Pチャンに構ってもらいたいシリーズ (篠崎レニア)
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天然シンデレラ 十時愛梨

「ねぇ……プロデューサーさぁん……」

 

「ん……?どうした?」

 

「……愛梨……もう、我慢出来ないんですっ……」

 

「我慢……?ていうか……な、何をやってるんだよっ!」

 

「はぁはぁ……体がとても、暑いんですっ……だからぁ……脱いでも……いいですよねぇ……?//」

 

「……」ビシッ

 

「きゃあんっ!いたぁ〜い……急に、何をするんですか〜……」

 

「おい、愛梨。お前は今、何をしようとしてるんだ?」

 

「何って……暑いから、脱ごうとしたんですけどぉ……?」

 

「あのなぁ……愛梨は、女の子なんだぞ?俺だからいいけど、これが変な人とかだったら、どうするんだ?」

 

「え〜……そんな、あちらこちらで脱ごうとなんて、してませんよぉ〜……」

 

「お前、前にスタジオで、収録が終わった後に暑いって言って、脱ごうとしたよな?」

 

「うっ……」

 

「ビーチでのロケ終わりに、上着と間違えて水着を脱ごうとしたことがあったよな?」

 

「うぅっ……」

 

「全く……愛梨は年頃の女の子なんだから、もっと、恥じらいを持つとかだな……」

 

「ま、待ってくださいよぉ!愛梨はそんなに、いやらしい子じゃないですよぉ〜!」

 

「嘘つけ!あの時、ギャラリーの中に怪しい視線で、愛梨のことを見てた人がいたんだぞ!わかってるのか!」

 

「私が暑がりだってことは、ファンのみなさんは知ってるはずですので、大丈夫だと思いますっ!それに……」

 

「……プロデューサーさんが一緒にいてくれるから……つい、安心しちゃうのかなぁ〜……なんてぇ……//」

 

「信頼してくれるのもいいけど、でも、少しはアイドルとして、しっかり自覚を持つこと。いいな?」

 

「えへへ……はぁ〜い♪」

 

「ふぅ……愛梨は隙が多すぎるから、いつか変なことに巻き込まれてしまわないか、心配になっちゃうぜ……」

 

「大丈夫ですよぉ♪私たちは、心も体も常に通じ合っていますし……いつも、隣にいてくれますよねっ?」

 

「まあ、一緒にシンデレラのお城を目指してるし……って!心はわかるけど、次はどういうことだよっ!//」

 

「さぁ……どういうことでしょう……♪では……今から、確かめて……」

 

ガチャッ

 

「フフ……お、おはよう……」

 

「……っ!し、輝子……!」

 

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「……フ、フヒヒ……ヒャーッハァァア!テメェらァァ!朝から何、イチャついてやがるんダァァアッ!!」

 

「ちょっ……!イチャついてなんかねぇって!少し落ち着けっ!」

 

「リア充なんか、爆発……むしろ……私が焼き払ってやるゼェェェ!ヘルファイアァァァ!!」

 

「おはよう輝子ちゃん。違うよ、プロデューサーさんとは、お友達なんだよ」

 

「えっ……と、トモダチ……?」

 

「うんっ♪輝子ちゃんも、プロデューサーさんも、私も、キノコも、み〜んな、お友達だよ♪ね〜っ♪」

 

「そうだね……私はもう、ぼっちじゃなくて、ブナシメジみたいに、たくさんのトモダチがいるんだよな……」

 

「うんうん♪じゃあ、歌おうか♪き〜のこ♪き〜のこっ♪」

 

「……き、き〜のこ……き〜のこっ……」

 

「き〜のこ♪き〜のこっ♪」

 

「……き〜のこ……き〜のこっ……」

 

「……お〜い。盛り上がってるところ悪いけど、何か忘れてないか〜……?」

 

「えっ、何かありましたっけ〜?」

 

「全く……俺たちはこれから公園に、ロケの下見に行くんだろ?」

 

「あっ……そうだったね……秋の公園は、トモダチがたくさんいるから……嬉しい……♪」

 

「ま、建前上は下見だけどほぼ、公園を散策するようなものだけどな。せっかくだし、楽しもうぜ」

 

「そうですねぇ〜♪みんなで公園を散策するなんて、楽しみだなぁ〜♪」

 

「……あれ?でも……歌鈴ちゃんと、翠さんの姿が見えないけど……確か、収録が一緒だったよね……?」

 

「二人は、先に用事があるそうだから、現地集合にしてもらったんだ。だから、あとで合流だ」

 

「成る程……現地集合なんだね……納得したよ……」

 

「よし、輝子も愛梨もそろそろ準備してくれ、二人を待たせちゃ、悪いからな」

 

「フヒ……了解……」

 

「は〜い♪ところで、プロデューサーさん。さっきのこと……どう思いますかぁ?」

 

「ん?さっき……?何のことだよ?」

 

「うふふ…♪……愛梨との……「相性」の、ことですっ……♪」

 

タプンッ♪

 

「なっ……!ば、バカなことを言ってないで、とっとと準備しろっ!全く……!//」

 

「あんっ、プロデューサーさんてば……いぢわるです……」

 

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「わぁ〜♪紅葉がすっご〜く、綺麗です〜♪」

 

「フフ……キノコがたくさん……トモダチがいっぱい……♪」

 

「すっかり秋だよな。いい景色だ」

 

「それで……歌鈴ちゃんと翠ちゃんとはどこで、待ち合わせをしてるんですかぁ?」

 

「あぁ。確かここら辺でって、話をしたんだが……」

 

「……あ〜♪プロデューサーさ〜ん♪」

 

「お待ちしてましたよ。みなさん」

 

「おっ、噂をすれば……お〜い!かり〜ん、翠〜、こっちだ〜!」

 

「はぁ〜い♪今、行きま〜すっ♪」

 

「ははっ、そんなに慌てるなって〜。ゆっくり来いよ〜」

 

「いえいえ♪すぐに、そっちに行きま……きゃっ!すべ……ひゃあああっ!?」

 

「……っ!歌鈴!!」

 

ギュッ

 

「あっ……//」

 

「おい……大丈夫か……?全く……だから、言っただろ?ゆっくり来いって……」

 

「す、すみません〜……と、ところで……プロデューサーさんって、あのっ……その……」

 

「?」

 

「と、とと……とても暖かくて……逞し……あっ……や、やっぱり、忘れてくださいっ!//」

 

「うわっ……!?おい!だから、少し落ち着けって!」

 

「……ひゃあん!うぅ〜……いったぁ〜い……」

 

「か、歌鈴ちゃん、大丈夫ですか……!?」

 

「ほれ……言わんこっちゃない……ほら、手を貸してやるから、起きろ……」

 

ピラッ

 

「……っ!//」

 

「あぅ〜……ん?プロデューサーさん、どうかしましたか……?」

 

「……い、いや……その……スカートが……//」

 

「スカート……ひゃわっ!?//」

 

「……むっ」

 

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「ううっ……あ、あの……見ちゃいました……?//」

 

「い、いや!俺は何も、見てないぞっ!//」

 

「……さっき……少しだけ、目線が下に……向いてませんでしたかぁ……?」

 

「なっ、何を言ってるんだ愛梨!俺は本当に、何も見てないんだって!」

 

「と、とりあえず、救急車を呼びましょう!ええっと……110番を……」

 

「……フフ……み、翠さん……110番だと……プロデューサーが、逮捕されちゃいますよ……」

 

「逮捕……あっ、これは警察でしたか!では、改めて救急車の方を呼んで……」

 

「おい!お前たちまで、変なことを言うな!と、とにかくほらっ!手を貸すから起きろっ!」

 

「あっ……ありがとうございますっ……!」

 

「ふぅ……それで、どこか怪我とかはしてないか?」

 

「はいっ♪大丈夫です♪」

 

「ならよかった。よし!この件はもう終わり!改めて、俺たちで散策を楽しもうぜ」

 

「そうですね♪楽しみましょうっ♪」

 

「……あ〜……何だか……暑くなってきました〜。脱いじゃおっかなぁ〜?」

 

「……」チラッ

 

「うふふ……♪それでは、さっそく……きゃ……!」

 

「おっと。全く……筋金入りだな、歌鈴は。気をつけてくれよ……?」

 

「あうぅ……す、すみませんっ……でも……プロデューサーさんの手……とても暖かいですっ♪えへへ……♪//」

 

「……む〜っ」プクッ

 

「平坦な道で、何回も……歌鈴ちゃん……恐るべしですね……」

 

「そうですね……このシイタケクンも、すごい……心配してますよ……フヒ……」

 

「……プロデューサーさんの……おばか……」

 

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「ねぇ、輝子ちゃん。このキノコは、なんて言う名前なんですかぁ?」

 

「あっ……これはね……チチアワタケって、言うんだ……」

 

「へぇ〜「チチ」アワタケって言うんだ〜。何だか、かわいいキノコだねぇ〜♪」

 

タプンッ♪

 

「フ、フヒ……愛梨ちゃんは、チチアワタケが似合いそうだけど……でも、毒を持ってるから……要注意……」

 

「え〜っ、こんなにかわいいのに……見かけによりませんねぇ〜……」

 

「輝子ちゃん。こっちのキノコは、何て言うんですか?」

 

「それはですね……ベニテングダケって言うんです。でも……それも毒があるから……注意してください……」

 

「成る程、毒があるんですか!でも、美味しそうですよね。味は一体、どんな味がするんですか?」

 

「……フ、フヒヒ……翠さんは最高にロックですね……赤い帽子の配管工も、びっくりしてるよ……」

 

「でも……このキノコの毒は、強い旨味成分でもあるんです。だから……少しだけなら美味しいかも……フヒ」

 

「そうなんですかっ……♪では、ちょっとだけ味見を……」

 

「ちょ〜っと、待った!」

 

「わわっ!ぷ、プロデューサーさん!?」

 

「おい、翠。輝子の話を聞いてなかったのか?それ「毒」キノコなんだぞ?」

 

「あっ……そうでしたね……つい、美味しいと聞いたので、そっちばかりに目がいってしまって……」

 

「全く……翠は意外と、ゆかりみたいに天然だからな……目が離せないぜ……」

 

「ううっ……別に、私は天然などでは……//」

 

「それより、どうだ輝子。散策は楽しんでるか?」

 

「うん……おかげさまで、楽しんでるよ……」

 

「それはよかった。でも、悪いな。天然な二人の相手は、大変だっただろ?」

 

「ううん……そんなことはないよ……キノコに興味を持ってくれるのは、嬉しいし……それに……」

 

「みんな、キノコの次に……いや、キノコと同じぐらい大切なトモダチだし……特に「シンユウ」は……//」

 

「シンユウ……?」

 

「こ、こっちの話……ところで、プロデューサーもさ……その……キノコとか、興味ある……?」

 

「ん?そうだな。輝子のおかげで、食事にキノコが出るたびに、調べてしまうぐらいには興味を持ったぞ」

 

「そ、そうか……もし、よかったらさ……公園に生えてる、色々なキノコのことを……教えようか……?」

 

「おっ、そうだな。せっかくだし、教えてもらってもいいか?」

 

「フフ……わかった……じゃあ、行こうか……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ〜、輝子ちゃ〜ん。こっちのキノコは、何て言うの……」

 

「こ、このキノコはな……とても……美味しいんだぞ……♪」

 

「おお、そうなのか。流石は輝子だ」

 

「フ、フヒ……そんなことはないよ……私は、ただ……トモダチを紹介してるだけだから……」

 

「何だか輝子の楽しそうな姿を見てると、俺もキノコのことが、輝子と同じぐらい好きになりそうだ」

 

「えっ……わ、私と……!?//」

 

「あぁ。女の子の楽しそうな笑顔って、見てて気持ちいいしな」

 

「う、うぅ〜……また……そういうことを、平気で……い、イジワルだな……プロデューサーは……//」

 

「ははっ、イジワルってなんだよ。輝子だって、ファンの人が楽しそうにしてくれてたら、嬉しいだろ?」

 

「それは……そうだけど……//」

 

「だから、俺にもっと、輝子とキノコのことを教えて欲しいな。あ、ちなみに、このキノコは何て言うんだ?」

 

「え、えっと……これはね……」

 

ピトッ♪

 

「あっ……わ、悪いっ……!//」

 

「う、ううん……私の方こそ……ごめんっ……//」

 

「「……//」」

 

「……むう〜っ」プクッ

 

「その……輝子の手に、触れるつもりはなかったんだ。俺はただ、キノコを触ろうと思っただけで……//」

 

「い、いや……気にしないでくれ……むしろ、プロデューサーの手って、その……と、とても温かくて……」

 

「?」

 

「……ふ、フヒ……フヒヒ……ヒャッハァァァァア!もう耐えられネエエエエッ!!」

 

「うわっ……!?し、輝子……!?」

 

「口から……いや……全身から砂糖が吹き出そうなぐらい、甘ったるいゼエエエエッ!!」

 

「ここでシャウトはまずいって!とりあえず落ち着け!おいっ!」

 

「こんな甘ったるさは、地獄の激辛デスソースで、ゴォトゥヘェルしてやるゼェ!ヒャッハアアアアッ!!」

 

「プロデューサーさ〜んっ♪あっちの方に、綺麗なお花がありましたので、一緒に……ひゃああああ!?」

 

「毒があるけど美味しい、美味しいけど毒がある……どっちなんでしょう?でも、毒は怖いし……う〜ん……」

 

「くっ……楽しかったはずの、秋の散策が一瞬で……地獄絵図にっ……!」

 

「……」

 

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「よし。日が落ちてきたし……そろそろ、解散にしようか」

 

「そうですね。今日はありがとうございました♪」

 

「フヒ……ありがとう、プロデューサー……美味しいものまで、ご馳走になっちゃって……」

 

「気にしないでくれ。食欲の秋だしな。どうだった?今日は楽しめたか?」

 

「はいっ♪栗の入ったぜんざい……とっても、美味しかったです♪」

 

「ははっ、そうか。翠が言うなら、間違いないな」

 

「そうですねぇ♪食べてる時の翠ちゃん……と〜っても、幸せそうでしたぁ〜……♪」

 

「えっ……そうですか……?」

 

「だな。なんなら、散策してる時よりかイキイキしてたもんな、翠は」

 

「ええっ……!?そ、そんなことは……ただ……みなさんとの食事が楽しくて、つい……//」

 

「まあいいじゃん。あの時の翠、すごくかわいかったしさ」

 

「……か、かわいいって……また、そのようなことを……うぅ……恥ずかしいですっ……//」

 

「私も……今日は、色々とありがとうございました。ご馳走をしてもらったり、助けてもらったりもして……」

 

「そうだな。歌鈴にはもう少し、気を付けてもらわないとな」

 

「ううっ……」

 

「でも、むしろそういうところも、歌鈴のいいところだと俺は思うぞ」

 

「えっ……いいところ、ですか……?」

 

「うん。確かに危なっかしいけど、そこが庇護欲をくすぐると言うか、見守ってあげたくなるって言うかさ」

 

「実際、ファンの人からもそういう声が多いって聞くし、歌鈴の、一つのアピールポイントなんじゃないか?」

 

「そ、そうなんですか……?何だか、少し……照れてしまいますね……//」

 

「だから、これからもよろしく。一緒にシンデレラの城に行こうぜ」

 

「は、はいっ……♪よろしくお願いしますっ……♪//」

 

「よし、その意気だ。ところで……確か、三人は女子寮だったよな?」

 

「はいっ♪私たち三人は、女子寮ですっ♪」

 

「それじゃあ俺は、愛梨を家まで送っていくよ。じゃあ愛梨。俺たちも、そろそろ行こうか」

 

「は〜いっ♪みんな、今日はありがとうございました♪また会いましょうね〜♪」

 

「それでは二人とも、気をつけてくださいね。また会いましょう」

 

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「ふぅ。今日はみんなで、秋の公園を散策出来てよかったな」

 

「……そうですねぇ……」

 

「一時はどうなるかと思ったけど、何だかんだで楽しかったよ。愛梨もそう思うだろ?」

 

「……むぅっ……確かに、楽しかったですけど……今日は全然……愛梨に、構ってくれませんでした……」

 

「えっ……?いや、そんなことは無いと思うぞ?」

 

「あるんですっ。では、今日……どれだけ愛梨と、お話をしてくれましたか……?」

 

「それは……三人よりか少しだけ、短かった程度じゃないか……?」

 

「ほら、やっぱり……いぢわるですっ……」

 

「悪気はなかったんだって。謝るから許してくれよ、なっ?」

 

「……本当に……反省してますか……?」

 

「あぁ。ごめんよ、愛梨」

 

「じゃあ、明日……愛梨に付き合ってくれますかぁ……?」

 

「ん……?急に、どうしたんだよ?」

 

「少し、付き合ってもらいたいところがあるんです。ダメでしょうか……?」

 

「明日は……うん。特に用事はないし、大丈夫だぞ」

 

「そうですか……♪それでは、明日は愛梨とずっと一緒に、いてくださいねっ♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!お、おい!急に、くっついて来るなっ!//」

 

「ふ〜んだ。散々、愛梨を放置したんですから、これぐらい、いいじゃないですかぁ♪」

 

「わかった!わかったからとりあえず、一旦離れろっ!//」

 

「いやで〜す♪送るって言ってくれたんですから、お家に着くまで離れませ〜んっ♪」

 

「くうっ……!//」

 

「うふふっ♪明日は楽しみですねぇ〜♪」

 

「……全く……本当に、何なんだよっ……//」

 

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「さぁ〜♪プロデューサーさ〜んっ♪着きましたよぉ〜♪」

 

「ここは……図書館か……?」

 

「はいっ♪今日は、本を一緒に探してもらいますっ♪」

 

「付き合って欲しいって言うから、付いてきてみたけど……珍しいな。愛梨が図書館だなんて」

 

「あっ!ひど〜い!私だって大学生なんですから、本を借りに来る時はありますよぉっ!」

 

「ははっ、そうだったな。じゃあ今日は、勉強するために本を借りに来たのか?」

 

「違います。今日は、お菓子のレシピ本を借りに来たのです」

 

「あぁ、愛梨って、お菓子作りが好きだったよな。前にもらったアップルパイも、すごい美味しかったっけ」

 

「えへへ♪アップルパイは得意なんですよ♪アイドルのみんなもすごい喜んでくれて、嬉しかったですっ♪」

 

「でもさ、何で俺のだけハート型だったんだ?いや、別に、悪いって言ってるわけじゃないんだぞ?」

 

「そ、それは……え〜っと……愛のカタチ、かも……なんちゃって……♪//」

 

「そうか、たまたまもらったのが、ハート型だったんだな。他にも、色々な形のがあったしな」

 

「むぅっ……また、そういうことを言うんですからっ……でも、いいですっ」

 

「昨日は、構ってくれなかった分……今日は愛梨にずっと、付き合ってもらいますからねっ……♪」

 

「まあ、お手柔らかに頼むぞ……?」

 

「……あっ……プロデューサーさんと、愛梨さん……」

 

「ん……?おっ、文香じゃないか。こんにちは」

 

「あ〜っ♪文香さんだ〜♪こんにちはっ♪」

 

「こんにちは……♪本日は、お二人で……どうしたのですか……?」

 

「あぁ。ちょっと、図書館に用があってな。文香もこれから、図書館に行くのか?」

 

「はい……休暇をいただけましたので……あの……何か、お探しのものでも……?」

 

「え〜っとですね〜。お菓子のレシピ本を、探しに来たんですっ♪」

 

「レシピ本ですか……よかったら、私が案内しましょうか……?結構来ているので、お力になれるかと……」

 

「本当!?ありがとうっ♪文香さんっ♪」

 

「いいのか?ありがとう、文香。悪いな、貴重なオフなのに」

 

「いえいえ。お気になさらないでください……それに、これも……運命の巡り合わせだと思いますので……//」

 

「えっ、運命……?」

 

「……少々、喋りすぎてしまいましたね……それでは、行きましょう……」

 

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「……ここが……お料理の本の、コーナーです……」

 

「おぉ。お菓子どころか、色々な料理のレシピ本があるな」

 

「わぁ〜!すっご〜い♪それじゃあ、ちょっと行ってきま〜す♪」

 

「うふふ……♪美味しいお菓子が、作れるといいですね……♪愛梨さんのお菓子は、とても美味しいので……♪」

 

「そうだな。案内してくれてありがとう、文香。あとは自由にしてくれ」

 

「……実を言うとですね……私も……お料理の本を、探しに来たんです……」

 

「おっ、そうだったんだな。文香って、料理が得意なのか?」

 

「いえ……アイドルになる前は、本の虫と言いますか……正直、お料理とは無縁の生活を送ってきました……」

 

「ですが、今の私はアイドル……世の中は諸行無常……世界は常に、変化をし続けているのです……」

 

「それで……身近なことから変わっていきたいと、思い立ったのがお料理だった、というわけなんです……」

 

「おぉ……何だか、深いな……流石は文香だ」

 

「あの……もしよかったら今度、味見をしてもらえませんか……?いまいち、自信がなくて……」

 

「え?俺なんかでいいのか?」

 

「はい……挑戦したいという、意欲が湧いたのも……プロデューサーさんの、おかげですので……♪//」

 

「俺の……?いや、それは文香自身の、意思のおかげだと思うぞ?もっと、自信を持てって」

 

「いえ……その……プロデューサーさんと、一緒にいると……勇気をもらえると言いますか……つまり……//」

 

「プロデューサーさぁ〜ん!来てくださぁ〜い!!」

 

「あっ、愛梨が呼んでる。ちょっと行ってくるよ」

 

「あっ、はい……では、私はこの辺で……本を探していますから……いつでも声を、掛けてくださいね……」

 

「わかった。じゃあ、またあとでな」

 

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「ん〜!ん〜っ!」

 

「お〜い、愛梨。どうしたんだ?」

 

「あっ、プロデューサーさん!あの本をとってくれませんかぁ?私、届かなくて……」

 

「あぁ、そこの本か。よっと……ほら、これでいいか?」

 

「わぁ〜♪ありがとうございます〜♪プロデューサーさんってやっぱり、身長が高いんですねぇ♪」

 

「まぁ、男だからな。普通ぐらいじゃないか?」

 

「いえいえ♪平均以上のスタイルだと思いますよ♪」

 

「ははっ。何だか、俺が愛梨にプロデュースされてるみたいだな」

 

「ふふっ♪私たちって、もしかしたら「お似合いの」カップルかもしれませんよ……?なんて……♪//」

 

「そうか?やんちゃで天然な妹に振り回されてる、兄妹にしか見えないと思うぞ?」

 

「……も、も〜……!だから、愛梨はもう大学生ですよぉ!?お子様扱いしないでくださいよぉ〜!」

 

「はいはい。かわいい、かわいい」

 

「むぅ〜……えいっ!」

 

プニュッ♪

 

「!?」

 

「えへへ……♪こんなお子様……いますかぁ……?」

 

「ちょっ……!あ、愛梨!何をしてるんだよっ!//」

 

「うふふっ……♪プロデューサーさんは「コレ」がぁ……だぁ〜いすき、ですもんね〜♪」

 

「……っ!//」

 

「……いいんですよぉ……?プロデューサーさんになら、もっと……愛梨の「素」を見してもっ……♪//」

 

「……ば、バカっ……!変なことを言ってないで、とっとと文香のところに戻るぞ!!//」

 

「あんっ、いぢわる……」

 

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「……これも……あっ……これも、キープ……」

 

「ふ、文香……大丈夫か……?」

 

「あっ……プロデューサーさんに、愛梨さん……どうでしたか?ご所望のものは、見つかりましたか……?」

 

「はい♪見つかりましたよ♪ありがとう、文香さん♪」

 

「そうですか……それは、何よりです……♪」

 

「そ、それより文香?踏み台の上で、そんなに本を担いで、大丈夫なのか?」

 

「あっ……む、夢中になってしまって、つい……きゃっ……!」

 

「っ……!?文香っ!」

 

バラバラバラバラ!

 

「ちょっ……文香さんっ!大丈夫!?」

 

「おい!大丈夫か!?」

 

「は、はい……すみません……ご迷惑を、おかけしてしまって…」

 

「気にするな。文香が無事で、何よりだ」

 

「……//」

 

「ん……?どうしたんだ……?」

 

「……プロデューサーさんって……結構、逞しいのですね……流石は、男性の方です……♪//」

 

「えっ……あっ……わ、悪いっ!//」

 

「恋愛小説のような……いわゆる、お姫様抱っこを現実でしてもらえて……貴重な体験でした……♪//」

 

「……むっ……」

 

「ご、ごめんな!別に、変なこととかは、考えてないぞ!本当だぞっ!//」

 

「何故……謝るのですか……?」

 

「いや……文香だって、その……年頃の女の子なわけだし……//」

 

「ふふっ……♪全然、気にしていませんよ……♪むしろ……とても嬉しかったです……♪//」

 

「……童話みたいに……「王子様」に颯爽と抱きとめてもらえて……つい……ときめいてしまいました……//」

 

「なっ……お、王子って……でも、守るのは当然のことだ。なんせ、文香はシンデレラなんだからな……//」

 

「そんな……シンデレラだなんて……//」

 

「「……//」」

 

「……むぅ〜〜」プク−

 

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「今日はありがとう、文香。色々と付き合ってくれて」

 

「いえいえ。お目当のものが見つかって、よかったです……♪」

 

「じゃあ愛梨。俺たちもそろそろ行くか……って……あれ?愛梨……?」

 

「愛梨さんなら……あちらの方に……」

 

「えっ……ちょっ……!何でもう、あんな遠くにいるんだよ!?」

 

「「私は先に行きます」と聞いてたので、てっきり……プロデューサーさんは、知ってるものかと……」

 

「俺は、何も聞いてないぞ!?全く……本当に世話が焼けるヤツだな……アイツは……」

 

「うふふ……プロデューサーさんは、まるで……愛梨さんのお兄さんみたいですね……♪」

 

「おっ。文香もやっぱり、そう思うか?」

 

「えぇ……とても、仲のいい兄妹に見えますよ……♪」

 

「それじゃあ、愛梨が妹なら、文香は俺のお姉さんだな。しっかりしてるし、色々と教えてもらってるしな」

 

「い、いえ……そんな……むしろ、私はプロデューサーさんの……やはり……何でもないですっ……//」

 

「ん……?ま、いいか。それじゃあ。そろそろ愛梨を追いかけるよ。色々とお世話になったな」

 

「いえいえ。それでは……あっ……プロデューサーさん……もしよかったら……これを……」

 

「これは……栞?随分と綺麗だな」

 

「はい……胡蝶蘭をあしらえた、栞なんです……よろしければ、もらっていただけませんか……?」

 

「嬉しいけど……こんなに綺麗な栞を、もらっちゃっていいのか?」

 

「えぇ……むしろ、その……プロデューサーさんに受け取ってもらいたくて……作りました……♪//」

 

「そうなのか……わざわざ悪いな。じゃあ、ありがたくいただくよ。ありがとう、文香」

 

「いえいえ……ふふっ……大切にしてくださいねっ……♪//」

 

「あぁ、もちろんだ。それじゃあ、行くよ。また事務所で会おうな」

 

「はい……それでは、また……お会いしましょう……行っちゃった……」

 

「……胡蝶蘭の花言葉は……いえ、この言葉はまだ……心の本棚にしまっておきましょう……」

 

「でも、いずれは……ふふっ……♪プロ……いえ……王子様……♪//」

 

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「……」

 

「……むぅ〜……プロデューサーさんの、おばか……」

 

「隙あらば……す〜ぐ、女の子とイチャイチャし始めて……もうっ……」

 

「他にも、歌鈴ちゃんや翠ちゃん、輝子ちゃんにも……本当に見境ないんですから……困っちゃいますっ……」

 

「輝子ちゃんや文香さんも、まんざらではなさそうでしたし……」

 

「……みんな、ずるいですっ……愛梨だって、もっとプロデューサーさんに……」

 

「あ、あの……すみません……」

 

「はい……?何でしょうか?」

 

「東京に来たばかりで、あまり詳しくなくて……この店ってどこにあるか、わかりますか……?」

 

「えっと……あぁ〜、このお店ですね♪知ってますよ♪」

 

「……どう……行けばいいでしょうか……?」

 

「えっとぉ、そうですねぇ……色々な行き方がありますけど、一番早いのは……」

 

「……あっ!でしたら、この道を真っ直ぐに行って、あの細い道を通ってですね……」

 

「あの……申しわけないのですが……もしよろしければ、案内をしてもらえませんでしょうか……?」

 

「はいっ♪いいですよっ♪お店まで、私が案内しま〜す♪」

 

「あ、ありがとうございます。すみません……急に、声を掛けてしまって……」

 

「大丈夫ですよ♪それでは、一緒に向かいましょう♪」

 

「はい……よろしくお願いします……」

 

「……くそっ……!アイツ……意外と、足が速いんだな……おかげで見失いそうに…あっ!いたいた……」

 

「全く……お〜い、愛梨〜!待ってくれよ〜!……ん?」

 

「しっかりと、私に付いてきてくださいね〜♪」

 

「……わかりました……デュフ……」

 

「……愛梨……?一体、誰といるんだ……?」

 

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「随分と……人気がないんですね……」

 

「そうなんですよぉ〜。ここは昼間でも、人があまり通らないんです」

 

「……普段から……ここには、通ったりとかしてるんですか……?」

 

「いえいえ。ここを最後に通ったのは、随分と前なんです。私一人だと、色々と心細いので……」

 

「なるほど……それでは……安心して、迎えれそうですね……デュフフ」

 

「迎える……?誰かと一緒に、行くんですかぁ?」

 

「はい……愛梨たんと一緒にねっ!!」

 

「えっ……んんっ……!?」

 

「や、やっと会えたね……ボクの愛梨たん……♪」

 

「んっ……んん〜……!」

 

「あの、公開収録の時の、水着を脱ぎかけた愛梨たんでも興奮したけど……ナマは全然、違うナア……//」

 

「柔らかくて、女の子特有の甘い匂いもして……これが、本物の愛梨たんなんだね……スーハースーハー……」

 

「んんっ〜……んん……」

 

「こ、このまま……ボクと愛梨たんの二人で、一緒に……デュフ……♪」

 

「んんっ……!?……いやあっ!!」

 

「あっ……どこに行く気なんだい……?「ボクだけ」の、愛梨たん…♪」

 

「怖い……怖いよおっ……助けてっ……プロデューサーさんっ……!」

 

「デュフ……追いついた……♪」

 

「えっ……な、何で……!?前までここに、道があったはずなのにっ……!」

 

「残念だね……実は、この道……工事で整備されて、もうとっくに壁が、出来ちゃってるんだ……♪」

 

「……つまり……これで、ボクとずっと……二人きりだね……デュフフ♪」

 

「……っ……!い、いや……」

 

「ボクの部屋に、愛梨たんをお持ち帰りして……あんなことやこんなことを……そして……ハァハァ……//」

 

「ひっ……いやああああっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「……愛梨っ!!」

 

「きゃっ……!?」

 

「……えっ……お、男っ……!?」

 

「愛梨!大丈夫か!?」

 

「あっ……は……はいっ……//」

 

「ふぅ、よかった。ところで、あんた……ここで、何をしようとしてたんだ……?」

 

「う、嘘だ嘘だ嘘だっ!清純な愛梨たんに、男なんかいるわけないんだ!ねっ!愛梨たん……!」

 

「……うぅ……怖かったです……プロデューサーくんっ……//」

 

「あぁ、もう大丈夫だからな。愛梨」

 

「よ、呼び捨て!?それに……くん付けって……」

 

「さて……今なら、通報だけにしておくけど……どうする……?」

 

「う、うぅっ……!」

 

「うふふっ……♪プロデューサーくん……暖かい……♪//」

 

「……ぐはっ……!も、もう……好きにしてください……」

 

「うん、それがいい。お互い、穏便に済ますのが一番だ」

 

「……あの……最後に一つ、聞いていいですか……?……あ、あなたは、愛梨たんの……何なのですか……?」

 

「俺か?俺は、愛梨の……」

 

「うふっ……♪この人はぁ、愛梨の彼氏さんですよぉ♪」

 

「……は?」

 

「うぐっ……や、やっぱりっ……!」

 

「ちょっ……!やっぱりって何だよ!ていうか、愛梨!お前も何を言ってるんだ!//」

 

「んもう。愛梨を一人にして……すごく、心細かったんですよぉ……?だからぁ……」

 

ギュッ♪

 

「……もう……愛梨のことを、離しちゃ……イヤですっ……♪//」

 

「……コポォ……さ、砂糖を吐きそう……」

 

「あぁ、もう!とりあえず、電話をするから離れろっ!//」

 

「……ふふっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、よろしくお願いします」

 

「ご協力、感謝します。ほら、行くぞ!」

 

「……愛梨たんに……彼氏……」

 

ピーポーピーポー……

 

「ふぅ……これで無事、解決したな。愛梨……大丈夫か?」

 

「……プロデューサーさん……怖かったです……クスン」

 

「だから、気を付けろって言っただろ?俺が来なかったら、あの変質者に誘拐されてたかもしれないんだぞ?」

 

「そうですね……反省します……でも……」

 

「……颯爽と愛梨を守ってくれた、あの時のプロデューサーさん……とっても、カッコよかったですっ……//」

 

「はいはい、それはど〜も。全く……愛梨が勝手に、一人で先に行っちゃうから、こういうことに……」

 

「むうっ……だいたい、プロデューサーさんが約束を破ったのが、悪いんですっ……」

 

「……愛梨と、ずっと一緒にいてくれるって約束したのに……文香さんと、イチャイチャしちゃって……」

 

「おい!イチャイチャって何だよ!変なことを言うなっ!//」

 

「……でも……愛梨を差し置いて、いい雰囲気になっていたのは、事実ですよねぇ……?」

 

「いい雰囲気だったかは、よくわからないけど……愛梨を置いてけぼりにしたのは謝るからさ、なっ?」

 

「ふ〜んだ……それでは……愛梨のお家で、一緒にアップルパイを……食べてくれますかぁ……?」

 

「アップルパイ……?何のことだ?」

 

「実を言うと……さっき、図書館に行った時に借りたレシピ本は、アップルパイのレシピなんです」

 

「愛梨の、真心を込めて作った新作のアップルパイを、プロデューサーさんに、食べてもらいたくて……」

 

「そうだったのか……でも、気持ちはありがたいけど、女の子の……ましてや、アイドルの家はちょっと……」

 

「……そうですよね……愛梨のよりか、文香さんの料理の方が、いいですもんね……」

 

「ちょっ……!何で急に、文香が出てくるんだよ!」

 

「いいもん……どうせ……愛梨なんかっ……」

 

「あぁ、もう……わかったよ。愛梨の美味しいアップルパイを、是非、食べさせてもらえないか?」

 

「本当ですか!?わ〜いっ♪嬉しいなあ♪」

 

「うわっ!?な、何だよっ……!」

 

「ふふっ♪これでも演技には、自信があるんですよぉ♪作戦大成功ですっ♪」

 

ギュッ♪

 

「くっ……!演技だったのかよ……ていうか!急に、くっつくな!//」

 

「うふふっ……♪聞こえませ〜んっ♪さあっ♪愛梨のお家に、行きますよ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、美味しかったよ。ご馳走さま」

 

「うふふ♪喜んでもらえて、よかったですっ♪」

 

「愛梨の旦那さんになる人は、幸せだよな。こんなに、お菓子作りが上手なお嫁さんがいるんだから」

 

「も、もうっ……プロデューサーさんってば……愛梨にはまだ、早すぎますって〜……//」

 

「ははっ、そうだったな。愛梨は人気アイドルだし、まだそういうのは早いよな」

 

「……でも……幸せは、案外……身近にあるかもしれませんよぉ……?//」チラッ

 

「だな、愛梨の言う通りだ。これからもお互いに、頑張って行こうな」

 

「はいっ♪よろしくお願いしますっ♪」

 

「それじゃあ、そろそろ失礼するよ。今日は招待してくれてありがとう。愛梨」

 

「えっ……もう……帰っちゃうんですか……?」

 

「あぁ。日もそろそろ落ちてきたし、長居するのも悪いしな」

 

「……いやっ!……帰っちゃ……いやですっ……!」ギュッ

 

「えっ……あ、愛梨……?」

 

「私……怖いんです……もしさっき、プロデューサーさんが、助けに来てくれなかったことを考えるとっ……」

 

「さっきの……あぁ、あのことか……」

 

「……今日だけでも……愛梨の家に、泊まっていってもらえませんか……?一人では……心細いんです……」

 

「いや……でも……」

 

「……プロデューサーさんっ……」ウルッ

 

「……わかったよ……じゃあ今晩だけ、愛梨の家に世話になるよ。確かに、あの時は怖かっただろうしな」

 

「本当ですか……?……ありがとうございますっ……♪」

 

「じゃあちょっと、事務所に電話してくるよ。それと、俺の家から着替えとかも、持って来なきゃいけないな」

 

「あっ、電話だけで大丈夫ですよ♪プロデューサーさん用の着替えや、生活に必要なものが一式ありますので♪」

 

「おっ、そうか。ありがとう……って、おい……愛梨……?何で……俺用の着替えが、あるんだ……?」

 

「ふふっ♪「いつでも」大丈夫なように、用意してたんですよっ♪」

 

「なるほど……って!色々と、おかしいだろっ!」

 

「細かいことはいいじゃないですか〜♪これで、今日はずっと、プロデューサーさんの隣に入れますね♪」

 

「今夜も……ううん……これからも、愛梨のことを見守り続けてくださいね♪「プロデューサーくんっ♪」」

 

チュッ♪



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極真シンデレラ 中野有香

「……」

 

「……はあっ!!」

 

バキッ!

 

「……くっ……一枚……残ってしまいました……いつもなら全部、瓦を割れるのに……おかしいな……」

 

「……ううん。何も、おかしくはないですね。まだまだ、未熟な証拠です。もっと……修行しないと……」

 

「最近ずっと、こんな調子だな……どうしちゃったんだろう、あたし……考えても、仕方がありませんね」

 

「さて、心頭滅却すれば、火もまた涼し。座禅を組み、精神統一をしましょう」

 

「空手……精進……心頭……滅却……一心……不乱……」

 

「……かわいい……アイドル……そうでしたね……今のあたしはあの、憧れていたアイドルでしたね……」

 

「高校最後の大会を終え、師匠に「空手以外の道に目を向けてみろ」と言われ、始めたアイドル道ですが……」

 

「かわいい衣装……かわいい仕草……かわいい雰囲気……実に、奥深いですね。もっと、精進をしないと……」

 

「でも……かわいいって何でしょう、どうしたらもっと、かわいくなれるんでしょう」

 

「……どうしたら……もっと「見て」もらえるんでしょうか……//」

 

「って……あ〜!もうっ!あたしらしくないです!ていっ!やあっ!はぁ〜っ!!」

 

「はっ……!い、いけません……あたしは、アイドル……あたしは、かわいいアイドル……コホン……」

 

「……みなさ〜んっ♪中野有香ですっ♪今日は、ファンのみんなに、瓦割りをご覧に入れて見せますっ♪」

 

「じゃあ、いっくよ〜♪えいっ♪やあ〜ん♪痛いぁ〜いっ♪瓦割れな〜いっ♪」

 

「だ・か・らっ♪キュートなあたしにぃ、みんなの恋色のエナジーを、た〜くさんちょ〜だいっ♪きゃはっ♪」

 

「……うぅ……わかりません……アイドルの正しい型って、何なんだろう……」

 

「仕草……?愛嬌……?それとも……あざとさ……?ううっ……考えれば考える程、泥沼にはまって……」

 

「師匠……あたしは、どうしたらよいでしょうか……」

 

------------------------------------------------

 

「……ん〜♪このストロベリーのドーナツ、おいし〜い♪」

 

「このシンプルなドーナツ、とても好きなんです」

 

「カスタードクリームがたっぷり入ってて、美味しいですねっ!」

 

「ははっ、気に入ってくれてよかった。やっぱり、レッスンのあとは甘いものだよな」

 

「あたし、ちょうどドーナツが食べたかったんだよね〜♪グッドタイミングだったよ♪」

 

「何を言ってるんだ。法子は一日中、ドーナツのことを考えてるだろ」

 

「あ〜っ!ひど〜い!あたしだって、ドーナツのことばかり、考えてるわけじゃないよ!?」

 

「んじゃあ、例えば何を、考えてたりするんだよ」

 

「そ、それは……その……何というか……何ていうかぁ……あ、アイドルについて、いつも考えてるもん!//」

 

「おっ、それは頼もしいな。なら、気をつけて欲しいことが、あるんだけどな〜……少し、失礼するぞ」フキッ

 

「「!?」」

 

「全く、ドーナツのかけらが頰についてたぞ。これじゃ、かわいい顔が台無し……って、どうしたんだ法子」

 

「あっ……あわ……あわわっ……//」

 

「何だよ、そんなに俺を見つめて。俺の食べてるドーナツが、欲しいのか?」

 

「も、も〜!だから、そんなことないもんっ!プロデューサーの、いぢわるっ!//」

 

「ははは。そんなに、ムキになるなって。かわいいなあ、法子は」

 

「……むぅ〜//」

 

「「……」」

 

「ゆかりと有香もほら、まだあるから食べな」

 

「ふえっ!?あっ……は、はい……いただきます……//」

 

「え、えっと……あ、ありがたくちょうだいします!押忍!!」

 

------------------------------------------------

 

「さて……法子は現場に送ったし、有香は別室で、雑誌のインタビューを受けてるし……あとは……」

 

「……」

 

「……この眠り姫を、どうするかだな……お〜い、ゆかりさ〜ん?起きてますか〜?」

 

「……ん……zzz」

 

「やっぱり……ほらゆかり、俺は仕事をするんだから、離れてくれよ」

 

「……んっ……」ギュッ

 

「……ちょっと、失礼するぞ〜……」

 

「……んんっ……やっ……!……zzz」

 

「ふぅ……ゆかりの寝相の悪さには、困ったものだな……俺にそんな、腕を絡めて……油断しすぎだろ……」

 

「……うふふ……//」

 

「全く……思春期の女の子がこんな無防備じゃ、危なっかしくて放っておけないな」

 

「……」ニコッ

 

「あっ、でも、法子も元気すぎて目が離せないし……この事務所のアイドルはみんな、目が離せないな……」

 

「……」ムスッ

 

「ふぅ、困ったものだ……しかし……こうして見るとやっぱり、ゆかりってお嬢様って感じだよな……」

 

(透き通るような、白い肌……清楚さを感じる、甘い香り……確かに感じる、柔らかいもの……)

 

……ムニッ♪

 

「……くっ……意識しちゃ、ダメだっ……!……しょうがない。こうなったら最終手段だ。少し、失礼するぞ」

 

「……ふにゅっ//」

 

「何だか、誤解を生むような抱っこの仕方だが……誰もいないからいいよな」

 

「ほ〜ら、ゆかり姫〜。こちらが寝室ですぞ〜っと……よし、ソファーに降ろして、毛布をかけて……」

 

「ふぅ……これでよしと……さ〜て、残りの作業をしちゃいますかね」

 

「……好き……なんですっ……//」

 

「……ん?好き……?まさか、夢の中でまだ、ドーナツを食べてるのか?」

 

「甘くて……素敵で……とても大好きな……私の……zzz」

 

「そんなに気に入ってくれたなら、また今度買ってきてやるか、さぁて、仕事仕事っと」

 

「……ぷろでゅーさーさん……ふふっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサーさんっ!ただいま戻りました!」

 

「おっ、お疲れ様、有香。どうだった?」

 

「はい!あたしなりに、全力で答えさせていただきましたっ!」

 

「それはよかった。じゃあ、俺も一つ質問があるんだ。ゆかりってさ、すごい寝相が悪いと思わないか?」

 

「ゆかりちゃん……?そうですか?ソファーで普通に、寝てるだけのように見えますが……」

 

「大変だったんだぞ。ゆかりってば、さっきまで寝ぼけてて、俺に思いっきり、密着してたんだから」

 

「みっ……密着ですか!?」

 

「あぁ。話をしてたら、いつの間にか寝てしまってたんだ。だから一生懸命、ゆかりを起こそうとしたんだ」

 

「だけど、引き離そうとしたり、立ち上がろうとしても全然、離れてくれなくてな。困ってたんだよ」

 

「あのゆかりちゃんが……少し、意外ですね……」

 

「普段はしっかりとした、清楚なお嬢様って感じなのに、こういう肝心なところは、抜けてるんだよな」

 

「……言われてみれば……あたしから見ても、その……ゆかりちゃんは少々、天然な部分がありますね……」

 

「天然すぎて手が焼けるけどな。あっ、でも有香がついてるから安心か」

 

「えっ……?あたしですか……?」

 

「天然なゆかり姫には、しっかりものの有香がついてるし、だから安心だな。ははっ」

 

「そ、そんな……あたしも、その……色々と力不足なところがありますので……」

 

「謙遜すんなって。有香の強さはどれ程のものか、俺はよく知ってるつもりだよ」

 

「……あ、あのっ……!プロデューサーさんっ!その……あたしも、女の子ですので……だから……」

 

「ふぁ……?」

 

「おっ、姫のお目覚めだ」

 

「う〜ん……えっと……ここは……」

 

「おはようゆかり。ここは事務所だぞ」

 

「あら……?どうして……わたしのへやに……プロデューサーさんが……?」

 

------------------------------------------------

 

「お〜い、もう一度言うぞ?ここは事・務・所だぞ」

 

「ん〜……?……っ!?や、やだ……私ったら……!」

 

「さっきまで、俺に思いっきり腕を絡めて、密着してたネボスケさんは、どこの誰だっけ〜?」

 

「みっ、密着……!?冗談はやめてください……!私は、そんなはしたないことは、しないですっ……!//」

 

「どの口が言うんだか……じゃあ、その格好は何だ……?」

 

「格好……きゃあっ!?」

 

「ゆかり姫は、普段からそんなはしたない格好で、過ごしてらっしゃるのかなぁ?ん〜?」

 

「……〜っ!//」

 

「まあ、かわいかったからいいけどさ。いっそ、ネボスケゆかり写真集でも出してみるか?なんてな」

 

「も、もうっ……!プロデューサーさんってば、いぢわるです……!はしたないですっ……!//」

 

「はいはい。ゆかりはかわいいなあ」

 

「……む〜っ……//」

 

「あっ、そうだ。ところで有香、さっき、何を言おうとしたんだ?」

 

「ふぇっ……!?え、えっと……あのっ……い、いえ!何でもないですっ!//」

 

「そうか?ならいいんだが……」

 

「……プロデューサーさん……こ、このような姿を見られてしまったからにはもう、お嫁には行けません……」

 

「……ですから……最後まで責任を……とってもらいますからね……?//」

 

「ん……?あ〜、そうだな。俺は俺なりに、ゆかり姫に尽くさせてもらいますよ〜」

 

「約束ですよ……ふふっ……♪//」

 

「それじゃあ有香、そろそろ行くか?」

 

「はいっ!よろしくお願いしますっ!」

 

「取材を受けてもらったばかりなのに悪いな、忙しくて……もし、辛かったらいつでも言ってくれよ?」

 

「いえいえ、そんな……むしろ、プロデューサーさんと一緒なら、どこまでも頑張れますよ♪……なんて♪//」

 

「そうか……?でも、無理はしちゃだめだぞ。有香は、俺の大切なアイドルなんだからさ」

 

「大切……はいっ!ありがとうございますっ!それではさっそく、向かいましょう!」

 

「あぁ。それじゃあ、そろそろ行くか。また今度な、ゆかり」

 

「えぇ……お二人とも、頑張って来てくださいね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「はぁっ!やぁっ!……せいやぁ〜っ!!」

 

「はい、撮影終了です。ありがとうございました」

 

「押忍!ありがとうございました!!」

 

「お疲れ様、有香。頑張ったな」

 

「あっ、プロデューサーさん!お疲れ様です!」

 

「いや〜、流石だ。遠くで見てたけど、すごい迫力だったぞ」

 

「あ、ありがとうございますっ!幼い頃から、空手を続けて来た甲斐がありました!」

 

「有香の魅力を色んな人に伝えるには、空手が一番だと思ってな。素敵なPVが撮れたよ」

 

「あ、あたしが、一番ですか……?嬉しいです……♪//」

 

「メロウ・イエローはそれぞれ個性が出てきたよな。ユニットとしても、個人としても」

 

「個性……ですか?」

 

「あぁ、ちょっと、この雑誌を見てくれ」

 

「ん?えっと……今、人気沸騰中の、三つのkawaii「イエロー」を大紹介……」

 

「「可憐」なイエローの水本ゆかりちゃん……「幼気」なイエローの椎名法子ちゃん……「強固」なイエローの中野有香ちゃん……」

 

「どうだ。いい感じに、三人の特色が出てるだろ?アイドルは、個性が大事だからな」

 

「……可憐……幼気……強固……」

 

「……」

 

「ん……?どうかしたか?有香」

 

「はっ……い、いえ!何でもないです!」

 

「そうか?なら、いいんだが……あ、そうだ。ところで、あっちの方は順調か?」

 

「はい!おかげさまで、順調に邁進させてもらっています!」

 

「よかった。ユニット「メロウ・イエロー」で、初のライブだからな。順調でよかった」

 

「あと数日なので、緊張はしていますが……初めてユニットで歌えるので、とても楽しみです♪」

 

「よし!その意気だ!頑張って、ライブを成功させようぜ!」

 

「はい!頑張ります!押忍!」

 

------------------------------------------------

 

「「「みんな〜!ありがとう〜!!」」」

 

タノシカッタ~! チョウカワイカッタヨ~! メロウイエローサイコ~!

 

「三人ともお疲れ様。よく頑張ってくれた」

 

「お疲れ〜♪あ〜、楽しかったぁ〜♪」

 

「お疲れ様です。ファンのみなさんに無事、笑顔をお届けできました……♪」

 

「初めてのライブ……手に汗を握りましたが、とても楽しかったです!!」

 

「無事に、終了してよかった。最高に盛り上がってたな」

 

「こんなに緊張したのは、空手の県大会に出場した時以来です!でも、全力を尽くさせてもらいました!!」

 

「あたし、ライブ中にずっと、手が汗ばんじゃってたよ〜……あ〜、緊張したぁ〜……」

 

「マイクを握る手が、ずっと震えてしまっていて……フルートの演奏会とはまた違う、緊張感でした……」

 

「大丈夫だ。舞台裏から見てたけど、緊張が見えないぐらい、しっかりとパフォーマンスが出来てたぞ」

 

「プロデューサーさん……私たちのことをずっと、裏から……見ていてくださったのですね……//」

 

「当たり前だろ?大切な、アイドルユニットの初お披露目を、最後まで見届けるのは当然のことだ」

 

「えへへ……♪なんか、恥ずかしいのか嬉しいのか、わからなくなっちゃうねっ……♪//」

 

「よし!じゃあ打ち上げにいこうぜ。他のアイドルや、関係者のみんなが、主役の登場を待っているからな」

 

「はい!行きましょう!」

 

「……その前に……有香。ライブ中に発射された、紙吹雪が髪についてるぞ。俺が取ってやるよ」

 

「あっ……す、すみません……ありがとうございます……//」

 

「全く……今の姿は、俺が独り占めだ。だから、他の人には見せちゃだめだぞ」ナデナデ

 

「……プロデューサーさんに、独り占め……えへへ……♪//」

 

「……いいなぁ……」

 

「ん?ゆかり、何か言ったか?」

 

「い、いえ……何でもないです……//」

 

「そうか?それじゃあ、そろそろ会場に向かおうか」

 

「はいっ!む、向かいましょう!押忍!!」

 

「……そういうことを……恥ずかしげもなく言えちゃうんだよね〜……プロデューサーは〜……」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……やっぱり、この時期になってくると、日が暮れるのが早いよな」

 

「そうですね。秋風も吹いてきましたし、夏の終わりを改めて感じます」

 

「ライブも大成功だし、打ち上げも楽しかったし、今日は本当にハッピーで幸せな一日だったよ!」

 

「よかったな。初ライブが成功して、幸先のいいスタートだ。今後も、一緒に頑張っていこうな」

 

「はいっ!是非とも、よろしくお願いしますっ!」

 

「しかし……こうして夜道を歩いていると、さっきまでの盛り上がりが、嘘のように静かですね……」

 

「ははっ、しょうがないさ。遊園地の閉園時間に感じる、寂しさと哀愁に通じるものがあるよな」

 

「あるある!楽しかった分、終わり間際にあの何とも言えない、寂しさが込み上げてくるんだよね!」

 

「それに……何だか、暗くて……少し、怖くなってきてしまいました……えいっ……♪//」」

 

ギュッ

 

「!?」

 

「……あ”〜っ”!ゆかりちゃんだけずる〜い!あたしもこわ〜い!」

 

「お、おいっ!二人とも、急に何だよっ……!//」

 

「プロデューサーさん……守って……くださいますよね……?」ウルッ

 

「プロデューサーが、優しいお兄ちゃんだってこと……あたし、知ってるよ……?」ウルッ

 

「……ふぅ……しょうがないな……女子寮までだぞ?」

 

「「は〜いっ♪」」

 

「まあでも、俺たちには有香がついてるから安心だな。きっと、変な奴が来ても懲らしめてくれるさ。なっ?」

 

「えっ……?あっ……そ、そうですね……困ってる友達がいたら、助けるのは当然だと思いますので……」

 

「流石は有香だ。メロウ・イエローは、色んな意味で安泰だな。ははっ」

 

「……あ、あの……あたしもプロデューサーさんに、その……すみません……やっぱり、何でもないです……」

 

「ん?どうした?なんか悩みとかあるなら、相談に乗るぞ?」

 

「有香ちゃん……何か、悩み事でもあるのですか……?」

 

「悩みだなんて……むしろ、ライブを無事成功させることが出来て、嬉しい気持ちでいっぱいですよ!」

 

「そう?もし何か悩んでたら、いつでも相談してね?あたしたちは、有香ちゃんの友達なんだしさ」

 

「そうだな、俺たちは有香の友達だ。だから、何か相談があるなら、いつでも言ってくれよ」

 

「はい……みんな、ありがとうございます……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「本日は、楽しいライブの時間を、ありがとうございました……♪また……よろしくお願いしますね……♪」

 

「あたしたちがハッピーなら、みんなもハッピーになれるもんね♪今日は、ありがとうっ♪」

 

「二人とも、今日はありがとう。あとはゆっくり、休んでくれ。じゃあ有香、そろそろ俺たちも行こうか」

 

「そうですね。今日は、ありがとうございました。ゆかりちゃん、法子ちゃん、また会いましょう♪」

 

「えぇ……♪それでは、おやすみなさい……お互いに、よい夢を見ましょう……♪」

 

「おやすみなさ〜いっ♪」

 

「ふぅ……今日のライブは、三人とも大活躍だったな。幸先のいいスタートになりそうだ。なっ?有香」

 

「そう……ですね……」

 

「……」

 

「……有香……?」

 

「……っ!」ギュッ

 

「なっ……!?ゆ、有香!?急に、どうしたんだ……!?」

 

「……プロデューサーさん……あたしは……女の子らしく、ないですか……?」

 

「女の子……?何の話だ……?」

 

「確かに、あたしは今まで空手一筋で、空手以外のことはよくわからずに、日々を過ごして来ました」

 

「メイクやオシャレだって無頓着で、アイドルになってから初めて、意識するようになりました」

 

「だけど……ゆかりちゃんや法子ちゃんみたいに、あたしのことも……その……」

 

「……一人の女の子として……見て欲しいんです……だめ……でしょうか……?」

 

「有香……そんなの、言うまでもないだろ?有香は十分、かわいい女の子だ。俺が保証するよ」

 

「本当ですか……?」

 

「あぁ。有香は、俺が目をつけたアイドルなんだ、かわいくないわけがないだろ?」

 

「……でしたら、その……証明をしてもらえますか……?」

 

「えっ、証明……?」

 

「えっと……あ、あたしと、その……明日……一緒に……」

 

「?」

 

「……て、手合わせを、お願い出来ませんか!?」

 

------------------------------------------------

 

「手合わせ……はあっ!?お、俺と……!?」

 

「はいっ!……どうでしょうか……?」

 

「おいおい……俺じゃあとても、有香の相手なんて務まらないと思うぞ?空手だって、やったことないし……」

 

「あっ……す、すみませんっ!そういうことではなくてですねっ!その……」

 

「……一緒に……お買い物に、付き合ってもらえないでしょうか……//」

 

「あっ、手合わせって、そういう……また、どうしたんだ?」

 

「……かつて、空手の師匠が言ってたんです。「日頃から感謝の気持ちを忘れるな、それが大事だ」と」

 

「それで、改めて友達に、感謝の気持ちを伝えようと思い、そのプレゼントを一緒に選んで欲しいんです」

 

「なるほどな。でも、そういうのは、俺より同じアイドルの子たちに選んでもらった方が、いいと思うぞ?」

 

「確かに、それもいいですけど……でも、男の人と一緒に探した方がより「実感」が湧くと思いまして……//」

 

「実感って……まあ、俺でいいなら付き合うよ」

 

「本当ですか……!?嬉しいですっ……♪……えいっ♪」

 

「うわっ!?な、何だよ……!?」

 

「うふふ……♪夜道は怖いですっ♪だから、家までしっかりと、あたしをエスコートしてくださいねっ♪//」

 

「いや……そりゃ、もちろん送るけど……近すぎじゃないか……?」

 

「いえいえ♪……あたしも、女の子ですし……「守って」もらいたいんですっ……♪」

 

「……しょうがないな……ただし、家までだからな?」

 

「は〜いっ♪わかりましたっ♪……あの……プロデューサーさん……」

 

「何だ?」

 

「お、お買い物に行く時も、そのっ……しっかりと、あたしを……エスコートしてくださいねっ……♪//」

 

「あぁ、出来る限りのことはさせてもらいますよ。有香お嬢様」

 

「ふふっ……♪お願いします……♪」

 

「じゃ、改めて、有香の家に向かおうぜ。もう、夜も遅いしな」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ。さて、お風呂から上がったことですし、さっそく、明日のデートの準備を……」

 

「……ではなく!「お買い物」の準備をしましょうっ!クローゼットを開けてと……//」

 

「これがいいかな……それとも、これ……?あっ、こっちもいいかも……」

 

「うぅっ……おしゃれは、難しいですね……空手と違って、正しい型というのがありませんし……」

 

「唐突に、プロデューサーさんを誘ってしまったものの……どれを着ていけば、いいんだろ……」

 

「……って!ただ、お買い物に付き合ってもらうだけなんです!特別な意味なんか無いんですっ!」

 

「……だけど……せっかくなら、その……か、かわいいって……言ってもらいたいですし……//」

 

有香。その服装、すごいかわいいよ。

 

そ、そんな……あたしなんか、別に……//

 

そんなことを言うなって。じゃあ今から、有香がかわいいってことを、俺が証明してやるよ。

 

えっ……きゃっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?

 

ほら、俺の腕の中に、すっぽりと入っちゃったぞ。有香はかわいいなあ。

 

……あぅっ……そ、そんな……いきなり……//

 

もう、絶対に離さないからな。今から、二人だけの特別な時間を過ごそうぜ……「俺だけ」の有香……。

 

ふあっ……は、はいっ……よろしくお願いします……♪//

 

「……えへへ……二人だけの、特別……//」

 

「って……!あ、あたしってば、何を考えてっ……!だ、だめですっ!煩悩、たいさ〜んっ!!//」

 

「……本当に、変わっちゃったな……あたし……以前とは、考えられない程に……」

 

「寝ても覚めても、プロ……ううん……「おしゃれ」や「かわいい」のことばかり、考えて……」

 

「これが……アイドルというものなのでしょうか……それとも……」

 

「……さ、さてと!鏡とにらめっこをするのはこれぐらいにして、そろそろ寝ましょう!」

 

「睡眠不足は、お肌の大敵ですからね!アイドルとして、もっと自覚を持たないといけませんっ!」

 

「でも……やっぱり、もっと試行錯誤した方がいいかな……?髪型とか、アクセサリーとか、メイクとか……」

 

「その他にも、色々……ああああっ!もうっ!どうしたらいいか、わかりませ〜んっ!!」

 

「うぅ……あたしの……おバカっ……」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「ふぅ……待ち合わせ場所は、ここですね。プロデューサーさんは……」

 

「……まだ、来てないみたいですね。少し、早く来すぎちゃったかな……」

 

「では、来るまで調べ物をしましょう。この近辺の情報を知っておいて、損はありませんからね」

 

「「お店 かわいい」……って……かわいい……?」

 

「……かわいい……かわいい……」

 

「……」

 

「……「空手 かわいい」……っと……あっ……一番最初に……えへへ……♪//」

 

「よぉ、有香。待ったか?」

 

「いえ……むしろ、一番最初に来ました……//」

 

「一番最初……?他に、誰か来るのか?」

 

「……ん……?わぁっ!?ぷ、プロデューサーさんっ!?」

 

「俺は別に、構わないけど……誰が来るんだ?」

 

「こ、こんにちはっ!本日はお日柄もよく……で、ではなく!あ、あたしはその……別に……あのっ……!//」

 

「おいおい、落ち着けって。別に、怒らないから話してみな」

 

「いえ!本当に誤解なんです!ただ、楽しみすぎて、早く来てしまったってことを、伝えたかったんです!」

 

「そうなのか……?なら、いいんだが……」

 

「で、ですので……今日は……ぷ、プロデューサーさんとあたしの、二人っきり……ですよ……♪//」

 

「そうだな。力になれるかどうかわからないけど、今日はよろしく。有香」

 

「いえいえ!こちらこそ、今日はよろしくお願いしますっ!!……と、ところで、プロデューサーさん……」

 

「何だ?」

 

「今のあたしはそ、その……かわいい……ですか……?//」

 

「あぁ、よく似合ってるよ。かわいい、キュートな女の子って感じだ。それじゃあ、そろそろ行ってみるか?」

 

「……えへへ……ありがとうございますっ……♪では、改めて、手合わせをお願いしますっ!押忍!!」

 

------------------------------------------------

 

「やはり、プロデューサーさんを頼って正解でした♪カタログを見て悩むより、実際に触れた方がいいですね♪」

 

「頼ってくれるのは嬉しいけど……俺で、本当によかったのか?」

 

「……言ったじゃないですか……選ぶのに「実感」した方が、よいものを選べるかもしれないって……//」

 

「まあ、有香がいいならいいんだが……」

 

「うふふ……♪ところで、このリボン……とても、かわいいですねっ♪」

 

「あぁ。まるで、有香のためにあるような、リボンだよな」

 

「……ま、また……プロデューサーさんは、そういうことを言うんですから……//」

 

「本心から言ってるだけだって。ほらっ、俺が付けてやるよ」

 

「あっ……よ、よろしくお願いします……」

 

「じゃあ、少し失礼するぞ……よし、どうだ?こんな感じでいいか?」

 

「えっと……はいっ!法子ちゃん風に言うと、バッチグ〜ですっ!なんて……♪」

 

「ははっ、すごい似合ってるよ。やっぱり、かわいい有香には、かわいいリボンだな」

 

「……カッコよくて素敵なお兄さんに、そう言ってもらえると……女の子として、自信が付きますっ……♪//」

 

「なっ……!か、カッコいいって……そんな……//」

 

「「……//」」

 

「……さ、さて……あっ!これとか、どうでしょうか!プロデューサーさんにも、似合うと思いますよ!//」

 

「おっ!これなら俺にも……って!これ、有香が付けてるリボンの色違いだろ!俺にそういう趣味はないぞ!」

 

「あっ……すみません!そういう意味ではなくて、友達とペアグッズとかいいな……と思ったんです」

 

「あぁ……そういうことか。確かに、友達とお揃いの物を付けてたら、もっと仲が深まる気がするよな」

 

「……もし、よかったら……あたしたちも、お揃いなんてどうでしょうか……「親友」の証として……//」

 

「おっ、それは名案だな。じゃあ、俺たちもお揃いにしてみるか!」

 

「本当ですか!?それでは、さっそく……!」

 

「……な〜んてな、冗談だよ。「親友」にはもっと、アイドルとして輝いてもらわないとな。だからお預けだ」

 

「冗談……そうですか……」

 

「そんなに落ち込むなって。別に物がなくても、俺たちは心で繋がってるだろ?これからもよろしくな、有香」

 

「心で……は、はいっ……これからもずっと、よろしくお願いします……プロデューサーさんっ……//」

 

「あぁ。それじゃあ、有香の友達のためにも、素敵なプレゼントを選ぼうぜ。俺と有香の二人でな」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサーさん。本日は、私に付き合っていただき、ありがとうございました♪」

 

「気にしないでくれ。それより、よかったな。素敵な贈り物が見つかって」

 

「はいっ♪きっと、友達も喜んでくれると思います♪」

 

「にしても、感謝の気持ちを贈り物で伝えるだなんて、有香って改めて誠実だよな。アイドルとしてもさ」

 

「いえいえ。親しき中にも礼儀あり、です。礼儀を重んずることも、武道の大切な心得ですので」

 

「ははっ。そこまで思ってもらえるなんて、有香の友達は幸せだな」

 

「……プロデューサーさんも……あたしの「親友」です……なので……あ、あたしから、その……//」

 

「……あら?プロデューサーさんと、有香ちゃんじゃない」

 

「ん……?あっ、レナさんじゃないですか。こんにちは」

 

「れ、レナさん……!?こ、こんにちはっ!いつも、お世話になっておりますっ!押忍!!」

 

「こんにちは♪うふふ……♪相変わらず、有香ちゃんは礼儀正しいわね♪」

 

「こんな所で奇遇ですね。何か用事ですか?」

 

「えぇ。ちょっと、アクセサリーを買いにね。二人こそ、仲睦まじそうだけど何をしてるの?」

 

「俺たちは、有香の友達へのプレゼントを、一緒に選んでたんです。な?有香」

 

「はいっ!感謝の気持ちを、プレゼントで伝えようと思い、プロデューサーさんに選んでもらっていました!」

 

「そうなんだ……いいなぁ〜♪私もぉ「お兄さん」から、心のこもったプレゼントが、欲しいなぁ〜♪」チラッ

 

「……何で、今……俺を見たんですか……?」

 

「あんっ、いぢわるぅ〜……しょうがないなあ……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「!!」

 

「ちょっ……!れ、レナさんっ!?」

 

「ねぇ〜、私にもぉ、有香ちゃんのような、心のこもったプレゼントをちょ〜だいっ♪」

 

「ぷ、プレゼントって一体、何を……ていうか、近いですって!//」

 

「さて「ナニ」でしょうか……♪ヒントは……プロデューサーさんが今、考えてるものよ……♪」

 

「お、俺は別に……何も考えてなんか…!//」

 

「ウソつき♪元ディーラーの私に「イカサマ」は通用しないわよっ♪」

 

「くっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇっ……一緒にぃ、酒の肴をつまみあった仲じゃない……♪だから、いぢわるをしちゃ……イヤよ……?」

 

「そ、それは……ていうか!あの時は酒の肴なんて、なかったじゃないですかっ!!//」

 

「エ〜。だってぇ、肴はプロデューサーさんだったしぃ、別に、私はウソは言ってないも〜んっ♪」

 

「全く……何が肴ですか……酔っ払ったお姉さんたちにどれだけ、俺が苦労したと思ってるんですか……?」

 

「……むぅ〜……何よぉ、お姉さんたちにたくさん「つままれて」気持ちよくなってたクセにぃ……」

 

「へ、変な言い方をしないでください!ただ、レナさんの家でお酒を飲んだだけじゃないですかっ!//」

 

「……レナさんの……お家で……」

 

「でもぉ、あの時はすぐに、私に付いて来たじゃない♪実は「ナニ」かを、期待してたんじゃないのカナ〜?」

 

「いや……それは、その……いいワインが手に入ったと聞いただけで、別に変なことは……//」

 

「うふふ……♪じゃあ、今はいいプロデューサーさんが手に入ったから、お姉さんからプレゼントをあげるわ♪」

 

「えっ……レナさんから、ですか……?」

 

「えぇ♪それじゃあ、アツくて素敵なモノを、あ・げ・る……♪……んっ……」

 

「はあっ……!?れ、レナさん!?何をしてるんですか……!?有香っ!助けてくれえっ!!」

 

「……お邪魔して、すみませんでした……では、あたしはこれで、失礼させてもらいます」

 

「なっ……!ゆ、有香……!?」

 

「うふっ♪有香ちゃん公認ねっ……♪じゃあ、続きをしましょう♪ん〜♪」

 

「ちょっ……まっ……!//」

 

「……」

 

ピトッ♪

 

「……はいっ♪私のカイロをあ・げ・る♪」

 

「……えっ……か、カイロ……?」

 

「言ったじゃない♪アツくて素敵なものだって♪まだ少し、時期的に寒いでしょ?」

 

「えぇ……それは、まあ……ありがとうございます……」

 

「……うふふっ……♪「ナニ」だと思ったのかなぁ〜?」

 

「なっ、何も思ってないです!全く……レナさんはアイドルなんですから、少しは謹んでください……!//」

 

「ふふっ、ごめんなさいね♪デートの邪魔をしちゃって♪ほら、愛しの彼女のところに行ってあげないと♪」

 

「彼女……あっ、有香……」

 

「んもう、ダメじゃない。私ばかりじゃなくて、もっと有香ちゃんのことも見てあげなきゃっ」

 

「そ、それはレナさんが……とにかく……俺は、有香を追いかけます。では、またよろしくお願いしますね」

 

「えぇ♪よろしくねっ♪……あ、最後に一つ、いいかしら?」

 

「何でしょう?」

 

「……プロデューサーくんになら、もっと……「素」の私を、見せてあげてもいいわよ……♪」

 

タプンッ♪

 

「なっ……また、そんなことをっ……!お、俺はもう行きますからねっ!ではっ!」

 

「まったね〜♪うふふ……かわいいんだから♪……頑張ってね♪有香ちゃん♪」

 

------------------------------------------------

 

「有香〜!待ってくれって!」

 

「……」

 

「なあ、有香……急に、どうしたんだよ……」

 

「……ですね……」

 

「えっ……?」

 

「レナさんと随分……仲がいいんですね……」

 

「い、いや……あれは誤解なんだって!レナさんはすぐに、ああいうことをするから……//」

 

「むぅ……それにしては……随分と、デレデレしてたじゃないですか……」

 

「まあ、レナさんはとても……じゃなくて!デレデレなんかしてないって!//」

 

「ふ〜んです……どうせ、あたしなんかより……レナさんの方が、魅力ですもん……」

 

「そんなことはないって。有香も十分、魅力的な女の子だよ」

 

「……お世辞なんかいりません……」

 

「しょうがないなあ……んじゃ、少し失礼するぞ……これでよしと。ほら、こっちを向いてみろよ」

 

「えっ……プロデューサーさん……?」

 

「おっ、よく似合うじゃないか。流石は、キュートな女の子だな」

 

「あ、あの……このネックレスは、一体……」

 

「有香がプレゼントを選んでる時に、こっそりと選んでみたんだよ。どうだ?気に入ってくれたか?」

 

「あたしのために……はっ、はい……とても素敵ですね……♪……ありがとうございます……//」

 

「ははっ、よかった。選んだ甲斐があったよ」

 

「……その……あ、あたしも、プロデューサーさんに渡したいものがあるんです……少し、失礼しますね……」

 

「ん……?これって……ネックレス……?」

 

「はいっ♪実は、あたしも……プロデューサーさんにこっそりと、プレゼントを選んでたんですっ……♪//」

 

「そうだったのか……わざわざありがとうな、有香。大切にさせてもらうよ」

 

「ふふっ……♪喜んでくれて、よかったです♪でもこれで……相思相愛に、なりましたね……♪//」

 

「相思相愛……?何のことだ……?」

 

------------------------------------------------

 

「あたしたちの、このネックレス……実は「ペアネック」なんです♪」

 

「ペア……あっ、本当だ!色が違うだけで、全く同じネックレスじゃないか!」

 

「どうやら、あたしたち……同じことを、考えてたみたいですね……♪嬉しいです……♪//」

 

「あっ、あぁ……確かに嬉しいけど……何だか、少し照れちゃうな……//」

 

「実を言うと、このネックレスにはあともう一つ、秘密があるんですよ」

 

「ん?まだ何かあるのか?」

 

「プロデューサーさんと、あたしのネックレスを合わせると……なんと……ハートの形に、なるんです……//」

 

「おぉ……すごいな……色々な意味で……//」

 

「まるで……あたしたちの関係みたいですねっ……//」

 

「そ、そうだな……プロデューサーとアイドル、良好な関係を築いてる俺たち見たいかもな……ははっ……」

 

「……違います……今のあたしたちは……普通の「男の人と女の人」……ですっ……♪」

 

「えっ……んんっ……!?」

 

チュッ……♪

 

「……ぷあっ……ゆ、有香っ……!?//」

 

「……ラブはストレート。プロデューサーさんに「一本」を決めてみちゃいました……♪//」

 

「い、一本……?ていうか、有香……お前っ……//」

 

「確かに今回は、あたしの友達に気持ちを伝えるための、プレゼント選びだと言いました」

 

「ですが、その……「親友」でもあるプロデューサーさんに、気持ちを伝えるためでもあったんです……//」

 

「気持ち……?つまり、それって……」

 

「師匠から……いえ……これからは、あたしはあたしなりに「アイドル道」を極めていきたいんです」

 

「ですので……これからも、プロデューサーさんと「二人三脚で」一緒に、歩ませてもらえませんか……?」

 

「……そんなこと……決まってるだろ?言うまでもなく、俺も有香と歩んで行きたい。これからもずっとな」

 

「でも、それは「メロウ・イエロー」も一緒だ。シンデレラの舞踏会には、みんなで行きたいんだ」

 

「だから、その……今の俺には、どう答えていいかわからないんだ……ごめんな……」

 

「……そうですか……では……えいっ♪」

 

ギュッ♪

 

「この瞬間……いえ…せめて、今だけは「あたし」のプロデューサーさんですっ♪」

 

「うわっ……!?ちょっ……ゆ、有香っ……!?//」

 

「あたし……これからも、どんな壁でも越えていけるって、自信が付きました♪だって……」

 

「プロデューサーさんから……たくさんの、恋色のエナジーをもらっちゃいましたからね♪押忍♪」



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薄荷シンデレラ 北条加蓮

「よし!レッスンは終わりだ!しっかり休むんだぞ!」

 

「ア〜……やっと終わった……」

 

「結構、ハードだったね……」

 

「はぁ……はぁ……きっつぅ〜……」

 

カチャッ

 

「みんな、レッスンお疲れ様。喉が渇いただろ?差し入れを持ってきたぞ」

 

「あっ、プロデューサー♪来てくれたんだ♪差し入れ、ありがとう♪」

 

「お疲れ様。いつもありがとうな。プロデューサー」

 

「ちょうど、喉が渇いてたんだ。ありがとう」

 

「気にするな。で?どうだ?レッスンの方は」

 

「うん、順調だよ。だいぶ息も合ってくるようになったし。ねっ、加蓮、奈緒」

 

「そうだね。きついけど、体が少しづつ慣れてきたって感じかな〜」

 

「あぁ。あと、もう一歩ってところだ。あたしたちを待ってくれてるファンのためにも、頑張らないとな」

 

「あれぇ〜?待ってるのって、ファンじゃなくてむしろ、奈緒の方なんじゃないの〜?」

 

「ん?どういうことだよ……?」

 

「レッスン中に、しょっちゅうドアの方を見てて、トレーナーさんに注意をされてたよね〜?」

 

「……もしかして……奈緒は、レッスンのことよりプロ……」

 

「あっ……ああ……あ〜!あ〜!ち、ちげえよ!た……たまたま、ドアが視界に入っただけだって!」

 

「たまたまにしては……ねぇ〜?」

 

「うるさいうるさい!と・に・か・く!あとは、ライブに向けてひたすら頑張るだけだ!」

 

「ふふっ♪奈緒は、かわいいんだから……ケホッ」

 

「ちょっ……大丈夫か!?加蓮!?」

 

「……ちょっと……ドリンクが、気管支に入っただけだよ。プロデューサーってば、心配しすぎだって」

 

「なら、いいんだが……万が一ってことも、あるんだからな?」

 

「あ〜、はいはい。この話題は終わり終わり。私は大丈夫だからさ」

 

「……まあ……何事も無かったなら、いいんだけど……でも、気をつけてくれよ?」

 

「わかってるって、それじゃあ凛、奈緒。着替えに行こうよ」

 

「あっ……うん……」

 

「あ、あぁ……そうだな……じゃあ、行ってくるよ……」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜……美味しそう……♪」

 

「日頃、レッスンを頑張ってもらってるからな。そのお礼だよ」

 

「嬉しいんだけど……いいのか?」

 

「何が?」

 

「いや……本当にいいのかなって……何だか、悪いっていうか……」

 

「気にするなって。奈緒たちには、将来で返してもらうからさ」

 

「な、なななっ……!し、将来……!?//」

 

「あぁ。トライアドプリムスが将来、トップアイドルユニットになったら、返してもらおうって思ってさ」

 

「……あ……あぁ、そうか!そういうことか……//」

 

「一体、何だと思ったんだ?」

 

「な、何でもねえよ!とにかく、いただくよ!ありがとうな!プロデューサーっ!//」

 

「ふふっ、奈緒ってば……♪それにしても……う〜ん!このパフェ、おいし〜い!」

 

「本当……美味しいね……」

 

「よかった、気に入ってくれて、何よりだ」

 

「う、美味い!美味いよ!でも……高かったんじゃないか?」

 

「奈緒。さっき、気にするなって言っただろ?それに、他にもっと、気にするところがあるんじゃないか?」

 

フキッ

 

「なっ……!?あ、あわわわっ……//」

 

「「……」」

 

「全く……ほっぺにクリームをつけるだなんて、奈緒もまだまだ、子供だな〜」

 

「……わ、悪かったなっ……//」

 

「じゃあ、俺もそろそろいただこうかなっと……うん、結構いけるな」

 

------------------------------------------------

 

「……ねぇ、プロデューサー。このパフェ、美味しいね。つい夢中になっちゃうよ」

 

「うん、美味しいな……って、おい。凛も、ほっぺにクリームがついてるぞ。ほら」

 

「あ、ついてた……?……ありがとう……//」

 

「全く……お前たちはアイドルなんだぞ。それに、一人の女の子でもあるんだから……気をつけろよ?」

 

「……そうだね……気をつけるよ……♪ふふっ……♪//」

 

「……ねぇ〜。プロデューサーのパフェって、私のパフェとフレーバーが違うよね?」

 

「うん……?あぁ、そうだな。加蓮のがスイートポテト風味で、俺のがチョコ風味のフレーバーだな」

 

「……えいっ!」

 

パクッ♪

 

「「「!?」」」

 

「ちょっ……か、加蓮……!?」

 

「……う〜ん……プロデューサーのパフェも、美味しいねぇ〜……♪」

 

「か、かかか加蓮!は、はしたないぞ!?//」

 

「え?奈緒?何が、はしたないの?」

 

「な、何って……今……ぷ、プロデューサーの、スプーンに乗ってるのを、食べただろっ!//」

 

「……だって……美味しそうだったんだもん……許してよっ……ねっ?//」

 

「お前な〜……ふぅ、全く……食べたいなら食べたいって言ってくれよ……びっくりするだろ……」

 

「次から気をつけま〜すっ♪……えへへ、美味しかった……♪//」

 

「まあ、加蓮が前から行きたがってた店だし、気持ちはわからなくもないけどさ」

 

「えっ……加蓮が……?」

 

「あぁ。前、ロケの帰りに、加蓮と一緒に、ここの通りを通ったんだよな」

 

「そうだね。それで私がプロデューサーと、ここの店おしゃれだね〜、いいな〜、って話してたんだ」

 

「せっかくのサプライズなら、喜んでくれる場所がいいと思ったんだが……何か、安直すぎだったか?」

 

「ううん……覚えててくれただけでも……嬉しいよ……ありがとう……♪//」

 

「そうか、喜んでもらえてよかった。じゃあ、ほら、奈緒も凛も遠慮せずに、食べてくれ」

 

「えっ……あ、そ、そうだな……もらうよ……」

 

「うん……ありがとう、プロデューサー。私ももらうね」

 

「……うふふっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、美味しかったな」

 

「美味しかったぁ〜♪素敵なサプライズを、ありがとうねっ♪」

 

「すごいよかったよ。ありがとうな、プロデューサー」

 

「美味しかったよ、ありがとう」

 

「三人とも、喜んでくれてよかった。連れてきた甲斐があったよ」

 

「それにしても……すっごい、幻想的で綺麗だよね〜♪」

 

「あぁ。街路樹がこうして、イルミネーションで光ってくると、もう冬の季節が来たんだって、実感するよな」

 

「うん、すごい綺麗。まるでもう、クリスマスみたい」

 

「……ふふ〜ん……♪周りを見ると結構、男女のカップルが歩いてるよねぇ♪ね〜、奈緒♪」

 

「……っ!?な、何で急に、あたしに振るんだよ!//」

 

「だってぇ、奈緒もお年頃の女の子なんだしさ〜、ああやって、腕を組みたい人とかいるんじゃないのぉ?」

 

「な、なな……い、いねえよ!いいか!あたしたちは、アイドルなんだぞ!?」

 

「アイドルじゃなかったら……いるの?」

 

「り、り〜ん!話をややこしくするな!絶・対に、いねえから!」

 

「……まぁ……お年頃なのはわかるけど……程々にな……?」

 

「だ〜か〜ら〜ぁ!いねぇっつうの!プロデューサーも、あたしをそんな目で見るなっ!//」

 

「ふふっ……♪奈緒ってば、ムキになっちゃって……クチュン」

 

「おい、加蓮……大丈夫か……?」

 

「も〜、だから大丈夫だって。少し、くしゃみをしただけだよ〜」

 

「一応、カイロとかあるぞ?それとも温かいものでも飲むか?」

 

「う〜ん……それじゃあ……えいっ♪……人肌カイロをもらっちゃおうかな……なんちゃって……♪//」

 

「加蓮……!?な、何だよ、急にっ……!//」

 

「何って……ちょっと冷えるから……ねっ……?//」

 

------------------------------------------------

 

「ほ、ほら……こっちに、カイロがあるぞ?これを使えよ……なっ?」

 

「……ヤダ。だって……人肌カイロが、一番温かいもんっ……//」

 

「……そ、そうか……でも、俺の方はなぜか、顔が真っ赤になりそうなぐらい熱いんですけどねぇ……//」

 

「何さ、プロデューサーは、私にこういうことをされるのイヤなの?」

 

「イヤとか、そういう問題じゃなくてだな……」

 

「それに……私って昔から冷え性なんだよね……すぐに全身が冷えて……」

 

ヒュウゥゥ-…

 

「……うぅ……寒いっ……」

 

「……しょうがないな……ほら、俺でよければどーぞ。ただし、事務所までだからな」

 

「いいのぉ!?やったぁ〜♪プロデューサってば、やっさし〜♪じゃあ、凛や奈緒もこっちに来なよ♪」

 

「はぁっ!?あ、あたしは別にいいよっ……!//」

 

「……私も……少し、寒くなってきちゃったかな……」ギュッ

 

「ふふっ……♪いらっしゃい、凛♪」

 

「何だ……?凛も寒かったのか?」

 

「うん、少しね。ふふっ……プロデューサーって暖かいね……♪流石は、大人のお兄さんだよ……♪」

 

「……」チラッチラッ

 

「……奈緒も、どう?」

 

「なっ……!だ、だからっ!あたしはいいって〜の!ふんっ……!」

 

「もうっ……素直になればいいのに……しょうがないなあ、奈緒は……♪」

 

「……なあ……二人とも、寒いのはわかったけどさ……少し、近くないか……?」

 

「気のせいだよ。ねっ、加蓮♪」

 

「うんうん♪気のせい気のせい♪ほらっ、事務所に向かおうよ♪うりうり〜♪」

 

……ムニュッ♪

 

「ぐあっ……!//」

 

「ん……?どうしたの?顔が、真っ赤だよ?」

 

「な、何でもない!ほらっ!さっさと、事務所に帰るぞっ!//」

 

「……ふふっ……変なプロデューサー……♪」

 

------------------------------------------------

 

「おっ。相変わらず、レッスンを頑張ってるな」

 

「あっ、プロデューサー。また来てくれたんだ」

 

「お疲れ〜、プロデューサーっ♪」

 

「あぁ、お疲れ……って、加蓮。その腕、どうしたんだ?」

 

「腕……?あぁ、これね。少し、擦りむいちゃっただけだよ」

 

「おいおい……どれ、少し腕を貸してみろ」

 

「ふぇっ!?えっ……ど、どうしたの……急に……//」

 

「こら、絆創膏貼ってやるから、おとなしくしてろ」

 

「……い、いいって!ちょっと擦りむいただけだし、すぐ治るよっ!//」

 

「ダメだ。この傷から菌が入って、感染症になったらどうするんだ。だから、大人しくしてろ」

 

「も、もうっ……心配しすぎだよ……えへへ……♪//」

 

「……」

 

「ねぇ、プロデューサー……ちょっと……」

 

「……クチュンッ」

 

「加蓮!寒いのか!?ほら、温かいカフェオレを淹れてきてやるから、俺のコートを着て待ってろ!」

 

「だから大丈夫だって〜、プロデューサーは大袈裟なんだから〜」

 

「大袈裟でも何でもいいからほらっ!これを着とけ!」

 

「エェ〜。コートじゃ少し寒いから、もっと暖かくなるものが欲しいなあ〜」

 

「えっ……?」

 

「……例えば……「プロデューサー」カイロとかさぁ……温かそうだよね〜……?」チラッ

 

「なっ……!ば、ばかなことを言ってないで、これを着て待ってろ!……全く……!//」

 

「あんっ、プロデューサーのいぢわる〜」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ……プロデューサー……」

 

「おい、加蓮!また、そんなものばかり……!」

 

「私ぃ、このハンバーガーとポテト、好きなんだ〜♪プロデューサーも、少し食べる〜?」

 

「あのなぁ……最近、お昼はそればかりじゃないか……少しは、健康に気を使うとかだな……」

 

「ちょっとぐらい、いいじゃ〜ん♪それとも、プロデューサーが私に、ご飯を作ってくれるの……?」

 

「……しょうがないなあ……ほら、ちょっと来い。今日は俺が、栄養のあるものを食わせてやるよ」

 

「わ〜いっ♪やったぁ♪」

 

「……」

 

「ねぇ……プロ……」

 

「ダ〜メ!却下!!」

 

「エ〜!何でよぉ!別にいいじゃん!」

 

「お前なあ……わかってるのか……?」

 

「わかってるよ?だってぇ、私は現役の、キラキラしてるアイドルだも〜んっ♪」

 

「わ、わかってるなら何だ!その。露出が多すぎる服は!」

 

「セクシーでいいじゃん!何がダメなのさ!」

 

「ダメに決まってるだろ!加蓮はアイドルな以前に、女の子なんだぞ!?」

 

「むぅ……じゃあ、具体的にどこが悪いのか言ってよ!」

 

「具体的にって……その……む、胸が……あと、もう少しで……//」

 

「へ〜。プロデューサーってば、私のことをそんな目で見てたんだぁ〜……えっち……♪//」

 

「うるせえ!いいから、ダメだものはダメだ!そんな服で外を出歩くだなんて、絶対に許さないぞ!」

 

「……まぁ、いいけど。プロデューサーの前以外で、こんなに大胆な服を着るわけがないし」

 

「……ん?」

 

「それよりさ。これから私と、ショッピング付き合ってよ。いいでしょ?」

 

「はぁっ!?何で急に、そうなるんだよ!?」

 

「だって、この服で出歩くのは許さないんでしょ?それに、ちょうど新しい服が欲しかったところなんだよね」

 

「確かに言ったけどさ……」

 

「それならはい、決まり!今日は私のショッピングに一日中、付き合ってもらうからね♪」

 

「お、おいそんな引っ張るなって!わかった!わかったから!」

 

「……っ!」

 

------------------------------------------------

 

「うん、これも……あれも……あっ!あっちのも、オシャレでいいなあ〜♪」

 

「おいおい加蓮。はしゃぎたい気持ちもわかるけど、少し落ち着けって」

 

「エ〜。だってぇ〜……あ〜!あそこにも、新しい店が入ってる〜♪ねぇねぇ、早く行こうよっ♪」

 

「はいはい、お店は逃げないから、慌てなくても大丈夫だと思うぞ」

 

「ダ〜メ♪早くしないと足が生えて、お店が逃げちゃうよ♪」

 

「動く城かよ!全く……いくらアパレルショップが密集してるとはいえ、たっぷり時間はあるだろうに……」

 

「ううん♪まだまだたくさん、やることがあるから急がないとっ♪」

 

「服を買って……プリも撮って……美味しいものを食べて……そのあとも色々と……えへへ……♪//」

 

「……あの……加蓮さん……?俺たち、服を買うために「ショッピング」をしに来たんですよね……?」

 

「ん?何を言ってるの?私たち、デートしに来たんでしょ?」

 

「……は?……デート……?」

 

「そうだよ♪今のプロデューサーは、私の彼氏なのっ♪何か問題でもある?」

 

「いや、その……大ありだと思うんですけど……色々と……」

 

「何さ。元はと言えば、プロデューサーが悪いんじゃ〜ん」

 

「何でだよ!別に、俺は何もしてねえだろ!」

 

「へ〜、そういうことを言っちゃうんだ〜……じゃあ……」

 

ムニッ♪

 

「……っ!?」

 

「……さっきは、な〜んで……あの服で……外出させてくれなかったのカナ〜?」

 

「いや……だからそれは……ていうか、急にくっついてくるな!」

 

「あ、そうだった〜♪「コレ」のせいだったっけ〜♪……プロデューサーの、えっち……♪//」

 

「えっちって……あのなあ……俺はただ、加蓮のことが心配でだな……//」

 

「はいはい♪お気遣いど〜も♪私のことをそんなに意識しちゃって……かわいいんだからっ♪」

 

「し、知るかっ!ほら!服を買いに行くんだろっ!バカなことをしてないで、とっとと行くぞ!//」

 

「んもうしょうがないなあ〜。じゃあ次は、あのお店に行こっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ほら。揚げたてらしいから気をつけろ」

 

「うむ、ご苦労♪私これ、大好きなんだよねぇ〜♪」

 

「トルネードポテトって言うんだっけ?本当に加蓮は、ポテトが好きだよな」

 

「前に、凛と一緒に食べた時に気にいっちゃってね♪また、食べたかったんだ♪」

 

「楽しむのはいいけど、ジャンクフードは程々にしておけよ?栄養バランスは、しっかりと考えないとな」

 

「わかってるってぇ〜♪あむっ……ん〜♪ホクホクのサクサクで、美味し〜い♪」

 

「本当にわかってるのかよ……ま、いいか。それじゃあ俺も、食べてみるかな」

 

「あつつ……うん、結構いけるじゃないか。揚げたてだから、香ばしくて美味しいよ」

 

「でしょでしょ?これでプロデューサーも、ポテト仲間だね♪今度、凛や奈緒も誘って、また一緒に来ようよ♪」

 

「ははっ、そうだな。ところでどうだ?気に入った服は見つかったか?」

 

「うんっ♪おかげで、たくさんいい服が買えちゃった♪今日はありがとうね♪」

 

「よかったよかった。加蓮が満足してくれたなら、俺は嬉しいぞ」

 

「プリを撮って、プロデューサーと一緒にお店を周って、美味しいもの食べて、遊べて……大満足だよっ♪」

 

「……なあ……やっぱりさぁ、プリは無しにしないか……?」

 

「ん?何のこと?私、プリはどこにも貼ってないよ?」

 

「でも、スマホには保存しただろ?」

 

「うんっ♪今の時代は、スマホに保存できるからね〜♪だから、実質「無い」ようなもんじゃんっ♪」

 

「屁理屈を言いやがって……おい加蓮。お前は、アイドルなんだぞ?わかってるのか?」

 

「そうだよ♪私は立派なアイドルだもんっ♪それじゃあ、こうしようよ♪」

 

「このプリは、私たち二人だけの「大切な思い出」だよ♪ねっ?これなら全然、やましくないでしょ?」

 

「だ、だけどな〜……」

 

「うふふ……♪あの子が見たらきっと、羨ましがるだろうなあ〜♪」

 

「あの子……?何の話だ?」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、私って、入院生活が長かったでしょ?アイドルになったのも、ほぼ、退院から間もなかったし」

 

「だからね……つい最近まで、こういう普通の女の子の遊びって、あまりしたことがなかったんだ」

 

「……っ」

 

「それで、ふと、入院してた頃の私が、今の私を見たらすごく羨ましがるだろうな〜って、思っちゃってさ♪」

 

「……」

 

「……わかったよ。このプリは、俺と加蓮の大事な思い出だ。大切にしろよ」

 

「やった〜♪プロデューサーってば、やっさし〜♪じゃあしっかりと、保存しておこっと♪」

 

「ただし、他のみんなには内緒だからな?……ふぅ……本当に、困ったアイドルだな……加蓮は……」

 

「えへへ……♪だから、これからも私を見守ってね♪プロデューサー♪」

 

「あぁ。それじゃあ、そろそろ暗くなってきたし、帰ろうぜ」

 

「うん、行こう行こう♪」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……!だから、さっきから距離が近すぎだって!//」

 

「エ〜。だって、今のプロデューサーは、私の彼氏だから問題ないじゃん♪」

 

「だ・か・ら!大ありだっつ〜の!全く……ついでに家まで送ってやるから、それまでだからなっ……//」

 

「ついで?これから何かあるの?」

 

「あぁ、ちょっとやり残したことがあるから、事務所に行くんだよ」

 

「ふ〜ん?大変だね。私も一緒に、手伝おうか?」

 

「それはありがたいけど、気持ちだけ受け取るよ。女の子に、夜道を歩かせるわけにはいかないからな」

 

「ざ〜んねん。でも、しょうがないか。事務所で二人っきりになったら、何をされるかわからないしね♪」

 

「おい!どういうことだよそれ!」

 

「さぁね〜♪あ、でも……プロデューサーのことだから、帰ってる途中に私のことを……いや〜ん♪こわ〜い♪」

 

「お前……!……あぁもう!とっとと、加蓮の家に向かうぞ!」

 

「はいはい♪頼りにしてるぞ♪お・お・か・みくんっ♪ふふっ……♪」

 

「くっ……バカにしやがって……!」

 

------------------------------------------------

 

カタカタ……

 

「……はぁ〜……終わった、終わった」

 

「資料も作り終えて、スケジュール調整も終わったし……そろそろ帰るか」

 

「……」

 

ほら、私って入院生活が長かったでしょ?アイドルになったのも、ほぼ、退院から間もなかったし

 

それで、ふと、入院してた頃の私が、今の私を見たら、すごく羨ましがるだろうな〜って思っちゃってさ♪

 

「……加蓮……」

 

コンコン

 

「ん?こんな時間に、ノック……?え〜っと、どちら様でしょうか……?」

 

「……入るよ」

 

「って……凛……!?どうしたんだ……?」

 

「ちょっと、用があって来たんだ」

 

「何だ?忘れ物とかか……って……ちょっ……!?り、凛っ!?」

 

「……ずるい……加蓮ばっかり……ずるいよっ……!」

 

「えっ……ずるいって……何がだ……?」

 

「最近、加蓮加蓮加蓮って……私のことを、全然構ってくれないじゃん……!」

 

「そんなことはないと思うぞ?ほら、この前、俺を含めて四人で食べに行っただろ?」

 

「うん、それはすごい嬉しかったよ。でも、あそこも加蓮が選んだ場所だよね?」

 

「絆創膏を貼ってもらえたり、料理を作ってもらえたり、ショッピングに一緒にいったり……他にもっ……!」

 

「……凛……とりあえず、そこに座って落ち着こうぜ。な?」

 

「っ……うん……わかった……」

 

「まぁ、確かに俺も、多少過保護すぎるかなって、思うときはあるんだぞ?」

 

「でも、万が一、加蓮に何かあったらって考えるとさ、やっぱり目が離せないんだ」

 

「そんなのわかってる……わかってるんだよ!でもっ……!」

 

「凛の言いたいこともわかる。色々と、相談したいことがあったんだよな?察してやれなくてごめんよ」

 

「……本当に反省してる?」

 

「あぁ、そのつもりだ」

 

「……じゃあさ……いいよね……」

 

「……凛?って、なっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「少し……こうさせて欲しいかな……」

 

「あ、あの……凛さん……?少し、近すぎじゃないですかね……?何も、そんな隣にこなくても……」

 

「……何さ。私をずっと、放置してたんだからこれくらい、いいじゃん」

 

「だけどさ……」

 

「あのね、私は加蓮のことはよく知ってるよ。過去にとらわれずに、今を生きようと頑張ってるのもね」

 

「それに答えようと、プロデューサーも一生懸命なのはわかってるんだよ?……でも……」

 

「……最近は、少し寂しかった……だから、本当に反省してるなら……私のことも…….もっと見てよ……//」

 

「……わかった、頑張ってみるよ。凛もまだまだ、目が離せないからな」

 

「本当……?……約束だからね……?」

 

「うん、約束だ。よし!トライアドプリムスがもっと輝けるように俺も頑張らないとな!……ところで、凛?」

 

「何?」

 

「夜も遅いし、そろそろ帰らないと、親御さんが心配すると思うんだけど……」

 

「大丈夫、一言言ってきたから。それにお母さんは、プロデューサーを信頼してるから安心だよ」

 

「でもですね……俺がそろそろ恥ずかしくなってきたっていうか……//」

 

「ヤダ、離さない。今まで私を、寂しがらせた罰だよ」

 

「……あぁ、もう……わかったよ……煮るなり焼くなり、好きにしてくれ……」

 

「……そうする……//」

 

「だけどな、凛。いくら親御さんの了承を得ても、女の子が夜遅くに、一人で歩くのはあまり関心しないぞ?」

 

「大丈夫だよ。だって……今はプロデューサーと二人きりだし、私を守ってくれるじゃん……♪//」

 

「あのなぁ……まあいいか。気が済んだら家まで送ってやるよ」

 

「うん……ありがとう……♪ふふっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「よぉ、加蓮」

 

「あっ、プロデューサー♪お見舞いに来てくれたんだ♪」

 

「大丈夫か?ほら、色々と買ってきたぞ」

 

「野菜ジュースに、ヨーグルトに、お水……ありがとう♪嬉しいなぁ♪」

 

「全く……レッスン中に急に倒れるから、心臓が止まりそうになったぞ」

 

「……ごめん……急に、頭がフラついちゃって……」

 

「ま、元気ならいいけどさ。ライブまでまだ、時間があるからゆっくり療養しとけよ」

 

「うん……そうさせてもらうよ……ねぇ、プロデューサー……やっぱり、こういう運命なのかな……?」

 

「ん?運命……?」

 

「ほら、私って、生まれつきこういう体でしょ?だからまた、入院生活に逆戻りしちゃうのかなって……」

 

「加蓮……」

 

「凛や奈緒、プロデューサー。そして、事務所のみんなとたくさん……友達になれたのに……」

 

「また……一日中……ベットから、木を眺めるだけの生活に……戻っちゃうのかなぁ……クスン……」

 

「……」

 

ギュッ

 

「あっ……」

 

「……なあ、加蓮。お前は考えすぎなんだよ。確かに、加蓮の生い立ちと境遇は色々と聞いている」

 

「だけど、それはもう過去の話だろ?今の加蓮は輝いてるアイドル。それは、揺るぎない事実だ」

 

「……」

 

「それに、お医者さんに完治したから大丈夫だって言われたんだろ?なら、心配する必要ないじゃないか」

 

「……確かに……今の私は、テレビの向こうにいた、あの憧れていたアイドル…なんだよね……」

 

------------------------------------------------

 

「その通りだ。だからもう、変なことは考えるな。アイドルになった以上は、もっと輝きたいだろ?」

 

「……うん、輝きたい……」

 

「な?だから、今はただ前だけを見ろ。辛い時は、俺が支えてやるからさ」

 

「そうだね……後ろばかり見てても……何も、始まらないもんね……」

 

「よし、その意気だ。ほら、とりあえず、このハンカチで涙を拭きな」

 

「……ありがとう……ねぇ、私ね……プロデューサーと出会って正直……すごい後悔してるんだ……」

 

「えっ……後悔……?」

 

「だって……ここまでトントン拍子で、夢が叶っちゃったらさ……もう……後戻り出来ないじゃん……♪」

 

「……そうだな。今の加蓮は、輝くアイドルだ。もう、あの頃の加蓮じゃない」

 

「それにやらない後悔より、やる後悔だろ?これからも、一緒に頑張っていこうぜ」

 

「うん……これからもよろしくね……プロデューサー……//」

 

コンコン

 

「加蓮、いる……?」

 

「おっ、凛と奈緒も、お見舞いに来てくれたみたいだ。じゃあ、俺はそろそろ退散しようかな」

 

「えっ……もう帰っちゃうの……?」

 

「凛と奈緒は学校があったからな。夕暮れ時だし、ちょうど時間的に、入れ違いになると思ってたんだ」

 

「だから、野郎の俺はとっとと退散するよ。女の子同士で、喋りたいこともあるだろうしさ」

 

「……そうだね。お見舞いに来てくれて、ありがとう……♪」

 

「気にしないでくれ。じゃあ、元気でな。ライブを楽しみにしてるぞ」

 

「うん、頑張るよ。あっ……最後に、ちょっといいかな……?」

 

「ん?どうした?」

 

「……励ましてくれた……お礼だよっ……♪//」

 

チュッ♪

 

「なっ……!?ちょっ……か、加蓮……!?」

 

「うふふ……してみちゃった……♪……もしかして……「お口」の方が、よかった……?//」

 

「してみちゃったって……し、知るか!とりあえず、俺はもう帰るぞっ!じゃあなっ!//」

 

「また、今度ね♪もうっ、あんなに照れちゃって……プロデューサーはやっぱり、かわいいなあ♪」

 

「……でも……あんなに力強く、私を抱きしめてくれて……結構、ドキドキしちゃったな……えへへ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「加蓮、お邪魔するよ」

 

「うん、入って。凛も奈緒も、お見舞いに来てくれたんだね。嬉しいよ♪」

 

「当たり前だろ?あたしたちは友達なんだからさ。ところで加蓮、具合はどうだ?大丈夫か?」

 

「うん。だいぶ、よくなったかな。あともう少ししたら、レッスンに復帰出来そうだよ」

 

「よかった……ところでさっき、プロデューサーが顔を真っ赤にして、出て行ったけど……何かあったの?」

 

「えっ、そんなに顔を真っ赤にしてたの?さっきまで、普通だったのに……どうしちゃったんだろうね?」

 

「まっ、ほっとこうぜ。それより加蓮、本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「だから、大丈夫だって〜♪奈緒は心配性だなぁ〜♪」

 

「全く……レッスン中に急に倒れるから、心臓が止まりそうになったぞ」

 

「……ぷっ……奈緒ってば、プロデューサーと全く同じことを言ってるっ……あははっ♪」

 

「ええっ!?ぷ、プロデューサーが……!?じゃなくて!本当に心配したんだからな!あの時はっ!//」

 

「あははっ、ごめんごめん♪これからは気をつけるよっ♪」

 

「全くっ……!//」

 

「ふ〜ん。塩対応の割にはしっかりと、プロデューサーのことがわかってるじゃん♪」

 

「う、うるさいっ!と・に・か・くほら!お見舞いの品だっ!//」

 

「ん……?これは……写真?」

 

「あぁ。トライアドプリムス結成時に撮った、あの時の記念写真だ」

 

「お見舞いついでに持って行けって、プロデューサーがね。丁寧に三人分、写真立てに入れてくれてるし」

 

「いつの間にか、出来てたんだ……大事に飾らせてもらうね♪ありがとう♪」

 

「本当……変なところで気を利かすんだからなぁ、プロデューサーは」

 

「ふふっ。それが、プロデューサーのいいところなのかもね」

 

「……」

 

「……ねぇ……二人ってさ……プロデューサーのことを……どう思ってるの?」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……?」

 

「どっ、どうって……急に、何だよ……?」

 

「ほら、色々とあるじゃん。頼り甲斐がある〜とか、お兄ちゃんみたい〜とかさ」

 

「……ま、強いて言うなら、超お人好しかな。うんざりするぐらいに」

 

「確かに……お節介ではあるよな……色々と、鈍いところもあるけど……」

 

「なるほどね……そういう風に思ってるんだ」

 

「加蓮は、どうなの……?」

 

「私は……「好き」……かな」

 

「「!!」」

 

「あのね。スカウトされた時は、何もかもいい加減だったんだ。私」

 

「努力なんて柄じゃないと思ったし。無愛想で、やる気がなくて。正直、すぐに見捨てられると思ってた」

 

「でも……プロデューサーは、そんな私を見捨てずに、ここまで育ててくれた。それで、変化していったんだ」

 

「一緒に過ごしてるうちに「期待に応えたい」って思いが、いつしか「好き」って感情にね……」

 

「……ふふっ♪入院してる時の私に見られたら、きっと笑われちゃうかもね。超乙女〜♪って」

 

「加蓮……じゃあ言うよ……私も……好きだよ」

 

「正直、鈍くて鈍感で、誰にでもいい顔をしたり、お人好しすぎるところは、嫌い。大嫌い」

 

「……でも……いざという時は、凛々しかったり……優しく包み込んでくれる……そんなところが……好き」

 

「……そっか……奈緒は、どうなの……?」

 

「あ、あたしは……」

 

「……奈緒?」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……あーそうだよ!あたしも、プロデューサーのことが好きだよ!お節介なところも、バカ正直なところも、全部ひっくるめて大好きだよ!!」

 

「うふふっ♪そうなんだ……♪」

 

「なな、何だよっ!何か、文句あるのかぁ!?//」

 

「いや、やっぱりねって感じ」

 

「うんうん♪奈緒はわかりやすいからな〜♪前から、そんな気はしてたんだよね〜♪」

 

「ふ……ふんっ……!//」

 

「さてと……これで、みんなの気持ちがわかったね」

 

「そうだね……でも……今はまだ、アイドルに集中したいかな。もっと、アイドルとして高みを目指したいし」

 

「凛……うん、そうね。プロデューサーも、それを望んでるだろうしね」

 

「……そうだな。あたしたちは縁があって、こうしてユニットを組んでるんだもんな」

 

「それに……最終的に決めるのは、私たちじゃないしね。本当に困った人だよ……憎らしいぐらいに」

 

「だな。でも、誰にでも優しいし、誰にでもいい顔するからなぁ。どうなるんだか」

 

「……ねぇ……凛、奈緒……これからも……私と、仲良くしてくれる……?」

 

「もちろんだよ、加蓮。でも、同時に、私たちはライバルでもあるからね。譲れないところは、譲らないよ」

 

「……確かに……あたしたちは戦友でもあり、同時に、戦わなきゃいけない運命でもあるんだよな……」

 

「あははっ♪何さ、戦わなきゃいけない運命って。奈緒ってば、中二病っぽい〜♪」

 

「う、うるさいっ!同じアイドルなんだから、しょうがねえだろ!//」

 

「……だけど……あたしはあたしなりに、二人に応えていきたいんだ。時には、対立することがあっても……」

 

「それに、どんなことがあっても、あたしたちはトライアドプリムスだ。それは変わらないよ。絶対に」

 

「うふふ……♪これからもよろしくねっ♪凛、奈緒♪」

 

「うん。悔いのないように、三人で全力で頑張ろうよ」

 

「だな。じゃあ今は、目の前のライブに向けて頑張るか!記念すべき、デビューライブだしな!」

 

「そうだね……二人とも、今日はお見舞いに来てくれてありがとう♪」

 

「いいってことよ。いつでも待ってるからな」

 

「元気で戻ってきてね。加蓮」

 

「うん……必ず戻るよ♪私たちの初ライブ、成功させようよ♪……絶対にねっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「三人とも、どうだ?調子の方は」

 

「うん、万全だよ」

 

「私も完璧♪バッチリ、決めちゃうんだから♪」

 

「……」

 

「……奈緒?どうしたんだ?」

 

「……ど……どうしよう……緊張しすぎて、足の震えが止まらないんだ……」

 

「まあ落ち着け。この会場に来てくれてるファンの人たちは、きっと暖かく迎えてくれるさ。ほら、見てみろ」

 

「……うわぁ〜……めっちゃ、人いるじゃん……」

 

「すごい人数だね……私たちのために、こんなに来てくれたんだ……」

 

「「トライアドプリムス」の初お披露目ライブだからな。みんな、楽しみにしてくれてるはずだ」

 

「人人人……あ、やばい……ますます、緊張してきちゃった……」

 

「それじゃあさ、奈緒。プロデューサーに、ギュッとしてもらえば?」

 

「ギュッ……?何だよ、それ?」

 

「プロデューサーに思いっきり、抱きしめてもらえばいいってことだよ。奈緒も、思いっきり抱きついてさ」

 

「「なっ……!そ、そんなこと、出来るかっ!!」」

 

「……あ、あははっ♪奈緒とプロデューサーってば、息ぴったりじゃんっ♪ウケる〜♪」

 

「ふふ……やっぱり、二人はお似合いだね。色々な意味で♪」

 

「全く……ライブ直前に、アイドルが何てことを言いやがるんだ……//」

 

「そ、そうだぞ!あたしたちはアイドルなんだぞっ!?しかも、これから歌いに行くんだからなぁ!?」

 

「はいはい、わかってますよぉ♪あ〜♪なんだか二人を見てたら、すっかり緊張がほぐれちゃった♪」

 

「そうだね、なんだか胸の内が、すっきりしたような気がするよ」

 

「くっそ〜っ…!こんな時まで、あたしをおもちゃにしやがってぇっ…!」

 

「さっ、夫婦漫才を楽しんだところで……はいっ♪プロデューサー♪」

 

「ん……?何だよ加蓮。急に、両手を広げて」

 

------------------------------------------------

 

「私を思いっきり、ギュッとしてよ♪ねっ……♪」

 

「おいおい……また、俺をからかう気だな?もう騙されないぞ」

 

「……今度は……本気だよ。私ね、本当はとても不安で、緊張してるの……だから、お願い……」

 

「えっ……加蓮?」

 

「……私も、して欲しい……何でかは……言わなくてもわかるよね?」

 

「何だよ……結局、二人とも緊張してるんじゃないかよ……まっ、あたしは元から緊張してたんだけどな……」

 

「……だ、だからさ……プロデューサーとして、やるべきことは、やってくれてもいいんじゃないか……?」

 

「……凛……奈緒……わかったよ……ほら、いくぞ」

 

ギュッ……

 

「「「あっ……//」」」

 

「頑張ってくれ……これはファンのみんな、そして、三人の大切な、デビューライブでもあるんだ」

 

「だから無事、成功させようぜ。俺の大切な、アイドルたち……」

 

「「「……//」」」

 

「……どうだ?落ち着いたか……?」

 

「ま、まあ、落ち着けたかな……!ちょっとだけなっ……!//」

 

「……何さ……今日は……男らしいじゃん……//」

 

「今日は余計だ。それじゃあ、そろそろ開演の時間だ。行ってこい」

 

「……ねえ、プロデューサー。私たちを、ここまで連れて来てくれてありがとう♪これからも、よろしくね♪」

 

「うん、よろしく。今の加蓮はもう、立派な輝いてるアイドルだ」

 

「ふふっ……♪私をアイドルにした以上は「最後まで」責任を……取ってもらうからねっ……♪//」

 

「わかってるさ。責任を取って無事、シンデレラのお城にまでお連れしますよ。お姫様」

 

「……約束したからね♪それじゃあ、奈緒、凛、行こうか♪」

 

「あぁ。もちろん三人で手を繋いでな」

 

「私たちなら、これからどんなことがあっても、乗り越えていけるよね」

 

「当たり前じゃない♪だって「最高の三和音」なんだしねっ♪」

 

「だから……もっと輝くために……じゃなくて……響かせていこうよ。私たちの「トライアドプリムス」を」

 

「うん。あるのは、目の前のただ一本の道。それだけだもんね」

 

「だな。あたし達は、ただひたすら、前を向いて進むだけだ。それじゃあ行くぞ!」

 

「「「せーの!!」」」

 

「「「輝きの向こう側に!!」」」



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恋風シンデレラ 高垣楓

「ただいま、戻りました♪」

 

「ただいまにゃ〜!」

 

「あっ、お疲れ様です。楓さん、みく」

 

「ねねっ!Pチャン!Pチャン!」

 

「ん?」

 

「みく、今日もお仕事頑張ったよ!」

 

「うん、いつもありがとうな」

 

「みく、今日もお仕事頑張ったよ!!」

 

「……ありがとうな?」

 

「……何にもないの?前にやってくれた、あれとか……」

 

「えっ……?あれって、何だよ?」

 

「も〜!Pチャンのイヂワル!あれと言ったらあれにゃ!!」

 

「さぁ……知らないなあ」

 

「フ〜ン……そうやって、みくのことをイヂメるんだ〜。楓さ〜ん、Pチャンがイヂワルをしてくるにゃぁ〜」

 

「え〜、プロデューサーさんってば、ひどいですね〜」

 

「楓さんも何、みくに乗ってるんですか!……ったく……わかったよ」

 

「ほんとかにゃ!?」

 

「あのなぁ。恥ずかしいから、一回だけって約束したよなぁ?」

 

「そんなこと聞いてないにゃ〜♪ほら、早く早くぅ♪」

 

「悪知恵の働く猫め……ほら、来い」

 

ナデナデ

 

「にゃふふ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「あらあら♪みくちゃん、いいですね♪」

 

「お前な〜……少しは楓さんを見習って、大人になったらどうなんだ?」

 

「知らにゃ〜い♪みくは自分を曲げないのにゃ♪」

 

「全く……すみません、楓さん。お恥ずかしいところを、見せてしまって……」

 

「いえいえ、お構いなく♪みくちゃんも女の子ですからね♪ところで、プロデューサーさん」

 

「はい?」

 

「私もたくさん、お仕事を頑張りましたよ?」

 

「えぇ。いつもありがとうございます」

 

「私もたぁ〜くさん、お仕事を頑張りましたよ?」

 

「……ありがとうございます?」

 

「……じ〜……いいなぁ〜、私もみくちゃんみたいに何か、して欲しいなぁ〜」

 

「は、はぁ……それじゃあ今度、一緒に飲みに行きま……」

 

「「今」して欲しいなぁ〜?」

 

「……」

 

「じゃあ、楓さんもPチャンに、ナデナデしてもらうといいにゃ♪」

 

「あのなぁ……楓さんは、大人のお姉さんなの。あんまり、大人をからかっちゃダメだぞ」

 

「はい♪よろしくお願いします♪私にも、なでなでしてください♪」

 

「……えっ……か、楓さん……?」

 

「もしかして……嫌でしたか……?」

 

「いえ……まあ、楓さんがいいなら……では……」

 

ナデナデ

 

「あっ……うふふ……♪//」

 

「んにゃぁ〜♪」

 

(二人とも、髪の毛がツヤツヤでサラサラだなぁ……)

 

(……何してるんだろ……俺……)

 

ガチャッ

 

「おはようございま……えっ……あっ……す、すみませんっ!」バタン!

 

「ちょっ……み、美優さん!?ま、待ってください!これは違うんです!誤解ですっ!!」

 

「「〜〜♪」」

 

------------------------------------------------

 

「は、はぁ……そういうことだったのですね……すみません……早とちりしてしまって……」

 

「いえいえ。俺も、誤解を生むようなことをしてたので……」

 

「……いいなぁ」

 

「えっ……?」

 

「あっ……な、何でもないです……//」

 

「気持ちよかったですね〜♪みくちゃん♪」

 

「んにゃあ〜……♪Pチャンの、最高だったにゃあ〜……♪//」

 

「おい!そこの二人!変な風に言うのやめろ!」

 

「ところで、プロデューサさん……頼まれてた物を、お届けに来たのですが……大丈夫でしたか……?」

 

「あっ、あれ、届いたんですか!?」

 

「はい、こちらです……」

 

「これは一体……?」

 

「アロマポットです。この前、美優さんと一緒にアロマショップに行って、予約してもらってたんですよ」

 

「……ヘェ〜……美優さんと二人で、アロマショップねぇ〜……フ〜ン〜……」

 

「いや〜、でも、すみませんね。予約してもらっただけではなく、オイルまで選んでもらってしまって」

 

「いえいえ……普段は一人で来るので、二人で一緒に見れて、楽しかったですし……」

 

「……これで……プロデューサーさんとお揃いですね……♪なんて……♪//」

 

「ははっ、こんな綺麗なお姉さんに、アロマを選んでもらえるなんて本当、俺ってすごい、幸せ者ですよ」

 

「き、綺麗だなんて……そんな……//」

 

「……じ〜」

 

「ん……?何だよみく。何か、俺の顔についてるのか?」

 

「……Pチャン……えっちだにゃ……」

 

「はっ、はぁ!?何だよ!急にっ……!」

 

「知らにゃ〜い。Pチャンは、Pチャンだしぃ〜」

 

「ですねぇ〜。プロデューサーさんは、プロデューサーさんですもんねぇ〜」

 

「楓さんまで……一体、何なんですか!」

 

「知りませ〜ん……むぅ……いいなあ……」

 

------------------------------------------------

 

「……これで、よしっと……ふぅ……終わったぁ〜」

 

「お疲れ様です、プロデューサーさん。はい、コーヒーです♪」

 

「あ、ありがとうございます、楓さん。すみませんね。でも、よかったんですか?せっかくのオフなのに……」

 

「いえいえ、気にしないでください♪ところで、今日の仕事はこれで終わりなんですか?」

 

「えぇ。楓さんが手伝ってくれたおかげで、何とか終わらせることができました」

 

「それはよかったです♪ということは、これからお暇なんですか?」

 

「そうですね。これから……」

 

バンッ!

 

「こんにちは〜☆プロデューサー、い・る・か?☆」

 

「あ、心さんこんにちは」

 

「おい☆何でそんなに、他人行儀なんだよ☆」

 

「何か用ですか?心さん」

 

「……」

 

「……おい、心、何の用だ。急に、扉を乱暴に開けて」

 

「心さん、お元気そうですね♪」

 

「楓さんもこんにちは☆プロデューサー、今、暇?ていうか、暇だよな☆」

 

「暇じゃない、すごい忙しい」

 

「嘘つけ☆扉の前から一言一句、全部聞いてたぞ☆ほら、とっとと支度しろよ☆」

 

「ストーカーか、お前は!……わかったよ」

 

「何か、約束事でも……?」

 

「はい☆これから、めっちゃうめ……スウィーティー☆なものを一緒に、食べに行くところなんです☆」

 

「ったく……急に、メールをよこしやがって……これで、俺に仕事があったらどういうつもりだったんだ」

 

「まあ、気にすんなって☆プロデューサーのことわぁ、はぁとは全てお見通しだから、安心し・と・け☆」

 

「だから怖えって!」

 

「ふふっ♪何か夫婦漫才みたいで、面白いですね♪」

 

「め、夫婦って……そんなじゃないですよ……こいつとは……」

 

「よかったら、楓さんもどうですか?すごい、スウィーティーですよ☆」

 

「私も……お邪魔しちゃって、いいんですか……?」

 

「もちろんです♪プロデューサーも、いいでしょ?」

 

「えっ……?あ、はい。もし、楓さんがよければ……」

 

「……では、お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます♪」

 

「それじゃあ、レッツ、スウィーティー☆」

 

「スウィーティー♪」

 

------------------------------------------------

 

「ん〜♪うめ……美味し〜い☆」

 

「とても、美味しいですね♪」

 

「うん。結構、いけるな」

 

「あ〜♪前から念入りに、リサーチしといてよかった☆」

 

「えっ?唐突に、決めたんじゃないのか?」

 

「そんな訳ねぇだろ☆雑誌を見たり、実際に歩き回ったりして、見て決めたんだぞ☆感謝しろよ☆」

 

「確かに美味いけど……そんな手間かけるなら、適当にそこらに入れば…むぐっ!」

 

「ほら☆このマカロン美味しいでしょ☆それ以上喋るなよ?このニブチン☆」

 

「ん、んぐっ……おい!急に口にマカロン突っ込むな!」

 

「ふふっ♪お二人とも、本当に仲がいいんですね♪」

 

「これでもこの人、初対面の時はすごい他人行儀だったんですよぉ?はぁと、悲しくて悲しくて……」

 

「誰だって、初対面はそうなるだろ!駅前のキャッチじゃあるまいし、急に打ち解けれるか!」

 

「それにしては……何だか、昔からの幼馴染みたいに、見えますね」

 

「いえいえ……なんか、心の猛烈な勢いに押され続けて、今見たいな間柄になっていうか……」

 

「アイドルは勢いだからね☆早く打ち解けて、ガツガツ、プロデュースしてもらわないとって思ったんです☆」

 

「成る程……それでは、プロデューサーさんっ♪その勢いで私のことも「楓」って呼んでください♪」

 

「は、はいっ……!?」

 

「か・え・でって呼べよ☆なんちゃって♪」

 

「やぁ〜ん☆楓さんてばすっごーいスウィーティー☆」

 

「え、えっと……か……かえ……」

 

「何、緊張してるんだよ☆思春期の高校生かよっ☆」

 

「う、うるさいぞ心!……か、か……かえで……」

 

「!!」

 

「……さんっ……ごめんなさい!やっぱり、楓さんは楓さんって、呼ばさせてください!」

 

「……む〜っ……心さんは普通に……呼び捨てにしてるくせに……」プクッ

 

「そ、それはですね……心が、特別っていうか……」

 

「え〜☆と・く・べ・つ、だなんてぇ〜☆はぁとのはぁとが、ドキドキしちゃう〜☆」

 

「話をややこしくするな!さ、さあ!せっかく心が選んでくれた店ですからね!スイーツを楽しみましょう!」

 

「……いぢわる……」

 

------------------------------------------------

 

「おい☆何、はぐらかそうとしてるんだよ☆」

 

「う、うるさいっ!ていうか心!お前だって「楓さん」呼びじゃないかよ!」

 

「エ〜、だってぇ、楓さんははぁとのパイセンだしぃ☆だから、まぁ……多少はね?」

 

「そんな、お構いなく。私も、もっと心さんと仲良くなりたいです♪」

 

「う〜ん……あっ、そうだ☆それじゃあ、お互いに「ちゃん」でどうですか!?」

 

「あら、いいですね♪それでは、よろしくお願いします♪心ちゃん♪」

 

「うんっ♪よろしくね♪楓ちゃん♪」

 

「よかったよかった、これで二人とも、ますます仲良くなれたな」

 

「「……」」ジー

 

「ん?どうしたんだ?二人とも」

 

「ちょっと〜。な〜に、円満に終わったって顔しちゃってるの〜?まだ、一番肝心なことが終わってないぞ☆」

 

「うぐっ……!な、な〜んのことかなぁ〜……」

 

「……ねぇ、プロデューサーさん。こんな格言知ってます?」

 

「愛すること、それは行動することだ。フランスの詩人、ヴィクトル・ユーゴーの言葉です♪」

 

「格言って……今度はまた、何に影響されたんですか〜……?」

 

「今の状況に、ぴったりの言葉だと思ったんです♪しょうがないですから今は「ちゃん」で妥協してあげます♪」

 

「わぁお☆これでさらに、仲良くなれるねぇ☆ほらっ、善は急げだぞ☆」

 

「ちゃんって……何だか余計に、恥ずかしい気が……//」

 

「私……プロデューサーさんともっと……仲良しになりたいな〜……?」ウルッ

 

「くっ……!……わかりましたよ……これからも、よろしくな……か、か……」

 

「……わくわく♪」

 

「……楓……ちゃん……//」

 

「ふふっ……♪よろしくお願いしますねっ♪プロデューサー「くん」……♪//」

 

「ちょっ……「くん」って……//」

 

「「……//」」

 

「ねぇ〜、はぁともぉ、プロデューサーくんと仲良くなりたいなぁ〜☆」

 

------------------------------------------------

 

「あぁ、よろしくな。佐藤」

 

「……♪」

 

ゲシッ!

 

「いてっ!何をするんだよ!」

 

「んもう、いぢわるだなぁ〜♪「は・ぁ・とちゃん♪」でしょぉ〜?」

 

「うっわ……キ……」

 

「あ”?」

 

「……お願いします……はぁとちゃん……」

 

「はぁい☆よろしくねっ♪プロデューサーくんっ♪」

 

「……むぅ〜……また目の前で、心ちゃんとイチャイチャしちゃって……ずるいですっ……」

 

「またってなんですか!しかも、別にイチャイチャなんかしてませんって!//」

 

「そうですよぉ〜……イチャイチャだなんて……はぁと、照れちゃう……♪//」

 

「ふ〜んだ……本当に、自覚がないんですねぇ〜。困ったさんだなぁ〜、プロデューサーくんはぁ〜」

 

「……あ〜!そうだった!はぁとぉ、急に用事を思い出しちゃった〜☆」

 

「は?……用事……?」

 

「うんっ☆というわけで、お金置いていくから、あとは楓ちゃんと二人で楽しんでね☆じゃ〜ねぃ〜☆」

 

「あっ、おい!……行っちゃった……」

 

「……全く……何なんだよ……自分から誘っておいて、アイツは……楓さんも、そう思いますよね?」

 

「……」

 

「……「楓ちゃん」も、そう思うよね……?」

 

「そうですねぇ。心ちゃんってば、私たちを置いて行くなんて酷いですっ。だから……」

 

ギュッ♪

 

「……プロデューサーくんと、私で……次のお店に行きましょうよ♪ねっ……♪」

 

「えっ?でっ、でも……」

 

「あ〜あ、まだこんな時間かぁ〜。お家に帰ってもやることがないし……一人は、寂しいなあ〜……」チラッ

 

「……わかりましたよ……では、行きましょうか」

 

「はいっ♪決まりですね♪……ありがとうございます……♪心ちゃんっ♪」

 

「ん?今、何か言いましたか?」

 

「いえいえ♪それでは、行きましょう♪」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪美味しそう〜♪」

 

「……明日は、収録があるんですからね……?コメディ映画の撮影じゃないんですから、一杯だけですよ?」

 

「は〜い♪わかってますよぉ♪」

 

「それにしても、いい雰囲気の店ですね。よく来てるんですか?」

 

「えぇ♪お仕事の帰りとかに結構、来ますね♪女子会とかも、よくここで開くんですよ♪」

 

「ははっ、すっかりお姉さんたちの、憩いの場じゃないですか。まさに「しんでれら」の舞踏会ですね」

 

「あら♪お上手♪でも、今日は私とプロデューサーくんしかいませんので、二人っきりで楽しみましょう♪」

 

「……あの……やっぱりお互いに、呼び方を戻しませんか……?……何だか、気恥ずかしいですし……//」

 

「エ〜、ダメですっ。そんな、ワガママを言ってはいけませんっ。ほらっ、もう一回やり直しましょう」

 

「……わぁ〜♪このお料理、美味しそう〜♪プロデューサーくんも、そう思いますよねっ♪」

 

「……そ、そうですね……楓……さん……//」

 

「むぅ……また……そういういぢわるなことを、言うんですから……」

 

「……むしろ「ちゃん」付けをさせる方が、よっぽど、イジワルだと思うんですけど……?」

 

「んもう、プロデューサーくんは、恥ずかしがり屋さんなんですから〜……しょうがないですねぇ〜」

 

「じゃあ、今だけは「さん」で許してあげますっ。だけど、いずれはとってもらいますよ。いいですね?」

 

「は、はい……ありがとうございます……?」

 

「うふふ♪それでは……プロ〜スト〜♪」

 

「ぷ、ぷろ〜すと〜……」

 

カツンッ♪

 

------------------------------------------------

 

「うん、美味しい!このたらちり、結構いけますね!」

 

「そうですよね♪この鍋をつつきながら飲む、日本酒は本当に「酒」あわせな気分になれるんです♪」

 

「おっ、上手いですね。確かに、こんなに美味しいと、お酒がどんどん進んじゃう……ん?」

 

「で・す・か・ら♪今日はこのまま、一緒にどんどん飲みましょうよ♪」

 

「え、えぇ……そうですね……って!撮影があるから、さっき、一杯だけって約束したじゃないですか!」

 

「そんなこと、聞いてませんも〜ん」

 

「ダメですっ!撮影には万全を期して臨んでもらいたいので、今日はそれでおしまいですっ!」

 

「むぅ〜……プロデューサーくんの、おケチ……」

 

「全く……仕事の時には凛々しいのに、どうして俺といる時は、こんなにワガママなんですか!」

 

「……そんなの、決まってるじゃないですか……普段は「嘘」をついてるんですから……」

 

「えっ?嘘……?」

 

「私……本当は、色んな人に気づかれないように、取り繕って……真実を偽りに隠してるだけなんです」

 

「だから……プロデューサーくんには、ほんの少しだけでも「真実」を見て欲しいな……なんて……♪//」

 

「真実……偽り……格言の次は、飛鳥ですか〜……?」

 

「ふふっ……そうですね♪飛鳥ちゃん風に言うと「真実を偽りし虚像」と言ったところでしょうか♪」

 

「つまり、プロデューサーくんの前では「真実」はいつもひとつ!ということですっ♪」

 

「信頼されてるのは、嬉しいですけど……でも、程々にお願いしますよ……?」

 

「わかりました♪それでは……はいっ♪」

 

「ん?どうしたんです?」

 

「……「優しい」プロデューサーくんが、注いでくれたお酒……飲みたいな〜?」ウルッ

 

「……わかりましたよ……本当にこれで、最後ですからね?」

 

「やった〜♪プロデューサーくんはやっぱり、優しいですねっ♪」

 

「全く……明日はよろしくお願いしますよ?「宵乙女」の大切な、第一歩なんですから……」

 

「わかってますよぉ♪それでは、プロデューサーくんも一緒に、今は「酒」あわせな時間を過ごしましょう♪」

 

------------------------------------------------

 

「みなさん、準備の方はどうですか?」

 

「あたしはバッチシよ!早苗お姉さんの魅力をた〜っぷりと、見せつけてやるんだから♪」

 

「うぅ……少し、背中が……湿布を貼ってくれば、よかったかな……」

 

「菜々?大丈夫か……?」

 

「……はっ!だ、大丈夫ですよっ!何せ、ナナは現役JKですからね♪キュピピーン☆と、決めちゃいますよ♪」

 

「そうか?なら、いいんだが……」

 

「あ、あの……プロデューサーさん……」

 

「あっ、美優さん。どうしましたか?」

 

「その……帯を締めてもらっていいでしょうか……?少々、緩くなってしまって……」

 

「いいですよ。では、少し失礼しますね」

 

ギュッ

 

「……あんっ……あっ……す、すみません……!私ってば、今……変な声を……//」

 

「……っ……だ、大丈夫ですか……?もし……締めすぎてたら、言ってくださいね……?//」

 

「いえいえ……むしろ、ちょうどいいくらいです……ただ、その……」

 

「……プロデューサーさんの手の温もりが、伝わってきて……ドキドキしちゃったのかな……なんて……//」

 

「えっ……//」

 

「「……//」」

 

「……ねぇ〜、プロデューサー☆ネクタイが緩んでるぞ☆」

 

ギュッ♪

 

「ぐがっ……!お、おい!心!急に、何をするんだよ!」

 

「えぇ〜?ネクタイが少し緩んでたから「シメ」てあげただけだよぉ?何か問題ある〜?」

 

「締めすぎだろ!一瞬、息が出来なかったぞ!」

 

「ふ〜んだ。隙あらば、す〜ぐ女の子とイチャつき始めるんだからぁ〜、本当、はぁと、困っちゃう☆」

 

「何なんだよ……一体……」

 

「……プロデューサーさん、プロデューサーさん」

 

「ん?楓さん……?どうしましたか?」

 

「少し……私と一緒に、来てもらっていいですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「……どうしたんです?こんな、舞台裏に呼んで……」

 

「えっとですね……これから撮影するPVの、寸劇の練習相手になって欲しいんです♪」

 

「寸劇……?いいですけど……俺、素人ですよ?何なら、宵乙女のメンバーの誰かに頼んだ方が……」

 

「大丈夫です♪あくまで確認のためですので、軽く相槌を打ってくれれば結構です♪」

 

「そうですか……?なら……」

 

「うふふ……♪それでは行きますよ♪せーのっ、始めっ♪」

 

「……ふふっ……今宵はとても、梅の花が綺麗ですね……♪」

 

「えっ……あ、そ、そうですね!とても綺麗です」

 

「……ねぇ……プロデューサーくん……一つ、聞きたいがあるんだけど……いいかな?」

 

「なっ……!また「くん」って……な、何だい……?」

 

「プロデューサーくんは、私のことを……好きですか……?」

 

「ちょっ……!?そ、それはっ……!//」

 

「……演技ですよ、演技」

 

「うぅ……その……好き……だよ……//」

 

「そうですか……嬉しいです♪では……その気持ちが本当なら……私の肩を、抱いて欲しいな……//」

 

「……っ!」

 

「今の私は、恋心と命が燃えてる、恋する乙女なんです……だから、名前を呼びながら……ねっ♪」

 

「くっ……!あ、愛してるよ……楓……さん……//」

 

ギュッ

 

「あっ……うふふ…♪」

 

「……これで……いいですか……?」

 

「ちょっと、最後が不満でしたけど……まあいいでしょう♪演技に付き合ってもらい、ありがとうございます♪」

 

「いえいえ。でも、流石は楓さんですね。本当に告白されてるみたいでしたよ」

 

「えっ?告白は本当ですよ?寸劇があるって言うのは嘘でしたけど♪……では、収録に行って来ま〜す♪」

 

「……は?」

 

「〜〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「……せ〜の」

 

「「「「かんぱーい!!」」」」

 

「みなさん!PVの収録、お疲れ様でした!」

 

「お疲れ様〜!いや〜、楽しかったわ〜!」

 

「お疲れ様です……とても緊張してしまいしたが……無事、終えれてよかったです……♪」

 

「でも、残念ですねぇ〜。菜々パイセン来れなくて……」

 

「仕方がないよ。流石に撮影が押したとはいえ、夜の飲み屋に未成年を連れてくるわけにはいかないしな」

 

「それに、菜々からもお願いされたし、また後日、菜々を交えて俺たちで何かしようぜ」

 

「でも、偉いです……とても未成年とは思えないぐらい、しっかりしてますよね……菜々ちゃん……」

 

「美優さん……ふふっ、そうですね♪菜々ちゃんにはつい、私も頼ってしまいます♪」

 

「思ったんだけどさ〜、菜々ちゃんより心ちゃんの方が大人でしょ?何でパイセンなの?」

 

「え、だって……あっ☆アイドル業界歴は菜々パイセンの方が上なので、だから、業界的には先輩なんです☆」

 

「あっ、そ〜なんだ〜。心ちゃんより菜々ちゃんの方が早かったんだ。成る程ね〜」

 

「さ、さぁて☆菜々パイセンの分まで、楽しみましょうよ☆まだ、こんなにお酒があるんですから☆」

 

「そうね〜!さぁ!今日は、じゃんじゃん飲むわよ〜!」

 

「早苗さん、明日もお仕事なんですから程々に……しましょうね……?」

 

「わかってるわよっ♪ね〜?楓ちゃんっ♪」

 

「はいっ♪程々に楽しみましょう♪」

 

「そうですね、程々がいいって言いますしね。で?楓さん?その、両手に持ってるものは何ですか?」

 

「うふふ……♪これは、大人の「お水」です♪だから大丈夫ですよぉ♪」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「うぃ〜ひっく。もっと、酒をもってきなさ〜いっ!」

 

「うっ……うぅ……クスン」

 

「この塩焼き、お酒とあいますねぇ〜「アイ鱒」なだけに♪ふふっ……♪//」

 

「きゃ〜ん☆こんなに酔っちゃったらぁ、誰かにお持ち帰りされちゃあ〜うんっ☆え?されないから安心しろ?黙っとけ☆」

 

「……すごい、地獄絵図……」

 

「んもう、プロデューサーく〜ん?もっと飲まなきゃだめよ〜♪ほらっ、あたしのア・ゲ・ルから♪」

 

「ちょっ……ま、待ってください!それ、早苗さんのコップじゃないですか!ダメですよ!色々とっ!//」

 

「ふ〜ん……プロデューサーくんってば、あたしのことをちゃんと、気にしてくれてるんだ〜……」

 

「当たり前じゃないですか!早苗さんは俺のとって、大切なアイドルなんですから!」

 

「……も〜!嬉しいことを言ってくれるじゃない!お姉さん感激しちゃったぞぉ〜……えいっ!」

 

プニュン♪

 

「ちょっ……!早苗さん!?何をしてるんですかっ……!さ、流石にまずいですって!//」

 

「んふっふっ〜♪プロデューサーくんを、確保ぉ〜♪」

 

「……」

 

「あっ、美優さん、ちょうどよかった……早苗さんを止めてくださいっ!//」

 

「……クスン」ジー

 

「み、美優さん……?」

 

「早苗さんと……仲良さそうですねっ……スンッ」

 

「えっ……ち、違いますよ!これは、早苗さんから勝手に……」

 

「いいですよ……どうせ私なんか……流されるだけで終わってしまう……哀れな女ですもんっ……クスン」

 

「なんてことを言ってるんですか!美優さんっ!」

 

「だいたいですね……ぷろでゅーさーさんもぷろでゅーさーさんです……」

 

「人前で、綺麗だなんてことを平気で言うし……その他にも、すぐみなさんに……ブツブツ」

 

「だめだ……完全に、自分の世界に入ってる……そ、そうだ……!楓さんっ!」

 

「……」

 

「楓……さん?」

 

「……違うもん……私……「楓さん」なんて、名前じゃないですもん……だから、知らないですっ……」プイッ

 

「くっ……わかりました……た、頼むよ、楓!早苗さんをなんとかしてくれ!」

 

「!!……も〜しょうがないですねぇ〜♪ほぉら、早苗さんっ、ダメですよぉ〜?」

 

「よかった……これで……!」

 

ギュッ♪

 

「一人占めしちゃ……ダメですっ……♪//」

 

「……か、楓さぁ〜ん……」

 

「えへへ……プロデューサーくん……温かい……♪//」

 

「楓……楓っ……♪うふふ……♪//」

 

「……もう……どうにでもなってくれ……」

 

------------------------------------------------

 

「うぅ〜……ナナちゃんが、ナナ人いるわぁ〜……♪」

 

「そぉ〜れ、しゅがみんっ☆しゅがみんっ☆……うぇっ☆」

 

「ほら!変なことを言ってないで、行きますよっ!」

 

「悪いな、菜々。わざわざ来てもらって」

 

「いえいえ♪プロデューサーさんのSOS電波がピピピッ!と、ウサミン星に伝わってきましたのでっ♪」

 

「助かったよ。俺だけじゃ……」

 

「……スンッ」

 

「私たちは酔い乙女〜……ふふっ……♪」

 

「……とても介抱しきれなくてな……」

 

「プロデューサーさんも、色々と大変ですねぇ」

 

「でも……よかったのか?本当は……菜々も、参加したかったんじゃないか?」

 

「……いいんです。ナナは、永遠の17歳ですから……」

 

「そ・れ・に♪プロデューサーさんが後日、ナナに何か、してくれるんですよねっ♪」

 

「えっ……何でそれを……」

 

「……♪」チラッ

 

「……ナナちゃんにぃ……特別な、さぷらいずよぉ〜……ヒック」

 

「……全くこの人は……まあ、期待しといてくれ。菜々も、宵乙女の収録を頑張ってくれてたもんな」

 

「頑張ってただなんて、そんな……むしろ、楽しかったですよ!」

 

「それならよかった。これからもお互いに頑張ろうな」

 

「はいっ!それでは、おやすみなさいっ♪さあ、行きますよ!早苗さん!心さんっ!」

 

「あぁ、おやすみ。……さてと……俺も、この「乙女たち」を連れて帰るか……」

 

------------------------------------------------

 

「うぅ……流石に、夜は冷えるなあ……それに、都会なのに少し離れたら、こんなに人気がなくなるとは……」

 

「……ふあ……?……ここは……」

 

「あっ、美優さん。起きましたか?今、解散して、事務所に向かってるところですよ」

 

「やだ……私ったら……あっ……す、すみません……!こんなに密着してしまって……!//」

 

「いえいえ。むしろ、もっと……じゃなくて!大丈夫ですよ、気にしないでください」

 

「……//」

 

「それにしても、今日は楽しかったなあ。宵乙女のメンバーで、打ち上げが出来て。美優さんはどうでした?」

 

「えっ……?そ、そうですね……私もすごく楽しかったです……♪まるで、夢の世界にいた気分でした……♪」

 

「……ただ……後半からの記憶が、混濁してしまっているので……少し……お恥ずかしいですが……//」

 

「……あの時の、美優さん……すごい、かわいかったですよ♪普段とは一味違くて、とても新鮮で……」

 

「あうっ……かわいい……こ、これ以上はいいです……!忘れてくださいっ……!//」

 

「ははっ、わかりましたよ。これは、俺だけの大切な思い出にします……うわっ!?」

 

グイッ

 

「……ぷろでゅーさーさ〜ん……?」

 

「おっ。楓さんも、起きましたか?」

 

「んもぅ、みゆさんばかりずるいれす。わたしのことも、かまってくださいっ」

 

「……まだ、夢をみてる人発見……楓さん?起きたんですから俺、そろそろ離れますよ?」

 

------------------------------------------------

 

「やっ」ギュッ

 

「……困ったなあ……ほら、目を冷ましてください」グイッ

 

「……いやっ!」ギュゥッ

 

「結構……からみ酒なタイプなんですね……楓さん……」

 

「楓さんは、こうなったらしばらくは長引くからなあ……本当に、困ったおねーさんですよ」

 

「……私も……もっと飲んでおけば……」

 

「ん?どうかしましたか?」

 

「い、いえ……何でもないです……!//」

 

「でも……こうして、改めて見ると……楓さんって結構、おちゃめですよね……♪」

 

「そうですね。普段は言えないですが「25歳児」ていう表現が、今の楓さんにはぴったりかも、なんて」

 

「ふふっ……♪そうかもしれないですね……♪」

 

「でも、そうすると俺らは「楓ちゃん」の夫婦になってしまいますね♪」

 

「ふえっ……!?ふ……夫婦……!?//」

 

「ははっ、冗談ですよ冗談」

 

「も、もうっ……またそういうことを……平気で言うんですからっ……//」

 

「……ぷろでゅーさーさぁん?……わたしのことも、みてくれなきゃ……いや……」

 

「はいはい、すみません楓さん。あと、もう少しですから我慢してくださいね」

 

「……はぁ〜い」

 

「ふふっ……♪こんな、夢のような楽しい毎日が過ごせるのも……プロデューサーさんのおかげです……」

 

「……なので……これからも……私たちのことを、よろしくお願いします……♪//」

 

「えぇ、一緒に頑張っていきましょう。では、そんな「シンデレラ」をしっかりと、お城までお送りしますね」

 

「そんな……シンデレラだなんて……で、では……」

 

ギュッ♪

 

「……私も、こうして……プロデューサーさんに、思いっきり甘えちゃいますね……なんて……♪//」

 

「えっ……み、美優さん……?確かに、送るとは言いましたけど……少し……近すぎるような……//」

 

「うふふ……♪着くまでしっかりと……私のことを、守ってくださいね……王子様……♪//」

 

「……むぅ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、楓さ〜ん?事務所に着きましたよ〜」

 

「……zzz」

 

「……って、寝ちゃってるし……しょうがない、ソファーに寝かせるか……よいしょっと……ふぅ……」

 

「全く……気持ちよさそうに寝ちゃって……楓さんの、こんな姿を見せつけられたら、いくら俺だって……」

 

(きめ細やかな白い肌……艶やかな唇……元モデルなのも頷ける、すらっとして艶かしい生足……)

 

「……ダメだダメだ!さて!何か、酔いが覚めるものでも持ってこよっと……!//」

 

「……俺だって……何ですか?」

 

「そうですねぇ。綺麗なお姉さんが、目の前でこんなに無防備だったら、俺だって流石に……ん?」

 

「……きゃあ〜♪襲われちゃ〜う♪」

 

「ちょっ……か、楓さん!?起きてたんですか!?」

 

「えぇ♪プロデューサーくんが「狼」になる前から、起きてました♪」

 

「狼って……ち、違うんです……!これは、そういう意味で言ったわけじゃないんですっ!」

 

「それでは、どういう意味で言ったんですか?」

 

「い、いや……その……楓さんは魅力的なので、あまり……無防備なのは、よくないと思ったんです……//」

 

「私のことを、そういう風に……ふふっ……♪しょうがないですねぇ〜……プロデューサーくんはっ……♪」

 

「……では……二人で一緒に「気持ちよく」なりましょうか……ねっ……♪//」

 

「気持ちよく……はあっ!?か、楓さんっ……!?一体、何を言ってるんですか……!?//」

 

「……私……欲しいんです……プロデューサーくんの……気持ちよくなれて……とても大切な……」

 

「ええっ!?ちょっ……まっ……!//」

 

「……冷蔵庫にある……お・さ・けを♪」

 

「……は?お酒……?だ、ダメですよ!」

 

「エ〜!プロデューサーくんのおケチ!」

 

「ケチじゃないですっ!ここまで介抱したのは、誰だと思ってるんですか!」

 

「むぅ……いぢわる……」

 

「全く……楓さん?俺だって、男なんですよ?もう少し、女性としての危機感をですね……」

 

「危機感……?プロデューサーくんは一体、何だと思ってたんですか?」

 

「それは……と、とにかく!楓さんは少し無防備すぎるので、今後は気をつけてくださいっ…!//」

 

「……ふふっ……変なプロデューサーくん……♪」

 

------------------------------------------------

 

「楓さん、大丈夫ですか?まだ、酔いが残ってるかもしれませんから……気をつけてくださいね……?」

 

「えぇ♪すっかり、酔いが覚めました♪でも、大丈夫です♪だって、プロデューサーくんが一緒なんですから♪」

 

「もう、夜も遅いですしね。こんなに人気のない夜道を、女性一人で歩かせるわけには行きませんよ」

 

「うふふ……♪頼りにしてますよ……♪」

 

「……ところで……少し、近すぎじゃないですか……?何も……そこまで密着しなくても……//」

 

「そうですか〜?だって、暗くて怖いですし……こうしていると、とても安心するんです♪」

 

「……それに……美優さんだって、同じくらい近かったじゃないですか……♪」

 

「えっ……美優さん……?」

 

「……ふ〜んだ……シンデレラ姫と、王子様の子供だなんて……私、すごく鼻が高いなぁ〜?」

 

「うぐっ……!なぜ……それをっ……!」

 

「お酒は飲んでも飲まれるな。お酒好きの基本ですよ?」

 

「あ、あれはですねっ……その……つい、その場のノリで、冗談を言ってしまったと言いますか……!」

 

「……私の隣で……美優さんとイチャイチャしちゃって……ずるいですっ……」

 

「いや……そんなことは……」

 

着くまでしっかりと……私のことを、守ってくださいね……♪

 

タプンッ♪

 

「……ないと思います……多分……//」

 

「……プロデューサーくんのえっち……もう、知らないですっ……」

 

「あっ……ま、待ってくださいよ!……っ……!?か、楓さ……楓!危ないっ!」

 

ブゥゥウン!

 

「えっ……きゃっ!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……全く……乱暴な車だな……楓さん、大丈夫ですか?」

 

「あっ……は、はい……大丈夫です……//」

 

「よかった。無事で何よりです」

 

「……うふふ……♪やっと……プロデューサーくんから、呼んでくれましたね……「楓」って……//」

 

「……あっ……すみません!とっさのことだったので、つい……」

 

「いえ、謝らないでください。むしろ、助けてくださって……ありがとうございました♪」

 

「そうですか……?楓さんがいいなら、いいんですが……そろそろ、大丈夫そうですね。では……」

 

「……待ってください!……もう少しだけ……この状態で、いてくれませんか……?」

 

「えっ……?で、でも、この状態って、俺が楓さんを思いっきり、抱きしめて……」

 

「いいんです……こうしてもらってると、その……とても……気持ちが暖かくなりますし……」

 

「……プロデューサーくんを「直で」……感じれますので……//」

 

「いや……でも、ですね……楓さんは……アイドルなんですよ……?」

 

「では……私が、プロデューサーくんを離しません。これなら……いいですよね……?」

 

「っ……楓さんは、本当にずるいですね……色々と……」

 

「……プロデューサーくんも、ずるいです……こういう時は、颯爽と……私を守ってくれるんですから……//」

 

「……」

 

「……ねっ♪「ずるいもの同士」お似合いじゃないですか♪私たちっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「「……//」」

 

「ふふっ……♪プロデューサーくんって、逞しいんですね……♪流石は男の人です……♪//」

 

「か、楓さんも、その……とても華奢ですね……女性って、感じがします……//」

 

「……ねぇ……プロデューサーくん?一瞬だけじゃなくて、ずっと……「楓」って呼んでもらえませんか?」

 

「そ、そんなことは出来ませんよ!楓……さん……//」

 

「ふぅ……やっぱり、ダメですか……仕方ないですね……では……」

 

「……そんな……イジワルな口は……えいっ……♪」

 

「えっ……んぐっ!?」

 

チュッ♪

 

「……//」

 

「……ぷあっ……ちょっ……か、楓さんっ!?」

 

「うふふ……ほんのちょっぴり……勇気を出してみちゃいました……♪//」

 

「ゆ、勇気って……今……俺にっ……//」

 

「んもう……プロデューサーくんが悪いんですからね……?いつも、私にイジワルばかりして……」

 

「……こうして「真実」を……私から伝えなければ……いけなくなったんですから……//」

 

「……楓さん……//」

 

「私の気持ちを知られてしまったからには……もう「嘘」はつきません……♪」

 

「……私に……む「ちゅー」になるぐらいに……虜にしちゃうんですから……覚悟、してくださいね……♪」



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女神シンデレラ 新田美波

「これを保存して……バックアップを取って……」

 

「それで、このスケジュール表をこうやってっと……あ〜!終わったぁ〜!」

 

「いや〜……久しぶりの徹夜は、堪えるな〜。仕事の量が多かったとはいえ、まさか徹夜になるとは……」

 

チュンチュン……

 

「……うへぇ……もう、朝か……くっ……日差しが体に、染みるっ……!」

 

「しょうがない……あまりよくないけど、景気付けにスタドリでも飲みましょうかね……」

 

「……って……あれ?スタドリがもうない……」

 

「まさか……俺……ちひろさんからもらった、スタドリ1ダースを全部、飲み干しちまったのか……!?」

 

「いくら、徹夜で意気込んでたとはいえ、これだけの量を一夜で……しかも、かなり散らかってるし……」

 

「……いかんいかん……飲み干したドリンクに囲まれてる姿なんて、アイドルの教育によくないしな……」

 

「瓶は瓶の箱に、片づけてっと……よし、これでOKだ。にしても、すごい数のスタドリだな……」

 

「……さて、まずは、軽く体操をしてスッキリするか……」

 

「1234……1234……ふぅ〜……これで、少しは体が軽くなったぜ……」

 

「……適度に心地よい日差し……眠気を促すような、早朝の小鳥のさえずり……」

 

「そして……目の前には……気持ちよさそうな、ふかふかのソファー……」

 

「……捉えたら離さな〜い……夢の世界へと〜……さ〜れ〜る〜が〜ま〜ま〜、Welcome to my sofa……」

 

「……さて……少し、疲れてるようだな俺……早く……仮眠室に行こっと……」

 

「うっ……ひと段落したら、急に凄まじい眠気が……!」

 

「だ、ダメだっ……!ちゃんと、仮眠室で寝ないと……」

 

「……ね……ない……と……」

 

「………」

 

「……zzz」

 

------------------------------------------------

 

ユサユサ

 

「……ろでゅーさー……」

 

「……zzz」

 

「ぷろでゅーさー……おきてー……」

 

「……んっ……」

 

「おーきーてー……おきろー……」

 

「……ちひろ……さん?……すみません……いますぐ……」

 

「……あっ……ぷろでゅーさー……おきたー……」

 

「って……えっ……こ、こずえ!?」

 

「ぷろでゅーさー……おねんねはまだ……はやいよー……」

 

「ど、どうしたんだ、俺の上に乗って……まさか……起こしてくれたのか?」

 

「そうだよー……いまはもう……おねんねのじかんじゃないからー……」

 

「あ、あぁ……そうだな……ありがとう。こずえ」

 

「だいじょうぶー……ねー……こずえとあそぼー……」

 

「何だ?遊んで欲しいのか?」

 

「うん……ぷろでゅーさーは、いま……おひまー?」

 

「そうだな……うん。せっかく、こずえが起こしてくれたんだし、遊び相手になるよ。何して遊ぼうか」

 

「わーい……やったー……」

 

ガチャッ

 

------------------------------------------------

 

「おはようございま〜す♪」

 

「おっ、美波。おはよう」

 

「みなみー……おはよー……」

 

「こずえちゃんも、おはよ……って!こずえちゃん!?何をしてるんですか!?」

 

「あぁ。俺がソファーで寝てたから、こずえが起こしてくれたんだよ」

 

「えっ……あ……そ、そうだったんですね……//」

 

「……どうしたのー……?」

 

「なな、何でもないですっ……でも、だめよ?こずえちゃん。プロデューサーさんは、疲れてるんだから……」

 

「ははっ。こずえだって、俺のことを気遣って、起こしてくれたんだよな?優しいなぁ、こずえは」ナデナデ

 

「あっ……なでなで……すきー……//」

 

「もうっ、プロデューサーさんってば……」

 

「あっ、そうだ。せっかくだし、事務所の近くのカフェに、何か食べに行くか?ご馳走をするよ」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「あぁ。こずえもどうだ?」

 

「うん……こずえもいくー……」

 

「えっと……は、はい。では……ご馳走になります……ありがとうございます」

 

「よし、決まりだな。じゃあさっそく、行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「……」カタカタ

 

「プロデューサーさん。何か手伝えることとか、ありますか?」

 

「ん?あぁ、大丈夫だよ、ありがとうな。それより、ライブの方はどうだ?順調か?」

 

「はい♪おかげさまで、順調にレッスンが進んでいます♪」

 

「よかった。少し、心配してたんだよ。悪いな……俺の勝手な思いつきに、付き合わせてしまって」

 

「気にしないでください♪むしろ、感謝していますよ?蘭子ちゃんたちも、喜んでいましたし……」

 

「思ったんだ。美波の代理で、蘭子にアーニャと組んでもらった時に、三人で組んだらよさそうだなって」

 

「……あの時は、すみません。私が、しっかりとしていなかったから……あんなことに……」

 

「心配するな。あの時は、しょうがなかったんだから。また、心を入れ変えて、頑張ればいいじゃないか」

 

「俺もアーニャも蘭子も、事務所のみんなも、みんな美波の仲間だ。何も、気にする必要はないよ」

 

「プロデューサーさん……は、はい……ありがとうございます……//」

 

「よしっ。それじゃあ俺も、新ユニットのために、頑張んなきゃな!」

 

「……あ、あの……プロデューサーさん……もし、よかったらその……今度、私と一緒に……」

 

バンッ!

 

「やっほ〜♪Pくんいる〜!?」

 

「莉嘉……?おいおい。ドアは静かに開けろって、言わなかったか?」

 

「ごめんごめん♪ねねっ、Pくん♪何をしてるの〜?」

 

「何って、見りゃわかるだろ。仕事だ」

 

「エ〜!つ〜ま〜ん〜な〜い〜!Pくん!アタシとあ〜そ〜ぼ〜♪」

 

「ダ〜メ。俺は今、忙しいの。また今度な」

 

「ふ〜ん、わかったよ。それじゃあアタシは、あっちで遊んでるね〜」

 

「あぁ、そうしてくれ」

 

「……と見せかけて……ていっ!」

 

「なっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「えへへ〜♪Pくんのスマホ、いただきぃ〜♪」

 

「お、おいっ!返せ!」

 

「や〜だ〜よ〜!Pくんが鬼ね〜♪返して欲しかったら、アタシをつかまえてみなさ〜いっ♪」

 

「冗談はよせ!こら、おい!」

 

「きゃあ〜♪アタシぃ、Pくんにおそわれちゃ〜う♪」

 

「ばか!変なことを大声で言うな!ていうか、俺のスマホを返せ!!」

 

「い〜や〜♪ほらほらぁ♪鬼さん、こちらっ〜♪」

 

「このっ……!……くっ……!すばしっこい、ちびギャルめ……!」

 

「ほらほら〜♪こっち、こっちぃ〜♪……あっ……」

 

「こらっ、莉嘉ちゃん。プロデューサーさんは、お仕事で忙しいの。だから邪魔しちゃダメ。いい?」

 

「み、美波ちゃん……はぁ〜い……わかったよ……」

 

「うん。莉嘉ちゃんは、おりこうさんだね。はい、プロデューサーさん」

 

「おぉ……ありがとう、美波。全く……お前ってヤツは……」

 

「てへへ……ごめんなさぁい♪でも、Pくんてば、アタシの画像を今も、待ち受け画面にしててくれたんだね♪」

 

「っ……!?ば、ばかっ……お前っ……いつの間に……!」

 

「……えっ」

 

「や〜んっ♪アタシってばもしかしてぇ、Pくんのと・く・べ・つ?きゃ〜♪はずかちぃ〜♪//」

 

「……プロデューサーさん……?」

 

「ち、違うんだ美波……これはだな……!」

 

「夜の屋上で撮った、アタシとPくんの大切な……や〜んっ♪これだから、Pくん大好き〜♪」ギューッ

 

「おい莉嘉!ややこしくなるから、これ以上喋るな!……ったく……待ち受けを勝手に見やがって……//」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪とてもステキ、ですね♪」

 

「ふふふ……ヴァルハラをも凌駕する、広大なる我が野望を語るのに、相応しい場所ね……!」

 

「とても、おしゃれですね♪よく来たりするんですか?」

 

「あぁ、ここの喫茶店、気に入ってるんだ。打ち合わせにはもってこいだろ?」

 

「ククク……我が同胞たちを享楽へ誘う祝祭について、思う存分語り会おうではないか!」

 

「じゃあほら、メニュー表。好きなものを頼んでいいぞ」

 

「スパスィーバー♪ありがとう、です♪」

 

「感謝するぞ、我が友よ」

 

「すみません……いつも、奢ってもらってしまって……」

 

「いいんだよ。三人ともいつも、頑張ってもらってるからな。むしろ、俺が感謝してるぐらいだよ」

 

「それに、特に美波は、いつもみんなのお姉さんとして、頑張ってもらってるからな」

 

「ダー。ミナミはとても優しくて、頼りになります♪」

 

「うむ……迷える子羊を導く、後光の差す女神よ!」

 

「……みんなの……お姉さん……」

 

「美波?どうかしたか?」

 

「えっ……い、いえ……何でもないです……」

 

「そうか……?なら、いいんだが……何か悩みとかあったら、いつでも相談してくれよ?」

 

「はい。ありがとうございます……」

 

「……」

 

「で?どうだ?みんな、注文決まったか?」

 

「では、私は、この鳥のミルクでお願いします」

 

------------------------------------------------

 

「鳥のミルク!?なんかすごい名前だな……ミルクを出す、鳥がいるのか?」

 

「ニェット。この名前の理由は、おとぎ話から来ているんです」

 

「好きと言ってくる男性を、お姫様がどれだけ、お姫様のことを好きかギモン?に思ったそうです」

 

「そこで、本当に好きなら、探して取って来なさいっていったのが、この「鳥のミルク」だそうなんです」

 

「ロシアではフクースナ。たくさんの人が美味しいって言って、食べてるんですよ♪」

 

「そうなのか……蘭子も、こういう童話とか好きそうだよな。アーニャと一緒に、この鳥のミルクにするか?」

 

「否……我は、この供物を所望する」

 

「ん?……」ニヤッ

 

「……ん〜……指を指されても、どのメニューかわからないなあ〜」

 

「なっ……!だ、だから……我は、この供物をっ……!」

 

「ちゃ〜んと言ってくれないと、俺、わかんないなあ〜」

 

「……ぷ、ぷりん……」

 

「え〜、何だって〜?」

 

「ぷ……プリン!プリンアラモードっ!!//」

 

「はい、よく出来ました。かわいいなあ、蘭子は」

 

「……いぢわる……」

 

「美波はどうする?」

 

「え、えっと……それでは、私はパンケーキでお願いします」

 

「よし、みんな決まったな。すみませ〜ん!注文をお願いしま〜す!」

 

------------------------------------------------

 

「それで、ライブのPRイベントのことなんだが、アーニャがこの位置から登場して」

 

「ダー」

 

「蘭子がここの位置から。そして美波が、こっちの位置から登場してもらう」

 

「うむ」

 

「で、ドライアイスの霧が吹き出て、ユニットカラーのライトが、三人を照らすんだ」

 

「そのあとに、天井に備え付けられたスノーマシンが、雪を降らすから……そして……」

 

「……//」

 

「シトースヴァーミ?どうしました?プロデューサー」

 

「どうした、我が友よ」

 

「な、なぁ……さっきから、思ってたんだが……二人とも……少し、近くないか……?」

 

「そうですか?フツウ……だと思いますよ?」ギュッ

 

「ふふ……共に、悠久の時を経てきた我が友との、善悪の境界線はしかと心得てるつもりだ……」ギュッ

 

「にしてはだな……俺の両腕が異様に、暖かい気がするんですけどねぇ……」

 

「そ、そうよ……?プロデューサーさんに悪いから、離れないと……」

 

「イヤ……ですか……?」ウルッ

 

「……イヤ?」ウルッ

 

「……まあ……悪い気は、しないけどさ……//」

 

「ypa……!嬉しい、です……プロデューサー……♪私のも、食べてください♪」

 

「い、いいよ、悪いって……ムグッ」

 

「……我の……わ、私のプリンも……//」

 

「……ぷあっ……!わ、わかった!二人の気持ちはよ〜く、わかったから!だから、少し落ち着けって!//」

 

「うふっ……慌ててるプロデューサー……とてもかわいいです♪」

 

「ふっふっふ……フェニックスが生み出しし、甘美なる誘惑……親愛なる我が友に、存分に授けようぞ……♪」

 

「……あっ!そ、そうだっ!美波もせっかくだし、もらったらどうだ?」

 

「えっ……」

 

「ダー♪ミナミも、どうぞ♪楽しい気持ちはみんなで、分け合いっこです♪」

 

「同じ志を、持つ者同志……血湧き肉躍る狂宴に、打ち興じようではないか!」

 

「あっ、ありがとう……じゃあ、もらうね。私のも食べていいよ」

 

「相変わらず、三人は仲良しで羨ましいなあ!やっぱり食事は、みんなで楽しまないとな!あ、あはは……」

 

------------------------------------------------

 

「ごちそうさまでした♪プロデューサー♪」

 

「実に、有意義な饗宴であったぞ。親愛なる我が友よ」

 

「今日は、ありがとうございました。すみません……ご馳走になったうえに、女子寮にも送ってもらって……」

 

「いやいや、気にしないでくれ。この調子で無事、ライブを成功させよう。三人の結束を深めるためにもな」

 

「……三人……違います」

 

「えっ……?」

 

「三人だけではなく、プロデューサーも、一緒です♪そうですよね?ミナミ、ランコ♪」

 

「えぇ♪そうですね♪プロデューサーさんも、一緒ですよっ♪」

 

「我らの、強固たる結束……例え、強靭なデュランダルであろうとも、到底切れぬわ!ハーッハッハッハ!」

 

「……そうだったな……俺も三人と「共に」無事、ライブを成功させたい。頑張っていこうな」

 

「ダー♪それではダスビダーニャ♪また明日、です♪」

 

「我が……いえ、プロデューサーさん。今日は、ありがとうございました♪それでは、また明日会いましょう♪」

 

「あぁ、明日もよろしく頼む。さて、俺もそろそろ行くか……」

 

「……あ、あのっ!」

 

「ん?美波……?どうした?」

 

「プロデューサーさんは……私のことを、どう思っていますか……?」

 

「どう思うって……どういうことだ?」

 

「えっと、そのっ……アイドル以外では、どういう風に……私のことを見てくれてるのかなと思いまして……」

 

「?」

 

「……すみません……やっぱり、何でもないです……では、また明日、よろしくお願いしますね」

 

「あ、あぁ……よろしくな……何だったんだ……?」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「よいしょっと……三人とも悪いな。手伝ってもらって」

 

「クックック……軍神マルスも慄く、魔王の魔力…とくと思い知るがいい!」

 

「気にしないでください♪それより、プロデューサーさん。この荷物は、どこに置いたらいいですか?」

 

「あ、その荷物は俺が持つよ。結構、重いからさ」

 

「大丈夫です♪これでも、ラクロスでかなり鍛えてますので♪」

 

「そうか……?それじゃあ、お願いするよ。悪いな美波」

 

「いえいえ♪昨日は、ご馳走になりましたので♪」

 

「……ん〜……」

 

「……おい、アーニャ?大丈夫か……?」

 

「ごめんなさい……この荷物……少し、重くて……」

 

「じゃあ、この荷物を持ってくれないか?俺が、アーニャの荷物を持つからさ」

 

「あ、ありがとうございます……♪プロデューサーはやっぱり、男の人ですね……とても、力持ちです……//」

 

「手伝ってくれるのは嬉しいけど、無理しちゃだめだぞ?アーニャは、女の子なんだしさ」

 

「……っ……女の子……」

 

「ふふっ……♪プロデューサーはとても優しくて、頼りになります♪」

 

「大切なアイドルに、無理させたくないからな。遠慮せずにどんどん、俺を頼ってくれよ」

 

「……わ、私もその……プロデューサーは、大切なアイドル……ですっ……♪//」

 

「おいおい。アーニャの中では、俺はアイドルなのか?面白いことを言うな」

 

「「あはは♪・うふふ♪」」

 

「……我が友よ……憎き超重ギガンティス……我が魔力をしても、到底及ばぬ……」

 

「えっ……?」

 

「……これ……重くて、持てない……」

 

「ははっ、それ、ポスターが数個しか入ってないダンボールだぞ?魔王の魔力とやらで、なんとかしてくれよ」

 

「やっ!持てないのっ!」

 

「やれやれ。かわいい魔王だなぁ、蘭子は。しょうがない、俺の魔力を使ってやるよ……」

 

「だ……だめよ!蘭子ちゃんっ!プロデューサーさんに、ワガママばっかり言って、困らせちゃ!」バンッ!

 

「!?」

 

「ひっ……!」

 

「み、ミナミ……?どうしたのですか……?」

 

「……っ!ごめんなさい……私ってば……す、すみません……失礼しますっ!」

 

「あっ、ミナミ……行ってしまいました…」

 

「女神……じゃなくて、私……美波さんに何か、してしまったのでしょうか……?」

 

「……ちょっと、美波のところに行ってくるわ。二人とも、その荷物を片付け終えたら、終わりにしてくれ」

 

「えっ……?でも……プロデューサー?ミナミ……どこに行ったか、わからないですよ……?」

 

「大丈夫、俺に心当たりがあるんだ。それじゃあ、手伝ってくれてありがとうな。アーニャ、蘭子」

 

「我が友……ううん……プロデューサーさん……」

 

------------------------------------------------

 

コンコン

 

「美波、いるか〜?」

 

「……プロデューサーさん……」

 

「おっ。やっぱり、ここにいたか。今、大丈夫か?」

 

「……どうして……ここにいることが、わかったんですか……?」

 

「当たり前だろ?俺は、アイドルたちのことを、よく知ってるつもりだ。特に、美波のことはな」

 

「……っ!」

 

「なあ……もしよかったら、俺に、何があったのかを聞かせてくれないか……?無理にとは言わないからさ」

 

「……ここでは、何ですので……中に入ってもらっても、いいですか……?」

 

「ありがとう。少し、お邪魔させてもらうよ」

 

「それでは……どうぞ。私の、学習机の椅子にかけてください」

 

「あぁ、悪いな……で?さっきは、どうしたんだ?」

 

「……先程は、すみません……急に、取り乱してしまって……」

 

「気にしないでくれ。それより、美波があんなに怒るなんて珍しいよな。蘭子と、何かあったのか……?」

 

「いえっ……決して、蘭子ちゃんが嫌いだとか、何かあったとか、そういうことではないんです……ただ……」

 

「……二人が、羨ましかっただけなんです。すみません。こんなに、身勝手な理由で……」

 

「羨ましい……?どういうことだ?」

 

「……プロデューサーさんは私のことを、みんなのお姉さんって、言ってくれましたよね……?」

 

「あぁ、確かに言ったな」

 

「それは嬉しいんです。でも、私からすれば、プロデューサーさんはお兄さんなんですよ……?」

 

「ですので……プロデューサーさんに、もっと私も「一人の女の子」として、見てもらいたいんです……」

 

「……そうだな……美波に頼るんじゃなくて、俺がもっと、しっかりしなきゃいけないよな……ごめんよ……」

 

「……本当に反省してるのなら……美波のお願い事を一つ、聞いてくれますか……?」

 

「お願い事……?まあ、俺に出来る範囲でなら……どうした?」

 

「ありがとうございます♪あっ……でも、まずは……片付けの続きと、二人に、謝りに行かないと……」

 

「片付けはもう終わったから大丈夫だよ。それに、あの二人には終わったら、解散って伝えてあるんだ」

 

「だから、謝るのはまた今度にしようぜ。少しお互いに、時間を置いた方が、落ち着いて話せると思うしさ」

 

「……そうですね……ごめんなさい……私のワガママで、こんなことになってしまって……」

 

「大丈夫だって。きちんと話せば、わかってくれるさ。ところで……さっきのお願いって、何だったんだ?」

 

「あっ……そうでした。えっと……このあと、お時間とか大丈夫ですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ、着いた……」

 

「……」

 

バッ

 

「……だ〜れだっ♪」

 

「……うわっ!?……こ、この声は……美波……?」

 

「うふふ……正解です♪」

 

「いきなり……視界を遮られたから、びっくりしたぞ……」

 

「えへへ♪ごめんなさいっ♪プロデューサーさんを驚かせたくて、つい……♪」

 

「しかし……美波、よかったのか?」

 

「はい?」

 

「確かに、何でも聞くとは言ったぞ?でも、そのお願い事が、俺なんかと遊園地で遊ぶことだなんて……」

 

「……違いますよ……遊ぶのではなく……「デート」ですっ♪」ギューッ

 

「ちょっ……み、美波!?」

 

「それに、私とプロデューサーさんの二人っきりで、デートが出来る……それだけで、幸せなんです……♪//」

 

「そうなのか?まあ、美波が喜んでくれるならいいんだけどさ……でも、事務所のみんなには、内緒な?」

 

「はいっ♪二人だけの秘密ですっ♪」

 

「……ところで……美波さん?少しだけ……離れた方が、いいんじゃないんですかね……?」

 

「えっ、どうしてです?」

 

「いや〜……何ていうか……やっぱり、美波はアイドルだし……なぁ……?//」

 

「むぅ……アーニャちゃんや蘭子ちゃんはよくて、私はダメなんですか?」

 

「そ、そうじゃないけどさ……」

 

「じゃあ、決まりですっ♪ほらっ、早速、入り口に向かいましょう♪「お兄ちゃん」♪」

 

「お兄ちゃん……?って……おい!そんなに引っ張るなって!」

 

------------------------------------------------

 

「ううっ……成り行きで、美波と遊園地に遊びに来ちゃったけど……すごい、恥ずかしいような気が……!//」

 

「これじゃあ、俺たちはまるで……だ、ダメだっ!美波をそういう風に、見るだなんて……!」

 

「……でも……何で、美波は俺と……」

 

「お兄ちゃ〜ん♪こっちですよぉ〜♪」

 

「おぉ〜、美波〜……って!だから!その呼び方は、恥ずかしいって!//」

 

「聞こえませ〜んっ♪それより、私のことを綺麗に、撮ってくださ〜いっ♪」

 

「全く……ほらっ、撮るからな。行くぞ〜」

 

「えへへ……ぶいっ♪」

 

パシャッ!

 

「どれどれ……うん。よく撮れてるな」

 

(やっぱり……美波って、どの写りも絵になるよなぁ……)

 

(メリーゴーランドとはいえ、さながら、本物のお姫様が乗ってるみたいだ……)

 

(……いつか、美波にも……白馬の王子様が……)

 

「次はぁ、私と一緒に乗ろうね〜♪お兄ちゃ〜んっ♪」

 

「ちょっ……!み、美波っ!?何を言ってるんだ!?」

 

「で〜す〜か〜ら〜、次は、私とお兄ちゃんで「腕組み」をしながら、乗りましょうね〜♪」

 

「なんか、余計に恥ずかしいことになってるぞ!?ていうか、声が大きいって……!//」

 

「……」ジー

 

「ねぇ、ママ〜。あのお姉ちゃんが言ってる、うでくみってなんなの〜?」

 

「ふふっ♪今に、わかるわよ♪あの「お兄さんとお姉さん」を見てればね♪」

 

「……青春しとるなあ……まるで、わしたちの若い頃を思いだすよ。なあ、婆さんや」

 

「えぇ。あの時の青春が、蘇ってきますねぇ……微笑ましいので、あともう少し……見ていましょうか……♪」

 

「……ちっ!あんな、美人なお姉ちゃんと、白昼堂々とイチャつきやがって!爆発しやがれっ……!」

 

(くっ……しかも、何だか周りに……超、見られてるような気がするしっ……!//)

 

「……うふふっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ、何とか……腕組みは免れたな……」

 

「むぅ……お兄ちゃんは、いぢわるですっ……」

 

「あのなあ……美波はアイドルなんだぞ……?それに、俺はいつ、美波の兄になったんだ?」

 

「え〜、お兄ちゃんはお兄ちゃんですよ?今の美波は、プロデューサーさんの妹なんですっ♪」

 

「……むしろ……俺が、弟みたいなものじゃないか……?美波には結構、頼っちゃってるし……」

 

「また……そういうことを言うんですから……じゃあ、いいですっ。次は、プロデューサーさんは私の……」

 

ヒュ~ドロドロ……

 

「……きゃあっ♪お兄ちゃん、こわ〜い♪」ギュッ

 

「うわっ……!……さ、最近のって……すごいリアルで、精巧なんだな……」

 

「うふふ……守ってくれますよねっ……♪//」

 

「礼さんが見たら、さぞ驚くだろうな……出来がよすぎて……」

 

「……礼さんが、どうかしたんですか……?」

 

「ああ見えて、礼さんって結構怖がりなんだよ。前に、礼さんと一緒に、小梅の怪談を聞いたことがあってな」

 

「聞いてる間、ず〜っと俺に密着してくるんだよ。怖いのはわかるけどさ。な?意外な一面だろ?」

 

「……」

 

「あっ。このことは、他のみんなには内緒にしておいてくれないか。礼さんのためにもな」

 

「……あ〜!お化けがこっちに、近づいて来ます〜!こわぁ〜いっ♪」

 

「は……?ど、どこにお化けが……って、美波!お前まで、密着するなっ!//」

 

(くっ……!さっきまで……お化け屋敷の雰囲気に飲まれてて、意識してなかったけど……)

 

ムニュッ♪

 

「……美波って、結構……じゃなくて!だ、大丈夫だって!だから、少し落ち着けっ!//」

 

「やぁ〜で〜すっ♪お化けが怖いから、落ち着けませ〜んっ♪」

 

「……」ベー

 

(くそっ……あの提灯め……!舌を出して、俺をバカにしてるような目つきで、こっちを見やがって……!)

 

(……くっ……むしろ、俺が落ち着かないとな……色々な意味で、真っ暗でよかった……//)

 

「……ふ〜んだ……プロデューサーさんの、おばか……」

 

------------------------------------------------

 

「うぅ……すごく、怖かったです……」

 

「そ、そうだな。怖かったな……うん……//」

 

「ん……?すごい顔が真っ赤ですよ?一体、どうしたんですか……?」

 

「えっ……?なな、何でもないぞ!心配しないでくれっ!//」

 

「……ふふっ……♪変なお兄ちゃんっ♪」

 

「ぴにゃっ」

 

「うん?何だ?この、緑の物体は……」

 

「ぴにゃあ〜」

 

「わぁ〜♪お兄ちゃんっ!ぴにゃこら太ですよっ!ぴにゃこら太!とてもかわいいですねっ♪」

 

「ぴにゃこら太って、あの緑色の猫のマスコットか!結構、大きいな!」

 

「ぴにゃあっ、ぴにゃっ!」

 

「ん……?何か伝えようとしてるのかな……?」

 

「ぴにゃっ!」ビシッ

 

「あっちを見ろ……?……なんか……コスプレした、ぴにゃこら太の銅像が見えるな……どういうことだ?」

 

「あの銅像は、ウェディングぴにゃですよ♪」

 

「うわっ!?こ、今度は誰だ…!」

 

「ぴにゃの国からやってきた、ぴにゃ子で〜す♪ぴにゃこら太のことなら、何でも任せてね♪」

 

「そ、そうか……ところで、ぴにゃこら太は何て言ってるんだ?」

 

「「お二人があまりにも、素敵なカップルだったんで、あそこで一緒に写真を撮りたい」って言ってます♪」

 

「か、カップル……!?いや……俺は、その……ただの付き添いで……」

 

「はぁい♪私たち、カップルなんです♪」ギュッ

 

「なっ……!?」

 

「やっぱり♪あそこのウェディングぴにゃ像の前で、カップルで写真を撮ると、さらに愛が深まるんですよ♪」

 

「もちろん真ん中に、ぴにゃこら太を添えてね♪」

 

「……み、美波……お前は、アイドルなんだぞ……?」

 

「ん〜?聞こえないですねぇ♪ぴにゃ子さんっ、このスマホにお願いします♪」

 

「はぁ〜い♪それじゃあ、銅像の前に来てくださ〜い♪はい、ポーズっ♪」

 

「ぴにゃあっ♪」

 

パシャッ!

 

------------------------------------------------

 

「うふっ♪よく撮れていますねっ♪」

 

「ぴにゃこら太って結構、力があるんだな……全然、動けなかったぞ……」

 

「んもう。私に全然、近づいてくれないから、ぴにゃちゃんは愛のキューピットに、なってくれたんですよ?」

 

「キューピットって……あのなぁ……」

 

「それよりっ♪ほら、お兄ちゃん♪あ〜んですっ♪」

 

「えっ……いや、悪いからいいって……」

 

「むぅ……アーニャちゃんや蘭子ちゃんのは、喜んでもらってたクセに……」

 

「はぁ!?い、いや、あれはほぼ、あいつらが無理矢理、俺に……」

 

「……そうですよね……アーニャちゃんや蘭子ちゃんからもらった方が……嬉しいですもんね……」

 

「私からもらっても……嬉しくないですよねっ……」

 

「えっ……み、美波さん……?」

 

「ごめんなさい……私、すごいワガママで……クスン」

 

「ちょっ……!?……あ〜!やっぱり俺、欲しくなっちゃったなあ〜!ほら、もらうぞっ!」

 

「……うふっ♪美味しいですかっ♪」

 

「えっ……?」

 

「ふふっ……♪アイドルたるもの、演技の勉強も、欠かしてないんですよっ♪」

 

「なっ……だ、騙されたっ……!//」

 

「ほらっ、今度は、お兄ちゃんのが欲しいですっ♪美波にもください♪」

 

「……わかったよ……俺のもやるよ。ほら……」

 

「あむっ……ん〜♪美味しいです♪楽しい時間ですねっ♪お兄ちゃんっ♪」

 

「そ、そうだな……楽しいな……あはは……//」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜……すごい、綺麗……」

 

「やっぱり夕暮れ時に、観覧車に乗るのはいいよな。夕日がとても綺麗だ」

 

「えぇ……あの……プロデューサーさん……今日は、色々と……ありがとうございました……」

 

「ん?あぁ、気にするな。美波が喜んでくれたのなら、俺はそれだけで満足だよ……ただ、な……」

 

「?」

 

「……今日の美波は、いつもと違っていたような気がするんだ。何かに必死になってる、そんな感じがしてな」

 

「……」

 

「確かに、遊園地でテンションが上がるのはわかるんだぞ?事実、俺も今日は、すごい楽しかった」

 

「だけど……そういうことは将来、本当に美波のことを、大切に思ってくれる人と、した方がいいと思うぞ?」

 

「大切に……思ってくれる人……」

 

「俺も、一応男だし、美波みたいな綺麗な女の子とそういう風に、一緒に過ごしてると……その……」

 

「……色々と……勘違いしそうになっちゃうからさ……なっ?」

 

「……やっぱり……優しいですね♪プロデューサーさんは……♪……隣、失礼しますね……」

 

「えっ……美波……?今、言っただろ?そんなに、距離感が近いと、俺は……」

 

「プロデューサーさん、前の打ち合わせの時に言ってくれましたよね?「みんなのお姉さん」って」

 

「確かに、頼ってくれたり、信頼されてるのは嬉しいんですよ?でも……ですね……」

 

ギューッ

 

「私だって……一人の女の子なんです。頼られたり信頼されるだけじゃなくて、思いっきり……」

 

「……頼ったり、甘えたり、構ってもらいたり……したいんですよ……?」

 

「美波……」

 

「あの時、こずえちゃんや莉嘉ちゃんに注意したり、蘭子ちゃんに怒ってしまったのも……」

 

「本当は、ただ……羨ましかっただけなんです……」

 

「行為に対して注意したんじゃなくて、ただの醜い嫉妬を、ぶつけてただけだったのかもしれませんね……」

 

「……ふふっ……私ってば、お姉さん失格ですね……♪こんなに子供っぽくて、ワガママなんですから……」

 

「……ごめんな……美波を頼りすぎて、知らず知らずのうちに、プレッシャーを与えてしまってたんだな……」

 

「……反省してますか……?それでは……遊園地を出るまでずっと……甘えちゃっていいですか……?//」

 

「こんな俺でよければ……どうぞ……//」

 

「ありがとうございますっ♪では……隣で、ずっと……甘えさせてください……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、美波。大丈夫か」

 

「とと……ありがとうございます♪観覧車、とても眺めがよかったですね♪」

 

「……あ、あぁ……そうだな……」

 

「……プロデューサーさん?どうしたんですか?」

 

「……何でもないぞ……気にしないでくれ……」

 

「え〜?本当に、大丈夫なんですかぁ〜?」

 

「うわっ!?き、急に、ほっぺを触るなっ!//」

 

「うわぁ〜!すごい熱いですよ!?それに、タコさんみたいに、顔が真っ赤です……」

 

「……どこかの甘えんぼなおねーさんが、ずっと……俺に、密着してきたからな……//」

 

「……えへへ……♪そんなに私で、ドキドキしてくれたんですね……♪嬉しいです……♪//」

 

「と、とにかくほらっ!そろそろ閉園時間だから、門に向かうぞっ……!//」

 

「そうですね♪それでは……はいっ♪」

 

「ん……?どうしたんだ?急に、手を差し出して」

 

「んもう、いじわるなんですから……」

 

キュッ

 

「……入口まで……私を、エスコートしてくださいっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「えっ……い、いや……それは流石に……」

 

「……手……冷たいな〜……?」ウルッ

 

「……わかったよ。ほらっ」

 

「あっ……うふふっ♪プロデューサーさんの手って、やっぱり大きいですね♪流石は、男の人です……♪//」

 

「さぁ、行きますよ。お姫様」

 

「……はいっ……♪よろしくお願いしますっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「やっぱり、閉園時間って一気に、雰囲気が変わるよなあ。朝とは大違いだ」

 

「えぇ。夜はとても……静寂な雰囲気ですね……」

 

「……今日は、楽しんでくれたか……?」

 

「はいっ♪美波は、大満足ですっ♪とても楽しい時間を、過ごさせてもらいました……♪」

 

「ならよかった。それじゃあ、ライブに向けて、お互いに頑張ろうぜ」

 

「……俺も……美波の負担にならないように、努力するからさ……」

 

「ふふっ……はいっ♪ありがとうございます♪……では……プロデューサーさんっ……♪」

 

「ん?」

 

「……うふふ……♪」

 

チュッ♪

 

「!?」

 

「……ちょっぴり……大人になってみました……♪//」

 

「ちょっ……み、美波……!?//」

 

「ふふっ……♪……ていっ♪」

 

「……あぁっ!俺のスマホがっ!」

 

「ほぉら、行きますよぉ〜♪プロデューサーさんが、鬼で〜す♪」

 

「お前は莉嘉か!っておいっ!スマホを返せ〜!」

 

「いや〜で〜す♪ほら、こっちですよぉ〜♪……さて、スマホの待ち受けをこっそり、変えちゃおっと♪」

 

「二人だけで撮った、大切な……うふふっ……♪これで「お揃い」ですね……♪」

 

「私……やっぱり、お姉さん失格です……こんなにも、子供っぽくて「独占欲」が強かっただなんて……」

 

「でも……いいよね……こんな姿を見せるのは、あなたの前だけですし……」

 

「……いつかは……プロデューサーさん「だけ」の……お姫様になりたいな……なんて♪」

 

「……これからも、ずっとずっと、隣にいさせてくださいね……♪……約束ですよっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「あっ……みんな……おはようございます……」

 

「おお、美波。おはよう」

 

「ドブライェウートラ。おはようございます、ミナミ」

 

「女神……み、美波さん……おはようございます……」

 

「……蘭子ちゃん……アーニャちゃん……ごめんなさいっ!」

 

「えっ……」

 

「あの時は……急に怒って、ごめんね。ワガママなのは蘭子ちゃんじゃなくて、私だったの……」

 

「ミナミ……」

 

「美波さん……」

 

「自分勝手だっていうのはわかってます。だけど……こうして二人に、改めて謝りたかったんだ……」

 

「本当に……あの時は、ごめんなさい……」

 

「……いえ、気にしないでください……もしかしたら、その……」

 

チラッ

 

「……クックック……光の女神と、闇の魔王……対になりし意思も、あの時ばかりは、しかと共鳴せり!」

 

「?」

 

「つまり……美波さんと私……あの時は「同じことを」考えてたのかもしれないって、ことですっ……♪」

 

「えっ……それって、つまり……」

 

「うふふっ……♪そういうことかもしれませんねっ……♪」

 

「おっ、どうやら、仲直りが出来たようだな。よかったよかった」

 

「やっぱり、みんな仲良くが一番、ですねっ♪私たちはアイドルであり、ドゥルーク、お友達なんですからっ♪」

 

「うん……そうだね。ねぇ、蘭子ちゃん、アーニャちゃん。これからも、私と一緒に、活動してくれる……?」

 

「ダー♪当然ですっ♪これからもずっと、よろしくお願いしますねっ♪ミナミ♪ランコ♪」

 

「はいっ♪私も、アーニャさんや美波さんと一緒に、もっと、アイドル活動をして行きたいです♪」

 

「……ありがとう♪では、みんなで頑張っていきましょうね♪ずっと、一緒に♪」

 

「ははっ、相変わらず、三人は仲がいいな。強い絆で結ばれてるって感じがするよ」

 

「はいっ♪でもですね……」

 

キュッ♪

 

「ん……?美波……?」

 

「あの時……言いましたよね?三人ではなく「四人」で頑張ろうって♪」

 

「そうですね♪プロデューサーも、一緒です♪」

 

「そなたの魂……我らのグリモワールに、永遠に刻印されたわ!これからも、共に歩もうぞ!親愛なる我が友よ!」

 

「……ありがとう、みんな……それじゃあ、一緒に頑張っていこうな!これからも、よろしく頼むぞ!」

 

「「「はいっ♪よろしくお願いします♪」」」



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炎華シンデレラ 向井拓海

「半端な気持ちはいらねぇ〜♪っと。さーて、今日もバリバリ仕事をこなすか!」

 

「事務所のドアはここだな。よし、気合いを入れて……!」

 

「くっ……あっ……!//」

 

「どう……で、ありますかっ……プロデューサー殿っ……//」

 

「……ん?この声は……亜季とプロデューサーか?何だかやけに、騒がしいな」

 

「亜季の……すごいキツい……//」

 

「まだまだで、ありますよっ……!怠けたカラダを、徹底的に……鍛え直してやるでありますっ……♪//」

 

「っ……!?」

 

「それに……さっきから……すごい、当たってる……うあっ……くっ……!//」

 

「何を……よそ見してるんですかっ……今は「実戦中」ですよ……!私だけに、集中するのであります……//」

 

「なっ……なななっ……!//」

 

「はぁはぁ……うあっ……亜季っ……そ、そろそろ……限界……だっ……!//」

 

「ふふっ……離しませんよっ……♪もっともっと……熱いモノを、見せてもらわないとっ……!//」

 

「……〜っ……!//」

 

バンッ!

 

「「!?」」

 

「て、ててて、てめえらぁ!あ、ああ、朝から事務所で、何をしてやがるんだあっ!//」

 

「た、拓海?どうしたんだよ、そんなに慌てて……」

 

「アァ!?ど、どうしたんだって、こっちのセリフだ!ああ、朝から……こんな場所でなあっ!//」

 

「どうしたんだって……護身術を、伝授してただけでありますが……?」

 

「はぁっ!?護身術だあ!?」

 

「あぁ。さっき、亜季と今、ハマってる、サバゲーの話をしてたんだ」

 

「それで、サバゲーで使ったことのある護身術を、リアルで体験させてくれるって聞いて、お願いしたんだよ」

 

「えへんっ!これくらいの護身術なら、朝飯前でありますよっ♪」

 

「何だ……そうだったのかよ……ったく……てめェってやつは……」

 

「一体、何をしてると思ったんだ?」

 

「そ、それは……う、うるせぇ!ただ、騒がしかったから、ちょっと気になってただけだっ!//」

 

「そうか。でも、亜季。護身術って、あんなに密着するものなのか?」

 

「……は?」

 

------------------------------------------------

 

「えぇ!関節技、抑込技、絞技、護身術の基本スキルであります!」

 

「そうなのか。かけてもらった技の中には、サバゲーで見たことのない技もあったから、勉強になったよ」

 

「後ろや正面から、俺の上半身に手を回されて、思いっきり抱きしめられたり……あんな護身術もあるんだな」

 

「あ、あれらも、身を守るための……大切な護身術でありますっ……//」

 

「……」

 

「何だか少し、照れ臭かったけど……でも、一番きつかったのは、関節技だったな。あれは、凄かった……」

 

「より実戦に近いように、少々、キツめにかけてしまったのでありますが……痛くなかったでありますか?」

 

「いや、頼んだのは俺だし、気にしないでくれ。むしろ……別の意味で、キツかったかな……」

 

「……と、言いますと……?」

 

「かけられてる最中に、俺の顔にすごいグイグイ当たって来たんだ。その……亜季の、柔らかい物がな……//」

 

「……!」

 

「あ、あれはワザとではなくて……不可抗力と言いますか……気にしないでくれると、助かります……//」

 

「そ、そうだよな……亜季は女の子だし……仕方のないことだよな……//」

 

「「……//」」

 

「……」

 

ゲシッ!

 

「痛てっ!」

 

「……おい。さっきから何、アタシの目の前でイチャイチャしてやがるんだ……」

 

「は、はぁっ!?イチャイチャなんかしてねえって!//」

 

「そ、そうでありますよ!戦場に色恋は、必要ないのでありますっ!//」

 

「チッ……どの口が抜かしてやがるんだか……それより……いつまで、アタシを放置してやがるんだ……」

 

「……あっ、そうか……悪い悪い。拓海と、これから収録に行くんだったな。じゃあ、向かうか」

 

「ふぅ……ったく……朝から、胸くそ悪りぃぜ……」

 

「……プロデューサー殿には……護身術よりも、乙女心を学んで欲しいのであります……」

 

------------------------------------------------

 

「涼、拓海。今日はよろしく」

 

「あぁ、よろしく頼むよ。プロデューサーサン」

 

「チッ……何で、アタシが……こんなことを……」

 

「どうした、拓海。何か不満でもあるのか?」

 

「大アリだっつーの!何で、アタシが……アタシがっ……」

 

「……遊園地にまで来て……お化け屋敷に入らなきゃなんねえんだよぉっ!!」

 

「何でって……収録だから?」

 

「お化け屋敷に入るだなんて、一言も聞いてねえぞ!いつ言ったんだ!コラァ!」

 

「言うわけないだろ。サプライズをするのに、今からサプライズをするぞって言われて、喜ぶヤツがいるか?」

 

「テメッ……!これのどこがサプライズなんだよ!喧嘩売ってんのか!!」

 

「あれぇ?もしかして、お化け屋敷が怖いのか〜?」

 

「なっ……!ンなわけねえだろ!アタシは特攻隊長なんだぞっ!ナメんじゃねえ!!」

 

「なあ、拓海、そこまでにしときなって。そんなに駄々をこねても、しょうがないと思うよ?」

 

「なっ……!べっ、別に、駄々をこねてなんか……!」

 

「これはお仕事なんだし、ささっと済ませちゃった方が、気が楽になるんじゃないかい?」

 

「それは……ふぅ……わかったよ。行けゃいいんだろ、行けゃ」

 

「おっ、行く気になってくれたか。涼、ありがとうな」

 

「礼には及ばないよ。それじゃあ行こうか、拓海」

 

------------------------------------------------

 

ヒュ~ドロドロ~……

 

「なかなか凝った作りをしてるな……結構、雰囲気があるじゃん」

 

「へ、へんっ!こんな子供騙しみてぇな所、ちっとも怖かねえ!!」

 

「このお化け屋敷、小梅がすごい推してたからね。タダモンじゃないってのはわかるよ」

 

「どうだか、そんなことより……おい」

 

「ん?何だよ?」

 

「何でここに、プロデューサーがいるんだよ!外で、待ってるんじゃなかったのかよっ!」

 

「しょうがないだろ。出演予定の人が来れなくなって急遽、代理で俺が入れられたんだから」

 

「だからってなあっ……!」

 

「まあ、いいじゃないか。それより私服、似合ってるよ」

 

「そうか?ありがとう、涼」

 

「ったく……んじゃあ、とっとと行って、済まそうぜ……」

 

「……た〜く〜み〜ん〜」

 

「ひゃあっ!?」

 

「ひゃあっ!だってぇ〜♪たくみんってば、か・わ・い・い・ぞ♪」

 

「よぉ、里奈。ここの案内をよろしくな」

 

「はぁっ!?り、里奈!?」

 

「ちょり〜す♪たくみん♪みんなっ♪今日はよろよろ〜♪」

 

「どうしてここに、里奈が……!それに何だよ!その格好は!」

 

「どう?似合う〜?キュートなおばけが、テンションあげあげで、屋敷を案内するぽよ〜♪」

 

「……なぁ、プロデューサー……まさか、アタシ以外はみんな、打ち合わせ済みだなんて言わねえよな?」

 

「知らないなあ。なあ、涼」

 

「うん、知らないねえ」

 

「くっ……!帰ったら……ぜってぇにシメる……!」

 

「ではっ♪たくみん御一行を、恐怖と怨嗟が蠢く、未知の怖〜い冥界にご案内しま〜すっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「やばっ……ただのお化け屋敷だと思って、つい、二つ返事で代理出演を承諾しちゃったけど……」

 

「……何これ……雰囲気出すぎじゃね……?本当にここ……遊園地の敷地内なの……?」

 

「ふふっ♪アタシたち、ここから帰れないかもしれないな♪」

 

「涼……何だか、余裕そうだな……」

 

「さあ、どうだろうね。拓海はどうだい?」

 

「……ふ、ふんっ!全然、怖かねえよっ!」

 

「おっ、そいつは頼もしいねぇ。頼りにしてるぜっ♪」

 

「ここさ、マジヤバな雰囲気でしょ?激ヤバで超、テンション萎えぽよしちゃうかもだから、注意してね♪」

 

「……そんなにハイテンションで、ギャル語を話す幽霊なんて……聞いたことがないぞ……」

 

「あっ、ヤバッ☆……ヒュ〜……ドロドロ〜……う〜ら〜め〜し〜や〜ぁ〜……」

 

「チッ……!バカことをしてねえで、とっとといくぞ……!ったく……」

 

ガシッ

 

「……ひっ……!……な、何だよぉっ……」

 

「これは……手か?」

 

「うん、これは死んだ人の手。生きてる人を恨んでいて、道連れにしようとしてるらしいよ?」

 

「……さらっと、怖いことを言うな……」

 

「な、何が道連れだ!それになんダァ!よく見たら作りモンだろこれ!びっくりさせやがって!!」

 

「たくみん頭いい〜♪そうだよっ、たくみんの足を掴んだのは、作りもんだぽよ〜♪」

 

「……あっさり、認めちまうんだね……」

 

「あ、でもね?確かに、今のは作り物だけど……」

 

フッ……

 

……タマニホンモノガマザッテルカラ……チュウイシテネ……?

 

「なっ……おい!蝋燭が消えちゃったぞ!」

 

「じ、冗談はやめろよっ!おいっ!!」

 

「……」

 

「……なぁ……里奈ぁ……悪ふざけは、いい加減にしてくれ……」

 

ポロッ

 

「っ……!?う、うわあああっ!」

 

「た、拓海……!?どうしたんだ!?」

 

「り、里奈の首がっ……」

 

「おいおい、流石にこれは、やりすぎだよ……っ!?」

 

「涼も、どうしたんだ?」

 

「いや……今、首筋に……冷たい感じがしたような……」

 

「うぅ……薄暗くて前が……よく見えねぇよぉ……」

 

「と、とりあえず二人とも、先に進もうぜ!何だか、霧も濃くなってきてるし……」

 

「……そうだね……このまま……進むしかないね……」

 

「……ううっ」

 

------------------------------------------------

 

「くそっ……明かりが無くなったせいか、ますます不気味になってきたぞ……」

 

「……」

 

「おい、拓海?大丈夫か……?」

 

「……クスン……う、うるせぇ……こっちみんなよぉ……スンッ」

 

「……おいおい……さっきの勢いは、どうしたんだ……?」

 

「そうだよ?アタシたちは、拓海を頼りにして……」

 

……エヘヘ……リョウサン……♪

 

「……ひっ!」

 

「っ……!?り、涼!急に、大声を出すなって!」

 

「わ、悪い……だって、今……耳元で誰かが……アタシに囁いてきて……」

 

……ワタシトアソボウヨ~……コッチダヨォ~……♪

 

「ひっ……きゃああああああっ!」ギュウッ

 

「うわっ!?ど、どうしたんだよ!涼っ!」

 

「こ、今度は、反対側から声がしたんだっ……!」

 

「とりあえず落ち着け!なっ……?」

 

キュッ……

 

「ひっ……!片腕を掴まれた感触が……幽霊か……!?」

 

「……クスン」

 

「って……何だ……拓海かよ……」

 

「……何だって、何だよぅ……あたしだって、少しくらい……こうしてもいいじゃねぇかよぉ……」

 

「ふぅ……普段の威勢の良さはどこにいったんだ?亜威怒流の特攻隊長さんよ」

 

「うるせぇぞ……ずべこべ言ってると……あとでシメるぞぉ……クスン」

 

「ったく……涼も拓海も、どうしちまったんだよ……」

 

……ネェ……ア~ソ~ボ~……♪

 

「……ひっ……!もう……いやぁっ……」ギュッ

 

……オネエサ~ン……アタシモツレテッテ~……♪

 

「ひいっ!ざけんなよぉっ……!」ギュッ

 

「お、おいっ……そんなに、密着してくるなって……」

 

ムニュッ♪

 

「……二人とも……意外と……じゃなくて!こ、怖いのはわかったから落ち着け!大丈夫だから!なっ!?//」

 

「……クスン」

 

「ううっ……スンッ」

 

「……だめだこりゃ……しょうがない。とりあえず、今は二人を連れて、出口まで向かうか……」

 

プニプニ……

 

「くっ……!いろんな意味で……歩きにくいっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「……クスン」

 

「ほら、二人とも。出口だぞ」

 

「……本当かい?」

 

「あぁ、涼。こんなに、日差しが眩しいだろ?」

 

「……終わったのか……?……へ、へんっ!大したことはなかったな!……スンッ」

 

「涙袋に涙を溜めながら言われても……説得力がないぞ……」

 

「……みんな……お疲れ様……♪」

 

「ひっ……!?」

 

「おっ、小梅。お疲れ様」

 

「ここのお化け屋敷……凄かったでしょ……?あの子の、お気に入りの場所なんだ……えへへ……♪」

 

「すごいも何も……本気で、どうにかなってしまいそうなぐらい、凄かったぞ……」

 

(……もちろん……別の意味でだけど……この二人のせいで……//)

 

「ふふっ……♪怖がってる涼さん……すごい……かわいかった……♪」

 

「勘弁してくれよ、小梅……ホラー映画は好きだけど、マジなのは苦手なんだって……」

 

「お〜い☆みんなぁ〜♪おっつかれちゃ〜ん♪」

 

「……里奈?」

 

「たくみん、どうしたの?そんなに涙目になっちゃってさ。らしくないじゃん」

 

「お、おい!里奈か!?本物の里奈なのかっ!?」

 

「そうだよ?テンションMAX、キュートさMAXな、いつものLOVEハズカムな里奈ちゃんだよ♪」

 

「首……首は大丈夫なのか!?怪我はしてねぇのか!?」

 

「ちょっ……たくみん、大丈夫?テンションサゲサゲで、マジヤバになっちゃった?」

 

「おい……里奈。あそこまでやるとは、俺も聞いてないぞ」

 

「エェ〜。だってぇ、簡単にネタバレしたらつまんないジャン♪それに首って……これのことぽよ?」

 

------------------------------------------------

 

「うわあっ!?」

 

「よく出来てるよね〜、これ♪美術さんに見せてもらった時に、マジで感動しちゃった〜♪」

 

「お前……よくそれを、平気で持てるな……」

 

「だって、美術さんたちが一生懸命に作ってくれたもんだし、丁寧に扱わなきゃね♪」

 

「それに、人様と物は大切にしろって教えてくれたのは、プロデューサーでしょ〜?」

 

「それは……ぐっ……確かに、その通りだ……」

 

「……な、何だ……作り物だったのかよ……心配したアタシが、バカみてえじゃねえか……」

 

「涙目なりょーちゃとたくみん、ちょ〜かわいかった〜♪ね〜、小梅ちゃん♪」

 

「うん……♪かわいかったぁ……♪」

 

「な、なぁ……小梅?一つ、聞いていいかい?」

 

「ん……?涼さん……どうしたの……?」

 

「小梅ってさ……この遊園地にいつ来たんだ?アタシたちが朝、集合した時に、小梅たちって……いたっけ?」

 

「ううん……実は、涼さんたちが来る前に、里奈さんと一緒に、少し早めに来たんだ……」

 

「そうそう♪アタシと小梅ちゃんは一足先に、この遊園地に来たんだよね〜♪」

 

「何だ、そうだったのか。それならいいんだ」

 

「ん……?でもよぉ。アタシたちが屋敷に入ったときに、里奈はいたけど、小梅はいなかったよな?」

 

「えっと……私は、里奈さんの衣装の着付けと、装飾のお手伝いをしに来ただけなので……」

 

「うんうん♪小梅ちゃんが手伝ってくれたおかげで、アタシをマジコワにしてくれたんだぽよ♪」

 

「ということは、プロデューサーサンは知ってたのか?小梅のことを」

 

「あぁ。衣装の着付けに来るってことは、知ってたぞ」

 

------------------------------------------------

 

「確か、あの時……あ、そっか!なあ、拓海。屋敷に入って少し経ってから、変な声が聞こえただろ?」

 

「変な……?あ、あの時か!確かに、首を誰かに触られながら、声が聞こえたような気がしたな」

 

「あれってさ、小梅と里奈なんじゃないかい?」

 

「んにゃ……?」

 

「全く、二人とも人が悪いよ。マジのヤツかと思って、すごいビビっちまったじゃないか」

 

「ま、待って……私たちは……お屋敷に入ってないよ……?」

 

「もういいって。番組の趣旨は、わかってるからさ」

 

「え?イヤ、まじでアタシたちは知らないよ?ね?スタッフさん」

 

「はい。藤本さんと白坂さんはずっと、裏のテントで、モニターをチェックしてもらっていました」

 

「えっ……?じゃああの時に、案内してくれた里奈は、誰だったんだ……?」

 

「あの時は、アタシはいたよ。でも、蝋燭を消して、マネキンとすり替わった以降は知らないよん?」

 

「だって、その時にテントに戻って、小梅ちゃんとずっとモニターで、たくみんたちを監視してたんだから」

 

「……えっ?でも確かに、あの時「涼さん」って小梅の声が聞こえたはず……」

 

「……嘘……だろ……じ、じゃあ……まさか……アタシと涼が、聞いた声って……」

 

「えへへ……もしかしたら……「生霊」かもしれないね……♪」

 

「ええっ!?それ、ガチホラーなヤツじゃん!まじウケる〜♪」

 

「「……」」

 

「……なぁ、拓海……このことは、聞かなかったことにしよう。アタシたちは何も知らない、いいな?」

 

「……あぁ……そうだな。アタシは、何も知らねぇ……知らねぇぞ……」

 

「どうしたんだ?二人とも、何かあったのか?」

 

「……プロデューサーサン……さっき、お化け屋敷で起きたことは……忘れてくれ……」

 

「ん?何だよ。あの時の二人、すごいかわいかったじゃないか」

 

「……シメる。こっちに来い。記憶を無くさせてやるから」

 

「……アタシも協力するよ……少し、痛いだろうけど……悪く思わないでくれ……」

 

「ちょっ……急に、物騒すぎだろお前ら!何なんだよ一体!」

 

「……うふふっ……♪生霊……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ〜、夏樹っち〜♪見て見て〜♪」

 

「ん?おぉ。これが、例の番組か」

 

「ばっ……!り、里奈!てめえ、何を見せてやがるんだ!!」

 

(……クスン……う、うるせぇ……こっちみんなよぉ……スンッ)

 

「〜〜っ!//」

 

「何だよ、普段とは真逆じゃないかよ。大スクープだな、こりゃ」

 

「う、うるせえ!ていうか!夏樹だって何だよ!その格好は!」

 

「ん?これかい?何って……メイド服だが?」

 

「てめえだって、普段とイメージが真逆だろうが!」

 

「そうだねぇ。これでも、何回か断ったんだけどな。はい、プロデューサー。コーヒーを淹れたよ」

 

「おっ、ありがとうな。夏樹」

 

「夏樹っち、似合うじゃ〜ん♪髪を下ろした姿も、マジカワだし♪」

 

「やめてくれよ。アタシはあくまで、ロックなアイドルだからな。こういう衣装は似合わんよ」

 

「……にしては……仕事が終わってるはずなのに、まだ着てるんだな……おめえ……」

 

「新境地に挑戦するのも、ロックだろ?それにこの際、拓海も着てみるか?特攻服ばかりじゃ、飽きるだろ」

 

「なっ……き、着ねえよ!特攻隊長が、そんな軟弱な服を着るか!ナメんじゃねえ!//」

 

「にしても、本当に似合ってるよな。仕事じゃなかったら毎日、夏樹目的でこの喫茶に、通ってしまいそうだ」

 

「……よしてくれ……それより、コーヒーは淹れたてが美味しいと思うぞ?「いけずな」ご主人様」

 

「ちょっと〜、夏樹っちばかり見て、ずるいぞぉ。アタシのこの、リナリナメイドもどうぽよ〜?」

 

「里奈も似合ってるよ。ギャルもいいけど、そのキュートなメイド服もすごいイケてるじゃないか」

 

「マジ!?ちょ〜嬉しいっ♪……アタシって、アイドルになる前はガテン系でさ、作業着が多かったんだよね」

 

「出歩くのも基本的に、作業着だったんだ。アイドルになるまで、かわいいものは無縁だと思ってたの」

 

「だからこそ……こういう、かわいい衣装をたくさん着れるようになって……すごい、嬉しいんだ……♪//」

 

「俺がスカウトしたんだ、かわいくないわけはないだろ?里奈はもう立派な、キュートなアイドルだよ」

 

「……んも〜♪プロデューサーってばマジメ〜♪ていうか好感度、超アゲぽよ〜♪」ギューッ

 

「お、おいっ!急に抱きつくなって!//」

 

「おっ、大胆だな。最高にロックだぜ」

 

「……ふぅ。流石に、長時間仕事をすると少し、休息を取りたくなるな。プロデューサー。隣、失礼するよ」

 

「!?」

 

「ふふっ……最高の、憩いの場所だ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「夏樹まで……どうしたんだ?」

 

「て、てめえらっ!さっきからアタシの目の前で、イチャついてるんじゃねえよ!」

 

「何さ〜。たくみんだって羨ましいなら、こっちに来ればいいのにぃ〜」

 

「なっ……べ、別に、羨ましくなんかねえっ!」

 

「ほら、ここが空いてるぞ?遠慮せずに来いよ」

 

「だからいかねえって!しつけえぞっ!」

 

「そうか。それじゃあ……今はこの場所を、譲り受けることにするよ……♪」ギュッ

 

「な、夏樹っ……!?」

 

「……うん。たまには、こういうシュチュエーションも……悪くはないな……//」

 

「にへへ〜……プロデューサーの腕……あったか〜いっ♪//」

 

「……チッ……あぁっ!胸糞悪りぃっ!おい!プロデューサー!ちょっと面を貸せや!!」

 

「はぁ!?何で、俺なんだよっ!?」

 

「うるせぇ!いいから、アタシとタイマンを張れや!」

 

「わぁお♪たくみんってば、ちょ〜だいた〜ん♪」

 

「タイマンって……おいおい。そんなに物騒なことを、アイドルの女の子が言うもんじゃないぞ……?」

 

「うるせぇ!デレデレしてふやけきったてめェを、アタシがしっかりとシメてやるぜ!!」

 

「拓海は一回こうなると、止まらないからな……どうだい?少し、乗ってあげてくれないか?」

 

「全く……しょうがないな……で?俺は、何をすればいいんだ?」

 

「ンなもん決まってるだろ!正々堂々、アタシと腕相撲で勝負だ!」

 

「……拓海……?俺は男で、拓海は女の子なんだぞ……?わかってるのか……?」

 

「アァ!?アタシが女だからって見下してんのかぁ!?ナメんじゃねえぞ!」

 

「そうじゃなくて……あぁもう……わかったよ……やればいいんだろ……?」

 

「やっと、腹を括ったか!よし!正々堂々とかかって来いや!!」

 

「ひゅ〜ひゅ〜!やっちゃえ♪やっちゃえ〜♪」

 

「やれやれ……憩いの場が、決闘の場になってしまったねぇ……」

 

------------------------------------------------

 

「さぁ、二人とも〜?準備はいい?」

 

「あぁ、アタシはいいぞ」

 

「俺も大丈夫だ」

 

「それじゃあ……よ〜い……始めっ!!」

 

「行くぜオラァ!」

 

「ぐっ……結構……強いなっ……!」

 

「だろっ!?これが仏恥義理亜威怒流、向井拓海様の実力だぜ!どうだっ!思い知ったか!!」

 

「確かに、強いぞ……でも……一つ、気づいたことがあるんだが……」

 

「あぁ?何だよ?」

 

「……拓海の手って……意外と華奢で、きめ細やかで……小さいんだな……」

 

「なっ……急に、何を言ってやがるんだよ!あっ!さては、アタシの注意をそらす気だな!卑怯だぞコラ!//」

 

「そ、そんなつもりで言ってねえよ!ただ、ついそう思ってしまっただけだ!//」

 

「チッ……!相変わらず、変なことを言いやがって……で、でもよ……」

 

「……ぷ、プロデューサーの手だって、その……意外と大きくて……温かいんだな……//」

 

「なっ……!//」

 

「「……//」」

 

「……ねぇ、夏樹っちぃ。これってさ……腕相撲、だよね……?」

 

「……あぁ、そうだな「白熱」した腕相撲だってことは、間違いないと思うぜ?」

 

「そうだねぇ……あ〜あ、何だかアタシまで、暑くなってきちゃったぽよ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「……意外と……しぶてえじゃねぇか……!」

 

「な、なあ……拓海……?そろそろ……やめにしようぜ……?」

 

「アァ!?アタシの力に怖気付いて、逃げる気なのかぁ!?」

 

「そうじゃなくて……やばいんだよっ……」

 

「やばいって……何がだよ……?」

 

「いや、その……手と手の間が、汗で湿ってきてるっていうか……//」

 

「はぁっ!?し、湿っ……!な、何を考えてやがるんだよっ!!//」

 

「しょうがないだろ!ずっと、互いに手を握り合ってたら、嫌でもこうなるわ!!//」

 

「……チッ……この……変態ヤローがっ……!//」

 

「だいたい、俺のことを変態変態って言うけど、拓海だって何を考えてたんだよ!」

 

「いや……それは……な、何も考えてねえよ!このアタシがてめェのことなんて、意識するわけねえだろ!//」

 

「……あ〜もう!りなぽよ、ギブギブ〜!一抜〜けたっ!」

 

「ふぅ。何だか、コーヒーが飲みたくなってきたぜ。どうだい里奈?アタシの奢りで、一杯やらないか?」

 

「え〜マジ!?夏樹っち、オゴってくれるのぉ〜!?」

 

「あぁ。糖分を取りすぎて「ブラック」コーヒーで、さっぱりしたいんだ。さっそく行こうぜ」

 

「あっ!アタシもブラックがいい〜♪んぢゃね〜♪バカップルちゃんたちっ♪」

 

「ったく……だいたいテメーは、色々な女に、鼻の下を伸ばしすぎなんだよっ……!」

 

「くっ……か、勝手に、決めつけるんじゃねぇ……!」

 

「嘘こけ!あの時に散々、亜季にデレデレしまくってたじゃねぇか!」

 

「……っ!あ、あれはだな……!」

 

(ナマけたカラダを……徹底的に「鍛え直して」やるであります……♪)

 

ムニッ♪

 

(……むぐっ!?)

 

(何を……よそ見してるんですかっ……今は「実戦中」ですよ……!)

 

(むぐ……うぐぐっ……//)

 

(……「私だけ」に、集中するのでありますっ……♪//)

 

ムニュッ♪

 

「……しょうがないだろ……色々と……//」

 

------------------------------------------------

 

「あっ!また、変なことを想像してやがったな!本当に、てめェってヤツは……!」

 

「だ、だからしょうがないだろ!亜季だって、その……女の子なわけだし……//」

 

「……何だよ……亜季にばかり、デレデレしやがって……そんなに、アタシには魅力がねぇのかよ……」

 

「魅力……?いや、拓海だって十分、魅力的な女の子だと思うぞ?」

 

「……どういうところがだよ……?」

 

「どういうって……」

 

「……」

 

タプンッ♪

 

「……スタイルとか?//」

 

「……やっぱり…てめェみたいな変態ヤローは……」

 

「っ…!?」

 

「アタシがしっかりと…シメなきゃ……いけねえなあっ!!」」

 

グイッ

 

「ぐあっ……!」

 

「よっしゃ〜!やっりぃ〜!!アタシの勝ちだぜぇ!!」

 

「くっ……油断してしまった……!」

 

「さぁて、たっぷりと楽しませてもらおうじゃねぇか……♪」

 

「はぁ!?負けたら何かあるなんて、聞いてないぞ!?」

 

「うるせぇ!男がぐちゃぐちゃ抜かすんじゃねぇ!負けは負けだ!潔く、負けを認めろや!!」

 

「……あの……拓海さん?俺、一体……どうなっちゃうんですかね……?」

 

「さぁ〜?そいつぁ、あとのお楽しみだ♪……覚悟しろよなっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「あれから急に、拓海の部屋に連れて来られ、座って待ってろって言われたけど……ていうか……」

 

「……アイドルが堂々と、男を女子寮に連れて行くなんて……色々と、アウトだと思うんだけど……?」

 

「しかも……拓海のヤツは洗面所に行ったっきり、出て来ないし……まさか……」

 

(へへへ……ここなら、誰も来ねえな……♪)

 

(た、拓海……)

 

(あの時はよくも、アタシを無理やり、お化け屋敷に連れて行ってくれたな……)

 

(その礼として、プロデューサーをアタシが、立派なゾンビにしてやるぜ……感謝しろよな……♪)

 

(……プロデューサーさん……ゾンビになるんだ……嬉しいなぁ……♪//)

 

(まっ、待ってくれ……!)

 

(安心しろって。ゾンビだから、死なねえ程度にしといてやるよ♪)

 

(ゾンビっ……ゾンビっ……えへへっ……♪)

 

(やめ……ぎゃああああああ)

 

カチャッ

 

「すみません!それだけは許してくれっ!何でもするから!」

 

「あん?どうしたんだよ。急に、土下座なんかして……」

 

「だって、俺のことを……って…拓海っ…!?その格好は……」

 

「……」

 

「……前に、拓海が……絶対に着たがらなかった、フリフリのピンクの衣装じゃないか!」

 

「……で?どうなんだよ……?」

 

「えっ、どうって……?」

 

「……似合うのか、似合わねえのか……どっちかって、聞いてるんだよ……//」

 

「いや、まあ……すごいかわいいと思うぞ?」

 

「っ……!ほ、本当なのか……!?」

 

「あぁ、本心から言ってるつもりだよ。でも何で、そんな格好をしてるんだ?」

 

「……あいつらだけ、ずりぃんだよ……だから、しばらくは……てめェをアタシが独占する……いいな……//」

 

ギューッ♪

 

「ちょっ……た、拓海っ!?何だよ……いきなり抱きついてきて……//」

 

「……わかってねぇな……んじゃあ、てめェの頭の中を……アタシでいっぱいに……してやんなきゃな……//」

 

ギュムッ♪

 

「むぐっ……!?……むぐぐっ……!//」

 

「……へへっ……♪アタシの胸で、窒息させてやるよ……♪この……変態ヤローがっ……♪//

 

------------------------------------------------

 

「むぐ……んっ……んんっ〜……!//」

 

「なぁ、どうだ……?亜季の時より……アタシの方が、ドキドキするだろ……?//」

 

「……ぷあっ……た、拓海っ……お前は、アイドルなんだぞ?冗談でも、こんなことはやめ……」

 

「ここまでしてわからねえのか……この……ニブチン野郎ッ!!」

 

「っ……!」

 

「アタシ以外の女には、抱きつかれてあんなに、鼻の下の伸ばしてやがったのに……」

 

「アタシには、こういうことをされても……何も感じねぇのかよぉっ!ああっ!?」

 

「お前……今日は、何か変だぞ?一体、何があったって言うんだよ……」

 

「……あいつらだけ、ずりぃぞ……もっと……アタシのことも構えよおっ……クスン」

 

「ちょっ……おいおい……いつものカッコイイ「亜威怒流」の拓海は、どこに行ってしまったんだ……?」

 

「わあってるよ……いつもそういう風に、見られてるってことぐらい……でもよ……アタシだってその……」

 

「……お、女なんだからな……もっと……アタシのことを見てくれても、いいじゃねぇかよ……」

 

「それは……そうだな……確かに最近、拓海のことをあまり見てあげれてなかったな……悪い……」

 

「反省……してるのか……?」

 

「あぁ。これからはもう少し、アイドルたちを公平に見るようにするよ。拓海を含めてさ」

 

「……ざけんな……これからは他の女じゃなくて、アタシだけを見ろ……いいな……?//」

 

「……悪い、それは出来ない。俺はあくまで「アイドル」のプロデューサーだ」

 

「輝いてもらうためにも、公平にアイドルたちを見守らなければな。だから、その要望には答えられない」

 

「そうか……じゃあ、しょうがねえな……」

 

「わかってくれたか……よかった。じゃあ、俺は一旦帰る……」

 

ガバッ!

 

「……じゃあせめて「今」だけは……アタシをず〜っと、見てもらわなきゃな……♪//」

 

「ぐうっ!?た、拓海……!?」

 

「今日はずっと、アタシと一緒にいてもらうぜ……ぜってえに、離さねえからな……覚悟しとけよ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「「……//」」

 

「……あの……拓海さん?」

 

「何だよ……」

 

「あれからずっと、ベットに押し倒されたままなんだが……俺は……どうしたらいいんですかね……?」

 

「……う、うるせぇなあ!アタシもどうしたらいいか、わかんねぇんだよ!!//」

 

「えっと……俺はもっと……わからないんだが……」

 

「何だよ……そんなに、アタシと一緒にいるのがイヤなのかよぉ……クスン」

 

「ふぅ……押し倒したと思ったら、泣き始めたり……忙しいヤツだな……」

 

「何だよぉ……シメるぞっ……ヒック」

 

「あ〜はいはい。とりあえず一旦、俺を解放してくれると助かるんだが?」

 

「……わかった……」

 

「さてと、解放してもらったことだし……ほら、落ち着くまで手を握ってやるから、少し冷静になれ。なっ?」

 

「あっ……うん……そうさせてもらう……//」

 

「やれやれ。拓海も何だかんだ言って、まだまだ女の子だよな。しばらくは、目が離せないぜ……」

 

「なっ……!てめェ……アタシはもうガキじゃねぇんだ!!ナメんじゃねえぞオラァ!!」

 

「んじゃあ、手を離した方がいいか?拓海お姉さんよ」

 

「そ、それは……チッ、わあったよ。とりあえず……しばらくは離すんじゃねえぞ……いいな……//」

 

「了解。拓海の望み通りにさせてもらうよ」

 

------------------------------------------------

 

「……どうだ?落ち着いたか?」

 

「あぁ、少しはな……何だよ……いつもは、ヘタレのニブチンのクセに……」

 

「……今日は……男らしいじゃねえかよ……//」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「何でもねえよ♪それにしても、プロデューサーの手……結構、温けえんだな……えへへ……♪//」

 

「おっ、今の笑顔。すごい女の子らしくて、かわいいじゃないか」

 

「う……うっせえなあ!いちいち、見てんじゃねぇよっ!//」

 

「あ〜あ。これで拓海がもう少し、文香や美波みたいに、お淑やかだったらよかったのにな〜」

 

「っ……!またてめェは、他の女のことを……」

 

「そしたらもっとたくさん、拓海のことをプロデュース出来るのにな。あ〜、残念だ」

 

「……それ……本当なのか?アタシが変われば、もっとアタシのことを、プロデュースしてくれるのか……?」

 

「そうだな。せっかく拓海は美人なんだから、アイドルとして色々な可能性があるって、思っただけだよ」

 

「……じゃあよ……コホン……あ、あの……プロデューサーさんっ」

 

「ん?」

 

「アタ……いえ、私……プロデューサーさんと一緒にいると、つい、心が暖かくなるんです……ですので……」

 

「……これからも……私のことを、ずっと……見守っていただけますか……?」ウルッ

 

「……」

 

「……チッ……やっぱり、アタシの柄じゃねぇよな……こんなの……」

 

「……かわいい」

 

「あ”……?」

 

「今の、すごいかわいかったぞ!拓海!!」

 

「ちょっ……なっ、何だよ急に……!」

 

------------------------------------------------

 

「さっきの拓海……清楚で可憐な、お嬢様って感じでかわいかったぞ!やっぱり、拓海はかわいいなあ!!」

 

「おいっ!いちいち、連呼するんじゃねぇ!!いいから、わ、忘れやがれっ……!//」

 

「そうだ!これからは「かわいい」特攻隊長で売るのはどうだ!?斬新でいいんじゃないか!?」

 

「調子に乗るんじゃねぇ!それ以上言ったら、シメんぞコラ!!」

 

「あぁ、結構だ。シメられようが、たくみんスマイルでねだられようが、絶対に忘れないぞ」

 

「てめェ……!いいか!よく聞け!アタシは天上天下、唯我独尊の向井拓海様だ!それ以外の何者でもねえ!」

 

「……そんな、ピンクのかわいい、フリフリの格好で言われてもねえ……」

 

「るせぇ!ガワなんかどうだっていいんだよ!アタシはアタシ、唯一無二だぜ!!」

 

「まあ、俺の心のメモリーに一生、保存しておくけどな。たくみん「お嬢様」♪」

 

「……どうやら……本気でシメられてえようだな……」

 

「はいはい。そんなに怖いことばかり言ってると、せっかくのかわいい衣装が台無しだぞ」

 

「……ちぃと、面貸せや……」

 

「ははっ、何だよ……むぐっ!?」

 

「……//」

 

「……ぷあっ……た、拓海……お前っ……」

 

「へへっ……♪どうだ……思い知ったか……//」

 

「……おい……自分が今、何をしたか……わかってるのか……?//」

 

「あぁ、わあってるよ、ンなこと……それに、アタシは特攻隊長だしな」

 

「……てめェの変な邪念を、吹き飛ばす勢いで……暴走してやったぜ……♪//」

 

「あのなあ……お前はアイドルなんだぞ…?こんなことは…」

 

「おっと、これ以上は言わせねえ。てめェにはもっと、忘れてもらわねえと、いけねえことがあるしな」

 

「……何だよ?」

 

「言っただろ?アタシはアタシなんだって。だから今は、他の女は忘れて……アタシのことだけを見ろ……//」

 

「いや……さっきからこの部屋には、俺と拓海しかいないと思うんだが……?」

 

「チッ……本当、こんなヘタレでニブチンで、変態ヤローの何処がいいんだろうなあ、アイツらは……」

 

「アイツら……?」

 

「何でもねえよ。とりあえず、今日はず〜っと、アタシに付き合ってもらうぜっ♪」

 

「……それにさ、その……アタシの「初めて」も、アンタにやったんだから……か、覚悟しろよなっ……//」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……密着しすぎだって!付き合ってやるから、とりあえず少し離れようぜ……なっ?」

 

「今度はアタシが、好きにさせてもらう番だぜ♪それとも……もう一回、アタシと「特攻」するか……?//」

 

「……っ!いいから離せっ!色々とマズイからっ!//」

 

「ざけんな!亜威怒流の特攻隊長である、このアタシが、てめェのニブチンな精神を、叩きなおしてやるぜ!」

 

「だから、ぜってぇに離せねえぞ♪これからも、ずっと……いや……「一生」な……♪」

 



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純情シンデレラ 城ヶ崎美嘉

「……」

 

「……ていっ♪」バッ

 

「うわっ!?」

 

「えへへ〜……♪誰か、わかるかな〜?」

 

「こ、この声は……莉嘉……?」

 

「ふふっ……正解はぁ〜……ざんね〜んでしたぁ〜♪カリスマギャルの、城ヶ崎美嘉ちゃんだよっ♪」

 

「な、何だ……美嘉か……」

 

「むっ……何だって、何さ〜」

 

「いや……だって……ていうか急に、目隠しをするな!びっくりするだろ!」

 

「ごめんごめん!ちょっと、いたずらをしてみたかっただけなんだって〜!で?理由は?」

 

「ったく……まあ、何ていうか、やっぱり姉妹だよな。第一声を聞いた時、莉嘉にしか聞こえなかったぞ」

 

「えへへ〜♪そうでしょ、そうでしょ〜♪アタシ、莉嘉の声真似、得意なんだよね〜♪」

 

「ねねっ、Pくん♪アタシとあ〜そ〜ぼ〜!カブトムシ?プリ?それともぉ……少し、イケナイ遊びする〜?」

 

「……あんまり言うと……あとで、莉嘉に怒られるぞ……」

 

「ちょっと、ちょっと〜♪何を想像しちゃってるの〜?プロデューサーのえっち……♪」

 

「う、うるさい!って!お前は一体、何をしに来たんだよ!」

 

「エ〜、ひ・み・つだよっ♪んじゃあ、もう行くから♪まったね〜♪」

 

バタン!

 

「……何なんだよ、アイツ……ふぅ……何だか、集中力が切れちまったな……」

 

「……少し、屋上で一服しましょうかねぇ……」

 

------------------------------------------------

 

「んく……あ〜……美味しいなあ〜……」

 

「この時期に飲む缶コーヒーって、何でこんなに美味しいんだろ……冷えた体に、染み渡るぜ……」

 

「……」

 

「……しかし……珍しいよな。いつもは賑やかな場所である、この屋上が……こんなにも、静謐なのは……」

 

「……ふっ……虚しいものだね、下界は。光と闇が入り乱れ、絶え間ない混沌に満ち溢れている……」

 

「無残にも、混沌にただ身を委ね……己の運命すら、闇雲に翻弄されていく……」

 

「これも……迷える子羊を束ねる、孤高のマスターたる所以か……あまりにも、残酷だね……」

 

「残酷故に、美しい……だからこそ、俺には眩しすぎる……歌唱と美貌で、魅了していく……この世界が……」

 

「……」

 

「……って!俺は飛鳥かっ!!//」

 

「いかんいかん……静かな場所で、一人になるとつい、変なポエムが頭に浮かんでしまうんだよな……」

 

「……俺って……実は、現役中二病?……いや……しかし……くっ……!」

 

「……」

 

「……蘭子や飛鳥の気持ちが少し、わかったような気がする……さて、そろそろ戻るか……」

 

「さあ、始めようじゃないか!暗黒のミサを……」

 

バタンッ!

 

「あ”〜っ”!こんなところにいた〜!もう!どこに行ってたのさ!」

 

------------------------------------------------

 

「うわっ……!?み、美嘉!?どうしたんだ……?」

 

「あっ、もしかして……休憩中だった?」

 

「そそ、そうだな!一息ついてたところだ!」

 

「何で、そんなに慌ててるの?」

 

「な、何でもねえよ!それより、俺に何か用があるのか?」

 

「あ〜、そうそう!ほら、こっちですよこっち!」

 

「……//」

 

「ん?……えっ……美優さん……?」

 

「ではっ!美優さん!こっちを向いて向いてっ!」

 

「……あぅ……//」

 

「あと、もう少し!ほらっ!ワンローテション!」

 

「えっと……うぅ……//」

 

「どうしました?美優さん?どこか調子でも……」

 

「さぁ!ご覧くださいっ!ギャル船美優で〜すっ♪」」

 

「……//」チラッ

 

「っ……!!」

 

「そ、そんなに見つめないでください……は、恥ずかしいですっ……//」

 

「……うっ……」

 

「ねね、どう?似合うでしょ……」

 

------------------------------------------------

 

「……うわああああ!かわいいいいいいいいっ!」

 

「「!?」」

 

「あっ……す、すみません……つい……でも、美優さんの、そのギャルメイク似合ってますよ!!」

 

「うぅ……そ、そんな……お世辞なんて、言わなくても……//」

 

「お世辞なんかじゃないですって!普段の美優さんとのギャップもあって、すごいかわいいです!」

 

「……か、かわいいだなんて……//」

 

「……」

 

「……あっ!そうだ!今度は衣装もギャル風にして、ギャル系雑誌に挑戦してみませんか!?」

 

「えっ……?いえ……そういうのは、その……美嘉ちゃんが……」

 

「大丈夫ですよ!俺がしっかりと、仕事を取ってくるんで!あっ、記念にスマホで一枚、いいですか!?」

 

「えっと……その……//」

 

「……むっ」

 

「さあ、美優さん!ピースですよ!ピースっ!!」

 

「あの……で、では……ぴーす……//」

 

「……ちょっと!プロデューサー!アタシの美優さんに、何をしてるのさっ!!」

 

「うわっ!?な、何だよ美嘉……急に、大声を出して……」

 

「プロデューサーの変態!美優さんが、困っちゃってるじゃん!」

 

「なっ……へ、変態……!?」

 

「美優さんに、変なことばかり言って……セクハラじゃん!嫌がらせじゃん!変態じゃんっ!」

 

「えっ……あ、あの……私は別に……//」

 

「さあ、美優さん!メイクを落としに行きますよっ!あんな変態の近くにいたら、変態が移っちゃいます!」

 

「……あっ……」

 

「プロデューサーのばーか!えっち!もう知らないっ!!」

 

バタン!

