ソビエト連邦召喚(ww2) (イブ_ib)
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1話
1943年 夏季
広大な平野をT-34-85の部隊がドイツに攻勢をかけるべく進んでいた。
いままではドイツに煮え湯を飲まされていたが、今度はこちらの番だと言わんばかりに乗員達の顔は決意にあふれている。
[……ガッ ……11時方向の森林に……戦車確n……新型・ガガッ・eしょうか? ……]
お世辞にも良いとは言えない出来の無線機から報告される。
「ついに来たか……」
そういうと、車長は覗き窓から例の戦車を確認する、すると車長は驚いた。
「……馬鹿な、何故ヤポンスキーの戦車がここに??」
因みに彼はハルハ河の戦闘を経験している、その時はBTに乗っていた彼は戦闘で
日本軍の九七式中戦車を見ていた。
「[兎に角全車警戒を怠るな、いつでも撃てる準備をしろ]」
隊長は攻撃準備をする様に無線で全車に伝える。
(しかし何故日本はヨーロッパ方面に来たのだ? わざわざそんな手間をかけるよりもシベリアから攻めればいいものを……)
そんなことを考えていた彼の思考を1つの轟音が中断させた。
ドォォン!!
[ガガッ・敵s・発砲!! ]
「……くそ!」
ギュイン!!
敵の弾はちょうど前方を走っていた戦車に当たるが事もなく弾く。
[やはり敵か! 全車帝国主義者を殲滅しろ!」
[[[[ураааа!! ]]]]
ズガァァン!!
まず最初に前方の一両が射撃を行う。
放たれた弾は前方のヤポンスキーの戦車に当たり、そのまま黒煙を吹き上げる。
[いいぞいいぞ! そのまま殲滅だ! ]
隊長は笑いながら指示を出す。
残りの敵戦車も反撃を行うが、笑いたくなるほど痛くない。
「ヤポンスキーどもは39年からちっとも進んでねぇみてぇだな!!」
隊長車はハルハ湖の仕返しと言わんばかりに残りの敵戦車に向かって撃ち続けた。
◇◆◇◆◇◆
グラ・バルガス帝国side
「……隊長、12時方向から、戦車がやってきます、見たこともない形です!!」
「何だと? まさかケインの奴らが新型でも作ったのか?」
◆◇◆
グラ・バルカス側は今まで海だったところに大地が広がっていたり、本国に到着するはずだった一部の部隊が音信不通になったりと混乱が続いていた、その隙をついてケイン神王国が攻勢を仕掛けてくるかもしれない為、国境沿いに兵を配置していた。
◆◇◆
「今までケインとは違う設計だな……
しかも砲がデカイ……よし、この距離なら……十分だな。
アイン車、砲撃を許可する、1発で仕留めろ」
[了解! ]
無線機の向こうから元気溢れる声が聞こえてくる。
彼はまだ若いが、芯が通っている
いずれは士官にまで上り詰めるだろう。
などと隊長はそんなことを考えていたが、この作品においてこんなことを考えるのはフラグである。
ドォォン!!
アイン車から放たれた弾は真っ直ぐ敵戦車に向かっていく直撃コースだ。
しかし……
カンッ
あっけない音と共に弾かれた。
「なっ! ……跳弾です!」
「装甲が強化されている様だな……
[アイン車は引け、ギクマ車は木々を陰にして前進、近距離で攻撃! ]」
[はっ! ]
すると、敵戦車が撃ってきた。
ズガァァン!!
その長砲身から放たれる威力は凄まじく、グ帝戦車の正面装甲をブチ破った。
そのまま砲弾に引火し砲塔が吹き飛ぶ。
「アッ! アインが! なんてこった……、コイツはまずい! ギクマ! ここは一旦引くぞ! ]」
[は、はっ!! ……ガッ!!」
隊長は急いでギクマのいる方向を見ると、既にギクマ車はエンジンに引火し、爆発を起こしていた。
「あ……ああ……」
隊長は既に恐怖に支配されていた。
「ぐぁや」
その恐怖に支配されていた思考もソ連の攻撃で強制的に停止した。
この日はソビエト連邦とグラ・バルカス帝国が始めて出会った日であり、始めて戦闘した日であった。
チハでT-38-85と戦えなんて、それなんて無理ゲー?
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2話
◇◆◇◆◇◆
グラ・バルガス帝国
とある航空基地
そこでレーダーに反応があった。
「……!! レーダーに機影!
