幼馴染は赤髪ポニテっ娘 (ノブやん)
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第一話 幼馴染は赤髪ポニテっ娘

前々から白蓮可愛いなぁ…書きたいなぁ…って思ってた所にTwitterで白蓮についてのやり取りをしていたら、もう書いちゃえって感じになって書いちゃいました。




こんちは!

自分、姓は李、名は炎、字は紅水(こうすい)、真名は紅蓮(ぐれん)って言います!

ここ幽州遼西郡令支県出身の現在10歳です!

 

自分、みんなに内緒にしてたことがあるんっすよ!

 

実は……自分……転生者なんすよ!

 

いやまぁ、いきなりぶっちゃけられても「こいつ何言ってんだ?」ってなりますよね?

いや、分かってます。けど、しょうがないじゃないですか!

 

家に帰って飯食って風呂入って歯みがいて寝て目が覚めたら知らない顔の二人があって、

 

「あ、炎ちゃん目覚ましたんでちゅか~?」

「おなかちゅいてまちぇんか~?おっぱい飲みまちゅか~?」

って自分をあやしてたんだよ。

 

声出して抵抗しようとしたけど、しゃべれないし、自分の手を見たらスゲー小っちゃくて、そこで俺は赤ちゃんに戻ってる、もしかしてこれが噂の転生ってやつですかい!?

で、それからはさ、両親がいっぱい愛情を注いで育ててくれてさ、5歳の時に父親の仕事仲間がやってきて同い年の娘さんを紹介されたんだけどさ、

 

「……」

 

「紅蓮どうしたんだ?急に空を見上げて」

 

「いや……何でもない……」

 

「???」

 

俺の横にいる、可愛らしい顔立ちで赤い色の髪を後頭部で纏めたショートポニテの女の子。

みんな、その女の子の名前……公孫賛って言うからな?

紹介された時は驚いたぜ。なにせ歴史上の人物が目の前にいて、しかも女の子だったんだからな。

 

あとそれとは別に驚いたと言えば、服装のレベルが現代並って所と、野菜でジャガイモやニンジン、ピーマンなんかの、この年代では無かったはずの野菜があることだ。

そのわりには、カレーやコロッケなどが無く、料理の大半は煮物や煮っ転がしなんだよなぁ。

はぁ……カレーが食べたい……

そんなことを考えていたら

 

「ほら休憩は終わりだぞ紅蓮。畑仕事に戻るぞ」

 

そんなことを言う白蓮。

あ、白蓮って言うのは公孫賛の真名ね。

 

真名って言うのは本人が心を許した証として呼ぶことを許した名前であり、本人の許可無く“真名”で呼びかけることは、問答無用で斬られても文句は言えないほどの失礼に当たるものなんだ。

 

「しゃーねーな。さっさと終わらせるか……」

 

「ああ。頑張って終わらせよう!何、みんなでやればすぐに終わるさ」

 

「そうだな」

 

え?10歳の子供が働いてもいいのかって?

何言ってんの。この時代は子供でも働かなきゃ飯なんて食えませんぜ。

現代日本のように、学校行って、遊んで、帰ってから宿題やって、飯食うなんてやったら、捨てられっちまうよ。

働かざる者食うべからず。俺達二人は休憩後村人と一緒に畑仕事に精を出すのであった。

 

 

 

 




えー…もう一個作品さっさと書けやって気持ちは良く分かります…

ちゃんと書くからもうちょっと待って(´;ω;`)


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第二話 旅立ちへ

「ファイヤ」

 

人差し指を立てて言葉を発すると指先からライターの火より二回りくらい大きい火が現れた。それを焚き木に近づけ火をつける。

 

「まぁ、これくらいの火しか出せないけど十分だな。それに……アイス」

 

手のひらを上に向け言葉を発するとスーパーボール大の氷が現れる。

ちなみに氷は口に含みガリガリして食べました。冷てー!

 

「気の存在を父さんに教えてもらって5年。ようやくここまで出来るようになった」

 

5年前、当時5歳の俺は読み書き、武術などを両親に習っていた。

そんな日々を過ごしていたある時父さんが

 

「紅蓮。“気”と言うものを知っているか?」

 

「き?なにそれおいしいの?」

 

なぜいきなり食べ物の話をするんだこの人は?

 

「いやいや食べ物じゃなくてな……気と言うのはな……」

 

父曰く、気と言うのは誰の中にでもあるもので自強化や気弾を放つことが出来るらしい。

特に女性は男性より扱いがうまく、無意識に気を操って自強化しているらしい。

ああだから白蓮と取っ組み合いのケンカになっても負けることが多いのか。女性の体が男性に比べて早熟傾向にあるとはいえ、おかしいなと思ってたんだよなぁ。

……え?転生者のお前の方が精神年齢的には上だろって?取っ組み合いのケンカなんてするなよって?何言ってんの。精神年齢的に上だろうが下だろうが譲れないものってあるじゃん?それだよそれ。はっはっはー!

……大人げなかったね。ゴメン白蓮……俺、大人になるよ……

 

ちなみに気の扱いが男性よりウマい女性でも気弾を放つにはそれ相応の鍛錬を詰まなければ出来ないらしい。

 

父さんから気についての説明(途中、別のことを考えていたが)を受けたあと学んでみないかと言われた俺は

 

「やってみたい!」

 

と即答。気なんてロマンじゃないか!よーし俺も気弾が撃てるように頑張るぞー!

 

 

 

「……5年経っても気弾は撃てるようになってないけど、火や氷を出せるようになったんだからこれってスゲーよなぁ……おっと魚が焦げる焦げる!」

 

5年前に気の存在を教えてもらったあの日のことを思い出して感傷に浸ってあやうく魚を焦がすところだった。

焚き火で魚を焼いて食べていると

 

「おーい!紅蓮ー!どこにいるんだー?」

 

あの声は白蓮か。何か用かな?

 

「ここにいるぞー!」

 

あれ?誰かのアイデンティティーを奪った気がする?

 

「まったくここじゃ分かんないよ……っていたいた」

 

やっと俺を見つけることが出来たのであろう。俺の姿を見つけ近くまで寄ってきた。

 

「まったく探したんだぞ……」

 

「ゴメンゴメン。急に魚が食いたくなってさ」

 

あははーと笑う俺にやれやれとあきれた顔をする白蓮。お詫びに焼き魚を1匹渡しご機嫌を取る。それで機嫌が直ったのか、はふはふとおいしそうに食べる白蓮に

 

「それで、なんで俺を探してたんだ?」

 

「なんか、おじさんが話があるみたいで探しててさ。手伝ってたんだ」

 

父さんが?一体なんだろう?

 

「ならそれ食べ終わったら戻るか」

 

二人で数匹の焼き魚を食べて、火の後始末をし、村へ戻ろうとした時、

 

「そう言えば1個試してみたいのがあったんだ」

 

「ん?どうした紅蓮?」

 

「ウインド」

 

小さな声で唱えると白蓮の足元から上に向かって風が巻き起こり

 

「うわっ!急に風が下から!?きゃっ!」

 

スカートがめくれ、中に隠されていたものが姿を現し

 

「ふむ、白か……」

 

「ふむ、白か……じゃなーい!」

 

羞恥心で顔を真っ赤にして右ストレート(ギャラクティカマ◯ナム)を放って俺を殴り飛ばす白蓮。

 

「この……バカ!」

 

ふんっ!とぶっ飛ばした俺を置いて先に戻る白蓮を見て俺は

 

「ナイス……みぎ……ストレート……」

 

と褒めたたえるのであった。

 

 

 

 

 

「はぁ~えらい目にあった……」

 

「自業自得だ、バカ」

 

白蓮渾身の右ストレートのダメージが回復したあと、白蓮に追いつき一緒に村へ向かった。

小川から歩いてすぐの場所にある村へ10分くらいで着き、白蓮と別れ自宅へ。

自宅に着いた俺はそのまま父さんの部屋まで行き、

 

「父さん話があるって聞いたけど、何の話?」

 

「やっと戻ったか……まぁ、座りなさい」

 

父さんに促され机越しの真向かいに座る。

 

「紅蓮よ。お前……旅に出てみないか?」

 

「は?旅?」

 

あれ?この世界には某ポケットな怪物の世界みたいに10歳過ぎると旅に出るのが当たり前なのかな?