 

「……お、俺って……そんなに……変態だったのか……」

 

「……む〜っ……バカ……」

 

------------------------------------------------

 

「……っと……よし、今日の作業は終わったな」

 

「見積もりやスケジュール調整も済んだし、あとは軽く整理をして、帰るか……」

 

コンコン

 

「ん……?はい。どちら様でしょうか?」

 

「……失礼しま〜す♪」

 

「おっ、みりあじゃないか。お疲れ様」

 

「お疲れ様です♪あのっ、プロデューサー。今って、お暇かな?」

 

「うん。ちょうど今、仕事が終わって、これから帰るところだ」

 

「よかった〜♪莉嘉ちゃ〜ん♪プロデューサー、今、大丈夫だって〜!」

 

「わ〜いっ♪Pくんっ、こんちゃ〜す♪」

 

「おぉ、莉嘉もいたのか。お疲れ様」

 

「お疲れちゃん♪ねねっ、PくんPくんっ♪これ、見て見て〜♪」

 

「ん?何だ。随分と、かわいらしい箱じゃないか」

 

「ふっふっふ……じゃっ、じゃ〜んっ!今日ね、とときら学園のお仕事で、みりあちゃんと作ったんだ〜♪」

 

「えへへ♪みりあたちの、自信作なの♪プロデューサーにも食べてもらいたいと思って、持ってきたんだ〜♪」

 

「これは……クッキーか?よく出来てるな。ありがとう、二人とも。それと、みりあ」

 

「ん〜?」

 

「よく、ドアをちゃんとノックしたな。偉いぞ」ナデナデ

 

「あっ……べ、別に……大したことじゃないよっ……えへへ…♪//」

 

「あ〜っ!みりあちゃんだけ、ず〜る〜い〜!Pくん!アタシも褒めて〜!」

 

「おい。莉嘉はいっつも、ドアを乱暴に開けるだろ。少しは、みりあを見習え」

 

「むぅ〜……いいもん!Pくんに、たくさんクッキーを食べてもらって、いっぱい褒めてもらうんだからっ!」

 

「そうだな。では、せっかくだし、もらおうか」

 

「じゃあ、プロデューサー♪こっち、こっち〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「いただきます。うん、結構美味しいな」

 

「本当!?よかった〜♪」

 

「甘さもちょうどいいし、よく出来てるぞ」

 

「えへんっ!アタシたちの、自信作だからね!当然だよ♪」

 

「でも、悪いな。わざわざ、俺のために持ってきてくれて」

 

「よかったぁ♪喜んでもらえて♪心を込めて作った、甲斐があったよ♪」

 

「Pくんのために、頑張って作ったんだから、ありがたく食べてよね!」

 

「あぁ、ありがとうな。莉嘉、みりあ」

 

「……ねぇ、プロデューサー……みりあって……いい子?」

 

「もちろんだ。思いやりがあって、元気でいつも、みんなに優しいしな」ナデナデ

 

「……えへへ……♪撫でられるの、好き〜……♪//」

 

「あ〜っ!PくんPくんっ!アタシも、頑張ったんだよ〜!?」

 

「わかってるよ、莉嘉もいい子だ。いつも、お仕事を頑張ってくれてるしな」ナデナデ

 

「あっ……にへへ……♪//」

 

「しかし……二人みたいな妹がいたら、毎日が楽しそうだよな。とても賑やかになりそうだ」

 

「妹……?」

 

「うん。俺って一人っ子だからさ、姉妹や兄弟とかが時々、羨ましく感じるんだよ」

 

「だから、みりあや莉嘉みたいな妹が、いたらよかったなぁって思ってさ。なんてな」

 

「妹……それじゃあ……みりあは、いいよ……?」

 

「えっ……?」

 

「プロデュ……お、お兄ちゃん……//」

 

------------------------------------------------

 

「えっと……み、みりあ……?」

 

「ほらっ、お兄ちゃんっ♪クッキーだよぉ〜♪……あ〜んっ……♪//」

 

「ははっ、みりあは優しいなあ。でも、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとうな」

 

「お兄ちゃんはイヤ……?みりあが妹なの……」

 

「さっきも言っただろ?みりあみたいな妹がいたらよかったって。その気持ちは間違いないよ」

 

「じゃあ……その気持ちが本当なら……みりあのクッキーを、食べて欲しいな……//」

 

「みりあ……じ、じゃあ……もらっていいか……?//」

 

「わ〜いっ♪じゃあ……あ〜んっ♪」

 

「あ、あ〜ん……」

 

「……どう?お兄ちゃん……美味しい……?//」

 

「……あ、あぁ……美味しいぞ……みりあ……//」

 

「えへへ……よかった♪」

 

「……む〜……ちょっと!Pくんっ!さっきから、アタシのことを忘れてなぁい!?」

 

「あっ……わ、悪い……すっかり、夢中になってた……」

 

「も〜!ひっど〜い!こうなったら、アタシも今からPくんの妹になるっ!ほらっ!お兄ちゃん!あ〜ん!」

 

「は……?んぐっ……!?」

 

「どう?お兄ちゃん、美味しい〜?」

 

「……ぷあっ、おいっ!莉嘉!急に俺の口に、クッキーを突っ込むなっ!」

 

「よかった〜♪美味しかったんだねっ☆ほらぁ、も〜っとたくさんお食べ〜♪」

 

「だから、莉嘉!おま……んんっ……!」

 

「あ〜!みりあも、もっと、お兄ちゃんに食べてもらう〜」

 

ガチャ……

 

「プロデューサー、いる〜?」

 

「んぐっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜♪美嘉ちゃんだ〜♪こんばんはっ♪」

 

「みりあちゃん、こんばんは。で?これはどういうことなのかな?」

 

「み、美嘉っ……!」

 

「あのねっ♪プロデューサーは今、みりあたちのお兄ちゃんなのっ♪」

 

「……お兄ちゃん?」

 

「うんうん♪今のアタシたちは、Pくんの妹なのだ〜☆」

 

「ち、違うんだ……これには、深い訳があってだな……」

 

「ふ〜ん……まぁ、いいけどさ」サッ

 

「ん?お姉ちゃん今、何かしまった?」

 

「何でもないよ。それよりさ、プロ……じゃなくて、みんなでゲーセンに行かない?」

 

「ゲームセンター!?わ〜い!行く行く〜♪」

 

「はい、は〜いっ♪アタシも、ゲーセンに行きた〜い!」

 

「うん。じゃあ、決まりだね。プロデューサーは?」

 

「いや、俺は遠慮しておくよ。女の子同士で楽しんできな。野郎の俺はとっとと、帰らせてもらうよ」

 

「エ〜!Pくん、帰っちゃうの〜!?つ〜ま〜ん〜な〜い〜!」

 

「せっかくだし、お兄ちゃんも一緒に行こうよぉ〜!」

 

「だけどなぁ……」

 

「アタシは別に……構わないよ?……むしろ……一緒にいてくれた方が、安心するし……//」

 

「う〜む……確かに、女の子だけでゲーセンというのは……そうだな。じゃあ、俺も行かさせてもらうよ」

 

「わ〜い♪やったぁ〜♪じゃあ、みりあたちと一緒に行こうね♪お兄ちゃんっ♪」ギュッ

 

「おに〜ちゃん〜!いこ〜っ!」ギュッ

 

「お、おい……二人とも!急に、くっつくな!びっくりするだろっ!//」

 

「「えへへ〜……//」」

 

「………」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪きれ〜いっ♪」

 

「おぉ。街路樹のイルミネーションが、とても綺麗だな」

 

「まあ、クリスマスだからね〜」

 

「ところで、今更なんだが……今日の美嘉は、何というか……大人っぽいな」

 

「むぅ……ちょっと〜。いつものアタシは、子供っぽいってわけ〜?」

 

「そ、そういう意味で言ってねえよ!ただ、髪も、いつものポニーテールじゃなくて長髪だし……」

 

「それに、その服装も、いつものギャル風の衣装とは違って、なんか落ちついてるって気がしたんだ」

 

「ふふっ……似合う……?」

 

「うん、すごい似合ってるよ。流石はカリスマギャルだ」

 

「……そっか……ありがと……♪//」

 

「お姉ちゃんってば、最近、気合いが入ってるもんね〜」

 

「……っ!?ちょ、ちょっと莉嘉!//」

 

「気合い……?」

 

「お姉ちゃんね、最近よく、鏡とにらめっこしてるんだ〜。特に、お風呂上がりとかね〜」

 

「こら莉嘉!アンタって子は……あ、あのね……これは、その……」

 

「……そう!ほら!前に化粧品の、タイアップのお仕事があったでしょ!?」

 

「化粧品……あぁ!あの仕事か!大人向け化粧品の、広告の……」

 

「そう、それ!あの時にもらった試供品を、試してただけなのっ!」

 

「そうか、それで……確かに、たまにはこういう、大人っぽい美嘉もいいな」

 

「……えへへ……そうでしょ……♪どう?今のアタシに……ドキドキする……?//」

 

「ちょっ……な、何だよ……少し、近いって……//」

 

「や〜んっ♪プロデューサーったら、照れちゃってぇ〜……♪超、かわいい☆」

 

「……」

 

「ん?どうしたの?みりあちゃん」

 

「美嘉ちゃん、大丈夫……?今日の美嘉ちゃん……何だか、少し……」

 

「……んも〜!みりあちゃんってば、やっさしいなあ〜♪ますます、好きになっちゃうっ♪」ギュー

 

「ひゃっ……!?」

 

「心配してくれて、ありがとうっ♪そうだ!みりあちゃんも、メイクでオトナになってみる?」

 

「あっ、でも、やっぱりみりあちゃんは、このままがいいなっ♪」

 

「そのままの、ちっちゃいちっちゃいみりあちゃんが一番かわいいよ♪ふひひ♪」

 

「そ、そうかな……」

 

「でも、大丈夫♪今日も、いつものアタシだよ♪ああっ!それより、ゲーセンが見えて来たよ!早く行こうっ♪」

 

「うわっ!こら、美嘉!急に、引っ張るなって!」

 

「ちょ、ちょっとお姉ちゃ〜ん!アタシを置いてかないでよぉ〜!」

 

------------------------------------------------

 

ウィンウィンウィンウィン……ポロッ……

 

「あ〜!落ちちゃったぁ〜……なかなか難しいね……」

 

「ぐぬぬ……!手強いっ……!」

 

「もう少し、脇とか狙った方がいいんじゃないのか?ほら……ここの辺りとかさ」

 

「じゃあ、選手こうたぁい!お兄ちゃんやってぇ〜!」

 

「お、俺!?ていうか……そろそろ、お兄ちゃん呼びは……」

 

「お兄ちゃん頑張って♪みりあも応援してるよっ♪」

 

「……はい」チャリン

 

ウィンウィンウィンウィン

 

「左に移動して……ふぅ、この辺りでいいか……よし、次は、前に移動だな」

 

「どれ……少し、横から確認してみるか。うーん……どれぐらい進めるかなあ…」

 

「ねぇ、プロデューサー。脇もいいんだけどさ……ここはどう?」

 

「おっ……そうか!ここなら確実に、ホールドが出来る!ありがとうな!美嘉!」

 

「にししっ☆ど〜いたしましてっ♪……頑張ってね……お兄ちゃんっ……♪//」

 

「えっ……?……あっ……」

 

ウィンウィンウィンッ……

 

「あ〜……変な位置で止まっちゃったね」

 

「ぐっ……わ、悪い……」

 

「あはは☆お兄ちゃんってば、ドジっ子〜♪」

 

「う、うるさい!まあ……最後までやってみるか……」

 

ウィンウィンウィンウィン…ボロボロッ!

 

「……って……えぇっ!?ふ、二つも落ちた……!」

 

「わぁ〜♪お兄ちゃんすご〜い♪」

 

------------------------------------------------

 

「まさか……外れるどころか、二つも取れるとは……」

 

「掴むんじゃなくて、崩して取るなんて……流石はお兄ちゃんだねっ♪みりあもびっくりだよ♪」

 

「あ、あぁ……正直、俺も驚いてるんだ……でも、これは、美嘉のアドバイスのおかげだな」

 

「いやいや、そんなことないよ♪プロデューサーのテクが、すごかっただけだって♪」

 

「う〜む……しかし……二つも取れてもなあ……あっ、そうだ!せっかくだし、これは美嘉に……」

 

「……!」

 

「……と思ったけど、美嘉はこういうのって興味ないよな。それじゃあ、これは……ほれ、みりあ、莉嘉」

 

「いいのぉ?わぁ〜い♪ありがと〜う♪」

 

「やった〜☆ありがとう!お兄ちゃん!!」

 

「あぁ、大切にしてやれよ?」

 

「……ピニャア」

 

「きゃははっ!ぶちゃいく〜♪でも、きゃわいい〜☆」

 

「よかったな。あんなに喜んでもらえると、見てるこっちも嬉しくなるよ。なっ、美嘉」

 

「えっ……う、うんっ……そうだねっ♪」

 

「ね〜ね〜!次はみんなで、プリ撮りに行こうよ〜♪」

 

「おっ、いいな。記念にみんなで撮ろうぜ」

 

「行こう行こうっ☆アタシ、プリ撮るの大好き〜♪」

 

「……」

 

「ん?美嘉……どうした?」

 

「……あっ!ううんっ、何でもないよ!プリを撮るんでしょ?行こうよ♪」

 

「そうか……?よし!じゃあ、行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「えへへ〜……よく撮れてるねっ☆」

 

「うん。結構、いい写りじゃないか」

 

「いい記念になったね〜♪みりあ、大満足だよっ♪」

 

「でも……なぁ、美嘉?プリ見て思ったんだけどさ……少し……近すぎないか?」

 

「ん〜、そう?そんなことは、ないと思うよ?」

 

「思いっきり俺に、腕組みをしてるし……これじゃあ、まるで……」

 

「エ〜。だってぇ、プリはカメラに近づかないと、みんなで綺麗に撮れないんだよ?」

 

「そりゃ……そうだけどさ……」

 

「よ〜し♪さっそく、アタシのスマホに貼っちゃお〜っと♪」

 

「みりあも貼る〜♪」

 

「おいおい、二人とも?恥ずかしいから、あまり目立たない所に貼ってくれよ?」

 

「大丈夫だって☆前に、おに……「Pくん」と撮った、プリの隣に貼るからさ〜☆」

 

「えっ……前?」

 

「ばっ、ばか……!」

 

「え〜?莉嘉ちゃん。前にも、お兄ちゃんとプリを撮ったの〜?」

 

「うんっ♪Pくんと、お仕事の帰りに撮ったんだ〜♪ほらっ♪」

 

「うわぁ〜……ほっぺにちゅーしてる〜……いいなぁ〜……」

 

「おい、莉嘉……!みんなには、内緒だって言っただろ!」

 

「ありゃ、そうだった☆てへぺろっ☆」

 

「……プロデューサー?」

 

「っ……!こ、これはだな……その……仕事終わりに、ちょ〜っと遊んだだけっていうか……//」

 

「……とりあえず……あとで、話したいことがあるから」

 

「……はい……わかりました……」

 

------------------------------------------------

 

「え〜!もう終わりなのぉ!?つまんな〜い!」

 

「ダーメ。ほら、外はもうすっかり、暗いだろ?」

 

「……まだ……イルミネーションで……明るいもんっ……」

 

「おいおい、莉嘉?そんなワガママ、言っちゃだめだと思うぞ?」

 

「せっかくのクリスマスだし……みりあも、もう少し遊びたいなあ〜……」

 

「みりあ。気持ちはわかるけどあまり、夜遅くに出歩いてると、親御さんが心配しちゃうぞ?」

 

「……そうだね……夜遅いと、お母さんとお父さんが心配しちゃうもんね……」

 

「うん。だから、家まで送るから今日は帰ろう。なっ?」

 

「わかった!みりあ、おうちに帰る!」

 

「よし、いい子だ。ほら、莉嘉も帰ろうぜ」

 

「ちょっと!お姉ちゃんからも、何か言ってやってよ!アタシたちはもう、オコサマじゃないってさ!」

 

「えっ……?えっと……アタシはその……このあとに、もう少し……」

 

「え〜!?お姉ちゃんだけまだ、Pくんと遊ぶの〜!?ずるいよぉ〜!」

 

「あの……コホン……アタシはいいの。莉嘉はまだ、中学生になったばかりのオコサマなんだからダメ」

 

「何さ〜!お姉ちゃんだってまだ、オトナじゃないじゃん!」

 

「そうだね……でも、わかって……?アタシたちは遊びじゃなくて、色々と話さなきゃいけないことがあるの」

 

「ふ〜んだ!そうやって、隠れて遊びに行こうとしてるんでしょ〜!」

 

「ちょっと、莉嘉……アンタ、いい加減に……」

 

「……莉嘉ちゃん。ここは、美嘉ちゃんの言うことを聞いて、おうちに帰ろうよ、ねっ?」

 

「っ……!」

 

「エ〜……で、でもさ〜……」

 

「美嘉ちゃんはお姉さんだから、みりあたちの知らないことも、たくさん知ってると思うんだ」

 

「だから、これからプロデューサーと話すことって、とても大切なことなんじゃないかな」

 

「……みりあちゃん……」

 

「それに、また来ればいいじゃん♪その時はまた、みんなで楽しい思い出作ろうよ♪ねっ、莉嘉ちゃん♪」

 

「……そうだね。また、来ればいいんだもんね……ワガママを言って、ごめんなさい……お姉ちゃん」

 

「莉嘉……ううん、いいの。アタシも莉嘉のことを、オコサマだなんて言って悪かったよ」

 

「どうやら、丸く収まったみたいだな。みりあ、ありがとう」

 

「ううん♪みんな、仲良しが一番だよ♪……特に……プロデューサーとはねっ……♪」

 

「えっ……俺……?」

 

「何でもないよ〜ぅ♪それじゃあ♪みりあたちを、お家まで連れてって欲しいなあ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、またあとでね。お姉ちゃん」

 

「うん、またあとでね。莉嘉」

 

「あ、それとPくん!今回は譲ってあげるけど、今度はアタシに、た〜っぷりと付き合ってもらうんだから!」

 

「わかったよ。でも、程々に頼むぜ?」

 

「にひひ☆覚悟しておいてね♪……それじゃあ……えいっ♪」

 

チュッ♪

 

「なっ……!?//」

 

「ちょっ……り、莉嘉ぁ……!?」

 

「……今日のお礼だよっ♪……じゃ〜ね〜♪//」

 

「……あ、アイツ……急に何だよ……//」

 

「……全く……あの子は、本当にもうっ……で?どうだったの……?」

 

「えっ……?ど、どうだったって……?」

 

「……嬉しかった……?」

 

「いや……そりゃ、なぁ?嬉しくないと言えば、嘘になるけど……」

 

「でも、みりあも莉嘉もアイドルなんだから、もう少し、誤解を生むようなことは控えて欲しいよな〜」

 

「莉嘉のほっぺにちゅーもそうだけど、みりあだって、家に送った帰りに、急に抱きついてきて」

 

今日はありがとうっ♪お兄ちゃん、大好きっ♪

 

「だもんなあ……まあ、しょうがないか。二人とも、まだまだ子供だしな。距離感がわからないんだろう」

 

「……ニブチン」

 

「ん?今、何か言ったか?」

 

「何にも言ってないよ。それより……やっと、二人きりになれたね。じゃあ……行く?」

 

「……そうだな……行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「うぅ……結構、冷えるね〜……」

 

「まあ、時期も時期だしな。それに、日もだいぶ落ちてきたし」

 

ヒュ~……

 

「……クチュン」

 

「おい、大丈夫か?」

 

「大丈夫大丈夫。少し、冷えちゃっただけだから……うぅっ……」

 

「……ほらよ、俺のコート着ろ。これで少しは、暖かいだろ」

 

「えぇっ……!?だ、だからいいって!アタシは別に大丈夫だからっ……//」

 

「嘘つけ、体が震えてるぞ。それに、美嘉は冷え症だったろ?隠そうとしても無駄だ」

 

「……ずるいよ……そうやってすぐに、アタシのことを……見破るんだから……//」

 

「全く……すぐに一人で抱え込んだり、強がったりするのは、美嘉の悪い癖だぞ?」

 

「美嘉は、俺の大切なアイドルなんだ。だから遠慮なく、俺を頼ってくれよ」

 

「プロデューサー……ありがとう♪……じゃあ、さっそく……えいっ……♪//」

 

ギュッ

 

「うわっ……み、美嘉!?急に、何だよっ!//」

 

「……だって……頼っていいんでしょ?コートも、もちろん暖かいけど……人肌が一番……暖かいし……//」

 

「……わかったよ……今日だけだからな……//」

 

「わ〜いっ♪お兄ちゃん、大好き〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「おいおい。俺には一体、妹が何人いるんだ?それに、美嘉はお姉ちゃんだろ?」

 

「何さ……アタシからみれば、プロデューサーは大人のお兄さんだし……」

 

「……「目が離せない」……妹みたいな、もんじゃん……//」

 

「はいはい。どれ、美嘉ちゃん?あそこでおいし〜、キャンディの棒でも買ってあげようか〜?」

 

「むっ……子供扱いしないでよね!アタシは、オ・ト・ナのレディーなんだから!」

 

「子供なのか、オトナなのか、どっちなんだよ!」

 

「いいの!乙女は色々と、複雑なの!」

 

「複雑すぎだろ……」

 

「……あ〜♪プロデューサーさぁ〜ん♪美嘉ちゃ〜ん♪こんばんは〜♪」

 

「ん……?あっ、イヴさんだ♪こんばんは♪」

 

「よぉ、イヴ。ここで、何をしてるんだ?」

 

「えっとですね、クリスマスの、販売のアルバイトをしてるんですっ♪……あっ、そうだ♪」

 

「もしよかったら、プロデューサーさんたちも、プレゼントはいかがですかぁ?」

 

「プレゼント……?」

 

「はぁい♪何が出るか、お楽しみ☆開けるまでわからない、ドキドキワクワクするプレセントなんですよぉ♪」

 

「ほぉ……そりゃ、面白そうだな」

 

「うふふ……♪お隣の、かわいい「運命のシンデレラちゃん」にお一ついかがですか〜?」

 

「ふえっ……う、運命っ……//」

 

「……おい……イヴ?そんな言葉……どこで覚えたんだ?」

 

「えっ?日本の男の人はみんな、こういう風に女の子を見てるって、教えてもらいましたよ?」

 

「……今度……ゆっくり、日本語を教えてやるよ……とりあえず、せっかくだし二つもらおうか」

 

「わ〜いっ♪お買い上げ、ありがとうございますぅ♪いいものが、当たるといいですねぇ〜♪」

 

「ほら美嘉、プレゼントだ」

 

「……あ、ありがとう……お兄ちゃん……♪//」

 

「……っ!?」

 

「えっ……ええっ!?プロデューサーさんって、美嘉ちゃんのお兄さんだったんですか!?」

 

「ち、違うぞ!美嘉は、ただイタズラでだな……」

 

「えへへ……お兄ちゃんからのプレゼントっ…♪//」

 

「や、やっぱりっ……!」

 

「あぁ、もうっ!じゃあ、俺らはそろそろ行くよ!またな、イヴ!ほら、行くぞ美嘉!」

 

「あんっ……急に、引っ張らないでよ……//」

 

「ふふっ♪「兄妹」で、楽しいクリスマスを過ごしてくださいね〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、美嘉。コーヒーだ」

 

「あっ、サンキュ〜♪プロデューサー♪……んく……ん〜♪あったか〜い♪」

 

「それより……お前なぁ〜……他のアイドルの前で、あの呼び方はやめろよ……」

 

「……だって、ほら……認めてくれたじゃんっ……アタシを「女の子」だって……♪//」

 

「俺は「大切なアイドル」って言ったはずなんだがな……?でも、困ったな……」

 

「他のアイドルならまだしも、あのイヴにだし……本当に、俺らが兄妹だって、純粋に信じちゃってるぞ……」

 

「大丈夫だって、イヴさんは優しいから。それに後日、プロデューサーが日本語を教えてあげるんでしょ?」

 

「そりゃあ、そうだけど……」

 

「……むしろ……アタシは本当に……妹でもいいんだけどな〜……」

 

「ん?本当に……?」

 

「何でもないよ。そんなことより、プレゼントを開けようよ♪」

 

「ん?おぉ、そうだな。開けてみるか」

 

「じゃあ、まずはアタシから……あっ!これって……"LiPPS" stick charm & cake set……」

 

「……アタシのユニットの商品じゃん!商品化するって聞いてたけど、こうなってるんだ……」

 

「よかったな、大当たりじゃないか。それじゃあ、俺はっと……うへぇ……」

 

「何が当たったの?……ぷっ……そ、それって、もしかして……ブリッツェン?」

 

「イヴからのプレゼントで、ブリッツェンの人形か……ある意味で、大当たりだな……」

 

「……か、かわいいお人形だね……くふっ……」

 

「わ、笑うな!まあ、確かに、よくは出来てるけどな……」

 

「ほらぁ、そのお人形でぇ、美嘉お姉ちゃんが遊んであげようか?……ぷっ……」

 

「お前なぁ〜……まあ……これは莉嘉にやるか。ある意味当たりだけど、流石に男の俺にはな……」

 

「それに、莉嘉はこういうの好きそうだしな。ゲーセンの時にあげた、ぴにゃ人形も喜んでたし」

 

「……」

 

「……ねぇ、プロデューサー……いらないならさ……そ、その……アタシが……欲しいな//」

 

「えっ……美嘉に……?」

 

------------------------------------------------

 

「うん……アタシがもらっていい……かな……?」

 

「そりゃ、別にいいけど……美嘉って、こういう人形とか興味あるのか?」

 

「少しは、あるかな……あのね……さっきも言ったけどさ……アタシもその……女の子、なんだよ?」

 

「カリスマギャルって、よく言われるけど……普通の女の子見たいに、かわいいものにも興味があるし……」

 

「……それに……大切な人からの、プレゼントにだって……ドキドキしちゃうんだ……//」

 

「美嘉……」

 

「それに、言ったでしょ?乙女は複雑だって。あの時、ギャル風メイクをした美優さんを見て、どう思った?」

 

「えっ?いや、そりゃ……何ていうか……すごいかわいかった……//」

 

「……それで……思ったんだ。アタシが逆に、美優さんみたいになったら、どう思ってくれるのかなってさ」

 

「だから、趣向を変えてみたの。でも、プロデューサーは結局、莉嘉やみりあちゃんに、鼻を伸ばしてた……」

 

「待て、別に伸ばしてなんか……」

 

「ウソ。二人にお菓子食べさせて貰ってた時に、すごい緩んだ顔をしてた」

 

「うっ……そ、それは……!」

 

「ねぇ……プロデューサーは、どっちが好みなの?教えて…?」

 

「オトナなアタシがいい?それとも、少しチャイルディッシュなアタシがいい?ねぇ、ねぇ?」

 

「み、美嘉?少し、落ち着けって……」

 

「ねぇ……教えてよ……!教えてってば!」

 

「ぐっ……!」

 

「もっともっと、プロデューサーに、女の子として見て欲しい!構って欲しいよ!だから、だからっ……!」

 

「どんなアタシがいいか、教えてよぉっ!!」

 

「……悪いな。それは答えられない」

 

「っ……!な、何でっ……!」

 

「なぁ、美嘉、お前は何なんだ?」

 

「えっ……?」

 

「城ヶ崎美嘉、だろ?世間に大人気の、カリスマギャルの城ヶ崎美嘉と言う、唯一無二の存在だ」

 

「だから、俺が一番好きなのは「城ヶ崎美嘉」なんだ。他の誰でもない、な」

 

「プロデューサー……」

 

「それに、美嘉がそこまで、俺のことを好いてくれてたなんて、正直すごい嬉しいぞ?」

 

「……だからこそ……変に変わろうとせずに、今まで通りの美嘉でいてくれよ、なっ……?」

 

「……」

 

「……わかった……ごめんね。今のアタシ……何だか、変だったよね……」

 

「気にするな。それより、ほら、この人形をやるよ。大切にしてあげてくれ。あと、莉嘉には内緒な?」

 

「……うん……ありがとう……//」

 

------------------------------------------------

 

「ところで、相談のことなんだが……やっぱり、あれのことだよな……?」

 

「……さあ…どうだろうねえ」

 

「……ごめん……こんなんじゃ、偉そうに「アイドルとして」だなんて、言えないよな……」

 

「……反省してる……?」

 

「あぁ、俺もプロデューサーとして、しっかりと意識を持つようにするよ」

 

「ふーん……どうやら本当に、反省してるみたいだね……それじゃあ、反省したご褒美に……これ、あげる♪」

 

「えっ……これって……クッキーか?」

 

「そうだよ♪アタシって結構、お菓子作り好きなんだ♪どう?女の子っぽいでしょ♪」

 

「……もらって、いいのか?」

 

「もうっ。あの時、あげようとしたのに、二人にデレデレしてたから、あげれなかったんだよ?」

 

「あぁ、あの時の……って!だから、別にデレデレなんかしてねぇって!変な誤解をするな!」

 

「どうだか……まぁ、ユニットの子に配って余った物を、包んだだけだからね。おすそ分けってところだよ」

 

「にしては、随分と包装が凝ってないか?それに、一枚一枚丁寧にラッピングしてあるし……」

 

「……バカ……とにかくほら、せっかく作ったんだし、食べてよ」

 

「あ、あぁ……じゃあ、もらおうか……」

 

「ちょ、ちょっと待って!何で勝手に、食べようとしてるのさ!」

 

「はぁ!?だって今、美嘉が食べていいって……」

 

「全く、せっかちなんだから……ほらっ……あ、アタシが、食べさせてあげる……//」

 

「いや……い、いいよ……自分で食べるから……」

 

「ふ〜ん、そうだよねぇ〜、アタシなんかより、莉嘉やみりあちゃんから、もらった方が嬉しいよね〜」

 

「あ〜あ……やっぱり、プロデューサはロリコン確定かぁ〜。これは、予想以上のスクープだなぁ〜」

 

「……これは、是非……フレちゃんやシューコちゃんに、デレぽで報告……」

 

「……美嘉さんから、いただかせてもらいます……」

 

「よろしい♪はい、それじゃあ……あーん……♪//」

 

「くっ……あ、あーん……//」

 

「……どう?美味しい……?」

 

「……あぁ。甘くて、しっとりとして……美味い……//」

 

「そ、そう……よかった♪//」

 

「な、何だよ……食べさせる側が、恥ずかしがってどうするんだよ……//」

 

「う、うるさい!アタシもこういうことするのは、その……初めてで……それに、想いを込めたのも……」

 

「……って……こらっ!これ以上は、女の子の口から言わせないの!ほら、まだたくさんあるんだから……」

 

「……もっと、味わって食べて……ねっ♪//」

 

------------------------------------------------

 

「……ごちそうさま。美味しかったよ」

 

「全部、食べてくれたね……よかった♪手作りした甲斐があったよっ♪」

 

「あぁ、ありがとう、美嘉。少し……恥ずかしかったけどな……//」

 

「……アタシも正直……ちょっと、恥ずかしかったけど……すごく……嬉しかった……//」

 

「「……//」」

 

「……結構、静かだね……ここ……」

 

「……そうだな。公園のベンチといえど、ほぼ、人気のない夜の公園だしな……」

 

「……ねぇ、プロデューサー……今、アタシ、スマホをもってるから……その……二人で、写真を撮らない?」

 

「えっ、いや……さっき、莉嘉の件について、美嘉に謝ったばかりじゃないか」

 

「莉嘉って……何のこと……?」

 

「何のことって……おいおい。さっき、そのことについて怒ってたんだろ?」

 

「アイドルをプロデュースするプロデューサーとして、プロ意識がないって」

 

「あぁ、その話ね、別にそんなこと思ってないよ?ただ単に、莉嘉だけずるいな〜って、思っただけ♪」

 

「……そ、そうだったのか……それはよかったよ……色々な意味で……あ、あはは……」

 

「それじゃあ、撮ろうよっ♪ほら早く♪大丈夫♪アタシ専用のフォルダーに、厳重に保管しとくからさ♪」

 

「……それともフレちゃん文春に、プロデューサーのスクープを、リークしてあげようか?ふひひ☆」

 

「……わかったよ……ほら、もう俺のことを、好きにしてくれ……」

 

「物分かりがよくてよろしい♪それじゃあ撮るよ〜♪タイマーセットしてと……」

 

「ほら、準備をして!3……2……1……」

 

……チュッ♪

 

「なっ……!?//」

 

パシャッ!

 

「……えへへ……ちょっぴり……「オトナ」になってみちゃいました……//」

 

「……美嘉……お、お前……やって良いことと、わ、悪いことがあってだなっ……!//」

 

「知らな〜い♪それじゃあ、アタシ帰るからっ♪……まったね〜♪」

 

「お、おいっ!こら美嘉!待てっ!」

 

「いっやだよ〜♪それじゃあ、おやすみ〜♪」

 

「……くっ……やれやれ……イタズラ好きなのは、姉妹共通か……」

 

「何だかんだいって……美嘉も、まだまだオコサマだな……あんなイタズラを、急にしてくるし……」

 

「……少し……夜風で火照りを冷ましてから……帰るか……//」

 

「うふふ……よく撮れてるぅ♪この写真は、アタシとプロデューサーだけの、大切な……えへへ……♪」

 

「プロデューサーから直接、お人形も貰えたし……最高のクリスマスプレゼントをもらっちゃった……♪//」

 

「……「初めて」もプレゼントしちゃったし……♪ふふっ♪ちょっとまだ……恥ずかしいなあ……//」

 

「貰ったお人形……一生、大切にするからね。もう絶対に離さないし、アタシだけのものだよ」

 

「……だから、アタシのことも……ず〜っと大切に見守って、離さないでね♪プロデューサー……♪//」



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幸運シンデレラ 鷹富士茄子

ゴーンゴーン……

 

「……おっ。除夜の鐘が鳴ってますね」

 

「えぇ♪どうやら、年が明けたみたいですね♪」

 

「今年もよろしくお願いします。ちひろさん」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします♪プロデューサーさん♪」

 

「しかし、去年もアッという間に、過ぎちゃいましたね。時が経つのは早いもんです」

 

「そうですねぇ。でも、早く感じるってことは、それだけ日常が充実してる証拠だと思いますよ?」

 

「ははっ、そうかもしれませんね。あっ、そうだ。少しいいですか?」

 

「えっ?どうしました?」

 

「えっと……あ、あったあった……」

 

ピッ

 

Happy New Yeah! Happy New Yeah!

 

「おっ、やってるやってる。みんな、頑張ってるな」

 

「あぁ。そういえば、今は元日ライブを開催してる最中でしたね」

 

「はい、彼女らにとって、新年第一発目の、めでたいライブですからね」

 

「みんな、一年の計はライブにありって言う程、意気込んでいましたよ。特に心とか」

 

「ふふっ♪相変わらず、プロデューサーさんは仕事熱心ですね♪」

 

「いえいえ。アイドルたちを見守るのも、俺の役目ですから」

 

「それに、こうして事務所から除夜の鐘を聞くのも、もう慣れっこですし……」

 

「あっ。でも、たまには部屋の掃除しなきゃマズイかなって、思っちゃう時はありますけどね、なんて」

 

「……お仕事……辛いですか……?」

 

「……そうですねぇ……「充実しすぎて」辛いと思う時はありますねぇ」

 

「そうですか……ふふっ♪それを聞いて、安心しました♪」

 

「それに、今もすごい充実してますよ?こうしてちひろさんと二人きりで、甘酒を楽しめてるんですから」

 

「……っ!//」

 

「ん?どうしました?」

 

「……何でもないですっ。ちょっと、酔いが入っちゃっただけですよっ」

 

「またまた〜。これ、甘酒ですよ?ちひろさんはお茶目だなあ」

 

「こ〜らっ。お姉さんをからかうんじゃありません」

 

「ははっ、すみませんっ」

 

「でも……普段、頑張ってくれてますからね……じゃあ……」

 

「……そんな、頑張ってるプロデューサーさんに、お姉さんからお年玉をあげちゃいます♪はいっ♪」

 

「えっ……これ……ほ、本当にいいんですか!?」

 

「いつも、頑張ってくれてるご褒美ですよ♪今年も、しっかりとプロデュースを、お願いしますね♪」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

------------------------------------------------

 

「さ〜て。夜も明けてきたことだし、新年初の、初詣といきますかね」

 

「しかし……驚いたなあ……5ダースも、スタドリをくれるなんて……」

 

「領収書を簡単に切らせてくれない、あのちひろさんがだぞ……?」

 

「……やっべ……新年早々、運を使い切ってしまったかもしれん……」

 

「……まあいいか。あのドリンクを飲んで、頑張ってくれってことだよな、うん」

 

「それと、おまけに福引券ももらったしな。俺の運がどれだけのものか、試してやるぜ」

 

「流石に多いから一旦、自宅に置いてきたけど……なんつーか……ちひろさんも、気を付けて欲しいよなあ」

 

「自宅まで運ぶのを手伝うって、言ってくれたけど……流石に、女性に持たせるわけにはいかないし……」

 

「それに、こんな一人暮らしの、野郎の部屋にだぞ……?アイドルなら説教を……って……アイドル……?」

 

「ちひろさん……アイドル……意外とイケる?噂だけど、コスプレが好きらしいし……結構、綺麗だし……」

 

「……頼めば、あのフリフリの衣装を……着てくれるかな……?」

 

「あっ、プロデューサーじゃないですか♪」

 

「いや、スク水も……ううん。この時期なら、和服とか着物も捨てがたい……」

 

「……あの〜……プロデューサー?聞こえてますか〜?」

 

「はっ……!い、いえっ!何も考えてないですよ!?そんな、コスプレだなんて……」

 

「コスプレ……?」

 

「……っ!ちひ……か、茄子……!?どうしたんだ!こんな所で……!//」

 

「どうしたんだって……こっちの台詞ですよ〜。新年早々、こんな道の真ん中で、何か考えごとですか?」

 

「いや、それはだな……少し、仕事のことを考えてたんだよ……」

 

「流石はプロデューサーですね♪新年早々、お仕事のことを考えてたなんて♪」

 

「ま、まあな……それより茄子、明けましておめでとう。今年も、よろしくな」

 

「おめでとうございます♪こちらこそ、今年もよろしくお願いしますね♪」

 

「あぁ、よろしく。ところでその、茄子の着物、すごく似合ってるな」

 

「ありがとうございます♪やっぱり、初詣は着物ですよね♪」

 

「お、茄子も初詣だったのか。俺も、これから行こうと思ってたんだよ」

 

「プロデューサーも初詣なんですね♪よかったら、一緒に行きませんか?これも、何かのご縁だと思うので♪」

 

「それはいいな、一緒に行こうぜ」

 

「決まりですね♪……ちなみに、プロデューサー?私……スクール水着を、持ってますよ……?」

 

「えっ……って!さ、さっきの独り言は忘れてくれ!ほら、行くぞ!//」

 

「そうですか……私でよければ、いつでもお力になりますので、遠慮なく言ってくださいね……?」

 

------------------------------------------------

 

カランカラン

 

(アイドルたちが、今年も活躍出来ますように……)

 

「……」

 

(茄子……すごい集中してるな。一体、何をお願いしてるんだろ……)

 

「……」

 

「おーい、茄子ー」

 

「……」

 

「……大丈夫か?」

 

「……ふう……無事、お願いし終わりました♪」

 

「おぉ、終わったか」

 

「ん?プロデューサー。どうかしましたか?」

 

「いや……すごい真剣な顔をしてたから、何かあったのかと思ってさ……」

 

「ごめんなさい。私って、いつも神社を参拝する時に、すごい集中しちゃう癖があるんですよね」

 

「自惚れるつもりはないんですけど、運には自信があるんですよ♪」

 

「だから、いつまでも幸運でいたいので、こういう神事にはより一層、気合いが入っちゃうんです♪」

 

「成る程な……たしかに、茄子って幸運もアイドルとしての、一つのアピールポイントだもんな」

 

「ふふっ……♪みなさんに、幸運をおすそ分けですよ♪何せ、私は「幸運アイドル」なので♪」

 

「そうだな。流石は茄子だ」

 

「プロデューサーは、何をお願いしたんですか?」

 

「ん?あぁ。アイドルたちが、今年も活躍出来るようにってお願いしたよ。茄子は?」

 

「……秘密です♪」

 

「何だそりゃ!」

 

「……ところで……プロデューサー?私って……と〜っても、幸運体質なんですよ♪」

 

「ん?そうだな。さっき、そう言ってたよな」

 

「えぇ♪私とず〜っと一緒にいると、プロデューサーも、幸運体質になっちゃうかもしれませんよ?」

 

「……だから……どうですか……?//」

 

------------------------------------------------

 

「どうって……俺は、茄子も担当してるからな。常に一緒だぞ?」

 

「むぅっ……そうじゃなくて……」

 

「あ〜っ!プロデューサーじゃねーですか!」

 

「ん……?おっ、仁奈?」

 

「明けましておめでとう。プロデューサー君」

 

「明けましておめでとうございます……プロデューサーさん……」

 

「あっ、おめでとうございます。って、留美さんと美優さんも、一緒なんですね」

 

「はい……仁奈ちゃんとは前から一緒に、初詣に行く約束をしていましたので……♪」

 

「私は、道中でばったりと会ってね。ご一緒させてもらってるの」

 

「そうなんですか。俺もついさっき、茄子と偶然会って一緒に、初詣に行ってきたんです」

 

「みなさん、明けましておめでとうございます♪今年も、よろしくお願いしますね♪」

 

「えぇ、よろしくね。茄子ちゃん」

 

「よろしくお願いします……」

 

「よろしくです!茄子おねーさん!」

 

「ところで、みんなはもう、参拝は済んだんですか?」

 

「はい……♪仁奈ちゃんに思いっきり、鈴を鳴らしてもらいました……♪」

 

「えへんっ!お願い事を叶えるために、たくさん、鳴らしたでごぜーますよ♪」

 

「そうですか。あ、そうだ。もし、よかったら、みんなであそこの茶屋に行きませんか?」

 

「あら?いいのかしら?」

 

「えぇ。茄子や、美優さんと仁奈もどうですか?」

 

「はい♪ご一緒させてもらいます♪」

 

「そんな……悪いですよ……」

 

「いいのでごぜーますか?」

 

「遠慮しないでくださいよ。日頃、頑張ってもらってますので。たまには俺にも、頑張らせてください」

 

「そ、そうですか……では、お言葉に甘えて……」

 

「わ〜いっ♪嬉しいのでごぜーます♪」

 

「よし、決まりですね。それでは、行きましょう」

 

「……新年早々……プロデューサーさんと、出会えちゃった……♪うふふ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「全員分、頼み終わりました。あとは、来るのを待ちましょう」

 

「ありがとう。それにしても、ここの茶屋って個室になってるのね。いい雰囲気だわ」

 

「わふーな雰囲気が、お正月って感じがして、とてもいいお店でごぜーますね♪」

 

「ところで、三人のその着物姿、すごくかわいいですよ。とてもよく似合ってます」

 

「えっ……か、かわ……!//」

 

「やった〜♪プロデューサーに、褒めてもらったですっ♪」

 

「……プロデューサー君?私たちは女性なのよ?そういう風に、からかうのはよくないと思うわ」

 

「い、いえ、別にからかってなんかないですよ。つい、本心で言ってしまっただけで……」

 

「似合ってるって言ってくれるのは、嬉しいのよ?だけど……」

 

「……そういう言い方は……勘違いしちゃう子もいるから……程々になさい……//」

 

「勘違い……?ははっ、大丈夫ですよ。俺はそういうことに、全く縁がありませんので♪」

 

「……留美さん」

 

「……茄子ちゃん……言わなくてもわかるわ。私ってば……少し、この人を見くびりすぎてたようね……」

 

「そうだ、仁奈。ほら、これ」

 

「えっ、これって……お年玉でごぜーますか?」

 

「うん。大事に使えよ?」

 

「わ〜いっ♪ありがとうでごぜーます♪」

 

「よかったわね……仁奈ちゃん……♪」

 

「あら。私には、お年玉は無いのかしら」

 

「そうですね〜。でしたら今度、一緒に食事でもどうですか?」

 

「それも悪くないわね。でも、もっと欲しいものがあるの」

 

「……と、言いますと……?」

 

「そうね……「給料3ヶ月分」の物が今、と〜っても欲しいわ」

 

「っ……!?……る、留美さんっ……!?//」

 

「ははっ、ダメですよ。留美さんは、人気アイドルですので、もっと活躍してもらわないと」

 

「それに、今の調子で行けば、給料5ヶ月分でも何年分でも、どんどん上に行けますよ!」

 

「……んもう……つれないんだから……」

 

トゥン,テケテンテンテンテン,トゥントゥトゥン♪

 

「あ、電話が……少し、席を外しますね」

 

------------------------------------------------

 

「る、留美さん……急に……何を、言い出すんですか……//」

 

「あらっ?美優さんは、欲しくないのかしら?」

 

「そ、それはっ……//」

 

「いらないなら私、もらっちゃうわよ?「いつ」くれるかなんて、保証はないけどね」

 

「……だ、だめです……私も、その……欲しいです……//」

 

「……そう。茄子ちゃんは……?」

 

「……私って、すごい幸運体質なんですよ?「運命」だってきっと、よい方向に向くと思います」

 

「ふふっ、そうなるといいわね」

 

「留美おねーさんたち、何をしゃべってやがるんですか?」

 

「ううん、何でもないわ。それより、プロデューサー君からお年玉をもらえて、よかったわね」

 

「えへへ〜♪留美おねーさんは、もらわねーのですか?」

 

「そうね。プロデューサー君はイジワルだから、私には中々くれないのよ」

 

「そうなのですか……イジワルはよくねーことです」

 

「でしょ?だから今度、プロデューサー君に……」

 

「ちょ、ちょっと……留美さん……?」

 

「あらっ、少し言いすぎたかしら。仁奈ちゃん、今のは冗談よ?本当は、私たちもお年玉をもらったの」

 

「そうだったんですか。やっぱり、仲良しが一番ですね!お正月は、みんなで楽しまなきゃいけねーです!」

 

「ふふっ、そうね……」

 

「あっ、そうだ。お正月に詳しい茄子おねーさんに、一つ、聞きたいことがあったのでごぜーます」

 

「ん?どうしたのかな?仁奈ちゃん」

 

「「ひめはじめ」って、何でごぜーますか?」

 

「「「!?」」」

 

------------------------------------------------

 

「ひ、ひめっ……!?//」

 

「に、仁奈ちゃん……?どこで……そんな言葉を……?//」

 

「美優おねーさんと会う前に、派手な格好をしたおにーちゃんたちが、歩きながらこう言ってやがりました」

 

「やっぱり正月は、ひめはじめをしなきゃはじまんねーよなー、って」

 

「…….っ〜……//」

 

「……あぅ……//」

 

「ん?おねーさんたち、どうしたのでごぜーますか?」

 

「んっ……コホン……え、えっとね。仁奈ちゃん」

 

「姫始めって言うのはね、名前の通り、新年を迎えた最初に、お姫様になることなんです」

 

「お姫様ですか!?」

 

「うん。ほらっ、仁奈ちゃんって今、着物を着てるでしょ?だから、仁奈ちゃんも今は、お姫様なの」

 

「そーなのですか?でも、お姫様ってもっと、シンデレラ見たいなドレスを、着てるよーな気が……」

 

「あのね。今からと〜っても、昔の日本にいたお姫様はね、仁奈ちゃんが着てるような、着物を着ていたの」

 

「だから、昔のお姫様に成り切って、新年を迎える。これが、姫始めなんだよ」

 

「確かに……テレビでたくさん、着物を着たおねーさんを、見たことがあるですね」

 

「でしょ?でもね、この「姫始め」は女の子にとって、と〜っても大切な、新年の行事なんです」

 

「あくまで、お姫様になった「気持ち」が大事なの。ですので、他の人には喋っちゃだめですよ?」

 

「喋っちゃうと、良い運が逃げちゃうの。ねっ?今、喋ったことは、私たちの秘密にしましょう」

 

「なるほど〜……流石は、茄子おねーさんです!仁奈、ぜってーに誰にも言わねーです!」

 

「うん。仁奈ちゃんはいい子だから、今年も神様がきっと、幸運を運んで来てくれますよ♪」

 

「わ〜いっ♪やった〜♪」

 

「……ふぅ」

 

「ん?……ということは……おねーさんたちも、ひめはじめをして、お姫様になってるってことですよね?」

 

「!!?//」

 

「どーですか!?仁奈と、同じ気持ちでごぜーますかっ!?」

 

「あっ、あの……そのっ……うぅ……//」

 

「そ、そうね……その……なんというか……すごい、気分がいいわね……//」

 

「茄子おねーさんもですか!?」

 

「ふぇっ!?そそ、そうですね……仁奈ちゃんと、同じ気持ち……ですね……//」

 

「わ〜いっ♪みんなと同じ気持ちだなんて、すげ〜嬉しいでごぜーますっ♪」

 

「あっ、すみません。ただいま戻りました」

 

「えへへっ……♪」

 

「ん?どうしたんだ仁奈。やけにご機嫌じゃないか」

 

「……にへへ♪そう見えるですか♪実は……ではなく!お年玉をもらって、ウキウキワクワクしてたのです♪」

 

「そうかそうか。そんなに喜んでもらえると、お年玉をあげた甲斐があったな」

 

「「「……//」」」

 

「ん……?みんな、どうしたんです?そんなに黙っちゃって……」

 

「な、何でもないですっ……//」チラッ

 

「そうね……気にしないでちょうだい……//」チラッ

 

「ぷ、プロデューサー……//」チラッ

 

「そうですか?……あっ。ちょうど頼んだものが来ましたよ、早速、食べましょうか」

 

「は、はい……いただきます……//」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサー♪ごちそーさまでした〜♪」

 

「ご馳走様、プロデューサー君。今日はありがとう」

 

「あ、あの……ご馳走様でした……」

 

「いえいえ。それじゃあ茄子、俺たちも行こうか」

 

「はい、そうですね♪では、みなさん。今年もよろしくお願いします♪」

 

「よろしくお願いします……茄子ちゃん……プロデューサーさん……♪」

 

「えぇ。よろしくお願いします。お互いに、頑張っていきましょう」

 

「よろしくね。それでは仁奈ちゃん、美優さん。行きましょうか」

 

「は〜いっ♪またね〜、プロデューサー♪茄子おねーさーんっ♪」

 

「……うふふ♪新年早々、みなさんと出会えてよかったですね♪」

 

「そうだな。仁奈たちと出会えたのも、茄子の「幸運」の力なのかもしれないな」

 

「ふふ〜ん♪何せ、私は幸運アイドルですからねっ♪今年もい〜っぱい、胸を張っちゃいますよ〜♪」

 

タプンッ♪

 

「……そ、そうだな……//」

 

「ん?プロデューサー、どうしたんですか?少し、お顔が赤いですよ?」

 

「な、何でもないぞっ!それよりぜんざい、美味かったか?」

 

「はいっ♪とても美味しかったです♪」

 

「よかった。俺もあそこのぜんざいは、当たりだと思ってたんだよな」

 

「えっと……ありがとうございます……私まで、ご馳走になってしまって……」

 

「いいんだって、気にするな。ところで……まだ、時間とか大丈夫か?」

 

「えっ……?えぇ、大丈夫ですけど……何か用ですか?」

 

「俺さ、ちひろさんから福引券をもらったんだよ。二枚あるから一緒に、運試しをしてみないか?」

 

「福引……運試し……いいですねっ!やりましょう!!」

 

「おっ、運試しと聞いた瞬間に、目つきが変わったな。流石は幸運アイドル。いい目だ」

 

「えへへっ♪運と聞いてはこの茄子、気合い入っちゃいますよ〜♪」

 

「よし勝負だ!さっそく、境内の抽選会場に行こうぜ!」

 

------------------------------------------------

 

「おっ、ここだな。茄子、先にやるか?」

 

「いえいえ♪プロデューサーから、お先にどうぞ♪」

 

「そうか?それじゃあ先に、行ってくるよ」

 

「はいっ♪行ってらっしゃい♪」

 

「すみませーん。お願いします」

 

「はいよ。ニイチャン、頑張りな!後ろのかわいい彼女ちゃんに、一等を当ててやんなよっ!」

 

「あぅ……か、彼女っ……//」

 

「ははっ……頑張ります……っと……」

 

ガラガラガラガラガラ

 

……コロッ

 

「ど、どうだ……!?」

 

「……あちゃ〜……残念だったね……はい、ティッシュ。また挑戦してね」

 

「くっ……ダメだったか……!……ん?このティッシュ、なんか見覚えあるような……」

 

「……って、これ……元日ライブの、販促用ティッシュじゃないか!……ある意味、大当たりだなこりゃ……」

 

「プロデューサー、どうでした?」

 

「あぁ、大当たりだ。ほれ」

 

「くすっ……お、大当たりですね……」

 

「あっ!今、笑っただろ!次は茄子だからな!」

 

「は、はいっ……行ってきます……」

 

「おっ、今度は彼女ちゃんかい?頑張りなっ!」

 

「はいっ♪それでは、回させてもらいますね♪」

 

ガラガラガラガラ……コロッ

 

「……あちゃ〜……この色は、ハズレだね〜……」

 

「そうですか……それは残念です……」

 

「まあ、気を落とすなって。また挑戦してくれよなっ。それじゃあ、ティッシュを……ん?」

 

「?」

 

「ん〜……っ!?こ、これ……よくみたら、五等のグレーじゃなくて……と、特賞の……プラチナだ……!」

 

「……えっ……えええっ!?」

 

「はっ……ハワイ旅行ペア招待券、大当たり〜!!」

 

カランカランカラン!!

 

「と、特賞!?……まじかよ……特賞を当てる人なんて、初めて見たぞ……」

 

「ほら、お嬢ちゃん。ハワイの旅行券だよ」

 

「え、えへへ……ありがとうございますっ……♪//」

 

「いや〜、俺も、ここで抽選会をやってきて長いけど……特賞を当てたのは、お嬢ちゃんが初めてだよ」

 

「そうなんですか……とても光栄です♪」

 

「おい、ニイチャン。こんな強運の持ち主で、超美人な彼女ちゃんを、一生大切にしてあげなよっ!」

 

「あっ、はい……って、俺は別に、彼氏じゃなくて……」

 

「……そ、そんな……美人だなんて……でも……これで、ハワイに二人っきりで、行けますね……♪//」ギュッ

 

「ちょっ……か、茄子っ……!//」

 

「ヒュ〜!新年から、見せつけてくれるねぇ!」

 

「……二人っきりでハワイ……うふふ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「〜〜♪」

 

「特賞、当たってよかったな」

 

「はいっ♪どうでしたか?幸運アイドルの実力はっ♪」

 

「あぁ。新年早々、縁起のいい物を目の当たりにしたよ」

 

「ですよねっ♪だから……あなたの隣にお一つ、縁起のいい「茄子」はいかがでしょうか……なんて……♪//」

 

「あ、あぁ……確かに、茄子と一緒に居ると、とても幸せになれそうだ……だけどな……」

 

プニュッ♪

 

「……少し……近すぎやしませんかね……?//」

 

「エ〜、そうですかぁ?」

 

「茄子……?一応言っておくけど、お前はアイドルなんだぞ?もう少し、適切な距離感をだな……//」

 

「わかってますよぉ。それに、これぐらいが適切な距離感だと思いますよ?」

 

「プロデューサーは私の担当なんです。さっきの初詣の時も、常に一緒って言ってくれましたよね?」

 

「いや……確かに、言ったは言ったけど……そういう意味で、言ったわけじゃなくて……」

 

「んもう、これぐらいで恥ずかしがってたら、ハワイ旅行の時はどうするんですか〜?」

 

「ハワイ旅行……?何のことだ……?」

 

「えっ。私、さっき、特賞のハワイ旅行を当てましたよね?」

 

「あぁ。当てたな」

 

「しかもこれって「ペア」旅行券ですよ?この意味、わかりますよね?」

 

「いや……よくわからないんけど……」

 

「……むぅ……ですから、私と一緒に……」

 

「あっ……プロデューサーさん……茄子さん……」

 

「ん……?おっ、ほたるじゃないか。あけましておめでとう」

 

「あの……あけましておめでとうございます……今年も、よろしくお願いしますね……」

 

「よろしくな。ところで、ほたるも初詣に来たのか?」

 

「はい……今年も無事に、新年を迎えれましたので……プロデューサーさんたちも、初詣ですか……?」

 

「あぁ。さっき、茄子と偶然出会ってな。今、一緒に初詣を終えたところだよ」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ♪ほたるちゃん。明けましておめでとうございます♪」

 

「おめでとうございます、茄子さん……その着物姿……とても、綺麗ですね……♪」

 

「ありがとうございます♪ほたるちゃんもその着物、とてもよく似合っていますよ♪」

 

「い、いえ……そんな……私なんて……//」

 

「あぁ、よく似合ってるじゃないか。その髪飾りもかわいいしな」

 

「そ、そうですか……?えへへ……何だか、照れてしまいますね……//」

 

「ほたるはもっと、自信を持てよ。俺がスカウトしたアイドルだ、かわいくないはずがないだろ?」

 

「……はい……そう言っていただけると……とても、嬉しいです……♪//」

 

「今年も一緒に、がんばりましょうね♪私たちは、同じアイドルなんですから♪」

 

「ありがとうございます……新年に、お二人と出会えて幸せです……♪初詣は「例年」通りでしたけど……」

 

「例年……?何のことだ?」

 

「えっと、実は……願掛けのために……毎年、初詣を終えたあとに、おみくじを引いてるんです……」

 

「おみくじ……あぁ。そういえば、境内に引ける場所があるな。結果はどうだったんだ?」

 

「……そうですね……今年は、大凶でした……あ、違いますね……今年も、大凶だったんです……」

 

「そ、そうか……まあ、おみくじはあくまで占いだしさ、気にするなって」

 

「いえ……気にしてはいないんです……今まで、ずっとこうでしたので……」

 

「多分……これからもずっと、同じ結果だと思います……ですので、ある意味で気が楽ですね……ふふっ……」

 

「ほたる……」

 

「……それでは、試してみましょうよ」

 

「えっ……?」

 

「今度は、ほたるちゃんではなく「ミス・フォーチュン」として、おみくじを引いてみませんか?」

 

「もう一回ですか……?でっ、でも……それでは……茄子さんに、ご迷惑が……」

 

「……いや、いいんじゃないか?せっかく、茄子とユニットを組んだわけだしさ」

 

「ユニットとして、運勢を占ってみるのも悪くないんじゃないか?」

 

「それは……確かに、そうですが……」

 

「決まりですね♪それではほたるちゃん、行きましょうか♪」

 

「あっ……は、はい……よろしくお願いします……」

 

------------------------------------------------

 

「あの……本当に……いいんですか……?」

 

「当たり前じゃないですか♪ほたるちゃんと私は、一心同体なんですから♪」

 

「……そう言っていただけるのは、嬉しいのですが……やはり……」

 

「気にしちゃダメです♪さあ、ほたるちゃん♪一緒に引きましょう♪せーのっ♪」

 

「あっ……えっ、えっと……せ、せ〜のっ……!」

 

「……」

 

「どうだ、二人とも。いいのが引けたか?」

 

「もしかして……これって……中吉……ですっ……!」

 

「わぁ♪私も、ほたるちゃんと同じ中吉ですっ♪嬉しいなあ♪」

 

「よかったじゃないかほたる!これで、新年を明るく迎えれるなっ!」

 

「わっ、私っ……こんなにいい運勢……初めてですっ……」

 

「ふふっ♪ほたるちゃんはもう、不幸な女の子ではなく、ラッキーガールですねっ♪」

 

「大丈夫でしょうか……一生分の運を、使ってしまったかも……それか、帰り道にとんでもないことが……」

 

「まあ、落ち着け。中吉を引けたのは事実なんだし、これで今年から「中吉」のほたるになったんだ」

 

「それに。ミス・フォーチュンとしても、二人とも同じ運勢だってことは、相性が抜群ってことじゃないか」

 

「……そうですね……幸運の女神と……不幸な女の子じゃなくて……」

 

「「普通の」鷹富士茄子と白菊ほたる。それが、私たちだと思いますよ♪」

 

「不幸じゃない、普通の私……何だか、とても嬉しいですっ……♪」

 

「ははっ、いい感じにまとまったな。その調子で、これからも頼むぞ!ほたる!茄子!」

 

「「はいっ♪」」

 

------------------------------------------------

 

「本日は……色々と、お世話になりました……♪」

 

「気にするな。それより、中吉を引けてよかったな」

 

「えぇ……生まれて初めて……こんなにいい運勢が、引けましたので……とても嬉しいです……♪」

 

「私たちは、もう二人で一つですからね♪一緒に、頑張って行きましょう♪」

 

「はいっ……♪よろしくお願いします……茄子さんっ……♪」

 

「それじゃあ、俺たちはそろそろ行くよ。今年もよろしくな、ほたる」

 

「はい……これからも、末永く……よろしくお願いします……それでは、またお会いしま……きゃっ……!?」

 

「っ……!ほたるっ!!」ギュッ

 

「あっ……ありがとうございます……」

 

「ほたるちゃんっ!大丈夫ですか!?」

 

「はい……大丈夫です……ご心配をおかけして、申し訳ありません……」

 

「気にしないでくれ。それより、大丈夫か?怪我はしてないか?」

 

「えぇ、何とか……どうやら、鼻緒が切れてしまったみたいです……」

 

「鼻緒……あぁ……完全に、切れてしまっていますね……」

 

「……せっかく……茄子さんと中吉を引けたのに……やはり、私は……」

 

「……それ以上、何も言うな」

 

ギュ-ッ

 

「ひゃっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?//」

 

「ほたるは、決して不幸な女の子じゃない。俺が保証する」

 

「で、ですが……その……」

 

「確かに、今まで不幸なことがあったのかもしれない。でも、これから幸せになればいいじゃないか」

 

「ほたるの幸も不幸も、全て俺が受け止めてやる。だから、俺と一緒に幸せになろうぜ、なっ?」

 

「ふあっ……//」

 

「ほたるは、俺の大切なアイドルだ。だからもう、これ以上不幸にはさせない。絶対にな」

 

「は、はいっ……そのっ……よ、よろしくお願いします……プロデューサーさんっ……//」

 

「あぁ、よろしくな。ほたる」

 

「……//」

 

「……むぅ〜……プロデューサ〜?いつまで、ほたるちゃんを抱きしめてるんですかぁ〜……?」

 

「ん?抱きしめ……うわっ!わ、悪いっ……!」

 

「そ、そんな……謝らないでくださいっ……!むしろ、その……助けていただき、ありがとうざいます……」

 

「……それに……プロデューサーさんって、その……逞しいんですね……何だか、とても安心しました……//」

 

「そうか……?ならいいんだが……それじゃあ、ちょっとあそこで座ろうか。切れた鼻緒を直さなきゃな」

 

「あっ……す、すみません……お願いします……「とんでもないこと」が、起きちゃった……うふふ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……これでよしと。どうだ?歩けるか?」

 

「っと……あ、歩けます……すみません……何から何まで、ご迷惑をおかけしてしまって……」

 

「気にするな。でも、また切れる可能性もあるから一応、帰りは気をつけてくれ」

 

「うふふっ♪気をつけてくださいね〜♪」

 

「はい……♪それでは……またお会いしましょうね……♪茄子さん……プロ……お、お兄ちゃん……//」

 

「ん……?」

 

「で、ではっ……私はこれでっ……!本日は、ありがとうございましたっ……!//」

 

「あぁ。これからも一緒に、頑張っていこうな。それじゃあ、茄子。俺たちも行くか」

 

「……そうですねぇ〜」

 

「茄子……?どうしたんだよ?」

 

「何でもないですぅ〜。ただ、新年の寒空の下だというのに、と〜っても火照ってしまっただけですぅ〜」

 

「火照ってるって……俺、何か変なことを言ったか?」

 

「……何ですか……幸も不幸も、全て受け止めるって……また、そういうことを平気で言うんですから……」

 

「何だよ。俺はただ、ほたるのことを心配して言っただけだぞ」

 

「むぅ……分かってますよ……プロデューサーが、そう言う人だってことは分かってますけど……」

 

「……抱きしめられながら、あんなことを言われたら……誰だってですね……」

 

「……?」

 

「と・に・か・く。ミス・フォーチュンには、私もいるってことを、忘れないでくださいね〜?」

 

「あぁ、わかってるつもりさ。ほたると茄子の二人で、ミス・フォーチュンだ。代わりなんかいないよ」

 

「全くもう……プロデューサーは、目が離せないんですから……でも……ほたるちゃんが、羨ましいな……」

 

「羨ましいって……何がだよ?」

 

------------------------------------------------

 

「……私……酷いことを考えてしまったんです……ほたるちゃんは、不幸で羨ましいなあって……」

 

「……っ!何で、そんなことを……!」

 

「私……自慢ではないんですが、頑張っても、頑張らなくても成功しちゃうんです。なにせ「幸運」ですから」

 

「よく言われるんです「努力もしてないくせに」「どうせ幸運のおかげなんでしょ?」って」

 

「でも、その「幸運」に助けられてるのは事実なんで、何も反論が出来ないんです。悔しいですよね」

 

「茄子……」

 

「だから、不運に負けず、大変なことでも逃げずに頑張っている、ほたるちゃんの姿がとても眩しいんです」

 

「それに……プロデューサーに「一緒に幸せになろう」って、温かい言葉をかけてもらってる姿を見て……」

 

「……ちょっぴり……嫉妬してしまったのかもしれませんね……なんて……」

 

「……」

 

「ふふっ「幸運の女神」が新年早々、こんなことを言ってはいけませんね。すみません、プロデューサー」

 

「……俺さ……今だから言うけど、茄子のことを一度も「幸運」だなんて思ったことはないぞ?」

 

「えっ……?」

 

「確かに人それぞれ、ツイてるツイてないってあると思う。茄子はもちろん、ツイてる方だ」

 

「だけどな……それ以上に茄子が、裏で努力をしているのも、知っているつもりだ」

 

「……っ!」

 

「色々な努力をしてる茄子を神様が見ていて、その結果、茄子に「幸運」を授けてくれてると思うんだ」

 

「だから……茄子の運勢は「幸運」ではなく「結果」だと、俺は思う」

 

「……私の幸運は……結果……」

 

「茄子やほたるは「普通の女の子」だ。幸運だとか不幸だとか、そんな目で一度も見たことはないよ」

 

「な?だから、自信を持て。みんなが何て言おうと、俺は茄子を知っている。それだけは事実だ」

 

「……プロデューサーっ!!」

 

ギュッ

 

「ちょっ……茄子……!?」

 

「嬉しいですっ……プロデューサーが、そこまで私のことを……見てくれてたなんてっ……!」

 

「な、何だよっ……!いきなり、抱きついてきて……//」

 

「私……「幸せとは何か」って、ずっと考えてたんです……」

 

「考えれば、考えるほど。悩めば、悩むほど。どんどんわからなくなってしまっていて……でも……」

 

「……今、わかりました……私を見てくれてる「想い人」が、一緒にいてくれること自体が「幸せ」だということを……!」

 

「想い人……?ていうか、そんなにくっつくなって!離れろっ!//」

 

「うふふ♪いやで〜す♪今は、プロデューサーを、茄子が一人で独占しちゃいますも〜んっ♪」

 

「くっ……!どうしたんだよ……急にっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「ふんふ〜ん♪」

 

「あの〜……茄子さん…?」

 

「はい♪なんでしょう♪」

 

「そろそろ、暑くなってきたことですし……一旦、離れませんか…?」

 

「エ〜、何を言ってるんですかぁ♪今は、真冬でと〜っても寒いじゃないですか♪」

 

「いや、そうじゃなくて…俺も一応、男ですし……」

 

プニッ♪

 

「……アイドルの女の子に…そんなに密着されると…色々とヤバイと言いますか…//」

 

「うふふ…♪私、実を言うと運はもちろん、スタイルにも自信があるんです♪なので……」

 

「……プロデューサーとなら……も〜っと、暑くなっちゃってもいいんですよ……?//」

 

「はぁ!?お、お前……一体、何を言って…!//」

 

「な〜んて、冗談ですよ♪あらあら、プロデューサーてば、何を想像しちゃったんですかねぇ〜?」

 

「な、なな…なんでもねえよっ……!……ったく……!//」

 

「まあ、それはいずれとして……では、ハワイ旅行の計画を立てましょうか♪」

 

「え…ハワイ…?何のことだよ?」

 

「もうっ、さっきから何回も言ってるじゃないですか〜。ハワイの「ペア」旅行券が当たりましたって〜」

 

「あぁ、さっきの……いや、気持ちはありがたいんだぞ?でも、俺には仕事があるからさ…悪いな、茄子」

 

「そうですか……それは残念です……」

 

「だから、そのチケットは、他のアイドルと……」

 

「……では「特別休暇」の時に、行きましょうか♪」

 

「っ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「私、知ってるんですよ〜♪もう少ししたら、プロデューサーに一週間の特別休暇が、与えられるってことを♪」

 

「……あ、あれ〜……おかしいな〜……アイドルたちに、そんな話をした記憶はないんだけどな〜……」

 

「それでは、私が一番乗りと言うことですね♪やはり、私は「幸運」ですっ♪」

 

「なあ……一体、その情報ってどこから仕入れたんだ……?」

 

「そんなことは、どうでもいいじゃないですかぁ〜♪それより、ねっ♪行きましょうよ♪」

 

「だけどな〜……」

 

「私……プロデューサーとの、大切な思い出を……作りたいな……?」ウルッ

 

「……わかったよ……じゃあまずは、下準備から始めようぜ」

 

「やった〜♪これでプロデューサーと二人っきりで旅行に行けますね♪」

 

「ただし、他のアイドルたちにバレないようにしてくれよ?これは俺と茄子の、二人だけの秘密だからな?」

 

「わかってますよぉ♪では……た〜くさん、ハワイ旅行を楽しみましょうね♪運命の王子様♪」

 

「おい!何だよ、その呼び方っ!」

 

「私、さっきプロデューサーに言われて、気づいたんです」

 

「……プロデューサーと出会えたのは「幸運」ではなく……「運命」だったってことを……♪//」

 

「いや……そこはせめて、幸運って言ってくれよ。運命だと、その……色々と気恥ずかしいから……//」

 

「「普通」の女の子は、こういうシュチュエーションに憧れるんです♪だから、プロデューサーは、運命の王子様なんですっ♪」

 

「……その呼び方……他のアイドルの前では、やめてくれよ……?」

 

「わかってますよぉ♪これも、私とプロデューサーの、二人だけの秘密ですっ♪」

 

「これから、ハワイ旅行……だけではなく、色んな思い出を一緒に、たくさん作っていきましょうね……♪」

 

「……「私」の……運命の、プロデューサー……♪」



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妖狐シンデレラ 塩見周子

chu chu chu chu chu chu lip ……

 

「〜♪」

 

「……ねぇ……」

 

ハジマリハソット……スkiss kiss kiss……

 

「〜♪〜♪」

 

「……ねぇってば!!」

 

「うわっ!?……し、周子か……?どうしたんだ……?」

 

「んもう〜、やっと気づいてくれた〜!さっきから話かけてるのに、無視するんだもん〜!」

 

「あっ、悪い悪い。ちょっと、曲を聞いててな」

 

「曲……?」

 

「あぁ。この前、新ユニットを発足して、スタジオでレコーディングをしただろ?」

 

「その、レコーディングをした、新曲のサンプルが届いたから、聞いてたんだよ」

 

「あぁ〜、あの時のね。もう届いたんだ」

 

「どうだ?周子も聞いてみるか?」

 

「うん、聞く〜。どんな風になってるのか、気になってたしね〜」

 

「それじゃあ、ほれ。イヤホン」

 

「ありがと〜……っと……」

 

ワスレテキテアゲタノヨ、ジブンノカサヲ……

 

「……」

 

「どうだ……?いい曲だろう?」

 

「……うん、よく出来てるね。何だかオトナ〜って、感じがするよ」

 

「だろ?「LIPPS」は、大人な女性をイメージしたユニットだしな。デビュー曲としては、申し分ないだろう」

 

「そうだね……ちなみにさ……この曲を聴いて、あたしたちの中で、誰を思い浮かんだ?」

 

「え?誰って……歌ってるのは、LIPPSのメンバーみんなだろ?」

 

「そうじゃなくて、あえて挙げるとしたらだよ」

 

「ん〜……そうだな〜……あえて、挙げるとするなら……奏かな」

 

------------------------------------------------

 

「ふ〜ん。どうして?」

 

「あいつさ、高校生の割に大人びてるし「オトナ」なイメージで考えると、奏が一番かな」

 

「……そうなんだ〜……ふ〜ん……」

 

「でも、何で急に、そんなことを聞いたんだ?」

 

「別にぃ〜。ただ、曲のイメージに誰が似合うのか、聞いただけだよ〜ん」

 

「そうなのか?でも、俺はあえて奏を挙げただけで、みんなを思い浮かべたぞ?もちろん、周子もだ」

 

「そらあ、どうもおおきに〜……あほ……」

 

バタン!

 

「……っ!?」

 

「おっはよ〜ん♪シキちゃんだよ〜♪」

 

「ぼんじゅ〜る♪フレちゃんだよ〜♪」

 

「あぁ……志希、フレデリカ。おはよ……って、おい!ドアは静かに開けろと、あれ程だな……」

 

「固いこと、言わない言わない〜。ねね、それより何してるの?」

 

「ったく……今、お前らの曲を聴いてたところだ」

 

「曲……?」

 

「なんか、あたしらの曲が、出来たみたいだよ〜」

 

「もしかして、LIPPSの……えぇ〜、うそうそ!?もう、出来たのぉ!?」

 

「あぁ。まだ出回る前の、サンプルだけどな」

 

「あたし、聴きた〜い♪ねぇ……聴・か・せ・てっ……♪」

 

「アタシもアタシも〜♪しるぷぷれ〜♪」

 

「そうか。ほら、こっち来い」

 

「わ〜いっ♪どんな曲なんだろっ♪ワクワクドキドキ♪」

 

「じゃあ、あたしはもう聴いたから、あそこのソファーで、雑誌を見てるね〜」

 

「……んじゃあ、ほれ。イヤホンだ」

 

「サンキュ〜♪」

 

「っと……さて、俺はデスクに戻るかね」

 

「……エ〜、めんど〜じゃ〜ん。このまま、座ってなよ〜♪」

 

「そうだよそうだよ♪ほらっ、スィットダウン♪」

 

「は?だって、俺がいたら曲を聴けないだろ?」

 

「あたしが右耳で、フレちゃんが左耳で聴けばいいじゃん♪」

 

「いや……それでも、二人の邪魔になっちゃうだろ」

 

「い〜のい〜の♪キュートで大人気アイドルな、このフレちゃんがいいって言ってるんだから♪」

 

「それに、神様もここに座ってなさいって言ってるよ〜?確証はないけどね〜♪」

 

「何だそりゃ……」

 

「細かいこと、言わないのっ♪ほら、座った座った〜♪んじゃ〜、右耳に……と……はい、フレちゃん♪」

 

「ありがとう♪それじゃあ、アタシは左耳につけて……と」

 

「ちょっ……全く……何なんだよ、一体……//」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「わぁお♪すごい、いい曲だねぇ♪」

 

「そうか……そりゃ、よかった……」

 

「んふふ〜♪オ・ト・ナでセクスィーな、曲だね♪」

 

「あぁ……ユニットのイメージに沿って、作詞作曲をしてもらったからな……それより……」

 

プニプニ♪

 

「……さっきから……少し、近いんじゃないんですかね……?//」

 

「ん〜?気のせいだよ〜♪ね〜、フレちゃん♪」

 

「うんうん♪気のせい気のせい〜♪」

 

「そ、そうか……?」

 

「しかし、いいネェ〜♪この「匂い」〜♪」

 

「そうだろそうだろ。いい曲……ん?」

 

「うんうん♪アタシたち好みな、いい匂いだよね〜♪」

 

「……」クンカクンカ

 

「……」クンクン

 

「……って……おい!何だよ匂いって!曲じゃねぇのかよ!//」

 

「この新曲もすっご〜い、いい曲だよ?完成度の高さにびっくりしてるもん♪でも……」

 

クンクン

 

「……プロデューサーの匂いは……もっと、いい匂い……なんちゃって♪//」

 

「何だよそれっ!比較対象が、明らかにおかしいだろっ!」

 

「クンカクンカ……ン〜♪男のフェロモンって言うのかな〜、嗅ぐだけで……すごい、ドキドキしちゃう〜……♪//」

 

「……あ〜……何だか、ア・タ・シ……トリップしちゃいそう〜……//」

 

「いちいち解説しなくていい!いいから、曲に集中しろっ!」

 

「えへへ……このままずっと……スンスン……わぁお……♪クセになっちゃう……♪//」

 

「……」チラッ

 

「ハスハス……ところでさぁ、プロデューサー。フレちゃんのフレグランスって、どんな感じだった?」

 

「わぁお♪シキちゃん、うま〜い♪座布団はないけどね〜♪」

 

「何って……少し甘くて、花っぽい香り……はっ……!」

 

「……にゅふふ♪プロデューサーも仲間だねぇ……♪」

 

「ち、ちがっ……これは……その……//」

 

「何だぁ〜♪プロデューサーも、アタシたちの香りを、嗅いでたんじゃ〜ん♪……えっち……//」

 

「不可抗力だ!だいたい、お前らが近づいてくるからだろ!」

 

「ん〜……フレちゃんだけ、ずる〜い……ほらっ、あたしももっと、急接近しちゃう〜♪」

 

「だからやめ……んぐっ……!」

 

「にゃはは♪キミも一緒に……トリップしちゃっていいんだよ……?きゃ〜♪恥ずかし〜♪//」ギュッ

 

「プロデューサーってば、両手に花だねぇ♪アタシたちは、両腕の中にいるけどね〜♪」ギュッ

 

キャッキャッ♪

 

「……」ジー

 

「ぷはっ……お前ら!いい加減にしろっ!周子もいるんだぞ!」

 

「……別に〜。あたし、何にも見てないよ〜?」

 

「だってサ♪周子ちゃん、公認だぞ〜♪」

 

「プロデューサーって、あったか〜い♪」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「んふっふっ〜♪気持ちよかったぁ〜♪プロデューサーの体温が、だけどね〜♪」

 

「……プロデューサーのカラダと、フェロモンもたくさん堪能出来て……シキちゃん、大満足……♪//」

 

「おい!誤解を生むような言い方はやめろ!」

 

「さて……ハスハスして、プロデューサー分もたくさん摂取出来たことだし、そろそろレッスンに行こうか♪」

 

「そうだねシキちゃん♪トレーナーさん、怒ると怖いもんね〜♪」

 

「それじゃあ、アタシたちはレッスンに行ってきま〜す♪お〜ゔぉわ〜♪」

 

「スィ〜ユゥ〜♪」

 

バタン!

 

「ふぅ……何だったんだ、あいつら……あ、そうだ。周子……っ……!?」

 

「ん〜、どうしたの〜?もう、イチャイチャタイムは終わったん?」

 

「何だよ!イチャイチャタイムって!……じゃなくて!お、お前……その格好……」

 

「格好?何かおかしい?」

 

「何って……そんなに、ふとももを投げ出すように寝転がって……しかも、あともう少しで……その……」

 

「……パンツが……見えちゃうぞ……//」

 

「あ〜、大丈夫だって。あたし、短パンだからさ〜」

 

「そういう問題じゃないだろ……周子は、アイドルなんだからな?」

 

「それと同時に、お前は女の子だ。そんな調子だと、変なヤツに絡まれる可能性だってあるんだぞ?」

 

「大丈夫だって〜、プロデューサーさんの前以外で、こんな格好はしないよぉ」

 

「それとも、何……?そんなにあたしで、ドキドキしちゃったの……?」

 

「なっ……し、してねぇよ!//」

 

「嘘つき♪顔が真っ赤だぞ〜♪……スケベ……♪」

 

「……っ!う、うるせえ!いいから気をつけろっ!お前はアイドルなんだぞ!」

 

「はいはい♪ところで、話って何なの〜?」

 

------------------------------------------------

 

「……ごめん……話が逸れてたな。周子。今度の、ファッション誌の撮影のことなんだが……」

 

「あぁ、ファッション誌ね〜。どうしたの?」

 

「クライアントからの要望なんだけど、各自、普通の私服で来て欲しいそうだ」

 

「そうなんだ。じゃあ、これでいい?」

 

「それもいいけど……どうせならもう少し、オシャレをしてみないか?」

 

「ん〜……あたし、基本的に私服には無頓着だからな〜。こういうのしか持ってないよ?」

 

「そうか……なんか、もったいないなあ」

 

「え?」

 

「せっかく、周子は魅力的なアイドルなんだからさ、もっとかわいい私服とか、似合うと思うんだよな〜」

 

「ふ〜ん……そんなに見たい?……いつもと違うあたしを……」

 

「ん?あぁ。そりゃ、見てみたいな」

 

「……それじゃあ……付き合ってよ……」

 

「付き合うって……どこに?」

 

「ん〜……ぶてぃっく?あぱれる?」

 

「何で、疑問形なんだよ……」

 

「だってあたし、こういうカタカナ語は詳しくないも〜ん」

 

「……あっ、そういえば……前に、加蓮の荷物持ちで行った所が、ファッション街だったような……」

 

「ん?どこかに、オススメの場所があるの?」

 

「あぁ……思い当たる場所が、あるけど……でも、俺じゃない方がいいと思うぞ?」

 

「どうして?」

 

「こういうのは、女の子同士の方がいいだろ。この事務所に結構いるじゃん、センス抜群のアイドルがさ」

 

「確かに、それもええねぇ。でもね、あたしはプロデューサーさんに、選んでもらいたいなあ〜」

 

「う〜ん……まあ、いろんなアイドルを見てきてるから、俺でも、多少はどうにかなるかもしれんが……」

 

「……そのかわり……保証は、出来ないからな?」

 

「わ〜い♪決まりやね♪それじゃあ、いつ行く?」

 

「ん〜……じゃあ、今夜はどうだ?空いてるか?」

 

「うん、空いてるよ〜」

 

「よし、あと少しで仕事が終わるからさ、申し訳ないんだが、先に行って待っててくれるか?」

 

「うん、いいよっ♪どこで待ち合わせする?」

 

「そうだな〜……あ、じゃあさ、駅前の広場とかどうだ?ここから結構、近いだろ」

 

「わかった、広場だね♪じゃあ、シューコちゃんは先に行ってま〜す♪」

 

「うん、またあとでな」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ……終わった、終わった……」

 

「え〜っと。待ち合わせ場所は、ここの、駅前の広場だったな」

 

「……周子はっと……あっ、いた……お〜い、周子〜……ん?」

 

「ちょっと〜、姉ちゃん一人〜?俺らと遊ぼうよ〜♪」

 

「……周子?」

 

「……あたし……待ってる人がいるんで……」

 

「またまた♪そんな嘘を言っちゃって〜♪俺らと、楽しい所に行こうよぉ〜♪」グイッ

 

「……ちょっ……離してよっ……!」

 

「すぐに、楽しくなる所に連れてってやるって♪ほら、遊びにいこうぜ♪なっ♪」

 

「やっ……いやっ……!」

 

「……すみません。ちょっと、いいですか?」

 

「……っ!」

 

「あぁ?誰、アンタ」

 

「僕の彼女に何か用でしょうか?」

 

「……!!」

 

「えっ……か、彼女……!?」

 

「……も〜、遅いよぉ〜♪あたし、待っちゃった♪」ギュッ

 

「ちっ、姉ちゃん……彼氏持ちかよ……」

 

「うっぜ。他、行こうぜ〜」

 

「……周子。大丈夫だったか?」

 

「……うんっ♪大丈夫だよん♪」

 

「びっくりしたんだぞ?待ち合わせ場所に行ったら、これだし……」

 

「心配してくれてありがとう♪プロデューサーさん、カッコよかったぞ♪」

 

「ふう、その調子なら大丈夫そうだな、早速行くか?」

 

「うん♪行こう行こう♪」

 

「……なっ?言っただろ?周子は魅力的なんだから、気をつけないとああいう変なのに、絡まれるってさ」

 

「ふふん……♪もしかしてぇ♪プロデューサーさんも、シューコちゃんの魅力の虜になっちゃった?」

 

「あのなぁ……俺は、お前が心配で……」

 

「大丈夫だってぇ。あたし、こういうのは慣れてるからさぁ〜」

 

「ったく……まあ……何かあったら、いつでも俺に言え」

 

「……んもう……だから、大丈夫だよ……」

 

「周子は、俺の大切なアイドルだ。出来る限り、俺が守ってやるから」

 

「……!」

 

「だから……一人で、抱え込んだりするなよ……?」

 

「……うん、ありがとう……ねえ、プロデューサーさん……ちょっと、いいかな……」

 

ギュッ

 

「周子……?」

 

「……怖かったよぉっ……クスン」

 

「……そうか……少し、休んで行くか……」

 

------------------------------------------------

 

「……クスンッ」

 

「……落ち着いたか?ほら、ハンカチだ。とりあえず、涙を拭けよ」

 

「……うん……ありがとう……」

 

「ふぅ……周子はまだまだ、か弱い女の子だな。こんなんじゃ、俺も当分は目が離せないな」

 

「……」

 

「ウチの事務所はみんな、手のかかるアイドルばかりで、困っちゃうぜ。本当」

 

「そう、だね……ねぇ……プロデューサーさん……」

 

「ん……?」

 

「……」ウルウル

 

「……な、何だよ……//」

 

「……ぷっ……あははっ♪そない、顔を赤こうして……プロデューサーさんってば、かわええなあ〜♪」

 

「はぁっ……!?」

 

「あ〜あ♪なんか、いつものプロデューサーさんを見たら、安心しちゃった♪」

 

「あのな〜……大人をからかうのも、いい加減にしとけって……」

 

「ふふっ、めんごめんごっ♪でも、別にからかってるつもりはないんよ?」

 

「普段は鈍いのに、こういう時だけ、颯爽と守ってくれるなんて……ほんま……いけずなんやから……//」

 

「……まあ……よくわからんけど、周子が元気になってくれて、よかったよ」

 

「おおきに〜♪ねぇ〜、プロデューサーさん♪」

 

「なんだ?」

 

「……さっきの、プロデューサーさん……めっちゃ……カッコよかったえ……♪//」

 

「ふぅ……はいはい。そりゃ、ど〜も。周子はんに褒めてもろうて、嬉しおすなあ〜」

 

「んもう……ほんまのことやのに……」

 

「……あら?プロデューサーと、周子じゃない」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?おぉ、奏と美嘉か。こんばんは」

 

「こんばんは、今日も月が綺麗ね」

 

「あっ……え、えっと……こんばんは……//」

 

「二人で珍しいじゃないか。これから、どこかに行くのか?」

 

「えぇ。せっかくのオフなんで、美嘉とショッピングをね」

 

「こんばんはっ♪奏ちゃん♪美嘉ちゃん♪」

 

「こ、こんばんは……周子ちゃん……」

 

「周子もこんばんは。こんな所で奇遇ね。ところで、二人もこれから、どこかにいくの?」

 

「あぁ。これから、ファッション誌の撮影のための服を、周子と買いに行くんだ」

 

「服……?」

 

「あたしってさ、結構、服に無頓着でしょ?だから、プロデューサーさんに選んでもらおうかなと思ってさ♪」

 

「俺じゃあ、力になれないと思うんだけど、どうしてもって言うから……あっ、そうだ!」

 

「奏と美嘉に、選んでもらったらいいんじゃないか?二人とも、すごいかわいい服を着てるし」

 

「あら、嬉しいことを言ってくれるじゃない。じゃあ……美嘉も、プロデューサーに服、選んでもらう……?」

 

「ふえっ……!?あ、あたしっ……!?//」

 

「おいおい……周子以上に無頓着な野郎の俺に、カリスマギャルの私服を選べってか?冗談きついぞ」

 

「そう?せっかく、おめかしをしたのに……残念ね……?」

 

「……っ!?ちょ……かなっ……!」

 

「うん?おめかし……?」

 

「この子ったらね、私より先に、プロデューサーたちを見つけたのよ。しかも、すごい遠くの場所から」

 

「そしたら、急に手鏡を出して歩きながら、メイクをし始めたの」

 

「それで、直前になって、リップを塗り直し終えたんだもんね〜♪ねっ、美嘉♪」

 

「かっ……かなッ……かなッ……!かなぁ〜〜ッ!!//」

 

「あら?真冬なのに、セミが鳴いてるわね。不思議だわ」

 

「おぉ……プライベートでも常にプロ意識を持って、身だしなみに目を光らせてるとは……流石は美嘉だな!」

 

「……っ!と、とーぜんでしょ!?だって、アタシはカリスマギャルなんだからっ!//」

 

「まぁ、そうね。周子がいいなら、私たちと……やっぱり、やめておきましょう」

 

------------------------------------------------

 

「ん?そうか……?」

 

「えぇ。私たち、これからお茶をしにいくの」

 

「あなたたちより「ホット」なコーヒーと「甘い」スイーツをいただきにね」

 

「奏ちゃん……」

 

「そうなのか……なら、仕方がないな」

 

「えっ……あっ……そ、そうなの!これから、奏とお茶をしに行くのっ!だから、ごめんねっ……!//」

 

「……ふふっ♪今回は周子に譲るけど、次は私に付き合ってもらうからね♪荷物持ち、頼むわよ♪」

 

「ああっ!奏、ずるいっ!アタシだって、その……プロデューサーと一緒に、回りたい所……あるもん……//」

 

「ははっ、わかったよ。でも、程々に頼むぞ?」

 

「なんや、プロデューサーさんも、大忙しやねぇ♪」

 

「んじゃあ、譲ってくれたお礼と言ってはなんだけど、奏ちゃん。ちょっと、耳を貸して〜」

 

「あら?何かしら?」

 

「……ゴニョゴニョゴニョ……」

 

「……っ!?//」

 

「……んふふっ……♪よかったね♪」

 

「ん?どうしたの、奏。耳が赤いよ?」

 

「……何でもないわ。美嘉……それより、そろそろ行きましょう……」

 

「おっ、そうか。悪いな、邪魔をしちゃって」

 

「……んじゃ〜、お二人さんっ♪またレッスンで会おうね〜♪さ、行きまひょか♪ダ〜リ〜ンっ♪……えいっ♪」

 

……チュッ♪

 

「「!?」」

 

「おっ……おいっ!?周子っ!?//」

 

「ちょっ……し、周子……!?あなたっ……今、何をしてっ……//」

 

「あ、あわ……あわわ……//」

 

「知らへんなぁ〜♪さっ、ファッション街へGO〜♪」

 

「は……?って、おいっ!急に引っ張るなっ!」

 

「ちょっと、周子!待ちなさいっ!まだ、話は終わってないわよ!//」

 

「こ、こらあっ!今のは何よ!逃げるな〜!//」

 

「ふふ〜ん♪聞こえまへ〜ん♪」

 

------------------------------------------------

 

「周子、これなんかどうだ?」

 

「うん、ええなぁ〜♪」

 

「あっ、これもいいんじゃないか?」

 

「おぉ♪それもええね〜♪」

 

「……おい。これって、普通は逆じゃないか……?」

 

「エ〜、気のせいやって♪それに、ダーリンが選んでくれるものなら、何でも気に入っちゃうよ♪」

 

「おい……さっきから、何だ……その呼び方は……」

 

「ん〜?ダーリンはダーリンだよ?」

 

「……いつ……俺は、周子のダーリンになったんだ……?」

 

「んもう、さっき助けてくれた時に、言うてくれたやん……「僕の彼女に何か用でしょうか」って……♪//」

 

「あ、あれは、あの変な輩たちを諦めさせるために、言っただけだぞ!?」

 

「む〜。こういう時は「男に二言はねえ!」って言うところでしょ〜?」

 

「二言でも三言でもあるわ!いいか!お前はアイドルなんだぞ!」

 

「……それに……さっきだって、奏と美嘉の前で、俺の頰にあんなことをしやがってっ……!//」

 

「しゃ〜ないなあ〜……はいはい。健全なアイドルのシューコちゃんは、ダーリンなんていませんよ〜ぅ」

 

「ったく……」

 

「んま〜、冗談はさておき。プロデューサーさんが選んでくれた服、試着室で着てみるね♪」

 

「うん、行って来い」

 

「……」

 

「……うむ……この服も……あっ……やっぱり、こっちもいいか……」

 

「……」

 

「……大の男が一人で、女物の服を物色してるって……心なしか、周りの目線が少し、冷たいような……」

 

「……周子……早く来てくれっ……!//」

 

「……っ!……いっ、痛い……!」

 

「えっ……し、周子!?」

 

------------------------------------------------

 

「いっつ……うぅ、痛いよぉ……助けてっ……プロデューサーさんっ……!」

 

「……っ!周子っ!おい!大丈夫か!?」

 

「あっ……プロデューサーさん……ねぇ、お願い……そこのカーテンを閉めてくれる……かな……?」

 

「ん?あ、あぁ、わかった。これでいいか?」

 

「うん……ありがとうっ……!」

 

「なあ、それより大丈夫か?どこか、痛いのか?」

 

「う、うんっ……少し……ねっ……「ブラ」が、きつくてっ……//」

 

「……は?……ブ、ブラ……?」

 

「そうっ、ブラだよん♪」

 

「えっ……?どこか、具合が悪いんじゃないのか?」

 

「ん〜?痛いとは言ったけど、特に具合は悪くないよ?」

 

「うふふ……♪最近、また……成長しちゃったのかな……あたしの胸っ……♪//」

 

「……ハァ〜……またお前は……何だよ……周子に本気で、何かあったのかと思ったんだぞ……?」

 

「ふふっ、めんごっ♪どう?あたしってば意外と、演技派かなっ♪」

 

「ったく……人騒がせな奴め……」

 

「それよりさぁ……どう?……あたしの下着姿♪こう見えても「結構」ある方だと思うんだけどナ〜♪」

 

プニッ♪

 

「なっ……おいっ!何を、押し付けてるんだよっ!//」

 

「……あたし……いいよ?プロデューサーさんになら、もっと……大胆になってもっ……♪//」

 

「っ……!?また、俺のことをっ……!お、俺はさっさと、出るからなっ……!//」

 

「あんっ、いけずぅ……」

 

「そ〜っと、出るぞ……そ〜っと……」

 

「お客様?いかがなされましたか?」

 

「っ……!?」

 

「あ〜、何でもないです〜。すみませ〜ん」

 

「そうですか。では引き続き、お楽しみくださいませ♪」

 

「……」

 

「……ふふ〜ん♪今出たら、アウトやったね♪……しばらく……この体勢で、待ってた方がいいと思うぞ♪」

 

「……くっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「お買い上げ、ありがとうございました〜♪」

 

「ふふっ♪どう?似合う〜?」

 

「うん。年相応の、女の子って感じだぞ」

 

「えへへ〜♪プリンセスシューコちゃん、誕生♪見たいな〜?」

 

「そうだな。大切にしてくれよ?」

 

「ありがとうね♪プロデューサーさん♪ず〜っと、大切にするよっ♪」

 

「まあでも、いずれはもっといいものを、買ってもらえるかもな」

 

「ん?それってつまり……あたしが、トップアイドルになったらってこと……?」

 

「いや、将来、周子に本当に大切な人が出来た時に、その人からもっと、大事な物をもらえるかもってことだ」

 

「「楽しい思い出」は、物の値段や価値で、決まるもんじゃないだろ?」

 

「大切な人……」

 

「だから、今はアイドル生活を楽しめ。まあ、楽な事ばかりじゃないとは思うけどさ」

 

「周子が立派に旅立つ時まで、裏からバッチリサポートしてやるよ。だから、それまでお互いに頑張ろうぜ」

 

「……うん……ありがとう……♪ところでさ……新しい服に変わると、知らない世界に来た気分になるねっ♪」

 

「そうだな、とても新鮮でかわいいぞ」

 

「……んも〜……プロデューサーさんてば、またそないなことを……ほんま……いけずなんやから……♪//」

 

「何だよ、事実だろ?」

 

「……もう、知らな〜いっ♪それよりプロデューサーさん、あたし、おなかすいたーん♪」

 

「ん?あぁ。そういえば、夕飯を食べてなかったな。せっかくだし、何か食べに行くか」

 

「わ〜いっ♪行く行く〜♪」

 

「……あっ、そうだ……そういえば周子。さっき、奏に何を言ったんだ?珍しく、狼狽してたけど…」

 

「ん〜?大したこといってないよ♪ただ…ユニットの中で「一番」だったって、伝えただけだよ♪」

 

「一番……?何だそりゃ」

 

「い〜の♪女の子同士の秘密なんやから♪あまり深く聞いちゃ、あきまへんえ〜♪」

 

「まぁいいか……でも、あくまでLIPPSは、周子を含めてみんなで一つのユニットだ」

 

「誰が何で一番だとか、そういうことじゃないと思うぞ?」

 

「わかってるよ♪それより早く、ご飯にしまひょ〜♪シューコちゃん、お腹ペコペコどすえ〜♪」

 

「わかってるならいいけどさ。それじゃあ、食べに行こうぜ」

 

「は〜い♪」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、周子」

 

「わぁ〜♪あんがとさ〜ん♪」

 

「買ってきた俺が、言うのもなんだけどさ……お前……すごいな……」

 

「ん〜?何が〜?」

 

「外食したあとに、クレープまで食えるとは……」

 

「んふふ〜♪美味しい物は別腹だよん♪健康のコツは、少し不健康に生きることなんよ♪気がラクだしねっ♪」

 

「それとも……こっちの「肉」がついちゃうことが……気になるん……?//」

 

ムニュッ♪

 

「……ばっ、ばかっ……!だから、そういうことはやめろって!//」

 

「あははっ♪本当、かいらしいなあ〜♪プロデューサーさんは♪」

 

「全く……お前ってヤツは……あの、試着の時だって何だ」

 

「年頃のアイドルが、あられもない下着姿を晒して……俺じゃなかったら、色々と危ないぞ……?」

 

「んもう、だから言ってるやん。プロデューサーさんにしか……あんな姿を見せないって……//」

 

「信頼してくれるのは嬉しいけど……でも、最悪、アイドル人生が狂っちゃう可能性もあるんだからな……?」

 

「わかってるよ♪でも、だいじょ〜ぶ♪その時はプロデューサーさんに、もらってもらうもんっ♪//」

 

「はぁっ!?お、俺にっ……!?」

 

「ねぇ〜、プロデューサーさんって、彼女とかいるん?」

 

「……俺が、いると思うか?」

 

「うん♪いないと思う♪」

 

「ぐっ……そんな、はっきりと……!」

 

「でも「候補」は、たくさんいるんじゃないの?」

 

「ははっ。いたら、凸レーションに、俺も混じって歌っちゃうぐらい、ハッピーかもな。なんて」

 

「……ふ〜ん……プロデューサーさんって、やっぱりプロデューサーさんだねぇ」

 

「おい!何だよそれ!」

 

「まあ、そういうところを含めて、あたしは……んじゃ〜……みんなには悪いけど……いいよね……」

 

「……あっ、プロデューサーさん。顔にさあ……クレープのクリーム、ついてるよ……えいっ♪//」

 

チュッ……♪

 

「なっ……しゅ……周子!?」

 

「えへへ……♪おいしゅうございました〜♪//」

 

「お前……か、からかうのもいい加減にっ……!//」

 

「美嘉ちゃんと奏ちゃんの時は半分、悪ふざけだったよ?でも、今のは……」

 

「……や〜んっ♪これ以上、女の子の口から言わせるな〜♪//」

 

「あっ、こら!待て!待ちやがれ!//」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ……♪あんなに、顔を赤うして……♪ほんまに、プロデューサーさんはかいらしいなぁ♪」

 

「……みんな……堪忍な……あたし……フライングスタートを、してもうたわ……//」

 

「でも……負けへんよ。だって……プロデューサーさんは、あたしの……きゃっ!」

 

「……捕まえたっ!さ〜て、周子〜?俺と、今からアイドルについて、お話しをしようぜ〜?」

 

「……プロデューサーさんって……やっぱり……男の人、なんやね……♪//」

 

「そんなに力強く、あたしの手を握って……何だか……すごい、ドキドキしてもうたわ……//」

 

「は?おい……周子……?」

 

「……なあ、伝わってるかな……?あたしの鼓動……//」

 

「鼓動って……一体、何を言ってるんだ……?」

 

「……あたし、今……こんなに、ドキドキしてるんよ……?……えいっ♪//」

 

ムニュッ♪

 

「ちょっ……!?ばっ、バカ!だから、そういうことはやめろって!離れろっ!!//」

 

「聞こえるでしょ……?あたしの「柔らかい」鼓動が……♪//」

 

「や、柔らか……し、知るかっ!!//」

 

「むぅ、いぢわるなんやから……でも、プロデューサーさんの、暖かい鼓動……しっかり、聞こえんで……♪」

 

「……っ!//」

 

「ねぇ……このまま……あたしとプロデューサーさんの、このドキドキ……「共有」しようよ……♪//」

 

「き、共有って……どういうことだよっ!//」

 

「それは……や〜んっ♪せやから、そういうことは女の子の口から、言わせたらあきまへんって……♪//」

 

「……しゃ〜ないなあ〜……鈍感なプロデューサーさんには……あたしがしっかりと、わからせないかんね♪」

 

「……?」

 

「んふふ……♪じゃあ……あたしと甘いことを……しよっか……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「どう……?ぷっくりとしたピンクで、すごく艶々して……美味しそうでしょ……?」

 

「なっ……!お前……まさか……!」

 

「クレープを食べたあとだから、さらに甘くなってるかも♪だから、直接……味わってみて♪……ねっ……♪//」

 

「おい!流石に、冗談にも程があるぞっ!//」

 

「冗談かどうか、確かめさせてあげるよ♪それじゃあ……んっ……」

 

「ちょっ……ち、近い……!近すぎだって……!//」

 

「……プロデューサーさん……」

 

「……や、やめっ……!//」

 

「……」

 

ピコンッ

 

「……んぐっ!?」

 

「……えへへ……どうだった……?「あたし」の味は……♪//」

 

「んん……ぷあっ……な、何だこれ……!?」

 

「甘かったでしょ……?あたしの……や・つ・は・し♪」

 

「……八つ橋?」

 

「あははっ♪あたしのバックに、八つ橋を何個かストックしておいたんだ♪どう?美味しかった?」

 

「お、美味しかったって……//」

 

「んもう、どうしたの〜?狐に化かされた顔をしちゃって♪」

 

「もしかしてぇ、この九尾狐の申し子である、キツネシューコちゃんに魅了されちゃった?」

 

「……」

 

「雪やこんこん、シューコちゃんもこんこんってね♪あっ、今、あたし上手いことを言ったかも♪」

 

「……この妖狐め……!ちょっと来い!俺が、イタズラ好きな妖狐を退治してやらなきゃな!!」ギュッ

 

「あんっ、またそんなに強く引っ張って……プロデューサーさんてばぁ……だいた〜ん♪//」

 

「いいから来い!きっちり、俺が退治してやる!!」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、コーヒーだ」

 

「あっ、あんがとさ〜ん♪う〜ん……やっぱり、事務所が一番落ち着くねぇ〜♪」

 

「さてと。まずは、何から話そうかな……」

 

「二人っきりやし……まずは、あたしとプロデューサーさんの「将来」について、話そか……//」

 

「またお前は……あのな〜……いいか?周子は少し、無防備すぎるんだよ。色々な意味でさ」

 

「エ〜。そんなんあらへんもんっ」

 

「い〜や、あるんだ。すぐに思わせぶりなことをするし、言うし……さっきもそれで、怖い思いをしただろ?」

 

「確かに、あの時は怖かったけど……でも、あれは別に、あの人たちが勝手に寄ってきただけだよ〜?」

 

「それだけ、周子が魅力的な女の子ってこと。だから、変なことばかりしてるとまた、怖い思いをするんだぞ」

 

「……言ったやん……あんなこと……プロデューサーさんにしか、せえへんって……」

 

「それに、プロデューサーさんも、人のことを言えへんと思うで?」

 

「は……?俺が……?」

 

「誰にでも優しいし、平気で恥ずかしいをこと言うし、そのくせ、急に男らしくなったりするし……」

 

「そのせいで、あたしがどれだけ、苦労をしてると思ってるん?」

 

「よくわからないけど……それって、褒められてるのか……?」

 

「やっぱり、自覚がないんだ……ほんま、困った人やね〜……しゃ〜ないなあ〜……」

 

「あのな〜?プロデューサーさんは少し、無防備すぎるんよ。色々な意味で」

 

「えっ、そんなことはないと思うぞ?」

 

「い〜や、あるの。すぐに思わせぶりなことをしたり、言ったりして……女の子を惑わして……」

 

「プロデューサーさんは魅力的なんやから、もう少し、自分が「男の人」やって自覚を持った方がええで〜?」

 

「うぐっ……!そ、それは……すみません……反省します……」

 

「……じゃなくて!何でいつの間にか、俺が説教されてるんだよ!!」

 

「んふっふっ……♪幻術、オウム返しならぬ、シューコ返しを使ってみました♪だって、あたしは妖狐だもん♪」

 

「全く……でも、本当に気を付けてくれよ?アイドルな以前に、周子は女の子なんだからさ」

 

「大丈夫やって〜♪危険な目に、あいそうになっても……プロデューサーさんが、守ってくれるもんっ……//」

 

「俺だって常に、周子といれるわけじゃないし、最終的には、自分の身は自分で守らないといけないんだぞ?」

 

「……ふ〜ん……じゃあ常に、あたしとプロデューサーさんが、一緒にいれるようにする?」

 

「えっ……どういうことだ……?」

 

「ふふっ♪あたしをここまでにした……「責任を」とってよね……♪//」

 

「……お前はまた、そういうことを言って……おい!いい加減にしろっ!!」

 

「きゃあん♪プロデューサーさんが、狼になったぁ〜ん♪襲われちゃ〜う♪」

 

「周子にはあと、もう一時間説教だ!そこに座れ!」

 

「イ・ヤ・ダ♪あたしぃ、もうその話、聞き飽きたも〜ん♪」

 

「聞き飽きたって……俺は、周子のことを思ってだな……」

 

「はいはい♪んじゃあ、あたしはそろそろ……あっ、そうだ♪最後に一つ、言いたいことがあったんだ♪」

 

「……あたしも、プロデューサーさんを「大切」に思ってるよ……♪んじゃね〜♪今日は、あんがとさ〜ん♪」

 

「おい!まだ話は……行っちまった……ふぅ……何が、俺のことを大切に思ってるだよ……」

 

「人のことはいいから、まずは自分のことを大切にしろっつ〜の……ったく……//」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜♪今日は、楽しかった〜ん♪」

 

「プロデューサーさんに服も買ってもらえたし、一緒に美味しいものや、クレープも食べれたし」

 

「……男らしい、カッコええ一面も見れたし……大満足や……//」

 

「あっ、でも……すこ〜しだけ、不満やったなあ〜……」

 

「んもう……あれだけ、誘惑してるのに……ほんま、超がつくほどの鈍感さんやね……あの人は……」

 

「さっきだって、もう少し「狼」やったら……あたしは……」

 

「……ま、しゃーないか♪ああいう人やもんね♪むしろ……そういう部分に、惹かれたって言うか……//」

 

「いや〜ん♪あたしってば超乙女〜♪我ながら、もう見てらんな〜いっ♪//」

 

「……ほんまに……いつから、こうなっちゃったんやろな……あたし……」

 

「思えば、アイドルになる前は、フツーすぎて退屈な毎日の中、ず〜っとダラダラしてたっけねぇ……」

 

「フツーの学校生活を送り、フツーに和菓子屋を継ぎ、フツーの日々を送る。それも一つの幸せだったのかも」

 

「でも、それでええのかな〜、このままでええのかな〜って、悩んでたのも事実なんよね……」

 

「……だけど……そんな中、突然現れたんだよね……あの人が……」

 

「店番をしてた時に、急にアイドルにならない?って言われた時は正直、戸惑いもあったけど……」

 

「何となく思ったんだ。この人となら、やってみたいかもって。なんか、シンパシーを感じたんだよね」

 

「でも、ずっとダラダラしてた娘が急に、アイドルをやりたいーなんて言ったら、両親に何を言われるかと思ったけど……」

 

「やるならちゃんとやれ。だなんて言われちゃったら、もう、後戻り出来へんよね♪」

 

「……本当……プロデューサーさんには、色々と……責任をとってもらわなあかんね♪罪作りなお人……♪//」

 

「ふふっ♪寝ても覚めても、プロデューサーさんのことばかり……本当にどうしちゃったんだろう、あたし♪」

 

「まあ……それは「みんな」もなんやけどね。あの時の二人……めっちゃ、かいらしかったわ〜♪」

 

「照れつつも、まんざらではなさそうな奏ちゃん。隠しきれてないどころか、溢れちゃってる美嘉ちゃん」

 

「そして、その他にもたくさん……あ〜あ……本当に、ライバルが多いなあ〜」

 

「それでいて、当の本人は、全然自覚してへんし……あたしがしっかりと、見守ってあげないとっ♪」

 

「……だって……プロデューサーさんは……あたしの「大切な人」……やからねっ……//」



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誘惑シンデレラ 速水奏

「ねぇ、味わって……みたくみない……?」

 

「えっ……?」

 

「なめらかで、しっとりとして……艶やかで……と〜っても甘くて……美味しいわよ……?」

 

「な、何だよ急に……」

 

「ふふっ、照れちゃって……♪そんなに、欲しかったのかしら……♪」

 

「それじゃあ、味わって……?私の「甘いもの」を♪……ほらっ……少しずつ、近づいちゃうんだから……♪」

 

「なあ……やめ……んっ!?」

 

「……んふっ♪」

 

「んんっ……んっ……ぷはっ……か、奏……お前……//」

 

「……しちゃったね♪どう、だったかしら……//」

 

「私の……「チーズケーキ」♪」

 

「いや、まあ……美味かったぞ……?//」

 

「ふふっ、よかったわ♪」

 

「でも……どうしたんだよ。いきなり、スプーンを俺に近づけて」

 

「そうね。気分かしら」

 

「気分って、お前……そういうことはだな……」

 

「いいじゃない。久しぶりのオフだから、少し浮かれてしまってるのよ」

 

「確かに奏は最近、仕事が増えてきたから、わからなくもないけどさあ……」

 

「そうでしょ?それに、プロデューサーとこうして、ショッピングを楽しむ時間を作るのだって大変だったの」

 

「えっ?どういうことだ?」

 

「……プロデューサーって、仕事が終わったあとも、いろんなアイドルに付き合ってるわよね?」

 

「ん?あぁ、そうだな。早く、仕事が終わったりした時とかに、よくつるんでるな」

 

「最近だと、早苗さんと飲みに行ったり、茜と走りに行ったり、みりあと遊んだりしたっけ」

 

「ねっ?最近だけで、それでしょ?だから、今日の時間を確保するのも、色々と苦労したのよ?」

 

「ははっ、それは悪かったな。確かに、アイドルたちとの時間で、スケジュールがたっぷりだったよ」

 

「本当にもう……すぐ、安請け合いをして……その分、今日は私にたっぷりと、付き合ってもらうんだから」

 

「ま、まあ……程々に頼むぞ……?」

 

「ふふっ、そうね♪程々にしないと、怒っちゃうもんね……美嘉が……♪」

 

「えっ、何で美嘉が怒るんだ?」

 

「あの子が、一番強敵だったわ……だって、会うたび会うたび」

 

「「ぜーったい、抜け駆けしちゃダメなんだからね!」って迫ってくるんだもの」

 

「そうだったのか?何でそんなに……」

 

「美嘉は、プロデューサーと甘い時間を過ごしたいんじゃない?この「甘い」ケーキぐらいね」

 

「成る程、それじゃあ今度、美嘉も連れてきてやるか。ここのケーキ、美味しいしな」

 

「うん、そうしてあげて?美嘉、すごい喜ぶと思うわ……でも……今は、私と甘い時間を……ねっ…♪」

 

「そうだな。このケーキって甘いし、紅茶と合うから結構、楽しめるよな」

 

「むぅ、そういうことじゃなくて……ま、いいわ。今日はたくさん、ショッピングに付き合ってもらうわよ」

 

「うん。任せてくれよ」

 

------------------------------------------------

 

「はいっ♪これもお願い♪」

 

「あぁ。よっと……しかし、女の子ってやっぱりすごいなあ。いろんな服を買うんだな」

 

「ふふっ、そうね♪かわいい服とかあったらつい、買っちゃうわね♪」

 

「俺はこういうのに無頓着だから、奏のファッションセンスが羨ましいよ」

 

「私は常に、見られてるをこと意識してるの。いつまでも綺麗に見られたいし。特に……身近な人にはね♪」

 

「なるほどな。でも、奏は元がいいから、何を着ても似合うよな」

 

「あら、嬉しいわ♪でも、プロデューサーもたまにはスーツじゃなくて、私服でもいいんじゃない?」

 

「おいおい……私服姿の俺と、奏が並んでるのを想像してみろ?あぁ……考えただけでも恐ろしいっ……!」

 

「そうかしら?色々と、お似合いだと思うけど?」

 

「あのなぁ……それは、皮肉か〜?」

 

「どうかしらね♪じゃあ、いっそのこと試してみる?……ペアルックとか……♪」

 

「ははっ、そりゃいい。センスのいい奏に選んでもらえれば、一石二鳥だな」

 

「でしょ?それじゃあ、さっそく、あのお店で……」

 

「でも、まだまだ奏には活躍して欲しいからな〜。そういうのは、将来にお預けだ」

 

「……んもう、いじわるなんだから……」

 

「今の奏は、アイドルだ。だから、しっかりと頼むぞ」

 

「はいは〜い。今の私は、アイドルですよ〜……でも、将来的には……いいのね……?」

 

「ん?そうだな。その頃には、俺がしっかりと奏を見送ってやるよ。なんてな」

 

「……そうね……一緒に……見送られたいわね……」チラッ

 

「あぁ、盛大に送ってやるぞ。奏の大切な人と一緒にな」

 

「ふふっ、楽しみにしてるわ♪」

 

「……あら……?プロデューサーさん……?」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?あっ、礼さん、志乃さん。こんにちは」

 

「こんにちは。プロデューサー君、奏ちゃん」

 

「こんにちは、お二人さん……奇遇ね。こんな所で」

 

「そうですね。これから二人で、何処かに行くんですか?」

 

「えぇ。これから、志乃さんのオススメのワインバーに、向かってたところよ」

 

「おぉ、ワインですか!お洒落ですね!」

 

「私のお気に入りの場所なの。とても、味わい深いワインが楽しめるのよ……」

 

「ワインに詳しい志乃さんのオススメなら、美味しいワインが飲めそうですね。いいなぁ」

 

「よかったら、貴方たちも……ごめんなさい……私ってば、うっかりしてたわ……」

 

「そうよ?だめじゃない、志乃さん。今のプロデューサーの君の隣には、かわいいフィアンセがいるんだから」

 

「……っ!?」

 

「ははっ、フィアンセですか。だってよ、奏」

 

「えっ、えっと……そのっ……//」

 

「そうだったわね。私たち、お邪魔をしちゃったかしら……」

 

「そんな、邪魔だなんて。俺は単に、奏の荷物持ちをしてただけです」

 

「……!」

 

「あら、そうなのかしら?それにしては……やけに、仲睦まじそうだったけど……」

 

「いえいえ。あくまで俺は、奏の付き添いですよ」

 

「……むっ」

 

「……へぇ〜、そうなんだ〜。ところで……ねぇ、プロデューサー君」

 

「はい。なんでしょう?」

 

「私なら……本当のフィアンセに、なってあげてもいいのよ……?」

 

「えっ……は、はいっ!?」

 

「……!!」

 

------------------------------------------------

 

「あらっ♪礼ちゃんってば……情熱的ね……♪」

 

「……どうかしら?オ・ト・ナの、お姉さんはっ♪」

 

ムニッ♪

 

「っ……!?ちょっ……れ、礼さんっ!近いですって……!//」

 

「ふふっ……♪こんなに、心臓をバクバクさせちゃって……かわいいんだから♪」

 

「……」

 

「れ、礼さんも、あ、アイドルなんですから、こういうことはっ……!//」

 

「うふふ……プロデューサー君って、すごい温かいのね。私も、すごい「アツク」なって来ちゃった……//」

 

「すごいって……れ、礼さんが……そんなに、近づいてくるから……//」

 

「ふうん?貴方も、そんなに私で、アツクなってくれたのね。すごい情熱的だわ……♪//」

 

「……でもぉ……アツクなってるのは、体温だけかしらぁ……?」

 

「は、はいっ!?//」

 

「うふっ♪実はぁ……「ココ」も……♪」

 

「礼ちゃん……?そこまでになさい。奏ちゃんが、困ってるわよ?」

 

「……い、いえ……別に、私は……//」

 

「あらっ、ごめんなさいねっ♪でも、プロデューサー君のアツイもの。すごい、タクマシかったわ♪」

 

「へ、変なことを言うのは、やめてくださいっ!奏に悪いですからっ!//」

 

「……えっ」

 

「そうよ?礼ちゃん。奏ちゃんは、まだ未成年なんだから、少しは控えなさい」

 

「……は〜い。以後、気をつけるわ。ごめんなさいね、奏ちゃん」

 

「だ、大丈夫です……//」

 

「じゃあ……そろそろ、私たちはワインバーに向かうわ。ごめんなさいね、色々と……」

 

「そうね。プロデューサー君、奏ちゃん、また会いましょうね♪」

 

「えぇ。また、お会いしましょう……」

 

「ところでプロデューサー君……「女の子」はね、想ってる人の視線を、常に独占したいものなのよ……?」

 

「えっ。視線……ですか……?」

 

「それじゃあね♪かわいいフィアンセちゃんっ♪」

 

「あっ、ではまた今度……何だったんだ?……うぅ……それにしても……まだ、体が熱いっ……!//」

 

「礼さんの感触……香り……艶やかな唇……だ、だめだだめだ!思い出したら、またっ……!//」

 

「……」グイッ

 

「うわっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっと……レディーを忘れるだなんて、紳士じゃないと思うけど…?」

 

「あっ……か、奏……別に、忘れてはいないぞ……?ただ、少し……熱くなってただけで……//」

 

「……ふぅん……」

 

「それに、俺が「かわいい」レディを忘れるわけがないだろ?」

 

「……むぅ……私は、かわいいんじゃなくて……「大人」の、女性よ……」

 

「……何が違うんだ?」

 

「大違いよ。だって、かわいいだと子供っぽいじゃない」

 

「子供っぽいって……奏はまだ、未成年なんだから子供じゃないか」

 

「……へぇ〜……そんなことを言うんだ……それじゃあ……試してみる……?」

 

「確かめるって……何を?」

 

「ふふっ……♪こっちのレディも……もっと、魅力的だと思うんだけどなあ〜……♪」

 

「お前……何をっ……!」

 

「……うふっ♪わかってるくせに……♪あなたにならもっと……私の「素」を見せてあげてもいいわよっ……♪」

 

「お、おい……奏……あっ、そうか!」

 

「……?」

 

「さてはお前、礼さんのモノマネをしてるんだな?」

 

「なっ……!べ、別に、モノマネなんかしてないわよっ!」

 

「恥ずかしがるなって。大人のお姉さんである礼さんの真似をして、少しでも近づこうとしてるんだろ?」

 

「……私だって……大人のお姉さんだもん……」

 

「ははっ、わかってるよ。奏は、大人のかわいいおねーさんだもんな」

 

「むっ……また、私を……子供扱いして……」

 

「まあ、奏も結構、大人びてるから、普通の高校生よりかはお姉さんだと思うぞ?」

 

「それじゃあ……意味がないのよ……」

 

「そうだった、奏はアイドルだしな!普通の人より、輝いてるシンデレラでなきゃいけないよな!」

 

「……よ〜し!奏のために、頑張るぞ!ほら、他にも行きたいショップとかあるんじゃないか?」

 

「……んもう……本当にイジワルね……でも、そうね。一つ、行きたい所があるの。次はそこにしましょう」

 

「そうか、それじゃあ行くか!」

 

------------------------------------------------

 

「ここで……いいのか?」

 

「えぇ。ここの席で、大丈夫よ」

 

「にしても、まさか映画館とは……服は、もう見なくてよかったのか?」

 

「そうね。服はたくさん見させてもらったから、次は映画を楽しみたかったのよ♪」

 

「そうなのか。確かに、奏は映画鑑賞が趣味だったよな」

 

「うふふ……♪実は今日のために、前から予約しておいたのよ。「ペアシート」をね……♪」

 

「予約してくれたのは嬉しいけど……何で、わざわざペアシートなんだ?」

 

「強いて言うなら、雰囲気作りってところかしら♪どうせ観るなら、いいムードで映画を観たいじゃない?」

 

「それは、そうだけど……でも、この映画って……」

 

「細かいことはいいじゃない♪それじゃあ、さっそく……」

 

キュッ♪

 

「ちょっ……奏!?」

 

「この映画は、すごくハラハラするの。だから……怖くないように、私が手を握っておいてあげるわ……♪」

 

「怖がるか!ていうか、こういう時って普通は逆だろっ!//」

 

「あら?そうだったかしら?ほ〜ら♪奏お姉さんがいるから、安心よ〜?プロデューサー君♪」

 

「……お前、まさか……さっきの、仕返しのつもりか……!」

 

「ふふっ、どうかしらね♪というのは冗談で、本当は手が冷たいの。だから、私をエスコートして欲しいわ♪」

 

「何だ、そうだったのか。それじゃあ、俺の手袋を貸すよ。念の為に持ってきておいたんだ」

 

「ダ〜メ♪こっちの方がいいわ♪ね?これで普通の「カップル」になったでしょ?」

 

「……は?カップル……?」

 

「ほら、そろそろ映画が始まるわ♪だから、静かにしないとね♪」

 

「あ、あぁ……そうだな……」

 

「……うふふ♪」

 

------------------------------------------------

 

(奏のオススメと聞いて、ミステリーか、恋愛系の映画だと思ったけど……)

 

うわあっ!巨大なサメが、こっちに来るぞ!逃げろ〜〜!!

 

(……まさかの……サメのパニック映画だったとは……!)

 

(確かに、ハラハラして面白いけど……奏が、こういう映画を見るなんて……意外だよな……)

 

(しかも……特に驚くことをせずに、集中して観てるし……こういう映画は、慣れてるのか?)

 

……シャアアアアアア!

 

きゃあああああああああ!!

 

「……ひっ!」

 

(うわっ!さっそく、喰われたっ……!……思わず、声が出ちまった……!)

 

(いくら、ハラハラするって言っても……所詮、映画は映画だと思っていたが……結構、心臓に悪いな……)

 

キュッ♪

 

(ん?奏……?)

 

「……♪」ニコッ

 

(くっ……こいつ……やっぱり、俺のことをっ……!……よし、こうなったら……)

 

ギュッ

 

「……!」

 

(……ふふん。少し強く、手を握り返してやったぜ。どうだ、大人を甘く見るとこうなるんだぞ)

 

「……//」

 

(仕返しが意外だったのか、俯いちゃったな。全く……奏も一人の女の子として、もう少し自覚をだな……)

 

うわあああっ!!助けてくれえええええ!!

 

シャアアアアアア!!

 

「……ひいっ!!」

 

(……やっぱり……奏が一緒にいてくれて、助かったかも……)

 

------------------------------------------------

 

ようやく……巨大ザメを、倒せたな……

 

えぇ……みんなで、力を合わしたおかげね……

 

(ふぅ。やっと、サメが退治されたか……これで、一件落着だな……)

 

(ハラハラしたけど……結構、楽しかったな。流石は、奏のオススメの映画だ)

 

ふふっ♪あの時、私のことを助けてくれて、ありがとうねっ……♪んっ……♪

 

(あとはそのまま、ハッピーエンドに……って、あれ……?)

 

……ぷあっ……き、急になんだよ……!//

 

私を助けてくれたお礼よ……♪……どう……?//

 

(……何か……嫌な予感が……まさか……)

 

……俺……もう、我慢出来ない……

 

あっ……ま、待って……まだ……心の準備が……//

 

ダメ。今度は……お前が俺に、食べられる番だぜ……?

 

あんっ……♪……うふふ♪ねっ……来てっ……♪//

 

(ちょっ……そこで、こういうシーンかよっ……油断してたっ……!!//)

 

俺……お前のことが……欲しい……//

 

うふふ……私も……あなたと「同じ」よっ……♪//

 

(くっ……直視できねえっ……!……奏は、大丈夫だろうか……//)

 

「……」

 

(おぉ……流石は、奏だな……落ち着いて観てるし……)

 

ギュッ……

 

(……少し……俺の手を握る力が、強くなったような気がするけど……)

 

(まっ、気のせいか。奏は大丈夫そうだし。……俺は……大丈夫じゃないけどな……//)

 

愛してる……! 私もよ……

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……見終わったわね」

 

「そうだな。それにしても、ここの喫茶店の雰囲気、結構いいな。よく、来るのか?」

 

「えぇ。ここの純喫茶は、私のお気に入りなの。映画を見終わったらいつも、ここで、余韻に浸ってるのよ」

 

「確かに、ここなら落ち着いて、余韻に浸れそうだよな」

 

「ところで……映画はどうだった?楽しんでくれたかしら?」

 

「あぁ、楽しかったぞ。でも、意外だったよ」

 

「意外……?」

 

「奏って、ミステリーとか恋愛系の映画が好きだと思っててさ。まさかの、パニック映画だったとはな」

 

「恋愛映画は苦手なのよ。見てて、恥ずかしくなっちゃうし……」

 

「そうだったのか。ところで奏、体調とか大丈夫か?」

 

「えぇ。特に、変なところはないけど……急に、どうしたの?」

 

「いや、何だか奏の耳が少し、赤いような気がしてな。大丈夫ならいいんだ」

 

「あぁ、これね。もしかしたら結構、映画に感情移入しちゃって、顔が火照っちゃったのかもしれないわ」

 

「ははっ。そこまで集中してたのか」

 

「そうね、最後に巨大なサメを退治して、無事、主人公とヒロインが結ばれてよかったって、思ったのよ」

 

「成る程な。確かにパニック映画って、主人公かヒロインのどっちかだけが生き残るってパターンもあるよな」

 

「俺もあの二人が、無事でハッピーエンドを迎えれてよかったよ。途中、何回もハラハラしたけど」

 

「吊り橋効果っていうのかしら。ああいう危険な状況だと、愛が芽生えやすいそうよ」

 

「おぉ、そういうのがあるんだな。随分と詳しいじゃないか」

 

「だからもし……私が、巨大なサメに襲われそうになったら……あの主人公みたいに、助けてくれる……?」

 

「もちろんだ。奏は、俺の大切なアイドルだしな。出来る限りのことはすると思うぞ?」

 

「……私が……アイドルじゃなくても?」

 

「当たり前だろ。奏は女の子なんだから、アイドルだとかじゃないとか、そういうのは関係ないさ」

 

「ふふっ……頼りにしてるわよ♪そして最後は、映画みたいに二人で、ハッピーエンド迎えたいわね♪」

 

「……あぁ……そうかもしれないな……」

 

------------------------------------------------

 

「何よ。何だか、歯切れが悪いじゃない」

 

「いや……その……やっぱり、よくないと思うぞ……?」

 

「……どういうことかしら?」

 

「だって……主人公が、ヒロインを助けたあと、その……ら、ラブシーンがあったし……なんていうか……//」

 

「……っ……!そ、そういう意味で、私は言ったんじゃないわよっ!//」

 

「俺だって、そういう意味じゃないって!ただ、そういうシーンがあったって、言っただけだっ!」

 

「「……//」」

 

「……全くもう……プロデューサーはすぐに、恥ずかしくなることを平気で言うんだから……//」

 

「おい!まるでいつも俺が、変なことを言ってるみたいに言うな!」

 

「何よ、その通りじゃない。す〜ぐ、アイドルたちに甘い言葉を言って、たぶらかしてるクセに」

 

「そんなことあるかっ!俺は、アイドルたちのプロデューサーなんだぞっ!?」

 

「やっぱり、自覚がないのね……ま、いいけど。でも……」

 

「……ああいうシーンを、思い浮かべてくれたってことはさ、そのっ……わ、私と……そういう関係に……//」

 

「……あ〜!映画、楽しかったな〜!さ〜て!せっかく喫茶店に来たことだし、何か、頼むか!!」

 

「えっ……?」

 

「おぉ!結構、色んなメニューがあるじゃないか!奏のオススメはなんだ!?」

 

「……むぅ……すぐそうやって、ごまかそうとするんだから……」

 

「な、何のことかなぁ〜!おっ!このメロンクリームソーダとかいいんじゃないか!?アイスも大きいし!」

 

「私は「オトナのレディ」だからそういうのは遠慮してるの。だから、コーヒーとパンケーキをお願いするわ」

 

「あ、あはは……奏はオトナだな〜……じゃあ、俺もそれにするか!あ、すみませ〜んっ!注文いいですか?」

 

「……本当……イジワルなんだから……」

 

------------------------------------------------

 

「……」カタカタ

 

カチャッ……

 

「おはよう。プロデューサー」

 

「おぉ、おはよう、奏。さっそく、昨日買った服を着てきたんだな。結構、似合ってるじゃないか」

 

「ふふっ、ありがとう♪昨日は楽しかったわ♪また、よろしくね♪」

 

「うん、楽しかったな。……ところで……奏って、今日もオフじゃなかったか?」

 

「そうね、つい来ちゃったわ」

 

「それなら、何か温かいものでも飲むか?外、寒かっただろ?」

 

「ううん、今はいいわ。それより……飲み物よりもっと「熱いもの」が欲しいの…」

 

「……ん?熱いもの?」

 

「ねぇ、プロデューサー。こっちを見て……?」

 

「えっ……?あ、あぁ……こうか……?」

 

「……」ジー

 

「……うふっ♪プロデューサーって、男の人なのに……まつ毛が長いのね♪……とても、素敵……♪」

 

「ちょっ……き、急に、何だよ……//」

 

「ねぇ……私は……どうかしら……?」

 

「いや……どうって突然、言われても……その……すごい、かわいいぞ……?」

 

「……ふぅん、そう……実はね……今日は、私が「キレイ」だってことを、証明しに来たのよ……♪」

 

「証明って……なあ、もしかしてまた……礼さんのモノマネをしに来たのか……?」

 

「……また、そんなイジワルを言うのね……しょうがないわね……」

 

「……そんな、イケナイ口は……私が、塞いであげるわ♪……じゃあ、さっそく……んっ……」

 

「はあっ!?ま、待てっ!奏っ!少し、落ち着け!!//」

 

「んもう、何よ……いけずね……」

 

「あのなぁ……お前は、アイドルである以前に、女の子なんだぞ?わかってるのか……?」

 

「えぇ。自覚はあるつもりよ?私は、速水奏と言う、唯一無二の存在だもの」

 

「……それに……こんな、大胆なことなんて……あなたにしか、しないもの……//」

 

「えっ……それって……どういうことなんだ…?」

 

「うふふ♪どういうことかしらね♪その答えを、今から私が教えてあげるわ♪ねっ?美味しそうでしょ……?」

 

「しっとりとして、艶やかで、ぷっくりとしたサーモンピンクで……とっても……甘いわよ……ん〜……♪」

 

「ちょっ……ば、ばかっ!だから、やめっ……」

 

バンッ!

 

「「!?」」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜っ!プロデューサー、いた〜!それに、奏おねーさんもいるでごぜーますっ!」

 

「に、仁奈……!?どうしたんだ?そんなに、慌てて……」

 

「あ、そうでした!これ見てくださいっ!」

 

「ん?それは……ステッキ……?」

 

「はいっ♪千佳ちゃ〜ん♪プロデューサーを、見つけたでごぜ〜ますよ〜♪」

 

「ふふっ!ラビットニナも、仲間を見つけたみたいだね!」

 

「ち、千佳ちゃん……」

 

「じゃあ、スーパーラブリーチカと、私の仲間たちで勝負だ〜!」

 

「ふっふっふ……私のサイキックパワーを、お見せしますよっ!」

 

「にゅふふ……こんちゃ〜……♪」

 

「げっ……裕子に、志希……また、面倒くさそうなヤツらが……」

 

「ちょっと〜、待ってくださいよぉ〜……」

 

「藍子まで……おいおい、一体、何なんだ?真昼間から、こんな大勢で……」

 

「えへんっ!今の私たちは、魔法少女なんだよっ♪」

 

「うんっ♪千佳ちゃんと仁奈で、魔法少女ごっこをしてるのでごぜ〜ますよ♪」

 

「そ、そうなのね……とても、楽しそうだわ……」

 

「……それよりさぁ……プロデューサーと奏ちゃんこそ、昼間から事務所で「ナニ」をしてたのかにゃ〜?」

 

「うっ……そ、それはだな……」

 

「あぁっ!言わないでくださいっ!エスパーユッコであるこの私が、サイキックで当ててみせますっ!」

 

「むむむ〜……む〜んっ!……わかりましたっ♪プロデューサーと奏さんは、朝から二人で……」

 

「……ズバリ、何の映画が好きか、雑談をしてたんですよね!そうですよねっ!」

 

「えっ……そ、そうね……最近、観に言った映画の話をしてたのよ……ねっ、プロデューサー……」

 

「あっ、あぁ……そうだな。俺も奏も映画が好きだから、語り合ってたところだ」

 

「やった〜!当たりましたぁ!えへん!どうですか!?エスパーユッコの、サイキックパワーは!」

 

「わぁ〜!裕子おねーさん、すげ〜!」

 

「そうなんだぁ……で?どういうジャンルの話を、してたのカナ〜?」

 

「どうって……ミステリーとか、サスペンスとか……色々なジャンルだよ」

 

「へぇ〜、なるほどねぇ〜、あたしはてっきりぃ……「恋愛」映画の話をしてたのかと、思ってたなぁ〜♪」

 

「……っ!//」

 

「それじゃあ、裕子おねーさんに続いて、仁奈もみんなに魔法をお見せするですよっ!」

 

「それでは、いくでごぜーますよ……まじかるぱわ〜・ふるちゃ〜じ!!」

 

------------------------------------------------

 

キララララーン♪

 

「……に、仁奈ちゃん……?」

 

「……ん……ちゅ……♪」

 

「……仁奈……?何をしてるんだ……?」

 

「ふっふっふっ……これは、奏おねーさんです♪」

 

「えっ……私?」

 

「仁奈の魔法はなんと……頭に思い浮かべたイメージに、そのまま、なりきることが出来るのでごぜーます!」

 

「ん?でも、何で、その格好が奏なんだ?」

 

「奏おねーさんはいつも、ちゅーをしてるのでごぜーます。だから、このポーズは奏おねーさんなのです!」

 

「意外と見られてるのね……じゃなくて!わ、私は別に、いつでもキスをしてるわけじゃないわよっ……!//」

 

「そうでごぜーますか?テレビで見る、奏おねーさんはいつも、ちゅーをしてやがります」

 

「あ、あれは、ただ……演出で、してるだけよ……//」

 

「あ〜!仁奈ちゃんだけ、魔法を使ってずる〜い!あたしもする〜!ねっ!藍子ちゃんもしようよ!」

 

「えっ……わ、私は、ちょっと……」

 

「……藍子ちゃんも……スーパーラブリーチカの……仲間、だよね……?」ウルッ

 

「うぅっ……そ、それじゃあ……少しだけ……だからね……?//」

 

「やったぁ〜♪藍子ちゃんも、あたしたちと同じ、魔法少女だぁっ♪」

 

「ふふっ♪魔法だけじゃなくて、サイキックも負けてませんよ〜!サイキック〜、イミテ〜ションッ!」

 

「なっ……ちょっ……あなたたち、一体何を……!//」

 

「「「「……ん……ちゅ……♪」」」」

 

「ち、ちょっとっ!は……恥ずかしいから、全員でそのポーズはやめてよっ!//」

 

「にゃはは♪全員が、キス待ち顔をしてるだなんて、シュールだけど壮観だねぇ♪」

 

「でも……ん〜……何か、物足りないナ〜……あ、そうだっ♪……少し……イタズラしちゃおっと……♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ…♪……え〜いっ♪ラブリーシキちゃんの、プリティー・アタ〜ック♪」ドンッ!

 

「きゃっ……!」

 

「きゃあっ!」

 

チュッ♪

 

「!!?」

 

「っ……!?あ、あなたたちっ……//」

 

「ごめんねっ、藍子ちゃん♪ユッコちゃんっ♪手が滑っちゃった♪」

 

「あ……あっ……い、いっ……いやあああああああああっ!!//」

 

バタンッ!

 

「あっ……あわわわ……//」

 

「ちょっ……お、お前ら……今、直接……俺の頰にっ……!//」

 

「……さ〜て、この二人のちびっ子魔法少女も……って、流石にちびっ子は、色々とマズイからやめとこ♪」

 

「わぁ〜……直接、プロデューサーに魔法を……流石、おねーさんたちはオトナでごぜーますねっ!」

 

「こういうの、アニメで見たことある〜♪うわぁ〜♪目の前で見ちゃったぁ〜♪すご〜い♪」

 

「なっ……何をするんですかっ!お、乙女の初めてを奪うなんてっ……プロデューサーのおバカ!!//」

 

「ちょっ……変な言い方をやめろ!ていうか、何で俺なんだよ!勝手に押したのは、志希だろうがっ!」

 

「エ〜?あたしはただ「後押し」をしただけなんだけどな〜」

 

「し……知りません!!これも全て、プロデューサーが悪いんです!ふしだらです!不潔ですっ!!」

 

「理不尽すぎだろっ!!ていうか、バカって言う方がバカなんだよ!ユッコのアホ!バカ!!」

 

「うるさいです!プロデューサーの方がおバカですっ!現に、顔を真っ赤にして、デレデレしてるクセに!」

 

「デレデレなんかしてねぇよ!そうやってすぐに、物事を決めつけるから、おバカだって言われるんだよ!」

 

「ふ〜んだ!プロデューサーなんか、もう知りませんっ!プロデューサーのおバカッ!ヘンタイっ!!//」

 

バタンッ!

 

「う〜ん。二人とも、かわいいナァ〜♪んじゃあ、あたしもつ・い・で・にっ♪」チュッ♪

 

「……っ!?//」

 

「ちょっ……志希まで……何をやってるのよ!//」

 

「ナニって……そうだなぁ〜。プロデューサーに、愛の魔法をかけてみました……なんてネ……♪//」

 

「なっ……い……いい加減にしなさいっ!!」

 

「きゃあ〜♪怪人カナデーンが怒ったぁ〜♪逃げろ〜っ♪」

 

「「逃げろ〜っ♪」」

 

バタンッ!

 

「……もうっ……」

 

------------------------------------------------

 

「……ったく……何なんだよ、一体……どいつもこいつも、俺のことをっ……!//」

 

「……プロデューサー……ドキドキした?あの子たちに、ちゅーをされて……」

 

「……アイドルにあんなことをされて、ドキドキしないと思うか……?」

 

「……そうね。プロデューサーも「オトナ」の男の人だもんね……」

 

「ふぅ……そうこうしているうちに、もう夕方になっちゃったな」

 

「ふふっ……夕日が綺麗だわ……」

 

「ほら……奏も、そろそろ帰れよ。日が完全に、落ちる前にな」

 

「あらっ、まだ私は、用があるのよ?」

 

「ん?まだ何かあるのか?」

 

「んもう……忘れちゃってるの?イジワルね……あの子たちに少し、邪魔されちゃったけど……」

 

「……今は、二人っきりだし……さっきの続きをしましょうよ……ねっ♪」

 

「……つ、続きって……お前……」

 

「……実はね私、今、あの子たちに、凄い妬いちゃってるの」

 

「だから……あの子たちのことを忘れちゃうぐらいに、私が濃厚なのを、してあげるわ……♪」

 

「……これ以上は、やめようぜ……なっ……?」

 

「ん〜?聞こえないわ♪それじゃあ、さっそく……プロデューサー……ん〜……♪」

 

「……」

 

「……ふふっ♪な〜んてね♪本気にしちゃった……?//」

 

「……奏……」

 

「うふふっ。悪いけど、今はオ・ア・ズ・ケ……」

 

「……奏っ……!!」

 

ガバッ!

 

「きゃっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「奏……俺……もうっ……!」

 

「ちょっ……!い、いきなり、何をっ……!//」

 

「……もう……我慢できないんだよ……!どいつもこいつも、俺を弄びやがって……!」

 

「やっ……ちょっ……ま、待って……!」

 

「ダメ。これ以上は、もう無理だ」

 

「……なぁ、奏……俺もな?プロデューサーである以前に……「オトコ」なんだぜ……?」

 

「……っ!」

 

「そんな豊満な体や、艶やかな唇を散々、見せつけられて我慢できる程……俺は……強くねぇんだよ……」

 

「わ、悪かったわよ……謝るから……これ以上は、やめましょう……ねっ?」

 

「奏って、すごいやわらかいし……いい香りがするんだな……へへっ……楽しませてもらうぞ……」

 

「ちょっ……い、いやっ……!」

 

「いや……?どの口が言うんだ?」濃厚なのをしてくれるって言ったのは、奏だろ……?」

 

「そ、それは……そのっ……あくまで……プロデューサーをからかうためであって……」

 

「……本気では……言ってないっていうか……//」

 

「ふぅ、俺も舐められたもんだな……でも……俺は本気だぜ?」

 

「……っ!!」

 

「こうなったのも、奏が散々、俺を誘惑したのが悪いんだからな?もう我慢出来ないんだ」

 

「……うぅ……//」

 

「さぁて……俺が「あの子たち」を忘れるぐらいに、お前を「女」にしてやるぜ……」

 

「まずは、貪ってやるよ……オトコを知らない、お前の艶やかな唇をな……」

 

「……〜っ……//」

 

(あぁ……私……求められちゃうのね……)

 

(反応が面白いからつい、普段から、からかってたけど……本当は、こういう風に……)

 

(……ううん、なんでもない……今はただ……目の前の男の人に……身を委ねるわ……//)

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……な〜んてな。冗談だよ」

 

「えっ……冗談……?」

 

「俺は、アイドルのプロデューサーだからな。大切なアイドルに、手を出すわけがないだろ?」

 

「……だ、騙したのね……」

 

「どうだ?なかなか、怪演だっただろ?」

 

「……」

 

「……な?わかっただろ?思わせぶりなことばかりしてると、こういう目に遭う可能性があるんだ」

 

「奏は、俺にとっての大切なアイドルだ。だから、もうそういうことはやめてくれよ」

 

「……プロデューサー……」

 

「ま、俺は幻滅されただろうけどな。演技とはいえど、奏に、セクハラ紛いなことをしたのは事実だ」

 

「だから、距離を置いたり、軽蔑してくれても構わない。だけど、しっかり仕事は取ってくるからさ」

 

「……」

 

「……色々と、悪かったな。俺からも極力、奏に近づかないようにするよ……」

 

「……いくじなし……」

 

「えっ……?」

 

「……言ったじゃない……こんな姿を見せるのは、プロデューサーにだけだって……」

 

「こんなにも、私を情熱的にさせたんだから……最後まで、責任を……取ってもらうわよ……//」

 

「奏……」

 

「……本当に、反省してるのなら見せてよ……あなたの、熱い気持ちを……//」

 

「……ごめん……それは、出来ない……俺は、アイドルのみんなを、見守らなければならないからな……」

 

「ふぅん……さっきの狼とは、大違いね……」

 

「それじゃあ……ふふっ♪今度こそ、見せてあげる……あなたへの「濃厚」な、熱い気持ちをねっ……♪//」

 

「なっ……か、奏……!?//」

 

「ねっ、目を閉じて……?……正直……私も、少し……恥ずかしいから……//」

 

「……なあ……やりすぎたのは謝るからさ……俺の肩から手を一旦、離してくれないか……?」

 

「ふふっ……イヤ♪乙女の純情を、ここまで弄んだんだから、逃がさないわよ……「絶対に」……♪」

 

「……っ……//」

 

「うふふ……プロデューサー……ん……」

 

カチャッ

 

------------------------------------------------

 

「ごめんね〜。プロデューサー、いる〜……っ!?」

 

「ん?……って……み、美嘉!?」

 

「プロデューサーと……か、奏っ!?何で、ここにいるの!?」

 

「あら……?美嘉じゃない。こんばんは」

 

「よ、よぉ……美嘉……どうしたんだ?こんな夕方に、何か用か……?」

 

「ちょ……ど、どうしたって……アンタたちこそ、ここで何をしてるのよっ!そんなに、み、密着してっ!//」

 

「んもう……美嘉ってば、無粋なんだから……私たちの、秘密の営みを覗くなんて、よくないと思うわよ?」

 

「い、営みって……!//」

 

「せっかく、これから愛し合おうと思ったのに……これ以上は無理ね。残念だわ」

 

「あ、愛し合い……ちょっと!アタシの……じゃなくて!プロデューサーに、何をしようとしてたのよっ!//」

 

「知りたい?私はね……」

 

チュッ♪

 

「!!?//」

 

「うあっ……!?か、奏!?」

 

「んっ……」

 

「あ……ああ、アンタ!な、なな、何をしてっ……!!//」

 

「ん……んんっ……」チュー

 

「お、おいっ!俺の……くっ、首筋をっ……吸うの……や、やめろっ……うあっ……!//」

 

「……んふっ……♪ん〜っ……ン……♪」

 

チュパッ……

 

「……プロデューサーの、ア・ジ・ミかしらっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「あ、あわ……あわわわ……//」

 

「ちなみに美嘉?……プロデューサーって、すごい「タクマシイ味」がしたわよっ……♪//」

 

「〜〜っ☆!%?▲!!?か……かかっ……かなかな、かなっ……」

 

「……かなで〜〜〜〜〜〜っ!!!!//」

 

「きゃっ♪また季節外れに、セミが飛んで来たわ♪じゃあ、プロデューサー♪この続きは、また今度……ねっ♪」

 

「おい!奏っ!急に、何をするんだよっ!//」

 

「言ったでしょ?味見だって♪それと…「私だけのもの」って、美嘉に示すためかしら♪じゃ、失礼するわね♪」

 

「ちょっと!待ちなさ〜〜〜いっ!!」

 

「ったく……あいつ……何で急に、俺の首筋を……//」

 

「それに……美嘉も、何でここに……ん?何か、落ちてるぞ……これは……俺のコート?」

 

「……うふふっ♪やっぱり美嘉も、からかいがいがあるわねっ♪」

 

「それにしても……プロデューサーも、結構……男らしいところが……あるじゃない……♪//」

 

「少し、恥ずかしかったけど……気付いてくれるといいな……私の、キスマークにっ♪」

 

「ちょっと目を離すと、すぐに他の子たちにデレデレしちゃうから、マーキングしておかなきゃね♪」

 

「うふっ……♪私ってこんなにも、独占欲が強かったのね……まるで……」

 

「こら〜〜っ!奏ぇ〜〜っ!!//」

 

「……あの子みたいに……いえ、むしろ、それ以上になっちゃったかも……♪」

 

「私はあのまま、プロデューサーに……ううん……それはまた、いずれ……ねっ♪」

 

「だから……これからもずっと、隣にいてね……「私だけ」のプロデューサー……//」



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秘密シンデレラ 一ノ瀬志希

「……えっ、そうですか……」

 

「はい……はい、わかりました。今すぐ、向かわせますので……」

 

「どうしたんですか?」

 

「……またですよ……レッスンの時間なのに、来てないそうです」

 

「あぁ、また……」

 

「全く……すみません、ちひろさん。ちょっと、迎えに行ってきます」

 

「え?どこにいるのか、わかるんですか?」

 

「えぇ。アイツの行動パターンは大抵、お見通しですから」

 

「ふふっ……♪流石は、プロデューサーさんですね♪」

 

「一回、二回じゃないですからね。ある意味、もう慣れてます」

 

「もしかして、プロデューサーさんを信用してるから、安心していなくなれるんじゃないですか?」

 

「勘弁してくださいよ〜……アイツが安心してても、俺が、気が気じゃないんですから」

 

「何かあったらとか、アイドルとしてやっていけるのかとか、その他にも色々と……」

 

「……あ〜もうっ!考え始めたら、止まらなくなってしまう……!」

 

「……だからですよ……何だか、私もあの子の気持ちが、少しわかったような気がします♪」

 

「えっ……?」

 

「あ〜あ、お仕事ツライなぁ〜。私もどこかにふらっと、いなくなっちゃおうかなぁ〜♪」チラッ

 

「ええっ!?冗談はやめてくださいよ!あいつもいなくなって、ちひろさんまでいなくなったら……」

 

「事務所の存続……スケジュール……アイドルたち……今後……うっ、目眩がしてきた……」

 

「……ふふっ……もし、私がいなくなったら、探してくれますか?」

 

「あ、当たり前じゃないですか!ちひろさんは、俺や事務所にとって、大切な人なんですから!」

 

「……そうですか♪では、前言撤回します♪プロデューサーさんと一緒に頑張っていきたいですからね♪」

 

「お願いしますよ?ちひろさんがいなくなったら、俺は……」

 

「大丈夫ですよ♪プロデューサーさんは少し、考えすぎだと思います。たまには、息抜きも必要ですよ?」

 

「……そう、ですね……反省します……」

 

「ですから……はいっ♪今なら、お姉さんが思いっきり、甘やかしてあげますよ♪」

 

「えっ……//」

 

「ほぉら……いいんですよ?私に甘えても……♪よしよ〜し、してあげちゃいます♪」

 

「……っ!す、すぐに、連れ戻してきます!では、行ってきますっ!//」

 

バタン

 

「あらあら、照れちゃって……かわいいんだから♪」

 

------------------------------------------------

 

「……よし、ここだな」

 

ピンポーン

 

「……」

 

「……反応がない……お〜い、志希〜?いないのか〜?」

 

ガチャ……

 

「えっ、開いてる……?……それに……うっ……何だ、この匂い……」

 

「アルコールか……?にしては、何だか甘いような、ツンとくるような……妙な匂いだな……」

 

「……まさか……!おい!志希!大丈夫か!!」

 

「……」

 

「……やっぱり、反応がない……悪い……入らせてもらうぞ……」

 

「うわっ!何じゃこりゃ……足の踏み場がないなんてレベルじゃないぞ、これ……」

 

「卯月の部屋……いや、それ以上かも……全く……アイドルな以前に、女の子としてだな……」

 

「って、それどころじゃなかった!今、行くぞ……お〜い!志希!いるなら、返事をしてくれ〜!」

 

「……ん?あそこに誰か……もしかして、志希か!?」

 

「……」

 

「志希……おい!志希っ!目を覚ましてくれよっ……!」

 

「……ん……」

 

「っ……!?志希……起きたのか!?」

 

「ん〜……プロデューサー……?何で……あたしの部屋に……?」

 

「どうしたもこうしたも、あるか!大丈夫なのか!?」

 

「……んにゃ?あたしは別に、大丈夫だよ〜……?」

 

「なら、よかった……全く……何事かと思ったんだぞ!」

 

------------------------------------------------

 

「いったいどったの〜……?そんなに、あせっちゃって〜……」

 

「あのなあ……ドアが開いていて、変な匂いがしたら誰だって、何かあったと思うだろ?」

 

「ん〜……ねむねむ……あぁ〜、それかぁ〜。にゃはは♪ごめんごめん♪」

 

「あたしさ〜、昨日から徹夜で、香りの研究をしてたんだよね〜」

 

「……研究?」

 

「そそ。とても、気持ちよぉ〜くなれるような、香りの香水を作ってたんだよ〜♪」

 

「あ、ちなみに、香水と言っても、あたしが作ってるのは「トワレ」なんだ〜」

 

「何か、違うのか?」

 

「そうだね。主に、エタノール濃度と、香りの持続力が違うの」

 

「パルファム、パルファン、トワレ、コロンの四種類あって、パルファムから順に、香る時間が短くなるんだ」

 

「言っちゃえば、香りってのは、揮発性の有機化合物だからね〜」

 

「って言っても、機械で細かく成分を分析しないと、気持ちよぉ〜くなる香りを作るのは、難しいんだけどさ」

 

「へぇ〜……色々と、種類があるんだな……って……そんなの、どうでもいいわ!」

 

「ふにゃあっ!」

 

「おい志希。今日は、何の日だっけ?」

 

「ン〜……新作ピザの、発売日……?」

 

「……し〜き〜?」

 

「じょ、冗談だよぉ〜、レッスンでしょ?あん・どぅ・とろわ〜♪ってね♪」

 

「全く……まあとりあえず、無事でよかったぞ。でも、次からはこういう変な実験は、禁止だからな?」

 

「はいは〜い♪気をつけま〜す♪」

 

「ふぅ……手のかかるアイドルだぜ……」

 

「……ねぇ、プロデューサー……あたしのこと……嫌いになっちゃった……?」ウルッ

 

「嫌いかどうかを聞かれて、嫌いって答える奴がいると思うか……?ほら、レッスンに行くぞ。準備をしろ」

 

「……にゅふふ……♪は〜い♪」

 

「そうだ、志希。一つ、聞きたいことあるんだが。研究してたのはいいとして、何でドアを開けてたんだ?」

 

「んにゃ……?ン〜……どうしてだっけ?わかんない☆」

 

「何だそりゃ……一人暮らしをしてる女の子がそんなんじゃ、色々と危ないぞ?」

 

「わかってるって〜♪もしかしたらキミが来てくれるって、信じてるからかも♪じゃあ、さっそく行こ〜う♪」

 

「あっ……おいっ!志希!俺の車の鍵を、盗むな!こら、待て!」

 

------------------------------------------------

 

「よ〜し!今日のレッスンは終わりだ!ご苦労だった!」

 

「あ〜……終わったぁ〜……」

 

「ふにゃあ〜……きっつ〜い……」

 

「フレデリカ、志希、お疲れ様。ドリンクを買っておいたぞ」

 

「わ〜♪プロデューサー、めるしぃ〜♪」

 

「……んにゃあ〜……」

 

「おい、志希……?大丈夫なのか?」

 

「ん〜……あたしぃ、普段から運動しないし、それに、徹夜明けだから色々ときつくて〜……あぅ〜……」

 

「ほら、言わんこっちゃない。サボって、徹夜なんかするからだぞ?」

 

「それは……そうだけどさぁ〜……」

 

「ほら。とりあえず志希も、ドリンクを飲んでひと休憩しろ」

 

「ふぁ〜い〜。確かに……プロデューサー分を補給しなきゃ、体に悪いしね〜……」

 

「うん、その通り。だから、補給を……は?」

 

「にゅふふ……えいっ♪」

 

ギュッ♪

 

「なっ……し、志希!?」

 

「わぁお♪シキちゃんってば、大胆だねぇ〜♪」

 

「クンカクンカ……ン〜……♪癒されるぅ〜♪」

 

「ちょっ……何をやってるんだ!志希!フレデリカが見てるぞっ……!//」

 

「ううん!アタシは見てないよ!指の隙間からだけしか、見てないから安心してっ!」

 

「がっつり見てるじゃねぇか!おい、志希!恥ずかしいからやめろって!」

 

「エ〜、あたしは別に、恥ずかしくないもん♪……クンカクンカ……ハスハス……//」

 

------------------------------------------------

 

「ばかっ……くすぐったっ……!//」

 

「……んふふ……♪こんなに息を切らして、汗だくな女の子が上目遣いで、抱きついてきてるんだよ〜?」

 

「だ・か・ら♪ねぇ……あたしと一緒に……「トリップ」しようよ……ねっ♪」

 

「なっ……!へ、変なことを言ってないで、ほら!さっさとドリンクを飲め!」

 

「う”に”ゃ”っ”……んもう〜、イヂワルなんだからぁ〜……」

 

「シキちゃ〜ん?あんまり、プロデューサーを困らせちゃ、だめだよ〜?」

 

「ふ、フレデリカっ……!よく言ってくれた!ほら、少しはフレデリカを見習え…‥」

 

「えっちなプロデューサーは、こういう方が喜ぶはずだよっ♪……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「ぐあっ……!?」

 

「えへへっ……♪あま〜いフレちゃんを、ぷれぜんとふぉ〜ゆぅ〜♪」

 

「な〜んだ〜、そういうのがよかったんだぁ〜、それじゃあ、ア・タ・シもっ♪……え〜いっ♪」

 

プニュッ♪

 

「ぐうっ……!お、お前ら……何をっ……!//」

 

「ふふっ♪しきフレサンド、かんせ〜い♪具材はプロデューサーだけどね〜♪」

 

「にゃはは♪こういうのが好きなんだネェ〜♪プロデューサーの、むっつりすけべ〜♪」

 

「……べ、別に……俺は、興味なんか……」

 

「あ、興味ないなんて、言わせないよ?そもそも男は子孫繁栄のために本能的に求めてるものなんだから」

 

「まず搾乳期間に女性の脳内で分泌されるオキシトシンって言うホルモンから始まるんだけどね」

 

「そのオキシトシンって言うホルモンと中枢神経系に存在する神経伝達物質であるドーパミンと共に機能してそれで……」

 

「真面目に解説をするな!あぁもう!お前らっ!いいから、離れろっ!//」

 

「い〜や〜♪フレちゃんも、プロデューサー分をた〜くさん、補充しちゃうんだから♪」

 

「こんなところを、誰かに見られたらヤバイって!//」

 

「大丈夫だよぉ♪トレーナーさんも、レッスンが終わって帰ったし、誰も見てないよっ♪」

 

カチャッ

 

「うふふ……失礼しま〜す♪」

 

「……多分ね♪」

 

------------------------------------------------

 

「うっ……ま、まゆっ……!」

 

「こんにちは〜♪まゆちゃんっ♪」

 

「うふっ♪志希さんもフレデリカさんも、こんにちは♪ところで今、何をしてるんですかぁ?」

 

「う〜ん……レッスン?」

 

「うふふ……♪とても楽しそうな、レッスンですね♪まゆ、お邪魔でしたかぁ?」

 

「そ、そんなことはないぞ……それより、まゆこそ何でここに?」

 

「えっとですね。この部屋から、プロデューサーさんの気配がして……見事に、当たってしまいましたねっ♪」

 

「成る程……そりゃ、奇遇だな……あはは……」

 

「それで……いかがですかぁ?両腕の温かさは♪と〜っても、温かそうですねぇ♪羨ましいなぁ〜♪」

 

「うぐっ……ご、誤解をしないでくれ!こいつらが勝手に、抱きついてきただけで俺は……」

 

「ん〜?にしては、喜んでた気がするんだけどなぁ〜♪特に、こういうことで♪」

 

プニュッ♪

 

「くっ……志希っ……!ば、ばかっ……!//」

 

「うふふ……♪男の人は……好きですもんね……♪」

 

「でもぉ、まゆもそれ以上に、プロデューサーさんを好きだと思う気持ちは、負けてませんよぉ?」

 

「……今、ここで……運命の赤い糸で、プロデューサーさんを、蝶結びにしちゃいたいぐらいにっ……♪」

 

「ん?蝶結びって……何を言ってるんだ?」

 

「うふっ♪このまま、まゆと一緒に……結ばれちゃいましょうか……♪……「永遠」にっ……♪」

 

「わぁお♪まゆちゃんってば、情熱的ぃ〜♪」

 

「まゆ……?何だか、目が笑ってないぞ……?」

 

「気のせいですよぉ♪うふっ♪……うふふ……うふふふっ……♪」

 

「まゆちゃん、ちょっといいかな?」

 

「……はい?」

 

「さっき、気配って言ってたよね?それってさ、もしかして……「香り」のことかな?」

 

「……っ!」

 

------------------------------------------------

 

「香り……だと?」

 

「……はい……実は、お恥ずかしながら……プロデューサーさんの香りを辿って、ここまで来ました……//」

 

「んふふ〜……やっぱりね〜♪」

 

「えっ……お、俺って……そんなに、臭うのか……?」

 

「ん〜……たぶん「アレ」のことかなぁ〜。ちょっと待ってて〜」

 

「スーツもクリーニングに出したばかりだし……体も毎日、洗ってるし……」

 

「もしかして、あれか……?いや、それとも……う〜ん……」

 

「はい、持ってきたよ♪じゃーんっ♪」

 

「ん?随分とかわいらしい小瓶だねぇ、シキちゃん」

 

「にゅふふ……えいっ♪」

 

プシュッ

 

「ひゃっ……ちょ、ちょっと、いきなり何を……ん?スンスン……わぁお♪いい匂い〜♪」

 

「でしょでしょ〜♪」

 

「ん〜、でも、この匂いって……プロデューサーの匂い……だねぇ……♪」チラッ

 

「えっ……お、俺のっ!?」

 

「……実はね〜、あの時に、香りの研究をしてたって、言ってたでしょ?」

 

「その時に、何と……プロデューサーの香りの香水を、作ってたのでしたぁ〜♪」

 

「っ……!!プロデューサーさんのっ……!」

 

「お、お前……なんてものを、作ってるんだよ!!」

 

「うーん……気まぐれでカナ?あっ、ちなみに、量産態勢を整えてるから、いつでもウェルカムだよ〜♪」

 

「ばかっ!そ、そんな変なものを、量産するなっ!!」

 

「……志希さん……ちょっと、お話しが……」

 

「ん〜?どったの?まゆちゃん」

 

「……」ゴニョゴニョ

 

「……んふふ♪りょ〜かい♪初回特典で、もう一本おまけしとくね……♪」

 

「うふふ……♪ありがとうございます……♪」

 

「……おい、まゆ?二人で、何を話してたんだ?」

 

「何でもないですよぉ。これは乙女の秘密ですっ♪ねっ♪志希さんっ♪」

 

「ウンウン♪これは、女の子同士の秘密だから、教えてあ〜げないっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「にしても、よくわかったね〜。ちょっとハンカチに染み込ませて、あたしのバックに閉まってただけなのに」

 

「うふふ……プロデューサーさんのことなら、何でも知ってますから……「何でも」……ね♪」

 

「おい……何で、ハンカチなんかに染み込ませてるんだ……?」

 

「……だってぇ……いつでも、どこでも……プロデューサーさんを、感じられますから……うふっ♪//」

 

「……っ!?」

 

「な〜んて♪少し、まゆちゃんのモノマネをして見ちゃいました〜♪」

 

「あははっ、ちょっと似てるぅ〜♪」

 

「んもう、まゆはそんなこと言いませんよぉ〜」

 

「……み、みんなから愛されて、俺は嬉しいぞ〜……は、ははは……」

 

「……あっ、それでは、そろそろお仕事の時間なので、失礼しますね」

 

「あ、あぁ……仕事を頑張ってきてくれ。頼むぞ」

 

「はいっ♪ところで、プロデューサーさん……これからも……ずっと、まゆのそばにいてくれますか……?」

 

「ん……?そんなの当たり前だろ?まゆも、俺の大事なアイドルだ。これからも一緒に、頑張っていこうな」

 

「本当!?本当に「一生」そばにいてくれるんですか!?えへへ♪まゆ、嬉しい……♪……失礼しま〜すっ♪」

 

タッタッタッ…

 

「……ん?まあいいか。とりあえず、一件落着だな……」

 

「にゃはは♪プロデューサー、おつかれ〜♪」

 

「おい、元凶。誰のせいで、こうなったと思ってるんだ」

 

「さぁ〜?……あ、ちなみに、プロデューサーの車に、あたしの香りの香水を置いといたからネ♪」

 

「……は?」

 

「……イ・ケ・ナ・イことに、使っちゃダメなんだからね……?や〜ん♪恥ずかし〜♪//」

 

「馬鹿!使うか!あとでお前に返す!絶対にな!!」

 

「あんっ……せっかく、作ったのに〜……」

 

「……シキちゃん、シキちゃん……」

 

「んにゃ?どうしたの?フレちゃん」

 

「アタシにも……その……しるぷぷれ〜……♪」

 

 

「……了解♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」カタカタ

 

「……ふぅ、終わった〜……さ〜て、一息つくか……」

 

「ん〜と……あ、あったあった。それじゃあ、いただきま……」

 

「……ん?俺……飲み物なんか、買ったっけ……?」

 

「……」ジー

 

「……まさか……」チラッ

 

「……」バッ

 

「……おい、志希。この飲み物……お前が置いただろ?」

 

「ううん、あたしじゃないよん♪」

 

「ふ〜ん、そうか〜。でも、この部屋には、俺と志希の二人しかいないんだけどな〜」

 

「えっ、ちょっ……な、何をする気なの……?まさか……いやぁん♪プロデューサーの、ケダモノ〜っ♪」

 

「……」ビシッ

 

「ふ”に”ゃ”っ”!」

 

「いいから言え。これは何だ」

 

「え〜っと……元気になるドリンクだよ?」

 

「お前な〜……また俺で、実験しようとしてたのか?」

 

「そんなぁ、実験だなんて人聞きの悪い〜。ただ、味見をしてもらいたかっただけだよ♪」

 

「味見って……おい!言い方を変えただけだろ!こんな得体の知れないものなんか、飲めるか!」

 

「んも〜、ワガママだなあ〜。んじゃ、代わりにあたしが飲んであげるよ♪じゃあ、いただきま〜す♪」

 

「……ん〜♪おいし〜い♪ねっ?何でもないでしょ?ほら、キミも飲みなよ〜♪」

 

「ちょっ……わかったから、ストローを近づけるなって!それってお前が使った……んぐっ……!?」

 

「にゃはは♪た〜んと、召し上がれ〜♪」

 

「ん、んぐっ……ん……」

 

「……どう……?オイシイ……?」

 

「……ぷはっ……あ、あぁ……意外と……イケるな……//」

 

「そうでしょ?色んなフレーバーを調合して作った、あたしの自信作なんだから♪」

 

「少し、疑いすぎてたよ。悪いな志希」

 

「わかればよろしい♪でも……美味しいと感じたのは……「あたし」の、味のほうじゃないかな……?//」

 

「っ……!?な、何だか……急に、体が……熱くなってきてっ……!//」

 

「……ふふっ……あたしぃ、言ったよねぇ?……「元気になる」ドリンクって……//」

 

「ぐっ……ぜ、前言撤回だ……お前……このドリンクに、何を入れやがったっ……!」

 

「うぅん……何だかあたしも「アツク」なってきちゃったあ〜ん♪ねぇ〜……」

 

「……このまま……あたしと一緒に、気持ちよぉ〜く……「トリップ」しようよ……♪」

 

「ば、ばかっ……そんなに、近づいて来るなっ……!//」

 

「安心してっ……♪今から、あたしのことで……頭をい〜っぱいに、してあげるからっ♪」

 

「……ちょっ……や、やめろっ!……これ以上はっ……!//」

 

バタン!

 

「「!!」」

 

------------------------------------------------

 

「Pチャン♪ただいまにゃ〜♪」

 

「っ……!み、みくっ……!」

 

「……ん〜……ざんね〜ん……」

 

「んにゃ?あっ、志希チャンも一緒なんだ♪こんにちは♪」

 

「にゃはは♪こんにちは♪」

 

「ところで、二人ともここで、何をしてたのかにゃ?」

 

「あ、あぁ……ちょっと、次の仕事の話をしててな……」

 

「そうなんだ……あ!そうだにゃ!Pチャンに、見せたいものがあったんだにゃ!……じゃ〜んっ!」

 

「ん?これは……香水?」

 

「うんっ♪新作の香水を、買ったんだ〜♪ねぇ、いい香りでしょ〜♪」

 

「スンスン……あぁ……確かに、いい香りだな」

 

「……ふふっ♪もっと、嗅いでもいいんだよっ♪えいっ♪」グイッ

 

「ちょっ……みく!近いって……!//」

 

「細かいことは気にしにゃい♪気にしにゃい♪ほらっ、もっと堪能してにゃ♪」

 

「お、おい!わかった!わかったから、少し離れろっ!//」

 

「……ねぇ、みくちゃん」

 

「んにゃ……?」

 

シュッ

 

「に”ゃ”っ”……!!ちょ、ちょっと!志希チャン!急に、何をするにゃ!!」

 

「んふふ……♪実はあたしも、香水を持ってるんだよねぇ〜♪」

 

「えっ……ふにゃあ〜……なんか……この香水も、いい香りにゃ〜……♪」

 

「そうでしょ?だってこれ、あたしをイメージした香水だからね♪」

 

「ん〜……それに……何だか暑く……って!いきなり、みくに吹きかけるなんてひどいにゃ!」

 

「ごめんごめんっ♪シキちゃんのファンを増やしたかったんだ♪」

 

「あの子もその子も、シキちゃんの香りに……そしたら、どこにいても……あたしを感じてくれるもんね♪」

 

「おい……何で今、俺を見た……?」

 

「さぁねぃ〜……♪」

 

「んにゃあ……マタタビを、食べたのかってぐらい……暑いにゃ〜……食べたことないけど……」

 

「う〜……あ、飲み物みっけ♪ちょっと、もらうにゃ〜♪」

 

「ちょっ……ば、ばかっ!お前、それはっ……!」

 

チュー……

 

「あっ……」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……さっぱりしてて、美味しいにゃあ〜♪」

 

「……間に合わなかったか……」

 

「……あれ?おかしいにゃ……さっぱりした飲み物のはずなのに、むしろどんどん、体が熱くなってきて……」

 

「なあ、みく……?大丈夫か……?」

 

「にゃあ〜……♪Pチャ〜ン〜……♪何だか、みく……とても、ふわふわするにゃ〜……//」

 

「おいおい……しっかりしてくれよ。ほらっ、肩を貸してやるから一旦、ソファーに行こうぜ」

 

「ふぁ〜い……それにしても……Pチャンって……」

 

「?」

 

「……改めてみると……結構、イケメンにゃあ〜……♪」

 

「は、はぁっ……!?//」

 

「今のみくは、ネコチャンにゃ……だからぁ〜♪頭を……なでなでして、欲しいにゃあ〜♪」

 

「なっ……み、みく!一体、どうしちまったんだよっ!」

 

「にゃはは♪どうやら、香水とドリンクの相乗効果で、完璧に酔っちゃったみたいだね♪」

 

「お前……やっぱり香水にも、何か変なものを……!」

 

「知らなぁ〜い♪でも、何だか面白くなってきたねっ♪……えいっ♪」

 

「このマッドサイエンティストめ……!ていうか、お前までくっついてくるな!!//」

 

「エ〜、みくちゃんだけずるい〜♪しきにゃんも、キミでごろにゃんさせてもらうにゃん♪」

 

「にゃっ……!ちょっと、志希チャン!Pチャンのネコチャンは、みくだけなの!!」

 

「ごろにゃ〜ん……んにゃあ〜……♪プロデューサーって、温かいにゃぁ〜ん……♪」

 

「フシャ〜……!ネコは二匹もいらないのっ!ネコチャンは、一匹でいいのにゃ!!」

 

「お前ら何、変なことで争ってるんだ!とりあえず、二人とも一旦離れろっ!//」

 

「いやにゃ〜♪だってぇ、あたしはキミのネコチャンだからねぃ〜♪」

 

「違うもん!Pチャンのネコチャンは、みくだもんっ!だから、志希チャンには渡さないにゃっ!!」

 

プニプニ♪

 

「おい!さっきからあ、当たってるって……!お前らは女の子だろ!もうちょっと、恥じらいを持て!//」

 

「にゃふふ……♪」

 

「ふう〜っ……!」

 

------------------------------------------------

 

「……zzz」

 

「ほら、みく。ソファーだぞ」

 

「……Pチャン……もう……お魚、食べられないにゃ……zzz」

 

「やれやれ……やっと、落ち着いたか……」

 

「……ねぇ〜……あたしと一緒にぃ……気持ちよく、トリップしよぉ……?」

 

「あぁ。じゃあ志希、ソファーで一緒に……」

 

「……♪」

 

「……って……!何を言わせるんだよっ!ていうか、お前は起きてるだろうがっ!//」ビシッ

 

「に”ゃ”っ”……!あ〜ん……もう少しだったのに〜……まあ、面白かったからいいか♪にゃはは♪」

 

「……あのなあ……いつも思うんだけど、その頭脳をもう少し、いい使い方が出来ないのか?」

 

「……と、言いますと……?」

 

「変な香水とか、怪しげなドリンクを作るんじゃなくて、もっと、普通に人が喜ぶものをだな……」

 

「ん〜?あたしさぁ、子供の頃から「普通」って言うのがよくわからないし、興味がないんだよね〜」

 

「ほら、あたしってギフテッドアイドルじゃん?それに、天才は変人って言うしね♪にゃはは♪」

 

「あのなぁ……それじゃあ、頭の良い志希なら知ってると思うけどさ」

 

「「十で神童、十五で才子、二十過ぎれば只の人」って、諺を知ってるか?」

 

「……っ!」

 

「いや、別に、志希を只の人って言ってるわけじゃないんだぞ?お前の天才ぶりは、幾度となく見てるからな」

 

「だけど、お前だってあと二年で大人だ。色々と、思うところがあるだろう」

 

「それに、今のお前は変人なんかじゃない。色んなアイドルと一緒に輝いてる、立派なアイドルだ」

 

「だからさ、急に変われだなんて言わないから、もう少し……「普通」にならないか……?」

 

「……」

 

「……そうだね。今のあたしは、アイドルなんだよね……とても輝いてる……」

 

「よし、よく言った。俺がサポートするから、少しづつ頑張ろうぜ。なっ…?」

 

「……うん……そうだね……只の人……」

 

カチャッ

 

「し、失礼します!」

 

「はいどうぞ、って……ちひろさん?」

 

------------------------------------------------

 

「どうしたんですか?そんなに、慌てて……」

 

「プロデューサーさんっ!フレデリカちゃんは、来てませんか!?」

 

「フレデリカ……?いえ、まだですけど……」

 

「そうですか……困りましたね……」

 

「一体何があったんですか?」

 

「いえ……さっき、ニュースで速報が出て、刑務所から勾留中の、容疑者が逃走したそうなんです」

 

「それで、逃走した場所がその……この近辺の、刑務所だそうで……」

 

「っ……!?それは本当ですか!?では、すぐにフレデリカに連絡をしないと……!」

 

「それが……残念なことに……ここに、彼女のスマホがあるんです」

 

「えっ……!」

 

「どうやら昨日、事務所に置いたまま忘れて、帰ってしまったみたいですね……」

 

「くっ……こんな時に限ってっ……!」

 

「……プロデューサー?フレちゃんなら、大丈夫だと思うよ?待ってればすぐに来るって」

 

「……いや……俺、少し外に出て、フレデリカを探してきます!」

 

「えっ……外にですか……?」

 

「はい。すぐに戻りますので、みくと志希をお願いします。では、行ってきます!」

 

「ちょっ……プロデューサーさ……行っちゃった……」

 

「……」

 

「待ってろ……すぐに、探しだしてやるからな……!」

 

「……プロデューサー……」

 

------------------------------------------------

 

「はぁ、はぁ……いないな……いつも、フレデリカが行きそうな場所を、回ってみたのに……」

 

「まさか……逃走犯に……いや、変なことを考えるな……」

 

「……とりあえず……一旦、事務室に戻るか……目の前まで、来たし……」

 

「一体、どこにいるんだよ……頼む……無事であってくれ……フレデリカっ……!」

 

カチャッ

 

「ただいま、戻りました……」

 

「あ〜っ♪プロデューサーっ♪おかえり〜♪」

 

「っ……!?フ、フレデリカ……!?」

 

「プロデューサーさん、お帰りなさい♪フレデリカちゃんは無事ですよ♪あと、逃走犯も捕まったみたいです♪」

 

「Pチャン、おかえり〜。今、目が覚めたばっかでよくわからないけど、何か大変だったらしいね〜」

 

「……」

 

「……ねっ?だから、言ったでしょ?待ってれば来るって……」

 

「……フレデリカっ!」

 

ギュッ

 

「!!」

 

「ひゃっ……!?ぷ、プロデューサー……!?//」

 

「ちょっ……ぴ、Pチャン……!?」

 

「……よかった……無事でっ……!」

 

「やっ……ちょ、ちょっと……急に……恥ずかしいよ……//」

 

「……プロデューサーさん……大胆ですね……//」

 

「あっ……わ、悪いっ!つい、安心してしまって……」

 

「……んもう……心配しすぎだよ……えへへ……♪//」

 

「……」

 

「ぴ、Pチャン!フレチャンに何してるの!変態にゃ!ハレンチにゃ!」

 

「いいの、みくちゃん。プロデューサーが、アタシのことをそんなに心配してくれてたなんて……その……」

 

「……すごい……嬉しかったから……//」

 

「そ、そうなの?フレチャンがいいなら、いいんだけど……」

 

「うふふ……♪それよりさっ、これからユニットの、打ち合わせがあるんでしょ?さっそく、始めようよ♪」

 

「あ、あぁ、そうだな……それじゃあ、始めるか……」

 

「とにかく、これで一件落着ですね♪何事もなくて、よかったです♪」

 

「……いいなあ……」

 

------------------------------------------------

 

「はい……えっ、また……」

 

「はい、わかりました。すぐに連れて行きますので、では……ふぅ……」

 

「どうしたんですか?」

 

「……ちょっと、迎えに行ってきます……」

 

「あぁ……はい♪行ってらっしゃい♪……ふふっ♪」

 

「どうしたんですか?」

 

「いえ、プロデューサーさんってすっかり、志希ちゃんと意思疎通してるなあと思ったんです♪」

 

「そんな高尚なことじゃないですよ。ただ、あいつは俺を、便利屋かなんかと勘違いしてるだけです」

 

「そうですか?私から見れば、あの子はプロデューサーさんのことをすっかり、信頼してる風に見えますよ?」

 

「どうですかねぇ。あいつは、自分のこと以外には興味なさそうですから。信頼なんか、皆無だと思いますよ」

 

「私だったら……こんな「気を引く」ようなことなんて、信頼してる人にしかしませんけどねぇ……」

 

「ははっ、それは言えてますね。愛する、トレーナーさんの気をもっと、引いてもらわないといけませんね」

 

「……そうですね……あ〜あ。本当に困った人ですねぇ、プロデューサーさんは」

 

「えぇ。本当に、志希には困りま……って……あれ……?」

 

「ほ〜ら。早く、迎えに行ってあげてください。女の子を待たせるだなんて、よくないですよ」

 

「何か違ったような……まあ、いいか。それじゃあ、行ってきますね!」

 

カチャッ

 

「……」

 

「……プロデューサーさんは、もう少し……乙女心をですね……」

 

------------------------------------------------

 

「よし、ここだな……」

 

ピンポーン

 

「……」

 

「……反応がない……お〜い、志希〜?いないのか〜?」

 

ガチャッ

 

「ん〜……相変わらず開いてるなあ……全く……仮にも、アイドルなんだぞ?これはまた、説教するしか……」

 

「……いやあっ!!」

 

「!?」

 

「いやっ!やめてっ……!……誰か……助けてっ……!」

 

「し、志希……志希なのか!?い、今行くぞ!志希!どこだっ!」

 

「……あっ……プロデューサー……来てくれたんだね……//」

 

「おい、志希っ!大丈夫なのか!?」

 

「うん……大丈夫……」

 

「よかった……ところで、お前を襲おうとした奴は、どこに行ったんだ!?」

 

「えっとね……目の前にいるの……」

 

「ん?……目の前?」

 

「スーツを着てて、お人好しで、意外と顔が整ってて……だけど……少し、オオカミな男の人なの……」

 

「……は?」

 

「……いやぁ〜ん♪プロデューサーにぃ、襲われちゃ〜う♪」

 

「……」ピンッ

 

「に”ゃ”っ”!」

 

「志希、そこに座れ」

 

「えっ、でも……」

 

「いいから座れ」

 

「……はい」

 

「さて、と……まず、どこから始めようかな……」

 

「……」ガクガクブルブル

 

------------------------------------------------

 

「……だから、以前に何回も言ってるが、お前はアイドルな以前に、女の子としての自覚がまるでなくて……」

 

「……む〜……」

 

「おい、志希。ちゃんと聞いてるのか」

 

「もういや!シキちゃん、たくさん聞いたもん!それに、レッスンに行くんでしょ?遅れちゃうよ!」

 

「あっ、そっか……って!お前が、偉そうに言える立場か!」

 

「シキちゃん、真面目だも〜ん。フレちゃんと立派に、ライブを成功させたいもんね〜」

 

「ったく……悪知恵の働く猫め……!じゃあ、ほら、行くぞ」

 

「……」

 

「ん?おい、志希。行くぞ……?」

 

「……ぎゅーはないの……?」

 

「えっ……?」

 

「あたしを思いっきり……ぎゅーって……してくれないの……?」

 

「なっ…!そ、そんなことを、するわけないだろ!馬鹿なことを言ってないでいくぞ!ほら!」

 

「……何でよ……何で、あたしにはしてくれないのさっ!!」

 

「ちょっ……急に、何だよ……」

 

「フレちゃんには何も言わずに、すぐに、ぎゅーってしたくせに!!」

 

「えっ……いや、あれは……本気で、フレデリカのことを心配してたから、つい……」

 

「ふ〜ん……それじゃあ、あたしのことは、どうだっていいってことなんだね……」

 

「そんなことないって、俺は志希の担当だろ?」

 

「……キミ、言ったよね……「二十過ぎれば只の人」って……」

 

「だから、このまま……あたしはキミに飽きられて、捨てられちゃうんだっ……!」

 

「ん?あぁ。あの時、俺が言ったことを気にしてたのか」

 

「……やれやれ……頭がよすぎるアイドルってのも、困りもんだな……」

 

------------------------------------------------

 

「あのな。お前は話を色々と、飛躍しすぎなんだよ」

 

「言ってしまえば、あんなのはただの諺だ。そんなに深い意味で、言ったつもりはないよ」

 

「……じゃあ……仮に、天才でもギフテッドでもなくなった「普通」のあたしでも、見てくれるの……?」

 

「当たり前だろ?俺は別に、志希の頭脳を見込んで、スカウトしたわけじゃない」

 

「それに、本当に志希に飽きてたら、今、ここに俺がいると思うか?だから、安心しろ」

 

「……そう、だね……」

 

「な?わかっただろ?俺は正直、ギフテッドだとか天才だとか、そういうのはどうでもいいんだ」

 

「ただ単純に、志希がアイドルとして活躍したり、その一瞬一瞬を、楽しんで欲しいだけなんだよ」

 

「……じゃあ……証明して……?」

 

「えっ……証明……?」

 

「その言葉が、本当だって言うなら……あたしを思いっきりぎゅっとして、証明してよ……ねっ……?//」

 

「なっ……!だ、だから、それは……!」

 

「……してくれないと……ここから、一歩も動かないモン……」

 

「……あ〜……わかったよ……輝いてもらうためにも、レッスンは受けてもらわないといけないしな……」

 

「ヤッタ〜♪それじゃあ……来て……?//」

 

「少しだけだからな……?……ほら、いくぞ……」

 

ギュッ……

 

「あっ……//」

 

「……何だよ……なんか言えよ……//」

 

「……キミの耳……すごく、赤くなってる……♪//」

 

「なっ……し、しょうがないだろ!女の子を抱きしめてるんだから!//」

 

「にゃはは♪プロデューサーってば、超乙女〜♪……でも……流石は、男の人だね……」

 

「……筋肉質だし……胸板も逞しくて、力強くて……とっても……安心する……//」

 

「……そりゃ、どうも。でも……そろそろいいか……?流石に、恥ずかしくなってきたんだが……//」

 

「……んも〜……しょうがないナァ〜。少し、名残惜しいけど……終わりにしようか♪」

 

「あ、あぁ……そうしてくれ……//」

 

「にゃはは♪プロデューサーってば、顔真っ赤〜♪そんなに、あたしのことを意識しちゃったのかなぁ〜?」

 

「くっ……約束は、ちゃんと……果たしたからなっ……!//」

 

「それじゃあ、最後にもう一つ、して欲しいことがあります。ちょっと、目を閉じて〜♪」

 

「ん……?まだ、何かあるのか?」

 

「いいから、いいから〜♪」

 

「……えっと……こうか?」

 

「うんっ、いい子だね〜♪それじゃあ……こうして、こうやって……♪」

 

------------------------------------------------

 

「おい……まさかまた、俺に何か変なことを、する気じゃないだろうな……?」

 

「そんなことしないよ♪それじゃあ、準備も出来たことだし……え〜いっ♪」

 

ムチュッ♪

 

「んっ……!?」

 

「……んふふ……♪」

 

「……ぷはっ……ちょっ……!い、今……俺の口にっ……//」

 

「んふっ……しちゃったね……♪あたしの、初めての……「人工呼吸」をっ……♪」

 

「は……?じ、人工呼吸……!?」

 

「うん、人工呼吸だよ♪ほら、これを見てよ♪」

 

「ん?何だ……?この、ペラペラのビニールみたいなヤツは……」

 

「これは、キューマスクって言うの。応急手当の講習ビデオとかで、見たことあるでしょ?」

 

「マスク……あぁ。確かに、見たことがあるな」

 

「だから、このマスクを使ってキミに、人口呼吸を施したのでした〜♪」

 

「な、何だよ……やっぱり、変なことじゃないかよ……//」

 

「……にゃはは♪どうだった?ドクターシキちゃんの「愛の」応急処置はっ……♪//」

 

「何が、愛の応急処置だ!馬鹿にするなっ!志希はアイドルなんだぞ!わかってるのか!?//」

 

「んっふっふ〜……もしかして……物足りなかった?それじゃあ、今度は……「ナマ」でしてみる……?//」

 

「っ……!またお前は、そういうことを……い、いい加減にしろ!ほら、レッスンに行くぞ!//」グイッ

 

「あんっ……つれないなあ〜……」

 

「全く!俺はいつになったら、このせわしない猫の世話が終わるんだろうな!本当、嫌になるぜ!!」

 

「……とか言いつつも……毎回心配して、来てくれるクセに……//」

 

「なっ……う、うっせ……!//」

 

「それに……案外、相性抜群だと思うよ?キミとあたしっ♪」



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文豪シンデレラ 鷺沢文香

「いつまでも凋むことを知らぬ、白と紅の薔薇のように」

 

「二人は楽しく、ずっと、幸福でありました……」

 

「……」

 

「……ふぅ。良き書でした……」

 

「グリム兄弟による、アッシェンプテル……シャルルペローによる、サンドリヨン……」

 

「今昔問わずに、様々な文学者たちによって、色々な解釈がされていますが……」

 

「……いいですね……たまには、童心に帰って絵本と言うのも……」

 

「子供の頃とは、また違う視点で楽しめますし……とても、探求心がくすぐられてしまいます……♪」

 

「ふふっ……♪この本を貸してくれたありすちゃんには、感謝をしないといけませんね……♪」

 

「それに……いいな……この最後のページ……王子様とシンデレラ……とても幸せそうです……♪」

 

「……私もいつかは……あっ、いけませんね……すぐに物事を、文学で例えてしまう悪い癖を直さないと……」

 

「何せ、今の私は……暖かくて優しい、包み込まれるような陽射しを求める……「灰かぶり」ですものね……」

 

「今は、カボチャの馬車に乗るために……邁進していかないと……少し、窓を開けましょう……」

 

フワッ……

 

「今日は、とても月が綺麗です……あの方も、同じ景色を見ているのでしょうか……?」

 

「……そうですね……こんなにも、明るく闇夜を照らす、大きな月ですから……きっと、見ていますよね……」

 

「うふっ……♪何だかとても……不思議な気分になってしまいます……♪」

 

「それにしても……この時期にこんな、暖かくて心地よい風が吹くだなんて……」

 

「……少し、早い春風ですね……まるで……誰かからの、贈り物みたいです……」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、またどこかで……お会いしましょう……」

 

「ご清聴、ありがとうございました」

 

「……お疲れ様。文香、ありす」

 

「あっ、お疲れ様です……プロデューサーさん……」

 

「……」

 

「ん?ありす……?」

 

「……ありすじゃなくて、橘。です」

 

「……あぁ〜、はいはい。ご苦労様でした〜、橘大明神様〜」

 

「だいみょ……何なんですか、それ……」

 

「とりあえず、二人ともお疲れ様。しっかりと、アイドルをしてたぞ」

 

「ありがとうございます……少し、緊張してしまいましたけど……とても楽しかったです……♪」

 

「当たり前です。私は、プロですので」

 

「よかった。今回の仕事は、二人にぴったりだと思ってな。いつもより、仕事がしやすかっただろ?」

 

「そうですね。とても、トークが弾みました」

 

「はい……充実した時間を、過ごさせてもらいました……♪」

 

「古本市でのトークイベントと聞いて、真っ先に、文香と橘が思い浮かんだんだ。二人とも、本が好きだろ?」

 

「そうですね……この様々な古本たちから漂う、香り……雰囲気……触れた時の、感触……」

 

「初めて出会う、新たな書との邂逅……知見を広める楽しさ……探求し続けても終わりのない奥深さ……」

 

「そして……あっ……すみません……本のことになると、つい……」

 

「ははっ、聞くまでもなかったな。本当に、本が好きだって言うのが伝わってきたよ」

 

「文香さん、始まる前から、すごい嬉しそうな顔をしてましたもんね」

 

「橘はどうだったんだ?」

 

「はい、古本も好きです。でも……私には、電子書籍がありますからっ……!」ドヤッ

 

「そうだった。橘は、電子書籍派だったな。俺にもよく、おすすめの書籍を紹介してくれるしな」

 

「……プロデューサーさんも……電子書籍を読むのですか……?」

 

「うん。とは言っても、俺は基本的に、スマホのアプリでだけどな」

 

「……そうですか……」

 

------------------------------------------------

 

「しかし……最近って、便利になったよな。どこでも手軽に、スマホで本を読めるんだからさ」

 

「そうですね。共有をしてるから、どの場所にいてもすぐに、おすすめの本を紹介出来ますしね」

 

「えっ、共有……ですか……?」

 

「あぁ。橘と、お互いにおすすめの本を読めるように、電子書籍のアカウントを共有してるんだよ」

 

「私の好きな本を、たくさん読んでもらいたいですからね。それに……」

 

「……プロデューサーさんの好きな本も、もっと……読まさせてもらいたいですし……//」

 

「そうか?俺は橘と比べて、読書量が少ないから一方的に、勧めてもらってるだけの様な気がするんだが……」

 

「いえいえ。プロデューサーさんのおすすめも、よかったですよ…?「シンデレラ」とか「白雪姫」とか…」

 

「おっ、気に入ってくれたか。橘に、ピッタリだと思ってたんだ」

 

「私に……ですか?」

 

「定番だけど、やっぱり女の子って、こういうの好きだろ?お姫様にも憧れる年頃だしさ」

 

「こ、子供扱いしないでください!私は、そんなのではありません!」

 

「でも、王子様とかには憧れるだろ?」

 

「それは……そうですね……手を引いて、連れて行ってもらいたいですね……」チラッ

 

「……あの……プロデューサーさん……その……ご迷惑でしたか……?」

 

「えっ……?急に、どうしたんだ?文香」

 

「この前に、胡蝶蘭をあしらった栞を……受け取って、いただきましたよね……?」

 

「うん。文香が作ってくれた、あの綺麗な栞だな。今も大切に持ってるよ」

 

「大切にしていただけてるのは誠に嬉しいのですが……その……御荷物ではないですか……?」

 

「お荷物って……いや、そんなことはないぞ?」

 

「ですが、その……電子書籍を、利用されてるそうなので……」

 

「……あっ……そ、それは……」

 

「……すみません……勝手に押し付けて、ご迷惑をおかけしてしまって……くすんっ……」

 

------------------------------------------------

 

「わわっ!ふ、文香!?お、俺も電子書籍だけじゃなくて、紙の本も大好きだから!ありすもそうだろ!?」

 

「橘です!……じゃなくてっ!は、はい!私も紙の本が、大好きですっ!」

 

「ほら!さっきも、お仕事の前にここで古本を、こんなに買っちゃいましたよっ!」

 

「なっ?俺も、あ……橘も、紙の本が大好きなんだ!だから少し、落ち着いてくれよっ!頼むよ!」

 

「……本当……ですか……?」ウルッ

 

「あぁ。それにほら、これを見てくれ」

 

「……あっ、これは……」

 

「文香から借りてる本だよ。まだ読み途中だが、作ってもらった栞を使わせてもらってるんだ」

 

「それに、俺が古本に興味なかったら、この仕事を文香たちに、持ってくると思うか?」

 

「それは……確かに……」

 

「な?それに、文香とだってお互いに、おすすめの本を貸しあってるだろ?」

 

「……!」

 

「……は、はい……そうですね……♪//」

 

「だから、この栞がないと困るんだ。それに、今まで文香からもらった栞も、コレクションにしてるしな」

 

「そうですか……♪……こちらこそ、気に入っていただけて……とても嬉しいです……//」

 

「……」

 

「誤解が解けてよかった。これからもよろしくな。じゃあ、解決もしたことだし、事務所に戻ろうよ」

 

「はいっ……♪」

 

「よし、行こうぜ。文香、あ……あれ……?橘は?」

 

「えっと……ありすちゃんならあそこに……」

 

「ちょっ……!?何でもう、あんな遠くに……おい!ありす!待てって!」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「お〜い!ありす〜!」

 

「……橘……です」

 

「な、なぁ……急にどうしたんだよ……何だか、怖いぞ……?」

 

「……気のせいだと思います」

 

「いいや、さっきと様子が違うぞ。いつも、お前のことを見てるからわかるんだ」

 

「っ!……む〜//」

 

「何か、悪いことをしたのなら謝るからさ、機嫌を直してくれよ」

 

「……てるんですね……」

 

「え……?」

 

「……文香さんとも……本を、貸しあってるんですね……私だけだと……思ってたのに……」

 

「一体何を……あっ、そうか!子供向けの本じゃなくて、もう少し難しい本を、勧めて欲しかったんだな!」

 

「……えっ」

 

「文香が読むような本が、読みたかったんだろ?いや〜、絵本は流石に、子供扱いしすぎたな。悪かったよ」

 

「……そうですね……よい作品ではありましたが……少し、幼稚すぎます」

 

「それに、あまり私を子供扱いせず……もう少し「オトナ」の女性として、見てください……」

 

「はいはい、わかりましたよ。次はもっと、大人向けの本を勧めるよ」

 

「……話は以上です。それでは……」

 

「……あっ!あそこに、イチゴが!」

 

「っ……!?い、いちご……!……はっ……!//」

 

「……ニヤッ……どうです?あそこで、何か食べて行きますか?橘大明神様♪」

 

「ありすです!……じゃなくて!ば、バカにしないでください!私は、もう大人なんです!」

 

「た、食べ物で、ご機嫌取りをしようとしたって、そうはいきませんっ……!//」

 

「ふ〜む……今なら、イチゴ増量中か……それに、スンスン……う〜ん、イチゴの甘い香りが、漂ってるなあ〜」

 

「あっ……うっ、うぅ〜……」

 

「でも、しょうがないか〜。女の子を食べ物で釣るだなんて、はしたないことをしたくないしな〜」

 

「今回は諦めて、事務所に戻るか〜。さあ、行こうぜ」

 

「……ますか……」

 

「ん?」

 

「私を……子供扱いしたことを……反省してますか?」

 

「うん、そうだな。後悔してるぐらい、反省してるよ」

 

「じ、じゃあ……言葉だけじゃなくて、その……行動で、示してください……//」

 

「それじゃあ、反省の意を込めて、パフェをご馳走させてくださいよ」

 

「し、しょうがないですねっ……プロデューサーさんの誠意を……受け取ってあげます……//」

 

「はいはい。それじゃあ、さっそく行くか。お〜い!文香〜!」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜……♪//」

 

「とても……美味しそうですね……♪」

 

「みんなの分が来たな。それじゃあ、さっそくいただこうか」

 

「ありがとうございます。でも……よかったのですか……?私まで、ご馳走になってしまって……」

 

「ははっ、遠慮するな。二人には、いつも頑張ってもらってるから、そのお礼だよ。大明神様も喜んでるしな」

 

「……//」

 

「大明神……?仏教における、神の称号の一つですか……?」

 

「流石、文香は詳しいな。まあ、気にしないでくれ」

 

「はぁ……?」

 

「ところで、どうだありす。来て、よかっただろ?」

 

「……はい//」

 

「おっ、やけに素直だな。とうとう、名前呼びが認められたか?」

 

「いえ……おそらくですが……ありすちゃんは、目の前のイチゴパフェに……集中してるだけかと……」

 

「な〜んだ、やっぱりそうか。そう簡単に、認めてくれるわけないがないもんな。このイチゴ姫は」

 

「……プロデューサーさんは、その……ありすちゃんのことを、名前で……呼びたいですか……?」

 

「あぁ、そうだな。やっぱり担当としてはお互いに、下の名前で呼びあった方が、親しみやすいと思うよ」

 

「それに……」ジー

 

「……はっ!な、何ですか!そんなに、私のパフェをジロジロ見て……!」

 

「……さ、さては……イチゴを取るきですねっ!だ、だめです!絶対に渡さないですよっ……!」

 

「ありすってからかうと、すごい面白いしな」

 

「そうですか……あの、プロデューサーさん……」

 

「何だ?」

 

「わ、私のパフェを、その……もらって……いただけませんか……?//」

 

「……!」

 

「えっ!?い、いや、悪いよ……文香のは、文香で食べな」

 

「そんな、悪いだなんて……むしろ、その……もらっていただけたら……嬉しいです……♪//」

 

「そうなのか……?そ、それじゃあ……少しだけ……もらうぞ?」

 

「あっ……ちょっと、待ってください……召し上がっていただくのは、その……こちらの方です……♪//」

 

「えっ……えぇっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「こちらって……それ、文香のスプーンのじゃ……」

 

「はい……♪それとも……ご迷惑でしたか……?」

 

「いや……別に、迷惑なわけじゃないけどさ……」

 

「そうですか……♪それでは……あ、あ〜ん……//」

 

「っ……あ〜ん……//」

 

「……どうですか……?美味しい……ですか……?//」

 

「……あぁ、すごく……美味いよ……//」

 

「「……//」」

 

「……むっ」

 

「喜んでいただけて、嬉しいです……♪それでは……えいっ♪」

 

パクッ

 

「!?」

 

「……うふふ……♪プロデューサーさんのパフェも……すごく、美味しいです……♪//」

 

「あの……文香さん?それって……今、俺がスプーンで……すくったやつでは……?//」

 

「魔が差したと言うのでしょうか……少し、いたずらしてみちゃいました……♪//」

 

「……」

 

「どうか……されましたか……?」

 

「……いや……少し、驚いてるんだ。文香が、こういうことをするのって、意外だなって思ってさ……//」

 

「……そうですね。実を言うと……私自身も、驚いてるんです……」

 

「ひたすら書に耽り……催事や四季の変化に疎く、ただ無為に、去っていく日々……」

 

「少し、語弊がありましたね……私にとっては有意義でしたが、心のどこかで、虚無感を感じていました……」

 

「そんな中……このような、華やかな世界に私を導いてくれた……プロデューサーさんのおかげで……」

 

「……少し……積極的に、なれたような気がするんです……//」

 

「うん……?まぁ、それは悪いことじゃないけど……でも、文香はアイドルだし、そこら辺は頼むぞ……?」

 

「……はいっ……♪わかりました……♪//」

 

「……プロデューサーさん……私のパフェも、食べたいですか……?」

 

「ん?何だよ橘。気が変わったのか?」

 

「……はい」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、橘のだ〜いすきな、イチゴをもらっちゃおうかな〜」

 

「……っ」

 

「……な〜んて、冗談だよ。せっかくのイチゴなんだし、たくさん楽しめよ」

 

「えっ……いらないんですか……?」

 

「あぁ。だって、二人にパフェを楽しんでもらうために、来たんだ。だから、気にするなよ」

 

「……今回だけは、特別に……私のイチゴを、食べていいですよ……?」

 

「だから、気にするなって。橘はイチゴが、大好きなんだろ?」

 

「……橘じゃなくて……「ありす」……です……//」

 

「えっ……!?」

 

「これからは、二人きりの時以外でも、ありす呼びを許してあげます……//」

 

「二人きり……ですか……?」

 

「ばっ、ばか!……あ〜もう!このことは、二人だけの秘密だって言っただろ!」

 

「知りません。それに、よくよく考えてみたら、文香さんだけずるいです」

 

「えっ……私ですか……?」

 

「だって……文香さんは「文香」なのに、私だけ「橘」だなんて、不公平です」

 

「ずるいも何も、たち……」

 

「ありすです!」

 

「……ありすが、橘で呼べって言ったんだろ?アイドルとして、公私混同はよくないとか言ってさ……」

 

「少なくとも……私の記憶では、そんなことを言った覚えはありません」

 

「……ったく……都合のいいヤツめ……」

 

「それに、さっきから各々の場面で、私のことを下の名前で呼んでたじゃないですか」

 

「うっ……それは……そうだけど……」

 

「これからは、表裏一体です。ですから「ありす」で統一してください。いいですね?」

 

「……わかったよ。橘だったり、ありすだったり、ゴチャゴチャしてると、周りも混乱するしな……」

 

「わかってくれたんですね!それでは……はいっ♪私のイチゴを、もらってくださいっ♪」

 

「……」

 

「ちょっ……文香も見てるし……それに、恥ずかしいからいいよ……//」

 

「……文香さんのは、喜んでもらってたのに……私のは……もらってくれないんですか……?」ウルッ

 

「……ああ、もう……それじゃあ、ありがたくいただきますよ。イチゴ姫様」

 

「ほ、本当ですか!?嬉しいですっ♪」

 

「おいおい……さっきのオトナのお姉さんは、どこに行っちゃったんだろうなあ?」

 

「さぁ、知りませんっ♪」

 

「ったく……文香、何だか悪いな」

 

「いえいえ……とても、微笑ましい光景です……♪」

 

「それでは……はいっ♪どうぞっ♪」

 

「っ……あ、あーん……」

 

「……美味しいですか?//」

 

「……あぁ。美味しいぞ……//」

 

「「……//」」

 

------------------------------------------------

 

「うん。美味しかったな」

 

「ご馳走様でした……プロデューサーさん……♪」

 

「プロデューサーさん、ありがとうございました」

 

「喜んでもらえてよかった。連れてきた甲斐があったよ」

 

「でも、ありすちゃん……よかったのですか……?私まで、ありすちゃんのイチゴをもらってしまって……」

 

「そんな。私はみなさんと幸せを、共有したかっただけです。イチゴは、幸せな気持ちにしてくれますから」

 

「……それに……文香さんは……私の大切で、特別なお友達ですので……♪」

 

「うふふ……♪ありすちゃんも、私にとって特別なお友達です……これからも、よろしくお願いしますね……♪」

 

「文香さん……はいっ♪よろしくお願いします♪」

 

「「ふふっ……♪」」

 

「ははっ。相変わらず、二人とも仲がいいな。側から見てると、姉妹にしか見えないぞ」

 

「当然です。文香さんは、私のお姉さんですから」

 

「ありすちゃんが妹なら……毎日が、楽しそうですよね……♪」

 

「本当、変に背伸びをしなきゃ、素直でかわいい妹なんだけどな〜」

 

「むっ。背伸びなんかしていません。いつも、等身大の私です」

 

「はいはい。ムキになっちゃってかわいいなあ、ありすは」

 

「……むぅ〜」

 

「同年代と比べると、博識ではありますが……年相応だと思いますよ……」

 

「だな。ほ〜ら、ありすちゃ〜ん。もっと、素直になってもいいんだぞぉ〜?」

 

「……ばかにしないでください……」

 

「悪い悪い。冗談だって、だから真に受けるな……って……なっ……!?」

 

「!!」

 

「……私だって、その……年相応になる時だって……あります//」

 

「あ、ありす……!?何で、俺の膝の上に乗ってるんだよっ!?」

 

「プロデューサーさん、今、言いましたよね。素直になっていいって」

 

「だ、だから……あれは冗談だって……//」

 

「プロデューサーさんは、冗談かもしれませんけど……私は、冗談じゃありません……//」

 

「ありすちゃん……大胆ですね……//」

 

「なぁ……変な冗談を言って悪かったからさ、一旦降りてくれよ。なっ……?」

 

「……イヤです」

 

「……ワガママは、いけないと思うぞ?」

 

「知らないです。女の子を弄ぶようなセリフを、平気で吐く、プロデューサーさんが悪いんです」

 

「おい!誤解を生むような言い方やめろ!何だよ弄ぶって!」

 

「……自覚が……ないんですね。文香さんも、呆れてますよ」

 

「えっ……?わ、私……ですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「ふ、文香!俺って、そんなことないよなっ!」

 

「え、えっと……プロデューサーさんは、その……もう少し、言葉を慎まれた方が……いいと思います……」

 

「うぐっ……!」

 

「ほら。自覚がないのは、プロデューサーさんだけですよ」

 

「ふ、文香に言われると……かなり堪えるな……」

 

「あの……す、すみませんっ……!別に、嫌悪や不快に感じるとか、そういうことではないんです……!」

 

「むしろ……なんと言いますか……プロデューサーさんの言葉は、とても……」

 

「……甘美で情熱的なので……動揺してしまう方が、多いのではないでしょうか……//」

 

「情熱……?俺って、そんなに暑苦しいセリフを吐いてたのか?」

 

「い、いえ……そういう意味では、なくて……」

 

「う〜む……何にせよ、指摘された以上は俺も気をつけないとな……」

 

「……よし!これからは、文香やありすを見習うことにするよ。二人とも、容姿も言葉遣いも綺麗だしな」

 

「き、きれい……あぅ……//」

 

「……そういうところですよっ……でも、反省したんですね……?//」

 

「あぁ。したつもりだよ」

 

「それでは……反省の意を込めて、私の頭を……な、撫でてください……//」

 

「えっ……な、何だよ急に……」

 

「さっきも言いました。今の私は「年相応」だって」

 

「ですので……本当に反省をしてるのなら、少しぐらい……私を労ってくれても、いいじゃないですか……//」

 

「くっ……!ただでさえ、この体勢で恥ずかしいのにっ……!//」

 

「……だめですか……?」ウルッ

 

「……わかったよ……少しだけ、だからな……//」

 

「……はい♪では、お願いしますねっ……♪」

 

「それじゃあ……ほらっ、いくぞ」ナデナデ

 

「ありすちゃん……よかったですね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ありすって結構、髪の毛がさらさらしてるんだな」

 

「当然です。私はアイドルなんで、身だしなみも完璧です」

 

「それに……何だか、フルーツの香りがするな。これは……イチゴか……?」

 

「なっ、何を嗅いでるんですかっ!プロデューサーさんの変態っ!//」

 

「何だよ変態って!しょうがないだろ!膝にお前を抱えて座ってたら、嫌でも香ってくるわ!」

 

「ふっ、ふんっ!まあ、いいですけど……//」

 

「ったく……しかし、ありすは本当に、イチゴが好きなんだな」

 

「甘くて、美味しいですからね。それに、かわいいですし。何より……幸せな気持ちにしてくれます♪」

 

「ははっ。確かに、食べると幸せな気分になれるよな、イチゴって」

 

「……でも……今は、プロ……お、お兄さんに、頭を撫でられてる方が……幸せな気持ちです……//」

 

「ん?ありすに、お兄さんなんていたっけ?」

 

「で、ですから!頭を撫でられてる今が、幸せなんですっ!すぐに察してくださいっ!おバカ……!//」

 

「頭……って……ま、まさか……俺のこと!?何で、俺がお兄さんなんだ!?」

 

「さっき、文香さんと私のことを、姉妹にしか見えないって言いましたよね」

 

「あぁ。言ったな」

 

「ですから……その姉妹を見守る、お兄さんもいたらいいなと思ったんです……//」

 

「……俺は、どちらかと言うと、保護者じゃないか……?」

 

「そうですか?私から見れば、文香さんとプロデューサーさんも、仲の良い兄妹にしか見えませんよ?」

 

「っ……!兄妹……ですか……//」

 

「おいおい、それはないと思うぞ。文香だって、俺みたいな不釣り合いな兄がいたら嫌だろ?」

 

「ふえっ……!?あ、あの……そんなことはないですっ……!//」

 

「ぷ、プロデューサーさんが、その……私のお兄さんだったら、とても……幸福だと思います……//」

 

「えっ……?そ、そうか……ありがとう?」

 

「「……//」」

 

「決まりですね。プロデューサーさんは、私たちのお兄さんです。これからも、ずっと見守ってくださいね」

 

「……まぁ……頑張るよ……//」

 

「それでは、文香さんにも、私と同じことをしてあげてください」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……!?//」

 

「なっ……!ふ、文香にもっ……!?」

 

「当然じゃないですか。だって、私たちのお兄さんなんですから」

 

「な、何を勝手に……それこそ、文香に迷惑だろ!//」

 

「……いえ……ぷ、プロデューサーさんがよろしければ……私のことを、撫でていただけますか……?//」

 

「えっ……いや、文香がいいならいいけど……それじゃあ……こっちに来るか?」

 

「はいっ……お願いしますっ……//」

 

「……よし、いくぞ……」

 

ナデナデ

 

「あっ……//」

 

「……文香の髪の毛も……結構、サラサラでツヤツヤしてるな……//」

 

「そ、そうですか……ありがとうございます……//」

 

「あと、その……文香も結構、いい香りがするんだな。甘いって言うか、柑橘系の香りと言うか……」

 

「いえ、そんな……トリートメントの香りがするだけかと……それを言うなら、プロデューサーさんも……」

 

「……爽やかで……「男性を」感じさせる……素敵な香りがしますっ……♪//」

 

「俺、俺も……?えっと……ありがとう……?//」

 

「「……//」」

 

「……プロデューサーさん……こっちの手が休んでますよ。私にも、続きをしてください」

 

「ん?あ、あぁ……悪いな、ありす。ほら……」

 

「あっ……えへへ……//」

 

(膝にありす……腕の中に文香……)

 

プニッ♪

 

(ぐっ……や、柔らかいのが……当たってるっ……!……普段、おとなしいけど……文香って意外と……)

 

(……って!ふ、文香は、純粋な女の子なんだ!そんな、ヨコシマなことを考えちゃだめだっ……!)

 

(ありすの甘い香り……文香の柔らかいもの……うぅ……い、意識するな!耐えろ、耐えるんだ、俺っ……!//)

 

「……お兄さんの手……とても大きくて、温かいですっ……♪//」

 

「……うふふ……♪お兄さんっ……♪//」ギュッ

 

------------------------------------------------

 

「……そろそろ、日が暮れてきたな。事務所に帰るか」

 

「そうですね……」

 

「ほら、ありす。お前もそろそろ……」

 

「……」

 

「……ん?ありす……?」

 

「……zzz」

 

「ありすちゃん……気持ちよさそうに、寝ちゃってますね……」

 

「えっ、まじかよ……やれやれ。普段は背伸びしてるけど、寝顔はやっぱり、年相応だな」

 

「うふふ……かわいいですね……♪……あの、プロデューサーさん……」

 

「……私たちって……どういう風に、見られてるのでしょうか……?」

 

「ん?どうって……アイドルとプロデューサー?」

 

「そ、そうではなくて……もしかしたら、その……ありすちゃんが言ってた、関係に見えるのかなって……//」

 

「ははっ、そうだな。ということは、ありすは俺と文香の……あっ……」

 

「……えっ……そ、それは……つまりっ……//」

 

「「……//」」

 

「……あ、ありすが言ってたのって、俺らは兄妹に見えるって話だよなっ!あはは……」

 

「え、えぇ……仲の良い兄妹に……見えるそうですね……とても仲良しな……//」

 

「「……//」」

 

「……あ〜!長時間ベンチに座ってたから、少しキツイな!ちょっと、立ってリフレッシュするか!」

 

「そ、そうですね……それでは、私も……あっ……」

 

「っ……!?文香!!」

 

ギュッ

 

「……す、すみません……少し……立ちくらみをしてしまって……」

 

「おい……大丈夫か?具合が悪かったり、体調に異変を感じたら、すぐに言うんだぞ?いいな?」

 

「ありがとうございます……ところで……プロデューサーさんって、すごく……逞しいのですね……//」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……あっ、わ、悪いっ!」

 

「……//」

 

「その、別に変なことを考えてたんじゃなくて、文香のことが心配で、ついうっかりとだな……!//」

 

「……うふふ……皆まで言わなくても、わかってます……♪プロデューサーさんは、お優しいですから……♪//」

 

「……そ、そうか?」

 

「えぇ……♪プロデューサーさんの優しい一面と、凛々しい一面の二面性を、私は理解してるつもりです……♪」

 

「それに……「お兄様」に強く抱擁されるのは……とても……安らぎますので……//」

 

「お、お兄様って……//」

 

「……冗談です……♪ところで……先程、ありすちゃんの言ったことについて……お話ししましたよね……?」

 

「えっ?あ、あぁ……話したな」

 

「その時に……兄妹ではなく、どういう関係に……見えると思ったのですか……?」

 

「ど、どうって……悪い……これ以上は、言えない……だって……」

 

「……文香はアイドルで……俺はプロデューサーだから……」

 

「……やはり……お優しいですね……プロデューサーさんは……♪//」

 

「でも、そのように思っていただけたのは……私のことを……意識してくださったってことですよね……?//」

 

「うっ……そ、それは……そうだな……俺は少し、文香のことを……意識してしまったのかもしれない……//」

 

「そうですか……嬉しいです……♪//」

 

「でもな。俺に限らず、文香見たいな可憐で綺麗な女の子に、ああいうことをしたら……」

 

「……意識しない男性なんて……いないと思うぞ……?//」

 

「うふふ……♪一人の女性として意識していただけて……とても、嬉しいです……♪」

 

「……では……プロデューサーさん……その……わ、私の魔法を……解いていただけませんか……?//」

 

------------------------------------------------

 

「ま、魔法……?」

 

「はいっ……//」

 

「魔法……魔法……どのメーカーのステッキが、一番解けやすいんだ……?」

 

「ち、違うんです!そうではなくてっ……//」

 

「私と、その……キ、キスをして……いただけませんかっ……!?//」

 

「キ……はぁっ!?ど、どうしたんだよっ!急にっ!//」

 

「……今後の、演劇のお仕事のために……予行練習の相手に、なっていただけませんか……?」

 

「なんか……今日の文香は、積極的だな……でも、俺じゃ……相手になってあげれないと思うぞ?」

 

「……先程……言ったじゃないですか……何事にも、積極的に挑戦するための勇気をくださったのは……」

 

「……他の誰でもない……プロデューサーさん、と……//」

 

「……そんな……俺は、別に……」

 

「……無理と言うのなら……拒否してくださっても、構いません……それでは……プロデューサーさんっ……」

 

「なっ……!ちょっ、ちょっと待て!少し落ち着けって文香っ…!//」

 

「ふふっ……とても、綺麗な瞳です……♪……んっ……」

 

「……ふぁっ?」

 

「……っ!あ、ありす……?」

 

チュッ…♪

 

「!?」

 

「ん〜……ぷろでゅーさーさんと……ふみかさぁん?一体、何を……?」

 

「……い、いや……少し、話をしてただけだ……気にしないでくれ……//」

 

「はぁ……?」

 

「……//」

 

------------------------------------------------

 

「あ、ありえないです!デタラメを言うのは、やめてくださいっ!」

 

「あのなあ……どの口が言うんだよ……」

 

「この私が……無防備に、お外でお昼寝をしてただなんて……ないです!ありえませんっ!//」

 

「おいおい……さっきまで、気持ちよさそうな寝顔を見せてたヤツが、何を言ってるんだ?」

 

「なっ……寝顔っ……!やはり……ぷ、プロデューサーさんは、変態ですっ……!//」

 

「何でだよ!全部、ありすが悪いんだろうがっ!」

 

「うるさいですっ!も、もう先に、事務所に戻りますからねっ!それではっ!」

 

「あっ、おいっ!ありす……行っちまった……」

 

「うふふ……♪ありすちゃん……元気ですね……♪」

 

「あぁ。そうだな……元気すぎて困っちゃうぐらいにな……」

 

「……」

 

「……ふふっ、拒否……しませんでしたね……♪でも……残念です……「直接」では、ありませんでした……」

 

「……ありすの方に、振り向いたからな……これで、しばらくはお預けだ」

 

「あの……改めて……私の「方向」を見ていただくことって……出来ませんか……?」

 

「文香の気持ちは嬉しい。だけど……やはり、俺は文香を含めた、アイドルたちの輝く姿をもっと見たいんだ」

 

「だから……ごめん。今の俺には、答えは出せない……悪いな……」

 

「そうですか……ふふっ……プロデューサーさんは本当に、どこまでも……だから、皆さんは……」

 

「……ん?皆さん…?」

 

「あっ……すみません……少し、独り言が過ぎました……」

 

「そうか?まぁ、その……俺らも、日が暮れる前に……事務所に戻ろうぜ?」

 

「えぇ……そうですね……♪えいっ……♪」

 

「うわっ!?ふ、文香っ!?だから、そういうことはっ……!//」

 

「今は……二人っきりです……ですから、事務所に戻るまでの間は……離しません……♪」

 

「……文香も、女の子なんだから……こういうことは控えてくれよ?俺だって、その……男なんだし……」

 

「……「勘違い」……されてしまうかもしれないんだぞ……?//」

 

「うふふ……大丈夫ですよ……♪こういうことは、プロデューサーさんだけにしかしませんので……♪」

 

「……それに……いつかは「直接」……プロデューサーさんから、温もりが欲しいです……なんて……♪//」

 

ムニュッ♪

 

「……っ!」

 

「きゃっ……ぷ、プロデューサーさん……!?どうしたんですか……?急に、私の手を引っ張って……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「あ、あの……これは一体……」

 

「……文香っ!」

 

「えっ……きゃっ……!?」

 

「さて……鍵も掛けたことだし……この事務所には、俺と文香の二人だけだぜ……」

 

「ふ、二人きり……」

 

「……俺……もう、我慢出来ない……言っただろ?「勘違い」されてしまうかもって」

 

「俺だって、男だし……文香みたいな女の子に、あんなことをされ続けたら……耐えられないんだよ……!」

 

「……先程も言いましたが……あのようなことは、プロデューサーさんにだけしか……しませんよ……?」

 

「……じゃあ……これからすることも、文香にしかしねえよ……二人だけの、秘密だ……」

 

「これから……で、でも……そのっ……//」

 

「プロデューサーとアイドルの関係だって、言いたいんだろ?安心しろよ」

 

「今は、ただの「一人の男と、一人の女」だ。だから……たっぷり、楽しもうぜ……?」

 

「……い、いやっ……!やめてください……!私たちはまだ……そんなっ……!//」

 

「それじゃあ、抵抗してみろよ。この押し倒された状態から、出来るならな」

 

「……っ……//」

 

「だいたい、文香が悪いんだぞ……?俺を、こんなことになるまで誘惑したんだしな……」

 

「ゆ、誘惑だなんてっ……!私はただ……プロデューサーさんのことが……//」

 

「さてと……そろそろ、始めようぜ。俺も……文香の温もりが欲しいんだ……」

 

「……ふあっ……温もり……//」

 

「……ま、拒否権はないけどな。文香がくれないのなら、俺からもらいにいってやるよ」

 

「それに、俺は独占欲が強いんだ。だから……もう絶対に、離さないからな「俺だけ」の文香……」

 

「あうっ……そ、そのっ……やさしく……お願いします……//」

 

------------------------------------------------

 

「……そして……夜の誰もいない事務所で、プロデューサーとアイドルの、禁断の逢瀬が始まるのです……」

 

「男性の力強さと、逞しさを感じながら……自分が次第に、女だと言うことを再認識し始め……」

 

「快楽と愉悦が入り乱れた饗宴に……二人は身を委ね、溺れていくのでした……」

 

「……」

 

「……やはり……難しいですね……官能小説というものは……」

 

「文字にすればするほど……恥ずかしくなってきて……このノートは、誰にも見せれませんね……//」

 

「急に手を握られた時に、何事かと思いましたが……あの後、少し……お叱りを受けてしまいました……」

 

「でも……仕方がありませんね……私も、あの時は少々、はしたない部分があったと思いますし……」

 

「……私ってば、ますます大胆になってきていますね……♪少し前まででは……考えられないぐらいに……//」

 

「優しくて、暖かくて……時には、凛々しく……一緒にいるだけでつい……心がときめいてしまいます……♪//」

 

「……しかし、それは「皆さん」も同じです……視線を……独占したいと言う気持ちも……」

 

「ですので……官能小説の中だけでも「野生的」な一面を、私だけに見せてくださいね……ふふっ……♪」

 

「ある意味で、プロデューサーさんより……独占欲が強いかもしれませんね……だって、こんなにも私は……」

 

「……ふぁ……あ、いけません……つい……では、そろそろ寝ましょう……夜も遅いですしね……」

 

「眠りについたら……来てもらえるのでしょうか……」

 

「……毒リンゴを食べてしまった、お姫様……そして、駆けつけて来てくれた、白馬の王子様……」

 

「羞恥心を拭い去り、姫のためにと、眠る姫の口に……暖かくて素敵で、濃密な……魔法を……」

 

「……い、いけません……私ってば……また、そのようなことを……//」

 

「……でも……きっと、してくれますよね……だって……あなたは、とても優しいですもの….…//」

 

「うふふ……♪もし、眠りから覚めたら……いつまでも、萎むことを知らない……白と赤の薔薇のように……」

 

「ずっと……隣に、いてもらえますよね……?プロデューサーさんっ……♪」



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末裔シンデレラ 黒埼ちとせ

「二人とも、初めまして。今日から二人を、我がプロダクションの新たなアイドルとして迎え、歓迎します」

 

「よろしく〜♪」

 

「よろしくお願いします」

 

「二人には、充実したアイドル生活を送ってもらうために、主に裏からサポートし、かつ、円滑にスケジュールを進行し……」

 

「んもう。ちょっと、硬いよ〜」

 

「うん……?」

 

「あなたが、私をスカウトした時には、もっとフランクな口調だったでしょ?だから、そうして欲しいな」

 

「……そ、そうか?それじゃあ……コホン……まあ、二人には、充実したアイドル生活を、送って欲しいんだ」

 

「楽しいことだけではないと思うが、その辺りも含めて、一緒に頑張っていこう。よろしくな。黒埼、白雪」

 

「うんっ♪よろしくねっ♪」

 

「……」

 

「……ん?どうした、白雪?」

 

「私は、馴れ馴れしいのは嫌いです」

 

「えっ……?」

 

「ですので、あなた……いえ、お前くらいでいいか。お前と私、適切な距離感を、常に心がけてください」

 

「なっ……お、お前って……」

 

「では、これからお嬢様のお食事を、作らねばなりませんので、失礼します」

 

バタン

 

「……俺……白雪に何か、悪いことをしてしまったか……?」

 

「あはは、ごめんね〜♪あの子ってば、いつもあんな感じなんだ〜♪」

 

「でもね?決して、悪い子じゃないの。だから少しづつ、理解していってもらえると、嬉しいな♪」

 

「そうか?なら、いいんだが……」

 

「そ・れ・よ・り♪あれ、覚えてるぅ?私が、あなたに出した条件をっ♪」

 

「条件……あぁ、確か……」

 

「ひとつ、黒埼を退屈させないこと」

 

「ふたつ、黒埼に嘘をつかないこと」

 

「……だったか?」

 

「さっすが〜♪ご名答だよ♪というわけで、これから私を、たくさん楽しましてね♪」

 

「それは違うな」

 

「えっ……?」

 

「確かに、俺は黒埼たちに、アイドル生活を充実させると約束した。でもな」

 

「これからは「楽しませる」ことを考えるのも、いいんじゃないか?今日から黒埼は、アイドルなんだしさ」

 

「……そうだね……まだ、経験したことのない、未知の世界に来たんだもんね……」

 

「私とあなたの……うん!いいよ!あなたが私を求めるなら、答えてあげるよ♪」

 

「あぁ。頼むぞ」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、この子たちをよろしくお願いします。トレーナーさん」

 

「はい。必ず、プロデューサー殿の期待に添える、アイドルに育てあげて見せます。な?黒埼、白雪」

 

「は〜い♪頑張りま〜す♪」

 

「……」

 

「む……?白雪、どうした?」

 

「……私は、あくまでお嬢様のためだけに、尽力する所存です。この人の傀儡に、なるつもりはありません」

 

「あ、あはは……」

 

「そう言うな。今日のレッスンも、プロデューサー殿がスケジュールを組んでくれたおかげで、行えるんだぞ」

 

「その他に、楽曲や衣装の打ち合わせ、PR、営業活動、色々とある。お前たちだけが、動いてるんじゃない」

 

「ふうん、偉いんだね」

 

「だから、その期待に応えようと、頑張ろうとする姿勢を見せるのも、悪くないんじゃないか?」

 

「それは……」

 

「そうよ、千夜ちゃん。やるからには頑張んなきゃ」

 

「……お嬢様が、そうおっしゃるのなら……頑張らせてもらいます」

 

「よし、その意気だ。みっちり、面倒をみてやるぞ。それではさっそく……」

 

ガチャッ

 

「こんにちは。プロデューサー、トレーナーさん」

 

「あ〜♪プロデューサーも、いるね〜♪」

 

「ん……?凛、加蓮、奈緒……?」

 

「ここ、こんにちは……」

 

「む、何だ、お前たち。ここは次のコマまで、黒埼と白雪が使ってるぞ?」

 

「いえ、新しいアイドルが入ってきたって聞いて、見に来たんですよ。ね?加蓮」

 

「うん。結構、事務所内で噂になってたから、気になって様子を見に来たんだよね」

 

「……」

 

「……って、おい!何であたしには、何も振らないんだよ!!」

 

「いや、だって……奈緒は新しい子じゃなくて、プロデューサーを……」

 

「っ!?ア〜ア〜!余計なことを、言うな!あたしも、新しいアイドルを見に来たんだよ!//」

 

「そうか。じゃあ、紹介するよ。今日から新しく入った、黒埼ちとせ。そして、白雪千夜だ。仲良くしてくれ」

 

「よろしくね〜♪」

 

「よろしくお願いします」

 

「それで、左から、渋谷凛、北条加蓮、神谷奈緒。うちの事務所に所属してる、アイドルたちだ」

 

「うん、よろしくね」

 

「あたしたちも、所属したのは最近だけど、何かわからないことがあったら聞いてね」

 

「ありがとう♪たくさん、色々なことを教えて欲しいな♪」

 

「あぁ。あたしたちでよければ、いつでも遠慮なく相談をしてくれよな」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「ん?どうしたんだ……?」

 

「……いえ。私のことは、おかまいなく。お嬢様のお力になっていただければ、幸いです」

 

「えっ……お、お嬢様?」

 

「うん♪千夜ちゃんは、私の僕ちゃんなんだよ♪言うなら、メイドさんってところかな?」

 

「お嬢様……僕……えっ、えぇ〜!?ほ、本当なのか?……白雪さん……?」

 

「千夜で結構ですよ。はい、神谷さん。私は正真正銘、お嬢様の僕です」

 

「あたしも奈緒でいいよ。って……すげえな……僕なんて言葉、アニメでしか聞いたことないぞ……」

 

「えっ……マジで、そういう関係なの……?てっきり、先輩後輩の間柄ってだけだと……」

 

「嘘だと思ってたのですか?全く、お前は失礼なヤツですね……」

 

「あはっ♪まだ、出会って間もないし、無理もないよ♪……ところで……凛ちゃん……で、いいのかな?」

 

「うん。凛で大丈夫だよ」

 

「何だか、凛ちゃんって……とっても美味しそうだね♪」

 

「は、はぁっ……!?急に、何を言ってるの……!?//」

 

「でも、ざ〜んねん♪今すぐ、食べちゃいたいんだけど……恋する乙女を、いただくわけにはいかないねっ♪」

 

「なっ……!か、勝手に決めないでよ!別に、恋なんか……//」

 

「目を見れば大抵わかっちゃうんだよね〜♪だって「目は、口ほどに物を言う」って言うでしょ?それに……」

 

「女の子の直感って、意外と侮れない。同じ女の子なら凛ちゃんも、共感をしてくれるんじゃないかな?」

 

「う、うぅ〜……//」

 

「何だ、凛?好きな人がいるのか?」

 

「……む〜……知らないっ……!//」

 

「うふふ……♪凛ってば、かわいい♪」

 

「……黒埼さん……加蓮は、どうなのかな……?」

 

「……っ!?」

 

「え〜っと……加蓮ちゃんは……恋をしてるね♪」

 

「早っ!て、ていうか、あたしは別に……//」

 

「んもう。みんな、奈緒ちゃんみたいに、恋する乙女なのかぁ〜。困っちゃうなぁ〜」

 

「はっ、はぁっ!?あ、あたしは、別に……何も関係ないだろ!//」

 

「奈緒ちゃんは、目を見るまでもなく……ねっ♪」

 

「何だ……三人とも、好きな人がいるのか……?」

 

------------------------------------------------

 

「「「……//」」」」

 

「……苦労してるんだね♪色々とっ……♪」

 

「みんな、お年頃の女の子だし、わからなくもないけど……まあ、程々にしてくれよ?」

 

「ふ〜ん……でも、あなたも彼女たちのことを、あまり言えないんじゃないかな?」

 

「えっ、俺が……?」

 

「……だって……あの、初めて目があった時に……必死に、何日も何日も、私を探し求め続けてくれて……」

 

「やっと、再び出会った瞬間に……あなたは、ケダモノのように……私を、求めてきたじゃない……//」

 

「そして、そのまま……やぁん♪それ以上は、言えな〜いっ♪//」

 

「おい!誤解されるような、言い方をするなって!//」

 

「……お前……お嬢様に、何をした……!」

 

「あぁ、もう!これ以上、ややこしくするな!そうだよ!声を掛けたのは、紛れもない事実だ!」

 

「でも、それは黒埼に、アイドルや女の子としての魅力を感じたからだよ!遊び半分で、スカウトをしたわけじゃない!」

 

「……あはっ♪その言葉、信じちゃうからね……?」

 

「あぁ。思いっきり、信じてくれ。黒埼を絶対に、輝くアイドルにしてやるよ」

 

「うふふ……♪//」

 

「ねね♪レッスンの邪魔をしちゃ悪いから、あっちであたしたちと少し、お話をしようか♪」

 

「レッスン……?……あっ……す、すみません、トレーナーさん……すっかり、邪魔をしてしまって……」

 

「……そうですね。あと……発言内容と場所をもう少し、考えていただけるとありがたいのですが……//」

 

「えっ……?」

 

「ほ〜ら!邪魔になってるから!さあ、撤退撤退!」

 

「あっ、おい!加蓮!そんなに、引っ張るなって!わかった!わかったから!」

 

「おい、まだ話は終わってな……」

 

「白雪。お前はこれから、レッスンだろ?どこに行くつもりだ?」

 

「そうよ〜、千夜ちゃん。たくさんレッスンをして、初ライブを成功させなくちゃ」

 

「ですが……」

 

「それに、期待をしてくれてるプロデューサーや、見に来てくれる観客のためにも、頑張らなきゃねっ♪」

 

「……私はお嬢様のために、尽力させていただくだけです」

 

「はいはい♪それじゃあ、トレーナーさんっ♪今日は、よろしくお願いしま〜す♪」

 

「うむ、いい心がけだ!二人とも、しっかりとついてこいよ!」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ♪さて、何から話そうか♪」

 

「な、何だよ、お前ら……何だか、怖いぞ……?」

 

「あんなに熱弁しちゃってぇ♪随分と黒埼さんたちに、お熱なんだね♪あたし、感心しちゃったよ♪」

 

「熱弁って……なんか俺、変なことを言ってたか?」

 

「やっぱり、自覚がないんだ……まぁ、いいけど。それより、また、スカウトをしに行ったの?」

 

「ん?あぁ。スカウトも、俺の仕事の一つだからな。凛たち三人も、俺がスカウトをしてきただろ?」

 

「それは……そうだけどさ……」

 

「何だ?なんか、含みのある言い方だな」

 

「だって……その……黒埼さんが、言ってたじゃん……ケダモノのように、求めてきたって……//」

 

「あ、あれは、さっきも言っただろ!俺はただ、スカウトをしに行っただけなんだって!//」

 

「でも、黒埼さんを何日も探し周って、スカウトをしようとしたのは、事実なんだよね?」

 

「まあ……逸材だと思って、黒埼をくまなく探し回ったのは本当だよ。一際、存在感やオーラがあったしな」

 

「そんなに……魅力を感じたんだ……」

 

「……なぁ、プロデューサー。さっき、黒埼さんと千夜さんが、レッスンをしてるって言ってたよな?」

 

「うん、してもらってるな。あの二人には近々、デビューライブがあるんだ。期待の新人としてな」

 

「そうか……それじゃあ、これからは……あたしたちといる時間も、減っちゃうってことだよな……」

 

「……っ!」

 

「う〜ん……これから少し、忙しくなるかもな。でも、安心してくれ。少しの間だけだから、なっ?」

 

「ほら、トライアドプリムスだって、あの時に初ライブを無事、成功させることが出来て、嬉しかっただろ?」

 

「それは……確かに、そうだけど……」

 

「だから、あの時の達成感や喜びを、二人にも味わって欲しい。ただ、それだけなんだよ」

 

「……」

 

「……わかったよ。我慢する」

 

「あぁ、ありがとう。奈緒や加蓮はどうだ?」

 

「あたしも、その……ま、待ってやるよ……別に……寂しくなんか、ないけどな……」

 

「……あたしも待つよ……だけどね、プロデューサー。この借りは……大きいからね……?」

 

「ははっ、そうだな。終わったら今度、美味しい物を食べに行こうよ。期待しておいてくれ」

 

「それもいいけど……終わったら……このまま、あたしたちの専属に……」

 

バタン!

