Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~ (セム)
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第一章 蘇りしサイヤ人編 其之一 摩訶不思議な出会い! 光の中から現れた謎の少年、孫悟空!

 というわけで始まりました、Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~。

 劇場版ドラゴンボール超を見てテンション爆上げしつつの投稿になります。

 こちら完全に不定期な更新となりますし至らぬ点もまだまだあるとは思いますが完結まで頑張って書きますのでどうぞ応援よろしくお願いします。

 長い挨拶は活動報告の方でするとして、それでは記念すべき其之一をどうぞ。


 時は流れゆく。

 

 あの頃のメンバーはもういない。

 

 しかしだからと言って物語は、戦いは終わりはしない。

 

 さぁここから始めよう、とある戦闘民族が紡いでゆく新たな物語を。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 ――海鳴市。

 ビルなどの建造物と海や山、木々と言った自然が上手く共存したとても平和な地方都市。

 そんな市内の綺麗に舗装された道の上を一人の男がのんびりと歩いていた。

 

 

「ふぅ……いい朝だな」

 

 

 軽く空を眺めながらそう小さく呟いた男の名は高町 士郎。

 喫茶翠屋というそれなりに人気な喫茶店のマスターである彼は現在、早朝の散歩中だった。

 別に早朝の散歩が彼にとっての日課というわけではない。

 ただ今日は何となくそんな気分だったというだけの話だ。

 誰にだってあるであろう、ふとした気まぐれからの行動である。

 だがその気まぐれが――思わぬ事態との遭遇を引き起こす。

 士郎は平和な時間を謳歌しながら何となく周囲を見回した。

 すると――。

 

 

「ん……!? な、なんだ!? あれは……!」

 

 

 その眼は大きく見開かれ瞬時に驚愕の色に染まった。

 それも当然である、何せ士郎のいる場所の近くで音も無くだが天高く、雲をも突き抜けるほどの巨大な光の柱が上がっていたのだから。

 何が起こっているのか、士郎はそう考えながらもとりあえず走り出しその光の柱の傍へと近づいていく。

 結果、数分足らずで光の柱の目の前まで辿り着く事が出来た士郎。

 ――光を凝視する、少々眩しくはあったがそれよりもこの光が何なのか、それが気になった。

 目の前で起きてる現象のように光が自然に発生し柱のように天高く上がるなんて事はまずあり得ないし聞いたことも無い。

 とは言え流石に何が起こるか分からない以上、安易にその光に触れるわけにもいかず、かと言って放っておくことも出来ず――ただただ呆然と見つめていると光が徐々に収縮していくのが感じられた。

 光の柱は少しずつ小さくなり、細くなり、そして消え去る。

 そして光の柱の跡地、そこには――。

 

 

「え……?」

 

 

 一人の少年が倒れていた。

 着用している派手な山吹色の道着のような服の左胸には白丸のマークが描かれており、その中に“悟”の文字が刻まれている。

 それに加えて青いアンダーシャツと腰の辺りに巻かれた結び目のある青い帯、青いリストバンドにブーツ状の靴、くわえて黒い髪が四方八方にツンツンと跳ねた特徴的な髪形が印象的なその少年は気を失っているのだろうか、微動だにする事なく倒れ込んでいる。

 暫く呆然としていたが不意にハッと我に返った士郎は急いでその少年に駆け寄った。

 

 

「き、君、大丈夫かい!? しっかりするんだ!」

 

 

 慌て混乱している心を何とか押さえつけ冷静さを失わないよう心がけながらその少年の体を軽く揺さぶる。

 しかし――。

 

 

「んん……ムニャムニャ……ぐごごご」

 

「ね、寝てる……?」

 

 

 少年は眠っていた、それも大きなイビキをたてながら――熟睡、いや爆睡である。

 一体この子は何者なのか、それはさっぱり分からなかったが一つだけ言える事があった。

 

 

(普通の子、ではないよなぁ)

 

 

 光の柱の中から現れた少年、その派手な恰好といい、寝てても感じられるどこか浮世離れしてる感じがする独特の雰囲気といい、どう考えても普通ではなかった。

 これが普通の子供だったなら警察に連絡して彼を引き取ってもらい親を探してもらうところなのだが――摩訶不思議な現象により現れたこの少年の場合それはまずい、そんな気がした。

 かと言って放置という選択肢は無しだ、そんな真似が出来るほど士郎は薄情な人間ではない。

 

 

「……しょうがない、か」

 

 

 とりあえずこのままここにいて考えていても埒が明かない。

 士郎は気持ちよさそうに眠っている少年を起こさないようにそっと抱きかかえ背負う。

 考えた末に士郎の下した決断、それはこの少年を自宅へと連れ帰るという事だった。

 警察沙汰にするのもまずく、放置も出来ないとなると士郎に取れる選択肢はこれしかなかったのである。

 

 

「それにしても……」

 

「ぐごごごご……すぴー……」

 

「よく眠ってるなぁ……」

 

 

 こうして間近で見て背中越しとは言え触れてみると分かる事がある。

 それはかつてボディーガードとして働き、日々鍛え、戦っていた士郎だからこそ理解出来る事だった。

 

 

(この少年、筋肉の付き方からして、よく鍛えられているな……服装も派手だが道着っぽいし武道の経験でもあるんだろうか)

 

 

 なんてことを考えつつも士郎は少年を背負いながら我が家へ向けて歩き始める。

 もしかしたらさっきの光の柱を見た他の誰かがこちらに向かってるかもしれないし、下手したら通報されているかもしれない。

 そう考えると自然と足は普段よりも速く動いた。

 当然少年を起こさないように細心の注意を払いながらだが。

 

 

 

 ――高町家。

 大きめの敷地内に二階建ての家と道場が建てられているため普通の家よりも立派な佇まいをしている、そんな自宅に士郎は帰ってきた。

 さて、連れて来てしまったのはいいものの家族にはどう説明したものか、なんて考えながら士郎は戸を開ける。

 すると――。

 

 

「あなた、お帰りなさい」

 

 

 わざわざ玄関まで出迎えてくれたのは明るめの茶色の長く美しい髪と若々しく可愛らしい外見が特徴的な女性、彼女こそが士郎の妻の高町 桃子、喫茶翠屋のパティシエ兼経理担当でもある非常に優秀な人物でもある。

 桃子は笑顔で士郎を出迎えてくれたが、その背に抱えられた存在に気づきすぐに首をかしげる。

 

 

「あら? あなた……その子は?」

 

「あー……何て言えばいいのかな、とりあえず中に入ってもいいかい? 詳しい事は……」

 

 

 この子を部屋で寝かせてから話したい、そう言おうとした最中だった。

 ピクリ、と士郎は背中で何かが動いた感触を感じ取った。

 そして――。

 

 

「ん……んん……うん?」

 

「……あれ、起きちゃったかぁ、調子はどうかな?」

 

 

 聞こえてくる声、どうやら背負っていた少年が起きたらしいと士郎は判断した。

 相手は少年、出来るだけ怖がらせないように優しい声音でどこか異常があったりしないかを問いかける。

 対し少年はと言うとキョロキョロと周囲を見回した後。

 

 

「おめえ達……誰だ?」

 

「僕は高町 士郎、それでこっちにいる人は……」

 

「高町 桃子よ、よろしくね。貴方のお名前は?」

 

 

 桃子が笑顔で優しく問いかける。

 流石と言うか何というか、夫が突然連れて来た男の子にもこれだけの優しく平然とした対応が出来る辺り、人としても妻としても出来た人である。

 二人の自己紹介を受けて少年もまた名乗る。

 

 

「オラか? オラの名前は悟空だ、孫悟空」

 

「孫悟空……」

 

 

 その名を聞いて士郎が真っ先に思い出したのは西遊記というお話に出てくる猿の孫悟空の姿。

 あり得ないはずなのに何か関わりがあったりするのかな、なんて考えてしまうのは少年――悟空が摩訶不思議な現れ方をしたからだろうか。

 

 

「悟空くん、ちょっと君に聞きたい事が……」

 

「あなた、とりあえず中に入ったらどうかしら? ずっと立ち話もなんだし」

 

「……それもそうだなぁ。じゃあ悟空くん、君に少し聞きたい事があるから良かったら上がっていってくれないかい?」

 

「何が聞きたいのかは知らねえけんどオラは構わねえぞ? ところでよ、悪りいけんど下ろしてもらっていいか? 家に入んなら靴脱がねえといけねえしな」

 

「あぁそれもそうだね」

 

 

 士郎はそっと悟空を抱えていた腕の力を緩める。

 すると悟空は軽々とした動きでひょいっと飛び降り華麗に着地した。

 

 

「おぉ身軽だね、悟空くん」

 

「へへっ、結構鍛えてるかんな。これくらい朝飯前だぞ」

 

 

 やっぱりか、と士郎は思いつつも桃子と共に悟空を自宅へと招き入れる。

 そして予備の椅子を用意してそこに悟空を座らせて自分達もまた自らの席についた。

 士郎は、まずは現状の再確認と桃子への説明を兼ねて悟空を発見した際の状況を説明する。

 

 

「まず……僕はさっきまで普通にこの近所を散歩していた、すると近くで光の柱みたいなのが天高く上がっているのが見えたんだ」

 

「光の柱? あなた、それって一体……」

 

「……分からない、僕にもさっぱりだ。ただその光の柱が消えた後、そこには悟空くんが倒れていた……悟空くん、この現象について何か心当たりはあるかい?」

 

「んー……正直言うとオラにもさっぱり分からねえや、ところで士郎、桃子、一つ聞きてえ事があるんだけどよ」

 

「ん? なんだい?」

 

「どうしたの?」

 

「オラの頭の上にさ、天使の輪っかみてえなの付いてっか? 自分じゃよく見えねえから一応確認してえんだ」

 

「「え?」」

 

 

 正直言ってその質問の意図は二人には分かりかねた。

 ただ聞いてくる以上は何かしら意味があるのだろうと思い二人は悟空の頭の上に視線を向ける。

 だがそこには――何もない。

 だから二人は正直に「何もないよ」と伝えた、すると悟空は眉間に皺を寄せて腕を組み難しい顔をする。

 

 

「そっか……オラ確かに()()()()はずなのに何で生き返ってんだ?」

 

「え、死、死んでた!?」

 

「悟空くん、それってどういう事なの?」

 

「お? そのまんまの意味だぞ? オラ年くって死んじまって天国にいたはずなんだけどよ、なんでかは知らねえけど今は生きてるみてえだし、ついでに体も若返っちまってる、どうなってんのかなぁ……」

 

 

 悟空のその言葉を聞いて士郎と桃子は大いに混乱した。

 はっきり言って今、悟空が言った言葉の意味がまるで理解できなかったからだ。

 死んでた、天国、体が若返ってる、正直今の短い発言の中だけで考えても気になる部分がありすぎて逆に言葉が出ない。

 しかも悟空が嘘を言ってるようには見えないというのが余計にたちが悪かった。

 当の悟空は二人が混乱している間も難しい顔をしながら何かを考え――そしてその状態のまま数秒ほど経過した後。

 

 

「……まぁいっか!」

 

 

 けろっと表情を変えて笑顔でそう言った。

 これには思わず士郎はズッコケそうになってしまう。

 

 

「い、いいのかい!? 君の話を聞く限りとんでもなく深刻な状況だと思うんだけど……」

 

「あぁ! 確かにとんでもねえ状態だし何でこうなってるのかもさっぱりだけんど、はっきり言ってどうしようもねえからな、考えるのはやめにした!」

 

「え、えぇ……そんなあっさりと……」

 

「ふふっ、悟空くんは面白いわね」

 

 

 ガクリと項垂れる士郎に対して桃子はクスクスと笑っていた。大物である。

 悟空も普通だったら慌てそうな状況にあるにも関わらず、あははと屈託なく笑っている。

 だがこのまま項垂れててもしょうがない、悟空本人がそれでいいと言ってるのだから、一先ずはそれでいいという事にしておいて別の話題を切り出す事にする。

 

 

「そういえば悟空くんのその恰好……もしかして君は武道家だったりするのかな?」

 

「んーまぁそんな感じだな、オラつええ奴と戦ったりするのが何よりも好きなんだ。なんだかんだ言ってオラもサイヤ人だからかな、だから普段から鍛えてんだ」

 

「……サイヤ人?」

 

「あぁ戦闘民族ちゅう奴でもう殆ど滅んじまったんだけどさ、えーっと何ていえばいいんかな……そう! 宇宙人ってやつだな」

 

「宇宙人……!?」

 

「あら、とてもそうは見えないけれど……」

 

「嘘じゃねえぞ? と言ってもオラの場合は地球育ちのサイヤ人だから地球人扱いでも別にいいんだけどな、ははっ!」

 

 

 そう言ってまた悟空はニカッと笑った。

 何というか質問すればするほど、話せば話すほど衝撃の事実が明らかになっていき同時に悟空に関する謎が増えるのは気のせいだろうか、と士郎は思わず頭を抱えたくなった。

 と、ここで一つ、先ほどの悟空の発言に違和感を覚える。

 

 

「ん……? 滅んだって事は……」

 

「あぁフリーザっちゅう奴に故郷の星を破壊されたんだ、オラの両親も多分それで死んじまった。でもサイヤ人も散々悪りい事してきたみてえだからな、滅ぶべくして滅んだんだとオラは思ってる」

 

 

 悟空はそんな重たい話をサラッと喋った。

 場の空気が一気に重くなる。

 というか星を破壊された、なんてスケールがデカすぎて若干ついて行けないというのが士郎の本音だった。

 いや、宇宙人って時点で話のスケールは十分にデカいのだが。

 

 

「ま、まぁサイヤ人云々も一旦置いておくとして……悟空くんはこれから行く当てとかあるのかい?」

 

「それなんだけどよ……パオズ山って知ってっか? そこにオラの家があるんだけんど」

 

「パオズ山? 母さん聞いた事あるかい?」

 

「いいえ、無いわね……」

 

「そうか……よし、とりあえず地球一周して探してみっか!」

 

「ち、地球一周!?」

 

「悟空くん、それ凄く時間がかかるんじゃないの?」

 

「ん? そうでもねえぞ、小さくなって大分力は落ちちまってるみてえだけど多分舞空術は使えっからな、数分もありゃあ一周出来るはずだ」

 

「「す、数分……?」」

 

 

 またもや一般人からしてみればとんでもない事をさらっと言ってのける悟空。

 そして相変わらずその眼にも言葉にも嘘は微塵も感じられない。

 もしそんな事が可能だとするならば先ほどの“戦闘民族”や“宇宙人”という単語もある程度納得がいく――かもしれない。

 なんてことを二人が考えていると突如ぐぎゅるるるるうう~とデカい音が鳴り響いた。

 出どころは――悟空、の腹だ。

 悟空は自分の腹を押さえながら笑う。

 

 

「ははは! 悪りい、悪りい、腹が減っちまって、つい……」

 

(凄い音だったな……)

 

「あらあら、確かにもう朝ごはんの時間だものね……それじゃあそろそろ用意を始めようかしら、悟空くんも良かったら食べていって?」

 

「え、いいんか!?」

 

「勿論よ、何となく今日は多めに作っておいたしね。あなたもいいでしょ?」

 

「あぁこうして出会ったのも何かの縁だしね、歓迎するよ。悟空くん」

 

「サンキュー! 士郎、桃子! 恩に着るぞ」

 

 

 こうして孫悟空は高町家に拾われて朝ごはんをご一緒する事になったのだった。

 暖かな日差しに照らされた春の日の朝、この日、孫悟空と言う名の一人のサイヤ人は新たな出会いを経て繋がりを得た。

 そしてこの日から運命の歯車は回り始め物語が再度動き出したという事に当の悟空が気づく事はなかった――。




 オッス! オラ悟空!

 いやぁ桃子の作るメシ楽しみだぞぉ!

 ん? 誰だ、おめえ……ははっ桃子にそっくりだなぁ!

 おっと、それもいいけんどオラもオラで色々やったり考えたりしねえと……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「ここは別の宇宙!? 悟空が立てた仮説!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二 ここは別の宇宙!? 悟空が立てた仮説!

 光の中から現れた少年、孫悟空。

 悟空は高町 士郎に拾われて高町家へと招かれる。

 だが複雑な自分の現状を再確認しつつ悟空は「まぁいっか!」と考えるのをやめてしまうのだった。


 朝ごはんの良い香りが漂う高町家。

 そんな高町家内にトテトテと足音が響く。

 足音の正体はこの家の次女、高町 なのはである。

 彼女はいつも通り――と言っても朝が苦手なので時折寝坊するのだが――起きると一階に下りて鏡の前でリボンを使い母親ゆずりの綺麗な茶色の髪を結び、しっかりと身だしなみを整えるといつも通りにリビングに顔を出す。

 そこにはいつも通りなら父と母がいるからだ、朝の挨拶はちゃんとしなくてはいけない、そこら辺の躾はちゃんとされている。

 

 

「おはよう、お父さん、お母さ……ん?」

 

「おぉおはよう、なのは」

 

「あら、おはよう。なのは」

 

「ん?」

 

「……え?」

 

 

 そこに広がるのはいつもの光景――じゃなかった。

 確かにいつも通り父がいる、母もいる、だが明らかに違う事が一つだけ。

 なんか知らない男の子がいつもの光景に混じってるのだ。

 しかもどういうわけか結構馴染んでる上に父も母もまるで気にしていない。

 当然なのはの視線はその謎の男の子に集中する。

 

 

「えーっと……」

 

「おめえ誰だ?」

 

「そ、それはこっちのセリフなんだけれど……」

 

「あ、悪りいな。オラの方から名乗った方が良かったんか、オラは孫悟空だ。で、おめえは?」

 

「あ、えっと高町 なのはです」

 

「なのはかぁ、よし、覚えたぞ!」

 

 

 そう言って悟空はニカッと笑う。

 何というか、太陽みたいに明るい笑顔をする子だな、というのがなのはの悟空に対する第一印象だった。

 それはいいのだが、何故悟空が高町家にいるのか、その疑問は解消されていない。

 

 

「その……悟空くんはどうして家にいるの?」

 

「んー? なんて言えばいいんかなぁ……オラが道で倒れてるところを士郎に助けてもらって連れて来てもらったんだ」

 

「え、倒れてたって……お父さんそういう事なら救急車とか警察とか呼んだ方がいいんじゃ……」

 

「あー……その事なんだけどな、ちょっと話すと長くなる事情があってさ……なのは、とりあえず恭也と美由希を呼んできてくれないかい? 詳しい事は皆がいる朝食の時に話すよ」

 

「う、うん……」

 

 

 その言葉を受けてなのはは一旦リビングを出ていく。

 そして家の隣にある道場へと向かって行った。

 それから数分後、ガチャリと音を立ててリビングの戸が再び開く。

 

 

「あ、本当だ! なのはの言う通り知らない男の子がいる!」

 

「父さん……一体どういう事だよ……」

 

「あ、あはは……」

 

「オッス! オラ悟空、おめえ達が恭也と美由紀か?」

 

「いきなり呼び捨てか……まぁいいが、そうだ。俺が高町 恭也だ」

 

「私が美由希だよ、よろしくね」

 

 

 恭也と名乗った青年は若干警戒した眼で悟空を見ており、対する美由希は対称的にそう言った警戒心とか無さそうな顔で悟空に挨拶をしてくる。

 そこへ桃子が料理をテーブルへと運んできた。

 

 

「さて自己紹介も済んだ事だし朝ごはんにしましょうか、皆座って?」

 

「おー! 待ってたぞぉ!」

 

 

 大はしゃぎする悟空。

 そんな悟空の姿を見て色々な思いを抱きながら三人の子供達は一先ず自分の席に着くのだった。

 

 

 

「つまりこの悟空って子供は光の中から現れたと?」

 

「ガツガツガツ……!」

 

「あぁ……信じられないかもしれないが本当なんだ」

 

「モグモグモグ……」

 

「まぁお父さんがそんな嘘吐くとは思えないし、信じるしかないと思うけど……」

 

「うんめぇ~! 桃子の作る飯、すげえうめえぞ!」

 

「あらあら、ふふっありがとう、悟空くん」

 

「「「……」」」

 

「にゃ、にゃははは……」

 

 

 士郎、恭也、美由希が真面目な話をしてる横で、これでもかと朝ごはんにがっつく悟空。

 そんな悟空に対して何とも言えない視線を送る三人だったが悟空は目の前のご飯に夢中で気づく事はない。

 そしてそんな悟空を微笑ましそうに見つめる桃子に苦笑いを浮かべるなのは。

 高町家の朝食の雰囲気は何とも混沌としていた。

 悟空の前に置かれた大盛りの朝食はみるみるうちに減っていき、あっという間に綺麗さっぱり無くなる。

 だが桃子は見逃さなかった、悟空の物足りなさそうな顔を、僅かな表情の変化を、故に。

 

 

「悟空くん、おかわりはいる?」

 

「いいんか!? じゃあおかわりー!」

 

 

 こうして悟空は二杯目のご飯をガツガツと食べ始めた。

 さらに三杯目、四杯目とおかわりは続いていく。

 とてもじゃないが炊飯器のご飯だけでは足りず冷凍庫内の冷凍ご飯まで総動員して悟空の腹を満たしていく。

 桃子を除いた面々は目を丸くして驚いた、その小さな体のどこにそんなに入るのだと思わざるを得ないほどの底なしの食欲に。

 ついでにその遠慮のなさにも、まぁおかわりはいるかと聞いたのは桃子なので悟空に非があるわけではないのだが。

 そして何のかんので朝食を食べ終えた子供達はそれぞれ準備に入る。

 

 

「お母さんお弁当は?」

 

「勿論用意してるわよ、はい。どうぞ」

 

「ありがとう! 行ってきまーす!」

 

「「行ってきます」」

 

 

 そう言ってなのは、恭也、美由希の三人は家を飛び出していった。

 ともなれば高町家に残るのは士郎、桃子、そして悟空のみ。

 そんな中、悟空は空気を目いっぱい入れたボールのようにパンパンに膨れ上がった腹を擦りながら尋ねた。

 

 

「なのは達はどこ行ったんだ? 皆弁当持ってったみてえだけど」

 

「それは勿論学校だよ」

 

「ひゃーそうか、学校かぁ……大変(てぇへん)だなぁ」

 

「そう言えば……悟空くんは学校とか通った事はあるの?」

 

「いや、オラはじいちゃんに拾ってもらった後は山暮らしだったしさ……じいちゃんが死んじまった後も暫くは山から出なかったからな、学校なんて通った事ねえぞ」

 

「そう……悟空くんは大変な人生を歩んできたのね」

 

「ん? まぁ普通じゃねえのは確かだけんど、なんやかんやで楽しかったからな、特に問題はねえとオラは思う」

 

 

 それに学校は勉強するところなんだろ? オラ勉強とか苦手だしな、と悟空はまた笑う。

 何というか底抜けに明るい子だな、というのが士郎と桃子の抱いた感想だった。

 しかもただ明るいだけじゃない、その明るさで周りの人の心も照らしてくれそうなそんな不思議な少年。

 なのはが太陽のような笑顔と思ったのもある種納得のできる話であった。

 

 

「そんじゃ、そろそろオラちょっくら行ってくっかな」

 

「地球一周……だったかな、本気でやるつもりなのかい?」

 

「あぁ勿論だ、でもすぐ帰って来るから心配はいらねえぞ?」

 

 

 そう言って悟空は玄関へと歩き出しブーツ状の靴を履く。

 そしてその後を追ってきた士郎と桃子が見つめる中――悟空の体は自然と、さも当然のように宙に浮いた。

 ジャンプしたわけではない、本当にスゥーッと、まるで膨らませた風船かのように自然に浮いたのだ。

 

 

「と、飛んでいる……!?」

 

「悟空くん凄いわ……そんな事が出来るのね」

 

「へへっ、これが舞空術だ! そう難しい技じゃねえぞ? そんじゃちょっと行ってくる!」

 

 

 悟空がそう言うとその体から白いオーラのようなものが吹き出し、その小さな体は自動車も真っ青なスピードで飛んでいった。

 ただでさえ小さいその姿がどんどんと小さくなり空へと消えていくのを士郎と桃子はただただ見つめていた。

 その過去の一端を聞いた時から思っていたがとことんまで規格外な少年だ、と改めて思う。

 そして数分後――。

 

 

「ただいまー!」

 

「早い!? もう一周してきたのかい!?」

 

「ん? 数分で一周できるって言ったじゃねえか」

 

「いや、言葉で聞くのと実際見るのとでは大分衝撃が違うんだけど……」

 

「まぁまぁあなた、良いじゃない。それで悟空くん、パオズ山って言うのは見つかったの?」

 

「それがよぉ……あちこち見て回ったんだけんど見つからなかった! ハハッ!」

 

 

 笑ってる場合じゃないはずなのに、やはり笑顔を見せる悟空。

 それが強がりゆえのものではないという事は見ている士郎と桃子には分かった。

 能天気というか何というか、どんな苦難も笑い飛ばせる強さが彼にはあるのだろうと言うのを二人は感じた。

 それはそれとして――。

 

 

「それじゃあこれから行く当てはあるのかい?」

 

「いや、ねえぞ? しょうがねえからどこかで野宿でもすっかなぁ」

 

 

 それを聞いた時、士郎は妻である桃子と目を合わせる。

 それだけで意図を汲んでくれたのだろう、桃子は笑顔で頷いた。

 考えた事がそれだけで伝わる、長い夫婦関係で育まれた確かな絆がそこにはあった。

 

 

「それじゃあ悟空くん、君さえ良かったら……家で暮らさないかい?」

 

「……いいんか?」

 

「勿論よ、それにここでお別れなんて寂しいもの。ねえ? あなた」

 

「あぁ、もちろん悟空くんさえ良ければ……だが、どうだろう?」

 

「オラとしては寝れる場所貰えるだけでも十分ありがたいんだけんど……本当に頼んでもいいんか? 士郎、桃子」

 

「あぁ僕達は君を歓迎するよ、悟空くん」

 

「改めてようこそ、高町家へ」

 

「……へへっ、ありがとうな」

 

 

 こうして優しい二人に迎えられ、悟空は暫くの間、高町家に住む事になった。

 その選択を士郎と桃子は後悔していない。

 行く当てのない子供を放り出す事なんて出来なかったし何となくだが悟空にはまだここにいてほしい、そんな思いがあったから。

 問題があるとすれば――食費ぐらいだろうか。

 受け入れたはいいものの、今後の出費は大丈夫だろうかと士郎は後になって心配になってきた。

 ――それから暫くの時が経ち、士郎と桃子が仕事のため喫茶翠屋に行く時間が訪れる。

 

 

「僕達はこれから仕事だけど……悟空くんはどうする?」

 

「そうだなぁ……それなら道場貸してもらえねえか? オラ、修行してえしよ」

 

「そうか、そう言う事なら好きに使ってくれていいよ」

 

 

 というわけで悟空は一人高町家に残り道場で修行を開始する事にした。

 早速道場に入った悟空はその立派な佇まいに少し驚いた。

 広さは十分、これなら心置きなく修行が出来そうだと感じた。

 後は壊さないように気を付けておけば問題はないだろう。

 とりあえず最初は基礎的な訓練を積み重ねる悟空。

 地味だが己を鍛えるにあたって何よりも大事なのは基礎だ、それを悟空は長年の経験から嫌と言うほどに理解している。

 だが――。

 

 

(やっぱり力はかなり落ちてんなぁ……これは元に戻るまでちょっと時間がかかりそうだぞ)

 

 

 思わずそんな事を思ってしまうほどに彼の肉体と気の弱体化は激しかった。

 これでは神の気を使うどころか普通の超サイヤ人にもなれはしないだろうというのが、ここまでの特訓での悟空の判断だ。

 実際その判断は間違っていない。

 変身の感覚こそ覚えているものの、いくら力を込めても、背中をゾワゾワさせても超サイヤ人にはなれなかった。

 変身するのに何かが足りないらしい、と悟空が理解するのにそう時間はかからなかった。

 それが単純な肉体の強さか、それとも気の強さかまでは分からなかったが。

 だがそれぐらいでへこたれる孫悟空ではなかった。

 弱くなったのならまた修行に打ち込み元の強さ――いいや、それ以上の強さを得ればいいだけの話なのだ。

 幸い時間はたっぷりあるし、今の自分の肉体が何歳相当なのかは分からないがサイヤ人は肉体の若さを長期間保てるというのもあり焦る必要性はどこにもない。

 故に前向きにトレーニングを積み重ねる悟空。

 拳を突き出す、蹴りを放つ、単純に思われる作業を繰り返して自分自身という原石をひたすらに磨いていく。

 そんな中、悟空は思う。

 

 

「やっぱりここ……別の宇宙なんかなぁ」

 

 

 気になるのはパオズ山が見つからなかった事。

 知ってる気や、それに類似した気が感じ取れないのはまだしも山そのものがどこにも存在しなかったというのは奇妙に思えた。

 そもそもの話、この地球、パオズ山の有無を除いても悟空が知る地球とは大きく異なっているというのも印象的だった。

 見たところホイポイカプセルなども存在しないようだし、地名など、何か根本的なところから違うような気がするのだ。

 ならば考えられる理由は一つ、ここは自分が住んでいた地球とはまた別の地球なのではないか、という事だ。

 そもそも宇宙とはこの世界に十二もの数が存在する、というのを悟空はしっかり覚えていた。

 かつてはそんな他の宇宙の猛者たちとしのぎを削り合い自分の腕を磨いた事だってあるからだ。

 つまりは、そのうちのどれか一つに飛ばされた――という可能性も捨てきれはしないという事である。

 それでもどうやって飛ばしたのかとか飛ばした存在の目的は何なのか、何故若返れたり生き返れたりしたのか等、色々疑問は残るわけだが。

 

 

「ま、考えててもしょうがねえか! 今はとりあえず修行に専念しねえとな!」

 

 

 その言葉と共に思考は打ち切られ、悟空はその後も一人で一心不乱に修行に打ち込むのだった。




 オッス! オラ悟空!

 いやぁ修行すんのはやっぱりいいな!

 力も気も大分落ちちまってるから、いっそう頑張って強くならねえと!

 ……ん? なんだ? 何かどっからか声が聞こえっぞ……?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「誰かが呼んでいる!? 悟空に届いたテレパシー!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三 誰かが呼んでいる!? 悟空に届いたテレパシー!

 想像以上にお気に入りの数が増えて驚いております。

 まだ二話しか投稿してないと言うのに……。

 しかももう評価も貰えましたし本当に嬉しいです!

 お気に入り登録してくれた方々、感想をくださった方々、そして評価をくださったカルなさん本当にありがとうございます。

 おかげでモチベーションはいい感じに維持出来ております、よろしければ今後もお付き合いください。

 では其之三をどうぞ。


 日が沈み始め夕暮れ時が近くなってきた。

 悟空はと言うと。

 

 

「はっ! ほっ! でりゃあっ!」

 

 

 今なお修行を続けていた。

 それも一分、一秒とて休むことなくだ。

 その額には汗の粒が浮かんでいるが悟空がその手を、そして足を止める気配はない。

 それほどに今の彼は修行に夢中になって同時に集中していた。

 この集中力とひたすら修行に打ち込める根性、ひたむきさもまた、悟空の強さの秘訣なのかもしれない。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 今度は軽く飛び上がって連続で拳を繰り出す。

 そして着地すると同時に今度は蹴りの連打を放つ。

 それを何度も繰り返した後、悟空は不意に動きを止めた。

 

 

「……うーん、やっぱりいまいちキレがねえなぁ、しょうがねえけど……よし、じゃあそろそろ……」

 

 

 修行は終わりか――と思わせておいて。

 

 

「イメージトレーニングでもすっかなぁ!」

 

 

 悟空の修行はまだまだ終わらない、寧ろ今までのは前座と言わんばかりだった。

 そっと目を閉じる。

 脳裏に浮かべるのはかつて戦った強敵達の姿。

 ――そもそもの話、孫悟空とは本人は自慢する気はさらさらなさそうだが何度も地球を危機から救い戦い続けて来た英雄と呼ぶに相応しい人物だ。

 故にイメージトレーニングの相手にも困りはしない。

 何せ幾度も経験した激しい、命がけの戦いの中でぶつかり合った強敵の数は計り知れないからだ。

 

 

「……!」

 

 

 無言で構えを取る悟空。

 今彼の眼には彼にだけしか見えない強力な戦士達の影が映っていた。

 そのうちの一人が悟空に向かって接近してくる。

 

 

「ふっ……はぁっ!!」

 

 

 その攻撃を軽くいなした悟空は掌底で反撃。

 相手の顎を捉えて脳を揺さぶる。

 そしてすかさず足払いを仕掛けて体勢を崩させた。

 そこへ――。

 

 

「でりゃあっ!!」

 

 

 渾身のパンチが相手の頭部に炸裂する。

 それを受けた相手の頭部はパンッと破裂してしまい、頭を失った体はそのまま倒れ込む。

 その姿を見届けた悟空はため息を吐いた。

 

 

「いくらオラが弱くなってるって言ってもピッコロ大魔王レベルじゃ相手になんねえか……じゃあもう少し相手のレベルを引き上げてみっかな……!」

 

 

 次に悟空が脳裏に浮かべるのは緑と黒のカラーリングが特徴的な怪物。

 その名は――セル。

 かつて悟空の息子である孫悟飯が倒した何人もの戦士の細胞とデータから生み出された究極の人造人間だ。

 先ほどのピッコロ大魔王とは比べ物にならない殺気と迫力。

 悟空の目つきは一層鋭くなる。

 だがその顔はどこか楽しそうでもあった。

 そして――暫しの静寂の後、イメージ内のセルが動き出す。

 

 

「――っ!」

 

 

 セルの腕と悟空の腕がぶつかり合う。

 即座に悟空は力任せにセルの腕を弾き懐に入り込む。

 体が小さくなるという事はそれだけリーチも短くなるという事、故に今の悟空が相手に攻撃をするためには極限まで相手に接近しなくてはならないのである。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 懐に入り込んだ悟空は殴りと蹴りが混じったラッシュを叩き込む。

 しかし――。

 

 

「くっ……!」

 

 

 悟空の放った渾身のラッシュをセルは片手だけで防いでしまう。

 イメージのセルの顔に浮かぶ余裕という二文字、だが悟空とて歴戦の戦士、このままでは終わらない。

 左の拳がセルに掴まれる。

 そこですかさず右の拳でアッパーを繰り出しセルの顎を捉え体を宙に打ち上げた。

 そのまま悟空は隙だらけの胴体に連打を打ち込む!

 

 

「でえええりゃあああああっ!!」

 

 

 最後に回し蹴りを腹部に打ち込んで吹き飛ばした悟空。

 だが着地と同時に悟空は再び構えを取る。

 その眼にはまだ闘志の炎が燃えていた。

 この程度で倒せるほど柔な相手でない事を悟空は嫌と言うほど知っていたからだ。

 現にセルを飛ばした方向からは――高速のビームのようなものが飛んできた。

 

 

「やべえ!」

 

 

 それを体を逸らして何とか避ける悟空。

 しかしビームは次から次へと飛んでくる。

 それを体を曲げて、時には飛ぶ事で避ける――が。

 

 

「はっ!?」

 

 

 気が付けばビームの嵐は止みセルの姿もどこかへと消えていた。

 警戒しながら周囲を見回す、だがどこにもセルの姿はない。

 が、悟空の長年の戦闘で鍛えた勘が、危機察知能力がセルの居場所を教えてくれた。

 にじみ出ている僅かな殺気、それを頼りに――悟空は背後に渾身の蹴りを放つ!

 と、そこまでは良かったのだが。

 

 

「いいっ!?」

 

 

 悟空の渾身の蹴りは受け止められてしまっていた。

 しかも足はガッチリと掴まれて離れる事が出来ない。

 そこへセルは何も掴んでいない自由なもう片方の手を大きく開き悟空へと向けるとエネルギー波――気功波を放つ。

 悟空は足を掴まれているため避ける事も出来ずその気功波に飲まれた。

 勝敗はここに決した。

 

 

「ふはぁ~……」

 

 

 その場に倒れこむ悟空。

 汗の粒をいくつも浮かべ息を切らしながら悟空は上半身だけを起こす。

 

 

「めえったなぁ……何となく分かっちゃいたけど今のオラじゃセルにすら勝てねえんか……」

 

 

 せめて超サイヤ人になれればなぁと悟空は一人考える。

 だがすぐにそんな事を考えていても仕方ない、と思考を切り替えた。

 と、その時何か胸の辺りに違和感を感じた。

 

 

「ん? なんだ、何か入ってるんか?」

 

 

 悟空はそう言いつつゴソゴソと胸元に手を突っ込み探る。

 するとコツンと何かが手に当たった。

 悟空はそれを掴んで勢いよく引っ張り出す。

 

 

「あっ!? こ、これは――」

 

 

 出て来たのはオレンジ色に輝く半透明の球。

 中には赤い星が入っておりどこか神秘的な雰囲気を漂わせるそれは悟空にとってはとても馴染み深いものだった。

 

 

「ドラゴンボール! しかも四星球(スーシンチュウ)じゃねえか、ははっ!」

 

 

 四星球(スーシンチュウ)を見た時、悟空は何とも言えない嬉しさを感じ思わず笑みを零した。

 ドラゴンボールという物は悟空にとってはとても縁が深いもので、さらにその中でも四星球(スーシンチュウ)は育ての親とも言えるじいちゃん、孫悟飯の形見でもあるから尚更馴染み深い。

 何故こんなところに四星球(スーシンチュウ)があるのか、それは分からなかったが何はともあれ嬉しいというのが悟空の思いだった。

 

 

「ずっと懐に入ってたんかぁ……飯や修行に夢中で全然気づかなかったぞ」

 

 

 しかし四星球(スーシンチュウ)がここにあるという事は残り六つのドラゴンボールもどこかにあるのだろうか、と一瞬考えたが悟空はすぐに考えるのを止めた。

 どの道ドラゴンレーダーが手元に無い以上探しようがないわけだし考えても無駄だと思ったからだ。

 とりあえず手持ちの袋に四星球(スーシンチュウ)はしまっておく事にした悟空。

 彼はその袋を道着の帯に結び付けると一呼吸おいて――。

 

 

「よし! 修行再開すっかぁ!」

 

 

 なんて事を言いだした。

 あれだけやってもまだまだ足りないらしい。

 というわけで早速再度イメージトレーニングに入ろうとした、その瞬間。

 

 

(誰……か……)

 

「ん? なんだ……声が聞こえっぞ、いや、違えな……頭の中に声が響いてきてんだ」

 

(誰か、助けて……)

 

「!!」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、悟空は道場を飛び出して舞空術で空を飛び、全速力でどこかに向かい始めた。

 悟空は気を探る、だが――。

 

 

「……駄目だ! 人が多いからどれが声の主か、さっぱり分かんねえ……だけんど!」

 

(誰か……お願い、します……)

 

「待ってろ、すぐに行くかんな」

 

 

 今にも死んでしまいそうな弱弱しい声。

 とても放ってはおけなかった、お人好しとも言われる悟空にとっては尚更だ。

 悟空は逆探知のように声の発生源を辿りながら空中を高速で移動する。

 そして。

 

 

「あそこだな……!」

 

 

 辿り着いたのは木々の生い茂った舗装のされてない荒い一本道。

 悟空が気を探るとその道の先に弱弱しい気が一つあるのが感じ取れた。

 上空からじゃ木が邪魔でよく見えないのでここからは着地して走る、ただひたすらに走る。

 修行の疲れなど何のその、悟空は走り続けて――遂に見つけた。

 

 

「キュウ……」

 

 

 そこにいたのは一匹のイタチ? フェレット? とりあえずそれっぽい動物だった。

 よく見なくても体は傷だらけで鳴き声も弱弱しい。

 

 

「おめえか、オラに呼びかけてたんわ……ひでえ傷だ……気も弱くなってるこのままだと少しやべえな」

 

 

 悟空はそのフェレットもどきをそっと手の平に乗せる。

 生憎と治療用の道具は持ってないし、万能の回復薬とも言える仙豆も手元にはない。

 薬草でもあれば治療用の薬の調合くらいは出来るかもしれないが近くには見当たらない。

 ならば出来る事はただ一つ。

 

 

「はあぁぁぁぁぁ……」

 

 

 暖かな光がフェレットもどきを包み込む。

 悟空がやってるのは気の分け与え、と言っても大量に分け与えると害になりかねないから少しずつではあるが。

 これで少なくとも小さくなってる気は回復するはずである、現に。

 

 

「キュ……?」

 

「お、目ぇ覚めたか? おめえだろ? 助けてくれって言ってたの」

 

「キュキュ!?」

 

「おっとっと、あまり動かねえ方がいいぞぉ。オラの気を分けたって言っても傷は治ってねえんだからよ」

 

「キュ?」

 

 

 問題はここからだ。

 このまま逃がしてもこの傷では生き残るのは難しいだろう。

 やはりある程度治療はしなくてはいけない、だがその手立てがない。

 そこへ――。

 

 

「ちょっと――どうしたのよ!?」

 

「――ちゃん!?」

 

「ん? この気は……」

 

「キュ……?」

 

 

 悟空は声が聞こえ気を感じた方向に振り向く。

 声は聞いた事のない声だったがこちらに近づいてくる気は知ってるものだったから。

 すると向こう側から現れたのは。

 

 

「はぁっ……はぁっ……あれ? 悟空……くん?」

 

 

 朝に出会った少女、高町 なのはだった。




 オッス! オラ悟空!

 やっぱりなのはだったかぁ、へ? おめえも呼ばれたからここに来たんか?

 ……まぁいいや、で。そっちにいるんがなのはの友達だな。

 ん? どーぶつびょーいんってところに行けばこいつの治療が出来るんか、そんじゃ急ぐとすっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「悟空となのは、二人を呼ぶ謎の声!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四 悟空となのは、二人を呼ぶ謎の声!!

 新たにお気に入り登録をしてくださった方々、感想をくださった方々、評価をくださった一神龍さんとバウさんありがとうございます!

 おかげさまで非常にテンションが高まり溢れております。

 書き溜めも溜まる溜まる……この調子でジャンジャン書いていきたいもんです。

 では其之四をどうぞ!


「お? オッス! なのはじゃねえか」

 

「どうして悟空くんが……」

 

「いや、実は助けを呼ぶ声が聞こえてよ。急いで来てみたらこいつがいたんだ」

 

「キュー……」

 

 

 悟空はそう言って手の上に乗っけたフェレットのような生き物をなのはに見せる。

 フェレットと思われるその生き物は悟空の手の上で小さく弱弱しく鳴いた。

 

 

「声って悟空くんも……? いや、それよりもこの子フェレット、かな。酷い怪我してる……」

 

「へぇこいつフェレットって言うんか……まぁいいや、それよりもこいつをこれからどうするか今考えててよ……」

 

「んー……確かに動けそうではあるけどこの傷のまま放っておくのはね……あ、それなら動物病院に――」

 

「なのはー!」

 

「なのはちゃーん!」

 

 

 なのはの言葉は途中で後方から聞こえて来た声によってかき消された。

 悟空となのはは揃って声がした方向に顔を向ける。

 するとそこにいたのは金色の髪をした少女と紫髪の少女という何ともカラフルな印象を受ける二人組だった。

 二人はそれぞれ大なり小なり息を切らしながらなのはの側まで寄ってきて足を止める。

 

 

「はぁ……はぁ……一体どうしたのよ、急に走り出して……」

 

「そうだよ、なのはちゃん……」

 

「あ……ご、ごめんね。二人とも」

 

 

 二人に対し謝るなのは。

 そんな光景を悟空はフェレットを手に乗せながら眺めていた。

 

 

「ところで……誰よ、そいつ? なのはの知り合い?」

 

「ア、アリサちゃん……もうちょっと言葉を優しく……」

 

「にゃはは……えっと、この子は悟空くん、今朝話したでしょ? お父さんが拾ってきた男の子だよ」

 

「オッス! オラ悟空、なんだ。なのはの友達か?」

 

「うん、こっちがアリサちゃんで、そっちがすずかちゃん。私の友達だよ」

 

 

 なのはがそう言うと一応二人は挨拶を始める。

 まずは金髪の少女、アリサと呼ばれた子から。

 

 

「ふーん、あんたがねぇ……私はアリサ・バニングスよ」

 

「私は月村 すずか。よろしくね」

 

「おう、よろしくな! ……おっとこいつを忘れるところだったぞ、早く治療してやんねえと」

 

「あ、そうだったね。とりあえず近くの動物病院に行こう? そこでなら治療してもらえるはずだよ」

 

「どうぶつびょーいん……そんなのがあるんか、じゃあ悪りいんだけんど案内頼んでいいか?」

 

「うん、勿論!」

 

「よく分からないけどそのフェレットのために動物病院に向かうってわけね、いいわ。私達も付き合う」

 

「この子元気はあるみたいだけど怪我は酷いね……急ごう?」

 

 

 こうして悟空と三人の少女は動物病院へと向かって歩き出した。

 傷だらけのフェレットは弱弱しく鳴く。

 そんなフェレットを悟空は小さくなった自分の手でそっと抱きながら歩くのだった。

 

 

 

「暫くは安静にしてた方がいいけど……もう大丈夫よ、どういうわけかあまり衰弱もしてなかったし」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

「もう大ぇ丈夫だってよ、良かったな」

 

「キュー……」

 

 

 結果、フェレットは無事治療してもらう事が出来た。

 衰弱していなかったのは悟空が気を分けたおかげなわけだが悟空にとってはそれはどうでもよく、無事ならばそれで十分だった。

 一応明日まで預かっておくという動物病院の先生に改めてお礼を言って四人は病院を出る。

 

 

「もうこんな時間……フェレットも無事だったし帰ろうかな」

 

「おう、そうだな!」

 

「あれ、そう言えば悟空くんは……」

 

「あり? そういや言ってなかったか、オラ暫くはなのはの家に住まわしてもらう事になったんだぞ?」

 

「えぇ!? そうなの!?」

 

 

 突然の居候宣言になのははただただ驚くしかない。

 対し悟空は頭を掻きながら笑っていた。

 

 

「なのはも大変ね……ところであのフェレットどうする? 私の家は犬がいるから厳しいし……」

 

「私の家も猫達が……」

 

「うーん……うちも食べ物取り扱ってるから厳しいかもしれないけど一応聞いてみる!」

 

 

 なのはは気合を入れてそう言った。

 もし駄目であれば可哀想な事にあのフェレットの行く当てが無くなってしまう。

 何とかして許可を貰わなければ、なのはは密かに決心を固め燃えていた。

 

 

「んじゃ、帰っか」

 

「うん、それじゃあね。二人とも、また明日!」

 

「えぇ、また明日」

 

「またね、なのはちゃん。悟空くんも」

 

「あぁまたなー!」

 

 

 こうして帰路に就いた悟空となのは。

 悟空は舞空術で飛んでいっても良かったのだが特に急いで帰る用事も特に無かったのでなのはに合わせて徒歩で帰る事にした。

 二人は何気ない会話を交わしながら高町家へと歩を進めていく。

 そして――。

 

 

「ただいまー」

 

「たでえまー! 帰ったぞぉ」

 

「おっ、お帰り。なのは、悟空くん。二人一緒だったのかい?」

 

「うん、ちょっとね」

 

「偶然会ったからよ、一緒に帰って来たんだ!」

 

 

 出迎えてくれた士郎に対し悟空となのははそう言って靴を脱いで家に上がる。

 そのままリビングへと行き桃子達にもただいまを言った後、手洗いうがいをちゃんと行い、なのはは意を決して言葉に出した。

 ちなみに恭也と美由希は悟空の居候の件はもう聞かされていたのだろう、特に驚く事もなく悟空の事を受け入れていた。

 

 

「あの……ちょっと皆にお話があるんだけど……」

 

「なんだい、なのは。改まって」

 

「そうだぞ、らしくもない」

 

「お話って何? なのは」

 

「えっとね……」

 

 

 なのはは話す、悟空と共に傷だらけのフェレットを見つけた事。

 そしてそのフェレットを治療して今は動物病院に預けている事。

 ――そのフェレットを高町家で預かれないかという事を。

 それを聞いた一同の反応は。

 

 

「ん~……フェレット、動物かぁ」

 

 

 何とも微妙なものだった。

 それもそうだろう、喫茶店と言う飲食に関係する職業に就いてる以上、衛生面的な観点から動物を飼うというのは頷きがたいものがある。

 分かってはいた事だ、それを承知の上でお願いしたのだから。

 ここは援護射撃を求めるしかない、なのははそう考えて悟空の方を向く。

 

 

「ご、悟空くんも一緒にお願いしてくれないかな?」

 

「そうは言ってもよぉ……オラも拾われた身だかんなぁ……なぁ士郎、桃子、駄目か?」

 

 

 その言葉が今、悟空に出来る精いっぱいの援護射撃だった。

 対し士郎はまだ「ん~」と頭を悩ませている。

 出来る事なら二人のお願いは聞いてやりたい、だが先ほど言ったように飲食物を提供する身である以上動物は……と言う気持ちもある。

 そんな気持ちの競り合いの中で士郎が悩む中、桃子は。

 

 

「いいんじゃないかしら? ちゃんとお世話するなら私は賛成よ?」

 

「本当!?」

 

「えぇ、あなたもそんなに悩むくらいなら二人のお願いを聞いてあげたらどう?」

 

「うーむ……そうだな、分かった。許可しよう」

 

「ありがとう、お父さん、お母さん!」

 

「二人とも悪りいな、我儘言っちまってよ」

 

「いいんだよ、気にしなくて。今日からは君も高町家の一員なんだから」

 

「うふふ、そうね。さぁ問題も解決したところでご飯にしましょうか」

 

「飯!? 飯か! 桃子の作る飯は美味いからな、楽しみだぞぉ!」

 

 

 はしゃぐ悟空。

 そんな悟空を見ながら高町家の面々は微笑んでいた。

 孫悟空という少年は、出会ったばかりとは言えその笑顔と人柄で周りを明るく照らしてくれる、そんな存在だと高町家の面々は思い始めていた。

 というわけで早速一同は席に着く。

 テーブルの上に並ぶのは豪勢かつ家庭的な料理の数々。

 桃子曰く悟空が高町家に来た記念として今日は多めに尚且つ豪華に作ったらしい。

 もちろんご飯もたっぷり炊いてある、これもまた完全に悟空対策だった。

 

 

「今日も最高に美味そうだなぁ、それじゃ皆食べようか」

 

 

 士郎の言葉を聞いて両手を合わせる。

 そしてその口から「いただきます」という言葉を紡ごうとした瞬間だった。

 

 

(誰か……助けて!)

 

「え――!?」

 

「お? この声……」

 

 

 聞き覚えのある声が脳裏に響いた。

 だが。

 

 

「ん? どうかしたかい? なのは、悟空くん」

 

「何かあったの? 二人とも」

 

 

 どうやら聞こえていたのは悟空となのはだけのようだった。

 その証拠に突然動きを止めた二人に他の四人は不思議そうな視線を送っている。

 困惑するなのは、ポカンとする悟空。

 さらに声は響いてくる。

 

 

(お願いします、誰か!)

 

 

 その声をもう一度聞いたその瞬間、なのはは動き出していた。




 オッス! オラ、悟空!

 なのはの奴飛び出していっちまった。

 それに、なんだ……? すげぇ嫌な気を感じっぞ。

 なのはは嫌な気のある方向に向かってる……こりゃ放っておくわけにはいかねえな、飯早く食いてえけどオラも行くとすっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「二人に迫る脅威!? 現れた謎の怪物!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之五 二人に迫る脅威!? 現れた謎の怪物!

 新たにお気に入り登録をしてくださった皆さんに評価を入れてくださった« 誘宵 »さんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあっていい感じにこの小説の続きも書けております。

 テンション任せに書いたので後で細かい修正は必須ですが……。

 それはそうと、其之五をどうぞ!


「ちょ、なのは!?」

 

「おい、どうしたんだ!?」

 

「ごめんなさい、ちょっと行ってくる!」

 

「行くってどこへ――」

 

 

 家族の制止も振り払いなのはは家を飛び出した。

 突然の出来事。しかも普段こんな真似は絶対にしない、なのはの行動と言う事もあり高町家の面々は混乱していた。

 そんな中、悟空だけは混乱せずに冷静に気を探っていた。

 

 

「……嫌な気を感じっぞ」

 

「「「「え?」」」」

 

 

 視線が悟空に集まる。

 そして高町家の面々はさらに驚いた、悟空の表情は見た事ないほどに真剣そのものだったからだ。

 朝から何度も見て来た能天気な顔も明るい笑顔も今は隠れてしまっている。

 その表情の変化に只事ではない事は何となく察せた。

 

 

「多分動物病院のとこだ、なのははそこに向かってる……オラも行ってくる」

 

「ま、待て! 何でそんな事が分かるんだ!?」

 

「気を感じっからさ、なのはの気が向かう先に嫌な気を感じる。これは多分偶然じゃねえ」

 

「気……? 悟空、お前何を言って――」

 

「まぁ待ちなさい、恭也。悟空くん、それはつまりなのはが危ないって事でいいのかな?」

 

「あぁ、多分な。でもオラなら何とか出来る」

 

 

 その眼には相も変わらず迷いも嘘も感じられなかった。

 士郎は少しだけ目を瞑り考える。

 そして一度溜め息を吐くとこう言った。

 

 

「悩んでる時間はないか……悟空くん、悪いけどなのはの事頼めるかい?」

 

「父さん!?」

 

「お父さん!?」

 

 

 父である士郎の言葉に恭也と美由希は驚く。

 無理もないかもしれない。

 二人にとって悟空は見た目からしてなのはとそう歳の変わらない、ちょっと変なだけの男の子なのだから。

 そんな子供になのはの事を任せる、それは到底納得のいく話じゃなかった。

 

 

「落ち着くんだ、二人とも。悟空くんなら大丈夫なはずだ、僕にはその確信がある」

 

「確信って……」

 

「……悟空くん、なのはの事お願いね? 出来るだけ早く帰って来るのよ?」

 

「お母さんまで……」

 

「サンキュー、二人とも。そんじゃちょっくら行ってくっぞ!」

 

 

 そう言って悟空は飛び出した。

 その後ろを恭也が追う。

 

 

「待て、悟空! 俺も――!?」

 

「はあああああっ!!」

 

 

 恭也は思わず自分の目を疑った。

 悟空の体から吹き出すもの、それは白いオーラ。

 さらに悟空の体は宙に浮かび流星の如きスピードで飛んでいった。

 人が空を飛ぶ、そんな非現実的なその光景に思わずポカンとしてしまう恭也。

 だがすぐに我に返り一旦リビングへと戻る。

 

 

「父さん、俺も行ってくる! やっぱり心配だ、動物病院ならここからそう遠くはない!」

 

「待つんだ、恭也!」

 

「悟空が行って良くて俺が駄目って事はないだろう? それに一応武器は持ってくから大丈夫さ! それじゃあ行ってくる!」

 

 

 そう言って恭也もまた二人を追って家を飛び出した。

 もはや静止の声は届かない。

 士郎はやや厳しい面持ちで頭を掻く。

 そんな夫に妻である桃子は。

 

 

「大丈夫よ、あなた。なのはも恭也も――悟空くんも」

 

「あぁ……そうだね、今は信じよう。あの三人を」

 

「恭ちゃん、なのは、悟空くん……」

 

 

 三人は多数の料理が並ぶ食卓でただただ祈る事しか出来なかった。

 だが士郎と桃子の胸中には心配だけじゃなく何故か安心感もあったのは紛れもない事実である。

 それはきっと――孫悟空が向かってくれたからだろう。

 あの不思議で非常識な少年ならきっと何があっても大丈夫、そんな謎の信頼感がそこにはあった。

 

 

 

 海鳴市上空。

 そこを悟空は高速で飛行していた。

 まだ春という事もあり少々肌寒くはあったが気にしてる暇はない、悟空は飛びつつ気を探る。

 そしてあっという間に見つけた。

 

 

「おーい! なのは!」

 

「えっ、悟空くん……? あれ、どこ?」

 

「上だぞ」

 

「上……!? ご、悟空くんが飛んでる!?」

 

「へへっ、驚れえたか? 舞空術っちゅう基本的な技なんだけどなぁ」

 

「基本的って……私、空を飛ぶ人なんか見た事ないんだけど……」

 

 

 なのはの中で悟空という存在はますます不思議な存在となっていた。

 光の中から現れたとされ、空も飛べる。

 そう考えると何ともミステリアスというか摩訶不思議な少年である。

 

 

「まぁいいじゃねえか、細かい事はさ。それよりも……動物病院に向かってるんか?」

 

「え? うん……何だか呼ばれてる気がするから」

 

「なのはもか……でも悪い事は言わねえ、今のうちに家に(けえ)れ。動物病院の方向には嫌な気を感じる、行ったらきっと危ねえ目に遭うぞ」

 

「嫌な気……?」

 

 

 悟空が何を言っているのか、なのはには分からなかったがこの先に危険な何かがある、というのは何となく理解出来た。

 だが――。

 

 

「ごめん、それは出来ないよ……だって呼んでるんだもん、助けてって……誰かが私を呼んでるんだもん!」

 

「……なのは、おめえ」

 

「ごめんね、悟空くん。もう私は行くから――」

 

「そういう事ならしょうがねえな、オラも行くぞ!」

 

「えっ……いいの?」

 

「いいも何も最初っからオラは動物病院に行くつもりだったからな、出来ればなのはは帰したかったんだけんど帰る気がねえならしょうがねえ、オラが守ればいいだけの話だ」

 

「悟空くん……ありがとう」

 

「へへっ、そんじゃ急ぐぞ、なのは!」

 

「うん!」

 

 

 二人は走り出す。

 動物病院までの距離はもうそう遠くはない。

 地面を蹴り駆ける、駆ける、ひたすらに暗くなり街灯に照らされた道を駆け抜ける!

 その結果。

 

 

「ご、悟空くん……ちょ、ちょっと待って……」

 

「……なのは、おめえ足遅えぞ」

 

 

 なのはは悟空に置いていかれていた。

 そもそもの話、なのはは運動音痴だ。

 そして悟空は武道家で体を鍛えているため足は相当に速い。

 その二つの要素が合わさった結果こうなってしまったのである。

 なのはは息を切らしながらも言葉を紡ぐ。

 

 

「ご、悟空くんが速すぎるんだよ……!」

 

「しょうがねえなぁ、ほれ。なのはのスピードに合わせてやっから急ぐぞ」

 

「う、うん……」

 

 

 悟空はなのはのスピードに合わせながら走りだした。

 これなら置いていかれる心配はないだろう。

 そして二人はそのまま駆け抜け、ついに動物病院に辿り着いた。

 

 

「つ、着いた……」

 

 

 夕方にもここには来たが今はその時とはまるで違う、何か嫌な空気みたいなものが充満しているように感じられた。

 なのはは息を切らしつつも周囲を見回す。

 そして悟空は周囲の気を探った。

 

 

「さてと、嫌な気の出どころは……!」

 

 

 だがなのはにとっては一難去ってまた一難。

 突然目の前の動物病院の壁が吹き飛んだのである。

 咄嗟に悟空がなのはの前に立ち、飛んでくる瓦礫などを跳ね除ける。

 

 

「大ぇ丈夫か、なのは!?」

 

「うん……ありがとう悟空くん、でも一体何が――」

 

「キュゥー!!」

 

「「あっ!!」」

 

 

 その鳴き声には聞き覚えがあった。

 間違いない、先ほど助けたフェレットだ。

 そのフェレットは全身の至る所に包帯を巻いた姿のまま病院内から飛び出してくる。

 そんなフェレットを追い飛び出してくる、影が一つ。

 

 

「おめえ、こっちに来い! 早く!」

 

「キュッ!?」

 

 

 なのはを守るために側を離れるわけにもいかない悟空はフェレットに対して声をかける。

 その声を聞いたフェレットはちゃんと反応を示し、悟空の方に走りだした。

 しかしそれは同時にフェレットを追う影をもこちらに引き寄せるという事。

 だが悟空とて馬鹿ではない、しっかりと対策は考えていた。

 

 

「そのフェレットを虐めてるんは……おめえかあっ!!」

 

 

 悟空はそう言いながら標的を睨み付ける。

 そして拳をゆっくりと構えた。

 次の瞬間!

 

 

「はぁっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 悟空は勢いよく拳を突き出す。

 それから間もなくフェレットを追いかけていた影は吹き飛び近くの塀に激突した。

 砂煙が上がる。

 その間にフェレットは悟空のもとに辿り着きその肩の上に乗った。

 

 

「もう大ぇ丈夫だぞ」

 

「ありがとうございます……来てくれたんですね」

 

「ふぇ、フェレットが喋った!?」

 

「ん? そんなに驚くような事なんか?」

 

「え、えぇ……」

 

 

 フェレットが喋ったと言う衝撃的な事実になのはは眼を丸くしつつ悟空のけろっとした反応に困惑する。

 悟空からしてみれば喋る動物など珍しくもなんともない。

 喋る恐竜やら、イルカやら、ウミガメやら様々な生き物と関わり合いになった経験は伊達ではなかった。

 それはそうと――。

 

 

「ところで悟空くん、今何したの?」

 

「簡単だぞ、拳を突き出した時に発生する衝撃波であいつをふっ飛ばしただけだ」

 

 

 何という非常識な戦い方。

 もしかして悟空くんってもの凄く強いのでは? なんて疑問がなのはの中には浮かんでいた。

 しかしのんびりと会話している暇はない。

 

 

「ギシャアアアアアッ!!」

 

「「「!!」」」

 

 

 気が付けば土煙の中からは真っ黒な謎の生き物――いや、怪物が飛び出してきており雄たけびを挙げていた。

 そんな怪物に対し悟空はそっと構えを取る。

 その眼は能天気でも何でもない闘志に満ちた戦士の眼だった。




 オッス! オラ、悟空!

 なんだ、ありゃ。見た事ねぇ生き物だなぁ。でもあいつが嫌な気の出どころみてぇだ!

 いぃっ!? こいつ攻撃を与えても再生しちまうぞ!?

 しょうがねぇ……こうなったら久々にアレ、使ってみっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「これがオラの十八番(おはこ)! 放て、必殺のかめはめ波!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之六 これがオラの十八番(おはこ)! 放て、必殺のかめはめ波!!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さん、感想を書いてくださった方々、評価を入れてくださった蜂蜜野郎さん、ひまじんホームさん、ラットイコールトリさん、カラエフフさん、ぼるてるさん、ありがとうございます!

 これだけの評価や感想、お気に入り登録をいただけるとは思わず滅茶苦茶驚いております。

 しかも日間ランキングにも一時的に乗る事が出来ましたし、これも応援してくださってる皆様のおかげ、本当にありがとうございます!

 さて長い話は活動報告の方でやるとして今年最後の投稿となる其之六をどうぞ!

 あ、よろしければ来年も引き続きよろしくお願いします!


「な、何あれ……」

 

 

 なのはは思わず後ずさる。

 それもまた当然の反応だった。

 目の前にいる怪物は明らかに非日常の存在、ごく普通の日常の中で生きて来たなのはにとっては恐怖以外の何者でもない。

 だが孫悟空は違う。

 

 

「なのは、悪りいけどこいつ預かっててくれ」

 

「え……う、うん」

 

「な、何する気ですか!?」

 

 

 なのはに手渡されたフェレットから心配の声が上がる。

 なのはもそれには同意見だった。

 そんな一人と一匹に対し悟空はさらっと言ってのける。

 

 

「このまま放っておく事は出来ねえからな、あいつをぶっ倒す!」

 

「「えっ!?」」

 

 

 一人と一匹が驚くのも束の間、悟空は駆けだしていた。

 静止する暇など当然ない。

 凄まじい速度、まるで自動車のようなそんなスピードと勢いで駆ける悟空はあっと言う間に怪物との距離を縮める。

 あまりの速さに怪物はその眼を見開かせた。

 それはつまり悟空のスピードについて行けてないという事、という事は当然――隙は生まれる。

 

 

「だりゃあっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 悟空の助走をつけた拳が怪物の顔面にめり込み、その巨体を吹き飛ばす!

 さらに悟空の体から白いオーラが噴出、悟空は宙を飛びながら怪物が飛んでいった方向に先回りして今度はその体を天高く蹴りあげる。

 まだ攻撃は終わらない、悟空はもう一度宙に浮かび先回りし、かかと落としを叩き込む。

 防御する暇などなく地面に勢いよく落下する怪物。

 衝撃でアスファルトは砕け土煙が上がる。

 そんな一連の悟空の攻撃をなのはは電柱の影に隠れながら何とか目で追っていた。

 

 

「す、凄い……」

 

「こんな人がいるなんて……でも駄目です! あいつは……!」

 

「え?」

 

 

 フェレットの言葉の意味をなのははすぐに理解する事になる。

 土煙が吹き飛ぶ。

 中から現れたのは当然怪物、だが問題はその姿だった。

 あれだけの攻撃を加えられたのにピンピンしているのだ。

 目立った傷も見当たらない。

 絶望がなのはを襲う、あんな凄い悟空の攻撃があまり効いてないのだからしょうがないだろう。

 だが――。

 

 

「ひゃー、あれだけオラの攻撃を受けて殆どダメージないんか。おめえ中々やるじゃねえか」

 

 

 悟空は――笑っていた。

 それはまるで戦いを楽しんでいるようにも見えて、なのはは悟空という存在をますます不思議に感じる。

 自分の攻撃があまり効いてないのにどうして笑っていられるのだろう。

 そんな事を考えてるなのはに魔の手が迫る。

 

 

「ギ……ッ!!」

 

「えっ……!?」

 

 

 突如として怪物の大きな目がギョロリとなのはの方を向き同時にニヤリと笑ったような気がした。

 それに違和感を感じたのも束の間、怪物の体から触手のようなものが伸びてなのはの方に迫る。

 

 

「きゃっ!?」

 

「あ、危ない!」

 

 

 思わず目を瞑るなのは、だがいつまで経っても衝撃は来なかった。

 恐る恐る目を開ける、するとそこには。

 

 

「大ぇ丈夫か? 二人とも」

 

 

 悟空がいた。

 上空にいたのにも関わらずいつの間にかなのはの目の前に移動して飛んできた触手全てをその両手で握りしめて受け止めている。

 怪物は必至に触手を引っ張って抜け出そうとしているがビクともしない。

 

 

「汚ねえ奴だ……戦えねえ、なのはの方を狙うなんて、オラちっとばかし怒ったぞ!!」

 

 

 顔が見えなく背中しかなのはには見えなかったが悟空の怒りが伝わって来る。

 それが頼もしくもあり、同時に少し怖いとも思ってしまったなのはの事は誰も責められまい。

 それだけ今の悟空の迫力は凄まじかった。

 そこへ――。

 

 

「なのは、悟空! 無事か!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「お、恭也じゃねえか」

 

 

 やって来たのは木刀を手に持った恭也だった。

 悟空に遅れて家を飛び出した恭也がようやく追いついたのである。

 だが恭也はすぐにその眼を見開く。

 

 

「な、なんだ……あの化け物は」

 

 

 現在悟空に触手を掴まれているため身動きが取れなくなっているとは言え見た事もない怪物がそこにいたのだから無理もない。

 だがそんな恭也を余所に悟空は何かを思いついたように頷いた後、こう言った。

 

 

「恭也! なのはとフェレットの事、頼めっか?」

 

「え、あ、あぁ……」

 

「サンキュー! これで心置きなく戦えっぞ!」

 

 

 悟空はそう言うと鋭い目つきで怪物を睨み両腕に掴んだ触手を思いっきり引っ張った。

 凄まじい馬鹿力に引っ張られた怪物の巨体はそのまま悟空の方へと引き寄せられて――。

 

 

「でりゃあっ!!」

 

 

 ギリギリまで接近したところでその胴体に悟空の蹴りがめり込んだ。

 と同時に悟空は触手から手を離す事で怪物は吹っ飛んでいく。

 さらにそんな怪物に悟空は凄まじいスピードで追いすがり、その拳を強く握る、そして!

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「グガアアアアアッ!?」

 

 

 叩き込まれるラッシュ。

 怪物の体はところどころ陥没し、その眼が苦痛で歪む。

 さらに数え切れないほどラッシュを叩き込んだ後、悟空はその場でクルリと回転し。

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

 

 回し蹴りを怪物の側面に叩き込んだ。

 怪物は近くの塀に勢いよく激突、再び砂埃を舞い散らせる。

 そんな悟空の戦いっぷりを、見るからに重たい攻撃の数々を見ていたなのはと恭也、そしてフェレットは誰もがポカンと口を開けて、少し間抜けな表情を浮かべていた。

 

 

「やっぱり悟空くん強い……」

 

「なんなんだ、あいつ……本当に人間か?」

 

「……気を付けてください! そいつは普通の攻撃じゃそう易々とは倒せません!」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「アレでも倒せないって言うのか……? ……ってフェレットが喋った!?」

 

 

 恭也の驚きなど何のその、なのはは心配そうに悟空を見つめる。

 対し悟空は土煙の方を睨み付けたまま構えていた。

 あれで倒せていないのは気を察知すれば容易に理解する事が出来るから気は一切抜いていない。

 そこへ、今度はこちらの番と言わんばかりに土煙から怪物が飛び出して来た。

 高々と飛び上がった怪物は空中で一瞬静止、そして隕石の如く悟空目掛けて体当たりを行う。

 

 

「よっ」

 

 

 悟空はそれを軽々と回避、だがそんな悟空に対し怪物の追撃が入る。

 伸びて来たのは無数の触手、それら一つ一つが悟空の体を貫かんとばかりの勢いで迫って来る。

 だが悟空は冷静に対処を行っていく。

 

 

「はっ! だっ! でりゃあっ!」

 

 

 拳が、蹴りが、触手を弾いていく。

 それを見て触手攻撃は通じないと判断したのか怪物は今度は真っすぐ体当たりをしてきた。

 しかし悟空はそれも予想していたのか、まるで動じずに両手を前方に伸ばす。

 そのまま悟空の両手にぶつかる怪物の巨体。

 だが悟空は僅かに後ろに下がっただけでその体当たりを苦も無く受け止めた。

 これには怪物も驚愕の色を浮かべる。

 

 

「ギギッ!?」

 

「へへっ、この程度じゃオラは倒せねえぞ……だりゃっ!」

 

 

 驚愕で動きが止まっていた怪物に対し悟空はその巨体を軽々と蹴りあげた。

 そして重力に従い落下してくるその巨体を睨みながら右の拳を強く握る。

 そのまま落ちて来た怪物に目掛けて悟空は拳を突き出す!