 

「え、何。俺、小さな怪物の主人になるために旅に出るの?」

 

「は?小さな怪物の主人?なんだそれは?そうではなくてだな、見分を広めるために大陸を見て回ってこいってことだ」

 

「あ、なーんだそう言うことか……」

 

確かに今後起こりうるであろう動乱を潜り抜けるために大陸を旅して色々とコネを作ったり、各地域を自分の目で見てくるのは大きいかもしれない……が、

 

「ねぇ父さん」

 

「なんだ?」

 

「この家にそんなお金あるの?」

 

村の中では裕福な方とはいえ、所詮田舎の弱小豪族だもんなウチ……

 

「そんなことか……心配するな。流石に路銀は自分で稼いでもらうが、出るときには馬と剣と半年分のお金くらいはお前に持たせるさ」

 

ふむ、条件はかなりいい。例えるなら、某竜の冒険譚で初期装備に銅の剣と各皮装備を持っている様なものだ。

 

「分かった。そこまで援助してくれるなら旅に出るよ。本当は前々から外を見てみたいなと思ってたからさ」

 

「ふむ、そうか」

 

俺の返事を聞いた父さんは嬉しいが寂しい、そんな感情が混じった顔をしていた。

10歳の子供に下手したら今生の別れになるかもしれない(そっちの可能性大)のだから本当は手元に置いておきたかったのだろう。

でも村の外の世界を見ることと旅で色々な経験つんで、一皮も二皮もむけて欲しいと言う願いもあるに違いない。

 

「で、出発はいつごろなの?」

 

「いや、それはお前が決めなさい」

 

「なら、1週間後にしようかな」

 

「分かった。馬とお金はこっちで準備しておく。村の人たちに旅に出ることを伝えてきなさい」

 

「うん。行ってくるよ」

 

出発日も決まり、村の人たちに旅を出ることを伝え回った。

 

1週間後、旅立ちの日。

 

「お金も持った……荷物も乗せた……あとは……うん、OKだ」

 

「紅蓮」

 

「何、父さん?」

 

「選別だ。受け取れ」

 

父さんに渡されたのは剣(形はダイの大冒険の覇者の剣)だった。

 

「マジか……振ってみてもいい?」

 

ああ。とOKが出たので鞘から抜いて2、3回振ってみると、まるで長年使っていたかのようなフィット感だった。

 

「ありがとう、父さん!……じゃあ、父さん母さん、名残惜しくなるから行くね」

 

「ええ。いってらっしゃい」

 

「ああ。いってこい」

 

「行ってきます」

 

馬に乗り、両親に見送られ村の門へ走らせる。村の人たちとは挨拶を済ませてある。

 

「そう言えば、あれから白蓮と会ってなかったな」

 

旅に出ることを白蓮に伝えに行った日、信じられないって顔して、その後泣き出しちゃってずーっと部屋に籠もったまんまだったもんな。出て行く前には一目見ておきたかったな……

門に差し掛かった所で

 

「紅蓮!」

 

白蓮が門の所にいたので、馬から下りて白蓮に近づき

 

「やっとお見送りに来てくれたか白蓮」

 

「紅蓮……」

 

「どうした白れ……ん!?」

 

「……ん」

 

何と言うことでしょう。白蓮の唇が俺の唇をふさいでいるではありませんか。

……って、こ、これは接吻!?ちゅー!?キス!?うわー柔らかい……

 

「は……初めてなんだからな!ちゃんと責任……取ってくれよ?」

 

「いや……奪ってきたのにそんなこと言う?……まぁ、ちゃんと戻ってくるわ」

 

白蓮の頭をぽんぽんと撫でてから馬に乗り、

 

「行ってくるわ」

 

「ああ。いってらっしゃい!」

 

 

 




10歳ってこんなことしたっけ?

まぁ、深夜のテンションで書いたご都合主義なので勘弁を……



感想いただけると嬉しいです!

頂けたらもう一つの作品の執筆もはかどるかも?


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第三話 とある村の3人娘

「紅蓮兄さーん。ちょっとこれ見てくれるかー?」

 

「紅蓮くーん!これとこの組み合わせなんだけどねー」

 

「紅蓮さん。組手お願いします」

 

「ちょっとまて!3人いっぺんに来られても開いてできねーよ。とりあえず家に帰ってからな」

 

畑仕事終わりの帰りに年下の女の子3人に見つかりまとわりつかれてしまった。

豫洲にある小さな村に立ち寄った俺を快く迎え入れてくれた村人たち。

この村に来て早4ケ月。置いてもらっているお礼に村人の仕事を手伝っていたら皆に気に入られてしまい、グダグダと4ケ月も住み着いてしまった。

村人が用意してくれた家に着き、荷物をおろし3人の相手をすることに。

 

「真桜、こことここの歯車がかみ合ってないぞ。こっちのやつを少し削ってみな」

 

「ホンマか!ならすぐに削ってみるわ!」

 

この関西弁をしゃべり、胸の発育が良い女の子は李典。真名は真桜。

 

「この組み合わせもいいな。あとこれも組み合わせると沙和に似合うと思う」

 

「わー!この組み合わせ、バッチリなのー!」

 

服のコーディネートを相談してきたそばかすがチャームポイントの女の子は于禁。真名は沙和。

 

「おまたせ凪。じゃあやろっか」

 

「はい!お願いします!」

 

目つきが鋭く、銀髪の長髪を後ろで三つ編みにしている真面目そうな女の子は楽進。真名は凪。

 

村の子供たちの中でも特にこの3人は俺にすごく懐いてくれている。

 

 

 

 

 

「よし、今日はこのくらいにしよう」

 

「ふー……はい。ありがとうございました」

 

日が暮れてきたためキリのいい所で組手を終え

 

「お前らー、もう日が暮れてきたから帰れよー」

 

と3人に帰るよう促すが

 

「えぇーいややー。ウチ泊まってくー」

 

「沙和も!沙和もー!」

 

と真桜と沙和が駄々をこね始めたので

 

「お前らなぁ……凪、こいつらの親を呼んで……あれ?凪?」

 

今まで横にいた凪がいない。どこ行ったのかと思いキョロキョロと周りを見渡すが姿が見えないが、かまどがある所の窓から煙が出ている。

もしかしてと思いすぐさま家の中へ入り、台所を確認すると

 

「あ、紅蓮さん。今日の晩御飯は麻婆豆腐と炒飯と青椒肉絲ですよ」

 

とエプロン姿の凪の姿があった。

 

「あの……凪?もしかしてお前も……?」

 

「はい。でも、ちゃんと両親に言ってあるので大丈夫です」

 

その言葉を聞いた俺が口をあんぐりと開けて固まっていると

 

「ウチもちゃんと両親に言ってあるで」

 

「私もお父さんとお母さんに言ってきたのー」

 

最初から仕組まれてたのね……

その後、凪が作った晩御飯を食べたあと、布団を2枚並べて左から真桜、沙和、俺、凪の順で川の字になって一緒に寝た。

一晩中3人が俺の腕を腕枕にしていたせいで朝起きた時には両手はしびれていて数刻は使い物にならなかった。

 

 

そんなこんなで2ケ月たったある日

 

「今までお世話になりました」

 

ぺこりと村長を始め村人たちに頭を下げる。

 

「別にもっと居てくれても良かったのにのぉー。誰かを嫁にもらってこの村に骨をうずめても良かったんじゃよ?」

 

え、村長さんそんなこと考えてたの?だからあんなに善くしてくれてたのか!

そんなしたたかな村長さんにおののいていると

 

「紅蓮兄ちゃん……」

 

と呼ぶ真桜と横にいる沙和と凪の姿が

 

「もう行っちゃうの……?」

 

と今にも泣きだしそうな沙和。真桜と凪は声こそ出してないが涙を流してた。

 

「……真桜、沙和、凪」

 

3人の頭を順番になでていき

 

「大丈夫。また会える。その時はどんと甘えて来い」

 

「「「うん!」」」

 

と元気よく返事をしてくれた。その後、他の子供たちや大人たちに挨拶をし、村を後にした

 

 



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第四話 漢の首都へ

村を出て2ケ月たったくらいに次の街へ着いた。その街の名は

 

「うひゃーここが洛陽かぁ……」

 

目の前に広がるは人、人、人。故郷や今まで回ってきた村などと比べると全然違う。さすが首都。

 

「お金はまだあるんだけど路銀を稼ぎたいな。都も見て回りたいし。どっかで住み込みで働かせてくれる所無いかな?」

 

まあ、そんな都合の良い話があるわけ……

 

 

「なんだ坊主?金が欲しいならウチで働いてくか?」

 

あったー!!たまたま入った飲食店のオッチャンに聞いたら雇ってくれるって!

 

「なら明日から来い。……なんだって?ここで住み込みで?ったくしょーがねーなー。その代り今から皿洗いに入れ。それが条件だ」

 

あざーす!お世話になりまーす!