 

「失礼する!プロデューサー殿はいるか!?」

 

「ん?トレーナーさん……?」

 

「あっ、プロデューサー殿!今すぐ、来ていただけませんか!?」

 

「どうしたんです?そんなに慌てて……」

 

「く、黒埼がその……倒れてしまいまして……」

 

「えっ、黒埼が……!?今すぐ、行きます!」

 

「あっ……プロデューサー……」

 

------------------------------------------------

 

「黒埼っ!!」

 

「あは、どうしたの?あなた、私より顔色が悪いよ?」

 

「どうしたもこうしたもあるか!大丈夫なのか!?」

 

「ふふっ……ちょっと、血が足りなくてね〜。まあ、よくあることだから、慣れっこなんだけど♪」

 

「よくあるって……」

 

「私って、普段から貧血気味なんだ。だから、ちょっとレッスンをしてたら……ねっ?」

 

「おいおい……本当に、大丈夫なのか?う〜ん、これは一旦、レッスンを中止にした方がよさそうだな……」

 

「大丈夫だよ。先生にも、処置はしてもらったしさ」

 

「……大丈夫ではありません」

 

「白雪……」

 

「また、お嬢様の身に何かあっては困ります。ですから、休養なさってください」

 

「そうだな。それじゃあ、黒埼は残って、白雪だけレッスンに戻ってもらおうか」

 

「断ります。私も、ここに残ります」

 

「えっ……」

 

「私は、お嬢様に仕えるもの。お嬢様の身を案じるのは当然です。ですので、私は残ります」

 

「だけどなあ……レッスンを受けてもらわないと、ライブが……」

 

「……これは、私とお嬢様だけのことです。お前には、関係ありませ……」

 

「千夜ちゃん、レッスンに行って。それに私、大人の人に、お前って呼んでなんて教えたっけ?」

 

「お嬢様……」

 

「千夜ちゃんのことは、よくわかってるつもりだよ。かわいい、私の僕ちゃんだもの」

 

「でも、従者である以上は、そんなに、周りに失礼なことばかりをしてると、主の私にまで迷惑がかかるの」

 

「だから、もう少し気をつけてくれると、私、すごい嬉しいな?」

 

「……わかりました。お嬢様の命令なら……」

 

「……おま……いえ、あなたに対して、今まで失礼な言動をとってしまい、申し訳ありませんでした」

 

「い、いや……別にいいよ。それじゃあ……レッスンに、戻ってくれるか……?」

 

「はい、レッスンに戻らさせていただきます。では……後ほど」

 

パタン

 

「あはっ、ごめんね。色々と迷惑をかけちゃって」

 

「気にしないでくれ。それより、びっくりしたよ……」

 

「何が?」

 

「いや……白雪と、いつも仲良くしてたから、あんなに言うとは思わなくてさ……」

 

「……これも、千夜ちゃんのためだから……それに私、長くないと思うの」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……?どういうことだ……?」

 

「私ってさ、生まれつき体が弱くてね〜。さっきもレッスン中に、貧血で倒れちゃったでしょ?」

 

「そういうことだから……将来的には……ね?」

 

「……」

 

「あ、でも、今すぐにって言うわけじゃないから、安心してっ♪さっきのは、たまたまだったの♪」

 

「ただ……千夜ちゃんは違う。あの子には未来がある、ちょっと口下手だけどね。本当はとても優しい子なの」

 

「ねっ?だから、あなたの魔法で千夜ちゃんを、私の僕じゃなくしてあげて欲しいな」

 

「……それは出来ない」

 

「えっ……?」

 

「俺は言ったはずだ、輝くアイドルにするって。だから「黒埼」と白雪で一緒に舞踏会に行かせる。絶対にな」

 

「……戻れなくなるかもしれないよ……?」

 

「そうか。でも、約束をしちゃったからな「黒埼には嘘をつかない」ってさ」

 

「……あはっ♪あなたって、本当に優しいんだね♪あの子たちの気持ちが、少し、わかっちゃったかも……♪」

 

「……でも……本当に、いいの?私、一旦信じちゃうと……止まらないよ……?」

 

「あぁ、望むところだ」

 

「そっか……♪それじゃあ、あなたは今から、私の二人目の僕ちゃんだね♪」

 

「えっ……し、僕!?」

 

「あっ、ちゃんじゃなくて「くん」の方がいい?あなたって結構、童顔だしっ♪」

 

「何だか、調子が狂うな……」

 

「雰囲気作りって、大事じゃない?ほら、僕くんっ♪私と交わした最初の約束を、言ってみなさい♪」

 

「……俺……いえ、私は誓いました「お嬢様を退屈させない」と……これでいいか……?」

 

「は〜い♪よく出来ました〜♪」

 

「う〜む……ま、まあ、改めてよろしくな。黒埼」

 

「……」

 

「……黒埼?」

 

「ちとせ」

 

「ん?」

 

「私のことは、ちとせって呼んで欲しいなっ♪せっかく、私の僕くんになったことだしね♪あはっ♪」

 

「僕かどうかは別として……確かに、仲が良好なのに、越したことはないけどさ……」

 

「でしょでしょ?ほらっ、One more time♪」

 

------------------------------------------------

 

「えっと……よ、よろしくな……ちとせ……//」

 

「……ふ〜ん♪」ジー

 

「な、何だよっ……//」

 

「そんなに照れちゃって……あなたって、食べちゃいたいぐらい、かわいいっ♪」

 

「はぁっ!?ば、バカ……!大人をからかうなっ!//」

 

「うふふ……♪まあ、あなたで遊ぶのはこれぐらいにして……誓いの儀式をしようか♪」

 

「儀式……?」

 

「うん。それじゃあ……はいっ♪私の手の甲に、キスをして?」

 

「えっ、き、キスっ……!?」

 

「ほら、僕くんっ♪これは、主である私の命令だぞ♪」

 

「……何も、そこまで……凝らなくていいんじゃないか……?」

 

「えっ……もしかして……「お口」の方がよかった……?やぁん♪僕くんのえっち♪//」

 

「ち、ちげえよ!ああ、もう!すればいいんだろ!……それじゃあ、失礼するぞ……」

 

チュッ♪

 

「……はぁい、いい子いい子♪これで、あなたは正式に、私の僕くんだね♪」

 

「これからは、私を昇天させる程、楽しませてねっ♪あはっ♪」

 

「おい!縁起でもないこと言うな!」

 

「んもう、ジョークジョークっ♪ねっ?つまり、ジョークを言えるぐらい、大丈夫ってことだよっ♪」

 

「ったく……とりあえず、体調の方は大丈夫なんだな?」

 

「うんうん♪だから、千夜ちゃんのレッスンの様子を、見に行ってあげて?」

 

「わかったよ。でも、何かあったらいつでも俺を頼れ。いいな?」

 

「は〜い♪それじゃあ、またあとでね〜……あっ、そうだ。ねぇ、僕くんっ♪」

 

「ん?何だ?」

 

「……あはっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「あっ、プロデューサーだ!お〜いっ!」

 

「うん……?おっ、トライアドプリムスじゃないか。どうした?」

 

「どうしたじゃないよ!黒埼さんは、大丈夫なのか!?」

 

「あ、あぁ……ちと……黒埼は、ちょっと貧血で倒れただけだ。今は、安静にしてもらってるよ」

 

「そうなんだ……よかった……」

 

「心配をかけて悪かったな」

 

「気にしないで。それより、プロデューサーこそ大丈夫なの?なんか、惚けてるというか……顔が赤いよ?」

 

「っ……!そ、そうか……!?//」

 

「……なんか……あたしたちに、隠してない……?」

 

「な、何も隠してねえよ!それより……何で三人が、ここにいるんだ?」

 

「私たちも、黒埼さんのことが心配だったんだよ。でも、この調子だと安心そうだね」

 

「あぁ、黒埼は大丈夫だよ。色々と、心配をかけちゃったな」

 

「ううん、気にしないで。ところでさ、あたしたちとこれから一緒に、ご飯を食べに行かない?」

 

「ん……?ご飯?」

 

「うん。これから凛と奈緒で、ファーストフードを食べに行くの。プロデューサーも行こうよ♪ねっ?奈緒♪」

 

「なな!何で、あたしに振るんだよ!べ、別に、あたしはどっちでも……いいけどさっ……//」チラッ

 

「ははっ、ありがとうな。でも、これから、白雪のレッスンの様子を、見にかなきゃ行けないんだ」

 

「えっ……白雪さんの?」

 

「だから、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとうな」

 

「……そうだよね。二人の大事な……初ライブのためだもんね……」

 

「それじゃあ、俺はそろそろ行くよ。また今度、会おうぜ」

 

「うん……また今度ね……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「捉えたら離さない……こちらの世界へと……」

 

「されるがまま、Welcome to my heaven……」

 

「……よし!二人とも、よくやった!!今日のレッスンは、ここで終わりだ!」

 

「お疲れ様です。トレーナーさん」

 

「あっ、プロデューサー殿。お疲れ様です」

 

「調子はどうですか?黒埼と白雪は」

 

「だいぶよくなりましたよ。この調子でいけば、ライブは間違いなく大成功です!」

 

「それはよかった。これも、トレーナーさんのレッスンのおかげですね」

 

「いえいえ。彼女たちの、努力の賜物ですよ」

 

「……あの……トレーナーさん……あれから、黒埼は大丈夫でしたか……?」

 

「えぇ、大丈夫ですよ。振り付けも少し変更をして、黒埼には基礎レッスンをメインに、練習させてます」

 

「……いきなりハードなのは、その……辛いと思うので……」

 

「……すみません。色々としてもらって……」

 

「とんでもない。彼女たちの喜びは、私の喜びでもありますから。あの二人の喜んでる顔が、見たいだけです」

 

「トレーナーさん……」

 

「さぁ、プロデューサー殿!今は、頑張った黒埼と白雪を、労ってやってください!それでは、失礼します」

 

「はい、ありがとうございました」

 

パタン……

 

「お疲れ様。黒埼、白雪」

 

「お疲れ様です」

 

「……」

 

「ん?黒埼、どうした?」

 

「……」チラッ

 

「……あぁ……わかったよ……ちとせ」

 

「!!」

 

------------------------------------------------

 

「はぁ〜い♪おつかれさま♪僕くんっ♪」

 

「……お嬢様……どういうことですか?」

 

「うん?何が?」

 

「あいつ……いえ、あの人が、お嬢様のことを下の名前で呼んだので」

 

「あれ?千夜ちゃんには、言ってなかったっけ?この人は、私の僕くんになったんだよ♪」

 

「……それは、本当なのですか?」

 

「えっと……まぁ、そうだな。ちとせの僕……で、いいのかな?」

 

「お嬢様……?私、何か不手際が、ありましたでしょうか……?」

 

「ううん、千夜ちゃんはと〜っても、いい子だよ♪でも、僕が増えたら楽しそうじゃない?ただ、それだけ♪」

 

「は、はぁ……」

 

「それじゃあ、さっそく……あ〜んっ、疲れたぁ〜♪少し、私の抱き枕になりなさぁ〜い♪」

 

プニッ♪

 

「おい、ちとせ!これは、流石にっ……//」

 

「ん〜、どうしたの?」

 

「どうしたって、その……や、やわらかいものが……だな……//」

 

「えっ……や〜んっ♪僕くんてばぁ、えっちなんだから♪」

 

「おい。一体……お嬢様で、何を考えているのですか?」

 

「何も考えてねえよ!いいから一旦、離れてくれっ!」

 

「あんっ、しょうがないなあ〜♪」

 

「……コホン……そ、それよりさ。二人とも、これから一緒に食事でもどうだ?」

 

「うんっ♪私はいいよ♪このあとは、特に何もないし♪」

 

「白雪は?」

 

「……お嬢様が行くのなら、お供します」

 

「よし、決まりだな。それじゃあ、行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん、美味しい♪」

 

「あなたにしては、お店選びのセンスがいいですね」

 

「そうだろ。ここのお店、結構おしゃれで気に入ってるんだ」

 

「レッスンをしたあとのスイーツって、こんなに美味しいんだねっ♪私、なんだかクセになっちゃいそう♪」

 

「ははっ、それは何よりだ。で?どうだ?レッスンは順調か?」

 

「うんっ♪何とか、最後の踊りまで覚えたし、これでライブは完璧だよ♪」

 

「トレーナーさんに指示された範囲は、こなせるようになりました」

 

「おっ、順調じゃないか。この調子で、ライブを成功させようぜ」

 

「そうだね♪棺桶から飛び出しちゃうぐらい、張り切らないとねっ♪」

 

「か、棺桶って……お前な〜……」

 

「それぐらい、楽しみってことだよ♪それじゃあ、いつも頑張ってくれてる、僕くんに……はいっ♪あ〜ん♪」

 

「えっ!?い、いや……俺はいいよ……」

 

「食べて……くれないの……?」ウルッ

 

「だって……なぁ?色々と、恥ずかしいし……//」

 

「ふ〜ん……そんなイジワルをしちゃうんだ〜……もう、ライブをすっぽかしちゃおうかな〜」

 

「……っ!お嬢様、それは……」

 

「おい!何を言ってるんだ!それだけは、勘弁してくれ!」

 

「じゃあ〜、食・べ・て♪ほらっ♪あ〜んっ♪」

 

「……わかったよ……あ、あ〜ん……//」

 

「どう?美味しい……?」

 

「……美味しいよ//」

 

「そう、よかった♪」

 

------------------------------------------------

 

「あのなあ……からかうためにこういうことをするのは、今後は控えてくれよ〜?」

 

「ん〜?私はからかうつもりで、こんなことをした覚えはないんだけどなあ〜♪」

 

「……それって、どういう意味なんだ〜?」

 

「ふふ〜ん♪さあ、どういうことでしょう♪」

 

「……おい。私のも、食べてみますか?」

 

「えっ、し、白雪?どうしたんだ、急に……」

 

「私の、スイーツを食べたいかと、聞いてるんです」

 

「あはっ♪せっかくだし、もらっちゃいなよ♪親睦を深めるんでしょ?」

 

「それは、そうだけど……じゃあ。もらっていいんだな?」

 

「はい、それでは、召し上がってください」

 

「い、いくぞ……あ〜ん……」

 

「……」

 

「……?」

 

「……パクッ……残念ながら、あなたにあげるつもりはありません。ばーか」

 

「あははっ♪千夜ちゃんってば、おもしろ〜い♪」

 

「私は、そのような行為をするつもりはありません。あくまで私は、お嬢様の従者ですので」

 

「なっ……そ、そうだよな……あはは……」

 

「あなたも、お嬢様の僕になった以上は少しでも、お嬢様の役に立てるように、精進してください」

 

「……はい、努力します……」

 

「……ん?あれって……」

 

「あはっ♪頑張ってね♪それじゃあ、私も、僕くんのスイーツが、欲しいな〜♪」

 

「あぁ、どうぞ」

 

「ありがとう♪……う〜ん♪これも、美味し〜いっ♪」

 

「……プロデューサー?」

 

------------------------------------------------

 

「えっと……あとは、これを送ってっと……よし……ふぅ、終わった」

 

コンコン

 

「は〜い、どうぞ……おっ、トライアドプリムスじゃないか。三人でどうした?」

 

「プロデューサー。これから、暇だよね?」

 

「えっ……いや……」

 

「ちひろさんにも、確認済みだよ。あとは、特に仕事がないって」

 

「その……だから……」

 

「これから、訪問するところもないよね?あたし、プロデューサーのスケジュール帳を、チェックしたんだ」

 

「ちょっ、待て……」

 

「他のアイドルたちとも、予定は無いよな……?一応、あたしなりに確認をしてみたんだけどさ……」

 

「……えっと……これから黒埼たちと、少し用が……だから、また今度……」

 

「……いやっ!」

 

「えっ……り、凛?」

 

「また今度って……その今度はいつ来るの!?黒埼さんたちばっかり、ずるいよ!」

 

「……なあ、凛。待つって、約束をしただろ?それに、これは仕事のためでもあるんだよ」

 

「……ふ〜ん……スイーツを食べさせあいっこすることが、仕事なんだ……」

 

「っ……!何で、それを……!」

 

「……あたしたち、見ちゃったんだよ?黒埼さんと白雪さんの二人と、楽しそうにしてるところを……」

 

「あ、あれはだな……黒埼たちと、親睦を深めようとして……」

 

「……あたしたちとは、してくれないの?」

 

「えっ……?」

 

「確かに、二人のライブが終わるまで待つとは言ったよ?あたしたちだって、成功出来た時は嬉しかったし」

 

「でも……それ以降は、プロデューサーと一緒にいれる時間が少なくて……寂しいんだよ?あたし……」ギュッ

 

「加蓮……」

 

「それで、あんな光景を見ちゃったら、もう……私も、気持ちが抑えれないよ……」ギュッ

 

「ま、まあ……あたしはどっちでもいいって、言ったんだけどさ……」

 

「……でも……ほんの少しだけ、寂しかったんだからな……?」ギュッ

 

「凛、奈緒……ごめんな、三人とも。でも、もう約束をしちゃったんだ。だから、わかってくれよ……」

 

「ヤダ、離さない」

 

「ワガママはいけないと思うぞ?」

 

「いやっ、絶対に離れないんだから」

 

「おいおい……困ったなあ……」

 

カチャッ

 

------------------------------------------------

 

「はぁい♪待ったぁ?それじゃあ、さっそく……えっ?」

 

「ちと……く、黒埼……」

 

「……ふ〜ん。こんなに、食べちゃいたくなるような女の子たちに囲まれて……いいなぁ〜」

 

「待て!少し、話をしてただけなんだよ!ほら、話は終わったんだから離れてくれよっ!なっ?」

 

「……イヤ」ギュッ

 

「……くっ!」

 

「なるほどね〜♪僕くんってこんなに、女の子たちから愛されてるんだ〜♪羨ましいなぁ〜♪」

 

「……黒埼さん……プロデューサーは、渡しませんから……」

 

「お、おい!凛!」

 

「……や〜ん♪そんなに、私に妬いちゃったのぉ?もう本当に、食べちゃいたいぐらい、かわいいんだからぁ♪」

 

「……」

 

「残念だけど……この調子だと、私と出かけるのは無理そうだね」

 

「ごめん……悪いな。せっかく、約束をしたのに……」

 

「いいのいいの♪あなたに、魅力された子たちをたくさん構ってあげて?」

 

「……でも……明日は、私ねっ……♪」ボソッ

 

「えっ……?」

 

「それじゃあ、また、次の機会にね〜♪see you♪」

 

パタン

 

「……なあ、凛。何で、あんなことを言ったんだ……?」

 

「……だって……このままだと、プロデューサーが黒埼さんばかりに、目が行っちゃうと思って……」

 

「あのなぁ……そんなことないって。今まで俺が、特定の誰かだけにえこひいきをしたことがあるか?」

 

「それは、ないけど……」

 

「……でも……あたしはむしろ、えこひいきをして欲しいかな〜」

 

「えっ、加蓮……?どういうことだ?」

 

「プロデューサーはみんなに甘いからね〜。何かあると、些細なことでもすぐに安請け合いしちゃうし」

 

「そ、そんなことはないと思うぞ……?」

 

「イ〜ヤ、あるの。だから、そろそろ……特定の人だけを、見てくれてもいいと思うんだけど……ねぇ〜?」

 

「ダメだ。お城にはみんなで行くんだからな。これからも、みんなで頑張っていこうぜ」

 

「はぁ……やっぱりだめか……残念だね、奈緒……」

 

「えっ!?だ、だからっ!何でいちいち、あたしに振るんだよ!あたしは別に……」

 

「……どっちでもいいって、言った割には……奈緒もしっかり、プロデューサーに抱きついてたよね」

 

「場の空気でちょっと抱きついちゃっただけだって!……あぁもう!そうだよ!寂しかったのは事実だよ!」

 

「だ、だからせめて、今日だけはあたしたちに、しっかりと付き合ってもらうからなっ!//」

 

「……そうだね。あの時、言ったもんね「借りは大きい」って」

 

「ふふっ♪あたしたちを散々、寂しがらせたんだから……覚悟してよね♪」

 

「……まあ……お手柔らかに頼むぞ?」

 

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「わぁ〜……綺麗〜♪夜のバラ園って、何だか幻想的で、素敵だね♪」

 

「そうか、気に入ってもらえてよかったよ」

 

「流石は、私の僕くんだねっ♪明日って急に変更したのに、本当に連れてきてもらえるなんて♪偉いぞ♪」

 

「まぁ……状況がどうであれ、約束を守れなかったのは俺だしな。これぐらいのことはさせてくれ」

 

「うん、いい子いい子♪」

 

「でも……あまり、感心しないぞ?」

 

「えっ、どういうこと……?」

 

「ちとせは女の子なんだからさ。夜が好きと言えど、あまり、夜遅くまで外を出歩くのはどうかと思うぞ?」

 

「あはっ♪僕くんなのに、親みたいなことを言うんだね♪」

 

「でもね、実を言うと私って、幼い頃はいつも、夜が嫌いだったんだ」

 

「えっ……?」

 

「一度、眠りについたらもう目が覚めない。そんな気がしてね。だから、夜は散歩に出かけるの」

 

「月は、進む先を照らしてくれるけど、全てを明らかにしてしまう程、明るすぎない」

 

「夜は、私を自由にしてくれる。そう、今の私みたいにね♪」

 

「それに「目が覚めなくなる」この意味は、僕くんならわかってくれるよね?」

 

「それは……そうだな……悪い。軽率だったな、俺……」

 

「ううん、いいの♪私が一番、わかってることだからさ♪」

 

「……」

 

「あはっ♪なんか、しんみりさせちゃったね♪でも、だから思うの「今が楽しければいいよね」ってね」

 

「人によっては、そういう刹那主義をよくないって思うかもしれないけど、私は思わない」

 

「だって、楽しくないもん。それに私ね、あなたと出会うまで「将来」と言うものを諦めていたんだ」

 

「だから、あの時に言ったでしょ?千夜ちゃんを、私の僕じゃなくして欲しいって」

 

「……あぁ。聞いたな」

 

「それで、あなたに千夜ちゃんを託して、私自身はこのまま、夜霧のように静かに消えちゃおうと思ってたの」

 

「だけど……運命ってわからないものだよね。あなたから、舞踏会に連れていってくれるって聞いた時にさ」

 

「……私の心に芽生えちゃったんだ「将来」がね。だから尚更、今を楽しまなきゃって思いが、強くなったの」

 

「だって、思い描く将来だって、今を大事にしないと暗い物になっていっちゃうでしょ?」

 

「おぉ……何だか、色々と深いな……でも、まぁ、希望を持ってもらえて、何よりだよ」

 

「うふふ♪それに……私ね「将来」と同時に、僕くんに芽生えちゃったんだ……♪……イケナイ感情がねっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「なっ……!ち、ちとせ!?急に、何をっ……!?//」

 

「言ってなかったっけ……?私って、すごい嫉妬深くて、独占欲が強いの」

 

「だから、ここに来た理由もね?夜のバラ園で、僕くんと二人っきりになりたかったからなんだよ?」

 

「ど、独占って……」

 

「んもう。私の前で、トライアドちゃんたちとイチャついちゃって……どれだけ、我慢をしたと思ってるの?」

 

「別に、イチャついてなんか……むしろ、あいつらからだな……」

 

「ここまで、この主である私を妬かせるだなんて……本当、罪作りな「私だけ」の僕くんなんだから……♪//」

 

「……ぐうっ!//」

 

「それじゃあ、しよっか♪「二回目」の誓いの儀式を♪」

 

------------------------------------------------

 

「儀式って……えっ!?また……「アレ」をやるのかっ……!?」

 

「あはっ♪これは、主の命令だぞっ♪僕くんは乙女をたぶらかす、イケナイ子だしね〜♪だから……」

 

「……今から……私を、刻印してア・ゲ・ル♪きゃあんっ♪恥ずかしい〜♪」

 

「ちとせが運ばれた時に、もうしたじゃないか!あの時もすごい、恥ずかしかったんだからな……//」

 

「エ〜、だってあの時は、あくまで手の甲「だけ」だったでしょ〜?今度はぁ……いただきっ♪」

 

カプッ

 

「うっ……!?」

 

「んふっ……♪//」

 

「くっ……あっ……」

 

「んんっ……んっ……」

 

チュパッ♪

 

「はぁはぁ……ち、ちとせ……急に、何だよっ……!」

 

「あはっ♪ご馳走様でしたっ♪う〜ん……やっぱり、僕くんのって美味しいね♪」

 

「えっ……?」

 

「……少し……もらっちゃった♪//」ペロッ

 

「もらった……?って……うわっ!?首からち、血が出てる!」

 

「安心してよ♪出てると言っても、虫刺され程度ですぐに傷が塞がるからっ♪」

 

「……一回目の時とは、何か……違くないか?」

 

「私ね、今、トライアドちゃんたちに、すごく妬いちゃってるの♪だから……ちょっと、思い切っちゃった♪」

 

「しかし……何だよ!首に噛み付くって!吸血鬼か!お前は!」

 

「えっ、だって……ううん。まだいいか……あはっ♪ごめんねっ♪これは私なりの、愛情表現なの♪」

 

「全く……//」

 

「……でも……これで……私の中で、僕くんがずっと……そして僕くんも、私の印が永遠に……//」

 

「……どうしたんだ?」

 

「何でもないよ♪それより、私をスカウトした時の条件を、もう一回、言ってくれるかな?」

 

「えっ、条件……?確か……」

 

「ひとつ、黒埼を退屈させないこと」

 

「ふたつ、黒埼に嘘をつかないこと」

 

「……だったか?」

 

「だ〜いせいか〜いっ♪でも、少し足りないな〜♪」

 

「えっ?」

 

「……うふっ♪」

 

チュッ♪

 

「!?」

 

「……みっつ……私を愛する……こーとっ♪」

 

「なっ、ななっ……!//」

 

「あはっ♪ようこそ、私たちの世界に…♪言ったでしょ?私って、すごい独占欲が強いの♪」

 

「だから、一度捉えたらずっと、離さないんだから……♪……もう、後戻りは……出来ないよ♪」



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従者シンデレラ 白雪千夜

「……」

 

「……起きろ」

 

「……ん……」

 

「……目覚めないと……噛みついちゃうよ?」

 

「……んん?……はっ!ち、ちひろさん、すみません!今のは決して、寝てたわけではなくて……!」

 

「残念ながら白雪です。ばーか」

 

「って……し、白雪……?」

 

「残念ですね。ちひろさんではなくて」

 

「あ、あぁ、よかった……じゃなくて!何でここに、白雪がいるんだ?」

 

「レッスンを、成果を確認してほしい」

 

「レッスン……?」

 

「独りでもやれと、お前が言ったのだから、お前が確認する義務がある」

 

「別にいいけど……珍しいな。白雪から、声をかけて来るなんて」

 

「当たり前です。お嬢様の記念すべき、初舞台なので」

 

「その、初舞台を統率していくお前が、過程を確認するのは当然のことだと思うのですが」

 

「そうだな。二人には無事、ライブを成功させて欲しいしな。よし、見せてもらおうじゃないか」

 

「決まりですね、それでは私について来てください」

 

「うん。ところでさ……ちとせから……言われたんじゃないのか?」

 

「……口を滑らせてしまいました。そうですね」

 

「独りでもやれと「あなた」が言ったのだから「あなた」に確認する義務がある、ついて来てください」

 

「あぁ、そうだなぁ」

 

「……今……少し、口角をあげませんでしたか?」

 

「い〜や、気のせいだと思うぞ?それじゃあ、行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「失礼します」

 

「おぉ。これはこれは、プロデューサー殿。お疲れ様です」

 

「あっ、トレーナーさん。お世話になってます」

 

「一体、どうされたんですか?」

 

「いやあ。ちょっと、白雪のレッスンの成果を、見に来たんですよ」

 

「そうなんですか!よかったな!白雪!」

 

「はい。練習の成果を見てもらうために私が呼び、足を運んでもらいました」

 

「ほぉ……白雪自ら、呼んだのか……なる程な……」

 

「……プロデューサー殿……白雪のレッスンの成果、しっかりと見てやってくださいね!」

 

「えぇ。しっかりと、白雪の晴れ姿を見させてもらいます」

 

「それでは、私は用があるので、これにて失礼します」

 

「えっ?トレーナーさんも一緒に、確認をしなくていいんですか?」

 

「はい、私はプロデューサー殿が来る前に、しっかりと確認しましたので」

 

「そうだったんですね。いつも付き添ってもらって、ありがとうございます」

 

「いえいえ。それでは白雪!しっかりと見せてやれよ!」

 

「はい、完璧にこなしてみせます」

 

「それじゃあ白雪、俺に、華麗なダンスを見せてくれ」

 

「えぇ、ご覧になってください」

 

------------------------------------------------

 

貴方ノ幸セ 私ノ幸セ

 

数多ノ力へ 魂ヲ抱カセテ……

 

……

 

「……以上です」

 

「おぉ!しっかりと歌って、踊れてるじゃないか!」

 

「それは、何よりです」

 

「あとは、ちとせも含めてレッスンをしていけば、ライブは大丈夫そうだな。安心したよ」

 

「そうですね。お嬢様に喜んでいただけるのなら、光栄です」

 

「……あのさ、白雪。ライブを楽しみにしてるのは、ちとせだけじゃなくて白雪も、だろ?」

 

「いえ。私は別に、興味ないです」

 

「えっ……」

 

「言ったはずです。私は、アイドルに興味がないと」

 

「あくまで、お嬢様の戯れに付き添ってるだけ。それ以上でもそれ以下でも、ありません」

 

「……」

 

「無気力な私に呆れましたか?安心してください。その内、いなくなりますので」

 

「……そうか、そうだな」

 

「理解が早くて嬉しいです。だから、私のことは……」

 

「それじゃあ、白雪にはもっと、アイドルの楽しさを教えてあげなきゃな」

 

「……どういうつもりだ?」

 

「なあに、単純な話だ。知らないなら、これから知ればいい。な?簡単だろ?」

 

「このライブは、Velvet Roseとしての第一歩だ。しかし、それと同時に、アイドルとしての第一歩でもある」

 

「だから、白雪もちとせも「一緒」に楽しんでもらう。いいな?」

 

「……ふっ」

 

「おっ。初めて、笑ってくれたな」

 

「いえ……自分自身の、あまりの滑稽ぶりに、笑ってしまっただけです」

 

「お嬢様に振り回され……あなたにも振り回され……滑稽すぎて、笑うしかありません」

 

「まったく、おせっかいだ、あなたと言うヤツは。面倒だ、面倒です、本当に……」

 

「あぁ、何度でも言え。俺はしつこいからな。じゃあ、一旦、事務所に戻ろうぜ」

 

「今後の予定とか、イベントの話とか、白雪と色々、話したいことがあるしな」

 

「はい、わかりました。話を聞かさせてもらいましょう」

 

------------------------------------------------

 

「……で、ここはこうで……そしてここは、事前のPRイベントだ。どうだ?何か、質問とかあるか?」

 

「いえ、全て、把握をしました」

 

「おっ、流石は白雪だな。それじゃあ、よろしく頼むぞ」

 

「はい。承ります」

 

カチャッ

 

「あっ……失礼します……プロデューサーさん、その……も、持って来たんですけど……」

 

「おぉ。悪いな、乃々。こっちに、持って来てもらえるか?」

 

「は、はい……どうぞ……」

 

「……何か……頼み事をしたのですか?」

 

「あぁ。ちょっと資料を、別室に置き忘れてしまってな。……よし、全部あるな。ありがとう」

 

「い、いえ……//」

 

「……」

 

「持って来てくれたお礼にと言っては何だが、乃々に、何かお礼をさせてくれ。何がいい?」

 

「えっ……そ、そんなっ……お礼だなんて……!」

 

「遠慮するなって。何かさせてくれよ」

 

「あぅ……え、えっと……それじゃあ……あ、頭をその……撫でて欲しいんですけど……//」

 

「えっ、そんなのでいいのか?」

 

「は、はい……お願いします……//」

 

「そうか?それじゃあ……いくぞ?いつも、頑張ってくれてありがとうな。乃々」

 

ナデナデ

 

「あっ……え、えへへ……//」

 

「……」

 

「あっ、そうだ。乃々に、紹介をしておきたい子がいるんだ」

 

「……はい?」

 

「白雪千夜。新しく、事務所に入ったアイドルなんだ。仲良くしてあげてくれ」

 

「初めまして、白雪千夜と言います。よろしくお願いします」

 

「あっ……えっと、そのっ……も、森久保乃々と言います……よ、よろしく……お願い……〜っ!」ダッ!

 

「あっ!乃々!……行ってしまった……」

 

「……私……何か、森久保さんの気に触ることを、してしまったのでしょうか?」

 

「全く……いや、気にしないでくれ。あいつは、極度の人見知りなんだよ。悪いやつではないんだがな……」

 

「そうなのですか?」

 

「あぁ。少しすれば慣れると思うから、乃々とも、仲良くしてやってくれ」

 

「はぁ……」

 

「まあ、話は以上だ。じゃあ、あとは自由にしてくれ。長々と引き留めて、悪かったな」

 

「いえ。では、お嬢様のために、全力を尽くさせてもらいます」

 

「よろしく頼むぞ。それじゃあ、ちゃちゃっと、残りの仕事を終わらせちゃいましょうかねぇ」

 

------------------------------------------------

 

「……」カタカタ

 

「……」

 

「……」カタカタ

 

「……」

 

「……あの……白雪さん?」

 

「はい。何でしょうか」

 

「もう、話は終わったから、好きにしていいんだぞ……?」

 

「いえ。おかまいなく」

 

「そ、そうか……なぁ、何か、その……趣味とかないの?ここで、ただ突っ立ってるのは、退屈じゃないか?」

 

「ありますよ。でも、私はお嬢様に仕えることが、一番の生きがいです」

 

「なる程な……ちなみに、ちとせの所には行かなくていいのか?」

 

「お嬢様は就寝中です。朝があまり得意な方ではないので」

 

「あぁ……確か、夜型だったよな。月光浴が趣味だとか言ってたし」

 

「えぇ。ですから、私のことはおかまいなく、目の前の仕事を続けてください」

 

「う〜ん……だけど、そのまま立っててもらうのもなあ……」

 

「……それでは、何か、依頼をください。私に、頼み事はないですか?」

 

「えっ?いや……特にはないけど……急に、どうしたんだ?」

 

「私は本来、お嬢様に仕える従者です。あなたに従う義務はありません」

 

「しかし、今のあなたはお嬢様の従者です。従者である以上、お嬢様に誠心誠意、尽くさなければなりません」

 

「……従者と言っても……そこまで本格的には、なったつもりはないんだがな……」

 

「……誠に不可解ではありますが、お嬢様はあなたに対して、何らかの期待をしています」

 

「他者に、さほど興味をお示しにならない、あのお嬢様が、です。その期待を、無下にする気なのですか?」

 

「えっ、俺って何か、ちとせに期待されちゃってるの?まあ、頼られるって言うのは悪い気はしないけど……」

 

「でも、それと頼み事と、何の関係があるんだ?」

 

「プロデューサーと言うのは、言わばアイドルたちを管理するのが、主な業務ですよね?」

 

「まぁ、そうだな」

 

「ですので、それら一連の業務を、円滑に遂行するための能力があるかどうかを確かめる。と、言うことです」

 

「えっと……ようは、ちとせのことを、俺に任せられるか確かめるってことでいいのか?」

 

「……そうとも言います」

 

「う〜ん……必要な書類は、乃々に持って来てもらったし……他にやって欲しい雑務もないし……」

 

「……あっ、それじゃあ、コーヒーを淹れて来てくれるか?あっちに給湯室があるからさ」

 

「かしこまりました。では、少々お待ちください」

 

------------------------------------------------

 

「……ふう。ちょっと、休憩するか……」

 

「……」

 

「……にしても、白雪のヤツ……遅いな……何か、あったのか?いや、白雪に限ってそんなことは……」

 

「……少し……様子を、見に行ってみますか」

 

「あらよっと……お〜い、白雪〜、大丈夫か〜?」

 

「……」

 

「って……何をしてるんだ?そんなに、背伸びをして」

 

「……あなたには、関係ありません」

 

「ん……?あっ、もしかして、棚の上にあるコーヒー豆を、取りたいのか?」

 

「……答える義務はありません」

 

「そうか。それじゃあ、俺は戻るぞ」

 

「えぇ。お行儀よく、待っていてください」

 

「……なんてな。俺が取ってやるよ」

 

「……言ったはずだ。あなたには関係ないと」

 

「そんなに冷たいことを言うなって。ほら、この豆が欲しかったんだろ?」

 

「余計な手出しは無用です。これは私の仕事なので」

 

「筋金入りだな……じゃあ、こうするか?「お嬢様」がお待ちだ。だから、早く持って行ってあげないとな」

 

「……そういうことでしたら、受け取ります」

 

「ほらよ。ったく……背が届かなかったのなら、遠慮なく俺を頼ってくれよ。白雪は、女の子なんだからさ」

 

「私はあくまで、お嬢様に仕える従者です。命じられた以上は、自分のことは自分で、しなければなりません」

 

「……俺……何か、余計なことをしちゃったか?」

 

「いえ、とてもあなたに、感謝をしていますよ。あくまで、従者としてですが」

 

「はいはい。お嬢様にお出しする前に、俺が味見をして差し上げないとな。じゃあ、あとは頼むぞ」

 

「えぇ。今すぐ、お持ちします」

 

------------------------------------------------

 

「お待たせしました。コーヒーです」

 

「おっ。白雪、ありがとうな」

 

「いえ。お口に合うか、どうかわかりませんが」

 

「それじゃあ、さっそく、いただきま……」

 

「……」グイッ

 

「!?」

 

コクッコクッ……

 

「……ふぅ……あなたのリクエストに、応える義務はありません。コーヒーなら、自分でどうぞ」

 

「なっ……し、白雪!?」

 

「……ふっ。冗談です」

 

「……?」

 

「お嬢様は、退屈がお嫌いな方です。だからこうして、時にはユーモアを取り込んだりしているのですよ」

 

「ですので、あなたもお嬢様に、笑っていただける様に日々、精進をしてくださいね」

 

「……あ、あぁ……心がけるよ?」

 

「さて。もう一杯、新しいコーヒーを入れてありますので、どうぞお召し上がりください」

 

「えっ?あ、ありがとう……それじゃあ、もらうよ……」

 

「……でも……珍しいよな。白雪が冗談を言うなんてさ。もしかして、白雪に認められちゃった?なんて」

 

「……自惚れるな。私はまだ、あなたを認めたつもりはありません」

 

「ははっ……だよな〜……」

 

「しかし……同じ、お嬢様に仕える従者であることは、確かです」

 

「今の行動は、従者同士の情報の共有。と、言ったところでしょうか。ですので、今後の参考にしてください」

 

「わかりましたよ。白雪お嬢様」

 

「お嬢様は、ちとせお嬢様だけです」

 

「おいおい、真面目に返すなって。お嬢様は、ユーモアが大好きなんだろ?」

 

「……ジョークにジョークで返しただけです」

 

「はいはい。面白い面白い」

 

「それに、もう一つ、言っておきたいことがあります。私のことは今後「千夜」と呼んでください」

 

「ん……?何だ、急にどうした?」

 

「お嬢様の命令です。ファーストネームで呼んだ方が、親しみを覚えやすいとのことです」

 

------------------------------------------------

 

「えっと……それじゃあ……千夜?」

 

「……鳥肌が立った」

 

「なっ……!お、お前から呼べって、言ったんだろ!」

 

「えぇ、そうですね。非常に「不愉快」ではありますが」

 

「あのな〜……そんなに嫌なら引き続き、白雪って呼ぶぞ?」

 

「いいえ。これは、お嬢様の命令です。千夜って、呼んでください」

 

「ったく……白雪さぁ……一つ、聞いていいか?」

 

「……」

 

「……千夜、一つ、聞いてもいいか?」

 

「はい。なんでしょう」

 

「ちとせのことを、いわゆる主として、そして友人としても、とても信頼してるのはわかるんだ」

 

「だけど、少しでもいいから、自分と言うものはないのか?」

 

「えぇ、ありません。私の人生のページは、お嬢様の「僕」の一文字で、完結しています」

 

「お嬢様の人生は私の人生であり、私の人生はお嬢様の人生ですので」

 

「……自分の足で……歩かなくてはいけない時が、来てもか……?」

 

「……っ……それは……」

 

「余計なお世話だっていうのはわかる。だけどな、もう少し……「自分」を持っても、いいんじゃないか?」

 

「……」

 

カチャッ

 

「おっはよ〜♪僕く〜んっ♪あれ?千夜ちゃんもいるんだ?」

 

「……お、お嬢様……」

 

「えっ……何、この空気……や〜んっ♪私ってば、イケナイ逢瀬の邪魔しちゃった〜♪」

 

「なっ……!変なことを言うな!ただ、今後の予定について、話しをしてただけだ!//」

 

「そうです。こんな男と、逢瀬だなんて……」

 

「冗談冗談♪私と千夜ちゃんは、アイドルだもんね♪」

 

「そんなことよりお嬢様。先程まで、おやすみになられてたのでは……?」

 

「う〜ん、なんか目が覚めちゃってね〜♪いつもより、早めに起きちゃった♪」

 

「はぁ……」

 

「にしても、どうしたんだ?今日は、レッスンの予定もないし、スケジュールも空いてるはずだが……」

 

「んとね、なんか暇だから、ここに来たの♪」

 

「何だそりゃ……」

 

「この事務所に来れば、何か面白いことがあると思って、来てみたんだけど……」

 

「やっぱり私って、カンが冴えてるね♪私の目の前で、二人が面白そうなことをしてるし♪あはっ♪」

 

「だ、だから別に、千夜とはそんなんじゃ……」

 

「ん……?」

 

「お嬢様。昨晩はかなり、月光浴を楽しまれたのですから、安静にされた方がよいのではないでしょうか?」

 

「ううん、大丈夫♪それより千夜ちゃん。僕君に話したいことがあるから少し、席を外してもらってもいい?」

 

「えっ、俺に……?」

 

「わかりました。それでは、席を外させてもらいます」

 

「うんっ、ありがとう♪それじゃあ、僕くんっ♪私とお話しをしようか♪」

 

------------------------------------------------

 

「で?俺に話したいことって、何なんだ?」

 

「うふふっ♪私たち……二人っきりになっちゃったね……♪//」

 

「あ、あぁ……って!なったんじゃなくて、ちとせが二人っきりにしたんだろ!」

 

「んもう、僕くんってば、つれないんだから〜……でも、実は……期待しちゃってるんじゃないかなぁ〜?」

 

「えっ……期待?」

 

「だってぇ、こんな密室で、お年頃の男女が二人っきりなんだよ?だから……ねっ♪//」

 

「ちょっ、何だよ……急に、近づいて来て……//」

 

「……あはっ♪僕くんの瞳って、すごい綺麗なんだね♪何だか……吸い込まれちゃいそう……」

 

「なっ……//」

 

「うふふ♪ねぇ、僕くんっ♪私は……どうかな?これでも、すごいスタイルに自信があるんだよ……?//」

 

「へ、へぇ……それはよかった……自信があるのは、いいことだしな……//」

 

「……僕くんになら、このまま……素の私を……って、やぁん♪乙女にこれ以上、言わせちゃダメ〜ッ♪//」

 

「……っ!//」

 

「ねぇ……もっと、私を感じて……?主と僕の禁断の逢瀬って、すごいロマンティックじゃない……?//」

 

「ばかっ……!ちとせは、主である以前に……アイドルなんだぞっ……!//」

 

「……今はただの、一人の女の子だよ♪だから……僕くんの温もりを、感じさせて欲しいなっ……♪//」

 

「ま、待てっ……!//」

 

「イ〜ヤ♪ほらぁ、私を思いっきり……堪能していいんだよ?……千夜ちゃんの時みたいにっ♪」

 

「ちょっ……だ、だから、千夜とは何もしてないって!!」

 

「はぁ〜い♪言質いただきました〜♪……うふふ♪本当、あなたって飽きないなあ〜♪」

 

「……?」

 

「僕くんって、からかうと面白い反応を見せてくれるから、飽きないってこーとっ♪う〜んっ♪満足満足♪」

 

「なっ……お、おい!大人をあまり、からかうもんじゃないぞ!//」

 

「悪かったって〜♪つい、僕くんの反応が面白くて、ヒートアップしちゃったんだ♪」

 

「……でも……いずれは、ゆっくりと……温もりを……ねっ♪//」

 

「えっ……?」

 

「何でもないよ♪それよりぃ、ねぇ〜♪いつから「千夜」ちゃん呼びになったの〜?」

 

------------------------------------------------

 

「いつって……今さっきだけど?」

 

「ふ〜ん……そんな急に、千夜ちゃんと仲良くなったんだ〜。いいなぁ〜」

 

「……ん?」

 

「むぅ〜……千夜チャンだけズルイナ〜、エコヒイキハンタ〜イ!」

 

「な、なぁ……ちとせ。一つ、聞いていいか?」

 

「うん、なぁに?」

 

「ちとせが千夜に、言ったんだよな……?「白雪」から「千夜」に、呼び方を変えた方がいいって……」

 

「えっ?私、そんなこと……」

 

「……」

 

「……言ったかな♪あはっ♪」

 

「何だ、今の間は……」

 

「いや〜♪千夜ちゃんも、ようやく言えたんだなあ〜って、思ってね♪」

 

「おいおい。ちとせが言わせたんだろ?命令がどうのこうのって、言ってたぞ」

 

「だってぇ♪そういうことにしてあげないと、恥ずかしがって、千夜ちゃんが言ってくれないんだもん♪」

 

「恥ずかしいって……あの千夜が?」

 

「あの子って結構、口ベタでしょ?いつまでも僕くんにツンツンするのは、よくないと思ったの」

 

「だから……主と言う立場を使って、ちょちょっとね♪てへっ♪」

 

「……あ〜……千夜オジョウサマは、年頃の乙女でかわいいですね〜」

 

「「鳥肌が立つ」なんて言う程、恥ずかしがってたなんて、知らなかったナ〜」

 

「……そこまで……よし!き〜めた!ねねっ♪僕くんっ♪明日って、ヒマ?」

 

「ん?いや……明日は特に、予定はないけど……」

 

「それじゃあ、私ね、明日、千夜ちゃんと僕くんの三人で、ピクニックに行きた〜い♪」

 

「ピクニック……?」

 

「今って、桜が満開でしょ?春風を感じながら、お花見するのって、すごい楽しそうだと思ったの♪」

 

「おぉ。確かに、今の時期は桜が満開だし、楽しそうだな」

 

「でしょでしょ?ねっ?だから僕くんも行こうよ!」

 

「そうだな。いい機会だし、行こうか」

 

「あはっ♪決まりだね♪ちなみに僕くんはさぁ、お料理とか出来る?」

 

「……美味しい冷食なら……いくらでも、紹介出来るぞ?」

 

「なるほどね〜♪それじゃあ、私が明日、お弁当を持って来てあげる♪」

 

「えっ。いや、悪いよ。そこら辺のコンビニで、何かを買ってくるよ」

 

「ダ〜メ♪これは主である私から、僕くんへの命令です♪とびっきり、美味しいのを持って来てあげるよ♪」

 

「そうか?そこまで言うなら、せっかくだし……頼もうかな」

 

「うんうん♪素直でよろしい♪じゃあ明日は、公園前に集合ね♪」

 

「わかった、楽しみに待ってるよ」

 

「さ〜て♪約束もしたことだし、また明日ね〜♪千夜ちゃ〜ん!もう、お話しは終わったから、帰ろ〜♪」

 

「終わりましたか。それでは帰宅しましょう。今、ドアをお開けします」

 

「二人とも、また明日な……それにしても、ちとせのヤツ……随分と、張り切ってたな……」

 

------------------------------------------------

 

フワッ……

 

「う〜ん……見事に、桜が満開だなあ。ぽかぽか陽気で、いい天気だし。絶好のお花見日和だな」

 

「……やべっ、何だか眠気が……最近、事務所に泊まり込みで、ソファーで寝てたからなぁ……」

 

「やわらかそうな芝生……暖かい春風……心地よい開放感……くっ、今の俺にとっては、すごい恨めしい……」

 

「そういえば、こういう状況を表す言葉を、文香から聞いたことがあるな……何だっけ?」

 

「……そうか!春眠、暁を覚えずだ!あっ、でも、意味が違うか。あれは春の夜の、寝心地の話だったな……」

 

「……桜を見ながら……文香に、膝枕をしてもらったら、さぞ……寝心地がいいんだろうなぁ……」

 

「……くん」

 

(柔らかな文香の笑顔に、見守られ……柔らかな膝に、包まれながら寝る……あぁ……もう……)

 

「……くんっ!」

 

(あっ、でも……見上げるアングルだと、文香の……ある意味で、目が冴えてしまって、寝れないかもな……)

 

「……僕くんっ!!」

 

「うわっ!何だ!?」

 

「んもう!何だじゃないよ!やっと、気づいてくれたんだからぁ!」

 

「あっ……ち、ちとせ……おはよう。それと、千夜もな……は、ははっ……」

 

「おい。一体、何を考えてたのです?お嬢様が何回も、あなたをお呼びしてると言うのに……」

 

「……い、いやあ、ごめん……二人のライブのことについて、少し考え事をしててな……あはは……」

 

「……ふ〜ん……」ジー

 

「何だよ、ちとせ……そんなに、俺のことを見つめて……」

 

「別にぃ〜、ただ、僕くんがすごい楽しそうだな〜って、思っただけだよ〜」

 

「そりゃ、楽しみに決まってるだろ?こうして二人と、花見を楽しめるんだからなっ!」

 

「……一つ、忠告しておきたいことがある……」

 

「?」

 

「……お嬢様に変なことをしようとするものなら、容赦はしない。それだけは、覚悟しておくんだな」

 

「なっ……!ど、どうしてそうなるんだよ!俺は、別に何も、変なことなんか考えてねえって!//」

 

「どうだか……さ、お嬢様。目的地に向かいましょう」

 

「そうだね〜、僕くんはおネムみたいだしぃ、邪魔をしちゃ悪いもんね〜」

 

「あっ、おいっ!待てって!」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん、満開だね〜♪桜吹雪がとても綺麗♪」

 

「えぇ、そうですね。非常に美しい光景です」

 

「天気もいいし、来てよかったな」

 

「それじゃあ、さっそくご飯にしようか♪千夜ちゃん♪お願いっ♪」

 

「はい。かしこまりました」

 

「ちとせが作ってくれてるんだっけ?楽しみだ」

 

「……」

 

「そうだよっ♪腕によりをかけて、作ったんだから♪」

 

「こちらが、お嬢様のです」

 

「ありがとう♪」

 

「それで、これがあなたのです」

 

「おぉ、ありがと……ん?……な、なぁ……これってさ……」

 

「えぇ、サプリメントです。お嬢様が、あなたに用意した弁当ですよ。ほら」

 

「栄養不足な僕くんのために、用意したんだよっ♪たくさん味わって、元気をつけてね♪あはっ♪」

 

「……おかしいな〜……サプリって確か、一日の摂取目安量が、あったような気がするんだけどな〜……」

 

「……冗談ですよ。ほら、受け取ってください」

 

「えっ……?な、な〜んだ、冗談だったのか〜。あ、あはは……」

 

「お嬢様が丹精を込めて、あなたに作ったものです。お嬢様の愛情に感謝をしながら、味わってくださいね」

 

「あぁ、ありがとうな。ちとせ」

 

「いいよいいよ♪僕くんにはこれからも、頑張ってもらわないといけないしね♪」

 

「それでは、さっそく……おぉ!すごいかわいらしくて、綺麗な弁当じゃないか!」

 

「そうでしょそうでしょ♪味も、すごい美味しいんだから♪」

 

「そうか!じゃあまず、このミニハンバーグからもらおうかな。いただきます」

 

「……」

 

「どう?美味しい?」

 

「うん。いい感じに、塩胡椒が効いていて美味しいよ。焼き加減も最高だ」

 

「そう♪千夜ちゃんも、嬉しがってるよ♪」

 

「……っ」

 

「こんなに美味い弁当を、毎日作ってもらえるなんて、千夜は幸せもんだなあ」

 

「……そう、ですね……ところで……一つ、言わせてください」

 

「ん?何だ?」

 

「今回はあくまで、お嬢様がご好意で作ってくださったものです。ですので……」

 

「……勘違いしないように、してください」

 

「あぁ。これでも、色んなアイドルの世話をして来てるからな。そこら辺はきちんと、弁えてるつもりだよ」

 

「エ〜。私は別に、僕くんならいいんだけどな〜?」

 

「えっ?それって……どういうことだ?」

 

「どういうことも何も、額面通りの意味だよ♪だって、僕くんは私だけの僕くんだもんっ♪」

 

「うん……?……むぐっ!?」

 

「……特別に、私の卵焼きをあげます。感謝をしてください」

 

「んぐっ……お、おい!急に、俺の口に卵焼きを突っ込むな!」

 

「あはは♪千夜ちゃんってば、だいた〜ん♪」

 

「本当は、あなたに施しなど、もってのほかですが、これでも同じ主に仕える従者同士です」

 

「ですので、日頃の活動に対する慰労の気持ち。と、受け止めてください」

 

「ったく……でも、卵焼きも結構、美味しいな」

 

「でしょ♪ほらぁ、まだたくさんあるから、食べながらお花見を楽しもうよ♪」

 

「あぁ、そうだな。楽しもうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「うん、ご馳走様。美味しかったよ」

 

「は〜い♪お粗末様でした〜♪」

 

「ところで、ちとせ。体調とか大丈夫か?」

 

「うん、大丈夫だよ?どうして?」

 

「いや……弁当を半分ぐらい残してるから、大丈夫かなって、思ってさ……」

 

「あぁ。私ね、食べることは好きだけど、たくさんは食べられないんだ〜」

 

「だから、いつも半分ぐらいは千夜ちゃんにあげちゃってるの。ね?千夜ちゃん」

 

「はい。お嬢様は少食ですので、私がいつも、お嬢様の分もいただいてます」

 

「なるほど。確かに、女の子なら箸より、喋りの方が進むってよくあることだよな」

 

「それに、千夜ちゃんは食べるのが早いから、私のお弁当が半分くらいの頃にはもう……って、あれ……?」

 

「どうされました?」

 

「……もしかして……私が千夜ちゃんに、喋りすぎっていう説もある……?」

 

「えぇ、そうですね。私としては「口の数より、おかずの数」になっていただけた方が、嬉しいのですが」

 

「あ〜!千夜ちゃんてば、ひっど〜い!」

 

「ははっ。二人とも、本当に仲良しなんだな」

 

「そうですね。お嬢様には長く、従者として連れ添わさせてもらってます」

 

「それはもう……気の遠くなるような、昔から……です」

 

「そうなのか。確かに、二人の仲の良さを見てたら納得だな」

 

「しかし、お嬢様。私たちは、アイドルになったのですから、より多く食べてもらいたいと言うのは本当です」

 

「栄養をしっかりと摂って、スタミナをつけないとまた、倒れてしまいますよ?」

 

「そうだな。無理に食べろとは言わないけど、俺もちとせにはもっと栄養をつけてほしいな」

 

「あ〜ん……二人して、私のことをいぢめる〜……」

 

「虐めではありません。私はただ、お嬢様のことが心配なだけです」

 

「アイドルには体力も必要だ。だから、無理しない程度には……なっ?」

 

「……そうだよね……今の、私たちはアイドル……わかった!私、少しずつ、食べる量を増やしてみるよ!」

 

「おっ、いい心がけだ。その調子で、これからも頼むぞ」

 

「うんっ♪頑張るよ♪そ・れ・にぃ……」

 

ギュッ

 

「っ……!?」

 

「……倒れそうになっても……僕くんが、守ってくれるしね……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「お、お嬢様……はしたないですよ?こんな、公衆の面前で……」

 

「エ〜。今の私は、貧血だも〜ん♪だから少し、僕くんに寄り添ってもらってるだけだよ〜♪」

 

「嘘つけ!こんな急に、貧血になるかっ!//」

 

「んもう、僕くんは、乙女心がわかってないなぁ〜……で、どう?想像してた女の子より……ドキドキした?」

 

「えっ?まあ、そりゃ……って……何だよ!想像って!」

 

「さっき、私たちが来る前に、公園の前で変なことを考えてたでしょ〜?」

 

「な、何も考えてないって!それに、さっきも言っただろ!?俺は、二人のライブのことをだな……//」

 

「ウソツキ。明らかに、鼻の下を伸ばしてデレデレしてたもん」

 

「いや、それは……あっ、でも、女の子のことを考えてたって言うのは、あながち間違えじゃないぞ」

 

「……ふ〜ん?」

 

「ちとせも千夜も女の子だし、しかも、二人の初ライブともなれば、そりゃ、色々と考えるさ。あはは……」

 

「うふふ……そっか♪偉い偉い♪それじゃあお礼に、僕くんに一つ、主から教訓を授けてあげよう♪」

 

「?」

 

「女の子のカンは、侮れない程当たるの♪よ〜く、覚えておいてね♪」

 

「……っ!」

 

「あ〜あ、油断しちゃいけないな〜。目を離すとすぐに、他の子に浮気しちゃうんだからぁ〜、僕くんはぁ〜」

 

「……全く、不潔な色情魔だな。お嬢様はなぜ、こんなヤツを僕にしたのか……」

 

「う、浮気って……アイドルなんだから、そういう誤解を生むような言い方はだな……!」

 

「これは、教育が必要みたいだね〜。私って、ものすご〜く独占欲が強いの♪」

 

「だから、それを僕くんにわからせるために、しばらくは離れないんだから♪」ギュッ

 

「……っ//」

 

「う〜ん、落ち着くなあ〜♪それに、僕くんってスマートだと思ってたら、結構たくましい体つきなんだね♪」

 

「……まぁ、そりゃ……一応、俺も男だしな……//」

 

「……」

 

「ほらっ♪千夜ちゃんも見てないで、おいでよ♪」

 

「いいえ、遠慮しておきます。こんな変態に触れてしまっては、私にも変態が移ってしまいます」

 

「へ、変態っ……俺って、そんな……」

 

------------------------------------------------

 

「ワガママはダ〜メ!これは、主としての命令だよ〜!」

 

「……っ」

 

「こんな状況で、俺が言うのもなんだけど……いくら命令でも、千夜がそんなことをするはずが……」

 

……ギュッ

 

「えっ……ち、千夜……!?」

 

「あはっ♪千夜ちゃんてば、わかってるぅ♪」

 

「……勘違いするな。これは、やらされてるだけだ……」

 

「主従関係に挟まれる、一人の僕……やぁ〜ん♪危険な、アバンチュール♪」

 

「……さて……そろそろ、離れないか?主の愛とやらは、十分に伝わったからさ……」

 

「いやっ♪離れないよ♪」ギュッ

 

「……千夜も……もういいんだぞ?無理するなって……なっ?」

 

「……まだ、離れろとは命令されていません。不本意ですが、この体勢のままでいます」

 

「……まじかよ……」

 

「あ〜、幸せだな〜……こうして、暖かな春の陽気を感じながら、三人でお花見が出来るなんて……」

 

「……このまま……桜の花びらに包まれながら、棺桶に入るのも……いいかも……♪」

 

「……っ、お嬢様……」

 

「桜と同じ「すぐに散る儚げさが美しい」ってね♪どう?有終の美を飾るのに、悪くない光景だと思わない?」

 

「ちとせ……」

 

「人の夢と書いて儚い。だから……夢は、儚いままの方がいいのかな〜……なんて♪」

 

「……」

 

ギュッ

 

「きゃっ……!し、僕くんっ……!?//」

 

「……バカ。お前が入るのは、棺桶じゃなくて……「カボチャの馬車」……だろ?」

 

「俺たちは、夢を見るんじゃなくて、夢を見させる側だ。だから……そんなことは、俺が許さない……絶対に」

 

「僕くん……あはっ……そうだったね……♪」

 

「私と千夜ちゃんはもう……あの頃の私たちじゃない。今は……夢を与えるアイドル……だもんね……」

 

「……えぇ、お嬢様。歩んでいきましょう、共に……いえ……「三人で」一緒に……」

 

「……うんっ♪それじゃあ……お城まで、エスコートをよろしく頼むぞ♪私の、かわいい僕たちっ♪」

 

「あぁ。仰せの通りに、お嬢様」

 

------------------------------------------------

 

「よし。暗くなって来たことだし、そろそろ帰るか」

 

「そうですね。帰宅しましょう」

 

「うん♪それじゃあ、行こ〜う♪にしても、夕暮れ時の桜吹雪も、綺麗でいいね〜♪とても、幻想的って感じ♪」

 

「あぁ。昼間の時とはまた違った、美しさがあるよな」

 

「……あなたにも、桜の美しさがわかるのですね。意外です」

 

「風流なことは嫌いじゃないさ。だからこうして、二人と花見をしに来たんだからな」

 

「今日は、楽しかったね♪また来年も、ここに三人でこようよ♪」

 

「そうだな、また来ようぜ」

 

「ところでさぁ。お花見もいいけど、お弁当もどうだった?満足してもらえた?」

 

「うん。栄養バランスもしっかりしてて、味も色彩も、とてもよかったよ」

 

「そっか♪だってさ、千夜ちゃん♪よかったね♪」

 

「……お、お嬢様っ……!」

 

「えっ?作ってくれたのは、ちとせだろ?」

 

「ううん、違うよ?作ってくれたのは、千夜ちゃんだよ♪」

 

「……っ!」

 

「千夜が……?いや、だって、ちとせがお弁当を作って来てくれるって、言ってたよな……?」

 

「う〜ん?私「持って来る」とは言ったけど「作って来る」なんて、一言も言ってないよ?」

 

「僕くんが食べた、ミニハンバーグも卵焼きもぜ〜んぶ、千夜ちゃんが作ってくれたの♪」

 

「そうなのか?千夜?」

 

「……違います」

 

「あんっ。千夜ちゃんってば、恥ずかしがり屋さんなんだから〜」

 

------------------------------------------------

 

「……私は……この人のために、作ったのではありません。余り物を、あげただけです」

 

「そうか、千夜が作ってくれてたのか。ありがとうな、千夜。美味しかったぞ」

 

「……同情や憐れみなど、いりません」

 

「そんなんじゃないって、本当に美味しかったよ。また、作ってくれると嬉しいな」

 

「……言ったはずだ、勘違いするなと。今後は、お嬢様と私の、二つしか用意しません」

 

「そっか。それは残念だ」

 

「……今は」

 

「ん?今、なんか言ったか?」

 

「何も言ってません。それでは、明日の朝食の下ごしらえがありますので、お先に失礼します」

 

「あっ……おい!千夜っ!……行っちゃった……」

 

「ふふっ♪僕くんは幸せものだぞ〜?千夜ちゃんが、男の人にお弁当を作るなんて、初めてだったんだから♪」

 

「そうだったのか、それは光栄だ。余り物って言ってたけど、いい出来だったし、とても嬉しかったよ」

 

「……おばか……」

 

「うん?ちとせ、どうした?」

 

「何でもないよ〜。ただ、僕くんってやっぱり、僕くんなんだな〜って、思っただけ」

 

「ちょっと待て、どういうことだよ?」

 

「さぁね〜、でも……」

 

チュッ♪

 

「!?」

 

「さっき……片腕で、私のことを思いっきり抱き寄せてくれた、僕くんはとても……カッコよかったよ……♪//」

 

「ちょっ……い、今っ……//」

 

「知らな〜い♪それじゃあ、私も先に帰るね〜♪また、明日もよろしく〜♪」

 

「おい、待て!まだ、話は終わってないぞ!」

 

「私はもうないも〜んっ♪……あ、一つあった♪」

 

「……ちなみに……私は、呼び方に関して、千夜ちゃんに何も命令してないよっ♪……さよ〜なら〜!//」ダッ

 

「あっ!……行っちまった……ふぅ……ちとせも千夜も、一体……何だったんだ?」

 

「……全く、いたずら好きなお嬢様にも、困ったものです。しかし、元はと言えばあいつが……」

 

「……そうです、全てはあいつが悪い。お嬢様は悪くないんです」

 

「しかし……お嬢様はなぜ、あんなヤツのことを……あぁもう、面倒だな……色々と……」

 

「……でも……少しだけなら……悪くはない……かな//」



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凸凹シンデレラ 佐藤心

「ねぇねぇ☆プロデューサー☆」

 

「ん?」

 

「はぁとのぉ、す・く・み・ず、だぞっ☆」

 

「うわ……キ……」

 

「あ”?」

 

「……キレイです……」

 

「そうでしょ☆そうでしょ☆んも〜☆プロデューサーてば、素直なんだからぁ☆」

 

「……で?色々とツッコミたいんだが、何で、スク水なんか着てるんだ?」

 

「何でって……おい☆何、寝ぼけたことを言ってやがるんだよ☆」

 

「ん……?」

 

「セクスィ〜な番組に呼ばれたと思ったのに、まさかのバラエティー番組って、どういうことだよ☆」

 

「……あぁ、思い出した!あの時、着てたスク水か!何でだよ。ものすごい、ウケてたじゃないか」

 

「ねぇっ、はぁとわぁ、アイドルなんだよぉ?なのにぃ、バラエティのオチ要因って、扱い酷くなぁい?」

 

「あの番組って、視聴率もよかったって聞いてるし、また使いたいって喜んでたぞ?何が不満なんだよ」

 

「はぁとは、何にも聞かされてなかったぞ☆」

 

「そりゃ、ドッキリ番組だしな。最初からドッキリってわかってる番組なんて、つまらないだろ」

 

「セクスィ〜なグラビア番組だと思ってたのにぃ……はぁと……すごい、傷心しちゃったんだよぉ?」

 

「まあ、番組のためとはいえ、心を騙したのは悪かったとは思ってるけどさ……」

 

「でも、結果的に「面白い」アイドルとして、全国的に知名度が上がって、よかったじゃないか」

 

「ふ〜ん……はぁとのこと、そういう風に思ってるんだ……しょうがないなあ……」

 

「……それじゃあ、もっと……はぁとの魅力を、わかってもらわないとな☆」

 

「……ん?」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ、プロデューサー……この部屋……何だか、暑くなぁい?」

 

「うん……?あぁ。春とはいえど、まだ肌寒いから少し、エアコンをつけてたんだが……暑かったか?」

 

「そうだねぇ。そのせいで、はぁとぉ……少し、汗ばんできちゃった……☆」

 

「そうか。それじゃあ、少し下げるよ。リモコンリモコンっと……」

 

「おい☆そうじゃねえだろ☆ねぇ……はぁとの、スク水姿……どぉう?」

 

「どうって……何が?」

 

「あぁん、もう……いじわるぅ……仕方がないなぁ……」シュルッ

 

「っ……!?な、何をしてるんだよ!?//」

 

「何ってぇ、暑いからちょっと、脱いだだけだよぉ?」

 

「脱いだだけって……お前っ……!//」

 

「んふふ〜♪どぉ……?はぁとの……スウィーティーな、ス・タ・イ・ルは☆」

 

「ば、ばか!変なことをしてないで、早くずらした肩紐を直せっ!//」

 

「えぇ〜?そんなことを言ってもぉ、実は「ナニか」を期待してるんじゃないのぉ〜?」

 

「期待って……何だよっ……//」

 

「とぼけんなよ☆この、むっつりスケベ☆視線がイヤらしいぞっ☆」

 

「……っ!//」

 

「ほぉら☆これでもぉ、はぁとのことを「面白い」アイドルなんて、言っちゃうのぉ?」

 

「わ、悪かったって!気にしてたなら謝るから、とっととしまえ!なっ……?」

 

「あんっ……何だか、暑くて……胸の真ん中に、汗が溜まってきちゃった☆……ねぇ……」

 

「……はぁとね、今、拭うもの持ってないのっ☆だからぁ……プロデューサーに、拭いて欲しいなぁ……☆」

 

「はあっ!?し、心……お前は、今……何を言ってるのか……わかってるのか?」

 

「エ〜、ちゃんとわかってるよぉ?だってぇ、はぁとはスウィーティーなアイドルだもんっ☆」

 

「わかってるじゃないか……ほれ、ハンカチを貸してやるから、とっとと拭け!//」

 

「ありがと☆それじゃあ、借りるね〜☆……お前の手も、一緒になっ☆」

 

ムニッ♪

 

「あんっ♪力強いっ♪……これだけ、アピールをしてるんだから、とっとと察せよ☆このスケコマシ……☆//」

 

「ちょっ……!?ば、ばかっ……やめっ……!//」

 

バンッ!

 

「ねぇ♪PサマPサマっ♪見て見て……って……えっ?」

 

------------------------------------------------

 

「っ!?り、りあむ……!」

 

「あ、あわわ……Pサマが朝から、事務所で……え、えっちなことをしてる……//」

 

「ち、違うんだ!りあむ!これはだなっ……!」

 

「ん?この子……誰……?」

 

「……これは、大スクープの予感……!今、デレぽにあげれば、オタクどもにちやほやされるかもっ……!」

 

「……なあ……りあむ?何で……スマホを構えてるんだよ?」

 

「ごめんね、Pサマ。悪いけどこれも、ぼくがやさしい世界に行くためなんだ……」

 

「……だから……撮影して、デレぽに……あげちゃうね……♪//」

 

「……はぁ!?ば、バカなことはやめろっ!そんなことをしたら、お前どころか、事務所の存続自体が……!」

 

「えへへ……♪ぼくのPサマが、スク水姿の「おねーさん」と、朝から事務所でえっちなことをして……」

 

「……ねぇ……ちょっといい?今、何て言ったのかな……?」

 

「はい?え、えっと……Pサマが、朝から事務所で変なことをしてるって、言いましたけど……」

 

「……もっと前、もっと前」

 

「もっと前……Pサマが、スク水姿の「おねーさん」と朝から……」

 

「……あ〜ん♪スウィーティー♪はぁとのことを、おねーさんだなんてぇ〜☆かわいいなぁ、キミっ☆」

 

「ふぎゃっ!?う、うぎゅ……苦しっ……」

 

(このおねーさん……結構、大きいなぁ……うぅ、みんなには、いいことなんかないって、言ってたけど……)

 

(……実は……乳が大きいのって、少し……自慢だったのにぃ……めっちゃやむ……)

 

「う……うぐぐ……うぅっ……」ウルッ

 

「……おい……心。そろそろ、やめてやれよ……」

 

「えっ……?あぁん!ごめんねぇ〜!」

 

「う、うぅ……」

 

「ねぇねぇ☆プロデューサー☆このかわいい子は、なんて言う名前なのっ?」

 

「ん?あぁ。夢見りあむ、俺がスカウトしてきた、新人アイドルだ。仲良くしてやってくれ」

 

「そうなんだ〜♪ねぇねぇ♪りあむちゃんって、呼んでいいっ?」

 

「うぇ……?あ、はい……クソザコメンタルの、夢見りあむです。やさしい世界から、やってきました……」

 

「うん、よろしく♪それじゃあ、私も自己紹介をしなきゃね☆」

 

「私は、佐藤心☆またの名を、しゅがーはぁとって言うの♪この事務所で、アイドルをやってるんだ☆」

 

「えっ!おねーさんも、アイドルをやってるんですか!?」

 

「うんっ☆だ・か・ら、一緒に頑張っていこうね☆」

 

------------------------------------------------

 

「そうですね……佐藤さん。よろしくお願いします」

 

「そんなに、堅苦しくなくていいよ♪しゅがはって、呼んで欲しいな☆」

 

「えっ……そ、それじゃあ……しゅがはさん……で、いいですか?」

 

「はぁい♪よろしくねっ♪りあむちゃん♪う〜んっ♪最高に、スウィーティー☆」

 

「す、スウィーティー……?」

 

「とてもいい気分だってことだよ♪さあ♪りあむちゃんも一緒に言おうよ♪せ〜のっ♪スウィーティー☆」

 

「……す、すうぃーてぃー……☆あっ、なんか、エモいかも……少し、クセになりそう……♪」

 

「エモい……?それって、どう意味!?若者言葉なのっ!?」グイッ

 

「ふえっ!?わ、若者……?そ、そうですね……エモいって言うのは、そのっ……なんというか……」

 

「……お〜い……そろそろ、いいか〜?」

 

「えっ……?あ、わりぃ☆素で忘れてた☆」

 

「ったく……とりあえず、服を着ろ、服を」

 

「はぁ〜い☆」

 

「ところでりあむ。俺に何か、用だったのか?」

 

「……あっ!そうだった!PサマっPサマっ!見て欲しいものがあるの!はいっ!」

 

「ん?どうした、スマホなんか見して……ん?」

 

[聞け!オタクども!昨日は「弟」と一緒に、パフェを食べに行ってきたよ!雰囲気も味も甘々だったんだ!]

 

[どうだ!羨ましいか!パフェも「弟」も、とっても美味しかったよ♪ごちそ〜さまっ♪]

 

[#トレンド入り#拡散希望#炎上]

 

「……おい……これは、なんだ……?」

 

「何って……ぼ、ぼくとPサマの、愛のメモリーだよ……なんちゃって♪//」

 

「……りあむ。ちょっとこい」

 

「ん?どうしたの?」

 

「……」ピンッ

 

「あうっ!?で、デコピン……!Pサマひどいっ……!……あっ、でも、雑な扱いも……これはこれで……//」

 

「なあ。これは、どういう意味だ?」

 

「どういう意味も何も、Pサマと、パフェを食べに行った時の写真だけど?」

 

「よ〜しわかった。それじゃあ、りあむ。あの時に、俺の言ったことをもう一度、言ってみようか」

 

「えっ?ん〜と、確か……」

 

------------------------------------------------

 

「「俺と、パフェを食べに行ったことは、みんなには内緒な。それに、変なことは考えるなよ?」だっけ?」

 

「は〜い、よく出来ました。で?改めて聞くが、これはどういうことなんだ?」

 

「……Pサマとじゃなくて……「弟」とパフェを食べに行った、微笑ましい光景をあげただけだもん……」

 

「おい!俺はいつ、りあむの弟になったんだよ!」

 

「弟は弟だもん!アイドルはみんな「弟」と、遊びに行ってるんだよぅ!」

 

「何だそりゃ……ていうか、どうでもいいわ!あの時に、約束をしただろ!変なことはやめろって!」

 

「へ、変なことじゃないよぅ!これは、ボクとPサマの……大切な思い出だもん……//」

 

「思い出ねぇ……見てみろ。案の定、すごい数の暖かいコメントが来てるぞ?」

 

「えっ、ホント!?やったぁ〜♪炎上商法、大成功だね!これでぼくも有名人にっ……!」

 

「……」ピンッ

 

「あぅ!また、デコピンっ……!」

 

「あのなぁ……今後、どうなっても知らないぞ?こういう売り方は感心しないと、あれほど前からだな……」

 

「えっ……やっ、やだよぅ!Pサマっ!ぼくを捨てないで!!」ギュッ

 

「うわっ!?ちょっ……り、りあむ!?」

 

「もう、変なことなんか考えないし、レッスンもアイドルも頑張るよぅ!だから……だからっ……」

 

「……ぼくのことを……みすてちゃ……やだぁ……クスンッ」

 

「おいおい……ったく……俺は何も、そこまで言ってないって」

 

「……そう、なの……?」

 

「あぁ。りあむは、俺の大切なアイドルだ。だから、見捨てたりなんてしないよ」

 

「ホント?よかったぁ……♪//」

 

「それによく見たら、この写真。りあむだけが写ってて、俺はほぼ写ってないしな」

 

「不幸中の幸いと言うか、なんと言うか……まあ、とりあえず、デレぽからその写真は消しとけ」

 

「わ、わかったよ……えへへ♪//」

 

「ただし。デレぽはあくまで「楽しく」「平和」に使えよ?いいな?」

 

「うん!これからも、人気アイドルになるために頑張るよ!」

 

「あぁ、その意気だ。頑張ってくれよ」

 

「……ところで……Pサマって、その……何だかんだで、ぼくのことを……気にしてくれるよね……♪//」

 

「なっ……い、いいから、用が済んだなら、さっさと仕事に行ってこい!」

 

「は〜い♪それじゃあ、これからもよろしくねっ♪Pサマ♪しゅがはさんっ♪」

 

「うん。頑張ってこいよ……よし、りあむも仕事に行ったし、一件落着だな……」

 

「……って……あれ?しゅがは……あっ……」

 

「……聞かなかったことにしてあげるから……なっ?」

 

「……是非……ご馳走させてください……」

 

「よろしい☆」

 

------------------------------------------------

 

「んっ……あ〜ん☆すっご〜い、スウィーティー☆」

 

「そうか、よかった」

 

「ここが、りあむちゃんと行ってた喫茶店なんだねぇ。なかなか、オシャレじゃん☆」

 

「親睦もかねて連れてきたんだよ。あいつはまだ、アイドルになって日が浅いしな」

 

「その割には……随分と、イチャイチャしてたじゃね〜かよ☆」

 

「んぷっ……!?き、急に、何を言い出すんだよっ!//」

 

「あんっ、キタナイなぁ〜。ていうか、自覚がなかったのぉ?」

 

「何の自覚だよ……」

 

「「りあむは、俺の大切なアイドルだ。だから、見捨てたりなんてしないよ」なんて、言っておいて?」

 

「何だよ、事実を言っただけじゃないか。だから、何も問題な……むぐっ……!?」

 

「んふふっ♪どう?美味しいっ?」

 

「ぷあっ……おい!急に、俺の口に突っ込むな!」

 

「これ以上喋るなよ?この、アイドルキラーめ☆」

 

「き、キラー?何だよ、それ……」

 

「気にすんな☆ほぉら☆次は、はぁとの番だぞ☆プロデューサーのも、ちょ〜だいっ☆」

 

「あげたも何も、お前が勝手に、俺の口に突っ込んだんだろうが!」

 

「……くれないの?はぁと、寂しいなぁ〜……」

 

「あのな〜……ん?まてよ……いや、いいぜ。俺のパフェをくれてやるよ、ほれ」

 

「ほんとぉ!?やったぁ〜☆……って……おい!超大盛りすぎるだろ!仕返しのつもりか!」

 

「何のことだかわからないなぁ〜♪さぁ、お食べ♪はぁとちゃん♪」

 

「……一口でいってみろってか……オッケー。そのラブ、受け止めてやんよ!」

 

「ははっ、なんだよラブって。いくら心でも、流石に無理……えっ?」

 

「パクッ……う〜ん♪最高に、スウィーティー☆」

 

「なっ……!お、お前……本当に、食ったのかよ……!」

 

「どう?プロデューサーのラブ、しっかりと受け止めてやったぞ☆」

 

「ラブも何も……このスプーン……俺が使ってたやつなんだぞ……?」

 

「何だよぉ♪あげた側が恥ずかしがって、どうするんだよ☆この、いくじなし☆」

 

「う、うるせえ!冗談のつもりだったんだよ!こっちはっ!//」

 

「えぇ?プロデューサーは冗談でも、はぁとは本気……うぐうっ……!」

 

「ん?どうしたんだよ?」

 

「うごごご……キタキタ、アイス痛がっ……!まともにきたぞこれ〜ッ!!」

 

「何だよ、アイス痛って……そりゃ、あんなにたくさんのアイスを、一気に食ったらそうなるだろ……」

 

「……うぅ……いって……あっ☆やぁ〜ん♪頭、いったぁ〜い☆……ぐううっ、痛ってぇ……」

 

「ったく……どれ。温かいコーヒーを持って来てやるから、少し待ってろ」

 

「ご、ごめん……うごごっ……!」

 

(あそこの席の、お兄さんとお姉さん……バカップルだ……)

 

------------------------------------------------

 

「うぅっ……」

 

「おい、心……大丈夫か?」

 

「うん……だいぶ、落ち着いた……」

 

「よかった。無理するなって、色々な意味で……」

 

「おい☆それって、どういう意味だよ☆」

 

「どうも何も、そのまんまの意味だ」

 

「えぇ〜?ラブを受け取るために頑張った、健気でか・よ・わ・い、はぁとわぁ、超かわいかったでしょ〜?」

 

「……」

 

「何だよ、その目は☆あんまり変な目で見ると、はったおすぞ☆」

 

「……あ〜あ。お前は黙っていれば、普通に美人なのになぁ〜」

 

「えっ……?」

 

「いや、その路線でやっていきたいのはわかるぞ?俺もそこは否定しない」

 

「ただ……そんなことをしなくても、心は十分に、綺麗だと思うぞ?なんてな」

 

「プロデューサー……」

 

「……」

 

ゲシッ!

 

「痛って!急に、何をするんだよ!」

 

「……黙っていればは、余計だっつ〜の☆まぁ、いいけどぉ☆はぁとは、はぁとだしぃ☆」

 

「ったく……ところで、俺たちさ。今、心の家に向かってるよな?」

 

「うん、そうだね。だって、はぁとのことを心配してくれてるんでしょ?」

 

「あぁ。アイス痛だか、何だか知らないけど、頭痛がしたんだろ?」

 

「うん」

 

「それで、安静にして欲しいから、家まで送るって言ったよな」

 

「そうだねぇ」

 

「ついでに、買い物も手伝って、今に至るわけだけど……缶ビールに惣菜に枝豆って……なぁ?」

 

「何だよ☆何か、文句あんのか☆」

 

「……お前……一応、アイドルなんだぞ?もう少し……チョイスをだな……」

 

「エ〜。一応じゃなくて、はぁとは正真正銘の、オ・ト・ナのアイドルだもんっ☆だから、問題ないじゃん☆」

 

「そりゃ、そうだけど……」

 

「そ・れ・に・ぃ☆この、スウィーティーなスタイルも、キチンと、維持が出来てるしぃ☆えいっ☆」

 

プニュッ♪

 

「なっ……お、俺の腕に、変なものを押し付けるなっ!//」

 

「あんっ、照れちゃってぇ〜☆かわいいんだ・か・ら☆」

 

「う、うるせえ!ほら!とっとと、お前の家に向かうぞ!//」

 

「はいはい☆それじゃあ、レッツゴ〜☆」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ。ここでいいのか?」

 

「うん、ありがと☆」

 

「そうか。それじゃあ、俺はこれで。ほれ、スーパーの袋」

 

「おい☆ちょっと待てよ☆」

 

「ん?何だよ?」

 

「か弱い女の子に、重たい荷物を押し付けて帰っちゃうのぉ?それって、ヒドくなぁい?」

 

「ははっ。どこに女の子が……」

 

「あ”?」

 

「……目の前にいます」

 

「よろしい♪」

 

「……で?マンションみたいだけど、お前の家は何階にあるんだ?」

 

「そんなに高いところじゃないから、安心して♪ほら、とっとといくぞ☆」

 

「はいはい、わかりましたよ……っしょっと……」

 

「しかし、プロデューサーってば、手慣れてるよねぇ〜」

 

「何がだ?」

 

「買い物をしてる時に、手際がいいなぁ〜って思っただけ。惣菜のセールの時間も、しっかり把握してたし」

 

「まぁな。俺も結構、一人暮らしをしてるし、慣れたものさ」

 

「ふ〜ん?何で、彼女の温かい手料理とか食べないの?」

 

「……あのな〜……俺に彼女なんて、いると思うか?」

 

「あぁ、それもそうだな☆いるわけねえか☆」

 

「……あぁ、そうですね〜。どうせ、いませんよ〜だ」

 

「冗談だってぇ〜☆そんなに、いじけるなよぉ☆」

 

「まあ、別にいいけど。今は仕事が、彼女みたいなもんだしな〜」

 

「エ〜。なんか、いかにもセリフが、哀愁漂う独身の男って感じぃ〜」

 

「うっせ。俺は今の、この暮らしを謳歌してるからいいんだよ」

 

「本当にぃ〜?毎日そんな生活で、寂しくないのぉ?」

 

「寂しい、ねぇ……目の前の「女の子」を筆頭に、世話が焼けるアイドルだらけだしな〜、うちの事務所は」

 

「だから、寂しさなんか、感じる暇すらねぇよ。本当、困っちゃうぜ」

 

「……ふ〜ん……そっか。それじゃあさ……」

 

------------------------------------------------

 

「……もし……行き遅れそうになったら……はぁとが、もらってやるよ☆」

 

「ははっ、そりゃいい。これで俺も、安心して仕事に熱中出来るな」

 

「でしょぉ?でも今はぁ、はぁとは、みんなのはぁとだからねぇ☆手を出したら、だ・め・だ・ぞ☆」

 

「……あっ、この缶ビール……前に、一緒に宅飲みした時の、あの、酔った楓さん……かわいかったなあ……」

 

「……♪」

 

ゲシッ!

 

「痛ってぇ!だから、俺の足を蹴るなって!」

 

「うっせ〜ぞ♪この、女たらし☆あまり、変なのろけ話をすると、そのだらしない口を縫い付けるぞ☆」

 

「何なんだよ……一体……」

 

「何でもね〜よ☆ほら☆ここが、はぁとの家だよ☆」

 

「ん……?あぁ、ここか。話ながら歩いてたから、あっという間だったな」

 

「そうだね♪それじゃあ、さっそく……♪」

 

ピンポーン♪

 

「えっ?何で自宅なのに、ピンポンをするんだ?」

 

「いいからいいから☆」

 

「はい……どちら様でしょうか?」

 

「!?」

 

「やっほ〜♪美優ちゃ〜んっ♪遊びにきたよぉ〜♪」

 

「あっ、心さん……こんにちは。待ってましたよ」

 

「待たせちゃって、ごめんね☆はい、これっ☆」

 

「こんなに……悪いですよ……」

 

「いいのいいの♪そ・れ・に☆」グイッ

 

「うわっ!?」

 

「今日は、とびっきりの酒の肴を持ってきたの♪だから、たくさん楽しもうよ♪」

 

「えっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?」

 

「み、美優さん、その……こ、こんにちは……」

 

------------------------------------------------

 

「あ、あの……どうしてここに……?」

 

「いえ……俺もその、よくわかってないといいますか……」

 

「はぁ……」

 

「プロデューサーってばね?美優ちゃんに、会いたくて会いたくてしょうがないって、聞かなかったの☆」

 

「だ・か・ら・ぁ……しょうがなく、ここまで連れて来てあげたんだ☆」

 

「ふぇっ……//」

 

「なっ……おい!し、心!お前は、何を言ってるんだよっ!//」

 

「ホント、こまったさんなんだからプロデューサーは♪でも「愛しの」美優ちゃんに会えて、よかったねっ☆」

 

「あぅ……え、えっと……そのっ……//」

 

「……こいつめ……!……それじゃあ、美優さん。あとは心と、楽しんでくださいっ!」

 

「……えっ」

 

「俺は、何というか……心の荷物持ちで、来ただけなんで……だから、これで失礼します」

 

「……ふ〜ん?」

 

「あっ、あのっ……!もし、プロデューサーさんがよろしければ、その……ご、ご一緒に……どうですか?//」

 

「いえ、お気遣いありがとうございます。でも、本当に俺は、荷物持ちとして来ただけなんで……」

 

「……そうですよね……暗くて無愛想な、私なんかと話しても……楽しくないですよね……」

 

「えっ、いや……そんなことは……」

 

「……すみません……無理強いをしてしまって……」

 

「い、いえ!美優さんみたいな、かわいくて綺麗なお姉さんと会話をするだけで、毎日が幸せな気分ですよ!」

 

「えっ……//」

 

「……あっ//」

 

「「……//」」

 

「んふふ……☆決まりだな☆」

 

「……あ、上っていきますか……?//」

 

「えっと……そ、その……では……お邪魔をさせてもらいます……//」

 

------------------------------------------------

 

「何もない部屋ですが……どうぞ、くつろいでいってください……」

 

「おじゃましま〜す♪」

 

「……すみません……本当に……」

 

「いえいえ、ゆっくりしていってくださいね……それと、地味ながら手料理も用意しましたので……」

 

「肉野菜炒めや卵焼き、和え物。お好きにつまんでください……」

 

「えっ、これを全部、美優さんが作ったんですか!?どれもすごく、美味しそうですねっ!」

 

「いえ……あり合わせのもので作ったので、そんなに大した物は……」

 

「美優さんの旦那さんになる人は、幸せですね。こんなに美味しそうで温かい手料理を、毎日食べれるなんて」

 

「ふあっ……旦那さん……そ、そうですね……//」

 

「……わ、わたしも、そのっ……想い人には、毎日……お味噌汁を作ってあげたいですねっ……//」チラッ

 

「ははっ、いいですね〜。でも、美優さんはアイドルだから、しばらくはお預けですね」

 

「……美優ちゃん、美優ちゃん。これ、使っていい……?」

 

「えっ?はい……別に、大丈夫ですけど……?」

 

「さんきゅ〜☆さぁて☆楽しい飲み会の、はっじまりぃ〜☆」

 

パーン!

 

「うわっ……!?おい!心!耳元で、鳴らすもんじゃないだろそれ!」

 

「エ〜、そうだっけぇ?はぁと、わかんなかった〜☆……むしろ……」

 

「……恥ずかしくなることを平気で言う、そのスウィーティーな頭を覚ましてあげたんだから、感謝しろよ☆」

 

「はぁ……?」

 

「……//」

 

「それじゃあ、ほらっ!美優ちゃんもこっちに来て!お酒を開けようよ!」

 

「あっ、そ、そうですね……開けましょうか……//」

 

------------------------------------------------

 

「せ〜のっ……」

 

「「「かんぱ〜い!」」」

 

「んくっ、んくっ……ぷあっ☆あ”〜うめ……おいし〜い☆」

 

「うふふ♪心さんってば……♪」

 

「うんっ、やっぱりみんなと飲むと、いつもより美味しく感じますね」

 

「そうですね……♪一日にあった、色々なことを……誰かと語りたいものですよね……」

 

「今みたいにこうして、親しい人とお酒を交わせることを……すごく、幸せに思います……♪」

 

「美優ちゃんって、アイドルをやる前はOLだったんでしょ?そういう、付き合いはなかったの?」

 

「そうですね……会社でのお付き合い、と言うのはありました……」

 

「ですが、上京したてで、友人も少なくて……こういうお付き合いは、縁がありませんでした……」

 

「そして、感じたことがあるんです。ふと、見回すと誰もいなくて……あぁ、一人なんだなって……」

 

「今、思い出しても……寂しかったですね、あの頃は……まるで、暗闇の中をずっと、歩いてるみたいで……」

 

「美優さん……」

 

「だから……思ったんです。こんな風に「帰るべき場所」があるということは、とても幸せなんだなって……」

 

「……これも……プロデューサーさんが、手を差し伸べてくれたおかげですね……♪うふふ……♪」

 

「いえ、そんなことは……」

 

「ふ〜ん。色々と、あったんだねぇ」

 

「あの時……私は慣れない靴を履き、少しでも背伸びをしようと思った矢先に、ヒールを折ってしまいました」

 

「そのことで、意気消沈しているところに……颯爽と現れ、ガラスの靴を履かせてくれた……」

 

「……プロデューサーさんの、かっこよくて素敵なお姿を……今でも、鮮明に覚えています……//」

 

「そんな……大げさですよ……//」

 

「そして、あの日以来……プロデューサーさんと一緒にいると……とても、暖かい気持ちになるんです……//」

 

「お、俺も、手当たり次第に、スカウトをしてたわけではないんです……その……何と言うか……」

 

「……目の前に……ガラスの靴に相応しい、美しいお姫様がいたので、つい……//」

 

「えっ……そ、そんな……お姫様だなんて……//」

 

「「……//」」

 

「……あぁっ、もうっ!あんま〜いっ!!」

 

「うわっ!?」

 

「きゃっ……!」

 

「何、はぁとの目の前で、イチャイチャしてやがるんだよぉっ!思春期の初恋のカップルか!お前らはぁ!」

 

「べ、別に、イチャイチャなんかしてねえよ!ねっ!美優さんっ!」

 

「そう、ですね……ふぁ……?そうなのかなぁ……?」

 

「えっ、み、美優さん……?」

 

「……あ〜……始まっちまったか……」

 

------------------------------------------------

 

「美優さ〜ん、大丈夫ですか〜?」

 

「大丈夫れす……これは、もものジュースなんで……」

 

「えっ……まさか、もう酔ってるの……?これ、アルコール度数はそんなにないはずなんだけどな……」

 

「美優ちゃんってば、お酒弱いからね〜。ま、いいじゃん。かわいいし☆」

 

「かわいいとか、そういう問題じゃなくてだな……」

 

「でも、そんなにお酒が弱いと、変な人にお持ち帰りされちゃうよ〜?美優ちゃんは結構、スキだらけだし」

 

「むっ……そんなことないですよぉ……わたしはもう……りっぱな、おとなのおねーさんなんです……」

 

「そこ!そういうところを、はぁとは言ってるのっ!」

 

「……じゃあ、いいもん……ぷろでゅーさーさんに……まもってもらうもんっ……」

 

ギュッ

 

「ちょっ……!み、美優さん……!?」

 

「ぷろでゅーさーさんは、おうじさまなんです……だから、わたしのことを……」

 

「……まもって……くれますよねっ……?」ウルウル

 

(うぅっ……か、かわいいっ……!//)

 

「……あ〜んっ☆はぁともぉ、何だか酔ってきちゃったぁ〜ん♪」

 

「静かに、佐藤」グイッ

 

「ぐ"え"っ……ちょっとぉ!はぁとだけ、なんか扱いが酷くなぁい!?」

 

「お前は酔ってないだろ!大人なんだから、少しは節度を持て!」

 

「ふ〜ん、そういうイヂワルしちゃうんだぁ。でもぉ……こ・れ・はスキ、だろぉ?」

 

ムニュッ♪

 

「ぐうっ……!?//」

 

「やっぱりな☆プロデューサーのえっち……☆」

 

「お前っ……!だ、だからっ、そういうことはだなぁ……!//」

 

「アイドルだからやめろって言いたいんでしょぉ?なら、問題ないぞ☆」

 

「……だってぇ、今のはぁとわぁ、プロデューサーだけのアイドルだもんっ☆」

 

「……何を言ってるんだ、お前……」

 

ムニュッ♪

 

「……っ!?」

 

「もうっ、しんちゃんばかりみて……わたしのことも、みてくれなきゃ、いや……」

 

「み、美優さんまでっ……!//」

 

「んふふ……♪オ・ト・ナのお姉さんたちに、挟まれるのって悪くねぇだろ☆」

 

「……くっ!知らねえよっ!//」

 

「うふふ♪ぷろでゅーさーさん……あたたかい……♪//」

 

------------------------------------------------

 

(……この体勢で……数十分が、経過したわけだが……)

 

「……うふふ♪」

 

「ん〜、スウィーティー……☆……zzz」

 

(流石に、そろそろ限界だ……いろんな意味でっ……!//)

 

「……おい、心……そろそろ、離れてくれ……頼む……//」

 

コテン

 

「あ、寝落ちして、勝手に離れてくれた。さてと、次は……」

 

「……」ギュッ

 

「……美優さん?そろそろ、離れてください」

 

「……いやっ……「みゆみゆ」ってよんでくれなきゃ……いうことをきかないもん……」

 

「っ……!このおねーさんは、本当にもう……!……わかりましたよ……」

 

「……なあ……みゆみゆ、お願いだ。頼むから、一旦離れてくれ、なっ?」

 

「……はぁ〜い……」

 

「ようやく終わった……ふぅ、あぶね〜……あともう少しで、俺は……どうにかなってたかもしれんな……」

 

「全く……この大人たちは……俺だって一応、健全な男なんだから……もう少しは、危機感をだな……」

 

「……待てよ?男である以前にプロデューサーなのか、プロデューサーである以前に男なのか……」

 

「……まあ、あまり考えると、頭がユッコになりそうだからやめとこ……」

 

「……ぷろでゅーさーさんっ……」

 

「はい?どうしました?美優……いや、みゆみゆ」

 

「わたし……さいきん、がんばってますか?」

 

「えっ……?」

 

「みんなとなかよくなれて、うれしいんです。でも……あいどるとして、がんばれてるのかなとおもって……」

 

「……もちろん。みゆみゆは、とっても頑張ってるよ。アイドルとしても、大人のおねーさんとしても」

 

「そうですか……よかったです……♪//」

 

「だから、これからもよろしく頼むよ。一緒に、シンデレラのお城に行こうな」

 

「はい♪これからもおねがいします♪ぷろでゅーさーさんっ……♪あの……さいごにひとつ、いいですか……?」

 

「ん?何だい?」

 

「……がんばったごほうびに、そのっ……あ、あたまを……なでてくださいっ……//」

 

「あ、あぁ……いいよ。ほらっ」

 

ナデナデ

 

「あっ……え、えへへ……♪//」

 

(見た目は大人のおねーさん。中身はただの、幼稚園児……)

 

(……だめだだめだ!いくら酔って、幼稚化してるからとはいえ、美優さんにそんなことを……!//)

 

「うふふ……♪ぷろでゅーさーさぁん……だいすき……です……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「今日は、ありがとうございました。すっかり俺も、ご馳走になってしまって……」

 

「あっ、いえ……こちらこそ、楽しい時間を過ごさせてもらって……ありがとうございました……」

 

「やっぱり、大人同士だと会話が弾みますね。未成年とは、お酒を飲みつつ、なんてわけにはいきませんから」

 

「そうですね。大人には、大人の楽しみがありますもんね……♪」

 

「……全速力でぇ……しゅがーはーと☆レボリューション☆……むにゃ……」

 

「……ただ……ここに、おねむな「26歳児」が一人いたのが、心残りですけどねぇ……」

 

「ふふっ……♪プロデューサーさんが……まるで、妹を迎えに来た、お兄さんに見えます……なんて♪」

 

「勘弁してください。これが妹だったら、体がいくつあっても足りませんよ。今でも、手がかかるのに……」

 

「心さんはとても、アクティブな方ですからね……♪私も、見習いたいぐらいです……♪」

 

「……あ〜あ……俺も「みゆみゆ」みたいな、大人しくて素直な妹が、欲しかったな〜」

 

「えっ……みゆみゆ……?」

 

「……酔ってた、美優さん……かわいかったですよ♪」

 

「ふぇっ……!?わ、私ってば……一体、何を……!?//」

 

「あれ?記憶にないんですか?」

 

「えぇ、そのっ……お恥ずかしながら……お酒を口にしてからの記憶が、少々……曖昧でして…..」

 

「……そうですか、残念です。あの時の美優さん、すごいかわいかったのになあ」

 

「か、かわいい……うぅ……恥ずかしいっ……//」

 

「それじゃあこれは、俺だけの記憶のメモリーに、保存しときますね」

 

「だ、だめです……!忘れてくださいっ……!//」

 

「そうですね〜。美優さんが、シンデレラになってくれたら考えますよ」

 

「もうっ……プロデューサーさんってば、いじわるなんですから……」

 

「ですから俺が、美優さんをシンデレラにしてみせます。お互いに、頑張って行きましょう」

 

「……ずるいです……そんな不意打ち……//」

 

「さて、それでは失礼しますね。今日は、ありがとうございました。っしょっと……ほら、いくぞ。心」

 

「さようなら……行ってしまいましたね……」

 

「……でも「みゆみゆ」か……意外と……いいかも……//」

 

------------------------------------------------

 

「……ううっ、春とはいえ……まだ、夜は冷えるなあ〜……」

 

「……zzz」

 

「全く……散々かき回したクセに、気持ちよさそうに寝やがって、こいつ……」

 

「しかも、よりにもよって、オフショルかよ……これじゃあ、寒いんじゃないか?」

 

「……ん……」

 

「おっ。やっと、起きたか」

 

「ん〜?……プロデューサー……?」

 

「おはよう、心。もう夜だけどな」

 

「えっ……?はぁとたち……美優ちゃんのお家にいたんじゃ……ま、まさかっ……!」

 

「……やぁ〜んっ☆はぁとぉ、プロデューサーにぃ、お持ち帰りされちゃってるぅ〜ん☆」

 

「……やっぱり、いいか。なんちゃらは風邪を引かないって言うし」

 

「なんか何気に、酷いことを言われてる!?ていうか、さっむ!!」

 

「あぁ、もう……ほら、心。一旦降りろ」

 

「エェ〜!?か弱いはぁとを、置いていこうってのぉ?ひっど〜いっ!」

 

「あっ、その手があったか」

 

「……はいはい、降りますよ。降りればいいんだろ?この鬼畜め☆」

 

「……それはさておき、ほれ。これを着ろ」

 

「えっ、何、急に……」

 

「お前、今日はオフショルだろ?冷えるだろうし、俺のコートを着とけ。風邪を引かれたら、困るからな」

 

「それに……俺がこんな夜道に「女の子」を、置いてけぼりにするわけがないだろ」

 

「……何だよ……急に、男らしいじゃねーかよ……☆//」

 

「急には余計だ。さあ、事務所に行こうぜ。今日はもう遅いから、泊まっていけ」

 

「それじゃあ、お言葉に甘えて……えいっ♪」

 

「おい!何、くっついてるんだよ!離れろっ!」

 

「だってぇ、コートだけだと寒いしぃ、こうなら暖かいでしょ?……それとも……イヤ……?」

 

「……ったく……ほら、行くぞ……//」

 

「んふふ〜♪プロデューサーてば、わかってるぅ♪」

 

「……でも……さっきのはちょっと、ハートにずきゅん☆と、きちゃったぞ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ずきゅん……?何だそりゃ」

 

「何でもねえよ☆ほらぁ、今は、はぁとをエスコート、し・ろ・よ☆」

 

「はいはい。わかりましたよ」

 

「……それとぉ……こっちのエスコートも、して欲しいな……えいっ☆」

 

チュッ♪

 

「なっ……お、お前っ!急に、何をするんだよっ!?//」

 

「はぁと……ううん、私ね……もう抑えられないの……だから……ねっ……」

 

ムニュッ♪

 

「……この胸のドキドキを……プロデューサーと、共有したいな……なんて……♪//」

 

「ちょっ……し、心?」

 

「プロデューサー……私と……「一緒」になろうよ……ねっ?//」

 

「はぁっ!?いや……俺には、まだ……心の準備が……じゃなくてっ!」

 

「お、お前はアイドルなんだぞ!?自分が何を言ってるのか、わかってるのか!?//」

 

「何を言ってるか……?そうだね……わっかんな〜い☆じゃ〜ん☆ドッキリ大成功〜☆」

 

「……は?……ドッキリ……?」

 

「はぁとね?プロデューサーが、美優ちゃんのことばかり構うから、ちょっぴり妬いちゃってたの☆」

 

「だ・か・ら、少し、イタズラしてみちゃった☆やぁん☆はぁとってば、超乙女〜☆」

 

「イタズラって……おい!心!ちょっと来い!お前はこれから、事務所で説教だ!」

 

「いや〜ん☆旺盛な狼に、襲われちゃ〜う☆」

 

「あっ、こらっ!待ちやがれ!!//」

 

「ふふ……プロデューサーてば、あんなに顔を真っ赤にしちゃって……♪」

 

「……本当はね……さっき、言ったことは……」

 

「……ま、いっか☆今のはぁとは、みんなのはぁとだしぃ☆そ・れ・に☆今は、あの狼から逃げなくちゃね☆」

  

「これからもよろしく頼むぞっ☆プロデューサー☆」



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清純シンデレラ 水本ゆかり

「わぁ〜……綺麗〜……♪」

 

「素晴らしい、眺めですわね……♪」

 

「喜んでもらえてよかった。連れて来た甲斐があったよ」

 

「しかし……よろしかったのでしょうか?」

 

「ん?どうした、星花?」

 

「プロデューサー様のご厚意とはいえ……わたくしたちだけ、連れてきていただいてしまって……」

 

「気にするな。素晴らしいものは、みんなと共有したいんだ。ゆかりもそう思うだろ?」

 

「そうですね♪みなさんと共有した方が、感動もひとしおな気がします……♪」

 

「プロデューサー様……うふふ……♪お優しいのですね♪」

 

「いやいや。むしろ、感謝したいのは俺の方だよ。3人とも、美術館でのコンサートを頑張ってくれたしな」

 

「とても、楽しかったですわね♪美術館で、コンサートだなんて、素敵なお仕事でした♪」

 

「えぇ♪まるで、夢のようなお時間でした♪私たちのために、ありがとうございます♪プロデューサーさんっ♪」

 

「何、お互い様さ。それより……」

 

「……うぅっ」

 

「おい……琴歌……大丈夫か?」

 

「き、気にしないでください……この程度でおののいていては、西園寺家の恥なのでっ……!」

 

「そうか。それじゃあ、ゆかり、星花。行こうぜ」

 

「えっ……?え、えっと……その……」

 

「あっ……う、うぅ……置いていかないでくださいまし……」

 

「冗談だ。ったく……前にロケで行った、スカイウォークでもこんな調子だったよな?」

 

「そっ、それはっ……!」

 

「張り切り過ぎて無茶をするのは、琴歌の悪い癖だぞ?年頃の女の子だし、気持ちはわからなくもないけどさ」

 

「うぅ……反省します……でも……こうして、何事にも勇気を持ち、新たな一歩を踏み出せるのも……」

 

「……プロデューサー様と……楽しい思い出を、共有したいからかもしれませんわ……♪なんて♪」

 

「自信を持つのもいいけど、無理はしないこと。ほらっ、手を貸してやるよ」

 

「あっ……うふふ♪プロデューサー様の手って……すごく大きくて……力強いのですね……♪//」

 

「ははっ。琴歌の手は、小さくて柔らか……」

 

「……」ジー

 

「……じゃなくて!俺はただエスコートしてるだけだ!変なことは考えてないからなっ!//」

 

「ふふっ♪プロデューサー様ってば……♪」

 

「……えいっ♪」

 

ギュッ

 

「ん?せ、星花……?急に、どうしたんだ……?」

 

「……わたくしにも、エスコートを……お願い出来ますか?」

 

「!!」

 

------------------------------------------------

 

「何だ?星花も、高い所が苦手だったのか?」

 

「はいっ♪あまりの高さに、少々……足がすくんでしまいました……♪//」

 

「……にしては、さっきまで……普通に、景色を眺めてたような気がするんだが……」

 

「……プロデューサー様は、いじわるです……ですので、少し……小悪魔になっちゃいますっ♪」

 

「まあ……怖いなら、無理はするなよ……?」

 

「は〜い♪……うふふ♪プロデューサー様の腕……とても、逞しいですっ♪//」

 

「あらっ♪星花さん、いいですわね♪それでは、わたくしもっ……♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!?こ、琴歌まで、何だよっ!?//」

 

「何って……私たちのエスコートを、してくださるのでしょう?」

 

「するとは言ったけど……琴歌まで、腕にくっついてくるから……//」

 

「うふっ♪プロデューサー様のお手を、拝借させていただくより、腕の方がさらに、安心出来ますわねっ……♪」

 

「なあ、お嬢様方?一応聞くが、エスコートだよな?少し……近すぎるような、気がするんですけど……//」

 

「あらっ?そんなことは、ないと思いますわ♪ねっ、琴歌さんっ♪」

 

「はいっ♪わたくしも、星花さんと同じ意見ですわ♪」

 

「そ、そうか?なら、いいんだが……でも、な……」

 

プニッ♪

 

「……俺的には、もう少し……距離を置かれた方が、いいと思うんですけどね……?//」

 

「そんなことはありませんわ♪では、私たちをしっかりと、エスコートしてくださいまし♪」

 

「……わかったよ。そのかわり、タワーを降りるまでだからな?」

 

「「は〜いっ♪」」

 

「やれやれ……ゆかりは、こういう場所は大丈夫だったか?」

 

「えっ……?そ、そうですね……高所からの美しい眺めは……嫌いではないです」

 

「それはよかった。この中じゃある意味、ゆかりが一番お姉さんかもな。ははっ」

 

「いえ……そんなことは……」

 

「ゆかりお姉さん♪いい響きですねっ♪」

 

「ゆかりお姉様〜♪ですわっ♪」

 

「それじゃあ、そろそろ食事にしよう。景色を一望しながら、食事が出来るレストランを知ってるんだ」

 

「うふふ♪それは、楽しみですわね♪」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……よし、みんないるな。それじゃあ、帰ろうか」

 

「そうですね。そろそろ……日が暮れてきましたしね」

 

「とても楽しくて、充実した時間でしたわ♪」

 

「ちょっと車を持ってくるから、ここで待っててくれ。みんなの家に送っていくよ」

 

「あら、お気遣いありがとうございます♪でも、わたくしたちは大丈夫ですわ♪なぜなら……」

 

「琴歌お嬢様、星花お嬢様。お迎えにあがりました」

 

「迎えの者を、呼んでありますので♪」

 

「さ、流石は、一流のお嬢様だな……あはは……」

 

「プロデューサー様♪本日はどうも、楽しい時間をありがとうございました♪」

 

「いや、俺の方からも、お礼を言わせてくれ。三人とも、今日は仕事を頑張ってくれて、ありがとうな」

 

「いえいえ♪美術館でのロビーコンサートだなんて、わたくしたちにとって、とても光栄なお仕事でしたわ♪」

 

「そうですね……♪それぞれ、得意とする楽器を活かせれて、よかったです……♪」

 

「あぁ。ゆかりのフルート、琴歌のチェロ、星花のバイオリン。どれも、素晴らしい音色だったよ」

 

「うふふ♪特技のバイオリンをお仕事に活かせれて、お父様やお母様もきっと、喜んでいますわ♪」

 

「これからも、この調子で一緒に頑張ろう。アイドル、そして、ノーブルセレブリティとしてもな」

 

「アイドルとプロデューサー。お互いに切磋琢磨し、研鑽を積んでいく……素晴らしい響きですわね♪」

 

「これからも、頼りにさせていただきますわ♪プロデューサー様っ♪」

 

「頼りにしてくれるのは嬉しいんだぞ?琴歌。でも……もう少し、気をつけてくれると嬉しいんだがな……」

 

「えっ?何をですか……?」

 

「さっきみたいに密着するのは、お嬢様やアイドルとしても、色々と誤解を招くだろうし、それに……」

 

「……俺も、一応男だしさ……あまりよくないというか、なんというか……//」

 

「……うふっ♪ご安心くださいっ♪あのようなことは、プロデューサー様にしかいたしませんっ♪」

 

「琴歌さんの言う通りですっ♪わたくしも、小悪魔になるのは、プロデューサー様の前だけですわ♪」

 

「うん……?まあいいか。それじゃあゆかり、俺らもそろそろ行こうか。少し、待っててくれ」

 

「はいっ♪送迎、よろしくお願いします……♪」

 

「それでは、プロデューサ様、ゆかりさん。ごきげんよう」

 

「あぁ。二人とも、今日はありがとう。また、よろしくな」

 

「ふふっ♪また、お会いしましょうね♪琴歌さん♪星花さん♪」

 

------------------------------------------------

 

「ゆかり。今日は、ありがとうな」

 

「いえいえ♪こちらこそ、お招きいただき、ありがとうございました♪お食事も、ご馳走になってしまって……」

 

「気にしないでくれ。それより、食事はどうだった?口に合ったか?」

 

「はいっ♪とても、美味しかったです♪まさか、お食事もいただけるなんて♪」

 

「東京タワーに来たら、是非、連れて行きたいと思ってたんだ。喜んでもらえてよかったよ」

 

「それって……私たちを……と、言うことですか?」

 

「ははっ、そうかもな。あ、でも、決して嫌がらせしたかったわけじゃないぞ?そこは、勘違いしないでくれ」

 

「嫌がらせ……?」

 

「東京タワーの展望台に行った時に、琴歌が怖がってただろ?」

 

「えぇ……うずくまっていましたので、てっきり体調が優れないのかと思いました……」

 

「俺もな?実を言うと、最初は思いつきで、タワーに登ってみようって言ったんだ」

 

「その時に、しまった、と思ったんだが、すでに琴歌が目を輝かせて、こっちを見てるんだ。足を震わせてな」

 

「で、高い所が苦手なはずなのに「大丈夫です!登りましょう!」って、聞く耳を持ってくれなかったんだよ」

 

「ある意味……プロデューサーさんを信頼してるから、張り切れるのだと思いますよ……?」

 

「それは嬉しいが……あまり、張り切られても困るぞ?さっきもそれで、エスコートをするはめになったしさ」

 

「……エスコート……」

 

「全く……あれだけ、無理をするなって言ったのに……琴歌の世話係の人もさぞ、苦労をしてるだろうな」

 

「……あの……プロデューサーさん……琴歌さんや、星花さんをエスコートをして……どうでしたか?」

 

「どうって……どういう意味だ?」

 

「……その……お二方を「異性」として、意識されたのかな……と、思いまして……//」

 

「なっ……!お、俺は、アイドルをそういう目でなんか見てないぞ!うん!断じてないっ!//」

 

「ですが、あの時……プロデューサーさんの顔が少し、惚けているようにも見えましたので……」

 

「いや、気のせいだっ!全く……あの二人はお嬢様なんだから、節度を持って欲しいものだな!あはは……//」

 

「……」

 

「……プロデューサーさん……私も、その……」

 

ブーブー……

 

------------------------------------------------

 

「ん?電話が鳴ってるな。ちょっと、待っててくれ」

 

「はいっ、もしもし……あっ、ちひろさん。お疲れ様です」

 

「はい、はい……えっ……わかりました、すぐに行きます。それではまた、後ほど……ふぅ……」

 

「どうされたのですか?」

 

「いや、乃々が色々と、駄々を捏ねてるそうだ。やっぱり、一人で仕事に行かせたのは、不味かったかな……」

 

「えっ、乃々さんが……ですか?」

 

「うん。今日は、ノーブルセレブリティの方を優先しなきゃいけなかったから、乃々に一人で行かせたんだ」

 

「何となく、嫌な予感はしてたんだけど……案の定、予感が当たっちゃったな」

 

「そうなのですか……」

 

「罪悪感はあったんだ。行く前に、半泣きでずっと、俺のスーツの袖を掴んで離さなかったし」

 

「「プロデューサーさんが一緒じゃなきゃイヤです!」なんて涙目で言うから、俺もすごい辛かったんだぞ?」

 

「でも、将来、立派なアイドルになってもらうために、心を鬼にしたんだが……まだ、早かったみたいだな」

 

「それは、お気の毒に……乃々さんは色々と、心細かったのではないでしょうか?」

 

「そうだな……あ〜あ。乃々が、ゆかりみたいだったらよかったのになあ」

 

「えっ、私……ですか?」

 

「ゆかりってさ、周りの同年代と比べて、しっかりもののお姉さんって感じだろ?礼儀正しいし、素直だしさ」

 

「甘え放題でワガママな乃々とは、対照的だなって思ったんだよ」

 

「是非、ゆかりの爪の垢を煎じて、乃々に飲ませたいよ。むしろ、俺も飲まなきゃいけないかな。ははっ」

 

「……そんなことは……」

 

「あっ、ちなみにさ。さっき、電話が来る前に俺に何か、言いかけてなかったか?」

 

「……いえ、お気になさらないでください。些細なことでしたので……」

 

「そうか?ならいいんだが……ところで、ゆかりは確か、女子寮だったよな?」

 

「えぇ。そうです」

 

「よし、ゆかりを寮に送ったら、ちょっと乃々の所に行って来るよ。全く、世話が焼けるヤツだぜ……」

 

「あ、はい……寮まで、よろしくお願いします……」

 

「……」

 

「……私だって……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「よ〜し。今日も仕事、仕事っと……」

 

「おはようございます♪プロデューサーさん♪」

 

「おっ、おはよう、ゆかり。昨日はありがとうな。ところで……もう、事務所に来てたのか?」

 

「私こそ、素敵なお時間をありがとうございました♪えぇ♪いいお天気でつい、早起きをしてしまって……」

 

「流石はゆかりだな。今日も、よろしく頼むよ。じゃあ俺は、今日のスケジュールを確認しようかなっと……」

 

「プロデューサーさんは、いつもこの時間に、事務所に来られてるのですか?」

 

「いつもは、もう少し遅いかな。もしかしたら俺も、ゆかりを見習って規則正しくなったのかもな。ははっ」

 

「……いえ……そんな……」

 

「さ〜て、チェックチェック……ゆかり、志希、奏……うん。予定通りだな」

 

「今日は、他のアイドルの方も、お仕事をしてらっしゃるんですね」

 

「うん。これから、ゆかりに行ってもらう仕事場に、みんなもいるんだ」

 

「えっ、同じお仕事なのですか?それは初耳です」

 

「あぁ、ごめん。正確には、同じ仕事場だけどみんなそれぞれ、別の階で仕事をしてもらってるんだ」

 

「そうですか。少し、寂しい気もしますが、特に変更点などがなくてよかったです」

 

「それじゃあ、そろそろ行ってみるか?」

 

「はいっ♪今日も、送迎をよろしくお願いしますっ♪」

 

「任せてくれ。じゃあ、車の鍵を持ってくるから……」

 

トゥン,テケテンテンテンテン,トゥントゥトゥン♪

 

「ん?電話……?悪い。ちょっと、待ってくれ」

 

「はい、もしもし……あっ、ちひろさん。おはようございます」

 

「……えっ、また……はい……わかりました。すぐに行きます……ふぅ……」

 

「どうされたのですか?」

 

「……志希が……事前の打ち合わせに、来てないそうだ」

 

「志希さんが……?どうかされたのでしょうか……」

 

「全く……乃々の次は志希かよ、しょうがないな。悪い、申し訳ないが、先に仕事場に向かってくれないか?」

 

「えっ……一人で……ですか?」

 

「うん。志希を捕まえたらすぐに、車で向かうからさ。頼むよ」

 

「……いやです……」

 

「……はい?」

 

「……プロデューサーさんが、一緒に行ってくれないのなら……お仕事に行かないです……」

 

「ちょっ……ゆ、ゆかり!?どうしたんだ、急に……ほら、仕事場に向かってくれよ。なっ……?」

 

「……やっ!」

 

「は、はは……面白い冗談だ……ゆかりは、ジョークもたしなんでるんだな……それじゃあ、仕事に……」

 

「いやっ、ですっ!」プクッ

 

「おいおい……う〜ん、まあ、送ってから志希を捕まえても……わかったよ。送るから、準備をしてくれ」

 

「……っ!……はいっ♪わかりましたっ♪」

 

「……何だか……調子が狂うな……」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、よろしくお願いします。じゃあ、ゆかり、頼んだぞ」

 

「……プロデューサーさんっ?行ってしまうのですか……?」

 

「志希を捕まえたら、すぐに様子見に来るよ。だから、頑張って来てくれ」

 

「……」ギュッ

 

「えっ……ゆかり……?」

 

「……いっちゃ、いやです……プロデューサーさんがいてくれないと……寂しいですっ……」ウルッ

 

「えっ……ど、どうしたんだ?いつもは颯爽と、仕事に向かっていくじゃないか。具合でも悪いのか?」

 

「……む〜……プロデューサーさんは、全然……わかってくれないんですから……いぢわるです……」

 

「いじわるって……俺、何かゆかりに、しちゃったか……?」

 

「……知らないですっ……」

 

「えっと……ごめんな?」

 

「……本当に反省してるなら、欲しいです………給料3ヶ月分の物をっ……//」

 

「給料……はぁっ!?ゆ、ゆかり!お前……何を言ってるんだ!?」

 

「えっ?私……今、何か言いましたか……?」

 

「ん?確かに今、ゆかりの声で……」

 

「……にゃはは♪」

 

「……にゃ……?う、うわっ!?志希っ……!?」

 

「プロデューサーにゆかりちゃん、こんちゃ〜♪こんな所で、何をしてるの〜♪」

 

「急に横から出てくるな!ていうか、お前こそ何をしてるんだよ!」

 

「何って……お散歩?」

 

「散歩も何も……お前がいないって、上で大騒ぎになってるんだぞ!?」

 

「あ〜、あのお仕事ね〜。なんか退屈そうだったから、抜け出してきちゃった♪」

 

「退屈って……お前な〜……」

 

「ねぇねぇ!そんなことより、これを見てよ!じゃ〜ん♪」

 

「ん?何だ?この機械は……」

 

「ふふ〜ん……♪プロデューサーさんっ♪これは、ボイスチェンジャーって言うんですよっ♪」

 

「えっ、これは……私の声……ですか?」

 

------------------------------------------------

 

「にゃはは♪抜け出してから、ちょっと暇つぶしに弄って、改造をしたんだ〜♪」

 

「本当は、リボン型にしようと思ったんだけど、色々と危なそうだからやめちゃった♪どう?すごいでしょ♪」

 

「へぇ〜……流石は志希だな……じゃなくて!仕事を抜け出して、何をしてるんだよ!いいから、戻るぞっ!」

 

「うふふ♪それでは……あたしのお願い事を一つ……聞いてくださりますか……?」

 

「……何だ?」

 

「……プロデューサーさんの匂いを……ハスハスさせてくださいっ♪」

 

「っ……!?」

 

「……し、志希さんっ……!何を、おっしゃってるんですかっ……!//」

 

「何って……ハスハス、でしょうか……?」

 

「わ、私の声で、復唱をしないでください……!私は、そんなはしたないことなんて、言いませんっ……!//」

 

「まあ、はしたないだなんて……だってよ、プロデューサー。どう思う?」

 

「志希が、ゆかりの声だったり、俺の声だったり……ああ、もう!ややこしくなってきた!」

 

「事務所の色んな人や、アイドルの声をサンプリングしてあるからねっ♪まだ、全員分はないけどさっ♪」

 

「と、とりあえず!いいから行くぞ!ほらっ!」グイッ

 

「きゃあんっ♪プロデューサーさんの、ケ・ダ・モ・ノ♪」

 

「や、やめてくださいっ!!//」

 

「ぐっ……この声はゆかりじゃない……ゆかりじゃないんだっ……!//」

 

「う〜ん……あ〜面白かった〜♪それじゃあ、お仕事に行こうよっ♪プロデューサー♪」

 

「ったく……!本当に気分屋だな、お前は……!//」

 

「猫は移り気だからね〜♪……あ〜そうだ♪ねねっ、ゆかりちゃんっ♪」

 

「はい。何でしょうか……?」

 

「……ゆかり……俺は、お前が欲しい……」

 

「ふえっ……!?//」

 

「ば、ばか!何を言ってるんだ、俺……じゃなくて志希!!変なことを言ってないで、行くぞ!ほらっ!//」

 

「にゃはは♪それじゃあねぃ〜♪すぃ〜ゆぅ〜♪」

 

「……」

 

「……あぅ……ほ、欲しい……//」

 

------------------------------------------------

 

「んくっ、んくっ……」

 

「……ふぅ。ようやく、ひと段落したな。あとは、アイドルたちを待つのみか……」

 

「う〜ん……にしても、静かだな。スタジオ外だから、当然っちゃ、当然なんだけどさ……」

 

「……」

 

チラッ

 

「変なことに使われると思って、志希から没収したが……ったく……毎回、妙なものばかり作りやがって……」

 

「……」

 

「……誰も、見てないよな……?ふむ……アイドルの名前を、選択するんだな……コホン」

 

「ぷ、プロデューサーさんっ♪お疲れ様ですっ♪」

 

「……すげぇ……マジで、ゆかりの声になってる……」

 

カチャッ

 

「あ〜ん……お仕事退屈だな〜……ふぁぁ……ネムネム……」

 

「志希の声だ……ていうかあいつ、自分の声も入れてたのか。どんだけ、自分が好きなんだよ……」

 

カチャッ

 

「あら、プロデューサー。お疲れ様。今日は、月が綺麗ね」

 

「そうね。頭上の照明がとても輝いてるわ」

 

「う〜む……奏の声だ……すげえなあ、これ……」

 

「何だか、楽しそうね♪私も混ぜてもらえるかしら♪」

 

「うふふっ♪言いわよ♪……ん?」

 

「……♪」ニコッ

 

「っ……!?か、奏……!?」

 

「あらっ♪プロデューサーって、「そっち」の気があったのね♪大スクープだわ♪」

 

「ま、待て!違うんだ!」

 

「ふふっ♪まずは、LIPPSのみんなに、報告しなきゃっと……♪」

 

「本当に違うんだって!これには深いわけがだな……!//」

 

「そうなの?それじゃあ、弁明を聞かせてもらおうかしら」

 

------------------------------------------------

 

「……というわけなんだ」

 

「ふ〜ん……志希がねぇ……」

 

「だから、ほんのちょっと遊んだだけで、変な気は全くないんだよ」

 

「……」

 

「……こんにちは。私、一ノ瀬志希って言うの。よろしくね」

 

「なるほど……本当に、志希の声になってるわ」

 

「なあ、すごいだろ?本当に、本人が喋ってるみたいなんだよ」

 

「でも……声だけと言えど、女の子を弄ぶのは、あまり感心しないわよ」

 

「うっ……そ、それは……反省してます……」

 

「ふ〜ん?……本当に反省してるなら、わかってるわよね?」

 

「ん……?」

 

「……奏……俺は、お前が欲しい……ふふっ♪プロデューサーの声にも変換が出来るのね♪面白いわ♪」

 

「おい!俺の声で「わよ」をつけるな!それに、何だよ奏が欲しいって!俺は変態かっ!」

 

「何よ。繊細な乙女心を弄んだくせに。それとも……今すぐ「共有」を、してあげてもいいんだけど?」

 

「うぐっ……!理不尽感が半端ないけど、なぜか逆らえない……!」

 

「それじゃあ、これはしばらく、私が預かるわねっ♪」

 

「えっ?べ、別にいいけど……」

 

「うん?何か、言いたそうね?」

 

「いや……奏が、このボイスチェンジャーに興味を持つなんて、意外だな〜って思ってさ」

 

「あら?柄じゃなかったかしら?」

 

「そこまでは言わないけどさ。でも、あまり感心してなさそうだったから、つい……」

 

「ふふっ。正直、感心はしてないわ。だから、これ以上悪用されないように、私が管理してあげるのよ」

 

「それとも……二度と使わないって、約束出来るかしら?」

 

「そんなの……くっ、何も言えねえ……!」

 

「決まりね♪これは、私が預かるわね♪じゃあ私、まだ仕事があるから、そろそろ失礼させてもらうわ」

 

「……あぁ、頼むぞ。頑張ってきてくれ」

 

「じゃあ、またあとでね」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ。ようやく、収録が終わりました……」

 

「少し、緊張をしてしまいましたが……なんとか、スタッフさんからOKをもらえて、よかったです」

 

「プロデューサーさんが、いてくださらなかったのが……少々、心残りでしたが……」

 

「……もっともっと、アピールをしていかないと、ですね……」

 

「ところで、ここは……どこなのでしょうか……?随分と、人気がない場所に来てしまいました……」

 

「何も考えずに歩き回るのは、私の悪い癖ですね。直していかないと……ん?」

 

「……だ……」

 

「何やら、奥の方の部屋から声が聞こえたような……備品でも、取りに来たのでしょうか……?」

 

「……いえ、他人の詮索をするのは、よくないですね。早く、戻らないと……」

 

「……奏」

 

「……っ……!この声は……!?……少しだけ、ドアの外から拝聴……させていただきます……」

 

「……」

 

「ん……ちゅ……♪」

 

「!?」

 

「……ふふっ……しちゃったわね……♪」

 

「……あぁ、そうだな……」

 

「えっ……か、奏さんと……プロデューサーさん……!?」

 

「どうだった?感想は……//」

 

「何ていうか、その……奏の味がした……//」

 

「……こ、これって……まさか……!」

 

「もうっ、また……そんなに恥ずかしくなるようなことを言って……でも、そうね。私も……」

 

「……「初めて」は……プロデューサーの味がしたわ……♪//」

 

「……」

 

「……ここまで……私に言わせたんだから、あなたからも……答えを聞かせてもらうわよ♪//」

 

「……俺も、その……実は、ずっと前から奏と……初めてをしたいと思ってたんだ」

 

「うふふ♪それじゃあ……相思相愛ってことで……いいのかしら?」

 

「まぁ、そうなるな……//」

 

「……プロデューサーさん……奏さんと……っ……!」ダッ

 

「……うん?今、誰か……気のせいかしら」

 

------------------------------------------------

 

「……プロデューサーさんっ……!」

 

(……ふふっ……しちゃったわね……♪)

 

「何で……どうしてっ……!」

 

(うふふ♪それじゃあ……相思相愛ってことで……いいのかしら?)

 

「いや……!いやっ……!」

 

ドンッ!

 

「うわっ!!」

 

「きゃっ!す、すみません……」

 

「いえいえ……って……ゆかり!?」

 

「えっ……ぷ、プロデューサーさんっ!?どうして、ここに……?」

 

「どうしてって、それはこっちのセリフだ!急に、いなくなったから心配してたんだからな!」

 

「心配……ですか?」

 

「当たり前だろ……?ゆかりは俺の、大切なアイドルなんだから」

 

「……プロデューサーさんっ!」

 

「えっ……ちょっ……ゆ、ゆかり!?どうしたんだ!?」

 

「………クスン」

 

「あの……ゆかりさん……?急に、抱きついてくるのは……色々とよくないと思うんですけど?//」

 

「……プロデューサーさんっ……いや……ですっ……クスン」

 

「おいおい……どうしたんだ一体。何か、嫌なことでもあったのか……?」

 

「……クスン……置いて行っちゃ……いやですっ……私は、もうっ……スンッ」

 

「ん〜……とりあえず、一旦、控え室行こうぜ。なっ?」

 

「……はいっ……スンッ」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、ホットミルクだ。これを飲んで、落ち着け」

 

「……はいっ……ありがとうございます……」

 

「それじゃあ、本題に入ろうか。一体、何があったんだ?」

 

「……えっと……」

 

「ゆかりの様子を見に行ったのに、収録はもう終わったって聞いた時は、冷や汗をかいたんだからな?」

 

「……申し訳ありません……好奇心に動かされて、つい……」

 

「好奇心って……あのなあ。いくら社内と言えど、女の子が一人でフラフラするのは、感心しないぞ……?」

 

「……反省してます……」

 

「全く、今日のゆかりは何かおかしいぞ?仕事に行きたくないって言い出すし、勝手に一人でうろつくし……」

 

「前から多少、天然気があるとは思ってはいたが……それでも、いつもと様子が違っていたのは確かだ」

 

「……やはり、プロデューサーさんは、すごいです……すっかり、見透かされていたのですね……」

 

「当然だ。ゆかりは、俺のアイドルだからな。これぐらいお見通しだ」

 

「俺のって……また、そのようなお言葉を、平気で……うふふ♪でも……すごく、嬉しいです……♪//」

 

「おいっ、嬉しがってどうする。俺は、ゆかりが心配でだな……」

 

「……プロデューサーさん?私は今……何なのでしょうか?」

 

「えっ、何って……う〜ん、そりゃ……ゆかりは、アイドルだろ?」

 

「そうですね。今の私はアイドルです。ですが、それ以前に……等身大の女の子……なんです♪//」

 

「私自身も、甘えんぼだったり、お茶目なところもあるんですよ?ですから、その……」

 

「……外面だけではなく、もっと……年相応な部分も、プロデューサーさんに、見て欲しかったんです……//」

 

「女の子なのはわかったけど、あまり無茶はしないこと。わかったな?」

 

「は〜い、ですっ♪」

 

「全く……ゆかりも、しっかりしているようで、天然なところがあるからな……気をつけてくれよ?」

 

「天然……かは、よくわかりませんが、それでは……いつまでも私のことを……見守っていただけますか?//」

 

「あぁ、もちろんだ。見守ってやるよ」

 

「うふふ♪ありがとうございます♪ところで、プロデューサーさん。一つ、質問をしてよろしいでしょうか?」

 

「何だ?」

 

「誠に申し訳にくいのですがその……先ほど……奏さんと、何をされてたのでしょうか?」

 

------------------------------------------------

 

「……っ!か、奏と!?」

 

「えぇ……何と言いますか、その……大変、会話が弾んでた様子でしたので……//」

 

「あ、あれはだな……!月が綺麗だって、話をしてたんだよ!今話題の、ストロベリームーンの話をなっ!」

 

「ストロベリー……?イチゴのように赤いと言う、あのお月様の話ですか……?」

 

「そうだ!ほら、奏って、ああ言うロマンティックな話とか好きだろ?だから、それについて話をしてたんだ」

 

「そうなのですか。私はてっきり……色恋のお話を……されてたのではないかと思って……//」

 

「い、色恋!?そんなことを話すわけないだろ!スタジオの休憩スペースでっ!//」

 

「えっ……休憩スペース?」

 

「そうだ、そんな公共の場で!しかも、アイドルとそんなことを話すか!」

 

「……失礼ですが、プロデューサーさん?先程まで……どこにおられましたか?」

 

「ん?どこにって……ゆかりが収録してた、スタジオだけど?」

 

「……収録現場から少し離れた、人気の少ない小部屋に、行かれた記憶はないでしょうか?」

 

「小部屋……?何のことだ?」

 

「私たちが先程、合流した場所の奥にあった、小部屋です」

 

「……あ〜、あの小部屋か。スタジオの備品の倉庫って聞いたけど……でも、それっておかしくないか?」

 

「おかしい……ですか?」

 

「だってあの時、俺はスタジオを出て、そして、ゆかりと合流したんだ」

 

「だから、俺がその小部屋にいたって言うなら、小部屋のドアから俺が出てこなきゃ、おかしいだろ?」

 

「あっ……確かに、そうですね……もしかして……奏さん……」

 

「でも、何で俺と奏が、休憩スペースにいたことを知ってるんだ?その時、ゆかりは収録してたはずだろ?」

 

「それは……収録が終わったあとに、スタッフさんからお聞きしましたので……」

 

「な、な〜んだ……そうだったのか〜。全く……スタッフさんはよく見てるなあ〜……あはは……」

 

「……そうだったのですね……」

 

------------------------------------------------

 

「でも、それを聞いてどうしたかったんだ?何かあったのか?」

 

「……何でもないですっ♪うふふっ……♪」

 

「なんだよ。随分と、ご機嫌そうじゃないか」

 

「そうですね♪この気持ちを例えるなら、このホットミルクと……私と、プロデューサーさんを合わせて……」

 

「……とても幸せで……甘くて、温かく……何でしょうね……?//」

 

「ははっ、何だよそれ。本当にゆかりは天然だなあ」

 

「……言葉ではわからないので……行動で表してみますっ♪……えいっ……♪」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……ゆ、ゆかり!?何だよ!また、急に抱きついて来て……!//」

 

「私……言いましたよね……?……「等身大の」私を見て欲しいって……♪//」

 

「等身大だか何だか、知らないけど!離れろっ!!//」

 

「ふふっ……♪いや〜で〜すっ♪」

 

「……くっ……!//」

 

「……プロデューサーさんって……まつ毛……長いですねっ♪」

 

「ん?……まつ毛……?」

 

「それに……すごく、綺麗な瞳です……まるで……吸い込まれるようです……♪//」

 

「おい……ゆかり?何で、そんなに……顔を近づけて来るんだ……?」

 

「……プロデューサーさんって……間近で見ても、やはり……とても素敵ですねっ……♪//」

 

「ちょっ……ゆ、ゆかりっ……!近いってっ……!//」

 

「……このまま……等身大の、私の「想い」を……受け取ってください……んっ……」

 

「ま、待てっ!これ以上は……本当にやば……」

 

コンコン

 

「……っ!?は、はいっ!ちょっと、待ってくださいっ!」グイッ

 

「きゃっ……!……もうっ……」

 

------------------------------------------------

 

「……失礼するわね」

 

「おっ、奏じゃないか。どうした?」

 

「収録が終わったことを、報告しに来たのよ」

 

「そうか……お疲れ様。奏」

 

「ありがとう。それより……ゆかり。プロデューサーに、何かされなかった?」

 

「えっ、私ですか……?」

 

「なっ……!べ、別に俺は、ゆかりに何もしてねえよっ!//」

 

「あなたには聞いてないわ。私は、ゆかりに聞いてるの」

 

「えっと……私は特に、何も……」

 

「……そう、よかった。それを聞いて、安心したわ」

 

「何で急に……そんなことを聞いたんだ?」

 

「プロデューサーは、隙を作るとすぐに、捕食をしようとするケダモノだからね。信用出来なかったのよ」

 

「おい!ケダモノってなんだよ!!」

 

「……でも……この様子だと大丈夫そうね。全員無事に、収録が終わったみたいだし」

 

「ん?全員……?志希は、どこにいるんだ?」

 

「さぁ?あなたの車の中で、寝てるんじゃない?」

 

「車……?……ちょっと待て、まさか……ないっ!俺の車の鍵がないっ!」

 

「うふふ♪志希の方が一枚、上手だったようね♪」

 

「まさか、あいつ……俺がスタジオに、連れて行った時に……!」

 

「さあ、行きましょう。このままだと私たちも、プロデューサーに襲われかねないわ」

 

「……そうですね。プロデューサーさんは……油断ならないかもしれませんね……♪」

 

「お前ら……!あぁ、もう!とっとと、事務所に帰るぞ!ほら!準備をしろっ!」

 

「……ふふっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「三人とも、今日はお疲れ様。よく頑張ってくれた」

 

「礼には及ばないわ」

 

「こちらこそ……本日は、ありがとうございました♪」

 

「これで、今日の仕事は終わりだ。ゆっくり休んでくれ」

 

「あら?何か、ご褒美とかはないのかしら?」

 

「褒美……?それじゃあ今度、このメンバーで食事でも行くか?」

 

「そうね、それもいいけど……もっといいものが欲しいわ。例えば……左手の薬指、空いてるわよ♪」

 

「……っ!」

 

「なっ!また、お前はそういうことをっ……!いいか、お前はアイドルなんだぞ!?//」

 

「はいはい。じゃあ、またの機会にさせてもらうわ♪ところで……志希はどうするの?」

 

「……この状態で……帰れると思うか?」

 

「……んにゃ〜……zzz」

 

「志希さん……気持ちよさそうに、眠っていますね……」

 

「散々、俺を引っ掻き回してこれだよ。本当にこいつは、みくより猫っぽいぜ……」

 

「うふふ♪そうですね……♪志希さんは、プロデューサーさんによく懐いてる、猫さんみたいです……♪」

 

「懐かれても困るんだがな。まあ、もう少し事務所で預かっておくよ。それじゃあ、気をつけて帰ってくれ」

 

「えぇ。じゃあ、また今度ね……そうだ……ゆかり。ちょっといい?」

 

「はい?何でしょうか、奏さん」

 

「事務所から、寮に行くまでの間……私と一緒に、帰らない?」

 

「えぇ♪是非、ご一緒させていただきます♪」

 

「おっ、二人とも、仲が良いな。この調子で、これからも頑張ってくれ」

 

「うふっ……そうね……♪それじゃあゆかり、行きましょう♪」

 

「はいっ♪奏さんっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「今晩は……月が綺麗ね……」

 

「そうですね。雲一つないので、とても輝いて見えます……♪」

 

「ふふっ。このまま私たちも、あの月のように、アイドルとして輝き続けれるといいわね♪」

 

「えぇ♪そうですね♪……奏さん……一つ、質問をしてもいいでしょうか?」

 

「ん?何かしら?」

 

「今日……収録が終わったあとって、どこかに行かれましたか……?」

 

「私?そうね、終わったあとは、スタジオ内で一息ついてたわ」

 

「……「倉庫」で……ですか?」

 

「……どうかしらね。でも、どうしてそう思うのかしら?」

 

「そうですね……「女のカン」と、言うものでしょうか」

 

「なるほどね。それじゃあ、私も一ついいかしら?」

 

「……何でしょう」

 

「あの時に、プロデューサーと随分、仲睦まじそうだったけど……何をしようとしてたのかしら?」

 

「……「将来」の相談をしてました。アイドルの……そして、一人の女性としての……」

 

「……ふ〜ん。なるほどね」

 

「でも……よく私たちが、控え室にいるということが……わかりましたね……?」

 

「そうね……「女のカン」と、言うものじゃないかしら♪」

 

「うふふ……そうですか……♪」

 

「……あ〜あ。また一人、増えちゃったなあ「ライバル」がね」

 

「私は……信じています。いつか……薬指に、暖かい温もりをいただけると……」

 

「ふふっ、そうね♪私も信じてるわ♪「あの人」次第だけど……♪」

 

「でも……私たちは、同じアイドルだからね。仲良くやっていきましょう?」

 

「えぇ……♪私も奏さんや、事務所のみなさんと一緒に、もっと高みを目指したいです♪」

 

「そうね。それじゃあ、ゆかり。これからもお互いに、頑張っていきましょうね♪」

  

「「うふふっ……♪」」



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浪漫シンデレラ 小日向美穂

「……ちゃん」

 

「……うふふ……♪」

 

「……ほ……ちゃん」

 

「……大丈夫で〜す……起きてますよぉ〜……zzz」

 

「……美穂ちゃんっ!!」

 

「わわっ!す、すみませんっ……!これは決して、寝てたとかそういうわけではなくてっ……!」

 

「もうっ……美穂ちゃんてば……」

 

「……って……あれ?ここは……どこ……?」

 

「さぁて♪一体ここはどこでしょうか♪それと……ボクのこと、わかる?」

 

「わかるも何も、あなたは……って……えっ、ええっ!?も、もしかして……」

 

「……おはよう♪美穂ちゃんっ♪」

 

「……プロデューサーくんっ!?」

 

「正解っ♪流石は美穂ちゃんだね♪ボク、嬉しいな♪」

 

「えっ……ぷ、プロデューサーくんが……動いて、喋ってる……」

 

「あははっ♪少し、不思議な感じがするけど……「初めまして」で、いいのかな?」

 

「……えっと……プロデューサーくんとはいつも、部屋でもお布団の中でも、常に一緒だよね?」

 

「でも……プロデューサーくんとお話をするのは初めてだけど、初対面って言うのは、違和感があるし……」

 

「……うぅ……何だか、わからなくなってきたよぉ〜……」

 

「そんなに、深く考えなくていいよ。それよりボクは、美穂ちゃんに伝えたいことがあって来たんだ」

 

「伝えたいこと……?」

 

「うんっ♪美穂ちゃん、いつもボクのことを、もふもふしたり、ぎゅ〜っとしてくれてありがとう!」

 

「えっと……どういたしまして……?」

 

「優しく撫ででもらったり、思いっきりぎゅ〜っとして、暖かい温もりをくれたりして……」

 

「……ボクは、美穂ちゃんのおかげで、毎日が幸せなんだ♪と〜ってもね♪」

 

「……え、えへへ……なんだか改まって言われると、照れちゃうな……//」

 

「だから、そのお礼も兼ねてこれから、美穂ちゃんには見てもらいたいものがあるんだ」

 

「見てもらいたいもの……?」

 

「うんっ♪それじゃあ、ちょっと、目をつむって貰えるかな?」

 

「えっ……う、うん。こうでいいかな……?」

 

「大丈夫だよ♪あっ、それと、一つ言っておくね」

 

「……これから、美穂ちゃんが見た物は……夢か現実か……美穂ちゃん自身で、判断をして欲しいんだ」

 

「えっ……?」

 

「それじゃあ……えいっ!」

 

ポンッ!

 

「きゃっ!……あっ……また眠く……ねむ……く……なって……zzz」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「ん……ここは、どこ……?」

 

「……う〜ん……見た感じ……どこかの部屋みたいだけど……」

 

「……って……部屋?何だか……見覚えがあるような……」

 

「あの、スタンドミラー……壁飾り……観葉植物……」

 

「って、もしかして……ここって、私の部屋?……あっ、そっか……目が……覚めたんだ」

 

「ということは、さっきのは……夢、だったんだね……ふふっ♪短かったけど、楽しい夢だったな……♪」

 

「……よ〜し!今日も一日、頑張らなくちゃね!今の私は、輝くアイドルなんだからっ!」

 

「じゃあまずは、顔を洗おうっと……ん?」

 

「……う〜んっ……あれ?おかしいな……か、体が動かないっ……!どうしてっ……!?」

 

「それに……何か、視線が……私って……こんなに、小さかったっけ?」

 

ガチャッ

 

「……っ!だ、誰っ!?……えっ……」

 

「……」

 

「……蘭子ちゃん?」

 

「……」キョロキョロ

 

「何で……私の部屋に、蘭子ちゃんが?それに……蘭子ちゃん……随分と、身長が高くなった?」

 

「……♪」

 

ギュッ

 

「きゃっ!?ら、蘭子ちゃんっ……!?」

 

「……ふふっ♪」

 

「ど、どうしたの!?急に、私を抱きしめてっ……!//」

 

「……ふふふ……汝の、勇ましくも猛々しい魂の鼓動……しかと、我が魂と共鳴せりっ!」

 

「……?」

 

「えへへ……プロデューサーく〜んっ♪」

 

「っ……!?プロデューサーくんっ!?」

 

「もふもふしてて、気持ちいい♪それに、すごい暖かいなあ♪」

 

「あうっ……く、くすぐったいよぉ……//」

 

「まるで我が友……ううん。まるで……プロデューサーくんに、ぎゅっとされてるみたい……♪//」

 

「蘭子ちゃんの、こんなに幸せそうな顔……初めて見た……じゃなくて!もしかして、私……」

 

「……♪」

 

「……プロデューサーくんに、なっちゃったの!?」

 

------------------------------------------------

 

「……むぎゅ〜っ♪//」

 

「うぅ〜……状況が、理解できないよぉ……でも……ただ一つ、理解できるのが……」

 

「〜♪」

 

「……蘭子ちゃんに、思いっきり……抱きしめられてるって、こと……かな……//」

 

「うふふっ♪プロデューサーくん、だ〜いすきっ♪」

 

「……蘭子ちゃん……そんなに、プロデューサーくんを気に入ってくれたんだね。なんか、嬉しいな♪」

 

「……今なら、誰もいないし……言っても、大丈夫だよね……コホン……お、お兄ちゃんっ……!//」

 

「えっ、お兄ちゃん……?」

 

「えっと……その……あのっ……//」

 

「……うぅ……こ、このかみの慈愛に満ちた、安息の波動を……しかと賜らせてもらうぞっ!//」

 

「……??」

 

「……お、お兄ちゃんに、もっと……甘えちゃうんだからねっ!//」ギュッ

 

「ふえっ……た、確かに、プロデューサーくんをもふもふしたら、安心するけど……」

 

「……あれ?そもそも、何で「プロデューサーくん」なんだっけ……?」

 

「……あのね、もう一つ……言いたいことがあるの……こ、このまま、我……私とね……そのっ……//」

 

カチャッ

 

「蘭子ちゃ〜ん、お待たせ〜……って……蘭子ちゃん、どうしたの?」

 

「えっ……」

 

「ふぇっ!?な……なな……なんでんなかばいっ!!//」

 

「……あれって……「私」?」

 

------------------------------------------------

 

「……そうだよ。あれは、美穂ちゃんなんだ」

 

「……って、あれ……?」

 

「おかえり。美穂ちゃん」

 

「ぷ、プロデューサーくんっ……?どうして、ここに……?」

 

「ははっ。急かしちゃって、悪かったね。これが、ボクの見せたかったものなんだ」

 

「見せたかったもの……」

 

「今。美穂ちゃんが見たものは、ボクの目線から見た光景なんだよ。いわゆる、回想って言うものかな」

 

「ほら、最後に美穂ちゃんが、ドアを開けて部屋に入ってきたでしょ?何か、思い出せることはない?」

 

「……あっ……そういえば、少し前に蘭子ちゃんと、お茶会をしたような気が……」

 

「そうだね。あの時、美穂ちゃんがお手製のクッキーを作って、蘭子ちゃんと楽しそうに喋ってたよね」

 

「うん、蘭子ちゃんと楽しく……あれっ?さっきのが回想って言うことは、蘭子ちゃんの、あの行動って……」

 

「……ふふっ♪ボクね、蘭子ちゃんにすごく、かわいがってもらっちゃった♪」

 

「あ、あれも……「回想」の、一つなのっ……?//」

 

「……どうだろうね。でも、他にも見てもらいたいものが、たくさんあるんだ。じゃあ、次に案内するよ」

 

ポンッ!

 

「……あっ……zzz」

 

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「……」

 

「……んっ……また、私……プロデューサーくんに……今度は、どこだろ?」

 

プニュッ♪

 

「わわっ!な、何っ!?なんか急に、すごい柔らかいものに包まれたっ……!?//」

 

「……プロデューサーさ……くんっ……♪//」

 

「あわわ……何だか、すごい温かくて……柔らかいっ……//」

 

「……ねぇ、プロデューサーくんっ。今日も、美波……頑張りましたよ?」

 

「えっ……み、美波さんっ!?ということは、この、温かくて柔らかいものって……//」

 

「……だからぁ……ご褒美を、くださいっ♪」

 

「う、うぅっ……私も、女の子なはずなのに……ドキドキしてきちゃったよぉ……//」

 

「何をして欲しいかって?例えば……こんなことをしたいな……えいっ♪」

 

ムギュッ♪

 

「むぐっ……!?」

 

「……こういう風に、もっと……プロデューサーくんに、甘えさせてくださいっ♪……なんて♪」

 

「あ、あの、凛々しい美波さんが……こんな……//」

 

「うふふ……♪すごい、安心します♪まるで……「本当」に、抱きしめてるみたい……//」

 

「……あれっ?もしかして、私……ものすごい、イケないもの見ちゃってるのかな……?」

 

「プロデューサーくんは、いじわるです。他の女の子ばかり、甘やかして……私には、頼ってばかりで……」

 

「……私だって、本当は……こんな風に、もっと……甘えたいんだよ……?」

 

「……」

 

「今も……プロデューサーくんは全然、私を甘やかしてくれないし……本当に、いじわるです……」

 

「……美波さん……」

 

「だから……いつか、気づいてくれるまでこうして……いえ、この瞬間だけは……」

 

「……た〜っぷり……甘えちゃうんだからっ……//」

 

「そうだったんだね……本当は、美波さんも……」

 

「……ねぇ……プロデューサーくん?もう一つ、美波のワガママを……聞いてくれる?」

 

「……うん?」

 

------------------------------------------------

 

「あの……ね……その……み、美波の口も……甘やかして欲しいな♪……なんて//」

 

「えっ……ま、まさか……」

 

「うふふ……今はぁ……プロデューサーくんと美波の、二人だけだよぉ?だから……しよ……?//」

 

「ちょっ……み、美波さんっ!?そ、そそ、それはっ……!」

 

「……プロデューサーくんっ……」

 

「あ、あわわ……!さ、流石に、それはダメですっ!私たちは、女の子同士なんですよっ!?//」

 

「……あっ、でも……今の私って……よ、余計だめですっ!美波さぁ〜んっ!目を覚ましてぇ〜っ!!//」

 

「……やっぱり、やめておこっと……流石に、これ以上は色々とよくないし……それに……」

 

「……初めては……「本当」のあなたに、とっておきたいし……ねっ♪//」

 

「……あれ?助かった……のかな?」

 

「ふふっ♪これからは、少しづつ……プロデューサーくんに甘えちゃおっと♪」

 

「だから……いつかは、気づいて欲しいな……私の気持ちに……」

 

「……」

 

「……おかえり。美穂ちゃん」

 

「あっ……プロデューサーくん……」

 

「美波ちゃんの回想は、どうだった?」

 

「……うぅ……ちょっと、刺激が強かったよぉ……//」

 

「あはは♪美波ちゃんは結構、大胆だからね。流石にボクも、恥ずかしくなっちゃったよ」

 

「でも……美波さんって、その……実はあんなに、甘えんぼさんだったんだね……」

 

「気丈に振る舞う人程、内面は意外とわからないものさ。さっきの顔が、美波ちゃんの本当の顔なのかもね」

 

「確か……美波さんと一緒に、ロケに行った時の記憶だよね?これ……」

 

------------------------------------------------

 

「そうだね。あの時、美穂ちゃんが美波ちゃんに、ボクを貸してたよね」

 

「プロデューサーくんに興味があるって聞いて、つい、嬉しくなって貸したんだけど……まさかね……//」

 

「みんな、ボクをもふもふって、してくれるからね。あの瞬間が、すごい嬉しいんだ♪」

 

「……ねぇ、プロデューサーくん。もしかしてさ……「みんな」ってことは……」

 

「……他の人の記憶も……あるってことなのかな?」

 

「うん。ボクは正直、記憶力がそんなにいい方じゃないけど、あと、数人分の記憶ならあるよ」

 

「そうなんだ……でも、プロデューサーくんは何のために、私にこの回想を、見せてくれるの……?」

 

「ん〜……難しい質問だね。でも……今は、答えれないかな……」

 

「……そっか……」

 

「そんな顔しないで。ボクは別に、美穂ちゃんを困らせたいわけじゃないんだよ」

 

「それに、自ずとわかってくるさ。ただ……一つだけ、言わせて欲しいことがあるんだ」

 

「ん?」

 

「ボクはいつでも、美穂ちゃんの味方だよ。絶対に。それだけは、信じてくれると嬉しいな」

 

「プロデューサーくん……」

 

「じゃあ次、行ってみようか」

 

「えっ?あっ……お願いしてもいい……?」

 

「まかせてよ。それじゃあ、目をつむってくれるかな?」

 

「うん……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……ん……次は……誰だろう?」

 

「って、私……だいぶ、この状況に慣れてきちゃってる?」

 

「プロデューサーくんの目的は、まだ……わからないけど……」

 

「今は、私が「プロデューサーくん」だからね!しっかりしないとねっ!……少し、悪い気もするけど……」

 

「……」

 

「……あれ?誰もいないのかな……?」

 

「……」

 

「……そ〜っ」

 

ヌウッ……

 

「きゃっ!?し、下から急にっ!?」

 

「……誰も……いないよねっ……よしっ!今がチャンスっ……!」

 

「ピンク色の髪……見ただけで溢れる、カリスマ性……み、美嘉ちゃんだっ……!」

 

「……//」サッサッ

 

「手鏡を用意して、髪の毛を整えて……これから、どこかに行くのかな?」

 

「……ね、ねぇ……どうかなっ。あ、アタシさ、少し……イメチェンを、してみたんだけど……//」

 

「うわぁ〜♪かわいい〜♪ツインテール美嘉ちゃん、すごい似合うよ〜♪」

 

「……って……ツインテール?ということは、ここってまさか……あの場所じゃ……」

 

「……ふ、ふんっ!どうせ、アタシなんか似合わないって、笑うんでしょっ!わかってるんだから!」

 

「うぅ……かわいいのに……」

 

「……」

 

「……そ、そんなことないよ……美嘉//」

 

「えっ?」

 

「美嘉のツインテール、すごい似合ってるし、それに……か、かわいいぞっ……//」

 

「美嘉ちゃん……?ま、まさか……」

 

「な、何さ!どうせ、口だけなんでしょ!」

 

「……それじゃあ……俺が、証明してやるよ」

 

「……プロデューサーくんを、相手に……一人芝居っ……!」

 

------------------------------------------------

 

「……ど、どうやって……証明するのさっ!//」

 

「どうって……決まってるだろ?」

 

ギュッ

 

「……これが、俺の感想だ。美嘉……すごい……かわいいぞっ……//」

 

「わぁ〜……こんなに、乙女な顔をした美嘉ちゃん……初めてみたかも……//」

 

「それに、自分で自分の肩を抱いて……すごい顔を、真っ赤にしてるし……」

 

「……き、急に……何よっ……」

 

「だって……美嘉がかわいすぎるのが、いけないんだぞっ……?//」

 

「……ふんっ!どうせ、他のみんなにも同じようなことを、言ってるんでしょっ!//」

 

「バカ……こんなこと……美嘉にしか、言わねえよっ……//」

 

「じゃあ……アタシも……」

 

ギュッ…

 

「ひゃっ…!?」

 

「こんなこと……プロデューサーくんにしか……しないもんっ……//」

 

「ううっ……美嘉ちゃんには悪いけど……何だか私まで、恥ずかしくなってきちゃった……//」

 

「……えへへ……すっご〜い暖かくて、もふもふ〜っ♪//」

 

「……美嘉ちゃん……こんなにも、プロデューサーくんを愛してくれてたんだね……」

 

「でも……何でみんな、こっそりもふもふするのかな……?言ってくれれば、いつでも貸してあげるのに……」

 

「……ずるいよ……何で、アタシはダメで……莉嘉はオッケーなのさ……」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……莉嘉ちゃん?」

 

「少しでも、こういうことをしようとしたら、やめろって言うのに、莉嘉だけは……すぐに甘やかして……」

 

「アタシだって……プロデューサーから見れば、妹みたいなものだし……こういう風にさ……」

 

「……甘えさせて欲しいし……もっと、構ってもらいたいよ……」ムギュッ

 

「美嘉ちゃん……」

 

「……」

 

「……おかえり。美嘉ちゃんの回想は、ここまでだよ。どうだった?」

 

「あっ、プロデューサーくん……うん。ツインテールの美嘉ちゃん、すごいかわいかったよ」

 

「そうだね。あれは、美穂ちゃんがボクを、宿泊先のロッジに連れて行ってくれた時の、回想だね」

 

「収録前に、奏ちゃんと喋ってて、気づかなかったけど……美嘉ちゃん……ここにいたんだね」

 

「美嘉ちゃんも、たくさんボクをもふもふしてくれたんだ♪」

 

「でも、意外だったよ……カリスマギャルなだけじゃなくて、あんな一面が、あっただなんて……」

 

「美波ちゃんもそうだけど「お姉さん」って色々と、頼られちゃうからね」

 

「頼られてるうちに、頼る「自分」を抑えて、いつのまにか、抑えてる自分が本当の自分になってるのかもね」

 

「……あのね……一つ、わかったんだ。みんなは改めて、プロデューサーくんのことが大好きなんだって」

 

「あはは♪それは嬉しいな。でも……みんなが好きなのは「ボク」だけなのかな?」

 

「えっ……どういうこと……?」

 

「ふふっ♪どういうことだろうね♪ささっ、次に行こうよ♪」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……私って……何だったっけ?」

 

「アイドル……プロデューサーくん……アイドル……プロデューサーくん……」

 

「……って!ダメダメっ!私は、今を輝く立派なアイドルなんだから!しっかりしないと!」

 

「……」

 

「……でも……「ボク」だけ、か……」

 

カチャッ

 

「……と、トリックオアトリート〜!」

 

「わあっ!?な、何っ!?」

 

「……って、言ってみちゃったりして……えへへ……♪//」

 

「うわぁ〜♪魔女っ子だぁ〜♪……って!藍子ちゃん!?」

 

「む〜……プロデューサーくんてば、お菓子をくれないんだ〜。いぢわる〜」

 

「……それじゃあ……イタズラをしちゃうんだからねっ♪ふふっ♪」

 

チョコン♪

 

「きゃっ!何か、頭にっ……って、これは……帽子?」

 

「うふふっ♪これでプロデューサーくんも、私と同じ、魔女だねっ♪かわいいっ♪」

 

「あっ……だからあの時、プロデューサーくんに、魔女の帽子が被せてあったんだね」

 

「……」キョロキョロ

 

「……ちょっとだけなら……いいよね?……と……とっ……」

 

「……?」

 

「と、トリックオアっ……!くろねっ……ぷ、プロデューサーくんっ!!」

 

「!!?」

 

「プロデューサーくんをくれないと、その……い、いたずらを……しちゃうよっ!……えへへ♪//」

 

「あ、藍子ちゃんっ……!?」

 

「……お菓子を持ってないの?……それじゃあ……お、お菓子より……欲しいものがあるの……えいっ♪」

 

ムキュッ♪

 

「わぷっ……!」

 

「……「温もり」を……ください♪……ふふっ♪プロデューサーく〜んっ♪」

 

「うぅ……いきなり、ギュ〜ってされるのは……やっぱり……慣れないなあ……//」

 

「……でも……何だか、今までより少し……「感触」が、少ないような……気のせいかな?」

 

「う〜んっ♪もふもふです〜っ♪」

 

「まあ、藍子ちゃんが嬉しそうだからいいか。プロデューサーくんも、喜んでると思うし」

 

「うふふ……♪変身したプロデューサーくんを見て、美穂ちゃん……びっくりしてくれるかなっ♪」

 

「……」

 

「……美穂ちゃんたち……似合ってたな……それに……」

 

------------------------------------------------

 

「……プロデューサーくんにも、たくさん……「かわいい」って、褒められてたもんね……いいな……」

 

「えっ……そ、そんな……藍子ちゃんだって、その魔女の仮装、すごいかわいいよ?」

 

「みんなの気持ち、わかるよ。だって、私も褒めてもらった時はつい、頰が緩んでしまいましたからね……//」

 

「……でも、もう少し……プロデューサーくんの視線を、独占出来たらいいな……なんちゃって……♪//」

 

「……えっ?」

 

「わかってます……それは、叶わないってことぐらい……だって、プロデューサーくんは……」

 

「……とても……優しいですからね♪だけど、今は私とプロデューサーくんの、二人っきりです♪」

 

「だ・か・ら♪この時間だけは……あなたの視線を、独占しちゃいますねっ♪うふっ……♪」

 

「……藍子ちゃん……」

 

「藍子ちゃ〜んっ?どこですかぁ〜?」

 

「……あっ……美穂ちゃんたちが、呼んでる……それじゃあ、そろそろ行くね♪」

 

「私に、付き合ってくれてありがとう♪プロデューサーくんっ♪」

 

「……」

 

「……以上だよ。おかえり、美穂ちゃん」

 

「……ただいま。今度は、藍子ちゃんだったね」

 

「うん。これは、事務所のみんなで、ハロウィンパーティーをした時の記憶だね」

 

「みんなの、楽しそうな声が聞こえてきたり、美穂ちゃんがボクも、ハロウィンに参加させてくれたよね」

 

「そうだね。みんなにもプロデューサーくんを、もふもふしてもらったりしたっけ」

 

「藍子ちゃんがボクを仮装させてくれたり、みんながもふもふしてくれたり……あの時は、楽しかったなあ♪」

 

「でも、何でだろうね。みんなが、プロデューサーくんを愛してくれるのは、嬉しいんだよ?だけど……」

 

「わざわざ、隠れてもふもふしなくても……言ってくれれば、普通に貸してあげるのに……」

 

「ふふっ、そうだね。でも、その理由は、美穂ちゃんが一番わかってることなんじゃないかな?」

 

「えっ、私が……?」

 

「美穂ちゃんは、何でボクを「プロデューサーくん」って、呼んでくれてるのかな?」

 

「何でって、それは……あっ……」

 

「あはは♪ボクって、すごい人気者なんだねっ♪嬉しいな♪……さて、次が最後だけど……どうする?」

 

「最後……お願い、見せてくれるかな?」

 

「……本当にいいの?無理をしなくていいんだよ?」

 

「確かに、後ろめたい気持ちはあるの。でも……全てを見ておかなきゃいけない、そんな気がしたんだ……」

 

「……そう。ボクは、美穂ちゃんのことが大好きだからね。美穂ちゃんの力になれるなら光栄だよ」

 

「それじゃあ……目を瞑ってくれる?」

 

「……うん、お願い」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……「プロデューサーくん」か。ファンの人から初めてもらった、クリスマスプレゼントだったんだよね」

 

「あの時は、嬉しかったなあ。アイドルになって、間もない頃だったし……」

 

「それに、不思議だよね。初めてあなたを見た瞬間から、自然と、あの人の顔が浮かんできちゃったんだ」

 

「だから、その瞬間から名前を……もしかしたら……みんなも……」

 

カチャッ

 

「あ、誰か来た……最後は、誰なんだろ……」

 

「……あ〜、疲れたぁ〜……」

 

「えっ……杏ちゃん?」

 

「う〜……飴舐めた〜い、おうちにかえりた〜い……あ、くまのぬいぐるみがある……」

 

「これって確か、美穂ちゃんのだっけ?……少しだけなら……いいかな……」

 

「ほら〜、今日も頑張ったぞ〜。だから、杏をねぎらいたまえ〜」

 

モフッ

 

「う〜ん……ふかふかで、もふもふだぁ〜……♪」

 

「……ったく……プロデューサーてば、杏を酷使しすぎだよ〜。ブラックだよっ、労働基準法違反だっ」

 

「たくさん働いたんだから、これからはた〜っぷりと、杏を甘やかしてもらわないとね」

 

「そうだな……これから毎日「勤労感謝の日」を制定してもらおっと♪」

 

「365日、フカフカの堕落クッションで寝ながら、杏の杏による杏のための、絶対王政を敷いてさぁ……」

 

「「杏を甘やかせ」を金科玉条として、みんなに甘やかしてもらいながら、日々を過ごす……」

 

「……う〜ん……考えただけでも、垂涎ものですなぁ〜……♪」

 

「杏ちゃん……ずいぶんと頑張ってたんだね……」

 

「……ま、それは、しばらくはお預けだけど。杏には、やらなくちゃいけない使命があるし」

 

「えっ、使命……?」

 

「杏を応援してくれてるファンや、事務所のみんなのため、そして……」

 

「……頑張ってくれてるプロデューサーのためにも……アイドルを、続けていかなきゃいけないしね」

 

「みんなの希望と笑顔のために頑張る。これが杏にとって、そして、輝くアイドルとしての使命だと思うんだ」

 

「杏ちゃん……すごい……そこまで、みんなのことを考えてたなんて……」

 

------------------------------------------------

 

「……という建前は、さておき……杏の使命なんて、決まってるじゃんっ♪」

 

「……ん?」

 

「優雅な印税生活だよ、優雅なねっ♪早く私に、悠々自適な、印税生活をさせておくれ〜♪」

 

「印税……えっ……えぇっ!?」

 

「今、お仕事を頑張っておけばさぁ、後々、楽になりそうだもんね〜♪」

 

「CDやグッズとかの印税が、毎月がっぽがっぽ入ってきてさ♪そりゃもう、一生困らないほどね♪」

 

「そこからさらに、色々な企業とコラボして、ロイヤリティも稼いで、節税もして……そして……」

 

「……へへへへ……考えただけで、にやけが止まらないよ……♪//」

 

「……杏ちゃん……私の感動を、返してっ……!!」

 

「あっ、いっけな〜い♪しゃべり過ぎちゃった♪なぁ〜、プロデューサーくぅん♪」

 

「今、聞いてたことを黙ってくれたらさぁ、いいことをしてあげるんだけどな〜?」

 

「……?」

 

「そうだね〜……あっ!じゃあキミを、杏王国のプリンスとして迎え入れてあげるよっ!」

 

「!?」

 

「キミって、ふかふかのもふもふで、気持ちいいんだよね〜♪だから、常に杏の側に居させてあげるっ♪」

 

「ちょっ……!だっ、だめだよっ!!」

 

「んふふ……♪これはもう、決定事項だよっ♪」ギュッ

 

「だ、だめ〜っ!プロデューサーくんは、私のっ……!!」

 

「それに……あながち、間違えじゃないんだよね〜……「キミ」のためってさ……//」

 

「だって、ほらっ。印税で食べていけるってことはさ、あくせく、働かなくていいわけでしょ?」

 

「……そしたらさ、ずっと一緒にぐうたら出来るじゃん……「プロデューサー」と……//」

 

「えっ……あ、杏ちゃん?」

 

------------------------------------------------

 

「……あ〜、はいはい。どうせ、柄じゃないって笑うんでしょ。わかってるよ、そんなこと」

 

「だけどさ、杏だって一応…花も恥じらう乙女座の女の子なんだし、その……」

 

「……あ、飴のように甘い時間を……プロデューサーと過ごしたい時だって……あるさ……//」

 

「杏ちゃん……」

 

「ま、わかってくれてないだろうね。キミは、超がつく程の鈍感だもん」

 

「全く……あれだけ甘やかして欲しいって、アピールしてるのにさぁ……本当にもう……」

 

「せっかく「プリンス」として、迎え入れてあげてるんだからさ……」

 

ギュッ

 

「たまには…こうして、杏の隣に居てくれても……バチは当たらないじゃん…//」

 

「……あ〜もう、なんだか疲れちゃったな〜。もうだめだぁ〜、これ以上は、働きたくないよぅ〜……」

 

「……」

 

「だ、だからさ……早く、プロデューサーに……永久就職……させてよ…//」

 

「……って…何を言ってるんだろ…私……//」

 

「……あ〜もうっ!この話は終わりっ!頑張ったご褒美として、美味しい飴を要求してこよっと!//」

 

「とびっきり甘くて美味しい飴じゃなきゃ、もう働かないんだからねっ!プロデューサーっ!!」

 

「……そこまで……思って……」

 

「……」

 

「……お疲れ様。美穂ちゃん」

 

「あっ……うん。ただいま…」

 

「これで、全ての回想は終了だよ。今まで、付き合ってくれてありがとうね」

 

「……ううん。こちらこそありがとう、プロデューサーくん」

 

「どうだった?最後の回想は」

 

「……正直…驚いてるよ。まさか、杏ちゃんがあんなに……」

 

「ははっ、無理もないさ。ボクも聞いた時は、驚いちゃったよ」

 

「でも……杏ちゃんも、女の子だからね。本当はどこかに、想いを隠してたんじゃないかな」

 

「言わずとも、察して欲しいってね。流石、花も恥じらう乙女座だよね」

 

「……あのさ、プロデューサーくん」

 

「うん?」

 

「みんなの言うプロデューサーくんってもしかして……「現実」のこと、なのかな…?」

 

「……」

 

「……あはは、流石は美穂ちゃんだね。そう、みんな「現実」のボクのことを言ってるのさ。一言一句ね」

 

「でも…まだ、わからないんだ……なんでプロデューサーくんは私に、回想を見せに来てくれたの?」

 

「……そうだね。もう、言っても大丈夫そうかな。あのね、これも全て、美穂ちゃんのためなんだ」

 

「私のため……?」

 

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「正直、ボクをもふもふしてくれた女の子たちを、勝手に晒すのは、迷ってたんだよ?」

 

「でも、初めて出会った時からずっと、ボクを大切にしてくれた美穂ちゃんになら、大丈夫だと思ったんだ」

 

「見せてくれたのは嬉しいけど……何だか、その……他の子に悪い気がしちゃって……」

 

「ふふっ♪やっぱり、美穂ちゃんは優しい女の子だね♪」

 

「ボクは、アイドルとして輝いてる美穂ちゃんを、ずっと見てたいんだ」

 

「……でも、ボクがもっと見ていたいのは……恋する、ただ一人の女の子な美穂ちゃんなんだよ」

 

「えっ……こ、恋っ……!?//」

 

「うん。美穂ちゃんは毎晩、ボクを抱きながら話してくれてるよね」

 

「今日はどこに一緒に行ったとか、遊びに行ったとか、こういうところが素敵だった、とかさ」

 

「いつも嬉しそうに、ボクにお話をしてくれてる美穂ちゃんの顔、アイドルの時以上に輝いてるよ♪」

 

「あっ……う、うぅ……何だか……恥ずかしいなあ……//」

 

「だからこそ、みんながどう想ってるのかを美穂ちゃんに見せて、警鐘を鳴らしに来たんだ」

 

「警鐘……?」

 

「……みんなが大好きな「ボク」は、一人しかいないんだ。世界中を、どれだけ探してもね」

 

「とても悲しいことだけど……最終的に「ボク」の隣で、微笑めるのは……「一人」……だけだからさ……」

 

「っ……!」

 

「……だから「勇気」を持って欲しいんだ。大好きな美穂ちゃんには、いつまでも笑顔でいて欲しいからね」

 

「プロデューサーくん……」

 

「さて、ボクの役目は終わったみたいだね。短い間だったけど、付き合ってくれてありがとう。美穂ちゃん」

 

「……もう……お別れなの?寂しいよ……まだ、出会ったばかりなのに……」

 

「ははっ♪面白いジョークを言うんだね♪美穂ちゃんとボクは、いつも一緒にいるじゃないか♪」

 

「それに……どうやら「プリンス」が来たみたいだし、ボクはさっさと、退散をしないとね♪」

 

「えっ……ぷ、プリンス……?」

 

「ふふっ♪ボクは、美穂ちゃんに毒りんごを食べさせた悪い魔女。美穂ちゃんは、眠ってる美しいお姫様……」

 

「……さて……美穂ちゃんは、どうしたら……起きれるでしょうか♪」

 

「りんご……お姫様……って…えっ、えぇ〜っ!?」

 

「それじゃあ、頑張ってね♪ボクは、いつでも側で、美穂ちゃんを応援してるよっ♪」

 

「ちょっ……ま、待って!!//」

 

「今度、会う時は………「報告」……待ってるよ♪」

 

「ぷ……ぷぷ……ぷろっ……」

 

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「……プロデューサーくんっ!!」

 

「うわっ!?み、美穂……!?……大丈夫か?」

 

「えっ、プロデューサー……さん?それに、ここは……」

 

「おいおい、しっかりしてくれよ。ここは女子寮の、美穂の部屋だよ」

 

「私の部屋……って!何で、プロデューサーさんがここにいるんですか!?//」

 

「待て!決してやましいことでも、何でもないんだからな!勘違いするなよ!?//」

 

「……そうなんですか……?」

 

「ったく……それじゃあ、聞くが。今日、美穂は何をしてたんだ?」

 

「何って……えっと……お仕事……ですか?」

 

「何で、疑問形なんだよ……そうだ。それで、仕事が終わったあとは、どうした?」

 

「えっと……お仕事が終わって……プロデューサーさんの車の、助手席に乗せてもらって、そして……」

 

「……あれ……?どうしたんだっけ……」

 

「やっぱりな……随分と、気持ちよさそうだったもんな……お前……」

 

「気持ちよさそう……ですか?」

 

「だって、運転中に美穂と喋ってて、声がしないと思って隣を向いたら、思いっきり寝てたんだからな」

 

「寝て……えっ、ええっ!?」

 

「しかも、熟睡してるもんだから、女子寮に着いても全然、起きなかったし……」

 

「だから、ちひろさんと相談をして、美穂の部屋の鍵を借りて、ここまで美穂を運んできたんだよ」

 

「うぅ……すみませんっ……//」

 

「まあ、仕事を頑張ってくれてたからな。無理もないさ。どうだ?わかってくれたか?」

 

「は、はい……でも……むしろ、その……何ていうか……」

 

「……ぷ、プロデューサーさんと一緒だったから……安心して、つい寝ちゃったのかな……なんて……♪//」

 

「ん?そうなのか……?でも、疲れてるなら無理……するなよ?」

 

「えへへ……♪はいっ♪」

 

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「まあ、何もなくてよかった。それじゃあ俺は、そろそろ帰るよ」

 

「えっ……?」

 

「今日はありがとうな、体に気をつけてくれよ。じゃあ、また明日……」

 

「……あ、あのっ!!……少し……お時間、大丈夫でしょうか……?」

 

「ん?……そうだな……うん。このあとは、特に何もないな。どうしたんだ、美穂」

 

「あの……私のベッドに、腰を掛けてもらっていいですか?」

 

「ベット……俺、スーツだけど、いいのか……?」

 

「は、はいっ!大丈夫ですっ!」

 

「そうか。じゃあ、失礼させてもらうよ」

 

「……うふふ♪では……私も、隣に……失礼しますね♪」

 

「えっ……」

 

「「……//」」

 

「……そ、それで……何か、相談とかあるのか……?//」

 

「そ、そうですねっ!あの……その……えいっ!//」

 

ギュッ

 

「ちょっ……み、美穂っ!?何だよ!?急に、腕を絡めてきてっ……!//」

 

「えへへ♪私の、今度のドラマのお仕事って、恋人の彼女役ですよね?」

 

「ドラマ……?あぁ……あの仕事か……」

 

「だから、役作りのために、プロデューサーさんが彼氏役として、私の練習に付き合ってくださいっ♪」

 

「彼氏役って……こういうことは、同じ女の子に頼んだ方がいいと思うぞ?例えば、卯月とか響子とかにさ」

 

「それもいいですけど……やはり、役に入り込むために、より、リアルに再現した方がいいと思いますし……」

 

「……恋人の気持ちや、感触を確かめておくのも、役作りにとっては……重要だと思いますので……♪//」

 

「か、感触って……//」

 

「ふふっ……♪プロデューサーくんの腕って、とても暖かいですっ……♪」

 

「えっ……プロデューサー「くん」?」

 

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「はいっ♪今のプロデューサーくんは、私の彼氏さんなんです♪ですので……」

 

「……しばらくは……この体勢で、一緒にいようね……♪ぷ、プロデューサーくんっ……♪//」

 

「いや……美穂が真面目だっていうのはわかってるし、勉強熱心なのは嬉しいんだぞ?だけど、その……」

 

「……は、恥ずかしいから……普段通りの呼び方に、戻してくれないか……?//」

 

「だめですっ♪プロデューサーくんっ♪」

 

「……っ//」

 

「プロデューサーくんって、流石は男の人ですね♪ぎゅっとしてると、つい、安心しちゃいます……♪//」

 

「あ、あぁ……そりゃどうも……//」

 

「「……//」」

 

「……何だか、こうしてると私たちって……本当のカップルみたいだね……♪//」

 

「な、何を言ってるんだ、美穂……俺は、あくまで美穂の、彼氏「役」だろ……?」

 

「むっ……また、そういういじわるを言っちゃうんだ……そんないじわるな、プロデューサーくんには……」

 

……チュッ♪

 

「!?」

 

「……ちょっと……小悪魔になっちゃいます……なんて♪//」

 

「ちょっ……!?みっ、美穂……!?//」

 

「うふふ……どうでしたか……?私の「心のこもった演技」は……♪//」

 

「し、知るかっ!美穂!お前はアイドルなんだぞ!?な、何だっ!今の行為はっ!!//」

 

「もう、照れちゃって……♪でも、いいんだよ?プロデューサーくんとなら「その先の」ことをしても……//」

 

「なっ……!お、俺をからかうのも、いい加減にしろ!もうこれ以上、付き合ってられるかっ!//」

 

「ええ〜っ……もう少し、演技の練習に付き合ってくださいよぉ〜……」

 

「知るかっ!あとは、他のアイドルに頼めよ!じゃあなっ!//」

 

「あっ……行っちゃった……あと……もう少し、だったのにな……」

 

「……うぅ……何だか、自分からしておいて、急に……恥ずかしくなってきちゃった……//」

 

「でも……頑張らなきゃね。だって、私は……みんなに負けたくないから……」

 

「だから、これからも頑張る私を、見守り続けてくれると嬉しいな……ねっ……」

 

モフッ♪

 

「……「プロデューサーくん」っ♪」



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超力シンデレラ 堀裕子

「わぁ〜〜!眩しいですねぇ〜っ!ファイヤ〜〜〜!!」

 

「熱い、熱いですねっ!これはみなぎってきました……!ボンバ〜〜〜!!」

 

「おいおい裕子、茜。慌てるなって」

 

「南風が気持ちいいわね〜♪南国の島に来たって感じがするわ♪」

 

「ふふん♪カワイイボクに、ふさわしい場所ですねっ♪」

 

「うぅ……凄い……眩しい……」

 

「うふふ……乃々ちゃんってば……♪」

 

「あははっ♪テンションあがるよね〜♪」

 

「でも、プロデューサー君。本当によかったのかしら?こんなに綺麗な南国の島に、私たちだけだなんて……」

 

「気にしないでください。あくまで「仕事」として、来てもらっていますので」

 

「……どこまでが……かしら?」

 

「……一割ぐらいですかね……」

 

「……頑張ってくれたのね……プロデューサー君……」

 

「ん?プロデューサー。何を話してるんですか?」

 

「あぁ、ちょっとな。それより裕子。見えて来たぞ」

 

「えっ?……わぁ〜♪きれ〜い♪」

 

「どうだ、綺麗なビーチだろ?俺たちはここで、楽しい時間を過ごすんだ」

 

「南国の島で過ごす、みなさんと、熱くて楽しい一夏の思い出……何だか……感極まってきましたっ……!」

 

「全く、そんなにはしゃいで……ま、オトナなボクがついてるから、安心ですけどねっ♪」

 

「それは頼もしいな。ところで幸子、その目のクマはどうしたんだ?」

 

「えっ?ク、クマ……?これは、今日が楽しみすぎて、夜に眠れなくてつい……」

 

「……じゃなくて!!み、みなさんから、目を離してしまったらとか考えて、心配で寝れなかっただけです!」

 

「そうか。じゃあいつまでも、その健康な肌を維持してくれよ。ほれ、鏡」

 

「えっ……ふ、ふふんっ♪相変わらず、ボクはカワイイですねぇ♪……って!クマなんてないじゃないですか!」

 

「あぁ、ないな。流石、幸子おねーさんはお肌の管理も、しっかりとしてるんですねぇ。関心関心」

 

「ぐぬぬ……ボ、ボクを騙しましたねっ……!」

 

「あ〜はいはい。漫才はそこまでにして、まずは、荷物を置きに行きましょう」

 

「そうですね。さあ、みんな。待ちきれない「カワイイ」おねーさんがいるから、早く行くぞ〜」

 

「なっ……!だ、だから違うんですっ!あぁ、もうっ!!」

 

「乃々ちゃんは……見ていて、飽きませんね……♪」

 

「そ、そうですね……もりくぼも……そう思います……」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ、よし。あとは、みんなを待つだけだな」

 

「って……俺が一番乗りかよ……幸子のことを、言えないな」

 

「……そうだ。俺だって、楽しみにしてたのは事実だし、しょうがない」

 

「今日の、このバカンスを楽しむために色々と、スケジュールやら経費を工面して、頑張ってきたんだ」

 

「しかし……普段がスーツだから、水着ってのは何だか慣れないな。開放感が、ありすぎるっていうか……」

 

「……当然のことだけど……アイドルたちも、みんな……くっ、意識するなっ……俺っ……!//」

 

「……え〜いっ♪」

 

プニュッ♪

 

「うわっ!?」

 

「……うふふ♪だ〜れだっ♪」

 

「え、えっと……川島さんですか……?//」

 

「だいせいか〜い♪流石は、私のプロデューサー君ねっ♪どうかしらっ♪私の水着姿は♪」

 

「どうって、その……す、すごい、似合ってますよ……?//」

 

「あらっ♪嬉しいわ♪ほらっ……もっと、見ていいのよっ♪」

 

「ちょっ……か、川島さんっ……少し……近いですって……!//」

 

「えぇ〜?そう〜?だいたい、プロデューサー君が私のことを、全然見てくれないのが悪いのよ〜?」

 

「えっ?どういうことですか?」

 

「……だって……プロデューサー君の視線が、私の顔じゃなくて……」

 

タプンッ♪

 

「……こっちにばかり……いってるんだもの……♪//」

 

「なっ……!そ、そんなことはないですよっ!//」

 

「……プロデューサー君になら、いいんだけどなぁ〜?もっと「女の子」なところを、み・せ・て・も・っ♪」

 

「か、川島さんは、アイドルなんですよっ!?変なことを言うのは、やめてくださいっ!//」

 

「あんっ、つれないんだから〜……」

 

「……プロデューサーっ!」

 

「……ん?」

 

------------------------------------------------

 

「ふっふっふっ……どうですか!?私たちの水着姿はっ!セクシーですよねっ!」

 

「フフーン♪魅力的すぎるボクたちを見て、変なことを考えないでくださいね〜?」

 

「……あ〜そうだな〜。似合ってるぞ〜」

 

「むっ!ちょっと!何か反応が、川島さんの時より薄くないですか!?」

 

「裕子や幸子の歳で、セクシーだなんて言われてもねぇ〜……ま、今後に期待だな〜」

 

「……むぅ……私と同い年の雫ちゃんには、鼻の下を伸ばして、デレデレしてるクセに……」

 

「はぁっ!?デレデレなんかしてねえって!それに、雫は……」

 

(プロデューサーさぁ〜ん♪もぉ〜っと、私のプロデュースをお願いしま〜すっ♪)

 

タプン♪

 

「……色々と……すごいし……//」

 

「ああっ!また、変なことを考えてますっ!他のみなさんからも、何か言ってあげてください!」

 

「いつものことでしょ〜。すぐに、アイドルの子を襲うとする「ケダモノ」だからね〜。あ〜、怖い怖い」

 

「なっ……!そ、そんなことを考えてはいけませんっ!あとで、私と一緒に全力疾走をして、忘れましょう!」

 

「うぅ……ゆかり〜、乃々〜……みんなが、俺のことをいじめるよぉ〜……」

 

「えっと……いじめは、よくないことだと思います。それに、プロデューサーさんはとても、素敵な方ですよ」

 

「っ……!ゆかりっ……!」

 

「凛々しくて、優しくて、時には勇敢に、私たちを守ってくださる、まるで、トラさんのような……」

 

「……あれ?でも、トラさんってことは……プロデューサーさんは「獣」なのでしょうか……?」

 

「うぐっ!の、乃々っ……!」

 

「あっ、えっと、その……ぷ、プロデューサーさんはとても、優しい……ですよ……」

 

「……そうですね……例えるなら、木の上のリスさんみたいな、微笑ましい「動物」のような……あっ……」

 

「……俺……もうだめだ……」

 

「ほらほら「ケダモノ君」もいいけど、みんなが揃ったことだし、そろそろ遊びに行きましょうよ♪」

 

「そうですねっ!あっちで一緒に、ビーチバレーをしましょう!」

 

「プロデューサーさん……?元気を、出してくださいね……?」

 

「あ、あのっ!そういう意味で、言ったのではなくてっ……!むしろ、その……好意的にといいますか……//」

 

「……いいんだ……気にしないでくれ……」

 

------------------------------------------------

 

「いくわよっ♪パァ〜ッション、スパァ〜イク!!」

 

「受け止めて見せますよっ!全力ぅぅぅ!トラァァァイ!!」

 

「……ふぅ……あっちは、随分と賑やかだな。さて、俺はしばらく、パラソルの下で昼寝でもしよっと……」

 

ザァー……ザァー……

 

「あぁ〜……波の音が、心地よいぜ……このまま……夢の世界に……」

 

「……」

 

ピトッ♪

 

「うわあっ!?」

 

「はぁ〜い♪プロデューサー♪」

 

「み、美嘉っ!?何だよっ、急に!」

 

「アタシからぁ、冷た〜い炭酸ドリンクの、差し入れだよぉ〜♪」

 

タプンッ♪

 

「ドリンク……?あ、あぁ、さんきゅ……って……ちょっ……ち、近いって!」

 

「えぇ〜、何がぁ〜?」

 

「何って……その……む、胸が、あと少しで……俺の顔にっ……//」

 

「あれぇ〜?ちょっとちょっとぉ、どこを見てんのっ♪」

 

「仕方ねえだろ!だいたい、美嘉が近すぎるんだよ!」

 

「その元気があるなら、ドリンクはいらないよね〜っ♪ということで、このドリンクは、アタシが飲んで……」

 

「……あ〜っ!いましたぁ〜っ!」

 

「!?」

 

「……ん?裕子か……?どうしたんだよ?」

 

「あの、すみません……ペットボトルの蓋を、開けてもらえませんか?私の力では……開けれなくて……」

 

「何だよ、わざわざ。そんなの、裕子のお得意の、サイキックパワーで開ければいいじゃないか」

 

「むっ……プロデューサーのいぢわるっ……」

 

「冗談だ。ほら、貸してみろよ……っしょっと……よし、開いたぞ」

 

「わぁ〜♪ありがとうございますっ♪そのお礼と言っては、なんですが……えいっ♪」

 

「……んぐっ!?」

 

「!!?」

 

「……プロデューサーに……サイキック補給をしてあげます……なんてっ♪」

 

「んぐ……ぷあっ……ゆ、裕子っ……お前……!」

 

「どうです……美味しかったですか……?//」

 

「き、急に、何をするんだっ!びっくりしただろうが!……ユッコのアホっ!バカっ!」

 

「なっ……!ば、ばかっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「お前は、仮にもアイドルなんだぞ!?やって良いことと、悪いことがあるだろ!」

 

「お、おバカなのは、プロデューサーです!いつも、私の気持ちを何も、わかってくれないじゃないですか!」

 

「お前の思考なんて、全てお見通しだっ!その「おバカ」な思考にいつも俺は、うんざりしてるんだよっ!」

 

「とか言って、私がいないと寂しがって泣いちゃうクセにっ!プロデューサーのおバカっ!」

 

「泣くかっ!それよりユッコこそ、俺がいないと寂しくて、メソメソしてるんじゃないか?ん〜?」

 

「そんなことないですよ〜だっ!プロデューサーなんかいなくたって、平気ですぅ〜!……多分」

 

ギャーギャー!

 

「……むっ……」

 

「ぐぬぬ……も、もういいですっ!プロデューサーのおバカっ!エッチ!!」

 

「はぁっ!?え、エッチ……!?ちょっ、待て……行っちまった……ったく、何なんだよ一体……」

 

「……」ジー

 

「……はっ!み、美嘉……悪い……色々と、騒いじゃったな……」

 

「ふ〜ん……二人とも、随分と「お熱い」んだねぇ〜……ま、いいけど。それより、これからどうするのさ」

 

「う〜ん。とりあえず、裕子を探してくるよ。あいつ、俺が飲んだドリンクを持って行っちまったんだ」

 

「ふぅ……せっかく開けてやったのに、あれじゃあもう、飲めないだろうに……本当、おバカなヤツだぜ……」

 

「そうなんだ……あのさ、その……よ、よかったら……アタシのジュースを……飲む?」

 

「ん?いや、いいよ。だってそれは、美嘉のジュースだろ?」

 

「そりゃ、そうだけど……少しだけならいいよ。ほらっ」

 

「いや、だから……悪いって……」

 

「……やだ!いいからさっさと飲むっ!ほらっ!!」

 

「ちょっ……色々とおかしいだろっ!それに、そのジュースは美嘉が自分で飲むって、言ってただろっ!」

 

「知らない!裕子ちゃんだけずるいっ!だ・か・ら・っ!アタシのも、あ〜げ〜る〜っ!」グイッ

 

「何で急に、裕子が出てくるんだよ!と、とりあえず、またあとでなっ!!」

 

「ああっ!こら〜っ!逃げるな〜〜っ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……なんとか、逃げ切ったな……」

 

「しかし、美嘉のヤツ……急に、何だったんだ……?まあいいか。それより、裕子を探さないとな……」

 

「……あっ、プロデューサーさ〜んっ♪」

 

「ん……?おっ、幸子じゃないか」

 

「プロデューサーさんって今、暇ですよね?ううん、暇に決まっています♪」

 

「ですから……ふふ〜んっ♪特別に、ボクと遊ぶ権利を差し上げます♪感謝してくださいねっ♪」

 

「俺は今、忙しいの。じゃあな」

 

「ちょっ……ま、待ってくださいっ!……ボクと……遊んでくれないんですか?」ウルッ

 

「何だ、遊んで欲しいのか?しょうがないな……」

 

「流石は、ボクの……いえ、ボクたちのプロデューサーさんですね♪それでは、遊びましょう♪」

 

「たちってことは……他に、誰かいるのか?」

 

「えぇ。ちょうど今、ゆかりさんと一緒に、海水浴をしてたところなんです、あそこにいますよ。ほらっ」

 

「あそこ……ん?何か、ゆかりの様子がおかしくないか……?」

 

「えっ……?あぁ。あれはただ単に、息を止めてるだけで……って……あれ?」

 

「……まさか……くっ……!いや、待ってろ……今すぐに、行くからなっ……!」

 

「……ゆかりっ!」」ギュッ

 

「きゃっ!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?」

 

「大丈夫か!?どこか、調子が悪いのか!?」

 

「えっ……?い、いえ……特に……異常はありませんけど……//」

 

「なら、いいんだが……海に、力なく浮かんでたから……何かあったのかと、思ったんだぞ……?」

 

「あっ……す、すみません……息継ぎの練習を、してたんです……」

 

「息継ぎ……?」

 

「はい。お恥ずかしながら……段々と、水中が気持ちよくなってしまい、つい……反省します……」

 

「全く……本気で心配したんだからな?でも、とりあえずゆかりが、無事でよかったよ」

 

「……あのっ……プロデューサーさん、その……心配していただけたのは、ありがたいのですが……」

 

「……そんなに……力強く抱きしめていただいてると、そのっ……何と言いますかっ……//」

 

「ん?抱きしめ……うわっ!?わ、悪いっ!//」

 

「……あ、あわわ……//」

 

------------------------------------------------

 

「ゆかり……本当に、ごめんな……」

 

「あ、謝らないでください!むしろ、その……すごく……嬉しかったです……♪//」

 

「そうか?でも……もし、体調が悪かったら、遠慮なく言ってくれよ?」

 

「……はいっ♪……うふふ♪プロデューサーさんに、思いっきり……抱きしめられちゃった……♪//」

 

「……グルルル……!!」

 

「よぉ、幸子。戻ったぞ……何だよ?そんなに、怖い顔をして……」

 

「じ、上半身裸の男が、水着の女の子に抱きつくなんて事案ですよ!事案っ!早苗さんに言いつけますよ!//」

 

「ちょっ……!おい!裸って言うな!水着姿って言え!ていうか、誤解を生むような言い方をするな!//」

 

「全く……早とちりしちゃって……ゆかりさんからも、何か言ってあげてください!」

 

「そ、そのっ……お遊びとはいえ、ご迷惑をおかけしてしまったので……むしろ、感謝をしています……♪//」

 

「……だってよ、幸子。俺は本当に、ゆかりが心配だっただけなんだよ」

 

「ま、まあ……ゆかりさんがいいならいいですけどねっ!ところで……」

 

「……ボクもさっき……足がつって、溺れかけたんですよ……?」チラッ

 

「そうか、それは大変だったな」

 

「……」

 

「……って!それだけですか!?もっとありますよね!?例えば、その……ゆかりさんみたいにとか……//」

 

「ゆかりみたいに……?どういうことだよ?」

 

「……あぁ、もう!じれったいですねっ!ボクもゆかりさんみたいに、ギュっとして欲しかったんですっ!」

 

「こ、ここまで言わせないください!プロデューサーさんのおバカ!!//」

 

「あぁ、そうだったのか。それは悪かったな」

 

「……なんか……反応が、淡白ですね……」

 

「いや、だって……足がつったって言ってる割には、随分と自由に動けてるじゃないか」

 

「……もういいですっ!と・に・か・く!しばらくは、ボクの手を離さないでくださいねっ!」

 

「うふふ……♪幸子ちゃん……♪」キュッ♪

 

「わっ!ゆ、ゆかりさん……!?」

 

「このまま、私たちで踊りましょう♪さあ、プロデューサーさんも、ご一緒に……♪」

 

「……踊る?」

 

「うふっ……♪三人で、手を繋いで……ぐるぐる〜♪ですっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……ようやく、解放された……」

 

「しかし……何でゆかりは急に、踊ろうって言い始めたんだろ……?まあ、考えてもしょうがないか……」

 

「……でも……意外と……って!俺も、ゆかりの天然ワールドに、引きずりこまれかけてるな……」

 

「……あっ、プロデューサー君」

 

「ん……?あぁ、川島さん。お疲れ様です。ビーチバレーは、もういいんですか?」

 

「そうね♪少し、ひと休憩ってところよ♪それより、私にちょっと、日焼け止めを塗ってくれないかしら?」

 

「あぁ、いいですよ……って!日焼け止めっ!?」

 

「えぇ。今日って、日差しが強いでしょ?だから、塗り直しておこうかと思ったの」

 

「えっと……なぜ……わざわざ、俺に……?」

 

「……一番、近くにいるから?」

 

「そっ、そんな理由で、決めないでください!川島さんは、アイドルなんですよ!?」

 

「えぇ、そうね。私は、ピチピチのかわいいアイドルよ♪で?何か問題でも?」

 

「大問題ですよ!男の俺に、そ、その……日焼け止めを……塗って欲しいだなんて……//」

 

「むぅ、何よ〜、いぢわるぅ〜……それに……こんなこと……プロデューサー君にしか、頼まないわよ……」

 

「えっ……?」

 

「ねぇ……プロデューサー君は……私が紫外線で、お肌がボロボロになっても……いいの?」

 

「そ、そんなことないです!川島さんには、いつまでも綺麗なままで、いて欲しいです!……あっ……」

 

「……うふっ♪決まりね♪それじゃあ……お・ね・が・いねっ♪」

 

「うぅ……わ、わかりました……」

 

------------------------------------------------

 

「じゃあまずは、背中から塗ってもらえるかしら。それと一つ、言い忘れてたことがあるの」

 

「何でしょう?」

 

「……変なところは……触っちゃダメ……だからねっ……♪//」

 

「なっ……!さ、触りませんよっ!……それじゃあ……いきますよ……//」

 

ヌルッ…

 

(うわっ……柔らけえ……女性の肌って……こんなに、柔らかいんだな……//)

 

(うぅ……い、意識するなっ!俺はただ、アイドルに日焼け止めを……塗ってるだけなんだっ……!)

 

「うふふ……♪塗るの上手ね♪他の子にも、塗ったことがあるの?」

 

「そんなわけないじゃないですかっ!こんなことをするのは、川島さんが初めてですよっ!//」

 

「……ふ〜ん、そうなんだ……♪じゃあ、だいぶ塗ってもらえたし、次は下の方を、お願い出来るかしら♪」

 

「し……下っ……」

 

(……おい……これ、大丈夫……?俺、これでも……健全な男子なんですけど……?)

 

「……どうしたの?手が、止まってるわよ……?」

 

「あっ、すみません……それでは、いきますね……」

 

ヌルヌル

 

(ぐっ……さらに、柔らけえっ……!川島さんって……前から、スタイルがいいとは思ってたけど……)

 

(……これは……想像以上だっ……!//)

 

「ふふっ♪上手上手っ♪でも……少しだけ……塗る力が強くなってきたような……気がするわね……♪//」

 

「っ……!?」

 

グニッ♪

 

「……あんっ……ぷ、プロデューサー君……さっき、言ったじゃない……「ダメ」だって……//」

 

「ふ、不可抗力です!川島さんが、急に変なことを言うからっ……//」

 

「はいはい♪ごめんなさ〜い♪それじゃあ、続きをお願いねっ♪」

 

「ったく……//」

 

------------------------------------------------

 

「……っしょっと……どうです?こんな感じですか?」

 

「うんっ♪しっかり塗ってくれたわね♪ありがとう♪」

 

「いえいえ。まんべんなく塗れて、よかったです」

 

「うふふ……♪それで……どうだったかしら……?」

 

「どうって……すごく柔らかくて……あっ……」

 

「……やっぱり……変なことを考えてたんだ……♪……プロデューサー君の、えっち……♪//」

 

「で、ですからっ……あれは、川島さんが変なことを言うからっ……!//」

 

「ふ〜ん。でも……背中から伝わってきたわよ?プロデューサー君の、心臓の音が……ねっ……♪」

 

「くっ……し、仕方ないじゃないですか……川島さんみたいな、綺麗なお姉さんに触れてたらその……」

 

「……ドキドキしないわけ、ないですよ……男なら……//」

 

「へぇ〜……私のことを、そんな風に意識してくれてるんだ〜♪じゃあ、もう一つ頼んでもいいかしら♪」

 

「えっ、何でしょう?」

 

「うふっ……♪ねぇ、今度はぁ……「前」も、塗ってもらえるかしら……?//」

 

タプンッ♪

 

「なっ……!こ、これ以上は、自分で塗ってください!!俺はもう行きますから!では、またあとでっ!//」

 

「あっ、プロデューサー君……もう、あんなに照れちゃって……かわいいんだから♪」

 

「……少し……余裕ぶっちゃったけど……私も、結構……ドキドキ、しちゃったわね……♪//」

 

「だって……プロデューサー君の手の温もりに、ドキドキして顔が見れなかったなんて、言えないもの……//」

 

「……やぁん♪私ってば、思春期の女の子みたいっ♪超乙女〜♪」

 

「でも、そっか……私が、プロデューサー君の初めて……うふふ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ったく……川島さんも、美嘉も……少しは一人の女性として、危機感を持つとかだな……」

 

「あ、あと、裕子も……ウチって実は、問題児だらけ……?」

 

「う〜む……どうしたものか……ん?あそこに、誰か……」

 

……ザァー……

 

「都会の喧騒から遠く離れた……誰もいない、静かな漣の音のみの……ひっそりとした、南国の島……」

 

「ふ、ふふ……♪最高の、もりくぼプレイス……ですね♪……実は、もりくぼは「森」の精霊だったのです……」

 

「ですので……ここで、アイドル活動に終止符を打って、みなさんと……お別れをしなければなりません……」

 

「さようなら、みなさん。これからは、この大自然の中からみなさんを、見守らせてもらいます……ガクッ」

 

「……」

 

「……まぁ、それはさておき……私はここで、一人静かに……ポエム作りをしましょう……」

 

「綺麗な快晴の青空……綺麗な澄んだ海……綺麗な純白な砂浜……」

 

「こんなにも、心踊る環境だと言うのに……私の心は曇っているの。まるで、海を覆い隠す海霧のように……」

 

「そういう時、思うの。私に霧を晴らす、超能力があったらいいなって」

 

「私は、あなたを見てるのに……あなたは、私のことを見てくれない……」

 

「でも……私が一歩、勇気を出したら、あなたが魔法をかけてくれるんだよね?私の、初めての思い出に……」

 

「初めての思い出……?」

 

「はい……初めての……って、ひえっ!?プロデューサーさんっ……!?//」

 

「よぉ、乃々。ここで何をしてるんだ?」

 

「え、えっと……その……何をしてたんでしょうか?……え、えへへ……♪」サッ

 

「……ん?今、何か……あっ!あそこに、リスがっ!」

 

「えっ……」

 

「……隙ありっ!」

 

------------------------------------------------

 

「あっ……!ちょっ……か、返してくださいっ!」

 

「何だ、ポエムを書いてたのか。えっと……なになに……曇っている……初めての思い出……?」

 

「あ、あわわ……!だ、だめです〜っ……!」

 

「うわっ!」

 

「うぅ……プロデューサーさん……ひどいですっ……」

 

「悪い悪い。でも、乃々もだいぶ、言えるようになったな」

 

「……えっ?」

 

「俺と乃々が出会ってしばらくはさ、意見どころか、目も合わせてくれなかっただろ?」

 

「だからこうやって、自分をしっかりと、俺に主張してくれるようになって、嬉しいよ」

 

「プロデューサーさん……あの……さっきのこと……本当に、反省してますか……?」

 

「うん、反省してるよ。乃々に意地悪をしてしまって、悪かった。ごめんな」

 

「それなら……これからずっと……もりくぼと、一緒に……」

 

「……あ〜っ!!プロデューサーさ〜んっ!乃々ちゃ〜んっ!」

 

「ん?……茜?」

 

「ここで会うなんて、奇遇ですね!お二人も、私みたいに砂浜で、全力疾走ですか!?」

 

「よぉ、茜。いや、一歩を踏み出せずに、曇ってたんだよ。なっ?乃々」

 

「っ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!//」

 

「曇ってた……?乃々ちゃん……何か、悩み事でもあるんですか?」

 

「よかったら、茜も相談に乗ってくれないか?女の子同士ならもっと、分かち合えると思うんだ」

 

「曇ってる……分かち合う……何だか……燃えてきましたっ!!乃々ちゃんっ!!」

 

「ひっ!な、何でしょう……」

 

「今から、私と砂浜を全力疾走して、その悩みで曇った心を、汗と共に洗い流し、分かち合いましょう!!」

 

「おっ、いいじゃないか。乃々、行ってこいよ」

 

「うぅ……プロデューサーさん……やっぱり、ひど……」

 

「さあ!行きましょう!!乃々ちゃんっ!!うぉおおお!!全力トラァァアアイッ!!」

 

ひぃぃいいいぃぃ……

 

「……ま、これで少しは、茜とも仲良くなれるだろうし、悪く思わないでくれよな」

 

「でも……あのポエムは一体、どういう意味だったんだ?」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ。ここにもいないか……そろそろ、夕方になってきたな……」

 

「ったく……どこにいるんだ、裕子は……本当、世話が焼けるヤツだぜ……」

 

「……あ〜っ!プロデューサーっ!!」

 

「ん?……あっ、裕子!」

 

「もうっ!どこにいたんですか!探しちゃいましたよ!」

 

「おい!探してたって、こっちのセリフだ!ずっと、裕子のことを探してたんだぞ!?」

 

「わっ、私だって、プロデューサーのことをずっと、探してましたもんっ!」

 

「だいたい、お前はいつも、思いつきで行動しすぎなんだよ!だから、おバカだって言われるんだぞ!!」

 

「し、知りません!これも全て、プロデューサーが私の気持ちを、わかってくれないのが悪いんです〜っ!」

 

「さっきも言っただろ!お前の、単純な思考はお見通しだって!おバカすぎて、うんざりするぐらいな!」

 

「ぜんっぜん、わかってくれてません!私も、プロデューサーにはうんざりしてるんです!おバカっ!」

 

「「ぐぬぬ……!」」

 

「……あっ……そんな場合じゃなかった……プロデューサー。私に、ついて来てください……」

 

「は……?どこにだよ?」

 

「いっ、いいから!私について来てください!……ここでは、その……少し、恥ずかしいので……//」

 

「……?」

 

「さっ、行きますよ!ほらっ!早くっ!」

 

「ちょっ!おい!急に引っ張るな!わかった、わかったから!」

 

「……//」

 

------------------------------------------------

 

「こっちの方に……はいっ!着きましたっ!」

 

「で……?こんな岩場に、何の用があるんだ?」

 

「……うふふ♪それでは、見てください……私の……ありのままの姿を……♪//」

 

「ありのまま……はぁっ!?お、お前……自分が、何を言ってるかわかってるのか!?」

 

「わかってますよ♪だって、こんな姿……プロデューサーにしか、見せませんし……♪//」

 

「……これは、二人だけの「秘密」ですよっ……♪それでは……見てくださいっ♪私の……」

 

「ちょっ!ばっ、バカ!やめ……//」

 

「……ヤドカリです……♪//」

 

「……は?……ヤドカリ?」

 

「はいっ♪この子、貝を被ってない素の状態なんですよ♪かわいいですよねっ♪」

 

「……ハァ〜……なんだよ……要は、俺にヤドカリを見せたくて、呼んだってことか?」

 

「えぇ。そうですね……ああ〜〜っ!!」

 

「うわっ!?なっ、なんだよっ!?急に、大声を出すな!」

 

「忘れてました〜っ!川島さんから、バーベキューの準備が出来たと、伝えて欲しいって言われてたのをっ!」

 

「おい……それって、ヤドカリより大事なことなんじゃないか……?」

 

「そ、そうですね!プロデューサーを探してる時に、ヤドカリを見つけてつい、夢中になってしまって……」

 

「お前は、本当に……とにかく、待たせちゃ悪いからさっさと戻るぞ。ほら、ヤドカリも海に返してあげろ」

 

「はいっ♪それでは、お別れですね〜♪さあ、お帰り〜……きゃあっ!?」

 

「あっ、バカっ!……ふぅ、あのなぁ……岩場は滑りやすいんだから、気をつけろよ……?」

 

「……あっ……す、すみません……//」

 

「「……」」

 

「……あの……そ、そろそろ……いいですか?」

 

「ん?何がだよ?」

 

「私を助けてくれたのは、ありがたいのですが……そんなに、力強く抱きしめられてると……そのっ……//」

 

「……あっ……わ、悪い……//」

 

「「……//」」

 

「その……なんだ……戻ろうぜ?//」

 

「……え、えぇ……戻りましょう……//」

 

------------------------------------------------

 

「……せーのっ」

 

「「乾杯っ♪」」

 

「うふふ……♪サンセットを眺めながら、コテージで二人きりでお酒を飲むって、素敵ね♪」

 

「えぇ。とても素敵です」

 

「未成年の子たちは、あっちの方で楽しんでるし、大人は大人で楽しみましょう♪」

 

「はい、そうですね。しかし、こうして川島さんと二人きりで飲むなんて、久しぶりですね」

 

「そうね〜。最近、プロデューサー君が全然構ってくれなくて、寂しい思いをしてるのよ〜?」

 

「ははっ、すみません。でも、これも人気アイドルの宿命かもしれませんね」

 

「あ〜あ……本当に困っちゃうわ「プロデューサー君」ってば、大勢のファンに囲まれちゃってるんだもの」

 

「えっ、俺が……?」

 

「こっちの話よ♪ところで、プロデューサー君。そろそろ……「瑞樹」って、呼んでくれないかしら?」

 

「ん?急に、どうしたんですか?」

 

「他の子は下の名前で呼んでるのに、私だけ「川島さん」って、何だか寂しいなぁって思ったの」

 

「……それとも……いっそのこと「みじゅき」って、呼んでくれてもいいのよっ?きゃはっ♪」

 

「……」

 

「……むぅ、なによぉ〜、その目は〜」

 

「いえ。それもいいなって、思ったんです」

 

「……えっ?」

 

------------------------------------------------

 

「川島さんは俺にとって、いつまでも輝くアイドルですし、おちゃめな「みじゅき」も、かわいいですよっ♪」

 

「……もうっ……また、そういうことを平気で……でも、呼んでくれるのよねっ……?//」

 

「えっと……そ、そうですね。改めて、よろしくお願いします……瑞樹さん…… //」

 

「これからも、よろしくね……プロデューサー君っ……♪//」

 

「「……//」」

 

「な、何だか、こうして改まると少し……気恥ずかしいですね……//」

 

「そっ、そうね……ねぇ、プロデューサー君。私……少し、酔いが回ってきちゃったみたい……//」

 

「えっ……瑞樹さん……?」

 

「……プロデューサー君の瞳って……すごい綺麗……♪」

 

「ちょっ、み、瑞樹さんっ!?ち、近いですって……!//」

 

「……うふふ……プロデューサー君っ……ん……」

 

「ちょ、まっ……!?//」

 

「……なんちゃって♪「今」は遠慮しとくわ♪だって……かわいい乙女が、来ちゃったもんね♪」

 

「プロデューサ〜〜〜っ!」

 

「乙女……?……って、裕子?」

 

「どう?ドキドキ、しちゃったかしら……?//」

 

「……こういう冗談は、やめてください……瑞樹さんは……アイドルなんですからっ……//」

 

「ふふっ♪問題ないわ♪だって……今は「君だけ」のアイドルだもんっ♪ほら、裕子ちゃんが待ってるわよ♪」

 

「ん?……って、瑞樹さんはどうするんですか?」

 

「……私は……もう少しここに残って、綺麗なサンセットを眺めることにするわ」

 

「そうですか?では、少し行って来ますね」

 

「うふっ♪行ってらっしゃい♪」

 

「……あ〜あ……相変わらず、ライバルが多いなぁ〜……それに……若い子ばかりで……」

 

「……いえ、私には、私の魅力があるじゃない……そうね♪私だって、負けないわよ♪プロデューサー君っ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

チュー……

 

「……う〜ん♪トロピカルジュース、美味しいですねぇ〜♪」

 

「あ、あぁ……確かに、美味しいな」

 

「えへへ♪実はこれ、一回、やってみたかったんですよねっ♪」

 

「……でも……二人で一つのを飲むんじゃなくて、最初から二つ、用意すればよかったんじゃないか?」

 

「むっ……また、そういうことを言って……プロデューサーは、何もわかってないです……」

 

「……川島さんの時は……ドキドキしてたクセにっ……」

 

「?」

 

「と・に・か・くっ!今は私と一緒に、このジュースを飲んでもらいますからねっ!」

 

「裕子がいいなら、いいんだけど……何だか、少し……恥ずかしいんだが……//」

 

「ふふっ♪全部、飲み終わるまで付き合ってもらいますので、覚悟してくださいねっ♪」

 

「くっ……あ、そういえば、裕子が持って行った、俺が口をつけたドリンクはどうしたんだ?」

 

「ふぇっ!?そ、それはですねっ……//」

 

「あれ、もう飲めなかっただろ?ったく……お前は本当に、後先を考えずに行動をしすぎなんだよ……」

 

「あっ、ああ、あれはですねっ!さ、サイキックインビジブルで消しちゃいましたっ!むむむ〜んって!//」

 

「何だそりゃ。まあでも、熱中症にはお互いに気をつけようぜ。裕子は、俺の大切なアイドルだしな」

 

「そ、そうですね!でも、プロデューサーも……私の大切な「存在」ですので、気をつけてくださいね?//」

 

「……それと……「ジュース」……ご馳走様でしたっ……♪//」

 

「ははっ。ジュースはまだ、たくさん余ってるぞ?裕子は飲みきる前に、ご馳走様って言うのか?」

 

「えっ……あっ、そ、そうでしたねっ!えへへ……♪//」

 

「おいおい、しっかりしてくれよ?本当に、裕子は目が離せないヤツだな」

 

「……では……お互いに熱中症にならないように、このジュースを一緒に、楽しみましょうね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、結構美味しかったな。ご馳走様。裕子」

 

「いえいえ♪私こそ、このビーチに連れて来てもらって、ありがとうございますっ♪」

 

「気にするな。裕子にも、普段からアイドルを頑張ってもらってるから、そのお礼だよ」

 

「アイドルのみなさんと、たくさん喋って、遊んで、楽しんで……とても、素敵な思い出が出来ました……♪//」

 

「それはよかったな。その思い出を、大切にするんだぞ?」

 

「はいっ♪それでは、記念に一つ……私のサイキックを、お見せしましょう♪むむむ〜ん……えいっ♪」

 

ギュッ

 

「うわっ……!?ゆ、裕子!?」

 

「えへへ……サイキック急接近です♪どうです?驚きましたか……?//」

 

「いきなりなんだよっ!俺の腕にくっ付いてきてっ!//」

 

「ふふっ♪実を言いますと……さっきから、私の胸が……ドキドキしっぱなしなんです……♪//」

 

ムニッ♪

 

「……ちょっ……あ、当たってるって……!//」

 

「うふふっ♪伝わっていますか……?私の、胸の鼓動が……♪//」

 

「……さっき、プロデューサーに抱きしめられた時から、こんなにも……ドキドキしてるんですよっ……?//」

 

「あっ、あれは、その……裕子が勝手に、ドジを踏んで転んだから、助けただけでっ……//」

 

「もうっ……また、そういういじわるを言うんですから……でも……あっ、待ってください!」

 

「むむむん……わかりましたっ♪プロデューサーだって、私のことを意識しすぎて、ドキドキしてますね♪」

 

「はあっ!?いきなり、何を言ってるんだ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「ふふ〜ん♪エスパーユッコの能力、相手の思考を見通す、サイキックテレパシーですっ♪」

 

「なっ……別に、ドキドキなんか……し、してねえよっ!勝手に決めるなっ!//」

 

「ふ〜ん……そうなんですか……それでは……ふふっ♪」

 

チュッ♪

 

「……サイキック……以心伝心ですっ……♪」

 

「なっ……!?//」

 

「あっ……急に鼓動が、激しくなってきました♪……プロデューサーの嘘つきっ……♪//」

 

「おっ、お前っ……いきなりあんなことをされたら、驚くに決まってるだろっ!何をしてるんだよ!//」

 

「あははっ♪では、見事に的中しましたので、しばらくの間……サイキック密着しちゃいますっ♪//」

 

「……っ……//」

 

「えへへ♪お互いのドキドキが、伝わって来ます♪これが……「甘酸っぱい」と言うものなのでしょうか……//」

 

「……なあ……お前は……」

 

「わかっていますよ♪私は今を輝く、サイキックアイドルです♪」

 

「……でも、私だって女の子なんです「大好きな人」と大切な時間を過ごしたい時だって、あるんですよ?」

 

「確かに、この島でまだまだたっぷりと、何日も遊べる時間があるのはわかってます」

 

「しかし……それはあくまで「みなさん」とであり「二人」の時間は、この瞬間だけだと思いますので……」

 

「……ちょっぴり……プロデューサーを、独り占めしちゃいたいなって……思ったんです……♪//」

 

「裕子……」

 

「ですので……今は、私とプロデューサーだけの素敵な思い出を作りましょう♪サイキック「相思相愛」です♪」



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炎上シンデレラ 夢見りあむ

「Pサマっ♪また炎上しちゃった♪」

 

ピンッ

 

「あうっ!デコピン……Pサマ、ひどいっ……!」

 

「おい、りあむ。SNSはどういう風に使えって、俺、言ったっけ?」

 

「どうって……楽しく、ちやほやされるように、だよね?」

 

「おぉ、よく覚えててくれたな。偉いぞ」

 

「えへん!ぼく、エライでしょ!だから、ぼくをもっと、すこってくれても……」

 

ピンッ ピンッ

 

「あうっ、うぎゃっ……!ちょっとPサマっ!さらに、2回もデコピンをするなんて酷いよう!」

 

「俺、楽しく「平和に」使えって、言ったような気がするんだけどな〜?」

 

「むぅ、そんなこと……聞いてないもんっ……」

 

バンッ!

 

「プロデューサーさぁ〜んっ!」

 

「うわっ!?あ、あかり!?」

 

「私のつぶやきで、炎上しちゃったンゴ……じ、じゃなくて……炎上しちゃいました……こんな感じに……」

 

「ん?どれどれ……あ〜、これは……」

 

「うぅ……都会で流行ってるって聞いたから、少し、マネてみただけなのにぃ……くすんっ」

 

「まあ、大丈夫だろ。少ししたら落ち着くって。元気を出せよ」ナデナデ

 

「あっ……ありがとうございますっ……えへへ……♪//」

 

「うわぁ〜!?ちょっと!Pサマっ!」

 

「なんだよ?」

 

「なんか、ぼくだけ扱い酷くない!?あかりちゃんには優しいのにっ!ぼくにも優しくしてよ!」

 

「お前は、わざと炎上させてるだろ!あかりは別に、わざとしたわけじゃないんだぞ!」

 

「むぅ〜……」

 

「でも、今後のためにも何か、対策を打っておいた方がよさそうだな……どうしたものか……」

 

「……あ、そうだ。なあ、あきら」

 

「何デス?」

 

「確か、あきらって動画配信が趣味だったよな?炎上とか大丈夫なのか?」

 

「大丈夫デスよ。基本、変なコメントはスルーする主義なんで。ネットでイキるなんて、恥ずかしいと思うし」

 

「おぉ……あきらは色々と、逞しいな……」

 

「しかし、今のネット社会は戦場デス。油断をすると、物陰からヘッドショットを決められ、ワンキルです」

 

「ですから、熾烈なネット社会で生き残るためには、最低限のネットリテラシーが必要だと思うな」

 

「……だってよ。りあむ」

 

「ちょっと!なんで急に、ぼくに振るのさ!」

 

「……この中で、真っ先にヘッドショットを喰らいそうだから……」

 

------------------------------------------------

 

「そんなことないもん!ぼくはこの中で、一番、お姉さんなんだよ!?バカにしないでよね!」

 

「あ〜、はいはい。頼りにしてるぞ〜、りあむおねーさん。まあ、ということであかり」

 

「これからは、SNSをする時は一応、一回下調べをしてから、投稿をした方がいいんじゃないか?」

 

「はい……これからは、きちんと調べて投稿をします!ありがとう♪あきらちゃんっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「いえいえ。礼には及ばないデス」

 

「よかった。これで、一安心だな」

 

「……あの、プロデューサーさんっ……もし、よかったら……私のアカウントを、支援してくれませんか?//」

 

「えっ、支援……?フォローのことか……?」

 

「あっ、そうでしたっ♪フォローって、言うんでしたね♪お願いできますか……?」

 

「別にいいけど……でも、俺も最近、アカウントを作ったばかりだからなあ……」

 

「私、まだ、都会のことがよくわからなくて……ですので、教えてもらったり、見守ってもらいたいんです♪」

 

「俺もそんなに、詳しい方じゃないぞ?それでもいいなら、フォローをするけど……」

 

「やったぁ!嬉しいんご!……じゃなくて!嬉しいですっ!では、よろしくお願いししますっ♪」

 

「あぁ。じゃあとで、フォローリクエストを送っておくよ」

 

「……Pサン……自分にも、その……フォローいいデスか?」

 

「あきらもか?別にいいけど……むしろ、あきらの場合は、俺が教えてもらう立場なんじゃないか?」

 

「いくら、ネットに慣れててもやっぱり心細い時もあるし、そんな時に、見守ってもらえればと思ったんデス」

 

「……兄ぃに……//」

 

「まあ、あきらも女の子だしな……って……兄ぃ?」

 

「お兄ちゃんって意味だよ。Pサンって、なんとなくウチの兄ぃに、雰囲気が似てるような気がするし」

 

「あっ、わかりますっ♪プロデューサーさんって、何だかお兄ちゃんって感じですよねっ♪」

 

「う〜む……確かに、ネットにも色々と危険があるしな。それにしても、お兄ちゃんって……」

 

「……兄ぃ……守ってくれるよね?」ウルッ

 

「……お兄ちゃんっ?」ウルッ

 

「……っ!わかった!わかったからっ!何だか気恥ずかしいし、二人ともこれ以上はやめてくれっ!//」

 

「へへ♪からかうと面白いのも、兄ぃにそっくりデスね♪」

 

「おい!大人をからかうなっ!//」

 

「ふふっ♪頼りにしてますよっ♪お兄ちゃん♪」

 

「……とにかく。二人のアカウントに、フォローリクエストをしておくから、承認頼むぞ?」

 

「「は〜い♪」」

 

「……ねねっ♪PサマPサマっ♪」

 

「ん?何だ、りあむ」

 

------------------------------------------------

 

「知ってる?ウサギってクソザコメンタルだから、寂しいとお星様になっちゃうんだって!」

 

「クソザコ……あぁ。確かに、寂しいと衰弱するって聞いたことがあるな」

 

「でしょぉ?かわいそうだよねぇ〜!見守ってあげたくなるよね〜っ!?」

 

「……何で急に、ウサギなんだ?」

 

「……ふふん♪Pサマっ♪ぼくのアカウントも、フォローをして欲しいぴょんっ♪」

 

「うん、ヤダ♪」

 

「はぁ〜っ!?なんでぇ!?どうしてぇ!?ぼくがお星様になっても、いいって言うのぉ〜!?」

 

「お前をフォローなんかしたら心労で、俺が先にお星様になっちまうわ!!」

 

「Pサマひっど〜い!めっちゃやむ!寂しすぎてお星様になったら、一生、Pサマを恨んでやるんだからね!」

 

「縁起でもないことを言うな!ていうか、ウサギってお前のことだったのかよ!」

 

「うわぁ〜んっ!二人だけずるいよう!Pサマっ!ぼくにも、フォローをしてよう!」

 

「……おいおい……りあむ「おねーさん」は、どこに行ったんだ?」

 

「そんなの、どこかに行っちゃったよう!今のぼくは、寂しくてめっちゃやみそうな、か弱いウサギだもん!」

 

「ったく……都合のいいヤツめ……」

 

「……Pサン。りあむサンも、フォローをしてあげてよ。一人だけ、仲間外れっていうのはかわいそうだよ」

 

「うっ……」

 

「私も、そう思いますっ♪りあむさんも入れて、みんなで仲良くしたいですっ♪」

 

「うぐぐっ……!……わかったよ。ただし、炎上目的で変なことを呟いたら、すぐにフォローを外すからな?」

 

「ホント!?わ〜いっ♪やったぁ〜♪」

 

「よかったですね♪りあむさん♪」

 

「うんっ!ありがとうね!あかりちゃん!あきらちゃん!」

 

「いえいえ。同じアイドル同士、みんなで仲良く、デス」

 

「ふぅ、どっちがお姉さんなんだか……それじゃあさっそく、三人のアカウントを登録させてもらうよ」

 

「はいっ♪よろしくお願いしますっ♪」

 

「よろデス。Pサン」

 

「えへへ……♪たくさん、ぼくを見てね♪Pサマっ♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「……ただいま……って、誰もいないよな。一人暮らしだから、当たり前だけど……」

 

「仕事も、久しぶりに綺麗に片付いたし、帰ってみたものの……何か、落ち着かないな……」

 

「……俺ってすっかり、仕事に染まっちゃってる?……いやいや!と、とりあえず、夕飯にするか!」

 

「うん、たくさんあるな!俺の、カップ麺コレクション!さ〜て。どれにしようかな〜……」

 

フォンッ♪

 

「ん?着信か?どれどれ……」

 

[Pサマっ!初送信をしてみたよ!どう?届いてる?]

 

「おっ、りあむか。しっかり届いてるぞ、っと……これでよし。さ〜て、点火点火……」

 

フォンッ♪

 

「うわっ!?」

 

[よかった♪これからもよろしくねっ♪Pサマ♪]

 

「返信はやっ!……ん〜……まあ、お互い頑張っていこうな……っと……」

 

「あっ、そうだ。りあむに返信したついでに、他の二人の呟きでも見てみるか」

 

[みなさんっ!どうです?この、立派なりんご!青森じゃなくっ、山形産なんですよっ!山形産っ!!]

 

[#今日のあきらコーデ#サイコーの一着#動画配信中]

 

「うん、二人ともいい感じにやってるな。やっぱり、アイドルはこうでなきゃ」

 

フォンッ♪

 

「っ……!?」

 

[チヤホヤされたいから、頑張るよっ!だからずっと、ぼくを見ててねっ♪Pサマ♪]

 

「律儀に一回一回……あいつ……意外とマメなんだな……」

 

「……少し、怖い気もするけど……りあむの呟きも、見てみるか」

 

[見て!今日のぼくの、晩御飯!真心を込めて作った、カップラーメンだよっ!]

 

「ははっ、なんだよ真心って。ていうか、りあむも俺と同じ、夕飯はカップ麺なのか」

 

[トッピングに卵と野菜もつければ、栄養バランスも完璧!これなら毎日でも大丈夫!]

 

「おいおい。女の子が毎日、カップ麺だなんてあまり関心しないぞ?まあ、俺も人のことを言えないけどさ」

 

「って、何だよ。変なことばかりじゃなくて、ちゃんと、普通のことを呟けるじゃないか……よしっ」

 

[よお、りあむ。楽しいことを呟いてるじゃないか。その調子で、これからも頼むぞ?]

 

「送信っと……そうだ。こういうのでいいんだよ、こういうので」

 

フォンッ♪

 

[えへへ、見てくれたんだ……♪Pサマに見てもらうために、これからも頑張るね♪//]

 

[おい。見てもらうのは俺じゃなくて、ファンのみんなにだろ?あと、毎日カップ麺だけはやめとけよ?]

 

「全く……変な冗談を言うな……でも、よかった。今のところは変な呟きもないし、とりあえず一安心だな」

 

ピィ---ッ!

 

「ん……?うわっ、やばっ!火をかけてたの忘れてた!!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……さてと。後片付けも済んだし、風呂でも入りますかね」

 

フォンッ♪

 

「……りあむからか……」

 

[ねねっPサマPサマ♪見て見て♪この服、かわいいでしょ♪]

 

「……あぁ、かわいいぞっと。さて、着替えて風呂に……」

 

フォンッ♪

 

[Pサマっ♪見て♪新しいシャンプーを買ったんだ♪すごい、いい香りがするんだよ♪]

 

「……」

 

「ふぅ、いい風呂だったな」

 

フォンッ♪

 

[Pサマ♪Pサマっ♪どう?ぼくのパジャマ姿っ♪似合う?]

 

「……」

 

「……よし、そろそろ寝るか……」

 

フォンッ♪

 

[……ねぇ、Pサマ……?少し、恥ずかしいけど……寂しかったら……「使って」いいんだからね……?//]

 

タプンッ…♪

 

「ちょっ!?あ、あいつ……!//」

 

[おい!何を送ってるんだよ!冗談でも、やって良いことと、悪いことがあるんだぞっ!?早く消せっ!//]

 

[大丈夫♪Pサマにしか見れないように、設定してあるしっ♪それにもっと、ぼくを見てもらいたいもん……♪//]

 

[もしかして……寄せ乳じゃ、足りない?ぼく、Pサマのためなら、もっと曝け出してもいいんだよ?]

 

[ふとももがいい?それともナマ乳?水着?ナース?ねぇ、何がいいの?ぼくをもっと見てよ。ねぇねぇねぇ]

 

PサマPサマPサマPサマPサマPサマPサマPサマPサマPサマPサマ……

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

カチャッ

 

「あっ、おはよう♪Pサマ♪」

 

「……あぁ。おはよう……りあむ……」

 

「ねぇねぇ♪昨日さ♪アレ、使ってくれた……」

 

ピンッ

 

「あうっ!き、急に、デコピンをするなんて……ひどいっ……!」

 

「……俺、やっぱり……りあむのフォローを、やめるわ……」

 

「ええ〜っ!?なんでよう!?」

 

「……俺の顔を見て……わからないか?」

 

「ん?今日も健康的で、カッコいいよ♪」

 

「そうか、ありがとう」

 

「えへへ……♪//」

 

ピンッ ピンッ

 

「あう、うぐっ……!ちょっと!二回もデコピンをするなんて酷いよ!ぼくのおでこを壊す気なの!?」

 

「壊されたのは……俺の方なんだけどな……?」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「……誰かさんが、メッセージを送り続けてくれたおかげで……昨日から一睡も、出来てないんだがな……」

 

「んもう♪誰かさんなんて、酷いなあ♪い・と・しの、りあむでしょっ♪」ニコッ

 

「……さて、フォロー解除って、どこだっけ……」

 

「だから、何でよ!変な呟きもしてないし、Pサマも、ぼくの服をかわいいって、褒めてくれたじゃん!」

 

「うるせぇ!呟きはいいとして、数十秒間隔でメッセージを送ってこられたら、迷惑にも程があるわ!!」

 

「何さ!そんなに冷たいことを言われたら、クソザコメンタルのぼくは、お星様になっちゃうよ!?」

 

「あぁ!お星様でもミツボシでもズヴェズダでも、勝手になっちまえ!俺はもうイヤだ!!」

 

「ひど〜いっ!Pサマの外道!鬼畜う!めっちゃやむ!」

 

「と・に・か・く!俺はもう、フォローをするのやめるからな!」

 

「……やだあっ!!」

 

ムギュッ♪

 

「ちょっ……!?」

 

「Pサマが、フォローを外すのやめるって言ってくれない限り、離れないよ!!」

 

------------------------------------------------

 

「おっ、おい!急に、くっついてくるなっ!」

 

「どうせ、ぼくはこのまま、Pサマにフォローを外されて、捨てられちゃうんだっ!!」

 

「はあっ!?い、いや……何も、そこまでは……」

 

「……見捨てちゃ……やだあっ……クスン」

 

「あのなぁ……わかったよ。フォローは外さないから、安心しろ」

 

「……ほんとぉ!?やったあっ♪」

 

「ったく……話が飛躍しすぎなんだよ。俺がいつ、りあむを見捨てるだなんて言ったんだ?」

 

「えへへ……そうだったね……♪//」

 

「とりあえず、フォローを続ける、お前を見捨てない。これでいいか?」

 

「うん……ありがとう♪……Pサマって……何だかんだで、すごい優しいよね……♪//」

 

「おい、調子に乗るな。元はと言えば、お前の迷惑行為が悪いんだぞ」

 

「はいはい♪わかってるよぉ♪これからは控えめにするよう♪……多分ね♪」

 

「ふぅ。ところで……りあむ?……そろそろ、離れてくれないか?」

 

「えっ、何で?」

 

「何でって……」

 

プニンッ♪

 

「りあむの柔らかいのが……じゃなくて!フォローを続けるって言ったんだから、もういいだろ……?//」

 

「エ〜。もうちょっとぐらい、いいじゃんっ♪うりうり〜♪」

 

「ぐあっ……!よ、よくねえよっ!いいから離れろ!このクッツキムシが!//」グイッ

 

「ふぎゅっ!もうっ、Pサマったら照れちゃってぇ♪こういう雑な扱いも、ス・テ・キ♪//」

 

「変態かお前は!いいから離れろっ!こんなところを、誰かに見られたら……」

 

カチャッ

 

「プロデューサーさん、おはようございます……」

 

「……あっ……」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ♪とても、爽やかで素敵な朝だね♪プロデューサー♪」

 

「朝からお熱いねぇ♪未央ちゃんつい、火傷しそうになっちゃったよぉ♪」

 

「あっ……えっと、その……す、すみません……お邪魔しちゃって……//」

 

「ち、違うんだ!凛、未央、卯月!これには、深いわけが……」

 

「ふーん、そうなんだ。じゃあ、聞かせてもらおうかな「不快」な言い訳をねっ♪」

 

「えっとだな……俺は、りあむとアイドルの方向性について、話をしてたんだよ」

 

「方向性……ですか?」

 

「あぁ。なあ、りあむ」

 

「……」

 

「……おい……りあむ?」

 

「えっ……?あっ、そ、そうですね……」

 

「……?」

 

「その……Pサ……いえ、プロデューサーとの「将来」の方向性について、話しあってたと言いますか……//」

 

「……っ!?」

 

「……へぇ〜「将来」について、ねぇ……」

 

「バカ!誤解を生むような、言い方をするな!それに、喋り方がなんだか……あっ……」

 

(……いつも、俺の前では騒がしかったから、気づかなかったけど……こいつ……極度のコミュ障だった!)

 

「……」 

 

「あの……夢見さん……で、いいでしょうか?」

 

「あっ……りあむでいいですよ、島村さん。はい、何ですか……?」

 

「私も卯月で大丈夫ですよ♪それでは……りあむさん。一体、どういうことをお話ししててたんですか?」

 

「えっと……そ、それはですね……」サスサス

 

「ん?どうしたんだ……?急に、お腹をさすって……体調でも悪いのか?」

 

「……プロデューサーが「優しく」してくれたので……それについて、話をしてたんです……♪//」

 

「!!?」

 

「……ふ〜ん……へぇ〜……」

 

「プロデューサーっ♪これは、どういうことなのかな♪未央ちゃん、すごい気になってきちゃった♪」

 

「ちょっ……おま……!……あぁ、もう!話が余計にこじれるから、お前は少し、あっちに行ってろっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「……♪」ニコニコ

 

「……えへへ♪」ニコニコ

 

「どうしたんだ凛、未央?何だか、怖いぞ……?」

 

「ふふっ♪そんなことないよ♪プロデューサーの方が、よっぽど怖いと思うよ?」

 

「うんうんっ♪プロデューサーがここまで「ケダモノ」だったなんて、知らなかったもん♪ねっ、しまむー♪」

 

「あっ……そ、そうですね……結構、大胆な方だったんですね……プロデューサーさんって……//」

 

「なっ……ケダモノって……!お前たち、完全に誤解してるって!本当に違うんだよ!」

 

「何が違うの?言い訳によっては、早苗さんに手錠を掛けてもらうことになっちゃうけど♪」

 

「ほらっ、りあむってすぐに、SNSで炎上を仄めかす発言をするだろ?それについて、話し合ってたんだよ」

 

「ですが、その……さっき……「優しく」してくれたって……//」

 

「だ、だから、あれは完全な誤解だって!りあむには少し、SNSについてアドバイスしただけだっ!//」

 

「……ふーん。ま、そう言うことだろうと、思ってたけどね」

 

「えっ……?」

 

「そんなことをする度胸なんて、プロデューサーにあるわけないしね。だって、ヘタレだし」

 

「ぐっ……へ、ヘタレっ!」

 

「そうだねぇ♪プロデューサーは、肝心なところで鈍いしっ♪」

 

「うぐっ……鈍いっ!」

 

「……だからこそ……厄介なんだけどさ……とにかく、何となく事情はわかったよ」

 

「何だか、腑に落ちないが……まあ、分かってくれてよかったぞ」

 

「ところで、プロデューサーさん。その、スマホについてるストラップ、かわいいですね」

 

「ん……?あぁ、これか。あかりとあきらとりあむの三人から、それぞれもらったんだよ」

 

「名前は、これがりんごろう、これがしゃーくん、そして、この目がついた心臓みたいなの……何だっけ?」

 

「あははっ♪プロデューサーにしては、随分と乙女チックなストラップじゃん♪」

 

「ははっ、まぁな。アイドルの女の子たちが、くれたものだからな」

 

「……なんか……すごい嬉しそうだね……」

 

「そりゃ、嬉しいよ。凛だって、贈り物をもらったら嬉しいだろ?」

 

「それは、そうだけど……」

 

「あの三人はまだ、事務所に来て日が浅いから、早く馴染んでくれると嬉しいよな。ははっ」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「あ、でも、最近はあの三人に、むしろこっちが教えてもらってることが多いかな」

 

「あかりと二人で、りんごの展示会に行って、りんごの種類を教えてもらったり」

 

「……二人で……ですか」

 

「あきらにつきっきりで、サバゲーを教えてもらったり」

 

「……付きっ切り……ふ〜ん」

 

「りあむとは、アイドルの勉強のために何回も、地下アイドルのライブに現場参戦したりしたな」

 

「……へぇ〜……何回も……ねぇ」

 

「その他にも、喫茶店で三人と、交流会をしたりもしたっけ」

 

「……私たちとは……?」

 

「ん?ニュージェネたちとは前に、ライブの打ち上げでパーティーをしただろ?」

 

「それ……もう、半年も前だよ……」

 

「あれ?もうそんな前だっけ?」

 

「……むぅ……最近、プロデューサーさんてば、新しい子たちのことばかり、見てますっ……」

 

「いや……そんなことはないと思うぞ?」

 

「そんなことあるよ。じゃあ、打ち上げ以外で、私たちと遊んでくれた?」

 

「それは……確かに……最近は、ないな……」

 

「ほら、やっぱり事実じゃん」

 

「……いや、待てよ……ほ、ほら、三人で和気藹々と楽しく話したじゃないか!今、こうして……なんて♪」

 

「……やだっ!!」ギュッ

 

「うわっ!み、未央!?」

 

「ねぇ、プロデューサー……私たちに…飽きちゃった……?」

 

「えっ……どういうことだ……?」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサーが、仕事熱心なのはわかってるし、新しい子たちのためなのはわかってる。でも……」

 

「……最近……時々しか会えないし、会っても新しい子たちの話ばかりで……私たち……寂しいんだよ?」

 

「未央……」

 

「プロデューサーさんが、優しい人だっていうのはわかってます、わかってますけど……」

 

「……もう少し……私たちに、構ってくれてもいいじゃん……」

 

「卯月、凛……悪かった。これからは少しでも、ニュージェネたちとの時間を作るために、努めてみるよ」

 

「本当……?本当に「責任」を取ってくれるの?私、嘘は嫌いだからね……?」

 

「ん?……責任?」

 

「うふふ……♪約束しましたからねっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「……まあ、とりあえず、男に二言はないよ。だから、これからもよろしくな」

 

「それじゃあ、さっそく……その男気を、未央ちゃんたちに見せてもらおうじゃないですか♪」

 

「ねぇ、プロデューサー。少し、スマホを貸して」

 

「えっ、スマホ?別にいいけど……急に、どうしたんだ?」

 

「何さ。もう、約束を破るの?」

 

「いや、そういうことじゃないけど……まあいいか。ほれ」

 

「ありがとう。それじゃあ、行くよ……卯月、未央……」

 

「……はいっ♪」

 

「……おっけ〜♪」

 

「?」

 

「……こうしてと……よし……せ〜のっ」

 

「ん?……むぐっ!?」

 

パシャッ♪

 

「んぐ……ぷあっ、な、何だ……!?」

 

「……ふふっ♪少し、恥ずかしかったけど……抱きついてみちゃった♪//」

 

「なっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「……どうだった?「ニュージェネサンド」の味は……♪//」

 

「味って……ていうか、何だよっ!急に三人で、抱きついてくるな!!」

 

「むぅ、何さ。りあむさんはよくて、未央ちゃんたちはダメなの?」

 

「いや……ダメとかじゃなくてだな…むしろ、さっきのはりあむが勝手に……//」

 

「……ふーん、ま、いいけどさ、とりあえずミッションは完了したね」

 

「あとは、これをこうやって……うん、OK。スマホを返すね。それじゃあさっそく、画面を見てみてよ」

 

「画面……ちょっ……こ、これって……!」

 

「ホーム画面を「ニュージェネサンド」にしてみたよ。どう?気に入ってくれた?」

 

「気に入ったも何もあるか!ていうか、凛!何、勝手に撮影してるんだよ!!」

 

「……だって……あの三人だけ……ずるいんだもん……」

 

「えっ、三人……?」

 

「ねぇ、プロデューサー。りあむさんたち、三人のユニット名ってもう決まってるのっ?」

 

「りあむ……あぁ。三人って、あかり、あきら、りあむのことか?いや、特に決まってないけど……」

 

「へぇ〜そうなんだ。じゃあさ、あえて名前をつけるとしたら、どういうユニット名にするの?」

 

「どういうって……そうだな……「ニュー」ニュージェネレーション?」

 

「ぷっ……」

 

「な、何だよ未央!笑うなっ!」

 

「あははっ♪ニュージェネに「ニュー」を一個乗せるだけなんて、安直すぎだよっ♪」

 

「しょうがないだろ!突発的に考えたんだから!!」

 

「やっぱり、プロデューサーはプロデューサーだねぇ♪何だか未央ちゃん、安心しちゃった♪」

 

「……そうですねっ♪私も……安心しちゃいました♪」

 

「ったく……バカにしやがって……//」

 

「でもさ……突発的に、ニュージェネの名前が出てきたってことは……」

 

「……私たちのことを……意識しちゃってるんじゃないんですかねぇ……なんてっ♪」

 

「なっ……し、知らねえよっ!!と・に・か・く!これは、ホーム画面から……」

 

「ダメだよ」

 

「……っ!?」

 

------------------------------------------------

 

「消したらダメ」

 

「えっ……り、凛さん?」

 

「言ったでしょ、ずるいって。そのストラップはよくて、なんで私たちはダメなの?」

 

「ストラップって……これのことか?」

 

「うん。だってそれって、アイドルからもらったものでしょ?」

 

「いや、だって……これはあくまで、お近づきの印にもらったものだし、それとこれとは違うと思うぞ?」

 

「……はぁ……やっぱり……プロデューサーは、何もわかってないよ……」

 

「……プロデューサーさんっ……私たちのこと……嫌いになっちゃったんですか……?」ウルッ

 

「いや……嫌いとか、嫌いじゃないとか、そういうことじゃなくてだな……」

 

「私……プロデューサーのカッコいい男気……見たいなぁ?」ウルッ

 

「……あぁ、もう……わかったよ。この写真は、削除しないよ」

 

「やったぁ♪プロデューサーてば、わかってるぅ♪」

 

「ふふっ♪プロデューサーはやっぱり、こうでなきゃね♪」

 

「ったく……まあ、二言はないなんて言っておいて、すぐに前言撤回するなんて恥ずかしいからな……」

 

「えへへ……♪これからも私たちと、大切な思い出を作っていきましょうね♪プロデューサーさんっ♪」

 

「あぁ。これからも頼むぞ、3人とも」

 

「……写真だけじゃなくて……いつかは本当に……」

 

「凛……?今、何か言ったか?」

 

「ううん、何でもない。それじゃあ二人とも、そろそろ行こうか。りあむさんを待たせちゃってるし」

 

「そうだねぇ♪じゃあ、プロデューサーっ♪まったね〜♪」

 

「ふふっ♪それでは失礼しますね♪また、よろしくお願いします♪」

 

「うん、また今度な。……ふぅ、なんとか終わった……」

 

「やれやれ……質問責めにされるわ、恥ずかしい写真を撮られるわ……どっちがアイドルなんだか……」

 

「……それもこれも……」

 

カチャッ

 

「おい!ピンクの悪魔!ちょっと来い……って……あれ?……あいつ……どこに行っちまったんだ?」

 

------------------------------------------------

 

突 然 で す が

 

夢見りあむ度診断を、やってみましょう!

