪穂、

「する前に私が倒れてしまうよ」

と、倒れこんでしまった。

 

 だが、こんな状況を悔しい気持ちで見ている人がいた。

「なんで、私にはむかうのでしょうか」

星子だった。あれだけスクールアイドルとしての練習をしないように言っているのに、それを未だにしているのか、それが気にいらなかったのだ。

「でも、体力づくりなら、普通行うことでしょ。そこは注意できないんじゃないかな」

と、氷が言うと、星子はあることを決めた。

「私にはむかうなら、私が印籠を渡してやる」

 

 翌日の放課後、

「ちょっとみなさん、集まってきてください」

と、星子が言うと、

「なにかあったんでしょうか」

と、九たち8人が集まる。

 すると、星子は九、ひろ子、たい子、めい、小明5人に対して、

「なんでまだスクールアイドルという幼稚なことをするのですか」

と、怒りながら言うも、九、

「そんなことしてないよ。やっているのは体力づくりだよ」

と反論するが、星子、

「それがスクールアイドルとつながりをもつのです」

と言えば、小明も、

「ただの体力づくりをスクールアイドルと結びつけるなんておかしいよ」

と反論するも、星子、

「わたしが言っていることが全て正しいのです!!」

と、聞く耳持たずだった。

 こんなやりとりに多恵、

「私は関係ないから抜けるね」

と言った瞬間、

「だったら、1つ勝負したらどうかな?」

と、氷があることを提案してきた。氷いわく、

「勝ったほうが負けたほうに命令をすることができるの。星子が勝てば5人に対してこれ以上スクールアイドルの練習をしないって言えるでしょ」

これにはひろ子、

「それはちょっと…」

と言うも、すぐに九、

「やります!!絶対にやります!!」

と、これまた前向きに答えてしまう。

「ちょっと。負けたらもうスクールアイドルできなくなるのよ」

と、たい子が言うも、九、

「勝てばいいんだよ、勝てば」

と、これまた聞く耳持たず。

「これで決まりですね」

と、星子が言うと、すぐに春が横から入り込み、

「それじゃ勝負のやり方だけど、この学校伝統の島一周遠泳ならどうかな?」

と言うと、遠くから見ていた雪穂が、

「島一周遠泳って危なくないの?」

と聞くと、氷が、

「それなら大丈夫です。島の漁師たちにすでに話をつけていますから」

と言うと、雪穂、

「なんと話が早い、というか都合よすぎる…」

と、とほほ顔で言うと、九はすぐに、

「それじゃ、港にレッツゴー」

と叫びだす。

 そんななか、多恵は、

「そんな茶番、私は付き合えないわ。それじゃね、ばいばい」

と言うも、すぐに春に見つかり、

「逃がさないわよ~」

と言うと、多恵の首ねっこを押さえつけ連れて行く。

「誰か助けて~」

と、多恵は声を上げていた。

 

「なんかすごいことになっている…」

と、雪穂は驚いていた。なんと港にはテントがたっていて、漁師の奥さんたちがつみれ汁を作っていた。

「や、父さん、雪穂先生だよ」

と、たい子が言うと、

「雪穂先生、お久しぶりです」

と、たい子の父親が言うと、

「お久しぶりです。たしか漁協の組合長でしたか」

と言うと、たい子の父、

「はい、まさか、あの伝統がよみがえるなんて、こんな嬉しいことありません」

と、感激しつつ言う。

 そして、スタート10分前になると、星子が、

「さあ、水着に着替えましょう」

と言うと、いきなりひろ子が、

「それじゃ」

と、制服をいきなり脱ぎだそうとする。星子、

「ちょっと、民衆の前で裸になるなんて見苦しくてみっともない」

と言うも、ひろ子、そんなこと気にせず、

「えいっ」

と、脱いでしまった。星子、

「やめ…て」

と言いかけるが、ひろ子、

「もう下に水着着ているもんね」

と、堂々と水着姿をみせる。九は、

「実はひろ子ちゃん、いつでも海に飛び込もうと思っているらしく、下には必ず水着を着込んでいるんだ」

と言うも、星子、

「はいしたない」

と、言ってしまう。

 

 そして、スタート1分前、

「チームですが、1・2年生チームと3年生チームの対決となります」

と、星子が説明すると、九、

「それじゃ6対3になっちゃうよ」

と、欠点をあげるが、星子、余裕で、

「大丈夫です。3年生チームには2年生の土居(多恵)さんをいれますので、これで5対4になります」

と言うと、多恵、

「私はやるなんて一言も」

と言うも、星子から、

「これは学校の伝統行事です。全員参加です」

と言われ、しかたなく参加する多恵であった。

 ここで遠泳競争のやり方を伝えておこう。多恵を除く1・2年生チームと多恵をいれた3年生チーム、5対4の競争。泳ぐ長さに決まりはなく、疲れたら次の人に交代。ただし、泳げるのは1人1回だけ。チーム内のペース配分が勝利の鍵になる。

 スタートとなる港には第1泳者のひろ子と春がすでにスタンバイ状態にはいっていた。

「あれ、あんちゃんたちも参加するの?」

と、九が言うと、

「そうだ。俺たち特効野郎Sチームがこの遠泳のサポートをしてやるぜ」

と、これまた特攻服を着た漁師たちの集団「特攻野郎Sチーム」の漁船が2人のまわりを囲んでいた。

「いつも特攻服を着ているんだ」

と、審判の船に乗っている雪穂が言うと、

「当たり前よ。いつでもとばせるよう特攻服を着るのが俺たちの流儀よ」

と言うが、雪穂の心の中で、

「暑くないのかな?九たちよりも先に倒れるんじゃないかな」

と、少し心配になった。

 

「よ~いスタート!!」

と掛け声で遠泳競争が始まった。

 最初は水泳の得意なひろ子がおり、人数も1人多い1・2年生チームが優位とみていたが、おもわない伏兵がいた。

「土居さん、すごい…」

と、九が驚く。

「土居さんがこんな水泳が得意なんて」

と、ひろ子が嘆く。あの体育が得意な小明にも負けないくらいのスピードで泳ぐ多恵。3年生チームの第3泳者として、春、氷からバトンを受け取った多恵は2人の泳いだ距離以上の距離をスピードを落とさずに泳ぐ。対する1・2年生チームは第4泳者のたい子が泳いでいた。最初水泳の得意な第1泳者のひろ子が3年生チームを100メートル以上離していたが、めいと小明が泳ぐ間に多恵がどんどん距離をつめより、今はどちらとも並んでいる状態に。

「天海(星子)さん、あとはお願い」

と、多恵が言うと、星子、

「わかったわ」

と、多恵と交代で泳ぐ。

「土居さんってすごいね。あんなに早かったなんて」

と、九が言うも、多恵、

「あんなの当たり前です。私はこれでも東京では遠距離の水泳選手としては有名でしたから」

と、多恵は威張るように言う。

 そんなとき、たい子からSOSが。

「はやくかわってください」

と言うと、九、

「待ってて。今かわるから」

と、突然漁船から飛び込む。

 

 こうして、最終泳者の九と星子の競争は抜いたら抜き返す、その繰り返しだった。

 だが、ここで星子は勝負にでた。

「えいっ」

と、星子、力を込めて前にでようとする。

「うっ」

と、九も前にでようとする。どっちが勝ってもおかしくない状況。

 ところが、ここにきて、星子の様子がおかしくなった。

「星子ちゃん、どうしたのかな?」

と、九が心配そうに思った瞬間、

「うっ」

と、星子が足を抱え込むと、そのまま、

「ううっ」

と言って、そのまま沈んでいく。

「このままじゃいけない!!」

と、九は星子のそばまでいそいで泳いでいく。

 

「あともう少し、あともう少しで勝てる!!」

星子はそう思うと勝負にでた。

「もっと早く、もっと早く」

と思った瞬間、

「ううっ」

と、いきなり足裏から激痛がはしる。

「このままじゃ負ける」

と、星子、焦るも、思うように進まない。むしろ、足を抱え込みながら沈んでいく。

「このまま私は死ぬのかな」

と、思いつつも沈んでいく。

 そんなとき、

「星子ちゃん、待ってて」

と、聞こえてくる声を聞きながら気を失っていった。

 

「はっ」

と、星子は目を覚ますと、

「よかった」

と、九が星子を抱きしめて泣きながら言った。

「私、どうしたの?死んだんじゃないの?」

と、星子が言うと、すぐに雪穂が、

「天海さんが足をつって沈んでいくのを九が助けてくれたんだよ」

と言うと、九、

「たいしたことしてないよ」

と、照れながら言うも、星子、

「あ、ありがとう」

と、お礼を言うと、九、

「ありがとう」

と、照れつつ言った。

 

「ところで勝負はどうなったの?」

と、多恵が言うと、星子、

「それは私たちの負け…」

と言った瞬間、

「この勝負は無効だよ」

と、九がいきなり言いだした。

「無効…」

と、星子が言うと、九、

「だって、こんな状態なんだもん。これで勝負が成立しているなんて言えないもん」

と言うと、氷、

「もう本当のこと、話しちゃいなよ」

と、星子になにかをすすめるように言えば、星子、

「私はそんなこと…」

と黙ってしまう。これには春、

「なら、私から言おうかな」

と言うと、星子、

「わかりましたわ」

と言って、3人は横一列に並ぶ。星子はそれを見て、

「それでは聞いてください」

と言うと、3人はいきなり歌いだした。

 

3年生 挿入歌 「スプリングコンタクト」

 

キュンキュンキュン キュキュンがキュン

キュンキュンキュン キュキュンがキュン

 

春 出会いのきせつ

新しい 世界がひろがる

あなたと 出会って

すぐに ときめいちゃった

 

あなたと つながったから

私の心の つめたい氷が

あっというまに とけちゃった

きっと運命の 神様が

くださった 奇跡

 

新しい出会いに 感謝しよう

いつまでもあかるい 世界が

ひろがっていく そんな気持ちが

うまれてしまった 私の心に

だからね お願いだから

私のこと 大切にしてね

 

キュンキュンキュン キュキュンがキュン

キュンキュンキュン キュキュンがキュン

 

春 すべてがかわる

新しい 気持ちがひろがる

あなたを みつけて

すぐに ときめいちゃった

 

あなたは あたたかいから

私の気持ちは いつでもホットで

どんなときでも あたためるの

きっと天からの あたたかい

私への ギフト

 

新しい未来に 感謝しよう

いつまでもあかるい 未来が

続いていく そんな予感が

感じてしまった 私の心に

だからね お願いだから

私のこと はなさないでね

 

春は出会いのキセツ

必ず誰かと出会える

だから 忘れないで あきらめないで

運命の人ときっと出会える

絶対に出会える!!

 

新しい出会いに 感謝しよう

いつまでもあかるい 世界が

ひろがっていく そんな気持ちが

うまれてしまった 私の心に

だからね お願いだから

私のこと 大事にしてね

 

「なにこれ。すごいじゃない」

と、九が言うと、氷、

「実は私たち3年はみんなと一緒にスクールアイドルをやりたいんだ。どう、仲間にいれてくれる?」

と言うと、九、

「それはもちろん。絶対に後悔させたくないもん」

と、笑いながら3年生のスクールアイドル入りを承諾した。

「でも、なんで入りたいの?」

と、ひろ子が言うと、春が、

「実は私たち3年もみんなと一緒に思い出作りをしたかったんだよ」

と言えば、めい、

「ちゃんと正直に言えばいいじゃない」

と言おうとすると、たい子、

「それもそうですけど、どうしてまわりくどいことをしたんですか?」

と、星子に質問。これに氷、

「星子の最後の抵抗といってもいいんじゃないかな。もしくは昔の星子との決別かな」

と言うと、星子、

「そんなの関係ない~」

と、怒りながら言った。

 

「これで私たちは8人になった。あとはスクールアイドルとして成功するのみだ~」

と、九が叫ぶと、星子、

「私はまだ…」

とだだをこねる。これに氷、

「そんなの関係ない」

と、強制的に参加させる?ようにみせた。

 

「ところで、土居(多恵)さんはどうするの?」

と、突然雪穂から言われた多恵。多恵は、

「こんな茶番、子どもだましに参加するぎりはありません」

と言うと、どこかに消えてしまった。

「これからどうするのかね?」

と、雪穂は多恵の消えた方向を向いてさびしそうに言った。

 

次回につづく。

 

(ED 1番のみ)

 

次回 祭りと建造とステージ

 




あとがき

 みなさん、こんにちは。La55です。今回でこの物語も第9話をむかえることになりました。今回、ついに3年生の星子、氷、春の3人が仲間となり、8人で活動することになりました。前回のお話で1年生が加わったことをみると、展開が早すぎるのかもしれません。でも、これはただの序章かも?次回、ついに多恵の父、土居建造が動き始めます。そして、それに加えて、九たちのライバル的存在も登場してきます。ライバルはもちろんスクールアイドルグループです。通称BS。はたしてどのようなグループなのか。お楽しみにしてください。ちなみに、九たちのグループは通称ISと称しております。

 で、今回の曲紹介は2曲。前回発表した「ウインターガーデン」と今回の「スプリングコンタクト」です。
 「ウインターガーデン」は前のあとがきで紹介した「オータムウインド」に続く「Love season」シリーズの2曲目にあたります。「オータムウインド」で破局した女の子が元の恋人を待ち続けたのですが、結局あらわませんでした。そして、「ウインターガーデン」で元の恋人にメッセージを送ることになりました。その内容がこの曲「ウインターガーデン」となります。とても切ない内容かもしれません。元の恋人に届くかどうかもわかりません。でも、彼女としてはどうしても伝えたい、それを感じさせる曲です。
 で、「スプリングコンタクト」はその「オータムウインド」から続く「Love season」シリーズの3曲目にあたります。破局した女の子にも春が来ます。ついに新しい彼氏を見つけることができました。その気持ちをあらわしたのがこの曲となります。この曲は前の2曲と違い、ポップ気味な感じで作詞しました。そのため、曲にすると、前の曲たちが悲しい感じになるのが、この曲は明るい、むしろ王道系アイドルソングになるのではと思います。春は恋の季節。新しい芽吹きの季節となります。新しい恋に目覚めた彼女。はたしてどうなるのか。
 で、秋、冬、春と続きましたので、次の曲は…、もちろん夏の曲です。どうぞお楽しみにお待ちください。

 で、この小説の進捗情報を少し。このあとがきを書いている11月16日現在、本編はすでにパソコンに入力済み、つまり、あとは投稿するだけとなっております。まっ、あとがきを書かないといけないので、今から全部投稿することはできないのですがね…。
 で、いつものあれその1はパソコンに入力するのみです。とはいえ、これがないと本編どころか本編を書く骨組みとなるプロットすらできないのですがね。これについては本編を順次投稿していくなかでどこかで投稿することになりそうです。
 で、いつものあれその2は現在、本編はすでに書き終わっております。昨日まで休みを削って書いていましたから疲れました。あとは歌を作ってパソコンに入力すれば完成、なのですが、これが難しいのよね。特に歌を作り出すのは1話分書くぐらい体力を消耗します。ですが、歌はこの小説にとって重要なファクターの1つなので、最後の気力を振り絞って頑張ります。でも、投稿スケジュールが凄いことになっているのよね、本当。

 というわけで、次回、ついに九たちのライバルチームがついに動き始めます。それに対して、九たちはどう立ち向かっていくのでしょうか。そして、多恵はどうなるのか。実は多恵がこれからの重要なファクターになるかも?それでは今回はここまで。さよなら、さよなら、さよなら。


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スピンオフ 第8.3~9.5話 3年生編 第1回

「星子よ、おもてをあげよ」

「はい、おじいさま」

9月下旬、天海(星子)邸、大広間。ここでは週に1回、星子のおじいさま(町長!!)と星子との定期面談が行われていた。今日はその面談の日。上座についたおじいさまに星子は正座をして、襟を正して挨拶する。

「星子よ、学校の様子はどうが」

おじいさまからのいつもの質問。これには星子、

「いつもの質問だけど、真面目に答えないと」

と、思うと、すぐに、

「今のところ、平穏です。土居建設の社長令嬢(多恵のこと)ともなにも問題なくすごしております」

と、静かに答えるも、おじいさまはすぐに、

「星子、うそをつくのではない」

と、怒鳴るように言う。これに星子、

「なにかございましたか」

と言うと、おじいさまはすぐに、

「この私の目は誤魔化せないぞ。たしか、金城九という娘が中心になってスクールアイドルとかいうものが九龍高校ではやっているそうじゃないか」

と、星子にまたも怒鳴るように言うと、星子、

「それは…」

と、言葉に窮してしまう。これを見たおじいさま、

「いいか、女性というものは大和撫子らしくおしとやかに、つつましくするものだぞ。必ず男性の一歩後ろを歩くものなのだぞ。それが、なにがスクールアイドルだ。どこぞやの遊郭みたいにスカートをひらひらさせて、男性を誘惑させている。過激な衣装を着て男たちを喜ばしている。そんなものはいらん。いいか、もう1度言っておく。女性とは淑女なれだ。おしとやかに微笑む、そして、男性の言うことは必ず聞く。これこそ日本の女性というものだぞ」

と、激しい論調で言うと、星子、

「はい…」

と、ただうなずくだけだった。

 そして、おじいさまは最後にこう締めくくった。

「いいか、どんな方法でもよい、金城九たちにスクールアイドルというちゃらんぽらんなことはすぐにやめて、もっとおしとやかになるようにしつけよ。あと、星子、これはお前に言っておく。いいか、九たちみたいにちゃらんとしたことはやらないようにな。よいか、これで、今日の面談は終わる。以上」

 これには星子、

「はい、かしこまりました」

と、ただ言うだけしかなかった。

 

 翌日の放課後、星子は図書室…、の奥にある閉架図書がしまってある部屋に来ていた。ここには島に関する郷土本、江戸時代、までとはいかなくても、明治時代から現代までの貴重な本などが納められていた。そして、ここに入れるのは、この高校の生徒会長で、同時に図書委員である星子、それに、その補佐をする副会長の氷だけだった。

「ようやくできました。これでこの学校がいつ閉校しても、この学校の歴史や思い出はずっと残るのです」

星子はこう言うと、机に置いた1冊の本を眺めていた。多恵が1学期の始業式に突然宣言した「閉校(閉町、閉島)宣言から星子はずっとこの学校、九龍高校の学校史を編さんしてきた。途中、九とひろ子の手伝いもあり、そのおかげで、来年3月までの閉校までに十分といえるくらい余裕をもって学校史を編さんし終えたのだ。

 その学校史であるが、大切な思い出なので、誰の目も触れないまま、学校の閉架図書の棚に収められることになった。みんなの大切な思い出、それがこの一冊に収められている。

「ごめんね。誰の目にも触れることなく、ここでおやすみなさい」

星子はこう言うと、学校史を閉架図書の棚のなかに収めた。が、星子はほかのところからも本、というより雑誌を次々と出した。「onon」「gonno」「fifteen」「HIS」などなど。これらは一般で言うところの芸能雑誌、ファッション雑誌に分類される雑誌であった。それもどれもこれも最新号であった。星子はこれを机の上に置くとすぐに、

「ふ~ん、これ、私にぴったりかな」

と、いろいろ想像しながら読みふけていた。さらに、スクールアイドルに関する特集のところには、

「なんかかわいいな。九たちはこんなものを目指しているんだね」

と、喜びふける星子。顔はにやけていた。

 それから1時間後、すべての雑誌を読み終えると、星子、

「新しい号ってこないかな。ああ、フェリーが到着するのが待ちどうしいなぁ」

と、なにかを楽しみにしていた。実は星子、みんなに内緒でネットでファッション雑誌などを注文し、フェリーと一緒にその雑誌を運んでもらっていたのだ。その雑誌だが、フェリーが島の港に到着すると、フェリーの女性乗組員からこっそり星子が受け取る手はずとなっている。

 だが、雑誌である以上、物はちゃんと存在する。なので、その雑誌の保管場所が必要となる。が、星子の家において置くと、いつおじいさまに見つかるかわからない。見つかると、大きな雷が星子に落ちるのは必死。では、ほかのところはと言うと、星子が秘密で買っているので、ほかの人にはばれたくない。ということで、星子の家以外もだめ、なのだが、1つだけ見つからずに隠せる場所、それが学校の閉架図書の置いてある部屋だった。この部屋に入れるのは星子と氷だけ。だが、氷はあんまりここに来たがらない、というよりも来たくない。なぜなら、氷は古い本の独特のにおいが嫌いなので、古い本のにおいが充満しているこの部屋に来たくないのだ。ちなみに、星子はこのにおいが好きである。というわけで、星子が注文した雑誌を隠すには都合がよかったのだ。

「でも、本当はこんな格好をするなんてだめなんだよね。だって、おじいさまの言いつけだから」

星子はこう言うと、ファッション雑誌を悲しそうに見つめていた。さらに続けて、

「私は小さい頃からおじいさまから言われていた。「大和撫子らしく、おしとやかになれ」って。おじいさまの言いつけは絶対。私はこれまで忠実に守ってきた。そして、これからも…」

と、星子は悲しい目をして言った。星子の家は江戸時代から続く島役人の家系であった。島を代表する家系、それをこれまで守ってきた。江戸時代、島を管理する役人を代々務め、それが明治、大正、昭和、平成になると、町長として代々引き継がれてきた。なので、この九龍町は1回も町長選挙をしたことがなかった。なぜなら、町長というのは代々天海家がなるものだと考えられてきたから。それほど星子のいる天海家は由緒ある名家なのである。なのだが、これがもとで堅物、保守的なのである。家制度の考えが色濃く残っていた。なので、男尊女卑は当たり前、女性というのは良妻賢母であるべきという考えが今だに通じていた。

「私はこんな若い女性が着るファッションが着れる日はくるのかな。九たちみたいに自分の気持ちで、ひらひらしたスカートを着て、スクールアイドルとして踊れる日なんてくるのかな」

と、星子は机にあるファッション雑誌をもう1回めくりつつ思いをのせていた。が、おじいさんの言うことは絶対、なので、いまどきの若者が着る服なんて絶対にない、そう、星子は思っていた。

 そんなとき、

キーンコーンカーンコーン

と、学校のベルが鳴る。

「あっ、もう家に帰らないと。さんしんのお稽古が始まっちゃう」

と、星子はファッション雑誌をもとの場所に戻し、図書室を出る。そんなとき、

「あっ、星子、もう帰るの?」

と、ちょうど星子の前を通り過ぎようとしていた氷に呼び止められる。

「あっ、氷。氷ももう帰るところ?」

と、星子が言うと、氷、

「いや、これから小中学校の生徒たちと遊びに行くところだよ」

と答える。氷はややインドア派の星子と違い、完全にアウトドア派。社交的であり、誰とでもフランクに話せる。それが小中学校の子どもたちでもだ。なので、よく小中学校の子どもたちとよく遊びに行く。

「星子、途中までついていくよ。今日は学校史の編さんで残っていたの?」

と、星子と氷はたわいもない会話をする。星子にとって氷は心置きなく話せる数少ない親友の1人。なのだが、そんな氷に対しても、星子はおじいさまの従順な僕なので、若者のファッション関連などについてはあまり話さず、それにふれると、

「私、あんなちゃらちゃらしたもの、いやですから」

と一蹴する。なので、氷もその話題にはあまりふれなかった。

 だが、星子と氷、2人が歩いていると、

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、聞き覚えがある声が聞こえてきた。これに星子、

「なんの声?」

と、その声の方向にいってみる。そこには、

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、九たち5人と雪穂が一緒にスクールアイドルになるための練習、というよりダンス練習をしていた。これには星子、

「ちゃらんぽらんなことはすぐやめて、もっとおしとやかになるようにしつけよ」

というおじいさまの言葉を思い出し、

「あんなの、やめさせてくる」

と言うと、氷、

「今はやめとき。ほっときましょう」

と、星子を止める。これに星子、

「なんて気にくわないことをしているのですか」

と、本心で言っているような、まるで怒っているような声で言うと、氷、

「星子…」

と、ただ星子を見つめて言った。いや、なにかを感じ取っていた。なぜなら、星子は荒々しい声で言っているのに、目にはなにか、なにか言いたそうな、いや、なにか一緒にやりたそうな感じであり、なおかつ、目から涙が流れていた。これには氷、

(なにか言いたそうだね。もしかして、星子、九たちと一緒にやりたいのかな?)

と、思えて仕方がなかった。

 

 その日の夜。

「春、ごめんなさい、夜分遅く…」

と、春は営業時間外のため、暗くなっている島唯一のスーパーに春を呼び出し、こう言った。なぜここに呼び出したのかというと、ここには公衆電話があり、それを照らすための明かりが灯っていた。ほかのところでは道を照らす明かりすらない。それだけ夜になるとあたり一面暗くなるのだ。その分、星空は明るく見え、普通の人でも6等星まで見える。町では「星空がよく見える島」としても売り出しており、その星空目当てで観光に訪れる方も多かった。それともう1つ、営業時間外なので、誰も来ない。来るにしても公衆電話を使う人だけ。なので、氷にとって内緒で春にあるには都合がよかった。

「氷、なに、内緒の話って」

と、春は氷に事情を聞く。春はどちらかというとお母さんキャラみたいなところがある。氷は誰とでもフランクに話せるのだが、そのことがあだとなり、内緒の話をすると、誰かに話すのではと心配されることが多い。むしろ、揉め事を仲介するのがしょうにあっていた。一方、春はお母さんキャラといわれるほど困っている人に対して真摯に受止め、的確なアドバイスをくれる。また、相談内容については必ず秘密を守ってくれる。なので、相談するならまず春に、というのがこの島の子どもたちの暗黙のルールになっている。

「実は、星子、なんか困っているみたいなんだ。九たちがスクールアイドルってものになるための練習をしているときに、「あんなのやめさせてくる」「なんて気に食わない「ことするの」と言ってやめさようとしたの。でも、目にはなにか九たちとやりたそうな目で涙を流していたの」

と、氷は春に今日の放課後起こったことを話す。

「ああ、なるほどね。だから、星子、図書室でこっそり見ていたのね」

と、なにかわかったように言うと、氷、

「えっ、図書室でこっそり見ていた~」

と驚く。これには春、

「実はね、星子が図書室のなかでなにかを見ているのを見たことがあるの。で、なにかなって少しのぞいてみたら、ファッション雑誌だったの」

と言うと、氷、

「星子がファッション雑誌!!あの「堅物がとりえです」の星子がファッション雑誌だなんて信じられないよ」

と、大げさに笑う。が、春は真面目に、

「いや、だからこそいまどきの若者にあこがれているのだと思うよ、氷」

と言うと、氷、

「まじ?」

と言うと、春、

「大まじです」

と答えた。春は続けて、

「星子にとっておじいさまという頑固親父、もとい、頑固おじいちゃんがいる。そのおじいちゃんはもとから「女性は男性の言うことをきくものだ」という考えの持ち主で、それでもって星子に対してその考えを強制的に守らせている。星子はおじいちゃんに従順しないといけない。けど、星子だっていまをときめく女の子だよ。少しでも若者ファッションを着てかわいい格好をして都会に出たいんじゃない。でも、それができないのが現状だよ」

と言うと、氷、

「たしかにそうかも」

と言うと、春、

「で、星子は九たちがスクールなんとかになる練習を見て、自分もひらひらなスカートを着て、今をときめくスクールなんとかっていうものになりたい、と思ってしまう。けど、おじいちゃんから「スクールなんとかをやめさせなさい」とかいわれたんでしょ。ひらひらしたスカートなんかを着て踊るなんてけしからん、みたいに。だから、星子はおじいちゃんの言うことを守るために言ったが、それに対して、目は自分の心に正直になってしまい、九たちに対するあこがれ、スクールなんとかになりたいという願望があらわれたんじゃない」

と言うと、氷、

「それは一理あるかもしれない」

と、納得の表情。だが、ここで1つ疑問が浮かび上がる。

「で、春、なんでスクールなんとかって言っているの?」

と、氷は春に質問すると、春、

「九たちがなろうとしているのってスクールなんとかってものでしょ。スクールなんとかって?」

と言うと、氷、

「スクールアイドル」

と言うと、春、

「そう、スクールアイドル」

と言い直す。が、春、重要なことを言う。

「ところで、スクールアイドルって何?」

これには氷、

「スクールアイドルって、あれよ、踊ったり歌ったりするアイドルのことでしょ」

と言うと、春、

「氷、実は知らないのでしょう、スクールアイドルのこと」

と、氷に指をさしつつ言うも、氷も、

「そういう春も知らないのでしょ」

と、痛いところをつく。これには春、

「ということは、私たち、スクールアイドルのこと、知らないね」

と、正直に言うと、氷、

「うん、そうだね」

と、正直にうなずく。

これではまずいみたいで、春、

「なら、まずスクールアイドルのことを調べてから動こうね」

と言うと、氷も、

「うん、そうだね」

と答えた。さらに春は、

「でも、星子にばれるとまずいから、星子には内緒でこっそり調べようね」

と言うと、氷、

「うん」

とうなずいていた。

「で、なんで、星子の秘密知っているの、星子がファッション雑誌を読んでいること」

別れるとき、突然氷は春に聞いて見た。すると、春、

「それは防犯カメラを見たから…、じゃなくて、偶然星子がフェリーの女性乗組員と学校で会っているとこ見ちゃったの。でもって、星子が図書室に行くからこっそりあとをつけたの。そしたら、星子、閉架図書のある部屋に入る前、待ちきれなかったのか、突然、袋からあるものを取り出したの。そのとき、「fifteen」ってタイトルが見えたの。で、星子がその雑誌を熱心に見ていたの。もちろん裏もとってあるよ。後日、フェリーの女性の乗組員に聞いてみたの。そしたら、星子がネットで注文した雑誌を星子のかわりに受け取って、それを星子に渡しているって。星子も無用心だね。だって、その乗組員、星子にファッション雑誌渡しているの、秘密にしていないみたいだったし」

これには氷、

「春、相談相手の秘密を簡単に言うのはいけないと思うけど」

と言うと、春、

「だって、星子から相談受けていないし、氷からの相談には必要な情報かなって」

と言うと、氷、

「春ってなんていう策略家なんだか」

と言うと、続けて、

「あっ、たしか、星子って閉架図書のある部屋の前で雑誌読んだのよね、そのあとは?」

と言うと、春、

「その雑誌を持って閉架図書のある部屋に入っていったけど…」

と言うと、氷、

「雑誌を持って閉架図書のある部屋にねぇ…」

と言うと、あることを思いついた。

 



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スピンオフ 第8.3~9.5話 3年生編 第2回

 そして、翌日、

「それじゃ、なにか策が見つかったら合流ってことで、それまでは別行動をとりましょう」

と、春が言うと、氷も、

「ええ、そうね。2人で動くと星子のことだもの、気づいてしまうしね」

と言うと、2人は別々に皇室に入っていった。

 で、まず、春はというと、

「まずはネットで調べるのが1番。やっぱりパソコン。もしかしなくもこれが知識の海に繋がっているというインターネットずら~」

と言いつつ、家で「スクールアイドル」についてネットで調べる春。

「え~と、「スクールアイドル」と入力、そして、ポチっと。オー、いろいろでてきた」

春は驚いていた。スクールアイドルと入力しただけで何百万件もの検索結果が出てきたのだ。とはいえ、これでは混乱するので、まずは…。

「まずは1番最初に出てきたところをポチっとな」

と、クリックすると、スクールアイドルに関する説明が出てくる。

「え~と、「芸能プロダクションを介さず一般高校の生徒を集めて結成したアイドル」か」

スクールアイドル、それは普通の女子高生が一緒になって活動する高校生アイドルのことと知った春。続けて、その説明ページの下をスクロールすると、

「「ラブライブ!」「スクールアイドルの頂点を決める大会のこと。別名、スクールアイドルの甲子園。年2回あり、夏と冬にそれぞれ開催される。第1回と第2回、そして、1回だけ行われた博多ドームを除くと、決勝大会はすべて秋葉ドームで行われる」と」

と、ラブライブ!に関する説明も出てくる。

「へぇ~、スクールアイドルってラブライブ!を目指して頑張っているんだね。なんか面白そう。どんどんスクールアイドルについて調べちゃえ」

春、こうなると止まらない。春はなにごとに対しても研究熱心になる。それがたとえ無限であっても。でも、それが春の知識となり、それが困っている人たちの相談に役に立つのだが、それでも、春にとって謎とはすべてを調べないと気がすまない存在なのだ。

「え~と、A-RISE、第1回ラブライブ!優勝グループか。ふむふむ。あのトップスターのA-RISEも最初はスクールアイドルだったのね。で、μ‘s、第2回ラブライブ!優勝グループ。A-RISEを破り優勝。そして、ニューヨークのライブ中継、秋葉原でのスクフェスでもって活動休止。1年間しか活動していないが、伝説といえる存在となった。そのリーダーが高坂穂乃果…」

と、いろいろと調べまくる春、そして。

「で、オメガマックス、μ‘sのメンバーの妹たちが所属していたグループ。紆余曲折をえて8人となり、前回のラブライブ!優勝グループK9を破り優勝。そして、突然あらわれたμ’sをも破り伝説となった。光の道といわれる自然現象が起こる神社にてその光の道(ゴールデンロード)が起きたときに発表した解散宣言が特に有名。で、そのときのリーダーが高坂雪穂、ってあの高坂先生じゃない。高坂先生って有名だったんだ」

衝撃のことを知った春、それでもいろいろと調べ続ける、というよりもこれはすでにスクールアイドル研究になっていた。

さらにあのグループについても。

「え~と、Aqours、静岡県沼津のスクールアイドル。ラブライブ!夏季大会は東海予選で敗退。廃校を阻止するために望んだラブライブ!冬季大会東海予選では大技を決めて突破するも、廃校阻止という夢は叶わず。しかし、学校の名を刻んで欲しいという全校生徒の願いを胸に優勝を目指す。結果、優勝。メンバーいわく、自分たちだけの輝きを見つけた」と」

Aqoursの説明に、春、

「これって私たちの学校と同じじゃない。スクールアイドルって廃校を救う的なことを書いているところもあったけど、実際のところ、廃校を阻止できる力なんてないんだね」

と言ってしまう。たしかに「スクールアイドルは廃校を救う」という考えは現段階ではまだ強かった。が、春はいろいろと調べていくことで、それが幻想であることを見抜いてしまった。

 そんでもって春はあることを考え始める。

「スクールアイドルって10年以上の歴史もあって、全国にはいろんなスクールアイドルがたくさんいる。それなら、その動画もたくさんあるってことよね」

ということで、今度は動画サイトでスクールアイドルが実際に踊っている動画を探してみる。すると、

「いろいろある。えっ、1000万件以上。ありすぎるでしょ」

と、春は驚いた。実際にμ‘s、A-RISEなど過去のスクールアイドルたちの名曲をカバーした動画があれば、オリジナル曲もある。だが、それでも1000万件以上とは、さすがスクールアイドルである。でもって、春は片っ端から動画を見ていく。そのなかで、

「あっ、これって九たち2年が披露した「オータムウインド」じゃない。で、こっちはたい子たち1年が披露した「ウインターガーデン」。みんな頑張っているねぇ」

と、春、九たちの動画を見て喜ぶ。でも、なんでこんな動画があるのだろうか。投稿主は「スノースパイク」。実はこれ、雪穂がこっそり撮っていたのだった。少しでも思い出にと隠しカメラで撮った動画なのである。雪穂よ、それは犯罪ではないかとツッコミたいが、今はよしておこう。

 いろんな動画を見ていくうち、春はあることを思いついてしまう。

「なんか、動画を見ていくうちに無性に踊りたくなってきた」

春、ネットをするくらいなので、インドア派、なのだが、実は行動的インドア派なのである。別にいつも室内にこもっているわけではない。いろいろと調べていくうちに自分で行動したくなるのだ。たとえば…。

「あれがデネブであっちがアルタイル。星座の本を見ていたら、無性に星が見たくなった」

小学6年生のとき、春は星座の本を片っ端から読むうちに星座を見たくなった。ので、

「よ~し、今夜は島のキャンプ場でキャンプだ」

と、春、勝手に決めて、家から無断でキャンプ道具を持ち出し、島のキャンプ場でキャンプを1人でしてしまった。そして。

「あれ、あの星ってなんか動いているねぇ」

ということで、その星のことを翌日、学校の先生に言うと、後日、それが未発見の彗星であったことがわかり、九龍島は瞬く間に星空のメッカとなってしまったのだ。それほど春の研究熱は高く、行動をおこさないと気がすまないのだ。

 で、動画を探している春、そのうちに、

「そういえば、私の名前がはいった曲ってないかな?」

と、春が言うと、「スプリング」と検索をかけ、「スプリング」と名がつく曲を探すと、

「「スプリングコンタクト」、なんかいい響き。それに九たち2年の秋、たい子たち1年の冬ときて、「春」。なんていい並びなんだ」

と、とても喜んだ表情に。ということで、

「それじゃ、この曲のダンスや歌を覚えちゃおう」

と、春、勝手にこの曲の練習を勝手に始めてしまった。が、このとき、これが3年生にとって思い出に残る曲になろうとは…。

 

 一方、氷は別の方法をとった。その方法とは、直接九たちに聞いていみることだった。九たちが練習にはいる前、

「ねぇ、九ちゃん、ひろ子ちゃん、たい子ちゃん、めいちゃん、小明ちゃん、ちょっとこっちにきて」

と、氷が九たちを呼びかけると、

「氷ちゃん、なんですか」

と、九たち、すぐに氷のところに集まる。

 そして、氷はまず九に聞く。

「なんでスクールアイドルを始めたの?スクールアイドルになってどう思っている?」

これには九、

「最初はねぇ、学校を救おうと思っていたけど、ひろ子ちゃんと一緒に練習していくうちにスクールアイドルっていろんなことをして、みんなと一緒に楽しむことが一番なんだって思えてきたんだ。今はスクールアイドルをもっと楽しもうと思っているんだ」

と答えると、今度はひろ子が、

「たしかに、最初は大変だったね。だって、私も九ちゃんもスクールアイドルって何をすればいいのかわからなかったから。まずは初心者用の講座みたいな動画をみるところから始めたよ。でも、練習していくうちにどんどん上達して、今は雪穂先生が教えてくれる。最初のころから見ると、よく頑張ってこれたかなって思うよ」

と答える。

 続けて、小明が答える。

「小明はね、アクロバットをしたいためにはいったんだよ。アクロバットはダメって言われた。でも、いつかはきっと役に立つ日がくる。小明はそう信じているよ」

これが後日、鹿児島県予選で現実になるのだが、それはさておき、続けてめい。

「めいも忍耐を鍛える意味でスクールアイドルになったの。最初は慣れないことが多かったけど、九ちゃんやひろ子ちゃん、雪穂先生が丁寧に教えてくれるから、今じゃとても面白いと感じているよ」

と答える。最後にたい子。

「私は2人がはいるならばとはいっただけ。いつでもやめていいんだけど、2人がとても楽しく練習している姿を見ると、なんか落ち着く。なんか楽しいって今は思えるかな」

 この5人の言葉に氷、

(へぇ~、みんな、最初は大変だったけど、練習を重ねていくうちに楽しく思えるようになっていったんだね)

と思うと、すぐに九たちに、

「手間を取らせてごめんね。これで私の心は決まった。本当にありがとうね」

と、九たちと別れた。

 九たちと別れたあと、氷はすぐにあることを実行に移すことを決めた。

「このままじゃ星子と九ちゃんたちとのあいだに深い溝ができてしまう。ならば、星子をスクールアイドルにしてしまおう。まずは私が星子にスクールアイドルになろうって誘えばいいんじゃないかな」

そう決めた氷、すぐに星子を探すと、2分後には、

「あっ、星子だ。星子~」

と、呼びかけようとしたが、そのとき、

「はい、おじいさま…」

と、携帯で誰かと話している星子の姿を見て、呼びかけるのをやめる。

「はい、はい、はい、そうですね。は、おじいさまのいうとおりにします」

星子はこう言って携帯を切ってしまう。

 氷はそのタイミングを見計らって、星子に、

「お~い、星子、誰と電話していたの?」

と聞いてみる。すると、星子は、

「おじいさまからですわ。九たちのことですね。スクールアイドルをやめなさいと。あんな不純なもの、させておいたらだめになるって」

と言うと、氷、思わず、

「えっ、スクールアイドル!!九たちってたしか今日もスクールアイドルの練習をしていたのよね」

と、思わず口がすべる。これに星子、すぐに、

「なんですって。九たち5人がスクールアイドル、まだ続けているですって」

と言うと、氷、星子に合わせてか、

「それは本当のことです」

と言ってしまう。星子は何度も氷に聞くも、氷はそうであると答え、それとともに、

「でも、いいんじゃないかな。ほっといて」

と、フォローするも、星子、

「あんなの不潔なもの。やること自体不愉快ですわ」

と一蹴。むろん、氷は本心で言っているのではなく、星子のおじいちゃんの言うことだからと見抜いていたが、それでも星子は、

「もうこれ以上ふしだらになるのはいけないことですわ」

と言って、急遽九たち5人を生徒会室で公開説教を始めてしまった。

「悪いことしてないもん」

と言う九に対し、星子、ついに言った。

「スクールアイドルといういかがわしいものをやっているからです」

と、大声で言うと、さらに、

「ひらひらとしたスカートで踊る。これこそいかがわしい。女性とは淑女なれという言葉があります。おしとやかに微笑む、これこそ日本の女性というのもなのです」

と断言する。そして、

「いいですね。九、ひろ子、たい子、めい、小明の5人はスクールアイドルの活動をやめなさい。今後一切似たようなまねをしないこと」

と言ってしまった。

 これを見ていた氷、

(星子、ついにいけないところまでいってしまったよ。これじゃ、星子と九ちゃんたちに深い溝ができてしまったよ~。私、ついに言い切れなかった。もっとはやく星子に言えばよかったのに~)

と、先に星子をスクールアイドルに誘えばよかったと後悔していた。

 で、星子が九たちにスクールアイドル禁止令を出したあと、星子はすぐに隣にいた氷に言った。

「ごめん、1人にさせてくれないかな」

これには氷、

「わかった」

と言って、生徒会室をあとにする。

 星子は氷が出ていくと、生徒会長の机に顔をうずめ、

「私、なんてことを言ってしまったの」

と言うとともに、

エ~ン エ~ン

と泣き出してしまった。そして、星子は泣きながら言った。

「私だって九たちの活動を応援したいよ。だって、あの子たちは自分がやりたいことを一生懸命頑張っているのよ。私もスクールアイドルみたいな衣装を着てみたいよ。でも、それはおじいさまの言いつけでできない。なら、九たちが私のかわりに着て踊ってほしいよ。でも、それでもおじいさまはそれすらも許さない。女性はこうあるべきだって。それは昔の考え。だけど、今でもまかりとおってしまう。私はどうしたらいいの」

星子、自分の今の気持ちをそのまま言う。でも、もう言ってしまった以上どうすることもできなかった。

 

「星子、やっぱり我慢していたんだね。私はなにもできなかった」

氷は泣き叫ぶ星子をこっそり見ていた。その星子の姿を見て、氷、こう言うと、

「私、今からどうすればいいのかな」

と、途方にくれていた。

 一方、雪穂にもスクールアイドルの練習をやめるように校長から言われる。これには雪穂、

(これって大丈夫なのかな。みんなに深い溝を作らないかな)

と、心配していた。

 

 



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スピンオフ 第8.3~9.5話 3年生編 第3回

 スクールアイドル禁止令を出されあと、九たちは教室にいた。

「やりたい、やりたい、やりたいよ~」

と、だだをこねる九に対し、ひろ子は、

「生徒会長である星子さんからの命令じゃどうしようもないよ」

と言うも、九はやりたいの一点張り。

 そんななか、突然九たちの前にあらわれたのが、

「それなら、こうしたらどう」「ちゃおですわ」

「春さん!!」

そう、春だった。春はすぐにあることを提案した。

「体力づくりですよ」

これには九たちは驚く。めいから「なぜ体力づくりを」と聞かれると、春、

「スクールアイドルとはいえ、全力でダンスするにしても体力は必要。だからこそ、体力づくりは必要なんですよ」

と答える。

 実は春、スクールアイドルのダンス動画を見て、いろんなダンスを踊っているうちにあることに気づいた。

「そういえば、激しいダンスなのに、この子たち、息一つ切らしていないね」

そう、動画に映るスクールアイドルたちはたとえ激しいダンスをしていても息一つ切らしていなかったのだ。むろん、激しいダンスをするにはものすごい体力が必要である。というわけで、今度はスクールアイドルの体力づくりについて調べることに。すると、

「へぇ~、μ‘sって夏の合宿のときにランニング10キロ、遠泳10キロしたんだ。あっ、Aqoursもそれをしたんだね。それにμ’sやオメガマックスは神田明神の男坂というきつい石段で何本もダッシュしていたんだね。あっ、雪穂先生、相当きつい特訓をしている。でも、別のメンバーが平気でも、雪穂先生は途中でへばっていたんだね。Aqoursも同じように坂でダッシュしている。スクールアイドルって体力も大事なんだね」

と、いろんなことがわかってきた。

 これを見た春、あることに気づく。それは。

「そういえば、九ちゃんたちってダンス練習や歌唱練習しかしてないよね。体力づくりしていないような。九ちゃんやめいちゃん、小明ちゃんは体力ありすぎ、ひろ子ちゃんも体力あるかな。けど、たい子ちゃんは体力なさそうだし」

そう、九たちは体力づくりをまったくしていなかったのだ。雪穂が教え始めても体力づくりはしていなかったのだ。

 そして、それが春の心に火をつけてしまった。

「体力づくりかぁ。私もみんなと一緒に体力づくりしたいなあ。みんなと一緒に体力づくり。ここ最近動いていないしね。体がこわばっているのよね。ああ、体を動かしたい」

実は春、めいと同じく忍耐という言葉が好きだったりする。インドア派のくせにである。また、持久力もあるため、どんな練習でもへこたれない。ある意味強靭なのである。

「ああ、みんなと体力づくりをしたい。あっ、そうだ。この際だから、氷には悪いけど、一足早く九ちゃんたちと合流して一緒に体力づくりしちゃおうか」

こう春が思ってしまうと、あとは行動あるのみである。思ったら吉日、春はその言葉を胸に九たちと合流することを決めた。でもってちょうどそのとき、星子からスクールアイドルの練習を禁止されて途方にくれていた九たちにとって春の提案は嬉しいものとなった。

 とはいえ、反対意見も出てくる。めい、

「ダンス練習がしたい!!」

と、だだをこねるも、

「春さんの言うとおりだよ」

と、雪穂が春の意見に賛成する。雪穂はさらに、校長経由で星子からスクールアイドルの練習禁止のお達しがでていることを告げるとともに、

「でも、体力づくりなら話は別。体力づくりなら言い訳もつくしね」

と言うと、九たちはすぐに体力づくりをはじめた。

 雪穂は体力づくりにいく九たちを見て、

「ある意味ちょうどよかったのかもしれない。だって、あの5人にとって1番大切なのは基礎体力ですもの」

と、いろんなことを言うと、春も、

「そうですね」

とうなずいた。

 そして、雪穂は春に聞いた。

「なんで春さんはここにいるのかな?」

と言うと、春、

「本当は私も九ちゃんたちと一緒にスクールアイドルしたいんですよ」

と答えた。そして、春はこのときこう思った。

(私はスクールアイドルってなんだろうと調べ始めた。すると、いろんなことがわかった。さらに、スクールアイドルの動画を見て、無性に体を動きたくなった。さらにさらに、いろいろ調べていくうちにスクールアイドルには体力が必要であることもわかった。そして、今、みんなと一緒に体力づくりをしようとしている。けど、それってただのきっかけに過ぎないのよね。本当は自分がみんなと一緒にスクールアイドルをやりたい、それだけかもね。スクールアイドルについて調べていくうちに、自分もスクールアイドルになってしまった。まるでミイラ取りみたいだね。でも、私はそれでいいと思っているよ)

 そして、春は九たちのあとを追った。

 

 それから1週間、九たち5人と春は体力づくりにいそしんでいた。

「なんか最近体力がついてきたかも」

と、九が言うくらいみんな体力をつけてきたのだ。ただ1人、雪穂を除いては…。

「な、なんていう体力。私のほうがいつもへばってしまう…」

と、雪穂がぜえぜえ言っているが、九たち5人+春はまだまだ平気だった。6人にとって「島の自然が遊び相手」というくらい外で遊んでいたりする。なので、たい子や春のようにインドア派であっても、体力は結構あったりする。都会育ちの雪穂にとって田舎育ちの九たちに付き合うにはもう少し体力がほしいところ。なので、今現在、体力づくりがもっとも必要なのは雪穂なのかもしれない。

 

 だが、この状況をにがにがしく思っている人がいた。

「なんで、私にはむかうのでしょうか」

星子だった。星子は九たち5人と春が一緒に体力づくりしている様子を見てハンカチをくわえて悔しがるように見ていた。

 けれど、その横にいた氷は九たちと一緒に楽しんでいる春の姿を見て、

(あっ、こういうはいりかたもあるんだね。星子のスクールアイドル禁止令を逆さにとって、体力づくり。「体力づくりしてます」って言えば言い逃れもできるしね。そんでもって、自分も一緒にやる。やるじゃない、春)

と思っていたのか、星子に対し、

「でも、体力づくりなら普通行うことでしょ。そこは注意できないんじゃないかな」

と、九たちをフォローする氷。

 だが、星子はついにあることを決めた。

「私にはむかうなら、私が印籠を渡してやる」

 これを聞いた氷、すぐに、

「それって星子の本心なの。これ以上九たちから楽しいことを奪うの」

と反論すると、星子、

「本心です」

と、ズバリ答える。これには氷、

(こりゃ、本心じゃないな。絶対に(星子の)おじいちゃんのためだな)

と思っていた。なぜなら、星子の目から涙が流れていたからだった。

 氷はさらに踏み込んだことを言い出す。

「星子、それっておじいさまのためじゃないの」

これには星子、

「そうです。だって、おじいさまの言うことは絶対です。おじいさまがこう言えば町民は必ずそれに従うべきです。おじいさまがスクールアイドルがちゃらちゃらしているからやめなさい、女性はもっとおしとやかに、淑女らしくあるべきと言えば、そらが正しいのです」

と答えた。が、目からは涙が流れていた。

 これを聞いた氷、

(こりゃやばいな。このままじゃ星子が壊れるかも…)

と思うと、あるところに移動した。

 

 氷が移動した場所、それは図書室の奥にある閉架図書が置いてある部屋だった。

「やっぱ、古い本のにおいは私は嫌いかな」

と、氷は言いつつもある本を探しだした。

「これこれ、星子が編さんしていた学校史」

氷はそう言いつつ学校史を読み続けているうちにある項目にたどり着く。

「島一周遠泳大会…」

それは20年くらいまえまで行われた学校行事。全校生徒が島のまわりを泳ぐ大会であり、島を1周することになっていた。20年くらいまえまで年に1回行われていた。目的は島を1周するくらいの体力、そして、強い精神力を鍛えること。島をあげての行事だった。しかし、高校から男子生徒がいなくなったこと、その行事をするためのコストや安全性から取りやめになったのだ。

「この遠泳大会をちょっと工夫して、九たちと星子たちの戦いにしたら、星子もふんぎりつくんじゃないかな」

氷はそう言うと、紙に自分の考えをまとめ、大会の素案を作り上げた。

「よし、これでいいかな。それならすぐにでも星子たちに見せてあげよう」

と、氷は納得がいく表情で部屋をあとにするのだが、

「あれっ、これってなにかな」

と、学校史の横に立てかけていた本、というより雑誌を見つけた。

「これって星子の…。まだあるかな」

と、氷は閉架図書のある棚を見て回ると、次々と見つかる。これを見て、氷、

「これは使えるかも。一緒に持っていこう」

と、あるものを数冊持って図書室をあとにした。

 その後、

「春、ちょっと考えがあるのだけど…」

と、氷は春を呼びだし、この大会のことを伝えるとともに一緒にいろんなところを回っていった。

 



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スピンオフ 第8.3~9.5話 3年生編 第4回

 そして、翌日の放課後。

「これでいいかな」

と、氷と春は大会の提案書を書き上げると、すぐに星子が、

「ちょっと、みなさん、集まってきてください」

と言うので、みんな集まることに。

 すると、星子、すぐに、九たち5人に、

「なんでまだスクールアイドルという幼稚なことをするのですか」

と、怒りながら言う。対する九たちは体力づくりだと言い張るも、星子はそれがスクールアイドルとつながりがあると言い張るばかり。しまいには、

「私が言っていることがすべて正しいのです!!」

と、言ってしまうほどに。

 これを見た氷、

(これだと埒が明かないね。仕方がない。この手を使うしかないね)

と思うと、すぐに、

「だったら1つ勝負、したらどうかな?」

と、みんなに提案してみる。そして、氷はさらに、

「勝ったほうが負けたほうに命令できる。星子が勝てば、5人に対してこれ以上スクールアイドルの連取をしないって言えるでしょ」

と付け加えた。これなら頑固な星子でも納得するだろうと思ってのことだった。むろん、いつも前向きに答えちゃう九のことだから、というのも計算のうちだった。そして、氷の憶測どおり、九と星子、両方とも賛成した。

 と、ここで横から、

「それじゃ、勝負のやり方だけど、この学校の島一周遠泳はどうかな?」

と、春が提案してきた。実は氷と春は事前に打合せをしていた。きっと近いうちに九たちと星子が対立するときがくる。そこで、氷が勝負事をもちかけ、春が途中からあいだにはいって遠泳大会をもちかける。そのほうが自然とうまくいくのではとの打算だった。そして、それはうまくいった。

 途中、雪穂から、

「島一周遠泳って危なくないの?」

と、心配されるも、これも織り込み済み。

「それなら大丈夫です。島の漁師たちにすでに話をつけていますから」

氷は自信満々に答えた。実は昨日、漁協の集まりがあり、そこに氷と春がお邪魔していた。

「あの~、ちかいうちに高校で遠泳大会が行われるので、その手伝いをしてもらえませんか」

と、氷が漁協の組合員に頼むと、そこにいた、いつも法被を着ているハッピーさんから、

「こりゃ、あの伝説が復活するんだねぇ。自分は親父のススメで島外の高校だったし、入れてもいろんな事情でその伝統が取りやめになっていたから、参加できなくて悲しいもんだったよ。でも、それが復活させるんだったら、俺が一肌脱いでやるぜ」

と、力強く言われると、その隣にいたいつも特攻服を着て漁をする特攻野郎Sチームのリーダーからも、

「もちろん、俺たちも一肌脱ぐぜ。ハッピーにいいところもっていかせたくないしな」

と言われる。こうして、漁協の組合員の全会一致で遠泳大会を全力でサポートすることが決まった。そして、九たちと星子の対立が決定的になったのを見計らって漁協に連絡していたのだ。なので、遠泳大会の準備はすでに終わっているのだ。ちなみに、たい子は漁協の組合長の娘ではあるが、氷と春が内緒にしてほしいと組合長に言ったため、組合長はたい子に対してしゃべっていなかった。なので、たい子も知らないことだった。とはいえ、

「都合がよすぎる…」

と、雪穂が言うくらい、氷と春の手際のよさだった。

 で、春の提案からすぐに九は、

「それじゃ、港にレッツゴー!!」

と言って、みんな港に移動した。

 ただ、多恵は、

「そんな茶番~」

と、言って逃げようとするも、春に見つかり、強制的に連れて行かれた。

 

 港ではすでに漁師たちによって遠泳大会の準備は終わっていた。さらに、なぜか冷えた体を温めるためのつみれ汁すらも作っていた。それほど漁師たち、いや、島の人たちは過去で潰えた伝統が再び復活したことにどれだけ喜んでいるのだろうか。それは雪穂に対して漁協の組合長であるたい子の父の言葉でも表れていた。

「まさか、あの伝統がよみがえるなんて、こんなうれしいことありません」

と。

 

 開始10分前、全校生徒はスクール水着に着替えていた、1人、下に水着を着込んでいるひろ子を除いて。ただし、1・2年と3年は別々のところで着替えていた。

 で、3年生が着替えている最中、春は星子にスマホを渡すと、

「ねぇ、星子、この動画、見ない」

と、春が言うと、星子、

「こんな大切な勝負のときにまったく関係ない動画見る余裕なんてないです」

と断るも、強引に、

「星子、ちゃんと見なさい!!」

と、星子の目の前で動画を再生する。その動画からは、

「新しい出会いに感謝しよう~♪」

と、かわいい衣装を着て踊るスクールアイドルの姿があった。そう、春が見つけてきた(そして、春が一生懸命練習した)「スプリングコンタクト」の動画だった。

「わぁ、きれい!!」

と、星子、目をキラキラしながらつぶやくも、すぐに、

(いやいや、いけない。おじいさまの言うことを守らないと、こんな衣装、こんな踊りなんてハレンチなんだ)

と、思ってしまい、すぐに、

「なんなんですか、あのいかがわしい動画は!!」

と一刀両断する。

 が、その一瞬のあいだを氷は見逃さなかった。氷はすぐに、

「それって本当に本心なの?」

と、星子に問うと、星子はすぐに、

「はい、これが私の本心です。あのいかがわしい動画、なんで私に見えるのですか?」

と反論する。これには氷、

「絶対にそうかな。私の知っている星子はそんなこと言わないよ」

と言うと、星子、

「私はいつだって同じことを言っています。女性は淑女であるべきだと。女性は男性の一歩後ろに歩くべき、そして、女性はおしとやかに、つつましく、優雅に、良妻賢母を目指すべきなのです」

と、怒鳴るように言う。

 そんなときだった。

「なら、これらはなんなのですか!!」

「春…」

こんなににえぎらない星子の対応にキレてしまったのが春だった。春は星子の前にあるものを見せる。星子はただそれを見つめるだけだった。春はそんな星子に向かって怒るように言う。

「星子、これはなにかしら。ファッション雑誌やスクールアイドルの雑誌だよね。これね、学校の図書館、それも閉架図書のある部屋にから見つかったの。その部屋って星子と氷しか入れないじゃない。でもね、氷がわざわざそんなところに隠す必要はない。だって、氷は自分の部屋にその雑誌を置けるから。で、家族の方針でそんな雑誌を自分の部屋に置けず、隠さないといけない。でもって、誰にもばれずにその閉架図書のある部屋で保管し、いつでも読むことができる人物って、あとは星子だけじゃないかしら」

これには星子、ただ、

「…」

と、黙るのみだった。

 そして、氷はそんな星子にあることを聞く。

「星子、実は九たちと一緒にスクールアイドルしたいんじゃない」

これには星子、

「私は…、私は…」

と、何も言えない状況に。星子にとって誰にもバレたくない秘密が一番の親友である春と氷にバレてしまい、さらに氷からいたいところをつかれているので、頭の中がパニックを起こしていた。

 春はそんな星子を見て、ついにあることを言い出した。

「星子、なんでファッション雑誌やスクールアイドルの雑誌を見たいか、私はよ~くわかるよ。だって、星子だって1人のかよわい少女だもんね。普通におしゃれして、普通にみんなとファッションなどのたわいもないことをおしゃべりしたいって。そして、女の子なら誰でもあこがれるアイドル。スクールアイドルなら、誰でもなれるもんね。ひらひらしたスカートを着て、きれいな衣装を着て、みんなの前でかわいく歌って踊る、星子はそれをしたいって夢見ていたんでしょう」

これには星子、ついにキレた。

「私だってあこがれているわよ。普通におしゃれして、みんなとたわいのない話をしたいよ。スクールアイドルにあこがれてなにか悪い。私だって九たちみたいにかわいい衣装着て、スカートをひらひらさせながらみんなと一緒に歌って踊りたいよ、でも…」

と、本心を言う星子だったが、途中で口がこもってしまう。それを見た氷はすぐに、

「それっておじいさまの言いつけを守るためじゃない。本当は九たちと一緒にスクールアイドルをしたい。でも、おじいさまの言うことだから、無理にしたくないって言っているんじゃないかな」

と言うと、星子、

「そうよ。おじいさまに言われているからだよ。この島では、おじいさまの言うことが絶対。それが家族ならなおさらだよ。それを破るなんて、私はできないよ」

と言うと、春、

「いつもおじいさまの言いつけを守るためなんて言っていても、いつかはそれが通らなくなることもあるんだよ。いつまでもおじいさま、おじいさまって言っていたら、星子の心の成長は止まったままなんだよ。もっと自分の心に正直になろうよ」

と、強く呼びかけるも、星子、

「それは…」

と躊躇する。

 これを見た氷、すぐに、

「それじゃ、この勝負で踏ん切りつければいいじゃない。勝てばいつもの星子のまま、まければ新しい星子を受け入れる。それでいいんじゃない」

と、星子に提案すると、星子、

「うん…」

と、素直に同意する。これを見た氷、

「それじゃ、この勝負頑張っていきましょう」

と、星子と春に声をかけた。

 

 開始2分前にチームわけとルールが発表された。チームは多恵を除く1・2年生連合と多恵を含む3年生チームに。これには氷と春の陰謀が隠されていた。1・2年連合には水泳が得意なひろ子のほかに、体力に自信がある九、小明がいる。一方、3年生チームのメンバーには水泳が得意なメンバーはいないし、多恵にいたっては都会育ちのお嬢様なので、頭数にはならない。というわけで、1・2年連合が勝つ確立が非常に高いのだ。

なお、全員で島1周するわけでなく、リレー方式でたすきをつないでいく方式を採用した。これは全員とも遠泳の経験がないので、最初から全員で島1周するのはきつすぎる。それならばと、リレー方式で島を1周する方法をとった。ただし、1人が泳ぐ距離に制限はなく、疲れたら次の泳者に交代することになっている。

 

で、ついに遠泳大会がスタートした。

「ひろ子ちゃん、早い…」

と、九が見とれるほど1・2年生連合の第1泳者のひろ子は同じく3年生チームの第1泳者の春の距離をどんどんひろげていく。ついには100mも離してしまった。

 続く1・2年生連合の小明はその距離を保ちつつ、つぎのめい、そして、たい子へとたすきをつないだ。対する3年生チームの第2泳者氷はその距離を保つだけで必死だった。

 だが、ここでとんだ伏兵があらわれた。

「土居(多恵)さん、早い…」

と、九が驚くのも無理がなかった。泳ぎが得意なひろ子すら、

「土居さんってこんなに水泳が得意なんて」

と、驚いていた。伏兵多恵、その泳ぎはすさまじく、

「はいはいはい」

と、言っているみたいにリズミカルにクロールをしているようだった。そのスピードは体育が得意な小明だけでなく、学校で泳ぎのスピードがナンバーワンのひろ子に匹敵するくらいだった。100mあった距離はどんどん短くなっていき、ついには、

「あ~、追いつかれる~」

と、九が心配するくらいたい子と多恵がならんでしまった。ちなみに、あとで聞いた話によると、多恵は東京では遠距離の水泳選手として有名だったとのこと。恐るべしスーパー女子高生多恵であった。

 

 そして、勝負は最終泳者の九と星子の対決となった。が、ここで氷が一言。

「これはちょっとまずいわねぇ」

これに春、

「なんで?」

と、氷に聞くと、氷、

「本当なら、1・2年連合が圧倒的な差で勝っているつもりだったけど、土居さんが頑張りすぎて五分の状態になっちゃった。ということは、星子は勝とうと無理をするんじゃないかな」

と、冷静に分析する。春、

「でも、九ちゃんは体力があるし、泳ぐスピードも早い。これなら星子も諦めて…」

と言うと、氷、

「いや、だからだよ。星子はそんな九に勝とうとさらに無理をする。だって、勝つことができれば、これ以上九たちがスクールアイドルをしなくてすむし、おじいさまの言いつけを守ることができる。だけど、それは自分の本当の思いを永遠に封じ込めることにもなるから、負けてあげたいと思う。その心のゆれうごきが逆に危ないのよ」

と言うと、春、

「それはあたっているかもね」

と言うと、星子のほうを見た。

 

 九と星子の戦いは抜いたら抜き返す、その繰り返し。星子、抜かれると、

(これじゃ負けてしまう。負けたらスクールアイドルの活動を認めてしまう。そうなったら、おじいさまの言いつけを守れなくなる。おじいさまの言うことは絶対。私はおじいさまの言うとおり、大和撫子、淑女を目指さないといけないの)

と、思って腕に力がはいり九を抜く。が、抜いてしまうと、

(このままじゃ勝っちゃう。勝ったら、スクールアイドルを目指している九たちが悲しんでしまう。それよりも、私の本当の気持ち、かわいい服を着て、みんなと一緒にファッションを楽しむこと、いや、九たちと一緒にとてもきれいな衣装を着て、スクールアイドルとして楽しく活動できなくなる)

と思って、腕の力が抜けて九に追い抜かれる。その繰り返しだった。

 が、ゴール手前で星子の頭の中にある人物があらわれた。

「いいか、女性とは大和撫子らしく、おしとやかに、つつましくするべきものだぞ」

そう、おじいさまの顔だった。これには星子、

(おじいさまの言うことは絶対。絶対に守らないと。絶対に勝たないと)

と思い、勝負にでた。泳ぐスピードがあがる。そして、ついに、

「あっ、星子が九を突き放した」

と、春が叫ぶくらい九を突き放す。

(あともう少し。あともう少しで勝てる!!これでおじいさまの言うことが守れる)

と、星子はなにか焦りを感じているみたいに思うと、

(もっと早く、もっと早く)

と、なにかを念じ始めた。

 が、ここで星子に異変が起きた。

(ううっ)

と、星子の足裏に激痛が走る。

(もっと頑張らないと、もっと頑張らないと)

と、星子は思うも、体が思うように動かない。

(体、動いて、動いて。このままじゃ負けちゃうよ)

と、星子は焦るも、星子の体は思うように動けないまま。

 そして、星子はそのまま沈んでいく。自分もどうにかして浮上したいが体が動かない以上、ただ沈んでいくしかなかった。このとき、星子は、

(あっ、短い人生だったな。私、いろんなことしなかったな。みんなとファッションについて語りたかったな。九たちと一緒にひらひらのスカートを着て、かわいい衣装を着て、スクールアイドルしたかったな。もっと本当の自分をみんなに見せたかったな)

と思うと、そのまま体を丸め、そのまま自然の流れに身をまかせて沈んでいった。

 

 星子の異常はすでに海上でも気づいていた。

「星子、どうしたの?もしかして、足をつったの」

と、氷があわてていると、春は、

「落ち着いて!!まずは星子を助けましょう。誰か、星子を助けに言ってください!!」

と叫ぶと、隣にいた特攻野郎Sチームのリーダーは、

「ダメだ。星子譲ちゃんを助けようにも星子譲ちゃんが沈むスピードが速すぎて間に合わない」

と言うと、氷、

「誰か、星子を助けてあげて~」

と叫ぶと、すぐに、

「まかされました」

と、誰かが答えた。

 

 そのまま海中に沈んでいく星子。心のなかでは、

(このまま私は死ぬのかな。春、氷、みんな。さようなら)

と思っていたが、その瞬間、

「星子ちゃん、待ってて!!

と、言う誰かが叫ぶ声が聞こえてきた。が、星子の記憶はここでぷつりと消えた。

 

 



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スピンオフ 第8.3~9.5話 3年生編 第5回

 それから数分後、

「はっ」

と、星子が目覚めた。まわりを見渡す星子。そこにはいつもの見慣れた港だった。

「よかった~」

と、九は星子を抱きしめて泣きながら言った。話に聞くと、足をつって沈んでいく星子を九が必死になって助けたとのこと。

「あ、ありがとう」

と、星子が言うと、九は照れつつ、

「どうもいたしまして」

と言い返した。

 そして、多恵は大事なことを言った。

「これって勝負じゃなかったかしら。それで、勝負はどうなったの?」

これには星子、

(みんなには私のことで迷惑をかけたからね)

と思い、いさぎよく、

「それは私たちの負け…」

と言った瞬間、

「この勝負は無効だよ」

と、九がいきなり言うと、星子の「無効…」の言葉に続けて、

「だって、こんな状態なんだもん。これで勝負が成立しているなんて言えないもん」

と言い張る。これには星子、

(九…、もしかして、私のことをかばっているのかな。勝てばこれから先、スクールアイドルやり放題なのに、それでも、自分の考えなんて無視して無効だと言い張る。それに比べて私は…。これは私の完敗かな…)

と思うとともに、

(そして、ちょっと無理していたのかもね、私。おじいさまのためと思って無理をしてきた。でも、それって本当の自分をも押し殺していたんだね。本物の自分、今の若者らしく生きたいという本当の自分、そして、九たちと一緒にスクールアイドルになりたいという本当の自分の気持ち、今からは正直になろうかな)

と思ったりもする。

 が、やっぱり星子、

(でも、おじいさまのことが~)

と、おじいさまのこともやっぱり心配する。

 これに業を煮やしたのが氷だった。

(ああ、じれったい)

と思うと、

「もう、本当のこと、話ちゃいなよ」

と、星子に諭すと、星子、うっかり、

「私はそんなこと…」

と、躊躇してしまう。これには春が氷への援護射撃が始まる。

「なら、私から言おうかな。あのことも含めてね」

あのこと、つまり、星子が隠していたファッション雑誌のことかもしれない、そう推測した星子、

(このままじゃ私が図書室でファッション雑誌などを無断で読んでいたことがバレる!!)

と思ってしまい、

「わかりました」

と、白旗をあげた。

 そんな星子だったが、ここからは吹っ切れたようになる。星子はまず春と氷を呼ぶと、

「で、氷に春、あの曲を歌いますわよ」

と言うと、春、

「ああ、あの曲ね。私が今さっき見せた「スプリングコンタクト」ね。いいわ。みんなに披露しちゃいましょう。星子に氷、私が踊るところをマネしてね。そしたらうまくいくと思うから。歌については私がセンターするから、2人はコーラスなどしてね」

と、星子と氷に指示をだす。

 一方、氷はと言うと、

「えっ、私もするの。ちょっと待って、私、するって一言も…」

と言うと、星子、

「一蓮托生よ。氷、諦めなさい。それに、氷だって九たちと、私と一緒にスクールアイドルしたいんでしょ。だって、いつも九たちの肩をもっていたよね。今回も遠泳なら九たちが有利だとふんだんだよね。結局、伏兵の土居(多恵)さんによって思い通りにはならなかったけど」

と言うと、氷、

「バレていたのね」

と正直になる。

 そして、星子は言った。

「氷も正直になりなさい。これまで私に本物の自分を見せるように言ってきた氷だけど、裏を返せば氷も本物の自分を見せていないよ」

これには氷、

「本物の自分…」

と、言って何かを思い返していた。そして、

(本物の私…、私って、星子にいまさっき、星子に本物の自分を、今の若者みたいにファッションについて語ったり、スクールアイドルとして九たちと一緒にやりたいでしょって言った。それは星子に本物の自分をだしてほしい、そして、九ちゃんたちと一緒にスクールアイドルを楽しんで欲しいと思っていたから。なぜそう思ったのかというと、星子が隠れてファッション雑誌を読んでいたことを知ったから。私は今までそう思っていた。けれど、今思うと、裏を返せば、自分も星子やみんなと一緒に楽しみたい、スクールアイドルをしたいという思いにつながるのかな。それが私の本当の思い、本当の自分かもしれないね。ああ、最後になって星子にやられたよ~)

と思うと、すぐに、

「うん、わかった。私もやってみるね。そして、歌い終わったら、正直に話そう。私たち3人とも九たちと一緒にスクールアイドルになろうって」

と、氷が言うと、春は、

「うん、わかった」

と言うと、星子も、

「わかりましたわ」

と言うと、氷、春、星子は横一列になって「スプリングコンタクト」を歌い始めた。

 

「キュンキュンキュン キュキュンガキュン~♪」

と歌い始めた星子たち3人。これには九、

「なにこれ、星子ちゃんたちってこれ、隠していたの。ずるい~」

と喜んでいる。さらに、

「新しい出会いに感謝しよう~♪」

と歌っているとき、たい子から、

「なんていい響きんなの。これじゃ私たち(たい子、めい、小明)じゃ表現できない。春先輩のセンターボーカルに氷先輩、星子先輩のコーラスがマッチしている。これは凄いよ」

と褒めていた。

 

 そして、星子たち3人が歌い終わると、

「なに、これ、凄いじゃない」

と、九が言うと、氷はすぐに、

「実は、私たち3年はみんなと一緒にスクールアイドルをやりたいんだ。どう、仲間にいれてくれる?」

と言うと、九はすぐに承諾。ちなみに、ひろ子から加入する理由について聞かれると、春、

「みんなと一緒に思い出作りをしたかったから」

と、うそをついた。

 が、後輩たちの追及は続く。たい子から、

「どうして回りくどいことをしたのですか?」

と、聞かれてしまう。これには氷、

「星子の最後の抵抗、もしくは、昔の星子との決別かな」

と言った。これには星子、

(たしかに、歌う前の自分の姿はおじいさまのことに従わないといけないという昔の自分と、みんなと一緒にスクールアイドルをしたい今の自分の最後の攻防だったのかもしれない。でも、結局はみんなと一緒にスクールアイドルをやりたいという今の自分、本物の自分が勝っちゃったかもね。さようなら、昔の自分…)

と、思ったりもするも、すぐに、

(でも、これは私たち3人だけの秘密にしたいしね。ここはばれないようにと)

と思い、

「あとはスクールアイドルとして成功するのみだ~」

と、突然叫ぶ九に対し、

「私はまだ…」

と、お茶目に言う星子。これには氷、

「そんなの関係ない」

と、星子にツッコミをいれた。

 

 その後、みんなはそのまま自分たちの家に帰宅すると、誰もいなくなった学校にはなぜか雪穂の姿があった。その雪穂、ただひとりで学校にあるパソコンの前でよなよなあることをしていた。

「さてと、今日、盗撮、いやいや、撮影した3年生の踊っているところを動画サイトに投稿しよう」

と、雪穂が言うと、その動画サイトにつながらない。

「あれ、どうしたのかな?」

と、不思議がる雪穂。

 そこへ、

「それはですね。この有線LANを抜いているからですよ」

と、ぬっと春が雪穂の前にあらわれる。

「うわっ、なんでここに春がいるの?」

と、雪穂は驚きつつも言うと、春、

「それは、今日踊っているところを動画にアップされたくないからですよ。だって、星子はおじいさまには今日のこと、そして、スクールアイドルになることを黙って欲しいみたいですし、それよりも、スクール水着で踊っているところ、大きなお友達のえさにしてほしくないですしね」

というと、続けてあることを言う。

「あと、これまでアップした動画はすべて非公開にしておいてくださいね。過去、九たちが踊っているところを盗撮して動画を動画サイトにアップしていたでしょう。私にはわかりましたよ。だって投稿した人の名前、「スノースパイク」、これ、直訳すると「雪穂」ですよね。雪穂先生が投稿していたことがすぐにわかりましたよ。私、理系は得意なんですよ。とくに電子系にはね」

これには雪穂、

(理系、電子系、それ、ネットとまったく関係なくない)

と、ツッコミそうになるも、春の雰囲気からして言えず。

 そして、春はあることを言った。

「あと、私たちが踊っているところを映した動画データ、こちらで預かります。また勝手に投稿されたらまずいですからね。時期をみて、私が動画を投稿しますからね。複製なんてしないでくださいね」

 これを聞いた雪穂、心の中ではこう思った。

(もう春には逆らえないな)

と。

 というわけで、スノースパイクこと雪穂が投稿した九たちが踊っている動画は非公開、というより削除された。また、その動画データは春によって管理されるようになった。雪穂、とほほの巻であった。

 

 が、これに反応したのが、なぜか、多恵の父、建造だった。

「ほう、多恵が踊っている動画が消されたとな」

と、建造が部下に言うと、その部下はすぐに、

「でも、それがなくなったお陰で多恵お嬢様が地元の人と一緒に楽しんで踊っているといういかがわしい噂が発生しなくなります。多恵お嬢様はもっと尊厳をもって地元の人と接するべきです」

と言うと、建造、

「それは違うな。地元の人とふれあうことこそ、リゾート開発をすすめる上で大切なものである。それに、これは企業のイメージアップにもつながる。それこそ大事である」

と言うと、部下、

「それは失礼しました」

と謝る。このとき、建造は、

(多恵よ。もっと地元の人とふれあい、そして、リゾート開発の賛同者を増やすのだ。我が野望のためにもな。ハハハ)

と思っていた。が、これがのちに別の意味で建造に危機をもたらすのは別の話である。

 

 ちなみに、春が雪穂から奪った、いや、預かった動画データはこのあと行われた九龍祭りで九たち「アイランドスターズ」が華麗にデビューしたあと、春が責任をもって再び動画サイトにアップした。九たち「オータムウインド」、たい子たち「ウインターガーデン」はそのままアップしたが、やっぱり星子たち「スプリングコンタクト」はスクール水着で踊っているのでアップするのはやめた。そのかわり、星子、氷、春はジャージ姿で「スプリングコンタクト」を再び歌い踊っているところを再び撮り、その動画をアップすることにした。さらに九龍祭りでの「サマーフェスタ」も撮っていたので、その動画もアップした。

こうした動画をまとめたチャンネル、「アイランドスターズチャンネル」は春の手で運営することになる。そして、建造が差し向けた前回のラブライブ!優勝グループ「バックスター」を九たち「アイランドスターズ」が九龍祭りにて退けたことがネットで話題となり、これらの動画の再生回数が大幅に増えていった。で、このときの莫大な広告収入が春のもとに転がりこんできた。それで、春はそれを自分のために使わず、九たち「アイランドスターズ」の活動資金にした。これがこの後、ラブライブ!決勝の遠征費用にも利用されていたとは春のみにしか知らないことだった。さらに、これから続く九龍高校スクールアイドル部の資金もここから出ていることも。そう思うと、天王寺春、裏のリーダー、財政担当大臣、といってもいいかもしれない。

 

 そして、九たちと星子の対決、そして、3年生の加入があった日から数日後。

「なんなんですか、この計画性の無さは!!」

星子は怒っていた。なぜなら、これまで九たちスクールアイドル部の練習は行き当たりばったりだったのだ。九がやりたいことをまずやる。それが当たり前だった。雪穂も雪穂でこれまでスクールアイドルを指導したことがないみたいで、こちらも九のやりたいことを追認するぐらい。というわけで、ザルみたいな計画性の無さをしった星子はスクールアイドルについて調べて、いや、研究していた春の監修のもと、自ら進んで練習計画を練っていたのだ。

「当面の目標は秋の大祭、九龍祭りでの新曲披露です。それまでは少しでもさまにならないとね」

と、星子が言うと、その隣にいた氷は、

「でも、スクールアイドル部に加入したけど、大丈夫?」

と、心配そうに言うと、星子、

「それは心配ありません。あのとき、春と氷から言われた一言で踏ん切りがつきました。私は私。おじいさまのいうことには縛られず、普通の少女として、そして、スクールアイドルとして活躍していきます」

と言うとともに、

「おじいさま、一度だけの裏切りをお許しください」

と、そっとつぶやいていた。

 これを見た春は星子、そして、氷に優しく語った。

「きっと大丈夫だよ。後悔なんてしないよ。だって、私たちは全員で1つになれたのだから」

これには星子、氷、ともに力強くうなずいていた。

 そんなとき、

「星子ちゃん、この雑誌、借りていい?もっとスクールアイドルについて勉強したいんだ」

と、九がいきなりスクールアイドルを扱った雑誌を手にあらわれると、星子、

「大事に扱いなさいよ。それは大事な資料ですからね」

と、大きな声で言った。結局、星子が閉架図書のある部屋にファッション雑誌やスクールアイドルの雑誌を隠していたことは九たちにばれてしまった。そこで、星子は閉架図書の棚を整理して、別々のところに隠していた雑誌を1箇所に集めて九たちに解放した。閉架図書のある部屋はこれまで星子や氷しか入れなかったが、これからは九たちも入れるようになった。それはまるで星子の心みたいなものをあらわしているかのようだった。

 星子は思った。これから先、いろんな苦難があるかもしれない。だって、これまでは自分の心は中から鍵がかかった、心の中を閉じた状態だったと。それが解き放たれたからこそ、これまでわからないことが起こるかもしれない。けれど、それでも大丈夫だと。だって、自分には氷や春がいるのだから。そして、九たちと一緒にいれば、きっと楽しい新しい未来が開けるのだと。

 



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爆誕編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第10話


第10話 祭りと建造とステージ

 

 九たちスクールアイドル部は星子、氷、春の3年生グループ3人が入部した。そして、生徒会長である星子の許可を得て正式な部として活動することになった。

「で、なんで、あんなに毛嫌いしていたスクールアイドル部に入部することになったんですか、生徒会長」

と、たい子が言うと、星子は照れながら、

「それは、たしかに今でもひらひらしたスカートをはいて踊るのはしたくないと思うけど…」

と言うが、その横から氷が、

「だって、実はミーハーだったりするんだよね~、星子」

と、ちゃちゃをいれると、星子、

「それは言わない約束でしょ」

と怒りだす。そこに春が横はいりし、

「家自体が堅物だからね。新しい考えっていうのが受け入れられないのよ。星子にとって外面は堅物だけど、心はいつもミーハーなんだよね」

と言うと、星子、

「だって、私だって今の若者みたいにかわいい服着たいよ。でも、家の中では女は質素でつつましくしなさいってうるさいんだもの」

と言うと、九、

「生徒会長がミーハーなんてなんか笑えちゃう」

と、笑いながら言うと、星子、

「そんなにちゃかさないで…」

と怒って言った。

 

(OP 1番のみ)

 

「ところで、私たちの次の目標が決まりました」

と、星子がみんなに言うと、

「なになに」

と、九が目をキラキラさせながら言うと、星子は、

「次の目標は秋の大祭、九龍祭りのステージですわ」

と言うと、雪穂は、

「九龍祭り?九龍祭りってなに?」

と質問する。星子は新参者の雪穂に説明する。

「九龍祭りは九龍島における秋の大祭のことなの。島の外からの人たちが来るし、島の人たちも楽しみに待っているの。それに、この祭りではステージが作られて、いろんな催しものが開催されるわけ」

と言って、この祭りを目標にするわけを話す。

「私たちスクールアイドル部はこの祭りのステージに参加することでみんなに私たちの名を広めるのにいい機会になると思うわけ」

と言うと、横から氷がのほほんとでてきて、

「本当は今年が高校生活最後になるからいい思い出を残したいのよ」

と、ずばり星子の本音を代弁すると、星子、

「そんなんじゃないの~」

と叫んでいた。

 

 一方、そのころ、多恵は1人工事事務所にいた。

「ところでどうかね、多恵」

と、どすのきいた声がスピーカーを通して部屋一面に鳴り響く。

「大変申し訳ございません、お父様。まだ半分以上もの地権者から合意を得られていません」

と、多恵はある人物が映っている画面に向かって謝っている。

「いいかね、多恵。これはわが社の社運がかかっている事業だ。遅れてしまってはわが社で働く多くの社員を路頭に迷わせることにつながるのだぞ」

どすぐろい声がスピーカーからこだますると、多恵、

「大変申し訳ございません」

と、ただ平謝りするしかなかった。

「いいか。あと1ヶ月で全ての地権者のはんこをもらってこい。どんな方法でもよい。必ずもらってくるようにな」

と、どすぐろい声を響かせ、突然映像が消えた。

 部屋を明るくした多恵、顔からは汗がだらだらと流れていた。

「あと1ヶ月、あと1ヶ月しかない」

と、多恵は焦りを感じていた。実は夏休み以降、毎日のように各集落でリゾート開発の説明会を開いていた。それもこれまでの2倍以上。多恵はある集落で説明会を行えば、次の会場へと急いで移動するなどしていた。さらには各家庭へ挨拶まわりをするなど地道な活動をしていた。