それから……

 

 

「炎!皿洗い終わったら注文聞いて来い!」

 

「炎!そっち片付けたらこっちを片付けてくれ!」

 

「炎!薪が足りねぇ!薪割頼む!」

 

「どうした紅蓮。何?これを食べてみてくれ?……腹壊さねぇよな?……悪かった悪かった!食えばいいんだろ食えば!……紅蓮……これ……新商品として出していいか?」

 

「紅蓮!そっちが終わったら次はこっちを作ってくれ!俺はこっちをやるから!」

 

そんな慌ただしい日が約半年、俺が旅に出て1年が過ぎたそんなある日

 

 

「うーん……ここはどこなのかしら?」

 

「えーん!だから(ふぁん)と一緒に来ようって言ったんだもーん!」

 

「うるさい!それは言わないの!ほら探すわよ!」

 

なんだか道に迷ってしまった姉妹がケンカしてるな。

しょうがない案内してやるか。

 

「おい、そこの2人」

 

「……なによ?」

 

俺に声かけられた2人はビクッ!とした後、姉らしき方が妹らしき方を自分の背後にやり、警戒しながら返事をした。まぁ、知らないやつが声かけたら警戒するわな。

 

「いや。道に迷ってたみたいだから、案内できる所なら案内しようかと思って声をかけたんだが……」

 

「あら、そうなの?なら聞くけど、最近この辺りに珍しいものを売ってる店があるって聞いたのだけれど分かるかしら?」

 

「珍しいもの?うーん、聞いたことないなー。名前とか分かる?」

 

珍しいものなんて沢山あるからなー。せめて名前とか分かればいいんだがなぁと思っていたら背後に隠れていた妹?が

 

「えっと……“ころっけ”と“ふらいどぽてと”って言うらしいんだもん……」

 

コロッケとフライドポテトのことかよ……それなら話が早いな

 

「それなら俺が働いてる所で出してるやつだわ」

 

「あらそうなの?なら案内しなさい」

 

「分かった。着いてきな」

 

姉妹2人を働いてる食堂へ案内し、店内へ

 

「オッチャン。帰ったよー」

 

「おう遅かったな。さっそく仕込みに……」

 

「ん?どうしたの?」

 

帰ってきた俺の方を振り向いたと思ったら目を大きく開けてワナワナと振るえてるし。仕込みするんじゃないのか?

 

「ぐ、紅蓮が……紅蓮が彼女連れてきたー!」

 

「……は?」

 

「一体どうしたのさ?そんな声あげて……まぁ!」

 

「店は臨時休業だ!お祝いだ!宴会だ!」

 

「そうね!お休みにして今日はお祝いだわ!」

 

当人をほったらかしにして、騒ぎ始めるオッチャンとおばさん。いや、確かにさ女っ気無かったよ?でもそれってここで働いてたからだし、そもそも俺、まだ11歳だぞ?てか、後ろの2人も呆然としてるし、目の前の2人はお祭り状態だし……あーもう!

 

「オッチャン!おばさん!彼女じゃねーよ!客だ!客!」

 

「「はっ!……客?」」

 

「きゃーく。お客様」

 

俺の言葉を理解した2人は「なんだ……客か……」とうなだれていた。何でそんなに残念そうなんだよ……はぁ……

 

「……あなたの両親ってそそっかしいのね」

 

「いや、両親じゃなくて雇い主な。まぁ、すんげー可愛がってくれてるが……」

 

「ふーん」

 

そんなドタバタがあったが、2人を連れてきたわけを話し、それを聞いたオッチャンは

 

「よし!まかせろ!速攻で作ってやるぜ!」

 

と言葉通り速攻で作ってしまった。

 

ここで出しているフライドポテトは一般的なシューストリングポテトではなく、ナチュラルカットのポテトだ。某ハンバーガーチェーン店みたいにシューストリングにしようかと思ったが、専用の道具を準備出来なかったため、三日月形に切るだけのナチュラルカットにしたわけだ。

おっと2人の反応はっと

 

「へぇ~いもだけでこんな料理が作れるなんてね」

 

「アツアツでおいしいんだもん!」

 

とペロリと食べてしまった。

 

「そんなに美味しいか?」

 

「ええ。いつもは冷めた料理しか食べてないから、こんなアツアツのものは食べたことないわ」

 

冷めた料理って……こいつらはそんなに食べるのに困っているのか……

ふと厨房の方を見ると聞こえていたのかオッチャンとおばさんが涙を流していた。そして

 

「嬢ちゃん達……これも飲みな」

 

姉妹2人の前に出されたのはワンタンスープだった。

 

「これは?頼んでないけど?」

 

「俺達からのおごりだ。気にするな!」

 

ずずっと鼻をすすり、涙ぐむオッチャンからの差し入れ。

オッチャン……カッコいいぜ!

 

「ふぅ、ごちそうさま。……ねぇあなた」

 

「ん?どうした?」

 

「あなたの名前は?」

 

「名前?ああ、言ってなかったな。俺の名は李炎。字は紅水。真名は紅蓮だ」

 

「えっ!ちょっと、真名まで教えちゃってもいいの!?」

 

「別に問題ないよ。それより人に名乗らせておいて自分は名乗らないのか?」

 

「うっ……はぁ、そうね。ちょっと姓は言えないのだけれど名は宏。真名は空丹よ」

 

「わ、わたしも姓は言えないけど、名は協。真名は白湯だもん」

 

宏に協。なんかかすかに聞いたことあるけど、忘れちゃったな。

あ、もしかして……んなわけないか

 

「宏に協……ね『空丹』……え?」

 

何か真名っちゅーもんが途中で入ってきたが?

 

「私のことは空丹と呼びなさい」

 

「私も白湯で構わないもん」

 

「えーっと……」

 

呼ぶかどうか迷っていたが、さっさと呼べよと言う無言の圧力を感じたので

 

「空丹」

 

「はいはい」

 

「白湯」

 

「はい!」

 

「えーっと、よろしく……」

 

真名を呼んだ時の2人の笑顔は眩しかった。

が、初対面の人間に真名を預けるかふつー!真名って大事なものじゃないの?

……まぁ、2人の笑顔が見れたから深く考えないようにしよう。

 

 

 

 

空丹と白湯の2人と出会ってから半年

 

「まだー?早くしてよー」

 

「お腹すいたんだもん……」

 

「だー!忙しい時間に来て何言ってんだ2人とも!ちょっと待ってろ!今作ってるから!」

 

と姉妹は2人してほぼ毎日のように入り浸っていた。

 

 

「あ、そうだ。お前らに話があるんだった」

 

「話?珍しいわね。何よ?」

 

「実は……」

 

2人に来月くらいには洛陽を出て旅を再開することを話した。

話し終わった後

 

「そう……」

 

「やだやだ!いやだもんー!」

 

と別れの時を想像したのか嫌だと泣き出す白湯。

空丹もショックをうけているようだった

 

「……今日はもう帰るわ。ごちそうさま……」

と鳴き続ける白湯をなだめて帰って行った。

 

 

 

1ヶ月後

 

「お世話になりました」

 

ペコリとオッチャンとおばちゃんに頭を下げる。

 

「なに気にすんな……元気でな……」

 

「紅蓮ちゃんも元気でな……賊に襲われたら逃げるんだよ。作戦は命大事にだよ……」

 

おばさん……そんなこと知ってるなんてあなた……転生者かなにかですか?

 

「あの2人こなかったね~」

 

「しょうがないっすよ」

 

今日でお別れだと言うのに2人はあれから姿を見せていない。

ちゃんと今日だって伝えたはずだが……

まぁ、別れるのがつらいからこなかったのかなぁ……

 

 

「「紅蓮!」」

 

と俺を呼ぶ大きな声が

 

「空丹に白湯。お見送りに来てくれたのか。ありがとう」

 

「紅蓮……1つだけ約束して」

 

「何だ?俺に出来ることなら」

 

「私達2人に危機が訪れた時ちゃんと助けること」

 

「なんだそれ、ムチャクチャだろ……はぁ、分かった。約束する」

 

「絶対よ!」

 

「絶対だもん!」

 

「ああ。1ケ月ぶりに2人の笑顔も見れたし、もう行くわ」

 

「そういえば行先を聞いてなっかたわ」

 

「だもん……」

 

「次は涼州方面だな」

 

 

 




あれ?白蓮可愛いで始めた小説なのに現地妻を増やしてる気が……


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第五話 赤髪アホ毛の女の子

洛陽から西へ進み、函谷関、潼関を越えて現在、長安の少し前の村の宿屋に泊ってる。

洛陽を出た後も子供の一人旅というかなり珍しいことをしてる俺を襲ってきた賊は数知れず。

某竜の冒険譚に出てくる青いボディーに愛くるしい表情のゼリー状の魔物を蹂躙してレベルを上げるがごとく賊を蹴散らしてきた。

ちなみに返り討ちにした賊が持っていたものはありがたく頂戴して、商人に売って路銀に変えたよ。

宿屋で一晩休み、朝食も食べ終え、そろそろ村を出るかと思っていた所で声が聞こえてきた。

 

「そういや、あのじいさん。最近姿を見ないがどうしちまったんだ?」

 

「そう言えばそうね。恋ちゃんの姿も見てないわ」

 

「様子を見に行きたいが仕事があるしなぁ……」

 

何やら困っている様子。まぁ、見に行くだけならいいかな?