3機の機影です!」
「迎撃隊、出撃用意!!」
2機のアンタレス型戦闘機が飛び立って行く
◆◇◆◇◆
イリューシンIl-2の攻撃隊が、
ドイツ軍の集積所を攻撃する為に向かっていた。
「なぁ、こんな話聞いたか?」
「なんだよ」
「今俺らのいる世界がどうも変わっちまったって皆んなが噂してんだ」
「どういう事だよ」
「ええと、なんか俺らの国が別世界に飛ばされったって言ってたっけ……」
「怖くておかしくなっちまったか?」
そういうと、パイロットは自分の頭をトントンと指で叩く仕草をする。
「やろう! 馬鹿にしてんのか?!」
などとわちゃわちゃしていたが、急にパイロットの目つきが鋭くなる。
そして無線機のスイッチを入れ叫んだ。
「敵機!」
◆◇◆◇◆◇
「あいつか!」
ここ最近ケインの奴らは新型を投入しているとの噂だ。
しかし奴らがどう足掻こうと、我々帝国に追いつけるはずがない、この世界の支配者は我々第八帝国人なのだ。
「さぁ、今日もスコアを伸ばすぞ!!」
グラ・バルカス帝国の戦闘機乗りであるレジーは、そう言い牽制も兼ねて7.7ミリ機銃を撃ち込む。
……が
「おかしいな……いま弾を弾かなかったか?」
イリューシンの必要以上に分厚い装甲にはほぼ無傷であった。
◇◆◇◆◇◆◇
「くそ、痛かったな今のは!」
「おい! 新型に後ろを回り込まれるぞ!!」
イリューシンの2人も飛び回るアンタレスに向かい後方機銃で応戦する。
タイミングよく12.7ミリが敵機の横っ腹に当たったと思ったら、その敵機は瞬く間に火達磨となり落ちて行く。
「え……よっわ……」
後方機銃手は唖然となった。
◇◆◇◆◇◆◇
僚機が目の前で火達磨になって落ちていくのを見たレジーは復讐に燃える。
「この野郎! よくもドレグを!」
今度は20ミリに切り替え、後方から攻撃する……が。
「……嘘だろ?!」
何発かしっかりと被弾している様だが、それでも何発かは弾いている。
「バ! バケモノめ!!」
そうこうしているうちに敵機は基地上空まで来てしまう。
◇◆◇◆◇◆
「ちょっと、これ報告と違くないか?!」
イリューシンのパイロットは目をパチクリさせて攻撃目標である集積所があろう場所を見る。
[恐らく芋野郎が急いで飛行場を作らせたんだろ、お前は滑走路付近を破壊しろ、俺は格納庫を攻撃する」
「よし! いっちょやったるかぁ!!」
パイロットは滑走路付近に並ぶドラム缶やトラックに向けて23ミリ機関砲のトリガーを引いた。
◆◇◆◇◆◇◆
ダガタガタガタガタガタガタガ!!!
およそ飛行機から撃ち出されるものではない弾が容赦無くトラックやドラム缶を蜂の巣にする。
そして燃料に引火し大爆発を起こし、次々と誘爆する。
滑走路が穴だらけになり、僚機の2機も攻撃を終えた様なので帰途に就くこととなった。
「……なぁ」
「なんだ」
「あの敵の新型よぉ」
「おう」
「国籍マークみたか?」
「おう」
「あれ、ドイツじゃねぇよな」
「おう……でも最初に撃ってきたのはアイツらだよな……」
(でも攻撃しようとしたのはこっちだけどな……)
心の中でそう思いながら彼らは帰途についた。
次回から本格的にソ連とグ帝の探り合いが始まります。
流石にゼロ戦擬きのアンタレス型でも12.7ミリで直ぐ落とされることは無いでしょうが、まぁ目を瞑ってもらって・・
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3話
グラ・バルカス情報局
現在情報局は正月と盆がいっぺんに来た様な騒ぎとなっていた。
「数日前から報告されているケインの新型について詳細な情報は無いのか?!」
怒鳴るように局員は情報を求める。
数日前から突然現れたケイン神国の新型戦車及び航空機は、帝国のそれの遥か上の性能を持っており、防ぐのが一杯一杯であった。
◆◇◆◇◆◇
グラ・バルカス軍 後方基地
「ではレジー大尉、大尉と交戦した新型機の事について教えてもらえないだろうか」
「ええ」
レジーはIl-2と戦った時の事を事細かく話した。
「……その新型の攻撃機は7.7ミリどころか、20ミリでさえ弾くというのですか……」
「ええ、正直アレを落とすには苦労すると思います、弱いところを狙うなどして……例えば操縦席とか」
グラ・バルカス帝国は交戦した兵たちに聞き込みを行い、有効な戦術を模索していた。