「これでもこの町の世帯の半分は合意してもらったが…」

と、多恵は結果を誇示したがっている。実際、多恵の頑張りによってこの町の世帯の約半分もの人たちから合意を得ることができた。が、あと半分が強固に反対していた。

「私はいったいどうすればいいの」

と、必死に悩む多恵。あまり強引な手段はとりたくない多恵であったが、このままでは自分の身が危ない。けど…と、堂々巡りで悩む多恵。こうして多恵の眠れない日々が続くのだった。

 

 多恵との通信を終えたあと、

「ふう、多恵ももう少しやれると思っていたのにな」

と、どすぐろい声でいう人物、それは土居建造、九龍島でのリゾート開発を主導する土居建設の社長であり、多恵の父である。

「このままじゃ私の夢もすべておしゃんになる。こうなればしかたがない。あいつらを呼べ!!」

と建造が言うと、すぐにとある人物たちを呼び出した。

「なんでしょうか、スポンサーさん」

と、建造の前にあらわれたのは女子高生3人だった。

「実は行ってもらいたい場所がある」

と言うと、地図でとある場所を指し示した。

 すると、女子高生のリーダー格があることを言いだす。

「これだとこのあとはいっているスケジュールは全てキャンセルになりますが、どういたしますか?」

と言うと、建造、

「それは必要ない。お前たちのために高速ヘリを用意する。さらにスポンサー料も今の倍だそう」

と言うと、女子高生のリーダー格は、

「わかりました。それで手を打ちましょう」

と言うと、すぐに建造のもとを離れた。

「これで九龍島は私のものだ。私の夢が叶うときがきた。ハハハ」

と、建造は大笑いしていた。

 

 リゾート開発の裏でなにかがうごめいているとも知らず、九たちはスクールアイドルになるための練習を日夜行っていた。

「毎日毎日体力づくりって嫌になってくるです」

と、めいが言うも、星子は、

「それでも基礎体力がなければスクールアイドルになることはできないのです」

と説明するも、めい、

「それでも体力には自信があります」

と言うことを聞かない。

「それだったら、ちょっとあることをしてみようかな」

と、雪穂がいきなり提案してくる。

「なにですか、なにですか」

と、めいが食い入るように言うと、雪穂、

「それじゃ腕立て伏せ、やってみて」

と、めいに言うと、めい、

「そんなの簡単簡単」

と、何度も腕立て伏せを実践、ゆうに20回以上している。

「それじゃ腕立て伏せしながら笑ってみて」

と、雪穂が言うと、めい、

「そんなの簡単…」

と、笑顔をつくるも、すぐに、

「あれ、あれれ」

と、腕立て伏せができずに崩れていく。

「どう、難しいでしょう。スクールアイドルには普段使わない筋肉を使うことがあるの。そのためにも基礎体力は鍛えておくべきことなの」

と、雪穂が言うと、めい、

「そうなんだ」

と、納得の表情をする。その横で春が、

「これはいいこと聞いちゃった。それじゃ、雪穂先生はできるのですか?」

と言うと、雪穂、

「そんなの簡単だよ。元スクールアイドルの底力見せてあげる」

と言えば、まず腕立て伏せを実践。

「どう、これでも体力には自信があるんだ」

と、腕立て伏せを何度も行うと、今度は氷が、

「それじゃ笑ってみせて」

と言うと、雪穂、

「にこ~、こここ…」

と、笑い始めて1秒後に崩れてしまった。

「あれ、昔はできていたはずなのに」

と、雪穂弁明するも、

「人間って1日サボっただけで3日ぐらいの筋肉が落ちるって言われていますよ」

と、星子が言うと、雪穂、

「うう。私も基礎体力しっかりしないと…」

と、反省しまくっていた。

 だが、これに触発されるのか、九、

「見て見て。笑いながら何度でもできるよ」

と、笑いながら高速腕立て伏せを実施、小明も、

「小明の方がもっとすごいことできるよ」

と、片手で笑顔で腕立て伏せをしていた。

 これには雪穂、

「すごいことできる人たちもいるもんだ」

と言うと、星子、

「彼女2人だけ規格外ですから」

と言えば、一同納得してしまった。

 

 基礎練習のあと、雪穂は、

「ちょっときて」

と言うと、九たち8人は雪穂のもとに集まってくる。

「私からみんなにプレゼント」

と言うと、1枚のSDカードを取り出し、ラジカセにセットし、曲を流した。

「なんかすごい曲ですね」

と、九が言うと、雪穂、

「今聞いた曲とは別なんだけど、祭りでは私がこの前のラブライブ!10周年パーティーで発表した「スペシャルデイソング」を歌ってもらいます」

と言うと、九、

「私がリクエストしたんだよ」

と言うと、星子、

「それじゃ今の曲はなんですか」

と聞くと、雪穂、

「これは祭りのあと、もしなんかあったときのための曲なの。「スペシャルデイソング」ならすでにダンスなどがネット上で公開されているから、家に帰っても練習できるでしょ。でも、今の曲はまだ曲だけでダンスなどはできていない。これから作り上げるための曲です」

と言うと、たい子がSDカードがはいったファイル以外のファイルを見つける。

「あれ?曲以外はいっていないのに…」

と、そのファイルを開く。すると、

「雪穂~、このファイルを開いているのなら、隠しファイルを見つけたってことね」

と、どこかで聞いたことがある声が再生されている。

「このファイルにはこの曲のダンスの動画が収めているよ。ぜひ参考にしてね」

と言うとともにそのダンス動画が始まった。

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、曲にのってダンスが続く。

「愛…」

この動画に映っている女性の姿をみて雪穂は涙ぐんでいた。

「あれっ?この人、どっかみたことがあるわ」

と、春が言うと、氷はすぐに気づいた。

「この人って、今や日本中を席巻している博多小娘のメンバー兼プロデューサーの秋葉愛さんですよ」

と言うと、その隣から、

「そして、高坂(雪穂)先生が高校時代でしていたスクールアイドル「オメガマックス」のメンバーの1人でもありました」

と言うと、

「えー」

と、一同驚いてしまった。

「雪穂先生ってすごかったんだね」

と、九が言うと、雪穂、

「それもそうだけど…」

と、言葉に窮してしまう。

「って、土居(多恵)さん!!」

と、星子が言うと、多恵、

「なんかみんなで見ていたので、気になって見にきただけです」

と言うと、九、

「それじゃ、私たちに興味を持ったんだね」

と言うが、多恵、

「ただ気になっただけです」

と答えていた。

 だが、九はそんなこと関係なく多恵に、

「それじゃ、このダンス、一緒にしようよ」

と言うと、多恵、

「今は忙しいのですから」

と言うも、九は、

「そんなのあとにすればいいじゃない」

と、多恵に迫って言うと、これに多恵、

「仕方がないですね」

ということで、

「先生、この曲のダンス練習させてください」

と、九が言えば、雪穂、

「わかったわ。後日、「スペシャルデイソング」の練習をするから、今日はこの曲のダンス練習をしましょう」

と言って、この曲の練習をすることになった。

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、曲と一緒にダンス練習をする九たち9人。

「まっ、これも高校生活の一環、かつ、ちょっとした息抜きね」

と、多恵は少し納得した表情でこの状況を楽しんでいた。

 

 こうして、九龍祭りまでの2週間、「スペシャルデイソング」の練習の傍ら、多恵がちょっと九たち8人の練習している場所を通るときだけ、九の強引の勧誘のおかげ?で、多恵を含めた9人でのあの曲の練習をすることになった。

 だが、町中では不吉な噂が流れていた。

「九龍祭りにシークレットゲストがでるって噂よ」

「それって九龍高校の生徒のあいだではやっているもの」

「それじゃなくて、日本中で有名なアイドルらしいよ」

「そいつらが来れば、この島はおしまいだって」

そんな噂を知らず、九たち8人は練習に明け暮れていた。

 

 そして、ついに島の秋の大祭、九龍祭りは幕をあげようとしていた。混乱が起こることも知らずに。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 祭りとデビューとシークレットゲスト

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第11話

第11回 祭りとデビューとシークレットゲスト

 

 九龍島の秋の大祭、九龍祭りが始まった。

「よっといで、よっといで」

と、露店が島の広場に数多く設置されている。

「これ、九ちゃん、おいしいよ」

と、さとうきびの茎をかぶりつくひろ子に九も、

「このさとうきびの茎から吸い込むのがとても甘いんだよね」

と言うと、そばにいた雪穂もさとうきびの茎をかぶりつく。すると、

「このさとうきびを生で吸うのって初めてだけど、とても甘くておいしい」

と喜んでいた。

 そんなとき、たまたま隣にいた観光客が、

「そういえば、この祭りにシークレットゲストが来るんだってね」

「なんでも日本中で有名なアイドルみたいよ」

「それは見てみたいね」

と言うと、九、

「それって私たちのことかな」

と、わくわくしながら言うも、

「それは違うよ、九ちゃん」

と、ひろ子、ツッコむ。これには九、

「それもそうか」

と言うと、ステージの方を見た。

「明後日、あのステージで私たちはデビューするんだね」

と言うと、雪穂、

「それまでに最後の追い込みするよ」

と言えば、九とひろ子は、

「「はい」」

と、元気よく挨拶した。

 

(OP 1番のみ)

 

 秋の大祭、九龍祭りは10月の3連休のときに行われる。みこしの興行、島唄大会、島に伝わる伝統芸能の奉納などが行われる。特に3日目(最終日)に行われるお祭りステージには島民あげていろんなステージが繰り広げられるのだった。

「で、私たちの目標ですが、このステージできっちり歌い踊り、島中に私たちありと知らしめることにあります」

と、星子が息を詰まらせながら言うも、

「知らしめる?」

と、九が不思議そうに言うと、隣にいる氷が、

「まっ、私たちスクールアイドル部の存在をみんなに広めることね」

と言うと、九、

「それもそうだけど、もっと大事なことがあるかもしれないよ」

と、祭りの露店がある方向を見ると、

「?」

と、星子は疑問に思ってしまった。

 

 九が見ている露店、そこには今の町の縮図があるのかもしれない。

「どうですか。この焼き魚、おいしいよ」

と、露店のお兄さんがお客様にすすめる。が、

「この魚、おいしいのか?」

と、お客様が言うと、

「おいしいよ。だって、今朝捕れたばかりの魚だからよ」

と、お兄さんはお客様に説明するも、お客様は、

「そうか。ところで、お前はこの島のリゾート開発に賛成なのか?」

と言えば、お兄さんは、

「私は反対だね。だって、魚が捕れなくなるんだもの」

と言うと、お客様は、

「それじゃ買わねえ。反対しても利益にもなんにもならないし、逆にリゾート開発してくれたら、多額の賠償金がもらえる。それさえあえば、ほかのところで優雅に暮らせるしよ」

と言えば、お兄さんが急に怒りだし、

「それこそこちらからお断りだ。お前に食わせる魚なんてないね」

と言うと、お客様も、

「こうなったらケンカしようか」

と、ケンカごとになってしまった。

 そんなとき、

「ちょっとお待ちよ。ケンカっていうのは、やらないほうがいいよ」

と、「祭」と書かれた法被をきた若者が1人、ケンカの仲裁にはいる。

「ケンカっていうのは江戸時代から続く文化かもしれない。けど、こんな楽しい場にケンカっていうのはよくないぜ」

と、法被を着た若者が言うと、お客様があることに気づく。

「この法被を着ている、てことは、いつも法被を着ている、町でも有名人のハッピーさんですか」

と、お客様が言うと、法被を着ている人ことハッピーさんが、

「そうですがなにか」

と言えば、お兄さんからも、

「ということは、まさか、その近くには、ヒー」

と、逃げだそうとするが、すぐに特攻服を着た集団から、

「お客様とケンカしているなんて、みっともないぞ!!」

と言われて捕まってしまう。捕まえた人物はお兄さんに、

「もうケンカするなよ。わかったか」

と言えば、お兄さんも、

「はい、わかりました」

と、しゅんとなってしまう。

「おう、ありがとうな。ケンカの仲裁してくれて」

と、特攻服を着た集団こと「特攻野郎Sチーム」のリーダーに言われると、ハッピーさんも、

「まっ、こんな雰囲気作ってくれたのが悪いんだからね」

と言う。

 なぜこんなケンカになるような雰囲気が生まれたのか。それはリゾート開発がキーとなる。多恵の必死の地道な活動のおかげで、町の約半分の世帯がリゾート開発承諾の紙にはんこを押した。それすなわちリゾート開発賛成派が半分以上いることになる。が、その残り半分がまだ反対している。いまや町を二分する争いとなっていた。

 そして、そのことが町の雰囲気を壊すきっかけになっていた。

「この町からでていけ~」

と、リゾート開発反対派が言えば、賛成派は、

「お前たちは未来のことを考えていないのか」

と、逆に反論する。それがそのまま続くのだった。そんな雰囲気がこの祭りでも起きていたのだった。

 

 そして、九龍祭り最終日、ついに祭りのフィナーレをかざるお祭りステージの幕がきっておとされた。

「南京玉すだれ、よいと、よいと、レインボーブリッジ」

ステージでは南京玉すだれの団体があがっていた。

「この次が私たちの番になりますね」

と、星子が言うと、たい子は、

「なんか緊張してしまいます」

と、ブルブル体を震えさせているが、めいはそれを見て、

「大丈夫だよ。絶対に成功するから」

と、元気づけると、たい子も、

「そうだね」

と、震える体をおさえた。

 そして、九はひろ子たち8人に言った。

「失敗してもいいんだよ。私たちは今回が初めてのステージだから」

と言えば、雪穂も、

「今回は何も考えずにやってきなさい。だって、これは競争のための舞台じゃない。みんなと一緒に楽しもうということを示す舞台なのだから」

と言うと、九たち8人は、

「「「「「「「「はいっ」」」」」」」」

と、大きな声で答えていた。

 そんなとき、雪穂と九に近づく少女がいた。

「あれってこの町を二分した悪人じゃない」

「あいつのせいで俺たちの家族は引き裂かれたのだぞ」

と、ステージスタッフはその少女をさけていく。

「ふん。私もこんなに嫌われ者になるなんてね」

と言っているのは多恵だった。

「土居さん、見にきてくれたの?」

と、九が言うと、多恵、

「あなたたちのステージをわざわざ見にきたのよ。私が納得するようなステージ、見せてください」

と、冷たく接すると、

「わかった」

と、九が元気よく答えるとすぐに、

「でも、これを見て、土居さんも楽しめると思うよ」

と言えば、多恵、

「?」

と、不思議な表情をみせた。

 そして、ステージからある声が聞こえてきた。

「次は九龍高校スクールアイドル部による演舞です」

これを聞いた九、

「それじゃ頑張るよ」

と言えば、ひろ子たち7人は、

「「「「「「「オー」」」」」」」

と、大声をかけた。

 

 ステージに横一列に並ぶ8人。九はマイクを取り挨拶をする。

「みなさん、こんにちは。私たちは九龍高校スクールアイドル部です。結成してまだ2ヶ月ですが、一生懸命頑張ります。それでは聞いてください。「スペシャルデイソング」!!」

 

挿入歌 「スペシャルデイソング」

 

スペシャルな1日を過ごそうよ

 

この日をどれだけ待っていたのか

(スペシャルデイ スペシャルソング)

みんながまちこがれていたこの日が

(スペシャルデイ スペシャルソング)

 

大きくお祝いしようよ

すべてをハッピーにするために

だから泣くのはやめよう

泣けば泣くほどハッピー逃げるから

 

スペシャルデイ スペシャルソング

スペシャルでい スペシャルソング

全てがハッピーになる一日

スペシャルデイ スペシャルソング

スペシャルな1日だから

すべて楽しんでいこうよ

 

 曲が終わると、意外なところから大声がでる。

「なんてハレンチなんだ。そんなひらひらしたスカートで踊るなんて。女性はもっとしおらしく、清楚にするものだぞ。特に星子、そんな格好で踊るなんて。すぐにやめなさい」

と、言ってきたのは町の町長、天海星子のおじいちゃんだった。

「本当に申し訳ございません、おじいさま」

と、星子は平謝りする。ちなみに、九たちの衣装はA○B48などが着るひらひらしたアイドル衣装だった。

 だが、そんな町長の言葉を耳にするものはいなかった。

「まさか、この年でこんなものが見れるとは」

「今の若者も捨てたものじゃないな」

「こんなに楽しくなるものなんてなかったじゃよ」

と、どちらかというと好意的な意見が大多数だった。

「なんで誰も反対しないのじゃ」

と、町長が言うと、ハッピーさんが、

「8人から楽しい気持ちが感じられたんだ」

と、まわりの気持ちを代弁するように答えた。

 九はこれをみてあることを言った。

「私たちはいつまでもいがみあうのはいけないと思います。いつまでもいがみあっていると幸せは逃げていきます。だからこそ、いつまでも、島民同士、町民同士でいがみあわないでください」

 これを聞いた多恵は、

「あれ、涙がとまらない」

と泣いていた。そのとき、あることに気がついたのだった。

「私ってなんていけないことをしていたのかな。自分のやっていたことが島民を、町民を引き裂くようにしていたなんて」

多恵は今まで九龍氏までやっていたことを思い出していた。父親から言われた通りリゾート開発のためにしてきた説明会や各世帯への行脚によってリゾート開発の賛成派を広げてきたが、それが逆に賛成派と反対派の溝をつくっていたのだった。町は今やリゾート開発の賛成派と反対派によって溝が深くなっており、どっちが勝っても溝は大きく残ってしまう。それがこの祭りのステージスタッフから多恵にした嫌がらせ、いや、今まで多恵には町民から嫌がらせを多くされてきたのだ。多恵は今まで気にしていなかったが、一度自覚すると、こんなに悲しいことはない、と思えるようになっていたのだ。

「今の私って悪い女にしか見えないよね」

と、泣きながら多恵が言うと、突然、

「それは違う!!」

と、スピーカーから大きな声が聞こえてきた。九だった。

「土居さん、そんなに泣かないで。今までの過ちはこれでおしまい。今からは前に向かって走って」

九の心からの叫びに多恵、

「こんな汚い女の私でもいいの?」

と言うと、九は、

「汚くないよ。これからきれいになればいいんだよ」

と、大きな声で言うと、多恵、ステージに上り、九のそばに行き、

「ありがとう」

と、大泣きしながら九を抱いて言った。

 これを見ていた九、

「リゾート開発の話はまだあるけど、今はそのことを忘れて楽しもう」

と、大声で自分の気持ちを言った。

 これを聞いた観客からは、

パチパチパチ

という大きな拍手がおきていた。

 

 が、ここで、

バサバサバサ

という音が聞こえてきた。

 そして、祭り会場に大きな竜巻が起こった。

「なに?」

と、九が言うと、

「上を見て」

と、星子が上を指し示した。そこには。

「ヘリコプター?」

そう、ヘリコプターが祭り会場に降りたとうとしていた。

 そのヘリコプターから大きなスピーカー音が鳴り、そこから大きな声が聞こえた。

「土居多恵に告ぐ。お前はお父様から見捨てられたのだ」

「えっ」

多恵の頭の中が真っ白になる、そのような声だった。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 逃げる多恵と九龍駅と9人と

 

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第12話

第12話 逃げる多恵と九龍駅と9人と

 

「土居多恵に告ぐ。お前はお父様から見捨てられたのだぞ」

「えっ」

ヘリコプターから聞こえるスピーカーの音に動揺する多恵。そんな多恵を尻目にヘリコプターはステージのすぐ横に降りたつ。そこからかわいらしい3人組があらわれた。

「私はリーダーの伊藤ルナ!!」

「鈴木レン!!」

「田中カレンです!!」

「「「3人合わせてバックスター!!通称BSです」」」

3人はそう言うと、ステージの前に並び始める。

「バックスターだと!!」

と、ハッピーさんは驚いていた。そして、ハッピーさんは3人について説明する。

「バックスターは今をときめくスクールアイドルや。今年夏に開催されたラブライブ!でぶっちぎりの優勝をしている。そんな大物がこの祭りのシークレットゲストだなんて」

これにはまわりにいる観客はどきもを抜かれていた。

「バックスターがなぜここにいる」

と、雪穂が言うと、ルナが雪穂の前にきて言った。

「この島、この町をもらいにきたからです」

 

(OP 1番のみ)

 

「この島、この町をもらう?」

と、聞いた雪穂が言うと、ルナが、

「言葉のとおりですよ」

と言うと、すぐにリンが言った。

「ここで私たちの曲を1曲聴いてもらいましょう」

これに呼応するがごとくカレンが紹介する。

「それでは聞いてください。バックスターで「バックスターNo.1」!!」

 

バックスター 挿入歌 「バックスターNo.1」

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

世界はいつでも ナンバーワンがいる

どんなときでも ナンバーワンがいる

だれにも負けない 世界最高の

そう、私たちが ナンバーワン!!

 

全てが私たちの トリコになる

世界中の人たちが 全ての人たちが

絶対にふりむく 私たちの方を

だからこそ私たちが ナンバーワン!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

私たちこそが チャンピオン(チャンピオン)

全てにおいて チャンピオン(チャンピオン)

私たちの上には だれもいない

だからこそ私たち ナンバーワン!!

私たちを抜かす おろかもの

でてくるなら でてくるがいい!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

全てにおいても ナンバーワンがいる

みんなみとめる ナンバーワンがいる

絶対君主の 史上最高の

そう、私たちが ナンバーワン!!

 

これから何がおきて いたとしても

世界中の人たちが 全ての人たちが

認めざるをえない 私たちの力

だからこそ私たちが ナンバーワン!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

私たちこそ チャンピオン(チャンピオン)

世界の中の チャンピオン(チャンピオン)

世界中でいちばん だれもかもが

みとめてる私たち ナンバーワン!!

私たちをくだす おろかもの

こてんぱんに してやるからな!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

みんなが認める ナンバーワン!!(ナンバーワン!!)

どんなあいてが きたとしても

私たちは負けない ぜったいに負けない

だって私たち 全てにおいて

チャンピオン (チャンピオン)

パーフェクトな 私たちに

勝てる相手なんて 絶対にいない!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

私たちこそが チャンピオン(チャンピオン)

全てにおいて チャンピオン(チャンピオン)

私たちの上には だれもいない

だからこそ私たち ナンバーワン!!

私たちをぬかす おろかもの

でてくるなら でてくるがいい!!

 

(バックスター the ナンバーワン!!)

 

「なんて次元が違うの」

バックスターのダンスを見て、星子はただ呆然とするしかなかった。

「これが全国の力なの」

と、たい子が言うと、

「小明じゃこんなのに太刀打ちできない」

と、自信喪失するしかなかった。

 だが、ただ1人目をキラキラさせている少女が1人…。

「普通なら自信喪失するのに、あなただけ目をキラキラさせているなんて、なぜ?」

と、ルナが言うと、目をキラキラさせた少女、九は元気よく、

「だって、全国にはこんなにすごい人たちがいるんだと思えるから」

と答えると、ルナから、

「かわった人ね」

と言われると、九、

「ありがとう」

と答えていた。

 

「それで、町をもらいにきたって言っていたけど」

と、雪穂が言うと、ルナ、

「そうだった。私たちのスポンサー主からの伝言です。この町に住む人たちに告ぐ。来年4月、この町は全て土居建設のものとなる。これは県、国の決定事項である。土地を提供してくれる者には弁償金などを保証する。抵抗する者には行政代執行を行う」

と言うと、九は、

「行政代執行って何?」

と、雪穂に聞く。雪穂はそれについて説明する。

「行政代執行とは、その人がしないといけないことをしないとき、行政がかわりに行うことなの。ただ、費用はしないといけない人持ちだけどね」

と言うと、星子、

「でも、それだと町はどうなるの?」

と聞くと、レンは、

「この町は来年4月をもって廃町となる。そして、土居建設が作るリゾート地として生まれ変わる」

と、大々的に言うと、今度は多恵が言う。

「それじゃ私がやってきたことは無駄だったの?」

と言うと、カレンは堂々と、

「ああ、無駄だったね。いや、少しは報われているかもね。あんたの働きによって町の班部もの人が賛成にまわってくれた。これはうれしいことだね」

と言うと、多恵、

「そうなの。これならお父様のために…」

と、泣きながら言うと、カレンが突然笑いだした。

「けどね、それじゃなまぬるいんだ。スポンサー主の土居建設からはすぐにでも工事を始めたいと思っているんだ。けれど、半年かけてようやく半分。これじゃ遅すぎるんだ。だから、私たちは直々にこうしてお知らせにきたんだ」

と言うと、ルナが多恵に向かってこう言いだした。

「もう一度言う。土居多恵、お前は建造様から見捨てられたんだぞ」

 これを聞いた多恵、

「うそでしょ。私が、実の娘である私が…」

と、愕然としていた。そんな多恵に対し、レンは、

「ああ、言い忘れていた。多恵の全ての役職は昨日付けをもって解任。そして、建造様から勘当を言いつけられているわ」

と言うと、多恵、

「嘘でしょ」

と泣きながら言うと、

「本当のことだよ、バーカ」

と、カレンから言われ、

「うぅ」

と、泣きながらその場から逃げるように走り去った。

「土居さん…」

と、九が言うと、

「追うわよ」

と、星子がみんなに言うと、

「「「「「「「はい!!」」」」」」」

と、8人とも多恵のあとを追った。雪穂も、

「仕方がないわね」

と、多恵のあとを追った。

 これを見ていたルナ、

「ああ、馬鹿らしい。けど、宴はまだまだ続くよ。では、次の曲…」

と、多恵のことは無視するも、次の曲へとシフトチェンジした。

 

「土居さん、土居さん」

と、多恵を探す雪穂と九たち8人。途中で見失ってしまったのだ。

 だが、九があることに気づく。

「もしかすると、九龍駅に行ったんじゃないかな」

「九龍駅!!」

と、びっくりする雪穂やひろ子たち8人。

「ちょっと待って。ここって鉄道あったけ?」

と、雪穂が言うと、星子は、

「鉄道はありませんが、駅ならあります。正しくは列車の動輪と駅舎のモニュメントだけがある記念碑ですが」

と言うと、九、

「それはどうでもいいでしょ。早く行こうよ」

と言えば、雪穂と九たち8人はその記念碑のところに向かって走っていった。

 

 九龍駅に先に着いた九はあるものを見た。

「1,2,3,4、1,2,3,4」

そこで声をだして踊っている少女がいた。

「土居さん!!」

九が呼ぶと、踊っている少女こと多恵が、

「はいっ」

と返事をする。

「土居さんって踊り上手なの?」

と、星子が言うと、多恵、

「私は小さいときから母に歌や踊りを叩き込まれていました。いずれはミューズやAqoursのようになれるために。しかし、お父様の命令ですべてやめさせられました」

と言うと、九、

「すごいよ、すごいよ。すごくうまかったよ」

と、喜びながら言うと、多恵、

「ありがとう」

と、笑いながら答えた。すると、めい、

「笑っているとこ、初めて見た!!」

と驚くと、ひろ子も、

「やっぱり土居さんは笑っている姿がいいよ」

と言うと、多恵、

「なんか恥ずかしいなあ」

と、はみかみつつも言うと、すぐに悲しい表情になり、

「でも、みんなから土居、土居と言われると、お父様から勘当されているのに、このまま土居と言っていいのかなって思うと悲しくなる。私、親から見捨てられたんだよ」

と泣きながら言う。

 そんなとき、九は多恵を抱え込むように抱きしめて大きな声で言った。

「たとえ親から見捨てられたとしても、私たちは絶対に見捨てない。私たちは仲間なんだから」

これを聞いた多恵、

「あ、ありがとう」

と、泣きながら言うと、九と多恵のまわりにはほかの7人が集まり、

「そうです。私たちは仲間なんです」

と、星子が言えば、氷も、

「仲間ほど強いきずなはありません」

と言えば、春も、

「なんかあったら、私のところに来なさい。相談にのるから」

と優しく言い、たい子も、

「私たちこそ大事にすべきです」

と言えば、めいは、

「めいは昔から仲間だと思っていました」

と言えば、小明は、

「仲間!!仲間!!」

とはしゃいで言い、最後にひろ子が、

「これで本当に9人が1つになりました」

と締めた。

 

「ところで、土居さ…、あっ、これって言わないほうがいいよね」

と、九が言うと、多恵は、

「たしかに。土居って言われたくないよ。だって、私、親から勘当を受けたから」

と言うと、九、

「それじゃ、今から多恵ちゃん、多恵ちゃんって言おうよ」

と、とってもないことを言うと、星子、

「多恵ちゃんってなんかちょっと…」

と、心配そうに言うが、多恵、

「ふふふ。それっていい響きだね」

と、笑いながら答えた。

「それじゃ多恵ちゃんに決定!!」

と、九が言うと、多恵も、

「それじゃ、私もこれから名前で言うね、九」

と言うと、九、

「はい!!多恵ちゃん!!」

と、笑いながら答えていた。

 

「で、これからどうするの?」

と、星子が急に真面目モードにはいると、

「それじゃ、例の曲でバックスターをやっつけちゃおうよ」

と、九が元気よく答える。

「でも、多恵とはこの曲の練習、あまりしていないと思うんだけど」

と、氷が心配そうに言うと、

「う~ん」

と、多恵以外全員考え込む。

「それは大丈夫と思うよ」

と、横にいる人から言われると、

「あれ、雪穂先生!?」

と、九は雪穂が横にいることをはじめて気づく。

「私はずっとここにいました」

と、雪穂は弁明すると、すぐに答えた。

「土居…、ふっ、多恵はみんなと練習するとき以外でもこの駅で隠れて練習していたんだ」

と言うと、九、

「えっ、本当なの!!」

と驚くと、多恵、

「少しね。空いている時間に少しだけ練習していたの」

と言うと、雪穂、補足説明。

「多恵はかげに隠れて練習する方だからね。だから、ばっちりだと思うよ」

これには多恵、

「恥ずかしい」

と顔を赤くする・

「それじゃ、ここで一度あわせようか」

と、九が言うと、9人は立ち上がり、一度あわせてみる。すると、

「まさかここまで9人の息がぴったりなんて」

と、雪穂が驚くほどだった。

 

「それじゃ、最後の曲だよ」

と、ルナが言うが、そのとき、

「ちょっとまった~」

という声が聞こえてきた。

「あれっ、あんたたちは負け犬の名無しの多恵さんとそのお仲間じゃありませんか」

とレンが言うと、雪穂、

「それはどうかな。あなたたちみたいに汚いやり方で強くなったりしないこそいいんじゃないかな」

と、逆に文句を言う。これにカレン、

「そこのおばさん、そんな汚い言葉で言うのはやめてくれる」

と怒りだす。

 星子はそんなやり取りを見て雪穂に聞いてみた。

「バックスターのどこが汚いのですか?」

と言うと、雪穂は答えた。

「バックスターのうしろには土居建設の土居建造がいるの。建造の寄付金で作られた高校、土居建造記念高校のスクールアイドルがバックスター。お金にものをいわせ、超一流の先生、超一流のスタジオなどを整備し、能力の高い3人を青田買いするかたちでスカウトし、ここまで育ててきたの」

これを聞いた星子、

「そのどこが汚いのかな?」

と、疑問視するも、雪穂、

「けれど、バックスターに係わる黒い噂はたくさんあるの。だから汚いの」

と言うと、星子、

「なんとか納得しました」

とうなずいた。

「ところで話は終わった、おばさん」

とカレンが言うと、

「今の彼女たち、九たちならバックスターよりも輝いていると思うよ」

と雪穂が挑発する。これにレン、

「それじゃやってみなさいよ」

と挑発にのってしまう。雪穂は、

「それじゃ、九たち、やってやりなさい」

と言うと、九、

「わかりました」

と答えた。

 

 ステージには九たち9人が円陣を組んでいた。

「まさか、こんなことになるなんて。ごめんなさい」

と多恵が言うと、九、

「でも、この9人でできること、絶対にやろうよ」

と励ます。ここでひろ子、

「でも、私たちってまだグループ名、決めてないよね」

と心配そうに言うと、九、

「それなら私たちらしい名前、もう決めているよ」

と言うと、小明、

「まさかナインマーメイドでは?」

と言うと、九、

「いや。私たちの名前、島に輝く星たち、アイランドスターズ(IS)ってどうかな?」

と言うと、星子、

「とてもいい名前。それでいこうか」

と言うと、みんなうなずく。

 そして、

「1」と九、「2」とひろ子、「3」と多恵、「4」とたい子、「5」とめい、「6」と小明、「7」と星子、「8」と氷、「9」と春が言うと、全員で、

「アイランドスターズ、テイクオフ!!」

と名乗りをあげた。

 そして、9人は歌の位置にスタンバイすると、九が元気よく言った。

「それでは聞いてください。「サマーフェスタ!!」」

そして、曲が始まった。

 

アイランドスターズ 挿入歌 「サマーフェスタ!!」

 

(祭りだ 祭りだ わっしょい わっしょい)

 

夏といえば 祭りだ祭りだ

だれもが さわぎだす

心がゆれうごく きせつで一番の

にぎやかな シーズン(シーズン)

 

祭りといえば 屋台だ屋台だ

いろんなもの 売っている

私がほしいもの あなたがほしいもの

何もかもが 売っている(売っている)

 

わたがし買って 2人で食べあい

金魚をすくって 2人で飼う

そんな夢を 叶える場所

祭りはふしぎな ちからがある

 

サマーフェスタ フェスタフェスタ

真夏のふしぎな 引力で

2人の心は もえあがる

こんなきせつ もうないよ

だから(だから) だから(だから)

だいたんな私 みせてあげる

 

夏といえば 花火だ花火だ

だれもかもが みあげてる

気持ちがゆれうごく すべてがうつくしい

芸術の 一品(一品)

 

花火といえば ゆかただゆかただ

いろんなもの つけている

私のつけたもの あなたがつけたもの

何もかもが きれいだな(きれいだな)

 

花火をみあげ 2人で語って

思い出つくって あいしてみる

そんな夢を つくれるもの

花火にはふしぎな 力がある

 

サマーファイヤ ファイヤファイヤ

花火のふしぎな みりょくでね

2人の気持ちは あつくなる

こんなことは もうないよ

だから(だから) だから(だから)

美しい私 みせてあげる

 

真夏の魅惑の魔法

だれもかもが だいたんになる

いつもより美しく いつもよりきれいに

みえるからこそ真夏は

すべての人をとりこにする

そんなきせつ~

 

サマーフェスタ フェスタフェスタ

真夏のふしぎな 引力で

2人の心は もえあがる

こんなきせつ もうないよ

だから(だから) だから(だから)

だいたんな私 みせてあげる

 

サマーフェスタ フェスタフェスタ

祭りだ祭りだ わっしょい わっしょい

サマーフェスタ フェスタフェスタ

祭りだ祭りだ わっしょい わっしょい

 

 曲が終わると、

パチパチパチパチ ヒューヒュー

と、観客のほうからスタンディングオベーションが起こった。

 これを見て、バックスターのルナ、

「これじゃ私たちが悪者にみえるじゃない!!」

と言って、レンは、

「はやくヘリを用意して」

と焦るとともにカレンも、

「こんなところ、はやくでていきたいね」

とあわてることに。

 そして、ルナは、

「あなたたちとの勝負、この島の運命はラブライブ!決勝でつけてあげるわ。私たちが勝ったらこの島をいただくわ、建造様の夢、リゾート開発を進めるためにもね。だから、ラブライブ!決勝で待っているわ~」

と、捨て台詞を言って、ヘリで去っていった。

「どうだい、べろべろバー」

と小明が言うと、多恵は、

「本当にありがとう、九」

と泣きながら言うと、

「これからは私たち9人でスクールアイドル「アイランドスターズ」としてやっていけるね」

と、九は喜びながら言った。

 

 この様子はなぜかネットで中継されていた。

「あれ、九じゃないかな?」

と、とある女子生徒が言うと、続けて、

「なつかしい。九ってあんなに大きくなったんだね」

と言った。

 また、同じ中継映像を見ていた先生たちも、

「雪穂、頑張っているね」

「でも、私たちが手を組めば百人力だ」

「雪穂さん、九州予選で待っているわ」

と話していた。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 鹿児島県予選とミスと文通相手

 




(ちょっと長い)あとがき

 みなさん、こんにちは。La55です。ついにこの小説も12話目を迎えることができました。物語も半分が過ぎようとしている?のかもしれません。そして、九たちはついに多恵を仲間として迎え入れることになりました。グループ名も「アイランドスターズ」として活動することに。ルナ率いる難敵「バックスター」を退けることにも成功。これでようやく「ラブライブ!」に無事に参戦できる、はずなのですが、次回、さらなる問題が発生します。それは九たち「アイランドスターズ」にも、そして、雪穂にも。果たしてどうなることやら。また、ルナたち「バックスター」もこのまま指をくわえて待っているのでしょうか。次回、新たなるスクールアイドル、そして、前作の登場した人物たちが登場します。次回以降をお楽しみに。

 で、曲のほうですが、第12話でどどんと2曲披露しました。
 まずは1曲目、ルナたち「バックスター」の曲、「バックスター№1」ですが、これは題名の通り、自分たち「バックスター」が全てにおいて№1であることを大々的に歌った曲となります。これまで投稿した曲の中ではかなり異質かもしれません。これまでの曲は未来志向や仲間を歌った曲、少しだけど恋愛に関する曲などが多かったのですが、この曲はどちらかというと、自分たちのことを堂々と歌っています。これまで投稿した曲として一番近いのは「ラブライブΩ」で投稿した「インターナショナルアイドル」かも。でも、「インターナショナルアイドル」はどちらかというと外国人のスクールアイドルについて歌った曲なので、自分たちのことを大々的に歌った曲は初めてかもしれません。それも、この「バックスター」が夏のラブライブ!にてぶっちぎりで優勝しているからかも。この小説上ではトップに光臨しているスクールアイドルグループなので、結構髙飛車に見えるかもしれません。でも、これ、たしか、前作「ラブライブΩ」でも「K9」というグループと同じ設定?なのでは…。それについてはご愛嬌ください。それでも、曲にまで自分たちのことを№1と言っているあたり、結構な自信家に見えるかもしれません。
 そして、九たち「アイランドスターズ」にとって初めてとなる曲「サマーフェスタ」ですが、これまで投稿してきた「オータムウインド」「ウィンターガーデン」「スプリングコンタクト」に続く「Love season」シリーズの最後を締める夏の曲となります。名前の通り夏祭りをフューチャーした曲となっております。春に結ばれた2人が夏祭りでさらに接近する、そのような感じを歌詞にあらわしてみました。祭りによって大胆になった彼女が彼氏に接近する、簡単に言えばそんな風に作っております。では、この2人はこの後どうなるのでしょうか。その続きはのちほど…、ではなく、実は「オータムウインド」に続くのです。夏祭りで彼女は大胆になって彼氏に接近する(「サマーフェスタ」)のですが、結局彼女は彼氏と別れてしまいます。それでも彼女は諦めきれずに彼氏を待ち続けます(「オータムウインド」)。けれど、待ち人は来ず。彼女は彼氏に私のことを忘れないように願うのでした(「ウィンターガーデン」)。そして、春、彼女は一目ぼれで新しい彼氏を見つけます(「スプリングコンタクト」)。それから、彼女は新しい彼氏と夏祭りで大胆になって接近するのです(「サマーフェスタ」)。夏、秋、冬、春、そして夏。この永遠ループこそ「Love season」シリーズの本当の正体なのです。4つの曲がリンクしあい、1つのループを形成しております。この世の中、恋愛ソングは数多くあります。また、失恋ソングも数多くあります。でも、恋愛ソングと失恋ソング、両方がリンクすることはあまりないかもしれません(ただし、私の見方によると)。今回、季節にあわせたラブソングを4曲作るにあたり、このループを基本構造として作詞しました。春に出会い、夏で接近するも別離、秋で待ち続けるも来ず、冬に自分のことを忘れないよう願い、そして、春に新しい人と出会う。このループが永遠に続くかもしれません。もしかすると、彼女はこの永遠ループから脱することができるかもしれません。けれど、気づかないうちに永遠ループに入り込んでいることも。あなたにとって恋愛ってなんでしょうか。この機会にぜひ考えてみたらどうでしょうか。
 って、よく考えてみたら1番最初に春の「スプリングコンタクト」をもってきたら、春夏秋冬になって順番的にすっきりするのではと思っている方、大正解だと思いますよ。でも、なんで秋冬春夏の順番で発表したのか。それには深い理由が…、あるわけでなく、ただたんにこの秋の大祭である「九龍祭り」ということもあり、祭りの曲である「サマーフェスタ」をもってきたかっただけなのです。そして、九たち「アイランドスターズ」最初の曲というのもあり、できるだけ明るい曲である「サマーフェスタ」にしただけです。もし、最初の曲が失恋ソングである「ウィンターガーデン」ではどうしても作品的に暗くなってしまうのではないかと思いました。なので、3年生の曲が申し合わせたように春の曲になったわけでなく、ただ偶然的に春の曲になっただけ。期待させてすいません。
 そして、「サマーフェスタ」にはもう1つの隠されたものが…。それは、これまでの曲のなかで少し長くなっているのです。これまではそこまで長くありませんでした。ただ、これだと作曲すると曲が短すぎるのでは思っておりました。そこで、ちょっと長くして見ました。これなら普通の曲と同じ時間になるのではと思います。ただ、作曲できない自分にとって判断しづらいとも…。これが吉とでるか凶とでるのか、どうなんでしょうかね。

 というわけで、これで今回のあとがきはおしまい…、ではありません。ここで重大情報を公開します。
その①
 本編は今年の大晦日に投稿する第21話をもって最終回を迎えますが、それ以外にもこの物語関連のものを投稿します。前に言っていたいつものあれその1を再来週の月曜日に投稿します。第13~15話で1つのお話になるのですが、それが終わるのを見計らって投稿します。この物語の基本となるものにもなっております。お楽しみにお待ちください。
そして、大晦日に最終回を投稿するのですが、その翌日から3日間、つまり、正月3が日にはいつものあれその2を投稿します。このいつものあれその2ですが、全部で5話にわたるお話となっております。それも、前半3話、後半2話の2つの物語で構成されています。実はすでに全て書き終わっており、前半3話にいたってはすでにパソコンに入力済み、後半2話もあとはパソコンに打ち込むのみとなっております。ですが、この物語を終わらせるにはとても大切なもののため、本編の最終回を投稿してから正月3が日、それも、朝5時25分と夕17時25分に5話次々に投稿する予定です。でも、それなら本編どおり毎週月・金に投稿すればいいのではと不思議に思うかもしれません。これには理由があります。いつものあれその2の投稿が終わる1月3日の次の日、4日なのですが、この日にある映画作品が公開されます。「ラブライブ!サンシャイン!!」。そうです。「ラブライブ!サンシャイン!!」の映画が公開されるのです。で、この物語は前作「ラブライブΩ」の流れを汲んでいるのですが、その作品の起点となるのが、「ラブライブ!」の劇場版のラスト、雪穂と亜里沙が新入生にμ‘sの最後のライブを見せるシーンなのです。世の中は「ラブライブ!サンシャイン!!」一色なのになぜ今「ラブライブ!」なのか、と思ってしまってはまずい、なので、できれば「ラブライブ!サンシャイン!!」の劇場版が始まる前にこの物語を終わらせたいのです。自分のわがままで申し訳ないのですが、ご理解のほどをお願いいたします。
その2
 で、この物語なのですが、今回、自分としては初めてスピンオフをつくることになりました。きっかけはハーメルンに届いた感想からでした。お褒めの言葉もあったのですが、そのなかで、「九人の女子高生がいまだに好きになれない点が大きい」というのがありました。実は自分も書いているにあたり、九と多恵、そしてみんなのリーダーである星子以外のキャラが成り立っていないのではとうすうすと感じていました。原因は1話あたりの文字数を少なく、できるだけ短い文章で話を展開してしまったこと、もうひとつは自分の実力不足からでした。そこで、それを補強するためにスピンオフを作ることになったのです。話としては6つの物語を想定しております。まず、前半の3つの物語はそれぞれのメンバーが加入する4~6話、7~8話、8~9話のお話を補強する形となります。本編では語られなかった裏話となります。ここでは加入するメンバーをよりフューチャーした内容となっております。そして、後半の3つの物語は後日発表するつもりです。ただ、このうちの2つは本編の裏の部分をより詳しく書くつもりです。そして、最後の1つは9話以降のある人たちに焦点をあてた物語となります。今のところ、6つの物語のプロットは完成しており、準備でき次第物語を書くつもりです。ただし、プロットを書くなかでノート2ページ以上費やすものもあり、「これ、長くない?」と思うものもありました。もしかすると、本編以上の長さになるのか、という心配もありますが、物語を書き上げてパソコンに入力でき次第投稿する予定です。ただ、全部を投稿すると、いつものあれその2の最後の投稿日である来年の1月3日を越すこともあります。その場合はお許しください。
 ただし、実はスピンオフにも弱点があります。現在書く予定の物語は本編ありきの物語になる予定なのです。そのため、単品では読んでも本編を読まないとわからないことも。できるだけ単品でもわかるように書くつもりですが、もしこうなったらごめんなさい。また、このスピンオフは本編を書き終えたあとに投稿を決断したため、本編の内容とはすこしずれがあるかもしれません。ずれがないように書くつもりですが、もし少しずれていたらごめんなさい。それなら完全版を作ればいいのではとお思いになるかもしれませんが、完全版を作る時間が今のところないので、スピンオフという形で本編を補強することになりました。なお、投稿方法ですが、ピクシブでは本編とは別枠でシリーズ化します。そして、いつものリンクをつかって対象となる本編の話とを結ぶ予定です。また、ハーメルンでは、対象となる本編の話の途中に挿入する形で投稿する予定です。

 すこし長くなりましたが、今回のお話はどうでしたでしょうか。重大情報が2つありましたが、少なくとも、本編はあと1ヶ月で完結します。次回から舞台は九龍島からラブライブ!大会に軸足が移ります。九たちアイランドスターズはどうなっていくのでしょうか。それは次回までのお楽しみ。というわけで、今回はここまで。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。

追伸(2018/11/27 11:00)
 大変申し訳ございません。「バックスター№1」の歌詞が抜け落ちていました。この曲はルナたちバックスターの現状、現在の心情を歌った曲なので、この物語にとって重要なファクターの一つでもあります。それが抜け落ちていたとは…、本当に申し訳ございません。修正は行いましたので、読んでもらえたらと思います。本当に申し訳ございません。


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覚醒編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第13話


第13話 鹿児島県予選とミスと文通相手

 

「これで9人になったんだし、ラブライブ!っていうの、でていいよね」

九が突然言うと、雪穂は、

「でも、まだラブライブ!に参加できるレベルじゃないと思うけど…」

とすごくためらう。

 が、そんな雪穂に衝撃的な言葉が突き刺さる。

「そのラブライブ!というものですが、先ほどエントリーしましたけど…」

と言ったのは生徒会長の星子。

「えっ?」

雪穂は声がでなかった。

「たしか、雪穂先生からエントリーしてください、って九から」

と星子の言葉に雪穂、

「九!!」

と大きく怒鳴る。

「だった、ラブライブ!出たいんだもん」

と、九のこだまする声は島中に響いていた。

 

(OP 1番のみ)

 

 と、いうわけで、ラブライブ!にエントリーした九たちアイランドスターズであったが、これを機に練習はハードを増していく。

「1,2,3,4、小明、そこは早い」

と、雪穂は小明に注意すると、

「ごめんなさい」

と小明は謝る。まるで鬼神のようだった。

 だが、雪穂の怒りはほかにも牙をむく。

「1,2,3,4、多恵、全体的に遅れている!!」

これには多恵、

「ごめんなさい」

と小声で言う。

「多恵、どうしたの?動きが鈍いよ」

「多恵、ワンテンポ遅れているぞ」

雪穂の嫉妬に多恵はただうなずくのみだった。

 

「これで終了」

と、雪穂の言葉にみんな、

「はい」

と答えると、星子たち3年は1ヶ所に集まる。

「なんか雪穂先生の機嫌悪くない?」

と春が言うと、星子、

「もしかして、私が勝手にラブライブ!にエントリーしたからかな?」

と、ひざをがくがくしながら言うと、氷、

「それ、気にしすぎだよ。心配しないでね」

と星子を元気づける。

「ありがとう」

と星子は氷に言うも、

「でも、これが続くと絶対に破綻するよ」

と、星子は雪穂を心配そうに見つめていた。

 

 一方、多恵は1人誰もいない宿舎に戻っていた。

「まさかバックスターがあらわれるなんて」

と、多恵は1人ぶつぶつ言っている。多恵、

「バックスターがなによ。わたしだってやればできるのに」

と怒りながら言うと、

ジャー

と、やかんに水を入れて沸かした。そして、沸いた水をカップめんに注ぐ。

「ずるずるずる」

とカップめんをすする多恵。

「今夜もやってきました。バックスターの○○」

と、テレビからバックスターの3人があらわれた。

「バックスターがなによ」

とただ言い続ける多恵。

プチン

とテレビを消すと、動画サイトを見る。

「♪~」

と、動画サイトからあるスクールアイドルの映像が流れる。多恵が見ているもの、それはこの前の九龍祭りでのアイランドスターズの動画だった。

「私だって一緒に踊ればバックスターにも勝てるのよ」

と、多恵はただの言い訳を言うにすぎなかった。

 多恵はこの動画を見て、今日のことを思い返していた。

「多恵、どうしての?動きが鈍いよ」

ハッ

と、多恵はあることを思い返してしまう。

「私、これまで九たちに悪いことをしてきたんじゃないかな」

そう、多恵は苦悩していた。これまで多恵は九たち8人に対してそっけない態度をしてきたのである。

「私って罪な女だよね」

多恵はこの島に来てから父建造のためにリゾート開発を進めていた。多恵は地道な活動により、町民の約半数の賛成をこぎつけていた。だが、それは町民同士の亀裂を生みだしていた。

「そんな私が許されることなんてないよね」

多恵は思った。町を二分するほど亀裂をつくったのだ。それが父建造の指示であっても。今、多恵は父建造からの勘当により1人になった。そして、九たちという仲間にもなった。だが、過去の過ちはそんなに修復できない。むしろ、自分だけがいい思いをしていいのだろうか。自分自身罰を食うべきではないか。

「うぅ」

と、多恵には涙が流れていた。

「私はもう九たちに対してあわせる顔がないわ」

町の人たちに対して悪いことをしたこと、そして、九たち8人に対して悪いことをしてきたことを悔やむ多恵。その気持ちで多恵は一睡もすることもできなかった。

 

「多恵、昨日より遅いよ」

と、雪穂のゲキが多恵にとぶ。

「はい」

と、多恵はただ小声でうなずくのみ。

「どうしてあわせることができないの、多恵?」

これを聞いた多恵、

「いえ」

と言うだけだった。

 

「多恵、どうしての?」

「多恵、多恵」

と、練習するごとに悪くなる多恵。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

と、多恵は心の中で謝るだけであった。

 

 こうして、十分に練習ができないまま、鹿児島県予選の日を迎えてしまった。

「ついにラブライブ!に出場できるのね!!」

と、九は元気に言うと、星子は、

「でも、まだ万全ではありません」

と心配そうに多恵の方を見る。

「わ、私なら大丈夫よ」

と元気よく見えるように答える多恵。

「ならいいんですが」

と、星子は心配そうに言った。

 

「本当に大丈夫でしょうか?」

もうすぐ本番と言うとき、たい子は雪穂に問うた。

「さあどうかな。私としては万全とは言えないかど…」

と、雪穂はたい子に言うと、たい子、

「なら、なんか秘策はあるのですか?」

と言うと、雪穂、

「あとはやったことをやるだけだと思うけど」

と、自信なさそうに答えると、たい子、

「なら、私たちは自分でできることをするだけですね」

と答えていた。

 

「で、話ってなにかな?」

と、小明はたい子に聞いた。たい子は事前にめいと小明を集めていた。

「お願いがあるのだけど、もしものときは合図するからそのときに…」

と、たい子はめいと小明にこそこそ話をする。

「わかったです。やってみるです」

とめいが言うと、小明、

「それなら小明の出番です。やるです」

と答えていた。

 

「エントリーナンバー15、九龍高校、アイランドスターズ」

と、アナウンスが聞こえると、9人は歌のフォーメーションの場所に並ぶ。

「ではいくよ~」

と九が言うと、ほかの8人は、

「「「「「「「「オー」」」」」」」」

と答えた。

「本当に大丈夫かな?たった1ヶ月で本番なんて…」

と、雪穂は心配そうに言った。たった1ヶ月しかない練習期間。雪穂は焦りつつ教えたが、万全ではない。そのことが心配の種だった。ちょっと焦ってしまったのか、そう雪穂は思っていた。

 

「あれ、あれれ」

と星子は思った。雪穂の心配は当たってしまった。

「私、ここで多恵と対になるんじゃないの?」

多恵の動きがワンテンポ遅れていた。

「多恵ちゃんの動き、なんかぎこちない」

とひろ子も思っていた。

「どうしよう」

と、多恵は心の中でパニックになっていた。それが歌にもあらわれていた。

 そして、

「あれ、あの子、少し遅れているわね」

と、観客が気づくほどの遅れになっていた。

「歌がぎこちないな」

と、審査員も評価をマイナスにしたいと考えてしまう。

 そんなときだった。

「今です!!」

と、たい子はめいと小明にウインクをする。

「わかったです」

と、小明はいきなりみんなの前にでる。

「それっと」

と小明はいきなりバク転などをする。

「ちょっとちょっと」

と星子もあわてるが、次にめいが、

「えいっと」

と小明をフォローする。

「なにやっているの、小明とめいは?」

と、雪穂が頭を抱えていると、

「なんかおもしろそう」

と、九がめいと小明の間にはいる。

「九ちゃんもしっかりやって」

と、ひろ子も心配そうにみるが、

「あの小さい子、すごいなあ」

と、観客は小明に注目するようになり、審査員も、

「おお、すごいな」

と思うようになる。

 一方、ワンテンポ遅れる多恵はまだ、

「どうしたらいいの?」

と、パニックになっているままであった。

 

「3位、九龍高校、アイランドスターズ!!」

3位として名前が呼ばれた九たち。だが、そこには笑顔はなかった。

 

 ラブライブ!鹿児島県予選が終わり、九たちの控え室にて…。

「なんでずれていたのですか?」

と星子は多恵に詰め寄る。

「そうだよ。めいや小明のおかげで九州予選に進めるんだよ」

と、めいも多恵に詰め寄る。

「ごめんなさい」

と、多恵は星子とめいに謝る。が、

「ごめんじゃないでしょ!!」

と、星子は多恵にまた詰め寄る。

「ごめんなさい」

と再び謝る多恵。

「今度はきちんとすればいいのよ」

と氷が仲裁にはいる。

「ほら、星子さんもめいも落ち着いて」

とたい子も仲裁にはいる。

「しかし、あわせることができれば1位も」

と星子が言うも、たい子、

「3位をとったことこそ奇跡だと思いますよ」

と言うと、星子は、

「…」

と黙るのみだった。

 対する多恵はこのやり取りを見ていても、ただ、

「…」

と、こちらも無音になるしかなかった。

 

「多恵、もう少し早く」

と、雪穂は多恵に指示をだすも、多恵、

「…」

と無音のまま。

 鹿児島県予選が終わり、九州予選に選出できたものの、多恵とほかの8人とのずれは直っていなかった。

「どうしてあわせることができないの?」

と、星子は再び多恵に詰め寄る。

「…」

と、多恵、いつも無言。

「無言ならいいわ」

と、星子は怒りながら去る。多恵はその星子の態度を見てこう思った。

「ごめん、本当にごめん。私がこれまであなたたちに悪いことをしてしまったの。私に対して怒るのも無理がないね。それだけ私が悪いことをしてきたのだから」

そして、多恵はこんなふうに思いながら空を見上げていた。

「今、私は償いをしなくてはいけないかもしれないね」

 

「雪穂先生、お願いがあります」

と、星子は雪穂に直訴する。

「お願いです。多恵をアイランドスターズからはずしてください」

と星子は雪穂にお願いをするも、雪穂、

「それはできない。だってエントリーする際、多恵をメンバーとして登録したじゃない。ちゃんとした理由がなければ、はずすことはできないわ」

と答えると、星子、

「なんでエントリーするときに多恵をメンバー登録したのかしら。うぅ、悔やむ~」

と言うと、雪穂、

「星子、もう少し長い目で多恵を見つめなさい。きっとなにか理由があるかもしれないよ」

と星子を諭すが、星子はただ、

「…」

と無言になるだけであった。

 

 こうして、多恵と8人とのずれは修正できないまま、九州予選の行われる博多に行く日を迎えた。

「ああ、ここが九州で一番大きな町、博多だ~」

と九は博多の都市的な風景に驚く。

 九たちアイランドスターズと雪穂は船と新幹線で九州予選が開かれる九州一の大都市博多に到着していた。

「あんまりはしゃがないでよ」

とひろ子は九に言うも、九、

「都会だよ、都会。こんなの初めてだよ。はしゃぎたくなるよ」

と、はしゃぎながら答えた。九にとって都会というのは初めての経験だった。

「あっちにビル、そっちにビル、あっちにもビル、ビルビルビル!!」

とはしゃぐ九。

 そんなはしゃぐ九に対し、多恵はただ、

「…」

と黙っていたままだった。

 そんな九があるものを見つけた。

「あれ、私たちを歓迎する旗を振っている人がいるよ」

と九がそう言うと、その人めがけて走っていく。

「ちょっと待ちなさい」

と星子が言うも、九は聞く耳持たず、ただただ進んでいく。

「お~い、九龍高校のみなさ~ん」

と、旗を振る少女は雪穂たちを呼ぶ。

「どうやら私たちのことを呼んでいるみたいね」

と雪穂が言うと、雪穂たちはその少女の方へと進んでいく。

「こんにちは。あなたはだ~れ?」

と、先に旗を振る少女のところに着いた九が訪ねると、

「これは失礼しました。私の名前は大野ひろ美です。まさか九ちゃんですか?」

と、旗を振る少女こと大野ひろ美は九に尋ねる。

「その通りだけど、もしかして、本物のひろ美ちゃん?」

と、九は驚いた表情で言うと、ひろ美、

「そうだよ。会うのは初めてだよね。でも、初めてっていう感じがしないよ」

と答える。

「もしかして、九の友達?」

と、ようやく九のところに到着した雪穂が尋ねると、

「友達というか、昔の文通相手!!会うのは初めてだけどね」

と、九はにこにこしながら答える。

「はじめまして、大野ひろ美です。よろしく」

と、ひろ美が挨拶すると、星子、

「みんなを代表して挨拶します。天海星子、どうぞよろしく」

と律儀に挨拶する。

「ところでなんでひろ美ちゃんがここにいるの?」

と九が尋ねると、ひろ美、

「みなさんを博多の街にご招待したいと思いまして…」

と答える。

「ありがとう」

と九がお礼を言うと、ひろ美、

「では行きましょう」と、九たちを博多の街へと案内していく。だが、ひろ美の顔はややにやけていた。はたして、ひろ美とはどういう人物なのか。それは次回明らかになる。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 博多とかつての仲間と九州予選

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第14話

第14話 博多とかつての仲間と九州予選

 

「私の名前は大野ひろ美です」

この言葉に多恵、

「大野ひろ美、たしか聞いたことがある…」

と、そう思ったのもつかの間、ひろ美は、

「みなさんを博多の街にご招待したいと思いまして…」

と言うと、九、

「ありがとう」

とお礼を言うと、ひろ美、

「ではいきましょう」

と、九たちを貸し切りバスへと案内していった。

 多恵は歩きながら、

「とはいえ、私、やっぱりこの場にいること自体場違いだよ」

と思い続けていた。

 

(OP 1番のみ)

 

「ここが博多ポートタワーだよ」

ひろ美がまず案内したのはベイサイドプレイス博多埠頭だった。

「わ~、高い~」

と九は喜ぶと、ひろ美、

「でしょでしょ」

と笑いながら言うと、星子、

「でも、なんで博多で一番高い博多タワーに行かないの?」

と聞くと、ひろ美、

「このタワーはね、東京タワーを設計した人が設計したものなんだよ。だから、東京タワーに似ているでしょ。それに、この展望台は無料なんだよ」

と言うと、たい子、

「ここが無料。なんていいところなんだ」

と、目をきらきらしながら言うが、一方、小明も、

「九龍島でも一番高い山から島を見るにしても、山を登らないといけない。けど、このタワーならエレベーターでいける。未来ずら~」

と別の意味で目をきらきらしていた。

 次に行ったのはキャナルシティ博多。

「夜になると噴水ショーが行われるんだ」

と、キャナルシティの中心部といえる噴水前でひろ美は説明する。

「その噴水ショー見てみたい」

と九が言うと、春、

「こんなところで噴水ショー、なんか綺麗なんでしょうね」

と喜びながら言った。

 

 こんな風に博多の名所を巡った九たち一行はあるところに行った。

「うわー。なんて大きな建物なの」

と、九はその大きさにびっくりしていた。

「ここって…」

と、雪穂はあることを思い出しながら言った。

「そう、ここはあの雪穂さんたちオメガマックスと天さんたちK9が死闘を繰り広げたラブライブ!開催の地、博多ドームです」

と、ひろ美が言うと、雪穂、

「たしかに。ここで私はラブライブ!の頂点にたった…」

と、体をびくびくさせながら言うと、

「そうですね。私、中洲天は高坂雪穂にここで戦い、そして、敗れました。けど…」

と、雪穂が知る人物が物陰からでてきた。

「天…」

と、雪穂はびっくりしながら言うと、

「天さんって誰ですか?」

と九は雪穂に聞く。

 これにはひろ美がかわりに答えた。

「中洲天。雪穂さんたちオメガマックスとラブライブ!決勝で対決したスクールアイドルグループ、K9のリーダーであり、今はアイドルグループ、博多小娘のリーダー」

すると、物陰からあらわれた人物、中洲天は雪穂に向かって言った。

「雪穂、おひさしぶり。どう、元気にしていた?」

これには雪穂、

「どうしてここに天がいるの?たしか、博多小娘の活動が忙しくないの?」

と言うと、天、

「たしかに忙しいですわ。でも、今は一時休業としてお仕事を休んでいます」

と答えた。そこにたい子が一言、

「たしか、この前のワイドショーで博多小娘が一時休業に入ったって言っていた。理由は不明で、メンバーの1人に恋人ができたとか騒いでいた」

と。これには天、

「それは間違いです。私たちのメンバーで恋人ができたという話はありませんから」

と答えると、雪穂、

「では、なんでは方小娘を休んで、ここにいるの?」

と言うと、天、

「それは、あなた、雪穂にリベンジしたいからです」

と、堂々と答えた。

「リベンジ…」

と雪穂が言うと、天、

「そうです、リベンジです」

と答える。

「でも、たしか天ってユニドルのとき、私にリベンジしたんじゃ…」

と雪穂が言うと、

「たしかにユニドルのとき、雪穂に勝ったことがあります。しかし、スクールアイドルとしてはまだ勝ったことがありません」

と、天はきりきり言うと、

「ということは、天さんはもう一度高校に入ってスクールアイドルとして雪穂先生と対決したいんだ。けど、雪穂先生って高校生だったけ?」

と九が言うと、ひろ美、

「九ちゃん、それはないよ。たとえ天さんでもそんなことはできません」

と九に対してツッコミをする。

「じゃ、なんでここにいるの?」

と雪穂が言うと、天、

「私は雪穂、あなたにリベンジしたいのです、教師としてね」

と、指を雪穂に対して指しながら答えた。

「天…、って、教師の免許持っていたの?」

と雪穂、天に逆ツッコミをいれると、天、

「ずこっ。たしかに教師免許は持っていませんわ。けど、それ以前に私にはちゃんとしたものがあります」

と言うと、雪穂、

「福博女子大学の理事長職…」

と答えた。

「そうです。私は福博女子大学の理事長でもありますわ」

と天が言うと、雪穂、

「でも、たしか、博多小娘の仕事が忙しいからって、(天と同じK9の元メンバーの小賀値)イリヤに理事長職を押しつけていたんじゃ…」

と言うと、天、

「たしかにこれまでイリヤに理事長職を押しつけていました。が、今は違います。今は(一時的ですが)福博女子大学の理事長職についています」

といってひろ美の方を見た。

 そして、天は答えた。

「私は雪穂が教師としてスクールアイドルを育っていることを聞きました。それなら、私はそんな雪穂が育てたスクールアイドルを倒したいと思い、理事長職に就いたのです」

 これにあるところからクレームがはいる。

「私が、のところが違うでしょ。私たちは、でしょ」

このクレームを聞いた雪穂が言った。

「この声は(秋葉)愛…」

「そうです。私は秋葉愛。雪穂と同じスクールアイドルグループ、オメガマックスのメンバーで、今は博多小娘のメンバー兼プロデューサーをしています」

と愛が答えると、その横からまた聞きなれた声が聞こえてきた。

「雪穂、ちゃお~」

この声に雪穂はまた答える。

「カオル~」

これにカオルが反応する。

「そうだよ。私は阿蘇カオル。天と同じK9のメンバーで大学時代に雪穂とユニドルグループを組んでいてね、そして、今はスクールアイドルのアドバイザーをやっています!!」

さらに、カオルの横からでてきた女性一人。

「イリヤです。雪穂さん、おひさしぶりです」

イリヤが挨拶すると、雪穂、

「イリヤ、って、なんでここにいるの?」

と質問すると、イリヤ、

「ひどいです~。(小賀値)イリヤだって元は(天と同じ)K9のメンバーですよ。そして、(大学のときにカオルと)雪穂さんと一緒にユニドルグループ結成していたんじゃないですか~。なんで仲間はずれするんですか~」

と泣くも、雪穂、

「まったく内容がつかめていない」

と答える。

 これにイリヤ、怒りつつ、

「私がここにいるってことは、私たち、天さん、愛さん、カオルさん、そして、私で雪穂さんが育てているスクールアイドルを倒しにきたのですよ~」

と言うと、雪穂、

「天たち4人で私を倒す、って、どうやって?」

と聞くと、天、

「それは、私たちが今育てている福博女子大学付属のスクールアイドル、新生K9によってですわ」

と大きな声で答えた。

「で、どこに新生K9はいるの?」

と雪穂が言うと、

「それはここにいます!!」

と、天はひろ美のところを指し示した。

「ひろ美ちゃん、まさか…」

と九が言うと、ひろ美、

「ようやく主役の出番ですね。そう、大野ひろ美、新生K9のリーダーとして、あなたたち、アイランドスターズを倒します!!」

と元気よく言うと、その横から、

「ひろ美、あなただけがK9ではない、俺、西新カケルも参る!!」

と、カケルが出てくるとともに、

「そうですよ、ひろ美さん。私のことも忘れないでね。この朝倉はるな、私もおりますから」

と、はるなも出てきた。

「この3人こそ新生K9。雪穂が育てているアイランドスターズを倒すためにただいま育てている最中だ!!」

と、天は雪穂に向かって挑発的に言う。

 ひろ美はそんな天を見て言った。

「私たち新生K9はラブライブ!で日本一になるために博多小娘の先生たちの教鞭、カオル先生のアドバイスなどを受けてただいま成長中なのです」

すると、イリヤ、

「あの~、私は(天たちが来るまで)理事長代理として新生K9を今まで育てて着たのですが…」

とぼそぼそと言った。

 これを見ていた雪穂、

「天に愛、カオルにイリヤ。私、かつての仲間たちと戦わないといけないの?」

と言うと、天、

「そうです。かつての仲間たちはやがて敵となっていくのです」

と言うと、雪穂、

「なんで、なんで~」

と空に向かって叫んでいた。

 

「まさか、天に愛、カオルにイリヤが敵にまわるなんて」

と雪穂は嘆いていた。

 九たちは博多ドームでひろ美たちと別れたあと、ホテルで夕食をとっていた。

「雪穂先生、大丈夫かな?」

とひろ子が言うと、雪穂、

「あっ、大丈夫だよ」

と言うも、

「あっ」

と野菜サラダのミニトマトを落としてしまう。

「あまり無理をしないほうがいいのでは」

と星子が言うも、雪穂、

「それはそうですが…」

と心配する星子に断るも、

「先生、それ、ソースでしょ。しょうゆはこっち」

と春に注意を受ける。

「えっ、そうだね」

とソースをなおし、しょうゆに持ち替えて豆腐にかける。

「こんな先生、見たことない」

と氷が言うも、

「どうしたのかな、先生。本当に大丈夫かな」

と、めいにも心配される始末。

「本当に大丈夫でしょうか?」

と星子、雪穂にもう一度聞くも、

「大丈夫だよ…」

と、雪穂は体を震わせながら言った。

 そんなとき、大きな声が雪穂めがけて駆け巡った。

「大丈夫じゃないよ、雪穂先生」

「九…」

雪穂は大きな声をだした九の方を見ると、九、

「なんか無理をしているよ」

と叫びだす。そして、九、

「雪穂先生、いつもの雪穂先生じゃない!!」

と言うと、九は雪穂めがけて駆け寄ってきた。

「九…」

と雪穂、静かに言うと、九は、

「そんな雪穂先生、見たくない!!元気な雪穂先生に戻って!!」

と雪穂に向かって熱く言った。

 雪穂はそんな九に対し、

「九はかつての文通友達と対決するのって苦しくない?」

と聞くと、九、

「私も苦しいよ。でも、それとこれとは話は別だよ」

と答えた。九の話は続く。

「私だってひろ美ちゃんと戦うのはいや。でも、それでも、スクールアイドルになった以上、そんなことだって起きる」

 そして、九は雪穂に向かって言った。

「でも、スクールアイドルって勝負ごと以上に楽しむことがすべてでしょ」

これを聞いた雪穂、

「楽しむことがすべて…」

と言うと、涙がでていることに気がついた。

「涙…、私が涙って…」

と雪穂が言うと、続けて、

「私、本当は天たちと戦いたくない。九たちがこれ以上苦しめたくない…」

と本音を言う。

 九はそれを見て、

「私、雪穂先生からスクールアイドルは楽しむものだって教えてもらったよ。そんな先生が弱音をはいてどうするの!!」

と言うと、続けて、

「私、もっとスクールアイドルを楽しみたい。ひろ美ちゃんたちとも楽しみたいよ」

と、みんなに向けて言った。

 これをきいた星子、

「そうですね。九の言う通りですね。私たちは九州予選を大野(ひろ美)さんたちと一緒に楽しみたいと思います」

と言うと、多恵を除くみんながうなずいていた。

「ありがとう。私、大事なことを忘れていたかも。スクールアイドルは楽しんでなんぼって」

と雪穂が言うと、続けて、

「私、考え方を変えてみるよ。天たちと対決するより一緒に楽しみたいと」

と言うと、たい子、

「ようやく、もとの雪穂先生に戻りましたね」

と言うと、雪穂、

「たい子、いつものってどんな意味かな?140字以内にまとめよ。納得がいかない答えだったら、罰として学校中の掃除1週間ね」

と言うと、たい子、

「やぶへびだったです~」

と答えていた。すると、

ハハハ

と、多恵を除く8人と雪穂は笑っていた。

 だが、多恵はこのとき、別のことを考えていた。

「私、こんなところにいる人じゃない…」

 

 翌日、というか、九州予選を翌日に控えた日の夜、

「1,2,3,4」

と雪穂はいつものように九たち9人の練習を見る。

「ちょっと、多恵、遅れているよ」

と雪穂が多恵に注意をすると、多恵、

「ごめんなさい」

と謝る。多恵とほかの8人とのずれはまだなおっていなかった。

「なんか前よりずれが大きくなっていない?」

と星子は多恵に指摘すると、多恵、

「ごめんなさい」

とただ謝るだけだった。

「はい、もう1回」

と雪穂が言うと、

「は~い」

と多恵を除く8人ともに元気よく返事をした。

 一方、多恵は、

「…」

と黙るだけであった。

 結局、多恵とほかの8人とのずれは解消されないまま九州予選本番を迎えるのだった。

 

「さあ、九州予選が始まるよ~」

と、司会であるラブライブ!でおなじみのレポーターが言うと、続けて、

「まずはくじ引きで順番を決めるよ~」

と言うと、ルーレットが回り始める。

「よ~し、ストップ!!」

と、レポーターはルーレットを止めると、順番が決まった。

「1番最初は優勝候補の福博女子大学付属のK9だ~。そして、ラストはダークホース的存在、九龍高校のアイランドスターズだ~」

とレポーターが元気よく言うと、九、

「ラストだね。とても楽しみ~」

とこれまた元気よく言った。

 だが、多恵はこのときもただ、

「…」

と無言を通すだけだった。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 多恵とみんなとラストダンス

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第15話

第15回 多恵とみんなとラストダンス

 

「ついに始まりますわね」

と、星子はほかのメンバーと手を握りながら言った。

「まず、最初は優勝候補の一角、福博女子大学付属のスクールアイドル、K9!!」

と、司会であるリポーターが言うと、

「「「はい!!」」」

と、K9の大野ひろ美、西新カケル、朝倉はるなの3人は大声で返事し、ステージ上に立った。

「最初で全力で圧倒的なパワーで1位になる!!これが終わったらのシナリオ!!」

と、カケルが元気よく言うと、はるな、

「そうですね。私たちならそれはできますよ」

と、微笑みながら言うと、ひろ美は、

「私たちの全力のパワー、みせてやりましょう」

と、2人を鼓舞するように言った。

「では、歌ってもらいましょう。K9で「SE-NO-BI」!!」

と、レポーターが言うと、曲が始まった。

 

K9 挿入歌 「SE-NO-BI」

 

SE-NO-BI SE-NO-BI

SE-NO-BI SE-NO-BI

背伸びをしていると

未来が見えてくる

 

本当に背伸びを してみると

新しい世界が  ひろがってくる

見たことがない 未体験の

とても楽しい  ことがはじまる

 

すべてが   楽しい(楽しい)

すべてが   新しい(新しい)

とてもすごい とても明るい

なにもかもが 嬉しい予感

 

SE-NO-BIを   すれば

きっとすごいこと できるかも

だからみんな   一緒に一緒に

SE-NO-BIを   してみよう

私たちと一緒に  あたらしい未来

新しい世界    つくってみよう

 

SE-NO-BI SE-NO-BI

SE-NO-BI SE-NO-BI

背伸びをしていると

大きく見えてくる

 

本当に背伸びを してみると

全てが大きく  より見えてくる

これまでにない 未体験の

とてもうれしい ことがはじまる

 

すべてが   嬉しい(嬉しい)

すべてが   面白い(面白い)

とてもすごい とてもハッピー

なにをしても 楽しい予感

 

SE-NO-BIを  すれば

新しいこと   できるかも

だからみんな  一緒に一緒に

SE-NO-BIを  してみよう

私たちと一緒に 面白い明日

面白い世界   つくってみよう

 

私たちはまだこどもだけど

もう少しSE-NO-BIをすれば

大人になれるかもしれない

大人になれば新しい世界

明るい未来が待っている

だから(だから) だから(だから)

SE-NO-BIをしてみよう

 

SE-NO-BI SE-NO-BI

SE-NO-BI SE-NO-BI

背伸びをしていると

未来が見えてくる

 

SE-NO-BIを   すれば

きっとすごいこと できるかも

だからみんな   一緒に一緒に

SE-NO-BIを   してみよう

私たちと一緒に  あたらしい未来

新しい世界    つくってみよう

 

SE-NO-BI SE-NO-BI

SE-NO-BI SE-NO-BI

もう少しSE-NO-BIしてみよう

 

「えっ、ノーミス!!それでいて、あんな迫力のある歌声。うそでしょ」

と、星子は絶句した。

「小明、なんか勝てる気しないです」

と、小明が言うと、めいも、

「めいも小明と同じです~」

と、弱音を吐いてしまう。

「大丈夫だよ、きっと…」

と、たい子は言うが、足が震えていた。

 春は、

「弱音を吐く星子をはじめて見た。でも、私も同じだよ…」

と言えば、氷も、

「これを超えることってできるのかな。いっそう2位か3位に…」

と、星子と同じく弱音を吐く。

「これで大丈夫かな?私も自信ないよ」

と、ひろ子が言うと、多恵、自分がいると必ず失敗すると思い、

「やっぱり私、いないほうが…」

と、弱音を吐くと、

タタタ

と、ステージとは反対方向に走りはじめた。

「多恵ちゃ~ん」

と、九が言うも、多恵は九たちのもとから離れていく。

「多恵ちゃ~ん、ちょっと待って~」

と、九は多恵の走り去った方向へと追いかけようとする。

「九、ちょっと待ちなさい!!」

と、星子が言うと、

「九ちゃんを追いかけるよ!!」

と、ひろ子が叫び、星子たち7人は九のあとを追った。

 

「多恵ちゃん、ちょっと待って~」

と、九は多恵を追う。

「私のことなんてほっておいてよ」

と、多恵は叫ぶも、

「ほっておけないからね、ずっと追いかけるよ」

と、九、多恵に向かって叫ぶ。

「えっ」

と、多恵は九の言葉に一瞬立ち止まる。

「多恵ちゃん、捕まえ~た!!」

と、九は多恵に抱きつくと、

「ちょっとやめて」

と、多恵、九を離そうとする。

 だが、そんな多恵に対し、九、

「やめないよ。私はやめないからね」

と、多恵に向かって言う。

「えっ」

と、多恵が振りほどくのをやめる。これを見た九、

「だって、多恵ちゃんは私の、いや、私たちの大切な仲間なんだから!!」

と、叫ぶと、

「九!!」

と、星子たち7人も九のもとへと集まってくる。

 これを見た九、

「私はぜったいに諦めないよ!!」

と、多恵だけでなく星子たち7人にも聞こえるように叫ぶ。

「どうしたの、九。なんかへんになったんじゃない」

と、星子が言うと、九、

「おかしいのはみんなの方だよ」

と、九は叫ぶ。

「どこがおかしいの?」

と、星子が聞くと、九、

「全部だよ、全部!!」

と、大きな声で言うと、続けて、

「星子ちゃんも、春ちゃんも、氷ちゃんも、たい子ちゃんも、めいちゃんも、小明ちゃんも、ひろ子ちゃんも、そして、多恵ちゃんもだよ」

と、みんなを指しながら言った。

「なんで!!」

と、ひろ子が言うと、九、

「だって、まだ始まってもいないのに、すでに負けているように見えるもん。それに、ぜんぜん楽しんでいないじゃない」

と、みんなに大きな声で言う。

 そんな九に対し、星子、

「だって、K9の圧倒的なものを見せられて、自信なくすのって当たり前でしょ」

と、九に向かって言う。九はみんなを見ると、自信をなくすもの、すでに負けていると思っているものがほとんどだった。

 そんなとき、九はいきなり、

「しっかりしろ~」

と、大声を張り上げた。

「い、いきなりなによ」

と、星子が言うと、九、

「まだ負けていないんだよ。まだやっていないんだよ。それなのに、どうしてそう決めているの?」

と、星子に対して言う。

「だって~」

と、星子が言い訳をすると、九、

「そんな顔、見たくないよ!!私、このままで終わりたくないよ!!」

と言うと、たい子、

「決勝は1位じゃなくても2位や3位で通ればいいじゃない」

と、九に対して弱弱しく言う。

 九はそんなたい子に対し、

「こんな弱気じゃ2位や3位もとれないよ」

と、反論。ひろ子も、

「そんなこと言ったて、みんな、こんな状態じゃ…」

と、弱気になる。これにも九、

「ここで弱気になるなんておかしいよ。もっと元気になろうよ」

と、みんなを鼓舞するだが、九の訴えにも係わらず、星子たちはただ黙るしかなかった。

 そんな星子たちに対し、九はさらに訴える。

「私たちは今まで一生懸命練習してきたんだよ。たとえなにがあっても練習してきたんだよ。努力ってそんなに簡単に裏切るものなの?」

これを聞いた星子、

「練習…」

と言うと、九、

「そう。練習してきたんだよ。たとえズレていても、たとえ失敗しても、練習してきたんだよ」

と、星子たちに訴える。

「でも、練習って、いつもズレズレ…」

と、たい子が言うも、九、

「たしかに練習のときはズレているかもしれないよ。でも、本番ならみんなで合わせることができるはずだよ」

と言うと、春、

「たしかに、本番ならきっとうまくいくかも…」

と、少しずつ自信を取り戻そうとする。多恵を除く7人は少しずつ自信を持ち直そうとしていた。

 九はそれを見逃さなかった。九、とどめの一発を繰り出す。

「私、思ったの。みんなバラバラかもしれない。一緒にできないかもしれない。けれど、私たちってそんなにバラバラなのかな。違うでしょ。私たちはかけがいのない、一緒に生きる、キズナで結ばれた仲間でしょ。仲間だったらわかるでしょ。自信をなくしたとき、生きる希望をなくしたとき、互いに助け合って、励ましあって、一緒に生きるものでしょ」

と九が言うと、続けて大きな声で言った。

「私たちは9人で1つ。ここで頑張らないと、楽しまないと、悔しい気持ちのままで終わっちゃうよ」

この言葉に氷、

「たしかに。ここで諦めたら試合終了だね!!」

と言うと、春、

「なんか九ちゃんに励まされてしまったね」

と言うと、小明、

「そうです、そうです。小明たちはまだ終わっていないよ」

と、めいの方を見ると、めい、

「めいだってみんなのぐらいできます」

と、声をあらたかに言う。たい子も、

「めいと小明が頑張るなら、私も頑張ります」

と言えば、ひろ子も、

「やっぱり、いつもの九ちゃんだね」

と、九の背中を叩く。

「いたい、いたいよ」

と、九が言うも、九はまだ元気のない星子と多恵の方を見る。

「星子ちゃん…」

と、九が言うと、星子、

「たしかに。ここで頑張らないといけません。が、それもこれも多恵が、いつもズレているのがすべての元凶です。それを正さないと…」

と言うと、九、

「多恵ちゃん、どうなの?」

と多恵に聞く。多恵、

「私は…、私は…」

と、ただ黙るしかない。

 そんな多恵に対し、九、多恵に寄り添い、

「あんまり無理はしないでね。苦しかったんでしょ。ここで全部さらけだしてよ」

と、語りかけると、多恵、

「ご、ごめんなさ~い」

と、大きな声で泣きながら言った。

「多恵ちゃん!!」

と、ひろ子が言うと、多恵、

「本当にごめんなさ~い」

と、九の肩に寄り添い言った。

 九はそんな多恵に対し、

「やっぱり、私たちとの深い溝があったからじゃないかな」

と言うと、多恵、

「うん…」

と、小さくうなずく。星子はこれを見て、

「深い溝…」

と言うと、多恵はすべてを話しはじめた。

「私、みんなの高校に編入したときから辛く当たってきたでしょ、みんなから塩対応って言われてもおかしくないくらいに」

これにはたい子、

「塩対応?あれって塩対応だったの?」

と言うと、春、

「たしかに多恵ちゃんの対応って塩対応だったね。今頃になってわかったけど…」

とさらりと言う。これには多恵、

「え~、塩対応って思っていなかったの~」

と驚く。星子は、

「はいはい。多恵は続きを話す」

と言うと、多恵、

「はい…」

と、続きを話す。

「私は父親の命令だけど、町を二分するような悪さをした。これでみんなの、町の人たちのきずなを断ち切ろうとしていた。そんな悪女の私にみんなと楽しもうということをしていいのかな?」

と、多恵が言うと、九、

「別にいいんじゃない。昔のことだし」

と、あっけらかんに言うと、続けて、

「まだ隠しているがあるでしょ」

と、多恵の方を見ていた。

 多恵は別のことも話す。

「うん。私にはあのバックスターは許せないと思う。あのバックスターがいるから、私は苦しんでいるの」

これには九、

「今はそんなこと、忘れようよ。今は今を楽しもうよ」

と言うと、多恵、

「今を楽しむ…」

と言い返す。九は、

「そう、多恵ちゃんはバックスターのことより自分のことを許していないと思うの。はやく気がついて。多恵ちゃんは多恵ちゃん、バックスターはバックスター。多恵ちゃん、自分を許して。そして、今を楽しんで。私たちも多恵ちゃんと一緒に楽しむから」

と言うと、多恵、

「こんな私でいいの?」

と言うと、九、

「そういう多恵ちゃんだから、私も、みんなも、大好きなんだよ」

と、多恵に大々的に言う。多恵はこれを見て、

「みんな、そうなの?」

と言うと、星子、

「多恵がこんなに苦しんでいるなんて、なんで気がつかなかったの。仲間だったらお互い助け合うものよ」

と言うと、多恵、

「はい?」

と言うと、星子、

「もう苦しまないでね。きっと私たちが助けてあげるから」

と言うと、みんな大きくうなずく。これを見た多恵、

「みんな、こんな私だけど、よろしく頼みます!!」

と、大きく礼をする。

 これをみた九、

「よ~し、みんな多恵ちゃんのところに集まれ!!」

と言うと、多恵を中心に8人が集まる。

「さあ円陣を組もう」

と、九が言うと、多恵を含めて円陣を組む。

 そして、

「アイランドスターズ、Go!!」

と、九が大きく言うと、ほかの8人は、

「「「「「「「「オー!!」」」」」」」」

と、大きく叫んだ。

「みんな~、どこ~」

と、声が聞こえてくる。雪穂だった。

「みんな探したよ~。もうすぐ本番だよ」

と、雪穂が言うと、喜び合っている九たちの姿を見て、

「どうやらまとまってきたようだね。雨降って地固まるってこんなことだね」

と言うと、九、

「雨降って…って、なんのことですか?」

と聞くと、雪穂、

「こりゃー島に帰ったら勉強だね」

と言うと、九、

「それはないよ~」

と、嘆きながら言うと、みんな、

ハハハ

と笑っていた。

 

「さあ、これでラストですよ。ラストは九州予選でのダークホース的存在、生徒全員で頑張ります。九龍高校のスクールアイドル、アイランドスターズ!!」

レポーターの言葉でステージ上にあらわれた九たちアイランドスターズ。九たちの姿を見て、ひろ美は言った。

「なんか一皮むけたみたいだね。こりゃ、私たち、負けるかもね」

これにはカケル、

「それはない。私たちの優位性は間違いないぞ」

と言うと、ひろ美、

「いや、あの顔、笑っているよ。こんな顔されたらどんな相手でもノックアウトだよ」

と言った。そう、九たち9人は笑っていた。そして、

「私たちの全力、ここでみせつけよう!!」

と、九が言うと、みんな、

「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

と、大きな声で答えた。

「それではいってみましょう。アイランドスターズで、「NEW VOYAGER」!!」

と、レポーターが言うと、曲が静かに始まった。

 

アイランドスターズ 第15話 ED 「NEW VOYAGER」

 

さあ 航海にむけて 全力前進!!