 

「オッチャン。俺が様子を見に行ってこようか?」

 

いきなり話しかけた俺にギョッと驚いたオッチャンとオバさんだったが、仕事で手が離せないため逆にお願いされた。

 

 

 

 

 

「えっと、この辺だと思うけど……」

 

オッチャンに教えてもらったあたりに着いたが小屋らしきものは見当たらないためもう少し奥を探してみると1件の小屋を発見。

 

「お!発見、発見!すみませーん!誰かいませんかー?」

 

何度か声をかけてみたけど何の反応もない。帰ろうかなと思った時、

 

「……誰?」

 

後ろから声がしたため振り返ると赤い髪に2本のアホ毛の俺と同い年くらいの女の子がいた。

 

「あ、えっと……村の宿屋のオッチャンに頼まれて、おじいさんと女の子の様子を見に来たんだけど……」

 

ここに来た理由を話すと、シュン(アホ毛も一緒に)となり

 

「……おじいちゃん……ちょっと前に死んじゃった……」

 

辛いことを聞いてしまったなと思いつつ申し訳ないが状況を把握するために色々と聞くことに。

1ヶ月前に育ての親であるおじいさんが亡くなって、村の人たちに頼ることなく1人で生き抜いてきたらしい。

色々とおじいさんがやってきたのであろう。小屋も手入れ等が出来ておらずボロボロの状態だった。

あと名前なんだけど姓は呂、名は布だって……

みなさんお気づきだろうか……この娘、呂布だって!?

おっと、やべーやべー。あまりの大物の名前を聞いて、今までの歴史の知識と現実がかなり違っていて混乱してしまったようだ。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、ちょっと混乱しただけだから……」

 

「???」

 

「えーっと……あ、俺の名前言ってなかったな。姓は李、名は炎だ。それで、今あったばかりの俺が言うのもなんだが、この家もうボロボロで危ないから住むのをあきらめて村に行った方が良いと思うんだが?」

 

自分で言っておいてあれだが、ついさっき初めて会った人にこんなこと言われて従うやつが……

 

「うん。そうする」

 

「いたー!?」

 

「???」

 

おっといきなり大声で叫んだ俺を不思議そうに見てる呂布

 

「い、いいのか?」

 

「うん。恋も……そう思うから」

 

「そっか……じゃあ必要な物を纏めて行くか」

 

コクッと頷いてくれた呂布。その後、最低限の荷物を纏めて、おじいさんの墓石に挨拶をして村へと向かうのであった。

 

『恋ちゃん!?』

 

「……おばちゃん……おじさん……」

 

呂布を宿屋に連れて行くと、おじさんとおばさんが駆け寄ってきた。

 

「今まで姿を見せなかったけど、どうしたんだい?」

 

「えっとね……」

 

呂布から事情を聞いたおじさんとおばさんは

 

「恋ちゃんさえよければおじさん達と一緒に暮らさないかい?」

 

「ここで?いいの?」

 

「おう!遠慮なんかするな!それに……ここからならおじいさんの墓にも近いからな」

 

「じゃあ……お願いします」

 

その言葉を聞いたおじさんとおばさんはすごく嬉しそうだった。

頃合いを見て

 

「それじゃあ、俺は行きますね」

 

用事も済んだので出て行こうとしたら

 

「ちょっと待て。これ駄賃だ」

 

そう言って渡されたのは1週間分くらいある食糧だった

 

「えっ!ちょっ!こんなにもいいんですか?」

 

「ああ。身しらずな俺らのために働いてくれたんだ。持ってけ」

 

「ありがとうございます!」

 

「礼を言うのはこっちよ」

 

今度こそ行こうとしたら

 

「待って……」

 

トテトテと呂布が寄ってきて

 

「ん?何?」

 

「恋」

 

「えっ?」

 

「恋って呼んで」

 

「分かった。俺は紅蓮だ」

 

「紅蓮……うん。紅蓮」

 

「恋。またな」

 

「またね紅蓮」

 

 

 



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第六話 とある街のご令嬢とメガネ娘

紅蓮 11歳の年


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恋と別れて西の都、長安へ。特に見るものはなく1週間くらい滞在して食料などを補充してから長安を立ち、天水を抜け、隴西郡へとたどり着いた。

 

「ようやく隴西郡へたどり着いたぁ……さて、今日泊まる宿を探さなきゃ……」

 

と思っていたら運よく宿自体はすぐに見つかり部屋を確保。すぐに見つかったため時間つぶしに街をぶらぶらすることに。

 

「もうすぐ冬だから冬物が結構出てるなぁ。お、これなんか温かそうだ」

 

ウィンドウショッピングをしていたら暖かそうな服を発見。一目惚れしてしまい速攻で購入。

 

「いやー、あまりこういうの買わないけどビビビッて来たから買っちゃったよ♪」

 

先ほど買った毛皮のコートを大事に抱きながらルンルン気分で街の散策を再開していると

 

「――っ!――かっ!」

 

「ん?何か聞こえたような?ちょっくら試してみるか……デビルイヤーは地獄耳~」

 

気になったので耳に気を流して聞こえやすくすると、路地裏から女の子が何か叫んでいる声が聞こえる

 

「ヤバそうだ。行くか!」

 

一刻も早く助けるために路地裏へ。

声を頼りに進んでいくとそこには、4人の男達が同い年くらいの女の子を囲んでいた。

 

「おい、オッサン達。その女の子を放してやれよ」

 

いきなり声をかけられビクッ!となるオッサン達。こんな所に人なんて来ないと思って油断してたみたいだな。

てか普通見張り役くらい置いとくだろう……

 

「あ?なんだガキじゃねーか。脅かすなよな!」

 

「ガキはさっさと家に帰ってカアチャンのおっぱいでもすっとけ」

 

『ぎゃははははっ!』

 

相手が子供だと知ったらこの態度だよ。はぁ、しょうがないけどさ。

でもイラッと来たからやるか。

下品に笑ってるオッサン達に近づき

 

「あんたらさぁ……子供だと思って甘く見すぎっ!」

 

「あん?それはどうい……げふっ!がっ!」

 

無警戒のままバカ正直に聞き返してきたヤツの腹に1発いれると膝から崩れ落ち、痛みで腹を抱えてうずくまっている所に頭に蹴りを入れて気絶させた。

一瞬で1人倒された事実を呑み込めずにポカーンとしている残りの3人もその隙にノックアウトさせていき

 

「さて、目を覚ましても逃げられないように足の骨でも折っとくかな」

 

4人の足の骨を1本ずつ折った後、女の子に声をかけたらかなりビビられた。

まぁ、目の前でなんの躊躇もなく人の足の骨を折っていくんだもんな。そりゃ、ビビるわ。

何とか少女の誤解?をとき、路地裏から表通りへと出て

 

「あの、助けていただいてありがとうございました」

 

ペコリと頭を下げてお礼を言われた

 

「いやー、間に合って良かったよ。でもなんであんな所に?」

 

「えっとそれは……」

 

少女が訳を話そうとしたその時

 

「月をどこに連れて行くつもりよっ!」

 

「え?げふっ!」

 

別の女の子の声が聞こえ、声がする方を振り向いたら目の前に靴底があり、そのまま気を失った……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「詠ちゃん」

 

「うぅ……だって……」

 

「だってじゃないよ。私を助けてくれた恩人なのにこんなことをするなんて」

 

「うぅ……」

 

助けてくれた男の子を膝枕しながら友人である詠ちゃんを叱ると言う傍から見たら変な絵になっているが、そんなことは関係ない。

 

この友人は生まれた時からずっと一緒で、私のことをすごく大事にしてくれていた。その分こうして暴走しちゃうことがあるが……

 

「董卓お嬢様!やっと見つけましたぞ。まったく目を離すとすぐ……この男の子は一体?」

 

少ししたら家で雇っている私兵の方が来てくれた。

彼は私が生まれる前から雇われている人で私に一言言おうとしたら膝枕をされている彼に気付いた。

 

「この子は私の恩人です。詠ちゃんに気絶させられてしまって。屋敷まで彼を運んでください」

 

「なんと!お嬢様と同い年くらいの子供が……分かりました。お運びいたします。お二人も一緒に屋敷へ帰りましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……見たことない部屋だ……」

 

目を覚まし上体を起こして部屋を見渡す。

家具や色々な調度品があり、どうやら自分が取った宿ではなさそうだ。

 

「えっと……確か……少女が路地裏でオッサン達に絡まれていて、少女を助けたあと表通りに戻った所で……」

 

キィ……バタンと扉が開く音がしたのでそっちの方を見ると

 

「あ、お気づきになられたんですね」

 

「良かった目を覚まして……」

 

助けた女の子ともう1人メガネをかけた女の子が部屋に入ってきた。

 

「ああ。……ここはキミの家?」

 

「はい、私の家です。助けていただきありがとうございました。それと……ほら、詠ちゃん」

 

助けた女の子に促され、メガネをかけた女の子が

 

「えっと……その……あ、あんたのことを犯人だと思って飛び蹴りをしてしまってごめんなさい……」

 

あー……飛び蹴りかぁ……そんなのくらって良く気絶だけですんだな。

 

「そうだったんだ。まぁ、どこにも異常はなさそうだし、謝ってもらったから大丈夫だよ」

 

「そ、それなら良かった……」

 

「それじゃ、目も覚めたしいつまでもここに居るわけにもいかないから宿屋に戻るね」

 

「そ、そんな!まだ助けていただいた恩を返せていません!ご迷惑でないのなら、この屋敷に泊っていてください」

 

「そ、そうよ!間違って蹴っちゃった分のお返しもしてないのに……」

 

お暇しようとしたら2人にそんなことを言われその上、ウルウルとした目で上目遣いで懇願されちゃあ

 

「えーっと……その……じゃあ、お世話になります……」

 

そりゃ折れるわね……

 

 

 



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第七話 かゆうまとぶんえんちゃんそして別れ

紅蓮12歳になる


その後、自己紹介がまだだったのでお互い自己紹介をすることに。

 

「私の名前は姓は董、名は卓、字は仲穎、真名は月といいます」

 

なん…だと…こんな可愛い娘が董卓だと……あの悪逆非道、酒池肉林の董卓がこんな可愛い娘だと……しかも真名まで預けられたんだが…

 

「月っ!真名も預けちゃうの!?ほらこいつもあまりのことに放心してるわよっ!?」

 

「へぅ……だって助けて下さったんだからこれくらいはと思って……」

 

メガネっ娘よ…別に真名のことで放心してたわけじゃないんだが……いやそれも無いと言ったら嘘になるが……

 

「はぁ……しょうがない……ボクの姓は賈、名は詡、字は文和、真名は詠よ」

 

「ふぁっ!?」

 

突然の奇声に2人とも驚いていたが、いやいやいや!