 

これであなたも、立派な夢見りあむちゃんになれるかも!?

 

「……」

 

トゥン,テケテンテンテンテン,トゥントゥトゥン♪

 

「うひゃぅ!」

 

突然の電話にびびる 50りあむ

 

「うぉう……電話の着信音に慣れてないんだからさ〜……」

 

「うぐ……Pサマからだ……そ〜っと……よし、Pサマはいないね!カーテンも閉めっぱなしにしとこっと!」

 

部屋のカーテンが閉まりっぱなし 100りあむ

 

トゥン,テケテンテンテンテン,トゥントゥトゥン♪

 

「でないよ〜……でないってば〜……あ、切れた……もう……5・6コールで察してよ……」

 

電話が切れたあと、謎の安心感に包まれる 200りあむ

 

「……ふんっ……だいたい、Pサマが悪いんだからねっ……」

 

「急にぼくをつまみ出して、ずっと放置して、ニュージェネの三人とイチャつき始めるんだから……」

 

「ドア越しから、超絶リア充みたいな会話が聞こえてきてさぁ……はぁ……めっちゃやむ……」

 

「別に、好きでスルーしてるわけじゃ……いやしてるけど……でも、勝手に帰っちゃったのは事実だし……」

 

出た方がよかったかなと罪悪感を感じ、葛藤する 250りあむ

 

「……いいやっ!これもぼくを放置して、イチャついてたPサマが悪いんだっ!だから、し〜ら〜ないっ!!」

 

「それに、ぼくはやむやむの無だもんっ!あ〜あ!リア充、マジで爆発しないかなぁ〜っ!」

 

「……でもでも、今のぼくは、アイドルだし……怒られるのはやだし……よし!何か、言い訳を考えよっと!」

 

どう転んでも、炎上をする言い訳を考える 300りあむ

 

「え〜っと……何かないかな……?」

 

「頭ピンクの子だけにかかる、都合のおい病気とか……それとも、ウサミン星人に連れ去られてたとか……」

 

「……うわ〜んっ!もう、む〜りぃいいいっ!なんでこんなにぼくが、悩まなきゃいけないんだあ〜っ!」

 

「これも、アイドルのせい!いやっ!全部、Pサマのせいだ!」

 

目の前の現実から目を背け、責任転嫁をする 400りあむ

 

「だいたいPサマもさぁ!プロデューサーならやさしくしてよう!もっとぼくをみてよう!」

 

「……もっと……構ってよう……Pサマのばかあっ……」

 

「……ふんっ……あと、一秒でここに来てくれなかったら……もう、アイドルなんか……やめてやるう……」

 

カチャッ

 

「それは困るな」

 

「うわあっ!P、Pサマっ……!?」

 

間の悪さと、ここぞと言うときの強運は天下一品 700りあむ

 

------------------------------------------------

 

「ちょ、ちょっと!Pサマっ!急に、ぼくの部屋に入ってこないでよっ!//」

 

「アイドルをやめてもらっちゃ困るからな。それとも、このまま俺は出て行けばいいか?」

 

「……むぅ……Pサマのいぢわる……」

 

「ったく……何で、電話にでないんだよ……心配するだろ?」

 

「ふんっ……これも全部、Pサマが悪いんだもんっ……」

 

「えっ……俺が……?」

 

「……ぼくをずっと、廊下に放置して……隣の部屋で、ニュージェネの三人とイチャつき始めたクセに……」

 

「はぁっ!?イチャついてなんかねぇって!……ってか……」

 

ピンッ

 

「うぎゃっ!ま、また、デコピンっ……!」

 

「元はと言えば、お前のせいだろ!三人の目の前で、誤解を生むようなことをしやがって!!//」

 

「……し、知らないもん!全てを辿れば、Pサマがぼくをアイドルに、スカウトしたのがいけないんだよう!」

 

「ちょっ……逆ギレかよっ!ていうか、なんだよその理論!めちゃくちゃすぎだろっ!!」

 

「うるさいうるさいっ!ぼくを寂しがらせた罰として、Pサマにもデコピンさせろ〜っ!」

 

「うわっ!?こ、こっち来るなっ!」

 

「うりゃっ!このっ!このっ!!」

 

「バカっ!落ち着けって!そんな引っ付かれると……」

 

プニプニ♪

 

「……あ、あたってるんだよ!お前は女の子だろ!少しは、恥じらいを持てっ!//」

 

「うぐぐ……やっぱり……男の人って身長が高いから、指が届かないっ……!こうなったら……ていやっ!!」

 

「なっ!?き、急に、飛びかかってくるなっ!」

 

「どうだっ!これで、Pサマにデコピンが出来るよ!やられたらやり返す!倍返しだっ!」

 

「ちょ……おまっ……!顔が近っ……!分かった!分かったからっ!これ以上は、色々とやばいって!//」

 

「ふふん♪逃げようたって、そうはいかないよう♪さぁ〜、覚悟してねぃ〜♪」

 

「ばかっ……!やめっ……」

 

……チュッ♪

 

「……んぐっ!?」

 

「……」

 

「……ぷあっ……あ、あわわっ……//」

 

「……なぁ……りあむ?一旦……落ち着こうぜ……なっ?」

 

「あっ……は、はい……//」

 

------------------------------------------------

 

「「……//」」

 

「……おい、りあむ……なんか言えよ……//」

 

「……P、Pサマが……ぼくの、初めてを奪ったっ……//」

 

「第一声がそれかよっ!ていうか、人聞きの悪い言い方をするなっ!」

 

「……むぅ……//」

 

「ったく……SNSや実生活でも、そうやって炎上させるようなことばかり言いやがって……」

 

「……あのさ……Pサマはどうして、ぼくがここにいるのがわかったの?」

 

「さあな。お前は、目を離すと何をしでかすかわからないから、なんとなく、ここに来ると思ったんだよ」

 

「つまり……ぼくのことを、心配してくれてたってこと?」

 

「心配ねぇ……あ〜、そうだな〜。お星様になっちゃいそうなぐらい、心配しちゃったぞ〜」

 

「……そっか……Pサマってホント……優しいよね……//」

 

「おい、今のは皮肉だぞ。だいたい、お前があの時に変なことを言ったから、こんな騒ぎになったんだからな」

 

「はいはい♪わかってるよう♪」

 

「本当に、わかってるのかよ……」

 

「そ、それじゃあさ……ひと段落ついたことだし、その……せ、責任を取ってよ……♪//」

 

「ん?……責任?」

 

「ぼ、ぼくの初めてを奪ったんだからさ……Pサマが「やさしい世界」に、ぼくを連れて行って欲しいな♪//」

 

「うん、ヤダ♪」

 

「はぁっ!?何でよう!?男に二言はないって、言ってたじゃん!!」

 

「いつ、お前にそんなことを言ったんだよ!ていうか、責任も何も、お前が勝手にしでかしたんだろうがっ!」

 

「何さ!そんなに、ニュージェネちゃんたちがよかったの!?何がよかったのか、言ってみてよう!!」

 

「何だよ!よかったって!またお前は、そういうことを……!//」

 

「……むぅ〜……もういいもんっ!こうなったら、この部屋からスマホで、生配信をしてやるぅ!」

 

「は?……生配信?」

 

「……この部屋で……Pサマとイチャついてる様子を、生配信したら……炎上どころじゃなくなるねっ……♪//」

 

「そうしたら……Pサマが責任を取ってくれて、ずっと……ううん……「永遠に」ぼくと一緒に……えへへ♪//」

 

「あの……りあむ?一体……何を言ってるんだ?」

 

「Pサマっ……♪ぼくは、炎上をして燃え尽きても、アイドルをやめないって決めたよ♪だって……」

 

「……ぼくは……「Pサマだけ」の……アイドルだから……♪//」

 

「……な、なぁ……早まるなって……俺が悪かったからさ……なっ?」

 

「二人で、やさしい世界に行こうね……♪Pサマはずっと、ぼくだけのPサマだよっ……♪//」

 

「おい!やめろっ!そんなことをしたら、お前どころか、事務所そのものが……!」

 

「えへへ……配信スタート……っと……♪//」

 

「ばかっ!やめろおおおおおおっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……おい、準備は出来たか?」

 

「あっ……うん……出来た……」

 

「そうか。それじゃあ、行くぞ」

 

「……あのう……ぴ、Pサマ?その……わ、悪かったよう……」

 

「……ふぅ、そうだな。お前は本当に、悪いヤツだ」

 

「うぅっ……」

 

「……ったく……言っただろ?バカなことはやめろって」

 

「俺が瞬時に、配信をストップさせたからよかったものの……今後は、気を付けてくれよ?」

 

「はぁい……反省します……」

 

「それとも……お前は、アイドルをやめたかったのか……?」

 

「……そんなことない。もっと、オタクどもにすこって欲しいし、もっと、チヤホヤされたいもん……」

 

「だろ?それにさ……」

 

「あ〜っ!プロデューサーさ〜んっ!りあむさ〜んっ!こっちですよぉ〜!」

 

「Pサンとりあむサンの、おでましデスね。#今日もサイコーの一日が始まる、っと……」

 

「せっかく出会えたんだしさ、三人で、シンデレラの舞踏会に行きたいだろ?」

 

「……うん……行きたい」

 

「よし、その意気だ。これからも、一緒に頑張っていこうぜ」

 

「そうだね、頑張るよ。ところで……Pサマ?これからも、その……ぼくのことを、見ててくれる……?」

 

「……さぁ、どうだか。それは、お前次第だな」

 

「……そっか……それじゃあ……」

 

ギュッ

 

「早く、二人と合流をして、レッスンを頑張らないとねっ!」

 

「うわっ!?ちょっ……いきなり引っ張るなって!」

 

「……ぼく……クソザコメンタルだけど……頑張ってみるよ……」

 

「だから、Pサ……いや、オタクども……これからも、たくさんぼくをすこって、たくさんちやほやしてね♪」

 

「……約束だよう……♪」

 

これからもよろしくね♪Pサマ♪ 8000りあむ

 

------------------------------------------------

 

☆診断結果☆

 

0〜200りあむ     え”っ”……リア充……?

 

201〜1000りあむ  何さ!この、にわかオタク!めっちゃやむ!

 

1001〜1999りあむ いい感じのオタク!ぼくをすこってね♪

 

2000りあむ      お前はぼくか?

 

2001〜9999りあむ もう完璧♪オタクどもよりもPサマが……あ、これ……炎上案件?

 

10000りあむ     これからも「永遠に」よろしくねっ♪Pサマっ♪

 

さあ!高ければ高い程、あなたは立派な、夢見りあむちゃんだ!



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贈物シンデレラ 久川凪

「みなさん、どうも。二十話ですよ、二十話。ハタチです、大人です、成人式です」

 

「パーリーピーポーですよ。いぇーい」

 

「……ん?何か、言ったか?」

 

「いえ、こっちの話です。どんとうぉーりーです」

 

「そうか?それじゃあ……コホン……オーディション合格おめでとう。今日から二人は、立派な新人アイドルだ」

 

「はい♪お願いしま〜すっ♪」

 

「よろしくお願いします」

 

「楽しいアイドル生活を送れるように、俺がしっかりと、二人をサポートさせてもらう。よろしく、久川……」

 

「ちょっと待ってください」

 

「ん…?」

 

「も〜、プロデューサーさん〜?私たちは双子だし、久川じゃ、どっちが呼ばれてるのかわからないよ〜」

 

「あっ……そうだったな。それじゃあ、何て呼んだらいいかな?」

 

「シンプルに、下の名前で颯がいいなっ♪」

 

「では、私はねぎでお願いします」

 

「そうか。じゃあ改めてよろしくな。颯、ねぎ」

 

「は〜いっ♪」

 

「……つーん」

 

「ん?どうした?……あれ?待てよ……名簿、名簿っと……」

 

「……なぁ……「ねぎ」じゃなくて「なぎ」じゃないか……?」

 

「はい、そうです。私が正真正銘の「なぎ」です。ねぎでもきぎでもくぎでも、ありません」

 

「……」

 

「流石は、アイドルを束ねるプロデューサーですね。非常にお目が高いです」

 

「……そ、そうか……まあ、なんだ、凪もよろしく頼むよ」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「それじゃあ、お互いに自己紹介も済んだことだし、さっそく、事務所を案内するよ」

 

「案内してくれるの!?やったぁ〜♪お願いしま〜すっ♪」

 

「旅は道連れ世は情け。さあ、凪を導いてください」

 

------------------------------------------------

 

「まずはここが、アイドルの基本であるレッスンを行う、レッスンルームだ」

 

「わぁ〜♪噂には聞いてたけど……こんな風になってるんだ〜♪」

 

「……鏡の向こうに、もう一人の凪がいます」

 

「ここでは主に、3種類のレッスンをしてもらって……」

 

「私、知ってる♪ダンスレッスンと、ヴォーカルレッスンと、ヴィジュアルレッスンでしょ♪」

 

「おぉ、詳しいな。その通りだ。アイドルたちには、歌って踊ってもらわなければいけないからな」

 

「だから日夜、ここでレッスンに励んでもらってるんだ。二人も頑張ってくれよ」

 

「……イェーイ……ふふ、今日も凪はご機嫌ですね」

 

「次は食堂だ。レッスンも大事だけど、日々の食事も大事だからな。ここで、栄養をしっかり取ってもらってるんだよ」

 

「学校の食堂より豪華だ!すご〜い!」

 

「今週のA定食はからあげ……B定食は塩焼き……カレーに、うどんそばラーメン……」

 

「週によって、メニューが変わるんだよ。バラエティ豊富だから、飽きずに栄養たっぷりの食事を楽しめるぞ」

 

「チキンサラダやアボカドシュリンプなどの、ローカーボメニューまである……やるな」

 

「そして、ここは中庭。アイドルたちの、憩いの場だ」

 

「あっ、ここ知ってるよ!オーディション前に、私が自己紹介の練習してた場所だ!」

 

「……あぁ、そうだな。自己紹介の仕方について、悩んでたよな」

 

「だって、初めてのオーディションだったし……って、なんで知ってるの!?」

 

「オーディション会場に行く前に、遠くから颯の姿が見えたんだよ。随分と頑張ってたよな」

 

「……うぅ…なんだか、恥ずかしいよ……//」

 

「そんなに、恥ずかしがることはないって。その、頑張った結果、オーディションに受かっただろ?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「でも、どうせなら、一人で練習するんじゃなくて、凪に見てもらった方がよかったんじゃないか?」

 

「ん?あの時、なーも一緒にいたよ?」

 

「えっ……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「不安だから、なーにオーディションが始まる前に、確認してもらってたの。ねっ?なー」

 

「はい。しっかりと、はーちゃんを凪メイションさせてもらいましたよ」

 

「……わ、悪い……物陰で、颯が一人で練習してるようにしか見えなくて……」

 

「……つーん、いいんです。凪はねぎのように、日陰で地中深くに埋まってるような、存在ですので」

 

「そんなことを言うな。颯も凪も、俺が目をつけたアイドルだ。だから、絶対にシンデレラにしてみせるよ」

 

「ほぉ……あなたはなかなか、口説き上手ですね。シャンパンタワーです」

 

「なんか、誤解を生むような言い方だが……とにかく、俺に任せてくれ」

 

「……ねぇ……なーは……スカウトだったんだよね……?」

 

「えぇ。すました顔をして悩んでるところを、お持ち帰りされてしまいました。ぶい」

 

「お持ち帰りって……あのなあ……まあ、偶然、廊下で凪と出会って、俺がスカウトしたんだよ」

 

「そう……なんだ……」

 

「雰囲気で何となく、感じていたけど……見事に的中したよ」

 

「この、目の前にいる少女が、颯がオーディションで言っていた、双子の姉だってことがな」

 

「わぁお。はーちゃんはオーディションで、凪のことを話してくれてたんですね。これは鼻が高い。ドヤ」

 

「……私たちが……「双子」だから……オーディションで、採用してくれたの……?」

 

「う〜ん、半分当たりで、半分はずれかな。もちろん、颯が一際、輝いていたから採用したのは事実だ」

 

「だけど、このオーディションはうちの事務所に、新しい風を吹かせるためのものでもあったんだよ」

 

「新しい風……?」

 

「あぁ。颯が「双子の妹」と聞いて、閃いたんだ。今までうちでいなかった、双子のアイドルユニットをな」

 

「でも、凪との出会いは、本当に偶然だったんだ。だから、色んな意味で奇跡のユニットかもな。ははっ」

 

「偶然も必然のうち。ここで、出会ったのも何かの縁……エモいな」

 

「……プロデューサーさんはさ……私のこと……」

 

「あ〜っ!僕く〜んっ!」

 

「!?」

 

------------------------------------------------

 

「……僕?」

 

「……お嬢様……急に走ると、お体に支障が……」

 

「なっ……ち、ちとせ……!それに、千夜まで……一体、どうしたんだ?」

 

「あはっ♪こんにちは♪暇だから少し、お散歩をしてたんだ♪僕くんこそ、何をしてたの?」

 

「ばかっ……あまり、大きな声で言うな……!」

 

「えっ……あれっ?そういえば、後ろにいる、その女の子たちは誰?」

 

「あっ、あの……」

 

「……そうだったな、コホン……紹介するよ。この子たちは、今日から新しく事務所に入った、アイドルだ」

 

「二人は双子で、それぞれ、久川颯、久川凪って言うんだ。入って間もないが、仲良くしてあげてくれ」

 

「は、はいっ!はー……じゃなくて!私、久川颯って言います!徳島からやってきました!」

 

「……颯ちゃん……」

 

「私は、久川凪と言います。はー……ではなく、颯ちゃんの姉です。どうぞ、よろしくお願いします」

 

「……凪ちゃん……あ〜んっ♪かわいい〜っ♪」ムギュッ

 

「ひゃっ!?」

 

「新しい子は、双子ちゃんなんだ♪どっちも、食べちゃいたいぐらいかわいい〜っ♪」

 

ムニュッ♪

 

「……おぉ。はーちゃんと、同じぐらい……いや、もしかしたら……」

 

「私は、黒埼ちとせって言うんだ♪双子ちゃんたちと同じ、アイドルなの♪そして、この子もね♪」

 

「……初めまして、白雪千夜と言います。以後、お見知り置きを」

 

「あっ……よ、よろしくお願いしますっ!黒埼さん!白雪さん!」

 

「私の、かわいい僕ちゃんなんだ♪仲良くしてあげてね♪」

 

「……僕ちゃん……?」

 

「はい。私は、ちとせお嬢様に仕える、正真正銘の僕です」

 

「あれ?でも、さっき……僕「くん」って、言いましたよね?」

 

「そうだね♪僕ちゃんは千夜ちゃんで、僕くんは……」

 

「……っ!……あぁ、もう!ちとせ!ちょっと来いっ!」

 

「きゃっ……!?」

 

「あっ……行っちゃった……」

 

------------------------------------------------

 

「ったく……お前ってヤツは……!」

 

「……僕くんってば……結構、大胆なんだね……そんなに……私の手を、強く握るなんて……//」

 

「えっ…?……痛っ!」

 

「おい、お前。お嬢様に何をする気だ?」

 

「あっ……悪い……って!何で、俺が悪者になってるんだよ!」

 

「馴れ馴れしく、急にお嬢様の手を握るなんて、失礼だとは思わないのか?」

 

「馴れ馴れしいも何もあるか!ちとせも、少しは自重しろ!」

 

「えっ?どういうこと?」

 

「あのなぁ……他のアイドルがいる時に「僕くん」呼びはやめろって……」

 

「なんで?あなたが、私の僕くんだって言うのは事実でしょ?」

 

「事実なのか、事実じゃないのか……」

 

「……むぅっ…」

 

ギュッ

 

「うわっ!?おい!ちとせ!何、急に抱きついて来るんだよっ!」

 

「……知らない。僕くんが悪いんだぞっ……また……私の許可なく、勝手に……女の子を連れてきて……」

 

「ちょっ……人聞きの悪い言い方をするな!彼女たちは、事務所主催のオーディションで、合格をしたんだ!」

 

「でも……僕くんが、あの双子ちゃんたちを……合格させたんだよね?」

 

「……まあ……双子で少し、経緯は違うが……俺が、審査員の一人だったって言うのは間違いないな」

 

「ふぅ。お前はロリコンだったのですね。心底、呆れました」

 

「はぁっ!?ロリコン……!?」

 

「……どうせ……鼻の下を伸ばして、デレデレしながら、審査をしてたんでしょ〜」

 

「人を勝手に、変態扱いするな!ただ単に、彼女たちにアイドルの素質があると思ったんだよ!」

 

「それに、ちとせや千夜だって、そうだっただろ?素質があると思って、俺がスカウトしたんだからさ」

 

「それは、そうだけど……でも…何だか妬いちゃうな〜……言ったでしょ?私って、すごい独占欲が強いの」

 

「だから……あの双子ちゃんたちに、ものすご〜く、妬いちゃってるんだよ?」

 

「妬くって……何だよ?さっき、あれだけ二人と、仲良くしてたじゃないか」

 

「……ねぇ、僕くん……?私のことを、もう……見てくれないの……?……寂しいよ……クスン」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……ち、ちとせ!?」

 

「……お前……僕が主である、お嬢様に涙を流させるとは……覚悟は出来てるだろうな?」

 

「何だよ覚悟って!ていうか、ちとせも急に泣くなっ!」

 

「だって……最近、僕くんってば……忙しそうにしてて……全然、私たちに構ってくれないんだもん……」

 

「今日、やっと会えたと思ったら……新しいアイドルの女の子たちを、連れてきてるし……」

 

「私……すごい、寂しかったんだよ……?」

 

「ちとせ……」

 

「でも……これも、お仕事の一つなんだよね……?わかってる……わかってるけど……」

 

「他の女の子ばかりじゃなくて……もっと私のことも……見て欲しいよ……スンッ」

 

「……悪い……ごめんな……」

 

「……ってね……千夜ちゃんが言ってたの……クスン」

 

「!?」

 

「これからはもっと、二人のために……って……ん?」

 

「……これからは……何っ?」

 

「いや……これからはもっと、二人のために時間を作れるように、頑張ろうと思って……」

 

「……あはっ……よかったね♪千夜ちゃん♪どうだった?私の演技っ♪」

 

「お、お嬢様っ……!?急に、何をおっしゃるのですか……!」

 

「は?……演技?」

 

「んもう。千夜ちゃんってば最近、僕くんが全然、構ってくれないからず〜っと、いじけてたんだよ?」

 

「えっ……千夜が?」

 

「……そんなことはありません。何で、こんなヤツに私が……」

 

「あんっ、千夜ちゃんてば、素直じゃないんだから〜……でも「この子」は素直なんだけどねっ♪」

 

ピッ♪

 

(……さて、始めるか……)

 

「!!?」

 

------------------------------------------------

 

(まずは、解凍したひき肉を、分けないといけませんね)

 

(これが、私の分。これが、お嬢様の分。そして、これは……)

 

「お、お嬢様……これは、一体……」

 

「あはっ♪私のかわいい僕ちゃんの、観察記録だよっ♪どう?よく撮れてるでしょ♪)

 

(……いけない。また、あいつの分まで……用意をしようと……)

 

「あいつ……?」

 

「……〜っ…//」

 

(全く……最近の私は、どこかおかしいな。一体……どうしてしまったんだ?)

 

(……そうです。あいつが悪いんです。あいつが、全ての元凶なんです)

 

(なぜ……お嬢様はあんな、不潔な色情魔を僕にしたのか……今だに、理解が出来ません)

 

(待てよ?と言うことは、私が目を離した隙に、あいつはお嬢様を……)

 

(……ふぅ。あいつからはしばらく、目を離せませんね。面倒だ、面倒です、本当に)

 

(だいたい……男なら一途に、一人の女性に忠誠を誓えないのか。名誉ある、お嬢様の僕なのに……)

 

(それに……私だって……ああ、そうか。ふん、そっちがその気なら、こうしてやる)

 

(どうだ、分けたひき肉を合わせてやったぞ。そうです、お前にはもう作らないと、言っておいたはずです)

 

(でも……サプリだけは、特別に差し入れてあげましょう。一応、お嬢様の僕ですからね)

 

(……本当に……仕方のないヤツだな、あいつは……ふふっ)

 

「ねっ♪かわいいでしょっ♪」

 

「お、お前ぇえええええええ!//」

 

「ちょっ……何で、俺に怒るんだよ!勝手に隠し撮りしたのは、ちとせだろっ!」

 

「どう?千夜ちゃんはこれだけ、寂しがってたんだよ?」

 

------------------------------------------------

 

「どうだったって……えっと、千夜……悪かったな……?」

 

「……お前……今までのことを……全て、忘れろ……」

 

「は?忘れろって……何をだよ?」

 

「今日まで生きてきた記憶、全てだ。何なら私が今ここで、手伝ってやろう。一思いに全て、忘れさせてやる」

 

「なっ…!ぶ、物騒なことを言うな!無茶苦茶すぎだろ!」

 

「ふふっ♪千夜ちゃんってば……♪……でもね、僕くん?私も、寂しかったのは本当だよ?だから……」

 

チュッ♪

 

「!?」

 

「……これからも「私」を見てね♪これは……主からの、命令だぞっ……♪」

 

「ち、ちとせ……お前、今……俺の頰にっ……!//」

 

「あはっ♪次、会うまでにイイ子にしてたらもっと……「甘い」ご褒美を、あげるからねっ……♪//」

 

「……あのなぁ……前から言ってるが、こういうことは……冗談でも、やめろって……//」

 

「知らな〜いっ♪それじゃあ、ニブチンな僕くんは放っておいてぇ♪そろそろいこ〜っ♪千夜ちゃんっ♪」

 

「えぇ、参りましょう。不潔なケダモノに襲われる前に」

 

「おい。まだ話は、終わってな……」

 

「それじゃあね〜♪see you〜♪」

 

「あっ、行っちまった……何だったんだよ、一体……ふぅ。本当、わけのわからんヤツらだな……」

 

「……」

 

「……あれ?何か、忘れてるような……って!あの二人を、放置したままだった!早く戻らないとっ!」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪すっご〜い、美味しそう〜♪」

 

「わーお、わざとらしく驚いていますが、実際に驚いています。とてもオシャレですね」

 

「そうだろ?ここ、気に入ってるんだ」

 

「でも……本当にいいの?なんか、ご馳走になっちゃって……」

 

「なに、気にするな。二人を勝手に放置をしてしまった、お詫びでもあるんだ。だから、遠慮しないでくれ」

 

「いえいえ、そんな。それより、凪はあなたに対し、とても驚いています」

 

「えっ、俺に……?」

 

「白昼の、アイドルの憩いの場で、SMプレイとは……やりますね」

 

「……は?え、SM!?」

 

「えぇ。これがいいのかしらぁー、ぶひー。です」

 

「バカっ!アイドルのJCが、そんなことを言うなっ!ていうか、どういう意味だよそれっ!//」

 

「いえ。黒埼さんとは、そういう関係なのかと思って。ですよね?僕くん」

 

「……っ!何で、それをっ……!?」

 

「何やら、大変盛り上がっていたみたいなので。あなたは、変わった趣味をお持ちなんですね」

 

「そんな趣味あるか!変な誤解をしないでくれっ!」

 

「それじゃあ、黒埼さんたちとは、どういう関係なの?」

 

「どうって……ただ、アイドルとプロデューサーって言う、関係だと思うけど……?」

 

「それはないですね僕くん。さあ素直になってください僕くん。真実はいつも一つですよ僕くん」

 

「連呼するな!……と、とりあえず!ちとせも千夜も、二人と同じアイドルだから、仲良くしてやってくれ!」

 

「ふ〜ん?まあ、同じアイドルなんだし、お互いに少しづつ、仲良くなっていきたいな♪」

 

「仲良しなのはいいことだしな!頼むぞっ!あ、あはは……」

 

「……ところで……凪たちは、あなたのことをなんて、呼べばいいですか?」

 

「うん?どういうことだ?」

 

------------------------------------------------

 

「黒埼さんは「僕くん」です。凪たちも、僕くんと呼んだ方がいいのでしょうか?」

 

「ちょっ……だから、その呼び方は忘れてくれ!あいつが一方的に、呼んでるだけなんだって!//」

 

「だけど……せっかく、プロデューサーさんと仲良くなれたんだし、はーたち見たいに何か、欲しいなぁ〜」

 

「はーたち……そういえば、それぞれ双子同士で、ニックネームで呼びあってたよな」

 

「はい。「颯」だから、はーちゃん。「凪」なので、なー。シンプルイズザベストです」

 

「かわいらしい呼び名だな。でも、俺のことは普通に、プロデューサーでいいんじゃないか?」

 

「でもなぁ……う〜ん……プロデューサーさん……プロデューサーくん……プロデューサー……」

 

「……あっ!そうだ!プロデューサーだから「Pちゃん」っていうのはどう!?」

 

「確かに、あなたはPぽいですね。何か、擬音みたいです。ぴーぽいぴーぽい」

 

「ちょっと、気恥ずかしい気もするけど……俺は別に、構わないぞ」

 

「やった♪それじゃあ、さっそく……Pちゃん♪よろしくねっ♪」

 

「P、よろしくです」

 

「あぁ、よろしくな。二人とも」

 

「じゃあ、Pちゃんも……はいっ♪」

 

「えっ……?」

 

「Pちゃんも、私たちのことをそれぞれ「はー」「なー」って、呼んでよ♪」

 

「いや……俺は、颯、凪、で、いいんじゃないか?」

 

「近くの他人は、所詮他人。遠くの他人も、所詮他人。ですが、Pは凪たちと、運命共同体になりました」

 

「ですので、Pはお互いに、親しみを覚える呼び方をすべきだと思います」

 

「でもなぁ……はーと、なーって……」

 

「……Pちゃんは……はーたちのこと……きらい?」ウルッ

 

「いや……嫌いだとか嫌いじゃないとか…そういう意味じゃなくてだな……」

 

「……何かを目で訴える……いたいけなJCの顔に、アップデート……」ウルッ

 

「くっ……!あぁ、もう!わかったよ!呼ぶよ!呼べばいいんだろっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ、Pは押しに弱いタイプですね。わかりみです」

 

「ったく……それじゃあ……改めてよろしくな……はー、なー……//」

 

「あははっ♪Pちゃんてば、照れちゃって♪かわいい♪」

 

「……なぁ、やっぱり俺は、颯、凪にしないか……?」

 

「ダメ〜っ♪はーは、はー♪なーは、なー♪これはもう、決定事項だよぉ〜♪」

 

「アーアーきこえなーい。凪は、都合のいい言葉しか聞こえない、ハイテク仕様なのです」

 

「ぐっ……!まあ……お互いに、仲が良いのに越したことはないからな……」

 

「えへへ……♪//」

 

「さて、親睦を深めたところで……さっそくなんだが、いいか?」

 

「うん、どうしたの?」

 

「明後日から早速、二人にレッスンを行ってもらうことにしたんだ」

 

「わぁ〜♪もう、アイドルのレッスンを受けれるのっ!?」

 

「あぁ。二人の様子を見て、すぐにレッスンをしても、大丈夫だと思ってな」

 

「ふんっ、望むところだ。と、凪はあえて虚勢を張ってみます」

 

「やった〜♪じゃんじゃんレッスンをして、超有名なアイドルになってやるんだからっ♪」

 

「頼もしいな。それじゃあ、明後日のレッスンへの英気を養うためにも、今は食事を楽しもうぜ」

 

「そうだねっ♪それでは、いただきま〜すっ♪」

 

「いえいいえい、ひゅーひゅー、うぇいうぇい」

 

「……果たして……凪たちは無事に、アイドルになれるのか。衝撃の瞬間は、CMのあと」

 

------------------------------------------------

 

Tig-Tig-Tig……Hey!

 

Tig-Hag……オクリモノ、Yes!

 

……

 

「は〜い♪お疲れ様でした♪今日のレッスンは、ここまでですっ♪」

 

「あ〜、終わったぁ〜」

 

「ふぅ、千里の道も一歩からですね……いや、どこぞの王冠を被った、金属の王様を倒せばもしや……」

 

「レッスンお疲れ様。二人とも」

 

「あ〜♪Pちゃんっ♪来てくれたんだ♪」

 

「あぁ。二人の初レッスンだし、様子を見に来たんだよ。どうだった?」

 

「なんとかCM明けまで、持ちこたえることが出来ました。ぶい」

 

「ん?……CM?」

 

「気にしないでください、それより……真正面からどーん」

 

ギュッ

 

「うわっ!?」

 

「凪は、はーちゃんのため……いえ、少しだけPのためにも、レッスンを頑張りました」

 

「ですので、さあ、凪を思う存分褒め称え、崇めてください」

 

「ちょっ……急に、何だよっ……//」

 

「あ〜っ!なーだけずる〜い!Pちゃんっ!はーにもっ!」ギュッ

 

「えっ?あ、あぁ……颯も……お疲れ様?」

 

「えへへ……Pちゃんっ……♪」

 

「何だ?二人とも、そんなに疲れてたのか?」

 

「プロデューサーさんっ、お疲れ様です♪」

 

「おっ、ルキちゃんお疲れ様。いつもありがとうね」

 

「いえいえ。私こそ、姉たちの代役とはいえ、しっかりとレッスンをこなせれたかどうか……不安で……」

 

「そんなことないよ。ルキちゃんはしっかりと、レッスンをしてくれたはずだ。な?颯、凪」

 

「……」

 

「……おい、二人とも……?」

 

「あうっ……やっぱり……だめでしたか?」

 

「……Pちゃんっ、違うでしょ〜?」

 

「ぴー、パスワードが間違っています。システムエラー、発生中です」

 

「えっ、どういうことだ……?」

 

「……はー、なー……」

 

「!?」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……花?」

 

「ちょっ……!それは、三人の時だけだろっ?」

 

「エ〜。はー、そんなこと、約束をした覚えないも〜ん」

 

「呼ばないと、この体勢のままPと一生、運命を共にします。覚悟するんだな」

 

「……しょうがないなあ……わかったよ。そんなことないよな?はー、なー」

 

「うんっ♪トレーナーさん、すっごく優しくレッスンをしてくれたよっ♪」

 

「はい。手取り足取り、しっかりと教えていただきました。いぇーい」

 

「そ、そうですか〜……よかったです〜」

 

「ねっ?ルキちゃんはもっと、自信を持っていいと思うぞ?」

 

「は、はいっ!これからも、頑張らせてもらいますっ!ところで、プロデューサーさんっ」

 

「ん?何だい……?」

 

「その……花、と言うのは一体……」

 

「あっ、えっと……これはだね……」

 

「Pちゃんが考えてくれた、私たちの呼び名なんですっ♪」

 

「は……?」

 

「そうですね。ナギセレクション最高金賞受賞レベルの、ナイスな呼び名です」

 

「私たちの頭文字を、それぞれとって「はー」「なー」って、呼んでもらってるんですよ♪」

 

「颯ちゃんだから、はー。凪ちゃんだから、なー……あっ、そういう意味だったんですね……いいなあ……」

 

「いや、ルキちゃん?元は、この双子同士が呼び合っててだね……ん?」

 

「あわわっ……!い、いえっ!こっちの話ですっ!//」

 

「そう?なら、いいんだけど……」

 

「……はー、いいことを思いついちゃったっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ん?何だよ。いいことって」

 

「トレーナーさんも、Pちゃんに「るー」ちゃんって、呼んでもらおうよ!」

 

「えっ……ええ〜っ!?」

 

「わぁお。それは、グッドアイディアですね」

 

「おいおい……あのなぁ。ルキちゃんは、トレーナーさんなんだぞ?そんな風に呼んだら、失礼だろ」

 

「あっ……え、えっと……//」

 

「ほら。ルキちゃんからもこの双子に、お姉さんとして言ってあげて?大人には、色々あるんだってことを」

 

「そのっ……そそ、そうですねっ!社会には色々とあって、混同するのは余り、よくないと思います……」

 

「なるほど。一理ありますね」

 

「で、でもっ、私はその……プロデューサーさんには、親しみを込めて、呼んでもらいたいと言いますか……」

 

「うんうん……ん?」

 

「むしろ、その……いつでも私のことを……る、るーって、呼んでもらいたいな……なんて♪//」

 

「……ルキちゃん?」

 

「ほらっ!Pちゃんっ!トレーナーさんのことを、るーちゃんって呼んであげて!」

 

「善は急げですよ。ひゅーひゅー」

 

「ルキちゃん?無理をしなくて、いいんだぞ……?」

 

「い、いえ!無理とかはしてませんっ!だからこれから私のことを……」

 

「……「るー」って呼んでくださいっ……だめですかっ……?//」ウルッ

 

「……ぐっ……わ、わかったよ……ルキちゃんが望むなら……そう呼ばさせてもらうよ……」

 

「本当ですか!?えへへ♪やっぱり……プロデューサーさんは、優しいですねっ……♪//」

 

「えっと……そ、それじゃあ、これからも、この双子のレッスンを頼むよ……るーちゃん……//」

 

------------------------------------------------

 

「は、はいっ!これからも頑張らさせてもらいますっ!だから、私のことも応援してもらえると嬉しいな……」

 

「……ぴーちゃんっ//」

 

「えっ……//」

 

「「……//」」

 

「……ねえ!ちょっとPちゃん!!なんか、はーたちのことを忘れてないっ!?」

 

「うわっ!?あっ……わ、悪い……」

 

「……む〜っ」

 

「……あ、あのっ!それでは、私はそろそろ打ち合わせがありますので、これで……」

 

「あっ、ごめんね……つい、引き止め続けちゃって……」

 

「いえっ!では、颯ちゃん、凪ちゃん!ぴ、ぴーちゃん!これからも、よろしくお願いします!ではっ!//」

 

パタン

 

「ふう、ったく……何だか、すごい恥ずかしくなってきたぜ……それもこれも……」

 

「……」

 

「おい!はー!何で急に、あんなことを言いだしたんだよ!」

 

「ふ〜んだ!はーたちを放置して、トレーナーさんにデレデレしちゃってさ!Pちゃんなんか、知らないっ!」

 

「ちょっ!逆ギレかよ!お前のせいで、すごい恥ずかしかったんだからなっ!」

 

「……知らないもん」

 

「ぴー」

 

「……」

 

「……P、無視ですか?そんないじわるをすると、もう領収書を切ってあげませんよ?」

 

「……っ!?そ、それだけは勘弁してくださいっ!」

 

「やっと、反応してくれましたね。ぶい」

 

「って……なー?」

 

「なるほど。これは、ロード画面で待機中のみなさんに、教えてあげなければいけませんね」

 

「Pのウワサ。領収書を管理する、緑の服の人が苦手らしい……っと」

 

「……何を言ってるんだ……?」

 

「いえ、こっちの話です。それより少し耳を貸してください。その……ゴニョゴニョ……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

ジー

 

「……おぉ、いけない。天井の、存在しないシミを数えていたらつい、ぼーっとしてしまいました」

 

「凪はもう歳ですね。そう思いますよね?はーちゃ……そうでしたね。今の凪は、一味違う凪でした」

 

「……おひとりさまになりたいのは、ふたりだから。ずっと、いっしょにいましたね」

 

「でも、凪は自分の場所がほしい……はーちゃん、やっていきましょう」

 

コンコン

 

「お〜い、なー。いるか〜?」

 

「その声は、Pですね。そのまま入ってきてください」

 

「そうか、それじゃあ失礼するぞ……おぉ。ここが、なーの部屋か」

 

「えぇ。JCの部屋に、合法的に入れてよかったですね。今だけは、通報しないでおいてあげます」

 

「……俺……帰った方がいいか?」

 

「だめです、帰ったら通報します。Pの転職先が、刑務所になってしまいますよ?」

 

「……お邪魔させてもらいます」

 

「はい、どうぞ。約束通り、来てくれたんですね」

 

「まあな。で、どうだ?女子寮の居心地は」

 

「べりーぐっどですよ。やっぱりここはいい」

 

「それはよかった。気に入ってもらえてよかったよ」

 

「それでは、P。ご飯にします?お茶にします?それとも……」

 

「うん。俺、お茶が欲しいな」

 

「おぉ、なかなかやりますね。インターネットレスバトルで、無敗を誇る凪に即レスとは」

 

「あのなぁ。前から思ってたんだが、そんな言葉、どこで覚えてくるんだ?」

 

「ふふん、さとり世代をなめないでください。この現代は、インターネット大航海時代です」

 

「ありとあらゆる情報をネットからサルベージし、収集したこの、凪ブラリーを甘くみないことですね」

 

「何だそりゃ……まあ、いいか。で?どうしたんだ?急に俺を呼び出して」

 

「おっと、これは失礼しました。実を言うと、少しお願い事をしに、Pを呼んだのです」

 

「でも、その前に、Pがご所望をしたお茶を淹れてきます。ですので、少し待っててください」

 

「そうか、ありがとう。なんか悪いな」

 

「いえいえ。調べによりますと、五分に一回スタミナが回復するそうです。ですので、ゆっくりしてください」

 

「そうだな、ゆっくりさせてもらうよ……って……スタミナ?」

 

------------------------------------------------

 

「はい。どうぞ」

 

「おぉ。ありがとうな」

 

「それでは、隣に失礼します」

 

「「……」」

 

「……で?何の用ですか?」

 

「おい!それはこっちのセリフだ!何の用で、ここに俺を呼んだんだよ!」

 

「冗談です。Pはからかうと面白いのでつい、いたずら心が芽生えてしまいます」

 

「ったく……大人をからかいやがって……」

 

「……まるで……はーちゃんみたいです」

 

「ん?はーって……俺が?」

 

「はい、まるで瓜二つです。寂しがりやで構ってちゃんなところも、とても……そっくりです」

 

「……あ〜、そうですね〜。俺、寂しかったから、なーお姉さんに構ってもらえて、嬉しいぞ〜」

 

「ほぉ、それは朗報です。それじゃあ……」

 

ギュッ

 

「ちょっ……!?」

 

「もっと、Pを構ってあげます。今の凪は、Pだけの凪です。感謝するんだな」

 

「……さて……構ってもらえて嬉しかったな〜。じゃあ、離れようか」

 

「ダメです。離れません」

 

「……俺も、冗談で言ったんだよ……おあいこだろ?」

 

「凪に大人のジョークはわかりません。いたいけなJCなので」

 

「くっ……!都合のいい時だけ、JCになりやがって……!」

 

「……ところで……Pは、はーちゃんのことをどう思いますか?」

 

「ん?急に、どうしたんだよ?」

 

「いいから答えてください」

 

------------------------------------------------

 

「どうって……元気で、かわいい女の子だと思うけど?」

 

「それは……アイドルとして、ということですか?」

 

「当たり前だ。むしろ、それ以外ないだろ」

 

「……ふっ……勝ったな。はーちゃんなら、凪の隣で寝ています。Pに、完全勝利してしまったみたいだな」

 

「……どういう意味だ?」

 

「はーちゃんは、凪だけのアイドルです。ですので、Pがはーちゃんを、どう思ってるのか確認しただけです」

 

「あのなあ……なーが、俺をどういう風に見てたのかは知らんが、安心しろよ」

 

「俺はこれでも、色んなアイドルと接して来てるからな。そこら辺はしっかりと、弁えてるつもりだよ」

 

「……その言葉……本当なんですね?」

 

「あぁ。なんなら、その隣で寝てるはーにも、伝えておいてくれ」

 

「わかりました。これは、はーちゃんにも朗報ですね」

 

「朗報かどうかは知らんが……まあ、そういうことだ。それより……」

 

「……なーがこうやって、俺にずっと抱きついてる方が……よっぽど、誤解を生むと思うぞ?」

 

「おぉ、これはいけない。凪には、はーちゃんと言う、愛しのアイドルがいるとうのに」

 

「そうだな。その愛しのアイドルのためにも、こういうことは程々にしてくれよ」

 

「えぇ、わかりました。それでは……はい」

 

「ん?何だよ?急に、手を差し出して」

 

「今月分の、お姉さん料を払ってください。凪の口座ではなく、ゆーこちゃんの口座に振り込んでくださいね」

 

「ゆーこちゃんって、なーたちの親御さんか……じゃなくて!何だよそれ!」

 

「冗談です。特別に、今月分はチャラにしてあげますね。さて、それでは本題に入りましょうか」

 

「本題……あぁ。すっかり、話がそれてたな。それで?何だっけ?」

 

「今度、凪たちで、初ライブがありますよね?」

 

「そうだな。ユニット「miroir」としての、初ライブがあるな」

 

「もし……その初ライブが無事に、成功したら……凪のお願い事を、聞いてくれますか……?」

 

「お願い事って何なんだ?」

 

「それは秘密です。いたいけなJCのお願い事を聞こうとするなんて、馬に蹴られてお星様ですよ?」

 

「何だそりゃ……まあ、俺が出来る範囲でなら別にいいぞ。なーたちの、記念すべきデビューライブだしな」

 

「ありがとうございます。では無事、ライブを成功させましょう」

 

「あぁ。頼むぞ」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、そろそろ凪は、はーちゃんの部屋に戻ります。お時間をもらってしまいました」

 

「気にしないでくれ。それじゃあ、俺もそろそろ……ん?」

 

「どうしました?」

 

「……凪の部屋は、ここだろ?」

 

「わぁお、バレてしまいましたか。これは、スキャンダル間違いなしですね」

 

「狙うタブロイドに、迫るP、そして凪たちは覚めることのないアブない夢に……いやーん」

 

「……まあ、双子だし問題ないけどな。でも、程々にしてくれよ…?」

 

「安定のスルースキルですね。それでは、後日また会いましょう」

 

「うん。じゃあまた、後日な」

 

「……あっ、P。言い忘れてたことがありました、凪は、Pははーちゃんに似てると言いましたね」

 

「ん…?あぁ、聞いたな」

 

「と言うことは、凪の中で、Pとはーちゃんは一心同体です。この言葉の意味、わかりみですね?」

 

「えっ、俺とはーが……?一体どういう意味なんだ?」

 

「……ふぅ。凪は一つ、わかったことがあります」

 

「PはPのPによるPのためのPであり、Pはとんでもなく、Pと言うことです」

 

「???」

 

「話が長くなってしまいましたね。それでは思う存分、JC分を堪能してください。私物は特別料金ですよ」

 

「するか!俺はとっとと出るぞ!それじゃあ、後日なっ!」

 

------------------------------------------------

 

コンコン

 

「はーちゃん。いますか?」

 

「なーなの〜?入っていいよ〜」

 

「それではお邪魔します。すみませんね、こんな夜に」

 

「別に大丈夫だよ。それで、どうしたの?」

 

「いえ。何となく、来てみてしまいました」

 

「あははっ♪何それ〜♪」

 

「何だか、今まで一緒の部屋だったので、まだ、違和感が拭えませんね。はーちゃんはどうですか?」

 

「……そうだね……はーも、なーがいないと何か、違和感を感じるよ。部屋は近いのにね」

 

「ゆーこちゃんもいませんしね。心配性なゆーこちゃんの、抜き打ち来襲もないですし……」

 

「ゆーこちゃん……寂しくて、泣いちゃってないかな?パパがいるから、大丈夫だとは思うんだけど……」

 

「……はーちゃんは……寂しいですか……?」

 

「……半分は本当で、半分は違うかな。正直まだ、都会に慣れてないし、家が恋しくなる時はあるよ?」

 

「でも…黒埼さんや白雪さんたちみたいな、同じ道を目指す、色んなアイドル仲間に出会えたし、それに……」

 

「……Pちゃんにも出会えたしね……今は寂しさより、アイドルを頑張りたいって気持ちの方が強いんだ」

 

「……そうですね。Pは、はーちゃんとよく似ています。一緒にいると、とても安心出来ますしね」

 

「なーこそ……寂しくないの?」

 

「そうですね。お布団お菓子パーリーが、いともたやすく出来るのは、違和感を感じます。ですが……」

 

「……凪も……Pやアイドル仲間に囲まれて、寂しくはないですね。むしろ、すごくエモい気分です」

 

「……そっか……それじゃあ、はーたちで改めて頑張って、超人気者になろうよ♪ねっ♪」

 

「えぇ。はーちゃんと、そして、Pの三人とならイケる気がします。ですので、頑張りましょう。はーちゃん」

 

「そうだね、なー♪ゆーこちゃんやパパに、最高の贈り物を届けようよ♪せーのっ!おー!」

 

「おー、です」



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日曜シンデレラ 久川颯

「それでは、はーちゃん。また明日」

 

「うん♪おやすみ♪なー♪」

 

カチャッ

 

「……行っちゃった……う〜ん……やっぱり、なーがいないとヘンな感じ……」

 

「ずっと、一緒だったもんね……はーたちが、生まれた時から……ずっと……」

 

なーは……スカウトだったんだよね……?

 

えぇ。すました顔をして悩んでるところを、お持ち帰りされてしまいました。ぶい

 

「……」

 

私たちが……「双子」だから……オーディションで、採用してくれたの……?

 

う〜ん、半分当たりで、半分はずれかな

 

「……双子……か……」

 

凪との出会いは、本当に偶然だったんだ。だから、色んな意味で奇跡のユニットかもな。ははっ

 

「もし……あの時……なーじゃなくて、はーだったら、Pちゃんは……」

 

「……ううん。はーは、はー。なーは、なー。だもんね……」

 

「近くて遠い、すぐ隣にいる……楽しみも趣味も違くて……でも、どこか似ている……」

 

「もう一人の……「私」……そっか、そうだよね……」

 

「こうやって、なっていくんだよね。はーも頑張らなきゃ……だって……」

 

「……輝くアイドルに……なるだもん……絶対に……」

 

------------------------------------------------

 

「よし、着いたな」

 

「わ〜っ!ここが原宿!?」

 

「うん、今日はオフにしよう。だから、俺が原宿を案内するよ」

 

「ウワサには聞いてたけど……すっごくオシャレな街並!人!お店!さっすが、都会って感じ〜♪」

 

「都会は情報が多いですね。あと、はーちゃんが地元で見たことがないほど、生き生きしているな」

 

「ほらっ!Pちゃん!なー!早く早く!置いてくよ〜!」

 

「時は金なり、善は急げというやつですね。わかりみです」

 

「まあまあ、そう焦るなって。時間はまだ、たくさんあるんだからさ」

 

「うぅ〜……それは……そうだけどぉ……あ〜っ!」

 

「はーちゃん。どうしました?」

 

「クレープだあ!しかも、たくさん種類がある!」

 

「何だ、クレープに興味あるのか?それじゃあせっかくだし、食べていくか?」

 

「い〜の!?やった〜♪」

 

「P、いいのですか?」

 

「あぁ。好きなのを選んでくれ」

 

「それでは、お言葉に甘えて。ありがとうございます」

 

「ありがとう♪Pちゃんっ♪さ〜て♪ど・れ・にしようかな〜♪」

 

「これは、はんぶんこの流れですね。わかりみです」

 

「見て見て♪かわいくない?なーは、イチゴ以外選んでっ!」

 

「流石に、専門店だと種類が多いよな。メニューを見てるだけでも、お腹がいっぱいになりそうだ」

 

「そうですね。凪は今、決断を迫られています。これは一大事です」

 

「ははっ、大袈裟だな。でも、迷うのはわからなくもないぞ。これだけ種類が多いんだから」

 

「Pちゃんは、ここに来たことがあるの?」

 

「流石に、俺一人ではないけど…事務所のアイドルとは、何回か来たことがあるぞ。例えば仕事帰りとかな」

 

「そうなんだ〜。帰り道に、オシャレなクレープを食べながらお話……やっぱり、最先端だねっ!都会って!」

 

「……決まりました」

 

「おっ、決まったか。なーは、何を選ぶんだ?」

 

「そうですね。凪は、これにします」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……美味し〜い♪はい♪なー♪」

 

「あむ……わぁお。あまくてすっぱい、恋の味ですね。それでは、はい、はーちゃん」

 

「ありがとう♪……ん〜♪なーのも、すごい美味しいね♪」

 

「ははっ。二人とも、本当に仲がいいんだな」

 

「えぇ。はーちゃんは、凪検定一級を持っていますので」

 

「はーたちは、いつも仲良しだしねっ♪」

 

「それはいいことだ。でも、一つ聞きたいことがあるんだが……なーは、クレープじゃなくてよかったのか?」

 

「はい。凪は、タピオカドリンクが飲みたかったので」

 

「何て言うか……なーはやっぱり、個性的だよな」

 

「……と言いますと……?」

 

「いや。飲みたかったなら、それでいいんだ」

 

「ただ、俺はてっきり、姉妹で違う具のクレープを選ぶと思っててな。想像の斜め上をいったっていうか……」

 

「凪は自分を曲げませんよ。ぶい」

 

「……ね〜ね〜!PちゃんPちゃんっ!はーは?ね〜!はーは!?」

 

「ん?どうしたんだ?急に」

 

「イチゴのクレープを選んだはーのこと、どう思った!?イケてるアイドルっぽい!?」

 

「どう思ったって……その……かわいいと思うぞ…?」

 

「あ〜っ!今、悩んだでしょ〜!それに、アイドルの特徴がかわいいって、普通すぎるよ〜!」

 

「いや……アイドルにとっては結構、重要な要素だと思うぞ?イチゴっていうのも、実に女の子らしいし」

 

「普通すぎて、ヤ〜ダ〜!何か、はーならではって、言うのはないの〜!?」

 

「う〜む……そうだな……強いて、言うなら……」ジー

 

「?」

 

「……他の同年代よりか……スタイルがいいとか…?」

 

------------------------------------------------

 

「スタイル……?ふ〜ん、そっか〜。へぇ〜」

 

「……何だよ……」

 

「確かに、スタイルには自信があるよ?はーの、一つの自慢ポイントだしねっ♪」

 

「……でも、まさか……Pちゃんが、そういう風に思ってくれてたなんて……えっち……//」

 

「はぁっ!?」

 

「美味しそうなクレープより、美味しそうなはーちゃんのことが、気になっていたのか。流石は、Pですね」

 

「ちょっ……そういう意味じゃねえって!ただ、はーの特徴を言えって言うから、仕方なくだな……!//」

 

「……えいっ♪」

 

プニッ♪

 

「なっ……!?はっ、はー!何だよ!急にっ……!//」

 

「んもう。さっきからPちゃんてば、なーのことばかり、見てるんだもん。だから……」

 

「……こうやって……はーの「個性」を、Pちゃんにアピールしていかなくちゃね♪ねね、どう……?//」

 

「別に、そんなことは……ていうか!どうも何もあるか!離れろっ!//」

 

「いやっ!えっちなPちゃんが、悪いんだも〜んっ♪」

 

「Pは、凪たちをそういう風に見てたのですね。いやーん」

 

「おい!誤解に誤解を重ねるな!」

 

「……でも……「キライ」じゃないよねっ……♪//」

 

「っ!……し、知るかっ…!//」

 

「ふふっ…♪照れてるPちゃんって、超かわいい♪」

 

「ったく……!はーはアイドルになったんだから、こういう誤解を招くようなことはだなっ……!//」

 

「……こんなこと……Pちゃん以外の、男の人には……しないよ……?」

 

「ん?どういうことだ……?」

 

「何でもないよっ。Pちゃんはやっぱり、Pちゃんなんだな〜って、改めて思っただけ。ね〜?なー」

 

「えぇ、そうですね。本当に、手のかかるPです」

 

「二人して……何なんだよ……一体……」

 

「ところで、Pちゃん。次は、どこにはーたちを、案内してくれるの?」

 

「うん……?あぁ、そうだな。でも、食べてからにしようよ。まだ、時間はたくさんあるんだし」

 

「それもそうだね♪……ん〜♪それにしても……本当にこのクレープ、美味し〜い♪」

 

「映えの聖地で、映える飲み物を飲みながら、凪自身の映えについて考える……エモいな」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……」

 

「ねぇねぇ、Pちゃん♪Pちゃんっ♪どう?これ、似合う?」

 

「あぁ。とてもよく、似合ってるぞ」

 

「ありがとう♪じゃあ、これはキープして……なーは、これ着てみて!」

 

「凪は今、全力でマネキンをしています。貴重な、1/1スケールのJCマネキンです」

 

「ここのショップも、たくさん種類があるからな。ゆっくり選べるんじゃないか?」

 

「でも、Pちゃん。本当にいいの?クレープも、ご馳走になったのに……」

 

「なに、二人のアイドルデビュー祝いだ。気にしないで、好きなのを選んでいいぞ」

 

「わ〜いっ♪ありがとう♪Pちゃんっ♪う〜ん、これもいいなぁ〜……あっ、こっちも、なーに似合うなあ」

 

「あとで、はーちゃんのも選んであげますね。ナギ・コレクション開催です」

 

「ははっ。何だかこうしてみると、二人って改めて、双子って感じがするよな」

 

「えっ、そう……?」

 

「例えば、どういうところがですか?」

 

「いや、服を着せあってるところを見てると、顔つきから何まで、そっくりだな〜って思ってさ」

 

「「……」」

 

「ん…?どうしたんだ?二人とも」

 

「……あっちへ行こうぜ……久しぶりに…………キレてしまいました……」

 

「ふ〜ん……Pちゃんってば、そんなイジワルを言っちゃうんだ〜」

 

「……えっ、い、イジワル……?」

 

「Pには、ワックワクでドッキドキな、楽しいことをしてあげます。さあ、来てください」

 

「えへへ♪はーたちと、と〜っても、楽しいことをしようねっ♪」

 

「あっ、いや、その……悪かったよ……?」

 

「ダメ〜ッ♪Pちゃん、覚悟してねっ♪」

 

「ちょっ……ま、待て……」

 

「Pくんがクロに決まりました。オアソビを開始します」

 

「わ、悪かったってええええ!」

 

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「うぅ……どうして……俺が、こんな目に……」

 

「あははっ♪Pちゃんって結構、キュートな服が似合うんだね♪かわいい♪」

 

「Pには、アイドルの素質がありますね。どうも、P担当の凪です」

 

「頼む……スマホの、その俺の写真を消してくれよ……なっ?」

 

「やっ!Pちゃんが、はーたちにイジワルをしたんだし、はーたちも、Pちゃんにイジワルをしちゃうもん!」

 

「だから、そのイジワルって何だよ……」

 

「……凪たちは…変わってきています」

 

「えっ……変わってきてる…?」

 

「常に一緒だった、凪とはーちゃんが「アイドル」として、変化をしてきているのです。ねっ、はーちゃん」

 

「……例えば?」

 

「部屋は別ですし、それに朝食は、パン派の凪に合わせずに、はーちゃんは和食を選ぶようになりました」

 

「そこぉ!?」

 

「今までは、どれもこれも一緒でした。今はだんだんと、違いが出てきていますね」

 

「何がとは、はっきり言えないけど……確かに、変わってきてるのかもね……はーたち……」

 

「アイドルとして、自信を持ってくれるのは嬉しいけど……二人とも、何かあったのか?」

 

「ううん。はーたちは、いつでも仲良しだよ♪毎日、会ってるしね♪」

 

「えぇ。もちろんはーちゃんは、凪だけのアイドルです。ですが……」

 

「……アイドルになる前の凪たちとは、何かが違ってきている……そんな気がするんです」

 

「そうか。まあ、仲がよければ別にいいんじゃないか?いい変化なら、喜ばしいことだし」

 

「具体的には言えないけど……何かが変わってきてるのかな……?はーたち……」

 

「でも、一つだけ、確実に変わったと確信できることがあります……じー」

 

「ん?何だよ。俺をそんなに見つめて」

 

「……凪プロダクションに、Pという新しいアイドルが、来たということです」

 

------------------------------------------------

 

「???」

 

「……そうだね〜♪こんな「かわいい」Pちゃんと出会ってから、はーたちの日常って、激変しちゃったかも♪」

 

「ちょっ……だからその写真は、早く消せって!恥ずかしいからっ!//」

 

「しかし、本当によく似合っていますね。同じアイドルとして、嫉妬してしまいます」

 

「あっ!そうだ♪今度は、コスメも試してみようよ♪Pちゃんって童顔だから、もっとカワイクなれそうだし♪」

 

「同じって何だよ!あと、俺をおもちゃにするな!」

 

「ふふっ。少しずつ、慣れてきました。都会にも、アイドルにも、Pの扱いは、当然」

 

「扱いって……あのなぁ……」

 

「凪は、P検定一級を取得しました。ですので、Pの扱いなら朝飯前です」

 

「Pちゃんって、面白くていい人だよね♪あと、優しいっ♪」

 

「……褒めてるのか、貶されてるのか……」

 

「褒めてるんですよ。よーし、よしよし」

 

「えへへっ♪Pちゃん♪これからもよろしくねっ♪」

 

「凪たちがPをシンデレラにするのか、Pが凪たちをシンデレラにするのか、卵が先か、ニワトリが先か、これ以下に」

 

「……おーい。お前たちは、アイドルなんだぞ〜?少しは、自覚を持ってくれよ〜?」

 

「……おぉ、そうでした。Pのあまりのかわいさに、凪は我を忘れていました。凪たちはアイドルでしたね」

 

「おいおい頼むぜ?ったく……」

 

「あははっ♪それじゃあ、さらに仲良くなったところで……Pちゃんっ♪これ持って♪」

 

「ん?何だこれ」

 

「映えの聖地で、自撮り棒を託します。この意味がわかりますか?どういうことだ」

 

「自撮り棒……?」

 

「Pちゃんに買ってもらった、新しい服をゆーこちゃんに自慢するのっ♪だから、はーたちを撮って欲しいな♪」

 

「あぁ、親御さんに送る用か。それなら、自撮り棒でじゃなくて俺が直接、撮ってあげるよ」

 

「ダメっ!Pちゃんも、はーたちと一緒に映るの!」

 

------------------------------------------------

 

「……俺は……いらないんじゃないか?」

 

「JCと合法的に、一緒に写れるチャンスですよ。今だけは、通報しないでおいてあげます」

 

「いや、双子だけで撮りなって。ほら、綺麗に写してやるよ」

 

「……いや〜んっ!お巡りさ〜ん!Pちゃんが、イジワルしてくるよう!」

 

「ぴーぽーぴーぽー……どうも、凪ポリスです。今から、Pを逮捕します」

 

「えっ……?」

 

「さあ、自撮り棒を持つんだ。そして……」

 

ギュッ

 

「!?」

 

「凪たちと同行をしてもらおう。もちろん、拒否権はありません」

 

「あははっ♪Pちゃんタイホ〜♪」

 

「何で、俺が逮捕されなきゃいけないんだよ!つうか、二人して俺にくっついてくるな!//」

 

「Pちゃんは……はーたちと、写真を撮るの……イヤ?」ウルッ

 

「イヤだとか、そういうことじゃなくてだな……」

 

「……ふぅ。これは、はーちゃんとだけの、ヒミツにしたかったのですが……しょうがないですね」

 

「?」

 

「この「新しいアイドル」の写真をフレちゃんさんにも見てもらいましょう」

 

「おぉ♪ナイスアイディア♪」

 

「なっ……!ま、待て!そんなことをされたら…!」

 

(わぁお♪この新しいアイドルの子、かわいいねぇ〜♪)

 

(う〜ん、アタシだけで独占するのは、もったいないな〜……あ、そうだっ♪)

 

(事務所のみんなに、教えてあげよっと♪楽しいことは、みんなで共有しなきゃね〜♪)

 

(それじゃあさっそく、アイドルのみんなのところにぃ〜……れっつらごぉ〜♪)

 

「……さあ……一緒に、仲良く撮ろうぜ……」

 

「流石はP。話がわかりますね」

 

「じゃあ、撮ろうよ♪ほらぁ、Pちゃんっ♪もっと、寄って寄ってぇ♪」

 

「ちょっ……近いって……!//」

 

「よしっ♪いっくよ〜♪せーのっ、はいっ♪」

 

「「チーズっ♪」」

 

パシャッ♪

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「あっ♪Pちゃん、おはよ〜♪」

 

「おぉ、おはよう。はー……ん……?」

 

「んん〜?どうしたのっ?」

 

「いや……何でもないよ、ごめんな。ところで、昨日はどうだった?楽しんでくれたか?」

 

「うんっ♪すっご〜く、楽しかったよ♪」

 

「タピオカを飲んだり、クレープを食べさせてもらったり、あとは、かわいい服を買ってもらえたりして……」

 

「……とっても……と〜っても、ハッピーな時間をありがとうね♪Pちゃん♪」

 

「そうか、そんなに喜んでくれると、連れて行った甲斐があるよ」

 

「あっ、あとね♪ゆーこちゃんに写真を見せたら、かわいい服って、褒めてもらっちゃった♪」

 

「……やっぱり……あの写真を……ゆーこさんに、送ったのか……?」

 

「うん♪……真ん中に写ってる、素敵な彼氏さんは誰なのって、ゆーこちゃんが……気にしてたよ……?//」

 

「は?……彼氏?」

 

「あははっ♪ゆーこちゃん、公認だねっ♪」

 

「公認って……おい、はー……まさか……ゆーこさんに、変なことを吹き込んだりしてないよな……?」

 

「さぁ、どうだろうねっ♪それよりさ……Pちゃんは……なーのことを、どう思う……?」

 

「ん?なーが、どうかしたのか?」

 

「ちょっと、聞いてみたいだけ♪ねねっ♪どう思ってるの?」

 

「どう思うって……双子のアイドル?」

 

「そうじゃなくて。なー自身について、Pちゃんはどう思ってるのかな?」

 

「……う〜ん、まあ……色々と、個性的ではあるけど……そこが魅力の、不思議な女の子だと思うぞ?」

 

「……それって……アイドルとしてって、意味かな?」

 

「それしかないだろ。むしろ、それ以外あるか?」

 

「……そっか……そうだよね……Pちゃんはやっぱり、Pちゃんなんだよね……」

 

「?」

 

「ううん、こっちの話。それじゃあそろそろ、はーは行くねっ♪」

 

「そうか?ところで、何でそんなことを聞いたんだ?」

 

「ん〜……気分?女の子は気分屋なのっ♪じゃあねぃ〜♪」

 

「あっ、おい!……行っちゃった……」

 

「……」

 

「……P……ちゃん……」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……はーも、なーと同じぐらい、不思議な奴だな……やっぱり、なんだかんだで双子だな」

 

「……ふぅ……せっかくだし、休憩でもするか……」

 

カチャッ

 

「さ〜て。今日は、何を飲もうかな〜っと……」

 

ドンッ!

 

「うわっ!?す、すみませんっ……!」

 

「……」

 

「……って……なーか……?」

 

「おうおう、どこに目つけてんだぁ。と、いたいけなJCに、このようなセリフを言わせる気なんですね」

 

「いや……それより……どこか、怪我をしてないか?大丈夫か?」

 

「えぇ、大丈夫です。豆腐の角に頭をぶつけても、傷一つつかない、この凪ボディーを甘く見ないことだな」

 

「どれ、一応気になるから、俺にも見せてみろ、ほら……ん?」

 

「……P?どうしたのですか…?」

 

「いや……何でもないよ……」

 

「変なPですね……今、変なヤツに、変なヤツ呼ばわりされたくないと思いましたか。わかりみです」

 

「ふぅ。その調子なら、大丈夫そうだな」

 

「それでは、仕切り直しましょう……わお。これは偶然ですね。ちょっと、そこでお茶しない?ヘイヘイ」

 

「……何か……俺に、用があるのか?」

 

「おぉ。だいぶ、Pも凪の扱いに長けてきましたね。Pにも、凪検定一級を差し上げましょう」

 

「そりゃあ、どうも……」

 

「それはさておき、はい。凪はPに用があってここにやって来ました。ですが……」

 

「……ここでは…少し話にくいので、凪について来てください。それとも、手を繋ぎながら行きましょうか?」

 

「別に、いいけど……って!繋ぐかっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ。着きました」

 

「ずいぶん、遠くまで来たな……で、俺に、何の用だ?」

 

「……単刀直入に、聞きたいことがあります。Pは、はーちゃんのことを、どう思っていますか?」

 

「えっ……?はーのこと……?」

 

「はい。そのままの意味です」

 

「……姉妹揃って……同じことを聞くんだな……」

 

「姉妹……ですか……?」

 

「さっき、はーと出会ってな。その時に、なーのことをどう思うかって、聞かれたんだよ」

 

「はーちゃんと……それで、Pは何て、答えたのですか?」

 

「いや、まあ……個性的ではあるけど、そこが魅力なアイドルだって、答えたぞ」

 

「個性的……」

 

「なーってほら、他のアイドルとは違う、独特の雰囲気があるだろ?あ、別に、悪い意味じゃなくてな」

 

「その、独特な雰囲気に魅力を感じて、なーをスカウトしたんだ。だからこれからも、はーと頼むぞ」

 

「……P……」

 

「……」

 

ギュッ

 

「……ちょっ……!?き、急に、何だよっ!?//」

 

「……ねぇ、P……ちゃんっ……」

 

「一体、どうしたんだよ……なー……えっ……も、もしかして……」

 

「……」

 

「……「はー」……なのか……?」

 

------------------------------------------------

 

「いいえ、ネギです」

 

「ちょっ……えっ……?」

 

「……って……そこは凪だろって、ツッコんで欲しいな……なんて……♪」

 

「はーが、なーで……でも、あの時のはーは……ど、どういうことだっ……!?」

 

「……前に、Pちゃんと原宿に遊びに行った時に、こう言ってたよね「顔つきからなにまでそっくり」って」

 

「あ、あぁ……確かに、言ったな……」

 

「だから、はーとなーでお互いに、髪型と服装を入れ替えてみたの」

 

「入れ替えてって……何でわざわざ、そんなことを……」

 

「……Pちゃんの気持ちが、知りたかったの……ねぇ、Pちゃんは何で、はーだってわかってくれたのかな?」

 

「何でって……近くで目を見て、なーとは違うと思ったからだが……」

 

「あははっ♪目を見て違いに気づいてくれるなんて、ちょ〜ロマンティックだねっ♪でもぉ……」

 

「……Pちゃんが、はーだって見破れたのって……実は「コレ」で……なんじゃないかな……?//」

 

ムニュッ♪

 

「ちょっ……はー!?お前……一体、何をっ……!」

 

「うふふ…♪Pちゃんはコレがぁ、だ〜いすき、だもんねっ…♪」

 

ムニュムニュ♪

 

「くあっ……や、やめろってっ……!//」

 

「はー、知ってるよ……♪えっちなPちゃんは、コレで……はーだって、わかってくれたことをねっ……♪」

 

「お、お前は……アイドルなんだぞっ……!こんなことを、するもんじゃ……//」

 

「今は……Pちゃんだけの、アイドルだよぉ♪それにぃ……はーは、Pちゃんの「一番」になりたいなっ……♪//」

 

「い、一番……?」

 

「えへへ……♪このまま、はーの「個性」で、Pちゃんの頭の中をいっぱいにしてあげるっ……♪//」

 

「ばかなことはやめろっ……!これ以上は、他のアイドルどころか……なーにだって、顔向けが……」

 

「……イヤッ!言わないでっ!!また、なーと比べて……そんなに、なーのことが好きなのっ!?」

 

「……っ……!」

 

------------------------------------------------

 

「なーなーって、なーのことばかりっ!なーだけずるいよっ!!」

 

「好きって……一体、何を言ってるんだ……?」

 

「……わかってるよ。なーと比べてはーは、個性が薄いってことぐらい……」

 

「個性?いや、そんなことはないと思うぞ……?」

 

「ううん、いいの。生まれた時から、なーとはーは二人で一つだったからね。わかってるんだ」

 

「テストでいい点をとっても、習い事を頑張っても、何をしても、なーと比べてはーは……って言われてたの」

 

「まぁ、なーはテストも習い事も頑張らないタイプだから、だいたいはーが勝つし、褒められてたんだけどね」

 

「双子あるあるって言うのかな?それに、なーはその分、何でもそつなくこなせるって言うか……」

 

「はーより、少しでも出来た日があったら、なーは周りの人にすごい褒められてたの。ずるいよね、色々と」

 

「……比べられる……か」

 

「あ、でも、勘違いしないで。比べられることが嫌ってわけじゃないの。なーのことも大好きだし。ただ……」

 

「はーは、はーが一番好きだもん。だから、みんなには、はーのことを好きになって欲しいと思ったんだ」

 

「……」

 

「……しょーじきさ。なーとふたりっきりのユニットだって聞いた時は、ちょ〜っとだけ複雑だったの」

 

「はーは、はーのことを好きになって欲しいのに、横になーがいたら、これまでと同じじゃない?」

 

「だから、Pちゃんの双子でアイドルユニットって考えもわかるんだけど、少しだけ、んーって思っちゃった」

 

「そうか……」

 

「……ふふっ、はーってホント、わがままだよね」

 

「アイドルとしてだけじゃなく、はー自身のことも、もっと見て欲しいと思ってるなんて……」

 

「……」

 

「ねぇ、Pちゃん……?改めて……聞かせて欲しいな……はーのことを、どう思う……?」

 

「どう思うって……それは……」

 

「……「いい」答えが欲しいな……なんて……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜っ!Pちゃ〜ん!な〜!!」

 

「!?」

 

「んもう。探しちゃったよぉ……って……ええっ!?は、はーが二人いる!?どういうことなのっ!?」

 

「……「なー」……だよな……?」

 

「……」

 

「……ふぅ。どうやら、もう「はーちゃん」である必要はなさそうですね。ミッションコンプリートです」

 

「えへへっ♪入れ替わり作戦、成功だねっ♪」

 

「は……?ミッションって……どういうことだ……?」

 

「もうお気づきかと思いますが、はーちゃんと相談して、少しお互いに、入れ替わってみたのです」

 

「本当は、なーが来てからネタバラシしようと思ったんだけどね♪予想外に早く、バレちゃった♪」

 

「流石は、凪たちのPです。これでもう安心して、はーちゃんを任せられますね」

 

「待てよ……ということは、ここまでのことは全部……」

 

「うん♪なーと連絡を取り合いながら、Pちゃんを誘導したのっ♪」

 

「情報通信技術の、進歩の速さは恐ろしいものです。いや……真に恐ろしいのは、凪たちの仲のよさか……」

 

「どうだった?声色から容姿まで、入れ替わっても全然、違和感がなかったでしょ♪」

 

「まんまと、双子のお遊びに付き合わされたということか……ったく……人騒がせな双子だな……」

 

「でも、お互いにどういうことを話したのかまでは、聞いていません。はーちゃんと、何を話したのですか?」

 

「あ〜!はーも、Pちゃんとなーが何を話したのか、聞きたい聞きたい聞きた〜いっ♪」

 

「それは……知るかっ!もう忘れちまったよ!」

 

「え〜っ!そんなことを言わずに、教えてよ〜!」

 

「……さっさというんだな。Pにも、かぞくがいるだろう…」

 

「物騒なことを言うな!と・に・か・く!忘れたものは、忘れたんだっ!」

 

「むぅ〜……Pちゃんのイヂワル……」

 

------------------------------------------------

 

「それより……入れ替わりごっこもいいけど、何か大切なことを、忘れてないか?」

 

「大切……あっ……そうでしたね……とても大切なことを、忘れていました……」

 

「……はーと、なーの初めてのデビューライブ……だね……」

 

「その通り。間近に迫ってるんだから、しっかりと頼むぞ?」

 

「凪とはーちゃん……いえ、アイドルとしての、初めの大きな一歩。ですもんね」

 

「あぁ。このライブは、はーと、なーの「miroir」が主役のライブなんだ。だから、バッチリと決めてくれよ」

 

「えへへ……♪そうだったね♪頑張ろうっ♪なー♪」

 

「えぇ。お空にいってしまったPのためにも、頑張りましょう。はーちゃん」

 

「おい!勝手に俺を殺すなっ!」

 

「ところで……Pちゃん?さっきのことを、忘れちゃったならぁ……」

 

プニッ♪

 

「……もう一度、思い出せる方法を……はーは、知ってるんだけどナ〜♪なんてっ……♪」

 

「ばっ、バカ!変なことをしてる暇があったら、ライブに向けてレッスンをしろっ!//」

 

「エ〜!Pちゃんってば、ノリわる〜い!」

 

「P、どうしたのですか?」

 

「な、何でもない!とにかく!事務所に戻ろうぜ!ほら、早く行くぞ!!//」

 

「んもう……Pちゃんてば、照れちゃって……かわいい♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

チラッ

 

「……うっわ〜……お客さんがすっごい、いるよ〜……緊張する〜……」

 

「おぉ、これは壮観ですね。色々とりどりのサイリウムが、幻想的に輝いています」

 

「ヤバい、心臓バックバクになってきたよ。緊張もだけど、テンションもおかしくなってきたかも」

 

「はーちゃんがバグってますね。凪は……わかりません」

 

「普段のありのまま?それとも、少しアレンジした、はーのどっちがいいかなぁ?」

 

「凪は今の……アイドルのはーちゃんが、本物のはーちゃんだと思います」

 

「……自分らしいってやつ……?」

 

「えぇ。凪自身も、今のアイドルの凪が、本物の凪であると確信しています」

 

「……そうだね!なーみたいな変な子は、目立って面白がられるべきなんだから!」

 

「では、目立ちまくって売れまくっちゃいます。そしたら、はーちゃんよりもっと、褒めてもらえるはずです」

 

「……Pに……」

 

「……やっぱり……なーも、なんだね……」

 

「はーちゃんは……言うまでもありませんね」

 

「はーたち、本当に変わっちゃったね……なーは、はーのこと……キライになっちゃった……?」

 

「そんなことはないですよ。はーちゃんはPと同じぐらい、大好きです。凪に、二言はありません」

 

「そっか……でも、はーも、なーのことが大好きだよっ♪Pちゃんと同じぐらいにっ♪」

 

「……ふふっ。やはり、凪たちは似た者同士ですね」

 

「うんっ♪だって、十四年間、一緒に過ごしてきたバディだもん♪似ないはずがないよ♪」

 

「ですね。それでは、はーちゃん、手を……」

 

「……うん」

 

「はーちゃんには、凪がついています。それに……今は、Pもいます。恐ることは、何もありません」

 

「そうだね♪これからもよろしくねっ♪なー♪」

 

「えぇ。よろしくお願いします。はーちゃん」

 

「それじゃあ……行こうか♪」

 

「そうですね、行きましょう」

 

「「せーのっ!」」

 

------------------------------------------------

 

「……はぁ〜。無事、終わったぁ〜……」

 

「真っ白に……燃え尽きました……白いのは、凪の髪の毛だけですが」

 

「はー、なー。初ライブ、お疲れ様」

 

「あっ、Pちゃんっ♪お疲れ様♪」

 

「P、お疲れ様です」

 

「何事もなく、無事に終わってよかったよ、しっかりと歌って踊れてたぞ」

 

「緊張しすぎて、どうにかなっちゃいそうだったけど……と〜っても、楽しかったよ♪」

 

「ははっ、それはよかったな。ほら、喉が乾いただろ?ドリンクだ」

 

「わぁ〜♪ありがとっ♪Pちゃんっ♪」

 

「ほら、なーも飲みな」

 

「えぇ……ありがとうございます……」

 

「ん?なー、どうかしたか?」

 

「……P。あとで、少しお時間をもらってもいいですか?」

 

「ん……?別に大丈夫だけど……何か、あったのか?」

 

「えぇ、何かありました。まさに、なにかんがえてるの。です」

 

「???」

 

「それではお待ちしています。では、後ほど」

 

「あっ、あぁ……」

 

「ん〜?Pちゃん、なーがどうかしたの?」

 

「あっ、いや……何でもないよ。気にしないでくれ」

 

「そう?なら、いいんだけど?」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「よぉ、約束通りに来たぞ。ここでよかったのか?」

 

「P、お待ちしてました。すみません、お時間をもらってしまって」

 

「気にするな。で?何の用なんだ?まさか、また「はー」じゃないだろうな」

 

「えぇ。正真正銘、凪度100%の凪です。安心してください」

 

「そうか。なら、安心だな」

 

「それでは、言いますね……あの時の、お願い事を……今、使っていいですか……?」

 

「お願い事……?あぁ。あの時、凪の部屋で交わした約束か」

 

「はい。合法的に、JCである凪の部屋に入って、Pが凪と交わした、お願い事です」

 

「……何か、おかしい気がするが……まあ、そうだな。凪と交わしたもんな。それで?何が欲しいんだ?」

 

「…………給料三ヶ月分のものをください」

 

「……は?給料……三ヶ月……えっ……?」

 

「もちろん、Pならどういう物か、わかりみですね?」

 

「……いや……全然わかりみじゃないんだが……色々な意味で……」

 

「ふぅ、しょうがないですね。それでは、三ヶ月分のボーナスをください」

 

「ん?……ボーナス?」

 

「えぇ。ライブを成功させて、興行収入がたくさん入ったはずです。それと、物販も大盛況でしたよね?」

 

「……あぁ……ボーナスか。そうか、そうだよな〜……あはは……」

 

「で?何がいいんだ?豪華な食事や服とか?あっ、年頃の女の子なら、コスメとか美容品とかもよさそうだな」

 

「それらの物を買うのにも、マネーが必要ですね?ですので、凪はマネーを所望します」

 

「さ、最近のJCは……現実的で進んでるな……は、はは……」

 

「冗談ですよ。それでは、はい、給料三ヶ月分の物をください」

 

「えっ……は?」

 

「その顔は、どっちが冗談だったのか、わからなかったと言う顔ですね。安心してください」

 

「前者が凪ジョークです。後者が……Pと凪が交わした「お願い事」です」

 

「いや……確かに、何でも聞くとは言ったけど……自分が何を言ってるのか、わかってるのか?」

 

「凪は分かっているつもりです。ですが、あくまでつもりですので、Pの口から説明してください」

 

「説明って……それは……」

 

「それは……何ですか?」

 

「……さあな。わからないから、なーの「凪ブラリー」を開いて、俺に教えてくれないか?」

 

「……凪ブラリーに、そのような意味は載っていません。ですので、凪にもわかりません」

 

「そっか。それじゃあ、俺もわからないから、その三ヶ月分とやらは当分お預けだな。あー、残念だ」

 

「Pはイジワルです。閻魔大魔王に舌を抜かれるレベルで、イジワルです」

 

「おぉ、それはおっかない。それじゃあ、舌を抜かれる前に、とっとと戻ろうぜ。はーのいる場所にな」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「はー。待たせたな」

 

「はーちゃん。お待たせしました」

 

「あっ!Pちゃん!なー!んも〜!二人で、どこに行ってたの!?はー、探しちゃったんだからね!?」

 

「悪い悪い。ちょっと、なーと話し込んでてな」

 

「えっ?なーと、何を話してたの?」

 

「ここなら、泣いても喚いても誰も来やしねえぜ、ぐへへ……と、Pに美味しくいただかれそうになりました」

 

「ちょっ……!?へ、変な誤解を生むようなことを言うな!」

 

「……P〜ちゃ〜ん?」

 

「違うって!ただライブについての話をしてただけだって!」

 

「……ふ〜ん……」

 

「何だよ、その目は……」

 

「……ま、わかってるけどね〜。色んな意味で「お人よし」なPちゃんが、そんなことを出来るわけないし〜」

 

「そうですね。砂糖とメープルシロップとスクラロースとタウマチンを煮詰めた物ぐらい、お人よしです」

 

「つまり、Pのお人よしさは、物体Xということですね」

 

「何だか、よくわからないが……俺ってそんなに、お人よしなのか?」

 

「やっぱり、自覚がないんだ……んもう、しょうがないなあ〜♪Pちゃんは〜♪」

 

「……じゃあ……これからも、はーたちが「見守って」あげないといけないね♪……えへへ♪」

 

「そうですね。Pは、凪プロダクションに所属する、売れっ子アイドルなんです」

 

「……ですので……しっかりと「大切」だという自覚を、持ってもらわなければいけませんね……ふふっ♪」

 

「何だよ。姉妹揃って、ご機嫌じゃないか。何かいいことでもあったか?」

 

「うん♪初ライブが大成功したしね♪それにさっき、すっご〜くいいことがあったのっ♪ねっ、なー♪」

 

------------------------------------------------

 

「えぇ。ありましたね、はーちゃん」

 

「面白そうだな。俺にも教えてくれよ」

 

「ダメっ!これは、はーとなーの、二人だけの乙女なヒミツなのっ!」

 

「どうしても知りたくば、この凪を倒して行くんだな。ただし、凪はチートを使わさせてもらいます」

 

「そりゃ、残念だ。でも、相変わらず仲がいい双子だな」

 

「うん♪だって、はーとなーは、いつでも仲良しだもんっ♪」

 

「そうですね。はーちゃんと凪は、一心同体です。それは、今後も変わることはありません」

 

「ですが……一つだけ、変わったことがあります。それは……」

 

「……「一心」の中に……Pという新たな存在が、加わったということです」ギュッ

 

「あははっ♪そうだねっ♪だから、これからも頼りしてるぞっ♪」ギュッ

 

「えっ……俺も?えっと……ありがとう……?」

 

「それじゃあ、そろそろ打ち上げ会場に行こうよ♪はー、お腹空いちゃった♪」

 

「打ち上げ……あ、そうだった。そろそろ時間だったな」

 

「腹が減ってはアイドルが出来ぬ、と言いますしね。凪の中限定ですが」

 

「行くのはいいけど……このまま三人で、手を繋いで行くのか……?」

 

「当ったりまえだよ〜♪さぁ、行こうよっ♪Pお兄ちゃん♪」

 

「お兄様、兄上、兄者……やはり、Pが一番しっくり来ますね。さあ、P。行きましょう」

 

「なんか、恥ずかしい気がするが……まあいいか。ほら、行くぞ」

 

「これから……どんなことが、待ってるのかな……?」

 

「どんなことがあっても、はーちゃんとなら乗り越えていけます。だって……」

 

「近くて遠い……すぐ隣にいる……」

 

「楽しみも趣味も違う、チグハグだけど、でも、付かず離れずな……」

 

「「「バディ」ですもんね・だもんねっ♪」」



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聖夜シンデレラ 三船美優

「よいしょっと……わ〜い♪完成でごぜーます♪」

 

「無事……完成しました……♪」

 

「やった〜♪クッリスマスツリーだぁ〜♪」

 

「おっ、綺麗に星を着けれたじゃないか。偉いぞ、仁奈」

 

「えへへ……♪これも、美優おねーさんが仁奈を、支えてくれたおかげでごぜーますよ♪」

 

「ううん……仁奈ちゃんや千枝ちゃん。そして、薫ちゃんたちみんなが頑張ってくれたおかげです」

 

「そうですね。クリスマスイブは、クリスマスツリーがなければ始まらないからな。みんな、ありがとう」

 

「あははっ♪せんせぇたちとツリーをお飾りするの、すっご〜く楽しかった〜♪」

 

「そ、そんなことは……千枝はただ……仁奈ちゃんと薫ちゃんの、お手伝いをしただけなので……」

 

「いや、千枝もよく頑張ってくれたよ。この飾りだって、千枝が手作りしてくれたんだろ?」

 

「あっ、はい……その……みんなに、喜んでもらいたかったので……♪//」

 

「みんなだけじゃなくて、飾りたちも仲間が増えて喜んでるぞ。ありがとうな、千枝」ナデナデ

 

「あっ……ありがとうございますっ……えへへ……♪//」

 

「あ〜っ!せんせぇ!薫も頑張ったよぉ〜!?」

 

「わかってるよ。ほら、薫もこっち来い」

 

「わ〜いっ♪……えへへっ……♪プレゼントをもらえて、頭もなでなでしてもらえて、最高のクリスマスだよ♪」

 

「おっ。もう、プレゼントをもらえたのか?」

 

「はい♪イヴおねーさんが、仁奈たちにプレゼントを持ってきてくれました♪」

 

「うんっ♪イヴお姉ちゃんが、薫たちにと〜っても、ハッピーなプレゼントをくれたよ♪」

 

「そうですね……♪とても素敵なプレゼントを、イヴさんからもらいました…♪」

 

「ふふっ♪よかったわね……プレゼントをもらえて……♪」

 

「よかったな。イヴからもらったプレゼント、大切にするんだぞ?」

 

「もちろんでごぜーます♪ところで、プロデューサーは、プレゼントをもらわねーのですか?」

 

------------------------------------------------

 

「ははっ、そうだな〜。俺も、プレゼントをもらえるといいな」

 

「薫たちのためにいつも、おしごとをがんばってくれてるから、きっともらえるよ♪いい子いい子♪」ナデナデ

 

「仁奈も、プロデューサーに、いい子いい子してあげるです♪よ〜しよしでごぜーますよ♪」ナデナデ

 

「ありがとう薫、仁奈。でも、何だか……逆にしてもらうと少し、照れくさいな……//」

 

「あははっ♪せんせぇてば、照れちゃって〜♪かっわいい〜♪」

 

「あの……美優さん」

 

「うん?どうしたのかな?千枝ちゃん……」

 

「美優さんは、その……どういうプレゼントをもらえたら、嬉しいですか……?」

 

「そうね……私は……「魔法」をもらえると……嬉しいかな……」

 

「魔法……ですか?」

 

「えぇ。優しくて、暖かくてね……とても、嬉しくなっちゃうような……そんな魔法が、欲しいですね……♪」

 

「魔法がプレゼント……とても素敵です!」

 

「うふふ、ありがとう……千枝ちゃんも、魔法が欲しい……?」

 

「そうですね♪千枝も、魔法が使えたら嬉しいです♪」

 

「お空を飛んだり、ぬいぐるみさんとおしゃべりしたり、美味しいお菓子をたくさん出したり、あと……」

 

「……美優さんみたいな……オトナのお姉さんに変身出来たらな……って、思いますね……♪//」

 

「えっ……私に……?」

 

「はい♪そしたらその……「素敵な人」と、素敵で楽しい時間を過ごせそうですよね……なんて♪//」

 

「……千枝ちゃんは、千枝ちゃんのまま、お姉さんになった方がいいと思いますよ……」

 

「えっ……?」

 

「私みたいになってしまったら……魔法が、魔法のままで終わってしまうかも……しれませんからね……」

 

「?」

 

「おっ。美優さんと千枝で、何を話してるんですか?」

 

「あっ……プロデューサーさん……」

 

「えっ、えっと……これは、千枝と美優さんだけの、乙女の秘密です!//」

 

「そうか。なら、聞いちゃいけないな」

 

「……あのっ!プロデューサーさんっ!……ち、千枝からの……クリスマスプレゼント、ですっ……!//」

 

「おっ、俺にくれるのか?ありがとうな、千枝。今、開けていいか?」

 

「はっ、はい……少し……恥ずかしいですけれど……//」

 

「ははっ、恥ずかしいってなんだよ。それじゃあ、さっそく……」

 

------------------------------------------------

 

「これは……マフラーか……?」

 

「千枝ちゃんって、あみものがすっご〜く上手なんだよ!薫も、うさちゃんセーターを作ってもらったんだ♪」

 

「仁奈も、うさちゃんのきぐるみを作ってもらいましたですよ♪」

 

「私は……うさちゃんクッションをもらっちゃいました……♪とても、かわいいです……♪」

 

「みんなも千枝に、作ってもらったんですね。なんか悪いな、俺のも作ってもらっちゃって」

 

「い、いえっ!みなさんに、最高のプレゼントを贈りたかったので、つい……張り切ってしまいました……//」

 

「それは、嬉しいけど……あまり無理はしないでくれよ?千枝は、俺の大切なアイドルなんだしさ」ナデナデ

 

「あっ……はいっ……♪//」

 

「それにしても、よく出来てるよな。このうさぎだって、しっかりと編んであって……ん?」

 

「どうしました?」

 

「いや……うさぎの隣に何か、男の子っぽい顔が縫ってあるんだが……これは、一体……」

 

「え、えっとですねっ、それは……プロデューサーさんです……♪//」

 

「えっ……お、俺!?」

 

「あははっ♪せんせぇにそっくり〜♪」

 

「うふふ♪かわいらしい、プロデューサーさんですね……♪」

 

「手を込んでくれたのは、すごく嬉しいんだけど……でも、何で俺を……?」

 

「ウサギさんだけだと寂しいので、プロデューサーさんが隣にいてくれれば、寂しくないと思って……♪//」

 

「そういうことだったのか。確かに、二人なら寂しくないよな」

 

「それと……あと、もう一つ理由があるんです。少し……失礼しますね……」

 

「えっ……?」

 

「こうやって……次にこうして……はいっ♪出来ました♪……カップル巻きの、完成ですっ……♪//」

 

「ちょっ……!?ち、千枝!?いきなり……どうしたんだよっ……!」

 

「マフラーを編んでみたのも……プロデューサーさんとこうしたくて、作っちゃったのかな……なんて……♪//」

 

「こ、こうしたくてって……//」

 

「あの……プロデューサーさん……?将来、千枝がオトナのお姉さんになったら……」

 

「……もう一回、こうして……千枝と……このマフラーで、カップル巻きをしてくれますか……?//」

 

「いや、その……千枝がそうしたいのなら……俺は別に……いいけど……//」

 

------------------------------------------------

 

「本当ですか……!?えへへ♪約束ですよっ……指切りげんまんですっ♪」

 

「……ゆ、指切りげんまん……」

 

「千枝ちゃんと、プロデューサーさん……とっても、お似合いですね♪羨ましいです……♪」

 

「何だか、らぶらぶすぎて、仁奈には千枝ちゃんが、プロデューサーのママに見えるのでごぜーます」

 

「わぁ〜♪千枝ちゃんってば、せんせぇとけっこんをするんだ〜♪オットナ〜♪」

 

「ええっ!?そ、そんな……千枝が、プロデューサーさんのお嫁さんだなんて早いし、そんな、あのね……//」

 

「そしたら、薫はせんせぇと千枝ママの、こどもになる〜♪えへへっ♪ハッピーだね〜♪」

 

「……〜っ//」

 

「結婚か……確かに、千枝はいいママになりそうだけど……でも、俺のママは美優さんだと思うぞ?」

 

「ふえっ……!?//」

 

「そ……そうですよねっ……!プロデューサーさんのお嫁さんは、その……美優さんですよねっ……!//」

 

「ぷ、プロデューサーさんっ……急に……何を言い出すんですかっ……//」

 

「美優さんは大人のお姉さんで優しいし綺麗だから、みんな、美優さんがママだったら嬉しいだろ?」

 

「はいっ♪美優おねーさんがママだったら、毎日が幸せなきもちでごぜーますね♪」

 

「美優お姉ちゃんって、やさしーから大好きぃ〜♪」

 

「あぅ……//」

 

「だろ?でも、美優さんを含めてみんなはアイドルだ。だから、しばらくはお預けだ。ねっ?美優さん」

 

「えっ?そ、そうですね……でも……プロデューサーさんがいいのなら……私は、アイドルでも……//」

 

バンッ!

 

「っ……!?」

 

「やっほ〜♪美優ちゃん☆プロデューサー☆そして、みんな〜☆せくすぃ〜な、しゅがはサンタの登場だぞ☆」

 

「……心さん……?」

 

「わぁ〜♪心おねーさんも、サンタさんになったのでごぜーますか!?」

 

「うん♪愛梨ちゃんから、借りたんだ♪どう?このサンタの衣装、かわいいでしょ☆」

 

「あははっ♪心お姉ちゃん、おもしろ〜い♪」

 

「「か・わ・い・いしゅがーはぁと」だぞ☆ノートに、10P書き取りしとけ〜☆冬休みの宿題にな☆」

 

「おい、心……それ、水着だろ……?こんな時期に……寒くないのか?」

 

------------------------------------------------

 

「確かに、少し寒いけど……でもぉ、誰かさんの視線でぇ……アツくなってきちゃったかもっ……♪//」

 

タプンッ♪

 

「ちょっ……何をしてるんだよっ!//」

 

「何って……すこ〜し、肩が凝っちゃったからぁ、リラックスしてるだけだけどぉ……?」

 

「ばかっ!子供たちの前で、そういうことはやめろって……//」

 

「エ〜?そういうことって、どういうことカナ〜?」

 

「そ、それは……//」

 

「心さん……何と、言いますか……すごい……オトナな衣装ですね……//」

 

「ありがと☆美優ちゃん☆それじゃあ、美優ちゃんも一緒に、着てみようよ☆」

 

「えっ……!?わ、私が……ですか……!?//」

 

「美優サンタが、プレゼントを持ってきましたよ……それは……「わ・た・し」ですっ……♪みたいな〜☆」

 

「ふえっ……!?//」

 

「おい!何を言ってるんだよ心!美優さんを、お前みたいに汚すなっ!!」

 

「ハァ〜!?ちょっとっ!それって、どういう意味だよ!?」

 

「そのままの意味だっつ〜の!お前のその、変な思考で美優さんを汚すなって言ってるんだよ!」

 

「あぅ……え、えっと……そのっ……//」

 

「何さ!プロデューサーだって、美優ちゃんがこの衣装を着たら、喜んじゃうクセにっ!!」

 

「いや……それは……そ、そんなことはねぇよ!お前と一緒にするなっ!//」

 

「あ〜っ!今、少し妄想したでしょ〜!?このむっつりスケベ!変態!!」

 

「なっ……!むっつり……!だ、だいたいお前だって、少しは女らしくしろよ!アイドルのクセに!!」

 

ギャーギャー!

 

「やっぱり心お姉ちゃんって、すっご〜くおもしろ〜い♪」

 

「プロデューサーと心おねーさん、息がぴったりでごぜーますね♪まるで芸人さんみてーです♪」

 

「プレゼント……私……あぅっ……//」

 

「……」

 

スカッ

 

「……千枝も、早く……オトナのお姉さんになりたいな……」

 

------------------------------------------------

 

「「ゼェーゼェー……」」

 

「あ、あの……大丈夫……ですか……?」

 

「うん☆大丈夫だよぉ☆騒がしくしちゃってごめんねぇ☆美優ちゃん☆……ゲホッ」

 

「……で?結局……何をしに来たんだよ、お前……」

 

「何をしにって……あっ☆忘れてたぁん☆ほら、キッズたち♪はぁとからのぉ、プレゼントだぞ☆」

 

「わぁ〜い♪ありがとう♪心お姉ちゃん♪」

 

「心おねーさんっ!ありがとうでごぜーます!」

 

「いいのいいの☆はいっ☆千枝ちゃんも、ど〜ぞ☆」

 

「あっ……心さん……ありがとうございます……♪」

 

「なんだ、プレゼントを配りにきたのか。よかったな、みんな」

 

「そして……ほらっ☆そこの、かわいいカップルたちにもプレゼントだぞ☆」

 

「えっ、俺たちにもあるのか……?てか、カップルって何だよっ!//」

 

「うぅ……カップル……//」

 

「細けえことはどうでもいいだろ☆とっとと受け取れよ♪この、バカップルどもめ☆」

 

「何だか、腑に落ちないが……まあ、ありがとうな。心」

 

「心さん……ありがとうございます……♪」

 

「大丈夫だよ☆さぁ☆さっそく、開けてみて☆」

 

「そうだな。それじゃあ、さっそく……ん……?何だこれ」

 

「これは……一体……」

 

「せんせぇと美優お姉ちゃんは、どんなプレゼントもらったの〜?」

 

「あっ、えっと……素敵なプレゼントだよ。ですよね?美優さん」

 

「えっ…えぇ……そうですね……とても、素敵なプレゼントです……」

 

「そ〜なんだ♪心お姉ちゃんのおかげで、みんな、と〜っても幸せなクリスマスになったね♪」

 

「いや〜ん☆そ〜んなぁ〜☆はぁと、照れちゃう〜☆じゃあ、二人とも……「今夜」また会おうね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……お〜い☆美優ちゃ〜ん☆」

 

「あっ……心さん……」

 

「ごっめ〜ん♪待っちゃった?」

 

「いえいえ。今、来たばかりですよ……」

 

「よかった〜☆どうだった?はぁとからの、プレゼントはっ☆」

 

「うふふ……♪サンタさんが「クリスマス」をプレゼントしてくれるだなんて、とても素敵ですね……♪」

 

「クリスマスって言っても「オトナ」のクリスマスだからね〜☆それじゃあ、さっそく……」

 

「……ねぇ〜、ちょっとぉ、そこのお姉ちゃんたちぃ〜。これから、どっかに行くのぉ?」

 

「えっ……?あ、あのっ……」

 

「……うん、そ〜なのっ☆はぁと……じゃなくてっ☆私たち、これから二人で遊びに行くんだ☆」

 

「こんな聖夜に、お姉ちゃんたちだけって寂しくない?俺たちも混ぜてよ〜」

 

「お店に間に合わなくなるからダ〜メ☆さあ、行こう♪美優ちゃん☆」

 

「えっ…?は、はい……それでは……失礼します……」

 

「えぇ〜?そんな、冷たいことを言わないでよ〜♪俺たち、聖夜を楽しく過ごせる場所を知ってるからさ〜♪」

 

「ちょっ……は、離してよ……!」

 

「あっ……い、いやっ……!」

 

「うへへ……安心しなって♪俺たちが、すぐにお姉ちゃんたちを、気持ちよくしてやるから……」

 

「……お〜い!二人とも〜!」

 

「!?」

 

「……ん?何だよ、ニイちゃん。なんか用か?」

 

「……あ〜ん☆もうっ☆待っちゃったよぉ〜☆」ギュッ

 

「えっ……も、もしかして……そのニイちゃんって、お姉ちゃんの彼氏なの……?」

 

「うんっ☆ね〜っ☆だ〜りぃ〜ん☆」

 

「あぁ、待たせてごめんな。そして……」ギュッ

 

「きゃっ……!?」

 

「この人も、俺の彼女なんだ。それじゃあ、行こうぜ。はぐれないようにしっかりと、俺の腕の中にいろよ?」

 

「は〜い☆」

 

「……あっ……暖かい……うふふ……♪//」

 

「ちょっ……!待てコラっ!おいっ!!……行っちまった……」

 

「……なあ……あのニイちゃん……「この人」もとか……言ってたよな……?」

 

「……皆まで言うなよ、兄弟……そういうことだ……格差社会だな……色々と……」

 

------------------------------------------------

 

「……せーの……」

 

「「「メリークリスマースー!!」」」

 

「んく……ん〜☆美味し〜い☆」

 

「ぷはぁ〜っ!やっぱり、クリスマスに飲むビールは、格別ねっ♪」

 

「いや〜、それにしても、プレゼントがクリスマス会の招待状だなんて、最高の演出ですね」

 

「ふふん♪乙女っぽいでしょ♪早苗ちゃんと心ちゃんで、前から計画を練ってたのよ♪ねっ、早苗ちゃん♪」

 

「うんっ♪でも本当は、あの子たちも誘ってあげたかったのよ?」

 

「……だけど……聖夜の「オトナ」なクリスマス会、だから……ねっ?」

 

「そうですね。俺たちは俺たちで、クリスマスを楽しみましょう」

 

「よ〜し!今日は楽しみまくって、心も体も若返りまくっちゃうわよ〜!」

 

「いやぁん☆これ以上若返ったらはぁとぉ、少女になっちゃう〜ん☆」

 

「……//」

 

「……あら?美優ちゃん、もうお顔が真っ赤よ?大丈夫……?少し、休む?」

 

「い、いえ……そんなことは……//」

 

「……んふっふっ☆実はですねぇ〜☆はぁとたちぃ、プロデューサーにお持ち帰りされちゃったんですっ☆」

 

「ちょっ……!?」

 

「あぅ……え、えっと……//」

 

「何それ!ちょっと、面白そうじゃない!早苗お姉さんに話してみなさいよ♪」

 

「おい心!誤解を生むような、言い方をするな!//」

 

「エ〜。誤解も何もぉ、事実を言ってるだけだも〜ん☆」

 

「……//」

 

------------------------------------------------

 

「……ってな感じで、プロデューサーが、はぁとたちを守ってくれたんですよっ♪」

 

「なるほどね〜。プロデューサー君ってば、やるじゃない♪」

 

「アイドルを変な輩から守るのも、俺の仕事ですからね。当然のことをしたまでです」

 

「まあ、美優ちゃんはかわいくて、可憐な女の子だからねっ♪守ってあげたい気持ちになるのも、わかるわ♪」

 

「か、かわいいだなんて……でも……あの時の、プロデューサーさん……とても素敵でした……♪//」

 

「いえいえ。素敵なのは、美優さんの方ですよ。だから今、大人気アイドルじゃないですか」

 

「……いえ……そんなことは……//」

 

「……♪」ニコニコ

 

「ん……?どうしたんだよ。心」

 

「ね〜え〜♪誰かぁ〜、かよわぁい女の子を忘れてなぁい?」

 

「えっ?だから、美優さ……」

 

「あ"?」

 

「……心さんも素敵です……」

 

「よろしい☆」

 

「ねぇ〜、プロデューサーくぅん〜♪あたしも最近、ストーカーにつけ狙われてる気がするの。だからぁ……」

 

ギュッ♪

 

「……早苗お姉さんのことも……守って欲しいなぁ……なんて……♪//」

 

「まぁ♪早苗ちゃんってば、大胆ね♪」

 

「ははっ。俺じゃなくても早苗さんなら、元婦警直伝の技で、ストーカーなんて一発じゃないですか♪」

 

「……♪」

 

ギリギリ……

 

「ちょっ……痛っ!?」

 

「そうねぇ〜♪まずは目の前の、鈍感で不埒な、ストーカー君をシメなきゃね♪」

 

「あががっ……!さ、早苗さんっ……急に、何でっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「ん〜?なんでかしら?瑞樹ちゃん、心ちゃん、わかるー?」

 

「わかるわ!とみせかけて、わからないわ♪」

 

「はぁともわからな〜い☆でも、じゃんじゃんやっちゃってください☆」

 

「ちょっ……ギブギブッ……!そ、それにっ……!」

 

ムニュッ♪

 

「……あ、当たってますから……!早苗さんはアイドルなんですから、もう少し……自覚をっ……!//」

 

「知らな〜い♪プロデューサー君の、お・ば・か♪」

 

「あんっ。プロデューサー君ってば、早苗ちゃんとばかり、イチャイチャしちゃって〜……」

 

「うぐ……別に、イチャついてなんか……!ぐうっ……!」

 

「……ところで……ねぇ、プロデューサー君。今日は、何の日かしら……?」

 

「えっ、何の日って……クリスマスですよね……?」

 

「でしょ〜?みじゅきねぇ、そろそろ、いい頃合いかな〜って思ってるの♪」

 

「だからぁ……「三ヶ月分」のクリスマスプレゼントを、欲しいなっ♪きゃ〜♪言っちゃった〜♪」

 

「あっ!瑞樹ちゃんだけずるい!ね〜え〜♪早苗お姉さんにも、ちょ〜だいっ♪」

 

「ちょっ……ふ、二人とも……近すぎですって……!//」

 

「……ふふっ……♪それとも、お姉さんからス・テ・キなプレゼントを……あげちゃおうかしら……?」

 

「わぁお♪ナイスアイディアね♪あたしもプロデューサー君に、プレゼントをあげるっ♪……てりゃっ♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!?さ、早苗さん……!?」

 

「えへへっ…♪プロデューサー君を、タ・イ・ホ♪」

 

「私もプロデューサー君をターイホっ♪えいっ♪」

 

「……瑞樹さんまで……!一体、何なんですかっ……!//」

 

「……プロデューサー君に……伝わってるかな…?……あたしたちの、柔らかい温もりが……♪//」

 

「柔らかい……っ……!//」

 

「うふっ……♪プロデューサー君ってば、急に、顔が真っ赤になったわね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……だって……そのっ……//」

 

「どう……?たまには……ビターな大人の、お姉さんの甘い魅力も、いいでしょ……♪」

 

ムニュッ♪

 

「年下の女の子にばかりにデレデレしてる、ロリコン君はしっかりとシメなきゃ♪……ねっ、美優ちゃん♪」

 

「えっ……」

 

「べ、別に……俺は、ロリコンじゃ……美優さんからも、このお姉さんたちに何か、言ってやってください!」

 

「……//」

 

「……美優さん…?」

 

「……そのっ……わ、私も……思いっきり、甘えちゃっていいでしょうか……なんて……♪//」

 

「ふふっ♪わかってるわね♪それじゃあ、美優ちゃんもプロデューサー君に、ご〜♪」

 

「さあ、美優ちゃん♪プロデューサー君にたっぷりと、オトナのお姉さんの魅力を、教えてあげなさい♪」

 

「……プロデューサーさんっ……//」

 

「ええっ……!?ちょっ……まっ……!//」

 

「あぁん。みんなだけ、ずる〜い!はぁともぉ、プロデューサーに甘えた……」

 

「っ!……す、少し、外の空気を吸ってきますっ!」グイッ

 

「ぐ”え”っ」

 

「あっ……プロデューサーさん……」

 

「んもう。あんなに、顔を真っ赤にして……かわいいんだから……♪……ねね、美優ちゃん美優ちゃんっ」

 

「はい……?」

 

「飲み初めて、火照ってきちゃっただろうし、少し外で、涼んできた方がいいんじゃない?」

 

「ほらっ♪あたしたちはここで飲んでるから、行ってきなさいよ♪」

 

「……そうですね……それでは、少し……席を外させてもらいますね……」

 

「……はぁとも……」

 

「心ちゃんはダ〜メ♪ほらっ♪あたしたちと、じゃんじゃん飲むわよ♪」グィッ

 

「うぐっ……う”え”っ」

 

「ふふっ……美優ちゃん……ファイト……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ……何とか、落ち着いた……それにしても……」

 

「……全く……俺だって男なんだし……変に、勘違いされちゃうかもしれないんだぞ……?」

 

「みんな、いくら大人だって言っても、一人の女性なんだし、それに……アイドルなんだしさ……」

 

「あ、あの……プロデューサーさん……」

 

「ん……?あっ、お疲れ様です。美優さんも、涼みに来たんですか?」

 

「お疲れ様です……えぇ……少々、火照ってしまいましたので、涼みに来ました……」

 

「そうなんですか。いや〜、お互いに大変ですねぇ。いつも、あのお姉さんたちに振り回されてて」

 

「いえ……そんなことは……」

 

「美優さんは、優しいですからね。でも。嫌な時は嫌だって、言った方がいいと思いますよ?」

 

「むしろ……感謝をしているんです。素敵な仲間たちがいてくれて、本当に毎日が楽しくて……」

 

「アイドルになる前の、OL時代の私からしたら……考えられないぐらいに……それに……」

 

「……そんな……楽しい世界に、連れて来てくれた……素敵なプロデューサーさんとも……出会えました…♪」

 

「いえ、そんな……俺こそ、その……美しいシンデレラと、運命的な出会いが出来て……よかったです……//」

 

「そんな……シンデレラだなんてっ……//」

 

「「……//」」

 

「……な、何だか、涼みすぎて少し、冷えてきちゃいましたね!それでは、戻りましょうか!」

 

「……あ、あのっ……!もし、よかったらその……私と……付き合っていただけないでしょうか……//」

 

「えっ……つ、付き合う……!?//」

 

「あっ……い、いえっ!そういう意味ではないんです……//」

 

「ただ……このあと……プロデューサーさんと一緒に、過ごせたらいいなと思いまして……♪//」

 

「あ、そういう……俺は、美優さんがいいのなら、大丈夫ですけど……」

 

「ふふっ♪それでは、決まりですね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、また会いましょうね〜♪メリークリスマース♪」

 

「クリスマス会、とっても楽しかったわ♪また、あたしたちでやろうね♪」

 

「はい、今日はとても楽しかったです。誘ってもらい、ありがとうございました」

 

「気にすんなって☆それじゃあねぃ☆プロデューサー♪美優ちゃん♪」

 

「また会いましょうね……♪今日は、ありがとうございました……♪」

 

「それでは美優さん。行きましょうか」

 

「……はいっ……♪」

 

「……」

 

「……と見せかけて……こっそりと、プロデューサーと美優ちゃんをちぇ〜っく……♪」

 

「美優ちゃんってば、あんなに喜んじゃって……かわいいんだから……♪」

 

「でも、瑞樹ちゃん。随分と、美優ちゃんに尽くすのね?」

 

「えっ、そうかしら?私はただ「今回だけ」は、美優ちゃんに譲ってあげてるだけよ?」

 

「……ふ〜ん?随分と余裕じゃない?」

 

「うふふ♪「オトナ」のお姉さんだもの♪早苗ちゃんはどうなの?」

 

「そうね〜。聖夜ぐらい、見逃してあげるわ♪だってあたしも、お姉さんだもん♪」

 

「流石は、早苗ちゃんね♪わかるわ♪」

 

「じゃあ、はぁとわぁ、お年頃の女の子なんでぇ、今から美優ちゃんのところにぃ……」

 

「……四の字固めがいい?それとも……現行犯逮捕がいいかしら♪」

 

「……すんません」

 

「カップル……多いですね……あの……私たちは、どう見られてるのでしょうか……//」

 

「ははっ、美優さんはどう見られてると思います?」

 

「えっと……た、例えば……私たちも……仲良しなカップルに、見えてたりしてるのかな……なんて……//」

 

「えっ……//」

 

「「……//」」

 

「……あぁ〜、もうっ!甘酸っぱすぎて、見てるこっちが、胸焼けしちゃいそうだわっ……!//」

 

「そうですね。見てるだけで、胸焼けが……あっ☆別に、歳のせいだからとかじゃないですからね☆」

 

「さてと、あのラブラブカップルは置いといて。お邪魔虫は、そろそろ退散するわよ♪」

 

「エ〜、瑞樹サンタさぁん。はぁとたちには、クリスマスプレゼントはないのぉ?」

 

「……しょうがないわね〜。今日は、もう一回「女子会」をするわよ!私の奢りでね♪」

 

「やった〜☆」

 

「瑞樹ちゃんってば、太っ腹〜♪」

 

「うふふ……プロデューサー君、美優ちゃん。メリークリスマス♪」

 

------------------------------------------------

 

「そんな……カップルだなんて……美優さんは、冗談が上手いな……あ、あはは……//」

 

「……プロデューサーさんは……私とカップルになるのは……嫌、ですか……?」

 

「いえ……美優さん見たいな、綺麗なお姉さんとカップルになれたら、すごい幸せだと思います」

 

「ですが、その……美優さんはアイドルで、俺はプロデューサーなので……それに……」

 

「……千枝が、大人のお姉さんになるまで、俺が見守ると約束したんです」

 

「そうですか……そんな約束を……千枝ちゃん、ごめんなさい……こんな、大人気ないお姉さんで……」

 

ギューッ

 

「えっ……ちょっ!み、美優さん……!?」

 

「うふふ……♪今宵の私は、聖夜の魔法にかけられた、シンデレラなんです……♪」

 

「ですので……そんな、大切な聖夜のために、真心を込めたプレゼントを持ってきました……♪」

 

「プレゼント……?」

 

「……そのプレゼントは……私です……なんて……♪//」

 

「……っ!//」

 

「あの……プロデューサーさん…?真心のこもったプレゼントを……受け取っていただけませんか……?」ウルッ

 

「……美優さんっ!」

 

ギュッ

 

「きゃっ!?ぷ、プロデューサーさん……!?//」

 

「美優さんがいけないんです!上目遣いでそんなことを言われたら。我慢出来るわけがないじゃないですか!」

 

「そ、そんなに強く抱きしめられるとっ……私……//」

 

「美優さ……いや、美優……今日の美優は一段と、綺麗だよ……」

 

「ええっ……!?そ、そうですか……?//」

 

「あぁ。とても素敵だ……」

 

「あぅ……そ、そのっ……プロデューサーさんも、とても……素敵ですよっ……?//」

 

「ありがとう。それじゃあ、俺たちで行こうぜ……?俺と美優の「愛の巣」に……」

 

「ふあっ……あ、愛の巣……//」

 

「さあ。二人で、最高のホワイトクリスマスを過ごそうな……今夜は寝かさないぞ♪美優♪」

 

「は、はいっ……あの……やさしく……お願いします……♪//」

 

「……ゆさん……」

 

「うふふ……♪プロデューサーさん……やっと、私のことを……//」

 

「美優さんっ!!」

 

「ひゃっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「すみません……介抱を、していただいて……」

 

「いえいえ。こういうのは慣れていますので」

 

「前に、友紀ちゃんの介抱をお願いしたのに……今度は、私もだなんて……はしたないですよね……」

 

「気にしないでください。それより、今日は素敵な二次会に、招待してもらい、ありがとうございました」

 

「いえ、そんな……私も……プロデューサーさんと、二人っきりの二次会……とても楽しかったです……♪//」

 

「美優さんの言ってたとおり、素敵な場所でしたね。高層からの夜景が、とても綺麗でした」

 

「気に入ってもらえてよかった……あそこのバーは、私のお気に入りの場所なんです……」

 

「でも……俺的には、夜景よりもっといい物が見られました」

 

「?」

 

「……酔って寝ちゃった、無防備な寝顔の美優さん……すごく、かわいかったです♪」

 

「えっ……無防備……!?」

 

「随分といい笑顔で寝てたので、何か、楽しい夢でも見てたのかなって思ったんですよ」

 

「あぅ……ゆ、夢……忘れてくださいっ……!//」

 

「ははっ。忘れずに、俺の心のメモリーに大切に保存をしておきますよ」

 

「うぅ……でも……いつもの優しいプロデューサーさんも、素敵ですけど……」

 

「……あの……少し強引で、野生的なプロデューサーさんも……素敵だったな……//」

 

「えっ?野生……?」

 

「あっ……い、いえ!何でもないです……しかし……今年は、多忙でしたね……」

 

「えぇ。美優さんは人気アイドルですから。特に、コスプレ系の仕事が多かった印象ですね」

 

「そうですね……これも……誰かさんの趣味でしょうか……♪」

 

「趣味……?」

 

「バレオを脱いで、ビキニだけになったり……布の面積が少ない、アニマル衣装でライブで踊ったり……」

 

「……最近は、少々……露出が、多かったような気がします……」

 

「いや、それはですねっ!美優さんが色っぽ……じゃなくて!美人で、何でも似合ってしまうので、つい……」

 

「美人だなんて、そんな……」

 

「そ、それに、ビキニの件は、撮影が終わった後に美優さんが、自分から脱いで来たじゃないですかっ!//」

 

「うふっ……♪確かに、お仕事で慣れたって言うのもあります。ですが、それはあくまでお仕事……」

 

「撮影のあと……つまり、プライベートに自分の気持ちで、そういう格好を見せるのとは違いますから……」

 

------------------------------------------------

 

「そうなんですか?」

 

「私ってば……どんどん、大胆になってきてしまってますね……プロデューサーさんの前だけではっ……♪//」

 

「いや……俺のことを信頼してくれてるって言うのは、すごく嬉しいんですよ?だけど、その……」

 

「美優さんは、魅力的なお姉さんですし……あまりされると、色々と勘違いしてしまうと言いますか……」

 

「……俺も……プロデューサーである以前に、一人の男ですので……//」

 

「そうですね……それでは、そんなに私を大胆にしてしまった……責任を……とってくださいね……♪//」

 

「責任……ですか……?」

 

「はい…♪責任をとって、私をお城に……連れて行って、くださいますよねっ……//」

 

「……すみません……それは……出来ません……」

 

「えっ……どう、して……ですか……?」

 

「なんというか、その……俺にはまだ……早いと思いますので……」

 

「……いやっ!!」ギュッ

 

「ちょっ……み、美優さんっ!?」

 

「……もう……興味を失ってしまいましたか……?私に……」

 

「興味……?」

 

「プロデューサーさんなしの人生はもう、考えられないんです……だから……見捨てないでくださいっ……!」

 

「美優さん……安心してください。美優さんはいつまでも、俺の大切なアイドルですよ」

 

「えっ……?」

 

「俺が絶対に、美優さんをシンデレラのお城に連れて行くと、約束します。だから、一緒に頑張りましょう」

 

「ですが、その……先程……」

 

「えっと、それはその……なんといいますか……目の前に「お城」があるので……俺は、てっきり……//」

 

「えっ……?……あっ……//」

 

「「……//」」

 

「……もう少し……歩きましょうか……//」

 

「……は、はいっ……そうですね……//」

 

------------------------------------------------

 

「「……//」」

 

「「……あ…あのっ!!」」

 

「あっ、美優さんから先にどうぞ……」

 

「いえいえ……プロデューサさんから、お先に……」

 

「「……//」」

 

「それでは……プロデューサーさん……こ、このあと……もし、よろしければ……その……お城……」

 

「……ではなくっ!この、聖夜の夜だけでも……あなただけの「シンデレラ」でいても、いいですか……?//」

 

「えっ……あ、あはは……ダメですよ。美優さんは、みんなの「シンデレラ」なんですから……」

 

「あの……そうではなくて……やはり……わ、忘れてくださいっ……//」

 

「な、何か、悩み事とかあったら言ってくださいね!いつでも、相談に乗りますからっ!//」

 

「……それでは……さっそく、一つ……聞いてもらってもいいですか……?」

 

「はい。何でしょうか」

 

「プロデューサーさんの周りには……大勢の、素敵なアイドルがいますよね……?」

 

「えぇ。俺の、自慢のアイドルたちです」

 

「そして、今日も……その、素敵なアイドルたちばかりで……全然、私に構ってくれませんでしたよね……?」

 

「うんうん……ん……?」

 

「ですので……今だけはプロデューサーさんを独り占めしてもいいでしょうか……?//」

 

きゅ……

 

「なっ……み、美優さん……?」

 

「ダメ……でしょうか……?」

 

「……い、いえ……そんなことは、ありませんけど……//」

 

「嬉しい……♪それでは、さっそくですが……少し、私について来てもらっても……いいですか……?」

 

「あっ、はい……では、行きましょうか……?//」

 

「……ふふっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ここは……」

 

「……覚えて……いますか……?」

 

「俺と美優さんが初めて、出会った場所ですよね……?」

 

「はい……プロデューサーさんが私に、ガラスの靴を履かせてくれた、大切な場所です……」

 

「あの時……仕事や人生に対して、鬱屈としていた私にそっと……手を差し伸べてくれました……」

 

「……困っているシンデレラを……見過ごすわけには、いきませんから……」

 

「お上手ですね♪でも、今思えば……あの時の出会いは、偶然ではなく……運命だったのかもしれません……」

 

「運命……ですか…?」

 

「えぇ……その証拠に……手を差し伸べられて、アイドルデビューをしてから、今日までずっと……」

 

「……プロデューサーさん……いえ「素敵な王子様」のことが、ずっと……頭から離れないんです……♪//

 

「そんな……王子様だなんて……//」

 

「アイドルになってから、毎日が本当に幸せなんです……プロデューサーさんも、幸せですか……?」

 

「……はい。俺もプロデューサーになって、美優さん、そして、アイドルのみんなとも出会えました」

 

「ですので……とても、幸せです。失うのが怖いぐらいに……」

 

「私と同じ気持ちなんですね……♪うふふっ……♪すごく、嬉しいです……♪それでは……」

 

ギュ-ッ♪

 

「「魔法」は0時で解けてしまいますので……解けるまで、私と「運命」の赤い糸で結ばれてください……//」

 

「ええっ!?ちょっ……み、美優さん…!?」

 

「安心してください。聖夜の魔法が解けたら、私たちはまた、アイドルとプロデューサーの関係に戻ります」

 

「……だから……魔法にかかってる間だけ……「王子様」とずっと、こうしていたいな……うふふ……♪//」

 

「……っ//」

 

「あなたと共に……この先、二人で進む未来も、幸せだと信じています……」

 

「ですので……これからも、よろしくお願いしますねっ……♪プロデューサーさん……♪//」

 

「……えぇ……よろしくお願いします……美優さん……♪//」

 

「うふふ……メリークリスマス……♪」



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黒猫シンデレラ 佐城雪美

カチャッ

 

「プロデューサー……あけまして……おめでとう……」

 

「おっ、雪美か。おめでとう」

 

「うふふっ…♪雪美ちゃん♪あけましておめでとうございます…♪」

 

「楓さんも……おめでとう……」

 

「その着物、よく似合ってるじゃないか。とてもかわいいぞ」

 

「ありがとう……頑張った……甲斐があった……//」

 

「頑張った……?」

 

「……着付け……全部一人で……やったの……」

 

「えっ。その髪飾りから着物まで、全部一人でやったのか……!?」

 

「……うん……京都にいた時に……覚えた……」

 

「あ、そっか。そういえば雪美って、京都出身だったよな。流石は京娘といったところか」

 

「……プロデューサー……私……えらい……?」

 

「あぁ。偉いどころか、すごいじゃないか」ナデナデ

 

「……えへ……嬉しい……//」

 

「……む〜っ……」プクッ

 

「ん……?どうしました?楓さん」

 

「プロデューサーさぁん?私の着物も、どうですかぁ?」

 

「えぇ。楓さんも、もちろん……って!楓さんはさっきからずっと、俺と一緒にいるじゃないですかっ!」

 

「そうですけど……私の時より……雪美ちゃんの方が、沢山褒めてました……」

 

「いや……そんなことは……」

 

「そんなことあるんですっ。むぅっ……」

 

「プロデューサー……楓さんと、ずっと……一緒だったの……?」

 

「ん?あぁ、前から約束しててな。事務所で年を越して、これから初詣に行くところだったんだ」

 

「初詣……?」

 

「そうなの♪よかったら雪美ちゃんも、一緒に来る?」

 

「………うん……行きたい……」

 

「よし!雪美も加えて、さっそく初詣に行きますか!」

 

------------------------------------------------

 

「んしょ……んしょ……」

 

カランカラン……

 

(今年も……アイドルが無事に……活動出来ますように……)

 

「……」

 

(……それにしても……二人とも……すごい、集中してるな……)

 

「……」

 

「……終わった……」

 

「おっ、終わったか。雪美」

 

「うん……お願い事……叶うように……たくさん、祈った……」

 

「そうか。雪美の願い事が、叶うといいな。楓さんはどうですか?」

 

「……えぇ♪私も今、終わりました♪」

 

「二人とも、随分と集中してましたね。何をお願いしたんです?」

 

「……秘密……//」

 

「はい♪今年は楽しい「クリスマス」になるといいな〜って、お願いをしました♪」

 

「ははっ。新年早々……って……クリスマス……?」

 

「……じー」

 

「えっと……楓さん……?」

 

「……プロデューサーさんたちだけで、クリスマス会をしてたなんていいな〜。私も、参加したかったな〜」

 

「なっ……!し、しょうがないじゃないですか!楓さんはあの時、クリスマスに仕事が入ってたんですから!」

 

「むぅっ……みんなだけで、楽しんじゃって……ずるいですっ……」

 

「……私だって……「プロデューサーくん」と、みんなで……飲みたかったのに……」

 

------------------------------------------------

 

「楓さんは、大人気アイドルなんです。ですので、元日の今日だって休みを取るの、大変でしたよね?」

 

「……ふ〜んだ……」

 

「新年早々申しわけないですけど、明日はさっそく、新年初の生放送の収録を、よろしくお願いしますね」

 

「……プロデューサーさんにイヂワルをされたので、行きませ〜ん」

 

「ワガママはダメです」

 

「や〜で〜す。行きませ〜んっ」

 

「……楓さん……どうしたの……?」

 

「聞いて?雪美ちゃん。プロデューサーさんってば、私だけ仲間外れにして、イヂワルをしてくるんです……」

 

「ちょっ…!雪美に、変なことを言わないでください!」

 

「……プロデューサー……イジワルをするの……よくない……楓さん……かわいそう……」

 

「いや……あのな、雪美。楓さんはその日に、お仕事があってだな……」

 

「イジワル……ダメ……」

 

「だから……」

 

「ダメ……」

 

「……はい……」

 

「それとぉ……美優さんと「二人っきりで」随分と、お楽しみだったそうじゃないですか〜……」スッ

 

「ん?スマホ……?……ちょっ……な、何で、こんな写真がっ……!」

 

「そうですね……あえて言うなら、何でもお見通しだぞ☆って、言うところでしょうか♪」

 

「くそっ!あいつめ……いつの間に、こんな写真をっ……!//」

 

「……プロデューサー……どういうこと……?」

 

------------------------------------------------

 

「あっ、いや……これは……く、クリスマス会のあとに少しだけ、イルミネーションを見てただけなんだよ!」

 

「………よくない……」

 

「えっ……?」

 

「美優さんは……アイドル……だから……プロデューサーと……二人きり……よくない……」

 

「ぐっ……そ、それはっ……!」

 

「それに……プロデューサーは……みんなのプロデューサー……だから……」

 

「……もっと……私たちを……見てくれなきゃ……ダメ……//」

 

「はい……反省しま……ん……?」

 

「そうですね♪美優さんのことばかり、構うのはずるいですっ♪」

 

「……今……反省するって……言った……?」

 

「あ、あぁ……そのつもりだが……」

 

「今の言葉、しっかりと聞きましたよっ♪ねっ♪雪美ちゃん♪」

 

「うん……私と楓さん……しっかり聞いた……//」

 

「えっと……二人とも……?」

 

「あのね、雪美ちゃん「男に二言はない」って言葉を、知ってるかな?」

 

「にごん……?」

 

「うん♪大人の男の人はね、一度言ったことを、最後まで守らなきゃいけないって決まりがあるの♪」

 

「そうなんだ……」

 

「ちょっ……!か、楓さん……!?」

 

「だから、プロデューサーさんは「オトナ」のお兄さんだから、きっと、最後まで反省してくれますよ♪」

 

「……プロデューサー……かっこいい……//」

 

「……あ〜!あそこに、甘酒がありますよっ!二人とも、飲みたいよな!?ちょっと、もらって来ますねっ!」

 

「あっ……逃げた……」

 

「もうっ、本当にプロデューサーさんは、イヂワルなんですからっ」

 

------------------------------------------------

 

「あっ、すみません。甘酒をもらってもいいですか?」

 

「はい。どうぞ……って……プロデューサー!?」

 

「おっ、拓海じゃないか。どうしたんだ?こんなところで」

 

「ぷ、プロデューサーこそ、ここに、何をしに来やがったんだよ!!」

 

「何をしにって……年が明けたから、初詣に来たんだが?」

 

「ちっ……!新年早々、みっともねえ姿を晒しちまったぜ……」

 

「何がみっともないんだよ?」

 

「……どうせ……アタシのこの、巫女姿なんて似合わねーって、内心バカにしてやがるんだろ……」

 

「何でだよ。拓海の巫女姿、とてもかわいいぞ」

 

「ふんっ、くだらね〜お世辞はいらね〜よ。ったく……胸糞わりいぜ……」

 

「お世辞じゃないって。本当に似合ってるぞ?」

 

「……じゃあ……証明してみろよ……」

 

「えっ?証明……?」

 

「だ、だから、その……男なら……こ、行動で表してみろって……言ってるんだよ……//」

 

「行動って、急に言われてもなあ……どうすればいいんだよ……?」

 

「なあ……初詣のあと……予定とか、あるか……?」

 

「あと……ううん。特になかった気がするけど……どうした?」

 

「それじゃあよ、その……あ、アタシと一緒に……//」

 

「プロデューサーさ〜んっ!」

 

「……ん……?」

 

「プロデューサー……急に走っちゃ……ダメだよ……?」

 

「雪美ちゃんの言う通りですっ。はぐれたりしちゃったら、どうすんですかっ」

 

「うっ……す、すみません……」

 

------------------------------------------------

 

「……楓さんに……雪美……?」

 

「あっ……拓海……明けましておめでとう……」

 

「明けましておめでとうございます♪拓海ちゃんも、初詣ですか?」

 

「おめでとうございます。いえ、駄賃稼ぎに巫女のバイトをしてるんです。年末年始は、何かと金欠なもんで」

 

「拓海……かわいい……♪」

 

「はぁっ!?ゆ、雪美!?」

 

「巫女装束、とても似合ってますよ♪今年の神社は、拓海ちゃんのおかげで大盛況ですね♪」

 

「楓さんまで……!一体、何を言ってるんですかっ!//」

 

「ほら、拓海。みんな、かわいいって言ってくれてるじゃないか。だから自信を持てよ。な?」

 

「……何なんだよ……ったく……調子が狂うぜ……//」

 

「ところで……プロデューサー……またなの……?」

 

「ん?何がだ?」

 

「……また……女の子と……二人きり……」

 

「……あ”……?「また」ダァ……?」

 

「ふ〜ん。美優さんの次は、拓海ちゃんですか〜。プロデューサーさんてば、全然反省してませんね〜」

 

「だから、誤解を生むようなことを言わないで下さい!俺はただ、たまたま拓海と出会っただけですっ!」

 

「……おい。ちょっと、面を貸せや……アタシが厄を払ってやるよ……新年を祝ってな……」

 

「そうですね〜♪プロデューサーさんはこの際、厄払いをしてもらった方が、いいかもしれませんね♪」

 

「私も……楓さんと同じ……考え……」

 

「誰彼構わずに、アイドルをたぶらかす不浄な色情魔を、シメ……お祓いしてやる……」

 

「厄……?色情魔……?どういうことだよ……?」

 

「いいから来い!てめェは目を離すと、見境がねぇからな!特別に、スペシャルなのをくれてやんよ!!」

 

「ちょっ……!そんなに、引っ張るなって!おいっ!!」

 

「うるせぇ!悪霊退散邪念必減煩悩滅却だ!!オラァッ!!」

 

------------------------------------------------

 

「……甘酒……美味しい……//」

 

「えぇ♪と〜っても、美味しいですね♪」

 

「ってて……ったく……何だったんだよ……拓海のヤツ……」

 

「んもう、プロデューサーさん?拓海ちゃんも、女の子なんですからね?ダメですよ?」

 

「ダメって……それは、こっちのセリフですよ……酷い目にあわされたんですから…」

 

「巫女のクセに、お祓いに使う棒で俺をバシバシ「お清め」してきたし……罰当たりなヤツだぜ、本当……」

 

「……罰当たりなのは……プロデューサー……拓海……とても悲しんでた……」

 

「悲しんでたって……むしろ、急にこんなことをされた、俺の方が悲しいんだけど……?」

 

「プロデューサー……やっぱり……何も反省してない……」

 

「もう一度言いますっ。拓海ちゃんは「女の子」なんですよ?だからもう少し、乙女心を理解してくださいっ」

 

「拓海が……乙女……」

 

「……何か……言いたいこと……ある……?」

 

「……いえ、何もないです……」

 

「それじゃあ、プロデューサーさんっ。次はどこに行きましょうか♪」

 

「次ですか?う〜ん……初詣も済んだし……事務所に戻りますか?」

 

「……ということは……あとは特に、予定がないってことなんですね……?」

 

「まあ、そうですね。新年を無事、気持ちよく迎えれて初詣も済みましたし、今のところはないですね」

 

「そうですか……♪それでは、雪美ちゃん♪私たちが乙女心を教えてあげましょうか♪……えいっ♪」ギュッ

 

「えっ……?」

 

「そうだね……プロデューサーは……ペロより目が離せない……悪い子だから……見守らないと……」ギュッ

 

「乙女心……?ペロ……?……って……ま、待ってくださいって!」

 

------------------------------------------------

 

「は〜い♪着きました♪」

 

「……到着……♪」

 

「二人とも……着物は、もういいんですか……?」

 

「そうですね♪着物もいいですけどやはり、普段着が一番ですっ♪」

 

「うん……普通が一番……」

 

「ならいいんですけど……それで?一旦事務所に戻って、着替えてきたわけですが、ここは何処なんです?」

 

「ここは……氷の迷路……」

 

「氷の迷路……?」

 

「はい♪冬季限定の、氷で出来た迷路なんです♪結構、スリルがあるって評判なんですよ♪」

 

「へぇ〜。これ、全て氷で出来てるのか……すごいな……」

 

「出られなくて、ヒヤっとするかもしれませんね♪氷の迷路なだけにっ♪ふふっ♪」

 

「……入る前から、飛ばしてますね……楓さん……」

 

「それじゃあ……みんなで……行こ……?」

 

「えっ?俺も行くのか?」

 

「当たり前じゃないですか♪プロデューサーさんも、一緒ですよ?」

 

「私……プロデューサーと楓さん……三人で……迷路に行きたい……」

 

「そうか?それじゃあ、せっかくだし……行きますか?」

 

「は〜い♪行きましょ〜う♪」

 

「……プロデューサー……一つ……お願いがあるの……いい?」

 

「何だ?雪美?」

 

「私たちと……ずっと、一緒に……いてくれる……?」

 

「あぁ、もちろん。俺は、二人と常に一緒いるよ」

 

「……そう……嬉しい……//」

 

「うふふっ……♪頼りにしてますよ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……あれ…?この道って、通ったっけ……?」

 

「いや……でも、さっきは行き止まりだったし……新しい道に、来たのか……?」

 

「……ふぅ……つい、ノリと勢いで、迷路に入ってしまったが……」

 

「結構、入り組んでるな……辺り一面、氷で出来てるから、幻想的で綺麗は綺麗だけど……」

 

「ていうかこれ、本当にアトラクションなの……?マジな迷路じゃん……」

 

「目印になりそうなものもないし……道も結構、入り組んでて複雑だし……」

 

「う〜む……どう進めばいいか、悩んじゃうな……なあ、雪美はどう思う……」

 

「……」

 

「……って、あれ?雪美……?楓さん……?」

 

「……まさか……お〜い!雪美〜!楓さ〜ん!」

 

「やばっ……入る前に、常に一緒だって言ったのに……雪美たちとはぐれてしまったのか…?」

 

「う〜ん……楓さんがついてるから、大丈夫だとは思うけど……アイドルたちだけじゃ、心配だな……」

 

「それに……もしものことがあったら……」

 

「……とにかく探そう。ここで待っていても、しょうがないしな」

 

「とりあえず、元きた道に戻るか……」

 

「……えっと…元きた道って、どっちだったっけ?」

 

「こっち?それともここからだっけ?」

 

「いや、あっちからだったか?それとも……これは想像以上に、大変そうだ……」

 

「こうしてる間にも、彼女たちは……必ず、見つけ出すからな。待っててくれ……雪美……楓さん……」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……結構、歩いたな……」

 

「迷路自体はそこまで、大規模ではないはずだし、距離はそんなに離れてないはずなんだが……」

 

「……くそっ…どこにいるんだ……二人とも……!」

 

「まさか……いやいや、そんなことはないはずだ……もし……そうなってしまったら……俺……ん?」

 

コツコツ

 

「何だ……?何か、音がするぞ……?それに、何やら小さな影が、こっちの方に……」

 

「……プロデューサー……?」

 

「っ……!雪美……?雪美なのか!?」

 

「……プロデューサー……やっと……見つけた……」

 

「雪美っ!大丈夫か!?変な目に合わなかったか!?」

 

「うん……大丈夫……迷路で迷ったら……カベに手をあてて進むと……出られるって……教わってたから……」

 

「そうか……とにかく、無事でよかったよ。本当に、ごめん。色々と、不安だったよな?」ギュッ

 

「……あっ……少し……不安だった……だけど……手をぎゅっとしてくれたから……今はとても安心……//」

 

「俺も、安心したよ。もう離さないからな」

 

「……えへ……暖かい……♪ねぇ……プロデューサー……私……いい子……?」

 

「あぁ。よく泣かないで、一人でここまで来れたな。偉いぞ」

 

「……それじゃあ……いい子にしてたから……ご褒美……欲しい……」

 

「ん?ご褒美……?何が欲しいんだ?」

 

「うん……一つ……私のお願い事を……聞いて欲しいの……あのね……このまま私と……」

 

「……やっぱり……今はダメ……まだ……お願い事を……とっておく……」

 

「ははっ、何だよそりゃ。遠慮せずに言ってみな?」

 

「……ダメ……//」

 

「そりゃ、残念だ。ところで、楓さんはどうしたんだ?一緒じゃないのか?」

 

「最初は……一緒に歩いてた……でも……楓さんとも……途中で……はぐれちゃった……」

 

「そうか……それじゃあ、楓さんを探しに行こうぜ。一緒にな」

 

「うん……」

 

------------------------------------------------

 

「なあ、雪美。どこらへんで、はぐれちゃったんだ?」

 

「私も……いつ間にか……楓さんがいなくて……困っちゃった……」

 

「雪美もか……この氷の迷路って、少し目を離すと迷ってしまうぐらい、入り組んでるよな……」

 

「楓さん……心配……」

 

「あぁ。俺も、同じ気持ちだよ。だから早く、楓さんを探してあげような」

 

「……そうだね……ところで……プロデューサーって……楓さんのことを……どう思ってる……?」

 

「えっ?どう思ってるって……アイドル?」

 

「そうじゃなくて……楓さん自身について……どう思ってるの……?」

 

「う〜ん、そうだな〜。ダジャレとお酒が好きな、綺麗なお姉さんだと思ってるぞ?雪美はどうなんだ?」

 

「……楓さんは……すごく綺麗な……オトナのお姉さん……それに……すごく優しい……」

 

「でも……ライバルとも……思ってる……楓さんは……強敵……」

 

「ライバルか。まあ、アイドル同士で、お互いを見つめ合うことは悪いことじゃないしな。その調子で頼むぞ」

 

「……うん……頑張る……」

 

「……クスン」

 

「ん……?雪美?どうしたんだ?」

 

「何が……?」

 

「いや、今……すすり泣く声が、聞こえたような気がしたんだが……」

 

「えっ……私……じゃないよ……?」

 

「……この声は……プロデューサーさんっ……?」

 

「あっ!か、楓さんっ!俺ですよ!大丈夫でしたか!?」

 

「……プロデューサーさぁんっ!」

 

「うわっ!?ちょっ……急に、抱きつくだなんて……//」

 

「プロデューサーさん……私……怖かったです……」

 

「三人だったのに……いつの間にか、私一人になってて……とても心細くて……クスンッ」

 

「……楓さん……心配をかけてすみません。これからはずっと、一緒です」

 

ギュッ

 

「あっ……プロデューサーさんっ……はい……ありがとうございます……♪.//」

 

「もう、雪美と楓さんの手……絶対に離しませんよ。さあ迷路から出ましょう、三人で」

 

「……プロデューサーの手……暖かい……//」

 

------------------------------------------------

 

「ふう……なんとか、出れたな……」

 

「予定とは、少し違ってしまいましたが、みんなで無事に出れましたね♪」

 

「そうですね。雪美と楓さんが無事で、本当によかったです」

 

「……いつもは優しいのに……急に、凛々しくなったりするんですから……本当に……ずるいです……//」

 

「ん?どうしました?楓さん」

 

「いえいえ♪何でもないですよ♪それよりっ♪さっきのプロデューサーさん……とても、素敵でしたよっ♪//」

 

「そんな。アイドルの安否を心配するのは、当然のことですから」

 

「ねぇ……プロデューサー……分かってくれた……?……乙女心を……」

 

「乙女心……?」

 

「……さっき……迷路で……私たちとはぐれた時……どう思った……?」

 

「どうって……二人のことで、頭がいっぱいになったけど…?」

 

「……私たちも……同じ気持ち……それも……ずっと前から……」

 

「初詣の時に、言ったじゃないですか。乙女心を、教えてあげますって」

 

「そういえば、言ってたような……でも、迷路と乙女心って、何の関係があるんだ?」

 

「女の子はですね、想ってる人に対していつも、必死なんですよ?さっきの、プロデューサーさんみたいに」

 

「俺は男だから、乙女心はわからないけど……でも、確かにあの時、二人を探すのに必死になってましたね」

 

「……初詣の時も……拓海は……プロデューサーのことで……頭がいっぱいだった……」

 

「……でも……他の女の人と……二人きりでいたことが……わかって……拓海……すごく悲しんでた……」

 

「少し、想定外でしたけど……どうです?「一番」でいたいという、必死な乙女心をわかってくれましたか?」

 

「要は、その乙女心って言うのは、俺がアイドルたちに対する、思いってことでいいんですか?」

 

「……プロデューサーの……?」

 

「あぁ。アイドルたちは、俺の大切な存在だ。常に「一番」のトップアイドルを目指して欲しいと思ってる」

 

「だから俺も、日頃からアイドルたちのことで、頭も胸もいっぱいだ。そういうことなのか?」

 

「むぅ〜……プロデューサーさんはやっぱり……何もわかってないですっ……」プクッ

 

「……他のみんなより……プロデューサーが……一番……強敵……」

 

「えっ?何か、違うの?」

 

「知りませんっ。とにかく今度、拓海ちゃんに謝っておいてくださいね?女の子は色々と、繊細なんですから」

 

「はぁ……わかりました……」

 

「わかればよろしいです♪それでは……事務所に戻るまで……二人で、独占しちゃおうか♪」ギュッ

 

「うん……今は……私と楓さん……二人だけの……プロデューサー……//」ギュッ

 

「ちょっ!?二人して、急に何だよっ!そんなに、密着をしてきて……!//」

 

「ふ〜んだ♪プロデューサーさんがその気なら、こっちもこうしちゃいますも〜んっ♪」

 

「……大丈夫……プロデューサーは……いつも私と一緒……ふふっ……//」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「ただいま帰りました♪」

 

「……ただいま……」

 

「あっ!プロデューサー君に、雪美ちゃんに、楓ちゃんじゃない♪あけおめ〜♪」

 

「あけましておめでとうございます♪今年も、よろしくお願いしますね♪」

 

「早苗さんと清良さんも、事務所に来てたんですね。あけましておめでとうございます」

 

「今年もよろしくねっ♪ところで……三人で、どこかに行ってたの?」

 

「えぇ。三人で、初詣に行ってきたんですよ。ですよね?雪美、楓さん」

 

「うん……三人で……初詣に行ってきた……」

 

「はいっ♪今年もいい年になるように、お参りをして来ました♪あと、氷の迷路にも、行って来たんですよ♪」

 

「氷の迷路って……あの、冬限定のアトラクション?」

 

「えぇ♪結構、本格的な迷路でしたよ♪ねっ、雪美ちゃん♪」

 

「うん……楽しかった……」

 

「あの迷路は、かなり複雑だって聞いたことがあるけど……大丈夫だったんですか?」

 

「少し……はぐれちゃったけど……いい思い出になった……//」

 

「うぐっ……!」

 

「えっ……はぐれた……?」

 

「……そうですねぇ〜。誰かさんが、私たちを置いて行っちゃったんですよぉ〜」

 

「あっ、いや、その……」

 

「……プロデューサー……?置いて行ったとは……どういうことなんですか……?」

 

「そ、それはですねっ……色々と、深いわけがあって……!」

 

「ちょっと……あたしたちに、そのわけを聞かせてくれるかしら?ねっ、プロデューサー君♪」

 

「……はい……」

 

------------------------------------------------

 

「……というような、感じで……雪美たちと、氷の迷路ではぐれてしまいまして……」

 

「もう!ダメじゃない!プロデューサー君が、しっかりと雪美ちゃんたちを、見てあげなきゃっ!」

 

「女性たちを置いてけぼりにするのは、関心しませんね……何かがあってからでは、遅いんですよ……?」

 

「……面目ないです……」

 

「二人とも、寒かったでしょう?今、蜂蜜生姜湯を作りますから……あとで一応、お熱も計りましょうね」

 

「ありがとうございます♪」

 

「……ありがとう……」

 

「さて♪プロデューサーには……お仕置きかしら♪」

 

「っ……!?お、お仕置き……ですか……?」

 

「はい♪あっ、心配しないでください♪すこ〜し、キュッ♪とするだけなんで♪」

 

「それじゃあ、あたしは、少しシメるだけにしといてあげるわ♪覚悟しなさいね♪」

 

「きゅっとされちゃうんですね♪「キュート」な清良さんに……ふふっ……♪」

 

「あっ……あぁっ……」

 

「うふふ♪痛くないですから……動かないでくださいね〜♪」

 

「置いていかれた、乙女の心の痛みよりかは痛くないから、安心しなさい♪さぁ〜♪行くわよ〜♪」

 

「……みんな……ダメ……」

 

「えっ……雪美ちゃん……?」

 

「ゆ、雪美っ……!」

 

「プロデューサーは……私と結婚する……大切な人……だから……ひどいことをするの……ダメ……」

 

「……は?」

 

「……ねぇ〜、プロデューサーくぅんっ♪ちょ〜っと、お姉さんとこっちに来ようか♪」

 

「うふふ♪プロデューサーっ♪少し……大切なお話があるのですが……♪」

 

「ちょっ、さ、早苗さんっ!清良さんっ!ま、待って下さい!誤解ですっ!」

 

「誤解じゃない……あの時……約束してくれた……「お願い事」を……聞いてくれるって……//」

 

「……あの時……?あぁ。確かに約束はしたけど……別に、そういう意味じゃ……」

 

「それに……言っておかないと……プロデューサーを……お姉さんたちに……取られちゃうから……」

 

「ん?どういうことだ……?」

 

「……私……わかる……みんな……プロデューサーのことが……好き……」

 

「えっ……!?ゆ、雪美ちゃん……?急に……どうしたの……?//」

 

「あ、あははっ……雪美ちゃんは一体、何を言ってるのかなぁ〜……//」

 

------------------------------------------------

 

「……好き……?」

 

「みんなは……すごい仲良し……それに……プロデューサーの……ことばかり……見てる……」

 

「あらっ♪雪美ちゃんてば、よく見てるんですね♪」

 

「……あのな、雪美?確かに、俺たちは仲良しだけど、そういう意味はないと思うぞ?」

 

「……そうなの……?」

 

「うん。大人になると、色々なお付き合いがあるんだ。ましてや、アイドルだとな」

 

「みんなは大人のお姉さんだから、そこら辺はしっかりとしてるんだよ。そうですよね?みなさん」

 

「えぇ……確かに、大人になると……色々とありますが……」

 

「……手を離さないって言われたら、すごく……ロマンティックな気分に、なってしまいますよね…?//」チラッ

 

「そ、そうねっ……!オトナになると、色々とあるのよっ!」

 

「……で、でも……プロデューサー君が、どうしてもっていうなら……いいかな〜……なんて……♪//」チラッ

 

「私も……大人やアイドルである以前に、一人の女性ですので……」

 

「……「心のケア」はいつも……怠っていませんよ……?//」チラッ

 

「な?雪美もいずれわかるようになるよ。でも、雪美は、人気アイドルなんだから、今を頑張ってくれよ」

 

「うん……頑張る……じゃあ……結婚はまた今度……もうひとつの……お願い事を……聞いてくれる……?」

 

「ん?何だ?」

 

「……連れて行って……欲しい……場所が……あるの……」

 

「行きたい場所があるのか?それなら、別にいいけど……どこに行きたいんだ?」

 

「ふふ……まだ……言えない……//」

 

「何だよ、言ってみなって。あ、そうだ、せっかくだし、みなさんも一緒にどうですか?」

 

「……あ〜、ごめんねー。あたしたちで、これから飲みに行く約束をしてたの」

 

「えぇ♪前から、早苗さんと清良さんで、約束をしてたんですよ♪」

 

「はい……ですので、プロデューサーと雪美ちゃんの二人で、行って来てください♪」

 

「えっ?そうなんですか?それじゃあ、雪美……二人で行くか?」

 

「……うん……行く……//」

 

「うふふ♪かわいい「プチマドモアゼル」と楽しんできてくださいね♪ぷ「ちっと」だけ羨ましいですけど♪」

 

「ただし、ヘンなことしようとしたら……執行猶予なしの、実刑に処するからね♪おイタはダ・メ・だ・ぞ♪」

 

「何を言ってるんですか!そんなことはしませんって!」

 

「……みんな……ありがとう……」

 

「それじゃあ。あたしたちも、そろそろ行くね〜♪今年もよろしく頼むわよっ♪」

 

「えぇ。今年もよろしくお願いします」

 

「……お願い……します……じゃあ……プロデューサー……行こ……?」

 

「おぉ、そうだな。それじゃあ、行くか!」

 

------------------------------------------------

 

「へぇ〜……これはすごい……」

 

「……ここの写真館……私のお気に入り……」

 

「たくさんの猫の写真が、展示されてるな。特に、黒猫が多いな」

 

「……ペロのお友達……たくさんいる……だから……お気に入り……♪」

 

「ははっ。確かに、これだけいれば、寂しくないよな」

 

「うん……寂しくない……でも……」

 

「……今日は……プロデューサーも……いるから……もっと……寂しくない……//」

 

「おっ。俺も、猫たちの仲間にしてくれるのか?」

 

「……猫たち……プロデューサーと……私を……祝福……してくれてる……//」

 

「それは嬉しいな。にしても、落ち着くよな〜、ここ。この猫の置物だって、随分とリアルで……」

 

ニャー

 

「うわっ…!?」

 

「……ペロ……おいで……」

 

「えっ……ぺ、ペロ…!?何でここに…!?」

 

「……ペロ……連れてきちゃった……♪」

 

「びっくりさせないでくれよ……置物が、動いたと思ったじゃないか……」

 

「……少し……いたずら……してみたかった……えへ……//」

 

「全く……」

 

「じゃあ……プロデューサー……しばらく……一緒にいよ……?」

 

「そうだな。せっかくだし、写真を見て回るか。結構な種類の猫が、飾られてるしな」

 

「……言葉は苦手……でも……写真は……心が伝わる……だから楽しい……」

 

「苦手?そんなことはないと思うぞ?ライブの時とか、しっかりと歌って踊れてたじゃないか」

 

「そう……?私……よく歌えてた……?」

 

「あぁ。雪美は、頑張りやさんだしな。いつもありがとう」ナデナデ

 

「……ふふっ……暖かい温もりが……写真より……伝わってくる……♪//」

 

「おっ、上手じゃないか。でも今は、猫たちの写真を楽しもうぜ。ペロも一緒にな」

 

「そうだね……でも……いつかは……プロデューサーにも……」

 

「……ううん……やっぱり……何でもない……さあペロ……行くよ……」

 

ニャー

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……だいぶ、見回ったな。少し休憩するか?」

 

「うん……休憩……する……」

 

「ちょうど、ここに椅子があるな。ほら雪美、先に座りな」

 

「……プロデューサー……先に座って……ペロを……だっこしてるから……あとがいい……」

 

「そうか?では、お言葉に甘えて、先に座らせてもらうよ」

 

「うん……それじゃあ……ペロはここで……私は……こっち……」

 

チョコンッ

 

「……あ、あの……雪美さん……?」

 

「何……?」

 

「ペロに、席を用意してあげるだなんて、優しいじゃないか。でもな……」

 

「……雪美さんは、ちょっと……席を間違ってるんじゃないですかね……?//」

 

「何で……?プロデューサーの……膝の上……座りやすいよ……?」

 

「いや……座りやすいとか、そういう問題じゃなくてだな……//」

 

「私が……膝の上にいるの……イヤ……?」

 

「そんなことはないぞ、むしろ嬉し……じゃなくて!雪美は女の子なんだぞ!?」

 

「こういうことばかりしてたら、将来、悪い人に変なことをされちゃうかもしれないんだ」

 

「だから……もう少し、雪美と俺は、距離感を考えようぜ……なっ……?」

 

「……プロデューサー……悪い人……」

 

「えっ……お、俺がっ……!?」

 

「あの時……迷路に入る前に……ずっと……一緒にいてくれるって……お約束したのに……嘘をついた……」

 

「うっ……それは……」

 

「……オトナの……お兄さんなのに……お約束を……破った……」

 

「……わかったよ……男は知らんが「俺に二言」はないよ」

 

「……っ……!……本当……!?」

 

「あぁ。約束を守らないのは、よくないことだしな。俺に出来ることで、何か雪美にお詫びをさせてくれ」

 

「それじゃあ……けっこ……」

 

「それはダメ。そんなことより、イチゴのケーキとかどうだ?雪美も食べたがってただろ?」

 

「……むぅ……また……子供扱いして……私もう……お姉さん……」

 

「はいはい、雪美はかわいいアイドルだからな。今後も、頑張ってくれよ〜?」

 

「じゃあ……今から……約束して……?私が……楓さんみたいな……オトナのお姉さんに……なっても……」

 

「……いつまでも……一緒に……いてくれる……?」

 

「あぁ、もちろんだ。でも、雪美がその時まで、アイドルを続けてくれてたら、だけどな」

 

「……ふふ……お約束……だよ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「約束……?」

 

「プロデューサー……にごんはないって……言った……だから……」

 

「……これで……プロデューサーと……私……結ばれた……//」

 

「ははっ。何で、俺なんだよ。その言葉は将来、雪美の隣にいる、素敵な人にだろ?」

 

「ふふっ……そうだね……ねぇ……プロデューサー……は……はっ……」

 

「?」

 

「……はっぴぃ……にゅう……にゃあ……なんて……//」

 

「おっ、上手いじゃないか。はっぴぃにゅうにゃあ。雪美」

 

「………えへ……//」

 

「さて、新年を改めて祝ったところで……雪美?そろそろ、俺の膝から降りてくれないか……?」

 

「……何で……?」

 

「いや〜…少し、恥ずかしくなってきたし……この絵面はアイドルとして、色々とよくないと言うか……//」

 

「……ヤダ……約束した……だから……私がいいって……言うまで……降ろしちゃ……ダメ……」

 

「……ワガママは、よくないと思うぞ〜…?」

 

「今の私……悪い子……だから……問題ない……」

 

「ぐっ……まじかよっ……!//」

 

「それに……ペロ……その席……気に入ってるの……」

 

「そうなのか?ペロ?」

 

ニャー♪

 

「ほら……ペロも……気に入ってるって……言ってる……」

 

「……ゆ、雪美は、猫と喋れるんだな〜……そうか〜、すごいな〜……あ、あはは……」

 

「プロデューサー……これからも……ううん……ずっと……私と一緒に……いてね……?」

 

「あぁ、もちろんだ。プロデューサーである俺、そしてアイドルである雪美。お互いに、頑張っていこうな」

 

「うん……よろしく……じゃあ……今はしばらく……こうしていようね……」

 

「……ペロが「雪美ちゃん、膝から降りて、ボクを構って欲しいにゃあ」って、言ってるぞ?にゃんて……♪」

 

「ペロ……そんなこと……言ってない……だから……ずっと一緒……♪」

 

「くっ……!//」

 

「……ふふっ……プロデューサーの膝……すごく暖かい……♪」

 

------------------------------------------------

 

「お〜い、雪美〜?」

 

「……zzz」

 

「ふぅ……まだ起きないのか……ぐっすりだな、こりゃ。途中から返事がないし、何となく察したが……」

 

「閉館の時間になっても、起きないとは……しょうがない。とりあえず、事務所までおぶって帰りますかねぇ」

 

「……ふふっ……イチゴのケーキ……あ〜ん……♪」

 

「おいおい。新年早々、もう初夢か……?全く……無防備なヤツだぜ……」

 

「……美味しい……?そう……よかった……♪」

 

「……何だよ……何だかんだ言って、寝顔は年相応の女の子じゃないか。口では、お姉さんぶってたけどさ」

 

「しんこんせいかつ……楽しいね……♪ねぇ……今度は……私にも……ちょうだい……♪」

 

「新婚……って、おい!夢の中では、雪美はもうお嫁さんなのか……!?」

 

「……あまくて……美味しい……♪まるで……イチゴとケーキ……今の私たち……みたい……♪」

 

「……前言撤回。年不相応だな、雪美は……さっきもだけど、十歳の小娘が結婚だなんて、早すぎだっつうの」

 

「それより、もっと普通の女の子らしく、友達と遊んで、勉強をして、青春を謳歌して……」

 

「……アイドル活動を楽しんだりして……たくさんの、素敵な思い出を作るのが、優先だろ……?」

 

「これからも……ずっと一緒だよ……♪……えへ……//」

 

「まあ……楽しそうな夢を見てそうだし、別にいいか……でも……そうだよな……」

 

「いずれ、雪美にも……素敵な人が出来て、そして……」

 

「……zzz」

 

「……よし!俺も雪美に、楽しくて素敵な思い出を、たくさん作ってもらうために、頑張らないとな!!」

 

「だから、これからもよろしくな。雪美。その時が来るまで、一緒に歩んでいこうぜ」

 

「オトナのお姉さんと……オトナのお兄さん……すごくお似合い……だから……」

 

「これから……楽しいこと……「素敵」なこと……いつも二人で一緒に……分け合いっこ……しようね……」

 

「……プロデューサー……♪//」



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星雲シンデレラ アナスタシア

「……」

 

「……Звезды так прекрасны сегодня……」

 

「Все ли видят одно и то же звездное небо……」

 

「……あっ……いけません……また、ロシア語が出てしまいました……」

 

「ミナミに……言われましたね……気をつけないと、いけません……」

 

「それにしても、今日はズヴェズダ……とても、星が綺麗ですね。一つ一つが綺麗に、輝いています……」

 

「グランパ……グランマ……パパ、ママも、私と同じ、星を見ているのでしょうか……?」

 

「それに……今、何をしてるのか……とても気になりますね……」

 

「ロシアにいた頃は毎日、この星空をみんなで見ていました……でも、今は……」

 

「……そうでしたね。今の、私はズヴェズダです。この夜空で輝いてる、星の一つなんです」

 

「もう……あの時の……昔の私と、違います。今は、たくさんの星に囲まれて、寂しくないですね」

 

「あの星空に浮かぶ……たくさんの、星のように……♪」

 

「うふふ……♪風は冷たいですけど、セルツェ……心は、とても暖かいです……♪」

 

「とは言っても私、まだまだ小さな星ですね。もっと、輝きたいです」

 

「輝いたら、ファンの人、家族、友達……いろんな人が、私を見てくれます、だから、頑張らないとですね」

 

「今の私には、帰る場所があります。それは、とても幸せなことです」

 

「あの人は……私のことを、見てくれているのでしょうか…?」

 

「……あー、いけませんね。私は今、アイドルです。みんなが見てる、ズヴェズダだって教えてもらいました」

 

「でも……いつかはこうして……綺麗な星空を見たいですね……С любимым человеко……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「よお、みんな。レッスンお疲れ様」

 

「あっ、プロデューサーさん。お疲れ様です♪」

 

「現れたか……親愛なる我が友よ。闇に飲まれよっ!」

 

「……あ〜♪プロデューサーっ〜♪」

 

ギュッ

 

「ちょっ……あ、アーニャ……!?」

 

「うふふ……♪私、レッスンを頑張りました♪だから……頭を、撫でてくださいっ♪」

 

「あっ、あぁ……いつも、頑張ってくれてありがとうな。アーニャ」ナデナデ

 

「えへへ……♪」

 

「……アーニャちゃん……?ちょっと、距離が近すぎるんじゃないかな……?」

 

「えっ?そうですか……?ロシアでは、フツウですよ?」

 

「あ、アーニャは……礼儀正しいなあ……あはは……」

 

「……ところで……我が友よ。我も軍神による、幾多の試練を乗り越えた……さすれば、我にも癒しの魔力を授けよ……」

 

「えっ……?」

 

「……私もレッスン……頑張りましたよっ……?」

 

「そ、そうか……じゃあ……蘭子も、こっちにくるか……?」

 

「クックックッ……は〜いっ♪私にも頭を、なでなでしてくださ〜いっ♪」

 

「あぁ。蘭子も、レッスンお疲れ様。ありがとうな」ナデナデ

 

「……えへへ…♪//」

 

「美波もどうだ?レッスンは順調か?」

 

「……」

 

「……美波?」

 

「あっ……は、はいっ……!おかげさまで、順調にこなせていますっ……!//」

 

「どうした……?どこか、具合が悪いのか……?」

 

「……いえっ!少し、考え事をしてただけですので……//」

 

「そうか?なら、いいんだが……」

 

------------------------------------------------

 

「でも……アーニャちゃん?ここは日本なんだから、あまりそういうことはしない方がいいと思うよ?」

 

「あっ……そうですね……また、プロデューサーに……迷惑をかけてしまいました……すみません……」

 

「いや、別に迷惑とかじゃないんだぞ?アーニャのことを、俺はよく知ってるつもりだ」

 

「だけど、一応アーニャもアイドルだし、他の人、特にファンの人には、そういうことはやめてくれよ?」

 

「わかりました♪それでは、プロデューサーにだけ、します♪つまり、トクベツ。と言うものですね♪」

 

ギュッ♪

 

「あ、アーニャは、素直でいい子だなあ……素直すぎて、少し……心配になっちゃいそうなぐらいにな……」

 

「……もうっ……プロデューサーさんは……甘いんですから……」

 

「んじゃ、アーニャ。そろそろ準備してくれ」

 

「はいっ♪わかりました♪」

 

「えっ?プロデューサーさんとアーニャちゃんって、これからどこかに、行くんですか?」

 

「あぁ。アーニャは、次に仕事が入っていてな。これから現場に、向かわなくちゃいけないんだ」

 

「……ま、まさか……百戦錬磨の強者が犇めき合う、死地……不可視境界線管理局へと、赴くのか……!?」

 

「何だそりゃ。ただ、アーニャは他のアイドルたちと、写真集のための撮影に、行ってもらうだけだよ」

 

「そうなんですか……アーニャちゃん、大変だね……」

 

「いえいえ♪むしろ、プロデューサーと一緒なので、楽しみですよ♪」

 

「あ、あはは……アーニャは、仕事熱心だなあ……俺は嬉しいぞ〜……」

 

「……お仕事なんだから……ちゃんとしないと、だめよ……?遊びに行くんじゃないんだから……」

 

「まあ、そう言うな。美波だって、アーニャが真面目で素直な子だって、わかってるだろ?」

 

「それは……そうですけど……」

 

「アーニャは決して、そんな女の子じゃない。俺が保証するよ。なっ?アーニャ」

 

「はいっ♪みんなのためにお仕事を、頑張りたいです♪」

 

「おぉ、いい返事だ!よし、その調子で、次の仕事も頑張りに行こうぜ!」

 

「では、ミナミ、ランコ、ダスヴィダーニャ♪また、会いましょう♪」

 

「うん……ごめんね、アーニャちゃん……私ってば、変なことを言っちゃって……」

 

「大丈夫です♪ミナミはとても優しいって、私、知ってます♪」

 

「さらば、愛しき友たちよ……共に修練を重ね、我が同胞たちに、狂喜の凱歌を捧げようぞ……」

 

「あぁ。お互いに、頑張ろう。それじゃあ、そろそろ俺たちは行くよ。また、よろしくな」

 

「あっ、はい……よろしくお願いします……頑張ってね、アーニャちゃん……」

 

------------------------------------------------

 

「……にゃぁ〜ん……♪」

 

「お〜、よしよし」

 

「……ニャ〜……です……//」

 

「よ〜しよし、いい子だ……俺……一体、何をしてるんだろ……」

 

「何って、猫を愛でてるだけでしょ〜?」

 

「「女の子」の猫たちを、スーツ姿の男が愛でてるって……すごく、危険な香りしかしないんですけど……?」

 

「気にしにゃい♪気にしにゃい♪さあっ♪のあにゃんも、こっちにくるにゃっ♪」

 

「……私は……興味ないわ……流れを完璧に、インプットしてるもの……」

 

「は、ははっ……のあは、流石だな〜……」

 

「ノア……来ないのですか……?」

 

「そうね。私は「形」には興味ないの。アーニャ、形にのみ囚われてはいけないわ「心」も大切にしなさい」

 

「カタチ……ココロ……どういう意味でしょうか……?」

 

「形は日々、変化していくのよ。個々の意志に関係なくね」

 

「ただ、心は不変のものよ。何物にも囚われず、永遠に輝かせることが出来るものなの、つまり……」

 

ムギュッ

 

「うわっ……!?」

 

「……形に心を込めて、始めて……「真実」が生まれる……にゃん」

 

「にゃあ〜♪のあにゃんってば、わかってるぅ〜♪」

 

「ちょっ……の、のあ……?どうしたんだ……?」

 

「言ったでしょ?形には興味ないって。真実は、いつも心の中よ」

 

「なるほど……つまり、シンジツは「にゃん」と言うこと、なんですねっ♪」

 

「えぇ。だから今は、形に心を込めて「真実」にする……にゃん」

 

「ン〜。のあにゃんの話はムズカシくてわからないけど、これで、にゃん・にゃん・にゃんが再集結だにゃ♪」

 

「の、のあまで……ていうか、三人とも近すぎだって!少し離れてくれよっ!!//」

 

「いやよ。貴方もプロデューサーなら、この仕事を私たちに持ってきた以上、職務を全うすべきだわ」

 

「……っ!そ、それは……」

 

「一人の人間、そして、道徳的規範を持つ社会人として、アイドルたちの模範になるのも、貴方の役目だと思うわよ?」

 

「ぐっ……な、何も言い返せねえっ……!」

 

「だから、今は私たちを愛でることに徹しなさい。いいわね?」

 

「……はい……わかりました……」

 

「うふふ……♪プロデューサーは……とても暖かいです……にゃんっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……//」

 

「んにゃ〜♪Pチャンはやっぱり、落ち着くにゃあ〜♪」

 

「……なあ……そろそろ……終わりにしないか……?」

 

「ダ〜メ♪Pチャンには、みくたちの猫に対する熱い想いを、もっとわかってもらうにゃ♪」

 

「どう……?これで、私たちの猫に対する、情熱をわかってもらえたかしら……?」

 

「まあ……確かに、この調子なら「にゃん・にゃん・にゃん」は安泰だな。これからも頼むぞ、三人とも」

 

「えぇ。私とアーニャで、頑張っていきましょう」

 

「は、はい……頑張りましょう……ノア……?」

 

「にゃあっ!?ち、ちょっとのあにゃん!みくを忘れるなんて、酷いにゃ!!」

 

「あなたに「にゃん」はまだ、早いと思うの。だからその場所は、私たちに譲りなさい」

 

「そ、そんなことないもん!Pチャンや、にゃん・にゃん・にゃんのセンターは、誰にも渡さないにゃ!!」

 

「お、お前たち……?さっきから、何の話をしてるんだ……?」

 

「ふぅ……まあ、いいわ。肉体的なつながりなんて、何の意味もなさないもの。だって……」

 

ムニュッ♪

 

「……心で繋がりあっていれば、距離なんて関係ない……貴方も、そう思うわよね……?」

 

「そ、そうだな……でも、すこ〜しだけ、心以外も……繋がっちゃってるんじゃないですかね……?」

 

「あらっ……?どういうことかしら……?」

 

「いや……何と言うか、その……や、柔らかいものが……俺にだな……//」

 

「あ”〜っ”!また、変なこと考えてるっ!Pチャンのえっち!!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……呆れたものね……職務のことより、生物的欲求を優先するだなんて」

 

「またってなんだよ!ていうか、し、仕方ないだろっ!俺だって一応、男なんだぞ!?//」

 

「……魅力的なアイドル……もとい、女の子たちに囲まれてたらその……こうなっちゃうだろ……//」

 

「ふうん。私たちのことを、そういう風に意識してくれてるのね。光栄だわ」

 

「生物的欲求……プロデューサーは、何を考えてましたか?」

 

「……あ〜!あ〜!アーニャは、気にしなくていいぞ!少し、アイドルのことについて、考えてただけだっ!」

 

「そうですか……?何かあったら、私に相談してくださいね?」

 

「あぁ、ありがとうな。ふぅ……アーニャはいつまでも、純粋な女の子でいてくれよ……」

 

「むっ……!ちょっと、Pチャン!それって、みくたちは純粋じゃないってことなのっ!?」

 

「は……?そ、そんな意味で言ったんじゃないぞ!?」

 

「……聞き捨てならないわね……もっと詳しく、話を聞かせてもらおうかしら」

 

「のあも、落ち着けって!二人が、純粋じゃないんじゃなくて、アーニャが純粋すぎで……」

 

コンコン

 

「すみませ〜ん!そろそろ、スタンバイの方を、お願いしま〜す!」

 

「……あっ!ほ、ほらっ……!スタッフさんが呼んでるぞ!そろそろ、始まるみたいだ!」

 

「撮影が、始まるんですね……!それでは、行きましょう♪ノア♪ミク♪」

 

「……しょうがないわね……あとで、たくさん聞かせてもらうわよ」

 

「どういうことなのか、Pチャンの口からしっかりと、説明をしてもらうんだからね!覚悟するにゃ!」

 

「わかったよ。ほら、行って来い……ふぅ……何とか、難を逃れられた……日本語って難しいぜ……本当……」

 

------------------------------------------------

 

「悪いわね。行きも帰りも、車で送迎してもらって」

 

「気にするな。それより、お仕事お疲れ様。ありがとう、のあ」

 

「別に、お礼なんていいわ。用意されたシュチュエーションを、完璧に演じただけよ。それに……」

 

「「……zzz」」

 

「……この子たちも、よくこなしてくれたわ……」

 

「……Pチャ〜ン……もう……お魚は、食べられないにゃ〜……zzz」

 

「ははっ、そうだな。全く、いつもは騒がしいクセに、寝顔はしっかりと女の子じゃないか。かわいい猫め」

 

「そうね。じゃあ、そんな女の子のために、本題に入ろうかしら」

 

「ん……?本題……?」

 

「……なぜ……私たちを、不純扱いしたの……?」

 

「不純……って!だからあれは、誤解なんだって!」

 

「何が誤解なのか、説明しなさい。これは私とみくの、アイドルとしての名誉に関わることなのよ」

 

「そんな、大げさな……ただあの時は、アーニャが純粋すぎるって言おうとしただけなんだ」

 

「純粋すぎる……?」

 

「ほら、アーニャはとてもいい子だけど、いい子すぎて、のあだって心配になる時があるだろ?」

 

「……なるほど……確かに、一理あるわね……本当に、貴方とアーニャはとても、そっくりだわ」

 

「は……?俺とアーニャが?……それじゃあ……少し、変なことを聞くが、俺って純粋なのか……?」

 

「いいえ。貴方こそ、とんでもない不純だわ。時折、一緒にいると、貞操の危機を感じるもの」

 

「うぐっ……!お、俺って……そんな風に、思われてたのか……!」

 

「……でも……「アイドル」に関して、貴方はこの子並みに純粋よ。澄み切った水のようにね」

 

「えっ……?どういうことだ……?何だか、混乱してきたぞ……」

 

「そういうところよ。とりあえず、青信号になったし、進んだ方がいいんじゃないかしら」

 

「あ、あぁ……そうだな。ごめんよ」

 

「……プロデューサー…… Я хочу быть с тобой всегда……zzz」

 

------------------------------------------------

 

「いい?もう一度、言うわ。あなたは「アイドル」に関しては純粋すぎるのよ。アーニャと同じぐらいに」

 

「……それって、褒められてるのか……?まあ、俺はプロデューサーだし、いいことではあると思うが……」

 

「むしろ……その点に関しては、少しぐらい「不純」になった方が、いいと思うわよ?」

 

「やなこった。これ以上不純になったら、誰かさんを襲ってしまうかもしれないからな。あ〜、怖い怖い」

 

「ふぅ……やはり、貴方は変わってるわね……本当に……」

 

「結構だ。変わり者の俺がスカウトしたアイドルは、み〜んな変わってる。な?のあもそう思うだろ?」

 

「……そうかもしれないわね……だって、貴方はあの時、スカウトしたんだもの……」

 

「霞のような……そもそも、存在しているかすらわからない幻のような私をね……本当に、変わってるわ……」

 

「そんなことを言うなって、のあはもう「高峯のあ」と言う、唯一無二の立派なアイドルだ。自信を持てよ」

 

「そうね……私の人生の、因果律を書き換えた罪は……重いわよ……?」

 

「ははっ、何だよそれ。でも、これからもよろしくな、のあ。変わったもの同士、頑張っていこうぜ」

 

「えぇ。これからも、よろしく頼むわ。変人さん」

 

(星は……いつも変わらない……星の本質が変わる事は、決してない……)

 

(それでも……みる人によって、色や輝きは変わる。もしかしたら、未来もまた……)

 

(……そうね……アーニャもみくも……)

 

ナデナデ

 

「因果律を書き換えられた……無数に輝いている、星の一つなのかも……しれないわね……」

 

「ん?今、何か言ったか?」

 

「何でもないわ。ただの独り言よ」

 

「そうか?ならいいんだが……」

 

「んん……プロデューサー……気持ちいいです……zzz」

 

「ん〜……お魚より、Pチャンの方が……zzz」

 

「……ふふっ」

 

------------------------------------------------

 

「……ん〜……Доброе утро……おはようございます……」

 

「ふにゃあ〜……Pチャン……おはよ〜……」

 

「あぁ。おはよう、二人とも。今日も星が輝いてるな」

 

「ん〜、そうだねぇ〜……星が、さんさんだにゃあ〜……♪」

 

「ここは……寮の前……?これから……収録に、行きますか……?」

 

「おいおい。二人とも、しっかりしてくれよ。今日はもう収録が終わって、俺たちは寮に帰ってきたんだ」

 

「にゃ……?……って!もう夜じゃん!ていうか、さっむっ!!」

 

「そういえば、そうでしたね……あの……プロデューサー?私……お仕事、頑張りましたか……?」

 

「うん。三人とも、随分と頑張ってくれたからな。今度、俺たちで何かしようぜ」

 

「あっ!それじゃあみく、みんなで美味しい物を食べに行きた〜い♪」

 

「おぉ、いいな。じゃあ今度、俺たちで、寿司でも食べに行くか」

 

「それは名案ね。みくがすごく、食べたがってたしね」

 

「……は……?ぴ、Pチャンと、のあにゃんは一体……にゃにを言ってるのにゃ……?」

 

「何だよ。お前さっき、車の中で「お魚はもう食べられない〜」って、散々言ってたじゃないか。なあ、のあ」

 

「えぇ。みくが実は、夢に出てくる程、魚が好きだったなんて知らなかったわ。これは大スクープね」

 

「ち、ちが〜う!あれは、お魚でもタ・イ・ヤ・キなのっ!ていうか、みくの寝言をいちいち聞いてたの!?」

 

「聞いてるも何も、車内であれだけ寝言を言ってれば、嫌でも聞こえちゃうだろ」

 

「ふしゃ〜……!やっぱり……Pチャンはヘンタイだにゃっ……!もう行こっ!あーにゃん!」

 

「えっ……?あっ、は、はい……行きましょう……?」

 

「まあ、三人ともお疲れ様。明日は仕事がないから、今日の疲れをゆっくりと、癒してくれ」

 

「言われなくてもそうするにゃ!Pチャンのおバカ!ヘンタイ!もう知らな〜いっ!」

 

「えっと……それでは、プロデューサー、ノア。今日はありがとうございました。また、会いましょうね」

 

「あぁ。今日はありがとう、アーニャ、みく。いい夢を見ろよ」

 

「またよろしくね「にゃん・にゃん・にゃん」は、永久に不滅よ」

 

「はいっ……♪それでは、スパコィナイノーチェ。おやすみ、ですっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……行ってしまったわね」

 

「あぁ、そうだな。本当にみくは、からかうと面白いヤツだ」

 

「そうね。あの子たちと一緒にいると、思考に、エラーが発生してしまうわ。不思議なものね」

 

「ははっ。何だよ、エラーって」

 

「……言うならば……感情のオーバーロード、と言ったところかしら」

 

「微かに感じる、心の鼓動……そう、無から生まれた宇宙のような感情が、私の思考回路に生まれ始めたのよ」

 

「……の、のあの表現は……随分と、詩的だなあ……あ、あはは……」

 

「つまり、内側に情熱を、かすかに感じるようになったの。そうね……行動に表すとしたら……」

 

……チュッ

 

「……!?」

 

「……こんな、感じかしらね……」

 

「ちょっ……の、のあ……!?お前……今、何を……!//」

 

「どう?これでわかってくれた?言ったわよね、罪は重いって」

 

「貴方は、無だった私を灰かぶりの女として、人生そのものを書き換えた」

 

「だから……書き換えられた以上は、誰にも負けたくないの。絶対「一番星」になってみせるわ」

 

「一番星……?ま、まあ……頑張ってくれよ……?」

 

「……少し……喋りすぎてしまったようね。じゃあ、今日はありがとう。そろそろ失礼するわ。おやすみ」

 

「あぁ……おやすみ……のあ……」

 

「……」

 

「くっ……のあのヤツめ……何で……あんなことを、急に……!//」

 

「エラーだの、オーバーロードだの、因果律だの……本当に、わけのわからんヤツだ……」

 

「それに……さっきの温かい感触が、まだ……残ってるような、気がするし……あ〜、もう!」

 

「さっさと書類を整理して、俺も早く寝よっと!こういう時は、寝るのが一番だっ!」

 

「……ったく……のあも、アイドルである以前に女性なんだから……少しは、気をつけろっつうの……//」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「Сегодня очень тепло……Что ты сегодня делаешь……」

 

「……あっ……いけません……また、ロシア語が……ぽかぽかしてたので、つい……」

 

「いけませんね、気をつけないと……でも、今日もとてもいい天気ですね」

 

「……さて、今日はお休みです。何をしましょうか……?」

 

「……むふふ……♪」

 

「ん……?あれは……」

 

「むふっ……王子様……むふ、むふふっ……♪」

 

「おはようございます、ヒナコ。ここで、何をしてますか?」

 

「むふふぅ……あっ、アーニャさん♪おはようございます♪ちょっと、王子様に会ってたんですっ♪//」

 

「オウジサマ……ですか?」

 

「はい♪スーツを着た……じゃなくてっ!白馬に乗った、素敵な王子様なんですよ♪」

 

「принц……オウジサマ……とても、素敵ですね♪」

 

「あっ、そうだ♪アーニャさんは、バレンタインはどうするんですか!?」

 

「バレンタイン……ですか?」

 

「明日は、バレンタインですよ♪バレンタイン♪女の子にとって、と〜っても大切な日のっ♪」

 

「あっ……明日だったんですね。ヒナコは、誰かにチョコをあげますか?」

 

「むふ……そうですね……♪スーツの……ではなくっ!愛しの王子様にあげようかな〜って、思ってるんです♪」

 

「そうなんですね、羨ましいです」

 

「アーニャさんは、誰かにあげる予定とか、ないんですか?」

 

「そうですね……私、日本のバレンタインのこと……あまり、詳しくなくて……どうしましょう……」

 

「あっ、それでは、私とこれから一緒に、手作りチョコを作りませんか?」

 

「ヒナコと……ですか……?」

 

「はいっ♪是非、日本のバレンタインをアーニャさんに、たくさん知ってもらいたいんですっ♪どうですか?」

 

「たくさん……はいっ♪ヒナコに日本のバレンタインを、教えてもらいたいですっ……♪」

 

「決まりですね♪じゃあまずは、私とチョコを買い出しに行きましょう♪」

 

「スパスィーバ♪よろしくお願いしますね♪ヒナコ♪」

 

------------------------------------------------

 

「はいっ♪プロデューサーさんっ♪ほんのお気ちですが……♪」

 

「ふっふっふ……親愛なる我が友に……古に伝わりし、伝説の甘美なる秘薬を授けようぞっ!」

 

「おぉ。美波、蘭子、ありがとうな。大切にいただくよ」

 

「はいっ♪味わってもらえると、嬉しいです♪」

 

「……たくさん……味わって、食べてくださいねっ……♪//」

 

カチャッ

 

「みんな♪おはようございます♪」

 

「おっ、アーニャも来たか。おはよう」

 

「おはよう♪アーニャちゃんっ♪」

 

「来たな……愛しき、我が同胞よ……煩わしい太陽ね!」

 

「ところで、その、リボン付きのヘアバンド、かわいいじゃないか。とても似合ってるぞ」

 

「ありがとうございます♪あっ、そうでした♪みんなに、ハッピーバレンタイン、です♪」

 

「わぁ〜……これ全部、アーニャちゃんが作ったの!?」

 

「ほぉ……アポロンをも凌駕する……見事な造形よ……」

 

「教えてもらいながら、作りました♪はいっ♪ミナミ♪ランコ♪」

 

「えっ、私にもいいの……?ありがとう♪それじゃあこれ、私からもアーニャちゃんにあげる♪」

 

「感謝するぞ、親愛なる同胞よ。気持ち程ではあるが……我も、そなたに秘薬を授けよう……」

 

「あっ、ありがとうございます♪みんな幸せで、楽しいバレンタインですね♪」

 

「ははっ。相変わらず、三人は仲がいいな。流石は「Memories」だ」

 

「それでは、プロデューサーにも……ハッピーバレンタインです♪」

 

「おっ、俺にもあるのか?」

 

「はいっ♪……そ、それでは、そのっ……チョコと……わ、私も一緒にもらってください……オウジサマ……//」

 

 

「……は?」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……あ、アーニャちゃん……!?」

 

「わ、我が友……じゃなくて!プロデューサーさんっ!?これは、どういうことなの!?」

 

「ちょっ……ら、蘭子!落ち着けって!色んな意味で!」

 

「どうですか……?もらって……くれますか……?」ウルッ

 

「なあ……アーニャ……?少し、話を整理しよう。まず、何で俺が王子様なんだ?」

 

「えっ?日本のバレンタインは「オウジサマ」に、チョコと「私」を一緒にあげる文化では、ないのですか?」

 

「……ちなみに……さっき、教えてもらいながら作ったって言ってたよな?誰に、教えてもらったんだ……?」

 

「えっと……ヒナコ、ですけど……?」

 

「……あとで、あいつは説教だな……あのな、アーニャ。あいつの言うことは、信じちゃだめだぞ」

 

「えっ……ヒナコ……悪い人なんですか……?」

 

「いや……悪いヤツではないんだがな……ただ少し、感覚がおかしいんだよ」

 

「……???」

 

「まあ、とりあえず、あげるのはあくまで、チョコだけなんだよ。それ以外は何もいらないんだ」

 

「そうだったのですね……でも、プロデューサーに、チョコを作ってきたのは本当ですっ♪」

 

「……ですので……心を込めたチョコを……受け取っていただけませんか……?……オウジサマ……♪//」

 

「……そ、そうか……それじゃあ、受け取らせてもらうよ……ありがとうな、アーニャ……//」

 

「「……//」」

 

トントン

 

「……うふふ……♪プロデューサーさんっ♪」

 

「……ん…?どうした、美波……?」

 

「二人でイチャイチャしてるところを、申し訳ないのですが……少し、お話ししたいことががあるんですっ♪」

 

「何だよそれ!イチャイチャなんかしてないって!なっ、蘭子!そんなことはないよなっ!?」

 

「……禁句を犯し者よ……女神の、神聖なる審判に身を捧げ、裁きの洗礼を受けるがよい……」

 

「?」

 

「……ふ〜んだ……プロデューサーさんなんか……美波さんに、怒られちゃえばいいんですっ……」

 

「なっ……!」

 

「それでは二人とも、待っててね♪すぐに戻りますから♪」

 

「プロデューサー……?」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ……♪さ〜て♪プロデューサーさんっ♪私とたくさん、お話しをしましょうか♪」

 

「み、美波……?何だか……怖いぞ……?」

 

「そんなことはないですよ♪純粋なアーニャちゃんに「王子様」なんて呼ばせてる方が、よっぽど怖いですっ♪」

 

「ち、違うんだ美波!あれは、日菜子がアーニャに、変なことを教えただけで……」

 

「そうやって、女の子のせいにするのって、王子様としてどうかと思いますよ?王子様♪」

 

「連呼するな!と、とにかく……本当に、違うんだって……」

 

「むうっ……アーニャちゃんがあげるって言ってた時に、あんなに嬉しそうな顔をしてたクセに……」

 

「……いいもんっ……私はみんなより、もっといいものを持ってるんだから……」

 

「ん……?いいもの……?」

 

「プロデューサーさん。この前、私と二人で遊園地に、お忍びデートをしに行きましたよね?」

 

「あぁ、お忍び……じゃなくて!誤解を生むような言い方するな!遊びに行ったんだろ!遊びに!」

 

「そういうことにしておいてあげます♪それで、その時に二人で、写真を取りましたよね?」

 

「うん、撮ったな」

 

「……実は……あの写真……お父さんに、送ってみちゃったんです……♪//」

 

「送る……はぁっ!?」

 

「そしたら「これはどういうことなんだ!お父さんに説明しなさい!」って、怒られてしまいました……//」

 

「あ、あの……美波さん……?何なら、その説明を俺にもして欲しいんですけど……?」

 

「いいですよ♪今度、お家でじっくり話しましょう♪「お父さん」も交えて♪」

 

「……あ、あはは……楽しい家庭訪問になりそうだな……うん……」

 

「ふ〜ん……だいたい最近、アーニャちゃんにばかり構ってる、プロデューサーさんが悪いんですっ……」

 

「アーニャにばかり……?いや、そんなことはないと思うぞ……?」

 

「いえっ、あるんですっ。それでは……アーニャちゃんではなく……私がもらえたら……嬉しいですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「もらうって……美波を……?」

 

「はいっ♪……どうですか……?//」ウルウル

 

「いや……それは……し、知るかっ!んなもん、答えられるかっ!//」

 

「むっ……プロデューサーさんのいぢわるっ!」

 

「と・に・か・く!この話は終わりだ!アイドルがそんなことじゃ、だめだって!」

 

「……いやっ!こうなったら……答えてくれるまで、離れませ〜んっ♪」

 

ギューッ♪

 

「なっ……こ、こら!美波っ!離れろっ……!//」

 

「こ、こら!美波っ!離れろっ……!//」

 

「や〜で〜す♪離れないで〜すっ♪」

 

「……あ〜!わかったわかった!美波みたいな綺麗な女の子が、来てくれたら嬉しいよ!これでいいか!?」

 

「あっ……えへへ……嬉しいですっ……♪//」

 

「全く……いつもの、凛々しい美波はどこに行ってしまったんだ……?」

 

「……こんなこと……プロデューサーさんにしか、しませんよ……?」

 

「それに……あの時、言ってくれましたよね……?「お兄さんらしくしっかりしないと」って……」

 

「うっ……それは、確かに……言ったけどさ……」

 

「アーニャちゃんが優しくて純粋で、だけど、どこか目が離せない子だと言うのはわかります、ですけど……」

 

「……私だって……女の子なんですから、もっと「アーニャちゃん」と同じ目線で、見てもらいたいです……」

 

「美波……わかったよ。あの時に、約束をしたしな。何かあったら、いつでも俺を頼ってくれ」

 

「ありがとうございます……♪これからも、よろしくお願いしますね♪プロデューサーさんっ……♪//」

 

「あぁ、よろしくな。よしっ、誤解も解けたことだし……そろそろ離れてくれよ」

 

「んもう……仕方ないですねぇ……なんちゃって♪えいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ……

 

「あっ、プロデューサーが、戻ってきました」

 

「女神の審判はどうであった?禁句を犯し、我が友よ……」

 

「うふふ♪安心してください♪ちょっと、お話ししただけですので♪ねっ、プロデューサーさんっ♪」

 

「……あ、あぁ……そうだな……//」

 

「じゃあ、蘭子ちゃん♪私たちは、そろそろ行きましょうか♪アーニャちゃんの「彼氏」さんが待ってますし♪」

 

「は……?」

 

「……カレシ……?」

 

「うむ……我も、親愛なる友の情事を妨げる程、無粋ではない。さらば……愛しき同胞たちよ……」

 

「ちょっ……待てっ……!//」

 

「「今回は」譲ってあげますっ♪それでは、ハッピーバレンタイン♪アーニャちゃん♪プロデューサーさんっ♪」

 

「おいっ!……行っちゃった……」

 

「あの……プロデューサー「カレシ」って、どういう意味なんですか……?」

 

「えっ……?いや……お、俺たちは仲がいいって、意味なんだ!だから、別に、特別な意味とかはないぞ!//」

 

「プロデューサーと仲良し……!私……とても、嬉しいですっ……♪//」

 

「あはは……そうだな〜……俺も、アーニャと仲良しで、嬉しいぞ〜……」

 

「はいっ♪これからも、よろしくお願いしますねっ♪ところでプロデューサー。今、お暇ですか?」

 

「うん?あぁ。このあとは特に、何もないよ。どうした?」

 

「あの……私を、どこか遠く……人のいないような場所に……連れて行ってくれませんか……?」

 

「えっ……?き、急にどうしたんだ?」

 

「あっ……すみません……連れて行って欲しい、場所があるんです……いいですか……?」

 

「な、な〜んだ!そういうことか!だよなっ!あ、あはは……」

 

(……逃避行じゃなくて、よかった……)

 

------------------------------------------------

 

「……わぁ〜……ズヴェズダ……星が、とても綺麗ですね……」

 

「そうだな。とても輝いていて、綺麗だ」

 

「ありがとうございます、プロデューサー。連れてきてもらってしまって……」

 

「気にするな。チョコのお返しと言うには、まだ早すぎるとは思うが、バレンタインのお礼だよ」

 

「ここは……星が綺麗に見えますね……♪ハラショー……とても、素晴らしいです……♪//」

 

「そうだろ。ここの展望台は、都会から少し離れてて、空気が綺麗なんだ。今も、満天の星が見えるしな」

 

「うふふ……♪こうして、プロデューサーと二人っきりで、星空を眺めることが出来て……幸せです……♪//」

 

「……私……昔は、一人でした……パパにもママにも言えなくて……とても悲しくて、寂しかったんです……」

 

「周りのみんなは、私に近づいてくれませんでした。怖い、冷たいと、そう思われていましたね、きっと……」

 

「……アーニャ……」

 

「でも、今は違います。私はあの、星空に浮かぶ一つの、ズヴェズダになったんです」

 

「たくさんの星に囲まれて……もう、寂しくないですね。それに……プロデューサーとも出会えました……♪」

 

「確かに……そうだな。こうして、二人で星を見れるのもあの時、アーニャに出会えたからだよな」

 

「でも……どうして、私をスカウトしましたか……?怖くは……なかったのですか……?」

 

「うん。初めて出会った時に、思ったんだ。むしろ、いい意味で、神秘的で優しそうな女の子がいるなって」

 

「そりゃ過去に、色んなことを思う人がいたのかもしれないけど、俺はそうは思わなかった」

 

「この子。つまり、アーニャはアイドルとして、あの星みたいに輝くことが出来る。そう思ったんだ」

 

「星みたいに……輝くことが出来る……」

 

「な?だから今、アーニャの周りには、たくさん仲間がいるだろ?あの夜空の星みたいにさ」

 

「それに、アーニャはもう、俺のアイドルだ。みんなもいるし、俺もいる。決して一人なんかじゃないぞ」

 

「……プロデューサーっ……!!」

 

ギューッ

 

「うわっ!?あ、アーニャ!?いきなり、どうしたんだ……!?//」

 

「……プロデューサーが……私のことを、そこまで思っててくれたなんて……とても、幸せです……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「……私……もう……寂しくないですね……?悲しくも……ないですよね……?」

 

「そ、そうだな……今のアーニャはあの星のように、輝いてるアイドルなんだから、安心しろって」

 

「嬉しい……♪……私……このまま、プロデューサーと……あっ!あれは……流れ星、ですっ……!」

 

「ん……?おぉ!綺麗な流れ星だな!何か、願い事でも言ってみるか?」

 

「Я тебя люблю……Я тебя люблю……Я тебя люблю……」

 

「……Я люблю продюсеров……!!」

 

「おっ、ロシア語でお願い事か、ロマンティックだな。一体、何をお願いして……んぐっ!?」

 

……チュッ♪

 

「んっ……んんっ……」

 

「……ぷあっ……あ、アーニャ……!?//」

 

「……えへへ……♪……お願い事……叶いますように……♪//」

 

「おいっ!……い、今……俺にっ……!//」

 

「日本のバレンタイン……女の人から男の人に「想い」をこめたチョコを渡すって、教わりました……」

 

「ですので……チョコと一緒に、私の想いもプロデューサーに……プレゼント、ですっ……♪」

 

「想いって……アーニャ……お前……//」

 

「……それでは、さっそく……グランパとグランマにも会って、紹介したいです♪私の大切な人なので♪」

 

「えっ……グランパ……グランマ……?」

 

「あっ、あと、パパとママにも紹介しないとですね♪それと、指輪やドレスも、用意をしないと……」

 

「ちょっ……ま、待て!ちょっと話が、色々と早すぎないか!?」

 

「えっ……そうですか?プロデューサーは、私の大切な人ですよ?……「初めて」も……しましたし……//」

 

「……ちなみにさ……アーニャ……?その、パパやママたちには、俺のことを、何て伝えてるんだ……?」

 

「もちろん「大切な人」って言ってますよ♪だから、家族のみんなともきっと、仲良しになれますっ♪」

 

「……ですので……今度、一緒にロシアに行きましょう♪みんなも、プロデューサーに会いたがってますよ♪」

 

「……お、俺って……大家族なんだな……あ、あはは……」

 

「大家族……?プロデューサーは、他にも家族がいますか?」

 

「いや、気にしないでくれ……こっちの話だ……」

 

「そうですか?それでは、今は私と一緒に、たくさんのズヴェズダを見ましょう♪……このままで……♪//」

 

「これからも、楽しい思い出を一緒に、たくさん作っていきましょうね♪プロデューサー♪」



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狂愛シンデレラ 佐久間まゆ

「ふん♪ふん♪ふ〜ん♪」

 

カチャッ

 

「おはようございます♪プロデューサーさんっ♪今日は、とてもいい天気ですね♪」

 

「おっ、まゆじゃないか、おはよう。そうだな、おかげで仕事が捗ってるよ。まゆはどうだ?」

 

「そうですねぇ……まゆも、ぽかぽか陽気に心が躍ってしまい、つい……」

 

「……研ぎすぎて、しまいましたっ……♪」

 

「おぉ、そうか。まゆも、春の陽気でつい、研ぎすぎて……って、えっ?……研ぐ……?」

 

「うふっ……♪そうですよぉ〜♪と〜ってもいい感じに研げたんですっ♪……ほらっ……♪」

 

「……おい……それって、まさか……」

 

「……まゆ……凄く辛いんです……まるで……胸が張り裂けそうなぐらいに……」

 

「辛いって……一体、何があったんだ?」

 

「……最近……まゆに全然、構ってくれませんよね……?他の女の子のことばかり……見てますよねぇ……?」

 

「いや、そんなことはないと思うぞ……?みんな公平に、見守ってるつもりだよ」

 

「……だからこそ、辛いんです……その優しさに……と〜っても、心が……ときめいちゃうんですよぉ……?」

 

「その証拠に、プロデューサーさんの周りには、いつも……たくさんの女の子が、いますよねぇ……?」

 

「よくわからないけど……アイドルたちと、仲がいいに越したことはないと思うぞ?」

 

「わかってます……わかってはいますけど……みんなに笑顔を振りまいてるのを見て、胸が苦しいんです……」

 

「……プロデューサーさんは……私だけの、プロデューサーさんなのに……」

 

「と、とりあえずさ……落ち着こうぜ……?その、物騒な物を置いてくれよ。なっ?」

 

「うふっ♪ということで、まゆは考えました♪プロデューサーさんを永遠に、まゆだけのものにする方法をっ♪」

 

「ちょっ……まっ、まさか……!」

 

「うふふ……♪安心してくださいっ♪まゆもすぐに、そっちに行きますから……♪」

 

「これで、ずっと……いえっ♪永遠に一緒ですね……♪私だけの……」

 

……プロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさんプロデューサーさん

 

------------------------------------------------

 

「う、うわあああああああっ!!」

 

「きゃっ……!」

 

「……あれ……?ここは……事務所……?それに、俺のデスク……?」

 

「プロデューサーさん……大丈夫ですか……?」

 

「……っ!ま、まゆ……!」

 

「もうっ……急に、驚かさないでくださいよぉ〜。一体、どうしたんですかぁ……?」

 

「まさか俺……ここで、寝ちゃってたのか……?」

 

「寝てたので、起こそうと思ったら急に、大声をあげて……まゆ、びっくりしちゃったんですよぉ……?」

 

「悪い……ごめんな、まゆ。心配をかけてしまったな」

 

「いえいえ♪何でもないなら、何よりです♪でも、夜はちゃんと寝ないと、体に悪いですよ?」

 

「ははっ、その通りだ。気をつけないとな」

 

「卯月ちゃんにも、言ってあげてくださいっ「女の子が夜遅くまで長電話」をするのは、よくないって」

 

「そうだな。卯月と話してるとつい、夜遅くまで……ん?」

 

「それと「手料理をご馳走しに行くなんて、アイドルとしてよくない」って響子ちゃんにも、伝えてあげてくださいね?」

 

「あぁ。カップ麺ばかりはダメって、響子に色々と手料理をもらってたが……そうだな……よくないよな……」

 

「その他にも、色々と切らしてましたし……だめですよ?生活必需品は、ちゃんと買い置きしておかないとっ」

 

「……あの……まゆさん……?俺たち、今日は初めて出会いましたよね……?」

 

「えぇ、そうですね♪」

 

「それにしては、何だか……随分と、こっちの事情にお詳しいんですね……色々と……」

 

「うふふ……♪プロデューサーさんのことは、何でもお見通しです♪……「何でも」……ねっ……♪」

 

「あ、あはは……そこまで、まゆに思われてるなんて……俺ってすごく、幸せ者だな〜……」

 

「ところで、どういう夢を見てたんですかぁ?……まさか……他の女の子の夢とかでは、ないですよね……?」

 

「そ、そんなことはないぞ!ちょ〜っとだけ、まゆが出てきた気がするけどな!はははっ……」

 

「うふっ……♪夢に出てくる程、まゆのことを思っててくれてたなんて……嬉しいですっ……♪」

 

「……まゆも……プロデューサーさんのことを、一日中思ってますよ♪では、レッスンに行って来ますねっ♪//」

 

「あぁ……もうそんな時間か……うん、頑張ってきてくれ。頼むぞ」

 

「はいっ♪それでは、失礼しま〜すっ♪」

 

「……」

 

「……あれは……夢だったのか?それとも……」

 

------------------------------------------------

 

「お……俺の女に……なれよ……」

 

「きゅん……」

 

カチャッ

 

「みんな、お疲れ様。どうだ、レッスンの方は……」

 

「あっ……プロデューサーさん……」

 

「「……」」

 

「……わ、悪い!俺、邪魔をしちゃったなっ……!//」

 

「ちょっ……!プロデューサーさん!?誤解ですっ!誤解だってば!!」

 

「そ、そうですよぉ……李衣菜ちゃんとは、仲良しですけど……そういう関係じゃないです……」

 

「えっ……じゃあ、さっきのは……何だったんだ?」

 

「壁ドンですよ、壁ドン♪壁際で、女の子をドンするアレです♪」

 

「壁ドン……あぁ、あれか。何だかそういうのが、流行ってるって聞いたことがあるな」

 

「二人とも……とても絵になっていて、私もつい……ドキドキしてしまいました……えへへ……♪//」

 

「……あっ、そうだ!せっかくですし、プロデューサーさんも一緒に、やってみましょうよ♪」

 

「それは名案ですねぇ♪まゆ、プロデューサーさんに壁ドンをしてもらいたいですっ♪」

 

「俺が……?いや、遠慮しておくよ。こういうのは、女の子同士で楽しみなって」

 

「エ〜、い〜じゃ〜ん♪プロデューサーさんも一緒に、壁ドンデビューをしましょう♪」

 

「あ、あの……プロデューサーさんが、壁ドンをしてくれたらとても……素敵だと思います……♪//」

 

「でもなぁ……大の男が女の子を相手に、そういうことをするのは何か、気が引けるって言うか……」

 

「壁ドンって、そういうシュチュエーションですし、プロデューサーさんのロックな姿を見てみたいなあ♪」

 

「……ちなみに……こういうのは、何ロックって言うんだ?」

 

「え、えっと……ハード……いや、メタル……?と、とにかく、そんなことはどうでもいいじゃないですか!」

 

「ロックは熱い魂!女の子の魂を揺さぶる、熱いビートを見せてくださいよっ!」

 

「何だそりゃ……とにかく、俺は……」

 

「それでは、まゆにお願いしますっ♪うふっ♪」

 

「いや……だから……」

 

「お 願 い し ま す っ ♪」

 

「……はい……やらさせてもらいます……」

 

「わぁ〜♪プロデューサーさんから、壁ドンをしてくれるなんて……♪まゆ、すごく嬉しいですっ♪」

 

「……まゆちゃん……いいなあ……」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ……準備は、いいか……?」

 

「はいっ♪うふふ……♪流石は、男の人ですね……♪とても……ドキドキしちゃいますっ……♪//」

 

「うっわ〜……何だか……見てて恥ずかしくなってきたぁ〜……//」

 

「おい!何だよ、それ!誘ったのは李衣菜だろっ!!」

 

「じ、冗談ですってば〜♪いい意味で、恥ずかしいって言ったんですよっ♪ねっ、智絵里ちゃん♪」

 

「えっ……!?あっ、そ、そうですね……私も李衣菜ちゃんも……女の子ですので……」

 

「……まゆちゃんと同じ気持ちに……なっちゃってるのかもしれませんね……なんて……//」

 

「同じ気持ち……?まあいいか。よし……行くぞ」

 

ドンッ

 

「きゃっ♪」

 

「まゆ……その……だ、黙って……お……俺の女に……なれよ……//」

 

「はいっ♪よろしくお願いします♪」

 

「は……?い、いや……これは……」

 

「嬉しいですっ……♪プロデューサーさんも、まゆと同じことを……考えてただなんて……//」

 

「……おい……まゆ……?」

 

「さ、流石は、まゆちゃんだね……最高に、ロックだぜ……」

 

「まゆちゃん……大胆ですね……//」

 

「それで……まゆのどんなところが、好きなんですかぁ……?教えてくださいよぉ……ねぇ……ねえっ……!」

 

「ちょっ……と、とりあえず、落ち着けって!これはただの遊びだろっ!?」

 

「……なんちゃって♪冗談ですよ♪プロデューサーさんにも、まゆのドキドキをおすそ分けですっ♪」

 

「……なっ……!そ、そうか、そうだよな……全く……まゆは、しょうがないヤツだなあ……あはは……」

 

「うふっ♪まゆは、大満足ですっ♪普段とは違う一面の、プロデューサーさんを堪能できましたし……」

 

「……しっかりと……言質を、いただけましたしね……♪//」

 

「ん…?まあ、まゆが満足してくれたらいいけどさ……でも、こんなことをされて、嬉しいものなのか?」

 

「女の子は「大切な人」の意外な一面に、ときめいちゃうものなんです♪ねっ♪李衣菜ちゃん♪智絵里ちゃん♪」

 

「ま、まあ、私はロックに生きるアイドルだから、そういうのは興味ありませんけどねっ!」

 

「……でも……プロデューサーさんにされたら……悪い気はしないかな〜……なんて……」チラッ

 

「そ、そうですねっ!プロデューサーさんにしてもらったら、すごく嬉しいと思いますっ……!」

 

「だから、その……もしよかったら……わ、私にも……//」

 

カチャッ

 

「おはよう、みんな……」

 

------------------------------------------------

 

「……あっ……り、凛ちゃん……おはよ〜……」

 

「凛ちゃん……うふふ♪おはようございます♪」

 

「……ふーん……何だか、楽しそうなことをしてるじゃん」

 

「よ、よぉ、凛……今日も天気がいいな……」

 

「そうだね。で?これはどういうことなの?」

 

「いや……こ、これはそのっ……何ていうか……!」

 

「……さ、さ〜て!レッスンも終わったことだし、智絵里ちゃん!私たちはどこかに、遊びに行こうか!」

 

「えっ……」

 

「あっ、李衣菜!ずるいぞ!俺を見捨てる気なのか!?」

 

「男女の逢瀬を覗くなんてロックじゃないですからねっ!そ、それじゃあ……あでゅ〜っ!」

 

「あっ、あの……その……」

 

「変な言い方をするな!……ち、智絵里は、俺の味方だよな!なっ!?」

 

「……私にも、そのっ……さ、さっきのを……やっぱり、何でもないです!……ごめんなさいっ……!」ダッ

 

「ぐっ……智絵里までっ……!でも、そうだよな……俺も智絵里だったら、そうすると思うよ……うん……」

 

「あのさ、まゆ。アイドルなんだから、面白半分でもそういうことをするのはダメだと思うよ?」

 

「うふっ……♪冗談ではこんなことをしませんよぉ♪まゆは、いつでも本気ですっ♪」

 

「余計ダメだよ。まゆはもう少し、アイドルとして自覚を持った方がいいんじゃない?」

 

「うふふ……でも、それは「凛ちゃんも同じ」だと思いますよぉ……?」

 

「……そうかもね。まゆよりか「少しだけマシ」かもしれないね……」

 

「「ふふふっ……♪」」

 

「……よしっ…!俺もそろそろ、仕事に戻ろうかな〜っと……」

 

「ちょっと、プロデューサー。どこに行く気なの?まだ、話は終わってないよ?」

 

「そうですよぉ。プロデューサーさんにも、た〜っぷり……お話ししたいことがあるんですっ……♪」

 

「くっ……あ〜っ!あそこに、プロデューサーが!!」

 

「「えっ……!」」

 

「……じゃあな!」

 

「あっ!待ってよ!どこに行く気なの!?」

 

「……プロデューサーさん……?まゆを置いて行っちゃ……イヤですよぉ……?」

 

------------------------------------------------

 

「くそっ……!李衣菜のヤツ……俺を、あっさりと見捨てやがって……!全く……何が壁ドンだよっ……!」

 

「李衣菜に言われてやってみたものの……くっ……!思い出すと、余計に恥ずかしくなってきたぞ……!//」

 

「……黙って……俺の女になれよ……うわぁ〜……!改めて考えてみると、クサすぎだろっ…!//」

 

「あんなことを言われながら、壁際に追い詰められるのが、そんなにいいのか……?俺には理解出来ん……」

 

「しかし……凛も、何もあそこまで怒らなくても……まゆはまゆで、何だか目が笑ってなかったし……」

 

「嬉しいですっ……♪プロデューサーさんも、まゆと同じことを……考えてただなんて……//

 

「……「同じこと」ねぇ……ふう、年頃の女の子って、わからんな……」

 

「……あら?プロデューサーじゃない」

 

「ん……?おっ、奏じゃないか。奇遇だな、こんな所で」

 

「えぇ、奇遇ね。ところで、そんなに慌ててどうしたの?」

 

「あぁ。凛とまゆに……じゃなくて!今は少し、急いでるんだ!また今度な!」

 

「凛とまゆ?……ふ〜ん、そうなんだ〜」

 

「……何だよ……その目は……」

 

「ねぇ、プロデューサー。私とこれから、面白い所に行かない?」

 

「……もう一度言うぞ!俺は、い・そ・い・でるの!だから、また今度なっ!!」

 

「あんっ、つれないわね……でも、来て損は無いと思うわよ?だって……」

 

「……かくまってあげられるわよ……?「凛とまゆ」から……♪」

 

「……っ!何でそれをっ……!」

 

「ふふっ♪図星のようね♪それじゃあ、私と一緒に行きましょう♪」

 

「……よろしく頼む……」

 

「うんうん♪素直が一番よ♪いつも、これくらい素直だったら、奏お姉さんは困らないんだけどなあ〜♪」

 

「くっ……バカにしやがって……!」

 

「……うふふ♪」

 

------------------------------------------------

 

「さて。ここでほとぼりが冷めるまで、待機してましょう♪」

 

「なるほど……事務所の倉庫か。考えたな」

 

「さっき、ちひろさんのお手伝いをしたのよ。ねっ?これだけダンボールがあったら、わからないでしょ?」

 

「確かに、ここなら人もあまりこないし、これだけたくさん積み上げられてたら、バレなさそうだ」

 

「……ところで……今度は一体、何をしちゃったのかしら?」

 

「今度……おい!まるで俺が、いつも何かをやらかしてるみたいに言うな!」

 

「でも、さっき「凛とまゆが」って言ってたじゃない」

 

「ふぅ……いつものことだよ。また、二人の喧嘩が始まってな。それの仲裁を、させられそうになったんだよ」

 

「あら、そうなの。それは大変ね……」

 

「全く……二人は、仲がいいんだか悪いんだか、わからないよな……本当に、困ったアイドルたちだぜ……」

 

「そうね。本当に困った人だわ……プロデューサーは」

 

「だろ?奏もそう思う……って!何で俺なんだよ!」

 

「何よ。だいたいプロデューサーが、ハッキリとしないのが悪いんじゃない」

 

「ハッキリって……?何をだよ?」

 

「……凛とまゆ……どっちが、好きかってことよ……」

 

「はぁっ!?何でそうなるんだよ!それとこれとは、全然関係ないだろ!」

 

「ふぅ、予想通りの返答をどうもありがとう。じゃあさ……間をとって……私はどうかしら……?」

 

「だから、何でそうなるんだよ!余計にややこしくなるだろ!」

 

「ねぇ……私、あなたになら……いいわよ?……うふっ♪」

 

プニッ……♪

 

「……私だったら……凛やまゆが出来ないことを、あなたにしてあげられるんだけどな〜……?」

 

「なっ……!か、奏……!?」

 

------------------------------------------------

 

「甘くて、気持ちいいもので……優柔不断なプロデューサーの頭の中を、私でいっぱいにしてあげるっ……♪」

 

「おまっ……!み、密着しすぎだって!離れろっ……!//」

 

「うふふ……♪プロデューサーって、意外と筋肉質なのね……♪それで……感触は、どうかしら……?」

 

「感触って……おい……お前は、女の子なんだぞ?自分が何をしてるのか、わかってるのか……?//」

 

「わかってるつもりよ……ねぇ、私のこと……飽きちゃった……?」

 

「……何で急に、そんなことを聞くんだ……?」

 

「だって……今のプロデューサーは、二人だけのことを見て、私のことを全然見てくれてないじゃない……」

 

「少なくとも……今のこの場所には、俺と奏しかいないと思うけどな……?」

 

「むぅっ……そういう意味で、言ってるんじゃないわよ……」

 

「冗談だ。とにかく俺は、アイドルのことは平等に見守ってるつもりだ。もちろん、奏も例外じゃないさ」

 

「……本当に……?じゃあ、証明してよ……」

 

「ん?証明……?」

 

「言ってたわよね……?今は、プロデューサーと私だけだって……だから……ねっ……♪」

 

「……お前……まさか……」

 

「ふふっ……動いちゃイヤよ……♪……んっ……」

 

「ちょっ……や、やめっ……!//」

 

グラッ……

 

「……っ!?奏!危ないっ!!」

 

「えっ……?……きゃっ……!」

 

ドサドサドサ!!