◆◇◆◇◆◇
赤軍参謀本部情報局
「ドイツの通信を傍受出来ないのか?」
「はい、数日前からドイツの通信を拾う事すら出来ないのです……」
「日本と思われる通信も一切傍受出来ません」
「そのかわり、何処の国とも違う信号が……」
「どれ、見せてみろ」
「はっ」
それは其処には如何なる国の言葉とも違う言葉のモールス信号の様な物が書かれた紙だった。
「なんだね、これは?」
「それがわからないから苦労しているのです」
参謀本部では兵士達が機械と睨めっこしており、解読しようと励んでいた。
◇◆◇◆◇◆
グラ・バルカス帝国 首都ラグナ
「ではなにか? 我が帝国がユグドからこの他所の星へ転移したというのか?」
「はっ、天文台による観測や他国との通信が取れないことや、陸地続きだった所が切り立った海岸になっている事からその様な結果が出されました」
グラ・バルカス帝国 皇帝のグラ・ルークスは将校の報告を聞き、頭を悩ます。
国が突然転移しましたなんて言われたら
そりゃ頭を抱えるだろう。
しかし皇帝の心配事は他にもある。
「転移したことはわかった。しかし少し前からケインの新型戦車が確認されているとの報告だが……」
「……ええ、その件なのですが……」
そういうと、後ろにいた技術将校が一枚の封筒を出し、机に広げる。
「此方が例の新型と呼ばれているものです」
一枚の写真には遠くからだがT-34-85が写っている。
「そしてこれが鹵獲したケイン神国の戦車です」
写真にはルノーFT17と九五式を足して2で割った様な戦車が写っていた。
「ほう」
「この新型戦車を一目見てわかる事は、途轍もなく巨大な砲を装備している事です。パッと見でも50ミリは超えているでしょう」
「それに、砲塔はボルトなどの継ぎ目がありません、恐らく鋳造によって作られたものと思われます」
グ帝戦車も接合部にボルトを使用しており、鋳造による砲塔などを量産するなど高い技術力が要求される事となる。
「車体などは、このように、斜めになっております。コレは傾斜装甲と言われておりまして、我が国でも研究中のものです」
◆◇◆◇◆
しばらく技術将校の説明が終わると、皇帝の口が開く。
「つまりお前は何が言いたい? まさか我が第八帝国の技術がケインに劣っていると言いに来たわけではあるまいな?」
「……あ、え〜、コホン 失礼致しました。勿論第八帝国がケインなどに劣る訳が万が一にもございません。 」
技術将校が話していると、「変われ」という感じで最初の将校が前に出る。
「我々が転移して周辺国が軒並み消え、何よりケイン神国がある所から現れた戦車や航空機の国籍マークは我々の知るケインの物とはまるで違います」
「つまる所なんだ?」
「はい、彼の国も我が国同様転移して来たばかりの国だと思われます。しかも彼らも直前まで前の世界で戦争をしていたと思うのです」
「なぜそんな事が言える?」
「直前まで戦争をしていなければああして直ぐに戦闘になるとは思えません。記録によれば謎の光が起こった翌日に戦闘が起きています。事情を知らない戦線の兵士は此方の兵士を見て攻撃したものだと思われます」
「で、どうすれば良い?」
「まずは誤解を解くべきです。そしてなるべく彼の国とは友好的に接するべきです。残念ながら戦車を見るに彼の国の方が性能が上ですので正面からぶち当たれば我が軍は劣勢に立たされてしまうでしょう。 周辺国の調査はそれからでも遅くはないでしょう」
グラ・バルカスではまだ見ぬ隣国と、どの様に接触するか慎重な会議が行われていた。
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4話
ソビエトーグラ・バルカス間
ソ連のとある前線基地
とある歩哨
最近見られるドイツとも日本とも違う謎の兵士が見られるとのことで、歩哨の数を増やしていた。
そんな中、ある兵士がだだっ広い平原を見張っていると、はるか奥の方から何かが蠢いているのが見えた。
蠢いているものはだんだんとハッキリしていく。
蠢いているものが人と車数台の集団である事が確認でき、先頭で何かの旗を掲げていた。
(見たことの無い旗だな)
掲げていた旗は戦時外交旗であったのだが、末端のソ連兵士がそれを知るはずがない。
「止まれ!!」
ソ連兵が小銃を構え、一団に怒鳴りつける。
