転生者との戦争 ドイツの苦痛録 (ゆっくり霊沙)
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プロローグ

頭痛でヤバい中で、精神を落ち着けるために書きました


1935年・・・ドイツ第三帝国のアドルフ・ヒトラー総統は再軍備を布告した。

 

それは異常成長するソ連への恐怖からである。

 

ソ連は自国の国民と資源を最大限に利用し、膨大な数の陸上部隊を整備し、ポーランド、バルト3国をヨーロッパ方面の対共産主義の防波堤となるように外交的圧力により社会主義国家へと変貌させ、シベリアの大開発と呼ばれる開拓及び工業地帯への成長、有力な穀物地帯を得ることに成功、ミハイル・ニコラエヴィチ・トゥハチェフスキー元帥の縦深戦術理論の確立と戦術を実行可能な戦力を確保した。

 

ヒトラー以下ナチス幹部及び軍事関係者、外務省の者達は、この事態をなんとか打開するために、第一次世界大戦の仇であるフランスや、イギリス、イタリアに急速に接近を試みるのであった。

 

「SDからの情報によりますと、現時点で欧州方面軍が約180師団、兵員は350万人を超えるとのことで、約4分の1が機械化されているとの事です。」

 

この場に居る全員はヒムラーから言われた報告を事前に知らされていたため驚きはしないが、冷や汗が全員から滲み出ていた。

 

ヒトラーは辛辣な顔をしながら聞く。

 

「将軍諸君に聞くが、現時点で何日ドイツは持つかね。」

 

「東プロイセン州は良くて3日、最悪3時間で占領される可能性があります。ポーランド方面からベルリンまでは遅滞戦術を駆使したとしても1ヶ月で占領される見込みです。全土となると1ヶ月半になるかと・・・。」

 

ブロンベルク国防大臣は軍人を代表して発言した。

 

現時点でソ連はT-34と呼ばれる最新型の戦車を大量量産しており、ドイツ国防軍はこの戦車に対抗可能な戦力を必死に探していた。

 

その事を、ヒトラーも知っており、友人のゲーリング空軍大将兼航空省にJu87シュトゥーカの量産を命令した。

 

また、ヒトラーは海軍のZ計画中止を通達し、その資材をドイツ陸軍と空軍に回すように手配したりもした。

 

ただ、それでも戦力が足りないドイツは低姿勢の外交交渉を開始していた。

 

スイスにチェコスロバキアといった中小国に銃の代理生産を頼んだり、イギリス、フランスの借金返済を遅らせてもらったりと史実では見せなかったドイツの弱さを隠す事なくさらけ出し、国防の為の力を必死に蓄えることとなった。

 

そのようなドイツの涙とプライドを嘲笑うかのごとく、Il-2と呼ばれる高性能攻撃機が量産に入った事を数日後に知ることになる。

 

「我が国の生産力ではソ連の大量に生産される兵器に対抗するために対空砲であった88mm高射砲を戦車に載せる事で対抗する事にす。」

 

ドイツ陸軍の兵器開発局はそう書類に書き込んだ。



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88mmの神話性

ドイツ機甲師団の研究をしていたハインツ・グデーリアン師団長はヒトラー及び軍の高官からソ連の機械化師団に対抗可能な戦術及び、兵器を考案せよと辞令が下っていた。

 

「奇跡的に敵戦車の設計図でわかっているが、傾斜装甲により実質装甲厚80mmだと・・・現在開発中の3号戦車や、4号戦車に搭載予定の5cm砲では正面を貫通不可能ではないか・・・。」

 

自身が構想していた3号戦車を主力に、4号戦車を火力支援車両とした構想は破綻を意味しており、攻撃計画であった電撃戦も破綻した。

 

「88mm搭載可能な車両の早期にだと・・・兵器開発局から4号戦車のシャシーに88mmを搭載した対空砲計画があったはずだ・・・それくらいしか現在のドイツには88mmを搭載できる車両はないぞ・・・。」

 

それは戦車ではなく自走砲であり、対空砲にハリボテを着けただけのものである。

 

「88mmは無理だが高貫通の対戦車砲さえできれば・・・。」

 

グデーリアンの戦車に対する熱意は75mm対戦車砲を数年早く産み出し、史実では生まれなかった3号と4号が合体した3/4号戦車が38年度より量産されることとなり、3/4号戦車にはソ連のT-34を意識して傾斜装甲を採用した戦車となる。

 