 

さあ むかおう 新しい世界へ

どんなとこか  知らないけれど

私たちなら   大丈夫

だって私たち  NEW VOYAGER

 

一緒に組むのは  はじめてだけど

きっとなにかの縁 きっと最初から

一緒になるって  決まっていたんだよ

だからこそ    だからこそ

大きな海原    一緒にこえていこう

 

すべての海を(海を)   のりこえていこう

私たちの(私たちの)   処女航海は

とても大変(大変)    だけでども

そんなこと(そんなこと) 百も承知

 

私たちは(私たちは)   NEW VOYAGER

きっとのりこえられる   すべての困難を

だからこそ(だからこそ) あきらめずに

全力前進!!         してみよう

 

さあ むかおう 新しい明日へ

どうなるかは  知らないけれど

どんなときでも 大丈夫

だって私たち  NEW VOYAGER

 

どんなになるかは  わからないけれど

きっとみんなとなら きっとさいごまで

全力だすって    わかっていたんだよ

だからこそ     だからこそ

大きな大空     一緒にこえていこう

 

すべての空を(空を)   のりこえていこう

私たちの(私たちの)   処女航海は

とても危険に(危険に)  みえるけど

そんなこと(そんなこと) かんけいない

 

私たちは(私たちは)   NEW VOYAGER

すべてみつけてやろう   すべてのお宝を

だからこそ(だからこそ) あきらめずに

全力前進!!         してみよう

 

私たちは全員初心者

なにもしたことないけど

まわりは心配しているけど

そんなこと関係ない

私たちはきっとやり遂げる

1つだけ言えることは(ことは)

私たちこそ真のVOYAGER

 

すべての海を(海を)   のりこえていこう

私たちの(私たちの)   処女航海は

とても大変(大変)    だけでども

そんなこと(そんなこと) 百も承知

 

私たちは(私たちは)   NEW VOYAGER

きっとのりこえられる   すべての困難を

だからこそ(だからこそ) あきらめずに

全力前進!!         してみよう

 

私たちは NEW VOYAGER!!(NEW VOYAGER!!)

     NEW VOYAGER!!(NEW VOYAGER!!)

私たちこそNEW VOYGER!!

 

「すごい。こんなに全員が合ったところ、見たことがない」

と、ひろ美はアイランドスターズの踊りに見とれてしまっていた。

「こりゃ、私たちの負けですね」

と、はるなが言うと、ひろ美、

「たしかに。今回は負けたかも。でも、ラブライブ!決勝では負けないからね」

と、九たちにむけて言った。

 

「それでは2位の発表です。2位はK9!!おしくも1位にならず!!」

と、レポーターが言うと、続けて、

「そして、栄えある1位は…、アイランドスターズ!!あのK9をおしのけての1位だ~」

と発表した。

「こりゃ雪穂に負けちゃったわ~」

と、(中洲)天が言うと、雪穂、

「いやあ、私の力じゃないよ。あの子たちの力だよ。私はそれに手を貸したにすぎないのよ」

と言うと、(秋葉)愛は、

「それも雪穂の力だよ。でも、決勝では負けないからね」

と言い放つ。

「それでも負けないよ」

と、雪穂は天たち4人に対して言い返した。

 

「これで決勝だね」

と、九が言うと、その横から、

「1位おめでとう。でも、決勝では負けないよ」

と、ひろ美が激励に駆けつけた。

「それでも負けないよ」

と、九はひろ美に対して言い返す。

 そんなとき、

カチッ

と、会場中が暗くなった。そして、

「みなさん、ごきげんよう」

と、ステージのスクリーンからある人物が映りだされた。

「誰?」

と、九が振り向くと、突然、多恵の顔がこわばっていく。

「お父様…」

 

つづく…

 

次回 建造と決勝と電話

 




あとがき
 
 みなさん、こんにちは。La55です。九たち「アイランドスターズ」は多恵がみんなに心を開いたおかげで心が1つになりました。その結果、ひろ美率いる「K9」を撃破、無事に九州予選をトップで通過。ついにラブライブ!決勝に進出しました。が、実は「K9」も予選を突破しているのですよね。自分の考えた設定では上位3位まで決勝に進めるので、その意味では決勝では「アイランドスターズ」対「K9」の対決が見られる、のですが、それ以上に強敵が現れます。そう、ルナ率いる「バックスター」です。「バックスター」は前回のラブライブ!夏季大会で優勝している実力を持っています。いや、その実力は「パーフェクトワールド」級。完璧オブ完璧なスクールアイドルグループ。さらに、その裏でなにやら事件が…。それは次回をお楽しみに。

 で、今回の楽曲は「SE-NO-BI」と「NEW VOYAGER」の2曲でした。それでは簡単に解説を。
 「SE-NO-BI」ですが、これは「K9」の楽曲でした。漢字にすると「背伸び」、つまり少し背伸びをしてみたらどうなるのかを表現した曲となっております。自分たちが子どものころ、少しでも大人に近づこうと背伸びをしたことがありませんか。無理してでも背伸びをして大人に少しでも近づきたい、そう考えたことありませんか。自分にとって背伸びとは子どもが少しでも大人、または未来へと近づきたいために行っている行為だと思っております。子どもが背伸びをした結果、大人、未来に一歩近づいたかもしれません。背伸びをすることは子どもにとって無理をしているかもしれません。しかし、それをしたことで子どもはさらなる進化を遂げる、背伸びにはそのような効果があったりします。背伸びをしている子どもを見かけたとき、やめさせるのではなく、どのように考えたらよくなっていくのか一緒に考えてみるのもいいかもしれません。しかし、「K9」の曲って、天たちのときの「TE TO TE」といい、なんでローマ字でかつ3文字なのか、自分でも不思議に思っております。
 で、「アイランドスターズ」の新曲「NEW VOYAGER」ですが、これは本編の物語とリンクしております。九龍島で行われた祭り「九龍祭り」のとき(第12話)は、「アイランドスターズ」はまだ完全に1つになっておりませんでした。その理由は多恵がまだみんなに心を開いていなかったから。「九龍祭り」のときは多恵の父、建造から勘当を言い渡された多恵に対し、九たちは多恵を優しく接しました。それに対しては多恵は非常に感謝しているはず。しかし、多恵の心には父親からの圧力があったとはいえ、島の人たちの仲を引き裂いたという罪悪感がありました。それが鹿児島県予選での失敗を生んでしまいました。それが多恵と九以外のメンバーの仲に亀裂を生じさせる結果に。でも、九は多恵の罪悪感も星子たちの多恵に対する不信感も一挙に吹き飛ばすほどの明るさで多恵、そして、星子たちを纏め上げました。ついに1つになった「アイランドスターズ」。そう、ここからが彼女たちの本当のスタート。新しい船出を新しいメンバーで迎える、この曲はそれを歌った曲になります。新しい冒険がついに始まる。それはわくわくがとまらない、彼女たちにとってそう思っているのかもしれません。

 で、私は現在、この作品のスピンオフを絶賛執筆中です。6つの物語のうち、すでに2つの物語は書き終えています。あと4つなのですが、1つ問題が。実は2つの物語、話が長くなってしましいました。最初の物語はノートにして38ページ分、2つめの物語も28ページとながくなっております。文字にすると、大体最初の物語が2万字以上、2つめでも1万6千字を超えているかも。ちなみに、この物語は1話あたり約8~10ページ、文字数で5千字前後。それほど長くなってしまいました。でも、削ると話としては成り立たないこともあるので、ひとつの物語を何回かに分けて投稿したいと思います。パソコンに入力次第投稿したいと思います。それまでお待ちください。

 というわけで今回はここまで。次回は本編を少しお休みします。そのかわり、いつものあれその1を投稿します。本編の次回の投稿は1週間後となります。いつものあれその1を含めてお待ちください。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。


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人物設定 その3(アイランドスターズ‼編)

アイランドスターズ

 

2年

 

金城 九 2006/12/15生まれ

 この物語の主人公。スペシャルライブの雪穂のライブを見て、自分もスクールアイドルになりたいと思い、雪穂に志願する。いろんなものに好奇心が働くため、なにか新しいものがあれば、それをとりいれることが多い。1つの夢に対して熱心になりやすく、それがアイランドスターズの原動力になることもある。困難があっても開拓しようとする。ただし、楽天的。親は島で唯一の民宿を経営している。

 

水木 ひろ子 2006/4/2生まれ

 九の幼馴染。陽気で活発。海があればどこでも飛び込むほど海が大好き。いつも水着を着込んでいるため、どこでも脱ごうとしてしまう。情熱的であり、サービス精神の塊。親はダイビングショップを経営。

 

土居 多恵 2006/8/10生まれ

 島をリゾート開発しようとしている土居建設の社長の一人娘。リゾート開発の責任者として転校してきた。気位があり、まわりに攻撃的。そのため、孤独になりやすい。紆余曲折をえてアイランドスターズ最後のメンバーとなる。向上心が強く、陰に隠れてよく練習する。

 

1年

 

川畑 たい子 2007/9/1 生まれ

 魚好きの女の子。誰に対しても親切に対応してくれる。また、友人が困っている顔をしていると、なぜか同情したくなってしまう。見ていて飽きないほど人間味あふれている。アイランドスターズのなかでも協調を大事にしており、なにかあれば中立となって3年の氷と一緒に仲裁にはいろうとする。親は漁師(漁協では会長)をしている。

 

林 めい 2007/10/18 生まれ

 ちょっと不思議な女の子、と見えて、本当はしっかりしている子。責任感が強く、ときにはそのせいで自分を追い詰めることも。ときには大胆になることも。また、無限のひらめきがあると思うほどに。要するに、両極端になりやすいので、注意が必要。ちなみに、鍛錬という言葉が好きで、どんなことでもへこたれないらしい。親はさとうきび農家。

 

池田 小明(あかり) 2007/4/15 生まれ

 アイランドスターズのなかでは一番小さい。九と同じくらい楽天的であり、自由気ままに行動する。とてもマイペースであり、なんでも前に進まないと気がすまないタイプ。軽快に動き回り、アイランドスターズで唯一、バク転、側転などのアクロバットができるくらい運動神経抜群。親はプロサーファー。

 

※ めいと小明のせいで、たい子は苦労がたえないらしい

 

3年

 

天王寺 春 2005/10/10 生まれ

 理系の得意な女の子。どんなことにも研究熱心。たとえそれがダンスであっても、気になるものには目がない。そのため、どんな練習であっても持久力があるため、どんなことでもへこたれない。アイランドスターズにおける母親キャラになりやすく、いろいろと教育することがある。感受性も豊か。親は環境保護官。

 

天海 星子 2005/7/20 生まれ

 高校の生徒会長。堅実であり、やや保守的。最初、九のアイランドスターズに対してちゃらちゃらしているという理由で拒むも、丸め込められてしまう。計画性があり、ちゃらんぽらんになるアイランドスターズの練習計画を作成するほど事務仕事はお手のもの。花、琴、さんしん、島唄など、多趣味であり、努力家かつ粘り強い。祖父は町長であり、家自体が堅物である。

 

富永 氷 2005/6/1 生まれ

 星子の幼馴染。星子と違い、笑顔が絶えない元気な子。社交的であり、どんな人たちともフランクに会話できる。また、アイランドスターズ内で揉め事があると、仲介する役回りをもこなす。名前のとおり落ち着いた子に親はしたかったが、その逆の子になってしまった。アイランドスターズのムードメーカー。親は副町長をしている。

 

バックスター 全員2年生

 

伊藤 ルナ(リーダー) 2006/11/3 生まれ

 土居建設の社長、土居建造(けんぞう)に忠実な女の子。アイランドスターズに対しては本格的につぶそうとしている。建造のために生きているみたいで、なんに対しても無欲である。ただし、優柔不断であり、リーダーとしての素質を疑われることも。

鈴木 レン 2006/11/3 生まれ

 バックスターにおける参謀格。優柔不断なルナを支える。いろいろと策をめぐらそうとする。まねすることには天下一品であり、どんなダンスでもすぐにマスターしてしまう。知恵者であり、バックスターが成り立っているのはこの人がいるからともいわれている。

 

田中 カレン 2006/4/30 生まれ

 バックスターにおける分析係。どんなことに対しても分析しないと気がすまない。潔癖症であり、いつも手袋をしている。とても神経質であり、どんなことでも警戒を怠らない。また、理性が強く、ルナとレンが暴走しようとなると、それをとめようとする。

 




あとがき?

 みなさん、こんにちは。La55です。前々回で発表したいつものあれその1は人物設定でした。これは前作「ラブライブΩ/UC」でも公開しましたね。自分の考えなのですが、小説を書く際、主人公たちの人物設定をしっかり設定してから小説を書き始めるようにしております。一部突発的にほかのキャラクターを入れてしまうこともありますが(たとえば、「ラブライブUC」にでてきた漫才コンビ「大阪シスターズ」)、大体は人物設定を活かして小説を書いております。その意味でも人物設定は物語の大きな構成要素のひとつなのです。
 で、この人物設定なのですが、今回、前作以上に難儀でした。これまでにない性格を持つ登場人物を出そうとしたのですが、想像力が少ない自分にとって前作の登場人物の性格以外を持つ登場人物を考え出すのは難しかったです。というわけで、今回はいろいろネットで調べて、それをもとにこの作品の人物設定をしてみました。なにを参考に性格を決めたのかは秘密なのですが、ヒントとして、それぞれの登場人物には正確な誕生日を設定しております。そして、第1回のラブライブ!が行われたのがアニメ作品「ラブライブ!」の本放送があった2013年に設定した場合、ラブライブ!が10周年を迎えるのが2023年となります。そう、本作は2023年を舞台としております。それにあわせてそれぞれの登場人物も誕生日を設定しました。その誕生日がその登場人物の性格を決めている、のかもしれません。ただ、そのために1つ問題が発生。なんと、登場人物のなかに早生まれがいないんだな、これが…。
 で、小説を書き始めたのはいいものの、いかんせん、自分の能力不足などがあって、人物設定を十分に活かしていない状況に。メインである九、多恵、そして、リーダーである星子ぐらいしか活躍できなかった。それを小説の感想で指摘されてしまいました。というわけで、今現在、スピンオフを製作中です。このスピンオフでほかのメンバーも十分に活躍させてあげたいと思っております。ただし、ただいま絶賛製作中なので、不定期での投稿をお許しください。全部のスピンオフを投稿したときには、全員分の人物設定を活かすことができた、といえるはず…、とはいかないかな、しゅん。
 というわけで、あと残すところ5話。話はついにクライマックス。どんな展開をするのでしょうか。それは秘密なのですが、少しだけヒントをいうと、ラブライブ!史上最大級の事件が発生します。これについては好き嫌いはっきりと分かれると思います。拒絶反応を示す方もいれば、その逆もしかり。自分はそれでも最後まで本編を投稿するつもりです。そして、最終話が投稿される大晦日の次の日、元旦を含む正月三が日にはいつものあれその2が3日連続、それも朝夕続けての投稿があります。それもお楽しみにお待ちください。いつものあれその2を最後まで読んだあと、あなたにとって感動する、かもしれません。それとも、自分の実力不足で空振りに終わる…、かもしれません。それもお楽しみに(いや、お楽しみじゃないだろ、それ)。それでは、今回はここまで。さよなら、さよなら、さよなら。


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決戦編
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第16話


第16話 建造と決勝と電話

 

「お父様…」

多恵は絶句した。そこに映っていたのは多恵の父、建造だった。

「スクールアイドルのみなさん、そして、観客のみなさん、こんにちは。私は土居建造というものです」

建造の低音の声が会場中に響き渡る。建造は一呼吸おいて話し始める。

「このたびは九州予選に来ていただきありがとうございます。主催者としてお礼申し上げます」

「えっ、主催者!!」

星子たち、いや、会場中が驚いた。

 

(OP 1番のみ)

 

「驚いているのには仕方がない」

と、モニターの建造は言うと続けて、

「実はラブライブ!の趣旨に感動しまして、このたび、土居建設グループは全社をあげてラブライブ!を応援することを決めました」

と言う。九は、

「応援?」

と言うと、多恵、

「つまり、ラブライブ!のスポンサーになりましたということよ」

と、説明する。

 建造の話は続く。

「応援、つまり、私がスポンサーになったということは、これまで以上にスクールアイドルは日本中に、いや、世界中に広がることでしょう」

これには多恵、

「本当にそうかしら。私利私欲が見え隠れしているんじゃないの?」

と、建造に対する強いツッコミ。

 それでも建造の話は続く。

「ラブライブ!こそ日本の文化、いや、世界に誇れる文化なのです」

これにも多恵、

「うそばっかり」

とツッコむ。

 だが、建造の本性をあらわしたのはここからだった。

「ただし、このスクールアイドルの頂点に立つのはただ1つ、それは土居建造記念高校のスクールアイドル、バックスターしかおりません」

これには観客たちからブーイングが鳴り響く。それでも建造の話は続く。

「バックスターは見事前回のラブライブ!にて、圧倒的な力で優勝しました。これもみなさま、ラブライブ!を応援しているみなさまのおかげです」

これには観客は黙る。

「バックスターはこれからもみなさまの声援を糧に頑張っていきます。スクールアイドルのみなさま、こんな圧倒的なパワーを持つバックスター、倒したいでしょう」

これにはステージ上にいるスクールアイドルたちから、

「そうだ、そうだ」

と、声をあげている。

 建造、これを見ていたのか、

「それなら、今から流す映像を見てください」

と、ある映像が流れだした。

「!!」

スクールアイドルたちはスクリーンに映された映像を見て絶句した。

「なんていうパーフェクトな歌なの」

「これじゃ勝てないよう~」

と、自信を喪失していくスクールアイドルたち。

 映像が終わると、再び建造があらわれる。

「どうでしたか。これは前回のラブライブ!決勝のときの映像です」

と、解説すると、建造は再びスクールアイドルたちに言った。

「だからこそ、バックスターはあのμ‘s、A-RISE、いや、Aqoursをもこえる存在なのです」

 そして、建造はスクールアイドルたちにとどめをさそうとしていた。

「バックスターに勝てるスクールアイドルはいません。そんなスクールアイドルがいたら見てみたいものですね。ハハハ」

建造の笑い声とともに映像が終わった。

「なにが勝てるのですか。なんで笑っているのですか」

と、多恵はスクリーンに向かって怒りだす。続けて、

「どこまで私利私欲な男ですか。これが私の父だなんて恥ずかしい思いです」

と言うと、星子、

「多恵、ちょっと静かにしなさい!!」

と、多恵に注意する。これには多恵、

「はい」

としゅんとする。

「でも、多恵さんの言うことは一理あるかもしれません」

と、K9のひろ美が言うと、星子は、

「ここでは言えることも言えないでしょう。一度控え室に戻りましょう」

と言ってスクールアイドルたちを控え室へと誘導した。

 これを見ていた司会役のリポーター、

「なにがどうだかわかりませんが、これで波乱の九州予選はここで終わり!!みんな、またね~」

と、大会を終わらせた。

 

「なんだ、あの茶番は!!俺たちをなめているのか!!」

と、K9のカケルが言うと、めい、

「たしかにあれは舐めている目でした」

と、怒りながら言う。

 だが、K9のはるなは冷静だった。

「でも、あの踊りを見せられると、何も言えなくなりますわ」

そして、春も、

「たしかにはるなちゃんの言うことも一理あるかも」

と言うが、多恵は、

「それでも、あんなの許せない!!」

と、怒りながら言う。

 そんなことを言いあっているあいだ、九は、

「ああ、バックスターってあんな踊りするんだ。こりゃ決勝が楽しみだなあ」

と、どこ吹く風であった。

 

 九州予選から1週間後。ここはラブライブ!運営本部。

「あの~、ここに資料、置いていいですか?」

と言う声が資料室にこだまする。

「おお、新入り。ここに置いてくれ」

と、職員らしき人から言われると、

「はい、ここに置いておきますね」

と、若い女性は言って資料を机に置いた。

「ああ、憧れのラブライブ!の運営に携わることができるのか。いいなあ」

と、若い女性は廊下を歩きながら言うと、

「こら、新入り。少しは静かに廊下を歩きなさい!!」

と、これまた別の職員から注意を受ける。

「ごめんなさい」

と、若い女性は謝る。

「だから、若いものは…」

と、愚痴を言いつつ職員は女性のもとから立ち去った。

 その若い女性は小言を言う。

「新入り、新入りって、私は渋谷ヒカリっていう名前があるのに」

そう、この若い女性の正体、それは渋谷ヒカリ、昔、雪穂が大学生のとき、一緒にユニドルグループを結成した仲間の1人である。ヒカリは大学院に通う傍ら、今年の秋からラブライブ!の運営のノウハウを学ぶため、バイトとしてラブライブ!運営本部にて働くことになったのだ。

「だけど、今は下働きしかさせてくれないけどね」

それでもヒカリにとって嬉しいことだった。あのラブライブ!に携われる、そんな嬉しいことはなかった。ヒカリにはスクールアイドルとしての活動歴はなかった。ラブライブ!、そして、スクールアイドルというものを知ったのは大学生になってからだった。高校時代はそんなことを知らずにいた。だから、この年でようやくスクールアイドル、そして、ラブライブ!に携われることは嬉しくて仕方がなかった。

 だが、そんな嬉しさはすぐに終わりを告げようとしていた。

「…様、ここにお座りください」

と、なんか偉い人の声が聞こえてきた。

「誰かな?」

と、ヒカリはドアをちょっと開けてのぞきこむと、

「おお、くるしゅうない、くるしゅうない」

と、低音じみた声が聞こえてきた。

「あのソファーに座っている人って、もしかして…」

と、ヒカリがあることに気づく。

「あの人って、今度、ラブライブ!のスポンサーになった土居建造じゃない」

そう、ソファーに座っているのは、土居建造だった。

 建造に対し横にいる年老いた人は言った。

「このたびはご足労いただきありがとうございます」

すると、建造、

「いやいや。あなたみたいな方に出会えて、こちらとしても光栄です」

と、挨拶をかわした。

「ところで、横にいる人って誰かな?」

と、ヒカリが小声で言う。

 建造はヒカリが見ていることを知らず話をすすめる。

「ところで、例の件はどうなりましたか?」

と、横にいる人に建造が言うと、その人は、

「ほかの審査員にも根回しをしている最中です」

と答えた。これには建造、

「決勝までにはお願いしますぞ。こちらは多額の金をあなた方に差し上げているのですから。だから、私のバックスターを勝たせてくださいね」

と言った。

 この会話からヒカリはあることを思い出していた。

「たしか、建造の横にいる人って、今度のラブライブ!決勝で審査員をする人じゃないかな。それじゃ、もしかして…」

ヒカリは直感した、この現場で建造は審査員を買収しようとしているところだと。

 そんなヒカリがいることも知らずか、建造は話をすすめる。

「そう、あなたのお子さん、今度、大学受験ですね。私が一言言えば、大学なんてお茶の子さいさいですぞ、はは」

と、横にいる人に建造は言うと、その横の人も、

「私の子はどうしても希望の大学に受かりたいのですが、そこまでの学力がありません。でも、建造様の力をもってすれば、きっと叶うものです」

と答える。建造はこうして審査員たちを次々へと買収しようとしている、そうヒカリは思った。

「これは一大事だよ。はやく知らせなきゃ」

と、ヒカリはドアをこっそり閉め、建造がいる部屋から離れた。

「むむ、なんか音がしたぞ」

と、建造が言うと、その横にいる人は、

「どうしたのですか?」

と言うと、建造、

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

と言った。

「なんかの気のせいか」

と、建造はそう思うと、その横にいる人と話し続けていた。

 

「これは大変だ!!誰かに知らせないと…」

と、ヒカリは走り抜けると、誰もいない会議室に逃げ込んだ。

「でも、誰に話せばいいの?」

と、ヒカリは考えた。

「上司の人に言えば…。いや、だめ。絶対につぶされる。なら、スクールアイドル関係者に…。いや、私にはそんな人脈はいない。誰がいいのかな~」

と、悩むヒカリ。すると、あることを思いつく。

「そうだ。こんなときこそ雪穂さんだ!!雪穂さんならいろんな人脈を持っているからね」

と言うと、すぐに雪穂に電話をした。

「雪穂さん、はやく出てください」

と、願いつつ雪穂がでてくるのを待つ。すると、

「はい、雪穂ですが」

と、雪穂の声が聞こえてきた。

 

ツルルル

と、雪穂の携帯から着信音が聞こえてきたのは雪穂がちょうど放課後の練習に行く最中だった。

「あれっ、これってヒカリからだよね」

と、雪穂はヒカリからの電話だと気づくと、すぐに、

「たしか、ヒカリってラブライブ!運営本部にバイトに行っているよね。もしかして、何かあったんじゃないかな」

と、直感が働くとすぐに誰もいない教室に隠れ、電話をとった。

「はい、雪穂ですが…」

と言うと、すぐに、

「雪穂さんですか。私、ヒカリです」

という声が聞こえてきた。雪穂は、

「なにかあったのですか?」

と言うと、ヒカリは、

「はい、とても大事なものを見ました」

と答えた。

「なにがあったの?」

と、雪穂が言うと、

「実は建造が審査員を買収している現場を見たのです」

と、ヒカリは答えた。

「審査員を買収!!」

と、雪穂が言うと、

「はい、建造はバックスターを勝たせたいためか、審査員を買収しています」

と、ヒカリは真実を話す。

 これに対し、雪穂、

「今はそのことは心のうちにとどめておきなさい。じゃないと、ヒカリみたいな下のものはすぐに消されるから」

と言うと、ヒカリ、

「そうですね。そうします」

と答えた。

 雪穂は言った。

「私も決勝まで心のうちにとどめておきましょう」

 だが、そんなとき、

バーン

と、教室のドアを開ける音がした。

「だ、だれ?」

と、雪穂が言うと、

「私です、多恵です」

と、多恵は答えた。

「多恵、どうしたの?」

と、雪穂が言うと、多恵、

「今、だれかと話していたのでしょ」

と言うと、雪穂、

「昔の友達とだったのよ」

とうそをつく。

 けれど、雪穂のうそを多恵は見逃さなかった。

「それって、私に関係あることですか?」

と、多恵が言うと、雪穂、

「いや~、そうでもないよ」

と、さらにうそをつく。そんな雪穂に対し、多恵、

「うそをつかないでください」

と、大きな声で雪穂に迫る。

「きっと私の父のことでしょ」

と、多恵が言うと、雪穂、

「なんでそんなことわかるのかな?」

と、逆に質問した。

 多恵はすぐに答えた。

「それは、先生の声を聞いたからです」

 

 時間は少し戻る。

「多恵ちゃ~ん、雪穂先生、呼んできて~」

と、九は多恵に言うと、多恵、

「はいはい」

と、軽く返事して雪穂を呼びに行く。

「なんで、今日に限って雪穂先生、遅くなるのかな?」

と、多恵はぶつぶつ言うと、

「あれ、あれって雪穂先生だよね。なんで空き教室に入るのかな?」

と、空き教室に入っていく雪穂に気づく多恵。

「ちょっとのぞいて見よう」

と、多恵はガラス窓から雪穂をのぞく。

 すると、

「審査員を買収!!」

という雪穂の声が聞こえてきた。

「えっ!!買収!!」

と、多恵が言うと、すぐに教室のドアを開けた。

 

「やっぱり父親はいけないことをしていたのですね!!」

と、多恵が言うと、雪穂は、

「落ち着いて!!」

と言うも、多恵、

「落ち着いていられません!!」

と言った。

 はたして、多恵はどんな行動をとろうとするのだろうか。そして、九たちの運命は…。

 

次回につづく。

 

(ED 1番のみ)

 

次回 多恵と雪穂とみんな

 

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第17話

第17話 多恵と雪穂とみんな

 

「やっぱり父親はいけないことをしていたのですね」

と、多恵は言うと、雪穂は、

「落ち着いて」

と言うも、多恵は、

「落ち着いていられません」

と言った。

「多恵、これは多恵自身にはなにもできないことだよ」

と、雪穂が言うも、多恵、

「それでも、父親は悪いことをしているのです。私にとってそんな父親であっても、ラブライブ!の審査員を買収するなんてとても悪いこと、黙っていられません」

と言い返す。

「多恵、少しは落ち着いて!!」

と、雪穂が言うと、多恵、

「私は落ち着いていられません。父親をとめないと」

と、怒りながら言った。

 

(OP 1番のみ)

 

「どうして落ち着いていられないの?」

と、雪穂が言うと、多恵、

「だって、父親が悪いこと、止めるのが家族の役目です。それが絶縁状態であっても父親は父親です。とめないと」

と言うと、雪穂、

「それをとめるのは私たち大人の役目です。多恵がいくら言っても、とめることはできないのよ」

と言う。でも、多恵は、

「それが大人の役目であっても、私の父です。私は家族としてとめる義務があります」

と、反論する。これには雪穂、

「…」

と、黙るしかなかった。

 多恵、これを見逃さず、

「私、(多恵の父の)会社に連絡しにいきます」

と、動こうとする。

 だが、雪穂は、

「はっ!!」

と、われに返ると、すぐに多恵の腕を掴む。

「やめて!!」

と、多恵、掴まれた腕を放そうとするも、雪穂、

「はなさない!!」

と、多恵の腕を放そうとはしなかった。

「私には父の、父のやることをとめないと…」

と、多恵が言うも、雪穂、

「それは私たちにまかせなさい」

と、ただ言うのみ。

 多恵、これではいけないと、

「わかったわ」

と、立ち止まる。雪穂も、

「ならいいのだけど…」

と、多恵の腕を放す。

 そして、多恵は一呼吸おくと、雪穂に自分の思いをぶつけた。

「私は父親をとめないといけません。だって父親がやっていることはいけないことですから。父親は審査員を買収してまでバックスターを勝たせようとしております。それは、今は会社にとって利益になりますが、あとになって不利益になる。そこまでしてまで父親は自分のためにやろうとしています。私としてはとめたいです。だって、私の父親ですから」

 これを聞いた雪穂、

「それなら、その思いを今度のラブライブ!決勝ぶつけなさい。その思いをぶつけ、バックスターを倒しなさい。それこそ父親の野望をつぶす、そして、父親を助ける唯一の方法だから」

と言うと、多恵、

「バックスターをつぶす!!それって可能なんですか?審査員を買収されているのに」

と言うと、雪穂、

「バックスターの曲以上のものを見せる!!」

と答えると、多恵、

「それは単純明快ですね」

と答えた。

 だが、多恵はさらにこう答えた。

「でも、私はラブライブ!決勝が始まる前にとめたい!!」

これを聞いた雪穂、

「それは…」

と、言葉に窮する。それでも雪穂、勇気を振り絞り、

「それでも、私は多恵をとめる。だって、それは私たち大人の仕事だから」

と言うと、多恵、

「そうですか」

と答える。

 雪穂はこれを見ると、多恵に、

「私が言えることは、その思いを今度のラブライブ!決勝にぶつけなさい、そして、その思いをアイランドスターズの勝利へと昇華させなさい」

と言うとともに、

「そして、その思いは多恵の心の中にしまいなさい。そうじゃないと、ほかのメンバーに悪影響がでるから」

と、多恵に釘を刺した。

 だが、多恵はいきなり、

「それはできないよ」

と答えると、雪穂、

「えっ、思いをラブライブ!決勝にぶつけること?」

と、多恵に聞くと、多恵、

「いいえ、そっちじゃなくて、その思いを私の心の中にしまうこと」

と答えた。

「どういうこと?」

と、雪穂が言うと、いきなり、

バーン

と、教室のドアが開く音が聞こえてきた。そこにいたのは…。

「九…」

そう、九たち8人であった。

 九はすぐに多恵のところに行き、

「多恵ちゃん、その思い、私たちの心配もはいっているでしょ!!」

と言うと、多恵、

「えっ、今は雪穂先生を攻める方じゃ」

と、戸惑いながら言うと、九、

「いや、大事なところをまだ隠しているよ」

と、多恵を攻めながら言うと、

「それは…」

と、今度は多恵が言葉に窮する番になる。

 これを見た九、

「多恵ちゃんはまだ本音を隠しています」

と断言すると、多恵、観念したのか、

「そう、私には本音を隠していました」

と、正直に言うと、九、

「それって、負けてしまうと、この島、町、そして、高校がなくなるってことなの?」

と、多恵の目をしっかり見ながら言うと、多恵、

「えっ、なんでそんなことわかるの?」

と、ビックリした。

 そして、多恵は本音を話した。

「私、今、この高校が、九たちが、とても好き。だって、町民のきずなを切り裂くような悪いことをした私を快く迎えてくれたから。でも、そんな町を、島を、高校を、私の父親はなくそうとしています。町のリゾート開発は父親の野望、それに加担した私が本当に言えることじゃない。でも、その野望をつぶすため、島、町、そして、私たちの高校をつぶさせないためにも父親をとめたかった」

 これを聞いた九、

「私はそんなこと気にしないよ」

と、あっけらかんに言うと、多恵、

「えっ?」

と、あっけにとられる。

 これを見ていたひろ子たちも次々に答えた。

「私は高校がなくなっても、九ちゃんたちと一緒にいれば大丈夫だよ」

と、ひろ子たちが言うと、たい子も、

「心配するだけ損ですよ

と答え、めいは、

「めいはどこにいてもめい、みんなはどこにいてもみんなだよ」

と言い、小明も、

「そんなに小明たちのキズナをなめないでくださいまし」

と答え、春は、

「ずっと九龍島で一緒であった私たちにとってそんなの苦じゃありませんよ」

と、笑いながら答え、氷は、

「ものというのはいつかは消えるもの。それは町であっても、島であっても、高校であっても同じこと」

と言うと、最後に星子は、

「でもね、キズナっていうのはいつ、どんなときでも消えないものなの。多恵、あなただってそうよ。私たちはいまは同志、いつ、いかなるときでも助け合うのが仲間でしょ」

と言うと、九は、

「だから、心配しないで」

と、多恵に付き添うように言うと、多恵、

「あ、ありがとう」

と、涙を流しながら答えた。

 これを見た九、

「それにね、スクールアイドルって楽しんでなんぼの世界だよ。そんなに肩肘を張らないで。島が、町が、高校がなくなる、父親を止めたい、バックスターを倒したい、なんて考えないで。今、できること、今、やれることを楽しんで。一生懸命頑張っていこう」

と言うと、多恵、

「うんうん」

と、元気よくうなずいていた。

 

「こりゃ、私がでる幕はないかな」

と、雪穂は九たち9人を見てそう言った。さらに、

「でも、これも青春なんだよね。私も同じこと経験したかな」

と、いろいろと思い返す雪穂。

 としながらも、雪穂はあることを思った。

「でも、これで九たちはこうして心も体も1つになった。これならたとえ、どんなことがあっても、ラブライブ!決勝は大丈夫かな」

 そして、雪穂はある行動をとることに。

「さあて、私は今からいろいろとやりますかね。ひさしぶりに腕がなるわ」

と、言い残して。

 

 こうして、心も体も?1つになった九たちアイランドスターズは、

「よ~し、もう1回いきますか~」

と、九の掛け声とともに、

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、練習につぐ練習をしていた。

 そして、雪穂は、

「はい、そこ。多恵、少し遅いよ。こらこら、九。そこ早すぎるよ。気持ちが先にいっているよ」

と、アイランドスターズの指導をするとともに、

「多恵、決勝で歌う曲はできたかな?」

と、作詞作曲をなぜか担当している多恵に、

「はい、あともう少しでできますよ」

と、多恵をたきつける。と思うと、

「あの~、つばささん、こんにちは」

と、A-RISEのつばささんなどになぜか連絡しているなど、なぜか?多忙な日々をすごしていた。

 

 こうして、ついにラブライブ!決勝の前日を迎えることになる。

「ここがラブライブ!決勝が行われる秋葉ドームなんだね」

と、九が目をきらきらしながら言うと、多恵、

「はしたないからやめなさい。なんて言えないよね。私もここでできるなんて胸がドキドキしているのですから」

と、九に同調する。ほかの7人も同じ状況だった。

 そんな中、

「あれ、あなたたちも来ていたのね」

という声が聞こえてくる。

「あなたはバックスターの(伊藤)ルナさん」

と、多恵が言うと、

「そうです。私はルナ、日本一のスクールアイドル、バックスターのリーダーです」

と、ルナは堂々と答えた。

 そんなルナ、いきなり、

「今からアイランドスターズの泣く顔が思い浮かびますわ」

と、嫌味を含めながら言うと、多恵、

「それはどうかな。私たちはこれまで以上に強くなった。あの島の秋の大祭みたいな急造チームじゃない。今は日本でもっとも強いグループになったのよ」

と、堂々と言う。

 だが、ルナはそれにはおじけずに、

「それはただの虚勢でしかない。実力、そして実績は私たちバックスターが1番。ただの田舎のチームに負けるわけないわ」

と反論する。

 これを見ていたのか、九、突然の乱入。

「私は多恵ちゃんの意見に賛成だよ。だって、私が言うのもなんだけど、日本一のキズナで、日本一(になった雪穂)の指導を受け、日本一の思いをもった私たち、アイランドスターズに負ける要素はあるのか、いや、ない!!反語!!」

と、これまたルナに反論する。

 これを見たルナ、

「ふん。それは明日になればきっとわかるよ。明日のラブライブ!決勝、絶対に私たちバックスターの勝利で終わるわ」

と言うと、メンバーを連れてその場を離れた。

 九はルナを見送ったあと、

「私たちは負けないよ。だって、私たちは、アイランドスターズは、日本で誰よりもずっとスクールアイドルを楽しんでいるんだからね」

と言うと、すぐに多恵たち8人を見て、

「明日のラブライブ!決勝、楽しんでいこう」

と大きく言う。それに呼応してか、多恵たち8人も、

「「「「「「「「オー」」」」」」」」

と、大きな声をあげていた。

 

次回につづく

 

(ED 1番のみ)

 

次回 ラブライブ!決勝とバックスターとアイランドスターズ!!

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第18話

第18話 ラブライブ!決勝とバックスターとアイランドスターズ!!

 

 ついにラブライブ!決勝の日を迎えた。九たち九龍高校スクールアイドル、アイランドスターズは神田明神に来ていた。

「ここがμ‘sの穂乃果さんや雪穂先生が通っていた神田明神だね」

と、九が言うと、多恵は、

「ここには全国各地のスクールアイドルたちが勝利のために祈願しに来ております。それをあらわすように、全国のスクールアイドルが奉納した絵馬がたくさん…」

と言うと、九、

「ここで祈願すれば、優勝できるね」

と言うも、星子、

「それはどうでしょうか…」

と、ちょっと苦笑するも、小明、

「大丈夫だよ。だって、小明たちは絶対に日本一になれるもん」

と、自信満々に答える。

 これを見ていたたい子、

「そうです。私たちなら大丈夫。だって、あの雪穂先生から教えてもらったのだから」

と言うと、九、

「そうだよ。私たちは日本一のキズナで、日本一の指導を受け、日本一の思いをこもったグループなんだから。楽しむ気持ちなら誰にでも負けない。私たちはそんなグループなんだから」

と言うと、続けて、

「でも、私たちの気持ちを神様にも見せてあげよう。そうすることで、さらに強くなるから」

と言うと、本殿のところに行き、9人が横一列に並び、拝礼をおこなった。

パンパン

拍手をしたあと、きれいに礼をする9人。

「私たちの素晴らしいダンス、雲の上から見ていてください」

九はそう思った。

 

(OP 1番のみ)

 

「あら、アイランドスターズのみなさん、こんにちは」

ラブライブ!決勝の会場となる秋葉ドーム、その控え室前ではバックスターがアイランドスターズを待っていた。バックスターのリーダーである(伊藤)ルナがアイランドスターズに声をかける。

「こんにちは、ルナさん。今日はお手わらかに」

と、星子が言うと、ルナの隣にいた(鈴木)レンは、

「こちらこそお手わらかに。まっ、景気祝いに一踊りを」

と言うと、μ‘sのスノーハレーションの振り付けを完コピしてみせた。

「これは凄い。どこで覚えたの?」

と、春が言うと、レン、

「これ、今さっき、動画サイトにアップしていたμ‘sのスノハレを見よう見まねでしてみせたの。まっ、私にとって朝飯前だよ」

と、自信満々そうに言うと、小明、

「なら、これはできるでしょ」

と、バク転などのアクロバットを披露する。これにはレン、

「それは難しいね。でも、それ以外ならどんなダンスでもマスターできるよ」

と、自信満々で答えた。

 そのレンの横から、

「ちょっと待ってください」

と、スラーと出てくる人が…。

「って、あなた、誰?」

と、氷が言うと、

「私は田中カレン。池田小明さん、あなたはアクロバットを披露すると疲れてしまう癖がありますね」

と、カレンが言うと、小明、

「えっ、どうしてわかったの。アクロバットをすると、疲れてしまうんだよね」

と、小明が言うと、たい子、

「えっ、そんな状態で決勝、できるの?」

と言うと、小明、

「大丈夫だよ。だって、少し休めばばっちり元通りだもん」

と言うと、カレンも、

「たしかに。小明さんの体力は無尽蔵ですからね」

と説明した。

「どうです。どんなダンスもマスターできるレンに分析に長けたカレン。そして、絶対的リーダーのルナこと私がいれば、バックスターは絶対に完璧なスクールアイドル、どんなスクールアイドルでも木っ端微塵になりますわ。オホホ」

と、ルナが言うも、九、

「本当にそうかな?絶対に完璧なスクールアイドルっていないと思うよ。むしろ、もっと大事なことがあると思うよ」

と、あまり動揺せずに言うと、

「その大事なものってなんですの?」

と、ルナが聞くと同時に、

「すみませ~ん、スクールアイドルのみなさんははやくステージに来てください」

と、大会スタッフがスクールアイドル全員を呼ぶ声が聞こえてきた。

 これにはルナ、

「ふん、あとで言い訳を聞きますからね」

と、捨て台詞を言って自分たちの控え室に戻った。

「?」

と、九は首を傾げるのみだった。

 

「さあ、ついに始まりました。ラブライブ!決勝!!司会はもちろん、いつものリポーターですよ」

と、いつものリポーターが声を張り上げた。

 レポーターは続けてゲストを紹介する。

「まずは元祖スクールアイドルにして、ラブライブ!初代チャンピオン、A-RISE!!」

A-RISEが紹介されると、会場中から大声援が起きる。

「つづけて、こちらもラブライブ!歴代チャンピオン、オメガマックスの流れをくむ2組、アクロバットならお手のもの、(京城)みやこ、(矢澤)こころ、ここあによるユニット、ビースト!!」

これにはみやこ、

「ありがとう」

と、客席に向かって言うと、こころ、ここあとも、

「「どうも(です)」」

と、客席に向かって手を振っていた。

 そして、

「こちらは高学歴かつトップアスリートの2人組。(代々木)はるか、(神宮)はやてによるユニット、H&H!!」

こちらも、はるか、

「このステージ、いつもくせになるのですよ。アイドルおたくの私にとって幸せの心地です」

と言うと、はやて、

「自分がアイドルおたくって完全に認めているな、こりゃ」

と、少し諦め顔だった。

 

 ゲストの紹介が終わると、

「さあて、ついに決勝に進んだスクールアイドルたちを紹介するよ~」

と、リポーターが言うと、北からスクールアイドルたちが紹介される。

 そして、

「次は前回ラブライブ!を圧倒的なダンスと歌で優勝した大本命!!土居建造記念高校のスクールアイドル、バックスター!!」

と言うと、会場中、

ワー

という声が聞こえてきた。

「みんなありがとう!!」

と、ルナが言うと、レンも、

「今回も絶対に優勝するからね~」

と言うと、カレンも、

「大丈夫です。今回も圧倒的な力で優勝できると分析していますから」

と、自信満々で答えていた。

 バックスターの紹介のあと、全国のスクールアイドルたちが紹介される。そして、

「最後は南の島からやってきました。全校生徒はった9人。その9人でグループを結成。みんなのキズナでここまで来ました。九龍高校スクールアイドル、アイランドスターズ!!」

と、レポーターが言うと、

「声援ありがとう」

と、星子がまず観客に挨拶すると、

「こりゃすごい景色ですな」

と、めいが言うと、小明も、

「う~、体が動かしたくなるにゃ~」

と、元気そうに言うと、たい子、

「少しは落ち着いてね」

と、2人をけん制した。

「でも、こんな景色はもう二度と見れないですね」

と、春が言うと、氷も、

「こんななかでやれること自体凄いと思うよ」

と答えていた。

 さらに、ひろ子も、

「私たち、こんなところで歌えるんですね」

と言うと、多恵も、

「それだけ私たちは注目されているのですよ」

と答えると、九は、

「そんな注目も関係ない。ここで楽しく踊れば、楽しく歌えば、絶対にうまくいけるよ!!」

と、元気よく答えていた。

 

 こうして、決勝に進んだスクールアイドルを紹介したあと、リポーターはあることを発表した。

「では、今回の審査方法ですが、公正公平を期すために、今回は審査員による投票によって優勝グループを決めるってことだよ」

これにはスクールアイドルたちから、

ブーブー

とブーイングをする。会場中からもブーイングが聞こえてくるも、

「自分もおかしいと思うけど、こればかりはね~」

と、リポーターもしらけ顔だった。

「いつもなら会場とネットの投票で決まるのにねぇ~」

と、アイランドスターズの隣にいたK9のひろ美が言うも、

「みんな、静かにして。お願いだから」

と、リポーターの声に一同静かになる。

 会場が静かになったところで、レポーター、

「それでは歌う順番を今から決めるねぇ~」

と言うと、ステージのうしろにある巨大スクリーンに映りだされたルーレットがいきなり回り始めた。

「まずは1組目…」

と、リポーター、ルーレットをとめると、

「まず1組目は、なんと、いきなり大物を引き当てたぞ~。なんと、大本命のバックスターが1番だー」

 これには観客席から、

ワー

と、大きな声援が聞こえてきた。

「続いて、2組目はK9…」

と、次々に順番が決まっていく。

 そして、最後、

「最後、大トリをつとめるのは、アイランドスターズ!!」

と、アイランドスターズの名前が呼ばれる。

「九、大トリだよ」

と、多恵が喜ぶと、九、

「大トリで歌うのか。とてもワクワクしてきたよ」

と、大喜びしながら答えていた。

 

「スクールアイドルのみなさんは一度ステージから出てください」

と、大会スタッフに言われ、一度ステージを降りるスクールアイドルたち。

 だが、そのあと、おかしな指示がとぶ。

「え~と、スクールアイドルのみなさんはこのままステージ前に移動してください」

「えっ!!」

この言葉にスクールアイドル一同びっくりする。

「なんでステージ前なのかな?」

と、K9のひろ美が言うと、同じくK9のカケルは、

「なにか嫌な予感がするぜ」

と言うと、同じくKのはるなは、

「でも、スタッフの指示だから従わないと」

と言うと、ひろ美とカケルはしぶしぶステージ前に移動した。

 

「これってもしかして父親(建造)の策略では?」

と、多恵は言うが、星子も、

「それはどうでしょうか。ステージ前に移動するだけですから」

と言うと、多恵、

「それならいいのだけど…」

と、答えていた。

 

 スクールアイドルたちはステージ前のところに移動すると、いきなりステージが暗くなった。

「それでは、トップバッターの登場だ~。前回ラブライブ!にて圧倒的なパワーで優勝した。今、のりののっているグループだ~。土居建造記念高校のスクールアイドル、バックスター!!」

と、リポーターの紹介が終わると、

「みんな、ありがとう」

と、いきなりルナが観客に向かって大きな声をあげる。

 それに呼応してか、レンも、

「これが私たちの力一杯のステージだ~」

と言うと、カレンも、

「この歌を聴いて、みんなをメロメロにするよ~」

と、大きな声で言う。

 そして、ルナはみんなの前で言った。

「トップバッター、バックスター。ここで全力を出し切ります。バックスターで、「パーフェクトワールド」!!」

 そして、曲が始まった。

 

バックスター 第18話 ED 「パーフェクトワールド」

 

すべてをパーフェクトで埋め尽くす!!

 

私たちはいつでも パーフェクト

すべてにおいて  パーフェクト

どんなときでも  パーフェクト

 

私たちには   死角がない

すべてがすべて パーフェクトでこなす

ミスすらない  私たちこそが

パーフェクト  パーフェクトガール

 

すべてのミッション ミスなくこなす

すべてでエレガント すべてでビューティフル

私の仕事は     すべてにおいて

パーフェクト    パーフェクト!!

 

パーフェクト  ワールド

パーフェクト  エンディング

私のすべてが  パーフェクト

パーフェクト  パーフェクトガール

ミスすらしない 完全無欠の

私たちこそ   パーフェクトガール

 

私たちはどこでも パーフェクト

あらしがきても  パーフェクト

雪がふっても   パーフェクト

すべてがすべて  パーフェクト

 

どんなことでも ミスすらない

要求すべて   パーフェクトでみたす

危機すらない  私たちこそが

パーフェクト  パーフェクトガール

 

すべての考え     超越してる

すべてでギャラクシー すべてでハイパーさ

私たちの答えは    すべてにおいて

パーフェクト     パーフェクト!!

 

パーフェクト   ワールド

パーフェクト   シンキング

世の中のすべてで パーフェクト

パーフェクト   パーフェクトガール

ライバルなんて  完全無視だよ

私たちこそ    パーフェクトガール

 

パーフェクトワールド

私たちに敵なし すべてで完全無欠

パーフェクトワールド

世の中 私たちが回している

パーフェクトワールド

だからこそいえる

パーフェクトワールド

私たちにひざまつきなさい

 

パーフェクト   ワールド

パーフェクト   シンキング

世の中のすべてで パーフェクト

パーフェクト   パーフェクトガール

ライバルなんて  完全無視だよ

私たちこそ    パーフェクトガール

 

パーフェクトワールド

 

「こ、これがバックスターの圧倒的なダンス、歌なの…」

と、ひろ美は愕然とした。いや、ステージ前に並んだスクールアイドルたちはみな自信喪失していた。

 カケルは腕を震わせながら言った。

「こんなバケモノに勝てるわけないよ…」

あの元気がとりえのカケルすらこの表情。そう、バックスターの圧倒的なダンスと歌を前にみんな自信喪失するしかなかった。

 

「それでは、スクールアイドルのみなさん、また移動してください」

ステージはバックスターがステージ袖に移動し、次のK9のステージの準備をしていた。

「棄権しよう」

と、スクールアイドルたちからは諦めの声が聞こえてきた。

「それでは各自控え室に移動してください。あと、K9のみなさんはすぐにステージに移動してください」

と、大会スタッフに言われると、ひろ美、

「今はバックスターのことは忘れよう。今の全力をだしていこう」

と言うと、カケルも、

「たしかにそうだな。絶対に勝てるはずさ」

と、元気をだし、はるなも、

「よ~し、頑張るぞ」

と言うと、3人とも、

「「「オー」」」

と答えていた。

 

 一方、アイランドスターズはみんな終始、

「…」

と、無言のまま控え室に移動した。

 

 バックスターの圧倒的なライブにより、自信喪失したスクールアイドルたち。はたして、どんな影響がでるのだろうか。そして、九たちアイランドスターズは…。

 

次回に続く

 

次回 九たちとみんなと最高のライブ

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第19話

第19話 九たちとみんなと最高のライブ

 

「続いて、九州を代表する名門中の名門、先輩たちはラブライブ!に優勝している!!その力を見せろ!!福博女子大学付属のスクールアイドル、K9!!」

K9の紹介が終わると、ひろ美、カケル、はるなはステージの上に立つ。

「今の全力を見せていこう!!」

と、ひろ美の掛け声とともに曲が始まる。

 が…。

「…」

と、曲が始まっているにもかかわらず、ひろ美は歌おうとはしなかった。

「どうしたんだ」

と、カケルが言うも、ひろ美、

「…」

と、黙ってしまうばかり。

ザワザワザワ

と、騒ぎだす観客たち。

「もう1回お願いします」

と、はるなが言うと、リポーターも、

「なにかアクシデントかな?それではもう1回、K9で…」

と言うと、カケル、

「大丈夫か」

と、ひろ美に言うと、ひろ美、

「ご、ごめんなさい。もう1回頑張ろう」

と言うと、今度は無事に歌い始めるも、

「キャー」

と、今度ははるなが大きく転んでしまう。

 いつもと違うK9の姿。本当ならステージいっぱい大きく元気よく動きまわる3人であったが、今回は失敗の連続だった。

「えーと、K9でした。いつもなら元気一杯に動きまわるのですが、今回はどうしたのでしょうかねぇ」

と、リポーターは心配そうに言った。

 こうして、K9のステージは失敗で終わってしまった。

 

(OP 1番のみ)

 

「え~ん」

と、秋葉ドームの控え室から大きな泣き声が聞こえてきた。

「ひろ美、また次回頑張ればいいのよ」

と、カケルはひろ美を慰めるも、

「私が失敗したからだよ~」

と、ひろ美は泣くしかなかった。

 すると、突然、隣から少女があらわれ、すぐに、

「ごめんなさい。これはきっと私の父親の仕業にまちがいない」

と言う。

「あれ、アイランドスターズの多恵さんでしょうか」

と、はるなが言うと、その少女子と多恵は言った。

「まさか順番まで操作するなんて思っていなかった」

これにはカケル、

「順番を操作?」

と、多恵に聞くと、多恵はすぐに自分の考えを言う。

「私の父親、土居建造はバックスターを勝たせるためにわざとトップバッターにしたの。そして、圧倒的な力を見せつけることで、スクールアイドルたちの自信を喪失させていったの。ただ、バックスター自体相当自信をもって自分の力を見せびらかすほどの強さをもっていたからこそできた芸当だけどね」

と言うと、ひろ美、

「私も最初は大丈夫と思っていたけど、ステージに立つと失敗できないというプレシャーにつぶされてしまったわ」

と答えた。

「ところで、多恵さんたちアイランドスターズもそのバックスターのダンスや歌を見て、自信を喪失したんじゃないの?」

と、カケルはいきなり多恵に聞くと、多恵、

「それは心配しないで。これでもバックスターのダンスや歌を見たのは2回目だし、そのための耐性もつけているしね」

と言うと、ひろ美、

「?」

と、顔をかしげていた。

 

「多恵ちゃん、ひろ美ちゃんは大丈夫だった?」

と、アイランドスターズの控え室に戻ってきた多恵に九は質問する。

「ステージで失敗したことが相当ショックだったみたい。でも、今は持ち直しているよ」

と、多恵が言うと、星子、

「たしかにあんなもの見せられたら相当プレッシャーになるのは仕方がないね」

と言うと、ひろ子も、

「モニターからほかのスクールアイドルのステージ見ているけど、プレッシャーのあまり、あまりいい動きしていないよ。失敗しなくても動きがぎこちないよ」

と言うと、春、

「プレッシャーというのは自分が自覚していなくても突然起きるものですよ」

と言うと、氷も、

「それ、わかる~」

と答えた。

 対して、小明、

「なら、小明たちもプレッシャー、起きるのかな?」

と、みんなに聞くと、めい、

「そんなプレッシャー、鹿児島県予選でも感じていたから耐性があるにゃー」

と答えると、たい子、

「たしかに。あのときは多恵さんに迷惑をかけていたけど、今はもう大丈夫。バックスターのプレッシャーなんてへっちゃらだよ」

と、自信満々に答える。

 そして、多恵はひろ子に聞く。

「バックスターのプレッシャーなんて大丈夫だよね?」

これにはひろ子、

「私たちならあんなプレッシャーなんてなんも関係ないと思うよ。だって、私たちには…」

と言うと、ひろ子は九の方をみつめる。

「?」

と、九が不思議そうな顔になると、多恵、

「そうだね。だって、私たちには精神的な柱である九がいるからね」

と、笑いながら答えていた。

 

「今日はどうしたのかな?バックスター以外のスクールアイドルたちは動きがぎこちないよ。失敗するなど、ちょっといつもとは違うようです。でも、今度がラストのスクールアイドルになってしまったにゃ。大丈夫かな?」

と、レポーターが言うと、会場のあるところから、

「大丈夫ですよ。だって、俺たちがついているから」

と、大きな声が鳴り響く。

「こりゃ凄い応援団が来ているみたいだよ。こりゃ期待できるぞ。それでは、ラストのスクールアイドル、登場だ~」

と、大きな声で呼ばれると、ステージにはあの9人があらわれるようとする。

「ついにあらわれました。最後の希望、バックスターを倒すのは私たちしかいない。たった9人しかいない高校で、生徒全員が一緒のグループをつくり、そして、成長していった。キズナの強さなら日本一。九龍高校スクールアイドル、アイランドスターズ!!」

と言うと、あの9人が…。

「あれ?」

と、リポーターは首をかしげる。

 そのとき、九たち9人はステージ袖に集まっていた。

「雪穂先生、今までありがとうございました」

と、星子が言うと、雪穂、

「なんか物語の出番が少なかったような気がしたけど、それでも、私からすれば、今では立派なスクールアイドルになったと思うよ。日本一かもしれないよ」

と言うと、九、

「日本一、いや、世界一のスクールアイドルになれるよ。だって…」

と言うと、雪穂、

「だって…」

と聞きなおす。九はつかさず、

「だって、日本一の指導を雪穂先生がしてくれたからだよ。これで日本一にならなければ絶対におかしいよ」

と答えた。これにはみんな、

ハハハ

と、笑うしかなかったが、雪穂、

「これなら、きっと大丈夫だね。絶対にうまくいくよ。私は今からとある用事でみんなのステージは見れないけれど、見れなくても心の底から応援しているからね」

と、笑いながら言った。

 ここで小明、あることに気づく。小明、

「雪穂先生、ところで、とある用事ってなんですか?」

と言うと、雪穂、

「とある用事ってね、鬼退治?」

と言うと、小明たちみんな、

「?」

と、はてな顔になった。

 

「アイランドスターズのみなさん、いませんか~」

と、リポーターが呼び出してから1分後…。

「すいませんでした~」

と、九たちアイランドスターズはステージ中央に駆け足で集まってきた。

「今までどうしていたのかニャ?」

と、リポーターが聞くと、九、

「ちょっと立ち話をしていました」

とお茶目に言うと、会場中、

ワハハ

と、笑い声が聞こえてきた。

「こりゃ将来立派な大人になるかもだにゃ」

と、レポーターが言うと、九、

「ありがとうございます」

と、照れ笑いをすると、またも会場中から、

ワハハ

と、今まで以上の笑い声が聞こえてきた。

「こりゃ一本とられた~。って、そうだ。アイランドスターズのみなさん、なんか凄い応援団が来ているみたいだけど、どうしたの?」

と、レポーターが言うと、星子は、

「!」

と、ある場所を見てびっくりしていた。星子の見た方向には青いペンライトのじゅうたんが見えていた。

「おじいちゃん!!」

星子は気づいた。そのペンライトの一団に町長である星子のおじいちゃんがいたのだ。

 だが、それだけではなかった。春もある人を見つけた。

「ハッピーさん!!」

その一団にはいつも法被を着ているハッピーさん率いる一団もいた。その法被には九たち全員の顔の絵が描かれていた。

 さらに、氷はまたもある一団を見つけた。

「特攻野郎Sチーム!!」

そこにいたのはいつも特攻服を着て漁をしている漁師たちの集団「特攻野郎Sチーム」もいた。それもいつも着ている魚の刺繍ではなかった。そこには九たちの顔をあしらった刺繍がほどこされていた。

「どうしてここに来ているのですか~」

と、たい子が大声で言うと、ハッピーさんが大きな声で、

「だって島の子どもたちの晴れ姿だから。今やお前たちは島を代表する立派なグループになっているんだよ~」

と答えた。また、続けて、「特攻野郎Sチーム」の団長も、

「ここに来ようと言ったのは町長だ。島のほとんどの人たちがお前たちを応援しに来ているんだ!!絶対に負けるなよ!!」

と応援していた。

 実は九州予選で優勝してから九龍島ではラブライブ!決勝で応援しようという動きが水面下でおきていた。そして、それは大きなうねりとなり、ラブライブ!決勝に出場するために島を出た九たち9人と雪穂がいなくなると同時に町長である星子のおじいちゃんが中心となってフェリーを1隻まるごと借りて応援に駆けつけてきたのだった。

「絶対に負けるなよ~」

「優勝してね~」

と、青いペンライトの集団の掛け声は次第に大きくなり、会場中から、

「頑張れ~、頑張れ~」

と、アイランドスターズを応援する声が響き渡った。

 これには九、

「私たち、絶対に楽しんで、絶対に優勝してくるからね~」

と、大きな声で答えていた。

 だが、九の前にとあるグループが立ちはだかる。

「あれ、ルナちゃん、どうしてここに?」

と、九が言うと、アイランドスターズの前に立ったグループ、バックスターのルナが答える。

「お前たちは絶対負ける。それは間違いない!!」

そんなルナに対し、九はある質問をした。

「このラブライブ!、楽しんでいますか?」

これにはルナ、

「はっ、なにそれ?」

と言うと、九は再び、

「このラブライブ!、楽しんでいますか?」

と聞きなおす。ルナは、

「ふざけないで!!楽しみなんてないよ。ラブライブ!っていうのは勝負の世界。勝負は勝つことがすべてなんだよ」

と、九に対して怒鳴るように言う。

 これに対し、九は反論する。

「本当にラブライブ!って勝負だけなのかな?私はそう思わないよ。ラブライブ!ってスクールアイドルの甲子園でもあるけれど、それ以上にスクールアイドルを楽しむ場でもあると思うんだ」

 これにルナも反論。

「そんなのは幻想だ。ラブライブ!では必ず順位がつく。それがある以上競争がおきる。ラブライブ!は勝負がすべてだ!!」

 だが、九はおじけずに言った。

「それはちがうよ。ほかの人がルナちゃんの考えに賛同したとしても、私たち、アイランドスターズはスクールアイドルとして、ラブライブ!を楽しみたい。たとえ、高校がなくなっても、島がなくなっても、町がなくなっても、すべてがなくなっても、ただ1つだけ言える。スクールアイドルは、ラブライブ!は、すべてを楽しんだもの勝ちなんだよ」

 これに対し、ルナは、

「このラブライブ!で負けてしまえば、(土居建造様がすすめる)リゾート開発のために、高校が、島が、町がなくなるとしてもか」

と言うと、観客から、

「えっ、ラブライブ!に島や町の存亡がかかっているの?」

「そんな大事なこと、高校生に決めさせるつもりだったのか?」

と、疑問の声が聞こえてきた。

 だが、九はそんな声も気にせず、はっきりと言った。

「そうだよ。たとえ、存亡の危機があるとしても、私たちはスクールアイドル!!今、このときを一生懸命頑張って、一生懸命楽しんで、一生懸命歩み続ける。たった3年という短い間しか楽しめない。だからこそ、スクールアイドルは、ラブライブ!は、楽しむことがすべてなんだ!!」

九はこう言い残すと、所定の場所に立った。多恵たち8人も何もしゃべらずに所定の位置に立つ。しかし、9人の表情は緊張はしていない。おだやかな、そんでもって楽しい表情だった。

「…、は」

と、レポーターは一連の流れに見とれていたらしく、すぐにわれにかえると、

「それでは、ラストのスクールアイドル、鹿児島県の九龍島という小さな島にある全校生徒9人という小さな高校で生まれました。9人全員で輝き続ける。そして、すべてを楽しむ。そんなスクールアイドル、九龍高校スクールアイドル、アイランドスターズ!!」

と、アイランドスターズを紹介すると、九、観客席に向かって、

「私たちのすべてを見てください!!」

と言うと、曲がはじまった。

 

アイランドスターズ 第19話 ED 「GALAXY VOYAGER」

 

GALAXY VOYAGER

GALAXY VOYAGER

Take   Off!!

 

星々をかけぬける(GALAXY VOYAGER)

いろんな景色広がる(GALAXY VOYGER)

みたことがない 美しい景色が

ひろがっていく 体中に

 

太陽をまわりつづける  私たちの船は

1人1人が惑星に    なった気分になれる

その中心にかがやく   大きな天体に

私たちはまわりつづける 大きなキズナで

 

私たちの心は   いつもひとつ

どんなことでも  くずれはしない

光かがやく    私たちの星

いつでもどこでも めじるしになる

 

私たちは(私たちは) GALAXY VOYAGER

不屈の心で      ここまでやってきた

いつまでずっと    さがしつづける

だからこそ私たち   かがやきつづける

 

(GALAXY VOYAGER)

 

星雲をかけぬける(GALAXY VOYAGER)

きれいな景色ひろがる(GALAXY VOYAGER)

経験のない   広大な景色が

ぶつかってくる 体中に

 

星々をすすみつづける  私たちの船は

みんなとならばひとつに なれる気分になれる

その心身にみちびく   大きな希望で

私たちはかんじつづける 大きなこころで

 

私たちの気持ちは  いつも前に

すすんでいくよ   どんなときでも

光きらめく     私たちの星

かがやきつづけて  みちびきになる

 

私たちは(私たちは) GALAXY VOYAGER

信じる力で      ここまでやってきた

いっしょになって   すすみつづける

だからこそ私たち   きらめきつづける

 

1人1人は小さい力だけど

だれかが中心となって

それが結び続けたら

きっと大きな力になれる

だからこそ(だからこそ)

私たちは1人じゃない

私たちは私たちだ!!

 

私たちの心は   いつもひとつ

どんなことでも  くずれはしない

光かがやく    私たちの星

いつでもどこでも めじるしになる

 

私たちは(私たちは) GALAXY VOYAGER

不屈の心で      ここまでやってきた

いつまでずっと    さがしつづける

だからこそ私たち   かがやきつづける

 

(GALAXY VOYAGER)

私たちはいつもひとつ

(GALAXY VOYAGER)

私たちは GALAXY VOYAGER

 

 歌い終わると、観客全員が立ち上がり、

ヒューヒュー パチパチ

と、スタンディングオベーションがアイランドスターズを包み込んだ。そう、観客たちからもわかってしまう。アイランドスターズの曲はラブライブ!史上心に残る曲、9人がしっかりまとまり、完璧といえるもの、そして、元気よく、誰もが楽しめる、そんな曲だった。

 九はスタンディングオベーションを見ると、すぐに、

「本当にありがとうございました」

と、一礼すると、多恵たち8人も一緒に、

「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」」

と、一礼した。

「これでスクールアイドルたちの演目は全て終わったよ。これから審査を始めるから、ちょっと待ってね~」

と、リポーターは言うと、すぐにステージは暗くなった。

 

「最後のステージはどうだった。これで心置きなく島に帰れるね。もっとも、帰るころにはすべてはなくなっているけどね。ハハ」

と、ステージから降りてきたアイランドスターズに向かってルナが言うと、九、

「それでも私たちは全力で楽しんできたよ。もう悔いはないよ」

と言うと、ルナ、

「あれで全力ですか。でも、私たちバックスターはそれ以上を見せています。私たちの優勝は揺るがないものですわ」

と、威張るように言った。

 だが、それはすぐに苦しい表情にかわろうとしていた。突然、リポーターがあわてるようにしゃべりはじめた。

「ここで大変なことが発生してしまったよ~。私が少し審査結果がでるのが遅いと思って調べてみたら、大変なことになってしまったよ~」

このアナウンスに、ルナは、

「なにがあったのよ」

と、すぐにステージ袖に駆け込む。九も、

「みんな、すぐにステージに行こう」

と言うと、多恵、

「まさか…」

と言うとともに、みんなで一緒にステージ袖まで駆け込む。

 バックスター、アイランドスターズ、そして、そのほかのスクールアイドルたちもステージ袖に集まっていた。

 すると、ステージ後方の巨大スクリーンにはある光景が映りだされていた。

 

続く

 

次回 ラブライブ!と九たちとアイランドスターズ!!(前編)

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第20話

ステージの巨大スクリーンにはとある光景が映し出されていた。

「このたびはご足労願いましてありがとうございます」

「いやいや。あなたみたいな人に出会えて、こちらとしても光栄です」

そこに映っていたのは多恵の父でラブライブ!のスポンサーの1つである土居建造と今日の決勝の審査員だった。

「そう、あなたのお子さん、今度、大学受験ですね。私が一言言えば、大学なんてお茶の子さいさいですぞ。はは」

と、建造が言うと、審査員も、

「私の子はどうしても受かりたいのですが、そこまでの学力がありません。でも、建造様の力をもってすれば、きっと叶うものです」

と答える。

「なに、これ?」

「これって建造っていう人が審査員を買収しているところじゃないの?」

これに対し、バックスターのルナは、

「そんなのうそでしょ。建造様がこんなことをするなんてうそでしょ」

と、動揺するも、

「それはうそではありません」

と、ある女性がステージにあらわれた。

「雪穂先生!!」

九は叫ぶ。そう、ステージにあらわれたのは雪穂だった。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 第20話 

「ラブライブ!と九たちとアイランドスターズ」 前編

 

「土居建造はバックスターを優勝させるため、審査方法を会場とネットの投票から審査員による審査に変え、審査員を買収していたのです」

雪穂がこう言うと、ルナが雪穂に問うた。

「ちょっと待って。私たち(バックスター)は優勝する実力はあります。それなのに、なぜ、そんな汚い方法をとったのですか?」

 これに雪穂は答えた。

「それはね、九たちアイランドスターズの存在があったからよ」

これには多恵、

「ちょっと待って。私たち(アイランドスターズ)にそんな力はないはずだよ。一スクールアイドルでしかないのに…」

と言うと、雪穂、

「それは勘違いしているわ。その証拠に島のお祭りで一度バックスターを退けたじゃない。そして、九州予選ではK9をおさえてトップで通過した。これだけみても、たった短期間で急成長しているじゃない。急成長しているグループには勢いがある。その勢いにのってラブライブ!に優勝するグループも多い。μ‘sやAqours、そして、私のいたオメガマックスも」

と言うと、ルナ、

「たとえ勢いがあるにしても、私たちの実力はアイランドスターズ以上だわ」

と、元気よく言うも、雪穂の横にある人物が近づく。A-RISEのツバサだった。

「たしかに、実力さとしてはバックスターが有利かもしれない。けれど、1回勝負のラブライブ!としてはその実力さ以上に勢いというのも大事かもしれない、第2回大会のμ‘sのように。私たちA-RISEも全力をだしたけど、μ’sはそれ以上の力、勢いをもって私たちA-RISEに勝ったのよ」

と、ツバサが言うと、続けて、雪穂は、

「そして、今回のラブライブ!でももっとも勢いがあったのはアイランドスターズである、そう思った土居建造はラブライブ!のスポンサーとなり、審査方法を変えてまでバックスターを優勝させたかったのよ」

と言うと、ルナ、

「そんな…。建造様は私たちの実力を認めていないの…」

と嘆くも、雪穂、

「いや、実力はあると思っているよ。けど、それ以上にアイランドスターズを脅威に感じた。だから買収に動いたのよ。もっといえば、バックスターが夏冬連覇をすれば、それだけ土居建造の会社、そして、学校の地位が向上する、それだけ価値が上がれば、それだけで利益を生む、利権を得ることもできる。土居建造はそれを狙っていた。しかし、アイランドスターズという難敵があらわれた。これからの利益、利権を守るために審査員を買収したとみることができるのよ」

と言うと、ルナ、

「そんな…」

と、地に落ちてしまう。

 これを見ていた多恵、

「でも、いったいこんな映像、どこで撮ったのかしら?」

と、繰り返し流されるスクリーンの映像を見て言うと、雪穂、

「実はラブライブ!運営に私の友達がアルバイトにいっているの。その友達がこっそり撮ったのがこの映像なんだ」

と説明する。スクリーンに流された買収の現場を撮影したのは、雪穂が大学のとき、一緒にユニドルとして活動していた(渋谷)ヒカリだった。ヒカリが偶然建造が審査員を買収している現場を目撃した際、こっそりスマホで録画していたのだった。そして、その映像をヒカリが雪穂に提供し、それをA-RISEのツバサなど、雪穂が知る関係各所に送っていたのだった。

「で、この映像をもとに審査員本人に直接確認したんだ、今日、この会場でね。そしたら、簡単に認めちゃったのよ、これが」

と、雪穂が言うと、多恵、

「でも、審査員1人だけだったら審査に影響が少ないのでは?」

と聞くと、雪穂、

「実はね、ツバサさんたちにお願いしていろいろと調べていたら、すごいことがわかったのよ。建造は審査員全員を買収していた、というより、自分に有利な、バックスターが有利になるよう審査員を選んでいた上で買収していたみたいなのよ」

と言うと、多恵、

「なんという常識外なことを…」

と、絶句していた。

 雪穂はこれを見ると、

「けどね、実はこれがもとで今や大変なことになっているのよね」

と、スクリーンの映像をテレビ放映に切り替えた。そこに映っていたのは…。

「今、土居建設の本社前に来ています。政治家や教育機関などに賄賂を送っていたとの容疑で土居建設の社長、土居建造が逮捕されようとしています。あっ、たった今、土居建造容疑者が逮捕されたという情報が…」

という生中継映像が流れていた。

「お父様が逮捕…」

と、多恵、再び絶句。

「これは想定外だった。ちょっと、ヒカリ、出てきなさい。そして、亜里沙もね」

と、雪穂が言うと、

「は、はい…」

と、ラブライブ!決勝でアシスタントをしていた(アルバイトの)ヒカリと、

「ちょっとやり過ぎました…」

と、これまた雪穂と一緒にスクールアイドル、オメガマックスのメンバーとして活躍していた、雪穂の大の親友で、かつ、μ‘sのメンバー、綾瀬絵里の妹の亜里沙が出てきた。

「私はここまで大きくしなさいとは言っていないでしょ。なのに、なんで、こんなにことが大きくなったの?」

と、雪穂が言うと、ヒカリ、

「だって、これは一大事だと思って、雪穂さん以外に亜里沙さんにも送ったのですよ」

と、言い訳を言うと、亜里沙、

「だって、こんなのいけないことでしょ。大捕り物になると思って。これなら時代劇みたいに、この紋所に目がはいらぬか、ってなるでしょ」

と、言い訳をする。ちなみに、亜里沙は海外の文化を紹介する仕事をしており、そのためか、いろんな報道各社にコネを持っていた。

「いつの時代の話なんだよ。でもね、これによっていろんなところに悪影響がでることがあるんだよ。たとえば…」

と、雪穂が言うと、レポーターの方を見る、すると、レポーター、

「は、はい、ここでニュースだよ。土居建設の社長、土居建造が逮捕されたことを受けてね~、土居建設とそのグループはラブライブ!のスポンサーを降りることになったよ~」

と、ニュースを読むと、

「ヒカリ、亜里沙、これ、どう始末をとるの。ラブライブ!はスポンサーさんのおかげで運営できるのよ。そのスポンサーがいなくなったらどうするの?」

と、雪穂、ヒカリと亜里沙を叱る。

 さらにレポーターのニュースは続く。

「そして、審査員全員が土居建造に買収されていたことを受けて、審査員全員が辞めたってことよ~」

これには雪穂、

「買収されていたのだから、全員辞めるのは筋ってものよ」

と、かっこよく言うも、亜里沙、

「これって、しまいには土居建設がスポンサーを降りるパターンじゃないかな?」

と、ぼそっと言うも、

「ギラッ」

と、雪穂は目をぎらぎらにさせていた。これには亜里沙、

「ごめんなさ~い」

と言うも、雪穂、

「まちなさ~い」

と、亜里沙を追いかける。

 だが、ここに聞き覚えがある声が響く。

「雪穂、ちょっと静かにしなさ~い!!」

「はいっ!!」

と、雪穂は突然立ち止まる。その声は続く。

「雪穂、ラブライブ!運営はどうするの!!スポンサーは降りちゃうし、審査をする審査員は全員辞めるし。それが今日起きちゃったから、今、運営は混乱しているよ」

これには雪穂、

「それ、私に言われてもわからないよ~」

と嘆く。

 そんなとき、ステージの端の方にスポットライトがあたる。

「このときのための、私こと、高坂穂乃果がいるのです!!」

声とともにあらわれたのは、μ‘sのリーダーであり、雪穂の姉である穂乃果だった。

「お姉ちゃん!!」

雪穂が喜びながら言うと、穂乃果、

「雪穂はいつもつめがあまいのよ。こんなことをするなら、あとのことも考えないと」

と言うと、すぐに、

「現在、ラブライブ!運営は混乱しています。そこで、私が一時的に指示をだします。運営のみなさん、落ち着いて対処してください」

と言い、さらに、

「(A-RISEの)ツバサさん、ラブライブ!の(土居建設以外の)スポンサーさんの根回し、できましたか?」

と言うと、ツバサはすぐに、

「それならOKだよ。穂乃果さん、準備はできたかな?」

と言い、穂乃果はすぐにゲストに来ていたみやこ、こころ、ここあのビーストにも指示を出す。

「みやこちゃん、こころちゃん、ここあちゃん、ステージの準備はできている?」

と、穂乃果が言うと、みやこ、

「いつでもいいですよ」

と、とっくに歌う準備をしていた。こころ、ここあも、

「ひさしぶりにラブライブ!のステージだ!!」

「頑張るです~」

と、答えていた。

 さらに、ツバサも、

「こっちも歌う準備はできたわよ」

と言うと、穂乃果、

「さぁて、観客のみなさんには、A-RISE、そして、ビーストのライブを見てもらうよ。元スクールアイドルのみんなのライブ、楽しんでくれるかな~」

と言うと、観客は、

「いいとも~」

と叫び返す。

 こうして、A-RISEとビーストのライブが突然始まると、穂乃果はすぐにはやてとはるかを呼ぶ。

「はるかちゃん、申し訳ないけど、すぐにあのシステムを復旧してもらえないかな?」

と、穂乃果が言うと、はるか、

「それなら大丈夫ですよ。こんなことがあろうかと、あのシステムの準備はとっくにできています。それをラブライブ!運営のサーバーに接続しますので、あと5分待ってください」

と言う。雪穂は穂乃果に、

「お姉ちゃん、あのシステムって?」

と質問すると、穂乃果、

「審査員の審査に変わる、いつものシステムだよ」

と言うと、雪穂、

「?」

と、ハテナ顔になった。

 

 A-RISEとビーストのライブの裏で、穂乃果たちがある準備をしているころ、ステージの裏では、

「建造様がいなくなった。私はこれからどうすればいいのですか?」

と、1人嘆く少女がいた。ルナだった。

「もう生きていけない。もうどうすることもできない」

と、嘆き続けるルナ。

 そんなルナに対し、ある少女が近づいてくる。

「そんなに落ち込んでいたら、幸せ逃げるよ」

それを言ってきたのは九だった。

 九の励ましに対し、ルナは、

「そんなの関係ない。私の人生はもうおしまいだ~」

と、嘆き続ける。それにも九、

「そんなことないよ。バックスターのルナちゃんの歌ってとてもよかったよ。だから、おわりだなんて言わないでよ」

と言うと、ルナ、

「私のことはほっといてよ」

と、九を拒絶する。

 そんなルナに対し、同じバックスターのメンバーであるレンとカレンが付き添う。

「まだおわっていないんだから。だから、大丈夫だよ」

と、レンが言うと、カレンも、

「私の分析のところ、まだ、バックスターが有利です。諦めないでください」

と、ルナに声をかける。だが、ルナはふさぎこんだままだった。

 そんなとき、

「スクールアイドルのみなさんは今すぐステージに来てください」

と、大会スタッフ、というより、穂乃果の声が鳴り響いた。

「ほら、いこうよ」

と、レンが言うと、ルナはただ、

「…」

と、黙って動こうとしない。仕方がないのか、

「カレン、ちょっと手伝って」

と、レンがカレンを呼び、強制的にルナを移動させる。

「ルナちゃん…」

と、九はルナの方を見るも、

「九、ステージに集まれって」

と、星子が九を呼びにくる。

「は~い」

と、九はそのままステージへと戻った。

 

 ステージでは、A-RISEとビーストのライブが終わっていた。

「さぁ~て、審査員の審査に変わる審査方法を発表するよ~」

と、司会役のレポーターが元気に言う。

「新しい審査方法とは、まえと同じ、会場とネットの投票だよ~。会場のみんな~、ネットのみんな~、すぐにラブライブ!ホームページにいますぐアクセスしてね」

とレポーターが言うと、観客はいっせいにスマホやケータイを立ち上げ、ラブライブ!ホームページへとアクセスした。

「ホームページにアクセスしたら、投票画面をだしてね~。そこで、今日、とても輝いていたスクールアイドルを選んでね。1番投票数が多いスクールアイドルが優勝だよ」

と、リポーターは説明した。

「不測の事態を予想していてね、はるかちゃんにお願いして、昔のネット投票システムを復旧してもらっていたんだよ。でも、ホームページまでは直前にならないと変更できなかったから、ツバサさんやみやこちゃんたちにお願いして、少し時間稼ぎをしてもらっていたんだ。そのあいだの時間を使ってネット投票システムとラブライブ!運営のサーバーをリンクしていたんだ」

と、穂乃果は説明する。雪穂は、

「お姉ちゃん~」

と、穂乃果に抱きつく。穂乃果、

「やめて~「」

と言うも、まんざらいやではなかった。

 

「もうすぐ投票を締め切るよ~。投票が終わっていないみんなは今すぐ投票してね~」

と、レポーターが言うころ、ステージ袖では、

「あともう少しで優勝チームが決まるんだ~」

と、九はステージの方を見つめていた。そこには、九たちアイランドスターズ、ルナたちバックスターを含めたラブライブ!決勝に参加しているスクールアイドル全員が集まっていた。

「それでは、みなさん、ステージにおあがりください」

と、穂乃果が言うと、

「ハイッ!!」

と、ステージの上にあがっていくスクールアイドルたち。ただ、ルナだけは、

「もうステージにはあがりたくない」

と、しかめつらをするも、レンとカレンに連れられてステージにあがる。

 

 はたして、ラブライブ!優勝をするのは九たちアイランドスターズなのか、それとも、ルナたちバックスターなのか、それとも、それ以外のスクールアイドルなのか。そして、園先に見えるものとは…。

次回、ついにクライマックス。最終回に続く。

 

次回 最終回 ラブライブ!と九たちとアイランドスターズ (後編)

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 第21話

「さあ、投票は終わったよ~。ステージには今日参加してくれたスクールアイドルたちが結果を待っているよ~。それでは、今から発表するよ~」

と、レポーターが言うと、九、

「いったいどのスクールアイドルが優勝するのかなあ」

と、わくわくしながら結果を待っていた。

「きっと大丈夫。私たちが絶対に優勝する」

と、バックスターのレンはまだ優勝できると思っており、同じメンバーのカレンも、

「私たちは終わっていない。それが今回実証できる」

と、自信をもって言った。

 一方、多恵は、

「こんなことになったけど、私は、いや、私たちは全力を出し切った。絶対に優勝できる!!」

と思うと、ほかのアイランドスターズのメンバーを見る。

「私たちなら大丈夫!!」

と、自信満々の星子を筆頭に全員が力強くうなずく。

 そして、九を見る多恵。すると、

「今日は私たちにとって一番うまくいったと思うよ。だって、全力で楽しんだのだから」

と、九は力強く言う。これに多恵、

「うん!!」

と、大きくうなずいた。

 

ラブライブΩ/UC外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終回 

ラブライブ!と九たちとアイランドスターズ!!