董卓に続きあの賈詡ぅ!?董卓の後は曹操、曹丕に仕えたあの賈詡ぅ!?

 

「あ、あの……」

 

「はっ!?ゴメンゴメン……」

 

「何?何か私達の名前を聞いたら驚いてたけど?」

 

「い、いやいや!いきなり真名を預けられたから戸惑っただけだから!ははは……そうだ!俺まだ自己紹介してなかったね!えーっと、姓は李、名は炎、字は紅水、真名は紅蓮だ。よろしく!」

 

まぁ、なんだかんだで自己紹介は終わった。

その後は月の父と母に挨拶。娘を助けてくれてありがとう!と力いっぱいハグされました。あー、死ぬかと思った……

晩御飯もゴチになり、その日はそのまま就寝となった。

 

翌朝

早くに目が覚めてしまった俺はやることが無かったので朝食まで屋敷内を見て回ることにした。

早くから働いてる侍女さん達と挨拶を交わしながら歩いていると、中庭から人の声が聞こえてきたため気になり中庭へ。

中庭に行くと2人の少女が打ち合いをしていた。

ガキンガキンと金属同士が当たる音を聞きつつ近くへ。

しばらく見ていると戦斧を持った子が両膝をつき、偃月刀を持った子が切っ先を目の前に突き付けて勝負あり。

2人にねぎらいの拍手を送るとその音で気づいたのかこちらを見る2人。

 

「誰だ?お前は?」

 

「あー…昨日からここで世話になってるんだ」

 

「ん?もしかして、月を助けてくれたんはアンタかいな」

 

「そうそう。あ、俺、李炎って言うんだ。しばらく厄介になるからよろしく」

 

「私は華雄だ」

 

「ウチは張遼や。よろしく」

 

この娘達が華雄と張遼か。さっきの打ち合いを見てると華雄はパワー型、張遼はテクニシャンって感じかな。

その後、ここで厄介になることになった経緯や旅をしてることなど話していたら、侍女さんに朝食の準備が出来たことを告げられ朝食へ。

月や詠と合流し、一緒に食べた。

食ってる最中に

 

「月と詠が真名許してるし、ウチの真名も預けるわ。ウチの真名は霞や」

 

「私には真名がないからそのまま華雄と呼んでくれ」

 

「分かった。俺の真名は紅蓮だ。改めてよろしく!」

 

 

朝食後、月と詠は勉強へ、霞と華雄は鍛錬へ行き、俺は腹ごなしに街を見て回ることにした。

見て回っている内に昼時になり近くの飲食店へ入りお腹を満たした後、屋敷に戻り中庭に顔を出すと華雄と霞がまだ打ち合っていた。

 

「まだやってたの?昼ご飯は?」

 

「食べた。これは午後の分だ。はぁぁぁ!」

 

俺の問いに答えてくれた華雄は気合を入れ直し霞へ仕掛けていく。

その攻撃をいなそうとしたがうまく流すことが出来ずに霞は偃月刀を落としてしまった。

 

「勝負あり。2人ともおつかれ~」

 

2人に竹で作られた水筒を渡す。

 

「んぐ…んぐ…ぷはぁー!うまい!あーあ負けてもうた…」

 

「んぐ…んぐ…今日は…んぐ…私に軍配が上がったようだな」

 

「かぁー!くやしいわぁ…お、そう言えば紅蓮はどうなん?」

 

悔しがっていたがふと興味を持ったのか俺の腕を聞いてくる霞。

 

「う~ん…どうだろ?こういうのやったことないからなぁ…」

 

ん?凪とやってたじゃないかって?あれは俺が教えて、凪が学んでたって感じだったから含まれません。

 

「じゃあ私らとやってみればいい」

 

俺の返事を待たずに華雄は素振りを始めた。

 

「そやそや。やることなくて暇やろ~。ウチらもいつも同じ相手やからたまには違うやつとやりたいわ~」

 

確かに暇だけどさ…まぁやってみるか。

 

「お、やる気になったみたいやな。そこに刃をつぶしたやつがあるからそっから自分の使いやすいもの選び」

 

霞が指を指した先には色々な武器が置いてある小屋があった。

その中に入り、自分が普段使っている両刃剣に似てるものを何本か素振りし、ある程度しっくりきたものを選び小屋を出て華雄と向かい合った。

 

「両者ええか?―――では……始めっ!」

 

霞の声と共に一気に詰め寄ってくる華雄。自分のイメージより少し早いスピードで近づき、大振りの一撃を放ってくる。

 

「おっと。さすがにそれは大振りすぎるでしょ」

 

バックステップで躱し、追撃が来ないように目で牽制する。

 

「何、これはちょっとした挨拶代りさ。ふっ!はっ!せいっ!」

 

これが華雄のスピードなのだろう。先ほどとは明らかに違うスピードで攻撃してくる。

 

(スピードは慣れてきた。次はどれだけの力なのか受け止めてみるか)

 

と思ったその時、横に薙ぎ払ってきたので受け止めてみると、

 

(やべっ!この威力じゃ押し切られる!横へ飛んで衝撃を減らさないと!)

 

剣で受け止めたわずか0コンマ何秒で今の自分では受け止められないと悟ると横へ跳び衝撃を和らげる。

 

「あぶねっ!横に飛んでなかったらやばかった…まぁそれでも、ダメージはかなり貰っちまったが」

 

「どうした紅蓮?お前はその程度か?」

 

「うっせ!今度はこちらから行かせてもらうからな!」

 

このやろ、こちらが避けることしかしてないせいか調子に乗りやがって……男舐めんな!ぜってー泣かしちゃる!

先ほどとは打って変わって自分から仕掛けていく。

 

「やっ!せいっ!とうっ!おんどりゃぁっ!」

 

華雄に反撃の隙を与えないくらいの連撃を浴びせていく。

すると華雄は

 

「この……うっとうしい!」

 

今まで防御に回っていたうっぷんを晴らすがごとく大振りの一撃を放とうと戦斧を振り上げてきたが、俺はこれを待ってた。

振り上げた隙を狙い、某竜の冒険譚の必殺技を放とうと華雄の懐に入り

 

「ギガブレイクッ!(仮)」

 

(仮)なので原作ほどの威力は無いがこの一撃をもらってしまった華雄は

 

「ぐわぁぁぁっ!」

 

と吹き飛んで行った。

が、吹き飛んで行った方向が悪かった。

武器が置いてある小屋へ飛んで行った。

 

「くっ!間に合えっ!」

 

体中の気を下半身に集め、強化して華雄を追いかける。

途中で何とか追いついたものの、目と鼻の先に小屋が。

華雄を守るように抱きしめ、全身を気で強化して激突に備えた。

ほどなくして

 

ドーン!ガラガラガッシャン!

 

 

小屋へ突っ込み、突っ込んだ衝撃で武器が色々降ってきた。

気で守ってるとは言えすごく痛い…

 

「華雄…無事?キズとかない?」

 

「ああ。お前が守ってくれたおかげでな」

 

「そっか、良かった……女の子に傷つけたらサイテーだからな……」

 

そんな言葉を聞いた華雄は耳まで真っ赤にして、あわあわしてたけどもう無理……

気が枯渇したのと体中痛いので意識が朦朧としてきた……

あ、もうダメだ……

 

 

 

 

 

 

「……知ってる天井だ」

 

「当たり前やん。何言うとんの」

 

「あれ?霞……俺は一体……」

 

「覚えとらん?手合せ中に紅蓮が華雄をぶっ飛ばして……」

 

「あー……思い出した。てかあんな事になってよく生きてるな俺……」

 

まったくやでーはははと霞は他人事のように笑ってた。

まぁ、他人事なんだけどさ……

 

「よっと……あれ?体が重い?」

 

「そりゃそうやで。5日間意識うしなっとたんやし」

 

「5日間!?」

 

そんなに寝てたのかよ!?やっぱり気が枯渇したからなのかなぁ…

 

「そならウチ、みんなに目覚ましたって知らせてくるから、これで体でも拭いといて」

 

「そうだな。大人しく体拭いてるよ」

 

霞は桶と手ぬぐいを俺に渡すとみんなを呼びに部屋を出て行った。

服を脱いで体を拭いてると

 

「紅蓮!目覚ましたのか!?……うわぁっ!?」

 

いきなり扉が開いたと思ったら華雄が入ってきて何か驚いていけどどうしたんだ?