 

 

「だあっ!!」

 

「グギャッ!?」

 

 

 真っすぐ吹き飛んでいく怪物。

 地面を転がりながら怪物は何とか体勢を立て直す。

 今度のはそれなりにダメージが入ったようだがまだまだ動けそうだった。

 そんな怪物を見ながら悟空は言う。

 

 

「こりゃこのままじゃいつまで経っても終わらねえな……しょうがねえ!」

 

 

 そう言って悟空は独特な構えを取る。

 そんな悟空を見ながらフェレットは思った。

 このままではいけない、今こそ優勢ではあるが相手には再生能力がある、ともなればいずれジリ貧となるのは明白だった。

 だからこそフェレットは今、自分を抱きかかえてくれてる少女――なのはに声をかける。

 

 

「お願いします、僕に力を貸してください!」

 

「え、わ、私!?」

 

 

 現状を打破するにはあの怪物を止められる存在が必要だ。

 それこそ倒すのではなく封印する事が出来る存在が。

 そしてフェレットはこの少女と今戦ってる少年にならその資質があるだろうと踏んでいた。

 何故ならこの二人はきっと自分の念話を聞いてここにやって来てくれたのだから、と。

 

 

「今戦ってくれてるあの人――悟空さん、でしたっけ。彼か貴方にしか出来ない事なんですが、とてもじゃないけど彼にやり方を教えてる時間はないんです、お願いします! 卑怯な言い回しかもしれないけれど彼を救うためにも、ジュエルシードを封印するためにも貴方の、魔法の力を貸してください!」

 

「え、えぇ!?」

 

「魔法? おい、一体何を……」

 

 

 突然そんな事を言われても、混乱してしまうのが普通というものだ。

 恭也も捲くし立てるように喋るフェレットを制止しようとしている。

 ――だがなのははチラリと悟空の方を見た。

 そこには独特の構えを取ったまま怪物と相対する悟空の姿があった。

 彼を救う? 自分が?

 そんな事が本当に出来るのだろうか、という気持ちもあったが――。

 

 

「……分かった、何すればいいの?」

 

「おい、なのは!?」

 

「いいの、お兄ちゃん。よく分からないけど私やるよ」

 

 

 なのははフェレットの提案に乗る事を決めた。

 兄の静止を聞かずにそう決断したのは提案してきたフェレットが悪い子には見えないというのもあるが一番はあの太陽のように明るい少年の助けになりたいという気持ちだった。

 自分なんかでも力に、助けになれるのなら――なのはは勇気を振り絞って一歩踏み出せる。

 

 

「ありがとうございます……それじゃあこれを」

 

「何これ……宝石? 綺麗……」

 

「かー……」

 

 

 なのはがフェレットに手渡されたのは赤い宝石だった。

 一見ただの宝石に見えるがその実、全然違う事が手に持ってるなのはには分かった。

 何というべきか、宝石なのにどこか温かみがあるのだ。

 その不思議な宝石をなのははそっと握りしめる。

 

 

「眼を閉じて……心を澄ませて、僕の言った言葉を続けてください!」

 

「う、うん!」

 

「我、使命を受けし者なり」

 

「われ、使命を受けしものなり……」

 

「契約のもと、その力を解き放て」

 

「契約のもと、その力を解き放て……」

 

「風は空に、星は天に」

 

「風は空に、星は天に……!」

 

「めー……」

 

 

 言葉を紡いでいくと手に持った宝石がドクン、ドクンとまるで心臓のように脈打つのが感じられる。

 さらになのはとフェレットは言葉を、呪文を紡ぐ!

 一方で悟空もまた言葉を紡ぎ体に力を込めていた。

 それに気づいているものは未だにいない、なのはやフェレットは勿論、妹に何が起きるか気が気でない恭也もそちらに夢中なので気づいていない。

 気づいているとすれば相対している怪物ぐらいだろう。

 

 

「そして不屈の心はこの胸に」

 

「そして不屈の心はこの胸に!」

 

「「この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」」

 

「はー……」

 

 

 瞬間、なのはの体は光に包まれた。

 それは優しい桜色の光。

 その光はやがて収縮していき中から現れたのは――白い服に身を包み大きな杖を持ったなのはだった。

 

 

「な、なのは……その姿は……」

 

「え? えっ、何これ!?」

 

「それこそが君のイメージを具現化した戦闘服、バリアジャケットだよ。早速だけどやり方は教えるから悟空さんの援護を!」

 

「う、うん! ……え?」

 

「めー……」

 

 

 早速援護に向かおうとなのはは目を疑った。

 悟空の両手の間から青白い光が放たれていたからだ。

 先ほど自分を包み込んでいた優しい桜色の光とはまた違う、力強い光。

 その光を見てなのはに限らずその場にいたものは眼を丸くした。

 

 

「悟空の奴、一体何を!?」

 

「ま、まさか……砲撃魔法!? いや、魔力は感じない……じゃああれは一体!?」

 

「ほ、砲撃魔法!? なにそれ!?」

 

 

 動揺する三人。

 そんな三人を置いて悟空は溜め込んだ力を一気に解放する!

 

 

「波あああああーっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「くっ……!」

 

 

 放たれた青白い光の波動。

 その衝撃波凄まじく三人は思わずその場にしゃがみこんだり、尻もちをつく。

 これこそが亀仙流の奥義であり悟空お得意の必殺技、かめはめ波である。

 かめはめ波はそのまま怪物に迫り、そして。

 

 

「ギャアアアアアッ!?」

 

 

 その巨体を光の中に飲み込みあっと言う間に消し飛ばした。

 海鳴市の夜空に一筋の光が撃ちあがる。

 ――流れる静寂。

 それを破るように宙からは一つの宝石が落ちて来た。

 悟空は淡い光を放つそれを見ながら首を傾げる。

 

 

「ん? なんだ? あれ」

 

「えっと……あれはジュエルシード、あの怪物の発生源です」

 

「へぇ、あんな石ころが……すげえなぁ」

 

 

 いつの間にか隣に来ていたフェレットの言葉に悟空は感心する。

 攻撃力はともかくとしてタフさに関しては驚くものがあった。

 その発生源があんな宝石一つだとは思いもしなかった、だから感心したのである。

 フェレットからしてみれば怪物をいとも容易くふっ飛ばしてしまった悟空の方がよっぽど凄いのだが――今はそれよりもやるべき事がある。

 

 

「そ、それじゃあ早速封印を、早く封印しないと復活しちゃうかもしれないから」

 

「う、うん。分かった」

 

「お? なんだ、なのは。おめえ着替えたんか?」

 

「ちょ、ちょっと色々あってね……とりあえずあのジュエルシードって言うの封印してくるね」

 

 

 なのははそう言ってジュエルシードに駆け寄りフェレットに言われるがままに杖を振り上げる。

 正直こういう役目がまだ残っていて良かったと心から思う、もしこの役目すら残ってなかったら先ほどの決意も手に入れた力も全部無駄になるところだったから。

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード封印!」

 

 

 そう言ってなのはが杖を振り下ろすとジュエルシードは杖へと吸い込まれ消えていった。

 こうして騒動は一旦の収まりを見せたのである。




 オッス! オラ、悟空!

 とりあえず一件落着だな! ははっ!

 ん? なんだ、なのは、恭也、移動するんか?

 今度は何だ? ジュエルシードについての説明? オラ、小難しい話は苦手なんだけんど……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「おめえはどうしたい? なのはの思い」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之七 おめえはどうしたい? なのはの思い

 明けましておめでとうございます!

 今年最初の投稿となります。

 新たにお気に入りに登録してくださった皆さんに、感想をくれた方々、誤字報告をしてくれた方に評価を入れてくださったグンマーさん、アマッカスですが?さん、おかゆフィーバーさん、Spopoさん、ミミズク33さん、きりたちのぼるさん、皆さんに心からの感謝を!

 今年もDragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~をよろしくお願いします。

 それでは其之七をどうぞ。


「とりあえず一件落着、かな」

 

 

 封印を終えたなのははそう呟く。

 よくよく考えれば大変な事に巻き込まれたものだが悟空のおかげもあり何とか切り抜ける事が出来た。

 だが恭也は難しそうな顔をしながら眉間に皺を寄せている。

 

 

「恭也、どうかしたんか?」

 

「ん、あぁ……ジュエルシードって言ったか、何であんな危険なものがこの街にあるのかと思ってな」

 

「それは……」

 

 

 その疑問を聞いたフェレットは俯き何かを言いよどむ。

 それだけで恭也は何となく察する事が出来る。

 このフェレットはジュエルシードがこの街にある理由と何かしら関係していると。

 

 

「……知ってる事、話してもらうぞ」

 

「……はい」

 

 

 重々しい空気が両者の間に流れる。

 そんな空気をぶった切ったのは――悟空だった。

 

 

「そんな事よりよ、オラ達ここにずっといていいんか? 何か周りも騒がしくなってきてるしよ」

 

「えっ」

 

「……そういえば」

 

 

 それを聞いたなのはと恭也は周囲を見回す。

 大きな穴が空いた動物病院、あちこち崩れてしまってる塀、陥没している道路。

 あえて言おう、大惨事である。

 こんなところを仮に警察に見られたら――間違いなく面倒事になるのは目に見えていた。

 

 

「に、逃げるぞ!」

 

「う、うん!」

 

「ん? 逃げるんか?」

 

「悟空くん、急いで!」

 

 

 恭也となのはは急いで駆け出し、そんななのはに手を引っ張られ悟空も駆けだす。

 こうして一行は面倒事になる前にその場から離れる事に成功した。

 ちなみにフェレットはなのはの肩に乗っかっている。

 そして暫くの間我武者羅に走った後、三人と一匹は近くの公園に辿り着いた。

 

 

「と、とりあえずここで休憩しよう」

 

「さ、賛、成……」

 

「なのは、おめぇ運動オンチってやつだな」

 

 

 恭也の提案になのはは盛大に息を切らしながら答える。

 なお、悟空はあれだけ戦った後に全力疾走したというのにケロッとしていた。

 これぞまさに鍛え方が違うという奴だろう。

 とりあえずベンチに腰掛けるなのは。

 と同時にフェレットはなのはの肩から降りる。

 そして三人に向き直り、一人一人の顔を見ながら言った。

 

 

「えっと、まずはお礼を言わせてください。ありがとうございます、悟空さんと――えーっと」

 

「俺か? 俺は恭也だ」

 

「私はなのは、高町 なのは。なのはって呼んで?」

 

「それじゃあ悟空さん、恭也さん、なのは、本当にありがとうございました。おかげでジュエルシードを封印する事が出来ました」

 

 

 そう言ってフェレットはペコリと頭を下げる。

 そんなフェレットに対し悟空は。

 

 

「気にすんなって、オラは単に嫌な気を出してる奴を倒しただけだしよ」

 

 

 そう言って笑った。

 そんな風に言ってもらえたおかげか気持ちが幾分か軽くなったのをフェレットは感じていた。

 そして気づく、そう言えばまだ自己紹介もしていないと。

 

 

「自己紹介が遅れました、僕の名前はユーノ・スクライアって言います」

 

「ユーノくんかぁ、可愛い名前だね」

 

「ハハハ……か、可愛いかぁ……ありがとう」

 

 

 可愛いと言われて遠い目をしながら軽くしょぼくれるユーノ。

 そんなユーノの反応になのはは首を傾げる。

 まぁそれは置いておいて恭也が切り出した。

 

 

「それじゃあ話してもらえるか、ジュエルシードとやらについて」

 

「……はい」

 

 

 そうしてユーノは語りだす。

 ジュエルシードはそもそも自分達が発掘したものである事。

 とある事故でジュエルシードがこの海鳴市周辺にばら撒かれてしまった事。

 それを集めるために頑張ったが返り討ちにあい負傷してしまった事。

 ここに至る経緯を全て。

 それを聞いた三人の反応はまさに三者三様だった。

 恭也の表情は険しく、なのはは困惑した顔をしており、悟空にいたっては理解しているのかしてないのか表情を変えずに首を傾げている。

 

 

「巻き込んでしまった事は申し訳ないと思っています、でもこの街に散らばったジュエルシードを集めるには魔法の力が……なのはの力が必要なんです、どうか力を貸していただけませんか?」

 

 

 それは必死の懇願だった。

 本当は認めたくないが認めざるを得ない自分自身の無力を認め、ひたすらに頭を下げる。

 だが――。

 

 

「話は分かった……だが俺は賛成出来ない」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「……」

 

「危険な代物だという事はさっきのを見れば嫌でも分かる、だけどな、それと妹を危ない目に遭わせる事に関しては別問題だというのは分かってくれるよな?」

 

「……はい」

 

 

 当然の話だ。

 確かに誰かがやらねばならない事ではあるのだろう。

 だがその役目を担うのが実の妹ともなれば納得はし難いと言うのが家族として、兄としての恭也の感情だった。

 ユーノは俯く。

 恭也のその感情は、言ってる事は間違っていないと感じた。

 とてもじゃないが、ここから彼を説得するだけの材料をユーノは持ち合わせていない。

 こうなったらしょうがない、時間はかかるが自分だけ何とかして――そう思った矢先だった。

 今まで黙っていた悟空が口を開いた。

 

 

「そんな顔すんなよ、大ぇ丈夫さ、オラがおめえの力になってやる」

 

「え……?」

 

 

 ユーノが顔を上げる。

 するとそこにはニカッと笑った悟空の顔があった。

 悟空はユーノをそっと抱えると頭の上に乗っけて言う。

 

 

「要はそのジュエルシードってのを集めればいいんだろ? オラそういうの昔から結構やってたから得意だしな」

 

 

 思い出すのは若い頃から幾度となく行ってきたドラゴンボール集めの日々。

 ドラゴンボールと違ってレーダーがないから厳密に言えば違うのだろうがそれでも悟空は何とかなると踏んでいた。

 だがユーノからすれば嬉しい反面申し訳ない気持ちも出てくる。

 

 

「で、でもどんな危険が伴うか分からないんですよ!? 今回は勝てましたけど次は上手くいくかどうか……」

 

 

 だからこそユーノは改めてこの件に関わる危険性を説明した。

 それに対し悟空は闘志に満ちた眼でこう言う。

 

 

「望むところだぞ! オラ、役に立てておまけに強え奴と戦えるなら願ったり叶ったりだ!」

 

「え、えぇ!?」

 

 

 そう、ユーノはまだ理解してなかった、孫悟空という人間を。

 彼は自身に危険などが迫ってくれば逆に燃え上がるタイプなのである。

 そうとは知らず悟空の闘志の炎にガソリンを投下してしまったユーノはただただ困惑していた。

 

 

「それによ? おめえ一人じゃ厳しいんだろ? オラが手伝えばそれだけ上手く行く可能性も上がるじゃねえか」

 

「そ、それは……そうですけど……本当にいいんですか?」

 

「あぁ、勿論だ! これからよろしくな、ユーノ!」

 

「あ……ありがとう、ございます……!」

 

 

 心強い味方を得る事が出来た、その事実にユーノは思わず涙ぐむ。

 悟空の心強く優しい言葉一つ一つがユーノの心を揺さぶっていた。

 だがなんとかその涙を堪えてお礼を言う。

 そんな一人と一匹の会話を聞いていたなのははと言うと。

 

 

(私は……)

 

 

 まだ自分の気持ちに結論が出せていなかった。

 自分には悟空ほどの力は無い。

 それに危険だから反対だという兄の気持ちを蔑ろにはしたくはない。

 でも、だからと言ってこのまま引き下がってしまっていいのか? という気持ちはあった。

 成り行きとは言え手にした魔法という特別な力。

 今の自分ならユーノの、悟空の力になれる……かもしれない。

 そう考えるとますます悩んでしまう。

 そんななのはに悟空は問いかける。

 

 

「なのは、おめえはどうする?」

 

「え、わ、私?」

 

「……悟空、さっきも言ったが俺は反対――」

 

「んー恭也の言いてぇ事も分かるけどよ? なのは本人の気持ちをまだ聞いてねえだろ? こういうのは本人の意志が大事なんじゃねえのか?」

 

「それはそうだが……」

 

 

 視線がなのはに集まる。

 まだ自分の中でも答えは出てないのにそんな視線集められても困るというのが正直なところだったが、なのはは考える。

 出来る事なら自分も力になりたい、それは偽らざる本心だ。

 だが自信のなさと心配してくれている兄への思いから最後の一歩が踏み出せないでいた。

 そんな時、悟空が言った。

 

 

「無理にとは言わねえけんど悔いのねえようにな? どっちを選んだってオラ達は別に恨みも怒りもしねえから安心して選んでくれていい」

 

「悟空くん……」

 

 

 不思議な子だな、と改めて思う。

 普段はどこか子供っぽくて、食いしん坊で、でも規格外に強い変な子だけど今みたいに大人びたところも時折見せてくる。

 そしてそんな悟空の言葉が、なのはに最後の一歩を踏み出させた。

 

 

「私は……私もユーノくんの、悟空くんの力になりたい。この魔法の力で……!」

 

 

 ――それは勇気を振り絞って紡ぎ出した言葉だった。




 オッス! オラ、悟空!

 よし決まりだな! ジュエルシードはオラとなのはで何とかする!

 ところで今日のオラの寝床は……そっか、なのはの部屋だな、分かったぞぉ。

 ん? なんだよ、なのは。オラに聞きてえ事でもあるんか?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「夜の語り合い、悟空の人生(これまで)

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之八 夜の語り合い、悟空の人生(これまで)

 新たにお気に入り登録してくださった方々、感想をくれた方、評価を入れてくださったタカtさんとケチャップの伝道師さんに感謝を。

 八話目にしてようやく初日が終了。

 思った以上にスローペースな本作ですが、今後もお付き合いいただけると幸いです。

 では其之八をどうぞ。


「お、おい。なのは!?」

 

「ごめん、お兄ちゃん。でも私……放っておくなんて出来ないよ、ユーノくんのお手伝いがしたい」

 

 

 そう告げたなのはの眼に迷いはなかった。

 これは何を言っても聞かない眼だ、そう即座に理解出来たのは兄妹であるが故か。

 だから恭也も腹をくくった。

 

 

「はぁ……分かった、そういう事なら俺も出来る範囲で協力する」

 

「え、お兄ちゃん!?」

 

「お? なんだ、恭也も一緒にやるんか?」

 

「あぁ、自分で言うのもあれだが妹と悟空にだけ任せて後は我関せず……とはいかない性格なんでな」

 

 

 それに最初っから俺が手伝うつもりではいたんだ、と恭也は笑った。

 妹であるなのはが自ら首を突っ込みこの一件に関わっていく事を決断したと言うのは正直言って予想外だったが、彼もまたこの件を放っておけない優しい心と正義感を持っていた。

 それにこの海鳴市――自分達が育った街には相応に思い入れもある、そこにジュエルシードのような危険な代物がばら撒かれてるともなれば放っておくという選択肢は自然と除外されると言うものである。

 そしてその話を聞いていたユーノはと言うと。

 

 

「皆さん……本当にありがとうございますっ! うう……」

 

「ん? ハハッ、何泣きそうになってんだ? ユーノ」

 

 

 また泣きそうになっていた。

 そんなユーノに悟空は笑顔を向ける。

 そんな一人と一匹を見てなのはと恭也は微笑むのだった。

 

 

「ところでよ、なのは。おめえいつまでその恰好してんだ?」

 

「え、あっ! わ、忘れてた……これどうやって戻るの?」

 

「グスッ……スッと力を抜けば戻れると思うよ」

 

「スッ、と……?」

 

 

 なのはがユーノに言われるままに体の力を抜いた瞬間、なのはの体は光に包まれ服装は元に戻っていた。

 とりあえずこれで今度こそ一件落着。

 ともなれば――。

 

 

「お、戻ったな。そんじゃ……帰っか! 腹も減ったしよ」

 

「あぁ」

 

「にゃはは、うんっ!」

 

「えっと、僕も行って良いんでしょうか?」

 

「ん? 何言ってんだ? 当たり前だろ?」

 

「ユーノくんを飼う許可は貰ってるから大丈夫だよ」

 

 

 こうして三人と一匹は高町家に向けて歩き出した。

 暫く歩くとぐぎゅるるると大きな音が鳴る。

 当然悟空の腹の音である。

 

 

「悟空くん、凄い音だね……」

 

「しょうがねえだろ? まだ晩飯食ってねえんだから」

 

「やれやれ……だが確かに腹が減ったな、少し急ぐか。父さんたちも待っててくれてるだろうし」

 

 

 

 ――数分後。

 一行は高町家へと無事辿り着き、玄関の戸を開いた。

 

 

「「ただいまー」」

 

「たでえまー!」

 

 

 三人のその声が響いてから数秒後、高町家の中からはドタドタという足音が聞こえてくる。

 そして士郎達が顔を出した。

 

 

「三人とも無事だったか、良かった……」

 

「へへっ、悪りいな。心配かけちまったみてえでよ、でも誰一人怪我せずに終わったぞ」

 

「恭ちゃん、なのは、何があったの?」

 

「あー……なんと言ったらいいか……」

 

「えーっと……」

 

 

 恭也となのは兄妹は美由希の言葉にどう返したらいいものか分からず言葉を詰まらせる。

 怪物と遭遇して悟空がそれと戦いましたとか、なのはが魔法の力を手に入れましたとか、先ほど起こった出来事を馬鹿正直に伝えるのはどうかと思ったからだ。

 かと言ってパッといい感じの嘘が思い浮かぶ事もなく二人は頭を悩ませる。

 それを察してか否か、桃子が口を開いた。

 

 

「色々あるんでしょうけど、とりあえずご飯にしましょ? 悟空くんなんか相当お腹空かせてるでしょうし」

 

「飯! ようやく食えるんかぁ!」

 

 

 見るからにウキウキしている悟空。

 確かに相当お腹を空かせてそうだった。

 そんな姿を見て士郎は思わず笑う。

 

 

「ははは、確かに待ちきれなさそうだ。三人ともとりあえず手を洗って……おや? なのは、その動物は……」

 

「あ、この子がさっき話に出したフェレットで……ちょっと色々あって連れて来たの」

 

「わー! 可愛い!」

 

「キュー!?」

 

 

 美由希に抱きしめられてジタバタもがくユーノ。

 そして脱出したと思いきや今度は桃子に抱きしめられる。

 とりあえずユーノはその可愛らしい外見を活かして高町家に何とか溶け込んだのだった。

 その間に先ほどまで外に出ていた三人は手を洗い席に着く。

 こうして全員が揃ったところで高町家は少し遅い夕食の時間に突入した。

 

 

「ガツガツガツ! うんめえ~! やっぱり桃子の作る飯は凄くうめえや!」

 

「ふふっ、ありがとう。おかわりいっぱいあるから遠慮せずに食べてね」

 

「にゃはは、朝も思ったけど凄い食欲……悟空くん、詰まらせないようにね」

 

「モガ? んぐんぐ……心配いらねえぞ、よく噛んでるからな!」

 

「その割には食うスピードが……どんな速度で噛んでるんだ……お前は」

 

 

 というわけで夕食の時間は楽しく過ぎ去った。

 大量に炊いたご飯は悟空が多めにおかわりした事で見事に空っぽになったという。

 

 

「……ねぇお父さん、我が家の食費大丈夫なのかな?」

 

「だ、大丈夫だろう。問題ないさ、多分」

 

「ふふ、あれだけ食べてくれると作りがいがあるわね」

 

 

 その裏でそんな会話があったのはまた別の話である。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 夕食後、風呂をあがったなのはは自室で自らの携帯電話をいじりメールを送っていた。

 フェレット――ユーノの事を友人であるアリサとすずかに報告するためである。

 そんななのはの姿をベッドの上に座ってるユーノは見つめている。

 それから数分、一通りメールでの会話を終えたなのはは携帯電話を閉じた。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 思わず溜め息が漏れる。

 今日は色々ありすぎたから少し疲れてしまったのかもしれない。

 だが眠るには妙に眼が冴えてしまっていた。

 なのはは枕に顔を埋めて今日一日に遭遇した出来事を思い返す。

 

 

(ユーノくん、怪物、ジュエルシード、魔法……)

 

 

 こうして考えてみると何という濃密な一日だろうか。

 たったの二十四時間の間にこれほどの未知との遭遇があった。

 だが一番印象深かったのは――。

 

 

「悟空くん、かなぁ……」

 

 

 正直言って不思議な子だと思う。

 魔法の力なんて非常識な力を手にしたなのはが言うのもアレだが、なのはから見た悟空はそれ以上に非常識だった。

 空は飛べるし、ビームみたいなのも撃てる、人間か疑わしくなるくらい食欲も旺盛だ。

 その上、太陽のように明るい笑顔を見せる時もあれば怖いくらいの怒りを見せる時もあるし、子供とは思えない大人びた顔を見せる事もある。

 いろんな顔を持った不思議な少年、それがなのはが今日一日で悟空に抱いた印象だった。

 そんな悟空とも出会ってまだ一日も経過してないと言うのだから驚きである。

 

 

「はぁ……」

 

「なのは……」

 

 

 また溜め息が漏れる。

 それがどういった意味合いの溜め息なのかは吐いた本人であるなのはにも分からなかった。

 ただ何となく悟空の事が頭から離れなかった。

 それだけ悟空という存在が印象深くかつ心の奥底に刻まれたからかもしれない。

 そんな状態のなのはをユーノは心配そうな顔で見ている。

 中々眠れそうにはないがもう寝てしまおうか、なんて考えていると――。

 

 

「おーい、なのは! 入っぞー!」

 

「え? この声……悟空くん?」

 

 

 ドアが開く。

 そこには布団を抱えた悟空が立っていた。

 どういう事か理解が追い付かずなのはは思わず首を傾げる。

 

 

「えっと、悟空くんどうしたの? というかそのお布団なに?」

 

「おう! 士郎達がなのはの部屋で寝ろって言うからよ、布団持ってきたんだ」

 

「えぇ!? 部屋の主である私の意志は!? 問答無用!?」

 

「ん? なんだ、オラがいると嫌なんか?」

 

「そ、そういうわけじゃないけど……」

 

「じゃあ決まりだな!」

 

 

 そう言って悟空は空いたスペースに布団を敷き始める。

 同じ部屋で寝るのはちょっと恥ずかしいだけで別に良いし歳の事も考えて一番近そうで仲良さそうな、なのはの部屋に寝かせる事にしたのは分かるのだが部屋の持ち主である自分に一言ぐらい言っておいてほしかったなぁとかなのはが考えている内に悟空はあっという間に布団を敷き終わったようで布団の上に笑顔で寝っ転がっていた。

 ――だがこれはいい機会かもしれない、なのははふとそんな事を思う。

 そもそもの話、色々と聞いてみたい事はあったのだ、明日以降にするつもりだったが折角同じ部屋にいるのだ今聞くのも悪くはないだろう。

 

 

「ねぇ悟空くん……」

 

「ん? どうかしたんか?」

 

「悟空くんは……どうしてそんなに強いの?」

 

「どうして強えのかって? 今のオラなんてまだまだだと思うけんど……強く見えんならそりゃあ鍛えてるからじゃねえかな? 自慢じゃねえけどオラ修行も大好きだからな!」

 

 

 一体どういう修行をすれば空を飛んだりビームみたいなのを撃てるようになると言うのか。

 なのはの悟空に対する謎は深まるばかりだった。

 だから少し質問の形を変えてみる事にする。

 

 

「それじゃあ悟空くんは一体どんな生き方をしてきたの?」

 

「お? なんだ、なのはおめえ……そんな事が気になるんか?」

 

「うん、凄く気になる……かな?」

 

「あ、それは僕も聞きたいです。悟空さんみたいな人見た事ないですし」

 

 

 ユーノもそれに便乗して悟空に尋ねる。

 悟空は腕を組んで少し考え始めた。

 

 

「ん~……どこから話したらいいんかな……まずオラは小せえ頃にじいちゃんに拾われてよ、その時孫悟空って名前を付けてもらったんだ」

 

「え……」

 

「拾われたって……悟空さん、それじゃあご両親は」

 

「多分死んじまったんじゃねえかな、オラ昔に頭を強く打った事があってよ、そのせいで記憶も飛んじまったから顔も覚えてねえんだけどさ」

 

 

 軽い気持ちで尋ねた事だったのだが想像以上に重たい話が返ってきた。

 孫悟空、彼はその性格に反して背負ってる物は中々に重かったのである。

 そんななのはとユーノを余所に悟空は話を続ける。

 

 

「んで、それからはじいちゃんに育ててもらってさ。その時に戦い方とか色々教えてもらったんだ。それがオラの原点ってやつだな」

 

「その……おじいさんは……」

 

「ん? あぁ……もう随分前に死んじまった、それからは暫くの間は山で一人で暮らしてたんだ」

 

 

 悟空はどこか遠くを見るような眼でそう言った。

 何というべきか、その雰囲気や性格に見合わず壮絶な人生である。

 なのにどうしてそんな平気そうな顔が出来るのだろうか。

 なのはには、そしてユーノにも分からなかった。

 そんな一人と一匹の雰囲気を察してか悟空は問いかける。

 

 

「オラはまだ話してもいいけんど……どうする? おめえ達まだ聞くか?」

 

「……うん、良ければもう少しだけ聞かせてほしいな」

 

 

 そう言ったのはなのはだった。

 もう少し、もう少しだけ悟空の事が知りたい。

 そう思ったが故の言葉だった。

 そんななのはに対し悟空はニカッと太陽のような笑みを見せる。

 

 

「よし、分かった! そんでよ? 暫くの間山で暮らしてたんだけんどある日よ――」

 

 

 悟空の話す昔話はなのはとユーノが自然と眠りにつくまで続いたという。




 オッス! オラ、悟空!

 ははっ! なのはのやつ遅刻しそうになってら!

 ……ん、嫌な気だ。ジュエルシードが発動したみてえだな。

 今回の奴はこの前の奴より強えのか……よっし、行くぞ。なのは、ユーノ! まずはジャンケンだ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「猛獣襲来!! 悟空となのはタッグの初陣?」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之九 猛獣襲来!! 悟空となのはタッグの初陣?

 新たにお気に入りに登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れてくれた深々さん、虚気さん、アルトアイゼン・ナハトさんありがとうございました!

 今回から本格的にジュエルシード集め開始となります。

 それでは其之九をどうぞ!


 ――朝。

 温かな日差しが天から降り注ぎ、小鳥達が囀る、そんな平和な時間帯。

 そんな時間帯に高町家はと言うと。

 

 

「ち、遅刻、遅刻ー!?」

 

「モガモガ……おかわりぃー!」

 

「はい、ちょっと待っててね♪」

 

「ハハハ……」

 

 

 何とも混沌とした朝を迎えていた。

 なのははバタバタしてるし悟空は相変わらずの食欲だし、桃子はマイペースに悟空のお茶碗にご飯をよそってるし、士郎は苦笑いを浮かべている。

 何でこんな事になっているか、理由は至極単純。

 今朝はなのはが寝坊した、ただそれだけである。

 ただでさえ朝が弱いなのはだ、それに加えて昨日は限界まで悟空から話を聞いていたため寝るのがいつもより少々遅かった。

 ともなれば寝坊するのはある種必然だろう。

 

 

「もー! 悟空くん、早く起きたなら私も起こしてよぉ!」

 

「もが? んぐんぐ……って言ってもよぉ、なのは、おめえ起こしてくれなんて言ってなかったじゃねえか」

 

「そ、それはそうだけど……もぉー!」

 

「あんまりモーモー言ってっと牛になっちまうぞ?」

 

 

 ちなみにこの会話から察する事が出来る通り悟空は早起きして朝からトレーニングを積んでいた。

 なのはとは対照的なまでに朝に強い悟空であった。

 とりあえずなのはは急いで身だしなみと準備を整える。

 

 

「お母さん、お弁当!」

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう! それじゃあ行ってきまーす!」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

「ガツガツ……!」

 

 

 ダッシュで家を飛び出したなのは。

 一方で悟空はお茶碗にたっぷりと盛られたご飯を平らげて――。

 

 

「おかわりー!」

 

 

 そう元気な声を響かせるのだった。

 余談だが今日も釜の中にあった大量のご飯は全て食されたと言う。

 

 

 

 食事を摂ったらその分運動も行うのが健康な体を維持するための基本である。

 それは悟空にも当てはまる。

 と言っても悟空の場合は健康のため、などではなく強くなるために行うわけだが。

 悟空は道場内で軽く準備運動をする。

 その様子をユーノは道場の入り口付近で見つめていた。

 

 

「よし、準備運動終わったぞぉ! 始めるとすっか……ユーノ、おめえもやるか?」

 

「え!? い、いえ僕は遠慮しておきます」

 

 

 悟空の提案をユーノはやんわりと断る。

 まだ体の怪我が治っていないため本調子じゃないというのもあるが悟空の修行、それを聞いただけで並の人物は付いて行けないだろうと思ったからだ。

 なので今回は見学に徹する事にしたのである。

 

 

「そうか? じゃあオラだけでやるかな……はっ!」

 

 

 悟空はそう言うと両手を胸の前辺りに持って来て力を軽く込めた。

 するとどうだろう、悟空の両手の間に一つの光球――気弾が発生したのだ。

 悟空はそれを誰もいない方向に放つ。

 と、気弾は自動的に方向を転換、悟空に向かって高速で接近してきた。

 

 

「よっ!」

 

 

 悟空はそれを最低限の動きで回避する。

 そして躱された気弾はそのまま真っすぐ飛んで――とはならず再び方向転換し、悟空に迫りくる。

 悟空はそれを今度はアクロバティックな動きで回避。

 これを繰り返していく。

 ユーノは悟空のその凄まじく軽い身のこなしに改めて驚かされる。

 

 

(悟空さんはやっぱり凄いや……ただ……)

 

 

 不思議な事が一つ。

 それは悟空からは魔力を感じないという事だった。

 最初、ユーノは自分の呼びかけに答えてくれたなのはと悟空、双方に魔法の才能があると見込んでいた。

 だが冷静になり落ち着いて見極めてみるとなのははともかく悟空にはまるで魔法の才能がなさそうだったのだ。

 だとしたら何故自分の呼びかけ――念話を悟空が聞く事が出来たのか。

 それがどうしても気になった。

 なのでもう一度試してみる事にする。

 

 

(えっと……悟空さん、聞こえますか?)

 

「よっ、ほっ! なんだ? ユーノ」

 

(あれ、やっぱり聞こえてる……悟空さんに魔法の才能は無さそうなのに何で……)

 

「何でって言われてもなぁ……オラ超能力も少しは使えっからな、そのせいじゃねえか?」

 

「超能力……ですか?」

 

「あぁ、試してみっか?」

 

 

 悟空はそう言うと相変わらず気弾を回避しつつユーノに言葉を送る。

 

 

(どうだ? 聞こえっか?)

 

「わっ!? ほ、本当だ。まるで念話みたいに頭の中に声が響いてくる……」

 

(こういう能力の応用でユーノの声も聞こえたんじゃねえかって思うんだ、まぁオラには小難しい事は分かんねえけど)

 

 

 なるほどな、とユーノは一応の納得を見せる。

 こう言った普通じゃない能力まで持ち合わせているならば聞こえても不思議じゃないかもしれない。

 というか悟空と言う存在はどこまで規格外なのかとユーノは悟空に対し唖然とするしかなかった。

 そして唖然としている間に気が付けば悟空を襲う気弾の数は三つに増えている。

 悟空はそれらの動きを冷静に見極め、先読みし、的確で最小限の動きを持って回避していく。

 飛び交ってる気弾のスピードからして普通に考えれば超人的な技である。

 だが悟空にとっては何てことない普通の修行の一環だった。

 そんな修行がどれほど続いただろうか。

 気が付けば時間は過ぎ去り、流石の悟空の額にも汗が浮かんでいた。

 その時である。

 

 

「……! この嫌な気は……」

 

「えっ? 悟空さんどうしまし――!? この気配、ジュエルシード!?」

 

「行くぞ、ユーノ!」

 

「は、はい!」

 

 

 悟空はユーノをそっと抱えると舞空術で大空へと飛び上がった。

 そして白いオーラを体から吹き出しながら嫌な気が感じた方向へと飛んでいく。

 ちなみに瞬間移動の事はすっかり忘れていた悟空だった。

 まぁそう遠い距離ではないので支障は無かったが。

 

 

「なのはにも念話で連絡を入れました! 今向かってるみたいです」

 

「そうか、分かった! そんじゃもう少し急ぐとすっか!」

 

 

 悟空はそう言うと体に気を込めてさらにスピードを上げる。

 それはつまり体にかかる負荷も上がるという事であり、それは同時に悟空に掴まってるユーノにもその負荷が同じくかかるわけで。

 

 

「ご、ごごご悟空さん! もう少しスピード落としてくださいぃぃぃぃっ!?」

 

「あ、悪りい、悪りい……ちょっとばかし張り切りすぎちまった、とりあえず急ぐぞ」

 

 

 少しスピードを落としながらも悟空とユーノは空を切り裂くように飛んでいく。

 そして数分もしないうちに辿り着いた場所は神社だった。

 海鳴市の高台にある神社、そこには巨大な犬のような獣と――バリアジャケットを纏い杖を構えるなのはがいた。

 

 

「なのはー!」

 

「あ、悟空くん! ユーノくんも!」

 

 

 空から降りてなのはの隣に着地する悟空とユーノ。

 なのははそんな悟空達の登場に流石にもう驚く事なく笑顔を見せる。

 対し悟空は着地と同時に獣の方を睨み付けるのだった。

 

 

「あいつか……嫌な気の出どころは、昨日の奴とはえれぇ違いだな」

 

「昨日のはジュエルシード自身が生み出した怪物、対してあれは生き物の願いをジュエルシードが歪んだ形で叶えた結果生まれた怪物です、昨日の奴よりも強力だと思いますから気を付けて!」

 

「昨日の奴より強ええのか! オラ何だかワクワクしてきたぞ!」

 

「もう悟空くんってば……とりあえず気を抜かずにいこうね」

 

「おう、分かってっさ! ところでよ、なのは」

 

「え、なに?」

 

「どっちが戦う? ジャンケンで決めっか?」

 

「「えっ」」

 

 

 なのはとユーノは悟空の言葉の意味がよく理解出来なかった。

 何故どちらか一方だけが戦うという話になっているのだろうかと。

 

 

「普通ここは二人一緒になって戦うものなんじゃないの……?」

 

「そ、そうですよ、悟空さん!」

 

「でもよぉ、相手は一体なんだし二対一ってのは卑怯じゃねえか?」

 

「そんな事言ってる場合じゃないよ!?」

 

 

 そう、そんな事言ってる場合じゃないのだ。

 だが悟空は色々と普通ではないのでこういう所には少し拘りを見せてしまう。

 そんな二人と一匹の話してる姿を見て好機と判断したのか獣が二人に襲い掛かった。

 

 

「おっと……はっ!!」

 

 

 しかしその突撃は悟空の手のひらから放たれた気弾によっていとも簡単に防がれてしまい、体はそのまま勢いよく吹っ飛ぶ。

 そしてそれを確認した悟空は一歩前に出た。

 

 

「しょうがねえな、なのははまだ戦闘経験もねえだろうし今回もオラがやる」

 

「ご、悟空くん、でも……!」

 

「その代わりオラの戦い方をよく見ておくんだぞ、なのは。オラとなのはじゃ戦闘スタイルはちげえだろうけど少しは参考になると思うしよ」

 

 

 悟空はそう言うと地面を勢いよく蹴って駆け出した。

 一方で何とか体勢を立て直した獣も悟空目掛けて駆け出す。

 縮まっていく双方の間の距離。

 先に攻撃を仕掛けたのは――獣の方だった。

 獣はそのナイフのように鋭い爪を悟空目掛けて振り下ろす。

 が、その一撃は悟空の腕によって止められた。

 衝撃で地面が砕ける、それほどに重い一撃を受けているにも関わらず悟空は何てことなさそうな平然な顔をして、そっともう片方の手を大きく開き獣に向けた。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 悟空の手のひらから放たれたのは一つの気弾。

 気弾はそのまま真っすぐ飛んでいき獣の頭部に直撃、爆発を起こす。

 と同時にその衝撃に怯み獣の腕から力が抜けた。

 その隙に悟空は獣の懐に入り込み、そして!

 

 

「でぇりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 拳と蹴りを何度もその胴体に叩き込む!

 衝撃で宙に浮かぶ獣の巨体。

 悟空はその飛んでいく巨体に対し舞空術で先回りして両腕に力を込める。

 そのままハンマーのように腕を振り下ろして獣を地面に向けて吹き飛ばした。

 獣が勢いよく落下する事により砕ける地面。

 舞い上がる土煙。

 そんな中、悟空はゆっくりと地上に降り立った。

 目の前には痙攣しながら倒れ込む獣の姿。

 これは誰がどう見ても再起不能だろう。

 と、こうして勝敗はあっさりと決した。

 後は――。

 

 

「なのは! 封印お願いできっか?」

 

「あ、うん……流石悟空くんだね、あっさり倒しちゃった」

 

「確かに思ったより手ごたえはなかったなぁ……ちょっと力入れすぎちまったかな?」

 

「にゃ、にゃはは……」

 

 

 なのははあんな戦いをした後にケロッとしている悟空に思わず苦笑いを浮かべざるを得なかった。

 と同時に思う。

 あんな戦い方のどこをどう参考にすればいいと言うのか、と。

 まぁそれは置いておいて、なのはは杖――レイジングハートを高々と振り上げる。

 

 

「リリカルマジカル! ジュエルシード……封印!」

 

 

 そう言ってレイジングハートを振り下ろした次の瞬間、辺り一面が光に包まれる。

 すると獣からはジュエルシードが排出されレイジングハートの中へと吸い込まれていく。

 後に残ったのは一匹の子犬だけだった。

 このようにして悟空となのはは二つ目――ユーノが最初に持っていた一個と合わせれば三つ目のジュエルシードの封印に成功した。

 残りは十八個、果たしてこのまま難なく集めきる事は出来るのだろうか。




 オッス! オラ、悟空!

 もう夜中だってのに嫌な気を感じる……またジュエルシードか?

 ……ん? 嫌な気が二つ……って事は今回の敵は二体って事だな。

 ちょうどいいや、なのは! ここは平等に半分こだ、片方はおめえに任せっぞ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「学校での戦い! まさかまさかの魔獣二体!?」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十 学校での戦い! まさかまさかの魔獣二体!?

 新たに本作をお気に入り登録をしてくれた方々、感想をくれた方ありがとうございます!

 本作も今回でもう十話目となります、早いもんです。

 これからもDragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~をよろしくお願いします!

 それでは其之十をどうぞ。


 その日、悟空となのはは夕食を終え、風呂に入った後、部屋で談笑していた。

 あれから数日、これと言ってジュエルシードの反応はない。

 悟空も嫌な気を探ってみるが成果は得られなかった。

 どうやら嫌な気を放つのはジュエルシードの発動後のみらしい。

 ジュエルシードは危険な代物だ、この街のためにも、そこに住む人々のためにも一刻も早く見つけなければという思いもあるにはあるが、広大な海鳴市から発動前のジュエルシードを見つけるのは至難の業、故にこればっかりは発動してもらわないと探し様がなかった。

 だから今はこの平和な一時を謳歌する事にする。

 

 

「それでね、その時アリサちゃんが怒って――」

 

「ははっ、そりゃおっかねえや!」

 

 

 いつからだろうか、気が付けば寝る前にユーノも交えてこうして会話するのが日課のようになっていた。

 悟空が高町家に来てからまだ数日、一日も欠かす事なく寝る前にはこうして会話をする。

 ちなみに基本的に話し手はなのはで聞き手は悟空だ。

 大体はその日に起こった出来事を、時には昔の話を混ぜて話して二人で笑い合う。

 なのはは何気ないこの時間がとても好きだった。

 何故かはなのはにもよくは分からない。

 ただアリサやすずかと言った友人と過ごす時間、家族と過ごす時間とはまた違った楽しみがそこにはあった。

 勿論優劣は付けられはしないが。

 

 

「なのは、悟空さん、そろそろ寝た方がいいと思うよ?」

 

「あ、本当だ……もうこんな時間、そろそろ寝ないとね」

 

「だな! でないと、なのはがまた寝坊しちまう」

 

「もう、悟空くん!」

 

 

 また笑い合う二人と一匹。

 だが確かに寝坊なんかしたら大惨事だ、主になのはが。

 悟空となのははそれぞれの布団に包まる。

 

 

「それじゃあ悟空くん、ユーノくん、おやす――」

 

 

 おやすみと言おうとした、その時だった。

 急に現れた嫌な気配を、嫌な気をそれぞれが感じ取る。

 

 

「ユーノくん、これって……!」

 

「間違いない、ジュエルシードだ!」

 

「……よし、行くか!」

 

 

 すぐに悟空となのはは着替えてそっと部屋を出た。

 こんな時間だ、家族に見つかるのはまずい。

 事情を知る恭也も起こそうかともなのはは一瞬考えたが、これまでのジュエルシードの戦闘を思い返し悟空と自分が揃っているならば無理に起こす必要はないだろうと考え今回は二人と一匹だけで外に出る。

 そして走りだそうとした矢先、悟空が言った。

 

 

「なのは、ユーノ、今回は飛んでいくからオラに掴まれ」

 

「え、飛んでいくって……どうして?」

 

「簡単だぞ。走っていくより飛んでいった方が早えだろ?」

 

「それはそうですけど……」

 

「考えてる時間はあんましねえんだ、ほれ。行くぞ」

 

「わっ!?」

 

「きゃっ!? ご、悟空くん!?」

 

 

 悟空はそう言うとユーノを頭の上に乗せてなのはをお姫様抱っこで抱えた。

 そして舞空術でゆっくりと浮上する。

 なのはからすれば急に抱きかかえられるわ、宙に浮かぶわで恥ずかしいやら怖いやら色々と複雑な心境だったがジタバタして落っこちたら元も子もないのでしっかりと悟空にしがみ付く。

 

 

「お、落とさないでね……?」

 

「大ぇ丈夫だ、おめえ達が手を離さない限りオラは落とさねえさ……そんじゃ行くとすっか!」

 

 

 悟空がそう言うといつものように白いオーラが吹き出し空を凄まじい速度で飛び始めた。

 暗くなった夜空をまるで流れ星のように白い光が切り裂いていく。

 風を浴びながら空を移動するというのは妙に新鮮で、さらに星空が近くに感じられるという事もあってこんな時になんだが少し楽しいとなのはは感じていた。

 そして飛んで一分もしないうちに悟空はその速度を緩やかに落とし停止した。

 

 

「なのは、ユーノ、着いたぞ」

 

「あ、ありがとう悟空くん……あれ、ここって……」

 

「なのは?」

 

「どうかしたんか?」

 

「あ、ううん。ただここ私が通ってる学校だったから少しびっくりしちゃって」

 

「ひゃー、ここがなのはが通ってる学校だったんか……なら壊されねえうちに急いで封印しねえとな、降りるぞ」

 

 

 そう言うと同時に悟空の高度は下がり地上に降り立つ。

 なのはは首にかけているレイジグハートを握りしめて言葉を紡いだ。

 

 

「レイジングハート、セットアップ!」

 

 

 するとなのはの体が桜色の光に包まれて服装がバリアジャケットに変化する。

 杖へと変化したレイジングハートを強く握りしめ周囲に目をやる。

 一方、悟空も真剣な表情で気を探っていた。

 と、ここで悟空が一点、いつもとは違う事に気が付く。

 

 

「あり? よくよく感じ取ってみっと嫌な気が……二つあっぞ?」

 

「「え?」」

 

 

 その言葉になのはとユーノが振り向いた瞬間。

 

 

「「グルアアアアアッ!!」」

 

「「っ!?」」

 

「やっぱり二体いやがったな……!」

 

 

 現れたのは二体の怪物。

 そう、ここにあるジュエルシードは二つ。

 それが同時に暴走を起こし二体の怪物を生み出したのである。

 悟空となのはは急いで構える。

 そこで悟空はこう言った。

 

 

「ちょうどいいや、なのは、一体はおめえに任せる。もう一体はオラが相手するからよ」

 

「えぇ!? た、確かに数を考えたらそうなるかもしれないけど、でも……」

 

「悟空さん、なのはに一対一をやらせるのはマズいんじゃ……」

 

 

 なのはは躊躇しユーノも反対する。

 何せまともな戦闘経験など、なのはにはないからだ。

 怖いという思いもあれば、自信がないというのもある。

 だが悟空はそんななのはの不安を吹き飛ばすかのようにニカッと笑う。

 

 

「大ぇ丈夫だ、危なくなったらオラが助けてやる。こういうのは何事も経験って言うだろ? それにおめえの魔法の力があればそんなに苦戦はしないとオラは思う」

 

「悟空くん……わ、分かった。やってみる!」

 

「なのは!?」

 

「よし、決まりだな! 行くぞ、なのは!」

 

「うん!」

 

 

 会話を終えると二人は臨戦態勢に入る。

 そして怪物が動き出す前に――悟空が動いた。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 裂帛の気合とともに痛烈な一撃が片方の怪物に決まる。

 たまらず怪物は吹き飛んでいき、悟空はそれを追って行った。

 とりあえずこれで分断には成功した。

 後はなのは次第だ。

 

 

「ギシャアッ!!」

 

「くっ!」

 

 

 襲い掛かる怪物の巨体をなのははギリギリ回避する。

 悟空のように鍛え抜かれた肉体ならともかくなのはのような女の子があんな攻撃をまともに受ければバリアジャケットがあると言ってもダメージは免れない。

 だが怪物はすぐさま方向転換しなのはに迫る。

 想像以上に方向転換が早かったため今度は避けられない。

 ――だが。

 

 

「ギッ!?」

 

「……っ!」

 

 

 怪物の体当たりはなのはが魔法で作り出した防御壁によって防がれ、その巨体は弾かれた。

 プロテクション、対象を弾き飛ばす防御壁を展開するなのはの魔法である。

 さらに吹き飛んだ怪物目掛けてなのはは手のひらを向ける。

 イメージするのは悟空の気弾、あれと同じような事が出来れば――そう考えた。

 そしてその考えは。

 

 

「ええいっ!!」

 

「ギイイイイイッ!?」

 

 

 見事に成功していた。

 放たれたのは一つの桜色の魔力弾。

 その魔力弾は怪物の体を穿ち、明確なダメージを与える。

 たまらず逃げようとしたのか、距離を取ろうとしたのか、とにかくなのはから離れようとする怪物。

 しかしその対処もまた、なのははしていた。

 

 

「逃がさないよ!」

 

「グッ!?」

 

 

 気が付けば光の輪が出現しており怪物の体を拘束する。

 これで怪物はもう動く事が出来ない。

 これがレストリクトロック、範囲対象の捕獲魔法である。

 ――なのはとて何も戦いを全部悟空に任せている事を良しと思っていたわけではない。

 なので人目が付かないところでレイジングハートの指導のもと魔法の訓練を行っていたりする。

 その成果が今回使った魔法達なのである。

 そして動けなくなればこちらのもの、なのははゆっくりと怪物へと近づいていった。

 一方で、悟空はと言うと。

 

 

「やるなぁ、なのはの奴!」

 

 

 そんななのはの戦いっぷりを見て嬉しそうに笑っていた。

 勿論怪物の触手攻撃を軽々と回避しながらである。

 

 

「オラも負けてらんねぇ! そろそろ行くぞ!」

 

「グギッ!?」

 

 

 悟空の目つきが変わった瞬間、その姿が怪物の視界から消えた。

 そして気が付けばとんでもなく重い一撃が怪物のボディに決まっていた。

 

 

「でやあっ! だりゃりゃりゃりゃりゃ! だあっ!!」

 

 

 悟空の拳が、蹴りが確実に怪物にヒットし追い詰めていく。

 そして何度目かの蹴りで怪物の体は宙に舞い上がった。

 さらに悟空は目にも止まらぬ高速で怪物が飛んでいった方向に先回り。

 地面目掛けてその巨体を吹き飛ばす!

 

 

「グ、ググ……」

 

 

 ピクピクと動きながら何とか這い上がり態勢を立て直す怪物。

 すぐさまその眼の空中に向けるが、もうそこに悟空はいなかった。

 そして怪物は気づく、自分の後方に気配がある事に。

 だが気づいたところでもう遅い。

 

 

「だらあっ!!」

 

「グガッ!」

 

 

 強烈な蹴りが怪物を背後から襲う。

 吹き飛び、砂煙を上げながら地面を転がる巨体。

 それを睨みながら悟空は構えを取った。

 

 

「かぁー……めぇー……」

 

 

 青白い光が手と手の間に集まっていく。

 体中を巡る強力なエネルギーを集中させて必殺の一撃を放つ準備を整える。

 だが怪物も足掻きをみせる。

 どうにか体勢を立て直した怪物は地面を蹴ったのか、凄まじい速度で悟空に迫る。

 

 

「はぁー……めぇー……」

 

 

 対し悟空は微動だにしない。

 ただその怪物の動きを眼で追いながら気をさらに溜め込んでいく。

 そしてぶつかるか、ぶつからないかという距離にまで怪物が接近してきた瞬間!

 

 

「波あああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 凝縮された気の砲撃が悟空の手の平から放たれた。

 気は青白い光となりて突き進み、怪物を飲み込む。

 そして空高く上がっていき――爆発を起こし散った。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 悟空は息を吐きながら落ちて来た青い宝石、ジュエルシードを掴む。

 そのままそれをなのはの方へと向けた。

 その頃なのはもまたレイジングハートを高々と掲げる。

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード……封、印!!」

 

 

 なのはの目の前にいた光の輪で縛られた怪物が姿を消す。

 もう怪物はどこにもいない、その場に残ったのは二つのジュエルシード。

 それらは一緒にレイジングハートへとゆっくりと吸い込まれていった。

 

 

「お、終わった……お疲れ様、悟空くん」

 

「おう! それにしてもなのは、おめえすげえじゃねえか! もうあれだけ戦えるなんてよ」

 

「え、そ、そうかな?」

 

 

 褒められて悪い気はしない、なのは。

 少しはにかみながら笑顔を見せる。

 

 

「どうだ? 今度オラと戦ってみねえか?」

 

「そ、それはちょっと遠慮したいかも……」

 

 

 そんな会話を交わす二人をユーノはただただ呆然と見つめていた。

 呆然としていたのには相応の理由がある。

 

 

(悟空さんもだけど……なのはも凄い、二人とも才能がある証拠だ)

 

 

 類まれなる戦闘力を持つ悟空。

 魔法を手にして数日であれほど戦えるなのは。

 どちらも天才と評しても問題ないとユーノは思う。

 それだけあの二人の戦いっぷりは凄まじかった。

 

 

(この二人が手伝ってくれるなら、きっとこれからのジュエルシード集めも……)

 

「ユーノくん? どうかした?」

 

「おーい、ボーッとしてっと置いてくぞぉ!」

 

「あ、待ってくださいよ!」

 

 

 こうしてユーノは考えるのを中断して二人のもとへと駆けていったのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 サッカーの応援かぁ、楽しんで来いよ、なのは! オラ? オラは修行だ!

 ……ん? この気……ジュエルシードか! しかも今までよりもでけえ……。

 なのは、ユーノ、行くぞ! ……あり? どうした、なのは。元気ねぇみてえだけど。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「固まる決意! おめえはよく頑張った」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十一 固まる決意! おめえはよく頑張った

 お気に入り登録をしてくださった方々、感想をくれた方々ありがとうございます!

 別に次回から章が変わる、というわけではないのですが今回の話は一章の中でも一つの節目って感じですかね、多分。

 ちなみに地味に難産でした、今回の話。

 では其之十一をどうぞ。


 ――二つのジュエルシードの封印を一気に成功させた日の翌日。

 

 

「なのはー! もう朝だぞ、起きろー!」

 

「んん……後五分……」

 

 

 悟空となのははそんなテンプレ的な会話をしていた。

 そんななのはの言葉を聞いて悟空は首を傾げる。

 

 

「おめえがどうしてもそうしてえってんならオラも文句はねえけどさ……なのは、おめえ今日用事があるとか言ってなかったか?」

 

「……あ、そ、そうだった!」

 

「ははっ、何だ。忘れてたんか?」

 

 

 悟空の一言で今日の用事を思い出しガバッと布団から飛び出すなのは。

 そんな慌ただしいなのはの姿を見て悟空は笑っていた。

 

 

「す、すぐに着替えるから悟空くんは部屋の外に出てて! それと起こしてくれてありがとう!」

 

「おう、ユーノ。おめえも起きろ、朝飯食うぞー」

 

「ムニャ……はい、悟空さん」

 

 

 こうして悟空はユーノを連れて部屋を出ていった。

 出た後の部屋の中からはバタバタと慌てふためくなのはによる騒音が響いていた。

 ただ悟空も多少は学習する、これは高町家ではよくある光景だ。

 なので放っておいてユーノと共に一階に下りていく。

 ――ちなみに一回だけバタバタという音が気になってノックもせずに部屋に入ったところ、着替え中のなのはを見てしまい悲鳴とともに物を投げつけらたという事件があったりしたがそれはまた別の話だ。

 

 

「なのは、あぁ見えて怒るとおっかねえからなぁ……チチにも負けてねえかもしれねえな」

 

「……悟空さん、どうかしました?」

 

「いや、何でもねえさ。行くぞ、ユーノ」

 

 

 懐かしい記憶を思い起こしながら、まだ若干寝ぼけ気味のユーノを頭に乗せて悟空は階段を下りていく。

 一階に下りれば食欲をそそる美味しそうな匂いが漂ってくる。

 もうすっかり嗅ぎ慣れた、桃子の作るご飯の匂いだった。

 まぁ嗅ぎ慣れたと言っても、まるで飽きはしないし悟空にとっては毎日の楽しみなわけだが。

 悟空は戸を開ける、そしていつもの挨拶を口にする。

 

 

「オッス! 士郎、桃子!」

 

「おぉ、おはよう。悟空くん」

 

「おはよう、悟空くん。なのはを起こしてくれてありがとうね」

 

「気にしなくていいぞ、なのはからも頼まれてた事だしな。それよりも今日の朝飯なんだ!?」

 

「ふふっ、今日はね――」

 

 

 桃子の朝食のメニューの説明を聞きながら悟空はヨダレが溢れるのを必死に堪えた。

 パオズ山とはまた違った温かく優しい場所。

 それが悟空の高町家に対するイメージ。

 要はこの場所が、この雰囲気が悟空はすっかり好きになっていたのだった。

 

 

 

 朝食時。

 皆で揃って朝食を食べる、高町家の朝のいつもの光景。

 勿論――。

 

 

「ガツガツガツ……!」

 

 

 底なしの食欲でご飯にがっつく悟空も、ここ最近ではいつもの光景の一部となっていた。

 そんな悟空だが気になる事がありなのはに問いかける。

 

 

「そういえばよ? なのは」

 

「え? 何?」

 

「おめえ、今日は学校は休みなんだろ? 用事ってなんなんだ?」

 

「あぁそれはね、お父さんがコーチ兼オーナーをしてるサッカーチームの応援にいくんだ、アリサちゃんとすずかちゃんも一緒にね」

 

「サッカー……オラ知ってっぞ。確か球蹴ってゴールに入れるっちゅうやつだろ?」

 

「にゃはは……まぁ間違ってないかな」

 

 

 正解したからか、少し嬉しそうにご飯を食べ進める悟空。

 なのははそんな悟空を微笑みながら見つつ何かを思いついたような顔をした。

 

 

「そうだ! 悟空くんも一緒にいかない?」

 

「オラもか?」

 

「うん!」

 

「ん~……誘ってくれんのは嬉しいんだけどよ、オラじっと応援すんのはどうにも性に合わねえし修行もしてえからな、やめとくぞ」

 

「そっか……」

 

「悪りいな、なのは。あ、桃子! おかわりー!」

 

「はい、ちょっと待っててね」

 

 

 なのはの落ち込む姿に流石の悟空も若干心を痛めたものの、じっとしてるのが性に合わないのも修行をしたいのも事実だったためしょうがないと割り切った。

 こうして賑やかな朝食の時間は過ぎ去っていく。

 

 

 

「よっ、ほっ……」

 

 

 なのはやユーノ達が出かけた後、悟空の姿は道場にあった。

 修行前の準備運動中である。

 そして準備運動を終えた悟空は気合を入れて構えを取った。

 

 

「よっしゃ、今日もいっちょやってみっかな!」

 

 

 ――悟空の修行が始まった。

 基礎トレーニング、気弾を利用した回避のトレーニング、仮想敵と戦うイメージトレーニング、様々なトレーニングを休む事なく行っていく。

 悟空はこのようなハードなトレーニングを毎日のように行い腕を磨いている。

 それはジュエルシードから生まれる怪物に負けないため。

 何より今後今相手にしている怪物とはまた違った強者が現れた時に、その強者に負けないためのトレーニングだった。

 正直なところ、そんな強者が存在するのかは悟空本人にも分からない。

 だが宇宙は広大だ。

 どんな強者が存在するか、なんて誰にも分からないし、そんなの絶対にいないとは言い切れない。

 それを理解しているからこそ鍛錬は怠れない。

 

 

「もしかしたら今まで見た事もねえ強え奴と出会って戦えるかもしれねぇんだ……今からワクワクすっぞ」

 

 

 その時になって後悔しないためにも一刻も早く強さを取り戻す――いや、それ以上を目指す必要がある。

 だから悟空は今日もひたむきに特訓に打ち込める。

 そんな折、突如として嫌な気を感じた。

 それも今までの怪物とはまた違う、大きな気だった。

 

 

「この気は……やべえかもな、急がねえと!」

 

 

 悟空は道場を飛び出す。

 そこでバッタリと遭遇したのは、なのはとユーノだった。

 ちょうど応援を終えて帰って来ていたのである。

 

 

「悟空くん!」

 

「悟空さん!」

 

「なのはにユーノか、おめえ達も来るんだろ?」

 

「う、うん!」

 

「勿論です!」

 

「よし、じゃあ急ぐぞ。オラに掴まれ、こんぐらいの距離ひとっ飛びだ」

 

 

 なのはは頷くと悟空に抱き着き、ユーノもまた悟空の頭の上に乗る。

 そしてなのはをしっかりと抱き抱えると悟空の体は宙に浮かび――現場に向かって飛んでいく。

 瞬間移動を使っても良かったが相手の様子を遠方から見れるという意味でも今回も舞空術での移動を選択した悟空であった。

 

 

 

 ――そこに広がる光景はあまりにも悲惨だった。

 平和なはずの街並みは見た事もないほどの巨木によって破壊されていた。

 ビルは貫かれ、地面は根によって隆起し、巨木は未だに成長を続けているのか枝や根を伸ばしている。

 

 

「ひゃー、でっけえなぁ……こりゃとんでもねえぞ」

 

「多分人間が発動させたんだと思います、でなきゃこんな大きさには……」

 

「人間……そんな……やっぱりあの時……」

 

「なのは? どうかしたんか?」

 

「……なんでも、ない……それより早く止めないと」

 

「よし、そう言う事ならまずはオラから試してみっか!」

 

 

 悟空はそう言うと近くのビルの上になのはとユーノを下ろし構えを取る。

 両腕に青白い光が灯る。

 悟空はそれを――勢いよく連続で打ちだした。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ、でやあっ!」

 

 

 連続で放たれた気弾は伸びる枝を巻き込み消滅させていく。

 だが消滅した傍から枝は伸び、また元の長さに戻ってしまった。

 

 

「あちゃー……駄目か、こうなったらしょうがねえ、全力のかめはめ波で……」

 

「だ、駄目ですよ。悟空さん!」

 

 

 かめはめ波の構えに入ろうとした悟空を止めたのはユーノだった。

 悟空は止める意味がよく分からずに首を傾げ疑問を口にする。

 

 

「なんで止めんだ? ユーノ」

 

「さっきも言いましたけど今回のは恐らく人間の願いによって発生した暴走です! 悟空さんの攻撃であの木を全部消し飛ばしてしまったら……」

 

「願い事をした人間まで消し飛ばしちまう可能性があるっちゅう事か……」

 

「は、はい。そうです……」

 

「まいったな、そうなると手出しが出来ねえぞ」

 

 

 頭を掻きながら困った顔を浮かべる悟空。

 そんな中で前に出たのは――なのはだった。

 

 

「……私がやる」

 

「……出来るんか? なのは」

 

「うん、試したい事もあるから……」

 

「……分かった、じゃあオラはあの枝や根っこの足止めをする。その間に頼むぞ」

 

 

 悟空はそう告げると飛び立つ。

 そして両手に気を溜めてそれを連続で発射。

 木や根を一時的に消滅させて、これ以上の被害が出ないように食い止める。

 ――なのはの様子がおかしいのは悟空とて気づいている。

 だがだからと言って聞いてる暇は今は無かった。

 一方でなのははバリアジャケットを装備しレイジングハートを構える。

 

 

<Area Search>

 

 

 無数の光がなのはの周囲、巨木の方面へと放たれる。

 エリアサーチ、魔力で出来たサーチャーと呼ばれる端末を飛ばし中範囲を視る事が出来る中距離探索魔法だ。

 これにより、なのははこの巨木の元、ジュエルシードがある場所を探る。

 効果はてき面で数分もしないうちに。

 

 

「見つけた!」

 

 

 なのははジュエルシードを発見した。

 それに気づいたのか巨木はその枝をなのはの方へと伸ばす。

 だが、そうはいかない。

 

 

「はあっ!!」

 

 

 横から飛んできた気弾が枝を消し飛ばしていく。

 言わずもがな、悟空である。

 悟空がいる限り危険はない、そんな信頼感がなのはの中にはあったから、なのはは枝が迫って来ても微動だにしなかった。

 さらになのはは攻撃の準備に入る。

 

 

「お願い! レイジングハート!」

 

 

 主の呼びかけに応えるようにレイジングハートがその形を変える。

 光の翼が生え、四つの環状魔法陣に取り巻かれたその姿は最早杖と言うよりは砲のように見えた。

 なのははその先端を真っすぐ、ジュエルシードのある方向に向ける。

 先端に魔力が溜まっていく。

 

 

「行くよ!!」

 

 

 その叫びと共に放たれたのは桜色の砲撃だった。

 この時なのはの脳裏には悟空のかめはめ波が浮かんでいた。

 あれとは違うが自分なりにああ言った事が出来ないかと考え辿り着いたのがこれだった。

 砲撃はそのまま巨木の一か所に激突。

 さらになのはは、そのまま封印に入る。

 

 

「リリカルマジカル! ジュエルシード……封印!!」

 

「わっ!?」

 

 

 その言葉が紡がれると共に桜色の光は周囲を包み込む。

 そして気が付けば巨木の姿は完全に消え去っていた。

 残ったジュエルシードはゆっくりとレイジングハートに吸い込まれ消えていく。

 

 

(やっぱりなのはは凄い……まさか砲撃魔法まで撃てるようになるなんて)

 

 

 ユーノはなのはのその才能に改めて驚かざるを得ない。

 そもそも砲撃魔法とは並大抵のものでは使えない代物だからだ。

 現に悲しい話ではあるがユーノにはとてもじゃないが使えない。

 それを魔法を覚えてまだ僅かなのにも関わらず会得、使用してみせたなのはは十分規格外だった。

 まぁ気なんて言う魔法とは別の力を使いあれだけの戦闘力を誇る非常識の塊のような悟空のせいで若干霞みはするが。

 

 

「なのは、お疲れ様……なのは?」

 

「なのは、おめえやるなぁ! あんな技を持ってたなんてよ、やっぱり今度オラと……あり? どうした?」

 

「悟空くん、ユーノくん……私、私……」

 

 

 なのはは語りだした。

 俯きながら、悲しそうに、自分を責めるように。

 ジュエルシードの存在に実は何となくではあるが気づいていたという事を。

 それを気のせいだと思い見逃してしまった事を。

 

 

「私がもっとしっかりしてればこんな事には……」

 

「なのは……」

 

「……でもよ? 不幸中の幸いっちゅう奴なんだろうけど死人は出てねえぞ?」

 

「でも街は壊れちゃった……」

 

「壊れたなら直せばいいじゃねえか」

 

「そんな簡単に……!」

 

「簡単な事だろ? おめえは難しく考えすぎだと思うぞ? ここじゃ命は元には戻せねえけど物なら時間はかかっけど直せる。それによ、確かにおめえが見過ごした結果がこれなのかもしれないけんど……これだけは言えっぞ」

 

「悟空くん……?」

 

 

 気が付けば悟空の手はなのはの頭の上にあった。

 そしてそのまま優しく頭を撫でる。

 まるで大人が子供を慰める時のような優しい撫で方だった。

 

 

「なのは、おめえはよく頑張った、それをオラ達は知ってる。そん中で失敗の一つや二つあったってしょうがねえとオラは思うんだ。おめえは元々一般人なわけだし尚更だな。色々足りてねえもんもあるんだろうし、だからよ? あまり自分の事を責めすぎんなって、責めたっておめえが傷つくだけだし、そもそも失敗なんてもんは誰にでもあんだしよ」

 

「……悟空くんもあるの? 失敗した事」

 

「あぁいっぱいあるぞ。それこそ何度だってな、その度に反省して次に生かすんだ、まぁそれでも失敗する事もあんだけどよ、あはは!」

 

「……ふふっ」

 

「お、やっと笑ったな? やっぱなのはは笑顔なのが一番いいや!」

 

「悟空くん……ありがとう」

 

「ん? ……おう!」

 

 

 二人は笑い合う。

 ただしなのはの目尻には涙が溜まっていた。

 

 

(失敗を次に生かす……今私がやるべきなのは自分を責め続ける事じゃなくて二度とこんな事が起きないように、こんな失敗をしないように気を付ける事……生半可な、お手伝い気分じゃなくて本当の本当に私の意志でこのジュエルシードの事件を解決するために改めて頑張っていこう……悟空くん達と一緒に)

 

 

 不屈の心を持つ少女は夕日を見ながら、頭に残った悟空の温もりを感じながらそう決意を固める。

 この日、悟空となのはの間の距離は心なしか縮まり、なのはは精神的に少し成長したのだった。

 ――しかしそう易々といかないのが世の中というものである。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「……ねぇ、本当にいいの?」

 

「くどいぞ、協力はしてやると言っているだろう。俺も地球には少し用があるしな」

 

「ったく、相変わらず口の悪いガキンチョだねぇ」

 

 

 新たな戦士達の影がすぐそこまで迫っているのだから。




 オッス! オラ、悟空!

 ここがすずかの家か、でっけえなぁ! ブルマの家とどっちがでけえかな?

 菓子もうめえ! オラ大満足だぞぉ! ……ん?

 気を感じる……ジュエルシードもあっけど近くにある二つの気も結構つええ、特に片方の気は――待てよ? この気……!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「現れたライバル!? 二人の新戦士!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十二 現れたライバル!? 二人の新戦士!

 お気に入り登録してくださった皆さん、感想を書いてくれた皆さん、評価をくださったパンナコッタ11さんとyouheiさんありがとうございます!

 おかげさまでランキングにも乗れましたし、自分の調子もいい感じです。

 どんな形であれ皆さんの応援が自分の力となります。

 今後とも応援よろしくお願い致します!

 では其之十二をどうぞ!