 

 ドラムロールが鳴り響く。そして、レポーターが発表する。

「今回のWINNERは…」

ゴクリ

スクールアイドル全員のツバを飲み込む音が聞こえてくる。

 レポーターはつかさず言う。

「今回のWINNERは…、九龍高校スクールアイドル、アイランドスターズ!!2位のバックスターの猛追を引き離しての勝利だ~」

 これを聞いた九、

「ヤッター。ついに日本一だよ!!」

と喜ぶと、ひろ子、

「私たちやったんだね」

と喜ぶ。めいも、

「めいたちはやったんだ!!」

と、ガッツポーズをし、小明も、

「勝利のアクロバットだ!!」

と、1人でバク転を繰り返す。

春は、

「これで島に優勝旗がくるんだね」

と喜ぶと、星子は、

「これで町が、島が、高校が救われた!!」

と、春の手をとり喜び、氷は、

「ちょっと喜びすぎ」

と、春と星子をおさめようとするも、2人を抱擁してしまう。

 たい子は、

「これで、めいと小明の腐れ縁は続くんだわ」

と、涙を流しながら言う。

 最後に多恵は九に対し、

「私をスクールアイドルに、アイランドスターズに誘ってくれてありがとう」

と言うと、九、

「どうもいたしまして」

と返した。

 そして、九は喜んでいる星子たちを見ると、すぐにルナのところに駆け寄る。

「またみんなで楽しみましょう」

と、九がルナに声をかけると、ルナは九の手をひき、

「私たちが負けたのは楽しまなかったからですか?やっぱり負けるして負けたのですか?」

と、泣きながら言うと、九はすぐに笑いながら、

「私は思うんだ、ラブライブ!は、スクールアイドルは、楽しんでなんぼの世界だと。だって、スクールアイドルってみんなで楽しんで、ほかのスクールアイドルと楽しんで、そして、日本中で、世界中で楽しめる、そんなとても楽しいものだよ。ルナちゃん、そんなにがっかりしないで。今回は楽しめなかったと思うけど、次回から楽しんでいけばいいんだよ」

と言った。

 これを聞いたルナ、

「次回から楽しんでいく…」

とつぶやくと、すぐに、

「そうだよ。次回から私たちも楽しんでいけばいいんだよ」

と、レンが元気づけようと言うと、カレンも、

「そうです。私の分析以上に楽しむことがすばらしいことなのか、今回の経験で得ることができました。私たちだって楽しむことができます」

と言うと、ルナ、

「本当にそうなの?」

と、九に再び聞く。

 すると、九は、

「そうだよ。また、一緒に楽しみましょう」

と、手をルナにむかって伸ばした。そして、ルナは、

「そうですね。今度から楽しんでいけばいいんだね」

と、少しずつ明るい表情を見せ始めた。

 この光景はスクリーンなどにより映し出されていたため、会場中から、

パチパチ

と、大きな拍手が沸きあがっていた。

 レポーターはそれを見るとすぐに、

「とても美しい光景ですね~。では、ここで優勝したアイランドスターズにもう1曲歌ってもらいましょう」

と言うと、九、

「もう1曲歌えるんだ。みんな、準備はいいかな?」

と、多恵たちに呼びかけると、8人とも、

「「「「「「「「うん!!」」」」」」」」

とうなずく。

 そして、九は、

「それでは、私たち9人で、「アイランドスターズ!!」!!」

と言うと、曲が始まった。

 

ラブライブ!アイランドスターズ 「アイランドスターズ!!」

 

すすみつづける あしたの方へ

 

明日へとすすむ わたしたち

帆をあげて   前進していく

わたしたちは  いつでもどこでも

永遠の     チャレンジャー

 

たとえ迷って  しまっても

心の中に    地図は持っている

だからこそ   前にすすむ

私たちは    絶対に

あきらめるものか!!

 

絶対に見つかる  私たちの宝

それは(それは) 私たちの(私たちの)

キズナという   1つだけの宝

どんなことでも  あきらない

私たちの宝は   永遠に光つづける

 

「こうして、ラブライブ!決勝は私たちアイランドスターズの優勝で幕が下りました。めでたし、めでたし」

「って、九、誰に話しているの?」

ラブライブ!決勝から1週間後、九の親が経営する民宿の食堂には、九と雪穂の2人だけがいた。九の締めの言葉に雪穂は問いかける。それに九、

「こう言った方が物語の締めにはいいかなって」

と言うと、雪穂、

「それはいいけど、新学期になったら大変なんだからね。ラブライブ!優勝しちゃったから、4月から入学する生徒が多いんだからね。新しい先生を採用するまで、私1人なんだから、助けてくれるよね」

と言うと、九、

「たしか30人だったよね。すごいったらすごいね」

と、あっけらかんに話すも、雪穂、

「ひとごとみたいに話さないで。新入生の面倒を見るのも九たち先輩のつとめでしょ」

と言うも、九、

「そうかな?」

と、知らん顔。

 そんなとき、

ピンポーン

と、玄関から呼び鈴の音がしたので、九、

「どなたさまですか~」

と、玄関がくると、そこにいたのは、

「多恵ちゃん!!」

そう、そこにいたのは多恵だった。多恵はきてそうそう、

「今日からお世話になります、土居多恵です」

と挨拶する。

「どうしてここに多恵ちゃんがいるの?それに今日からここに住むの?」

と、九は多恵に質問すると、多恵、

「しかたないでしょ。住む場所がなくなったのだから」

と、理由を簡単に言う。

 そこに、

「多恵、今日からここに住むことになったんだ」

と、雪穂が玄関にあらわれると、

「雪穂先生、お世話になります」

と、軽く挨拶する多恵。続けて、

「こんなことになるのは予想していました。私の父、土居建造が逮捕されて、土居建設と政治家などとの癒着があかるみになったため、会社は信用を失い倒産。島のリゾート開発も当然破綻。島の事務所に住んでいた私も事務所の閉鎖によりでていくことになったの。わかる、九」

と説明するも、九、

「わかりません」

と、あっけらかんに答える。多恵、

「九!!」

と、怒るように言うも、九、

「でも、今日から多恵ちゃんも一緒に住むことになるんだね。私は嬉しいよ」

と言えば、多恵、

「あっ、そうだった。九は昔からこんな調子だったね。今からすれば当たり前だね」

と言うと、雪穂、

「そうだね」

と、笑うしかなかった。

 でも、雪穂は心の中でこう思った。

「リゾート開発の破綻で島はもとに戻るけど、高校の新入生が大幅に増えたことで、昔以上によりにぎやかになるんだね。そして、その中心には九、みんなの太陽がいるんだから、これからも安泰だね」

 

 そして、3月。星子、春、氷は無事に?高校を卒業し、新しい生徒会長の多恵のもと、九、ひろ子、たい子、めい、小明と新入生30人はスクールアイドルとして雪穂の指導のもと、新しいスタートをきろうとしていた。

 そんな3月末日。秋葉原ではドームを中心に、ラブライブ!10周年を締めくくるフェスティバル、スクールアイドルフェスティバルが開催されていた。

「みんな~、はっちゃけているかい!!スクールアイドルの祭典、スクールアイドルフェスティバルは、秋葉原だけでなく、全国いくつもの場所で同時開催中だよ。全国から多くのスクールアイドルが参加しているから、見に行ってね~」

と、レポーターもいつも以上にはっちゃけていた。だが、そこにはアイランドスターズはおろか、バックスターすら参加していなかった。しかし…。

「みんな~、準備はできたかな~」

と、九の合図とともに、

「私たち9人の最後の勇姿、見せつけよう」

と、星子が言うと、氷、

「そうです、そうです」

とうなずき、春、

「私たち(星子、氷、春)の最後のステージだからね。頑張りましょう」

と言うと、めい、

「本当に最後のステージになるかな?突然戻ってくるんじゃ」

とわざとらしく言うと、小明、

「それならそれで楽しくなるよ~」

と反応するも、たい子、

「めいに小明、星子さんに迷惑をかけないでね」

と注意する。

 こんな6人を見て、ひろ子、

「いつもこんなやり取りしているから、私たち、ラブライブ!に優勝できたのかもね」

と言うと、多恵、

「それもあるけど、やっぱり、私たち8人をひきつける九の存在が大きいのかも。そして、これからも九はみんなをひきつける太陽になるのかもね」

と言うと、九、

「話は終わったかな?もうすぐ開演の時間だよ」

と、みんなを諭す。すると、みんな、

「「「「「「「「準備OK!!」」」」」」」」

と言うと、9人とも1つの輪となり、声賭けをおこなう。

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」

そして、まわりから「10」の声が聞こえてくる。

「アイランドスターズ、テイク、オフ!!」

この言葉とともにアイランドスターズ最後のステージ?が開く。場所は鹿児島県九龍町九龍島に新しく作られた九たちのステージ、九龍島野外ステージ。そこでアイランドスターズのスクールアイドルフェスティバルが始まる、全国にネット中継されて…。

 

ラブライブΩ/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!!

最終回 ED ネバーエンディングストーリーズ

私たちの物語は永遠につづくよ

 

物語はいつかは   おわるものだと

だれが決めたのか  (だれかがきめた)

おわりだといったら おわりになると

だれがきめたのか  (だれかがきめた)

 

だけど私たちは 永遠につづくよ

生きていれば  かならず物語は

つづられていく どんなときでも

きっとあかるい とてもたのしい

物語がずっと  つづいていく

 

おわりのない  historyがつづく

his story   彼の物語はつづく

私たちの物語も おわりのない

永遠につづく  私たちのhistory

 

私たちの物語   とてもたのしい

そんな物語が   永遠につづく

おわりのない物語 きっとだれにも

必ずあるはずさ  さがしてみよう

私たちとなら   必ずみつかる

だってだれもが  もっているはずさ

 

物語はかならず  悲劇になると

だれがきめたのか (だれかがきめた)

悲劇だといったら 悲劇になると

だれがきめたのか (だれかがきめた)

 

だけど私たちは 笑ってすごすよ

泣いていても  かならず私たちは

喜びを知り   わかちあってく

きっときらめく とてもうれしい

物語がずっと  つづいていく

 

心つなぐ    みんなとのキズナが

my story    心おどりつづけていく

私たちの物語は かなしまない

喜びがつづく  私たちのmy sotry

 

私たちの物語  どんなときでも

心あふれている 楽しみがつづく

悲しみない物語 きっとだれでも

必ずあるはずさ みつけてみよう

私たちとなら  絶対あえるさ

だってだれもが 楽しめるからさ

 

私たちはだれもが

自分のストーリーを持っている

おわりのない物語 だけど

絶対にまじわる物語

永遠につづく物語

人の数だけまじわりつづけて

おわりのない物語 たくさん生まれるよ

 

私たちの物語   とてもたのしい

そんな物語が   永遠につづく

おわりのない物語 きっとだれにも

必ずあるはずさ  さがしてみよう

私たちとなら   必ずみつかる

だってだれもが  もっているはずさ

 

私たちの物語は永遠につづくよ

 

 そして、スクールアイドルフェスティバルも終盤にさしあたり、最後の全体での発表を残すのみになる。

「スクールアイドルのみんな~、準備できたかな?」

と、九の掛け声とともに、全国から、

「いいとも~」

の声が響きあう。

「それでは、最後の曲はもちろん、SDS!!「Sunny Day Song」と「スペシャルデイソング」、2曲続けて聴いてください」

と、九の掛け声とともに曲が始まる。

 踊っているとき、九はちらっと横を見た。そこには一緒に楽しく踊るバックスターがいた。ルナも元気よく笑いながら踊っていた。

 九は近くにいる雪穂を見ると、雪穂、

「これからも大きく羽ばたきなさい、未来にむかって」

と、声をかけるような顔をしている。九は雪穂の顔を見ると、

「やっぱり、私、スクールアイドルになってよかった。楽しんでこそのスクールアイドル、これこそ私の求めるスクールアイドル像。そう思って本当によかった~。私、飛び続けるよ。どんなことがあっても飛び続ける。大きな空にむかって」

と思いつつ、楽しく踊り続けていた。

 

 これでアイランドスターズ、雪穂と九の物語は終わる、かもしれない。けれど、本当の話はまだまだ続く。それはあなた自身の手にゆだねられているのかもしれない。なぜなら、ラブライブ!とは「みんなと叶える物語」だからである。そして、この物語は君と紡ぐ物語(ストーリー)なのだから。

 

ラブライブΩ/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!! 本編 了

 



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最終章 BSS -Back Star’s story-
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 最終章 第1話(第22回)


「この高校は廃校になります」

「えっ…」

「そんな…」

「建造様…」

「建造…」

「建…」

「…」

ガシッ

「えっ!!」

頭をぶつけてルナは目が覚めた。

「なんかいやな夢であった…」

ルナは夢の中の出来事を思い返していた。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終章

 

BSS -Back Star’s story-

 

前編 夢と現実と失意

 

「伊藤(ルナ)さん、授業中に居眠りなんてどうしたの?ラブライブ!が終わってから気が抜けたのかしら?」

先生から注意を受けるルナ。

「あんな夢、見るなんて…」

ルナは先生の注意を聞かず、ただ夢の中の出来事を繰り返し、繰り返し思い返していた。

「伊藤さん、聞いていますか?」

先生はルナに何度も注意するも、ルナ、

「あの夢は…」

と、繰り返し考え込むまま。

「伊藤さん!!」

ついに先生の怒りは頂点に…。

「えい!!」

と、先生、必殺のチョーク投げ。そのチョークはそのままルナの頭に…。

「いたっ!!」

ルナの頭にクリーンヒット。

「なんでしょうか、先生」

ルナはようやく先生のほうを向く。

「伊藤さん、今は授業中でしょ」

と、先生がルナに怒ると、まわりの生徒たちは、

ハハハ

と笑う。

 だが、先生はいきなりルナの顔を見るなり、

「伊藤さん、大丈夫?なんか顔色が蒼白そうに見えてしまうけど…」

と、言い出す。ルナ、

「えっ!!」

と、鏡を取り出し、自分の顔を見る。

「…」

と黙るのみ。本当に蒼白そうに見えていた。

「伊藤さん、保健室に行ってください。すこし疲れているみたいだもの」

と、先生が言うと、ルナ、

「はい…」

と、立ち上がって保健室に移動する。

 これを見ていた隣の席のレンとカレンはただ、

「…」

と、黙るのみだった。

 

 保健室に移動するルナ。

「ラブライブ!が終わって1週間経つのか」

と、思い出していた。あのアイランドスターズと対決したラブライブ!決勝から1週間。失意の敗北のあと、アイランドスターズの九から楽しむことの大切さを説かれ、少しは気がはれていた。しかし、それ以上にルナたちバックスターを支援していた土居建造が賄賂などの容疑で逮捕されたこと、そして、これまで完璧を求められていたバックスターがあの地方の、それもとても小さな高校のアイランドスターズに負けたことでこれまでの完璧さ、そして、自分たちのプライドが崩れ去ったことの方が強かった。

「私たちのプライドって…」

完璧、パーフェクトを求められていた、いや、完璧、パーフェクトだったことこそバックスターというプライドを保ち続けていた、だが、ラブライブ!決勝で敗れたことで、そのプライドすらももろくも崩れ去った。

「私たちってこれからどうすればいいのかな…」

ルナは悩む。

「この学校があればまた、トップに返り咲くのかな…」

トップに返り咲く、ルナにとってそれが唯一の救いかもしれなかった。超一流の教師陣、超一流の施設などなど。バックスターを影から支えたもの、それがあればまたトップに返り咲くことができる、ルナはそう考えていた。

「トップに戻れば私たちのプライドも元に戻るのかな…」

ルナは今さっきの夢のことは忘れ、ただ、わずかな希望にすがっていた。

 

 だが、その希望すらもただの蜃気楼になろうとしていた。

「起立、礼」

「お願いします」

「着席」

「それでは緊急LHL(ロングホームルーム)をはじめます」

午後、先生の一言で、緊急LHLがはじまった。

「…」

ルナは昼休み、保健室から戻ってくるなり、ただ黙ったままだった。

「えー、みなさんに大事なお知らせがあります」

先生はLHLをはじめるなり、いきなりあることを言い出す。

「えー、この高校は今月をもって廃校となります」

「えっ!!」

ルナの頭の中はいきなり真っ白になった。まさか廃校になるなんて…。顔面がまた蒼白になるなか、先生の話は続く。

「実は、私たちの高校、土居建造記念高校は土居建造様から多額の寄付金をもらって運営してきました。その建造様が逮捕され、建造様が経営していた土居建設も倒産しました。建造様、土居建設という後ろ盾を失った結果、これ以上高校を運営することはできないということになりましたので、廃校となりました」

これにはルナの隣にいるカレンが手をあげる。

「先生、私の分析ですが、ほかの企業などからスポンサーを探せばいいのではないのでしょうか」

カレンらしい意見だが、先生はさらに答えた。

「この1週間、理事会はスポンサーを探しましたが、土居建造様が賄賂を送っていたこともあって、高校のイメージが急に悪くなり、誰もスポンサーになりたがらないと聞いております」

これにはカレン、

「悪いイメージが…」

と気を落とす。

 先生はカレン以外誰も質問をしないことを確認し、すぐに次に進める。

「廃校になることを受けて、あなたたちはこれから自分が転校したい高校の希望調査を行います。100%希望が叶うわけじゃないけど、できるかぎりのことはするわ。でも、急なことなので、今日提出…、というのはしないわ。明後日までにこの紙に書いて私のところに提出してください」

先生はそのことを言って生徒1人1人に転校希望調査票と書かれた紙を渡す。

 だが、ルナはそれすら気づかなかった。

「まさか廃校…」

「夢だよね、夢って言ってよ!!」

ルナの心の中はその言葉で一杯だった。まさか夢が正夢になるなんて、ルナはただ心の中で失意のどん底を味わっていた。

 そして、ついには…。

バタン

「伊藤さん!!」

「ルナ!!」

「ルナ!!」

先生やレン、カレンがルナの名前を叫ぶなか、ルナは倒れてしまった。

 

 そして、翌日…。

「ルナ、おはよう」

レンの挨拶にルナ、

「おはよう…」

と、ただ挨拶するだけ。

「昨日倒れたけど、大丈夫だった」

と、レンは昨日倒れたルナを心配するも、

「…、大丈夫だよ…」

と、ただ呆然と言うルナ。

「あんまり考え込まないでよ。ルナは私たちにとって大切な仲間なんだから」

と、レンがルナに優しく言うも、ルナ、

「…」

と、ただ黙るままだった。

「大丈夫ですよ。私の分析だと、私たちバックスターはトップから陥落したとはいえ、実績があります。ほかの高校に…」

と、レンの横にいたカレンが言うと、ルナ、

「グガッ」

と、カレンに対して牙をむく。

「ルナ、どうしたの?」

と、カレンが驚くと、レン、

「ルナ、落ち着いて、どうどう」

と、ルナを落ち着かせようとする。

 だが、運悪く近くを通っていた生徒たちからある言葉が聞こえてきた。

「ああ、まさか廃校になるなんてね」

「本当だね」

「今月末でみんなとおわかれだね」

「でも、別の高校にいけるんでしょ」

「私たちの高校、案外偏差値高いし、学力も高いほうだから、かなりいい高校にいけるって話よ」

「どこまでいけるのかな?」

「案外どこにでもいけるみたいだよ」

「だったら、どこの高校にいこうかな」

この会話がルナの耳に届く。すると…。

「ガルルル」

と、ルナ、いきなりその女子生徒たちめがけて襲い掛かる。

「ひー」

いきなり襲ってくるルナに女子生徒たちは逃げ始めようとする。

「ルナ、落ち着いて!!」

レンはいきなり女子生徒たちに襲い掛かろうとするルナを止めようとする。

「ガルル」

ルナはレンが止めていてもまだ女子生徒たちに襲い掛かろうとしている。

「ルナ、ごめん」

と、カレンはルナに対してチョップ。

バシッ

「ガル~」

と、ルナは可憐のチョップで落ち着く。

「ルナ、どうしたんだい?いつものルナじゃないよ」

と、レンはルナに言うと、ルナ、

「だって、あの子たち、廃校のこと、あんまり考えていないんだもの…」

と言うと、女子生徒たちは次々に、

「だって、いまさら廃校のことを気にしても…」

「おきたことはおきたことだもん」

「私たちにとっていい高校に転校すればいいだけの話だもんね」

これにはルナ、

「この高校がなくなるよ。この高校を、建造様をなくしてもいいの?」

と、女子生徒たちに質問すると、女子生徒たちは、

「この高校ってそんな価値があるの?別にこの高校がなくなっても、私たちがほかの高校に移動すればいいだけの話ですから。別にこの高校に愛着があるわけじゃないから」

「それより、建造様ってキモいんですけど…」

と、平気で答える。

 この言葉にルナ、ついに、

「なんですって~」

と、女子生徒たちめがけて怒鳴り始める。

「ルナ、落ち着いて」

と、レンは再びルナの怒りをおさめようとするも、ルナ、

「ガルル」

と怒鳴り続けるだけ。

「伊藤さん、なんかへん」

「こんなキャラだっけ…」

と、女子生徒たちは凶変したルナをただ見続ける。

 そして、

「この高校を…、この高校を…、愛していないなんて、なんて薄情な人たち!!」

ルナはついに女子生徒たちめがけて言うと、

「別に廃校になっていいじゃない」

「私たちがよければいいんじゃない」

と、女子生徒たちはルナの意見を反故するようなことを言うと、さらに、

「あんな伊藤さん、キモい」

「あんなの見たら近づきたくないわ」

「伊藤さんのことはほっとこう」

と、ルナの前から退散する。

「ガルル」

と、ルナはさっさと退散する女子生徒たちめがけてうなるだけ…。

「ルナ…」

レンはそんなルナを悲しく見つめていた。

 

 そして、この日を境に、ルナとほかの女子生徒たちとの溝は日に日に深くなっていく。

「伊藤さんのことはほっとこ」

ルナのことを遠ざける女子生徒たち。

「なんて薄情な人たちなんだ!!」

と、ルナの言葉がその都度聞かれる。

「ルナ、ほっとけばいいんだよ」

と、レンが優しくルナに言うも、ルナ、

「レンも、カレンも、廃校のこと、別に考えていないんでしょ」

と、レンとカレンにつらくあたる。

 だが、レンとカレンはそんなルナに対し、

「大丈夫だよ。私はいつもルナの味方だよ」

と、レンが言うと、すぐにカレンも、

「そうですよ。私もレンもいつまでもルナと一緒ですよ」

と、優しく語りかける、いつもその繰り返しだった。

 

 そして、ついに廃校の日。

「これで廃校式を終わります」

「ついに廃校…」

ルナの心の中は真っ白だった。ついに廃校という現実を受け入れなければならない日がきたからだった。

「私、○○という高校にいくんだ」

「それだったら、私のいく高校の近くだね」

「来月からついに新しい高校いいくんだね」

ほかの女子生徒たちからは喜び、そして、これからの期待への声が聞こえてくるが、ルナからは、

「ああ、私たちの高校が…、ついに…、廃校…」

と、ただただ失意の言葉が聞こえてくるのみ…。

「私たちだけだったね、希望票に希望の高校書かなかったの」

レンが言うと、カレン、

「それについて分析すると、先生たちは苦慮しているみたいです」

と言う。そう、ほかの生徒たちは転校希望調査票をだして、そのほとんどが自分の希望する高校に転校することになった。しかし、ルナ、レン、カレンだけ白紙だった。ルナ、レン、カレンの転校先については先生たちは苦慮していた。

「福博女子大学は-」

「だめだ。K9がいる」

「なら、UTX学園は…」

「そこもだめだ。すでに締め切っている」

先生たちはいろんなところにあたるも、ルナたちの意見がはっきりしないため、話を進めることができなかった。

 そんななか。

「え~、ルナさん、これ、ルナさん宛てに郵便が来ているよ」

と、ルナにある先生から郵便封筒を受け取る。

「私に郵便って…」

と、封筒に書いてある宛名を見ると、

「九龍高校、金城九…」

九からの手紙だった。

「なんだろう」

封筒を開けると、そこには…。

「手紙と…、チケット?」

九がルナ宛てに送った手紙と3枚のチケットがはいっていた。

 

つづく

 

次回 ルナと九とスクールアイドルフェスティバル

 

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 最終章 第2話(第23回)

「まもなく九龍島に到着します」

フェリーの到着アナウンスが聞こえてくると、バックスターのルナ、レン、カレンは車両甲板へと移動した。

「私は別に来たくはないのですが…」

ルナが文句を言うも、レン、

「少しは気分転換したらどうかな。今回の旅も金城(九)さんの計らいで来れたのですから」

と、ルナをなだめようとする。

 そして、カレンもレンの行動に加わろうとしている。

「私の分析によると、この旅は気分転換するうえでも最高です」

と、カレンがルナに語りかけるも、

「ハ~」

と、ルナはため息ばかり。

 そんなやりとりの最中、

「九龍島に到着です」

と、接岸のアナウンスが聞こえてくる。開く扉、車両甲板に光が差し込む。すると、ある少女の姿がだんだん見えてくる。

 そして…。

「ルナちゃん、待っていたよ。私、九だよ」

 

BSS -Back Star’s story- 

中編 ルナと九とスクールアイドルフェスティバル

 

「金城さん、お迎えありがとうございます」

九の姿を見るなり、レンはすぐに九のところにいき、あいさつする。

「レンちゃん、会いたかったよ。久しぶりだね」

と、九がレンに近づくと、すぐに、

「九ちゃん、少しは落ち着いたらどう」

と、九の横にいたひろ子が九を止める。

「私の分析…、というより、金城さんが落ち着きがないのはわかります」

と、カレンが納得するように言うと、

「田中(カレン)さん、九はいつもこんなものだから分析しなくてもいいよ」

と、九の後にいた多恵が言うと、カレン、

「分析以前の問題ですね」

と、妙に納得していた。

 だが、九、ひろ子、多恵とレン、カレンのやり取りを見ているルナ、おもわず、

「レンもカレンも金城さんたちと仲良くすればいいですわ。私は勝手にします…」

といじけてしまう。これにはレン、

「別に仲良くしていたわけじゃないよ。挨拶ぐらいしていないと…」

と弁解するも、ルナ、

「私にとってこの旅はレン、カレンについてきただけ。私はこれから先、(土居)建造様という柱を失い、帰るべき高校もなくなった。私はここで朽ち果てればいいのです」

と、まるでこの世の最後をにおわすような言葉を放つ。

 これにはレン、

「ルナ、この世の終わりのようなことは言わない」

と注意するも、ルナ、

「私はただ尽き果てるまでです…」

と、ただこの言葉を繰り返し言うのみだった。そして、ルナの表情は暗く、いや、暗すぎるくらいいじけていた。これにはカレン、

「本当にごめんなさい。ルナはいつも明るいのよ」

と、九たちに弁解すると、多恵、

「それは仕方がないよ。だって、心の支柱だった父(土居建造)は逮捕され、愛した高校が廃校になったのだから」

と、ルナに同情するも、とうのルナはただ、

「…」

と、暗い表情で黙っているままだった。

 

「このままじゃルナちゃん楽しくないかも。九龍島の素晴らしいところ、見せてあげる!!」

島の唯一の民宿、九龍荘に向かうバスのなか、九はいきなり思いつきで言うと、ひろ子、

「ちょっと。荷物をまだおかずに観光だなんて失礼だよ、九ちゃん」

と、九に諭すも、九、

「だって、このままじゃルナちゃん、楽しめないもん」

と、だだをこねる。これにはひろ子、

「鈴木(レン)さんに田中(カレン)さん、民宿に荷物を置いてからにしたほうがいいでしょ」

と同意を求めるも、レン、

「私はルナの機嫌を早く直したいかな。だから、金城(九)さんの意見に賛成かな」

と言うと、カレンも、

「私もそう思います。ルナがこのままじゃ旅する気分になりませんから」

と、たんたんに答える。

 これを聞いた九、

「鈴木さんに田中さんが賛成したことだし、いまから素晴らしい場所巡りだ~」

と、勝手に素晴らしい場所巡りというより名所案内に行くことを決めた。

「九…」

と、ひろ子は言うも、多恵、

「九は一度決めたことはなにがあってもまげないからね。諦めるしかないよ」

と、ひろ子に対して言うも、ひろ子、

「そうだね…」

と、妙に納得していた。

 ただ、そんなことでもルナは、

「…」

と、しかめっ面のまま黙っていた。

 

「まずは九龍サンセットビーチ!!」

九はまず白い砂浜が広がるビーチを案内した。

「ここは夕日がとても綺麗なところだよ」

と、ひろ子が言うと、

「どれくらい綺麗なのかな?」

と、レンが興味をもちはじめる。すると、多恵はすぐに、

「これくらい綺麗、というより、すべてが赤く染まるから、とても綺麗」

と、自分が持っているタブレットで写真を見せる。これにはカレン、

「本当にコントラストが綺麗!!これは本当に美しい」

と褒める。

 だが、ルナは写真も見ずに、

「ただのビーチ、面白くない」

と、毒舌をはいてしまう。これにはひろ子、

「…」

と、黙るしかなかった。

 

「次は九龍遊歩道だよ。ここからはまわりの島がよく見えるんだよ」

と、九。ここはまわりの島がよく見えるほど風光明媚な遊歩道。

「晴れていれば沖縄本島まで見通せることができるんだ」

と、ひろ子、はるか彼方にある沖縄本島まで見えることを自慢するおt、

「沖縄かぁ、私、一度行ってみたい…」

と、レンが喜びながら言うも、

「私たちは仕事で沖縄に行ったことがあるでしょ。いまさらうれしくないよ、そんなもの」

と、ルナ、また毒舌をはく。これには多恵、カレンともに、

「…」

と、黙るしかなかった。

 

「なら、ここならどう。九龍駅!!」

九はついに汽車の動輪と駅標札がある九龍駅に着いた。

「ここは私たちアイランドスターズの思い出の地。ここで私たち8人と多恵ちゃんが一緒にスクールアイドルになろうと約束した地!!」

と、九が説明すると、多恵、

「違うでしょ。私が9人目のメンバーとしてアイランドスターズとして入った地でしょ」

と、間違いを指摘すると、レン、

「どちらにしても、ここが金城さんや土居(多恵)さんの思い出の地なんだね」

と言う。これにはひろ子、

「そうともいえるね」

と言うと、カレン、

「こりゃ水木(ひろ子)さんの方が正しいかも…」

と納得する。

 だが、ここでもルナはただ、

「ただの汽車の動輪と駅の標札があるだけじゃない。そのどこが思い出なの?」

と、またまた毒舌を吐いてしまう。これには九、

「違うよ。ここははるか空につながる夢のレールの出発地点。ここから私たちははるか彼方にあるゴール目指して出発したんだよ」

と、反論するも、ルナ、

「そんなのただの幻想だよ。私には関係ない」

と、さらに塞ぎこむ。

 これにはレン、

「もうこれ以上塞ぎこまないで」

と、ルナに注意するも、ルナ、

「…」

と、黙るだけ。カレンも、

「これじゃ旅行の雰囲気が台無しだよ」

と、叫び始める。

 そんなとき…。

「それならばー」

と、九はいきなり言い出す。

「九、どうしたの?」

と、多恵が九に聞くと、九、

「いいこと思いついた!!」

と言うと、すぐに、

「ルナちゃん、私たちと一緒に参加しませんか?」

と言うと、多恵、ひろ子、レン、カレンは共に、

「?」

と、ハテナ顔だった。むろん、ルナも、

「?」

となってしまった。

 

 翌日…。

「で、誰にも相談せずに決めたと…」

と、雪穂はただ九の突然の行動力に驚いていた。

「まさか、突然の参加だなんて。準備もろくにしていないのに…」

と、星子はただ呆れていた。

「あの~、話がみえないのですが…」

と、ひろ子は雪穂と星子の顔を見る。

 すると、雪穂や星子にかわり、多恵が説明する。

「九が勝手に(今度3月末に行われる)スクールアイドルフェスティバル、通称スクフェスに勝手にエントリーしちゃったのよ」

これには九、

「そのほうがルナちゃんが元気になると思ったんだもん」

と、言い訳を言うと、多恵、

「本当に大丈夫なの?準備は今からだよ。月末まで時間がない、新曲も作らないといけない。ないないづくし。それに、東京まで行かないといけないのよ。スクフェスは秋葉原で行われるのよ。わかっている」

と、九に怒るも、九、

「それでもルナちゃんを元気にしたいんだもん」

とだだをこねる。これにはひろ子、

「今回は多恵ちゃんに一理あると思うよ」

と言うも、九は「やりたい」の一言のみ。

 そんななか、

「今からでも間に合いますよ」

という声が…。

「鈴木(レン)さん…」

と、星子が言う。そう、ちょうど、ルナ、レン、カレンが九たちの前を通り過ぎようとしていたのだった。

 レンはすぐに説明する。

「実は東京に行かなくてもスクフェスには参加できます。自分たちでネットに中継できるようにすれば、どこにいても参加できるのです」

そして、カレンからも一言。

「たしか、雪穂先生が高3のときにしたスクフェス、ネットで日本中の会場を結んでやりましたよね」

これには雪穂、

「たしかにそうだったような…」

と、誤魔化している顔になる。

 そして、レンは言った。

「私は金城(九)さんの意見に賛成です。私もスクフェスに参加したい。カレンとルナ、そして、アイランドスターズのみなさんと一緒にスクフェスに参加したいです」

雪穂はカレンのほうを向くと、カレンも力強くうなずいていた。雪穂はさらに星子やひろ子、多恵の方を見ると、星子、

「バックスターの2人がそこまで言うならいいのでは」

と言うと、ひろ子も多恵もうなずいていた。

 雪穂はついに決めた。

「それなら、九たちアイランドスターズ、ルナたちバックスター2組で、この島からスクフェスに参加することにしましょう」

これには九、

「やった~!!」

と喜んでいた。

 一方、そのころ、ルナは…、

「…」

と、ただ民宿の部屋に引きこもりになっていた。

 

 こうして、スクフェスに参加することを決めたアイランドスターズとバックスター。はたしてどうなるのだろうか。

 

つづく

 

次回 アイランドスターズとバックスターと1つの答え

 

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 最終章 第3話(第24回)

「1,2,3,4、2,2,3,4」

雪穂の掛け声と共に九たちアイランドスターズとルナたちバックスターはスクフェスに向けてダンス練習をしていた。

「九、ちょっと速いよ」

雪穂の注意を受けた九、

「はい、わかりました」

と、返事をする。

 そして、雪穂はある少女にも注意する。

「ルナ、もう少し元気よく踊って」

これにはルナ、

「…」

と無言になる。

「ちゃんとやってよ~。伊藤(ルナ)さん、ずっと動かないままじゃない」

と、星子が言うも、ルナ、ただ、

「…」

と無言になるまま。一緒に練習をしているが、ルナはただそこに立っているだけしかなかった。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終章

BSS ―Back Star’s story-

後編 アイランドスターズとバックスターと1つの答え

 

「本当にごめんなさい。ルナは本気をだせばちゃんとできる子なんですよ」

と、レンが言うも、めい、

「でも、伊藤(ルナ)さんが動かないと邪魔だよ」」

と、怒りながら言うと、小明も、

「小明たちの邪魔になるなら参加しないでほしいです」

と、こちらも怒りながら言うも、たい子、

「こら、めいに小明、そんなこと言わないでよ」

と、小明とめいを叱る。これにはカレン、

「いや、いいですよ。実際に本当の話ですから。でも、本当にルナは本気をだしたらすごいんだから。私の分析がそう証明します」

と弁解する。

 これについて、たい子の隣にいた春も、

「それは言えているかもしれないよ。だって、ラブライブ!のときでもキレキレのダンスを見せていたしね」

と言うと、氷も、

「あのダンスはほかをひきつけない素晴らしいダンスだったよ」

と証言するも、めい、

「でも、今はただの柱に成り下がっています」

と言うと、小明も、

「そうだそうだ」

と言うも、たい子、

「めいと小明、少しは黙って!!」

と、めいと小明に注意する。

「だって…」

と、めいが言い訳を言うも、レン、

「それは仕方がないよ。私だってめいさんの気持ち、わかるもの。でも、もう少し待って。きっと、ルナも本気をだしてくれるから」

と、ルナをかばうように言った。

 

 練習終了後。

「やっぱり、伊藤(ルナ)さんをスクフェスに参加させるべきじゃなかったのかな?」

と、星子が雪穂に相談すると、雪穂、

「今は仕方がないと思うよ。だって、自分の心の柱である土居建造はいなくなり、高校すらも失った。伊藤さんにとって大切にしていたものがなくなってしまう、そんなショック状態のまま、踊ってください、と言ってもやる気がでないと思うよ。それに、その練習相手がそれを失うきっかけを作ったアイランドスターズだからね」

と言うと、たまたま隣にいたレンが証言する。

「雪穂先生、ルナのことを心配していただきありがとうございます。実際、私もカレンも土居建造様と高校を失ったことについては今でもショックと思っております。ただ、私もカレンも現実を見つめ、前に進もうとしています。対して、ルナはそのショック状態から抜け出していない。もしかすると、リーダーである責任感が強すぎて、ショックの度合いが大きかったのかもしれません。私とカレン以上に土居建造様に心酔するぐらいですから」

 そんなとき、

「なら、いいこと思いついたよ!!」

と、いきなり九が横から割り込んできた。

「九、いきなりどうしたの?びっくりしたよ」

と、雪穂が言うと、九、

「ルナちゃんはいろんなことからのショックで動けないんでしょ。それなら、さらなるショックを与えればいいんだよ」

と、わけのわからないことを言う。それには星子、

「ショック状態の伊藤(ルナ)さんにさらなるショックを与えてどうするの。もっと危ない状態になるんだぞ」

と注意するも、九、

「私、ショックがおきたら、さらなるショックを与えると元気になるもん。ルナちゃん、いろいろと考えすぎているんだもん。だから、ショック状態から抜け出せないんだもん。なら、さらなるショックでそんなもの、吹き飛ばせばいいんだよ」

と言うと、雪穂、

「それは九だけだと思うよ。人間って混乱しているときにさらなる混乱を受けると悪い方向に進んでしまうものなのよ」

と、九に諭すも、九、

「もう遅いもん。もうほかのみんなと約束したもん。明日、それをするもん。もう決定事項だもん」

と言うと、星子、

「また勝手に進めちゃって…。それがどれだけ人に迷惑をかけていると思っているの」

と、九に怒るも、九、

「もう決めたもん。明日、絶対に行うもん」

と、だだをこねる。これには雪穂、

「…」

と黙るしかなかった。

 

 翌日…。

「なんかモニターばかりなんですけど…」

と、雪穂は絶句していた。それもそのはず。練習に使う体育館にはステージには大型スクリーン、そして、横には大小30以上のモニターが設置されていた。

「こんなモニター、どこからもってきたのか…」

と、星子も呆れているばかり。

 すると、

「それはね…」

と、突然九が雪穂と星子の前にあらわれると、すぐに、

「これから行う練習に使うものだよ」

と答える。続けて、

「実は、星子ちゃんのおじいちゃんにお願いしたら、町中にあるモニターをできるかぎり貸してくれたんだよ」

と言うと、星子、

「おじいちゃん、九には甘いんだから」

と、おじいちゃんを怒るも、すぐに、九に対して、

「練習に使うなら、モニター1つで大丈夫でしょ」

と反論するも、九、

「だって、これから行う練習はたくさんのモニターが必要なんだもん」

とさらに反論、さらに、

「あと、星子ちゃんのおじいちゃんにもっとお願いして、インターネットの回線も自由に使えるようにしたらから。それに…」

と言うと、続けて、

「もしものために、人工衛星に通信できる大きなアンテナを持つ車も借りたから」

と言うと、雪穂、

「だから、校庭に大きな車が2台止まっていたんだ。でも、1台は(人工衛星に電波を送る)パラボラアンテナ車だけど、もう1台は?」

と言うと、星子、

「きっと電源車でしょう。このモニターすべての電力をまかなうにはそれぐらいの設備を持つ車が必要となります。しかし、どれくらいお金がかかっているのやら…」

と、呆れてしまうと、となりにいたレン、

「なんとスケールの大きな話になってしまっているなんて…」

と、ただただ呆れるしかなかった。

 

 アイランドスターズとバックスター、あわせて12人+雪穂の13人は体育館に集合していた。だが、前面に大型スクリーン、横には大小30以上のモニターに囲まれていると、なんか異様な光景に見えてしまう。

 でも、その異様な光景になった理由がこのあと、すぐにわかった。九は13人全員が集まったことがわかるとすぐに、

「スタッフさん、モニターの電源をつけてください」

と言うと、大型スクリーンとモニターの電源がつく。すると、そのスクリーンやモニターにはある少女が映っていた。

「ヤッホー、九、元気だったー」

と、モニターから九たちがよく知る少女の声が聞こえてきた。

「ひろ美ちゃん、元気だよ~」

と、九はすぐにモニターに映る少女に声をかける。そこに映っていたのは、九たちアイランドスターズと九州予選で競い合ったK9のリーダー、ひろ美だった。その横にはK9のメンバー、カケルとはるなも映っていた。

「これはすごい…」

レンは絶句した。ほかのモニターには全国各地のスクールアイドルたちが映っていた。

「こんな光景、私の分析すらこえています…」

カレンも絶句するしかなかった。

 そして、九はその巨大スクリーン、モニターの前に立って言った。

「これから、私たちはスクフェスの最後に見せる曲、SDS、「Sunny Day Song」と「スペシャルデイソング」の全体練習を行います」

これには多恵、

「こんなスケールの大きな練習、はじめて。というより、これを実現できた九って一体何?」

と驚くと、ひろ子、

「いや、なにも考えていないよ。むしろ、自分のやりたいことをそのまま表現したっていうほうが正しいかも」

と、たんたんに答えていた。これには多恵、

「…」

と、ただただ絶句するしかなかった。

 

「1,2,3,4、1,2,3,4」

と、雪穂の掛け声とともに九たち11人はSDSのダンス練習をする。それにあわせるかのようにモニターに映るスクールアイドルたちもダンス練習をする。だが、初めてとはいえ、全体的にまとまっている感じだった。

「1,2,3,4、はい止め」

最初からSDS、「Sunny day Song」と「スペシャルデイソング」を2曲続けて、それも何も個人練習もせずに突然みんなあわせて練習する、そんな無謀と思えること、なのだが…。

「うん、はじめてみんなとあわせて練習したけど、とてもあっていると思うよ」

と、雪穂も太鼓判を押す。それを見ていたひろ美、

「だって、SDSは私たちにとってバイブルですから」

と答える。実はSDS…、「Sunny day Song」はμ‘sたち10年前のスクールアイドルたちがスクフェスで披露して以降、スクールアイドルたちにとって先輩たちから最初に習う曲となっていた。また、「スペシャルデイソング」も、雪穂たちが去年の「ラブライブ!10周年記念パーティー」で披露して以降、またたくまに全国のスクールアイドルたちの虜になっていた。そのためか、2曲ともみんなすぐに踊れるほど練習してきたのだ。

 だが、そんなスクールアイドルたちとは対照的にただ1人ただ立っている少女が1人…。

「あれ、1人だけ立っているだけの人がいるよ」

と、モニターに映ったあるスクールアイドルが言うと、

「それは気のせいだよ。雪穂先生、もう1回お願いします」

と、レンが誤魔化すと、雪穂、

「うん、わかった。もう1回通し練習、始めるよ」

と、最初からSDS2曲の通し練習を始める。

 すると、完璧に踊る九たち11人とモニターに映るスクールアイドルたちとは対照的に少し動いているが、ほかのスクールアイドルたちとはまったく違う、いや、動きが遅い少女が1人…。

「1,2,3,4、はい止め」

と、雪穂が終了の合図をすると、すぐに、

ハハハハ

と笑い声が聞こえてきた。それも笑っているのは一人じゃない。モニターに映っているみんなだった。これには星子、

「みんな、どうしたの?なんかおかしかった?」

と言うと、モニターに映るスクールアイドルたちを代表してか、K9のひろ美が答えた。

「だって1人だけ動きがぎこちないんだもん。それが…」

この言葉に九を除くアイランドスターズ8人がある少女のほうを見る。

 ひろ美は続けて、

「それがバックスターの伊藤ルナさんだったからだよ」

と、衝撃的なことを言った。そう、SDSの通し練習でみんなとあわせて踊れなかった少女とはルナのことだった。ルナはただ立っている、もしくは動きがぎこちない、動きが遅かったのだ。

 レンはすぐにみんなに弁解する。

「これには理由があって…、ルナは…、ちょっと…、いろいろあって…」

だが、それにもかかわらずモニターに映るスクールアイドルたちはそんなの関係ないみたいに、ただ、

ハハハハ

と、笑い続けている人たちもいた。

 ルナ、これを見て、

「もういや。私、やっぱり無理。建造様や高校はすでにもうない。そして、みじめな私をみんなは笑い続ける。こんな私、もういや。死にたい…」

と、塞ぎこんでしまう。これにはカレン、

「みんな、言いすぎだよ。これじゃルナがかわいそうだよ」

と言うも、それでも、

ハハハハハハ

と、笑い声が止まらなかった。

 そんなとき…。

「笑うな!!」

と、みんなを一喝する大声が聞こえてきた。これにはみんな、

「…」

と、一瞬で黙らせてしまう。ルナは大声をだした人物の方を見て一言、

「金城(九)さん…」

そう、大声をだしたのは九だった。九はすぐに雪穂を含めた全員を見るなり、叱り始める。

「みんな、笑いすぎだよ。ルナちゃんは、ルナちゃんは今、心が折れそうになっているんだよ。ルナちゃんは心酔していた人、そして高校を失い、そのために心が折れそうになっているんだよ。それに対して、踊りがおかしいっていうことだけで笑うなんて、みんな、どうにかしているよ」

これには雪穂を含めた全員、

「…」

と無言になるしかなかった、はずだった。

 一瞬無言になったと誰もが思った瞬間、口火を切ったのは、

「九ちゃん…」

と言ったひろ美だった。九はすぐに、

「ひろ美ちゃん、言い訳言うのだったら絶交だよ」

と言うと、ひろ美はすぐに、

「言い訳じゃないよ。本当はね…」

と言うと、すぐにあることを言った。

「実はね、私たちが笑ったのは伊藤(ルナ)さんの動きがおかしいから笑ったんじゃないんだよ」

これには九、

「じゃ、いったいなぜ?」

と言うと、ひろ美、

「伊藤ルナさん、いや、ルナちゃんがとても人間くさかったからだよ。ルナちゃんってなんでも完璧に物事をこなす、そんなイメージが今まで強かったんだ。だって、いついかなるときでも完璧にこなしているしね。それが、ラブライブ!であっても。でもね、完璧に踊れるはずのルナちゃんがいろんな理由で悩んで、それで失敗した。そんなルナちゃんが見れただけでもびっくりだよ」

と言って、ルナにむけてひろ美が一言。

「ルナちゃん、もっと私たちにいろんな一面をみせて」

これに続けとばかり、ほかのスクールアイドルたちからも、

「そうだよ。ルナちゃん、私たちと一緒に楽しもう」

と言う。

 これに対して、ルナ、

「こんな私でもいいの?」

と聞くと、九、

「そんなルナちゃんだからいいんだと思うよ。これまで完璧が求められていたから、心の支えだった人(土居建造)のために、高校のために完璧を求められていた。でも、今は違うよ。もう心の支えの人や高校はもうない。でも、そのかわりに、私たちスクールアイドルのみんながいるんだよ。みんなを頼ってよ。そして、もっと、ほかのルナちゃんのいいところを見せてあげてよ」

と、笑いながら答える。これにはルナ、

「金城さん、いや、九、ありがとう。私、もう諦めない。建造様や高校のことはもう言わない。けれど、九、そして、みんなを頼って生きていく。完璧な私はもうさようならするよ」

と答えると、九、

「ルナちゃん、それなら約束して。これからずっと、永遠に、私たちと一緒に楽しんでいこう」

と、ルナに対して笑いながら言うと、ルナ、

「うん」

と、元気よくかつ力強く答えた。

 

 そして、無事に?星子、春、氷の卒業式をえて、スクフェス当日…。

「よ~し、みんなで頑張っていこう」

と、九の言葉とともにアイランドスターズとバックスターのスクフェスが始まった。場所は九たち、ルナたちのために新しく作られたステージ、九龍島野外ステージ。そこには全国にネット中継するためのカメラなどの撮影設備が設置されていた。

「今からアイランドスターズ、バックスターの中継が始まります」

と、撮影スタッフの言葉とともに、アイランドスターズ、バックスターのステージが始まった。

「まずは2年で「オータムウインド」です」

と、これまで歌ってきた曲を次々に披露するアイランドスターズとバックスター。この様子は全国、いや、世界中にネット生中継され、世界中の人たちの目を釘付けにしていた。その人たちの目には楽しく歌って踊るスクールアイドルたち、九たちアイランドスターズとルナたちバックスターの姿があった。

 そして、そんな夢のようなステージも永遠に続く…、わけでもなく、その終わりは突然訪れた。

「「GALAXY VOYAGER」でした。私たちのステージはこれで終わり…」

と言う星子の声にネット中継のコメント欄には、

エー

という言葉がたくさん流れていく。そんなコメントを見てか、九、

「というのはうそだよ。もう1曲、みんなにみせるのは初めての曲、披露するよ~」

と言うと、突然の発言にコメント欄にも、

ヤッター

の言葉が画面中に流れていく。

 ステージにはすでにアイランドスターズ9人にバックスター3人、全員で12人が勢ぞろいしていた。九はこれを見て、カメラにむけて言った。

「今から披露する曲は私たちアイランドスターズ、ルナちゃんたちバックスター全員で歌う曲です」

これを聞いてなのか、突然アイランドスターズとバックスターからある言葉が…。

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」「10」「11」「12」

番号をメンバーそれぞれが言っていくと、12人全員で、

「アイランドバックスターズ、テイク、オフ!!」

と言う掛け声が聞こえてくると、すぐに踊る態勢にはいる。

 そして、九は言った。

「それでは聞いてください。アイランドバックスターズで「コンタクト」!!」

そして、曲が始まった。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!!最終章 BSS 挿入歌「コンタクト」

 

指と指がふれあう 明日へと

 

お互い同士    認めあっている

それをライバルと ひとはいっている

どんなとき    どんなところでも

すばらしき    たたかいをしてる

 

そんな戦い    続けていると

いつかは     目覚めてしまう

一緒になって   すすめていくと

すばらしいもの  つくりだしてく

 

小さな光が    1つにあつまり

大きな光へ    進化していく

未知の力が    あふれだしている

のりこえられない かべなんてないのさ

 

無限の力     みんなのために

使っていけば   あかるい未来

創造していく   だからこそ

みんな信じて   前にすすむのさ

 

にらみあってる  時間すぎていく

それにともなって 伊敷きかわってく

こころにも    響きあっていく

すばらしき    つながりを知ると

 

みんなどこか   みとめているよ

いつでも     みえない糸を

たどっていくと  みつけてしまう

どんなときでも  つながっている

 

小さなこころが  1つにあつまり

大きなキズナへ  進化していく

無限パワーが   すべて照らしあう

みえないところは 存在しないのさ

 

はるかな未来   すべてのために

きりひらいてく  信じるちから

パワーにかえてね だからこそ

みんな信じて   前にすすむのさ

 

はじめはライバル同士でも

交わり続けることで

いつかは仲間となる

どんな困難があっても

いつかはこえていける

だからこそ今は

ライバルだけど

いつかは一緒になれるさ

 

小さな光が    1つにあつまり

大きな光へ    進化していく

未知の力が    あふれだしている

のりこえられない かべなんてないのさ

 

無限の力     みんなのために

使っていけば   あかるい未来

創造していく   だからこそ

みんな信じて   前にすすむのさ

 

指と指がからみあい

大きなうねりとなってく

あかるい未来 しんじて

今を生きてく

 

 歌い終わると、九はすぐに、

「これで私たちアイランドスターズとバックスターのステージを終わります」

と言うと、全員ステージの袖に移動した。

「やったね」

と、ルナが言うと、九も、

「うん」

と、元気よくうなずく。そして、メンバー全員で健闘をたたえあう。

 だが、それで終わった…、わけではなかった。ネット中継画面には、

アンコール アンコール

というコメントがたくさん流れていた。

 これを見ていた雪穂、

「みんなぁ、視聴者みんながアンコールを求めているよ」

と言うと、九、

「それじゃ、みんなでアンコールに答えちゃおう」

と言うと、ルナ、

「いや、それはできないよ」

と、即答。これには九、

「なんで!!」

と、いきなり驚くも、ルナ、

「これから先は九たちアイランドスターズのステージだよ。だって、私たちバックスターは全員2年生だから。私たちには来年がある。でもね、九たちアイランドスターズはこのスクフェスをもって3年の星子、春、氷が卒業する。ここで思い出に残る最高のステージ、見せてくれるかな。アイランドスターズ最後の勇姿を私たちに、そして、みんなに見せてくれるかな」

と答えると、九、

「うん、わかった。私たちの最高のステージ、見せてあげるね」

と、大きくうなずくと、星子たちを連れてステージへとあがっていった。

 

 そして、アイランドスターズが「ネバーエンディングストーリーズ」を歌っている最中、ルナは雪穂に近づくと、すぐに、

「実はお願いがあるのですが…」

と言う。雪穂はすぐに、

「お願いって何?」

と聞くと、ルナはすぐに答えた。

「実は私たちバックスターをこの九龍高校に編入させてくれませんでしょうか。私たちも九たちと一緒に雪穂先生のもとで一から頑張っていきたいのです。お願いします」

 これには雪穂、

「それは別にかまわないよ。だって、うちの高校は誰でもはいれるオープンな高校だもん。それに、バックスターという仲間を得ることができれば、九たちにも刺激になるしね」

と言うと、ルナ、

「本当にありがとうございます」

と、雪穂にお礼を言った。

 しかし、そこから衝撃的な言葉が雪穂から飛び出した。

「それに、私にとってあと1年だしね~」

これにはルナ、

「えっ、あと1年…」

と絶句すると、雪穂はさらにこう言った。

「そう、あと1年。私、あと1年でこの高校を離れないといけないの。あと、これはお願いだけど、九たちには内緒にしていてね」

このとき、ルナはただこの言葉に絶句したままだった。

 

 こうして、ラスト、全国のスクールアイドルたちとSDS、「Sunny Day Song」「スペシャルデイソング」を歌ってスクフェスは終了した。それはすなわち、星子、春、氷の3年生の卒業をもって、現メンバーによるアイランドスターズの活動が終了することを意味していた。

 

 だが、物語はさらに進む。これから先、九たちは、ルナたちはどうなっていくのだろうか。そして、雪穂が言った「あと1年」とは…。物語はついにクライマックスへと進む…

 

次回 ラブライブ!アイランドスターズ!!最終章

    ファイナルストーリー 「My Graduation~光の中へ~」

 



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スピンオフ BSS~Back Star’s Story~bigins
BSS~Back Star’s Story~bigins 第1話


BSS~Back Star’s Story~bigins

 

 2024年4月―。

ヒューヒュー

「なんていい風。とても気持ちいい。やっぱりここはいつきても気持ちいい風がふくね」

その少女は舵引き丘と呼ばれる丘に立っていた。ここは九龍島が生まれた地といわれ、また、遠くは沖縄や奄美本島が見えることでも有名なところだった。そして、島風がふくことでも有名だった。

 丘に立つ少女、名を伊藤ルナという。17歳、4月に高校3年生になったばかりである。今は九龍高校の3年生。けれど、先月まではすでに廃校となった土居建造記念高校の2年生だった。

 そして、彼女こそ、前年度のラブライブ!夏季大会で優勝し、つい先日までスクールアイドルのトップに居続けたスクールアイドルグループ、バックスターのリーダーだった少女

である。

「ちょっと、ナレーターさん、だったは余計です。今でもバックスターのリーダーは私、ルナです」

と、ここでルナからきついツッコミがきたところで…、本題に戻ろう。

 ルナは島風にあたりながら、何を考えるように言った。

「私は先日、建造様を失うなどして、地位、名誉、お金、その他いろいろ、すべて失った。けど、それでも今を生きている。それは九たちがいるから。九たちが私を助けてくれた。だから、今、ここにいる。じゃ、今までどうやって生きてきたのか。それは建造様のお陰です」

ルナはその言葉をかみ締め、(とても長いが)自分の過去を振り返った。

 

「ことのはじめは中学3年生の卒業のときかな」

ルナはその中学3年生のときのことを思い返していた。

 伊藤ルナ、中学3年生。とある地方のローカルアイドルの研究生として活動していた。そのローカルアイドルはその地方ではほかのローカルアイドルをも圧倒するほどの知名度を誇っていた。

 そんなルナがそのローカルアイドルに研究生として入ったのは中学1年のときだった。

「私、アイドルとして輝きたい」

そう思ってルナはローカルアイドルのオーディションを受けて一発合格してしまった。そのときの審査員はルナのある点にひかれて合格させたと言った。その点とは…。

「え~と、この曲ですが、このように踊ってください」

と、ダンスを教えるコーチはローカルアイドルのメンバー全員の前で曲の振り付けを1度してみる。だが、メンバーからは、

「これ、短い時間で覚えるのって難しい」「だめだ、できん」

と、諦め顔、なのだが、その翌日…。

「これでいいですか」

と、ルナはすましてみんなにその曲の振り付けを見せる。これを見たダンスの先生、

「えっ、完璧じゃない。これ、たった1日の練習ではできないものよ。上位レベルのダンスだよ」

と、ビックリしてしまう。でも、ルナにとって朝飯前だった。特に小さいときからダンス練習を受けていたわけではない。小学校の義務教育でダンスを少しかじっただけだった。だが、ルナにとって、昨日、少し練習しただけで上級クラスのダンス(振り付け)をマスターしたのだ。

 さらに、こんなことまで。歌の先生から、

「え~、それでは歌ってみましょう」

と、新曲の歌唱練習をするメンバーたち。だが、先生からは、

「そこ、ちょっと声が小さい」

「こらっ、もっとおなかから声をだす」

と、罵声が飛びまくる。

 ところが、ルナが、

「~♪」

と歌うと、その先生から、

「なんて素晴らしいのでしょう。みんなもルナさんみたいに上手になりましょう」

と褒めるばかり。もちろん、ルナは少し練習しただけだった。特に努力しているわけではなかった。

 この例でもわかるように、ルナは天才肌だった。なので、ルナは少し練習しただけですべてをマスターできる。上層部からすればいわば金の卵なのである。その意味で、加入した当時は上層部からは「将来のセンター」と目されていた。

 そして、ルナはルナで少しの練習で、

「とても上手だね」「少しはルナを見習わないと」

と、先生たちからも褒められるごとに、

(やっぱり、私、天才だね。少ししか練習してないのに、すべてマスターできる。これは私しか与えられていない才能だよ。私こそ天才にふさわしいんだね)

と、思っていた。なぜなら、ルナは小さいときから天才だと認識していたから。

「は~い、ルナちゃん天才ですね~」

幼稚園のとき、絵のコンクールで最優秀賞をとるなど、ルナは小さいときから遺憾なく天才を発揮していた。そのため、まわりからは、

「ルナちゃんは天才だね。大物になるよ」

と言われ続けていた。その都度、ルナは、

「私は天才なんだ」

と、天狗になっていった。そして、中学に入ってから初めて見たローカルアイドルのライブを見て、

「私、アイドルになって輝きたい。そして、天才的アイドルとしてすぐにセンターになってやる」

というなんという野望を持つようになった。実際、オーディションには一発合格し、はれて研究生としてローカルグループの仲間入りを果たした。

 のだが、中学3年生になっても研究生のままだった。これには理由があった。

「ルナさん、とても上手ですよ。やっぱり天才ですね」

と、先生から褒められるルナ。

「いやぁ、天才ですから」

と、わざわざ天才であることを自慢げに放すルナ。その横では、m

「また、ルナを称える会が始まったよ」

と、嫌味を言うメンバー。だが、これはこのメンバーだけではなかった。そのにいるメンバー全員、

「ルナだけ褒めてどうするんだ」「ルナが図に乗るだけだよ」

と、あまりルナに対していい印象をもっていなかった。ちなみに、ルナを称える会とは、天才であるルナに対して褒めて褒めちぎる、そんな隠語的なニュアンスがはいっていた。 

 こうして、ルナに対していい印象をもっていないメンバーはルナに近づいてくるたび、

「天才的なルナさん、今日はどれくらい褒められたのかしら。もしかして、私たちが叱られることを喜びにしているのかしら」

と、ルナに対して嫌味を言う。でも、普通の人はそれを無視するのだが、ルナは違っていた。ルナはこれを言われると、すぐに、

「あれ、またも怒られたのですね。それはあなたが努力不足だからですよ。それに比べて、私は天才だから、少しの練習でも完璧に踊れるのですよ。そんな天才の私と比べてあなたは…」

と、相手を見下すように言うルナ。そう、ルナは自分が天才でゆえに、相手を見下すくせがついていた。

 これにより、ルナとそのほかのメンバー全員とは軋轢が生まれていき、それは日がたつごとに深くなっていった。ルナが2年たっても研究生のままである理由、それはほかのメンバーとのあいだに深い溝があり、アイドルグループとして必要な仲間との和を結べていないところにあった。

 そして、その軋轢はついに修復不可能なところまでになっていく。ルナがちょうど学校からローカルアイドル専用練習場に来るとき、練習するためのシューズを置いてあるロッカーにルナが行くと、そこには…。

「きゃー、なになの!!」

ルナは叫んだ。そこにあったのは臭くなった雑巾などの掃除道具、そして、

「私に靴…」

と、ルナが呆然になるほど切り刻めたルナの靴だった。これにはルナ、

「誰かやったんでしょ!!」

と、ほかのメンバーをじっと見つめると、そこに、

「あれ、ルナちゃん、今から練習。ごみだめみたいなロッカーからいかがわしい靴をだして練習するの。それってアイドルとしてやっていいのかしら。アイドルは誰からも好かれないといけないのよ。なのに、ルナちゃんは汚いままでするのですか」

と、主犯格らしきメンバーがこう言いながら登場する。すると、ルナ、

「なんだと~」

と言ってそのメンバーに食いかかるが、そこから、

「ルナ、先輩に対してその口の言い方はいいのか」

「少しは先輩の言うことを聞きなさい」

と、そのメンバーの子分らしきメンバーからそういわれるとすぐにルナを羽交い絞めする。

「やめなさい、やめなさい」

と、ルナは抵抗するも、

「少しは反省しなさい」

と、ルナを練習場から追い出してしまう。結局、ルナはその日練習を休んだが、こんなルナいびりはこれで終わりではなかった。ルナが近づくと必ずその都度ルナに嫌がらせをするメンバーたち。それに対して嫌な顔をして反抗するルナ。ときにはバケツの水をそのままルナに浴びせることまで起こった。

 そして、ついにはルナの堪忍袋の緒が切れた。

「このままじゃ埒が明かない。上層部に訴えてやる」

そう決めたルナはついに上層部に訴えた。

「私、ほかのメンバーから嫌がらせを受けています。やめさせるようにしてもらえませんか」

 だが、この訴えに対して、上層部の意見はルナの想像していたものとは逆だった。

「ルナ、それは君が悪い。たしかにルナは天才的な才能がある。だけど、一番大切なものが欠けている。それはみんなと合わせることだ。ほかのメンバーが嫌がらせをするのは、ルナがみんなに合わせることをしないためだ。自分は天才だからすぐできる、ほかのメンバーは努力していない、そういつもメンバーのことを見下している。それをまずやめなさい。そして、みんなと合わせることでそのいじめもなくなる。まずはルナ、君から変わりなさい」

 これにはルナ、

(なんでなんだよ。私が天才なのが嫌なの。なんで自分がみんなと合わせないといけないの。私は天才なんだよ。みんな私に合わせるべきなんだよ。それが近道なんだぞ)

と、憤慨しようとするも上層部の意見は変わらないと見えて、ルナは何もいえないまま上層部のいる部屋をあとにした。で、これはあとからわかったことだが、上層部は当初ルナが加入したときは、天才的な才能の持ち主として未来のセンターとして期待していたが、ルナが中3になるころには、単なるわがまま娘としかみていないらしく、お荷物と見られていた。これがルナが2年所属してもいまだに研究生のままであるもうひとつの理由である。 

上層部に訴えた翌日、ルナはついに中学卒業と同時にローカルアイドルも卒業することを決める。もうルナのことを同情してくれるメンバーや上層部はいない、孤立無援であると悟ったからだった。

「もうアイドルなんてやらない。もっと別のことをしてやる」

ルナはそう思うと、上層部に退職願みたいなものを書いて、それを上層部に叩きつけようと考えていた、そのとき。

「ルナさん、お手紙です」

と、ルナにある手紙が届く。ルナは差出人を見る。すると、

「土居建設?」

ルナは不思議に思った。自分と建設業界、まったく縁のゆかりもないところからなぜ手紙がきたのか。だが、とうのルナは、

「もしかして、何があるのかな?」

と、不思議と縁を感じて、その手紙に指示された日時、場所に行くことにした。

 

「お待ちしておりました、伊藤ルナさま」

3月のある日、ルナはその手紙に書かれた町の喫茶店に行くと、そこには全身黒尽くめの男が待っていた。

「で、私に何のようですか?」

と、ルナはその男に尋ねると、

「実はルナさまにある高校に入学してほしいのです」

と、はっきりとその男は答える。が、あまりにも怪しすぎる男に見えたため、ルナは、

「でも、私はずでに地元の私立高校への進学を決めています。なのに、なぜ、今となって別の高校にいかないといけなのでしょうか」

と、はっきりと答える。ルナはこのときすでに地元の私立高校への進学を決めていた。アイドルとは関係ない、自分のことをまったく知らない人たちがいく高校に。

 だが、その男はルナに対しあることを言った。

「実はルナさま、あなたのアイドルとしての才能を見込んでのお願いなのです。ぜひ、うちの高校に入学してください」

が、あまりにも怪しすぎる男に対しルナはこう思った。

(私のアイドルの才能を買っている。もしかして、私のことをスカウトにきたのかな。でも、それっておかしいよね。だって、ローカルアイドルとしてはお荷物と言われていたのよ。そんな私をスカウトなんて、もしかすると、スカウトと称してAVまがいなことをさせるんじゃないかな)

 そして、ルナはその男に対して強くこう言った。

「で、お荷物と言われた私をスカウトする人って誰なんでしょうね?」

 すると、この男はすぐに、

「あっ、これは失礼いたしました。実は私はこういうものです」

と、ルナに名刺を渡した。

「なになに、土居建設スクールアイドル課スカウトエージェント…」

その名刺を見るなり、ルナは不思議に思うと、すぐに、

「なんで中堅の建設会社の人がわざわざ私に?」

と、その男に対してルナは質問した。ルナは土居建設の名を知っていた。大手ではないが、中堅の建設会社。そんな認識だった。でも、なんでそんな会社がアイドルとしてスカウトにきたのか、それがルナにとって疑問だった。

 だが、その男は堂々と答えた。

「実は私どもの会社はスクールアイドル、そして、スクールアイドルの甲子園「ラブライブ!」を応援しております。そして、このたび、うちの会社の系列にあたる高校でスクールアイドルグループを作ることになりました。そこで、そのメンバーとしてルナさまをスカウトにきたのです」

 これを聞いたルナ、

(スクールアイドル?それって高校生が一緒になってグループを作ってアイドルみたいなことをまねるのでしょ。スクールアイドルって素人の集まりでしょ。そんなものに私がなるわけ。バカにしないでよ。私は超一流なのよ。天才なのよ。それが素人の集まりに参加ですって。本島にバカにしないでよ)

と、考えてしまい、

「あの素人みたいな集まりに参加する義理はありませんけど」

と、ルナは答えてしまう。

 それに対し、その男はスマホを取り出し、1つの動画を見せる。

「これが素人に見えますか?」

その動画をルナが見ると、一瞬で驚いた。

(えっ、これって素人なの?そんなに見えない、トップアイドル並みだよ)

ちなみにその男が見せた動画はA-RISEの「Private wars」だった。

 そして、この男は言った。

「この動画に映っているグループの名はA-RISE。もう知っていますよね。今やA-RISEは日本を代表するトップアイドルです。でも、最初はスクールアイドルとして出発しています。スクールアイドルと思って侮っていると痛い目にあいますよ。スクールアイドルのなかには日本のトップアイドルに引けを取らないぐらいの実力を持ったグループもいるのですよ」

 この言葉にルナ、

(知らなかった。まさか素人同然のスクールアイドルと見ていたけど、なかにはトップアイドル並みの実力を持つグループもいるんだね)

と驚いていた。

 で、その男はルナにお願いを言った。

「ルナさま、私たちは日本のトップアイドル以上の実力を持つスクールアイドルを作りたいと思っております。そのためにも、ルナさま、ぜひ私たちのところに来てください。ルナさまの才能、実力をもってスクールアイドルのトップ、いや、日本のトップアイドルになりましょう」

これにはルナ、

(これは!!)

と、一瞬傾くもすぐにあることを尋ねる。

「でも、トップにあがるにはいろいろ必要じゃない。コーチ、練習場などなど」

これにもその男は真摯に答える。

「それは大丈夫です。超一流のコーチ陣、超一流の練習設備、これらは保証しましょう。さらに、ルナさまにはこれから結成されるスクールアイドルグループのリーダーをお任せしたいと思っております」

この答えにルナ、

(えっ、超一流のコーチ陣に設備、凄いじゃない。それよりも、私がリーダーなんて、なんていい響き~)

と思うと、すぐに即答する。

「わかりました。行きましょう。私の力でトップアイドルに押し上げましょう」

これに男は、

「それはありがとうございます。それでは、後日、詳細な資料をお送りいたします。なお、入学料、授業料などはいりません。特別奨学生として入学していただきます。あと、寮での生活となりますので、入学式のある日までにはお荷物はまとめておいてください」

と、ルナに言った。このとき、ルナは、

(これで私の実力が発揮できる場所が見つかった。これで私は怖いものなしよ)

と、思っていた。

 

 そして、高校の入学式の日。ルナが入学する高校の名は土居建造記念高校。企業が創立した高校で、土居建造とはその企業、土居建設の社長の名らしい、ルナはそう思っていた。

 で、入学式のあと、ルナは貴賓室に呼ばれた、とある人物に会うために。

「失礼します」

ルナは扉を開いて挨拶すると、そこに待っていたのは中年ぐらいの大男だった。その大男はすぐに、

「ああ、君が伊藤ルナ君だね。噂はかねがね聞いているよ。私の名前は土居建造。これでもこの高校の理事長をしている。そして、土居建設の社長もしている」

と、大男こと、土居建造はルナに挨拶した。ルナはすぐに、

「はじめまして、伊藤ルナです」

と、土居建造に挨拶した。

 建造はすぐにあることを言いだした。

「ルナ君、君のことはいろいろと調べさせてもらった。ある地方のローカルアイドルグループに加入するも、あまりの天才的な才能のせいでほかのメンバーとの軋轢が生まれて、それによって、ほかのメンバーのあいだに深い溝ができた。それにより、ルナ君、君に対するいじめが増発し、それを上層部に言うも、「みんなと合わせない君が悪い」の一言で門前払い。結果、君は孤立無援となって中学卒業と同時にそのグループを卒業した」

これを聞いたルナ、

「よくご存知ですね。相当私のこと、調べているのですね」

と建造に言った。ルナはこのとき、

(ストーカー?なにか私のこと、よく知りすぎてない)

と、建造を疑っていた。

 が、建造はあることを言う。

「でも、それって君が悪いんじゃなくて、そのローカルアイドルのほかのメンバー、それと上層部が悪いんじゃないかな。だって、本当なら少し練習すればものになる君の才能を活かそうとするべきものを才能があまりないほかのメンバーに合わせなさいって、それっておかしくない」

これにはルナ、

「えっ」

と驚く。まさか自分が悪いんじゃなくて、相手のほうが悪いと言うなんて。建造の話は続く。

「天才には天才のための舞台があるものだよ。私は保証しよう。ルナ君、君にはその舞台を用意しよう。超一流のコーチ陣、超一流の設備、それを約束しよう。これはこの学校の理事長である、この私、土居建造の名において約束しよう。そして、君にはトップアイドルになるための支援を惜しみなくおこなおう」

 これにはルナ、

(超一流のコーチ陣や設備については前に聞いたけど、私がトップアイドルになるための支援もしてくれる。それって、私のパトロンになるってことだよね。一企業の社長が自ら支援してくださるなんて、こんなありがたいことはないよ)

と思うと、すぐに、

「わかりました。この私、伊藤ルナは一日もはやくトップアイドルになりましょう」

と答えた。このとき、ルナは、

(私の才能をかっていただくだけでなく、トップアイドルになるための支援すらしていただく。なんて、土居建造、いや、建造様~。私は一生ついていきます)

と、心の中ではそう思っていた。

 



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BSS~Back Star’s Story~bigins 第2話

 入学式翌日、

「これは凄い…」

ルナは口をあんぐりとした。まず、最初に行われたグリーティングでこれからお世話になる施設を見学していく。が、スタジオタイプの練習場だけでなく、小劇場、ジム、大浴場などなど豪華設備といっても過言ではないくらいのものだった。

 そして、コーチ陣は…。

「私はA○Bの振り付けを担当していました。…」

と、これも全員がすぐに名前が思い出せるくらい有名な人たちばかりだった。

「建造様の言ったことは本当だったんだ」

これにはルナ、建造の力をみたと思っていた。

 が、ここで問題が発生した。といっても、超一流のコーチ陣、超一流の設備に関してはルナには文句どころか尊敬の念であった。で、問題なのはこれからルナと一緒に活動していくスクールアイドルのメンバーだった。

「この人たちと一緒にやれと…」

ルナは絶句していた。スクールアイドルグループなので、メンバーがルナ1人だけではない。絶対にほかのメンバーもいるのだ。そのメンバーに問題があった。

「私は鈴木レン、高1です」

「私は田中カレン、同じく高1です。分析しちゃいますよ」

グリーティングのあと、ルナはレンとカレン、2人のメンバーを紹介される。このとき、はじめてルナはこの2人と一緒にスクールアイドルグループとして活動していくことを聞かされるのであった。

 が、このメンバー、一癖も二癖もあった。まず、レン。

「この曲についてはこのような振り付けをしてください」

と、ダンスの先生から振り付けを習うと、ルナは1回やってみると、

「あれ、ちょっと難しいなあ」

と言う。少し練習すればものにできるルナでも、最初のうちは手間取ってしまう。だが、レンは先生の動きを見るとすぐに、

「はいっ」「はい」「はいっ」

と、先生の動きを完コピ、いや、完全に踊ってみせた。いや、それ以上の出来だった。これにはルナ、

「うそでしょ!!」

と驚くも、レンからは、

「こんなの当たり前でしょ。必ず一回見れば誰もがすぐに覚えられるよ」

と余裕だった。これにはルナ、

(むかつく)

と、レンの余裕をみせていることに腹を立てていた。

 そして、カレン。

「いつまで手袋しているの。練習の邪魔でしょ。はやく手袋をはずしなさい」

と、ルナがカレンに注意すると、

「嫌よ。だって、いつ汚いものに触れるかわからないもの。私は汚いものに触れたくないの」

と言い切る。カレンは手を拭く、風呂にはいる以外はずっと手袋をしている。ルナはこれを見て、

「カレンは重度の潔癖症だ」

と認識した。さらに、カレンにはある問題が。

「え~と、これをこうして、こうすればいいかな」

3人の自主練のとき、ルナは先生から与えられた課題曲のダンスをカレンの前で踊ると、すぐに、

「う~ん、そこはですねえ、もう少し肘をあげたほうがいいんじゃないですか」

と、カレンが指摘すると、ルナ、

「そうかな」

と言うが、カレンは続けて、

「それより、ルナはもう少し練習したほうがいいです。私の分析によると、約1秒、ダンスが遅れています。もう少し曲にあわせて練習してください。そうしないとばっちりとあいませんから」

と、ルナの悪いところを次々と指摘する。踊ってみては分析して指摘、歌ってはすぐに分析して指摘。ルナにとっては耳が痛いことだった。

 これにはルナ、ついにキレた。

「あの2人がメンバーなんて、私、もう我慢できない!!絶対にメンバーを替えさせてやる!!」

ルナはすぐに建造を呼び出す。建造様だったら、私の気持ちをわかってメンバーを替えてくれる、そんな期待をしていた。

「で、私になにかようかね」

と、建造はルナが呼び出してから1時間後にルナのところに到着すると、ルナに用件を聞く。ルナはすぐに、

「お願いなんですけど、今すぐ、レンとカレン、2人のメンバーをはずして新しいメンバーをいれるか、私1人のソロプロジェクトにしてください」

と、建造に直訴。しかし、建造の言葉は意外のものだった。

「それじゃ、今度のGW,合宿と称して温泉でも入りにいこうかね。ルナ君たち3人を連れてね」

この建造の言葉にルナ、

「えっ?」

と、驚かざるをえなかった。

 

 そして、建造はルナ、レン、カレンの3人を連れて某有名温泉の高級旅館に泊まりにきていた。が、3人とも一緒に行動せず、別々の行動をとる。一緒にいても無言。これには建造、

「こりゃ相当な重症だな」

と、言うしかなかった。

 そこで、建造はルナ、レン、カレンに対しある命令をだす。

「ルナ、レン、カレンよ。今から一緒に貸切風呂に行きなさい。絶対に一緒にはいるんだぞ。あと、勝手に風呂から出てはいかんからな」

これには3人、

「「「えー!!」」」

と、言うしかなかった。これまで高校にある大浴場でも一緒にはいることはなかった3人。だって、一緒にはいるといろいろと言われるから。1人の時間を大切にしたい、そう3人は思っており、時間をずらして1人ずつはいっていた。なので、一緒にはいること自体意外なのである。

 一緒にはいりたくない3人。けれど、建造の命令からというわけで、仕方なく3人で貸切風呂にはいる。

「…」

3人とも無言のまま。貸切風呂なので、旅館の大浴場みたいに広いわけではなく、広さもせいぜいたたみ6畳程度。着替える場所を含めてもたたみ10畳ほどしかなかった。また、外に鍵をかけているみたいなので、勝手に外に出ることもできなかった。

 そして、無言のまま、30分が過ぎたころ。

「ああ、もうじれったい」

まず声をあげたのはルナだった。30分以上も無言だと気まずいのだ。ルナはそれに我慢できなかった。

 ルナはすぐにレンとカレンにあることを言った。

「レン、カレン、今すぐグループから脱退しなさい。2人がいると、私がトップアイドルになれないから」

ルナにとってトップアイドルになるのが夢であった。その夢の障害となる2人は邪魔でしかなかった。ルナの2人への攻撃は続く。

「レン、あなたはいつも私よりはやくダンスや歌を覚えてそれを自慢する。カレン、あなたは重度の潔癖症でいつも分析しては私の悪いところを指摘する。2人とも私にとって邪魔でしかないわ。すぐに脱退しなさい。これはリーダー命令です」

 これに対して2人が反論。まず、レン、

「ルナ、あなたはすべてにおいて、自分は天才だ、誰よりも優れている、と言い張る。それって違うんじゃないかな、自分が偉いって思っていることが」

さらにカレンも、

「私の分析がいけないというの。分析ってその人の特徴や弱点を捉えることだよ。その分析結果を言ってなにが悪いの。ルナはいつも私の分析を否定する。なんで弱点などを直そうとしないの。直さなくてもいいというくらい天才なの」

これにはルナ、

「私は天才だから天才なのです!!レンとカレンとは違うのです!!」

とさらに反論。こんな言葉の応酬が20分くらい続いた。

 が、20分も論争を続けていると、本音が少しずつ出てくるものである。まず、レン。

「私はこれまで1度も見たものを完コピ、いや、完全に再現してきた。それって私の得意分野じゃない。ルナ、カレン、なぜそれを認めてくれないの。昔の仲間みたいに、なんで私の得意分野を褒めてくれないの。なぜ、みんな、私のこと、嫌うの」

さらにカレン。

「私だってそうよ。重度の潔癖症、それだけでもみんな引いてしまうのに、私が分析すると必ずみんな嫌がる。重度の潔癖症、分析したがる癖、それって、私の癖じゃない。なんで、それをみんな認めてくれないの。なんで、本当の私を受け入れてくれないの」

 これを聞いたルナ、

(えっ、レンもカレンも私と同じ境遇なの。もしかして、私と似ているの?)