 

「いつつ……なんとか、間に合ったな……」

 

「あっ……」

 

「全く……俺たちはダンボールの山に隠れてるんだから、ちょっとは周りを見ろって……」

 

「あっ、あのっ……その……ぷ、プロデューサー……//」

 

「おい、まだ動くな。じっとしてろ」

 

「……うん……わかった……//」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……ふぅ、もう大丈夫そうだ。奏、大丈夫か?」

 

「えっ……?え、えぇ……私は……大丈夫よ……//」

 

「ならいいんだけど。ふぅ……奏も何だかんだで、まだまだ目が離せないな」

 

「……そうね……反省するわ。ねぇ……プロデューサー……」

 

「何だ?」

 

「私のことを、颯爽と守ってくれて……ありがとう……//」

 

「はいはい。俺も、奏姫をお守り出来てよかったぞ。全く……気をつけてくれよ?」

 

「本当、そうだね。プロデューサーには、気をつけてもらわないとね」

 

「あぁ。だから奏は、もっとアイドルとして……ん?」

 

「うふっ……♪プロデューサーさん……み〜つけたっ……♪」

 

「……っ!り、凛……まゆっ……!?」

 

「こ、こんにちは……奇遇ね……二人とも……//」

 

「ふふっ♪これは、どういうことなのかな?」

 

「ねぇ……プロデューサーさん……?どうして……まゆを置いて行ったんですかぁ……?」

 

「ま、待て!俺たちはただ、倉庫で荷物の整理をしてただけなんだよっ!」

 

「ふーん。にしては、随分とアツアツなんだね」

 

「そんなに、奏さんをぎゅっと抱きしめて……と〜っても、暖かそうですねぇ……いいなあ〜♪」

 

「アツアツ……うわっ!?ち、違うんだ!これはだな……!」

 

「何が違うの?プロデューサーが、奏を抱きしめてたのは事実じゃん」

 

「だから違うんだって!抱きしめてたけど、抱きしめてないっていうか……!なっ!奏!」

 

「……そ、そうね……プロデューサーはただ、私のことを暖かく……包み込んでくれただけよ……//」

 

「ちょっ……!誤解を生むような言い方するな!」

 

「やっぱり……♪プロデューサーさんは、狼さんだったんですねぇ……♪がお〜♪」

 

「あぁ、もう!だから違うんだって!奏も、何を言ってるんだよっ!//」

 

「……//」

 

------------------------------------------------

 

「なっ?そういうことなんだ。だから、本当に何もしてないんだって」

 

「なるほど……奏さんを、身を呈して守ったんですね。すみません、変なことを言ってしまって……」

 

「気にするな。誤解が解けてくれたなら、それが何よりだ」

 

「……ま、そんなところだと思ってたよ。プロデューサーに、そんなことをする勇気があるわけないしね」

 

「それに、ヘタレだし鈍感だし……変に……優しいしさ……//」

 

「すごい言われようだな……でも、わかってくれただろ?」

 

「まあね。でも、わざわざ私たちから逃げる必要は、なかったんじゃない?」

 

「そうですよぉ……急にどこかに行ってしまって……まゆ、とても寂しかったんですよぉ……?」

 

「うぐっ!そ、そうだな……それは俺も反省するよ……その結果、奏も巻き込んでしまったわけだしな」

 

「そうね……一緒に行こうって言ったのは私だけど、少し想定外だったわ」

 

「……全く……普段は優柔不断なクセに、急に男らしくなったりするし……本当に……ずるいんだから……//」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「何でもないわ。ただの独り言よ」

 

「それでは、無事に見つかったことですし……凛ちゃん。今回は、協定を結びませんかぁ?」

 

「……協定……?」

 

「まゆと凛ちゃんで、それぞれ一日ずつ、プロデューサーさんを独占するんです♪どうですかぁ?」

 

「……ふ〜ん……悪くないじゃん……♪じゃあ、今回はまゆに譲るよ。でも次は、私が独占するからね?」

 

「ありがとうございます♪それでは、決まりですね♪」

 

「おい、二人で何か勝手に、話が進んでるみたいだが……協定?独占?何の話をしてるんだ?」

 

「うふふ♪二人で「仲良く」プロデューサーさんと、楽しい時間を過ごしたいって、お話をしてたんですっ♪」

 

「プロデューサーが、いつも言ってるじゃん「みんな仲良く」って」

 

「仲良しなのは、いいことだけど……俺の意思はないんですかね……?」

 

「……何さ……そんなに、私たちのことが嫌いなの……?」

 

「えっ……?」

 

------------------------------------------------

 

「私……最近、プロデューサーが全然構ってくれなくて……寂しかったんだよ……?」ウルッ

 

「うっ……」

 

「まゆ……プロデューサーさんが、と〜っても優しいお兄さんだってことを……知ってますよぉ……?」ウルッ

 

「……わかったよ……最近、仕事が忙しくて、二人をあまり見てあげれなかったのは、事実だしな……」

 

「ふふっ♪決まりだね♪」

 

「やった〜♪プロデューサーさんはやっぱり、優しいお兄さんですねっ……♪//」

 

「……あの……私も……」

 

「奏、この前プロデューサーと一緒に、楽しそうにしてたらしいじゃん」

 

「……っ!」

 

「うふふ♪礼さんと志乃さんから、聞きましたよぉ?「とても仲睦まじそうにしてた」って……♪」

 

「ですから……楽しいことは「みんな」で、共有しましょうよぉ♪ねっ♪」

 

「うぅ……わかったわよ……今回は、二人に譲るわ……」

 

「ありがとう。それじゃあ、プロデューサーもいいよね?」

 

「まあ、よくわからんが……でも、お手柔らかに頼むぞ?」

 

「わかってますよぉ♪では、まゆと凛ちゃんでお互いに、楽しい時間を過ごしましょう♪」

 

「うん、そうだね、これで楽しい時間を過ごせるね」

 

ギュッ♪

 

「ふぅ……本当に、仲がいいんだか悪いんだか……」

 

「……ねぇ……プロデューサー……今回は、二人に譲るけど……私のことも見てくれなきゃ、イヤよ……?」

 

「心配するな。さっきも言っただろ?奏もみんなと同じだって、だから安心しろ」

 

「むぅ、ちょっと不満だけど……わかったわ。これからもよろしくね」

 

「あぁ。よろしくな」

 

------------------------------------------------

 

「……でさ……凛とまゆが、相変わらずなんだよ……本当に困っちゃうんだ」

 

「そうなんですか。それは、あまりよくないですね……」

 

「二人とも、卯月みたいに優しくて素直な子なら、いいんだけどな〜」

 

「いえいえ、そんな……むしろ私こそ、いつもご迷惑ばかりかけてしまっては、ないでしょうか……?」

 

「ははっ。例えばどんな?」

 

「例えば、いつもこうして私の長電話に夜遅くまで、付き合ってもらってたりしてますので……」

 

「気にするな。俺も卯月から色々な話を聞けたり、こうして悩みも聞いてもらってるし、むしろ感謝してるよ」

 

「プロデューサーさん……はいっ♪そう言ってもらえると、光栄です♪」

 

「でも……「二人だけ」で色々な話や、お互いに普段、他の人には話せないようなことを話してるとその……」

 

「……ま、まるで……恋人同士みたいですね……なんて……♪//」

 

「そうだな。でも、この安心感は恋人と言うより、妹に近いと思うな」

 

「えっ、妹……ですか……?」

 

「うん。卯月は、聞き上手で優しくて、素直な妹っていうか、そんな感じがするんだ」

 

「……そうですか……でも、それを言うなら、プロデューサーさんも同じですよ?」

 

「いつも優しくて、暖かくて……でも、時には凛々しくて、違う素敵な一面が見れたりして、まるで……」

 

「……あ、憧れのお兄ちゃんみたい……ですっ……♪//」

 

「おっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。それじゃあ、かわいい妹のために、俺も頑張らないとな!」

 

「はいっ♪頼りにしてますよ♪お兄ちゃん♪……でも……いつかは、プロデューサーさんの……」

 

「……?」

 

「あ、あわわっ!何でもないですっ!少し……考え事をしてただけなので……//」

 

「そうか……?それじゃあ、そろそろ失礼するよ。あまり電話をすると「まま」に怒られちゃうからな」

 

「ママ……ですか?」

 

「こっちの話だ。今日も、色々な話をしてくれたり、相談に乗ってくれてありがとう。またよろしくな」

 

「いえいえ♪私の方こそ、ありがとうございました♪これからも、よろしくお願いしますねっ♪」

 

「あぁ、よろしく。じゃあおやすみ、いい夢を見ろよ……ふぅ……結構、喋ったな……」

 

「……まさか、この電話も……?いやいや、少し考えすぎだな。さて……明日に備えて、そろそろ寝るか……」

 

……うふふ♪

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、ついた……」

 

「まゆは……まだ来てないみたいだな。さて、スマホでも見て待ちますかねえ……」

 

「……おっ「大人気アイドルの、速水奏のグラビア写真集発売」か、そういえば発売日って、今日だったっけ」

 

「しかも、何枚かサンプルがあるのか……ちょっと見てみようかな……いや、でも……」

 

「……あ、あくまで、仕事として見るんだ!所属してるアイドルの情報を、知っておいて損はないからな!//」

 

「よし、それじゃあさっそく……おぉ……結構、攻めてるな……」

 

「……ちょっ!?こ、このページ……大丈夫なのか?……改めて見てみると……奏って、結構あるよな……//」

 

「結構……何ですかぁ……?」

 

「そうだな……例えばこの、泡が少ないあたりとか、もうほぼ……ん?」

 

「うふふっ♪おはようございますっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「うわあっ!?ま、まゆっ……!?」

 

「と〜っても、楽しそうですねぇ♪一体、何を見てたんですかぁ?」

 

「え、えっと……あ、阿波踊りのページを見てたんだよ!」

 

「阿波踊り……ですか?」

 

「あぁ!仙台でも、阿波踊りが見れると聞いてな!楽しみにしてたんだ!」

 

「私の故郷のことを、調べてくれてたんですね……♪嬉しいですっ♪」

 

「でも、阿波踊りが見れるのは主に、8月なんです。ですので、この時期はまだ見れないんですよ」

 

「そ、そうだったのか……それは残念だなっ!あ、あはは……」

 

「……ちなみに……プロデューサーさんになら、まゆの「全て」をいつでも……お見せ出来ますからね……?」

 

「えっ……?」

 

「……な〜んて♪それでは、今日は一日、よろしくお願いしますねっ♪私と一緒に、仙台を楽しみましょう♪」

 

「あ、あぁ。よろしく頼む……って!そんなに引っ張るなって!!」

 

「ふふっ♪今日はず〜っと、まゆだけを見てもらいますからねっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「うん。やっぱり、都会と違って空気が美味しいな。とても新鮮な気分だ」

 

「気に入ってもらえて何よりです♪仙台は、と〜ってもいい所なんですよ♪」

 

「確かにいい所だけど……でも、東京にも女の子が喜ぶ店が結構あるし、そっちでもよかったんだぞ?」

 

「いえいえ、そんな♪プロデューサーさんに、は私の故郷をたくさん知ってもらいですしそれに……」

 

「……東京じゃなくて、仙台なら……邪魔が、入りにくいかなって……♪」

 

「ん?邪魔……?」

 

「こっちの話ですっ♪とにかく、気にしないでください♪」

 

「そうか?ならいいんだが……」

 

「うふふ♪それではさっそく、プロデューサーさんの腕を……まゆが、独占しちゃいますっ……♪//」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……少し、近くないか……?」

 

「……ふふっ♪プロデューサーさん……?……まゆの温もりを……感じてくれてますかぁ……?」

 

プニッ♪

 

「なっ……!?し、知るかっ!変なことを言ってないで、とっとと行くぞ!//」

 

「あんっ、もうっ……でも、そんなにまゆで……ドキドキしてくれたんですね……♪嬉しいっ♪」

 

「全く……まゆはアイドルで、俺は男なんだぞ……?もっと、危機感を持てよ……//」

 

「……では……そんな、危うくてか弱いまゆを、守ってくれますか……?//」

 

「そうだな。あんなことは、俺以外に……いや!俺にもするな!わかったなっ!//」

 

「……うふふ……♪プロデューサーさんってば……♪」

 

------------------------------------------------

 

「はぁ〜いっ♪プロデューサーさぁ〜ん♪あ〜ん♪」

 

「……あ、あ〜ん……」

 

「うふふ♪どうですかぁ?仙台名物の、ずんだ餅パフェは♪」

 

「……うん。甘くて、ずんだ餅の食感と合わさってて、結構美味しいな」

 

「よかった♪ここのお店は、まゆのお気に入りなんですよ♪」

 

「確かに、美味しいけど……何だか、周りの目がすごい……生暖かいような、気がするんだが……//」

 

「エ〜?そんなことはないですよぉ♪ほらっ♪次は、まゆにもくださいっ♪あ〜んっ♪」

 

「カップルって……あのなあ……まあ、いいか。ほらっ、行くぞ」

 

「あむっ、ん〜♪美味しいですっ♪」

 

「ふぅ、なんかまゆとこうしてると、あの時を思い出すよ」

 

「あの時、ですかぁ……?」

 

「あぁ。前に心と一緒に、パフェを食べて……むぐっ!?」

 

「……プロデューサーさん……ダメですよぉ……?」

 

「んん……ぷあっ……おい!急に、何をするんだよっ!!」

 

「ダメです……まゆの前で、他の女の子の名前を出しちゃ……」

 

「女の子……?ははっ、安心しろって。心は別に、女の子じゃ……んぐっ……!?」

 

「……今は……まゆだけを見てください……いいですね……?」

 

「んぐ……は、はいっ……わかりました……」

 

「うふっ♪嬉しい♪まゆも、いつもプロデューサーさんのことしか見てませんよっ♪」

 

「それに、仙台には色々と、楽しいスポットがたくさんあるんです♪」

 

「ですので……「二人だけの」甘くて楽しい時間を、これからまゆとた〜っぷりと、過ごしましょう♪」

 

「そ、そうだな……すごく楽しみだ……あ、あはは……」

 

「ふふっ……たくさん、楽しんでいってくださいね♪だって……」

 

「……ここが……「第二の故郷」になるんですから……うふふ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ。だいぶ暗くなってきたな。まゆ、寒くないか?」

 

「大丈夫ですよ♪プロデューサーさんの温もりで、心も体もすごく暖かいですっ♪」

 

「……そ、それはよかった……にしても、イルミネーションがすごく綺麗だな……とても幻想的だ」

 

「うふふっ♪そうですね♪今、こうしてプロデューサーさんと二人きりで、一緒にいれるのも……」

 

「……出会う前……ううん。生まれる前から、運命の赤い糸で結ばれてたからかもしれませんね……//」

 

「ははっ、生まれる前からか。随分とロマンティックだな」

 

「このイルミネーションをみてると、色々な思い出がたくさん蘇りますね♪例えば、この前のライブとか♪」

 

「おっ、イリュージョニスタってか。上手いじゃないか」

 

「あの時は、みなさんのおかげでライブを無事に、成功させることが出来ました♪ありがとうございます♪」

 

「いやいや。まゆたちが必死に頑張ってくれたから、成功出来たんだ。もっと、自信を持てよ」

 

「……あの……プロデューサーさん……「まゆたち」ではなく、その……」

 

「……「まゆ」だけを、見てもらえることって……出来ませんか……?」

 

「……俺は、アイドルの成長する姿を平等に、見守っていきたいんだ。だから、それは出来ない。ごめん……」

 

「そうですか……やっぱり、辛いなあ……まるで……胸が張り裂けそうなぐらいに……」

 

「えっ……?辛いって、一体何が……ん……?」

 

(……この光景……どこかで、見覚えがあるような……)

 

「わかってます……わかってはいますけど……みんなに笑顔を振りまいてるのを見て、胸が苦しいんです……」

 

「……プロデューサーさんは……私だけの、プロデューサーさんなのに……」

 

「あの……ま、まゆ……?とりあえずさ……一旦、落ち着こうぜ?なっ?」

 

「うふっ♪ということで、まゆは考えました♪プロデューサーさんを永遠に、まゆだけのものにする方法をっ♪」

 

「ちょっ……まっ、まさか……!」

 

「うふふ……♪安心してくださいっ♪まゆもすぐに、そっちに行きますから……♪」

 

「これで、ずっと……いえっ♪永遠に一緒ですね……♪私だけの……」

 

「う、うわあっ……!」

 

「……プロデューサーさんっ♪」

 

------------------------------------------------

 

チュッ♪

 

「……むぐっ…!?」

 

「んっ……♪」

 

「んんっ……ぷあっ……ま、まゆ……お前……//」

 

「……うふふっ♪まゆ……やっと、わかったんです……あなたと出会ったあの時から、ずっと……」

 

「……「プロデューサー」ではなく……「憧れのお兄さん」として、ずっと目で追ってたんだって……♪」

 

「ですので……その「憧れのお兄さん」への素直な気持ちを、形にしてみちゃいました……うふっ♪//」

 

「素直って……今、自分が何をしたのか、わかってるのか……?」

 

「わかっています。それはもう愛おしてくて、狂おしい程に……」

 

「だからこそ、一人の女の子の気持ちをプロデューサーさんに、どうしても伝えたかったんです」

 

「……まゆ……」

 

「プロデューサーさん……まゆのことをアイドルではなく「一人の女の子」として、見てもらえませんか?」

 

「……確かに……まゆの気持ちは、しっかりと伝わったよ。だけど……やっぱり一旦、冷静になった方が……」

 

チュッ♪

 

「んぐっ……!?……ぷあっ……ま、まゆ……!?//」

 

「もう……自分でも、愛おしいと思う気持ちはとめられないんです……ですので……」

 

「……イケないことを言おうとする、悪いお口は……何回でも塞いじゃいます……♪うふっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……だから、俺たちはアイドルとプロ……んんっ……!」

 

「……んっ♪……ふふっ……♪また……言おうとしましたね……♪//」

 

「……お、お前……//」

 

「うふふ♪さてとっ♪今日はもう遅いので、これから、まゆの実家に行きましょう♪」

 

「実家……はあっ!?」

 

「実は、仙台に来たのはプロデューサーさんを、実家の両親に紹介するためでもあったんですっ♪」

 

「待て待て、実家って……俺たちはただの……」

 

「……うふっ♪」ジー

 

「……心の準備が、まだ出来てないって言うか……急に、お邪魔をするのは悪いんじゃないか……?」

 

「大丈夫ですよぉ♪「運命の人」と一緒に帰るってもう伝えてますので♪」

 

「ちょっ……!う、運命って……まゆ……お前は、アイド……」

 

「……♪」

 

「い、いや……せめて友達って、紹介すべきなんじゃないか……?」

 

「もうっ、恥ずかしがっちゃって♪でも、大丈夫ですっ♪これから慣れていけばいいんですから♪」

 

「あなたと出会うまでは、運命の出会いなんて、少しも信じていませんでしたが……それは間違いでした……」

 

「だって……あなたの顔も容姿も匂いも髪の毛も体も全てが愛おしてくて、大大大好きなんです!もう絶対に、離したくないんです!」

 

「ですので……これから少しずつ、幸せの階段を一緒に登って行きましょうね♪ず〜っと……いえ、永遠にねっ……うふふ……♪」



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祇園シンデレラ 小早川紗枝

「よぉ。ただいま戻ったぞ〜」

 

「あっ、プロデューサー、お帰り……ん?」

 

「ただいま……戻りました……グシッ……」

 

「……スン……スンッ…」

 

「紗枝ちゃん、ゆかりちゃん……どうしたの?鼻風邪?花粉?マスク使う?」

 

「えっ……!?あっ……これは、ちゃいますっ……!ただ、そのっ……何と言いますか……」

 

「?」

 

「お気遣いありがとうございます、泉さん……でも……気にしないでください……クスン」

 

「……まさか、プロデューサー……二人に何か、キツイこととか言ったの……?」

 

「……せや……何も、あそこまで言わへんでも……スンッ」

 

「は?いや……俺は、何も……」

 

「やっぱり……二人とも女の子なんだから、少しは加減してあげてよ?」

 

「せやでせやで〜♪もうちょっとうちに、優しくしてくれてもええと思うで〜♪」

 

「いえ……プロデューサーさんは、一緒にいてくださっただけですよ……?」

 

「えっ……そうなの?ゆかりちゃん?」

 

「はい。この涙は、お仕事の現場で感激してつい、流してしまったものなんです」

 

「……むしろ……プロデューサーさんには、そんな私たちを優しく……包み込んでもらいましたので……//」

 

「ゆかり……ありがとう。やっぱり、ゆかりは優しいなあ」ナデナデ

 

「あっ……そ、そんな……//」

 

「……むっ」

 

「感激してたゆかり、とてもかわいかったぞ。仕事が無事成功して、よかったな」

 

「うふっ……♪プロデューサーさんと一緒にいると、安心してつい……素の感情が出てしまいますね……♪//」

 

「……ちょっと……プロデューサーはぁん〜?頑張ったのは、ゆかりはんの他にもおると思うんやけどな〜?」

 

「あぁ、わかってるよ。紗枝も、頑張ってくれてありがとうな」

 

「それだけどすか……?ほら、他にもありますやろ……その……ゆかりはんみたいに〜、とか……」

 

「えっ……ゆかりみたいに……?どういうことだよ……?」

 

「……もうええわ……プロデューサーはんの、えっち……」

 

「はぁ!?えっち!?何でそうなるんだよ!」

 

「ふ〜んだ……知りまへ〜ん……」

 

カチャッ

 

「みんな〜♪おはよ〜さ〜ん♪」

 

------------------------------------------------

 

「あっ……周子さん。おはようございます」

 

「泉ちゃんもおはよ♪……フ〜ン……朝から女の子を三人も……プロデューサーはんは、いいご身分どすな〜」

 

「おい!急に、何を言うんだよ周子!俺たちは、仕事から帰ってきただけだ!」

 

「ほんま、目を離すとす〜ぐコレなんやから〜。ねぇ〜、泉は〜んっ」

 

「……そうですね……ある意味で、正常なアルゴリズムを崩そうとする「バグ」みたいなものですしね……」

 

「泉も乗るな!全く……ほら、変なことを言ってないで、さっさと支度しろ」

 

「えっ……プロデューサーさん……これからどこかに、行かれるのですか?」

 

「あぁ。これから「羽衣小町」と、京都に仕事しに行くんだよ」

 

「せやな♪うちと周子はんは同じ京都出身やから、ある意味で、故郷に帰るようなもんやね♪」

 

「京都って……結構、遠いんじゃないの?」

 

「まあ、少し遠いかもな。だけど一週間ぐらいでこっちに戻ってくるよ」

 

「ということは…プロデューサーさんたちと…しばらく会えなくなるってことですよね……?寂しいです……」

 

「俺も同じ気持ちだよ。でも、ゆかりはいい子だから、ちゃんと待っててくれるよな?」

 

「……では……いい子にしていますので……帰ってきたら、私のお願い事を一つ、聞いてもらえますか……?」

 

「お願い事?別にいいけど……俺が出来る範囲で、頼むぞ?」

 

「はいっ……♪うふふ……楽しみにしています……♪//」

 

「……ねぇ……プロデューサー。私との約束も……覚えててくれてるよね……?」

 

「泉と……あぁ、そうだな。俺にプログラミングを、教えてくれるんだったよな?」

 

「うん。前に、スケジュール表の作成に困ってたから、もっと楽になるように今度、一緒にマクロを組もうよ」

 

「そうだな。泉は、ITやプログラムに詳しいから助かるよ。帰ってきたら是非、俺に教えてくれ」

 

「……待ってるからね……約束だよっ……♪」

 

「なんや、プロデューサーさんも、大忙しやねぇ♪」

 

「プロデューサーはんのスケジュール帳は、女の子との予定がびっしりで……羨ましい限りどすなぁ〜」

 

「なんか、腑に落ちないけど……まあ、ほら。紗枝も、準備をしてくれ。忙しいのはお互い様だろ?」

 

「ま、うちもあいどるになったことやし、これも宿命かもしれへんね。ほな、行きまひょか〜」

 

「じゃあ、そろそろ行くか。また今度な、二人とも」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪この空気……懐かしおすなあ〜♪」

 

「……ふぁ〜……到着〜って、感じ〜?」

 

「んもう、周子はん〜?そない大あくび……お行儀悪いで?」

 

「なんかもう、空気が違うよな。まだ駅なのに、京都に来たって実感が湧くって言うかさ」

 

「んま〜、あたしたちは地元やし、よく通ってたからそんなに実感ないけど……そんなに物珍しいものなん?」

 

「修学旅行とか、ロケの打ち合わせとかで、指で数えれるぐらいしか来たことがないしな。胸が高まるよ」

 

「ほなら、うちらが案内しますえ♪京都へおこしやす〜♪みたいな〜♪」

 

「そうだな……宿泊先には荷物も送ってあるし、チェックインまでまだ、時間があるし……」

 

「……うん、じゃあせっかくだし、案内してもらってもいいか?俺に、京都を教えてくれ」

 

「決まりやね♪それじゃあ、プロデューサーはん♪周子はん♪行きますえ〜♪」

 

「……ん〜……じゃあさ〜……観光ついでにぃ……あたしを、お持ち帰りしてぇ〜……」

 

ギュッ

 

「おい、周子!何だよお持ち帰りって!ていうか、急にくっついてくるなっ!」

 

「せ、せやで……!京娘ともあろうものが、そないはしたないことを……!//」

 

「だってぇ、眠いんだも〜ん。せやからちょ〜っとぐらい、あたしをエスコートしてくれてもええや〜ん」

 

「あのなあ……周子は、アイドルなんだぞ……?自分が、何を言ってるか……わかってるのか……?」

 

「それだけ、信用してるってことだよ♪さあっ、かわいい京娘のシューコちゃんを、お持ち帰りや♪なんて♪」

 

「知るか!ほらっ!寝ぼけたことを言ってないで、さっさと行くぞ!」

 

「……せやな。起きたまま寝言を言うなんて、周子はんは芸達者どすなぁ〜」

 

「も〜!二人とも、ノリわる〜い!ていうか、あたしを置いていかないでよぉ〜!」

 

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「ほな、プロデューサーはん♪ここが、京都で有名な神社さんやで〜♪」

 

「おぉ……流石は京都だな。立派な神社だ」

 

「ここって確かさ〜、縁結びで有名な神社だったよね〜?」

 

「せやな♪でも商売繁盛、交通安全、何でもござれな神社なんよ♪せっかくやし、お参りでもして行きまひょ♪」

 

「そうだな。アイドルたちの、安全祈願をしていくか。何事もなく、楽しくアイドル活動をして欲しいしな」

 

「……ほんまに、それだけでええの〜?この神社は「縁結び」で有名なんよ?それは、お願いしないの〜?」

 

「ははっ。俺にはまだまだ関係ないって。今は、仕事と縁結びされてるからな」

 

「ふ〜ん……じゃあさ……あたしと、縁結びを……してみる?」

 

「……」

 

ピンッ

 

「ふぎゃっ……!ちょっと〜……いきなり、あたしのおでこに何をするんよ〜……」

 

「……まだ、寝ぼけてるみたいだからな。で?どうだ?少しは、目が覚めたか?」

 

「エ〜。別に、寝ぼけてなんか……あ〜♪でも、そっか〜♪」

 

「今ここで、あたしたちが縁結びをしちゃったらぁ……誰かさんが、嫉妬しちゃうもんね〜♪」チラッ

 

「ちょっと……何で今、うちを見たん……?」

 

「何のことかな〜♪全くぅ、もうちょっと素直だったら……あいたたっ」

 

「……周子はん……?余計なこと言うたら……あきまへんえ……?」

 

「あんっ、つねらんといてぇ〜。めんごめんご♪」

 

「おい……一体、何の話をしてるんだ……?」

 

「何もあらへん♪でも、縁結びはともかく、この神社にはおみくじもあるし、ついでに運試しもしてみようよ♪」

 

「おぉ、おみくじもあるのか。面白そうじゃないか」

 

「……ふ〜ん……どうせ、悪どいことばかりしとる、いけずな周子はんは大凶に決まっとります……」

 

「うふふ……紗枝はんったら……♪……しゃ〜ないなあ〜♪それじゃあ、大凶を引かんようにせんとね♪」

 

「では「紗枝はん」と事務所のみんなのために、しっかりと、祈願させてもらいますえ♪二礼二拍一礼ってね♪」

 

「だな。運試しもいいけど、まずはお参りしに行こうぜ」

 

「むぅ……おばか……」

 

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ガラガラ

 

「っしょっと……どれどれ……あ〜中吉か〜。まずまずやね〜」

 

「……へぇ〜……周子はんも、少しはええ行いをしとったんやねぇ〜」

 

「にゃはは♪なんせ今のあたしは、みんなに夢を与えるアイドルやからね♪紗枝はんはどうだったん?」

 

「うちは……末吉や〜……あ〜ん……なんで〜な〜……」

 

「どんまい♪まあ、末吉は末広がりって意味でもあるし、悪いことばかりじゃないやん♪」

 

「それは、そうやけど……」

 

「じゃあ次は、プロデューサーさんだね♪」

 

「えっと、俺は……おぉ……」

 

「……って、うわぁ〜!プロデューサーさん……大吉やないの〜!やったやん♪」

 

「新年早々……じゃなくて、新春早々、縁起がいいな……これも、お参り効果なのか……?」

 

「ええなぁ〜、プロデューサーはん〜……ちょっと、うちにもみして〜」

 

「あぁ、いいよ。ほれ」

 

「おおきに〜♪えっと……うわ〜……流石は大吉やねぇ〜。ええことばかり……ん〜?」

 

「どうしたんだ?紗枝」

 

「……恋愛……浮気心は捨てよう……やって〜♪」

 

「あははっ♪お天道様はしっかりと、みとるんやね♪」

 

「ちょっ……何だよ浮気って!俺には何も、関係ないだろっ!//」

 

「うふふ……♪慌てるプロデューサーはん……かいらしいなあ……♪」

 

「大吉だからって、浮気はあきまへんよ♪だって……プロデューサーさんには、あたしがいるんやし♪」

 

「……あぁ、俺には周子がいるしな。だから今は、二人のプロデュースにしっかりと専念させてもらうよ」

 

「えっ……も、もうっ……変なところで、素直なんやから……//」

 

「変なは余計だ。これからも「羽衣小町」と俺で、シンデレラのお城を目指していこうぜ。なあ、紗枝」

 

「……せやね……うちも、浮気はあきまへんと思います……」ギュッ

 

「うん、改めてよろしく……って……ちょっ……!さ、紗枝!?」

 

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「わぁお♪紗枝はんってば、だいた〜ん♪」

 

「……周子はんや、他の女の子ばかり……ずるいどす……」

 

「おい……何だよ、急にっ……!//」

 

「そうだそうだ〜♪あたしたちのことも、構え〜♪」

 

プニッ♪

 

「うぐっ……!?……し、周子……お前っ……!//」

 

「……んふふ〜♪プロデューサーはんはぁ……「コレ」が、だぁ〜いすきやもんね〜♪」

 

「何だよ、コレって……!ていうか、二人して俺にくっついてくるなっ!//」

 

「も、もうっ!せやから、はしたないどすえ……!ましてやこないな場所で……罰当たりどすっ!//」

 

「エ〜。でも、紗枝はんだって思いっきり、プロデューサーはんに密着しとるやんけ♪」

 

「それは……し、周子はんがプロデューサーはんに、けったいなことをせえへんように見守ってるだけやっ!」

 

「あんっ、けったいだなんて……あたしはただ、肌と肌の温もりを共有してるだけやでっ……♪」

 

ムニュッ♪

 

「ぬ、温もりって……//」

 

「「豊穣」の神様はぁ……ほんのすこ〜し、あたしに微笑んでくれたみたいやね♪な〜♪紗枝はんっ♪」

 

「……む〜……もう知りまへんっ!プロデューサーはんの、おばかっ!」

 

「ちょっ……何で俺なんだよっ!おい紗枝!待てって!……行っちまった……」

 

「ほんまにもう……かわええんやから〜♪紗枝はんは〜♪」

 

「おい、周子。また紗枝に、何かしたのか……?」

 

「何にもしてへんよ♪それじゃあ、プロデューサーさんが、紗枝はんのところに行ってあげて〜♪」

 

「俺だけ……?周子も一緒に来いよ」

 

「いやいや♪あたしばかりじゃ、ずるいからねっ♪ほらっ、早くしないと、紗枝はんが迷子になってまうで?」

 

「……まあ、迷子は困るし……じゃあちょっと、行ってくるわ」

 

「りょ〜かいっ♪あっ、そうだ♪……さっきの話なんやけど、その……」

 

「……プロデューサーさんには、あたしがいるって……どういう意味なのかな……?//」

 

「特に深い意味はないぞ。いつも、俺をからかってくるから、仕返しをしただけだ。じゃあ、またあとでな」

 

「そっか……♪んじゃあ、行ってらっしゃ〜いっ♪……しっかりと、聞いちゃったからね……♪ふふっ……♪」

 

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「お〜い!紗枝〜!待ってくれ〜!」

 

「……」

 

「ふぅ……やっと追いついた……全く、何で急に、俺たちを置いて行くんだよ……」

 

「あれ〜?愛しの彼女とは、もうええんどすかぁ〜?」

 

「愛し……彼女……?何のことだよ?」

 

「……「目の前」に……あつあつなカップルがおったので、うちはお邪魔虫かと思ったんどす〜」

 

「ちょっ……あつあつって何だよ!あ、あれは周子が勝手に、変なことをしただけだって!//」

 

「ふ〜ん……その割には、周子はんに……鼻の下を伸ばして、デレデレしとったクセに……」

 

「それは誤解だ!なあ、紗枝。何かしたのなら謝るから、機嫌を直してくれよ。なっ?」

 

「……ほんまに……反省しとります……?」

 

「あぁ。ごめんよ、紗枝」

 

「じゃあ……今からうちと一緒に、来て欲しいところがあるんやけど……ええどすか?」

 

「来て欲しい……?別にいいけど……でも、周子が……」

 

「むぅ……やっぱり……うちより、周子はんをとるんやな……」

 

「何で、そうなるんだよ!でも……まあ、周子もそこら辺を散策するって言ってたし、少しくらいなら……」

 

「……うん、いいぞ。で?どこに行きたいんだ?」

 

「ほんまどすか!?ほな、うちについてきて〜♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ!?な、何だよ!?」

 

「ふふっ……周子はんばかり、構ったんやから……次は、うちのばんやでぇ〜♪」

 

「いや、別にそんな……ていうかわかった!わかったから、そんなに俺を引っ張るなって!」

 

「聞こえまへ〜んっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「枯山水のお庭……ここがうちの、お気に入りなんどす……」

 

「おぉ……写真でしか、見たことがなかったけど……すごくいい景色だ……」

 

「うふふ…♪日頃のせわしなさは忘れて、しばらくまったりしておくれやす……プロデューサーはん……♪」

 

「そうだな……これは、活かせるかもしれないな……」

 

「ん?プロデューサーはん……?何してはりますの?」

 

「いや、この枯山水の庭園を、紗枝の新しいステージに活かせれないかと思ってな。少し、メモをしたんだよ」

 

「すてーじ……もう〜……だから、お仕事は忘れてください言いましたやろ?」

 

「それは無理だな。俺はもう、紗枝のことが、頭から離れなくなってるんだ」

 

「ふあっ……!?//」

 

「だから、常日頃アンテナを張って……ってどうしたんだよ?紗枝。そんなに、顔を真っ赤にして……」

 

「それが、うちのぷろでゅーすのことやて、わかっとりますけど……ほんま、このお人はすぐそういうことを平気で……//」

 

「どうした?熱でもあるのか…?」

 

「な、何でもあらへんっ……!……でも……うちだって、そのっ……」

 

「……プロデューサーはんのことが……いつも、頭から離れへんよ……?//」

 

「ははっ。紗枝も、俺のプロデュース業について、興味を持ってるのか?」

 

「……せやな〜……プロデューサーはんの、女の子のぷろでゅーすの仕方に、えらい興味をもっとりますわ〜」

 

「ん……?アイドルの事務所なんだから、女の子をプロデュースするのは当たり前だろ?」

 

「にしてはいつも、やらしい目で女の子を、品定めしてはりますやないか。随分と、お目が高いんやなぁ〜」

 

「何だよそれ!俺はアイドルたちを、そんな目で見た覚えはないぞ!?」

 

「どうだか……ほな、さっきは何で、周子はんにあないドキドキしてはりましたの……?」

 

「い、いや、それはだな……何ていうか……周子が、その……俺に当ててくるから……つい……//」

 

「……ふぅ……しゃ〜ないなあ。そんな、す〜ぐ女の子にデレデレする、いけずなプロデューサーはんは……」

 

キュッ♪

 

「……うちがしっかりと……見守ってあげないと、いかんね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ん?どうしたんだよ。急に、俺の手なんか握って」

 

「ちょっと、こうして見たかったんや……♪イヤどすか……?」

 

「別に、嫌じゃないけど……」

 

「ほな、ええやん♪にしても、プロデューサーはんの手……大きいなぁ♪」

 

「そうか……?なら、紗枝の手は小さくて、女の子の手って感じがするよ」

 

「女の子……プロデューサーはんは、うちを女の子として……意識してくれてるんどすか……?」

 

「当たり前だろ?紗枝は、お年頃のかわいい女の子だよ。むしろ、それ以外に何があるんだよ」

 

「……うちは、てっきり……「あいどる」としか、見てもらえてへんと思てました……」

 

「そんなことはないって。俺はいつも、紗枝を一人の女の子として見てるよ。だから、自信を持てって」

 

「……せやな♪「品定め」が上手なプロデューサーはんに、そう言うてもらえると何だか、自信がつくなぁ♪」

 

「おい……それは、皮肉か〜?」

 

「はて、どうでっしゃろか♪でも……うちも、プロデューサーはんのこと「一人の男の人」として見てますえ♪」

 

「そりゃどうも。じゃあ、俺も改めてプロデューサーとして、そして、男としても頑張らないといけないな」

 

「うふふ……♪これからも、よろしおすな……♪ほな、確かめてみますか……?」

 

「確かめるって……何をだ?」

 

「周子はんよりかは、あらへんかもしれへんけど……うちも、女の子やさかい……」

 

ムニッ♪

 

「もっと……意識してくれはっても……ええんやで……?//」

 

「なっ……!おい、紗枝!お前はアイドルなんだぞ!?何をしてるのか、わかってるのか!?」

 

「え〜。ただ、プロデューサーはんに、甘えてるだけやで〜?だって、うちはお年頃の京娘やし♪」

 

「全く……!周子もそうだけど、お前たちは無防備すぎるんだよっ!もう少し、女の子としてだな……//」

 

「安心しとぉくれやす♪男の人言うても、こないなこと、プロデューサーはんにしかしまへんし、それに……」

 

「……プロデューサーはんが、えらい優しいお兄さんだってこと……うちは知ってますえ……♪//」

 

「……まあ……俺だって、プロデューサーだからな……そこら辺は、弁えてるつもりだけどさ……//」

 

「せやろ♪ほな♪しばらくはこうしながら、枯山水の景色を二人っきりで、眺めまひょ♪」

 

「くっ……!//」

 

「ふふっ……♪プロデューサーはんの腕……逞しくて……えらい、暖かおすなあ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜!いたいた〜♪お〜いっ♪」

 

「おっ、周子じゃないか。待たせたな」

 

「いやいや♪気にせんでええよ♪それより、どうやった?楽しめた〜?」

 

「あぁ、枯山水の庭園、とてもいい眺めだったぞ。なあ、紗枝」

 

「せやな♪二人での〜んびりと、楽しい時間を過ごせたなあ♪ところで……周子はんは、何をしとったんどす?」

 

「あたしはねぇ……じゃじゃ〜ん♪この八つ橋を食べながら、散策しとりました〜♪」

 

「……周子はん……?あまり食べすぎると、太んで……?」

 

「大丈夫やって♪これでも、アイドルになってからは色々と、気をつけてるし♪」

 

「それに……京都についてからさ、実家の味が、恋しくなっちゃったんだよね〜♪」

 

「実家……?あぁ、確か周子の実家って、和菓子屋さんだったっけ」

 

「せや♪だから、二人が庭園に行ってる間に、ちょっと実家に寄ってきたんだ〜♪」

 

「ちゅうことは、それって周子はんの、実家の八つ橋なん?」

 

「せ〜いか〜い♪あっ、そうだ♪せっかく京都に来たんだし、二人とも、あたしの実家に寄って行きなよ♪」

 

「えっ……?でも、急に寄るのは悪いんじゃないか……?」

 

「ええってええって♪あたしの両親は、紗枝はんやプロデューサーさんのことを、気に入ってくれてるし……」

 

「……それに……「将来」は何回も、お世話になるかもしれへんからね……//」

 

「……周子はん?」

 

「な〜んて、冗談や♪あたしから連絡しとくからさぁ、せっかくだし、寄って行きなはれ♪」

 

「ん〜、チェックインの時間まで、まだ結構あるし……うん。じゃあ、寄らさせてもらうか。紗枝はどうだ?」

 

「うちも、周子はんのご両親がええって言うなら、ええけど……」

 

「決まりやね♪じゃあさ、あたしの実家に寄ったあとも、色々な所を観光しようよ♪まだ、時間はあるんだし♪」

 

「そうだな。改めて三人揃ったことだし、俺に京都をもっと教えてくれよ」

 

「りょ〜かい♪プロデューサーさんに、あたしたちの……じゃなくて!京都の魅力をもっと、教えないとね♪」

 

「……せやな♪うちら「羽衣小町」が、プロデューサーはんを、ご案内しますえ〜♪」

 

「うん、よろしく頼むよ。二人とも」

 

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「紗枝はん♪今日は、お疲れやす〜♪」

 

「お疲れやす〜♪周子はんっ♪」

 

「は〜……プロデューサーさんってば、粋だよね〜♪こんなに立派な、旅館を用意してくれてたなんて♪」

 

「せやな〜♪ここの温泉……と〜っても、気持ちええわ〜♪」

 

「今日は楽しかったね〜♪あたしの実家に行って、ラーメンを食べに行って、ライブに使う扇子を選んだりさ♪」

 

「それにしても……周子はんは、すごいなぁ……」

 

「ん〜?何が〜?」

 

「……八つ橋のあとに、らぁめん……そして、旅館のお食事……ようそんなに入るなぁ……」

 

「あははっ♪意外に、ペロリといけちゃった♪ほら、楽しく食べてるとつい、箸が進んじゃうって言うやん♪」

 

「そら、そうやけど……でも、さっきも言うたけど、少しは控えへんと……太りますえ?」

 

「大丈夫やって〜♪だって、あたしはぁ……食べたものがお腹周りに行くんやなくてぇ……」

 

タプンッ♪

 

「……こっちに行ってまう体質みたい……やからね……♪//」

 

「……むっ」

 

「そういう意味では、むしろ……紗枝はんはもっと、食べた方がええんちゃいますか〜?ん〜?」

 

「……うちだって……これからもっと、成長しますもんっ……」

 

「うんうん♪せやから紗枝はんも、シューコお姉さんを見習って、も〜っとたくさん食べなって♪」

 

「せやね〜……目の前のお狐様に化かされて、うちが鏡餅にならんよう精進しますわ〜」

 

「もうっ……しゃ〜ないなあ〜、紗枝はんったら……まあ、ええわ♪その方が有利やしね♪」

 

「有利……?どういう意味どすか……?」

 

「ふふ〜ん♪だってぇ、プロデューサーはんは……あたしみたいな大きさの「コレ」が、大好きやもんっ♪」

 

「……そんなんあらへん。プロデューサーはんは……す、少し、小さい方が好きって言うとったもん!//」

 

「エ〜、ほんまか〜?ほな……確かめてみる〜?」

 

「確かめる……?」

 

「では……コホン……ただいまより「わくわくどきどき!ドリーム温泉我慢対決」を、開始する〜!」

 

------------------------------------------------

 

「……どりーむ……?急に、何を言ってるんどすか……?」

 

「ルールは簡単♪最後まで、お湯に浸かってた方が勝ち♪ねね、楽しそうでしょ♪」

 

「……周子はん……また、そないなことを……」

 

「まあ、ええやん♪それじゃあ、商品は「プロデューサーさんの入浴中に、お背中流しま〜す♪」にしようか♪」

 

「……さて、周子はんの邪魔になってもうたらあかんし、うちは一人で、温泉情緒を楽しませてもらいます〜」

 

「あんっ、ツレないんやからぁ〜……じゃあいいも〜ん♪この勝負……不戦勝で、シューコちゃんの勝ち〜♪」

 

「おめでと〜さんどす〜」

 

「さてと……ほな♪あたしは、プロデューサーさんのところに、行ってきますえ♪」

 

「……えっ……周子はん……?」

 

「だって、紗枝はんは不参加なんでしょ〜?だ・か・ら♪無条件で、賞品はあたしのものってことやん♪」

 

「ちょ、ちょっと、周子はん……?はしたないどすえ……京娘ともあろうものが、そないなことを……//」

 

「安心してや〜♪プロデューサーさんのお背中を、ちょ〜っと流しにいくだけやから〜♪……それに……」

 

「……あたしは「お年頃の」京娘やし……素敵なお兄さんと、楽しい思い出をたくさん、作りたいもん……//」

 

「……あきまへん……」

 

「んにゃ?」

 

「し、周子はんが行くと、何をしでかすかわからへんさかい!そないなこと……うちが許しまへんっ!」

 

「アラアラ♪ということは……あたしと「対決」してくれるってことで……ええのかなぁ?」

 

「受けて立ちます……そないなことでおののいとっては、京娘の恥やからな……」

 

「あははっ♪決まりやね♪さて、紗枝はんの意思も固まったことやし……さっそく、はっじめ〜♪」

 

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カポンッ

 

「ふぅ〜……いいお湯だな〜……」

 

「景色も綺麗だし、湯加減はちょうどいいし、この旅館を選んで正解だな。流石は京都の旅館だ」

 

「それに、紗枝と周子も故郷に帰ってこれて、よかったって喜んでたし……来てよかった……」

 

ガラッ

 

「……し、失礼します〜……」

 

「ん?……って……は……?」

 

「……こんばんは……プロデューサーはんっ……♪今宵は、月が綺麗どすな……♪//」

 

「ちょっ……!さ、紗枝!?どうしたんだよ!女湯はあっちだろ!?」

 

「あっ……そ、その……お背中を流しに来ましたえ……なんて……♪//」

 

「お背中って……お前……//」

 

「日頃から、頑張ってくれてはるプロデューサーはんを、労おう思いまして……あきまへんか……?」

 

「いや……労ってくれるのは、嬉しいんだが……その……何て言うか……//」

 

「……プロデューサーはんっ……?」ウルッ

 

「……あぁ、もう……わかったよ。せっかくの、紗枝の気持ちだしな」

 

「ほんまどすか!?ほな、さっそく、プロデューサーはんのお背中を、流させてもらいますえ♪」

 

「じゃあ、頼むよ。でも……紗枝?俺も一応、男なんだし……もう少し、警戒心を持った方がいいと思うぞ?」

 

「うふふ……♪さっきも、言いましたやんか♪こないなこと……プロデューサーはんにしかしまへんって……♪」

 

「それとも……プロデューサーはんは、この綺麗な月をみると変身してまう「おおかみさん」なんどすか?」

 

「おい!何だよ狼って!俺を勝手に、変態扱いするなっ!//」

 

「せやろ♪そやさかい、うちに任せて〜な♪ほな、失礼しますえ♪」

 

「ったく……//」

 

------------------------------------------------

 

「力加減は、どないどすか〜?」

 

「あ、あぁ……ちょうどいいよ……」

 

「よかった♪それにしても……プロデューサーはんの背中、大きいどすなぁ……♪」

 

「まあ……俺も、その……男だしな……//」

 

「そんな、大きな背中を見てると……うちも改めて、女の子かて意識してまいますえ……♪」

 

「……なあ、紗枝……もう十分、背中は洗ってもらったから、そろそろ周子のところに……」

 

「……えいっ♪……ふふっ……♪えらい、暖かおすなあ♪」

 

「ちょっ……お、おい!紗枝!?何してるんだよっ……!?」

 

「……プロデューサーはん。さっき、うちのことを「一人の女の子」として見てくれてるって、言うたよな?」

 

「ん……?あぁ。確かに言ったな」

 

「せやからもっと、うちのことを……意識してくれても、ええと思うで……?//」

 

ムニッ……♪

 

「なっ……!?//」

 

「あっ……うふふ……♪急に、心臓の音が、激しなってきたなぁ……♪」

 

「……これが本当の「裸の付き合い」って言うものやね……なんてっ♪」

 

「は、裸って……あのなあ……//」

 

「うちも……実を言うと、ものすごくドキドキしてるんどす……どないどすか?伝わってはりますか……?//」

 

「伝わってるって……し、知るか!そんなもん!//」

 

「あんっ、いけずなんやから……しゃ〜ないなあ……」

 

「せやったら、プロデューサーはんの頭の中が、うちでいっぱいなるまで離しまへんからな♪覚悟しいや……♪」

 

「……俺はもう……紗枝のことで、頭がいっぱいなんだがな……」

 

「えっ!ほんまに!?プロデューサーはん……やっと、うちのことを……ほなら、証明してくれはりますか♪」

 

「証明……?」

 

「はい♪少し、恥ずかしおすけど……体をこっちに向けて、うちのことを思いっきり……//」

 

「……うぁ……」

 

ドサッ

 

「きゃあっ!?ぷ、プロデューサーはんっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「……あぅ〜……」

 

「……ぐうっ……」

 

「全くもう。二人して、のぼせるやなんて……だらしないなあ……」

 

「ご、ごめ〜ん……つい、久しぶりの温泉だったもんやから……うぅ〜……」

 

「せやから、あかん言うたのに……温泉は勝負の場やなくて、楽しむ場どすえ?」

 

「それはそうだけど……でも……紗枝はんだって、途中から少し、乗り気になって……」

 

「……何か言うたか?」

 

「なっ……何でもあらへ〜んっ!ほな!あたしは少し、安静にするんでおやすみなさ〜いっ♪……zzz」

 

「……ふぅ……ほんま、しゃあない人やなあ……そう思うやろ?プロデューサーはん」

 

「……」

 

「あれ……?もしかして、プロデューサーはんも……?もしも〜し、プロデューサーは〜んっ」

 

「……zzz」

 

「……もう……寝るタイミングも、一緒やなんて……ほんま、お二人はお似合いどすなぁ〜……」

 

「プロデューサーはんもまだまだ、目が離せへんね。うちがしっかりと、見守ってあげへんといかんな」

 

「……紗枝……zzz」

 

「もしかして……うちのことで頭がいっぱいになって、それで血が上って、のぼせてもうたりとかして……」

 

「……あ、ありえへん!こない、色んな女の子のことばかり考えとる、おおかみはんに限って、そんなん……」

 

「むぅ……でも、それはそれで……何か、もやもやしますし……全くもう……」

 

「……うちはこんなにも、想ってるっちゅうのに……ほんま、罪作りなお人やね……」

 

「……」

 

「……こう、間近で見とると……プロデューサーはんって……結構かっこええ……?」

 

「まつ毛も長いし……鼻筋も通っとるし……唇だってまるで、女の子のように綺麗で……」

 

「……ってあかんっ!うちってば今、何を考えて……あぁもう!京娘がそないなことでは、あきまへんっ!//」

 

「……周子……泉……ゆかり……紗枝……zzz……」

 

「……むっ……やっぱし、他の女の子のことも、考えとったんやな……」

 

------------------------------------------------

 

「みんな……俺の大切な、アイドル……だぞ……」

 

「ふ〜ん……えらい楽しそうな夢を、見とるんどすなぁ……ふぅ……」

 

「その甘い言葉のせいで、どれだけの女の子が惑わされてると、思てるんどすか……?ほんまにもう……」

 

「……そんな、はしたないお口は……」

 

「……」

 

チュッ♪

 

「……うちがしっかりと……塞がなあかんね……//」

 

「……んん…?ここは……」

 

「ふあっ……!?ぷ、プロデューサーはんっ!?」

 

「よぉ、紗枝……それに……周子……?」

 

「ちょっ……えっ……ね、寝とったんちゃうんどすか……!?//」

 

「寝る……?あぁ……そういえば、のぼせて少し、安静にしてたんだっけか……」

 

「なっ……何で、こないなタイミングで……ほんま……いけずなんやから、この人は……//」

 

「何だ……周子も、のぼせたのか?全く……しょうがないやつめ……」

 

「……//」

 

「……ん?紗枝も何だか、顔が赤いぞ?大丈夫か?」

 

「う、うちは大丈夫やさかい!せやから、気にしいひんでください……!//」

 

「そうか……?でも、一応念のために、おでこを当てて……」

 

「せ、せやから大丈夫やって!うちはもう寝ますっ!ほな!おやすみなさいっ!」

 

「あ、あぁ……おやすみ……紗枝のやつ……何であんなに、慌ててたんだ……?」

 

「……〜っ……//」

 

「……ニヤッ」

 

------------------------------------------------

 

「二人とも、準備はいいか?」

 

「うちは大丈夫どすえ♪」

 

「あたしもおっけ〜だよ〜♪」

 

「よし。じゃあこのまま、旅館から仕事に向かうか。それと、俺を介抱してくれてありがとうな。紗枝」

 

「いえいえ♪それより、少し、花でも眺めていきまへんか……?とても綺麗に、咲いておりますえ……♪」

 

「まあ、仕事まで結構時間があるし……そうだな。眺めていくか」

 

「にしても綺麗やね〜♪もうすっかり、春が来たって感じがするよ♪」

 

「あぁ、とてもいい眺めだ。まるで、アイドルたちが踊ってる、ライブ会場みたいだな」

 

「ふふ……プロデューサーはん、わからはります?」

 

「ん?何が?」

 

「こうして花を傷つけんよう、眺めるだけで愛でるんも、よろしおすけど……」

 

フワッ…

 

「たまにはこうやって、触れて愛でてあげるんも、ええと思うんどす……」

 

「なぜって……花には手も口もついてないから、相手に触れてほしくとも……自分では伝えられないさかい」

 

「……お、おう……なるほどな……詩的で素敵じゃないか……あはは……」

 

「「なるほど」言いはりますけど、ほんまに意味、わかっとります?」

 

「うぐっ……そ、それはだなっ……!」

 

「もうっ……そういうとこ……いけずやわぁ」

 

「……ちょっと……紗枝はん紗枝はん……」

 

「ん?周子はん?どうしたんどすか?」

 

「……んも〜……そういうのは素直に「撫でて〜」とか言えばいいのに〜♪ほんま、京都人なんやから〜♪」

 

「……京都関係あらしまへん。これは、普通の乙女心どす♪周子はんはもう、忘れたんどすか?」

 

「……せやねぇ〜。紗枝はんよりかは、忘れてへんと思うけど……で?どうやった?「初めて」の感想は♪」

 

「なっ……!?な、何でそないなことを……!//」

 

「んっふっふ〜♪タヌキ寝入りならぬ、キツネ寝入りをしてみちゃいました〜♪だって、あたしは妖狐だもん♪」

 

「も、もう〜……ほんまにこの人は……もうっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「おい。二人で、何をコソコソ話してるんだよ?」

 

「ううん♪何であらへんよ♪ほな、ねぇ……プロデューサーさん……♪あたしの頭を……撫・で・てっ♪」

 

「ちょっ……周子はんっ!?」

 

「ん?頭……?急に、どうしたんだよ」

 

「なんか、甘えてみたくなっちゃっただけ♪あたしも「お年頃の」乙女やしね♪ねねっ♪い〜でしょぉ〜?」

 

「いや……そんなことを、突然言われてもな……でもまあ、周子がいいなら……ほれ、いくぞ」

 

ナデナデ

 

「あっ……えへへ……♪//」

 

「全く……周子も、普段はお姉さんっぽく振る舞ってるけど、何だかんだで甘えんぼなんだな」

 

「せやね♪「プロデューサーさん」の前だけでは九尾狐も、ただのか弱い狐娘になってまうね♪」

 

「ははっ。どうせなるなら狐娘じゃなくて、もう少し京娘になってくれよ。なあ、紗枝」

 

「……むぅ〜」プクッ

 

「ん?どうしたんだよ?そんなに、頰を膨らまして……」

 

「……周子はんだけすこいどす!プロデューサーはんっ!うちも、頭を撫でて〜な〜!」

 

「えっ、紗枝も……?」

 

「おっ、やっと素直になったね♪ほらっ、紗枝はんも、もう片方の腕におこしやす〜♪」

 

「何だ、紗枝もして欲しかったのか?……それじゃあ……いくぞ?」

 

ナデナデ

 

「あっ……うふふ……♪」

 

「やれやれ……二人とも、まだまだ女の子だな……この調子だと、しばらくは目が離せそうにないな」

 

「うふふ……♪せやから、あたしらをプロデュースしてくれる「プロデューサー」としても……」

 

「そして……うちらを暖かく、見守ってくれる「一人のお兄さん」としても……」

 

「「これからもずっと、よろしおすな♪プロデューサーはんっ♪」」



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兎民シンデレラ 安部菜々

「……」

 

ピッ

 

ミンミンミン ミンミンミン ウ〜サミン!

 

「……」

 

ウサウサウ〜サ ウ〜サミンッ!

 

プルルルル……

 

「……はい、もしもし……あ、お母さん……?」

 

「えっ?選挙のはがきがきてる……?あぁ、わかってるてば……」

 

「わかった……行く……来週に行くから……うん、うん……」

 

「大丈夫だって、しっかりとしてるから……ご飯もちゃんと、食べてるし……」

 

「あっ、それともう、落花生は送らなくていいからね!じゃあ、そろそろ仕事だから一旦切るよ!またね!」

 

「……ふぅ。もうっ……心配症なんだから……そんなに心配しなくても、私はもう、立派なオト……」

 

「……ではなくっ!立派な17歳なんだから、心配をしなくていいのに!本当に困っちゃうんだからっ!」

 

「でも、選挙かぁ……行ったら少しは、税金の負担が減って……はっ……!」

 

「ま、全く……最近は、ウサミン星に納めなきゃいけないニンジンの量が増えて、困ってしまいますね!」

 

「こういう時こそ「アベナミクス」を打ち出して、解決しないとねっ♪きゃはっ♪」

 

「さて!ニンジンを収穫しに行きましょう!まずは、三本のニンジンのうちの一本を、実行しないとっ!」

 

「テレビを消して、火の元を確認して、戸締りはしっかりとしてと……よしっ♪」

 

「あとは……うん!今日も、びっしり決まってますね♪鏡の向こうに、しっかりと「ウサミン星人」がいます♪」

 

「では!総武……じゃなくて!ニンジンの馬車に乗り、今日も一日頑張りましょう!えい、えい、お〜!」

 

------------------------------------------------

 

「二人とも、おはようございます♪今日は一日、よろしくお願いします♪」

 

「おはようございま〜す☆菜々パイセン☆」

 

「おっ、菜々、おはよう。よろしくな。それで、調子とかどうだ?具合が悪いとかないか?」

 

「はいっ♪ナナはとっても元気ですよ♪今日のお仕事を、とても楽しみにしていましたので♪」

 

「それはよかった。なんせ、今日の仕事は菜々にとって、とても大切な仕事だもんな」

 

「大切……?どういうこと?」

 

「あぁ。これから二人には、秋葉原で撮影があるって話をしただろ?」

 

「うん「しゅがしゅが☆み〜ん」の二人で、メイドカフェで写真撮影があるって、言ってたよね」

 

「ふっふっふっ……実はですねぇ……その撮影場所のメイドカフェは、ナナの元勤務先なんですよ♪」

 

「勤務先……えぇ〜!?菜々パイセンのぉ!?」

 

「この、撮影の仕事をもらった時に、菜々がメイドの仕事をしてたってことを、思い出してな」

 

「それで、せっかくならと、菜々が勤務してたメイドカフェを、撮影場所に選ばせてもらったんだよ」

 

「えへへ……♪ちょっと、恥ずかしいですけど……思い出の場所で、お仕事出来るなんて嬉しいです♪」

 

「……ふ〜ん……プロデューサーにしては、粋なことするじゃん☆でもぉ……はぁと、すこ〜し残念だなあ〜」

 

「ん?残念……?」

 

「てっきりぃ、はぁとのメイド姿を独り占めしたいと思って、お仕事を取ってきたと思ったのにぃ〜☆」

 

「……そうだな〜。さて、そろそろ現場に向かうか。行こうぜ、菜々」

 

「えっ……?あ、は、はい……行きましょう……?」

 

「おい☆ナチュラルに、スルーすんなよ☆」

 

------------------------------------------------

 

「あっ、ナナ先輩じゃないですか〜♪お久しぶりですっ♪」

 

「みんな、お久しぶり♪元気そうでなによりです♪」

 

「初めましてぇ〜☆佐藤心ことぉ、しゅがーはぁとって言います☆今日は、よろしくお願いしますねっ☆」

 

「うわぁ〜!本物のしゅがはさんだぁ〜♪前に、ナナ先輩と一緒に秋葉原で、ライブをしてましたよね!?」

 

「あっ☆見に来てくれたんだ☆ありがとうね☆どう?はぁとたちの「凸凹スピードスター」を聞いてくれた?」

 

「はいっ♪お二人とも、息がぴったりでしたよ♪思わず私たちも、一緒に踊りたくなってしまいました♪」

 

「あ〜、あのダンスねぇ〜。あれって結構、腰に……じゃなくてぇ☆楽しんでもらえてよかった☆」

 

「そうですね♪喜んでもらえるように、鞭を打って……ではなくっ!頑張った甲斐がありましたっ♪」

 

「とても元気をもらえましたよ♪流石は、あのお兄さんが太鼓判を押していただけはありますね♪」

 

「お兄さん……?」

 

「ほら。今、打ち合わせをしてる、あのスーツのお兄さんって、プロデューサーさんなんですよね?」

 

「うん、そうだけど……何で知ってるんですか?」

 

「前にも、うちに来てくれたんです。その時に、ナナ先輩の担当だって、自己紹介をしてくれたんですよ」

 

「そうなんですか……何だか、恥ずかしいな……//」

 

「でも、あのお兄さんって、なかなか素敵ですよね。ナナ先輩は、どう思ってるんですか?」

 

「えっ……!?どど、どうって……あの人はただ、ナナのプロデューサーさんとだけしかっ……//」

 

「も〜、だめだよ〜。ナナ先輩は、アイドルなんだから〜」

 

「あっ、すみません!私ってば、変なことを言って……アイドルに恋愛は、ご法度ですよね!」

 

「……そ、そうですね……ナナはまだ、17歳でアイドルですし、そういうのはまだ早いかな……//」

 

「でも「ナナ先輩の」プロデューサーさんなのに、しゅがはさんとも仲がいいですよね」

 

------------------------------------------------

 

「ん?はぁとちゃんが……?」

 

「ほらぁ……どうだよぉ☆プロデューサー☆はぁとのぉ、メ・イ・ド姿は☆」

 

「あぁ、似合ってるぞ」

 

「エ〜。それだけぇ〜?もっと、あるだろぉ〜?例えば「俺のメイドにしたい」とかあるじゃんか☆」

 

「何だよ……俺のって……」

 

「……はぁとの、この姿……かわいくなぁい?」

 

「……似合わないと思ったら、わざわざ、オファーをすると思うか……?」

 

「知ってる……♪や〜ん♪やっぱりぃ、プロデューサーは、はぁとの魅力にメロメロなんだねぇっ☆」

 

「あ〜、やっぱり、前言撤回。お前はあくまで、菜々の「ついで」に呼んだだけだ。変な勘違いをするな」

 

「はぁ〜っ!?上げてから落とすの、早くない!?もっと褒めてくれてもいいぢゃん!いぢわるっ!!」

 

「はいはい。心はすぐに、変な勘違いをするから、しっかりと見守ってやらないとな。ほら、頑張って来いよ」

 

「何だか、長年連れ添ってるカップル感があるよね〜。息がぴったりと言うか」

 

「……早くしないと……心さんに、プロデューサーさんを取られちゃいますよ♪ナナ先輩♪」

 

「ええっ……!?だ、だから、ナナは別にっ……!//」

 

「あ〜あ〜。ナナ先輩も寿退社かぁ〜。寂しくなりますねぇ」

 

「えっ……ナナ「も」……?」

 

「はい♪ナナ先輩がアイドルになってから、何人か寿退社をしたんです♪子供が生まれた子もいるんですよ♪」

 

「そういえば……少し、人がいなくなってるような気がするね……そうなんだ……結婚かぁ……」

 

「ふふっ♪だから、ナナ先輩も今から、プロデューサーさんにっ……」

 

「よぉ、菜々。そろそろ、撮影が始まるから準備をしてくれ」

 

「あっ……噂をすれば……うふふ……♪「これからも」ナナ先輩をよろしくお願いしますねっ♪お兄さんっ♪」

 

「ん……?えぇ、任せてください。菜々を立派なアイドルにしてみせますよ。なあ、菜々」

 

「……そ、そうですねっ……!では、お嫁……じゃなくて!お仕事に行ってきま〜すっ!//」

 

「ふふっ……♪ナナ先輩って……本当に、かわいいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「せ〜のっ……」

 

「「「かんぱーい♪」」」

 

「んぐ……美味し〜い☆はぁとの五臓六腑に、染みわたるぅ〜☆」

 

「そうですねっ♪働いた後の一杯は、たまらないですっ♪」

 

「あぁ。仕事終わりに飲むと、いつもよりか美味しく感じるよな」

 

「でもぉ、おでんってトコが、ちょ〜っとスウィーティーじゃないけどねぇ〜☆」

 

「何でだよ。秋葉原と言ったらおでん缶だろ?まさに、この上なく相応しいご馳走じゃないか」

 

「えぇ♪ナナにとってはまるで、故郷の……だ、第二の故郷の味みたいなものですしねっ♪きゃはっ♪」

 

「二人とも、今日はお疲れ様。頑張ってくれて、ありがとうな」

 

「いえいえ♪とても楽しかったですし、何より馴染みのメイド喫茶で、お仕事が出来てよかったですっ♪」

 

「や〜ん☆これでまた、はぁとたちの魅力の虜になったファンが、増えちゃうんだねぇ〜☆困っちゃう〜☆」

 

「いいことじゃないか。二人とも脂が乗ってきているし、この調子でじゃんじゃんファンを増やしていこうぜ」

 

「そうですねっ♪そ、それに……プロデューサーさんも一緒に、虜に出来ちゃったかな……なんて……♪//」

 

「ははっ。俺はある意味で、菜々たちの一番のファンみたいなものだからな。しっかりと、見せてもらったよ」

 

「……えへへ……♪嬉しい反面、何だか照れてしまいますねぇ……//」

 

「本当にねぇ〜。プロデューサーってば、はぁとたちのことをやんらし〜目で、ず〜っと見てたもんネ〜♪」

 

「はぁっ!?何だよやらしいって!そんな風に見てた覚えはねえよっ!!」

 

「どうだか……さっきのメイド服だって、胸が強調されるような、ちょっとえっちな感じだったしぃ〜」

 

「い、いや……あれは前に、夏樹に着てもらったメイド服を、参考にしただけで……」

 

「フ〜ン……夏樹ちゃんまで……本当にプロデューサーは、見境がないオオカミさんなんだから〜☆」

 

「……ほぉら……言ってみなってぇ……♪撮影中さぁ……はぁとたちの「ナニ」を、見てたんだよっ♪」

 

「なっ……!だっ、だから、何も見てねえって!菜々からも何か、心に言ってやってくれっ!」

 

「……」

 

「おい……菜々……?」

 

------------------------------------------------

 

「……むうっ……はぁとちゃんや、夏樹ちゃんばかりに、デレデレしちゃって……ずるいですっ……」ギュッ

 

「ちょっ……菜々までっ……!べ、別に……俺は、デレデレだなんて……!」

 

「そうだそうだ〜☆他の子だけじゃなくて、はぁとたちのことも、少しは見・ろ・よ☆」

 

「お前まで、くっついてくるなっ!あぁ、もうっ……!何なんだよ……一体……//」

 

「んもう〜、しょうがねぇなあ〜☆んじゃあ……はぁとたちと……イこうよ……♪」

 

「行く……?どこにだよ?」

 

「そんなの決まってるじゃねぇかよぉ♪いろんな女の子に色目を使ってる、イケナイプロデューサーはぁ……」

 

タプンッ♪

 

「……はぁとたちが、美味しくいただいちゃうんだからっ♪ね〜☆菜々パイセンっ☆」

 

「……そうですねぇ……もう少し、オトナの……ではなく。ナナたちのことを、わかってもらわないと……」

 

「ちょっ……二人とも、近すぎ……!そ、それに、その……当たってるって……!//」

 

「エ〜?はぁとぉ、お年頃の女の子だから、よくわからな〜い☆」

 

「……ナナもまだ、17歳なので……何を言ってるのか、よくわかりません……」

 

「くうっ……二人して、何だよ……さっきからっ……!//」

 

「ヘェ〜……オオカミのくせに、ま〜だそんなことを言って、しらばっくれるんだ〜……ま、いっか☆」

 

「じゃあ〜、はぁとたちから喰らいついてやるよ☆どう猛な肉食獣みたいにな☆」

 

「ふふっ……♪がお〜ですっ♪なんて……♪」

 

「なっ……ま、待てっ……!俺には、心の準備が……!//」

 

「ダ〜メ☆さてっ☆とっとと、いただきますかねぇ☆逞しくて肉肉しい、プロデューサーのぉ……」

 

「……ちょっ……まっ……!//」

 

「……お・に・く・を・な☆」

 

「は……?……肉?」

 

------------------------------------------------

 

「ね〜ね〜、肉食い行こ☆肉☆はぁと、近くにいい店を知ってるんだ☆」

 

「えっ……?あっ……そ、そうだな……ちょうど、夕飯時だし……行くか?」

 

「わ〜いっ♪ナナも実を言うと、さっきからお腹がペコペコだったんですっ♪」

 

「……何だ……奇遇じゃないか。実は、俺もなんだ……あはは……」

 

「ん〜?どうしたの?そんな、呆気にとられて……」

 

「な、何でもないぞ……あ〜、仕事が終わったあとはやっぱり、がっつり肉を食べたいよなあ〜!」

 

「んふふ……そうなんだ……「がっつり」食べたいんだぁ……えっち……☆//」

 

「はあっ!?何でそうなるんだよっ!?そんなことなんか、考えてねえよっ!//」

 

「んじゃあ〜。さっきからな〜んで、そんなに顔が真っ赤なのかなぁ〜?ん〜?」

 

「ばかっ!そりゃ、お前たちがこんなに、密着してくるからだろうがっ!//」

 

「……ということは……ナナたちのことを「女の子」として、意識してくれてるってことですよね……//」

 

「い、いや……それは……」

 

「きゃ〜ん☆プロデューサーってばぁ、やっぱり、はぁとたちを食べようとしてたんだ〜☆こわ〜いっ☆」

 

「……意識なんかしてねえよ!ったく……ほら、心。いい店を知ってるんだろ?とりあえず、一旦、離れ……」

 

「両手に花でよかったですねっ♪きゃはっ♪」

 

「は……?いや……だから、離れ……」

 

「両手に花で、嬉しそうじゃねぇかよっ☆このっ☆」

 

「……だから……」

 

「嬉 し い よ な ? ☆」

 

「……はい……では、三人で仲良く、焼肉を食べに行きましょう……」

 

「や〜んっ♪もう、プロデューサーてば、素直なんだからぁ〜♪それじゃあ、行きましょう☆菜々パイセンっ☆」

 

「そうですねっ♪はぁとちゃん♪せ〜のっ♪」

 

「「ハイタ〜ッチ♪」」パチンッ♪

 

------------------------------------------------

 

「たっだいま〜♪……あ〜♪今日は、楽しかったなぁ〜♪」

 

「メイド時代の仲間にも会えて、しゅがはちゃんと楽しくお仕事をして、三人で美味しいお肉も食べれたし♪」

 

「ナナは、大満足です♪……でも……楽しかったは、楽しかったけど……うぅ……少し、飲み過ぎ……」

 

「……はっ……!つ、つい、お肉を食べすぎてしまいましたねっ!いけませんいけません!」

 

「まだ、17歳の女の子なんだし、気をつけないと……♪ねぇ、そう思いますよねぇ?プロデューサーさ……」

 

「……そうでした……ナナは……一人でしたね……」

 

「……」

 

「……でも、そうかぁ……あの子たち……」

 

ナナ先輩がアイドルになってから、何人か寿退社をしたんです♪子供が生まれた子もいるんですよ♪

 

「……結婚して……子供も出来たんだ……そうだよね……それって、とても幸せなことだよね……」

 

「ナナは、みんなのアイドル……でも、ナナは一人……これからも……その先も、ずっと……」

 

「……」

 

「……このままで……いいのかな……?それとも……ナナは……」

 

「……そうだ、スマホは……あ、あった……少し、時間が遅いけど……よしっ……」

 

プルルルル……

 

「……あ、もしもし?ごめんね。夜分遅くに……」

 

「あの……急に、申し訳ないんですけど……明日って、時間があるかな…_?」

 

「うん……あっ、いい……?……ありがとう……」

 

「えっと……少し……話したいことがあるんだ……直接、会った時でいいかな?電話じゃ、話ずらくて……」

 

「悪いね……うん、うん……それでは明日、よろしくお願いしますね」

 

「うん……おやすみ。急に、電話をかけてごめんね……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……こんにちは。待ってたわよ♪さあ、上がって♪」

 

「こ、こんにちは……来ちゃいました……瞳子さん……」

 

「……もう、水臭いわね……私たち、今は二人っきりよ?「菜々ちゃん」♪」

 

「……そうでしたね……お邪魔するね。瞳子ちゃん」

 

「ふふっ……どうぞ……♪今日は、楽しみましょう……♪」

 

「あと……ほんのお気持ちですが、よかったら使ってね。瞳子ちゃんって、入浴剤が好きだったよね?」

 

「あら……そんな、いいのに……うふふ♪ありがとう……♪大切に、使わせてもらうわね……♪」

 

「さあ、立ち話もなんだし、座ってちょうだい。それで……どうしたの?随分と、急だったようだけど……」

 

「うん、ありがとう。そうですね……その……瞳子ちゃんに一つ、聞きたいことがあったんだ……」

 

「聞きたいこと……?」

 

「えっと……あのね……ものすごく、聞きにくいんですけど……」

 

「……昔に一度、引退をした時……どう思いましたか……?」

 

「……あら。また、どうして、そんなことを聞くのかしら……?」

 

「いえ……その……ごめんなさい。急に、こんなことを聞かれても、困ってしまいますよね……」

 

「……菜々ちゃんになら……話してもいいわね。初めて出会った時から、シンパシーを感じてたもの……」

 

「えっ……いいの……?」

 

「えぇ、大丈夫よ。そうね……一言で言うなら「呪った」わ。ごめんなさいね。急に、物騒なことを言って」

 

「……」

 

「自惚れるつもりはないけど、努力はしたつもりなの。自分なりに試行錯誤をし、報われるように頑張ったわ」

 

「だけど……あるものの前では、無力だと言うことに気づいて、あの頃の私は絶望したの。とてもね」

 

「あるもの……ですか……?」

 

「そう、才能よ。ダイヤモンドの原石は、磨けば磨くほど輝きを増すけど、石ころは磨いたところで、ずっとただの石ころ」

 

「そして、その石ころが私だって、気づいてしまったの。それで引退を決意したわ。まだ、私が十代の頃にね」

 

「で、その事実から逃げるように、お世話になってたカフェの店員に戻ったの。まあ、そんなところかしら」

 

「……そうですか……そんなことが、あったんだね……」

 

「でも、結果的によかったと思ってた。夢は儚いから夢であり、短い時間でも、夢を見れてたのは事実だしね」

 

「それに、カフェの店員は私にとって、天職だったの。おかげで毎日が充実して、日々を楽しく過ごせてたわ」

 

「……あの人と、出会うまでは……ね……」

 

------------------------------------------------

 

「あの人……」

 

「うふふ……♪菜々ちゃんの想像してる人……つまり……プロデューサーさんよ……」

 

「本当に、突然だったわ。最初は何回か、カフェにお客さんとして来てもらってて、急に、スカウトされたの」

 

「「もう一度ステージに立ちませんか」ってね。もちろん、私はすぐに断ったわ」

 

「でも……あの人も物好きよね。それから、断っても毎日来るのよ。こんな私のためにね」

 

「……プロデューサーさんは、アイドルのことになると、止まりませんからね……」

 

「その通りね。そして、その熱意に押され、首を縦に振ってしまったの。根負けをしたってところかしら」

 

「だって、一度は挫折をした私に、何回も「自信があります」って言うのよ?なんて、酷い人だと思ったわ」

 

「だけど……彼は決して、私の目を捉えて離さなかった。そして、目を見据えながらこう呟いたのよ」

 

「「俺の人生も、一緒に捧げます」ってね……本当に……ずるい人よ……」

 

「……プロデューサーさん……そんなことを……」

 

「もちろん、わかってるつもりよ。そういう意味じゃなくて、私を鼓舞するために言ってくれたんだって」

 

「でも……諦めた私を呼び戻して、再び、アイドルとしてスポットライトを浴びて欲しいって言う以上は……」

 

「……「色んな」責任を、取ってもらわなきゃいけないわね……なんて……//」

 

「……」

 

「まあ、そんな感じで、今に至るわけ。どう?だいたい、わかってくれたかしら?」

 

「はい……色々と、苦労があったんだね……瞳子ちゃん……」

 

「うふふ……でも、ある意味では、菜々ちゃんと私って、似た者同士じゃないかしら?ねっ……♪」

 

「……そうかもしれませんね……」

 

「綺麗な姿を見てもらおうと、この水槽に飛び込んで、一度は沈んだ私たちだけど……」

 

「今度の水槽は「熱帯魚」にとっては、申し分のない世界よね。他の、泳ぐ仲間たちを見てわかるもの」

 

「だから……改めて、これからも一緒に頑張っていきましょう♪菜々ちゃん……♪」

 

「瞳子ちゃん……はいっ♪これからも、よろしくお願いしますっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ところで……少し、話がそれちゃったけど……菜々ちゃんはどうして、この話を私に聞きにきたのかしら?」

 

「あっ、もう大丈夫ですっ♪瞳子ちゃんのおかげで無事、解決出来ましたので♪」

 

「……ふうん……それはよかったわ。でも……何だか少し、笑顔がぎこちないような気がするわよ……?」

 

「……ううっ……やっぱり、瞳子ちゃんには嘘をつけませんね……」

 

「言ったでしょ。菜々ちゃんには、シンパシーを感じてるって。この場では、お互いに隠し事はなしよ」

 

「そうだね……実を言うと、少し……悩んでることがあるんだ……」

 

「確かに、ナナには瞳子ちゃんやはぁとちゃん、アイドルのみんな、そして……プロデューサーさんもいます」

 

「アイドルになるって夢も叶って、毎日が本当に楽しいんだ。でも……ある時に、ふと思ったんです……」

 

「アイドルとしての幸せ、ナナとしての幸せ……どっちが「幸せ」なんだろうって……どう思います……?」

 

「そんなの、決まってるじゃない……と、言いたいところだけど、現実はそうはいかないわよね」

 

「だけど、これは私じゃなくて、菜々ちゃん自身が決めないと。自分の人生は、自分で決めるべきだと思うわ」

 

「……やっぱり……そうですよね……」

 

「でも、例え、菜々ちゃんがどんな決断をしようとも、私たちは何も変わらないわ。決して」

 

「だって、私の中で菜々ちゃんは、ただ一人しかいないもの」

 

「……ありがとう。やっぱり……瞳子ちゃんは、強くて優しいね……とても……」

 

「ふふっ……もしかしたら、取り繕ってるだけかもしれないわよ?私、嘘が下手だって、よく言われるの」

 

「えっ……そうなの……?」

 

「……特に……プロデューサーさんにはね……本当に不思議な人よ……あの人は……」

 

------------------------------------------------

 

「いくら隠し事をしてても、すぐに見透かされちゃうの。どんなことでもね」

 

「確かに……プロデューサーさんには、不思議な魅力がありますね……」

 

「ふ〜ん……菜々ちゃんは「魅力」なんだ……♪例えば、どんなところがかしら?」

 

「にへへぇ……そんなことを言い出したら、きりがないですよぉ……♪まずはですねぇ〜……」

 

「……って……ナ、ナナは別に、プロデューサーさんのことが、好きなわけじゃないですっ!//」

 

「あら?私は「魅力」を聞いただけで「好き」かどうかだなんて、聞いた覚えはないんだけど……?」

 

「あっ……と、という演技をしてみました!アイドルは、演技も出来て当然ですからねっ!」

 

「……うふっ♪」

 

チュッ♪

 

「ちょっ……!?と、瞳子ちゃんっ……!?//」

 

「……この味は、嘘をついてる味ね……♪どう?前に、菜々ちゃんから借りた漫画を、参考にしてみたわ……♪」

 

「えっ……ええっ……!?//」

 

「それとも……「女の子」には、大人のジョークはまだ早かったかしら……なんて……♪」

 

「……と、瞳子ちゃんは、アイドルなんですよ!?やっていいことと、悪いことがあるんだからねっ!?//」

 

「うふふ……プロデューサーさんみたいなことを言うのね……♪やっぱり、菜々ちゃんは……」

 

「あ〜!あ〜!知らな〜いっ!!ナナはアイドルなんですから、そういうことはご法度ですっ!ノウッ!!」

 

「……じゃあ……プロデューサーさんと、私……どっちが好きなのかしら……?」

 

「知〜り〜ま〜せ〜ん〜っ!瞳子ちゃんのいぢわるっ!//」

 

「んもう、菜々ちゃんってば、かわいいんだから……♪まあ、それはさておき……」

 

「まだ、時間はたくさんあるわ……♪私たち二人で、女子会を楽しみましょうよ♪ねっ……♪」

 

「……むぅ〜っ……//」

 

------------------------------------------------

 

「それでは、お邪魔をしました♪今日はありがとうねっ♪瞳子ちゃんっ♪」

 

「どういたしまして。今日は、菜々ちゃんとたくさん「恋バナ」が出来て、よかったわ……♪」

 

「えぇ♪たくさん、恋バナが出来て……じゃなくて!恋バナじゃなくて、女子会でしょぉ!?//」

 

「あら?そうだったかしら?でも、楽しかったのは事実でしょ……?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「なら、細かいことはいいじゃない……♪……それで……どうするか、決めたの……?」

 

「……うん。ナナは決めました……もう、迷いはないです」

 

「そう……頑張ってね。陰ながら、応援をさせてもらうわ……あること以外はね……」

 

「えっ?あること……?」

 

「……私たちは色んな意味で、これからもライバルじゃない……♪特に「女の子」な部分ではねっ♪」

 

「なっ……!で、で〜す〜か〜ら〜!ナナは何も、関係ないってばっ!//」

 

「……じゃあ……私がいただいちゃっても、いいってことかしら……?」

 

「それは……す、好きにすればいいじゃない!ナナはもう行きますからねっ!じゃあ、また今度ね!!」

 

「ふふっ……また会いましょうね……♪……行っちゃった……もう、本当にかわいいんだから……♪」

 

「……でも……気持ちはわかるわ……私も、一緒にいるとつい……心が、暖かくなってしまうもの……//」

 

「本当に、酷い人……色々と考えなきゃいけない年齢になったのに、もう一度夢を見てって言うんだから……」

 

「……これで、また沈むことがあったら私は、もはや熱帯魚……いえ、魚ですらなかったということ……」

 

「だけど、もう今の私は、傷つきたくなくて言い訳ばかりしてた、悲劇のヒロインじゃないわ」

 

「それに、今は貴方がいるもの。再び、水槽に戻ってきた以上はきっと、期待に答えてみせるわ。必ずね」

 

「……でも……夢だけじゃなくて、いつかは「正夢」にしてくれるわよね?……プロデューサーさん……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ふんふ〜ん♪うさみん♪うさみん♪ぐるこさみ〜んっ♪」

 

「うさみんぱわ〜で、めるへんちぇ〜んじ♪……あっ、プロデューサーさん。これは、どこに置きますか?」

 

「ん?あぁ、そこに置いてくれ。ありがとうな」

 

「いえいえ♪それじゃあ、こっちに置きますね♪」

 

「にしても、悪いな。わざわざオフなのに、事務所の掃除をしてもらって」

 

「気にしないでください♪あっ、それとコーヒーも、あともう少しでお持ちしますね♪」

 

「おぉ……コーヒーまで……ていうか、菜々ってすごい手際がいいよな。俺も、見習いたいぐらいだ……」

 

「ふふん♪これも、年の功……じゃなくて!ご主人様への、奉仕の精神を忘れてないだけですっ♪」

 

「はは……ご主人様か……何だか、照れ臭いな……」

 

「むしろ、専属メイドなんてどうでしょうか♪もっとたくさん、ご奉仕をしてあげれますよ♪きゃはっ♪」

 

「……そ、そうか……それは、助かるな……色々と……//」

 

「ん?何だか、顔が赤く……あ”〜っ!さては今、変なことを考えてませんでしたか!?めっ、ですよっ!」

 

「はぁっ!?な、何を言ってるんだよっ!変なことなんか、考えてねえって!//」

 

「全くもう……でも……もしかしたらナナたちって、その……ご主人様とメイドじゃなくて……」

 

「……仲のいい夫婦に、みえちゃってるのかな〜……なんて……♪ //」

 

「えっ……夫婦……?」

 

「はっ……!じ、冗談ですよっ!それより、プロデューサーさんっ!このあと、お時間とかありますか……?」

 

「このあと……うん。特に、用事はないよ。どうした?」

 

「もし、よかったらその……ナナと一緒に、ついてきて欲しい場所があるんですけど……どうですか……?」

 

「あぁ。別に、大丈夫だよ。じゃあ、残ってる仕事を片付けちゃうから、少し、待っててな」

 

「ありがとうございます♪では、ナナも一緒に、お手伝いをしますね♪」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ……ここは……」

 

「うふふ……♪どうですか?菜々の、お気に入りの場所なんですよ♪」

 

「夕日が綺麗だ……こんなに眺めのいい河川敷なんて、あったんだな」

 

「お仕事の帰りとかよく、ここに来るんです♪前にも、アイドルの子と一緒に来たんですよっ♪」

 

「おっ、誰と来たんだ?」

 

「んふふ……誰とでしょうか……♪そこの、地面に書いた落書きを見て、当ててみてくださいっ♪」

 

「ん……?なんか、書いてあるな。え〜っと……「Rock&Cat+ウサミン」……?」

 

「う〜む……ウサミンは菜々として……もしかして「アスタリスク」の二人と、夏樹の四人で来たのか?」

 

「流石は、プロデューサーさんですね♪大正解ですっ♪でも、よく夏樹ちゃんも来たって、わかりましたね?」

 

「ロックなアイドルと言えば、夏樹だしな。それに、李衣菜はロック系と言うには……なあ……?」

 

「そんなことはないですよ。李衣菜ちゃんも、プロデューサーさんのために、必死に頑張ってるんですから」

 

「……も、もちろん……ナナもですけど……えへへ……//」

 

「頑張ってくれるのは嬉しいけど……でも、そうだな。この際、別の方向性を見出すのもいいかもしれないな」

 

「別の方向、ですか……?」

 

「あぁ。あいつらって、何だかんだで仲がいいし、巷じゃ「解散芸」なんて呼ばれてるそうじゃないか」

 

「だから、お笑い路線もよさそうだと思ってさ。菜々も、一緒にどうだ?」

 

「確かに、二人は微笑ましい……って!ナナは「カ・ワ・イ・イ」17歳のアイドルなんですよっ!?」

 

「ははっ、冗談だって。菜々は、微笑ましいアイドルだよな」

 

「もうっ!ぷんぷんですっ!あまりからかうと、アニメみたいにウサミンパンチをお見舞いしちゃいますよ!」

 

「何だ、アニメにそういうシーンがあるのか?」

 

「えぇ♪夕日の河川敷で、熱い男同士が拳で語り合い、最後は男の友情を語り合う……」

 

「……って言うのが、昔のアニメの定番だったそうなんです!ナナは17歳だから、わかりませんけどっ!!」

 

「ほぉ……流石は菜々だ。アニメに詳しいな」

 

「ふふん♪アニメは大好きですから♪でも……好きなんです……この、夕焼けの景色が……」

 

「……懐かしいなあ……小さい頃はよく……ここで……」

 

------------------------------------------------

 

……クスン……なにさ……みんなの、わからずやっ……

 

ないないって、ばかにして……あるもん……ウサミン星……ここに、あるもんっ……

 

そんで、なるも〜ん!!ナナっ、絶対に、ウサミン星のプリンセスになるも〜んっ!!

 

「……色々とあったなあ……ふふっ……♪」

 

「なるほど、つまりこの場所は、菜々の思い出の場所でもあるんだな。俺もすっかり、気に入っちゃったよ」

 

「気に入ってもらえてよかった♪でも、今は……ナナとプロデューサーさんの、二人っきり……ですよ……//」

 

「あぁ、そうだな。俺と菜々の、二人っきりだ」

 

「……あの……プロデューサーさん……少し、お話があるのですが……いいですか……?」

 

「ん……?どうした?」

 

「そのっ……えっと……すごく……伝えにくいのですが……」

 

「……ナナ……いえ、私……引退をしようと思うんです……」

 

「……は……?」

 

「実を言うとですね……少し前から、考え始めてたんです。そろそろ頃合いかな〜って」

 

「ちょっ……引退……?頃合い……?……ど、どうしたんだ、急に……」

 

「もちろん、アイドルは楽しいんです。長年の夢でしたから。でも……だからこそ「幸せすぎて」怖いんです」

 

「幸せが……怖い……?」

 

「はい。アイドルとしての幸せ、私としての幸せ。どっちが「本当の」幸せなのかなって、考えてたんです」

 

「それで、そろそろ、自分を見つめ直すいい時期なのかなって思い、ここに呼ばさせてもらいました」

 

「待ってくれ……急すぎて、頭が追いついていないんだが……何かあったなら、俺に言ってくれないか……?」

 

「……もう決めたことなんです……すみません。急に、勝手なことを言ってしまって……」

 

「……そうか……そうだよな……菜々には菜々の、人生があるわけだしな……」

 

「……うん、わかった。菜々が、悩みに悩んで決断したことだ。名残惜しいけど、受け入れることにするよ」

 

「ありがとうございますっ……♪では、今までお世話になりました……」

 

「あぁ、元気でな。これからも、俺は俺なりに、菜々を陰ながら応援させてもらうよ」

 

「嬉しいです……♪では、お別れの挨拶はこれくらいにして……そろそろ帰りましょうか……♪」

 

「そうだな。よし、事務所に帰ろうぜ」

 

「はいっ♪それじゃあ……「ウサミン星」に行きましょう♪……ナナとプロデューサーさんの、二人でっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……えっ?」

 

「……♪」

 

テッテレ〜!

 

「わあっ!?な、何だぁっ!?」

 

「うふふっ♪ドッキリ大成功ですっ♪あっ!センスが古いとか思っちゃ、ヤですからねっ!」

 

「……ドッキリ……?」

 

「んもう。ナナがアイドルを、やめるわけないじゃないですかぁ♪こんなに、楽しい世界に来れたんですから♪」

 

「そ・れ・にっ♪こうして、プロデューサーさんとも、縁があって出会えたわけですしねっ♪きゃはっ♪」

 

「……何だ……冗談だったのかよ……そういう冗談は、マジで笑えないからやめてくれって……」

 

「ふふっ……♪菜々のことを……心配してくれましたかっ……?//」

 

「あぁ。急にあんなこと言われて、驚かない人なんていないと思うぞ?ましてや、大切なアイドルからだとな」

 

「そうですか……♪えへへ……やっぱり、プロデューサーさんは優しいですねぇ……♪//」

 

「……でも……長かったなあ……何度も何度もつまずいて、悩んで、挫折をして……」

 

「だけど……必死に夢にしがみついて、藁にもすがる思いで、ずっと前を向き、歩いてきて……」

 

「……ここまで来れたのも……プロデューサーさんが、いつもナナのことを、優しく見守ってくれて……クスン」

 

「ん……?おい、菜々……?」

 

「グスッ……ヒグッ……」

 

「ちょっ……ど、どうしたんだよっ!?急に、泣くなって!」

 

「……す”……す”み”ま”せ”ん”……つい……感極まってしまってっ……」

 

「感極まったって……あぁ、もう……何だかよくわからないけど、少し落ち着こうぜ。なっ?」

 

「……は"い"……クスンッ……」

 

「全く……ドッキリって言い始めたかと思ったら、急に泣き出すし……忙しいヤツだな……」

 

------------------------------------------------

 

「……スンッ……」

 

「どうだ?落ち着いたか?」

 

「……えぇ……なんとか……」

 

「ふぅ……まさかこれも、ドッキリだとか言わないよな?」

 

「はい……この涙は……本物なんですっ……嬉しくて、つい……」

 

「そうか。まあ、とりあえずよかった。もうあんな冗談は、やめてくれよ?ほれ、ハンカチ」

 

「……ありがとうございますっ……」

 

「さてと……じゃあ、引退は嘘で、アイドルも続けてくれるってことで、いいんだな?」

 

「えぇ……そうですね……やっと、掴んだ夢ですから……それに……」

 

「……これからも、ずっと……プロデューサーさんとナナの、二人三脚で一緒に、歩んでいきたいので……//」

 

「そうだな。俺も菜々には、いつまでも輝いてもらいたいしな。これからも、よろしく頼むぞ」

 

「はいっ……♪と、ところで……一つ聞きたいことがあるんですけど……いいですか……?」

 

「何だ?」

 

「えっと……ナナは、小さい時から憧れていたプリンセスになれました。ですけど……」

 

「……ファンだけではなく……プロデューサーさんのプリンセスにも、なれましたか……?……なんて……♪」

 

「ははっ。俺の中で菜々は、いつもプリンセスだよ。それに、輝いてるのは、菜々の努力の成果だと思うぞ?」

 

「い、いえ……そんな……それに、そういう意味で言ったのではなくて……えっと……何と言うか……」

 

「?」

 

「……き、きゃはっ♪そうですよね♪ナナはウサミン星のプリンセスなんですから、皆さんに夢をお届けしなきゃですね♪」

 

「うん……?まあ、その調子で頼むぞ。よし、そろそろ日も沈んで来たし、改めて事務所に帰ろうぜ」

 

「そうですねっ♪では、帰りましょう♪手を繋いでっ♪」

 

キュッ♪

 

「うわっ……!菜々っ……!?」

 

「事務所に着くまで、絶対に離しませんからねっ♪だから、その……」

 

「……プロデューサーさんも……「ずっと」菜々の手を離さないって……約束を、してくれますか……?」

 

「えっ?……そ、そうだな……約束するよ……?」

 

「うふふっ♪約束ですよ……♪では、これからもよろしくお願いしますね♪「プリンスとプリンセス」としてっ♪」



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紅玉シンデレラ 辻野あかり

「それではっ!無事、正式にユニットデビューをした、お祝いに……せ〜のっ……」

 

「「「かんぱ〜いっ♪」」」

 

「ふふっ♪ようやく、ユニットデビューが出来たんですねっ♪私たちっ♪」

 

「そうデスね。まあ、改めてこれからもよろデス」

 

「よろしくねっ♪あかりちゃん♪あきらちゃん♪何もない部屋だけど、ここでゆっくりしていってねっ♪」

 

「それにしても……りあむさんのお部屋って、片付いてるんですね〜。流石は、お姉さんって感じがします♪」

 

「いやいや、そんなことはないよ〜。普段は汚部……じゃなくて!少し散らかってるから、片付けたのっ!」

 

「結構、いろんなグッズがあるんだね。もしかして「ガチ勢」ってやつデスか?」

 

「おっ!流石はあきらちゃん!そうなの!アイドルをやる前は、地下アイドルの追っかけをやってたんだ〜!」

 

「追っかけ……アイドルの子を追っかける、お仕事があるんですか?」

 

「ううん。追っかけっていうのは、特定の子をつい、追っかけてしまうぐらい好きなファンって意味なんだよ」

 

「あっ、そういう意味なんですね。なら、今度は私たちの追っかけが、出てきてしまうかもしれませんね♪」

 

「うっ……そ、そうだねっ……」

 

(……どうしよう……三人の中で、ぼくが一番年上のお姉さんなんだから、しっかりしないと……)

 

(だけど……二人とも、歳の割にはしっかりしてるし……むしろ、ぼくが一番……めっちゃやむ……)

 

(でもぉ……少しは、二人から尊敬されたり、頼られたりしたいし……どうすれば……あっ、そ〜だっ♪)

 

(……イイコト思いついちゃった……ニチャア……)

 

「ねねっ♪二人ともっ♪Pサマについて、どう思ってる?」

 

「Pサマ……プロデューサーさんのことですか?」

 

「うんうん♪Pサマのことを、二人はどう思ってるのかな〜って、思ってさ♪」

 

「どう思うって……まあ、いろんな意味で「兄ぃ」って感じかな。あまり、業界人って感じではないデスね」

 

「確かに……目上の人というよりも、近所のお兄ちゃんって感じだよね。親しみやすいうえに、優しいですし」

 

「なるほどね〜♪でも、実はPサマって、とてもダメダメなんだよっ♪」

 

「ダメダメ……?」

 

「うんっ♪この前だってね〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「あ”〜っ!Pサマっ!ネクタイが、ずれてるよぉ〜!?」

 

「うわっ!?な、何だよりあむ!急に、耳元で大きい声を出すなっ!」

 

「ほらっ!ぼくが直してあげるよ!しょうがないなあ〜♪Pサマは〜♪」

 

「い、いや、いいって……自分で直すから……」

 

「ダ〜メ!あっ!ネクタイじゃなくて、スーツも少しずれてる!それと、かすかにほつれもあるよっ!!」

 

「意地悪な姑か!お前は!全く……はいはい。どうもありがとうな」

 

「んもう〜。本当にPサマは、ぼくがついてないと、ダメダメなんだからぁ〜♪」

 

「そうだな。んじゃあ俺も、ダメダメなりあむに、ついてないといけないな」

 

「えっ……?……あっ……」

 

「ほら、髪の毛に埃がついてるぞ。全く、気を付けてくれよ?りあむは、アイドルなんだから」

 

「……あ、ありがとう……ねね、Pサマ……一つ、聞いていい……?」

 

「何だ?」

 

「さっきさ……ぼくに、ついていないといけないって、言ったけど……それって、本心……?」

 

「あぁ、当たり前だ。りあむはすぐに、炎上だなんだって、騒ぎを起こすからな。心からそう思うぞ」

 

「……そっか……♪じゃあ……これからも、ぼくを見ててね……約束だよぅ……♪」

 

「おいおい、少しは気をつけてくれよ?ふぅ、本当にしょうがないやつだな……お前は……」

 

「えへへ……//」

 

「……うふふっ♪何だかお二人って、とても仲睦まじいですねぇ〜♪ねっ、加蓮ちゃんっ♪」

 

「うんうん♪人前であんなに、ナチュラルにイチャつけるなんて、ある意味で才能だよね〜♪ねぇ〜、まゆっ♪」

 

「はぁっ!?何だよそれっ!こいつが勝手に、俺に絡んできただけだって!」

 

「はいはい♪じゃあ……その理屈なら、あたしたちも……いいよねっ……♪」

 

「ですね♪りあむさんだけ、ずるいですっ♪うふっ……♪」

 

「……おい……二人とも……?何だか、怖いぞ……?」

 

「ねぇ……りあむさぁん……まゆたちも、ご一緒して……いいですよねぇ……?」

 

「えっ……?あっ……は、はい……二人が、よければ……」

 

「決まりだね♪それじゃあ、たっぷり楽しもうか……♪……プロデューサーの、奢りでねっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「そして、このあと滅茶苦茶……じゃなくて!みんなで、Pサマについて、お茶をしながら話し合ったのっ!」

 

「ふ〜ん……結構、かわいいところがあるんだ」

 

「でしょでしょ♪本当に目が離せないんだ♪Pサマはっ♪」

 

「確かに……プロデューサーさんってたまに、お茶目なところがありますよね」

 

「だから、ぼくがしっかりと、お姉さんをしてあげないといけないんだ♪本当に困っちゃうよ〜♪」

 

「へへ……Pサンが兄ぃなら、りあむサンは姉ぇデスね……♪」

 

「ふふっ♪私たちのお姉さんとして、これからも、よろしくお願いしますね♪りあむお姉さんっ♪」

 

「お、お姉さんっ……うんっ!よろしくね!どんどん、このりあむお姉さんを、頼っちゃっていいからね!」

 

「頼りにしてるよ。でも、むしろPサンには、自分たちが「頼らせて」あげなきゃいけないね、なんて」

 

「ですね♪聞かれたら、怒られちゃうかもしれないので、これは、私たち三人の秘密にしましょう♪」

 

「じゃあ今、話したことは、ぼくたち三人だけの秘密ってことに、けって〜い!他の人には、内緒だからね!」

 

「は〜いっ♪ところでりあむさん、一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

 

「ん……?どうしたの?あかりちゃん」

 

「あの……さっき、このあと滅茶苦茶って、言いかけてましたけど……何か、続きがあるんですか……?」

 

「あぁ〜!それはね……って!ダメ〜っ!あかりちゃんにはまだ、早いよぅ!」

 

「早い……ですか?」

 

「うんっ!あかりちゃんは、りんごのように甘酸っぱい女の子なんだから、まだ、知らなくていいんだよっ!」

 

「なるほど……では、またの機会にさせてもらいますねっ♪」

 

「あかりちゃんは、いつまでも純粋でいてね……ぼくみたいな、ヨゴレで頭ピンクに、なっちゃだめだよ……」

 

「……あ…自分で言ってて、何だか涙が出てきそう……はぁ〜……めっちゃやむ……」

 

「?」

 

「はっ……!そ、それよりさっ!あきらちゃんはPサマについて、何かあったりするっ!?」

 

「自分デスか?自分は特に……あっ……でも、そういえばこの前、Pサンと……」

 

------------------------------------------------

 

「……くっ……危ねぇ〜……間一髪だったぜ……」

 

「ふぅ……さて……次は、どうしようかな……」

 

「……兄ぃ!危ないっ!!」

 

「えっ……?」

 

YOU LOSE!

 

「……ああっ!ヘッドショットを、喰らってしまった……」

 

「油断しちゃだめだよ。戦場に、安全地帯なんてないんデスから」

 

「ちょっとした判断ミスが、命取りか……FPSってやっぱり、奥が深いな……」

 

「もうっ、兄ぃはすぐに、前にでたがる癖があるから、直さないとだめデス」

 

「あぁ、そうだな……って……さっきから何だ、その呼び方は……」

 

「何って……兄ぃは、兄ぃだけど……?」

 

「……お〜い……俺はいつ、あきらの兄になったんだ〜?」

 

「前にも言ったじゃん。Pサンは、ウチの兄ぃにそっくりだって」

 

「聞いたことがあるような、ないような……そんなに、似てるのか……?」

 

「サバゲーで、前に出たがる癖もそうだけど、本当によく似てるよ。それに……」

 

ギュッ

 

「うわっ……!?」

 

「……こうやって、からかうと面白いのも……そっくりデス……♪//」

 

「からかうって……ていうか、急にくっついてくるなっ!」

 

「へへ。せっかく、兄ぃと二人っきりなんだし、今日はつきっきりで、サポートをしてあげる♪」

 

「……だから……兄ぃも、自分のことをアイドルにした以上は、いつまでもサポートしてね……約束デスよ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……と言うような感じで、徹夜でPサンと、FPSで遊んだことがありましたね」

 

「えふぴーえす……何だか、オシャレな響きですね!」

 

「「ファーストパーソン・シューティング」の略で、要はシューティングゲームだよ。スコアを競うんデス」

 

「あっ!それなら、私もやったことがあります!父ちゃんの、お友達の喫茶店で、宇宙人を撃つゲームをっ♪」

 

「……まあ……そんな感じデスね。それを、Pサンと遊んだんだ」

 

「へぇ〜。Pサマって、FPSが得意だったんだ。知らなかったよ」

 

「ううん。正直、まだ結構危なっかしいかな。初心者だから、しょうがないけど」

 

「その、えふぴーえすっていうのは、そんなに難しいんですか?」

 

「慣れてしまえば、簡単だけど……でも、FPSは、一瞬の判断が勝敗を分ける、過酷な面もあるんデス」

 

「だから、しっかりとPサンを、サポートしてあげなければいけないんだ。チームワークも重要だからね」

 

「なるほど……えふぴーえすって、色々と奥が深いんですねぇ〜」

 

「現実では、Pサンが自分をサポートをして、FPSでは、自分がPサンをサポートする……」

 

「……何だか、ベストパートナーみたいだよね。アイドルとしても、戦場での戦友としても……そして……」

 

「……こ、これ以上は……やめておこうかな……へへ……//」

 

「あの……もしよかったら、今度、私にも教えてくれませんか?なんだか、興味が湧いてきましたっ♪」

 

「うん、いいよ。FPS仲間が増えてくれるのは、嬉しいことだし。りあむサンもどうですか?」

 

「えっ!ぼくもいいのっ!?でも……ぼく、クソザコメンタルで、あんまり経験ないけど……大丈夫?」

 

「安心して。手取り足取り教えるんで。すぐに、慣れると思うよ」

 

「あきらちゃんに、手取り足取り……うへへ……じゃなくて!じゃあ今度、ぼくにもお願いねっ♪」

 

「決まりデスね。あっ、ちなみにあかりちゃんは、Pサンについて、何かあったりするの?」

 

「えっ……?」

 

「ぼくも、あかりちゃんの、Pサマのエピソードを聞きた〜い♪ねねっ、教えて〜♪」

 

「う〜ん……私は……あっ、強いて言うなら、一つだけ……」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜。なんとか、無事終わりましたぁ〜……」

 

「お疲れ様、あかり。しっかりと、歌って踊れてたぞ」

 

「ありがとうございます♪ファンの皆さんに、たくさん喜んでもらえて嬉しいですっ♪」

 

「その、籠の中のりんごろうも、喜んでもらえてたみたいだし、よかったな」

 

「はいっ♪投げても、心が痛まないデザインにして正解でした♪おかげで、ジャンジャン投げれましたしね♪」

 

「……なあ、あかり……もう少し、りんごろうと仲良くしてあげても、いいんじゃないか……?」

 

「えっ?こいつとは仲良しさんですよ?あくまで、ビジネスパートナーとしてですけどねっ♪」

 

「……でも……プロデューサーさんとは、色んな意味でパートナですけどっ♪なんて……♪//」

 

「それは嬉しいけど……だけど、俺からすればりんごろうは、あかりと同じぐらい大切な存在だぞ?」

 

「むぅ……ということは、プロデューサーさんの中で、私はりんごろうさんと同じってことなんですか?」

 

「えっ……?いや……それは……」

 

「……」ンゴ-

 

チラッ

 

「……」ウルッ

 

「……し、知るかっ!どっちもどっちってことで、いいだろっ!」

 

「ああっ!ひっど〜い!こいつと同じだなんて、失礼しちゃうんご!じゃあ、質問を変えますっ!」

 

「では……りんごろうさんと私……どっちが、かわいいですか……?//」

 

「はぁ!?かわいいって……そ、そりゃ、その……」

 

「……あかりに決まってるだろ……なんせ、俺がスカウトした、自慢のアイドルなんだからな……//」

 

「ふふっ……ありがとうございます♪私も、自慢のプロデューサーさんだと思ってますよ♪まるで、理想の……」

 

「……りんご農家みたいです……えへへっ……♪」

 

「んん……?……りんご農家……?」

 

「りんごは、とても繊細な果物で、ちょっとでも目を離すとすぐに、ダメになってしまうんです」

 

「だから……そんな「あかりんご」を、いつまでも見守って、甘く実らせてくださいねっ……♪うふふ……♪//

 

------------------------------------------------

 

「……みたいな感じで、ライブのあとにりんごろうさんについて、プロデューサーさんとお話ししましたね」

 

「りんごろうって……前に、あかりちゃんが見せてくれた、マスコットキャラのことぉ?」

 

「はいっ♪この子で、一儲け……ではなくっ!大切なお友達なんですっ♪」

 

「何ていうか、その……改めて見てみると、独特デスね……これ……」

 

「ですよねぇ!なのに、プロデューサーさんってば、どっちもどっちだなんて、言ったんですよ!?」

 

「……でも……ぼくは結構、好きだよ?例えば、その……この、葉っぱの部分とか……」

 

「もう、ぷんぷんですっ!プロデューサーさんは、そういうところはいぢわるですよねっ!」

 

「……あかりちゃん自身は……りんごろうのことを、どう思ってるんデスか……?」

 

「えっ?そうですねぇ……いたらいたでアレだけど、いないならいないで、アレだし……」

 

「まあ、どっちもどっちって感じですねっ♪って、結局私も、プロデューサーさんと同じ考えですね♪」

 

「そっか……でも、もしかしたら、りんごろうはもっと、あかりちゃんに構って欲しいんじゃない……?」

 

「またまた〜♪あくまでこいつは、りんごの精の「マスコット」なんですからぁ〜♪」

 

「……そう思ってるんだ……それは残念デス……ンゴ……」

 

「ねぇ……あかりちゃん……もう少し……りんごろうを、すこってあげても……いいんじゃないかな……」

 

「りんごろうさんのことは、大好きですよっ♪だから、早く「一山」当てて欲しいですね♪なんてっ♪」

 

「……なるほどね……はぁ〜……めっちゃやむ……ンゴ……」

 

「あれ……?二人とも、どうしたんですかぁ?そんなに、うつむいちゃって……」

 

「……あかりちゃん……ひどいんご〜……」

 

「……?」

 

「……ボクたちのことを、そんな風に思ってただなんて……かなしいんご〜……」

 

「ど、どうしたんですか……?あきらちゃん……りあむさん……って……えっ……?」

 

------------------------------------------------

 

「……」ンゴー

 

「こいつら……じゃなくて……り、りんごろうさんっ……!?」

 

「よ〜く〜も〜散々、ボクたちを雑に扱ってくれたなんご〜……」

 

「えっ……ええっ!?ど、どうして二人が急に、りんごろうさんにっ……!?」

 

「投げられたりぃ〜……全然、構ってくれなかったりぃ〜……ひどいんご〜……さみしいんご〜……」

 

「あっ、あの……ごめんなさい!本当は、りんごろうさんたちのことを大切な、お友達だと思ってるの……!」

 

「……だ〜け〜ど〜、あかりちゃんはいつも、ボクたちにつめたいんご〜……」

 

「それは……つい、素直になれなくて……ほ、ほらっ!愛情の裏返しって、いうやつですよっ……!」

 

「……じゃあ……一つ、聞くんご〜……ボクたちとプロデューサー……どっちが……好きんご……?」

 

「ええっ!?す、好きっ……!?そっ、そんなの……」

 

「……プロデューサーさんに、決まってるじゃないですか!い、いちいち、言わせないで欲しいんごっ!//」

 

「……そうなんだ……ふぅ、しょうがないんご……これは少し、わかってもらう必要が、ありそうんご……」

 

「わかってもらう……ですか……?」

 

「このままあかりちゃんも、ボクたちみたいに、みずみずしくて、キュートな……」

 

「……「りんごろう」にしてやるんご〜♪これで、あかりちゃんも同じ、仲間んご〜♪」

 

「ひっ……!?」

 

「そしたら、ずっと……ボクたちのことを……ううん、これからは、あかりちゃんは「ボクたち」んごね♪」

 

「なっ……何を言ってるの……」

 

「大丈夫んご♪元々、ボクたちは「あきらちゃん」と「りあむちゃん」だったんご♪」

 

「……い、いや……」

 

「だから……ずっと「お友達」……んご♪」

 

------------------------------------------------

 

「いやああああああああっ!」

 

「うわっ!あ、あかりっ……!?大丈夫か!?」

 

「えっ……プロデューサーさんっ……!?それに、ここは……」

 

「おいおい……大丈夫か……?俺たちは、この公園にピクニックを、しに来たんだろ?」

 

「ピクニック……あっ、そうでしたね……」

 

「全く……まあでも、さっき、公園のボートに乗って、あれだけはしゃいでたから、わからなくもないけどさ」

 

「んん……って……!私ってば、プロデューサーさんに、膝枕をしてもらってたんですかぁ!?」

 

「女の子を、芝生の上や硬いベンチに、直に寝かせるわけにはいかないだろ?だから、膝枕をしてたんだ」

 

「……うぅ……あ、ありがとうございますっ……でも……何だか少し、恥ずかしい気がするんご……//」

 

「ところで、さっきはどうしたんだ?何か、怖い夢でも見てたのか?」

 

「それは……いえっ!何でもないですっ……!」

 

「そうか?なら、いいんだが……てりゃっ」

 

ムニッ

 

「むぎゅっ……!ぷ、ぷろでゅーさーしゃん……!?」

 

「ははっ、リンゴみたいなほっぺをしてるんだな」

 

「む、むぎゅ……ぷあっ……ちょっと!プロデューサーさんっ!急に、何をするんごっ!」

 

「悪い悪い。つい、寝ぼけてたあかりを見てたら、したくなっちゃってな。ちょっと、夢中になっちゃったよ」

 

「ひど〜いっ!……こうなったら私も……えいっ!」

 

「もがっ……!あ、あひゃり……!?」

 

「うふふ……♪プロデューサーさんのほっぺだって、柔らかいじゃないですかっ♪えいっ♪えいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「もがっ……ひゃ……ひゃめろっ……!」

 

「ふ〜んだっ♪さっきの、お返しですよぉ〜♪」

 

「……ほうなったら……ていっ!」

 

「むぎゅ……ま、また……何をするんれすかっ!」

 

「あかりのほっぺの方が、ひゃわらかいっつうの!」

 

「ひょ、ひょんなことないれす!プロデューサーひゃんのほっぺのほうが、ひゃわらかいもんっ!」

 

プニプニプニ……

 

「……」

 

「くっ……このっ……!……ん……?」

 

「……随分と……仲良しなんデスね……」

 

「あきら……?りあむ……?どうしたんだよ、そんなところで突っ立って」

 

「いや……何か二人とも、超エモエモ空間にいたからさ……ねっ、あきらちゃん」

 

「うん。エモいを通り越して、もはや尊いレベルだったね。それよりほら、ジュース買ってきたよ」

 

「ん……?おっ、買って来てくれたか。ありがとうな」

 

「ジュース……?」

 

「みんなで、ボートで遊んだあとに、買って来て欲しいってお願いをしたんだよ」

 

「は〜いっ♪これ、あかりちゃんとPサマの分ね〜♪」

 

「わぁ〜♪ありがとうございます♪」

 

「サンキュー。それじゃあさっそく、みんなで乾杯を……」

 

「ちょっと待って……ほらっ。みんな、こっちこっち」

 

「ん?どうしたんだ、あきら」

 

「……いくよ……せ〜のっ……」

 

パシャッ

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ♪今日は、楽しかったですねっ♪」

 

「うんうん♪みんなとお話が出来て、よかったよ♪」

 

「そうだね。写真も、結構いい感じに撮れたし、満足デス。#みんなで仲良く#りんごジュースで乾杯、っと」

 

「あぁ。みんなが楽しんでくれてよかった。でも……流石は、あきらだな……」

 

「何が?」

 

「いや……ジュースのチョイスは任せたけど、まさか「映え」まで、意識してたとは……」

 

「たまたま、りんごジュースだけの自販機があって、閃いたんだ。これはいい感じに映えるって」

 

「そうだね♪これならオタクども……じゃなくて!あかりちゃんが喜ぶと思ったんだ♪」

 

「ははっ。あかりにりんごジュースか。そりゃ、映えるよな」

 

「私は、嬉しいですけど……でも、みんなは自分が飲みたいものを飲んで、よかったんですよ……?」

 

「いえいえ。自分もちょうど、りんごジュースを飲みたかったんで。ねっ?りあむサン」

 

「うんっ♪前に、あかりちゃんからりんごを、ご馳走してもらった時から結構、りんごにハマっちゃったんだ♪」

 

「何だ。二人もそうだったのか。俺も、あかりのおかげですっかり、りんごの虜になっちゃったよ」

 

「みんな……と、とても嬉しいんご!じゃなくてっ!とても、嬉しいですっ……!」

 

「俺たちはある意味で、一番のあかりのファンだ。だから、これからも俺たち四人で、頑張っていこうな」

 

「……はいっ……♪よろしく、お願いしますっ……♪」

 

ピョコン♪

 

「……隙ありっ!」

 

「ひゃんっ!?ぷ、プロデューサーさんっ!?」

 

「実は、あかりのこれ、笑ったり怒ったりすると、一緒に動くんだぜ。どうだ面白いだろ」

 

「も、もうっ……!いきなり、ひどいんごっ!」

 

「おっ、また立った。ほれ、ほれっ」

 

「ひゃっ!わ、私の髪の毛で、遊ばないでくださいっ!……こうなったら私だって……えいっ!」

 

「うわっ……!?あ、あかりっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ♪プロデューサーさんてば、私がちょっとこうするだけで、すぐにあたふたするんですよっ♪」

 

「おまっ……急に、抱きつくのは反則だろっ!ていうか、ちょっとどころじゃないだろこれ!離れろっ!//」

 

「イヤで〜すっ♪りんごのように、お顔を真っ赤にさせちゃって……♪どうです?新しい発見ですよねっ?」

 

「……甘々すぎて、砂糖を吐きそう……#ブラックコーヒーを飲みたい、っと……」

 

「加蓮ちゃんの言ってた通り……Pサマって、ぼくたちより才能があるよね……色々な意味で……」

 

「才能……何の話だよ?」

 

「はぁ……自覚がないんだね……やっぱり、ぼくがお姉さんとしてしっかりと、見守らなきゃいけないと……」

 

「?」

 

「Pサマ?頼むから、炎上をするようなことは、控えてよ?これも、Pサマのためを思って、言ってあげ……」

 

「……」ピンッ

 

「ふぎゃっ……!?ちょっとPサマ!急に、何をするんだよぅ!」

 

「……何だか少し、イラっとした……ていうか、お前だけには絶対、そんなことを言われたくねぇ……!」

 

「ひど〜いっ!せっかく忠告してあげたのにっ……!こうなったら……てりゃっ!」

 

「うわっ……!?な、何だよっ!?」

 

「もういいもんっ!こうなったら、ぼくもPサマと一緒に炎上をして、燃え尽きてやるぅ!」

 

「……ちょっ……当たってるっ……じゃなくて!何でお前まで、くっついてきてるんだよ!//」

 

「ふ〜んだ!どうせぼくなんか、乳と炎上しか取り柄のない、クズでカスな、ダメダメアイドルだもん!」

 

「開き直るな!……くそっ……いいから、離れろっ……!//」

 

「きゃあ〜!えっちでオオカミなPサマに、襲われちゃ〜う!あ〜あ!これはもう、炎上だなあっ!」

 

「ばかっ!変なことを、大声で喚くな!なあ、あかりからもこいつに、何か言ってやってくれ……」

 

「……」

 

「……あかり……?」

 

------------------------------------------------

 

「むぅっ……プロデューサーさんってば、りあむさんのことを……すごい、意識してるんですね……」

 

「は……?意識って……何のことだよ?」

 

「……私の時より……りあむさんの時の方が、ドキドキしてますっ……」

 

「いや……そんなこと……」

 

ムニュッ♪

 

「……っ!?」

 

「ほらっ……やっぱり……」

 

「……ヘェ〜……Pサマってば、ぼくのことをそんなに、意識してくれてたんだぁ〜……♪」

 

「べ、別に意識なんかしてねえよ!変な勘違いをするなっ!//」

 

「んもうっ、そんな王道のツンデレみたいなことを言っちゃって〜♪正直になりなよっ♪うりうり〜♪」

 

「くあっ……!お、お前なあ!俺だって、男なんだぞ!?少しは、自分が女の子だって危機感をもてよっ!//」

 

「いいも〜んっ♪「そうなった」ら、Pサマに責任をとってもらうから、問題ないも〜ん♪」

 

「こいつめ……!……と、とりあえずさ……あかりだけでも、離れてくれないか……?頼むよ……」

 

「……プロデューサーさんのえっち……もう、知らないんご……」ギュッ

 

「くっ……あかりまでっ……!あっ、そうだ!あ、あきらっ!頼む!助けてくれっ!」

 

「……」

 

パシャッ

 

「……おい……あきら……?」

 

「ふむ……これは、バズりそうデスね。まずは、デレぽにあげてみるか……」

 

「あの……あきらさん……?一体、何をしてるんですか……?」

 

「ん?自分はただ、兄ぃの微笑ましい日常を、あげようとしてるだけだよ?」

 

「……と、とりあえずさ……その前に、俺を助けてくれると嬉しいんですけどねぇ……あはは……」

 

「……知らない。さて#リア充爆発しろ#アイドルに挟まれてデレデレしてる#変態兄ぃ、っと……」

 

「ちょっ……!おい!やめてくれええええっ!」

 

------------------------------------------------

 

「ゼェ〜……ゼェ〜……何とか、収まった……」

 

「……むうっ……」

 

「おっ、めっちゃバズってる。これは大収穫デス」

 

「ちょっ……!?本当に、あげちゃったのか!?」

 

「な〜んてね、冗談だよ。だって、わざわざあげなくても、みんな「わかってる」ことだしね」

 

「えっ……?……と、とにかく……デレぽにあげてないっていうのは、確かなんだな……?」

 

「うん。だからこれは、大切に保管しておくよ。なんか面白いし」

 

「い・ま・す・ぐ消せ!ったく……どうして、こう俺の周りには、手のかかるアイドルばかりなんだ……」

 

「……へへ♪兄ぃはやっぱり、からかうと、とても面白いデスね……♪」

 

「うんうん♪本当にPサマは、しょうがないんだから〜♪」

 

「……」

 

ピンッ

 

「うぎゃっ……!ちょっと!何で、ぼくだけなんだよう!」

 

「……何となく、りあむにムカついたから……」

 

「理不尽すぎでしょっ!もう、アイドルなんかやめてやるう!」

 

「はいはい。ふぅ……とりあえず、そろそろ暗くなって来たから、帰るぞ」

 

「そうデスね。じゃあ、あかりちゃんも行こうよ」

 

「……」

 

「……あかりちゃん?大丈夫デスか?」

 

「えっ……?は、はいっ!そうですねっ!あの……あきらちゃん。一つ、聞いていいですか?」

 

「うん、どうしたの?」

 

「あきらちゃんは、その……「りんごろうさん」じゃないですよね……?」

 

「えっ、りんごろう……?多分……違うと思うけど……」

 

「……そうですよねっ!あきらちゃんは、あきらちゃんですもんね!では、行きましょうっ♪」

 

「???」

 

------------------------------------------------

 

「りあむの家は、ここだったよな?」

 

「うんっ♪じゃあ、ぼくはここでお別れだね。みんな、今日はありがとう!とても楽しかったよ♪」

 

「あぁ、また今度会おうぜ。じゃあ、あきら、あかり、俺たちも行くか」

 

「いえ。自分も、ここで失礼するよ。これから、予約したゲームを、取りに行かなければならないんデス」

 

「そうなのか……でも、そろそろ暗くなってきてるから、早く寮に帰るんだぞ?いいな?」

 

「うん、わかった。じゃあ、あとは二人っきりで「恋愛ゲーム」を楽しんでね。お邪魔虫は退散デス。なんて」

 

「えっ……恋愛ゲーム……?」

 

「こっちの話。じゃ、また会おうね。今日は楽しかったよ」

 

「ん……?ま、いいか♪はいっ♪またね、あきらちゃん♪りあむさん♪」

 

「うん、またね♪あっ、Pサマ。最後に一つ、言い忘れてたことがあったんだけど、いい?」

 

「ん?どうした?」

 

「……いくら、かわいいJKと二人っきりになれるからって、途中で「オオカミ」になっちゃダメだからね?」

 

「なるかっ!俺が、そんなことをするわけがないだろ!」

 

「でも……さっき、あかりちゃんとりあむサンに密着をされて、デレデレしてたじゃん」

 

「……デレデレした次は、オオカミさんですかぁ〜。プロデューサーさんって、怖いですねぇ〜」

 

「あ、あれは不可抗力だって!あかりも変にのるな!あぁ、もう!とっとと行くぞ!じゃあなっ!//」

 

「ふふっ……まったね〜♪……Pサマってば、本当にかわいいんだから♪あきらちゃんもそう思うでしょ?」

 

「うん、そうだね。兄ぃは、からかい甲斐があるよ。……あかりちゃん。ファイトデス」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……あの……あかりさん……?」

 

「……ふ〜んだ……」

 

「なぁ、あかり……機嫌を直してくれよ。何かしたのなら、謝るからさ。なっ?」

 

「……じゃあ……私のお願い事を一つ……聞いてくれますか…。?」

 

「ん?お願い事……?」

 

「はい。もし……私がアイドルとして、芽生えれなかったら……一緒に来てくれますか……?」

 

「……私の実家の……りんご農園に……」

 

「……なんか急に、話が飛躍したな……一体、どうしたんだよ」

 

「私……ふと、思ったんです。アイドルとして、このままやっていけるのかなって」

 

「確かに、毎日が楽しいんです。あきらちゃんやりあむさんとも出会って、ユニットも組むことが出来ました」

 

「そして、プロデューサーさんや、色々な人とも出会えて、本当にアイドルになれて、よかったと思ってます」

 

「……ですけど、もし仮にアイドルとして、成功出来なかったらと思い、少し……不安になってしまって……」

 

「なるほど……まだ女の子なのに、しっかりしてるんだな。あのピンク頭を見てると、余計にそう思うよ」

 

「アイドルになる前に、実家の農園で、嫌と言うほど見てきたんです……摘み取られた花たちを……」

 

「摘花と言って、実になる前の余分なりんごの花は全部、摘み取っちゃうんです。立派なりんごを作るために」

 

「だから……私はその、摘み取られる花になってしまうのかな……と、ふと思ってしまいまして……」

 

「そうか……でも、俺はそれでもいいと思うぞ?」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……?」

 

「確かに、俺はあかりをスカウトした以上は、トップアイドルになってもらうつもりだ」

 

「だけど、俺はあくまで、アイドルを楽しんでもらえたら、それでいいんだよ」

 

「楽しむ……ですか……?」

 

「あぁ。アイドルになる動機なんて、みんなそれぞれ違うしな。俺は個々を尊重するよ」

 

「ほら、その証拠にあかりは、個性を活かしつつ「りんごアイドル」として、活躍出来てるじゃないか」

 

「それは……そうですけど……」

 

「成功の基準は人それぞれ、違うと思うけど、俺の中では、楽しんでくれたらそれでいいと思ってるんだ」

 

「でも、あかりに、アイドルになってもらった以上、俺は全力で応援するよ。だから、これからもよろしくな」

 

「プロデューサーさん……はいっ♪よろしくお願いしますっ♪」

 

「みんなで一緒に、頑張っていこうぜ。あきら、りあむ、そして……りんごろうもな」

 

「そっ、それは……りんごろうさんの、ストラップですか……!?」

 

「うん、あかりがくれたやつだ。結構、気に入ってるんだよなこれ」

 

「……大切に……付けてくれてたんですね……とても、嬉しいですっ……♪//」

 

「前にも言っただろ?りんごろうとあかりは、同じぐらい大切だって。だから、りんごろうも一緒だ」

 

「はいっ♪これからも、よろしくお願いしますね♪」

 

「じゃあとりあえず、今は寮に向かおうぜ!寮に帰るまでが、ピクニックだ!」

 

------------------------------------------------

 

「よし、ついたな」

 

「今日は色々と、ありがとうございました♪みんなで楽しく、ピクニックも出来て、充実した一日でしたっ♪」

 

「それはよかった。この調子で、今度のユニットでの初ライブを、無事成功させような」

 

「はいっ♪頑張りますっ♪……ところで、プロデューサーさん……さっきの話なんですが……」

 

「ん?さっきの話……?」

 

「その……アイドルとして芽が出なかったら、一緒に実家に来てくれるかって話ですっ……どうですか……?」

 

「……そうだな。そうならないように、あかりには尚更、トップアイドルになってもらわないといけないな」

 

「……ふふっ♪頼りにしてますよ……♪ではっ……」

 

「……」

 

チュッ♪

 

「……っ!?」

 

「……「あかりんご」を甘くて立派な果実にするために、ずっと、大切に育ててくださいね……なんて……//」

 

「なっ……あっ、あかりっ……!?//」

 

「では、私はこれで失礼しますっ♪今日は、ありがとうございましたっ♪」

 

「ちょっ……おいっ!い、今のは、何だ!まだ、話は終わってないぞっ!」

 

「聞こえませ〜ん♪私は、努力は苦手ですけど、出来ないことは、もっと嫌なんですっ♪だから……」

 

「……私をアイドルにした以上は、最後まで……責任を取ってもらうんご……♪うふふっ……♪」

 

「待てって!……行っちまった……流石に、農業をしてただけあって、素早いな……あいつ……」

 

「ふぅ……全く、何なんだよ……急に、あんなことをしてきやがって……//」

 

「……でも、あかりの実家ねぇ……いっそ、俺も転職してみるか?案外、向いてるかもしれないな」

 

「……」

 

プロデューサー、あたしと遊びに行こうよ♪ プロデューサーさぁんっ♪ず〜っと、一緒ですよぉ♪

 

Pサン、今日も一緒にFPSやろうよ Pサマ!Pサマ!構ってくれないと、また炎上させちゃうよっ!

 

「……やれやれ。どうやら現役引退は、当分先の話になりそうだ。世話が焼けるアイドルだらけだしな……」

 

「……よし!頑張るぞ!……それにしても、まだ少し「温い」ような……き、気のせいだな!うんっ!!//」

 

------------------------------------------------

 

「……」チラッ

 

「……うっわ〜……どうしよう……めっちゃくちゃ、人がいるじゃん……」

 

「予想外に人がいるね。#これからライブ#ちょー緊張するっと……」

 

「な、何だか……余裕そうだね……あきらちゃん……クソザコメンタルのぼくとは、大違いだよ……」

 

「ううん、それなりに緊張をしてますよ。全く、初めての経験なので」

 

「……りんごろうさんが、一匹……りんごろうさんが、二匹……りんごろうさんが、三匹……」

 

「よぉ。みんなどうだ、調子の方は」

 

「あっ、Pサン。おつデス」

 

「……さ、さて……どうせバックれても、ちょっと炎上するだけで終わりだろうし……ぼくは帰るね……」

 

「うん、じゃあな。気をつけて帰れよ」

 

「……って!何で、誰も止めてくれないんだよぅ!」

 

「病んでる人を、止めるわけにはいかないからな。それとも「帰りたかった」のか?」

 

「むぅ〜……Pサマのいぢわる……」

 

「ほらっ、頑張ってこいよ。なあ、あかり」

 

「……りんごろうさんが十五匹……りんごろうさんが十六匹……りんごろうさんが……」

 

「お〜い、あかり〜。大丈夫か?」

 

ムニュッ

 

「むぎゅっ……!ぷ、ぷろでゅーさーしゃん……!?」

 

------------------------------------------------

 

「うずくまってたみたいだが……どこか、体調が悪いのか……?」

 

「……い、いえ……その……初めてのライブなので、緊張しすぎてどうしたらいいのかと、思いまして……」

 

「安心しろって。俺がずっと、後ろで見守ってやるからさ。それに、三人でなら心強いだろ?」

 

「確かに……私には、あきらちゃんとりあむさん……そしてプロデューサーさんが、いてくれますもんね……」

 

「……そうデスね……一人よりか、三人の方が……安心するかな」

 

「うぅ……逃げ出したいけど……でも、二人がいてくれるなら、ちょっとだけなら頑張れるかも……」

 

「だろ?ほら、恐れることは何もないぞ。だから安心して、楽しんで来てくれ」

 

「はいっ……では、そろそろ出番みたいですし……行きましょうか……あきらちゃん……りあむさん……」

 

「うん……行こう。もちろん、三人で手を繋いでね」

 

「そ、そうだね……二人とも……手を離さないでくれると、嬉しいな……これからもずっと……」

 

「三人でなら、どこまでも行けるさ。こうして、同じアイドルとして、出会えたんだからな」

 

「えぇ、そうですね♪さあ、歩みましょう♪待ってくれてる、ファンの人たちのための……」

 

「事務所のみんな、そして、Pサンや自分たちを支えてくれてる人のための……」

 

「アイドルとして出会えた、ぼくたちのための……」

 

「「「……新たな一歩をっ!」」」



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太陽シンデレラ ナターリア

カチャッ

 

「……ただいま〜……ふぅ、あっちい〜……」

 

「あ〜っ♪おっかえりぃ♪プッロデューサーッ♪」

 

「うわっ……!な、何だ……!?」

 

「お疲れサマ♪いっつも、ナターリアたちのためにお仕事を頑張ってくれて、ありがとうナ♪」

 

「あっ、な、ナターリアか……お疲れ様……」

 

「そんな、いつも頑張ってくれるプロデューサーにはぁ、ありがとうのハグをあげちゃうゾ♪ぎゅ〜っ♪」

 

「くっ……//」

 

「ン……?どうしたの、プロデューサー?お顔が真っ赤だよ?ダイジョーブ?」

 

「いや……いつも、出迎えてくれるのは嬉しいんだが……その……」

 

ムニュッ♪

 

「……ちょっと……距離が、近いんじゃないか……?//」

 

「エ〜。これくらい、フツーだっテ♪プロデューサーは、ナターリアの大好きなダーリンだから、問題ないヨ♪」

 

「ダーリンって……まあ、好きだって言ってくれるのは、嬉しいんだぞ?でも一応、俺も男だし……なっ?//」

 

「ンン〜?プロデューサーが、オトコの人だっていうのは知ってるゾ?それが、どうしたんダ〜?」

 

「いや……と、とにかく!ナターリアは、魅力的な女の子なんだから、ハグは程々にしてくれよ。いいな?」

 

「ヤッタ♪ミリョクテキだなんて、嬉しいナ♪でも、ナターリアのドコがミリョクテキだと思ってくれてるノ?」

 

「……そっ、それは……ゴクリ……」

 

「?」

 

カチャッ

 

「おはようございま……わお」

 

------------------------------------------------

 

「……っ!?な、凪っ……!」

 

「……P。これは一体、どういうことなんですか……?」

 

「あっ、ナギ!助けテっ!プロデューサーが急に、怖くなったのっ……!」

 

「……」

 

「……ち、違うんだ……!これには、深い訳があってっ……!」

 

「そうですか。では、Pの言い分を聞きましょう。早苗さんと一緒に」

 

「……っ!」

 

「ではさっそく、連絡を……っ……!?」

 

「……しょうがねぇ……こうなったら、凪も一緒にいただいてやるぜ……」

 

「き、急に、何をするんですか……!離してくださいっ……!」

 

「うへへ……凪もなかなか「美味しそう」じゃねぇか……これは、楽しめそうだ……」

 

「……ねぇ……どうしちゃったノ……?いつもの……優しいプロデューサーじゃないヨ……?」

 

「全く……ナターリアはいけない小娘だぜ……さっきから、そんな無防備な姿で俺を、誘惑しやがって……」

 

「ユウワク……?何のコト……?」

 

「今から、その意味を教えてやるよ。どうやら、オシオキが必要みたいだしな」

 

「イケナイ……?オシオキ……?ナターリア……何か悪いことを、プロデューサーにしちゃっタ……?」

 

「全く……ウチは、悪い小娘ばかりで困っちまうぜ……ま、その方がヤりがいがあるけどな……ぐへへ……」

 

「や、やめてください……お願いです……今ならまだ、連絡しないであげますから……」

 

「安心しろって。すぐによくしてやるから。だから二人とも、俺がしっかりと、美味しくいただいてやるよ」

 

「プロデューサー……」

 

「P……」

 

------------------------------------------------

 

「そして、凪たちはこのまま……続きは、DLCでのお楽しみです」

 

「……おい……何か今、すごい失礼なことを考えてなかったか……?」

 

「いえ、そんなことはないですよ。では「本編」に戻りましょう。おはようございます」

 

「オハヨウ♪ナギ♪今日も、あっついね〜♪」

 

「えぇ。Pたちほどではないですけどね。ひゅーひゅー」

 

「茶化すな!とにかく……ほら、ナターリアもそろそろ、離れてくれ……」

 

「あっ、そうダ♪ナギも一緒に、プロデューサーにギュ〜っとしようヨ♪」

 

「……は?」

 

「ほぉ……はーちゃんだけのアイドルなこの凪に、そのような提案をしてくるとは……なかなかやるな」

 

「そうだ。凪もナターリアも、アイドルなんだからな?ほら、一旦離れてくれ……」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……!な、凪!?」

 

「今の凪は「わるなぎスタイル」なので、大丈夫です。どんな理屈だ」

 

「おい!言ってるそばから何で、凪もくっついてくるんだよっ!離れろっ!」

 

「パッションプリンセスをすてるだなんてとんでもない。一緒にいればハイスコア間違いなしです」

 

「ですので、今年のプラチナスカウトチケットは、このわるなぎで決まりですね、凪とのお約束だぞ」

 

「……何を言ってるんだ?」

 

「気にしないでください。「みなさん」とお約束をしただけなので。決してダイマではないのご安心を、ぶい」

 

「何だそりゃ……ま、いいか。いつもの凪で安心したよ」

 

「えぇ。これにて、一件落着。めでたしめでたし」

 

「あははっ♪めでたしめでたしぃ〜♪」

 

「……って!何も解決してねえよっ!いいから、二人とも離れろって……」

 

カチャッ

 

------------------------------------------------

 

「たっだいま〜……あぅ〜……あっつい……」

 

「っ!……は、颯っ……!」

 

「……あ"〜っ!またPちゃんが、朝から女の子とイチャイチャしてる〜っ!」

 

「「また」って何だよ!ていうか、急に誤解を生むようなこと言うな!」

 

「全く……ちょっと目を離したら、これなんだから……本当にもう……美嘉さんからも、何か言ってあげて!」

 

「……ナターリアちゃん、凪ちゃん、おはよう。で?プロデューサー。これは、どういうことなの?」

 

「……み、美嘉もいたのか……ははっ……二人とも、奇遇だな……」

 

「美嘉さんと、お買い物に行ってたんだ。それで?Pちゃん。どういうことなのか、説明をして欲しいナ♪」

 

「うんっ♪今ねっ、プロデューサーに、ご褒美あげてたノ♪ねっ、ナギ♪」

 

「えぇ。飴とムチ、Pを飼いならす第一歩です。つまり、資本主義です」

 

「……へぇ〜……一体、どんなご褒美をあげてたのかな〜……?」

 

「思いっきり、ギュ〜っとしてたんダ♪こうすると、すごく気持ちいいんだヨ♪」

 

「ちょっ……何を言ってるんだよっ!」

 

「流石は、オトコの人だよね♪プロデューサーって、すごいタクマシイんダ♪」

 

「……プロデューサー♪ちょ〜っと、アタシたちとお話しをしようか♪」

 

「はぁっ!?いや……だから……」

 

「Pちゃんは、聞き分けのいい子だって、はーは知ってるよ♪だからぁ……ねっ♪」

 

「……はい……」

 

「ンン〜?二人とも、どうしたのぉ?」

 

「ふふっ♪ちょっと、プロデューサーにお話があるんだ♪ナターリアちゃんと凪ちゃんは、待っててね♪」

 

「すみません……また、うちのPが……ふぅ、本当に手のかかるPですね、Pは。なーむー」

 

------------------------------------------------

 

「「……♪」」ニコニコ

 

「……なあ……二人とも?何だか……怖いぞ……?」

 

「そんなことないよぉ♪はー、Pちゃんがあんなに、二人と仲良しさんだなんて、知らなかったナ〜♪」

 

「うんうん♪そうだねぇ〜♪で?どういうことなのかなぁ?美嘉お姉ちゃんが、た〜っぷり、聞いてあげるっ♪」

 

「いや……だからこれは、ナターリアや凪が、勝手に抱きついてきただけで、俺は……」

 

「……へぇ〜……そうやって、女の子のせいにしちゃうんだ〜。Pちゃんサイテ〜」

 

「はーちゃん。あまり、Pを責めないであげてください。少しオオカミですけど、根はいい人なんです……」

 

「おい!双子で何だよ!ていうか、凪!誤解を生むような方向に、持っていくな!」

 

「……ま、いつものことだし、今に始まったことじゃないけど。でも、アタシは、ちょ〜っと感心しないな〜」

 

「うっ……それは……反省するよ……」

 

「フ〜ン……Pちゃん。本当に、反省してくれてるの〜?」

 

「あぁ、そのつもりだよ」

 

「そっか♪流石はPちゃんだね♪はーはわかってくれて嬉しいよ♪じゃあ……」

 

「……まずは、その状況をどうにかしなきゃ……ねっ……♪」

 

「ン〜?もう、お話しは終わったのカ〜?」

 

「えっと……あと、もう少しってところだな……//」

 

「ソッカ♪じゃあまだ、プロデューサーの腕を、ぎゅ〜っとしてるネ♪」

 

「……くうっ……//」

 

「本当に、二人とも仲良しさんなんだね♪でも、どうしてなーも、Pちゃんに抱きついてるのかな〜?」

 

「強いて言えば、ノリですね。凪は、陽キャぶりたいお年頃なのです。うぇいうぇい」

 

「へ〜……にしては随分と、密着をしてるんだねぇ〜……」

 

「……ねぇ、二人とも?アタシたちはアイドルなんだから、少しは気をつけた方が、いいと思うな」

 

「えっ?気をつけるっテ……何を?」

 

------------------------------------------------

 

「Pちゃんみたいなオオカミさんに、そんなことばかりをしてると、いつかガオ〜って、食べられちゃうよ?」

 

「オオカミさん……?プロデューサー?ナターリアは、食べても美味しくないヨ……?」

 

「おいっ!ナターリアに、変なことを植え付けるな!何だよ!オオカミって!」

 

「だから、こっちにおいでよ。変態なプロデューサーから、アタシたちが守ってあげるからさ」

 

「ううん、ダイジョウブ♪オオカミさんでも、ナターリアはプロデューサーのことが、大好きだからっ♪」

 

「……むぅ……そうじゃなくてぇ〜……」

 

「そ、それは、とても嬉しいぞ……でも、もうすこ〜し、離れてくれないか?そろそろ「限界」がっ……//」

 

「えっ……プロデューサーは、ナターリアたちのこと……キライなの……?」ウルッ

 

「……P……そうなのですか……?」ウルッ

 

「い、いや……むしろ、二人のことは大好きだぞ?仕事もアイドルも、頑張ってくれてるしな……」

 

「ホントウ!?やったぁ〜♪ナターリアも、プロデューサーのこと、大大大ぁ〜い好きだよっ♪」

 

「わ〜い。凪もお兄ちゃんのこと、大好き〜……こういうのがいいんですよね?わかりみです」

 

ムギュッ♪

 

「ちょっ……だからっ……!//」

 

「フ〜ン……Pちゃんってばやっぱり、ぜ〜んぜん、わかってないねぇ〜」

 

「本当、プロデューサーってば、年下の女の子が大好きなロリコンだよねぇ〜。莉嘉の時もデレデレしてたし」

 

「おい!デレデレなんしてねえよ!俺を勝手にロリコン扱いするな!」

 

「どうだか……だめだよ〜?女の子ばかりじゃなくて、もっと身近にいる、大人のレディを見てあげなきゃ」

 

「は……?レディって……何のことだよ?」

 

「ほらっ、いるじゃん。例えばその……あ、アタシとかさ……//」

 

「待て。そのレディが美嘉だとしたら結局ロリコンになっちゃうだろ、美嘉だってまだ女の子なんだし」

 

「はぁ〜っ!?ちょっと!アタシはもう、大人のレディなんだから、子供扱いしないでよね!!」

 

「俺から見たら、美嘉も莉嘉もそんな、大差ないっつうの。ちびギャルちゃんよ」

 

「む〜っ……バカ……」

 

「も〜……しょうがないなあ、Pちゃんは〜。じゃあ今度、はーがシミュレーションしてあげるっ」

 

「シミュレーション……?」

 

------------------------------------------------

 

「はーが、Pちゃんの「相手」って設定で一緒に、色々なところに遊びに行くの。二人っきりでね」

 

「颯と一緒に?」

 

「うん。そしたら、はー……じゃなくて!女の子の気持ちがわかってくれるかなって〜。ねぇ、どう……?//」

 

「わお。はーちゃんは、とても大胆ですね」

 

「……そーでごぜーますか。じゃあ、はやておねーさん。次は、おすなばで遊びやがりますか?」

 

「あ、でも、暗くなるまえに帰らないと、ママに怒られちゃうから、程々にですよ?」

 

「むっ!相手って、そういう意味じゃないって!ていうか!はーは、そこまで子供じゃないもん!」

 

「ふぅ……ま、二人とも、背伸びをしたい年頃なのはわかるけど、今は目の前のアイドルを優先してくれよな」

 

「……アタシたちをアイドルにした以上は、最後まで……責任を取ってもらうんだからね……覚悟してよ?」

 

「はいはい、これからも頼むぞ」

 

「じゃあさっそく、二人も一緒に、プロデューサーをぎゅっとしようヨ♪楽しいことは分け合いっこダヨ♪」

 

「みんなで一緒に、Pとレッツパーリーをしましょう。うぇいうぇい、ぱふぱふ」

 

「は……?何を言ってるんだ……?この二人が、そんなことをするわけが……」

 

「……じゃあ、颯ちゃん♪「プロデューサーの」お言葉に甘えて、アタシたちも混ざろうか♪」

 

「はいっ♪Pちゃんってばやっぱり優しいなあ〜♪流石は大人のお兄さんだねぇ♪」

 

「……あの……二人はアイドルなんだから、そういうことはあまり、よくない気がするんですけどねぇ……」

 

「何さ。ナターリアちゃんや凪ちゃんはよくて、アタシたちはダメだって言うの?」

 

「いや……そういうことじゃなくて……とにかく俺は……」

 

「そっか♪じゃあいいよねっ♪ふひひ☆だって「責任」を取ってくれるって約束してくれたじゃん☆」

 

「なーたち……ううん。それ以上に、甘えちゃうんだから、覚悟をしてよね♪……動いちゃイヤだよ♪えへへ♪」

 

「ちょっ……あ〜っ!そうだ!ナターリア!そろそろ、時間だから仕事に行こうぜ!」

 

「えっ……?お仕事……?」

 

「ああ!ということで、俺たちは仕事に行ってくるよ!じゃあな!」

 

「う〜ん……?ま、いっカ♪それじゃあ三人とも、マタ今度ネ〜♪」

 

「ああっ!こら〜っ!逃げるな〜!!」

 

「もうっ!逃げるなんて、Pちゃんってば男らしくな〜い!」

 

「……いたいけなこの凪を、置いていくとは……今月の凪料金は倍増しですね。もちろん、支払いはPPAYで」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ……ここまで来れば、流石にあいつらも追ってこれないだろ……」

 

「なんか……ミカとハヤテが少し、怖かった気がするヨ……何かあったのカナ……?」

 

「そうか?いつもどおりだと思うぞ」

 

「そう……?でも、イヂワルをしちゃだめだヨ!ミカとハヤテにも、ぎゅ〜っとさせてあげなキャ!」

 

「あのなあ……さっきも言ったけど、俺は男なんだぞ……?わかってるのか?」

 

「ウン、わかってるヨ?プロデューサーは、オトナのオニイサンだよネ?」

 

「そうだ。だから、女の子があまりに近いと、恥ずかしくなっちゃうんだよ」

 

「ハズカシイ……?ナンデ?」

 

「それは……と、とにかく!男はみんな、そういうもんなのっ!//」

 

「ふ〜ん?ところで、街に来ちゃったけど……これから、何のお仕事をするんダ〜?」

 

「ん……?あぁ、ごめんな。実は仕事じゃなくて、仕事の「打ち合わせ」をしたいと思ってたんだ」

 

「ウチアワセ……?どういうコト……?」

 

「つまり、あいつらから逃げるための口実で……じゃなくて!ナターリアと二人で、話しがしたかったんだよ」

 

「二人で……!?わ〜いっ!と言うことは、プロデューサーと二人っきりってことダネ♪嬉しいナ〜♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!?な、何をしてるんだよっ!さっきの話を、聞いてたのか!?//」

 

「知ラナ〜イ♪せっかく街に来たんだし、ナターリアと一緒に遊ぼうヨ♪ねっ、いいでしょお?」

 

「う〜ん……まあ、今は事務所に戻れないし……特に急ぎの仕事もないし……」

 

「……そうだな。じゃあせっかくだし、どこかに行くか」

 

「ヤッタ〜♪プロデューサー……じゃなくて!ダーリンと、デートだァ〜♪」

 

「ちょっ……おい!街中で、その呼び方はやめろって!変な目で見られるから!!//」

 

「あっ、そうだっタ!日本では「彼氏」って言うんだったっケ♪ごめんネ♪ナターリアのステキな彼氏♪」

 

「色々と間違ってるぞ!?あぁ、もう……何だか、周りの目線が生暖かくなってきたし……ほらっ!行くぞ!」

 

「あんっ。プロデューサーてば、力強いっ……♪流石は、オトコの人だネ……//」

 

「全く……//」

 

------------------------------------------------

 

「それで、プロデューサー。どこに行くノ〜?」

 

「そうだな。今日は結構暑いし、とりあえず、どこか涼しいところに行こうか」

 

「そうダネ♪プロデューサーと一緒なら、どこでも楽しいゾ♪」

 

「あぁ。俺も、ナターリアと一緒にいると楽しいよ。じゃあまずは、離れようか」

 

「エ〜!ナンデ〜!?」

 

「もう夏なんだし、暑いだろ?それに、このまま暑さで倒れちゃったら、大変だしな」

 

「ダイジョウブだヨ♪ナターリアはこのまま、プロデューサーと溶け合ってもいいゾ……ナンテ……♪//」

 

「溶け合うって……どこで、そんな言葉を覚えたんだ?」

 

「前に、マユが教えてくれたんダ♪これは、日本のコイする女の子の「アイジョウヒョウゲン」だっテ♪」

 

「あのなあ……まゆの日本語は少しだけ、他の人とは違うんだ。だから、ナターリアは真似しなくていいぞ」

 

「そうなのカ?あ、そういえば、トクベツな人以外には言わないって、言ってたナ。ダレのことなんだロ?」

 

「……さあな。まゆもお年頃の女の子なんだし、色々と思う人がいるんじゃないか?」

 

「ナルホド……でも、ナターリアは大好きな、ダーリンしか見てないゾ♪」

 

「……くうっ……//」

 

「……あっ……プロデューサーさん……ナターリアちゃん……」

 

「ん……?あっ、美優さんじゃないですか。こんにちは」

 

「こんにちは、ミユ♪今日は、とっても暑いナ♪」

 

「二人とも、こんにちは……えぇ、とても暑いですね……」

 

「ところで、美優さんはここで、何をしてるんですか?」

 

「えっと……夏用の、アロマオイルを買いに来たんです……もうすっかり、夏ですので……」

 

「なるほど……そ、そうですね。もう夏ですから……気をつけないといけませんね……//」

 

「ふぅ……この季節は、汗ばんで……困ってしまいますね……ん?あの……プロデューサーさん……?」

 

「はっ、はいっ!?何でしょうか!?」

 

「いえ、その……随分と、顔が火照っていいますので……熱中症とか……大丈夫ですか……?」

 

「あっ、えっ、えぇ!大丈夫ですっ!むしろ、その……」

 

タプンッ♪

 

「色々な意味で、熱中症になってしまうかもしれません……なんて……//」

 

------------------------------------------------

 

「それは大変です……少し、失礼しますね……」

 

「うわっ!?み、美優さん……!?」

 

「……ムッ」

 

「結構……おでこが熱いですね……やはり、熱中症の可能性があるかも……」

 

「ちょっ……ち、近いですって……!それに、おでこが熱いのは、汗ばんだ姿がいつもよりさらに……」

 

「……じゃなくて!と、とにかく大丈夫ですっ!だから、心配しないでくださいっ!//」

 

「そうですか……?でも……一応、念のために……おでこを……」

 

「……ンモ〜……!ダメ〜〜〜〜ッ!!」

 

「きゃっ……!?」

 

「うわっ!?な、ナターリア!?」

 

「もうっ!プロデューサーってば、ダメだヨ!ミユのことを、そんなえっちな目で見チャッ!!」

 

「えっ……//」

 

「はあっ!?そ、そんなことねえよ!急に、変なことを言うなっ!//」

 

「ウソツキ!絶対に見てたモンッ!」

 

「あっ、あの……プロデューサーさん……?//」

 

「いえ、そのっ……俺は、美優さんをアイドルとして見てますけど、変な意味では決して……うあっ……!//」

 

「ああっ!また見てル!……もう、シラナ〜イッ!プロデューサーのおバカッ!えっち!!」

 

「おい!ナターリア!待てって〜!……あぁ、もう……何なんだよ……一体……」

 

「……プロデューサーさん……そのっ……//」

 

「あっ……い、いえ!勘違いしないでください!俺は、そんな目で一切、見てませんからっ!//」

 

「そうですか……でも……プロデューサーさんになら……見られちゃってもいいかな……なんて……♪」

 

「えっ……?あの……美優さん……?//」

 

「冗談です……♪では、ナターリアちゃんの所に、行ってあげてください……「彼氏さんっ」……♪」

 

「か、彼氏って……と、とにかく、行ってきます!では、またお会いしましょう!美優さんっ!」

 

「はい……お会いしましょうね……♪……行っちゃった……ナターリアちゃん……いいなあ……」

 

「私も……手を握りながら、一緒にお出かけをして、最後は人気のない海辺で、プロデューサーさんと……」

 

「……あっ、これ以上はいけませんね……でも……プロデューサーさんてば、私のことを……うふふ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「お〜いっ!ナターリア〜!待ってくれ〜!」

 

「……」

 

「ふぅ……やっと追いついた……急に、一人で行くなよ……」

 

「……ムゥ〜」

 

「何でそんな、むくれてるんだよ。俺、ナターリアに何か、しちゃったか……?」

 

「……ワタシが、ギュッとしてた時より……ミユの時の方が、デレデレしてタ……」

 

「はぁ……?そんなことはないって。俺がいつ、美優さんにデレデレしてたんだよ」

 

「……じゃあ……さっき何で、ミユの顔じゃなくて少し、下を見ながら話してたノ……?」

 

「いや……そりゃ、美優さんが……じゃなくて!ただ単に、ナターリアの勘違いだって!//」

 

「ふ〜んダ……プロデューサーのヘンタイ……えっち……」

 

「とにかく…なんだかよくわからないけど許してくれよ…謝るからさ、な?」

 

「……ホントウに……反省してるノ……?」

 

「あぁ。ごめんよ、ナターリア」

 

「じゃあ……これから、ワタシを美味しいゴチソウを食べに、連れて行ってくれル……?」

 

「ご馳走……?あぁ、いいぞ。何が食べたいんだ?」

 

「……ダーリンなら、言わなくてもわかってくれるよネ……?」

 

「ダーリンかどうかはわからないけど……それじゃあ今、ナターリアが食べたがってるものは……」

 

「……あ〜っ!Pチャ〜ン!!」

 

「……ん?おぉ、みくじゃないか。何だか今日は、色んなアイドルに出会うな……」

 

「ナターリアチャンも、こんにちは!二人とも、こんなところで何をしてるの?」

 

「コンニチハ♪ミク♪今ね、プロデューサーと、デートをしてたんダ♪」

 

「……フ〜ン……デートねぇ〜……」

 

「ちょっ……!何を言ってるんだよ!普通に、散歩をしてただけだって!」

 

------------------------------------------------

 

「でぇ〜?「今度は」ナターリアチャンなんだぁ〜。Pチャンって本当に、見境がないよねぇ〜」

 

「おい!何だよ、今度はって!まるで、俺がアイドルたちを、たぶらかしてるみたいに言うな!」

 

「やっぱり、無自覚なんだねぇ……まあ、PチャンはPチャンだし、しょうがないけど〜」

 

「タブラカス……ミク、どういう意味なんダ?」

 

「えっとね。たぶらかすっていうのは、Pチャンみたいな人のことを言うんだよ♪つまりねぇ……」

 

「変なことを植え付けるな!いいか、ナターリア。今、みくが言ったことは気にしないでくれ」

 

「そうカ……?でも、よくないことなら、しちゃダメだと思うゾ?」

 

「そ〜だ♪そ〜だ♪アイドルの子たちに、変な色目を使うのをやめるにゃ〜♪」

 

「こいつめっ……!」

 

「さて……みくは、二人を見て熱中症になるまえに、そろそろ退散するにゃ〜♪じゃ〜ね〜♪」

 

「……ん?待てよ……なあ、みく。これから俺たち、ご馳走を食べに行くんだが、よかったら一緒にどうだ?」

 

「えっ……ご馳走!?みくもいいのぉ!?」

 

「あぁ、もちろんだ。なあ、ナターリア」

 

「ウンッ♪ご飯はみんなで食べた方が、美味しいよネ♪」

 

「だってよ。さあ、どうする?」

 

「……し、しょうがないにゃあ……Pチャンが、どうしてもって言うなら……ご馳走になるにゃ……♪」

 

「決まりだな。よし、じゃあ行くか」

 

「わぁい♪みんなで、ゴッチソウだあっ♪」

 

「ところで……ご馳走って、何を食べに行くの?」

 

「それはお楽しみだ。みくも大好きなものだよ」

 

「ふ〜ん?ま、いっか♪それじゃあ、レッツゴ〜にゃっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「に”ゃ”あ”っ”……!」

 

「さあ、二人とも遠慮しないでくれ。いつも頑張ってくれてるからな」

 

「……Pチャン……これは一体、どういうことにゃっ……!」

 

「どういうことって……ご馳走と言えば寿司だろ?なあ、ナターリア」

 

「ウン♪へい!Pちゃん!ザギンでシースーいっとく?って、気分だヨ♪」

 

「ザギン……?シースー……?おい……そんなの、どこで覚えたんだ……?」

 

「オトナの人は、スシを食べにいく時には「ザギンでシースーする」って、サナエに教えてもらったゾ♪」

 

「また、あのお姉さんは……いいか、ナターリア。それは、早苗さんだけで、普通の大人は言わないんだぞ」

 

「えっ……?そ〜なのカ?フルイって思ったら、シメサバだって言ってたヨ?」

 

「多分「シメる」だと思うぞ……ていうかあの人、元婦警だよな……?教育によくないことばかり言って……」

 

「?」

 

「……と、とにかく!さあ、注文しようぜ!二人とも、何を頼む?」

 

「えっとネ♪じゃあナターリア、マグロがいいナー♪」

 

「あっ!じゃあ、みくはね〜……って!Pチャン酷いにゃ!みくは、お魚がニガテなのを知ってるでしょ!?」

 

「え〜、そうだったっけ?まあ、サイドメニューもあるし、魚以外にもネタがあるからいいじゃないか」

 

「ふしゃ〜……!Pチャンのイヂワル……!」

 

「悪い悪い。でも、みくとも一緒に、ご飯を食べたかったのも本当なんだ。せっかく、出会えたんだからさ」

 

「……っ!……ま、まあ……そういうことなら……許してあげるにゃ……//」

 

「よし。みくはいつも、頑張ってくれてるからな「特上海鮮丼、甘エビの尾頭付き」を注文してやるよ」

 

「ええっ!?いいのぉ!?Pチャン太っ腹〜……って、だからっ!もういいにゃ!みくが自分で選ぶっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……唐揚げ……美味しいにゃあ〜……♪」

 

「マグロも美味しいヨ〜♪あっ!あと、サーモンもっ♪」

 

「イカとかイクラもいけるぞ。結構、ネタが新鮮で美味しいなここ」

 

「全く……あんなもの、よく食べられるよね……みくには、理解出来ないにゃ……」

 

「そんなことを言わないデ♪は〜い♪ミク♪あ〜んダゾ♪」

 

「にゃあ〜♪ナターリアチャン、ありがとうにゃ♪それじゃあ……あ〜ん……」

 

「……って……!ちょっと!ナターリアチャンも、酷いにゃ!!」

 

「あはは♪ダイジョーブだっテ♪これ、ハンバーグズシだし♪これなら、ミクも食べられるでショ?」

 

「えっ……あっ……そ、そっか……それじゃあ、もらうにゃ……ありがとう……//」

 

「さあ♪もう一回、あ〜んダゾ♪」

 

「あ、あ〜ん……むぐ……にゃあ〜♪ハンバーグのお寿司、美味しいにゃあ〜♪」

 

「ははっ。二人とも、仲がいいな」

 

「うんっ♪ミクとは同じアイドルで、お友達だしネ♪それじゃあ、プロデューサーも……あ〜ん♪」

 

「ちょっ……お、俺はいいって……何だか恥ずかしいし……みくも見てるし……」

 

「……別にぃ〜。今更どうでもいいにゃあ〜。いつもの、見慣れてる光景だしぃ〜」

 

「おい!それって、どういう意味なんだよ!」

 

「フ〜ンだ。知らにゃ〜い〜」

 

「ほら♪ミクはいいって、言ってるゾ♪それに、好き嫌いはダメって、前にプロデューサーが言ってたよネ♪」

 

「いや……それはそうだけど……でも、それとこれとは、意味が全然違うような気が……」

 

「ほらぁ〜。ナターリアチャンの愛と、Pチャンの欲望がこもった、愛の一口を受け取ってあげなよぉ〜」

 

「変な言い方するな!あぁ、もう!わかったよ!もらえばいいんだろ!もらえば!!」

 

「決っまり〜♪ほら、あ〜んだヨ♪」

 

「……あ、あ〜ん……」

 

「どう?美味しいカ♪」

 

------------------------------------------------

 

「うん……美味しいぞ……//」

 

「ヨカッタ♪じゃあ、ナターリアにもチョ〜ダイ♪」

 

「あぁ。それじゃあ……俺のを食べるか……?ほらっ……」

 

「ア〜ン♪……ン〜♪「プロデューサー」のスシ、オイシ〜♪」

 

「……」

 

「ははっ。別に、俺が握ったわけじゃないんだから。面白いヤツだな、ナターリアは」

 

「……Pチャン」

 

「ん?どうした、みく」

 

「その……みくも……Pチャンのお寿司が、欲しいにゃ……ダメ……?」ウルッ

 

「えっ?いや……みくがいいなら、いいけど……んじゃあ、今、俺のと同じ物を注文するから、少し待ってろ」

 

「もうっ!そういうことじゃないにゃ!おバカッ!さっさと、Pチャンのお寿司をみくによこすにゃ!」

 

パクッ!

 

「ちょっ……みくっ……!?」

 

「ワァオ♪ミクってば、超ダイタンだねェ〜♪」

 

「……に”ゃ”あ”〜……お口の中に……お魚の味が、広がってっ……キクにゃあ〜……!」

 

「おいおい……一体、何をしてるんだ……?」

 

「だって……Pチャンのお寿司なら……美味しいと、思ったんだもん……//」

 

「ふぅ。俺はいつ、寿司職人になったんだよ。とりあえず、口直しに唐揚げとかハンバーグでも、頼むか?」

 

「……Pチャンに、任せるにゃ……//」

 

「ああっ!ハイハ〜イ!ナターリアもプロデューサーに、スシを選んで欲し〜イ♪」

 

「ナターリアもか……?まあ、いいか。じゃあ、適当に選ばせてもらうぞ。何にしようかな〜っと」

 

------------------------------------------------

 

「結構、楽しめたにゃ♪ご馳走様♪Pチャン」

 

「気にするな。普段から、頑張ってくれてるお礼だよ」

 

「みんなで一緒に、スシを食べられてよかったヨ♪ありがとう♪プロデューサー♪」

 

「喜んでもらえてよかった。寿司が大好きだもんな、ナターリアは」

 

「……ねぇ、Pチャン。さっきの……お寿司を食べてたみくを見て……どう思った……?」

 

「ん?どう思ったって……何だよ?」

 

「ほら……例えば、その……健気だな〜とか、オトナっぽいな〜、とか……色々とあるじゃん……//」

 

「……そうだな……マジで、バカだと思ったよ」

 

「にゃあっ……!?お、おバカァ!?」

 

「勝手に俺の寿司を取って、苦手だって言いながら食べてたんだ。バカ以外の、何者でもないだろう」

 

「ひっど〜い!Pチャンはやっぱり、Pチャンにゃ!女の子のことを、何もわかってないんだから!おバカ!」

 

「みくのことは全て、お見通しだ。だから、何事も無理はするな。俺の、大切なアイドルなんだからさ」

 

「っ……いつもそうやって……本当に、ずるいにゃ……でもみく、頑張って、お魚が苦手なのを克服するよ」

 

「……だから……いつか、Pチャンと「二人っきり」で、回らないお寿司に行きたいにゃ……//」

 

「おっ、いいなそれ。でも、それまでに俺の方が先に、現役を引退してるかもな、なんて」

 

「もうっ!じゃあ、そうならないためにも、さっさとみくを、人気アイドルにするにゃっ!」

 

「ははっ、わかったわかった。期待をしてるぞ」

 

「でも……もし売れないまま、ずるずるいっちゃったら……Pチャンに「責任」を取ってもらうからね……♪」

 

プニッ♪

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……い、いきなり、何だよっ!?」

 

「にゃふふ……Pチャンは、今のみくと「オトナ」なみく……どっちが好きかにゃ……?//」

 

「……オトナって……お前……//」

 

「ン……?ああッ!プロデューサーったら、ミクと何をしてるノ!?」

 

「い、いや……これはだな……こいつが勝手に、変なことをして来ただけで……//」

 

「あれあれ〜?Pチャンってばぁ、にゃにを想像しちゃってるのかなぁ〜?ン〜?」

 

「モウッ!また、プロデューサーってば、ヘンなことを考えてル!ほらっ!もう行くヨ!」

 

「うわあっ!?急に、引っ張るなって!!」

 

「……ムゥ……目を離すと、すぐにコレなんだかラ……ダメだヨッ……」

 

「まあ、デートの邪魔をしちゃ悪いから、みくもそろそろ退散するにゃ♪……あっ、最後に、一ついい?」

 

「何だよ……?」

 

「……今度は「オイシイ」ハンバーグを、奢ってもらうからね♪覚悟をするにゃ♪」

 

「……はいはい……わかりましたよ。半ば、騙すような形で連れて来ちゃったのも、事実だからな」

 

「にゃふふ……♪約束だからね……♪」

 

「だから、これからもアイドルを頑張ってくれよ。頼むぞ」

 

「もちろんにゃ♪だけど……色々なことも、頑張らないとね♪例えば……Pチャンのこととか……♪」

 

「……は?俺のこと……?」

 

「それじゃあね〜♪二人とも〜♪ゆっくり、二人で楽しんでねぇ〜♪」

 

「何だったんだ、あいつ……って!だから、そんなに引っ張るなって!わかったから!」

 

「……知らないモン……」

 

------------------------------------------------

 

ザァ~……ザァ~……

 

「すごい……綺麗だネ……」

 

「あぁ。とても、綺麗な夕日が見える海辺だな」

 

「そうデショ♪ここの場所、ナターリアのお気に入りなんダ♪」

 

「なるほど。よく来たりするのか?」

 

「ウン……たまに来るノ。この夕日を見てると、リオを思いだすんダ……それと、パパとママのことモ……」

 

「……そうか、そうだよな……女の子一人で、異国の地にやって来たんだ。やっぱり、寂しいよな……」

 

「ううん。今はもう、寂しくないヨ♪アイドルの子や、他にも、色んなヒトたちともお友達になれたシ……」

 

ギュッ♪

 

「……プロデューサーっていう……ステキなダーリンとも、出会えたしネ……エヘヘ……♪//」

 

「ちょっ……だから、近いって……//」

 

「あのね……ナターリア……ミカやハヤテの気持ちが少し、わかったかもしれないノ……」

 

「ん?美嘉と颯が、どうかしたのか?」

 

「よくわからないけド……プロデューサーが、他の女の子と一緒にいると、ムネがもやもやするんダ……」

 

「……もしかして、これが「シット」っていうものなのかナ?ミユやミクのことは、大好きなはずなの二……」

 

「俺はともかく……アイドルたちに嫉妬するってことは、いいことなんじゃないか?」

 

「えっ……イイコト……?」

 

「大好きだからこそ、そのアイドルたちのいいところや、羨ましいところが、魅力的に見えてるんだと思う」

 

「だから、少しでも近づきたい、むしろそれ以上になりたい。こう、ナターリアは思ってるんじゃないか?」

 

「……そっカ……今のナターリアは、アイドルだもんネ……でも、それはミユもミクも、一緒だよネ……」

 

「大切なことに気づけて偉いぞ。これでまた、立派なアイドルへと一歩、近づけたな。将来が楽しみだ」

 

「ショウライ……ねぇ……プロデューサー……一つ、聞いてイイ……?」

 

------------------------------------------------

 

「うん?どうした?」

 

「もしサ……ナターリアがショウライ、ウェディングドレスを着たら……一番最初に、見てくれル……?」

 

「あぁ、きっと素敵だろうな。でも、それもいいけど、今はしっかりとアイドルを頑張ってくれよ」

 

「あっ……そうだったネ……♪エヘヘ……イケナイイケナイ……//」

 

「でも、その時はみんなで、ナターリアをお祝いしてやるよ。楽しいパーティーにしようぜ」

 

「ヤクソクだヨッ♪じゃあ、指切りしようヨ♪ねっ♪」

 

「うん、約束するよ」

 

「指切りゲンマン♪ウソついたら、ハリセンボンの〜ますッ♪指キッタ♪」

 

「よし。ナターリアに、楽しい思い出をたくさん作ってもらうために、俺も頑張らないとな」

 

「……それじゃあ、サッソク……今から「ステキ」な思い出を作りたいノ……イイ……?」

 

「ん?作るって……何を……んんっ……!?」

 

チュッ……♪

 

「……♪」

 

「……ぷあっ……な、ナターリアっ……!?//」

 

「……「初めての」思い出は……プロデューサーの味がしたヨ……♪」

 

「初めてって……お前……//」

 

「ふふっ……スキな人に、こういうことをするのっテ……こんな気持ちなんダ……」

 

「……「温かさ」が残ってて……すごく、ドキドキしてるヨ……エヘヘ……♪」

 

「それに「薬指」で指切りをしちゃったし、ナターリアはもう、プロデューサーのお嫁さんだネ♪」

 

「……少し、整理をしよう。まず、薬指の意味はわかってるのか?別に、体にいい指って、意味じゃないぞ?」

 

「わかってるっテ♪前に、ミユが教えてくれたんダ♪日本で薬指は、お嫁さんの指って意味なんでしょ?」

 

「ある意味、間違ってないけど……でも、何か勘違いしてるんじゃないか?……さっきのことも含めて……//」

 

「カンチガイじゃないヨ♪だっテ……ショウライ……」

 

「……「隣で」一番最初に、ワタシを見てくれるのはプロデューサーだって……今、約束したモン……//」

 

「……っ!そ、それは……!」

 

「これからも、ナターリアと色んな思い出、そして、アイドルの思い出ををいっぱい作っていこうヨ♪」

 

「だから、ミ・アモーレ……ウウン。フーフになっても、ずっと一緒ダヨ♪ねっ♪「イトシ」のダーリン♪」



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夏恋シンデレラ 松永涼

ザァ~……ザァ~……

 

「う〜ん……日差しが、眩しいぜ……」

 

「サンサンと照る太陽、塩気を含んだ暖かい塩風、淡々と繰り返される、漣の音……もうすっかり、夏だ……」

 

「……」

 

「よぉ、プロデューサーサン。隣、いいか?」

 

「ん……?おっ、涼か。別に大丈夫だぞ」

 

「じゃあ、失礼するよ。ふぅ……日差しが眩しいぜ……もうすっかり、夏だねぇ」

 

「ははっ。涼も、俺と全く同じことを考えてたのか。偶然だな」

 

「ところで……どうかな……?アタシのこの、水着姿は……似合ってるかい?」

 

「うん。とてもよく似合ってるぞ。普段の涼もいいけど、今のその、かわいい水着姿の涼も、俺は好きだ」

 

「か、かわいいか……何だか照れるな……でも、そうか……「好き」なんだね……ふふっ……♪//」

 

「うん?……うわっ!?」

 

「だ〜れだっ♪外したら、かわいい九尾狐が一生、取り憑いちゃうよ〜♪」

 

「……そうだな。めんどくさい狐に、取り憑かれるのはごめんだ。なあ、周子」

 

「あんっ、ひっど〜い!でも、まあいいか♪当ててくれたし♪ほらっ、涼ちゃんばかりずるいぞ〜♪」

 

「うわっ……!?ちょっ……急に、後ろから抱きつくなって!//」

 

「ヒュ〜。この気候並みに、暑いぜ。見せつけてくれるねぇ」

 

「……二人とも……一体、何をやってるんですか……」

 

「おっ、ありすじゃないか。どうしたんだい?」

 

「どうしたもこうしたも、ありません。今がどういう状況なのか、わかってるんですか……?」

 

「わかってるってぇ♪ね〜♪プロデューサーさ〜んっ♪」

 

「……あぁ……そうだな。ふぅ……どうしてこうなったんだか……」

 

------------------------------------------------

 

「よし、ルールを説明する。今回は、数週間後に行う無人島ロケと同じ、六日間をこの島で過ごしてもらう」

 

「まあ、事前に説明した通りだが、リハーサルといえど、本番と同じ環境だ。荷物も全く同じにしてある」

 

「なるほどねぇ。随分と、本格的じゃないか」

 

「初期装備は水と食料、そしてナイフなどの、キャンプ道具が用意してある。各自、この一式を使用してくれ」

 

「それと、日焼け止めは無限にあるからな。ケガをした時も、医療スタッフに待機してもらってるから安心だ」

 

「そこは、気を遣ってくれるんですね……サバイバルなのに……」

 

「あくまで、アイドルたちのサバイバルだしな。よし。これで、説明は以上だ。何か質問はあるか?」

 

「は〜い。シューコちゃんから、質問で〜す。プロデューサーさんは、参加せえへんの〜?」

 

「あぁ。俺はスタッフさんと一緒に、近場の船で待機だ。何かあったら、すぐに呼んでくれ」

 

「おや?なんか、打ち合わせと違うねぇ。なぁ、スタッフさん」

 

「はい。では、プロデューサーさんの水着も用意してありますので、着替えて来てください」

 

「……はい?」

 

「だってさ。そういうことだから、着替えてきなよ」

 

「いや……だから俺は、スタッフさんと一緒に、船で待機して……」

 

「んもう!さっさと、脱いだ脱いだ!それとも……あたしたちが脱がせてあげようか?ねっ、ありすちゃん♪」

 

「なっ……何で、私に聞くんですか!知りませんっ!//」

 

「……あの……スタッフさん?これは、一体……」

 

「まあ……そういうことですので……♪」

 

「さあ、いくよ〜。まずは、スーツのボタンを外してと……」

 

「ちょっ……!あぁ、もう!わかったよ!自分で着替えてくるから、少し待ってろ!//」

 

「流石は、プロデューサーサンだ。物分かりがよくて、助かるぜ」

 

------------------------------------------------

 

「まさかあの時、二人が俺の知らないところで、打ち合わせをしてたとはな……」

 

「あくまで今回は、リハーサルなんやし、一緒にいてくれてもええやん♪ねぇ〜、ありすちゃん♪」

 

「だから何で、いちいち私に聞くんですか!……でも、二人だけで勝手に決めないでください。唐突すぎます」

 

「ま、いいじゃないか。顔馴染みの男性がいてくれた方が、心強いと思うぜ?」

 

「それは……確かに、そうですけど……では、承諾した以上はしっかりしてくださいね?」

 

「……これでも……「私の」お兄さんなんですから……//」

 

「うんうん♪あたしたちを見守ってね♪おにいた〜ん♪」

 

ムニュッ♪

 

「おぉ。普段のスーツ姿じゃわからなかったけど、意外と筋肉質で、がっしりしてるんだね♪流石は男性だな♪」

 

「うあっ…!ふ、二人して何だよ!暑苦しいから離れろっ!//」

 

「……」

 

「……ふふっ。ありすちゃんも、こっちに来る……?」

 

「なっ……!わ、私は、そんなはしたないことはしませんっ!//」

 

「あんっ、はしたないだなんて……じゃあいいも〜ん♪おにいたんは、あたしたちで独占しちゃうんだからっ♪」

 

「……むぅ〜」

 

「……と、とにかく!俺は寝床を組み立ててくるから、お前たちはあっちの海で遊んでろ!じゃあなっ!//」

 

「きゃっ……行っちゃった……んも〜、しゃ〜ないなあ、プロデューサーさんは〜♪」

 

「ふぅ。もう少し、レディの扱い方をわかって欲しいねぇ。ま、ある意味でプロデューサーサンらしいけどな」

 

「……お二人とも……ダメですよ?私たちはアイドルなんですから、ああいうことは控えないと……」

 

「ありすちゃんってば、マジメ〜♪それじゃあ、そんなありすちゃんには……てりゃっ♪」

 

「きゃっ……!ちょっと、周子さん!急に、何をするんですかっ!!」

 

「嫉妬の「炎」を消さなきゃな〜って、思ったんよ♪てりゃっ♪そりゃっ♪」

 

「ひうっ!やっ!……またやりましたね……もう、周子さんには容赦しません……覚悟をしてください……!」

 

「や〜ん♪涼ちゃ〜ん、助けて〜♪ありすちゃんが怖ぁ〜い♪」

 

「そうだな。とりあえず、プロデューサーサンのお言葉に甘えて遊びに行こうぜ」

 

------------------------------------------------

 

「これを、こうしてこうやって……よし……」

 

「……ふぅ……ま、こんなもんだろ。寝床の完成だ」

 

「しかし……リハーサルをするとは聞いてたけど、まさか、俺まで参加とはな……予想外だったぜ……」

 

「まあ……とりあえず、引き受けた以上は俺も頑張らないとな。だって、三人は俺の大切な……うわあっ!?」

 

「……だ〜れだっ♪」

 

「またか……おい、しゅ……じゃなくて……涼か?」

 

「当ったりぃ♪流石は、プロデューサーサンだね♪」

 

「何だ?もう、遊びは終わったのか?」

 

「いや、ちょっと様子を見に、抜け出してきたんだが……どうやら、心配はいらないみたいだな♪」

 

「ははっ。心配して、来てくれたのか。でも、この通り無事に、完成したぞ」

 

「……なあ……こんなことを聞くのは、野暮だけどさ……これって、ルール的にオッケーなのか……?」

 

「まあ、本番でもお助けカードシステムがあるし、それを使ったってことにしてくれ。それに……」

 

「……俺がここにいるのだって、ある意味「特例」だろ?だから、オッケーってことだ」

 

「あはは♪そうだったね♪確かに今回は、プロデューサーサンがいてくれるもんな♪」

 

「女の子だけじゃ正直、心配だけど……でも、本番の時は三人で、サバイバルをしてもらうんだし、頼むぞ?」

 

「ふ〜ん……アイドルとしてじゃなく「女性」として、心配をしてくれてるのか……」

 

「当たり前だろ。涼たちは女の子なんだ。そりゃ、心配になるさ」

 

「……そうか……それじゃあ、頼りにしてるぜ♪アニキっ♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!?り、涼!?」

 

「組み立ては終わったんだろ?なら、プロデューサーサンも、アタシたちと一緒に遊ぼうよ♪善は急げだぜっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「「「「いただきま〜す♪」」」」

 

「うん。この缶詰、結構いけるな」

 

「にゃはは♪たくさん遊んだあとの缶詰は、美味しいね♪」

 

「普段、食べ慣れてるものも屋外で食べると、一味違うよな。雰囲気も加味されるっていうか」

 

「それにしても……意外です……プロデューサーさんって、火を起こすのが上手なんですね……」

 

「いやいや。前に、教えてもらったことがあるんだよ。拓海にな」

 

「えっ、拓海さんに……?」

 

「あぁ。ツーリングをしたあととかに、よく焚き火をしてるそうだから、前に教えてもらったことがあるんだ」

 

「……そうか。だからあの時、拓海があんなに笑顔で、このことを……」

 

「うん?拓海がどうかしたのか?」

 

「いや、ただの独り言さ。それより、楽しい雰囲気の中、悪いんだが……とうとう来てしまったな……」

 

「……えぇ……食料が……切れてしまいましたね……」

 

「あぁ……まぁ、しょうがないさ。本番と同じ、約二日分しか食料を用意してなかったからな」

 

「つまり、自ら調達をしないとってことだね。よし、明日からさっそく、アタシたちで調達をしに行こうぜ」

 

「覚悟はしていましたけど……仕方がありませんね。嘆いていても、始まりませんから……」

 

「それじゃあ、明日の散策のために、ジャンケンでチーム分けをしようよ♪二人一組で行動とかどう?」

 

「あぁ、いいなそれ。みんなはどうだ?」

 

「アタシも賛成だよ」

 

「一番、公平ですからね。私も賛成です」

 

「決まりやね♪それじゃあ、行くよ〜♪グーとパーで分かれましょっ♪ほいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「さてと。よく寝れたし、今日も一日、頑張るぞっと」

 

「二人は山で、俺たちは海か……いくらこの島に、俺たちだけしかいないとはいえ……少し心配だな……」

 

「……プロデューサーさ〜ん!こっちですよ〜〜っ!」

 

「あぁ。今いくよ〜、ありす〜!ま、二人ならお姉さんだし、何より涼がついてるから大丈夫か」

 

「もうっ!早く来てください!せっかく見つけたのに、カニさんが逃げてしまいますっ!」

 

「悪い悪い。それで?カニはどこにいるんだ?」

 

「確か、ここら辺に……あっ!いました!もたもたしてると逃げてしまいますよ!ほら、こっちですっ!」ギュッ

 

「ちょっ……急に引っ張るなって!少し、落ち着け!」

 

「ダメですっ!そうやっていつも、よそ見ばかりをして、私のことを全然見てくれないじゃないですか!」

 

「は?よそ見……?……って……ここは岩場なんだから、そんなに走ると……うわっ……!?」

 

「きゃっ……!」

 

ドサッ!

 

「いてて……ほら、言わんこっちゃない……おい、ありす、大丈夫か……?」

 

「……二人きりなのをいいことに、どさくさに紛れて私に……帰ったら、早苗さんに報告します……」

 

「ちょっ……何でだよ!だいたい、ありすが周りを見ずに、おバカな行動をしたのが悪いんだろうが!」

 

「なっ……!ぷ、プロデューサーさんの方がおバカです!そうやって、他の女性にも色目を使ってるクセに!」

 

「何だよ色目って!そもそも、ありすみたいなお子ちゃまが、そんな言葉を使うなんて十年早いわ!」

 

ギャーギャー!

 

「ハァ〜……ハァ〜……全く……知識だけは無駄にある、頭でっかちめ……!」

 

「だ、だいたい……アイドルのプロデューサーならもう少し、理性と良識をですね……」

 

「「……」」

 

「……って……こんなことを、してる場合じゃなかったな。ほら、俺たちはここに、何をしに来たんだ?」

 

「そうでしたね……私としたことが、迂闊でした。では、改めてカニさんを捕まえに行きましょう」

 

「なあ……なんか、さっきの時より……近くないか……?」

 

「プロデューサーさんは、目が離せませんからね。私が、しっかりと側にいてあげます。感謝してくださいね」

 

「……あ〜、はいはい。じゃあ、お願いしますよ。ありすおねーさん」

 

------------------------------------------------

 

「お〜い。今、戻ったぞ〜」

 

「ん……?おっ。プロデューサーサンと、ありすか。お疲れ様」

 

「見てくれ、立派なカニだろ?ありすが頑張って、獲ってくれたんだ。なあ、ありす」

 

「いえ、そんな……むしろ、プロデューサーさんと二人の「共同作業」で獲った、カニさんですっ……//」

 

「おぉ♪二人とも、偉い偉〜い♪でも、あたしたちもなかなか、大物が取れたんよ♪ねっ、涼ちゃん♪」

 

「そうだな。正直、最初は捕まえるのに抵抗があったが……人間、追い詰められるとどうにかなるもんだな♪」

 

「そういえば、さっきから何か、香ばしい香りが漂ってきて……って……きゃああああっ!!へ、ヘビ〜!?」

 

「……これ……本物なのか……?」

 

「うん♪本物だよ〜♪それじゃあ、そんな偉いありすちゃんには、焼きたてを味見させてあげる♪」

 

「こ、子供扱いしないでください!私は、お姉さんですから……プロデューサーさんに、譲ってあげます……」

 

「はあっ!?お、俺っ……!?」

 

「わぁお♪ありすちゃんってば、オットナ〜♪それじゃあ、おにいたんが先だねっ♪はい、あ〜ん♪」

 

「いや、俺は……むぐっ!?」

 

「おぉ、ワイルドにいったな。流石は、プロデューサーサンだぜ」

 

「……んぐ……おい!急に、俺の口に……って、待てよ……意外とイケるな、これ。まるで鶏肉みたいだ……」

 

「えっ、マジ!?んじゃあ、シューコちゃんもいただきま〜す♪……ん〜♪本当だ〜♪おいし〜い♪」

 

「ほら、せっかくだし、アタシたちも食べてみようぜ。ありす」

 

「……うぅ……では、少しだけ……いただきます……結構、美味しいですね……これ……」

 

「うん、これは確かにイケるな♪本当に、鶏肉みたいだぜ♪」

 

「なあ……まさかとは思うが……俺を、毒味役にしたんじゃないだろうな……?」

 

「んも〜、毒味役だなんて人聞きの悪い〜。ただ、焼きたてアツアツを、食べてもらいたかっただけだよ♪」

 

「ふぅ……まあ、いいか。じゃあ、俺たちが獲ったカニもあるし、無人島初の獲物パーティといこうぜ」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

------------------------------------------------

 

「実はね、この島……強い恨みをもった生霊が、集まる島だって言われてるんだ……」

 

「い、生霊ですか……?」

 

「うん。生霊っていうのはね、誰かの強い思いが実体化して、その思った人に取り憑く霊のことなの」

 

「だから……過去に、この島に訪れた人たちは、その恨みをもった生霊にみんな……ふ、フフフ……」

 

「……おい……周子……?」

 

「フ……フフ……フフフ……ア……ア〜リ〜ス〜チャ〜〜〜〜ンッ!!」

 

「ひいっ!?きゃああああっ!」

 

ギューッ♪

 

「……ってな感じに、訪れた人はみんな、かわいい生霊に食べられちゃったのでしたぁ〜♪」

 

「むぐ……し、周子さんっ……」

 

「ははっ、面白いじゃないか。でも、幽霊より、人間の方が怖いと思わないか?なぁ、プロデューサーサン」

 

「……何で……俺に振ったんだ……?」

 

「確かに……男一人と女の子三人。無人島、六日間、何も起きないはずがなく……」

 

「理性を失った人間の、三大欲求のうちの一つが、あたしたちに牙を剝いて……や〜ん♪超こわ〜いっ♪」

 

「そうでしたね……あやふやな存在より「確かに」いる実体の方が、怖いですよね……」

 

「さっきから、お前たちは一体……何を言ってるんだよ……?」

 

「……知ってるク・セ・にっ♪素直になっても、ええんよ……?」

 

タプンッ♪

 

「なっ……!またお前は……!と、とにかく!俺は手洗いを済まして、とっとと寝るからな!じゃあな!//」

 

「ふふっ……あんなに赤くして……プロデューサーはんは相変わらず、からかい甲斐が、ありますなあ〜♪」

 

「……だ、ダメですよ、周子さんっ……私たちはアイドルであり、その……女の子でもあるんですから……//」

 

「んにゃ?もしかして、博識なありす先生は知ってるのかなぁ〜?ん〜?」

 

「なっ……し、知りませんっ!ほら!私たちも火を消して、明日に備えますよっ!//」

 

「そうだ、周子。明日の獲物探しのためにも、今日はお開きにしようぜ。ほら、火を消すよ」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……済んだ済んだ。さて……キャンプに戻って、俺も寝るか……」

 

「しかし……何が性よ……じゃなくて!生霊が出る島だよ……昔の、B級映画じゃあるまいし……」

 

「……シ〜モ〜ベ〜ク〜ン〜……」

 

「周子は本当に、わけの分からんことをいつも……ん?今、何か……声が聞こえたような……気のせいか?」

 

「キノセイジャナイヨ〜……ホラ……コッチコッチ〜……♪」

 

「こっち……うわっ!?ち、ちとせ!?」

 

「グッモ〜ニン♪シモベクン……♪アソビニキチャッタ……♪」

 

「あぁ……グッモ〜……って!今はもう、夜中だぞ!?それに、何でちとせがここにいるんだよ!」

 

「アハッ……♪ドウシテデショウカ……♪アテテミテゴランナサイ……♪」

 

「どうしてって……ん?待てよ……まさか、これって周子が言ってた……少し、失礼するぞ……?」

 

スカッ

 

「ヤンッ……♪シモベクンッテバ、ドコサワッテルノ……エッチ……//」

 

「やっぱり……まさか、生霊ってヤツなのか……?」

 

「ダ〜イセイカ〜イ♪ネテタライツノマニカ、シモベクンノマエニイタノ♪ラッキーダネ♪アハッ……♪」

 

「なるほど……それにしても、随分とよく喋る生霊だな……」

 

「……ヤバッ……ハヤクワタシニ、カマッテクレナイト……エイエンニ、トリツイチャウゾ〜……」

 

「急に、物騒なことを言うな!あぁ、もう!わかった!帰ったらたくさん構ってやるよ!それでいいだろ!?」

 

「ソッカ……♪ジャア、トリツカナイデアゲル……♪ソノカワリ……カエッテキタラ、カクゴシテネ……♪」

 

「まあ……お手柔らかに頼むぞ?何だって、ちとせはアイドル……って、あれ……?お〜い、ちとせ〜?」

 

「……」

 

ギュッ

 

「いてっ……やっぱり、夢じゃないのか……?でも、さっき確かに、目の前にちとせがいたような気が……」

 

「……そ、そうか!きっと、疲れてたんだな!さて、そろそろ寝るか!明日も早いしな!うんっ!」

 

「……ウフフ……「ヤクソク」ダカラネ……シモベクン……♪」

 

------------------------------------------------

 

「さて……さっさと、キャンプに戻ろっと……ん?」

 

「あそこに誰か……って、あれは……涼?」

 

「……」

 

「……そうだ……せっかくだし、ちょっと遊んでやるか……よ〜し……そ〜っと、近づいて……」

 

「……涼サ〜ン……ア〜ソ〜ボ〜……♪」

 

「ひっ……きゃああああっ!?」

 

「うわっ……!?そ、そんなに驚くなって!俺だよ俺っ!」

 

「な、何だ……プロデューサーサンか……びっくりさせないでくれよ……」

 

「悪い悪い。ところで、何をしてたんだ?」

 

「ん?あぁ。寝る前に少し、無人島の夜空を眺めようと思ってさ。プロデューサーサンは?」

 

「まぁ、俺もそんなところだ。さっきも、あっちの方で眺めて来たんだよ「ちとせ」とな」

 

「えっ……ちとせサンと……?」

 

「あぁ。信じてくれないかもしれないけど、さっき、俺の目の前に、ちとせがいたんだ」

 

「ここにいるはずがないのに、おかしいよな。でも、確かにこの目で見たんだよ」

 

「……そうか……プロデューサーサンも……実は、アタシもさっき「小梅」に出会ったんだ。偶然な……」

 

「えっ」

 

「「……」」

 

「……なあ、涼。ここは一つ、お互いに「気のせい」だったってことに、しないか……?」

 

「そうだな……アタシたちは寝ぼけていた、そういうことにしようぜ……」

 

「よし、決まりだな。それじゃあ、おやすみ。涼」

 

「……待ってくれ……少しだけ……いいか……?」

 

「うん?どうした?」

 

「その……アタシの手を……少しの間だけ、握っててくれないか……?……頼む……//」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「……ふあ……やばい……全然、寝れなかった……」

 

「それにしても…涼って意外と怖がりなんだな…まさか周子の生霊の話で寝れなくなっていたとは……」

 

「……ま、いいか。涼のかわいい姿が、見れたことだし。さて、三人と合流して、今日も収穫に……えっ……」

 

「……」

 

「……涼?……それに、周子もこんなところで寝て……お〜い。二人とも、起きろ……っ!?」

 

「何だこれ……ひどい血だ……まさか、生霊に……?……涼……大丈夫か!おい!周子も起きてくれよっ!」

 

「……」

 

「くっ……いや、まだ望みはあるはずだ……!少し、抵抗があるけど……そんなことを言ってられるか……!」

 

「……よし。まずは仰向けにして、服をまくってと……少し、失礼するぞ……涼……」

 

「……っ……!?ちょ、ちょっと、待ってくれっ!!//」

 

「うわあっ!な、何だ!?」

 

「……むぅ〜。ちょっと〜?プロデューサーさぁん?あたしの涼ちゃんに、何をする気なんだい?」

 

「何って……とりあえず、人工呼吸をしながら、心臓マッサージを……って、周子!?どういうことだ……?」

 

「ふっふっふ……実はあたしたち、この血っぽい汁の実を使って、死体ごっこをしてたんよ♪ねっ、涼ちゃん♪」

 

「あぁ。あの状態で、ありすを驚かそうとしたんだが……少し、想定外だったよ」

 

「スンスン……確かに、これは果汁の匂いだ……ふぅ、何だよ、死体ごっこって……人騒がせな二人だな……」

 

「めんごめんご♪じゃあ次は、ありすちゃんを救出しに行こうよ♪あっちの方で、血まみれで倒れてたし♪」

 

「……ナチュラルに物騒なことを言うな……ていうか、ありすもかよ……」

 

「……なぁ、プロデューサーサン……その……さっきは、ドキドキしたか……?」

 

「したに決まってるだろ。朝起きて、二人があんな状態で倒れてば、そりゃもう、心臓が跳ね上がるぐらいな」

 

「そうじゃなくて……ほら……直接「しよう」としたわけだし……アタシも、ドキドキしたっていうか……//」

 

「???」

 

「……悪い、変なことを聞いちまったな。じゃあ、周子。一緒に果汁を落としに行こうよ。少し待っててくれ」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「きゃあ〜。ありすちゃんが倒れてる〜。どうしよ〜」

 

「おい、大丈夫かい?ありす……返事がないねぇ。どうしようか、周子」

 

「これは、緊急事態みたいやし……それじゃあ、シューコちゃんが、人工呼吸をしてあげないとね♪」

 

「……!」

 

「じゃあ、心臓マッサージのために、まずはありすちゃんの水着を……うへへ……」

 

「ち、ちょっと!周子さんっ!ハレンチですよっ!//」

 

「……ありす……ちゃん……?無事でよかった〜ん♪」

 

「ちょっ……わざとらしい演技で、抱きついて来ないでくださいっ!」

 

「エ〜。あたしたちぃ、本当にありすちゃんのことを、心配してたんよ〜?」

 

「……それにしては……手つきが何だか……イヤらしかったです……」

 

「そんなことあらへんって♪それに……あたしたちも、この方法で助けてもらったもん……//」チラッ

 

「……ん?」

 

「……周子さんと、涼さんにまで……プロデューサーさん……やっぱり帰ったら、早苗さんに報告します……」

 

「ちょっ……何で俺に、飛び火するんだよ!変に巻き込むな!//」

 

「知りません。それに、周子さんも悪いんです。あの時、急に怪談をしようって、言い始めるんですから……」

 

「あれ〜?もしかして、あの話を聞いて、怖くなっちゃったのかにゃ〜?」

 

「そ、そんなことないですっ!私はもう、大人ですので!とにかく!まずは、この果汁を落としてきます!」

 

「ま、プロデューサーサンが、助けてくれようとしたのは事実だけどな。行ってきなよ」

 

「にゃはは♪いってらっしゃ〜い♪」

 

「ふぅ……さて。一件落着をしたことだし、ありすが来たら、ジャングルに向かうぞ。今日はみんなで収穫だ」

 

「あぁ、そうだな。腕がなるぜ」

 

------------------------------------------------

 

「よし……ジャングルに着いたな。さ〜て!今日もたくさん、獲物を捕まえるぞ〜!」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

「「「「歩く速度をあげた〜♪」」」」

 

「……っ……!」

 

「「「言葉〜♪」」」

 

「……」

 

「……ん?涼、どうしたんだ?」

 

「気にしないでくれ……少し、ひねっちまっただけ……くっ……!」

 

「ちょっ……涼さんっ!大丈夫ですか!?」

 

「……面目ない……アタシとしたことが……」

 

「う〜ん、外傷はなさそうだけど……あっ、そうだっ♪プロデューサーさんが隣に、一緒にいてあげなよ♪」

 

「えっ、いいのか……?」

 

「任せて♪二人の分まで、たくさん取ってきてあげるから♪ねっ、ありすちゃん♪」

 

「そうですね。こういう時こそ、助け合いの精神ですよ。それに、女性を一人で、置いていく気なんですか?」

 

「……そうだな。それじゃあ俺は、涼を連れて行くよ。よし……行くぞ、涼」

 

「ひゃっ……!?」

 

「わぁお……プロデューサーさんってば……大胆やねぇ〜……//」

 

「ぷ、プロデューサーさん……それって……お姫様だっこでは……?//」

 

「ちょっ……い、いいって……少し、捻っただけだからさ……//」

 

「ダメだ。ジャングルに、女の子を一人にしておけるか。とりあえず戻って、スタッフさんに診てもらうぞ」

 

「……わかったよ。全く……普段は優柔不断なのに……何でこういう時だけは、いつも……//」

 

「じゃあ二人とも、あとはよろしく頼む。怪我とかには、気をつけてくれ」

 

「あんがとさん♪それじゃあ、しっかりと「お姫様」をお送りするんやで〜♪」

 

「なっ……周子のヤツ……バカっ……//」

 

------------------------------------------------

 

「さぁ♪いい感じに、焼けてきたしぃ♪食べよ食べよ〜♪」

 

「今日は、果物もありますからね。デザートもしっかりついてますよ」

 

「悪いな。周子とありすだけで、獲って来てもらって……」

 

「ええよ♪ええよ♪それより、涼ちゃんの方は大丈夫なの?」

 

「あぁ。診てもらったら、軽い捻挫で特に異常はないそうだ。心配をかけて、悪かったね」

 

「そうか〜♪それはよかった♪いやぁ〜、お姫様に対する、王子様の愛のパワーって、やっぱり偉大やねえ〜♪」

 

「ははっ。何だよ、愛のパワーって」

 

「「姫は……この私が、命に代えて護ってみせます!」みたいな〜♪ね〜♪涼ちゃん♪」

 

「なっ……だ、だから……言わないでくれ……//」

 

「でも、とにかく涼さんが、無事でよかったです。このままみんなで、このリハーサルを終わらせましょう」

 

「せやね♪で?プロデューサーさん、どうだったの?」

 

「どうだったって……何が?」

 

「だってぇ、あんなにロマンティックに連れて行ったんだよ?だから、この果物みたいに……あむっ……」

 

「……あんま〜い出来事があったんじゃないかな〜って、思っただけ♪」

 

「特に変わったことはなかったぞ?医療スタッフさんに診てもらったあとは、ずっと安静にしてたしな。」

 

「そうだね。キャンプで、プロデューサーサンと一緒に、安静にさせてもらってたよ」

 

「ふ〜ん……それで?やっぱり、安心した……?」

 

「あぁ。二人でいると、とても安心出来てつい、意識してしまったり……っ……//」

 

「……な〜るほどねぇ〜……♪そうなんだぁ〜……♪」

 

「意識って……あの時、何か考え事をしてたのか?」

 

「き、気にしないでくれ!ほら!せっかくの、愛の籠った獲物が冷める前にいただこうぜ!なっ!ありす!//」

 

「ちょっ……何で急に、私に振るんですか!何も籠っていませんっ……!//」

 

「それじゃあ、食事にしようか♪たくさん獲ってきたから、た〜んと召し上がれ♪」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……今日も相変わらず、快晴だな……太陽が眩しいぜ……」

 

「……」

 

「……あれ?……なぁ、涼。今日って、無人島生活何日目だっけ……?」

 

「ん?おいおい。今日は、六日目の最終日だろ?しっかりしてくれよ」

 

「あぁ……そうだったな。悪い悪い。何だか、すっかり野生化しちゃったな、俺」

 

「まぁ、無理もないさ。アタシもまるで、この島にもう何年もいるような感覚だしな。慣れって怖いよ」

 

「それで、確か今日は、涼と俺のペアで獲物探しだったよな」

 

「そうだな♪だから、頼りにしてるぜ……♪」ジー

 

「ん……?どうした?そんなに、じっと見つめて。俺の顔に何かついてるか?」

 

「いや……なんかさ……リハーサル前より、その……ターザンっぽくなったって思ってさ……//」

 

「ターザンって……それって、褒められてるのか……?」

 

「つまり、野性味が溢れた、ワイルドなアニキになったってことだ♪最高にイケてるよ♪それにさ……」

 

「……「吊り橋効果」って言うのかな……?普段より、プロデューサーサンが「男らしく」見えるぜ……♪//」

 

「そうか?そんなに、変わらないと思うけど……まあでも、それならプロデューサーとして、鼻が高いよ」

 

「ははっ。ワイルドでターザンな、プロデューサーサンか。そりゃ、頼もしいな」

 

「だろ?それに、逞しければ涼たちのことを、しっかりと守れるし、ターザンも悪くないかもしれないな」

 

「……また、そういうことを平気で……バカ……//」

 

「何だ?何か言ったか?」

 

「何でもないよ。それじゃあ、最後は素敵な晩餐にするために、とびっきり美味い食材を探しに行こうぜ♪」

 

「そうだな。周子とありすに世話になった分、俺たちも恩返ししないといけないしな!じゃあ、行くか!」

 

------------------------------------------------

 

「「「「いただきま〜す!」」」」

 

「んぐ……今日のヘビ肉も、なかなかイケるな……」

 

「そうだね。なかなか生きがよくて、肉厚で美味しいよ♪ところで、アタシたちの獲物もどうだい?」

 

「二人が獲ってきてくれた、昆虫や果物も結構イケるよ♪それに、貴重なタンパク質やしね♪」

 

「……改めて考えてみると……この絵面は決して、電波に乗せれませんね…… 色々と……」

 

「にゃはは♪あたしたちってば、すっかり、野生化しちゃったね♪」

 

「ま、そこは収録になったら、何とかしてくれるさ。なんせ、アタシたちはアイドルなんだからなっ♪」

 

「それはそうと……気のせいか、いつもより体が、なんか熱いような気がするな……どうしてだろ?」

 

「確かに……何だか、体がぽかぽかするような、気がしますね……」

 

「んっふっふ〜……実は、今日のヘビ肉の正体はぁ……マ・ム・シ、なんだよねぇ〜♪」

 

「むぐっ……!ま、マムシ……!?」

 

「みんなに、元気になってもらおうと思って、全員分のマムシを捕まえてきたんよ♪特に、涼ちゃんにはねっ♪」

 

「なるほど……滋養強壮にってわけか……確かに、これは精力がつきそうだねぇ……」

 

「……もしかしてぇ……一人だけ違う「精力」がついちゃった…?ね〜、プロデューサーさんっ♪」

 

「……なっ……!?い、一体……何を言ってるんだ……?」

 

「わかってるクセに……♪その証拠に、プロデューサーさんの視線が、さっきから少し「えっち」やで……♪」

 

タプンッ♪

 

「そ、そんなことは……!//」

 

「……実は……「ナニ」かを、期待してるんじゃないか……?ほら……正直に、言ってみろよっ……//」

 

「あ、あわわ……」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……二人とも……様子が、おかしいぞ……?」

 

「安心して……♪あたしたちがしっかりと、リードをしてあげるからっ……♪」

 

「ふふっ……絶対に、逃がさねえからな……アタシたちと最後の「素敵な夜」を……過ごそうぜ……♪」

 

「ま、待てっ……!俺にはまだ、心の準備がっ……//」

 

「……だ、だめです〜〜っ!お、お二人とも、アイドルなんですよ!?いくら何でも、度が過ぎてますっ!//」

 

「……ありすちゃんってば……♪しゃ〜ないなあ♪とりあえず、プチドッキリ成功〜♪」

 

「は……ドッキリ……?」

 

「うんっ♪名付けて「プロデューサーさんは、狼男に変身するのか!?」でした〜♪今、決めたんだけどっ♪」

 

「……だけど……まさか、涼ちゃんも一緒に、ノッてくれるとは……意外だったにゃ〜……♪」

 

「何か、面白そうだったからな。自分で言うのもなんだけど、アタシはこれでも、ノリがいい方なんだぜ?」

 

「流石は、涼ちゃんだねぇ♪せ〜のっ♪」

 

「「イェイ♪」」パチンッ

 

「ふぅ……何だか、この島に来てから、二人のイタズラにばかり、付き合わされてるような気がするな……」

 

「にゃはは♪最後に、楽しいリハーサルの思い出になったやん♪それとも……「本当に」……しちゃう……?//」

 

「なっ……!ま、また……!俺はもう寝るからな!明日は、朝早くに迎えが来るんだから、早く寝ろよ!//」

 

「ふふ……あんなに顔を真っ赤にして……かいらしなあ♪ねっ、ありすちゃん♪」

 

「……し、知りません……全く、もう……//」

 

------------------------------------------------

 

「さてと。寝る前に、いつものベストスポットで、景色を眺めましょうかねぇ」

 

「ふぅ、今日でこのリハーサル生活も、最後か……長かったんだか、短かったんだか……」

 

「それにしても……全く……周子はともかく、涼まで……二人とも、女の子なんだぞ……//」

 

「ふ〜ん……それはつまり……アタシを女性として、意識してくれてるってことかい?」

 

「当たり前だ。なんたって、涼は俺の大切な……ん?」

 

「やぁ、プロデューサーサン。今夜も、月が綺麗だな」

 

「ちょっ……り、涼……!?何で、ここに……!」

 

「何でって……アタシも、景色を眺めに来たんだよ。何か、不都合だったか?」

 

「いや……別に、そうじゃないけど……じゃあせっかくだし、一緒に夜空を眺めるか?」

 

「あぁ、そうさせてもらうよ♪にしても、本当に綺麗な夜空だよな……都会じゃ、見れないぐらいに……」

 

「そうだな、とても幻想的だ。思わず、時間を忘れてしまいそうになるぐらいにな」

 

「「……」」

 

「……なあ、アタシさ……プロデューサーサンと出会えて、本当によかったと思ってるんだ……」

 

「ん……?急に、どうした……?」

 

「前に、アイドルになる前は、アタシがロックバンドのボーカルとして、活動してたって言っただろ?」

 

「あぁ……そうだったって、聞いてるな」

 

「あの頃は楽しかった。アタシはアタシなりに、バンド仲間と一緒に活動が出来て、毎日が幸せだったんだ」

 

「結果的に、バンドは解散しちまったけど、メンバーの意思を継いで、ステージ上で歌えたり踊れたり」

 

「そして、アイドルたちとあの頃みたいに、お互いに切磋琢磨をしつつ、楽しい日々を送れてるのも……」

 

「……プロデューサーサンと出会って……アタシに、ガラスの靴を履かせてくれたおかげだからさ……//」

 

------------------------------------------------

 

「そうか……色々と、聞いてはいたけど……大変だったんだな……」

 

「まあ、今更どうってことないんだけどさ。アタシって、昔から望んだものが、手に入らないことが多くてね」

 

「だからこそ……今が、怖いのさ……あの頃に欲しかったものが、一気に手に入っちゃったしな。あと……」

 

「……っ!?」

 

「……アタシには、縁がないと思っていた「トクベツな」感情もな……もう、何も失いたくないんだ……//」

 

「うあっ……り、涼!?いきなり……どうしたんだよっ……!?」

 

「ふふっ……どうだ、伝わるか……?アタシのドキドキ……♪//」

 

「何だよ、ドキドキって……ていうか、その……あ、当たってるぞ……//」

 

「アタシさ……プロデューサーサンと一緒にいると、いつも気持ちが高揚するんだ。まるでライブの時……」

 

「……じゃないな……強いて言うと「女性の気持ち」ってヤツかな?本当、どうしちまったんだろうね……//」

 

「とりあえず……まずは一旦、離れようぜ……なっ……?」

 

「……ヤダ……アタシのことを、どう思ってるのか答えてくれるまで、絶対に離さねえからな……♪//」

 

「はあっ……!?どう思うって……し、知るか!そんなもん!//」

 

「ふふ……プロデューサーサンの心臓も、ドキドキしてきたぜ……♪もしかして、これが「答え」か……?」

 

「いや……なあ、涼。これ以上は、やめようぜ……?こんなことをしたって、何も……むぐっ!?」

 

チュッ♪

 

「ん、んんっ……ぷあっ……り、涼!?//」

 

「これが、アタシの答えさ。プロデューサーと、秘密の関係があるアイドルってのも、なかなかロックだろ?」

 

「今回の生活で、確信に変わったんだ。もうアタシは負けたくない、アイドル、そして「ライバル」としても」

 

「だから……無人島生活を終えても「人生のサバイバル」を、生き残り続けようぜ♪……アタシと一緒にな♪」



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豪華シンデレラ 大槻唯

ミ”~ンミ"~ンミ"-ン……

 

「あぅ〜……あ”つ”い”〜……」

 

「うん、そうだな」

 

「ねぇ〜……あ”つ”い”よ”ぉ”〜……」

 

「あぁ、暑いな」

 

「……プロデューサーち”ゃ”〜ん”……あ”〜つ”〜い”い”い”い"〜!」

 

「ああああ!うるせええええ!暑いのはわかったから、少し静かにしろっ!!」

 

「イヤ!涼しくなるまで、ゆいゼミは鳴き続けるも〜ん!み”〜ん!み”〜ん”!み”〜んっ!」

 

「エアコンが壊れてるんだから、扇風機で我慢しとけ!それに……」

 

ムギュッ♪

 

「そんなにくっついてくるから、さっきから俺も、暑苦しいんだよ!とっとと離れろ!//」

 

「あ”〜っ!ひっど〜い!健気で乙女なゆいに、そんなイヂワルなこと言っちゃうんだ〜!」

 

「意地悪なのはお前だろ!こんな暑いのに、ベタベタしてきやがって!俺に対しての嫌がらせかよ!」

 

「マジでありえな〜い!もういいもん!こうなったら、徹底的にイヂワルをしてやるんだから!ぎゅ〜っ!!」

 

「ちょっ……あ、当たって……じゃなくて!何、さらに密着してきてるんだよ!」

 

「シ〜ラナ〜イ!!プロデューサーちゃんのおバカ!ドンカン!えっち!!」

 

「はぁっ!?何だよそれっ!だいたい、唯こそ普段からもう少し、アイドルとしての自覚をだな……」

 

「……ふ〜ん。何か、楽しそうなことをしてるじゃん」

 

「全然楽しくねえよ!あぁ、もう……お前からも、何か唯に言ってやってくれ……ん?」

 

「ふふっ♪二人とも、おはよ♪今日も「と〜っても」暑いね♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふう……ま、こんなもんだろ」

 

「わ〜い♪プールだぁ〜♪プロデューサーちゃんってば、やっるぅ〜♪」

 

「倉庫に、ビニールプールがあったのを思い出したんだ。これで少しは、涼めるだろ」

 

「確かに、屋上でなら気兼ねなく、涼めるよね。やるじゃん」

 

「しかし……偶然だな加蓮。何か、用があったのか?」

 

「ショッピング帰りに、ちょ〜っと、寄ってみたんだ♪そしたら……グッドタイミングだったよ♪」

 

「グッドタイミングって……エアコンは今、壊れてるし……逆に、タイミングが悪かったんじゃないか?」

 

「そういう意味じゃなくて、二人の、あつ〜いやりとりが見れて、よかったってこと♪」

 

「あつい……って!だからあれは、唯が勝手にくっついてきただけだ!変な風に言うな!」

 

「……むっ」

 

「どうだか……ドア越しから、二人の声が丸聞こえだったよ?まあ、いつものことだし、どうだっていいけど」

 

「いつものって、どういうことだよ!全く……それじゃあ、俺は戻るぞ」

 

「えっ、プロデューサーは入らないの?」

 

「あぁ。俺にはまだ、仕事があるからな。二人だけで楽しんでくれ」

 

「……あ〜☆ホースが、変な方向に曲がっちゃった〜☆」

 

ビシャアアッ!

 

「うわっ!?ちょっ……おい!何をするんだよ唯!!」

 

「ごっめ〜ん☆つい、手が滑っちゃった☆てへぺろ☆」

 

「あぁ、もう……びしょ濡れじゃないか……これは一旦、乾かさないとダメだな……」

 

「それは大変だぁ!これはもう、Yシャツが乾くまで、ゆいたちと一緒にプールを楽しむしかないねぇ☆」

 

「あのなあ……誰のせいで、こうなったと思ってるんだ……?」

 

「まあ、いいじゃん♪乾くまでの間、あたしたちと涼もうよ♪どうせ、エアコンは壊れてるんでしょ?」

 

「そりゃ、そうだけど……まあ、そうだな。天気もいいからすぐ乾くだろうし、少しなら大丈夫か」

 

「決まりだね♪じゃあ、唯。あたしたちは着替えてこようか♪……覗いちゃだめだぞ♪」

 

「覗くか!と、とっとと着替えて来いっ!//」

 

「は〜い☆それじゃあ、ゆいたちは着替えてくるから、プロデューサーちゃんは待っててね〜☆」

 

------------------------------------------------

 

チャプッ……♪

 

「う〜んっ♪ひんやりしてて気持ちいい〜♪やっぱり、夏はプールがいっちばんだよねぇ〜♪」

 

「ふふっ、そうね♪とてもひんやりしてて、気持ちいい♪」

 

「……なぁ……やっぱり、俺さ……戻っていいか?」

 

「エ〜、何でぇ?ひんやりしてて、気持ちいいじゃん♪」

 

「確かに、気持ちいいんだぞ……?でも……」

 

「でも?」

 

「……狭いプールで……水着の女の子二人と、この絵面はヤバくないですかね……?色々と……」

 

「あれ〜?プロデューサーってばもしかして、あたしたちのことを「意識」しちゃってるのぉ〜?」

 

「そ、それは……って!意識がどうこうより、このビニールプールに三人は狭すぎだろっ!//」

 

「そう?あたしは、大丈夫だけど……唯は?」

 

「ゆいもだいじょ〜ぶだよっ♪楽しいことは、みんなで共有しないとね〜☆」

 

「……そうか……じゃあ、野郎がいなくなれば、もっとスペースに余裕ができるな……では、俺はこれで……」

 

「ダ〜メッ♪楽しいことは「三人で」共有だぞっ☆ほらっ♪アゲアゲでいこうぜ☆うりうり〜♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!?//」

 

「こんな、両手に花の状態だなんて、幸せものだぞ〜?ま、拒否権はないんだけどね♪えいっ♪」

 

プニュッ♪

 

「くうっ……お、お前たちっ……!//」

 

「……ふふ……ほ〜ら♪顔が真っ赤になってきたぞ♪だから、あたしたちと一緒に涼もうよ♪」

 

「そうだそうだ〜♪いつも、ゆいたちに「熱中症に気をつけろ」って言ってるじゃんっ♪」

 

「そ、それは……」

 

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「……わかったよ。アイドルたちに、偉そうに言っておいて、自分がなったんじゃ示しがつかないからな……」

 

「うんうん♪流石はプロデューサー♪わかってるぅ♪ところで……どう?あたしたちの水着姿はっ♪」

 

「ん?どうって……かわいいんじゃないか……?」

 

「そっか……ありがとっ♪本当に、グッドタイミングだったよ……♪」

 

「なんか、さっきも言ってたな……どういう意味なんだ……?」

 

「さっきさ、ショッピングしてきたって言ったでしょ?」

 

「あぁ。確かに聞いたな」

 

「実はね……水着を買いにいったの。それで一番に、プロデューサーに見てもらいたかったんだ……//」

 

「えっ、俺に……?何でまた、急に……」

 

「そうだねぇ。ヒントは……プロデューサーの視線かなぁ♪」

 

「視線……っ……//」

 

「うふふ……♪その証拠に、さっきからクギヅケになってるし……買って、大正解だったな〜♪」

 

「なっ……そ、そんなことはないぞっ!」

 

「……ねぇ……プロデューサーは、あたしのどこを見てたの?正直に言ってみなって♪……ねっ♪」

 

「だ、だから……俺はっ……//」

 

「じゃあ、答え合わせをしてみようか……♪「オオカミ」なプロデューサーは、あたしの……」

 

「……むぅっ〜……やっ!!」

 

シャーーッ!

 

「きゃっ……!」

 

「うわっ……!?つ、冷たっ!!」

 

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「んも〜!二人だけで、アガっちゃって……ゆいだけ仲間ハズレだなんて、ヤ〜ダ〜!!」

 

「あっ……そ、そうだぞ、加蓮。唯もいるんだから、三人で楽しまないとな……//」

 

「しょうがないなあ〜……じゃあ、今回だけは見逃しておいてあげるっ……♪」

 

「ねえ〜!加蓮ちゃんばかりズルイ!プロデューサーちゃん!ゆいのことも構ってよ〜!!」

 

「わぷっ……!わ、わかった!だから、そのホースを一旦、降ろしてくれ!頼むよ!!」

 

「……本当?じゃあ、ゆいの水着姿を見て……どう思う……?」

 

「は……?どうって……かわいいんじゃないか……?」

 

「んもう!さっきと同じじゃん!さては、何も考えてなかったでしょ!プロデューサーちゃんのおバカ!」

 

「なるほどねぇ〜。そうやって、色んな子にも同じようなことを言って……てりゃっ」

 

「ちょっ……おい!挟み撃ちなんて卑怯だぞ!」

 

「知らな〜い♪そのイヤらしい頭を、少し、あたしたちが冷やしてあげる♪唯、じゃんじゃんいこうか♪」

 

「りょ〜かい☆蛇口をさらに捻って……よ〜し!じゃあ、いっくよ〜♪ゆいブーストぜんか〜いっ☆」

 

「ぐがっ……お前ら……!こうなったら、俺だって……」

 

バシャッ

 

「きゃあん♪……やったな〜……そりゃっ♪てりゃっ♪」

 

「こうなったら、二人まとめてびしょ濡れにしてやる!覚悟しろよ!!」

 

「きゃはは☆や〜んっ♪プロデューサーちゃんが、まじおこになった〜☆」

 

キャッキャッ♪

 

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「ふぅ……結構、はしゃいじまったぜ……」

 

「えへへっ☆楽しかったぁ〜☆」

 

「さっぱりした♪これぞ、夏って感じだよね〜♪」

 

「……ん?なあ、加蓮は買ってきたってのは聞いたけど、唯は水着を、どこから持ってきたんだ?」

 

「ん〜?事務所のロッカーだよ〜?いつでも、ここから遊びに行けるように、色々と置いてあるんだ〜♪」

 

「便利だよね〜♪あたしもしょっちゅう、化粧品とか色んな私物を置かしてもらってるし♪」

 

「お〜い……ここは、事務所だぞ〜?自宅か何かと、勘違いしてないか〜……?」

 

「固いことを言わない言わない♪それだけ、この事務所の居心地が、いいってことだよん☆」

 

「だからと言って……少し、気を抜きすぎだろ……今だって何だ、その格好は……」

 

「えっ、どういうこと?」

 

「……いくら、事務所内って言っても、水着姿でうろつくのは、どうかと思うぞ……?」

 

「エ〜。上着を羽織ってるから、いいじゃん♪それに、水遊びをしたあととはいえ、まだ暑いし〜♪」

 

「うんうん♪今は、プロデューサーちゃんしかいないから、安心だしねっ☆」

 

「あのなあ……二人は、アイドルなんだぞ……ちゃんとわかってるのか……?」

 

「もっちろ〜ん☆いつでもゆいは「プロデューサーちゃん」のアイドルだって、自覚を持ってるよぅ〜☆」

 

「そうだよ。あたしだって「プロデューサー」のアイドルだっていう、プロ意識は持ってるつもりだよ?」

 

「ん……?まあ、いいか。とにかく、お前たちは輝くアイドルなんだから、どうすればいいかわかるな?」

 

「うん♪わかってるよ♪……今の事務所には、あたしたちとプロデューサーしか……いないしねっ……♪」

 

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「うんうん♪だから、アゲて行こうぜ♪今度は加蓮ちゃんだけじゃなく、ゆいもた〜くさん、構ってもらうゾ☆」

 

「あの……二人とも?何でそんなに、近づいてくるんですかね……?それに、何だか少し……怖いぞ……?」

 

「そんなことないよ♪ただ……今はプロデューサーを、二人占めしたいだけ♪ねっ、唯……♪」

 

「そうだねぇ♪最近は、他の女の子のことばかりで全然、ゆいたちのことを見てくれなかったもんねぇ〜☆」

 

「は……?いや、そんなことはないと思うぞ……?」

 

「ふ〜ん?じゃあさ、前に「Go Just Go」のメンバーで、衣装合わせをしたよね?」

 

「衣装……あ、あぁ。したな」

 

「それで、衣装を着た川島さんや志希とかを見て、どう思った?」

 

「どう思ったって……そりゃ、とてもかわいかった……あっ……」

 

「……へぇ〜……他の子の時は「とても」なんだ〜♪あたしたちは、何もなかったのにね〜♪」

 

「ま、待て!違うんだ!これは、言葉の綾ってやつでっ……!」

 

「ゆい〜「あやとり」は得意なんだ〜☆だから、プロデューサーちゃんにた〜っぷり、教えてア・ゲ・ル☆」

 

「悪かった!謝るから許してくれよ!なっ……?」

 

「ダ〜メ♪繊細な女の子の気持ちを、弄んだんだから……覚悟してよね……♪」

 

「逃げちゃ、ヤだよ……☆ゆいも、プロデューサーちゃんのことを……も〜っと、知りたいなあ〜☆」

 

「ちょっ……やっ……やめっ……//」

 

「……あぅ〜……ただいまぁ〜……って……事務所の中なのに、何でこんな暑いのぉ……?めっちゃやむ……」

 

「っ!……り、りあむ……!」

 

「……あっ……もしかして……お楽しみ中でした……?では、ぼくはこれにて失礼……」

 

「ちょっ……ま、待て!これは違うんだって!おいっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「あの……ごめんなさい……その……「にゃんにゃん」の邪魔を、しちゃって……」

 

「だから誤解なんだって!それに、にゃんにゃんって、どういうことだよ!」

 

「いや……だって……あの状況は、どう見ても……このあと滅茶苦茶セ……」

 

「やっぱり言わんでいい!本当に違うんだって!//」

 

「あたしたちはただ、屋上のビニールプールで遊んできて、少しくつろいでてただけだよ♪ねっ、唯♪」

 

「うんうん♪ゆいたちはな〜んにも、ヘンなことはしてないよっ☆」

 

「屋上……?プール……?何それ……めっちゃリア充じゃん……なんなの、この格差……やむ……」

 

「……と、とにかく!りあむはここに、何をしに来たんだ?」

 

「え〜っと……何をしに来たんだっけ……?」

 

「はぁ……?何だそりゃ。何か目的があって、ここに来たんじゃないのかよ」

 

「……非リアのぼくに……オフの予定なんか、あると思う……?」

 

「それもそうだな……りあむに、予定なんかあるかわけないか……」

 

「むぐぐ……!い、いいもん!もう、Pサマとのにゃんにゃん目的で、ここに来たってことにしておくよぅ!」

 

「ちょっ……だから、さっきからお前は一体、何を言ってるんだよ!//」

 

「りあむちゃんは、純粋な二歳児だからわからないもんねぇ〜!かまってぇ〜!あそんでぇ〜!バブゥ!」

 

「全く……りあむも、お前たちも……本当に、自分がアイドルだって自覚を、持ってるんだろうな……?」

 

「そうだよ〜。あたしたちはアイドルなんだから、そこら辺はちゃんとしないと、ダメだと思うな〜」

 

「その通り。それと同時に、女の子でもあるんだからな?しっかりと、頼むぞ……ん?」

 

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「……にゃはは♪みんなぁ〜♪グッモ〜ニ〜ング♪」

 

「……うわあっ!?し、志希!?お前、一体どこから出てきたんだよ!?」

 

「えっとね〜……プロデューサーの机の下で、お昼寝をしてたんだ〜♪」

 

「お昼寝って……ていうか、いつからここにいたんだ……?」

 

「そうだな〜。プロデューサーと、水着の女子二人が部屋で、イチャイチャしてた少し前かな〜?」

 

「……ちょっ……あの時から……俺の机の下にいたのか……?」

 

「だってぇ、暇つぶしに事務所に来たのに、誰もいないんだも〜ん。それに、今日は暑いしね〜」

 

「だから、日陰でお昼寝をしてたんだけど……状況が状況だから出れなかった、と言うわけなのでした〜♪」

 

「きゃはは☆ 何それぇ〜♪マジウケるんですけど〜☆」

 

「……志希といい……りあむといい……事務所は、暇つぶしに来る所じゃないんだぞ……?わかってるのか?」

 

「ま〜、細かいことは気にしない気にしない♪それよりさぁ、みんなでジャンケンをしようよ〜♪」

 

「ん?ジャンケン……?」

 

「うんっ♪何だか暑いし、アイスが食べたくなっちゃった〜♪だから、負けた人が買いに行くってのはどう〜?」

 

「あっ……なんかそういうの、リア充っぽい……ぼくも参加していい……?」

 

「きゃはは☆ゆいも、アイスを食べたいからじゃんけんする〜☆」

 

「いいね。あたしもその話、ノッた♪」

 

「決まりだね〜。それじゃあ行くよ〜♪じゃ〜んけ〜ん……」

 

「いや……ちょっ、まっ……」

 

「「「「ぽんっ!」」」」

 

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「おいしいっ♪夏と言えば、アイスだよね〜♪」

 

「う〜ん……うまうま〜……♪」

 

「悪いな、りあむ。わざわざ暑い中、買いに行ってもらって」

 

「あれ……?なんでぼく、負けてるんだろ……あの流れって普通、Pサマだよね?……めっちゃやむ……」

 

「う〜ん♪オイシ〜♪ねぇ〜、プロデューサーちゃんのも美味しそうだから、少しちょ〜だ〜い〜♪」

 

「ん?あぁ、いいぞ……って!ダメに決まってるだろ!?」

 

「エェ〜。イイジャン〜……おケチ〜……」

 

「そうだよ、唯。棒アイスなんだから、そういう言動は控えないと。あたしたちは、アイドルなんだよ?」

 

「加蓮の言う通りだ。唯は、アイドルなんだからな」

 

「……むぅ……」

 

「うんうん。こういうことは、パートナーとしての信頼関係が大事なんだから。はいっ、プロデューサー」

 

「おっ、サンキュ〜……って!おい!加蓮もどさくさに紛れて、何をやってるんだよ!」

 

「……だって……あたしたちは、信頼で繋がりあってるから……いいじゃん……♪//」

 

「確かに、プロデューサーとアイドルって関係で、繋がりあってるけど……加蓮もそういうことは禁止だ」

 

「何さ……いくじなし…」

 

「……暑い中、買いに行ったんだから……少しぐらい、いいよね……そ、そ〜っと……うへへ……」

 

「そうはさせるか、てりゃっ」ピンッ

 

「うぎゃっ……!ちょっと!ぼくだけ物理って、扱いヒドくない!?」

 

「お前のやることなんて、全てお見通しだからな。全く……世話が焼けるヤツだぜ……」

 

------------------------------------------------

 

「……あ〜っ!お空に、うえきちゃんが飛んでる〜!」

 

「えっ!?」

 

「……隙ありィ♪」

 

パクッ♪

 

「「「!?」」」

 

「ちょっ……志希!?何をしてるんだよ!?」

 

「ん〜?なんか、キミのアイスもおいしそ〜だったから、ちょっともらっちゃったぁ〜ん♪」

 

「もらっちゃったって……お、お前っ……!//」

 

「こういう時ってさぁ、他の人のアイスが美味しそうに見えるでしょ〜?だから、おっけ〜ってことで♪」

 

「……ふ〜ん……あたしはダメで……志希はいいんだ〜……」

 

「何だよ!その、滅茶苦茶な理屈は!それに、志希が勝手に、俺のアイスを食べたんだろうがっ!」

 

「へぇ〜……それじゃあ「勝手」になら……食べていいんだね……?」

 

「……志希ちゃん……いいなあ〜……ゆいも「プロデューサーちゃん」のアイス……食べたかったなぁ〜……」

 

「何だ……?みんな、揃いも揃ってそんなに、俺の味のアイスが欲しかったのか……?」

 

「……Pサマの「モノ」を巡って……アイドルたちが、くんずほぐれつ……」

 

「……おい。今なんか、言ったか?」

 

「な、何も言ってないよう!でも、Pサマが美味しそうに食べてるのを見て、ぼくも少しだけ欲しかったかも」

 

「ふぅ……じゃあ今度、俺と同じ味のアイスを買って、事務所の冷凍庫にたくさん入れといてやるよ」

 

「ふふっ……♪今度から、勝手に食べちゃうんだから♪……覚悟してよ……♪」

 

「プロデューサーちゃん……ゆいは、イタズラ好きだっていうの……知ってるよねぃ……☆」

 

「……にゃはは♪プロデューサーってば「太っ腹」だねぇ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、まったね〜♪プロデューサーちゃんっ☆」

 

「あぁ。日も暮れてきたし、気をつけて帰れよ」

 

「ありがとう♪それじゃあ、行こうか。唯、りあむさん」

 

「うん。じゃあまたね、Pサマ」

 

「ふぅ。さてと……アイドルたちを見送ったことだし、残りの作業をささっとこなしますかねえ」

 

「……zzz」

 

「……ただし……こいつを、どうにかしてからだな……お〜い志希〜、起きろよ〜」

 

「……ん〜……ネムネム……zzz……」

 

「この猫娘は……食べ終わったらすぐに寝るし……本当に、自由奔放なヤツだな……」

 

「そ、それに何だ……そんなに服を着崩して、ふとももを投げ出すように寝て……油断しすぎだろ……//」

 

「全く……さっきのアイスの件といい、お前は普段から、隙が多すぎなんだよ……」

 

「……俺だって一応、男なんだし……何か……されちゃうかもしれないんだぞ……?//」

 

「えっ……いや〜んっ♪あたしぃ、プロデューサーに襲われちゃ〜う♪……あっ……」

 

「……ほぉ……志希。随分と、寝起きがいいじゃないか……で?気持ちよく「狸寝入り」出来たか……?」

 

「ち、違うの……今……すごい怖い夢に、うなされてただけなんだって……」

 

「なるほどな。じゃあ今、どんな夢を見てたか、教えてもらおうじゃないか」

 

「そ、それはね……その……プロデューサーが、あたしと二人っきりなのをいいことに豹変して、そして……」

 

「……「今」みたいにケダモノ化して、あたしを……やだ……これ以上は、恥ずかしくて言えないよ……//」

 

「……おい!志希!今すぐ、そこに正座をしろ!俺はお前に、たっぷり言いたいことがあるんだ!!」

 

「ふにゃあっ!」

 

------------------------------------------------

 

「……てな感じでな。だいたいお前は、アイドルでもそうだけど、女の子としての自覚がまるでなくて……」

 

「……」

 

「おい、聞いてるのか?」

 

「……はいはい。わかりましたよ〜だ。なにせ志希ちゃんは、アイドルとしてもギフテッドだもんね〜」

 

「本当にわかったのか……?まあ、いいや。んじゃあ、話は以上だ。日が暮れる前に早く帰れよ」

 

「エ〜。歩くのめんどくさいからあたしぃ、今日はここに泊まるぅ〜」

 

「ダメだ。しっかりと家で、休んでくれよ。体調管理も、立派なアイドルの仕事の一つなんだからな」

 

「それに近々「あのイベント」があるだろ?志希も主要メンバーの一人なんだから頼むぞ」

 

「……んもう、しょーがないなあー♪じゃあ今回は素直に言うことを聞いてあげるっ♪」

 

「あぁ、そうしてくれ、なにせ志希や他のアイドルにとっても一大イベントなんだしな」

 

「わかってるって♪でも、あたし……プロデューサーになら……いいんだけどなぁ〜……♪」

 

「ん?いいって……何がだよ……?」

 

「……このまま……「男と女」になっても……なんて……♪//」

 

「……お〜い。どうやら、話し足りないみたいだから、泊まり込みで俺ともう一回、お話しをするか……?」

 

「じ、冗談だよ〜!それじゃあ、志希ちゃんはお家に帰りまぁ〜すっ!あでゅ〜♪」

 

「ふぅ……やっと、終わった……世話が焼けるアイドルだぜ……」

 

「……さて……俺も、イベントのために頑張らないとな。よし、今度こそ、残りの作業を済ましちゃうか……」

 

フォン♪

 

「ん?メッセージ……?誰からだろ……」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ、ついた……」

 

「えっと……確か、ここら辺で……あっ、いたいた!お〜い!」

 

「あら、プロデューサーさん♪ごきげんよう♪」

 

「えっ……?あの……唯……だよな?」

 

「えぇ♪わたくしは正真正銘、大槻唯ですっ♪来てくださったんですね……♪ふふっ……♪」

 

「そうか。じゃあ、せっかく用意したけど……これはいらないか」

 

「それは……キャンディ……ですか?」

 

「あぁ。でも、淑女なら食べながら歩くなんて、はしたないことをしないだろうし、必要ないよな」

 

「し、しかし……様々なことを知っておくのも、淑女の嗜みだと思いますし……えっと……何というか……」

 

「……んも〜〜!やっぱ、や〜めた!おすましモード切れたっ!ねぇ〜、キャンディをちょ〜だいっ☆」

 

「はいはい。やっと、戻って来てくれたな。ほら、キャンディをやるよ」

 

「わ〜い♪サンキュー♪では、いっただきま〜すっ♪……ん〜♪おいちい〜☆」

 

「それで?呼び出されたのはいいけど……何をするんだ?」

 

「えっと〜……ま、細かいことはいいジャン☆台本通りにいかないのが、人生って言うしねっ☆」

 

ギュッ♪

 

「ちょっ……!い、いきなり何だよっ!//」

 

「さぁ〜、行っくよ〜♪今日はプロデューサーちゃんを、ゆいが一人占めしちゃうも〜ん☆」

 

「一人占め……?って……わかった!わかったからとりあえず、そんなに引っ張るなって!//」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ〜、プロデューサーちゃんっ♪ゆいのこと、すき〜?」

 

「いや……それは……」

 

「じゃあ〜、ゆいとず〜っと、一緒にいたい〜?」

 

「だから、それは……何というか……」

 

「……んも〜!プロデューサーちゃんってば、ノリわる〜いっ!どんどん、アゲていこうぜぇ〜?」

 

「アゲすぎなんだよ!こんな街中で、恥ずかしいことを大声で連呼しやがって……!//」

 

「雰囲気って大事じゃん♪今のプロデューサーちゃんは、ゆいの彼氏なんだから♪」

 

「彼氏って……お前なあ〜……」

 

「じゃあ、改めて言ってミヨウ☆ゆいはぁ〜、プロデューサーちゃんにとって、何のかなぁ〜?」

 

「……あぁ……そうだな。唯は俺にとって、大切な「アイドル」だ。な?間違ってないだろ?」

 

「んも〜……イヂワル……」

 

「で?昨日、急にメッセージを送って、俺を今日、呼び出して……何かあったのか?」

 

「それは……あ〜っ!ねぇ、見て見て♪プロデューサーちゃん♪セレクトショップだよ、セレクトショップ♪」

 

「セレクト……?おぉ、随分とかわいらしい店だな。お菓子のお店なのか?」

 

「うんっ♪このお店、前から気になってたんだ〜☆ねぇねぇ♪入ってみようよっ♪……ダーリン☆」

 

「ばかっ!だから、声がでかいんだよっ!……あぁ、もう……ほら、行きたいなら、早く入るぞ……//」

 

「……ふふっ、照れちゃって……かわいいっ☆」

 

------------------------------------------------

 

「ん〜……おいちぃ〜♪やっぱ、話題のお店ヤバイ!」

 

「そうか、よかったな」

 

「それじゃあ、プロデューサーちゃんも……ハイ!おくち開けて〜☆」

 

「いや、俺はいいよ。唯だけで食べなって」

 

「遠慮するなって☆志希ちゃんだけ、ずるいぜぃ☆」

 

「ん……?何で急に、志希が出てくるんだよ?」

 

「ふ〜んだ……この前、ゆいたちの目の前で、志希ちゃんとカップルみたいなやりとりをしてたくせに……」

 

「カップル……って!あれは、志希が勝手にイタズラして来ただけだ!!」

 

「……志希ちゃんが、アイスを勝手に食べたのは……ただのイタズラだと思ってるんだ……?」

 

「それ以外、何があるんだよ。全く……あいつも女の子なんだから、もう少し気をつけて……んぐっ!?」

 

「んも〜☆プロデューサーちゃんってば、そんなにアイスを食べられたのが、悔しかったのぉ〜?」

 

「い、いや……だから、そういうことではなくて……もがっ……」

 

「卑しんぼちゃんだなぁ♪ほらぁ♪た〜んとお食べ♪お・バ・カなプロデューサーちゃん♪」

 

「……あ〜っ♪二人とも、こんちゃ〜☆」

 

「ん……?あ〜っ♪はぁとちゃんだぁ☆こんちゃ〜っす☆」

 

「むぐ……し、心……?こんなところで、何をしてるんだ?」

 

「んもう☆お菓子のセレクトショップに来たんだから、スウィーティーなお菓子目当てに決まってるだろ☆」

 

「へぇ〜。まさか、はぁとちゃんもウワサを聞いて、ここに来たのぉ?」

 

------------------------------------------------

 

「うん♪デレぽで、話題になってたんだ☆ところで、二人とも何だか楽しそうだねぇ☆このっこのっ☆」

 

「えへへ……♪今はプロデューサーちゃんと、デート中なの♪お菓子も、選んでもらったんだ♪」

 

「ちょっ……唯!?」

 

「へぇ〜……唯ちゃん、いいなあ〜……ねぇ、プロデューサー☆はぁとにもぉ、おごってほ・し・い・な☆」

 

「しょうがないなあ……せっかくだし、特別に……って!お前はすでに、自分のを買ってるじゃねえか!」

 

「はぁとわぁ「プロデューサー」が選んでくれたのを、食べたいの☆やぁん♪我ながら、超乙女〜☆」

 

「そんなに欲張ると肥えるぞ!少しは、アイドルとしての自覚を持て!」

 

「ハァ〜!?ひっど〜い!!健気な乙女に向かって、そんなことを言っちゃうのぉ〜!?」

 

「何が健気だ!そんな、食い意地の張った乙女なんて、世界中どこを探してもいねえっつ〜の!!」

 

「何さ!誰のせいで、こんなことになったと思ってるの!?責任を取ってよね!!」

 

「ちょっ……バカ……!声が大きいって!変なことを、大声で言うな……!//」

 

「……あらあら☆もしかして、はぁとのことを違う意味で、意識しちゃったのかなぁ〜?ん〜?」

 

「そんなわけあるか!へ、変な勘違いをするな!//」

 

「確かにぃ、このスウィーティーなはぁとの虜になっちゃうのは、わかるけど……でも、ダメだぞ☆」

 

「……だって……今は、かわいい彼女ちゃんのことをしっかりと、エスコートしてあげないとね☆」

 

「ん?彼女……?」

 

「それじゃあ「お邪魔虫」は、とっとと退散しますよ☆んじゃあね〜☆スウィーティーなカップルたちぃ☆」

 

「ちょっ……!……全く……何だったんだ?あいつ……なあ、唯もそう思うだろ?」

 

「……むぅ〜」

 

「あ、あの……唯さん……?」

 

------------------------------------------------

 

「……」プクッ

 

「なぁ……唯?頼むから、機嫌を直してくれよ……何かしたのなら、謝るからさ……なっ?」

 

「ふ〜んだ……どうせゆいとなんかより、はぁとちゃんとデートをしてた方が、楽しいんでしょ〜……」

 

「なっ……!だ、だから、何でそうなるんだよ!さっきのは、あいつが勝手に絡んできただけだ!」

 

「ど〜だか……ゆいからみたら、二人ともすごい、楽しそうにしてたもん……」

 

「そんなことないって、唯と一緒にいる時の方が楽しいぞ」

 

「……じゃあ……証明してよ……今から改めて、ゆいの「彼氏」になってくれたら、許してあげる……」

 

「はぁっ!?い、いや……だから、それは……」

 

「……うんって言ってくれるまで、ゆい……ず〜っと、イジけちゃうよ……?」

 

「……あぁ、もう……わかったよ。彼氏でも何でもいいから、唯に付き合ってやるよ」

 

「ホント……!?やったぁ〜☆それじゃあ、今日は改めてゆいに、たくさん付き合ってもらうんだからね〜☆」

 

ギューッ♪

 

「うあっ……!//」

 

「ゆい先生から、プロデューサーちゃんに問題です♪「ハチミツ」を英語にすると、何て言うでしょうか☆」

 

「……お、俺……英語は詳しくないから……わからないなあ〜……」

 

「……プロデューサーちゃん……?」ウルッ

 

「くっ……は、ハニーだろ……!//」

 

「や〜ん☆だいせいか〜い☆ゆいはぁ、プロデューサーちゃんのあま〜い、ハニーだよぅ☆」

 

ムニュッ♪

 

「うわっ……ちょっ……!いくら何でも、くっつきすぎだろ!唯は、アイドルなんだからな!?」

 

「シ〜ラナ〜イ♪それじゃあ、唯とたくさんエンジョイしようぜ☆よ〜し!アゲアゲ⤴︎でいこ〜う♪ダーリン☆」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜☆楽しかったぁ〜☆」

 

「……そ、そうだな……」

 

「ダーリンとたくさん遊べて、甘い時間を過ごせてぇ、ちょ〜ハッピ〜ってかんじぃ☆」

 

「……あぁ……俺も過ごせて、よかったぞ……」

 

「ん〜?どうしたのぉ?もしかして、お疲れのご様子〜?」

 

「お前……すごいな……あんなに、色んなところを巡ったのに、よくそんな体力が残ってるよな……」

 

「きゃはは☆プロデューサーちゃんってば、面白い冗談を言うんだね☆そんなの当たり前じゃ〜ん☆」

 

「プリとって〜、カラオケに行って〜、美味しいものたべて〜、他にもた〜くさん遊んでぇ〜……」

 

「それでも、むしろまだまだ、遊び足りないぐらいだよっ♪楽しいことは、別腹って言うじゃん☆」

 

「……は、はは……流石は、唯だ……パッションアイドルなだけあるな……」

 

「どう?プロデューサーちゃんは……楽しかった?」

 

「……そうだな。唯と遊べて、俺も楽しかったよ。唯の言う通り、楽しいことは別腹だ」

 

「よかった♪プロデューサーちゃんと遊んでるとつい、はしゃいじゃうんだよね〜♪」

 

「……それに……こんな、わがままになれるのも……プロデューサーちゃん、だからだし……」

 

「えっ……?」

 

「ねぇ……プロデューサーちゃん。最後に、行きたい所があるんだけど……いい?」

 

「あ、あぁ……別に、構わないけど……」

 

「ありがと……☆それじゃあ、ゆいについて来てっ☆」

 

------------------------------------------------

 

「ここは……ガレージ……?」

 

「うんっ♪こっちこっち♪見てもらいたいものがあるんだ♪ちょっと、待っててね……ボタンボタンっと……」

 

ガラガラガラ……

 

「……じゃっ、じゃ〜ん☆どうだぁ〜☆」

 

「ん……?おぉ……なんか、すごい模型だな。でも、どこかで見覚えがあるような……」

 

「ふふっ……♪実はこれ「ウォータースライダーパーク」なんだ……♪みんなの夢が、いっぱい詰まったね♪」

 

「確か、前に設計図を見してくれたよな。にしても、すごいなこれ……まんま、設計図通りじゃないか……」

 

「そうでしょそうでしょ♪ゆいたちが、頑張って作った自信作なんだから☆」

 

「でも……よかったのか?完成してるとはいえ、俺だけ先に見ちゃってさ」

 

「本当は、ロケ先でお披露目をしたかったんだけど……先に、伝えたいことがあったんだ……」

 

「伝えるって……何を?」

 

「実はね……いきなり誘ったのも……改めて感謝の気持ちを、今日ここで、伝えたかったからなの……」

 

「正直、最初はメンドかったり、アイドルになるって気軽に言ったことを、後悔しそうになる時もあったよ?」

 

「でも、今はたくさんのお友達が出来て、毎日、たくさん楽しいことがてんこ盛りで……そして……」

 

「……プロデューサーちゃんとも、こうして出会えて……怖いぐらい……幸せなんだ……♪//」

 

「唯……」

 

「今日みたいな……ううん。これからも、アイドルとして過ごす時間が、永遠に続いたらいいと思ってるの」

 

「だから……プロデューサーちゃんも、ゆいの隣にず〜っと……いてくれる……?」

 

「……あぁ、もちろんさ。俺も、唯を含めてみんなでここまで来れて、本当によかったと思ってる」

 

「だから、これからもよろしくな、唯。楽しい時間を永遠に過ごせるように、一緒に頑張っていこうぜ」

 

「プロデューサーちゃん……うんっ♪よろしくねっ♪……あ、そ〜だ♪ねぇ、もう一つ……い〜い?」

 

------------------------------------------------

 

「ん?どうした……?」

 

「あの、ね……その……何ていうかあ……えいっ!//」

 

チュッ♪

 

「んぐ……!?」

 

「……//」

 

「……ぷあっ……ゆ、唯っ……!?」

 

「……この気持ちも……永遠にプロデューサーちゃんと、共有をしていきたいな……なんちって……♪」

 

「永遠にって……お前……//」

 

「うふふ……♪「初めて」って、こんな感じなんだ……♪まだ、ハートがバクバクいってるぜぃ……☆//」

 

「「……//」」

 

「……あ……あ〜!あ〜!やっぱり、今のはナシっ!プロデューサーちゃん!今のは、ノーカンにしてっ!//」

 

「はあっ……!?い、いや……ノーカンって言われても……どうすればいいんだよっ!//」

 

「ゆいに聞かれてもわからないよぅ!とりあえず、ハズいからもうここから出るよ!ほらっ!早くっ!!//」

 

「うわっ……!急に引っ張るな!何なんだよ!さっきからお前はっ!//」

 

「し、知らないっ!ゆいもこんがらがって、パニクってるの!!……ただ……」

 

「……初めては……プロデューサーちゃんの……あ”〜〜〜〜っ!//」

 

「ああああ!だからうるせええええ!何だか知らないけど、少しは落ち着けって!」

 

「いいから出ようよ!それと、今日のことはみんなには内緒だよっ!はい!指切った!もう待ったなしっ!//」

 

「あぁ……もう……さっきの感動は、何だったんだよ……全く……」

 

------------------------------------------------

 

ザァー……ザァー……

 

「ねぇねぇ♪プロデューサー♪似合ってる?」

 

「あぁ、似合ってるぞ」

 

「ありがとう♪んじゃあ、行って来るね〜♪」

 

「ふにゃあ〜……ねぇねぇ、どぉ〜?似合ってるぅ……?」

 

「あぁ、とても……って、おい志希。少し、リボンが曲がってるぞ。ほれ」

 

「にゃはは♪あんがとさ〜ん♪」

 

「ねぇ〜☆はぁとのぉ、この姿、か・わ・い・い〜?☆」

 

「……あ〜、かわいいぞ〜……いでっ!」

 

「や・り・な・お・し☆声が全然、やる気がなかったぞ〜☆」

 

「あぁ、もう!かわいいよ!めっちゃかわいい!ほら!これでいいだろっ!」

 

「よろしい☆じゃあ、行ってきま〜す☆」

 

「ねぇ♪Pサマ♪Pサマ♪聞いてよっ♪さっき、更衣室でアイドルたちの生乳が……ふぎゃっ……!」

 

「ほら、行ってこい」

 

「ちょっと!ぼくの、衣装姿の感想はないの!?めっちゃやむ!!」

 

「プロデューサーちゃ〜んっ♪どう?ゆい、似合ってるぅ〜?」

 

「あぁ、バッチリ決まってるぞ。頑張ってきてくれ」

 

「ありがと☆じゃあ……途中まで、一緒に行こうぜぃ♪」ギュッ

 

「うわっ……唯!?」

 

「これは、プロデューサーちゃんも含めた「みんな」のライブなんだから、アゲてこアゲてこっ☆」

 

「……だから……これからもず〜っと、ゆいたちと一緒に、ムゲンに遊ぼうね♪プロデューサーちゃんっ☆」



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死霊シンデレラ 白坂小梅

「……」

 

バンッ!