その一団の中から1人の男が、両手を上げながら話しかけてきた。
「我々はグラ・バルカス帝国の使者である。願わくば其方の国の代表者と会談を行いたい」
◇◆◇◆◇◆
モスクワ
ソ連は、スターリングラードの戦いでドイツ陸軍第6軍が壊滅し攻勢に転じた為、モスクワ市内も何処か和らいだ雰囲気になっている。
その中に建つクレムリンの執務室で1人の男がパイプを蒸していた。
一見、立派なヒゲを蓄えた好々爺に見える男だが、その実側近はおろか、国民にさえ懐疑心を向けた冷酷無比の独裁者、
ヨシフ・スターリンその人であった。
「同志スターリン、戦線の兵士から奇妙な報告が届きました」
「何だと? 言ってみろ」
「はっ、グラ・バルカス帝国の使者を名乗るもの達が会談を行いたいと接触してきたとのことです」
「グラなんちゃら帝国なんぞ聞いたことないが?」
「はっ……、恐らく我が国が転移した世界の国かと思われます」
それを聞くと、スターリンは幾らか呆れたような顔をしながら応える。
「やれやれ、皆も揃って口を開けば転移だ何だと。国ごと別世界に飛ぶなんてあり得るのかね。空想小説でもまだマトモだぞ?」
「申し訳ありません同志」
「まぁ、いい。会談場所はここモスクワにしろ。後はモロトフに任せる」
「了解致しました」
◇◆◇◆◇◆
とある前線基地
部屋に通されたグ帝外交団は、返事を待っていた。
「やはり最近まで戦闘が起こっていたようですね」
「ああ、どうも空気がピリついている」
外交団の1人である技術将校は、周りのソ連兵の装備を見る。
(歩兵銃の技術レベルはあまり変わらない……か、しかし短機関銃が我が軍よりも持っている兵士の数が多いな……)
「そこ! 、キョロキョロするな!」
そうしているとソ連兵の叱咤が飛び、首を竦める。
兵達の服は薄汚れ、外にある兵器類もまともに整備されている物の方が少ないが、それだけ過酷な戦場だったという事だろう。
その様子を見てシエリアは、外交団の団長のアルスに声をかけた。
「この感じであれば、ダラスを連れてこなくて正解でしたね」
「ああ、あいつはお世辞にもこういう仕事は向かん。それにゲスタもだ。アイツらは植民地等の田舎に威張りちらすのがお似合いだ」
そう話していると、将校と思われる装飾の兵士が入って来た。
「いま、外務省より許可が降りた。
指導者である同志スターリンは現在忙しい。
仮にモロトフ外相が対応に当たる」
そういうと、外交団について来るよう合図する。
「まずは一歩進んだ。というところだな」
アルスはシエリアを見ながら、まずは手応えありといった様子で頷いた。
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5話
それと音楽産業廃棄物買いました。
モスクワ
外務省
この場で会談が行われたのだが、両国の外交官の雰囲気は控えめに言って最悪だった。
まず最初に行われたのは外交官の自己紹介と国の説明だったのだが、
それがまずかった。
皇帝を一番として国家運営を行うグラ・バルカス帝国と、皇帝を革命で玉座から引きずり落とした国ソビエト連邦。
ソビエトとグラ・バルカス、特にグラ・バルカスのソビエトに対する印象はかなり悪い物となってしまった。
「共産主義……理解し難い思想ですね……」
会談の合間の休憩室でシエリアは呟くと、アルスはさりげなくシエリアに紙を渡した。
『用心せよ、盗聴されている恐れあり』
その文を見てシエリアは急いで前を向き、手帳を使い筆談を始めた。
『ソビエト連邦とは敵対せずに済む事は可能?』
『現時点では何とも言えない、相手の出方次第』
外交官達にも前線の情報は少なからず伝えられている、相手の方が数枚上手だということも噂程度だが囁かれている。
現状グラ・バルカスはソビエトとの外交において後手に回るしか無かった。
◇◆◇◆
「……聞こえませんね。如何やら感づいたようです」
NKGB(国家保安人民委員部)の職員が上司に報告した。
「そうか、まあ良い。帝国主義者の考えている事なんてたかが知れている。全ては同志スターリンの意のままとなるだろう」
NKGBのヴィソツキー少尉は口角を上げて笑った。
◇◆◇◆
「両国の国交締結、新世界探索の相互協力に情報共有。そして転移後に起きた
不慮の戦闘に対する賠償金。これでよろしいですか」