と思うと、すぐに、

「レン、カレン、聞いてくれる、私がなぜこのグループに入ったのかを」

と言うと、レンとカレンにこのグループに入った経緯を話した。

「私、実は中学時代、あるローカルグループに入っていたの。けれど、自分は天才であると自慢していた。そして、どんなこともそくなくこなしていた。それがほかのメンバーにとって気に食わないことだったらしく、ほかのメンバーから私、嫌がらせを受けていたの。そして、上層部からはほかのメンバーと合わせなさいとの一点張り。そのローカルアイドルのなかで孤立無援になった私はアイドルをやめようと思ってたの。けれど、建造様はその私を受け入れた。天才であること、それを活かせる環境を提供してくれるって。私、その建造様によって救われたと思っているの。そして、これが私にとってトップアイドルになるための最後のチャンスになると思っているの」

これを聞いたレン、

「私も同じ境遇だよ。私もある地方のローカルアイドルとして活動していた。けれど、みんなよりはやく歌やダンスをマスターしちゃうから、まわりからは白い目で見られていた。なので、いつも私は1人ぼっち。それだけでなく、陰ではコーチに媚を売っているのではといわれていた。だから、ルナと同じく中学卒業のときにアイドルやめようと思っていた。けれど、建造はそんな私を受け入れた。「君のダンスでトップアイドルになってほしい」って。だから、私はこのグループに入ったの」

と、本音で白状した。そして、カレンも、

「私も同じだね。私は関東では名の知れたローカルアイドルの一員だったの。でも、重度の潔癖症、いつも分析したがる癖のせいでまわりから迫害を受けていたの。私の触ったもの、それに触ると臭くなるとか、私の分析はちっとも当たらない、むしろ害になるだけってね。だから、私、ローカルアイドルをやめようと思った。けれど、建造はそんな私を認めてくれた。「君の分析でグループを強くしてほしい」って。だから、私の特技を活かすためにこのグループに入ったの」

 これを聞いたルナ、

「そうなんだ。レンもカレンも私と同じなんだね。2人ともみんなから仲間はずれにされてきたんだね。それを建造様は私と同じように救ってくれた。2人とも私と同じだね」

と、泣きながら言うと、レンも、

「そうだね。まさか、ルナ、カレン、ともに私と同じだなんて。同じ境遇の3人が一同に集まるなんて奇跡なんかじゃないかな」

と言うと、カレンも、

「まさか同じ境遇の3人が集まるなんて、私、分析できません。分析できないことなんて、私にとって初めてです。ああ、神に感謝です」

と、泣きながら言う。

 けれど、ルナははっきり言った。

「これは神の奇跡じゃないよ。建造様がくれた奇跡だよ。私、決めたよ。レン、カレン、力を貸して。これまで私たちを仲間はずれにした人たちに見返してやるんだ。3人の天才が集まれば、どんなことでも出来るってところ、みんなに見せつけてやる!!」

これにはレン、

「私のこと、天才と認めてくれるんだ。うん、私もルナとカレンと一緒にトップアイドルになってやる。そして、見下してくれた人たちに逆襲を果たすんだ」

と決意を言うと、カレン、

「えっ、私も天才なの?分析癖については天才かどうかはさておき、わかりましたわ。私も微力ながらトップアイドルになるお手伝いをしましょう。でも、いつも分析してしまって気が参るんじゃ」

と心配そうに言うと、ルナ、

「分析するというのも1つの天才だよ。それに、分析することによって、今悪いところもわかっちゃう。それを直していけばさらに完璧なものになる。そう考えれば、分析癖も苦にならないかもね」

と、天才らしく考え方を変えて対応することを言うと、レンも、

「私は完コピはできるし、ちょっと上を目指せるけど、それ以上は無理なんだ。だから、冷静な分析によってさらにその上、より完璧を目指すことができるよ」

と言うと、カレンも、

「うん、わかった」

と、元気よく答えた。

 そして、ルナは言った。

「私たちは絶対にスクールアイドルでトップになり、トップアイドルになってやる!!そして、建造様のためにも頑張っていきましょう」

これにはレン、カレン、ともに、

「「お、おー!!」

と、少しためらいながらも手をあげた。しかし、このとき、レン、カレン、ともに

((建造様のために…。本当に大丈夫かな。ルナ、建造のために尽くすなんて…。でも、あの建造って男、なんか裏がありそうだな。私はそれが心配だよ))

と、ルナのことを心配していた。レン、カレンともに自分を拾ってくれた建造には感謝しつつも、なんか胡散臭い雰囲気をかもしだす建造のことを少し警戒していた。

 一方、貸切風呂の外では建造が、

「うんうん、私のために頑張ってくれ」

と、泣きながら3人を応援していた。

 

 そして、合宿から帰ってくると、3人はこれまでとうってかわって、3人一緒に練習に明け暮れていた。

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、ダンス練習をするとき、まず、レンが先生の振り付けをまず覚え、そのレンがルナ、カレンに教える。

「ルナ、そこはもっと上。カレン、少し遅れているよ」

ルナは少しの練習で覚えるし、カレンもローカルアイドル上がりということで基礎はばっちりなので、ある程度練習すれば完璧に覚える。で、3人とも完璧に踊れるようになると、今度はカレンの出番。

「ルナ、少し肩をあげたらどうでしょうか。レン、ちょっと気持ちがからぶっていない?少し空回り気味ですよ」

と、カメラで映した映像をもとにカレンが分析、悪いところは直していく。

 で、ルナはというと、

「ここはこうしてすればもっと見栄えがいいんじゃないかな」

と、レンとカレンに曲についてさらなるパワーアップするための提案をする。もちろん、実施するにはカレンの分析を聞いてから少し直してからすることにしている。

 3人ともこれを繰り返しすることで、3人一緒にレベルアップをしていった。ダンスも、歌も、むろん、超一流のコーチ陣の指導を受けて、超一流の施設を使って基礎体力や自分の能力、才能をどんどん伸ばしていく。3人はいつかは自分たちを阻害した人たちを見下すことを夢見て、そして、ルナのみ建造のためにと思って。

 3人はどんな辛いことも気にせず、一生懸命頑張っていった。そして、自分たちの実力を伸ばしていった。

 



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BSS~Back Star’s Story~bigins 第3話

 そして、1年の9月、突然その実力が試される場が用意された。

「今や私たち、実力が相当上がっているね」

と、ルナが言うと、レン、

「たしかに。4月と比べても愕然とあがっています」

と言うが、カレンはというと、

「たしかに、私の分析では4月と比べて50倍以上あがっていると思われます。しかし、現実的にいうと、お客様の前でステージにあがって歌わないとその実力を測ることはできません。実際、私たちは1度もステージに立っていません。もしあがって緊張して本来の実力をだせないのであれば、それは実力があるとはいえませんからね」

と、冷静に分析する。

 すると、

「それならば、その実力を測る場所を私が用意しよう」

と、突然建造が3人の前にあらわれる。

「建造様、素敵!!」

と、ルナはそんな建造に対して目をキラキラしながら言うと、レン、

「で、その場所ってどこですか。この学校の小劇場ですか。たしかにホームグランドになりますけど、それだと実力はだせたといえませんよ」

と、冷たく言うと、建造、

「いや、うちの学校ではやらない。やるのは東京の某公園にある野外ステージだ」

と言うと、カレン、

「えっ、あの野外ステージですか?有名なアイドルがよくコンサートを開く、あの野外ステージですか?あそこは1000人以上のキャパをもっていますよ。そこで私たち3人だけでライブをするのですか。まだ無名の私たちにとってあまりに無謀では…」

と、呆れるように言うと、建造、

「いや、君たち3人だけなら無謀だと思うよ。だから、今回はちょっと趣向を凝らしてみた。今回は対バン、バトル形式だ。アイドルグループが君たち以外に3組出場する。そして、1組あたり2~3曲歌ってもらう。それを観客がどのグループがよかったのを投票してもらう。でもって、一番票をとったところが優勝だ」

と説明する。これにはカレン、

「対バン形式ですか。これならキャパの心配はないけど、それよりも、私たち以外はライブなどの経験を持っているはず。対して、私たちはライブの経験はない。それで勝てるのでしょうか」

と心配する。これにも建造、

「それは大丈夫だと思うよ。このライブが行われるのは来週の日曜。今日は月曜日だから、まだその対策は十分とれるよ」

と言うと、レン、

「その対策とは…」

と、少し興味を持つ。

 建造はすぐに、

「ちょっとおいで。その対策とは…」

と、ルナ、レン、カレン3人を集めてこそこそ話。これを聞いたルナ、

「それはいい考えですね

と、建造を褒めていた。

 

 そして、対バンバトルライブ当日。

「まさか、対バン相手、私たちが過去に所属していたローカルアイドルなんて…」

と、ルナは驚いていた。そう、ルナたち以外の3組とは、ルナ、レン、カレンが過去に所属していたローカルアイドルグループ3組だった。

「よっ、ルナ元気だったか」

と、当時ルナをいじめていたローカルアイドルのメンバーがルナを見つけて挨拶する。

「はい、あなたもおかわりがないようで」

と、ルナが嫌味ながらも挨拶すると、そのメンバーは、

「まっ、恥をかいてアイドルやめちないな。スクールアイドルという素人同然のアイドルなんてやめちないな」

と、ルナに対して暴言を吐くと、ルナ、

「それはそのままあなたに返しますわ。私たちの実力をみてください」

と、言い返した。

 このあと、昔のローカルアイドルのメンバーに対して言い返したルナに対し、レンから、

「大丈夫か、そんなことを言って」

と言うと、ルナ、

「大丈夫ですよ。勝つのは天才の集まりである私たちですから」

と、平然と言うと、カレンも、

「それもそうですね。あの秘密特訓のおかげで十尾は十分できてますからね。私の分析だと、100%勝てます!!」

と、自信満々に答えた。

 

 そして、超満員で迎えたステージ。ローカルアイドルたちは自信満々に、そして、元気よく歌い踊っていた。あこがれの東京で、あこがれのステージで、ファンの前で歌い踊る。こんなことはローカルアイドルにとって夢が叶ったといっても過言はなかった。だって、いつもは小さいステージで多くても百人規模の観客の前で踊るのが普通だから。だから、その倍のお客さんの前でライブをするのはローカルアイドルにとって夢のまた夢であった。それが実現できた。

「どうもありがとうございました」

と、司会の人が3組のローカルアイドルたちにむけて御礼を言うと、すぐに、

「それでは、今日デビューの新人スクールアイドルです。圧倒的なステージを見せてください。バックスターで…」

と、ルナたち3人のグループ名、バックスターの名が会場中に響き渡る。バックスター、うしろに輝く一番星、それを目指してルナたちは駆け上がる、そんな気持ちでルナたち3人がつけたグループ名だった。

「レン、カレン、いくよ!!」

と、ルナが言うと、レン、カレン、ともに、

「「OK!!」」

と言って曲が始まる。披露する曲はすべてオリジナル曲。それも十分というくらい練習してきた。

 しかし、初めてのステージなので、その実力は発揮できるか未知数だった。が、

「よ~し、いくぞう」

と、ルナが言うと、レン、カレン、ともに、

「「オー」」

と叫びまくり、迫力ある声で観客を圧倒していくと、これには、

「す、すごい。こんな圧倒的な力を持つグループがいるなんて」

と、観客たちがみるくらいルナたちのステージは凄かった。そして、ルナたちをいじめていたローカルアイドルたちも、

「うそでしょ。私たち、あんな人たちを見下していたの…」

と、いわせるくらい圧倒的なステージ。

 でも、観客は不思議に思った。

「なんで、初めてのステージなのに、緊張せずにあんなに堂々と歌えるんだ?」

これにはからくりがあった。実はルナたちバックスターは厳密にいうと、初ステージではなかった。なら、過去にローカルアイドル時代にステージに立っていたから。それもあるかもしれない。が、それだけではなかった。

 建造がライブの告知をルナたちにしてからの翌日。

「え、え~、私たちは~、バ、バックスターと、いい、いいます…」

と、ルナは緊張していた。ここは学校内の小劇場のステージ。ルナたち3人はそこでリハーサルをしていた。

「あの~、声が小さいのですけど~」

と、ルナたちの前には50人ほどの学校の生徒たちがいた。小劇場のキャパは50人くらい。なので、ルナたちの前には満員となった観客席が見えていた。そして、これが本当のルナたちの初ステージだった。緊張しすぎてなにをしたいか混乱していたルナ。

「ルナ、はやく、曲を」

と、レンガ言うと、ルナ、曲が流れても、

「…」

と、無言になるだけ。もちろんレン、カレンも緊張でいつもの10%もの実力しかだせない。本当の初ステージとしては大失敗だったのである。が、これを何度も繰り返していくうちに、

(わっ、慣れてきたかも)

と、ルナが思うくらい緊張しなくなっていった。もちろん、レンもカレンも。そして、学校の先生、生徒だけでなく、学校の近くに住む人たちをもいれて、どんどんステージを重ねていく3人。最初はぎこちないMCでも、回を重ねるごとに、

「ねぇ、あの先生って少しふけてないかな」

と、冗談が言えるくらいに進化。

 そして、ライブ前日、学校の体育館で超満員の観客の前で、

「よ~し、私たちの歌を聞け~!!」

と、ルナが叫ぶくらい元気よく、そして、完璧にライブを行えるまでに成長した。それが(形式上は)初ライブでも緊張せずに元気よく、より完璧に歌える秘訣であった。

 

 で、結果は、

「圧倒的多数でバックスターの勝利!!」

との司会の言葉にルナたちは、

「「「ヤッター!!」」」

と喜んでいた。

「なんで、なんで負けたの。私たちが勝てたのに、あんな素人集団に負けたの」

とがっかりするローカルアイドルのメンバーたち。これにルナは、

「たしかに私たちは初ライブでしたが、そのまえの準備はしました。そして、私たちは3人とも天才です。あまり甘く見ていたのが敗因かもしれませんね。じゃ、さようなら」

と、冷たく接してルナたちは帰っていった。実はローカルアイドルたちも頑張っていた。しかし、千人規模という初めての経験でミスがところどころにでていたのだった。それに対して、ルナたちはそれにも屈しないほど圧倒的なステージを見せたのだった。そこに観客たちは気づいていたのかもしれない。

 控え室に帰ってきたルナたちをある男が迎えた。

「よう、ルナ、レン、カレン。圧倒的な勝利だったな」

その男の名は建造だった。ルナはすぐに、

「建造様、やりましたよ。これこそ私たちの本当の力ですよ。ああ、スカッとしました。昔、私たちを見下していたやつ、いじめてくれた人たちに逆襲ができました」

と、今の気持ちを伝えた。

 が、建造の見方は違っていた。建造はルナに、

「ルナよ、それはよかったな。けれど、それで目標は達成できたと思っているのか?」

と聞くと、ルナ、

「目標を達成できた?」

と言うと、建造はルナ、レン、カレンを鋭く見ると、

「ルナ、レン、カレンよ、おまえたちは覚えているか。おまえたちはトップアイドルになるっていう夢をもっているのではないか。昔バカにされた人たちに逆襲できた、それだけで満足していないか。それに満足しているならいい。でも、そこで止まっているのなら、それはその自分たちをバカにしたローカルアイドルたちと一緒だ。これは言っておく。そのローカルアイドル以上の実力を持つアイドルはいっぱいいるんだぞ。特に、スクールアイドル業界は競争が激しい。全国にはおまえたち以上の力を持つグループはたくさんいる。そして、そのグループたちはみな、スクールアイドルの甲子園「ラブライブ!」の優勝を目指しているんだぞ」

と力説する。これにはルナ、

「ラブライブ!…」

と言うと、建造は続けて言った。

「そう、「ラブライブ!」で優勝することこそスクールアイドルとしての頂点に立った証となるのだ。ルナ、レン、カレンよ、もう1度言う。ここで立ち止まるな。もっと成長し、トップアイドルになれ。そして、スクールアイドルの頂点「ラブライブ!」で優勝するんだぞ!!」

これにはルナ、

「はい、建造様」

と、建造に感化されていた。一方、レン、カレンも、

(ラブライブ!か。ここで優勝してトップになればもっと活躍できる。これからはそれに向けて頑張っていこう)

と思うも、それに加えて、

(でも、建造にとってなにか裏があるかもしれないな)

と、建造を疑っていた。

 実はその見立ては間違いではなかった。実は建造、ルナたちバックスターと自分の学校、土居建造記念高校の名を広げるために今回のライブを開催したのであった。今回のライブ、実は無料だった。ただし、事前に申込制をとり、申込した人たちを会社が作為的に選んでいたのだった。特にスクールアイドルを応援している人たちやスクールアイドル業界の関係者、そして、芸能関係者などを中心に。そして、ライブの題名も「新スクールアイドルお披露目ライブ」とでんでんと宣伝していたのだ。ただし、ステージではただたんに「対バンライブ」としか掲示していなかった。ルナたちにはばれないようにである。なので、ローカルアイドルたちはいわばゲスト、というよりもルナたちバックスターのお膳たてである。

 しかし、招待された人たちは最初からルナたちバックスターのファンだったわけではなかった。観客全員といってもいいだろう。目が肥えている人たちだらけであった。なので、ルナたちが下手だったら平気で批判するのもいとわないのである。その人たちですらルナたちは魅了した。それだけルナたちに実力があったのである。建造はこのライブを通してルナたちの実力をみていたのだ。もし批判が多ければ実力なしとして切り捨てるだけ、もし名をあがることができれば、ルナたちバックスターは一夜にして人気スクールアイドルの仲間入りを果たすことができると踏んでいたのだ。

 

 で、結果は建造にとっていい意味で転んでくれた。

「まさか、こんな原石が眠っているなんて」

「こりゃ将来、ラブライブ!優勝なんて目じゃない。むしろ、連覇するんじゃないのか」

と、ルナたちバックスターの名はスクールアイドル業界に一夜にして轟いていた。むろん、スクールアイドルを応援している人たちのなかには、

「バックスター、とても凄いグループだよ。応援したいよ」

「バックスター、これこそ、A-RISE、μ‘sの再来だよ」

と騒ぐ人たちもでていた。こうして、バックスターのファンは日をおうごとに広がりをみせていた。

 そして、ルナたちにも変化が。

「バックスターで~す」

と、ルナたちがステージにあがるごとに、

「ルナちゃ~ん」「レンちゃ~ん」「カレンちゃ~ん」

とルナたちを呼ぶ声が回を重ねるごとに強くなっていく。これを見たルナ、

(あ~、どんどん私たちのファンが増えていく~)

と、嬉しい悲鳴を心のなかにあげている。それに答えるかたちでステージにも力がはいる。当然、ファンからの声援にこたえて練習にも力がはいる。

「レン、カレン、練習頑張りますわよ」

と、ルナの掛け声にレン、カレン、ともに、

「「オー!!」」

と、勇ましい声をあげる。ファンの声援に応えたるために練習を頑張るルナ。これはレン、カレンにおいても同じであった。

 こうして、日々強まるファンからの声援に応えるためにルナ、レン、カレンは練習、そして、ステージに力をどんどん注いだ。そして、それがスクールアイドル業界にとって、

「バックスター、ここにあり」「ニューカマーあらわる」

というみたいにバックスターの名を広げていった。もちろん、土居建設、土居建造記念高校の名も一緒に広がっていく。

 

 そして、1年生冬。待ちに待ったラブライブ!冬季大会がやってきた。

「は~い、私たちバックスターです。よろしく~」

と、ルナが言うと、会場中から、

「バックスター頑張れ~」

の声援が聞こえてくる。この声援に応えるルナたち。このためか、県予選、地方予選をトップで通過。

 そして、決勝…。

「第8位、バックスター。初登場にしてSaint Snowと同じ快挙を果たしましたにゃ~」

と、司会役であるレポーターに言われると、ルナたちは、

「「「ヤッター!!」」」

と喜ぶ。あのSaint Snowと同じ初登場にして8位入賞。μ‘sみたいに初出場初優勝までもいかないが、あのAqoursのライバル、Saint Snowと同じくらいの快挙を果たした。が、ルナたちの目にはあまり嬉しさは感じられていなかった。喜んだ瞬間、ちょっとがっかりしているように見えたのである。

 

「やったではないか」

ラブライブ!決勝終了後、バックスターの控室で土居建造は喜びながらルナたちを迎えていた。

「まさか初出場で8位入賞とは、快挙ではないか。喜びたまえ」

と、建造は嬉しそうにルナに接するも、そのルナは、

「なにが8位入賞ですか」

と、あまり嬉しくないようだった。

「どうしたんだ。8位だぞ。初出場としてはよい結果ではないか」

と、建造はルナに言うも、レンは、

「私たちはもっと上にいけると思っていました」

と、本音を話す。そしてカレンも、

「私の分析では初出場で初優勝という、μ‘sみたいな快挙を狙えると思っていました。けれど、現実派8位だった」

と、がっかりした表情で答えた。

 そんな3人に対し、建造は、

「なにぃ!!3人とも優勝を狙っていたのか。たしかにμ‘sは初出場初優勝を果たした。けれど、出場チームの数は第2回大会と今を比べて5~10倍以上あるのだぞ。昔と比べても…」

と言うも、ルナからは、

「そんなの関係ありあません。私たちは天才です。天才である以上、優勝してもおかしくありません。なのに、優勝できないなんて。とても悔しいです」

と、なにかを訴えるかのように言うと、建造はにやと笑った。

「じゃ、なぜ負けたと思うか?」

と言うと、ルナ、

「努力が足りなかったのでしょうか」

と答えると、建造、

「それもある。たしかに優勝したチームとの実力の差はあった。が、もっと大切なものがある」

と、ルナに言うと、ルナ、

「?」

と、疑問をもつ。建造はその顔を見て大声で言った。

「それはな、知名度、そして、人気だ!!」

「知名度!!人気!!」

建造の答えにルナはビックリする。建造はその理由を言った。

「いいか。優勝したチームは全国的に知名度、そして、人気が高い。全国には多くのファンを持つ。それは10年ものあいだに先輩たちが少しずつ積み上げたものである。しかし、バックスターはまだ結成して1年もたっていない。たしかに、対バンライブで知名度をあげた。ライブをするごとにファンは増え、人気もでてきた。しかし、おまえたちはまだひよっ子だ。ニューカマーだの、スーパールーキーだの言われているが、それでも全国的に見てもまだ知名度、人気ともに低い。むろん、ファンもそんなに多くない」

この言葉にルナ、

「じゃ、どうすればいいのですか」

と、建造に聞くと、建造はその答えを言った。

「ルナ、レン、カレンよ。おまえたちはもっと強くなりたいか。もし強くなりたいなら、私はどんどん支援していこう。私がどんどんおまえたちの知名度、実力、そして、人気をあげていこう」

これにはレン、

「具体的になにを支援してくれるのですか」

と、建造に疑いつつも聞くと、建造はすぐに答えた。

「まずは実力をあげるために、練習を今よりよりハードにしていく。天才は生まれたときから天才だ。むろん才能もある。だが、それにあぐらをかいていては努力した人間に負けてしまう。でも、天才が努力すれば、それは才能がなくても努力した人以上のものが得られる。改めて言っておく。努力する天才こそ、無敵の強さを得ることができるのだぞ」

これにはカレン、

「たしかに理にかなっているかも」

と、納得の表情。

 そして、建造はさらに言った。

「そして、土日祝は私がとってきた営業をこなしてこい。小さなイベントに参加していては知名度、人気をあげることに限界がある。それよりも、全国規模のイベントに参加できるようにしていく」

これにはカレン、

「でも、それって会社や学校の知名度をあげるだけじゃ」

と、冷静に言うと、建造、

「たしかにそれもある。が、それ以上にバックスターの名前がどどんとでる。知名度や人気をあげるには絶好の機会だ。むろん、ラブライブ!初出場8位入賞という輝かしい実績があるからこそ実現できるのだがね」

 そして、建造はルナたち3人に言った。

「いいか。平日はこれまでよりもハードな練習をし、土日祝はいろんなイベントに参加してこい。そうすることで、絶対の知名度、実力、人気をもつことができる。次のラブライブ!は絶対に優勝できるぞ!!」

これにレン、カレン、ともに、

(胡散臭いのだけど…)と、少しためらうも、とうのルナは、

「はい、わかりました。建造様の言うとおりにします。これで私たちはもっと飛躍できる!!」

と言って、前のめりで返事した。バックスターのリーダーであるルナの返事にレン、カレンともに、

「…」

と、口をだすことはできなず、ただ無言になるしかなかった。

 



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BSS~Back Star’s Story~bigins 第4話

 そして、3月末、都内某所。

「なに、これ!!水着撮影なんて聞いてないよ!!」

レンは叫んでいた。目の前にあるのは色とりどりの水着。

「水着撮影なんて聞いていませんよ。私たちは制服を着て撮影するとしか聞いてないのですが」

と、カレンも叫んでいた。

 それについて、撮影スタッフは言う。

「でも、今度、青年誌に載せるグラビアは水着だと聞いているのですがね」

これにレンは噛み付く。

「100歩譲ってスクール水着ならわかりますよ。だけど、ビキニ、それもきわどいものばかりじゃないですか」

これには撮影スタッフ、

「でも、依頼してきたところからはきわどい水着もOKと言ってきておりますが…」

と言うも、カレン、

「依頼主がよくても私たちがよくないです!!」

と、さらに反論する。これには、撮影スタッフ、

「でも…」

と困惑の表情に。

 だが、これを見ていたルナ、

「レン、カレン、我慢しなさい!!」

と、レンとカレンを叱る。これにレン、

「でも…」

と言うと、ルナ、

「グラビア撮影はアイドルにとって登竜門。有名なアイドルはそれをこなしていくことで知名度と人気を獲得していったのです。今は知名度、人気、ファンを獲得するチャンス。我慢しなさい」

と、理路整然に言うと、レン、カレン、ともに、

「…」

と、黙るしかなかった。

 

「はい、よって、よって」

と、カメラマンは3人に指示をだす。

「はい、そこ。止まって」

きわどい水着をきた3人。ルナはやる気に満ち溢れていたが、レン、カレンはあまりいい心地をしていなかった。

「よし。じゃ、胸をよせてみようか」

と、カメラマンが3人に指示するが、レンはすぐに、

「ちょっと。それはいけないと思いますが…」

と、カメラマンに反論するも、すぐにルナが、

「レン、静かに!!ここはカメラマンの指示に従いなさい!!」

と注意する。これにはレン、

「…」

と、ただ黙ってカメラマンの指示に従うしかなかった。

 

 そして、4月下旬。有力青年誌にはルナたちバックスターの水着グラビアが見開きページで載っていた。それも10誌以上で、これには全国の読者から、

「うそでしょ!!スクールアイドルがこんなグラビアを発表するなんて」

「このバックスター、限界を超えているぜ!!」

と、SNS上で大いに盛り上がっていた。だって、スクールアイドルがこんな過激なグラビアを、それも有力青年誌に載せるなんて前代未聞であった。普通ではありえないことだった。それも前年度ラブライブ!冬季大会で初出場8位入賞をとった実力の持ち主なのである。また、練習で鍛えていたので、意外とグラマーだったことも話題となった。

 とはいえ、このグラビアにより、ルナたちバックスターの名は一躍有名(特にSNS上で)といえた。

 だが、そのグラビアの前後ページにはちゃんと土居建設の一面広告が載っていた。そこには「南の島のリゾート開発中」の文字も載っていた。抜け目なしの建造である。

 

 そして、GW期間に突入すると、

「の~このこ動画」

でおなじみののこのこ動画のイベント、「のこのこ超会議」が幕張で行われていた。そこでは、ルナたちバックスターがライブを行っていた。客室は超満員。そのほとんどが青年誌のグラビアのことをSNSで知り、興味をもってくれた人たちであった。

「みんな、元気~!!」

と、ルナが叫ぶも声援は少しだけ。だが、歌い始めた瞬間、ルナたちの迫力ある歌声、ダンスにより、

ドガー

という衝撃が観客を包み込んだ。あまりにも迫力のステージなのか、この衝撃を体験した観客たちはルナたちが2~3曲歌い終わるとすぐに、

ブラボー

との歓声をあげた。それは会場中に響きわたる。あまりにも凄いステージに観客全員が沸きあがっていた。そして、このライブの映像は動画サイトにアップされ、その動画やのこのこ動画のネット生中継動画を多くの人が見たりしたことにより、バックスターの名はネットを中心に瞬く間に広がっていく。

 一方、ルナたちはのこのこ超会議のライブのあと、すぐに横浜のイベント参加のために移動するなど、休みなく関東近郊のイベントに参加し、どこでものこのこ超会議のライブと同じ現象を起こした。

 で、GW後半…。

 ルナたちはまず、博多のどんた~く港祭で一番大きなステージ、博多市市役所前本舞台にて何百人規模のライブを行う。そこには超会議のライブ動画などを見たことでバックスターのファンになった人たちが多く詰め掛けていた。

「みんな~、のっているか~い」

と、ルナが大声で叫ぶと、会場中から、

「いえ~い」

の大声援がこだまする。会場はまわりに人があふれるくらいの大声援だった。

 で、そのライブが終わると、すぐに広島に新幹線で移動。広島のピースフェスティバルで一番大きなステージがあるピース公園大舞台でまたもライブを開く。そこでも博多と同じ現象が起きる。

 このように、ルナたちはGW後半、西日本各地を休みなくまわりライブを行った。が、そのライブが行われる前、そして、後では必ず、

「えっ、みなさんにお知らせです。私たち土居建設はみなさまの夢や希望を作っていく会社です。今も南の島のリゾートを開発中。あともう少しで、夢や希望を叶える場所が南の島にできますよ」

というアナウンスが流れていた。

 

 さらに、追い討ちをかけるようにラブライブ!が始まる前日まで、ルナたちはライブツアーと称して全国を回っていた。

「今度の土日は北海道と仙台でライブです!!」

とルナが言うと、レン、

「ちょっとやりすぎじゃないか。これでは私の体はもたないよ」

ときつそうに言うと、カレンも、

「そうです。私の分析だと、もう少しでダウンです」

と疲れながらも言うも、ルナは、

「トップアイドルになるためよ。今は頑張るのみだよ」

と、レンとカレンを励ましている。こうして、ルナたちは疲れながらも全国をまわる。が、その裏で、ライブ会場にはいたるところで土居建設と南の島のリゾートに関するポスターが貼られていた。

 なお、そんなこと関係なく、ライブ会場はどこも超満員になっており、それが、

「こんな凄いスクールアイドル、見たことない」

「絶対見るべき!!だって、こんな迫力あるステージ、見たことないよ!!」

と、SNS上で話題となり、よりいっそうルナたちバックスターの知名度、人気、ファンは広がりをさらに見せていく。

 

 むろん、全国ライブツアーだけではない。ライブは土日祝に行われているが、平日も練習に明け暮れていた。

「1,2,3,4、2,2,3,4.ルナ、少し遅くなっているぞ。レン、練習前と変わっていないぞ。遅すぎる。カレン、もっと自分を分析しろ。どこが悪いか考えろ」

と、ダンスを教えるコーチからキツイしごきを受けると、3人とも、

「「「ハイッ!!」」」

と、毎日の練習や全国ライブツアーで疲れながらも、気力を振り絞り返事をする。前回のラブライブ!冬季大会と比べて2倍以上濃くなった練習。これにはルナ、レン、カレン、ともについていくのがやっとだった。が、ルナたちは次のラブライブ!に優勝するため、トップアイドルになるためにと我慢した。

 

 こうして、1年のラブライブ!冬季大会8位になってあぐらをかくことはせず、平日はきつい練習、土日祝は全国各地でライブをこなしていったルナたちバックスター。ライブをするごとにSNS上で盛り上がり、それがライブに参加する人たち、そして、ファンを増やしていく。そんな好循環により、バックスターの人気は不動のものとみられていた。

 そして、ラブライブ!夏季大会に突入する。県予選、地方予選、ともに1位の成績で進む。ここまでは前回と同じ。でも、今回の決勝は前回とは違うと思うルナたち。ついにルナたちは、ラブライブ!決勝の地、そして、前回は8位で涙をのんだ運命の地、秋葉ドームの特大ステージに再びのぼった。

 が、このとき、ルナたちは前回とは違う光景を見た。前回は、ステージにのぼると、

シーン

と、観客の反応がなかった。だが、今回はルナたちがステージにあがると、

「バックスター、バックスター、バックスター」

「ルナ、ルナ、ルナ」

「レン、レン、レン」

「カレン、カレン、カレン」

と、バックスターの名やルナたちを呼ぶ大きな声援が聞こえてくる。そして、観客席には、

「バックスター、優勝を目指せ!!」

という大きな横断幕が掲げられており、そのまわりにはバックスターのイメージカラーの黄色のペンライトがじゅうたんのようにひろがっていた。

 これにはルナ、

「こんな大きな舞台で、こんな大きな声援、とても嬉しいよ」

と喜ぶと、レンも、

「これは本当にどのスクールアイドルにも負けたくないですね。本当にありがとう」

と、観客に対して御礼を言う。カレンも、

「こんなの私の分析では計りきれません」

と、自分なりに喜びをあらわしていた。

 観客たちの大きな声援を受けたルナたちバックスター、それに応えるかたちで歌いながらも会場中を走りぬける。少しでもみんなの声援に応えるために飛び跳ねていった。

 そして、すべての演目が終わり、あとは結果を待つだけ。会場にはドラムロールが鳴り響く。緊張するルナたち3人。その緊張をほぐすため、ルナ、

「大丈夫だよ。だって、私たち天才は誰にも負けないように努力していった。努力した天才が負けるなんてないよ」

と、レン、カレンに言うと、レンも、

「そうですね。私たちには私たちを応援してくるファンがいます。そのファンたちに報いないと」

と自分の思いを言うと、カレンも、

「今日は私の分析よりもっと高い勇気をファンたちからもらいました。負ける気がしないでしょう」

と、力強い思いで言った。

 そして…、ついに勝者の発表の時がくる。

「ラブライブ!夏季大会、優勝チームは…」

会場中が一瞬静かになる。そして、司会役のレポーターは大きな声で勝者を告げる。

「優勝チームは、土居建造記念高校のスクールアイドル、「バックスター」だにゃ。ついに天才たちがスクールアイドルのトップに上り詰めたにゃ~」

 これにはルナ、

「わ、私たちが優勝したんだ!!レン、カレン、ヤッタ、ヤッタ、ヤッタよ~」

と、喜びながら飛び跳ねると、レンも、

「そうですよ。天才がそのほかの人たちに負けるわけがないものね」

と、こちらも喜びながら言うと、カレンも、

「もう誰からもバカにされないよね。だって、私たちは今トップになれたんですもの」

と、大声で喜んでいた。

 

「と、こうして、私たちバックスターはスクールアイドルの頂点に立ち、トップアイドルとまでといわれるようになりました。めでたし、めでたし」

と、ルナは自分たちがラブライブ!で優勝したときまでのことを語ると、すぐに悲しい顔になり、その続きを語り始めた。

「で、ここからはおろかな私たちの転落の物語。トップになったものの末路です。ちょっと短いですが、お聞きください」

 



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BSS~Back Star’s Story~bigins 第5話

「ルナちゃん、ラブライブ!に優勝したときの感想は?」

ラブライブ!優勝の翌日、ルナたちバックスターは多くのテレビインタビューを受けていた。SNS上では不動の地位を得ていたバックスターではあるが、テレビなどではまだまだひよっ子である。が、ルナは、

「私たちは優勝するために頑張りました。その結果、優勝できたのです」

と、王者の貫禄を見せていた。もちろん、あとで、レンが、

「そして、私たちバックスターを応援してくれたファンのみなさまの声援のおかげであります」

と、ルナをフォローしていた。

 

 そんなテレビインタビューも終わり、控室に戻るルナたちを待っていたのは、

「おお、おかえり。ルナ、レン、カレン」

と、いつもの建造だった。ルナはいきなり、

「疲れましたよ。優勝してからこんなのばっかし。だって、優勝したというだけでたくさんのお祝いメールが届きましたよ。読むのもつらい。特に昔、私をいじめていたローカルアイドルのメンバーからもきてましたよ。あんなのちっとも見たくもない。だって、昔、私をいじめていたのに、今となっては手のひらを返してますからね」

と、建造に愚痴を言うと、建造、

「まあ、それだけ有名になったということだ。それよりも…」

と、話の話題を変えようとするなり、突然、

「実はこれから先、仕事をどんどん入れようと思っている。特に平日にもね」

と、建造が話す。これに反応したのがカレン。

「ちょっと待ってください。平日にも仕事を入れたら練習ができません。今の実力をあげるどころかキープすらできませんよ」

と、建造に忠告すると、建造、

「それは大丈夫だ。これまで平日の夜に練習していたのを日中に変えればいい」

と、平然と言うと、レン、

「ちょっと待ってください。勉学はどうするのですか。学生は勉学も大事ですよ」

と、心配そうに言うと、建造は、

「それは大丈夫。空いた時間に勉強すればいい。そのための特別カリキュラムはつくってある」

と答えると、レン、

「それで大丈夫なのですか?」

と、さらに心配する。

 が、建造はさらに強くこう述べた。

「いいか。おまえたちはスクールアイドルとしてはもうすでにトップクラスだ。そして、アイドルとしてもすでにトップにのぼりつめようとしている。これからは世界を目指せ!!そのためにもどんどんいろんなところに進出しろ!!そのための支援は惜しみなくしてやる」

 これにはルナ、

(私たちの世界進出のために一肌脱ごうとしている。建造様、私はついていきます)

と思い、

「そうですね、建造様。私たちは世界を目指します。そのためにもどんどん仕事をやっていきます。レン、カレン、いいね。さあ、次の仕事場に行こう!!」

と、強く言うと。レンもカレンも、

「…」

と、黙るしかなかった。

 そして、ルナたちは建造が用意した次の現場に行くために控室を出た。その直後、建造は小声でこうつぶやいていた。

「今のうちに、私のため、私の野望のために働いてくれ、私の操り人形たち…」

その後、建造は会社へと帰っていった。が、このとき、その部屋からは、

ジー

と、なにかの音が小さいながらも響いていた。

 

 そして、これ以降、ルナたちバックスターはテレビ、ラジオ、ネットTV、動画サイトでの番組など、いろんなところに進出していった。そして、その先々でルナたちは大活躍をみせていた。たとえば、とあるクイズ番組では、

「1985年、ミハイル・ゴルバチョフが提唱した改革運動の名前は?」

という問いに対し、ルナはすぐに、

「はい、ペレストロイカ」

と、正解を言う。これには司会者、

「正解!!ルナちゃん、頭いいんだね~」

と、おだてるように言うと、ルナは大いばりで、ルナたちの解答席のうしろにわざわざ張ってある土居建設のポスターの前で、

「あたりまえでしょ。私たちは天才なんですから」

と言って、会場中を沸かしていた。

 ところが、ここでちょっとした問題が発生した。実はルナたちバックスターの仕事場では必ずあるものを設置するか、それに変わることをしないといけなかった。それはルナたちのバックには必ず土居建設のポスターを貼るか、それがダメならルナたちが出演するところの前後の時間に土居建設のCMを流したり、ルナたちのグラビアページの前後のページに土居建設の広告を載せないといけないのだ。これはルナたちが1年冬のラブライブ!で8位入賞したときから起こっていたことだったが、優勝したことにより、建造の手によって露骨に増やしていたのだった。

 なら、それをしなければいいのではと考えようにも…。

「あのう、やっぱり土居建設のポスターやCMを流すの、やめにしませんか。それなしでもバックスターは出演してくれるはずですから」

と、あるテレビ局のADがディレクターに提案するも、

「そんな考えは捨てておけ。この業界に残りたいならな。ここではあまり大きな声で言えないが、バックスターが出演するということで、土居建設から多額のスポンサー料をもらるんだ。それにな、そのことをかぎつけて、あるフリーライターさんが雑誌に暴露記事を載せようとすると、土居建設だけでなく、政治家などから圧力がかかってしまい、そのフリーライターさんは業界から干されたということだ。これを知っていることがばれたら俺が干されてしまう」

と、びくびくしながら答える。それくらい土居建設からテレビ局、ラジオ局、雑誌、ネットTV、動画サイトなどなどに多額のスポンサー料が送られていた。

 だが、実は、レンとカレンはそのことをうすうすと感じていた。

「なんか土居建設のポスターが前より増えていないか?」

と、レンが言うと、カレンも、

「そうだね。私の分析だと、ポスターはラブライブ!優勝の前と比べて倍以上に増えているし、たとえなくても、私たちが出演しているところの前後でCMや広告をばんばん出しているような気がする」

と、冷静に分析していた。これを踏まえて、レンは、

「こりゃ、私たち、建造にうまいように使われていないか。私たちが土居建設の広告塔になっていないか」

と言うと、カレン、

「でも、ルナは建造に心酔している。ルナに言っても無駄じゃないか」

と、諦めの表情だった。ルナがリーダーである以上、ルナたちバックスターは土居建設の広告塔として、ルナが知らず知らずのうちに活動していた、そんな事実、レンとカレンからはルナに伝えるのは無理だった。が、ルナたちバックスターが土居建設の広告塔、という真実は、ルナたちバックスターに対して別の意味で悪い方向に進むきっかけになったのかもしれない。

 そんななか、あるSNSサイトにある書き込みがされた。

「最近、バックスターを見ない日ってないけど、そのバックスターが出演しているところだけ、なんか目立つポスターってないかな?」

これにはすぐに誰かが反応する。

「それって、土居建設じゃないかな。たしか、南の島のリゾート開発をしているという」

この言葉がもとでどんどん書き込みが続く。

「あっ、それって見たことがある。たしか、昨日のトーク番組でこれでもかとくらいみかけたよ」

「でも、この前のクイズ番組にはなかったよ」

「でも、そのクイズ番組、やたらと土居建設のCMが流れていたよ」

「そういえば、この前の雑誌、バックスターのグラビアページの前のページに土居建設の広告があったよ」

「この前の動画サイトのライブ配信にバックスターが出演していたけど、やたらと土居建設のバーナー広告が大きかった」

「それってバックスターがでると必ず土居建設がなにかの形で係わっているような」

「いや、それっていえているよ。バックスターの影に土居建設あり、といえるくらいに」

「でも、それって、バックスターは土居建設というスポンサーがいる、そのため、バックスターはその企業の広告塔をして活動しているといえるんじゃない」

 これにはすぐにいろんなところから反応がでる。

「バックスターにスポンサーがいるなんて…」

「スクールアイドルが一企業の広告塔になるなんておかしくない」

「それより以前に少し異常だと思うよ」

SNS上にこのことを書き込んでいる人たちがこう考えるのは理由があった。スクールアイドルとは「芸能プロを介さず一般高校の生徒を集めて結成された高校生アイドル」のことである。なので、スクールアイドルとはいえ、活動資金はあまりない。μ‘sはメンバー全員で小遣いをだしあって活動している。また、Aqoursも活動資金不足で地元の水族館でアルバイトをしたことがあるくらいである。それに比べて、バックスターは土居建設というスポンサーがいる、そのスポンサーのために自分たちはテレビ番組などに出演することで、その企業を宣伝している、つまり、その企業の広告塔になっている、それが教育上おかしくないか、ということである。なぜなら、バックスターはスクールアイドル、つまり、普通の女子高生なのだ。たとえそうでなくても、あまりにも土居建設の広告が多すぎるという点でも問題だった。

 この書き込みは瞬く間にSNS上に拡散された。むろん、土居建設もすぐにこのことに気づき、削除をいろんなところに要請したが、ときすでに遅く、数多くの人たちが知るところとなった。

 さらに悪いことに、ラブライブ!決勝前のライブに行ったファンからある書き込みがあった。

「そういえば、ラブライブ!優勝前からすでにライブ会場に土居建設のポスターなどがあった」

と、続々とバックスターと土居建設を結ぶ証拠がSNS上にあがってくることになり、

「バックスター=土居建設」

という結びつきが生まれ、さらに強くなった。これにより、これを問題視したバックスターのファンたちは、少しずつだが、次々とバックスターのファンをやめていくことになっていく。

 

 そして、10月、バックスターにとって悪いことが起こった。それは建造のある言葉から始まった。南の島のリゾート予定地、九龍島の土地買収の苦戦が続いていることに業を煮やした建造は、

「このままじゃ、私の夢もおじゃんになる。こうなれば仕方がない。あいつらを呼べ!!」

と、建造の最後の切り札、バックスターを呼ぶ。

「なんでしょうか、建造様」

と、ルナが言うと、建造はすぐに、

「実は行ってもらいたいところがある」

と、九龍島を指し示すと、スケジュール関連の問題はあるも、ルナはその後、

「わかりました。それでは行ってきます」

と言って、その2週間後、九龍島の秋の大祭、九龍祭りにあわせるかのように九龍島に向かった。

 

 その九龍島に向かう高速ヘリのなかで、

「この場所でなにがあるのですか?」

と、ルナは土居建設の関係者に聞くと、

「実は建造様は九龍島のリゾート開発があまり進んでいないことを心配しております。今のところ、建造様の一人娘の多恵様が頑張っておりますが、来年までに着工できるか微妙なところです。南の島のリゾート開発は建造様の夢。それを達成できないとなると建造様が苦しみます」

と言った。

 そして、関係者はさらに、

「なので、建造様は国や県の有力者たちを動かし、来年4月には九龍島そのものを土居建設のものになるように手配しております。ルナさまには島の住民に対し最終宣告をしてもらいたいのです。土地を提供するものは弁償金を保証し、抵抗するものは行政代執行を行うと」

と言うと、続けて、

「あと、多恵様には工事が遅れている責任をとってすべての役職を解任、建造様から勘当とも伝えてください」

と言うと、レン、

「それって多恵様に悪いのでは…」

と、多恵のことを心配するも、関係者から、

「これは建造様の決定です」

と強く言った。

 

「おい、これって九龍島の人たちや多恵様に悪いのでは…」

と、心配するレン。カレンも、

「私の口からは言いたくないよ」

と、ルナに意見する。

 が、ルナは違っていた。

「レン、カレン、心を鬼にしなさい。これは建造様に刃向かう者たちへの鉄槌なのです。そして、多恵には建造様を困らせた報いを受けるべきなのです」

と、ルナが言うと、レン、

「しかし…」

と言いかけるも、ルナはすぐに強く、

「いいですね。すべては建造様のため。心を鬼にして住民たちに言いなさい。特に、多恵にはね。もし失敗すると、私たちはもとの仲間はずれ、いじめられ子にもどるのよ。見捨てられるかもしれないよ、多恵のように」

と言うと、レン、カレン、ともに、

「「はい」」

と、うなずくしかなかった。

 

 そして、九龍島に降り立ったバックスター。当日は九龍祭りの真っ最中。直前には九たち九龍高校のスクールアイドル部8人による歌が披露されていた。それが終わった直後、突然始まるバックスターのゲリラライブ。圧倒的な歌の前に、九を除く九龍高校スクールアイドル部のメンバー全員が自信を失う。さらに、住民たちには最終宣告をするとともに、多恵には、

「土居多恵、おまえは建造様から見捨てられたんだぞ」

と、建造からの勘当を言い渡され、多恵はその場から去ってしまった。

 だが、ルナはのりのりで言っているのに対し、レン、カレンはのりのりで言うふりをしつつ、心の中では、

「住民のみなさん、多恵様、申し訳ございません。でも、これを言わないと裏切りとみなされてしまいそうですし」

と思っていた。事実、レン、カレンの後ろには土居建設の関係者がおり、裏切ると多恵みたいに見捨てられる恐れを感じさせるようなオーラをだしていた。

 

 が、バックスターの九龍祭りへの電撃来襲、結果的にはルナたちバックスターの負けに近いような撤退を余儀なくされたかたちとなった。多恵はそのあと、九たちに感化されて仲間となり、ルナたちがいるステージに戻っては新生九龍高校スクールアイドル「アイランドスターズ」としてルナたちの目の前で「サマーフェスタ」を歌い上げたのだった。

 実力としてはバックスターのほうが上であったが、一生懸命楽しく歌い踊る九たちの前ではその実力もかすみに見えてしまうことに…。そして、住民たちはアイランドスターズをスタンディングオベーションでむかえてしまった。

 これにはルナ、

「これじゃ、私たちが悪者に見えるじゃない」

と言うとともに、

「あなたたちの勝負、この島の運命はラブライブ!決勝でつけてあげるわ」

と、捨て台詞を言って帰ってしまった。

 が、この様子はネットで全国に中継されていた。この中継を見た人たちは、

「バックスターって、やっぱり土居建設の広告塔だったんだ」

「バックスターの実力はその程度かな。私たちなら勝てるかも」

「あんな素人集団に負けるなんて、バックスター、地に落ちたな」

と、いろいろと陰口をSNSを中心に言われるようになり、ファンを減らす要因ともなってしまった。

 

 が、ここで問題になったのが、ルナの捨て台詞、

「勝負はラブライブ!決勝でつけてあげる」

だった。これ、ルナが勝手に言ったことなのだ。なのに、これが建造の意見と見られてしまったのだ。

(どうしてくれるんだ。バックスターがラブライブ!で優勝しないと、私の野望が潰えてしまう。そして、アイランドスターズの登場。あのグループはきっと今度のラブライブ!の他風の目になってしまう。勢いがつけば、バックスターすら危ない。今のうちになにか対策を建てないと)

そう建造は考えていた。なにか方法がないか、いろいろ考える建造。

 そんなとき、

「建造様、お願いがあります」

と、ルナが建造に泣きついてきた。これには建造、

「どうしたんだ。私にできることは何でもするぞ」

と安心させるように言うと、ルナ、

「実は私たちに支援をもっとしてください」

と泣きながら言うと、建造、

「支援とは?」

と、ルナに聞く。それにはルナ、

「もっとメディアの露出を増やしてください。私たちの知名度、人気をもっとあげて、ラブライブ!で優位に立ちたいのです」

と言うと、建造、

「わかった、わかった。そうしよう」

と穏やかに言うと、ルナ、

「ありがとうございます」

と、喜びながら御礼を言った。

 が、その横にいたレンはただたんに、

「それってルナの傷ついたプライドをただ癒したいだけじゃないかな。自分たちはトップなんだからというプライドを保つためのね」

と小言で言った。実際、その通りであった。九龍島での敗北はルナにとって天才であること、そして、スクールアイドルは自分たちがトップであるというプライドに傷がはいってしまったのだ。天才である、1番であるという自信がルナの心の源だったりする。その源に傷があれば粉々に砕けるのは簡単だったりする。ルナはそれを恐れているのかもしらない。それを少しでも修復しようとしているのかもしれない。

 でもって、カレンはこのことをシビアにみていた。

「でも、このままでは私たちバックスターは負けてしまう。九龍島の敗北によって、バックスターの実力に陰りがあると見られてしまった。ラブライブ!の審査方法は会場とネットでの投票。これまでの実績や知名度で押し切るのは難しい。それなら、圧倒的な練習量で実力をあげるべき。もしくは、審査方法を変えてズルをするべきか…」

と、カレンは小言を言っていた。

 が、その小言を偶然建造は聞いてしまった。

「審査方法を変える、ズルをするか…」

実は建造、土居建設、そして、建造本人がラブライブ!の運営本部に多額の出資をしていたのだった。これは建造本人がスクールアイドルを、ラブライブ!を応援したいと昔から思っていたからだった。だが、建造はこれをもって審査方法を変えるズルを考えてしまった。

「よし、ラブライブ!のメインスポンサーになってラブライブ!を牛耳ってしまおう」

と、建造が言うと、すぐにラブライブ!にこれまでの倍以上の多額の出資金を出してラブライブ!のメインスポンサーになってしまった。

 さらに、メインスポンサーになったことを利用して、会場とネットでの投票から審査員投票に変えるように運営本部に迫ったのだ、いろんな理由をつけて。当然最初は運営本部も拒否するも、建造が金にものをいわせて迫ったため、仕方なく投票方法を変えてしまった。ただし、予選については準備が間に合わないため、決勝のみ審査方法を変えることにした。

 建造は次に審査員を買収することにした、それも全員に。審査員は運営本部が厳正に選び、決勝まで秘密にするつもりだったが、その情報が建造のところに事前に漏れてしまった。

「このメンバーなら全員買収できるな」

建造はそう言うと、審査員の買収に動いた。以前から政治家や教育関係者などに賄賂を贈るなどをしてきた建造にとって審査員の買収など朝飯前だった。

 こうして、建造はバックスターがラブライブ!にて優勝できる筋書きを完成させていた。まさか、審査員を運営本部で買収したところを雪穂の親友でラブライブ!運営本部でバイトをしていたヒカリにこっそり撮られていることを知らずに。

 



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BSS~Back Star’s Story~bigins 第6話

 一方、ルナたちはメディアの露出を増やしていった。そんななか、レンはあることを思った。

(建造はなにか悪いことをするに違いない。それをはやくルナに伝えないと)

だが、とうのルナは仕事を熱心にやっていた。レンは心配になってルナに聞いた。

「ルナ、ちょっと無理していない?」

この言葉にルナ、

「私は大丈夫だよ。でも、少し考えてしまうんだ」

と言うと、カレンは、

「どんなふうに考えてしまうの?」

と聞くと、ルナは続けて、

「私、トップの場を守り続けたい。それが建造様の役に立つための唯一の方法だから。けど、この前の失敗(九龍島での敗北)でちょっと危ういかなって。だから、今は建造様から与えられた仕事を全うするだけ。それなら、私たちの実力、知名度、人気をあげて、トップの座を守り続けることができるからね。そして、ラブライブ!でも勝ち続けることもできるしね」

と言い切る。これにはカレン、

(これは重症だな。ルナはトップを守るために、常にラブライブ!などで勝ち続けないといけないと思っている。だから、建造から与えられた仕事をこなすことで自分たちの知名度、人気をあげていき、それでもってトップの座を不動のものにしようと考えている。また、それにより、建造に貢献できるとも思っている。けど、この前の失敗でそれにも焦りを感じている。このままだとルナが壊れる)

と思うも、仕事に熱心になるルナの姿を見てしまい、ルナに言うことができなかった。

 

 だが、レンとカレンの心配はまだあった。ラブライブ!決勝を1週間後に控えた日のこと、

「あのう、練習時間があまりないのですが…」

と、レンは練習などバックスターのスケジュールなどを管理しているスタッフに言うと、そのスタッフは、

「練習しなくても大丈夫でしょう。だって、3人とも天才ですから」

と、平気で答える。これにはカレン、

「そうですか。仕事ばかりで練習は週に1回程度。これだと完璧な歌やダンスが披露できませんが」

と、文句を言うも、そのスタッフは、

「これまでの実力があればすぐにでも完璧な歌やダンスは披露できますよ。だって、みなさんは天才なのですから」

これにはレンもカレンも黙るしかなかった。実は、このスタッフは最近入ったばかりでずぶの素人だった。前の担当者はルナたちの実力を維持するため、できるかぎり空いている時間に練習できるよう、町の練習場を確保するなどの手配を行っていた。だが、ルナが九龍島での敗北後に「今以上の仕事を」と建造に依頼したため、大変貴重な練習時間すら削られてしまったのだ。これに前の担当者はルナたちの練習時間の確保するよう建造に直訴するも、これが建造の逆鱗に触れ、解雇されてしまった。ちなみに、今の担当者は建造、そして、ルナのイエスマンであった。そして、そのルナは、

「もっと仕事をいれて。そうすることで建造様の役に立てるから」

と言っているので、より練習する時間はさらに削られてしまった。

 

 こうして、ルナたちバックスターはあまりに練習をしないまま、ラブライブ!決勝をむかえてしまった。途中、控室前で九たちアイランドスターズとルナたちバックスターが偶然会う。そのとき、ルナは、

「バックスターは絶対に、完璧なスクールアイドル。どんなスクールアイドルでも木っ端微塵になりますわ」

と、九に言うと、その九から、

「本当にそうかな?絶対に完璧なスクールアイドルなんていないと思うよ。むしろ、もっと大事なことがあると思うよ」

と言われる。これにはレン、

(私たちは本当に完璧なんだろうか。九という人が言うことも一理あるのでは?)

と思うも、とうのルナは、

(憎たらしい。絶対に私たちの完璧なダンスと歌で潰してさせますわよ)

と思っていた。

 

 そして、(建造のズルによる)抽選で(作為的に)1番最初に歌うことになったバックスター。係員の誘導でステージの一番前にほかのスクールアイドルたちが座るなか、ルナたちは歌い始めた。曲の名前は「パーフェクトワールド」。その名の通り、「完璧なる世界」。たとえ練習してなくても、天才であるがゆえに3人は完璧に歌い踊る。この「パーフェクトワールド」、ルナたちバックスターの持ち歌のなかでもパワフルさが売りの曲。そのパワフルさで圧倒的な歌やパフォーマンスにステージ前にいたスクールアイドルたちは次々に自信を喪失していく、九たちアイランドスターズを除いては。

 が、それはステージ前だけのことだった。うしろのほうにいた観客たちは、

「あれっ、なんかいつものバックスターじゃないかな」

「なんか迫力欠けるな」

「ちょっと期待はずれだな」

そんな意見がちらほら聞こえてきた。カレンはのちにこう分析している。

「まさかのまさかだった。ここで練習不足の影響がでたのかもしれない」

と。本来であれば練習につぐ練習で、もっとメリハリのある、観客を圧倒するほどのパフォーマンスを見せつけることができるのだが、練習不足により迫力不足に陥っていた。

 さらに、ルナにいたってはちょっとしたミスが連発していた。これも練習不足の影響なのだが、ルナ自身、勝たないといけないという焦りも原因だった。そして、歌い終わるルナたち。その後、観客から拍手が沸くも、それほど大きなものではなかった。

 と、こんなふうにステージ前にいたスクールアイドルたちにとっては自信を失うほどの迫力のあるステージだったのだが、そのうしろにいた観客たちにとってはいつものバックスターではない、期待はずれだったとみられていた。以前に迫力あるステージを見ていると、そのステージと今のステージを見比べてしまうものである。そして、今のステージが以前見たことがあるステージよりも悪いと、そのとき受ける印象は前よりもとても悪く感じられてしまうものである。

 

 とはいえ、自信喪失により、ほかのスクールアイドルたちは次々に勝手に自滅していくところが殆どだった。が、九たちアイランドスターズは違っていた。雪穂の指導のもと、九州予選から決勝前日まで練習につぐ練習をしてきた。さらに、九という精神的支柱を中心となってひとつにまとまっていた。さらに、島から九たちを応援しにきた島民たちの熱い声援。九たちはそれらを胸にステージに立つ。が、途中でルナが立ちはだかる。

「おまえたちは負ける。それは間違いない」

と、ルナが言うと、九が逆に、

「ラブライブ!楽しんでいますか?」

と聞き返す。これにはルナ、

「ラブライブ!は勝負の世界。勝負は勝つことがすべてなんだよ」

と言い返すも、九はものおちせず、

「ラブライブ!ってスクールアイドルを楽しむ場でもあるんだよ」

と反論。もちろんルナも、

「勝負がすべて!!」

と言い返すも、九は逆に、

「スクールアイドルは、ラブライブ!は、楽しむことがすべてなんだ!!」

と言い残してステージに立った。

 このとき、ルナは、

(なにが楽しむのがすべてなんだ。勝負に勝つことがすべて。私たちが勝ってトップを守ってやる)

と思っていた。

 

 が、九たちの歌「SPACE GALAXY」は九の言っていることを体現するものだった。練習にしたうちされたパフォーマンス、どこもミスを感じさせない。けれど、9人全員がなにかを楽しむように演じている。観客たちにはわかっていた。ラブライブ!史上心に残る歌。9人がしっかりとまとまり、完璧といえるもの、そして、元気よく、誰もが楽しめる、そんな曲だった。当然おわると観客はスタンディングオベーションでもって九たちをむかえた。だが、ルナはまだ安心していた。なぜなら、審査員による審査で結果が決まるから。

 

 が、それは泡と消えた。いや、ルナ自身が再起不能に陥ってしまった。最後の演目、九たちアイランドスターズのステージが終わったあと、突然スクリーンに映し出された映像、そこには審査員を買収する建造の姿が映っていた。

 それを見たルナ、

「そんなのうそでしょ!!」

と言うも、これが現実であった。でも、ルナは言った。

「でも、私たちは優勝する実力はあります。それなになぜ?」

と誰かに聞くと、その映像を公開した雪穂は、

「アイランドスターズの存在」

と答え、短期間のあいだで急成長していた九たちアイランドスターズの勢いを危惧していたということを伝えた。

 そして、雪穂はある事実を伝える。

「バックスターが夏冬連覇をすれば、それだけ土居建造の会社、そして、学校の地位が向上する、それだけ価値が上がれば、それだけで利益を生む、利権を得ることもできる。土居建造はそれを狙っていた。しかし、アイランドスターズという難敵があらわれた。これからの利益、利権を守るために審査員を買収したとみることができるのよ」

 これにはルナ、

(建造様、本当に私たちの実力を認めてくれていたの?そんなことしなくても、私たちは勝てるのに。なのに、なぜ、審査員を買収したのー!!)

と嘆くのみだった。

 が、ルナの悲劇は続く。スクリーンには別の映像、いや、生中継の映像が映し出されていた。そこには、

「土居建造が逮捕されたという情報が…」

これにはルナ、

「うそでしょ!!建造様が逮捕だって。うそっていってくれ~」

と叫ぶ。が、まわりはラブライブ!の審査員全員辞任などのごたごたでルナの相手をする暇はなかった。

「建造様が逮捕。それは夢だよね。夢だって誰か言って」

ルナは叫び続ける。

 そんなとき、

「ルナ、もう現実をみようよ」

と、声をかけたのはレンだった。

「レン、私のほっぺたをつねって。そして、夢からさまして」

と、ルナはレンに言うも、レンはただ冷静に、

「ルナ、本当に現実に戻ってくれ。建造は私たちをただのコマとしかみていなかったのだよ。私たちを使って自分の会社をいろんなところに売り込もうとしていた。建造が欲しがっていたのは私たちの地位や名誉じゃない。自分の会社のため、自分の利権、利益をもっと得るために私たちを使っていたのよ」

と言うと、カレンも、

「私の分析によると、私たちのライブ会場、インタビューなどで建造は自分の会社、土居建設のポスターやCM、広告などを展開していました。これにより、会社の知名度、よいイメージをあげるのに貢献してしまいました。知名度、よいイメージをあげれば、それだけほかの資本や企業と組みやすくなる。いや、それ以上に九龍島というリゾート開発を成功させるため、その支持拡大をもくろんでいたみたいです。私たちを抱き合わせでリゾート開発についての広告をだせば、それだけで注目されるし、いい印象を与えるかもしれませんしね」

と、冷静に分析する。

 けれど、ルナはただ、

「建造様、建造様…」

となにか呪文を言っているだけだった。

 これにキレたのがレンだった。

「ルナ、早く目を覚まして、これを聞いて!!」

と、あるICレコーダーのスイッチを押すと、そこからは、

「さあ、次の仕事場に行こう」

というルナの声の後に、建造の声で、

「今のうちに私のため、私の野望のために働いてくれ、私の操り人形たち」

という声が響いていた。これにはルナ、

「うそでしょ。私たちが操り人形。うそでしょ」

と叫びまくる。これにはレン、

「そうだよ。建造は私たちをコマとしか見てなかったのよ。すべて自分のためだけに私たちを使っていたのよ」

と、ルナに対してはっきり言うも、ルナ、

「ハハハ。それでも私には建造様が必要だよ。だって、私は建造様を必要だと思っているもの。きっと逮捕も夢幻なんだよ。きっとそこにいるんだよ」

と、不気味に笑う。これにはレン、建造を失っても建造を必要とし、はては現実をみないルナに対し、

バンッ

と、ルナのほほをぶった。これにはルナ、

「なにするのよっ」

と、レンに怒るも、そのレンは、

「もうこれ以上建造のことを必要としないで!!いい、建造のことをこれ以上言うのであれば、私、そして、カレンはルナ、あなたと絶交するわ。もう口も聞かない。もうなにもしない。バックスターは今日で解散よ!!さあ、ルナ、もう1回だけしか言わない。建造のことを忘れて。私たちと前に進むのか、それとも、建造という亡霊と一緒に私たちと縁を切って、また1人にもどるのがいいか。どっちか選んで!!」

と、大声で言うと、カレンも、

「私もレンと同じ意見です。さあ、ルナ、どっちを選びますか?」

と言われる。

 これを聞いたルナは思った。

(えっ、レンもカレンも私のもとから離れるの。それはいやだよ。これ以上昔みたいに1人、孤立無援になるのは嫌。惨めな昔に戻るは嫌。私、もう1人にはなりたくない。建造様は私にとって命の恩人。建造様のおかげでレンとカレンに会えて、今まで育ててくれた。それがたとえ建造様自身のためであっても。でも、建造様はもういない。そして、レンとカレンは私のもとから離れていく。それだけは嫌。私は建造様と同じくらいレンとカレンのことが好き。この2人とならまだ私はやっていける。そのためにも、建造様、本当にごめんなさい。もうあなたのこと、忘れます、一時的にね)

 そして、ルナは口にした。

「レン、カレン、あなたたちの言うとおりにします。もう建造様のことは言わないわ。そして、これからも一緒にやっていこうね」

 これにはレン、カレン、ともに、

「「ルナ!!」」

と、ルナを抱きしめて喜んだ。

 そんなとき、ルナはふとあることを思って口にした。

「でも、なんで私たち負けたんだろう。私たちはいつも完璧、どんなときだって完璧にこなす天才の3人なのに、なぜ負けたの?勝負としては私たちに有利なはずなのに」

これにはレン、

「いろいろとあるけと思うよ。まずは練習不足。私たちはただの天才じゃない。努力する天才、だった。けれど、九龍島での敗北のあと、焦るあまり仕事を増やしてしまい、結果、練習量が圧倒的に少なかった。これじゃ、ただの天才に逆戻り。いや、それ以下だったのかもね。特に私たちのことをよく見てきた観客たちにはね」

と説明すると、続けてカレンからは、

「それもありますが、トップを守りたい、勝負に勝たないといけないといった焦りもありました。焦りは勝負の世界では禁物ですからね」

と言うと、ルナ、

「ほかにないの?」

とさらに聞くと、レンは正直に話した。

「あと、九という子がいうところの楽しんでいなかったことかな。私たちはローカルグループで孤立していたりいじめにあっていた。結成した当時はそいつらに逆襲したいという気持ちでいっぱいだった。そして、逆襲が成功したあとはその成功した勢いとスクールアイドルのトップになりたいという思いが強くなって結果的にスクールアイドルのトップに上り詰めた。トップに上り詰めたあともそれを維持するためにいろんなことをした。けれど、そのどこにも九がいう楽しさというのはなかった。私たちってあまりに急ぎすぎたのかもしれないね。自分たちのことだけ考えてしまい、とても大切なこと、スクールアイドル、そして、ラブライブ!を楽しむことをね」

これにはカレンも、

「私の分析にもそれが欠けていました。自分たちのことだけで精一杯だった。そのために本当に大切なことを忘れていたのかもしれませんね」

と言うと、ルナは、

「楽しむこと、私たちはそれだけで負けたのですか…」

と言っているそばから、

「また、みんなで楽しみましょう」

と、九がルナのもとへ駆け寄ってきた。それにルナは九に、

「私たちが負けたのは楽しまなかったからですか?やっぱり負けるして巻けたのですか?」

と聞きなおすと、九は笑いながら力説した。

「私は思うんだ、ラブライブ!は、スクールアイドルは、楽しんでなんぼの世界だと。だって、スクールアイドルって、みんな楽しんで、ほかのスクールアイドルと楽しんで、そして、日本中で、世界中で楽しめる、そんなとても楽しいものだよ。ルナちゃん、そんなにがっかりしないで。今回は楽しめなかったけど、次回から楽しんでいけばいいんだよ」

これを聞いたルナ、

(みんなと楽しむこと。それって素晴らしいことなのかな?)

と、少し疑問に思うも、その隣にからレンが、

「そうだよ。次回から私たちも楽しんでいけばいいんだよ」

と、九の意見に賛同すると、カレンも、

「そうです。私の分析以上に楽しむことが素晴らしいことなのか、今回の経験で得ることができました。私たちだって楽しむことができますよ」

と、自分の意見を言った。

 これを聞いたルナ、

(レンとカレンが彼女(九)の意見に賛同している。私たちが勝負に負けた理由、そして、今の私たちにとって欠けているもの、それって、楽しむことなのかな。ちょっと疑問だけど、今はそうしておこう)

と思い、

「そうですね。今度からは楽しんでいけばいいんですね」

と、口を合わせるように言った。

 だが、このときはまだルナの心の中にはまだ建造への忠誠心、いや、依存が残っていた。建造が立てた学校、自分が通う土居建造記念高校に対する愛着度も強かった。そんなルナであったが、この後、土居建造記念高校の廃校というかたちで残っていた依存心が粉々に崩れていってしまうのであったが、その話は別の機会にしておこう。

 

「このあと、前の学校(土居建造記念高校)が廃校となったとき、また建造様のことでまわりとトラブルとなり、私は心を閉ざしてしまいます。けれど、そんなとき、レンが九に直接メールを送って、この島、九龍島に招待するように仕向けたんでしたよね。で、そのメールを見た九は私のことを心配して自分の貯金をすべておろして、私たちをこの島に招待したのでした。そして、スクフェスの一件で私は九やほかのスクールアイドルたちに心を開きました。その後、私たち3人は一緒に相談して、この島、九たちがいる九龍高校に編入しました。これで私たちバックスターの誕生と成長、そして、栄光と挫折の物語はこれにておしまいです」

と、ルナは島風に吹かれながら話を締めようとする。

 が、

「ルナちゃん、その話、まだ続きがあるでしょ!!」

と、丘を駆け上がってきた九に言われると、ルナ、

「そうでしたね。その話の続きでしたね。それをするために、九、ちょっとお話があるのだけど」

と言って、九の前に行く。そして、ルナは九にあるお願いをした。

「実はね、九に私たちバックスターの再建をお願いしたいの。だって、九だったら、私たちが持っていなかった「楽しさ」というものを与えてくれると信じているから」

これに、九、すぐに、

「いいよ。でもね、こちらからもお願いしたいことがあるんだ」

と言うと、ルナ、

「なに?」

と聞きなおす。

 すると、九はルナの言葉を聞くと、すぐにあることを言った。

「実はね、私たちをバックスターにいれてほしいんだ。だって、私、ルナちゃんと一緒にもっと楽しみたいんだ。ルナちゃんから見える世界、もっと見てみたいんだ。だから、お願い、バックスターにいれて~」

これにはルナ、

「それはいいけど、九以外に誰がはいるの?」

と聞く。九はすぐに、

「え~とね~、私とルナちゃんと~、あとは~」

と、なにかを思い出そうにも思い出せない。これに怒ったのか、

「九、私の名前を忘れないでよ~」

と怒るように言う多恵と、

「そうですよ。私は九と幼馴染なんだから、忘れないでよ」

とひろ子、2人があらわれた。

 そして、ルナ側からも、

「このメンバーなら絶対に新しい世界が見えますよ」

と、レンが言うとともに、

「私の分析によると、この6人なら無限の可能性を秘めています。絶対にです!!」

と、カレンも登場する。

 そして、九は元気よく言った。

「私たち6人で新しいグループ、新しいスクールアイドル、「バックスター with アイランドスターズ」を作っちゃおう。そして、大きな海原を駆けて新しい世界を作っちゃおう」

これにルナも、

「うん、私たちだけの新しい世界、作っていこう!!」

と、みんなと一緒に叫んでいた。そのとき、ルナは思った。

(これからは建造様なしで生きていける。だって、自分には九たち5人がいるから。

だから、建造様、見ていてください。新しい私たちが活躍するステージを見ていてください)

と。

 そして、ルナは大声で叫んだ。

「私たちのこれからの物語(ストーリー)、新生「バックスター with アイランドスターズ」の物語(ストーリー)はこれからも続くのです!!」

 

 



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スピンオフ とある建造伝
とある建造伝 第1話


 1989年、去年ごろから始まったバブル景気は今や絶好期を迎えていた。株、土地、そのほかすべてが値を上げていく。それにともない、町中にお金の嵐が吹き上がる。人々は物をみさかいなく買っていく。株、土地、絵画などなどを日本中、いや、世界中から本当にみさかいなく買い続けた。それほどこの時代を生きる人たちの金銭感覚はマヒしており、これから起こるであろう不景気のことすら忘れて今の時代を謳歌していた。

 そんななか、東京に小さな建設会社があった。土居建設、のちに業界でも中堅企業として名をはせる会社であるが、1989年ごろはまだ下請けのさらに下の孫請けの地位でしかなかった。

 そんな土居建設にもいつもの朝が訪れる。

「う~ん、気持ちいい朝ですなぁ。さあてと、今日も1日頑張りましょうかね」

と言って会社の外に出てきた人物、この人こそこの土居建設の創業者、そして社長の土居建造である。建造は東京で一旗あげようと5年くらい前に東京に出てきた若者である。そして、建造は東京に出てくるなり建設会社を興した。小さいながらも一国の主となった建造はこれまで大手建設会社の孫請けをせっせとこなしていくことで、まわりから信頼を得ていた。そして、バブル景気により、全国各地で建物、博覧会、などなどが次々と作られることにより、その仕事(ただし、孫請けだけど)を次々と獲得、時代の流れにのって今やその波にのろうとしていた。

 そんな建造だが、大親友でなおかつ仕事のパートナーというべき若者がいた。

「おい、建造。また株を買ったんだって」

この男、名を清水大地、建造と同じくらいの年齢で、彼も建造と同じく地方の出身であり、その地方というのが、鹿児島県の南に浮かぶ島、九龍島だというのだ。彼も5年前に東京で一旗あげようと九龍島を出て東京に進出してきたのだ。そして、ほどなくして、たまたま入った居酒屋で建造と会い、お酒を飲んで意気投合。その際、建造が建設会社を興すと言ったので、自分が一緒に会社を盛り上げてやると言ったため、共同で土居建設を創立したのだ。その後、大地は営業で仕事を獲得し、建造が現場で指揮をとるという2人3脚でここまで会社を盛り上げていた。

「おうよ。株はどんどんあがっていく。安いうちに買って高くなったら売る。そうすればその差額がうちに転がり込んでくる。そうしてら、社員の福利厚生のたしになるからよ。今がその安い時期なんだぜ。今のうちに買わないと、将来高くなってからじゃ遅いんだぞ。絶対に損はしないよ。だって、今日も明日も必ず値上がりするからよ」

と、建造が言うと、大地はすぐに、

「そう言ってこの前はどこかの地方の知らない土地をあっさり買っていたな。知らないぞ。土地や株は絶対値下がりしないとしても、きっといつかは損するぞ。あんまり熱をいれるな。絶対に後悔しかしないからな」

と言うと、建造はすぐに、

「そんなの、心配しなくてもいいぞ。特に土地は絶対に値下がりしない。だって、値下がりするどころか、いつも値上がりしているしよ」

と、大地の肩を叩き安心させようとしていた。事実、このときは土地神話といって、土地は絶対にずっと値上がりするという安全神話というべき考えが広がっていた。それがこの時代の人々が次々と土地を買っていく現象を引き起こしていた。なので、建造が軽い気持ちで土地を買っていてもおかしくなかった。むしろ、土地を買って値上がりしたところを売れば、その差額分利益となる。むろん、土地は絶対に値上がりする、それがずっと続くとなればなおさらである。そんなことを信じて建造は土地を買っていたのだ。

 そんな建造であるが、そのとき、大地にあることを言った。

「たしか、大地の夢って自分の島にリゾート地をつくることだったよな」

これには大地、

「そうよ。今や九龍島は人口が減っていくばかり。つい最近、島の人口が1000人をきったそうだ。それなら、九龍島でリゾート開発して一山当てれば、九龍島はもっと賑やかになる。賑やかになれば人口も増える。それをするためにリゾートを自分の島に作りたいんだ」

と、夢を語った。この時代、地方の衰退が問題化していた。東京などの大都市に人々、特に若者が地方から集まるようになると、それにより地方の人口が減り、結果、地方が衰退していく構図となっていた。そこで、全国各地で地域振興のためにリゾート開発が盛んに行われていた。たとえば、長崎のハウステンボスや北九州のスペースワールド、宮崎のシーガイア、北海道のトマムリゾートなどなど。そして、国もそれを見越してリゾート法をつくり、リゾート開発をする企業や地方を法律などで優遇していた。その結果、全国各地、いろんなところでリゾート開発という名の工事が盛んに行われていた。大地はその流れにのるかたちで島を盛り上げたいと思い東京に進出、そして、建造と出会った。そして、建造と一緒に建設会社を興し、大きくし、その会社の力で島にリゾート地を作ろうと夢見ていた。

 そんな大地の夢について、建造は、

「そうか、そうだよな。男っていうのは地元に錦を飾りたいものだよな。まえにも言っているが、この俺も力を貸すぜ。絶対にこの会社を大きくして、おまえの地元、九龍島に一大リゾート地を作ってやろう。それがおまえの夢であり、俺の夢でもある」

と、大きな声で大地に言うと、大地、

「本当にすまない。やっぱ、おまえは俺にとって最高のパートナーだぜ」

と、建造を称えた。

 その後、株価は1089年の年末に、今でも破られていない株価のめやすとなる日経平均株価3万8千円をつけた。むろん、土地もどんどん値上がりし、地上げも多発するなど、一種の社会問題ともなっていった。だが、人々は思っていた、これから先も土地や株は値上がりしていく、そして、この時間は永遠に続く、そんな幻想にとりつかれていた。このあとの悲劇を予見できずに、いや、その感覚すらマヒしていた、当時の多くの人々は。

 

 が、夢幻はいつかははかなく散ってしまうものである。1990年3月、日銀はあまりにも急騰していた株価、地価(土地の価格)が実体経済、つまり本来の経済の姿とかけ離、れているとして、不動産の融資を規制(総量規制)したり、金融引締め策をとるようにした。これにより、1980年から土地の価格が大幅に下落、いや、暴落していった。また、

日経平均株価も1990年にはいるとみるみるうちに暴落、同年10月にはついに2万円を切るところまでいく。ぞくにいうバブル崩壊である。

 人々はわが春と思い土地や株などを買いあさっていたが、バブル崩壊とともにその株や土地の価格は買ったときの価格すら下回るほどに下落していく。そして、売ろうにも買い手がいないので売れなかったりする。それが不良債権(売ろうとしても売れず、その買ったときの資金の回収すら困難となった土地、株などのこと)としてこれから先、個人や企業を苦しめることになった。

 このことは建造にもあてはまった。1994年ごろ、

「なんで株価が2万円をきっているんだよぉ。89年末には3万8千円だったのに、いまやそのときの半分以下になってしまった。それに、土地はどんどん値下がりしている。「絶対にあがります」って言うから買ったのに、今となってはその買値よりも下回った。売ろうにも売れない。土地ってずっと値上がりするもんでしょ。土地神話ってやつ、その神話は続くものなんでしょ」

と、建造は経済新聞を見て愚痴を言っていた。それを見ていた大地、

「だから言っていただろう、あまり熱をいれるなって。熱をいれるまえに売っておけば損しなくてすむんだぞ。それに、土地神話というのはただの幻だったんだ。それにはやく気づけば今みたいにならなくてすんでいたんだぞ」

と、建造に諭す。

 だが、建造はその大地の言葉に黙ったままだった。それを見ていた大地、

「もしかして、会社の資金を勝手に使っていたのか。その資金をもとに株や土地を買っていたのか。そんなことをしたら、もしものときに困るんだぞ。それに私的目的で会社のお金を使うのはいけないことなんだぞ」

と、建造に怒るも、

「これは会社のためだったんだ。株価や土地の価格があがれば、それだけ会社の資金も増える。会社を大きくすることもできる。社員に楽もできる。すべて会社のためだったんだぞ。許してくれ、大地」

と、建造は言い訳をする。これを見た大地、

「おまえな、土地神話という幻想につかれたからこうなるんだ。少しは反省してろ」

と怒ると、建造は、

シュン

となってしまった。

 

 こんなこともあって大地はあらためて会社の資産財務状況を見直してみる。すると、大変なことがわかった。会社の資産のほとんどをバブル景気のときに建造は土地と株に投資していたのだ。で、それが今となっては会社の重荷、いや、不良債権化していた。

「これは非常にまずい。このままだと、うちらの会社はちかいうちに倒産するぞ」

と、大地はものすごく心配していた。これは全国的にいろんなところで起こっていた。不良債権により多くの企業が倒産、破産していった。それはこの当時まで国が守ってくるから絶対につぶれないといっていた金融機関、銀行などもその国が守ってくれなくなったこともあり次々に破綻していった。

「これだけ不良債権があると建て直しは難しい。それだけでも大変なのに、今、仕事がどんどんなくなっている」

と、大地はつぶやいていた。事実、バブル崩壊でバブル景気のときに決まっていた工事はどんどん中止になっていた。なので、工事を受注しようにもその影響で工事を受注することすらできなくなっていた。特に孫請けの自分たちの会社は。仕事があるにしてもとても小さな工事のみ。これでは建設会社として経営するにしても無理なはなしである。

「このままだとこの会社はもうじき潰れる。そうしたら、会社を大きくするという建造の夢が潰えてしまう。建造のパートナーとしてそれはさせたくない。仕方がない。腹をくくるか」

大地はそう言うと、奥のほうへと消えてしまった。

 

「ふう、今日はなんとか工事を受注できたな」

と、建造は営業の外回りから会社に戻っていた。建造も会社の会計が火の車、財務状況がとても悪いことは認識していた。それが自分のせいであることも。なので、建造自らなれない営業をしていたのだった。むろん、建造は外回りなどあまりしたことがない。が、建造は現場でリーダーとして働いていたことで、その工事関連の人脈を築いていた。そこで建造はその人脈を活かして少しでも工事を受注できるように営業をしていた。

「でも、これでは会社としては維持できない。もっと大きな工事を受注しないと」

と、建造は会社のことを危惧していた。自分の会社を維持するためにはもっと仕事が欲しいのだが、バブル崩壊で国、都道府県、市町村など自治体が工事を発注する、いわば公共工事すら減らされていることもあり、工事の受注を得ることは難しくなっていた。それは建造の人脈をもってしてもだ。どの会社も明日を生きるために死に物狂いで喰らいつこうとする。どんな条件でも工事を受注しようと必死になっている。そして、工事を受注することすらできない建設会社は消えていく運命だった。それが大きな工事ならなおさらだった。それほど建設業界は苦しかったらしい。

「今日の受注は小さいが、それでも1週間ぶりの工事だ。今のうちに用意してないと」

と、建造はすぐに資料作成に取り掛かる。今日とってきた仕事は小さな町の道路補修工事。それでも建造は久しぶり腕がなった。小さい工事をこつこつとこなしていけば、それが信頼となって必ず大きな工事に結びつく。建造はそう考えていた。事実、小さな工事をこつこつとこなしていったことで、建造は建設業界で人脈を築くことができた。それが今活かされようとしていた。

 が、事務室に入った建造はなにかに気づく。

「あれ、なんか隣の台所からガスのにおいがするぞ」

そう建造が言うと、事務室の隣にある台所に通じる扉を開けようとするが、あけることができない。なにかによって扉が封鎖されているのでは、そう考えた建造はいきおいをつけて扉を無理やり蹴り飛ばそうとした。

「えいっ!!」

と、建造はなんども扉を蹴り飛ばす。すると、

バカッ

と、その扉は台所のほうに倒れていった。

「なんかガス臭いな」

と、建造はなかが暗い台所に充満するガスをかいでいた。このままだとガス爆発するのではと思った建造はすぐに、

バカッ

と、台所の窓を強引に開けたが、そのとき、なにかガムテープみたいなもので目張りしていることに気づく。

「ガスつけぱなっしだ」

と、ガスを止める建造。

 すると、そこには…。

「大地、だいち~!!」

と、大地の変わり果てた姿が見えた。建造はすぐに気づいた、大地はガス自殺をはかったことを。

 建造はすぐに救急車を呼び、病院に駆け込む。が、手遅れだった。

「なんで、なんでなんだよ~」

と、建造は病院のなかで叫びまくる。大切なパートナー、大地を失ったのだ。それは建造にとって死よりもつらいことだった。

「俺がしっかりすれば大地を失わずに済んだんだ。それなのに、それなのによ~」

自暴自棄になりかける建造。

 そんなとき、

「土居(建造)社長、これが大地さんの近くにありました」

と、会社の従業員があるものを建造に渡した。

「なんだこりゃ」

と、建造はそれを受け取る。それは茶色いちょっと大きな封筒だった。その封筒を開けてみる。そこには、

「なんだこりゃ。これって生命保険の証書じゃないか。あと、なにかはいっているな」

と、証書とそのなにかを取り出す。そして、それがなんかの手紙だと気づいた建造はすぐに、

「え~と、なになに…」

と、その手紙を読んでみる。内容はこうだった。

「建造へ おまえがこれを読んでいるってことは、おれはこの世にはもういないだろう。なので、この手紙を残す。俺には多額の生命保険をかけていた。俺は少ない給与から毎月その生命保険の掛け金をかけていた。それも10年以上も。保健金の額も大きくなっているだろう。建造よ、頼みがある。その多額の保険金で会社を立て直してくれ。俺はいなくなるが、会社はきっとよみがえるだろう。そして、仕事にまい進してくれ。余計なことは考えるな。仕事に集中していればきっと世の中はきっと建造に微笑みかけてくれるだろう。建造よ、達者でな、あばよ。 大地より」

この手紙を読んだ建造、

「俺のためにあいつは死んだんだ。ごめんよ、ごめんよ」

と泣きじゃくる。そして、建造は保険の証書を見る。

「えっ、あいつは俺のためにこれほどの大金を残したのか」

と、建造は驚く。その保険金の額は建造の会社の不良債権、負債を含めた借金の総額を超え、当面の運転資金を賄えるほどの額だった。で、受取人は建造となっていた。

 その証書を見た建造、すぐにあることを決意する。

「大地よ、おまえの覚悟、たしかに受け入れた。俺は心を入れ替えるよ。これからは仕事のことだけ考えていく。おまえが残したお金で絶対に会社を大きくしてやる。おまえの犠牲は無駄にしないよ」

さらに、建造はあることを強い思いで決意する。

「そして、大地の夢、おまえの故郷、九龍島に必ず一大リゾート地を作ってやる。おまえは九龍島をリゾート開発するという夢があったな。その夢、俺が引き継いでやる。九龍島に一大リゾート地を造り、九龍島を盛り上げてやる。だから、大地、安らかに眠れよ」

そして、建造は大地のために黙祷した。

 



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とある建造伝 第2話

 大地の自殺はその後、事故死として扱われた。自殺だと保険金が下りないことが多かったからだった。建造はそれを見越して事故死に見せかけたのだった。

 こうして、多額の保険金を受けた建造はそれをもとに借金をすべて返し、不良債権となっていた株や土地を全部償却、余ったお金で会社を切り盛りしていた。むろん、すぐに仕事が増えるわけではない。もちろん、工事が増えることもない。それでも建造はたとえ小さな工事、人がいやがる工事をすすんで引き受け、多くの工事を手がけることになる。それが建造の会社、また、土居建設の信頼にもつながり、それが次の工事への依頼につながっていった。このような好循環により、土居建設は少しずつであったが大きくなっていった。

 

 そして、ときがたって2000年、建造の会社土居建設は孫請けから下請け、そして、元請けができる会社へと成長を遂げていた。つまり、大きな工事を直接受注できる会社にまでになったのだ。

「ここまで長かったな、大地」

と、建造は大地の遺影の前で祝い酒を飲んでいた。

「大地よ、俺の会社は地方ではあるが、元請けとして初めて受注した工事を完遂できた。ここまで成長できたのもおまえのお陰だ」

と言うと、これまでの苦しみを思い出していた。大地の残したお金で最初は小さな工事、人がいやがる工事を数多くこなしていくうちに信頼を得ていった土居建設。そして、それを続けているうちに大手建設会社から直に下請けの依頼を受ける。建造はこれはチャンスということでその下請けを大手建設会社の期待する以上のものをつくりあげた。

「俺は下請けであっても全力でやった。下請けとしてはそこまでお金をもらっていない。そのため、工事をしてくれた従業員には十分な賃金をあげることまではできなかった。でも、それでも、従業員たちはこの土居建設の将来のため、それを我慢して俺と一緒に頑張ってくれた」

と、建造は下請けの工事のときのことを思い出すと、さらに、

「そして、その工事を認めてくれた地方の市長さんからこの俺に直接「元請けとして工事をしてくれないか」と言ってきてくれた。俺はこれこそ土居建設の命運をかけるときがきたと思ったよ」

と言うと、初めて手がけた元請けの工事のことを思い出していた。その地方の市長は戦前からある市民会館を建て替えようと計画していた。そんなとき、土居建設が下請けとして工事していた現場に偶然見学に来ていたその市長は、下請けではあるが熱心に働く従業員たちに心を打たれ、土居建設を元請けとして直々に迎え入れようとしていた。

「だけど、その市民会館は昔からあるとても美しい建物だった。だから、その立替工事には反対する市民も多くいたな」

と、建造は反対する多くの市民たちのことを思い出すと、すぐに、

「そこで俺は元請けとして工事を受注するとすぐにある建築デザイナーに全体的な設計を依頼した。でも、依頼をかけたときのデザイナーの苦しい表情、あれには俺も悪いことをしたなと思ったよ」

と言うと、そのデザイナーのことを思い出していた。建造はそのデザイナーに新しい市民会館の設計を依頼したとき、あることをお願いした。それは、

「外観は残しつつ、中は最新の設備を持つ立派な建物にしてほしい。あと、耐震もしっかりね

これには建築デザイナーも困らせてしまった。が、この建築デザイナーはこの要求をすべて叶えるぐらい立派な設計図を作成してくれた。その設計図をもとに建造は自ら陣頭指揮をとり、会社の総力を結集して一生懸命取組み、新しい市民会館を完成させた。

「そして、落成式のとき、昔の外観そのままの姿を見た市民のみなさんはとても喜んでいたな」

と、建造は新しい市民会館の落成式のときのことを思い出していた。落成式のとき、昔からある美しい建物の姿は残っていたことに反対していた市民たちですら喜んでいたという。ただ、外観はそのままでも、中は最新設備を整えているだけでなく、耐震もしっかりしている。これ以上ない出来だった。

「大地よ。俺は元請けとして第一歩を踏むことができた。これでおまえの故郷、九龍島に一大リゾート地を造るというおまえの夢にむかうための第一歩をようやく踏むこともできる。大地よ、天国から俺の活躍を見ててくれよ」

と、建造は大地に対してこれからも頑張っていくことを誓う。

 そんなときだった。

「社長、市長がお見えになっております」

と、建造の部下が市長が来たことを告げる。

「わかった。応接室に行く。市長をそこに通してくれ」

と建造が言うと、部下はすぐに、

「わかりました」

と答え、建造のもとを離れる。

「さて、私になにか用事かな」

と、建造は襟を正して応接室に行く。

 

「おお、市長殿、こんにちは。私になにかごようでしょうか」

と、建造は応接室で市長をあたたかく迎える。それに市長、

「実はな、あなたを見込んでお願いがあるのじゃが」

と言うと、建造、

「この私にですか。私でよければ」

と言うと、市長は建造の近くに移動し、その願いを言った。

「実はな、あなたに縁談をもってきたのだ。その縁談を受けてくれないか」

これには建造、

「えっ、私に縁談ですか。でも、会社はまだ成長途中です。まだ売上なども少ない。そんな私に縁談なんてはやいですよ」

と謙遜するも、市長は建造の耳元に近寄り、小さい声で話した。

「実はな、その縁談のお相手なのだが、こそこそ…」

「えっ、うそでしょ!!」

と、縁談の相手の名を聞いた建造は驚いてしまう。なんと、その縁談の相手は、その市長が治める地方出身の大物政治家の娘であった。その大物政治家はぞくにいう建設族、つまり、建設業界関係を管理している国土交通省に顔がきく政治家だった。それだけじゃない。その政治家はその建設族のなかでも有力な政治家であり、大手建設会社にも顔がきくことでも有名だった。

(これはとんでもないことだ。この政治家と強いパイプを築けたら、今後、俺と大地の夢、九龍島での一大リゾート開発を優位に進めることができる。こんなチャンス、なかなかないぞ)

と思う建造だったが、

(ちょっと待て。でも、なんでまだまだひよっ子の俺にこんな大きな縁談をもってきたのか。これってなにかのわな?)