 

「ヒャッハアアアア!トォリィィックオア!トルィイイイイト!」

 

「うわっ!?な、何だ!?」

 

「お菓子をくれないとっ!!」

 

「い、イタズラをしちゃうよ……えへ……♪」

 

「えっ……お、お菓子……?あぁ……そういえば、今日ってハロウィンだったっけ……」

 

「ご名答です♪この、ボクたちのカワイイ格好を見れば、一目瞭然じゃないですか♪」

 

「そ、そうだな……みんな、カワイイじゃないか……あはは……」

 

「んもう♪当たり前のことを、言わないでください♪それでは、はいっ♪お菓子をくださいっ♪」

 

「シンユウ……お菓子もいいけど……私は、キノコでもおっけーですよ……?フフ……」

 

「……悪い……今、ちょうど持ち合わせがないんだ……」

 

「アラアラ。致し方ないですねぇ♪では、良心が痛みますが、ハロウィンに則ってイタズラをしちゃいます♪」

 

「ふふ……♪安心して……?ゾンビにはしないから……♪」

 

「あ、あの……お手柔らかに、頼むぞ……?」

 

「フフ〜ン♪どうでしょうか♪では、このぴにゃマスクを、つけさせてもらいますねっ♪」

 

「……フヒ……もう戻れないよ……行き先は地獄か……棺桶か……それとも……フフ……」

 

「ちょっ!?何だか今、すごく物騒なことが聞こえてきたんだけど!?」

 

「気のせい気のせい♪さあ、行きましょう♪ボクたちについてきくださいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ……ついたよ……♪」

 

「あの……俺は一体……どこに連れて来られたんですかね……?」

 

「ふっふっふっ……では、始めましょう!……てりゃっ!」

 

「うわっ!?な、何だっ……!?」

 

「よ〜しっ!ウチだって負けないからな!とっても、怖くしてやるぞ!」

 

「……こ、怖いだけではなく……かわいさも少し、必要だと思うんですけど……多分……」

 

「ちょっ……まっ……何だか、随分と賑やかだな!?」

 

「もう……泣いても喚いても、誰も来やしねえぜ……覚悟しな……フヒ……」

 

「プロデューサーさん。安心してって……あの子も言ってるから……心配しないで……♪」

 

「あの子……?……って、わぷっ!なんか、口に突っ込まれたんだけど!?」

 

「フフ〜ン♪そろそろいいですね♪では……目隠しを、オープンですっ!」

 

「うあっ……ま、眩しいっ……!……ん?」

 

「こ、こんにちは……プロデューサーさん……」

 

「よぉ、プロデューサー!どうだ!ウチらのこの衣装、カッコいいだろっ!そして、怖いだろっ!!」

 

「乃々と美玲……?……まあ……かわいいんじゃないか……?」

 

「あぅ……か、かわいい……//」

 

「なっ……!何で、そうなるんだよ!ハロウィンの仮装なんだから、もっと怖がれよっ!」

 

「仮装……あぁ。そういえば、今日はハロウィンだって、さっき聞いたっけな」

 

「フフ〜ン♪では、ご覧になってください!はい!鏡です!」

 

「ん?鏡?……って!何だよこれ!?」

 

------------------------------------------------

 

「ゾンビもよかったけど……でも、今回はハロウィンだし、パンプキンの髪飾りにしちゃった……えへ……♪」

 

「私は……前にライブで使った、ヴァンパイアの衣装にしたよ……これで、シンユウとお揃い……フフ……」

 

「ウチの大好きな、デビキャの牙もつけたぞ!どうだ!カッコいいだろ!」

 

「そ、そのままでは少し、怖いので……リスさんの耳を、つけさせてもらいました……」

 

「おぉ……みんな、わざわざ俺に……って!一体、これはどういうつもりなんだよ!」

 

「どういうつもりも何も、お菓子をくれなかったので、イタズラをしたんですよ♪トリックオアトリートです♪」

 

「全く……こんなにして……俺はおもちゃじゃないんだからな?」

 

「わかってますよ♪それに、これはボクたちなりの、プロデューサーさんへの感謝の気持ちなんです♪」

 

「感謝……?どういうことだ?」

 

「プロデューサーさんが最近、夜遅くまでお仕事をしてるって……あの子が教えてくれたよ……?」

 

「っ……!」

 

「机の下のトモダチたちと一緒に、シンユウが頑張ってる姿を、いつも見てたよ……ねっ、乃々ちゃん……」

 

「……え、えぇ……そうですね……もりくぼはいつも……プロデューサーさんの、机の下にいますので……」

 

「……」

 

「ほらっ♪隠そうとしても無駄です♪ボクは、プロデューサーさんのカワイイ「人生のパートナー」ですから♪」

 

「そうだぞ。ウチらとプロデューサーは、パートナーであり友達だ。だから、隠し事はナシだぞ」

 

「……そうか。ありがとう……みんな……」

 

「礼には及びません♪では、プロデューサーさんも仮装をしたことですし、ボクたちと一緒に遊びましょう♪」

 

「だな!せっかく仮装をしたんだし、ウチらとハロウィンを楽しもうぜ!」

 

「にへへ……♪プロデューサーさんも、一緒に……遊ぼうよ……♪」

 

「……そうだな……よし!それじゃあ、ハロウィンをみんなで楽しみに行くか!」

 

「フフ〜ン♪決まりですね!では、みなさん!今宵はハロウィンを楽しみましょう!せ〜のっ!」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

「……お〜っ……ふふ……「あなた」も、私たちと一緒に楽しもうね……えへへ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ……街がすっかり、ハロウィン一色だ……」

 

「ゾンビやオバケがたくさんいる……えへへ……嬉しいなあ……♪」

 

「ふっふっふっ。ウチの野生のカンで、すぐに幸子たちを捕まえてやるぞ♪」

 

「鬼は俺と小梅と美玲か。でもまた、何で鬼ごっこなんだ?」

 

「そんなの決まってるだろ!楽しいからだ!なあ、小梅!」

 

「うん……そうだね……♪みんなで鬼ごっこ……すごい楽しい……まるで、ゾンビになれたみたいで……♪」

 

「そういうもんなのか?まぁ、ハロウィンだし、テンションが上がるのも、わからなくもないが……」

 

「それにさ……今回は、その……ぷ、プロデューサーが一緒にいるから、何ていうか……」

 

「……い、いつもより、さらに……ワクワクするような、しないような……//」

 

「ん?俺が、どうかしたか?」

 

「な、何でもないモン!それより、さっさと幸子たちを見つけに行くぞっ!!//」

 

「ふふ……♪美玲ちゃん……かわいい……♪」

 

「そうだな。う〜ん……しかし、街中はハロウィンで装飾されてるし……これは、探すのは結構大変……」

 

フリフリ

 

「……なあ……あの尻尾って、もしかして……」

 

「うん……間違いないね……あれは……」

 

「し〜っ!二人とも、見てろよ……こういうのは「狩り」の仕方があるんだ……」

 

「……獲物に気づかれないように、こっそりと……こっそりと……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……幸子……覚悟ォ!……むぐっ!?」

 

「ちょっと待て、美玲。俺に、少し考えがあるんだ」

 

「むぐ……おい!急に、何をするんだよっ!」

 

「悪い悪い。二人とも、少し耳を貸してくればいか?」

 

「えっ……どうしたの……?」

 

「それはだな……ゴニョゴニョゴニョ……」

 

「……なっ……!そ、そんなことをするのか……!?」

 

「で、でも……そんなことをしたら、ちょっとかわいそうな気が……」

 

「大丈夫大丈夫。ちょっとした「イタズラ」をするだけだから。それに、今日はハロウィンだし、な?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「……じゃあさ……ついでに、ウチからも一つ、提案があるんだが……いいか……?」

 

「どうした?」

 

「ちょっと、耳を貸してくれ……ゴニョゴニョゴニョ……」

 

「……はあっ!?い、いや……何も、そこまでしなくても……!」

 

「提案したのは、プロデューサーだろっ!?う、ウチは、中途半端が一番イヤなんだっ!//」

 

「私も、その……プロデューサーさんにしてもらえるなら、嬉しいかも……なんて……//」

 

「えっ……小梅……?」

 

「ほらっ!小梅もいいって言ってるし、やるぞ!さっさと準備をしろっ!//」

 

「……あぁ、もう……わかったよ。二人がいいって言うなら、やらさせてもらうよ」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜れェ〜?どこにいるんだろうなァ、サチコォ」

 

「……あの子の気配はするけど……幸子ちゃんの気配はしないね……」

 

「……」

 

「そうだな〜……幸子のヤツ、どこに行ったんだろうなあ。それにしても、二人とも、かわいいなあ」

 

「……!」

 

「ん……?急に、何だよ?」

 

「いや、その……二人の、ハロウィンの仮装姿が、とてもかわいいと思ってさ」

 

「はあっ!?だ、だからウチは、かわいいじゃなくてカッコいいんだ!いい加減にしないと、噛みつくぞ!//」

 

「そ、そんな……かわいいだなんて……//」

 

「あ〜、二人とも「カワイイ」なあ〜」ナデナデ

 

「……むっ」

 

「うわあっ!な、何をするんだよっ!//」

 

「あっ……//」

 

「……むむっ」

 

「なんせ二人とも、俺の自慢の「カワイイ」アイドルだからな。たくさん、撫でてやるよ」

 

「ったく……し、しょうがないな……今回だけは、特別だぞ……アニキ……//」

 

「……なでなで……気持ちいい……♪……お、お兄ちゃん……//」

 

「「……えへへ……//」」

 

「……あ〜!もうっ!ボクはここにいますよっ!」

 

「おっ、幸子。そんなところに、隠れてたのか」

 

「何で、気づいてくれないんですか!カワイさが溢れてるこのボクが、こんなに近くにいると言うのに!」

 

------------------------------------------------

 

「ごめんごめん。みんな「カワイイ」から、気づかなかったよ」

 

「全くもう……「ボクの」プロデューサーさんなのに、気づいてくれないなんて……イヂワルです……」

 

「それにしても、美玲。何でまた、あんな提案をしたんだ?」

 

「おい!違うだろ!さ、最初に提案をしたのは、プロデューサーだろっ!!//」

 

「いや……「カワイイ」で釣ろうっていうのは、提案したけど……頭を撫でろって言ったのは、美玲だろ」

 

「そ、それは……ウチダッテイチオウオンナダシタマニハナデテホシカッタッテイウカ……」

 

「?」

 

「……と、とにかく!幸子を見つけれたからいいだろっ!これ以上聞いたら、噛みつくぞ!ガルルル……!//」

 

「ん……?ま、いいか。よし、あとは乃々と輝子だな。それじゃあ、行くか」

 

「ふふ……♪どんどん、仲間が増えていくって……まるで、ゾンビみたい……♪」

 

「……ち、ちょっと、待ってください!ほらっ!何というか、その……ボクも、カワイイんですよ!?」

 

「あぁ、幸子ももちろん、カワイイぞ」

 

「「……」」

 

「……って!あぁ、もう!じれったいですね!ぼ、ボクのことも、撫でて欲しいってことですよっ!//」

 

「何だ、幸子も撫でて欲しかったのか?」

 

「そうですっ!二度も言わせないでください!おバカ!!//」

 

「幸子がいいなら……じゃあ……いくぞ?」

 

ナデナデ

 

「全くもう……本当にプロデューサーさんは、ボクがついてないとダメダメなんですから……えへへ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……さて。まずは、幸子を捕獲か。あとは乃々と輝子だな」

 

「ち、ちょっと!捕獲って何ですか!ボクを動物みたいに言うのを、やめてくださいっ!」

 

「猫の仮装をしてるんだから、動物みたいなもんだろ。やかましい猫め」

 

「ボクは「カワイイ」猫なんです!いい加減にしないと、噛み付きますよ!ガルルル……!」

 

「ちょっ……おい!ウチは、孤高の一匹オオカミなんだ!幸子は猫なんだから、猫らしくしろッ!」

 

「……あら?プロデューサーくんじゃない」

 

「ん……?おっ、礼さんじゃないですか。こんばんは」

 

「こんばんは♪うふふ……♪何だか、とっても賑やかね♪」

 

「えぇ。みんなで、ハロウィンを楽しんでるんです。礼さんもハロウィンですか?」

 

「そうね♪お菓子を配ってるの♪はい♪みんなにも、ハッピーハロウィンよ♪」

 

「わぁ〜っ!カワイイお菓子ですね〜♪いいんですか!?」

 

「えぇ♪今宵は、楽しいハロウィンですもの♪みんなで一緒に、楽しみましょう……♪」

 

「あ、ありがとうございます!美味しくいただきますねっ♪」

 

「いいのか!?ありがとう、礼さん!美味しくいただくぞ!」

 

「あっ……すみません……ありがとうございます……♪」

 

「ははっ。よかったじゃないか、みんな」

 

「じゃあ、プロデューサーくんにも、お菓子をあげるわ♪ただし、私のなぞなぞに答えられたらね♪」

 

「えっ、なぞなぞ……何でしょう?」

 

「いくわよ♪「プロデューサーくんが今、考えてること」って、な〜んだっ♪みんなも考えてみてね♪」

 

「何だ、そういうことですか。それなら……って……ん?」

 

「……うふふ……一体……「ナニ」を考えてるのかしら……?」

 

ムニュッ♪

 

「……っ!?//」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサーが、考えてることって……そんなの、ハロウィンに決まってるだろ。なぁ、小梅、幸子」

 

「そうだね……プロデューサーさんとみんなで……ハロウィンを楽しんでるもんね……あと、あの子も……♪」

 

「当たり前じゃないですか♪仮装をしてる、カワイイボクたちのことで、頭がいっぱいに決まってます♪」

 

「確かに、今日は楽しいハロウィンよね……♪でも……今の私は、お菓子をあげてない、イケナイ女なの……」

 

「……だから、このままだと……プロデューサーくんに「イタズラ」を……されちゃうわね……♪//」

 

「うあっ……!?ちょっと……礼さん、近っ……!あ、アイドルたちの教育に、悪いですって……!//」

 

「ん〜?ナニが悪いのかなぁ〜?正直に。お姉さんに話してごらんなさい♪」

 

「……っ!//」

 

「ははっ♪何だよ、あんなに見つめ合っちゃって♪二人とも相変わらず、仲良しだなっ!」

 

「むむ……あんなに、デレデレして……確かに、礼さんは魅力的なお姉さんですけど……ボクだって……」

 

「ふふっ……さあ、答えてちょうだい……?でないと、お菓子はお預けよ……♪」

 

「……こ、これ以上は、本当にまずいですって!色々な意味でっ……!//」

 

「んもう、しょうがないわね……じゃあ、今回は特別に、私が答えてあげるっ……♪」

 

「えっ……れ、礼さんがっ……!?」

 

「……プロデューサーくんが、考えてるのはぁ……白くて柔らかくて……とても、気持ちよくなっちゃう……」

 

「ん……?あ”〜っ!あそこに、輝子がいるぞぉ〜っ!!」

 

「えっ……輝子ちゃんがいたの……?」

 

「あぁ!今、走り去って行くのを、しっかりと見た!よし、みんな!輝子を追いかけに行くぞッ!」

 

「じゃあ、私も……礼さん……お菓子を、ありがとうございました……」

 

「お菓子をありがとうな!礼さん!ありがたく、食べさせてもらうよっ!」

 

「お菓子をいただき、ありがとうございました♪では……ボクたちはこれで、失礼させてもらいます♪」

 

「いえいえ♪お礼なんていいのよ……♪鬼ごっこ、頑張ってね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「よ〜しっ、いっくぞ〜!プロデューサーも、早く来いよ〜!」

 

「……うふふ♪みんな……元気でいい子たちね……賑やかで、楽しいわ……♪」

 

「え、えぇ……ところで、礼さん。その……一旦、離れてもらえませんかね……?そろそろ、限界が……//」

 

「ん……?あらっ、ごめんなさい……♪じゃあ、プロデューサーくんにもお菓子をあげるっ♪はいっ、どうぞ♪」

 

「えっ?あ、ありがとうございます……でも、いいんですか?まだ、なぞなぞに答えてないんですけど……」

 

「いいのよ♪だって……プロデューサーくんの顔を見れば、言葉にしなくてもわかっちゃうもの……♪」

 

「俺の顔……?一体、どういう……んぐっ!?」

 

「ふふっ……♪だって……白くて柔らかくて……とても気持ちよくなっちゃう……」

 

「……ような魅力を持ってる「コレ」のことで、頭がいっぱいだったわよね……?」

 

「んん……ぷあっ……こ、これって……マシュマロ……?」

 

「うん♪プロデューサーくんだけには、特別にもう一つ、私からハッピーハロウィンよ♪どう?美味しい?」

 

「えぇ……確かに、甘くて美味しいです……」

 

「……それとも、もしかして……プロデューサーくんは別の「マシュマロ」を想像してたのかなぁ〜?」

 

タプンッ♪

 

「……っ!そ、そんなことはありません!全く……礼さんはアイドルなんですから、そういう言動は……//」

 

「うふっ……♪こんな、オトナのジョークなんて、プロデューサーくんにしか言わないわよ♪じゃあ……」

 

「……特別に……「こっち」の方も、確かめてみる……?と〜っても、甘くて柔らかいわよっ……♪」

 

「なっ……また……!お、俺はもう行きますっ!お菓子をありがとうございました!ではっ……!//」

 

「あら……うふふ……♪いってらっしゃい……♪もう……本当に、みんなかわいいんだから……♪」

 

------------------------------------------------

 

「う〜ん……」

 

「どうだ?輝子、見つかったか?」

 

「……面目ない……ウチとしたことが……この辺に、いるとは思うんだけどなあ……」

 

「輝子ちゃん……結構、走るのが早いんだね……まるで、あのゾンビみたい……」

 

「輝子さんは、アグレッシブな方ですからね♪ま、ボクたちからは逃げられませんけど♪」

 

「んぐ……そうだな。それにしても、礼さんからもらったこのお菓子、結構美味しいな」

 

「うん……♪礼さんのお菓子……美味しい……♪」

 

「えぇ♪カワイくて美味しいお菓子が、たくさん入ってますね♪ま、ボクの方がカワイイんですけど♪」

 

「……ん?おっ、よく見たら、キノコやタケノコも入ってるな。みんなは、どっちが好きとかあるか?」

 

「私は、キノコかな……ホラー映画にも……出てくるから……」

 

「ボクも断然、キノコ派ですね♪何たって、ボクみたいにカワイイですし♪」

 

「ウチは、タケノコの方が好きだけど……プロデューサーは、どっちが好きなんだ?」

 

「ん?そうだな……俺も、どっちかと言えばタケノコかな。何となく、チョコの量が多い気がするし」

 

「……キノコも……いいと思うヨ……?」

 

「まあ、人それぞれ好みがあるしな。あくまで俺は、タケノコ……って……ん?」

 

「……タケノコ……お前……キノコじゃなかったのカァアアアア!?」

 

「ひっ……!?」

 

「うわっ……!し、輝子……!?」

 

「あれだけ、キノコが好きだって言ってくれたのに……シンユウは裏切るのかァ!?ア”ア”ア”ア”ッ!?」

 

「は?う、裏切り……?何のことだ……?」

 

「トモダチのキノコを、見捨てやがって……刈り取ってやるぜェッ!男もッ、女もッ、タケノコもォォッ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……とにかく、落ち着け!好きなのは、あくまでお菓子のタケノコだ!キノコ自体は、好きだから!」

 

「よく聞けェ!キノコはナアッ!タケノコより1.4倍……チョコが多いんだアアアアッ!URYYYYYYYY!!」

 

「えっ、マジ……?キノコの方が、チョコが多いのか……ウチも、キノコ派になろうかな……」

 

「と、とりあえず、ほら!輝子にもお菓子をやるから!なっ?一旦、落ち着こうぜ……?」

 

「えっ……いいの……?じゃあ、もらおうかな……いただきます……」

 

「……あっ……タケノコも中々……オイシイ……♪……フヒ……♪」

 

「ふぅ。これで何とか、解決したな……」

 

「……ああっ!乃々さんも、発見しました!」

 

「……あぅ……」

 

「ん……?おっ、乃々もいたのか」

 

「いえ……その……輝子ちゃんのシャウトに、つい……びっくりしてしまって……」

 

「ラッキ〜♪二人とも一気に、見つけれたな!やっぱり、ウチの野生のカンは正しかったんだ!」

 

「そうだな。ほら、礼さんからお菓子を預かってるんだ。乃々にもやるよ」

 

「あっ……ありがとうございます……かわいいお菓子がたくさん……えへへ……♪」

 

「よし、これで全員捕まえれたな。鬼ごっこ、楽しかったぞ」

 

「何を言ってるんですか♪まだまだ、ハロウィンは終わらせませんよ♪全員が、再集結したんですから♪」

 

「あぁ!今宵のウチらは、ハロウィンを駆け巡る恐ろしい野獣なんだッ!もっと遊ぼうぜィ♪」

 

「そうだね……せっかくの楽しい、ハロウィンなんだし……ヒャッハー、しないとね……フフ……」

 

「もりくぼも、みんなと一緒だと、楽しいです……プロデューサーさんも一緒だと、特に……//」

 

「……そうだな……よしっ!それじゃあ、みんなで再び、ハロウィンを楽しむか!せ〜の!」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

「……お〜っ……ふふっ……そんなに喜んじゃって……♪もう……わかってるよ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「では、みなさん!次はあっちの方まで、競争をしましょう!」

 

「そうだな!ウチが一番乗りだ!誰にも負けないぞッ!」」

 

キャッキャッ♪

 

「ふぅ……さてと。あいつらは楽しんでくれてるようだし、俺は少し、ベンチで休憩しますかねぇ」

 

「しかし……相変わらず元気だよなあ。さすがは、現役のアイドルたちだ」

 

「普段はお姉さんぶってる、幸子や美玲まで、あんなにはしゃいで……何だかんだで、まだまだ子供だな」

 

「輝子と乃々は……まあ……二人は二人で、楽しそうだからいいか……」

 

「……でも……そうか……そうだよな。みんないつも、あんな風に団結して、頑張ってくれてるんだよな」

 

「いつか、みんなも立派なシンデレラに……って、あれ……?誰か、忘れてるような……」

 

「……プロデューサーサ~ン……」

 

ス~ッ……

 

「うわあっ……!?」

 

「えへへ……取り憑いちゃった……♪」

 

「ちょっ……こっ、小梅なのか……!?」

 

「うん……あの子じゃなくて……私だよ〜……♪」

 

「ど、どうしてここにいるんだ……!?みんなと、遊びに行ったんじゃないのか!?」

 

「ううん……私はちょっと、休憩させてもらったんだ……プロデューサーさんを……驚かせたくて……♪」

 

「全く……急に、首に何か巻きついてくるから……心臓が跳ね上がるぐらい、びっくりしたぞ……」

 

「ご、ごめんね、つい……ねぇ……隣、いいかな……?」

 

「ん……?あぁ、別にいいぞ」

 

------------------------------------------------

 

「ありがとう……♪じゃあ……失礼するね……♪」

 

「「……」」

 

「……あ、あの……ふ、二人っきりに……なっちゃったね……//」

 

「そうだな、小梅と二人っきりだ。で?どうだ?ハロウィン、楽しんでるか?」

 

「うん……オバケやゾンビがたくさんいて……とても楽しいよ……♪プロデューサーさんは、どう……?」

 

「あぁ。みんなのおかげで、楽しまさせてもらってるぞ。一緒に来てよかったよ」

 

「そっか……よかったあ……♪私ね……あの子と一緒に、心配してたの……」

 

「えっ……心配……?」

 

「……いくら、イタズラだって言っても……勝手に……プロデューサーさんを、連れてきちゃったから……」

 

「あぁ、そういう……なに、気にしないでくれ。もちろん、最初はびっくりしたけどさ」

 

「でも、その誘おうとしてくれた気持ち自体が、嬉しいんだ。こうして、みんなとも遊べたわけだしな」

 

「プロデューサーさん……」

 

「心配してくれてありがとう。やっぱり、小梅は優しいなあ。あ、あと……あの子もな」

 

「そ、そんな……プロデューサーさんも、優しいよ……?……それに……か、かっこいいし……//」

 

「ははっ。このヴァンパイアの衣装を、褒めてくれるのか?そりゃ、嬉しいな」

 

「うぅ……そうじゃなくて……あ、あの……プロデューサーさん……このあとって、大丈夫……?」

 

「うん?あぁ。特に、何もないけど……どうしたんだ?」

 

「えっとね……その……わ、私と……あのっ……//」

 

------------------------------------------------

 

「……あ〜っ♪プロデューサーさ〜んっ♪あっちの方に、すごいカワイイものが……ん?」

 

「おい、どうしたんだよう、幸子ォ。プロデューサーたちも、呼ぶんだろ?」

 

「し〜っ……みなさん……あれを見てください……」

 

「ん……?ベンチに、プロデューサーと小梅が座ってるな。それがどうかしたのか?」

 

「いえ……どうやら「いい雰囲気」になっている、様子でしたので……」

 

「いい雰囲気……あぁ。確かに、言われてみれば……」

 

「二人とも……あんなに近く……リア充め、爆発……は、して欲しくないかな……大切なトモダチだし……」

 

「秋の肌寒さが、吹き飛んでしまいそうぐらい……いい雰囲気ですね……」

 

「……さて……ボクたちはこのまま、退散をしましょうか……♪」

 

「そうだな……あんないい感じなのに、邪魔をするわけにはいかないしな……」

 

「シンユウと小梅ちゃん……すごい楽しそうだしね……なぜか、目に染みてくる光景だぜ……フヒ……」

 

「ふふ……な、何だか……素晴らしいポエムが出来そうな、光景ですしね……少し、羨ましいですけど……」

 

「しかし……幸子にしちゃ、珍しいよな」

 

「珍しい……?何がです?」

 

「いや、てっきりウチは、いつもの調子で真っ先に、向かうと思ってたからさ……意外だな〜って」

 

「フフ〜ン♪「塩を送ってあげる」のは、当然です♪なんせボクは、オトナなお姉さんですからね♪」

 

「ん……?何で塩なんだ?それとこれと、どういう関係があるんだよぅ」

 

「まだ、美玲さんには早かったですね♪もう少し、お姉さんになったら教えてあげます♪」

 

「ああ〜っ!子供扱いすんなよ!ウチだって多分、分かるぞッ!」

 

「それより、プロデューサーさんに一言、言いに行きますよ♪小梅さん……今回だけは、特別ですからね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「なあ、小梅……本当に、よかったのか……?」

 

「えっ、何が……?」

 

「いや、あいつらが急に、別行動を提案してきたからさ……俺より、幸子たちの方がよかったんじゃないか?」

 

「……いいの……今は、プロデューサーさんと一緒に……いたかったから……♪//」

 

「まあ、小梅がいいなら、いいけど……でも、戻りたかったらいつでも、言ってくれていいからな?」

 

「は〜い……♪……みんな……ありがとう……♪」

 

「えっ、ありがとう……?」

 

「ううん、こっちの話……♪じゃあ、改めて……ハロウィンを、二人で楽しもうね……えいっ……♪」

 

ギュッ♪

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「えへへ……ちょっと、手が寒くなってきちゃって……どう……?ゾンビみたいに、冷たいでしょ……♪」

 

「ゾンビみたいって、あのなあ……まあ、いいか。俺でよければどうぞ」

 

「うん……ありがとう……♪」

 

「……じゃあ……二人っきりになったことだし、その……ちゅー……していい……?//」

 

「あぁ、そうだな。せっかくだし、ちゅーを……はあっ!?こ、小梅……!?」

 

「ん……?どうしたの……?」

 

「どうしたって……き、急に、何を言いだすんだよっ!小梅は、アイドルなんだからなっ……!?//」

 

「えっ……私、今……何か言った……?」

 

「何かって……今、確かに……うあっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

チュ~♪

 

「んふ……♪ぷあっ……やっほ〜♪僕くんっ♪」

 

「くうっ……って……ち、ちとせ……!?」

 

「あはっ♪こんばんは♪お二人さんっ♪ハッピーハロウィン♪」

 

「な、何だよ!いきなり後ろから、俺の首に噛み付いて来るなっ!//」

 

「ごめんごめん♪つい、美味しそうだったから♪で?どう?小梅ちゃんの声真似、似てた〜?」

 

「声真似って……全く……お前ってヤツは……//」

 

「……」

 

「小梅ちゃんもこんばんは♪どう?ハロウィン、楽しんでる?」

 

「こ、こんばんは……あの……はい……楽しまさせてもらってます……」

 

「んもう♪僕くんってば、いいなあ♪ハロウィンに、こんなにかわいい小梅ちゃんと、仮装デートだなんて♪」

 

「あぅ……で、でーと……//」

 

「そうじゃないって。小梅とは普通に、二人でハロウィンを楽しんでるだけだ」

 

「なるほどね♪実は、私も千夜ちゃんと一緒に、ハロウィンデートをしてたの♪ね〜っ♪千夜ちゃ〜ん♪」

 

「……」

 

「ん……?おぉ、千夜もいたのか。どうしたんだよ、そんなところに隠れて」

 

「……私は、ただのお嬢様の飾りだ。いいからお前は、お嬢様だけを見ろ」

 

「そんなことを言うなよ。仮装、似合ってるじゃないか。例えばこの、猫耳のキュート感とか……あだっ!」

 

------------------------------------------------

 

「気安く触れるな。せっかくの衣装が汚れる」

 

「……相変わらずだな……お前……まるで、家に来たばかりの、気難しい猫みたいだ……」

 

「どう?千夜にゃん、かわいいでしょ♪「ヴァンパイアくん」のために、時間をかけて選んだ甲斐があったね♪」

 

「なっ……!」

 

「ヴァンパイアくん……?何だ?実は千夜も、ハロウィンを楽しみにしてたのか……?」

 

「……お、お嬢様……また、そのようなでまかせをっ……!//」

 

「ふふ〜ん♪ところで、僕くんたちのその衣装も、似合ってるよ♪ハロウィンにぴったりだね♪」

 

「あっ……ありがとうございますっ……//」

 

「あぁ、ありがとう。ちとせも、そのヴァンパイアの仮装、よく似合ってるぞ」

 

「あはっ♪ありがとっ♪じゃあ〜、今の僕くんは、ヴァンパイアなんだしぃ……」

 

「……私に、思いっきりかぶりついて……「ちゅー」しちゃう……?//」

 

「ちゅー……だ、だから、さっきから何、変なことを言ってるんだよ!するわけないだろっ!!//」

 

「エ〜。じゃあ、これは主からの命令ですっ♪さあっ♪私に「忠誠の証」を示しなさいっ♪」

 

「だから、しないって!だいたい俺はいつ、ちとせの僕になったんだよ!」

 

「むっ……ちょっと、今の言葉は聞き捨てならないなあ〜。それって、どういう意味なのかな?」

 

「どういう意味も何もあるか!僕僕って!小梅が目の前いるんだぞ!少しは、自重しろっ!」

 

「えっ……あっ、あの……私は……//」

 

「何さ!私より、小梅ちゃんを取るっていうの!?今までは、遊びだったわけっ!?」

 

「……お前……やはり、本性を現したか……高貴なお嬢様を弄ぶとは……この……不潔な色情魔が……」

 

「ちょっ……!な、何だよ!遊びって!変なことを言うな!//」

 

「もうっ!僕くんのおバカ!私は僕くんを、そんなワガママに、育てた覚えはありませんっ!」

 

「だ・か・ら!俺はいつ、ちとせの僕になったんだよ!勝手に決めるな!」

 

ギャーギャー!

 

------------------------------------------------

 

「……んもう……僕くんの、わからずや……」

 

「全く……ちとせはいつも所構わず、変なことばかり言いやがって……アイドルとして、もう少しだな……」

 

「ふ〜ん。じゃあ、いいも〜ん♪……えいっ♪しっかりと、顔をホールドっ♪これで、もう逃げらないよっ♪」

 

「うわっ……ち、ちとせっ……!?」

 

「ワガママばかり言う、悪い僕くんには少し、お仕置きが必要みたいだからねっ♪だ・か・らぁ♪」

 

「……ヴァンパイアの末裔である、この私が……僕くんの理性を「ちゅー」して全部、吸い尽くしてあげる♪」

 

「ちょっ……まっ……そ、そうだっ!千夜!ちとせに何か、言ってやってくれ!//」

 

「……不本意ではあるが……男なら堂々と、お嬢様のご意志を受け入れろ。後ろを向いておいてやる」

 

「なっ……!」

 

「うふふ……「私だけ」の、僕くんっ……♪じゃあ……いただきま〜すっ♪」

 

「……だ、ダメ……!」

 

「ん?……小梅ちゃん……?」

 

「あ、あの……えっと……プロデューサーさんが、困っちゃってますし……これ以上は、かわいそうです……」

 

「……あはっ♪そっか♪そうだよね♪私たちは、アイドルだったもんね♪」

 

「だったって……おい……まさか、今まで忘れてたとか、言うんじゃないんだろうな……?」

 

「安心してよ♪私がアイドルだってことも、あなたが私の僕くんだって言うことも、ちゃんと覚えてるよ♪」

 

「またお前は……あぁ、もう。わかったよ。俺は、ちとせの忠実な僕です。これでいいか?」

 

「よろしい♪じゃあ、誓いも済んだし、私たちもそろそろ、行こうか♪デートの邪魔をしちゃ、悪いしね♪」

 

「えぇ、参りましょう。では、失礼……いや、待て。最後に一つ、言いたいことがある」

 

「ん?どうしたんだよ?千夜」

 

「お嬢様の従者はお前だけではなく、私もいるってことも、忘れるな。肝に銘じておけ。では、失礼する」

 

「は……?あっ、おい……!……行っちまった……本当、何だったんだよ……あいつら……」

 

「……っ〜//」

 

「ま、いいか。小梅、ありがとうな。小梅のおかげで、助かったよ」

 

「ううん、気にしないで……それより……少し、行きたいところがあるんだけど……いいかな……?」

 

「うん?あぁ。別に、大丈夫だぞ」

 

「ありがとう……♪じゃあ、行こうか……♪」

 

------------------------------------------------

 

「えへへ……着いた……♪」

 

「行きたいところって……事務所の屋上だったのか……?」

 

「うん……今日は、とても……月が赤いでしょ……?だから……二人っきりで、眺めたかったんだ……♪」

 

「月……おぉ、遊んでる最中は気づかなかったけど、今日は月がとても赤いな」

 

「ふふっ……♪おばけたちも……ハロウィンを、祝ってくれてるのかも……♪」

 

「「……」」

 

「何だか……とっても、静かだね……さっきまで、賑やかだったのが……嘘みたい……」

 

「まあ、事務所の屋上に、俺と小梅しかいないからな」

 

「まるで……世界で、パンデミックが起きたあとの……崩壊した世界みたい……♪」

 

「確かに、今日はそこら中をゾンビが徘徊してるから、あながち間違ってはいないな」

 

「……ねぇ……プロデューサーさん……もし……世界が崩壊しても……私と一緒に、いてくれる……?」

 

「随分、壮大な質問だな……でも、そうだな。小梅がいいなら、ずっと、一緒にいたいぞ」

 

「……例え……ゾンビになっても……?」

 

「ははっ。いっそ、二人でゾンビになって、崩壊後の世界を楽しむのも、いいかもしれないな」

 

「そうなんだ……じ、じゃあ……あの……ね……」

 

「……ぷ、プロデューサーさんの……体をよこせぇ〜……!」

 

「えっ?……っ!?」

 

カプッ♪

 

------------------------------------------------

 

「くっ……ちょっ……こ、小梅!?」

 

「……うふふ……♪噛まれちゃったから……もう「私の」プロデューサーさんに、なっちゃったね……♪」

 

「いや……ど、どうしたんだ……?急に、俺の首元に噛み付いて……//」

 

「実は……私も、よくわからないの……でも、さっき……ちとせさんと、プロデューサーさんを見てたら……」

 

「……何だか……胸がモヤモヤしちゃって……だから……ゾンビみたいに「仲間」にしたいと思ったんだ……」

 

「何ていうか……その……そんなことをしなくても、俺はいつも、小梅の仲間だぞ?アイドルとしてもな」

 

「ううん……そうじゃなくて……えっと……こ、こ……こい……//」

 

「こい?」

 

「や、やっぱり……何でもない……それより、プロデューサーさん……その……」

 

「……もし、よかったら……私と、一緒のお墓に……入ってくれませんか……?」

 

「一緒の……はあっ!?こ、小梅……?自分が何を言ってるのか、わかってるのか……?」

 

「うん……だって……ゾンビになっても……お墓の中で、二人一緒なら……寂しくないしね……♪」

 

「あっ……そ、そうだよな〜……それなら、俺がゾンビになっても、寂しくないな〜……あはは……」

 

「他に……何か、意味があったりするの……?」

 

「いやいや!何でもないぞっ!でも、悪いな。俺は、墓に入る気はないんだ」

 

「えっ……」

 

「ゾンビ映画は、生き残ってこそだろ?だから、ゾンビにならないように、最後まで生き残ろうぜ。一緒にな」

 

「……プロデューサーさん……うん……そうだね……確かに、ゾンビになるのも捨てがたいけど……」

 

「私も……最後まで生き残りたい……プロデューサーさんと、一緒に……」

 

「だろ?だけど、それはアイドルでも同じだ。だから、これからも一緒に頑張っていこうな。小梅」

 

「うん……よろしくね……♪……今は、首だったけど……次は……プロデューサーさんの……」

 

「?」

 

「……あうっ……や、やっぱり……何でもない……じゃあ、今は……」

 

キュッ……

 

「二人で……おててを繋いで……しばらく、赤い月を二人で眺めてようね……私の……ゾンビさん……♪」



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真偽シンデレラ 宮本フレデリカ

「ありがとうございました。では、またよろしくお願いします」

 

カチャッ

 

「……ふぅ……何とか、終わったな……」

 

「にゃはは♪終わった終わった〜♪」

 

「おい……その前に、何か言うことが……あるんじゃないか……?」

 

「えっ……?……ん〜と……あっ♪そうだっ♪」

 

「……ずっと握っててくれた、キミの手……すごく……大きくて、温かかったよ♪やだ……恥ずかしい……//」

 

「そうか、それはよかった」

 

「えへへ……♪……ふにゃあっ!?」

 

「で……?収録直前まで、そこら辺をほっつき歩いてた悪い猫は、どこのどいつだっけなあ……?」

 

「た、ただ、お散歩をしてただけよっ!別に、メンドくさくなったから、失踪しようだなんて……あっ……」

 

「……し〜き〜?」

 

「冗談だよっ!でも、ほら!ちゃんと、お仕事はしたでしょっ!?一回も、リテイクを出さなかったしっ♪」

 

「それは……確かに、そうだったな……何の滞りもなく、順調に収録が、進んでたっけ……」

 

「でしょでしょ〜?志希ちゃんは、やればちゃんと出来る子なんです♪だからほらっ♪褒めてよ〜♪」

 

「あぁ……ありがと……って!それとこれとは別だ!いつも失踪するお前を、探す俺の身にもなってみろっ!」

 

「それだけ、キミを信用してるってことだよ♪……だって、すぐに……あたしを見つけ出してくれるもんっ♪」

 

「「見つけ出さざるを得ない」ってことを、忘れるなっつ〜の……ったく……うわっ!?」

 

「ニ〜ハオ♪ズゥドラ〜ストヴィチェ♪グ〜テンタ〜ク♪」

 

------------------------------------------------

 

「グッドアフタヌ〜ン♪Bonjour♪こんにちは♪プロデューサ〜♪さあ〜♪この謎の手の正体は、誰でしょうか〜♪」

 

「ちょっ……わ、わからねえよ!一体、誰なんだよっ!」

 

「……しょうがないなあ〜……は〜い♪キュートなパリジェンヌの、宮本フレデリカちゃんだよぅ〜♪」

 

「あっ……何だ……フレデリカだったのか……」

 

「もうっ。プロデューサーってば、酷いなあ〜。ボンジュールの発音で、わかってくれると思ったのに〜……」

 

「確かに、ボンジュールだけネイティブで……って!あんなに、マシンガンみたいに言われたら、わかるか!」

 

「むぅ〜……ま、いいか♪フレちゃんは心が広いから、許してあげるっ♪シキちゃんもこんちゃ〜♪」

 

「こんちゃ♪フレちゃんはここで、何をしてたの〜?」

 

「えっとね〜。ちょうど、上の階でお仕事をしてたの♪それで、終わって降りたら、二人がいたってわけ♪」

 

「あぁ……そういえば、フレデリカにはファッション誌の撮影に、行ってもらってたんだっけ……」

 

「えっ……まさか、忘れてたの……?……ひどいよっ……クスン……」

 

「ちょっ……ふ、フレデリカ!?何で、急に泣いてるんだよっ!?」

 

「……ア〜ア〜。プロデューサーってば、女の子を泣かせたぁ〜。い〜けないんだ、いけないんだ〜」

 

「おま……誰のせいだと思って……!……と、とにかく!一旦、泣き止んでくれ!頼むよ!なっ……!?」

 

「スンッ……じゃあ……アタシのことを……たくさん、褒めてくれる……?」

 

「あ、あぁ!いつも仕事を頑張ってくれてありがとうなフレデリカ!フレデリカは俺の自慢のアイドルだっ!」

 

「……「お嫁さん」に、したいぐらいに……?」

 

「えっ……そ、そうだな!フレデリカがお嫁さんになったら、毎日が幸せだろうしなっ!あはは……」

 

「……そっか……め〜るしぃ〜♪じゃあ、みんなで、カフェに行こうよぉ♪どうだった?アタシのエ・ン・ギ♪」

 

「は?演技……?……ハァ〜……何だよ……びっくりさせないでくれよ……」

 

「ふふっ…♪でも、そっかぁ……お嫁さんにしたいぐらいの、自慢のアイドル……えへへっ……♪」

 

「むぅ〜……もうっ!プロデューサー!フレちゃんだけズルイ!あたしも、もっと褒めてよ〜!」ギュッ

 

「わぁお♪二人とも、仲良しさんだねぇ♪……えいっ♪アタシも、プロデューサーを確保ぉ〜♪」

 

「くっ……ふ、二人して、何だよ!周りに、変な目で見られるから、くっついてくるな!!//」

 

「えぇ〜?だってぇ、あたしたちは「クレイジークレイジー」だし、問題ないも〜ん♪ね〜♪シキちゃ〜ん♪」

 

「フレちゃん上手〜♪そうだねぇ♪だから、変な子って思われても、けっこ〜、こけこっこ〜だも〜ん♪」

 

------------------------------------------------

 

「「「いただきま〜す!」」」

 

「あむ……にゃは〜♪美味しい〜♪」

 

「確かに、ハムの塩味と卵サラダが効いてて、結構美味しいな。よく来るのか?」

 

「うんっ♪アタシの、お気に入りのお店なんだ♪お仕事が終わった時とかに、よく来てるんだよ〜♪」

 

「なるほどな。これだけ美味しかったら、俺も、ここの店のファンになってしまいそうだ」

 

「……でも……プロデューサーは「さっきの」サンドイッチの方も、お気に入りなんじゃないの〜?」

 

「そうだねぇ♪バンズが、アタシと志希ちゃんでぇ、具材がプロデューサーの……」

 

「「「シキフレサンド」をねっ♪」」

 

「シキフレ……んぷっ……!」

 

「あんっ、プロデューサーってば、お行儀悪い〜」

 

「わ、悪い……だけど……何が、シキフレサンドだよ……変なことをしやがって……//」

 

「やんっ♪そんなに、お顔を真っ赤にしちゃってぇ〜♪やっぱり、お気に入りになっちゃったのかなぁ〜?」

 

「しょうがないよ〜♪だって、プロデューサーは「女の子」が、だ〜い好きだもんねぇ〜♪」

 

「誤解を生むような、言い方をするな!……二人とも、アイドルなんだし……色々と、気をつけてくれよ?」

 

「じゃあ……そんな「クレイジーな」あたしたちを……しっかりと、見守ってねっ……♪」

 

「うんうん♪プロデューサーは、大人のお兄さんだもん♪だから……頼りにしてるぞ〜っ♪」

 

「ふぅ……頼りにされてるんだか、バカにされてるんだか……」

 

「……あっ……そうだ!ところでさ♪明日、二人とも暇〜?ちょっと、試してもらいたい試薬があるんだっ♪」

 

「また変なものを……勘弁してくれ。それに、明日はフレデリカと用事があるんだ」

 

「えっ……フレちゃんと……?」

 

「ごめんねぇ、シキちゃん。明日は、プロデューサーとお仕事について、色々と打ち合わせがあるんだ〜」

 

「……ふ〜ん……そうなんだ〜。でも、フレちゃん。気をつけてね〜?プロデューサーは「オオカミ」だし♪」

 

「えぇっ……!?もしかして、アタシと打ち合わせって、そういう……や〜んっ♪こっわ〜い♪」

 

「お前ら……!……ったく……ほら、バカなことを言ってないで、さっさとサンドイッチを食べるぞ!」

 

「「ふふっ……は〜い♪」」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、待ったね〜♪お〜ゔぉあ〜♪」

 

「あぁ。今日はお疲れ様。ゆっくりと、休んでくれ」

 

「シ〜ユ〜♪フレちゃ〜ん♪また今度ね〜♪」

 

「……さて……今日も、一日無事に終わったな。まさか、仕事先でフレデリカに会えるとは」

 

「うんっ♪ラッキーだったよね♪でもぉ……あたしはちょ〜っと、感心しなかったかな〜」

 

「は……?感心って……何の話だ……?」

 

「……女の子を悲しませちゃだめだと……志希ちゃんは、思うにゃ〜……♪」

 

「……そうだな。すっかり、騙されてたわけだし。俺は悲しいぞ〜」

 

「あれぇ〜!?プロデューサーって、女の子だったんだぁ♪どおりで、中性的なイケメ……ふ”に”ゃ”っ”……!」

 

「どこかの落ち着きがなくて、やかましい猫のことで俺は、頭がいっぱいいっぱいだったんだけどな〜?」

 

「……あんっ……そんなあ……いっぱいいっぱいだなんて……志希ちゃん、照れちゃう……♪//」

 

「ふぅ……本当……俺はいつまで、このやかましい猫娘に、振り回されなきゃいけないんだろう……」

 

「にゃはは♪やっぱり、キミって飽きないなあ〜♪一緒にいて、ちょ〜楽しいもんっ♪」

 

「……はいはい。俺に飽きてもいいけど、アイドルに飽きないでくれりゃ、それでいいよ」

 

「ふふ……さぁ〜、どうだろうねぇ〜♪それよりさ、明日はフレちゃんと、どういう打ち合わせをするの〜?」

 

「いや、実を言うと、打ち合わせって言っても、フレデリカから提案してきてな。俺も、よく知らないんだよ」

 

「ま、前々から、お互いに都合が合う明日に決めてたんだけどさ。仕事のことも、色々と話したかったしな」

 

「そっか……なるほどねぇ〜……じゃあさ!今から、あたしとお茶をしに行こう〜♪ハイけって〜い♪」

 

「は?お茶……?急に、どうしたんだよ……?」

 

「ん〜……何となく、キミと二人っきりで、お茶をしたくなったの♪ねぇ〜、いいでしょ〜?」

 

「まあ……まだ時間もあるし、俺は別に、構わないけど……でもさっき、三人でお茶をしたばかりじゃないか」

 

「細かいことは、気にしない♪気にしない♪……でも……本当に、仕事のことなんだよね……?」

 

「それしかないだろ。ったく……お前も、もう少しフレデリカみたいに、仕事に真剣に向き合うとかだな……」

 

「はいはい♪それじゃあ、今日は最後まで、あたしに付き合ってもらうのだ〜♪……信じてるからね……♪」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「ふぅ……着いた……」

 

「フレデリカは……まだ、来てないみたいだな。俺が一番乗りってわけか」

 

「それにしても……昨日、あれだけ打ち合わせがあるって言ったのに、全然、返してくれなかったし……」

 

「本当に、マイペースで自分本位なヤツだな……志希は……結果的に、間に合ったからいいけどさ」

 

「それにしても……この公園で、待ち合わせだとしか書いてなかったし……一体、どういうつもりなんだ……」

 

「……ま、いいか。フレデリカも、マイペースなのはいつものことだし。考えてもしょうがないな」

 

「さてと、スマホでも見て、時間を潰して……」

 

「……あの〜、すいません。ちょっといいですか?」

 

「ん……?あ、はい。何でしょう?」

 

「あなたと私、どこかで出会ったことがない?」

 

「えっ、君と……?いや〜、多分……人間違えだと思うんだけど……」

 

(随分と、綺麗な女の子だな……何だか全体的に、透明感があって……この近くの子なのかな……?)

 

「そう?それじゃあ、一緒に思い出してみようよ。頭に両手を当てて、こんな感じで」

 

「えっと……こ、こうかい……?」

 

「いいね、グー」

 

「じゃあ、やってみよう。目を閉じて、瞑想をするように、心を集中させて……」

 

「「……」」

 

「……どう?思い出せた……?」

 

「……う〜ん……ちょっと今は、思い出せそうにないかも……ごめんね。気を悪くしないで欲しいな」

 

------------------------------------------------

 

「そっか。それじゃあ、仕方がないね。ごめんなさい。変なことを聞いて」

 

「……あ〜っ!こ、こんなところにっ!」

 

「ん……?あっ、ふふっ。どうやら、お迎えが来たみたい」

 

「も、もうっ!何をしてるのっ!?早くしないと、時間に間に合わなくなっちゃうよっ!」

 

「……なんか……君のことを、探してたみたいだよ……?」

 

「そうみたいだね。それじゃあ、私は行くよ。でも……」

 

「……あなたを初めてみた時にさ、すごく……既視感を感じたんだけどな」

 

「えっ……既視感……?」

 

「こっちの話。もしかしたら、またどこかで出会えるかもしれないね。じゃ」

 

「あ、あぁ……またね……何だったんだ、あの子……随分と、不思議な子だったな……」

 

「なんか、既視感とか言ってたよな……?もしかしたら、あの子と俺って、過去に……うわっ!?」

 

「……さぁ〜♪誰か、当ててみたまえ♪もちろん「最愛」の女の子だからぁ、わかるよね〜♪」

 

「最愛って……ふ、フレデリカか……?」

 

「あったりぃ♪やっほ〜♪正真正銘、濃度100%のフレデリカちゃんだよ〜♪ジュースじゃないけどね〜♪」

 

「全く……また目隠しかよ……相変わらずだな、お前は……」

 

「めんご♪めんご♪それより、さっき、プロデューサーとお話ししてた女の子って、誰だったのかなっ♪」

 

「さっき……?あぁ、何だよ。見てたのか」

 

「何だか、すごい仲良さそうにしてたから、お知り合いだったのかなって、思ってさ♪」

 

「いや……フレデリカを待ってたら急に、声をかけられたんだよ。一応、初対面のつもりなんだが……」

 

「ふ〜ん……んも〜♪いくら、女の子がかわいかったからって、こんなところで、ナンパはダメだぞ〜♪」ギュッ

 

「はあっ!?ナンパなんかしてねえよ!むしろ、あの子から……ていうか!何、くっついてきてるんだよ!//」

 

「全くぅ、プロデューサーは目を離すと、す〜ぐこれなんだからぁ♪フレちゃん、困っちゃう♪」

 

「いいから離れろっ!恥ずかしいからっ!!//」

 

「イ〜ヤ〜♪それじゃあ、アタシとプロデューサーの、ラブラブでワクワクなデートにぃ……れっつらご〜♪」

 

「デート……?……って、そんなに引っ張るなって!わかった!わかったからっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ〜、プロデューサー♪これどう〜?」

 

「あぁ、似合ってるぞ」

 

「じゃあ、こっちはどう〜?」

 

「うん、それも似合ってるぞ」

 

「んもう〜、プロデューサー?さっきから、同じ返事ばかりぃ〜。本当に見てくれてるの〜?」

 

「も、もちろんさ……フレデリカは元がいいから、何でも似合うしな……あ、あはは……」

 

「……ふ〜ん。じゃあ、今度はアタシが、服を選んであげるっ♪例えば……これなんかどう?」

 

「おぉ、流石はフレデリカだな。これなら、俺にも……って!これ、女性服だろ!俺にそんな趣味はねえよ!」

 

「へぇ〜、そうだったんだぁ。だって、プロデューサーも「何でも似合っちゃう」から、つい〜」

 

「お前の中で、俺は一体……どういうイメージなんだよ……」

 

「じゃあ、一つ聞きたいんだけどさぁ〜。プロデューサーにとって、あたしは何なの〜?」

 

「は?何って……そりゃ、アイドルだろ?」

 

「でしょ?アタシは「プロデューサー」のアイドルなの。だからもっと、アタシに興味を持って欲しいなぁ」

 

「いや……別に、興味を持ってないとかじゃなくて……俺には少し、ハードルが高いと思ってな……」

 

「ハードル……?」

 

「あぁ。フレデリカだって、センスがない俺より、アイドルたちが選んでくれた方が、嬉しいだろ?」

 

「確かに、他の子とのショッピングは楽しいよ?でも、あくまで「エンジョイ」な意味なんだっ♪」

 

「それに「何でも」ってことは、別にアタシじゃなくても、似合うってことだよね?」

 

「だから、本当に興味を持ってくれてるなら、真剣にプロデューサーが、アタシの服を選んでくれるよね〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「うぐっ……そ、それは……!」

 

「……♪」ニコッ

 

「……そうだな……確かに、フレデリカの言う通りだ。自慢のアイドルに、何でも似合うはないよな……悪い」

 

「えぇ、私もそう思います♪彼氏さんってば、彼女さんのことをよく見てらっしゃるんですね〜♪」

 

「えっ……?いや、その……別に、俺たちはカップルではなくて……プロ……」

 

「……はぁ〜い♪アタシたち、カップルで買い物に来たんですっ♪」

 

「ちょっ……!?」

 

「やっぱり!服を選んでる彼氏さんの、彼女さんに対しての熱い想いが、ひしひしと伝わってきましたもの♪」

 

「や〜ん♪そんなぁ〜♪恥ずかしいですぅ〜♪」チラッ

 

「……えっと……そのっ……//」

 

「アタシって結構、悩んじゃうタイプなんですけど、ちゃんと最後まで、付き合ってくれるんですよぉ〜♪」

 

「……むしろ……アタシのために、一緒に真剣に悩んで、選んでくれたりするんです……えへへ……♪」

 

「わぁ〜♪素敵な彼氏さんですね♪では、何かご用がありましたら、遠慮なくお声がけくださいね〜♪」

 

「……//」

 

「……ふうっ……演技しゅうりょ〜う♪お〜い、プロデューサー?大丈夫〜?」

 

「……くっ……何が、演技だよ……唐突すぎて、顔から火が出るほど、恥ずかしかったんだからな……//」

 

「んもう、ダメだぞ〜?店員さんにわざわざ、アタシたちの関係を、説明しようとするなんてぇ〜」

 

「いや……カップルって、お前……意味をわかってるのか?」

 

「えぇ〜?「プロデューサーとアイドル」で買い物をしてた方が、よっぽど、誤解を生むんじゃないかな〜?」

 

「そ、それは……確かに……一理あるな……」

 

「……それとも……いっそのことさぁ……こんな感じになっちゃう……?」

 

------------------------------------------------

 

「こんな感じ……って……ウェディングドレス!?」

 

「ヨメデリカちゃんの誕生〜♪ってね〜♪もちろん、相手はぁ……身近な人だけどね〜♪」チラッ

 

「また、お前は……いいか!フレデリカは人気アイドルなんだぞ!?そんなことは、まだ早すぎるぞっ!」

 

「や〜ん♪プロデューサーってば、パパみたいなことを言うんだからぁ♪でも……アタシも、女の子だしぃ……」

 

「……真面目な顔で「結婚しよ」って言われたら……真面目に、お返事してあげるよ……?//」

 

「くそっ……また、からかいやがって……!と・に・か・く!お前には、そういうことはまだ早い!」

 

「ぶぅ〜……「ママデリカ」はまだ、早かったかぁ。じゃあ、今はカップルでいいや♪ねぇ〜、ダ〜リン♪」

 

「うわっ……!だ、だから今、話したことを聞いてたのか!?」

 

「ふふ〜ん♪だって、アタシは今を輝く、パリジェンヌのJDだよ〜?たくさん、青春を謳歌しなくちゃ♪」

 

「だから一緒に、いっぱい、楽しい思い出を作ろうよ♪人生って、楽しいことが多い方がいいでしょ?」

 

「いや……まあ、そりゃ確かに、そうだけど……でも……それとこれとはまた、違う気がするんだが……」

 

「ノンノン♪アイドル界の「自由の女神」である、このフレちゃんが言うんだから、間違いないもんっ♪」

 

「そ・れ・にっ♪変な距離感を作るより、カップルな方が、不自然じゃないと思うけどなあ〜♪」

 

「……わかったよ。衣装選びも、立派な打ち合わせだしな。お手柔らかに頼むぞ」

 

「わかればよろしい♪今日は、一日中アタシに、付き合ってもらうんだからね〜♪それじゃあ、れっつらご〜♪」

 

「ちょっ……だ、だから、そんなに引っ張るなって!そんなに焦らなくても、時間はたっぷりあるから!」

 

キャッキャッ♪

 

「……」

 

「ん……?あれは……プロデューサーとフレちゃん……?何で、ここに……」

 

「……にゃはは♪あっ、そっかぁ……なるほどね〜♪」

 

------------------------------------------------

 

カタカタ……

 

「今日の予定はこうで……ここの予定は、こうして……ふぅ……作業、終わりっと……」

 

「さて……一休憩するか。ジュースジュース……んぐ……ん?」

 

ザァ~……

 

「うわっ、雨が降ってきたな……」

 

「う〜ん。そうだねぇ〜」

 

「予報では、曇りって言ってたんだけど……強くならないといいが……」

 

「ん〜。強くならないといいねぇ〜」

 

「……ところで……志希、どうしたんだ?」

 

「どうしたって、何が〜?」

 

「今日はオフだろ?どうして、事務所にいるんだよ」

 

「どうって……ま〜、暇だからかにゃ〜。家よりここの方が、何となく落ち着くし〜」

 

「……お前なあ……前にも言っただろ?事務所は、憩いの場じゃないんだからな?」

 

「ま〜、細かいことは言わない言わない♪少しくらい、い〜じゃ〜ん〜♪」

 

「それにぃ、ね〜こは事務所で丸くなる〜って、言うもんね〜」

 

「ふぅ……とんだ猫が、住み着いちゃったな……でも、こういう時こそ、やることがあるんじゃないか?」

 

「やることって……?」

 

「志希の大好きな、実験だよ。仕事がない時にこそ、思う存分、好きなだけ家で……ぐっ……!?」

 

「確かに……そうだねぇ……♪で?どう……?飲み物……美味しかった〜?」

 

------------------------------------------------

 

「か、体がっ……!志希……お前……何をしたっ……!」

 

「にゃはは♪飲み物に少し、お薬を混ぜちゃった♪さて、志希ちゃんの、マジカルショーの始まり始まり〜♪」

 

「薬……だと……くそっ……いつの間にっ……!か、体が痺れて……動かねえっ……!」

 

「ねぇ……このままさぁ……あたしと「イイこと」を……しようよ……♪」

 

「……い、いいことって……なんだよっ……!」

 

「わかってるクセに……♪……もし、イヤだって言うなら……この写真をみんなに……バラしちゃおっかな〜♪」

 

「……っ……!?な、何で、それを……!?」

 

「あたしを差し置いて、二人っきりでデートだなんて……いいなあ〜♪ずるいなあ〜♪」

 

「いや……あれはあくまで、打ち合わせであって……デートとか、そんなんじゃ……」

 

「ふ〜ん……まだシラを切るんだ〜。しょうがないなあ〜♪……じゃあ……」

 

……タプンッ♪

 

「……キミには、少し……「正直」になってもらおうか……♪」

 

「ちょっ……な、何だよ、急に……それに、その……あ、当たってるし……近いって……!//」

 

「この、あたしの特製のお薬はぁ……「気持ちよ〜く」なっちゃう成分も、配合したの♪」

 

「だから、抵抗しちゃイヤだよ?あ、そっか♪痺れちゃってるからどのみち、動けないんだったね♪にゃはは♪」

 

「……お、お前は……アイドル……なんだぞっ……」

 

「ねぇ……このまま、あたしと気持ちよく……「トリップ」しよ……?もう、戻れなくなるぐらいに……♪」

 

「や、やめ……!//」

 

カチャッ

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「えっ……ふ、フレデリカ……!?」

 

「……やっほ〜♪フレちゃん……♪」

 

「……これは……どういうことなのかな……?」

 

「これから、あたしたち……「愛し合おう」としてたんだ♪……プロデューサーとねっ……♪」

 

「ちょっ……ま、待て!志希が勝手に俺に……むぐっ……!」

 

「んもう、恥ずかしがっちゃってぇ……「友達ごっこ」はもう……終わりだよ……♪//」

 

「……っ!」ダッ

 

「むぐ……ぷあっ……ふ、フレデリカ!だから、これは誤解なんだって!!」

 

「あんっ、誤解かどうかは、キミの体にぃ……直接、聞いてみよ……♪……まずは、キミのお口をいただ……」

 

「くそっ……離れろっ!!……フレデリカ!待ってくれ!!」

 

「きゃっ……あっ……行っちゃった……あ〜あ、せっかくのチャンスだったのに〜……」

 

「……やっぱり……少量じゃ、だめか〜。プラシーボ効果で、イケると思ったんだけどなあ〜」

 

「まあ……「シゲキ」的な成分は効果てきめんだったし、いいか♪あんなに、顔を真っ赤にしてたしっ♪」

 

「だけど、惜しかったな〜。あともう少しで、プロデューサーと、クレイジーで濃密な……」

 

「……あっ……いっけな〜い♪志希ちゃんはお年頃の女の子で、アイドルだったもんね〜♪って、何を今更〜♪」

 

「本当……どうしちゃったんだろうね。他人に興味がなかったのに、ここまで「独占」したくなるなんて……」

 

「でも……まあそれは、フレちゃんも同じか。普段から、キミを見る目に「艶」があったしね」

 

「……にゃはは♪もう、戻れないなあ♪……清浄な世界に……♪」

 

------------------------------------------------

 

「お〜い!フレデリカ〜!どこにいるんだ〜!!」

 

「ったく……傘もささずに、どこに行っちまったんだよ……あいつは……!」

 

「このままだと、風邪をひいて……って……そういえば、俺も傘をさしてきてなかったな……」

 

「それにしても……アイツ……何で、急にあんなのことを……普段から、変な薬の実験台にしてくるけど……」

 

「あそこまで、変なのは初めてだったし、何だか、志希がいつもより女らしく見えてきて……艶かしくて……」

 

「……って!ダメだダメだっ!……とりあえず、まずはフレデリカを見つけないと……//」

 

「ほらっ。傘をささないと風邪、ひいちゃうよ」

 

「えっ……?あっ……き、君は……」

 

「ふふっ、また会ったね。こんにちは」

 

「あ、あぁ……こんにちは……でも、何で君がここに…?」

 

「ん〜……どうしてだっけ。あ、もしかして、運命の出会いってやつかも。うん、そうに違いない」

 

「う、運命の出会い……?」

 

「何だかそっちの方が、ロマンティックでいいじゃん。それよりこれ、よかったら使ってよ」

 

「……いいのかい……?俺たちまだ、会って間もないのに……」

 

「いいよ。それに、傘もささないで、雨の中を走り回ってるのって……女の子のためでしょ……?」

 

「……っ……それは……」

 

「ふふっ、やっぱり。あなたって、顔に出ちゃうタイプでしょ。それに、とても心配性で、優しくて……」

 

「……本当……「あの人」そっくり」

 

「えっ、あの人……?」

 

「ううん、こっちの話。じゃあ、早く行ってあげて。傘はまた、今度会った時に返してくれればいいから」

 

「……悪いな……じゃあ、借りさせてもらうよ!ありがとう!絶対に、返しに行くからね!」

 

「頑張ってね。じゃあ、私も……あ……やべ……これから、小糸ちゃんの家に、傘を返しに行くんだった……」

 

「……ま、いいか。私の傘は貸しちゃったけど、小糸ちゃんの傘はここにあるし……少し、借りちゃおっと」

 

------------------------------------------------

 

「……フレデリカ!」

 

「ふふ……やっほ〜。プロデューサー」

 

「やっほ〜って、お前……心配したんだぞ!?」

 

「あはは♪心配して、来てくれたんだ♪でも……アタシがここにいるっていうのが……よくわかったね……?」

 

「……フレデリカのことを考えたら……何となく、この公園にいると思ったんだ……」

 

「ふふっ……そうなんだ……♪何だか、超ロマンティックだね♪まるで、おとぎ話みたいっ……♪」

 

「とりあえず……俺と一緒に来いよ。こんな所にいると、風邪を引いちゃうぞ……?」

 

「……ううん、気にしないで。アタシは、このままでいたいの」

 

「このままって……傘もささずにいるから……ずぶ濡れじゃないか……」

 

「いいの。この雨がね、アタシの気持ちを洗い流してくれるんだ。色々な気持ちもね……」

 

「それにしても……ごめんね?アタシ、とてもお邪魔虫だったよね。志希ちゃんに、悪いことしちゃったなあ」

 

「志希……って!だから!あれは、誤解なんだって!」

 

「ううん、誤解じゃないよ。志希ちゃんの気持ちは「本当」だよ。もちろん、アタシも……」

 

「……いつからかな?こんなにも、胸が苦しくなってきちゃったのは……みんな、お友達なはずなのに……」

 

「その他にも、考えれば考えるほど……ってあれ……?何で……こんなに、目が熱いんだろ……」

 

「……おかしい……おかしいよ……何で……アタシってば、こんなに……クスン……」

 

「……っ!フレデリカ!!」ギュッ

 

「あっ……イヤ……!……離してっ……!」

 

「バカ!フレデリカは、俺の大切なアイドルなんだ!こんな状態のお前を、放っておけるか!」

 

「……っ……そんなにギュッとすると……プロデューサーの服も、濡れちゃうよ……?」

 

「構うものか。お前を連れて帰るまで、俺は一歩も、この公園から出ないからな」

 

「……本当に、優しいね……プロデューサーは……アタシ……おかしくなっちゃいそうだよ……」

 

「それじゃあ。おかしくなるまえに、連れて帰らないとな。ほら。まずは、温まる場所に行こうぜ」

 

「……うん……ありがとう……//」

 

------------------------------------------------

 

チャプン……

 

「ふぅ……いい湯だ……」

 

「体の芯から、温まって……心も体もぽかぽかで、気持ちいいぜ……」

 

「……それにしても……近くに、いいホテルがあって……よかったな……」

 

「あのままだと、お互いに風邪を引いてしまいそうだったし……グッドタイミングだ……」

 

「プロデューサー。どう?湯加減の方は」

 

「あぁ、いい湯加減だ。フレデリカも、ちゃんと温まれたか?」

 

「うんっ♪おかげさまで、全身ぽかぽかだよ♪しるぷぷれ〜♪」

 

「なら、よかった。雨で体が冷えて、寒かっただろうしな」

 

「でもぉ……確かに、ぽかぽかだけど……また少し、冷えてきちゃったかも……」

 

「ん?そうなのか?じゃあ、少し待っててくれ。すぐに上がるからさ」

 

「ううん、気にしないで。それじゃあさ、せっかくなんだし……」

 

ガラッ

 

「……二人で「一緒に」……温まろうよ……ねっ……♪//」

 

「ちょっ……ふ、フレデリカ!?な、何で、入ってきてるんだよっ!?//」

 

「だって……ここって少し「大胆な」ホテルでしょ……?だから……」

 

「……もしかしたら……こういうことを、ちょっぴり……期待してたのかな〜って、思ってさ……なんて♪」

 

「ばっ、バカ!俺はただ、お前のことが本気で心配でだな……//」

 

「うふふ……そっか……♪なら、ご一緒してもいいよね?……失礼しま〜す♪」

 

------------------------------------------------

 

「「……//」」

 

「……ねぇ……プロデューサー……?」

 

「何だ……?」

 

「プロデューサーって、やっぱり……男の人なんだね……体が大きくて、とても逞しいしっ……♪」

 

「そうか……?なら、フレデリカは……」

 

「アタシは……?」

 

「……って……あ、アイドルに、そんなことを言えるか!ましてや、女の子にっ!//」

 

「ふふっ……アタシのことを……そんなに、意識しちゃってるんだ……♪……でもね?実は……」

 

ムニュッ……♪

 

「……アタシも……こんなに……ドキドキしちゃってるんだよ……?」

 

「……っ…!?ふ、フレデリカ……!?」

 

「どう……?アタシの鼓動……聞こえる……?//」

 

「……さ、さ〜てと!俺は、もう十分温まったし、そろそろ上がるか!」

 

「やんっ、ダ〜メ♪「フレちゃん」と一緒に、肩まで浸かって、100数えるまで離さないからねぇ〜♪」

 

「くっ……!//」

 

「まあ、それは冗談としておいてぇ♪……でも……」

 

「……シキちゃんに妬いちゃったのは、本当……だから……フレデリカ「猫」……やめるよ……」

 

「えっ、志希……猫……?一体、何を言って……んぐっ……!?」

 

チュッ……♪

 

「……//」

 

「……ぷあっ……ちょっ……ふ、フレデリカ……//」

 

------------------------------------------------

 

「アタシね……み〜んなが楽しくなれる「ウソ」の方が、ハッピーハッピーだと思ってたんだ」

 

「……でも……本当は、プロデューサーやみんなに「本当のアタシ」を知られるのが、怖かっただけなの……」

 

「知られたら……今までや、これからの全てが、変わっちゃうような気がして……とっても怖かったんだ……」

 

「……」

 

「でも……アタシはもう「ウソ」はつかないよ。本当の気持ちに、ウソはつけないってわかったから」

 

「……シキちゃんのおかげで……ね……」

 

「いや……だからあれは、志希が勝手に……」

 

「ううん。これ以上は、言わなくていいよ。プロデューサーは、と〜っても優しいお兄さんだもん」

 

「でも……今は、優しさはいらない……だから……「本当のプロデューサー」を、教えて……?」

 

「ほ、本当のって……」

 

「……プロデューサーからも……アタシにして……欲しいな……?」ウルッ

 

「フレデリカ……あぁ、もう!と、とりあえず、俺はもう上がるぞっ!」

 

「えぇ〜!?んもう!プロデューサーってば、雰囲気台無し〜!KYだよ!K・Yっ!!」

 

「う、うるさい!俺は本当に、お前を心配して来ただけだ!あとは一人で、しっかり温まれよ!いいな!!//」

 

「あんっ……行っちゃった……むぅ〜……イヂワル〜……」

 

「……でも……アタシ……しちゃったんだ……♪「初めて」を……プロデューサーと……」

 

「本当に、ずるいよ……普段は優しいのに、さっきみたいに、急にカッコよくなったりするんだから……」

 

「アタシを思いっきり、抱きしめてくれて……やだ……思い出したらまた……赤くなってきちゃった……//」

 

「体にも……そして、お口にもまだ……温もりが残って……えへへ……♪//」

 

「……大好きっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ。すっかり、晴れてるな」

 

「わぁお♪雲の隙間から日差しがさしてて、とてもきれ〜い♪」

 

「いいタイミングで、晴れてよかったな。さて、事務所に戻ろうぜ」

 

「……ああっ!プロデューサー!フレちゃ〜ん!!」

 

「ん……?おっ、志希じゃないか。どうしたんだよ?」

 

「もうっ、どうしたじゃないよ〜。二人とも雨が降ってる中、出て行っちゃうし、心配してたんだよ〜?」

 

「あぁ……そうだったのか……悪い……って!お前が、全ての原因だろうがっ!」

 

「えぇ〜?そうだっけ〜?♪それより、はいっ♪二人の傘を、持ってきてあげたよっ♪」

 

「ったく……まあ、ありがとうな、志希。でも、もう晴れたから傘は……ああっ……!」

 

「んにゃ?プロデューサー、どったの?」

 

「やっべ……傘を置いてきちまった……悪い!少し、待っててくれ!」

 

「んもう、プロデューサーってば、おドジなんだから〜♪いってら〜♪」

 

「「……」」

 

「……ねぇ、シキちゃん。聞きたいことがあるんだけど……いい……?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「さっき、言ってた……「友達ごっこ」って言うのは……どういう意味だったのかな……?」

 

「エ〜。あたしぃ、そんなこと言ったっけ?……ん〜……忘れちゃった☆」

 

「……そっか……」

 

「でも、フレちゃんとは「友達」だよっ♪それは、間違いないよっ♪」

 

「……うんっ♪アタシも、シキちゃんとはお友達だと思ってるよ♪だって……アタシたちは……」

 

「……清浄な世界から、離れた……「おかしくてクレイジーな」二人組だもん……♪」

 

------------------------------------------------

 

「にゃはは♪そうだね♪それに、決めるのは「おかしな」プロデューサーだしねっ♪」

 

「……悪い悪い。待たせたな」

 

「おっかえり〜♪忘れ物、あったの〜?」

 

「あぁ、なんとかな。じゃあ、行こうか」

 

(この傘……あの子のだったよな……果たしてまた、会えるのだろうか……)

 

(……うん……きっと、また会えるよな。今度会ったら、改めてちゃんと、お礼を言わないといけないしな)

 

「……もうっ!プロデューサーってばぁっ!」

 

「うわっ……!?」

 

「んもう〜。プロデューサーってば、ま〜た他の女の子のことを、考えてたでしょ〜?ダメだよぉ〜?」

 

「うんうん♪今、ものすご〜く、ふやけた顔をしてたもんね〜♪本当、フレちゃん困っちゃうなあ〜♪」

 

「そ、そんなことねえよ!ていうか、二人してベタベタしてくるな!周りから、変な風に見られるからっ!//」

 

「別にいいも〜ん♪だって、あたしたちは「レイジー・レイジー・レイジー」だもんっ♪ね〜♪フレちゃ〜ん♪」

 

「そうだねぇ♪アタシたちは、変な子と変な子が合わさった、エレガントなハイブリッドユニットなのだ〜♪」

 

「……なんか……一つ、多くないか?」

 

「そんなことないよぉ♪じゃあ、いっくよ〜♪レイジーな「クレイジー」担当の、一ノ瀬志希ちゃんで〜す♪」

 

「レイジーな「イジーレ」担当の、宮本フレデリカちゃんで〜す♪いじいじ、いじいじ♪そしてぇ……」

 

ギュ−ッ♪

 

「「……三人目は……女の子たちを惑わす、イケないレイジーな「ラブ」担当の、プロデューサーで〜す♪」」

 

------------------------------------------------

 

「あっ……」

 

「ん?透ちゃん、どうしたの?」

 

「いや、雲の間から、日がさしてきたなあって、思ってさ」

 

「えっ……うわぁ〜♪きれ〜い……♪」

 

「……あ。と思ったら、また隠れちゃった」

 

「あぅ……残念……じ、じゃなくて!今日も、レッスンがあるんだから、早くしないと遅刻しちゃうよ!」

 

「えー」

 

「いいじゃん。もう少し見てようよ」

 

「もっ……も〜!だめだよっ!ほらっ!透ちゃん!行こうよっ!」

 

「わかったよ、小糸ちゃん。じゃあ、コンビニ行こうか。飴買ったげる」

 

「えっ……飴!?い、いいの……!?じゃあ……お言葉に甘えて……」

 

「……って!だから、ダメだよっ!も、もう行くよ!透ちゃんっ!」

 

「わかったわかった。行くよ……あっ、また隙間から、日がさしてきた」

 

「……ふふっ「おかしな」天気。あの人も、どこかで見てたりして」

 

「あの人って……誰のこと?」

 

「う〜ん、そうだね。小糸ちゃんが今、想ってる人のことかな」

 

「えっ、それって……プロ……って……ぴゃ……!?と、透ちゃん!一体、何を言ってるのっ!!//」

 

「冗談冗談。でも、きっとまた、会えるよね。だって……「てっぺん」で、出会ったことがある仲だし……ね」



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結氷シンデレラ 神谷奈緒

「ふぅ……着いた……」

 

「ん〜と……確か、ここら辺で……」

 

「……」

 

「……おっ、あそこに……お〜いっ!」

 

「……っ!」

 

「よぉ、こんばんは。待たせちゃったか?」

 

「……あの……えっと……ひ、ひ……」

 

「?」

 

「ひ……人違いですぅ〜!」

 

「ちょっ……!?待てって!お前は間違いなく、奈緒、神谷奈緒だろっ!?」

 

「うぅ〜……そ、そうだったな……あたしは、神谷奈緒だ……多分……//」

 

「おいおい、大丈夫か?熱とか、あるんじゃないか?」

 

「そうじゃなくて……その……今日は二人っきりだから、少し……緊張しちゃってるんだ……//」

 

「ははっ。何で緊張してるんだよ。でも、万が一のこともあるし……少し……失礼するぞ……」

 

「なっ……!?//」

 

「う〜ん。特に、熱はなさそうだが……念のために、おでこも合わせてみるか……」

 

「なっ……ななっ……!ぷ、ぷ……」

 

「?」

 

「……プロデューサーの……ばかああああああああっ!!//」

 

「ちょっ……!だ、だから待てって!おいっ!」

 

------------------------------------------------

 

「……どうだ?少しは、落ち着いたか……?」

 

「あ、あぁ……悪い。少し、取り乱しすぎた……」

 

(全く……心配してくれたのは、嬉しかったけど……出会って早々……何だよ、あれはっ……!)

 

(おでこに手を当てるどころか、そのまま、おでこ同士をくっつけようとして……!//)

 

(……本当に……あぁぁぁ〜!もう!本当にいいぃぃっ……!//)

 

「……鈍感……//」

 

「ん……?何か、言ったか?」

 

「なっ、何でもねえよっ!ところでさ……今日は、あたり一面、クリスマス仕様だよな……」

 

「あぁ、そうだな。どこもかしこも、クリスマス一色だな」

 

「……あ、あたしたちも、その……クリスマスに馴染んでるかな……?……なんて……//」

 

「うん、馴染んでると思うぞ。まさに「ドレスアップナイト」って、感じだな」

 

「は……はあっ!?誰が上手いことを……じゃなくて!何で、そうなるんだよっ!!//」

 

「何でって、奈緒のその服、とても女の子らしくてかわいいじゃないか」

 

「か、かわいいって……もういっぺん言ってみろぉ!あ、いや、言うな〜!//」

 

「何度でも言ってやるよ。いつもかわいいけど、今日の奈緒は「すごい」かわいいぞ♪」

 

「っ……また、そういうことを、平気で……でも……今日は、悪いな……」

 

「ん?どうしたんだ、急に」

 

「いや……クリスマスに秋葉なんて、女の子らしくないよな……それに……」

 

「……きっと……凛や加蓮なら、もっと……女の子らしい場所を……知ってると思うし……」

 

「そんなことないって。奈緒となら、どこに行っても楽しいぞ?」

 

「……えっ……」

 

「それに、今日はクリスマスだ。どこと言うより「どんな」思い出を作ったかの方が、重要なんじゃないか?」

 

「思い出……あたしとプロデューサーの、大切な……うん!そうだな!楽しい思い出をたくさん作ろうなっ!」

 

「あぁ。よろしく頼むよ、奈緒」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ……結構、広いなあ……」

 

「あぁ!ここは、秋葉……いや!日本でも最大の、アニメショップなんだぞっ!」

 

「確かに……これだけ、大規模なアニメショップはみたことがないな。流石は秋葉だ」

 

「だろっ!前に、菜々さんや比奈さんと一緒に来て、フルボッコちゃんのグッズを買いに来たんだ!」

 

「フルボッコちゃん……?」

 

「うん!「幽体離脱フルボッコちゃん」って言ってな!今、ものすごい流行ってるアニメなんだよ!」

 

「まず、何が凄いかって言うと、とにかく、出てくる女の子がみんな魅力的でかわいいんだ!もちろん、主人公のフルボッコちゃんもかわいくてな!結構なイタズラ好きで、事あるごとにみんなをイタズラで困らせてるけど、実はかなりの寂しがり屋なんだ!イタズラは、構って欲しいって気持ちの裏返しで、このギャップがとても魅力的なんだよ!だから、OVAではフルボッコちゃんの日常に、焦点を当てていて、さらに萌えるシーンがあって……」

 

「……って……あ……わ、悪い……つい、アニメのことになると、熱くなっちゃって……」

 

「ははっ、気にするな。奈緒が、どれだけアニメが好きかってのが、伝わってきたよ。それに……」

 

アニメもOK!漫画もOK!アイドルもOK!何でもOK!Ah〜オタクisLOVE!

 

「……俺的には……こっちの女の子も、魅力的だと思うぞ♪」

 

「へ……?こっち……って!ああああっ!な、何だよ、これぇ〜!!//」

 

「このPV、よく出来てるよな。特にこの、魔法少女風の衣装を着た、ツインテール姿の女の子がとても……」

 

「ばっ、ばかっ!恥ずかしいから、あまり見るなああああっ!//」

 

「何なら、専用コーナーもあるみたいだし、少し寄って見るか?」

 

「うるさいっ!ほ、ほらっ!早く行くぞっ!今日はお目当ての物が、あるんだっ!」

 

「おっ、何か欲しいものがあったのか。じゃあ、行ってみようぜ「魔法少女」ちゃんよ」

 

「ぐうっ……くっそ〜!からかいやがってぇ〜……!//」

 

------------------------------------------------

 

「……ん?このフロアは丸ごと、フィギュアのコーナーなのか。少し、見て行ってもいいか?」

 

「うん、別にいいよ。でも、プロデューサーも、フィギュアに興味があったのか?」

 

「いや、前にうちのアイドルのフィギュアが、商品として出るって聞いてな。完成品を見てみたかったんだ」

 

「あぁ、なるほどな。そういうことだったのか」

 

「でも、これだけあると、探すのが大変……ん?……おおっ!」

 

「どうしたんだ?」

 

「さっそく、うちの自慢の「カワイイ」アイドルのフィギュアが、あるじゃないか……♪」

 

「ん?カワイイ……って!これ!あたしのフィギュアじゃねえかよっ!//」

 

「結構、精巧に出来てるじゃないか。目の前にいる「奈緒」に瓜二つだ」

 

「な、何だよ!瓜二つって!それって、どういう意味なんだよっ!」

 

「どういうって……そのまんまの意味だが?」

 

「いや……具体的に、どこら辺がその……瓜二つって、思ってくれてるのかなあ〜って……//」

 

「そうだな。全体的な雰囲気だけど……でも、強いて言うなら、やっぱり笑顔かな」

 

「えっ、笑顔っ……!?」

 

「ほら、この奈緒のフィギュアさ、弾けるような笑顔で、とてもかわいいだろ?」

 

「それに、奈緒の柔らかそうなほっぺや、艶やかで綺麗な唇も、しっかりと表現出来てるし……」

 

「あと、奈緒の特徴的な眉毛や、宝石のような綺麗な瞳とかも、細かく表現されてるしな」

 

「……//」

 

「それでいて「目の前」の奈緒みたいな、全体的なキュートさも、しっかりと表現されてて……」

 

「あ、あ”〜っ”!も、もうわかったから!これ以上は、言わなくていいよっ!//」

 

「ん?そうか……?まだ、たくさんあったんだが……」

 

「と、とにかく!他のアイドルのもあるんだろ!?あたしのフィギュアはもういいから!ほら!行くぞっ!//」

 

「ちょっ……わ、わかったから!そんなに引っ張るなって!おいっ!」

 

「……そうやって……「みんな」にも、きっと……同じようなことを……バカ……」

 

------------------------------------------------

 

「おっ、加蓮のフィギュアじゃん。よく出来てるなあ」

 

「こっちには、凛のフィギュアもあるぞ。トライアドプリムスが揃ったな」

 

「ははっ、本当だな。今度、加蓮や凛に、デレぽで伝えてあげよっと」

 

「しかし……すごいな……色々なアイドルの、フィギュアがあるけど……どれも、すごいクオリティだ……」

 

(特に、美優さんのとか……フィギュアなのに、まるで……本物のような、色気……)

 

(……じゃなくて!本物のような、質感だ……それに……こっちの、雫のフィギュアも……)

 

タプンッ♪

 

(……すごいクオリティだ……色々な意味で……最近のフィギュアは、よく出来てるな……//)

 

(……こういうのって「中」も、しっかり出来てるのか……?……ちょっと、確認をして……)

 

「……お〜い……プロデューサー……?何を、しようとしてるんだ〜……?」

 

「はっ……!な、何でもないぞ!少し、中……じゃなくて!クオリティの高さに、見とれてただけだって!//」

 

「どうだか……何だか少し、目がイヤらしかった気がするぞ……」

 

「そんなことないって!最近のフィギュアは、すごく精巧な出来だって、驚いてただけだぞ!あ、あはは……」

 

「ふぅ……ま、いいけどさ。でも……」

 

ギュッ

 

「……今は……あたしとプロデューサーの、二人っきりなんだから……あたしだけを見ろ……いいな……//」

 

「えっ……奈緒……?」

 

「何だよ……まだ、ジロジロ見たいって言うのか……?」

 

「おい!変な言い方をするな!そ、それより、奈緒のお目当てのものがあるんだろっ!?早く行こうぜ!」

 

「……じぇ〜……!」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……なっ……何なんスか……あれはっ……!」

 

「あれって……プロデューサーさんと、奈緒ちゃんですよね……?なぜ、ここに……」

 

「三人で姦しく、クリスマスを聖地で、過ごしていただけなのに……まさかの、特大スキャンダルがっ……!」

 

「少し前から、何だか、そわそわしていた様子でしたけど……こういうことだったんスね……奈緒ちゃん……」

 

「どっちから、誘ったんだろう……P×奈緒……?いやいや、もしかして……奈緒ちゃんは意外と「攻め」?」

 

「ということは「受け」はプロデューサーで、奈緒×P……あぁ〜!妄想が……止まらないじぇ〜……!」

 

「ゆ、由里子ちゃん!少し、落ち着いてください!普通に二人で、楽しそうにしてるだけじゃないですか!」

 

「この聖夜に、あたしたちの聖地でそんな、超リア充なことを……奈緒ちゃんは、そっち側だったとは……!」

 

「でも、アニメショップに何か、用だったんですかね?二人で、フィギュアを見てたみたいですけど……」

 

「もしかしてプロデューサーも、サブカルに興味をもって……これは……同士が増えそうな、予感っス……♪」

 

「むむむ……だんだんと……カップリングジャーナリストの血が、騒いできたじぇ〜……こうなったら……」

 

「……どうです?ここは一つ、みんなで……二人の「見守り」をしてみませぬか……?」

 

「ええっ!?そ、それは流石に、二人に悪いと思うんですけど……」

 

「……でも……実は、菜々さんも少し……気になってるんじゃないっスか……?」

 

「うっ……そ、それはっ……!」

 

「まあまあ♪少し、様子見をさせてもらおうじぇ♪決して、お邪魔はしないですから〜♪」

 

「……そうですね……少しだけ……少しだけなら……うん……」

 

「じゃあ、決まりっスね!アニメや漫画を愛する、同士の背中を見守らせてもらうっスよ……奈緒ちゃんっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ああっ!あった!あれだっ!!」

 

「ん?おぉ。あれが、欲しかったのか?」

 

「うん!クリスマス限定の、特典なんだ!あれが、お目当てだったんだよ!」

 

「そうか。それじゃあ、俺はここで待ってるから、もらってこいよ」

 

「……//」

 

「ん?どうしたんだ?奈緒」

 

「……あ、あのさ……実は、特典をもらうにはちょっと……条件があるんだ……」

 

「条件……?どういう条件なんだ?」

 

「そ、その……少し……耳を貸してくれっ……ゴニョゴニョ……」

 

「ふんふん、ふん……はあっ……!?」

 

「……ということなんだよ……どうだ……?//」

 

「どうって……別に……俺と、奈緒は……」

 

「……やっぱり……あたしとなんかじゃ……そういうのは、イヤだよな……」

 

「……一応、聞いておくけど……奈緒はいいんだな……?」

 

「へえっ!?い、いや……そりゃ……まあ……//」

 

「じゃあ……行くぞ……」ギュッ

 

「ひゃあっ!?ちょっ……!//」

 

「俺も、奈緒がいいなら……いいからさ……」

 

「えっ……じ、じゃなくて!待ってくれ!あ、あたしはまだ、心の準備がっ……!//」

 

「いらっしゃいませ♪何か、ご用件でしょうか♪」

 

「はい。ほら……言うぞ……」

 

「ええっ!?ちょっ、まっ」

 

「……せ〜のっ」

 

------------------------------------------------

 

「……//」

 

「その……なんだ……特典をもらえて、よかったな……//」

 

「あ、あぁ……うん……ありがとう……//」

 

「「……//」」

 

「しかし……最近の特典は、色々とすごいな……まさか、あんな条件付きだったとは……」

 

「あぁ……あたしが欲しかったのは「カップル限定」の、クリスマス限定特典だったんだ……」

 

「お互いに手を繋ぎながら、合言葉を言わなければいけないとはな……しかも、その合言葉が……」

 

「……「私たちは、クリスマスでもアツアツカップルです♪」だなんて……まだ……顔が少し、熱いぜ……//」

 

「その……悪い……やっぱり、あたしとカップルだなんて……迷惑だよな……」

 

「言っただろ……?俺は「奈緒がいいならいい」って。全然。そういうことはないから、気にするなって」

 

「それってさ……えっと、つまり……どういう意味なんだ……?//」

 

「い、いや……それはだな……」

 

「「……//」」

 

「……さぁ〜て!奈緒のお目当ての物も手に入ったし、次は、ゲーセンに行って遊ばないか!?//」

 

「そ、そ〜だなっ!秋葉は、デカイゲーセンがたくさんあるしなっ!たっぷり、遊ぼうぜっ!//」

 

「……でも、そっか……あたしがいいなら、いい……へへっ……♪」

 

「……くぅ〜!あんなに、いちゃついちゃって〜……!「か〜っ!卑しか〜!」って、叫びたいじぇ〜……!」

 

「ナナたち……ナチュラルに、二人を尾行しちゃってるんですけど……大丈夫なんですかね?」

 

「きっと、大丈夫っスよ!それに、創作活動をするための、いい刺激にもなってますし……へへへ……」

 

「……比奈ちゃん……何か、変なことを考えていませんか……?」

 

「……って、言うのは冗談でっ!あっ!二人が、何だか移動したっぽいっスよ!見守り大作戦、再開っス!」

 

「二人とも……とても、妄想が捗って……じゃなくて!つい、頰が緩んでしまうくらい、微笑ましいじぇ♪」

 

------------------------------------------------

 

「くっ……!何だか、たくさん敵が出てきたな……!」

 

「うわっ!こっちもだ!奈緒!援護を頼む!」

 

「わかった!……あっ!プロデューサー!そこの陰に、敵が隠れてるぞ!」

 

「えっ……ヤバっ!油断してたっ!」

 

バンッ!バンッ!

 

「クリスマスのゲーセンで、二人っきりで、ガンシューティングっスか……いい光景っスね……♪」

 

「ふふ……♪微笑ましくてつい、母親目線で見てしまいますね♪ナナは「JK」ですけどっ♪」

 

「あぁ^~、ユリユリの心が、ぴょんぴょんするんじゃぁ^~」

 

「ふぅ……何とか、一掃したな……」

 

「そうだな、全く……油断も隙もな……っ!?」

 

「「プロデューサー!・奈緒!危ないっ!!」」

 

ドンッ!

 

「あっ……わ、悪い……痛くなかったか?」

 

「ううん……大丈夫だ。あたしもつい、熱中しちゃって……ごめん……でも……」

 

「……プロデューサーって、やっぱり……男の人なんだな……//」

 

「えっ……奈緒……?」

 

「いや……その……同年代の男子って、何だかガキっぽいんだよな。だから……」

 

「……プロデューサーは、大人のお兄さんだし、その……一緒にいると「特に」安心するっていうか……//」

 

------------------------------------------------

 

「それに……あたしのことを、守ってくれようとしてくれたんだろ……?//」

 

「まあ、そりゃ……いくらゲームとはいえど、奈緒は女の子だし……守りたいと思うのは、当然だろ……?」

 

「そっか……ありがとう……プロデューサー。すごく……嬉しいよ……♪//」

 

「奈緒……」

 

「「……//」」

 

GAME OVER!

 

「くあ〜っ……!あれって、ガンシューティングゲームっスよね!?恋愛ゲームじゃないっスよねっ!?」

 

「くっ……こ、この、ユリユリの腐った心が、二人の、甘いピンクのオーラで……浄化されていくっ……!//」

 

「いいなあ……ナナもあんな感じで、甘酸っぱい青春を送りた……いですね!ナナも、お年頃のJKですしっ!」

 

「ゾンビより、プロデューサーのハートを、ラブアローシュート!ってことか……奈緒ちゃん、やるじぇ〜!」

 

「由里子ちゃん……そのネタは……ギリギリっスよ……?」

 

「はっ……!ご、ごめん……つい……」

 

「なあ……GAMEOVERに、なっちゃったな……もう一回、やるか……?」

 

「あぁ……それもいいけど……他にもちょっと、やりたいことがあるんだ……いいか……?」

 

「うん、わかった。奈緒についていくよ」

 

「……じゃあ……一緒に行こうよ……手を繋いで……//」

 

キュッ♪

 

「えっ……//」

 

「ああっ!どこかに行くみたいだじぇ!見守り、再開よっ!」

 

「……奈緒ちゃん……ファイトっ!ナナは陰ながら、応援してますからねっ……!」

 

「アイドルなのに、クリスマスに素敵な想い人と、禁断な聖夜のデートを……あぁ……いいっスねぇ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「フレームはこれで……あと、デコはこれを選んで、こうしてああして……」

 

「……よし!さあ、プロデューサー♪一緒に撮ろうぜっ♪」

 

「なあ……やっぱり、やめないか……?なんか……少し、気恥ずかしいし……//」

 

「な、何だよ……加蓮とはよくて……あたしは、ダメなのかよ……」

 

「ん?何で急に、加蓮が出てくるんだ……?」

 

「……前に、加蓮に見せてもらったぞ……プロデューサーと加蓮の、二人で楽しそうなプリを……」

 

「くそっ……あいつめ……あれだけ、言ったのにっ……!」

 

「……なあ……あたしとは……イヤか……?」ウルッ

 

「……わかったよ。これ以上は、隠し通せそうにないしな……奈緒の好きにしてくれ……」

 

「本当か!?じ、じゃあ……いくぞ……えいっ!!」

 

「うわっ……な、奈緒……!?」

 

「……//」

 

3、2、1……はいっ♪チーズっ♪

 

パシャッ♪

 

「……なんか「いい雰囲気」になってきたことですし……あたしたちはそろそろ、退散をしましょうか……♪」

 

「そうだね♪あたしも、カップリングが好きでも「カップル」の邪魔をするほど、腐ってはいないじぇ♪」

 

「えぇ♪奈緒ちゃんたち……今、とっても幸せそうですしね♪あとは、二人のお楽しみにさせてあげましょう♪」

 

「では……今から「戦利品」の報告会兼、女子会をしないっスか……?あたしのうちで……♪」

 

「わ〜いっ♪ユリユリぃ、その話、ノったじぇ〜♪」

 

「えっ、比奈ちゃん……いいの?」

 

「もちろん♪「同士」は、大歓迎っスよ♪それに、戦利品以外にもまだまだ、お二人とお話がしたいっス♪」

 

「で、では……比奈ちゃんがいいのなら……ナナも、お邪魔していいかな……?」

 

「決まりっスね♪でも……その前に……最後に一枚、いただきっス♪奈緒ちゃん……ファイトっスよ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……♪」

 

「どうだ?上手く撮れてたか?」

 

「うん♪バッチリ撮れてたぞ……へへっ…♪」

 

「なんだよ、嬉しそうじゃないか、どれどれどんな感じに……ちょっ…!?な、なんだよこれはっ!!」

 

「最初の方は、ぎこちなかったり、変なポーズだけど……最後らへんはよく撮れてるじゃん……//」

 

「よく撮れてるって……あのなあ…急に腕を絡めてきたらそりゃ、びっくりしてこんなポーズになるだろ……」

 

「なんだよ……迷惑だったか…?」

 

「迷惑とかそういうことじゃなくてだな……いいか、お前はアイドル……」

 

「……あーっ♪プロデューサーさーん♪奈緒ちゃーん♪」

 

「ん…?おっ、イヴじゃないか、こんばんは」

 

「二人ともこんばんは♪メリークリスマスですっ♪」

 

「こんばんはイヴさん、メリークリスマス♪こんなところで会えるなんて偶然だな」

 

「本当ですね♪まさかクリスマスのアキバで、二人に出会えるなんて、思ってもみませんでした♪」

 

「それにしてもイヴはここで何をしてるんだ…?」

 

「えへへ…♪クリスマスを楽しんでもらうために、ご主人様にご奉仕させてもらってるんです♪」

 

「クリスマスだからメイドサンタってことか、とても似合ってるじゃないか」

 

「ありがとうございます♪プロデューサーさんたちは、アキバで何をしてたんですかぁ?」

 

「ん?何って……俺たちもクリスマスの秋葉を楽しんでたんだよ、なあ奈緒」

 

「うん、あたしたちはデー……じ、じゃなくて!前からプロデューサーと秋葉で遊ぶ約束をしてたんだっ!//」

 

「そうなんですかぁ♪クリスマスは楽しいですもんね♪実は、私もお友達が出来たんですよっ♪」

 

「お友達……?」

 

「では、紹介しますね♪私と同じメイドさんの「マノ」ちゃんって言います♪私の大切なお友達なんですよっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ほわっ……!あ、あのっ、初めまして……私「櫻木真乃」と言います。よろしくお願いします……ご主人様」

 

「んん……?マノちゃん。フルネームは、言わなくていいんじゃないですか?」

 

「ほわわ……そ、そうでした……!私は「マノ」って言うんでした……すみませんっ……」

 

「えっと……よ、よろしくね?マノちゃん?君も、ここのメイド喫茶で働いてるの?」

 

「そうですね……一日体験で、ご主人様にご奉仕をさせてもらってるんです……アイドルのお仕事で……」

 

「えっ……マノちゃんって、アイドルなの!?」

 

「は、はいっ!その……一応……アイドルを、やらさせてもらってます……」

 

「おぉ……奇遇だな。実は、俺もアイドルのプロデューサーをしてるんだ。な?イヴ、奈緒」

 

「あぁ。あたしも、アイドルをしてる、神谷奈緒って言うんだ。だから、奈緒って呼んでくれると嬉しいな」

 

「えへへ……♪私も実は、アイドルをやってるんですよ♪マノちゃんと、同じですね♪」

 

「ほわっ……!?イ、イヴさんやお嬢様も、アイドルだったのですか……!?すごい……驚きですっ……!」

 

「会って間もないけど、今日から仲間であり、ライバルってことになるのかな?よろしく、真乃さん」

 

「よろしくお願いします……あ、あの……私も「真乃」で、大丈夫ですよ……」

 

「そうか?じゃあ、真乃って呼ばせてもらうよ。これからも、一緒に頑張ろうな。真乃」

 

「はい……では、その……奈緒……ちゃん……?これからも、よろしくお願いしますっ……♪」

 

「ははっ。二人とも、新しいアイドル仲間が出来て、よかったな」

 

「……あの……もし、よろしければ……ご主人様も、握手を……してもらえませんか……?」

 

「えっ、俺も……?別に、いいけど……それじゃあ、よろしくね。真乃ちゃん」

 

「あっ……よ、よろしくお願いしますっ……えへへ……♪何だか……「お兄ちゃん」みたい……♪//」

 

「ん?……お兄ちゃん……?」

 

「ほわわっ……す、すみませんっ!初対面のご主人様に向かって、失礼なことを言ってしまって……」

 

「いや、別に気にしないでくれ。むしろ……じゃなくて!ま、真乃ちゃんには、お兄さんがいるのかい?」

 

「いえ、その……私の、プロデュ……じゃなくて!はいっ♪とても優しい……お兄ちゃんがいるんです……//」

 

「そうなんだ……素敵なお兄さんがいて、羨ましいなあ!あ、あはは……」

 

------------------------------------------------

 

「でも……本当に、申し訳ありません……その……何か、ご奉仕をさせていただけませんか……?」

 

「いやいや、本当にいいんだよ……真乃ちゃ……」

 

「……」ウルウル

 

(……くっ……か、かわいいっ……!//)

 

(汚れがない、純真無垢な潤んだ瞳……つい、守ってあげたくなるような、可憐さ……そして、何より……)

 

ほわわ〜……♪

 

(この、包み込まれるような、ほわほわな癒しのオーラ……!真乃ちゃんのお兄さんが、羨ましいっ……!)

 

(俺にもこんな、ほわほわでかわいい、妹メイドがいたら……はっ……!ま、まさか……この感覚が……)

 

(……いわゆる……「萌え〜」という、ヤツなのかっ……!//)

 

「……?」

 

「……コホン……じゃあさ……一つ、いいかな……?」

 

「は、はいっ……!何でしょうか……?」

 

「さっきみたいに、もう一回……俺のことを、お兄ちゃんって呼んで……」

 

「……プロデューサー?」

 

「……って、言うのは冗談で!それじゃあ、そろそろ俺たちは行くよ!邪魔して悪かったね!」

 

「ほわっ……?そうですか……?」

 

「ふふっ……♪では、マノちゃん♪「ご夫婦」を、見送って差し上げましょう♪」

 

「あっ……は、はいっ!では、その……い、いっ……」

 

「「行ってらっしゃいませ♪ご主人様っ♪」」

 

「あぁ!行ってくるよ!これからもよろしくね、真乃ちゃん!そして、イヴも頑張ってくれよっ!じゃあな!」

 

「またよろしくな、二人とも。メリークリスマス」

 

------------------------------------------------

 

「……むぅ」

 

「あの……奈緒さん……?何だか、さっきより少し……怖くないか……?」

 

「別に……ただ、真乃に「いつも」みたいに、鼻の下を伸ばしてたな〜って、思ってただけだよ」

 

「おい!何だよ、いつもって!俺はアイドルたちを、そんな風に見てる覚えはないぞ!」

 

「ふんっ……何さ……あたしの時より、デレデレしちゃってさ……」

 

「あたしの時って……何のことだ?」

 

「……前に、みんなで……メイド服を着て、収録をしただろ……?」

 

「前に……あぁ。紗枝とか愛梨と一緒に、メイド服で撮影会をした時か」

 

「それで、その時……あたしに、何て言ってくれた…?」

 

「何って……似合っててかわいいって、言ったよな……?」

 

「だろ?……でも……あたしには言葉だけで……真乃には思いっきり、デレデレしてた……」

 

「だ、だから!さっきから何だよ!第一、それが仮に事実だとしても、どういう違いがあるんだよっ!」

 

「もういい……いいさ……どうせ、あたしなんか……」

 

「あぁ、もう……やれやれ……じゃあ、今度は俺が、奈緒お嬢様にご奉仕をさせてもらうよ」

 

「えっ、ご奉仕……?」

 

「実は、お店を予約しておいたんだ。そろそろ時間だし、行こうぜ」

 

「お店って……何のお店だ……?」

 

「それは、着いてからのお楽しみだ。ほら、とにかく行くぞ」

 

------------------------------------------------

 

フォンッ♪

 

「ん……?あっ、比奈さんからだ……」

 

「えぇ〜?何だって〜?」

 

「……見て、これ……」

 

「うん?……おぉ♪これはこれは……♪」

 

「ふふっ。どうやら、上手くやってるみたいだね」

 

「クリスマスに、ゲーセンで二人っきりでプリかあ。奈緒ってば、やるじゃん♪」

 

「でもきっと、顔を真っ赤にして、テンパってるんだろうね。容易に想像出来るよ」

 

「……ふふ〜ん♪新鮮なネタも入ってきたことだしぃ、今度……からかっちゃおうか♪」

 

「やだ。今回は、私はパス」

 

「エ〜、何で〜?せっかく、面白いネタが出来たのにぃ〜」

 

「だって……何だか、ラブラブなカップルを「後押し」してるみたいで……悔しいじゃん……」

 

「……ふ〜ん、もしかして……妬いちゃってるの〜?」

 

「……そういう加蓮は、どうなのさ……」

 

「ま〜、あたしも妬いちゃってるかな〜。クリスマスに、あたしたちの奈緒を、独占してるわけだしね〜」

 

「……そうだね……「この分」は今度、きっちりと埋め合わせしてもらわないとね……♪」

 

「ふふっ……そうね♪まあ、今はこの「ハッピー」なセットを、楽しもうよ♪」

 

「うん。水入らずで、たまには二人っきりで、ハンバーガーってのも、悪くないしね♪」

 

「だね♪あっちのお二方も、ラブラブだけど、あたしたちだって……ん?」

 

「どうしたの?加蓮?」

 

「……このフィギュア……前から、奈緒が欲しがってたやつだ……」

 

「ふ〜ん……「大当たり」じゃん……♪」

 

------------------------------------------------

 

「うわぁ〜……!」

 

「奈緒の分もきたな。それじゃあ、いただこうか」

 

「……な、なあ……これ……本当に、いいのか……?」

 

「あぁ、遠慮すんなって。それとも、何か苦手な物とかあったか?」

 

「いや……違うんだ……その……普段はファミレスや、ファーストフード店とかしか、行かないからさ……」

 

「……こういうオシャレなレストランは、あまり来ないし……ちょっと……緊張しちゃってるんだ……」

 

「ははっ、そういうことだったのか。まあ、料理が美味しいって噂の店だから、これで、機嫌を直してくれよ」

 

「なっ……!べ、別に、お腹が減ってて、不機嫌になってたわけじゃねえよ!//」

 

「そうだったのか?それは初耳だ」

 

「ったく……でも……ありがとうな……//」

 

「気にするな。せっかくのクリスマスだし、たまにはこういうのもいいだろ」

 

「そうだな……ねえ……一つ、聞いていいか……?」

 

「何だ?」

 

「こ、こういうお店に、連れて来てくれたってことはさ……その……」

 

「……あたしのことを……「女性」として……見てくれてるって、ことなのか……?//」

 

「ん?何を言ってるんだ。奈緒は、アイドルの「女の子」だろ?」

 

「……うん……そうだよな……よし!それじゃあ、ありがたく、ご馳走になるよ!」

 

「あぁ。召し上がれ」

 

------------------------------------------------

 

「うん!美味しい!すごく美味しいよっ!」

 

「それはよかった……って、奈緒。ほっぺにソースがついてるぞ」

 

「ええっ!?……わ、悪い……はしたなくて……」

 

「しょうがないな。ほら「ティッシュマン」が拭いてやるよ。じっとしてろ」

 

「……あっ……ありがとう……って!ティッシュマン!?」

 

「あぁ。今日はいらねーのに、ねじ込めるほどたくさん持ってきてるからな。安心して、拭いてやれるぞ」

 

「あ、あたしはそこまで、子供じゃね〜よ!ていうか、まだそのことを根に持ってたのかよっ!」

 

「そうだな〜。せっかく、素質があると思って声をかけたのに、ティッシュマン呼ばわりはないよな〜」

 

「いや……あの時は、悪かったよ……あの辺って、変な勧誘やスカウトとかが多くて、つい……」

 

「冗談だ。真に受けるなよ。でも、あの時に奈緒と出会えてよかったぞ。まさに、運命の出会いってやつだな」

 

「なっ……!また、そういうことを……で、でも……あたしも出会えて、よかったと思ってるよ。だって……」

 

「……こんな感じに「素敵なお兄さん」と一緒に、食事を楽しめるのも……出会えたからだと思うし……//」

 

「おっ、上手いじゃないか。そんなに、ここの店を気に入ってくれたのか」

 

「ちょっ……!ある意味、間違ってないけど、そういう意味じゃねえって!」

 

「と、とにかく!クリスマスを一緒に過ごせて、嬉しいってことだよ!これ以上、言わせるなあっ!//」

 

「そうか。俺も、奈緒と過ごせて嬉しいよ。これからも一緒に、頑張ろうな。でも、今はディナーを楽しもう」

 

「……あたしを、アイドルにした以上は……「最後」まで、一緒なんだからな……か、覚悟しておけよ……//」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、美味しかったな」

 

「あぁ、とても美味しかったよ。ごちそうさま」

 

「どうだ?気に入っていただけたか?奈緒お嬢様」

 

「そうだな。改めて言わせてくれ……ありがとう……プロデューサ……//」

 

「ははっ。何だよ、改まって。そんなに気に入ったのか?」

 

「うん……こんなサプライズがあるだなんて、思ってもみなくてさ……すごい、嬉しかったんだ……♪」

 

「そんなに喜んでくれて、選びがいがあったな。じゃあ今度は、奈緒が大人になったら、また来ようぜ」

 

「えっ……大人……?」

 

「あぁ。レストランの隣に、バーが併設されてただろ?いい感じな雰囲気のさ」

 

「だから、奈緒が大人になったら、今度はオシャレなバーで一杯ってのも、楽しそうだって思ってな」

 

「……じゃあさ……その時は、また……「二人っきりで」一緒に……秋葉に来てくれるか……?」

 

「あぁ、もちろん。奈緒がよければ、いつでもな」

 

「そうか……じゃあ、約束だからな……絶対だぞ……♪それにしても、いつの間にか雪が降ってたんだな……」

 

「ん……?おっ。確かに、言われてみれば降ってるな。とても幻想的だ」

 

「雪って、何で白いままなんだろ。神様が、塗り忘れたのかな?」

 

「……ぷっ」

 

「ちょっ……!な、何で笑うんだよっ!//」

 

「いや……随分と、ロマンチストだなって思ってさ。奈緒がそんなことを言うとは、意外だ」

 

「なっ、何だよ!別に、いいじゃねえかよっ!あ、あたしだってその……一応、女の子……なんだぞ……」

 

「んなことわかってるよ。なんたって、奈緒は俺の、自慢のアイドルなんだからな」

 

「ったく……何なんだよ……そうやっていつも、あたしをからかって……クチュン」

 

「何だ、寒かったのか?じゃあ、俺のコートを貸してやるよ」

 

「いいのか……?……でも……どうせならさ……え、えいっ!//」

 

「うわっ……!な、何だっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「コートより、こっちの方がいいと思ったんだ……ダメか……?」

 

「いや……まあ……そんなに寒かったなら、俺は別に……いいけどさ……//」

 

「そっか……♪じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ♪にしても……人肌って、こんなに暖かいんだな……♪//」

 

「「……//」」

 

「……なあ……プロデューサーってさ……前に、あたしの望みを叶えるって、言ってくれたよな……?」

 

「望み……うん、確かに言ったな。奈緒をアイドルにした以上は絶対に、シンデレラのお城に連れて行くって」

 

「だったら……ごめんな……凛……加蓮……スゥ〜……い、一度しか言わないから、よく聞けよ!//」

 

「?」

 

「これからも、元気でいろ!これからも、あたしとケンカをしろ!これからも、あたしをプロデュースしろ!」

 

「そして……これからも、あたしとっ……」

 

ゴーン……ゴーン……

 

「ん?何だ?鐘の音か……?……んぐっ!?」

 

「……//」

 

「……ぷあっ……な、奈緒っ……!?//」

 

「……ずっと……隣にいろ……これが、もう一つの……あたしの「望み」だ……//」

 

「望みって……お前……今……//」

 

「だから……今のは、その……あたしの気持ちの、証っていうか……何ていうか……」

 

「……あ、ああああっ!は〜ず〜か〜し〜す〜ぎ〜る〜っ〜!!//」

 

「ちょっ……おい!奈緒!どこに行くんだよ!!」

 

「ああああっ!今のは、忘れてくれぇ〜!いやっ!やっぱり忘れるなああああっ!//」

 

「だから、待てって!そんなに、雪の上で走ったら危ないぞ!」

 

「……わひゃあっ!?」

 

「あっ……バカっ……!」

 

ギュッ

 

「……っ…!」

 

「ふぅ……間一髪だな……何だかよくわからないけど、少し落ち着け。な?」

 

「……そうだな……あ、ありがとう……//」

 

------------------------------------------------

 

「「……」」

 

「……とっても……静かだな……」

 

「あぁ……そうだな」

 

「雪が、イルミネーションと一緒に、輝いてて……まるで、あたしたちだけで、違う世界に来たみたいだ……」

 

「そうだな……とても綺麗だ……」

 

「なあ……プロデューサー……その……本当に、あたしの望みを……叶えてくれるんだよな……?」

 

「言っただろ?俺は、奈緒を絶対に、シンデレラにしてみせる。男に二言はないよ」

 

「……「さっき」のもか……?」

 

「……「大人」になっても……奈緒が、変わらないのならな。今は、気持ちだけ受け取らせてもらうよ」

 

「そうか……じゃあ……今は、あたしに……聖夜の魔法をかけてくれよ……」

 

「魔法……?」

 

「正直、自分でも、変なことを言ってると思うんだ。今の、あたしの顔……とても、真っ赤になってると思う」

 

「もしかしたら、聖夜の魔法に囚われてるだけかもしれない。でも……あたしの気持ちは「本物」なんだ……」

 

「奈緒……」

 

「……なっ?せめて今だけは、そのまま、あたしのことを……ギュッと、抱きしめていてくれないか……?」

 

「……わかったよ。それが、望みだっていうなら……奈緒が満足するまで、こうさせてもらうよ」

 

「ふふっ、サンキュ〜……♪やっぱりプロデューサーって、とても優しいんだな……♪//」

 

「あともう少しで、聖夜の魔法は「解けて」しまうけど……だけど……それまでは、あたしだけで独占だ♪」

 

「……素敵な「クリスマスプレゼント」をありがとう……♪メリークリスマス♪プロデューサー……♪」



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迎春シンデレラ 島村卯月

「ふぅ……今年も無事に、新しい年を迎えることが出来たな」

 

「さて。アイドルたちの、無病息災を祈願しに、今年も神社に来たわけだが……ここでよかったのかな……?」

 

「……」

 

「……だ〜れだっ♪」

 

「うわっ!?な、何だっ!?」

 

「ふふっ……誰か、当ててみてくださいっ♪」

 

「こ、この声は……卯月……?」

 

「えへへ♪当たりですっ♪あけましておめでとうございますっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「あ、あぁ……あけましておめでとう、卯月。今年もよろしくな」

 

「よろしくお願いしますっ♪……と、ところで……私の、この姿……似合ってますか……?//」

 

「うん、とても似合ってるじゃないか。古風で清楚な巫女さんって感じで、かわいいぞ」

 

「えへへ……♪ありがとうございますっ♪ずっとずっと、来てくれるのを、楽しみにしてたんですよ♪」

 

「おっ、一緒じゃないか。俺も、卯月と会うことをずっと、楽しみにしてたんだ」

 

「一緒……は、はいっ♪まさに「相思相愛」っていうものですねっ♪」

 

「ははっ、上手いな。確かに、アイドルとプロデューサーとして、いい関係を築けてるもんな」

 

「そうですね……では、あともう少しで、お仕事が終わりますので、待っていてください♪」

 

「……ちなみに……この神社は「縁結び」の神社としても……有名なんですよ……?」

 

「ん……?縁結び……?」

 

「ひゃっ……!?い、いえっ!何でもないですっ……!では、拝殿までご案内しますね……//」

 

------------------------------------------------

 

カランカラン

 

(今年も、アイドルたちが活躍して、無病息災でありますように……)

 

「……ふぅ……祈り終わった。これで、今年もアイドルたちは無事、安泰だな」

 

「さて。そろそろ、卯月の仕事が終わる時間だし、ちょっと様子を見に行くか」

 

「確か……ここから少し行った、境内の裏が出入り口だって、卯月が言って……ん?」

 

「あっ……あの……えっと……」

 

「さっき、巫女装束を着てたよね?と言うことはお忍びで、何かの収録とかしてたの?」

 

「いえ……プロ……じゃなくて……少し……ご奉仕を、させてもらってただけでして……」

 

「やっぱ、卯月ちゃんはかわいいなあ♪本当はボクたちのために、ファンサービスをしてくれてたんだよね?」

 

「し、新年早々、卯月ちゃんに会えるなんて……しかも、新年らしく、清楚な巫女服で……ハァハァ……//」

 

「……す、すみません……とりあえず、失礼させてもらいます……」

 

「もう、照れなくていいんだよ♪それじゃあせっかくだし、記念に何枚か撮影をさせてよ♪」

 

「きゃっ……やっ、やめてくださいっ……!」

 

「普段はSNSで、卯月ちゃんが使ってるシャンプーを特定して、飲むことしか出来なかったけど……」

 

「……な、生卯月ちゃんはこんなに、女の子ないい香りがするんだね……クンクン、スーハースーハー……//」

 

「少し、際どいのを撮っても、卯月ちゃんなら許してくれるよね♪まずは、ローアングルから……ぐへへ……」

 

「あっ……いやっ……」

 

「……すみません、俺たち、急いでるので」

 

「きゃっ……!?」

 

「ちょっ……!な、何なんだキミは!ボクらの卯月ちゃんを、どうする気なんだ!」

 

------------------------------------------------

 

「う、卯月ちゃんが、謎の青年に連れ去られた……これは、事案だ……連絡をしないと……」

 

「はぁ〜い♪あなたたち、こんなところで何をしてるのかな〜?」

 

「あっ、お姉さん!今、女の子が変な人に、連れ去られていったんです!」

 

「それは大変ね〜♪もしかして、その変な人って、この人たちのことかな〜?」

 

「そうそう!この人が、女の子を……って……これは……ぼ、ボクたち……!?」

 

「さっき、巫女の子を盗撮してたでしょ♪しかも、わざわざ境内の裏まで、ストーカーをしてるのを見たわよ♪」

 

「……ち、違うんです……!ボクたちは、卯……いや……あの子のファンで……」

 

「とりあえず、署で話を聞きましょうか♪それじゃあ、現行犯逮捕……」

 

「……と、言いたいけど、あたしは「元婦警」だから、出来ないの♪だから……呼んでおいてあげたわよ♪」

 

「えっ……「元婦警」……?」

 

「さぁ、君たち。署まで、来てもらおうか」

 

「ぐぬぅ……新年早々、お世話になってしまうとは……でも……生卯月ちゃんを拝めれたから、いっか……」

 

「フフ……あの、元婦警のお姉さんもなかなか……こ、拘束プレイとか、して欲しいかも……デュフ……//」

 

「では、お巡りさん♪よろしくお願いします♪にしても、やるじゃない♪」

 

「流石は、あたしのプロデューサー君ね♪新年早々、身を挺して卯月ちゃんを守るなんて♪」

 

「早苗ちゃ〜ん、どうしたの?何だか、少し……騒がしかったみたいだけど……」

 

「あっ、ごめんね〜♪瑞樹ちゃん♪もう終わったから、気にしないで〜♪」

 

「そう?ならいいんだけど……女子会メンバーが待ってるから、行きましょう」

 

「は〜いっ♪……二人とも……新年あけましておめでとう♪今年も、よろしく頼むわよっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……ふぅ……卯月、大丈夫か?」

 

「……//」

 

「……卯月?」

 

「ひゃわっ!?な、何でしょう!?」

 

「あいつらに何か変なこととか、されなかったか?」

 

「は、はいっ!大丈夫ですっ!助けてくださって、ありがとうございましたっ♪」

 

「ならよかった。いくら人気が出始めたとはいえ、新年早々、変なヤツらに絡まれて災難だったな」

 

「そうですね……急に囲まれた時は、心細くて……とても怖かったです……でも……」

 

「……プロデューサーさんが、身を呈して颯爽と守ってくれて……安心しちゃいました……//」

 

「当たり前だろ?大切なアイドルを守るのは、当然のことだよ」

 

「……大切な……ふふっ……♪ありがとうございますっ♪では、今年も頼りにさせてもらいますね♪」

 

「あぁ。今年も改めて、よろしくな卯月。とりあえず、一件落着したことだし……どうしようか?」

 

「あっ、では私、さっそく行きたいところがあるんですっ♪いいですか?」

 

「おっ、そうか。じゃあ行ってみようぜ」

 

「はいっ♪……うふふ……♪今年は、もっとたくさん……構ってもらいたいな……//」

 

「ん……?何か、言ったか?」

 

「わわっ……な、何でもないですっ!では、行きましょう!ぶいっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪すごく、綺麗です……♪」

 

「綺麗な初日だな。これは今年も、縁起がよさそうだ」

 

「えへへ……♪実は、その……こうして観覧車に乗るのって、結構、憧れだったんですよ♪」

 

「憧れ……?観覧車に乗るのは、初めてだったのか?」

 

「いえいえ。同じアイドルの子たちや、家族とかとよく、乗ったことはあるんですよ」

 

「ただ……恋人みたいに、こうして二人っきりで乗ることなんて、出来ないと思ってたんです」

 

「まあ、普通の女の子の時も、出来なかったんですけどね♪えへへ♪」

 

「……恋人?」

 

ゴウン……ゴウン……

 

「……あっ……ち、違うんです!これは、その……言葉の綾と言うものでっ……!//」

 

「な、な〜んだ!そうだよな!あはは……//」

 

「でも……プロデューサーさんと新年に、一緒に乗れて嬉しいって言うのは、本当です……なんて……♪//」

 

「それは嬉しいな!俺も、卯月みたいなかわいいアイドルと、一緒に乗れて嬉しいぞっ!//」

 

「そんな……かわいいだなんて……でも……それを言うなら、プロデューサーさんも、とても素敵ですよ?」

 

「……その証拠に、さっきから……胸のドキドキが、止まらないんです……密室で、二人っきりなので……//」

 

「卯月……」

 

「……プロデューサーさんっ……♪」

 

「「……//」」

 

------------------------------------------------

 

「……はっ!」

 

「ん……?どうしたの?ユッコちゃん」

 

「いえ……どこからともなく、急にピンクのオーラを、感じとってしまいまして……」

 

「ムムム……わかりました!ズバリ、この観覧車のどこかに、熱々なカップルがいますねっ!」

 

「へぇ〜!ユッコちゃん、すご〜い!そういうことも、サイキック能力でわかるんだ〜!」

 

「フフ〜ン♪私のサイキックは、生まれ持った、唯一無二の才能ですからね♪全て、お見通しですっ♪」

 

「それにしても……むぅ〜……Pちゃんのおバカ……はーたちを、置いてけぼりにしてっ……」

 

「しょうがないですよ。何せ、新年を迎えても、PはPですからね。当たり前か」

 

「デレぽでPちゃんに、新年の予定を聞いたら、卯月さんの「頑張ります」スタンプだけが返ってきたし……」

 

「まあ、どうせ新年早々、どこかで女の子に鼻の下を伸ばして、デレデレしてるんじゃないですかぁ〜?」

 

「ふぅ、本当に、世話が焼けるPですね。では今度、凪たちとPで、おままごとをしましょう」

 

「ちょっ……何で急に、おままごとなの!?」

 

「凪たちを置いてけぼりにしたPを辱めるためです。ゆーこちゃんはどうですか?」

 

「いえ……私たちは、女子ですけど……プロデューサーは、大人のお兄さんですし、そういうのは……」

 

「大丈夫です。きっと、Pも乗り気になってくれるはずです。なぜなら凪は「かわいいP」を持っていますから」

 

「かわいいプロデューサー……?どういうことですか?」

 

「わからない人は是非「このシリーズの」凪たちのストーリーを見てください。なぎちまるとのお約束だぞ」

 

「……なーは、一体……何を言ってるの……?」

 

「何でもありませんよ。ただ「今、これを読んでくれてる方」と、お約束をしただけです」

 

------------------------------------------------

 

「では、配役を決めておきましょう。ママはゆーこちゃんで、パパはP。凪たちは二人の子供です」

 

「ふぇっ……!?わ、私が、プロデューサーのママなんですか!?」

 

「えぇ。ユッコちゃんは「ゆーこちゃん」凪たちは双子です。つまり、何も問題ないです」

 

「ちょっ……だ、大問題だよ!おバカなPちゃんのママとか、ユッコちゃんが迷惑だって!」

 

「そ、そそ、そうですよっ!ママだなんて、まだ早いですし、ましてや子供だなんて……//」

 

「……で、でも……凪ちゃんが、どうしてもって言うなら……いいですよ?……えへへ……♪」

 

「ゆ、ユッコちゃんに悪いよっ!Pちゃんのママは、はーが代わりになってあげるっ!」

 

「いえいえ!プロデューサーは、アホの子で目が離せないので、私がママをしてあげないとっ!」

 

「仕方がありませんね。では、間をとって、凪がPの「第2のママ」になりましょう「この泥棒猫」です」

 

「何か、どんどんおかしな方向になってない!?だ、ダメだよっ!Pちゃんは、はーの大切なっ……!」

 

「冗談ですよ。こんなせっていにまじになっちゃってどうするの。凪たちはもう、せくしーなJCなんですよ」

 

「はっ……だ、だよね〜!はーたちはもうJCなんだから、そういうのは卒業しないとねぇ〜!//」

 

「そ、そうですね!それに、そういうのは順序が大事ですっ!例えば、その……か、彼女からとか……//」

 

「「……//」」」

 

「……も、もうこの話は終わりっ!だいたい、あれもこれも、おバカなPちゃんが全部、悪いんだからっ!」

 

「えぇ!元はと言えば全部、ヘンタイでおバカなプロデューサーが、悪いんですよねっ!」

 

「……でも……私は前に、二人で過ごしましたので……今回は、見逃してあげても……あっ……」

 

「ええっ!?ちょっとユッコちゃんっ!それって、どういうことぉ!?」

 

「……って、言うのは冗談で!本当はロケで、他のアイドルたちと一緒に、ビーチに行っただけなんですっ!」

 

「その話は「このシリーズ」のお話なんですか?もっと詳しく、聞かせてもらいたいです。ワクワクナギナギ」

 

「くっ……こ、こんな記憶はさっさと、消しちゃいます!……サイキック〜……エクスプロージョンっ!//」

 

------------------------------------------------

 

ガコンッ!

 

「きゃあっ!?」

 

「うわっ……!う、卯月っ!!」

 

ギュッ

 

「……あっ……//」

 

「ふぅ……まさか、こんな急に揺れるとは……突風でも、吹いたのかな……?」

 

「あ、あの.……ありがとうございますっ……」

 

「大丈夫か?どこか、怪我とかしてないか?」

 

「はいっ……大丈夫です。それより、その……プロデューサーさんって……逞しいんですね……//」

 

「ん?逞しい?……うわっ!?わ、悪いっ!//」

 

「いえっ!その……あ、謝らないでくださいっ!むしろ、その……」

 

「……大人のお兄さんに、ギュッとして守ってもらえて……とても、安心してしまいました……えへへ……//」

 

「そうなのか……?まあ、アイドルを守るのは、俺にとって当然の役目だ」

 

「……特に……卯月みたいな、華奢な女の子はな……//」

 

「「……//」」

 

「……あの……ぷ、プロデューサーさん……」

 

「な、何だ……?」

 

「……隣……いいですか?」

 

「えっ!?いや……卯月がいいなら、俺は……大丈夫だけど……//」

 

「ありがとうございますっ♪では……降りるまで、私のことを守ってくださいね……うふふ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ほら、手を貸すよ」

 

「とと……ありがとうございますっ♪」

 

「それにしても、いい眺めだったな。快晴だったから、遠くまで眺めれたし」

 

「はい♪とてもいい景色でしたね♪プロデューサーさんと一緒に、楽しめてよかったです♪」

 

「……あと……プロデューサーさんの隣って、とても安心するってことを、再認識しました……♪」

 

「いや……だから……あくまでそれは、また揺れた時に、卯月を守るためであって……」

 

「「……//」」

 

「……あ〜っ!お〜い、しまむ〜!プロデューサー!」

 

「ん……おっ、未央と凛じゃないか。あけましておめでとう」

 

「あけましておめでとう。今年もよろしくね」

 

「あけおめっ♪ことよろ〜っ♪今年も、未央ちゃんたちのプロデュースを、よろしくねぃ♪」

 

「あぁ、今年もよろしくな。ところで、二人で何をしてたんだ?」

 

「神社に初詣に行ってきたんだよ。ねっ、未央」

 

「うんっ♪しぶりんと一緒に、行ってきたんだ♪でも……ちょ〜っと、残念だったなあ〜」

 

「残念って……何がだよ?」

 

「……プロデューサーってば、しまむーの巫女装束姿を、独占しちゃったんでしょ……♪」

 

「……っ!」

 

「ん?……何で、俺が卯月と会ったことを知ってるんだ……?」

 

「んっふっふ〜♪プロデューサーのために「譲って」あげたんだよぉ〜♪ねっ、しぶりん♪」

 

「そうだね。年末あたりに「一番最初に」見せたいってデレぽで聞いたから、それで卯月に……」

 

「わ……わ〜〜っ!こ、これ以上は、言わなくていいからぁ〜っ!//」

 

------------------------------------------------

 

「でもぉ、こんな所でデートをしてるだなんて、聞いてないぞっ♪ヒュ〜ヒュ〜♪新年早々、おアツいねぇ♪」

 

「ちょっ……!デートって何だよ!別に、そういうことじゃねえよ!//」

 

「そ、そうですよっ!私たちはただ、観覧車を楽しんでいただけですっ!//」

 

「……観覧車?」

 

「あぁ。俺たちはあの観覧車で、元旦の景色をただ、眺めてただけなんだよ!な、卯月っ!」

 

「えぇ!景色が、とても綺麗でしたよねっ!」

 

「ほぉ〜。観覧車の中で、二人っきりときましたかぁ〜……ふ〜ん……へぇ〜……」

 

「……ねぇ、卯月。何かプロデューサーに、変なことをされなかった……?」

 

「ひゃわっ!?へ、変なこと……ですか……!?//」

 

「だって、プロデューサーのことだし、何かされたんじゃないかって、思ってさ」

 

「アラアラ♪イケませんなあ♪いくらかわいいしまむーと、二人っきりだからって♪」

 

「お前らっ……!」

 

「ほ、本当に、プロデューサーさんとは、何もありませんでしたよっ!えぇ、絶対にっ!」

 

「……ただ……その……ほんのちょっぴり……「守ってもらった」のは、確かですけど……//」

 

「……ふ〜ん「守った」ねえ……まあ、しまむーが言うんだから、本当に何もなかったっぽいね」

 

「ま、わかってたけど。ヘタレなプロデューサーが、そんなことを女の子にできるわけないし」

 

「何か、腑に落ちないが……けど、わかってくれたか?」

 

「うん。でも……今度、改めて話を聞かさせてもらうからね……二人っきりで……」

 

「……えっ?」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、行こうか未央。ラブラブカップルのお邪魔をしちゃ、悪いしね」

 

「そうだねぇ♪新年早々、いいものを、拝めさせてもらいましたなあ〜♪」

 

「全くわかってないじゃないか!だから、卯月と俺はだなっ……!//」

 

「はいはい。じゃあ二人とも、今年もよろしくね」

 

「えっ……は、はいっ!今年もよろしくね!凛ちゃん!未央ちゃんっ!」

 

「よろしくっ♪しまむー♪それじゃあ、あでゅ〜♪」

 

「おい!……全く……新年早々、からかいやがって……!//」

 

「……あのっ……プロデューサーさん……もしかしたら私たち…周りからそういう関係に見られて……//」

 

「はっ……そ、そうだな!周りからみれば、俺たちは仲のいい「兄妹」に見えるかもしれないな!あはは……」

 

「兄妹……そうですね!私たちは「特別な間柄」に見えてるかもしれませんね……♪//」

 

「「……//」」

 

「……な、なあ!卯月!もしよかったら、何か、温かいものでも食べに行かないか!?」

 

「えっ、いいんですか……?」

 

「あぁ!温かいものを食べて、心も体も温まりに行こうぜっ!//」

 

「心も体も……ふふっ♪では……お言葉に甘えて、ご馳走になりますっ♪……えいっ♪」ギュッ

 

「うわっ……!う、卯月っ……!?」

 

「私たちは「兄妹」です♪だから、こうして腕を組んでも、何も問題ないですよねっ♪」

 

「いや……俺はあくまで、兄妹に「見える」って、言っただけなんだが……//」

 

「聞こえませ〜ん♪それより、早く行きましょうよ「お兄ちゃん♪」卯月、お腹ぺこぺこですっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ゆーこちゃん、はーちゃん。大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ……なんとか……まさか急に、観覧車があんなに揺れるとは……サイキック無念っ……!」

 

「あぅ〜……キモチワルイよぉ〜……」

 

「よしよし。まあ、二人に挟まれたので、凪は役得でしたね。ぶい」

 

「……って、いけませんね。これではまるで、Pみたいなことを考えて……ん?あれは……」

 

キャッキャッ♪

 

「……そういうことですか。本当にしょうがないですね」

 

「……うぅ〜……な〜……どうしたの……?」

 

「いえ、何でもないです。では一旦、あそこのベンチでひと休憩しましょう。話題は、Pとの楽しい思い出で」

 

「な”っ”……!」

 

「……そ〜だったね♪はー、ユッコちゃんの楽しい思い出を……た〜くさん、聞きたいなあ〜♪」

 

「さ、さっき……サイキック・エクスプロージョンをしたので……あの時の記憶は、綺麗さっぱり……」

 

「「大切な思い出」は、いつまでも忘れられませんよね?なんせ、凪たちはお年頃の女の子ですので」

 

「うぐぅ……!まさか……凪ちゃんも、私と同じ……サイキック・テレパシーの使い手だったのですかっ…!」

 

「いえいえ。ただ、同じ女の子同士、共感をしただけです。ですよね?はーちゃん」

 

「……うん。はーも……たくさんあるよ……特に、なーやユッコちゃん……あと、Pちゃんのはね……//」

 

「「「……//」」」

 

「……さて、凪は飲み物を買ってきます。お二人は、何がいいですか?」

 

「えっ!いいのぉ!?じゃあ、はーはね……って!結局、お話はどうなったのっ!?」

 

「新年早々、馬に蹴られたくありませんからね。ですので、飲みながら新年の軽い女子会(現役)をしましょう」

 

「……今回は、見逃してあげます。そして……今年も、よろしくお願いしますね……P」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪美味しそうです〜♪」

 

「だろ?ここのぜんざい、結構、気に入ってるんだ。さあ、いただこうぜ」

 

「はぁ〜い♪ありがとうございますっ♪では、お兄ちゃん♪あ〜んっ、ですよ♪」

 

「あぁ、あ〜……って!するかっ!それに何だ!さっきからその呼び方は!」

 

「……食べて……くれないんですか……?」ウルッ

 

「あ、当たり前だ!こんな、人目があるところで、その……恥ずかしいだろっ!//」

 

「むぅ……お兄ちゃんの、いぢわる……じゃあ、いいですっ」

 

「食べてくれるまでず〜っと、お兄ちゃんって呼びますからね?ね〜、お兄ちゃん♪」

 

「うわっ!?だ、だから卯月!少し、声が大きいって……!//」

 

「……♪」ニコニコ

 

「……わかったよ。じゃあ、卯月のも、少しもらうよ」

 

「ありがとうございます♪それでは……あ〜ん、してください♪」

 

「あ、あ〜ん……んぐ……」

 

「うふふ……♪おいしいですか……?//」

 

「そうだな……美味しいよ。なあ……新年早々、何だけど……卯月は……アイドルなんだからな?」

 

「わかってますよぉ♪こんなこと、お兄ちゃんにしかしませんっ♪」

 

「……それに……久しぶりに、プロデューサーさんに会えて……とても、嬉しかったんです……」

 

「……っ」

 

「最近、お仕事が忙しかったので……全然会えずに……心細くて……寂しくて……」

 

「……それで、新年に二人っきりになれたので、つい……でも、やはりご迷惑でしたよね。すみません……」

 

「……いや……むしろ、俺の方から謝らせてくれ。卯月には最近、仕事を詰め込みすぎたよな……ごめん……」

 

「いえいえ♪お仕事をたくさんいただけて、嬉しいですよ♪私はもっと、頑張らなければいけませんから♪」

 

「……卯月は、もう十分頑張ってるよ。これ以上にないぐらいにな」

 

「……では……ご褒美に思いっきり……甘えちゃってもいいですか……?」

 

「あぁ……俺でよければどうぞ」

 

「えへへ……♪ありがとうございます……♪たっぷりと……甘い新年を、一緒に過ごしましょうね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ぜんざい、ごちそうさまでした♪」

 

「あ、あぁ……気にしないでくれ……」

 

「ん?どうしたんですか?どこか具合でも悪いんですか?」

 

「いや……確かに、甘えてもいいとは言ったぞ……?でも……少し……近すぎるんじゃないですかね……?//」

 

「えぇ〜。そんなことないですよぉ♪「たっぷり」と甘えていいって、言ってくれたじゃないですかぁ♪」

 

「お、おかしいな……年明けの、この寒空なのに、何でこんなに暑いんだろう……ははは……//」

 

「うふふ……♪恥ずかしがり屋さんなんですから……♪では、せっかくですので……」

 

「あっ、プロデューサーと、卯月ちゃんじゃないですか♪」

 

「ん……?おっ、茄子じゃないか。あけましておめでとう」

 

「あけましておめでとうございますっ♪茄子さんっ♪」

 

「お二人とも、あけましておめでとうございます♪今年も、よろしくお願いしますね♪」

 

「よろしくな。ところで、その茄子の着物、よく似合ってるじゃないか」

 

「ありがとうございます♪今年も初詣に行ってきて、その帰りなんですよ♪お二人は?」

 

「あぁ。俺も初詣に行って、神社で卯月と合流したあとに、少し遊んできたんだ。な?卯月」

 

「はいっ♪巫女になって、みなさんにご奉仕をさせていただきました♪」

 

「そうだったんですね♪でも……今は、プロデューサーだけに「ご奉仕中」みたいですね〜♪」

 

「えっ……俺だけ……?」

 

「……ふふ〜ん♪そんなに、腕を絡めて密着しちゃって……とても、アツアツじゃないですかぁ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「あうっ……//」

 

「い、いや……これはだな……深いわけがあって……//」

 

「んもう、隠さなくていいんですよ〜♪新年早々、いいものを拝めて……茄子の胸は、幸運でい〜っぱいです♪」

 

タプンッ♪

 

「そ、そうか……それは……よかったな……//」

 

「……アラアラ♪今、何か、変なことを考えてませんでしたかぁ〜?」

 

「……っ!」

 

「はあっ!?な、何を言ってるんだよ、茄子!俺は、別に何も……//」

 

「ふ〜ん……それにしては、視線が少し……やんらし〜、感じだったような、気がしたんですけどね〜♪」

 

「くっ……そ、そんなことは……」

 

「うふふ……♪もしよかったら、幸運を司るこの、茄子巫女が、新年の「ご奉仕」をしてあげましょうか……♪」

 

「ちょっ……な、何だよ……そんなに近づいてきてっ……!」

 

「プロデューサーが望むことなら、何でも叶えちゃいますよ?何せ、私は幸運アイドルですので♪」

 

「何がいいですか?恋愛成就?比翼連理?それとも……」

 

「……「今」……プロデューサーが考えてることでもぉ……いいんですよぉ……?」

 

「なっ……!//」

 

「さぁ〜……プロデューサーは、一体……「ナニ」を考えてるんでしょうかねぇ〜?」チラッ

 

「……むぅ〜」

 

「……うふふ……♪わかりました♪ずばり「相思相愛」ですねっ♪では、祈祷をして差し上げましょう♪」

 

「な、何だよ!相思相愛って!ったく……茄子!お前は、アイドルなんだぞ!?」

 

------------------------------------------------

 

「私ではなく「卯月ちゃん」のためですよ♪では、いきますよ〜♪」

 

「……私の幸運を……た〜っぷり、お届けですよっ♪……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!//」

 

「……ふふっ……♪これで、プロデューサーたちの恋愛運は、急上昇しました♪今年も「安泰」ですね♪」

 

「茄子……お前っ……!//」

 

「さて、そろそろ、お邪魔虫は退散します♪今年も、お互いに頑張りましょう、卯月ちゃん♪ではっ♪」

 

「あっ、こら!おい!まだ、話は……行っちまった……」

 

「ったく……新年早々、何なんだあいつは……なあ……卯月も、そう思うだろ……?」

 

「……」

 

「……おい……卯月……?」

 

「……む〜っ」プクッ

 

「ふふっ……♪新年早々、あんなにイチャイチャしちゃって……羨ましい限りですねぇ♪」

 

「卯月ちゃん、ファイトですよっ♪茄子のお墨付きですので、ものすごい強力な恋愛運に、なってますからね♪」

 

「ただ……実は、あくまで恋愛運をおすそ分けしたのは、プロデューサー「だけ」なんですけど……♪」

 

「……本当……いけませんね。新年に、こんなイジワルなことを……神様に怒られてしまいます……」

 

「もしかして……本当は卯月ちゃんに、私は……ううん……気のせいですねっ♪」

 

「今は、この気持ちは抑えておきましょう……今年も、よろしくお願いしますね……♪お二人さん……♪」

 

------------------------------------------------

 

「あの……卯月さん……?」

 

「……何ですか……?」

 

「なんか……さっきよりさらに、密着されてるような気がするんですけど……気のせいですかね……?」

 

「……むうっ、気のせいじゃないです……プロデューサーさんの、えっち……」

 

「ちょっ……!あ、あれは、どう考えても茄子が悪いだろっ!//」

 

「ふ〜ん……です……茄子さんに、あんなにデレデレしちゃって……」

 

「いや……だって、急にあんなことをされたら……なぁ?……俺も、一応……男だし……//」

 

「……いいもん……私にはまだ……「挨拶」があるもん……」

 

「ん……?挨拶って……どういうことだ?」

 

「……では、問題ですっ♪このお家は、誰のお家でしょうかっ♪」

 

「誰のって……ここは……卯月の家……?」

 

「正解です♪せっかくですし、よかったら上がっていってください♪」

 

「いつの間にか、家の前に……ていうか、新年早々、悪くないか?親御さんも、くつろいでるだろうし……」

 

「いえいえ♪パパもママもきっと、プロデューサーさんがご挨拶に来てくれたら、喜ぶと思いますよ♪」

 

「……だって……「家族公認」の仲ですしね……えへへ……♪//」

 

「……公認?」

 

「あ、あわわっ!な、何でもないですっ!とにかく、大丈夫ってことです♪」

 

「そうなのか……?じゃあ、せっかくだし……新年のご挨拶に、伺わせてもらってもいいか?」

 

「はいっ♪では、行きましょう♪ふふっ…♪」

 

------------------------------------------------

 

「ただいま〜♪では、上がってくださいっ♪」

 

「失礼します……おぉ……何だか、久々に来たような気がするな……」

 

「前は居間で、ママと私と三人で、お話をしましたよね♪多分、今日も居間にいると思いま……」

 

フォンッ♪

 

「ん?ちょっと、失礼しますね。誰からだろ……あっ、ママからだ……え〜っと……」

 

「……って……ええええっ!?」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「パパとママで、初詣ついでに、色々と出かけてくるので、今日はしばらく、家に戻らないそうです……」

 

「おぉ、そうなのか。じゃあまた今度、改めて伺わせてもらうよ。一緒に、事務所に戻ろうぜ」

 

「……い、いえっ!せっかく来てもらったのに、申し訳ないです!ですので、上がって行ってくださいっ!//」

 

「でも……」

 

「ダメ……ですか……?」ウルッ

 

「卯月がいいって言うなら、いいけど……それじゃあ、お邪魔させてもらってもいいか?」

 

「はいっ♪では、お茶をお持ちしますねっ♪二階に私の部屋がありますので、そこで少し待っててください♪」

 

「あぁ……悪いな。じゃあ、卯月の部屋で……って……はあっ!?ちょっ……う、卯月っ!?」

 

「何でしょう?」

 

「あの……何だ……俺って、卯月の部屋に……お邪魔したことって、あったっけ……?」

 

「あっ、すみません♪初めてですから、言われてもわかりませんよね♪では、私と一緒に行きましょう♪」

 

「いや……卯月さん……?さっきも言いましたけど……俺も、一応……健全な男子なんですよ……?」

 

「大丈夫です♪すぐそこですから♪新年早々、二人っきりですね……えへへ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「お待たせしました〜♪すみません。これぐらいしか、用意出来なくて……」

 

「いやいや、お構いなく……それにしてもここが、卯月の部屋なんだな……」

 

「えへへ……♪男の人を連れてきたのは、プロデューサーさんが始めてなんですよ♪」

 

「そうか……それは光栄だな……あはは……」

 

「あの……私の部屋は、その……どうでしょうか……//」

 

「そ、そうだな!かわいらしい部屋だと思うぞ!女の子らしいし、それに、とてもいい香りがして……」

 

「……って!べ、別に、変な意味で言ったわけじゃないからな!?勘違いしないでくれよっ!//」

 

「ふふっ♪プロデューサーさんってば……♪では、隣に失礼しますね……よっと……」

 

「「……」」

 

「「……あ、あのっ……!//」」

 

「あっ……ごめん……卯月から、どうぞ……」

 

「いえいえ!ぷ、プロデューサーさんから、どうぞ……」

 

「「……//」」

 

「……それでは……あの……プロデューサーさんって、その……とても素敵ですよね♪」

 

「えっ……はあっ!?き、急に、何だよっ!?//」

 

「こうして間近で見ると、改めて……素敵な大人のお兄さんなんだなって、つい、思ってしまいました……//」

 

「いや……それを言うなら、卯月だって……笑顔が素敵な、かわいい女の子だと思うぞ……?」

 

「うふふ……ありがとうございます♪プロデューサーさんに言ってもらえると、とても自信がついちゃいます♪」

 

「……私の、唯一の取り柄ですので……今年はもっと、アピール出来るように頑張らないと……ですね♪」

 

「……っ……!そんなこと……」

 

------------------------------------------------

 

「いいんです。プロデューサーさんは優しいですから、きっと「そんなことない」って、言ってくれますよね」

 

「でも……私自身が一番、わかってるつもりなんです。だから、もっと頑張って頑張って頑張らないと……」

 

「……」

 

「笑うことなんて、誰でも出来ますからね。何もない私の「個性」に出来るように、頑張らなきゃ……」

 

「……俺は……卯月に、そんなことを言うつもりはないぞ……」ギュッ

 

「えっ……きゃっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?//」

 

「卯月の笑顔は卯月にしか出せない。それも、立派な「個性」だと俺は思う」

 

「だけど……それが、個性じゃないって言うなら、個性なんていらないんじゃないか……?」

 

「いらない……ですか?」

 

「あぁ。だって、卯月は現に人気アイドルだし「個性」より、ちゃんと「結果」が出てるじゃないか」

 

「でも、どうしても個性が欲しいって言うなら、卯月が納得いくまで、俺が一緒に探してやる」

 

「だから……一人で抱え込まないで、俺を頼ってくれ……卯月は、俺の大切なアイドルなんだからさ……」

 

「……プロデューサーさん……//」

 

「な?これからも、俺と一緒に歩んでくれないか?卯月と一緒に、シンデレラのお城に行きたいんだ」

 

「……はいっ♪私……「王子様」と一緒に、シンデレラのお城に行きたいです♪……えいっ♪」

 

「ちょっ……う、卯月……!?」

 

「えへへ……♪流石は、男の人ですね……♪すごく……逞しくて、暖かいですっ……♪//」

 

「私……間違っていました……個性個性って自分にばかり、固執してしまっていて……」

 

------------------------------------------------

 

「でも……そうですよね。こうして毎日、楽しいアイドル生活が送れるのも……ファンの皆さんや……」

 

「……そして、何より……私の隣にいつも、プロデューサーさんがいてくれるからなんですよね……♪//」

 

「あの〜……卯月さん……?ちょっと、距離が近すぎると思うんですけど……?//」

 

「私……やっぱり「妹」じゃなくて……プロデューサーさんの「大切な人」になりたいです……」

 

「……だから……プロデューサーさんのために……卯月、頑張りますっ……♪」

 

「うわっ……!?な、何だよ……急に、腕を俺の首に、巻きつけてっ……!//」

 

「シンデレラって……最後は、王子様とお姫様が無事に結ばれて、ハッピーエンドになりますよね……?」

 

「ですので……「私たち」もハッピーエンドを迎えましょう……えへへ……♪//」

 

「……と、とりあえず、一旦落ち着こうぜ!なっ……!?」

 

「私……もう、止められないんです……この胸のドキドキも……熱い想いも……」

 

「……プロデューサーさんを、独占したいって言う気持ちも……//」

 

ムニュッ♪

 

「ちょっ……あ、当たってるって……!//」

 

「……伝わっていますか?私の、胸のドキドキが……♪ギュッとしてもらってから、止まらないんです……//」

 

「それに……拒否するなら、拒否してください……それでも……私は、しっかりと受け止めますので……」

 

「拒否するも何も……そんなに、首に腕を巻き付けられてたら……身動きがっ……!//」

 

「うふふ……♪プロデューサーさん……大好きです……ん……」

 

「卯月〜、帰ってるの〜?」

 

「ひゃわっ……!?えっ、ええっ……!?この声って……ママっ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「はあっ!?お、親御さんが、帰ってきたのか!?」

 

「でも、さっき……初詣ついでに、出かけてくるって……」

 

「……もしかして……ママは最初から、私のことを全部……うぅ〜……ママのいじわるっ……//」

 

「え、えっと……とりあえず……隠れた方がいいか……?」

 

「あれ〜?卯月、いるの〜?もしかして「彼氏」さんも一緒〜?」

 

「わ、わ〜〜っ!い、言わなくても、帰ってるからあっ!……も〜……//」

 

「……そうか……どのみち、玄関に俺の革靴が……今更、隠れても無駄だな……」

 

「……こうなったら……私のスマイリング・ブレイブを発動しますっ♪……えいっ♪」

 

「えっ……ぶ、ブレイブ……?」

 

「うふふ……こっちの話ですっ♪では、パパとママのところに、一緒に行きましょう♪……手を繋いで……♪//」

 

「あ、あぁ……でも、何だろう……初めて会うわけでもないのに、何だかすごい、緊張するんだが……//」

 

「大丈夫ですよ♪二人とも、プロデューサーさんのことは、よく知ってますし♪」

 

「……それに……いずれは「家族ぐるみ」になるんですから……//」

 

「ん……?家族……?」

 

「何でもないですよ♪では、行きましょう♪」

 

「改めて、新年あけましておめでとうございます♪今年も、私のプロデュースをよろしくお願いしますねっ♪」

 

「……今年も……ううん……「ずっと」私と一緒に、二人三脚で頑張って行きましょう♪……ぶいっ♪」

 



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仮面シンデレラ 輿水幸子

「……」

 

「ん?どうした、緊張してるのか……?」

 

「そ、そんなことはないですよ!なんせボクは、才色兼備なアイドルですからねっ!」

 

「そうか。それじゃあ、行って来てくれ。みんなが待ってるぞ」

 

「……で、でも、プロデューサーさんが、寂しがっちゃうと思いますので……手を握っておいてあげます……」

 

「ははっ。何だよ、やっぱり緊張してるんじゃないか。しょうがないなあ、幸子は」

 

「あのっ、プロデューサーさん……ここまで、ボクのことを連れて来てくれて……ありがとうございます」

 

「なに、ここまで来れたのは、幸子が頑張って来たからだ。だから、堂々と胸を張って行って来いよ」

 

「……いえ……ここまで来れたのは、その……プロデューサーさんが常に、一緒にいてくれたからです……//」

 

「そんなことはないって。俺はあくまでサポートしただけだよ。ここには、幸子の実力で来れたんだ」

 

「……フフーン♪ま、当然のことを言わないでください♪ボクは輝いてるアイドルなんですよっ♪」

 

「そうだ。輝いてる舞台には、輝いてる幸子が必要だ。よし、その調子なら大丈夫そうだな。行って来てくれ」

 

「えぇ♪主役のボクがいないと、始まりませんからね♪……あの……最後に一つ……いいですか?」

 

「どうした?」

 

「……どうして、どうして……」

 

「?」

 

「……その輝く舞台が……スカイダイビングなんですかあああああっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「いや、どうしてって……こういう仕事はやっぱり、幸子が適任だと思ったんだが?」

 

「どうしてそうなるんですか!カワイイ仕事だって言ってたクセに!プロデューサーさんのおバカっ!」

 

「何でだよ「カワイイ」幸子がこの仕事をする。な?これでもう、この仕事は「カワイイ」仕事だ」

 

「そ、それは……ぐぬぬ……屁理屈を言って……もういいですっ!やればいいんですよね!?やればっ!!」

 

「おっ、やる気になってくれたか。じゃあ天使のように、舞って来てくれよ」

 

「言われなくてもそうします!ボクはカワイイ天使ですからね!では、行って来ますっ!!」

 

「あぁ。頼んだぞ」

 

「「……」」

 

「……あ、あのっ……プロデューサーさんっ……」

 

「何だよ?」

 

「……ぼ、ボク……本当に、怖いんです……で、ですから……」

 

「……プロデューサーさんなら……カワイイボクのことを……大切に思って、くれますよね……?」ウルウル

 

「ふぅ……しょうがないな……じゃあ、ダイビングは一旦、中止にするか」

 

「っ……!ほ、本当ですかぁ!?」

 

「……なんてな。ほらっ、行ってこい。Hey you Yeah you Queen You’re gonna make it!」

 

「えっ……みぎゃああああああああああああっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ。幸子チャン、すごいデスね。あの高所からスカイダイビングだなんて」

 

「……むぅ……プロデューサーさんの、裏切り者……」

 

「まあ、いいじゃないか。幸子の勇姿がしっかりとオンエアされてるし。取れ高もバッチリだって聞いたぞ」

 

「わ、わぁ〜……あんなに、お空の上の飛行機から……幸子ちゃん、すごいんご〜……」

 

「流石は幸子さん、ものすごい胆力ですね」

 

「ふ、フフ〜ン♪ま、当然ですけどね♪ボクはカワイイだけじゃなく、才能溢れるエリートアイドルですので♪」

 

「……おぉ、すごいデス。世界中で色々と、幸子チャンがバズってるみたいだよ」

 

「えっ……!?本当ですか!?」

 

「うん。ほらっ」

 

[Sachiko is a really funny idol!][这个幸子非常敢于跳伞〜!]

 

[사치코 짱!귀엽다!][Sachiko-Chan! Süß und hübsch!]

 

[Реакция Сатико слишком интересна!][Sachiko est mignon! C'est une idole japonaise!]

 

「んごぉ……色んな言葉が……飛び交ってるんご〜……」

 

「ふ、フフ〜ン♪ボクの魅力が、世界中に伝わってしまったみたいですね〜♪ま、当然のことですけど♪」

 

「……ほぉ。今、タブレットで調べたところ、幸子さんがバズってるのには、理由があるみたいですね」

 

「そんなの、決まってますっ♪ボクのカワイイ勇姿で、世界中の人を虜にしてしまったからですよね?」

 

「それもあるみたいですが、どうやら、このつぶやきが発端みたいですよ、こんな感じの」

 

「ん?……って!何ですか、この画像は!ボクは、こんなポーズをした覚えはありませんよ!?」

 

「ん〜、いわゆるコラってやつデスね。多分、幸子チャンのライブの映像を、加工したやつだと思う」

 

「しかも何か、英語が書いてありますね……Hey you Yeah you Queen You’re gonna make it……?」

 

「直訳すると「そこの君、君は女王だ、君ならできる」って意味ですね。SNSで、流行ってるみたいです」

 

「んもう〜♪いくら、ボクがカワイイからって女王だなんて〜♪……あれ?でも、この言葉って、あの時……」

 

------------------------------------------------

 

「あぁ。俺が幸子にかけた言葉だな。今、ありすが言ったみたいに、SNSから引用をさせてもらったんだ」

 

「あ、そうだったんですね……って!だからと言って、急に、ボクを突き落とすなんて酷いじゃないですか!」

 

「悪い悪い。だが、結果的に「一押し」で、幸子の知名度が世界中に広がって、よかったじゃないか」

 

「いや……それは、そうですけど……」

 

「でも、確かに、幸子のためとはいえ、心の準備が出来てないのに落としたのは謝るよ。ごめんよ、幸子」

 

「全く……ま、ボクのカワイイ顔に免じて許してあげますっ。感謝してくださいね!……その代わり……」

 

「……ボクに、何かあったら……「責任」を……とってもらいますからねっ……//」

 

「なっ……!?//」

 

「ははっ、望むところだ。そんな覚悟もなしで、幸子たちのプロデューサーをやってるわけじゃないからな」

 

「さ、幸子さんっ!一体、何を言ってるんですかっ……!//」

 

「さあ、どういうことでしょうか「特に」ありすさんなら、わかってそうですけどねぇ〜?」

 

「……っ!し、知りませんっ!//」

 

「まあ、安心してアイドル活動をしてくれ。俺がしっかりと、お前たちを支えるからさ」

 

「ふ、ふんっ!当然です!プロデューサーさんだって、ボクがいないとダメダメですからねっ!」

 

「……それに……女王には「キング」が必要ですよね?ですから……その……」

 

バンッ!

 

「アーッハッハッハ!どうやら、みんな集まってるようね!」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……れ、麗奈?ドアは静かに開けろっていつも言ってるだろ?」

 

「どうしたもこうしたもないわよ!ジャジャーン!ほら、みんな!これを見なさいっ!!」

 

「それって……クッキーですか?」

 

「流石ね!幸子!そう、このレイナ様がみんなに、特製クッキーを作ってきてあげたのよ!感謝しなさい!!」

 

「「「……」」」

 

「……って……な、何よっ!その目はっ!!」

 

「……俺、パス。幸子が最初に、味見をしてくれるってさ」

 

「そうですね……幸子さんは確か、クッキーがお好きでしたよね?」

 

「……ひ、一口目は……幸子ちゃんに、譲ってあげるんご……♪」

 

「……#最初の一口#譲ってあげる#御愁傷様」

 

「み、みなさん酷いですっ!何でこのボクが、毒味役にならなきゃいけないんですかっ!!」

 

「ちょっ……!ひ、人がせっかく作った手作りの物を、毒物みたいに言うんじゃないわよ!」

 

「……じゃあ、まずは作った麗奈自身が、食べてみろよ」

 

「まるで信用がないのね……わかったわよ!食べて証明すればいいんでしょ!?あぐっ、んぐっ!」

 

「……う〜ん、甘くておいし〜♪ねっ?何もないでしょ?」

 

「何だか怪しいな……よし、幸子。いってみろ」

 

「なっ……で、ですからっ!あぁ、もうっ!わかりましたよ!食べればいいんですよね!?食べればっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ええいっ!ままよ!あぐっ……!」

 

「……ど、どうですかっ……幸子ちゃん……?」

 

「……って、あれ……?普通に、甘くて……美味しいです……」

 

「ほらっ♪言ったじゃない♪アタシだってちゃんと、やる時はやるんだから♪」

 

「……本当に……大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ♪ほらっ♪あ〜んしてくださいっ♪」

 

「えっ……あ、あ〜……って!するか!自分で食べるからいいって!」

 

「むうっ……ノリが悪いんですから……」

 

「ほらっ、わかったところで、アンタたちも食べなさいよ♪素直にアタシのご厚意を受け取るがいいわ!」

 

「あっ……は、はいっ……では、いただきます……ん〜♪美味しいです〜♪」

 

「いただきマス。んぐ……中々イケるね、これ……」

 

「……美味しいです」

 

「そうでしょそうでしょ♪レイナ様の特製クッキーをとくと味わいなさい♪」

 

「何だよ……麗奈も、普通に美味しいものを作れるじゃないか。結構、美味しいぞ」

 

「「飴と鞭」の使い方ぐらいわかってるつもりよ。たまには飴でもくれてやらなきゃ、かわいそうでしょ?」

 

「……俺的には「飴」ばかりになって欲しいんだがな……」

 

------------------------------------------------

 

「ん〜♪美味しかったです〜♪」

 

「中々、楽しまさせてもらったよ。ありがとうデス。麗奈チャン」

 

「麗奈さんも、料理がお上手なんですね♪ボクと同じぐらいに♪」

 

「ご馳走様、麗奈。美味しかったぞ」

 

「礼なんていらないわ。たまたま、アタシの気分が向いただけだしね」

 

「麗奈さん、ご馳走様でした。……ところで、みなさん。もしよかったら、私のクッキーもどうでしょうか?」

 

「えっ、ありすもクッキーを作って来てくれたのか?」

 

「はい。本当はあとで、みなさんに差し上げようと思ったのですが、ちょうどいいタイミングでしたので」

 

「……それに……「一足先」に食べてもらいたかったんです……//」チラッ

 

「そうだったのか……それじゃあ、さっそくありすのも、もらってもいいか?」

 

「えぇ。それでは、みなさんもどうぞ、召し上がってください」

 

「わぁ〜♪いいんですかぁ♪ありがとうございます〜♪」

 

「ありがとうデス、ありすチャン」

 

「では、もらいますね♪ありがとうございます♪ありすさん♪」

 

「「「いただきまーす♪」」」

 

「……うん。ありすのも、中々美味し……うぐっ……!?」

 

「……っ!?ど、どうしたんですか!?プロデューサーさん!!」

 

------------------------------------------------

 

「んごごぉ〜……!す、すごい……辛いんご〜……」

 

「……#ヘッドショット#ワンキル#激辛マックス……」

 

「ちょっ……えっ、ええっ……!?」

 

「……ず、随分と美味しいクッキーですね……ボクは、好きですよっ……ケホッ……」

 

「アラアラ♪ありすがこういうイタズラをするとは、意外ね〜♪」

 

「みなさんまで……ご、誤解ですっ!私は、そんなことを、微塵も考えてなんか……ん?そういえば……」

 

「……何で、麗奈さんは……私のクッキーを、食べてないんですか……?」

 

「……クックックッ……アーッハッハッ!流石はありすね!そうよ!」

 

「アタシが、ありすのクッキーと、レイナ様特製の、粉わさび入りのクッキーをこっそり入れ替えたのよっ!」

 

「なっ……!い、いつの間に入れ替えたんですか……!?」

 

「アンタが事務所に早く来て、クッキーを持って来てた時に入れ替えたのよ!こっそりとね!」

 

「つまり、アタシがあげたのが「ありすのクッキー」ありすがあげたのが「アタシのクッキー」ってわけ!」

 

「でも……包装とかも、ほぼ同じですよね?一体、どうやってこんなことを……」

 

「数日前に、アンタはクッキーの本を見てたでしょ?その時に察したのよ「フライング」をする気ねって」

 

「だから、ラッピングからクッキーの型までリサーチして、同じ物を作って来たの!どう?完璧でしょ♪」

 

「れ、麗奈……お前ってヤツは……!」

 

------------------------------------------------

 

「……麗奈さん……もう少し、その熱意を何か他に、生かせれないんですか……?」

 

「やるからには全力でやるのが、アタシのポリシーなの!特に「ライバル」には手加減するつもりはないわ!」

 

「つまりアンタたちは、アタシの崇高なイタズラからは一生、逃れられないってことよ!オーッホッホッホ!」

 

「あ、ありすさんとボクたちを、二重に騙してたわけですか……敵ながらあっぱれですね……」

 

「ったく……麗奈?お前、そんなにイタズラばかりしてると、いつか本当に痛い目に会うぞ……?」

 

「……信頼してる人以外に、こんなことをしようとする程……アタシはバカじゃないわよ……」

 

「特に、アンタは……「一番最初」に……引っかかってくれると思ってたし……//」

 

「えっ……?」

 

「つまり……アーッハッハ!人生は「チョコ」みたいに甘くないってことよ!あたしは、これで失礼するわ!」

 

「あっ、おい!待てよ!……行っちゃった……ったく、アイツは本当に、イタズラ好きで困るな……」

 

「あぅ〜……まだ……鼻の奥がつ〜んって、するんごぉ……」

 

「麗奈チャンは……銃より、トラップで攻めてくるタイプだね……中々、厄介デス……」

 

「……あの……プロデューサーさん……私と麗奈さんのクッキー……どっちが、美味しかったですか……?」

 

「えっ、いや、それは……って!そんなの当然「ありすの」クッキーに決まってるだろ!」

 

「そうですか……♪//」

 

「あんなに辛いクッキー、初めて食べたっつうの……本当に、しょうがないヤツだな……麗奈は……」

 

「では、その……口直しといっては、何ですが……」

 

「……プロデューサーさんのロッカーに、もう一つ「特別なもの」を入れて置きましたので……♪」ボソッ

 

「えっ……?」

 

「ふふっ♪あとはお楽しみですっ♪さて、みなさん。日も暮れて来たので、そろそろ帰りましょうか♪」

 

「……あっ、もうこんな時間か。じゃあ最後に、みんなにジュースでも奢るよ。激辛クッキーの口直しにしな」

 

「えっ、いいんですか……?」

 

「あぁ。俺も、麗奈のせいで今も口の中がヒリヒリしてるんだ。それに、ありすのクッキーのお礼も兼ねてな」

 

「あっ、その……ありがとうございます。では……いただきますねっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「ふぅ……さて、今日も一日、頑張るぞいっと……」

 

「しかし……昨日は、エラい目にあったな……まだ、口の中がヒリヒリするような気がするぜ……」

 

「アイツには今度、改めて説教をしないと……ん?何だ?この、でかいプレゼントボックスは」

 

「……はは〜ん。また、麗奈の仕業だな。俺はもう、騙されないぞ。さぁ〜て、仕事仕事っと……」

 

ガタガタガタガタ!

 

「うわっ!?な、何だ……!?ボックスが超、動いてるぞ!?玲奈のヤツ……一体、何を入れたんだ?」

 

「……〜!〜!!」

 

「……ん?何か、声みたいなものが……もしかして……生き物が入ってるのか?」

 

「少し、怖い気もするけど……よし!開けてみるか!もうどうにでもなれっ!!」

 

ガバッ!

 

「……ぷあっ!やっと、出れました……!もうっ!さっさと開けてくださいよ!おバカ!!」

 

「えっ……幸子?お前は一体……何をしてるんだ……?」

 

「何って……見ればわかりますよね!?今日は二月十四日!バレンタインデーなんですよ!?」

 

「バレンタイン……おぉ、そうだった。今日はバレンタインデーだったな」

 

「……で?色々とツッコミたいんだが、幸子のその格好は何だ?」

 

「この人は、本当にもう……い、いいですか!よく聞いてくださいっ!//」

 

「……今日はバレンタインデーなので……そ、その……チョコではなく……甘いボクを……」

 

カチャッ

 

「……あらっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「あっ、楓さん。おはようございます」

 

「おはようございます♪……もしかして……私ってば、お邪魔でしたか?」

 

「いえいえ、そんなことはないですよ。なっ?幸子」

 

「……っ!えっ、えぇ!そうですねっ……//」

 

「ふふっ♪どうりで、事務所が「甘い匂い」に包まれてると思ったら……ここから漂って来てたんですね……♪」

 

「あ、甘いだなんて……ですって♪プロデューサーさん……♪//」

 

「ははっ、何ですかそれ。俺はただ、幸子とお喋りをしてただけですよ」

 

「むっ……」

 

「えぇ〜?側から見たら、とてもお似合いで、素敵なカップルに見えますよぉ?」

 

「ちょっ……へ、変なことを言わないでくださいっ!幸子はまだ「子供」なんですからっ!」

 

「……またそうやって、ボクのことを子供扱いして……」

 

「まあ冗談はさておき、はいっ♪プロデューサーくん、幸子ちゃん♪ハッピーバレンタインですっ♪」

 

「えっ、これは……チョコですか?」

 

「はいっ♪ささやかながら、チョコを用意させてもらいました♪それで、みなさんに配って歩いてるんです♪」

 

「あっ……ありがとうございます……//」

 

「ありがとうございます。すみません、わざわざ俺のも用意してもらって」

 

「いえいえ♪今日はバレンタインですから♪もしかしたら……そっちの方が「本命」かもしれませんよ……?」

 

「ん?本命……?」

 

「うふふ……ねぇ、プロデューサーくんっ♪「オトナ」のぉ……あま〜い、おねえさんはどうですかぁ?」

 

「えっ、いや……どうって言われましても……」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ♪プロデューサー君になら……イイですよぉ?私ってぇ、と〜っても甘いんですから〜♪」

 

「ちょっ……楓さ……うん?スンスン……何か、少し……お酒の匂いがするような……」

 

「……うふふ……「ちょこっと」つまんでしまったんです……チョコなだけにっ♪」

 

「まさか、これって……ウイスキーボンボンですか……!?」

 

「うふふ……だ〜いせいか〜い♪それじゃあ……プロデューサーくんも一緒に、気持ちよくなりましょ〜う♪」

 

「……あの、楓さん?これって確か……本当のお酒が、入ってますよね……?」

 

「大丈夫ですよぉ〜♪みんなに配ってるのは、あま〜い普通のチョコですのでっ♪」

 

「……でも……プロデューサーくんは「オトナ」ですので……一緒に気持ちよくなれますよ♪うふっ……♪」

 

「なっ……だ、だから……変なことを言わないでください!楓さんは、アイドルなんですよ!?//」

 

「えぇ〜?じゃあ今は、プロデューサーくん「だけの」アイドルですっ♪はいっ♪これで問題はないですよね♪」

 

「またそんな、子供みたいな屁理屈を言って……!//」

 

「……もしかして……プロデューサーくんは、私のこと……嫌いですか……?」

 

「いや……と、とにかく!楓さんは少し酔ってるみたいですから、一旦落ち着きましょう!ねっ!?」

 

「もしかしたら……普段の私は、アイドルの仮面を被ってる「恋する乙女」なのかもしれませんよ……?」

 

「えっ……?」

 

「……「マスク」だけにっ♪さあっ♪プロデューサーくんもっ……はいっ♪あ〜んっ♪」

 

「なっ……!だ、だからっ……!」

 

「あ、もしかして、もっと「大胆な方法で」食べさせて欲しかったんですか?ごめんなさい♪」

 

------------------------------------------------

 

「……では……チョコを、口に咥えて……ふぁいっ……プロデューサーくんっ……♪//」

 

「はあっ!?い、いや!余計に変なことになってるじゃないですか!本当に……まずいですって……//」

 

「んふふ……私の甘いものを……受け取ってくださいっ♪//」

 

「ちょっ、まっ……ち、近っ……!//」

 

「……ちょっと!ボクの目の前で一体、何をしてるんですかっ!!//」

 

「うわっ!?さ、幸子……!?」

 

「……んぐ……ん〜♪やっぱり、ウイスキーボンボンは美味しいですね♪何ちゃって♪演技ですよっ♪」

 

「……は?」

 

「んもう。本当に、酔うわけないじゃないですかぁ。私は「大人」のお姉さんなんですよぉ?」

 

「はぁ……ったく……そういうことで、俺をからかうのはやめてください。楓さんは、女性なんですから……」

 

「でも……もしかしたら「チョコっと」本心が混ざってるかもしれませんよ?プロデューサーくんっ……♪//」

 

「えっ?それって、つまり……//」

 

「「……//」」

 

「……もうっ!何、デレデレしてるんですかっ!今日はボクと、付き合ってくれるって約束でしたよねっ!?」

 

「ん?付き合うって……何のことだ……?」

 

「あらっ♪お二人ってば、バレンタインに「デート」の約束をしてたんですか♪いいですねぇ〜♪」

 

「えっ、いやいや。俺は、そんな約束をした覚えは……」

 

「ほらっ!行きますよっ!!……それと……楓さん……」

 

「ん?どうしたのかな?幸子ちゃん」

 

「……ボクは……負けませんから……ではっ!!」

 

「ちょっ……まっ……」

 

パタン

 

「……うふふ♪そうですか……♪あ〜あ。また、現れてしまいましたねぇ「カワイイ」ライバルが……♪」

 

------------------------------------------------

 

「なあ……幸子?」

 

「何でしょう?」

 

「……何で……俺ら二人で、街を歩いてるんだ……?」

 

「ふふ〜ん…♪カワイイボクのあげたプレゼントを開ければ、わかりますよ♪」

 

「プレゼント?……あぁ。さっき、幸子からもらった、この箱か」

 

「はいっ♪今すぐに、開けてみてください♪」

 

「そうか?じゃあ、さっそく開けて……ん?「カワイイボクと、甘いデートを楽しむ券」……?何だこりゃ」

 

「どうもこうも、そのままの意味です♪カワイイボクとのデートを楽しめるんですよ♪光栄でしょう♪」

 

「……待て。俺はいつ、幸子とデートをする約束なんてしたんだ……?」

 

「そんなの、決まってるじゃないですか♪今ですよ今♪だって、今日はバレンタインデーなんですから♪」

 

「……つまり……チョコではなく「甘い」ボクとの時間を……プレゼントしたってことです……♪//」

 

「甘い、ねぇ……そりゃとんだ、サプライズプレゼントだな。で?俺は喜べばいいのか?」

 

「当然ですっ♪なんせ、こんな大切な日に、カワイすぎるボクとデートが出来るんですからっ♪」

 

「そうか、それは光栄だ。こんな日に、幸子ちゃんのお守りが出来るとはな」

 

「………プロデューサーさんのおバカっ!!」ギュッ

 

「うわっ!?な、何だよっ……!?」 

 

「本当にもう!オトナのレディの扱いを、何もわかってないです!楓さんにはデレデレしてたクセにっ!」

 

「オトナ?楓さん?一体……何を言ってるんだ……?」

 

「と・に・か・く!今日は「オトナ」なボクに付き合ってもらいますからね!行きますよ!ほらっ!!」

 

「ちょっ……!わ、わかったって!だから、そんなに引っ張るなよっ!」

 

「……むぅ〜」

 

------------------------------------------------

 

「おぉ……何だか、すごいオシャレなお菓子屋さんだな……」

 

「そうでしょう、そうでしょう♪ここは、美味しくて話題で人気の、お菓子屋さんなんですよ♪」

 

「にしては……人が、ほぼ並んでないような……今日はやってないのか?」

 

「……フフ〜ン♪実はですね♪このお店は、バレンタインの日にのみ、完全予約制になるんですっ♪」

 

「ほぉ……そうなのか……ん?完全予約制……?」

 

「ふっふっふっ……流石はボクのプロデューサーさん、察しがいいですねぇ♪つまり……」

 

「……この日のために、前々から予約をしておいたんですっ♪どうです?ボクは気が利きますでしょ♪」

 

「いや……それは嬉しいんだが……何でわざわざ、俺と……?」

 

「んもう、何で、バレンタインの日だけ完全予約制になるのか、言わなくてもわかりますよねっ?」

 

「……女の子は、甘いものが好きだから?」

 

「むっ……また、そんなことを言って……大体、いつもそうなんですから……」

 

「……肝心なところで、察しが悪くて……だから、みなさんは……」

 

「……?」

 

「と、とにかく!プロデューサーさんのために予約をしてあげたんですから、感謝をしてくださいよねっ!//」

 

「そ、そうか……ありがとう?」

 

「全く、もうっ……//」

 

「……付き合ってます……から……」

 

「えっ……?」

 

------------------------------------------------

 

「私たち……まだ……付き合いたてなので……//」

 

(……め、目の前の、赤ずきんのような服装をした女の子……随分と大胆だな……)

 

(隣のお兄さんも何だか、赤面して困惑してるっぽいし……まさか、バレンタイン限定ってそういう……)

 

「さて、プロデューサーさん♪次はボクたちの番みたいですよ♪」

 

「えっ?あ、あぁ……そうか……」

 

「ご来店ありがとうございます。本日当店は、完全予約制となっております。ご予約の方はされましたか?」

 

「はい♪本日、予約をした幸子です♪」

 

「幸子様ですね♪お待ちしておりました♪二名様でのご予約で、よろしかったでしょうか?」

 

「はいっ♪それと……ボクたち……付き合ってますから♪」

 

「……は?」

 

「そうですか♪でしたら本日は、カップル限定の特別メニューもご用意していますので、お楽しみください♪」

 

「い、いや……俺たちは、その……」

 

「や〜ん♪カップル限定メニューだなんて♪楽しみですね♪ダーリン♪」

 

「それでは、ご案内します♪……ふふっ、何だか、初々しいですね♪」

 

「……おい、幸子……!これは一体、何の真似だ……!//」

 

「……フフーン♪さぁ、ボクは知りませんねぇ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪美味しそうなスイーツばっかりですねぇ〜♪」

 

「そ、そうだな……とても美味しそうだ……」

 

「ん?どうしたんですか?プロデューサーさん。そんなに固まっちゃって」

 

「……色々と聞きたいんだが……俺はいつ、幸子とカップルになったんだ……?」

 

「言ったじゃないですか♪完全予約制だって♪この日のために、何日も前から準備をしてたんですからね♪」

 

「……それに……「カップル」には、限定メニューがついてくるんですよ♪例えば、このスイーツとか……♪」

 

「なる程……そんなに、限定メニューが食べたかったのか。なら、納得だ」

 

「……むぐぐっ……またそうやって、ボクを子供扱いしてっ……ん?」

 

「ほらっ☆あ〜ん☆」

 

「いや……俺はいいよ……」

 

「ダ〜メ☆ほら、甘奈のことが好きなら、食べてよ〜☆」

 

「でも……周りに、人がだな……//」

 

「……甘奈のこと……嫌い……?」ウルッ

 

「……わかったよ……もらうから……」

 

「やった〜☆やっぱり、やっさし〜☆」

 

「……おぉ……プロデューサーさん……」

 

「ん?どうした……?」

 

「……と、特別に……ボクのも、食べさせてあげます……ほらっ、あーんをしてください……//」

 

------------------------------------------------

 

「いや……俺はいいよ……」

 

「……ボクのこと……嫌いなんですか……?」ウルッ

 

「別にそういうわけじゃ……ていうか、おい。顔にクリームがついてるぞ、俺が取ってやるよ」

 

「えっ……?あっ……」

 

「ほらっ、もう大丈夫だ。ったく、幸子はまだまだ、子供だな」

 

「なっ……!ぼ、ボクはもう、オトナのお姉さんなんですっ!子供扱いしないでくださいっ!」

 

「はいはい。ほらっ、口が汚れないように、俺が食べさせてやるよ。ほら、あーんをしろ」

 

「ぐぬぬ……!えいっ!!」

 

「むぐっ……!?……ぷあっ……おい!幸子!急に、何をするんだよっ!」

 

「……フフーン♪ボクを子供扱いしたバツですっ♪どうです?美味しいですか♪プロデューサーくんっ♪」

 

「お前……!いいか!だいたいお前は、カップルどころか、目が離せなくて危なっかしい小娘で……」

 

「「……」」ジー

 

「……あっ、す、すみません……」

 

「ほら♪騒いじゃだめですよ〜♪本当、プロデューサー「くん」はボクがいないと、ダメダメなんですから〜♪」

 

「……こいつめ……!ふぅ、そうだな……それじゃあ改めて、ご馳走になるよ。ありがとうな、幸子」

 

「素直でよろしいです♪さあ、せっかくのスイーツなんですから、楽しみましょうね♪ふふっ♪」

 

(……あそこのお兄さんと女の子……楽しそうでいいなあ……甘奈も、もっと甘えないと……)

 

------------------------------------------------

 

「うん、美味しかったな。ご馳走様。幸子」

 

「いえいえ♪日頃のお礼ですよっ♪どうです?素晴らしいサプライズでしたでしょ♪」

 

「確かに、美味しかったけど……ったく……恥をかかせやがって……//」

 

「恥って……何のことですか……?」

 

「周りに、あんなに注目されて……恥ずかしかったんだぞ……//」

 

「えぇ〜?そんなの、プロデューサーくんが悪いんじゃないですかぁ〜♪お食事の時は、静かにしないとっ♪」

 

「……あのなあ……そうやって、俺を弄ぶのもいいけど、幸子はアイドルで、俺は……」

 

「……あ〜♪プロデューサーと幸子ちゃんだ〜♪やっほ〜♪」

 

「こ、こんにちは……」

 

「ん……?おっ、美嘉とみりあじゃないか。こんにちは。二人で何をしてるんだ?」

 

「えっとね、美嘉ちゃんとバレンタインデートをしてたの♪幸子ちゃんたちは、何をしてるの?」

 

「フフーン♪そんなの見ればわかるじゃないですか♪ねっ、プロデューサーさんっ♪」

 

「あぁ。見ての通り、幸子のお守りだ。だいたいここにだって、幸子がほぼ、無理矢理……あだっ!!」

 

「んもう、そんなに恥ずかしがっちゃって〜♪恥ずかしがり屋さんなんですから〜♪」

 

「……ふ〜ん……何だか随分と、アツアツじゃん……」

 

「あはは♪おもしろ〜い♪あ、そうだっ♪二人にこれっ♪あ〜げ〜るっ♪」

 

「ん?これは……チョコ?いいんですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「うんっ♪ハッピーバレンタインだよっ♪今日は楽しいバレンタインだしね〜♪」

 

「わぁ〜♪ありがとうございます♪みりあさん♪」

 

「いいの♪いいの♪はいっ♪それじゃあ、プロデューサーも……あ〜っ!待って!」

 

「……CHU♪はいっ♪これでナンバーワンかつ、オンリーワン♪まるごと全部……受・け・取・っ・て?」

 

「……っ!?//」

 

「ん……?おっ、ありがとうな。みりあ」

 

「……えへへ♪みりあの想いも一緒に……味わってね……♪//」

 

「ちょっ……み、みりあちゃん……?」

 

「それにしても、今のは何だ?何かのおまじないなのか?」

 

「うんっ♪チョコを、と〜っても甘く出来る、魔法のおまじないなのっ♪ね〜♪美嘉ちゃ……」

 

「……あ”〜っ!もうこんな時間っ!早くしないと、予約してたお店に遅れちゃうよっ!みりあちゃんっ!!//」

 

「あれ……?そうだったっけ?」

 

「何だ、急ぎだったのか。引き止めて悪かったな」

 

「……ん〜……ま、いっか♪それじゃあ、プロデューサー♪幸子ちゃんっ♪また今度ね〜♪」

 

「えぇ♪チョコをありがとうございました♪また会いましょうね♪」

 

「そ、それじゃあ、また今度、会おうねっ!……あ、ちなみさ、プロデューサー……」

 

「ん?どうした、美嘉」

 

「……アタシも、その……引き出しに「オンリーワン」を入れておいたから……じゃあねっ!!//」

 

「えっ……?あっ、おい!……オンリーワンって……一体、何を言ってるんだ……?」

 

「……まあ、いいか。それより、みりあからチョコを貰えてよかったな。なあ、幸子」

 

「……そう……ですね……」

 

「……幸子?」

 

「あの……プロデューサーさん。今から、ボクとショッピングに、付き合ってください……」

 

「ん?あぁ、別にいいぞ。何か欲しいものとかあるのか?」

 

「えぇ♪改めて……「た〜っぷり」と、ボクに付き合ってもらいますっ……♪覚悟してくださいねっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「はぁ〜っ♪たくさん買いましたね〜♪さて、この海沿いの公園のベンチで、ひと休憩しましょう♪」

 

「……」

 

「んもう!プロデューサーさ〜ん?遅いですよ〜?」

 

「……あの……幸子さん?いくら何でも、少し……買いすぎじゃないですかね……?」

 

「フフーン♪ボクはカワイイですからね♪つい、似合う服が多すぎて、困ってしまいますっ♪」

 

「そ、そうか……そうだよな……幸子は、カワイイアイドルだもんな……あはは……」

 

「しょうがないですねぇ〜。ボクも少し、荷物を持ってあげますよ。「オシオキ」は済みましたしね♪」

 

「ん……?あ、あぁ……ありがとう……ふぅ、助かった……」

 

「「……」」

 

「……それにしても……夕暮れ時の海って、綺麗ですね……」

 

「うん、そうだな。とても綺麗だ」

 

「……あのっ、プロデューサーさん。改めて今日は、ボクに付き合ってもらって……ありがとうございました」

 

「ははっ。何だよ今更。まさか、もっと買いたい物とかあるんじゃないだろうな」

 

「も、もうっ!ボクを何だと思ってるんですか!ただ純粋に、お礼を言っただけですっ!」

 

「冗談だ。俺も唐突ではあったが、幸子にご馳走になっちゃったしな。今日はありがとう。幸子」

 

「全くもう……でも、こうして、素敵なバレンタインデーを一緒に送れて嬉しかったのは、本当です」

 

「……だから、その……ボクから最後にもう一つ、お礼を差し上げます」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?お礼……?」

 

「えぇ。その……実を言いますと、バレンタインの招待状の他に、ボクもチョコを作ってきたんです」

 

「ですので……はいっ♪ショッピングのお礼も兼ねて、ボクからもハッピーバレンタインですっ♪」

 

「わざわざ、俺に作って来てくれたのか?あ、ありがとう……」

 

「ちょ〜っと!待ってください!!本当にもう、プロデューサーさんは、せっかちなんですから……」

 

「……?」

 

「ボクが感謝と愛情を込めた、オンリーワンでナンバーワンな、世界一のチョコレートなんですよ?」

 

「……それに……CHU♪……まだ……おまじないがかかってませんよ……えいっ♪//」

 

「えっ……むぐっ……!?」

 

「……ふふっ♪「ボク」のチョコを……味わって食べてくださいねっ……♪」

 

「……ぷあっ……ちょっ……さ、幸子っ!?//」

 

「どうしたんですかぁ……?さっきまでボクを子供扱いしてたクセに、そんなに照れちゃって……♪」

 

「いや……だって、お前……今……//」

 

「美嘉さんやみりあさん……いえ、「直接」おまじないをかけたのは……ボクが初めてなはずですっ……♪」

 

「つまり……皆さんより、一歩リードが出来たってことですよね♪//」

 

「り、リード……?一体、何を言ってるんだ……?」

 

「……今日……改めて、思ったんです。やっぱり、ボクも負けてられないなって」

 

「みなさんの、バレンタインの贈り物に込めた熱い想いが……ボクにもひしひしと伝わって来ました……」

 

------------------------------------------------

 

「だから……まだ、みなさんがプレゼントしたことのないものを、プロデューサーさんに渡したかったんです」

 

「いや、それはまあ、心を込めたプレゼントを貰えるのは、嬉しいんだぞ?プレゼントは嬉しいものだしな」

 

「……だけど……さっきのあれは、やりすぎじゃないか……?幸子はアイドルなんだぞ……?//」

 

「ふふっ……この「続き」は……ボクがオトナになるまで……待ってくれますか……?」

 

「続きって……し、知るかっ!いいか!物事には限度ってものがあるんだぞっ!!//」

 

「……アラアラ♪否定しないってことは……「いい」ってことなんですよね……?//」

 

「これ以上大人をからかうな!あぁ、もう!ほら!荷物もあるし、さっさと事務所に帰るぞっ!!//」

 

「はいはい♪本当にもう♪プロデューサーくんはやっぱり、ボクがついてないとダメダメなんですから〜♪」

 

「お前……さっきの、仕返しのつもりか……!」

 

「さあ〜?どうでしょう♪全くぅ、あんなことをしたのは、プロデューサーくんが初めてなんですからね?」

 

「だから……ボクの初めてを受け取った以上は……責任をとってもらいますからね……♪」

 

「ったく……!まだ中学生のお子ちゃまが、何を言ってやがるんだ……!//」

 

「フフーン♪ボクは中途半端が、大嫌いなんですっ♪何事もやるからには、トップを目指したいんです♪」

           

「……ですので、ボクをアイドルにした以上には、覚悟を持ってもらいますよ♪「一生」……ねっ♪」



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菫蒼シンデレラ 渋谷凛

「みんな、グラスは持ったか?」

 

「はいっ♪しっかりと持ちました♪」

 

「うん。準備は出来てるよ」

 

「私も、いつでもおっけ〜だよっ♪」

 

「よし。じゃあ、行くぞ。せ〜の……」

 

「「「ライブ、お疲れ様でした♪」」」

 

カツンッ♪

 

「みんな、お疲れ様。よく頑張ってくれた」

 

「いえいえ♪私たちも、とても楽しく出来てよかったです♪ねっ♪凛ちゃん♪未央ちゃん♪」

 

「そうだね。何事もなく、無事にライブを終えれてよかったよ」

 

「うんうん♪ファンのみんなと一緒に、ライブを盛り上げれて楽しかったね♪」

 

「感謝の気持ちと言ってはなんだが、今日はライブのお祝いだ。遠慮せずにたくさん楽しんでくれ」

 

「ここのお店、いいよね。バイキング形式で、料理の種類が結構、豊富だし」

 

「そうですね♪見たこともないお料理がたくさん並んでて、とってもワクワクしちゃいます♪」

 

「だよね♪だよね〜♪たくさんありすぎて未央ちゃん、すごい迷っちゃったよ〜♪」

 

「ははっ、気に入ってくれてよかった。みんな、ライブを頑張って盛り上げてくれて、ありがとうな」

 

「少し、緊張しちゃったけど……どう?ちゃんと、パフォーマンスが出来てた……?」

 

「うん、出来てたと思うぞ。歌やダンスもしっかりと、歌って踊れてたし」

 

「よかった〜……流石の未央ちゃんも、ちょっと緊張してたんだよね〜……」

 

「そうですね……でも、凛ちゃんや未央ちゃんが、隣にいてくれたおかげで、何とか乗り切れましたっ♪」

 

「そうか。じゃあ、その頑張った分、しっかりとくつろいでくれ。よし、さっそく料理をいただくか」

 

「「「は〜いっ♪」」」

 

------------------------------------------------

 

「ご馳走様。美味しかったよ、プロデューサー」

 

「はいっ♪素敵なお食事を、ありがとうございました♪」

 

「いやいや、気にしないでくれ。三人とも、ライブを頑張ってくれたからな。俺の感謝の気持ちだ」

 

「さんきゅ〜♪プロデューサー♪楽しかったからつい、結構食べちゃったかも♪」

 

「そうですねっ♪みんなと楽しく食事が出来て、よかったですっ♪」

 

「うん、そうだね。食後のスイーツも、種類が豊富で美味しかったしね」

 

「よかった、気に入ってもらえて。このお店を選んだ甲斐があったよ」

 

「うふふ♪みんなで食べると、楽しくてつい、箸が進んでしまいますよね♪私も結構いただいちゃいました♪」

 

「……ふ〜ん……♪」

 

「ん……?未央ちゃん。どうしたんですか……?」

 

「いや〜……しまむーサンも随分と「育ち盛り」だと、思いましてなぁ〜」

 

「えっ、育ちざかり……?」

 

「んふふ〜……例えば……「あの辺の」肉付きとか……♪」チラッ

 

ムチッ……♪

 

「っ……に、肉付き……」

 

「ひゃわっ!?も、もうっ!未央ちゃんってば一体、何を言ってるんですかぁ〜……//」

 

「エェ〜?「ナニ」って……そうだなぁ〜♪しまむーの……しっかりと「主張」されているものかなぁ〜?」

 

「女の子を感じさせるような「大きさ」……全てを包み込んでくれそうな「柔らかさ」……」

 

「指を弾きそうなぐらい、ハリのありそうな「弾力性」……艶やかで健康的な「肌色」……そして……」

 

------------------------------------------------

 

「……ゴクリ……」

 

「あ、あわわっ!も、もう、言わなくていいですっ!未央ちゃんのいじわ……もひゃっ……!?」

 

「……んっふっふ〜♪つ・ま・り♪「ほっぺ」のことだよんっ♪」

 

「……ぷあっ……えっ……?ほ、ほっぺ……ですか……?」

 

「うんっ♪だって、しまむーのほっぺってリスみたいだし、柔らかいから、女子だな〜って思ってさ♪」

 

「あっ……え、えぇ!私、実を言うと、ほっぺも一つのチャームポイントかなって、思ってたんです……!」

 

「……へぇ〜……じゃあ、な〜んで今、いの一番にスカートを押さえたのかなぁ〜?ん〜?」

 

「あぅっ……そ、それは……」

 

「さてと……実は、しまむーは「おしり」に少し、自信があったっと……♪」

 

「ちょっ……!あ〜ん、プロデューサーさ〜んっ!未央ちゃんが、いじめてきますぅ〜……」

 

「……」

 

「……プロデューサーさん……?」

 

「……はっ……!そ、そうだな!肉付き……じゃなくて!みんな、アイドルとして日々、成長してるもんな!」

 

「プロデューサー……?今、何を考えてたの……?」

 

「な、何も考えてないって!ただ、二人のやりとりが微笑ましいって思ってただけだっ!//」

 

「エェ〜、本当〜?……実は、未央ちゃんも「肉付き」には少し、自信があるんだぞ〜?うりゃっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「なっ……!?み、未央っ!いきなり何だよっ!//」

 

「いや〜♪しまむーのことばかり考えてたみたいだから、ずるいな〜って思っただけだよ♪うりうり〜♪」

 

「ふあっ……そ、そうなんですか……?//」

 

------------------------------------------------

 

「いや……考えてないって言えば、嘘になるけど……別に、変なことは考えてないって……//」

 

「……ふ〜ん」

 

「んもう〜♪プロデューサーってばす〜ぐ、そういう「イケナイ」ことを考えるんだから〜♪ダメだぞ〜?」

 

「……少しは……未央ちゃんのことも、考えてくれなきゃっ……♪」

 

「だ、だから!何も考えてないって!いいから、離れろよっ!//」

 

「い〜や♪ほらっ♪しぶりんやしまむーも、こっちに来ようよっ♪」

 

「私はパス。プロデューサーに、変な妄想をされたくないし」

 

「……お、俺って……そんな風に、思われてたのかっ……!」

 

「……私は……え、えいっ……!」

 

「おっ♪いらっしゃいっ♪プロデューサーってば、両手に花だねぃ♪羨ましいぞっ♪よっ、この色男〜♪」

 

「えっ……卯月……?どうしたんだ……?」

 

「えへへ……私も、女の子ですので……少し、甘えてみたくなってしまいました……♪なんて……♪」

 

「……卯月……いいの?プロデューサーに、変な妄想をされちゃうかもしれないんだよ……?」

 

「そ、そんなことないよっ……!だって……プロデューサーさんは……」

 

ギューッ♪

 

「……優しくて、素敵なお兄さんだって……私……知ってますからっ……♪//」

 

「う、卯月……」

 

「あははっ♪しまむーってば、オットメ〜♪……でも……そうだね……私もさ、その……」

 

「……こうして……安心して甘えられるのは……プロデューサーだけ、だからさ……えへへ……♪//」

 

「いや……二人とも、信頼してくれるのは嬉しいんだぞ?でも……俺も一応、男だし……なっ?//」

 

「あははっ♪じゃあ……お兄さんを、頼りにさせてもらおうじゃないですか♪この体勢のまま、ねっ……♪」

 

「うふふっ……♪今は、私たちのことを家まで、しっかりと見守ってくださいね……お兄ちゃんっ……♪」

 

「まあ、夜道は危ないし、送るは送るけど……でも、俺は少し、違う意味で言ったんだけどな……あはは……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「お二人とも、今日はありがとうございました♪気をつけて帰ってくださいね♪では、おやすみなさいっ♪」

 

「おやすみ、卯月。また会おうね」

 

「今日はありがとう、卯月。ゆっくり休んでくれ。さて、二人とも家に送ったし、次は凛だな。行こうぜ」

 

「そうだね。行こうか」

 

「三人とも、今日は大活躍だったな。凛はどうだ?ライブは楽しめたか?」

 

「うん。私は私なりに、ベストを尽くしたつもり。ファンのみんなの期待に、応えられるようにね」

 

「よかった、流石は凛だな。これからの、ニュージェネの未来は明るいな」

 

「ふふっ、期待してて。ところで、プロデューサーも、卯月と未央はどうだった?」

 

「ん?俺か……?そうだな……って!何だよ!その質問は!」

 

「そのままの意味だよ。私の目の前で、三人でイチャイチャしてたじゃん「顔を赤くしながら」さ」

 

「いや……そりゃ、まあ……俺も一応、男だし……嬉しくないって言ったら、嘘になるけど……//」

 

「ふ〜ん……じゃあ、嬉しかったんだ……えっち……」

 

「なっ……!べ、別に、変なことは考えてないぞ!?」

 

「どうだか……卯月と未央に手を出したら、絶対に許さないから」

 

「手を出すって……あのなあ、俺のことを、何だと思ってるんだ?」

 

「オオカミ男。目を離すとすぐに、女の子に甘い顔を見して、デレデレし始めるから」

 

「ふぅ……まるで、信用がないんだな……俺……」

 

「プロデューサーは危なっかしくて、目が離せないからね。だから……手を握っておいてあげる……」

 

ギュッ

 

「えっ……り、凛……?……って!俺は子供か!ていうか、それって普通は、逆だろっ!!//」

 

「何さ、目が離せないのは事実じゃん。それとも……プロデューサーが、私を守ってくれるの……?」

 

「そんなの、当たり前だろ?凛は女の子なんだぞ?今の状況で、俺以外に誰が、凛を守るんだ?」

 

「……そうだね……じゃあ、この手を繋いだ状態で、家までお願い♪……お兄ちゃん……♪//」

 

「全く……卯月や未央、そして凛といい、俺には一体、何人妹がいるんだ……?」

 

「それだけ、頼りにしてるってことだよ♪じゃあ、行こうよ♪しっかり、私の手を握っててね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「よし、着いたな。凛の家って確か、この花屋さんだったよな?」

 

「うん、そうだよ。今日はありがとう。プロデューサー」

 

「気にするな。凛も、ライブを頑張ってくれてありがとうな。これからも、一緒に頑張っていこうぜ」

 

「うん、よろしく。今日のライブで私、何だか一皮剥けたような気がするよ」

 

「それはよかった。どんどん、業界に「ニュージェネーレーション」革命を、起こしていってくれよ」

 

「ふふっ、そうだね♪頑張るよ♪」

 

「頼むぞ。よし、じゃあ、俺はこれで、失礼するよ。おやすみ、凛」

 

「おやすみ。……あ、待って。最後に一つ、いいかな?」

 

「どうした?」

 

「……あの……さ……プロデューサーは危なっかしいって、さっき言ったでしょ……?」

 

「ん……?あぁ。聞いたな」

 

「だからさ、その……放っておくと、卯月や未央、他のアイドルに何をするかわからないからさ……」

 

「……私が……プロデューサーの「本当の」パートナーに、なってあげても……いいよ……?//」

 

「……あ〜、はいはい。それじゃあ、凛が大人のおねーさんになったら、お願いしますよ」

 

「むっ……そうやって……私を、子供扱いして……」

 

「15の小娘が、何を言ってるんだか……そんなことより、凛は目の前のアイドル業を、頑張ってくれよ」

 

「何さ……プロデューサーだって、大人ぶってるけど……危なっかしい、子供みたいなもんじゃん……」

 

「そうだな。夜も遅いし「いい子」はそろそろ寝ないとな。じゃ、俺は行くよ。おやすみ、凛。またな」

 

「あっ……おやすみ……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「ん……?よぉ、凛。おはよう」

 

「おはよう。ねぇ、プロデューサー。今、空いてるでしょ?」

 

「えっ、いや……今はちょっと……」

 

「ヤダ」

 

「だから……」

 

「ダメ」

 

「……なあ、凛……」

 

「ムリ」

 

「……おい!急に、何だよ!俺は今、仕事中なの!見ればわかるだろ!」

 

「そうなんだ。ところでさ、これから私に付き合ってくれない?いいでしょ?」

 

「あのなあ……今、俺の話を聞いてたのか……?」

 

「うん、聞いた。はい、これでいいでしょ?今度は、私の話を聞いてもらう番だよ」

 

「……おい、凛。ワガママはいけないと思うぞ?」

 

「いいじゃん。どうせ私は、15の小娘なんでしょ?だから、何も問題はないよ」

 

「……あの時に、俺が言ったことを根に持ってたのかよ……ふぅ……わかったよ……」

 

「ごめんな、凛。あの時、凛のことを小娘だなんて言って、悪かったよ」

 

「本当に……反省してる……?」

 

「あぁ、反省してるよ。凛はまだ大人じゃないけど、もう立派なお姉さんだもんな」

 

「じゃあさ……反省してるなら……改めて、これから私と付き合ってよ。いいでしょ……?」

 

------------------------------------------------

 

「いや……でもなあ……俺にはまだ、仕事が……」

 

「……プロデューサーは「大人の」お兄さんだし……言葉に、嘘はないよね……?」ウルッ

 

「……あぁ、もう……わかったよ。じゃあ、ちゃちゃっと済ませちゃうから、少し待ってくれ」

 

「ふふっ……♪流石は、プロデューサーだね♪わかってるじゃん……♪」

 

「全く……凛?何か用事があるのなら、事前に伝えておくのが、大人としてのマナーでだな……」

 

「はいはい。皆まで言わなくてもわかってるよ。だってこんなワガママ、プロデューサーにしか言わないし♪」

 

「うん……?何か、おかしいような気もするけど……まあ、わかってるならいいんだけどさ」

 

「でも……むしろ、プロデューサーも少しは、ワガママになっていいんじゃない?」

 

「えっ……?俺が……?どういうことだよ……?」

 

「ほら……前にも言ったでしょ?私たちは、パートナーだって……」

 

「それに、プロデューサーと知り合ってだいぶ経つし、お互い、信頼関係も結ばれてきたしさ……」

 

「……だから……少しぐらい「進展」があってもいいんじゃないかな〜って、思ってさ……どう……?//」

 

「……そうだな。じゃあ「将来」の凛のパートナーのためにも、今はアイドルを頑張ってもらわないとな」

 

「むっ……そういう意味じゃなくて……」

 

「さっき、言っただろ?「大人じゃないけど」って。まだ女の子なんだし、そんなことは考えなくていいんだ」

 

「……何さ……イジワル……」

 

「イジワルなのは、どっちの方だよ。まあ、すぐに仕事を終わらせるから、そこで待っててくれよ」

 

「……むうっ」

 

------------------------------------------------

 

「で?どうしたんだよ。急に、俺を連れ出して」

 

「さあ、どうしてでしょう。周りを見れば、わかると思うよ」

 

「周り……あぁ。そういえば、今日ってホワイトデーだったっけ」

 

「だったっけって……まさか、忘れてたの?」

 

「いや、そうじゃないんだ。チョコをもらったことはしっかりと覚えてるよ。もちろん、凛からもな」

 

「だけど、お返ししようにも、アイドルとの都合が合わなくてな。どうしようか悩んでたんだよ」

 

「悩んでた……?」

 

「うん。そこで、ちひろさんのご厚意で、経費でお返しを贈らさせてもらったんだ。日頃のお礼も兼ねてな」

 

「だから事務所の入り口に、たくさんお菓子が並んでただろ?それが、バレンタインのお返しだよ」

 

「……ふ〜ん……ということは、それぐらいみんなから、バレンタインにチョコをもらったんだ……」

 

「まあ、そうなるかな。わざわざ、手の込んだチョコをみんなからたくさんもらって、申し訳ないよ」

 

「……ま、何となくわかってたけどさ……ライバルが多いなあ……本当……」

 

「ん……?ライバル……?」

 

「こっちの話。でも、今は、私と二人っきりだしさ……たっぷりと「お返し」をしてもらうんだから……//」

 

「あ、あぁ……一応、凛からもチョコをもらったしな。でも、一つ聞いていいか?」

 

「どうしたの?」

 

「……チョコをもらえたのは嬉しいんだけど……何で「俺の家の」冷蔵庫に入ってたんだ……?」

 

「そんなこと、どうでもいいじゃん。とにかく、今日はホワイトデーなんだし、私に付き合ってもらうからね」

 

「……あらっ♪プロデューサーさんと、凛ちゃんじゃないですか♪」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?あっ、楓さんじゃないですか。こんにちは」

 

「こんにちは♪お二人で、何をしてるんですか?」

 

「えぇ。ちょっと、凛の付き添いをしてるんですよ」

 

「むっ……」

 

「つまり「今度は」凛ちゃんと、ホワイトデーにデートということですか♪いいですね♪」

 

「そんな大層なことじゃないですよ。なっ?凛」

 

「……そうですね……私たちはただ「付き合ってるだけ」なので……」

 

「あらあら♪とても、お似合いのカップルですね♪ところで、プロデューサーさん」

 

「はい。何でしょう」

 

「事務所に並べてあった、クッキーの袋を、お一ついただきました♪とても、美味しかったですよ♪」

 

「いえいえ。俺の方こそ、楓さんからチョコをもらいましたので、ほんのお気持ちです」

 

「でも……確かに、嬉しかったですけど……もう一つ……「特別」なものが……欲しいですねぇ〜……」チラッ

 

「ははっ、そうですね。では今度、一緒にお食事なんかどうですか?」

 

「うふふっ♪それもいいですけどぉ……前に「約束」したものが、欲しいですっ♪なんて♪」

 

「はい……?約束、ですか……?」

 

「えぇ♪この前、プロデューサーさんがくれるって、言ってくれたじゃないですか♪「婚約指輪」をっ……♪」

 

「……っ!」

 

------------------------------------------------

 

「……えっと……お言葉ですが……俺、いつそんな約束を、楓さんとしましたっけ……?」

 

「えっ……プロデューサーさん……もう、忘れちゃったんですか……?ひどいっ……」

 

「ちょっ……か、楓さんっ!?」

 

「私……あの時……すごく、嬉しかったんですよ……?プロデューサさんから、アプローチをしてくれて……」

 

「……それなのに……こんなに、綺麗さっぱり忘れてるだなんて……あんまりですっ……クスン……」

 

「い、いや……その……あの……す、すみません!そんなに大切なことを、忘れてただなんて……」

 

「……では……バレンタインに、言ってくれたってことに……してくれますかっ……?」

 

「そうですね……俺……楓さんに、改めて……ん?」

 

「……」ジー

 

「……って!「言ってくれたことに」って何ですか!俺の記憶を勝手に、捏造しないでくださいよ!」

 

「あんっ、バレてしまいましたか〜。あと、もう少しでしたのに〜……ざ〜んねん……」

 

「全く……!チョコは嬉しかったですけど、アイドルなんですから、そういうことはまだ、お預けですっ!//」

 

「エェ〜。では、今からぁ、約束をしちゃいますかぁ〜?」チラッ

 

「……むっ」

 

「また、そういうことを……いいですか?凛も見てるんですから、程々にしないと……」

 

「……ダメです……」

 

「えっ?凛……?」

 

「……ぷ、プロデューサーには、私がいるんです!だから、ダメですっ!」ギュッ

 

「まあ……凛ちゃんってば……大胆ですねっ……♪」

 

「ちょっ……お、おい!どうしたんだよ!凛っ!?」

 

「確かに……私たちは、アイドルです……ですけど……私だって、いずれは……ゆ、指輪が欲しいですっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「あらっ♪凛ちゃんと「お揃い」だなんて……嬉しいですっ……うふふ……♪」

 

「……あ、あの……お二人さん……?何だか……話が、飛躍しすぎてませんか……?」

 

「いえいえ♪あくまで「架空」のお話ですので♪ねっ、凛ちゃん♪」

 

「……そうかも、しれませんね……」

 

「えっと……とにかく、二人はアイドルなんだから……頼むぞ……?」

 

「はいっ♪頑張ります♪さて「デート」の邪魔をしては悪いですので、そろそろ失礼しますね♪」

 

「え?えっ、えぇ……では、また会いましょう……」

 

「これからも、私のプロデュースをよろしくお願いしますね♪」

 

「……それと……凛ちゃんも、これからもお互いに「切磋琢磨」していきましょう……♪ではっ……♪」

 

「……ふぅ……何とかおわった……おい、凛。急に、どうしたんだよ……」

 

「……だって……あのままだと、プロデューサーが楓さんのところに、行っちゃうと思ったんだもん……」

 

「行っちゃうって……あのなぁ、真に受けるなって。凛も、楓さんが冗談好きなのは、知ってるだろ?」

 

「それは……そうだけど……」

 

「あれは、楓さんなりのジョークだと思うぞ?……正直……たまに、どうかと思う時はあるけど……//」

 

「むぅっ……何さ……何だか、満更でもなさそうじゃん……」

 

「なっ……!そ、そんなことはないぞっ!なんせ、楓さんはアイドルだからなっ!」

 

「……ふ〜ん……」

 

「でも、いくら大人のお姉さんで、ジョークが好きでも、少しは控えて欲しいものだなっ!あ、あはは……//」

 

「……プロデューサーは、何も分かってないよ……」

 

------------------------------------------------

 

「そ、それよりさ!どこか、行きたいところがあるんだろっ!?さっそく、行ってみようぜ……」

 

ドンッ!

 

「きゃっ……!」

 

「あっ……!す、すみませんっ!大丈夫ですか!?」

 

「い、いえ……こちらこそ、すみません……つい、よそ見をしてしまって……」

 

「いえいえ、そんな……とりあえず、僕の手をお貸ししますよ」

 

「あっ、ありがとうございます……本当にすみません……どう、お詫びをしてよいやら……」

 

「気にしないでください。むしろ、僕の方こそ、よそ見をしていましたので……」

 

「……でも……それでは……」

 

「いえ、本当に大丈夫ですよ……お姉さんが無事なら、それで……」

 

「……」ウルウル

 

「……っ!」

 

(うぐっ……か、かわいいっ……!//)

 

「……?」

 

「……ちょっと……プロデューサー……?」

 

「はっ……ご、ごめんなさいっ!どこか、お怪我はないですか!?」

 

「えっと……大丈夫です……あの……お兄さんの方は、大丈夫ですか……?」

 

「僕も、大丈夫です。よかった、お姉さんに怪我がなくて」

 

「……そうですか……それは……何よりですっ……//」ジー

 

------------------------------------------------

 

「……あ、あの……俺の顔に、何か……ついてますか……?」

 

「ふあっ……す、すみませんっ!その……少し「似ていたので」つい……//」

 

ハ~ピ~リ~リ~♪ハシッテイク♪ムネノイタミハ〜♪

 

「ん?……あっ……いけない……プロデューサーさんが待ってるから、行かないと……」

 

「えっ……「プロデューサーさん」……?」

 

「では、そろそろ、失礼させてもらいますね。助けていただき、ありがとうございました♪ではっ♪」

 

「あっ、はい……お気をつけて……」

 

「……ファイトッ、千雪……今日はホワイトデーなんだし、たくさん「甘い」お返しをもらわなきゃ……」

 

「……私……何だか、すごい……期待しちゃってるみたい……ふふっ……♪」

 

「……あのお姉さん……俺のことを「似てる」って言ってたよな?どういうことなんだろ……」

 

(でも……何だか、美人で……かわいかったな……)

 

(おっとりとして、清楚な雰囲気……大人の色気を感じる、潤んだ瞳や、やわらかい笑顔……そして……)

 

タプンッ♪

 

(……って……ダメだダメだ!出会ったばかりのお姉さんで、そんなことを考えちゃっ……!//)

 

ギュッ

 

「あだっ……!……はっ……!」

 

「むぅ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「あ、あの……凛さん……?もしかして……怒ってます……?」

 

「うん、怒ってる」

 

「何かしたのなら謝るからさ……許してくれよ……なっ……?」

 

「やだ、許さない」

 

「おいおい……困ったな……」

 

「……何さ、私がいるのに……また、デレデレしちゃって……」

 

「な、何だよ、デレデレって!変な言い方をするなっ!//」

 

「ウソ。さっき、助けたお姉さんの手を取った時に、顔を真っ赤にしてデレデレしてた」

 

「なっ……!い、いや……そんなことは……//」

 

「全くもう……私の目の前で、あんなに見つめあっちゃって……しかも、初対面のお姉さんと……」

 

「……本当……油断も隙もないんだから……バカ……」

 

「と、とりあえずさっ!あそこで、トルネードポテトでも食べないか!?結構、気に入ってただろっ!?」

 

「今は、そんな気分じゃないからパス。食べ物で釣ろうったって、そうはいかないよ」

 

「ぐっ……なあ、頼むよ……凛のためなら、何でもするからさ……」

 

「……ふ〜ん「何でも」ねぇ……。じゃあ今から、クイズを何問か出すから、全部答えれたら、許してあげる」

 

「クイズ……?」

 

「うん。じゃあ、一問目。私とプロデューサーが初めてあった時の、私の第一声は何だったでしょう?」

 

「えっと……「ちょっと……前が、邪魔なんですけど……何か?」か?」

 

------------------------------------------------

 

「正解。じゃあ、二問目。そんな私が、アイドルになるのを承諾した理由は。何でしょうか?」

 

「そうだな……凛のやりたい「何か」を、見つけるため……?」

 

「うん、正解。じゃあ、次がラストね。それで、私は見事に「アイドルデビュー」を果たしました」

 

「……さあ「アイドル」として、改めてプロデューサーと顔合わせをした時に、私は何て、言ったでしょうか」

 

「……「ふーん、アンタが私のプロデューサー?……まあ、悪くないかな……」か……?」

 

「ふふっ……♪全問正解……♪流石は、プロデューサーだね。全部……覚えててくれたんだ……//」

 

「当たり前だろ。俺と凛が、初めて出会った思い出だ。忘れるはずがないよ」

 

「そっか……♪じゃあ、許してあげる……♪ねぇ、プロデューサー……あの時は、ごめんね……」

 

「ん?あの時って……?」

 

「ほら……初めて出会った時に、プロデューサーに冷たい反応をしちゃったでしょ……?」

 

「あぁ、そういうことか。気にするなって。あの時は、お互いに初対面だったし、しょうがないさ」

 

「アイドルのスカウトって聞いた時は、初めは驚いたよ。この私がアイドル?何かの冗談でしょって」

 

「でも……実を言うと、少し、興味を持ち始めたんだ。やってみたいってね」

 

「確かに、ステージで歌って踊る仕事だし、ハンパな覚悟じゃ務まらないと思ってたのも、事実なの」

 

「だけど……何となく「この人」とならやっていける、私の「何か」を見つけてくれる。そう思ったんだ」

 

「凛……」

 

「……まだ、どういう人かわからなかったから、最初は正直、警戒してたけど……」

 

「でも……一緒に行動していくうちに、わかったんだ。この人は優しくて、真面目で、そして……」

 

ギュッ

 

「……素敵な人なんだって……それに……今は、その……私の「大切な」パートナーだし……えへへ……//」

 

「そ、そうか……それは嬉しいな……じゃあ、とりあえず、一旦離れ……」

 

「それはダメ。何でもしてくれるって言ったじゃん♪だから、私がいいって言うまで、離れちゃダメ♪」

 

「くっ……//」

 

「さて、思い出話もこれくらいにして……行きたいところがあるんだ。ついて来てよ」

 

「……あぁ……わかったよ。どこにでも、ついていきますよ。凛姫様」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

コンコン

 

「お待たせ、入るね」

 

「あっ……いえ、お構いなく……」

 

「ふふっ、何さ。そんなに緊張しちゃって」

 

「いや……行きたいところがあるって聞いたから、どこに行くのかと思ったら……」

 

「……まさか……凛の部屋だったとは……//」

 

「いいじゃん♪初々しいカップルみたいで♪お家デートってのもいいでしょ?……誰にも邪魔をされないしっ♪」

 

「カップルって……あのなあ……一応言っておくけど、俺も男なんだからな……?わかってるのか……?」

 

「わかってるよ。で……?卯月とは、お正月はどうだったの?」

 

「ん?お正月……?まあ、お正月は、卯月の家で二人っきりで……はっ……!」

 

「……ふ〜〜ん……」

 

「ち、違うんだ!これは、卯月の親御さんに挨拶をしようと思って、少し、待機してただけで……//」

 

「じゃあ。私たちも問題ないよね「いずれ」ここが、第二の実家になるんだからっ♪」

 

「……ん?」

 

「ま、わかってたけど。卯月も、プロデューサーも、隠し事が下手だしね。じゃあ……」

 

ギューッ♪

 

「……卯月だけずるいから……私も「同じ」ことをしちゃうんだから……//」

 

「くっ……!」

 

「うふふ……♪二人っきりだなんて、久しぶりだね♪」

 

「あ、あぁ……そうだな……凛の部屋に入るのは、初めてだけどな……//」

 

------------------------------------------------

 

「んもう。私の部屋に、男の人を招いたのは、プロデューサーが初めてで、特別なことなんだよ……?」

 

「……そ、そうか……それは名誉なことだな……あはは……」

 

「今日は両親も、夜遅くまで帰ってこないし、ずっと、私と一緒にいてもらうからね♪ふふっ……♪」

 

「ということは……凛とずっと二人っきりってことか〜……嬉しいな〜……」

 

「ふふっ……ねぇ、プロデューサー。一つ、聞いていい……?」

 

「ん?どうした?」

 

「……これからも……「ずっと」私のプロデュースをするって、約束してくれる……?」

 

「……そんなの、当たり前だろ?俺がスカウトしたアイドルだ。凛の気の済むまで、させてらもうよ」

 

「そう……じゃあ、その言葉が本当なら……こっちを向いて……私を強く、抱きしめて……?」

 

「えっ、いや……それは……」

 

「……お願い……」

 

「……わかったよ。言葉に嘘はないって、証明しなきゃな。じゃあ……行くぞ……」

 

ギュッ

 

「あっ……//」

 

「「……//」」

 

「……どうだ……これでいいか……//」

 

「……うん、ありがとう。じゃあさ、実は、とっておきのプレゼントを用意してたの。受け取ってくれる?」

 

「えっ、プレゼント……?いや、前に凛からは、すでにチョコをもらっただろ?」

 

「ううん……とっても大切なものだから……是非、受け取って欲しいんだ……」

 

「そうか……?じゃあ……お言葉に甘えて……もらっていいか?」

 

「うん♪じゃあ、少し待っててね。すぐに用意するから♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

コンコン

 

「……お待たせ……入るね……♪」

 

「あぁ……って……はあっ!?り、凛っ……!?」

 

「どう……?……思い切って「ラッピング」しちゃった……♪」

 

「似合うって……お、お前……それっ……!//」

 

「すごく、恥ずかしいけど……プロデューサーに、私からの……プレゼントをあげるっ……♪//」

 

「……まさか、それ……「リボン」だけじゃ……ないよな……?」

 

「うふふ……さて、どうでしょう……♪じゃあ、隣に……失礼するねっ……♪」

 

「ば、バカっ!早く、着替えてこいって!どうして、そんな格好をっ……!//」

 

「ふふっ……とっても大切なプレゼント……そう……プロデューサーへの、プレゼントは……」

 

「……ありのままの……「私」……だよっ……♪//」

 

「……な、なあっ……これって、何かのドッキリとかで、誰かに、からかわれるとかじゃないよなっ!?」

 

「じゃあ……確かめてみる……?「ナマ」の感触をっ……♪」

 

「おいっ!リボンの紐をずらすなっ!そ、それに、近いって……!//」

 

「私は……こんな姿、誰にも……ううん。両親にすら、見せたことがないんだから……♪//」

 

「つまり……「心も体も」みんな、晒け出したのは……プロデューサーが、初めてだよっ……♪」

 

「な……ななっ……!//」

 

「何さ、あれだけ私を子供扱いしてたのに、顔が真っ赤じゃん♪やっぱり、プロデューサーも「男」なんだね♪」

 

「……さて、悪ふざけはこれぐらいにして……着替えて来いよ……なっ……?//」

 

「……悪ふざけなんかじゃない……」

 

------------------------------------------------

 

「えっ?」

 

「私の……プロデューサーに対しての想いは、本当だよ……」

 

「凛……」

 

「確かに、卯月や未央、そして、楓さんや他のアイドルのみんなは、大切な仲間だと思ってる」

 

「だけど……それと同時に、ライバルとも思ってる。だから……やるからには、トップを目指したいの」

 

「アイドル……そして「女の子」としてもっ……!だから……ねっ……♪」

 

「うわっ……!凛っ!?な、何で!俺のシャツのボタンを、外してるんだよっ!」

 

「このまま……私とプロデューサーだけの……温かくて、素敵な「ホワイトデー」を過ごそうよ……♪」

 

「なっ……!」

 

「うふふ……♪プロデューサーからは……クッキー以上に「大切なもの」を、もらっちゃうんだから……♪」

 

「……だから……まずは、私の……大切な「初めて」を……もらって……?」

 

「わ、わかった!凛の、アイドルや俺に対しての想いは、よくわかったから!これ以上はヤバいって!//」

 

「……ふふっ……♪ダ〜メ♪プロデューサーには、私の覚悟を、わかってもらわなきゃいけないんだから♪」

 

「ちょっ……顔が……近っ……!//」

 

「……改めて、近くで見ると……プロデューサーの瞳って、とても綺麗だね……素敵っ……♪」

 

「……り、凛……お前はっ……」

 

「今は……「プロデューサー」だけの、アイドルだよっ……♪だからさ……プロデューサーも……」

 

「……今だけは……私のことを……「一人の女の子」として、見て……?んっ……」

 

「……っ!」

 

「……」

 

チュッ……♪

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……今回は……これで、お預けっ……♪うふふ……♪」

 

「……ん?」

 

「もうっ、今回は、ほっぺでお預けだよ♪」

 

「ほ、ほっぺって……はぁ〜……変な冗談は、やめてくれよ……凛は、女の子なんだぞ……?」

 

「わかってたよ。どうせ、プロデューサーのことだし、全力で私のことを、止めようとするよね」

 

「例え、アピールをしたり、リボンを外してってお願いしても、そんなことはしないって、最初からねっ♪」

 

「あのなぁ……ま、いいか。ツッコミどころが満載だけど、今はやめておいてやるよ」

 

「ふふっ♪じゃあ、いつもの服に、着替えてくるねっ♪残りの時間も、ずっと、二人っきりで過ごそうよ♪」

 

「……やっぱりさ……これ以上は俺も、恥ずかしいから……どこかに行かないか……?」

 

「ダ〜メ♪せっかく、水入らずで二人きりになれたんだし、今日は私の部屋にずっと、居てもらうから♪」

 

「……「何でも」って言ってくれたし……それに、両親にもせっかくだし、ご挨拶をして欲しいしね♪」

 

「……わかったよ。男に二言はないよ。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」

 

「ふふっ♪決まりだね♪……でも……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「……っ……!?」

 

「……私は……プロデューサーになら「いつでも」……いいからねっ……♪」

 

「なっ……また……!い、いいから、さっさと着替えて来いっ!//」

 

「はいはい♪そんなに顔を真っ赤にしちゃって……かわいいんだから……♪」

 

「全く……大人をからかうのも、いい加減にしろっつうの……しかし……」

 

「……頰にまだ「温もり」が残ってるような……くっ……本当、今日は、とんだホワイトデーだな……//」

 

------------------------------------------------

 

「……はぁ〜……ドキドキしたぁ……やっぱり、恥ずかしいな……この格好……//」

 

「いくら、私の家とはいえ……裸に、リボン一枚って……こんな格好は絶対に、両親には見せられないな……」

 

「でも……ま、いいか♪プロデューサーの前だけでしか、あんな格好はしないしっ……♪」

 

「……それに、私のことを……「意識」してくれたみたいだしねっ……ふふっ……♪」

 

「これで、少しは他のみんなより、一歩でも多く……「リード」が出来たかな……?」

 

「本当……今の私を見たら「あの時の」私は、何て言うんだろうな……」

 

「何をしたいのか、どうしたいのか、やりたいことは何なのか、何もわからなかった私」

 

「それが、今までも、そしてこれからも、これから先もずっと、続くものだと思っていた」

 

「……だけど……そんな私を、察してくれたかのように、突然現れた「あの人」……」

 

「正直、最初は戸惑いもあったけど……何となく初対面なのに、フィーリングを感じていたんだ」

 

「私の探してる「何か」を探してくれるんじゃないかってね、そんな淡い期待を抱いてたの」

 

「……でも……アイドルをしていくうちに、わかったんだ。その「何か」がね」

 

「その証拠に……「運命の日」から、今日のこの日まで、ずっと……頭から離れなくなって……」

 

「……ごめんね。卯月、未央……この想いはもう、止められないんだ……」

 

「考えれば考える程、気持ちが大きくなったり、切なくなって……心がとても、ときめいちゃうの……」

 

「許して欲しいとは言わない。二人も、同じ気持ちだろうしね。それに、最終的には「あの人」次第だし」

 

「でも、もう振り返らない。例え、どんなことが待ち構えてても、私は真っ直ぐ進むよ」

 

「……だから……これからも、私を見守ってね……いつか「辿り着ける」その日まで……ねっ♪」



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桃色シンデレラ 五十嵐響子

「……プロデューサーさ〜ん……起きてくださ〜い……」

 

「……」

 

「プロデューサーさ〜ん……朝ですよぉ〜……起〜き〜て〜だ〜さ〜い〜っ〜……」

 

「……zzz」

 

「起きませんね……ふぅ……しょうがないですね……」

 

「……少しだけ……少しだけなら……いいですよねぇ……プロデューサーさん……んっ……」

 

「……んっ……?あぁ、もう……朝か……」

 

「ひゃっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?//」

 

「んん……?目の前に、誰か……って……き、響子!?」

 

「あっ……お、おはようございます……プロデューサーさんっ……♪//」

 

「……あれぇ……おかしいなあ……俺の記憶が正しかったら、ここって……俺の寝室ですよね……?」

 

「そうですよ♪今日も、朝ごはんを作りましたので、起こしに来たんですっ♪」

 

「朝ごはん……あぁ、朝食を作りに来てくれたのか。毎回悪いな」

 

「いえいえ♪気にしないでください♪お料理作りは、私の得意分野ですから♪」

 

「……そ・れ・にっ♪プロデューサーさんの体調管理をするのも、私の大切な役目だと思っていますのでっ♪」

 

「……俺なりにしっかりと、体調管理をしてるつもりなんだが……」

 

「んもう。ゴミ箱をみたら「プラごみ」ばかりでしたよ?そんな食生活ではいけませんっ」

 

「ぐっ……す、すみません……ところで……一つ、聞いていいか?」

 

「何でしょう?」

 

「さっき、起きる前に響子が、すごい近くにいたような気がするんだが……気のせいか?」

 

「えっ、それは……って!き、気のせいですよっ!!えぇ、絶対にっ!//」

 

「そうか……?でも……確かに、響子の気配がしたような……」

 

「やだも〜!変なことを言わないでくださいよ〜!では!朝食が冷めないうちに、来てくださいねっ!//」

 

「わかった……やっぱり……気のせいだったのか……?」

 

------------------------------------------------

 

「鍵を閉めました?戸締りも大丈夫ですか?火元確認もしましたか?」

 

「あぁ、完璧だ。じゃあ行こうか」

 

「はいっ♪行きましょう♪ところで……どうでしたか?私の料理は、お口に合いましたか……?」

 

「うん。響子の料理はどれも、美味しいよ。毎回持ってきてもらったりして、悪いな」

 

「よかった♪んもう、ダメですよぉ?カップ麺とかコンビニのご飯だけでは、栄養が偏ってしまいます」

 

「ははっ、そうだな。響子の言う通りだ。気をつけるよ」

 

「本当にもう……目が離せないんですから……ところで……私のお味噌汁は……どうでしたか……?」

 

「ん?あぁ。とっても美味しかったよ。響子のお味噌汁は毎回、絶品だ」

 

「よかった♪……「お嫁さん」になったら、毎日……作ってあげられますよ……?」チラッ

 

「ははっ。それは嬉しいな。でも、今の響子はアイドルだから、しばらくはお預けだな」

 

「うふふっ……プロデューサーさんは将来、何人ぐらい子供が欲しいですか?」

 

「そうだな〜。俺は……って……き、響子……?」

 

「あっ……えっと、つまり……私……ではなく!将来、何人ぐらい欲しいのか聞きたかっただけなんです!//」

 

「そ、そうだよなっ!でも、俺にはまだ少し、そういうのは早いかな〜!あはは……//」

 

「「……//」」

 

「……さ、さあ!それより今日は「P.C.S」で打ち合わせだな!楽しみだっ!」

 

「……そ、そうですねっ!また三人で集まれるだなんて、嬉しいですっ!」

 

「でもな……響子?本当に、無理はしなくていいんだからな?」

 

「えっ、何がですか?」

 

「いや、よく朝食を作りに来てくれたり、持ってきてくれるのは嬉しいんだぞ?でも、ほぼ毎日は大変だろ?」

 

「いえいえ♪気にしないでくださいっ♪お料理は、趣味でやっているんです♪それに……失礼しますね」

 

「……?」

 

「……「身近な人」のお世話も、私にとって大切なことですので♪ネクタイ、少し曲がっていましたよ♪」

 

「あ、あぁ……そうか、ありがとうな」

 

「ふふっ……♪では、改めて、今日は一日よろしくお願いしますねっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「「「いっただきま〜すっ♪」」」

 

「あむっ……う〜ん、美味しいです〜っ♪」

 

「まさに、P.C.S団結会inスイーツビュッフェですね♪一度、みんなで来てみたかったんですっ♪」

 

「喜んでもらえてよかった。たまには、こういうところで打ち合わせもいいと思ったんだ」

 

「流石はプロデューサーさんですね♪スイーツがたくさん種類があって、とても嬉しいですっ♪」

 

「気に入ってくれてよかった。それにしても、美穂。その服、かわいいじゃないか」

 

「ふえっ……!?そ、そうですかぁっ……!?//」

 

「うん。その頭のリボンとマッチしてて、とても似合ってるぞ」

 

「え、えへへ……そう言ってもらえると嬉しいですっ♪……実は……少し、気にしていましたので……」

 

「気にしてた……?何をだ?」

 

「……その、お恥ずかしい話なんですけど……洋服の趣味が幼いって、言われたことがありまして……」

 

「洋服……あぁ。前に美穂が着てた、クマの絵がプリントされた服のことか?」

 

「はい……私、熊本から出て来て、こっちの養成所にいる人たちがみんな、オシャレでびっくりしたんです」

 

「ですので、私なりにファッションを、色々と勉強したんです。アイドルにもなれましたからね」

 

「それに、この服も卯月ちゃんと響子ちゃんの三人で、遊びに行った時に買ったものなんですよ♪」

 

「そうですね♪前に、P.C.Sの三人でショッピングに行って来たんですっ♪ねっ♪響子ちゃん♪」

 

「えぇ♪卯月ちゃんにたくさん、都会のショップを教えてもらいました♪あの時は楽しかったな〜♪」

 

「そうだったのか……でも、もちろんその服もいいけど、俺はクマTの美穂もかわいいと思うぞ」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……?」

 

「美穂は元がいいから、何でも似合うしな。それに……うりゃっ!」

 

「ひゃんっ!ぷ、プロデューサーさんっ……!?//」

 

「このスイーツに乗ってる「さくらんぼ」みたいにかわいいし。俺の自慢のアイドルだ」

 

「あぅ……そ、そんなことはっ……//」

 

「この美穂の「毛」を含めて、本当にさくらんぼみたいだ。かわいいなあ、美穂は。そりゃっ」

 

「やんっ……!ううっ……プロデューサーさんってば、またそういうことを……いぢわるですっ……//」

 

「「……じ〜」」

 

「ん……?何だよ、響子、卯月。二人して、俺をそんなにじっと見て」

 

「むぅ〜……プロデューサーさんってば、目を離すとす〜ぐ、そういうことをし始めるんですから〜……」

 

「……プロデューサーさ〜ん……?「P.C.S」は三人で一つの、仲良しなユニットなんですよ〜?」

 

「えっ?いや……そりゃあ、わかってるけど……」

 

「うふふっ……では……えいっ♪」

 

「ちょっ……う、卯月!?」

 

「……う〜ん♪美味しいです〜♪」

 

「卯月ちゃん、いいなあ〜♪では、私もっ……もらっちゃいますっ……♪」

 

「あっ……うぅ……わ、私もっ……えいっ!!」

 

「響子と美穂まで……みんなしてどうしたんだ?俺のスイーツを、そんなに食べたかったのか?」

 

「ふふっ……そうですね♪何せ、私たちは「一心同体」ですのでっ♪ね〜♪響子ちゃん♪美穂ちゃん♪」

 

「はいっ♪うづうづしてる卯月ちゃんを見て、私もプロデューサーさんのを食べてみたくなったんですっ♪」

 

「……うんっ……私も……プロデューサーさんのを……食べてみたくなっちゃったのかも……えへへっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……まあ、仲良しなのはいいことだけど……三人ともアイドルなんだから、こういうことは程々にな……?」

 

「わかっていますよ♪私は小日向美穂♪「Pure」担当です♪はいっ♪響子ちゃんっ♪」

 

「は〜いっ♪私は五十嵐響子♪「Charming」担当です♪では、卯月ちゃんっ♪」

 

「うふふ♪私は島村卯月♪「Smile」担当です♪ぶいっ♪」

 

「「「三人揃って「P.C.S」ですっ♪ナイス団結イェ〜イ♪P.C.Sイェ〜イ♪」」」

 

「……あ、あはは……息がぴったりじゃないか……俺は、とても嬉しいぞ〜……」

 

「そして……はいっ♪「Produce」担当のプロデューサーさんもご一緒に♪イェ〜イ♪」

 

「えっ!?……い、いぇ〜い……?」

 

「んもう、ダメだよ響子ちゃん。それだと「P」が二人になっちゃうよ?」

 

「あっ♪そうでしたね♪でも、そうなると……やっぱり、プロデューサーさんと美穂ちゃんは……」

 

「わ、わ〜っ!もうっ!二人して、からかわないでよ〜っ!//」

 

「え〜っ?じゃあ……私たちがいただいちゃおうかなぁ〜?ねぇ〜?響子ちゃ〜ん♪」

 

「そうですねぇ〜。私も、女の子ですし……美穂ちゃんの代わりに、思いっきり甘えてみちゃおうかな〜?」

 

「そ、それもダメ〜っ!……むぅ〜……いぢわるっ……」

 

「あの……御三方……?さっきから一体、何の話をしてるんです……?」

 

「何でもないですっ♪これは、乙女同士の秘密ですよっ♪」

 

「「ね〜♪」」

 

「そ、そうか……まあ、色々とあるんだな……女の子は……あはは……」

 

「でも、プロデューサーさんも「P.C.S」の一員なんですっ♪だから……」

 

「……響子を……いえ「ピンクチェックスクール」の先生として、いつまでも私たちを見守ってくださいね♪」

 

「あぁ……頑張らさせてもらうよ。何せ三人とも、俺の自慢のアイドルだからな」

 

「ふふっ……♪それじゃあ、美穂ちゃん♪響子ちゃん♪改めてっ♪……P.C.Sぅ〜……」

 

「「「イェ〜イ♪・い、イェ〜イっ……//」」」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサーさんっ♪ごちそうさまでした♪」

 

「気にしないでくれ響子。常日頃、頑張ってくれてるからそのお礼だよ」

 

「今日は、ありがとうございました♪とても楽しかったです♪ねっ♪美穂ちゃん♪」

 

「うんっ♪P.C.Sで集まれてよかったよ♪……もちろん……プロデューサーさんとも……♪//」

 

「卯月や美穂も、楽しんでくれてよかった。女の子はスイーツが好きだと思ってな。少し、安直すぎたか?」

 

「いえいえ♪甘い物は好きですし、やっぱりみんなで食べると楽しいですね♪鳥取にいた頃を思い出しました♪」

 

「えぇ♪楽しすぎて、つい……食べすぎてしまいました……♪気をつけないといけませんね……♪えへへ……//」

 

「うふふ……卯月ちゃんってば……♪でも、今日はとっても楽しかったです♪ありがとうございました♪」

 

「ははっ。美穂なんか話に夢中になりすぎて、顔が「さくらんぼ」になってたもんな」

 

「あっ……そ、それはっ!確かに、みんなでお話ができて楽しかったのは、事実ですけど……うぅ……//」

 

「……プロデューサーさんは……私たちのことを、女の子として「意識」してくれてるんですか……?」

 

「ん?そりゃ、当然だろ?三人とも、俺にとって大切な「アイドルの」女の子だ。卯月もその一人だぞ」

 

「そうですか……♪よかったですね♪美穂ちゃんっ♪」

 

「わわっ!?だから何で、私にふるのっ!?からかわないでよ〜……もうっ〜……//」

 

「ふふっ……♪これからも、私たちのことを見守ってくださいね♪卯月、頑張りますっ♪」

 

「あぁ、よろしくな。これからも、P.C.Sを一緒に盛り上げていこうぜ……あ、響子。少し、いいか?」

 

「えっ?何でしょう……?」

 

------------------------------------------------

 

「頭に桜の花びらがついてたぞ、ほらっ」

 

「……あっ、すみません……ありがとうございますっ……」

 

「全く……気をつけてくれよ?響子は俺の、自慢のアイドルなんだからさ」

 

「えへへ……♪気をつけます……あっ!私も少し、失礼しますねっ♪」

 

「ん?どうしたんだ……?」

 

「……プロデューサーさんの肩にも、花びらがついていましたよ♪ほらっ♪」

 

「あぁ……悪いな響子。ありがとう」

 

「うふっ……これで、おあいこですよっ‥…♪私の「自慢の」プロデューサーさんっ♪」

 

「そうだな。俺と響子で、お互いに気をつけないといけないな」

 

「あははっ♪」

 

「うふふっ♪」

 

「……美穂ちゃん美穂ちゃん」

 

「ん?どうしたの?卯月ちゃん」

 

「……PCS……緊急ミニ会議です……♪C抜きでっ……♪ゴニョゴニョ……」

 

「……うん……そうだねっ……♪ふふっ……♪」

 

「ん?二人とも、どうしたんだ?」

 

「えへへ……♪えっとですね……」

 

------------------------------------------------

 

「では、本日はありがとうございました♪行こうか♪美穂ちゃん♪」

 

「はいっ♪また、よろしくお願いしますね♪響子ちゃん♪プロデューサさんっ♪」

 

「あぁ、よろしくな。今後も、みんなで一緒に頑張って行こうぜ。じゃあ、俺たちも行こう。響子」

 

「えぇ♪行きましょう♪また会いましょうね〜♪」

 

「今日は、三人と打ち合わせが出来てよかったよ。とは言っても、大半は喋ってただけ、だけどな」

 

「四人で、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました♪スイーツ、ごちそうさまでしたっ♪」

 

「気にしないでくれ。それにしても……二人とも急に、用が出来ただなんて……何かあったのかな?」

 

「……うふふ♪どうしたんですかね♪しかし……プロデューサーさんは、美穂ちゃんと随分仲良しなんですね〜」

 

「ん?美穂……?何のことだ?」

 

「……「カップル」と見間違えるぐらい、仲良しさんだな〜って思ったんですぅ〜」

 

「おい!何だよそれ!別に、美穂とは何もないぞ!?」

 

「……自覚がないんですね……まあ、プロデューサーさんはいつも、プロデューサーさんですしね〜」

 

「……ですけど……えいっ♪今は、私と二人っきりですよ……♪」

 

「き、響子?どうしたんだ?そんな急に、腕を絡めてきて……」

 

「私……家ではお姉ちゃんでしたけど……今回のユニットでは、末っ子なんです……」

 

「……だから……今は「妹」になってもいいですか……?……お兄ちゃん……♪//」

 

「……お兄ちゃんもいいけど……少し、近くないか……?」

 

「そんなことはないですっ♪では、私を寮まで、お見送りしてくださいねっ♪「お兄ちゃんっ♪」」

 

「いや、まあ……日が落ちて暗くなってきたし、送るは送るけどさ……」

 

「では、お願いしますっ♪……ありがとうございます……♪卯月ちゃん……♪美穂ちゃん……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……みんな〜……準備はいいかにゃ〜……?」

 

「本日は、よろしくお願いします……♪この水本ゆかり……精一杯、お手伝いをさせていただきます……♪」

 

「みんなでお掃除を頑張りましょう♪美波、頑張りますっ♪」

 

「お役に立てれるかどうか、わかりませんが……よろしくお願いします……」

 

「うんっ♪みんな、大丈夫みたいだね♪さあ〜っ!今日はみんなで、女子寮の浴場のお掃除にゃ〜♪」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

「よし。みんなで力を合わせて、女子寮の大浴場を綺麗にしようぜ」

 

「……ところで……何で、Pチャンまでいるの……?」

 

「ん?何でって。男手が必要だって、寮の管理人さんとちひろさんに、頼まれたんだよ」

 

「フ〜ン……てっきり、みくはPチャンが「えっち」だから、来てくれたのかと思ったにゃ〜」

 

「おい!何だよそれ!まるで俺が、変質者みたいに言うな!……ったく……必要がないなら、俺は帰るぞ?」

 

「そ、そんなことはないですよ!みんなでやった方が、効率がいいですし……」

 

「男の人……いえ……プロデューサーさんがいてくれた方が、その……安心もしますので……//」

 

「美波……」

 

「ふふっ……♪みんなで一緒に汗水を流し、共通の目的を果たす……何と、美しい光景でしょう……♪」

 

「そうですね……ゆかりちゃんの言う通りです……♪みんなで一緒に、頑張りましょうね……♪うふふ……♪」

 

「ゆかり……美優さん……はいっ!俺、頑張りますっ!」

 

「ま、やるからには、しっかり頑張ってよね〜……これでも一応……「みくの」Pチャンなんだから……」

 

「ん……?」

 

「何でもない〜。それじゃあ、みんな〜。さっそく掃除道具を持って、浴場に行こうにゃ〜」

 

------------------------------------------------

 

ガラッ

 

「よし。じゃあさっそく、お風呂掃除を始めるか……って!うわっ!?何だこれっ!?」

 

「にゃっ……な、何で、掃除を始める前からこんなに、あたり一面が泡だらけになってるの〜!?」

 

「……オ〜ッホッホッホ!よく来たわね!先に来て、お掃除しておいてあげたわよっ!」

 

「ん……?奥に誰か……って……麗奈……?」

 

「ちょっと!麗奈チャン!?何で、ここにいるのっ!?」

 

「アンタたちが浴場に来るって聞いて「泡風呂」を用意してあげたのよ!アタシに感謝しなさいっ!」

 

「泡風呂って……こんなにしちゃったら、後片付けが大変でしょ〜!?どうしてくれるにゃ!」

 

「優雅に、朝から泡風呂を楽しむがいいわ!ア〜ッハッハッハッ♪……少し……想定外だったけど……」

 

「やりすぎたって自覚はあるんかい!全くもう……こんなに一面、泡だらけにしちゃって〜……」

 

「もうっ、麗奈ちゃん!何をしてるの!私のところに来なさい!」

 

「イヤに決まってるじゃない美波!悔しかったら、アタシを捕まえてみてごらんなさいっ!」

 

「……あ、ちなみに、泡の中に石鹸があるから、うかつに踏み込まない方がいいわよ♪じゃ〜ね〜♪」

 

「あっ!こら〜っ!待ちなさ〜いっ!……んもう……本当に、麗奈ちゃんは……」

 

「くそっ……麗奈のヤツめ……あたり一面、泡だらけじゃないか……」

 

「うにゃあ〜……と、とりあえず……美優さんやゆかりチャンも……石鹸探しを頼むにゃ……」

 

「え、えぇ……わかりました……」

 

「そうですね……それでは……ひゃんっ!?」

 

「ちょっ……ゆ、ゆかりっ……!」

 

「……きゃっ……!//」

 

「いつつ……ゆかり……大丈夫か……?」

 

「は、はい……身を呈して守っていただき……ありがとうございますっ……//」

 

------------------------------------------------

 

「これは……さっそく、石鹸か……麗奈のヤツめ……余計なことを……」

 

「「……」」

 

「あ、あのっ……プロデューサーさん……その……助けていただけたのは、嬉しいのですが……」

 

「……少々……恥ずかしくなってきてしまいまして……//」

 

「ん……?うわっ!?わ、悪い!違うんだ!これは別に、変な意味じゃなくて……//」

 

「「……//」」

 

「……むっ……きゃあ〜。私も滑ってしまいましたぁ〜!」

 

ギュッ

 

「うわっ!み、美波っ……!?」

 

「うふふ……♪プロデューサーさんの背中って、とても……広いんですね……♪」

 

「何だ……?美波も石鹸で、足を滑らせちゃったのか……?」

 

「はいっ♪……私も……プロデューサーさんに、守ってもらってしまいましたねっ……♪」

 

「そ、そうか……とりあえず、美波が無事でよかったよ。少し、背中が温いのは気のせいだと思うけど……//」

 

「むうっ……わざとではないのは、わかっていますけど……そんなにギュッと抱きしめちゃって……」

 

「……いつもそうなんですから……他の子だけ、ずるいですっ……私だって……女の子だもん……」

 

「……?」

 

「あっ、あの……三人とも……大丈夫ですか……?……きゃんっ……!」

 

「ちょっ……!?み、美優さ……むぐっ……!?」

 

ムニュッ♪

 

「うにゃにゃ……泡で前に進めな……あ"〜っ"!ちょっとPチャン!ゆかりチャンたちと何をしてるの〜!?」

 

「むぐぐっ……//」

 

「オ〜ッホッホッホッ♪愚民ども!もっと、苦しみなさ……ぎゃああああ!目に泡がああああっ!」

 

ガラッ

 

「……あの〜、すみません……上の方まで、声が聞こえてきたんですけど……」

 

「「「……あっ……」」」

 

「……って……み、みなさん!?何をしてるんですか〜っ!?//」

 

------------------------------------------------

 

「もうっ!ダメよっ!麗奈ちゃんっ!変なことをしちゃっ!」

 

「……す、すみません……」

 

「美波さんの、言う通りですっ!普段もそうですけど、変なことをしちゃ、メッ!ですよっ!」

 

「……何で……俺まで……」

 

「うぅっ……私ってば、プロデューサーさんに……あんな……はしたないことを……恥ずかしい……//」

 

「全く……みくが目を離してる隙に、あんなことをして……やっぱり、PチャンはPチャンにゃ……」

 

「……プロデューサーさんっ……//」

 

「ねぇ、ゆかりチャン。さっき、Pチャンに押し倒されてたけど……大丈夫?怖くなかった?」

 

「ふぇっ……!?い、いえっ!プロデューサーさんにはあくまで、守っていただいただけですので……」

 

「むしろ……抱きしめられてる安心感……プロデューサーさんの温もりや逞しさを、直に感じて……」

 

「……少し……ドキドキしてしまいました……うふふっ……♪//」

 

「そう……?まあ、ゆかりチャンが無事でよかったけど……」

 

「もうっ、みんなでお掃除をしたから、綺麗になりましたけど……麗奈ちゃんも、ダメですからね?」

 

「はい……反省しま……な〜んてねっ!……隙ありっ!」ドンッ!