モロトフから出された案にグ帝側も納得出来ないものではなかった為、それで問題は解決した。
◇◆◇◆
数日後……
「同志スターリン、新大陸調査隊より新大陸の西側にパガンダ王国と言う島国を発見したと報告がありました」
「うむ、それで愚帝には報告していないだろうね」
「は、報告してません」
「よろしい、では早速調査し崩せそうな場所を探ってくれたまえ。この世界における橋頭堡を作らなくてはな」
「了解致しました」
◇◆◇◆◇◆◇◆
パガンダ王国
パガンダの民は不満を抱えて生活していた。
政府上層部の汚職沙汰は当たり前、大臣達はこれ見よがしに屋敷に金を懸け高々蝋燭一本に至るまで高級品を使い僅かな差でマウントを取ろうと必死なのに、国民は重税に苦しみ今日のパンを用意するだけで一苦労という有様である。
そんなある日、酒屋にとある男が現れた。
別にそのこと自体は何らおかしい事ではない、しかし彼は違った。
『労働者が皆平等に暮らせて職にも飯にも困らない方法がある』
マルクス・レーニン主義と言うものを人々に話しまわっていたのだ。
最初のうちは皆、「そんなうまい話があるか」と気にも留めていなかったが、余りに真剣に話すもんだから
段々と彼の話をちゃんと聞くようになった。
その後は自国の政府批判を織り交ぜた演説に心を惹かれていった人々の数は膨れ上がり、遂にデモが起こった。
これには政府側も黙っておらず、鎮圧部隊を出したが、既に幾多のソ連工作員が紛れておりライフルや爆弾等で鎮圧部隊を蹴散らし、デモ隊を扇動し王城になだれ込んだ。
結果王はレイフォルへ逃亡、大臣達は処刑された。
こうして、ソ連工作員を中心とした傀儡国家パガンダ人民共和国が生まれた訳だが、勿論この流れに待ったをかける国家が現れるのであった。
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6話
「何ッ!? それは本当なのかッ!」
パガンダ人民共和国建国の報を聞いたシエリアは飛び上がった。
「間違いありません、今もラジオから建国宣言が流れています!」
シエリアは執務室のラジオを付け、チューニングダイヤルをぐるぐる回すとパガンダの放送が流れてきた。
『……我々は悪しき王政を打破し、人民による人民の為の国家が今成立した。同じ共産主義国家としてソビエト・ロシアと手取り……』
「パガンダとはどこだ? ソビエトは報告してこなかったのか?!」
「ソビエトからは何の報告も受けてはおりません……」
「本性を現すにしても早すぎる! 一旦大使館に話を聞きにいかなくては……」
シエリアは部下に車を出すよう指示を出す。
◇◆◇◆
ソビエト大使館
「今日もひどい天気だな……」
濃い鉛色の空、大使としてやって来たアンドレイは辟易していた。
「もう既にモスクワの空が懐かしい……」
心なしか体調が優れない、そんな時。
「大使、シエリア殿から会談を行いたいと連絡がありました」
「うむ、大方パガンダの事だろう。宜しい話そうじゃないか」
◇◆◇◆
会議室
「会談の席を設けていただき感謝します。それで……単刀直入に申し上げます。此度のパガンダ人民共和国の成立は貴国が関与したのではありませんか?」
余りに突然核心を突こうと聞いてきたシエリアにあっけにとられながらも言い返す。
「なんとも……いきなりですな。確かにパガンダの新政府と我が国は手を取っている」
「ならなぜこちらに報告してくれなかったんです? 新世界探索の相互協力に情報共有をすると言ったではありませんか」
その言葉にアンドレイは片眉を上げながらも反論する。
「こちらも接触して落ち着いたら報告しようと思いました。しかし向こうの方が一足早く動いた様ですな。それからというもの状況の把握に手間取りましてな」
「そうですか、次は迅速に報告していただきたいものです。ついでと言ってはなんですが我々も新たな国家を発見しましてね」
「……なんと!」
「名はイルネティア王国、とても温厚な国家で平和的な接触でした」
「それは誠に結構……しかしその情報こそ教えていただきたかったですな」
「それはお互い様でしょう?」
「ははは! それはそうだ! 申し訳ない! ……それでソビエト海側の国家はわかりましたが、グラ・バルカス海側*1は何か発見はありましたかな?」
「生憎、どうも海の機嫌が悪い様で」