と、市長を疑ってしまう。そこで、建造は市長にある質問をした。

「なんで、建設業界のなかではまだまだひよっ子の私にこんな大きな縁談をもってきてくれたのですか」

 これには市長、すぐに、

「それはな、あなたが工事を引受けてくれた市民会館の立替工事はバブル崩壊のときからこの地方では懸案事項だったからじゃよ。戦前のときからある由緒正しい建物、かつとても美しい建物だったから、その立替は昔から反対が多く、その立替計画を立てては消え、立てては消えの繰り返し。それをあなたはいとも簡単にしてみせた。それも反対する多くの市民たちすら納得するくらいにな。そのことをあの方(大物政治家)に話したら、とても興味をもってくれたらしいでな」

と言うと、市長は建造に向かってこう言った。

「その方(大物政治家)はあなたの将来性を見越して縁談をもちこんだのだ。だからこそ、この縁談を受けてくれてほしい。あななの将来のためにもな」

これには建造、

「はぁ」

と、ただ答えるしかなかった。が、市長はさらに、

「そして、あなたはまだ若い。まだまだ成長できるが、家庭をもつことで守るものができ、さらなる飛躍ができる。どうだ、やってもらいえないだろうか」

と言うと、建造、ついに降参。

「わかりました。その縁談、受けましょう」

と、大きな声で答えた。

 

 その後、建造はその大物政治家の娘とお見合いをする。その娘の名は奏。

「はじめまして。土居建造と申します」

と、建造が挨拶をすると、奏も、

「奏と申します。どうぞよろしくお願いします」

と、大和撫子らしく物静かに挨拶する。

 お見合いは静かに進められていた。最初緊張していた建造だったが、物静かに、それでいて優雅に話をあわせる奏にいつしか心ひかれるようになる。

 そして、2人だけの時間がくると、

「ところで、奏さんはなにが得意のですか?」

と、建造が早速奏に聞くと、奏、

「そうですね。料理、裁縫などなど。花嫁修業といいますか、いい花嫁になるためのことはすべてしてきたのです。それに…」

と言うと、建造もつられて、

「それに…」

と言うと、奏はすぐに、

「ピアノを少ししておりました」

と言うと、建造は、

「そうですか。それならお願いがあります。ピアノを弾いてくれませんか」

と、奏にお願いをすると、奏、

「わかりました」

と、お見合い会場にある備え付けのピアノを弾く。

♪~

そのピアノの音色を聞いた建造、

(なんていい心地なんだ。これまで仕事だけをしてきた自分にとって安らぎを与えてくれているみたいだ)

と思うと、

「とてもいい曲、とてもいい響きですね。まるで奏さんをあらわしているみたいだ」

と言うとともに、

(俺は決めた。この奏さんと結婚しよう)

と、奏と結婚する意志を固めた。

 

 それから1年のあいだ、元請けとして初めての受注で成功を収めたことで土居建設に大型工事がどんどん舞い込むことになり、建造もさらに忙しくなったが、そのかたわらで奏と愛をはぐくみ、翌年、建造と奏は結婚した。

 だが、結婚したにもかかわらず、建造はあまり家には帰らなかった。別に愛人ができた、とかうわついたものではなかった。結婚したことで建造はいっそう仕事にまい進するようになった。自分の夢、大地の夢、九龍島に一代リゾート地を造る、それを叶えるだけではない、奏との生活を守るととに、自分の会社、土居建設をより大きくするために。

 そんな建造、仕事が予定よりはやく終わったので久しぶりに奏のいる、そしてピアノが置いてある家に帰ることになった。

「奏よ、ただいま。元気でいたか」

と、家に帰るなり、奏にただいまを言う建造。

「おかえりなさい。お風呂にしますか、それともお食事にしますか?」

と、奏は建造に訪ねるも、建造、

「久しぶりの帰宅だ。そこまでかしこまらなくてもよい」

と、奏に優しく言う。実際、建造にとって1ヶ月ぶりの帰宅だった。そんな建造の気遣いに奏、

「はいはい。でも、私はいつもケータイであなたの声を聞いていますから、久しぶりとは思わないのですよ」

と微笑み返す。あんまり家に帰らない建造であったが、1日に数分程度奏と電話で会話をしていた。そのため、奏にとって久しぶりとは感じていないらしい。

 そんな奏に対し、建造、

「そうか、そうだったな。いつも(電話越しだけど)会話をしているから久しぶりじゃないな」

と、奏に同意する。

 そのあと、お風呂を浴びた建造は奏と一緒に遅めの夕食をしていた。

「あなた、明日は東京で会合ですか?」

と、奏はご飯を食べながら建造に聞くと、建造、

「そうだ。明日は会合というより勉強会が行われる。俺はそれに参加する」

と答えた。建設業界、そして、建設に関係する省庁に顔がきく大物政治家の娘、奏と結婚したことにより、建造はその大物政治家のつてを使い、東京にある大手建設会社や中央省庁の人たちと交流することができた。そして、明日には若手の人たちが集まって勉強会を開くことになった。

「で、そのあとは全国各地の現場をまわるのでしょ」

と、奏が聞くと、建造、

「そうだ。俺にとって現場は重要だ。1回は見ないと気がすまない」

とたんたんに言う。奏との結婚は建設業界、中央省庁と強いパイプをもつだけではなかった。元請けとして初めての受注の成功のことが奏の父、大物政治家によって全国に広がっていったのだ。そして、それがもとで全国各地から工事の依頼が殺到していたのだ。だが、建造はその工事を選んでいた。ふつうならここぞ好機ということで、すべての工事を請けるべきなのだが、建造は違っていた。最初のうちはあまり広げすぎると工事の管理が行き届かなくなり、どこかで破綻する。それを防ぐため、自分たちができる工事を選んでいた。これは建造がバブル景気の波にのり、株や土地などを次々と買いあさった結果、バブル崩壊とともに不良債権となり、多額の借金が残ったことが教訓となったためだった。とはいえ、選んだ工事も全国各地に点在するため、建造は飛行機を乗り継いで全国をまわっていた。それほど現場を大事にしていた。

「そうですか。それなら、今日、私も1杯付き合いますよ」

と、奏は建造の仕事に対する熱心さを認めつつ、建造にお酒を勧めた。

 その後、2人はお酒を飲んでいるうちに奏から建造に質問をした。

「ところであなた、あなたの夢ってなんですか?」

これを聞いた建造、すぐに、

「これは秘密だ。誰にも話すなよ」

と言うと、奏、

「はい、わかりました」

と答える。

 そして、建造は自分の夢を語った。

「俺は九龍島という南の島に一大リゾート地を造りたいと思っている。これは俺だけじゃない。俺のかつてのパートナーだった大地の夢でもあった。俺はその大地の意思を受け継ぎこの夢を叶えたいと思っている」

これには奏、

「それはいいことじゃありませんか。あなたのかつてのパートナーの夢を引き継ぐなんて素晴らしいことじゃありませんか」

と、建造を褒めると、建造、

「おまえはなにも言わないのか。かつてリゾート開発が盛んに行われたけど、そのほとんどが失敗に終わっているんだぞ」

と、奏に言う。実際、全国各地でリゾート開発が盛んに行われていたが、その多くが失敗に終わり、いまやリゾート開発をすることすら難しくなっていた。

 そんな建造の心配をよそに、奏は堂々と、

「それでも夢をもつって大切なことですよ。今や夢をもたない人たちが多くなりました。そのなかで、今だに大きな夢をもっているなんてすごいと思いますよ」

と言うと、建造、

「本当か。それならよかった。ありがとう、奏」

と、奏に御礼を言った。

 が、そんなときだった。

ゴホン ゴホン

と、奏から大きな咳が聞こえてくる。

「奏!!」

と、心配する建造。これには奏、

「あなた、心配しなくてもいいですよ。いつもの咳ですからね」

と言うも、建造はすぐに、

「なにがいつものだ。おまえは体が弱いんだから、しっかり休むように」

と、奏に注意する。が、その奏は、

「そんなこと、少しでも休めばいいだけのことですよ」

と強気で言うも、すぐに

ゴホン ゴホン

と、また咳をする。建造はついに、

「奏、今から寝室に行くぞ。俺も休むからおまえも休めよ」

と言うと、奏、

「そうですか」

と答えていた。

 実は奏、生まれたときから体が弱かった。そのため、咳をよくする。今回も我慢してッ咳を止めていたが、それすらもかなわず建造の前で咳をしてしまった。良妻賢母、大和撫子の奏であったが、体が弱いので、外に出かけることは難しかった。買物にしても配送で送ってもらうか、ネットで取り寄せるしかなかった。そんな奏であったが、建造はそんな奏を愛していた。体が弱いことを理解するとともに、奏を大事にしていた。

 

 そんな建造と奏であったが、なかなか家に帰ってこない建造に対し、いつでも帰ってこれるように支度をしている奏、仲むつまじい生活を送っていた。そんな2人に対し、点からの贈り物が届いたのは2006年初めごろだった。

「奏さん、おめでとうございます。妊娠してますよ」

ある病院の産婦人科の看護婦から奏に妊娠したことを言うと、奏、

「えっ、本当ですの!!」

と驚く。奏、すぐに建造にメールを送ると、すぐに奏のケータイが鳴る。奏、それをとると、

「本当にそうなのか。よかったじゃないか、奏。ヤッター、ヤッター」

と、建造は奏のケータイからも大きく聞こえるくらい大きな声で喜んでいた。

 

 そして、2006年8月10日…。

「生まれましたよ。大きな女の子ですよ」

と、分娩室の扉の前で待っていた建造に助産婦さんが赤ちゃんが生まれたことを告げると、建造は、

「やったー。ついに俺たちに待望の赤ちゃんが生まれた!!」

と、大きく喜ぶとともに、

「あの体が弱い奏のことだ。あまり無理をしたと思っていたが、それでも無事だったのはとても嬉しいぞ。本当に頑張ったな、奏」

と、さらに喜んでいた。

 

 その翌日。

「大きな赤ちゃんですね。とても健康ですよ。いや、とても体が丈夫に見えますよ。これなら将来は安泰ですね」

と、看護婦から赤ちゃんのことを言われると、建造、

「そうですね。私たちにとってこの赤ちゃんは希望の星となります。本当にありがとうございました」

と、看護婦さんに御礼を言う。

 その後、建造は赤ちゃんと一緒にいる奏のそばに行くと、すぐに、

「奏、よかったな。大変丈夫な赤ちゃんだ」

と、奏を褒めると、奏は、

「それはありがとうございます、あなた」

と逆に御礼を言う。

 が、そのときだった。

ゴホン ゴホン

と、突然咳をする奏。それを見た建造、

「奏、おまえ、まさか無理しすぎたんじゃないか」

と、奏を心配すると、奏、

「そんなことないですよ。私も赤ちゃんもともに大丈夫ですよ」

と、元気な姿を建造に見せる。が、建造はすぐに、

「あまり無理するな。ちゃんと横に寝てろ」

と言うと、奏、

「そうですか。それじゃそうします」

と、ベッドに横になった。

 そんな奏に対し、建造はあることを言った。

「奏、この子の名前、もう決めたぞ」

これには奏、

「名前ですか。なんでしょうか?」

と聞くと、建造はこう答えた。

「多恵。多くの恵みをもたらす。この子は将来、俺みたいに多くの人たちに恵みをもたらす。そして、奏みたいに優しい子に育てたい。おれはそう思って多恵と名付けた」

これには奏、

「とてもいい名前ですね。多恵、あなたの名前は今日から多恵ですね」

と、赤ちゃんを癒す。これには建造、

(この赤ちゃんは私たちの宝だ。絶対いい子に育ててやる)

と心に決めるも、逆に、

(奏、無理していなければいいのだが…)

と、奏のことを心配する建造であった。

 

 



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とある建造伝 第3話

 だが、その心配は現実のものとなった。奏はこの後、体調不良をおこし、入退院を繰り返していた。だが、建造は仕事に忙しくて奏や多恵の付き合いができない。多恵に関しては奏のかわりにベビーシッターを雇って、そのベビーシッターが多恵を育てていた。建造はわかっていた。奏は無理して多恵を生んだ、そのために弱い体をさらに弱くなったのだと。

 そして、2008年。

「えっ、奏が倒れた!!」

建造は奏に付き添っていた看護婦からの突然の電話で奏が倒れたことを知ると、このあとの仕事をすべてキャンセルして家に戻った。

「奏、大丈夫か。ちゃんとしているか」

と、奏のところに駆け寄るも、奏は、

「だ、大丈夫ですよ。心配しないで」

と、弱弱しい声で答える。これには建造、

「あまり無理をするな。ほら、ベッドに戻るぞ」

と、奏をベッドに戻そうとする。

 が、

「私はベッドには戻りません」

と、奏、頑固に拒否。そして、

「ピアノのところに連れていってください」

と、奏は家にあるピアノのところに連れてってほしいと建造にお願いすると、建造、

「わかった」

と、奏をおぶって家の中にあるピアノのところに連れていく。

 そして、ピアノの前にある椅子に奏を座らせた建造はすぐに、

「奏、ピアノだぞ。なにがしたいのだ?」

と、奏に聞くと、奏、

「ちょっとピアノ、弾きたいの…」

と言うと、建造はすぐに鍵盤の蓋を開けた。

 すると、奏はある曲を弾いた。

♪~

この曲を聴いて建造はすぐに気づいた。お見合いのときに弾いた曲だった。

「奏、おまえ…」

と、建造が奏に言うと、奏、

「覚えていますか。お見合いのとき、この曲を弾いてあなたは褒めてくれましたよね。私、嬉しかった。だから、私はあなたと結婚したの。そして、私はいつまでもあなたのことを愛しています。これからもずっと…」

と言うと、すぐに奏は鍵盤によりそうように倒れてしまった。

「奏、奏、かなで~」

と、建造は倒れた奏を抱きしめ、いつまでも呼び続けていた。

 その後、建造は奏を病院に連れて行くも、助からず、帰らぬ人となった。

 

「奏、奏…」

と、奏の葬式のとき、まるで魂が抜けたみたいになっていた建造にさらなる悲劇が訪れる。 

 まず、2008年、リーマンショックが起こる。これにより、社会全体で企業の資金繰りが悪化してしまった。特にバブル崩壊などで社会全体での建築費が減らされたことで、工事費用が安くなってしまっていた建設業者に強烈なダメージを与えた。

 そして、2009年、政権交代により、「コンクリートから人へ」を合言葉に国などが公共事業を削減した結果、建設業者の仕事も減ってしまう。

 これらのことにより建設業者の倒産・廃業が相次いだ。むろん、建造の会社、土居建設もその影響をもろにかぶってしまう。建造は必死になって無駄なコストを削ったり、出来る限り工事を受注しようとするも、限界を迎えてしまい、結果、会社始まって以来のリストラを敢行。それにより土居建設はなんとかこの窮地を乗り越えた。それでも建造はリストラした社員の斡旋などに尽力した。

 そして、この危機を乗り越えたあと、建造は家で多恵と遊んでいた。

「多恵、奏が残してくれた唯一の宝。俺はこの子になにをすることができるのだろうか」

と、建造は多恵を見つめてこう言った。すると、突然、

「それはいいことじゃありませんか。あなたのかつてのパートナーの夢を引き継ぐなんて素晴らしいことじゃありませんか」

と、昔、自分の夢について語ったときの奏の様子と多恵を重ね合わせてしまった。

「奏!!」

と、建造が叫ぶも、そこにいるのは多恵のみ。これには建造、

「う~ん、幻想か。俺も年かな」

と言う。

 だが、すぐに建造は悟った。

「いや、これは奏が俺に残してくれた伝言だ。自分の夢のため、昔のパートナー大地の夢のために前に進めという暗示なんだ」

 そして、建造は多恵を見てあることを決めた。

「もしかすると、俺もこれから先、いつ死ぬかわからない。それでも俺の夢は誰かに引き継ぐことができる。九龍島に一大リゾート地を造る。大地の夢を俺が引き継ぎ、それを奏は褒めてくれた。そんな夢を引き継ぐのは、俺と奏の子、多恵なのかもしれない。俺は決めた。もしものときのために、俺は多恵に俺のすべてをおしえてやる。いや、帝王学だ。どんなことがあっても、その帝王学をもって多恵が俺のかわりにその夢を叶える。俺は多恵をそんな子に育ててやる!!」

 この後、多恵はすぐに有名私立幼稚園にはいり、帝王学を学ばせたという、建造の夢を叶えるために。ただ、それはまだ幼い多恵を見てまわりからは苦痛に見えたが、多恵にとってはまだ物心もついていなかったので、そんなことあんまり考えていないようだった。

 

 危機があれば必ずチャンスは訪れるものである。そのチャンスが建造、そして、土居建設にも訪れようとしていた。

 まず、1つ目は2011年に起きた東日本大震災をはじめとした自然災害の続発だった。これにより、全国各地で災害からの復旧及び復興工事が必要となり、建造は災害が発生するたびに率先して復旧及び復興工事できるように努めてきた。そのため、全国各地で土居建設は災害が起きるたびにすぐに災害の復旧及び復興工事を手がけるようになった。なおなぜ即急にその工事を手がけることが出来たのかというと、建造がどんなことがあってもすぐに現場へ向かえるよう日頃から準備していたということもあるが、奏の父、大物政治家とのパイプはいまだに健在であり、全国各地の必要となる情報がその大物政治家経由で建造のもとにいつでも届いていたこともあった。

 さらに、2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定すると、日本全体の必要とされる工事量(需要)がものすごく多くなり、リーマンショックと政権交代でかなり縮小されていた建設業界(供給)では全部をまかなえきれない、つまり、需要が供給を追い越す事態となり、建設会社はどこも人手不足に陥っていた。建造はそれに対処するため、数年前にリストラした従業員たちを呼び戻したり、さらには女性の起用を増やしたり、できるかぎりの作業の効率化などして、工事にかかわる人員を出来る限り少なくしようとした。こうした対応で、建造は迫り来る需要に対応とした。だが、一企業がこんなことをしても業界全体としてはまだすべての需要に対応し切れていないのにはかわりなく、それが工事費用の増加へとつながってしまう。それでも工事は必要なので、土居建設としては売上は年を重ねるごとに増えていった。

 そして、2つ目は建造とラブライブ!が邂逅したことである。それは2014年3月末、建造が秋葉原で行われる会合にでるために車で向かっていたときのことだった。

「ふ~ん、最近μ‘sというスクールなんとかがはやっているのかね」

と、後部座席に座っていた建造が運転手に言うと、その運転手は、

「建造様、スクールアイドルですよ。ここ最近若者たちのなかでブームになっているみたいです。そして、そのスクールアイドルていうのはみんな一般の女子高生ですよ。でもって、この近くにあるUTX学園にはA-RISEていうとても有名なスクールアイドルがいるんですよ。そして、今1番輝いているのがμ‘sですね。先日ニューヨークでの生中継ライブが成功したことでその人気がものすごいことになっています。たしか、A-RISEもμ’sもスクールアイドルの甲子園、ラブライブ!となるものに優勝しているみたいですね」

と言うと、建造、

「ふ~ん、そうか、ラブライブ!ね…」

と、なにも考えずに返事だけ返していた。

 が、車は何分たっても動かない。

「おい、まだ動かないのか。もうすぐ会合が始まるではないか」

と、建造は運転手に向かって怒って言うも、運転手、

「それは仕方がないことですよ。だって、このあたりすべて渋滞していますもの」

と、諦めムードで言うと、建造、

「なんだって。なぜなんだ?」

と、運転手に理由を求めると、運転手は、

「だって、今日はそのスクールアイドルたちがスクフェス?スクールアイドルフェスティバルというものを秋葉原一帯で行っていますもの。ものすごい人気ですし、仕方がないですよ」

と、あっさり諦めの表情。これには建造、

「だったら歩いて会合に向かう」

と、さっさと車から降りてしまった。

「こんな忙しいときにイベントなんて聞いたことがない。それだったら会合を秋葉原以外でするべきだった」

と、建造は歩きながら怒っていた。だって、このスクフェス、μ‘sとA-RISEが中心となっていきなり決まったイベントなのだから。なので、会合の場所をすぐに変えるのは難しいのである。

 そんな建造であったが、歩いている途中で、どこからか、

「ラララ~ ラララ~ ララララララララ ラララ~ラララ ララララ ララララ ラ~ララ」

と、美しい歌声が聞こえてきた。

「なんなんだ、この歌声は!!」

と、建造はその美しい歌声がする方向へと走り始めた。

 そして、建造はその歌声が奏でているところにたどり着く。そのとき、あまりにもすごい光景に、

「す、すごい…」

と、建造は圧倒されてしまった。なぜなら、その場所では、

「~♪」

と、μ‘sを中心に100名以上ものスクールアイドルたちが一緒になって「SUNNY DAY SONG」を熱唱していたのだ。それだけでも圧倒されるのだ。だが、それ以上にそれが1つのグループμ’sを中心に元気よく楽しく踊っているのだ。こんなものを見せられては缶化しないのだろうか、いや、感化される!!(反語!!)。

「これがスクールアイドルなんだ。1つの曲を全員で行うなんてすごいの一言でしかない。そして、こんな大きなイベントも女子高生だけの力で行うなんて考えられない…」

と、建造はスクールアイドルたちのすごさを実感していた。このとき、建造は心の中で、

(私はこれまで大地と俺の夢にむかって仕事のみにまい進してきた。しかし、それだとどうしてもまわりからは仕事人間としか見られない。まわりからは面白くないと見られているかもしれない。もうそろそろほかのことでもやっていかないとやばいかな)

と思う。実際、建造は仕事のためだけに生きてきたものだった。大地の死後、その大地の夢を引き継ぎ、仕事にのみ情熱を傾けていた。それは奏がいるときもそうだった。仕事のために建造は家にあまり帰っていなかった。それでも奏はなにひとついやな顔をしなかった。さらに、奏がいなくなり、娘の多恵1人残してもそれは変わらなかった。仕事人間建造、まわりからはそう見られていてもおかしくはなかった。

 そんな建造のなかにあるものがひらめいた。

(そうだ、この機会だ、スクールアイドルというものに係わっていくのもいいかもしれない。だって、こんな大きなイベントを成功させるくらいのものすごいパワーがあるのだから。そして、スクールアイドルはこれからどんどん成長していく。どんどん世界を広げていく存在になるはずだ)

 そう、建造は思い始めていた。これまでの人生を振り返ると仕事ばかり、それではいけないと思ったそのとき、スクールアイドルと出会った、なにかの運命だったのかもしれない、建造にとっては。

 そんな建造、思い立ったら吉日なのか、スクフェスが行われた日の翌日、自らの足でラブライブ!の運営本部に行き、そのまんま建造自らその本部長に直談判した。

「お願いします!!ラブライブ!を支援させてください!!」

建造の直談判に本部長も、

「そ、それは、そうですか…」

といわざるしかなかった。が、本部長はすぐに心を入れ替えて建造にその理由を聞く。

「で、土居建造殿、どうしてラブライブ!を支援したいのですか?」

 これには建造、すぐに、

「昨日のスクフェスでスクールアイドルたちが100名以上で一緒に踊っている姿を見ました。それは圧倒の一言しかなかった。私はそれに感化されました。私はスクールアイドルを応援したい。そのためにもスクールアイドルの甲子園というべきラブライブ!をまず応援したいと思っております」

と、素直に答えた。

 それを聞いた本部長はさらに建造に聞く。

「そうはそうですね。ところで、土居建造殿、あなたはこれからスクールアイドル、そして、ラブライブ!がどうなっていくのか、どんなふうに考えていますか?」

これにも建造はすぐに素直に答えた。

「私にとってスクールアイドルは日本中、いや、世界中に広がっていくと思います。それにつれて、スクールアイドル文化はさらに成長すると思います。また、ラブライブ!もそれにあわせて成長、拡大していくことでしょう。そんなとき、私の会社、土居建設はスクールアイドルとしてラブライブ!の裾野を広げていくお手伝いをしたいと思っております」

 これを聞いた本部長、

「わかりました。あなたの心意気、感激しました。私からもお願いします。これから一緒にラブライブ!、そして、スクールアイドルを盛り上げていきましょう」

と、建造と手をとりあって御礼を言った。

 そして、なぜか建造は多恵にもスクールアイドルになってほしい、と思っているのか、突然、ピアノやダンスを習わせ始めた。これには多恵、

「もういつもの勉強(帝王学の勉強)でも大変なのに、それに加えてピアノやダンスの習い事をしないといけないなんて、これじゃ友達と遊べないじゃない」

と、思っていたのか嫌がっていた。

 が、建造にとってはこのことについて、のちに、

「私はこのとき、スクールアイドルと私の妻、奏を重ねたのかもしれない。音楽の好きなスクールアイドルと同じくピアノが好きだった奏。多恵にもそうなってほしいと心のどこかで思っていたのかもしれない。べつに多恵にスクールアイドルになってほしいと思っていなかった。けれど、多恵には妻の奏と同じくらい音楽などに興味をもってほしかった。それが私の本心だったのかもしれない」

と、語っていた。

 こうして、建造とその会社土居建設はラブライブ!のスポンサーとしてラブライブ!に出資するようになる。ラブライブ!運営本部は土居建設などのスポンサーから獲たお金でラブライブ!を拡大していく。世の中の声援を受けて、秋葉ドームでの開催を毎回行われる(1度だけ博多ドームで開催したけど)ようになっていく。ただ、参加賞が2色ボールペンなのは抜きにして。たとえ東海予選を突破しても3色ボールペンにはなりませんのであしからず。

 さらに、建造はスクールアイドルのイベントには協賛として、そのイベントに出資していく。こうしていくことで、ラブライブ!、そして、スクールアイドルは成長していき、日本中、世界中へと広がっていく。その陰には建造のラブライブ!、そして、スクールアイドルへの熱意がこもっていたのかもしれない。

 だが、建造のラブライブ!、そして、スクールアイドルへの熱意は思わぬ副産物をもたらした。そのイベントを通して、教育業界やそれをつかさどる中央省庁、文科省と深いパイプ、人脈を建造は築くことができた。それが、建造にとって大きなプラスになっていく。

 



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とある建造伝 第4話

 そして、2018年、Aqoursがラブライブ!冬季大会に優勝し、廃校となる自分たちの学校の名をラブライブ!の歴史に残すとともに自分たちだけの輝きを見つけた、その年、建造は長年の夢、大地の夢であり、奏が褒めてくれた夢、九龍島に一大リゾート地を造る夢を叶えるために動き始めた。くしくも建造にとって2つの追い風が吹いていた。1つ目は土居建設を大手建設会社とまでもいかなくても立派といえるくらいの大企業に育てたこと、2つ目はIR法の成立である。IRとは本当の名前を総合型リゾートという。国際会議場、展示施設やレストラン、劇場、映画館、アミューズメント、スポーツ施設、温浴施設、そして、地方自治体への申請が必要だがカジノの併設をも認めるリゾートのことである。建造はリゾート開発をするための切り札としてIRを整備できるようにする法律、IR法の成立を待っていた。それが2016年末に成立した。建造はその切り札を使って九龍島にIR施設を造ろうと考えていた。

 そんな追い風であっても建造は長い時間をかけてリゾート開発の計画案を練り上げていた。誰にも反対されることのない、それほど立派な案だった。

 が、それであっても必ず反対するものはあらわれるものである。建造は満を持して取締役会でこのリゾート開発の計画案を発表した。

「え~、このようにわが社としては全社一丸となって、南の島に一大リゾート地を造る、そのような気持ちで立ち向かいと思います」

この建造の言葉のあと、建造はここにいる全員が賛成してくれると思っていた。

 が、その予想とはかけ離れたものとなった。

「ちょっとなにを考えているのですか、社長」

「わが社をだめにするのですか」

「いまどきリゾート開発なんて古いですよ」

と、反対意見の応酬だった。これには建造はたじろくしかなかった。

 では、このときでた反対意見の根拠はなんだったのか。それは大きくわけて3つあった。

 1つ目は過去の事例からだった。まえにも話したように、バブル景気のとき、全国各地で地域振興のためのリゾート開発が行われていた。が、その多くは失敗に終わっていた。たとえば、ハウステンボスは入場者数があまり集まらず、1度倒産に近い会社更生法を受けた。その後、大手旅行会社の手に渡り、その会社の支援により今の盛り上がりを見せている。また、宮崎のシーガイアも1度会社更生法を受け、今は大手ゲーム会社のもとで経営している。一方、北九州のスペースワールドはいろいろと努力をしたが、どうすることもできず、2017年末、惜しまれつつも閉園した。そんな事例が全国各地で起こっていた。

 2つ目はIR法の内容だった。IR法ではギャンブル依存症を懸念する動きにより、IRの設置箇所を3箇所と明記していた。なぜなら、IRにはカジノ場が設置されているから。また、そのカジノ場を設置することに関しては住民から反対意見がでるのは必須。そのため、そのための対策をとらないといけないのだが、その力が土居建設にあるかという心配だった。

 そして、3つ目は、たとえカジノ場を含むIRを造ったとしても、うまく経営できるかである。とくにカジノ場は日本だけでなく、韓国、マカオなどにも存在する。とくにマカオはアメリカのラスベガスと並ぶカジノが盛んな地域、近年、新しいカジノ場の設置が続く。マカオにとってカジノは一大産業地といえる存在だった。また、アメリカの東海岸にあるある都市はカジノによって昔潤っていた。が、まわりにある州がカジノ場の設置を認めたため、その都市のまわりにある町や都市に新しいカジノ場が次々と設置されていった結果、その都市にあるカジノ場は次々と潰れ、しまいにはその都市は急激に寂れていったという事実があった。

 だが、それでも建造はひるまなかった。

(九龍島に一大リゾート地を造るという夢は大地が道半ばで果たせなかった夢。それを俺が引き継ぎ、それを奏が褒めてくれた。それほど俺にとって絶対に叶えたい夢なんだ。これまでやってきたことはこの夢を叶えるための布石にすぎないのだ)

そう思った建造は反対する役員たちを解任させることすらいとわず、力でもって強引に認めさせた。それを見た人たち、特に会社のために一生懸命働く建造の姿を見て感動して入社してきた、また、建造のために働きたいと建造のもとに集まってきた人たちは土居建設の行く末に不安を感じ、また、昔の姿とはちがう建造の姿を見て、次々と建造のもとを去っていき、その結果、建造のもとには建造のイエスマンしか残らなかった。

 そして、建造は会社内でIR建設というリゾート開発案を承認すると同時に、それを進めるための行動を起こした。まず、IR法の定める3箇所という設置場所に選ばれるために建造は中央省庁、政治家、建設業界への働きかけを強めた。中央省庁への働きかけを強めるのに使ったもの、それがお金、ぞくにいう賄賂だった。

「必ずわが社を選んでください。よろしくお願いします」

と、連日、建造は中央省庁に挨拶回りをする。その都度賄賂を渡していたらしい。さらに、九龍島のある鹿児島県にも十分といえるくらいの挨拶回りをしていた。ただ、このとき、賄賂は渡していない。そのかわり、南の島にIR施設を造りたいとずっと言い続けていた。県としてもIR施設という魅力的なものをちらつかせてはなにもいえない。むしろ、絶対欲しいと思っているかもしれなかった。だって、そんなものあれば地域振興におおいに役に立つから。

 ただ、これに危惧していたのは奏の父、大物政治家だった。

「このままだと建造君、君の身が危なくなる。やめなさい」

と、大物政治家は建造に忠告するも、建造、

「それには心配ございません」

と一蹴してしまった。これには大物政治家は怒ってしまい、自分の力を使って建造の働きかけを阻止しようとしていた。だが、建造は大物政治家が思っていた以上の大きなパイプ、人脈を中央省庁、政治家、そして、建設業界に持っていた。また、政権交代などで大物政治家の影響力はかなり小さくなっていた。これにより、大物政治家の建造への邪魔は失敗に終わった。

 こうして、建造はいろんな障害を強引にはねのけつつ自分の夢、いや、自分と大地の夢を叶えるために着々とリゾート開発に向けた下準備を進めていた。

 

 その一方で、建造はあることを別に進めていた。それが自分の学校を作ることだった。それはある教育関係者との会話のなかで生まれたものだった。スクールアイドルのイベントのとき、たまたま建造はそのイベント会場に来ていた。そこで、そのイベントに参加しているスクールアイドルが所属する高校の理事長と会い、いろんなことを話して会話が盛り上がっていた。そんななか、その理事長が建造にあることを言った。

「建造さん。ところで、建造さんはスクールアイドルを育ててみてはどうですか」

これには建造、

「スクールアイドルを育てる?」

と、寝耳に水状態に。まさか自分でスクールアイドルを育てるなんて考えていなかった。これを見た理事長は続けて、

「スクールアイドルはいいですよ。だって、そのスクールアイドルが有名になれば、それだけで学校は有名になる、今をときめく学校ってね。それに、野球やサッカーといったスポーツみたいにお金をかけなくて済む。練習場を整備しないといけないのと、指導者を呼ばないといけませんが、お金がかかるのはそれくらい。安い投資で高い利益をうむ。スクールアイドルっていいことずくめですよ。ちなみに、廃校の危機をスクールアイドルの力で救ったという話もあります」

と言うと、建造、

(スクールアイドルを育てるか。そのことを考えたことがなかったな)

と思うと、すぐにある妙案が生まれた。

(そうだ。自分のための学校を作ろう。そして、そこで自分でスクールアイドルを育てよう)

 学校を作る、なぜ建造はそう思ったのか。それには理由があった。それは自分の後継者、会社の担い手をつくるためであった。だが、建造には多恵という娘がいる。そして、多恵には自分の夢を継がせるため、後継者として帝王学、さらにはピアノやダンスを習わせていた。それでも建造は後継者を欲した理由、それは多恵に何かが起こったときのための保険と、その多恵を支える人たちを育てること、そして、人手不足に陥っている建設業界、そして、土居建設に自分が育てた若者たちを供給するためだった。さらには、その学校を有名にするためにスクールアイドルを活用すれば、少ないコストで大きなリターンが見込める、それが建造の考えだった。また、自分の手で今をときめくスクールアイドルを育てることにも魅力を感じていた。

 ということで、建造はさっそく学校の許可申請をすることに。だが、少子化が叫ばれる現代日本、そうやすやすと認可がおりるわけではない。

「う~ん、予想はしていたが、これほど難しいとは」

と思った建造はラブライブ!などで得た中央省庁や教育業界に対しても賄賂攻勢に出つつも、ちゃんと表では、

「人手不足が続く建築業界に立派な若者たちを育てて送ることでもっと建築業界を盛り上げたい」

と、みんなのまえで力説した。

 そのおかげもあり、無事?に学校の認可がおりた。そのこともあり、建造はさっそく学校をつくることになった。学校の内容は男女共学化を前提とした女子高であり、将来世界中で活躍できるよう、英語や国語、簿記などを中心にしたカリキュラムを編成し、建築業界のためにと建築関連の教科も勉強できるようにした。

 それから2年の2020年、建造はついに自分の学校、土居建造記念高校を開校させた。厳しい試験を突破した優秀な生徒たちを見た建造、

(これで俺と会社、それに建設業界は安泰だ)

と思い、安心の表情を見せた。

 そして、もう1つ、スクールアイドルの育成について、建造は時をかけた。学校のほうはまず開校することを1番の目標としてスクールアイドル関連の施設以外の施設を先に建設した。そして、開校すると同時にスクールアイドル関連の施設の建設に着手した。建造はスクールアイドルを育てるなり、いままでにない究極のスクールアイドルグループを作ろうとしていた。なので、施設についても妥協はしなかった。体力づくりに使うジム、体を休める大浴場、メンバー同士が一緒に生活する寮など。しまいにはどんなときでも公園できる小劇場すら完備させた。

 コーチ陣についても妥協せず。建造は教育業界のつてをたよって芸能界や演劇界で名がとおった人たちを自らスカウトした。むろん、高い給与を保障した。また、教師たちについてもスクールアイドルに造詣が深い人物を建造自ら選んでスカウトした。なかには、A-RISEのメンバーに直接重合したことがある方やμ‘sのメンバーに対して生徒指導していた方もいた。

 そして、スクールアイドルのメンバーの人選も建造自ら行った。建造は3年かけて優秀なスクールアイドルの原石となる人物を探し続けた。

 そんな原石探しが佳境になるなか、建造はある地方で有名なローカルアイドルの練習場を見学していた。

「ほほう。これはすごく美しい動きですね」

と、建造は振り付けの練習をしているローカルアイドルたちを褒めていた。それにコーチ、

「いや、褒められては、私としては光栄です」

と照れる。そんなときだった。

「あれ、あの子、ほかのメンバーよりもとても上手ですね」

と、建造はある研究生を褒めるが、そのコーチは意外なことを言う。

「あの研究生ですね。あの子は伊藤ルナ、中3です。たしか、誰よりもうまいです。それに歌もうまい。昔までは将来のセンター候補でした」

これには建造、

「将来のセンター候補でした?」

と聞き返すと、そのコーチはすぐにあることを言った。

「はい、たしかに昔は将来のセンター候補でした。あの子は天才肌というか、数回練習するだけで完全に踊りや歌をマスターできます。それ以上に、練習することでそれ以上のことができてしまう。のですが、あの子、ルナは天才肌ゆえにまわりとコミュニケーションをとることが難しいのです。コミュ障害というべきか、あんまりまわりのメンバーとは仲が悪く、それが軋轢となっていろんな嫌がらせを受けました。上層部もルナを無視する始末。孤立無援のルナにとって今のグループにいても仕方がないと、ルナ自身は中学卒業と同時にローカルアイドルを卒業しようとしてます」

 これを聞いた建造、

(ローカルアイドルをやめるだと。あんないい原石をそのままにするのはもったいない。能力的に高いし、天才肌か。ある意味、アイドルとして生まれてきた人材だ。そんな人材、ぜひ欲しい。私が立派に育てて立派なスクールアイドルとして磨き上げれば絶対にトップにいける、俺はそう思う)

と、ルナを自分が育てるスクールアイドルのメンバーとして引き入れることを決めた。

 こうして、建造はルナをスカウトすると同時に、同じく一度見ただけで踊りなどを完コピできる天才のレン、いつも分析したがるカレンをスカウトし、そのメンバーでスクールアイドルグループを結成することを決めた。

 そして、ルナたちが入学式を迎えた日、建造は直接としては初めてルナと対面した。

「私の名前は土居建造」

と、ルナに挨拶するも、ルナは、

「よくご存知ですね。相当私のことを調べているのですね」

と警戒していた。が、建造は昔、ルナがローカルアイドルのグループ内でいじめられたことについて、

「それって、君(ルナ)が悪いんじゃなくて、ローカルアイドルのほかのメンバーと上層部が悪いんじゃないかな」

と、ルナに同情するとともに、

「ルナ君、君にはその舞台(天才、つまり、ルナのための舞台)を用意しよう」

「君(ルナ)にはトップアイドルになるための支援を惜しみなくおこなおう」

と、ルナにいろんな約束をすると、ルナはいきなり、

(建造様、私はついていきます)

と、思うくらい忠実な僕になってしまった。

 

 このあと、建造は自分、そして、大地の夢であるリゾート開発の申請許可を得るための十分な根回し、というか、賄賂攻勢をしつつ、ルナたちスクールアイドル3名を育成していくことになる。最初のころはルナ、レン、カレン、ともに不仲だったが、合宿と称した高級旅館に3人は招待し、3人一緒に貸切風呂にいれたりしたことで3人のなかで意見の総意を得られたらしく、メンバー間の不仲も解消し、3人ともさらなる練習に明け暮れていた。それを見た建造、

「よしよし、3人とも頑張れ」

と、陰から応援していた。

 

 そして、2022年夏、建造に2つのいいニュースが飛び込んできた。まず、政府が最後までもめにもめたIR施設の3箇所目の設置場所に土居建設が進めていた九龍島に決定したことだった。これは建造が中央政庁の高官や政治家、建築業界に賄賂を送り続けていただけでなく、十分な根回しをしてきた結果だった。しかし、すんなりと決まった1箇所目と2箇所目に比べ、3箇所目の九龍島は誰もが知っている場所じゃない。知名度がまったくなかった。それは建造も知っていた。九龍島の知名度、そして、IR施設を設置するということをどう世間に広げるか、それが建造の悩みだった。

 そして、もう1つはルナたちバックスターが鮮烈なデビューを果たしたことだった。それは建造が仕掛けたイベントだった。ルナたちバックスターと3人が以前所属していたローカルアイドル3組を東京にある某有名野外ステージで対決させるものだった。そのイベントは無料だったが、事前申込による抽選のかたちをとった。だが、抽選とは名ばかりで、実は土居建設が作為的に観客を選んでいた。特にスクールアイドルを応援している人たち、スクールアイドル業界の関係者、芸能関係者などなど。それも会場では目だっていなかったが、当選はがきにはでかでかと「新スクールアイドルお披露目ライブ」と書いてあった。とはいえ、観客全員ルナたちバックスターはおろかルナたちのことすらなんにも知らなかった。また、へたならすぐに批判するぐらいのつわものたちだった。それでも建造は信じていた。

(ルナたちよ、おまえたちは絶対に勝てる。そして、このイベントをきっかけにスクールアイドル業界にルナたちバックスターの名は轟くだろう)

これにはわけがあった。建造は自分の力でもって究極といえるスクールアイドル、バックスターを作って育ててきた。たとえ短い時間でも、誰もが文句言わせないほどの超一流の設備やコーチ陣でもってルナたちを育ててきたのだ。それにルナたちは天才である。普通のアイドルにはない高い能力の持ち主たちである。だからこそ負けるわけがない、と踏んでいた。また、慣れないステージに対する特訓も行っていた。

 結果、ルナたちバックスターは圧倒的な力でローカルアイドルたちを倒した。これにより、バックスターの名は日を追うごとにひろがりをみせるほどスクールアイドル業界に激震が走った。バックスターの名はどんどん世の中に知られるようになる。バックスターの知名度が日に日にあがっていくことに建造は満足していた。

 



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とある建造伝 第5話

 ルナたちバックスターの鮮烈なレビュー、それはいい意味で建造に味方した。ルナたちがライブを行うごとにファンを獲得していき、そのファンのなかには「バックスターはμ‘s、A-RISEの再来」といって騒ぐ人たちもでてきた。それとともに、ファンのなかにはそのルナたちバックスターが所属している土居建造記念高校、そして、その理事長、土居建造が社長を務める土居建設に好感をもつようになっていった。スクールアイドルを応援し、自らもスクールアイドルを作ってみんなと一緒に盛り上げていく、そんな会社に見えていた、だってラブライブ!だけでなく、スクールアイドルのイベントには必ず協賛しているから、といっているファンもいたらしい。

 

 こうしたなか、ルナたちバックスターは「ニューカマー」「スーパールーキー」といわれるようになっていった。そして、2022~23年冬、バックスターはラブライブ!冬季大会に臨んだ。その結果、無事に決勝に進出し、Saint Snowと同じ初出場8位入賞の成績を残した。

 が、ルナたちはその成績に満足していなかった。終了後、

「やったではないか」

と、ルナたちに喜びを伝える建造だったが、ルナたちからは、

「なにが8位ですか」

と、悔しい表情で言っていた。なぜかと建造はルナたちに聞くと、

「もっと(上に)いけると思っていました」

と、本音をポロリとだす。これを見た建造、

(これほどルナたちに向上心があるとは知らなかった。なら、どんどん鍛えていくことでルナたちは次回のラブライブ!で優勝できる実力を持つことができる。しかし、ラブライブ!は会場とネットの投票によって決まる。今回は8位だったが、よく考えると、バックスター以上の知名度、人気を持つスクールアイドルが上位にいるのでは。そう思うと、バックスターの知名度、人気をあげて、なおかつ実力があがれば、ラブライブ!で確実に優勝できる、そうしてら、俺の土居建造祈念高校、そして、土居建設の名はもっと知れ渡る)

と思うと、すぐにあることを思いついた。それは悪魔の思いつき、と、あとの人たちはそう呼んでいる、そんな思い付きだった。その思い付きとは、

(そうだ。バックスターを使って土居建設と大地と俺の夢である九龍島のIR施設、リゾート施設の宣伝をしていこう。そうすれば、バックスターの知名度、人気があがっていくごとに土居建設とIR施設、リゾート施設の知名度もあがっていくはず。それでいて宣伝コストも2つ別々宣伝することによりも安くなる。ルナたちの実力はどんどんあがっていくはず。それにつられてバックスターの知名度と人気、土居建設や九龍島のリゾート施設の知名度もあがっていく。俺と大地の夢は大いに進む。これは妙案だ)

と、建造は納得の表情。でも、土居建設は別として、九龍島のリゾート施設の宣伝をバックスターとあわせてするのだろうか。それは上から、もっと言えば九龍島のIR施設の設置を認めた中央政庁からの圧力だった。IR施設の認可を受けたとき、新聞などでは「鹿児島の南の島」とだけしか発表してなかったのだ。そのとき、土居建設は九龍町の地方議員たちに対して十分な根回しができていなかったため、いきなり「九龍島」と言ってしまうと、九龍町自体大混乱が生じてしまい、住民たちの猛反対により計画が白紙になりかねなかったからだった。が、いくら待っても九龍島のリゾート開発の主施工主の土居建設がいつもIR施設を設置する場所を「鹿児島県の南の島」としか言っていないため、中央政庁はあまりの遅さに痺れをきらしていたのだ。

「いつになったらIR施設の設置場所を発表するんだ」

と、いついかなるときでも電話をしてくる中央政庁には建造も、

(もう少し待てないのかね)

と、思うくらいだった。でも、ラブライブ!冬季大会決勝の前日、九龍島にいる社員から、

「ようやく根回しが終わりました」

という情報を受け、建造は本格的に自分の、そして、大地の夢である九龍島でのリゾート開発に着手できると思うとともに、九龍島、そして、そこに建設するIR施設、リゾート施設の知名度、認知度という認可がおりたときからの懸案事項をどうクリアできるか考えていた。

(ルナたちバックスターと九龍島のリゾート開発、2つの知名度をあげるビッグチャンスだ。それが成功すれば、バックスターはトップアイドルの仲間入り、そして、九龍島のリゾート開発も盛り上がりをみせてくれる。俺の夢、優秀なスクールアイドルを育てる、そして、俺と大地の夢、九龍島に一大リゾート地を造る、両方とも叶えることができる。ハハハ)

こう思った建造は8位という成績を残したルナたちに対しこう言った。

「ルナ、レン、カレンよ。おまえたちはもっと強くなりたいか。もっと強くなるなら、私はどんどん支援していこう」

この言葉にルナたちは驚くも具体的な内容を聞く。建造は今よりハードな練習をして、ただの天才から努力する天才に鍛えることで実力を伸ばすとともに、土日祝、建造がとってきた営業、とくに大きなイベントに参加して、より知名度、人気を獲得できるようにすると伝えると、ルナはすぐに、

「はい、わかりました」

と喜んでいた。しかし、建造はそのイベントで土居建設、九龍島のリゾート施設について少しでも目立つように、イベント会場やライブ会場で土居建設と九龍島のリゾート開発のポスターを貼ったり、それ関連のアナウンスをしたり、バックスターのグラビアページの前後に広告をのせたりすることで少しでも土居建設と九龍島のリゾート施設の知名度、認知度をあげようとした。

 が、普通に宣伝してはあまり効果がないことを知っている建造は会社の高校宣伝費を大幅にアップさせ、それとともに営業を行った。その額、5億以上。あまり最近にないほどのとてつもない額がテレビ、ラジオ、雑誌、ネット、動画サイト、それにイベントなどに投入され、バックスターの知名度、人気アップとともに、土居建設と九龍島のリゾート開発についても少しずつではあるがあがっていった。

 

 3月~5月、バックスターは建造がとってきた有力青年誌横断水着グラビア特集(これにも億単位の宣伝費がかかっています)や、GWや土日祝の大型イベント、全国各地でのライブツアーにより、SNSを中心に盛り上がりをみせ、知名度と人気はどんどんあがっていく。

 一方、九龍島のリゾート開発についても進展がみられるようになった。秘密裏に九龍町の町議会は建造の賄賂や根回しによりリゾート開発を許可する条例を可決した。そして、土地買収を手がけることになった。

 そこで、建造は奥の手をだした。建造の娘、多恵である。

「多恵よ、そこにいるか」

と、建造は多恵を呼ぶと、多恵はすぐに、

「はい、お父様」

と呼んだ。多恵はこれまで某有名高校において帝王学を学んできた。政治、経済などなど。さらに、人々との交流術なども学んでいた。勉学だけにおいては父建造に次ぐ実力を持っているとみられていた。

「少しはピアノやダンスは上達したかね?」

と、建造は多恵に言うと、多恵、

「それって必要なものなのですか。私にとっては少しも必要じゃないと思うのですが」

と、力強く否定する。これには建造、

(もう少しはピアノやダンスを愛してくれたら、妻、奏みたいに優しい子に育っていたのにな)

と、少し残念に思いつつも、すぐに多恵に指令をだした。

「多恵、いいか。来年度より九龍島に行って住民全員から土地を買収してこい。いいか、出来る限りはやく完遂させよ」

 これには多恵、

「九龍島ですか。なぜ私が九龍島に行かないといけないのですか?」

と、建造に質問すると、建造は答えた。

「九龍島でリゾート開発すること、それが私、いや、昔のパートナーだった大地、そして妻の奏、さらには土居建設の悲願である。その悲願を達成するため、多恵、おまえには一肌脱いでもらいたい。これまで勉学によって優秀な成績をおさめていると聞いている。その実力をぜひ九龍島で発揮してこい」

と言うと、多恵、

「はい」

と言って自分の部屋に帰っていった。このあと、建造は思った。

(でも、本当は多恵、おまえにも少し感情を豊かにしてもらいたいと思っている。九龍島での人々とのふれあい、それによって多恵の感情が豊かになればいいのだが)

と、少し親心をみせていた。

 

 そして、4月、多恵の九龍高校での閉島宣言と同時に建造は九龍島でのIR施設建設を含む一大リゾート地開発を発表。ついに建造、そして、大地の夢であり、妻、奏が褒めてくれた夢、九龍島に一大リゾート地を造る、その夢がついに日の目をみることとなった。そして、夢を叶える第一歩を踏むこととなった。だが、これらのことにより、ルナたちバックスターと建造の夢、九龍島のリゾート開発、その2つを一緒に宣伝すること自体が、自分でスクールアイドルを育てる、九龍島を一大リゾート地にする、2つの夢が建造にとって1つの野望へと変貌していった瞬間を迎えたのかもしれない。

 

 こうして、建造はバックスターを大々的に宣伝し、あわせて、土居建設と九龍島のリゾート開発の宣伝も一緒に(しれ~と)宣伝することでバックスター、そして、土居建設、九龍島のリゾート施設の知名度をあげていく戦術、多恵を中心とした土地買収を行う戦術、二面作戦を展開していたのだが、2つはまったく異なった反応をみせた。

 まず、バックスターではあるが、こちらはいつも以上のハードな練習を黙々とこなすルナたち。実力はどんどんあがっていく。そして、ライブツアーなどを通じてファン層を拡大していった。その陰でSNSがルナたちに対する盛り上がりを支えたのはいうまでもない。また、ほかの企業よりも高い広告代(スポンサー料)をだしてくれる土居建設はテレビ、雑誌などのメディアにとって神様である。だって、ネットに押され、テレビなどの収入源である広告代は減少の一途をたどっていた。そこにきて、土居建設はどんどんスポンサー料を払ってくれる。それにより収入も潤う。なので、テレビなどのメディアはこぞってバックスターを使っていったのだった。バックスターをどんどん使うことで、土居建設からどんどん広告代がもらえ、収入も増えるから。むろん、ネットも負けていない。ネットもバックスターをどんどん起用していく。こうして、バックスターの知名度、人気はうなぎのぼりになるとともに、土居建設、九龍島でのリゾート開発の知名度もあがっていった。

 その後、ルナたちバックスターはライブやメディア展開で得た知名度や人気、よりハードな練習で鍛えた実力でもって、圧倒的な力で2023年のラブライブ!夏季大会で優勝を遂げた。ルナたちバックスターは名実ともにスクールアイドルの頂点、トップアイドルの仲間入りを果たした。建造にとってスクールアイドルを育てる、そんな夢が叶った瞬間だった。

 一方、多恵率いる九龍島土地買収部隊は苦戦を虐げられていた。

「議員をだませても、俺たちはだまされないぞ」

「先祖代々の土地を手放しては先祖に顔向けできないわ」

高齢者を中心にリゾート開発に反対する住民が続出していた。若者はリゾート開発で職を得られるだけでなく、高い土地買収代金に魅力を感じ賛成にまわるも、高齢者たちは先祖代々の土地を手放したくないためか反対を貫いていた。これには多恵と一緒にまわっている土地買収部隊のひとりが、

「この頑固じじいが、はやく売ってくれたら楽に死ねるのに」

と、つい小言で言うも、壁に耳あり障子に目あり、である。この言葉がリゾート開発に反対する住民に伝わり、より強固に反対するようになる。さらに、それがリゾート開発反対デモへと発展していった。

 これには建造、

「このままじゃまずい。このままだと計画が進まない。なにかいい案はないか」

と、心配すると、すぐに妙案?を思いつく。

「そうだ。いまやトップアイドルになったバックスターを使えばいいんだ。いまやバックスターは名実ともにスクールアイドルの頂点にたった。その力を使えば、俺の夢、九龍島のリゾート開発なんてすぐに叶うことができる。もっと、バックスターを使って、わが社(土居建設)、そして、九龍島のリゾート開発の知名度があげる。あがればそれだけ俺の夢が近づく。そうだ、バックススターを使え!!もっと、もっとだ!!」

この建造が言うと、結晶の翌日、ルナたちにこれからの方針を伝える。

「これから先、仕事をどんどんいれようと思っている」

これにはレン、カレン、さすがに勉学に影響がでるのではと反対するも、建造は、

「これからは世界を目指せ!!」

と言って、強引に決めてしまった。とうのルナはそんな建造に魅了されている。

(このままじゃ私たち、建造にうまく使われてしまう!!)

と、危惧を感じたレンはすぐに自分のスマホを部屋全体が撮れるように隠すと、録画ボタンを押してそのままルナ、カレンと一緒に次の仕事場へと部屋を出ていった。

 スマホが部屋全体を録画している、そのことを建造は知らないまま、あの一言を言った。

「今のうちに、私のため、私の野望のため、働いてくれ、私の操り人形たち」

この言葉のあと、建造は会社へと帰っていった。

 1時間後、忘れ物をしたとかの理由で戻ってきたレン。隠していたスマホを見つけ、バッテリーが切れた自分のスマホを充電する。そして、ある程度充電すると、録画した映像を見てあることを確信した。

「このままじゃ、私たち、本当に建造の操り人形になっちゃう。なんとかしないと」

 

 そして、建造はバックスターの宣伝、というよりも、バックスターを使った広告にこれまでより多くのお金を費やしていく。その額、これまでの5億から3倍の15億以上に拡大。そのお金を使い、これまで以上にバックスターのメディア露出が増えていった。また、その際の広告代(スポンサー料)がこれまでの倍以上となったことはメディアとしては大喜びだが、1つ問題が発生した。バックスターが出演するとき、必ずルナたちのバックは土居建設、そして、九龍島のリゾート開発に関するポスターを貼るか、出演する前後には必ず土居建設のCMを流すこと、さらに、雑誌などはバックスターのグラビアページの前後に土居建設、そして、九龍島のリゾート開発に関する広告を載せるよう強制していた。本当は嫌がるところだが、高い広告代(スポンサー料)のために従わなければなかった。また、建造は政治家などと強いパイプを使って邪魔しようとするフリーライターなどを次々と排除していった。

もちろん、レンもカレンもそのことはうすうすと感じていた。特にレンはあの決勝翌日に見せた建造の映像を見てルナやバックスターについて相当心配していた。しかし、今はその映像をルナやカレンに見せるときではない、と思ったレンは、カレンとともに建造に心酔するルナの姿を見てそのことをいうのを諦めていた。

 が、建造の露骨な広告宣伝はルナたちバックスターにとって悪影響を与える。SNS上であまりにも目立つ土居建設のポスターについてちょっとした話題となっていった。そのなかで、

「クイズ番組でやたら土居建設のCMを見た」

「バックスターのグラビアページの前後で土居建設の広告を見た」

など、バックスターと土居建設の関係性を疑うような証言がでてしまい、それが結果的に、

「バックスターは土居建設の広告塔じゃないの」

というニセというよりかはグレーに近い情報になってしまい、その情報が、

「(バックスターは)学生である以上、一企業の広告塔になるのは問題になるのでは」

という考えのもと、SNS上に拡散していく。これには土居建設としても「間違いだ」という声明をだしたり、どんどんその情報が載っているものを削除したりしていったが、あまりにもはやく拡散していく。

 そして、バックスターがラブライブ!優勝により前に行ったライブに参加していたファンから、

「バックスターがラブライブ!優勝する前に行われたライブの会場で土居建設のポスターを見かけた」

という情報が流れると、

「バックスター=土居建設の広告塔」

という情報がグレーから正しい情報へと認識されるようになり、それがバックスターのファン離れを引き起こすこととなった。

 



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とある建造伝 第6話

 そして、10月、建造はバックスターのファン離れが確実に進行していることを知らず、バックスターを使った露骨な広告戦術をそのまま実行していく。

 そんななか、建造に悪いニュースが次々と飛び込んできた。

 まず、多恵率いる九龍島土地買収部隊から、ようやく約半数の世帯から買収同意書を得ることができたとの情報が届く。だが、建造はそれについて嬉しくなかった。なぜなら、

「半年でようやく半分。それだと遅すぎるんだ」

と。実は中央省庁からは

「できるだけはやく着工しろ」

とのお達しが建造のもとにきていたのだ。IR施設の認定第1号と第2号はすでに第1期工事は終了しあとはオープンを残すのみだった。それに対し、第3号の九龍島はいまだに土地買収にてこずっている。これだと国としては肝いりで始めた事業としてはメンツ丸つぶれになってしまう、そんな危惧から中央省庁は慌てて土居建設にはやく着工するようにとのお達しをだしたのだ。

 そして、土居建設の内情なのだが、次のことが発生した。先日、建造に悪い知らせが届いた。

「建造様、申し訳ございません。また都市再開発の入札に失敗してしまいました」

という部下の報告に建造は頭を抱えていた。また、都市再開発といった大型工事の入札に失敗したのだ。これで土居建設の大型工事の受注(入札)失敗は10連敗を数えてしまった。

「これでは土居建設はつぶれてしまう」

建造は相当悩んでいた。大型案件(工事)の受注(入札)に失敗し続ける、これは土居建設にとって危ない状況を生んでいた。大型案件(工事)を受注できれば何十億、何百億ものお金が土居建設にはいるのだが、それがないとなると、土居建設にとってそのお金ははいってこない。そうなると、土居建設は開店休業状態となる。これだと土居建設の大赤字は確実だ。なら、小~中規模の工事を受注すればいいのではと考えるも、これもほかの企業に取られてしまっていた。

 では、なぜ土居建設は受注(入札)に失敗するのか。その理由は2つあった。

 1つはオリンピック特需の終了だった。2020年、東京でオリンピックが開かれた。当然、そのオリンピックにかかわる競技施設の新設、改築工事は行われるも、オリンピックが始まる前にすべてが終わる。そうなると、オリンピック関連工事をしていた建築会社はもとの仕事、つまり、道路修繕や新しいビルの建設などもとから存在する工事に復帰する。また、オリンピック関連の工事などがひと段落することで社会全体の需要もひと段落する。これまで逼迫していた需要が落ちると、自然と供給とのバランスがとれるようになっていく。ということで、土居建設はこれまでオリンピック関連の工事をしていた建築会社にかわって道路修繕や新しいビルの建設などをしてきたのだが、オリンピック関連の工事を行っていた建築会社がその工事に復帰したことにより、その工事をその建築会社に次々ととられていったのだ。むろん、2025年には大阪で万博が開かれるが、それでも土居建設はその受注にも失敗したのだった。

 そして、2つ目は外国から安い賃金で働く外国人が流入してきたためだった。2018年末に成立した入管法改正などにより、限定的ではあるが、外国人が建築現場で働けるようになった。ただし、4万人までなのだが、大手建設会社はこぞって安い賃金で外国人を雇うようになった。そのため、大手建築会社は人件費を安い抑えることができるようになり、より安い工事費用で工事することが可能となった。これにより、大手建設会社はそれを武器に全国各地でほかのところより安い入札金額(=工事費用)で入札していく。そのおかげで、土居建設は全国各地でその大手建設会社の安い入札金額のまえに次々と敗北(入札(受注)失敗)を重ねていった。ちなみに、土居建設は外国人雇用については大手より遅れてしまったこともあり、いまだに外国人を多く雇用できなかった。そのため、大手建設会社と比べて高コスト体質だった。なので、土居建設は、大型案件はおろか小規模の工事までその大手建設会社に入札で次々と負けており、受注できない状況は続く、そんな状況に陥ってしまった。

 こんな悪いニュースにより、土居建設、そして、土居建造は危機に陥っていた。中央省庁からの圧力、全国各地で起こった入札失敗により九龍島以外の工事から締め出された土居建設と土居建造はしかたなく、自分と大地の夢、いや、いまや野望となった土居建設独自の案件、九龍島のリゾート開発に土居建設全社のすべての力をそこに集中させざるをえなかったのである。

 そして、ついに、

「こうなったら多恵を切るしかない。少し荒治療になるが、これで土地買収部隊も少しは本気になるだろう」

と、建造、ついに多恵を捨てることを決めた。たった半年で島の半分の世帯しか買収同意書を得ることができなかった、それは万死にあたいする、建造はそう思っていた。

 建造はその後、多恵のすべての役職を取締役会で解職したあと、ルナたちバックスターを呼んだ。

「なんでしょうか、建造様」

と、建造の忠実な僕であるルナが言うと、建造は、

「実は行ってもらいたい」

と、ルナに言うと地図をとりだし、九龍島を指し示す。そして、いろんなことを言って、最後にはルナが、

「わかりました。それでは行ってきます」

と言った。そして、2週間後、建造の指示で九龍島の秋の大祭、九龍祭りにあわせるようにルナたちバックスターを九龍島に向かわせた。

 そのなかで、建造はバックスターと一緒についていく土居建設の関係者に次のことをするように指示した。

①土地買収に反対する住民たちに最終通告をだすこと。その際、行政代執行(その人がしないといけないことをしないとき、行政が強制的にそのひとのかわりにそのことを行うこと。ただし、その費用はしないといけない人もち)も辞さないことを言ってよい。行政代執行については事前に町に確認済みである。

②多恵についてはすべての役職を解任したこと、建造自ら勘当を言い渡したといってよい。

③もし、バックスターで裏切り者が出たらその場で建造に報告。その建造は裏切り者について厳罰に処する。

①は土地買収に反対する住民に対して行政、つまり、町が強制的に土地を買収できる。これにより、土居建設は無事にリゾート開発を着工できるのである。②については前に書いたとおりだが、③についてはレン・カレン対策といってよかった。建造にとってレン、カレンはルナみたいに建造に忠実ではないと見られていた。が、裏切りによりレン、カレンを建造が見捨てれば、レン、カレンは昔みたいにまわりからいじめられる生活に逆戻りする。それは2人にとって嫌なことだ、と、建造は踏んでいた。

とはいえ、建造はバックスターの圧倒的な力をあてにしていた。バックスターさえいれば島の住民たちはだじろき、みんな建造のいいなりとなる、そして、住民全員から買収同意書を得て、無事にリゾート開発の工事に着工できる、そんな破天荒な考えを持ってしまっていた。また、強制代執行をちらつけさすことで住民たちは町の命令=建造の命令に従わないといけないという心理も生まれる、建造はそう考えていた。

(注意:行政代執行はしないといけないことをしないとき、代執行を行う行政は必ず「それをしてください」という催告書を送らないといけません。そして、ある程度の期間を設けてその期間内にそのことをしないとき、行政はその人に対し代執行を行います。なので、今回のような催告せずに代執行を行うことはできませんのでご注意ください)

 

 が、結果的にはバックスターの惨敗だった。一度九龍島のスクールアイドルを圧倒的な力で退けたものの、その後、そのスクールアイドル、いや、「アイランドスターズ」により返り討ちにあった、とのことだった。そして、そのなかには建造が勘当した多恵の姿もあった。これには建造、多恵の裏切りと判断した。

 さらに悪いことに、ルナが勝手に、

「あなたたちの勝負、島の運命はラブライブ!決勝でつけてあげる」

と、言ってしまったのだ。そのおかげで、住民全員から買収同意書を得てリゾート開発に着工できるかはラブライブ!決勝での勝負次第になってしまった。これには建造は頭を抱えてしまう。次回のラブライブ!冬季大会のバックスターの成績次第では自分の野望、九龍島のリゾート開発が中止になる可能性がでてきたのだ。また、バックスターが敗北とされる九龍島のステージについてはネットに中継されていたため、それを見ていた人たちは、

「バックスターの実力はあの程度なのか。なら、私なら勝てるかもね」

「あんな素人集団に負けるなんて、バックスターも地に落ちたな」

と、思えるほどバックスターに対するラブライブ!での優位性は揺らいでいた。

「このままだと会社だけでなく俺の学校、土居建造記念高校すら存亡の危機を迎えてしまう。なんとかしないと」

と思った建造だった。建造にとってバックスターの敗北は建造のリゾート開発計画に狂いが生じ、結果、建造にとって焦りを感じることとなった。

 そんななか、ある日、建造にルナがさらなる支援をお願いにきた。そのとき、建造とルナたちバックスターとの会話のなかで、カレンが、

「九龍島の敗北によって、バックスターの実力に陰りがあると見られてしまった。ラブライブ!の審査方法は会場とネットでの投票。これまでの実績や知名度で押し切るのは難しい。それなら、圧倒的な練習量で実力をあげるべき。もしくは、審査方法を変えてズルをするべきか…」

と、こそっと言ったこの一言を偶然聞いた建造、そのとき、

「審査結果を変えるズルをするか」

と、ラブライブ!の審査方法を変えて、その上でズルをすることを決めた。

 まず、建造はお金を使ってラブライブ!のメインスポンサーになってラブライブ!を牛耳ることに成功した。その上、さらにお金をちらつかせてラブライブ!決勝の審査方法を会場とネットの投票から審査員方式に変えてしまった。

 そして、建造は秘密裏に入手した審査員名簿を見て、

「このメンバーなら全員買収できるな」

と言って審査員全員に賄賂や便宜をはかることで審査員全員を買収してしまった。

 が、これが建造にとって自分の首を絞めることになった。それは建造がラブライブ!の運営本部でラブライブ!決勝の審査員の1人を呼び、本部の一室でその審査員にほかの審査員の買収の斡旋を催促していたときに起きた。

「ほかの審査員にも根回しをしている最中です」

と、その審査員が言うと、建造はつかさず、

「決勝ではお願いしますよ。こちらは多額の金をあなた方に差し上げているのですから。だから、バックスターを勝たせてください」

と言うと、その審査員のお子さんの不正合格の斡旋まで切り出す。

 が、このとき、建造は知らなかった。実はこの部屋には建造と審査員以外にもう1人いることを。その人は雪穂の大学の親友で1週間前からラブライブ!運営本部でバイトをして働いている渋谷ヒカリだった。ヒカリは偶然建造の買収現場を目撃し、その様子を自分のスマホで録画していたのだ。

「これは大変だ!!誰かに知らせないと」

と、ヒカリは慌てつつも、まずは雪穂に知らせたほうがいいと思い、すぐに雪穂に連絡するとともに、その動画データを雪穂に転送した。

「これは本当にまずいね」

と、この動画データを見た雪穂はそう思うと、A-RISEのつばさ、雪穂の姉でμ‘sのリーダーだった穂乃果、雪穂が高校のときに結成したスクールアイドル、オメガマックスのメンバーとして一緒に活動していた愛、はるか、はやて、みやこ、さらにはそのオメガマックスのライバルだったスクールアイドル、K9のメンバーだった天やカオルなど、雪穂が知るかぎりのスクールアイドル、ラブライブ!関係各所に送っていた。もちろん、決勝までは秘密にしてもらうようにもしていた。このあと、雪穂は裏取りし、審査員全員が買収されていることをA-RISEのツバサ経由で知ることになる。

 が、そんな悪いことを絶対に許さないからね、と、へんに正義感を持つ人物もいた。それがμ‘sのメンバー綾瀬絵里の妹で雪穂の大親友、なおかつ、雪穂たちと同じオメガマックスのメンバーだった人、綾瀬亜里沙、その人である。雪穂は亜里沙には動画データはおろか建造の買収についても教えていなかった。だって、亜里沙に送ったり教えたりすると絶対に「悪人は許さない」とどこかにそのことをもらしてしまう可能性があったから。だが、ヒカリは雪穂だけでは心配だということで、亜里沙にもその動画データを送ってしまったのだ。海外の文化を紹介する仕事をしていた亜里沙だったが、やっぱり雪穂の思ったとおりのことをしてしまう。

「こんな悪人は許さない。だって、こんなのはいけないことでしょ。大トリ物になるよ、これ。時代劇みたいにこの紋所が目にはいらぬか、だね」

と、亜里沙が言うと、さっそく仕事でお世話になっている報道各社にその動画データを送った。その動画データを見た報道各社は一大広告スポンサーとなっていた土居建設には内緒で秘密裏に建造に関するいろんな情報を集めようとした。

 だが、亜里沙が動画データを送ったのは報道各社だけではなかった。警察にも送っていたのだ。そのとき、東京地検特捜部は建造が九龍島にIR施設を誘致する際、中央省庁の高官や政治家に賄賂を送っていたという未確認情報を得ていて、その裏をとろうとしていた。しかし、それに係わる人たちは誰もそのことについて口をわらないため、建造の賄賂容疑の捜査は進展しておらず、途方に暮れていた。

 そんななか、警察からある動画データが送られてきた。その動画を見た検察官は、

「これってたしか、ラブライブ!という大会の審査員を建造が買収しているところですよね。これって刑事事件としては弱すぎませんかね」

とこの動画、つまり、ヒカリが撮影した建造がラブライブ!決勝の審査員を買収する映像を見て言うが、ベテラン検察官は別の見方をしていた。

「でも、これはこれで使えるかもしれない。なぜなら、これも買収している現場を映した証拠映像だからね」

 このベテランの一言で停滞していた捜査は一気に進展していった。まず、建造に賄賂を贈ったとされる中央省庁の高官に対して揺さぶりをかけた。しかし、なにも口をわらない。だが、検察官は建造が買収を行っている現場の映像があると言い、建造がラブライブ!決勝の審査員を買収している動画を見せた。すると、その動画を見た高官はついに建造から賄賂をもらい、九龍島のIR施設の誘致について便宜をはかったことを認めた。なぜ認めたのか。それは、建造から直接賄賂を受け取ったときの映像を検察側が把握しているのではないかとこの高官が心配していたからだった。

 その後、検察は秘密裏に建造が関係するところすべてを調べ上げ、多くの中央省庁の高官(特に建設関係や教育関係)や政治家、建築業界、教育業界に建造は大量の賄賂を送っていたことを突き止めた。そして、検察特捜部は建造関連の一斉摘発を決めた。日時は建造の警戒が揺らぐであろうと思われる時間、ラブライブ!決勝、それもスクールアイドルすべての演目が終わるとき――。

 

 そんななか、建造は何も知らず、ようやく自分、そして、大地の悲願だった九龍島のリゾート開発に着手できる、ようやく夢が叶うと思い、ラブライブ!決勝の日を迎えていた。裏では建造に対する摘発の準備が進められていることを知らずに。

 建造はバックスターの勝利を確信していた。なぜなら、審査員を全員買収し、バックスターの勝利は確実なものにしたからだった。また、念には念をいれて演目順をちょっと細工し、バックスターを必ずトップバッターになるようにしていた。そこでほかのスクールアイドルをステージ前に移動させ、バックスターの圧倒的なステージを見せることでスクールアイドル全員の自信、やる気をすべて喪失させようとしていた。事実、それにより、スクールアイドルたちは自信、やる気を喪失し、テージにあがるもうまく踊れないグループが続出した。たった1組、九や多恵がいるアイランドスターズを残しては。

 そして、最後の演目となったアイランドスターズが歌い終わったあと、結果を待つだけ、その結果も審査員全員の一致でバックスターの勝利で終わる、そう建造は思っていた。

 が、突然、ステージ上のスクリーンにある映像が映ると、建造は愕然とした。その映像は建造がラブライブ!決勝の審査員を買収しているところの映像だった。

「誰だ、こんな映像を流しているのは。濡れ衣だ。はやく止めろ。こうなったら抗議してやる!!」

建造がそう言うと、ラブライブ!運営本部に直接つながるホットライン用電話機の受話器をとった瞬間、

「東京検察特捜部である。土居建造だな」

と、検察がいきなり建造のいる部屋にはいってくると、建造

「わしを誰と思っている。土居建造だぞ!!」

と叫ぶも、検察官は、

「そんなの関係ない。土居建造、賄賂容疑により逮捕する!!」

と大声で言うと、建造、

「わしの、わしの、わしの夢、あともう少しで達成できるのに…」

と断末魔のようにさけぶ。が、検察官はそのことを気にせず、建造に手錠をかけた。このとき、この瞬間をもって、九龍島に一大リゾート地を造るという建造の夢、建造の野望は潰えたといってよかった。