 ――週末。

 多くの人が普段の生活から解放され休みを謳歌するこの日、高町家ではなのはが悟空を誘っていた。

 

 

「ねぇ悟空くん、良かったら一緒に来ない?」

 

「ん? なんだ、またサッカーか?」

 

「ううん、違うよ。今日はすずかちゃんの家に遊びにいくの……それでね? その……悟空くんも一緒にどうかなって」

 

 

 少し頬を赤らめながらそう告げるなのは。

 だが当の悟空の表情はあまりよろしくない。

 

 

「んー……でもよぉ、オラ修行が――」

 

「おいしいお菓子もあるってよ?」

 

「美味い菓子!? それならオラ行くぞ!」

 

「にゃ、にゃはは……」

 

 

 悟空を誘う事に見事成功したなのは。

 だが食べ物で釣るような形になってしまったので正直言うと不満はあった。

 出来ればそういうの無しで付いてきてもらいたかったなぁと言うのがなのはの思いだったのだ。

 と同時に心配になる。

 この調子じゃ悪い人にも食べ物で釣られたらホイホイ付いていってしまうのではないかと。

 まぁ悟空なら悪い人程度簡単に倒してしまうだろうが。

 ちなみにこの一連の悟空となのはの会話を聞いていた高町家の面々はと言うと。

 

 

(あの二人いつの間にか随分と仲良くなったなぁ……というかなのは、まさか……)

 

(あらあら、なのはったら。頑張ってるわね)

 

(こういう時どういう顔をしたらいいのやら……)

 

(面白い事になってきた予感!)

 

 

 程度の差こそあれど基本的に二人の、というよりなのはの態度の変化を面白がっていたりする。

 

 

 

 というわけで出発の時間。

 準備を整えたのは悟空、なのはに加え恭也とユーノもだった。

 

 

「ん? なんだ、ユーノはともかく恭也も行くんか?」

 

「あぁ俺も用事があるんでな」

 

「ふふっ、実はね。お兄ちゃんとすずかちゃんのお姉ちゃんは恋人同士なんだよ」

 

「おい、なのは……」

 

「ひゃー! そうなんか! で、いつ結婚すんだ?」

 

「気が早すぎるわ! 何でそんな話になるんだ!」

 

「ん? そういうもんなんか?」

 

 

 きょとんとする悟空に対し若干顔を赤くしながらブツブツ文句を言う恭也。

 そんな姿を見ながらなのはは微笑む。

 

 

「にゃはは、お兄ちゃん照れてる」

 

「う、うるさい。それよりもだ……ジュエルシードはいくつ集まったんだ?」

 

「えっと、ユーノくんが最初から持ってた一個と私が封印したのは五個だから合わせて六個だね」

 

「全部で二十一個あんだったな、まだまだ先は長そうだぞぉ」

 

「そうか……何か手伝える事があったら言ってくれ、微力だが力になる」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「ありがとうございます、恭也さん」

 

「サンキュー、恭也。そんじゃ出発すっか!」

 

 

 こうして三人と一匹は高町家を出発した。

 目指すは月村邸。

 悟空は初めて行くから知らなかったが、どうやら距離が結構あるようで徒歩からバスに乗る。

 バスに揺られながら悟空はふと呟いた。

 

 

「思ったんだけどよ。わざわざバスに乗んなくてもオラがおめえ達を運べばいい話じゃねえのか?」

 

「それも考えたんだけど流石に私とお兄ちゃん二人を抱えさせるには悟空くんの体が小さすぎるというか……」

 

「万が一にでも落っこちたらシャレにならないからな」

 

「キュー……」

 

「あ、そういや瞬間移動の事話してなかったか」

 

「「瞬間移動?」」

 

「そだぞ、覚えるのにすげえ苦労したんだけどよ。オラ知ってる奴の気がある場所になら自由に瞬間移動が出来んだ、すずかとは一回会って気を覚えてっからな、多分使えると思う……最近は舞空術ばかり使ってたからすっかり忘れてたぞぉ」

 

「そんな事も出来るんだ……あ、でもバスに乗っちゃったし……」

 

「わざわざ降りるのもあれだしな、それにあまりそう言う技を人前で使うもんじゃないぞ。騒ぎになる」

 

「そうけ? じゃあやめとくか」

 

 

 そんな会話をしているとバスが目的のバス停に到着する。

 バスを降りた一行は、その後談笑しながら徒歩で暫く移動を続けるとようやく目的の家が見えて来た。

 そこにあったのは――豪邸と呼ぶに相応しい巨大な屋敷。

 高町家も十分に立派な佇まいをしているのだが月村家は格が違うと表記するのが相応しいほどに立派な外見をしていた。

 

 

「でっけえなぁ! こんなでっかい家久々にみたぞぉ」

 

「久々って事は見た事はあるんだ……」

 

「あぁブルマっちゅう奴の家もここに負けねえくらい立派だったかんな」

 

「ブルマ……あぁ悟空くんの友達だっけ」

 

 

 何度聞いても面白い名前だなぁとかなのはは思いつつインターホンを押す。

 すると出て来たのは見た目を美しいメイドさんだった。

 

 

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。なのは様、恭也様、そして――」

 

「ん?」

 

「貴方様が孫悟空様ですね、お話は伺っております。私はこの家に仕えるメイドのノエルと言います、以後お見知りおきを」

 

「ノエルか! よし、覚えたぞ! よろしくな!」

 

「ふふっ、はい。では屋敷内にご案内しますのでこちらへどうぞ」

 

 

 ノエルに案内されるがままに屋敷の内部に入る一行。

 流石に豪邸だけあり外面だけじゃなく内装も立派なものだった。

 慣れたようにノエルに付いていくなのはとキョロキョロする悟空とユーノ。

 と、ここで恭也はノエルと何かを話して一人別方向へと歩き出す。

 当然それが気になった悟空は問いかけるわけで。

 

 

「恭也、おめえどこ行くんだ?」

 

「ここからは俺は別行動だ、帰る時は一緒だがな」

 

「悟空くん、さっきも言ったけどお兄ちゃんは恋人の忍さんのところにいくんだよ」

 

「なんだ、そういう事か、分かった。じゃあ恭也また後でなー!」

 

「あぁ」

 

 

 こうして恭也と別れなのは、悟空、ユーノはノエルの後ろを付いていく。

 暫くすると目の前に広がるのは日差しが差し込む暖かいテラスだった。

 そんな日差しが気持ちいいのか至る所で猫がくつろいでいる。

 と、そこに知ってる顔が二人。

 

 

「お二人をお連れしました」

 

「あ、やっと来たわね」

 

「なのはちゃん、悟空くん!」

 

「にゃはは、おはよう。それと誘ってくれてありがとう。アリサちゃん、すずかちゃん」

 

「オッス!」

 

 

 こうして集まった四人と一匹。

 と、ここで。

 

 

「キュー!?」

 

「え? ユーノくん?」

 

「ははっ! ユーノの奴やるなぁ。猫達とすっかり仲良くなってら!」

 

(ちーがーいーまーすーっ! 追われてるんです、助けてー!!)

 

「……なんだ、逃げてるだけだったんか。しょうがねえなぁ」

 

 

 悟空はユーノに追い付くとひょいっとその体を抱え頭の上に乗せた。

 猫達はちょいちょいと手を伸ばすが流石にこれではユーノには届かない。

 

 

「悪りいな、おめえ達。こいつはオラの友達だからよ」

 

(た、助かった……)

 

「……あんた、身のこなし凄く軽いわね」

 

「うん、あんなにあっさり追いついて素早くユーノくんを救出するなんて……」

 

「ん? これぐらい普通じゃねえのか?」

 

「悟空くん、それは流石に……」

 

 

 悟空からしてみればこれぐらい出来ない方が不思議だったらしいが傍から見てその早業は並大抵の人間が出来る事ではなかった。

 なのはからツッコミを受けたものの悟空はニカッと笑って言う。

 

 

「まぁ細かい事はいいじゃねえか」

 

「細かい事ってあんたねぇ……」

 

「あはは……何となく悟空くんって人が分かって来たかも」

 

「にゃはは、うん。悟空くんはこういう子なんだよ」

 

 

 すっかり慣れたのだろう、なのはだけは普通に対応していた。

 その後メイドにより運ばれてきたお茶菓子を食べながら軽い雑談タイムに入った。

 そもそもの話、何故急にお呼ばれしたのかとなのはが聞いてみると最近なのはの雰囲気が変わり心配だったからと二人は告げた。

 

 

「何か悩みがあるなら遠慮なく話しなさいよ? 友達なんだから」

 

「そうだよ、なのはちゃん。無理強いはしないけどいつでも頼ってほしいな」

 

「二人とも……ありがとう」

 

「モグモグ……うんめぇ~!」

 

 

 自分は良い友人を持ったとなのはは再度実感した。

 そしてこの時、僅かながらに魔法の事を打ち明けてしまおうかという気持ちも芽生えたが、なのははあえて言葉を飲み込む。

 二人を巻き込むわけにはいかない、勿論気持ちは心底嬉しいわけだがそこは譲れなかった。

 

 

「私なら大丈夫! どうって事ないよ」

 

「なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

「でも、もし本当に何か耐えきれない事があったら相談するね」

 

「ガツガツ! もごもご……」

 

「「「……」」」

 

(ご、悟空さん……)

 

「ん?」

 

 

 三人が真面目な話をしている横で菓子にがっつく悟空。

 当然一同の視線は悟空に向けられる。

 だが悟空はそんな視線などまるで気にしてないように首を傾げるのだった。

 

 

「どうしたんだ? おめえ達」

 

「どうしたんだ? じゃないわよ! 雰囲気ぶち壊しじゃない!」

 

「ア、アリサちゃん落ち着いて……」

 

「にゃはは……まぁ悟空くんだしね」

 

 

 そんな感じで楽しい時間は少しずつ過ぎていく。

 だが――その楽しい時間はただでは終わらなかった。

 

 

「「「!」」」

 

 

 突如として発生した嫌な気配、気を悟空となのは、ユーノは感じ取る。

 

 

(これは……間違いない、ジュエルシード!)

 

(それもかなり近えぞ)

 

(そんな……アリサちゃんやすずかちゃんもいるのに……!)

 

(とりあえず僕が先行するから二人は後から!)

 

 

 ユーノはそう告げると悟空の頭の上から飛び降りる。

 そして全速力で飛び出し、外へと逃げていった。

 

 

「あ、ユーノくん!?」

 

「なになに? どうしたのよ?」

 

「何かあったのかな?」

 

「わ、私ちょっと追いかけてくるね!」

 

 

 そう言ってなのはも走り出す。

 そして残った悟空はと言うと――。

 

 

(嫌な気、だけじゃねえ……近くに知らない気が一つと……もう一つでけえ気がある)

 

 

 その気が問題だった。

 何せその気はこの世界に来てから久々に感じる強い気だったからだ。

 今の自分と拮抗するか、あるいはそれ以上と思われる――そんな強い気。

 さらに問題なのはその気に覚えがあった事だ。

 

 

(まさか、この気……!)

 

「……悟空くん、大丈夫?」

 

「ん? ……あぁ、オラもちょっと行ってくる」

 

「過保護ねぇ、ユーノもなのはも放っておいてもすぐに戻って来ると思うけど」

 

「かもな、でもなのはは運動オンチだからなぁ……やっぱりオラが行かねえと、そんじゃすぐ戻ってくっからよ!」

 

 

 悟空はそう言って駆けだした。

 そんな悟空の背中を見ながらすずかは呟く。

 

 

「悟空くんってああいう顔も出来るんだね……」

 

「確かにえらく真剣な表情だったわね……」

 

 

 

 悟空は走る。

 全速力で駆け抜ける。

 舞空術を使うほどの距離でもなく、アリサやすずかの眼もあった事から瞬間移動も使わずに走り抜ける。

 どうしても気になる、大きな気の正体が。

 気のせいでなければ、その正体は恐らく――悟空の知ってる人物だ。

 そう思うと自然とスピードは上がっていた。

 そのまま少しの間駆け抜けた悟空の眼に映ったものは。

 

 

「ニャー……」

 

「……でけえ猫だなぁ、すずかの家にはこんなのまでいるんか」

 

「違うよ! あれジュエルシードのせいでああなっちゃったみたい」

 

「お、なのは。そうなんか……じゃあ早く戻してやらねえと……でもその前に、だ」

 

「え?」

 

「悟空さん?」

 

「……いるんだろ? 出て来いよ」

 

 

 悟空のその呼びかけに応じるように二つの影が上空に現れた。

 

 

「……」

 

「え、あの子……」

 

 

 一人は金髪赤眼の女の子。

 黒い服にピンクのスカート、黒のマントという服装でその手には黄色の宝石が輝く黒の杖が握られている。

 なのはが反応するのも無理はない。

 何となくだが察せてしまったのだ、彼女が自分と同じ魔導師であるという事を。

 そしてもう一人は――逆立ったツンツンヘアーとM字の生え際が特徴的で上半身がノースリーブ状になっている黒のアンダースーツと白い手袋とブーツを着用した男の子。

 その男の子は悟空を見据えて口を開く。

 

 

「まさかとは思ったが……やはり貴様だったか」

 

「やっぱりか……何となくそうなんじゃねえかって思ってたんだ、おめえも来てたんか」

 

「どうやら貴様とは切っても切れない因縁があるらしい」

 

「だな、この場合喜んでいいのか分からねえけど……なぁ?」

 

 

 会話を交わしながら互いに僅かながら笑みを零す。

 何となくだが嬉しかった、こうして出会えたという事はまたしのぎを削る事が出来る証だから。

 それだけ互いに目の前の相手を認めている証拠だった。

 男の子はニヤリと笑いながら言い放つ。

 

 

「――久しぶりだな、カカロット!」

 

 

 それを受けて悟空もまた口を開いた。

 

 

「あぁ、またおめえに会えるとは思わなかったぞ……ベジータ!」

 

 

 そう、その男の子の名はベジータ。

 誇り高き戦闘民族サイヤ人の王子にして悟空のライバル、そのベジータが悟空同様に子供の姿となって謎の少女と共に今、悟空達の目の前にいた。




 オッス! オラ、悟空!

 ベジータ! またおめえと戦えるなんてな! オラ、ワクワクすっぞ!

 だけんどジュエルシードは渡すわけにはいかねえ、これはなのはとユーノが頑張って集めてるもんだからな。

 だからよ……行くぞ、ベジータ! 勝負だ!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「再会、激突、超激戦! 悟空VS(たい)ベジータ!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十三 再会、激突、超激戦! 悟空VS(たい)ベジータ!!

 お気に入り登録してくれた皆さま、感想を書いてくれた皆さま、メッセージをくれた方、評価を入れてくださったメイジンAトモヤさん、とあるゴリラさん、MinorNoviceさん、enigmaXさん、ヨ=グルトソースさん、輝く航海さんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあって昨日の日間で二位に載る事が出来ました、心から感謝いたします。

 ベジータ達も登場し賑やかになり始めた本作、今後もお付き合いいただけると幸いです。

 ちなみにどうでもいい豆知識というか前回描写しましたが本作のベジータの服装は魔人ブウ編の服装の黒バージョンだったりします。

 では其之十三をどうぞ!


「……悟空くん、あの男の子と知り合いなの?」

 

「あぁあいつの事はよく知ってっぞ、けどよ説明してる暇はなさそうだ……!」

 

 

 悟空はそう言うと構えを取る。

 それとほぼ同時にベジータも空中で構えを取った。

 独特の構えを取りながらニヤリと笑う二人。

 

 

「ベジータ、構えるって事はおめえ達もジュエルシードを狙ってるって事でいいんだな?」

 

「無論だ、でなければ他人の敷地内にわざわざ足を踏み込んだりはしない」

 

「そうか……でもよ、ジュエルシードはなのはとユーノが必死に集めてるもんだ。そう易々とは渡さねえぞ?」

 

「ならば力づくで貰っていくのみだ……!」

 

 

 そこまで会話を終えると二人は気を開放する。

 白いオーラが吹き出し大気が震えるのをなのは、ユーノ、そして謎の少女は感じていた。

 こんな悟空を、なのはは初めてみた。

 とても嬉しそうで、同時にとてつもなく真剣なその瞳を見ると言葉が出ない。

 そんな中、謎の少女はベジータに声をかける。

 

 

「ベジータ……」

 

「あの男は俺様が相手をする、お前はもう一人の方と戦え……気が向かんのならそれでもかまわん、その時は俺一人で二人を相手にすればいい話だからな」

 

「……ううん、私も戦う」

 

「……そうか、なら行くぞ!」

 

「うん」

 

 

 そう言って少女は杖を構える。

 その眼はなのはに向けられていた。

 綺麗で寂しそうな瞳がなのはを映す。

 

 

(あの子……)

 

「なのは! 来るぞ!!」

 

「う、うん……!」

 

 

 なのははバリアジャケットを纏い杖を構える。

 それが合図となりベジータと謎の少女は飛び出した。

 

 

「はあああああっ!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 ベジータと悟空の腕がぶつかり合う。

 そして次の瞬間、二人の姿はその場から消え去っていた。

 ドン、ドンと何かがぶつかり合う音だけが周囲に響き渡り白濁する空気の球がいくつも生まれては消えていく。

 さらにそれが治まったかと思えば今度はビュッ、ビュッと空気を切り裂く音が聞こえ二人の姿が現れては消えていく。

 それがまた見えなくなったかと思えば再びぶつかり合う音とともに特大の空気の球が発生した。

 気が付けばその空気の球の中心には悟空とベジータの姿があり互いの拳を相手の顔面に叩き込んでいる。

 ダメージはそれなりにある、だが双方すぐに体勢を立て直し二人は再度ぶつかりあった。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだだっ!!」

 

 

 拳が、蹴りが、今までにないほどの勢いで放たれぶつかり合い衝撃で空気の球を作り出す。

 互いに右の拳を突き出し左手で相手の拳を受け止める。

 その状態で腕に力を込める事でパワー勝負に持ち込んだ。

 

 

「これが今の貴様の力か! 弱くなったものだな、カカロット!」

 

「おめえだって人の事言えねえじゃねえか……! オラの知ってるベジータはもっと強かったぞ!」

 

「ふん、今に見てろ。すぐにあの頃と同じ……いや、それ以上の強さを手に入れてみせる!」

 

「それはオラだって同じさ!」

 

 

 二人はほぼ同時に膝蹴りを放つ。

 互いの膝がぶつかり合い、同時に二人は相手の拳から手を放しクルクル回転しながら着地。

 再び構えながら睨み合う。

 そして即座に飛び上がり拳や蹴りをぶつけ合い始める。

 

 

「ところでカカロット、貴様気づいているか! ここが俺達の過ごした地球とは別の地球だと!!」

 

「あぁ気づいてっさ! 多分別の宇宙――十二ある宇宙のどれかにある地球だろ!?」

 

「……俺の推測が正しければそれは違う! この地球は別の十二の宇宙にある地球でもない!!」

 

「なんだって!?」

 

「不自然だとは思わんか! どれだけ広域に気を探しても界王神や破壊神、それどころか生物の気も殆ど感じられない……ここは十二の宇宙どれでもない全く別の宇宙の可能性がある!」

 

「……難しい事はオラよく分からねえぞ」

 

「……貴様に説明した俺が馬鹿だった! くそったれめ!!」

 

「うわあああああっ!?」

 

 

 ベジータの怒りが籠った渾身のパンチが悟空の胴体を捉えて吹き飛ばす。

 さらにベジータは飛んでいった悟空に追いすがり上から下へ向けた蹴りを放つ!

 悟空は何とか体勢を立て直しつつ、その蹴りを腕を交差させて防御するが衝撃までは殺しきれず吹き飛ばされてしまう。

 地面に激突するかと思いきやギリギリで踏ん張る悟空、その衝撃だけで多くの砂煙が舞い上がる。

 

 

「ふー、危ねえ、危ねえ……一応ここもすずかの家だもんな、壊すわけにはいかねえ」

 

「ふん……どうやらここでの地上戦では貴様は存分に戦えないらしいな、ならばとっとと空中に来い、カカロット! 地上だろうと空中だろうと俺は貴様を倒してみせる」

 

「へへ、わざわざそんなところにまで気を遣ってくれるなんてよ……でもおかげで思いっきりやれそうだ!」

 

「そうでなくてはこちらが困る、さぁ来い!」

 

 

 再度ぶつかり合う二人。

 拳と蹴りの連打がぶつかり合い衝撃で木々が、そして空気が揺れる。

 その攻防はとても激しかった、これこそが戦闘民族サイヤ人の真骨頂と言わんばかりの暴れっぷりだった。

 

 

「でぇりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!

 

「はぁっ! だあああああっ!!」

 

 

 攻撃、防御、回避、攻撃、防御、回避、凄まじい連続攻撃が双方から放たれ、だがその全てが決定打足りえない。

 それほどに互いの実力は拮抗していた。

 そして何度目かの衝突で二人は一旦距離を取る。

 

 

「やっぱやるなぁ、ベジータ。こんなにワクワクすんの、オラ久々だぞ!」

 

「ふん……だが準備運動はこれぐらいで十分なはずだ、そろそろ全力で来い……カカロット」

 

「やっぱお互い様子見だったわけだ。しょうがねえ……はあああああっ!!」

 

「……はあああああ……!」

 

 

 気が高まっていく。

 二人の体を包む白いオーラは膨れ上がり振動が遠くまで伝わっていく。

 一瞬の閃光が周囲を包み込む。

 気が付けば強烈なまでのオーラを放つ悟空とベジータが空に浮かんでいた。

 何度目かの睨み合い。

 だがベジータはどこか苛立たし気だった。

 

 

「カカロット、貴様……ふざけているのか?」

 

「何のことだ?」

 

「あの技はどうした、今の貴様は超サイヤ人にはなれないのかもしれんがあれは使えるはずだ!」

 

「オラにも色々考えがあんのさ……さぁ始めっぞ、ベジータ!」

 

「チッ、ふざけやがって……いいだろう、後悔するなよ!」

 

 

 二人は構える。

 ほんの少しの間の静寂の時が流れ、気が付けばどちらからともなく動き出していた。

 

 

「ふっ! はっ! でりゃあっ!!」

 

「だだだだっ! でやあっ!!」

 

 

 ぶつかりあう力と力、技と技、速さと速さ。

 そのどれもが互角――かと思われた。

 だが実際は違う、優勢なのは。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

 ベジータだった。

 吹き飛んだ悟空に対しベジータは両手に気を溜め込み追撃の用意に入る。

 

 

「だだだだあああああっ!!」

 

「! やべえっ!!」

 

 

 放たれたのは連続の気弾。

 連射された気弾の数々はまるで降り注ぐ雨の如く悟空目掛けて迫りくる。

 明確な技名こそないものの、これはベジータの得意技とも言っていいものだった。

 勿論その威力を悟空はよく知っているし一発当たるだけでもダメージは免れない事から体から白いオーラを吹き出し回避に専念せざるを得ない。

 だが気づけば気弾の嵐は止んでいた、その代わり。

 

 

「ぐ……っ、かはっ」

 

「フン……だあっ!!」

 

「うあああああっ!?」

 

 

 気が付けば接近していたベジータによる腹部にパンチをもろに受けた悟空は一瞬の隙を見せる。

 その隙を見逃すベジータではない。

 すかさず放った蹴りは見事に悟空に命中。

 悟空は吹き飛んでいく。

 何とかブレーキをかける悟空だったが、またもや気が付けば目の前にはベジータがいた。

 

 

「くっ……!」

 

 

 再び襲い来るパンチを悟空は何とか受け止める。

 そしてこんな状況であるにも関わらず――悟空は笑った。

 

 

「まいったな……オラもこっちに来てから相当修行したつもりだってのに、ベジータ、おめえどんな修行してきたんだ?」

 

「言う必要はない、ただ言える事があるのならばそれは一つ、俺は間違いなく貴様以上の鍛錬を積んできた……死にもの狂いでな! ただそれだけだ!」

 

 

 ベジータはそう言うと悟空に向かって頭突きを放った。

 ゴツンと言う固いものがぶつかり合う音が響く。

 

 

「いっ!?」

 

「隙だらけだ、フンッ!!」

 

「うあっ!?」

 

 

 ベジータの蹴りが悟空をとらえ再び吹き飛ばす。

 戦いの流れは確実にベジータが掴んでいた。

 

 

 

「悟空くんが……あんなに苦戦するなんて」

 

「一体何者なんだ、あの人は……悟空さんも相当強いはずなのに、いや、それよりも……なのは!」

 

「う、うん……!」

 

「……」

 

 

 なのはが視線を向けた先にいるのは金髪の同い年くらいの少女。

 少女はなのはがこちらを向いたのを察知すると悟空とベジータの方を見ていたのを中断してなのはに視線を向ける。

 そして。

 

 

「バルディッシュ」

 

 

 そう呟くと彼女の斧のような杖は鎌のような形に変化した。

 それだけで察する事が出来る、彼女の得意分野は接近戦だと。

 そして対策を講じるよりも早く、金髪の少女はなのはに接近、その鎌を振るった。

 

 

「くうっ!?」

 

「……」

 

 

 何とかその一撃を受け止めるなのは。

 なのはは少女に問いかける。

 

 

「どうしてこんな事をするの!? なんで急にこんな……!」

 

「答えても多分意味はない」

 

 

 その声音は冷たかった。

 本気でこちらを倒しに来ている、なのははそう感じ取る。

 怪物とはまた違う、人と戦う緊張感。

 それがなのはの行動を遅らせ後手に回らせる。

 

 

「くうっ……」

 

 

 力任せに弾かれる。

 そこで少女は一旦距離を取り鎌を杖に戻して、その砲口をなのはに向けた。

 

 

「あ……」

 

「……ごめんね」

 

 

 小さな声だった。

 なのはにははっきりとは聞こえなかったが、それでも何が言いたいかは何となく理解出来た。

 そして――無情にも雷の砲撃が放たれる。

 なのはは思わず目を瞑る、だが。

 

 

「なのはあああああー!」

 

「え……?」

 

 

 聞き覚えのある声と共になのはの前に影が現れる。

 それは他でもない、悟空だった。

 悟空はなのはの前に立つ事で盾となり雷の砲撃をその身に受ける。

 

 

「ぎゃっ!?」

 

 

 その電撃の強さには流石の悟空も思わず動きを止める。

 ダメージは大して無いが痺ればかりはどうしようもなかった。

 そこへ――。

 

 

「相変わらず甘いな……まさか自ら隙を晒すとは」

 

 

 今度はベジータが悟空の前に現れた。

 そして痺れてまだ上手く動けない悟空に対し手の平をそっと向ける。

 

 

「こんな形での勝利など不本意ではあるが貴様の負けだ、カカロット」

 

「や、やめて――!」

 

 

 なのはの叫びも虚しくベジータの手のひらからは気功波が放たれた。

 気功波はそのまま悟空に直撃、悟空の体は吹き飛ぶ。

 

 

「うわあああああっ!!」

 

 

 悟空の叫びが木霊する。

 そのまま吹き飛んだ悟空は地面を転がり動かなくなる。

 なのははその様を呆然と見つめていた。

 そこへユーノも駆け寄る。

 遅れてなのはもハッと我に返り悟空に駆け寄った。

 

 

「ご、悟空くん!!」

 

「悟空さん!!」

 

「……安心しろ、そいつはその程度で死ぬほどヤワじゃない」

 

「え……?」

 

「だがカカロットが倒れた今、この戦い貴様らに勝ち目はない……ジュエルシードはもらっていくぞ」

 

 

 ベジータはそう言うと金髪の少女に目を向ける。

 その視線を受けて少女は頷き巨大化した猫に杖を向ける。

 

 

「ジュエルシード、封印」

 

 

 その言葉とともに猫は元のサイズに戻り、ジュエルシードは少女の杖へと吸い込まれていく。

 回収を確認したベジータと金髪の少女はふわりと浮かぶとなのは達には目をくれず空を飛び姿を消した。

 なのはは悟空の側に付きながら二人が飛んでいった空を見つめる。

 

 

「なのは! 僕が悟空さんに回復魔法をかける!」

 

「え、あ、うん……お願い……!」

 

 

 今はそれよりも悟空の事だ。

 ただどうしてもなのはは気になっていた。

 寂しげな少女のあの眼も、厳しさの中に確かな優しさと寂しさを持ってそうなあの少年も。

 悔しさ、悲しさ、怒り、気になる気持ち、色んな感情がない交ぜになってグチャグチャになってしまい、なのはは悟空の傷が癒えるまで、ただただ俯くことしか出来なかった。




 オッス! オラ、悟空!

 オラ達の前に現れてジュエルシードを持って行った謎の子供とベジータ。

 何でベジータはあの子供の味方をするのか、ジュエルシードを集める二人の思いはどんなもんなのか。

 それを紐解く二人の出会いが明かされる!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「少女とベジータ、二人の出会い!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十四 少女とベジータ、二人の出会い!

 新たにお気に入り登録してくれた皆さんに感想をくださった皆さん、メッセージをくれた方に評価を入れてくださったNKーYAYOIさんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげでモチベーションも高めに維持でき、もうすぐ一章の書き溜めが書き終わりそうな勢いです。

 それでは其之十四をどうぞ!


 悟空が回復魔法で急いで治療されてる頃。

 金髪の少女とベジータは遥か上空を飛行し海鳴市から脱出、近隣にある遠見市へとやってきていた。

 ここに建てられたとあるマンションが彼らの地球での拠点だった。

 靴を脱いで部屋に上がった少女とベジータ。

 するとそこでは一人の人物が待っていた。

 オレンジの髪をしたスタイル抜群の女性、彼女は二人を――正確には少女を見ると嬉しそうに駆け寄って来る。

 

 

「フェイト! おかえり! あとベジータも」

 

「ただいま、アルフ」

 

「チッ、ついでみたいに言いやがって」

 

 

 フェイトと呼ばれた少女はアルフと呼ぶ女性の頭を撫でる。

 そんな光景をベジータは一歩引いた場所から眺めていた。

 

 

「そういえばジュエルシードは手に入ったんだろう?」

 

「うん、ちょっと邪魔は入ったけどベジータのおかげで何とかなったよ」

 

「フン、封印したのは貴様だろう、フェイト。俺は戦いたい奴と戦ったにすぎん」

 

 

 ベジータはそう言うとそっぽを向く。

 ただフェイトには一つ気になっていた事があった。

 それは――。

 

 

「ねぇベジータ……一つ聞いていい?」

 

「何だ、言ってみろ」

 

「あのベジータと競り合うくらい強かった男の子……知り合いだったみたいだけど……」

 

「奴は――」

 

 

 ベジータの脳裏には悟空との闘いと競い合いの日々が浮かび上がる。

 初めて地球に来て悟空と対峙した時の事。

 ナメック星でサイヤ人の誇りを託した時の事。

 セルゲームで力の差を見せつけられた時の事。

 バビディの洗脳にあえてかかり命がけの激突をした時の事。

 ――共に地球を守るために戦った日々の事を。

 それらを踏まえて自分と悟空の関係を表す言葉はこれぐらいしかないだろうとベジータは考える。

 

 

「奴は俺のライバルで……超えるべき壁だ」

 

「ライバル……超えるべき壁……」

 

「もし俺と奴が戦った事を気にしているのならそんな気遣いは不要だ、俺達は誇り高き戦闘民族サイヤ人。何よりも戦いを好む、例え相手が知ってる相手であろうがなかろうが関係ない」

 

「ベジータ……」

 

「……フン、まぁいい。腹が減った、今から飯を作るからちょっと待ってろ」

 

 

 ベジータはそう言うとキッチンに向かって行った。

 フェイトはその背中をただただ見つめる。

 その隣にアルフは立っていた。

 

 

「やれやれ、本当に戦いが好きな奴だね」

 

「……うん」

 

 

 料理をするベジータの背中。

 何故かそれがどこか寂し気にも見えて。

 フェイトは過去の記憶を思い返す。

 あれは――どれぐらい前だったろうか。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 ――時の庭園。

 フェイトとアルフ、そしてフェイトの母が暮らしている次元間航行なども可能な移動庭園だ。

 ある日の事だ、そんな時の庭園にちょっとした異常が発生した。

 

 

「フェイト! 大変だよ!」

 

「どうしたの? アルフ」

 

「いいからアレを見ておくれよ!」

 

 

 アルフに言われるがままにフェイトはアルフの指し示した方向を見やる。

 するとそこには。

 

 

「何、あれ……」

 

 

 巨大な光の柱が上がっていた。

 何かの異常か、もしくは無いとは思うが襲撃か。

 フェイトはバルディッシュを手にしバリアジャケットを纏うと光の柱が上がってる方へと駆けだした。

 

 

「ま、待ちなよ! フェイト!」

 

 

 アルフの静止する声が後ろから聞こえるがフェイトは止まらない。

 何故ならここには母がいるのだ。

 フェイトは母の事が大好きだった。

 近年、その母からはあまり愛情を向けられていないがフェイトの記憶には優しい頃の母親の姿がある。

 そんな母に万が一の事があってはいけない。

 母は自分が守るんだ、そんな思いを胸にフェイトは駆け抜けていた。

 そしてあっと言う間に光の柱の根元まで辿り着く。

 

 

「……」

 

 

 バルディッシュが杖から鎌へと姿を変える。

 フェイトはそれを構え臨戦態勢に入った。

 アルフも少し遅れてフェイトに追い付き同じく臨戦態勢に入る。

 これで万が一襲撃者が出て来ても戦える、そう思った。

 それからどれだけ待っただろう、数秒? 数分? とにかく待っていると光が収縮していく。

 緊張感が高まる。

 光は徐々に小さくなり、細くなり――そして消え去った。

 

 

「え……?」

 

「なんだい、ありゃ」

 

 

 フェイトとアルフは思わず臨戦態勢を解いてしまう。

 光の柱の跡地、そこには一人の少年が倒れているだけだったからだ。

 襲撃者……ではないだろうと即座に判断出来た、どう見ても彼は気を失っているのだから。

 フェイトはバルディッシュを杖に戻して少年に近づく。

 逆立ったツンツンヘアーが特徴的な少年は静かに眠っている。

 そんな少年の肩に手を置き軽く揺さぶる。

 すると、だ。

 

 

「ん……む?」

 

「あ、良かった。目を覚ました……」

 

 

 目をゆっくりと開けた少年とフェイトは目を合わせる。

 と、即座に少年は起き上がりアクロバティックな動きでフェイト達と距離を取った。

 少年は二人を睨みながら言う。

 

 

「何者だ? 貴様ら……」

 

「……ここは時の庭園、貴方こそ何者ですか?」

 

「そうだそうだ! 急に現れて……あんたこそ一体何なんだい!?」

 

「時の庭園……?」

 

 

 何だ、それはと少年は首を傾げる。

 だがとりあえずこう口にした。

 

 

「俺の名はベジータ……答えろ、ここは何だ? 天国か? それともまさか地球なのか?」

 

「……天国? 地球?」

 

「あんた何言ってんだい? ここは天国でも地球でもないよ」

 

「なに……?」

 

 

 ベジータは混乱する。

 天国でもなければ地球でもない? どういう事だ? そもそも自分は何故こんなところにいて、しかも体が縮んでいる?

 そんな疑問がグルグルと頭の中を巡る。

 そんなベジータに対しフェイトは一歩前に出る。

 

 

「私はフェイト、こっちはアルフ……ベジータは地球の出身なの?」

 

「出身はまた別の星だ、だが地球で暮らしていた時期はそれなりに長い」

 

「別の星?」

 

「……俺様の出身は惑星ベジータ、戦闘民族サイヤ人の星だ。まぁ滅んだ星の話はどうでもいいだろう、で? その言い方だと地球に行く方法はあるらしいな、どうすれば地球に戻れる」

 

 

 星が滅んだ、そんな重たい話をベジータは何てことなさそうな顔をしながら呟く。

 すると今度はアルフが疑問を口にする。

 

 

「故郷の惑星と同じ名前なんて大層な名を親に付けられたんだね」

 

「当然だ、俺様はサイヤ人の王子なのだからな。正式な名称はベジータ四世だ……だがそんな事は今はどうでもいい! 早く戻る方法を教えやがれ!」

 

「……その事なんだけど、普通のやり方じゃ地球には帰れないと思う」

 

「なにぃ!?」

 

 

 ベジータは苛立たし気に舌打ちをする。

 どうしたものか、そう考えているとフェイトはある提案をした。

 

 

「私達は近々地球に行く、それに同行すれば帰れると思う……ただ」

 

「ただ、なんだ?」

 

「その、母さんの許可を得ないと……私の独断で許可したら怒られちゃうから」

 

(あんな奴にわざわざ許可取る必要無いとは思うけどねぇ……)

 

「ほぅ……ならばその母親のところに案内しろ、直々に話を付ける」

 

「いいけど……出来る限り穏便にね? もし危害を加えるようなら――」

 

「ほぅ……やる気か? それはそれで面白いかもしれんな……冗談だ、俺の目的は帰る事……そのために必要な事である以上そっちが手を出さない限りはこちらも手を出さん、約束してやる」

 

「分かった……じゃあ付いてきて」

 

 

 そうして三人は歩き出した。

 フェイトの母のもとへ向かうために。

 そんな中足を動かしながらフェイトはベジータをチラリと見て思う。

 

 

(乱暴そうで、強そうで、でも寂しそうな子……)

 

 

 一方でベジータもフェイトを見ながらこう思っていた。

 

 

(しかしなんて寂しそうな眼をするガキだ……何があればあんな眼をする事が出来る、その母親とやらに原因があるのか?)

 

 

 奇しくも二人の考えてる事は大まかではあるが一致していた。

 互いに互いが寂しそうに見えて、それ故に何となく放っておけない――そんな思いを抱いていた。

 根っこの部分が優しい二人だからこその一致であったと言えるかもしれない。

 そして数分ほど歩いた後、三人は大きな扉の前に辿り着いた。

 

 

「母さん、入ります」

 

 

 フェイトはそう言うと扉を開ける。

 そこには椅子に座った一人の女性がいた。

 冷たい瞳をしたその女性がフェイトの母であるという事は何となく察する事は出来た。

 だが――。

 

 

(何だ、あれは。あの眼は自分のガキに向けるような眼じゃない……)

 

 

 それがベジータの抱いた感想だった。

 そしてフェイトの方を軽く見やれば、フェイトは少し怯えてるようにも見える。

 これだけでこの親子関係が真っ当なものではないという事は嫌でも理解出来た。

 そんな中、フェイトの母が立ち上がり言葉をかける。

 

 

「貴方がさっきの異変の元凶、みたいね」

 

「……貴様がフェイトの母親か」

 

「……で、何をしに来たのかしら」

 

「俺は地球に帰りたい、そのためにフェイトに同行する許可を寄越せ。用件はそれだけだ」

 

「礼儀と言うのを知らないのかしら? とても頼む側の態度ではないわね」

 

「フン……生憎とこういう性格でな、余程の事がない限り頭を下げるのは性に合わん」

 

「ベ、ベジータ……」

 

 

 一触即発の空気が流れる。

 何とか宥めようとフェイトはベジータに声をかけるがベジータは反応しない。

 ベジータは一目見てこの空気を感じ取った時から思っていた、目の前にいるこの女は気にくわないと。

 一方でフェイトの母親は何かを考え――急に杖を構えた。

 

 

「母さん!?」

 

 

 フェイトの驚きの声、杖の先端には雷が溜まっていく。

 だがそこで動きは止まった。

 よく見ればベジータが手の平を向けて気弾を作り出していたからだ。

 

 

「……驚いたわ、それは魔力じゃないわね……稀少技術(レアスキル)かしら?」

 

「稀少技術? 何のことだか分からんがこれは気というものだ……で、どうする? お望みとあれば打ち合っても構わんが?」

 

「……いいえ、止めておくわ。得体の知れない力とぶつかり合うのは避けたいもの」

 

「フン……」

 

 

 その言葉を皮切りに双方臨戦態勢を解いた。

 荒事にならずに済みフェイトは内心ホッとする。

 

 

「そうそう、同行の許可だったわね……別に構わないわよ、ただし条件があるわ」

 

「……なんだ」

 

「私にはね、どうしても欲しいものがあるの。フェイトを地球に送るのもそのため……それを集める協力をしてほしいのよ」

 

「え!?」

 

「ほう……つまりはフェイト達と協力して貴様のために働けと?」

 

「まぁそうとも言えるわね、どうかしら? 貴方は見たところ中々の実力を持ってそうだわ、その力を貸してほしいのだけれど?」

 

「……」

 

 

 ベジータは考える。

 地球に帰れる、それを考えれば多少働くぐらいはどうって事ないと思えた。

 それに――さっきから脳裏にフェイトのあの眼がチラつく。

 別に家族関係をどうにかしてやろうだとか、問題を解決してやろうだなんて微塵も思っちゃいない。

 だがあの少女をそのまま放ってはおけないと思ったのは紛れもない事実だった。

 

 

(甘くなったものだ……俺も。いや、今更か)

 

 

 ベジータはニヤリと笑う。

 かつては否定した自分の変化を正面から受け入れた男の笑みだった。

 そしてベジータは顔を上げる。

 

 

「いいだろう……だが勘違いするな、俺は俺の意志で動く、貴様の部下になるわけではない」

 

「えぇ、それで構わないわ……それともし裏切って途中で逃げ出したりすれば……少々痛い目にあってもらうわ」

 

「ほぅ脅しか? まぁいいだろう、この俺の誇りにかけて最後までフェイトに協力してやる」

 

「これで交渉成立ね……後は成果を期待しているわ」

 

 

 こうして交渉は終了した。

 フェイトは何事なく終わった事に心から安堵していた。

 所々でハラハラさせられはしたが。

 部屋を出た後、ベジータは口を開く。

 

 

「というわけだ、俺様は貴様達に同行する事になった」

 

「うん……よろしくね、ベジータ」

 

「フン……あぁ」

 

「しかし魔力じゃない力を持ってるとはねぇ……そのキってのはあんた固有の力なのかい?」

 

「……気は生きとし生ける者全てが持つ力だ、個人差はあれど鍛えれば誰でも使える」

 

 

 ベジータのその言葉にフェイトとアルフは感心する。

 先ほどベジータが気弾を生成した時、何とも言えない圧を感じた。

 それだけでベジータが実力者である事は何となく想像がつく。

 鍛えれば誰でも使えると言うが、そう言った張本人の彼は一体どれほどの鍛錬を積んだのだろうか。

 そんなことを考えながらフェイトはベジータとアルフと共に時の庭園内部を歩くのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 それから数日後にフェイトはベジータとアルフと共に地球に降り立ったのだ。

 ちなみにベジータは地球に降り立ってから数日、周辺を調査したり、慣れない図書館で地球について調べたりしていた。

 その結果至ったのがこの世界は自分が過ごした地球でも別の宇宙の地球でもない、という仮説だった。

 最初はショックに感じた部分もあった、だがすぐに気持ちを切り替えた。

 それ以降は暇が出来たら鍛錬に時間を費やしてきたのである、その結果が先ほどの悟空との戦いだ。

 そして実はフェイトはそんなベジータの頑張りをこっそり見ていたりする。

 一緒に過ごした時間はそんなに長くはないが今のフェイトは胸を張って言える、ベジータの事は信用していると。

 

 

「待たせたな、出来たぞ」

 

「うん、ありがとう。ベジータ」

 

「別に礼を言われるほどの事じゃない、貴様が栄養失調になって倒れたりしたら後が面倒だからな。ただそれだけだ」

 

「ベジータ! 肉、肉はあるかい!?」

 

「ええい、用意してあるからがっつくな!」

 

 

 そんなやり取りを見ながらフェイトはクスリと笑う。

 そしていつからか、アルフだけじゃなくベジータも傍にいるのが当たり前になっていた。

 一緒に過ごす時間が楽しかった。

 ベジータという存在がフェイトの中で段々と大きくなっていっているという事に本人も僅かながら気づいていた。

 だが今は何よりもジュエルシードを優先する。

 全ては母のために――優しかったあの頃の母に戻ってもらうために。

 尚、笑ったフェイトの顔を見てベジータもこっそりフッと笑っていた。

 

 

「さて、食うか」

 

「うん」

 

「おうさ!」

 

 

 こうして三人はそれぞれ目の前の食事に手を付け始めるのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 温泉旅行かぁ、どんな美味い飯が食えるのか楽しみだぞぉ! 

 ……なのは、おめえ大ぇ丈夫か? 最近様子がおかしいぞ?

 しょうがねえなぁ、この旅行で気分転換できるといいんだけんど。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「波乱の予感!? ドキドキワクワク温泉旅行!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十五 波乱の予感!? ドキドキワクワク温泉旅行!

 お気に入り登録してくださった皆様に感想をくださった皆様、評価を入れてくださったkatushiさんと氷樹.さん、ありがとうございます!

 一章の執筆は無事終了しました!

 現在は二章のプロット構成と執筆を進めております。

 と、そんな報告をしつつ其之十五をどうぞ!


 ――少しあの後の事を話そう。

 気絶した悟空、そんな悟空を心配そうに見つめるなのはとユーノ。

 傷はユーノの回復魔法によって治癒され、悟空は暫くして目を覚ました。

 その後、皆の元に帰った二人と一匹だったが時間かかりすぎだわ、悟空はボロボロだわで質問攻めにあってしまう。

 そんな中で悟空は。

 

 

「ちょっと色々あってよ、ははっ!」

 

 

 そう言って笑顔を見せ強引に誤魔化したのだった。

 嘘を付いても良かったのだが悟空の頭ではパッといい感じの嘘は思い浮かばなかったので結局こう言った強引な手段ならざるを得なかったのである。

 勿論それで納得したものは少なかったが悟空もなのはも本当の事など言えるはずもないためあえて黙ったままその日を終えた。

 

 

 

 それからさらに数日が経過した。

 あれからジュエルシードの反応はない。

 そんな中、高町家の面々は。

 

 

「さて、それじゃあ皆、出発するぞー」

 

 

 車を出してある所に向かっていた。

 よく見ればそれに付いてくる車が二台ほど。

 そんな一行の行き先は――海鳴温泉。

 何を隠そう、この連休を利用して二泊三日の温泉旅行に行くのだ。

 ちなみに同行している残り二台の車はそれぞれバニングス家と月村家の車である。

 毎年この時期にセッティングされた仲良し三家合同の恒例の行事、それがこの温泉旅行なのだ。

 というわけで勿論なのはもユーノも、そして悟空も温泉に行くため車に揺られている。

 そんな中で悟空が気にしている事が一つ。

 

 

「……」

 

「なのは、大ぇ丈夫か?」

 

「え? あ、う、うん。大丈夫だよ」

 

 

 あの少女とベジータとの交戦以降、なのはの様子がおかしいのである。

 いつも何かを考えているのかボーッとしている事が多くなり、周囲の人間もそれを心配していた。

 勿論悟空も心配している人間の一人なのだが何を聞いても「大丈夫」で済まされてしまうのでどうしようもない。

 そんななのはにユーノは念話で語り掛ける。

 

 

(なのは、色々気になる事もあるかもだけど休日くらいはゆっくりした方がいいよ?)

 

(うん……そうだね、ありがとう)

 

 

 その言葉を受けてなのはは少しだけ気持ちを切り替える。

 とりあえずは心配されない程度には明るく振る舞おう、そう思った。

 それでも気になる気持ちはまだ残っている、あの寂しそうな眼をした名前も知らない少女の事も悟空がベジータと呼んでいた少年の事も、見つからないジュエルシードの事も、そして何より自分を庇い怪我を負った悟空の事も。

 色んな事が気になってしまい頭の中をグルグルと回る。

 だけどここでいつまでも考えてたって埒は明かないと分かってはいるから、なのはは気分転換に隣に座っている悟空に質問してみる事にした。

 よくよく考えればここ数日は考えがまとまらず、あまり悟空とも会話していないし聞きたい事はいくつかあったから。

 

 

「ねぇ悟空くん」

 

「ん? どした?」

 

「この前会った男の子、ベジータくんだっけ……悟空くんの友達なんだよね?」

 

「友達? 友達かぁ……ちょっとしっくり来ねえなぁ、確かに嫌いじゃねえけどよ」

 

「え?」

 

 

 なのはは首を傾げる。

 友達、ではない。

 だとするならどういう関係なのだろうかと。

 

 

「オラとベジータは……うーん、そうだな。ライバルって言うのが一番しっくり来るかもしれねぇ……あいつはすげえ奴でよ? 戦いの天才なんだ」

 

「戦いの天才……」

 

 

 思い返すのは先日の悟空とベジータの戦い。

 あれだけ強い悟空を相手にして優勢を保つベジータの姿だった。

 

 

「悟空くんでも……敵わない人なの?」

 

「どうだろうなぁ……確かにベジータは強えぇし、この前も想像以上に強かったけどよ、オラだってあれからさらに修行したかんな、負けるつもりはねえぞ」

 

 

 悟空はそう言うといつものように笑顔を見せる。

 相変わらずの太陽のようなその笑顔は見ていると心を温かくさせてくれた。

 そういえば、となのはは先日の戦いを思い返して思いついた疑問を口にする。

 

 

「ベジータくんが悟空くんの事カカロットって呼んでたみたいだけど……」

 

「あぁカカロットってのはオラの本名だ」

 

「え? 悟空くんって外人さんだったの?」

 

 

 そんな質問に悟空は疑問符を頭に浮かべる。

 その顔は暗に「なに言ってんだ、おめえ」と言ってるように見えた。

 そして暫くしてあっと声を出す。

 

 

「悪りい、悪りい、そういや士郎と桃子以外には言ってなかったや。オラ宇宙人なんだ」

 

「へぇそっか、宇宙人――って」

 

「「「宇宙人!?」」」

 

 

 高町三兄妹の驚きの声が響き渡る。

 初耳だし、流石に悟空が非常識な存在と言ってもそこまでぶっ飛んだ話になるとは思ってもみなかった。

 そんな三人の反応に士郎は運転しながら苦笑いを浮かべ桃子はクスクスと笑い、悟空はキョトンとしていた。

 

 

「そ、それ本当なの!?」

 

「なんだよ、嘘ついてもしょうがねえだろ? サイヤ人っちゅう種族でさ、カカロットはサイヤ人としてのオラの名前で孫悟空っちゅうのはオラを育ててくれたじいちゃんが付けてくれた名前なんだ」

 

「へ、へぇ……そうなんだ……悟空くんが強いのは何でか少し分かった気がする」

 

「まさか宇宙人とは……本当に人を驚かせるのが上手い奴だ」

 

「この眼で本物の宇宙人を見る日が来るなんてねぇ……イメージと全然違うけど」

 

 

 高町家の中で悟空が宇宙人である事に疑問を持つものはいなかった。

 光の中から現れた、なんて時点で普通じゃないのは分かっていたし何よりも悟空は無駄な嘘はつかない人物だと信頼していたからだ。

 そんなこんなで騒がしくしながらも一行は温泉へと向かい進み続けるのだった。

 そんな中で悟空は少し考える。

 

 

(あれからベジータの気は感じねえ……気を抑えてんだな、オラの瞬間移動対策か。一緒にいた子供の気なら感じ取れっけどオラが向こうに行ったらベジータに攻撃されかねねえしなぁ)

 

 

 戦い自体は望むところな悟空だったが移動直後に襲われて怪我でも追ってしまえば後が面倒な事になるし怒られるのは目に見えている。

 それを分かっているから今は瞬間移動で会いに行くのはグッと堪えるのだった。

 

 

 

 そして車を走らせ続け一行はとうとう海鳴温泉に辿り着いた。

 悟空は早々に車から降りて旅館を見上げている。

 

 

「ひゃー……すずかの家の時も思ったけんど、こりゃまたでっけえ建物だなぁ」

 

「当たり前でしょ、旅館なんだもの」

 

「へぇこれが旅館って言うんか」

 

「悟空くんは旅館初めてなんだね」

 

「あぁ温泉は入った事あんだけど旅館ちゅうのは行く機会がなかったからな」

 

 

 そんな会話をしながら旅館の中に入る。

 そこには外見から想像できる通り広い空間が広がっており卓球台だとかゲームだとか色んなものが置かれていた。

 

 

「さて、とりあえず夕食までは自由行動にしようか」

 

「そうけ? じゃあオラ修行でも――」

 

(悟空さーん! 助けてー!!)

 

「ん?」

 

 

 頭の中に響いてきた知ってる声。

 悟空がクルリと振り向くとそこには――女湯に向かうなのは達と、そんななのはに抱えられたユーノがいた。

 ユーノはジタバタもがき、なのはの腕から抜け出すとダッシュで悟空のもとまで駆け寄って来てピョンッと悟空の頭の上に乗っかる。

 

 

「あ、ユーノくん!?」

 

「どうかしたんか? ユーノ。そんなに慌てちまってよ」

 

(女湯はどうしても嫌なんですー! 一生のお願いですから男湯に連れて行ってください!)

 

 

 こんなところで一生のお願いを使ってしまうユーノ。

 対し悟空はユーノがあまりにも必死すぎて思わず呆気にとられてしまった。

 

 

「しょうがねえなぁ……なぁなのは。ユーノ借りてもいいか? オラも風呂入ってくっからよ」

 

「えー、ユーノくん連れていっちゃうの?」

 

「しょうがねえだろ? 本人がそう言ってんだから」

 

「あんた何言ってるのよ? 動物が喋るわけないでしょ」

 

「ア、アリサちゃん……」

 

「オラ嘘は言ってねえんだけどなぁ、まぁいいや。とりあえずユーノは借りてくぞー」

 

「あ、悟空くん! 行っちゃった……」

 

 

 悟空は男湯に駆け込み、脱衣所で服を脱ぐと髪を洗い体を洗い、大きな風呂に浸かる。

 予定は狂ってしまったが、大きな湯船に浸かるというのは久々の感覚で悪くないと思えた。

 ちなみに幸いというべきか他に人は入っていない。

 そんな悟空を見て湯の入った桶に体を浸からせているユーノは申し訳なさそうに言う。

 

 

「すいません、悟空さん……ご迷惑をおかけして、それとありがとうございます。助かりました」

 

「ははっ、気にすんなって。おめえには恩もあるしよ、これぐらいどうって事ねえさ」

 

「恩?」

 

「オラがベジータにやられた時の傷、治してくれたのはおめえだろ? オラとしては何かしら恩返ししたかったんだ」

 

「そ、そんな! あれくらい当然ですよ、そもそも悟空さんがジュエルシード集めを協力してくれてる時点で僕の方が恩返しすべきなんですから!」

 

「そういうもんか? まぁ細けえ事はいいじゃねえか、オラとしては助かったのは事実だしな」

 

 

 悟空は笑いながらそう言った。

 事実として助かったのは本当だ、何故ならこの世界に仙豆はない。

 ともなれば怪我は自分の治癒力のみでどうにかすべきだったところでユーノの回復魔法には随分と助けられた。

 と、ここで悟空はある疑問を口にする。

 

 

「そういやよ? おめえ何であんなに女湯嫌がったんだ?」

 

「だ、だって僕は男ですし……目のやり場に困りますから……」

 

「へぇーおめえ男だったんか」

 

「え、今更!? これでも人間形態にだってなれるんですよ? 今は無理ですけど……」

 

「そんな事も出来るんか! 器用だな、おめえ」

 

「ご、悟空さんだって人の事言えないでしょうに……」

 

 

 そんな会話をしながら暫くの間、一人と一匹は湯に浸かり続けた。

 そして程よく体が温まったところで――。

 

 

「さて、そろそろ上がっか!」

 

「そうですね! これ以上はのぼせそうですし」

 

 

 悟空とユーノはそう言い合って風呂から上がる。

 体をよく拭き、髪を乾かし、服を着て、最後にユーノを頭の上に乗っけて男湯から出る悟空達。

 すると、知ってる顔が近寄って来る。

 

 

「あ、悟空くん、ユーノくん」

 

「オッス! なのは、おめえ達も上がったところか?」

 

「うん!」

 

 

 なのはとそんな会話を交わす中、二人と一匹に近づく影があった。

 それを察知し悟空はその方向を見やる。

 

 

「……悟空くん?」

 

「誰だ、おめえ? オラ達に何か用か?」

 

「……驚いた、話しかける前に察知されるとはね……それが気って奴かい?」

 

「へへっ、まぁそんなところだな」

 

 

 そこに立っていたのはオレンジの髪をしたグラマラスな美人の女性だった。

 女性は悟空を見た後になのはの方に眼を向け、そしてこう言う。

 

 

「アンタ達だろ? うちの子にアレしてくれちゃってるのはさ……」

 

「え……?」

 

「……おめえ何もんだ?」

 

 

 傍から見ても感じられる殺気。

 それを感じ取りなのはは思わず固まってしまい、悟空は目つきを鋭くさせて尋ねる。

 

 

「答える義理はないね、それにしても……そっちの男はともかく女の方は大した事なさそうに見えるねぇ」

 

「う……」

 

「言い返せないって事は自覚はあり、か。まぁ子供は――」

 

「何をしている、アルフ」

 

 

 その声がした方向に三人と一匹は顔を向ける。

 そこにいたのは――。

 

 

「げっ、ベジータ……」

 

 

 オレンジ髪の女性の言う通りベジータだった。

 ベジータは腕を組みながらアルフを見てこう言う。

 

 

「大方その眼で確認したかったというところだろうが……もう十分だろう、行くぞ」

 

「へいへい、分かったよ」

 

 

 背を向け去っていく二人。

 そんな二人を――いや、ベジータを悟空は呼び止める。

 

 

「待てよ、ベジータ」

 

「……なんだ、カカロット」

 

「おめえ……あの子のためにジュエルシード集めてるんか?」

 

「……さぁな、いちいち説明するのも面倒だ。貴様で勝手に想像してろ」

 

 

 ベジータはそう言うとアルフと呼んだ女性と共に去っていく。

 悟空はその背中を見つめていた。

 昔のベジータみたいにピリピリした感じはなかった、ならばきっと彼なりの善意で動いているのだろうと悟空は思う。

 すると悟空、なのは、ユーノの頭の中に声が響いた。

 

 

(子供はいい子にして家で遊んでなよ、じゃあね)

 

 

 その言葉はアルフのものだった。

 それを最後にベジータとアルフは視界から消える。

 その場に残るのはアルフが残した魔力と殺気。

 暫くの間立ち尽くす二人と一匹。

 そんな三名のもとに一歩引いたところから今までの様子を見ていたアリサとすずかが駆け寄って来る。

 

 

「大丈夫? なのはちゃん、悟空くん」

 

「まったく……なんなのよ、あの二人。ガラ悪いわね……」

 

「にゃ、にゃはは……私達なら大丈夫だよ、ね? 悟空くん」

 

「ん? あぁそだな」

 

 

 二人の応対をしながらなのはと悟空は考える。

 ベジータがいるという事は――それはつまりこの近辺にジュエルシードがあるという事ではないかと。

 そこまでは同じ考えだった、ただ。

 また戦いになる、そう考えると少し気が滅入るなのはとワクワクする悟空はある意味で対照的だった。




 オッス! オラ、悟空!

 でけえ気と嫌な気を感じる……この気、ベジータとジュエルシードか! 

 なのは、ユーノ! オラはベジータの相手をすっからそっちは頼んだぞ!

 ……と言っても普通にやったんじゃ今のベジータには勝てねえかもな、しょうがねえ……あれを使うしかねえ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「悟空の切り札! 見せてやれ、界王拳の力!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十六 悟空の切り札! 見せてやれ、界王拳の力!!

 お気に入り登録や感想をくれた方々、評価を入れてくれたぺちぷにさんに心からの感謝を!

 今回は色々悩みましたがこういう形にさせていただきました。

 では其之十六をどうぞ!


 その日の夜。

 悟空、なのは、アリサ、すずかは同じ部屋で寝る事になった。

 暫くの間、雑談をして過ごした後四人は眠りにつく。

 ――もっとも、寝たのはアリサとすずかだけでなのはと悟空はこっそり起きていたわけだが。

 そしてその近くにはユーノもいる。

 そんな中ユーノが切り出す。

 

 

「ねぇなのは、悟空さん……僕考えたんだけどやっぱり二人はジュエルシード集めから手を引いた方が――」

 

「ユーノくん、それ以上言ったら怒るよ?」

 

「そだぞ? 今更やめろってのは無しだ」

 

「……最初はお手伝い感覚だったけど今は自分の意志でやってる事だから、確かに戦いはあまりしたくないけど……それでも私は投げ出したりはしない」

 

「オラとしては戦いは大歓迎なんだけんど……どっちにしろ、向こうにベジータがいる以上戦力はいるだろ?」

 

「なのは、悟空さん……ありがとう」

 

 

 そう言葉を交わして笑い合う。

 その時だった。

 

 

「「「!」」」

 

 

 三人はジュエルシードの気配を感じ取る。

 加えて悟空は大きな気も感じていた、これは――ベジータの気だ。

 急いで支度をして部屋をそっと飛び出す二人と一匹。

 そのまま出入り口まで行き靴を履いたところで――。

 

 

「なのは、ユーノ、オラに掴まれ!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 二人がしっかりと掴まった事を確認すると悟空は己の額に指を当て気を探る。

 そして次の瞬間には悟空達の姿はそこから消えていた。

 

 

 

「よっ、着いたぞ」

 

「ありがとう悟空くん」

 

 

 ジュエルシードがあると思われる場所に辿り着いた悟空達。

 だがそこには怪物も何もいなかった。

 いるのはフェイトにアルフ、そしてベジータ。

 しかもフェイトの手の上にはジュエルシードが浮いている。

 この短時間で怪物を対峙し封印までしてしまったのだろう、それだけで彼女の、いや彼女達の実力の高さが計り知れる。

 一方でフェイトは急に現れた悟空となのはに対し内心驚いていた。

 それを察してかベジータが説明を入れる。

 

 

「奴の――カカロットの能力“瞬間移動”だ。気を感じとったところへならどこにだって飛んでいける」

 

「瞬間移動……そんな事が……」

 

「厄介な相手だねぇ、まったく」

 

 

 そんな会話を交わしながら悟空、なのは、ユーノとベジータ、フェイト、アルフは対峙する。

 高まる緊張感。

 その中で一番最初に構えを取ったのは悟空とベジータだった。

 

 

「なのは、オラがベジータの相手をする」

 

「奴の相手は俺が務める……残りは好きにしろ」

 

 

 二人はニヤリと笑う。

 そうして一気に飛び出そうとしたその瞬間。

 

 

「ま、待って! 悟空くん!」

 

「いっ!?」

 

「……」

 

 

 悟空の動きはなのはの声によって止められた。

 ベジータもまた悟空が動きを止めた事で一旦ブレーキをかける、その顔は何とも不満そうであり同時に不思議そうでもあった。

 そんな中でなのはは言う。

 

 

「出来れば……話し合いで解決したいの」

 

「なのは……けどよぉ」

 

 

 その言葉に最初に反応したのは――ベジータだった。

 

 

「フン……何かと思えば話し合いだと?」

 

「うん、私は話し合いで解決したい。教えて、どうしてジュエルシードを集めているの?」

 

「……カカロット、貴様と一緒にいるからまさかとは思ったが……貴様同様に甘い奴らしいな」

 

 

 ベジータはチラリとフェイトの方に目を向ける。

 それはフェイトの意志に任せるというベジータなりのメッセージだった。

 それをしっかりと受け取ったフェイトは――バルディッシュを構える。

 と同時にアルフもまた人型から狼のような姿に変わり威嚇する。

 そんなフェイト達になのはは尚も呼びかける。

 

 

「ま、待って! 私は――」

 

「言葉だけじゃ……」

 

「え……?」

 

「言葉だけじゃきっと何も変わらないし伝わらない」

 

 

 そのフェイトの言葉が開戦の合図だった。

 まずは先手必勝と言わんばかりにアルフが襲い掛かる。

 それを防いだのはユーノだった。

 魔力による防御壁による防御、ユーノの得意分野だった。

 アルフは一旦後ろに跳び走り出す。

 それを追うようにユーノも駆けだした。

 

 

「なのは、あの人の相手は僕がする!」

 

「ユ、ユーノくん待……っ!」

 

 

 なのはの言葉は届かず、途中で断たれる。

 何故ならなのはの目の前にはフェイトが迫っていたのだから。

 即座にバリアジャケットを纏い振るわれたバルディッシュをレイジングハートで受け止めるなのは。

 二人の力がせめぎ合う。

 

 

「私は何としてもジュエルシードを手に入れる……」

 

「だからその理由を……!」

 

「言う必要はない……そっちもジュエルシードが欲しいのなら――勝負しよう、互いのジュエルシードを一つ賭けて」

 

 

 一方でその戦いを見ていた悟空とベジータは。

 

 

「始まっちまったか……こりゃ結局やるしかなさそうだ」

 

「よく言う……貴様には分かっていたはずだ、戦うしかない事ぐらいな」

 

「あぁ、でもなのはの思いを無視したくはねえんだ。おめえだってあの子の思いを無視したくはねえだろ?」

 

「……チッ、相変わらずムカつく野郎だ。さぁ行くぞ! 勝負だ、カカロット!!」

 

「来い、ベジータ!!」

 

 

 互いに気を開放する。

 そしてほぼ同時に相手目掛けて突撃した。

 ぶつかり合う二つの超パワーで周囲の木々が揺れる。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 先に仕掛けたのはベジータだった。

 拳による連打が勢いよく放たれる。

 悟空はそれを冷静に見極めつつ防ぎ、躱し、反撃に転じる。

 

 

「だあっ!!」

 

 

 悟空の蹴りがベジータを襲う。

 だがベジータはそれを受け止め力任せに勢いよく悟空の体を振り回し、さらに上空に投げ飛ばす。

 そこへ追撃と言わんばかりに手の平を向け――。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 気弾を放つ。

 悟空は空中で気を使いブレーキをかけて体勢を整えつつギリギリでその気弾を回避する。

 だが悟空が急いでベジータがいた場所に眼を向けた時、既にそこにベジータの姿はなかった。

 悟空は気で探ろうとするがそれよりも早く。

 

 

「後ろだ」

 

「!!」

 

 

 背後からベジータの声がした。

 振り向く暇もなく、強い衝撃が悟空の体を駆け抜ける。

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 吹き飛んでいく悟空。

 そのまま地面に墜落するか、と思われたが何とか体勢を立て直し着地に成功する。

 背中を擦りながら悟空は言う。

 

 

「今のは効いたぞぉ……ベジータ、おめえこの前より強くなってるんじゃねえか?」

 

「当然だ、以前も言ったがサイヤ人の強さに限界などあってたまるか!」

 

「へへっ、そうだったな……」

 

 

 悟空はそう言うと両拳を腰の左右に持っていった。

 それを見たベジータはフッと笑う。

 

 

「ようやくそれを使う気になったか」

 

「あぁ……正直に言うとよ、体が縮んじまってどこまでの負荷に耐えられるか分かんなかったから出来るだけ使いたくなかったんだ……けどおめえを相手にするにはこれがねえと駄目だって事がよく分かった、だから――使わせてもらうぞ! はあああああ……っ!」

 

 

 悟空が気を溜めていく。

 大気が揺れ凄まじい圧が周囲を襲う。

 それは別の場所で戦闘中のなのはやフェイト、ユーノにアルフにも届いていた。

 

 

「悟空くん……!?」

 

「これは……!」

 

「これ……まさか悟空さんが!?」

 

「なんだい、この迫力は……!」

 

 

 誰もがその力に驚愕する中でベジータだけは笑っていた。

 寧ろワクワクしたような顔で悟空がそれを終えるのを待っている。

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 悟空の体が、勢いよく吹き出すオーラが真紅に染まる。

 これこそが界王拳。

 悟空がかつて界王様から伝授された技の一つであり自身の気や戦闘力を何倍にも膨れ上がらせる事が出来る技である。

 すると悟空はゆっくりとベジータを見て笑った。

 

 

「待たせたな……界王拳十倍、準備完了だ」

 

「そうだ、そいつとやりたかった……さぁ来い!!」

 

「そんじゃ……行くぞ!」

 

 

 悟空はそう言うと足に力を込める。

 そしてその力を一気に解き放つ!

 地面は砕け気が付けばベジータの目の前に拳を握った悟空がいた。

 

 

「!!」

 

「だりゃあっ!!」

 

「うおおっ!?」

 

 

 悟空の拳がベジータの横っ面に叩き込まれ、その体を遠くへと吹き飛ばす。

 さらに悟空は凄まじい速度で移動し飛んでいったベジータに追いすがる。

 

 

「はあああああ……だあっ!!」

 

「ぐおあっ!!」

 

 

 さらに叩き込まれた重たい拳はベジータを遥か上空にまでふっ飛ばした。

 そこへ悟空は右手に大量の気を溜め込み、気弾を放つ。

 気弾は真っすぐベジータの方へと飛んでいき直撃、爆発を起こした。

 だが悟空の目つきはまるで緩まない。

 分かっているのだ、今の相手は、ベジータはこの程度では倒れないと。

 実際爆発の煙の中から出て来たのは傷は負ってるものの、まだまだ平気そうな顔をしたベジータだった。

 

 

「やるな、そうでなくては面白くない……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう言うと体にありったけの力を込める。

 奥底に溜め込んでいた気を一気に開放する。

 ベジータの体から吹き出すオーラが膨れ上がっていく。

 と同時に悟空が界王拳を使った時にも負けない程の圧が周囲を襲った。

 悟空はそれに驚きつつも嬉しそうに笑う。

 

 

「やっぱおめえはすげえよ……ベジータ、オラますますワクワクしてきたぞ!」

 

「本当の勝負はここからだ……カカロット!」

 

 

 そう互いに告げた瞬間、二人の姿は消えていた。

 それから数秒もしないうちに空中では何かがぶつかり合う音と共に白い空気の球が発生しては消えていく。

 言わずもがな、この現象を発生させているのは悟空とベジータだった。

 二人は目にも止まらぬスピードで縦横無尽に飛び回り幾度となくその拳と蹴りをぶつけあっていたのである。

 互いに何度もぶつかり合い、時に吹き飛ばし、時に吹き飛ばされ、それを繰り返し最後に全速力で相手に突撃する。

 

 

「だああああありゃあああああっ!!」

 

「でやあああああっ!!」

 

 

 ギリギリまで接近する二人。

 ほぼ同時に拳を繰り出し、拳と拳をぶつけ合う。

 どちらも押されも引きもしない力と力の勝負。

 だが、やがて行き場を失った力は爆発を起こす。

 煙から飛び出し再び接近する双方。

 

 

「りゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだっだあああああっ!!」

 

 

 今度はラッシュによる手数の勝負。

 互いに攻撃を撃ち込み、防ぎ、躱し、ここでも互角の戦いが展開される。

 純粋なパワーだけなら界王拳を使用している悟空の方が上なのだろう、ベジータはその差を天性の勘や動きの見極め、何よりも技術でカバーしていた。

 悟空は思う。

 

 

(やっぱりすげえや……よっぽど厳しい修行をしてきたんだろうな、ベジータの奴……この戦いを続けるたびにオラも強くなってる感じがすっぞ……でもよ)

 

 

 同じくベジータも思う。

 

 

(やはりな、少々癪ではあるが貴様という存在が俺をさらに強くする! この戦い、一分一秒の間に強さが磨かれていく実感がある……だが!)

 

 

 二人は笑う。

 そして堂々と宣言してみせた。

 

 

「「勝つのは……」」

 

「オラだ!」

 

「このベジータ様だ!」

 

 

 二人は一旦距離を取る。

 このままでは埒が明かない。

 ならば自分の最大の最高の一撃をもって決める他ない。

 悟空の両手の間には青白い光が集まる、対しベジータの体全体からは紫の光が吹き出す。

 

 

「かぁー……めぇー……はぁー……めぇー……」

 

「……だあああああっ!!」

 

 

 互いにありったけの力を込める。

 この一撃で決着が着く。

 いや、着けてみせると決意を胸に溜め込んだありったけの気を――放つ!