グラ・バルカス帝国はクルセイリース大聖王国方面に調査隊を派遣したが、いつも嵐のように波打っており生半可な船では船体が折れる危険があり調査が難航していた。
(グラ・バルカス……こいつらも何か隠しているに違いない)
残念だがグラ・バルカスはイルネティアと接触した以外動きはながったが、共産国家特有の猜疑心の高さで勝手に疑っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「欧州情勢複雑怪奇……か」
東京 外務省
大体ロウリア戦が終わったあたりの日本だったが、現在ツァーリボンバ級の情報が飛び込んできた。
「ソビエト連邦、異世界にてかく戦えり……か」
漫画好きの副総理が捻り出す様に呟く、さっき呟いた総理と共に力なく笑う。
「露助も中共もいなくなったと思ったらとんでもねぇ厄ネタ連れてきやがった」
調査によるとここ第三文明圏には拡大主義をとる国がおり、占領下の国民は不満たらたらだろう。
「そんなとこに共産主義がやって来たらえらい事になるぞ……なぁ総理」
「えぇ、ほんとにあのソビエトだとしたら……先制攻撃も視野に入れんとな……」
二人はかの大戦時の出来事を思い出していた。
「しかし……グラ・バルカスって国も妙だな、旧軍とあまりに似ていやがる。その国と露助が組むたぁな」
「平沼騏一郎の気持ちが分かった気がするよ」
総理執務室にまたしても力ない笑い声が木霊した。
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寛大なる慈悲王
「予はレイフォル皇帝リリー・ザリオ・レイフォール4世なるぞ!」
「おっしゃる通りでございます貴方様はは天下に名だたるリリー・ザリオ・レイフォール4世であらせられます」
「列一位は、今年は三位になりかけたけど、今年も一位だった!」
「列強一位になるには、例えば、列強五位がおるだろう? そいつが列強五位だったとしても、列強一位なのだ」
「第三文明圏の主婦層の辺りには五位だと言っている男もいるが、とんでもない列強一位は列強一位なのだよ」
「列強一位も、考えれば海賊から始めさせられたんだよ、あの頃が一番辛かった」
「二位の奴にいじめられたんだよ」
「列強一位は寛大で慈悲あふれる統治もするよ」
「我が帝国は去年は何位だった?」
「一位です」
「今年は何位か?」
「一位です」
「よしんば二位だったとしたら?」
「無論、一位です」
御前会議では毎回恒例のやり取りである。
「して、パガンダで起こった革命とやらの詳細は分かったのか」
「はっ……我が国に逃げてきたパガンダの王族によると、共産主義なる思想に被れた者たちによって革命が起きたと。共産主義とは資本や財産を国民で共有する平等な社会体制のこと。土地や財産などはすべて国のものとなり、みんなで共有する。生産されたものも国民のものとなり、均等に分配するという考えの様です」
「……はっはっは!!! 国民皆平等!? 馬鹿馬鹿しい、王族とは神からその地位を約束された聖なる地位! 国民の階級も神の思し召しによって定められた物、それに反意を示すなど愚か千万」
「誠にその通りでございます」
「……余は今怒っている、今も罪なき友邦の民が異端の者によって虐げられている事実に」
家臣たちは寛大なお心を持つ王の言葉に胸を撃たれ、思わず涙を流す。
「かの国の民は今、こうしている間にも残虐なるソビエトの支配の恐怖におびえ震えている! 私は我慢ならない! 将軍! 軍の準備はどうか?!」
「はっ! 皇帝陛下が命じればいつでも作戦行動に移れます!」
「大変結構! ……ゴホン! では! レイフォル皇帝リリー・ザリオ・レイフォール4世の名において、ソビエト討伐をここに宣言する!」
「「「「おおおおおッッッーーーー!!!」」」」
自称寛大なる慈悲王リリー・ザリオ・レイフォール4世の宣言は瞬く間に第二文明圏を駆け巡った。
当然ソ連にも届く。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「奴らの方から宣戦布告してきたぞ!」
「馬鹿な奴らだ」
現在ソ連領パガンダでは航空隊が攻撃準備を行っていた。
大量のIl-2がレイフォリアの艦隊に向けて攻撃を行う為に。
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