 

 その後、ラブライブ!決勝は審査員の全員辞職などにより混乱するも、それを危惧していた穂乃果たちの働きによって従来の会場とネットの投票が行われることになり、結果、九たちアイランドスターズの優勝で幕が下りた。

 一方、建造が賄賂罪により逮捕されたことで土居建設は信用を失い、さらに九龍島のリゾート開発以外の工事以外に仕事がなく収入がなかったこととその状態のなかでもバックスターを通して土居建設、九龍島のリゾート開発の広告宣伝費に多くのお金を投入したことにより、土居建設の財務状況は火の車状態になってしまったことが幸いし、建造の逮捕から1週間後に土居建設は倒産した。また、建造から賄賂を受け取った中央政庁の高官や政治家は次々と逮捕された。このことはのちに土居建設事件とそう呼ばれることとなる。さらに、建造が立てた学校、土居建造記念高校も建造というスポンサーを失った結果、閉校が決まった。このとき、バックスターのルナに関するある問題が発生したことは別の話である。

 

 そして、4月、建造は拘置所の独房にいた。髪の毛はすべて白髪になっていた。逮捕されたショックで髪の毛がすべて白髪になったみたいだった。

 建造は逮捕されたことを受けてあることを考えていた。

「なんで、俺はこんなことになったのだろうか」

と。そこで建造は昔を思い返していた。バブル景気のころ、大地とともに一生懸命働くも、このとき買いあさった株や土地がバブル崩壊とともに多額の借金になった。そして、これがもとで大地は自殺し、そのときに残した多額の保険金で土居建設は立ち直った。このとき、建造は大地の夢であった大地の出身地九龍島のリゾート開発の夢を引き継ぎ、一生懸命働いた。その結果、会社は大きくなり、奏という奥さんをもらった。その奏から自分の夢、九龍島のリゾート開発の夢を褒められたことでさらに仕事に精進する。また、ラブライブ!と出会い、バックスターというスクールアイドルを育てた。

 だが、ここから足を踏み間違えたのだろう。あまりに夢を追いかけたあまり、夢のためなら手段を選ばなかった。自分の夢、いや、野望のために自分の娘多恵ですら自分のコマのように扱った、そして、役に立たないと平気で切り捨てた、それだけでなく、中央省庁の高官や政治家に賄賂を送り続けていた、とても悪いことをしてきた、それがいけなかったのだろうと、これが報いなのだろうかと、これからどう生きていけばいいのだろうかと。

 そんなとき、

「土居建造、土居建造」

と、看守から建造を呼ぶ声が聞こえてきた。

「土井建造、君に面会人だ!!」

この言葉にただ従う建造。面会室に入ると、

「お父さん」

と建造を呼ぶ声がする。そう、アクリル板の向こう側にいたのは自分の娘、多恵だった。

 その多恵は建造が椅子に座ると同時にあることを行った。

「お父さん。私は父、建造を見捨てていないよ。だって、私にとって唯一の家族だもの。どんな悪いことをしていたとしても、私の父は父だもの。だから、忘れないで、どんなときでも私は父を見捨てないって」

 これを聞いた建造、

「ありがとう、ありがとう、多恵。本当にありがとう」

と、涙を流しながら多恵に感謝の言葉を送った。そして、建造は決心した。娘多恵のためにもこれからはまっすぐに清々堂々と生きていこうと。

 

参考文献

東洋建設HP TOYO HISTORY 第5期 昭和60年~平成10年 バブル景気の到来と崩壊

鹿島建設 HP バブル景気、未曾有の不況、そして、21世紀へ

さくら事務所 HP 時系列で見る、マンション建設業界「人材不足」の変遷

 



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最終章 ファイナルストーリー 「My Graduation~光の中へ~
ラブライブ!アイランドスターズ‼ 最終章 第4話(第25回)


ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終章

 ファイナルストーリー 「My Graduation~光の中へ~」

  前編 優勝と告白と別れ

 

「今回の優勝は「バックスター with アイランドスターズ」!!バックスター、華麗なる復活だよ~」

あのルナが聞いた衝撃の雪穂の告白から1年後、バックスターの3人、ルナ、レン、カレンはラブライブ!冬季大会の決勝の地、秋葉ドームのステージに立っていた。

「う、うそでしょ。私たちがふたたび優勝できるなんて!!」

と、ルナは驚きながらも巨大スクリーンを見ていると、

「いや、本当だよ。私たち、やったんだよ」

と、レンはルナに真実を伝える。

「やっぱりですよ。私の分析でも、今回は優勝できるとでていましたから」

と、カレンは冷静に言うも、目には涙を流していた。

 そして、

「私の分析…、というよりも、助っ人がいてくれたから優勝できたのかもですね」

と、カレンはある方向を向くと、

「そうですね。私たちだけだったら復活はできなかったかもですね」

と、レンもその方向を向く。さらに、

「そうだね。本当、助かったよ。ありがとう」

と、ルナもその方向を向く。その方向には…。

「私の力じゃないよ。ルナちゃんたちの力があったから、また、優勝できたんだよ」

と、3年生になった九が立っていた。さらに、

「そうですよ。謙遜しなくても大丈夫ですよ」

と、ひろ子、最後に…、

「まっ、この前の優勝(1年半前の夏季大会)は私の父(土居建造)の助けがあったからじゃないの」

と、多恵がいた。多恵はあいからわず毒舌をふりまいていた。

「多恵~、それは違うでしょうが。この前の優勝だって私たちの実力で勝ったもんです~」

と、ルナは多恵と張り合うと、多恵、

「それはどうかな。一般世間ではその考えが広がっているでしょ」

と、ねちっこく言うと、ルナ、

「いや、私たちの実力です~」

と、これまたねちっこく言う。

 これにカレンが参戦…。

「私の分析…、ではなく、警察の調べでは、昨年度の夏季大会における買収はなかった…、というよりも、会場にいる観客とネットでの投票ではずるはできませんですしね。もし、ネットでの投票などに不正をしてしまえば、すぐにばれてしまうしね。それほど、ラブライブ!の運営はしっかりとしていますよ」

と言うと、レンも、

「それは言えている。簡単に不正はできない。だから建造は不正ができる審査員による審査に切り替えて不正を働こうとしていた。ラブライブ!の運営がしっかりしているから、建造も手段を選ばなかった…じゃないかな」

と冷静に言う。

 これに九、

「でも、去年度の夏季大会に優勝しているルナちゃんたち(バックスター)の実力だったら、別にずるしなくても(去年度の冬季大会に)優勝できたんじゃない」

と、あっけらかんに言うと、レン、

「それはちょっと…」

と、逆に落胆する。これにはひろ子、

「それをあんたが言うかねから、九ちゃん」

と同意。さらに多恵も、

「私たち(アイランドスターズ)が急成長してきたから、私の父はそれを危惧してズルをしてきたんじゃない…。ハー」

と、ため息をつきながら言うと、ルナも、

「自分たちのチームの存在すらも忘れている…。同調するわ…」

と、これまた落胆していた。

 だが、これを見ていた九、

「?」

と、なにもわかっていないようだった。

 

「「バックスター with アイランドスターズ」、優勝おめでとう。今の気持ちはどうかな?」

と、司会役のレポーターがルナに聞くと、

「私たちの力では優勝できませんでした。それもこれも、観客のみんな、ネットで見ているみんな、そして、応援してくれているみんなのおかげです。そして、私たち3人を直接支えた親友、九、ひろ子、多恵のおかげです。本当にありがとうございました」

と、喜びながらも御礼を言った。

 さらに、レポーターは九にもマイクを向ける。

「去年度の冬季大会では、アイランドスターズとして優勝しましたが、今回はどうしてバックスターに力を貸したのかにゃ?」

と、レポーターが言うと、九、

「だって、ルナちゃんたちと一緒に、もう1回、頂きに登りたいんだもん」

と言うと、レポーター、

「これは素晴らしいことだにゃ~」

と、喜びながらも次へと移る。

「そして、今回惜しくも5位だったにゃ~。それでも素晴らしいにゃ。どうかにゃ。今回のラブライブ!、先輩たちと一緒に頑張ってきた感想だにゃ?」

レポーターが次にマイクを向けたのはたい子だった。

「えっ、私!!わ、私は1年間、後輩の1年生と一緒に頑張ってきました。私たちはあと1年…」

と、たい子が言うと、横から、

「めいは頑張ったよ。めいをもっと褒めて~」

と、めいがよこやり、さらに、

「小明だって頑張ってきたよ。先輩として1年を引っ張ってきたよ~」

と、小明、これまたよこやり。これにはたい子、

「めいに小明~、いいかげんにしなさい!!私が言っている最中でしょうが」

と、めいと小明を叱る。これには1年から、

ハハハ

と、笑い声が聞こえてきた。

 たい子は気を取り直して言った。

「私たちはあと1年残っております。この九龍高校2年、1年、総勢33名のチーム「ISS」をもっとはばたせようと思います」

これにはたい子以外のめい、小明、そして、1年生30名は大きくうなずいていた。

「とても感動的なスピーチだったにゃ~」

と、レポーターもなぜか涙を流していた。

 一方、ステージ袖にはある人たちがいた。

「まさか、去年度の冬季大会に続いて、九龍高校から優勝チームを出すことができるなんてね…」

と、星子、その横から、

「それもこれも卒業してからもスクールアイドルを、九ちゃんたちを応援しようと頑張ってきた星子のおかげじゃないかな」

と、氷が星子を労っていた。これには星子、

「そうだね。私たちは紆余曲折をえてアイランドスターズを結成した。そこから私たちの道が始まったのかもね」

と言うと、氷、

「それだと物語が終わっちゃうじゃない。まだまだ続くんだから」

と、星子をたしなめる。さらには、

「そうですよ。私たちはこれからも九龍高校のスクールアイドルを応援していくのですから」

と、春も発言する。

 そんな卒業生3人を遠くから見ている女性が1人…、雪穂だった。

「九たち3年生はルナたち、バックスターを支えるべくバックスターに加わって、スクールアイドル最高のグループ「バックスター with アイランドスターズ」として生まれ変わり成長していった。たい子たち2年生は1年生30人全員と一緒に「ISS」として活動していた。そして、星子たち卒業生はそんな九たちを支えるべく、星子と氷は役場に入って、新しく設立したスクールアイドル課の職員として事務折衝など、縁の下の力持ちとして活躍、春も、新しくできた高校の寮の寮母として活躍中。これで私もお役ごめんかな」

と言うと、いきなり、

「雪穂先生、なにぶつぶつ言っているのですか?」

と、雪穂に近づいていた春が言っていた。これに雪穂、

「なんでもないよ。それより、春も今度入ってくる新入生のためにもっとおいしいご飯、作ってよ」

と言うと、春、

「それはもちろん。だって、私は九龍高校みんなの食のコーディネーター、ですから」

と、笑いながら答えた。

 

「これでラブライブ!も終了だにゃ。優勝した「バックスター with アイランドスターズ」に盛大な拍手を送るにゃ~」

レポーターの声とともに会場から、

パチパチパチ

と、ルナたちをたたえる拍手がおこり、ラブライブ!は終わった。

「みんな~、集まって~」

と、多恵の一言で、ステージ袖に集まる九龍高校の全生徒たち。

「今から雪穂先生から一言言ってもらいます」

と、多恵が言うと、雪穂、

「え~、実は大切なお話があります」

と、九たち全員に言うと、1年生の一部から、

「なにかな、なにかな」

と、ざわめく声がする。九も、

「もしかして、ごほうび!!」

と、わくわくしながら言うと、多恵、

「静かに!!」

と一喝。すると、九を含めて静かになる。多恵はこれを見てすぐに、

「雪穂先生、はじめてください」

と言うと、雪穂、

「う、うん」

と、ちょっとびっくりしつつ、話を続ける。

「実は大切なお話があります。私、高坂雪穂は今年の3月をもって九龍高校の教師を退任します」

これには1年生から、

「なんで…」

という泣く声が聞こえてきた。雪穂はそれを見て、

「実は、私が九龍高校との、九龍町との契約は2年だったの。そして、来年度、また高校にはこの島が好きで、そして、スクールアイドルを目指して多くの新入生が入ってきます。そこで、町ではそれを見越していろんな技能を持った先生たちがやってきます。これでこの高校の弱点だった複数の教員免許が必要という要件が緩和されます。私の役目は終わった、そう思っての退任なんです」

と話した。そこに多恵、

「でも、スクールアイドルを目指して新入生が来るけど、雪穂先生が退任したら、誰が教えるのですか?」

と、雪穂に質問する。雪穂、

「それは大丈夫。スクールアイドルっていうのは本来高校生、つまり自分たちが自らの意思、考えでもって活動していくものなの。先生が教える、導くってものじゃないの。私たち大人はただその手伝いをするだけ」

と答えると、すぐに多恵、

「でも、それだと道をはずして…」

と言うと、雪穂、

「それを止めるのも止めないのもスクールアイドルをする自分たちの務め、でもね…」

と言うと、すぐに、

「でもね、私たちはそんなスクールアイドルである高校生の道を応援し、時には手助けする、大人はそんな生き物なんだよ」

と言う。

 そして、雪穂は星子の方を見るなり、すぐに、

「これから九龍高校のスクールアイドルの顧問、というより指導はここにいる、九龍町役場スクールアイドル課の天海星子さんが勤めます。けれど、その部をどう進めるかはあなたたち、この生徒全員にかかっています」

と言うと、星子、

「はい、わかりました」

と、素直に答える。

 さらに、雪穂は多恵の方を見ると、

「そして、多恵、あなたはこれから先、九龍町のため、そして、九龍高校のスクールアイドルのために頑張っていきなさい。星子と、いや、スクールアイドルと一緒に九龍町を、九龍島を盛り上げていきなさい」

と、ずばり言うと、多恵、

「私が九龍島を…」

と言うと、星子、

「私はこれから先、九龍高校のスクールアイドルを陰から支えていくけど、多恵はこれから先、九龍島、九龍町を引っ張っていく存在になる。それが私たち、九龍島に住む人たちの、そして、これから入学してくる新入生たちにとって大きなプラスになっていくのだから」

と、元気よく答える。これに多恵、

「でも、星子にとっておじいちゃんから町長を継ぐのでは?」

と、心配するも、星子、

「私には町長は無理。でも、多恵はこの1年見ていくなかで、九やめい、小明といったクセのある生徒たちを抑え、なおかつ、生徒全員をまとめる統率力がとてもよかった。だからこそ、これから九龍島を引っ張っていく役に適しているしね」

と言って、すぐに星子は多恵の耳元に近づき、

「それに、これで幾分かは罪滅ぼしになるんじゃないかな」

と、こそこそ話をする。多恵、

「えっ」

と言うと、星子、

「あとはまかせるからね」

と、多恵の肩を叩いた。で、それと同時に、

「私、そんなにクセが強いかな」

と、九がふくれっつらなると、めいも、

「めいは悪くないもん…」

と、嫌な顔をする。小明にいたっては、

「小明にとってこれが普通です!!」

と、ただただ言うだけだった。

 そして、雪穂は全員を見渡し、

「これで私の、九龍高校におけるラブライブ!は終わりを迎えます。けれど、これは忘れないで。スクールアイドルはみんなが主役だよ。これからもスクールアイドルを楽しんでください。以上!!」

と、締めの言葉を言うと、1年生から、

「雪穂先生がいなくなるよ~。悲しいよ~」

とか、

「いっちゃいやよ~」

と、泣き声が次第に大きくなっていく。そして、

「え~ん」

と、1年生全員が泣いてしまう。

 これを見たのか、すぐに、

「みんな、泣くのはやめようよ」

と言う声がしてきた。九だった。九は、

「私だって泣きたいよ。でも、これは雪穂先生が決めたことだよ。私はそれを尊重するよ。雪穂先生を笑顔で送ろう」

と言うと、1年生から、

「そうだね」

「そうだよ」

という共感の声が聞こえてきた。多恵はそれを見るなり、

「九の言うとおりだよ。私たちはみんなで雪穂先生を笑顔で見送ろう」

と言った。これには雪穂、

「ありがとう、みんな」

と、御礼を言った。

 だが、多恵はこのとき、にやっと笑っていた。雪穂は知らなかった、このあと、多恵があることを思いついたことを…。

 

 ラブライブ!決勝が終わり、島に戻るとき…、多恵はフェリーの中で九、ひろ子、ルナ、レン、カレンの3年生を集めていた。

「で、1つ提案があるんだけど…」

と、多恵はある考えをほかの5人に示すと、ルナ、

「これは面白いですね。私は賛成ですわ」

と言うと、レンも、

「これを実現できればすごいことだよ」

と言うと、カレンも、

「私の分析でも100%成功できると思います」

と答え、ひろ子は、

「でも、これをばれずに進めるのはちょっと…」

と、心配顔。でも、九は、

「それでも、これはとても面白いことになると思うよ。絶対成功させようよ」

と、張り切っていた。

 

 そして、3月下旬…。

♪あおげば~とうとし~

この日は3年生である九、ひろ子、多恵、ルナ、レン、カレンの卒業式修了式が行われていた。

「え~ん、え~ん」

と泣くひろ子。対する九は、

「わくわく」

と、なぜかわくわくしていた。

「卒業証書授与。金城九」「はいっ」

「土居多恵」「はいっ」

「水木ひろ子」「はいっ」

「伊藤ルナ」「はいっ」

「鈴木レン」「はいっ」

「田中カレン」「はいっ」

3年生全員の名が呼ばれ、卒業証書の授与が行われた。

 そして、在校生を代表して新しく生徒会長になったたい子が、

「送辞…」

と言うと、いきなり、

「送辞、というのは私たちには似合わないよ。だから、この歌を送ります」

すると、たい子たち2年生、そして1年生全員が立ち上がり、いきなり歌いだした。

 

「Hallow Hallow say good-bye」(ラブライブΩ ラストメッセージより)

 

最初から一緒ではない

一つ一つの小さな粒たち

でもぶつかりしとき

大きな形になる

 

それでもかがやけない

みんなの声が聞こえし

そしてどんどんかがやき

そして1つの大きな太陽になる

 

全てがそろいしとき

全てがかがやき

全てが静まるとき

全てがおわるわけじゃない

 

Hallo,Hallo,say good-bye

はじまりがあれば終わりはない

Hallo,Hallo,say good-bye

 

最初から一つではない

一つ一つの大きな粒たち

でも混ざりあるとき

全てがぶつかりあう

 

ぶつかりあたるごとに

1つの橋がかかりし

そしてどんどんつながり

そして1つのかがやく太陽になる

 

みんなつながるとき

みんなひとつに

みんな離れるとき

みんなと終わるわけじゃない

 

Hallo,Hallo,say good-bye

つながれしキズナ終わりはない

Hallo,Hallo,say good-bye

終わりあってもつながり続ける

 

全てが1つにつながるとき

それは永遠を示す

みんなの声とつながるキズナ

これをかてにかがやき続ける

仲間という名の太陽が

 

Hallo,Hallo,say good-bye

はじまりあれば終わりはない

Hallo,Hallo,say good-bye

みんな合わせかがやき続ける

Hallo,Hallo,say good-bye

つながりしキズナ終わりはない

Hallo,Hallo,say good-bye

みんな合わせつながり続ける

 

Hallo,Hallo,say good-bye

別れにサヨナラしようよ

 

「これで送辞を終わります」

と、ひろ子が言うと、九たち3年から、

「ブラボー」

という声が聞こえてきた。

 そして、ついに最後を迎えるときがきた。

「これで九龍高校卒業式兼修了式を終わり…」

と、雪穂が言うと、そのとき、

「ちょっと待った~」

と、大声が聞こえてきた。

「えっ」

と驚く雪穂。

 いきなり暗幕が体育館の窓を覆い隠し暗くなる。さらに、

カサッ

と、1つのスポットライトが雪穂に降り注ぐ。

「えっ、なに!!」

雪穂は何がなんだかわからなかった。だが、雪穂以外の全員がわかっていた、これからはじまる、宴がはじまることを…。

 

つづく

 

次回 ファイナルストーリー 「My Graduation~光の中へ~」 後編 ?と?

 



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ラブライブ!アイランドスターズ‼ 最終章 第5話(第26回)

 九たち3年生の卒業式兼修了式のあと、直前、

「えっ、なに!!」

真っ暗になった体育館に1つのスポットライトが雪穂に降り注いだ。

 すると、ある声が聞こえてきた。

「え~、今から~」

これは2年のたい子の声だった。

 

ラブライブΩ/UC 外伝

 

「今から…」

たい子の声が続く。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終…

 

「今から…」

と、たい子の声が…。

「今からめいたち「ISS」のラブライブ!5位入賞おめでとう会をひらくよ~」

と、突然めいがよこやり。つづけて…、

「小明たちにつづくにゃ~」

と、小明もよこやりしてくる。

「こら~、めいに小明、悪ふざけはするな~」

と、たい子、めいと小明に怒る。

「ごめんにゃ~」

と、めいが言うと、小明も、

「でも、暗い雰囲気は苦手だにゃ~」

と弁解する。これにはまわりから、

ハハハ

と苦笑。そして、雪穂も、

「なにがどうなっているの?」

と困惑していた。

「え~、めいと小明は罰として年度末まで学校中のトイレ掃除ね」

と、たい子が言うと、めい、

「たい子が権力を持つとろくなことがないにゃ~」

と言えば、小明も、

「そうだにゃ~」

と言う。

 と、言っているのはほっといて、たい子は改めて言う。

「それでは、最初から」

また暗くなる体育館。そして、再びスポットライトが雪穂に降り注ぐ。

「…」

黙る雪穂…。

 

ラブライブΩ/UC 外伝

 

「続きまして…」

と、たい子の声が響く。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終章

 

「続きまして、これから雪穂先生の…」

と、たい子は少しためにはいる。

 

ファイナルストーリー 「My Graduation~光の中へ~」

 

「これから雪穂先生を送る会をはじめます」

と、たい子は雪穂に向けて言う。

「えっ、私の送別会!!」

これには雪穂は驚いていた。

 

後編 送別会と退任式とお別れと…

 

「私のための送別会…」

と、雪穂は驚いたまま、窓などに張られていた暗幕が一斉に落とされる。すると、そこには、

「雪穂先生 2年間 ありがとうございました」

と書かれた大きなパネルがかけられていた。

「本当にありがとう…」

と、雪穂が泣きながら喜ぶと、九、

「私たちは雪穂先生がいたから、ここまで頑張ってきました。その御礼に兼ねて、今から雪穂先生への送別会を行うことにしたの」

と言えば、多恵、

「これはいわば、私たちが雪穂先生に送る卒業式です。楽しんでください」

と言うと、ひろ子も、

「この様子はネットを通じて全世界に配信されています。今、見たところ、ざっと1万人ぐらいの人が見ていますよ」

と、こそっと雪穂に言うと、雪穂、

「大げさすぎるのでは…」

と言うと、ルナ、

「いや、本当だ。やっぱ、私たちバックスターの力はすごいんだぜ」

と、堂々と言うと、レン、

「まっ、本当はアイランドスターズを率いた九さんの最後の融資をみたいのかも?」

と言うと、ルナ、

「なんだとー!!」

と、レンにはむかうと、カレンは、

「私の分析だと…、半々かな、っていえばいいのだろうか?」

と悩む。

「はいはい、続けていきますよ。まず、1年生有志による…」

と、たい子は九たち3年を尻目にたんたんとプログラムを進める。これは多恵、

「こりゃ、私以上にクレーバーな生徒会長になるな」

と思ってしまった。

 

 ステージでは1年生による劇や合唱、そして、ミニライブが行われていた。これを見ている雪穂、おもわず、

「たった1年だけど、急成長してきたかな?」

と、思ってしまうほどうまかったりする。

 そして、1年生全ての演目が終わり、続いて…。

「続いて、卒業生による…」

と、たい子が言うと、雪穂、

「ついに九たちの番だね」

と言うが、とうの九は、

「私、ここにいますよ」

と、雪穂の横にいることをアピール。これには雪穂、

「…」

と、黙るしかなかった。

「卒業生による合唱」

と、たい子が言うと、ステージには星子、氷、春が並んでいた。

「雪穂先生、私たちはたった1年間しかいませんでしたが、それでもいい思い出でした」

と、星子が言うと、氷は、

「でも、その思い出は一生で1番楽しいものになりました」

と、泣くのをこらえて言うと、春は、

「私は寮母として雪穂先生たちを支えてきましたが、それでも、この2年間はとても嬉しい、楽しいものになりました」

と言うと、3人は、

「「「そんな雪穂先生に送る歌です。「さよならにさよなら」」

と、3人による歌が始まる。これには雪穂、

「うわあ、これ、お姉ちゃんが歌っていた歌だ~、懐かしい」

と、懐かしさにつつまれていた。

 そして、歌い終わると、星子たち3人は、

「本当にありがとうございました」

と、御礼を言うと、雪穂も、

「こ、こちらこそ」

と、これまた御礼を言ってしまった。

 そして、たい子たち2年がステージに上がる。さらに、九たち3年生6人も上がる。

「あれ、2年と3年は合同で…」

と言うと、九、

「私たちは9人で新曲を歌います。これは多恵ちゃんが今回のために作った新曲です」

と言うと、9人で一緒に、

「聞いてください。「夢ってなに?」」

と言うと、9人は歌いだした。

 

「夢ってなに?」

 

(ドリーミング イン ザ スカイ)

 

夢 だれもがもっている

夢 だれもがあこがれている

すべての人が 必ず叶える

夢にはそんな 力がある

 

けれど夢って 何だろう?

夢はいろいろ あるけれど

ただ1つだけ いえる

それは(それは) はてしない

パワーが ある

 

夢を必ず(必ず)叶える(叶える)

私たちには そんな力がある

夢をリンクして 1つの大きな(大きな)

でっかい夢を つくろう

(ドリーミング イン ザ スカイ)

 

 歌い終わると、2年と3年が一緒に、

「本当にありがとうございました」

と、雪穂に御礼を言った。

 そして、ステージには卒業生である星子、氷、春が再びあがってきた。ステージに並ぶ12人。九はその12人を代表して雪穂に言った。

「私たちは雪穂先生と出会えたことで楽しい未来が開かれました。本当にありがとうございます。送別会はこれで終わりますが、最後に私たちから雪穂先生にプレゼントがあります」

これには雪穂、

「なにかな?」

と言うと、九は笑いながら言った。

「それでは聞いてください。雪穂先生に送る最後の歌、アイランドバックスターズで

「僕らは光の中でへ」!!」

そして、雪穂に送る、アイランドスターズ、バックスター、それぞれの思いをミックスして、アイランドバックスターズ、最後の歌がはじまった。

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! 最終章 「僕らは光の中へ」

 

光さす 道の中へ

 

僕らは光の中を   すすんでいっている

あかりめいいっぱい てらしつづけて

ひろがっていく   世界をむけて

可憐にすすんでいく 僕たち

 

たえまない努力   してるけど

それでも難しい   生きていくには

氷のように固い   世の中でも

僕たちはきっと   のりこえるさ

 

月と星を      何度も見ている

それほど長い    航海だけど

僕たちには     そんなの苦じゃない

だってきっと    春は必ずくるさ

だからあきらめ   ないで僕たちは

きっと成功できる  大変だけど

究極の力もつ    僕たちだから

光の中をすすんで  いけるのさ

 

僕らはいつかは別れ ばらばらになるけど

たとえ暗くなって  すすめなくても

あきらめないよ   僕たちきっと

まよわず進んでいく かならず

 

たえまないあかり  みていると

それだけ元気出る  くじけそうでも

みんなのことを思い 全力だす

僕たちはきっと   あきらめないよ

 

星が流れ      何度もかわるよ

それほど長い    航海だけど

僕たちは      ひとりじゃないんだ

だってきっと    みんなココロはひとつ

 

だからさびしく   ないよ僕たちは

きっと繋がっている 遠くにいるけど

究極のキズナもつ  僕たちだから

はるかな道を進んで いけるのさ

 

いずれは散っていく僕たち

それがたとえ苦しくても

いつかは報われるはずさ

だって 散っていっても

僕たちのココロは1つ

だからこそあきらめないよ

僕たちはやっていけるはずさ

 

月と星を      何度も見ている

それほど長い    航海だけど

僕たちには     そんなの苦じゃない

だってきっと    春は必ずくるさ

だからあきらめ   ないで僕たちは

きっと成功できる  大変だけど

究極の力もつ    僕たちだから

光の中をすすんで  いけるのさ

 

僕たちは光の中をすすむのさ

かがやける未来へとすすむため

 

かがやける未来へとすすむため

 

「本当にありがとうございました」

九たち12人の声とともに1年生30人からも、

「ありがとうございました」

と、雪穂に御礼を言うと、雪穂、

「本当にありがとう」

と、泣きながら答えていた。

 

 こうして、雪穂の送別会は終わり、雪穂は引越しの準備に追われていた。その都度、級から、

「私、手伝うね」

と、勝手に手伝ってくれたが、雪穂、

「手伝ってくれるのは嬉しいのだけど…」

と、何か裏がありそうと感じていた。

 

 そして、3月31日、ついに雪穂が島を出る日がきた。

「高坂(雪穂)さん、準備はできましたか?」

と、九の母親が言うと、雪穂、

「は~い、できましたよ」

と言うと、玄関に移動、そして、

「これまで2年間お世話になって本当にありがとうございました」

と、玄関にいた九の両親に御礼を言う。すると、

「もう高坂さんは私たちの家族の一員ですよ。いつでも戻ってきてください」

と、九の母親は雪穂に言うと、雪穂、

「本当にありがとうございました」

と言い残して玄関をあとにした。

 その3分後…。

「それじゃあ、お父さん、お母さん、行ってきます」

と、九が玄関で両親に言うと、九の母親は、

「それじゃ、行ってきなさい。がんばっていくんだよ」

と、まるでどこかに行くみたいに火打石をあわせると、

「それじゃあね~」

と、九も玄関をあとにした。

 

 九龍高校、3月31日、朝、体育館…。ここでは雪穂の離任式が行われていた。

「高坂雪穂先生、2年間本当にありがとう」

と、校長から御礼の証書が渡されると、雪穂は、

「本当にお世話になりました」

と、涙を流しながら答えた。

 雪穂はステージの上からまわりを見渡した。そこには町長である星子のおじいちゃん、氷の父親である副町長をはじめ、この町のえらい人たち、さらに法被で応援してくれたハッピーさん、特攻服が持ち味の漁師軍団、特攻野郎Sチームなど、多くの町民が集まってくれた。

「島のみんな、本当にありがとう」

と言うと、ステージを降りて、生徒の前に立つと、

「1年生のみんな、私は今日でお別れだけど、星子のもとで輝いてね」

と、1年生に対して激励の言葉を送った。

 そして、雪穂は九たちの前に立つと、1人ずつ声をかけた。

「カレン、あなたの分析はみんなのために使ってね」

と、雪穂が言うと、カレンは、

「はい、わかりました」

と答えた。

「レン、ルナを助けていってね」

と、雪穂が言うと、レンは、

「私はいつもルナの味方です。安心してください」

と伝えた。

「ルナ、あなたは昔と違って生まれ変わったよ。だから、これからもがんばってね」

と、雪穂が言うと、ルナは、

「私はこれからもがんばっていきます」

と誓った。

「星子、これからはあなたが先生だよ。みんなを明るい未来へと導いてね」

と、雪穂が言うと、星子、

「わかりました。雪穂先生が残したもの、絶対に守っていきます」

と答えた。

「氷、星子を支えていってね。星子はあなたあってのものだからね」

と、雪穂が言うと、氷、

「まかせてください。星子のことならお任せあれ」

と答えた。

「春、あなたは九龍高校生徒たちの母親みたいなものだよ。これからも、生徒たちみんなのために頑張ってね」

と、雪穂が言うと、春、

「任されました」

と答えた。

「たい子、生徒会長としてみんなを引っ張っていってね」

と、雪穂が言うと、たい子、

「みんなをまとめていってやりますよ。任せてください」

と答えた。

「めい、みんな、めいの明るさには助かっているよ。ムードメーカーとしてみんなを暖めていってね」

と、雪穂が言うと、めい、

「めいも頑張るでしゅ」

と、かみながら答えた。

「小明、アクロバットなどでみんなを、島中を、楽しませてあげてね」

と、雪穂が言うと、小明、

「小明の得意技、絶対に活かしていきます!!」

と、元気よく答えた。

「ひろ子、あなたの元気はみんなの元気につながるよ。どんどん進んで言ってね」

と、雪穂が言うと、ひろ子、

「全力前進していきます!!」

と答えた。

「多恵、あなたはこれからこの町の、いや、みんなをまとめていく存在になるよ。だからこそ、もし、くじけそうなことがあっても諦めないで。そして、みんなを頼って。そうすることで必ず明るい未来が訪れるからね」

と、雪穂が言うと、多恵、

「雪穂先生、本当にありがとうございました」

と、泣きながら答えた。

 そして、九の前に立ち、雪穂はあることを語った。

「九、あなたが私に声をかけてくれたから、今があるんだよ。九、あなたはみんなの太陽だよ。あなたがいてくれたから、みんなはやってこれた。だからね、九、これからもみんなの太陽でいてね」

これには九、

「はい、わかりました」

と答えた。が、九、そのとき、こっそり、

「でも、その役目、多恵ちゃんに譲ったけどね…」

と、誰にも聞こえないように答えていたみたいだった。

 とはいえ、こうして、一人一人に声をかけた雪穂は、みんなの方をみると、町の人たちから、

♪あお~げばとうとうし~

の歌声が聞こえてきた。町中からの贈り物に雪穂、

「本当にありがとう。この2年間は私の宝でした」

と言って、そのまま体育館をあとにした。

 

 そして、雪穂は町中を雪穂の引越し荷物?を載せた自分の車でまわると、いろんなことを思い出しながら港へと向かった。

 九龍島の玄関口、九龍港。そこには本土に行くフェリーが待っていた。

「まもなく~、鹿児島港に向かうフェリーが出発します~」

港に響くアナウンスを聞いてか、雪穂はそのまま車をフェリーの車両看板へと進めた。車を降りてフェリーの外にでる雪穂。そこには…。

「雪穂先生、本当にありがとうございました」

「これからも頑張ってください」

などと書かれた横断幕を持った島民たちが集まっていた。

「みんな、本当にありがとう。この島の思い出は忘れないよ」

雪穂は泣きながら言うと、星子が、

「雪穂先生、本当にありがとうございます」

と言いながら、花束を雪穂に渡した。

「黄色いハイビスカス…」

雪穂は花束の花に驚いていた。星子はこれを見て、

「黄色いハイビスカス、花言葉は輝き。雪穂先生は私たちに、島の人たちに、町の人たちに輝きをくださいました。私たちはこれからもこの輝きを大切にしていきます」

と言うと、雪穂、

「頑張ってね」

と答えた。

 

 雪穂はこのあと、フェリーに乗り込み、デッキで見送りにきた島民たちに最後の別れをしていた。

 そんなとき、ある船員が雪穂にあるものを渡した。

「紙テープ?」

雪穂はこれでなにをするのかわからなかった。船員は、

「これを外に投げてください」

と、雪穂に紙テープを外に投げるように指示する。

「うん、わかった」

と、雪穂、紙テープを外に投げる。すると、投げた紙テープの端を多恵たちが拾っていく。船員は説明した。

「この紙テープは島を離れる先生たちと生徒たちを結ぶテープです。フェリーが出発すれば、その紙テープを離さないといけない。その意味でも、この紙テープは先生と生徒たちとの別れを実感するもの。こんな悲しいことはありませんが、見送る意味でも、これは心に思い出として強く刻み込まれます」

これには雪穂、

「へぇ~、そうなんだ」

と、うなずいていた。

 そんなこんなのうちにフェリーは、

ポー

と汽笛を鳴らして出発しようとしていた。

「あっ、みんな、本当にありがとう。また会おうね」

と、雪穂は大声で言うと、港にいる島民みんなから

「本当にありがとうございました」

という大きな声が響いていた。

 そして、フェリーは少しずつ港の外に出ようとしていた。

まず、ルナが持っていた紙テープが切れる。

「ルナ、ありがとう」

雪穂が言うと、ルナも、

「はい、本当にありがとうございました」

と答えた。

続いて、レン、カレンの紙テープも切れる。

「レン、カレン、ありがとう」

と雪穂が言うと、レンは、

「はい」

とうなずき、カレンも、

「はい」

と答えた。

さらに、星子の紙テープも切れる。

「星子、ありがとう」

と、雪穂が言うと、星子、

「はい、本当にありがとうございました」

と答えた。

続いて、春、氷の紙テープも切れる。

「春、氷、ありがとう」

と、雪穂の言葉に春、

「また来てください」

と答え、氷も、

「うん、またね」

と答えた。

そして、たい子の紙テープが切れる。

「たい子、ありがとう」

と、雪穂が言うと、たい子、

「先生、本当にありがとう」

と答えていた。

さらに、めい、小明の紙テープも切れる。

「めい、小明、またね」

と、雪穂が言うと、小明は、

「はい、またですね」

と答え、めいも、

「はい、またでしゅ」

とかみながらも答えた。

そして、ひろ子の紙テープも切れる。

「ひろ子、頑張ってね」

と、雪穂が言うと、ひろ子、

「わかりました」

と答えた。

最後に多恵の紙テープは切れる。

「多恵、本当にこれまでありがとう」

と、雪穂が言うと、多恵、

「雪穂先生、本当にこれまでお世話になりました。本当にありがとうございます」

と答えた。

 こうして、全ての紙テープが切れた。しかし、雪穂はそのままデッキにいた。小さくなる人影に対して大きく手を振る雪穂。

「本当にありがとう。そして、さようなら~」

と、大きな声でお別れを言う雪穂、対する港でも、

「雪穂先生、さようなら~」

と、大きな声で別れを惜しんでいた。それは港が、フェリーが見えなくなるまで続いた。って、あれ、誰か忘れていたような気が…。

 

「本当にお別れになったよ。でも、この2年間は本当に、私にとって幸せな2年間だったよ」

フェリーの客室に戻った雪穂。しかし、あることに気づいた。

「でも、なんか忘れているような。たしか、大事な人を忘れているような」

そんなときだった。

バタンッ

と、客室のドアが突然開く音が聞こえてきた。

「だ、誰?」

と、雪穂はおののく。すると、ドアの方からよく知る少女の手がのびてきた。その少女は言った。

「雪穂先生、私をスクールアイドルにしてください!!」

 

ラブライブ!アイランドスターズ!! グランドエンディング 「アイランドスターズ!!」

 

すすみつづける あしたの方へ

 

明日へとすすむ わたしたち

帆をあげて   前進していく

わたしたちは  いつでもどこでも

永遠の     チャレンジャー

 

たとえ迷って  しまっても

心の中に    地図は持っている

だからこそ   前にすすむ

私たちは    絶対に

あきらめるものか!!

 

絶対に見つかる  私たちの宝

それは(それは) 私たちの(私たちの)

キズナという   1つだけの宝

どんなことでも  あきらない

私たちの宝は   永遠に光つづける

 

(アイランドスターズ!!)

 

未来へとすすむ 私たち

あの星に    むかってすすむさ

私たちは    どんなになっても

あきらめは   しないのさ

 

たとえくじけて しまっても

心の中は    いつもあたたかい

あきらめず   前にすすむ

私たちは    絶対に

突破してみせる!!

 

絶対にみつかる  私たちの夢

それは(それは) 私たちの(私たちの)

みらいという   1つだけの夢

どんなときでも  つかまえるさ

私たちの夢は   永遠に見つめ続ける

 

(アイランドスターズ!!)

 

私たちは9人で1つ

たとえ1人欠けてしまっては

完成しない永遠のパズル

だからこそ9人で1つ

いつでもどこでもどんなときでも

つなぎ続ける

キズナという固い結びで!!

 

(アイランドスターズ!!)

 

絶対に見つかる  私たちの宝

それは(それは) 私たちの(私たちの)

キズナという   1つだけの宝

どんなことでも  あきらない

私たちの宝は   永遠に光つづける

 

私たちの心は 永遠に光りつづける

 

「って、あなた、誰?」

雪穂はおそるおそる聞くと、その少女は答えた。

「私ですよ。九ですよ」

これには雪穂、

「九かぁ、びっくりしたぁ~」

と言うと、九、

「それはこちらのセリフですよ」

と言うが、雪穂、あることに気づく。

「九かぁ~、って、なんで九がここにいるの?」

これには九、すぐに答える。

「私、決めました。卒業したら、雪穂先生を支えていこうって」

これには雪穂、

「でも、親御さんには話をしているの?多恵たちもこのこと知っているの?」

と、九に質問すると、九、

「それは大丈夫!!お父さん、お母さんにはすでに承諾をもらっているし、多恵ちゃんはおろか、島民全員知ってますよ、私の件についてはね」

と元気よく答える。これには雪穂、

「なんちゅう行動力。というか、私だけ知らなかったのかあ。でも、九、自分の荷物は?まさか、本土に着いてから新しく買うとか?」

と、これまた九に聞くと、九、

「それなら心配ないよ。だって、雪穂先生の荷物の中にちゃんとしまってあるもん」

と威張りまくる。

「えっ、うそ!!」

と、客室に持ってきていたキャリーケースを開ける雪穂。そこにはちゃんと九の着替えなどがいれてあった。

「なんで私の荷物のなかに九のがあるの!!いついれたの?」

この雪穂の質問にも九はすぐに答える。

「それは雪穂先生が引越し作業をしているときに私がこっそりいれたの」

そのとき、雪穂はあることに気づいた。

「って、それ、私が引越しの作業中に九が手伝ってくれたときじゃないの。まさか、手伝うふりをして、こっそり九の荷物いれていたってこと!!」

その雪穂の言葉に九、

「その通り!!」

と、これまた大威張りで答える。雪穂、呆れてしまう。

(まさか、九ったら、私が退任すると言ってからこの計画をたてたのかな。そして、その用意周到さ。これをほかのことにもまわしたら立派な大人になれるのになあ。はぁ~)

雪穂はこう思うと、

「感心を通り越して、呆れてものがいえないよ~」

と再び落胆する。これに九、

「雪穂先生、そんなに落胆しないで。それにね、私、雪穂先生のこと、ずっと支えていくと決めたの。だからね、お願い、私を雪穂先生のパートナーにさせて!!」

と言うと、雪穂、

「帰れ、とは言えないしね。でも、本当に大丈夫?もう島には帰れないと思うよ。どんな苦難があるかもしれないよ。それでも大丈夫?」

と、何度も九に聞く。その都度、九は、

「それは大丈夫だよ。だって、私には雪穂先生がいるからね」

の一点張りだった。これを見た雪穂、

「はあ~、仕方がない。九、わかったわ。これからは私、雪穂のパートナーとしてどんなときでも、どんなことがあっても、私についてきてね」

と言うと、九は答えた。

「ヤッター!!わかりました。雪穂先生、いや、雪穂さん!!」

 



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ラブライブ!アイランドスターズ!! グランドフィナーレ

ラブライブ!アイランドスターズ!! グランドフィナーレ

 

数年後…。

「多恵町長、大変です。島の人口が1000人を超えました」

町役場の職員が(年齢的にダメだけど、特例で)町長になった多恵のところに嬉しい悲鳴をもってきた。

「私が町長になって3年…たつけど、まさか人口1000人なんて驚きだわ」

多恵は驚いていた。前町長だった星子のおじいちゃんから全権を託された多恵は、スクールアイドルのための街づくりに精を出し、楽しく踊るスクールアイドルたちの育成を町をあげて行った。その結果、その楽しさを求めて全国各地からスクールアイドルになりたい若者たちがこの九龍島に集まるようになり、副産物として人口が増えるようになり、結果、なぜか島の人口が1000人を超えてしまったのだ。

「とはいえ、今を思うと、楽しく踊るスクールアイドルを私たちが育てるなんて思いもよらなかったね。でも、それって、雪穂先生、そして、九のお陰だね」

多恵は遥か彼方にいる雪穂と九のことを思い返していた。

 

「ほら、あともう少しでさとうきび、植え終わるから、待っときなさいよ」

畑仕事に精を出すたい子、畑作業をさぼって遊ぶめいと小明に注意する。

「だって暇なんだもん」

と、めいはこう言うと、小明も、

「そうだよ。遊ぼうよ」

と、バク転などを繰り返す。

「もう大人なんだから、しっかりしなさいよ」

と、たい子はめいと小明に再度注意する。

「「は~い」」

と、めいと小明、2人とも仕方なく返事する。それでも、3人はこのとき、あることを思い出していた、雪穂と九のことを。

 

「あと25メートル、頑張って」

九龍高校の海水プールにはひろ子が生徒たちに水泳の指導をしていた。ひろ子は高校卒業後に雪穂の母校、日本橋女子大学の教育学部に入学、そして、体育の先生の免許をもって大学を卒業した後、九龍高校の体育教師として島に戻ってきた。

「ひろ子先生、もうおわりですか~」

と、生徒から言われると、ひろ子、

「あなたはまだ練習が残っているでしょうが。もっと頑張りなさい」

と、生徒に注意すると、生徒たち、

「は~い」

と返事する。ひろ子はそんな生徒たちに、

「スクールアイドルは体力が大事だよ。だからこそ、水泳で体力を鍛えなさい」

と言うと、生徒たちは、

「はい!!」

と、強く返事した。

 ひろ子はそのとき、あることを思い返していた、雪穂や九のことを。

 

「1,2,3,4、2,2,3,4」

星子の掛け声に生徒たちはついていく。

「2,2,3,4、3,2,3,4。はい、終了。5分休憩。このあと、全体練習ね」

星子の掛け声とともに、生徒たちは休憩にはいる。そんなとき、

「星子、どう。調子はどうかな?」

と、氷は星子の様子を見に来ると、星子、

「まずまずだよ。これなら今年もラブライブ!で活躍してくれるよ」

と、生徒たちを褒める。さらに星子、氷に対し、

「で、今度の福博女子大学付属との共同合宿のすすみぐあいはどう?」

と聞く。今度のラブライブ!にむけて、博多の福博女子大学付属との共同合宿を企画していた。

 すると、氷は自分のスマホを星子に見せる。そこには、

「は~い、元気?ひろ美だよ。こちらはいつでもOKだよ」

と、福博女子大学付属のコーチになったひろ美がでていた。

「ひろ美、わかったわ。それでは、明日、詳しい内容を詰めていくからね。よろしく」

と、星子が言うと、ひろ美、

「わかった。カケルとはるなにも伝えておくね」

と言うと、スマホの画面が暗くなった。

「あっちの打合せもようやく大詰め。しっかり頼むよ、氷」

と、星子が言うと、氷、

「ラジャー」

と答えた。

 そんな2人を見ていたのか、

「私も混ぜて」

と、春が2人の前にあらわれる。

「春、君はこの九龍高校スクールアイドル部、というより、全生徒のお母さんなんだからね。これからもしっかり頼むよ」

と、星子は春に一言言うと、春、

「それはわかっているよ。これからもみんなの胃袋をしっかりキャッチしていくからね」

と答えた。

 そして、3人はある方向を向いた。そこには雪穂と九いるのではと…。

 

 多恵は嬉しい報告のあと、役場の外に出た。そのとき、島で唯一の郵便配達人から、

「多恵町長、お手紙です」

と、ある封筒を受け取った。

「なにかな?」

封筒を開けると1つのSDカードがはいっていた。

「差出人は…、はっ!!」

多恵は驚いた。まさか、あの人たちから送られてきたとは…。

 

 同じような封筒がたい子、めい、小明とひろ子、星子、春、氷にも届いていた。そして、差出人を見ると、みんな、

「ハッ!!」

と驚くとともに、

「日本のどこかで頑張っているんだね」

と、声をかけたくなるような雰囲気となった。

 

 そして、多恵は思った。

「また、今度、私たちの前にあらわれたとき、どんなことをしてくれるのかな?今から楽しみだね」

多恵は遥か彼方の方向を見て、そう感じていた…。

 

「バックスターさん、本番です。よろしくお願いします」

東京、秋葉原、スクールアイドルの聖地、秋葉ドーム。ここではバックスターのライブが開催されようとしていた。

「ルナ、もうすぐ本番だよ」

レンの呼びかけにルナ、

「はい、今行く~」

と答える。一方、カレンはというと、

「私の分析では、このライブ、100%成功します」

と、こちらも元気よく?答えていた。

 バックスターは高校卒業後、東京の大手事務所に所属し、アイドルとして活動していた。そして、ついに秋葉ドームでのライブを開催できるほど有名になった。

「ようやくここまでこれた。これもすべて雪穂先生や九たちのお陰かな」

ルナはそう思うと、ステージの方へと歩こうとしていた。

 そのとき、

「バックスターさん、お手紙です」

と、スタッフからある封筒を渡された。

「もう、精神統一していたのに~、なに」

と、ルナはスタッフに牙をむけると、スタッフは、

「でも、これはバックスターにとって大切な手紙と思いまして。この封筒にはSDカードがはいっていて、再生すると…」

と、SDカードにはいっていたデータを再生してみると、

「オー、頑張っているね」

と、レンが言うと、カレンも、

「本当だ~」

と、感心すると同時に、ルナから、

「こりゃ頑張らないとだね。よ~し、バックスター、行くぞ~」

という掛け声とともに、レン、カレンも、

「「オー」」

と、大きく返事した。

 

 バックスターはそのSDカードをスタッフに渡してライブを行った。そして、アンコールのとき、いきなりルナがしゃべりだした。

「私たちバックスターは1度、過ちを犯しました。けれど、ある人たちの出会いにより、その過ちに気づき、そして、私たちを再生させてくれました。その中心となった人たちは今、日本のどこかにいます」

そして、ステージにある巨大スクリーンにある映像が流れた。そこには、

「さあ、みんな一緒に練習しましょう」

と、ある女性が言うと、女子高生らしき生徒たちはみな、

「わかりました、雪穂先生」

と言うと、その女性からアシスタントらしき女性が出てきて、

「もっと大きく声をだしてね。誰もが楽しく、そして、嬉しくなれるような歌声でね」

と言うと、生徒たちからは、

「わかりました、九先生」

と答えていた。

 この映像のあと、ルナは大きな声で言った。

「この人たちは私たちにとって命の恩人です。日本のどこかにいます。雪穂先生、九、私たちは元気だよ。これからも一緒に頑張っていこうね」

 

 この言葉が通じたのか、日本のどこかにいる九はすぐに、

「あれ?ルナちゃんが呼んでいるような」

と言うと、そばにいる雪穂から、

「私もどこかでルナが呼んでいるような気がする」

と言った。

 だが、それを待ってはくれない状況にあった。

「雪穂先生、九先生、もっと教えてください」

と、ある女子生徒に言われると、九、

「わかった、わかった。どんどん練習しようね」

と元気よく言うと、女子生徒は、

「わ~い、ありがとう」

と、元気よく答えた。

 この様子を見ていた雪穂、その女子生徒のことを、

「まるで昔の九みたい」

と言うと、九、

「それ、禁句!!」

と、雪穂に注意する。すると、雪穂、

「はいはい」

と、軽くあしらってしまう。

「雪穂さんのわからずや!!」

九がそう言うと、すぐに生徒たちに向かって元気よく言った。

「さあ、楽しく練習しましょう。そして、みんな一緒にスクールアイドルを楽しみましょう。だって、スクールアイドルはみんなと楽しむのがすべて。そして、ラブライブ!はみんなと叶える物語なんだから!!」

 

ラブライブΩ/UC 外伝 ラブライブ!アイランドスターズ!!

 

                  完

 

 



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スピンオフ 九龍島伝
九龍島伝 第1話


カチカチ

「ここをこうして、こうして、よし、完成!!」

波乱の九龍島の秋の大祭、2023年の九龍祭りの翌日、いつも法被を着ているハッピーさん(本業は漁師ですよ)、パソコンのまえでマウスを動かしながらも何かをしている様子。どうやら終わったみたいです。

 そんなとき、

「お~い、ハッピー、いるかぁ」

と、大柄の男がハッピーさんの家に訪れたみたいです。ハッピーさん、その大男を見て、

「お~、ゴン、おまえか」

と挨拶していますね。この大男、みんなからはゴンさんと呼ばれています。昔人気のあった旧石器時代の人間たちをコミカルに描いたアニメに出てくる人気キャラと体型が似ているため、昔からそう呼ばれていました。ちなみに、ハッピーさんとゴンさん、実は幼馴染なんです。意外でしょ。案外と仲がよかったりしますが、いつもはいがみあっています。

 でもって、ハッピーさん、ゴンさんにあることを言います。

「あれ、いつもの特攻服は?」

これにはゴンさん、

「ああ、今は洗濯中だ。なにせ、昨日の祭りでおおはしゃぎしたから汗びっしょりになったんだよ。俺にとってはは大切な一着だからよ。だから、手洗いして天日干しだ」

と、笑いながら答えます。ゴンさん、今、特攻服、洗っているって言いましたよね。実はゴンさん、特攻服を着て漁をしている漁師集団「特攻野郎Sチーム」のリーダーなのです。特攻服を着て漁をする、これ、意外と九龍島の隠れた名物となっているんですよ。観光にきたお客さんがこのことを知って、早朝、漁に出発するゴンさんに「一緒につれてって」と言えば、ゴンさん、喜んで一緒に漁につれていってくれるのです。漁船で大海原を疾走する特攻野郎たち、なんて素敵な光景なんでしょう。特攻服を着て漁をしている特攻野郎たち、なんてすてき…、素敵な?光景っていえるのかな?とはいえ、観光客たちにとってとても貴重な経験になると喜ばれています。なお、特攻野郎Sチームのみなさんは特攻服を着ているからって暴走なんかしません。いつも法定速度を守っていますよ。海上でも安全第一で飛ばしています。そして、熱いときは必ず水文補給。法律遵守、安全第一、健康的生活をおくる、これが特攻野郎Sチームのモットーです。

 話がそれましたが、ゴンさん、ハッピーさんのパソコンを覗いています。そして、ゴンさん、ハッピーさんに一言。

「またやっていたのかよ。法被のデザインを描いていたのか。あんたも懲りないね」

これにはハッピーさん、

「これは俺の天職だい!!全国各地から依頼がきているんだ。その人たちのためにも魂のこもった法被を作るんだい!!法被には応援するアイドルたちに向けた自分の魂が籠もっている。だからこそ、ファンたちは魂の籠もった法被を着ている。俺はそれを応援したいだけだい」

と力説してます。このハッピーさん、自分用の漁に着る魂の籠もった法被を作っているのですが、本業の漁師以外に服飾として法被のデザインを手がけるデザイナーの仕事もしております。ネットで注文を受け付け、その依頼主の要望をもとに法被をデザインし、それをその依頼主が済む場所に近い印刷所に法被を印刷してもらい、それを依頼主に届ける、そんなサービスを提供しております。なのですが、これが意外と好評で、月に3~4件は依頼がきております。その多くがスクールアイドル、ローカルアイドルといったアイドル関連であり、その傾向のためか、ハッピーさん、意外とアイドルについて詳しいのです。ハッピーさん、そのアイドルの知識を駆使して依頼主の要望に沿った、いや、「頼んでよかった~」と言われるくらいに喜びそうなデザインに仕上げちゃいます。

 と、話がまたそれました。ゴンさん、ハッピーさんのパソコンに映る絵をもう一度見ると、さらに一言。

「あれ、どこか見たことがある顔だな」

どうやらゴンさん、ハッピーさんがデザインした絵を見てなにか感じたみたいです。

 これにはハッピーさん、ちゃんと答えます。

「おお、気づいてくれたか。これはよ、九ちゃんたちの絵だ。昨日、祭りのステージに九ちゃんたち、出演したよな。そのステージを見てな、俺、とても感動したんだ。そして、気づいたら、そのときの様子をデザインしていたんだよな~」

実はハッピーさん、九龍祭りの九たちアイランドスターズのステージにいたく感動してしまい、一瞬で九たちアイランドスターズのとりこになったみたいです。

 が、このハッピーさんの言葉にゴンさん、なぜか涙…。

「おい、ゴン、大丈夫か。なにかしちゃったか。なにかしたなら謝るよ」

と、ハッピーさん、泣いているゴンさんをいさめようとしてます。ですが、ゴンさん、ハッピーさんを払いのけ、あることを言います。

「いや、ハッピーは悪くない。悪いのは涙もろい俺のせいだ。けど、泣いてしまう。だって、あの九ちゃんたち、一生懸命踊っていたよな。町長から怒られても、それでも元気に楽しく踊っていたよね。俺、感動しちゃった。町民たちがリゾート開発のことでいがみあっていても、「そんなの関係ない!!」と言って必死になって踊っていたよね。島の人たちのことを大事に考え、いがみあわないよう呼びかける、そんな九ちゃんの姿に感動したよ」

ゴンさん、昨日の九龍祭りの出来事を思い返しています。九たちはステージで「スペシャルデイソング」を熱唱し、そのあとで今、九龍島で問題になっているリゾート開発の是非を巡っていがみあっている島民たちに対していがみあわないように訴えたのです。ゴンさんは九の姿に感銘を受けたのです。

 で、ゴンさんの話は続きます。

「でもって、バックスタートいうのが出てきてよお、多恵の嬢ちゃんに対して厳しいことを言ったのを見て、俺、完全に怒ったよ。だって、そこまで多恵の嬢ちゃんに言う。あれ、どう見ても多恵の嬢ちゃんに対する人格否定だよね。あれにはこの俺も怒ったよ」

九たちの熱唱のあと、ルナたちバックスターは空からさっそうと登場し、そのまま多恵を罵倒した。そして、多恵は逃げるように去っていった。九たちはその多恵を追いかけるのだった。

 ゴンの話は続く。

「で、バックスターがいきなりライブを始めたけど、呆れて頭にきたよ。だって、あんだけ多恵の嬢ちゃんを罵倒しているのに、このあと、平気でライブするんだよな」

これにはハッピーさん、

「俺もそう思うよ」

と言うと、ゴンはその続きを話す。

「だけど、そのライブの終盤に九ちゃんたちが多恵の嬢ちゃんを連れて戻ってきたよな。どうやら、多恵の嬢ちゃんが逃げたあと、九ちゃんたちは多恵の嬢ちゃんを探して、多恵の嬢ちゃんのまえで「多恵の嬢ちゃんのこと、自分たちが受け入れる」って言ったみたいだな」

これにはハッピーさん、

「それは初耳だな。そうか、九ちゃんたち、多恵ちゃんのこと、受け入れたのかぁ。九ちゃんらしいな」

と感動しつつ言うと、ゴンさん、さらに話を続ける。

「でもって、バックスターに対して反撃の一撃となる、たしか、「サマーフェスタ」を熱唱したよな。俺、あのステージ、忘れられないよ。あんな魂の籠もった、それでいて、誰からでもわかるくらい楽しく踊っている姿、あれは凄かった。そのステージを見て、バックスターは逃げ出したんだよな」

これについて、ハッピーさん、

「で、結局なにを言いたいんだ?」

と、冷静に言うと、ゴンさん、

「つまり、俺も九ちゃんたちのとりこになったってことよ」

と答える。

 これを聞いたハッピーさん、

「つまり、俺たち2人とも、昨日の九ちゃんたちのステージを見て、九ちゃんたちのとりこ、というより、ファンになったってことだよな」

と、冷静に分析すると、ゴンさんも、

「それもそうだな」

と答える。

 そして、ハッピーさんはあることを決めた。

「よし、そうだったら、今、ここに九ちゃんたち、え~と、たしか、「アイランドスターズ」だったな、そのアイランドスターズのファンクラブを、今、ここに創立しよう。俺が第1号で、おまえが第2号な」

これにはゴンさん、

「それはいいアイデアだよな。よし、決めた。おまえの提案を受け入れよう。今、ここに、アイランドスターズのファンクラブの設立を認める。で、なんで俺が第2号なんだ?」

と、ハッピーさんに聞くと、ハッピーさん、

「だって、俺がこのアイデアを考えたんだ、創立者だ」

と言うと、ゴンさん、

「いや、俺が第1号だぁ~」

と、ハッピーさんと言い争う。いつものいがみあい勃発である。

 そして、10分間いがみあいますが、ハッピーさん、ふとあのことを思い返します。

「でも、バックスターが言った、あの一言、なにも起きなければいいのだが…」

このハッピーさんの言葉にゴンさんも、

「ああそうだな。でも、一波乱あってもおかしくないな。町長、今頃、その対処に苦慮しているだろうな」

と、ハッピーさんとに一緒に町長のことを同情した。

 

 一方、同じ頃、町長は町議会場にいた。

「ここはリゾート開発を進めるべきです」

と、りぞトーと開発賛成派の議員が言うと、

「いや、やめるべきです!!」

と、リゾート開発反対派の議員が反対していた。これを見ていた町長、

「うぅ」

と、うなるだけであった。だって、頭の中では、

(うぅ、今日はなんていう日なんだ!!)

と、今の議会の様子に悩んでいた。

 ことの発端は今月の定例議会の最初にあった。今回は昨日の九龍祭のことについてで、その祭りの総括を行うとろろだった。いつもなら、

「ちょっと水が不足していた」

「もう少し人員整理をしたほうがいいのですが…」

とちょっとした問題点を話し合うだけなのだが、それが今回に限って大論争になってしまた。そのきっかけは議員の1人の町谷議員の質問だった。

「え~、これから町議会は開…」

という議長の開会の言葉の途中で、町谷議員はそれを遮るかたちで質問した。

「それにより、昨日の、え~と、バックスター、でしたっけ、その人たちの発言は真実なのですか?」

昨日のバックスターの発言、それは昨日の九龍祭りのステージにて起こった。多恵を除く九龍高校の女子生徒(九たち)8人の熱唱のあと、とつぜん高速ヘリであらわれた、リゾート開発を行う土居建設の使者バックスター、そのとき、バックスターのリーダールナはこう発言したのだ。

「これはスポンサー主(=建造)からの伝言です。来年4月、この町はすべて土居建設のものとなる。(略)土地を提供してくれる者は弁償金などを保証する。抵抗する者は行政代執行を行う」

行政代執行、それは「その人がしないといけないことをしないとき、行政が強制的にその人のかわりにそのことを代執行すること」(それにかかる費用はその人持ち)、ようは土居建設のリゾート開発のため、町が抵抗(反対)する住民の土地を強制的に接収することを堂々と宣言していたのだ。これを建造は最終通告と言っていた。

 で、このバックスターの発言で1番困惑しているのが町だった。実は代執行は抵抗する住民に対し、町は相当の履行期間(住民自ら土地を明け渡す期間)を定めて、その期限までに履行しないと代執行を行う旨を文書で戒告、つまり、通知しないといけないのだ。で、期限が過ぎて初めて代執行が行われることになっている。が、町はそんな文書はだしていない。それどころか、その前段階である受渡期限すらもうけていなかった。代執行の流れを簡単にいうと、期限を定めてこの期限内に土地を受け渡すよう住民に通知→その指定した(受渡)期限を過ぎる→町は住民に対し改めて履行(土地を受け渡す)期限を設けてその期限が過ぎると強制的に土地を接収することを文書で必ず通知→その履行期限を過ぎる→町が強制的に土地を摂取する、となる。なのだが、町はその1番最初の段階すらしていなかった。が、バックスター、というよりも、土居建造は、それをすっ飛ばして勝手に抵抗(反対)する住民の土地を強制的に取り上げるぞ、と言ってしまったのだ。もちろん、それをするのは町、ということになる。だって、代執行は行政行為、つまり、町が行う行為のひとつだからである。

 といいつつ、話をもとに戻す。町谷議員の質問に対し、町の関係者はすぐに、

「そんな事実はありません。また、そんな計画もありません」

と否定するも、町谷議員は、

「でも、あの子たち(ルナたち)ははっきりと言いました。反対派住民に対しては行政代執行を行う、つまり、町が強制的に反対派住民の土地を取り上げると言ったのです。これっておかしなことじゃないのですか。おかしいですよね」

と、厳しく追及する。さらに、町谷議員、

「それが事実なら私は反対しますよ」

と発言する。

 が、そんなとき、リゾート開発賛成派の近場議員から町谷議員に対し大変なことを言ってしまう。

「あの、ちょっといいですか。町谷議員、あなたは今までリゾート開発については賛成でしたよね。なのに、今日はなぜ反対派住民の肩をもつのですか。それに、なんで賛成から反対に変わったのですかね」

事実、町谷議員は昨日までリゾート開発に賛成だった。なのに、なぜ今となって反対に変わったのか。近場議員はそこをついてきた。

 この近場議員の発言に対し、町谷議員、

「それは昨日のバックスターの発言を聞いたからですよ。反対派住民の土地を強制的に接収するなんて。これはわれら町民を冒涜するような発言ですよ」

と反論すると、近場議員、

「それって、ただたんに住民たちの抗議におびえているだけですかね」

と言うと、町谷議員、

「そういうあなたこそ、あのバックスターの発言を聞いていまだに賛成なのですかね」

と逆に聞くと、近場議員、

「それはあたりまえです。バックスターの発言はいわば忠告なのです。ただたんにそうなることもありますよ、と言っているに過ぎません。それに…」

と言うと、町谷議員、

「それに…」

と言うと、近場議員は続けて答えた。

「それに、島のリゾート開発を認める条例は今年5月にはすでに可決して、すでに土居建設と契約を結んだんじゃないですか。それを今から町民が反対するからやめます、なんてしたら、それはお門違いじゃないでしょうか」

事実、町議会は今年(2023年)の5月にリゾート開発を認める条例を賛成6、反対2、棄権1で可決成立していた。ちなみに、九龍町議会は定数10.うち、議長を除く9人に条例に関する議決権が与えられていた。九龍町は4月の多恵の閉町宣言より前に秘密裏に土居建設から九龍町でリゾート開発をしたいとの打診を受けていた。町としても地域振興や若者の人口減少もあって、願ってもないことだったので、その話を受け入れ、何度か土居建設と話し合いをした上で、ある程度土居建設とのあいだで合意していた。で、4月に多恵の閉町宣言とともに九龍町でリゾート開発する土居建設の社長土居建造が九龍町に一大リゾート地を造る計画を世の中に発表したことを受けて、町はいそいでリゾート開発を認める条例案を作り、5月にその条例案を可決成立させたのだ。そして、それをもとに町は土居建設とリゾート開発に関する契約をかわしたのだ。

 が、そこに町谷議員はくらいついた。

「でも、その条例を可決するときに賛成した理由、実は土居建設の社長から賄賂をもらっていたのでは?」

これには近場議員も反論する。

「それは町谷議員ももらっていたのではないですかね。もし、もらって賛成したのに、今となっては反対派住民たちの抗議に屈して反対にまわるなんて、それって逃げ得じゃないのですか」

これも事実であった。実は5月のリゾート開発を認める条例を可決成立したと言ったが、賛成にまわった6人全員とも土居建設の社長である建造から賄賂を受け取っていた。賄賂を渡すかわりにその条例案に賛成してほしいと。賄賂に目がくらんだ議員6人が賛成にまわったことでその条例案は可決成立した。が、今になってその条例案に賛成した町谷議員が反対にまわってしまったのだ。

 とはいえ、これを認めてしまっては町谷議員は収賄罪で捕まってしまう。ということで、

「それは絶対にありません。5月のときはリゾート開発こそ町の発展に不可欠と思って賛成しただけ。だけど、昨日のバックスターの発言を聞いて、町民を大切にしない企業(土居建設)がリゾート開発したら、それこそ末代の恥になると思って反対にまわったのです」

と言った上で、近場議員に対し、町谷議員、

「近場議員こそ町民を大切にしない企業がリゾート開発していても賛成なんですか?」

と聞くと、近場議員は、

「私はそれでも賛成です。いちいち若い娘の言うことをまともに受けていてはいけません。それよりも、リゾート開発によって九龍町は新しく生まれ変わります。世界中からいろんな人たちが九龍町に訪れてくれます。そうなれば、この九龍町はもっと大いに繁栄できるのです」

と言うと、町谷議員、

「私は反対に鞍替えしたんだ。賛成しているおまえこそさっさと議員辞めてしまえ」

と、近場議員に文句を言うと、近場議員、

「それはこっちのセリフだ。おまえこそ辞めてしまえ」

と反論する。それが続く…わけではなかった。むしろ、これがきっかけとなり、結果的には、

「ここはリゾート開発すべきだ」(賛成派)

「いや、やめるべきだ」(反対派)

と、賛成派と反対派の大論争へと変貌を遂げてしまった。そして、悪いことに、このとき、リゾート開発を認める条例案に賛成した議員6人のうち、町谷議員を含む2人がリゾート開発賛成派からリゾート開発反対派に鞍替えしたため、今のところ、リゾート開発賛成派4人、反対派4人、棄権1と拮抗してしまったのだ。議会は多数決により議決するので、この状態ではにっちもさっちもいかずといえた。

 

 で、この論争は1時間も続いた。それでも、先に進めずに空転しているだけ。そこで氷の父である副町長はこれを打開するために次のことを言った。

「さあ、みなさん、ここは1つ論争はここまでにしましょう。その話はのちほどに。それよりも、今年の補正予算を…」

が、ここで賛成派から反対派に寝返った町谷議員から、

「ちょっと待て。ここで終わったら、リゾート開発が続いてしまう。ここで決着をつけないと後の祭りだ。ここは絶対にリゾート開発について反対すべきだ。土居建設にノーを突き詰めるべきだ」

と、よこやりがはいると、されに近場議員から、

「町谷議員、それは違うぞ。リゾート開発こそこの町を救う唯一の方法だ。だからこそ賛成なのだ」

と、言い返す。これにより、

「リゾート開発すべき!!」(賛成派)

「いや、はやくやめるべきだ」(反対派)

と、賛成派、反対派の論争はさらにエスカレートしていく。そんななか、議員の1人は、

「ふ~、お茶がおいしい」

と、どこふく風のように、ただたんにお茶を飲んでいるだけだった。が、町長はこの議員を見て、

(本当にぶれないな、あの長老!!)

と、少し安心を覚える。実はこの議員、おん歳90歳。全国でも一番高齢の議員。あだ名は長老、もしくは、長老議員と呼ばれていた。戦後、地方議会制度が整備されてから現在にいたるまで、九龍町議員一筋で生きてきたのだ。とはいえ、ずっとお茶を飲んでおり、リゾート開発についても棄権を表明するなど、そんなに物事には無頓着であった。なので、通常なら議決権のある議員が9人なので拮抗することはないのだが、この長老議員が棄権、というより中立?しているため、リゾート開発については賛成派4人、反対派4人と拮抗してしまっている原因のひとつだった。

(うぅ、このままでは埒が明かない。はやく終わらせて町民たちの対応にいかないといけないのに…)

と、論争がまだ続いているなかで、町長、さらになにかにおびえているようだった。

 



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九龍島伝 第2話

 町長のおびえの原因、それは町役場の前にあった。

「土居建設を追放しろ~」

「リゾート開発なんてやめてしまえ~」

と、リゾート開発とそれを行う土居建設に対する反対派住民の抗議デモが町役場前で起きていた。が、その様子はこれまでより少し違っていたのだ。これまでは今さっきのような言葉が中心だったが、今日に限っていえばこんな言葉が聞こえてきた。

「買取同意書を返せ~。俺たちの心を踏みいじるな~」

なんと、リゾート開発に賛成と見られていた(土地買収に1度は同意した島の全体の半数におよぶ)住民たちの一部が反対派の抗議デモに参加していたのだ。そして、1度は同意した買取同意書を撤回するよう迫っているのだ。では、なんでそんな住民たちがそのデモに参加しているかというと…。

「建造は強引なやり方でこの町をのっとるつもりだ~。そんなこと、許すな~」

 

これ、実は昨日のバックスターの発言で、「スポンサー主(=建造)の伝言である。」と言っていたから。さらに「抵抗するものは行政代執行を行う」と発言したため、「その発言=建造が強引なやり方で町をのっとる」という構図が賛成しているとみられていた住民の頭のなかではできてしまった。とはいえ、そんなこと言われたら誰だって怒っちゃうものだ。なので、横暴な態度をとる建造に対して賛成しているとみられていた住民たちは反旗をひるがえしたのだった。

 こうして、これまで町民たちの意見はリゾート開発について賛成派半分、反対派半分とみられていたのが、昨日のバックスターの言動を「建造のあまりにも横暴な言動?」とみられてしまい、結果、町民のほとんどが反対派にまわってしまったのだ。そして、それが今の抗議デモでも見られるようになった。その規模は昨日までの2倍以上の規模に膨れ上がっていた。これにはさすがの町長も頭を抱えるしかなかった。

 

 が、ここで町長は別のことでも頭を抱えていた。

(バックスターはあのあと、(町長の孫である)星子たちの熱唱を聞いて逃げだしていった。そのとき、「この勝負の決着、この島の運命はラブライブ!決勝でつけてあげるわ」と言った。ということは、もし、ラブライブ!というもので星子たちがバックスターに負けると、この島は土居建設のものになるってことだよな。負けたら無条件で住民たちから土地を奪いとり、リゾート開発を進めてしまう。この島の運命は星子たちに任せていいのだろうか)

そんなことを町長は悩んでいたのだ。が、実は抗議デモに参加している住民の中にもそんな心配をしている人はた。その町民は言った。

「この町の運命はたった9人の女子高生(九たち)に任せていいのだろうか。そのこと自体危険なのではないのか。あの子たちに任せるべきではないのでは。なにか、私たちだけでなんとかできなのだろうか」

この考えは少しずつではあるが反対派住民の中にも広がり始めていた。

 というわけで、町長は空転する町議会と激しさを増す反対派住民の抗議デモ、2つのことで悩む。それが4時間ぐらい続いた。そして、最後、ついには議長が、

「もうこれ以上論争をしても平行線のままの状態です。少しは頭を冷やしてもう1度考え直してください。今日はここで閉会とします」

と、強制的に定例議会を閉会とした。

 だが、町長は空転し続ける町議会を見続けたためか、抗議デモが収束していないためなのか、深く、

ハー

と、大きなため息を吐いた。そして、町長は長老議員を見るも、その長老議員は、

「ホホホ、お茶がおいしいの~」

と、ただお茶を飲んでいるだけだった。

 

 というわけで、町では町議会の相変わらずの空転状態とより激しさを増す反対派住民の抗議デモが続くなか、ときはすでに11月を迎えようとしていた。が、11月になって、町では衝撃的な出来事が3つ起こってしまう。

 まず1つ目。これは町議会関連なのだが、なんと、リコールが成立しそうになっていたのだ。リコール、それは住民たちが町に対して町長の解職、町議会の解散などを直接請求できる制度なのだが、それをするためには町に住む18歳以上の有権者全体のうち、法律で定められた割合以上分の署名を集めないといけない。で、その署名を選挙管理委員会(選管)にもっていってから町長の解職、もしくは町議会の解散を請求し、選管はその署名に間違いなどがないか調べ、間違いのない署名を数えたうえでその署名分が法律で定められた割合を超えていたらその請求は有効となる。で、その請求が有効なら、請求から60日以内に町長の解職や町議会の解散などを問う住民投票を行い、有権者の過半数以上だと町長を解職したり、町議会を解散できるのだ。で、今回の場合、町議会の解散なので、まず最初に町の有権者の1/3以上もの署名を集めないといけないのだ。

実は町議会の解散というリコール運動は5月のときからあった。町議会がリゾート開発を認める条例案を可決成立したため、リゾート開発の反対派は町議会の解散を目的としたリコール運動を始めた。が、当初は集まらなかった。リゾート開発に賛成の人たちもいるし、反対派のなかにも賛成派と揉め事を起こしたくないという住民もいたからだ。

 しかし、潮目が変わったのはあの九龍祭りの出来事、そう、バックスターの発言、のちに最終通告といわれる出来事が発生したからだった。前にも書いたように、バックスターの発言は「抵抗(反対)する者は強制代執行する(つまり、強制的に土地を取り上げる)」という、いわば住民の意見すら無視した、あまりにも一方的、あまりに強引的な発言だったので、賛成派とみられていた、いや、本当に町の未来のために賛成していた住民たちが反対派にまわってしまったのだ。そして、2週間以上たっても何もしてくれない町議会に対し、住民たちはついにしびれをきらしたのだ。そのため、11月になってすぐに町議会の解散というリコールを請求するという署名がどんどんと集まってきたのだ。その結果、法律で定める有権者の1/3を超える4/5、80%以上の住民たちの署名を集めることができたのだ。それを反対派住民は町の選管に持っていき、町議会の解散を請求した。それに驚いたのが選管だった。これまで九龍町は選挙という選挙はしていなかった。町長は江戸時代の島役人の流れを汲む天海家が代々なってきていたし、町議会も選挙しても定数10のところ、立候補者は11~12人と、それほど多くなかった。なので、選管としてはこんな大事は初めてだった。選管は驚きつつも1つ1つ署名に間違いがないか確認し、請求してから1週間後、11月下旬に町議会解散を問う住民投票をすると発表した。なのだが、その発表をしたにもかかわらず、町議会はいまだに空転していた。

 2つ目の出来事はリゾート開発の工事が進んでいたということだ。10月下旬。

「多恵様、町役場につきました」

と、多恵を乗せた車が町役場の裏門に到着した。表門はリゾート開発に反対する住民たちがいまだに抗議デモを繰り返していたからだった。

「天海町長はいますか?」

と、多恵は町長がいるか確認すると、

「お~、多恵殿ではないか。待っていたぞ」

と、町長は町長室のドアを開けると、多恵は、

「失礼いたします。って、町長、かなり痩せてしまいましたね」

と、あまりにも痩せ細った町長を見て驚いてしまう。これには町長、

「そうじゃな。町議会は空転状態、役場の前では抗議デモ、それを心配するあまり心労がたまっているのでのう」

と言うと、多恵、

「バックスターの発言については私としては陳謝します。が、会社側としてもあの発言が会社としての本心なのかもしれません。これについては私からは何もできないのが現状です。本当に申し訳ございません」

と、謝罪するも、町長、

「いやいや。あの発言と一緒に多恵殿は土居建設のすべての役職を解任され、さらに父親(建造)からは勘当されてしまう。そう考えると、多恵殿も大変では」

と、逆に多恵に気を使うも、多恵、

「本当に気を使ってくれてありがとうございます。けれど、心配しなくても大丈夫ですよ。私は元気ですから」

と、作り笑顔で対応する。が、このとき、多恵はこれまでしてきた(土地買収に動いていたこと)により町の住民たちの亀裂を招いてしまったことへの罪悪感、そして、九たちに対してこれまで冷たく接してきたことへの罪悪感に苦しんでいた。それでも、多恵はあまりの心労で痩せてしまった町長を無理させてはいけないと思い、無理して元気であることを装っていた。

 そして、2人は応接セットの椅子に座ると、すぐに多恵が町長に、

「町長、実はお願いがあります。今は使われていない市有地にあるものを建設したいのです。それは…」

と、あるものを建設したいというお願いをすると、町長はそれを快諾した。でも、1つここで疑問が。多恵はこのとき、リゾート開発をする土居建設のすべての役職を解任されているのだ。なので、リゾート開発の工事を始めたりとかすることを決める権限は今の多恵にはなかった。なのに、なぜ、今となって多恵はその工事を始めようとしていたのか、それはこのときはまだ謎だった。

そして、多恵が町長にお願いして承諾をもらった日の翌日、昔、町の体育館の建設予定地として整備したものの、予算不足などにより建設が中止となり、今や荒地になっていた市有地に重機が投入され、なにやら工事が始まったみたいだった。これには住民、

「おお、ついに土居建設は本当にリゾート開発を始めるつもりだ」

と思ってしまい、その考えが瞬く間に町中に広がっていった。では、なぜリゾート開発の工事だと思われたのか。それは工事現場のたて看板にはちゃんと「リゾート開発」と土居建設の名前が書かれていたからだった。と、工事が始まったという考えが町中に広がった結果、反対派住民たちはさらに危機感を強め、抵抗デモのトーンはさらにあがってしまった。

 そして、3つ目は九たちアイランドスターズの不調である。九の勝手な応募でラブライブ!に参戦した九たちアイランドスターズであったが、第1関門となる鹿児島県予選でアイランドスターズの多恵が前に書いた九たちへの罪悪感のせいでミスを連発してしまう。結局、めい、小明の機転でそのミスを2人がカバーしたことにより、なんとか予選突破ぎりぎりの3位で県予選を通過していたのだった。

 で、この予選の様子はすべてネットで中継されていた。なので、ハッピーさんや特攻野郎Sチームみんなをはじめとして町民の多くがこのネット中継を見ていた。

「多恵ちゃん、なにをやっているんだ。このままだと予選落ちしちゃうよ」

と、ハッピーさんは自分のパソコンの前でアイランドスターズが踊っている様子を見て心配するも、

「それはきっと大丈夫だ。だって、めいちゃんと小明ちゃんがそのミスをフォローしている」

と、隣にいたゴンさんがハッピーさんに言うと、

「本当だな。それならいいんだけど…」

と、ハッピーさん、少し安心するも、ちょっぴり心配していた。

 2人は鹿児島県予選の様子をハッピーさんの家で見ていた。いや、2人だけではない。特攻野郎Sチームのメンバー全員、そこにいたのだ。実はハッピーさんとゴンさん、2人で作ったアイランドスターズファンクラブ、会員が増えていた。といっても、特攻野郎Sチームのゴンさん以外のメンバーが全員加入しただけなのだが…。

 そして、結果発表で九たちアイランドスターズは3位で予選突破が決まると、ハッピーさんたちは、

「ヤッター!!」

と、みんな大声で喜んでいた。が、そのなかでゴンさんは冷静だった。

「3位か。これでは次の九州予選は苦戦が予想されるな」

と、ゴンさんがつぶやくと、ハッピーさん、

「そうか?なんとかなるんじゃないの」

と、楽観視するも、ゴンさんはいたって冷静に、

「いや、俺の考えからすると、ミスを連発→県予選をようやく3位で通過→九州予選では苦戦が予想される→もしかすると九州予選で敗退?→敗退すれば自動的にバックスターに負けることになる→(バックスターの発言により)九龍町すべての住民の土地が取り上げられて土居建設の土地となる→リゾート開発の工事が始まる、という流れが予想される。こうなると、反対派住民たちは黙っていないだろう」

と言うと、ハッピーさん、なにかに気づく。

「あっ、そういうことか。これはまずいな」

ハッピーさんが気づいたこと、それは九龍町の命運は九たちアイランドスターズにかかっていることだった。繰り返しになるが、九龍祭りで逃げていくバックスターのルナは帰り際に、

「この島の命運はラブライブ!決勝でつけてあげるわ。私たちが勝ったらこの島はいただくわ」

と言っていたのだ。バックスター、実は前回のラブライブ!で優勝するほどの実力をもっている。なので、決勝進出は確実視されている。一方、アイランドスターズは実力としては未知数、指導者がまえにラブライブ!に優勝した経験がある雪穂ではあるが、ミスを連発した鹿児島県予選だけ見てみたら九州予選を突破できる見込みすらできない。なので、バックスターは決勝に進出して、アイランドスターズは逆に九州予選で敗退すれば自動的にバックスターの勝利。これにより、九龍町は土居建設のものになっちゃうというわけだ。