 

 

「波あああああーっ!!」

 

「ギャリック砲!!」

 

 

 放たれた青白い気功波――かめはめ波。

 そして紫の気功波――ギャリック砲。

 両方とも悟空とベジータの代表的な技の一つである。

 初めてベジータが地球に来たあの日の再現のように、再度この二つの技が地球上でぶつかり合った。

 

 

「ぎぎ……ぎ……!」

 

「ぐぐっ、ぐ……!」

 

 

 木々が揺れる。

 大地が砕ける。

 大気が振動する。

 二人は血管を浮かび上がらせるほどに力を込め、どうにか相手の気功波を押そうとするがビクともしない。

 

 

「こうなったらしょうがねえ……界王拳の出力を二十倍に上げるしかねえ!!」

 

 

 悟空がそう言うと一気にかめはめ波の勢いが増す。

 界王拳はその出力を上げる事により、より高い戦闘力を引き出す事が出来る。

 だが大いなる力にはリスクが付き物だ。

 当然肉体にかかる負荷もあがるのだが……今はそんな事を気にしてる場合ではなかった。

 巨大化したかめはめ波はそのまま爆発的な威力をもってギャリック砲を押していく。

 

 

「ぐ……っ、まだだ、まだ負けんぞおおおおおっ!!」

 

 

 だがベジータも負けてはいなかった。

 ありったけの気を込めていたにも関わらず、さらにギャリック砲の威力を上げたのである。

 それは完全に火事場の馬鹿力だった。

 要は追い詰められた事で己の今の限界を超えたのである。

 ギャリック砲が一気に押し返していく。

 そして再び二人の中心で気功波は競り合い始めた。

 

 

「これでも……決まらねえのか……!」

 

「当然だ……! 俺様に同じような手が通用するとでも思っていたのか!」

 

 

 二人の力は再度拮抗する。

 どれだけの間力を込めただろうか。

 ぶつかり合いを続けた二つの気に限界が訪れようとしていた。

 スパークが走り、限界を超えたように膨張する巨大な気の球。

 そして――その時は訪れた。

 

 

「「!!」」

 

 

 二人の気がぶつかりあっていた、その中心地点が大爆発を起こしたのである。

 

 

「うわあああああっ!!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

 

 当然近くにいた悟空とベジータもその爆発に巻き込まれ爆炎の中へと消えていく。

 先ほどまでうるさいくらいに騒がしかったその場は静寂に包まれた。

 落下していく二人。

 そんな二人のもとに近づく影があった。

 

 

「悟空くん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 なのはとフェイトだった。

 なのはは悟空を、フェイトはベジータを抱き抱え一旦距離を取る。

 そんな中で悟空はゆっくりと目を開けた。

 

 

「う……なのは?」

 

「悟空くん! 大丈夫!?」

 

「へへ……ちょっと頑張りすぎちまった、悪りい……」

 

「ううん……私の方こそごめん……ジュエルシード取られちゃった」

 

 

 そう、悟空とベジータの戦いの裏でなのはとフェイトの戦いも行われていた。

 結果は――フェイトの勝利。

 ジュエルシードは一個、なのはからフェイトの手に渡ってしまった。

 一方でベジータも目を開ける。

 

 

「ぐ……」

 

「ベジータ……大丈夫!?」

 

「……この程度問題はない……貴様の方はどうだったんだ」

 

「うん、一個取ったよ」

 

「そうか……」

 

「ベジータやアルフのおかげだよ、とりあえず今日のところはもう撤退しよう? アルフ!」

 

「あいよ!」

 

 

 フェイトの呼び声に応じてアルフも戦闘を止めてフェイトの側まで飛んでくる。

 そして三人は背を向けて去ろうとしたところに、なのはから待ったがかかる。

 

 

「あ、待って! あの、名前……!」

 

 

 せめてそれだけでも聞かせてほしい。

 どうしてそう思ったのかはなのは自身も分からなかったが、とにかく聞いておきたかった。

 フェイトは少しだけ悩んだ後に口を開き告げる。

 

 

「フェイト・テスタロッサ」

 

「あ……私は――」

 

 

 名乗ってもらえた以上は自分も名乗り返そう、そうした考えのもと喋ろうとした次の瞬間には既に三人の姿は視界から消えていた。

 その場に残ったのはなのはとユーノ、そして悟空だけ。

 

 

「……行っちまったか」

 

「うん……」

 

 

 脳裏を過ぎるは寂しそうなフェイトのあの眼。

 ただ今はボロボロの悟空をどうにかするのが先決だと思ったので気持ちを少しだけ切り替えるなのはだった。




 オッス! オラ、悟空!

 なのは、おめえまた元気がねえぞ。一体どうした? 

 そうか、アリサと喧嘩しちまったんか……でも何とかなるさ、だからそんな顔すんなって!

 そしてその頃ベジータ達はまたも動き出そうとしていた!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「どうすればいい? なのはの悩み」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十七 どうすればいい? なのはの悩み

 お気に入り登録してくれた人達に感想をくれた人達、評価をいれてくださったフォンバックさん、ありがとうございます!

 前回が戦闘回だったので今回は息抜き回……?

 というわけで其之十七をどうぞ!


 温泉旅行は無事? に終了した。

 悟空とベジータの戦いの影響で旅館の敷地内の一か所が破壊しつくされていたという事件こそありはしたし悟空の服がボロボロになったという小さな事件もありはしたが、とにかく無事に終わったのである。

 英気を養った一同はまた再び忙しい日常へと帰っていく。

 それから数日後――。

 

 

 

「ただいま……」

 

「お、オッス! なのは、帰ったんか」

 

「あ、悟空くん……」

 

「……どした? 何か元気ねえみてえだけど」

 

 

 悟空が気になったのはなのはの様子だった。

 帰宅して早々に暗いオーラを纏ってるというかあからさまに落ち込んでいるのが見て取れたのだ。

 なのはは少し悩みながらも言う。

 

 

「……聞いてもらってもいいかな?」

 

「おう、いいぞ! 何か悩んでる時は話しちまうのが一番だ」

 

「……ふふっ、ありがとう。実はね――」

 

 

 なのはは語る。

 なんでも今日学校でアリサと喧嘩してしまったのだと言う。

 原因はここ数日――正確に言えばあの温泉旅行からずっとなのはが心ここにあらずな状態だったからだった。

 なのはからすれば、この胸の内に燻る悩みは魔法も関係している事からアリサやすずかがどんなに大切な友達だとしても言うわけにはいかず、アリサからすれば大切な友達であるなのはの力になれないという事実が何とも苛立たしく思えてしまう。

 そんな事もあり互いに相手を大切に思ってるのは間違いないのに喧嘩になってしまったのである。

 と言ってもアリサが怒り、なのはがただ謝るだけという形の喧嘩だったが。

 

 

「そうか、アリサと喧嘩しちまったんか」

 

「うん……悪いのは私なんだけどね……仲直り、出来るかな」

 

 

 なのはは俯きながら小さい声で呟く。

 そんななのはに対し悟空は――笑顔を見せた。

 

 

「そんな顔すんな、大ぇ丈夫だって!」

 

「え……? でも……」

 

「おめえ達は友達なんだろ? 友達ちゅうんはそう簡単には離れらんねえもんだとオラは思うぞ?」

 

「悟空くん……」

 

「だからよ? あまり気にすんなって、きっと仲直りは出来っさ!」

 

「うん……ありがとう」

 

 

 気持ちが幾分か軽くなったような気がした。

 悟空の笑顔を見ていると、言葉を聞いていると心が温かくなっていくのが感じられる。

 不思議な感覚だった、だが悪い気はまるでしなかった。

 そんななのはを余所に悟空は問いかける。

 

 

「けどよ、何でボーッとしてたんだ? 考え事か?」

 

「それは……」

 

 

 なのはの脳裏に浮かぶのはフェイト、ベジータ、アルフの姿。

 そしてフェイトのあの寂しそうな眼だった。

 

 

「……気になるの、フェイトちゃん達の事が」

 

「気になる?」

 

「うん、だって寂しそうな眼をしてたから……フェイトちゃん、ベジータくんもどこか寂し気に見えたけど」

 

「ベジータも? オラ戦いに夢中だったから全然気づかなかったぞぉ」

 

「にゃはは……悟空くんらしいかも」

 

 

 なのはは苦笑いを浮かべる。

 一緒に過ごした時間はそんなに長くはないが悟空という人間がなのはも何となく分かって来ていた。

 と、ここで悟空は言う。

 

 

「まぁ気になるってんならしょうがねえな、ここは戦うか話すかしてみるしかねえ」

 

「やっぱりその二択だよね……」

 

「なのはは嫌なんか? 戦うの」

 

「……あまり積極的にやろうとは思えないかな」

 

「オラでも少し気持ちは分かっけどな、あのフェイトってやつもアルフってやつも悪い奴じゃねえってのはオラには分かる……けどある程度覚悟は決めとく必要はあると思うぞ? 向こうが話し合いに応じなきゃ選択肢は一つになっちまうんだからさ」

 

「うん……分かってる」

 

「そっか、ならこれ以上は何も言う事はねえや。おやつでも食うか! 桃子が鯛焼きを置いてってくれたからさ」

 

「……うん!」

 

 

 こうして二人はリビングへと移動するのだった。

 

 

「そういえばユーノくんは?」

 

「ユーノならジュエルシード探しにいったぞ? 最近はますます張り切ってんな、あいつ」

 

「えぇ!? 一人で大丈夫かな……」

 

「大ぇ丈夫さ、危なくなったらオラ達を呼ぶように言ってあるしな」

 

「そうなんだ、でも少し心配だから……食べ終わったら私達も探しにいかない?」

 

「そうだなぁ、オラは別にいいぞ?」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方その頃、フェイト達は拠点にいた。

 

 

「ベジータ……怪我の方は大丈夫?」

 

「……貴様、何度同じ質問をするつもりだ?」

 

「ご、ごめんね。でもどうしても心配で……」

 

「……フン、何度でも言うがこの程度の傷どうという事はない。俺はいつでも戦える……戦闘民族サイヤ人の王子である俺様をなめるなよ」

 

「そっか、良かった……でも、もし辛かったりしたら言ってね?」

 

「だから大丈夫だと……まあいい、飯の用意が出来たぞ」

 

「待ってました! 肉、肉、肉!!」

 

「ええい、アルフ、貴様! いつも二言目には肉、肉、肉と! 野菜も食え!」

 

「アタシは狼だから肉を食う! 野菜はベジータが食べなよ、野菜人なんだし」

 

「サイヤ人だ! ぶっ飛ばされたいか、貴様!!」

 

 

 騒がしい食事の時間。

 実のところ、こんな時間がフェイトは好きだった。

 そして思う。

 いつか母ともこんな風に賑やかな食卓を囲めたらな、なんて事を。

 フェイトは料理を口にする。

 こう言うのもアレだがベジータは意外と料理が上手い、と言っても凝った料理は作れず簡単な料理のみではあるが。

 本人曰く昔は卵すら満足に割れなかったらしいが修行の息抜きがてら練習した過去があったらしい。

 あのベジータの意外な一面にフェイトが思わず笑ってしまいそうになったのは誰も責められまい。

 そして、そもそも何故ベジータが料理を作ってるのかと言えばそうでもしないとフェイトが食事を摂らないからである。

 フェイトはどこか気を張りすぎている節がある、故に放っておくと殆ど食事もせずにジュエルシードを探しにいってしまうのだ。

 それを見過ごすベジータではなかった、という事だ。

 

 

(とことん甘くなったものだ……)

 

 

 思わず頭を抱えそうになるほどの自分の変化。

 過去の自分が見れば発狂するんじゃないだろうか、なんて思いながらベジータも食事を開始する。

 

 

(うむ、悪くない出来だ)

 

 

 なんて事を思いつつ食べ進めるベジータ。

 昔、ウイスに弟子入りする時に手料理を振る舞おうとした時は我ながら醜態を晒したものだが――今ならば自らの手料理だけで十分弟子入りを認めてもらえる、とまで考えて。

 

 

(いや、あの天使は割と舌が肥えてるだろうからな……この程度では満足しそうにない)

 

 

 結果、そういう結論に至る。

 結局のところベジータの料理は一般的な家庭料理の域を出ないのだ。

 これならばカップ麺の方が美味いかもしれないとも思うが、フェイトを見て思う。

 

 

(ガキはしっかり栄養を取らんといかんからな……カップ麺は確かに美味いが栄養バランスが偏りすぎる)

 

 

 変なところで常識的なベジータだった。

 まぁそのおかげもあってか地球に来てからのフェイトの体調はすこぶるいいわけだが。

 そしてベジータは知らない、ベジータが丹精込めて作った料理をフェイトが気に入ってる事を。

 フェイトにとってはカップ麺なんかよりもベジータの作ってる料理の方が何倍も美味しく感じられるのだ。

 そうこうしているうちに全員が食事を食べ終わる。

 

 

「皿を寄越せ、洗ってやる」

 

「あ、手伝うよ。ベジータ」

 

「フン……好きにしろ」

 

 

 そう言葉を交わし二人は台所に皿を持っていく。

 そしてベジータが皿を洗い、フェイトが拭くという役割分担を自然に行っていた。

 そんな中。フェイトは尋ねる。

 

 

「ねぇベジータ……」

 

「なんだ」

 

「どうして……ここまでしてくれるの? あっ、勿論嬉しいんだよ? だけど……ここまでする義理はベジータにはないのに」

 

「……さぁな、俺にも分からん」

 

 

 本当の事は言わないでおいた。

 あまりにもフェイトの眼が寂しそうで放っておけなかったからなんて、とてもじゃないが言えなかったのである。

 フェイトにはベジータの真意は分からなかった、だが彼が善意で協力してくれていると言うのは何となく理解出来た、だからこの言葉を贈る。

 

 

「……ありがとう、本当に感謝してるんだよ? ベジータ」

 

「フン、気が早いぞ。まだジュエルシードはまるで集まっていないんだからな」

 

「ふふっ、そうだね。でも――ううん、何でもない」

 

 

 この時間がずっと続けばいいのに、とは思っても言わないでおいた。

 それを言葉に出したらお終いな気がしたからだ。

 今はとにかくジュエルシードを集める事を第一に考えなくてはならないと自分を戒める。

 全ては母のために。

 

 

「……この後、ジュエルシード探しに行くんだけど……ベジータはどうする?」

 

「当たり前の事を聞くな、俺も行く。カカロットも必ず来るだろうからな」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 なのはと悟空は街中に出ていた。

 ジュエルシードを探すためである。

 だが一向に見つかる事なく時間だけが過ぎ、空は暗くなってきている。

 

 

「うーん……一回帰った方がいいかな?」

 

「だな。あんまり遅えと士郎達が心配すっぞ」

 

 

 そんな会話をして一旦帰る事に決めた二人。

 なのはは念話でユーノに連絡を取ろうとする、その時だった。

 

 

「「!!」」

 

(なのは、悟空さん!)

 

 

 二人がジュエルシードの気配を察知したのとユーノから念話が入ったのはほぼ同時だった。

 悟空は急いでなのはに手を差し出す。

 

 

「なのは! オラに掴まれ!!」

 

「うん!」

 

 

 なのははその手を強く握る。

 と同時に悟空は指を額に当てて気を探る。

 ここは一旦ユーノのところに飛ぶべきだろう、そう考えた悟空はユーノの気を探り――数秒で見つけ出す。

 そして次の瞬間、二人の姿はその場から消えていた。

 

 

 

 フェイトがジュエルシードを見つけ、バルディッシュに備えられた砲口をジュエルシードに向ける。

 それとほぼ同時に桜色の光が視界の隅に映った。

 フェイトは急いで魔力をチャージ、金色の光と雷が砲口に溜まっていく。

 

 

「リリカルマジカル!」

 

「ジュエルシード……!」

 

「「封印!!」」

 

 

 その叫びと共に放たれた二つの光。

 それはジュエルシードを中心にぶつかり合うのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 再び対峙するオラ達とベジータ達。 

 さぁ勝負だ、ベジータ! 今度はオラが勝たせてもらうぞ!

 ……ん? 何か嫌な感じがすんぞ? なんだこの感じ……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「地球の危機!? 暴走、ジュエルシード!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十八 地球の危機!? 暴走、ジュエルシード!

 お気に入り登録してくださった方々、感想をくださった方々、評価を入れてくださった(oゝД・)b!さん、ありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあり総合評価1000pt超えを達成する事が出来ました!

 まだまだ未熟な作者と作品ではありますが今後ともお付き合いいただけると幸いです。

 それでは其之十八をどうぞ!


 ふよふよと宙を浮かぶジュエルシード。

 そのジュエルシードを挟んで二つの勢力が再び対峙していた。

 空中にいるのがベジータ、フェイト、アルフ。

 地上にいるのが悟空、なのは、ユーノ。

 両陣営は無言で暫くの間見つめ合う。

 そして、最初に動き出したのは――ユーノだった。

 

 

「なのは、悟空さん! ジュエルシードの確保を!」

 

「そうはさせるかい!!」

 

 

 対し仕掛けるのはアルフ。

 アルフの爪がなのは目掛けて振り下ろされる。

 だが黙ってそれを見過ごすほどユーノは甘くない。

 

 

「させない!」

 

「チィッ!!」

 

 

 魔力による防御壁。

 それはアルフの爪とぶつかり合い、弾け飛ぶ。

 その間もなのはの眼はフェイトに向いていた。

 見下ろすフェイトと見上げるなのは。

 なのはは勇気を出して一歩を踏み出す。

 

 

「この前は自己紹介出来なかったけど私の名前は高町 なのは。私立聖祥大付属小学校に通う小学三年生」

 

「……」

 

(アリサちゃんやすずかちゃんとだって最初は分かりあえていなかった、そして今日アリサちゃんと喧嘩しちゃったのは私の気持ちを伝えられなかったせい……だったらきっと……!)

 

 

 フェイトとだって分かりあえる、なのははそう信じた。

 伝えれば、伝わればきっと心は繋がると。

 そんななのはの足からは光の翼が生え、その体は宙に浮かんだ。

 フライアーフィン、悟空の舞空術を見て、フェイトとの戦闘を経てなのはが得た飛行魔法である。

 そんななのはに対しフェイトはバルディッシュを鎌に変え襲い掛かる。

 

 

「「っ!!」」

 

 

 ぶつかり合うレイジングハートとバルディッシュ。

 さらにフェイトは自慢のスピードを活かしなのはを翻弄しようとする――だが。

 

 

「!!」

 

 

 フェイトは眼を見開いた。

 なのはの姿が消えたのである。

 と同時に背後に感じる気配。

 フェイトは高速移動魔法ブリッツアクションを使用し即座にその場から離れ背後からの攻撃を回避、と同時に方向転換し案の定背後にいたなのはに斬りかかる。

 だがなのはの姿はまた消えた、これは姿を消しているのではない。高速移動の類だと言うのは分かったのでフェイトもまた同じく高速移動で追いかける。

 目にも止まらぬ速度でぶつかり合う二人。

 これがなのはが手に入れたもう一つの力、その名もフラッシュムーブ。

 フライアーフィンに魔力を込める事によって高速移動を実現する、フェイトのブリッツアクション対策に編み出した魔法だ。

 そんな二人の戦いを見つめるものが二人、悟空とベジータである。

 

 

「ほう……カカロット、貴様の連れであるあの娘……中々の成長スピードだな。フェイトとあそこまで張り合えるとは」

 

「へへっ、だろ? なのはの奴頑張ってたかんなぁ」

 

 

 悟空の脳裏を過ぎるのは魔法の修行をするなのはの姿だった。

 色んなものを試し、色んなものからヒントを得て魔法を編み出していくなのはの成長スピードは尋常ではなかった。

 

 

「フン、なるほど。奴もまた天才の類というわけか」

 

「まぁなのは本人はあんまり戦いは好きじゃねえみてえだけどな」

 

「才はあっても性格が戦いを拒む、悟飯を思い出すな……まぁいい、そろそろ俺達も始めるか」

 

「あぁ……今度はオラが勝つ!」

 

「抜かせ! 勝つのはこのベジータ様だ!!」

 

 

 そう言うと二人は構える。

 そして話ながらも溜め込んでいた気を一気に放出した。

 

 

「「はあああああっ!!」」

 

「界王……拳!!」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 二人の気は爆発的に膨れ上がる。

 先日あれだけの戦いをしたのにも関わらず疲労の色は見えない。

 いや、寧ろ二人とも先日よりも強くなっていた。

 磨けば磨くほど強くなるサイヤ人の肉体と天性の才能。

 忘れてはならない、この二人もまた戦いの天才だったのだ。

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

「であああああっ!!」

 

 

 二人同時に突撃し拳を打ち付ける。

 とそこからすぐに二人の姿が消える。

 こちらもまた高速で移動し、ぶつかり合いを始める。

 殴っては殴られて、蹴っては蹴られて、吹き飛ばしては吹き飛ばされて――互角の戦いが続く。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「チッ……はぁっ!!」

 

 

 悟空の放つラッシュをベジータは受け流しカウンターを叩き込む。

 だがその攻撃は、悟空の体をすり抜けた。

 

 

「残像拳か!」

 

「そうだ! だりゃあっ!!」

 

「うおぉっ!?」

 

 

 背後から飛んできた一撃を避けきれずベジータは地面の方へと吹き飛ばされる。

 さらに悟空は真紅のオーラを吹き出しながら突撃、一気に追撃をしようという作戦だった。

 しかしベジータとてやられっぱなしでいるほど甘い男ではない。

 そっと悟られないように手の平に気を溜め悟空をギリギリまで引き付け――気功波を放った。

 

 

「!! うあああああっ!!」

 

 

 悟空は気功波に飲まれそのまま光と共に遠くへと吹き飛んでいく。

 が、何とか自力でその気功波から脱出。

 開いてしまった距離を詰めようとするのだが。

 

 

「だだだだだっ、だあああああっ!!」

 

「いっ!?」

 

 

 次に襲ってきたのはベジータの気弾の連射だった。

 悟空は高速で移動しながらその気弾の嵐を回避する。

 そしてその最中に悟空は額に指を当て、その場から消える。

 これは高速移動ではない、瞬間移動だ。

 悟空が瞬間移動した先、それは――ベジータの背後だった。

 

 

「後ろだっ!!」

 

「フン!!」

 

「がっ!?」

 

 

 だが背後からの攻撃はベジータの裏拳によって寧ろ反撃されてしまう。

 悟空はまともに攻撃を受けた顔面を押さえながら言う。

 

 

「いちち……読まれてたか」

 

「当然だ、貴様の対策を怠る俺様だとでも思ったか。瞬間移動など俺には通じん!」

 

「こりゃまたこれしかねえかな……!」

 

「フン、撃ちあいか……望むところだ。先日のようにはいかんぞ!!」

 

 

 悟空とベジータはそれぞれ独特の構えをとる。

 それは先日と同じ、気による砲撃を行うという合図だった。

 

 

「か、め、は、め……」

 

「ギャリック……」

 

「「!?」」

 

 

 だが二人の動きは途中で止まる。

 理由は単純。

 嫌な感じを二人の研ぎ澄まされた感覚が感知したからだった。

 

 

「おい、ベジータ……」

 

「貴様に言われなくても分かっている!」

 

 

 これは何だ? 二人がそう考えて真っ先に思い浮かぶのはジュエルシードだった。

 この嫌な感じはジュエルシードが怪物を生み出した時に感じる気と似ている。

 だがこの付近にあるジュエルシードは封印済みの一つのみのはずだ。

 他にあるのだったらなのはやフェイトも気づいているはずだが、この違和感を感じているのはどうやら悟空とベジータのみのようだった。

 ならば何故……?

 そんな二人を余所になのはとフェイトの戦いは続いていた。

 高速でぶつかり合いを続ける二人。

 その実力はほぼ互角、いや接近戦をしている時点でややフェイトに分があるだろう。

 だからなのははもう一つの新魔法を使う。

 

 

「ディバインシューター! シュートッ!!」

 

「!!」

 

 

 現れたのは桜色の魔力弾。

 ディバインシューター、ディバインスフィアと呼ばれる発射台を生成しそこから魔力弾を放つという魔法だ。

 弾速こそやや遅いが発射速度は早く、連射も可能という優れた魔法である。

 フェイトはその桜色の魔力弾達を回避しながらこちらも一つの魔法で対処する。

 

 

「フォトンランサー……ファイア!!」

 

 

 フェイトが使用した魔法はフォトンランサー。

 ディバインシューターと同じくフォトンスフィアという発射台から槍のような魔力弾を放つ魔法だった。

 桜色の魔力弾と金色の魔力弾がぶつかり合い相殺される。

 その爆発の中をなのははフラッシュムーブを使い潜り抜け、フェイトに向かって突撃する。

 

 

「くっ……」

 

 

 再び交差するレイジングハートとバルディッシュ。

 ギリギリと音を立てながら力と力は拮抗する。

 そんな中、なのはが口を開いた。

 

 

「フェイトちゃん、フェイトちゃんは言葉だけじゃなにも変わらないって言ってたけど……話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」

 

「……っ」

 

「私がジュエルシードを集めるのはこの街に、大切な人達に危害が及ぶのが嫌だから! ……教えて? フェイトちゃんはどうしてジュエルシードを集めているの?」

 

「……わ、私は……」

 

 

 思わずフェイトが喋りそうになったその時だった。

 横から飛んできた声がフェイトの言葉を断つ。

 

 

「言わなくていい、フェイト!」

 

「アルフ……!?」

 

「アタシ達の最優先目標はジュエルシードの確保! 今はそれだけを考えるんだ! フェイトの望みを叶えるためにも!」

 

「……!」

 

「あっ……!?」

 

 

 フェイトはアルフの言葉を受けて口を閉じ、真っすぐ宙に浮かんだままのジュエルシードへと向かっていく。

 一方なのはもそれに気づき全速力でフェイトを追いかけた。

 二人は全速力でジュエルシードとの距離を詰め、杖を突き出そうとする。

 ちょうどその時だった。

 

 

「「……そうか!」」

 

 

 悟空とベジータは感じていた違和感の正体に気づいた。

 そして急いでジュエルシードのある方向に眼をやればそこには全速力でジュエルシードに向かうなのはとフェイトの姿が。

 

 

「やべえ! なのは、止まれ!!」

 

「フェイト、止せ!! そいつは……!」

 

「「え……?」」

 

 

 瞬間移動を使う暇もなかった。

 悟空とベジータの叫びに戸惑いの声をあげるなのはとフェイトだったが、少し遅かった。

 レイジングハートとバルディッシュがジュエルシードを中心にして交差する。

 瞬間、双方の杖にはヒビが入り――世界が揺れ、暴風が吹き荒れた。

 

 

「きゃあああああっ!?」

 

「くぅっ……うああっ!?」

 

 

 吹き飛ばされていくなのはとフェイト。

 

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

 

 だが即座に悟空とベジータが二人をそれぞれ抱きかかえて何とか事なきを得た。

 二人はそっと目を開ける。

 するとそこには安心出来る、大切な存在の顔があった。

 

 

「悟空くん……」

 

「大ぇ丈夫か? なのは」

 

「う、うん……ありがとう」

 

「ベジータ……」

 

「大丈夫そうだな、もう自分で空中制御できるだろう、手を放すぞ」

 

「うん。ごめんね……ありがとう」

 

 

 それぞれがそんな会話を交わしてるところにユーノとアルフも飛んでくる。

 

 

「なのは、大丈夫!?」

 

「フェイト、無事かい!?」

 

 

 そんな言葉に二人はそれぞれ大丈夫と告げる。

 だが悟空とベジータは厳しい目つきでジュエルシードを睨んでいた。

 あれはまずい、それは二人の共通の見解だ。

 予想外のところから来たとんでもない危機に悟空とベジータは対策を考えるのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 こいつはやべえな……どうしたらいいんかな。 

 っておい、ベジータ!? おめえ何するつもりだ!

 戻って来い! 流石のおめえでもそれは無傷じゃすまねえぞ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「奴は気に食わん! ベジータの中で燃え盛る静かな怒り!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十九 奴は気に食わん! ベジータの中で燃え盛る静かな怒り!!

 お気に入り登録、ならびに感想をくださった皆さんありがとうございます!

 現在、自分の活動報告にて本作の次回予告に関するアンケートを執り行っております。

 よろしければご参加、およびご協力をお願い致します。

 それでは其之十九をどうぞ!


 大気が揺れる、大地が、空が悲鳴を上げる。

 世界そのものが崩壊するかのような錯覚をその場にいた者達は抱いていた。

 それほどに果てしない災害だった。

 このままではシャレにならない事態に発展するのは目に見えていた。

 突然降って湧いた地球――いや世界の危機に悟空とベジータは考える。

 どうすればあれを抑えられるだろうか、と。

 そしていち早く決断し動いたのは――ベジータだった。

 

 

「アルフ」

 

「な、なんだい?」

 

「フェイトを頼む、今は貴様が守れ」

 

「ベジータ……? 一体何を……」

 

「アレを止めてくる、それだけだ」

 

 

 ベジータはそう言うと白いオーラを体から吹き出させジュエルシードに突撃する。

 それを見た誰もが目を丸くした。

 

 

「ベ、ベジータ! 駄目!! ベジータァッ!!」

 

「フェイト! 動いちゃ駄目だよ!」

 

 

 フェイトの必死の静止も最早ベジータには届かない。

 そしてベジータを止める者がもう一人、悟空だ。

 

 

「ベジータ! いくらおめえでもアレは無傷じゃすまねえぞ! 戻って来い!」

 

「フン、貴様の指図など受けるか……」

 

 

 ベジータはそう言って自嘲気味に笑った。

 確かにとんでもない量の気だ。

 悟空のかめはめ波やベジータのギャリック砲と同じくらい、もしくはそれ以上の迫力を感じる。

 だがだからと言ってベジータは止まらない。

 ベジータはプライドと守りたいもののために戦う男だ、そしてその守りたいものとはこの地球でありフェイトやアルフだ。

 この地球はベジータが過ごした地球とは別の地球だ、思い入れは殆どないしフェイトやアルフとの付き合いもそんなに長くはない。

 それでも守りたいと思ってしまうようになった辺り自分は大分毒されているのだろうとベジータは考える。

 やがてベジータはジュエルシードの目の前にまで辿り着いた。

 眩い光とともに暴風が吹き荒れ髪が荒々しく靡く。

 ベジータは意を決して右の拳に気を纏わせて――光の中へと突っ込む!

 

 

「ぐっ……」

 

 

 激痛が走る。

 実質片手でかめはめ波やギャリック砲並のエネルギーを受けているのだから当然だが。

 ベジータは意識を集中する。

 何とか右手がジュエルシードに触れたのを感じる。

 そのままベジータは手に纏わせた気をジュエルシードに移しジュエルシードを包み込むように気でコーティングしていく。

 魔導師ではないベジータには封印は出来ない、ならば封印に似た事をすればいい。

 要は暴走の力が外に出ないようにすればいいのだ。

 着用していた白い手袋がジュエルシードのパワーに耐えきれずに消え去る。

 手が焼け焦げるような感じを覚える。

 それでもベジータは気を抜かずにジュエルシードのコーティングを続けていく。

 

 

「くそったれめ、石ころ風情が……! このベジータ様をなめるなよ!! はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう叫びながら気を一気に放出しジュエルシードを気で包み込んだ。

 地球を壊しかねないほどの異変が治まっていく。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 

 ベジータは息を切らしながら自らの手のひらを見る。

 そこには何とか暴走を押さえ込めたジュエルシードが一つ。

 傷だらけの手でそれを握りしめるとベジータはゆっくりとフェイト達のもとへと戻る。

 

 

「ベ、ベジータ……」

 

「……お望みのもんだ、受け取れ」

 

 

 ベジータはぶっきらぼうにそう言いながらもフェイトにジュエルシードを投げ渡す。

 フェイトはそれを両手でギュッと握りしめると小さな声で。

 

 

「……ありがとう」

 

 

 そう呟きながら己の魔力でしっかりとした封印を施すのだった。

 ベジータはフンとそっぽを向き、悟空となのはの方へと目をやる。

 

 

「さて……俺達はこれで撤退させてもらう、追ってくるのであれば相手になってやるが……どうする?」

 

「それは……」

 

「……オラはやめとく」

 

「悟空くん!?」

 

「それはベジータが食い止めたもんだ、ならベジータ達が持ってくのが筋ってもんだとオラは思う、勿論いつかは取り返させてもらうつもりだけどよ」

 

 

 悟空の言い分はよく分かった。

 だがこのまま見過ごしていいのだろうか、そんな事をなのはとユーノが思っていると。

 

 

「行くよ、フェイト、ベジータ」

 

「……うん」

 

「あぁ」

 

 

 三人はどこかへと飛んでいってしまうのだった。

 結局なのは達はただただそれを見送るしか出来なかった。

 

 

 

 フェイト達の拠点である遠見市のマンション。

 その室内でフェイトはベジータの手に包帯を巻いていた。

 ジュエルシードを食い止める際に出来た傷の治療中である。

 

 

「……これでよし」

 

「治療などいらんと言ったはずだが」

 

「駄目だよ、傷は負ったんだからちゃんと治療はしないと……それにこれぐらいさせてほしいな、私がベジータに返せるものってこれぐらいしかないから……」

 

「……貸した覚えなどない、俺は俺の意志で動いている。別に恩に感じる必要はない」

 

「それでも、私はベジータに感謝してるし、何かを返したいと思ってるの……駄目かな?」

 

「……はぁ、勝手にしろ」

 

「うん、勝手にさせてもらうね」

 

 

 フェイトはニコッと笑い立ち上がる。

 そして、さらに告げる。

 

 

「ベジータは休んでて? 私とアルフは母さんに報告にいかなくちゃ」

 

「フェイト……」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「……うん、大丈夫だよ。だって四つも入手したんだから、怒られはしないと思う」

 

 

 そう言ってフェイトは笑う。

 その笑顔は儚げであり、フェイトの母に対し疑問を持っているベジータとアルフは一抹の不安が拭えずにいた。

 

 

「アルフ」

 

「皆まで言わなくていいよ、任せときな」

 

 

 どうやら思ってる事は同じだったようでそれだけで意思疎通が出来た。

 フェイトはその間に冷蔵庫に入れておいた菓子の箱を取り出していた。

 この日のために買っておいた母へのお土産である。

 フェイトはそれを手にアルフと共に玄関へと向かう。

 

 

「それじゃ行ってきます」

 

「行ってくるよ」

 

「……あぁ」

 

 

 二人が出ていく。

 ベジータは一旦気持ちを切り替え、この暇な時間をどうしたものかと考える。

 怪我をしてる事も考えればじっとしているべきなのだろうが生憎と生粋のサイヤ人の彼にとってはじっとしてる事など選択肢には入らない。

 

 

「しょうがない、修行でもするか」

 

 

 そう決めてベジータも戸締りをしてから部屋を出る。

 そして屋上を利用して修行を開始した。

 こちらも悟空同様に基礎を中心としたトレーニング、イメージトレーニングが中心だ。

 重力室や重りがあれば修行に活用できるのだが生憎とここにはない。

 重力室にいたってはこの世界の技術力では作れるかも疑問になるレベルだった。

 

 

「はぁっ!! だあっ!! でやあああああっ!!」

 

 

 ベジータはひたすらに掛け声を上げながら修行を続ける。

 脳裏を過ぎるのは当然悟空の姿だった。

 悟空の事だ、きっとさらなる修行を積んで再び目の前に現れるだろうとベジータは考えている。

 その時に悟空の強さを上回っている自分でありたいと、そう心から思う。

 

 

(奴だけは俺の先へは行かせん……俺はまだまだ強くなる、それは奴も同じだろうがそんな事は関係ない。勝つのはこのベジータ様だ!!)

 

 

 一心不乱に拳を、そして蹴りを放ち空を切る。

 怪我の事など忘れひたすらに修行に打ち込み己を磨く。

 そんな単調な作業だが自分が少しずつとは言え強くなっていく感覚というのは楽しいものがあった。

 ベジータはこの感じがたまらなく好きらしく、ニヤリと笑っている。

 ――どれだけやっていただろうか、気が付けば日が昇り始めていた。

 休むことなく寝る事もしないほどに夢中になっていたらしい。

 

 

(そろそろ部屋に戻るか……)

 

 

 どれだけ時間が過ぎたのかは知らないがフェイト達が帰って来てもおかしくない時間ではあるはずだ。

 その時間まで外にいて「怪我してるのになにしてるの!」なんて怒られるのも面倒だと、そう思った。

 ベジータは階段を下りて拠点となる部屋に戻る。

 そして軽く数時間ほど睡眠をとろうかと思った、その矢先。

 ガチャリとドアが開く音がした。

 

 

「帰ってきやがったか……ん?」

 

 

 ベジータはここで違和感に気づく。

 玄関にいるのは間違いなくフェイトとアルフの気だ。

 間違えるはずがない。

 だが――フェイトの気が小さすぎる。

 猛烈に嫌な予感がしてベジータはベッドから降りて玄関へと向かった、するとそこには。

 

 

「……」

 

「ベ、ベジータ……」

 

 

 ボロボロのフェイトとアルフがいた。

 それを見た瞬間ベジータはフェイトの母の顔を思い出していた、あの冷たい眼を思い出さざるを得なかった。

 額に血管を浮かび上がらせて、それでも極力冷静さを保ちながらベジータは問いかける。

 

 

「……何があった」

 

「うん、ちょっとね……怒られちゃった」

 

「フェイト……」

 

 

 フェイトは無理やり笑顔を見せる。

 その怪我も相まって痛々しい笑顔だった。

 アルフはそんなフェイトに対し何も言えなくなっている、大方私は大丈夫だからとか言われてしまったのだろう。

 そう言われてしまえばアルフもそれ以上は何も言えない。

 例えその内側に怒りを燻らせていたとしても。

 

 

「……チッ!」

 

 

 ベジータは苛立たし気に舌打ちをすると気を溜め込んだ手の平をフェイトに向ける。

 何をしようと言うのか、アルフが疑問に思っているとベジータの手の平から光が放たれフェイトを包み込んだ。

 力強い光がフェイトの傷だらけの体を包み、消えていく。

 

 

「あれ……?」

 

「俺の気を分けてやった、これで少しは楽になっただろう。だが――アルフ!」

 

「な、なんだい!?」

 

「フェイトの治療をしてやれ、流石に傷までは癒せんからな」

 

「あ、あぁ! 恩に着るよ、ベジータ」

 

「ベジータ……ありがとう」

 

「勘違いするな、俺は俺のやりたいようにやっただけだ」

 

 

 そこで会話を終えるとアルフはフェイトを抱えて部屋の奥へと消えていった。

 二人が奥へ行ったのを確認すると同時にベジータは歯を食いしばる。

 フェイトの傷だらけの姿とフェイトの母の顔が順番に脳裏をチラつく。

 

 

(これが……親が子にやる事か? くそったれめ!)

 

 

 ベジータ自身、過去には親とは思えない振る舞いをしていた時期がある。

 そんな自分を思い出してしまい、ますます腹立たしくなってきた。

 拳を握りしめる。

 怪我をしてようが関係ない、今はこの怒りを何かにぶつけるわけにはいかない。

 それを分かっているから必死に耐えるのだ。

 だがこの日、この時ベジータの中で一つの事柄が決定的なものになった。

 

 

(フェイトの母……俺は奴が……気に食わん!)

 

 

 今は敵対しない、彼女を敵に回すという事はフェイトやアルフも敵に回す事だ。

 誇りにかけてフェイトの味方であり続けると宣言した以上はこの一件が終わるまでは協力するつもりではいた。

 だが、この時からベジータの中で怒りの炎がメラメラと燃え盛っていたのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 なのはの奴どうしたんだ? オラの修行が見てえなんてよ。 

 まぁでもレイジングハートも直ったみてえだし良かったぞぉ。

 だけどその頃、ベジータ達もまたバルディッシュを回復させてジュエルシード捜索を再開していた。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「バリアを突き破れ! 華麗なる連携プレー!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十 バリアを突き破れ! 華麗なる連携プレー!

 お気に入り登録してくださった皆さんとアンケートにお答えいただいた皆さんありがとうございます。

 引き続きアンケートは活動報告にて回答募集中です。

 それはさておき二十話目ですね。

 もう二十話、だけど一章はまだまだ続くと言う……。

 長くなりますがお付き合いいただけると幸いです、それではどうぞ。


「オラの修行をみたいだって?」

 

「うん……駄目かな?」

 

「別にオラはいいけんど……どうしたんだ? 突然そんな事言い出してよ?」

 

「にゃはは、ちょっとね……」

 

 

 なのはの突然の提案。

 それを悟空は了承した。

 というわけで二人は早朝に道場へと移動した。

 そこには恭也や美由希の姿もある。

 

 

「オッス! 恭也、美由希」

 

「おはよう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

「あぁおはよう……珍しいな、悟空はともかくなのはも一緒なんて」

 

「本当にねぇ、何かあったの?」

 

「う、ううん。何でもないよ? ただ何となく皆の練習風景を見たくなって……」

 

 

 そんななのはの異変に気付いた恭也は小声で悟空に問いかける。

 

 

「なのはの奴、何かあったのか?」

 

「んーオラにもよく分かんねえけど何か悩んでるみてえだ」

 

「そうか……」

 

「でも心配はいらねえとオラは思う。なのははああ見えて強ええ奴だからな」

 

 

 悟空はそう言って修行の準備に入る。

 恭也もまた心配な気持ちこそあったが今は練習に集中する事にした。

 そしてなのはが見つめる、その前で――悟空は動く。

 

 

「はっ! ほっ!」

 

 

 最初は軽い動きから。

 これにより少しずつ体を温めていく。

 そしてある程度体が温まってきたところでギアを上げていく。

 

 

「だりゃっ! だあっ!! ……!!」

 

 

 次の瞬間、悟空の姿がその場から消えた。

 ビュンビュンと空気を切り裂く音だけが道場内に響き渡る。

 そして暫くすると悟空が再び姿を現す。

 

 

「よし、準備運動終わったぞぉ!」

 

「……何度見ても非常識だな」

 

「本当にね……消えるくらいのスピードで移動できるって人間の域を超えてると思うんだけど」

 

 

 恭也と美由希も最初は度肝を抜かれたものだが何日も見ていると慣れてしまった。

 というか早々に慣れておかないと、一々驚いていたらキリがないと学習したのだ。

 それだけ孫悟空という存在は非常識の塊であり、他者に驚きを与える事に関しても天才的だった。

 

 

「ふぅ……だだだだだっ! でりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

 

 気が付けば悟空の顔は真剣なものに変わっておりまるで動きも何かと戦っているようなものに変わっていた。

 いつの間にかイメージトレーニングに移っていたのだ。

 悟空の目に映ってるのはかつて戦った強敵の姿。

 長い長い戦いの日々で培った戦闘経験、それをフルに活かし修行に応用していく。

 そんな悟空が思い浮かべるのはベジータの姿だった。

 

 

(あいつはきっとオラよりもずっと厳しい修行を自分に施してるはずだ……オラも負けてらんねえ!)

 

 

 ライバル、その存在の大きさを改めて感じる。

 悟空は改めて思うのだ、ベジータの存在はやっぱり大きいものだと。

 競い合うライバルがいるからこそ自分はもっともっと強くなれる、それがたまらなく嬉しくて、楽しくて、次の戦いの機会が訪れるのを内心ワクワクしながら待ち望んでいた。

 そして次の機会を待つのは悟空だけではない。

 

 

「……」

 

 

 それは無言で三人の修行風景を見ているなのはも同じだった。

 なのはの脳裏にはフェイトやベジータの姿が映る。

 やはり――気になる。

 あの二人が、特にフェイトが何であんなに寂しそうな眼をしているのか。

 だが一番気になるのはその目的。

 未だにどうしてジュエルシードを集めているのか、それを知らないのだ。

 せめてそれを知りたい、なのはは心からそう思う。

 そうすれば少しは歩み寄れるかもしれないから。

 しかしフェイトはそう易々とは喋ってくれないだろう、ならば手段は一つ。

 

 

(こういう時は戦って――私の思いを理解してもらうしかないのかな……)

 

 

 そんな事を考えていると桃子の呼び声が耳に届く。

 それは朝ごはんが出来た合図。

 確かに気が付けば時間は大分過ぎ去っていた。

 こうして早朝の修行は終わりを告げたのである。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 夕暮れ時。

 建物の屋上から街並みを見下ろす少女が一人いた。

 少女の名は、フェイト・テスタロッサ。

 フェイトは自らの相棒であるバルディッシュを見る。

 先日のジュエルシードの暴走、その時にレイジングハート共々破損してしまったが自己修復機能のおかげで今では傷一つなくなっている。

 フェイトはそんなバルディッシュを見て微笑む、すると背後に気配を感じた。

 気配は二つ、よく知ってる、安心できる気配だった。

 

 

「ベジータ、アルフ」

 

「……バルディッシュの方は完全に治ったらしいな」

 

「うん、また一緒に戦ってくれるって言ってくれてるよ」

 

「そうか……」

 

「……ベジータ?」

 

 

 何か様子がおかしい、そう思った。

 自分達が報告から帰って来てからというもの、ベジータは少し雰囲気が変わった。

 というよりも何かを抑圧しているように見える。

 

 

「何でもない、気にするな。ところで……貴様の方はどうなんだ」

 

「……うん、私は大丈夫。この程度どうって事ないよ」

 

「フェイト……」

 

 

 フェイトは笑う。

 対しアルフは心配そうだった。

 だがベジータは――。

 

 

「貴様がそう言うのなら信じよう」

 

 

 そう、淡泊に返す。

 この時ベジータは自分の内側で燃え盛る怒りの感情を抑えるのに必死だった。

 フェイトが感じた違和感はこれである。

 それでも冷静さを保とうとしていたのは、ここで怒ってもしょうがないと分かっているからだ。

 だがいつか機会が来たら――ベジータは密かに決心を固める。

 そんなベジータの考えまでは読めないフェイトは首を傾げながらも、もう一度街並みに眼を向ける。

 

 

「ジュエルシードの発動が近い……行こう、二人とも」

 

「あぁ、気を抜くなよ」

 

「分かったよ、フェイト」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方でなのははと言うと、今日も一人で家路に就いていた。

 アリサとの仲直りはまだ果たせていない。

 そんななのはの前に突如として人影が現れる。

 

 

「きゃっ!?」

 

「オッス! なのは」

 

「ご、悟空くん!? ユーノくんも!」

 

 

 現れたのは悟空とユーノだった。

 突然現れた理由は単純、瞬間移動で飛んできたのである。

 びっくりしているなのはに対してユーノはある物を差し出す。

 

 

(これ、修復が終わったみたいだから持ってきたんだ。一応急ぎで、と思って)

 

「これ……レイジングハート! そっか……治ったんだ、良かった」

 

 

 なのははギュッとレイジングハートを胸の前で握りしめる。

 そしてこう言った。

 

 

「また一緒に頑張ろうね、レイジングハート……今度は気を付けるから」

 

 

 それを聞いてレイジングハートはキラリと光るのだった。

 

 

「そんじゃ帰っか……!」

 

「「!」」

 

 

 その時だ、ジュエルシードの気配を二人と一匹が感知したのは。

 悟空はなのはに向かって手を差し出す。

 

 

「なのは、ユーノ掴まれ! 瞬間移動で飛んでいくぞ!」

 

「うん!」

 

(はい!)

 

 

 なのはとユーノが悟空に掴まる。

 悟空はそれを確認すると同時に指を額に当てて気を探った。

 その後、数秒で嫌な気の出どころを発見し悟空達の姿はその場から消えた。

 

 

 

 現場に辿り着いた悟空達。

 そこには巨大な木の怪物がいた。

 そして当然と言えば当然なのだが――。

 

 

「フェイトちゃん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 フェイト、ベジータ、アルフもそこにはいた。

 フェイトは現れた悟空やなのはには目もくれずにその砲口を怪物に向ける。

 発生させた金色の魔力球を発射体にして放つ槍のような魔力弾。

 フェイトのフォトンランサーが怪物に襲い掛かる、だが。

 

 

「!!」

 

「なんだって!?」

 

 

 アルフは驚愕した。

 フェイトの実力を一番よく分かってるアルフだからこそ驚いた。

 フェイトの放ったフォトンランサー、それがバリアのようなもので弾かれたのである。

 フォトンランサーの威力はそう低くはない、今までだって当たれば殆どの相手を一撃で倒して来たほどだ。

 それが効かない、それが衝撃だった。

 

 

「どうやらあの化け物、中々の防御力を持ってるらしいな」

 

「そうみたいだね……ねぇベジータ……」

 

「フン、貴様に言われるまでもない……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう言うと気を一気に放出。

 体から多量のオーラを吹き出させ怪物目掛けて突撃した。

 一方でなのは達はと言うと。

 

 

「フェイトちゃんの攻撃が弾かれるなんて……」

 

「なのは、オラが行く」

 

「え? 悟空くん……」

 

「トドメはおめえがさすんだ、あの防御壁はオラが何とかすっからよ。じゃ頼んだぞ……界王拳!!」

 

 

 悟空の体とオーラが真紅に染まり、悟空は猛スピードで飛び出す。

 すると丁度よく同じタイミングで突っ込んできたベジータと目が合った。

 ベジータは忌々し気な口調で告げる。

 

 

「チッ、カカロット……貴様も来たか」

 

「へへっ、どうやら考える事は同じみてえだな」

 

「気に食わんが今はしょうがない……やるぞ!」

 

「あぁ!」

 

 

 そう言うと二人は怪物に拳を叩き込んだ。

 だがその拳は防御壁により防がれる。

 あの二人でも壊せないのか、その場にいる面々は驚いた。

 だが二人は諦めない。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだだ! だあああああっ!!」

 

 

 二人は連携などまるで考えずに自分のペースでラッシュを叩き込んでいく。

 するとどうだろう。

 防御壁にはビシリとヒビが入り、そのヒビはどんどん大きくなっていった。

 

 

「今だ! やるぞ、ベジータ!!」

 

「俺に……指図をするなあああああっ!!」

 

 

 なんて会話を交わしつつ二人はほぼ同時に必殺技の構えを取る。

 かめはめ波とギャリック砲。

 その発射準備はすぐに整った。

 二人は基本息が合わないはずなのに、こういう時に限っては同じタイミングで動く。

 

 

「「はあああああーっ!!」」

 

 

 同時に放たれる二種類の気功波。

 それはただでさえヒビが入っていた防御壁に直撃。

 そのヒビをさらに大きなものとして、甲高い音とともに崩壊させた。

 こうなってしまえば後はこちらのものだ。

 

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

「「うん!」」

 

 

 既に二人は準備を終えていた。

 最初こそ驚きはしたが二人は信じていた、自分のパートナーを。

 だからこそ相手に体勢を整える暇を与える事なく砲撃を放つ事が出来る。

 

 

「ディバイン……バスター!!」

 

 

 レイジングハートから放たれる桜色の魔力砲。

 

 

「撃ち抜け轟雷……サンダースマッシャー!!」

 

 

 バルディッシュから放たれる金色の魔力砲。

 その二つは怪物に同じタイミングで直撃し消し飛ばす。

 残ったのは一つのジュエルシードだけだった。

 

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

 流れる沈黙。

 誰も喋ろうとはしなかった。

 奇しくも連携する事にはなったが彼らは、彼女らはまだ敵同士なのだからしょうがないのかもしれない。

 ジュエルシードが浮かぶ夕暮れの公園、そこで悟空とベジータ、なのはとフェイト、ユーノとアルフは再び相対するのであった。




 オッス! オラ、悟空!

 さぁジュエルシードをどっちが持ってくか……勝負すっか! 

 そんなオラ達の前に現れた謎の人物。

 ん? なんだ、おめえ。見た感じ中々強そうだけんど……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「三人目の魔法使い登場!? 動き出した時空管理局!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十一 三人目の魔法使い登場!? 動き出した時空管理局!

 お気に入り登録してくださった皆さんに感想をくれた皆さん、アンケートにお答えいただいた方々ありがとうございます!

 皆さんの応援、大変励みになっております。

 それでは其之二十一、どうぞ!

 あ、アンケートはもう少し続けるつもりですので興味がある方は活動報告へ。


「……封印済みと言ってもジュエルシードに衝撃は与えちゃいけないみたいだ」

 

「うん、この間みたいになるのは嫌だもんね。レイジングハートやバルディッシュも可愛そうだし……何よりベジータくんにまた迷惑かけたくないもの」

 

「……うん、あまり迷惑はかけたくない」

 

「大事なんだね、ベジータくんの事」

 

「……っ!」

 

 

 フェイトはそう言われると少しだけ顔を赤くして俯いた。

 ある意味で痛いところを突かれた、そんな感じだった。

 一方で悟空とベジータは。

 

 

「ははっ、なんだベジータ、おめえ大事にされてんなぁ」

 

「やかましい! 誰も大事にしてくれなどと頼んだ覚えはない!」

 

「そう言うなよ、いい事じゃねえか。大切なものが増えたって事はさ」

 

「チッ……いつもいつもムカつく野郎だ……」

 

 

 ベジータはそう言うと構える。

 悟空もそれを見ると笑いながら構えを取った。

 いつでもやれる、戦いの準備は双方ともに出来ていた。

 

 

「あいつら、やる気満々だねぇ……」

 

「あの二人は戦いが好きみたいだから……でも君もやる気なんだろう?」

 

「当り前さね、アタシはフェイトの使い魔。フェイトのためならどんな戦いだってやってやる!」

 

「僕はあまり戦いたくないんだけど……そっちがやる気ならしょうがない!」

 

 

 アルフとユーノもまた戦闘態勢に入る。

 こちらも用意は万全だった。

 後は――この戦いの要とも言える二人の魔導師の動き次第。

 その雰囲気を察知したフェイトは頭をブンブン振って頭の中を整理、気持ちを切り替える。

 

 

「……今はそれよりもジュエルシードの事。私は何があってもジュエルシードは譲れない」

 

「私はフェイトちゃんとお話ししたい、それとジュエルシードを集める理由を聞かせてほしいだけなんだけど……」

 

 

 そこまで話して二人は構えを取る。

 話し合いだけではどうしようもない事を双方理解していた。

 譲れないものがある、退けない理由がある。

 なのはは決意の籠った瞳をフェイトに向ける。

 

 

「私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないって証明出来たら、お話ししてくれるかな?」

 

「……」

 

 

 フェイトは何も答えなかった。

 そして双方杖を握ったその手に力を込める。

 それは戦闘準備完了の合図だった。

 夕暮れの公園で三組それぞれが戦闘態勢を取る。

 そして――最初に動いたのはなのはとフェイトだった。

 

 

「「……!」」

 

 

 二人の振るう杖がぶつかり合おうとしたその瞬間。

 

 

「……ん?」

 

「……なんだ?」

 

 

 異変にいち早く気づいたのは悟空とベジータだった。

 よくよく見るとなのはとフェイト、二人の間には謎の魔法陣が出現。

 そこから一つの影が現れ、なのはとフェイト、二人の杖を制止する。

 悟空とベジータは構えながらその影を睨む。

 新たな敵である可能性も捨てきれない、そう思ったからだ。

 だが。

 

 

「……ストップだ! ここでの戦闘は危険すぎる」

 

 

 現れた影はその姿を晒すと同時にそう叫んだ。

 影の正体は黒いバリアジャケットに身を包んだ黒髪の少年だった。

 さらに少年は続ける。

 

 

「僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ、悪いが詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

「じくうかんりきょく……しつむかん? ベジータ、知ってっか?」

 

「何故貴様の疑問に俺が答えねばならんのだ……チッ、執務官はともかく時空管理局は聞いた事がないな」

 

 

 そんな会話をしている横でクロノはさらに続ける。

 

 

「これ以上戦闘行為を続けるのならば……!」

 

 

 だがその言葉は途中で途切れる。

 原因は空から降り注いだ魔力弾だった。

 その色は――オレンジ。

 放ったのはアルフである。

 

 

「フェイト、ベジータ、撤退するよ!」

 

「なに……? 退けというのか?」

 

「事情は後で話すよ! だから今は撤退するんだ!」

 

「……くっ!」

 

「フェイト!?」

 

 

 フェイトはアルフの言葉を聞いて飛んだ。

 逃げるためではない。

 空中に浮かんでいるジュエルシードを掴もうとしているのである。

 

 

「っ! させるかっ!!」

 

「あっ、駄目!!」

 

 

 なのはの制止の声も届く事なくクロノはフェイト目掛けて数発ほど水色の魔力弾を放った。

 その魔力弾は真っすぐフェイトに向かい、そのまま直撃――。

 

 

「ふんっ!!」

 

「え……べ、ベジータ……?」

 

 

 しなかった。

 ベジータがフェイトの盾になるように移動し魔力弾を一つ残らず弾いたのだ。

 自らの魔力弾が弾かれた事で目つきが鋭くなるクロノ。

 この相手は強い、それを認識し今度は手加減抜きで行こうとする。

 そんな中ベジータはフェイトの方を見る事なく話しかける。

 

 

「なにをしてやがる、さっさとそれを持って退きやがれ」

 

「で、でもベジータ……」

 

「心配はいらん、すぐに俺も追い付く」

 

「……フェイト、ここは退こう! ベジータを信じるしかないよ!」

 

「だ、だけど! 離して、アルフ!」

 

「……ベジータ、頼んだよ」

 

 

 アルフはそれだけ言うとフェイトを無理やり抱えて飛び去った。

 クロノの持っている杖の先がそんなアルフやフェイトに向けられる、だが。

 

 

「……くっ!!」

 

「俺様を前にして余所見とはな、随分と余裕じゃないか。執務官とやら」

 

 

 それはベジータの気弾によって防がれてしまう。

 さらにベジータは構えをとる。

 

 

「さて、楽しませてくれよ? カカロットとはまた違った刺激を与えてくれる事を期待させてもらうぞ」

 

「訳の分からない事を! 君が何をしたか、分かっているのか!」

 

「さぁな! 俺は俺の誇りと信念のもとに行動しているだけだ!」

 

「くっ、こうなったら君だけでも捕縛させてもらうぞ!」

 

 

 クロノはそう言うと杖を構えベジータを睨み付けた。

 対しベジータはそれを確認すると同時にクロノ目掛けて飛び出した。

 一瞬で詰められる距離。

 そのスピードにクロノは眼を見開き、ベジータは拳を突き出す。

 だがクロノはそれをギリギリのところで杖を使い防いだ。

 

 

「ほう……? やるじゃないか、気で何となく分かっていたが貴様はフェイトよりも上の実力を持っているようだな」

 

「なんてスピードだ……! だが!!」

 

 

 クロノは即座に距離を取る。

 今の一連の流れで、そして拳を受けとめた感じからして接近戦は危険だと判断した。

 なので可能な限り中距離、もしくは遠距離で攻める作戦である。

 だがそんなのはベジータとて察している、だからこそベジータはもう一度距離を詰めようとするのだが。

 

 

「はっ!!」

 

 

 クロノは接近させないように再度水色の魔力弾を放つ。

 スティンガーレイ、高速の魔力光弾を放つクロノの魔法。

 その弾速もさる事ながら威力もそれなりに高いという優れた魔法だ。

 無数の魔力弾がベジータに嵐の如く襲い掛かる。

 しかしベジータは冷静だった。

 これっぽっちも慌ててなどいなかった。

 

 

「なっ……」

 

 

 クロノから驚きの声が上がる。

 ベジータはなんと速度を落とす事なく、最小限の動きでクロノの魔力弾を躱し接近してきたのである。

 何とか我に返ったクロノは杖を使い防御態勢に入るが、その防御を潜り抜けるように拳は迫りクロノのボディにめり込む。

 

 

「かはっ……!」

 

 

 重たい拳による衝撃が体を駆け抜ける。

 クロノの体は必然的に後ろに吹き飛ぶ。

 が、何とか体勢を整えて腹部を押さえながらベジータを睨み付けた。

 

 

(この男、強い……! 力や速さだけじゃなく確かな技術も持ち合わせている! だが……)

 

「どうした? それが貴様の限界か」

 

「いいや、既に君はこちらの術中だ」

 

「なに……!?」

 

 

 クロノは笑いベジータは驚愕する。

 それも無理もない話だ、何故なら気が付けばベジータは魔力の鎖に縛り付けられていたからだ。

 ディレイドバインド、設置型の捕縛魔法でありクロノは予めこうなる事を予想して自分の目の前にこのバインドを設置していたのである。

 ベジータは脱出しようともがくが鎖はちぎれない。

 

 

「無駄だ、そのバインドには多めに魔力を込めた……君の馬鹿力でも壊れないような強度にするために」

 

「……」

 

「勝敗は決した、さぁ話を聞かせて――!?」

 

 

 クロノが捕縛したベジータに一歩近づいた、その時だった。

 凄まじい圧を感じて足が自然と止まった。

 圧を放っているのは当然ベジータだ。

 ベジータはニヤリと笑いながら言う。

 

 

「この程度で俺様を捕まえたつもりか……? 確かに少しは驚いたぞ、貴様はやはり中々出来る奴だ。だがな……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータの気が膨れ上がる。

 それはつまりベジータのパワーも上がるという事。

 その結果、クロノのバインドは――いとも容易く千切られ破壊された。

 クロノは思わず後ずさる。

 渾身のバインドをああもあっさり破壊されてしまったのだから当然と言えば当然かもしれない。

 そんな中でベジータは気を探知する。

 

 

(フェイトとアルフは……拠点に戻ったか、ここらが潮時だな)

 

 

 ベジータはクロノの方に目を向ける。

 そしてフッと笑みを見せた。

 

 

「ここまでだ」

 

「なに……?」

 

「逃げるのは癪だが俺はここらで撤退させてもらう、中々楽しかったぞ、執務官。さらばだ!」

 

「ま、待て!!」

 

 

 飛び去るベジータ。

 そんなベジータを追いクロノは宙に浮かぶと魔力を溜め込む。

 そのまま杖をベジータに向けて――。

 

 

「ブレイズ――」

 

「もう止めとけ」

 

「!?」

 

 

 魔力砲を放とうとした時、クロノの杖は突如現れた悟空によって掴まれていた。

 その間にベジータの姿はどんどんと小さくなり、見えなくなる。

 クロノはそれを確認すると悟空に詰め寄った。

 

 

「何故邪魔をしたんだ!」

 

「あれ以上やるとなるとベジータはおめえを殺すつもりで反撃してくる、それを見過ごすわけにはいかねえんだ」

 

 

 悟空は真剣な表情でそう語る。

 ベジータは敵と見据えれば容赦はしないタイプだ。

 それを知ってるからこそ悟空は止めたのだ、無駄な犠牲を出さないために、ベジータの手を汚させないために。

 それでもクロノは納得いってなかった。

 だがここで。

 

 

『彼の言う通りよ、クロノ。残念だけどここは見逃して正解だわ』

 

 

 突如魔法陣が浮かび上がり、緑髪の女性の顔が映し出される。

 クロノはその顔を見て驚いていた。

 

 

「か、艦長!」

 

「ん? 誰だ、おめえ」

 

『いきなりでごめんなさいね。私達時空管理局は情報を求めています、よければ貴方達には話を聞かせてほしいのだけれど』

 

「って言われてもよ……なのは、ユーノ! どうする!?」

 

「え、えぇ!? そこで私達!?」

 

「……悟空さん、なのは。時空管理局は信用できると思います、僕は話をすべきかと」

 

「ユーノがそう言うならしょうがねえな、分かった。で、何を話せばいいんだ?」

 

『あ、ちょっと待って。立ち話も何だし貴方達を私達の艦に招待するわ。クロノ、案内をお願い』

 

「……分かりました、艦長」

 

 

 クロノは了承すると緑髪の女性は「頼んだわよ」と言って消えた。

 小さくため息を吐くクロノ。

 戦闘で昂った気持ちを落ち着かせているのだろう。

 そしてある程度落ち着いたところでこう言った。

 

 

「それじゃあ君達を艦に案内する、こちらへ来てくれ」

 

 

 クロノに言われるままに悟空となのは、ユーノはクロノのもとへと移動を始めるのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 クロノに案内されるままにオラ達がやって来たのは艦の中。

 そんなオラ達を待っていたのは――。

 ……なんだぁ? なんかヘンテコな部屋だなぁ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「衝撃の連続!? アースラ艦内での話し合い!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十二 衝撃の連続!? アースラ艦内での話し合い!

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 では其之二十二をどうぞ。


 クロノに連れられるままに悟空達がやってきたのは不思議な場所だった。

 少し薄暗さのある近未来的な通路、とでも言うべきだろうか。

 そんな場所をクロノに先導されながら悟空となのは、ユーノは歩いていた。

 

 

「うう……」

 

 

 なのはは若干ビクついていた。

 無理もないかもしれない、薄暗さもあって若干不気味さも感じるからだ。

 だが悟空はと言うと。

 

 

「なんだ、なのは。そんなにビクビクしちまってよ。大ぇ丈夫だって」

 

 

 相変わらずケロッとしていた。

 彼に怖いものとかあるのだろうか、なんて疑問を持ちながらも一行は進み続ける。

 そして一つの扉を通り抜けたところでクロノが言った。

 

 

「いつまでもその恰好じゃ窮屈だろう? バリアジャケットは解除しても平気だよ」

 

「あ、はい」

 

 

 なのはもすっかり忘れていたのだろう。

 体の力をスッと抜いてバリアジャケットを解除する。

 と、ここまでは良かったのだがクロノはユーノの方にも目を向けて。

 

 

「ほら、君もだろ?」

 

「あ、そうですね。ずっとこの恰好でいたからつい……」

 

 

 ユーノがそう言うと彼の体は光に包まれる。

 そして眩い光が止んだと思えばそこには――。

 

 

「なのはにこの姿を見せるのは久しぶり……悟空さんには初めてですね」

 

 

 人型になったユーノが立っていた。

 それを見た悟空となのははと言うと。

 

 

「ひゃー、それがおめえのもう一つの姿かぁ。やっぱユーノ、おめえ器用だな」

 

「あはは……ありがとうございます」

 

「……ふぇ? いや、ちょっと待って?」

 

「「ん?」」

 

「何で二人して普通に話進めてるの? そんな能力あるって私、聞いてなかったんだけど……」

 

「って言ってもよぉ、オラは前にユーノに聞かされてたしなぁ」

 

「あれ? 僕となのはが出会った時ってこの姿じゃ……」

 

「いや、違う違う! 最初からフェレットだったよ! あれ、私だけ仲間外れ!?」

 

 

 その叫びを聞いてユーノは暫し考える。

 そして数秒ほどして。

 

 

「あー……そういえば見せてはいなかった、のかな?」

 

「うぅ……私だけ知らなかった……悟空くんもユーノくんも酷いよ」

 

「落ち込むなよ、なのは……」

 

「な、なのは。ごめんね?」

 

「……ゴホン、そろそろいいかな? 艦長を待たせてるんだが」

 

 

 何だかしっちゃかめっちゃかになってしまった空気をクロノは咳払いして正常に戻そうとする。

 結果、なのはは何とか立ち直り再び歩き始める。

 すると今度は前方から一人の女性が歩いてきた。

 

 

「あ、来た来た。クロノくーん!」

 

「エイミィ、何故ここに……」

 

「あんまり遅いから私も迎えにきたんだよ、もう何してたの?」

 

「色々あったんだよ……」

 

 

 エイミィと呼ばれた茶髪の、つむじからピョンと飛び出たアホ毛が特徴的な女性はクロノにからかい混じりに喋りかけてくる。

 それだけでこの二人の関係性がかた苦しいものではない事は誰にでも理解出来た。

 クロノは眉間に皺を寄せつつも特に嫌そうにする事もなくエイミィの対応をしている。

 正直こんなに時間を食うとは彼も思っていなかった、迅速に艦長のところに行くつもりだったのだが先ほどの一騒動のせいで大幅に遅れてしまったのである。

 そしてここでエイミィは後ろにいた悟空達に眼を向けて近づいてくる。

 

 

「初めまして、私はエイミィ・リミエッタ。ここのオペレーターだよ」

 

「オッス! オラは悟空だ、孫悟空」

 

「あ、えっと……高町 なのはです」

 

「ユーノ・スクライアです」

 

「悟空くんになのはちゃん、ユーノくんか。よろしくね、それじゃあ艦長のところに行こうか」

 

「あ、こら! 僕を置いて行こうとするんじゃない!」

 

 

 そんなこんなで騒がしくしながらも一行は一つの扉の前に辿り着く。

 その扉が開かれた時、なのはは驚き、悟空は首を傾げた。

 

 

「艦長、連れてきましたよー」

 

「艦長、三人に来てもらいました」

 

 

 エイミィやクロノは普通にしていたが、この何とも言えない違和感。

 何というべきか、日本風だけどどこか間違ってる感のする部屋が今、悟空達の目の前には広がっていた。

 何でこんな部屋が、とかそう言った疑問も湧くがそれよりもだ。

 部屋の奥にいた一人の人物に視線は集中する。

 その人物は間違いなく先ほどの映像に映し出されていた艦長と呼ばれていた女性――リンディ・ハラオウンだった。

 尚、姓で分かると思うがクロノの実の母親でもある。

 

 

「ありがとう、クロノ、エイミィ。さて、いらっしゃい。皆さん……どうぞ楽にして?」

 

 

 リンディは柔らかい女神のような微笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 とりあえず全員が座ったところで話し合いは始まる。

 まずはある種の発端とも言えるユーノの話から。

 自らの力でジュエルシードを集めようとしていた事に触れ。

 

 

「立派ね、それだけの決断と行動が出来るのは大したものだわ」

 

「だが無謀すぎる」

 

「う……」

 

 

 リンディからはお褒めの言葉をいただいたもののクロノの言葉にユーノは俯く事しか出来なかった。

 実際今思い返してみて無謀なのはその通りだったからだ。

 ユーノもそれを理解してはいるから何も言い返すことはしなかった。

 次に話はジュエルシード、そしてロストロギアへと移る。

 ここでなのはが尋ねる。

 

 

「あの……そもそもロストロギアって何なんですか?」

 

「そうね……簡単に言うと、だけど。まず前提として次元空間の中には無数の世界があるの、そしてその中には進化しすぎた世界も存在する……その進化の果てに滅んでしまった世界の技術の遺産、それがロストロギアよ、貴方達が回収していたジュエルシードもその仲間。次元干渉型のエネルギー結晶体で特定の方法で起動すれば次元振を引き起こす危ない代物よ」

 

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時の現象、あれが次元振だよ」

 

 

 クロノの言葉を聞き、なのはの脳裏を過ぎるのはあの時の世界が揺れたかのような現象。

 あの時はベジータが何とかしてくれた事で事なきを得たが、もしあの場に悟空やベジータのような規格外がいなかったらと思うとゾッとする。

 ――ちなみに悟空は。

 

 

「へぇ、あれって次元振って言うんか。結構やべえ状態だったからよく覚えてるぞぉ」

 

 

 呑気にそう言って笑っていた。

 その様にその場にいた面々は呆気にとられる。

 次元振の恐ろしさを間近で見ていながらなんで笑っていられるのかと。

 そこにクロノが補足を入れる。

 

 

「ちなみにあれでも何万分の一の威力だ、複数個集まってた状態で次元振を起こせばどうなるか……想像できるだろう?」

 

「ひゃー! あれで何万分の一なんか!? すげえや、本当にそうなったらオラやベジータが全力でやっても敵わねえかもしれねえな」

 

 

 あまりにも緊張感のない悟空にクロノは眉間に皺を寄せる。

 だがすぐに眉間を指で解した。

 ここで怒ってもしょうがない事は分かっていたからだ。

 ちなみになのはは慣れてるようで苦笑いを浮かべてる。

 と、ここで今度はリンディが尋ねる。

 

 

「実はこちらも気になる事があるのだけれど……聞いてもいいかしら? 悟空くん」

 

「ん? オラか? 別にいいけんど小難しい話は苦手だぞ?」

 

「大丈夫よ、聞きたいのはシンプルな事だから……貴方とあのベジータくんと言う子、魔力を使ってないわよね? あの力は一体どういうもので貴方達は何者なのかしら?」

 

 

 それを聞いた悟空は、少しだけ「んー」と考えると喋りだす。

 

 

「まずオラ達が使ってる力は気っちゅうもんだ」

 

「……キ?」

 

「そだぞ、何ていえばいいんかな……生きとし生けるもの全てが持ってるエネルギーみてえなもんだな。人間はもちろん動物に木々や草花、星、色んなもんに宿ってる力だ。オラやベジータはそれを増幅したり操って戦うんだ」

 

「気……そんな力があるんだ」

 

「僕のバインドが破られたのも気を増幅して自身を強化したからというわけか……」

 

「そうだ、一応言っとくけどベジータのパワーはあんなもんじゃねえぞ? もっと上がる、それこそ星なんか簡単に破壊出来るぐらいにはな」

 

「「「「「星を破壊!?」」」」」」

 

 

 これにはなのはとユーノもリンディ達と一緒に眼を丸くする。

 強いとは思っていた、だがそこまでとは思ってなかったのである。

 と、ここでなのはは一つの仮説に至る。

 ベジータに出来るという事は、だ。

 

 

「悟空くんもその気になれば出来る……って事?」

 

「まぁな! 絶対にやらねえけどよ、星壊しちまったらオラも死んじまうし、ははっ!」

 

 

 悟空はこんな問いにも笑顔で答える。

 対しクロノは警戒の度合いを一気に引き上げ杖を取り出し立ち上がろうとする。

 だが、それはリンディに制された。

 

 

「艦長……!?」

 

「大丈夫よ、クロノ。この子は多分そんな事しないわ、私達が下手な真似をしなければ……ね?」

 

「……はい」

 

 

 クロノは再び座る。

 そしてリンディはもう一つの質問の方の答えを聞く事にした。

 

 

「それで、そんな事が出来る貴方達は一体何者なのかしら?」

 

「オラ達はサイヤ人だ、戦闘民族サイヤ人」

 

「サイヤ人……」

 

「サイヤ人……それが種族の名前なんだ」

 

「戦闘民族、だって? 穏やかではなさそうだな」

 

「まぁ気持ちはオラにも分かる、ちっとばかし長くなるけど我慢してくれよ?」

 

 

 悟空は話した、戦闘民族サイヤ人の歴史を。

 他人の星を侵略し、制圧した星を売る、そんな種族であった事。

 ある日からフリーザと呼ばれる者の下に着く事になった事。

 そして結局はそのフリーザに星を破壊されて殆どのサイヤ人が死んでしまった事を。

 

 

「そんな事が……」

 

「オラとしては自業自得な部分もあるとは思うけどな、で、そんなサイヤ人の数少ない生き残りがオラとベジータだ」

 

「貴方達も辛い人生を送ってきたのね……」

 

「そうでもねえさ」

 

「……え?」

 

「確かにオラもベジータも失ったもんはいっぱいあると思う、でも地球に来て得たもんもいっぱいあんだ。だからよ? 辛いとか悲しいとか、そういうのはオラはあまり感じねえかな」

 

「悟空くん……」

 

 

 悟空はニカッと笑みを見せる。

 それは嘘や強がりを言っている顔ではなかった。

 心からそう思っているのだ、この男は。

 失ったもの、得たもの、全部ひっくるめて受け止めている、そんな確かな強さが悟空にはあった。

 

 

「貴方は強いわね……」

 

「鍛えてるかんな! 腕っぷしには自信あるぞぉ」

 

「そういう意味ではないのだけれど……ふふっ、ありがとう。質問は以上よ」

 

「お? そうか?」

 

「さて……少し横道に逸れてしまったけれど本題に戻りましょうか」

 

 

 リンディはそう言うと悟空、なのは、ユーノの顔を見る。

 そしてこう言った。

 

 

「これよりジュエルシードの回収は時空管理局が全権を持ちます」




 オッス! オラ、悟空! 