 

「うわっ……!?」

 

「きゃっ……!?」

 

「……ア〜ッハッハッハッ!響子!このアタシが、反省するわけないでしょ!!」

 

「あっ……れ、麗奈ちゃん!!」

 

------------------------------------------------

 

「転んでもタダじゃ起きないのが、このアタシよ!今回は、これくらいにしておいてあげるわっ!!」

 

「ちょっ……おい!麗奈!待て!!」

 

「待てと言われて待つヤツがどこにいるのよ!そのまま「イチャイチャ」してなさい!シィ〜ユゥ〜♪」

 

「くっ、行っちまった……全く……麗奈は、相変わらずだな……」

 

「……//」

 

「……美波、大丈夫か?」

 

「えっ……!?あっ……は、はいっ……!大丈夫ですっ……//」

 

「そうか。美波が無事で、よかったよ」

 

「「……」」

 

「……むぅ〜……プロデューサーさ〜ん?いつまで、美波さんを抱きしめてるんですかぁ〜?」

 

「ん……?うわっ!?わ、悪いっ!//」

 

「あっ……い、いえっ!その……私は、大丈夫ですっ……」

 

「……むしろ、その……プロデューサーさんって、やっぱり……男の人なんですね……なんて……♪」

 

「えっ……//」

 

「「……//」」

 

「……も、もうっ!全然、反省してないじゃないですか!プロデューサーさんだけ、居残りでお説教ですっ!」

 

「ちょっ……ご、誤解だ!響子!これは全部、麗奈のせいで……」

 

「言い訳は無用です!ワガママはいけませんっ!」

 

「……は、はい……すみません……」

 

「全く……ゆかりチャンの次は、美波チャンを……ふぅ……本当、Pチャンは見境がないんだから……」

 

「美波ちゃん……いいな……私も、プロデューサーさんに……って、やだ……私ってば、何を考えて……//」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

ピンポーン♪

 

「は〜いっ」

 

カチャッ

 

「うふふ……♪お待たせしました♪プロデューサーさんっ♪」

 

「よ、よぉ……響子……」

 

「はいっ♪今日は……二人っきりで、たくさん「お話」をしましょうねっ♪」

 

「なあ……響子?確かに、話を聞くとは言ったぞ?でも……」

 

「……何も……俺の家でじゃなくても……いいんじゃないか……?」

 

「いえいえ♪水入らずで、ゆっくり話したかったので♪それに……はいっ♪「今回も」作って来ましたよっ♪」

 

「ん……?これは……響子の料理か?わざわざ、作って来てくれたのか?」

 

「えぇ♪時間的にもお夕飯の時間ですし、人様の家にお邪魔をするのに、手ぶらってわけにはいきませんよっ♪」

 

「そ、そうか……響子は、礼儀正しいなあ……あはは……」

 

「それに……んもう……どうしたら、あんな体勢になるんですか……」

 

「ゆかりちゃんに覆い被さるように抱きしめて、美波さんに後ろから密着されて……美優さんには……」

 

「……顔を抱きしめられて、思いっきり「ぱふぱふ」されて……本当……油断も隙もないんですから……//」

 

「……???」

 

「と、とりあえず!私のお料理を味わってくださいっ!愛情をた〜っぷり込めて、作りましたからっ!//」

 

「そ、そうか……それじゃあ、何もないところだけど……上がって行ってくれ」

 

「はいっ♪では、お邪魔しますねっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「うん、ごちそうさま。響子」

 

「いえいえ♪お粗末様でした♪どうでした?私のグラタン、美味しかったですか?」

 

「あぁ。とても美味しかったよ。やっぱり、響子の手料理は絶品だな」

 

「よかった♪愛情をた〜っぷり込めて、作った甲斐がありましたっ♪」

 

「ところで……その、何だ……食事をしてる最中は、他愛もない話で盛り上がったけど……」

 

「……もう一つ……「話」があって……ここに、来たんだよな……?」

 

「ん……?あっ!そうでしたね。では……あ〜〜っ!!」

 

「うわっ!?ど、どうしたんだよっ!?」

 

「いつの間にか、こんなに遅い時間になってました……」

 

「時間……あぁ……そういえば、もう結構遅い時間になってるな」

 

「うぅ……そろそろ帰らないと……でも……夜は……怖いなあ……」チラッ

 

「じゃあ、俺が車で、寮まで送るよ。手料理をご馳走になったお礼だ」

 

「……」ウルウル

 

「響子……?どうしたんだ……?そんなに、俺の顔を見つめて……」

 

「プロデューサーさん……あの……そのですね……よかったら……」

 

「……私を……一晩、お家に泊めてくれませんかっ……?//」

 

「……は?」

 

「ダメ……でしょうか……?」

 

------------------------------------------------

 

「……えっと……響子さん?今、響子さんは何をされてるんでしたっけ……?」

 

「えっ?そんなの決まってるじゃないですかっ♪私は「Charming」なアイドルですよっ♪」

 

「うん。屈託のない笑顔で、よく答えてくれた。で?自分が何を言ってるのか、わかってるのか?」

 

「はいっ♪私は「プロデューサーさんの」アイドルなんです♪だから、何も問題はないですよねっ♪」

 

「俺のって……あのなあ……とりあえず、車の鍵を持って来て……」

 

「……プロデューサーさんは……優しいお兄さんだって……私、知ってますよ……?」

 

「……っ!」

 

「夜も遅いですし……今晩だけは「と〜っても」優しいお兄さんと一緒に……いたいな……?」ウルッ

 

「……あぁ、もう……わかったよ……響子は一度言ったら聞かないって、俺も知ってるからな……」

 

「わ〜いっ♪やった〜♪プロデューサーさんは、やっぱり優しいですねっ♪」

 

「でもな、響子?何回も言うけど、響子はアイドルなんだからな?そこら辺は自覚してくれよ?」

 

「わかっていますよ♪こんなこと、信頼してるプロデューサーさん以外には、決して言いませんっ♪」

 

「……それに……お話って言うのは、あくまで「口実」でしたし……♪」

 

「ん……?」

 

「では、今晩はよろしくお願いしますねっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「……まあ、いいか。じゃあ、まずはちひろさんと、寮の管理人さんに連絡するよ。少し、待っててくれ」

 

「はいっ♪……今日は……プロデューサーさんの部屋に、私とプロデューサーさんの二人っきり……」

 

「……私だけで……独り占め……♪うふっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……いいお湯だった……」

 

「お帰りなさい♪プロデューサーさんっ♪」

 

「ただいま。どうだ?響子も、ゆっくり温まれたか?」

 

「えぇ♪お風呂をいただいちゃいました♪とても、いい湯加減でしたよっ♪」

 

「そうか、よかった。でも、パジャマはやっぱり、少しぶかぶかだな」

 

「いえいえ♪男の人用なので多少大きいですが、とても着心地がいいですよっ♪」

 

「……何せ……プロデューサーさんのパジャマですので……えへへ……//」

 

「そうか……?まあ、着心地がいいならよかったよ。今夜は、それで我慢してくれ」

 

「うふふ……♪それにしても……プロデューサーさんの部屋はやっぱり……とても落ち着きますねっ♪」

 

「……なあ……響子?ほぼ毎朝、俺の朝ごはんを作って来てくれたり、持って来てくれるのは嬉しいんだぞ?」

 

「だけど……俺は男で……響子は女の子なんだから……わかってるよな……?」

 

「……わかってるつもりですよ……♪ところで……いつも見慣れてる、この部屋も……」

 

「……夜になったら……「雰囲気」が全然……違いますねっ……♪」

 

「雰囲気って……あのなあ……」

 

「「……//」」

 

「……と、とりあえず!今日はもう遅いから寝るぞ!じゃあ、響子は俺のベッドで寝てくれ!」

 

「ええっ!?い、いえっ!その……悪いですよっ!私だけ……そんな……」

 

「気にするな。俺は、ソファーで寝るからさ」

 

「本当に悪いですって……私から、泊まらせて欲しいってお願いをしたのに……」

 

「響子は、俺の大切なアイドルだからな。大切なアイドルを、床で寝かすわけにはいかないだろ?」

 

「プロデューサーさん……で、では……その……私から一つ……提案があるのですが……いいですか……?」

 

「提案……?」

 

「はいっ♪えっとですね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……よし……電気を消すぞ……?」

 

「えぇ♪お願いします♪」

 

パチッ♪

 

「それじゃあ……おやすみ、響子」

 

「おやすみなさいっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「「……」」

 

「……や、やっぱり……俺……ソファーで寝るよ……//」

 

「やんっ、ダメですよっ♪私とベッドで「一緒に」寝るって約束したじゃないですかっ……♪」

 

ギュ~ッ♪

 

「くっ……し、しょうがないだろ……俺と一緒じゃないなら、床で寝るとか言い始めるんだから……//」

 

「えへへ……♪プロデューサーさんの背中って……とても大きいですっ……♪//」

 

「……ふぅ……この絵面は決して、他のアイドルやファンのみんなに、見せれないな……」

 

「そうですね……♪私も……プロデューサーさんの「秘密」を見つけてしまいましたっ……♪」

 

「秘密……?何のことだ?」

 

「さっき……プロデューサーさんが、お風呂に入ってる間に……見つけちゃったんです……」

 

「……アイドルのみなさんの……写真集をっ……♪」

 

「なっ……!?」

 

「しかも……「大胆な」ものばかりで……やっぱり、好きなんですねぇ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「い、いや!あれはだなっ!仕事としてサンプルをもらっただけで、別に、変な意味は……//」

 

「みなまで言わなくても、わかってますよ……♪プロデューサーさんも、男の人ですからね……♪」

 

「……ですので……私なら、もっと……大胆になれますよ……?……えいっ♪//」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!?//」

 

「どうですか……?「本物」の感触はっ……♪」

 

「ちょっ……せ、背中に……当たってるって……!//」

 

「プロデューサーさん……私のことを……どう思っていますか……?」

 

「どう思うって……何だよっ……!//」

 

「もちろん、私はプロデューサーさんのことを、一人の「男の人」だと思ってます」

 

「だけど……プロデューサーさんは、私のことをアイドルとして見てくれるのか……」

 

「……それとも……一人の「女の子」としてなのか……どっちかなって、思ったんです……」

 

「……そ、そんなのっ……!//」

 

「……うふふ……♪私なら……いつでも「ママ」になってもいいんですよ……?……なんて……//」

 

「……っ!ほ、ほらっ!変なことを言ってないで、さっさと寝るぞっ!夜ももう遅いんだからっ!//」

 

「あんっ……いぢわるっ……しょうがないですね……では……」

 

「……このまま……今夜は、私の抱き枕になってくださいねっ……♪」

 

「……くっ!//」

 

「えへへ♪プロデューサーさんにこうしてると……とても安心しますね……♪いい夢が見れそうです……♪//」

 

「……夢の中でも……ずっと、一緒ですよ……♪おやすみなさいっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「……んっ……あぁ、もう……朝かぁ……」

 

「んん……?目の前に……誰か……って……ぷ、プロデューサーさんっ!?//」

 

「……zzz」

 

「あっ……そうでしたね……プロデューサーさんのお家に、お泊まりしてたんでした……」

 

「……うふふ……♪私ってば、他の人のお家なのに、ぐっすり……寝ちゃってたんですねっ……♪」

 

「……つい、安心しちゃったのかな……♪いつもの温もり……いつもの香り……」

 

「……いつもの……プロデューサーさん……♪ふふっ……♪まだ、起きてないみたい……♪」

 

「気持ちよさそうな顔をしちゃって……♪この顔は……私だけが知ってる、秘密の顔ですね♪」

 

「……誰もいないし……いいですよね……♪今は、私とプロデューサーさんの二人きりですし……//」

 

「全てを包み込んでくれるような、優しい笑顔……不意に見せてくれる、かっこよくて凛々しい顔……」

 

「……そんな、あなたの全てが……大好きっ……♪うふっ……♪」

 

……チュッ♪

 

「……えへへ……しちゃった……♪」

 

「……んっ……?もう、朝か……」

 

「あっ……うふふっ……♪おはようございます♪プロデューサーさんっ……♪//」

 

「響子……?あぁ、そうか……響子は、俺の家に泊まってたんだっけ……」

 

「ふふっ……♪「王子様」のお目覚めですね……♪」

 

「ん……?王子様……?」

 

「こっちの話ですっ♪では、少し待っていてくださいね♪すぐ、朝食のご用意をしますのでっ♪」

 

「あ、あぁ……悪いな。ありがとう、響子」

 

------------------------------------------------

 

「鍵を閉めました?戸締りも大丈夫ですか?火元確認もしましたか?」

 

「あぁ。しっかりとしたよ。じゃあ、行こうか」

 

「よかった♪では、行きましょう♪……うふふっ♪」

 

「ん……?どうしたんだよ、響子」

 

「いえ。毎日、こうしていつも通りの日常が送れるって、すごい幸せなことだなって思ったんです♪」

 

「ははっ。急にどうしたんだよ。何かあったのか?」

 

「P.C.Sを始め、アイドルの人たちや、色んな人と出会い、こうして楽しい日々が送れるのも……」

 

「……あの時に……プロデューサーさんと出会えたからだと思うと……何だか、感慨深くて……」

 

「響子……」

 

「まさに「運命の出会い」っていうものかもしれませんね♪なんてっ……♪」

 

「……そうだな。当たり前だと思ってるこの日々も、みんなと出会えたからこそ送れるんだよな」

 

「響子とこうして、他愛もない話が出来るのも、響子と出会えたからで……そう思うと、確かに感慨深いな」

 

「うふふ……♪では、そんな運命の出会いを記念して、私たちで「もう一つの」毎日を作ってみませんかっ♪」

 

「もう一つの……?どういうことだ……?」

 

「例えば、その……夫婦とか……どうですか……?//」

 

「夫婦……って!だから!そういうのはまだ早いって!響子はアイドルなんだからなっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「……まだ早いってことは……将来的には、いいってことなんですね……?」

 

「そんな先のことなんか、知るか!と・に・か・く!今は、アイドルを優先してくれよ!いいな!」

 

「冗談ですよ♪これからも、よろしくお願いしますねっ♪……「初めて」も受け取ってもらったことですしっ♪」

 

「ん?初めて……?」

 

「こっちの話です♪つまり、シンデレラ姫もいいですけど「白雪姫」もいいなって、思ったんですっ♪」

 

「いや……まあ……響子には、シンデレラのお城に行ってもらうんだから……そこら辺は頼むぞ……?」

 

「わかっていますよ♪では……私を、お城に連れて行ってくださいね……「王子様」♪」

 

「王子かはともかく……これからもよろしくな、響子。二人三脚で、一緒に頑張っていこうぜ」

 

「はいっ♪よろしくお願いしますっ♪私……頑張ります……」

 

「アイドルとしても「女の子」としても、目指すものは同じ。ライバルは全てのアイドルなんです」

 

「想えば想うほど……負けたくないって気持ちが強くなって……もう、止められません……」

 

「アイドルになった以上は、大好きを全部叶えたいですし、知りたいんです」

 

「……だけど……時には、心細くなったり、落ち込むこともあります……ですので……」

 

キュッ♪

 

「健やかな時も、病める時も……ずっと「あなた」と一緒に、歩ませてくださいねっ……♪うふふっ……♪」



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三星シンデレラ 本田未央

「……二人とも、おっまたせ〜♪」

 

「あっ、未央ちゃ〜ん♪待ってましたよ〜♪」

 

「未央、来たね。じゃあ行こうか」

 

「うん♪行こう行こう♪二人とも、レッスンお疲れ様♪」

 

「それにしても……今日のレッスン、大変だったね」

 

「本当それ!トレーナーさん、めっちゃ怖かったよね〜♪未央ちゃんもたくさん怒られちゃった♪」

 

「私もちゃんと出来ないところがあって、トレーナーさんによく……怒られちゃいました……」

 

「まあ、私たち「ニュージェネ」で久々の単独ライブだからね。気合いが入ってるんじゃないかな」

 

「……そうだね。これも、ライブを成功させるためだもんね。卯月、まだまだ頑張っちゃいますよっ♪」

 

「逆に、私たちの気合いでトレーナーさんを圧倒させちゃおうよ。もちろん、ファンのみんなも」

 

「だねっ♪それじゃあ、みんなで景気づけにご飯を食べに行こうよっ♪今日のレッスンのご褒美も兼ねて♪」

 

「うんっ♪私、レッスンでたくさん動いたので、もうお腹がペコペコですっ♪」

 

「確かに……朝からレッスンを始めて、何も食べてなかったね。私も賛成だよ」

 

「では、三人の意見が揃ったところで……さっそく、れっつご〜♪」

 

「「「お〜っ♪」」」

 

------------------------------------------------

 

「あむっ……う〜ん♪レッスンが終わったあとの、ハンバーガーは美味しいねぇ〜♪」

 

「ふふっ、そうだね。今日のレッスンはいつもより、ハードだったからね」

 

「えへへ……♪レッスンでお腹が空いてたから、とっても美味しいですっ♪」

 

「それにしても、こうして三人で食べるのって久々だよね〜♪いつ以来だっけ?」

 

「えっと……確か、今回のライブが決まる少し前じゃなかったかな?ねっ、卯月」

 

「うん、そうだね。最近、それぞれ忙しかったから、私たちだけで会えることは少なかったもんね」

 

「う〜む……アイドルとしては嬉しい気がするけど……やっぱり少し……寂しいねぇ〜……」

 

「仕方がないよ。でも、またこうして、私たちで単独ライブが出来るようになって、よかったじゃん」

 

「そうだよ♪また、三人で一緒にライブが出来て、とても嬉しいですっ♪」

 

「しぶりん……しまむー……うん!そうだね!私たちはこれから「長い旅」に出るんだよね……」

 

「……よ〜し……頑張るぞぉ〜!えい、えい、お〜!!」

 

「うふふっ……♪その意気だよ未央ちゃん♪なんせ、私たちはアイドル界のニュージェネなんですから♪」

 

「私たちは私たちなりに、全力を尽くそうよ。未央」

 

「だねっ♪じゃあ〜……改めて団結もしたことだしぃ〜……久々に「アレ」いっとく〜……?」

 

「アレって……何ですか?」

 

「……二人とも、今さぁ……「好きな人」とかいるぅ〜?」

 

「ふぇっ……!?ちょっ……み、未央ちゃんっ!?急に、何を言ってるの!?//」

 

「いや〜♪未央ちゃんたちも、お年頃の女の子だからさぁ〜♪聞いてみたいなって思って♪」

 

「そ、そんな……いるわけないじゃないですかっ!……多分……//」

 

------------------------------------------------

 

「そうだよ未央。私たちはアイドルなんだから、今はそういうことはナシだよ」

 

「あははっ♪そうだったねぃ♪私たちは今を輝く、アイドルだもんね〜♪」

 

「……でもぉ……未央ちゃんも……二人みたいに「プロデューサー」とお出かけしてみたいな〜?」

 

「「……っ!」」

 

「しまむーはお正月に、しぶりんはホワイトデーに「二人っきりで」お出かけしてたよねぇ〜?」

 

「……私の知らないところで、あ〜んなことやこ〜んなことを、プロデューサーと……羨ましいなあ〜♪」

 

「「そ、そんなことはしてませんっ!・してないよっ!//」」

 

「あははっ♪息がぴったしじゃんっ♪じょ〜だんだよ♪じょ〜だん♪」

 

「……でも……未央ちゃんも、二人みたいに遊びたいけど……プロデューサーも最近、忙しそうだしねぇ〜」

 

「未央ちゃん……」

 

「未央……」

 

「あ、でも、それは私も同じか♪いやぁ〜、人気者は辛いねぇ〜♪ま、これもアイドルの宿命かなぁ〜♪」

 

「……あのさ……未央もちゃんと、休みを取れてるの……?」

 

「うん♪やっと、来週末に休みが取れたんだ〜♪学校の試験とお仕事が重なっちゃって、少し大変だったけど♪」

 

「そうなんだ……未央ちゃんも最近忙しそうだったし、オフの日が取れてよかったね」

 

「ありがとう♪さぁて♪オフは一体、何をしようかなあ〜♪」

 

「しまむーみたいに「プロデューサーさぁ〜ん♪ぎゅ〜っ♪」って甘えてみるか……いや、待てよ」

 

「それとも「プロデューサー。ふふっ、甘えてみたかっただけ♪」って、しぶりんみたいにさりげなく……」

 

「「ちょっ……だ、だからあっ!!//」」

 

「んもう〜♪だから冗談だってばあ♪二人とも、かわいいなあ〜♪」

 

「「むぅ〜……!//」」

 

「さて、せっかく集まれたわけだし、女子トークをもっとしようよ♪時間もまだあるしっ♪」

 

「日頃のこと、学校のこと、アイドルのこと、そして……プロデューサーのこともね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃあ、まったねぃ〜♪」

 

「うん。また会おうね〜♪」

 

「日も暮れてきたから気をつけてね、未央。じゃあ卯月、私たちも行こうか」

 

「はいっ♪行きましょう、凛ちゃん♪」

 

「今日のレッスン、順調に進んでよかったね」

 

「うん♪いい感じに息も合ってきたし、それに三人で楽しくご飯が食べれてよかったよ♪」

 

「最近はお互いに忙しかったからね。レッスン外で会うのは久しぶりだったもんね」

 

「少し寂しい気もするけど……でも、立派なアイドルになるために、お互いに頑張ろうね」

 

「そうだね、頑張ろう。……ねぇ……ところで一つ、聞きたいことがあるんだけど……いいかな?」

 

「えっ、どうしたの?凛ちゃん」

 

「卯月はさ……お正月の時「一緒にいて」……楽しかった?」

 

「お正月……?……ふぇっ!?えっと、で、ですからそれはっ……!//」

 

「……卯月?」

 

「そのっ……うん……楽しかった……かな。凛ちゃんは……そうだね。さっき、言ってくれたもんね」

 

「……うん。だけど……未央も行きたがってたよね……」

 

「ようやく休みが取れたって言ってたよね。最近、お仕事や学業が忙しかったみたいですし……」

 

「「……」」

 

「「……よしっ!」」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「おはようございますっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「プロデューサー、おはよう」

 

「おっ、おはよう卯月、凛。ちょうどいいところに来たな」

 

「はい?何か、私たちにご用ですか?」

 

「あぁ。少し、日程を確認してもらいたいんだが……どうだ?どこか都合が悪い日とかあるか?」

 

「え〜っと……あ〜っ!すみません!この日は少し、予定が入っちゃってるんですっ!」

 

「そうか。じゃあ、別の日に……」

 

「ですので!ここからここまで、詰めちゃってください!」

 

「えっ……いいのか……?」

 

「はいっ♪卯月、頑張りますっ♪ぶいっ♪」

 

「……そ、そうか……わかった……でも、あまり無理はしないでくれよ?」

 

「えへへ……ありがとうございます♪」

 

「……ねえ……いくら何でも、最近少し仕事を詰めすぎじゃない?」

 

「あぁ……そうだよな。やっぱり、これは少し無理があるよな……」

 

「私たちじゃなくて、プロデューサーがだよ。しっかり休めてるの?」

 

「えっ、俺……?まあ、最近は少し忙しいが休めてるとは思うぞ?」

 

------------------------------------------------

 

「じゃあ……その後ろの、スタドリのケースは何?」

 

「……あっ、い、いや……これは……」

 

「……ふぅ。隠すのヘタ。やっぱり休めてないじゃん、ウソツキ」

 

「私たちのことを見守ってくれるのは嬉しいですけど……プロデューサーさんも無理しちゃダメですよ……?」

 

「……ごめん……これじゃあ「無理はするな」なんて、他人に言えないよな……」

 

「しょうがないなあ。じゃあ、私もここからこの日まで詰めるから、お願いね」

 

「……でも……そうすると、凛も……」

 

「でも、だって、じゃないよ。全く……いつも無理をするのは、プロデューサーの悪いクセだよ」

 

「……それに……「パートナー」なんだし、全てお見通しなんだから……本当にもう……//」

 

「……ん?」

 

「何でもない。とにかく、私たちも合わせるから、この日はプロデューサーもしっかり休むこと。いい?」

 

「そうですよ♪私たちとプロデューサーさんは、一心同体ですっ♪ですので、無理をしちゃダメですよ♪」

 

「わかった……ありがとうな、二人とも」

 

「決まりだね。じゃあ、ここからここまでの日はよろしくね、プロデューサー」

 

「うふふ……♪お願いしますっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

「……グッ」

 

「……ブイッ」

 

------------------------------------------------

 

「うぅ〜……」

 

「ほら、未央。今がチャンスだよ」

 

「ねぇ……本当に、いいの……?」

 

「さっき、プロデューサーさんにさりげなく聞いたら、その日は休みみたいですから……ファイトですっ♪」

 

「で、でも……どうやって言えばいいかな……?」

 

「「しぶりんやしまむーもいいな〜」ってな感じで、おねだりしてみればいいんじゃない?きっとイケるよ」

 

「そう……?……じ、じゃあ!未央ちゃん、行ってくるよっ!ありがとう!二人ともっ!」

 

「いえいえ♪楽しんで来てくださいねっ♪未央ちゃん♪「報告」待ってますよっ♪」

 

「行ってらっしゃい。じゃあ、私たちはこれで失礼させてもらうよ。じゃあね、未央」

 

「あっ……ちょっ、まっ!……うぅっ……//」

 

「うふふ♪未央ちゃんってば、あんなに恥ずかしがっちゃって……かわいいですっ♪」

 

「ふふっ、そうだね。……でも……卯月。卯月はいいの?」

 

「えっ?何がですか?」

 

「いや……もしかしたら卯月も「未央と同じ」だったんじゃないかなって、思ってさ」

 

「ふふっ……♪こういう時は「お互い様」ですよ♪何せ、私たちは三人で一つじゃないですか♪」

 

「……そうだね。私たちは三人で一つの、アイドル界のミツボシだもんね」

 

「えぇ♪楽しいことはみんなで仲良く、です♪……ファイトっ、未央ちゃん♪」

 

------------------------------------------------

 

コンコン

 

「はい、どうぞ」

 

「……や、やっほ〜……プロデューサー……」

 

「おっ、未央じゃないか。おはよう。どうしたんだ?」

 

「あの、さ……突然で悪いんだけど……今週の、この日って……予定とか空いてる……?」

 

「予定……うん。この日は特に予定はないぞ」

 

「そうなんだ……それじゃあさ、その……み、未央ちゃんと……」

 

「……じゃなくて……私と二人でさ……遊園地に遊びに行かない?ここに、チケットがあるんだ」

 

「俺と……?いや、気持ちはありがたいけどせっかくのオフなんだから、他のアイドル仲間と行ってきなって」

 

「……悪いな、プロデューサー。このチケットは二人用なんだ。だ、だからさ……」

 

「……たまには……水入らずで、二人っきりでとか……どう……?//」

 

「でも……何で、わざわざ俺なんだ?アイドル仲間と行った方が、楽しいんじゃないか?」

 

「……最近さ、お互いに色々と忙しくて、あまり会う時間がなかったでしょ?」

 

「だから……たまには、プロデューサーと二人っきりになってみたいな〜……って、思ったんだ♪……ダメ?」

 

「確かに……言われてみれば最近は、未央とは忙しくて会えてなかったな……」

 

「……うん。じゃあ、未央がいいなら一緒に行かさせてもらうよ。ありがとう」

 

「やった〜♪決まりだねぃ♪じゃあ、さっそく計画を立てようか♪一緒に楽しもうねっ♪」

 

「そうだな。楽しい一日にしようぜ」

 

------------------------------------------------

 

「じゃあ、この日はよろしくね〜♪」

 

「あぁ、よろしくな。気をつけて帰ってくれよ」

 

カチャッ

 

「……ふぁ〜……何だかすごい、緊張しちゃったぁ〜……まだ、ハートがバクバクいってるよ……//」

 

「おかしいな……ただ遊園地に誘っただけなのに、何でこんなに緊張しちゃってるんだろ……私……」

 

「……でも……そっか……♪プロデューサーと……二人っきりで……遊園地……うふふっ……♪//」

 

「……あ〜っ!未央ちゃ〜ん!」

 

「えっ……おっ!ふじともじゃん♪お疲れ様〜♪」

 

「お疲れ様♪こんなところで偶然だね♪今日はお仕事だったの?」

 

「ううん。仕事じゃなくて、ちょっと用事があったんだ♪……えへへっ……♪」

 

「おぉ〜、何だか嬉しそうじゃん♪何かいいことが……あ〜っ!待って!やっぱり言わないで!」

 

「ここは、あたしのスピリチュアルパワーで言い当てて見せるよっ!う〜ん……」

 

「……わかった!さっき、事務所の廊下で百円玉を拾ったんでしょ!ねっ!?」

 

「そ、そうだね……うん……まさか百円玉を拾えるなんて、今日はツイてるなぁ〜……」

 

「ちょっ!?大人の対応は地味に傷つくからやめて!?むむむ……あああっ!もうっ!」

 

「こうなったら、あたしがにわかじゃないってことを証明してあげる!だから少し、あたしに付き合って!」

 

「ええっ!?私はまだ、何も言ってないよ!?」

 

「いいからっ!アイドル界のフォーチュンテラーである、このあたしの占いは絶対に外れないんだからあっ!」

 

「わ、わかったから、少し落ち着こうよ!ねぇってばあ〜!!」

 

------------------------------------------------

 

「……う〜ん……どれにしよう……」

 

「鏡とにらめっこをして、はや数時間……輝くパッションアイドルの、この私がこんなに苦戦するとは……」

 

「この服……いや、こっちの服も捨てがたいし……迷っちゃいますなあ〜……」

 

「どれを着ていけばいいんだろ……かわいい系?カジュアル系?それとも……セクシー系とか……?」

 

「こんな風に、文字通り一肌脱いで、寄せて……少し色っぽく……セクシーな感じにしてっ……」

 

「そして……身も心もみ〜んな……「オトナ」な、未央ちゃんの虜に……//」

 

「「「やめときなって!いつもの未央・未央ちゃんでいて!」」」

 

「……さて……想像の中で総ツッコミをされたから、この辺にしておいて……」

 

「でも……やっぱり「好き」……なのかな……?」

 

「……姉ちゃ〜ん……こんなに夜遅くまで、何を……っ!?//」

 

「ちょっ……!?な、何を覗いてるのさ!この変態っ!えっち!!//」

 

「だ、誰も、姉ちゃんの下着姿なんか興味ねえよ!とにかく!早く寝なよ!おやすみっ!//」

 

「言われなくてもわかってるわ!……全く……弟も「マセて」きましたなあ……」

 

「……そうだよね……プロデューサーも男の人だし、その……きっと……好き、だよね……//」

 

「頑張ったらもっと……私のことを……って!ああああっ!何を考えてるんだあっ!私ぃ!」

 

「本当……いつから、こんなになっちゃったんだろ……私はアイドルなのに……」

 

「寝ても覚めても……頭から離れなくて……思えば思うほど、ドキドキして……」

 

「……こんな不思議な気持ち、初めてだよ……プロデューサー……//」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「やぁ〜♪プッロデューサー♪おっはよ〜♪」

 

「おっ。未央、おはよう。今日はよろしくな」

 

「うんっ♪よろしくっ♪今日は一日中、未央ちゃんと一緒に楽しもうねっ♪」

 

「あぁ。それにしてもその服装、中々似合ってるじゃないか。かわいいぞ」

 

「ありがとう♪プロデューサーも、大人お兄さんって感じで素敵だよ♪」

 

「ははっ、ありがとう。じゃあ、さっそく行ってみるか?」

 

「うんっ♪行ってみよ〜うっ♪……ちなみにさ……私たち、周りから……どう見られてるのかな……?//」

 

「ん?どう見られてるって?」

 

「た、例えばさ、その……「お似合いのカップル」みたいに、見られちゃってたりするのかな〜って……///」

 

「そうだな。どちらかと言えば兄妹じゃないか?未央って、俺から見れば妹に見えるし」

 

「……そっか。じゃあ……今日は周りに、ラブラブっぷりをたくさん見せつけないとね♪えいっ♪」

 

ギュッ

 

「ちょっ……み、未央!?」

 

「今日は、最近会えなかった分、た〜くさんプロデューサーに甘えちゃうもんね〜♪」

 

「いや……気持ちはわからんでもないけど……だけど……何だか少し、近くないか……?//」

 

「そんなことないよぉ〜♪アラアラ♪もしかしてぇ……未央ちゃんのことを「意識」しちゃったのかにゃ〜?」

 

「おい!何だよそれ!変なことを言うな!!//」

 

「冗談だよ♪じょ〜だんっ♪そんなことよりさっそく、遊園地に行こうよ♪よ〜し、れっつご〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「プロデューサー、準備はい〜い?」

 

「あ、あぁ……俺も大丈夫だ……」

 

「よかった♪遊園地の初めと言えば、まずはやっぱり、メリーゴーランドだよねぃ♪」

 

「そ、そうだな……俺もそう思うよ……//」

 

「ん?どうしたの?何だか顔が赤いよ?」

 

「なあ……やっぱり、二人用じゃなくて……お互いに、一人用のに乗った方がよかったんじゃないか……?//」

 

「エ〜。せっかく二人っきりなんだし、いいじゃん♪こうした方が「雰囲気」が出るでしょっ♪」

 

「雰囲気って……あのなあ……」

 

「細かいことは気にしない気にしない♪それとも……私とこういうことをするのは……イヤ……?」

 

「いや……イヤだとか、そういうことじゃなくてだな……//」

 

「……ふふっ♪もしかして、背中越しに……未央ちゃんの「魅力」が……伝わっちゃった……?//」

 

ムニュッ……♪

 

「なっ……!し、知るか!あぁもう!そろそろ始まるみたいだし、しっかり捕まってろよ!//」

 

「んもう、プロデューサーってばかわいいんだから〜♪まあ、それはともかくっ♪」

 

「乗ってる間は……しっかりと、プロデューサーを離さないんだから……覚悟してよね……♪」

 

「……くっ……!//」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜♪楽しかった〜♪」

 

「……そうだな……//」

 

「……ん?あははっ♪ちょっと〜、どうしたの〜?顔が真っ赤っかじゃん♪」

 

「そりゃ……メリーゴーランドに乗ってる時にずっと……あれだけ密着されてばな……//」

 

「……ふ〜ん♪プロデューサーってばやっぱり、未央ちゃんのことを意識しちゃってるんだ〜……♪」

 

「だっ、だから!意識って何だよ!さっきから、俺を変なヤツみたいに言うのをやめろ!!//」

 

「ふふっ……♪でも……プロデューサーもやっぱり、男の人なんだね♪とても背中が広くて……逞しくて……」

 

「……私はむしろ……プロデューサーのことを……意識しちゃったよ……?……えへへ……♪//」

 

「えっ……み、未央?//」

 

「「……//」」

 

「……お〜いっ☆お二人さ〜んっ☆」

 

「ん……?おっ、心と瑞樹さんじゃないですか。こんにちは」

 

「こんにちは♪プロデューサーくん、未央ちゃん♪こんなところで偶然ね♪」

 

「こんにちは♪心さんや川島さんも、遊園地に遊びに来たんですか?」

 

「うんっ☆瑞樹ちゃんとぉ、二人で女子会デートをしてたのっ☆そうですよね〜☆」

 

「えぇ♪ちょうど、オフの日のタイミングがあったの♪」

 

「そんなことより……ちょっとちょっと〜♪二人で随分とお熱いじゃん☆羨ましいぞ☆このっこのっ☆」

 

「私たち二人で、遠目から見てたけど……随分とラブラブだったじゃない♪」

 

「そんな大層なもんじゃないですよ。なあ、未央」

 

「えっ……!?い、いや……その……」

 

「ふ〜ん……そうなんだあ〜……♪ところでプロデューサーくん。私のこの、猫耳カチューシャ似合ってる?」

 

「えっ……?はい。とてもかわいらしいですよ」

 

------------------------------------------------

 

「うふっ……ありがとう♪それじゃあ、褒めてくれたお礼に……え〜いっ♪」

 

「……っ!?」

 

「うわっ……!?み、瑞樹さんっ!?」

 

「えへへ……♪プロデューサーくんの腕、も〜らいっ♪」

 

「わぁお☆瑞樹ちゃんってば、だいた〜ん☆」

 

「ちょっ……いきなり、どうしたんですかっ……!//」

 

「えぇ〜?だって、未央ちゃんだけズルイじゃない♪こんなに素敵なお兄さんとデートをしてるなんて♪」

 

「……だ・か・らぁ〜、少しだけ……「イケナイ」猫ちゃんになっちゃおうかな〜って、思ったの♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!//」

 

「うふっ……ねぇ……プロデューサーくんはぁ……オトナの猫ちゃんは……嫌い?」

 

「お、オトナって……ていうか、近いですって……!//」

 

「……むっ」

 

「私ぃ……プロデューサーくんになら、いいんだけどなあ〜?もっと……「素」の私を見せてもっ……♪」

 

「素……ゴクリ……」

 

「今から……お姉さんが教えてあげるっ♪甘くて気持ちよくなっちゃう……オトナの妖艶な魅力を……」

 

「……も、もうっ!プロデューサー!何、デレデレしてるのさっ!!」

 

「うわっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「……な〜んてね♪冗談よ♪何せ、今の私はピチピチの純真無垢なアイドルだもんっ♪」

 

「えっ……?」

 

「んもう。ダメよ?今のプロデューサーくんには、かわいい未央ちゃんがいるんだからよそ見をしちゃ」

 

「よそ見って……元はと言えば、瑞樹さんが俺のことを……//」

 

「俺のことを?」

 

「……と、とにかく!瑞樹さんもアイドルなんですから、そういう変なことは控えてください!//」

 

「うふふ……はぁ〜い♪わかったわ♪それじゃあ、お邪魔しちゃ悪いし、そろそろ行きましょうか♪心ちゃん♪」

 

「そうですねぇ♪ところでぇ、このきゃわいくて、プリティ〜☆な猫耳はぁともどうかにゃ〜?」

 

「……は?……まあ、かわいいんじゃ……あだっ!ちょっ、いきなり何をするんだよっ!」

 

「反応が三秒ほど遅かったぞ〜☆ま、未央ちゃんの顔に免じて許してやるよ☆んじゃね〜☆」

 

「じゃあ、私たちは失礼するわ♪あとは二人っきりで楽しんでね♪ラブラブカップルちゃんたちっ♪」

 

「あっ、おい!……行っちゃった……」

 

「全く……何だったんだよ、二人とも……なあ、未央もそう思うだろ……?」

 

「……」

 

「……未央?」

 

「……むぅ〜」

 

------------------------------------------------

 

「……お〜い、未央?どうしたんだ〜?」

 

「……ふ〜んだ……川島さんに、あんなに鼻の下を伸ばしてデレデレしちゃってさ〜……」

 

「ちょっ……!な、何だよそれ!そんなことないって!」

 

「じゃあ……何で川島さんに抱きつかれた時に、少し視線が下に向いてたの……?」

 

「いや……そ、それは……//」

 

「……やっぱり……プロデューサーのえっち……」

 

「ち、違うんだって!瑞樹さんが魅力的なのは間違い無いけど、別にそういう意味じゃなくて……//」

 

「んもう……少し目を離したら、すぐこれなんだから……ダメだよ?だって今は……」

 

ギュッ

 

「……「私だけの」プロデューサーなんだから……他の女の人に目移りするのは、あまり感心しないぞ……?」

 

「……未央?」

 

「……何?川島さんはよくて、未央ちゃんはダメなの?」

 

「いや、そうじゃないけど……とりあえず、何かしちゃったなら謝るから許してくれよ。な?」

 

「……じゃあさ……一つだけ、約束をして?……今日は、私のことだけを見ること。いい?」

 

「えっ、約束……?あっ、あぁ……わかったよ……?」

 

「……本当に?」

 

「うん。せっかく久しぶりに、水入らずになれたわけだしな。改めて、今日は二人でたのしもうぜ」

 

「……そうだね♪じゃあ、気を取り直して、今日はじゃんじゃん楽しんじゃおうか♪」

 

「あぁ。よろしくな、未央」

 

「よ〜しっ!それではっ!この体勢のまま、次のアトラクションにぃ〜……れっつごぉ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜♪たくさん遊べたねぇ〜♪」

 

「そうだな。俺もたくさん遊べて、楽しかったよ」

 

「あははっ♪久しぶりに二人っきりだったから、ついはしゃいじゃった♪」

 

「まるで、ステージ上と同じぐらいのテンションだったよな。まあ、俺も未央のことは言えないんだけどさ」

 

「まさに似たもの同士だねっ♪未央ちゃんはどこにいても、パッションアイドルなのだ〜♪」

 

「楽しい時間はあっという間ってやつだな。もうすっかり日が暮れ始めて、星が見えてきてるし」

 

「……そうだね……夕方になって……人が、少なくなってきたね。「いいムード」かも……」

 

「そうだな。昼間とはまた、違う雰囲気があるな」

 

「……」ジー

 

「ん……?未央?どうしたんだ?俺の顔をそんなに見つめて」

 

「……夕日に照らされた、プロデューサーの顔……いつもよりさらに、カッコよく見えるよっ……♪//」

 

「えっ……?」

 

「……な、な〜んてねっ!あ〜!喉が乾いちゃったから、飲み物を買ってくるね!少し、待ってて〜!//」

 

「あ、あぁ……わかった……」

 

「……うぅ〜……私ってば、何で急に……あんなことを言ったんだろっ……//」

 

「いい雰囲気になってきて……いつもよりさらに、プロデューサーの顔がカッコよく見えて……」

 

「……あぁ〜っ!私ってば、何を考えてるんだぁ〜っ!落ち着けっ!落ち着け〜っ!私ぃ〜っ……!」

 

「本当……いつからこんな、乙女思考になっちゃったんだろ……顔から火が出るくらい恥ずかしいよ……//」

 

「……でも……プロデューサーは、私のことを……どう思ってくれてるのかな……?」

 

------------------------------------------------

 

「かわいいアイドル?普通の女の子?それとも……」

 

「……わっ!わ〜っ!だ、だから、さっきから何を考えてるんだぁ〜!んも〜〜〜〜!!//」

 

「……ううっ……一人で勝手に暴走をして……本当、何をやってるんだろ……私……」

 

「……」

 

ずばり!この日のラッキーアイテムはこれだよっ!

 

えっ……これが……?

 

うん!今、水晶に念を送ったら、あたしの中で「これ」がビビッと浮かんできたの!

 

でも……これとラッキーって、何が関係あるの?

 

ふふ〜ん♪それはねぇ……わからないっ♪

 

ええっ!?何だそりゃっ!

 

スピリチュアルは、理屈では説明出来ないの♪と・に・か・く♪あたしのお墨付きなんだから、信じてみなさい♪

 

「あの時に……これがラッキーアイテムだって、ふじともが言ってたけど……本当なのかな?」

 

「別に信用してないわけじゃないけど……ふじともの占いは、結構当たるって評判だし」

 

「……もしかしたら……「叶っちゃう」のかな……?」

 

「いい雰囲気だし……プロデューサーと二人っきりだし……スピリチュアルパワーの後押しがあって……」

 

「……でも……そうすると、しまむーやしぶりんに……」

 

「……」

 

「……うんっ!」

 

------------------------------------------------

 

「わぁ〜♪きれ〜い♪」

 

「遊園地や、夕暮れ時の景色がとても綺麗に見えるな。いいベストスポットじゃないか」

 

「そうでしょ♪そうでしょ♪遊園地に来る前に、調べておいたんだっ♪」

 

「……それに……人も少ないし……これで……改めて二人っきりだよっ……♪//」

 

ギュッ

 

「おっと……いきなり、どうしたんだ?」

 

「ちょっと甘えてみたくなっただけ♪まるで……今の私たちはアツアツな……あ〜っ!一番星、はっけ〜ん!」

 

「ん?一番星……?」

 

「……ふふふ……見えるかい?プロデューサーくん。あれが私たちの目指す、アイドルの星だよ」

 

「なあ……水を差すようで悪いんだけど……あれって、金星じゃないか……?」

 

「も、もうっ!そこはノってくれなゃ困るよっ!何、真面目に返してるのさっ!」

 

「悪い悪い、冗談だよ。でも、俺にはもう一つ、星が見えてるんだけどな」

 

「えっ、もう一つ……?どういうこと?」

 

「それは……「未央」だ」

 

「未央……ふえっ……!?わ、私っ!?//」

 

「あぁ。未央は俺にとって、アイドルの一番星だ。何か間違ったことを言ってるか?」

 

「い、いや……そう言ってくれるのは……嬉しいけどさ……」

 

「あの星よりも、目の前の未央が一番輝いてるよ。眩しいくらいにな」

 

「全く……何さ……普段はすぐ、女の子に顔を真っ赤にしてデレデレしてるくせに……」

 

「……こういう、恥ずかしくなるようことは……ストレートに言ってくるんだから……//」

 

「?」

 

「はっ……!と、とにかく!未央ちゃんと一緒に、あの星を目指すよ!プロデューサーくんっ!!//」

 

「あぁ。俺もあの星に、未央と一緒に行きたい。ついてきてくれるか?」

 

「……うん♪これからも「ずっと」一緒だよ……♪……それじゃあさ……その誓いと言ってはなんだけど……」

 

「……今からさ……未央ちゃんと、お菓子を食べない……?」

 

------------------------------------------------

 

「えっ?お菓子……?」

 

「うん♪実は、一つ用意をしてたんだっ♪ちょっと待ってね……」

 

「……はいっ♪未央ちゃんの「ラッキー」なポッキーをあげるっ♪どうぞ♪」

 

「ははっ、面白いことを言うじゃないか。じゃあ、せっかくだし一つもらうよ。ありがとう」

 

「ふふっ……私のことを思ってくれてるなら……「全部」食べきってね……♪……えいっ♪」

 

「えっ……?……んぐっ!?」

 

「それじゃあ、未央ちゃんもいっただきま〜すっ♪あ〜んっ♪」

 

カリカリカリ……

 

「んぐっ……んんっ……!?」

 

「……んっ……♪//」

 

カリカリ……

 

「ん……んんっ……!//」

 

「……んふっ♪//」

 

カリ……

 

「……っ!?//」

 

「「……//」」

 

……

 

「……ふふっ……とっても甘かったね……♪」

 

「……ぷあっ……なっ……み、未央……!?と、突然、何をっ……!//」

 

------------------------------------------------

 

「あははっ♪ごちそ〜さまでしたっ♪……それにしても……初めてって、こんなに緊張するんだね……」

 

「……あと少しだったのに……「寸止め」をされちゃったけど……♪」

 

「初めてって……お前……//」

 

「わかってたよ。プロデューサーは本当に、私のことを思ってくれてるんだって」

 

「私の、誰にも負けないって自信がある熱い想いをぶつけても……してくれないってことはね……」

 

「だからこそ、フライングをして「一番星」になろうと、ダメ元でアタックしてみたけど………」

 

「……やっぱり……手強いなあ……あははっ……」

 

「未央……」

 

「あのね……正直、最近少し……寂しかったんだ……お互いに忙しかったし、しょうがないんだけどね」

 

「だから今日こうして、遊園地に誘ったのも……プロデューサーを独占して、甘えたかったからなんだ……♪」

 

「……」

 

「本当に……ズルイよ……アイドルだって自分に言い聞かせて、何度も諦めようとしたのに……」

 

「諦めようとすればするほど、私の心を独占して……さらにときめかせて……」

 

「……もう……気持ちが抑えられないよ……えいっ!!」

 

「うわっ!?こ、今度は何だよっ……!?//」

 

「あのね……私、今……ものすごい……火が出るくらいに、顔が赤くなってると思うんだ」

 

「だから……このまましばらく……プロデューサーの胸に、顔を埋めさせて欲しいなっ……♪」

 

「埋めるも何も……その……未央、お前は……」

 

------------------------------------------------

 

「……これだけは言わせて。私は、おふざけではこんなことをしないよ」

 

「しまむーやしぶりんと……ううん、他の誰にも負けてないつもり。女の子、そしてアイドルとしても」

 

「確かに、友達も仲間も大事だし、ユニット活動も大切だけど……でも、プロデューサーは言ってくれた」

 

「「一番星」ってね。アイドル本田未央は、ちゃんと一番星みたいに輝きたいんだ」

 

「だから……独りでも輝いてるって、みんなに思って欲しいの。……特に……プロデューサーにはね」

 

「……」

 

「あははっ……♪何かしんみりさせちゃってごめんね♪やっぱり、ガラじゃなかったかな♪」

 

「……いや、未央の真剣な気持ちをしっかりと聞かさせてもらったよ。アイドルに対しての真摯な思いもな」

 

「だから……これからも一緒に歩ませてくれ。もっと、アイドルとして輝いてる未央を、俺は……むぐっ!?」

 

「……未央ちゃんはイジワルだから、これ以上は言わさせてあげない……♪ほら、ポッキーをお・た・べ♪」

 

「むぐぐっ……!」

 

「この先の答えは……変えてみせるよ。未央ちゃんのスパークル・マジックでねっ♪」

 

「……それに……ふじともの「スピリチュアルパワー」のご加護もあるしね……♪」

 

「ぷあっ……えっ……?……朋……?」

 

「こっちの話だよん♪それじゃあ!気を取り直して、しばらくこの体勢でいさせてねっ♪」

 

「あともう少しで、閉園の時間になっちゃうけど……この時間だけは「夢と魔法の時間」だよっ♪」

 

「……今日は……二人だけの大切な思い出をありがとう♪プロデューサー♪……大好きだよっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

チラッ

 

「……わぁ〜……すごい人の数ですっ……」

 

「まさか……また、この場所でライブが出来るとはね」

 

「そうだね♪何せ、ここは……私たち、ニュージェネの「原点」だもんね♪」

 

「……うん。私たちニュージェネは、全てここから始まったんだよね」

 

「あの時のこと、よく覚えてるなあ〜♪まだアイドルデビューしたてだったから、すっごい緊張したしっ♪」

 

「何もかもが初めてだったもんね。でも……やっぱり、私は今も緊張しちゃうなあ〜……」

 

「そうなの?私は……そうだね。やっぱり、ライブ前は今だに緊張するね」

 

「な〜んだ♪二人も同じだったのかあ♪未央ちゃんも実は、手に汗を握ってたんだっ♪」

 

「「「……ぷっ……あははっ♪」」」

 

「やっぱり、私たちはあの時から何も変わってないね」

 

「えへへ……うんっ♪私たちはいつまでも「ニュージェネレーション」ですっ♪」

 

「だけど、今の未央ちゃんたちは人気アイドルだからねぃ♪着実に、階段を登って行ってるはずだよ♪」

 

「輝く未来に向かって……そして……アイドルとしても…………「女の子」としても……ね……」

 

「……っ」

 

「……未央。それ以上は言わない約束だよ」

 

「しぶりん……」

 

「私たちはいつまでも、ニュージェネレーションだよ。それはずっと変わらない、絶対に」

 

「……私も、凛ちゃんと同じ気持ちだよ。これからもずっと、三人で変わらずにいたいな……」

 

「それに……「決める」のは、私たちじゃないと思いますので……」

 

「しまむー……そうだね……私たちは、こうして出会えたんだもんね……」

 

「……うん!これからもずっと、一緒だよ♪私たちは、かけがえのない輝くミツボシなんだしっ♪

 

「はいっ♪これからも、よろしくお願いしますね♪凛ちゃん♪未央ちゃん♪」

 

「うん、よろしく。卯月、未央」

 

「おっ、いたいた。お〜い!みんな〜!」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?おっ、プロデューサーじゃん♪お〜いっ♪」

 

「みんなお疲れ様。どうだ?心の準備は出来たか?」

 

「お疲れ様♪もちろん、バッチシだよ♪ね〜♪しまむー♪しぶりん♪」

 

「えぇ♪卯月、今日も頑張っちゃいますよ〜♪ぶいっ♪」

 

「久しぶりの、ニュージェネだけの単独ライブだからね。気合いが入ってるよ」

 

「よかった。その調子なら大丈夫そうだな。初心にかえったつもりで、頑張ってきてくれ」

 

「よ〜しっ♪未央ちゃん、今日は思いっきりハジけちゃうぞ〜!……その前にぃ……え〜いっ♪」

 

「うわっ……!み、未央っ!?」

 

「緊張をほぐすために、プロデューサー分をた〜っぷり、補給しないとね〜♪うりうり〜♪」

 

「あっ……わ、私もっ……!えいっ!//」

 

「……二人だけっていうのは……フェアじゃないよね……」

 

「ちょっ……き、急に何だよ!三人で俺に抱きついてきてっ!//」

 

「これからも「ニュージェネ」のことをよろしくねっ♪プロデューサー♪」

 

「うふふ……♪「ずっと」……私たちのことを、見ていてくださいねっ♪」

 

「スカウトした以上は……「最後まで」責任をとってもらうんだからね。覚悟をしてよ」

 

「えっ……?いや……言われなくても、俺とニュージェネたちはいつまでも一緒だぞ?」

 

「……ふふっ……その言葉、しっかりと聞いたからね♪それじゃあ、そろそろ行こうか♪しまむー♪しぶりん♪」

 

「はいっ♪私たちの歌声を、ファンのみなさんにお届けしましょう♪」

 

「そうだね。私たちが望む、私たちの在り方を、ありのままに見てもらおう」

 

「じゃあ、いっくよ〜♪せ〜のっ♪」

 

「「「フライ……ドッ……チキ〜ン!!」」」



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電脳シンデレラ 砂塚あきら

「……」

 

カチャッ!バンッ!バンッ!

 

「……そこだっ!!」

 

YOU WIN!

 

「……ふぅ……何とか勝てた……今日は調子がいいな。連勝しまくりデス」

 

「さてと……休憩休憩。とりま、エナドリを補給しないと……」

 

プシュッ

 

「んく……んく……は~、緊張した神経にキクなあ~……」

 

「……やば。もうこんな時間か……少し、熱中しすぎたかな……」

 

フォンッ♪

 

「ん……?あっ、プロ……兄ぃから何かきてる……」

 

「えっと……[体調は大丈夫か。アイドル活動は順調か。夜遅くまで、ゲームはしてないか]……」

 

「……ご名答。[大丈夫だよ、しっかりやってるから。今度、一緒にFPSをやろうよ]っと……」

 

「これでよしと。さて、あともう一戦して、今日は寝るか……」

 

フォンッ♪

 

「っ……!リロード早っ!全く……兄ぃは本当に、心配症な……」

 

「……あっ「Pサン」からだ。えっと……」

 

「[お疲れ様。どうだ?体調の方は大丈夫か?それと、夜遅くまでゲームはしてないだろうな?]か……」

 

「……二人して「兄ぃ」みたいなことを言わないでよ……」

 

「兄ぃがPサンで、Pサンが兄ぃで……やば。わけがわからなくなってきた……」

 

「……もう……本当に「そっくり」なんだから……#ややこしい#兄ぃが二人……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「グッモ〜ニン♪僕く〜んっ♪」

 

「ん?おぉ、ちとせか。おはよ……うわっ!?」

 

「……あ〜ん……ねぇ〜!つ〜か〜れ〜た〜!」

 

「ちょっ……い、いきなりなんだよ!急に抱きついて来るなっ!//」

 

「ほぉら♪お仕事を頑張ってきたんだぞ〜♪だ・か・ら♪私のことをた〜っぷりと労ってよ〜♪ぎゅ〜っ♪」

 

「仕事……あ、あぁ……そうだったな。仕事お疲れ様。ありがとうな、ちとせ」

 

「……それだけ……?僕くんのために頑張ったんだよ?何か、ご褒びをちょ〜だいっ♪」

 

「ご褒美……それじゃあ今度、どこかに食事でもしに行くか?」

 

「う〜ん……それもいいけど……でも、もっと「甘い物」がいいなあ〜?」チラッ

 

「甘い物って……ケーキとかスイーツ系がいいのか?」

 

「ノンノン♪もっと甘くて「気持ちよく」なっちゃう、僕くんの大切な……うん?僕くん。それって、何?」

 

「ん……?あぁ、これか。少し休憩をして、ソシャゲやってたんだ。ほら」

 

ウマピョイ♪ウマピョイ♪

 

「……へぇ〜……何だか、かわいい女の子がたくさん踊ってるね……」

 

「だろ?今後のライブの参考になると思ってな。結構かわいいよな、この子たち」

 

------------------------------------------------

 

キミノアイバガ♪ズキュンズキュン♪ハシリダス~♪

 

「特に、この子は努力をして、このライブのセンターを勝ち取ったんだ。な?まるで「俺たち」みたいだろ?」

 

「ふ〜ん……むぅ〜、やだっ!!」

 

「うわっ!?だ、だから何だよ!?さらに密着してくるなって!!//」

 

「もうっ!僕くんってば、また他の女の子にデレデレしてちゃって!私のことも構ってよ!!」

 

「……は?いや、別にデレデレなんかしてないし、それに、これはあくまでゲームだぞ?」

 

「知らないっ!ゲームでも、イヤなものはイヤなのっ!僕くんのえっち!!」

 

「おい!えっちって何だよ!確かに女の子たちはかわいいけど、そんな目で見てねえよ!//」

 

「どうだか……僕くんは普段から、女の子が大好きな女たらしさんだからな〜?信用できないなあ〜?」

 

「俺のことを何だと思ってるんだよ!……全く……これは、ただの育成ゲームなんだから安心しろよ」

 

「……それに……俺はむしろ、アイドルたちを守るのも仕事だしな。もちろん、ちとせのこともな」

 

「……あはっ♪そうだよねっ……♪だって……あなたは「私だけ」の僕くんだもん……♪……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……ち、ちとせっ……!?//」

 

「うふふ……♪ねぇ〜……これでもぉ……ゲームの女の子がいいって、言っちゃうのっ……?」

 

「いや……だから……あくまでゲームはゲームって、さっき言っただろっ……!//」

 

「そうだよねぇ〜……やっぱり、僕くんはぁ……「ナマ」の、甘くて柔らかい女の子が好きだよねぇ〜♪」

 

「……だからぁ……私……いいよ?このまま、二人だけの世界に……一緒にいこ?……ねっ♪//」

 

「はあっ!?くっ……や、やめっ……!//」

 

「うふっ……僕くん……♪んっ……」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「……オハヨーデス」

 

「っ!……あ、あきらっ……!」

 

「あんっ……ざ〜んねん……」

 

「……何だか……朝からお熱いね……もしかして自分、お邪魔だった……?」

 

「ち、違うんだ!誤解なんだよ!これには、深いわけがあってだなっ……!」

 

「おはよっ♪あきらちゃん♪ねぇねぇ!聞いて聞いて〜!僕くんってば酷いんだよ〜!?」

 

「どうしたんデス?」

 

「「今日はどの子にしようかな〜♪ぐへへ……」って、ゲームの女の子に浮気してるの!私たちがいるのに!」

 

「だから、誤解を生むようなことを言うな!これはそういうゲームじゃないっつうの!!」

 

「ふ〜ん……まあ「いつものこと」じゃないですか。PサンはPサンだし……ふぁ〜あ~……」

 

「おい!それってどういうことだよ!……ていうか、何だ……その大きなあくびは……」

 

「ちょっと夜遅くまで、FPSでバトっててね〜……つい熱中しちゃってたんだ〜……」

 

「夜遅くって……やっぱりな。おい、あきら。昨日の、俺のメッセージはちゃんと読んでくれたのか?」

 

「うん、読んだよ。でも安心してよ。あれからもう一戦だけして、すぐに寝たからさ」

 

「そういう問題じゃないだろ。いいか?お前は女の子なんだぞ?しかも、今はアイドルでもある」

 

「夜更かしは、美容はもちろん、健康にだってよくない。健康管理だって、立派なアイドルの仕事でだな……」

 

「はいはい。わかってるよ。……ふふっ……」

 

------------------------------------------------

 

ん?どうしたんだよ?」

 

「いや……やっぱりPサンは「兄ぃ」だと思ってさ。内容から注意のしかたまで、瓜二つだよ」

 

「兄なのかはわからんけど……でも、あきらは俺の自慢のアイドルなんだから、しっかりしてくれよ?」

 

「へぇ〜、自慢かぁ……じゃあさ、いっそのこと……自分の「本当の」兄ぃになってくれる……?//」

 

「はいはい。じゃあまずは「本当の」お兄さんのために、あきらには立派なアイドルになってもらわないとな」

 

「むぅ……イジワル……いいもん。許可がなくても、これから勝手にPサンのことを兄ぃって呼ぶから」

 

「ふ〜ん……僕くんってば、あきらちゃんに自分のことをそんな風に呼ばせてたんだ〜……ヘンタイ……」

 

「は……?ち、違うぞ!?これは、あきらが勝手に……」

 

カチャッ

 

「みなさん、おはようございま……わお」

 

「っ……凪……!」

 

「あっ、凪ちゃんおはよう♪ねぇねぇ!聞いて〜!僕くんってば、変態なんだよ〜!?」

 

「どうしたのですか?」

 

「「あきら、俺のことはお兄ちゃんって呼べって」あきらちゃんに言ってるの!私たちがいるのに!」

 

「ちょっ……あぁもう!話が余計にややこしくなるから、ちとせは少し静かにしてろっ!!」

 

「……?」

 

------------------------------------------------

 

「ほぉ、なるほど。そういうことだったんですね」

 

「どうだ?わかってくれたか?」

 

「はい。まあ、Pがこうなのは「いつものこと」ですしね、わかりみです」

 

「うんうん。……ん?」

 

「では、改めておはようございます。みなさん」

 

「おはよーデス」

 

「おっはよ〜♪凪ちゃん♪」

 

「さて、本日はお日柄もよく……おぉ、そうでした。今日は、あきらさんのソロ曲「#HE4DSHOT」ちとせさんのソロ曲「Beat of the Night」そしてこの私、凪が歌う「14平米にスーベニア」が収録されたCDが発売されますね」

 

「おい……凪……?」

 

「わぁお。これはすごいです。ソロ曲と言えばコレですわ。種類いっぱいありますけどCDですわ。このCDだけあれば勝ちですわ。もうこれは、ショップに駆け込むしかありませんね」

 

「さぁ、今すぐショップに駆け込みましょう。ナギぴょい、ナギぴょい」

 

「……凪は一体……何を言ってるんだ……?」

 

「いえ、決してダイマではないのでご安心を。ちょっとした凪の独り言でしたので」

 

「独り言って……まあいいか。それで?ちとせはともかく、あきらと凪は、事務所に何の用で来たんだ?」

 

「う〜ん……何となく……?気付いたらここに来てた、みたいな?」

 

「えぇ。凪もあきらさんと同じ意見です。どうも、現代社会をさすらう風来のナギです」

 

------------------------------------------------

 

「何だそりゃ……あのなあ、事務所は遊びにくる場所じゃないんだぞ?わかってるのか?」

 

「細かいことは言わない言わない♪それだけ居心地が良いってだよん♪ね〜、二人とも〜♪」

 

「そうですね。ここは、実家のような安心感を感じます。はーちゃんもそう言ってました」

 

「確かに。FPSにおけるリスポーン地点みたいな感じかな。戻るべき場所があるみたいな」

 

「実家だかリスポーンだかよくわからんが……まあ……ある程度の、公私の区別はつけてくれよ?頼むぞ」

 

「「「……」」」

 

「……あ、そうだ。ところでみなさん、今日の夜は空いてますか?」

 

「ん……?夜?俺は空いてるだけど……急にどうしたんだよ?」

 

「これも何かの縁だと思いますので、是非、みなさんとオンライン会話をしてみたいと思ったんです」

 

「おぉ、いいね。自分は賛成デス」

 

「わぉ♪何だか楽しそう〜♪私もさんせ〜い♪」

 

「そうか……なら、俺もいいか?」

 

「もちろんです。では、決まりですね。いえいいえい。ひゅーひゅー」

 

「あはっ♪楽しい時間にしようねっ♪……ふ〜ん……♪」チラッ

 

「ん……?何だよちとせ。俺の顔をそんなに見て」

 

「……「夜」に「アイドルとプロデューサー」が会うんだよ……?……ヘンなことを考えちゃダメだぞっ☆」

 

「……は?」

 

「わぁお。Pは「やっぱり」そういうことを考えていたのですね。いやーん」

 

「ま、オンラインだから安心だね。画面越しで話すから「襲われる」心配はないだろうし」

 

「お前ら……!と、とにかく!話すんだろ!?まずは時間を決めようぜ!ほらっ!!」

 

「そうですね。では、まずは都合の合う時間を決めましょう。夜が楽しみですね」

 

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「……ふぅ……いい風呂だった……さて、後片付けも済んだし、時間は……」

 

「……うん、そろそろだな。それにしても、まさか凪からあんな提案があったとは……」

 

「オンラインとはいえ、自宅でアイドルたちと会話が出来るなんて……良い時代になったよな」

 

「でも……そっか……自宅で……アイドルと夜に……」

 

「……」

 

「……って!何を考えてるんだ俺は!全く……これも全部、ちとせが変なことを言うから悪いんだ……//」

 

「さ、さてと!まずは事前に、三人に教えてもらったIDを確認して、承認してと……」

 

「……よしっ、承認完了っと。そして、通話をクリックしてと……」

 

「……やっほ〜♪僕く〜ん、みんな〜♪こんばんは〜♪」

 

「みんな、どもデス。あきらだよ」

 

「こんばんは、みなさん。どうですか?凪はきちんと動いていますか?」

 

「あぁ、こんばんはみんな。凪もみんなもしっかり、動いてるぞ」

 

「それはよかったです、いぇい。どうも、リモートナギです」

 

「当たり前だけど、みんなパジャマ姿って新鮮だね。普段は私服だし」

 

「あはっ♪そうだねっ♪凪ちゃんとあきらちゃんのパジャマ、とてもかわいい♪」

 

「ちとせサンも似合ってますよ。Pサンも普段がスーツだから、何だか新鮮に感じるよ」

 

「ははっ、そうだな。全員がパジャマって、何だか修学旅行みたいだよな」

 

「ではさっそく、飲み会を始めましょう。みなさん、コップの用意はいいですか?せーの……」

 

「「「「……かんぱ〜い!」」」」

 

------------------------------------------------

 

「……という感じで、はーちゃんとは寮生活になってからもよく、一緒に遊びに行ったりしてますよ」

 

「あのお店は、なかなか美味しかったですね。今度、あかりちゃんたちを誘ってみようかな」

 

「そうかそうか。気に入ってもらえてよかった……ん?おっ、どうやら客が来たみたいだ。呼んでもいいか?」

 

「はて、誰か来たのですか?」

 

「あぁ、みんなの顔馴染みだから安心してくれ。ほれっ」

 

「……やっほ〜♪Pサマ〜♪遊びに来たよ〜……えっ……?」

 

「おぉ〜♪りあむちゃんじゃん♪こんばんは〜♪」

 

「どもデス。りあむサン」

 

「あっ……えっと、その……こ、こんばんは……今日はとても……月が綺麗ですね……」

 

「こんばんは。りあむさんも、Pと約束をしていたのですか?」

 

「いや。こいつはしょっちゅう、通話しようってうるさくてな。今日もずっとメッセージを飛ばしてきたし」

 

「……そうだね……その……「満足」できなくなっちゃったんだ……//」

 

「満足?どういうことなのっ?」

 

「つまり……えっと……Pサマのモノじゃないと満足できないように、ぼくは「開発」されてしまって……」

 

「おい!変なことを言うなっ!お前が一方的に、俺にDMを送りまくってきてるだけだろうがっ!//」

 

「ふ〜ん。まあ、いいじゃん。りあむサンも交えて、みんなで楽しく話そうよ」

 

「そうだそうだ〜♪構ってくれないと、クソザコメンタルのぼくは寂しくて炎上させちゃうぞ〜♪」

 

「ったく……都合のいいヤツめ……。ふぅ……じゃあ改めて、りあむも入れて楽しく話そうぜ」

 

「はい、楽しみましょう。いえいいえい。ひゅーひゅー。うぇいうぇい」

 

------------------------------------------------

 

「あ”〜♪楽しかったあ〜♪こんなリア充みたいなことをしたのって、久しぶりかもっ♪」

 

「おぉ。いつの間にか、もうこんな時間ですね。楽しい時間はあっという間ですね」

 

「よし。名残惜しいけど、そろそろお開きにするか。アイドルたちに夜更かしをさせるわけにはいかないしな」

 

「そうだね#そろそろ#眠くなってきた」

 

「んじゃあ、ぼくはここでログアウトさせてもらうね♪みんな、また会おうね〜♪おやすみ〜♪」

 

「凪も、失礼させてもらいます。楽しい時間をありがとうございました」

 

「それじゃあ、私もここで、失礼させてもらうね♪今夜はとても楽しかったよ♪see you〜♪」

 

「あぁ。おやすみ、みんな。……さてと、俺もそろそろログアウトをして、寝るか……」

 

「……あっ。ねぇ、Pサン。ログアウトをする前に、最後に一ついいかな?」

 

「……ん?どうした?あきら」

 

「いきなりで悪いけど、この日ってさ、Pサンって休みだったっけ?」

 

「この日……うん。その日は、俺は休みだぞ」

 

「じゃあさ、もしよかったらこの日に少し、自分に付き合ってくれない?」

 

「俺と……?別に、あきらがいいならいいけど……どうしたんだ?」

 

「……へへ。それはお楽しみ♪それじゃあ、ログアウトしたら改めて、DMを送るよ♪おやすみ「兄ぃ」♪」

 

「あぁ……わかった。おやすみ……って……だから、俺は兄ぃじゃ……切れちゃった……」

 

「ふぅ……ま、いいか。さてと、俺もログアウトをして、DMを確認したら、さっさと寝るか」

 

「……おっと、そうだ。「TP」を消化してから寝ないとな。育成育成っと……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……さて。ここが、あきらとの待ち合わせ場所だな」

 

「念には念を入れて、早起きをして来てみたが……やっぱり少し、早かったかな」

 

「よし……あきらが来るまで、SNSでもチェックしてるか……」

 

[#今日のあきら]

 

「おっ。さっそく、TLにあきらのつぶやきがあるじゃないか。どれどれ……」

 

[#サイコーにイケてる服#トップシークレット]

 

「うんうん。さすがは、趣味がファッションなだけあって……ん?何だこりゃ。画像が真っ黒じゃないか」

 

「……へへ……だ〜れだっ……♪」

 

「うわっ……!?な、何だ……!?」

 

「当ててくれるまで……見せてあげないよっ……♪」

 

「誰って……この声は……あきらか……?」

 

「うん、ビンゴ♪おはよう♪兄ぃ♪」

 

「ふぅ……少し驚いたけど……おはよう、あきら……って、おい。何だ、その呼び方は」

 

「えっ、何が?」

 

「何がって……あきらはアイドルなんだからな?わかってるのか?」

 

「うん、わかってるよ。じゃあ「兄ぃ」今日は一日よろしくね♪」

 

「……今の、俺の話を聞いてたのか?」

 

「えっ?もしかして「お兄ちゃん」って呼んで欲しかったの?うわ〜。兄ぃって、そんな趣味があったんだ〜」

 

「……わかったよ……もう、兄でも兄ぃでも、何でも呼んでくれ……」

 

「話をわかってくれて嬉しいデス♪じゃ、改めてよろしくねっ♪」

 

「あぁ、よろしく。それで?今日は、秋葉で待ち合わせをしたわけだが……どこに行くんだ?」

 

「そうだね。ま、色々と行きたいところがあるんだ。じゃあ、行こうか」

 

------------------------------------------------

 

「お待たせしました。それでは、ごゆっくりどうぞ。失礼します」

 

「ありがとうございます。それにしても……随分とオシャレなカフェだな」

 

「へへ、そうでしょ。事前に下調べをしておいたんだ。何せ「映え」の聖地だしね♪」

 

「ん……?映え……?」

 

「うん。少し……失礼するね」

 

パシャッ♪

 

「これでよしと……#今日のあきら#オシャレなカフェでひと休憩、っと……」

 

「どうしたんだ?急に、スイーツを撮って」

 

「まあ、近況報告ってところかな。ここのカフェは、撮影OKの映えに特化したカフェなんだ」

 

「確かに……盛り付け方が、普通のカフェよりオシャレって感じがするな。色とりどりっていうか」

 

「でしょ?味だけじゃなくて、見た目やSNSでも楽しめる。これが、映えに特化したこのカフェの特徴デス」

 

「そういえば、心もなんか、スイーツと一緒に自撮りをしてたっけ。まあ、アイドルには大事な要素かもな」

 

「現代は、ネット社会かつ戦場だからね。常日頃から最先端を行くためにも、スマホは戦場の相棒だよ」

 

「最先端もいいけど……なあ……やっぱり、今も夜遅くまで起きてたりするのか?」

 

「時と場合によるかな。つい熱中しちゃったり、SNSをチェックしてたりすると、遅くなってる時はあるね」

 

「おいおい……あのなあ、ゲームやSNSが楽しいのはわかるけど、あまり夜更かしは感心ないぞ?」

 

「それに、あきらは女の子なんだし学生でもあるんだから、しっかりと寝て勉強もしないとだな……」

 

「んもう、だからわかってるってば。……ふふっ♪本当に、Pサンは兄ぃみたいなことを言うんだね♪」

 

------------------------------------------------

 

「そうだな。あきらには立派なアイドルになってもらわないと「本当の」お兄さんに申し訳ないからな」

 

「だから、口を出すところはしっかりと出させてもらうからな。頼むぞ」

 

「……フ〜ン……Pサンはそう思ってるんだ……じゃあさ……してもいいよね……?」

 

「ん……?何をだ?」

 

「いいからいいから。はいっ、こういう感じにグラスを持って。じゃあ行くよ〜、1……2……3……」

 

パシャッ♪

 

「……うん。いい感じに映えてるね。兄ぃと仲睦まじい2ショットの完成デス」

 

「突然……どうしたんだ……?」

 

「気にしないで。さて……#今日は仲良く#兄ぃとオシャレなカフェ。よし、これをSNSに載せて……」

 

「は……?おい!ちょっと待て!何、SNSに載せようとしてるんだよ!?」

 

「えっ?何でって……「兄妹の微笑ましい日常」を載せようとしただけだよ?」

 

「……俺の記憶だと、あきらさんは俺の妹じゃなくて「アイドル」だと思ったんだけどな〜?」

 

「へへ、冗談だって♪本当にPサンは、からかいがいがあって面白いデス♪」

 

「大人をからからうな!ふぅ……とりあえず、あきらはまず、アイドルとしての自覚がまるで……」

 

フオンッ♪

 

「……ん?おっ、悪い。少し待ってくれ」

 

------------------------------------------------

 

「どうしたの?」

 

「ソシャゲのスタミナが、満タンになったんだ。ほら、キャラが通知してくれてるだろ?」

 

[Pさん♪TPが満タンになりましたよ♪一緒に走りましょう♪]

 

「ふ〜ん……Pサンは、この子推しなんだ……」

 

「まあ、この子が一番いいと思ったのは間違いないな。健気でかわいいし、何より主人公だからな」

 

「へぇ〜……やっぱり、えっちだね」

 

「……は?」

 

「その子のことを語ってる兄ぃ、すごい目を輝かせてた。#デレデレ#ニヤニヤ」

 

「そ、そんなことはないぞ!?だから、前から言ってるだろ!これはあくまでゲームだって!」

 

「どうだか……ま、いいけどさ。でも、ここは秋葉だよ?わかってるの?」

 

「ん……?あぁ。ここは正真正銘の秋葉原だ。それがどうしたんだ?」

 

「秋葉は、二次元と三次元が混同する、カオスかつ異次元な世界デス」

 

「……だから……そんなにハマってると、いつか本当に、二次元の世界に取り込まれちゃうかもよ……?」

 

「ははっ、そうだな。そうならないように、程々にしますよ……おっ!トレーニングが成功したっ!」

 

[頑張りますっ♪]

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

ウィンウィンウィンウィン……ポトッ

 

「……あっ……落ちちゃった……結構、難しいな……」

 

「あ〜。あともう少しだったのにな。惜しいじゃないか」

 

「う〜ん……じゃあ次、兄ぃに交代するね。#バトンタッチ#選手交代」

 

「俺に……?……よし、わかった!取って見せようじゃないか!でも、意外だよな」

 

「えっ、何が?」

 

「確かに、秋葉はゲーセンの聖地でもあるけど、あきらがUFOキャッチャーだなんて、意外だって思ってさ」

 

「そう?自分は、FPSと動画配信以外にも、サブカル全体にも興味があるよ。とても楽しい界隈だしね」

 

「あと、このお人形は今、SNSでバズってるんだ。だから欲しいなって思ったんだ」

 

「そうなのか……まあ確かに、この人形たちって俺が今やってる、人気のソシャゲのキャラクターだしな」

 

「でしょ?常に、流行や最先端を追い求め、ネットの波に乗り続ける。これがSNSの極意デス」

 

「……それに……どうせなら、兄ぃと「同じもの」を好きになりたいじゃん……//」

 

「ははっ、そうだな。面白いことや嬉しいことは、みんなで共有した方は楽しいもんな」

 

「だから頼むよ?全ては兄ぃにかかってるんだから」

 

「よし!任せておけ!で?どのキャラクターのが欲しいんだ?」

 

「ん〜とねぇ……これが欲しいな」

 

「わかった!じゃあさっそく、始めるぞ!」

 

------------------------------------------------

 

ウィンウィンウィンウィン……ポトッ

 

「くっ……!結構、難しいな……」

 

「う〜ん……ねぇ、あの頭だけが出てるのとかよさそうじゃない?何だか、取りやすそう」

 

「確かに……よし!あれを狙ってみるか!」

 

ウィンウィンウィンウィン……

 

「……おっ、掴んだ……って!何だかもう一人、ぶらさがってるぞ!?」

 

「……ゴクリ……#緊迫する#戦況……」

 

「いけるか……いけるのか……?」

 

……ゴトン

 

「……よし!取れたっ!」

 

「おぉ。兄ぃ、すごいじゃん。まさかのダブル取りとは」

 

「もう一人ついてきて、運がよかったな。ほら、あきらが欲しかったのは、この子だろ?」

 

「うん、ありがとう。二つ取れたし、兄ぃもお揃いだね♪」

 

「そうだな。でも……流石に、大人の男が人形はなあ……」

 

「……あ〜もう!何だよぉ!も〜〜〜!」

 

「……ん?」

 

「あ〜……残念ですねぇ〜……あと、もう少しでしたのに……」

 

「ボクは「カイチョー」の人形が欲しいのにぃ!何で「マックイーン」が一緒についてくるんだよぅ!!」

 

「そ、そんなことを言っちゃだめですよ!マックイーンさんのお人形も、十分かわいいじゃないですかっ!」

 

------------------------------------------------

 

「ふんっ!一番カワイイのはこのボクだいっ!カイチョーとボクで、カッコイイとカワイイの二大巨頭だっ!」

 

「……ねぇ、君たち。ちょっといいかな?」

 

「はい?何でしょうか?」

 

「もしかして……君たちが狙ってる人形って……これかな?」

 

「えっ……あ〜っ!それだよ!それ!いいなぁ〜」

 

「もしよかったらさ、この人形をあげるよ。ちょうど今、取れたばかりなんだ」

 

「本当ですか!?でも……そのままもらうのは、何だか悪いです……」

 

「いや、気にしないで。ついでに取れただけだからさ」

 

「本当に……いいの……?」

 

「ははっ、いいよいいよ。じゃあ、さっそくこの人形を……ん?」

 

「……?お兄さん、どうしたの?」

 

「いや……君たち、どこかで見た覚えがあるような……」

 

「えっ……?そう?スペちゃんはどう?」

 

「私ですか……?えっと、その……多分……今日が、初めてだと思います……」

 

「……そうだよね。変なことを聞いてごめんね。じゃあ改めて、俺の人形をあげるよ。はいっ」

 

「わ〜いっ♪ありがとう、お兄さんっ♪やった〜♪カイチョー人形をゲットぉ〜♪」

 

「よかったですね♪テイオーさんっ♪」

 

「うんっ♪じゃあ、スペちゃん♪お目当ての物も手に入ったし、これからはちみつドリンクを飲みに行こうよ♪」

 

「そうですね♪行ってみましょう♪では、これで私たちは失礼させてもらいますね♪ありがとうございました♪」

 

「じゃあね〜♪お兄さんたちぃ♪お人形、ありがとうねぇ〜♪」

 

「「はちみ〜♪はちみ〜♪はっちみ〜♪はちみ〜を舐め〜ると〜♪」」

 

「ははっ。喜んでもらえてよかったな。なあ、あきら」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……あきら?」

 

「ふ〜ん……今のは……兄ぃの新手のナンパ……?」

 

「は……?おい!何だよナンパって!俺は、そんなことをした覚えはないぞ!?」

 

「へぇ〜。初対面の女の子に「君たち、どこかで見た覚えがあるような……」なんて言うんだ〜……?」

 

「いや……それは……。ち、違うんだよ……何かこう……本当に、どこかで見たよう気がして……」

 

「まあ、秋葉はアニメやゲームのコスプレしてる人が多いし、別人なんじゃない?」

 

「そうか……そうだよな……」

 

「むぅ……そのゲーム夢中になりすぎて、現実と空想の区別がつかなくなってきてるんじゃない?」

 

「そ、そんなことはないぞ!あくまで、ゲームはゲーム!現実は現実だからな!あはは……」

 

「……ダメだよ……?今は……「自分だけの」兄ぃなんだから……」

 

ギュッ

 

「……#他の子に#よそ見をしちゃ……」

 

「えっ……?あ、あぁ……悪かったよ?」

 

「本当……?本当に、反省してる……?」

 

「あぁ。今日は、あきらと遊びに来たんだもんな。ごめんよ」

 

「なら……改めて、今日はずっと、自分に付き合ってもらうんだからね。覚悟をしてよ♪」

 

「うん、よろしく。じゃあ、お目当てのものも手に入ったし、俺たちもそろそろ行くか?」

 

「そうだね。じゃあ、行こうか♪……このまま、腕を組んだままね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「随分と暗くなってきたね」

 

「そうだな。いつの間にか夕暮れ時だ。楽しい時間はあっという間だな」

 

「今日はありがとうね、兄ぃ。おかげで色々と楽しかったよ」

 

「気にするな。俺も楽しかったし、あきらも楽しんでくれてよかったよ。さぁ、そろそろお開きにしようぜ」

 

「……ヤダ。#もう少し#ここにいたい」

 

「おいおい。ワガママはだめだぞ?あまり遅いと、あきらのお兄さんも心配するだろ?」

 

「……「兄ぃ」は。目の前にいるから心配いらないもん……」

 

「屁理屈を言ってもダメだ。さっ、駅まで送ってやるよ。「本当」のお兄さんが心配するからな」

 

「むぅ……じゃあさ、その……最後に一つ……いいかな?」

 

「どうした?」

 

「いや……これからさ、その……自分と「うまぴょい」しない……?」

 

「は……?うまぴょいって……何のことだ……?」

 

「それはね……えいっ……!」

 

「うわっ!?な、何だよっ!?」

 

「……さっきね……気づいちゃったんだ……。自分って、こんなにも独占欲が強かったんだって……♪」

 

「独占欲……?って!急に、そんなに密着してくるなって!離れろっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「……あっ……すごいバクバクしてる……♪何だ、言わなくても意味がわかってるんじゃん……えっち……♪//」

 

「なっ……!//」

 

「やっぱり……兄ぃは自分のことを、そういう目で見てたんだね……♪#ヘンタイ#ロリコン……//」

 

「そっ……そんなことはっ……!//」

 

「へへ……今度は「画面越し」じゃないから、本当に襲われちゃうかも……♪」

 

「……こんな年下に、顔を真っ赤にしちゃって……兄ぃは本当に、見境がないねっ……♪」

 

「……とりあえずさ……一旦、落ち着こうぜ……?あきらは、いい子だからさ……なっ……?」

 

「今の自分は、無惨にも人を貪ってしまう、悪いしゃーくんデス♪だから……」

 

「……「拒否」をしたら……あの時に撮った、2ショットを……SNSに載せちゃうからね……♪」

 

「ちょっ……!?」

 

「それに……Pサンは、さっき言ったよね?俺は「本当の」兄じゃないって」

 

「だから……へへ……これ以上は……言わなくても、わかるよね……?//」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!あ、あきら……お前っ……!」

 

「さぁ、約束通り、自分を「シンデレラのお城」に連れて行ってよ♪……拒否権はないけどね♪」

 

「……自分たちは、もう……「戻れないよ」……♪……兄ぃ……♪//」

 

「こ……こっ……」

 

------------------------------------------------

 

「こ、これ以上は本当にマズイって!!」

 

「……って……あれ?ここは……一体……」

 

フォンッ♪

 

「ん……?メッセージ……?」

 

[兄ぃ、お疲れ様。今日は自分に付き合ってくれて、ありがとうね。また一緒に遊ぼう♪]

 

「あきらから……あ、そっか。秋葉で遊んだあとに、駅まであきらを送って、家に帰ってきたんだっけ……」

 

「それで、いつの間にか玄関で寝てしまって……ふぅ……行儀が悪いな……俺……」

 

「……もしかして……俺って、あきら以上にはしゃいでたとか?……やれやれ……」

 

「こんなんじゃ、あきらに偉そうに「しっかりしろ」だなんて言えないな。しっかりしないと」

 

「さてと……まずは、明日の準備をして、しっかりと布団で寝ないとな」

 

「あ、でもその前に……やっぱりな。TPが溜まってるから、まずは消化するか」

 

私ですか……?えっと、その……多分……今日が、初めてだと思います……。

 

「……やっぱり、あの子は……ううん!気のせいだな!」

 

「あきらが言ってたみたいに、人間違えだったんだ。そんなことがあるわけがないし!」

 

「でも……あの時のあきらは……一体……」

 

「……って!ダメだダメだ!あんな変な夢をみるなんて、俺はプロデューサー失格だ!//」

 

「俺は、あれから寄り道をせずに、しっかりとあきらを駅まで送った!うん!間違いない!」

 

「……さて。スマホに入れておいた、明日のスケジュールを、軽く確認しておくか」

 

「明日の、最初の訪問先はっと……えっ……?」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……

 

「……ふぅ、着いた……場所は……」

 

「……うん。合ってるな。住所もここで間違いなさそうだし」

 

「いつもの朝……いつもの事務所……いつもの見慣れてる光景……」

 

「だけど……やっぱり、何かがおかしい……よし!あっ、ちょっとそこの君、いいかな?」

 

「えっ?私ですか?」

 

「うん。この学園の、この場所に行きたいんだけど、どうやったら行けるかな?」

 

「えっと……あっ、ここなら、昇降口を入ってすぐに階段がありますので、上がっていけばすぐに着きますよ」

 

「そうなんだ。教えてくれて、ありがとうね」

 

「いえいえ♪でも、お兄さん誰?」

 

「あぁ、ごめんね。俺、こういう者なんだ」

 

「プロダクション……ええ〜っ!?お兄さん、アイドルのプロダクションの人なの!?」

 

「まあ、そんなところかな。ちょっとお仕事でここに来たんだ」

 

「……ということは……もしかして、この学園にスカウトしにきちゃったり……?」

 

「そうだね。今日は「ライブ」があるって聞いたから、ここに招待されたんだよ」

 

「や〜ん☆ファル子……じゃなくて!私はすでに、この学園のトゥインクルな存在なのにぃ〜☆困っちゃう☆」

 

「すでに……もしかして君も、アイドルをやってたりするの?」

 

「はい!実は、私も……って!私は「ウマドル」ですっ!」

 

「えっ?ウマドル……?アイドルとは違うのかい?」

 

「えぇっ!?ウマドルを知らないの!?お兄さん……もしかして……怪しい人?」

 

「なっ……べ、別に、怪しくなんか……!」

 

「だって「この世界で」ウマドルを知らない人はいないもん!ましてや、芸能プロダクションの人ならば!!」

 

------------------------------------------------

 

「いや……聞いたことはあるんだけど……それはあくまでゲームの話で、現実では知らないっていうか……」

 

「ふ〜ん……へぇ〜……やっぱり、アヤシイなぁ〜……このまま、たづなさんに相談して……」

 

「……あっ!お〜い♪ファル子せんぱ〜いっ♪」

 

「……ん?おっ、スペちゃんとテイオーちゃんだ☆おはよう☆」

 

「おはようございます♪ファル子さんっ♪」

 

「おはよう♪ねぇねぇ、先輩。こんな正門前で、どうしたの〜?」

 

「ねぇねぇ!聞いて聞いて〜!ファル子ね〜、この怪しいお兄さんに声を掛けられちゃったの!」

 

「ちょっ……いや、待ってくれ!だから別に、俺は何も怪しくなんかないんだって!」

 

「怪しいお兄さん……あ”〜っ”!この前、ボクたちにお人形をくれたお兄さんだ!」

 

「……っ……君たちは……」

 

「えっ?もしかして、このお兄さんと二人って、知り合いなの?」

 

「う〜ん……知り合いっていうか、何て言うか……ねぇ?スペちゃん」

 

「そうですね……前に、秋葉原のゲームセンターで、お会いしたことがあるんですよ」

 

「そ、そうだね……こんなところで、偶然だなあ……あはは……」

 

「ボクたちは、ここの学園の生徒だからね。それで?お兄さんはここに、何か用があってきたの?」

 

「うん。この学園の理事長からね「ライブ」に招待されたんだ。あ、これ、俺の名刺ね」

 

「何なに……うわぁ〜!このプロダクション知ってる!お兄さんって、プロダクションの人だったんだ!」

 

------------------------------------------------

 

「ここのアイドルの人たちを、テレビで見たことがあります……お兄さんって、すごい人だったんですね……」

 

「いやいや、そんな大した者じゃないよ。今日は、ライブを見にきただけなんだ」

 

「ふ〜ん……そうなんだぁ〜……♪じゃあ改めて、ボクたち「主役」の自己紹介をしないとね!」

 

「えっ、主役……?」

 

「うんっ♪ボクは、トウカイテイオー!何を隠そう、今日のライブの主役なんだ〜♪」

 

「あの……私は、スペシャルウィークといいます。是非、私たちのライブを楽しんでいってくださいね♪」

 

「私はスマートファルコンって言うんだ☆ファル子って呼んでね♪お兄さんの視線を釘付けにしちゃうよ〜☆」

 

「もしかして……今日のライブって、君たちが踊ってくれるのかい……?」

 

「そうだよ♪「ウイニングライブ」は、選ばれし、このボクたちの特別なライブなんだから♪」

 

「うんうん☆そんな、ファル子たちのライブに招待されるだなんてぇ〜、お兄さんはツイてるねぇ〜☆」

 

「そうなんだ……それは楽しみだな。しっかりと、目に焼き付けさせてもらうよ」

 

「あの……もしよかったら、ライブ前にこの学園を、お兄さんにご案内しましょうか?」

 

「おっ、いいのかい?でも、その前に、理事長に挨拶をさせてもらいたいんだけど……」

 

「わかりました♪では、まずは理事長室まで、私たちがご案内しますっ♪」

 

「うんうん♪お兄さんには、この学園もとい、ボクたちのこともたくさん知ってもらわないとね〜♪」

 

「ささっ、行こう行こう☆ファル子ファンクラブ会員番号二番さんっ☆」

 

「「ボクたち・私たち」そして「ファル子たち」の……」

 

「「「……「トレセン学園」にようこそっ♪」」」

 

フォンッ♪

 

[……兄ぃ。どうやら「現実」になっちゃったみたいだね……♪#もう戻れない#それと#……ご馳走様……♪]



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花神シンデレラ 相葉夕美

「……」

 

「……はい!撮影終了!!みんなお疲れ様!」

 

「お疲れ様でした〜♪」

 

「お疲れ様みんな。無事、撮影が終わったな」

 

「はいっ♪美波、頑張りましたっ♪」

 

「ふぅ〜……やっと終わりましたぁ〜……何だか、暑くなってちゃった〜……脱いじゃおっかなぁ〜……」

 

「……こら、愛梨。これ以上、何を脱ぐんだ?」ビシッ

 

「きゃあん!あっ……そうでしたね……今の愛梨は、水着姿でした……えへへ……♪」

 

「全く……アイドルなんだから、気をつけてくれよ……?」

 

「ねぇ、プロデューサー。確か、このあとは自由時間だったわよね?」

 

「ん……?あぁ。このプール施設は実質、今日一日中、俺たちで貸切だ」

 

「あの……本当に……よろしいのでしょうか……?」

 

「うん。運営会社さんとスタッフさんのご好意で、一日貸切にしてもらえることになったんだ」

 

「だから、ホテルのチェックインの時間まで、たっぷりと遊べるぞ。奏と文香も存分に楽しんでくれ」

 

「なるほどね。それじゃあ、感謝して時間いっぱい楽しませてもらいましょう。ねっ、文香」

 

「うふふ……そうですね……奏さん……♪施設を貸し切りだなんて……とても楽しみです……♪」

 

「さぁ、仕事も無事終わりましたし!みんなで今日は、思いっきり楽しんじゃいましょう♪せ〜のっ♪」

 

「「「「お〜っ♪」」」」

 

----------------------------------------------

 

「ふぅ……さてと、水着に着替えたことだし、あとは俺も、プールでのんびりするか……」

 

「それにしても……施設全体を貸し切りにしてくれるとは……ずいぶん太っ腹だな。感謝をしないと」

 

「あ〜っ♪いたいた〜♪お〜〜〜い♪プロデューサー♪」

 

「ん……?おっ、夕美じゃないか。どうした?」

 

「ねぇねぇ♪一つ、お願いがあるの♪プールに入る前に、私に日焼け止めを塗って欲しいんだっ♪」

 

「おぉ、そうか。じゃあ入る前に軽く……って……おい……夕美?」

 

「ん?どうしたの?」

 

「どうしたのって……自分が何を言ってるのか、わかってるのか……?」

 

「えっ?何って……紫外線からお肌を守るために、日焼け止めを塗って欲しいって言っただけだけど……?」

 

「おいおい……あのなあ。そういうのは、他のアイドルたちに塗ってもらえよ。夕美はアイドルなんだぞ?」

 

「はいはい♪わかってるよ♪じゃ、お願いね♪」

 

「……今……俺が言ったことを、聞いてたのか……?」

 

「……ふ〜ん?じゃあプロデューサーは、私が紫外線でお肌が荒れちゃってもいいんだ〜……?」

 

「いや……それは……」

 

「私ぃ、いつまでもプロデューサーの「自慢」のアイドルでいたいな〜……?」

 

「……ふぅ……しょうがないな……わかったよ。紫外線は、お肌の大敵って言うしな」

 

「えへへ……ありがとう♪じゃあ、お願いね♪あっ、そうだ♪あと一ついいかな?」

 

「何だ……?」

 

「いくらプロデューサーでも……「変なところ」を触っちゃダメ……だからねっ……♪//」

 

「はあっ!?さ、触るか!ほら!さっさと塗ってやるから、早く準備をしろっ!//」

 

「ふふっ……は〜いっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜……日差しが眩しいなあ」

 

「お〜いっ♪プロデューサー♪プール、冷たくて気持ちいいよ〜♪早く来なよ〜♪」

 

「あぁ〜!今すぐ行くよ〜!……さて……俺も入るか……」

 

「……それにしても……夕美のヤツ……何で、あんな提案を俺にしてきたんだよ……」

 

「……無防備にも程があるだろ……俺だって……これでも、健全な男子なんだぞ……!//」

 

(……塗ってる最中に、手から伝わる夕美の体温……)

 

(やんっ♪……プロデューサーってば……結構、大胆……なんだね……♪//)

 

(んっ……プロデューサーの温もりが……伝わってきて……何だか私、ドキドキしちゃってるかもっ……♪//)

 

(……ねぇ……プロデューサーも……「私と」同じ気持ちかな……?)

 

(……もしかして、私たち……心も体も……繋がっちゃってたりして……えへへ……//)

 

「塗ってる最中も、変なことばかり言って……何なんだよ……ったく……//」

 

「……ん?あっ……奏ちゃ……」

 

「……」

 

(人差し指……あっ……奏ちゃん……プロデューサーを、プールに突き落とす気だ……)

 

(どうしよう……教えてあげた方がいいかな……?さすがに突き落とすのは……)

 

(……でも……ちょっと見てみたいような気もするし……)

 

「……くっ……さ、さてと!やっぱり、プールに入る前に少し、準備体操をするか……」

 

ドンッ!

 

「……きゃっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「うわっ……!?えっ……か、奏……!?」

 

「あっ……えっと……ち、違うの……これには、深いわけがあって……//」

 

「深いわけって……どうしたんだよ……急に、俺の胸に飛び込んできて……//」

 

「……むっ」

 

「ほ、本当に違うのよ!ただ少し……イタズラをしたかっただけっていうか……//」

 

「……さすがに……こんなイタズラは、アイドルとしてどうかと思うぞ……?」

 

「だから違うのよ!……もうっ……何で急に、振り向くのよ……バカ……//」

 

「「……//」」

 

「……二人とも〜?いつまで抱き合って、イチャイチャしてるのかな〜?」

 

「っ……!ちょっと夕美!べ、別に、イチャイチャなんかしてないわよっ!//」

 

「そ、そうだぞ!それに、俺は別に何も悪くないだろ!!」

 

「ふ〜ん……私から見れば、二人で水着デートをしてるアツアツなカップルにしか見えなかったけどな〜?」

 

「変なことを言わないで!……全く……だいたい、これも全部……プロデューサーが悪いんだから……」

 

「何でそうなるんだよ!ふぅ……これが逆に、俺が奏にしてたらセクハラだぞ?わかってるのか?」

 

「何よ、いいじゃない。「思春期」の女の子の特権よ。少し、想定外だったけど」

 

「……それに……プロデューサーって……細身に見えて、意外と……胸板が厚いのね……//」

 

「えっ……?」

 

「何でもないわ。さ、夕美のところに行きましょう。私で変な妄想をされる前に」

 

「お前なあ……はいはい。じゃあまずは、準備体操から始めないとな」

 

「うふふ……そうね♪体操をしましょう♪……一緒にね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……さて。結構遊んだから少し、休憩をするか」

 

「夕美や奏にも伝えてあるし、俺もあそこのパラソルでひと休憩して……ん?」

 

「……」

 

「よぉ、文香。お疲れ様」

 

「あっ……プロデューサーさん……お疲れ様です……」

 

「どうしたんだ?文香は泳がないのか?」

 

「そうですね……先ほどまで、美波さんたちと遊んでいましたので……少し、ひと休憩というところです……」

 

「そうだったのか。まあ、パラソルの下で読書も中々気持ちいいよな。文香の気持ちもわかるよ」

 

「うふふ……♪あの……プロデューサーさんも、休憩ですか……?」

 

「うん。俺もさっきまで、夕美や奏と遊んでたんだよ。だから、俺も休憩しに来たんだ」

 

「そうなんですね……えっと……もしよかったら……私と一緒に、お話をしませんか……?」

 

「えっ、文香と?」

 

「はい……ダメでしょうか……?」

 

「俺は別にいいけど……でも、読書の邪魔になっちゃうんじゃないか?」

 

「いえいえ……一人で休憩をしてる間の、暇つぶしでしたので……」

 

「……それに……せっかく、その……プロデューサーさんと、二人っきりになれましたので……♪」

 

「そうか……?じゃあ、色々と話そうか。文香の隣に失礼するよ」

 

「えぇ……では、たくさん私と……お話をしましょうね……ふふっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……お〜い、文香〜?」

 

「……zzz」

 

「ダメだ……全く起きない……。う〜ん……無理やり起こすのも何だか、かわいそうな気がするし……」

 

「話している途中から、返事がなくなったとは思ったけど……まさか……寝てしまっていたとは……」

 

「……しょうがない。起こさないように、俺の肩から文香を離してチェアに寝かせるか……」

 

「失礼するぞ、文香。よし……文香の上体を起こしてと……」

 

「……イヤです……」

 

ギュッ

 

「うわっ……ふ、文香っ……!?」

 

「……二人っきり……プロデューサーさんを……独占……ですっ……zzz」

 

ムニュッ♪

 

(うあっ……!う、腕に……文香の「感触」がっ……!//)

 

「ちょっ……ふ、文香っ!起きてくれよっ!なっ!?」

 

「……zzz♪」

 

「……くっ……しっかりと密着されて、腕をホールドされてて……動けないっ……!」

 

「……プロデューサーくんは……「騎士くん」……私は……「心がペコペコ」……うふふっ……♪」

 

「このままだと、本当に色々とヤバいから起きてくれよっ!……主に……俺の理性がっ……!//」

 

「……あっ♪お〜いっ♪プロデューサー♪……えっ……」

 

「……おっ、夕美じゃないか!ちょうどいいところに来てくれた!俺を助けてくれっ!」

 

「……」

 

「……夕美?」

 

「……む〜〜〜っ」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「あの……夕美さん?」

 

「……何?」

 

「……何で……夕美さんも、俺のもう片方の腕に密着してるんですかね……?」

 

「別にぃ〜?私も少し、休憩をしてるだけだよ〜」

 

「そ、そうか……。ならとりあえず、一旦離れてくれると嬉しいんですけど……」

 

「むぅ……私はダメで、文香ちゃんはいいんだ〜……?」

 

「ん……?何で、文香なんだよ?」

 

「…….さっきまで……パラソルの下で、文香ちゃんとイチャイチャしてたクセに……」

 

「ちょっ……誤解を生むようなことを言うな!ただ、話をしてたら文香が、寝落ちしちゃっただけだっ!//」

 

「ふ〜んだ……だいたい、いつもこうなんだから……少し目を離したら……すぐに他の子と……」

 

「……私だって……文香ちゃんと同じぐらい……ううん、文香ちゃん以上だもんっ……」

 

「?」

 

「とにかく、その理屈なら私もただ休んでるだけね。ハイ、決定っ」

 

ムニッ♪ムニッ♪

 

「……これ以上は……二人からの強い刺激で……熱中症になっちゃいそうなんですけど……//」

 

「知らないっ」

 

「なあ……せめて、夕美だけは離れてくれないか……?健全なアイドルなんだからさ……なっ?」

 

「やあだっ」

 

「くっ……両腕をホールドされて……ここは天国か、はたまた地獄なのかっ……!」

 

「……ふぁっ……?」

 

------------------------------------------------

 

「あっ……あのっ……!すみません……私ってば、はしたないことをっ……!//」

 

「い、いや……いいんだ!気にしないでくれ!」

 

「そうだよ、文香ちゃん。だって、プロデューサーの方がはしたなかったもん」

 

「えっ……?プロデューサーさんが……ですか……?」

 

「だってぇ〜、プロデューサーってばね?文香ちゃんに密着されて、すっご〜くデレデレしてたんだよ〜?」

 

「ふあっ……で、デレデレ……//」

 

「おい!変なことを言うなっ!別に俺は、デレデレなんかしてないぞっ!//」

 

「じゃあ、嬉しくなかったの?」

 

「……いや……そ、それは……その……嬉しくなかったって言えば……嘘になるけどさ……//」

 

「ほ〜ら、やっぱりぃ〜。プロデューサーのえっち〜」

 

「うぅ……恥ずかしいっ……でも……私も、その……プロデューサーさんが隣にいてくれたので……」

 

「……つい……安心して……身を委ねてしまったのかもしれませんね……うふふ……♪」

 

「文香……」

 

「「……//」」

 

「む〜っ……もう!文香ちゃん行こっ!プロデューサーってば、私たちでイヤらしいことを考えてるからっ!」

 

「はあっ!?だ、だから!そんなことはないって!」

 

「ウソツキ!すっご〜くデレデレしてたもん!ねっ、行こうよっ!」

 

「えっ……?は、はいっ……では……失礼させてもらいますね……」

 

「ふ〜んだっ!プロデューサーのおバカ!えっちっ!!」

 

「酷い言われようだな……でも、意外だったな……文香があんな大胆になるとは……」

 

「……まだ……かすかに、腕に温もりが残ってる様な……って!な、何を考えてるんだ!俺はっ!」

 

「あぁもう……本当に熱中症になりそうだっ……!さて!休憩も済んだし、俺もまた泳ぎに行くか!//」

 

------------------------------------------------

 

ザァ~ッ……

 

「……ふぅ……流れるプールは、やっぱりいいなあ……」

 

「貸切状態の誰もいないプールで、浮き輪の上で空を眺めながら、流れに身を任せる……最高に優雅だ……」

 

「たしか、愛梨と美波がこのプールで遊ぶって言ってたしな。アイドルたちの様子見も兼ねて、楽しもう」

 

「ちょっと、一周が長いけど……ま、流れてるうちに、二人と合流するだろ」

 

「……」

 

「……あっ……さぁ〜ん……」

 

「……ん?今、誰かの声が聞こえた様な……気のせいか?」

 

「……プロデューサーさぁ〜ん……ここですぅ〜……」

 

「こっちから、何やら声が……あっ……あそこのヤシの木の影に、誰か……って……」

 

「……」

 

「……愛梨?……お〜いっ!愛梨〜〜〜っ!!」

 

「……っ!」

 

「どうして……あんな木の裏に隠れてるんだ……?」

 

「……//」

 

「……う〜ん、何やら困ってそうな感じだし……よし、行ってみるか」

 

------------------------------------------------

 

「よぉ、愛梨。そんなところで、何をしてるんだ?」

 

「あぅっ……プロデューサーさぁん〜……少し、困ってたんですぅ〜……」

 

「どうしたんだ?何か、落としちゃったのか?」

 

「うぅ……その……笑わないでくれますか……?」

 

「ははっ、そんなことをするわけないだろ。いいから言ってみなって」

 

「そうですか……では……実を言いますとぉ……水着を……落としちゃったんですっ……//」

 

「何だ、そうだったのか。……って……は……?……落としたってことは……まさか……」

 

「……はい。つまり……見ての通り「何も」つけてないんですっ……//」

 

ムチッ……♪

 

「見ての通りって……ゴクリ……」

 

「やんっ……そんなにジロジロ見られると、その……とても恥ずかしいですっ……//」

 

「……っ……ご、ごめん!それで?愛梨も、この流れるプールで遊んでたんだよな?」

 

「はいっ……おそらく、この流れるプールのどこかに、愛梨の水着が流れてると思います……」

 

「そうか……じゃあ、探しに行ってくるよ。その間も、しっかりと手で隠してるんだぞ」

 

「あっ……いやっ!待ってくださいっ!……愛梨と一緒に……ここにいてください……」

 

「えっ……?いや……でも、探さないと愛梨の水着が……」

 

「この状態のままで……一人は怖いです……。もし……待ってる間に、変な人に襲われたりしたら……私……」

 

「っ……う〜ん……確かに……。この流れるプールは結構長いし……美波が来るまで……」

 

「……わかったよ。こんな、あられもない状態の愛梨を、一人にしておくわけにはいかないからな」

 

「うふふ……♪ありがとうございます♪では、このまま……えいっ……♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!?あ、愛梨……いくら何でも、そんなに密着すると……ち、直接……当たってるって……//」

 

------------------------------------------------

 

「こうしないと、その……見えてしまいますし、それに……」

 

「……「生まれたままの姿」の愛梨を……守ってくれますよねっ……?//」

 

「生まれたままって……お前……//」

 

「うふふっ……♪プロデューサーさんは……愛梨のことを……どう思ってますか?」

 

「いや……どう思ってるって……し、知るかっ!そんなのっ!!//」

 

「あんっ……うふふっ……♪でも……愛梨はとっても……ドキドキしていますよっ……♪」

 

「……それに……二人っきりの今なら……「チャンス」だよね……」

 

「……?」

 

「……何だか……プロデューサーさんの目って……すごい綺麗ですねぇ……♪」

 

「えっ?……おい……愛梨……?」

 

「まるで宝石のようで……何だか、このまま……吸い込まれちゃいそうです……」

 

「ちょっ……な、何をしてるんだよ……!?顔が近いって……!//」

 

「……私……プロデューサーさんのこと……んっ……」

 

トントン

 

「……あの〜、おアツイところを、お邪魔してすみません♪お二人とも、こんなところで何をしてるんですか♪」

 

「……ん?あっ、いいところに来てくれたな!今、愛梨の水着が……って……」

 

「……♪」ニコニコ

 

「……っ!み、美波っ……!」

 

------------------------------------------------

 

「はいっ、愛梨ちゃんっ♪これ、愛梨ちゃんのだよね?」

 

「わぁ〜っ♪ありがとう〜♪美波ちゃ〜んっ♪」

 

「よかったな、愛梨。まさか、美波が先に、愛梨の水着を見つけてくれてたなんて」

 

「流れるプールで泳いでいたら、偶然見つけたんですっ♪グッドタイミングでしたね♪」

 

「ふぅ……これで、一件落着だな。よかったよかった」

 

「……それで?さっきのは一体、どういうことなんですか♪」

 

「ぐっ……ち、違うんだ!さっきのあれには、深いわけがっ……!」

 

「「何もつけてない」愛梨ちゃんと、あれだけ密着して見つめ合って……もしかして私、お邪魔でしたか♪」

 

「だから、本当に違うんだって!なっ、愛梨!!」

 

「そ、そうですよ!プロデューサーさんには、その……ただ「抱いて」もらってただけなんですっ……//」

 

「……へぇ〜……うふふ……♪プロデューサーさんっ♪少し「二人っきり」でお話をしましょうか♪」

 

「いや……だから、俺は愛梨を……」

 

「お話、しましょうね♪」

 

「……はい……わかりました……」

 

「決まりですね♪では、まずは愛梨ちゃんを、集合場所まで送りましょう♪」

 

「ありがとうっ♪それと、プロデューサーさん……ごめんなさいっ♪」

 

「……でも……愛梨で、あんなにドキドキしてくれたんだ……えへへっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「……♪」

 

「あの……美波さん?もしかして……怒ってます……?」

 

「いえいえ、そんなことはないですよ♪むしろ、感心してるんです♪」

 

「人気のないプールの木陰で、二人っきりで一夏の逢瀬を……とてもロマンティックですよね♪」

 

「逢瀬……って!だからっ!あれはあくまで、愛梨の安全のために仕方なくだなっ……!//」

 

「はいはい♪そういうことにしておいてあげます♪……全くもう……目を離すと、すぐにこれなんだから……」

 

「……みんなに優しくして……だから、愛梨ちゃんも……本当にもう……困っちゃうなあ……」

 

「?」

 

「……とにかくっ「私たちの」プロデューサーさんなんですから、もう少し、しっかりしてくださいね?」

 

「うぐっ……は、はい……反省します……」

 

「ふふっ……♪さて、反省の言葉も聞けましたし、プロデューサーさん♪準備はいいですか♪」

 

「……あ、あぁ……。なぁ……これって……」

 

「えぇ♪見ての通り、ウォータースライダーですよ♪せっかく貸切なんですし、乗ってみたかったんです♪」

 

「二人で喋ってたら、いつの間に……通りで、高台の階段を登ってると思ったら……」

 

「このスライダーは、とても長いんです♪だから……「カップル向け」の、この浮き輪で楽しみましょうね♪」

 

「えっと……美波?俺……さっき、美波と約束をしたよな?……「しっかりしないと」って……」

 

「あの……プロデューサーさんっ?私だって、アイドルである以前に普通の女の子なんですよ?」

 

「……「好きな人」を……独占したいって気持ちも……もちろん、ありますっ……♪//」

 

「えっ……?」

 

「ふふっ……♪では、私が前で……はいっ♪プロデューサーさんは、後ろに座ってください♪」

 

「そして、流れる水に浮き輪をセットして……では、行きましょうっ♪よ〜いっ、スタートっ♪」

 

「ちょっ……こ、この体勢って、俺が美波を……うわああああっ!?」

 

ギュッ

 

「あんっ……プロデューサーさんってば、おもいっきり私を……大胆なんですから……//」

 

「な、なあっ!?このスライダー、結構スピードが早くないかっ!?」

 

「そうですねぇ〜!きゃあ〜♪はや〜いっ♪……ふふっ……今だけは……独り占めですっ……♪」

 

「……ううん。これからも、ずっと……後ろから、私を抱きしめていてくださいねっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……やっと、解放された……」

 

「美波め……あれから、何回も俺をスライダーに連れ回して……いくら何でも、はしゃぎすぎだろ……」

 

「しかも……あんな恥ずかしい体勢で、何回も……美波はアイドルなんだぞっ……!//」

 

(今は「私だけ」のプロデューサーさんですっ♪だから……離しませんよっ……うふふ……♪)

 

「……何か、謎の圧も感じたし……ま、いいか。美波が楽しんでくれたなら、結果オーライだな」

 

「正直、俺も途中から楽しんでたし。さて、俺はとりあえず、一旦みんなのいる集合場所に戻って……ん?」

 

「ねぇ、文香ちゃん♪夕美ちゃん♪俺たちと遊ぼうよ〜♪」

 

「えっと、その……先約がありますので……ごめんなさい……」

 

「えぇ〜、先約ぅ〜?今日は俺たち、関係者だけで貸切状態なのに、誰を待ってるの〜?」

 

「……とにかく、すみません。お気持ちだけ受け取ります。さぁ行こっ、文香ちゃん」

 

「……あ、そっか♪恥ずかしがってるんだね♪もう〜、二人はかわいいなあ〜♪」

 

「きゃっ……!……こ、困りますっ……!」

 

「先約ってつまり、俺たちのことだったんだね♪じゃあさっそく、遊ぼうぜ♪」

 

「……やだっ……離してっ……!」

 

「……俺たちって、こう見えてもディレクターとして結構、業界内で顔が広いんだよね〜♪」

 

「だから……このまま「関係」をもってくれたら……たくさん、仕事を紹介してやれるぜ……?」

 

「「……っ!」」

 

「二人とも、前から輝いてる逸材だとおもってたんだよね〜♪かわいいし♪綺麗だし♪魅力的だし♪」

 

「……それに……かなり「セクシー」だしねっ♪……俺……ずっと前から、二人のことを……ぐへへ……」

 

「……すみません。私のアイドルたちに、何か用ですか?」

 

------------------------------------------------

 

「あっ……プロデューサーっ……!」

 

「あん?アンタは確か……この子たちの……」

 

「はい、プロデューサーです。何か、ご用でしたでしょうか?」

 

「……別に……俺たちはただ、楽しく他愛もない会話をしてただけだよ」

 

「それにしては……何だか少し、彼女たちが怯えていませんか……?」

 

「なあ……一体、何が言いたいんだ?」

 

「この子たちは、私の大切なアイドルです。だから……」

 

ギュッ

 

「「あっ……//」」

 

「……「仕事」の話は……私を介してからにしてください」

 

「っ……!……ちっ……わあったよ。ほら、行こうぜ」

 

「あ、あぁ……そうだな……。くそっ……俺の文香ちゃんと夕美ちゃんを、目の前であんな大胆にっ……!」

 

「……」

 

「……ふぅ。夕美、文香、大丈夫だったか?」

 

「あっ……そ、そのっ……うん……ありがとう……//」

 

「……あの……守ってくださり……ありがとうございます……//」

 

「よかった無事で。全く……たまに、ああいう変なスタッフがいるんだよな」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇ……さっきのプロデューサー……すごい、カッコよかったよ……//」

 

「ははっ。当然のことをしたまでだよ。大切なアイドルを守るのも、俺の役目だからな」

 

「ふふっ……♪やはり……プロデューサーさんは……男の人なのですね……♪」

 

「……こんなに力強く……抱き寄せてもらうと……とても……逞しさと体温を感じます……♪//」

 

「えっ?抱き寄せ……うわっ!?わ、悪いっ!!//」

 

「えへへ……♪抱き寄せてもらってる間……とっても安心しちゃった……♪//」

 

「いや……本当に悪い……。別に、そういうつもりはなかったんだ」

 

「皆まで言わなくても、大丈夫ですよ……プロデューサーさんは、とてもお優しい方ですもの……//」

 

「うんうん♪それに……「素敵な人」に颯爽と守ってもらうのは……乙女の憧れだしねっ♪//」

 

「そ、そうか……?ならいいんだけど……じゃあ、無事に済んだことだし、集合場所に戻ろうぜ」

 

「うんっ♪そうだねっ♪じゃあ〜……え〜いっ♪」

 

「なっ……!?」

 

「今度は、私たちがプロデューサーを守る番だよ〜♪ねぇ〜、文香ちゃ〜んっ♪」

 

「……えっ……!?あ、あのっ……そのっ……では……えいっ……!//」

 

「ちょっ……文香まで……!二人して、いきなり何だよっ!!//」

 

「気にしない気にしない♪じゃあさっそく、ご〜♪」

 

「「えへへ……♪・うふふ……♪」」

 

------------------------------------------------

 

「よぉ、奏。今、戻ったぞ」

 

「おかえり……あらっ……何だか随分と、華やかね」

 

「ん?華やかって何だよ」

 

「両腕に、綺麗な花を咲かせちゃって……あ〜あ。見てるだけで顔が火照ってくるわ」

 

「いやいや。少し、変なのに絡まれてたんだよ。な?夕美、文香」

 

「えっ……?そ、そうだね!突然のことで、ちょっと怖かったけど……」

 

「……プロデューサーに守ってもらって……とても安心しちゃった……♪ねっ、文香ちゃん♪//」

 

「えぇ……♪プロデューサーさんに……颯爽と守っていただきました……♪」

 

「ふ〜ん……えっちね」

 

「はあっ!?な、何だよそれっ!」

 

「何でもないわ。ただの独り言よ。それじゃあさっそく、メインディッシュといきましょう」

 

「メインディッシュ……?何のことだ?」

 

「ほら、日も少し落ちてきたでしょ?ここのプール施設は、ナイトプールもやってるのよ」

 

「ナイトプール……おぉ。そういえば、夜はそういうイベントがあるって聞いたな」

 

「わぁ〜♪ナイトプールかぁ〜♪一回、行ってみたかったんだよねぇ〜♪」

 

「夜のプール……始めての体験ですね……♪」

 

「じゃあ、美波と愛梨も先に行って待ってるし、私たちも行きましょう。あ、ところでプロデューサー?」

 

「何だよ?」

 

「……月が綺麗なナイトだからって……オオカミになっちゃダメよ?「ナイト様」」

 

「……は?」

 

「あら、いけない。楓さんが少し移ってしまったかしら。さっ、向かうわよ」

 

------------------------------------------------

 

「わ〜いっ♪とっても綺麗ですぅ〜♪あっちにも行ってみましょう♪奏ちゃんっ♪」

 

「えぇ……そうね♪とても綺麗で幻想的だわ♪」

 

「ふふっ……奏ちゃんと愛梨ちゃん、すごく楽しそうだねっ♪」

 

「そうですね……♪しかし……人生で始めて……このナイトプールというものを経験しましたが……」

 

「……いいですね……♪こうして、プールの上で寝ていると……まるで、夢でも見ているような気分です……♪」

 

「気に入ってもらえてよかった♪私もいつか、文香ちゃんと一緒にこうしてみたかったの♪」

 

「……うふふ……♪私も……美波さんとこういうことが出来るのを、ずっと……夢に見ていましたよ……♪」

 

「えっ……それって……つまり……//」

 

「……あっ……す、すみませんっ……!これは、つまり……言葉の綾と言うものでして……//」

 

「「……//」」

 

「……プロデューサー、お疲れ様♪隣、いいかな?」

 

「ん……?あぁ。夕美も仕事お疲れ様。今日は頑張ってくれてありがとうな」

 

「ううん♪気にしないで♪みんなと一緒に遊べたり、お仕事が出来たりして、とっても楽しかった♪」

 

「ははっ。それはよかった。これからもよろしく頼むぞ、夕美」

 

「うんっ♪よろしくねっ、プロデューサー♪」

 

「「……」」

 

「うふふ……♪何だか、いいムードだね……♪それに……とっても幻想的……♪」

 

「あぁ。昼とはまた違った趣があるよな。さすがは、ナイトプールだ」

 

「そうだね♪……ねぇ……プロデューサー……?今からさ、その……私についてきてくれないかな……?」

 

「えっ?別にいいけど……どこに行くんだ?」

 

「えへへ〜……ひ・み・つ♪それじゃあ……私についてきてっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「お〜いっ♪こっちだよぉ〜♪」

 

「何だか……随分と暗いところに来たな……」

 

「そうだね♪ここは、プールから少し離れてるから、真っ暗な雑木林になってるみたい♪」

 

「で……?どうしたんだ?俺をこんな暗いところに呼び出して」

 

「うふふっ……♪えっとね〜♪ここに呼び出した理由は〜……」

 

「……もう……ね……我慢出来なくなったの……」

 

「えっ……んぐっ……!?」

 

「「……」」

 

「……えへへ……少し長めの……「オトナの」キスをしちゃった……♪」

 

「ぷあっ……ゆ、夕美……!?急に……何を……!//」

 

「もう……ダメだぞ……?こういうことを、女の子からさせちゃ……//」

 

「……本当は、プロデューサーからしてもらいたかったんだけど……待ってても、してくれないだもん……♪」

 

「してくれないって……お前……」

 

「あの時……プロデューサーに、颯爽と守ってもらった時から……」

 

「……ううん。始めて出会った時から……私の心に、紫色のライラックが咲き始めたの……♪//」

 

「だからね……他の子より少し……「フライングスタート」をしちゃった……♪」

 

「……とりあえず……一旦落ち着いて、離れようぜ……?なっ……?」

 

「い〜やっ♪返事をくれるまで、離さないよ♪……えいっ♪」

 

ムニュッ♪

 

「うあっ……!?//」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ……♪ねぇ……私の「やわらかい」鼓動……聞こえる……?」

 

「ちょっ……夕美!こ、これ以上は……本当にヤバいって……!……うわっ!?」

 

「きゃっ!!」

 

ドサッ!

 

「ご、ごめん!大丈夫か!?」

 

「……あはっ……♪これが……プロデューサーの答えなんだ……♪」

 

「いや、悪い……つい、つまづいて押し倒してしまって……今すぐ起き上がるから……っ……!?」

 

「ダ〜メ♪離さないよぅ♪えへへ……プロデューサーってば、こんなにドキドキしちゃってるんだ……♪」

 

「ちょっ……ゆ、夕美っ!何をしてるんだよ!?離せっ!!//」

 

「や〜だっ♪うふふ……私たちって今……お互いに、ほぼ「生まれたままの状態」だねっ……♪」

 

ムニュッ……♪

 

「くあっ……ゆ、夕美……何をしてるんだよっ……!こんなところを……誰かに見られたら……!//」

 

「大丈夫だよっ♪お月様も恥ずかしがっちゃうから、誰も見てないよっ♪……だから……」

 

「……プロデューサーの、この鼓動の答えを……教えて欲しいな……?……来てっ……♪//」

 

「……っ……!」

 

(月明かりに照らされ、艶かしく光る、艶やかな白い肌、唇……全身に感じる、夕美の感触……)

 

(……そして……目と鼻の先に……何かを求める……妖艶な潤んだ瞳……)

 

「……このまま一緒に、二人だけの「大切な」思い出を作ろうよ……♪……ねっ……♪//」

 

「……くっ……や、やっぱりダメだっ!こんなことっ!!」

 

「きゃっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「ゆ、夕美!いいか!夕美はアイドルなんだぞ!?こんな悪ふざけはやめろよ!//」

 

「あんっ、もうっ……ざ〜んねん。あと、もう少しだったのになあ〜……」

 

「……でもね、聞いて。私はこんなこと、決して冗談ではしないよ」

 

「プロデューサーを想う気持ちは本当。……でも……それは「みんな」も同じ……」

 

「だからね……私の、本気の気持ちを……知って欲しかったんだ……」

 

「っ……夕美……」

 

「それに、プロデューサーは優しすぎるからね〜。こうでもしないと、私のことを全然見てくれないんだもん」

 

「……だから……せめて、私の「始めて」は、プロデューサーにもらって欲しかったの……//」

 

「……ありがとう。夕美の気持ちはとても嬉しいよ。だけど……俺にはまだ、心の整理が……むぐっ!?」

 

「ダ〜メっ♪私にイジワルをしたんだから、プロデューサーにもイジワルを仕返しちゃうもん♪」

 

「むぐっ……ぷあっ……な、何をするんだよ!」

 

「これ以上はお口をチャックだぞ♪散々、私の乙女心を弄んだバツだよっ♪」

 

「いや……俺は、別に……意地悪で言ってるわけじゃ……」

 

「あ〜♪聞こえな〜いっ♪それじゃあ、みんなも心配するだろうし、プールに戻ろうか♪ほら、行くよ♪」

 

「ちょっ……わ、わかったから、そんな急に引っ張るなっ!」

 

「うふふ……♪あのね、私はと〜っても独占欲が強いの♪だから……」

 

「……「絶対に」あきらめないんだから……覚悟をしてねっ……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……あ〜っ!プロデューサーさんと夕美ちゃんがいましたぁ〜!!」

 

「んもう!二人とも、どこに行ってたんですか!?心配したんですよ!?」

 

「ご、ごめんごめん!少し、探し物してたんだよ!なっ!夕美」

 

「うんっ。みんな、心配をかけてごめんね」

 

「お二人とも……無事でよかったです……」

 

「ふぅ……人騒がせなんだから……ま、よかったわ。それより、そろそろチェックインの時間じゃない?」

 

「チェックイン……あ、そうだったな。じゃあ、そろそろホテルに向かうか」

 

「えへへ〜……♪二人とも、無事でよかったですう〜♪」

 

「そうね。……ところで……夕美?一つ、いいかしら」

 

「ん?どうしたの?奏ちゃん」

 

「手まで繋いで……「随分と」仲睦まじそうにしてたけど……何かあったのかしら?」

 

「ん〜?別に、何もなかったよ?どうしたの?」

 

「そう、ならいいんだけど。プロデューサーは「ナイト様」だから、夕美のことを心配してたのよ」

 

「うふふ……♪心配してくれてありがとうっ♪……でも……安心して♪」

 

「……奏ちゃんが「想ってる」ことは……何もしてないよ……♪」

 

「……っ!?//」

 

「さぁて♪それじゃあ、みんなでホテルに戻ろ〜うっ♪」

 

「ちょっ……夕美!それって、どういう意味なのよ!待ちなさいっ!//」

 

「知らな〜い♪ほら、プロデューサーも行こうよ♪……手を繋いだままね……♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「おはよう♪プロデューサー♪」

 

「おっ、夕美。おはよう」

 

「この前の、収録の時はありがとうね〜♪色々と楽しかったよ〜♪」

 

「それはよかった。俺からもお礼を言わせてくれ。いつも、仕事を頑張ってくれてありがとう、夕美」

 

「ううん♪お互い様だよ♪それに……大切な思い出も……作れちゃったし♪……えへへ……//」

 

「……ん?どうしたんだよ。人差し指で、口を押さえて」

 

「……あの時……「初めて」を、プロデューサーにあげちゃったもんね……♪」

 

「あの時……っ……!//」

 

「今は……二人っきりだよ……?だから……プロデューサーからも……欲しいな……?//」

 

「だ、だから!変なことを言うな!だいたい、俺と夕美はアイドルとプロデューサーでだなっ……!//」

 

「ぶぅ〜……。はいはい、言われなくてもわかってますよ〜だっ。じゃあ、今回はあきらめてあげますよ〜」

 

「全く……//」

 

「……な〜んてね♪え〜いっ♪」

 

ギュ~ッ♪

 

「うわっ……!?//」

 

------------------------------------------------

 

「えへへ〜……♪お仕事に行く前に、プロデューサー分をた〜っぷり補給しちゃうんだから♪」

 

「ちょっ……ゆ、夕美……!だからっ……!//」

 

「……やっぱり……プロデューサーの胸は、落ち着くなあ〜♪」

 

「……くっ……!」

 

「ねぇ……プロデューサーは……こういう私は……嫌い……?」ウルッ

 

「……知るかっ!とにかく!夕美はもう少し、自分がアイドルだってことを自覚しろっ!!//」

 

「うふふ……は〜いっ♪じゃあ、親睦を深めた証として、プロデューサーにはぁ……」

 

「……じゃじゃ〜ん♪はいっ♪これ、私からのプレゼントねっ♪」

 

「ん……?これは……花?」

 

「そうだよ♪これは、ペチュニアって種類の花なんだ♪どう?かわいいでしょ♪」

 

「あぁ。綺麗な赤色じゃないか。俺にくれるのか?」

 

「うんっ♪この子のことを、大切に育ててあげてね♪」

 

「ありがとう。それじゃあ、俺のデスクに飾らせて貰うよ」

 

「じゃあ、プロデューサー分も補給したことだし、お仕事に行って……あ、そうだ♪言い忘れてた♪」

 

「お花ってね、結構寂しがりやさんなんだ。常に様子見をしたり、構ってあげないとすぐに枯れちゃうの」

 

「だから……「ずっと」……その赤いペチュニアの花を、隣に飾ってかわいがってあげてね♪……約束だよ♪」



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縁日シンデレラ 諸星きらり

ピコピコ

 

「……」

 

カタカタ

 

「……」

 

「……あっ……ねぇ〜、プロデューサー。そこの飴袋を取ってぇ〜」

 

「ん……?何だよ。そのくらい自分で取ればいいじゃないか」

 

「エ〜。だってぇ、このフカフカ堕落クッションからだと、飴袋に手が届かないんだも〜んっ♪」

 

「あのなあ……ふぅ、しょうがないなあ。ほれ、この飴袋でいいのか?」

 

「うんっ、サンキュ〜♪じゃあ……あ〜んっ♪」

 

「あぁ、いくぞ。個包装を開けて……あ〜ん……って!何をさせる気なんだよ!あとは自分で開けて食えっ!」

 

「んもう……それくらい、いいじゃ〜ん……ケチぃ……」

 

「ケチも何もあるか!いいか!杏はアイドルなんだぞ!?」

 

「むぅ〜……はいはい。わかりましたよ〜だっ……何さ……せっかく「二人きり」なのに……」

 

カチャッ

 

「にゃっほ〜いっ♪おっすおっす☆二人とも、おっはよ〜☆」

 

「おっ、来たか。おはよう、きらり」

 

「おはよ〜。ねぇ、聞いてよ〜きらりぃ〜。プロデューサーってば酷いんだよ〜?」

 

「うきゅ?杏ちゃん、どうしたの〜?」

 

「杏ね、両手が塞がってて忙しいのに、プロデューサーが杏に飴を食べさせてくれないんだ〜」

 

「忙しいって……お前……ずっとクッションに座りながら、ゲームをしてただけだろ……」

 

------------------------------------------------

 

「ふ〜ん……んもう、Pちゃんっ!メッ、だよっ!」

 

「その通り。きらりからも、杏に何か言ってやってくれ……って……お、俺っ!?」

 

「そうですっ。杏ちゃんも女の子なんだから、もう少し乙女心をお勉強しなきゃいけませんっ」

 

「そ〜だそ〜だ〜♪杏は「花も恥じらう乙女座」なんだぞ〜♪」

 

「乙女心って……飴と一体、何の関係があるんだよ……?」

 

「んも〜……Pちゃんは本当にもう〜……しょうがないなあ〜。……じゃあ……」

 

「……Pちゃんはぁ〜……きらりのこと……しゅき……?」

 

「えっ?好きって……何がだ……?」

 

「いいから♪いいから♪ちなみにぃ……きらりはPちゃんのことがぁ……だ〜いしゅき、だよぉ〜♪」

 

「いや……その……それは嬉しいけど……突然、そんなことを言われてもなあ……」

 

「うふふっ……♪もし、しゅきならぁ……きらりにぃ……飴を食べさせて欲しいなあ〜♪な〜んて……♪//」

 

「あ〜っ!ちょっと、プロデューサー!きらりにはあげて、杏には飴をくれないの〜!?」

 

「ちょっ……あぁ、もう……わかったよ。何だかよくわからないけど、飴をあげればいいのか?ほらっ」

 

「わ〜いっ♪ありがとうっ☆じゃあ……いっただきま〜すっ☆……ん〜☆飴ちゃん、おいすぃ〜〜〜☆」

 

「ほら、杏も食べるんだろ?口を開けろって」

 

「やった〜♪プロデューサーってば、わかってるぅ♪あ〜んっ♪……えへへ……うまうま〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「で?結局、その乙女心とやらは関係あるのか?」

 

「うんっ♪「Pちゃんから」飴をもらうことに、意味があるんだよぉ〜♪ねぇ〜☆杏ちゃ〜んっ☆」

 

「むぐむぐ……そうだねぇ〜。プロデューサーは本当に鈍感すぎて、困っちゃうよぉ〜」

 

「そうかそうか。そりゃ、何よりだ。じゃあさっそく、仕事に行こうぜ」

 

「エ〜。それとこれとはまた、話が別……う、うわっ……!?ちょっ……な、何をするのさっ!」

 

「杏が仕事に行きたくないって、駄々を捏ね始める前に実力行使だ。飴をやったんだから働いてもらうぞ」

 

「にょわ〜……Pちゃんってば……だいた〜ん……//」

 

「実力行使もなにも……こ、これって!お姫様抱っこじゃんっ!杏は、花も恥じらう乙女座なんだよ!?//」

 

「ほぉ〜?じゃあ、今から俺たちと一緒に、仕事に行ってくれるか?」

 

「いや……それはその……あ、杏は自分を曲げないよっ!」

 

「はい、決定。じゃあ車まで、この体勢のままお送りしますよ、杏姫様」

 

「ちょっ……い、イヤだ〜!離せぇ〜〜〜!働きたくないよ〜〜〜!」

 

「さあ、きらりも準備をしてくれ。俺は、お姫様をかぼちゃの馬車に乗せて差し上げなきゃいけないからな」

 

「……」

 

「……きらり?」

 

「ひえっ!?あっ……そ、そうだねっ……!それじゃあ、れっつごぉ〜☆だよっ☆」

 

------------------------------------------------

 

「本日はありがとうございました。また、よろしくお願いします。じゃあ、行こうか。きらり、杏」

 

「うんっ♪事務所にかえろ〜うっ♪」

 

「そうだね〜……あ”〜、疲れたぁ〜。軽く一年分は頑張ったよ〜……」

 

「杏ちゃんってば、しゅっご〜くお仕事を頑張ってたもんねぇ〜☆なでなで〜♪」

 

「全く……普段から、クッションに座ってダラダラしてばかりだからそうなるんだぞ」

 

「……むっ……だいたい、プロデューサーが悪いんだぞっ。杏を必要以上に酷使するんだから〜」

 

「二人とも、人気アイドルなんだからしょうがないだろ。それに、優雅な印税生活とやらを送りたいんだろ?」

 

「うぐっ……それは……そうだけどさ……」

 

「な?だったら「あんきら」には、どんどん活躍してもらわないとな。せっかく、輝いてるんだし」

 

「むぅ……し、しょうがないなあ……。じゃあさ、その……杏は褒められて育つ子だからさ……」

 

「……たまには……頭を撫でて、褒めてくれてもいいんだよ……?」

 

「あ〜、はいはい。杏姫様にはずっと、頑張ってもらわないといけないしな。ほらよ」

 

ナデナデ

 

「あっ……な、何だよぅ……今回は……素直じゃん……//」

 

「「今回は」は余計だ。……ん?」

 

「むぇ?Pちゃん、どうしたの?」

 

「……おっ、どうやら明日、ここの周辺でお祭りがあるみたいだな」

 

「お祭り……あぁ〜。何だか飾りつけの準備をしてるね。それに、屋台の準備とかもしてる人がいるし」

 

「ええっ!?お祭りぃ!?わぁ〜☆しゅご〜く、楽しそうだにぃ☆」

 

「もうすっかり夏だねぇ〜。ま、クーラーが効いた部屋が大好きな、インドア派の杏には縁がない話だけど〜」

 

「んも〜。ダメだよぉ?杏ちゃんっ。たまにはお外でも、楽しいことをしないとぉ〜」

 

------------------------------------------------

 

「そうだ。きらりの言う通りだ。……あ、じゃあせっかくだし、明日行ってみるか?この三人でさ」

 

「わぁ〜♪いいね☆いいねぇ〜☆きらりはさんせ〜いっ☆」

 

「エ〜、どうしよっかなあ〜。……じゃあ〜、杏にあま〜いりんご飴を奢ってくれるなら、一緒に……」

 

「……」ソワソワ

 

「……な〜んてね。杏、明日は紗南ちゃんとゲームをする約束をしてるんだ。だから、今回はパ〜ス」

 

「紗南と……そうか。じゃあ、約束があるならしょうがないな」

 

「だからぁ……きらりと二人っきりで、お祭りを楽しんで来なよ♪ねぇ〜、きらりぃ〜♪」

 

「ふぇえっ!?ふ、二人っきりぃ……!?//」

 

「たまには、二人っきりの水入らずでお祭り「デート」もいいじゃん♪プロデューサーもそう思うでしょ?」

 

「デートって……まあ……俺は、きらりがいいならいいけど……どうする?」

 

「あっ……あのぉ……そのぉ……き、きらりもっ……Pちゃんがいいなら……いいよっ?」

 

「はい、けって〜い♪ひゅ〜ひゅ〜♪ぱふぱふ〜♪あ、あと、りんご飴のお土産もお願いね〜♪」

 

「お前なあ……まあ、いいか。それじゃあ、きらり。俺たち二人でお祭りに行こうか」

 

「そっ……そうだねっ……!…………杏ちゃん……ありがとう……」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「ぴえっ!?な、何でもないよっ!Pちゃんとお祭り、しゅっご〜く楽しみだなあって思っただけだにぃ☆」

 

「そうか、俺も同感だ。きらりと二人っきりだなんて、久しぶりだからな」

 

「……んっふっふ〜♪「あま〜い」りんご飴、すっご〜く楽しみだなあ〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……よしっ♪バッチシ☆これでぇ、き〜まりっ☆」

 

「……う〜ん、でもぉ……やっぱりぃ、何かが足りないような気がするなあ〜……あ、そ〜だっ♪」

 

「んっふっふ〜……まずはぁ〜、ポニィテ〜ルぅ〜♪こうやって、リボンで結んで……」

 

「そして少し……編み込みを加えて見てとぉ……きゃはっ☆これで少しは、オシャレになったかなぁ〜?」

 

「……にぇへへ……♪せっかく、Pちゃんと二人っきりなんだからた〜くさん試してみないとっ♪」

 

「二人っきりぃ……お祭りぃ……浴衣デートぉ……そして……うっぴゃっ〜〜〜!//」

 

「こんなに、お胸がドッキドッキしちゃってぇ〜……今からとってもぉ……緊張しちゃってるよぅ〜……」

 

「きらりんルームの鏡と、にらめあいっこをして数時間……髪型もなかなか決まらないしぃ……」

 

「だけどぉ……せっかくなら褒めてもらったり、かわいいって言ってもらいたりしたいよねぇ〜……」

 

「……うんっ!頑張らないとねっ!もっともっと試して、試行錯誤しなきゃっ☆」

 

「あっ!あとあと〜、髪型と似合いそうな浴衣を何着か試着してぇ……これで、ぱ〜ぺきだねっ☆」

 

「うぇへへ……♪明日はぁ……と〜っても、楽しみだなあ〜♪……むぇ……?……明日っ……?」

 

「……にょわあっ……!……今日はもう、寝るだけだったあ〜……」

 

「あうぅ〜……こんなに気合いを入れたのにぃ〜……」

 

------------------------------------------------

 

ワイワイガヤガヤ

 

「おぉ〜、とっても賑わってるじゃないか。流石はお祭りだ」

 

「うっきゃ〜♪色んな屋台があって、楽しそうだにぃ☆」

 

「いつもの見慣れてる光景でも、お祭りになると一気にきらびやかになるよな。まるで、今のきらりみたいに」

 

「むぇ〜……?きらりみたいにぃ……?」

 

「あぁ。いつものきらりもいいけど……今日の浴衣姿のきらり、とっても輝いてるぞ」

 

「ふぇっ……!?そ、そぉかなぁ〜……?//」

 

「あぁ。その他にも、髪型も編み込んであって浴衣と似合ってるし、あとまだまだ他にも……」

 

「……も、も〜〜〜っ!そんなに褒めても何もでないよぅ〜!でも……ありがとっ♪Pちゃんも、その……」

 

「……その浴衣姿……とってもカッコいいよおっ……☆//」

 

「ははっ、ありがとう。きらりと肩を並べられてたら嬉しいよ」

 

「にぇへへ……♪そ、それよりっ!さっそく二人で、屋台巡りをしようよっ!//」

 

「そうだな。じゃあきらり。色んな屋台があるけど、まずはどこに行く?」

 

「ん〜……あっ!じゃあ、まずは金魚掬いをやりた〜いっ☆」

 

「そうか。じゃあ、あそこの金魚掬いの屋台に行こうか」

 

「いらっしゃい。どうだい?金魚掬い、やってく?」

 

「はい、お願いします。じゃあきらり、ポイをもらいな」

 

「おや?お嬢ちゃん一人かい?せっかくだし、兄ちゃんもやっていきなよ。おじさんがおまけしておくからさ」

 

「えっ?いやいや……そんな……」

 

「遠慮するなって。カップルで仲良く、肩を並べてやった方が楽しいぜ。ほら、兄ちゃんの分のポイだ」

 

「あうっ……カップルっ……//」

 

「あ、あはは……ありがとうございます……」

 

------------------------------------------------

 

「とりゃっ!……あぅ〜……てりゃっ!……うぅ……そりゃっ!……」

 

「……むぇ〜……なかなか、上手く取れないよぉ〜……」

 

「ん?どうしたきらり、大丈夫か……?」

 

「わぁ〜……Pちゃんってば、そんなに金魚ちゃんを……しゅごいにぃ〜……」

 

「ははっ。そういうことか。金魚掬いにはちょっとしたコツがあるんだ。じゃあきらり、少し手を借りるぞ」

 

ギュッ

 

「ひゃわっ……!?ちょっ……ぴ、Pちゃんっ!?//」

 

「おっ、兄ちゃん。見せつけてくれるねぇ」

 

「そんな大袈裟ことじゃないですよ。さて、どの金魚が欲しいんだ?」

 

「あっ……う、うぅ〜……え、えっとね……そのっ……この、ちっちゃくてかわいい子がいいかなぁ〜……//」

 

「そうか。じゃあ、俺と一緒にやろうか。まずはポイを水面に近づけて……」

 

「……ううっ……//」

 

「そして、金魚が近づいてきたタイミングで瞬時に……って、きらり……?」

 

「ひゃあっ……!?な、何っ!?//」

 

「いや……顔を真っ赤にして俯いてたからさ。具合が悪いのかなって思ったんだよ」

 

「だっ、大丈夫だよっ!?Pちゃんの手……じゃなくてぇ!しっかりと、アドバイスを聞いてるよっ!//」

 

「ならよかった。じゃあ、続きをしようか。水面と平行になるように近づけてそのまま……」

 

「……うきゅう〜……さっきより、手を握る力が強いよぉっ〜……//」

 

「……ひゅ〜……あっついねえ。まるで、この縁日の熱気並だぜ」

 

------------------------------------------------

 

「にょわ〜っ……♪この金魚ちゃんたちぃ……と〜ってもかわいいにぃ☆」

 

「よかったな。大切に育ててあげるんだぞ」

 

「うんっ☆……これも……Pちゃんが、手取り足取り教えてくれたおかげだよっ……♪」

 

「いやいや。俺はただ、アドバイスをしただけだ。きらりが頑張ったから取れたんだよ」

 

「にぇへへ……♪あのね……もしよかったらぁ……この子たちを、事務所にスカウトしてあげない……?」

 

「えっ……事務所に……?」

 

「うんっ☆せっかく「二人」で取ったんだしぃ、事務所でこの金魚ちゃんを飼おうよっ☆」

 

「確かに……デスクに金魚鉢っていうのも、夏らしくてなかなか風流でいいかもな」

 

「そうでしょ♪そうでしょ〜♪アイドルのみんなもき〜っと、喜ぶと思うにぃ☆」

 

「そうだな。よし、じゃあこの金魚は俺たちで飼うか。俺たちの大切な思い出だしな」

 

「わ〜い☆けって〜い☆……ふふっ……♪Pちゃんときらりの……金魚ちゃんっ……♪//」

 

「……おおっ!そこのオニイさんとオネエさんっ!ちょっといいデスか〜?」

 

「……ん……?俺たち……?」

 

「ハウディ〜♪美味しい美味しい、タコヤキをお一つどうデスカ〜?」

 

「たこ焼き……スンスン……確かに、美味しそうな匂いが漂ってるな……」

 

「おう!ウチらの美味しいたこ焼きはどうや!兄ちゃんたちみたいにアッツアツで美味いで!」

 

「ふきゅう……き、きらりたちみたいにって……あうっ……//」

 

「ははっ……俺らみたいにねぇ……というか君たち、女の子だけで屋台をやってるの?」

 

------------------------------------------------

 

「イエス!エルの!……じゃなくて!アメリカ仕込みのデスソースとぉっ……」

 

「ワタシのおすすめの、ベリーテイストなアメリカの定番!ホットなマスタードが入ってるぅ……」

 

「ウチら特製の、アッチアチ激辛ロシアンたこ焼きがオススメや!ごっつ辛美味いで!!」

 

「えっとぉ〜……ロシアンたこ焼きってことはぁ……つまりぃ……」

 

「せや!6つのたこ焼きのどれかに一つだけ、激辛なたこ焼きがまじっとるんや!どや!面白いやろ!!」

 

「う〜ん……確かに、焼けたソースの匂いも美味しそうだけど……でも……ちょっと、激辛たこ焼きはな……」

 

「ベリーホットでも、味には自信があるデース♪……ゼヒ……お兄さんたちに、食べて欲しいなっ……?」ウルッ

 

「……っ!」

 

「オニーサン……?ワタシたちのラブが籠ったタコヤキは……とっても、デリシャスデスヨ……?」ウルッ

 

(くっ……ふ、二人とも……かわいいっ……!//)

 

「……そ、そうだね……じゃあ、せっかくだし……一つ、もらおうかな……あはは……」

 

「ホントウデスカ……!?センキュ〜ッ♪オニイサ〜ンっ♪」

 

ギュ~ッ♪

 

「うわっ……!?//」

 

「……っ!?」

 

「Oh……タイキ先輩ってば……とっても大胆デスねぇ……」

 

「あっ……そ、ソーリー……つい「トレーナー」と雰囲気が似てたので……いつものクセでっ……」

 

「えっ……トレーナー?」

 

「はっ……!い、いえ!何でもアリマセン!では、タマっ!お一つ、お願いシマ〜ス♪」

 

「よっしゃ!二人に負けへんぐらいのアツアツで、んまいたこ焼きを作ったるで!ちぃと待っててな!」

 

「……む〜っ」

 

------------------------------------------------

 

「……うぐっ……口の中がまだ、ヒリヒリするっ……!」

 

「Pちゃん……大丈夫……?」

 

「ま、まあ……さっきよりかは少し、落ち着いたよ……見事に「当たっちゃった」な……」

 

「もうっ、無理しちゃダメだよぉ……?普通のたこ焼きにした方が、良かったんじゃない〜?」

 

「まあ……ロシアンたこ焼きだったしな……とにかく、きらりが当たらなくてよかったよ……うん……」

 

「確かに、味は美味しかったけどぉ……あっ……もしかしてぇ……」

 

「……たこ焼きよりぃ……あの「女の子たち」が……お目当てだったんじゃないのぉ〜?」

 

「はあっ……!?そ、そんなことはないぞ!?俺は本当に、たこ焼きが食べたくて……」

 

「……素直に言ってくれたらぁ〜、このはぴはぴでしゅわしゅわな、ラムネをあげるんだけどなぁ〜?」

 

「うぐっ……!」

 

「Pちゃ〜ん〜?きらりはぁ〜、素直な子が好きなんだけどなぁ〜?」

 

「……いや、まあ……俺も一応、男だし……女の子に抱きつかれて……悪い気はしなかったけどさ……//」

 

「は〜い☆よく出来ました☆それじゃあ……約束通り、このはぴはぴなラムネをあげゆっ♪」

 

「あっ、あぁ……ありがとう……。では、さっそく……んく……んく……」

 

「……ふぅ〜……さっぱりしたぜ……口の中に残ってた辛さが消えたよ」

 

「むぇ〜……目を離すとぉ……す〜ぐこれなんだからっ……本当にもうっ……」

 

「……おっ、プロデューサーときらりさんじゃねえか」

 

------------------------------------------------

 

「うきゅ……?……あ〜☆梨沙ちゃんと晴ちゃんだぁ〜☆おっすおっす☆」

 

「おぉ、梨沙と晴か。こんばんは」

 

「こんばんは。偶然ね、こんなところで」

 

「それにしてもぉ、二人の着物姿……ちょ〜きゃっわ〜いっ♪はぐはぐ、ぎゅ〜っ♪」

 

「ちょっ……き、きらりぃっ!?」

 

「わぷっ……!おいっ!い、いきなりはびっくりするだろっ!」

 

「あっ……ご、ごめんねぇ……つい……」

 

「ふぅ……ま、いいわ。で?アンタたち二人は、ここでお祭り「デート」でもしてるのかしら?」

 

「ははっ。まあ、そんなところだ。きらりと二人で……ん?おい、晴。少しじっとしてろ」

 

「んあ……?何だよ……っ……!?//」

 

「……これでよしと。全く……ほっぺに、わたあめがついてたぞ?」

 

「あっ……そ、そうか……その…………ありがとう……//」

 

「はいはい。次からは気をつけてくれよ?晴は男勝りだけど、女の子なんだからさ」

 

「……じ〜」

 

「……ん?何だよ、梨沙。俺をそんなにじっと見つめて」

 

「……アンタ、やっぱりヘンタイなロリコンね」

 

「はあっ!?な、何でそうなるんだよっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「あんなナチュラルに、晴の頬を拭うなんてヘンタイよ。ねっ、きらりもそう思うでしょ?」

 

「ええっ!?そ、そんなことないよぉ……Pちゃんは、と〜っても優しくて……あとぉ……そのぉ……」

 

「……か、かっこよくて……素敵なお兄さんだからっ……//」

 

「……ふ〜ん……ま、晴もちょうど「優しい」から、きっと許してくれるわよ♪ね〜♪晴♪」

 

「んあ……?いや……別に、オレは怒ってなんか……」

 

「そうよね〜♪だって、アンタ今「優しいシャンプー」を使ってるもんね〜♪」

 

「なっ……!?」

 

「えっ、シャンプーって……何のことだ?」

 

「晴ってばねぇ〜、最近、自分専用のシャンプーを買ったのよ♪ねぇ〜♪晴ぅ〜♪」

 

「だ、だから何だよっ!別にいいだろっ!サッカーをしてると、その……汗をたくさんかくんだし……!//」

 

「スンスン……あれれ〜?今も優しい香りがするってことは、もしかしてアンタ「誰かさん」を意識し始めて……」

 

「……うるせえなあ!梨沙だって何だよ!最近、思いっきり「ブラコン」化してるじゃねえかっ!!」

 

「はあっ!?ぶ、ブラコンって……どういうことよっ!」

 

「この前「ウソでしょ!?だってアイツはロリコンよ!」だなんて、超必死だったらしいな〜?」

 

「……うっ……」

 

「むぇ……?梨沙ちゃんって、お兄さんがいたっけぇ?」

 

「由里子さんから聞いたんだよ。「パパに」取られそうなったからって、必死にロリコン認定をしようと……」

 

「わ、わ〜っ!何を言ってるのよっ!そ、それよりアンタ!いいものを持ってるじゃない!少しちょうだい!」

 

「ちょっ……!?おまっ……それっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「んく……んく……ふぅ〜……生き返ったわ〜♪やっぱり、夏のお祭りと言ったらラムネよね〜♪」

 

「……」

 

「……ん?何よ、そんな目でアタシを見て」

 

「いや……お前、そのラムネ……俺の飲みかけだぞ……?//」

 

「はいはい、勝手に飲んで悪かったわよ。じゃあ、今からあっちで買って……はあっ!?の、飲みかけっ!?」

 

「……梨沙ちゃん……大胆だにぃ……//」

 

「オレたちの目の前で、堂々と……お前……すげえな……//」

 

「ということは、つまり……ほ……ホント!アンタってヘンタイのロリコンねっ!万死に値するわっ!!//」

 

「ちょっ……何で、俺が悪いみたいになってるんだよ!勝手に飲んだ梨沙が悪いんだろうがっ!」

 

「うるさいうるさい!どうせ、わざとアタシにそういう目的で飲ませようと、仕組んでたんでしょ!」

 

「そんなわけあるか!第一、お前みたいなお子ちゃまにそんな大人気ないことするわけないだろ!」

 

「なっ……お、お子ちゃま……!ちょっと!それってどういうことよ!!」

 

「そのままの意味だっつうの!だいたい、お子ちゃまがそんなマセたことを考えてるんじゃねえ!」

 

「……な、何よっ!アンタだってガワだけ大人で、アタシがいないと何も出来ないロリコンなクセにっ!」

 

ギャー!ギャー!

 

「……晴ちゃん……二人ともぉ……と〜っても仲良しさんだねぇ……」

 

「……あぁ……な?言っただろ?「ブラコン」だって……」

 

------------------------------------------------

 

ゼェ~……ゼェ~……

 

「はぁはぁ……ったく……世話の焼けるお子ちゃまだぜ……!」

 

「それはこっちのセリフよっ……!これだから……見境のないおバカなロリコンは困るのよっ……!」

 

「ちょっ……だから、俺を勝手にロリコン扱いするな!だいたい、梨沙だって俺がいないと何も……」

 

「ハイハイ、スト〜ップ。いつまでオレ達の前で「イチャイチャ」してやがるんだ」

 

「「べ、別に!イチャイチャなんかしてないぞ!!・してないわよっ!!」」

 

「……二人ともぉ……あ〜つあ〜つ、ら〜ぶら〜ぶだったにぃ〜……」

 

「「何でこいつと!!・こんなヘンタイとっ!!」」

 

「ふぅ……息がぴったしじゃねえか……。それより、ほら梨沙、そろそろ行くぞ」

 

「っ……そうね。ふんっ、こんなイヤらしいロリコンと一緒にいたら、何をされるかわからないもんね」

 

「あのなあ……はいはい。それじゃあ梨沙には早く、立派なおねーさんアイドルになってもらわないとな」

 

「アタシはもう立派なレディーよ。だけど、アイドルにした以上はアタシをもっと輝かせなさい」

 

「……じゃないと……将来……パパにアンタを「紹介」出来ないじゃない……//」

 

「……ん?」

 

「と、とにかく!アタシはパパ一筋なのっ!変な勘違いをしたら、絶対に許さないんだからね!//」

 

「ま、これからもよろしくな。じゃあ、あとは二人で楽しんでくれ。お邪魔虫は退散させてもらうよ」

 

「ふわあっ……!ち、ちょっと……晴ちゃんっ……!//」

 

「……でも……たまには、その……ア……「アタシ」のことも……見てくれよなっ……じゃあなっ!//」

 

「うんっ、またな。よし、きらり。俺たちも行こうか」

 

「……」

 

「……きらり……?」

 

「……あっ……そ、そうだねっ……行こうか……」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜。しかしまあ、こんなところで梨沙と晴に出会えたとはな。奇遇だ」

 

「うんっ♪二人の浴衣姿がきゃわいいから、つい、はぐはぐギュ〜ってしちゃった☆」

 

「梨沙ももう少し気をつけて欲しいよな。まだお子ちゃまだから仕方がないけどさ」

 

「えっ……?そ、そうだね……」

 

「晴は顔にわたあめをつけて、梨沙は俺のラムネを勝手に飲んで……本当に、目が離せないぜ」

 

「う、うん……ねぇ……Pちゃん?Pちゃんは……どう思ってるの……?」

 

「ん?どう思ってるって……?」

 

「梨沙ちゃんと晴ちゃんも……女の子なんだよっ……?だから……どう思ってるのかな〜って、思って……」

 

「う〜ん……まあ、そりゃ……って!だから俺はロリコンじゃないっつうの!//」

 

「でも……だいしゅきってことは……違いないよね……?」

 

「大好きって……何だか誤解を生むような気がするけど……まあ、どちらかと言えば好きなんじゃないか?」

 

「きらりも……その「好き」に……入ってる……?」

 

「あぁ。何せ、みんなは俺の自慢のアイドルだ。アイドルになった以上は輝いてもらわないとな」

 

「……そっか……☆きらりも……Pちゃんのことが……「大好き」……だよっ……☆」

 

「ははっ、ありがとう。これからも一緒に、二人三脚で頑張って行こうな」

 

「うんっ☆ずっと、ず〜っと、きらりと一緒にはぴはぴしようね〜っ☆」

 

「……そっ、それでねっ……いつかは、えっとぉ……「男の人と女の人」になったりとかっ……//」

 

「……あ〜っ!やっほ〜♪プロデューサー君に、きらりちゃ〜んっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「えっ……?あっ、早苗さんじゃないですか。こんばんは」

 

「こんばんは〜♪ところで……アラアラ♪もしかして、二人でお祭りデート〜?よっ、この色男〜♪」

 

「にょわっ……で、デート……//」

 

「ははっ……まあ、そんなところですかね。早苗さんは……言わずもなくですね……」

 

「ふふ〜んっ♪お祭りと言えばやっぱりこの、泡の出る麦しゅわでしょっ!」

 

「イカ焼きやたこ焼き、お好み焼きや焼き鳥もあるしぃ、もう気分もお祭り騒ぎよっ♪」

 

「ふぅ……気持ちはわかりますけど、お酒は程々にしてくださいね?早苗さんはアイドルなんですから」

 

「んもう〜♪そんなこと、わかってるわよぉ〜♪ね〜♪」

 

「……」

 

(……ん?そういえば……早苗さんの隣にいる、ひょっとこのお面を被ってるこの人は誰だろ……?)

 

「……や、やぁ……プロデューサーくん……それに、きらりちゃんも……こんばんは……」

 

「おっ。何だ、あいだったのか。こんばんは」

 

「こんばんはっ☆うっきゃ〜♪二人とも、浴衣姿がしゅっご〜く美人さんだにぃ☆」

 

「……あ、ありがとう……二人の浴衣姿も……今宵の星空並みに綺麗だよ……」

 

「なあ。そういえば何で、あいはひょっとこのお面を被ってたんだ?」

 

「そうだね……ただ……お祭りの情緒を味わっていただけさ……」

 

「うにゅ……?あいさん……何だか、お顔が少し赤いような気がしますけどぉ……大丈夫ですかぁ……?」

 

「……何……気にしないでくれたまえ……らいじょうぶだから……」

 

「……もしかして……よし、じゃあ、あい。少し失礼するぞ」

 

------------------------------------------------

 

「にょわっ!?ぴ、Pちゃんっ!?

 

「……うっわ〜……プロデューサー君ってば……大胆ねぇ〜……」

 

「なっ……!ぷ、プロデューサーくんっ……!君は一体、何をしてるんだっ……!?」

 

「何って……熱がないかどうか、あいのおでこに手を当てたんだが?」

 

「……なあ……祭りの余韻のせいかい……?少し……いたずらがすぎるんじゃないか……?//」

 

「いたずらも何も、アイドルの体調管理も俺の仕事だからな。ほら、少しじっとしてろ」

 

「……全く……こんな公衆の面前で、堂々と……どうしてこういう時だけ、君はそんなに強引なんだっ……//」

 

「……ふむ……熱ではなさそうだ。ということは……」

 

「……むっ」

 

「ちょっと〜、プロデューサーくぅん?あたしのあいちゃんに、何をしてるのかな〜?」

 

「どうもこうもありません。早苗さん?あいにどれだけ「付き合わせ」たんですか?」

 

「うぐっ……!な、な〜んのことかしらぁ〜?」

 

「……さ〜な〜え〜さ〜んっ?」

 

「むぅ……悪かったわよ……少し、お祭り気分でハメを外しちゃったっていうか……」

 

「さっきも言いましたよね?程々にって。早苗さんもアイドルなんですから、普段からもう少しですね……」

 

「……何よぉ〜……プロデューサー君だって、人のことを言えないじゃないのよ〜」

 

「えっ……?俺ですか……?」

 

------------------------------------------------

 

「んっふっふ〜♪……さっきから目線が少し……「イヤらしい」ぞ〜?」

 

「イヤらしい……?……っ!」

 

タプンッ♪

 

「あらあら♪プロデューサー君も、顔が急に赤くなったわよ〜?やっぱり「図星」だったのかしらぁ〜?」

 

「……プロデューサーくん……君という男は……」

 

「……Pちゃ〜ん〜?」

 

「ち、違うんだ二人とも!ていうか!早苗さんも一体、何を言ってるんですかっ!//」

 

「えぇ〜?「ナニ」って……キミの視線が、さっきからぁ……」

 

「……この……あたしの浴衣の「隙間」に釘付けなんだもんっ……♪……プロデューサー君のえっち……♪//」

 

「ちょっ……べ、別にそんなことはっ……!//」

 

「イケませんなあ〜♪プロデューサーともあろうお方が、アイドルをそんなにイヤらしい目で見てるなんて♪」

 

「それに……「彼女」のきらりちゃんもいるのに〜……ねぇ〜?」

 

「……む〜〜〜っ」

 

「……と、とにかく!俺たちはもう行きますから!二人も、あまりハメを外さないようにしてくださいね!//」

 

「……ふふっ……は〜いっ♪じゃあ、二人とも行ってら〜♪」

 

「またね、二人とも……ふぅ……しかし、本当にプロデューサーくんは……」

 

「あははっ♪まあ、しょうがないじゃない♪プロデューサー君も、健全な男子なんだしっ♪」

 

「……それに……あいちゃんも「お年頃」な女の子なんだしね〜♪」

 

「あの……早苗さん?それって……どういう意味ですか……?」

 

「さぁね〜♪じゃあ、付き合ってもらったお詫びに、酔い覚ましにラムネを奢るわ♪よし、れっつご〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「あっ、あの……きらりさん……?」

 

「……なぁに?」

 

「何で突然……そんなに、俺に抱きついてるんですかね……?//」

 

「……べっつにぃ〜……?ただの気分だよ〜ぅ」

 

「そ、そうですか……だけどですね……きらりさんって、俺より少し背が高いですからその……」

 

ムニュッ♪

 

「……首の後ろあたりに、柔らかいものが当たってるような気がするんですけど……//」

 

「ふ〜んだ……Pちゃんってばいっつも、そんなことばっかり考えてるんだからぁ〜。えっちっ」

 

「なっ、何を言ってるんだよ!あれは早苗さんが勝手に……ていうか!俺を杏の要領で、抱き抱えるなっ!」

 

「し〜らないっ。……むぅ〜……Pちゃんのおばかっ……」

 

「……さっきの、お馬さんの耳をつけた女の子たち……それと……晴ちゃんや、梨沙ちゃん……」

 

「そして……早苗さんやあいさん……その他にも……本当にもうっ……」

 

「……ダメだよっ……今は……Pちゃんは、きらりだけのお兄さんなんだから……」

 

「……?」

 

ヒュ~!ドンッ!!

 

「……おっ、おおっ!花火が打ち上がり始めたぞっ!」

 

「花火……あっ……」

 

「色とりどりで綺麗じゃないか!なっ!きらりもそう思うだろっ!?」

 

「……うんっ、そうだね。……あの……Pちゃん?……今から、きらりと一緒に……来てくれゆ……?」

 

「ん?別にいいけど……どこに行くんだ?」

 

「あのね、花火がと〜っても綺麗に見える場所があるのっ。だから、そこで一緒に……はぴはぴしよ……?」

 

------------------------------------------------

 

ピュ~……ドンッ!ドンッ!

 

「……花火、とても綺麗だな」

 

「うんっ♪色がキラキラピカピカしてて、とても綺麗だにぃ☆」

 

「それにしても……よくこんな、見晴らしのいい場所を知ってたな。花火がとてもよく見えるよ」

 

「えへへ〜……そうでしょそうでしょ☆さっき、偶然見つけちゃったんだ〜☆」

 

「まさか、縁日の会場の離れに、こんな見通しのいい原っぱがあったとは……人もほぼいないし……」

 

「「……」」

 

「何だか……とってもいいムードだねっ……☆」

 

「そうだな。夜風がとても心地よいよ」

 

「……ふふっ……今なら……「きらりの気持ち」を、伝えられて……えいっ!」

 

「……うわっ!?きっ、きらりっ!?」

 

「にぇへへ〜……♪Pちゃんを、独り占めだにぃ☆」

 

「ちょっ……な、何だよっ!いきなり俺を抱きしめてっ……!//」

 

「……ねぇ……Pちゃん……一つ、聞いていいかなっ……?」

 

「ん……?何だ?」

 

「もし……いつか……何か、怖いことがあったら……きらりのことを……守ってくれゆ……?」

 

「守るって……どうしたんだよ、急に……」

 

「あのね……きらりって少し、他の子よりおっきい子でしょ……?だから……」

 

「……Pちゃんはきらりのことを……どう思ってくれてるのかなって、ふと思ったんだ……」

 

「きらり……そんなこと、言わなくてもわかるだろ?きらりは、俺の大切なアイドルだよ」

 

「それと同時に「女の子」でもある、大切なアイドルを守るのは当たり前だ」

 

------------------------------------------------

 

「Pちゃん……ありがとう……☆ねぇ……来年も再来年も……ううん……これからも「ずっと」……」

 

「……きらりとこんな風に、ここでまた一緒に……花火を見てくれゆ……?」

 

「もちろんさ。俺も、アイドルたちと一緒にいつまでも、こんな風に同じ光景を見ていたいんだ」

 

「だから……改めて、これかもよろしくな。きらり」

 

「……うんっ☆よろしくねっ♪Pちゃん☆……じ、じゃあねっ……その……」

 

「……今から……「はぴはぴなもの」をあげゆ☆……だ・か・らっ☆少し……目を閉じてっ……☆」

 

「はぴはぴ……?えっと……こんな感じでいいのか……?」

 

「おっけ〜☆ぱ〜ぺきだよっ☆そ……それじゃあ……いくねっ……えいっ……!」

 

「一体、何を……むぐっ!?」

 

ヒュ~!ドンッ!ドンッ!

 

「「……」」

 

「……えへへ……☆まだ……ラムネの味が……すゆねっ……♪//」

 

「……なっ……き、きらり……!?//」

 

「ふふっ……♪Pちゃんに甘くてふわふわな「ましゅまろ」をプレゼントしてみちゃいました〜☆」

 

「……どうだった……?甘くてぇ……美味しかった……?//」

 

「ま、ましゅまろって……なあ……これは一体、どういうことなんだ……?//」

 

「どういうことって……ふふっ……♪そういうことは、女の子に聞いちゃだ〜めっ☆」

 

「……この答えは……Pちゃん自身で考えて欲しいな……☆」

 

「きらり……」

 

「しばらく……このまま、二人でじ〜っくりと……きらきら☆な花火をみてよっ☆」

 

------------------------------------------------

 

「さて。杏へのお土産も買ったし、そろそろ帰るか」

 

「ふふっ♪しょ〜だねっ♪でも、Pちゃ〜ん?イジワルはメッ、だよ〜?」

 

「ははっ。杏にも、あの「美味しい」たこ焼きがいいと思ったんだけどな。いつも飴ばかり食べてるし」

 

「杏ちゃんは辛いのはダメだって、Pちゃんは知ってるでしょ〜?」

 

「そうだな。いつも頑張ってくれてるから、たまには杏にも「飴」をくれてやらなきゃな」

 

「あははっ☆Pちゃんってば、じょ〜ずっ☆だけど、きらりもPちゃんから大切なお土産をもらったよっ☆」

 

「……「ラムネ味の」……あま〜いひと夏の思い出をねっ……☆えへへ……☆//」

 

「ラムネ味……っ……!//」

 

「「……//」」

 

「ふふっ……♪Pちゃんもこれで少しは、きらりのことを……意識してくれたかなっ……?//」

 

「意識って……あのなあ……//」

 

「な〜んてねっ☆それじゃあっ☆Pちゃんを、事務所におっもち帰りぃ〜☆」

 

「うわあっ!?だっ、だからっ!俺を杏みたいに扱うなっ!」

 

「え〜?だってぇ、Pちゃんも杏ちゃんみたいに、ちょ〜かわいいんだも〜ん☆」

 

「それともぉ、このまま……きらりんルームに直行……すゆ……?//」

 

「きらりんルーム……って!何を言ってるんだよ!きらりはアイドルなんだぞ!?」

 

「じょ〜だんだよぉ、じょ〜だんっ☆Pちゃんは本当に、きゃっわいいんだからぁ〜☆」

 

「ったく……!//」

 

「じゃあ、それはまた「今度」にお預けねっ☆だからあっ、今はもう少し、ひと夏の……ううん……」

 

「これからもずっと、ず〜っと……楽しい思い出をた〜くさん一緒に作ろうねっ……☆……大しゅきっ……☆



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技工シンデレラ 原田美世

「……これをこうしてこうやって……」

 

「……うん!出来たっ♪プロデューサーさ〜んっ♪車の整備、終わったよ〜っ♪」

 

「おっ、そうか。ありがとうな、美世」

 

「ううん、気にしないでっ♪車のメンテナンスは得意分野だからねっ♪」

 

「そ・れ・に・っ♪車いじりはあたしのライフワークだもん♪調子が悪いと、少しエンジンの音が違うんだ♪」

 

「ははっ。流石は美世だな。よし、車を直してくれたお礼に、何かさせてくれ」

 

「ええっ!?そ、そんなの大丈夫だよっ!ちょっと直しただけだし……」

 

「いやいや。わざわざ、美世の家のガレージにまで来て、直してもらったんだ。何か俺にもさせてくれ」

 

「本当、いいのに……じ、じゃあさ……その……今度は、プロデューサーさんに……」

 

「……あ、あたしの、ボディのメンテナンスを……して欲しいなっ……なんて……//」

 

「えっ……美世の?俺、車の整備の知識はあまりないぞ?」

 

「あうっ……そうじゃなくてぇ……や、やっぱり、今言ったことは忘れてっ!//」

 

「そうか……?ならいいんだが……」

 

「……ちなみにさ……プロデューサーさんは、あたしのことを……どう思ってる……?」

 

「ん?どうおもってるって……?」

 

「ほら……車やバイクいじりって、どちらかと言えば男っぽい趣味でしょ……?」

 

「……だから……やっぱりあたしって……女の子らしくないよね……」

 

------------------------------------------------

 

「……そんなことはないぞ。じゃあ、少し失礼するぞ」

 

「えっ……?……ふぇっ……!?」

 

「よし、取れた。整備をしてくれたのは嬉しいけど、美世の「かわいい」顔に埃がついてたぞ」

 

「……あっ……ありがとうっ……//」

 

「美世はかわいい女の子だよ。スカウトした以上は、美世の魅力を俺が一番知ってるつもりだ」

 

「例えばその、くりくりっとした宝石のような瞳、リスのような愛らしいキュートなほっぺ」

 

「アイドルに相応しいスタイルの良さ、そして何より、女の子らしさを気にする健気な乙女さ……他にも……」

 

「わっ、わわっ……!も、もういいからあっ!……んもう……プロデューサーさんってば……」

 

「いつも……そういうことを平気で……本当、アイドルのことになると止まらないんだからっ……」

 

「……だけど……あたしのガレージに男の人を招いたのも……プロデューサーさんが「初めて」だよ……?//」

 

「えっ……?」

 

「……って……あ”〜っ!もうこんな時間だよっ!?そろそろ、出勤の時間だったよね!?」

 

「……うわっ、やばっ!悪いな美世!お礼の話は、仕事が終わってからでいいか!?」

 

「うんっ!じゃあ、初めて出会ったあの時みたいに、あたしが運転して事務所まで送ってあげるっ!」

 

「えっ……?いや……そんな、悪いって……」

 

「ほら!時間がないよっ!乗った乗った!「あたしの」プロデューサーさんなんだし、しっかりしてよね!」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「……ん?あっ!プロデューサーと美世ちゃんだ!おっはよ〜!」

 

「お二人とも、おはようございます♪」

 

「おっ、友紀と茄子も来てたのか。おはよう」

 

「ところで……アラアラ♪朝からアイドルと「同伴出勤」ですかぁ〜?イケませんなぁ〜♪ねぇ、茄子ちゃん♪」

 

「そうですねぇ〜♪ここまでお二人が仲良しさんだっただなんて私、知りませんでした〜♪」

 

「ふぇっ……!?ちょっ……そ、そんなんじゃないよっ!//」

 

「そうだ。事務所に来る前に少し、美世の家のガレージで、俺の営業車の整備をしてもらってたんだよ」

 

「ほぉ……つまり美世ちゃんは、プロデューサーに満塁ホームランを決めちゃったってことなんだねぇ〜♪」

 

「だ、だ〜か〜ら〜!そんなんじゃないんだって〜!からかわないでよぉ〜!//」

 

「ふ〜ん……ま、いいですけどぉ♪だって、茄子はぁ……プロデューサーとおっ……」

 

「……新年に……「初めて」を一緒に迎えた仲ですもの……♪ねぇ〜♪」

 

ムニュッ♪

 

「えっ……新年……?」

 

「ちょっとちょっと〜♪あたしだって、負けてないよぉ♪だってぇ……あたしぃ……」

 

「……この前、プロデューサーに……部屋に「お持ち帰り」されたことがあるもん……♪//」

 

ムニッ♪

 

「お持ち帰り……えっ、ええ〜っ!?」

 

「うあっ……!?ちょっ……お前ら、急に何だよっ!二人して密着してくるなっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「んふふ〜♪美世ちゃんという大切な女の子がいるのに……本当に、イケないお兄さんだねぇ〜♪」

 

「変な風に言うな!茄子とは初詣に行っただけで、友紀は居酒屋で酔い潰れたから、家に送っただけだろ!」

 

「あれ〜?そうでしたっけぇ〜?でもぉ……密着されて、お顔を真っ赤にしてるのは「本当」ですよねぇ〜?」

 

「いや……それはっ……//」

 

「……むっ……あ、あたしだって!プロデューサーさんと二人だけの、大切な思い出があるもんっ!!」

 

「へぇ〜?それは初耳ですねぇ〜。例えば、どんなことですかぁ〜?」

 

「そ、それは……ふ、二人っきりでドライブをしたり、遊んだり、手を繋いだり、そして……」

 

「「そしてぇ〜?」」

 

「……あうぅ〜……と、とにかく!!ねっ!?あたしだって、こんなに素敵な思い出があるんだからっ!//」

 

「……ほぉ……二人っきりで、ドライブに……そして……最後は……なるほど、いいことを聞いちゃった♪」

 

「……ですねぇ♪さて……プロデューサーを「ダシ」にして、重要な情報が聞けたところで……せ〜のっ……」

 

「「作戦、大成功〜♪イェ〜イ〜♪」」

 

パチンッ♪

 

「ええっ……!?さ、作戦……!?ダシ……!?まさか……あたしを騙してたのっ!?」

 

「さぁ〜ねぇ〜♪さて、ホームラン級の大スクープも聞けたことだし、そろそろ「お邪魔虫」は退散しよっ♪」

 

「ですね♪二人っきりだからって……「ヘンなこと」はしちゃダメですよ♪では、私たちはこれで失礼します♪」

 

「ちょっ……ふ、二人とも酷いよっ!それに……今のは……そのっ……!//」

 

「おい!何だよそれ!ちょっと待て!……行っちまった……。全く……何なんだよ……あいつら……//」

 

「……本当にもう……二人は、イヂワルなんだからっ……」

 

「「……」」

 

------------------------------------------------

 

「……ところで……あの……美世さん?俺たちっていつ、一緒にドライブをしたことがありましたっけ?」

 

「あっ……そっ、それは……したことあるもん…………今……」

 

「おい!何だよそれ!俺の記憶を勝手に捏造するなっ!」

 

「ふ〜んだ……プロデューサーさんはどうせ、あたしより友紀ちゃんや茄子ちゃんの方がいいんでしょ〜……」

 

「えっ……?いやいや……そんなことはないぞ?みんな同じぐらい、俺の大切なアイドルだよ」

 

「じゃあ……もう一回聞くね?あたしのどこが……女の子らしい……?」

 

「いや……突然、どこがって言われても……今朝言った通りで……」

 

「……」

 

……タプンッ♪

 

「……車の整備が大好きなところとか……?//」

 

「あ”〜っ”!今、少し考えたでしょっ!やっぱり、あたしのことを女の子と思ってくれてないんだ!!」

 

「いやいや!本当に美世のことを、女の子らしいって思ってるって!嘘じゃないぞっ!」

 

「……むぅっ、お世辞はいいよっ……」

 

「お世辞なんかじゃないって。でなきゃ、俺の目の前にいる「輝いてるアイドル」は一体誰なんだ?」

 

「それは…………じゃあさ……プロデューサーさんも、あたしのハンドルをずっと……握っててくれる……?」

 

「えっ?……ハンドル?」

 

「あぅ……つ、つまり……あたしの体調が悪くなったら、代わりに運転して欲しいってことなの!うんっ!//」

 

「あぁ……それはもちろん……そうさせてもらうけど……」

 

「そ、そんなことよりさっ!何か、あたしに手伝えることはない!?せっかくだし、お仕事を手伝うよっ!」

 

「そ、そうか……?じゃあ、少し頼むよ。よろしく美世」

 

------------------------------------------------

 

「はいっ♪プロデューサーさんっ♪書類を、バインダーにまとめておいたよ♪」

 

「おぉ、ありがとうな。じゃあ、そろそろ日も暮れてきたし帰ろうか」

 

「うんっ、そうだねっ♪行こ〜うっ♪」

 

「それにしても悪いな、美世。車の整備をしてもらった上に、仕事の手伝いもしてもらって」

 

「ううん、気にしないで♪今日は、あたしもちょうどオフだったし♪」

 

「美世のおかげで助かったよ、今日はありがとう。……あっ、そうだ。ちなみに、あの時の約束は何がいい?」

 

「あの時……?」

 

「あぁ。今朝、約束しただろ?「何かをさせてくれ」って。仕事のお礼も兼ねて、何かお礼をさせてくれよ」

 

「ええっ!?だから大丈夫だよっ!別に、あたしは本当に暇だから手伝っただけだし……」

 

「遠慮せずに言ってみなって、今日以外にも、美世には日頃からお世話になってるしな」

 

「……そ、そう……?じゃあさ……あたしと今度……「本当に」二人っきりで……そのっ……」

 

「……あ〜っ♪プロデューサーさ〜んっ♪美世さ〜んっ♪」

 

「ん……?おっ、卯月じゃないか、お疲れ様。こんなところで偶然だな」

 

「あっ……卯月ちゃん……」

 

「はいっ♪お仕事を終えて、これから帰宅するところなんです♪」

 

「そうか、いつも仕事を頑張ってくれてありがとうな。ところで、卯月のそれ、とても似合ってるじゃないか」

 

「あっ……ありがとうございますっ♪私、このアクセサリーをとても気に入ってるんですっ♪」

 

「……何せ……「プロデューサーさんが」プレゼントしてくれた……大切なアクセサリーですので……♪」

 

------------------------------------------------

 

「……っ!」

 

「気に入ってくれてよかった。卯月はかわいい女の子だから、きっと似合うと思ったんだ」

 

ナデナデ

 

「……あっ……頭をっ……は、恥ずかしいですよっ……♡//」

 

「……むっ」

 

「でも……プロデューサーさんも、そのネクタイ、とても似合っていますよ♪」

 

「そうか、ありがとう。何せ「卯月が」プレゼントしてくれた、大切なネクタイだからな」

 

「えへへ……ぷ、プロデューサーさんも、その……とても素敵なお兄さんなので、似合うと思ったんです♪」

 

「「うふふ♪・あはは♪」」

 

「……」

 

「……あっ、そうだ♪美世さんっ♪この前、私の作ったクッキーは美味しかったですか?」

 

「ええっ……!?あっ、そ、そうだねっ!卯月ちゃんのクッキー……とっても美味しかったよ」

 

「俺ももらったけど、卯月って本当にお菓子作りが上手いよな。香ばしくて、甘さもちょうどいいし」

 

「喜んでもらえて何よりです♪……たくさん……愛情を込めた甲斐がありましたっ……♪」チラッ

 

「ははっ、料理は愛情って言うしな。卯月の愛情を、しっかりと味わらさせてもらったよ」

 

「ふふっ……♪あっ、もうこんな時間……では、そろそろ失礼させてもらいます♪また、お会いしましょうね♪」

 

「うん、またね。卯月ちゃん」

 

「またな、卯月。……ふぅ。それにしても、帰り際に偶然卯月と会えるなんてな。なあ、美世」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……美世……?」

 

「……む〜〜〜っ」

 

「ん?おい、どうしたんだよ。そんな風船みたいに頬を膨らませて」

 

「んもう……何さ……目の前でナチュラルに、卯月ちゃんとイチャイチャしちゃってさっ……」

 

「……あたしなんか……プレゼントどころか……手も握ったことすらないのに……」

 

「?」

 

「ふ〜んだ……卯月ちゃんって、女子力が高くて……と〜ってもかわいくて「女の子らしい」よねぇ〜……?」

 

「えっ……?まあ確かに、卯月はキュートなアイドルだけど……でも、卯月は卯月、美世は美世だと思うぞ?」

 

「それは……そうだけど…………じゃあさ……今朝の約束……今、使っていい?」

 

「約束……あぁ、あれか。どうした?」

 

「……今度……あたしと一緒に……ドライブに行ってくれる……?」

 

「ドライブ?俺は別に、大丈夫だけど……でも、ご褒美とかじゃなくていいのか?」

 

「う、うん!最近、お互いに忙しくてあまりプロデューサーさんと会えてなかったでしょ?」

 

「……だから……「二人っきり」で、思いっきり楽しもうよっ♪どう?女の子らしいでしょっ♪」

 

「そういえば……そうだったな。うん。じゃあさっそく、二人でドライブの計画を立てようか」

 

「本当!?わ〜いっ♪やったぁ〜〜〜♪絶対に、約束だからね〜〜〜♪」

 

ムニュッ♪

 

「うわっ!?ちょっ……おいっ!そんなに密着してくるなって!//」

 

「あっ……ご、ごめんねっ……!つい…………えへへっ……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……よしっ!メンテナンス完了♪これで、明日のデー……じゃなくて!ドライブは完璧だねっ!!//」

 

「二人でドライブをして……たくさん遊んで……手を繋いで……そ、そしてっ……最後は……」

 

「……だ、だから!それ以上はダメ〜っ!……うぅ……このままずっと、シャシーの下に潜っていたい……//」

 

「あっ……そうだ。顔にオイルがついちゃってたね。ちゃんと落として、きちんとお化粧をしないと」

 

「えっと……前に、美嘉ちゃんに教えてもらったはずなんだけど……まずは、どうすればいいんだっけ?」

 

「下地を作るのに……ち、ちーくだっけ?それとも、ふぁんでーしょん?りっぷ……?」

 

「……あっ!そうだっ!クレンジングオイルだっ!……って!ちが〜う!それは、お化粧を落とすやつ!」

 

「うぅ……オイルって言葉に、つい反応しちゃって……やっぱり、女の子らしくないなあ……あたしっ……」

 

「アイドルになる前は、お化粧はあまりしたことがなかったし、車とかバイクばかりいじってたからなあ……」

 

「でも……アイドルになったからには、みんなからかわいいって言われたいよねっ……」

 

「……特に……プロデューサーさんには……って!あああっ!もうっ!頭の中がエンストを起こしそうっ!//」

 

「……本当、変わっちゃったな……あたし……。アイドルになる前とは、まるで別人みたいに……」

 

「寝ても覚めても……車やバイクのことばかりだったのに……今はもう……プロ……じゃなくてぇ!!」

 

「あぁ……もう……落ち着け……落ち着かないと……あたしっ……//」

 

「……ううっ……今夜は……眠れそうにないなあ……」

 

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チュンチュン……。

 

「……髪の毛は……よし。身だしなみも……よし。ふぅ、まあこんなもんだろ」

 

「それにしても……まさか、美世から直々にドライブのお誘いがあるとは」

 

「つい、早くに目が覚めてしまったが……何でこんなに、胸が高ぶってるんだろ……」

 

……「二人っきり」で、思いっきり楽しもうよっ♪どう?女の子らしいでしょっ♪

 

「……そうだな。最近、お互いに仕事が忙しくて、水入らずの時間を作れなかったもんな」

 

「俺と美世の二人で……よしっ!今日は、思いっきり楽しむか!せっかくの機会だしな!」

 

「さて……約束の時間まで、まだ結構あるし……持ち物のチェックでも……」

 

フォンッ♪

 

「ん……?おっ、美世からメッセージだ。なになに……[おはよう♪今日はよろしくね♪]か……」

 

「[そうだな。今日は一日、よろしく。楽しい時間にしようぜ]っと……」

 

「……よし、こんな感じだな。さて……じゃあ、さっそく持ち物の確認を……」

 

フォンッ♪

 

「……ん?あっ、美世からだ……って!返事早っ!?……えっと……なになに……」

 

[その……あのね、実を言うと……もう……「目の前に」いるんだ……♪]

 

「えっ……「目の前」……?」

 

ピンポーン♪

 

「はーい。……誰だろ?こんなに朝早くから……」

 

カチャッ

 

「……えへへ……お、おはようっ♪…………来ちゃった……♡//」

 

------------------------------------------------

 

ブーーーン……

 

「どう?あたしの車の乗り心地はっ♪」

 

「あぁ、とても快適だよ。エンジン音も静かだし、流石は美世の車だな」

 

「えへへ〜♪よかった〜♪……それより……ごめんね?こんな朝早くに、唐突に来ちゃって……」

 

「いや、気にしないでくれ。だけど……美世がまさか俺の家まで直接、車でお出迎えしてくれるとは……」

 

「あ、あのね……昨日の夜からその……ずっと……楽しみすぎて、朝早くに目が覚めちゃったの……」

 

「……だから……「少しでも」早く……プロデューサーさんに会いたかったんだ……なんて……♪//」

 

「ははっ。どうやら、俺と同じことを考えてたみたいだな。にしても……悪いな。美世に運転してもらって」

 

「ううん♪気にしないでっ♪今日は、せっかくのデー……じゃなくて!ドライブだし、張り切っちゃうよ〜♪」

 

「……その代わり……あたしのことを、しっかりと……「お城」に連れて行ってね……♡」

 

「……っ!?」

 

「あ”〜っ”!?今、笑いを堪えたでしょっ!?プロデューサーさんってば、ひっど〜いっ!!」

 

「べ、別に堪えてなんかないって!なあ……美世……?突然、何を言いだすんだ……?」

 

「あたしだって、これでも女の子なんだよ!?こういう乙女な憧れだって持ってるんだからっ!」

 

「……つ、つまり……あたしをアイドルにした以上は……最後まで「責任」を取ってってことだよっ……//」

 

「アイドル……あ、あぁ……そういうことか……」

 

「んもう!さては、あたしの柄じゃないと思ったんでしょっ!プロデューサーさんのいぢわるっ!」

 

「ち、違うって!ただ、その……窓の外に……「お城」が見えてたから……」

 

「えっ、窓……?…………あっ……」

 

「「……//」」

 

「……ほら、前を見ないと……危ないぞ……//」

 

「……そ、そうだね……よそ見運転は……危ないもんね……//」

 

------------------------------------------------

 

「……何とか……目的地についたね……」

 

「……あぁ……そうだな……」

 

「「……//」」

 

「……あ、あのっ!さっきは別に、そういう意味で言ったわけじゃないからねっ!勘違いしないでよっ!//」

 

「なっ……!そ、そんなことわかってるわ!!全く……美世もアイドルなんだし、そういう発言はだな……//」

 

「あうっ……で、でもさっ……ああいう場所を見て、お顔を真っ赤にしてくれたってことは……」

 

「……あたしのことを……「一人の」女の子として……意識してくれたってことなのかな……?//」

 

「いや、それは……し、知るかっ!とりあえず!せっかく着いたんだし、どこかに行こうぜっ!!」

 

「うふふ……♪じゃあ……少し、行ってみたいお店があるのっ♪だから、そこに行ってみよっ♪」

 

「そうか。よし、さっそく行ってみようぜ」

 

「では、……え、え〜いっ♪」

 

ギュッ♪

 

「うわっ……!み、美世っ……!?」

 

「えへへ〜……♪プロデューサーさんの腕……とってもあったか〜いっ……♡」

 

「あの……美世さん……?何だか少し……近くないですかね……?」

 

「そんなことないよ〜♪だって、今のあたしは「普通の」女の子だもんっ♪じゃあ、れっつご〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「どう?これ、あたしに似合う〜?」

 

「うん。似合ってるよ」

 

「……あっ♪こっちもいいかもっ♪ねぇ、これもどう?」

 

「あぁ、そっちも似合ってるよ。……というか、意外だよな」

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、美世がアクセサリーショップだなんて意外だなって思ってさ。向かいにカーショップがあっただろ?」

 

「んもう、前にも言ったでしょ?男っぽい趣味だって言うのは理解してるけど、こういうのも興味があるって」

 

「……それに……もっともっと、いろんなあたしを見てもらいたい人がいるしね……?」チラッ

 

「まあ、確かに、アイドルは色んな人に見られる仕事だしな。いい心がけじゃないか」

 

「それは、そうだけど……でも……そう意味じゃなくてっ……」

 

「……あの〜、すみません。もしかして、彼氏さんから彼女さんへのプレゼントをお探しとかですか?」

 

「……ふえっ……!?か、彼女っ……!?……だってさ……プロデューサーさんっ……♪」

 

「ははっ、いえいえ。僕はただ、この子の「付き添い」で来ただけです」

 

「……むっ」

 

「あら?そうでいらしたのですか?てっきり、お二人はカップルなのかと思ってました……」

 

「そうですか、それは嬉しいです。でも……俺たちは……」

 

「……も、もうっ!今日はあたしたち、「ペアルック」なアクセサリーを買いに来たんでしょっ♪」

 

「……は?……ペアルック……?」

 

「あらっ♪やっぱり♪でしたら、こちらの方にペアルックグッズのコーナーがありますよ♪ご案内しますね♪」

 

「わぁ〜♪楽しみだねっ♪ね〜♪だ〜り〜んっ♡じゃあ、さっそく行ってみよ〜うっ♡」

 

「いや……ちょっ、まっ……!」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜。結構、たくさん見ちゃったね〜♪」

 

「そ、そうだな……楽しかったな……」

 

「んん〜?どうしたの?プロデューサーさん。そんなに顔を真っ赤にして俯いちゃって」

 

「……実は少し……熱があるっぽいんだ……。顔が火照っていてな……」

 

「ええっ!?だ、大丈夫!?気分が悪いなら、今から病院で診てもらう?」

 

「いや……すぐに治せる方法が一つあるんだ……それは……」

 

ムニュッ♪

 

「……俺の腕に密着してる「当たってるもの」離れてくれれば……すぐに治ると思うんだ……うん……//」

 

「えっ……腕?……ひゃわっ!!あっ……ご、ごめんねっ……つい、夢中になっててっ……!」

 

「「……//」」

 

「……あのっ……そ、それよりさっ!キーホルダーどうっ!?気に入ってくれたっ!?//」

 

「キーホルダー……あ、あぁ、これか。うん、結構気に入ったよ」

 

「えへへ〜♪どう?かわいいでしょっ♪車の鍵型の「ペアルック」にしちゃった……♪」

 

「ペアルックねぇ……確かに、いい思い出にはなるけど……これじゃあ、まるで……」

 

「……まるで……?」

 

「……兄妹みたいだよな。二人揃ってこういうのを持つって」

 

「むっ……はいはい、わかってましたよ〜だ。プロデューサーさんはやっぱり、プロデューサーさんだなあっ」

 

「どうしたんだよ?そんなにむくれて」

 

「何でもないよっ。大切にしてよね〜?おにいちゃ〜ん?…………もうっ……おバカ……」

 

「……あ〜っ♪お〜〜〜いっ♪プロデューサー♪美世ちゃ〜んっ♪」

 

「……ん?この声は……」

 

------------------------------------------------

 

「よぉ、プロデューサーと美世じゃねえか。こんなところで偶然だな」

 

「おっ、里奈と拓海じゃないか。こんにちは」

 

「ちょり〜っす♪アラアラ♪もしかしてぇ……アタシたち……お邪魔しちゃったかにゃ〜?」

 

「いやいや、別にそんなことはないよ。ただ、俺たちはドライブを満喫してただけだ。なあ、美世」

 

「うえっ……!?う、うんっ……そうだねぇっ……//」

 

「はぁん……ドライブねぇ〜、随分とお熱いこって。まあ、ある意味でアタシたちも似たようなもんだけどな」

 

「だねぇ♪アタシも、たくみんと一緒に「ラブラブ」しながらバイクで、ツーリングをしてたんだよねぇ〜♪」

 

「あっ、そうだったんだ♪あたしもその気持ちわかるな〜♪グリップを握りしめて走ってると、爽快だよね〜♪」

 

「……なあ、ところで美世。本当に悪いんだが……少し、里奈の頼みを聞いてやってくれないか……?」

 

「うん……?どうしたの?拓海ちゃん」

 

「あ、あのね、その……もし、よかったらなんだけど……少し、アタシのバイクを見てくれないかな……?」

 

「バイク……どこかおかしいの?」

 

「何だか、マフラーから異音がしてね。たくみんと二人で見てみたんだけど、原因がわからなかったんだ」

 

「アタシもバイクに詳しい方ではあるけど、力になれなくてな……。頼む、美世の力を貸して欲しいんだ」

 

「そうなんだ……じゃあ、今から見てみるね。プロデューサさん。少し、待っててもらってもいいかな?」

 

「あぁ、もちろんだ。里奈のバイクをしっかりと見てやってくれ」

 

「悪い、恩に着るよ。じゃあ、アンタとアタシはあっちで待機しようぜ。二人の作業の邪魔をしちゃ悪いしな」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ。にしても……偶然だよな。拓海たちはツーリング、俺たちはドライブでちょうど出会うとは」

 

「だな。まさか、駐車場で「ラブラブ」ドライブに巡り会えるとはな。今日はツイてるぜ」

 

「ラブラブって……あのなあ……もう少し、言い方があるんじゃないか?」

 

「へへっ、うっせ。今の二人にぴったしの言葉じゃねえか……ん?おい、何だよそれ」

 

「ん?何って……?」

 

「それだよそれ。その、スマホについてるキーホルダーだよ」

 

「あぁ、これか。美世と二人で、あそこのショップで「ペアルック」のアクセサリーを買ったんだよ」

 

「っ……ペアルック…………なぁ、アンタはよ……美世のことを、一体……どう思ってるんだ……?」

 

「えっ?どう思ってるって、何がだよ?」

 

「そのままの意味だよ。いいから言ってみやがれ」

 

「いや、まあ……強いて言うなら…………アイドル?」

 

「そうか……ということはつまり…………本当……てめェってヤツは……」

 

「?」

 

「……とにかく……美世を大切にしてやってくれよ。何せ、アタシの大切なマブダチだからな」

 

「だけど……あ、アタシだってその……アンタにスカウトされて、アイドルになったんだからよ……」

 

「……たまには……美世だけじゃなくて…………も見ろよ……//」

 

「えっ?」

 

「……たぁ〜くみ〜んっ!美世ちゃんが無事に、バイクを直してくれたよ〜っ!」

 

「……んあ……?おぉ、そうか〜!!……どうやら、美世が無事に里奈のバイクを直してくれたみたいだな」

 

「おっ、もう直ったのか。流石は美世だな」

 

「よし、じゃあそろそろ、里奈たちのところに戻ろうぜ。その前に、ほら、これをやるよ」

 

「おぉ、さんきゅ……って!あっつっ!?」

 

------------------------------------------------

 

「じゃあ、また会おうね〜♪美世ちゃ〜ん♪アタシのバイクを直してくれてありがと〜うっ♪」

 

「邪魔をして悪かったな、美世。今度、何か奢らせてくれ」

 

「いいよ♪いいよ♪あたしたち、同じバイク仲間なんだから気にしないで♪」

 

「それじゃあまた今度、改めてお礼をさせてもらうね〜♪では♪ちゃお〜♪」

 

「だな。「お邪魔虫」はとっとと退散させてもらうぜ。じゃっ、あとは二人で楽しみな。じゃあな」

 

ブロロロロロ……。

 

「……ふぅ、直ってよかった♪ごめんね、プロデューサーさん。待たせちゃって」

 

「いや、気にするな。あんなに早く直せるなんて、流石、美世の技術はすごいな」

 

「そんなことはないよっ♪ちょちょっといじっただけだから♪里奈ちゃんに喜んでもらえてよかったよ♪」

 

「さて……無事に事なきを得たところで……あ、そうだ。これ、拓海からもらったんだ。飲むか?」

 

「えっ……?あっ、プロデューサーさんも、拓海ちゃんからもらったんだ」

 

「俺もって……もしかして、美世もコーヒーを拓海からもらったのか?」

 

「うんっ♪さっきのお礼にってね♪じゃあ、せっかくもらったんだから、ドライブの再開前に乾杯しようよ♪」

 

「そうだな。よし、タブを空けて……と……じゃあ……行くぞ、せ〜のっ」

 

「「乾杯〜っ!」」

 

「……んく……んく……ん〜♪一仕事を終えたあとのコーヒーは、やっぱり美味しいね〜♪」

 

「……んく……そ、そうだな……少し……熱いけどな……」

 

「えっ?熱いって……もしかして、プロデューサーさんのコーヒーってホットなの?」

 

「あぁ。差し入れは嬉しいけど……何でわざわざ、この時期にホットをくれたんだろうな……」

 

「そう、なんだ……拓海ちゃんも……やっぱり……」

 

「ん?美世……?どうした?」

 

「あっ……な、何でもないよっ!それより、飲みながら次の計画を立てようよっ!//」

 

「そうだな……。ま、いいか。じゃあ、どうするか決めようぜ」

 

------------------------------------------------

 

「……はぁ〜♪今日は、楽しかったね〜♪」

 

「あぁ。ドライブで、色々なところを巡れて今日は楽しかったよ」

 

「えへへ〜……♪やっぱり、ドライブの醍醐味はこれだよね〜♪昼間はたくさん、色んなところを巡ってさ」

 

「……そして……こんな風に日が暮れてきたら、こういう人気がなくて、空気の綺麗なところに車を走らせて」

 

「それで、こうして背もたれを倒して、時間を忘れてゆっくりと車内から絶景を眺める……最高の贅沢だよ♪」

 

「だな。落ちていく夕日がとても綺麗だ。それにしても、美世の車の中は本当に快適だな」

 

「ふふ〜ん♪でしょでしょ〜♪あたしの車って、色々といじってあるんだ〜♪もちろん、車検が通る程度にね♪」

 

「全体的に微調整をしつつ、ショックアブソーバーも高いのに交換して、スプリングの振動を抑え、乗り心地を向上!背もたれも、低反発のクッションを搭載して腰や体への負担を軽減!ステアリングホイールも変えて操作性も抜群!機能性を重視してるけど、アイドルらしく少しオシャレなのにしちゃった♪あ、ちなみにね、ステアリングホイールって言うのはハンドルのことで……」

 

「……」

 

「……あっ……ご、ごめんね……車のことになるとつい……熱中しちゃって……」

 

「なに、気にするな。むしろ、すごいかわいかったよ」

 

「……やっぱり……あたしは、女の子らしくなくて……って、ふぇっ……!?かっ……かわいいっ!?」

 

「あぁ。車のことを熱弁してた今の美世、とても目が輝いてたぞ。実に女の子らしいじゃないか」

 

「う、うぅ……さ、さ〜てと!次は、プロデューサーさんの好きなものの話をして欲しいなっ!うんっ!!」

 

「そうか?じゃあ、次は俺の番だな。俺の好きな「美世」について、たっぷり語らせてもらおうじゃないか」

 

「へぇ〜。プロデューサーさんは、美世が好きなんだ……って!えええっ!?あ、あたしっ!?」

 

「アイドルのことを語り出したら止まらないぞ?特に、目の前の「輝いてるアイドル」のことはな」

 

「も、もうっ!そう思ってくれてるのは嬉しいけど、恥ずかしいからこれ以上はダメ!禁止っ!!//」

 

「ははっ、そうか。それは残念だ。じゃ、アイドルの話はこれぐらいにして、夜空をゆっくり眺めようぜ」

 

「……むぅ〜//」

 

------------------------------------------------

 

「「……」」

 

「……何だか……とってもいい雰囲気だね……」

 

「あぁ。つい、時間を忘れてしまうぐらい綺麗で幻想的な夜景だな」

 

「うんっ……♪それに……今はプロデューサーさんと、車内で二人っきり……だもんね……♪」

 

コトンッ♪

 

「ん?どうしたんだ?急に、俺の肩に頭を預けて」

 

「えへへ〜……何となくしてみたくなっちゃったのっ♪……ダメかな……?」

 

「いや……俺は別に、いいけど……」

 

「やったぁ♪じゃあ、プロデューサーさんも………あたしを……抱き寄せて……♪なんてっ……♪//」

 

「そうか……?じゃあ……って!出来るか!そんなことっ!!//」

 

「あんっ、もう……ま、いっか☆今回は、これで許してあげるっ♪」

 

「全く……!//」

 

「……ねぇ……プロデューサーさんは……その……あたしのこと……「好き」……?」

 

「……えっ……?」

 

「あたしはね……プロデューサーさんのことが「大好き」だよ……?だから……えっとね……」

 

「…………ほんの少し……他の子より「勇気」をだしちゃうね……えっ……えいっ!」

 

「一体、何を……んっ……!?」

 

チュッ……

 

「「……」」

 

「……ぷあっ……み、美世……っ……!?」

 

「……えへへ……しちゃったね……♡どう……?あたしの気持ち……受け取ってくれた……?//」

 

------------------------------------------------

 

「気持ちって……な、何なんだよ急にっ!!//」

 

「あたしね……ずっと、悩んでたんだ……他のアイドルの子より、女の子らしくないなって……」

 

「茄子ちゃんや友紀ちゃん……卯月ちゃん……そして里奈ちゃん、拓海ちゃん……」

 

「みんな、とても……女の子らしくて、いいなあ……羨ましいなあって……ね……」

 

「いや……前にも言っただろ?美世はかわいい女の子だって。そんなことはないと思うぞ」

 

「……本当?」

 

「あぁ。俺の目の前にいるアイドルは、とっても輝いてるよ」

 

「……本当に本当?」

 

「何度でも言ってやるよ。美世はかわいくて輝いてる、俺の自慢のアイドルだ」

 

「……そう……じ、じゃあさ…………証明……してっ……♡」

 

シュルッ♪

 

「ちょっ……な、何で、服を脱いでるんだよっ!?」

 

「うふふ……♪実を言うとね、あたし……「スタイル」には……少し、自信があるんだっ……♡//」

 

「くっ……美世っ……俺だって一応、健全な男子なんだし……これ以上は、本当にヤバいってっ……!//」

 

「正直、顔から火が出るくらい恥ずかしいけど……他のみんなには負けたくないの……」

 

「……だから……今夜は車内で、お互いに……「男の子と女の子」になろうよ……♪…………ねっ……♡//」

 

ムニュッ♡

 

「……っ……!み、美世っ!!」

 

「きゃっ……!」

 

「……俺っ……もう……我慢出来ないっ……!」

 

「……そっか……わかった……じゃあ、このまま…………来てっ……♡」

 

------------------------------------------------

 

「……世……」

 

「ふふっ……もうっ……そんなにっ……♡」

 

「……美……世……」

 

「……えへへっ……大好き……だよっ……♡」

 

「……お〜い、美世〜?起きてくれ〜!」

 

「……んっ……ふあっ……?プロデューサーさぁん……?」

 

「ふぅ……やっと起きてくれたか。おはよう、美世」

 

「おはよ……って……あれ……?ここは……?」

 

「全く……寝ぼけてるのか……?ここは「美世の」車の中だよ」

 

「えっ……あたしの……?でも……何だかとても……眩しいような……」

 

「……完全に寝ぼけてるな……いいか?俺たちはドライブで、ここの奥地まで来たんだ」

 

「それで、美世と車内で喋ってたら返事が聞こえなくなって、様子を見たら美世が寝ちゃってたんだよ」

 

「そして、俺もこのまま寝て、一緒に朝を迎えたってわけだ。どうだ?状況整理が出来たか?」

 

「あっ……そ、そうだったんだ……ごめんね……あたしから提案したドライブだったのに……」

 

「まあ、気にするな。……それより……今は、他のことを気にして欲しいんだが……?」

 

「うん……?他のこと……?」

 

「……まずはその……はだけた服装を直してくれ……色々と誤解を生むから……//」

 

「……ひゃわっ!?あ、あわわ……ご、ごめんなさ〜いっ!!//」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン

 

「朝焼けが、とても綺麗だね……」

 

「そうだな。空気が綺麗だから、とても輝いてるな」

 

「綺麗な朝焼けを、プロデューサーさんと、こうして肩を並べて見てるなんて……夢の続きみたい……」

 

「夢の続きって……さっき、美世が見てた「楽しい夢」の続きか?」

 

「……夢……?」

 

「あぁ。「勇気」だとか、あとは「男の子と女の子」とか寝言を言ってて、何だかとても楽しそうで……」

 

「……わっ!わ〜〜〜っ!!これ以上は言わないでっ!う、うぅ〜……恥ずかしいっ……!」

 

「……「あの時」のあたし……あんなに大胆で、そして……ううっ……//」

 

「ははっ。まあ、俺は「かわいい」美世の寝顔を堪能させてもらったから、ある意味で役得だったけどな」

 

「役得って……え、ええ〜っ!?まさか、ずっとあたしの寝顔を見てたの〜!?」

 

「俺の方が先に起きてたしな。楽しそうな夢を見てたから、少し様子見をしてたんだ」

 

「むぅ〜……プロデューサーさんのいぢわる〜……。こんなに無防備な、あたしの寝顔を見たんだから……」

 

「……し、しっかりと……「責任」を……とってもらうんだからねっ……//」

 

「わかってるよ。美世をしっかりと、シンデレラのお城に送るのは俺の役目だからな。これからもよろしく」

 

「……いつかは……夢じゃなくて、現実で……プロデューサーさんに……」

 

「?」

 

「……何でもないよっ♪ほらっ♪新鮮な空気を吸ってリフレッシュしたことだし、さっそく事務所に帰ろうよ♪」

 

「もちろん、あたしの運転でねっ♪これからも、あたしの助手席にずっといてもらうんだからっ♪」

 

「その代わり……あたしの「人生の」運転は任せたよっ♪プロデューサーさんっ♡」



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散歩シンデレラ 高森藍子

「……どうでしたか〜?楽しんでいただけましたか〜♪」

 

ワ~!タノシカッタヨ~!アイコチャ~ン!ミホチャ~ン!

 

「わ〜♪喜んでもらえてよかったです♪……では、みなさ〜ん♪最後に「あの」コールをいっきますよ〜♪」

 

「みなさん、今宵は楽しんでくださいね〜♪じゃあ、藍子ちゃん♪一緒に言おうか♪」

 

「ですねっ♪美穂ちゃん♪さぁ!始まりますよ〜♪不思議な夜が♪今宵の街はカーニバルですっ♪せ〜のっ!!」

 

「「「ハッピーハロウィーーーン!!」」」

 

「……ふぅ〜……何とか、終わりました〜……」

 

「そうですねぇ〜……はぁ〜……とっても、緊張しましたぁ〜……」

 

「美穂、藍子、お疲れ様。舞台袖から、二人の活躍をずっと見させてもらったよ」

 

「あっ、プロデューサーさんっ、お疲れ様です♪」

 

「お疲れ様ですっ♪あの……藍子ちゃんと私……きちんと頑張れていましたか?」

 

「あぁ、しっかりとパフォーマンスが出来てたよ。これで無事、ハロウィンも大盛況だな」

 

「緊張はしましたけど、ファンのみなさんと楽しい時を過ごせてよかったです♪ね〜、美穂ちゃん♪」

 

「はいっ♪ハロウィンはやっぱり、ドキドキワクワクするね♪藍子ちゃん♪」

 

「それはよかった。とりあえず、今日はこのイベントで仕事は終わりだ。このまま、事務所に帰るか?」

 

「う〜ん……あ、そうだっ♪もしよかったらこのまま、三人でどこかでお茶をしませんか?」

 

「おっ、それいいな。俺は賛成だけど……美穂はどうする?」

 

「私も大賛成ですっ♪せっかくハロウィンに「マグナウィッチーズ」で一緒にお仕事が出来たんですしっ♪」

 

「決まりだな。じゃあ、俺たちも今宵はハロウィンを楽しもうぜ」

 

「「は〜いっ♪」」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜んっ♪……ん〜♪このパフェ、美味しいですぅ〜♪」

 

「そうだね♪藍子ちゃんっ♪ハロウィンの雰囲気も相まって、余計に美味しく感じるね♪」

 

「うん。ここのハロウィンカフェってオシャレだし、スイーツも結構美味しいよな」

 

「それに、二人のその、魔女の仮装もとてもハロウィンの雰囲気に似合ってるよ。例えば……ほれっ」

 

「ひゃんっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ!?」

 

「この、美穂の魔女の帽子とか、特に凝っててかわいいじゃないか。流石は、俺の美穂だな」

 

「俺のって……ううっ……そ、そんな、頭を撫でながら顔を見つめないでください……恥ずかしいです……//」

 

「……は〜いっ♪プロデューサーさんっ♪美穂ちゃん♪いきますよ〜♪」

 

「「えっ……?」」

 

パシャッ♪

 

「うわっ!?なっ……何だっ!?」

 

「えへへ〜♪実は、トイカメラを持って来てたんです♪ふいうちをしてみちゃいましたっ♪はいっ♪」

 

「トイカメラ……って……ちょっ、な、何だこれっ!?」

 

「あ、あうっ……こんなに見つめ合って……これじゃあ、私たちまるでっ……//」

 

「二人で、見つめ合っちゃって……と〜っても「お熱くて」素晴らしい写真が撮れちゃいましたっ♪うふふ♪」

 

------------------------------------------------

 

「なあ……藍子?頼むから、その恥ずかしい写真を消してくれないか……?」

 

「……じゃあ……消して欲しかったら……「私にも」この衣装の感想が欲しいなあ〜?」

 

「ん?感想って……まあ、藍子も似合ってて、ハロウィンチックでかわいいと思うぞ?」

 

「特に、ゴスロリ調の魔女の仮装や帽子とか……とても似合ってるよ」

 

「うふふ……ありがとうございます♪では、褒めてもらったことですし、この写真は削除してあげます♪」

 

「そのかわり、今度は三人で一緒に撮りましょうよっ♪それならいいですよねっ♪」

 

「あっ♪私も、三人でなら撮りたいです♪」

 

「うん、俺もそれならいいぞ。じゃあ……どう撮ろうか?」

 

「ではですね……トイカメラのタイマーをセットしてと…………うふっ♪少し、失礼しますね……♪え〜いっ♡」

 

ギュッ……♡

 

「なっ……!?あ、藍子っ……!?」

 

「はいっ♪次は美穂ちゃんの番だよっ♪急いで♪」

 

「ええっ!?あっ……う、うぅ〜……では……失礼しますっ!え、え〜いっ!//」

 

「ふふっ……♪では、いきますよ〜♪はい、チーズっ♪」

 

「ちょっ……まっ……!」

 

パシャッ♪

 

------------------------------------------------

 

「うふふ……♪と〜ってもいい写真が撮れましたっ♪美穂ちゃんにもあとで送るね♪」

 

「ありがとうっ♪えへへ〜♪三人の、楽しいハロウィンの思い出になったね〜♪」

 

「……まあ……二人が喜んでくれてるなら、それでいいか……。少し、恥ずかしかったけど……//」

 

「ふふっ……♪それでは、次はどうしましょうか?」

 

「うん?あぁ、そうだな。とりあえず……三人で、ハロウィンの街を回ってみるか?」

 

「はいっ♪では、さっそく……あ〜っ!」

 

「美穂ちゃん、どうしたんですか?」

 

「す、すみません……これから「P.C.S」で、ハロウィンに遊ぶ約束をしてたんでしたっ……」

 

「P.C.S……卯月や響子とか?」

 

「はいっ……ライブが終わったあとに、一緒に周ろうって約束をしてたんです……」

 

「そうだったのか、なら仕方がないな。よし、藍子。よかったら、俺たち二人だけで周るか?」

 

「ええっ……!?そ、そうですね……プロデューサーさんがよろしければっ……」

 

「ふふっ……♪では、本日はありがとうございました♪……あっ、そうだ♪藍子ちゃん♪」

 

「………今宵は二人っきりで……「ハロウィンデート」を楽しんでねっ♡」

 

「えっ……ふぇっ……!?//」

 

「では、またお会いしましょうね〜♪お互いにハロウィンを楽しみましょう♪」

 

「あぁ、またな、気をつけてくれよ。よし、藍子。俺たちもそろそろ行くか」

 

「……あっ……そ、そうですねっ!ふつつかものですが……よろしくお願いしますっ……//」

 

「ははっ、何だよそれ。まあ、改めてよろしくな。藍子」

 

「はいっ♪…………ありがとう……美穂ちゃん……」

 

「ん?どうした……?」

 

「い、いえ!何でもないですっ!では、まずはあの館に行ってみましょうっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「失礼しま〜す♪」

 

「……いらっしゃいませ……ハロウィンの、占いの館へようこそ……。よろしければ、席にお掛けください」

 

「お邪魔するね。じゃあ、藍子。座らさせてもらおうか」

 

「はいっ♪よろしくお願いしますね♪」

 

「本日は、この館にお越しいただき誠にありがとうございます。この私「シノブ」が占わさせていただきます」

 

「シノブちゃんって言うんだ、よろしくね。ところで、この館って君が一人でやってるの?」

 

「はい……お父さ……ではなく、私だけで占いの館をやっています」

 

「コウモリにクモ、キャンドル、そして水晶のドクロ……何だか、とっても雰囲気が出てますね……」

 

「そうだな。それに、シノブちゃんの衣装もハロウィン仕様なんだね。とても似合っててかわいいよ」

 

「えっ……?あ、ありがとうございますっ……コホン……。では、さっそく占いの方を始めて……//」

 

「……おうよ!甘々カップルなのが癪に障るけど、高名な占い師であるオレ様がしっかりと占ってやるぜ!!」

 

「「うわあっ!?・きゃあっ!?」ど、ドクロが喋った!?」」

 

「もう……まだダメだよ?急に喋りだして、お客さんを驚かせちゃ……いつもそうなんだから……」

 

「ね、ねぇ……その、水晶で出来たドクロって……どこから喋ってるの……?」

 

「それは……そうですね。これも「ハロウィン仕様」ということで、営業秘密とさせていただきます」

 

「そうだぞ青年。そんな、かわいいお嬢ちゃんとデートをしてるんだから、野暮なことを聞くのはNGだぜ」

 

「ふあっ……か、かわいいっ……//」

 

「ははっ……色々とツッコミたいけど……とりあえず、俺たちを占ってもらえるかな?」

 

「はい……。では、占わさせてもらいますね……それでは……よろしくお願いします」

 

「よ〜し、じゃあお二人さん。少し待っててくれよな。オレ様が占ってやるぜ」

 

((あっ……「そっち」が占うんだ……))

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……ふぅ。じゃあ、結果を発表をさせてもらうぜ。まずはお嬢ちゃんからだ。うん、お嬢ちゃんはだね……」

 

「……ゴクリ」

 

「……「とってもかわいい」から、超絶幸運な気運を感じたぜ!よかったな!今後も幸せな人生を送れるよ!」

 

「本当ですかっ!?わ〜いっ♪嬉しいですっ〜♪」

 

「さて、次に兄ちゃんは……ふぅ、残念だ……。悪いが、兄ちゃんには一生、不幸なことが付き纏うだろうな」

 

「うぐっ……!い、一生……!」

 

「仕事や女の子に一生、忙殺されたり振り回されて、リストラ、借金、浮気、スキャンダル、修羅場」

 

「そして、財産は消失し、親しき人は離れ、無数の不幸が兄ちゃんに襲いかかって、最後は……ぐがっ……!」

 

「……もう……「私怨」はダメだって言ったでしょ?……すみません……今のは、気にしないでください」

 

「私怨……?」

 

「はい。私が言うのもなんですが……このドクロの占いは、よく当たるんです」

 

「ですけど……男性にだけは、どのような結果が出ても、悪いことだけを伝えてしまうクセがあるんです」

 

「そ、そうなんだ……お茶目なドクロだなあ……あはは……」

 

「それでは……お詫びも兼ねて……今度は、私が改めてお兄さんのことを占わさせてください」

 

「えっ?いいの……?じゃあ……改めて占ってもらおうかな。お願いするよ」

 

「はい……では、私の得意分野である、人相占いをさせていただきますね……少し、失礼します」

 

------------------------------------------------

 

「「……」」

 

「……ふむ……」

 

「……」

 

(改めて見ると……本当にかわいいな……この子……。是非、うちのアイドルになって欲しいくらいだ……//)

 

「……むっ」

 

(……プロデューサーさんってば……また、女の子にデレデレしちゃって……本当にもうっ……)

 

「……ふぅ……終わりました……。では、占った結果を発表させてもらいます」

 

「……ゴクリ」

 

「…………大変お気の毒ですが……お兄さんの顔に……「女難の相」ありと出ていました」

 

「えっ……女難って……俺が?」

 

「はい。どうやら、お兄さんは数多くの女性と深い縁で結ばれてるようです。それも、とても強力に、です」

 

「これは……気をつけないと、お嬢ちゃんの兄ちゃんが、他の女の子に靡いちゃうかもしれないな」

 

「ははっ、そんな大袈裟な。俺はいつでも、藍子の隣にいるよ」

 

「ふえっ……ぷ、プロデューサーさんっ……そんなあっ……//」

 

「ケッ……!この屈託のない、純粋で爽やかな笑顔……あの憎らしい「小僧」にそっくりだぜ……!」

 

「それにどうせ、似たようなセリフを他のお姉ちゃんたちにも吐いてやがるんだろ、オレにはわかるんだぞ」

 

「……ねぇ……お客さんに失礼ですので……少し黙ってて」

 

「っ……す、すみません……。それにしても……お姉ちゃんといえば……」

 

「……さっきのお客だった……魔女のお姉ちゃん二人組は、最高だったなあ……♪」

 

「ふ、二人とも、なかなか美人な大人のお姉ちゃんたちで……!あぁ……思い出しただけでもっ……!」

 

「あの二人になら、すぐにでもお菓子を……いや!むしろ……イタズラをされたいっ……!」

 

「……お父さん?」

 

「ひいっ……!ま、まあ、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんがしっかりと、兄ちゃんを守ってあげるんだぞ。いいな?」

 

「はい……わかりました……」

 

「うしっ!じゃあ、これで占いは終わりだ!末長く幸せになれよ!オレは応援してやらないけどなっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「ご利用していただき、誠にありがとうございました……。また、どこかでお会いしましょう」

 

「うん。占ってくれて、ありがとうね。じゃあ行こうか、藍子」

 

「はいっ♪ありがとうございました♪また、お会いしましょうね♪」

 

「ふぅ……それにしても、まさか……俺に「女難の相」があったとはな……結構、ショックだ……」

 

「むっ……何、意外だったって顔をしてるんですか?むしろ「今まで」自覚がなかったんですか?」

 

「今までって……俺はさっき、初めてあの女の子に占ってもらったんだけど……?」

 

「……やっぱり、あの女の子と骸骨さんが言ってた通りです……本当にもう……目が離せないんですから……」

 

「ん?どうしたんだよ?急に、俺に腕を絡めて」

 

「ふ〜んです。知りませ〜んっ…………おバカ……」

 

「……あ〜っ!お〜いっ♪プッロデューサー♪あ〜むっ♪」

 

カプッ♪

 

「ひいっ……!?なっ、何だっ!?」

 

「あむあむ……えへへ……♪トリックオアトリートっ♪お菓子をくれなきゃ、イタズラをしちゃうぞ☆」

 

「コラっ!し、志希!!突然、何をしてるの!耳を啄むなんて、はしたないでしょっ!?//」

 

「志希……?あっ……なっ、何だ……美嘉と志希か……。こんなところで奇遇だな……」

 

「にゃは〜♪ハッピーハロウィ〜ン☆ねね♪あたしにぃ、オイシ〜イお菓子をちょ〜だいっ☆」

 

------------------------------------------------

 

「あ、あぁ……じゃあ、お菓子を……って!お菓子をもらう前から、俺にイタズラをしてるじゃねえかっ!//」

 

「あれ?……あぁ、そういえばそうだったね☆てへぺろ〜☆」

 

「もうっ!とにかく!いいからプロデューサーに抱きついてないで、離れなさい!全く……!//」

 

「ありがとうな、美嘉。ところで、二人のその仮装、とても似合ってるじゃないか。なあ、藍子」

 

「えぇ、そうですね♪お二人とも、とってもかわいらしいです♪」

 

「ありがとっ♪二人も似合ってるじゃん♪そっちも、ハロウィンパーティーに遊びに来たの?」

 

「まあ、そんなところだ。正確には、仕事の帰りなんだけどな」

 

「へぇ〜、お仕事だったんだ。てっきり、あたしは二人で「ハロウィンデート」をしに来たのかと思ったよ〜」

 

「ふぇっ……!でっ、デートっ!?//」

 

「そんな大層なことじゃないよ。二人と同じで、俺たちもただ単にハロウィンを楽しんでるだけだよ」

 

「そ、そうですよっ!デートだなんてぇ……そんなあっ……//」

 

「ふ〜ん……そ〜なんだぁ〜♪……じゃあ……いっただきま〜すっ♪あ〜んっ♡」

 

カプッ♪

 

「「なっ……!?//」」

 

「うあっ……!?し、志希っ……!?」

 

「チュ~……ぷあっ……。えへへ……♡プロデューサーの血を……いただいちゃったっ♡」

 

------------------------------------------------

 

「ちょっ……し、志希!アンタ!アタシの……じゃなくて!プロデューサーに、何をしてるのよっ!?」

 

「そ、そうだよ、志希ちゃんっ!?プロデューサーさんの首に噛み付くなんて……は、はしたないよっ!?」

 

「エェ〜?だって、こういうの好きなんでしょ♪この前、ちとせちゃんに教えてもらったよぉ〜?」

 

「……くっ……す、好きって何だよ!ったく、ちとせのヤツ……また変なことを言いふらしやがって……!//」

 

「……っ……好き……」

 

「えへへ〜♪プロデューサーってば、お顔真っ赤〜♪もしかしてぇ……「意識」しちゃった……?♡」

 

「し、知るかっ!いくら何でも、悪ふざけがすぎるぞっ!?だいたい志希は、普段から……うあっ……!?」

 

チュ~♡

 

「ええっ……!?み、美嘉さんっ!?」

 

「わぁお☆美嘉ちゃんってば、だいた〜んっ☆」

 

「……」

 

「ちょっ……み、美嘉まで、何をしてるんだよっ……!?//」

 

「……ぷあっ……知らないっ。志希だけなんて……ズルイもんっ……」

 

「にゃはは♪ねぇ〜、プロデューサー?あたしならぁ、も〜っとセクシーなヴァンパイアになれるよぉ〜?」

 

「……セクシー?」

 

「……今度はぁ……キミの「お口」を……吸血してあげるっ♡」

 

「はあっ……!?ち、ちょっと志希!?アンタ一体、何を言ってるのっ!?」

 

「さぁ〜?じゃあ、もう一回……いただきま〜すっ♡……ん〜♡」

 

「ええっ!?ちょっ……まっ……!」

 

「も、もう…………いけませ〜〜〜んっ!!」

 

「「……っ!?」」

 

「私たちはアイドルなんですよ!?い、いくらなんでも、悪ふざけがすぎますっ!!//」

 

「えっ……あっ、はい……すみません……」

 

 

------------------------------------------------

 

「……以上です。んもう、わかってくれましたか?」

 

「……はい……反省します……。じゃあ、お詫びと言ってはなんだけど、コレを藍子ちゃんにあげるっ♪」

 

「えっ……お菓子……?あっ……ありがとう、志希ちゃん」

 

「んじゃあ、プロデューサーにも……あっ!ちょっと待った!キミのには、おまじないをかけてあげるね♪」

 

「……chu♡はい♪これで、ナンバーワンかつオンリーワン♪」

 

「……っ!?」

 

「「お姉ちゃんの」愛を、まるごと全部……受・け・取・っ・て♡はいっ♡」

 

「あ、あぁ……えっと……ありがとう?でも、そのおまじないって何だ?」

 

「にゃは〜♪どういう意味だったっけ〜?ね〜?美嘉ちゃ………むぐっ!?」

 

「そ、そ〜だっ!!アタシも実は、知ってる人に会ったらいつでも渡せるように、お菓子を作って来てたの!」

 

「はいっ♪まずは志希に一口あげるっ♪そして、二人にもはいっ♪ハッピーハロウィン♪」

 

「おぉ……ありがとう……」

 

「ありがとうございます……」

 

「う”、う”に”ゃ”……」

 

「んもう♡志希ったら、そんなにお菓子を気に入ってくれたんだ♡じゃあ、アタシたちはそろそろ行くねっ♪」

 

「そ、そうか……俺たちの分までわざわざ、悪いな」

 

「いいのいいの♡遠慮しないで♡んじゃあ、まったね〜♡」

 

「あぁ、またな……。唐突のことで驚きはしたが……美嘉たちからお菓子をもらえてよかったな。なあ、藍子」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……藍子?」

 

「……はっ……!そ、そうですねっ♪美味しそうなお菓子をもらえて私、すごい嬉しいですっ♪」

 

「でも……さっそく「女難」が襲って来ちゃいましたね……占い通りに……」

 

「……あぁ。まさか、後ろから突然、志希にあんなことをされるとは……あの女の子の占いってすごいな……」

 

「もうっ、プロデューサさん?私が志希ちゃんを止めなかったら、どうなってたと思うんですか〜?」

 

「どうって、それは……さ、さあな!志希のイタズラ好きには困ったものだなっ!あ、あはは……!//」

 

「むっ……さては今、ヘンなことを考えてましたね〜……?…………えっち……」

 

「ちょっ……何を言ってるんだよ!?別に、俺は……うわっ!?」

 

「……あはっ♪さぁ〜♪突然ですが、私は誰でしょう♪当ててみて♪……し〜っ♪」

 

(……あっ……人差し指……)

 

「い、いや……突然、誰かと言われても……目隠しをされてるし……」

 

「えぇ〜?じゃあ、ヒントをあげるっ♡……あなたの大好きな……ハートの「エース」よっ……えいっ♡」

 

ムニュッ♡

 

「うあっ……!?え、えっと……エースということは、もしかして…………レナさんですか……?//」

 

「……エクセレント〜♪ハロ〜、お二人さ〜ん♪ハッピーハロウィ〜ン♪」

 

「……あの……レナさん?何で突然、出会い頭に俺に目隠しを……?」

 

「ごめんごめん♪つい、ハロウィンだからイタズラ心が芽生えて来ちゃったのよ♡」

 

------------------------------------------------

 

「えっと……こんばんは、レナさん」

 

「藍子ちゃんも改めて、こんばんは♪二人も、今宵のハロウィンを楽しみに来たのかしら?」

 

「そうですね、まあそんなところです。なあ、藍子」

 

「はいっ♪ところで、レナさんのその魔女の仮装、とっても似合ってますね♪」

 

「あら、ありがとう♪二人もとても似合ってるわよ♪ねっ、美優さんっ♪」

 

「……あっ……うぅっ〜……こ、こんばんは……//」

 

「あれ……?美優さんも一緒だったんですか?どうしたんです?そんなに、レナさんの後ろに隠れて」

 

「ふふっ……♪さぁ〜♪お披露目よぉ〜♪私たちぃ、オ・ト・ナの「マグナウィッチーズ」よっ♡」

 

「あうっ……あの……やっぱり、似合わないですよね……。私に……こんな格好は……//」

 

「いえいえ、そんなことはないですよ。お二人とも、とてもかわいらしくて……」

 

ムチッ……♡

 

「……それに……す、少し……「妖艶な」オトナの魔女って感じで……とっても似合ってます……えぇ……//」

 

「……むっ」

 

「……そう……♡ところで聞いて?プロデューサーさん。私たち、占いの館で酷い目にあったのよ?」

 

「えっ、占いの館ですか……?」

 

「えぇ。女の子がやってた占いの館なんだけどね、さっき、そこで占ってもらったの。美優さんと一緒にね」

 

「でね?その占ってくれた、喋る不思議なドクロがね、占いが終わったあとに失礼なことばかり言ってきたの」

 

「私たちを見て「胸が大きい」とか「むちむち」だとか……女性に対して、デリカシーがなさすぎるわよね?」

 

------------------------------------------------

 

「……胸……むちむち……ゴクリ……」

 

「……プロデューサーさぁん?「どこを」見てるんですかぁ〜……?」

 

「はっ……そ、それは、とんだ災難でしたねっ!あ、あははっ……!」

 

「ふぅん……♪ねぇ、ところでプロデューサーさん♪お菓子はいかがかしら?」

 

「えっ……お菓子ですか?」

 

「うふふっ……♡この、あまぁ〜いキャンディが欲しい?それとも……え〜いっ♪」

 

「きゃっ……!?」

 

ムニュッ……♡

 

「ほろあまぁ〜い、艶やかなオトナの「ウィッチーズ」に……「イケナイ」イタズラをしちゃう……?♡」

 

「うあっ……!?ちょっ……み、美優さんっ!?それに、レナさんも……一体、何をしてるんですかっ!?//」

 

「……ううっ……//」

 

「ふふっ……プロデューサーさんもやっぱり「男の人」なのね♪……視線が少し、下に向いてるわよ♡」

 

「……むむっ」

 

「い、いや……そんなことは……ていうか!近すぎですって……!そんなに密着されたら……俺っ……!//」

 

「うふっ……♡プロデューサーさんならぁ……もう、答えは……決まってるわよねっ♡」

 

「ちょっ、まっ……こっ、これ以上は、本当にマズいですって……!色んな意味でっ……!//」

 

「……ふふ……♪んもう、冗談よ♡ほらっ、二人にキャンディをあげるわっ♪はいっ♪」

 

「……えっ……?あ、ありがとうございます……?」

 

「あっ……ありがとうございますっ……」

 

「さっ♪お邪魔虫は、そろそろ退散するわ♪「デート」の邪魔をしてしまって、悪かったわね♪」

 

「……だから……そろそろ離れないとっ♪ねっ、美優さんっ♪」

 

「……ふえっ……!?あっ……す、すみませんっ……私ってばっ……!では……失礼しますね……」

 

「そ、そうですか……。では、また今度会いましょうね。お菓子、ありがとうございました……」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「うふふ♪二人とも、本当にかわいいんだから……♪」

 

「……も、もうっ……レナさんってば……急に、何をするんですかっ……//」

 

「ええ〜?だって、美優さんってば、藍子ちゃんに妬いてたんだも〜ん♪」

 

「だ・か・らっ♪「後押し」をしてあげただけよっ♡」

 

「えっ……わ、私は……そんなことはっ……」

 

「ふふっ……♪何だかんだいって、私が言うまでプロデューサーさんから離れなかったクセにっ♡」

 

「っ……そ、それはっ……ううっ〜……//」

 

「元ディーラーの私に「イカサマ」は通用しないわよっ♪賭け事は、心の読み合いが重要なんだから♪」

 

(うふふ……♪私も便乗して、ちょっぴり……プロデューサーさんに甘えちゃった♡)

 

(……愛しの藍子ちゃんがいるのに、私ってば……本当に「イタズラ好き」な悪いウィッチなんだから……)

 

(でも、ハロウィンだし、少しぐらいなら許してくれるわよね♪……ダシにしてごめんなさいっ♪美優さんっ♪)

 

「じゃあ、美優さんっ♪せっかくハロウィンに来たんだし、今からバーに飲みに行きましょうよ♪私の奢りで♪」

 

「えっ……?そんな……悪いですよ……奢りだなんて……」

 

「遠慮しないで♪「失恋」しちゃった美優さんを慰めるための、慰労会も兼ねてるしっ♪」

 

「ええっ……!?で、ですから……私は別に、そんなではっ……!//」

 

「はいはい♪じゃあさっそく、行くわよ♪オトナのハロウィンを楽しみましょう♪れっつご〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「……むぅっ〜」

 

「あ、藍子……?どうしたんだ……?」

 

「どうしたんだって……何がですか?」

 

「いや……そんなに、風船みたいに頬を膨らませて……俺、何かしちゃったか?」

 

「何でもないです〜っ。もうっ……男の人は、みんなこうなのかしら……」

 

「……胸を見て……あんなにデレデレしちゃって……本当にもうっ……」

 

「?」

 

「ふ〜んです……。どうせ、私なんかよりレナさんや美優さんの方が魅力的ですよ〜だっ」

 

「えっ……?いやいや。藍子も十分、かわいくて魅力的なアイドルだぞ?」

 

「お世辞はいいですっ…………プロデューサーさんのえっち……」

 

「はあっ!?だから、な、何だよそれっ!」

 

「知りませんっ。……確かに、二人は魅力的かもしれないけど……私だって……女の子なのに……」

 

「えっと……と、とりあえずさ……俺の腕から一旦、離れないか?」

 

「イヤですっ。プロデューサーさんが「ヘンな」ことをしないか、私が監視しなければいけませんからっ」

 

「するかっ!!……全く……一体、どうしちゃったんだよ……」

 

------------------------------------------------

 

「サレンディア救護院主催、チーム「ディアボロス」による、ハロウィンイベント開催っと……」

 

「……これで、よしっと……ふぅ〜♪これで、全箇所にポスターを貼り終えましたぁ〜♪」

 

「それにしても、ハロウィンを楽しんでる人や子供たちのためにイベントだなんて……」

 

「流石はお嬢様ですね♪チームの皆さんにも、快諾していただきましたし♪」

 

「……そして……そのあとは……えへへっ♪」

 

スズメ、トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃ、イタズラをするぞ。

 

ええっ!?ちょっ……あのっ……い、今は……手元に、何も持ってなくて……。

 

そうか。じゃあ、スズメにはイタズラをしなきゃいけないな。

 

……あっ!では!あちらの方にハロウィンカフェがありますので、よかったらご一緒に……きゃっ……!?