 

「ああ。ようやくな……ってなんで顔を背けてるの?」

 

耳まで真っ赤にして顔を背けてる。

あれ?体拭いてるだけだよな?下も隠してるし?

 

「うわぁ……こんな乙女な華雄ボク初めて見たよ…」

 

「わたしも……」

 

「しゃーないって2人とも。今まで男であんなに強いやつおらへんかったし、それに……女の子扱いなんて初めて見たいやったからなぁ。ああなるのもしかたないで」

 

「なっ!ち、違うぞ!それは違うからな!?」

 

『ふ~ん』

 

「なんだその反応は!?違うと言っている!」

 

みんなで部屋に来て患者ほっぽり出してワーワーキャーキャー女子トーク?

それ、あんまりじゃないですか?

 

 

その後俺は数日かけて体内の気の回復とリハビリに努めた。

負担のないように体を動かした後はいい機会だったので月や詠と一緒の勉強に参加させてもらった。

気が回復した後は、華雄や霞と仕合した後、月や詠に合流して勉強という流れになっていた。

そして、12歳の誕生日当日……

 

「お世話になりました」

 

ペコリとおじさんとおばさんに頭を下げる。

 

「もっと居てくれても良かったんだぞ?」

 

「流石にそこまで厄介になるわけには……それにそろそろ旅も再開させなきゃですし」

 

「そうか……残念だ……」

 

このままここに残って月と結婚してもらってワシの後を継いでもらおうと思ってたのに。とかなんとか聞こえてきたけど無視した。

 

「へぅ~……寂しいです~」

 

「まったく……アンタなんかさっさと居なくなればいいんだわ……」

 

月、俺も寂しいよ……詠、キツイこと言ってるけど泣いてるのバレバレだぞ……口に出さないけど

 

「次会ったらまた手合せやろうな~」

 

「ふ、ふん。次こそは負けんからな!」

 

ああ!霞に華雄、次も負けないからな!

そして俺はみんなと別れ、荊州を目指して出発した

 

 



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第八話 女の園、水鏡女学院で将棋とオムライスを広める

紅蓮 13~15歳の出来事



「雛里ちゃん!雛里ちゃん!今日のお昼楽しみだね!」

 

「うん朱里ちゃん!だって今日は……」

 

「紅蓮(兄さん)(お兄ちゃん)のオムライス!」

 

「ほら待ちきれないよ。早く行こ!食堂に向かって全軍突撃ー!」

 

「あわわ!待ってよ朱里ちゃーん!」

 

 

 

 

 

 

 みじん切りした玉ねぎと人参とぶつ切りにした鶏肉を炒め軽く火が通ったら、生米を入れる。

 米が透明になるまで炒めたら、鶏ガラスープとすり鉢でペースト状にしたトマトと一緒にお釜へ入れて炊く。

 炊き上がったら皿に盛り、その上に半熟のオムレツをおせて食べる前にスプーンで真ん中に切れ込みを入れ左右に開いたら紅蓮特製タン◯ポオムライスのかーんせーい!

 

 それを並んでいる少女たちに渡していくが渡したはなから馬もビックリなスピードで席に着き食べ始める少女たち。

え?君達武官じゃなくて文官だよね?

 

 とまあ、月たちと別れて1年。俺は今、荊州・襄陽にある司馬徽が開く水鏡女学院(水鏡は司馬幑のペンネームみたいなもの)で用心棒(と言う名の雑用)として働いている。

襄陽に着いたその日にアホどもに絡まれていた女子生徒を助けた所に水鏡先生が登場。経緯を説明してその場を離れようとしたら、首根っこを掴まれ、引きずられるがままに女学院へと拉致されて今に至る。

 

「紅蓮兄さん!」

 

「紅蓮お兄ちゃん!」

 

鍋を振っていると幼女2人が声をかけてきた。

 

「お、朱里と雛里か。2人ともちゃんと授業受けてきたか?」

 

金髪にベレー帽をかぶった幼女の名は諸葛亮孔明。皆さんご存知の天才軍師だ。

 

もう1人の薄紫色の髪で魔女帽子をかぶった幼女の名は鳳統士元。諸葛亮と対をなす天才軍師だ。

 

 俺の問いにほっぺをリスの様にほっぺを膨らませながら(かわいい)「ちゃんと受けてます!プンプン!」と2人して抗議してきた。

悪い悪いと苦笑しながら2人にオムライスを渡すと他の娘にも負けないスピードで受け取り席へと移動していった。

 

 

 昼飯も終わり自分の部屋でくつろいでいると、

 

「紅蓮ちゃん!勝負だ!」

 

とノックもせずに入ってきたおば(ギロリ)……お姉さんの正体はこの学院の代表である水鏡先生。

その手には持ち運び可能な将棋盤と駒があった。

半年前に

「娯楽が無い……象棋(シャンチー)は良く分からないから将棋でも作ってみるか」

と言うことで作ってみた所みんなにかなり受けた。

しまいには、月に1度、先生生徒を含めた大会が行われるようになり、優勝者には1週間3食にデザートとして紅蓮特製プリンが付くことになっている。

 

「紅蓮ちゃーん。早くやろうよー」

 

 少しばかり思考の沼に浸かっていたらお姉さんがしびれを切らせてガクガクと体を揺らして抗議してきた。

 

「はいはい。ならやりますかね」

 

「わーい!」

 

 ……この人、俺より年上だよな?

十局(5勝5敗)指した所で夕食の準備の時間になったのでお開きとなった。

今日の晩飯は麻婆豆腐か。

 

 そんな日々を過ごしていたある日、いつものように水鏡先生と将棋を指していて

 

「はい、王手」

 

王手された先生はうんうんと色々打開策を考えていたが

 

「まいりました」

 

と負けを認め頭を下げたので

 

「ありがとうございました」

 

とこちらも頭を下げた。

あそこであれを取って、こう言う風に打てばとぶつぶつ言ってる先生に

 

「あ、そう言えば俺、来週にはここ、出て行きますんで」

 

その言葉を聞いた先生はピタッと固まりギギギギと顔を上げ

 

「何……言ってるの?」

 

「だから、来週にはここを出て行きますって言ったんすよ」

 

もう一度聞いて理解しようと百面相をしていたが落ち着いて理解できたらしいがいきなり涙を滝のように流しながら

 

「どどどどおじでー!なにかわだじにいだらないごどあるのー!?」

 

沢山ありますがとは言えない雰囲気なので

 

「いや、自分もう15ですよ。年頃の男が女学院にいるのはやべーでしょ。世間体的に。それに元々この年になったら故郷に戻ろうと思ってたんでちょうどいいかなーって」

 

「ううう……たしかにそうだけど……分かりました。紅蓮ちゃんの意志をそんちょーします。でも、みんなにも説明しとかなきゃだから出発は1ヶ月後にしてほしい」

 

 確かにみんなにも話してないのに1週間後は些か性急過ぎたか。みんなに説明や引き継ぎとかしなくちゃだもんな。だとすると1ヶ月後は妥当か。

 

「分かりました先生。1ヶ月後でお願いします」

 

 その日の夜に教師陣に、次の日に生徒全員に1ヶ月後にここを出ることを告げたらみんなに泣かれた。

そのことに嬉しく思いながらも引き継ぎをしていたら早々に1ヶ月が経っていた。

 別れの日、みんな総出で送り出してもらい、水鏡女学園を後にした。

 

 

 



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第九話 義妹とペットが出来る

 水鏡女学院を後にして2ヶ月。各村々や街にたちよって食料を調達し、山賊や盗賊をほふりながら北上していた。

 ある日、街道から少し離れた林の前で野宿をするために簡易的な竃を作り、鍋の中に食材とカレー粉(襄陽の街で材料を揃えて作った。高かった…)を入れ火をおこし、煮ていたが、

 

「おや?匂いにつられて寄ってきたか?賊か何か知らないが出てきたらどうだ?」

 

 後ろの気配に声をかけるとガサガサと音を立てて出てきた。

 

「あの……」

 

「ん?」

 

 賊だと思っていた所に少女の声が聞こえたので振り向くと、1人の少女と1匹のセントバーナードだった。

 

「あの……もしよろしければ、少しばかり頂けないでしょうか?」

 

 よく見るとボロボロになった服に何日もロクに食べていなかったのか少し頬こけた顔をしていた。まったく、嫌な世の中だぜ。

 

「あの……」

 

「ほら、こっちに来て食べな。そっちの犬も食え」

 

「え……あ、ありがとうございますなのです!」

 

「ワン!」

 

 少女と犬を近くに座らせ、まず胃がビックリしないように少量のスープをゆっくりと飲ませ、その次にお椀に具をたっぷり入れたものを渡した。

 疲労度、緊張感Maxだったのだろう、食べ終わった後に少女と犬はすぐに寝てしまったので、2人?(1人と1匹)をゴザの上へと運び、毛布(もどき)をかけたあと、焚き火に枝を追加し寝ずの番をするのであった。