 オラ達に突きつけられた突然の決定。

 でもそうは言われてもよぉ、ここまで関わっておいて忘れるなんて器用な真似出来ねえぞ。

 んー……なのはも悩んでるみてえだしどうしたもんかな。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「貫く思い! なのはの決意!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十三 貫く思い! なのはの決意!

 お気に入り登録してくださった皆さんに、感想をくれた方、評価を入れてくださったクマンさんありがとうございます!

 最近少し調子が悪いですがまだ定期的な更新が出来るだけの書き溜めはあるのでご安心ください。

 それと活動報告でのアンケートの方ですが近々締めきりたいと思っています。

 と言ってもまだ少しの猶予はあるので興味のある方は是非。

 それでは其之二十三どうぞ。


「え……」

 

 

 なのはは思わずそんな言葉を漏らした。

 頭が追い付かなかった。

 先ほどの悟空の話を聞いただけでもいっぱいいっぱいだったのに、ここに来てとんでもない発言を耳にしてしまった気分だった。

 そんななのはを余所にクロノがリンディの発言に続くように喋る。

 

 

「君達はジュエルシードの事は忘れて元の生活に戻るといい」

 

「で、でも……」

 

「次元干渉が関わる問題だ、民間人を関わらせるレベルの問題じゃない」

 

「でもよぉ……おめえ達だけでベジータに勝てるんか?」

 

「ぐっ……」

 

 

 痛いところを突かれて思わずクロノのうめき声があがった。

 だがクロノはすぐに落ち着いてこう続ける。

 

 

「何とかしてみせるさ、僕にだって意地がある。やられっぱなしで終わるつもりもない」

 

 

 それは正直言って強がりだった。

 短期間であれだけの実力の差を埋めるのは困難だ、それはクロノにも分かっていた。

 ただこれ以上民間人である彼らを巻き込むわけにはいかないという正義感と優しさからそう発言する他なかった。

 だがなのははまだ俯いている。

 そんななのはを見かねてリンディはこう提案した。

 

 

「急に言われても気持ちの整理はつかないわよね、一晩だけ待つからじっくり考えてみて? 今後も関わるかどうかを……クロノ、エイミィ、三人を送ってあげてちょうだい」

 

「はい」

 

「分かりました!」

 

 

 

 こうしてクロノとエイミィに見送られ、悟空、なのは、ユーノは元の場所に戻ってきた。

 夕暮れの海を眺めながらなのはは未だに考えている。

 

 

(私は……)

 

 

 本音を言えばここで元の生活に戻るなんてしたくない。

 フェイトやベジータ、アルフとは分かりあえていないし、このモヤモヤしたものを抱えたまま元の生活に戻ってもきっとアリサとも仲直り出来ないと思うから。

 だが同時にそれは我儘なのではないか、とも思うのだ。

 子供の我儘、相手を困らせるだけの自分勝手な考え。

 そう考えてしまうと躊躇してしまう自分がいるのも事実だった。

 そんななのはの思いを知ってか、知らずか。悟空が歩み寄る。

 

 

「なのは、おめえ何そんな難しい顔してんだ?」

 

「悟空くん……」

 

「何考えてんのかは分かんねえけどよ、やりたいようにやればいいじゃねえか」

 

「やりたい、ように……」

 

「あぁそれとよ、これは言っておきたかったんだ」

 

「え……なに?」

 

「小難しい事は分かんねえけどオラはなのはの味方だ、遠慮はいらねえ。おめえが思うままに動けばいいさ」

 

「……!」

 

 

 なのはは眼を見開く。

 対し悟空は相も変わらず太陽のように明るく優しい笑顔をなのはに向ける。

 それだけで不安なんてものは吹き飛ぶ。

 本当に不思議な子だと思った。

 あれだけ悩んでたのに一つや二つの言葉と笑顔だけで解決してくれるのだから。

 おかげでなのはの中で決意が固まった。

 

 

「うん! もう大丈夫、ありがとう! 悟空くん」

 

「ん、いい顔になったじゃねえか! そうでなくっちゃな」

 

「ははは、そうですね……それとなのは、ごめん。正体を隠してたみたいになっちゃって……」

 

「ふふっ、いいよ。びっくりはしたけどね……それじゃあ帰ろっか、まずは夕食を食べなきゃ」

 

「おう! 今日の夕飯はなんだろうなぁ、オラワクワクすっぞ!」

 

「うん、あ……そうだ」

 

 

 ユーノはそう言うとフェレット形態に戻った。

 そして悟空の頭の上に飛び乗る。

 

 

「僕はこの姿でいる事にするよ、地球じゃこっちの方が色々便利だしね」

 

「うん、そうだね」

 

「飯、飯ー! なのは、ボーッとしてっと置いてくぞー!」

 

「あ、待ってよ! 悟空くん!」

 

 

 

「ガツガツ!!」

 

 

 悟空がいつものようにご飯にがっつく音が響く。

 皆で集まって食べる、いつもの夕食の風景。

 よくよく考えればいつの間にか、そこに悟空がいるのが当たり前になっていた。

 家族と悟空と一緒に過ごす時間、それは尊いものだ。

 それは分かっているが今はその尊さから離れる覚悟を決めなければならない。

 アースラへの連絡はユーノに任せてなのはは家族に説明をする事にした。

 

 

「あ、あの……皆ちょっといい?」

 

 

 家族の視線がなのはに集まる。

 

 

「どうしたんだい? なのは」

 

「そうよ、もしかして美味しくなかったかしら?」

 

「ううん、そんな事ない! お母さんの料理はいつでも美味しいよ」

 

「あらあら、ふふっありがとう」

 

「……なのは、何かあったのか?」

 

「そうだよ、珍しい。何でも言ってみな?」

 

「モガモガ……!!」

 

 家族全員が優しい言葉をかけてきてくれて、なのはの話を待つ。

 ちなみに察せるとは思うが悟空はこんな時でも平常運転だった。

 なのはは語る。

 

 

「その……隠してた事なんだけど私には大切な友達と一緒に始めた事があって……危険かもしれないんだけどそれを最後までやり通したいって思ってるの、心配かけちゃうかもしれないし、それをちゃんとやり通すには学校も暫く休んで家から少しの間離れないといけないんだ……その、許可、もらえないかな?」

 

 

 それを聞いた高町家の面々は驚いていた。

 なのはは滅多な事ではこういう事は言い出さない子だ。

 我儘とかは滅多な事では言わず、自分の内にしまい込んでしまう子だ。

 だからこそ、なのはの、大事な家族の変化が驚きであり嬉しくもあり――多分そのきっかけを与えたのは今ご飯を頬張ってる彼なんだろうなというのも何となく皆察していた。

 

 

「しかし学校を休んでまで、か……」

 

「そりゃあもう心配よ、私達はなのはの事をいつでも心配してるわ」

 

「お父さん、お母さん……」

 

「……危険だと分かっているのに、本気で行くつもりなのか?」

 

「もう……恭ちゃん、なのはの眼を見れば分かるでしょ? もうなのはは決めちゃってる、迷い何て欠片もなさそうだよ」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」

 

 

 個人差はあれど家族の反応は悪いものではなかった。

 少なくとも面と向かって大反対するものはいなかった。

 そこへ――。

 

 

「んぐんぐ……大ぇ丈夫だ」

 

「え? 悟空くん……」

 

「オラもなのはに付いていく、なのははオラが守っからさ!」

 

 

 悟空は意気揚々とそう言った。

 そんな悟空を見て高町家の面々は微笑む。

 

 

「そうか、悟空くんも行くか……少々寂しくはなるが心強くもあるな」

 

「えぇ、悟空くんが付いてくれてるのなら少し安心かもしれないわ」

 

「おう、任しとけ! ちゅうわけでなのは、改めてよろしくな!」

 

「う、うん! こちらこそ」

 

 

 その後、なのはと悟空は必要な物をある程度用意し準備を整えた。

 ユーノ曰く部屋などは用意してもらえるらしいが流石に着替えなどは持っていかなければいけない。

 なのはと悟空はそれぞれバッグに自分の荷物を詰める。

 ちなみに悟空のバッグは新しく買ってもらったものだ、着替えなども士郎や桃子から新たに買ってもらったものでありそれをバッグに詰め込んでいる。

 そして――その時がやって来た。

 

 

「それじゃあ行ってきます」

 

「じゃあな、行ってくっぞ!」

 

「あぁ行ってらっしゃい」

 

「二人とも気を付けてね」

 

「分かってると思うけど無茶はしないようにね」

 

「うん!」

 

「あぁ!」

 

 

 暗くなった道を二人は歩き出す。

 するとその二人に声をかける者がいた。

 

 

「なのは、悟空!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「恭也? どした?」

 

 

 それは恭也だった。

 ジュエルシードの事を知っている恭也は今回の件もそれの類であると察していた。

 だからこそ――。

 

 

「……二人とも無事に帰って来るんだぞ!」

 

 

 それは恭也が送れる最大限のエールだった。

 正直言えば力になれてない自分が歯がゆくてしょうがない。

 本音を言えば付いていきたいぐらいだ。

 だがそれは出来ないと分かっているから、付いていったところで足手まといになってしまうと分かってしまうから、ありったけの思いを言葉に乗せて送った。

 

 

「……大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

 

 聞こえて来たのは大事な妹の声だった。

 少し前の妹からは想像もつかないほどに強さを秘めた、そんな声だ。

 

 

「私と悟空くんはちゃんと一緒に帰ってくるから!」

 

 

 なのはは確かにそう言って歩き出した。

 そして悟空はと言うと。

 

 

「……行ってくる、後は任してくれ」

 

 

 真剣な顔でそう言ってサムズアップをして去っていった。

 何とも心強い奴だと恭也は心から思う。

 あんなに小さいのに心身ともに強く、それとは別に人を安心させてくれる不思議な力があると。

 恭也は家族と共に小さくなっていく二人の背中を見つめていた。

 この日、なのはとユーノ、そして悟空はそれぞれの決意を胸にアースラに乗艦するのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 拠点に戻ってきたベジータ。

 そこで初めて知り得る情報とは?

 そしてベジータはフェイトに問いかける!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「貴様はどうしたい? ベジータの問いかけ」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十四 貴様はどうしたい? ベジータの問いかけ

 新たにお気に入り登録してくださった皆さまに感想をくれた方々ありがとうございます!

 アンケートで意見を募集した次回予告の件ですがこの調子で行くとこのまま三行ぐらいの予告を継続する事になりそうかな? って感じですね。

 勿論今後は極力中身のネタバレにならないように気を付けますが。

 それと二章以降短くなる可能性もあります、とだけ。

 それはそれとして其之二十四です、どうぞ!


 遠見市のマンション。

 そこにベジータは帰って来た。

 追跡はされていない。

 気は感じないし、仮に気を感じない追跡をされていたとしてもこちらに手を出してくるなら返り討ちにしてやればいい、そう考えていた。

 いつも通り、いつもの部屋のドアの前に立ちガチャリと戸を開ける。

 するとそこには。

 

 

「グルルルル……ってベジータ!?」

 

「……何の真似だ、アルフ」

 

 

 入口に向かって威嚇してるアルフがいた。

 ベジータは若干呆れ気味にそう呟きながら部屋に入る。

 

 

「追手かと思ったんだよ! というかアンタよく逃げてこれたね、管理局の執務官相手に……」

 

「フン、中々骨のある奴ではあったが俺様の敵ではない」

 

「頼もしいよ、ほんと……」

 

「……フェイトはどうした?」

 

「部屋の奥にいるよ、早く顔を見せてやっておくれよ。アンタを心配してたんだ」

 

 

 ベジータはそれを聞くと部屋の奥に足を踏み入れる。

 と、そこではフェイトが月明りに照らされていた。

 よくよく見ると目からは大粒の涙が零れている。

 

 

「ベジータ……?」

 

「他に誰に見え――」

 

「ベジータァ!!」

 

 

 ベジータが言い終わる前にフェイトはベジータに抱き着いていた。

 涙を流しながらフェイトは力強くベジータに抱き着き、その胸で泣く。

 

 

「良かった、無事で……本当に良かった」

 

「……チッ、アルフといい貴様といい余計なお世話だ。俺様が遅れをとるとでも思っていたのか」

 

「管理局の執務官は腕利き揃いだって聞くからどうしても心配で……ごめんね、でも無事に帰って来てくれてありがとう」

 

「……フン」

 

 

 ベジータはフェイトを引きはがすと椅子に腰かける。

 それを見てフェイトも椅子に腰かけた。

 同じくアルフも座る。

 

 

「教えろ、時空管理局とはなんだ? そんなに厄介な相手なのか」

 

「うん……時空管理局って言うのは次元世界をまとめて管理してる、簡単に言えば警察と裁判所が一緒になったところだよ」

 

「次元世界?」

 

「ベジータなら分かると思うけど……世界って言うのは無数にあるの、この地球とはまた違う世界が次元世界には数え切れないほどいくつも存在してるんだ」

 

「……なるほど、要は今の俺達はそんな世界をまたにかける巨大規模の警察に追われる犯罪者、と言ったところか」

 

 

 ベジータの言葉にフェイトとアルフは黙って頷く。

 さらに。

 

 

「……ごめんね、ベジータ」

 

「……謝る理由を聞かせてもらおうか?」

 

「本当はこうなる前に全部終わらせたかった、結局ベジータまで巻き込んで犯罪者にしちゃって……」

 

「……くだらん」

 

「え?」

 

「ここまで貴様らに付いてきたのは他でもない俺の意志だ、誰に強制されたわけでもなくな。貴様らが謝るような事は何もない」

 

 

 ベジータは腕を組みながらそう言った。

 確かにフェイトの母からの脅しなどもあったが、そんなのは些細な事だ。

 ベジータはここまで自分のやりたいようにやってきた。

 故に、その果てに悟空と敵対しようと、何かを傷つける事になろうと、犯罪者として扱われようと悔いる事はない。

 

 

「だけど、もう駄目だ。おしまいだよ……管理局が出てきたらもう……フェイト、ベジータ! もうジュエルシード集めなんか放棄して三人で逃げようよ! 冷たくて理不尽なあいつの言う事なんかもう聞く事ないじゃないか!」

 

「……」

 

「フェイト、貴様はどうしたいんだ?」

 

「私は……」

 

 

 ベジータの問いかけにフェイトは俯く。

 そして暫くの間考え込んで――口を開いた。

 

 

「投げ出すわけにはいかないよ、母さんのためにも私はジュエルシードを集めを続ける」

 

「……そうか」

 

「フェイト……」

 

 

 ベジータはそれを聞いて立ち上がる。

 そんな姿を見てフェイトはさらに続けた。

 

 

「でもベジータは無理に付き合う事ないんだよ? 今ならまだ――」

 

「俺は俺の誇りにかけて誓った、フェイト、最後まで貴様の味方であるとな。ならば俺も投げ出すつもりはない」

 

「……ベジータは本当に誇り高いね」

 

「当然だ、誇りがあってこその俺様だからな。しかし腹が減ったな……待ってろ、飯を作って来る」

 

 

 ベジータはそう言ってキッチンへと歩いていく。

 するとそんなベジータの後ろを付いて歩くものが一人。

 フェイトである。

 

 

「……今度はなんだ?」

 

「お手伝いしたいと思って……駄目、かな?」

 

「好きにしろ、さっさと作ってしまうぞ」

 

「うん、ありがとうベジータ」

 

「……礼を言われる覚えはないがな」

 

「ベジータにとっては何気ない事かもしれないけど……私にとっては礼を言うに値する事なの」

 

 

 それを聞いてベジータは、とりあえず礼を受け取っておく事にした。

 この日、終始フェイトは嬉しそうで。

 対しアルフはどこか落ち込み気味だった。

 アルフが望んでいるのはフェイトの幸せだ。

 だがあの母親のもとにいて本当にその幸せが得られるのか、そう悩んでいるのだ。

 もっともフェイトはそんな母親の側にいる事を望んでいるわけだが。

 

 

 

 その後、フェイト達が寝たのを確認するとベジータはこっそり部屋を出て屋上に向かった。

 いつものように寝る時間も惜しんでの修行である。

 もっとも、この事がフェイト達にバレれば面倒な説教を受けるはめになるだろうから内緒にしているが。

 

 

(重力室さえあれば、寝る時間を割いてまで修行せずに済むんだがな……)

 

 

 ベジータは思わずそんな事を考えながらも修行を開始する。

 いつも通り基礎やイメージトレーニングを中心にした特訓を淡々とこなしていく。

 

 

「だだだだだっ! だあっ!!」

 

 

 闇夜にベジータの叫びが木霊する。

 そんな中でベジータの脳裏を過ぎるのはフェイトの姿だった。

 そしてフェイトやアルフに聞いた話を思い出す。

 

 

(時空管理局か……規模は大きく、その中でも腕利きの執務官があのレベルとなると……数で押し切られたら少々キツイものがあるかもしれんな)

 

 

 それがベジータが時空管理局に下した評価だった。

 クロノと戦ったベジータは思う。

 一人や二人程度なら問題ないが、あのレベルの人間がさらに多くの数を伴ってかかってきたら対処するのは面倒だと。

 それぐらいにはクロノの実力をベジータは評価していた。

 当然、負ける気は毛頭ないし弱気になる事もないが。

 

 

(ただ気になるのは……)

 

 

 今度脳裏に浮かぶのはフェイトの母の顔だ。

 あの冷たく、気にくわない顔を思い出すだけで思わず舌打ちをしてしまう。

 

 

(あの女……こうなるのも想定の上でフェイトにジュエルシード集めをさせてやがったのか? 娘が犯罪者として追われる事になっても構わないというのか?)

 

 

 そう考えるとますますあの女の事が嫌いになってくる感じがした。

 それに加えて気になる事がもう一つ。

 

 

(そこまでしてジュエルシードを集めさせて……その果てに奴が思い描くものはなんだ? 何を目的としている?)

 

 

 そこはずっと疑問だった。

 一度フェイトに聞いてみたがフェイトも聞かされていないという。

 そこまで秘密にして進めるフェイトの母の計画。

 それがベジータにはどうにも気がかりで、少し嫌な予感がしていた。

 何せジュエルシード一個の暴走であの規模だ。

 それを複数個集めて進める計画など碌なものではない事は誰にだって分かる。

 

 

「気のせいであればいいんだがな……」

 

 

 ベジータは思わずそう呟いて特訓を続ける。

 今はとにかく少しでも強く。

 そう思いながらひたすらに腕を磨く。

 今後は悟空だけでなく管理局も相手にしなければいけないから、というのもあるがフェイトやアルフを守るため、いざとなったらフェイトの母を止めるためにも力は必要であると思えたからだ。

 結局その日、ベジータは寝る時間の殆どを特訓に割いたのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 時の庭園。

 その奥でフェイトの母――プレシア・テスタロッサは座っていた。

 その眼に映る景色は何か、少なくとも目の前の景色や遠くで頑張っているフェイトを映しているわけではないのは確かだった。

 

 

「早くなさい、フェイト……アルハザードが、私達の救いの地が待っているのだから」




 オッス! オラ、悟空! 

 あれからもう十日かぁ早えなぁ。

 ジュエルシード集めは順調だけんどこのまますんなり行くとは思えねえ、気合入れてかねえとな。

 ん? なんだ、なのは。オラに聞きてえ事でもあるんか?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「もっと知りたい! 悟空の秘密!」

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其之二十五 もっと知りたい! 悟空の秘密!

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 それでは其之二十五をどうぞ!


 あれから十日ほどが経過した。

 悟空達はと言うと――。

 

 

「ピギイィィィィッ!!」

 

「あいつか……」

 

「おっきいね……」

 

「うーん、もう少しスピードが遅ければ縛れるんだけど……」

 

 

 黄金の巨鳥と相対していた。

 言わずもがな、この巨鳥もまたジュエルシードの暴走により生まれた怪物だ。

 アースラにいた三人は突如として呼び出されてこの巨鳥と戦うよう指示されたのである。

 この状況、まず最初に一歩踏み出すのは当然――悟空だった。

 

 

「よしっ、まずオラが行く!」

 

「気を付けてね、悟空くん」

 

「あぁ、分かってっさ!」

 

 

 悟空はそう言うと額にそっと指を当てる。

 次の瞬間、ビュンという音と共に悟空の姿は消えた。

 そして気が付いた時には悟空の姿は巨鳥の後ろにあった。

 巨鳥は気配で背後の悟空に気づく。

 

 

「ピギッ――!?」

 

「隙だらけだぞ、おめえ……だりゃあっ!!」

 

「ギィッ!?」

 

 

 巨鳥の、その大きな体を軽々と蹴とばす悟空。

 小さな体に見合わないパワーから放たれた痛烈な一撃は巨鳥に想像以上のダメージを与える。

 そこへ――。

 

 

「今だ!!」

 

 

 ユーノがバインド系の魔法で巨鳥を縛り付けた。

 この数日の間にユーノも体の調子が完全に戻りこうして戦力として活躍できるようになっている。

 巨鳥はもがく、だが抜け出せない。

 バインドや防御魔法、回復魔法はユーノの得意分野だ。

 この分野ならばなのはにも負けてはいないだろう。

 故に巨鳥の運命は既に決まっている。

 ゆっくり近づいてきた一人の少女――なのはが最後を決めようと杖を振りかぶっていた。

 

 

「リリカルマジカル……ジュエルシード、封印!!」

 

 

 そうして振り下ろされた杖――レイジングハートが光を放つ。

 巨鳥の体は光に貫かれ、中からは青い宝石、ジュエルシードが飛び出して来た。

 そのジュエルシードはゆっくりとレイジングハートに吸い込まれ消えていく。

 

 

「お疲れ、なのは」

 

「にゃはは、私は特に何もしてないけどね」

 

「んー……物足りなかったぞぉ」

 

「ご、悟空くん……」

 

 

 

 アースラ艦内。

 そこではオペレーターが悟空達に通信を入れていた。

 

 

「ジュエルシード確保を確認、三人ともお疲れ様」

 

『あ、はーい。お疲れ様です』

 

「今ゲートを作るからちょっと待っててね」

 

 

 そんな会話を聞きながらリンディは思う。

 

 

「それにしても三人とも優秀よねぇ、このままうちに欲しいぐらいだわ」

 

「本当ですよねぇ、クロノくんと比べても見劣りしないぐらいじゃないですか?」

 

「むっ」

 

 

 エイミィの発言にクロノは顔をしかめる。

 そしてこう口にした。

 

 

「確かに三人は優秀だ、だが僕だって負けてるつもりはない。こういうのは総合力がものを言うんだ」

 

「ま、そうだよねぇ。何たってうちのエースなんだから。でも悟空くんに勝てる自信はある?」

 

「ぐっ……」

 

 

 クロノはそう言われると何も言い返せなかった。

 悔しいが悟空、そして敵であるベジータは規格外と言えた。

 優秀な執務官であるクロノでも勝てるビジョンが見えてこない、それほどの強さだ。

 それでもクロノにだって意地がある。

 易々と負けを認めるのは何となく癪だったので、それ以上は何も言わずにそっぽを向くのだった。

 さらに強引に話題を変える。

 

 

「それよりも、だ! エイミィ、情報は纏めてあるのか? 見せてくれ」

 

「はいはい、もちろんだよ。これだね」

 

 

 そう言って映し出されるのはフェイト、アルフ、そしてベジータの姿。

 特にフェイトに関しては気になる部分があった。

 

 

「かつて追放された大魔導師と同じファミリーネーム……」

 

「やっぱりその人の関係者なのかな?」

 

「どうかな……偽名の可能性もあるから現状は何とも言えないな……」

 

 

 そんな会話の裏でフェイト達の事を気にしているものがいた。

 なのはである。

 

 

「どうしたの? なのは」

 

「ベジータ達が出てこなかったの気にしてるんか?」

 

「うん……」

 

 

 この十日間で見つけたジュエルシードは先ほどのも合わせて五個。

 うち三つを悟空達が回収し、残り二つはベジータ達がかっさらっていった。

 アースラは三人の追跡を行おうとしたが失敗。

 クロノ曰く強力なジャマ―結界が張られているそうだ。

 悟空ならばフェイトの気を察知して探知は可能だが、それはやめておいた方がいいだろうな。というのが悟空の判断だったのであえて何も言わなかった。

 そもそもの話、探知して拠点と思われる場所に局員を送ったとしても返り討ちにあうのがオチだ。

 悟空が三人を確保するための部隊に加わればなんとかなるかもしれないが、その場合ベジータは本気で戦おうとするだろう。

 するとどうなるか。

 戦いに巻き込まれて死人が出る恐れがあるのだ。

 現在のベジータという男は好き好んで相手を殺す事はしないが止む終えないと感じれば躊躇なく殺しにくるタイプだ。

 つまり下手をすれば死体の山を築く事になる、それは避けたいというのが悟空の考えだったのである。

 

 

「大ぇ丈夫さ、そのうち会える。今日も近くまでは来ていたみてえだしな」

 

「え、そうなの?」

 

「あぁ気を感じた、ただ今回は諦めたみたいだけんど」

 

 

 それを聞いたなのはは「そっか」と言って少しだけ表情を明るくした。

 とりあえず元気でいる事は間違いなさそうで、少し安心したのである。

 ――残りのジュエルシードは六個。

 長いような短いような、そんなジュエルシードをめぐる戦いも終わりが近い。

 一行は次のジュエルシードの反応があるまで各々、別のやり方で時間を潰す事にした。

 

 

「はっ、だっ、でりゃあっ!」

 

 

 悟空は当然修行だ。

 汗水流し、ひたすらに己を鍛える。

 その様はアースラ搭乗員の間でも話題になるほど凄まじく一緒に修行しようとして途中で挫折したものも少なくないと言う。

 そんな悟空に話しかけるものが一人。

 

 

「悟空くーん!」

 

「ん? なのはじゃねえか、どうした?」

 

 

 悟空は動きを止めて声がした方向を見ながらそう言った。

 なのはは悟空に駆け寄り少し息を切らしつつ告げる。

 

 

「何かお菓子あるみたいだから一緒に食べない?」

 

「菓子か、確かにちっとばかし腹も減ったしなぁ。いいぞ、オラも一緒に食う」

 

 

 少し腹を満たした方が修行にも集中出来るだろう。

 そう考えて悟空はその提案を了承した。

 それを聞くとなのははパァッと明るい笑みを見せる。

 

 

「それじゃ行こうか!」

 

「あぁ!」

 

 

 こうして二人は食堂へと移動する。

 そこではユーノも待っており、三人は揃ってクッキーを手にし食べ始めた。

 と、ここでユーノがなのはに尋ねる。

 

 

「ねぇなのは……」

 

「なに? ユーノくん」

 

「なのははさ、寂しかったりしない? 大丈夫?」

 

 

 この十日間家族と離れてしまっている事を言っているのだろう、という事は誰にでも察せた。

 普通に考えてなのはぐらいの歳の子が親から離れて十日間も過ごすというのは精神的に負荷がかかってもおかしくはない。

 だがなのはは「大丈夫」と言って、こう続けた。

 

 

「私は一人じゃない、悟空くんやユーノくんもいるし……それに一人って言うのも結構慣れてるから」

 

 

 その昔、士郎がボディーガードの仕事中に大怪我を負い入院した事があった。

 結果幼かったなのはを除く家族全員が忙しくなり、なのはは一人でいる時間が多くなってしまった。

 しょうがないという気持ちと構ってほしい、寂しいという気持ち。

 心の中がグチャグチャになり、なのははいつも一人で泣いていた。

 そして結果的にこの経験が現在の子供なのに、所々が子供らしくないなのはの性格を形成したと言えるだろう。

 

 

「そういえば私、ユーノくんの家族の話ってあまり聞いた事ないかも」

 

「あぁうん、僕は元々一人って言うか……両親はいないんだ。だから育ててくれた部族の皆が家族みたいなものかな」

 

「そっか……そういう意味じゃユーノくんと悟空くんは同じなんだ」

 

「モガ?」

 

「ははは……そうだね、少し近いかも」

 

 

 悟空はクッキーを頬張りながらも首を傾げユーノは笑う。

 そしてなのははこう続けた。

 

 

「じゃあ次は悟空くんのお話、聞きたいな」

 

「んぐんぐ……なんだ、オラも何か喋るんか?」

 

「うん、ほら最近夜中のお話は出来てなかったし、たまには悟空くんの話の続きも聞きたいなって」

 

 

 アースラに来てからは悟空、なのは、ユーノにはそれぞれ個室が割り当てられていた。

 当然寝るのはその部屋でとなるわけであり、すっかり日課となっていた寝る前のお話会はこの十日間は実施されていない。

 それになのははもっと悟空が知りたかった。

 思えばいつも話しているのは自分で悟空の過去は出会ったあの日の夜に少ししか聞いた事がない。

 故にもっと悟空を知りたい、知る事によりもっと近づきたいという思いがなのはにはあった。

 

 

「んーそだなぁ、どこまで話したっけかなぁ」

 

「ブルマって人に誘われて旅に出て色んなところに行った、ぐらいまでですね」

 

「あぁそうだったそうだった! そんでよ、オラその旅が一段落したところで亀仙人のじっちゃんのところに弟子入りしたんだ」

 

「仙人!?」

 

「おう、そうだぞ! オラに色々教えてくれて鍛えてくれたんだ。ちょっとエッチだけどな。かめはめ波はじっちゃんの教える亀仙流の奥義なんだぞ?」

 

((ス、スケールが大きすぎる……))

 

 

 なのはとユーノは自分から聞いておいてなんだがそう思わざるを得なかった。

 まさか仙人が出てくるとは思わなかった。

 だが悟空が強いのもそれなら納得がいく、そんな凄そうな人を師匠に持つのなら――。

 

 

「まぁオラの師匠は亀仙人のじっちゃんだけじゃないんだけどよ」

 

「「えっ」」

 

「後カリン様だろ? 神様に……界王様、後は天使のウイスさん、まぁこんなところだな」

 

「待って、ちょっと待って」

 

「ん? どした? なのは」

 

「いや、理解が追い付かないというか……仙人もだけど神様とか天使って……実在するものなの?」

 

「おう、実在すっぞ! 実際鍛えてもらったオラが言うんだから間違いねえ」

 

 

 改めて言おう、スケールが大きすぎる。

 一体何をどうしたらそんな超常の存在に師匠になってもらえるというのか。

 そしてどんな特訓を施してもらうというのか、何もかもが想像も付かなかった。

 とりあえず言えるのは――。

 

 

(悟空くんはだから強いのかな……)

 

(やっぱり悟空さんは何というかエピソードも格が違うなぁ……)

 

 

 と、そんなところだった。

 さらに悟空は追い打ちをかける。

 

 

「あ、でもここはオラが生きた宇宙とは別の宇宙だろうから仙人も神様も天使もいねえかもな。悪りい、悪りい」

 

「「え……?」」

 

 

 二人は一瞬悟空が何を言ったのか理解出来なかった。

 それはどういう事か、問おうと思って口を開きかけた、その瞬間。

 艦内にアラートが鳴り響く。

 

 

『エマージェンシー! 捜索域の海上にて大型の魔力反応を感知しました!』

 

「……何かやべえ感じがすんな。なのは、ユーノ、行くぞ!」

 

「う、うん……!」

 

「分かりました!」

 

 

 気になる事は山ほどある。

 聞きたい事もたくさんある。

 だけど今、優先すべき事は分かっているからこそ悟空の背中を追いなのはとユーノは駆けだすのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 オラ達が見たもの、それはジュエルシードに立ち向かうフェイトの姿だった。

 でもありゃまずいな……かなり消耗してっぞ。

 リンディやクロノは止めっけど放っておくわけにもいかねえな、これは。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「海上の激突! 協力してジュエルシードを回収せよ!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十六 海上の激突! 協力してジュエルシードを回収せよ!!

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 では其之二十六をどうぞ!


 悟空、なのは、ユーノの三人はブリッジにやって来た。

 状況を知るにはここが一番だからだ。

 そしてモニターに映っていたのは。

 

 

「フェイトちゃん!?」

 

 

 なのはは思わず叫んだ。

 そこに映っていたのは荒れ狂う海、発生した無数の竜巻、吹き荒れる暴風、そして――そんな中で封印を試みようとしているフェイトの姿だった。

 恐らくではあるが残った六つのジュエルシードは全て海の中にあり、フェイトはそれを無理やり発動させたのだろう。

 ハッキリ言って無茶すぎる計画だった。

 現に映像に映ってるフェイトは既に息を切らしている。

 とても見ていられずなのはは言う。

 

 

「あ、あの! 私、すぐに現場へ」

 

「いや、その必要はない」

 

「え……?」

 

 

 クロノの言葉になのはは眼を見開き固まる。

 対しクロノは続けた。

 

 

「放っておけば彼女は自滅する、仮に自滅しなかったとしても完全に消耗しきったところを確保する」

 

「そんな……」

 

「……なのはさん、残酷に見えるかもしれないけどこれが現実よ」

 

「……」

 

 

 リンディの言葉も受けてなのはは俯いてしまう。

 クロノとリンディは間違った事は言ってない。

 いや寧ろ正しいとさえ言える、フェイトは犯罪者でありクロノ達が警察だとするのなら、これ以上ないくらいに的確な判断だ。

 そして悟空達は命令無しで動かないようにという約束を管理局の面々と交わしている、これでは動く事は出来ない。

 ――だが、一つ穴がある。

 

 

「そいつはちっと無理があんじゃねえか?」

 

「なんだって?」

 

「悟空、くん?」

 

 

 悟空の言葉を受けて視線が集まる。

 そんな中で悟空は自分の意見を語った。

 

 

「フェイトちゅう子がいるって事はさ、ベジータだっているって事だろ? ベジータがおめえ達への対策を考えてねえはずがねえ。下手に手を出せば……全滅すっぞ?」

 

「……ならば確保時に君を投入すれば――」

 

「ベジータは戦闘の天才だ、オラと戦いながらでも仲間を守るなんて事も簡単に出来ると思う。そしてベジータは本当に敵と見据えた相手には容赦しねえ、そんなに死人を出したいんか? おめえ達は悪い奴じゃねえ、だから言うんだ、オラはおめえ達を死なせたくはねえ」

 

「悟空くん、貴方……」

 

「ってわけだからよ、なのは、ユーノ! オラに掴まれ!」

 

「え、う、うん!」

 

「は、はい!」

 

 

 二人が掴まったのを確認すると悟空は指を額に当て気を探る。

 それを見てまずいと思ったのかクロノは駆けだす。

 

 

「待て! まだ許可を出した覚えは――」

 

「悪りいな、時間がねえんだ、待てねえや。じゃ、また後でなー!」

 

 

 悟空はその言葉を最後に、なのはとユーノ共々姿を消した。

 クロノの手は空を切り、思わずそのまま頭を抱えるのだった。

 

 

 

「くっ、フェイト……」

 

「……」

 

 

 フェイトに迫りくる電撃や竜巻、水流を破壊し続けるアルフとベジータ。

 だがいくら破壊してもキリがない。

 そこへ――。

 

 

「オッス!」

 

「!? アンタ達は……!」

 

「……来たか、カカロット」

 

 

 やって来たのは悟空達だった。

 ちなみに今いるのは空中のため、なのはは急いでバリアジャケットを纏った。

 そんな三人に対しアルフは牙を剥き出しにして威嚇する。

 

 

「フェイトの邪魔を――!!」

 

「待て、アルフ!」

 

「ベ、ベジータ!? なんで止めるんだい!」

 

「……貴様も気づいているはずだ、今回はフェイト一人では止めきれん……あいつは大丈夫だとか言っていたがどう考えても無理だ」

 

「……っ、フェイト……」

 

 

 アルフはフェイトの方へと目を向ける。

 そこには明らかに消耗しきったフェイトの姿があった。

 対してベジータはチラリとだけフェイトを見た後、悟空の方に顔を向ける。

 

 

「ここに来た理由を言え、助太刀か? それとも俺達の確保か?」

 

「おめえなら分かってんだろ、今回は助太刀さ」

 

「フン、貴様らの甘さには反吐が出るぜ……だが丁度いい、利用させてもらうぞ」

 

「あぁ! なのは、行ってこい!」

 

「うん……ありがとう! 皆!」

 

 

 なのははそう言うとジュエルシードの暴走により発生した異常現象を回避しつつフェイトのもとへと飛んでいった。

 近づいてきたなのはにフェイトは警戒心を覗かせる。

 そんなフェイトになのはは言った。

 

 

「フェイトちゃん、協力して! 皆でジュエルシードを止めよう?」

 

「皆で……?」

 

 

 その会話が終わると同時にレイジングハートから光の帯が放たれてバルディッシュへと吸い込まれ消えていく。

 ディバイドエナジー、対象に魔力を分け与える魔法である。

 これによりなのはの魔力はフェイトに分け与えられた。

 

 

「これで二人できっちり半分こ、だよ」

 

「……」

 

 

 一方で悟空やベジータ達もまた動き出そうとしていた。

 

 

「よっしゃ、やるか! ユーノ!」

 

「そしてアルフ! 貴様達は竜巻の足止めをしろ!」

 

「わ、分かりました!」

 

「……分かった、こっちは任せてアンタ達はアンタ達の役割に徹しな!」

 

 

 そう言うとユーノとアルフは魔力の鎖を作り出し発生している竜巻を縛り上げ食い止める。

 これで竜巻がなのはとフェイトを襲う事はないだろう。

 後は――。

 

 

「さっきからうっとおしい、電撃と水の鞭の対処が俺達の役目だ」

 

「あぁやるぞ、ベジータ!」

 

「俺に指図するな! 言われなくてもやってやる!」

 

 

 そんな会話を交わしながら二人は両手に気を溜める。

 見据えるはなのはとフェイトに迫りくるジュエルシードの攻撃達。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!」

 

「だだだだだっ、でやあああああっ!!」

 

 

 二人は気弾を撃ちまくる。

 放たれた気弾は雷やせり上がって来ていた海水に直撃し、爆発を起こす。

 結果、ジュエルシードの暴走による攻撃は一撃たりともなのはとフェイトには届かない。

 

 

「悟空くんが、ベジータくんが、ユーノくんが、アルフさんが止めてくれてる今のうち! 二人でせーので一気に封印、だよ!」

 

 

 なのはの言葉を受けてバルディッシュは自動的に変形する。

 フェイトはそれを見て驚いた、今までこんな事はなかったからだ。

 そしてそれは主人であるフェイトの背中を押してくれているようにも見えた。

 

 

「ディバインバスター・フルパワー……行くよ、レイジングハート!!」

 

「……バルディッシュ、行くよ」

 

 

 ここでようやくフェイトも意を決し、バルディッシュを構える。

 なのはの足元に桜色の魔法陣が、フェイトの足元に金色の魔法陣が浮かび上がる。

 準備は万端だった。

 なのはは声を上げる。

 

 

「せーの!」

 

「サンダー……!」

 

「ディバイン……!」

 

「レイジ!!」

 

「バスタアアアアアッ!!」

 

 

 金色に輝く雷が降り注ぎ、桜色の魔力砲が飛んでいく。

 二つの力は混ざり合い、大きな爆発と衝撃を生む。

 ジュエルシードのものとはまた別の暴風が吹き荒れ空を覆っていた分厚い雲は割れて暖かな日の光が降り注ぎ、そして爆発の影響で宙に舞い上がった海水達がまるで雨のように降り注ぐ。

 もう暴走の気配は無くなっている、ジュエルシードの封印は為された。

 

 

「ひゃー、なのはの奴やっぱやるなぁ……今のは中々の威力だったぞ」

 

「フン、フェイトも負けてはいないがな。俺達とは分野が違うが中々見どころのある奴らだ」

 

 

 悟空とベジータも気を抜いて思わずそんな会話を交わしていた。

 ライバルだしベジータは日頃からツンツンしてるが、何やかんやでこういう何気ない会話も出来る間柄なのがこの二人である。

 だがここで一件落着、とはいかない事は悟空もベジータも分かっていた。

 

 

「ジュエルシードも綺麗に半分ずつ、とはいかねえよなぁ、やっぱ」

 

「当然だ、俺達は双方とも一つでも多くのジュエルシードを欲している、仲良しこよしはここまでだ。後はどちらがジュエルシードを持っていくか……それを決める必要がある」

 

 

 空気がピリピリとしていくのを悟空もベジータも感じていた。

 互いにいつだって仕掛けられるし、いつだって動ける。

 だが――。

 

 

「ベジータ、もうちっと待ってくれ。なのはがまだ言いたい事があるみてえだからよ」

 

「……フン、とことん甘い奴らだ」

 

 

 悟空のその一言で戦いは先延ばしとなった。

 ベジータもそう言ってそっぽを向く。

 一方でなのはとフェイトは。

 

 

「「……」」

 

 

 海上で相対していた。

 どちらも言葉を発する事なく、ただただ相手の眼を見ている。

 そんな中でなのはは思った。

 

 

(ずっと不思議だった、この気持ちは何なのかって……)

 

 

 思い返すのはフェイト達との出会いから今日に至るまでの出来事の数々。

 だがここでようやく答えが出た。

 そうだ、なのはの思いとは――。

 

 

「フェイトちゃん、私ね……」

 

「……」

 

 

 ごくごくシンプルなものだった。

 

 

「あなた達と……友達に、なりたいんだ」

 

 

 そうして思いは真っすぐな言葉となって放たれた。




 オッス! オラ、悟空! 

 なのはが言った言葉がフェイトの心を動かす。

 だけどそこに邪魔が入っちまった。

 ちくしょう! 防御する暇も、打ち消す暇もねえ! こうなったら――!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「フェイトの涙、あまりにも脆い親子の絆!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十七 フェイトの涙、あまりにも脆い親子の絆!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れてくださった魔神皇帝Zさんありがとうございます!

 おかげさまで久々に日間ランキングに入れました。

 何やかんやで凄く嬉しくてテンション上がっております。

 それはそれとして其之二十七です、どうぞ!


「……!」

 

 

 友達になりたい、そう聞いた時フェイトは僅かに眼を見開いた。

 そんな言葉をかけられるとは思わなかった。

 だからこそ僅かに気が動転して言葉が中々出てこなかった。

 だが、それも少しの間だけの事。

 やがて気持ちは落ち着き、口を開く。

 

 

「私は――!?」

 

 

 言葉を返そうとしたその時だった。

 フェイトは突如上空に眼を向ける。

 するとそこに広がる光景は――紫色に染まった空だった。

 

 

「おい、ベジータ……あれやばくねえか?」

 

「貴様に言われんでも分かっている! 行くぞ!!」

 

「あぁ!」

 

 

 ベジータはいち早く飛び出し、悟空もそれに続く。

 ベジータの中で嫌な予感がムクムクと膨れ上がっていた。

 あの紫色の空、元凶に心当たりがあった。

 そしてこれからしようとしている事も何となくだが察する事が出来た。

 だからこそ全速力で飛ぶ。

 すると――悟空とベジータの到着を待たずに紫の雷が落ちてくる。

 

 

「母さん……!?」

 

 

 雷はそのまま真っすぐにフェイトとなのはに襲い掛かった。

 だが。

 

 

「なのは!」

 

「悟空くん!?」

 

「フェイト!」

 

「ベジータ!?」

 

 

 ギリギリのところで間に合った悟空とベジータが自らの体を盾にする事で二人を守った。

 雷撃はそのまま二人に襲い掛り強力な電撃を流し込む。

 

 

「うあああああっ!?」

 

「ぐあああああっ!?」

 

 

 やがて雷は止んで空は元に戻る。

 残ったのは体から黒い煙を出しながら何とか耐えきった悟空とベジータだった。

 なのはとフェイトはすぐに駆け寄る。

 

 

「悟空くん! 大丈夫!?」

 

「へ、へへ……不意を突かれちまった……でもおめえが無事で良かった、ぞ……」

 

「ベジータ……ベジータ! しっかりして!」

 

「……大声を出すな……聞こえている、俺は問題、ない……ったくこれではカカロットの事を甘いなどと言え、んな……」

 

 

 悟空はなのはに、ベジータはフェイトに抱えられる。

 そうでもしなければ落ちていってしまいそうなほど酷い状態だった。

 一方でアルフはと言うと。

 

 

(ベジータ、ごめんよ……そしてありがとう。アンタの頑張りに応えるためにもジュエルシードは私が……!)

 

 

 アルフは手を伸ばす。

 今ならば止められる人間はいない、はずだった。

 しかし。

 

 

「……ッ!?」

 

 

 そこに現れたのはクロノ。

 クロノはアルフの手を止める。

 だがアルフは止まらない、止まるわけにはいかない。

 フェイトの願いのために、身を挺してフェイトを庇ってくれたベジータのために、ここで止まるわけにはいかないのだ。

 

 

「邪魔を、するなあああああっ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 底力を発揮しクロノを吹き飛ばすアルフ。

 そして改めてジュエルシードに手を伸ばそうとするのだが――。

 

 

「……!?」

 

 

 そこにあるジュエルシードは三つだけだった。

 六つあったはずなのに半分が消えていたのだ。

 そしてよくよく見ればその三つはクロノの手にあった。

 アルフは悔しさを滲ませた顔をしながら歯を食いしばり――叫ぶ!

 

 

「うあああああっ!! ぐうぅぅぅ……フェイト、撤退するよ!」

 

「う、うん……!」

 

 

 アルフが魔力弾を海に打ち付けて大きな水柱を発生させる。

 そして気が付いた時にはベジータもフェイトもアルフも、その姿を消していた。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「「……」」

 

 

 部屋に備えられたベッドの上に治療したベジータを寝かせてフェイトとアルフは部屋を出た。

 本当なら付き添っていたい、だがその気持ちを抑え込んで歩を進める。

 母――プレシアに報告に行く必要があったからだ。

 

 

「……フェイト、本当に行くのかい?」

 

「……うん、いらないかもしれないけど報告はちゃんとしておかないと」

 

「……」

 

 

 そう言われてしまうとアルフには何も言えない。

 本当は止めたい、あんな母親のところには行かなくていいと言いたい。

 だがフェイトの気持ちも伝わって来るからそれすらも言えなかった。

 だったらせめてフェイトが酷い目に遭いませんように、アルフは心の中でひっそりとそう祈った。

 ――だが現実は無慈悲だった。

 

 

「うあ……っ! ああ……っ!!」

 

 

 時の庭園にフェイトの悲鳴と鞭の音が響き渡る。

 アルフはそれを扉の前で歯を食いしばって耐える事しか出来なかった。

 そして扉が開いた時、アルフの眼に映ったのは――。

 

 

「フェイト!」

 

 

 傷だらけで倒れているフェイトと部屋の奥へと去っていくプレシアの姿だった。

 アルフはフェイトを抱き上げながらプレシアの背を睨み付ける。

 今ここで改めて確信した、自分は奴が大嫌いだと。

 そして思った、この怒りはぶつけなければ気がすまないと。

 アルフはフェイトをそっと置くとズンズンとプレシアが去っていた部屋の奥まで歩いていくのだった。

 

 

 

「ゴホッゴホッ! はぁ……はぁ……」

 

 

 ジュエルシードを眺めながらプレシアは咳き込んでいた。

 口から流れ出た血が床に落ちる。

 

 

「もう時間がないわね……私にも()()()()にも」

 

 

 その時だった。

 プレシアの背後の壁が突如として吹き飛んだ。

 そこに立っていたのは――アルフ。

 アルフはプレシアを睨み付けながら一歩、また一歩と距離を詰めていく。

 そのまま進みある程度距離を詰めたところで、アルフは動いた。

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 自慢の拳を振るう。

 ベジータほどではないがその威力は相当なものだと自負していた。

 だが。

 

 

「ッ!?」

 

「……」

 

 

 その拳はプレシアが張った魔法の防御壁によって防がれる。

 だがたった一発防がれた程度で諦めはしない、止まれはしない。

 今アルフの中で燃えている怒りの感情はもはや止まる事を知らなかった。

 

 

「だあああああっ!!」

 

 

 何度も、何度も、何度も――その拳を打ち付ける。

 やがて防御壁にはヒビが入り始める。

 いける、そう思いアルフは渾身の一撃を繰り出した。

 すると防御壁は綺麗に割れる。

 これでプレシアを守るものは何もない。

 アルフは即座に動きプレシアの胸倉を掴んだ。

 

 

「あの子は……あんたの娘だろ! そしてあんたは、あの子の母親だろ!? 何で……何であんな事が出来るんだい! あんなに頑張ってる子に、一生懸命な子に、あんたは!! 挙句の果てにここまで協力してくれたベジータにも怪我をさせて……私はあんたを許さな――!?」

 

 

 アルフは気づいた。

 プレシアの眼には確かに自分が映っているがプレシアは自分の事を見ていないという事に。

 今の叫びもまるで響いていないという事に。

 そしてその身から殺気が満ちている事にも。

 まずい、と思った。

 即座に後ろに跳ぶアルフだったがプレシアの雷撃は的確にアルフの腹部に直撃する。

 結果アルフの体は吹き飛び、地面に転がる。

 

 

「がああああっ!?」

 

「……あの子は使い魔の作り方が下手ね、余分な感情が多すぎるわ」

 

「ぐ……うぅ……っ、フェイトはね……あんたに笑ってほしいから……優しい頃のあんたに戻ってほしいから……あんなに頑張って……!」

 

「ふん……あなた邪魔よ、消えなさい」

 

 

 冷たい声音と共にプレシアはアルフに魔法を放つ。

 それを身に受けてボロボロになったアルフは時の庭園の外へと投げ出され落ちていく。

 このままでは死ぬ、アルフはそう考え最後の力を振り絞り転移の魔法を発動させた。

 

 

(どこでもいい、転移を……フェイトごめんよ、少しだけ待ってて……ベジータ、フェイトを頼んだ、よ……)

 

 

 アルフの意識はそこで途絶え、アルフの姿もその場から消え去った。

 

 

 

 アルフとの一戦を終え、プレシアは再びフェイトのもとへと赴いた。

 フェイトはボロボロだが既に起きていた。

 

 

「フェイト、ジュエルシードはこれでは足りないわ。最低でも後五つは獲ってきなさい」

 

「……はい、あのアルフは……」

 

「あの子なら逃げ出したわよ、とんだ使い魔を持ったものね……さぁ話は以上よ。行きなさい」

 

 

 逃げ出した、それが嘘である事はフェイトには分かった。

 でも逆らう事も出来ず、フェイトはただただ「はい」と言って頷き出ていく事しか出来なかった。

 

 

 

 遠見市のマンション。

 そこに帰ってきたフェイトはフラフラと歩きながら自分達の拠点となっている部屋に入った。

 するといい香りが漂ってくる。

 フェイトがその出どころであるキッチンに足を運ぶとそこにはベジータの後姿があった。

 

 

「帰ったか……フェイト」

 

 

 ベジータが振り向く。

 その顔を見た瞬間、フェイトは耐えきれなくなりベジータの胸に飛び込んだ。

 

 

「ベジータ……ベジータァ……!」

 

「おい、あまりくっ付くな! というか貴様、また傷だらけだな……それにアルフはどうした」

 

「アルフは……多分、私のために母さんに逆らって、それで……」

 

「……そうか」

 

 

 ベジータはひっそりと拳を強く握りしめる。

 プレシアに対する怒りはますます強く燃え盛っていた。

 もっとも表には出さないようにしていたが。

 そんな中でもフェイトはがっちりとベジータに抱き着いたまま離れようとしない。

 

 

「私、私は……!」

 

「……フェイト、貴様は貴様の譲れないもののために戦えばいい。それが何であろうと今は味方をしてやる」

 

「今はって事は……いつか敵になるって事……?」

 

「さぁな……それは貴様達次第だ」

 

 

 ベジータはそう言うとフェイトを引きはがす。

 

 

「さて、まずは治療だ、そして飯、これからの事はその後に考えるぞ」

 

 

 ベジータはそう言うと救急箱を取りにいった。

 そんな不器用ながらに味方であってくれる頼もしいベジータの背中をフェイトは涙混じりの眼で見つめながら少しだけ微笑む。

 傷ついた身と心に、ベジータの優しさはとても沁みたのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 リンディに説教を受けたり、プレシアについて説明されたオラ達。

 そんなオラ達に一時帰宅の許可が下りた。

 士郎や桃子と会うのも久々だなぁ、楽しみだぞぉ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「全てのジュエルシードを賭けて……最終決戦開幕!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十八 全てのジュエルシードを賭けて……最終決戦開幕!!

 お気に入り登録してくださった皆さん、感想をくれた皆さん、評価を入れてくださった 伝説の超ブロリストさんと秋ウサギさんありがとうございました!

 タイトルの通りいよいよ一章は最終局面に突入です。

 では其之二十八をどうぞ。


 アースラ艦内。

 薄暗い室内でリンディは椅子に座っており、その隣にはクロノが立っている。

 そしてその視線の先、そこには悟空、なのは、ユーノが立たされていた。

 暫しの沈黙の後、リンディが口を開く。

 

 

「私が言いたい事、分かりますね?」

 

「「はい……」」

 

「え、二人には分かるんか? オラ全然分かんねえぞ」

 

「「「「……」」」」

 

「ん?」

 

 

 全員の視線が悟空に集中する。

 普段は鋭い時もあるのに、こういう時に限ってこれである。

 おかげでリンディも毒気が抜かれてしまった、が。

 

 

「本来ならば私達の命令が出る前に動くのは約束に反しています、本来なら厳罰に処すところですが……」

 

「なぁげんばつ、ってなんだ?」

 

「……厳しい罰って意味よ、悟空くん」

 

 

 リンディは一回だけ「はぁ……」と溜め息を吐き、もう一度気合を入れなおす。

 そして話を続けた。

 

 

「でも、悟空くんがあの時言った事にも一理あるのよね……困った事に。だから今回の件は不問にします」

 

「えっ」

 

「いいんですか?」

 

「えぇ、でも次からはせめて指示を出すまで待ってね? でないと今度こそ厳罰を与えなきゃいけなくなるから」

 

 

 それを聞いたなのはとユーノは「ありがとうございます!」と言って頭を下げる。

 尚、悟空はと言うと不問の意味がよく分からず首を傾げていた。

 そんな悟空はひとまず置いといて問題はこれからだ。

 

 

「クロノ、事件の大元に心当たりがあるのかしら?」

 

「えぇ、エイミィ。頼む」

 

『はいはーいっと』

 

 

 エイミィの軽い返事と共に映し出されたのは一人の女性の姿。

 それを見たリンディが反応を示す。

 それはこの女性について知っている証拠だった。

 

 

「プレシア・テスタロッサ、僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師で専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な魔導師でしたが――違法研究と事故によって放逐された人物でもあります」

 

 

 テスタロッサ、それを聞いたなのはは反応する。

 そして思い出すのは海上でジュエルシードを封印した後、雷が降って来た時のフェイトの言葉。

 

 

「フェイトちゃん、あの時、母さんって言ってました……」

 

「親子、ね」

 

「でも……驚いてるよりも怖がってるように私には見えました……」

 

 

 なのははそう言うと俯く。

 ここまでの情報を整理しても普通の親子関係でないのは想像がつく。

 少なくとも何かしらの問題があるのは間違いない。

 

 

「エイミィ、プレシア女史についてもっと詳しいデータは出せるかしら?」

 

『はいはーい! すぐに探します!』

 

 

 そしてすぐに送られてきたデータの数々。

 だが家族などのデータは完全に抹消されていた。

 結局アースラはこの件を本局に問い合わせる事になったのだが流石に情報が届くまで時間がかかってしまう。

 だがフェイト達もあれだけ魔力を使った以上は暫くは動けないだろうと言う事と万が一に備えアースラのシールドも強化を施す必要がある事からリンディは決断を下す。

 

 

「貴方達も疲れたでしょう? 一休みした方がいいわね。一時帰宅を許可します、ご家族や学校にも顔を見せておいた方がいいわ」

 

「は、はい! ありがとうございます」

 

「良かったね、なのは」

 

「ん? 一旦帰るんか? 分かったぞ」

 

 

 こうして悟空達の一時的な帰宅が決定した。

 ただし――。

 

 

「私も同行させてもらうわね?」

 

「「え?」」

 

「なんだ、リンディも来るんか?」

 

「えぇ、ご家族に色々説明する役割を担う人が必要でしょう?」

 

 

 というわけで高町家に帰って来た悟空となのは、ユーノ。

 高町家の面々は帰って来た二人と一匹、さらにリンディを温かく出迎えてくれた。

 そして――ここからがリンディの出番。

 

 

「あら、そうなんですか?」

 

「えぇ、そうなんですよ。もう悟空くんもなのはさんも優秀でとても助かってて――」

 

「「「……」」」

 

 

 ペラペラと一割の真実と九割の嘘を上手く混ぜ合わせて桃子と喋るリンディ。

 その様と、あまりにも鮮やかな語り口に悟空達は呆然としていた。

 

 

(何か凄いね……リンディさん)

 

(あそこまで上手く嘘つけるのって、ある種の才能だと僕は思うな……)

 

(艦長ちゅうんは嘘を付くのが上手い奴がなる職業なんかな? オラには無理そうだぞ)

 

(にゃはは……悟空くんには確かに無理そう)

 

 

 結局最後までリンディは喋り続け、上手い具合にこの十日間の出来事を誤魔化した。

 何とも巧みな話術である。

 そのままリンディは桃子と仲良くなりつつ帰って行ったのだった。

 

 

 

 翌日。

 悟空の姿は道場にあった。

 いつも通りの修行である。

 ちなみになのはもユーノも今はいない。

 二人ともアリサの家に遊びに行ったらしい。

 

 

「ベジータは多分まだフェイトの側にいる……いつ戦いになってもおかしくねえ……オラも頑張らねえとな」

 

 

 悟空はそんな事を呟きながら拳を、蹴りを繰り出す。

 どれぐらい続けただろうか、汗を拭い、まだまだこれからと思っていたところに。

 

 

(悟空くん! 今大丈夫?)

 

(なのはか、どうした? 何かあったんか?)

 

 

 なのはから念話が入った。

 少し慌ててる様子だったので落ち着かせつつ悟空は何があったのかを尋ねる。

 

 

(今、私達のところに来れる?)

 

(そりゃ瞬間移動で一発だけどよ……どうしたんだよ?)

 

(アルフさんが傷だらけの状態でアリサちゃんの家で保護されてたの!)

 

(アルフちゅうと……誰だっけ? あははっ!)

 

(もう……フェイトちゃんやベジータくんの仲間だよ!)

 

(……あぁあいつかぁ!)

 

 

 悟空はやっと思い出したようでその場で笑う。

 対しなのはは悟空の平常運転っぷりに改めて苦笑いを浮かべるしかなかった。

 だがそういう事なら行かないという手はないだろう。

 

 

(要はユーノと一緒に話を聞けばいいんだろ?)

 

(うん……お願いできる?)

 

(あぁ任しとけ! 今から行くかんな、少しだけそこで待っててくれ)

 

 

 悟空はそうテレパシーを送ると靴を履いて外の空気を思いっきり吸い、額に指を当てた。

 そして気を探知する。

 なのはの気は毎日のように感じているから遠く離れていてもすぐに見つけられた。

 

 

(よし、行くぞ!)

 

 

 次の瞬間、悟空の姿はその場から消えた。

 

 

 

「どうしたのよ、なのは?」

 

「なのはちゃん?」

 

「う、ううん。何でもないよ」

 

 

 念話中だったため少しボーッとしてしまったのか、心配してくれている大切な友達、アリサとすずかにそう言葉を返したなのは。

 するとビュンッという音とともに気配を感じた。

 

 

「オッス!」

 

「悟空くん!」

 

「え、ちょ……!?」

 

「きゅ、急に……!?」

 

 

 突然の登場にアリサとすずかが絶句する中、悟空はそんな事お構いなしにアルフの入っている檻に近づく。

 そしてしゃがみ込み、その姿をまじまじと見た。

 

 

(あんたは確かベジータの……)

 

「んー確かに間違いねえな、でも怪我はちゃんと手当されてるみてえだな」

 

「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

「ん? どうした、アリサ。そんなに慌てちまってよ」

 

「どうした? じゃないわよ! 急に現れておいて何平然としてるわけ!?」

 

「なんだ、オラが急に現れて驚いてたんか。そりゃ悪かった、今のはオラの得意技なんだ」

 

「どんな得意技よ!? このビックリ人間!」

 

「ア、アリサちゃん、一旦落ち着こう? ね?」

 

 

 すずかが何とかアリサを押さえて落ち着かせる。

 それを見てなのははこっそり来てもらうべきだったかなと少し反省するのだった。

 悟空もそう言えば恭也からあまり人前で使うなと言われてたっけと今更になって思い出していた。

 それから暫く経ち息を切らしながらもアリサは何とか落ち着きを取り戻す。

 そこで別の疑問を口にした。

 

 

「……で、あんたは何で急に出て来たわけ?」

 

「そこにでけえ犬がいんだろ? そいつが気になってよ」

 

「この子が? 悟空くんはこの子の事何か知ってるの?」

 

「んーそうだなぁ、知ってると言えば知ってっかな」

 

「どういう意味よ……まぁいいわ、私達はこれから家の中で遊ぶから……混ざりたかったらあんたも来ていいわよ」

 

「あぁ気が向いたらな!」

 

「こ、こいつ……こっちが折角誘ったのに……」

 

「アリサちゃん、ストップ! ストップ!」

 

「にゃ、にゃはは……悟空くんに悪気は一切ないから許してあげて、アリサちゃん」

 

 

 すずかとなのはのフォローもあってアリサの怒りは静まり大人しく家の中に入っていった。

 それに付いていくように、すずかとなのはも家の中に入っていく。

 去り際になのはは念話で悟空とユーノに語りかけた。

 

 

(それじゃあお願いね、二人とも)

 

(あぁ、分かった。おめえはオラ達の事は気にしねえで楽しんで来い)

 

(こっちは僕達に任せて、なのは)

 

 

 そう言ってくれる二人に一言「ありがとう」と告げてなのははバニングス家の中へと消えていった。

 そしてここからは悟空とユーノ次第。

 まずはどうやって話を聞かせてもらおうか――とユーノが考えていると。

 

 

「なぁおめえ、何があったんだ?」

 

「ご、悟空さん……」

 

 

 悟空はストレートに質問をぶつけた。

 だがアルフはそっぽを向いたまま答えない。

 その反応を見て悟空はポリポリと頭を掻く。

 

 

「別に取って食おうってわけじゃねえんだ、ただ純粋に何があったのか聞きてえんだけど……駄目か? 言いたくねえならオラの超能力でおめえの記憶を探らせてもらうけんど」

 

「え、そんな事出来るんですか?」

 

「まぁな、滅多に使わねえけどよ」

 

(……あんたなら、あんた達ならフェイトを、ベジータを救ってくれるのかい?)

 

「そりゃ話を聞かねえ限りは何とも言えねえ、でもオラ達に出来る事はやるつもりだぞ」

 

 

 見つめ合う悟空とアルフ。

 ユーノがゴクリと喉を鳴らし見守っていると、また別の人間の声が聞こえて来た。

 

 

(まったく……勝手にどんどんと話を進めるな、君は)

 

「お、クロノの声がする……なんだずっと見てたんか、それなら最初から混じれば良かったのによ」

 

(少し様子見をしたかったんだよ、それは置いといて……我々時空管理局は全力を持って二人を助けると約束しよう)

 

(……本当かい?)

 

「安心していいぞ、クロノは真面目な奴だからな。嘘はつかねえと思う、オラが保証する」

 

(……)

 

 

 アルフは暫くの間黙りこんだ。

 二人のためにも今目の前にいる相手を信じていいかどうか見極める必要があった。

 ユーノの顔を見て、さらに悟空の顔を見る。

 そのまま暫し考え込み――そして結論を出した。

 

 

(……分かった、話すよ。ただ嘘を付くようなら……)

 

「安心していいぞ、その時はオラも一緒に戦ってやる」

 

(さらっと恐ろしい事を言わないでくれ……君まで敵に回すのは御免だ)

 

 

 アルフは念話で語りだした。

 今日この日まであった事を全部、包み隠さずに。

 それを聞いたクロノは言う。

 

 

(そうか……事情は把握した。なのは、悟空……君達はどうする?)

 

(私は……フェイトちゃん達を助けたい、それに友達になりたいって伝えた時の返事も聞いてないし)

 

(オラもだ、別にオラは正義の味方でもなんでもねえけど……これは放ってはおけねえとは思う)

 

(……分かった、そういう事なら作戦は君達を主体にして組ませてもらおう)

 

(ありがとう……なのはと、カカロット――いや、悟空だっけか、フェイトとベジータの事、頼んだよ)

 

(うん!)

 

(あぁ!)

 

 

 この日の帰り、なのはと悟空はアリサに大まかな事情を話してアルフを檻から出してもらった。

 クロノに告げられた作戦の開始は明日の早朝。

 というわけで高町家に戻り一時の休息を楽しむ悟空達。

 

 

「ガツガツガツ!!」

 

「悟空くん、今日は一段と食べるな……何かあったのかい?」

 

「ん? 明日ちょっと大事な用が出来てよ……オラちっとばかし燃えてんだ」

 

「大事な用か……何かは聞かないでおこう、ただ気を付けるんだよ?」

 

「あぁ大ぇ丈夫だ、ありがとうな。士郎」

 

 

 そんな会話があったりしたが他には特に何事もなく時間は過ぎ去っていく。

 そのまま夜は明け――早朝。

 悟空となのはは着替えて気合を入れなおしユーノもまたひっそりと気合を入れる。

 

 

「よし、行くか!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 三人は高町家を飛び出した。

 その道中、合流する一つの影があった。

 影の正体は一体の狼、アルフだ。

 アルフは悟空達と顔を見合わせ一度だけ頷くと前を向いて走り出す。

 行き先は――海鳴臨海公園。

 そこに辿り着いたなのはは意識を集中させ念じる。

 

 

(出て来て――フェイトちゃん、ベジータくん)

 

 

 風が吹く。

 嵐の前の静けさを体現するような静かな風が。

 そしてその風が止む頃、気が付けばそれぞれ街灯の上にベジータとフェイトは立っていた。

 フェイトとベジータの視線は自然とアルフに向けられる。

 

 

「アルフ……良かった」

 

「フン、まぁ貴様なら死にはしないだろうとは思っていたがな」

 

「フェイト、ベジータ……もう止めようよ、あんな女の言う事をこれ以上聞いちゃ駄目だ、このままじゃ不幸になるばかりじゃないか」

 

「……」

 

 

 ベジータは何も言わない。

 だがフェイトは少し悲しそうな顔をしながら首を横に振った。

 

 

「それでも……私はあの人の娘だから」

 

 

 フェイトはまだ信じていた、親子の絆を。

 例えそれがもうボロボロで、あまりにも脆いものだとしても。

 まだ自分と母は繋がっていると、そう信じて。

 それを聞いたなのははバリアジャケットを纏いながら一歩前に出る。

 と同時に悟空も一歩だけ前に出た。

 

 

「フェイトちゃん、あなたの相手は私」

 

「そしてベジータ、おめえの相手はオラだ」

 

「……」

 

「フン……」

 

「きっかけはきっとジュエルシード……だから賭けよう、お互いが持ってるジュエルシードを全て!」

 

 

 なのははそう言うと杖を突き出す。

 フェイトはバルディッシュを構え、悟空とベジータも構えを取る。

 

 

「私達の全てはまだ始まってもいない、だから本当の自分を始めるためにも……今ここでやろう、本気の勝負を!」

 

 

 最終決戦の幕が、今上がる。

 長いような、短いような、そんな戦いに終止符を打つ時が確実に迫っていた。




 オッス! オラ、悟空! 