ただ、その頃にはソ連はT-34-85という改良型の中戦車や、IS戦車が量産されることとなり、グデーリアンの憂鬱は終わらないのだった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

頭を抱えていたのはグデーリアンだけではない。

 

兵站局の方でも悲鳴をあげていた。

 

平時に膨大な量の機械化兵力を動かすことを前提としているため、大量の弾薬、燃料を消費する。

 

弾薬はなんとかなるのだが、ソ連から戦略物資の輸入に制限がかけられており、史実のように戦略物資の備蓄ができていないドイツは現在の全力活動日数が4ヶ月と制限されていた。

 

つまり、4ヶ月でソ連を撃退するか、フランス、イギリス、アメリカ等の資源産出国から輸入しなければすぐさま敗北が決定するのだ。

 

この問題に政治活動を引退していた、第一次世界大戦の後方を掌握し、数年間の戦争継続を実行可能にしたヴィルヘルム・グレーナー旧参謀次長を召集した。

 

ヒトラーはグレーナーと険悪であり、政治思考も違っていたが、グレーナーもソ連の膨張に警戒し、期限付きで承諾した。

 

ただ、グレーナーは物資を効率的に運用することには長けていたが、物資を産み出せるわけもないので、最終的には外務省が再びの土下座外交を行うのであった・・・。



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スペイン内戦

スペイン内戦・・・それは第二次世界大戦の前哨戦と言われ、独ソの兵器を飛躍的に進化させた戦いである。

 

しかし、この世界のスペイン内戦は半年で終わる。

 

原因は2つ、イギリスの中立とソ連が15個機械化師団、3つの航空団(航空機300機)派兵をすぐさま行った事である。

 

この事態にフランス、ドイツ、イタリア、ポルトガルは反乱軍支援を表明したが、フランスは支援が国会を通らず、そのまま内閣不一致案で内閣が崩れたため、ドイツ、イタリア、ポルトガルだけの支援となった。

 

ドイツはヒトラーの命令で、現状主戦力として見られていた3号戦車とBf 109 Bと呼ばれる戦闘機に多数の爆撃機、2個歩兵師団を派兵したが、ソ連が持ち込んだKV-1重戦車、KV-2重戦車、T-34中戦車の猛攻により3号及び1号、2号戦車はなすすべもなく破壊され、航空機は大量のIl-2攻撃機によりBf 109で互角、爆撃機は鴨射ちのごとく撃墜されていった。

 

特に巨大で大火力のKV-2は見ただけでドイツ歩兵部隊が逃げ出すほど強力で、勇気ある兵士が巨大な砲身に向かって、手榴弾を束ねた物を投げ入れようとすると、長距離からの狙撃でたちまち蜂の巣にされた。

 

あまりの完敗ぶりにヒトラーは顔を真っ青にしたが、それ以上に軍部は真っ青になっていた。

 

歩兵戦闘でも狙撃で殺されているのに、こちらには狙撃兵がいないという現状(再軍備宣言で狙撃兵が兵科から消えたことによる弊害)

 

一応現戦力主戦力の戦車がなすすべもなく敗北した事実

 

戦闘機と攻撃機が互角ということ

 

何とかして破壊し、回収してきたKV-1戦車の残骸からのデータから見てとれるソ連の冶金技術の高さ、及び量産できる工業力

 

最新式の戦術

 

これ以外にも多数の問題、難問に軍部は頭を抱えたのだった。

 

「抜本的改革なくして防衛は不可能。」

 

結論は第一次世界大戦時代の戦術からの脱却と、下級士官、若手将校の言う軍隊の機械化、対抗できる兵器開発・・・今進めていることを早くさせることを再認知した事だった。

 

 

 

 

 

 

ヒトラーは寝室で考えていた。

 

それはヒトラーの夢についてだ。

 

偉大なドイツの復活

 

東方生存権

 

連合陣営への復讐

 

アーリア人による支配

 

欧州の覇者

 

・・・ヒトラーはそれが不可能だと今回のスペイン内戦で認知した。

 

今あるのはドイツにソ連の国旗が立たされ、ドイツ人が奴隷のように働き、人の目には希望もなく、ただただ絶望しかないような光景がヒトラーには見えた。

 

そして愛するエバがソ連兵士に乱暴にされる姿も・・・

 

「大戦終結時の荒廃を再び・・・起こさせてはならない・・・」

 

その日、ヒトラーは夢を諦めた。



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