 

 朝になり、竈に火を入れて鍋に具材を入れコトコトと煮込んでいたら少女と1匹が目を覚ました。

 

「おはよ」

 

「あ……おはようございますなのです」

 

 起きた少女と犬に朝飯の入ったお椀(中身は雑炊)を渡す。

 警戒しながら受け取ったが、食欲には勝てなかったのか食べ始めた。それを見た俺の腹も「飯寄越せ!」と鳴き始めたので食べることに。

 朝食を食べ終わった後、超簡易的な更衣室を造り、人肌くらいの温度に温めたお湯を桶に入れたものと体を拭く為の手ぬぐいを渡し、体の汚れを落とすように言い、少女を更衣室に押し込んだ。

いきなりのことに戸惑いながらも更衣室の中で汚れを落として新しい服に着替えた少女(着替えも押し込んだ時に渡しておいた。流石に下着の替えは持っていなかったが)

 

 少女が出てきた後に俺も中に入り汚れを落とした。ちなみに、下にすのこを置き、すのこの上に立ち、気で大気中の水分を集めた水の塊をシャワーの様にして頭からかぶった。

 シャワーを浴びて更衣室(仮)から出ると少女が鍋をかき混ぜていた。

 

「あ……ゴメンなさいなのです……勝手に……」

 

「いや、お昼の準備をしてくれてたんだろ?ありがとな」

 

 少女の頭をポンポンしてお礼を言う。

 鍋の中を見ると野菜とお肉が入れられていたので、米、粟、キビを入れて、雑炊風に。

 

「すまんな。朝と同じで」

 

「い、いえ!これだけ食べれるのに文句なんて無いのです!」

 

「ワン!ワン!」

 

 まあ確かに。これだけのものが食べれること自体すごいわなこの時代。

しばらくしたら雑炊が出来たのでお昼に。

お昼を食べている時にふと気が付いた。まだ自己紹介してねーじゃんって。

 

「そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺は李炎。字は紅水だ」

 

「ね、ねねは陳宮。字は公台なのですぞ。こっちは張々と言うのです」

 

「陳宮と張々はどうして林の中から出てきたんだ?親はいないのか?」

 

「―――ッ!」

 

 あ、もしかして聞いちゃいかんやつだったか?

 

「あーすまん。言いたくないなら言わんでもいいよ」

 

「あ、いえ、大丈夫なのです」

 

 あまり思い出したくないと思うのにこれまでの経緯を話してくれた。

 孤児みなしごだった陳宮。生れ育った村を言いがかり(寝泊まりしていた水車小屋が陳宮の不始末で火事になったこと。しかし本当は水車の設備不良により歯車同士の摩擦によって火が付いた)により追い出され、愛犬の張々と一緒に各地を転々としながらお金を稼いでいたが、とうとう仕事が無くなり食糧を求めて林の中を彷徨っていたら、食事の匂いにひかれてやってきた所、俺と出会ったとのことだった。

 

「そう言うことだったのか。……なあこの先行く当てはあるか?」

 

「い、いえ……ないです……」

 

 まあ、アテがあればそこにまっしぐらに行くわなぁ。

うーん。流れでここまで世話焼いちゃったからこのまま別れて野垂れ死にされるのも気分悪いしなぁ。……よし!

 

「なら、俺と一緒に来るか?」

 

「……え?」

 

「一人旅をして2ヶ月。故郷に帰るための一人旅も飽きてきてな、一緒に旅してくれると助かるんだが」

 

「えっ、えっ?いいのですか?」

 

「もちろん」

 

「あの……何も返せないですよ?」

 

「なら妹になるか?」

 

「い……妹?」

 

いきなり一緒に旅しない?と言われたと思ったら、次は妹になるか?なんてこと聞かれたから大混乱になってるだろうな(苦笑)

 

「妹になれば家族になるな。家族なら迷惑もかけることや、助けることも当たり前だよな?それに妹なら兄に迷惑をかけることは義務だ!」

 

「迷惑をかけることが義務なのですか?」

 

「ああ、義務だ」(個人的感想です)

 

 かなりの暴論だが、まあ、可愛い少女を見捨てることが出来ないって事なんだよな(苦笑)

 

「で、どうする?」

 

「い、妹になるです……」

 

「お前もそれでいいか?」

 

犬にも許可を求めると

 

「ワン!」

 

と肯定してくれたので

 

「ならこれから頼むな。我が妹……えーっと……」

 

「音々音。ねねと呼ぶです」

 

「ねねか。良い真名だな。俺は紅蓮だ。好きに呼べ」

 

「はい!これからよろしくです兄上!」

 

 兄上……そんな風に呼ばれたことなかったから新鮮だなぁ!

 

「ああ、これからもよろしく。ねね。張々」

 

こうしてかなりの急展開だったが俺に義妹が出来た。

 

 

 




かなり強引にねねを義妹に!

妹は兄に迷惑をかけるのが義務!

意味不理論ですね(^_^;)


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第十話 義妹とペットと一緒に故郷である幽州目指して北上中 ひらがなとカタカナと将棋を教える

 新しい家族の義妹のねね(陳宮)と張々(犬)が出来て早1ヶ月。今日も元気に俺の故郷である幽州・遼西郡を目指して北上していた。

 

「兄上は妖術士なのですか?」

 

「どうした?藪から棒に」

 

「いえ、何も無い所から『ふぁいや』とか『うぉーたー』とか唱えると火や水が出てくるので」

 

 確かに何も無い所から火や水が出てきたら誰だって驚くわな。自分の場合は前世の記憶があった上に気の存在を父さんから教えてもらって魔法みたいだと思って試しにやってみたら出来たからな。出来るまで数年かかったが…

 

 とりあえずねねにはこれは気の操作でやっている事だと説明。ついでに空気の中には水分が含まれていて、その水分を利用して水を出している事。

 火は形を創造したものを具現化→具現化したものに熱を加えるという工程をへてやっていると説明。

 説明を受けたねねは首をかしげて「???」となっていたので「そう言うものだと思っておいてくれ」とねねに伝えた。

 

 そんな話をした数日後の冀州の魏郡にある鄴の宿屋で書き物をしていたら

 

「兄上。何を書いておられるのですか?」

 

「んー?小説~」

 

 この旅の途中にお金の足しになればと思い短編小説を書いて書店に持ち込んだらそこの店主さんが気に入ってくれて気合い入れて写本を売ってくれたおかげで人気に火が付いたんだよな~。で、旅の途中でもちょくちょく書いて出来上がったらそこの書店に黒猫山太郎って運び屋さんに届けてもらってる。

 

「小説!?見ても良いですか!」

 

「短編ものならこっちに入ってるからそれなら良いよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 凄く嬉しそうに小説が入ってる荷物を漁るねね。あれ?ねねって文字読めるのか?と思ったが、読めないのに小説を読みたいって言わないだろうと思い直し執筆を再開した。

 

 ベッドの上にうつ伏せに寝転がり読み始めたねねだったが、

 

「あのー兄上…」

 

「ん~?どうした?」

 

「これは何て書いてあるのですか?」

 

 と聞いてきたねねが指を差していた文字は“ひらがな”だった。

あちゃー、手にとって詠んでたのはまだ下書き段階のやつだったか。ふむ…この際だからねねにもひらがなとカタカナを覚えてもらうか。

 

「ねね。それはひらがなと言う文字でもう1つこっちの形が違う字がカタカナって言うものなんだ」

 

「もしかして兄上が新しく作ったのですか!?」

 

「いやいや!これは他の国の文字でな。ちょっと習う機会があったから覚えただけだ」

 

 生前、小学校で習ったから嘘は言ってない。

 

「もし興味があるならねねも覚えてみるか?」

 

「え、良いのですか?」

 

「ああ。覚えてもらったらこっちも色々便利だからな」

 

「是非覚えたいのです!お願いします!」

 

 この日からねねにひらがなとカタカナを教える事になった。

 

 ねねにひらがなとカタカナを教える事になって1週間後の邯鄲(かんたん)の宿で小説に挟む挿し絵を描いていたら、

 

「兄上。これは何ですか?」

 

 と差し出してきたのは折り畳み式の将棋盤だった。荷物を漁っている時に見つけたらしい。

 人の荷物を漁るのが好きな娘だな…

 

「人の荷物を勝手に漁らないように」

 

「ごめんなさいなのです…兄上の荷物はおもちゃ箱のようで面白かったのでつい…」

 

 あー確かに色々入ってるからな~。

 ねねには今後気を付けるようにと注意をした後に将棋のルールと各駒の動かし方を説明。

 説明後に1局指してみる事に。結果は……

 

「圧勝!」

 

「ぐぬぬぬ~……」

 

 まぁ、水鏡女学院でやった時も開発者兼転生者の意地とプライドにかけて上位を死守してたんだから初心者のねねには負けたりしないんだよ。ハッハッハー!