 さぁ始めっか! 勝負だ!

 ……ん? なんだ、この違和感。

 ベジータ、おめえは……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「二つの戦い、ぶつかり合う戦士達!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十九 二つの戦い、ぶつかり合う戦士達!

 お気に入り登録してくれた皆さま、感想をくれた方々、評価を入れてくださった横島さんありがとうございます!

 いよいよ最終決戦の序章が開幕。

 一章はどんどんと終わりに近づいていきます。

 それでは其之二十九をどうぞ!


「なのは、行ってこい!」

 

「うん!」

 

「フェイト、この戦い何人たりとも邪魔はさせん……目の前の相手に集中しろ」

 

「うん……!」

 

 

 その言葉が合図だった。

 誰からともなく動き出し、そして――目の前の相手とぶつかり合う。

 

 

「「っ!」」

 

 

 なのはとフェイトの杖が交差する。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「でやあああああっ!!」

 

 

 悟空とベジータの拳がぶつかり合う。

 四人とも相手の眼を見据え激突を繰り返す。

 その中で最初にまともな攻撃行動に移ったのはフェイトだった。

 ただ接近戦でぶつかり合うだけでは埒が明かないと思ったのだろう。

 フェイトの周囲には金色の魔力球が発生する。

 

 

「フォトンランサー……!」

 

 

 だがなのはも負けてはいない。

 フェイトが魔力球を発生させるのとほぼ同時、桜色の魔力球がなのはの周囲に発生した。

 その数は――同じ。

 

 

「ディバインシューター!」

 

 

 一瞬の睨み合い。

 その後に二人は同時に叫ぶ。

 

 

「ファイア!!」

 

「シュート!!」

 

 

 二人の間でぶつかり合う魔力球は弾け爆発し消え去る。

 その爆発を潜り抜けてフェイトは突撃。

 バルディッシュを鎌へと変形させてなのはに斬りかかった。

 なのはは、それを何とか防ぎつつ次弾を生成。

 

 

「シュートッ!!」

 

「くっ……!」

 

 

 フェイトは一旦距離を取り回避行動に移った。

 ディバインシューターは誘導操作が可能な魔法だ。

 故に魔力球はどこまでもフェイトを追っていく。

 このまま逃げていてもしょうがないと判断したフェイトは方向を転換。

 あえて魔力球に突撃し鎌と化したバルディッシュで魔力球を全て切断しなのはに迫る。

 だが、それを予想出来ないなのはではない。

 

 

「……っ」

 

 

 フェイトの一撃を防いだのは魔法陣型の防御壁だった。

 その名をラウンドシールド、プロテクションとはまた別の性質を持った防御魔法だ。

 なのはは防いだのを確認すると同時にこっそり生成しておいた魔力球をフェイトの背後から放つ。

 しかしそれに気づかないフェイトでもない。

 フェイトは即座に片手を背後に向けて、なのは同様にラウンドシールドを生成。

 魔力球を防いで見せた。

 だがその際に防御壁とぶつかり合っていたバルディッシュの感覚が軽くなる。

 フェイトはその違和感の正体に気づいた時、既にそこにはなのはの姿は無かった。

 

 

「たあああああっ!!」

 

 

 フラッシュムーブ、なのははそれを使用し高速で移動。

 そしてフェイトの真上に行きレイジングハートを振り下ろす。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 が、フェイトも行動は早かった。

 サイズスラッシュ、鎌と化したバルディッシュによる斬撃魔法を放ったのだ。

 ガキィンと言う音が響くとともにぶつかり合う二人の杖。

 真っ向からの力勝負は――フェイトに軍配が上がる。

 

 

「くっ……」

 

 

 なのはは吹き飛ばされつつも体勢を立て直す。

 そんな暇をただで与えてくれる相手ではないわけだが。

 

 

「!!」

 

 

 気が付けばなのはの前には金色の魔力球が浮かんでいた。

 なのはがさっき、こっそり魔力球を生成したようにフェイトも同じように先ほどの攻防の中で魔力球を生成、スタンバイさせておいたのだ。

 

 

「ファイア!!」

 

 

 フェイトの掛け声とともに魔力球が突撃を開始する。

 フォトンランサーの魔力球は誘導操作は出来ないが弾速が早いのが特徴。

 なのはは必死に回避しつつ避けきれないものはラウンドシールドを生成して防いだ。

 ラウンドシールドに当たり軌道が変わった魔力球が何発か海に落ちて爆発、大きめの水柱を発生させる。

 互角、まさに一進一退の攻防だった。

 フェイトは思う。

 

 

(強い……!)

 

 

 フェイトは正直言ってこの勝負勝てると思っていた。

 フェイトにとってなのはとは魔法を手にしたばかりの素人だったからだ。

 だが違う、なのははこの一月近くの間に必死に訓練を積んできた。

 目で見た物を学習して様々な魔法を身に着けて来た。

 もはやなのはは素人、なんてものではない。

 それをフェイトは身を持って体感していた。

 

 

(前とはまるで別人……速くて強い、迷ってるようじゃ……やられる! 私は負けるわけにはいかないんだ!)

 

 

 フェイトの脳裏にはプレシアの姿が映る。

 母に認めてもらうために、優しい母に戻ってもらうためにもここで負けてはいけない。

 フェイトは歯を食いしばり再び突撃を開始した。

 一方、悟空とベジータは。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「ぜあああああっ! でやややややっ!!」

 

 

 こちらも一進一退の攻防を繰り広げていた。

 ――傍から見れば、だが。

 今、悟空は違和感を抱いていた。

 ベジータの動きに異常はない、キレだってある。

 だがどうしても違和感が拭えない。

 

 

(なんだ……? よく分かんねえけど、いつものベジータとちげえぞ)

 

 

 悟空は構えながら頭をフルに回転させて考える。

 しかし答えは出なかった。

 

 

「どうした、カカロット……まさかもうへばったんじゃあるまいな?」

 

「……ベジータ、おめえ今何を考えて戦ってんだ?」

 

「フン……さぁな、ただ言えるのは――この戦い、どちらが勝っても結末は変わらんという事だ」

 

 

 ベジータは構えながら続ける。

 

 

「どうせ管理局もこの戦いを見ているのだろう? そしてこの戦い、恐らくフェイトが勝とうが負けようがあの女は動く、そしてそこから追跡すれば奴のいる時の庭園の場所はどの道特定される」

 

「ベジータ、おめえは……」

 

「さっきも言ったはずだ、この戦い何人たりとも邪魔はさせん……とな。俺の今回の役目は横やりを阻止する事」

 

 

 さらにベジータは言葉を続ける。

 その顔に強気な笑みを浮かべながら。

 

 

「そしてもう一つ、今日の俺には目標がある。カカロット、悪いが今回の貴様との戦いは俺にとってウォーミングアップだ……この後に待っているであろう本当の戦いに備えてのな」

 

「……小難しい事はオラには分かんねえや、けどよ。おめえの事だから何か色々考えてんだろうな、オラはそれを信じたい」

 

「……チッ、さぁお喋りはここまででいいだろう」

 

「あぁ! そんじゃオラもその本当の戦いちゅうのに備えてウォーミングアップぐらいで済ませるとすっかな!」

 

「好きにしろ、だが気を抜けばウォーミングアップで怪我をする事になるぞ」

 

 

 悟空とベジータはそこで会話を終えた。

 これ以上の言葉は必要なかったからだ。

 改めて構えを取る両者。

 数秒の睨み合いの後、二人はぶつかり合い空中には轟音と共に空気の球が発生し消えていった。

 そして――場面はなのはとフェイトへと戻る。

 

 

「シュートッ!!」

 

「ファイアッ!!」

 

 

 もう何度目か分からない桜色の魔力球と金色の魔力球の激突。

 二つの魔力球は爆発を起こし周囲は静寂に包まれる。

 

 

「「はぁ……はぁ……」」

 

 

 二人の息は切れていた。

 無理もない、戦闘開始からどれだけ経ったかなんて知らないが二人は最初から全力全開だった。

 ペース配分など考えてはいなかった、そうでもしなきゃ相手に勢いで押し切られる恐れがあったから。

 それだけ両者の気迫は凄まじく、この戦いに賭ける思いは強かった。

 だがこのまま続けていては消耗しきってしまう、そうなれば――。

 負ける、そこまで考えてフェイトは頭を横に振った。

 弱気になってはいけない。

 フェイトとしてはあまり認めたくない現実だが二人の実力は拮抗していると言える。

 ともなれば後は気力と魔力の勝負だ。

 温存か、あえて勝負に出るか、フェイトが選んだのは――。

 

 

(これで一気に決めるしかない!)

 

 

 後者だった。

 フェイトの足元には突如として大きな魔法陣が発生する。

 さらに、なのはの周囲にも小さな魔法陣が次々と現れては消えを繰り返す。

 

 

(フェイトちゃん、仕掛けて来た……!)

 

 

 なのははレイジングハートを強く握りしめながら警戒を強める。

 どんな攻撃が来るのか、想像がつかなかった。

 だが分かる事が一つだけ。

 それは今までにない、最大の一撃が来るという事だ。

 なのははもう少し距離を取ろうと少しだけ後ろに下がる。

 だがそれが失敗だった。

 

 

「え……っ!?」

 

 

 気が付けばなのはの両手両足は拘束されてしまっていた。

 魔法名、ライトニングバインド。設置型の拘束魔法である。

 先ほどなのはの周囲に現れては消えていた小さな魔法陣こそが、このライトニングバインドだったのだ。

 なのはは必死にもがく、だがバインドは外れない。

 その様を見ていたユーノとアルフは焦りを見せる。

 

 

「なのは!」

 

「あれは……まさか! まずい、フェイトの本気の一撃が来るよ!!」

 

「しょうがない、どうにか援護を……!」

 

 

 ユーノとアルフが動こうとしたその時だ。

 

 

(駄目! 二人とも手を出さないで!!)

 

「なのは!?」

 

 

 なのはの声が響いた。

 これには思わず二人も足を止める。

 

 

(これは私とフェイトちゃんの勝負……手出しは無用だよ!)

 

「で、でも……」

 

「フェイトのあの魔法を受けたら無事じゃすまないよ!?」

 

(二人とも、手を出さないでやってくれ)

 

「悟空さん!?」

 

 

 今度は悟空の声も聞こえて来てユーノは驚きの声をあげる。

 悟空は語りかける。

 

 

(これは一対一の真剣勝負だ、そこに横やり入れるんは無粋だとオラは思う)

 

「だ、だけど!」

 

(なのはを信じんだ! 少なくともオラは信じてる!)

 

(悟空くん、ありがとう……そういう事、二人とも今は私を信じて!)

 

 

 そう言ってなのはは念話を終えた。

 あそこまで言えば二人は多分手出しはしてこないだろう。

 申し訳ない気持ちもあったが、この勝負に横やりを入れられるよりはずっといい。

 援護もらって勝ったとしてもきっと後悔する、そうなのはは考える。

 今なら普段から一対一に拘る悟空の気持ちが少しだけ分かる気がした。

 なのははフェイトを見据える。

 目は逸らさない。

 この攻撃に耐えきれなければなのはの負け、逆に耐えきれれば――。

 そうこうしているうちにフェイトは詠唱を開始する、

 

 

「アルガス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

 

 

 フェイトが閉じていた眼を力強く開く。

 と同時に無数の金色の魔力球が発生、バチバチと電撃が流れる音が周囲に鳴り響く。

 準備は――完了した。

 

 

「フォトンランサー・ファランクスシフト……」

 

 

 フェイトはゆっくりと右手を上げる。

 

 

「撃ち砕け……ファイアッ!!」

 

 

 そしてそう叫びながら右手が振り下ろされる。

 フェイトの周囲に発生していた魔力球が一斉に、流れ込むようになのはのもとへと襲来する。

 次々となのはに直撃し爆発を起こす魔力球達。

 モクモクと煙が上がる中、魔力球達はまだまだなのはへと突っ込んでいく。

 フェイトはどんどんと消費されていく魔力に顔を歪ませるが、それでも撃ち続ける。

 そしてある程度撃ちきったところでフェイトは残った魔力球を左手に集中させて構えた。

 万が一の時のための保険という奴だ。

 だが。

 

 

「いたた……撃ち終わるとバインドも解けちゃうんだ」

 

 

 煙の中からなのはは現れた。

 しっかりと立っている状態で、だ。

 ところどころに傷を負ってはいた、だがそれでも尚立っているという事はフォトンランサー・ファランクスシフトが決定打にはならなかったという事。

 その事実にフェイトは驚愕した。

 フォトンランサー・ファランクスシフトは間違いなくフェイトの使える中で最強の魔法だ。

 それを正面から受けきるなど並の防御力じゃない。

 実際それが魔導師としてのなのはの長所である事をフェイトは知らなかった。

 スピードと接近戦の能力で相手を翻弄するのがフェイトなら高い防御力で耐え遠距離砲撃で反撃するのがなのはのスタイル。

 つまり――。

 

 

「今度は……こっちの番だよ!」

 

 

 ここからはなのはのターンだ。

 レイジングハートの先端に魔力が溜まっていく。

 

 

「ディバイン……バスター!!」

 

 

 放たれた桜色の魔力砲。

 たしいフェイトも左手に集中させた魔力球を投げつけた。

 ぶつかり合う二つの力、二つの光。

 だが決着は一瞬だった。

 なのはの魔力砲はあっさりとフェイトの魔力球を打ち消しフェイトに迫る。

 

 

「くっ……」

 

 

 フェイトは咄嗟に残り少ない魔力を使ってラウンドシールドを生成する。

 だがその威力を殺しきる事は出来ずフェイトのバリアジャケットは、マントは、左手はボロボロになっていく。

 しかし――フェイトは耐えた、耐えきった。

 息を切らしながらも何とかディバインバスターを防いで見せた。

 ならばここから反撃を、そう思っていた、だが。

 

 

「……!」

 

 

 フェイトは眼を見開く。

 今なのはからは桜色の光が放たれていた。

 光はどんどんと広がり、周囲を照らす。

 その光の量はディバインバスターなど比較にならない。

 それだけで分かる、次の一撃が彼女の全力の一撃なのだと。

 

 

「フェイトちゃん、受けてみて……ディバインバスターのバリエーション!!」

 

 

 大きな魔法陣が生成されそこに魔力が集まっていき、大きな魔力球が作り出されていく。

 これはなのはの魔力だけで出来る所業ではない。

 周囲の魔力をもかき集めているのだ。

 それを見た悟空はベジータと戦いながらも呟く。

 

 

「ははっ、まるで元気玉みてえだな」

 

 

 それはまるで星の光のように綺麗だった。

 だが対峙しているフェイトからすればそれは危険な光。

 フェイトは動こうとする、しかしその対処を怠るなのはではない。

 

 

「ッ……バインド!?」

 

 

 気が付けばフェイトはバインドで拘束されていた。

 こうなるようになのはは予め魔法を使っておいたのである。

 フェイトは何とか脱しようともがく。

 しかし相当に消耗した今のフェイトでは脱する事は不可能に近かった。

 

 

「行くよ、これが私の全力全開!!」

 

 

 なのははレイジングハートを構える。

 

 

「スターライト――ブレイカアアアアアッ!!」

 

 

 そして星の光はフェイト目掛けて放たれた。

 桜色の光はフェイトを飲み込み海に直撃。

 大きな水柱が上がり凄まじい衝撃が周囲を襲う。

 悟空とベジータですら防御態勢を取らざるを得ないほどの衝撃だった。

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 

 なのはは息を切らしながら周囲に眼を向ける。

 するとその視界の隅に落下していくフェイトが映った。

 

 

「フェイトちゃん!」

 

 

 なのはは全速力で追おうとする。

 だがそれよりも速くフェイトに追いすがる存在がいた。

 

 

「ベジータくん!?」

 

 

 そう、ベジータだ。

 ベジータは落下するフェイトの先回りをしてをそっと抱きかかえる。

 と、ここでフェイトは眼を覚ました。

 

 

「……ベジータ?」

 

「……」

 

「……ごめんね、負けちゃった。でもまだベジータが……」

 

「いや、その必要はない……所詮今回の俺とカカロットはオマケだ。あくまで重要なのはお前達の一戦だった」

 

「そっか……」

 

 

 それはつまりフェイトが負けた時点でこちらの負けが決したという事。

 フェイトは俯く。

 そんなフェイトにベジータは言う。

 

 

「顔を上げろ」

 

「え……?」

 

「そんな顔をする必要はない、貴様は貴様の譲れないもののために誇り高く戦った、その姿は確かに立派だった……よく頑張ったな、フェイト」

 

「……ッ」

 

 

 フェイトの眼から一粒の涙が零れ落ちる。

 今、優しい言葉をかけるのはずるいと思った。

 ボロボロの体に、傷だらけの心にその言葉は沁みる。

 だけどやられっぱなしは癪だからこう言い返す。

 

 

「……ふふっ、ベジータが優しい言葉を言ってくれるなんて……嬉しいけど、らしくはない……かな」

 

「フン……そんな事貴様に言われるまでもなく、俺が一番よく分かっている」

 

 

 ベジータはそう言ってそっぽを向く。

 フェイトはその姿を見て微笑む。

 そこへ。

 

 

「えっと……お邪魔かな?」

 

 

 なのはがやって来た。

 そんななのはに対してフェイトは首を横に振る。

 なのははそんなフェイトを見て微笑むと、こう続けた。

 

 

「ごめんね、フェイトちゃん……でも、私の勝ち……でいいのかな」

 

「……そう、みたいだね」

 

 

 バルディッシュからジュエルシードが排出される。

 こうして最終決戦はなのはと悟空に軍配が上がったのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 戦いの決着は着いたな。

 けどよ、まだだ。まだ全部は終わってねえ。

 プレシアちゅう奴は何を考えてんだろうな……オラにはさっぱりだけど嫌な予感がすんぞ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「笑うプレシア! 明かされた衝撃の事実!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十 笑うプレシア! 明かされた衝撃の事実!!

 お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます!

 戦いが一つ終わったと思いきや一難去ってまた一難、そんな今話です。

 では其之三十をどうぞ!


 ジュエルシードがゆっくりとなのはの方へと向かっていく。

 その時だ。

 空に紫色の雷がチラついた。

 それに気づいた悟空は叫ぶ。

 

 

「ッ、ベジータァッ!!」

 

「やかましい! 大声で叫ばんでも気づいている!」

 

 

 ベジータは片手でフェイトを抱いたまま右手のみに気を集中。

 そのまま右手を空に溜まった雷に向けた。

 そして次の瞬間、雷が放たれる。

 

 

「不意を突いたならともかく……そう何度もその程度の攻撃で、このベジータ様をどうにか出来ると思うなよ!! はあああああーっ!!」

 

 

 その雷が届く前にベジータは気功波を発射。

 雷をいとも簡単に打ち消す事に成功する。

 だが。

 

 

「あっ、ジュエルシードが!」

 

 

 バルディッシュから放出されたジュエルシードは急に軌道を変えて空に出来た穴へと吸い込まれていく。

 それを見てベジータはチッと舌打ちした。

 だが別に取られようと構わないとも考えていた。

 どの道やる事に変わりはない。

 そこへクロノから通信が入る。

 

 

『悟空、なのは、ユーノ、アルフ、一旦アースラに転移してきてくれ……そこにいる二人を連れて』

 

「クロノくん……分かった、フェイトちゃん、ベジータくん、付いてきてくれる?」

 

「……うん」

 

「フン、好きにしろ」

 

 

 その言葉を聞いてなのはは頷き、悟空達はアースラに帰還した。

 帰還早々にベジータとフェイトには手枷が付けられる。

 そしてそのまま二人を連れて悟空達はリンディのもとへとやって来た。

 そこには映像が映し出されていた。

 ベジータ達にはそれだけで理解出来る、そこがプレシアのいる時の庭園であると。

 それもそのはずだ、何故なら今、武装局員達が時の庭園に乗り込んでいる真っ最中なのである。

 

 

(なのはさん、フェイトさんは連れ出した方がいいわ)

 

(は、はい!)

 

「フェイトちゃん、良かったら私の部屋に……」

 

 

 リンディの呼びかけに応じ、なのははここからフェイトを連れ出そうとする。

 それは最大限の配慮だった。

 実の母が捕まるところなど、子供にはあまり見せたくはないという気持ちからくる配慮。

 だがフェイトはなのはの言葉に対し首を横に振りあえて前に出る。

 その眼は真っすぐ映し出される映像を見据えていた。

 ここまで来たのなら最後まで見届けたい、という事だろうというのは誰でも理解出来た。

 その意志を無視は出来ない。

 それ以上は誰も、何も言わなかった、いや言えなかったという方が正しいかもしれない。

 と、そうこうしてるうちに映像に動きがあった。

 

 

『目標を確認しました! プレシア・テスタロッサ! 時空管理法違反で貴女を逮捕します!』

 

 

 武装局員達がプレシアを取り囲む。

 完全に多勢に無勢、だがプレシアの表情には余裕の笑みが浮かんでいた。

 そんなにプレシアに不気味さを感じながらも数名の武装局員は内部の捜索を開始した。

 その内の一人が扉を開ける。

 すると。

 

 

『……こ、これは!?』

 

「え……?」

 

 

 そう声を上げたのは誰であったか。

 少なくともその映像を見て全く驚かなかった人間はいなかったというのは間違いない。

 映像に映っているもの、それは――カプセルの中に浮かんだフェイトと瓜二つの少女の姿――いや、フェイトよりも幾分か幼いかもしれない。

 少女は眼を閉じておりピクリとも動かない。

 そう、まるで死んでいるように。

 そしてそれを見られた瞬間、プレシアは表情を一変させた。

 

 

『私のアリシアに……近づかないで!!』

 

『うわぁ!?』

 

『くっ、撃てぇっ!!』

 

 

 何人かの武装局員が紫の雷に打たれ倒れた。

 即座に残った武装局員は魔法弾を放つ。

 しかし、それはいとも容易く防がれてしまう。

 それだけで武装局員とプレシアの間にある実力差がはっきりと分かった。

 

 

『うるさい奴らね……』

 

「……いけない! 防いで!!」

 

 

 リンディが指示を飛ばすも少々遅かった。

 残った武装局員達も暴れ狂う紫の雷を受けて倒れてしまう。

 それだけでアースラの中は大騒ぎになる。

 しょうがない事だろう、あれだけいた武装局員達が全滅したというのだから。

 

 

「急いで局員達の送還を!」

 

「は、はい! 了解です!」

 

 

 そんな中でフェイトを始めとした数名は映像を見つめ続けていた。

 容器の中に浮かんだ少女――アリシア。

 そんなアリシアを悲しげに、そして愛おしげに見つめるプレシア。

 ここで悟空がベジータに尋ねる。

 

 

「なぁベジータ……オラにはさっぱり分かんねえんだけど、どういう事だ?」

 

「俺が知るか……だがどうせ向こうが勝手に語ってくれるだろう」

 

『あら、その声はベジータ……なるほど、という事は見ていたというわけね』

 

 

 ふふふ、とプレシアは笑う。

 狂気の渦巻いた冷たい笑みだった。

 それだけでこれから彼女がやろうとしている事が碌でもない事であるというのは想像がつく。

 

 

『もう時間がないわ……たった九個のジュエルシードでどうにか出来るかは分からないけど……もういいわ、そろそろ終わりにしたかったもの、アリシアを失ってからの暗鬱な時間も、そこにいるであろう人形を娘扱いするのも』

 

「……っ」

 

 

 フェイトの肩がビクリと震えた。

 人形、その言葉がどうしようもなく胸に刺さる。

 

 

『聞いているのでしょう? あなたの事よ、フェイト。折角アリシアの記憶をあげたのに見た目がそっくりなだけで中身は別物の役立たずなお人形』

 

 

 そこでエイミィが悟空達に語りかけた。

 

 

「最初の事故の時……プレシア・テスタロッサは娘であるアリシア・テスタロッサを亡くしているの。彼女が最後に行っていた研究は使い魔を超える人造生命を作り出す研究、死者蘇生の秘術、その名も開発コード“F”……正式名称はプロジェクトF.A.T.E(フェイト)

 

 

 それを聞いたフェイトは俯く。

 分かった、分かってしまった。

 母が冷たかった理由も、あのアリシアという少女が何者なのかも。

 他の面々もそうだ、だが言葉は発せなかった。

 

 

『よく調べたものね、でも駄目だったわ。所詮造り物は造り物でしかない。失った者の代わりにはならなかった』

 

「あ……あ……」

 

 

 フェイトの眼から涙が零れる。

 これ以上は聞きたくない。

 そうは思うが耳は防げない、何故だか体が動かなかった。

 心が切り裂かれていく、一言一言が鋭利な刃となってフェイトを苦しめる。

 

 

『フェイト、やっぱり貴女はアリシアの偽物よ』

 

「……」

 

『最後に教えてあげる、フェイト……私はね』

 

「もう……もうやめて!」

 

 

 なのはの叫びも届かない。

 プレシアはニヤリと笑って最後の言葉を吐き出した。

 

 

『貴女を作り出してからずっと……貴女の事が大嫌いだったのよ』

 

「……ッ!」

 

 

 フェイトが崩れ落ちた。

 そこになのは、ユーノ、アルフが駆け寄り声をかける。

 だがフェイトの眼は虚ろで、アルフの声にさえ反応を示さない。

 

 

『フフフ……アハハハハハッ!!』

 

 

 プレシアが笑う。

 笑い声が響き渡り大人達は苦い顔をしながら歯を食いしばった。

 ――だが。

 

 

「……くだらん」

 

 

 その言葉で場は静まり返った。

 発したのはベジータ、そして隣には悟空も立っている。

 二人は映像に映るプレシアをじっと見つめていた。

 

 

『あら、ベジータ……何か文句でもあるのかしら?』

 

「あぁあるな、プレシア……貴様は親として失格だ、フェイトの親としてだけでなくアリシアの親としてもな」

 

『……なんですって?』

 

「どんな形であれ自分で生み出した命に責任を持てない奴が、笑いながら他者を傷つけるような奴が親に相応しいとでも思っているのか? だとしたら笑える話だな」

 

『……黙りなさい、子供風情が分かったような口を……』

 

「本当に碌でもねえや、まるで昔のおめえだな、ベジータ」

 

「チッやかましい! 茶々を入れるな、カカロット!」

 

「悪りい、悪りい……けどよ、オラにも分かっぞ。プレシア! おめえみてえな奴はオラは許せねえ」

 

『許せないとしたら何だと言うの、あなた達如きに何が出来ると?』

 

「出来るさ、おめえを止める事なら出来る」

 

 

 悟空はプレシアを睨みながらそう言った。

 ベジータも同じ意見なのだろう、映像のプレシアを睨み続けている。

 対しプレシアは笑った。

 

 

『ふん……面白い事を言うわね、出来るものならやってみなさい。出来れば、の話だけど』

 

「あぁ待ってろよ!」

 

 

 次の瞬間、アースラのレーダーに無数の反応が現れた。




 オッス! オラ、悟空! 

 プレシアのせいで次元振ちゅうのが起きちまった。

 このままだとやべえ! 早く止めにいかねえと。

 そんな中、ベジータはフェイトを抱えて動き出す!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「壊れかけた心! 魂に届けベジータの言葉!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十一 壊れかけた心! 魂に届けベジータの言葉!

 お気に入り登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れて下ったein0715さんありがとうございます!

 さて、早いものでこの作品も三十一話です。

 今回のメインはタイトル通りですね、それでは其之三十一をどうぞお楽しみください。


「何が起こってる!?」

 

「内部に魔力反応を多数確認! いずれもAクラス! 総数は六十、いや八十……まだ増えています!」

 

「なんだって……!」

 

 

 クロノは呆然とする。

 Aクラスの敵が少なくとも八十以上、しかもこちらの戦力は先ほどプレシアによって倒されてしまったため僅か。

 状況は絶望的だった。

 さらに追い打ちをかけるように艦が揺れる。

 

 

「次元振です! 規模は中規模以上!」

 

「ジュエルシード九個の発動を確認! 次元振さらに強くなります! 時空に歪みが生じる可能性も……!!」

 

「くっ……転送可能距離を維持したままで影響の薄い空域に移動して!」

 

 

 リンディの指示が飛ぶ。

 どんどんと慌ただしくなっていくアースラ艦内。

 それを見ていたクロノはギリッと歯を食いしばると動き出す。

 

 

「クロノくん?」

 

「僕が行って止めてくる……! ゲートを開いて!」

 

 

 クロノはそう言って駆けだした。

 なのはは悩んだ、自分も力になりたい。

 とても放っておけない。

 だがフェイトをこのままにしておくというのも気が引けた。

 そんななのはに対し悟空は言う。

 

 

「オラも行ってくる、なのは、ユーノ、アルフ、おめえ達はどうする?」

 

「私は……」

 

「フェイトの事なら心配いらねえと思うぞ」

 

「え?」

 

「だろ? ベジータ」

 

 

 悟空がそう言うと視線はベジータに集まった。

 ベジータはフッと笑うと腕に力を込める。

 すると大きな音と共に手枷は砕け散った。

 それを目の当たりにした面々は眼を丸くしつつもベジータなら出来てもおかしくないか、と納得する。

 寧ろ今まで大人しくしてたのが奇跡的だ。

 そのままベジータはフェイトを抱き上げる。

 

 

「どうする気だい?」

 

「とりあえずここは騒がしくて敵わん、医務室に連れていく。おい、誰か医務室の場所を教えやがれ」

 

「えっと……それなら――」

 

 

 ユーノの説明を聞きベジータは頷きフェイトを抱えたまま歩き出す。

 そんなベジータを止める者がいた、アルフだ。

 

 

「ちょいと待っておくれよ、ベジータ」

 

「なんだ、アルフ」

 

「……任せていいんだよね?」

 

「フン、それを判断するのは貴様自身だ。俺が信用に値するか、フェイトの相棒である以上じっくり考えろ」

 

「やれやれ相変わらずの物言いだねぇ。まぁあんたらしくていいと思うけど……フェイト、私は行ってくるよ。この騒ぎを止めてくる、フェイトのこれからの幸せのために、笑顔のために……私はフェイト自慢の使い魔だからね」

 

 

 フェイトは虚ろな目のまま反応を示さなかった。

 だがアルフは全てを言いきるとベジータとフェイトに背を向けて歩き始める。

 続いてなのはが駆け寄って来る。

 

 

「あの、ベジータくん!」

 

「……今度はなんだ」

 

「フェイトちゃんの事お願いね、私達も行ってくるから! 悟空くん、ユーノくん行こう!」

 

「あ、待ってよ! なのは!」

 

 

 走るなのはとそれを追うユーノ。

 残ったのはベジータとフェイト、そして悟空だ。

 

 

「……先に行ってっぞ、ベジータ」

 

「……精々油断してやられない事だな、貴様に勝つのは俺でなければならない」

 

「あぁ分かってっさ。じゃあな!」

 

 

 悟空はそう言うと駆け出した。

 ベジータはその背中を見送ると背を向け医務室に向かって歩き出した。

 

 

 

 医務室。

 そこにやって来たベジータは早々に抱えていたフェイトをベッドの上に置いた。

 フェイトは虚ろな目のまま動かない。

 これではまるで人形のようだとさえ思えた。

 

 

「……本能的に周りの声を聞かないようにしているのだろうが、あえて言うぞ……聞け、フェイト!!」

 

 

 その叫びはフェイトに――届いた。

 ただし恐怖を感じたのかビクリと反応するだけだったが。

 ベジータはそれを確認するとさらに言葉を続ける。

 

 

「貴様はこのままでいいのか? 人形だと言われ、偽物だと言われ……こんなところで挫けるのか、貴様の思いはそんなものか、答えろ! 俺は人形に聞いているのではない、アリシアとかいうガキの偽物に聞いているわけでもない! フェイト・テスタロッサという一人の人間に聞いているんだ!!」

 

「……」

 

 

 フェイトは今、自分が壊れてしまいそうな錯覚に陥っていた。

 自分という存在を根本から否定されたのだから無理もない。

 だがそんなフェイトの魂に僅かではあるがアルフの言葉も、ベジータの叫びも届いていた。

 

 

(アルフ……ベジータ……)

 

 

 記憶が、過去の映像が目の前を流れていく。

 アリシアの記憶ではない。

 フェイトとして歩んだ日々の記憶。

 短い、あまりにも短い期間ではあったがその分鮮明に思い出せるし、大切な記憶はいくつもある。

 

 

(母さんを信じて……母さんに認めてもらいたくて、母さんのために生きてきた)

 

 

 それがフェイト・テスタロッサの人生だった。

 確かにそれが主軸であった事は否定できない。

 ――だが本当にそれだけだっただろうか。

 

 

『フェイト!』

 

(……この声、アルフ?)

 

 

 最初に聞こえて来たのはアルフの声だった。

 ここ数日で聞いたアルフの声が、言葉が、記憶が流れていく。

 

 

『アタシ達の最優先目標はジュエルシードの確保! 今はそれだけを考えるんだ! フェイトの望みを叶えるためにも!』

 

『もう止めようよ、あんな女の言う事をこれ以上聞いちゃ駄目だ、このままじゃ不幸になるばかりじゃないか』

 

『フェイト、私は行ってくるよ。この騒ぎを止めてくる、フェイトのこれからの幸せのために、笑顔のために……私はフェイト自慢の使い魔だからね』

 

(アルフ……)

 

 

 大切な使い魔、相棒。

 そんなアルフの声を聞きフェイトは手を伸ばすがアルフの姿は消えていく。

 それが悲しくて、寂しくて、フェイトは泣きそうになった。

 だが、今度は――。

 

 

『フェイトちゃん!』

 

(今度はあの子の声……)

 

 

 なのはの声が聞こえて来た。

 この短い期間で幾度となくぶつかり合ったなのはの言葉が、戦いの記憶が流れていく。

 

 

『フェイトちゃんは言葉だけじゃなにも変わらないって言ってたけど……話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!』

 

『フェイトちゃん、協力して! 皆でジュエルシードを止めよう?』

 

『私達の全てはまだ始まってもいない、だから本当の自分を始めるためにも……今ここでやろう、本気の勝負を!』

 

(まだ始まってない……? そうなのかな……でも……)

 

 

 何故だかその言葉は心に刺さる感じがした。

 もしまだ始まってもいないのだとしたら――そうは思うものの、怖くて一歩が踏み出せない。

 そうこうしてるうちになのはの姿も消えていった。

 目の前が真っ暗になる。

 このまま沈んでいってしまうのか、なんて考えているとだ。

 

 

「フェイト!!」

 

(え……? ベジータ……?)

 

 

 今までの声よりはっきりとベジータの声が聞こえた。

 それと同時にベジータとの記憶が流れてくる。

 

 

『というわけだ、俺様は貴様達に同行する事になった』

 

『勘違いするな、俺は俺のやりたいようにやっただけだ』

 

『俺は俺の誇りにかけて誓った、フェイト、最後まで貴様の味方であるとな。ならば俺も投げ出すつもりはない』

 

『……フェイト、貴様は貴様の譲れないもののために戦えばいい。それが何であろうと今は味方をしてやる』

 

(ベジータ……ッ)

 

 

 厳しそうに見えていつも何だかんだ優しかったベジータの言葉が胸に刺さる。

 その時だった。

 先ほどのベジータの言葉が暗闇に響き渡る。

 

 

「こんなところで挫けるのか、貴様の思いはそんなものか」

 

(私……私は……)

 

「俺は人形に聞いているのではない、アリシアとかいうガキの偽物に聞いているわけでもない! フェイト・テスタロッサという一人の人間に聞いているんだ!!」

 

(私は……!)

 

 

 その時、暗闇に光が差し込んだ。

 フェイトはその眩しさに思わず目を瞑る、そして次の瞬間。

 

 

「ベジー、タ……?」

 

「フン、やっと目を背けるのを止めやがったか」

 

 

 目の前にはもう暗闇はなかった。

 あるのは白い清潔感のある部屋とベジータ。

 フェイトの意識は現実へと戻ってきたのである。

 

 

「ベジータ、ベジータは私を一人の人間として扱ってくれるの?」

 

「何を当たり前の事を聞いてやがる……貴様の生まれなど俺からしてみればどうでもいい話だ、俺が共に過ごしたのはフェイト、貴様なんだからな。それはアルフも、あのなのはとか言う娘にとっても同じ事だろう」

 

「……! ベジータ、もう一つ聞かせて……私は……まだ始まってすらいないのかな……?」

 

「……さぁな、それを決めるのは貴様自身だ。その上で俺の方にも聞かせろ……今の貴様の本心を。内容次第ではこの俺様が手伝ってやらん事もない」

 

 

 フェイトは俯き悩む。

 どうすればいいか、それを考える。

 脳裏にチラつく母の姿、心の奥から生まれる恐怖。

 それを踏まえてフェイトが出した結論は――。

 

 

「……私は、終わる。ここで……私は私を終わらせる」

 

「そうか……」

 

「ただし終わらせるのは今までの私……そして始めるよ、ここから本当の私を」

 

「……フッ、中々言うじゃないか。貴様のそんな眼は初めて見るな」

 

 

 ベジータは嬉しそうに笑う。

 フェイトの決断、それは要は前に進むという事だ。

 恐怖もあるだろう、悲しみもあるだろう、それを受け止めた上でそう決断するというのは簡単に出来る事ではない。

 フェイトの眼は今までにない強さを秘めていた、少なくともベジータはそう感じていた。

 

 

「あ、でも手枷が……」

 

「そんなもの俺が破壊してやる、じっとしてろ」

 

 

 ベジータはそう言うと二本の指でフェイトの手枷を挟み、力任せに破壊した。

 フェイトは自由になった両手を見ながら言う。

 

 

「流石ベジータ……凄い力」

 

「フン、この程度造作もない」

 

 

 そう言ってそっぽを向くベジータ。

 そんなベジータを見てフェイトは「ありがとう」と言いながら微笑む。

 そしてそのまま自分の手の中にあるバルディッシュに視線をやる。

 

 

「バルディッシュ……お前もずっと私と一緒に戦ってくれてたよね……もう少しだけ力を貸してくれる?」

 

 

 その言葉に応じるようにバルディッシュは杖へと姿を変えた。

 それが嬉しくてフェイトはまた微笑む。

 改めて感じる自分の周囲にいる存在の温かさ、それを感じれた今フェイトに怖いものなどない。

 フェイトの服がバリアジャケットへと変化する。

 マントを靡かせ、フェイトはバルディッシュ片手に歩き出した。

 その隣をベジータは歩く。

 

 

「……手伝ってくれるの? ベジータ」

 

「言ったはずだ、内容次第では手伝ってやらん事もないとな」

 

「私は母さんを止めて、もう一度話をしにいく……それでも手伝ってくれる?」

 

「いいだろう、それが貴様が本当の貴様を始めるのに必要な事なら付き合ってやる」

 

「もう何回も言ったけど……ありがとう、ベジータ」

 

「礼を言う必要など――」

 

「それでも言いたいの、ありがとうって。私はベジータに心から感謝してるから」

 

「……チッ、勝手にしろ」

 

 

 そんな会話を交わしながら二人は時の庭園へと向かい進んでいく。

 決意と闘志を胸に、強い眼差しを前に向けながら。




 オッス! オラ、悟空! 

 駆動炉を止めるために時の庭園を進むオラ達。

 そんなオラ達の前にベジータとフェイトが現れる!

 よし、おめえ達もいるなら百人力だ! 一気に行くぞ!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「雷の如きスピードで! ベジータ&フェイト参戦!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十二 雷の如きスピードで! ベジータ&フェイト参戦!!

 お気に入り登録してくださった皆様、感想をくれた方、誤字報告をしてくれた方、評価を入れてくださったフェローさん、気弱なジャイアンさん、fond0065さんありがとうございます!

 それでは其之三十二をどうぞ!


 その頃、悟空達はと言うと。

 

 

「だりゃあっ!!」

 

「シュートッ!!」

 

 

 迫りくる兵器――傀儡兵の群れを相手に戦っていた。

 目指すは駆動炉。

 ジュエルシードとは別に暴走してるそれを止める事が最初の目的だ。

 ちなみにクロノはいない。

 クロノはプレシアを止めるために別行動をとっている。

 クロノがジュエルシードを、悟空達が駆動炉を抑える事でこの次元振を止める。

 それが今回の作戦だった。

 ――だが。

 

 

「くっ……」

 

「どうするんだい!? 数が多すぎるよ!」

 

 

 アルフの言う通り傀儡兵の数は多すぎた。

 いくら倒してもキリがない。

 纏めて吹き飛ばしても次から次へと現れる。

 これでは駆動炉を止める前に時の庭園が崩壊してしまう。

 そうなれば全員無事ではすまないだろう。

 ミッドチルダや地球にも影響を及ぼすのは間違いない。

 そんな焦りが悟空を除く皆を焦らせた。

 結果、ユーノのバインドが少し緩み一体の傀儡兵が動き出す。

 

 

「しまった……! なのは、後ろ!」

 

「っ!!」

 

 

 なのはは急いで後ろを向く。

 そこには手に持った斧を高々と掲げた傀儡兵がいた。

 いつものなのはなら対処のしようもあっただろう、だが今のなのはは消耗している。

 忘れがちだがフェイトとの戦いから一時間も経っていないのだ。

 回復にはまだまだ時間がかかる。

 故に避けきれない。

 なのはは思わず目を瞑った。

 しかしここには――彼がいる。

 

 

「はあああああっ!!」

 

「ご、悟空くん!?」

 

「悟空さん!」

 

 

 飛んできた青白い光線が傀儡兵を破壊する。

 放ったのは当然悟空。

 悟空は一瞬でなのはの側にまで飛んでくる。

 

 

「大ぇ丈夫か、なのは!」

 

「う、うん! ありがとう!」

 

「気にすんな、それにしてもすげえ数だ。機械は気が感知出来ねえからちっとばかし面倒だぞぉ」

 

 

 気が付けば四人は傀儡兵に囲まれていた。

 次々湧いてくる傀儡兵にこのまま飲まれてしまうのか、そう思った矢先だった。

 

 

「ギャリック砲……!」

 

「サンダー……レイジ!」

 

「「はあああああっ!!」」

 

 

 空から雷を纏った紫色の光線が降り注ぎ、四人を囲んでいた傀儡兵を破壊していく。

 四人の視線は自然と上へと向けられる。

 そこには――。

 

 

「フェイトちゃん、ベジータくん!」

 

「フェイト、ベジータ!!」

 

 

 フェイトとベジータが浮かんでいた。

 ちなみに先ほどのは二人の合体技である。

 練習していたわけではない、だが今は自然と息が合い必殺技と魔法を合体させて放つ事が出来た。

 悟空は笑みを浮かべながら言う。

 

 

「待ってたぞ、二人とも」

 

「フン、カカロット、貴様がいながらこのザマはなんだ?」

 

「そう言うなよ、結構大変だったんだからさ」

 

「……まぁいい、とっとと雑魚は掃除して駆動炉とジュエルシード、そしてプレシアを止めるぞ」

 

 

 ベジータの言葉にその場にいる全員が賛同する。

 ともなれば早速駆動炉へ――と考えたのだが地響きが響き渡った。

 全員が鋭い目つきで警戒を強める。

 すると、だ。

 三方の壁を突き破り、巨大な傀儡兵が三体も姿を現した。

 見るからに強力そうなその傀儡兵に誰もがたじろぎ、どう戦うべきかを考える。

 もっともサイヤ人二人はその眼に闘志の炎を宿したままだったが。

 考えるなのは、少ない魔力でアレを倒すにはどうすればいいかと。

 そこにフェイトが近づいてきた。

 

 

「あれは大型、他の傀儡兵よりバリアが強い……それと背中には砲が備えられている」

 

「そうみたいだね、どうしようかな……」

 

「……でも、二人なら倒せると思うんだ」

 

「フェイトちゃん……うん!」

 

「ははっ、頼もしいや! じゃあ一体はおめえ達に任せっぞ。もう一体はオラがやる」

 

「残った一体はこの俺様が片付けてやろう」

 

「悟空くん、ベジータくん……」

 

「二人とも気を付けて……」

 

「あぁおめえ達もな!」

 

「俺の心配より自分達の心配をしていろ、こっちは問題ない。残った二人は万が一の時のために援護の準備をしていろ、まぁ必要ないとは思うがな」

 

 

 そう言ってそれぞれ前方の敵に眼を向ける四人。

 最初に動いたのはなのはとフェイトだった。

 前方の巨大傀儡兵が攻撃を仕掛けてくる。

 それを急上昇する事によって回避する、なのはとフェイト。

 煙が上がるが相手はあの巨体、見失う事はない。

 二人は上空で隣り合い、相棒である杖を構える。

 

 

「行くよ! レイジングハート!!」

 

「こっちも……バルディッシュ!!」

 

 

 二人の杖が光を放つ。

 主の思いに応えるように。

 さらに桜色の魔力と金色の魔力が杖の先に溜まっていく。

 そしてその魔力が溜まりきった瞬間。

 

 

「ディバイン……バスター!!」

 

「サンダー……スマッシャー!!」

 

 

 同時に解き放たれる桜色と金色、二色の魔力砲。

 二つは混ざり合い大型傀儡兵に直撃する。

 だが案の定バリアが張られており直撃はしているがダメージにはなってなかった。

 しかし二人は諦めない。

 後ろにはユーノやアルフがいてくれる、悟空とベジータだって戦ってくれている。

 ならば負けるわけにはいかないだろう、諦めるわけにはいかないだろう。

 信じてくれた皆のために、大好きな人のために――ここで全力を出す。

 

 

「「せーのっ!!」」

 

 

 その掛け声と同時に二人はさらに魔力を込めた。

 タイミングは全く同じ。

 協力するのはまだ二度目とは思えないほどに今の二人は息が合っていた。

 魔力砲は威力を増す、そのまま傀儡兵を押していく。

 やがてバリアにはヒビが入り、その亀裂はドンドンと大きくなっていった。

 

 

「「はあああああ!!」」

 

 

 そしてついに――バリアが崩壊する。

 魔力砲は勢いが衰えることなく、そのまま傀儡兵を飲み込み爆散させた。

 その勢いはすさまじく壁には大穴が空く。

 

 

「やったぁ!」

 

「ふぅ……」

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

 

 一仕事終えたなのはとフェイトにユーノとアルフが駆け寄る。

 二人は微笑みながらも悟空とベジータの心配をしてそれぞれの方向に眼をやる。

 そこでは――巨大傀儡兵の攻撃を避けまくる二人の姿があった。

 

 

「やるなぁ、あの二人! こいつ結構つええのによ!」

 

「あれぐらいどうという事はないだろう、奴らの実力ならな!」

 

「ははっ、それもそうか! そんじゃオラ達も行くとすっか!」

 

「分かっている……!」

 

 

 二人は一旦動きを止める。

 そして溜めていた気を開放し始めた。

 

 

「界王拳!!」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 悟空は真紅に染まり、ベジータの放つオーラは強くなる。

 これで強化は完了。

 目の前に立つ二体の巨大傀儡兵に余裕の表情を浮かべる二人だが先に動いたのは悟空の方だった。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

 

 目で追えないほどの高速移動をした悟空が空中を駆ける。

 そのまま突撃する悟空は勢いよく傀儡兵の右腕に直撃、そのまま貫き破壊した。

 さらに悟空はUターン。

 どんどん勢いを増し今度は左腕に突撃し破壊する。

 傀儡兵はたまらず背中の砲を悟空に向けようとするが、あまりにも速いその動きに付いて行けず狙いは定まらない。

 そうこうして間に悟空は再度突撃し今度は背中の砲を破壊した。

 腕と砲を無くし攻撃する手段を失った傀儡兵。

 そこに悟空は駄目押しとなる一撃を放つ!

 

 

「か、め、は、め……波あああああっ!!」

 

 

 放たれた青白い光線は一直線に進んでいき傀儡兵を直撃。

 バリアも一瞬で破り、その巨体を貫いた。

 崩れ落ちる傀儡兵。

 悟空は対しニカッと笑うのだった。

 そしてベジータもまた攻撃を開始する。

 

 

「この程度の兵器で俺様を倒せると思ったら大間違いだ」

 

 

 ベジータはそう言って指を二本立ててピッと傀儡兵に向けた。

 すると傀儡兵の右肩が爆発を起こし崩れ去る。

 指先から気を放ちそれを相手の肩の部分で爆発させたのである。

 余裕そうな、つまらなそうな表情を浮かべながらベジータは次々と各部位に指を向けて傀儡兵を破壊していく。

 気が付けば傀儡兵はダルマ状態と化していた、手も足も出ないとはまさにこの事だろう。

 最後に胸部に向かって指を向けるベジータ。

 と、大きな爆発を起こして傀儡兵は散った。

 

 

「フン……汚い、とまでは言うつもりもないが綺麗とは言い難い花火だな」

 

 

 あっという間に巨大傀儡兵を片付けてしまった悟空とベジータ。

 その強さに一同はポカンとしながらも、その頼もしさに安心を覚える。

 そう、この二人が今は味方なのだ。

 これほど頼もしい事はないだろう。

 

 

「悟空くん、流石!」

 

「ベジータもお疲れ様」

 

「おう、おめえ達もよく頑張ったな!」

 

「これぐらい当然だ、さてとりあえずもう増援は来ないようだな」

 

 

 ベジータの言う通りあれだけ湧いて出て来た傀儡兵がもう出てこない。

 恐らく先ほどの巨大傀儡兵が最後だったのだろう。

 一行は顔を見合わせ頷く。

 

 

「付いてきて、駆動炉に繋がる場所まで案内する」

 

 

 フェイトのその言葉に応じ悟空達は移動を開始した。

 駆動炉を止めるために、プレシアを止めるために、一刻も早くと焦る気持ちを抑えながら。




 オッス! オラ、悟空!

 駆動炉を止めに行くオラ達、プレシアを止めにいくベジータ達。

 オラ達ならきっと止められる……行くぞ!!

 そして遂に向き合うフェイトとプレシア、だけんどその先に待っていたのは……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「崩壊する時の庭園! 親と子、二人の思い!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十三 崩壊する時の庭園! 親と子、二人の思い!

 お気に入り登録してくださった皆さん、誤字報告をしてくれた方、新たに評価を入れてくださった、らぐなろんさん、トワイスさんありがとうございました!

 さてさて波乱の其之三十三、多くは語りません

 どうぞお楽しみください


 移動を始めると予めそこに配備されていたのだろう、一行の行く手を塞ぐように次々と傀儡兵が現れた。

 だがそんな傀儡兵達に対し悟空とベジータが前に出て蹴散らしていく。

 結果、道に転がる残骸の数々。

 悟空達は難なくエレベーターの前まで辿り着いた。

 

 

「このエレベーターを使えば駆動炉に行ける」

 

「うん……フェイトちゃん達はお母さんのところに?」

 

「……うん」

 

 

 フェイトは頷く。

 恐怖はある、だけどここを乗り越えなければ前に進めないとも思う。

 だから行くと決めた。

 そんなフェイトの手に、なのはは自分の手を重ねる。

 

 

「私、上手く言えないけど……頑張って」

 

「うん……ありがとう」

 

「ベジータ、おめえちゃんと守ってやれよ?」

 

「チッ、俺に指図するな……貴様に言われんでも分かっている」

 

 

 笑い合うベジータ以外の三人。

 そこへユーノとアルフが走って来る。

 

 

「今クロノが一人で向かってる! 急がないと間に合わないかも!」

 

「うん……! ベジータ、アルフ……行くよ!」

 

「あぁ」

 

「おうさ!」

 

 

 こうしてフェイト、ベジータ、アルフは走り去っていった。

 その背中を見送り悟空達はエレベーターに眼を向ける。

 

 

「そんじゃ、オラ達も行くか! さっさと終わらせてオラの瞬間移動でベジータ達に合流すっぞ!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 三人はエレベーターに乗り込む。

 そして辿り着いた駆動炉――そこには無数の傀儡兵達がいた。

 なのはを守るために前に出ようとする、悟空とユーノ。

 そんな二人をなのはは止める。

 

 

「ん? どうした?」

 

「なのは?」

 

「悟空くん、ユーノくん、ありがとう。二人がいるから、いてくれるからここまで戦ってこれたと私思うの」

 

「……何言ってんだ、まだまだこれからだろ?」

 

「うん、そうだね。でも言っておきたかったんだ」

 

「なのは……よし、なのはは封印に専念して! 敵は一体たりとも近づけない!」

 

「ははっ、気合入ってんな。ユーノ! そんじゃオラも気合入れて相手するとすっかな!」

 

 

 そんな会話を交わしながら悟空とユーノは傀儡兵に突撃する。

 ユーノが動きを拘束し悟空が破壊する。

 それを繰り返していき、なのはは魔力を消費する事なく少しずつ駆動炉に近づいていった。

 多少時間はかかるがこれが一番堅実なやり方だった。

 本当なら急いで終わらせてフェイトやベジータ達のもとに駆け付けたい。

 だけど焦りは隙を生む、それを分かっているから今はその気持ちを奥へと押し込んで駆動炉を止める事に専念する。

 進みながら、なのはは思う。

 

 

「悟空さん!」

 

(ユーノくん……私が魔法を手にする切っ掛けになった異世界の友達)

 

「いいぞ、ユーノ! かぁめぇはぁめぇ……波ああああああっ!!」

 

(悟空くん……突然現れてうちに転がりこんできた不思議な男の子……)

 

 

 二人に会えて良かったとなのはは心から思う。

 背中が温かくて頼もしいと思える。

 やがて、なのはは駆動炉の前に辿り着いた。

 

 

「よし、なのは! 行け!!」

 

「今のうちだよ!」

 

「うん! リリカルマジカル……ロストロギア、封印!!」

 

 

 なのはは呪文を唱えながらレイジングハートを振り下ろした。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 その頃プレシアは一人、アリシアの入ったカプセルを撫でながら笑っていた。

 狂気の混じった笑い声が響き渡る。

 だが時折、その脳裏には先ほどのベジータの言葉がチラついていた。

 

 

『どんな形であれ自分で生み出した命に責任を持てない奴が、笑いながら他者を傷つけるような奴が親に相応しいとでも思っているのか?』

 

「……忌々しい、無関係の子供の癖に何を分かったような口を……私は取り戻すの、こんなはずじゃなかった世界の全てを……!」

 

 

 その時、プレシアの背後の瓦礫が吹き飛んだ。

 現れたのはクロノだ。

 頭部からは血を流しているが、その眼の奥に燃え盛る闘志は欠片も消えてはいなかった。

 クロノは叫ぶ。

 

 

「世界はいつだってこんなはずじゃない事ばっかりだよ! ずっと昔からいつだって、誰だってそうなんだ!」

 

 

 クロノの言葉を受けたプレシアは眉間に皺を寄せる。

 不愉快だった。

 そして邪魔をしようとするこの執務官をさっさと始末してしまおうという結論に至る。

 プレシアの杖に紫の雷が溜まっていく……だがそこに三つの影が現れた。

 ――フェイト、ベジータ、アルフの到着である。

 プレシアはフェイトの顔を見ると忌々し気な表情を浮かべながらこう言った。

 

 

「何をしに来たのかしら?」

 

 

 その言葉には明確な拒絶の意志が込められていた。

 だがフェイトは怯まない。

 なのはに悟空とユーノがいるように、フェイトにもベジータとアルフがいる。

 二人が後ろにいてくれる、それがたまらなく嬉しくて心強かった。

 フェイトは一歩前に出て言い放つ。

 

 

「貴女に言いたい事があって来ました……」

 

 

 真っすぐプレシアを見据えながらフェイトは続ける。

 

 

「私はアリシアじゃありません、貴女が言うように作られた人形なのかもしれません。だけど私――フェイト・テスタロッサは貴女に生み出してもらって育ててもらった……貴女の娘です」

 

 

 しっかりと立ちながらそう語るフェイトの姿は、まるで別人のようだった。

 少なくともプレシアにはそう見えた。

 それだけフェイトはこの短時間の間で前に進み、成長していたのである。

 だがそれでも目の前にいる存在はアリシアではない。

 プレシアはフェイトの言葉に対し冷たい言葉を返す。

 

 

「だからなんだと言うの? 私にも貴女を娘だと思え……とでも言うつもり?」

 

「……貴女がそれを望むなら私は世界中のどんな事柄からも貴女を守ります、私が貴女の娘だからじゃない。貴女が私の母さんだから」

 

 

 フェイトはそう言って自らの手を差し出した。

 プレシアはその手をただただじっと見つめて――笑う。

 

 

「フフ、フフフ……アハハハハハッ!! くだらない……くだらないわ! もうすぐこの時の庭園は崩壊する……そしてその時こそ私とアリシアの旅立ちの時……アルハザードへのね!」

 

「アルハザードだって……? そんな伝承にすぎない場所に行くためにこんな真似を!」

 

 

 クロノは叫ぶ。

 唯一、この場にいる人間でベジータだけはアルハザードとは何かさっぱり分からなかった。

 だがプレシアの様子を見る限り、そしてクロノの言葉を聞く限り、そこに至ろうとするという事がどれだけ馬鹿げてる話なのかは分かった。

 だがプレシアは笑う、まるで行けると確信しているかのように。

 

 

「道は、確かに存在しているのよ!」

 

 

 その時だった。

 時の庭園各所で時空の歪みが発生。

 それに合わせるかのようにプレシアとアリシアの入ったカプセルがグラリと揺れた。

 ちょうど二人が立っていた場所の床が崩壊したのである。

 崩壊した先に広がるのは虚数空間――次元空間に空いた穴であり魔法が使えない、落ちたら二度と帰ってこれないとされる空間だ。

 フェイトは眼を見開き、必死に走る。

 

 

「母さん、アリシア!」

 

「さぁ……行きましょう、アリシア。アルハザードへ……私達の救いの地へ……」

 

 

 フェイトの手は届かない。

 ――だが忘れてはいけない、ここには魔法無しでも飛べる人間がいる事を。

 フェイトの真横を風が通り抜けた。

 いや、風ではない、とフェイトはすぐに気づく。

 何故ならその姿を知っていたから。

 いつだってフェイトを助けてくれた、雰囲気は近寄りがたいものがあるけれど根は優しい男の子。

 そう、ベジータが勢いよく飛び出し虚数空間へと落ちていったのだ。

 ベジータはそのまま高速で飛んでいき落ちゆくプレシアの腕を掴む。

 さらに落ちていくアリシアの入ったカプセルも空中で留まった。

 よくよく見るとそのカプセルは悟空によって支えられていた。

 駆動炉を止めてすぐ、瞬間移動でここまで来て即座に状況を把握しカプセルをキャッチしたのである。

 それを見てプレシアは叫んだ。

 

 

「なっ……離しなさい、貴方達!!」

 

「やなこった」

 

「断る」

 

「離せと言っているのよ! 私は……私達はアルハザードへ……!」

 

「行かせると思うのか? 貴様の思い通りの道になど俺の眼が黒いうちは進ません」

 

「この……っ!」

 

 

 ベジータの言葉を受けてプレシアは紫の雷を発生させる。

 だがそれもベジータがカッと眼に力を入れるだけで打ち消される。

 これには流石のプレシアも驚愕せざるを得ない。

 

 

「何をしたの……!」

 

「目力だ、それで貴様の雷を消した」

 

「そんな馬鹿な……!」

 

「へへっ、すげえだろ! 結構便利なんだぞ」

 

 

 プレシアは俯く。

 力の差は歴然、これではとてもじゃないがこの手を振り解く事は出来ない。

 抵抗がなくなったのを見て悟空とベジータは一瞬顔を見合わせ上昇を開始する。

 上がった先では――なのはや泣きそうになったフェイトが待っていた。

 

 

「悟空くん、良かった……」

 

「ベジータ……ありがとう……!」

 

「間に合って良かったぞ、な。ベジータ!」

 

「フン……だがカカロット、死体を救って貴様はどうするつもりだ」

 

「……ま、オラにも色々考えがあんだ。詳しくは一旦戻ってから――!?」

 

「――なにっ、これは!?」

 

「悟空くん……?」

 

「ベジータ……どうしたの?」

 

 

 突然悟空とベジータの表情が変わった。

 何が何だか分からずになのはとフェイトは首を傾げる。

 だが説明してる暇もないのか、悟空とベジータは周囲をキョロキョロと見回す。

 それを見かねて今度はクロノが尋ねる。

 

 

「どうしたんだ、何があった?」

 

「すげえ嫌な気だ……突然嫌な感じのする、ばかでけえ気が現れた!」

 

「くそったれ……どういう事だ」

 

 

 気は感じるのにそれを放ってる人物が見つからない。

 だが次の瞬間。

 

 

「かは……っ!」

 

「え……?」

 

 

 突如飛んできた黄色い閃光がプレシアの腹を貫いた。

 血を吐きながら倒れるプレシア。

 突然の事に固まるフェイト。

 他の面々も思わず固まってしまった。

 だがいち早く冷静になったのは――やはり悟空とベジータ。

 

 

「こん中で回復魔法使える奴はどんぐらいいる!?」

 

「は、はい! 僕とクロノだけです!」

 

「ならば貴様らの役割はプレシアの治療だ! いいか! 絶対に死なせるなよ!」

 

「……わ、分かった! 最大限やってみる!」

 

 

 急いで指示を飛ばす悟空とベジータ。

 ユーノとクロノはすぐに回復魔法を使用しプレシアを治そうとする。

 さらに悟空とベジータはなのは達の方を向く。

 

 

「なのは! おめえは皆を守っていてくれ!」

 

「う、うん!」

 

「フェイト、貴様も……っ」

 

「母、さん……」

 

「駄目かっ……アルフ! フェイトを何とか立ち直らせろ! 今は一人でも防衛戦力がいる!」

 

「無茶言ってくれるね……! だけどやれるだけやってみるよ!」

 

 

 そこまで指示を出して悟空とベジータは光線が飛んできた方を睨み付けた。

 その眼には怒りが渦巻いている。

 すると空間が歪んでいるのが見えた、それは時の庭園各所で発生していた時空の歪みの内の一つ。

 そしてその歪みから出て来たのは――左瞼の部分に傷を持ち二本の触覚が生えた緑色の肌をした人間。

 その人種を悟空もベジータも知っていた。

 

 

「ナメック星人だと……!?」

 

「けどピッコロじゃねえ……おめえ、誰だ!!」

 

「ほう、オレを忘れたのか……いいだろう、折角だ。名乗ってやる」

 

 

 そのナメック星人はニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、こう名乗った。

 

 

「オレの名は……スラッグだ!」




 オッス! オラ、悟空!

 スラッグ……? 聞いた事ねえ名前だぞぉ。

 けど分かる事は一つある……おめえが悪りい奴だって事だ!

 ……来るぞ、ベジータ! 気ぃ抜くなよ!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「招かれざる来訪者! (スーパー)ナメック星人スラッグ登場!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十四 招かれざる来訪者! (スーパー)ナメック星人スラッグ登場!!

 お気に入り登録してくださった皆さま、感想をくれた方々、評価を入れてくださった胡瑪柘弧さん、simple21さん、ただのはじめさん、だすと7さんありがとうございました。

 スラッグ大暴れ回です。

 いや、いざ見返すと思ったより暴れてない気もしますが……では其之三十四、どうぞ!


 次元振、そしてそれが起こした時空の歪み。

 それがどういうわけか、招かれざる来訪者を呼んでしまった。

 その名をスラッグ、超ナメック星人スラッグ。

 気を感じ取るだけで悟空達には分かる、スラッグの強さが。

 弱くなる前の悟空達にとっては大した事ないレベルだが、今の悟空達は全盛期と比べて遥かに弱体化している。

 そう考えるとこれだけの気を持った存在を相手にするのは中々に厳しい話だった。

 そんな中スラッグは笑いながら悟空を見て言う。

 

 

「何の因果か知らんが……また貴様に会う事になるとはな」

 

「……? 何言ってんだ、おめえ」

 

「カカロット……貴様知り合いか?」

 

「いや、知らねえよ……ナメック星にもあんな嫌な気を持った奴はいなかった」

 

「フン、まぁいい。わざわざ顔を見せてやったんだ……少しは楽しませてくれるんだろう?」

 

 

 スラッグはそう言うと構えて気を開放する。

 ビリビリと凄まじい衝撃が周囲を襲い、目の前に立つ悟空とベジータにはとんでもない圧がかかる。

 やはり強い、そう確信せざるを得なかった。

 

 

「カカロット、来るぞ! 分かっているだろうが……」

 

「あぁ分かってっさ! 一対一に拘ってる場合じゃ、ねえ!」

 

「ハハハハハッ!! オレ相手に何秒持つかな!?」

 

 

 そう言ってスラッグは二人に襲い掛かる。

 悟空とベジータも即座に構えを取る。

 そして。

 

 

「界王拳っ!!」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 二人もまた最大限、気を開放する。

 そのまま悟空とベジータ対スラッグの戦いが始まった。

 まずは腕と腕をぶつけ合う。

 そこから即座に悟空とベジータは連打を放った。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「でやあああああっ!!」

 

 

 目にも止まらぬ速度で放たれる拳や蹴りの数々。

 だがそれをスラッグは眼で追っていた。

 しかもその表情には余裕の笑みが張り付いている。

 現にスラッグは両手を使い悟空とベジータの連打を防いで見せた。

 そのままの流れで悟空の拳とベジータの足を掴んだスラッグは眼を光らせる。

 

 

「やべえ!」

 

「チッ!!」

 

 

 二人は危険を感じ即座に防御態勢に移るが、その直後。

 スラッグの眼から放たれた光線が二人を直撃し吹き飛ばした。

 

 

「うわあああああっ!?」

 

「ぐあああああっ!」

 

 

 壁に激突する悟空とベジータ。

 しかし二人は諦めない。

 すぐに立ち上がりすぐにスラッグとの距離を詰める。

 そんな二人の攻撃をスラッグはまたも余裕の笑みを浮かべつつ捌いていくのだった。

 

 

(フン……この程度か)

 

 

 スラッグは内心そう思った。

 目の前にいる憎き敵である孫悟空と見知らぬもう一人のサイヤ人。

 そんな二人を相手にしてみて思った、こいつらはオレの敵ではないと。

 そもそもの話、スラッグとは邪悪な心を持った悪のナメック星人である。

 かつて若くて元気な星である地球に眼を付け侵略に来たところで悟空と戦う事となり激戦の末に返り討ちにされた、そんな過去を持つ。

 故に彼は悟空を恨んでいた。

 だが悟空が彼を知らないのも無理はない。

 何故なら今スラッグと戦ってる悟空が歩んできた歴史の中にスラッグは存在しないからだ。

 つまりスラッグを倒したのも悟空ではあるが今戦ってる悟空とは別人、平行世界の同一人物というやつである。

 スラッグはその事を知らない。

 だが仮に知ってても、些細な事だと言っていただろう。

 スラッグはとにかく悟空に復讐したいのだ。

 それが平行世界の存在であろうが関係ない、とことんまで痛めつけ、苦しめ、殺す、そう心に誓っていた。

 

 

「だだだだだっ、だりゃあああああっ!!」

 

「でやあああああっ! だあああああっ!!」

 

「その程度でオレに歯向かうとは愚かな奴らめ!!」

 

 

 スラッグの周囲を気弾が回る。

 悟空とベジータはその気弾に直撃し吹き飛ばされ、さらにそこへスラッグの追撃が入る。

 スラッグが勢いよく腕を一振りする、すると大きな爆発が発生した。

 

 

「がっ……!」

 

「ぐっ……」

 

 

 さらに吹き飛びながらも体勢を立て直す二人。

 その気になればすぐに勝負を付ける事は出来る。

 だがそれでは気が治まらないのだ、極限まで追い詰めてから殺してやる、そう考えていた。

 地獄を歩いていたら偶然見つけた時空の歪み。

 そこを覗き込んだ時に見えた悟空の顔。

 何が何だかさっぱり分からないが千載一遇のチャンスだと感じた、復讐するために与えられた最高の機会だと。

 幸いというべきか、スラッグと戦った時よりも悟空のパワーが落ちている事がスラッグには分かった。

 これならば勝てる、例え二人がかりであろうと、例えあの時のような爆発力を見せてきたとしてもこの差は埋められない。

 それは確信だった。

 

 

「どうした? もう終わりか?」

 

「いいや……オラ達はまだ負けてねえ」

 

「ムカつく野郎だ……完全に俺達を見下してやがる」

 

「ベジータ! 気ぃ抜くなよ!」

 

「その言葉、そのまま貴様に返してやる!!」

 

 

 二人は真紅と白のオーラを放ちながら突撃する。

 対しスラッグもまた突撃してきた。

 

 

「だあああああっ!!」

 

「でやああああっ!!」

 

「ククク……はあああああっ!!」

 

 

 ラッシュの打ちあいが始まった。

 悟空もベジータも手数に関しては負けていない。

 だがパワーに圧倒的差があった。

 悟空とベジータは徐々に押されていき、スラッグにパワーに圧倒されていく。

 だが諦めるわけにはいかない、この程度で諦めるような弱い心を二人は持ち合わせていない。

 悟空もベジータもさらに攻撃スピードを上げていく。

 スラッグが少々の驚きを見せる。

 その時だった。

 

 

「今だあああああっ!!」

 

「分かっている!」

 

「ぐっ……!?」

 

 

 初めて悟空とベジータの一撃がスラッグの顔面に炸裂した。

 ふらつくスラッグ。

 やったと思った、ここから一気に畳みかければ行けると。

 だがスラッグは眼を血走らせながら叫ぶ。

 

 

「調子に……乗るなあああああっ!!」

 

「いっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

 

 右手で悟空の、左手でベジータの頭を掴む。

 そのままスラッグは腕を伸ばした。

 腕が伸縮自在なのはナメック星人特有の能力の一つだ。

 そして勢いよく悟空とベジータの体を壁に打ち付け、床に打ち付け、何度も何度も叩きつける。

 

 

「うわあああああ!!」

 

「ぐうううううっ!」

 

 

 二人の叫び声が木霊する。

 だがスラッグはその攻撃を止めない。

 それだけ今の一撃は屈辱的だったのだ。

 

 

「このまま死ぬまで叩きつけ続けてやるぞ、サイヤ人ども!!」

 

 

 一方でプレシアの治療と防衛をしていたなのは達は。

 

 

「よし、プレシアの治療は何とかなった……」

 

 

 クロノの言葉になのは達は少しだけホッとする。

 とりあえずこちらは一安心。

 だが、問題は。

 

 

「うあああああっ!!」

 

「がはっ……!!」

 

「悟空くん……!」

 

「ベジータ……!」

 

 

 目の前で行われている一方的な戦いだ。

 なのはも、アルフのおかげで何とか正気に戻ったフェイトも目の前に光景が信じられなかった。

 悟空もベジータも規格外の強さだと思っていた。

 実際その認識は正しいのだろう。

 悟空もベジータもこちらの世界に来てから苦戦らしい苦戦はほとんどしていないのだから。

 故に二人は思っていた、悟空なら、ベジータなら、どんな敵だって倒せるんじゃないかと。

 しかし現実は違う。

 あの突然現れた緑色の肌のスラッグという人物に悟空とベジータは苦戦していた。

 一方的に痛めつけられてるだけのようにも見えるので苦戦とさえ言えないかもしれない。

 なのはとフェイトは杖を強く握る。

 このままずっと見ているだけなんて嫌だ、それは二人の共通の意志だった。

 だけどそんな二人の気持ちを察したクロノは止める。

 

 

「二人とも、妙な事は考えるな!」

 

「クロノくん……でも!」

 

「でもも何もない……悔しいがこの戦い、僕達は完全に戦力外だ」

 

 

 クロノは歯を食いしばりながら言う。

 悔しいのは誰だって同じなのだ。

 だがあの次元の戦いになると、とてもじゃないが手を出せない。

 言いたい事はよく分かった、でも、フェイトが一歩前に出る。

 

 

「フェイト!?」

 

「アルフ、ごめん……でもベジータはいつだって私を助けてくれた、力になってくれた……そんなベジータが傷つくのを黙って見ているわけにはいかない」

 

「フェイトちゃん……うん! 私も同じ気持ち、私も悟空くんに助けてもらってばかりで……このままじゃ不公平だもんね」

 

「待って、二人とも! 無茶だ!!」

 

 

 ユーノは止める。

 だが心の隅っこでは多分力づくでもこの二人は止まらないだろうな、と思っていた。

 それでも止めずにはいられない。

 だけど二人は笑顔で言った。

 

 

「ユーノくん達はここで皆を守ってて」

 

「アルフも、お願いね」

 

「待つんだ! 無茶だと言って――!!」

 

「行くよ、フェイトちゃん」

 

「うん……!」

 

 

 クロノの制止も空しくなのはとフェイトはそれぞれ一つの魔力球を作り出す。

 そして。

 

 

「シュートッ!!」

 

「ファイア!!」

 

 

 なのはは右手の甲を、フェイトは左手の甲を狙い魔力球を放った。

 結果、魔力球は見事直撃。

 スラッグの動きが一瞬止まる。

 その隙を付き悟空とベジータは気を開放した。

 

 

「「はあああああっ!!」」

 

「チィッ……」

 

 

 何とかスラッグの手から脱出した悟空とベジータ。

 スラッグは舌打ちしながらも腕を元に戻した。

 なのはとフェイトも参戦し対スラッグとの戦いは激化の一途を辿ろうとしていた。




 オッス! オラ、悟空!