 そう考えたハッピーさん、すぐにあることを言いだす。

「ゴン、これはちょっと危ないな。こうなれば、反対派住民たちはさらに過激的に抗議してくるぞ。さらに、九ちゃんたちには九州予選に必ず勝たないといけないというプレッシャーが大きくかかってしまう。それだと、町はさらに混乱し、九ちゃんたちも安心して踊れなくなっちゃう。なんとかしないとな」

これを聞いたゴンさん、

「ハッピーよ、おぬし、なにか考えているな」

と言うと、ハッピーさん、少し笑って、

「ああ、そうとも。今、町議会の解散のリコール請求が通ったてことだしな」

と言うと、ゴンさんにあることを相談した。

 

 で、ゴンさんが危惧したこと、それが本当になってしまった。

「このままじゃ俺たちの九龍町はすべて土居建設のものになっちゃう。もう彼女たち(九たち)だけに任せておけない。みなの衆、準備はいいか。攻め込むぞ!!」

と、リゾート開発の反対派のリーダーはみんなにそう叫んだ。町の多くの住民が九たちアイランドスターズが出場しているラブライブ!の鹿児島県予選をネットで見ていた。が、ミスが目立ち、目も開けられない状況に。結果的には3位で県予選を通過となるも、このままの状態で九州予選に出場しても予選落ちは確実。一方、バックスターは決勝進出が確実。そうなると、バックスターの勝利により九龍町は土居建設のものになる。それを防ぐためには自分たちがさらに抗議を強めるしかない、そうリーダーは考えた。

 その結果、反対派住民全員に鼓舞すると、すぐに町役場とは別の場所に向かう。そこは。

「土居建設でていけ~。この町にはリゾート開発はいらない!!」「いらない!!」

土居建設の現場事務所である。このまえまで町役場にて抗議していた反対派住民の一部がリーダーの指示で土居建設の現場事務所の前で抗議デモを始めたのだ。

「土居建設はでていけ~」「でていけ~」

と、現場事務所の前では朝から夜まで抗議の声が響いていた。

 が、ここで困ったのが多恵や工事関係者である。多恵と工事関係者はここに寮みたいなものを作ってここで住んでいた。が、この抗議デモが続くと、身の安全が保障できない。特に多恵は土居建設の社長、建造の娘である。それだけでも危険なのに、抗議デモが暴動化したら、まず狙われるのは多恵であることは目にみえて明らかだった。なので、多恵は事務所の前で抗議デモが続いているあいだ、

「九、少しのあいだだけどお世話になるね」

と、九の住んでいる島唯一の民宿、九龍荘にお世話、というより非難していた。それほど抗議デモは激しさを増していた。

 そして、抗議デモは別のところでも起こっていた。それはあの工事現場だった。反対派住民はその工事現場でも抗議デモを行っていた。が、工事現場で働く人たちはそんなことを気にせずに働いていた。そして、反対派住民による抗議デモが続いていくなかで、その工事は少しずつ完成へとむかっていた。その抗議デモに参加している反対派住民たちはなにを建設しているのかは知らなかった。

 



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九龍島伝 第3話

 そして、町議会の空転と反対派住民による抗議デモで心労がたまりやせてしまった町長ラブライブ!鹿児島県予選を見ていた。

「なにがダンスなんだ。スカートをひらひらさせて男を誘惑しているだけじゃないか。kのどこがおもしろいのだか」

と、いろいろと言いつつちゃんと見ていた町長。しかし、九たちアイランドスターズのときには、

「なんじゃ、ミスばっかりしているじゃないか。これでは県予選なんて突破できないぞ」

とミスを連発するアイランドスターズの姿を見て嘆いていた。でもって、なんとか県予選3位で突破したことを知ると、

「なんとか県予選を突破したな。でも、この状態では次の吸収予選は予選敗退が確実。これでこの九龍町はすべて土居建設に渡ってしまう…」

と悩んでしまう。が、今、町長にできることはなにもなかった。町長には町議会の解散権が厳しく制限されていた。国会みたいに解散権は町長にはなく、唯一あるとしたら、町議会で町長の不信任案を可決したときだけ。そんなのリゾート開発賛成派と反対派が拮抗している今の町議会ではそんな見込みすらない。また、抗議デモにしても、それを強制的に排除すれば混乱が起きるのは必至。なので、町長にとってとれる対策はなかった。

「星子よ、なんとかしてくれ」

と、町長はアイランドスターズのメンバーである自分の孫星子にただ願うしかなかった。

 

 が、11月も下旬となり、状況は少しずつではあるが改善してきた。それは抗議デモではなく町議会のほうだった。町議会の解散を問う住民投票の前日、町議会はいつもの通り空転していた。

「地域振興としてもリゾート開発は大事なのです。だからこそ、リゾート開発の工事を進めるべきなのです」

と、リゾート開発賛成派の近場議員が言うと、今度は反対派に寝返った町谷議員からは、

「いや、いまの町の現状をみてください。いまや反対派住民による抗議デモは続いています。民意はすでにリゾート開発反対に傾いています。民意をもっと大事にしてください」

と反論する。だが、賛成派、反対派、それぞれの議員の心のなかは別にあった。

(リゾート開発を進めれば私は儲かる。だって、それにより建造殿(土居建設の社長)から多額のお礼がもらえる)

と、今なお、建造からの賄賂を期待している賛成派議員。それに対して、反対派議員は、

(明日の住民投票は絶対に圧倒的多数で解散賛成の票が集まる。それにより、リコール成立、議会は解散。そのあとは町議会議員を決める選挙が行われる。その選挙で議会でリゾート開発を反対したことを堂々と宣伝すれば、反対派の住民たちが私に投票してくれて、また議員として戻ってこられる。もっとも~と反対していることをアピールするぞ)

と考えていた。どちらも町の未来のことなんて考えておらず、自分の利益のことしか考えていなかった。

 一方、いつもの長老議員はというと、

「ふふ、お茶がうまいの~」

と、のほほんとお茶を飲むことしかしなかった。こうして、町議会は最後まで空転し続けたのだった。

 が、そんな自分たちの利益しか見ていない議員の姿は住民たちには筒抜けだった。住民投票当日、住民たちはこぞって住民投票を済ませた。その投票数、なんと有権者全体の95%以上。ほとんどの有権者が投票したことになる。そして、投票終了後、即日開票され、結果、全投票数のじつに95%以上という圧倒的多数で議会解散の賛成票が集まり、リコールは成立、町議会の解散は決まった。

 そして、選管はすぐに町議会選挙を12月中旬に行うことを発表した。もちろん、リコール成立で議員を失職した元議員たちも全員その選挙に立候補する予定であり、その選挙準備に追われていた。

 その一方で、ハッピーさんたちにも怪しい動きが活発化していた。

「どうですか。元気にしてますか」

と、住民たちとなにげなく会話をしているハッピーさん、その際、

「どうです。リコールが成立して町議会は解散したけど、どう思っています?」

と、さりげなく聞くと、その住民からはいろんな意見を聞くことができた。その後、ハッピーさんは必ず、

「そうですか。とても貴重な意見、ありがとうございました」

と、丁寧に御礼を言った。ハッピーさん、これをほとんどの住民たちに行っていた。そして、これは特攻野郎Sチームのリーダーのゴンさんも行っていた。こうなるとなにか不気味である、そう思ってしまう今日このごろだった。

 

 こうしているうちに、ときは12月にはいろうとしていた。町議会の出直し選挙の告知日が迫ろうとしたとき、市有地に建設していたものがついに完成した。それは大きな野外ステージだった。完成した野外ステージを見た反対派住民たちはみな、

「これはきっと、本当にリゾート開発をするぞ、という土居建設の本気度をあらわしているんじゃないか。これ以上、土居建設の勝手を許すと、手加減なく俺たちの住処を奪っていくんじゃないか。それならもっと抗議して土居建設を追放しよう」

と思ってしまい、抵抗デモはさらにヒートアップ、ついには、

「12月末、リゾート開発を行う土居建設に対して鉄槌を下すべく、全島、全町あげての抗議集会を行う。各自、その準備をしてくれ」

と、反対派住民全員にリーダーから一斉メールが送られてきた。こうして、抗議デモはついに抗議集会へと発展しようとしていた。

 

 そして、迎えた町議会議員の出直し選挙の告知日、この日から選挙に立候補する人たちの選挙戦が開始される。が、立候補してきた人たちをみると、意外なことが判明した。これまでの選挙では立候補者が多くてもたったの11~12人であった。が、これまでの選挙と違い、今回の選挙は定数10に対し、立候補者18名という大混戦になっていた。そのなかにはリコールにより議員を失職した元議員たち全員はもちろんのこと、なぜか、ハッピーさんや特攻野郎Sチームのリーダー、ゴンさんを含めたチームのメンバー数名の名もあった。

 立候補届出後、

「よし、あとは議員になれるように選挙戦を戦うのみだ」

と、選挙事務所となる自分の家でハッピーさんは心に改めていた。そんなとき、

「よ~、おまえはどうよ、選挙に立候補した気分は?」

と、ゴンさんがハッピーさんの家を訪れて、ハッピーさんに質問すると、ハッピーさん、

「そりゃ、頑張っていくのみだって思っているよ。そのおまえこそどうだ、立候補した気分は?」

と逆にゴンさんに質問。そのゴンさんも、

「そうだな。俺としてはこれから先、九ちゃんたちが安心してスクールアイドルをしていけるよう、議員になって静かな練習環境を整備したいね。そういうおまえも同じ考えじゃないか」

と言うと、ハッピーさん、

「そうだな。俺たちの願いはなにも気にせずに九ちゃんたちアイランドスターズが練習できて、さらに全国で活躍できるようにしていくことだけだからよ」

と言った。

 実はハッピーさんとゴンさん、九たちアイランドスターズが鹿児島県予選を突破したあの日からこうなることを見越して町議会議員の出直し選挙に立候補する準備をしてきた。きっかけはアイランドスターズが県予選を突破したその日だった。ハッピーさんとゴンさんが県予選の生中継を見ていたときの2人の会話には続きがあった。

「ハッピーよ。おぬし、なにか考えているな」

と、ゴンさんが言うと、ハッピーさんはすぐに、

「ああ、そうとも。今、町議会のリコール請求が通ったことだしよ」

と言うと、続けて、

「で、このあと、解散を問う住民投票が行われる。今の状況からみても賛成多数で議会は解散するだろう。そのとき、あらためて議員の出直し選挙が行われる。俺はそれに立候補しようと思う」

と決意を言うと、ゴンさん、

「なぜそうしていんだ」

と、ハッピーさんの真意をみようとする。ハッピーさん、それについてこう答えた。

「おれはなぜ九ちゃんたちアイランドスターズが県予選は突破できたものの、ミスを連発していたのかを考えてみたんだけど、それって、絶対に負けられない、負けてしまうとこの町、九龍町が土居建設にのっとられてしまう、というプレッシャーがあったからだと思うんだ。それに、絶対に負けるな、負けたら承知しないぞという町の住民すべての総意、それからくるプレッシャーが九ちゃんたちにかかっていると思うんだ」

でも、実際は多恵がこれまでしてきた行為からくる九龍町の住民たち、九たちへの罪悪感のせいでミスを連発していたのが原因なのだが、このせいで多恵と九以外のアイランドスターズのメンバーとのあいだに溝ができていた。ハッピーさんの考えと実際の原因はかけ離れているが、これから先、反対派住民が九たちに「絶対に負けちゃだめ」というプレッシャーをかけてしまうことがないとは絶対にいえない。よりむしろ、九たちが負けてしまうと、そこでゲームオーバー、島は土居建設の手に渡る、そんな九龍祭りで帰り際に言ったバックスターのルナの一言が本当に真実であれば、より激化する抗議デモのように、今以上のプレッシャーを九たちに与えてしまう。そうハッピーさんは考えていた。

 その考えにもとづき、ハッピーさんはゴンさんにこう言った。

「俺は議員の出直し選挙に立候補する。そして、九ちゃんたちアイランドスターズが安全安心に、なにも気にせずに無事に頑張れるような環境を整備したい。ゴンよ、俺を応援してくれ。俺と一緒に九ちゃんたちが無事に頑張れる環境作りをしよう」

 これに対し、ゴンさんは意外なことを言う。

「ハッピーよ、それはできん。ごめんな」

これにはハッピーさん、

「なんでだよぉ。まさか、ここでいつもの言い争いをするつもりか」

と、ゴンさんを疑うも、すぐにゴンさんはあることを言った。

「ハッピーよ。俺もでる。その出直し選挙に立候補する。そして、一緒に当選して九ちゃんたちが無事に頑張れる環境作りをしよう」

これにはハッピーさん、

「ゴン、おまえ、それでいいのか。俺と一緒に立候補するのか?」

と、もう一度聞くと、ゴンさん、

「あたぼうよ。男に二言はない」

と言うと、ハッピーさん、これに喜び、

「ゴンよ、ありがとうよ。これからは2人で頑張っていこう」

と言うと、ゴンは続けて、

「それに俺たちは2人だけじゃない。Sチームの中からも何人かは立候補させる。全員で当選して九ちゃんたちが一生懸命頑張れる環境作りを一緒にしていこう」

と言うと、Sチームのメンバーからも、

「それなら俺が立候補します」

「いや、私が立候補します。私だったらみんあから好かれていますから」

「と、立候補に意欲を見せるメンバーが挙手する。これを見たハッピーさん、

「みんな、ありがとう。目標は全員当選だ!!」

と言うと、みんな、

「オー!!」

と叫んでいた。

 こうして、選挙の告示日までのあいだはハッピーさんと特攻野郎Sチームのみんなは手分けして島に住む人たちにいろんなことを聞いてみた。そこからリゾート開発以外の問題点がわかってきた。高齢者の介護問題、水道光熱費がほかのところと比べて高い、島民の生活に欠かせない車や船の燃料となるガソリンなどの石油の価格が高騰しているなど、いろいろと出てきたのだ。では、町はなにもしてこなかったのか。実はしようとしていたのだができなかったのだ。それには2つの理由があった。まず1つ目は町議会が空転していたことだった。実は九龍祭りの翌日、副町長が議会にこれらの問題に関連した補正予算案をだそうとしていたのだが、もう少しだすところであの町谷議員がリゾート開発反対を表明したため、そのあとは町議会が空転する事態となってしまった。なので、その議会のときに町谷議員が反対表明を言わなければその補正予算案は通っているかもしれないし、それにより、町民の生活が少し楽になったのかもしれない。そして、2つ目は反対派住民による抗議デモの激化だった。抗議デモは九龍祭りでの惨事以来激化の一途をたどっていた。町役場だけでなく、土居建設の現場事務所やあの野外ステージの建設現場にもデモ隊はいた。町はそのデモに対応するため、日夜、そのデモに多くの職員の人員でもって集中して対応してきた。また、町役場も日夜の抗議デモで機能していなかった。こんなことが重なり、町の通常業務は支障を兆していた。なお、議員選挙において、告知日前の選挙活動は法律により禁止されている。なので、ハッピーさんと特攻野郎Sチームのみんなは立候補することは言わず、ただただ、町民からいろんな意見を集めていた。

 

 そして、告知日、ハッピーさんと特攻野郎Sチームはハッピーさん、ゴンさんを含めた5人が町議会議員の出直し選挙に立候補した。5人全員が当選すれば、その町議会の主導権を握ることができる、そうにらんでの立候補だった。

 そして、選挙期間中、ハッピーさんたち立候補者5人は別々に選挙活動を展開していた。もちろん、あつまることもなく、ただ偶然会うと、

「お互い頑張りましょうね」

と握手するだけ。そんな選挙活動を各自でやっていた。

 が、言っていることは共通していた。

「今、高齢者は困っています。介護サービスの質が落ちた。これだと高齢者に迷惑をかけているという状態になっているのですよ」

「今、水道光熱費、ガソリン代がずっと高騰しております。また、ほかの市町村と比べて、この町の価格は高すぎます。これが続くと私たち町民は生活に困ってしまいます」

と、問題提起をした上で、それについての公約を言っていき、最後には必ず、

「私は必ず若者たちや高齢者など、町に住む人たち全員が安心して暮らせる観光作りを行います。なので、ぜひとも清き一票を私にください」

と、町民たちに訴えていった。なお、町議会議員選挙の争点となっていたリゾート開発の是非については反対を表明しつつ、あんまり詳しくは言わなかった。町民のほどんどが反対派であり、また、リゾート開発について論争すれば、前の町議会の二の舞になるとの判断からだった。一方、前議員たちを含む、ほかの立候補者たちはリゾート開発の賛成、反対を中心に町民に訴えていた。劣勢の賛成派の前議員たちはリゾート開発をすることで町は豊かになると訴え、反対派は逆に反対して、土居建設を町から追放しようと訴えた。特に町谷元議員を含む反対派の元議員たちはみな、解散前の町議会でみんなのために反対してきたことを重点的に訴えていた。が、これは前の町議会が空転状態に陥ったことを知っている町民たちにとって逆効果だったらしい。

 というふうに、ハッピーさんたち立候補者5人はほかの立候補者たちとは違った論点で選挙活動を展開していたが、それとは別に秘密裏に動いていた。それは裏論点という別のものだった。それはある日の夜、ハッピーさんが開いた集会での話だった。

「実は私はある人のために力行しました。それは九ちゃんたちです。九ちゃんたちはスクールアイドルグループ「アイランドスターズ」を結成して、今、ラブライブ!優勝に向けて頑張っています。しかし、その拠点となるこの町、九龍町は今、リゾート開発によって荒れに荒れています。さらに、九龍祭りのとき、バックスターが帰り際に言ったセリフ、「アイランドスターズが負けたら九龍町をいただく」のおかげで反対派の住民たちから九ちゃんたちに強いプレッシャーを与えています。私は今、ここで言います。九ちゃんたちには安全安心に、そして、何も気にせずにのびのびと練習、活動していってほしい、私はそう思います。そのための環境整備をやっていきたい。私それをやっていきたい。なにとぞ、みんさんの後押しで私を男にしてください。そして、九ちゃんたちが安心して活動できる場所を提供してください」

 これには集会に参加していた人たちからは、

パチパチパチ

と、大きな拍手が鳴り響いていた。これはゴンたちほか、特攻野郎Sチームから立候補しているメンバー4人も同じことをしていた。ハッピーさんやゴンさんたちの九たちアイランドスターズへの思いはこの選挙活動を通じて全島に静かに広がりをみせようとしていた。

 



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九龍島伝 第4話

 こうして、長くて短い選挙活動期間は過ぎ、ついに投票日を迎える。

「さあ、あとは当選することを願うのみ。よし、今日も1日頑張ろう」

と、ハッピーさんは当選を願うために買ったダルマ(小)に拝むと、そのまま投票場へと向かい投票を済ませた。また、ゴンさんたち特効野郎Sチームもそれぞれの志を胸に秘め、投票を済ませた。

 そして、午後8時、投票は締め切られた。最終的な投票率は95%。まれに見る高さである。即日開票が行われた。開票状況が刻々と変化していく。結果がわかるのははやくて1時間後。その時間は立候補者たちにとって緊張が続く。

 ハッピーさんと特攻野郎Sチームのみんなはハッピーさんの家に集まり、開票作業をネット中継を通じてパソコンの前で見守っていた。その横にはダルマが5つ。そのダルマたちはみな全員の当選を願っていた。

「まだわからないのかな。早く知りたいな」

と、ハッピーさんが言うと、ゴンさん、

「やれることはやった。あとは神に祈るのみだ」

と、ハッピーさんを気遣う。ほかのメンバーもただただ開票作業を見守るのみだった。

 

 そして、午後9時、ついに当選確実、当確した立候補者名が出てきた。ネット中継画面に当確した立候補者の名前が掲載される。それを見たハッピーさん、

「えっ、3位。この俺が投票数3位で当確。やったぞ。俺、ついに町議会議員になれたぞ!!」

と、大喜びすると、ゴンさんも、

「俺もだ。俺は4位で当確だ。やったな、ハッピー。俺たち、ついに当選したぞ!!」

と男泣きしていた。

 そして、開票作業が続くうちに、特攻野郎Sチーム所属の立候補者たちも次々と当選を決める。その都度喜ぶハッピーさんと特攻野郎Sチームの面々。当確がでると、その都度ダルマに目玉をいれていく。5つのダルマにどんどん目玉がいれられていく。

 で、開票作業は11時で終了し、当選した人たち10人の名前がハッピーさんのパソコン上に表示されていた。で、ハッピーさんと特攻野郎Sチームから立候補した5人の結果は…、それはダルマたちが物語っていた。パソコンの横においていたダルマ5つとも目玉がはいっている。そう、立候補した5人全員が当選したのだ。これにはハッピーさん、

「ついにこれで九ちゃんたちが安全安心に、なにも気にせずに練習、活動できる環境が整備できるね」

と言うと、ゴンさんも、

「ああ、そうだな。でも、これは俺たちの初めての一歩にすぎない。これからが大変だぞ」

と気を引き締めていた。

 一方、前の議会にいた前議員たちは2人を除いて落選していた。

「なぜだ!!俺は賛成派を抜け出して反対派にまわったのに、なんで落選したんだ!!」

と、町谷元議員は悔し涙。で、賛成派の近場元議員も、

「この町を思ってリゾート開発に賛成したんだ。なのに、なんで、みんなわからないんだ」

と、こちらも悔し涙を流していた。で、前議員たちが落選したのか。これには理由があった。九龍祭りが終わってからリコール成立による解散までの1ヶ月半、議員たちは自分の利益を守るためだけに議会に参加しリゾート開発について論争を繰り広げていた。が、それが町議会の空転という最悪の結果を招いたことに住民たちは怒りを覚えた。なぜなら、それにより、リゾート開発以外のことが疎かになっていたからだった。やっぱり住民たちはそのことをわかっていたのかもしれない。また、案外、リゾート開発の是非についても争点にはならなかった。それは町民のほとんどがすでに反対しており、その是非を決めても今はあんまり関係ないこと、そして、それよりも町議会の空転状態と抗議デモによって町の機能がすでにマヒしていたため、それに嫌気がさした、はやく通常の生活に戻りたいと思っていた住民が大半だったのもその理由の一つだった。

 で、ハッピーさんたちは5人当選という嬉しいこともありハッピーさんの家では宴会騒ぎになっていた。が、ハッピーさん、まわりの様子を気にしつつ、最終開票結果を見た。上位2人について少し考えたハッピーさん。その2人とも前の町議会にいた議員だった。

「2位の前町議会の議長はなんとなくわかるな」

でも、その議長は前の町議会で空転状態を認めた張本人であった。が、その議会では中立を守っていた。また、5月のリゾート開発を認める条例案を可決成立したときも議長だったので、議決権がなく、そのためにその条例案の議決には参加していなかった。これがよかったのかもしれない。また、選挙活動のときも、ハッピーさんたちと同じようにリゾート開発についてはなにもいわず、もっぱら生活関連のことを訴えていた。この議長、意外と名白楽である。

 そして、1位は…。

「えっ、全有効投票数の3割!!凄すぎる、この長老議員…」

と、ハッピーさんも舌とまいてしまう。なんと、あの長老議員、全体の3割もの投票数でもってトップ当選していた。あの空転していた前町議会においてもずっとお茶を飲んでいた。そして、5月のリゾート開発を認める条例案の議決のときもただ1人棄権していた、あの長老議員である。また、今回の選挙でも立候補したこと以外なにもしていないのだ。ただたんに町の高齢者と一緒に毎日お茶を飲んでいただけだった。なのに、なぜかトップ当選を果たした。これにはハッピーさん、あとで長老議員からその秘訣を聞くと、

「おいそれしました」

と、頭をさげてしまった。では、長老議員はなぜトップ当選を果たしたのか。実はこの長老議員、町内の高齢者のほぼ半数以上の有権者の支持を集めていたのだ。それほど支持を集めた理由、それは長老議員独特の選挙活動にあった。選挙活動中にした町内の高齢者とのお茶のみ、実はそれこそ長老議員の選挙活動だったのだ。町内の高齢者と一緒にお茶をして、そのとき、参加している高齢者の意見を聞き入れ、それに対して自分はどうしていきたいかを語っていたのだ。これを町内に住む高齢者全員と行い、このお茶会を通じて自分の支持者を集めていた。これが長老議員がトップ当選した秘訣であった。人は見かけに寄らずとはこのことである。

 

 そして、投票日の翌日、町長はさっそく町議会を招集し、投票で決まったハッピーさんやゴンさんたち特効野郎Sチームのメンバー4人を含めた新議員たち10人はすぐに町役場の隣にある町議会室に集まった。そして、議長は前の議会と同じ人、つまり、前議長がそのまま留任した。なぜなら、あのトップ当選した長老議員を除くとみな新人議員、つまり、議員歴なんて0の素人だらけなのだ。それでもこの議員たちを選んだ住民はみな、空転してばかりしている前の町議会に飽き飽きして、町議会に新しい血を注ぐ、新しく生まれ変わるように新人たちに投票したのかもしれない。なお、長老議員はその新人たちを指導、もとい、導くための教育係となってもらった。その決まったときの長老議員の言葉が、

「ほほほ、お茶がおいしいのお」

と、いつもの通りお茶を飲みながら笑っていた。

 その後、リゾート開発以外のたまりにたまった議案を次々と可決していく新町議会。もちろん、副町長が前議会が空転する以前から作っていた補正予算案も可決成立した。これを見た町長、

「これでようやく町も沈静化する」

と安堵した様子をみせていた。

 そして、その翌日も新町議会はたまっている議案を次々と可決していく。そして、残りに残ったあの議案について採決した。

「土居建設とのリゾート開発に関する契約を破棄し、リゾート開発計画を白紙に戻す条例案の採決をします。これに賛成のものは起立を」

と議長が言うと、長老議員を除く8人全員が起立した。もともと中立の議長と長老議員を除く議員8人全員がこのまえの選挙で反対を表明していた。ハッピーさんもゴンさんたちも選挙活動中はそんなに言っていなかったが、一応反対は表明していた。ので、リゾート開発についてはその8人全員が反対してもおかしくなかった。ちなみに、長老議員はいつものようにお茶を飲みながら、

「棄権じゃ。ほほ、お茶がうまいの~」

と、いつものとおり棄権した。

 こうして、町としてもリゾート開発に反対の立場を表明したことにより、リゾート開発は中止に追い込まれ、これで反対派住民の抗議デモは鎮静化する、とみられていたが、逆のことが起こってしまう。突然、土居建設から、

「九龍町でのリゾート開発は続行する」

という声明が町に届いたのだ。これは自分の夢、そして、昔、建造と一緒に会社を創業し、道半ばして亡くなったパートナーの夢をなんとしてでも叶えたい土居建設の社長、土居建造の執念、というより、野望からだった。そして、土居建設自体開店休業中、ようするに、いろんな理由で大手建設会社との受注競争に負け続けてしまい仕事がない状態となり、結果として、土居建設単独の事業である九龍島のリゾート開発に会社存亡をかけてしまっているからだった。

 これで黙っていないのが反対派住民たちによる抗議デモ隊であった。出直し選挙でようやく町議会が正常化し、リゾート開発に対して反対したことで孤立した土居建設は町から出ていくと予想していたのだ。だが、逆のことが起こった。その土居建設は町が反対しても、リゾート開発をすることを続けると言っているのだ。また、そのリゾート開発のIR施設であることも問題視された。IR施設、総合型リゾートともいわれるもので、ホテル、ショッピングモール、映画館などいろんなものが集まったリゾート施設なのだが、そこにはカジノ場を設けることになっている。そのカジノ場が反対派にとって一番問題視されていた。カジノ場を設けることで子どもたちに悪影響を与えてしまう、治安が悪化する、ギャンブル依存症の人が増えるなど、いろんな問題が発生する。それが反対派にとってもっても危惧していたことだった。

 こうしたなか、反対派はついに抗議集会の日時を決めた。日時は12月末、場所はあの野外ステージだった。なぜ、あの野外ステージなのか。それは九龍島に住む全住民が集まることが想定されていたから。九龍祭りで利用して広場では全島民を収容できない。ではほかにないのかというと、あの野外ステージしか収容できないのだ。なんで、全島民を収容できる野外ステージが会場と決まった。

 が、ここで町議会議員になったハッピーさん、少し疑問に思った。なぜ野外ステージをそんなに貸出できたのか、それも反対派がである。なぜなら、あの野外ステージは町と土居建設の所有物であり、リゾート開発について反対の立場となった町はともかく、あの反対派が毛嫌いしている土居建設がよく許可したなと思ったからである。

 で、ハッピーさん、調べてみてわかったことがあった。あの野外ステージの使用許可をもらったのは、ハッピーさんたちと一緒に当選した議員の1人だった。その議員の正体、実は反対派住民による抗議デモのリーダーだったのである。そう、なにを隠そう、そのリーダーこそ、町役場だけでなく、土居建設の現場事務所、そして、この野外ステージの工事現場に抗議デモ隊を送った人、その人だった。そのリーダーは当初、野外ステージで映画上映会を行うと申請していたのだ。九龍町民にとって映画の上映を見るのは人生で1回あるかないかぐらい貴重なことだった。だって、島には映画館すらないし、DVD、BDの普及やネットで簡単に映画が見られるので、その意味でも映画の上映を見ること自体大変貴重な経験だった。が、実はそれは隠れ蓑で、本当は反対派住民による抗議集会だった。

 これに気づいたハッピーさん、

「これは大変だ。すぐにでもやめさせないと」

と、反対派住民に説得を試みる。もちろん、ゴンさんたち特効野郎Sチームの面々もそれに加わる。しかし、どの反対派住民も取り繕ってくれなかった。だって、土居建設は今だにリゾート開発を諦めていないし、もし、リゾート開発してカジノ場なんて造られたらそれこそいろんな問題がおきる、というのが反対派住民の意見だった。

「どうしたらいいのだろうか。なんとかして抗議集会を止めないと。止めないと町は大変なことになる」

と、悩むハッピーさん。そんなときだった。

「あれ、ハッピーさん、こんにちは。そこでなにをしているの?」

と、ある少女がハッピーさんを呼び止める。それにハッピーさん、

「あっ、九ちゃん、こんにちは」

と、その少女こと九に挨拶する。すると、九は突然ハッピーさんにあることを言った。

「ハッピーさん、私の悩み事、聞いてくれる?」

そのことにハッピーさん、思わず、

「俺でよかったらいいけど」

と、九の相談にのることに。九はすぐにハッピーさんに相談した。

「あのね、私の友達の多恵ちゃんと星子ちゃんたちが今ケンカしているの。どうしたら仲良くなれるかな?」

このとき、ハッピーさんは初めて気づいた。あの九たちアイランドスターズの中でもケンカが起きていることを。だが、ただ、それだけではケンカの原因がわからない。

「九ちゃん、どうして多恵ちゃんと星子ちゃんたちがケンカしているの?」

と、ハッピーさんは九に尋ねるも、九はただたんに、

「どうしてらいいの。どうしたらいいの」

と言ってくるだけ。これにはハッピーさん、困ってしまう。が、ここでハッピーさん、何かに気づく。

(そういえば、九ちゃんの笑顔を見ていると元気になれるなあ)

そう、九はいつも明るく元気な子である。そして、いつも前向きに考えるその心はときには危なくなるが、それが塞がっていた穴を開ける突破口にもなることもある。いつも元気で明るく笑いながら生きる九の姿はみんなを元気にさせてくれる。しかし、今の九は悩んでいていつもの顔じゃない。

(いつもみたいに笑ってくれている九ちゃん。でも、今は悲しんでいる。そんな九ちゃんは九ちゃんらしくない)

そう思ったハッピーさんはすぐに九に言った。

「九ちゃん、笑ってみせてよ」

これには九、

「わかった。ニカー」

と、いつもの元気で明るい、それでいてまわりにいる人たちを幸せにしてくれそうな笑顔を見せる。これを見たハッピーさん、

(これだよ。これこそいつもの九ちゃんだよ)

と言うと、すぐに九に言った。

「九ちゃん、その笑顔をいつもしていたら、きっと、多恵ちゃんと星子ちゃんも仲直りしてくれるよ」

と言うと、九、

「本当、本当にいつも元気よく明るく笑顔を見せたらみんな仲良くなるの!!」

と驚く。これにはハッピーさんはすぐに、

「そうだよ、九ちゃん。いつも笑顔でいること、そして、どんなときでも前を向いて全力で駆け抜けることこそがみんなを仲良くさせるコツかな」

と答えると、すぐに、九、思いっきりの笑顔で、

「そうだね。私、忘れていたよ。いつも前を向いて全力疾走。そして、笑顔を忘れないことが私のいいところなんだよね」

と、元気よく答えた。このとき、ハッピーさんは思った。

(そうだよ。反対派の抗議集会をやめさせるにはやっぱり九ちゃんの笑顔が一番の特効薬だよね)

そして、ハッピーさんはすぐに九に聞いた。

「ところで、次のラブライブ!九州予選はいつなの?」

これには九、

「う~んとねぇ、たしか今月の月末だよ」

と言うと、ハッピーさん、思わず、

(うわ~、抗議集会のある日だ~)

とがっかりする。なんと、ハッピーさん、抗議集会に九たちアイランドスターズを呼んで、九たちの笑顔をもって抗議集会をやめさせようと本当に思っていた。が、九の笑顔で抗議集会が中止できるほど世の中は甘くないのだが、ハッピーさんはなにか秘策があるみたいだった。が、当日、島の野外ステージに出られないのであれば万事休すである。

 が、そんなとき、ハッピーさんはあることをひらめいた。

(あっ、そうだ。たしか、ラブライブ!の九州予選も鹿児島県予選と同じくネット中継があったな。それならば…)

と、ハッピーさん、いきなり自分のスマホを出して九にあるお願いをした。

「九ちゃん、ごめん。九ちゃんのメールアドレス、教えて」

これを聞いた九、

「うん、いいよ。本当は知らない人から聞かれたら答えずに逃げなさいって言われるけど、ハッピーさんならいいよ」

と、ハッピーさんに自分のメールアドレスを教えた。

 そして、ハッピーさんは九に、

「ありがとう、九ちゃん。ラブライブ!九州予選、頑張ってね」

と言うと、九も、

「うん、ありがとう、ハッピーさん」

と、御礼を言って帰っていった。

 



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九龍島伝 第5話

 こうして、ついに九たちアイランドスターズが出場するラブライブ!九州予選が開かれる日を迎えた。そして、同時に九龍島では全島挙げてのリゾート開発反対派による土居建設への抗議集会が島の野外ステージで行われることになっていた。

 抗議集会の会場となる野外ステージには多くの島民が集結していた。とはいえ、表向きは映画上映会なので、みんな日頃の服で集まっていた。ステージには映画を上映するためのスクリーンと、それに映像を映し出すための投影機が置かれていた。が、このあとすぐに撤去され、抗議集会が始まることになっていた。

 ステージ横ではゴンたち特攻野郎Sチームの面々がその抗議集会の準備をしていた。

「ああ、あれだけやめろって言ってきたが、誰も聞いてくれなかった」

と、ゴンは悔し涙を流していた。抗議集会のある日までゴンたちは抗議集会をやめるよう反対派住民を説得してきたが、どこからも断られ、逆に抗議集会に参加するように言われ続けてきたのだ。そして、

「そんななかでハッピーのやつ、「この抗議集会、絶対に参加してほしい」とか言ってよう、俺だけでなくメンバー全員も抗議集会の手伝いをさせられているのに、ハッピーのやつ、どこかに雲隠れしているのか。それってずるくな~い」

と、ハッピーさんに文句を言うゴンさん。そんななか、あるメンバーから、

「あのう、ボス。そのハッピーさんからの伝言です。このあと、ステージのスクリーンにある映像が流れたら、この法被に着替えて、「アイランドスターズファンクラブ 会員募集中」って言ってください、とのことです」

といわれると、ゴンさん、すぐにぴんときて、

「そうか。ハッピーのやつ、なにかやるつもりだな。それだったら、いつもは特攻服をきているが、今回は仕方がない、やつのステータスシンボル、法被を着てやるか!!」

と言って、なにかを始める準備を始めた。

 

 そして、ついに抗議集会が始まろうとしていた。ステージには抗議集会を計画した反対派住民の抗議デモを指揮する、現在町議会議員のリーダーが壇上にあがっていた。

(うん。よくこんなに集まったな。これほどの人数が抗議集会に参加してくれたんだ。これで土居建設もそのうしろにいる土居建造や国もリゾート開発をやめてくれる。そして、俺はリゾート開発を止めた英雄となる。ハハハ)

と、そのリーダーはそう思っていた。そして、そのリーダーがステージ中央にくると、抗議集会のカモフラージュとして置いていたスクリーンと投影機を動かそうとするスタッフたち。

 が、そんなとき、

「ちょっと待った~!!」

と、誰かの掛け声が聞こえてきた。それを聞いたリーダーはすぐに、

「誰だ!!」

と、まわりを見渡すと、ステージの端に見たことがある人物がいた。その人物はスマホであるものを見るとすぐにスマホをポケットにしまい、そのままステージにあがると、リーダーのところまで歩いてきた。

 それを見ていたリーダーはすぐに怒鳴る。

「ハッピー、なんのようだ!!」

そう、ステージにさっそうとあらわれたのはハッピーさんだった。ハッピーさんはすぐに自分のスマホを取り出し、そのスマホとつながっているコードを投影機につないだ。そして、

「おい、この抗議集会、やめてもらえないか」

と、リーダーに対して抗議集会をやめるように言うも、リーダーはものおじせず、

「誰が抗議集会をやめるかよ。この抗議集会で土居建設に土居建造、そして、国に俺たちの意見をそのままぶつけてリゾート開発をやめさせるってばよ」

と反論。そして、

「おい、邪魔な投影機とスクリーンをどけろ!!どけたら即刻抗議集会を始めるぞ!!」

と、スタッフに指示してスクリーンと投影機をどけようとする。が、スタッフから、

「それができません。なんか重過ぎて持ち上げられません」

という答えが返ってくる。これにはリーダー、

「なんだと!!」

と、スクリーンと投影機の下を見る。すると、台風で飛ばないように物にくくりつける土嚢がスクリーンと投影機にくくりつけられていた。その土嚢、ちょっとやそっとじゃ解けないように縄で縛られていた。これにハッピーさんはすぐに、

「今気づいたか。俺はゴンたち特攻野郎Sチームにお願いして土嚢をスクリーンと投影機にくくりつけたんだ。これはちょっとやそっとじゃ解けないようになっている。だから、スクリーンと投影機をどけること自体無駄だ!!」

と、リーダーに向けて言った。が、リーダーがすぐに、

「たとえスクリーンと投影機をどけることができなくても、抗議集会は始められる!!」

と言って、投影機の前に出てなにかをしゃべろうとする。

「よ~し、これから抗議集会をおこ…」

そんなときだった。

「この映像を見てそんなことが言えるのかな」

と、ハッピーさん、いきなり自分のスマホを扱ってなにかを操作し、次に投影機のスイッチをつけた。すると、

「あれ、あれって…」

「そうだ、九ちゃんたちだ。九ちゃんたちのアイランドスターズだ」

と、突然映し出された映像にステージ前に集まっていた住民たちはびっくりしていた。そう、スクリーンに写しだされた映像は九たちアイランドスターズ、そのものだった。実はハッピーさんは自分のスマホを通してラブライブ!九州予選の生中継映像をスクリーンに投影していたのだった。

 九たちはそのまま歌うためのフォーメーション位置に移動していた。それを見ていたハッピーさんはすぐに、

「今から九ちゃんたちは一生懸命歌います。それはこの島のためでも、この町のためでも、ましてや自分たちの高校のために歌うんじゃない、今の自分たちを楽しむために歌うんです。それを見てください」

と、みんなに呼びかけた。これにはステージ前にいる住民たちからは、

「えっ、楽しむだけのために歌うの」

「もし負けたらこの町は土居建設にのっとられてしまうのよ」

と、なんか非難めいた言葉が飛び交う。

 が、九たちは、

「さあ 航海に向けて 全力前進!!」

と、大きな声で「NEW VOYAGER」を歌いだすと、会場中はシーンとなった。さらに、

「すべての海を(海を) のりこえていこう」

と、九たちが笑顔で歌っている。これを見た住民たちからはなにかひかれるように、

「九ちゃん、頑張れ~」「アイランドスターズ、頑張れ~」

と、自然と応援していくようになっていった。そう、九たちアイランドスターズの笑顔で一生懸命歌っている姿にステージ前に集まっていた住民たちは抗議集会にきていることを忘れ、映像に映るアイランドスターズに対して応援したい気分になっていった。

 そして、最後のサビ、

「すべての海を(海を) のりこえていこう」

に入るころには抗議集会に参加している住民たちから、

「海を~」

と、九たちといっしょにハモろうとしていた。

 そして、最後、

「私たちこそ NEW VOYAGER!!」

で、アイランドスターズは歌い終わった。この瞬間、会場中から、

ワー パチパチパチパチ

という歓声と大きな拍手が鳴り響いていた。

 そのあと、すぐにハッピーさんがステージ中央に戻り、会場にいる住民たちにあることを言った。

「ここに来ている住民たちよ、全員に告げる。あなたたちは今、ここでなにをしようとしていた。いくら言っても出ていかない土居建設を追い出し、リゾート開発を終わらせようとしているのか。が、いくら抗議しても土居建設は出ていかないだろう。だって、リゾート開発は土居建設の一大プロジェクトであるから。そんなプロジェクトやめたら、土居建設はおわりだろう」

 そして、ハッピーさんはさらに続けて言った。

「終わりのない戦い、そのため、最終的には抗議デモはついに暴徒化し、住民を襲い始めるかもしれない」

これにはリーダー、すぐに、

「そんなことはない。だって、私たちは自分たちを律している」

と、反論するも、ハッピーさんはそれを無視して話を続ける。

「もし暴徒化したら、それはデモでもなく、ただの反乱だ。俺は抗議デモが悪いとか言っているのではない。反対するのも自由、賛成するのも自由。だけど、それが行き過ぎると、それはただの迷惑になっちゃう。人って迷惑をかけてでも成し遂げないといけないものってあるのだろうか」

これには抗議集会に参加している住民たちから唾液を飲み込む音が聞こえてきた。

 ハッピーさんの訴えはここからピークを迎える。

「私は思う、この九ちゃんたちアイランドスターズは今を一生懸命頑張って、そして、元気よく、明るく、笑顔で踊ってくれた。それは俺たちのためでも、島や町のためでもない。自分たちスクールアイドルとして一生懸命楽しんでみたいために踊っているんだ!!」

 そして、締めの言葉をハッピーさんは言った。

「俺たちは九ちゃんたちになにができるのだろうか。リゾート開発を中止に追い込んで、普段の生活を取り戻すためなのか。それても徹底抗戦で島や町を守るのか。そうじゃない。今を一生懸命頑張って輝いている九ちゃんたち子どもたちをしっかり見守ってあげること、そして、その子どもたちが安心して活躍できる場所をつくることこそが大事なんじゃないかな」

と、ハッピーさんの長い演説が終わると、会場中から、

パチパチパチパチ

と、大きな拍手をハッピーさんを迎えていた。が、これを見ていたリーダーは、

「それは間違いだ。だって、リゾート開発を認めたらこの町はダメに…」

と言うと、ハッピーさんはすぐに、

「それは違うよ。リゾート開発があるとしても、自分たち大人は九ちゃんたち子どもがみな元気に暮らせる、そんな社会を作ればいいだけ。なにも問題はない」

と、リーダーに言うと、ハッピーさんはすぐにリーダーの耳元にこっそり、

「あと、リーダーさん、あなた、アイランドスターズのとりこになりましたね。だって、九ちゃんたちが踊っているとき、リーダーの体の動き、まるで自分の好きなアイドルを応援しているときに似ていますから」

と言った。実際、アイランドスターズが歌っているとき、リーダー自体九ちゃんたちを応援していたように見えた。さらに、これを見ていたステージ前の住民たちもみな、

「たしかに九ちゃんたちが歌っているとき、リーダー自体九ちゃんたちを応援していたように見えた」

と証言していた。

 これを聞いたリーダー、

「見ていろよ。必ず逆襲してやるからな」

と、誰かみたいに捨て台詞を言って、ステージ上からさっさと逃げていった。そのリーダーにハッピーさんは一言。

「それと、アイランドスターズのグッズ、会場内で販売していますから、よろしかったらどうぞ」

と、ちゃっかりグッズの宣伝もしていた。

 

「しかし、よくこんな策を練り上げたな。凄かったぞ」

抗議デモのリーダーが逃げていったあと、ゴンさんはハッピーさんのところに行き、ハッピーさんを褒めていた。

「いやぁ、ちょうど抗議集会とラブライブ!の九州予選が同じ日時だったし、抗議集会のカモフラージュが映画の上映会だったから、必ずスクリーンと投影機を用意していると踏んでいたのよ。そこで、九ちゃんたちが元気よく踊る姿を見せたら、みんなの考え方、変わるかなと思ってよ」

と言うと、ゴンさんはすぐに、

「でも、九ちゃんたちって鹿児島県予選ではミスばっかりだっただろ。なんでそれが今になってものすごいダンスや歌を披露できたんだ?」

と疑問を言うと、ハッピーさんはすぐに、

「それはね、ちょっと前に九ちゃんと出会って、多恵ちゃんと星子ちゃんたちがケンカしているって聞いたんだ。俺はそんな九ちゃんに、元気に、前向きに考えていけばいいよって、ただそれを教えただけ。でも、九ちゃん、それをそのまま実行したんだって。そしてら、多恵ちゃんと星子ちゃんたち、九州予選の真っ最中に仲直りしたんだって。そしたら、本来の力を取り戻した、っていうのが真相と思うよ」

と答えると、ゴンさん、

「なんでそんなこと、おまえが知っているんだ」

とハッピーさんに聞くと、ハッピーさん、すぐに、

「だって、そのことを抗議集会が始まるそのときにメールで教えてくれたんだもん、九ちゃんから直接に」

と答えると、ゴンさん、

「だから、ステージ上で堂々としていたはずだ」

と言うと、ハッピーさん、

「だって、俺は九ちゃんたちのファン第1号なんだもん。そのことぐらいわかっていたよ」

と、胸をはって答えていた。

 そんなハッピーさんに対し、ゴンさん、

「でも、この法被の絵柄、どこかで見かけたような」

と自分が着ている法被の絵柄についてハッピーさんに問いかけると、ハッピーさん、すぐに、

「これはね、九龍祭りの翌日に自分がデザインしたものだよ。九龍祭りの夜、一心不乱で踊っている九ちゃんたちアイランドスターズを描いたもの。これこそ、アイランドスターズのグッズ第1号だよ」

と、法被のデザインをゴンさんに見せびらかす。

 そんな喜んでいるハッピーさんを見て、ゴンさんは思った。

(この男こそ九ちゃんたちアイランドスターズを応援しているファン、いや、第一人者そのものの姿じゃないかな)

 

 その後、九州予選の結果発表で九たちアイランドスターズの1位通過を野外ステージのスクリーンで見ていた会場中の住民たちは、そのことを知った瞬間、

ヤッター!!

と、声を大にして喜んでいた。こうして、九たちアイランドスターズはこの瞬間、普通のスクールアイドルから九龍島の、いや、九龍町の輝けるスターへと変貌を遂げていった。ちなみに、アイランドスターズの大活躍により、会場中で募集していたアイランドスターズのファンクラブの会員数はうなぎのぼり、というより、会場中にいた住民たちのほとんどがファンクラブの会員となり、一緒に売られていたアイランドスターズのグッズはすべて完売。それを作ったハッピーさんは臨時収入としてたくさんのお金が転がり込んできたらしい。(なお、ハッピーさん、このあと、ちゃんと確定申告をしたとのことです)

 

 この日を境に反対派住民による抗議デモは収束へと向かった。こうして、町には平穏な日常を迎えた、はずではなかった。むしろ、誰もが驚くことが2つ起こっていた。

まず1つ目は抗議デモのリーダーが突然町議会の議員をやめたことだった。表上は抗議集会を行うために野外ステージの使用申請をする際、わざと映画の上映会とうその申請をしたというのが理由となっていたが、その裏では、抗議デモで反対派住民をたきつけて激化させるだけでなく、あともう少しで暴徒化させようとしていたみたいだった。これにより、町の実権を自ら握ろうとしていたのではと噂されていた。

 そして、もう1つは土居建設の現場事務所自らリゾート開発の工事を中止するとの声明を出したことだった。これについてはいろいろと噂になっているが、実際は土居建設の社長の建造からすべての役職を解任された多恵だったが、それでも現場事務所で働く土居建設の従業員はみな多恵のことをリーダーとして認めていたため、多恵がこの抗議集会後、

「ラブライブ!決勝が終わるまでリゾート開発の一切の工事を禁ずる」

と言ったので、従業員の圧倒的多数の賛成で、この声明が出されたとのことらしい。でもって、それに加えて、受注工事がまったく0が続く、開店休業状態に陥っていた土居建設のお金がついに底をついたみたいで、さらに九龍島の野外ステージの建設により、残っていた資材も底をついてしまい、今の土居建設にとって資材がまったくなく、資材を買うお金すらないので、工事をしたくても工事できない状況に陥っていたことも原因だったらしい。

 

 こうして、無事に平穏に年を越せることができた九龍町であったが、逆に盛り上がるところがあった。九龍高校であった。ここでは、

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、毎日九たちが雪穂の指導のもと、(星子が作った計画に沿って)毎日ダンス練習や歌唱練習、基礎トレをしっかりしていた。その様子を見に毎日多くの町民が訪れるだけでなく、

「九ちゃん、お菓子あげるね」

と、直接贈り物を贈る町民もあらわれた。もちろん、これらの贈り物はあとで星子の管理のもと、九たちに配られたりした。これを見た星子はこのときのことを、

「九州予選の前と後では住民のみなさまの対応が違っていてびっくりしました。だって、前はそんなに応援してくれる人たちが少なかったのに、終わってからはうってかわって、この島に住む住民全員から応援してもらっている、そんな感じでした」

と、思い出として振り返るとともに一緒に話していた。

 そして、町議会では抗議デモのリーダーが議員をやめたことで起こった補欠選挙が行われ、新人の人が当選したあと、九たちアイランドスターズが出場するラブライブ!決勝の地、秋葉ドームに応援団を結成して送ろうという案を相談していた。

「やっぱり、希望者全員で行くべきです」

と、ハッピーさんは言うも、ゴンさん、

「それはやめたほうがいいんじゃないかな。そこまでする予算なんてないぞ」

と反論する。

 が、そんな論争のなか、いきなり町長が、

「ちょっと論争の途中だが、先に言っておく。私はそのラブライブ!に応援団を送ることは反対だ。なんだ、スクールアイドルは。スカートをひらひらさせて男性を誘惑している。アイドルっていうのはそういうものなんだ。女性は淑女なれっていつも言っているだろうが。おしとやかに、男性の一歩後ろを歩くのが理想である。そんなのをしないスクールアイドルは応援する価値なしじゃ」

と言って、応援団派遣案を一蹴してしまった。これにはハッピーさん、

「最後の最後にでたよ。頑固親父のスクールアイドル否定論」

と言ってしまう。これは星子がスクールアイドルになるときに星子自身悩んでいたことだった。おじいちゃんである町長から、「いつも淑女なれ」といってきたため、星子はその考えで、一時期九たちスクールアイドルの練習を禁止していたほどだった。結局、それがもとで島一周遠泳大会での九たちVS星子の戦いとなり、それにより、星子をはじめとする3年生が九たちのスクールアイドル部に加入することになった。

が、町長みたいに昔の考え方でもって九たちスクールアイドルを否定する人たちはいまや町中どこを見ても皆無だった。それは2度の大きな出来事が大きかった。まず、最初のうちは町のほとんどの高齢者たちが町長と同じ意見だった。が、九龍祭りの九たちアイランドスターズのステージを見た高齢者たちは初めてながらも一生懸命踊る九たちの姿を見て、まるで孫と同じくらいの子どもたちがみんなのために一緒になって一生懸命踊っていることに感動を覚えたらしく、一瞬のうちに九たちのとりこになったようだった。そして、たとえ女性でも淑女じゃなくても、おしとやかでなくても、男性と同じく一生懸命頑張っていけるものだと認識を改めるきっかけとなった。

 そして、2度目は抗議集会のときだった。そのときの生中継映像を見た高齢者の人たちは、その祭りのときよりも格段にパワーアップした九たちの姿を見て、最初は一生懸命頑張っているだけだったのに、たった2ヶ月でもっと上手に、そして、もっと楽しく踊ることができるようになった九たちの成長の凄さに感動を覚え、そして、九たち若い女性というのは、男性にはない無限の可能性があるのではと思うようになった。そして、それが高齢者としては、

「昔みたいに女性らしく、という言葉はもういらない。おしとやかで、優雅で、淑女を求めるのはおかしいのでは。良妻賢母もいいけど、それよりも自分の無限の可能性を信じる女性たちを育てることが大事である」

と、みんな悟ったように見えた。と、ハッピーさんはそう解釈していた。だが、町議会は町長の反対で、ラブライブ!決勝で応援団を派遣する案を可決することができないままだった。

 



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九龍島伝 第6話

 こうしていくうちに冬は過ぎ、ついに3月を迎えることになる。ラブライブ!決勝がついに東京の秋葉ドームにて開催される日が近づいていた。九龍島から東京に行くためには船と飛行機を乗り継いでいかないといけないし、長い時間がかかる。というわけで、雪穂と九たちアイランドスターズははやめに島を出発することとなった。

 九たちが東京に出発する前日、野外ステージでは九たちアイランドスターズの壮行会が行われていた。九たちに向けていろんな催しが行ったあと、九たちはステージに上がり、

「みんな、応援ありがとう。頑張ってくるからねぇ」

と、九たちを応援しに来てくれた住民たちに向かって御礼を言って手を振っていた。

 そして、九たちはそのままステージを去り、その壮行会は終わりを迎えた。

 が、そこで終わりではなかった。いきなり、ハッピーさんが出てきて会場中に響くように言った。

「今、ここで町民総会を行います!!」

それを見ていた町長はいきなり、

「なんじゃと。町民総会だと」

と、驚いていた。町民総会とは、条例により、議会を置かず、そのかわりに選挙権を持つ者の総会ができる、つまり、町民全員で物事を決める総会である。

「町民総会だと。私は聞いてないぞ」

と、怒る町長に対し、ハッピーさんはすぐに、

「今回の総会で決めることはラブライブ!決勝に九ちゃんたちアイランドスターズの応援団を送るかどうかだ!!とはいえ、今夜はもう遅い。そのまま採決をしよう」

と言うとそのまま、

「では、賛成のものは挙手してください」

と言えば、町長を除く全員が挙手し、町長を除く全員が賛成にまわった。これを見たハッピーさん、

「それじゃ、応援団を送ることに決定…」

と宣言するも、すぐに町長、

「それは認めない。この私が言っているのだ。断固拒否する。絶対に応援団を送ってはいか~ん」

と、ハッピーさんの声を遮る。これを見た町民たちは、

「町長、引っ込んでいろ」「黙っていろ」

と、さんざんヤジを飛ばすも、とうの町長は、

「いかんと言ったらいかん」

と言って、だだをこねるだけだった。

 が、こんなとき、町長の行為についにあの方が怒り始めた。

「こりゃ~、天海町長、いや、若造がぁ~」

「だ、誰だ。私のことを愚弄するのは」

と、町長、その発言主を探す。すると、

「わしじゃ、長老議員だ~」

と、野外ステージの観客席奥にいた長老議員がステージに近づくと、

「長老議員…」

と、町長もたじろんでしまう。

「こりゃ、この若造が。少しは考えを改めよ」

と、長老議員はそう言うと、町長の前に立った。

 そして、長老議員の天海町長に対するお叱りタイムが始まった。

「天海町長よ、おまえはいつも「女性は淑女なれ」「女性とはおしとやか、優雅に」「女性は男性の一歩後ろを歩くもの」と言っていたな。だけど、今はそんな考えなんて通用しないぞ。今は女性であっても社会進出する時代じゃ。結婚しても働いている女性は多い。そして、男性ではできない考え方で社長になる女性もいる。それほど、女性の社会進出は進んでいるのだ。天海町長、それを認めなさい!!」

と、長老議員が言うと、町長、

「それは違います。だって、女性はいつだって男性の言うことを聞くものだと…」

と言い訳を言うも、長老議員、すぐに、

「その考えが古いのです。それに、このまま、その考えで町の運営をすると、どこかで破綻しますよ。だって、女性の社会進出を拒むこと自体できないことです。それに、拒んだ場合、社会的問題となります。されに、女性には男性にない無限の可能性があります。それを摘むこと自体いけないこと。少しは女性を信用しなさい」

と町長に一喝すると、続けて、長老議員、

「あと、スクールアイドルを認めない、という考えも改めるように。なんでスクールアイドルを認めないのか」

と町長に聞くと、町長、

「だって、ひらひらしたスカートで踊って男たちを誘惑して…」

と、理由を言うと、これにも長老議員は一喝。

「それは違う。スクールアイドルは踊るために踊りやすい衣装を着る。それがたまたまひらひらしたスカートで踊っているにすぎないのだ」

 そして、さらに長老議員は言った。

「そして、スクールアイドルを含むアイドル文化というのは、日本にとって新しい文化じゃないか。さらに、日本はその新しい文化を次々と受け入れることで、とても楽しく暮らしていける、住み心地のいいところとなっていったんじゃないか。戦後すぐのときは、この日本にはバレンタインもハローウィンもクリスマスもあまりやっていなかった。それが戦後になって日本に住んでいる人たちはそれを次々と受け入れるようになり、それが日本の新しい文化として定着してきた。そして、それが今や日本の誇れる文化の一つになった。もっと昔を見ても、日本はいろんな国のいいところ、文化を導入して発展してきた。外国の言葉ですら日本語に取り入れてきた。それくらい日本というのは新しい文化に寛容であり、新しい文化を取り入れることで日本の文化はさらに進化しようとしている。だからこそ、天海町長、認めなさい。古い考えを捨てて、そして、認めよ。おまえが心の底で思っていることを大事にしろ」

と言うと、町長、

「心の底で眠る、思っていること…」

と、黙ってしまう。それを見た長老議員は言った。

「私にはわかるぞ。心の底では星子ちゃんをスクールアイドルとして応援したいと思っていることを」

これには町長、

「いや、違う。私はそう思っていない…」

と否定すると、今度は長老議員が町長の耳元でこっそり言った。

「いいか。おまえの古い考えのせいで星子ちゃんは一時期苦しんでいた。その苦しみを星子ちゃんにもうさせないためにも、古い考えは捨てよ」

と言うと、町長、

(あの星子が私のために苦しんでいた。なんと罪深きことをしたんじゃ)

と思うと、すぐに、

「わかった。応援団を送ることを認めよう」

と言ってします。これを聞いた町民全員、

「ヤッター!!」

と、大いに喜んでいた。どうやら町長、星子が自分のせいで苦しんでいることを知り、その罪滅ぼしのために認めたと、ハッピーさんは思った。

 

 こうして、無事にアイランドスターズ応援団を東京に派遣することを認めた九龍町だったが。なんと、ほとんどの町民が応援に行くことを希望していた。これにはハッピーさん、

「これじゃ希望者全員を連れて行くのは無理だよ~。そんな交通手段、ないよ~」

と、嘆いていた。だって九龍町から東京に行くためには、船や飛行機を乗り継いでいかないといけない。が、それを1度に多くの人を送れる方法なんてなかった。が、ゴンさん、その問題をあっさり解決した。

「そう思ってよ、大型フェリーを1隻チャーターしたぜ」

大型フェリーなら応援希望者全員を1度に送れるし、東京での宿泊代も浮く。一石二鳥だった。これにはハッピーさん、

(こりゃゴンさん、特攻野郎Sチームをリーダーとして引っ張っていくうちにチームの運営方法を身につけたな)

と思ったほどだった。

 というわけで、決勝がある日には間に合うように島の港から大型フェリーで東京に向かったハッピーさんたちアイランドスターズ応援団はなにも起きることなく無事に東京に到着、その足で秋葉ドームに向かい、そして、そのまんま九たちアイランドスターズを応援していった。ちなみに、プレミアチケットであるラブライブ!決勝のチケットを応援団参加者全員分用意したのはゴンさんであった。ゴンさん、恐るべしである。

 で、ステージに上がった九たちアイランドスターズは司会役のレポーターの一言でハッピーさんたちアイランドスターズ応援団を見つける。驚く九たち。特にハッピーさんとゴンさんたち特効野郎Sチームのメンバーは今回のために作ってきた九たちを描いた法被と特攻服を着ていた。

 そして、アイランドスターズのメンバー、たい子から、

「なんでここにいるのですか~」

と聞かれると、ハッピーさん、

「だって、島の子どもたちの晴れ姿だから」

と、答えるとともに、ゴンさんとともに応援団のアイデアは町長のものであるとうそを言った。これは町長の権威を守るためとハッピーさんは言っている。

 青いペンライトを持っているハッピーさんたちアイランドスターズ応援団、

「絶対に負けるな~」「優勝してね~」

という掛け声が九たちの励みになったみたいで、九たちは元気よく、一生懸命、そして、楽しく「SPACE VOYAGER」を熱唱した。

 その後、いろんなことが起こったものの、九たちアイランドスターズが優勝を決めた。だが、それだけでは終わらなかった。決勝の最中に土居建設の社長、土居建造は賄賂を中央省庁や政治家、建築業界、そして、九龍町の町議会議員などに送っていた罪で逮捕され、それにより信用を失った土居建設は倒産。結局、九龍町のリゾート開発も中止になってしまった。また、町でも賄賂を受け取った町谷議員や近場議員などが逮捕され、一大事となってしまった。

 が、大型フェリーで九たちや真紅のラブライブ!優勝旗をのせて九龍町に帰る最中、町長はハッピーさんとゴンさんを呼んである話をした。

「ハッピーにゴンよ、おまえたちに伝えたいことがある」

この言葉にハッピーさんは、

「えっ、私たちになにか?」

と驚くも、すぐに、町長、

「今回のことでわかった。九たちみたいに若者たちには私みたいな老いぼれにはないパワーを持っている。それは間違えば大変なことが起きるが、正しいことに使えば、無限の可能性が広がる。そう考えると、自分みたいな老兵はただ去るのみ。あとのことはおまえたち若者に任せたほうがいいかもな」

と言うと、ゴンさん、

「えっ、それって本当ですか?」

と聞き返すと、町長、

「ああ。私はあと数年で町長を引退する。あとは後進に道を譲るつもりだ」

と言うと、ハッピーさん、

「町長のお言葉、お聞きしました。このハッピー、その言葉をもとに精進させていただきます」

と言うと、町長、

「頼むぞ。2人ともこれからの九龍町を盛り上げていってくれ」

と、2人を見て頼んでいた。

 

 そして、2024年4月、星子と氷は高校を卒業し、ハッピーさんとゴンさんの進言でできたスクールアイドル課に配属された。また、春は高校の隣にできた寮で寮母として新しく入学してきた1年生30人の胃袋をしっかりキャッチしていた。で、町長は自分の後継者は誰がいいか考え始めていた。

「う~ん、ハッピーやゴンにはかっこいいこと言ったが、あの2人のうちどちらかが町長にすると、もう1人はいろいろと文句を言いそうだな」

と、町長は悩んでしまった。事実、町議会ではハッピーさんとゴンさん、2人はよく対立する。一緒に条例案を提出したものの、その案の議論となると、2人は熱い論戦を展開する。これが町議会の新しい名物にもなってしまい、その論戦を見に議会がある日は多くの町民が見物にくる。しかし、昔の空転していたときとは違う。空転していたときは自分の利益のためにだけ論戦を繰り広げ、いつも平行線のままだった。が、2人の論戦は町の、そして、町民の未来のために論戦しているし、結局は2人とも歩み寄り、よりよい条例にしてから可決している。

 とはいえ、2人のうち、どちらかを町長にしちゃうと、どちらかがひがむし、このいいバランスを崩すことにもなる。

「となると、やっぱり星子かな。わしの孫だし、みんなをまとめる才能もあるしな」

と、町長、星子を後釜にすることを決めた。

 

 が、その星子が町長の後継者氏名を辞退してしまった。それは2025年の1月のある日だった。町長はある用事で九龍高校を訪れたのだった。そんなとき、偶然九たちの様子を見にきていた星子とばったり会ったのだ。

「あっ、おじい…、じゃなかった、町長、こんにちは」

と、星子が慌てて挨拶すると、町長、

「あっ、星子か。どうだ、九たちの仕上がり具合は」

と、九たちスクールアイドルの出来具合を星子に聞くと、

「ええ、ばっちり。九、ルナたちの「BS with IS」、たい子たちの「ISS」、ともに仕上がり具合はばっちりですよ」

と、星子は笑いながら答えた。これには町長、

「まさか、「BS with IS」「ISS」ともにラブライブ!決勝に進めるなんて、九龍町にしてみたらすごい快挙だと思うぞ」

と、笑いながら言うと、星子も、

「はい、そうですね。これも雪穂先生の指導のお陰です」

と、雪穂のことを尊敬しつつ言った。

 そして、町長はこの際だからと星子にあることを聞いた。

「星子よ。わしはあと数年で町長を引退する。だから、星子、わしのあとを継いでもらないか」

これで、はい、と星子が答えたら、町長としては嬉しいのだが、星子からは、

「それはお断りします」

と、お断りの返事がくる。これを聞いた町長、

ガーン

と、がっかりしてしまう。星子はそんな町長を見つつその理由を答えた。

「私はこの2年間、スクールアイドルに係わってきました。最初の1年間はスクールアイドルとして、あとの1年間はスクールアイドルを支える裏方として。そして、わかったんです、私、スクールアイドルが好きなんだなって。だって、こんな楽しいこと、なかなかないからですしね。まえは町長(おじいちゃん)のいうことを聞いて、スカートをひらひらさせていたことでスクールアイドルを毛嫌いしていました。しかし、どんどん係わっていくうちに、自分がスクールアイドルになって、こんな楽しいことしているんだって気づいていくうちに、私、いつのまにか、スクールアイドル、好きになっていたんです。kの好きをずっと、ずうっと経験したい。だから、私、これからもスクールアイドルを支えていきたい。その思いを大切にしているからこそ、町長の後を継ぎたくないんです。だって、町長になったらスクールアイドル以外のことをしないといけないしね」

 これを聞いた町長、

「星子の気持ちはよくわかった。星子を私の後継者にするのは諦めよう。じゃが、じゃ、誰を私の後継者にすればいいんだ?」

と言うと、星子はすぐに答えた。

「それだったら、多恵はどうでしょうか」

これには町長、

「多恵殿か。どうしてじゃ」

と、星子に聞くと、星子、

「多恵、ああ見えて私と同じくらい、くせのある生徒を上手にまとめていますよ。それに、土居建設の現場事務所を高校生ながらひとつにまとめていたし、人望も厚かった。それに、ああ見えて、小さいときから父建造のもと、帝王学を学んでいましたしね」

と多恵を推薦すると、町長も、

「多恵殿か。たしかに適任じゃな。一時期とはいえ、リゾート開発のときには半年でこの島の約半数の人たちから買収同意書を書かせた交渉力や粘りもあるな。これはすごい逸材だ。よ~し、多恵殿をわしの後釜にしよう」

と言うと、星子、

「それにはまず多恵の同意を得ないとね」

と、ちゃんと町長に釘を刺した。

 



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九龍島伝 第7話(スピンオフ最終回)

 こうして、多恵を自分の後継者にすることを決めた町長であったが、九たちのラブライブ!決勝に出場(していて、九、ひろ子、多恵、ルナ、レン、カレンの「BS with IS」が優勝、たい子、めい、小明、1年生30人の「ISS」が5位入賞!!)と、雪穂の退任ともあって、なかなか言いだせなかった。一応、雪穂とは会う機会があって、そのとき、「多恵に自分のあとを継いで欲しい」と言ってくれと頼んでいた。

 そして、2025年3月、雪穂は2年という契約の期限を向かえ、自分の役目はすでに終わったということで九龍島を去り、九もその雪穂のあとを追って島を去った。そんななか、町長は多恵を町役場に呼んだ。

「町長、なんでしょうか」

と、多恵は町長室に入ると、すぐに町長に尋ねた。町長はすぐに、

「多恵殿にお願いがある。わしのあとを継いで欲しい」

と、多恵にお願いをする。すると、多恵、

「わかりました。私が町長のあとを継ぎます」

と、あっさりと言ってしまった。これには町長、

「そんなにあっさりと決めてよかったのか?」

と、多恵に聞くと、多恵、

「前回のラブライブ!決勝のとき、雪穂先生から「九龍町のために頑張っていきなさい」と言われ、星子さんからは「九龍町を引っ張っていく存在」って言われてぴんときました、町長が私を後釜にするってことに。それに、九からも言われましたしね」

と、言うと、町長、

「九から?」

と言うと、多恵、

「九とあることを約束したのです」

と言ってその経緯を話した。

 

 その約束は九と多恵が高校を卒業式を明日に控えた日のことだった。九龍駅で、

「九、急に呼び出してなんなの?」

と、急に呼び出しをくらい走ってきた多恵が待っていた九に聞くと、

「多恵ちゃん、お願いがあるの?」

と、九がなにかお願いを聞いて欲しいような顔をして言うと、多恵、

「で、そのお願いってなに?」

と、九に聞くと、九はすぐに答えた。

「あのね、多恵ちゃん、今度は多恵ちゃんがみんなの太陽になってくれない」

これを聞いた多恵、

「はい?私がみんなの太陽?」

と驚く。九はその多恵の様子を見つつ、話を続ける。

「私ね、雪穂先生に一緒についていこうと思うんだ。だけど、私がずっと多恵ちゃんたちの太陽であったから、私がいなくなると、太陽がいなくなって、みんな悲しんじゃうと思うんだ。だからね、多恵ちゃん、いなくなる私にかわってみんなの太陽になって!!そして、みんなを照らし続けてね。だから、お願い!!」

と、拝むように手を合わせて多恵にお願いする九。これには多恵、

「わかったわ。そんなに九がお願いするんだもん。私が九のかわりにみんなの太陽になってあげる」

と言うと、九、

「ありがとう、多恵ちゃん」

と、多恵に御礼を言った。

 

「と、いう流れがあったのです。だから、私、町長の後継者として頑張っていきたいと思います。だから、町長、私をびしばしと鍛えてください」

と、多恵が元気よく言うと、町長、

「よし、わかった。多恵殿、びしばしと鍛えてあげます」

と、答えてみせた。

 

 こうして、町長の後継者として町役場に入った多恵は「町長補佐」という役職をもらい、1年間、町長のもとで修行?を重ねてきた。

 そして、多恵が高校を卒業してから1年後、町長は多恵に町長の全権を渡して引退した。ただし、多恵は選挙権があっても、町長選に立候補できる被選挙権はないため、名目上は氷の父親である副町長が町長となり、多恵はそのまま町長補佐のままだった。しかし、実際は多恵が町長として働いていた。

 そして、多恵が町長として初めて町議会に立つ日がきた。

「多恵町長、どうぞ」

と、議長から呼ばれ壇上にのぼる多恵。そして、議長の前に立つなり、

「それではまず、最初の条例案の議決をお願いします」

と、多恵が言うと、その条例案が提示される。この案は1ヶ月かけてハッピーさんやゴンさんたち特攻野郎Sチーム、それにそのほかの議員たち、星子たちと一緒に議論を重ねてつくりあげた条例案。そして、これからの九龍町が目指す道しるべとなる条例案であった。

「「スクールアイドルのスクールアイドルによるスクールアイドルのための条例」案、「1、町は楽しく踊るスクールアイドルのために全力でスクールアイドルをサポートする。2、町は楽しく踊るスクールアイドルを育成するためのサポートを全力でする。3、…」

と、「スクールアイドルのスクールアイドルによるスクールアイドルのための条例」案、略して「スクールアイドル条例」の中身を議長が説明する。この条例案、これから先、九龍町は楽しく踊るスクールアイドルを全力をもってサポートする、また、そんなスクールアイドルを育成する、それをうたった条例案だった。この説明のあと、議長は言った。

「この条例案、賛成のものは起立を」

多恵とみんなで作った条例案、その議決が行われる。すると、議員席にいたハッピーさん、そして、ゴンさんたち特攻野郎Sチームのみんな、そのほかの議員、さらにはいつも棄権する長老議員、さらにさらに、町議会に参加している町の職員、はては見学に来ている町民たち、最後には議長までもが起立した。そして、議長は言った。

「この条例案は全会一致で可決成立しました。多恵町長、頑張りましたね。その努力が報われましたぞ」

これには多恵、

「本当にありがとうございます」

と、みんなに御礼を言った。

 

 九龍町はその後、この条例、「スクールアイドル条例」をもとにスクールアイドルのために街づくりを行った。おりしも、ラブライブ!2年連続の優勝という実績を示し、それでいって楽しく踊る九龍高校のスクールアイドルを見てからか、九龍高校のスクールアイドルになりたいと夢見る女子高生たちがどんどん入学していった。それでも定員は1学年40人ほど。それでも、楽しく踊る、そんなスクールアイドルになりたいという女子高生にとってこの学校はあこがれとなった。

 多恵は今の九龍高校の広さだとすぐにパンクすると思い、九龍高校は増築に次ぐ増築を繰り返していたが、これでもスクールアイドルの練習に支障がでると思い、あの野外ステージ横に新しい校舎を建てている。で、完成したら高校をそちらに移転させるつもりだ。で、移転で空いた今の校舎はというと、この町の記念館にするつもりだ。そこにはあの星子が編さんした学校史やこっそり星子が買っていたファッション誌やスクールアイドル雑誌、そして、ラブライブ!の優勝旗2つも展示される予定だ。なお、多恵はそれ以外にもスクールアイドルの練習しやすい環境づくりをおこなった。

 

 そして、数年の歳月がたち、ついに九龍高校の新校舎落成の日。多恵は新しくできた新校舎を眺めつつ、野外ステージのほうを見ていた。そこには九龍高校のスクールアイドルたちが楽しく歌っていた。

 実はこの野外ステージ、リゾート開発のために造ったものではなかった。それは多恵がまだ九龍高校2年のとき、町議会が空転し、九たちアイランドスターズも鹿児島県予選で苦戦したあと、多恵は町長のもとを訪ねてきて、町長にこうお願いした。

「町長、実は体育館建築予定地に野外ステージを造ってほしいのです」

「あの荒地に野外ステージだと。なんで、どうして?」

と、町長は多恵に聞きなおすと、多恵はその理由をこう答えた。

「私は野外ステージを造って、その野外ステージを九たちみたいなスクールアイドルなどを夢見る人たちが活動できる場所にしたいのです。もし、土居建設がリゾート開発から撤退しても、九たちが諦めずにスクールアイドルを続けるのであれば、きっと町にとって野外ステージは宝となるでしょう。今の財政難の土居建設にとってリゾート開発は無理かもしれません。けど、野外ステージという宝があれば、そして、九みたいなスクールアイドルなどを夢見る人たちがいれば、きっと九龍町は生き続けることができます。あと、私のせめてもの罪滅ぼしかな」

 これを見た町長はすぐに野外ステージの建設を認めた。資材は土居建設の九龍町にある資材を使った。結果、土居建設はほとんどの資材を使ってしまい、リゾート開発などにまわす資材がなくなってしまったが、それでも立派な野外ステージは完成した。

 その野外ステージはリゾート開発への抗議集会に使われそうになるも、ハッピーさんの機転で九たちアイランドスターズが出場したラブライブ!九州予選のライブビューイング会場となり、九たちの活躍により、広く住民たちはスクールアイドルを認知するようになった。

 その後、この野外ステージは多恵の希望通り、スクールアイドルのためのステージとなっていった。

「ここまでの道のりは大変だったよ。でも、それでもみんなの力でここまできたよ」

と、多恵は昔を振り返りつつも、再び野外ステージで楽しく踊るスクールアイドルたちを見ていた。

 そんなとき、

「あっ、多恵町長、お元気で。どうです、今年のスクールアイドルは。でも残念でしたね。今年のラブライブ!準優勝でしたしね」

と、ハッピーさんが多恵に挨拶しつつ、今年のラブライブ!のことを話した。今年のラブライブ!、九龍高校のスクールアイドルグループの1組が準優勝に輝いた。しかし、ほかのグループも頑張っていた。それはスクールアイドルを教えている星子自身の方針。たとえ下手でも、たとえ上手でなくても、一生懸命頑張って、一生懸命楽しみなさい、と。別に結果が悪くてもいい。ラブライブ!でいい成績を残さなくてもいい。それより、悔いを残さず、一生懸命頑張って、そして、スクールアイドルであることを一生懸命楽しんでください、と。なので、たとえ優勝できなくてもよかった。そのグループの人たちがスクールアイドルとして一生懸命楽しんでくれたらいい。そして、その準優勝は一生懸命楽しんだ結果である、と、星子はそう言っている。

 そして、その隣には、

「それでも彼女たちはスクールアイドルとして一生懸命楽しんでくれたのだから、それでいいのでは」

と、ゴンさんが口をはさむ。その横には特攻野郎Sチームの面々が勢ぞろいしている。

「ハッピーさんにゴンさんたち、こんにちは。どう、新しい校舎は」

と、多恵はハッピーさんとゴンさんたちに新しい校舎を嬉しそうに指をさしながら言うと、

「そうですねぇ、新土居建設の人たちが心を込めて造った校舎です。きっと素晴らしいスクールアイドルたちが誕生していくことでしょう」

と、ハッピーさんは新校舎を造った人たちのことを褒めていた。新土居建設、土居建設が倒産して九龍島のリゾート開発が中止になったあと、九龍島の現場事務所は閉鎖となり、そこで働いていた人たちはそのまま島で路頭にまよう寸前までいった。そこで、多恵がその人たちのために新しい建築会社、新土居建設を作り、その人たちを雇うことにした。その後、多恵は1年して高校を卒業後、町長の後継者となるために町役場にはいったことにより社長を辞めたが、新土居建設は九龍町発展のため、そして、多恵たちが進めるスクールアイドルのための施設を造り続けた。そして、その従業員が家族を町に呼んだりしたこと、そして、スクールアイドルになる娘のために家族ごと島に移住してきたこともあり、めでたく、島の人口は1000人を超えた。島の環境はスクールアイドルをのびのびと育てるのに適している、そんな移住者の声も聞かれるほどに。ちなみに、アイランドスターズファンクラブは発展して、スクールアイドル応援隊として、九龍高校のスクールアイドルたちを全面的に支援する団体として、スクールアイドルを支援する、これがスクールアイドルを目指す女子高生たちには好評だった。

 多恵はそんなハッピーさんとゴンさんたち特攻野郎Sチームを見て、町長のことを思い出していた。元町長は引退後、夢見る若者たちを応援しながら、安らかに死…。

「死んでおらん。ぴんぴんしているぞ」

と、町長、もとい、元町長、いまなおお元気で隠居生活をおくっていた。ときどき野外ステージに来てはスクールアイドルたちの元気で楽しく踊る様子を見ているという。そして、長老議員も、その後、安らかに大往…。

「わしも死んでおらぬのでな」

と、長老議員からも激しいツッコミが。長老議員、いまなお町議会でお茶を飲みながらのんびりと議員として頑張っている。延ばせ、世界最高齢議員記録、らしい。ちなみに、九たちの応援団を送ることを決めた町民総会のとき、町長を叱りつけたのは何十年ぶりらしい。長老議員は重大なときにときどき若者たちを叱りつけては道を指し示すらしい。ただ、叱りつけるのはたまたまなので、いつもはのんびりとお茶しているとのこと。本当に長老議員、ご立派です。

 こうしていくうちに野外ステージでは新校舎落成記念ライブが始まっていた。次々と登場していくスクールアイドルたちの姿を多恵は遠くから見ていると、その横から、

「どうです、私が育てたスクールアイドルたちは」

と、スクールアイドルの指導者となった星子と、

「これも私のサポートのお陰かな」

と、スクールアイドルたちをサポートしている氷、そして、

「私があの子たちの体力を鍛えているから、体力不足の生徒はいないかな」

と、体育教師になったひろ子、さらに、

「私のことも忘れないでね。栄養面についてはちゃんと計算しているから」

と、スクールアイドルが住む寮の寮母になった春が座っていた。

 さらに、

「おお、やっているね。私たちもときどき手伝っているけど、成長スピード、はやくないかな」

と、たい子、

「まだまだだね。めいみたいにまだ頑張っていないよ、あの子たち」

と、めい、そして、

「小明みたいにアクロバットできる子いるかな。いたら教えたいな」

と、小明が来ていた。3人もときどきスクールアイドルたちの練習のお手伝いをしている。

 そして、遅れて登場の、

「やあやあ、ごめん。海外ライブの準備で遅れてきてしまった。すまない」

と、レン、

「私の分析だと、今度の海外ライブの成功率は100%、いや、200%でしょう」

と、カレン、そして、

「それでも、一生懸命頑張って、一生懸命楽しむ、それが私たちバックスターのいいところでしょ」

と、ルナ。そう、ルナたちバックスターも遅れながらも来ていた。ルナたちバックスターは秋葉ドームのライブを成功させるほどの人気アイドルとなり、そして、今度自身初となる海外ライブツアーが行われるようになった。その準備のため、少し遅れての登場となった。

 が、多恵は空席の2席のほうを見る。そこには九と雪穂が座る予定だった。一応、招待状は送ったのだが、今、新しいスクールアイドルを教えているらしく、忙しくて来れないというメールが昨日届いた。

「九、そして、雪穂先生。もしかすると、ラブライブ!で敵としてあいまみえるかもしれません。それでもいいです。だって、2人とならスクールアイドルを一生懸命楽しむスクールアイドルたちを一緒になって応援してくれるでしょうね」

と、こう多恵が言うと、空に向かって大声で叫んだ。

「スクールアイドルを志すみなさん、九龍島に、九龍町にぜひお越しください。ここにはスクールアイドルになるための施設が揃っています。そして、それを応援してくれる心温かい人たちもいます。さらに、私たちは、みんなと一緒にスクールアイドルを楽しもう、というモットーのもと、スクールアイドルを楽しみながら育てようと思っております。だからこそ、のびのびとスクールアイドルとして成長していける、さらに、スクールアイドルを楽しくやっていけるとわたしたちは確信しております。スクールアイドルを目指すみなさん、ぜひ、九龍島に来てください。絶対に後悔させません。だって、スクールアイドルは一生懸命楽しむことが大事だから。そして、みんな一緒にスクールアイドルを楽しみましょう。だって、スクールアイドルはみんなと楽しむのがすべて。そして、ラブライブ!はみんなと叶える物語なんだから!!」

 

九:だからみんな~、

 

「「「「「「「「「「「「「

 一緒にスクールアイドルを、そして、ラブライブ!を楽しもう

                」」」」」」」」」」」」」

 

 

ラブライブ!Ω/UC外伝

 ラブライブ!アイランドスターズ!!スピンオフ 完

 

ラブライブ!アイランドスターズ!!

             これにて完!!

 



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