 

「わふ……」

 

 うっせー。大人げないな~じゃねーんだよ張々。

 

「ねねは今日初めてやったわけだからな。勝てないのはしょうがないよ」

 

 頭をポンポンとしてあげるが余程悔しかったのか、む~と唸っている。しょうがないな~。

 

「ねね。君にはこの紙束を贈呈しよう」

 

「これは?」

 

「棋譜って言ってな。1手目から投了までの駒の動きが書いてあるんだ。水鏡女学院の時のものしか無いがこれで勉強してみな」

 

「分かったのです!今度やる時はケチョンケチョンにしてやるのです!」

 

 そんなことを言って宣戦布告したねねは早速棋譜を眺め始めた。

その後も移動や食事の時もずーっと棋譜を眺めては頭の中で色々と駒を動かしていたのだろう。

 次の街の襄国の宿屋に泊まった時

 

「くっ…負けました…」

 

「やったー!勝ったのですー!」

 

 ついにねねに負けてしまった。悔しいが喜んでるねねの姿を見ていると、まぁ良いかとなった。

 



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第十一話 知り合いのお姉さんに帰還の挨拶

 平仮名、片仮名、ついでにラッキー等の簡単な英単語(カタカナ表記)を教えつつ、将棋を指す(俺の勝率は8割くらい)生活をしながら北上していたらいつの間にか幽州・涿郡についていた。

 

 宿で体を休めた次の日。とある方の所へ行く準備をしていたら、

 

「あれ?どこかに出掛けるのですか?ねねも行きます!」

 

「ワフッ!」

 

 と言う事で2人と1匹で屋台巡りをしながら目的地まで行くことに。

 

 目的地である家に着き、家の前で掃除をしていたお手伝いさんに声をかけ家主に取り次いでもらい少し待って中へ居れてもらった。

 

 家主がいる扉の前まで案内してもらい扉をノックすると、「どうぞ~」と久しぶりに聞く女性の声が中から聞こえたので「失礼します」の言葉と共に扉を開け中へ入ると、笑顔で迎えてくれる女性がいた。

 

「お帰りなさい。紅蓮ちゃん」

 

「ただいま。ふー姉」

 

 笑顔で俺を迎えてくれた人は盧植。あの劉備や公孫瓚の私塾時代の先生として有名な人だ。

 

 この人との出会いは5歳の時。父の知り合いだった彼女が俺と白蓮の家庭教師として雇われた時だった。

 その後、俺が10歳で旅に出る少し前に他の仕事の都合で涿郡に帰った。

 その後、少ししてこの家に来て直接旅に出るって報告をしたのが最後だったから5年ぶりくらいの再開だ。

 

「早速、旅の話を聞きたい所だけど…隣にいる可愛い子を紹介してほしいわ」

 

「ああ、この子は陳宮。ここに来る途中で出会った、俺の義妹だよ。ねね、この人は俺の実の姉みたいな人だから自己紹介しな」

 

「は、はい!陳宮と言います!真名は音々音と言います!ねねと呼んで下さい!」

 

「ふふふ、ありがとう。私は盧植。真名は風鈴よ。紅蓮ちゃんのお姉ちゃんみたいな物だからねねちゃんも私の義妹ね。よろしくね」

 

自己紹介を終えたふー姉がパチンと片目ウインクした為、ねねの顔が真っ赤になって「よろしくお願いしましゅ…」だって。はぁ~可愛いすぎだわこの義妹。

 

 2人の自己紹介を終えた後は、俺の旅の話で盛り上がった。

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎて、夕方になった為、宿へ戻る事にした。

 

「ふー姉、宿に戻るよ」

 

「あら、もう夕方なのね。残念だけど私もこの後人と合う約束してるからここでお開きね。あ、そうだ。紅蓮ちゃんへの手紙を預かってたんだわ。はい、おじさまからよ」

 

 手紙と言っても竹で出来た竹簡を渡され早速中を読むとこんなことが書いてあった。

 

 『早く新しく家族になった我々の可愛い義娘を見せに来るように』

 

 え?ねねを早く見せろだけ?可愛い息子には何もなし!?まあ、いいや。色々と思うこともあるけど冬になる前にさっさと帰るか。

 

 ふー姉の家を後にし、宿に戻り1泊した。

 

「さあ!懐かしいの我が故郷の村に帰りま「あ、紅蓮ちゃん。おじさま、遼西郡の太守になってて今は陽楽(遼西郡の県長所在地みたいなもの)にいるわよ」…え?」

 

 出来るだけ早く出発しようと夜が明けて少したったくらい(朝5時くらい)に宿を出た所で上記の言葉でテンションを上げようとした所に、ふー姉から横やりが入ってその言葉に驚愕した。

 行政の単位は大きい方から州→郡→県となっていて、刺史(牧)→太守→県長(県令)と呼ばれるので親父殿は中々にお偉い立場になっていた。

 小1時間ほどその場で固まっていた俺をねねがドロップキックをかまして我に返ったのちに陽楽に向けて歩きだした。

 

 ちなみに、ふー姉があの場所にいたのは仕事に行く前に俺とねねに挨拶しに来たらしい。

 俺が小1時間固まってる間にねねとお茶してきたと満足げだった。



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第十二話 親子の再開

無茶苦茶久しぶりの投稿


「わしゃわしゃ~♪」

 

「わしゃわしゃ~♪」

 

「わふ~ん♪」

 

 陽楽に向かう途中、涿郡でふー姉と会った(帰還報告後の)帰り道に買った大きな樽の底に少し傾斜を付け、水を抜くための横穴を開け、栓を付けた樽に気で暖めたお湯を張り(気が異世界モノの魔法と化してるんだが、あまり考えないでおこう)、涿郡の宿屋でDIYした、足の高さを調節して沈めた時に水平になるようにした円形の竹製の簀の子を沈めたお風呂に、ねねと張々と一緒に入り俺はねねの頭を、ねねは張々の体を泡々になって洗っていた。

 ちゃんとお風呂用に買った天幕の中でだから覗かれる心配はナッシング。

 ちなみに、馬と荷車は涿郡に着く前に購入している。

 

「女の子なんだから、ちゃんと髪の手入れもしないとな」

 

 お風呂上がりに椿油を使って、ねねの髪の毛の手入れをする。

 

「ぶー。髪の毛なんかどうでも良いのです~」

 

 と、ぶー垂れているねねの声を無視してお湯を張った桶に椿油3~4滴入れ、よくかき混ぜた後、お湯を手ですくって髪の毛に少しずつ馴染ませていき、最後は気を使って操作した温風(ドライヤーがわり)を当てて髪を乾かしていく。

 お風呂に入った後は晩御飯を食べ、就寝用の天幕の中で寝た。

 

 道中何事もなく、冬になる前に陽楽へ到着。

 

 宿を先に確保してから、父さんの居る城へ。

 怪しまれたが、念のためとお願いして門番さんが渋々取り次ぎしてくれた。

 門に背を預け、その場に胡座(あぐら)の姿勢で座り込むと、ねねが組んだ足の上に乗ってきた。

 

 「時間かかりますね~」

 

 「しょうがないよ~」

 

 そんなやり取りをした後に、しりとりをしながら時間を潰していると、取り次ぎに行ってた門番さんが慌てた様子で帰ってきて

 

 「も、申し訳ありません李炎様!お待たせいたしました!」

 

 「いえいえ。それが貴方の仕事なんですから、気にしないで下さい」

 

 「はっ!お気遣いありがとうございます!では、私の後に着いてきて下さい。案内をさせて頂きます」

 

 部屋の前まで案内され、扉をノックして「父さん帰ったぞ~」と言うと中から「お~う。入ってこーい」との返事が返ってきた為、中へ。

 

「ただいま」

 

「おう。おかえり。で、そしてそっちが?」

 

「は、はじめまして!陳宮といいますです!真名は音々音です!」

 

「で、こっちのワンコが張々」

 

「ワン!」

 

 自己紹介後俺は旅での出来事、ねねを拾った理由等を語り、父さんからは俺が旅に出た後の事を教えてもらった。

 まあ、遼西郡令支県の中でも弱小豪族だったが政治的な理由で他の豪族が消される→父さんがその土地を吸収→また他の豪族が消される→父さんが土地を吸収

…を繰り返してたらしい。

 これ、白蓮の親父さんも絡んでるよな。

 まあ、味方は多い方が良いのは間違いないし弱肉強食だから仕方ないね。

 

 互いに近況報告し終わった後、適当に仕事を片付けた父さんと共にお城の近くにある家へ行き母さんに会った。

 母さんにもねねを紹介した後、家族そろって夕食を食べ、俺が樽で作った風呂で汗を流して就寝した。

 ちなみに、ねねは母さんに拉致られ一緒に寝室へ。父さんは張々と共に飲み明かしていた。張々…お前、酒飲めたのかよ。

 しかも、お座りの体勢で右前足でコップ持ってイッキしてた風に見えたけど…まあ、見間違いだな。うん。




ワンコがお酒飲んでるって書いてあるけど、これは小説です。
ご都合主義と言うやつです。

現実では絶対にやらないようにしてください。


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