 なのはとフェイトも参戦して激化する戦い。

 ベジータ! オラ達の力を限界まで合わせっぞ!!

 ……行くぞスラッグ! オラ達の本当の力っちゅうのを見せてやる!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「見ろ、この圧倒的な(パワー)! 戦士達に迫るスラッグの魔の手!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十五 見ろ、この圧倒的な(パワー)! 戦士達に迫るスラッグの魔の手!!

 お気に入り登録してくれた方々、感想をくれた皆さんありがとございます!

 今回も多くは語りません、どうぞ其之三十五をお楽しみください


「悟空くん、大丈夫!?」

 

「ベジータ!!」

 

 

 二人はそれぞれ大切な人の側に駆け寄る。

 しかし返って来た反応は予想外のものだった。

 

 

「何してんだ! おめえ達! とっとと逃げろ!!」

 

「馬鹿か貴様ら! 余力があるんなら俺達のためじゃなく逃げるために使いやがれ!!」

 

 

 二人にここまで怒鳴られた経験など無い二人はビクッと肩を震わせた。

 だけど分かる。

 二人が怒鳴ったのは自分達を思っての事なのだと。

 だからこう返す。

 

 

「出来ないよ……悟空くん達を置いて逃げるなんて出来ない」

 

「ごめんね、ベジータ……でも二人が傷つくのは見過ごせないの」

 

「なのは、フェイト……」

 

「チッ、筋金入りの馬鹿どもが……」

 

 

 悟空とベジータは立ち上がる。

 それに、となのはは続けた。

 

 

「あの人相手に逃げるのも難しいよ、逃げようと動いたら殺されちゃいそうだもん」

 

「うん……だったら皆で協力してあれを倒す方がずっと生き残れる可能性が高いと思う」

 

 

 その意見にも一理あった。

 あくまでスラッグの目標は悟空のみだが、最終的には全員殺すつもりであるのは眼に見えていた。

 どの道悟空とベジータが負けてしまえば後は殺されるのみなのだ。

 だったら少しでも力になろう、それがなのはとフェイトの決断だった。

 

 

「馬鹿が……貴様ら程度のパワーの持ち主が一人や二人増えたところでオレには敵わんという事が分からないのか?」

 

「やってみなくちゃ……分からないよ!」

 

「私達は、諦めない!!」

 

「……へへっ、頼もしいや。なぁ? ベジータ、おめえもそう思うだろ?」

 

「……さぁな、だが俺達が負けてはいられんのは確かだ!!」

 

 

 悟空とベジータはニッと笑い気を再び開放する。

 そして両手に気を溜め、それを連射した。

 

 

「「だだだだだっ!! だあああああっ!!」」

 

「行くよ……ディバインシューター! シュートッ!!」

 

「フォトンランサー! ファイアッ!!」

 

 

 続いてなのはとフェイトも魔力球を放つ。

 気弾と魔力球は雨のようにスラッグに襲い掛かり爆発を起こす。

 だが爆発の煙の中からはスラッグがゆっくりと歩いて現れた。

 それを見て悟空とベジータは接近戦に即座に切り替える。

 後方ではなのはとフェイトが顔面を狙って魔力球を発射する。

 ダメージ与えられないなら与えられないなりの戦い方が援護のやり方がある、顔を狙うのは目くらましするためだ。

 実際小さな爆発ではあるがスラッグの視界は多少封じられた。

 そこへ悟空とベジータが迫る!

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 悟空の拳がスラッグの頬を掠った。

 何とか避けきったスラッグは悟空への反撃を試みる、だが。

 

 

「がっ!?」

 

 

 突如として顎に強い衝撃がはしった。

 悟空はあくまで囮、本命は懐に入り込んだベジータのアッパーだった。

 作戦は見事に成功しスラッグはふら付く。

 そこへ悟空とベジータは畳みかける。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!」

 

「だだだだだ! でやあああああっ!!」

 

「ぐ、がっ……!?」

 

 

 悟空とベジータの渾身のラッシュが叩き込まれていく。

 防ぐこともままならず次々と炸裂する拳と蹴り。

 だがやられっぱなしのスラッグではない。

 

 

「貴様らあああああっ!!」

 

「おぉっ!?」

 

「チッ、一旦離れるか……」

 

 

 スラッグの反撃を躱し距離を取る悟空とベジータ。

 あれだけ叩き込んだのにスラッグはまだまだ動けそうだった。

 やはり若返ったを通り越して縮んだ弊害か、パワーが足りてない感じはあった。

 悟空は笑いながら言う。

 

 

「参っちまうな……ベジータ! こうなったらフュージョンすっか!?」

 

「ふざけるな!! そもそもそんな隙を与えてくれる相手だと思うか!?」

 

 

 悟空はそれもそうだなと笑う。

 フュージョンを使えば逆転は可能なのは間違いない、そういう意味では悟空の提案も間違ってはいなかった。

 だがスラッグのこちらへの警戒度は今のラッシュで上がっている。

 こんな状態では隙の大きいフュージョンを使うのは少々難しかった。

 まぁベジータ的にはあの恥ずかしいポーズを取るのは極力避けたいと言う気持ちもあるにはあったが。

 

 

「じゃあアレしかねえな!」

 

「くそったれ……しょうがない、それならやってやる!」

 

 

 なのはとフェイトの援護射撃は続いている。

 スラッグはそれをうっとおしそうに跳ね除けながら悟空とベジータを見据えた。

 その時、悟空とベジータが再び動き出す。

 スラッグに突撃――と見せかけて寸前で急上昇。

 背中合わせに技の構えを取る。

 

 

「ギャリック砲!」

 

「かーめーはーめー……」

 

「「はあああああっ!!」」

 

 

 悟空とベジータの合体気功波。

 これが最後の切り札だった。

 二つの気が混ざり合い、ただでさえ強力な一撃がとてつもない威力を伴う究極の一撃と化す。

 スラッグに迫る気功波。

 流石にこれはまずいと思ったのかスラッグは回避を試みる。

 だがその動きが阻害された。

 よく見ると足にバインドが仕掛けられている。

 それはなのはとフェイトのバインドだ、残り少ない魔力ではあったがスラッグの眼が悟空とベジータを追い上に行ったときにこっそり仕掛けたのである。

 勿論スラッグの力ならこの程度のバインドを壊すのは容易い。

 だが壊すのにかかる、ほんの数秒が致命的なのだ。

 

 

「ぐっ、おのれ……!」

 

 

 スラッグは力任せにバインドを壊したが気が付けば気功波は目の前にまで迫っていた。

 もはや避けきれない。

 そう判断したスラッグは受け止めようとする、しかし。

 

 

「ベジータ、ここで全てを出しきれえええええっ!! なのはとフェイトの頑張りに応えっぞ!!」

 

「俺に指図するなと何度言わせる気だ! そんな事貴様に言われんでも十分分かっている!!」

 

「「はあああああーっ!!」」

 

 

 気功波の威力がさらに増す。

 これにはスラッグも驚かざるを得ない。

 これほどのパワー、一体あの体のどこに眠っているというのか。

 スラッグはそもそも間違っていた、スラッグがかつて戦った悟空よりも目の前にいる悟空とベジータの方が爆発力は上を行くのだ。

 眠ってる潜在エネルギーは文字通り桁違いなのだから。

 

 

「ぐ……うおおおおおっ!?」

 

「「「「「「いけえええええっ!!」」」」」」

 

 

 皆の声が聞こえる。

 それと同時に気功波の威力がまた増した。

 皆の思いに応えたい、負けたくないという二人の気持ちが気を膨れ上がらせたのだ。

 結果。

 

 

「があああああっ!?」

 

 

 スラッグは気功波に押され、飲まれ爆発した。

 モクモクと立ち上る煙を前にしながら悟空とベジータは息を切らしながら着地する。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

「ぐっ……死ぬほど疲れたぜ……」

 

「悟空くん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 悟空とベジータに駆け寄るなのはとフェイト。

 終わった、そう皆思っていた――悟空とベジータを除いては。

 

 

「!! なのは! 悪りい!」

 

「え……?」

 

「チッ……フェイト!」

 

「うあっ……ベ、ベジータ!?」

 

 

 悟空とベジータは傍に寄って来ていたなのはとフェイトを突き飛ばした。

 次の瞬間、気弾の嵐が吹き荒れ悟空とベジータを飲み込む。

 

 

「うあああああっ!!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

 

 二人の叫びをあげながら壁に激突、気弾が何発も炸裂し爆発を起こす。

 悟空とベジータは気の察知で気づいていた、この攻撃が来るのを。

 故に突き飛ばしたのだ、巻き込まないために。

 気弾は止まない、それどころか煙の中からゆっくりと現れたのは――案の定スラッグだった。

 しかし左腕は綺麗に吹き飛び紫色の血がドバドバと流れている。

 スラッグは頭部に血管を浮かび上がらせながら言う。

 

 

「貴様ら、許さんぞ……このオレをこんな目に合わせた罪は重い……うおおおおおっ!!」

 

 

 気弾を撃ち続けながら叫ぶスラッグ。

 すると左腕が再び生えて来た。

 脅威的再生能力、これもナメック星人の持つ特殊能力の一つだ。

 スラッグは笑う、これでお終いだと。

 ひたすらに気弾を撃ち続ける。

 悟空とベジータはそれを受ける度に傷だらけになり服もボロボロになっていく。

 

 

「ち、ちくしょう……!」

 

「くそったれめ……!」

 

 

 どうにか打開策を探すがいくら考えても、いくら足掻いても気弾の嵐からは抜け出せない。

 それでもどうにか思案していると、突然身に降り注ぐ気弾が止んだ。

 

 

「な……っ」

 

「なにぃっ!?」

 

 

 二人が不思議に思い前方に眼を向けるとそこには――なのはとフェイトが立っていた。

 ラウンドシールドを片手で展開してスラッグの気弾を必死に受け止めている。

 これには思わず悟空もベジータも叫んだ。

 

 

「な、なにしてんだ! おめえ達!! オラ達の事はいいから馬鹿な真似はやめろ!!」

 

「貴様ら、余計な真似はするんじゃない!! とっとと下がれ、下がりやがれ!!」

 

「出来ないよ……出来るわけない!」

 

「そうだよ……助けられてばかりじゃ嫌だからここにいるんだから、私達だって退かない!」

 

「馬鹿野郎! 死ぬぞ!!」

 

「この要らん時に強気になりやがって……!」

 

 

 悟空とベジータは二人を止めようとする。

 だがダメージを受けすぎた体は引き摺る事は出来ても、自由には動いてくれない。

 やがてラウンドシールドにヒビが入り始めた。

 それを見たスラッグが邪悪な笑みを浮かべる。

 

 

「やめろ、スラッグーッ!!」

 

「貴様あああああっ!!」

 

「終わりだ」

 

 

 その言葉と同時にラウンドシールドは割れ大きな爆発が起きた。

 煙がモクモクと立ち込める中、悟空とベジータは体を引き摺りつつ前方に進む。

 そして暫く進んだ先、そこには。

 

 

「「!!」」

 

 

 なのはとフェイトが倒れていた。

 二人は出来るだけ急いで駆け寄る。

 必死だった、痛みなどどこかへ行ってしまったように体が勝手に動いていた。

 悟空はなのはを、ベジータはフェイトを抱き起す。

 

 

「なのは! しっかりしろ、おい!」

 

「おい、フェイト!!」

 

「う……悟空くん……?」

 

「ベジータ……?」

 

 

 なのはとフェイトはうっすらと眼を開ける。

 二人ともボロボロだった。

 バリアジャケットも、そして体も。

 

 

「にゃはは……少しは役に立てたかな……」

 

「何言ってんだ! 無茶しやがって……オラ士郎達に会わせる顔がねえじゃねえか……」

 

「ふふっ……そんな顔、らしくないよ。ベジータ……」

 

「やかましい……余計なお世話だ」

 

「ねぇ……悟空くん、私、ね……悟空くんの事……」

 

「ベジータ、私……ずっと、こんな私を、支えてくれたベジータが……」

 

「「大好き、だよ」」

 

 

 その言葉が最後の力を振り絞り伝えたかった事、なのだろう。

 それを言い切ったのを最後になのはとフェイトは同時に力尽きパタリとその細い腕は床の上に落ちた。

 悟空とベジータは眼を見開いたまま固まる。

 そこへ追い打ちのようにスラッグが言い放つ。

 

 

「フン……雑魚が、くだらん感情で命を捨てるか……だが悲しむ事はないぞ、すぐに貴様らも――」

 

 

 そこから先は聞こえなかった。

 悟空とベジータの耳には届かなかった。

 

 

「なのはぁ! 悟空さん!」

 

「フェイトォッ!! ベジータァッ!!」

 

「くっ、だから言ったんだ。無茶のしすぎだ……ユーノ、僕達で協力して回復魔法をかけるぞ!」

 

 

 皆が駆け寄って来る、だが悟空とベジータは俯いたままだった。

 ただどこか様子がおかしいのは誰の眼から見ても明らかではあった。

 

 

「悟空さん……?」

 

「ベ、ベジータ……? しっかりしなよ、ねぇ!」

 

 

 切れそうだった、切れてはいけない何かが。

 それを抑え込むのに必死だった。

 だが駄目だ、抑えきれない。

 この感情を、この怒りを。

 この衝動も、何もかも。

 

 

「ぐ……ぐくっ……!」

 

「が……ああっ……ぐううっ……!」

 

 

 歯を食いしばりながら必死に耐える悟空とベジータ。

 気が付けば地面が揺れていた。

 凄まじい圧力が周囲を襲う。

 その時、ユーノ、アルフ、クロノは信じられない光景を目にする。

 悟空とベジータの髪が逆立ち、一瞬金色に変わったのだ。

 目の錯覚かと思った、だが違う。

 何度も何度も、点滅するように髪色が変化していた。

 呆然とする一同、勿論この間も回復魔法はなのはとフェイトにかけたままだったが。

 そして――プツンと何かがついに切れた。

 

 

「うあああああ!!」

 

「だあああああ!!」

 

 

 悟空とベジータが叫ぶ。

 瞬間、風が吹き悟空とベジータの髪が完全に逆立ち、髪色は金に変わった。

 眉も金に、瞳は緑色に、何より放つオーラは黄金に輝く。

 スラッグもこれには動揺せざるを得ない。

 そう今、ここに――。

 

 

「な、なんだ……奴らのこのパワーは!」

 

「「……」」

 

 

 遥か昔から伝わる伝説の戦士は再び蘇った。




 オッス! オラ、悟空!

 貴様はもう謝っても許さんぞ、スラッグ!

 なのはとフェイトの受けた痛み、何倍にもして返してやる!!

 決着の時、って奴だ……行くぞ!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「俺達は怒ったぞ!! 悟空とベジータ、怒りの変身!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十六 俺達は怒ったぞ!! 悟空とベジータ、怒りの変身!!

 新たにお気に入り登録してくださった皆様、感想をくれた方々、ありがとうございます!

 さて、いよいよ本作にも登場した超サイヤ人

 その初陣回です、其之三十六どうぞ!


「悟空さん……!?」

 

「ベ、ベジータ達が光ってる……」

 

「あの二人に何が起こったって言うんだ……」

 

 

 ユーノ、アルフ、クロノは驚きで固まっていた。

 そこに悟空が声をかける。

 

 

「おい」

 

「「はいっ!?」」

 

「……なんだ?」

 

「……なのはとフェイトの治療、頼んだぞ」

 

 

 冷たく、悲しそうな眼だった。

 まるで普段の悟空とは別人に見えるほどに。

 そして次はベジータが喋る。

 

 

「死なせやがったら貴様らと言えども容赦せんぞ……」

 

 

 そう言って二人はスラッグのもとへと歩いていく。

 だがそんな二人をユーノは止めた。

 

 

「待ってください! 二人ともそんな体じゃ無茶です!」

 

 

 見た目の変化に驚き、忘れがちだが悟空もベジータも傷だらけだ。

 服はボロボロで上半身裸、肌には痛々しい傷がいくつも刻まれている。

 だが悟空もベジータも足を止めようとはしない。

 

 

「悟空さん!」

 

「ベジータ! 無茶だって!」

 

「うるせえ!!」

 

「黙っていろ! 貴様ら!!」

 

「「っ……!?」」

 

 

 悟空とベジータから飛んできた怒気を含んだ叫び。

 それを受けたユーノとアルフは思わず言葉を詰まらせる。

 こんな二人は初めて見た。

 それほどに荒々しい叫びだった。

 悟空とベジータは後ろに眼を向けて続ける。

 

 

「俺は……俺達は奴を許さねえ!」

 

「むかっ腹が立つぜ……奴にも、この状況を招いた自分の弱さにもな……今の俺達はイラついているんだ、死にたくなければ黙ってろ!」

 

 

 それだけ告げて二人はそのまま歩いていってしまった。

 まるで二人が遠くへ行ってしまうようで、ユーノとアルフは不安を感じる。

 だがとにかく今はなのはとフェイトの治療を優先するしかない。

 そう考えを切り替えてユーノとクロノは治療を続け、アルフはその防衛を続ける事にした。

 

 

 

 悟空とベジータは一歩、また一歩とスラッグに近づいていく。

 二人が近づいてくるたびに強くなる圧力にスラッグは思わず冷や汗を流す。

 空気がピリピリと肌を刺激する。

 どんどんと息が苦しくなっていく。

 間違いなくこの時、スラッグは悟空とベジータに恐怖を感じていた。

 そして気が付けば悟空とベジータは大分接近していた。

 そこでスラッグを睨みながら悟空とベジータは会話する。

 

 

「カカロット、一応聞こう。貴様……譲る気はあるか?」

 

「ねえよ……分かってるだろ? 奴を許せねえ気持ちは俺もお前も同じだって」

 

「フン、そう来ると思ったぜ……ならば少々卑怯だし癪ではあるが」

 

「あぁ二人で奴をぶっ潰すぞ」

 

「もう勝った気でいるのか……? なめるなよ! 貴様らっ!!」

 

 

 スラッグは恐怖を押し込み怒りを前面に押し出した。

 その勢いで腕を伸ばし悟空とベジータを捉えようとする。

 しかし。

 

 

「!?」

 

「この程度の攻撃が今の俺達に通用すると思ったのか……貴様こそ、今の俺達をなめるなよ……スラッグ」

 

 

 悟空はそう言い放つ。

 伸ばされたスラッグの腕、それを悟空とベジータは片手で掴んでみせたのだ。

 しかも引き戻そうといくら力を入れて引っ張ってもビクともしない。

 パワーの差は歴然だった。

 さらにベジータは手に力を込めながら言う。

 

 

「だが、わざわざ腕を差し出してくれるとはありがたいぜ……そらっ!!」

 

「だあっ!!」

 

「があああああっ!?」

 

 

 悟空とベジータはほぼ同時にスラッグの腕を引っ張り、力任せに引きちぎった。

 スラッグの痛々しい叫びが時の庭園に響く。

 両腕から大量の血を流し、スラッグは激痛に悶え狂う。

 そんなスラッグに対し悟空とベジータは冷静に引きちぎった腕を投げ、気で消滅させた。

 そしてこんな言葉を投げかける。

 

 

「どうした? 再生しろよ、スラッグ……出来るだろ?」

 

「ぐ、ぐうううううっ……!!」

 

「待ってやると言っているんだ、さっさとしやがれ」

 

「が、うう……あああああっ!」

 

 

 言いなりになるようで癪だったがスラッグは両腕を再生する。

 腕が無ければどうにもならないからだ。

 その様を見て悟空とベジータはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「それでいい……貴様にはなのはとフェイトの痛みと苦しみを何倍にもして返すと決めているんだ」

 

「息が上がっているぞ? まだまだ倒れてくれるなよ?」

 

「はぁっ……はぁっ……くそおおおおおっ!!」

 

 

 スラッグは不意打ち気味に眼から怪光線を放つ。

 屈辱だった、ここまでコケにされるのは初めてだった。

 怒りに身を任せ放った怪光線。

 それは真っすぐ悟空とベジータ目掛けて進み、その顔面に直撃する。

 ニヤッと笑うスラッグ。

 当たった、確かに――これならば最低でもダメージは免れないだろう、そう思っていた。

 だが現実はスラッグに対して無慈悲だった。

 

 

「自信満々に放ったわりには大した事ないな……この程度か」

 

「拍子抜けだぜ……これが貴様の限界というわけか」

 

「あ……ああ……」

 

 

 悟空とベジータは無傷だった。

 正確に言えば口から微量の血が流れてはいたが、それだけだ。

 スラッグは後ずさる。

 ここまでの差があるなんて、先ほどまで自分にボロボロにされていた奴らと同一人物とは到底思えなかった。

 思わずスラッグは尋ねる。

 

 

「貴様ら……本当にサイヤ人か……?」

 

「他に何に見えるってんだ? まぁ確かにただのサイヤ人じゃないがな」

 

「俺達こそサイヤ人に伝わる伝説の戦士――超サイヤ人だ」

 

「超サイヤ人……!?」

 

「そういう事だ、さぁお喋りはもういいだろう。正直貴様と話す必要なんてないんだが、わざわざ教えてやったんだ。感謝しろよ」

 

「ぐ、ぐぐ……まだだ。このオレが負けるものかあああああっ!!」

 

 

 スラッグは二人目掛けて突撃する。

 接近戦で勝負を仕掛けようと思ったのだ。

 しかし一瞬で悟空とベジータの姿が目の前から消える。

 

 

「消え――があっ!?」

 

「遅いな……これなら昔のフリーザの方が手ごたえがあったぜ」

 

「隙だらけだ……馬鹿が」

 

 

 気が付けばスラッグの腹部には悟空とベジータの拳がめり込んでいた。

 スラッグは思わずふらつきながら後退する。

 それでも何とか耐え、悟空とベジータを睨もうとした時には二人の姿はまたもや消えていた。

 

 

「今度は後ろだ」

 

「!!」

 

「さぁここからは俺達の攻撃の時間だ……!」

 

 

 その言葉が一方的な攻撃開始の合図だった。

 

 

 

「う……っ」

 

「ん……?」

 

「あ、なのは! 良かった……」

 

「フェイトォ! 目が覚めて良かったよお!」

 

 

 なのはとフェイトが目を覚ました。

 それに気づいたユーノ達は歓喜する。

 対しなのはとフェイトは慌てた状態で飛び起きた。

 まだ頭がボーッとするし痛みが完全に消えたわけじゃない、でも飛び起きずにはいられなかった。

 

 

「ご、悟空くんとベジータくんは……!?」

 

「スラッグはどうなったの……!?」

 

「落ち着くんだ、二人とも」

 

「クロノくん……?」

 

「実際見た方が早いだろう、悟空もベジータもスラッグもあそこにいる」

 

 

 クロノが指差した先、そこになのはとフェイトは視線を送る。

 するとその眼に映った光景に二人は眼を疑った。

 

 

「だあっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

「がっ、ぐぅっ、がはあっ!?」

 

 

 スラッグが圧倒されていたのだ。

 自分達が束になっても敵わなかった、あのスラッグが。

 そして圧倒している金色の髪をした二人に自然と視線が集まる。

 

 

「え……あの服……まさかあの人って悟空、くん?」

 

「悟空とベジータの髪が金色に……一体どういう事なの?」

 

「僕達にもさっぱり分からないんだ……君達が倒れてから様子が変わってああなってしまった」

 

「でもさ……何か金色になった二人って雰囲気が怖いんだよね、戦い方も荒々しいしさ」

 

 

 アルフの言う通りだった。

 今の悟空とベジータは動き一つ一つが荒々しい。

 その姿はまるで解き放たれた猛獣のようだとも思えた。

 どの道もう自分達に出来る事はない。

 だからなのはとフェイトは祈る。

 

 

(悟空くん、ベジータくん……)

 

(二人とも、無理はしないで……)

 

 

 一方で悟空とベジータ対スラッグの戦いも佳境を迎えていた。

 もはやボロボロのスラッグ。

 息も切れ切れで足元はふら付いている。

 短時間でこうなってしまうほど、悟空とベジータの攻撃は強烈だった。

 

 

「はぁっ、はぁっ……くそ……くそおおおおおっ!!」

 

 

 スラッグは叫ぶ。

 悔しかった、ここまで圧倒されるとは思っていなかったから余計に。

 故に――ここで最後の勝負に出る。

 

 

「「……!!」」

 

 

 悟空とベジータはスラッグの変化にいち早く気づいた。

 静かに構えを取る二人。

 どんな手を使ってこようと倒して見せるという意志がその眼からは見て取れた。

 そんな二人に対してスラッグは言う。

 

 

「貴様らは……終わりだあああああっ!!」

 

 

 スラッグはそう叫ぶと体を巨大化させてみせた。

 凄まじい威圧感を放つスラッグになのは達は驚く。

 

 

「お、大きい……」

 

「あんな切り札を持ってたなんて……」

 

 

 だがそんななのは達と違い悟空とベジータの反応はと言うと。

 

 

「なんだ、それだけか」

 

「フン……くだらんな」

 

 

 淡泊で冷たかった。

 二人の余裕は微塵も崩れていない。

 寧ろ警戒したのが馬鹿馬鹿しいと言いたげな態度。

 そんな態度がスラッグの怒りを加速させる。

 

 

「があああああっ!!」

 

「「……」」

 

 

 スラッグが巨大になった己の拳を振り下ろす。

 対し悟空とベジータは掛け声すら上げる事なく、迫るスラッグの拳に向かって拳を繰り出した。

 ぶつかりあう拳と拳。

 だが勝敗はすぐに見えた。

 

 

「うおあああああっ!?」

 

 

 スラッグの拳から、腕から血が勢いよく吹き出した。

 悟空とベジータのパワーにスラッグの腕が耐えられなかったのだ。

 

 

「……無駄だ、でかくなって多少パワーは上がったのかもしれねえがな」

 

「その分スピードが死んでいる、その上防御力は大して変わってないから今の貴様はただのでかい的にすぎん」

 

 

 悟空とベジータはそう言いながら一歩、また一歩とスラッグに近づいていく。

 明確な死のイメージがスラッグを襲う。

 

 

「ぐがあああああっ!!」

 

 

 それを振り払おうとありったけの力を込めて気功波を放つ。

 だが悟空とベジータはそれを空中に浮かぶ事で難なく回避。

 そして大量の気を放出する。

 

 

「なにっ……信じられん、パワーが……まだまだ、どんどんと上がっていく!」

 

「くたばれ、スラッグ! か、め、は、め……波あああああっ!!」

 

「ファイナル……フラアアアアアシュッ!!」

 

 

 悟空のかめはめ波とベジータのファイナルフラッシュが放たれる。

 それは混ざり合う事もなく、それぞれが真っすぐに進んでいき――。

 

 

「う、うおおおおおっ!?」

 

 

 スラッグに直撃し大爆発を起こした。

 それだけで時の庭園が揺れる。

 それは下手したらジュエルシードが暴走していた時より酷いのではないかという揺れ。

 その揺れの強さが今の悟空とベジータの力の強さを証明していた。

 モクモクと上がる煙を見ながら悟空とベジータは着地する。

 すると、だ。

 

 

「う、ああ、う……」

 

 

 煙の中からは傷だらけなボロボロのスラッグがはい出て来た。

 驚きのしぶとさだった、もっとも体のサイズは元に戻ってしまっているが。

 それを見た悟空は一歩前に踏み出す。

 そして右手に気を溜めてスラッグに向けた。

 

 

「ご、悟空くん!」

 

「……」

 

 

 なのはの言葉にも悟空は反応しない。

 そのまま悟空は――溜めた気を放つ。

 

 

「……!?」

 

 

 だが気はスラッグを飲み込み消滅させるのではなく、包み込み、吸収するように消えていった。

 見ていたベジータは眼を見開く。

 勿論スラッグも、見ていたなのは達もだ。

 誰もが驚いていた、悟空のその行動に。

 

 

「俺の気を分けてやった、もう暫くすれば動けるだろう」

 

「カカロットッ!! 貴様、どういうつもりだ! まさかこんな奴に情けをかけたんじゃあるまいな!」

 

「まぁ落ち着けよ、ベジータ……俺には俺の考えがあんだ」

 

「ほぅ……? ならば聞かせてもらおうか、その考えとやらを」

 

「……こいつの体と心はズタボロだ。たかがサイヤ人と侮っていた俺達にここまでコケにされて、ここまで追いつめられたんだからな」

 

「……ぐっ」

 

「……なるほどな、貴様の言いたい事は分かった。中々面白い事を考えるじゃないか」

 

「だろう? スラッグ、貴様は最早俺達の敵じゃない。とっとと宇宙の隅っこにでも行って大人しく暮らしていろ……そして惨めに無様に生きていくんだな。俺達に敗北したという事実と恐怖を抱えながら」

 

「次に俺達の前に顔を見せてみろ、その時は容赦なく殺す」

 

 

 悟空とベジータはそう言って背を向けて歩き出す。

 その道中で髪形も髪色も元に戻った。

 そんな悟空達に駆け寄るなのは達。

 

 

「悟空くん……」

 

「なのは、おめえ達が無事で本当に良かった……」

 

「ベジータ、大丈夫……?」

 

「……俺の心配より自分の心配をしていろ、貴様らだってダメージは受けたんだからな」

 

 

 なんて会話を交わしながらスラッグに背を向けて一旦アースラに帰ろうとする一行。

 だが背後で何かが動いた。

 この状況で動くものなど一人しかいない。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 

 スラッグだった。

 スラッグはその右手にありったっけの気を集める。

 この一撃で決める、そう心に決めていた。

 悟空とベジータは足を止める。

 なのはとフェイトはその顔を見て思う、怒りや悲しみ、呆れ、様々な感情が混ざった表情だと。

 そして――。

 

 

「オレは負けん……負けるはずがない!!」

 

 

 スラッグは巨大な気功波を放った。

 対し悟空とベジータは振り向きざまに超サイヤ人へと変身する。

 そのままそれぞれが叫びながら片手で気功波を放つ。

 

 

「このバカヤローがあああああっ!!」

 

「そんなに死にたいなら、くたばりやがれえええええっ!!」

 

 

 悟空とベジータが放った気功波は大きさのみならスラッグに劣る。

 だが威力は桁が違った。

 そのままスラッグの気功波は拮抗する事もなく押されていき――。

 

 

「ば、馬鹿なっ……オレ以上に強いものなどいるはずが、いるはずがあああああっ!!」

 

 

 そんな断末魔とともにスラッグを飲み込み爆発を起こした。

 気は――最早欠片も感じない。

 それはつまりスラッグが完全に消滅したという事。

 その爆発の跡を悟空は複雑そうな顔でベジータは舌打ちをしながら眺めていた。

 そしてその二人の背中をなのは達もまた見つめていた。




 オッス! オラ、悟空!

 スラッグとの戦いを終えてアースラに戻ってきたオラ達。

 ん? どした、おめえ達。オラ達に聞きてえ事でもあるんか?

 そしてそんな中でプレシアに隠された一つの事実が明らかになる!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「一難去ってまた一難!? プレシアに隠された秘密!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十七 一難去ってまた一難!? プレシアに隠された秘密!

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 さて、戦いが一段落してからを描く其之三十七をどうぞ!


「悟空くん……アースラに戻ろう?」

 

「……ベジータも、ね?」

 

「……あぁ」

 

「言われんでも分かっている……」

 

 

 再び元に戻った悟空とベジータを支えながら歩き出すなのはとフェイト。

 そんな一行に続きユーノ、アリシアの入ったカプセルを抱えたアルフ、プレシアを背負ったクロノも歩き出す。

 そうして一行は長いようで短い命がけの戦いを終えてアースラに帰ってきたのだった。

 とりあえずは気を失ってるプレシアを医務室に寝かせて、アリシアのカプセルも別室に安置、他の面々はリンディやエイミィを交えて一室に集まる。

 唯一フェイトはプレシアの様子を気にしていたようだったが今は他にも気になる事があるためこの部屋にやって来た。

 そんな中で最初に発言したのは――クロノだ。

 

 

「さて……早速で悪いが聞かせてもらおうか、悟空、ベジータ……先ほど君達に起こったあの変化、あれはなんだ?」

 

「いちち……あぁアレの事か」

 

「……何故わざわざ答えてやらねばいかんのだ」

 

「そう言うなよ、ベジータ。いいじゃねえか。減るもんでもねえわけだしよ」

 

 

 ちなみに現在ユーノによって悟空とベジータの二人には回復魔法がかけられている。

 ついでに上半身にはタオル、上半身裸のままだとなのはとフェイトが目のやり場に困るからという事での配慮らしい。

 そんな中で悟空は語る。

 

 

「あれはな、超サイヤ人ちゅうもんだ」

 

「超……サイヤ人?」

 

「そだぞ、穏やかな心を持ちながら激しい怒りで目覚める伝説の戦士……でいいんかな? ベジータ」

 

「チッ、結局俺も説明する羽目になるのか……」

 

 

 ベジータはブツブツと文句を言いながら渋々説明してくれる。

 何だかんだで説明してくれる辺りに彼の不器用な優しさが垣間見えた瞬間だった。

 

 

「超サイヤ人とは俺達サイヤ人の間に伝わる伝説の戦士だ、千年に一人現れるとされていた存在でその力は全宇宙最強だとも言われていた」

 

「千年に一人……でもベジータ、悟空とベジータの二人が同時に変身してたけれど……」

 

「……細かい事は気にするな、伝説と現実では違いも出てくるというものだ」

 

 

 ベジータは過去を思い返す。

 最終的には超サイヤ人のバーゲンセールと化していた自分達の世界を。

 伝説も安くなったものだ、とも思ったがそれだけの天才が集まる時代だったのだろうと無理やり納得する。

 

 

「話を続けるぞ……覚醒の条件は基本的に穏やかな心を持って激しい怒りを覚える事だ、たまにこれを無視して変身する天才もいたりするが……まぁ今はどうでもいいな」

 

「なるほどね、だから貴方達はなのはさんやフェイトさんが倒れた時に変身したのね」

 

「ははっ、まぁな!」

 

「……フン」

 

 

 悟空は笑い、ベジータは照れているのかそっぽを向く。

 それだけ二人にとってなのは、フェイトの存在は大事だったという証拠だからだ。

 それを知れたなのはとフェイトははにかみながらも嬉しそうに笑う。

 

 

「だけど、おめえ達。もうあんな無茶すんじゃねえぞ」

 

「カカロット、貴様と同意見なのは腹立たしいが……今回助かったのは運が良かっただけだ、次同じ事をすれば本当に死ぬぞ」

 

「うん、ごめんね……二人とも。でも私達後悔はしてないんだ」

 

「……二人を少しでも守れた事、力になれた事……それが本当に嬉しいの。だから今度は死にかけない程度に無茶をするよ」

 

「……駄目だって言ってもやりそうだな、おめえ達は。しょうがねえか、そんじゃそんな無茶させないくらい強くなんねえとな、ベジータ」

 

「まったくしょうがない奴らだ……」

 

 

 悟空とベジータはそう言いながらも笑っていた。

 困っているのは事実だった、あんな無茶はやめてほしいとも思っていた。

 だがそれでも無茶はするという二人を少々好ましく思ったのもまた事実だったのだ。

 誰かの為に体を張れる、そういう性分を二人は嫌いじゃないのである。

 

 

「とりあえず聞きたい事は聞けたわ、ありがとう二人とも」

 

「おう! でよ、この後どうすんだ?」

 

「本当なら悟空くんやなのはさん達は地球に帰してあげたいのだけれど……次元振の影響で今は無理なのよねぇ……とりあえずご飯にしましょうか、疲れたしお腹もすいたでしょ?」

 

「飯! そりゃいいや! じゃあ食堂だな!」

 

「にゃはは、悟空くんったら」

 

「ベジータ、行こう?」

 

「……貴様達は先に行ってろ、俺は少し寄るところがある」

 

「なんだベジータ、おめえ……トイレか?」

 

「違う! ただの野暮用だ!」

 

 

 ベジータはそう言うと歩いていってしまった。

 フェイトは少々心配そうではあったがベジータなら心配はいらないかなと考えを改める。

 一方で悟空もその背中を見ていたのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

(ここは――)

 

 

 プレシア・テスタロッサが目を開けるとそこには真っ白な空間が広がっていた。

 ここはどこ? と考えて記憶を掘り返す。

 プレシアの記憶があるのは悟空とベジータに無理やり救助されて地上に帰って来た部分までだった。

 ならばここはどこか、アルハザード――ではないだろう。

 ではあの世? それならばそれでもいいと思えた。

 何故ならあの世なら最愛の娘に会えるのだから、それはそれで構わない。

 すると、だ。

 

 

(何……? この光は……)

 

 

 突然目の前に光が集まっていく。

 美しい空色の光。

 それは集まっていき人型へと変化――やがてその正体を現す。

 

 

(……)

 

(貴女……! アリシア、アリシアなのね!)

 

 

 その正体は金色の髪をした少女。

 プレシアには分かった、彼女は愛する娘のアリシアであると。

 プレシアは急いで駆け寄る、だが。

 

 

(アリシア……?)

 

 

 アリシアは近寄るプレシアに対して後ろに下がる。

 それはまるで近づいてくる事を拒絶しているようで。

 その反応はプレシアにとってショック以外の何者でもなかった。

 

 

(何故……何故なの、アリシア! 私は貴女を……!)

 

(……ママ)

 

(アリシア……?)

 

 

 アリシアは悲しそうな顔をしていた。

 それこそプレシアが見た事もないくらいに。

 アリシアは明るい子だ、いつだって明るく笑顔だった。

 だからこそそんな顔を見た事はない、みたくない、そう思って手を伸ばそうとした時にアリシアの言葉が再び響く。

 

 

(ママが私を愛してくれているのはよく分かってるの、でもね……フェイトや他の人達を傷つけるママは見たくなかった)

 

(……!)

 

 

 全部見ていた、という事だろう。

 アリシアを失ってからのプレシアの行動、全てを。

 

 

(そんな……私は……ただ貴女を……)

 

(……分かってるよ、でもね、ママ。だからって誰かを傷つけていいって事にはならないと思うの、ましてやフェイトは……私にとっては妹みたいなものだから、尚更)

 

(……妹?)

 

(うん……覚えてる? 昔、私が何が欲しいって聞かれて妹が欲しいって答えたの……フェイトは生まれこそ特殊だけど、私にとっては妹みたいな存在かなってそう思うの。だからね? ママ、これだけは言わせて……フェイトを生み出してくれてありがとう、それとフェイトにはもっと優しくしてあげて? あの子だって優しい子なんだから)

 

 

 アリシアはそう言ってプレシアにそっと抱き着いた。

 プレシアはそんな愛娘の小さな体を抱きしめる。

 暖かい、心からそう思う。

 この温もりをずっと――ずっと求めていた。

 気が付けば眼からは涙が流れている。

 でも、そんな事はどうでもいいと思えた。

 今は一分、一秒でも長くアリシアと共にいたいと、そう考えていた。

 だが。

 

 

(ママ……そろそろ時間みたい)

 

(嫌……嫌よ、アリシア。私はまだ貴女と……!)

 

(もうママったら……駄目だよ? 我儘言っちゃ……それじゃあね、ママ。お話し出来て嬉しかった)

 

(待って……アリシア、アリシアァッ!!)

 

 

 次の瞬間、アリシアが離れていく感覚と共にプレシアの視界は光に包まれた。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「――アリシア!!」

 

 

 プレシアはそう叫びながら飛び起きた。

 目の前に広がる光景はもう真っ白な空間ではなかった。

 白い事には白いがここはどう見ても医務室である。

 

 

「夢……だったの? でも……」

 

「……フン、目が覚めたようだな」

 

「……!」

 

 

 知ってる声が聞こえた。

 声がした方に顔を向けると案の定そこにはツンツンヘアーの男――ベジータが立っていた。

 

 

「ベジータ……」

 

「その様子だと……アリシアの夢を見ていた、と言ったところか……いや、夢とは限らんな」

 

「……どういう事?」

 

「プレシア、貴様は死後の世界というのを知っているか」

 

「死後の世界、ですって? そんなものが……」

 

「あるんだよ、俺の知る限りではだがな……まぁこっちの世界にあるかは知らないが」

 

「……こっちの世界? ベジータ、貴方……」

 

 

 一体何を言っているのか。

 何となく察する事は出来たが本人の口から聞かなければ確証は得られない。

 だがベジータはそんな問いを無視して続ける。

 

 

「死者は基本あの世に行くものだ、基本はそのまま生まれ変わるもんだが、中には下界――この世界の様子を見ている者もいる。もしかしたらアリシアは全て見ていて、その上で貴様に会いに来たのかもしれんな」

 

「……アリシア……」

 

 

 確かにあの感覚は夢とは到底思えなかった。

 感じた温もりも言葉も思いも、とても夢とは思えない程リアルで。

 もし、もしあれがアリシアの本心であるとするのなら――。

 

 

「私に、どうしろと言うの……今更何をしろと……」

 

「さぁな、それは貴様が考えろ……貴様の人生なんだからな、だからこそ」

 

 

 ベジータはプレシアを睨みながら言う。

 

 

「貴様がフェイトを受け入れるかどうかも自由だ、好きに選べ……だがまた傷つけるようなら俺は貴様を完全に敵と見なす。言いたい事はそれだけだ」

 

「フフ……随分とあの子に入れ込んでるようね……うっ、ゴホッ!! ゴホッ!!」

 

「なに!?」

 

 

 ベジータは眼を見開く。

 ただの咳だったら無視していただろうが、プレシアの口からは明らかに真っ赤な血が流れ出ていた。

 

 

「貴様……まさか!」

 

「そのまさかよ……言ったでしょう? 時間がないと……私の体は病魔に侵されている、もう治療は不可能なほどにね」

 

「……くそったれめ!!」

 

 

 ベジータは悔しそうに歯を食いしばる。

 これでは駄目だ、どうしようもない、このままでは償いなんてさせられないではないか。

 だがそんなベジータに声をかける者が一人。

 

 

「大ぇ丈夫だ、ベジータ。何とかなっさ」

 

「カカロット……!?」

 

 

 そう、悟空である。

 悟空は笑いながら言った。

 

 

「オラ達にはドラゴンボールがあっからな!」




 オッス! オラ、悟空!

 そうだ、オラ達にはドラゴンボールがある!

 ん? なんだよ、ベジータ?

 確かにレーダーはねえさ、けどよ、だったら作りゃいいじゃねえか。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「ボール集め最初の壁! ドラゴンレーダーを作り出せ!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十八 ボール集め最初の壁! ドラゴンレーダーを作り出せ!

 新たにお気に入り登録してくださった方々、感想をくれた方々、ありがとうございます。

 それでは其之三十八をどうぞ!


「ドラゴンボール、だと……?」

 

「あぁ!」

 

 

 ベジータは頭に血管を浮かび上がらせながら悟空に詰め寄った。

 その表情は見るからに怒っている。

 

 

「ふざけるなよ、カカロット! 貴様ドラゴンボールがこの世界にあるとでも……」

 

「あるぞ? ほれ」

 

「なっ……」

 

 

 絶句した、せざるを得なかった。

 悟空が袋から取り出し見せてきた物が信じられなかったからだ。

 オレンジ色に輝く球体。

 それは間違いなくドラゴンボールだった。

 

 

「四星球……貴様、何故持っている」

 

「知らねえよ……気づいた時には懐に入ってたんだからさ」

 

「どういう事だ……俺達だけでなくドラゴンボールまで……」

 

 

 ベジータはドラゴンボールを手に考えるが答えは出なかった。

 そもそも自分達が何故この世界に来ているのかも分かっていないのが現状なのだから当然と言えば当然だ。

 そこへ。

 

 

「ちょっと、こちらにも説明を――」

 

「悟空くーん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 プレシアの声は突如聞こえてきた声によって途切れた。

 聞き覚えのある声に、視線は自然と声が聞こえた方に向く。

 そこにいたのはなのは、フェイトを始めとして先ほどまで一室に集まっていたメンバーだった。

 

 

「あり? どうしたんだ、おめえ達。食堂に行ったはずだろ?」

 

「そうなんだけど二人があんまりにも遅いから……気になっちゃって」

 

「ベジータ、ここにいたんだ……母さんの事、心配してくれたの?」

 

「勘違いするな、そんなんじゃない」

 

「ふふっ……あ」

 

「……」

 

 

 フェイトがふと室内に眼を向けるとそこには起きているプレシアがいた。

 目と目が合う。

 フェイトはそんな中で勇気を出して踏み出しプレシアの側まで寄った。

 

 

「あの……ご気分はどうですか? 母さん」

 

「……最悪よ、こちらの計画は完全に潰されたのだから」

 

 

 ぎこちない会話。

 だがプレシアの反応は幾分か優しくなっていたようにも見える。

 恐らく先ほどのアリシアとの会話がまだ頭に残っているからだろう。

 そこに悟空がさらっと。

 

 

「今よ、プレシアの病気をどう治すかって話をしてたんだ」

 

「えっ」

 

「病、気……?」

 

「おい、馬鹿! カカロット、貴様!! もう少しオブラートに包んで言いやがれ!」

 

 

 誰もが驚いた、プレシアが病気など初耳だからだ。

 だが一番ショックが大きかったのはやはりフェイトだろう。

 悲しそうな顔でプレシアの顔を見ている。

 そこでしょうがなくベジータがフォローに入る。

 

 

「そんな顔をするな、対策はある」

 

「ベジータ……対策って?」

 

「これだ」

 

 

 ベジータはそう言ってドラゴンボールを全員に見せる。

 隠しておきたいという気持ちもあるにはあった。

 これは下手したら悪用されかねない、ジュエルシードとは別のベクトルで危険な代物だ。

 だがここにいる者ならば一部を除き信用してもいい、ベジータはそう思っていた。

 世界の危機に立ち向かえる強さと優しさを持っている者達ならばこれを悪用する事はしないだろうと、そう判断したのだ。

 そこへリンディが尋ねる。

 

 

「それは一体何なのかしら? ただの球……ではないのでしょう?」

 

「あぁこれはドラゴンボールっちゅうもんだ」

 

「ドラゴン……ボール?」

 

「そだぞ、七個集めると神龍っちゅう龍が現れてよ。どんな願いも三つまで叶えてくれんだ」

 

「なんですって!?」

 

「どんな……」

 

「願いも!?」

 

 

 その発言にはその場にいた誰もが驚いたのは言うまでもないだろう。

 そんなジュエルシードの上位互換みたいな代物があるだなんて思ってもみなかった。

 

 

「こいつでプレシアの病気を治す……確かにドラゴンボールなら容易いだろう」

 

「……一つ聞かせなさい」

 

「ん? どした?」

 

「なんでもと言ったわね、だったら死者を蘇生させる事も可能だと言うの?」

 

「「……っ!」」

 

 

 プレシアのその言葉を聞いた時、ハラオウン親子もまた反応した。

 もし生き返らせると言うのなら……大切な存在を、失ってしまった大切な人ともう一度――。

 

 

「出来っぞ、ただよ……基本的に死んだら一年以内じゃなきゃ生き返らせんのは無理だ、一年を超すと不完全な蘇生になっちまうって聞いた」

 

「不完全……?」

 

「例えば死んだ時に受けたダメージがそのまま残ってたりよ、体が不完全な状態で蘇生されたりするみてえなんだ」

 

「……それじゃあの人は無理そうね……」

 

「……母さん」

 

 

 ハラオウン親子の心は僅かに沈む。

 一瞬希望が見えただけにショックは大きかった。

 悟空もそれを何となく察してか。

 

 

「悪りいな、おめえ達……ただよ、アリシアだったら大丈夫じゃねえかとオラは思う」

 

「……貴様がアリシアのカプセルを助けた時に言ってた考えとはそれか」

 

「あぁ、アリシアの体は残ってっからな。これだったら何とかなるかもしれねえ」

 

「……そう、アリシアは……生き返るかもしれないのね」

 

 

 プレシアは安堵の表情を浮かべる。

 それは今まで見た事もない顔だった。

 だがそこでベジータは言う。

 

 

「生き返らせるかどうかは貴様次第だがな、プレシア」

 

「……なるほど、そう言う事ね」

 

「あぁ貴様がアリシアとフェイトの母としてやっていけるかどうか、暫く見て判断させてもらう」

 

「ベジータ……」

 

 

 ベジータとしてはそこはずっと気がかりだった。

 もしアリシアを生き返らせて、その末にフェイトが不幸になったりしては意味がない。

 だからこそ出来るだけ時間を使い見極める。

 プレシアが変わっていけるかは彼女の心次第だ。

 

 

「それにしてもドラゴンボールかぁ……地球にそんな凄い物があったんだね」

 

「まぁオラ達の地球であって、おめえ達の地球じゃねえけどな」

 

「え? それどういう意味なの?」

 

「あ、そういや言ってなかったか。オラやベジータが過ごした地球となのは達の住む地球は別もんだ、こういうのを……何ていうんだったっけか、ベジータ」

 

「チッ……平行世界だ」

 

「そうそう、それだ! つまりオラ達やドラゴンボールは平行世界からやって来たってわけだ」

 

 

 その言葉に一同は絶句した。

 だってそんなの聞いてないからだ、これまた今初めて知った。

 だが悟空はと言うと。

 

 

「まぁそんな事は今はどうでもいいじゃねえか、今はどうやってドラゴンボールを集めるかだ」

 

「そこだ、仮にこの世界にもドラゴンボールが散らばっていると仮定して、だ。どうやって集めるつもりだ? ドラゴンレーダーはないぞ」

 

「作ればいいじゃねえか」

 

「簡単に言うんじゃない……生憎とこっちの地球にはそんな技術はない、それは貴様も分かってるはずだ」

 

「あぁ、だからよ。異世界の技術を利用すりゃいいんじゃねえかって思うんだ」

 

「……なるほど、それならあるいは……」

 

「というわけでよ、誰かレーダー作る役を引き受けてほしいんだけど――」

 

「私がやるわ」

 

 

 名乗りをあげたのは――プレシアだった。

 視線は自然とプレシアに集まる。

 確かに彼女の頭脳や技術力があればあるいはドラゴンレーダーも作れるかもしれない。

 だがベジータは言う。

 

 

「……大丈夫なんだろうな」

 

「私の体を治すために集めるのでしょう? ……だったらそれぐらいしないとね」

 

 

 ベジータからしてみれば色々と心配だった。

 プレシアの体の問題もあり、何より信用の問題もある。

 ベジータ視点から考えるとプレシアはまだ信用出来る相手ではないのである。

 だが悟空が横から割って入って来る。

 

 

「まぁいいじゃねえか、ベジータ。作ってくれるってんならよ」

 

「……貴様はいいな、能天気で……まぁいい、万が一おかしな真似をしたら俺様が止めればいいだけだ」

 

 

 そう言うとベジータはプレシアに近づきドラゴンレーダーの特徴を教えていく。

 プレシアは真剣な表情でそれを聞いていた。

 そして大体聞き終わると――。

 

 

「分かったわ、要はドラゴンボールから発せられる特殊な電波を感知出来る手の平サイズのレーダーを作ればいいのね、出来るだけやってみましょう」

 

「おぉサンキュー!」

 

「……ただしすぐには無理よ、私達には裁判が待っているだろうし……それが終わって機材が集まってからね」

 

 

 こうしてドラゴンレーダー作りはプレシアに一任される事となったのだった。

 果たしてドラゴンボールは無事に集めきれるのか、それはまだ誰にもわからない。

 それはそうと、だ。

 ベジータはクロノに尋ねる。

 

 

「一応聞いておこう、ドラゴンボールに手を出すもしくはこれを貴様らの上司に報告するつもりはあるか?」

 

「……いや、ないよ」

 

「……意外だな、貴様はもう少し頭が固い奴だと思っていたが」

 

 

 ベジータは心底意外そうにそう呟いた。

 クロノはその言葉を聞いて深くため息を吐いた後、こう告げる。

 

 

「君達なら悪用はしないと分かるし、ドラゴンボールの存在を下手に周囲にばら撒くのは危険だからね……ここにいる人間達のみの秘密って事にしておくのが一番だ」

 

「えぇ、そうね。この事は上には報告しないでおくわ。管理局内にも悪用しようと企む人間がいるかも分からないしね」

 

 

 その言葉を聞いた時、ベジータはふぅと安堵の息を吐く。

 これでドラゴンボールの存在が漏れる事はない。

 そして外に漏らすつもりがないなら管理局と敵対する必要もないからだ。

 そのように色々考えてるベジータを余所に悟空はいつものように笑っていた。




 オッス! オラ、悟空!

 ガツガツガツ!! 異世界の飯も中々うめえぞぉ

 ん? なんだ、なのは、フェイト。

 聞きてえ事があるって? いいぞ、何でも答えてやる!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「ただいま! 帰って来た、地球での日々」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三十九 ただいま! 帰って来た、地球での日々

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 語りたい事はありますがネタバレになるので自重します。

 それでは其之三十九、どうぞ!


 アースラの食堂。

 そこで一同は集まり食事を摂っていた。

 

 

「ガツガツ!!」

 

「モグモグ」

 

 

 大食らいのサイヤ人二人は次々と食事を胃袋の中に入れていき空の食器を重ねていく。

 関係ないがこの時、一応王族だからだろうか、ベジータの方が若干食べ方が綺麗だったりする。

 そんな悟空とベジータを見ながらなのはとフェイトは会話する。

 

 

「にゃはは……相変わらずすごい食欲、サイヤ人って皆そうなのかな?」

 

「そうかもね……二人が例外って感じでもなさそうだし」

 

「それにしても驚いたよね、悟空くん達が平行世界の人なんて」

 

「うん……どんな世界だったんだろう」

 

「聞いてみよっか? ねぇ悟空くん、ベジータくん」

 

「モガ?」

 

「……なんだ?」

 

「あのね――」

 

 

 なのはは尋ねた。

 一体悟空達が過ごした世界とはどんなところだったのかを。

 悟空達は暫し考えると適当に掻い摘んで話始めた。

 

 

「まず動物が多かったなぁ、恐竜とかいたしよ」

 

「きょ、恐竜!?」

 

「技術レベルも段違いだ、家や大量の物資なんかも自由に手軽に持ち運べる、そんな技術が存在していた」

 

「ミッドチルダでもそんな技術はないのに……凄いんだね、ベジータ達の世界」

 

 

 流石色々とぶっ飛んでいる二人の生まれた世界だけあって世界そのものも予想の大分上を行くぶっ飛んだ世界だった。

 話を聞いているなのはとフェイトは何度も驚かされる。

 そしてここでなのははとある謎に触れる。

 

 

「そういえば悟空くん達って何歳なの? 見た感じは私達と同じくらいに見えるけど……」

 

「んー何歳くらいだろうなぁ、前死んだときは確か百歳超えてたけんど若返った今は分かんねえや」

 

「「……え?」」

 

 

 聞き間違いだろうか、二人はそんな事を思った。

 前死んだ時、とか百歳、とか若返った、とかそんなワードが聞こえてきたような気がしたからだ。

 視線は自然とベジータに向けられる。

 そんな視線を受けてベジータは一度深い溜め息を吐くと悟空の発言の補足をする。

 

 

「そいつは嘘は言っていない、俺達は前の世界で一度死んだ……寿命でな。だが気が付いた時には若返った姿でこっちの世界にいた……原因は分からん」

 

「え? え? ちょっと待って」

 

「という事はベジータ達って……おじいさんなの!?」

 

「初耳ですよ、悟空さん!?」

 

「ベジータ、アンタなんで今まで黙ってたんだい!?」

 

「……百歳超えか、なるほど、それなら強いのも頷ける」

 

「そんな事言って……クロノ、貴方も凄く驚いてるんでしょう? 手が震えてるわよ」

 

「クロノくんって結構分かりやすいよねぇ」

 

 

 食堂は大騒ぎ。

 そこにベジータが喝を入れる。

 

 

「ええい! やかましいぞ、貴様ら! 後じじい扱いするな、今は若返っているんだからな!」

 

「ははっ、まぁ確かに今の見た目でじいさん扱いはちょっとしっくり来ねえな」

 

「お、おじいさん……見た目は若いけどおじいさん……あは、あははははは」

 

「なのはー!? なのはが壊れたー!?」

 

「ど、どうしよう……あわわわわわ……」

 

「フェイト! 落ち着きなよ!」

 

 

 ある程度落ち着いたものの、なのはとフェイトは混乱中。

 そこにエイミィが飛ばした質問が――。

 

 

「あ、じゃあ百歳まで生きたって事はさ……二人とも奥さんがいたりして、なんちゃって」

 

「あぁ、いっぞ! ついでにオラもベジータも子供も二人、孫もいたんだ!」

 

「えっ」

 

「「……」」

 

「あぁ!? なのはとフェイトが固まった上に真っ白に!」

 

「ちょっと! しっかりしなよ、二人とも!」

 

「フン……騒がしい奴らだ」

 

 

 ベジータはそう言いながらまた食事に手を付ける。

 尚、悟空はここまでの騒ぎになるとは思わず首を傾げていた。

 そんな悟空にベジータは呆れ顔で言う。

 

 

「貴様……スラッグの攻撃で倒れたこいつらが俺達に言った言葉を忘れたのか?」

 

「ん?」

 

 

 悟空は記憶を掘り返す。

 そして思い出したのは――。

 

 

『大好き、だよ』

 

「あー! そういや、なのは! おめえ、オラの事大好きだって――」

 

「わー! わー! 大きい声で言わないでよー!!」

 

 

 そんな感じでわいわい騒ぐ悟空&なのは。

 対してフェイトは一旦落ち着いて席に着く。

 そんなフェイトにベジータは言った。

 

 

「考え直すなら早い方がいいぞ」

 

「ベジータ……?」

 

「聞いての通り俺達は普通じゃない、そもそもお前達ならもっといい相手が――」

 

「それ以上は言わないで、ベジータ」

 

「……」

 

「確かに驚いたけれど、でもそんなの些細な事だとも思うんだ。私が好きになったのは紛れもなくベジータで……他の人、なんて考えられない。だからね、ベジータ――」

 

 

 一方で悟空となのはもまた。

 

 

「もうっ、悟空くん!」

 

「なんだよ、言ったのは事実じゃねえか」

 

「そうだけどそういう問題じゃないの! それと、悟空くん――」

 

「「私、諦めないから!」」

 

 

 なのはとフェイト、二人の思いと言葉はシンクロしていた。

 その言葉を受けた悟空とベジータはと言うと。

 

 

「おう、よく分かんねえけど頑張れよ!」

 

「……フン、物好きめ。だがそう易々とはいかんぞ」

 

 

 そんな反応を示した。

 これからは一層気合を入れなくては、そんな決意を胸に、なのはとフェイトもまた食事を再開する。

 こうして賑やかな食事の時間は終わりを告げた。

 

 

 

 後日、ベジータ、フェイト、アルフは護送室に隔離される事となった。

 ちなみにプレシアだけは医務室だ。

 出来るだけ長く体を持たせられるよう今後は健康に気を使った生活を送るらしい。

 その後次元振の余波が収まるまで悟空達はアースラに滞在。

 その間に感謝状を貰ったりしつつも、いつも通りの日々を過ごした。

 ちなみにユーノは再び高町家でお世話になる事に。

 それと言うのも次元振の影響はある程度収まったとは言えミッドチルダに帰るのはまだ厳しそうなようなので最終的に地球の高町家に戻るという話に落ち着いたのである。

 そして帰る日がやって来た。

 

 

「それじゃあ三人とも、今回は本当にありがとう」

 

「協力に感謝するよ」

 

「クロノくん寂しそうだねぇ、いつでも遊びにきてくれていいからね」

 

「んなっ!? そ、そんな事はない! そもそもここは遊び場じゃ……」

 

「あら。いいじゃない、クロノ。どうせ暫くは暇よ、私達」

 

 

 そんなやり取りに笑いながら悟空となのははリンディ、クロノ、エイミィとそれぞれ握手を交わす。

 そんなに長い間ではなかったが一緒に戦い、笑い合った仲間だ。

 寂しいという気持ちもあれば、楽しかったという気持ちも大いにある。

 そんな中、なのはが頭を下げる。

 

 

「えっと、お世話になりました!」

 

「お世話になったのはこっちの方かもね、貴方達がいなかったらどうなっていた事か……」

 

「ははっ、確かにな。でもとりあえず無事に終わって良かったぞぉ」

 

「全くだ、スラッグの辺りは大分焦ったものだが……」

 

「何とか乗り越えられて本当に良かったよねぇ」

 

 

 そんな会話を交わして一同はまた笑い合う。

 そしてクロノはこう言った。

 

 

「フェイトやベジータ達の処遇は決まったら連絡するよ、大丈夫、悪いようにはしない……特にベジータを敵に回すと管理局が危険に陥りかねないしね」

 

「にゃはは……確かにそうかも」

 

「違いねえや、あいつらの事頼んだぞぉ。リンディ、クロノ、エイミィ」

 

「えぇ任せておいて……ユーノくんも帰りたくなったらゲートを使わせてあげるわね」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「それじゃ、そろそろいいかな」

 

 

 パネルを操作していたエイミィがそう呟く。

 別れの時は来た。

 

 

「それじゃ、三人とも元気で」

 

「うん、またね!」

 

「じゃあなー!」

 

 

 手を振っていると光に包まれる。

 気が付けば悟空達は海鳴臨海公園に立っていた。

 数日ぶりに浴びる海鳴市の風が心地いい。

 一回大きく空気を吸った後、なのはは言う。

 

 

「それじゃ、帰ろっか!」

 

「そうだね!」

 

「あぁ! 瞬間移動使うか?」

 

「うーん……今日は歩いて帰りたいかな」

 

「だな! そんじゃおめえ達行くぞ!」

 

 

 二人はそう言って歩き出す。

 ちなみにユーノは悟空の頭の上だ。

 ここが彼にとっては特等席みたいなものらしい。

 

 

 

 

 暫く歩き三人は再びここへと帰って来た。

 高町家、ようやく全てを終わらせてここに帰ってこれた。

 そう考えると感慨深いものがある。

 なのはが代表して扉を開ける、そして。

 

 

「ただいまー!」

 

「たでえまー!」

 

「キュー!」

 

 

 三人は大きな声でそう言った。

 するとドタドタと室内から音がする。

 

 

「なのは! 悟空くん! 帰ったのか」

 

「あらあら、お帰りなさい。ふふっ何となくそんな気はしてたから多めにご飯作っておいて正解だったわね」

 

「全員無事みたいだな……本当に良かった」

 

「あ、ユーノもいる! いないと思ったら二人に付いていってたんだ」

 

 

 久々に感じる高町家の温かさ。

 それが何だか嬉しくて、悟空もなのはも笑った。

 そんな二人に桃子は言う。

 

 

「さ、ご飯を食べちゃいましょう? 二人は手を洗ってきてね?」

 

「はーい!」

 

「分かった、桃子の作る飯楽しみだぞぉ!」

 

 

 高町家の戸は閉まる。

 いつも以上に賑やかな声が中から響き渡る。

 今日、この日を持って孫悟空と高町 なのは、ユーノ・スクライアは日常へと戻ってきたのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

「ベジータ、大丈夫?」

 

「ベジータ、アンタ……少しぐらい休憩したらどうなんだい?」

 

「フン、そんなもの必要ない。俺はまだまだ強くなる、そのためにも――時間は有効に使いたい、ただそれだけだ」

 

 

 護送室の中でベジータはトレーニングを続けていた。

 あまり広くはないので出来るトレーニングは限られているが、それでもせずにはいられなかった。

 少しでも強くなるために、もうあんな思いをしないために。

 そんなベジータをフェイトは心配そうに、でも優しく微笑みながら見守っていた。




 オッス! オラ、悟空!

 日常に戻ったオラ達。

 いっ!? なんだよ、なのは……急に大きな声でオラを呼んだりして……。

 ――へぇ、ベジータやフェイト達にちょっとだけ会えるんか。なら行くっきゃねえな!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「それぞれの思いを胸に! 別れと再会の約束」

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其之四十 それぞれの思いを胸に! 別れと再会の約束

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 さて、いよいよ今話で一区切りです。

 でも一章はまだ終わらないぞよ、もうちょっとだけ続くんじゃ。

 では其之四十をどうぞ!