 

ダメ、もう待てない。じゃあ今から、お菓子の代わりに「スズメ」をもらうからね。

 

ええっ……!?ど、どどっ、どうしたんですかっ!?急に、私の顔に、両手を添えてっ……!//

 

もう、誰にも渡さないからね。「僕だけ」のスズメ……んっ……。

 

「……あっ……だ、ダメですよっ……♡あなたには、お嬢様がいるのにっ……♡」

 

「……って!なっ、ナニを考えてるんですかっ!?私ぃっ!?//」

 

「あぅっ〜……私ってば……ドジなうえに、はしたなくて……メイド失格ですぅ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「……」

 

「……なあ、藍子。そろそろ機嫌を直してくれよ。謝るからさ、なっ?」

 

「むぅ……じゃあ…………してくれたら……許してあげます……」

 

「えっ……?」

 

「で……ですから……はいっ!て、手を繋いでくれたら、許してあげますっ!」

 

「手……?……こうでいいのか?」

 

ギュッ♪

 

「あっ……えへへ……♪//」

 

「えっと……これで、許してくれるか……?」

 

「うふふっ……♪はいっ♪では、許してあげますっ♪……しばらく、こうして繋いでましょうねっ……♪」

 

「あぁ、よろしくな。……ん?」

 

「どうしたんですか?プロデューサーさんっ」

 

「いや……あそこの脚立に乗って、ポスターを貼ってる女の子……大丈夫かなって思って……」

 

「女の子……?」

 

「そっ、そそ、そうですよっ!あの方はとても優しいですし、そんなことをするはずがありませんっ!」

 

「……でっ、でも……たまには、その……ドジでダメダメな私に……」

 

「……少し強引に……背徳的な「イタズラ」を……って!ああああああっ!ですからあっ!……きゃあっ!?」

 

「っ……!?あ、危ないっ!……むぐっ!?」

 

「あいたた〜……って……あれっ?倒れたにしては、何だか下が……柔らかいような……」

 

「むぐっ……むぐぐっ……//」

 

「……ひゃわっ……!?ご、ごめんなさいっ!転んだ拍子に、お兄さんの顔に跨ってしまってっ!//」

 

「……むっ」

 

「……ぷあっ……い、いや……気にしないで……。むしろ、役得……じゃなくて!俺は大丈夫だからさ」

 

「あっ……ほ、本当にすみませんっ!今すぐ、どきますので…………ひゃあんっ!?」

 

------------------------------------------------

 

ムニュッ♪

 

「むぐうっ……!?」

 

「……むむっ」

 

「……あぅ〜……ご、ごめんなさぁい〜……今度は、飾りに足を滑らせてしまってっ……」

 

「ん、んぐ……いや……気にしないでくれ。それより、君の方こそ怪我はないかい?」

 

「は、はいっ!大丈夫ですっ!助けていただき、ありがとうございますっ!//」

 

「「……」」

 

「……え、えっと……その……俺の顔に、何かついてる……?」

 

「ひゃっ……!すっ、すみませんっ!そのっ……つい……「あの方に」似ていましたので……//」

 

「あの方……?……うあっ!?」

 

「……ほ〜ら♡プロデューサーさ〜んっ♡「ナンパ」をしてないで、さっさと行きますよ〜♡」

 

「い、痛たっ!おい、藍子!急に、俺の腕を引っ張るなっ!!」

 

「知りませ〜ん♪では、私たちはこれで失礼させてもらいますね♡ご迷惑をおかけしましたっ♡」

 

「あっ……はっ、はい……行っちゃった……。それにしても……私ってばまた、あんなはしたないことを……」

 

「見知らぬお兄さんの顔に跨って……しまいには、む、胸も顔に押し付けて……うぅ……恥ずかしいっ……//」

 

「……でも、あのお兄さん……すごく優しかったなあ。怒るどころか、私のことを心配してくれたし……」

 

「それに……「ご主人様」に雰囲気も似てて……とっても素敵で……って、ご主人様……?」

 

「……あっ!そうでした!この仕事を終えたら、ご主……ではなく!あの方と待ち合わせをしてるんでした!」

 

「えへへ〜……♪今宵は、お嬢様の許しももらってますし……たっぷり、甘えちゃおっかな……♡」

 

------------------------------------------------

 

「……むぅ〜っ」

 

「えっと……藍子さん?もしかして……怒っています……?」

 

「そんなことはないですよ。むしろ「目の前で」倒れそうになった女の子を助けたことに、感心してるんです」

 

「そ、そうか……ならよかった……あはは……」

 

「……もうっ……初対面の女の子にまで……どうしたら、あんな体勢になるんですか……」

 

「わかっています……そういう人じゃないって、わかっていますけど……本当にもうっ……」

 

「?」

 

「では……私はもう、行きますので……」

 

「は?おい、行くって、どこに行くんだよ?」

 

「……わからないですっ!どうせ、私なんか他の女の子より魅力がなくて…………きゃっ……!?」

 

「っ……藍子っ!!……ふぅ……間一髪だったな……。おい、藍子。大丈夫か……?」

 

「……あっ……はっ、はいっ!その……ありがとうございますっ……//」

 

「よかった。全く……急に、走り出して……気をつけてくれよな……?」

 

「「……」」

 

「ママ〜。あのお兄ちゃんとお姉ちゃんって、何をしてるの〜?」

 

「えっ……?あぁ。あれは、あすなろ……って!あんたにまだ早い!ほらっ!見ちゃダメ!早く行くわよ!//」

 

「ふんっ……。こんな道端でイチャついてるんじゃねえの。これだから、生きている人間は嫌なの」

 

「……あぁ、もう!「あいつ」を思い出して腹が立ってきたの!罰としてプリンを100個要求しに行くの!!」

 

「……と、とりあえず……周りの目線が気になるから……どこかに移動しないか?//」

 

「そっ……そうですね……はいっ//」

 

------------------------------------------------

 

「……よし、ここなら……もう安心だろ……」

 

「はぁはぁ……ですねぇ〜……人もほとんどいないですし……」

 

「にしても……全く……勝手に走りだそうとして、勝手に転んで……本当、天然すぎて目が離せないぜ……」

 

「あぅ……そ、それは……むぅっ……だいたい、プロデューサーさんだって悪いんです……」

 

「……いつもそうなんですから……気がついたら、他の女の子と楽しそうにしちゃって……本当にもう……」

 

「?」

 

「とっ、とにかく!プロデューサーさんだって、危なっかしくて目が離せないんですっ!……でも……」

 

「……もしかして……私たち……周りから見ると「そういうふう」に見えてたんですかね……?//」

 

「な、何だよ……そういうふうって……//」

 

「「……//」」

 

「……と、とりあえず!まずは、あそこのベンチにでも座って、落ち着こうぜ!//」

 

「あっ……そ、そうですねっ!では、座りましょうっ!」

 

「ふぅ……それにしても……住宅街から何まであたり一面、ハロウィンで溢れかえってるな」

 

「そうですね♪この公園も、ハロウィン仕様になっていますしね♪……ちなみに……覚えていますか……?」

 

「……ここは……私にとって……とても大切な場所なんですよ……?」

 

「大切……あっ……そうだったな。ここは、俺と藍子が「初めて」出会った公園だったよな」

 

------------------------------------------------

 

「ぴんぽ〜ん♪正解ですっ♪……思えば……ここで出会ってから、今日に至るまで……色々とありましたね……」

 

「楽しいことや嬉しいこと、時には悲しいことや辛いこと。本当に、色々とありました」

 

「それでも……プロデューサーさんはいつも、私の隣にいてくれました」

 

「ですから……この景色をこうして、改めて一緒に肩を並べて見ることが出来て……本当に嬉しいんです……」

 

「藍子は俺の大切なアイドルだしな。当然のことだよ」

 

「うふふっ……♪では、今から出会った頃を再現してみましょう♪」もちろん、覚えてくれてますよねっ♪」

 

「えっ?そっ……そうだな……。俺と藍子の、大切な思い出だもんな……もちろん覚えてるさ……」

 

「……本当ですかぁ〜?では、演技の練習も兼ねて、今からスタートですっ♪さん、はいっ♪」

 

「……あっ、どうも、こんにちは♪お散歩中ですか?」

 

「っ……そ、そうですね。とても天気がよかったので……」

 

「私もここで、お散歩をしてるんですっ。またお会いするかもしれませんね。それではっ」

 

「あっ、あの……よかったら……一緒に、歩んでみませんか……?」

 

「お散歩のお誘い……ですか?一緒にまわるくらいでしたら、もちろん構いませんけど……」

 

「いえ……僕と「アイドルの道」を……一緒に歩んでみませんか……?」

 

「あなたと…‥?うふふ……はい♪では、お願いします♪一緒に歩んで行きましょうね♪……「人生の道」をっ♪」

 

「えっ……人生……?……んっ!?」

 

チュッ♡

 

「「……」」

 

------------------------------------------------

 

「……ぷあっ……あ、藍子っ……!?//」

 

「……えへへ……やっぱり、覚えててくれたんですね♪でも……最後は、私のアドリブですっ……♡」

 

「アドリブ……?ていうか……今……俺に……」

 

「うふふ……♪今宵の私は、イタズラ好きな悪い魔女であり、ちょいワルなバンデットなんですっ♪」

 

「それに……私……あの女の子と骸骨さんの占いを聞いた時に、確信したんです。負けられないって」

 

「むしろ……占ってもらう前からずっと……もちろん、美穂ちゃんや他の皆さんだって……」

 

「……つまり、今のは「私の気持ち」ということです♪うふっ……初めてって、こんな感覚なんですね……♡」

 

「……」

 

「もうっ、女の子からこういうことをさせちゃ……ダメなんですよ?本当にイジワルなんですから……」

 

「……こんなにも……私の心にイタズラをした「責任」を……取ってくださいねっ……♡//」

 

「……藍子……俺……」

 

「これ以上は言わないでください。あくまで「イタズラ」ですのでっ♪さあ、そろそろ行きましょう♪」

 

「ちょっ……!?」

 

「今宵は、もうずっと手を離しませんからね♪ワクワクドキドキな、不思議な夜はまだ始まったばかりですっ♪」

 

「ですので……これからも「私たち」のファインダーに、色んな思い出を写していきましょうね……♪」

 

「……トリックオアトリート♪返事をくれないと……プロデューサーさんをずっと、独占しちゃうぞっ♡」



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悲恋シンデレラ 橘ありす

キーンコーンカーンコーン

 

「ふぅ……終わりましたね……」

 

「……さて……今日のスケジュールはと……ふむ……」

 

「お〜いっ♪橘さ〜んっ♪」

 

「あっ、はい……何でしょう?」

 

「ねぇねぇ♪あたしたちと一緒に帰ろぉ〜♪」

 

「あぁ……はい、いいですよ。では、三人で一緒に帰りましょう」

 

「しっかし、11月になって急に寒くなったね〜。息がもう、こんなに白いよ〜」

 

「えぇ。マフラーが手放せない季節になってきました」

 

「甘くて温かいココアが恋しいよぉ〜…………それにしても……」

 

ワ~!ワ~!

 

「……男子は相変わらず元気ね〜。こんなに寒くても、あんなにはしゃいじゃってさ〜」

 

「うんうん。いくら学校が半日で終わったからって、さっそくあんなに校庭で泥んこまみれになってるし……」

 

「ほ〜んと、お子様だよね〜。泥だらけになってまで遊んで、何がいいのかしら」

 

「元気でいいじゃないですか。……私は少し、遠慮したいですけど……」

 

「ところでさ〜、橘さんって好きな人とかいないの?」

 

「えっ……好きな人……ですか……?」

 

「うん。例えば、あの男子たちの中にいたりとかしないのかな〜って思ってさ」

 

「好きな人…………」

 

ウェ~イ!クラエ~!カンチョ~コウゲキ~!

 

アッ!テメ~,ヤッタナ~!オレモシカエシシテヤルゼ!クラエ!ドロンコビ~ム!!

 

ウワッ!キッタネ~!ジャアオレモ,オマエニドロヲカケカエシテヤルゼ!ウリャッ!セリャッ!

 

キャッキャッ♪

 

------------------------------------------------

 

「……いえ……私は「アイドル」をしてるから、そういうのは……」

 

「あはっ♪そうだったね♪橘さんは今、アイドルをしてたんだよねぇ〜♪」

 

「いいなあ〜。アイドルってあの、歌って踊るかわいい女の子たちのことでしょ〜?」

 

「いえいえ、そんな。私はまだまだ、見習いの身ですので」

 

「またまた〜♪橘さんってかわいいし、クラスの大人気アイドルじゃない♪」

 

「だよね〜♪この前のバレンタインの時も、妙に橘さんの周りで男子たちがソワソワしてたしっ♪」

 

「えっ……そうなんですか……?」

 

「うんっ♪だから、あたしたちが男子から橘さんのことを守ってあげないとっ♪」

 

「そうだよ〜♪橘さんも女の子なんだから、本命の男子にチョコを渡したいもんね〜♪」

 

「それは……そうですね。でも……仮に渡すなら、私は少し……大人な人の方が…………っ……!」

 

「うん?橘さん、どうしたの?」

 

「……いえ……では、私は「お仕事」がありますので、これで失礼します」

 

「あっ、そうだったんだ♪じゃ、また明日ね〜♪橘さ〜んっ♪」

 

「アイドルのお仕事、頑張ってね♪」

 

「えぇ。では、また明日会いましょうね」

 

「うん、じゃ〜ね〜♪……いいなあ〜♪学校からそのままお仕事だなんて、いかにもアイドル〜って感じ〜♪」

 

「だよね〜♪しかも、スーツのお兄さんが車でお出迎えしてくれるとは、まさに「シンデレラ」だよね〜♪」

 

「……もしかして……橘さんが言ってた、噂のお兄さんってあの人のことかなぁ?」

 

「えっ?噂の……?」

 

「うん。前に少し、橘さんから聞いたことがあるんだ。「頼りなくて危なっかしい」お兄さんがいるんだって」

 

------------------------------------------------

 

「よぉ、ありす、お疲れ様。学校はどうだった?」

 

「…………橘ですっ……」

 

「うん?どうしたんだよ……?そんなに浮かない顔をして」

 

「……学校の校門前に、車で迎えにくるなんて聞いていません。一体、どういうことなんですか?」

 

「どういうことって……前に、ありすが言ったんじゃないか「迎えに来てくれたら、お話が出来る」って」

 

「それは……い、言いましたけど、突然だなんて聞いていませんっ!事務所から行くってお話でしたよね!?」

 

「ははっ。急に学校まで来て、ありすを少し驚かしてやろうと思ったんだ。そしたら、見事に驚いてくれたな」

 

「本当にもう……大人なのに、子供みたいなことをするんですね……。呆れてしまいます」

 

「悪かった。じゃあ、迎えに行くのはこれっきりにさせてもらうよ。ごめんよ、ありす」

 

「待ってください。私は「非礼」を注意しただけで「迎えに来た」ことに関しては怒っていません」

 

「……むしろ……その気持ちは嬉しいです。ですので、次からは私に一声を掛けてください。いいですね?」

 

「あぁ、わかりましたよ。じゃあ、まずは今日の予定の確認を……」

 

「スタジオで「ドレミファクトリー」のPV撮影ですよね?次に撮影後、そのまま雑誌のインタビュー付きで」

 

「おっ、流石はありすじゃないか。しっかりとスケジュールを確認してくれてたんだな」

 

「当たり前です、私はプロのアイドルですから。これくらいのことは当然です」

 

「そりゃ、頼もしいな。なら、今更説明はいらないな。じゃあさっそく向かおうぜ」

 

「はい。では、改めて送迎をお願いします」

 

------------------------------------------------

 

「……よしっ、みんな揃ってるな。今日はよろしく頼むぞ」

 

「「「はぁ〜いっ♪」」」

 

「せんせぇ♪今日も、よろしくお願いしま〜す♪」

 

「よろしくな!プロデューサー!オレ様の華麗なシュートを決めてやるぜ!」

 

「プロデューサーちゃま♪本日は、わたくしたちをしっかりとエスコートをしてくださいまし♪」

 

「あの……プロデューサーさん……今日は、よろしくお願いします……」

 

「あぁ。みんなよろしく……ん?そういえば千枝。その千枝の髪飾り、新しく変えたんだな。似合ってるぞ」

 

「ええっ……!?あ、ありがとうございます……。でも、よく分かりましたね?」

 

「当たり前だろ。千枝は俺の大切なアイドルだしな。気が付かないわけがないよ」

 

「た、大切……えへへ……♪わ、私もその……少し……失礼しますね♪」

 

「えっ……?」

 

「……これでよし……うふふ♪プロデューサーさんのネクタイが、少しずれていましたよ♪」

 

「おっ、ありがとう。千枝は将来、いいお嫁さんになれるだろうな」

 

ナデナデ

 

「あうっ……そ、そんなことはっ……//」

 

「むっ……ねぇ、せんせぇ!かおるも、ピン留めをひまわりに変えてみたんだよぉ〜!?」

 

「プロデューサーちゃま!千枝さんだけではなく、わたくしだってリボンを新調しましたのよ!?」

 

「ちょっ……!わ、わかったから、そんなに押しかけてくるなって!少し落ち着けっ!!」

 

「……えへへ……「プロデューサーさん」の……お嫁さん……♪」

 

カチャッ

 

「失礼するわ……あら、何かとても賑やかね」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?おっ、奏じゃないか。お疲れ様」

 

「あ〜っ♪奏お姉ちゃんだ〜♪こんにちは〜♪」

 

「こんにちは。みんな、お疲れ様。ふふっ、仲が良くて微笑ましいわね♪」

 

「ところで、奏はどうしてここに来たんだ?」

 

「そうね、別のスタジオでCMの撮影をしてたのよ。……まさか……忘れてたわけじゃないわよね?」

 

「っ……あ、あぁ!もちろんさ!ただ、その……子供たちの相手をしてて、少し多忙だったっていうか……」

 

「んもう、しょうがないんだから。ダメよ?「大切な」オトナのレディのことをを忘れちゃ」

 

「……オトナ……あの……奏さん?一つ、聞いていいですか……?」

 

「うん?どうしたのかしら?ありすちゃん」

 

「えっと……奏さんみたいな、オトナのお姉さんになるには……どうすればいいでしょうか……?」

 

「あっ……それ……千枝も聞きたいです」

 

「う〜ん、そうね……特に意識してることは…………あっ、そうだ♪」

 

「……ねぇ……あなたはどう思うかしら……プロデューサー♡」

 

ムニュッ♡

 

「……っ!?」

 

「んあ……どうしたんだよ?急に、そんな顔を真っ赤にしてよ」

 

「突然、そんなにお顔を赤くして……もしかしてプロデューサーちゃま、風邪を引いてしまいましたの?」

 

「い、いや……ていうか、奏……お前っ……何をしてるんだよっ……!//」

 

「さぁ〜?「オトナ」に聞いた方が早いとおもったのよ♪ねっ♪オトナになるには、どうすればいいのかしら?」

 

「……答えてくれるまで、絶対に離れないんだから……♡オトナのレディを忘れた罰よ……♡」

 

「わぁ〜♪奏お姉ちゃんってば、楽しそ〜♪かおるもやる〜っ♪」

 

「えっ……?……きゃっ……!?」

 

「うわっ!?か、薫っ……!?」

 

------------------------------------------------

 

「ねぇねぇ♪お仕事の前に、みんなでおしくらまんじゅうをしようよ〜♪」

 

「えっ……?おしくらまんじゅう……?」

 

「うんっ♪みんなでぎゅ〜っとして、お仕事のために元気になろうっ♪」

 

「おっ!サッカーの試合前の、円陣みたいなもんか!よし!その話、ノった!うりゃあっ!」

 

「……ち、千枝も……プロデューサーさんから、元気を分けて欲しいな……え、えいっ……!」

 

「わ、わたくしは、そんな……子供じみたことなんて……」

 

「……でも……プロデューサーちゃまがどうしてもって言うなら、しょうがないですわね!失礼しますわ!」

 

「ほら〜♪ありすちゃんも、早くおいでよ〜♪」

 

「……えっと……私は、そういうことは……」

 

「ほらっ、早く来なさいな♪……でないと、わたくしたちだけで「独占」してしまいますわよ♪」

 

「むっ……わ、わかりましたよ!私もやればいいんですよね!?では……し、失礼しますっ……!//」

 

「ちょっ……こ、これは流石に……近すぎだって……!//」

 

「わ〜いっ♪たっのし〜いっ♪まるでかおるたちぃ、せんせぇと奏お姉ちゃんの子供みたいだね〜♪」

 

「なっ……!こ、子供っ……!?」

 

「子供はい〜っぱい、いた方が楽しいからね〜♪パパはせんせぇで、ママは奏お姉ちゃんだぁ〜♡」

 

「っ……子供扱いしないでください!私はもう、大人の女性ですっ!」

 

「そうですわよ!わたくしだって、オトナのレディーなんですの!失礼なことを言わないでくださいまし!」

 

「そ、そうよ……!子供だなんて……。別に……私はそこまでっ……//」

 

「さぁ〜♪かおるたちで、楽しい「ドレミファクトリー」を作っちゃおう♪せ〜のっ♪」

 

「「「「お〜し〜く〜らまんじゅう、押されて泣くなっ♪」」」」

 

「あうっ……//」

 

「うあっ……//」

 

(……細身に見えて……プロデューサーって……意外と逞しいのね……//)

 

(……くっ……か、奏の……「柔らかいもの」がっ……!//)

 

------------------------------------------------

 

「じゃあ、せんせぇ♪かおるたち、行ってくるね〜♪」

 

「オレたちの活躍を見ておいてくれよ!絶対だぞ!」

 

「プロデューサーさん……その……ずっと、見守っていてくださいね……//」

 

「プロデューサーちゃま!しっかりと、わたくしたちを見守っててくださいまし!」

 

「あぁ。みんな、頑張ってきてくれ」

 

「……」

 

「……ん?どうしたんだよ、ありす」

 

「……お仕事を頑張って来ます……ですので……「私も」見守っててくださいね……?」

 

「うん?あぁ、もちろんだ。ありすも頑張って来てくれ」

 

「えぇ。では、行って来ます。奏さんも、私に色々と教えてくださりありがとうございました」

 

「……えっ……?う、うん……ありすちゃんの力になれたのなら……光栄だわ……」

 

「「……」」

 

「ふぅ……。相変わらず、子供たちは元気いっぱいだな」

 

「そ、そうね……ねぇ……プロデューサー?その……さっきのことは……気にしなくていいからね……?」

 

「ん?さっきのこと……?」

 

「ほらっ……薫ちゃん達が言ってた……赤ちゃ…………じゃなくて!「子供」のことよ……//」

 

「子供……おっ、そうか。そういうことか」

 

「わ、私たちはまだ……そういうのは早いと思うし……。アイドルとプロデューサーなんだから……ねっ?//」

 

------------------------------------------------

 

「あぁ、そうだな。薫たちや「奏も」まだ子供なんだから、俺が見守ってあげないとな」

 

「……ちょっと?それって、どういうことかしら?」

 

「何って……そのままの意味だよ。子供らしくてもいいじゃないか。事実、奏はまだ子供なんだしな」

 

ナデナデ

 

「むっ……またそうやって、私を子供扱いをして……何よ……」

 

「……さっきまで密着されて、散々デレデレしてたくせに…………プロデューサーのえっち……」

 

「はあっ!?い、いや……あれはだな…………ていうか!そもそも、あれは奏が悪いんだろっ!?//」

 

「はいはい。プロデューサーくんも、お年頃の「男の子」だしね。……じ、じゃあさ……そのっ……」

 

「……今なら誰も見てないし……オトナの、甘くて艶やかなリップは……いかがかしら……?//」

 

「っ……!またお前はそういうことを……ば、馬鹿なことを言ってないで、さっさと仕事に戻れ!//」

 

「……ふふっ……本当に、からかい甲斐があるんだから……♪じゃあ、私はそろそろ戻るわね♪」

 

「あぁ……頑張ってきてくれ。頼んだぞ」

 

「えぇ♪それじゃあね♪…………えいっ♡」

 

チュッ♡

 

「なっ……!?」

 

「……うふふ……♪今は、これでお預けね♡…………「続き」を待ってるわよ♪じゃあねっ♡」

 

「ちょっ……!お、おい!奏っ!…………全く……本当、あいつは一体……何がしたいんだよ……」

 

「ねぇ!せんせぇも来てよ〜!」

 

「プロデューサーちゃま〜!?しっかりと見守っていただかなくては、困りますわよ〜!?」

 

「……っ……あぁ、ごめ〜ん!今行くよ〜!……ま、いいか……。今度会ったら、説教だな……//」

 

「……しちゃった……♡今夜は……耳の火照りが、収まりそうにないわね……♡」

 

------------------------------------------------

 

「「「ありがとうございました〜♪」」」

 

「みんな、お疲れ様。よく、頑張ってくれたな」

 

「うんっ♪かおるね〜、すっご〜く楽しかった〜♪」

 

「そうだね……千枝も、みんなと一緒に楽しくお仕事が出来て……よかったです……♪」

 

「ま、わたくしにかかれば、この程度のことなら朝飯ですわ♪いかがでしたか?プロデューサーちゃま♪」

 

「うん。みんな、しっかりと頑張れてたぞ。ありがとうな」

 

「まあ、当然のことです。私たちは、プロのアイドルですからね」

 

「へへん!どうだ!オレたちの活躍っぷりは!カッコよかっただろ!」

 

「あぁ。とっても「かわいかった」ぞ、晴」

 

ナデナデ

 

「なっ……!お、おい!何だよ急に!ていうか!かわいい言うな!オレは、カッコいいアイドルなんだぞ!?」

 

「そういえばそうだったな。じゃあ、頭を撫でるのをやめるよ。悪かったな」

 

「っ……いや……待て……。そ、その……なんだ……えっと…………」

 

「……今だけは、許す……。だから、オレ……あ、アタシの頭に、そのまま手を置いててくれ……//」

 

「あ”〜!晴ちゃんってば、いいなあ〜!せんせぇ!かおるたちも頑張ったんだよぉ〜!?」

 

「そうですわ!晴さんだけ不公平ですっ!わたくしたちにも、敬意を払うべきですわ!!」

 

「……あの……プロデューサーさんがよろしければ……千枝のことも……撫でて欲しいです……//」

 

「わわっ!?わかったから!少し落ち着けっ!元気なのはわかったから!なっ!?」

 

キャッキャッ♪

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「今日はありがとうね〜♪じゃあ、晴ちゃん♪あいお姉ちゃんが寮で待ってるし、そろそろ戻ろうか♪」

 

「あぁ、そうだな。今日は頑張ったから、もうお腹がペコペコだぜ!またな!プロデューサーっ!」

 

「うん、二人ともお疲れ様。寮で美味しいご飯を食べて、しっかりとくつろいで休んでくれ。じゃあな」

 

「……さて、桃華はお迎えの人が来て、千枝は親御さんと一緒に帰宅したし……俺たちもそろそろ行くか」

 

「えぇ、そうですね。行きましょう」

 

「今日も、仕事を頑張ってくれてありがとうな、ありす」

 

「いえいえ、当然のことをしたまでです。これでも私はプロなので」

 

「……それより……私たちがお仕事をしている間に、奏さんと何をしてたんですか?」

 

「ん……?あぁ、そりゃ……って!何で急に、奏が出てくるんだよ!?」

 

「撮影してる時に、少し見えたんです。何やら、二人で楽しそうにしてましたね?」

 

「いや……あ、あれはだな……!その……少し、雑談をしてたんだよ……あはは……」

 

「なるほど。「頭を撫でながら」雑談をするなんて、随分とロマンティックなんですね」

 

「うぐっ……そ、それはっ……!」

 

「ふぅ。全く……皆まで言わなくてもわかりますよ。プロデューサーさんは、プロデューサーさんですからね」

 

「……それに……同じ、女の子同士ですので……」

 

「えっ……?」

 

「いえ、こっちの話です。では、私の家までこのまま歩きましょう。ですので……」

 

ギュッ

 

「……しっかりと、私のことを見守ってください……手を繋ぎながら……」

 

------------------------------------------------

 

「では、お見送りをしていただき、ありがとうございました」

 

「気にしないでくれ。それより、今日は頑張ってくれてありがとう、ありす。家でゆっくり疲れを取ってくれ」

 

「はい、そうさせてもらいます。プロデューサーさんも、夜道には気をつけてくださいね」

 

「あぁ、ありがとう。じゃあ、また会おうぜ。明日はせっかくのオフだし、休んでくれ」

 

「えぇ。本日はありがとうございました……あ、プロデューサーさん。最後に一つ、いいですか……?」

 

「うん?どうした?」

 

「あの……よければ、私にも……その…………をしてくれても……いいんですよ……?」

 

「?」

 

「……やっぱり、何でもないです。足を止めてしまい、すみません」

 

「そうか?まあ、何かあったらいつでも言ってくれよ。じゃあ、俺はこれで帰るよ。またな」

 

「えぇ。さようなら。……ふぅ。今日も無事、一日がを終わりましたね」

 

「さて…………「ご飯は、冷蔵庫にあるからね」ですか。どうやら、今日も遅いみたいですね」

 

「……私も……本当は…………ん?これは、何でしょう……?」

 

「ふむ……どうやら、スケジュール帳みたいですね。プロデューサーさんの名前が書いてあります」

 

「もうっ……こんなに大事な物を落としちゃって……仕方がありませんね。今から……」

 

「……やっぱり、やめておきましょう。姿がもう見えませんし、後日、事務所に届けに行ってあげましょう」

 

「本当……目が離せない人なんですから……うふふ……♪」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……。

 

「……さて……オフの日だというのに、事務所に来てしまいました」

 

(全く……これも、プロデューサーさんが悪いんです。大事なスケジュール帳を落とすだなんて)

 

(アイドルを管理する立場として、失格です。もう少し、しっかりしてくれないと困ります)

 

(いつもそうなんですから……目が離せなくて……危なっかしくて…………誰にでも優しくて……)

 

(……ふぅ……。私がしっかりとついてあげてないとですね……本当、しょうがない人なんですから♪)

 

カチャッ

 

「プロデューサーさん、おはようございま……っ……!?」

 

「おっ、ありすじゃないか。おはよう」

 

「……ありす……おはよう……」

 

「え、えぇ……おはようございま…………って!一体、あなたたちは何をしてるんですかっ!?」

 

「いや……何って……なあ、雪美?」

 

「うん……。ただ……私は、プロデューサーの膝の上に……座ってるだけだよ……?」

 

「こんな感じで、言っても聞いてくれなくてな。ところで、ありすは今日オフだろ?どうしたんだ?」

 

「……はっ……!そうでした……はい。これ、プロデューサーさんのですよね?」

 

「ん……?あっ、俺のスケジュール帳じゃないか!どこで拾ったんだ!?」

 

「昨日、送ってもらったあとに、私の家の前で落としたのを見つけたんですよ」

 

「でも……気づいた頃には、もう帰ってしまってたので、後日事務所で渡そうと思ったんです」

 

「そうか……通りで探してもないと思った……。悪いな、ありす。わざわざ届けてもらって」

 

「……プロデューサー……ありすと一緒に……お家まで帰ったの……?」

 

「ん……?あぁ。昨日、ありすたちとお仕事があったんだ。それで、ありすの家まで一緒に帰ったんだよ」

 

「そう……なんだ……」

 

「送ってくれたのは嬉しいですけど、ダメじゃないですか。こんな大事なものを落としちゃ」

 

「ありすの言う通りだ。俺もしっかりしないとな」

 

「全くもう……頼みますよ?…………そんなでも……私の大切な「パートナー」なんですから……//」

 

「……」

 

------------------------------------------------

 

「……ねぇ、プロデューサー……?一つ……聞いていいかな……?」

 

「うん?どうした、雪美?」

 

「プロデューサーが……私のパパとママと仲良しさんなことって……何ていうの……?」

 

「えっ?親御さんと……?どういうことだ……?」

 

「えっと……私とプロデューサーが……付き合ってることを……パパとママが知ってるってこと……」

 

「う〜ん……まあ、その言い方は少しどうかと思うけど……強いて言うなら「家族公認の仲」ってところかな」

 

「かぞく……こうにん……?」

 

「そうだ。雪美をアイドルにスカウトした時に、雪美のパパとママに、一緒にご挨拶をしに行っただろ?」

 

「だから、二人は雪美がアイドルになったことを知っている。それが「公認」って言うんだと、俺は思うぞ」

 

「そうなんだ……♪私たちは……パパとママの……公認……♪」チラッ

 

「むっ……」

 

「……ん?おっと。さて、そうこうしているうちに、そろそろお迎えの時間だ。雪美を車で、家まで送るよ」

 

「……やだ……。もう少しだけ……このままがいい……」

 

「えっ……ゆ、雪美……?」

 

「プロデューサーの膝の上……とても居心地がいい……。だから……まだ、お家に帰りたくない……」

 

「っ……!わ、ワガママはダメですよ!雪美ちゃんっ!!」

 

「まあまあ、そんなに怒るなって。なあ、雪美。雪美は素直ないい子だろ?」

 

「俺は、いい子な雪美と「ずっと」一緒にいたいんだ。だから一旦、降りてくれないか?」

 

「ずっと……うん……わかった……。だけど……今、言ったことは……約束……だからね……?」

 

「あぁ、もちろんだ。これからも一緒に頑張っていこうぜ。ほら、ありすも送っていくよ。二人とも行くぞ」

 

「……えっ……?あっ、は、はい……では、よろしくお願いします……」

 

------------------------------------------------

 

「本日も、雪美をありがとうございました。また、よろしくお願いします」

 

「いえいえ、こちらこそ。今日も、雪美はとてもいい子でしたよ。なっ?雪美」

 

「うん……。だって……プロデューサーと……「約束」をしたから……私……いい子にしてた……♪」

 

「ははっ。これからも、お互いに頑張っていこうな。では、私はこれで失礼させてもらいます」

 

「またね……「私の」……プロデューサー……」

 

「あぁ。また会おうな、雪美。ふぅ……よし、車のキーはっと……あったあった」

 

カチャッ

 

「よぉ、待たせたな。ありす」

 

「いえ、大丈夫ですよ。電子書籍で本を読んでましたので。では、送迎をよろしくお願いします」

 

「あぁ。それにしても、改めて礼を言わせてくれ。手帳を届けてくれてありがとうな、ありす」

 

「気にしないでください。でも、気をつけてくださいね。アイドルとプロデューサーは一蓮托生なんですから」

 

「一蓮托生……その通りだな。そんなに難しい言葉を知ってるだなんて、ありすは物知りじゃないか」

 

「いえいえ、そんな。それより……プロデューサーさんは、その…………」

 

「……雪美ちゃんのことを……どう思っているんですか……?」

 

「ん?どう思ってるって……いきなりなんだよ?」

 

「いえ、その……雪美ちゃんも……「女の子」なんですよ……?」

 

「女の子って……あのなあ……。ありすは一体、俺のことを何だと思ってるんだ?」

 

「そんなの決まっています。「ヘンタイ」で「ロリコン」なプロデューサーさんです」

 

------------------------------------------------

 

「躊躇せずに言ってくれたな……ふぅ。ま、別に今更、どう思われててもいいけどさ」

 

「みんながしっかりとアイドル活動をしてくれれば、俺はそれで満足だし」

 

「……あ、ちなみにさ、ありすって好きな人とかいるのか?」

 

「なっ……!と、突然、何を言い出すんですか!?」

 

「いや、ありすも年頃の女の子だし、そういう人とかいるのかなって思ってさ」

 

「べ、別に、私は……それに、同年代の男子って、何だか子供っぽい人ばかりですし……」

 

「……どちらかといえば……少し、落ち着いてる「大人」な人の方が……いいですね……」チラッ

 

「ははっ、そうか。まあ、ありすもまだまだ「子供」だし、いろんな考え方があるよな」

 

「むっ……そうやってまた、私を子供扱いして……。でも、私にはまだ、そういうことは関係がありません」

 

「おっ、そりゃ頼もしいな。流石はありすだ」

 

「プロですから当たり前です。……で、ですけど……その……このまま帰るのはなんですし……」

 

「……よかったら……このままどこかに、私を連れて行ってくれませんか……?」

 

「ん?どこか……?」

 

「えっと……もしよろしければ……このまま一緒に、どこかに行ってみたいなと思いまして……ダメですか?」

 

「いや……俺は、ありすがいいなら別にいいけど……どこに行きたいんだ?」

 

「本当ですか!?……では、そうですね……二人っきりで……ゆっくり、お話し出来る場所がいいです……//」

 

「お話しか……う〜ん…………あ、じゃあ、あそこに行ってみるか」

 

「何か、思い当たる節があるんですか?」

 

「あぁ。ではさっそく、車を動かすよ。シートベルトをしてくれ」

 

------------------------------------------------

 

「お待たせしました」

 

「わぁ〜……♪」

 

「おっ、来たな。じゃあ、さっそくいただこうか」

 

「……はい……♪それにしても……覚えててくれたんですね……ここを……」

 

「まあな。前に、ここの牧場に仕事で来た時にそれ、気に入ってただろ?」

 

「そうですね……ここのイチゴソフトクリーム……とっても美味しかったんです……♡」

 

「ははっ。あの時のありすって今みたいに、純粋に目を輝かせて喜んでたもんな。普段もこうだといいんだが」

 

「むっ……私は、そんなではありません。ただ、一人の女性としてですね……」

 

「はいはい。かわいいなあ、ありすは」

 

ナデナデ

 

「なっ……!あっ、頭を撫でないでくださいっ!//」

 

「何でだよ。少しぐらい、いいじゃないか。そういう背伸びする姿も魅力的でかわいいぞ」

 

「……むぅ〜」

 

「でも……よかったよ。こうして、ありすと一緒に仲良くアイスを食べられるようになってさ」

 

「何せ、ありすと初めて出会った時は「大声で呼ばれそう」になったわけだしな」

 

「……だから……俺ってもしかして……少しはありすに信用してもらえたとか?なんて」

 

「っ……う、自惚れないでください!私はまだ、プロデューサーさんを信用したわけではありません!」

 

「ははっ、そうかそうか。それは残念だ」

 

「ですけど……悪い人じゃないっていうのはわかりました……なので……」

 

「……お近づきの印……もとい、日頃の感謝の印として……私が……あ、あーんをしてあげます……//」

 

------------------------------------------------

 

「何だよ、今更。そのアイスはありすのなんだから、遠慮すんなって」

 

「……い、いいですから!私のプロデューサーだって自覚があるなら、食べてください!」

 

「わかったよ。なら、もらわないわけにはいかないな。じゃあ、もらうよ。あ〜ん」

 

「……どうですか……?美味しいですか?」

 

「……あぁ、美味しいよ。よし、今度は俺のもやるよ。この前の、バレンタインのチョコのお礼も兼ねてな」

 

「なっ……!べ、別にあれは、義理チョコなんですからね!?変な勘違いをしないでください!」

 

「そんなことわかってるよ。じゃあ、ありすのスプーンを借りるぞ。ほらっ、口を開けな」

 

「うむむ……本当にもうっ……で、では、せっかくですのでお返しをいただきますっ……あ〜ん……」

 

「どうだ、美味しいか?」

 

「……はい……美味しいです……。プロデューサーさんからもらったので……特に……♡」

 

「「……」」

 

「……私たちって……周りからどういう風に思われてるんですかね……?//」

 

「えっ?どういう風って…………仲の良い親子とか……?」

 

「むっ……親子……?」

 

「あぁ。微笑ましくて、かわいい我が子にアイスを食べさせてる、父親と娘みたいで……むぐっ!?」

 

「うふふ……♪どうです?美味しいですか?「お兄さん」♪」

 

「むぐっ……お、おい!急に、何をするんだよっ!!」

 

「「オトナ」のレディに向かって娘だなんて、失礼にも程があります。せめて、そこは「兄妹」ですよね?」

 

「オトナって……わかったよ。なあ、妹よ?このイチゴのソフトクリーム、美味しいよな?」

 

「はい♪美味しいですね♪お兄さんっ♪このまましばらく、アイスを楽しみながらお話をたくさんしましょうね♪」

 

------------------------------------------------

 

「あの、ご馳走様でした。とても美味しかったです」

 

「それはよかった。ありすが喜んでくれて何よりだよ」

 

「うふふ……♪お話がすっかり弾んでしまって、もう夕方になってしまいましたね♪」

 

「ははっ、そうだな。楽しい時間はあっという間だ。すっかり日が暮れてしまってるな」

 

「……こうして並んで歩いてる私って……周りから、どういう風に見られてるんですかね……?//」

 

「えっ?だから、親……」

 

「……♪」

 

「……き、兄妹に見えてるんじゃないか……?あはは……」

 

「よろしいです♪…………あの……ところでプロデューサーさん、一つ……いいですか……?」

 

「うん?どうした、ありす」

 

「えっと……もし、私が仮に今……好きな人がいるとしたら……プロデューサーさんはどう思いますか……?」

 

「えっ……好きな人……?ありすに、好きな人が出来たのか?」

 

「で、ですから!仮にって言ってるじゃないですか!どう思うのかって、聞きたいだけですっ!」

 

「う〜ん……突然、何とも返事に困ることを聞いてくれるな……」

 

「……」

 

「…………まあ……それは……ありす次第なんじゃないか?」

 

「えっ……私次第……ですか……?」

 

「あぁ。俺もアイドルのプロデューサーである以上、これ以上は何も言えない」

 

「だけど……公には言えないけど、応援させてもらうよ。ありすの「大切な時間」をな」

 

「プロデューサーさん……」

 

「…………」

 

------------------------------------------------

 

「あ〜あ、ありすは将来、どんなアイドルになってくれるんだろうな」

 

「この、夕空の最初に輝き始めた、一番星になってくれるのか今からとても楽しみだ」

 

「……そうですね。プロデューサーさんの期待に応えて見せますよ。私はプロのアイドルですので」

 

「目指した以上は一番星になりたいです。素敵な歌声を、ファンの方や様々な方にも届けていきたいです」

 

「ですので…………私が大人になるまで……待ってくれますか?」

 

「あぁ。ありすが、立派な大人のお姉さんになったら盛大に見届けてやるよ。その「大切な人」と一緒にな」

 

「大切な人……はい、よろしくお願いします♪……では……私から「誓い」をさせてもらいますね……♡」

 

「えっ、誓い……?…………んっ!?」

 

「……♪」

 

「「…………」」

 

「…………ふふっ……これが、私の答えです……♡」

 

「……ぷあっ……なっ……あ、ありす……?」

 

「約束……しましたからね……♡大人になったら「大切な人」と一緒に見届けてくれるって……♪」

 

「大切って……ちょっ……お前……これがイタズラなら、流石に説教だぞ……?」

 

「何かがわからないで、私がこんなことをすると思ってるんですか?」

 

「私だって、もう「一人の女性」なんです。一回きりの「初めて」をイタズラなんかでするわけがありません」

 

「流石に、この意味はいくらプロデューサーさんでも……わかってもらえますよね?」

 

「……」

 

「「誓いのお返し」は……大人になるまで待ちます。今の私はアイドルであり、社会通念上、女子ですから」

 

「これが、私の一方的な想いだとしても……その間に、他の人を選んだとしても……後悔はありませんので」

 

「っ……」

 

「……さっ、ほら。ボサッとしてないで、そろそろ帰りますよ。車まで、手を繋ぎながら」

 

「これからも、ずっとこうして私の手を引いて、シンデレラのお城にエスコートしてくださいね♪……王子様♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「おはようございます。今日は、とても良い天気ですね」

 

「……格好……?うふふっ……♪どうです?この振袖、似合いますか?」

 

「ふふっ……ありがとうございます♪流石ですね。そうです。私は、今日から立派な「大人」です」

 

「……あっ……今、笑いを堪えましたね?全く、いつまでも子供だと思わないでください」

 

「正真正銘の、大人のレディーになったんですから、失礼ですよ。相変わらず、デリカシーがなさすぎです」

 

「……でも……ここに来るまで……思えば、色々なことがありましたよね」

 

「楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと……本当に色々とありました」

 

「でも……この窓からの景色は変わりませんね。あの出会った時から今日までずっと、何もかも、そして……」

 

「……私の……「この気持ち」も……。全く……いつまで待たせる気なんですか……?」

 

「こういうのもなんですが、私って、とてもモテるんですよ?今まで、色んな人に告白をされたんですから」

 

「でも、申し訳ないですが、その度にお断りをさせていただきました。私はアイドルですからね」

 

「本当……あなたは酷い人です。勝手に期待させて、勝手に想わせて」

 

「……勝手に……今日まで待たせて……。さては所詮、子供の言うことだって思っていましたね?」

 

「そんな、変に取り繕おうとしたって無駄ですよ。あなたのことは全てお見通しなんですから」

 

「ふぅ……ま、いいでしょう。私はそんな一面も含めて、あなたのことを好きになったんですからね」

 

------------------------------------------------

 

「では……大人になった今、改めて言います。あなたのことが好きです、大好きです」

 

「この想いは、あの頃から一切変わったことはありません。出会ったあの頃から、ずっと」

 

「……ですので、このまま……「誓いのお返し」を私に……って、してくれるわけがありませんよね」

 

「あなたは奥手で、際限なく優しい方ですからね。今になっても、私のためにと断ってくるでしょう」

 

「ですが……その優しさ故に、きっとたくさんの「涙」を見せてきたはずです」

 

「目の前にあるのに、手が届かないもどかしさ……真綿で締め付けられるような、切ない心の痛み……」

 

「……本当、罪作りな人です。ですから……改めて「もう一回」私から誓いをさせてもらいます」

 

「これは、私の身勝手な行為です。ですので……拒否するなら、堂々と拒否をしてください」

 

「今は優しさなどいりません。それに、どんな結果であろうとも……覚悟は出来ていますので……」

 

「では……いきます。あなたのことが……ずっと、大好きでした……ん…………」

 

「……」

 

……チュッ♡

 

「……ふふっ……♡受け入れてくれたということは……そういうことだと受け取って、いいんですよね……?」

 

「…………嬉しいですっ……あれ……?何で私……泣いてるんだろ……」

 

「嬉しいはずなのに……クスン……涙が溢れ出始めて……ヒック……」

 

「もうっ……違う意味で、私を泣かせてどうするんですか……どれだけ待ったと思ってるんですかっ……」

 

「ずっと、待ち続けて……私が勝手に、空回りしてるんじゃないかと不安になったり……」

 

「もしかしたら、私も「涙」を流すことになるのかと思ったり……とても心細かったんですよ?バカっ……」

 

「でも、もう我慢しなくていいんですよね……?このまま、あなたの隣にいてもいいんですよね……?」

 

「アイドルとして……そして「一人の女性」として……二人三脚で、ずっと一緒に…………」

 

「……うふふ……♪長年、私を待たせた分……もう絶対に、離さないんですからっ♪」

 

「覚悟してください……♡これから一生、そばにいてもらいますからね……プロデューサーさんっ♡」



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冬空シンデレラ 片桐早苗

シャラララ♪シャラララ♪まだかなPreciousDarling〜♪

 

「……」

 

「……おっ、雪が降り始めたな……」

 

(夜の街の景色を彩る、真っ白な雪……光り輝く、煌びやかなイルミネーション……)

 

(そして、何かを期待してしまうような……ワクワクドキドキする心が踊るような感覚……)

 

(そうか……そうだよな……。今宵は、一年に一度しかない……「特別な夜」で……)

 

「……え〜いっ♪確保〜♪」

 

「うわっ……!?な、何だっ……!?」

 

「やっほ〜♪プロデューサーく〜んっ♪メリ〜クリスマ〜スっ☆」

 

「あっ……さ、早苗さんでしたか……。メリークリスマス……」

 

「あははっ♪ごめんね〜?待たせちゃったかしら?」

 

「いえいえ。俺も今、ここに来たばかりですよ。ところで今日の早苗さん、すごい綺麗ですよ」

 

「むっ……ちょっと〜、プロデューサーくぅん?「今日の」ってどういう意味なのかしら〜?」

 

「その言葉通りですよ。いつもより「さらに」綺麗ということです」

 

「えっ……。あっ……そっ……そう……//」

 

「そのロング姿もとても素敵的ですし、コートと合わさって、大人の魅力的なお姉さんって感じで……」

 

「……す、ストーーーップ!も、もうわかったから!ありがとうねっ!プロデューサー君っ!//」

 

「そうですか……?まだ、たくさんあるのに……」

 

「と・に・か・く!それ以上は禁止っ!ほらっ!約束の時間に遅れちゃうから、そろそろ電車乗るわよ!//」

 

「うわっ……!?」

 

「今宵のクリスマスは、あたしたちで楽しみまくっちゃうわよ!Can'tStop!!」

 

「ちょっ……わ、わかりましたから、そんなに俺の腕を引っ張らないでくださいよっ!!」

 

------------------------------------------------

 

ゴトンゴトン……ゴトンゴトン……

 

「……さ、流石はクリスマスね……。結構、混んでるわ……」

 

「そ、そうですね……かなり……満員状態ですね……。早苗さん……大丈夫ですか……?」

 

「うん……あたしも何とか、大丈夫……。でも……ある意味で、役得かもっ……♪」

 

「えっ……?役得……ですか?」

 

「うんっ♪だって……こんなに君と、距離が近いんだもん……♡」

 

「距離……っ……!」

 

「ふふっ……プロデューサー君って細身に見えるけど、結構がっしりしてるのねっ♪」

 

「い、いや……まあ、それは……俺だって一応、男ですし……//」

 

「……ねぇ……プロデューサー君はさ、あたしのことをどう思って…………あっ……やっ……!」

 

「ちょっ……どうしましたか……?早苗さん……?」

 

「誰かがっ……あたしの……っ!」

 

(……お姉さんの……スベスベでツヤツヤなふともも……ハァハァ……//)

 

サワサワ

 

「大丈夫ですか……?体調が悪いのなら一旦、次の駅で降りますか……?」

 

「ううん……大丈夫、よっ……気にしないで…………ひうんっ……!//」

 

(お、お尻の方も……ムチムチスベスベで、触り心地が最高ダナア……//)

 

(……ふ、ふ〜ん……元婦警のあたしにこんなことをするなんて……中々、いい度胸をしてるじゃない……!)

 

(でも……あたしも鬼じゃないわっ……。今やめたら……「シメる」のだけは勘弁してあげるっ……)

 

(も……もう我慢出来ないっ……!次は、お姉さんの……ほ、豊満な胸を…………ぐへへ……)

 

(……どうやら、やめてくれないみたいね……しょうがないわ。満員電車だから少し、動きにくいけど……)

 

(このまま……手首を掴んで、捻って拘束を…………きゃっ……!?)

 

「……」

 

「……ぷ、プロデューサー君っ……!?どうしたのっ……!?急にっ……//」

 

「……とりあえず、この体勢のままで……目的の駅まで行きましょう」

 

「あっ……う、うんっ…………ありがとう……♪//」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……何とか駅まで着きましたね」

 

「そっ……そうね……」

 

「犯人は……どこかに行ってしまったみたいですね……。早苗さん、大丈夫でしたか……?」

 

「うん……。少し、触られてたけど……何とか……大丈夫……」

 

「よかったです。クリスマスなのに、変な人に絡まれて災難でしたね」

 

「えぇ……。正直、満員電車で逃げ場がない状態で、触られたのは心細かったけど……」

 

「……プロデューサー君に守ってもらえて……とても安心しちゃった……♡//」

 

「早苗さんは俺の大切なアイドルですからね。不埒な痴漢から守るのは当然のことです」

 

「そっ、そっか……あたしのことを、そう思ってくれてるんだ…………えいっ♪」

 

「うわっ……!さ、早苗さんっ!?」

 

「さっきのプロデューサー君、とってもカッコよかったわよっ♪お姉さん、見直しちゃった♡」

 

「えっと……突然、どうしたんですか……?そんな急に、俺に抱きついてきて……//」

 

「えへへ〜♪何だか、甘えてみたくなっちゃったの♪うりうり〜♡」

 

ムニュッ♡

 

「うあっ……!ちょっ、さ、早苗さん……少し、近いですってっ……!//」

 

「そんなことないわよっ♪それじゃあ♪この体勢のまま、クリスマスの街にれっつご〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「さっ♪まだ少し、待ち合わせまで時間があるし、この巨大なツリーを眺めてましょう♪」

 

「おっ、いいですね。にしても、随分と巨大なクリスマスツリーですね。イルミネーションがとても綺麗です」

 

「そうね♪いかにも、聖夜のクリスマス〜って感じがするわ♪色とりどりに輝いてて素敵ね〜♪」

 

「それにしても……今更なんですけど、俺も来てよかったんですか?」

 

「えっ、何が?」

 

「いや……クリスマスの「女子会」に、俺も参加しちゃってよかったのかなって……」

 

「あははっ♪今更、何を言ってるのよ〜♪いいに決まってるじゃない♪あたしたちの仲じゃないのよ♪」

 

「……むしろ……聖夜は「大切な人」と一緒に過ごしたいと思ってるはずよ♪あたしも含めてね♡」

 

「そうですか……?そう言ってもらえるのなら嬉しいですけど……」

 

「ふふっ。もしかして、プロデューサー君も実は「大切な人」とクリスマスに予定とかあったりしちゃった?」

 

「いえいえ、そんな。特になかったですよ。アイドルたちはアイドルたちで、クリスマスがありますからね」

 

「……ふ〜ん?ということは、少しはお誘いはあったんだ?」

 

「えぇ、一応。でも、早苗さんたちとの先約がありましたので、断らさせてもらいました」

 

「それに不思議なんですよ。俺に直接聞いてくれればいいのに、わざわざみんな、SNSで聞いてくるんです」

 

「「みんな」ね〜…………むうっ……それじゃあ……今日は、お姉さんだけで君を独占しちゃおっと♡」

 

「ちょっ……さ、早苗さんっ!?ですから……そんなに密着されると、その……色々とまずいですって!//」

 

「し〜らないっ♪それじゃあ♪プロデューサー君に一つ、早苗お姉さんがいいことを教えてあげようっ♪」

 

「……あたしって……意外と「独占欲」が強いんだぞっ……♡」

 

「えっ……独占欲……?」

 

「……あの〜、すみません。少し、いいでしょうか?」

 

------------------------------------------------

 

「ん……?あっ、はい。何でしょうか?」

 

「もしよかったらなんですけど……このスマートフォンで、私たちのことを撮ってもらえませんでしょうか?」

 

「スマートフォン……えぇ、いいですよっ♪」

 

「ありがとうございます。……よし、プロデューサー。許可はもらえたよ」

 

「おっ、そうか。すみません、突然お願いをしてしまって」

 

「いえいえ♪じゃあ、撮るのは君とお兄さんでいいのかな?」

 

「はい、お願いします。じゃあ、さっそく準備を始めよう」

 

「あぁ、そうだな。じゃあ一旦、俺はマフラーは外して……うわあっ!?」

 

「……ダメだよ♪このまま……むしろ、お互いにさらに密着して、大切な思い出を残そうじゃないか♪」

 

「ふふっ、仲がいいですねっ♪では、準備が出来たら言ってください♪」

 

「なっ……さ、咲耶っ……これは一体、どういうつもりなんだっ……!//」

 

「どういうって……こういうことだよ。「善は急げ」って言うじゃないか♪」

 

「善はって……これじゃあ、まるで俺たちっ……!//」

 

「ふふっ……♪では、よろしくお願いします♪」

 

「準備はいいですか〜?いっきますよ〜♪せ〜のっ♪はい、チーズ♪」

 

パシャッ♪

 

------------------------------------------------

 

「すみません。撮っていただき、ありがとうございました」

 

「いえいえ。良い写真が撮れたのなら幸いです」

 

「でも、すみません〜。わざわざ、あたしたちまで撮ってもらって♪」

 

「そんな。撮ってもらったお礼ですよ。それに、素敵なカップルだと思いましたので。なっ、咲耶」

 

「そうだね♪遠目で見ていて、一際素敵なオーラを放っていましたよ♪」

 

「そんなっ……素敵だなんてっ……♪さ、さあっ!そろそろ行きましょうかっ!//」

 

「そうですね。では、僕たちはそろそろ行きます。写真、ありがとうございました」

 

「あっ、いえ、こちらこそ。…………何だか、素敵で微笑ましいカップルだったな」

 

「うんっ。是非、私たちも「見習いたい」ものだね。何せ、こんなに素敵な聖夜なんだしね」

 

「あぁ、確かに。……ところで……やっぱりさ……このマフラーの巻き方は……やめないか?」

 

「えっ……?どうしてだい?とっても暖かくていいじゃないか♪「恋人巻き」も中々、オツだと思うよ♪」

 

「……ところで一つ、聞きたいことがあるのだが……あなたの瞳には一体、何が映ってるのかな?」

 

「えっ……?いや、瞳にって…………クリスマスツリー……?」

 

「……ふふっ……そうか。確かに、目の前の巨大なクリスマスツリーもとても美しいよね」

 

「でもね……今の私の瞳には、プロデューサーしか映ってないよ」

 

「いつもの暖かい優しい顔、仕事の時の貫くような厳しい顔、時折見せる儚げな顔」

 

「……そして……今の「私だけ」しか知らない顔……色んなプロデューサーが映ってるんだ」

 

「そ、そうなのか……。咲耶の言葉は、詩的でなかなか風情があるな……あはは……」

 

「ふふっ。つまり、プロデューサーの色んな面を知ってるってことさ。普段から一緒だからね」

 

「……でも……今宵は、私だけであなたを独り占めだよ。その表情も、気持ちや温もりも、全て」

 

「だからこうして、肩を寄せ合いながら手を繋いで……永遠のように感じるこの聖夜を、一緒に楽しもう♪」

 

------------------------------------------------

 

「それじゃっ♪今からクリスマスを祝って、乾杯するわよ〜♪せ〜のっ……」

 

「「「……メリ〜クリスマ〜ス♪」」」

 

カツンッ♪

 

「んく……んく……ふぅ〜♪クリスマスに飲むビールも、また格別ね〜♪」

 

「そうね♪またこうして、クリスマスに女子会を開けてよかったわ♪ねっ、楓ちゃん♪」

 

「はいっ♪瑞樹さん♪今日はみんなで、クリスマスを「タノシミマス」♪な〜んてっ♪」

 

「あの……本当によかったんですか……?クリスマスの女子会に、俺も参加しちゃって……」

 

「当たり前じゃない♪楽しい女子会にするには、美味しい「酒の肴」が必要だもの♪」

 

「えぇ♪それに「ボトル」はキープしておかないと、誰かさんに飲まれてしまうかもしれませんからね〜♪」

 

「えっ?肴……?ボトル……?」

 

「細かいことは気にしないの♪あっ、そうだ♪ねぇ〜、見て見て〜♪さっき、あたしたちで撮ってみたんだ〜♪」

 

「あら〜♪素敵じゃない♪これ、どこで撮ったの?」

 

「ここにくる前にちょっとね♪街の中心に、大きなクリスマスツリーがあったでしょ?そこで撮ってみたの♪」

 

「あらっ♪仲睦まじいカップルみたいでいいですね〜♪腕まで組んじゃって、微笑ましい写真ですっ♪」

 

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど……でも、早苗さんもアイドルなんですし、そこはお願いしますよ?」

 

「わかってるわよっ♪この画像は、あたしのスマホに大切に取っておくから安心しなさい♪」

 

「むうっ……いいなあ〜……。いいもんっ……私だって……プロデューサー「くん」とっ……」

 

「……二人っきりで……宅飲みをしたこと……あるもんっ……」

 

「なっ……!か、楓さん!?どうして急に、俺の腕に抱きついてるんですか……!?//」

 

「……アラアラ♪プロデューサー君ってば、随分とモテモテなのね♪早苗お姉さん、感心しちゃったぞ☆」

 

「いえ!別に、変な下心は少しもなかったですよ!?俺はただ、楓さんと楽しく晩酌がしたかっただけです!」

 

「ふ〜ん?……あぁ〜、何だかアツくなってきちゃった〜。私、コートを脱いじゃおっと♪」

 

「ふぅ……最近、何だか「肩が凝って」悩んでるのよね〜。本当、困っちゃうわ〜」

 

タプンッ……♡

 

「……っ!//」

 

(うわっ……机の上に乗ってる……)

 

(……セーター越しからでもわかる「存在感」……瑞樹さんって、やっぱり意外とっ…………//)

 

------------------------------------------------

 

「ん?どうしたの?プロデューサー君。今、私の事をじっと見てなかった?」

 

「はっ……!い、いえっ!気のせいですよ!気のせい!」

 

「………へぇ〜♪でもぉ、本当は「少しは」下心があったんじゃない?ねっ……プロデューサー君っ……♡」

 

「なっ……!で、ですからっ……!別に俺はっ……」

 

「うふふ……♪素直でイイ子になったら、お姉さんが「ステキな」クリスマスプレゼントをあげるわよ……♡」

 

ムチッ……♡

 

「っ……ゴクリ……」

 

「……むっ……ま〜たデレデレしちゃって……瑞樹さんばかりずるいですっ。私もぉ、構って欲しいな〜?」

 

「うわっ……!ちょっ……!楓さん……近っ……!//」

 

「知りませんっ。ふ〜んだ、目を離すとす〜ぐこれなんですからっ、プロデューサーくんのえっちっ」

 

「うふふっ……♪アタシの目の前で、随分と見せつけてくれるじゃない♪いい度胸をしてるわねっ♪」

 

「何で、俺が悪いみたいになってるんですか!……もしかして……もう、酔いが回って来たんですか……?」

 

「えぇ〜?そんなことないわよ〜♪ねぇ〜♪楓ちゃ〜ん♪」

 

「はいっ♪瑞樹さんっ♪「酔ってるのは、お前の瞳にだけだ」な〜んてっ♡うふふ……♡」

 

「…………完全に酔ってますね……ふぅ……まだ、少ししか飲んでないのに……」

 

「んもう、ダメだぞ〜?あたしっていう美人な女の子がいながら、他の子ばかり構って〜」

 

「女の子……?…………うあっ……!?」

 

「はい、シメる♪今の0.1秒の間はなんだったのかなぁ〜♪」

 

「ちょっ……いだっ……さ、早苗さんっ……!ギブギブっ……!」

 

「えぇ〜?聞こえな〜いっ♡乙女心を理解しない「不埒」な輩は、お姉さんがお仕置きよっ♪覚悟しなさい♡」

 

------------------------------------------------

 

「うぐっ……いてて……酷い目にあった……」

 

「もうっ、ダメじゃないプロデューサー君。早苗ちゃんだって、一人の女の子なのよ?」

 

「そうですよっ。もう少しプロデューサーさんは、乙女心を理解してあげてくださいね」

 

「乙女心もいいですけど……有段者の関節技は洒落になりませんって……」

 

「……それに……お〜い、早苗さ〜ん?」

 

「……zzz」

 

「やっぱり……。ダメだ……すっかり寝てしまっている……」

 

「……ふふっ……♪じゃあ、私たちは少し、酔い覚ましに夜風に当たってくるわ。行きましょう、楓ちゃん」

 

「えぇ♪では、後は二人っきりで楽しんでくださいねっ♪うふふっ……♪」

 

「ええっ!?ちょっ、待っ……!行っちゃった……」

 

「……プロデューサー君っ……zzz」

 

「全く……俺にアームロックを掛けたまま寝落ちして……本当に自由奔放なお姉さんだな……早苗さんは……」

 

(……にしても、油断しすぎだろ……俺に腕を組みつつ、肩に顔を預けてそんなに気持ちよさそうに寝て……)

 

(さっきだって言ったけど……俺だって、男なんだぞ……!そんなに密着されてると色々とヤバいって……!)

 

(動かそうにも、腕をしっかりとホールドをされてるし…………それにっ……)

 

タプンッ……♡

 

(その服装だと……早苗さんの「強調されたもの」が目に焼き付くんだよっ……!//)

 

「……あぁ、もう……瑞樹さんと楓さん……早く帰って来ないかな……このままだと、本当にヤバいし……//」

 

「……んっ」

 

「おっ、おはようございます、早苗さん。ようやく起きましたね」

 

「んん……ようやく……?う〜ん……ここは……」

 

「ここは居酒屋ですよ。瑞樹さんや楓さんと一緒に、クリスマスに女子会をしに来たんじゃないですか」

 

「居酒屋…………ふえっ……!?あ、あたしってば……もしかして……寝ちゃってたの……!?」

 

「えぇ。早苗さんの寝顔、とってもかわいらしかったですよ」

 

「かわいいって……う、うぅ〜……あたしってばっ……恥ずかしいっ……!//」

 

「えっとですね……とりあえず一旦、俺から離れてもらえませんかね……?……色々とヤバいので……//」

 

「えっ……あっ……ご、ごめんね……//」

 

「「……//」」

 

フォンッ♪

 

「……ん?あたしのスマホに何か、メッセージが……これは、瑞樹ちゃんから……?」

 

「えっと〜、なになに…………「後は、楽しんでね」……って……えっ、ええ〜〜〜っ!?」

 

------------------------------------------------

 

「ありがとうございました〜♪またのご来店をお待ちしております♪」

 

「ふぅ……。どうですか?酔いは覚めましたか?」

 

「えぇ♪すっかり大丈夫よ♪あたし、お酒には強い方だからっ♪」

 

「ならよかったです。しかし……突然、二人が帰ってしまったのは少し驚きましたが……」

 

「まあ、急用みたいだったし、しょうがないじゃない。その代わり、代金は代わりに払ってくれてたみたいね」

 

「だから、クリスマスプレゼントととしてもらっておきましょう♪後日、またお礼を言えばいいしっ♪」

 

「ですね。俺にも今、瑞樹さんたちからメッセージが届きましたし、また改めてお礼を言いましょう」

 

(もうっ……二人のバカバカバカっ……!何て言うことをしてくれたのよっ……!!)

 

[早苗ちゃん♪後は「二人っきりで」あま〜いクリスマスを楽しんでねっ♪お姉さん、応援してるわよっ♪]

 

[支払いは、私たちで済ませておきましたから「お邪魔虫」は退散しますね♪うふふっ♪]

 

(何が甘いクリスマスよっ!お邪魔虫よっ!ということは、あたしが寝ている間、プロデューサー君と……)

 

(……居酒屋の密室で、ずっと……二人っきりで……あ”あ”あ”あ”あ”〜っ!も〜うっ!!//)

 

(はっ……!もしかして……二人は最初っから、あたしたちのことをっ……!)

 

「では……これからどうします?ここで解散しますか?」

 

「えっ……!?いや……!そ、そうねっ!その……あのね……」

 

「……もしよかったら……これからあたしと「二次会」をしない?素敵なバーを知ってるんだけど……」

 

「おっ、バーで二次会ですか、いいですね。行きましょう」

 

「そう♪じゃあ、決まりね!えっと……ふつつかものですが……よろしくお願いします……//」

 

「ふつつかもの……?え、えぇ……よろしくお願いします……?」

 

------------------------------------------------

 

フォンッ♪

 

「あら、早苗ちゃんから返事が来たわ♪「この借りは必ず返すから覚えてなさいよ!色々な意味で!」だって♪」

 

「ふふっ♪どうやら無事「作戦」が成功しましたねっ♪」

 

「頑張ってね、早苗ちゃん♪私たちからの「クリスマスプレゼント」よっ♪」

 

「二人に、素敵なクリスマスプレゼントを「おおクリスマス♪」ですねっ♪うふふっ……♪」

 

「んもう〜、楓ちゃんってば、もしかしてまだ酔っちゃってるのかしら〜?」

 

「えぇ〜?そんなことないですよぉ〜。「飲んでも飲まれるな」お酒好きの基本ですよ〜?」

 

「……そう……♪ふふっ♪楓ちゃんも女子なのね♪随分と甘えてたじゃない♪」

 

「むっ、瑞樹さんだって随分とセクシーだったじゃないですかぁ。あまり度がすぎるとギルティーですよ〜?」

 

「私はいいんだもん♪だって、みんなのオ・ト・ナのお姉さんだしっ♪楓ちゃんはまだダ〜メっ♡」

 

「……むうっ〜」

 

「でも……実を言うと、楓ちゃんも本当は「デート」がしたかったんじゃないの〜?」

 

「そうですねぇ。クリスマスは女子にとって、心躍る特別な聖夜ですしぃ……」

 

ギュッ……♪

 

「……今夜は「瑞樹さん」に酔いたいですっ……♡なんてっ♡」

 

「あらっ♪お上手ね♪んもう、しょうがないわね〜♪じゃあ、私たちで改めてクリスマスを楽しみましょう♪」

 

「わ〜いっ♪では、瑞樹さんと私の二人っきりで、クリスマスデートですねっ♪」

 

「決まりね♪よしっ、さっそく今から二軒目に向かうわよ〜♪私、いいところを知ってるのっ♪」

 

「……素敵なクリスマスプレゼントをもらえるといいわね♪早苗ちゃんっ♪メリークリスマス♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜♪それにしても、改めて思うけど本当に、街中がクリスマスね〜♪とっても綺麗だわ♪」

 

「えぇ。降ってる雪がイルミネーションと相俟って、とても幻想的です」

 

「あの……ところでさ、さっきはごめんね?あたしが起きるまで、ずっと介抱してもらってて」

 

「いえ、気にしないでください。むしろ役得……じゃなくて、早苗さんのかわいい一面を知れましたので」

 

「なっ……!だ、だからっ!あれはもう忘れてよっ!あたしにとっては黒歴史なんだからっ!!//」

 

「ははっ。俺にとってある意味でいい思い出になりました。貴重な、美人なお姉さんの寝顔を拝めましたから」

 

「っ……!美人って……またプロデューサー君は、そういう恥ずかしくなるようなことを平気で……」

 

「……そうやって、無意識に「甘いこと」を言うから……他の子も……バカっ……」

 

「……あ〜っ♪プロデューサーさ〜んっ♪早苗さ〜んっ♪」

 

「……ん?おっ、イヴじゃないか。こんばんは」

 

「お二人とも、メリークリスマスですっ♪えへへ〜♪こんなところで奇遇ですね♪」

 

「メリークリスマスっ♪ところで、イヴちゃんもここでクリスマスを楽しんでたの?」

 

「はいっ♪私は今、クリスマスプレゼントを配り終えてきたところです♪今年も無事、何とか用意できました♪」

 

「おっ、そうだったのか。お疲れ様。もらった人が喜んでくれるといいな」

 

「そうですね♪……でも……最近は世知痒いですねぇ〜。年々物価も上がって来てますしぃ……」

 

「「世知辛い」な。まあ、そうだな。プレゼントだって、用意する方も大変だもんな」

 

「でも、もし今後イヴがトップアイドルになったら、色紙や日用品にサインをするだけでよくなるかもな」

 

「えっ、日用品……ですか……?」

 

「あぁ。例えば、イヴが使ったものとかにサインをするだけで、それが凄いプレゼントになるってことだよ」

 

「ええっ!?私が使ったものですかあっ!?……それなら、確かに……リーズナブルですけど……」

 

「……では……例えば「私の使ったコップ」とかも喜んでもらえますか?」

 

「……は?コップ……?」

 

「はいっ♪あっ、後は「私の靴下」とかでも、サインが入ってれば欲しくなりますか〜?」

 

「コップ……靴下……おいおい、イヴ?流石にそれはだな……」

 

「…………」

 

------------------------------------------------

 

あ、あの……私の脱いだ靴下を……差し上げますっ……。

 

……ええっ……!?ま、まだ、何か欲しいんですか……!?あぅ〜……でも、もう何もないですしぃ〜……。

 

あっ……で、では……そのっ……少し……後ろを向いていてください…………恥ずかしいのでっ……//

 

うぅっ……プロデューサーさんの目の前で、こんなはしたないことをっ……。サンタさん失格ですぅ〜……。

 

シュルッ……♡

 

あのっ……お、お待たせしました……。それでは……少し恥ずかしいですけど……。

 

……受け取ってくださいっ……私の…………「脱ぎたて」をっ……♡//」

 

「…………ゴクリ……」

 

「……♪」

 

「っ……!?痛あっ!?」

 

「……プロデューサーくぅん?今、イヴちゃんで一体「ナニ」を考えてたのかなぁ〜?」

 

「えっ?プロデューサーさん?私で何か、考え事をしてたんですかぁ?」

 

「い、いやいや!何も考えてないぞっ!特に変なことはなっ!//」

 

「そうですか……?なら、いいんですけど……」

 

「はいはい♪んじゃ、あたしたちはそろそろ行くわね♪また会いましょうね♪イヴちゃんっ♪」

 

「ちょっ……う、腕をそんなに引っ張らないでくださいよっ……!」

 

「は〜いっ♪またお会いしましょうね〜♪……ふふ……♪二人はとても仲良しさんですね♪ねっ、ブリッツェン♪」

 

「……」

 

「……ん?どうしたんですか?何だか、顔が怖いですよ?」

 

「……グフッ……グフグフ……!」

 

「えっ「あの人、変なことを考えてた」ですか……?またまた〜♪そんなわけないじゃないですかっ♪」

 

「プロデューサーさんは、とっても優しいお兄さんなんです♪ブリッツェンもそれは知ってますよね?」

 

「グフッ!……グフッフッ……」

 

「ですよね〜♪その期待に答えるためにも、頑張って私たちでトップアイドルを目指しましょう♪」

 

「……ですので……これからも、私たちを見守っていてくださいねっ……♪メリークリスマスっ♡」

 

------------------------------------------------

 

「……むぅ〜」

 

「あのっ……早苗さん?ところでなぜ、突然……俺に蹴りを……?」

 

「ふ〜んだ。プロデューサー君ってば、イヴちゃんで変なことを考えてデレデレしてたでしょ〜」

 

「はあっ!?い、いや……ですから俺は別に何も考えてませんし、デレデレなんかしてませんでしたよ!?」

 

「ウソツキ。あの時の君、とってもイヤらしい顔をしてたわ。元婦警の洞察力を甘くみないことね」

 

「…………うぐっ……!」

 

「全くもう。男子ってば、す〜ぐ変なことを考えるんだから。本当、あたしには理解できないわ〜」

 

「……何さ……そりゃ、イヴちゃんはかわいくて若い綺麗な女の子だし、放っておけない魅力があるけど……」

 

「……ダメよ……。今の君にはあたしがいるんだから、他の女の子によそ見をしちゃ……」

 

「?」

 

「と・に・か・く!今は、あたしが隣にいるんだから、他の子にデレデレするのは禁止!いいわね!」

 

「ですから……俺はっ……」

 

「言い訳禁止っ!ほらっ!さっさと、バーに向かうわよっ!飲まなきゃやってられないわっ!!」

 

「……あの……いくらクリスマスでも……程々にお願いしますよ……?」

 

「さぁ〜、どうでしょう♪それじゃっ♪改めて、あたしたちで二人っきりの二次会を始めるわよ♪」

 

「今宵の聖夜は……た〜っぷりと、飲み明かしましょうね♪「あたしの」プロデューサー君っ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ……結構、飲んじゃったわね……」

 

「さて、プロデューサー君がお手洗いに行ってる間にあたしは、少し夜風に当たって酔いを覚まそっと」

 

「ふふっ……♪それにしても、クリスマスでこんなに心が踊ったのはいつぶりかしら♪」

 

「まさか、こんな展開になるとは少し予想外だったけど……まあ、瑞樹ちゃんたちには感謝しないとね♪」

 

「……本当、お節介なんだから……今度、たっぷりと二人に取調べをしないとね」

 

「それにしても、たくさん喋っちゃったわね。お酒より口の方が動いてたってぐらい」

 

(……本当………どうしちゃったんだろ……今日のあたし……)

 

(プロデューサー君を見てるとつい、胸の奥がキュッとなって……ドキドキして……)

 

(普段は普通に、目を合わせられてるのに……今日は何だか、まともに顔を見れなくて……)

 

(しないように、忘れようと思えば思うほど、余計に意識しちゃって……)

 

(そして……胸の痛みとは違う、切ない感情があたしの周りにじわりとまとわりついて……)

 

(…………)

 

(……って……ああ〜っ!だから何でこんな、甘酸っぱいことを考えてるんだ〜っ!!あたしぃ〜!!//)

 

「よぉ、お姉ちゃん。今、一人かい?」

 

「……えっ……?」

 

「俺たち今、野郎二人しかいないんだよね〜♪だからお姉ちゃん、俺たちと遊ぼうぜ♪」

 

「っ……いや……その……あ、あたしは……」

 

「あれぇ〜?もしかして、クリスマスに一人で飲んでたのぉ〜♪そりゃ、かわいそうだねぇ〜」

 

「んじゃ、俺たちがたくさん「慰めて」やるよ♪ほら、これでもう寂しくないぜ♪」

 

「やっ……ちょっ……あ、頭に触らないで……!」

 

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(……っ……肝心な時に、酔いが廻って来てっ……!)

 

「そんなこと言うなって♪俺たちでクリスマスをたくさんエンジョイしようぜ♪」

 

「きゃっ……抱きしめないでっ……!」

 

(何よ、こいつら……頭を撫でてきたり、馴れ馴れしくあたしの肩を抱いてきて……気持ち悪いっ……!)

 

(くうっ……いつもなら、簡単にシメられるのに…………力が出ないっ……)

 

「お姉ちゃんさぁ、な、なかなか、いい体つきしてるじゃん……これは、楽しめそうだぜ……ぐへへ……」

 

「……すみません。何をしてるんですか?」

 

「……っ……プロデューサー君……!」

 

「んあ?誰だよ、アンタ」

 

「この人の「彼氏」です。今すぐ、やめてもらっていいでしょうか?」

 

「あぁ?彼氏だぁ〜?そうなのかよ、お姉ちゃん」

 

「えっ……あっ、いや……それはっ……//」

 

「ほら、お姉ちゃんが困ってるぞ。さてはアンタ、俺たちからお姉ちゃんを横取りしようってんだな?」

 

「どう思われてもいい。彼女は俺の「大切な人」なんだ。だから、お互いのためにもやめて欲しい」

 

「きゃっ……!あっ……プロデューサー君っ……//」

 

「っ……お姉ちゃんの反応が俺の時より……あぁ!胸糞悪りぃ!テメェのツラを見てるとイラついてきたぜ!」

 

「……」

 

「よぉっ、俺たち男同士でよぉ、どっちがお姉ちゃんに相応しいか、あっちで「拳」でケリをつけようぜ〜?」

 

「……ちょっ……おい……!これ以上はやめとけって……何だか、人だかりが出来て来てるしよぉ……」

 

「あ”ぁ”?……ちっ……!……わあったよ……。おい、アンタ。今回は見逃してやんよ。命拾いしたな」

 

「……さっ、早苗さん。行きましょう」

 

「えっ、えぇ……そうね……」

 

------------------------------------------------

 

「……何だか……とっても静かね……、さっきまでの喧騒が嘘みたい……」

 

「そうですね、もう夜も遅いですからとても静かです。それより……さっきは大丈夫でしたか?」

 

「うん、あたしは大丈夫よ。どうやらアイツら、厄介なナンパ野郎だったみたい」

 

「そうですか……。痴漢男といい、さっきのナンパ男といい、今日はとんだ災難でしたね」

 

「ごめんね……。何だか今日は、プロデューサー君に助けられっぱなしね。お姉さん失格だわ」

 

「そんな、気にしないでください。でも……これでわかりましたよね?」

 

「もちろん、元婦警の早苗さんの実力は知ってます。でも、アイドルであり、一人の魅力的な女性なんです」

 

「……ですので……もっと俺を頼ってください。早苗さんは俺の大切なアイドルなんですから」

 

「プロデューサー君……うん、ありがとう……♪やっぱり君って、すごい優しいのねっ♪」

 

「いえいえ。これからも一緒に、トップアイドルを目指して頑張っていきましょう」

 

「うんっ♪よろしくっ♪それにしても、今日は二人っきりで語り合いながら、しっぽりとお酒を楽しめたわね♪」

 

「ははっ、そうですね。中々素敵なバーでした。でも……少し意外でした」

 

「えっ……何が?」

 

「てっきり、俺は早苗さんがいつもの調子で、へべれけになるまで飲むと思ってましたので」

 

「へべれけ……んもう!プロデューサーく〜んっ?あたしだって、TPOは弁えてるつもりよ〜?」

 

「そりゃ、場合によってはへべれけになるまで飲むことがあるけど……「それだけじゃないのよ」って話」

 

「あたしなりに酒飲みの矜持があるの。だから、そんな一面があるって事を知って欲しかったのよ、君にね」

 

「そうですか。確かに、普段とは違う一面が見れましたね。特に……「かわいらしい寝顔」の早苗さんとか」

 

「ちょっ……だっ、だからあっ!それは忘れてよっ!忘れないと、公務執行妨害で逮捕するわよ〜!!//」

 

「そうですね。では、俺の心のメモリーに大切に取っておきます。クリスマスの大切な思い出として」

 

「むぅ〜……プロデューサー君のイジワルっ……じ、じゃあさ……」

 

「……そんな、誰にも見せたことのないあたしの無防備な顔を見たんだし…………「責任」を取ってよ……//」

 

「えっ……責任……?」

 

「ねぇ……プロデューサー君ってさ……結婚とか……考えてる……?」

 

------------------------------------------------

 

「結婚って……突然どうしたんですか?」

 

「あのね……ほら、あたしもそろそろお年頃じゃない?妙齢な大人のお姉さんっていうか……」

 

「それに、プロデューサー君も大人のお兄さんだし、どう思ってるのかな〜って思っちゃったりしたのよ」

 

「う〜ん……まあ、俺はまだそういうのは考えてないですね。今の俺には、アイドルたちがいますので」

 

「そう……なんだ……じゃあさ、あたしと……今からー晩だけの「聖夜の勘違い」を起こしてみる?//」

 

「えっ……うわっ……!?さ、早苗さんっ……!?」

 

「あたしね……今日、改めて思ったんだ……プロデューサー君ってやっぱり「男の人」なんだって」

 

「暴漢からあたしを守ってくれたり、君を見ているとつい胸がドキドキしちゃったり……」

 

「……そして……瑞樹ちゃんやイヴちゃんで変なことを考えてるところも……えいっ……♡」

 

ムニュッ……♡

 

「うあっ……ちょっ……!一体……何をっ……!//」

 

「えぇ〜?わかってるクセにっ♡オトナの男女が過ごす聖夜と言ったら……一つしかないじゃないっ……♡」

 

「……君がいいなら……今から、あたしを「シンデレラのお城」に連れて欲しいなっ……♡」

 

「……お、俺……本当に、これ以上はっ……!//」

 

「夜も遅いし、何だか冷えて来ちゃった……だから…………温めてっ……♡ねっ……♡//」

 

「っ……さ、早苗さんっ!!」

 

------------------------------------------------

 

「きゃっ……!あっ……ぷ、プロデューサー君……♡」

 

「俺……やっぱり、こんなことは……ダメだと思います……。何回も言いますけど、俺だって男なんです」

 

「これ以上は……本気で……「勘違い」してしまいそうになりますので……やめましょう……」

 

「何せ……俺と早苗さんは、男女ではなくプロデューサーとアイドルの関係ですので……」

 

「……そっか……ぷっ……あははっ♪やっぱり君は、からかいがいがあるなあ〜♪」

 

「えっ……?」

 

「もうっ♪ジョークよジョーク♪プロデューサー君には、オトナのジョークはまだ早かったかしら?」

 

「ジョークって……ふぅ……あの、早苗さん?いくらクリスマスでも、テンションが上がりすぎですよ?」

 

「あははっ♪ごめんごめん♪でも……ね……これだけは言わせて欲しいな……」

 

「……このあたしの気持ちだけは……本物よ…………んっ……」

 

「んんっ……!?」

 

チュッ♡

 

「「…………」」

 

「……ぷはっ……えへへ……少し長めの「オトナのキス」をしちゃったっ……♡//」

 

「なっ……さ、早苗さんっ……!?」

 

「ふふっ……今はこれで、オアズケよっ♪どうやら「勘違い」はしてくれなかったみたいだしっ♪」

 

「ほ〜んと、君って手強いなあ。どこまでも優しくて……暖かくて……お人好しで……」

 

「……だから……「みんな」は君のことを……まあ、そんなあたしも……そのうちの一人なんだけどね……♡」

 

「?」

 

「……さあっ!何だか気恥ずかしくなっちゃったから、そろそろ駅に向かうわよ!終電が来るまえにね!!」

 

「ちょっ……ま、まってください!何が何やら、頭の整理が追いついていないんですけど……//」

 

「ダ〜メ♡言ったでしょ?「聖夜の勘違い」って♪聖夜の魔法は、後もう少しで解けちゃうんだからっ!」

 

「また明日から、あたしたちは普通のプロデューサーとアイドルに戻るの。何の変哲もないごく普通の関係に」

 

「だけど……君が、永遠の相棒ってことには変わりないわ。……後……この「温もり」もねっ……♡//」

 

「……あたしから目を離したら……タイホしちゃうんだから♪これからも、覚悟してね♪プロデューサー君っ♪」



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??シンデレラ 千川ちひろ

「……ふぅ〜。プロデューサーさん。そっちはどんな感じですか?」

 

「はい、後もう少しで片づきます。整理整頓も終えました」

 

「そうですか♪すみませんね、わざわざ早めに仕事を切り上げて、手伝ってもらってしまって」

 

「いえいえ、俺たちの事務所じゃないですか。新年を気持ちよく迎えるためにも、大掃除は欠かせませんよ」

 

「ふふっ……そうですね♪この事務所は、私たちやアイドルの子たちにとって、大切な事務所ですものね♪」

 

「えぇ。ですので、今年の汚れは今年中に落として、新年を気持ちよく一緒に迎えましょう」

 

「うふふ……はいっ♪では、私は最後に、衣装室の方のお掃除や整理をしてきますね♪」

 

「はい、よろしくお願いします。……さて……俺も、さっさと残りを片しちゃおっと」

 

「それにしても……アイドルたちには今年も、色々と活躍してもらったな」

 

「この思い出の品の数々を見てると、あの時のライブの空気感と熱量が頭に思い浮かんで来るな」

 

「ヒメ琴……ブレイベル……サンサンシン……パリラジオ……バラードレス……サケビースト」

 

「杏の堕落クッション……志希の実験道具……加蓮のメイク道具……莉嘉のプリコレクション」

 

「美嘉の赤と青のペアカップ……まゆが撮った俺の秘密の写真…………って!後半は私物ばかりじゃねえか!」

 

「全く……事務所は自分の家じゃないって、あれほどだな……ふぅ。本当、しょうがないな……」

 

「まあ、これらは改めて、アイドルたちに各自必要か否か聞くとして……整理はこれでほぼ終了だな」

 

「さて……こっちの整理は終わったし、ちひろさんの手伝いをしに行くか。確か、衣装室に行ったよな」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「ちひろさ〜ん、整理の方はどんな感じですか?」

 

「……って……あれ?ちひろさんがいない……」

 

「おかしいな……。確か、ここに行くって聞いてたのに……他の場所に整理をしにいったのかな?」

 

「……よしっ。それじゃあ、俺が先に整理しておくか。その方が効率よく終わるしな」

 

「ふむ……見た感じ、衣装はほぼ整理をし終えてるっぽいな」

 

「じゃあ、次は並んでるロッカーを順に確認して行くか。一応、念のために」

 

「まずは……うん、綺麗に衣装が並んでるな」

 

「ここも……うん、次も……うん。その隣も……うん。特に問題はなさそうだ」

 

「さて、次のロッカーで最後だな。まあ、この調子なら開けるまでもなさそうだけど。ほいっと」

 

「……きゃっ……!?」

 

「……えっ……ち、ちひろさんっ……!?」

 

「「……」」

 

「あっ……ど、どうも…………ご無沙汰してます……//」

 

「えっと………一体、その格好は……」

 

「あの……すみません……。衣装室を整理してたら、コスプレ欲が湧いてしまって……」

 

「……居ても立っても居られなくて、つい……食指が動いてしまったんです……//」

 

「コスプレ欲……あぁ、確かちひろさんは、コスプレが趣味でしたよね」

 

「えぇ……。そして、足音が聞こえてきたので、慌ててロッカーに隠れてしまったということなんです……//」

 

「なるほど。それならよかったです。でも、突然いなくなったと思って心配したんですからね?」

 

「えへへ……心配をかけてごめんなさい♪次からは気を付けますねっ……♪」

 

「「……」」

 

(あれ?何だろう、この雰囲気……。何でこんなに、気まずいんだろ……)

 

(……そういえば、さっきは必死で気づかなかったけど……JK姿のちひろさんって……何だかいいな……)

 

(大人のお姉さんの制服って、こんなに……って!ダメだダメだ!俺ってば一体、何を考えてるんだ……!//)

 

(……何でしょう……この雰囲気……。何だか、甘くて危険な香りがするような気が……)

 

(こう……プロデューサーさんが、いつもより男らしく見えるというか……インモラルな雰囲気というか……)

 

((大人の男女……密室……二人っきり……何も起きないはずがなく……))

 

「「……//」」

 

「……と、とりあえずっ!後は衣装室だけですし、さっさと大掃除を終わらせてしまいましょうか!//」

 

「そっ、そうですね!では、私もすぐに着替えますので、二人で終わらせましょうっ!//」

 

------------------------------------------------

 

「ではっ♪プロデューサーさんっ♪せ〜のっで行きましょう♪せ〜のっ♪」

 

「「かんぱ〜い♪」」

 

カツンッ♪

 

「んく……ふぅ。ちひろさん、今年もお疲れ様でした」

 

「お疲れ様です♪今年も無事に終わりましたね♪」

 

「それしても、この「たるき亭」って言うんでしたっけ?いい雰囲気な居酒屋ですね」

 

「ふふっ♪そう思いますか?実は私もここ、結構お気に入りの居酒屋なんです♪」

 

「何だか、初めて来たのに懐かしいというか、実家に帰ってきたような安心感がありますね。不思議だなあ」

 

「ですよね♪……それにしても、こうして二人っきりで飲むのって久しぶりですね♪」

 

「えぇ。普段はこうして、二人きりになる機会ってそんなにないですもんね」

 

「そうですね〜。アイドルや「女の子」のことで、大忙しですものね〜。プロデューサーさんは〜」

 

「ははっ、ですね。今年もアイドルや仕事で大忙しで……って、あれ……?」

 

「うふふ……♪ですので、今日のこの大晦日は水入らずで、二人っきりの忘年会を楽しみましょうね♪」

 

「「……かんぱ〜いっ♪」」

 

「んく……んく……ふぅ。今年も無事に終わりましたね、小鳥さん」

 

「えぇ、そうですね♪今年も無事に「アイドル」の皆さんには活躍してもらえました♪」

 

(えっ……「アイドル」……?)

 

「ほらっ!プロデューサーさんっ!お姉ちゃんっ!乾杯しようよ♪乾杯っ♪」

 

「あぁ、そうだな」

 

「んもう……にちか〜?今晩だけは特別だからね〜?」

 

「わかってるってば〜♪じゃあ、ほら!二人ともグラスを持って!せ〜のっ!!」

 

「「「今年もお疲れ様でしたっ!かんぱ〜いっ♪」」」

 

「んくっ、んくっ……ぷは〜☆やっぱり、年末に飲む麦の飲み物は美味しいねぇ〜♪」

 

「そうね〜。まあ、にちかのは「麦風」のジュースだけどね〜」

 

「ああっ!お姉ちゃんってばKYだよ!K・Yっ!!気分が台無しだよ〜!」

 

「はいはい。にちかは「アイドルの卵」なんだから、そういう語弊を産むようなことは言わないの〜」

 

(…………「プロデューサー」……「アイドルの卵」……)

 

「うん……?どうかしましたか?ちひろさん」

 

「……うふふ……♪どうやら、今夜は「同業者」の方もたくさん来ているみたいですね……♪」

 

------------------------------------------------

 

「思えば、年末にこうして一緒にたるき亭で飲むのって、毎年恒例の俺たちのイベントになってますね」

 

「ふふっ、確かに♪大晦日に限らず、ここはもはや、私たちの憩いの場になっていますもんね♪」

 

「……それにしても……春香や千早を始め、うちの765プロのメンバーは立派に成長しましたね」

 

「そうですね♪成長を影ながら見守ってきた身としては、とても感慨深いものがありますね♪」

 

「って、何だか「夫婦」みたいな会話をしてますね。まあ、アイドルは俺たちの子供みたいなものですけど」

 

「えぇ♪まるで、アイドルの子たちの成長を見守る夫婦みたいで……ぴ、ぴよっ!?ふ、夫婦ですかっ!?」

 

「はい。俺と小鳥さんで育ててきた、大切なアイドルたちじゃないですか。実質、夫婦みたいなものですよ」

 

「……ですので……俺たち、そろそろ「本当の」夫婦になりませんか……?」

 

「ええっ!?また……そんなご冗談をっ……!…………きゃっ……!?」

 

「冗談なんかじゃありませんっ!俺と結婚してください!小鳥さんっ!!」

 

「ぴよっ……い、いきなり、そんな大きな声で言ったら、周りに聞こえてしまいますよぉ〜……//」

 

「構うものですか!俺、この大晦日のために用意してたんですっ!受け取ってくださいっ!」

 

「こっ……これはっ………指輪……ですか……?」

 

「はい。……小鳥さん……改めて言います……。俺と、新たな新年を「一緒に」迎えてくれませんか……?」

 

「……はいっ……♪では、末長くよろしくお願いしますっ……♪一緒に、新たな門出を迎えましょうね……♡」

 

「「「小鳥さん♪・小鳥お姉ちゃん♪ご結婚、おめでとうございます♪」」」

 

パチパチパチパチ♪

 

「……うふ、うふふ〜……♪みなさん……祝福……指輪っ……♪」

 

「何だか、楽しそうな夢を見ているな……。小鳥さ〜ん?こんなところで寝てたら、風邪を引きますよ〜?」

 

「……ふぅ、起きないな……。しょうがない。起きるまで、俺のスーツを羽織っておくか」

 

「まあ、年末は忙しかったし、小鳥さんも頑張ってくれてたしな。よっぽど疲れが溜まってたんだろう」

 

(……それにしても……惚けて寝てる小鳥さんって…………色気があるよな……)

 

(酔って顔が紅潮してて……寝息が妙に色っぽくて……何だかこう、日常生活感を醸し出してるというか……)

 

(プライベートな小鳥さん……ゴクリ……って!何を考えてるんだ俺はっ!俺こそ、目を覚まさないとっ!//)

 

「んく……んく……!……ふぅ、お冷を一気に飲んだら少しは目が覚めたな……いかんいかん……」

 

「でも……今年もお疲れ様、小鳥さん。来年も一緒に、二人三脚で頑張って行きましょうね」

 

「……プロデューサーさん……♡……zzz」

 

------------------------------------------------

 

「全くぅ、だから私は、にちかのアイドル入りは反対だったのよ〜?目が離せなくて危なっかしいし〜」

 

「も、もうっ……!お姉ちゃんは細かすぎっ!ちょっと間違えただけじゃん!!」

 

「そのちょっとが問題なの。アイドルが「麦の」飲み物だなんて……よくニュースとか見てるでしょ?」

 

「……っ……それは、そうだけどさぁ〜……」

 

「まあまあ。まだ日が浅いんですし、これから気をつけて行けばいいじゃないですか、な、にちか」

 

「ほ、ほらっ!プロデューサーさんもそう言ってるよ!だから、今のはノーカン!!」

 

「んもう……プロデューサーさんは甘いんですから……」

 

「それに、私だって「仕方なく」大晦日の掃除を手伝ってあげたんだから!それでおあいこにしてよ!ねっ!」

 

「……はいはい。ありがとうね〜、にちか〜。……あ、プロデューサーさん、もしよかったら注ぎますよ?」

 

「えっ?あっ、はい。ありがとうございます。では、はづきさんにも注ぎますね。グラス、失礼しますね」

 

「あっ……うふふ……♪ありがとうございますっ♪」

 

「むむっ……プロデューサーさん!お姉ちゃんだけじゃなくて、私にもジュースを入れて欲しいなあ〜っ!?」

 

「あぁ、わかったよ。少し待ってくれ、にちか」

 

「むぅ〜……それにしても……お姉ちゃんとプロデューサーさんって、随分と仲が良さそうだねぇ〜」

 

「えぇ〜、そう見える〜?ですって♪プロデューサーさ〜んっ♪」

 

「えっ……?いや、まあ……俺とはづきさんは仲がいい方だと思うぞ……?」

 

「仲がよすぎっ。全く、ここに来るまでだって何さ!見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうよ!」

 

「手が悴むからっていって、手を繋ぎながら歩いたり……「温めて欲しい」だなんて平気で言ったり……」

 

「後は、ナチュラルにプロデューサーさんのコートを借りたり……だいたい、普段からだって……」

 

「……あぁ、もうっ!とにかく!そういうのウザいんですけど!二人のば〜かば〜か!あほまぬけ〜!!」

 

------------------------------------------------

 

「寒かったのは事実だし、別にいいじゃな〜い♪……むしろ……私はいつでも、いいんだけどなあ〜?」

 

「……こんな風に……「腕を組む」仲になっちゃったりとかっ……♡」

 

「なっ……!?」

 

「だっ、だからお姉ちゃんっ!そういうことは暑苦しいからやめてよっ!みっともないよっ!!」

 

「えぇ〜?だって、私は事務員だしぃ〜、アイドルじゃないから何も問題ないも〜んっ♡」

 

「お・お・あ・りっ!もうっ!プロデューサーさんだって、困っちゃってるじゃんっ!」

 

「えっ……そうなんですか……?……ごめんなさい……私ってば……迷惑をかけてしまって……」

 

「い、いえ!そんなっ!迷惑じゃないです!むしろ、嬉しかったですよっ!……あっ……//」

 

「……うふふ〜♪だってぇ〜?にちか〜♪」

 

「むぐぐ……い、いいもん!私だって、プロデューサーさんとこれがあるもんっ!」

 

「ん……?それは……キーホルダーかしら……?」

 

「うんっ♪この前ね、プロデューサーさんとゲーセンに行って取ったの♪しかも「お揃い」なんだよ♪」

 

「その他にも、プリを撮りに行ったり、カラオケに行ったり………毎日が、と〜っても大忙しなんだからっ♪」

 

「……ふ〜ん?プロデューサーさんってば、随分とにちかと仲良くなったんですねぇ〜?」

 

「あはは……。まあ、アイドルの勉強の一環として、にちかに色んな体験をさせたいと思いまして……」

 

「私が、中国やインドに修行をしに行ってる間に……む〜っ……いいなあ〜……」

 

「えへん!どう!お姉ちゃんっ!羨ましいでしょっ!」

 

「……私もぉ……たまにはプロデューサーさんから、素敵なご褒美が欲しいなあ〜?」チラッ

 

「えっ……?ご褒美……ですか……?」

 

「最近は二人で寛げる時間もなかったですしぃ、どこかに行ってみたいなあ〜」

 

「どこか…………えっと……では、年が明けて少ししたら、休暇を取って温泉旅行とかしてみますか……?」

 

「わぁ〜♪それは名案ですねっ♪では、社長に今度、スケジュール調整も兼ねて相談をしてみますね♪」

 

「あ”ぁ”〜っ!?お姉ちゃんだけずる〜いっ!私も温泉に行きたい〜っ!!」

 

「にちかはもう「たくさん」プロデューサーさんと遊んだんだからいいでしょ〜?今度は私の番よ〜?」

 

「うぐっ……そっ、それはっ……!だっ、だけどっ!とにかく私も行く〜っ!!」

 

「ふぅ……しょうがない子なんだから……。では、プロデューサーさん。にちかもご一緒していいですか?」

 

「はい。はづきさんがいいなら、俺は大丈夫ですよ」

 

「わ〜いっ♪やった〜♪絶対に約束だからねぇ〜♪」

 

「はいはい。じゃあまずは、計画を立てないとね。三人で考えましょう♪」

 

------------------------------------------------

 

「……クチュッ」

 

「大丈夫ですか?小鳥さん」

 

「あっ、はい……すみません……。せっかくの楽しいお酒の席だったのに、寝てしまって……」

 

「いえいえ、気にしないでください。あれだけ頑張ってもらってたんですから、無理もないですよ」

 

「……それに、小鳥さんの寝顔、すごいかわいかったですよ。ですので、むしろ役得ですね。なんて」

 

「ぴよっ……!?か、かわいいって……ううっ……恥ずかしいですっ……//」

 

「ははっ。とりあえず、夜は冷えますので、しばらくは俺のコートを羽織っててください」

 

「……ありがとうございます……。プロデューサーさんのコート……すごい暖かいですっ……//」

 

「それはよかった。風邪を引かれては困りますからね。小鳥さんは、俺の大切なパートナーなんですから」

 

「っ……パートナー……あっ、あの……!プロデューサーさんはこの後、何か予定とかありますか……?」

 

「俺ですか?いえ、特にないですよ。後は家に帰って、ゆっくりと新年を迎えるだけですかね」

 

「そうなんですか……えっと……も、もしよかったらですね……」

 

「……私の家で、一緒に楽しく……新年を迎えませんか……?……なんてっ……//」

 

「えっ、小鳥さんの家で……?いやいや、そんな。悪いですよ」

 

「いえいえっ!もしよかったら一緒に、新年を迎えれたらな〜と思ったんですが……どうですか……?」

 

「そうですか……?でも、急に女性の家に上がるのは……」

 

「……私っ……プロデューサーさんと一緒に……新年を楽しく迎えたいな……?」ウルッ

 

「っ……!……では……小鳥さんがよければ、その……お邪魔させていただいてもいいですか……?//」

 

「ふふっ……はいっ♪決まりですね♪二人の愛の巣……じゃなくて!さっそく私の家に行きましょう♪」

 

「温かいお雑煮や年越しそばとかもご用意しますので、一緒に年を越して、楽しい新年を迎えましょうね♡」

 

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「にちか〜?お〜いっ、起きてる〜?」

 

「……zzz」

 

「ダメですね。これは完全に寝てます」

 

「ふぅ……本当にもう……。年の瀬まで、世話が焼ける子なんだから……」

 

「ははっ。それでは、俺が事務所までにちかをおぶりますよ。にちか、失礼するぞ」

 

「すみませんね……。この子ってばいつも、プロデューサーさんにご迷惑ををかけてしまってて……」

 

「いえいえ。俺にとって、にちかは大切なアイドルですから。迷惑だなんてとんでもないです」

 

「これからどんな成長をしてくれるのか、どんなアイドルになってくれるのかが楽しみで仕方がないんです」

 

「ですから……俺と一緒に、これからもアイドルたちの成長を共に見守っていきましょう。はづきさん」

 

「プロデューサーさん……そうですね。新年を迎えても、そしてこれからも「末長く」よろしくお願いします」

 

「手のかかるこの子も、そして、アイドルの子たちが輝き続けていけるように、一緒に頑張りましょう」

 

「えぇ。お願いします、はづきさん」

 

「……ところで……私たち……周りから見たら、どういう風に見えると思います……?」

 

「えっ……突然、どうしたんですか?」

 

「うふふ……何となく聞いてみたくなっただけです♪どう思いますか?」

 

「う〜ん……強いて言うなら、仲の良い同僚とかですかね……?あっ、でも……にちかをおぶってるし……」

 

「……まあ、夜遅くまで遊んでた悪い子供を迎えに来た、親戚や兄妹とかですかね……?」

 

「ふふっ……♪んもう、何ですかそれ〜、設定が凝りすぎですよぉ〜。……ダメですよっ……」

 

「……こういう時は……「夫婦」に見えるって言わないとっ……♡」

 

ムギュッ♪

 

「ちょっ……は、はづきさんっ……?」

 

「「事務員特権」を使って、今はプロデューサーさんを独り占めしちゃいます♪少し、冷えてきましたので♡」

 

「この体勢のまま、事務所に戻りましょう♪戻ったら甘くて美味しい、温かい甘酒を作りますね♪」

 

「ですので、温かい甘酒を飲みながら、改めて三人で一緒に新年を迎えましょう〜♪」

 

------------------------------------------------

 

「ううっ……やっぱり外は、結構冷えるなあ〜……」

 

「年末のつんざくような冷気……夜の寒空……ちひろさんは大丈夫ですか……?」

 

「……はぁ〜い♪らいじょうぶれす♪気分はさいっこ〜に「うぃっしゅゆ〜はぴね〜す」ですよ〜っ♡」

 

「大丈夫……ではなさそうですね……。会話をしてる最中にも、かなり酒が進んでたし……」

 

「あのちひろさんが……こんなに……ふぅ。じゃあ、ちひろさん。まずは一旦、どこかで落ち着きましょうか」

 

「……そうですねぇ……じゃあ、プロデューサーさぁん……?せっかくの大晦日ですし……お姉さんがぁ……」

 

ムニュッ……♡

 

「……っ!?」

 

「……あそこの素敵な「お城」で……今年最後の、素敵な「ログインボーナス」をあげちゃいますよっ……♡」

 

「ログインボーナス……?ていうか、ち、ちひろさんっ!何で、俺に抱きついて来てるんですかっ!?//」

 

「うふふ……プロデューサーさんの胸って……逞しくてあったかぁ〜いっ……♡」

 

「くっ……!とっ、とにかく!どこかで少し落ち着きましょうよ!ねっ!?」

 

「そうですねぇ〜……。じゃあ……あっちの、綺麗なピンクのネオンのところで休みましょう〜……♪」

 

「あぁ……あそこの、路地裏の……って!ですから!そっちもまずいですって!!//」

 

「……プロデューサーさんは……私のことが嫌いなんですか……?」

 

「いや……そんなことは……。むしろ、ちひろさんって結構……じゃなくて!」

 

「うふふ……♡私は、アイドルではないですしぃ……ナニも問題ないじゃないですかっ……♡」

 

「事務員とプロデューサー……ずっと「一心同体」で仕事をしてきた仲ですし……ねっ……♡」

 

「ちょっ……少し、落ち着いて…………ん?」

 

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「……うぅ〜♪うまぴょい♡うまぴょいっ♡」

 

「あの……たづなさん……?少し、飲みすぎたんじゃないですか……?」

 

「えぇ〜?そんなことないれすよぉ〜♪トレーナーさぁ〜ん♪」

 

「完全に出来上がってますね……。全く、年末だからって……はしゃぎすぎですよ?」

 

「むっ……10戦10勝の無敗かつ、クラシック二冠を制したこの私にぃ〜、そんなことを言うんれすかぁ〜?」

 

「また始まったよ……。はいはい、たづなさんはすごいですねぇ〜。ですので、まずはいい子にしましょうね」

 

「……またそうやって、適当に流して…………いいもん……。こうなったら………えいっ!」

 

ムギュッ♡

 

「ちょっ……た、たづなさん!?いきなり、何をっ……!//」

 

「信じてくれるまでぇ、ぜ〜ったいにトレーナーさんから離れないんですからぁ〜♡逃がしませんよ〜♡」

 

「……それともぉ、今から私と「うまぴょい」をしに行きますか〜?あそこに素敵なお城がありますしぃ〜♡」

 

「な、何を言ってるんですか!?いつものたづなさんじゃないですよ!?」

 

「せっかくの大晦日なんですしぃ、二人で素敵な思い出を来年に持っていきましょうよっ……ねっ……♡」

 

「……えっと……とりあえず一旦、落ち着きましょう。少し夜風で涼めば、酔いも覚めるはずです」

 

「……ふ〜んだ。私、知ってるんですよぉ〜?桐生院さんや他の子ばかり……ずるいですっ」

 

「えっ?桐生院さん……?他の子……?何のことです?」

 

「私ぃ、知ってるんですよぉ〜?ご褒美に「二人っきり」で「うまぴょい」温泉旅行をしたって〜」

 

「なっ!へ、変なことを言わないでください!桐生院さんやあの子とは、普通に温泉を楽しんだだけです!//」

 

「ふ〜ん……へぇ〜……いいなあ〜。それはそれは、楽しそうで何よりですぅ〜」

 

「でもぉ……私も……たまには「二人っきりで」……堪能したいなあ〜……?」チラッ

 

「……ふぅ……わかりましたよ。では、年が明けて少ししたら、休暇をとって温泉に行きましょうか」

 

「わ〜いっ♪……ふふっ……今の言葉、忘れませんからねぇ〜……?」

 

「はいはい。ですので、とりあえず変なことを言ってないで一旦、学園の寮に戻りますよ」

 

「うふふ……はぁ〜いっ……♪……あのっ……トレーナーさぁん……?」

 

「何です?」

 

「……来年も……これからもずっと……末長く、よろしくお願いしますね……♡」

 

------------------------------------------------

 

「……あそこのお兄さんとお姉さんも……どこもみんな、同じように苦労してるんだな……」

 

「まあ、年末だし……わからないでもないが……さて、俺もどうしたものやら……」

 

「むぅ〜、だいたいですねっ……プロデューサーさんは、アイドルの子ばかり見すぎなんですっ」

 

「いつもデレデレしちゃってっ……気がついたら誰かと一緒にいて……あきらかに「乙女な目」で見てて……」

 

「……私だって……プロデューサーさんのことが……プロデューサーさんの……ことが…………」

 

「…………き……なのに……」

 

「……あれ……?お〜いっ、ちひろさ〜んっ?」

 

「……zzz」

 

「もしかして、今度は寝ちゃったのか……?本当にどうしちゃったんだよ……しかも、こんなところで……」

 

「あのちひろさんが……こんなに無造作に……。ふぅ……とりあえず、一旦体勢を立て直して……」

 

ムチッ……♡

 

「……っ……!せ、制服が少しはだけてるっ……!……この状況……色んな意味で危険すぎるっ……!//」

 

(ピンクのネオン……お城……はだけた事務員のお姉さん……ダメだっ!これ以上考えるなっ……俺っ……!)

 

「う〜む……夜も遅いし……こんな状態のちひろさんを放っておくわけにもいかないし……」

 

「かといって、介抱するにも微妙に事務所への距離は遠いし……こうなったら……」

 

「……ふぅ……しょうがない……。そこら辺で、タクシーでも捕まえるか……」

 

------------------------------------------------

 

「では、気をつけて降りてくださいね。本日はご利用をありがとうございました」

 

「ありがとうございました。よし、ちひろさん。降ろしますよ」

 

「……zzz」

 

「さて、俺の家の前についたな。ここなら安全だし、ちひろさんをゆっくりと寝かせてあげられるからな」

 

「別に、アイドルを連れて帰ってるわけでもないから、特に問題ないだろうし」

 

「それにしても……どうしよう……。お〜い、ちひろさ〜ん?」

 

「……まだ熟睡してるな……ふぅ……いくら年の瀬だからといって、こんなになるまで飲んで……」

 

「そして、普段のちひろさんとは思えない無防備な寝顔を……全く……俺だって男なんだぞ……?」

 

「俺以外の男だったら……ちひろさんみたいな綺麗な女性に、こんなに寄りかかられたら……ゴクリ……」

 

「……って!何を考えてるんだ、俺!とりあえず!まずは、俺の部屋まで連れて行くか……」

 

「よしっ……じゃあ、ちひろさん。少し、失礼しますね」

 

「……んっ……」

 

「よっと……ふぅ。さてと、さっそく連れて行きますかね。それにしても……」

 

「酔って寝てる女性に、お姫様抱っこをしながら階段を上がり、部屋に連れていこうとしてる一人の男……」

 

「……アイドルどころか、普通の人に見られたら絶対に誤解されるよな……この状態……」

 

「……早く連れていこっと……新年早々、早苗さんにお説教されるのはごめんだからな……」

 

「プロデューサーさん……zzz」

 

------------------------------------------------

 

「……これでよしと。じゃあ、ちひろさ〜ん?少し、俺のベッドに寝かせますよっと」

 

「……zzz」

 

「ふぅ……ま、こんなもんだろ。後は起きるのを待つだけだな」

 

「全く、普段はそんな飲まないのに、何であんなに酔うまで飲んで……大晦日だしわからんでもないけど……」

 

「……」

 

「それにしても……こうして改めて見ると……ちひろさんって…………」

 

(……すごい、綺麗だよな……。アイドルじゃないのがもったいないぐらいに……)

 

(少しはだけた服……艶かしい光沢を放つ……黒タイツのふともも……)

 

(整った顔に……そ、そして…………意外と……あるんだよな……ゴクリ……)

 

事務員とプロデューサー……ずっと「一心同体」で仕事をしてきた仲ですし……ねっ……♡

 

「……こんなにあられもない姿を、男の前で晒して……油断しすぎだろ……」

 

「さっきだって、あんな無防備な姿を曝け出して……他の男だったらどうなると思ってるんですか……」

 

「俺だって、これでも健全な男子で……ちひろさんは魅力的な女性なんですからね……?」

 

「……」

 

「……んっ……」

 

「……っ!?ち、ちひろさんっ!?」

 

「……んん……?えっと……ここは……?」

 

「あっ……えっとですね……ここは、俺の家の部屋ですよ。ちひろさんをここまで連れてきたんです」

 

「俺の……っ……!?も、もしかして……ぷっ、プロデューサーさんの部屋っ!?//」

 

「ちょっ、ま、待ってください!変な誤解をしないでくださいっ!俺はただ、介抱をしただけです!//」

 

------------------------------------------------

 

「介抱……ですか……?」

 

「えぇ。あの飲んだ後に、ちひろさんが酔っ払って寝てしまったんです」

 

「ですので、あの場所から一番近かった、俺の家に連れてきたってわけなんです」

 

「やだ……通りで途中から、記憶が曖昧になってると思ったら……すみません、ご迷惑をおかけしまして……」

 

「気にしないでください。むしろ、役得……ではなく!普段は見れない、ちひろさんの一面を見れましたから」

 

「普段はって……私は一体、何をしてっ……」

 

「……えっと……何と言われれば、少し困るんですが……一例としてはですね……」

 

「わ、わわっ!やっぱり言わないでください!何だかその……嫌な予感がしましたので……//」

 

「そ、そうですか!でも、大したことはなかったですよ!少し「大胆」なだけでしたのでっ!」

 

「っ……大胆……」

 

「これ以上は、俺の心の中にしまっておきます。俺だけが知ってる大切な思い出にしておきますよ」

 

「……あの……プロデューサーさん……?少し、私の隣に来てもらってもいいですか……?」

 

「えっ……隣ですか……?え、えぇ……こうですか?」

 

「はいっ♪ありがとうございますっ♪では……えいっ♪」

 

「なっ……ちょっ……ち、ちひろさんっ!?どうしたんですか……?急に、俺の胸に飛び込んで来て……//」

 

「一度、こうしてみたかったんですっ♡私だって「悩み多き」女性なんですよっ♡」

 

「……あの……もしかして、まだ酔っちゃってたりとかしてます……?」

 

「むっ……そういうことを言っちゃうんですかぁ〜?……本当にもうっ……しょうがないですねぇ〜……」

 

「……では……今から、証明してみますか……?」

 

------------------------------------------------

 

「証明……ですか……?」

 

「このまま……プロデューサーさんに近づいちゃったら……どうなると思います……?」

 

「えっ……?いや、まあ……そりゃ……ん?」

 

「では……今から試してみましょうか……♡今は「オトナ」の男女が二人っきりなんですしっ……♡」

 

(くっ……な、何だろう……今のちひろさん……何だかいつもより、すごい艶やかで色っぽく感じるっ……)

 

「もう……介抱してくれたとはいえ、誰にも見せたことがない私の無防備な寝顔や痴態を見たんですから……」

 

「……「責任」を……取ってもらいますからねっ……♡//」

 

「っ……ちょっ……ちひろさん……近っ……!//」

 

(お互いの吐息を感じるほどの距離……俺、いいのか……?ちひろさんと、年の瀬にこんなことをして……)

 

「うふふ……♡プロデューサーさんの目って……と〜っても綺麗なんですね……♡」

 

「何だか……このまま……吸い込まれてしまいそうですっ……♡」

 

(彼女の目を見れば見るほど、胸の鼓動が高まる……この不思議な感覚は一体……)

 

トクントクン……。

 

(……あぁ……そうか。俺……実は、こんなにもちひろさんのことが……)

 

「……プロデューサーさんっ……んっ……」

 

ゴーン……ゴーン……。

 

「「……っ!?」」

 

「……この音は……もしかして……除夜の鐘……?」

 

「……ということは……私たち、新年を迎えてしまったってことですか……?」

 

「「…………ぷっ……あははっ♪」」

 

「何だか俺たちらしいですね。こうして二人で、いつの間にか新年を迎えるって」

 

「うふふ……ですねっ♪毎年、一緒に新年を迎えてるのに、何だか今年は新鮮な迎え方をしましたね♪」

 

「……あの……ちひろさん。明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」

 

「えぇ♪明けましておめでとうございますっ♪今年もよろしくお願いしますっ♪」

 

「……では……お姉さんが「お年玉」をあげますね♡……えいっ……♡」

 

チュッ……♡

 

「なっ……!?//」

 

「……ふふっ……「今は」頬にさせてもらいました♪本当は、いい雰囲気のまま迎えたかったんですけど……」

 

「……もっともっと、お互いを深めあって……「末長い」関係になったら、もっと……ねっ……♡」

 

「「……//」」

 

「……さて、プロデューサーさん。新年も迎えたことですし、これから初詣に行きませんか?」

 

「えっ……?あっ、そ、そうですね。では、行きましょうか」

 

「決まりですね♪ではまず、事務所に一旦戻って、初詣の参拝の準備をしましょうっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふふっ……♪今年も雲一つない、気持ちいいぐらいの快晴ですね〜♪」

 

「えぇ。とても縁起がいいですね。でもやっぱり、年明けの初詣は結構混んでますね」

 

「そうですね♪あと少しで私たちの番が来ると思いますので、その間、何かお話をしてましょう♪」

 

「おっ、いいですね。ところで……ちひろさんのその晴れ着姿、とてもお似合いですよ」

 

「ありがとうございます♪プロデューサーさんの私服姿も、とても素敵です♪普段がスーツだから新鮮ですね♪」

 

「……何だか、お互いに新鮮な姿で……私たちって「初々しいカップル」みたいだと思いませんか……?//」

 

「えっ……そ、それは……」

 

「「……//」」

 

「……うふふ♡プロデューサーさんのお部屋で「初めて」を迎えたんですから……責任をとってくださいね♡」

 

「ちょっ……!へ、変なことを言わないでください!だいたい、俺はただ、ちひろさんが心配でですね……//」

 

「皆まで言わなくてもわかってますよ♪それに、信頼してる人の前じゃないと、あんな飲み方はしませんっ♪」

 

「信頼してくれるのは嬉しいですけど、程々にお願いしますよ?ちひろさんも女性なんですから」

 

「ふふっ……♪では、そんな危い私を、いつまでもそばで見守ってくださいね……♪……ん?」

 

「ねぇ、佳凛さんは何をお願いしたの?」

 

「うふふ……♪私は「素敵な仲間が増えますように」ってお願いをしました♪ユウキくんは?」

 

「そうだね。僕は、これからもみんなと一緒に、楽しく平和に過ごせるようにってお願いをしたよ」

 

「……後……佳凛さんとも過ごせるようにね」

 

「そうですか♪それは素敵なお願い事で……えっ……私も、ですか……?」

 

「うん。今年も……ううん、これからも僕なりに、佳凛さんに尽くさせてもらうよ。だからよろしくね」

 

「ユウキくん……そんなことを言っていいんですか?私、頼れる人にはとことん頼っちゃいますよ?」

 

「望むところさ。佳凛さんの「一番」になれるように頑張るよ」

 

「っ……またそういうことを……そんなことを言ってるから「彼女たち」に誤解をされちゃうんですよ……?」

 

「えっ……?」

 

「何でもありませんっ、こっちの話ですっ。……うふふ……では……えいっ♪」

 

「うわっ……!佳凛さん……?」

 

「さっそく、頼っちゃいますねっ♪新年の「一番」は私がいただいちゃいます♪腕、失礼しますね♪」

 

「……ふふっ……今年も……ううん、これからも末永くよろしくお願いしますっ♡……ユウキくんっ……♡」

 

(おぉ……。目の前の男の子とお姉さん……随分と新年早々からお熱いですねぇ……)

 

(いいなあ〜……私も、あんな風に堂々とプロデューサーさんに…………よしっ♪)

 

「あっ、プロデューサーさん。私たちの番みたいですよ♪さっそく、お賽銭箱に「五円玉」を入れましょう♪」

 

「おっ、そうみたいですね。では、一緒にお祈りしましょうか」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ。何とか今年も無事に、初詣を終えれましたね」

 

「そうですね♪ところで、プロデューサーさんは何をお願いしたんですか?」

 

「俺は「アイドルたちや事務所の安全祈願」をしました。今年も立派に、活躍し続けて欲しいので」

 

「あっ、私と全く同じですね♪私も、みなさんの安全祈願をさせてもらいました♪」

 

「ははっ、偶然ですね。まさかちひろさんと、全く俺と同じお願いごとをしてただなんて」

 

「どうやら考えていたことは同じだったみたいですね♪流石はプロデューサーさんですっ♪」

 

「……でも……私はもう一つだけ「大切な」お願い事をしちゃいましたっ……♪」

 

「えっ、もう一つ?何をお願いしたんですか?」

 

「ふふっ……知りたいですか〜?……ダメですっ。教えてあげませ〜ん」

 

「えぇ〜。そこまで言われたら気になるじゃないですか、教えてくださいよ〜」

 

「こ〜らっ、女性の大切なお願いをそんなに詮索するものじゃないですよ〜♪……えいっ♪」

 

ムギュッ♡

 

「うわっ……!?ちょっ……と、突然どうしたんですかっ……!?俺の腕に抱きついて……!//」

 

「えへへ〜♪なんとなくしてみたくなったんですっ♪プロデューサーさんは、目が離せませんから♪」

 

「で・す・の・で♪「事務員特権」を使わさせてもらいます♪今だけは、私だけで独り占めですっ♡」

 

「……ちひろさん……新年からさっそく、色々と大胆ですね……あはは……//」

 

「これからも……いえ「末長く」こうして二人三脚で、お互いに支え合ってお仕事を頑張りましょう♪」

 

「……2022年も……希望にあふれるアイドル達の夢、一緒に応援しましょうね!プロデューサーさんっ♪」



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勝負シンデレラ 兵藤レナ

「……私……実は…………です……」

 

「……ほぉ……それは誠か……?」

 

「……ふ〜ん……なら…………っていうことなの……?」

 

「……えぇ……なぜなら…………の持ち主ですから……」

 

「……ふむ……つまり…………ということか……これは興味深い……」

 

「……じゃあさ…………とか出来るの……?」

 

「……もちろんです……私には……ミラクル…………がありますから……」

 

「……例えば……むむむんっと念じれば…………の方から現れて……」

 

カチャッ

 

「……おっ、蘭子に裕子、そして夏美さんじゃないですか。おはようございます」

 

「ひゃあっ!?ぷ、プロデューサー!?」

 

「わぁお♪本当に来た〜♡すっご〜いっ♡」

 

「これは…………流石は、奇跡を司りし超越者であるな……」

 

「うん?どうしたんだ?何かあったのか?」

 

「い、いえっ!別に何でもないですよ!?えぇ!本当にっ!!//」

 

「うんうん♪何でもないわよ♪別に、本当に「気になるカレ」が来たとかそういうことじゃ……」

 

「ひゃわっ……!?わ”〜!わ”〜っ!!そ、そそ、そんなことより!プロデューサーはなぜここにっ!?//」

 

「いや……なぜって……普通に、仕事をしに来たんだが……」

 

「そっ、そうなんですかっ!それは、よかった?ですぅ〜!!」

 

「煩わしい太陽ね。ところで、我が友よ……我が同胞たちと共に一時の戯れに打ち興じてみぬか……?」

 

「そうそう♪私たち今、これで遊んでたのよ♪…………「恋バナ」ついでにっ……♡」

 

「これって……糸電話……?随分とまた懐かしいものですね」

 

「裕子ちゃんが作って来てくれてね♪これがまた、結構よく聞こえるのよ♪」

 

「俺も、子供の時はよく作った記憶があるけど……声が届かない失敗作しか作れなかったっけ……」

 

「ふっふっふっ……では、今から私の声を、糸電話を通じてプロデューサーに伝えてみせましょう!ささっ!こちらにどうぞ!」

 

「そうか……?じゃあさっそく、聞かせてもらおうじゃないか」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「プロデューサー!準備はいいですかぁ〜!」

 

「あぁ。俺は大丈夫だ」

 

「では、いっきますよ〜!……スゥ〜……」

 

(……って……あれ……?今思ったら、私……プロデューサーに何を伝えればいいんだろう……?)

 

(いつもおバカキャラで通してるから……たまには女の子らしいことを言ってみたり……?)

 

(いえいえ!こ、これはあくまでお遊びなんですからっ!適当に何か言えばいいじゃないですかっ!私っ!//)

 

(うぅ……何でこんなに緊張して悩んでるんだろう……で、では無難に……いつもありがとう、でいいかな?)

 

(……それとも……今は、誰にも聴こえないはずですし……いっそのこと「好き」って言ってみちゃったり……?//)

 

「おっ、すごいな。しっかりと聴こえてるじゃないか」

 

「…………えっ……?聴こえてる……?」

 

「あぁ。裕子の声が聴こえて来たぞ。この糸電話、よく出来てるじゃん」

 

「えっ、ええ〜っ!?私まだ、何もっ……!はっ……ま、まさか……「心の声」がいつの間にダダ漏れで……」

 

「ありがとうって聞こえて来たし、それと何だか「好き」って言うのも聞こえて来て…………」

 

「……わっ!わ〜っ!!とっ、とにかく!糸電話は成功ですね!はい、次!次は蘭子さんの番ですうっ!」

 

「えっ……我……?」

 

「えぇ!蘭子さんもせっかくですし、プロデューサーに何か伝えてみましょうよ!ねっ!?」

 

「……う、うむ……そうだな。この際、我も我が友に謝恩の福音を伝導してしんぜようぞ……」

 

「決まりですね!では、はいっ!糸電話ですっ!」

 

「えっ……あっ、あぁ……。じゃあ、蘭子。よろしく頼む?」

 

「うふふっ……♡何だか「甘酸っぱい」雰囲気になってきたわね♡何だか夏美お姉さん、ドキドキしてきちゃったっ♡」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「では……準備の方はいいか……?」

 

「あぁ、俺はいつでも大丈夫だぞ」

 

「うむ……では、いざ参らん……コホン……親愛なる我が友よ……」

 

「……ではなく……えっとね……プロデューサーさん。いつも、私たちのために頑張ってくれてありがとう」

 

(ん……?まさかの標準語か……?)

 

「我……ううん。私ね、そんな頑張ってくれてるプロデューサーさんの後ろ姿が大好きなの」

 

「何だか一緒にいると安心して……カッコよくて優しくて、その……す……すっ……//」

 

(……?)

 

「すっ、すき………素敵な大人のお兄さんだと思うのっ!//」

 

「だからこれからも、そのっ……わ、私と……「運命を共に」してくれますかっ……?//」

 

(っ……)

 

「今すぐじゃなくてもいいから……「返事」をくれると嬉しいなっ♡…………えへへ……以上ですっ……♡」

 

「……蘭子……//」

 

「「……//」」

 

「……蘭子さん、少し借りてもいいですか♪」

 

「えっ……?あっ、はい……」

 

「では、お借りしますね♪すぅ〜……わ”あ”あ”あ”あ”っ”!!」

 

「うわあっ!?な、何だっ!?」

 

「ちょっと!プロデューサーっ!何、デレデレした顔をしてるんですかっ!!」

 

「そうよそうよ〜。私たちを差し置いて、な〜に蘭子ちゃんといい雰囲気になってるのよ〜」

 

「ちょっ……!裕子!耳元で急に大声を出すな!ていうか、いい雰囲気って何ですか!?」

 

「そ、そうたい!別に、何でんなかたいっ!!//」

 

「全くもう!すぐにプロデューサーは変なことを考えるんですからっ!えっちっ!」

 

「はあっ!?何だよそれ!勝手に俺の思考を決めるな!ていうか、バカって言う方がバカなんだよ!!ユッコのアホ!バカっ!」

 

「あっ!ひど〜いっ!プロデューサーだって、私がいないと何も出来ないクセに!鈍感!おバカっ!!」

 

ギャーギャー!!

 

「ふふっ……相変わらず二人は仲が良いわね〜♪青春だわ〜♡」

 

「……我が友…………ううん……お兄ちゃんっ……//」

 

カチャッ

 

「……あら……?」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「あっ、レナさんじゃない♪こんにちはっ♪」

 

「妖艶なる幻惑の賭博師……じゃなくて!レナさん、こんにちは」

 

「こんにちは、みんな。何だか随分と賑やかね」

 

「っ……れ、レナさんっ……」

 

「うん?プロデューサーさんと裕子ちゃんってば、何か面白そうなものをもってるじゃない」

 

「あっ、レナさん!お世話になっていますっ!えっとですね、その……少し、糸電話で遊んでまして……」

 

「糸電話……?あら、これまた随分と懐かしいわね」

 

「裕子ちゃんが持って来てくれたのよ〜♪あっ、そうだ!レナさんも一緒にどう!?」

 

「はいっ!紙コップと糸だけなのに、すごいよく聴こえるんですよ♪」

 

「そう……何だか面白そうね。じゃあ、私もいいかしら……?」

 

「えぇ!では、レナさんも一緒に、プロデューサーにサイキック以心伝心をしましょうっ♪」

 

「ありがとう、裕子ちゃん。あっ……そうだ、夏美さん。少し……私たちで「オトナな感じ」にしてみない……?」

 

「……うふふ……♪いいねっ♪私、その話ノッたっ♡」

 

「決まりね♡じゃあ、プロデューサーさん。少し失礼するわ♡」

 

「は、はい……って……両耳……?」

 

「うん♪私が左耳で、レナさんが右耳ねっ♪それじゃあっ♪いくわよ♪レッツ、スタートっ♡」

 

「……コホン……ねぇ、プロデューサーさん……?私の「ハートのエース」は一体、どこにあると思う……?」

 

(……ん?ハートのエース……?)

 

「うふっ……♡正解はぁ……今、あなたが「想像してる」ところにあるのよっ……♡」

 

「んもう、プロデューサーくぅ〜ん?レナさんだけずるいぞぉ〜。お姉さんも構って欲しいなあ〜?」

 

(うあっ……り、両耳から甘い吐息がっ……!……何だか、イケナイものを聴いてるような気がする……!//)

 

「これから、夏美お姉さんたちとステキなことをしましょっ……君が考えてることを……何でもしてあ・げ・る♡」

 

「オトナのお姉さんの魅力を、た〜っぷりと教えてあげるわ♪……今はスナオになってもい・い・の・よ♡」

 

(……これってまさか……今流行りの「ASMR」じゃないよな……?//)

 

 

------------------------------------------------

 

 

「……ほらっ……♡私の、胸の間にある「ハートのエース」を……取ってっ……♡」

 

タプンッ……♡

 

「あんっ、服が何だかキツくなってきちゃった……♡また肉がついちゃったかもっ……♡」

 

「……まずは……「フトモモ」から測ってもらおうかしらっ……♡ねぇ……触診してっ……♡」

 

ムチッ……♡

 

「……っ……!?す、すみません!これ以上は色々とヤバいですっ!!//」

 

「きゃっ……んもう、まだ途中なのに〜……」

 

「プロデューサーさぁ〜ん?せっかく盛り上がろうとしてたのに……夏美お姉さん、悲しいぞ〜?」

 

「いや……あっ……!ほ、ほら!レナさんっ!糸電話もいいですけど、そろそろ打ち合わせの時間ですよっ!」

 

「ん……?あら……そうだったわね♪糸電話がつい楽しくて、夢中になってしまってたわ♡」

 

「じゃあ、俺たちはそろそろ行きますんで!それではみんな!また会いましょう!!」

 

「うふふ……♡裕子ちゃん、糸電話を返すわね♪楽しい時間をありがとうっ♪今度、お礼をさせてね♪」

 

「えっ……。いえいえ……そんな……」

 

「それじゃあ、みんな〜♪また会いましょうね〜♪SEEYOU〜♪」

 

「……行ってしまいましたねぇ……」

 

「……あの……夏美さん?プロデューサーさんに、何を言ってたんですか?」

 

「えっと、それはねぇ……蘭子ちゃんが私にも「称号」をくれたら教えてあげる♡「妖艶なる幻惑の賭博師」みたいなっ♡」

 

「えっ……!?」

 

「ほら〜♡蘭子ちゃんも、さっきみたいに「カッコよく」私と話してよ〜♡」

 

「あっ、はい。では……コホン……と、ところで「世界を紡ぎし天空の案内人」よ……我が友には、どのような謝恩の福音を……?」

 

「う〜ん、えっとね〜♡少し「元気」になるオトナのおまじないをかけたのよ♡」

 

「ふむ……呪術の類か……。それは、如何程のものなのだ……?」

 

「そっ、そうですよ!そのおまじない、私も気になりますっ!」

 

「うふふ……♡やっぱり、蘭子ちゃんや裕子ちゃんはまだダ〜メっ♡オトナになるまで、ヒ・ミ・ツ・よっ♡」

 

「「……?」」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「レナさん、どうですか?大丈夫ですか?」

 

「……えっ、えぇ……。じゃあ、さっそく……でるわね……」

 

シャーッ

 

「……おおっ!すごいかわいいじゃないですか!」

 

「今回もピシッと決めて、大人の色気を……って思ったけど、これって俗に言う「甘ロリ系」って言うのよね……?」

 

「えぇ。この前、デザイナーさんと三人で打ち合わせをしたじゃないですか」

 

「確かに、私は「ビター&スウィート」な感じでってお願いしたけど……これは少し、予想外だったわ……//」

 

「とても似合ってますよ。俺の想像通りの出来です」

 

「……本当にそう思ってくれてる……?」

 

「もちろんです。何せ、世界でたった一つのレナさんのための衣装ですので」

 

「……そう……じゃあ、証拠を見せてもらえるかしら?」

 

「ん……?証拠ですか……?」

 

「えぇ。このキュートな衣装を似合ってるって言ってくれたのは正直嬉しいの。だけど……私も一人のオトナの女性なのよ?」

 

「……やっぱり……一抹の不安があるし、心細いわ。だから……私のことを抱きしめて欲しいの」

 

「抱きしめる…………って……ええっ!?ちょっ……れ、レナさんっ……?」

 

「覚悟があるなら出来るわよね?だって私たち、お互いに「大人」じゃない、ねっ……?」

 

(くっ……!真剣な目だし……冗談で言ってる風には見えないっ……!突然どうしたんだ……?)

 

(まさか、レナさんに試されてるとかじゃないよな……?プロデューサーとしてのあり方や本心を……!)

 

「……プロデューサーさん……?」

 

(でも……見れば見るほど……何だろうっ……この抱きしめたくなる、キュートかつ艶かしいかわいさはっ……!)

 

(普段の、オトナなお姉さんなレナさんとの「甘ロリ」なギャップ……!自然と醸し出していて、溢れ出てるオトナの色気……!)

 

(……いやいや……やっぱりダメだっ!大切なアイドルを、そんなに下心丸出しで見るなんてっ……!)

 

「ねぇ……どうしたの……?何だか少し、冷えてきちゃったわ…………早く……温めて欲しいなっ……?」

 

「っ……!れ、レナさんっ!!」

 

「ひゃんっ!あっ……ぷ、プロデューサーさんっ……♡//」

 

「もうどうにもなれです!レナさんみたいな魅力的なお姉さんに、そんなに潤んだ瞳で見られたら我慢できるわけないじゃないですか!」

 

「でも……決して、下心があってその衣装を決めたわけじゃないんです!それだけはわかって欲しいです!」

 

「……うふふ……♡わかったわ♡プロデューサーさんの本心が、この温もりと力強さで伝わったもの……♡」

 

「「……」」

 

「……私……今度のイベント、頑張るわね♡だから、しばらくこうして抱きしめてもっと私に元気をちょうだ……」

 

カチャッ

 

「……あら……?」

 

「……っ……!?か、奏っ……!?」

 

「……あっ……や、やっほ〜……奏ちゃんっ……♡」

 

「……お邪魔してごめんなさい。失礼させてもらいます」

 

「ちょっ……ま、待ってくれ奏!これは別に、違うんだ!勘違いをしないでくれっ!!」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「へぇ〜、なるほどね。衣装室でイベントの衣装の打ち合わせをしてたと……」

 

「そうなんだって!だから決して、変な考えはなかったんだよ!」

 

「それにしては……随分とレナさんと「お熱かった」ようだけど……?」

 

「いや……あれはだな……!レナさんを元気付けようとしたっていうか……」

 

「ふぅ……ま、いいわ。大抵予想がつくし。あなたにそんなことをする勇気があるわけないものね」

 

「……でも……「もう一人の」オトナのレディーがいるというのに、ああいうことはあまり感心しないわね」

 

「えっ?もう一人って……誰のことだよ?」

 

「今は、私たち二人しかいないと思うけど……?」

 

「……あ〜、はいはい。奏おねーさんは大人のおねーさんでごぜーますねぇ。よしよ〜し」

 

「むっ……何よ、また子供扱いして……。レナさんには、顔を真っ赤にしてデレデレしてたクセにっ……」

 

「そりゃそうだ。だってレナさんは、妖艶な色気が魅力のセクシーなオトナのお姉さんで…………はっ……!」

 

「……ふ〜ん……プロデューサーってば、レナさんをそういう風に見てたんだ〜……」

 

「ち、違うんだ奏!レナさんが魅力的なお姉さんなのは間違いないけど、そういう意味で言ったわけじゃないんだっ!//」

 

「どうだか……じゃあ……そういう意味じゃないのなら……私もいいわよね……?」

 

ムギュッ……。

 

「なっ……奏……?」

 

「……」

 

「ど、どうしたんだ……?突然、俺の胸に顔を埋めて抱きついて……」

 

「…………ふぅ……そうね。志希風に言うなら「プロデューサー分」を補給したってところかしら」

 

「どうせ、シテ欲しいって言ってくれてもしてくれないだろうしね。本当、ライバルが多くて嫌になっちゃうわ」

 

「???」

 

「まっ、私は仕事があるから、これで失礼するわ。……だけど……小娘扱いをしたことを、後悔させてあげるから……じゃあね」

 

「あっ、おい奏…………行っちゃった……一体、何だったんだ……?」

 

カチャッ

 

「お待たせ♪プロデューサーさんっ♪……あれ……?奏ちゃんは?」

 

「あっ、レナさん。着替え終わりましたか。奏なら次の仕事があるって行ってしまいましたよ」

 

「そう……残念ね。一言挨拶をしたかったのだけど……。ま、いいか♪ところでプロデューサーさん。これからお暇かしら?」

 

「暇……えぇ。このあとは特に何もないですよ」

 

「じゃあ、イベントの打ち合わせも終わったことだし、これから私と「デート」をしましょうよ♡」

 

「おっ、いいですね。レナさんとお出かけ……あれ?」

 

「じゃあさっそく、行きましょうっ♡……えいっ♡」

 

「うわっ……レナさんっ……!?」

 

「二人でたくさん楽しみましょうね♡……うふっ……♡プロデューサーさんの腕、あったか〜いっ♡」

 

 

------------------------------------------------

 

「……とまあ……昨日、こういうことがあったのよ」

 

「まあ、羨ましいわね。プロデューサーくんと二人きりで「デート」だなんて」

 

「ううっ……いいなあ、レナさん……。羨ましいですっ……」

 

「えへへ〜♡プロデューサーさんってば、かわいいのよ♪からかい甲斐があるっていうか〜♡」

 

「んもう、レナちゃん?ほどほどにしないと、色々とアブナイわよ?プロデューサーくんもお年頃の男子なんだから〜」

 

「大丈夫よ〜♪プロデューサーさんは優しいしっ♪……ねっ……美優さんっ♡」

 

「ふぇっ……!?そ、そうですね……。プロデューサーさんは、その……優しいお兄さんだと思います……」

 

「……私にも色々と……手取り足取り……優しくしてくれますしっ……♡//」

 

「ほら♪そういうことよっ♪礼さん♪それにあんなこと、プロデューサーさん以外にはしないわ♡」

 

「まあ……確かに、私もプロデューサーくんの「チェリー」を味わってるけど……」

 

「でしょっ♪って、何だかノロケ会になっちゃってるわね♪せっかくのオフで、三人で集まって女子会をしてるのに♪」

 

「……う〜ん何か「おつまみ」が欲しくなったわね……ねぇ〜、いっそのこと、追加注文しちゃう?」

 

「そうですか……?では……店員さんを呼んで……」

 

「違うわ、美優さん。「愛しの彼」を注文するのよ」

 

「えっ……?あの……そんなメニューって、ありましたっけ……?」

 

「あっ、それ賛成〜♪せっかくだし注文してみましょうよ♪きっと、美優さんも気に入ってくれる「裏メニュー」よっ♪」

 

「……???」

 

「じゃあ、さっそくスマホを出して……」

 

「あっ、待った!私が呼んでみせるわ!これでねっ!!」

 

「えっ、それって……スプーン……ですか……?」

 

「えぇ♪ふふ〜ん♪私ね、裕子ちゃんからサイキックを教えてもらったのっ♪」

 

「ねぇ……レナちゃんって、いつからマジシャンに転職したのかしら……?確か、ディーラーだったわよね……?」

 

「そうよ♪「ミラクル」を起こすディーラーって呼ばれてたわ♪それじゃっ、いくわよ♪」

 

「むむむ〜ん……サイキック〜、ミラクルテレパシ〜!」

 

「「「…………」」」

 

「……さて……スマホはっと……」

 

「あれ〜?おっかしいなあ〜……。心が通じ合っていればミラクルが起きるって、裕子ちゃんが言ってたんだけどな〜……」

 

「ふ〜ん?私は、スキンシップで通じ合った方が心も体も満足して、気持ちよく…………」

 

ガラッ

 

「……さて……今日はせっかくの休みだし、一杯飲んでいくか……」

 

「ええっ……!?ぷ、プロデューサーさんっ……!?//」

 

「……まあ……エクセレント……」

 

「……ん?レナさんに、礼さん……そして、美優さん……?」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「プロデューサーくんはビールでよかったかしら?」

 

「えぇ、ありがとうございます。それにしても偶然ですね。まさか、みなさんとこの居酒屋で出会えるなんて」

 

「そうね。久しぶりに都合が合ったから、私たち三人で女子会を開いてたのよ。ねっ、レナちゃん、美優ちゃん♪」

 

「うんうん♪最近、お互いに忙しかったからようやく時間が取れたのよね〜♪」

 

「なるほど。でも、よかったんですか?偶然とは言え、俺も一緒に混ざっちゃって……」

 

「えぇ♪もちろんよ♪私たちは大歓迎よ〜♪ねぇ〜♡美優さ〜んっ♡」

 

「ふぇっ……!?あっ……そ、そうですね……。会えて……よかったですっ……♡//」

 

(い、愛しの彼って……そういう……うう〜っ……レナさんや礼さんのいじわるっ……//)

 

「まあ、今宵の出会えた「奇跡」に乾杯よ、プロデューサーくん。せっかくだし、私たちで楽しみましょう」

 

「ははっ、ですね。是非、お邪魔をさせてもらいます」

 

「ふふ〜ん♪ミラクルってやっぱり起きるものなのね〜♪裕子ちゃんには今度、お礼を言わなきゃ♪」

 

「えっ……?裕子がどうしたんですか?」

 

「ううん、こっちの話っ♡むむむ〜ん!とした甲斐があったわ♡」

 

「?……あっ、美優さんのグラスが空いてますよ、よかったら入れますね」

 

「えっ……!?あっ、だ、大丈夫ですっ……!自分で注ぎますのでっ……!」

 

ピトッ……♡

 

「「あっ……//」」

 

「……ブラボー、流石は美優ちゃんね。侮れない人だわ」

 

「注ごうとして、お互いの手と手が触れ合って……あんっ、もうっ♡目の前で見せつけてくれるじゃない♡」

 

「「……//」」

 

「あっ……そうだ。ねぇ、ちょうどみんなのグラスが空になったことだし、今から飲み比べをしてみない?」

 

「えっ、飲み比べ……?どういうこと……?」

 

「どれだけお酒を飲めるか、勝負しましょう♪ご褒美はぁ……プロデューサーくんを独り占め出来ちゃう権利で〜すっ♡」

 

「ちょっ……お、俺ですか……!?」

 

「ふぅん……勝負、ねぇ……♪」

 

「プロデューサーさんを独り占め……ゴクリ……」

 

「そんな……アイドルが飲み比べだなんて……あまりよくないですよ?ねっ、レナさん、美優さ……」

 

「元勝負師として、その言葉は聞き捨てならないわね♪よし、その話、ノったわ!!」

 

「……わ、私もっ……挑戦……してみたいですっ……!」

 

「ええっ!?」

 

「決まりねっ♪うふっ……♡それじゃあ、さっそく……「アブナイ」飲み比べ、開始よっ♡」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「……ううっ〜……」

 

「ふぅ、夜はすっかり冷えますね。お酒を飲んだから少しは暖かいですけど」

 

「そうね♪と〜っても楽しい女子会兼飲み会だったわ♡」

 

「そうですね。ところで……あの……礼さんは大丈夫なんですか?二人と同じぐらい飲んでましたけど……」

 

「えぇ♪私は大丈夫よ?飲んでも飲まれるな。お酒好きの基本だもの♪ねっ、美優ちゃん♪」

 

「……あうっ〜……プロデューサーさんっ……」

 

「ははっ……美優さんってば、結構飲んでましたしね……。そこまで無理をしなくてもよかったのに……」

 

「もうっ、なに他人事みたいに言ってるのよ。だいたい、プロデューサーくんのせいなのよ?」

 

「あまり飲み慣れてない美優ちゃんが、あんなにムキになって飲んで……もうおわかりよね?」

 

「えっ、俺ですか……?あの…………ご、ごめんなさい……?」

 

「ふぅ……相変わらずね……。本当、罪作りな子ね……キミは……まあいいわ」

 

「……私たち、オトナのアイドルをここまで弄んだ「セキニン」を……取ってもらうわよっ……♡」

 

ムニュッ……♡

 

「……っ!?//」

 

「さぁ〜て♪そろそろ解散しましょうか♪今回は、私たちは負けちゃったわけだしキミを譲ってあげるわ♡」

 

「ちょっ……れ、礼さん!?今のは一体……!?//」

 

「しらな〜いっ♡とりあえず、プロデューサーくんはその「お姫様」を無事に家までお守りしてあげて?」

 

「お姫様って……あの〜……レナさん?大丈夫ですか〜?」

 

「……大丈夫よ〜。これでもディーラー時代は、お酒にもギャンブルにも強い女だって有名だったんだからぁ〜……」

 

「レナさんまでこんな状態に……ふぅ。お二人ともアイドルなんですから、程々にお願いしますよ……?」

 

「うふふ……♡それじゃっ、私たちはそろそろ行くわ♪今日は楽しい時間をありがとうね♪レナちゃん♪プロデューサーくんっ♪」

 

「いえ。こちらこそ今日はありがとうございました。では、俺たちもそろそろ行きましょうか、レナさん」

 

「……はぁ〜い……」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「それにしても、まさかオフの日にレナさんたちと会えるなんて、奇遇でしたね」

 

「……そうねぇ〜。私のミラクルテレパシーが通じたのね〜……」

 

「えっ……?テレパシー?」

 

「裕子ちゃんから教えてもらったのよ〜。「想いが共鳴すると」ミラクルが起きるって超能力を〜……」

 

「裕子からって……アイツの言うことは間に受けない方がいいですよ?あくまで「そういうキャラ」なんですから」

 

「むうっ……何よ〜。キミと私は、心が通じ合ってないって言うの〜……?」

 

「いや……そうではないですけど……」

 

「……だいたい、誰のせいでこうなったと思ってるのよ〜……おバカっ……」

 

「本当……誰とでも相性が合うなんて……「ジョーカー」みたいな人なんだからっ……困っちゃうっ……」

 

「???」

 

「とにかく〜!飲み比べで私が勝利したんだし、今夜はキミを独占しちゃうんだから〜!覚悟してよね〜!」

 

「あはは……でも、お酒も程々にしてくださいね?レナさんは魅力的な、大人のお姉さんなんですから」

 

「……ふぅん……?例えば……どこらへんが魅力的だって思ってくれてるの……?」

 

「どこらへんって……いや、それは……」

 

「…………」

 

タプッ……♡

 

「……と、とにかく!レナさんも女性なんですから!色々と気をつけてくださいっ!いいですね!//」

 

「……うふふ……は〜いっ♡わかったわよ〜♡」

 

「えっ……?れ、レナさんっ……?」

 

「プロデューサーさんの愛の力で、すっかり酔いから冷めちゃったわ♡どうだった?私の演技っ♡」

 

「演技って…………本当に大丈夫なんですか……?」

 

「もちろんよ♪それに「トリック」を使ったから、むしろ程よいほろ酔い気分になってるわ♡」

 

「……それに、私……まだ飲み足りないのっ♡だから、これからウチの部屋で二次会を開きましょうっ♡」

 

「この前ね、いいワインを買えたのよ♪それに「いいお酒の肴」も用意出来たし……ねっ……♡//」

 

「いいワイン……いい酒の肴……あれ……?何だかこの状況、前にもどこかで……」

 

「安心して♪今回は私たちで二人っきりよ♡だ・か・ら……♡た〜っぷりと、楽しみましょうね……♡」

 

「っ……二人っきり……」

 

「……んふっ……♡だからぁ、前回とは違ってキミが「期待」してることも……出来ちゃうかもよ……F♡」

 

「なっ……!何ですかそれ!ていうか、その……あ、当たってますってっ!!」

 

「あらっ……ごめんなさいっ♡プロデューサーさんといると安心しちゃってつい……♡」

 

「全く……!//」

 

「まあ、とりあえず、私の家まで守ってよっ♡ねっ、おねが〜いっ♡王子様っ♡」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「……」

 

カチャッ

 

「はい♪お待たせ♪プロデューサーさんは、氷はロックで大丈夫だったかしら?」

 

「あっ……はい、ありがとうございます……」

 

「うん?どうしたのかしら?そんなにソワソワしちゃって」

 

「いえ、その……本当によかったのかなって思って……。こんな夜遅いのにお邪魔をしてしまって……」

 

「うふっ……気にしないでいいわよ♪せっかく送ってくれたんだし、今夜は水入らずで二人っきりで二次会よっ♪」

 

「……それにぃ……今日の酒の肴は、プロデューサーさんじゃなくてっ……わ・た・し・なんだからっ……♡」

 

「あ、あれ……?レナさん……もしかして……まだ酔ってます……?」

 

「ううん。ぜんぜ〜んっ♡むしろ、これからがお楽しみじゃない♡ね〜っ♡「プロデューサーくんっ」♡」

 

「あ、あはは……さっき、あれだけ美優さんや礼さんと飲み比べをしたのに……本当に、大丈夫ですか……?」

 

「もちろん♪だって私、あの時は後半から烏龍茶しか飲んでないもんっ♡」

 

「……えっ……烏龍茶……?」

 

「そうよ♪美優さんと礼さんが酔い始めた時に、私のボトルだけこっそり烏龍茶に変えたのよっ♪」

 

「それで実質、数杯しか飲み比べで飲んでないわ♪どう?確実に勝てる+酔いも覚ませられる、高等テクニックでしょっ♡」

 

「だから、あれだけ飲んだのにそんな元気で…………でも、それっていいんですか……?色々な意味で……」

 

「相手を上手く欺くのも、ラスベガスで培ってきた私のディーラーとしてのスキルよっ♪それにね……」

 

ムギュッ……♡

 

「……私一人だけで……プロデューサーくんを、独り占めしたかったんだもんっ……♡//」

 

「っ……!?」

 

「ねぇ……せっかく二人っきりなんだしっ……しちゃおっか……♡」

 

「えっと……な、何をです……?//」

 

「んもう、いぢわる♡お年頃の男女が、部屋で二人っきりですることって言ったら……決まってるじゃない……♡」

 

「私としましょう……♡オ・ト・ナの遊びをっ……♡//」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「……うん。次はキミの番ね」

 

「えぇ、では引きますね。それにしてもまさか、ポーカーとは……」

 

「久しぶりにしてみたくなっちゃってね♪元ディーラーの血が騒いじゃったっていうか♪」

 

「ははっ、確かに。レナさんはアイドルになる前は、ディーラーを生業にしてたんですものね」

 

「……んふふ……♡ところで……さっきはお顔を真っ赤にしてたけど……一体「ナニ」かと思ったのかしら……?♡」

 

「えっ……?い、いえ!俺も、大人の遊びと言えばトランプだと思っていましたよ!えぇ!//」

 

「えぇ〜?本当にぃ〜?今は、私たち二人っきりなんだしぃ……スナオになってもいいのよ……♡//」

 

「なっ……!へ、変なことを言わないでください!何回も言いますけど、レナさんはアイドルなんですからね!?//」

 

「うふふ♡ごめんなさ〜い♡でも、今回はチップの代わりに負けた方は、相手のお願い事を一つ聞くってルールだから、そこはよろしくね♡」

 

「……あはは……お手柔らかにお願いします……。じゃあ、次は俺の番ですね」

 

(……ん?おっ……!この組み合わせは……フルハウスだっ……!これはもうイケるぞっ!)

 

「……」

 

(何だかレナさん……神妙な顔をしてるな……。あまり手札が良くなかったのか……?)

 

(まあ、でも……悪いですねレナさん。この勝負、俺の勝ちですよっ!)

 

「俺はストップです!では、俺の手札を公開しますねっ!」

 

「……えっ……!?フルハウス……!?」

 

「ははっ、揃ってしまいました。ではレナさん、どうします?」

 

「ううっ……仕方ないわね……。じゃあ、私もこの手札で勝負をするわ……行くわね……」

 

「そうですか。では、いざ尋常に勝負です!レナさ…………んんっ……!?」

 

チュッ……♡

 

「んんっ……!んっ……!?//」

 

「……んふっ……♡」

 

「「……//」」

 

「……ぷはっ……れ、レナさんっ……!?//」

 

「……ふふっ……♡「ロイヤルストレートフラッシュ」……♡」

 

「えっ…………なっ……!!」

 

「ポーカーでもっとも強い役がロイヤルストレートフラッシュなのは知ってるわよね……?だから、私の勝ちっ……♡」

 

「くっ……!ま、まさか、フルハウスで負けるとはっ……!でも……今のは、その……一体っ……//」

 

「言ったじゃない♡チップの代わりに、負けた方は一つ相手のお願い事を聞くって♡」

 

「……だからぁ……キミの心に「ロイヤルストレートフラッシュ」をお見舞いしたかったのっ♡なんて……//」

 

「レナさん……」

 

「……ねぇ……今度は、プロデューサーくんの願いを叶えてあげるわよ……♡」

 

「えっ、俺の……?ていうか、レナさん!?何でいつの間にか、そんなに衣服がはだけてるんですかっ!?」

 

「んもう……さっきは、美優さんばかりに構って……私、すごい妬いちゃってたのよ?」

 

「だからぁ……今からキミが考えてることを……お姉さんがぁ……叶えてあ・げ・る・っ……♡」

 

タプンッ……♡

 

「っ……!あっ、あの……レナさん?もしかして…………酔ってます……?」

 

「えぇ♡今の私はキミに酔ってるわっ♡こんなにも、オトナのお姉さんを酔わしたんだからぁ……」

 

「……「セキニン」を……取ってもらうわよっ……♡」

 

「ちょっ……れ、レナさんっ……これ以上は、本当にっ……!//」

 

「んふっ……♡今夜はぁ……お姉さんと楽しいことを、た〜くさんしましょうねっ……♡」

 

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……。

 

「……ん……」

 

「あっ、プロデューサーくん、おはよう。ようやく起きたわね」

 

「うん……?レナ……さんっ……?ここは……」

 

「ここは私の部屋よ。昨日、私たちだけで二次会をしたじゃない」

 

「二次会…………あっ、そういえば……二人でポーカーをしたあとから、何だか記憶が曖昧で……」

 

「うふっ……♡んもう、プロデューサーくんってばスゴかったのよ……?」

 

「普段は優しいお兄さんなのに、あの時だけは……ものすごい「オオカミ男」でっ……♡やっぱりキミも男の子なのねっ……♡//」

 

「オオカミ……って……ええっ!?お、俺……あれからレナさんに、一体何を……!」

 

「さぁ〜?……ふふっ……♡これがいわゆる「朝チュン」って言うものなのかしらっ……♡」

 

「へ、変なことを言わないでください!俺、本当に何もしてないですよねっ!?」

 

「しっりませ〜んっ♡でもぉ……部屋で酔ったまま朝を迎えたのは、事実よね……♡//」

 

「っ……!えっと……と、とりあえず、その……まずは、乱れた衣服を整えてもらえませんか?……色々と刺激が強すぎるので……//」

 

「……えっ……?あんっ、ごめんなさい♡じゃあ、せっかくだし何か朝食でも用意するわ♪少し、待っててね♡」

 

「えっ、いや……そんな、悪いですよ。ここで一晩を過ごさせてもらった上に、朝食もだなんて……」

 

「いいのいいの♪それじゃあ、私の部屋で待っててね♡オオカミくんっ♡」

 

カチャッ

 

「……俺……本当に、レナさんに何もしてないよな……?」

 

「…………」

 

……ふふっ……♡「ロイヤルストレートフラッシュ」……♡

 

「っ……!あ、あれはきっと気のせいだ!うんっ!そうに決まってる!俺も少し酔ってたからな!あ、あはは……!//」

 

「……うふふ……♡」

 

 

------------------------------------------------

 

 

「プロデューサーくん、荷物は大丈夫かしら?」

 

「えぇ、大丈夫です。しっかりと持ちました」

 

「よかった♪じゃあ、戸締りをするわね。早速事務所に向かいましょう」

 

「はい。でも、すみませんね。泊めてもらったうえに、朝食までいただいちゃって」

 

「うふふ、気にしないで♪むしろ、楽しい時間を過ごさせてもらったお礼よ♡」

 

「楽しい時間……っ……!」

 

「……うふっ……♡私たち「しちゃった」わねっ……♡//」

 

「「……//」」

 

「……そんなに顔を真っ赤にしてくれたってことは、あの時のことを……覚えててくれてたのね……♡//」

 

「いえ、その……まさかあの状況で、俺が負けるとは思っていませんでしたし……あまりにも唐突だったので……//」

 

「ふふっ……ねっ?ギャンブルの世界って奥深いでしょ?あの世界に「100%」はありえないの」

 

「最後の最後で、ミラクルが起きることが当たり前の世界なのよ♪いい意味でも悪い意味でもね♡」

 

(本当……不思議な人……。一緒に居れば居るほど……つい、素の自分が出てしまって……)

 

(勝負師だった頃は、絶対に「ポーカーフェイス」を崩すことなんてありえなかったのに……)

 

(……うふふ……私もまだまだ「乙女」なのねっ……♡こんな気持ち、初めてかもっ♡)

 

「あの、初めてクルーザーであった時にあなたは言ってくれたわよね?「人生を賭ける」って」

 

「目指すからにはトップになりたいの。アイドルとしても、そして女性としてもね。だから……えいっ♡」

 

「うわっ……!?えっ……?と、トランプ……?」

 

「あなたの「ハートのエース」も奪ってみせるわ♡こんな感じにねっ♡」

 

「いつの間に……俺のスーツの胸ポケットに、ハートのエースが……」

 

「賭けに負けた時にもう腹を括ったの。「人生を」あなたに賭けるって。勝負師のカンを侮らないで欲しいわ」

 

「レナさん…………俺……んっ……!?」

 

「これ以上はまだダ〜メ♡お姉さんとの約束だぞっ♡指でお口をチャックしちゃうんだからっ♡」

 

「なにせ、今の私はアイドルだからね♪目の前のことを全力で楽しむ、それが私のポリシーなのっ♪」

 

「……だからこれからも……シゲキ的な毎日を一緒に過ごしましょうね♡……もう、絶対に「サレンダー」はしないんだから、覚悟してねっ♡」



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巫女シンデレラ 道明寺歌鈴

さあ成敗いたす 世の不届き者

 

あゝ道を示し 手を差し伸べて

 

人情にあつく 一閃貫く意志

 

真・変化の術 耀う舞台へ

 

いざ行かん 花吹雪

 

なれば覚悟はよいか

 

天地人、勝負あり

 

私を呼ぶのなら何処へでも参ろう

 

参上 お助けしましょう。変幻自在 技の書

 

背水 魅せてあげましょう。忍びの意地を

 

「「「……せ〜のっ!!」」」

 

「義勇!!」

 

「任侠!!」

 

「はっ、はにゃふぶき……!」

 

「おい!道明寺!!最後で噛むな!そこで噛んだら全てが台無しになるんだぞ!!」

 

「ひゃっ……!あう〜……す、すみません……」

 

「さあっ!もう一回いくぞ!!完璧にこなせるまで、何度でもやるからな!!」

 

「「「はっ、はいっ!」」」

 

------------------------------------------------

 

「「「お疲れ様でした〜」」」

 

「はぁ〜……もう三月とはいえ、まだまだ外は冷えますねぇ〜……」

 

「そうですねぇ〜。まだまだこのマフラーが手離せません〜……小学生用のサイズですけど……」

 

「みんな、今日は一日中レッスンお疲れ様。こんなに暗くなるまで頑張ってくれてありがとうな」

 

「いえいえ♪不肖、この浜口あやめ、今日も立派な忍びになるために誠心誠意、鍛錬に励みましたっ♪ニンッ♪」

 

「はいっ♪わたくし、脇山珠美もみなさんと共に稽古に精進いたしました!」

 

「ううっ〜……」

 

「ははっ、頼もしいな。ところで……歌鈴は何で、さっきからそんなに落ち込んでるんだ……?」

 

「いえ……その……肝心なところで噛んでしまって……。私ってば、またみなさんにご迷惑ばかりおかけしてしまって……」

 

「そうだったのか。まあ、気にするなって、誰にでも失敗はあるさ。次から頑張ればいいじゃないか」

 

「そうですよ!歌鈴殿!アイドル道は日々「千里の道も一歩から」の精神ですよ!ニンッ!」

 

「えぇ!皆と共に精進しましょう!歌鈴殿!私たちで、美しい花吹雪を舞らせましょうぞ!」

 

「プロデューサーさん……あやめちゃん……珠美ちゃん……は、はいっ♪ありがとうございまひゅっ!」

 

「よし、その意気だ!ライブを無事に成功させてくれよ、三人とも」

 

「「「は〜いっ♪」」」

 

「えへへ〜……♪みんなと一緒に……♪……ひゃわあっ!?」

 

「おっと」

 

「……っ……あっ……す、すみません……私ってばまた……」

 

「おぉ……剣術の燕返しみたいな素早い反応でしたね……プロデューサー殿……」

 

「まあな。「そろそろ」かと思ったんだよ。歌鈴が転ぶ頃合いかなってな」

 

「頃合い……ええ〜っ!?も、もしかして……私が転ぶのを予測してたんですかぁ〜……!?」

 

「もうずっと歌鈴と一緒にいるしな。どのタイミングでいつ転ぶかなんて、空気感でわかるようになってしまったさ」

 

「ほほう……空気を読んで行動を予測できるとは……プロデューサー殿は、なかなか慧眼でござるな!!」

 

「……あうっ〜……はっ、恥ずかしいでしゅっ……//」

 

------------------------------------------------

 

「「「お疲れ様でしたぁ〜♪」」」

 

「あぁ、ゆっくり休んでくれよ。ふぅ〜。さてと、三人とも寮に送ったし、俺は事務所に戻ってあともう一仕事をするか」

 

「日も暮れてきたし、早く終わらせて帰ろっと。……それにしても……」

 

「……歌鈴のドジっぷりは筋金入りだな……何の障害物もない平坦な道で、あんな豪快に転ぶとは……」

 

「う〜む……何か、あのドジさをアイドルとして生かせないものか…………ん……?」

 

「……はうっ〜……ど、どうしましょう〜……」

 

(……どうしたんだろ……あの女の子……何か困ってるのかな……?)

 

「せっかく頑張って貯めたのにぃ〜……救いはないのですかぁ〜……?」

 

「……あの……ねぇ君、大丈夫かい?」

 

「はうっ……!?あっ……えっと……」

 

「何か困ってたりするのかな?もしよかったら、僕に相談してくれないかな?」

 

「あぅっ……あの……私、おドジでおバカなので……大切な財布を落としてしまってぇ〜……」

 

「財布……それは大変だね。ここら辺で落としたの?」

 

「あっ、はい……多分そうです……。さっきまでは持っていましたので……」

 

「そうか。じゃあ、僕も一緒に探すね。どんな形なのかな?」

 

「ありがとうございますっ……。えっと……た、たぬきちゃん型のお財布です……」

 

「たぬきだね、わかった。じゃあ、さっそく探そうか」

 

「はっ、はいっ……ひゃんっ!?」

 

「っ……あ、危ないっ!!」

 

ギュッ

 

「……っ〜……あうぅ……す、すみませ〜んっ……私ってば、本当におドジで〜……」

 

「いやいや、気にしないで……って……」

 

(……俺……もしかして、女の子を後ろから抱きしめてる状態になってる……?)

 

(はわわっ……お、お兄さんに……抱き止められてしまいましたっ……//)

 

「「……//」」

 

「……あっ……ご、ごめんね!別に、変な意味は何もなかったんだ……うん……//」

 

「い、いえいえ!そんなっ……!こちらこそ、抱き止めていただいてっ……ありがとうございますっ……//」

 

「ううん。じゃあ、さっそく……財布探しの続きを……ん?」

 

「あの……どうかされましたか……?」

 

「ねぇ……もしかしてさ……その、君のスカートのポケットにあるのって……違うかな……?」

 

「スカート……?……ああっ!ありましたっ!そうです!この財布ですうっ……!」

 

「あ、あはは……見つかってよかったよ……。スカートのポケットに入ってたんだね……」

 

「ううっ〜……す、すみません〜……私ってば……本当におドジでぇ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「あの……本当に、なんとお礼を言ったらよいのやら……」

 

「ううん、気にしないで。君の財布、見つかってよかったよ」

 

「いえいえ……それでは申し訳ありません……。何か、お詫びをさせてください……」

 

「本当に気にしないでいいんだよ。それじゃあ、日も暮れかけてるから早く帰った方がいいよ」

 

「あっ……は、はいっ……では、私はこれで……。すみません……本当に、ありがとうございました……」

 

「うん、気をつけてね。……ふぅ、何とか一件落着だな……」

 

「それにしても、あの女の子のドジっぷり……何だか、歌鈴にそっくりだったな……」

 

「何もないところで転んだり……スカートのポッケの財布に気づかない天然っぷり……中々の逸材かもしれん……」

 

(……今思えば……不可抗力とはいえ、後ろから思いっきり初対面の女の子を抱きしめてしまったな……)

 

「……」

 

いえいえ……それでは申し訳ありません……。何か、お詫びをさせてください……。

 

……タプッ……♡

 

「っ……!お、俺は一体、ナニを考えてるんだっ!さっ!さっさと事務所に戻るか!うんっ!!」

 

「……」

 

「……あうっ……それにしても……スカートのポッケのお財布に気づかないなんて……本当、ダメだなあ……私……」

 

「でも……さっきの、あのスーツのお兄さん……初対面なのに、とても優しかったな……」

 

「お財布を一緒に探してくれたし……転んだ時に、思いっきり抱き止めてくれたりもしたし……」

 

「まるで……どこか、トレーナーさんに似てて……って……はうぅ〜……わ、私ってば何を考えてるんだろう……//」

 

「ダメですね……もっとしっかりしないと……。何せ、フクキタルさんが言ってくれたじゃないですか……」

 

「……「救いはある」って……ですから、もっとトレーナーさんにアプローチを……うんっ……!」

 

「が、頑張れっ……私っ……!えい、えい、むんっ……きゃあっ……!」

 

「はうっ〜……どうやら……私のおドジは筋金入りみたいですぅ〜……」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……。

 

「ふぅ〜……。ここら辺は、だいぶきれいになったかな〜?」

 

「……ああっ!そっちにも……って、あわわっ!?ふぅ……あやうく転んで、集めたゴミを元に戻しちゃうところだった~……」

 

「歌鈴〜、そっちの方はどうだ〜?」

 

「ひゃわっ……!?は、はいっ!!プロデューサーさんっ!こっちは大丈夫でひゅっ!!」

 

「よかった。にしても、偉いな歌鈴は。朝早くから近所の清掃活動だなんて」

 

「いえいえ♪これも美化委員としての活動ですので♪それにしても……」

 

「はっ!ほっ!さぁっ!伊賀流のゴミ拾いの術をとくとご覧あれ〜!ニンッ!」

 

「ふふ〜ん♪私も負けませんよ!あやめ殿!道場や道場周りの清掃で、こういうことは鍛えられてますので!」

 

「……すみません……わざわざオフの日なのに、あやめちゃんや珠美ちゃん、そしてプロデューサーさんにも手伝ってもらってしまって……」

 

「何、気にするな。ゴミ拾いはとても気持ちがいいしな。それに、二人も「可惜夜月」で活動が出来るって喜んでたぞ」

 

「それに、いつも言ってるだろ?歌鈴は俺の大切なアイドルだって。だからもっと、俺を頼ってくれよ」

 

「……プロデューサーさん……はいっ♪ありがとうございますっ♪……えへへ……大切っ……♡」

 

「おっと、歌鈴、危ないぞ」

 

「えっ……?あっ……こ、これはっ……!」

 

「バナナの皮だな、歌鈴の天敵だ。間一髪で拾えてよかったよ」

 

「はうっ……あ、ありがとうございますっ……。でも、何で……いつもいいタイミングで、バナナの皮が私の目の前にっ……」

 

「……あら〜♪歌鈴ちゃんじゃない♪おはよう〜♪」

 

「えっ……?あっ、おはようございましゅっ……!」

 

「いつも、近所のお掃除をありがとうね〜♪綺麗にしてもらって助かってるのよ〜♪」

 

「いえいえ♪とんでもないです〜♪美化委員として、活動をしているだけですので♪」

 

「ところで……歌鈴ちゃんの隣にいるお兄さんは……「彼氏さん」かしら……♪」

 

「ひゃわっ!?えっ……か、彼氏ですかっ……!?//」

 

「あ、あはは……私……一応、こういうものです」

 

「……ん?名刺……?……え〜っと……芸能プロダクション……」

 

「はい。この子のプロデューサーをさせてもらっています。いつも歌鈴がお世話になっています」

 

「あらっ……!そうだったのね!あなたが噂のお兄さんだったのね!」

 

「えっ……噂、ですか……?」

 

「……っ!」

 

「そうよ〜♪歌鈴ちゃんが「いつも私に優しくしてくれる、素敵なお兄さん」がいるって……」

 

「……わぁっ〜!わぁっ〜!と、突然、何を言ってるんですかぁ〜っ!!//」

 

「うふふ……♪ねぇねぇ、歌鈴ちゃん。ちょっと……耳、いいかしら……?」

 

「ふぇっ……?はい、何でしょう?」

 

「……誠実で、優しそうなお兄さんじゃない……♪だから「逃しちゃ」ダメよ♪おばさん、応援してるからね♪」

 

「ぴえっ……!?//」

 

「じゃあ、私はこれで失礼するわ♪お兄さんも、これからも歌鈴ちゃんのことをよろしくお願いします♪」

 

「えっ、えぇ……わかりました……?」

 

「……はぅっ〜……//」

 

「……あっ……ねぇねぇ……珠美殿、珠美殿っ♪あのお二人を見てくださいよっ……♪」

 

「えっ、お二人……?おぉ〜……これは中々、いい雰囲気になってますねぇ〜……」

 

「……珠美殿……」

 

「……皆まで言わなくてもわかっていますよ……あやめ殿……♪その確かなご意志……しかと伝わりましたっ……♪」

 

「「……うんっ♪」」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ〜……まあ、こんなもんか……」

 

「世を偲び、陰から世を救う。忍びとしての任務をきっちりと果たせてよかったですっ♪」

 

「私も「小さいのに偉いね〜」って、近所の人に頭を撫でてもらいましたっ♪……多少、複雑ですけど……」

 

「あの〜、みなさん本当にありがとうございます……わざわざ、貴重なオフの日に手伝ってもらって……」

 

「何を水臭いことを言ってるんですか、歌鈴殿!私たち、同じアイドル道を歩む仲間ではござらぬか♪」

 

「そうですよっ!歌鈴殿と私たちは同じユニットの「可惜夜月」の一蓮托生の仲じゃないですかっ♪」

 

「あやめちゃん……珠美ちゃん……うぅっ〜……何だか私……油断してたら泣いてしまいそうですっ……」

 

「ははっ、三人とも仲良しで何よりだ。これからもよろしく頼むぞ!」

 

「「「は〜いっ♪」」」

 

「それじゃあ………どうする?せっかくだし、ゴミ出しをしたあとみんなで何か食べにいくか?」

 

「お気持ち感謝いたしますぞ、プロデューサー殿。ですが……すみません。私たち、このあと少し用事があるのです」

 

「えぇ。せっかくのお誘いは大変嬉しいのですが……これから私たちは用事がありますので……」

 

「そうなのか。なら仕方がないな。じゃあ、歌鈴はどうする?」

 

「ええっ……!?えっと……わっ、私はその……えっとっ……」

 

「……ぷ、プロデューサーさんがよろしければ、その……ご一緒してもいいでしゅか……?//」

 

「おっ、決まりだな。じゃあ、あやめ、珠美。今度のレッスンでまた会おうな。今日はありがとう」

 

「いえいえ♪では、また会いましょうぞっ♪……ところで……歌鈴殿っ……♪」

 

「うん?どうしたの……?あやめちゃん。珠美ちゃん」

 

「……せっかくの二人っきりなんですし……これはもう「チャンス」でござるぞっ……♪」

 

「……歌鈴殿の恋の行方を……不肖、この脇山珠美、影ながらしかと最後まで見届けさせていただきますぞ……♡」

 

「チャンス……恋……えっ、えぇっ〜!?//」

 

「どうしたんだ……?三人で何かを話して……」

 

「いえいえ♪気にしないでくださいっ♪では、私たちはそろそろ失礼いたしますね!ニンッ!」

 

「私もこれで失礼しますっ♪……お二人に幸福の御加護があることを祈っていますよっ♪ではっ♪」

 

「あ、あぁ……そうか……。じゃあ、またな」

 

「…………はうっ〜……//」

 

「えっと……歌鈴、とりあえず……向かってみるか?」

 

「ひゃいっ……!?あっ、は、はいっ……!不束者ですが……どど、どうぞ、よろしくお願いしまひゅっ……!//」

 

「ははっ、何だよそれ。まあ、よろしくな」

 

「……あの……ところで……お食事もいいのですが、プロデューサーさんと行ってみたいところが一つありまして……いいでしょうか……?」

 

「おっ、行きたいところがあるのか?うん、いいぞ。行ってみようか」

 

「わ〜っ……♪は、はいっ♪ありがとうございまひゅっ!では、善は急げですっ!さっそく……きゃあんっ!」

 

「……っと……おいおい、早く行きたいのはわかるけど少し落ち着けって」

 

「あっ……えへへ〜……すみません……つい、ワクワクしちゃって……♡//」

 

「ふぅ……こう、歌鈴を抱き止めてると「あの時の子」を思い出しちゃうな」

 

「えっ……?あの時の子……ですか……?」

 

「いや、気にしないでくれ。じゃ、改めて向かおうか」

 

「……」

 

「……ふふふ……珠美殿……お主も悪よのう……♪」

 

「いえいえ……あやめ殿ほどではっ……♪」

 

「まさか、目配せをしただけで意思疎通が出来るとは……流石、私たちは同じ志を持つ同士ですねっ♪」

 

「えぇ♪あやめ殿のご意志、しかと受け止めさせてもらいましたよ♪むしろ……」

 

「……あんなに「甘酸っぱい空気」だったら……読まざるを得ないじゃないですかっ……♪」

 

「……そうですねっ♪では、珠美殿……せっかくの機会ですし、どこかで一服しませぬか……?」

 

「えぇ♪大賛成ですっ♪あやめ殿♪私たちは私たちで、甘酸っぱいものを堪能いたしましょう♪」

 

「決まりですね♪では、さっそく参りましょうぞ♪せ〜のっ♪私たちはっ!」

 

「「三人で、可惜夜月〜♪イェ〜イ♪」」

 

パチンッ♪

 

------------------------------------------------

 

「……じゃ〜ん♪はいっ♪つきましたぁ〜♪」

 

「えっと……ここは……神社か?」

 

「えぇ♪プロデューサーさんと一緒に、願掛けをしに行ってみたかったんですっ♪」

 

「……あれ……?でも、前に別の神社で「可惜夜月」と俺で、結成時に願掛けをしに行かなかったか?」

 

「はわわっ……!い、いえっ!その………それは……そうなんですけどぉ〜……」

 

「ぷ、プロデューサーさんと一緒に、いつまでも一緒にアイドル活動していきたいと思いましたので……」

 

「……それで、改めて二人で願掛けをしたいと思ったんですっ……♡//」

 

「なるほど……まあ、歌鈴と一緒に居たいは俺も同じ気持ちだけど……」

 

「……うふふっ……そうですか……私、嬉しいですっ♪では、さっそく神社にお参りの方を……」

 

「……うんぎゃら〜……もんぎゃら〜……かしこみ〜〜……まきこみ〜〜……」

 

「……「キエェエエエイ!!!!・ひょええええ〜〜!!!!」」

 

「「うわっ!?・ひゃあっ!?」」

 

「……おおっ!出ました吉兆!センキューシラオキっ!方位は東!見えます暁光っ!」

 

「仲間と切磋琢磨をし、共にお互いに高めあって勝負に挑めば大大吉でしょう〜〜〜!!!!」

 

「わぁ〜……救いはあるのですね〜……♪」

 

「……なっ、何でしょうっ……何やらあそこで、女の子二人が何かしてますね……」

 

「あ、あぁ……きっとあの子たちも、神社へ何かの願掛けを……って……えっ……?」

 

「……ん?……っ……!?あっ、あの時のスーツのお兄さんっ……!?」

 

「……もしかして、君はあの時の……や、やぁ……偶然だね……こんなところで……」

 

「……おや?ドトウさん。この方たちはお知り合いなんですか?」

 

「あっ……はいっ……。前に、このお兄さんに助けてもらったことがありまして……」

 

「なんとっ!これもきっと、シラオキ様が紡いでくださった何かのご縁ですね!サンキューシラオキっ!!」

 

「……えっと……改めて、初めまして……で、いいのかな……?俺たち、一応こういうものなんだけど……」

 

「あっ、ご丁寧にどうも……って、プロダクション……?」

 

「うん。僕ね、この子、つまりアイドルのプロデューサーをしてるんだ。ほら、歌鈴」

 

「あっ……ひ、ひゃいっ!私っ、道明寺歌鈴と言いますっ!アイドルをさせてもらっています!」

 

「……ふあ〜っ……お、お兄さんって……アイドルのプロデューサーさんだったんですね……びっくりです……」

 

「おぉ〜っ……!まさかアイドルって、歌って踊るというあの……」

 

「まあ、そんなところかな。よかったら少しでも、この子の名前を覚えてくれると嬉しいな」

 

「えぇ!是非、覚えさせていただきます!それでは、今度は私たちも自己紹介させていただきますねっ!」

 

「私はマチカネフクキタルと言いますっ!稚拙ながら、占い師をさせていただいていますっ!はいっ!ドトウさんっ!」

 

「あっ、はい……私……メイショウドトウと言いますぅ……。フクキタルさんの、アシスタントをさせていただいてますぅ……」

 

「フクキタルちゃんとドトウちゃんって言うんだね、よろしく」

 

「よ、よろしくお願いしまひゅっ!フクキタルさんっ!ドトウさんっ!」

 

「はいっ♪お願いしますねっ♪歌鈴さん♪歌鈴さんのプロデューサーさんっ♪さて!これもシラオキ様が紡いでくださった、何かのご縁なはずですっ!」

 

「もしよろしかったら、私たちの占いの館に来てみませんかっ!?」

 

「えっ……館……?」

 

「はい♪私たち、スピリチュアルな占いの館をやってるんです♪ねっ♪ドトウさんっ♪」

 

「そ、そうですね……。よければ、お越しいただけたら……幸いです……」

 

「う〜ん……俺はいいけど……歌鈴はどうする?」

 

「あっ、そうですねっ♪是非、お邪魔してもいいですか?フクキタルさんっ♪ドトウさんっ♪」

 

「おおっ!決まりですね!では、私たちと共に、館に参りましょう!せ〜のっ!開運ダ〜〜〜ッシュ!!」

 

「ああっ……ふ、フクキタルさ〜ん……待ってくださ〜い……」

 

「……」

 

「……何だか、随分と愉快な子たちだな……」

 

「え、えぇ……そうですねぇ……」

 

 

------------------------------------------------

 

「ささっ♪では、椅子におかけくださいっ♪」

 

「うん、失礼するね」

 

「では、改めてようこそ♪私たちの占いの館へっ♪今回、このマチカネフクキタルがお二人を占わさせていただきますねっ♪」

 

「はうっ……!は、はいっ!フクキタルさんっ!よろしくお願いしまひゅっ!」

 

「水晶玉を通して……シラオキ様は、皆平等に見てくださいますので……ご安心くださいね……」

 

「えっと……さっきから聞きたかったんだけど……そのシラオキ様というのは一体……?」

 

「はいっ!よくぞ聞いてくださいましたっ!シラオキ様は、と〜ってもありがたい神様なのですっ!」

 

「時折、私の夢の中に現れてお告げをくださって、そのお告げがとてもよく当たるんですよ♪」

 

「ですので、そのお告げを世間のみなさんの力になればと思い、この占いの館を立ち上げたんですっ!」

 

「なるほど……初めて聞く名前だけど、そんなにありがたい神様なんだね」

 

「はっ、はい……シラオキ様は救いをくださる……とても優しくて素敵な神様なんですぅ……♪」

 

「今日まで健康かつ健やかに過ごせたのも、今朝、私の入れたお茶に茶柱が立ったのも、今こうしてお二人と出会えたのも」

 

「みんな、み〜んなシラオキ様のおかげなのです!センキューシラオキ!ハッピーシラオキっ!!」

 

「はわわ……それはすごいですねぇ〜……。お祈りをしたら、少しは私のおドジが治るかなぁ〜……?」

 

「っ……お、おドジっ……!……あのっ……道明寺さんっ……!」

 

「はっ、はいっ!何でしょうか……その……メイショウさん……?」

 

「ドトウで大丈夫ですよ……。ちなみに今「おドジ」で悩んでるっておっしゃいましたか……?」

 

「えっ、えぇ……。私、いつもおドジで周りに迷惑をかけてばかりで……それでちょうど、悩んでいたんです……」

 

「はわあ〜……♪お、同じ仲間がいてよかったですぅ〜……♪道明寺さんっ……握手をしていただけませんか……!?」

 

「あの……私も歌鈴で大丈夫ですよ。……ところで……もしかしてドトウさんも「おドジ」で悩まれているんですか……?」

 

「そうなんですぅ〜……。よく抜けてるって言われたり、私のおドジで周りの方々に迷惑をかけてしまって……ずっと悩んでたんですっ〜……」

 

「ドトウさん……はぁ〜っ……同じ悩みを持つ同士がいて嬉しいですっ〜♪是非、握手をさせてくださいっ!」

 

「あ、あはは……二人とも、いろんな意味で共通点があったんだね。仲良しになれそうじゃないか……」

 

(……その「おドジ」で、俺にとって役得なことが起きただなんて口が裂けても言えないな……)

 

「あははっ♪何だか私たち、初めて出会った気がしませんね♪これもシラオキ様が紡いでくださった縁に違いありません!」

 

「ではっ!さっそく、素敵な出会いに感謝をしてこの水晶玉でお二人を占わさせていただきますねっ♪」

 

「ふんにゃか〜……はんにゃか〜……ほんにゃか〜……」

 

------------------------------------------------

 

「…………」

 

「……どっ、どうですかぁ〜……?フクキタルさぁ〜ん……?」

 

「……むむむ〜ん……はっ……見えましたっ!!……でも……うぐっ……!」

 

「はわっ……どっ、どうしたんですかっ!?」

 

「……あの……お二人とも……発表しても大丈夫ですか……?」

 

「あうっ……そんな神妙な顔ってことは……もしかして……何かよからぬことが……?」

 

「少し聞くのは怖いけど……お願い出来るかな……?フクキタルちゃん……」

 

「わかりました……。これはずばりですね…………水晶玉を通して見えてきたものはっ……!」

 

「……お二人の……「前途多難」な未来が見えてきましたっ……!」

 

「ええ〜っ!?わ、私とプロデューサーさんの未来は……前途多難なんですかぁ〜!?」

 

「はい……。あまり大きな声では言えないのですが……これからも色々な試練が待ち構えているでしょう……」

 

「仕事……恋愛……人生……その他にも……決して、平坦な道ではないとシラオキ様はおっしゃっています」

 

「くっ……!そ、そうか……。まあでも、神様が言うんだから間違いなさそうだな……」

 

「あうっ〜……救いはないのですかぁ〜……?」

 

「……ですが!ここで一つ、状況を打破するラッキーアイテムがあるともおっしゃっています!」

 

「えっ……?ラッキーアイテム……?」

 

「それは、つまり……「バナナの皮」ですっ!!」

 

「「えっ……?」」

 

「あうっ……ばっ、バナナの皮って……私の……天敵ですぅ〜……」

 

「あの……えっと、バナナの皮ってあのバナナのだよね……?」

 

「はいっ♪「バナナの皮を信じなさい。さすれば道は開かれる」と、シラオキ様がおっしゃっていました!」

 

「ううっ……ちょっと怖いですけど〜……でも、神様がそうおっしゃってるんですからね!私、信じさせていただきますっ!」

 

「……そうだな。それが歌鈴と俺の人生を好転してくれるって言ってくれてるんだもんな。俺も信じるよ」

 

「うふふっ……♪お二人に、シラオキ様の開運の御加護がありますようにっ♪では、占いは以上です♪お付き合いいただき、ありがとうございましたっ♪」

 

「あっ、ありがとうございましたっ……お二人に、シラオキ様の救いの手がありますようにぃ〜……」

 

------------------------------------------------

 

「さあっ♪お空も夕焼けに染まってきていますし、お気をつけて帰ってくださいね♪」

 

「うん、占ってくれてありがとう。フクキタルちゃんもドトウちゃんも気をつけてね。それじゃ、歌鈴。そろそろ行こうか」

 

「そっ、そうですね♪では、私たちはこれで失礼しますねっ♪占いをしていただき、ありがとうございました♪」

 

「いえいえ♪これもシラオキ様が紡いでくださった縁です!きっとまたどこかお会いすることになるでしょう!ではっ♪行きましょう♪ドトウさんっ♪」

 

「はいっ……♪では、これで失礼させていただきますね……またお会いしましょう……♪」

 

「また会おうね、それじゃ。……ふぅ……よかったな歌鈴、新しいお友達が出来て」

 

「はいっ♪少し予想外でしたが、嬉しかったです♪きっと、またどこかで会えますよね♪」

 

「あぁ。何せ、神様が紡いでくださった縁だそうだからな。……それにしても……ごめんな……」

 

「えっ?どうして謝るんですか?」

 

「いや、神社にお参りしに行く予定だったのに、占ってもらおうだなんて勝手に言ってしまって……」

 

「あっ、いえいえ、そんな。気にしないでください♪こうして、新しいお友達も出来ましたし、神様の声も聞けましたので♪」

 

「……それに……プロデューサーさんと一緒なら、そのっ……ぜっ「前途多難」もいいかな……なんて思っちゃったり……♡」

 

「ん……?前途多難……?」

 

「さっき、フクキタルさんが占ってくれたじゃないですか♪私たちの人生は「前途多難」と」

 

「ですので……多難ってことは、それだけプロデューサーさんとずっと縁があるんだなって思ったんですっ……♪」

 

「……そ、そうか……歌鈴はプラス思考だな〜……俺は正直、少し落ち込んだけど……」

 

「うふふ……♪あの……唐突ですが、プロデューサーさんは……「運命」を信じていますか……?」

 

「運命……?」

 

「はいっ♪プロデューサーさんも知っての通り、私の実家は代々続く神社なんですっ♪」

 

「そこで、巫女をしてたおばあちゃんが言ってたんです。「出会った人たちとは何かしらの「因果」がある」と」

 

「つまり今、一緒にいる人たちは前世や遠い過去で何かしらの縁があって、再び現世で一緒にいるそうなんです」

 

「……だから、そのっ……プロデューサーさんとは……前世でも、大切な関係だったのかなあ〜って思いまして……えへへっ……♡//」

 

「おっ、中々ロマンティックじゃないか。でも、そうかもな。俺と歌鈴は前世でも縁があって、だからこうして一緒にいるのかもしれないな」

 

「……えっと……プロデューサーさんにとって……わっ、私はっ……たっ……「大切な人」……でしゅか……?//」

 

「そんなの聞くまでもないだろ。もちろんだ。歌鈴は俺の大切なアイドルであり「妹」みたいな存在だ」

 

「……妹……あっ、あのおっ!!私っ、プロデューサーさんのことがっ!……す、すっ……ううっ〜……」

 

「?……うわっ!?」

 

「わわっ!?だ、大丈夫ですかあっ!?」

 

「痛てて……何だ……?……って……これって、バナナの皮……?」

 

「はわっ!何でこんなところにバナナの皮がっ……」

 

「……ふぅ……ダメだな。歌鈴にあれだけ偉そうに言っておいて、まさか今度は俺がバナナの皮で転ぶとはな」

 

「い、いえいえ!とっ、とりあえずっ!私の手に捕まってくだしゃいっ!」

 

「あぁ、悪いな。それじゃあ、さっそく……」

 

カァーッ、カアーッ……ポトッ……。

 

「……ん?カラスが今、何か……って……きゃあんっ!?」

 

「なっ……!?か、歌鈴……んんっ!?」

 

チュッ……♡

 

「……っ〜!?…………ぷあっ……はっ、はわわっ……!ごっ、ごめ、ごめんなしゃいっ!?//」

 

「……いや、その……気にしないでくれ……。まさか、カラスがバナナの皮を追加で落としてくるとはな……あはは……」

 

「「……//」」

 

「……はうぅ〜……す、すみませ〜んっ!!また私のおドジでご迷惑をおかけしてえええええっ!!//」

 

「ちょっ……歌鈴っ!?どこに行くんだ!?」

 

「す〜み〜ま〜せ〜んっ!!今はプロデューサーさんに合わせる顔がないので、今日は失礼させていただきましゅう〜っ!!//」

 

「……おい!歌鈴っ!待てって!…………行っちゃった……歌鈴って、意外と足が速いんだな…………じゃなくて!」

 

「俺、今……歌鈴と……それにしても……何でこんなところにも、バナナの皮が……あれ……待てよ?」

 

「バナナの皮……バナナの皮…………っ……!」

 

……ですが!ここで一つ、状況を打破するラッキーアイテムがあるともおっしゃっています!

 

えっ……?ラッキーアイテム……?

 

それは、つまり……「バナナの皮」ですっ!!

 

「もしかして……あのシラオキ様のお告げ……。ははは……すごいな……色々な意味で……」

 

「とりあえず、まずはこの二つのバナナの皮をゴミ捨て場に捨てて、俺も一旦事務所に帰りますかね……」

 

「……その前に……しばらく夜風に当たって……顔の火照りを冷まさないといけないな……//」

 

------------------------------------------------

 

「……おおっ!綺麗な流れ星ですね!」

 

「あっ……そっ、そうですね……とても綺麗ですぅ〜……♪」

 

「きっと、何かいいことが起きるという、シラオキ様のありがた〜いお告げに違いありませんっ!ありがたや〜♪」

 

「うふふ……救いはあるのですね〜……♪」

 

「……ふふっ……ドトウさんも「幸運」が訪れるといいですねっ♪トレーナーさんと一緒にっ……♡」

 

「ふええっ……!?ど、どうして急に……トレーナーさんが出てくるんですかぁっ〜……?//」

 

「んもう〜またまた〜♪ドトウさんってば最近、トレーナーさんの話ばかりじゃないですかぁ〜♪」

 

「……それに……この前、トレーナーさんとドトウさんがバレンタインデートをしてたって、オペラオーさんが……」

 

「あ、あわわっ……!そっ、それは……流しがチョコをゴックンしちゃってぇ〜……」

 

「……か〜ら〜の〜?」

 

「……ううっ……そ、そういう、フクキタルさんはどうなんですかぁっ〜……!//」

 

「え”っ”!?……わ、私はシラオキ様一筋ですから……そういうことは……」

 

「この前……ハルウララさんから聞きましたよぉっ……?遊園地で仲睦まじそうに……」

 

「……トレーナーさんとフクキタルさんがぁ……手を繋いでる歩いてるところを見たとっ……」

 

「い、いや、それはですねっ!私のトレーナーさんは、シラオキ様の遣いである「運命の人」であるからしてぇ〜……つまり……あうっ〜……//」

 

「「……//」」

 

「……あのっ……これ以上は……色々と恥ずかしいですので……この話はもうやめませんか……?//」

 

「……えっ、えぇ……何せ、今の私たちは「トップ」を目指さなければいけませんからね」

 

「それに、シラオキ様が新しい縁を紡いでくださいましたし……そちらの方も大切にしないといけませんしね♪」

 

「新しい……あっ……歌鈴さんと歌鈴さんのプロデューサーさんのことですかぁ……?」

 

「はいっ♪今日、あのお二人と同じ日に同じ場所で出会えたのも偶然ではなく、必然なのです!」

 

「……特に……初めて出会ったはずなのに、歌鈴さんとは何だか……シンパシーを感じたんです……」

 

「ですので……近いうちに、あのお二人とはまた会うことになりそうですね♪シラオキ様もそう言ってます!」

 

「そっ、そうですね……同じ、おドジで悩むお仲間っ……うふふっ……♪」

 

「……いつか、また会えるその日を……楽しみにしてますからねっ♪歌鈴さんっ♪プロデューサーさんっ♪」

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「……あっ……お、おはようございましゅっ……プロデューサーさんっ……//」

 

「……おっ……か、歌鈴じゃないか、おはよう」

 

「あの……そのっ……昨日は、勝手に帰ってしまってすみません……私から誘っておいて……」

 

「いや、いいんだ……気にしないでくれ。あのあと、デレポで返事をくれたしな。寮に無事に帰れてたみたいでよかったよ」

 

「「……//」」

 

「「な、なあ!・あ、あのっ!」」

 

「あっ……ぷ、プロデューサーさんからどうぞ……」

 

「いやいや、歌鈴から先に言っていいぞ。どうしたんだ?」

 

「……では……私から……あっ、あのっ……昨日のことなんですけどぉ……」

 

「そのっ〜……えっとぉ〜…………しゅ、しゅみませんっ!私ってば、プロデューサーさんにあんな破廉恥なことをしてしまってっ!//」

 

「っ……あっ、あれは不可抗力だったからしょうがないもんな!あの時のことは、お互いに綺麗さっぱり忘れて……」

 

「……いえ!そのっ……むしろ……わっ、忘れないでいただけたら……嬉しいでしゅっ……!//」

 

「えっ……?」

 

「あの時は本当に、唐突で申し訳ありませんでしたっ……!ですが、私……あの時に改めて……意識してしまったんですっ……」

 

「ぷ、プロデューサーさんを……「一人のお兄さん」として……。もう、この気持ちは抑えられなくなってしまって……」

 

「……私……やっぱり、イヤなんです……「妹」じゃなくて「大切な人」になりたいんです……」

 

「歌鈴……」

 

「で、ですからっ……しょのっ……!もっ、もし……プロデューサーさんがよろしければっ……」

 

「……わ、私にっ……熱い「お返し」をっ…………はうっ〜……しゅ、しゅみませ〜〜〜んっ!!」

 

「ちょっ……!?ど、どうしたんだいきなり!?」

 

「今のことは忘れてくださぁ〜い!あっ、いえ!やっぱり、忘れないでもらえると嬉しいです〜っ!!//」

 

「おい!少し落ちつけ…………また行っちゃった……相変わらず早いなあ……歌鈴のヤツ……」

 

「…………それにしても……忘れないでって一体、どういう意味なんだ……?」

 

きゃあんっ!

 

か、歌鈴……んんっ!?

 

チュッ……♡

 

「っ……あぁ、もう……また思い出しちまった……。くっ……何だよ……俺だってこれでも、健全な男なんだぞ……?」

 

「……あんなことを突然されて……忘れたくても、そう簡単に忘れられるわけないだろうが……全く……//

 

「ふぅ……色々と難しいな……アイドルとプロデューサーって……」

 

「…………」

 

「……あううっ……わ、私ってば……どさくさに紛れて、あんな大胆なことをプロデューサーさんにっ……!」

 

「忘れようとすればするほど……あの時の熱と感触が蘇ってきてっ……恥ずかしい〜っ……!//」

 

「……ですけど……私っ……今まで半信半疑でしたけど……フクキタルさんの言葉で確信に変わったんですっ……」

 

「「因果」はあると……今世でこうして出会えたのも、神様が紡いでくださった縁に違いありませんっ……!」

 

「おっちょこちょいでおドジで弱虫な私ですけど……わっ、私……これからも頑張りますっ!!」

 

「アイドルとしてもっ……女の子としてもっ……そしてっ……」

 

「……前世からの因果を紡げるようにっ……。今度は「お返し」をもらえれるようにっ……!」

 

「ですので……今世……いえ、来世もこの先もずっと、私の隣で見守ってくれると嬉しいな……ねっ……」

 

「……プロデューサーしゃ……はうっ……噛んじゃったぁ〜……」



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恋猫シンデレラ 前川みく

「失礼しま〜す」

 

「おっ……よぉ、みく。来てくれたんだな」

 

「ううん、別にいいよ。それでPチャン、どうしたの?急にみくを事務所に呼び出して」

 

「そうだったな。じゃあ、さっそく本題に入ろう」

 

「その……言いにくいんだが……みくには「移籍」をしてもらおうと思うんだ」

 

「……は……?移籍……?」

 

「あぁ。唐突で申し訳ないんだが……もう決まったことなんだ」

 

「でも安心してくれ。もう移籍先の事務所とは話をしてあるから。きっと、よくしてくれるはずだ」

 

「ちょっ……ま、待ってよ!そんな、嫌だよ!みくはまだ何も聞いてないよ!?」

 

「ごめんな、みく……悪く思わないでくれ……。これも事務所のため、ひいてはお前のためでもあるんだ」

 

「正直、もううちの事務所は「猫チャンアイドル」は飽和状態なんだ……だからこそ、苦渋の決断をしたんだ」

 

「よその事務所でならきっと、みくはオンリーワンの猫チャンアイドルになれるはずさ。俺はそう信じてるよ」

 

「ちょっ……ちょっと待ってよ!こんなの……あんまりだよっ……!!」

 

「……ダンボールに入れた猫を置いていく心境って……こんな感じなのかもな……まあ、そういうことだ」

 

「これ以上顔を見ると辛くなるから話は以上だ。それじゃあ、みく。他の事務所でも元気でやれよ、じゃあな」

 

「いや……そんなに突然……イヤだよ!!Pチャ〜〜〜〜ン!!」

 

「……にゃあっ……!?…………あれ……?ここは……みくの部屋……?」

 

「もしかして……さっきのは夢……?それとも…………」

 

「…………」

 

「……に”ゃ”っ”……つねったら普通に痛い……ということは、さっきのは夢……だったんだ……」

 

「何なんだろう……あんな夢、初めてみた…………Pチャン……移籍……アイドル……」

 

「…………あれ……?みくって……猫チャンアイドル……だよね……?」

 

「だけど……猫チャンはたくさんいる……そうなると……みくは一体、何なんだろう……?」

 

「…………」

 

ジリリリリリリ!

 

「……って……あ”〜っ”!もうこんな時間にゃ!はよ、支度をせえへんとっ!!」

 

 

------------------------------------------------

 

カチャッ

 

「……Pチャン……おはよ〜」

 

「おっ、みく、おはよう」

 

「……」

 

「……ん?どうしたんだよ。そんなに眠そうに、俺の顔をジッと見て」

 

「……ん〜ん、何でもにゃ〜い……」

 

「何だよ、おかしなヤツだな……はは〜ん、さては……夜更かしをしてたな〜……?」

 

「は、はぁ〜っ!?ちょっと!ナニソレ!ちゃんと毎日、早寝早起きしてるもん!」

 

「はいはい。夜更かしは楽しいのはわかるけど、程々にしてくれよな。みくはアイドルなんだからな」

 

「……むむっ……一体、誰のせいでこうなったと思って……」

 

カチャッ

 

「たっだいま〜♡」

 

「おっ、志希じゃないか。お疲れ様」

 

「あっ♪みくちゃんもいたんだ♪こんちゃ〜っす♪」

 

「っ……志希チャン、お疲れ様。お仕事に行ってきたの?」

 

「うん♪ちょっとね〜♪今日はちゃんと、真面目に行ってきてあげたよ〜♪」

 

「ふぅ……。俺的には毎日、真面目になって欲しいんだけどな……」

 

「……ふ〜ん……?まあ、それはぁ〜……キミ次第だよっ……え〜いっ♡」

 

「に”ゃ”っ”……!?」

 

「うわっ……し、志希っ……!?」

 

「う〜ん……相変わらず、キミの膝の上は落ち着くねェ〜♡さぁっ、存分に志希にゃんのことを愛でたまえ〜♡」

 

「……ふぅ……はいはい。こうなったら志希は意地でも聞かないからな。ほら、これでいいのか」

 

ナデナデ

 

「にゃは〜♡うんうん♡いいカンジ〜いいカンジ〜♡」

 

「全く……気まぐれな性格といい自由奔放な感じといい、お前は本当に「猫みたいな」ヤツだな……」

 

「……っ!」

 

「えへへ〜♡だって、あたしは気まぐれでエキゾチックな志希にゃんだも〜ん♡」

 

「……そ・れ・に・ぃ〜、この事務所で「唯一の」ねこチャンアイドルだもんね〜♪……チラッ」

 

「むっ……!ちょっと志希チャン!何、勝手なことを言ってるにゃ!猫チャンアイドルはみくだけなの!」

 

「えぇ〜、そう〜?ねぇ、キミはどう思う〜?」

 

「は……?いや、どう思うって言われても……」

 

「んふっ……キミはもちろん、セクシーでオトナなネコチャンが好きだよねっ……♡」

 

ムニュッ……♡

 

「うあっ……!?」

 

「ねぇ〜……あたし、頑張ったんだからぁ〜……あま〜いご褒美を……ちょ〜だいっ♡……ねっ……♡」

 

「ちょっ……し、志希……顔が近いってっ……!//」

 

「っ〜……!も、もう!志希チャンもPチャンも、みくの目の前で一体何をやっとんね〜〜〜んっ!!」

 

「きゃあ〜♪みくにゃんがキレた〜♪こっわ〜いっ♪まあ、プロデューサー分もたくさん補給したことだし、そろそろ退散するね〜♡」

 

「そ・の・ま・え・に!さっきの言葉を撤回するにゃっ!!」

 

「は〜いっ♪すみませんでした〜♪さっきの言葉は前言撤回……しませ〜んっ♪んじゃね〜♪しぃ〜ゆう〜♪」

 

「あっ……おい!……行っちゃった…………一体、何だったんだ……?」

 

「……ふしゃ〜……!」

 

「おいおい、みく。何でそんなにムキになってるんだよ?いつもの志希じゃないか」

 

「むぅ〜……!だいたい、こんなことになったのも全部Pチャンが悪いんだからね!!」

 

「はあっ!?何でそうなるんだよ!?悪いのは変なことを勝手にしてきた志希だろ!?」

 

「うるさい!ほら!今日はお仕事に行くんでしょ!さっさと行くにゃ!!」

 

「っ……もうこんな時間か……。何だか腑に落ちないが……んまあ、準備をしてくれ。みく」

 

「ふんっ!本当に、Pチャンはみくがついていないとダメダメなんだからっ!しっかりしてよね!!」

 

------------------------------------------------

 

「……にゃ〜ん♡」

 

「おっ、ねこみみ、似合ってるじゃないか。流石は猫チャンアイドルだな」

 

「えへへ〜♡当然にゃっ♪だって、猫チャンはみくのアイデンティティーだもんね〜♡」

 

「でもぉ、今日はお仲間がいて嬉しいにゃ♪ね〜、二人とも〜♪」

 

「「……」」

 

「……あれ〜?どうしたの?飛鳥にゃん♪美優にゃん♪」

 

「別にどういうことはないさ、みく。これもアイドルの仕事、ひいては貴重な人生の軌跡となるのだろうからね」

 

「……だが……まさか、このボクが猫耳をつける日が来ようとはね。正直、羞恥心があるのは否めないよ」

 

「あっ、あの……プロデューサーさん……?えっと……やっぱり、こういう猫耳は若い子だけの方がいいのでは……?」

 

「いえいえ、そんな。この前、猫耳が見たいアイドルランキングで、見事に飛鳥と一緒に上位に輝いていたじゃないですか」

 

「うぅ……それは……そうですけど……」

 

「特に、美優さんの色気……じゃなくて!魅力と相まってとても似合ってますよ。だから、安心して撮影に臨んでください」

 

「……フ〜ン、本当にランキングを見て決めたの〜?みく、この前に心チャンから聞いちゃったんだけど〜?」

 

「心から……?何をだよ」

 

「Pチャンって「コスプレに悶えるオトナのお姉さんやアイドル」に興奮する趣味があるんだってサ〜。コッワ〜イ」

 

「……は……?」

 

「……なるほど……。つまり、この格好をさせたのは仕事とは建前で、キミの性的趣向と言うわけか……解せないね……」

 

「プッ……プロデューサーさんっ……」

 

「ちょっ……ち、違いますよ!?ていうか!これはあくまで仕事でなんだぞ!?誤解を生むようなことを言うな!」

 

「へ〜。じゃあ、似合わないと思ってるんだぁ〜?」

 

「いや……まあ……似合わないって言ったらそりゃ……嘘になるけど……//」

 

「ふふ……そうか。それは随分と嬉しいことを言ってくれるじゃないか。じゃあ……少し失礼するよ」

 

「えっ……あ、飛鳥……?」

 

「にゃっ……!ちょっと飛鳥チャン!?一体、何をしてるのっ!?」

 

「らしくないと思ったかい?まあ正直、仮初の姿に偽ることにボクは感心はない。だが、これはアイドルとしては大切な仕事だからね」

 

「……だからこうして、猫の生態を模写してなりきってみせたまでさ。さあ、存分にボクを愛でるといい」

 

「いや……プロ意識を持ってくれるのは嬉しいけど……何か少し、違うような気がするんだが……」

 

「気のせいだと思うよ。ほら、みくや美優さんもこっちにきて、ボクと一緒に猫の気持ちになりきってみようよ」

 

「……ふ、ふんっ!みくはいいもん!Pチャンなんかにゴロゴロしたら、おバカが移っちゃうにゃ!!」

 

「……お前なあ……」

 

「……えっ、えっと……私は……その…………え、えいっ……!」

 

「ちょっ……!?み、美優さん……!?」

 

「あっ、あの……私も飛鳥ちゃんと一緒に……愛でて欲しいですっ……なんて……♡//」

 

(くっ……!プロ意識を持ってくれてるのは嬉しいけど、何だよこの危ない絵面はっ……!//)

 

(二人の人気アイドルが俺の膝に……飛鳥がこんな甘えてくるのなんて珍しいし……特に……美優さんなんか……)

 

ムチッ……♡

 

(……む、胸が……チラチラ見えて、刺激が強すぎるんですけどっ!?色々な意味でっ……!//)

 

(……む〜っ……Pチャンってば、あんなに鼻の下を伸ばして〜……やっぱり二人でヘンなことを……は”ぁ”〜あ”……本当、しょうがないんだからっ……)

 

------------------------------------------------

 

「「「いただきますっ♪」」」

 

「う〜ん♪ハンバーグ、おいし〜いにゃあ〜♡」

 

「……うん、このドリアも中々いいね。とても芸術的な味がするよ」

 

「うふふ……♪それにしても、ありがとうございます……プロデューサーさん……♪」

 

「いえいえ、遠慮しないでください。たまにはこうして、仕事終わりにファミレスでみんなで食事でもと思ったんです」

 

「ふふ……感謝をするよ、プロデューサー。ボクとみくと美優さんとで、今日は貴重な体験が出来たよ」

 

「そうね……飛鳥ちゃん……♪少し、恥ずかしかったけど……みんなと大切な思い出が作れて……よかったわ……♪」

 

「にゃふふ〜♡二人とも、と〜っても猫耳が似合ってたにゃ〜♡」

 

「ははっ、三人を推してよかったよ。ファンへのアンケートでも、三人は上位だったしな」

 

「それは嬉しいにゃ〜。Pチャンだって、二人の美女猫チャンに囲まれて幸せそうだったもんね〜♪」

 

「あぁ、そうだな。俺も二人に囲まれて役得で…………は……?」

 

「「「……」」」ジー

 

「だってサ♪Pチャンってば、二人を堪能出来て、とっても幸せなんだって〜♡」

 

「おい!みく!勝手に俺の発言を捏造するな!……ったく……お前の中で、俺は一体どういう人物像なんだよ……」

 

「ええ〜?PちゃんはPちゃんだにゃっ♪ね〜♪飛鳥チャン♪美優さんっ♪」

 

「ふふっ、そうだね。同じ空の下で共に礎を築いてきた同志の思惑なんて、手に取るようにボクにだってわかるさ」

 

「ううっ……そ、そうね……。プロデューサーさんに……その……じ、女性として見られてるのなら……嬉しい……のかな……?//」

 

「あの……御三方……?何やら、話がどんどんそれているような……むぐっ……!?」

 

「んもう、Pチャンは本当にしょうがないにゃあ〜♪ほら、特別にみくがあーんしてあげるにゃっ♪」

 

「……んぐ……ぷはっ……おいみく!お前今、あーんどころか俺の口に突っ込まなかったか!?」」

 

「気にしにゃい気にしにゃい♪だって、こうでもしないと恥ずかしがって絶対にしてくれないと思ったんだもん♪ほら、二人が早く待ってるよ♪」

 

「「……♪」」

 

(っ……な、何なんだろう……この、断っちゃいけないような二人の謎の圧はっ……)

 

「みく、中々やるじゃないか。では、僭越ながらボクも参戦させてもらうよ。ほらプロデューサー、みくの次はボクのもいただきたまえ」

 

「……えっと……じゃあ、私も……飛鳥ちゃんが終わったら……プロデューサーさんに食べてもらいたいです……なんて……♡」

 

「あっ、はい……では…………いただきます……」

 

「にゃふふ♪やっぱり、みんなで食べると美味しいね♪Pチャンっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「ふぅ、美味しかったな」

 

「そうだね。美味しいひと時を過ごさせてもらったよ」

 

「えぇ……そうね……♪ご飯はみんなで食べると……とっても美味しいわね……♪」

 

「ご馳走様♪Pチャン♪ハンバーグ、とっても美味しかったにゃ♪」

 

「喜んでくれたのならよかった。このメンバーで食べるのは久々だったもんな」

 

「うふっ……そうですね……♪ところで……飛鳥ちゃん、大丈夫なの……?」

 

「ん?何がだい、美優さん」

 

「えっと……私と一緒にコーヒーを淹れに行った時は……ブラックみたいだったけど……」

 

「あぁ、もちろんさ。ありのままの素が一番美しい。森羅万象、全てにおける普遍の真理だとボクは思うね。ズズ……」

 

「……が、時に現世の文明社会では、己を偽りで内包しなければならない時もある……本当、複雑で残酷な世の中さ」

 

「……飛鳥チャン……一瞬、眉毛がピクってなってなかった……?」

 

「気のせいさ、みく。本当はブラックでもいいんだが、今回ばかりは気分があまり向かないみたいだ。だから砂糖を入れさせてもらうよ」

 

「あまり……無理しなくていいのよ……?……あっ……プロデューサーさん……少し、失礼しますね……」

 

「……はいっ♪少し……ネクタイがずれていましたよ……♪」

 

「えっ……?あっ、ありがとうございざます。では、俺も少し失礼しますね……はいっ、美優さんの頭に埃がついていましたよ」

 

「あっ……あうっ……私ったら……すみませんっ……//」

 

「「……ジー」」

 

「……ん?何だよ二人とも。俺たちをそんなに見つめて」

 

「べっつにぃ〜?ただぁ〜「アツアツ」カップルだな〜って思っただけにゃ〜。ねぇ〜」

 

「そうだね。幾多の試練や死線を共に乗り越えたかのような、熱くて強固な深い愛情がひしひしと伝わってくるよ」

 

「はあっ……!?何だよアツアツって!ていうか、カップルってどういうことだよ!誤解を生むようなことを言うな!//」

 

「そっ、そうですよっ……アツアツカップルだなんて……♡//」

 

「……ちょっ……み、美優さん!?それ……俺のコーヒーカップです……」

 

「ふぇっ……!?あっ……す、すみませんっ……私ってば……//」

 

「「……//」」

 

「……ねぇねぇ、飛鳥チャン……」

 

「皆まで言わなくてもわかるよ、みく。ふぅ……やっぱり、また気が変わったよ。今日は美味しいブラックコーヒーが飲めそうだ」

 

「……「目の前」の、全ての甘味をも凌駕する甘さが吹き飛ぶような……砂糖なしのとびっきり濃いのをね……」

 

「……同感。それじゃあ飛鳥チャン、みくと一緒にコーヒーを淹れに行こうにゃ。んじゃ、お二人でゆっくりしててね〜」

 

「あっ……おいっ……!」

 

(……くっ……みくが変なことを言うから、余計に意識しちゃったじゃないかっ……!//)

 

(あうっ〜……わ、私ってば……なんてはしたないことをっ……!プロデューサーさんのコーヒーカップに口をつけようとしてっ……//)

 

「……ほ〜んと、油断するとす〜ぐアレなんだから…………おバカ……」

 

------------------------------------------------

 

「じゃあな。今日も仕事を頑張ってくれてありがとう、二人とも。ゆっくりと女子寮で体を休めてくれ」

 

「あぁ、そうさせてもらうよ。今日はありがとうね、プロデューサー」

 

「お疲れ様、Pチャン♪ご飯、ご馳走様♪またよろしくお願いにゃ♪」

 

「うん、お疲れ様。今度もよろしく頼むぞ」

 

「……おっと……その前に一つ、言い忘れてたことがあった」

 

「うん?どうしたんだ?飛鳥」

 

「ボクはさっき、素の自分を偽りで内包しなければいけないと言ったよね……?」

 

「偽りで内包……あっ、あぁ……さっき、そんなようなことを言ってたな……」

 

「確かに、内包しなければいけない時もある。ボクたちは夢を与えるアイドルだからね」

 

「だが……いくら包み隠そうとも「真実」は永遠に輝き続けるのさ……心の中でずっと、ね」

 

「?」

 

「おっと、話しすぎたね。では、ボクはこれで失礼するよ。またよろしく頼むよ、おやすみ」

 

「あ、あぁ……おやすみ……?飛鳥のヤツ……一体なんだったんだ……?」

 

「……Pチャン。みくも最後に一ついいかな?」

 

「ん?どうしたんだ、みくも何かあるのか?」

 

「Pチャンはさ……今日のお仕事で、誰が一番猫っぽいって思ってくれた……?」

 

「えっ?いや……そんなことを当然言われても……」

 

「…………」

 

……プロデューサーさん……あの……わっ、私とっ……二人っきりで、そのっ……「ごろにゃん」しませんか……?……にゃんて……♡//

 

「……//」

 

「あ”〜っ”!Pチャンってば「美優にゃん」でヘンなことを考えてる〜!えっち!ヘンタイ!!」

 

「はあっ!?ちょっ……!おい!だから、俺の思考を勝手に決めつけるな!何で美優さんが出てくるんだよ!?//」

 

「ふんっ。Pチャンってば、ゴマかすの下手すぎ。本当にもうわかりやすいんだから……全てお見通しにゃ」

 

「うぐっ……!」

 

「はぁ〜……まあ、Pチャンもオトナのお兄さんだからね。多少、そういうことを考えちゃうのは仕方がないけど〜」

 

「……ダメだよ……?Pチャンの猫チャンはみくなんだから……他の猫チャンばかり構っちゃ……」

 

「ん……?いや、まあ……うちの事務所の猫アイドル=みくだって言うのは過言じゃないと思うぞ……?」

 

「ふふ〜ん……当然にゃ♪猫チャンはみくのアイデンティティーだからねっ♪んまあ、おやすみPチャン♪今日はありがとね〜♪」

 

「あぁ……おやすみ……ふぅ……みくと飛鳥も一体、何が言いたかったんだ……?ま、いいか」

 

「……さて、みくと飛鳥は寮に送って、美優さんも自宅へ送ったことだし、残りの仕事をさっさと済ませちゃうか……」

 

「……」

 

「……美優にゃん……オトナのイケナイネコチャン……って!お、俺は一体ナニを考えてるんだっ!」

 

「やばいやばい…………早く終わらせて、俺も今日は早めに寝よっと……」

 

「…………むぅっ〜」

 

------------------------------------------------

 

チュンチュン……。

 

カチャッ

 

「……あら……みくちゃん……?」

 

「あっ、ちひろさん。おはようございまぁ〜す」

 

「おはようございます。どうしたんです?こんなところに一人で机にうずくまって」

 

「……は”ぁ”〜……そうだね〜……。みく、最近Pチャンのことで悩んでることがあるんだ〜。ちひろさん、聞いてくれる〜?」

 

「プロデューサーさんの……?えっ、えぇ……私でよければ……どうしたんですか?」

 

「ありがとう。でね?Pチャンってばおバカなクセに最近、みくにはとってもうるさいんだ〜」

 

「だらしがないし、おっちょこちょいだし、それなのにみくにはいつもガミガミうるさいし」

 

「他にもすぐに女の子にデレデレしちゃうヘンタイだし、少しネクタイが曲がってダラしない時があるし」

 

「あっ!後、この前も少し髪の毛に寝癖があったりもしたにゃ!本当、Pチャンってば、みくがいないとダメダメすぎて困っちゃってるんだよ〜」

 

「……なるほど……♪うふふ♡その悩みってもしかして「恋煩い」なんじゃないですか?」

 

「……にゃっ……恋……?」

 

「えぇ♪ほら、よく言うじゃないですか♪「嫌よ嫌よも好きのうち」って♪みくちゃんは随分と慧眼なんですね♪」

 

「ちょっ……ち、違うよ!?別にみくは、Pチャンがあまりにもおバカだから目が離せないだけで……!」

 

「あれ〜?そうだったんですかぁ〜?でも、本当に嫌いならそんな細かいところまで気づけないと思うんですけどね〜♪」

 

「ううっ……そ、それはっ……!」

 

「ふふっ……♪でも、確かにプロデューサーさんは目が離せない時がありますよね♪私もその気持ちわかりますっ♪」

 

「……にゃうう〜……あ”っ”!そうだった!もうこんな時間にゃ!ではちひろさん!ちょっとPチャンのところにいってきま〜すっ!」

 

「うふふ……そうですか♪では、いってらっしゃい♪……あらあら♪相変わらず「女の子」なんだから♪みくちゃんは♪」

 

「……ダメですよ、プロデューサーさん。しっかり見守ってあげないと。猫は移り気で繊細なんですからっ♪」

 

------------------------------------------------

 

「……全くもう……ちひろさんってば……突然、何を言ってるにゃ……//」

 

「別に、Pチャンなんかどうでも……むしろ、うんざりしてるのに……」

 

「ドジでワガママでえっちで……す〜ぐ、他の女の子ばかり見て……変に優しくて……お節介で……」

 

「は”ぁ”〜……ダメだなぁ……。どうでもいいはずなのに、何でPチャンのことばかり考えちゃってるんだろ……」

 

「…………」

 

「……うん!そうだね!Pチャンは、みくがついていてあげないとね!」

 

「ホント、Pチャンはみくがいないとダメダメなんだから〜♪しょうがないにゃあ〜♪んじゃあ、さっそく……」

 

カチャッ

 

「……おはよ〜。Pチャ〜ン、いる〜?…………に”ゃ”っ”……!?」

 

「ん……?おっ、よおみく」

 

「Добрый день、みく、こんにちは」

 

「あっ……こ、こんにちは……あーにゃん……って……ふ、二人とも、何をしてるにゃっ!?」

 

「何って……少し、ひと休憩をしてたんだけど……」

 

「ひと休憩って……何で、あーにゃんを膝枕して頭を撫でとんね〜んっ!!」

 

「いや……まあ…………気分……?」

 

「うふふ……♪プロデューサーは、とても暖かくて気持ちいいですよっ♡」

 

「あはは……そう思ってくれるのは嬉しいけど……アーニャはアイドルなんだから、そういう発言はほどほどにしてくれよ〜……」

 

「むぅ〜……Pチャン……。何でそんなに嬉しそうなのさ〜……」

 

「は……?いや……そ、そんなことはないぞ!?ただ、愛おしいとは思ってるけどな!まるで「猫」みたいだしっ!」

 

「っ……「猫」……」

 

「猫……うふふ……♪では、Кот……今から、プロデューサーの猫になります……にゃんっ……♡」

 

「ちょっ……!?あ、アーニャ……!?」

 

「……プロデューサーのほっぺ、とても柔らかいですっ♪すりすりしちゃいますねっ♡」

 

「ええっと……アーニャ……?流石にそれは、少し大胆すぎると思うんですが……」

 

「猫は甘えたがりさんだとみくから聞きました♪……それとも……イヤ、でしたか……?」

 

「別に、嫌だとかではないんだけど……アーニャも女の子だし……なっ……?//」

 

「むむっ……んもう!Pチャンのアホ〜!!何、デレデレしてるにゃっ!!」

 

「はぁっ!?き、急に何だよ!?」

 

「ふんっ!!そんなにあーにゃんが好きなら結婚しちゃえばいいにゃっ!!おバカ!!えっち!!もう知らにゃいっ!!」

 

「結婚って……おい、みく!どういうことだよ…………行っちゃった……」

 

「……プロデューサー……?みく、どうしちゃったんですか?」

 

「……ま、気にするな。いつものことだし。放っておけばすぐに機嫌がよくなるだろ、あいつはいつもああだしな」

 

「そうですか……それならいいんですけど……」

 

「……ん?おっ。じゃあ、そろそろお仕事に行ってみるか。時間も時間だしな」

 

「あっ……そうですね……。では……Сделаю все отлично、今日も私、たくさん頑張りますっ♪」

 

(ふぅ……まあ……アーニャも女の子なんだし、確かにもう少しは危機感というものを持って欲しいけど……純粋で素直な良い子ではあるんだが……)

 

「……♡」

 

(……純粋……だよな……?)

 

「?どうしましたか?プロデューサー?」

 

「いや、何でもないよ。それじゃあ行こうか、アーニャ」

 

------------------------------------------------

 

「今日もありがとうございました♪では、до свидания、さようならです」

 

「あぁ。今日もしっかりとお仕事を頑張ってくれてありがとうな、アーニャ。寮でゆっくりと休んでくれ」

 

「はいっ♪……あっ……そうでした♪プロデューサー、最後に一ついいですか?」

 

「ん?どうしたんだ?」

 

「……Ты тот, кого я люблю……えいっ……♡」

 

チュッ……♡

 

「なっ……!?」

 

「ふふっ……では、またよろしくお願いしますっ♪オツカレサマですっ♪//」

 

「あっ、おい!アーニャ……行っちゃった……急に、どうしたんだ……?」

 

「……俺の頬に突然……あんなことを……。ふぅ〜……前から思っていたが、アーニャってちょっと距離感が近すぎるよな……」

 

「別に悪いってわけじゃないんだが……ま、いいか。役得……じゃなくて!文化圏の違いだよな、うん。そうに違いない!」

 

「ふぅ……やれやれ……本当、うちの事務所は自由気ままな猫だらけだな……」

 

「目が離せなくて……危なっかしい……アイドルの猫たちが……」

 

「…………」

 

んふっ……キミはもちろん、セクシーでオトナなネコチャンが好きだよねっ……♡

 

ふふっ、キミの膝は気持ちいいね。どうだい……?キミも……ボクで気持ちよくなってくれたかい……?♡

 

あっ、あの……プロデューサーさん……美優猫のことも……もっと構って欲しいです……にゃんっ……♡

 

プロデューサー……Очень тепло……とても、暖かいです……♡もっと甘えさせてください……にゃん……♡

 

「……はっ……!って、俺は一体ナニを考えてたんだ!?いけないいけない!俺としたことがっ……!」

 

「ふぅ……俺はプロデューサー……俺はプロデューサー……よし!事務所に戻って仕事をするか!」

 

「……ったく……もう少しは猫らしく、俺を警戒してくれよ……色々と無防備すぎなんだよ……」

 

「俺だって、これでも男なんだぞ……?もう少し、アイドルとしての自覚を持つとかだな……」

 

フォンッ♪

 

「……ん?メッセージ?えっと……誰からだろ…………えっ……」

 

------------------------------------------------

 

キィイイイイ……。

 

「……よぉ、みく」

 

「あっ……Pチャン……来てくれたんだ……」

 

「あぁ。で、どうしたんだよ?俺を突然屋上に呼んで。しかもこんな夕方に」

 

「えっとね……そのっ……相談したいことがあって、ずっと待ってたんだ……」

 

「相談……?まさか、昼からずっと事務所で俺の仕事が終わるのを待ってたのか?」

 

「……うん……。とても大事なことだから……」

 

「そうか……それは随分と待たせちゃったな。よし、さっそく聞かさせてもらおうか」

 

「ありがとう。じゃあ、さっそく相談させてもらうね。ねぇ……Pチャンってさ……」

 

「…………好きな人とか……いる……?」

 

「えっ……好きな人……?」

 

「うん……あのね……Pチャンの周りにはいつも色んな「猫チャン」がいるでしょ……?」

 

「……だから……好きな猫チャンがいるのかな〜って思ったんだ……」

 

「いや……そんなことをいきなり言われてもなあ……。でもまあ……猫は愛でるものなんじゃないか?それに、みんなはアイドルだし」

 

「ということは、つまり……今は特に誰もいないってことだよね……?」

 

「あぁ。俺たちはあくまで、アイドルとプロデューサーだしな。そういうことはまだ縁がないよ」

 

「そうなんだ…………でもね、みく……ううん、私はPチャンのことが大好きだよ。前からずっと」

 

「プロデューサーとしてじゃなくて、一人の大人のお兄さんとして好きなの……だから……えっと……」

 

「…………私の「専属の」Pチャンになってもらえませんか……?」

 

「っ……みく…………そうか。みくがそう思ってくれて俺は嬉しいよ。まあ、何と言うか……」

 

「……その気持ちをありがたく受け止めさせてもらうよ。ありがとうな、みく」

 

「えっ……ということはその……OKってことなのかな……?」

 

「あぁ。これからも、俺なりにみくと一緒に歩ませてくれ。アイドルとプロデューサーとしてな」

 

「Pチャン…………うんっ♪これからもよろしくねっ♪頼りにしてるにゃっ♪」

 

「よしっ、みくからの気持ちを受け取ったところで、今度は俺からお礼をさせてくれよ。これから暇か?」

 

「にゃっ……?お礼……?うん……この後は特に何もないけど……」

 

「よかった。それじゃあ、今から車を出すから待っててくれ。いい所に連れてってやるよ」

 

------------------------------------------------

 

「お待たせしました」

 

「ありがとうございます。よし、二人分来たな」

 

「……にゃあ〜……♪」

 

「じゃあさっそく食べようぜ。ほら、ナイフとフォークだ」

 

「うんっ♪ありがとっ♪でも……ここって……」

 

「あぁ。みくが来たがってたハンバーグの専門店だ。前に、俺におねだりをしてきただろ?」

 

「えっ……?まあ、それはそうだけど……でも、どうしてまた突然……?」

 

「みくから「大切な気持ち」をもらえたしな。日頃の感謝も含めて、俺からのささやかなお礼だよ」

 

「……それに……実は、俺のことよりもハンバーグのことで頭がいっぱいだったんじゃないか?」

 

「Pチャン……ううっ……流石は、みくのPチャ…………って〜……ちが〜うっ!!」

 

「ははっ、違ったのか?でも、食べたがってたのは事実だろ?」

 

「いや……そ、それは……まあ……そうだけど…………でも、みくはそんなに食い意地を張ってないもん……」

 

「冗談だ。みくには普段から頑張ってもらってるからな。とりあえず、遠慮せずに食べな」

 

「っ……うん、ありがとう……。ねぇ……ところで、Pチャン……?その……確認したいんだけどさ……」

 

「……みくたち……お付き合いしてるってことで……いいんだよね……?//」

 

「ん?何のことだ?俺たちは前からずっと一緒にいるじゃないか」

 

「にゃっ……?えっと……Pチャン……?みくのことを、どう思ってくれてるんだっけ……?」

 

「そんなの言うまでもないだろ。みくは俺の大切なアイドルさ。キュートな猫っぷりが売りのな」

 

「……で、でも……さっき、言ってくれたにゃ……みくと「付き合ってくれる」って……」

 

「あぁ。だから言っただろ?「アイドルとプロデューサー」だって。いつも常に一緒じゃないか」

 

「だから、気持ちだけ受け取っておくよ。そういうことはみくにはまだ早いと思うし」

 

「……むうっ……みくは本気で言ったのに……。子供だと思って……」

 

「事実、子供なんだからまだそういうことは考えなくていいんだ。今はアイドルに集中してくれよ、頼むぞ」

 

「……何だかイマイチ納得できないけど……わかったにゃ……。だけどその分「一生」みくに付き合ってもらうんだからね!覚悟するにゃ!」

 

「はいはい。これからも一緒に頑張っていこうぜ、みく。んじゃ、これからのみくと成功と繁栄を祈って、改めて……せ〜のっ」

 

「「……いただきますっ♪」」

 

------------------------------------------------

 

「はぁ〜♪美味しかったぁ〜♪今日はありがとう♪Pチャンっ♪」

 

「あぁ。どうだ、満足できたか?」

 

「うんっ♪突然のことだったから少しびっくりしたけど、とっても美味しかったにゃっ♪」

 

「よかったよかった。まっ、さっきも言ったけど、みくには普段から頑張ってくれてるからな。ささやかなご褒美だよ」

 

「……それに……俺だって、伊達にみくと一緒にずっといるわけじゃないからな。何でもお見通しさ」

 

「っ……そっか……確かに……ずっと一緒にいるもんね……アイドルデビューした時から……ずっと……」

 

「「……」」

 

「……ふふっ……それにしても、とても夜景が綺麗だにゃ♪」

 

「あぁ。都会のビル群が煌びやかに輝いてるな、海の波の音もとても気持ちいいな」

 

「そうだね♪みくも悩んだらよく、この海浜公園にきて景色をしばらく眺めてるんだ」

 

「……それに……ちょっと前にも……ここに来たことがあるしね……」

 

「ん……?どうしたんだ……?何か、悩み事でもあるのか……?」

 

「……うん。実を言うとね、さっきの屋上にいた時にもう一つ相談したいことがあったんだ……聞いてくれる……?」

 

「あ、あぁ……俺でよければ……どうした?」

 

「みくね……実はこの前、とっても怖い夢を見たの。その夢にPチャンが出てきたんだ」

 

「突然、事務所に呼び出されて、その時にPチャンにこう言われたの」

 

「……「猫キャラのアイドルはもう飽和状態だから、移籍してもらう」ってね……」

 

「っ……」

 

「うちの事務所にはたくさん「猫チャン」がいるでしょ?飛鳥にゃん、美優にゃん、志希にゃん、あーにゃん、そしてその他にも……」

 

「……だからね……いつか、みくはPチャンに飽きられて、捨て猫みたいに捨てられちゃうのかなって思っちゃったんだ……」

 

「みく…………」

 

「…………」

 

……ピンッ。

 

「い”だ”っ”……!?ち、ちょっとPちゃん!突然、みくのおでこに何をするにゃっ!?」

 

「……はぁ〜……何かと思ったら……そんなくだらないことで悩んでたのかよ……」

 

「っ……く、くだらなくないもん!みくは真剣に悩んでたんだよっ!?」

 

「そうか。でも正直、俺はみくのねこキャラはどうでもいいんだけどな」

 

「えっ……?」

 

「まあ、どうでもいいっていうのは語弊があったな。だけど別に、俺はお前をねこキャラだからスカウトをしたわけじゃない」

 

「「前川みく」だからスカウトをしたんだ。お前は世界で一人しかいないだろ?」

 

「だから、そんなことを気にするな。みくがアイドルを続けたいと思う限り、俺なりにみくに尽くさせてもらうよ」

 

「Pチャン……」

 

「…………」

 

「…………にゃっ!」

 

カプッ!

 

「うわっ……!?み、みくっ……!?」

 

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「……全く……何を寝ぼけたことを言ってるのさ!そんなの当たり前にゃ!」

 

「みくをスカウトした以上は、一生セキニンをとってもらうんだから!覚悟してよねっ!!」

 

「あ、あぁ……って!おい!突然何だよ!俺の首を甘噛みするな!お前は本物の猫か!!」

 

「ふ〜んだっ♪みくは自分を曲げないよっ♪だって、猫チャンなのはみくのアイデンティティーだもんねぇ〜♪」

 

「……それに……「女の子」としても……絶対に負けないんだからっ……♡」

 

「えっ…………んんっ……!?」

 

チュッ……♡

 

「……♡」

 

「「……」」

 

「……っあ……なっ……み、みくっ……!?//」

 

「……えへへ〜♡オクチにも「アマガミ」をしちゃったにゃ〜……♡」

 

「アマガミって……お前、今……//」

 

「……にゃふふ……♡言ったでしょ?みくは自分を曲げないって♡どう?みくの想いを受け取ってくれたかにゃ?」

 

「…………」

 

「んもう……Pチャンってば、みくのことを子供扱いばかりして〜。どうせ、さっきも子供の言うことだって思ってたんでしょ〜?」

 

「真剣に想いを告白をしたのに……簡単に受け流しちゃってさ〜。本当にPチャンってイヂワルだよね〜」

 

「いつも周りには女の子がいて……奥手で鈍感で……だけど、すごい優しくて暖かくて……」

 

「…………わかってもらうにはここまでするしかないでしょ……?Pチャンのおバカ……♡//」

 

「……みく……」

 

「「初めて」をあげちゃったんだから……セキニンをとってもらうにゃっ♡もちろん、アイドルとしてもねっ♡」

 

「……それとも……そんなにみくのことを、セクシーな猫チャンだと思ってくれた……?♡」

 

ムニュッ……♡

 

「っ……!?おい!何してるんだよっ!?」

 

「……みくね……少し恥ずかしいけど……いいよ……?このまま「シンデレラのお城」に連れて行ってくれても……♡」

 

「もうお外も暗くなってきたし……Pチャンだって、お年頃のお兄さんなんだし……ねっ……♡//」

 

「くっ……ば、バカなことを言ってないで、ほらっ!さっさと車に戻るぞっ!!」

 

「ええ〜……?んもう、しょうがないにゃぁ〜……ま、今回はそういうことにしておいてあげるにゃっ♡それじゃあ、右腕も〜らいっ♡」

 

「ったく……何なんだよ……いきなり訳のわからんことばかりしやがって……//」

 

「にゃふふ……でも……これでわかってくれたよね?みくは本気なんだってっ♡」

 

「アイドルとしても女の子としても……一度進んだ以上は絶対に負けたくないし……トップを取りたいにゃ……」

 

「だから……ずっと……ううん、一生をかけてPチャンにはみくをプロデュースしてもらうんだから……覚悟するにゃっ……♡」



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