 数日が経過した。

 帰って来たなのはは当然と言えば当然だが学校にも戻った。

 長い事離れていたが故に授業についていけるかという不安もあったが、そこはアリサが取っておいてくれたノートのおかげで何とかなったらしい。

 もう蟠りもなくなりアリサやすずかと共に笑い合う日々を過ごし始めたなのは。

 一方で悟空はと言うと。

 

 

「よっ、ほっ、はっ!」

 

 

 再び修行の日々を再開させていた。

 悟空は今回のジュエルシード争奪戦、そしてスラッグとの戦いを経てまた一つ成長し強くなった。

 だがそれで満足をする男ではないのだ、孫悟空という男は。

 どれだけ高みに上っても、より高みを目指す。

 その向上心に終わりはない。

 悟空は前の世界で今よりはるか上の領域まで至っているから尚更だ。

 

 

(スラッグみてえに突然強敵が現れる事もあるっちゅうのはよく分かった……次も起きねえとは限らねえんだ、少しでも強くならねえとな)

 

 

 悟空は今日も腕を磨く。

 強くなるために。

 負けないために。

 守るために。

 悟空は修行を続けながら回想する。

 あれは地球に戻ってから少し経った日の事だ。

 

 

『なぁ士郎、桃子、悪りい……』

 

『ん? どうしたんだい、悟空くん。急に謝ったりして』

 

『そうよ、何も謝られるような事されてないわよ?』

 

『実を言うとさ……オラ、なのはを守り切れなかったんだ。守るって言ったのによ……約束守れなくてすまねえ』

 

 

 それは心からの謝罪だった。

 悟空は言った、なのははオラが守ると。

 その約束を守れなかったのは悟空にとっての後悔だった。

 だがそんな悟空に士郎達は言う。

 

 

『だけどなのははちゃんと生きているしピンピンしてる、それは君がいてくれたからじゃないのかな?』

 

『そうよ、過程で色々あったのかもしれないけど最終的にあの子は元気に帰って来てくれた、それだけで約束は守られてると私は思うわ』

 

『士郎、桃子……』

 

『悟空くん、詳しくは聞かないけどあんまり気に病む事はない。僕達はただ君達が無事に帰って来てくれただけで十分なんだから』

 

『その通り、さ、そんな顔しないで。ご飯おかわりするでしょ』

 

『……あぁ! おかわりー!』

 

 

 悟空はフッと微笑む。

 いい人達に出会ったものだと心から思う。

 この出会いに感謝しながら、今度は守り切れるように――悟空は今日も修行に励むのだった。

 

 

 

 翌日の早朝。

 悟空の姿は相変わらず道場にあった。

 今は恭也も美由希もランニングに出かけているのでいない。

 そんな中で悟空は一人、そっと流れるように構える。

 そして。

 

 

「だっ! でりゃ! だだだだだっ!!」

 

 

 拳が、蹴りが空を切る。

 悟空は今日も今日とて腕を磨く。

 そして一通り動きを確認した後。

 

 

「よっしゃ、次は……」

 

「悟空くん!」

 

「いっ!?」

 

 

 なのはの突然の登場に驚く悟空。

 これから新しい修行を始めようとした瞬間に乱入されたものだからズッコケそうになった。

 

 

「なんだ、なのは……こんなに朝早くに、そんなに慌ててどうかしたんか? ユーノもいるしよ」

 

「あはは……すいません、悟空さん」

 

「あのね、あのね! クロノくんから連絡があったの!」

 

「クロノから? 一体何があったってんだ?」

 

 

 悟空は首を傾げながら尋ねる。

 それに対してなのはは嬉しそうな、心からの笑みを浮かべて言った。

 

 

「フェイトちゃんやベジータくんが本局に移動になるんだって!」

 

「ほんきょく? よく分かんねえけど、それがどうしたんだ?」

 

「それでね、少しの間だけど私達と会えるみたいなの。私は行くけど悟空くんはどうする?」

 

「なんだって!? それならオラも行くぞ、そんじゃ一旦道場を出てオラに掴まれ」

 

「うん!」

 

 

 道場を出ると、悟空はなのはの体を抱きかかえてふわりと宙に浮かんだ。

 余談だがこの時のなのはの表情は幸せそうだったとか。

 

 

「でよ? なのは、どこに向かえばいいんだ?」

 

「え? あ、ええっとね……海鳴臨海公園は分かるよね? あそこだよ」

 

「あぁあそこか! 分かった、そんじゃ飛ばしていくから、しっかり掴まってろよ!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 次の瞬間、悟空は体から白いオーラを放ち空を切り裂くように飛んでいった。

 そして飛び続ける事数秒。

 あっという間に悟空達は海鳴臨海公園に辿り着いた。

 

 

「よし、着いたぞ」

 

「ありがとう、悟空くん……あれ、フェイトちゃん達は……」

 

「もうすぐ来っと思うぞ、気が近づいてきてる」

 

「そんな事も分かるんですか……ともかく悟空さん速いから向こうより到着が早くなるのもしょうがないよ、なのは」

 

 

 なんて会話をしていると海鳴臨海公園の一部が光を放つ。

 その光の中からはフェイトやベジータ、アルフにクロノが現れた。

 

 

「フェイトちゃん、ベジータくん、アルフさん、クロノくん!」

 

「オッス! おめえ達元気にしてたか?」

 

「……うん、そっちも元気そうで良かった」

 

「フン」

 

「にしてもこっちも急いだってのにもう着いてるとはね……流石は悟空ってところかね」

 

 

 再会を喜び合う一同。

 だがここでクロノが言う。

 

 

「悪いがあまり時間はないんだ、早めに話をするようにしてくれ」

 

「あぁ分かった、なのは」

 

「うん」

 

「……フェイト」

 

「……うん」

 

「「行ってこい」」

 

 

 悟空とベジータに背中を押され、なのはとフェイトは顔を合わせる。

 微笑みあう二人。

 そんな二人を二人きりにするために他の面々は少し離れた。

 そしてこちらにももう一組。

 

 

「……ベジータ」

 

「……カカロット」

 

 

 視線がぶつかる。

 無言の時間が流れる。

 そのまま何も言わないかと思いきや二人はおもむろに構えを取り――超サイヤ人に変身して駆け出した。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 拳と拳がぶつかり合う。

 凄まじい衝撃が公園内を駆け抜ける。

 二人はぶつかり合った拳を見てニヤリと笑った。

 

 

「俺はまだまだ強くなる……精々置いていかれないよう気を付けろよ、ベジータ」

 

「ぬかせ……貴様が強くなるなら俺様はその一段、二段上を行く……ただそれだけだ」

 

「へっ……そうこなくちゃ張り合いがねえや、次会う時を楽しみにしてるぜ」

 

「フン、精々余裕ぶってろ。俺は必ず貴様を倒し頂点に立ってみせる」

 

 

 拳と拳をぶつけながらの会話。

 それを終えると互いにフッと笑う。

 難しい言葉も長い言葉も贈り物も必要無かった。

 その会話だけで十分、拳に乗せた思いと僅かな言葉があればいい。

 そんな方法で互いの意志を確認するのは戦闘民族サイヤ人同士故か、あるいはこの二人が特殊なのか。

 それは定かではないが当人達が満足そうなのでまぁいいだろう。

 二人は超サイヤ人から通常状態に戻る。

 と、そこへ。

 

 

「にゃはは、悟空くん達らしいね」

 

「うん、流石戦闘民族」

 

 

 髪を解いたなのはとフェイトが近寄ってきた。

 よく見ると互いが相手のリボンを手に握っている。

 交換したのだろうという事は誰が見ても分かった。

 

 

「悟空」

 

「ん? どした? フェイト」

 

「色々とありがとう、よく考えたらお礼言ってなかったから」

 

「へへっ、そんなに気にする事ねえよ。おめえの事を救ったのはなのはとベジータだしな」

 

「そうかもしれない……それでもお礼は言っておきたかったんだ」

 

「おめえ律儀な奴だなぁ、まぁそういう事ならどういたしましてって奴だ!」

 

 

 一方でなのはとベジータも言葉を交わす。

 

 

「ベジータくん」

 

「……なんだ? 高町」

 

「なのはでいいよ、それより……フェイトちゃんの事支えてあげてね?」

 

「フン、さてな。あいつは強くなった……もう俺など必要ないだろう」

 

「そんな事ないよ! 後フェイトちゃん言ってたよ、ベジータくんは何だかんだ言いながらも力になってくれるって」

 

「チッ……余計な事をペラペラ喋るようになりやがって……」

 

「にゃはは、照れなくてもいいのに」

 

 

 なんて会話をしているとクロノが近づいてきた。

 何も言わずとも分かる、タイムリミットだ。

 ベジータとフェイトはクロノやアルフがいる方へ歩き出す。

 

 

「フェイトちゃん、ベジータくん、アルフさん! また……また会おうね! クロノくんも!」

 

「じゃあな! おめえ達、元気でやれよ! 次会えんのを楽しみにしてっぞ!」

 

「うん……またね、なのは、悟空、ユーノ」

 

「フン……じゃあな」

 

「三人とも色々とありがとうね、心から感謝してるよ」

 

「さて、時間だ……三人とも機会が来たらまた会おう」

 

 

 クロノのその言葉を最後にフェイトやベジータの姿は光に包まれて消えていった。

 先ほどまで賑やかだった公園は静寂に包まれ、悟空、なのは、ユーノだけが残る。

 風が吹いた、優しい風が。

 悟空はその風を浴びながら空を見上げた。

 別れの寂しさは確かにある、だがこれは一時的なものだと言うのは分かっていた。

 いつか、そう遠くないうちにベジータやフェイトには会える日が来る。

 だからこそ悟空は笑う。

 今日も笑って前に進む。

 

 

「……帰っか! 桃子の飯が待ってるぞぉ」

 

「……うん!」

 

「そうですね!」

 

 

 三人は一緒になって帰りの道を歩く。

 別れの寂しさなんか吹き飛ばすように談笑しながら。

 再会の約束を胸に抱いて。

 

 

 

 しかし、彼らの物語はこれで終わりはしない。

 

 

 

 戦闘民族故か、それとも別の要因か、彼らの進む先には新たな戦いの数々が待っているのだから。

 

 

 

 ――だがそれはもう少し先のお話しだ。




 オッス! オラ、悟空!

 だりゃっ、でやあっ!

 やっぱり目指すべきものが見えてっと修行もやりやすいな。

 目指すは超サイヤ人のさらにその先だ! 早めに超えねえとベジータに追い抜かれちまう!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「超サイヤ人の壁を超えろ! 二人のサイヤ人の限界突破トレーニング!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十一 超サイヤ人の壁を超えろ! 二人のサイヤ人の限界突破トレーニング!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さんと感想をくれた方、ありがとございます!

 さて今回は一章と二章を繋ぐほんの僅かなお話し、その第一弾です。

 というわけで其之四十一をどうぞ!


「だっ! でやっ! でりゃあっ!!」

 

 

 フェイトやベジータ達と別れてから数日が経過した。

 悟空は今日も早朝から修行に打ち込んでいる。

 一見すればいつも通り、だが悟空はあの日以降はより気合を入れて修行に励んでいた。

 そして――。

 

 

「ふぅ準備運動終わりだ、次は……新しい修行をやってみっか」

 

(新しい修行……?)

 

 

 気になるワードに近くで練習していた恭也が反応する。

 すると悟空は手を握り力を込め始める。

 

 

「はあああああ……!」

 

「っ!?」

 

「え、ちょっ、なに!?」

 

 

 悟空の気合の高まりと共に気は増幅し、周囲に凄まじい衝撃をもたらす。

 気を感じ取れない恭也や美由希にも分かった、これはとんでもないものだと。

 そして恭也が見つめ、美由希が慌てふためく中で悟空はさらに気合を込めていく。

 

 

「ぐぎぎ……ぐっ、があああ!」

 

 

 髪の毛が徐々に逆立つ。

 髪の毛が点滅し金色へと変わり始める。

 

 

「お、おい。悟空! お前一体何を……」

 

「悟空くん、大丈夫!?」

 

 

 心配になった二人は駆け寄ろうとする。

 その瞬間。

 

 

「だあああああっ!!」

 

「「!?」」

 

 

 悟空の大きな叫びと共に髪の毛は完全に逆立ち眼の色と髪の色は変化。

 目つきも鋭くなり凄まじい威圧感と金色のオーラを放ち始める。

 そう、悟空は超サイヤ人になったのである。

 

 

「悪りいな……騒がせちまってよ、もう大丈夫だ」

 

「な、な……一体何が……」

 

「悟空くん……だよね?」

 

「当たり前だろ、お前達の目の前で変身したんだからな」

 

 

 悟空はさらっと言ってのける。

 だが恭也達からしてみれば、変身なんて初見だしとんでもない現象としか言えなかった。

 というか口調、髪形、髪色、目の色、雰囲気、どれを取っても別人にしか見えない。

 

 

「さて、始めるか……」

 

 

 悟空はそう言うと普段通り拳と蹴りを繰り出し始めた。

 そこだけなら普通、いつも通りの光景だ。

 ただその速度が問題だった。

 

 

(み、見えない……! 普段の悟空でもギリギリなのに今の悟空の腕の動きも足の動きも眼で追えない!)

 

(変身するとパワーアップするなんて漫画みたいな事、現実で起こりうるんだ……)

 

 

 結局二人は暫くの間、呆然としながら悟空の修行風景を見ていたのだった。

 

 

 

 早朝の修行を終えて悟空は高町家の中へ。

 一旦手を洗い、二階へと足を運ぶ。

 そして極力軽い力で一つのドアをノックした。

 ――声は聞こえない。

 

 

「……こりゃ寝てやがんな、入るぞ」

 

 

 悟空はそう言ってドアを開けた。

 そしてスタスタとベッドの方に近づいていきポコッと膨れた布団を揺さぶる。

 

 

「おい、起きろ……休みだから寝てていいってわけじゃねえんだ」

 

「うーん……むにゃぁ……」

 

「しょうがねえ奴だ……起きろって言ってんだろ」

 

 

 悟空はそう言ってちょっぴり力を込めてなのはの頬っぺたを引っ張った。

 むにょーんと柔らかい頬っぺたが伸びる。

 それが少し楽しく感じてしまい悟空は突っついたり、引っ張ったりを繰り返した。

 すると――。

 

 

「ん……んん……むぅ?」

 

「……やっと起きやがったか」

 

 

 なのはが眼を開けるとそこには――かなりの至近距離に超サイヤ人の悟空の顔が。

 それを理解した途端に頭の中を支配していた眠気は吹っ飛ぶ。

 

 

「にゃあああああっ!?」

 

「……うるせえぞ、お前は猫か何かか?」

 

「な、ななな……悟空くん、何で超サイヤ人に!?」

 

「修行だ、ユーノお前も起きろ。一階に行くぞ」

 

「は、はい」

 

 

 悟空はそれ以上何も言わずにユーノと共に部屋から出ていった。

 そしてなのははと言うと暫くの間ポカンとしていたのだった。

 

 

 

 一階に下りた悟空はリビングに足を運ぶ。

 

 

「士郎、桃子、なのはを起こして来たぞ」

 

「おぉありがとう悟空く……ん?」

 

「あなたどうしたの……あら?」

 

 

 二人の視線は自然と悟空に集中する。

 無理もない、色々と違いすぎるからだ。

 

 

「えっと……悟空くん、だよな?」

 

「……あぁそうだ」

 

「あらあら、随分イメージが変わるわね」

 

 

 唖然とする士郎とニコニコしながらあっさりと悟空の変化を受け入れる桃子。

 対称的な反応だったが一体何がどうなってるのか、さっぱり分からないのは共通していた。

 だがとりあえず桃子は言う。

 

 

「とりあえずご飯にしましょうか、ちょうど出来たところだし……話は食べながら、ね?」

 

「そ、そうだな。そうしよう」

 

「今日の朝飯も楽しみだ」

 

 

 ニヤリと笑いながらそんな事を言う悟空。

 とりあえず見た目も雰囲気も変わっているが本質的な部分は変わってない事を士郎達は確信するのだった。

 それから少し経って全員が集まり、食事が始まる。

 

 

「ガツガツガツ……!」

 

「ふふ、悟空くん。おいしいかしら?」

 

「あぁ、美味いぞ。相変わらずな」

 

「良かったわ、いつもと違って表情には出ないみたいだけど味覚は変わってないのね」

 

 

 悟空は超サイヤ人のまま食事を続けていた。

 そこに士郎が質問を飛ばす。

 

 

「悟空くん、それでその姿は一体……」

 

「これは超サイヤ人って言うもんだ」

 

「超サイヤ人……?」

 

「詳しい事は……なのはにでも聞いてくれ、なのは後は頼んだ」

 

「えぇ!? 私に丸投げ!?」

 

「俺は説明するのが苦手だからな」

 

「もう……しょうがないなぁ、超サイヤ人って言うのはね――」

 

 

 なのはは説明した。

 と言ってもアースラで聞かされた内容をそのままに、という感じだったが。

 それを聞いた高町家の面々は驚く。

 

 

「千年に一人の伝説の戦士……悟空くんが……」

 

「髪や目の色が変わるなんて不思議ねぇ」

 

「何ていうかもう別人だよね……ここまで来ると」

 

 

 悟空の事で驚くのは慣れたつもりだった。

 だがここまで見た目が変化したり、伝説の戦士だのなんだの言われてしまうと驚かざるを得ない。

 だが一つ気になった事があったのか恭也は悟空に尋ねる。

 

 

「悟空、お前のやってる修行ってなんなんだ? その超サイヤ人になって一体どんな鍛錬になるって言うんだ?」

 

「……超サイヤ人にもデメリットはある」

 

「え? デメリット?」

 

 

 なのはが驚愕の表情を浮かべる中、悟空は語る。

 

 

「戦闘力は大幅に上昇するが、その分肉体に負担がかかる。それと心がザワザワして落ち着かなくもなる――それの克服をする、体を慣れさせるための修行だ」

 

「なるほど……口調が変わってるのも落ち着かないせいか」

 

「あぁ……これを克服して超サイヤ人を完全に我が物にしなきゃ――超サイヤ人の壁は超えられねえ」

 

「超サイヤ人の壁を超える? それってどういう事?」

 

 

 なのはの問いに悟空は食事を摂りつつも答える。

 表面上は大分冷たくなっているが中身が悟空である事は変わらない。

 なのは達の問いをあまり蔑ろにはしたくないのだろう、そこら辺の優しさは変身しても変わらず持ち続けていた。

 

 

「簡単な話だ、俺は超サイヤ人の上を行く。超サイヤ人にはいくつもの進化が存在する、俺はそれを目指すつもりだ」

 

「超サイヤ人の上……進化……」

 

「そんなに強くなって君はどうするつもりなんだい? 悟空くん」

 

「当たり前の事を聞くなよ、士郎……俺は誰にも負けないために、守るために、そして単純に強くなりたいから強くなる、それだけだ」

 

「……ははっ、君らしいな、頼もしいよ。本当に」

 

「頼もしいかどうかは知らねえが……これが俺だからな、桃子、おかわり頼む」

 

「はいはい、ちょっと待っててね」

 

 

 こうして賑やかな高町家の朝ご飯の時間は過ぎていく。

 悟空はおかわりが来るまでの間、窓から外を眺めていた。

 

 

(あいつも多分同じ事を考えてるはずだ……そうだろ? ベジータ)

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方、ベジータはと言うと。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 悟空の想像通り、与えられた一室の中で超サイヤ人に変身していた。

 室内を凄まじい衝撃が駆け抜ける。

 その状態でベジータは拳や蹴りを放ち部屋の中は熱気が充満していく。

 そこへ――。

 

 

「ベジータ、入るよ……?」

 

 

 フェイトが入室してきた。

 よくよく見ると後ろにはアルフもいる。

 が、二人は驚いた部屋の凄まじい熱気に。

 

 

「フン……貴様らか」

 

「ベジータ……どうして超サイヤ人に?」

 

「というか暑っ! アンタどんだけ修行してたのさ!」

 

「……超サイヤ人になり体を慣れさせる、これも修行の一環だ」

 

「? どういう事?」

 

 

 ベジータは説明する。

 その内容は悟空達と同じものだった。

 ベジータもまた超サイヤ人の壁を超えるための修行を始めていたという事である。

 

 

「超サイヤ人の壁を……超える?」

 

「アンタ……どこまで強くなるつもりだい?」

 

「さてな、サイヤ人の強さに限界はない。ならば俺はどこまでも強くなる」

 

 

 ベジータはそう言って再び体を動かし始める。

 ひたむきに努力を続ける。

 悟空に負けないためにも、この先現れるかもしれない敵に負けないためにも。

 と、ここで気になったことを尋ねる。

 

 

「ところで貴様ら……何しに来た?」

 

「あ、ええっと……ご飯一緒にどうかなって思ったんだけど……お邪魔だったかな?」

 

「……いや、腹も減って来たところだ。俺も行こう」

 

 

 それを聞くとフェイトはパァッと明るい笑みを浮かべた。

 最初と比べると段違いに笑顔を見せるようになったなとベジータは思う。

 何にしても、いい傾向だと言えた。

 ベジータはタオルで汗を拭い超サイヤ人のままで部屋を出る。

 

 

「え、そのまま食事するの?」

 

「あぁ……少しでも早く慣れたいんでな、行くぞ」

 

「う、うん!」

 

「あいよ」

 

 

 ベジータは考える。

 超サイヤ人の超え方も、変身の感覚もこの身は覚えている。

 だが覚えているからと言ってすぐに変身できるわけじゃない。

 それ相応の修行が必要だというのはこちらの世界に来てからの日々で嫌と言うほど感じ取っていた。

 しかし感覚を覚えているが故に前の世界よりも早くに壁を超える事が出来る、そんな確信があった。

 そしてそれは地球で日常を謳歌している悟空も同じこと。

 少しでも早く、悟空よりも早く壁を超えて上を目指し、いずれは頂点に君臨する。

 ベジータは燃えていた、やる気に満ち溢れていた。

 

 

(見ていやがれ、カカロット……貴様だけは俺の先へは行かせんぞ!)

 

 

 一方でフェイトはそんなベジータを見ながら微笑んでいた。

 とりあえずやる気に満ちているのは見てるだけで分かったからだ。

 そんなベジータがフェイトは好きだった。

 

 

(それにしても……)

 

 

 フェイトはチラリとベジータを見る。

 黒い服に金髪、目の色こそ違うが自分に近いカラーリングのベジータ。

 

 

(お揃いみたいでちょっと嬉しい、かな)

 

 

 そんな事を思いながらベジータ、フェイト、アルフは食堂に向かうのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 オラ達がフェイトに送ったもの、それはビデオメールっちゅうもんだった。

 フェイトは嬉しそうにベジータ達を誘いその映像を見る。

 ははっ、何だかこういうのも悪くねえって思えるな!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「贈り物はビデオメール! 確かな変化と深まる絆」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十二 贈り物はビデオメール! 確かな変化と深まる絆

 新たにお気に入り登録してくださった皆さま、感想をくれた方々、評価を入れてくださったas123さん、ありがとうございます!

 さて、一章も残すところ後二話。

 書き溜めが尽きかけておりますが、尽きるまではこの更新ペースを維持する予定です。

 それでは其之四十二をどうぞ!


「フェイト! ほら、これ。届いてたよ」

 

「本当!? ありがとう、アルフ」

 

 

 アルフが渡して来た物を見てフェイトは嬉しそうに笑う。

 それをギュッと抱きしめるフェイト。

 そんなフェイトを見て微笑みつつアルフは言う。

 

 

「そんじゃ、早速見ようか!」

 

「うん……あ、その前に」

 

「ん? なんだい?」

 

「ベジータも呼ばなくっちゃね」

 

「あー……でも付いてくるかねぇ、あいつ。修行に夢中になってそうだけど」

 

「大丈夫だよ、きっと」

 

 

 フェイトとアルフはそう言ってベジータの部屋にいる。

 そこでは――。

 

 

「はぁっ!! だぁっ!! でやあああああっ!!」

 

 

 案の定ベジータが修行をしていた。

 大きな掛け声を上げながら超サイヤ人の状態でベジータは拳を蹴りを繰り出す。

 その額からは大粒の汗が流れていた。

 それがベジータがどれだけ厳しい修行をしているのかを現している。

 だがそんなベジータも二人の気を、そして気配を感じ取ると手を止めた。

 

 

「今日は何の用だ」

 

「ベジータ、少し休憩しない? これも届いたし、ね?」

 

「またそれか……それは貴様宛てのものだろう、俺がいたところで――」

 

「え? でも悟空からベジータへのメッセージも毎回入ってるよ?」

 

「何故奴からのメッセージを馬鹿正直に受け取ってやらねばならんのだ……俺達は別に友達では――」

 

「まぁまぁ、ほら。行こう? 私の部屋で見るから」

 

「おい、引っ張るな! 貴様どんどん性格が強引になっていってるぞ!」

 

「ふふっそれはきっとベジータの影響だよ」

 

「人のせいにするんじゃない!」

 

「やれやれ……とか言いつつ力任せに振り解かないあたりアンタもフェイトに甘いよね」

 

「チッ、貴様に言われたくはないがな……」

 

 

 結局ベジータはそのままフェイトに引っ張られてフェイトの部屋まで連れてこられた。

 ベジータもアルフも適当なところに腰掛けて、フェイトは再生機にディスクをセット。

 フェイトも席に着くと映像が映し出された。

 

 

『こんにちは、フェイトちゃん、ベジータくん、アルフさん』

 

『オッス! 元気にしてっか?』

 

 

 映っているのは悟空、なのはにユーノ。

 これは所謂ビデオメールと言うものである。

 なのはとフェイトは度々このビデオメールを送り合う事で交流をしていた。

 そこに悟空達も加わった影響もあってなのはから送られてくるビデオメールはいつも賑やかに始まる。

 話の内容は大抵が近況の報告だ。

 それと前のビデオメールの返事。

 何気ないちょっとした交流、だがフェイトはこれがどうしようもなく嬉しくて、楽しくて。

 ただただ幸せだった。

 

 

『それでね、今度私の友達……アリサちゃんとすずかちゃんもビデオメールに参加してもらおうと思って』

 

『ははっ、一気に賑やかになりそうだな。特にアリサちゅう奴はすぐ怒るからよ』

 

『もう、それは悟空くんが怒らせるような事するからでしょ?』

 

『え、そうなんか?』

 

「ふふっ……」

 

「あっちは本当に賑やかだねぇ、これで人が増えたらますます賑やかになりそうだよ」

 

「フン……本当にいつもいつも騒がしい奴らだ」

 

 

 それぞれがらしい反応を示す中でベジータとアルフはフェイトの顔をチラリと見る。

 その表情は笑顔だった。

 ちょっと前なら考えられないような笑顔。

 

 

「フッ……」

 

「あははっ」

 

「? どうしたの、ベジータ、アルフ。急に笑って」

 

「何でもない、気にするな」

 

「そうそう、気にしない、気にしない」

 

「むぅ……気になる」

 

 

 フェイトは膨れているがそんなの関係ないと言わんばかりに二人は何も言わない。

 特にベジータなんかは口が裂けても言えないだろう。

 フェイトが笑顔を見せるようになって良かったなどとは。

 と、そこで映像の中のなのはと悟空が語り掛けてくる。

 

 

『そういえばベジータくんはどうしてるのかな? やっぱりずっと修行?』

 

『ははっ、ベジータの奴は修行大好きだからな! きっと修行ばっかしてると思うぞ』

 

「チッ……貴様が人の事言える立場か、カカロット……」

 

「あはは……でも実際修行ばかりしてるから間違っては無いよね」

 

「サイヤ人ってのは修行バカばかりなのかい?」

 

「修行バカ言うな! ……中には戦いを好まない奴だっている、あくまで俺達が強くなりたいタイプのサイヤ人というだけの話だ」

 

 

 ベジータはそう言うとそっぽを向いた。

 すると不意に脳裏を過ぎる過去の記憶。

 だが今思い出しても何の意味もないとまた奥底に封じ込める。

 

 

「ベジータ……もしかして寂しい?」

 

「急に何だ……」

 

「何となく雰囲気が寂しそうに感じたから……」

 

「……気のせいだ、そんな事より映像を見ていろ。聞き逃しても知らんぞ」

 

「うん……」

 

 

 ベジータが本心を隠している事ぐらいフェイトには分かる。

 だがそれ以上は突っ込まなかった。

 今にして思えば――いや、ベジータの事情を知った今ならば何となく分かる。

 初めて会った時、何故ベジータを寂しそうだと感じたのか。

 それはきっと大切な人達と離れ離れになってしまったからじゃないかと。

 だから今でも時折寂しそうな顔を見せるのではないかと。

 そんなベジータを見てると放っておけないと感じる。

 少しでもその寂しさを埋めてあげたいと、そう思う。

 

 

(でも私に……出来るのかな、そんな事……ううん、違う。やるんだ! 他でもない私が……だから頑張らないと)

 

 

 そんな決意を胸に宿しフェイトは映像を見続ける。

 映像には仲睦まじいなのはと悟空が笑い合う姿が映ってる。

 それがちょっと羨ましくも感じるがベジータがにこやかに笑う姿なんて想像も付かないから考えるのを止めにした。

 なんて考えてるうちに。

 

 

『なのは、そろそろ時間じゃねえか?』

 

『あ、そうだね。それじゃあフェイトちゃん、ベジータくん、アルフさん、また今度ね。次はアリサちゃんとすずかちゃんも混ざったビデオメールを送るから楽しみにしてて! それと――フェイトちゃん』

 

「?」

 

『お互い頑張ろうね!』

 

 

 その言葉を最後に映像は終わりを告げた。

 フェイトは最後の言葉をしっかりと胸に刻み付ける。

 「頑張ろうね」それがどんな意味を込めた言葉だったのかはよく理解出来た。

 

 

「終わったようだな、俺は部屋に戻るぞ」

 

「あ、うん……そうだ、ベジータ」

 

「……なんだ?」

 

「後で返事のビデオメール撮るからベジータも一緒にどう?」

 

「何故俺が参加せねばならんのだ……」

 

「向こうだって悟空が参加してるんだし……息抜きだと思って、ね?」

 

「……はぁ、考えておいてやる」

 

 

 ベジータはそう言うと部屋を出ていった。

 フェイトはその背中を見送る。

 そんなフェイトをアルフはニヤニヤしながら見てた。

 

 

「な、なに? アルフ」

 

「いいや? フェイト嬉しそうだなぁと思ってさ」

 

「そ、それは……そうだけど、別に深い意味は……」

 

「今更隠さなくたっていいじゃないのさ、本当にベジータが好きなんだねぇ」

 

「う、うぅ……まぁ確かにそうだけど」

 

 

 そんな会話をしている裏側でベジータは。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 超サイヤ人に変身して修行を再開していた。

 手や足を動かしながらベジータはフッと笑う。

 

 

「本当に甘くなったものだ、俺も」

 

 

 だが悪い気分ではなかった。

 昔はあれだけ甘くなる自分を嫌っていたのに。

 これも一種の成長なのだろう。

 

 

「だがそれでも俺は妥協はしない、ただひたすらに強さを追い求める……そこは変わってはいない」

 

 

 故にベジータは今日も修行に励む。

 ライバルである悟空を超えるためにも。

 フェイト達の笑顔を守るためにも。

 己のプライドのためにも。

 誇り高きサイヤ人の王子は前に進み続けるのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「なのはー! アレ、届いてるわよ」

 

「え、本当!?」

 

 

 なのはは桃子の声に誘われリビングにやって来た。

 そこには確かになのは宛ての贈り物があった。

 見るだけで分かる、フェイトからのビデオメールだと。

 

 

「わぁ、もう来たんだ! 楽しみ……そうだ、悟空くんも呼ばないと!」

 

 

 なのははそう言って駆け足で道場まで向かった。

 そして戸を開き、そこにいる超サイヤ人状態の悟空に声をかける。

 

 

「悟空くん!」

 

「なのはか……どうした?」

 

「ビデオメール届いたよ、一緒に見よう?」

 

「随分早えな……まぁいいか、分かった。付き合ってやるよ」

 

「やったぁ! それじゃ行こう?」

 

「あぁ」

 

 

 こうして双方は絆を深めあっていく。

 再会の日はそう遠くはない。




 オッス! オラ、悟空!

 よし、なのは修行すっぞ!

 おめえも強くはなってっけどまだまだ甘えところはいっぱいあっからな、鍛えがいがあるぞぉ。

 その頃ベジータとフェイトも一緒に修行をしていた、ははっ考える事は同じってやつか。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「合同トレーニング開始! そして迫るフェイトの試験!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十三 合同トレーニング開始! そして迫るフェイトの試験!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さま、感想をくれた方、評価を入れてくださったK.Sさん、X(イクス)さんありがとうございます。

 さて、今話で第一章は終了となります。

 長かった……というわけで其之四十三をどうぞ!


「シュートッ!!」

 

「よっ、ほっ!」

 

 

 迫りくる桜色の光弾達。

 それを悟空は軽々と躱していく。

 だが光弾は追尾するように何度も何度も悟空に襲い掛かる。

 しかしそれも悟空は余裕の表情で躱して見せる。

 

 

「やっぱり操作できるって言ってもスピードは大した事ねえな……こんなんじゃオラには当てられねえぞ」

 

「だったら……アクセルッ!!」

 

「お?」

 

 

 光弾の速度が上がる。

 しかも一つ一つが違う軌道で襲い掛かって来た。

 悟空は少々驚きながらも最低限の動きで光弾を躱し続ける。

 

 

「速くはなったけんど、今度はその分コントロールが少しあめぇ! もう少し工夫しねえとすぐに見切られちまうぞ!」

 

「だったら……これでどう!?」

 

 

 その言葉通り今度は緩急をつける。

 光弾を遅くしたり速くしたりと細かいコントロールをしてフェイントをかけていく作戦だ。

 対し悟空は。

 

 

「……ふっ!」

 

 

 焦る事なくしっかりと見極める事で対処し回避する。

 この状況下でも落ち着いて行動できるのは戦闘経験の豊富さ故だろう。

 これでも通じないとなると正直お手上げである。

 だからこれが最後の攻撃になるだろう。

 

 

「おぉ?」

 

 

 四つの光弾が悟空を囲むように周囲をクルクルと回る。

 そしてタイミングを合わせて一気に四方から悟空を襲った。

 

 

「まだまだだな、こんなの空に逃げりゃいいだけじゃねえか」

 

 

 悟空はそう言って跳び上がる。

 ぶつかり合い爆発する光弾達。

 ――が、それでを終わりではなかった。

 

 

「いっ!?」

 

 

 爆発の煙の中から一つだけ光弾が飛び出してきたのである。

 要は爆発は他の光弾を使った目くらまし、本命はこちらだったという事だ。

 光弾は真っすぐ、最大の速度で悟空に迫る。

 対し悟空は。

 

 

「……!」

 

 

 キッ! と目を一瞬光らせて光弾を睨み付ける。

 と、不思議な事に光弾は破裂した。

 

 

「えぇ……」

 

 

 これには光弾を操作していた少女――なのはも唖然とするしかない。

 今のは当たったと確信していたのに、これである。

 悟空は着地するとなのはに歩み寄って来る。

 

 

「いやー惜しかったな、なのは。最後のはちっとばかし驚いちまったぞ」

 

「惜しかったかなぁ……悟空くん余裕に見えるんだけど、超サイヤ人にもなってないし……というか最後何したの?」

 

「あれか? あれは気合い砲ちゅうやつでよ。目から見えない気を飛ばす技なんだ」

 

「そんな事も出来るんだ……便利だなぁ、気って」

 

「魔法だって相当便利だとオラは思うけどなぁ」

 

 

 悟空となのははそんな会話を交わしつつも今の戦いの反省点などを挙げていく。

 

 

「やっぱり四発ちゅうのが問題だな、少なすぎっぞ。もっと数増やせねえんか?」

 

「うーん……私も試してみてるんだけど今はこれが限界みたい、これ以上増やすと負担が……」

 

「じゃあしょうがねえな、四発で出来る限り相手を近づけねえように立ち回んのが大事だ。なのはは接近戦得意じゃねえんだろ?」

 

「うん……出来なくはないんだけどね」

 

 

 そう、なのははあくまで遠距離での砲撃を得意とした魔導師だ。

 近接戦闘になれば分が悪いのは当然の事。

 故に如何にして相手を近づけずに自分の距離に持ち込む、もしくは距離を取らざるを得ない状況を作り出すかが重要になる。

 

 

「例えばよ? 全部撃っちまうんじゃなくて何発か手元においておけば牽制になるし一発目の後ろにピッタリくっつける形で放てば相手の不意をつける、やりようは色々あんぞ。試してみる価値はあんじゃねえかな」

 

「ふむふむ……そうだね」

 

 

 こういう時の悟空くんはやたら頭が切れるなぁとなのはは思う。

 これも戦闘民族サイヤ人であるが故なのだろうかと。

 と、ここで一つ思いついた事があった。

 

 

「そうだ、悟空くん!」

 

「ん? どした?」

 

「私に気の使い方、教えてくれない?」

 

「気の? うーん、そうだなぁ」

 

 

 なのはからしてみれば気の使い方を覚えればやれる事の幅が広がると考えていた。

 相手の探知なども楽に出来るだろうし攻撃手段も増える。

 いい事尽くめだ、だが悟空の反応はイマイチだった。

 どうしてだろうか、と考えていると悟空は口を開く。

 

 

「教えてもいいんだけどよ……今は駄目だな」

 

「え……? どうして?」

 

「おめえには魔法もあんだろ? 今の状態で気の使い方を教えっとどっちも中途半端になっちまう気がすんだ、だからもう少し魔法が上達してからの方がいい。オラはそう思う」

 

「そっか……」

 

 

 なのはからしてみれば少々残念な話ではあったが悟空の言い分はもっともだと思えた。

 中途半端になってしまうのは良くない。

 ならば少しでも早く魔法を上達してみせよう、そう思い立ちあがる。

 

 

「よーし! それじゃ修行の続きを――!」

 

「いや、一旦休憩すんぞ」

 

「えぇ!?」

 

 

 なのはは思わずずっこけそうになる。

 やる気に満ちていたのに急に止められてはそうなるのも無理はない。

 だが悟空にも理由はあった。

 

 

「なのは、おめえが努力家なのは認めるけどよ。ちっとばかし無理しすぎだぞ」

 

「私は別に無理なんて……」

 

「そう思えてるうちはいいけどな、あんまりやりすぎっとガタがくる。ユーノに聞いたけんど砲撃魔法は体に負担がかかんだろ?」

 

「でも悟空くんやベジータくんは凄くいっぱい修行してるじゃない? どうして私は駄目なの?」

 

「体の基礎だ、オラやベジータは基礎が出来てっから多少の無茶は何とかなる、でもおめえは違う。元々は一般人だったんだからしょうがねえけど体の基礎は出来てねえ、だからおめえにとって休憩は大事なんだ」

 

「むー……分かった、そこまで言うなら休憩する」

 

 

 悟空の言い分も理解出来た。

 若干納得いかない部分もなのはにはあったが、ここは悟空の言う事をちゃんと聞いておく事にする。

 確かに無茶しすぎて体を壊しては元も子もない。

 なので大人しく休息をとるために木陰に移動する、なのは。

 その間も悟空は一人鍛錬を積むのだった。

 

 

「よっ、だっ! うりゃあっ!!」

 

 

(体の基礎かぁ……私も少しは運動しようかな)

 

 

 何て事を考えつつなのはは悟空の修行風景を眺めるのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方でベジータとフェイトも合同トレーニングに励んでいた。

 

 

「はあああああっ!!」

 

「フン……」

 

 

 鎌状に変化したバルディッシュを振るうフェイト。

 それを腕を組みながら避けていくベジータ。

 何度か振ったはいいものの当たらないと判断したのかフェイトはバルディッシュを振りつつもフォトンスフィアを作り出す。

 そして。

 

 

「ファイア!!」

 

 

 放たれる雷を纏った魔力弾。

 それをベジータは僅かな動きで躱していく。

 だがそんなベジータにフェイトは斬りかかる。

 フォトンランサーで動きを止めてのバルディッシュによる斬撃攻撃。

 作戦としては悪くなかった。

 だが――ベジータは組んでいた手を解き指先に気を集中。

 その指先を使って鎌を受け止めてみせる。

 一旦距離を取るフェイト。

 

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

「……一旦休憩を挟むぞ、貴様はそろそろ限界だろう」

 

「うん……」

 

 

 一旦座り込んでドリンクを飲む二人。

 ちなみに今いる場所はトレーニングルーム。

 リンディ達の計らいで使用できるようになってからはほぼ毎日使っている。

 

 

「やっぱりベジータは凄いね……指一本で止めちゃうなんて」

 

「当然だ、俺はサイヤ人の王子ベジータだからな。だが貴様も少しは腕を上げたな」

 

「ほ、ほんと!?」

 

「あぁ……俺に指一本使わせただけでも上出来だ、まぁまだまだではあるがな」

 

 

 ベジータはそう言うと一気にドリンクを流し込み立ち上がる。

 

 

「あ、もう休憩終わり? じゃあ私も――」

 

「いや、貴様はもう少し休んでろ……無理は禁物だ」

 

「その言葉そのままベジータに返すよ……けど、うん、分かった。もう少しだけ休ませてもらうね」

 

 

 まだ疲労が抜けきっていないのも事実だ。

 なのでフェイトはその言葉に甘える事にした。

 そもそもフェイトはリンディ達からの誘いもあり近々嘱託魔導師の試験を受ける事になっている。

 今、無理して体を壊してしまっては元も子もないのは確かだった。

 一方で試験も何もないベジータはフェイトの休憩中も一人修行を重ねる。

 ちなみにフェイトもなのは同様に気を教えてほしいとベジータに頼んだが却下された。

 理由は悟空の言っていた事と同様、中途半端になりかねないからだ。

 フェイトもその説明を聞き納得し今は引き下がる事にした。

 

 

「はっ! だだだだだっ!!」

 

 

 今、目の前で修行しているベジータは何のかんの言いつつもフェイトの修行にも付き合ってくれている。

 だからこそ思う、頑張ろうと。

 頑張って試験を合格しようと。

 

 

「ベジータ、私頑張るから」

 

「……フン、当然だ。俺様が修行に付き合ってやってるんだからな、精々頑張って来い」

 

「うん!」

 

 

 後日、フェイトは試験を受けてクロノに負けはしたものの無事合格。

 それを聞いたベジータはフッと笑うのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「これで彼らの物語は一区切りとなりますね」

 

「楽しかったねー」

 

「凄かったねー」

 

 

 どこかの空間で三つの声が響き渡る。

 内一つは敬語で喋る男性の声、残り二つは全く同じ声でどこか舌足らずな子供のような声だった。

 子供のような声の主が言う。

 

 

「ねぇーもう終わりなのー?」

 

「続き見れないのー?」

 

「大丈夫ですよ、彼らの新たな人生は始まったばかり……これから先も多くの戦いが彼らを待っている事でしょう」

 

「楽しみなのねー」

 

「ねー」

 

 

 よくよく見ると空間には水晶が浮かんでおり、そこに悟空やベジータ達の姿が映っている。

 敬語で喋る男はこんな事を言った。

 

 

「あの次元振と言う現象……あれが呼び出したのは何もあのナメック星人だけではございません。それに送り込んだ三人の内の最後の一人もそろそろ動き出したようですから」

 

 

 男がそう言うと水晶には長い黒髪の男が映った。

 敬語で喋る男はさらに続ける。

 

 

「あの世界に送り込んだ孫悟空さんもベジータさんも、そして彼もまだまだ強くなる事でしょう、敵にも困りそうにはないですし。今後がますます楽しみですね……()()()

 

「「うん! 楽しみー」」

 

 

 無邪気な声が全王の宮殿に響き渡るのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 ユーノが裁判の証人? ちゅうやつに呼ばれたんで一旦お別れみてえだな。

 ははっ、なんだよ。なのは、おめえ寂しいんか? 大ぇ丈夫だって永遠の別れってわけじゃねえんだ。

 だけんど、そんなオラ達の日々の裏で動き出す奴らがいた!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「戦いの前兆!? 裏で動き出す者達!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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第二章 激突、サイヤ人編 其之四十四 戦いの前兆!? 裏で動き出す者達!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さんに感想をくれた方々ありがとうございます!

 さて今回から第二章の開幕です!

 というわけで其之四十四をどうぞ!


 十一月十五日。

 この日悟空、なのは、ユーノは海鳴臨海公園にいた。

 と、ここでユーノは悟空の頭から下りる。

 そしてクルリと振り向くとこう言った。

 

 

「それじゃ悟空さん、なのは。行ってきます」

 

「うん」

 

「気ぃつけろよー。何かあったらオラを呼ぶんだぞ」

 

「あはは……大丈夫ですよ、今回は証人として行くだけなんですから」

 

 

 そう、この日から暫くユーノはお別れなのである。

 理由はユーノも述べたように証人となるため。

 要はフェイト達の裁判の証人として呼ばれたという事だ。

 そうこうしているうちにゲートが開く。

 

 

「あ、そろそろ行かなくちゃ……それじゃあ二人とも、また!」

 

 

 ユーノはそう言って光となって消えていった。

 残った二人はゲートが閉まるまでその場に立ち尽くす。

 やがてゲートが閉まると。

 

 

「よし、帰っか! ……なのは? どうした?」

 

「え、ううん。何でもないよ」

 

「隠すなよ、もしかしておめえ寂しいんか?」

 

「……うん、ちょっとね。ユーノくんはあの日からいつも一緒だったから」

 

「しょうがねえなぁ……そんじゃ後でちょっと修行すっか!」

 

「え? 何でこの流れで修行?」

 

「そりゃおめえ……体を動かせば寂しさとか忘れられんだろ?」

 

 

 そういうものなんだろうか、となのはは疑問を持たずにはいられなかった。

 そもそもそれで色々と忘れられるのは悟空みたいにある程度単純じゃなければ無理なのではないかと。

 でも他にする事もなかったため――。

 

 

「そうだね、何もしないよりはいいかな!」

 

「お、やる気になったな! そんじゃ行くか!」

 

 

 こうして二人は肩を並べて歩き出す。

 あの戦いから約五か月半、地球は今日も平和だった。

 一方でベジータ達は。

 

 

「ふっ! はっ! だあああああっ!!」

 

「はぁっ! せいっ!!」

 

 

 今日も修行の日々を送っていた。

 ベジータはともかくフェイトもだ。

 嘱託魔導師の試験に合格した事もあってこれからますます頑張らないといけないと気合が入っているらしい。

 ここ暫くの間は時折ベジータの指導を混ぜつつ自分を鍛えている。

 そこへやって来たのは。

 

 

「二人とも頑張ってるねぇ」

 

「アルフ?」

 

「何の用だ、アルフ」

 

「タオルとドリンクを持って来てやったんだよ、ほれ!」

 

 

 アルフによってドリンクとタオルがベジータに投げ渡される。

 それを受け取ったベジータは「フン……」と言いつつもドリンクを喉に流し込む。

 フェイトも「ありがとう」と一言、礼を告げるとタオルで汗を拭いてドリンクを飲み始めた。

 

 

「それにしても熱心だよねぇ、そこまで急いで強くなる必要あるのかい?」

 

「……カカロットの野郎も間違いなく強くなってるはずだ、奴に先を行かれるのは我慢ならん」

 

「私は単純に……ベジータ達に置いていかれないようにしなきゃと思って、それにもう嘱託魔導師になるわけだし」

 

「ふーん、そういうもんかねぇ。それならアタシも少し鍛えてみるかな」

 

「アルフも?」

 

「あぁ! フェイトを守るのがアタシの役目、だったらフェイトばっかり強くなってアタシがそのままとはいかないじゃないか」

 

「やる気はあるようだな、まぁやるだけやってみたらどうだ」

 

「おうさ!」

 

 

 こうしてベジータ、フェイト、アルフの三人のトレーニングは始まった。

 それぞれ強くなりたい理由は違うが、それでも三人は時にはバラバラに、時には一緒に修行をする。

 これにより三人は少しずつではあるが実力を上げていったのだった。

 何やかんやでこちらも平和そのものだった。

 だが――次なる戦いは目前まで迫っている。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「ここは……どこだ?」

 

 

 一人の男がとある星の大地を踏んだ。

 地獄に発生した空間の歪みに気づき通り抜けてみたはいいものの目の前に広がるのは知らない星の光景だった。

 だがどうやら文明はあるらしい、人の反応がある。

 男はニヤリと邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

「ちょうどいいぜ……ここで宇宙船を調達し強くなりながら地球に向かうとするか……」

 

 

 男はそう言いながら歩き出す。

 その滲み出る邪悪さを微塵も隠さずに――この先に待つ戦いにワクワクしながら。

 

 

「待っていろよ……貴様に復讐してやるぞ、カカロット!」

 

 

 それとほぼ同じタイミングで、どこかの研究施設でも。

 

 

「クククッ、ハハハハハッ!! 素晴らしい、素晴らしいぞ!」

 

 

 一人の男が大きな笑い声をあげていた。

 その先にあるのはモニター。

 そのモニターには――。

 

 

『くたばれ、スラッグ! か、め、は、め……波あああああっ!!』

 

『ファイナル……フラアアアアアシュッ!!』

 

『う、うおおおおおっ!?』

 

 

 スラッグと戦う悟空とベジータの姿が映っていた。

 男は狂気に満ちた眼でその映像を注視する。

 特に悟空とベジータの一つ一つの行動を見逃さないように。

 

 

「こんな人間がこの世に存在するとは! ただでさえ戦闘力が高いと言うのに金髪になると遥かにその戦闘力を増すと言うのも面白い! 実に不思議な存在だ!」

 

 

 男はそう言うと椅子に体重をかけて天井を見上げる。

 

 

「平行世界……次元世界とはまた別の世界の在り方か、興味深いな」

 

 

 そう呟くと男は急いでキーボードを入力し始める。

 高速で次々と打たれる文字の列。

 暫くの間それを続けると不意に男は手を止めた。

 

 

「完璧とまではいかないが……」

 

 

 そう言いながら再び手を動かす男。

 モニターの隅によく分からない文字列が並んでいく。

 そして再び手を止めると。

 

 

「これだ! ハハハハハッ!! これならば行ける! 平行世界への移動は多少であれば可能だ!! フハハハハハッ!!」

 

 

 男は何度も笑いながら立ち上がった。

 そのままモニターを背に歩き出す。

 

 

「彼らのような面白い存在がいると思われる異世界に赴き実験材料を手に入れ、そして――ククク、ハハハハハ!!」

 

 

 男の笑い声は施設に木霊するのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 そんな明確な悪が動き出す中で――別の世界とある場所では戦闘が行われていた。

 

 

「くそっ! 何なんだよ!」

 

 

 一人の魔導師がそう言いながら魔力弾を連射する。

 モクモクと煙が上がる中で魔導師は着地する。

 やったか? そう思っていると。

 

 

「……」

 

「なっ……」

 

 

 出てきた敵は無傷だった。

 それどころかよく分からない力で風を起こし煙を吹き飛ばす。

 恐ろしい、魔導師は心からそう思った。

 さっきからこの敵は表情一つ変えずに魔導師の攻撃を防いでいる。

 いや、防いでいるという表現は正しくないかもしれない。

 敵は攻撃を防ぐことなくその身に受けていて、その上で無傷なのだ。

 こんな人間がいるなんて聞いた事がない。

 確かに鍛えているようであり屈強な肉体をしているが見た目は子供だと言うのに。

 心の中で膨れ上がる恐怖を押しつぶして、魔導師は切り札を使う。

 

 

「出て来い!!」

 

 

 その声に応じて現れたのは――赤い竜だった。

 赤竜召喚、これが魔導師の切り札だった。

 赤い竜は口に炎を溜めて吐き出そうとする、が。

 

 

「ウォアアアアアッ!!」

 

 

 今まで静かだった敵が突然雄たけびを上げた。

 すると姿が消える。

 

 

「ど、どこに――!?」

 

 

 周囲をキョロキョロと探し回っていると凄まじい衝撃と音が響き渡った。

 その音がした方向には竜がいるはずだ、男は急いで竜に眼を向ける。

 そして次、魔導師の眼に映った光景は敵が見れば分かるほどに重たい拳を竜に叩き込んでいる姿だった。

 竜はその一撃で倒れ込む。

 完全に気を失ったのだろう、それから間もなく竜は魔法陣の中に消えていった。

 ――信じられない。

 こんな子供が一撃で、たったの一撃で竜を倒したというのだから。

 現実を直視出来ないでいると敵はその手の平を魔導師に向け光弾を作り出していた。

 

 

「ひっ……」

 

「……ごめんなさい」

 

 

 その言葉を聞くと同時に光弾は放たれ爆発、魔導師の意識はそこで途切れた。

 

 

 

「う、うああ……」

 

 

 桃色の髪をした女性が一冊の本を手に持っている。

 気絶したはずの魔導師は苦しみだし、やがて終わったのか、パタリと動かなくなった。

 

 

「……死んだ、のか?」

 

 

 傍にいた、さっきまで魔導師と戦っていた腰に緑色の毛皮を巻いた少年が語り掛ける。

 だが桃色の髪の女性は首を横に振った。

 

 

「心配するな、魔力をいただいたにすぎん。死んではいない、気絶してるだけだ」

 

「そうか……」

 

 

 それを聞くと少年は少しだけ安心したような顔を見せる。

 さらに少年は問いかける。

 

 

「これで……これを続けてれば治るのか?」

 

「あぁきっとな」

 

「……なら、いい」

 

 

 髪が少し長めの少年はそう言うと歩き出す。

 それを追う様に桃色の髪の女性も歩き出した。

 二人は隣り合いながらも会話を続ける。

 

 

「私達は何としてもこの闇の書のページを埋めなくてはならない……こんな事を言うのもあれだが……お前の腕には期待している、これからも頼むぞ」

 

 

 桃色の髪の女性は少年の方を見ながら――その名前を口にした。

 

 

()()()()

 

「分かった」

 

 

 次の瞬間二人の姿は光に包まれ消えていったのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 なのは! まだまだ甘えぞ! おめえの限界はそんなもんか!

 そんなオラ達に忍び寄る影。

 おめえ……なにもんだ?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「日常の崩壊!? 闇夜から現れる襲撃者!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十五 日常の崩壊!? 闇夜から現れる襲撃者!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れてくださった坂本龍馬さんありがとうございます!

 さて二章第二話です。

 其之四十五をどうぞお楽しみください。


 十二月一日。

 その日も悟空となのははいつものように修行をしていた。

 

 

「シュートッ!!」

 

「あめえぞ!」

 

 

 なのはの放つ魔力球を悟空は片手で軽々と弾く。

 だがなのはとて成長している、それぐらいでは終わらない。

 

 

「コントロール! アクセル!」

 

 

 弾かれた魔力球達が軌道を変えスピードを上げて四方八方から悟空に襲い掛かる。

 悟空はその全てを紙一重のところで躱して見せる。

 普通に見ればギリギリでの回避、のように見えるだろう。

 だがその実、悟空には余裕があった。

 何故なら笑みを浮かべつつ冷静に魔力球の軌道を見極めて躱しているのだから。

 

 

「どうした! おめえの力はそんなもんか!」

 

「むぅ……まだだよ!!」

 

 

 なのははそう言うとさらに魔力球の操作に集中する。

 もっと鋭く、もっと速く、イメージしながら操作を続ける。

 ――だが。

 

 

「隙だらけだぞ」

 

「え……あうっ!?」

 

 

 悟空のデコピンがなのはに炸裂した。

 魔力球のコントロールに集中するあまり意識をそちらに向けすぎたのである。

 その間に悟空が魔力球を掻い潜り高速で接近しデコピンを放った、というわけだ。

 

 

「うー……」

 

「なのは、おめえもまだまだあめえな。でも確実に強くはなってっぞ」

 

「……ほんと?」

 

「あぁ、おめえの成長の早さにはオラもびっくりだ。やっぱ才能があんだな、それと毎日頑張ってる証拠だ」

 

 

 悟空はそう言うとニカッと笑う。

 褒められて少し嬉しいのか、なのはもえへへと笑みを見せる。

 今日も二人の過ごす日常は平和だった。

 それでも尚、修行を続けているのは――。

 

 

(まだまだ強くなりてえ……)

 

(成り行きで手にした魔法の力……どうせなら、ちゃんと使いこなせるようにならないと)

 

 

 そんな思いがあるからだったりする。

 二人の思いはまったく違うが何にしても強くなりたいという思いは共通していた。

 だから二人は毎日のように修行を重ねている。

 

 

「よし、そんじゃ休憩だ!」

 

「うん!」

 

 

 そして時は流れて夜。

 なのはは一人、風呂で湯に浸かる。

 一日の疲れが溶け出していくような心地良い感覚を感じながらふぅと息を吐く。

 

 

(今日も疲れたけど……)

 

 

 最初になのはの脳裏を過ぎるのは修行中の悟空の姿と言葉だった。

 叱られもしたしデコピンをされたりもしたが褒められもした。

 それが嬉しくて、思わずクスリと笑ってしまう。

 そして同時に思う。

 

 

(やっぱり本当はずっと年上ってだけあるよね……私に指導してくれる時の悟空くん凄く大人っぽいもの)

 

 

 なのははそこまで考えてため息を吐く。

 あのジュエルシードを巡る戦いから早半年。

 その最終決戦で思わず大好きだと言ってしまったなのはだったが悟空となのはの関係はあれ以降特に進展はない。

 無理もないとも思う。

 悟空の精神年齢を考えるとなのはは孫に等しい年齢だろうし、そもそも彼は鈍感だ。

 それに――恐らく前の世界でいたという家族、特に妻の事だって忘れられないのだろうから。

 

 

(分かってはいたけど険しい道のりになりそう……長期戦も覚悟しないとだよね)

 

 

 そんな事を考えつつ前向きに頑張っていこうと自分を奮い立たせるなのは。

 その眼には決意の炎が燃えていた。

 さらに次、脳裏に浮かぶのはフェイトやベジータの姿。

 

 

(そういえばもうちょっとで裁判終わるんだよね……)

 

 

 そうなったらまた会えるようになるのだろうか。

 そう思うとワクワクが止まらない。

 それに加えて嬉しさもある、やっとあの事件からフェイト達が解放されるという嬉しさが。

 

 

(次会った時びっくりさせるためにも修行、頑張らないとね)

 

 

 なんてちょっとした悪戯心を持ちつつ、なのはは風呂から上がるのだった。

 

 

 

 ――だがそんななのは達に忍び寄る存在は確かにいた。

 次の日、十二月二日。

 その日の深夜の事だった。

 

 

「……」

 

「なのはー、おめえまだ勉強してんのか?」

 

「うん、明日提出の宿題するのすっかり忘れてたから……」

 

「しょうがねえなぁ、早く終わらせて早く寝ねえとまた寝坊――!」

 

「……悟空くん?」

 

 

 悟空の目つきが鋭くなった。

 その眼を見たのは半年ぶりかもしれない。

 これは――何か良くない事が起こる合図だとなのはは察知した。

 次の瞬間。

 

 

「これ……結界!?」

 

 

 なのはは違和感に包まれたような感覚を覚えた。

 間違いない、結界だ、そう判断する。

 それと同時に悟空が言う。

 

 

「なのは! 結構強めの気が近づいてきてっぞ、どうする?」

 

「……ここで戦うわけにはいかないよね、近づいてきてるって事は向こうはこっちの位置を把握してるって事……だったら外に出て見晴らしのいい場所に移動、これが一番かな?」

 

「いい判断だな! 行くぞ!」

 

「うん!」

 

 

 こうして二人はすぐに家を飛び出した。

 そして何も言う事なくなのはは悟空に抱き着き、悟空は舞空術で飛び出す。

 言葉に出さずとも通じ合える程度の相互理解がこの半年、ずっと一緒にいた今の二人にはあった。

 飛びながらなのはは悟空に尋ねる。

 

 

「結界に取り込んだって事は狙いは私と悟空くん、なのかな」

 

「いいや、多分おめえだけだぞ。なのは」

 

「え、じゃあどうして悟空くんは結界の中に?」

 

「オラは咄嗟に気でバリアを張ったんだ、だから結界内に残る事が出来た」

 

「そっか……あ、悟空くん! この辺りがいいんじゃないかな」

 

「そうだな……下りっぞ!」

 

 

 悟空となのはが着地したのは高いビルの上だった。

 結界がある以上、いくら悟空が速くても逃げる事は出来ない。

 ならばどこかで迎え撃つしかないのだ。

 高いビルの屋上、ここなら気を探知出来ないなのはでも戦いやすいだろう。

 と、その時だ。

 

 

「「!!」」

 

 

 襲来するのは赤い魔力球。

 それは凄まじい速度でなのはに向かって一直線に迫る。

 その軌道からして恐らく誘導弾だろう。

 ともなれば避けるのは厳しい。

 

 

「なのは!」

 

「大丈夫……伊達に毎日特訓してきたわけじゃないんだから!」

 

 

 なのははそう言って右手を前に出した。

 と同時に魔法陣型の防御壁――ラウンドシールドを生成する。

 ぶつかり合う二つの魔力。

 衝撃が周囲に伝わる中でなのはは背後に気配を感じた。

 

 

「テートリヒ・シュラーク!」

 

 

 その気配の正体はハンマーを持った赤い服を着た少女だった。

 少女はそのままハンマーを思いっきりなのは目掛けて振るう。

 だがなのはは振り向かない。

 何故ならここには――。

 

 

「……!?」

 

「おめえ……何もんだ?」

 

 

 悟空がいるのだから。

 悟空はなのはを庇うように背後に立ち片手で少女のハンマーを受け止めていた。

 少女は眼を見開きハンマーを引っ張るがビクともしない。

 それだけ腕力の差は絶大だった。

 一方でなのはを襲っていた魔力弾も勢いを失い消える。

 悟空となのはは並び立ち少女と相対した。

 

 

「いきなり襲われるような覚えはないんだけど……一体貴女は誰? 何でこんな事するの?」

 

「……」

 

 

 少女はそんななのはの質問を無視して悟空に眼をやる。

 そして口を開いた。

 

 

「お前……一体何なんだ? 結界に取り込んだのは一人のはず……」

 

「質問してんのはこっちだぞぉ、おめえ人にいきなり襲い掛かるなんて危ねえじゃねえか。このハンマーもオラが止めてなかったらなのはに当たってたかもしれねえんだぞ?」

 

「うるせえ! 倒すつもりでやってんだから当然だ――!!」

 

「おめえにも何か事情があんのかもしれねえ、けどよ。なのはを傷つけようってんなら容赦はしねえぞ」

 

 

 悟空の発する威圧感に少女は言葉を無くす。

 こんな威圧感は感じた事がなかった。

 だがそんな恐怖を振り払い少女は力任せにハンマーを引っ張り距離を取る。

 

 

「あたしにはやらなきゃならねえ事がある……邪魔すんなあああああっ!!」

 

「だからそのやらなきゃいけない事を聞いてるんだってば!」

 

「しょうがねえなぁ……気は進まねえけどかかってくんなら相手になってやっぞ!」

 

 

 少女の振るうハンマーが再び襲い掛かる。

 それを二人は跳ぶ事で避ける。

 さらになのははレイジングハートを握り――。

 

 

「セットアップ!」

 

 

 バリアジャケットを身に纏いフライアーフィンで空を飛んだ。

 対し悟空も舞空術で空を飛び回りつつ一気に少女に迫る。

 

 

「チィッ!!」

 

 

 悟空の接近を目視した少女はどこからか鉄球のようなものを四つ取り出しそれを宙に放り投げる。

 そして勢いよくその鉄球のようなものをハンマーで打った。

 打たれた球は魔力を帯びてそれぞれが別々の軌道で悟空に迫る。

 が、悟空は冷静だった。

 

 

「よっ! ほっ! だりゃあっ!!」

 

「なっ……」

 

 

 悟空はその全てを軽々と弾いて見せたのである。

 唖然としている少女に悟空が迫る。

 少女が我に返った時には――既に遅かった。

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

「ぐぅっ!?」

 

 

 悟空の蹴りが少女を捉え、少女の小さな体は吹き飛び近くのビルに激突する。

 と、ここでなのはが悟空の隣にやってきた。

 

 

「悟空くん、流石にやりすぎなんじゃ……」

 

「いいや、あいつの気はあんまり減ってねえ……ダメージはあんまり入ってない証拠だ、結構丈夫みてえだな」

 

「そ、そういう意味じゃなくて……」

 

「悪りい、なのは。でも仕掛けてきたんは向こうだ……話が通じねえならこれで黙ってもらうしかねえんだ」

 

 

 悟空がそう言うと同時にビルから少女が飛び出してくる。

 その眼には怒りの炎が燃えていた。

 少女は叫びながら迫る。

 

 

「このやろおおおおおっ!! グラーフアイゼン、カードリッジロード!!」

 

 

 グラーフアイゼンと呼ばれたハンマーが形を変える。

 ハンマーに取り付けられたロケットが勢いよく噴射し少女の体はグルグルと回転する。

 そのまま少女は悟空となのはに接近していく。

 

 

「ラケーテン……ハンマアアアアアッ!!」

 

「こいつは……なのは、離れてろ!」

 

 

 悟空はそう言ってハンマーを受け止めにかかった。

 凄まじい衝撃が悟空の体を突き抜ける。

 

 

「ぐ、ぐぎぎ……!」

 

「このまま……ぶっ飛ばす!!」

 

 

 噴射がさらに強くなる。

 悟空の体が僅かながら押されていく。

 凄まじいパワーだった。

 その小さな体からは想像出来ないほどの重い一撃。

 だが。

 

 

「だあああああっ!!」

 

「そんな……!?」

 

 

 それは悟空にも言える事だ。

 悟空は気を開放し、白いオーラを吹き出しながらそのハンマーの勢いを止めた。

 驚く少女。

 そこへ悟空は片手を開き少女に向ける。

 

 

「はぁっ!!」

 

「うあっ!?」

 

 

 放たれた気弾が爆発を起こし少女を吹き飛ばした。

 さらに追撃に入る悟空。

 

 

「悪りいけんど……とりあえず気絶させて捕まえてから話を聞かせてもらうぞ……かぁーめぇーはぁーめぇー……!」

 

 

 青白い光が溜まっていく。

 少女は急いで防御態勢に入る。

 だが恐らく防げないだろう、それだけの強さが悟空のかめはめ波にはある。

 そして溜まった気を放出しようとした瞬間!

 

 

「ウオアアアアアッ!!」

 

「なっ……うあああああっ!?」

 

「え……悟空くん!?」

 

 

 何かが雄たけびを上げながら飛んできて悟空を吹き飛ばした。

 悟空は勢いよく地面に墜落。

 なのはも悟空を追い地上に降りる。

 そして舞い上がる砂煙の中で悟空を見つけ抱きかかえた。

 

 

「悟空くん、大丈夫!?」

 

「あ、あぁ、いちち……今のは……今感じた気は……!」

 

 

 悟空は気で砂煙を吹き飛ばし空に眼を向ける。

 そこにいたのは――少し長めの黒髪に黒のシャツ、紺のズボンに腰には緑色の毛皮を巻いた男の子。

 間違いないと感じた。

 彼の幼い頃の姿は見た事が無かったが面影は確かにある。

 

 

「おめえは……」

 

「……」

 

「ブロリー!?」

 

「……カカロット」

 

 

 そう、彼こそはブロリー。

 悟空達と同世代のサイヤ人にしてかつて悟空とベジータと激戦を繰り広げた最強の戦士が悟空達の前に姿を現したのだ。




 オッス! オラ、悟空!

 ブロリー、おめえもこっちに来てたんか!

 それにおめえ、オラ達を襲ってきたそいつの仲間なんか!?

 参ったな……ブロリーとの戦いはワクワクはすっけど楽しんでる余裕はねえかもしれねえ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「サイヤの血の宿命(さだめ)!? 激突、悟空VS(たい)ブロリー!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十六 サイヤの血の宿命(さだめ)!? 激突、悟空VS(たい)ブロリー!

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 さて、いよいよブロリー本格始動です!

 其之四十六をどうぞ!


「ブロリーって……?」

 

「オラと同じサイヤ人のブロリーだ、あの姿、間違いねえ」

 

「って事はあの人も……!」

 

「あぁ……あいつもこっちに来てたんだな」

 

 

 悟空は立ち上がりなのはと共にゆっくりと浮かぶ。

 そして先ほど吹き飛ばされた少女もすぐに飛んできてブロリーの横に並んだ。

 

 

「ブロリー、お前なんで……」

 

「助けに来た」

 

「……まったくお節介な奴だな」

 

 

 その会話だけで誰にでも分かる。

 襲撃者の少女とブロリー、二人は仲間であると。

 そんな二人と悟空となのはは相対する。

 

 

「ブロリー……おめえもこっちに来てたんだな」

 

「カカロット……久しぶり」

 

「? ブロリー、お前そいつと知り合いか?」

 

「あぁ俺の友達」

 

「そう、か……」

 

 

 それを聞いた少女は少々暗い表情を見せた。

 申し訳なさそうな顔、だけど今はそんな気持ちを奥に押し込む。

 

 

「だけど今は敵だ……分かってんだろうな」

 

「分かってる……俺達の目的を邪魔する奴は……倒す!」

 

 

 そう言うとブロリーは白いオーラを吹き出させ目つきを鋭くし悟空を睨んだ。

 悟空からすれば信じられない光景である。

 あのブロリーが、心優しいブロリーがこちらに明確な敵意を向けるなどいつ以来だろうか。

 だが同時にワクワクもしていた。

 これから起こる戦いは間違いなく激闘になると確信していた。

 これも一種のサイヤ人の性だろう。

 しかしその前にこれだけは聞いておく。

 

 

「どうしてもやるんか? ブロリー」

 

「……やる!」

 

「そうか……ならオラも全力で相手になっぞ!」

 

 

 悟空も構えを取る。

 睨み合う二人のサイヤ人。

 一方でそうなると必然的になのはもまた赤い服の少女と対峙する。

 

 

「これで二対二……今度こそぶっ飛ばす!」

 

「そう簡単にはいかないよ……襲ってきた理由、何としても教えてもらうから!」

 

 

 流れる沈黙。

 ピリピリと肌を刺激する緊張感のある空気。

 暫くの睨み合いが続いた後、誰からともなく目の前の相手へと飛び出した。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「ウオオオオオッ!!」

 

 

 悟空とブロリーの拳がぶつかり合う。

 ギリギリと音を立てて二つのパワーが衝突する。

 だが。

 

 

「くっ……!」

 

「ウオアアアアアッ!!」

 

 

 即座に拳を引っ込める悟空。

 パワーではブロリーの方が勝っていた。

 そこにすかさず放たれるブロリーのラッシュ。

 悟空はそれをギリギリで躱しながら時に受け流す。

 しかし、そう上手くはいかない。

 

 

「ウアアアアアッ!!」

 

「ぐ……うわあああああっ!?」

 

 

 ブロリーの拳が一発、悟空のボディにヒットし遠くへと吹き飛ばす。

 悟空は気を使い急ブレーキをかけて何とか体勢を立て直すが既に目の前にブロリーは迫っていた。

 

 

「……!」

 

 

 速い。

 それが最初に抱いた感想だった。

 そして受け流す度に感じるのだが一撃一撃がかなり重くもある。

 パワー、スピード共に今のブロリーは悟空を凌駕していた。

 

 

(やっぱブロリーはすげえ……素のポテンシャルはオラやベジータの上を行く……でもよ)

 

 

 悟空はブロリーのラッシュを何とか受け流しながらニヤリと笑う。

 そう、悟空の限界はこんなもんじゃない。

 悟空はブロリーの攻撃を受け流しつつ隙を見てその胴体に蹴りを叩き込んだ。

 

 

「ぐっ……」

 

 

 僅かに表情を歪ませ吹き飛ぶブロリー。

 そこに今度は悟空がラッシュを叩き込む。

 

 

「うりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「ぐ、うぅ……!」

 

 

 ブロリーはそれを防ぐ事に集中するため先ほどのように攻撃には移れない。

 攻撃の威力もスピードもブロリーは類まれなるものを持っているが細かなテクニックばかりは悟空には大きく劣っていた。

 なので悟空はそこを利用する。

 

 

「だっ!!」

 

「うっ……!?」

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!」

 

 

 気合い砲を使いブロリーを僅かに怯ませた後にラッシュを叩き込んでいく。

 ブロリーは中々自分のペースに持ち込む事が出来ない。

 対し悟空は確実に流れを掴み、それが相手側に流れないように常に自分に有利な状況を作り出し攻撃を続ける。

 こうしてあっと言う間に形勢は逆転。

 悟空が終始ペースを掴みブロリーを圧倒していた。

 ――だがここで終わるようなブロリーではない。

 

 

「ウウ……アアアアアアッ!!」

 

「いっ!?」

 

 

 突如としてブロリーが叫ぶと同時に周囲に気による爆発が発生した。

 爆発波、それを悟空は急いで距離を取って何とか避ける。

 煙の中からゆっくりと現れるブロリー。

 暫しの睨み合い、その後ブロリーはゆっくりと口を開く。

 

 

「やっぱりカカロットは強い……」

 

「へへっ、まぁな。これでも毎日修行してるしよ……おめえも修行してたんか? ブロリー」

 

「……俺は殆どしてない、戦う事はないと思ってたから」

 

「そうか……勿体ねえけど、まぁそれもおめえらしいかもな」

 

「だけどそんな気持ちじゃ駄目だと分かった、カカロットに勝つためには今の俺じゃ駄目だ、この力を使わなきゃ勝てない……!」

 

 

 ブロリーはそう言うと体に力を込めていく。

 ブワッと髪が逆立ち、筋肉は膨れ上がり、瞳は金色に輝く。

 あれは通称怒り形態、サイヤ人の持つ大猿の力を巨大化する事も月を見る事もなく活用できるようにしたブロリー独自の変身だ。

 悟空はその姿を見てブロリーと初めて出会った氷の大陸での戦いを思い出していた。

 あの時は制御出来ずにただただ暴れ回っていたが――今のブロリーは違う。

 

 

「ウウゥゥゥ……カカロット、行くぞ!」

 

 

 今はある程度ならその戦闘衝動、暴走を抑える事が出来る。

 理性を保って力を振るえるようになったのだ。

 これは前の世界で悟空やベジータと共に修行した成果だったりする。

 だが今はそんな事を言ってる場合ではない。

 その力の矛先がこちらに向かっているのは確かなのだ。

 悟空は構えを取る、その顔は真剣そのものだった。

 そして次の瞬間。

 

 

「なっ……」

 

 

 ブロリーが凄まじい速度で悟空に突撃。

 悟空の頭を鷲づかみにし、そのまま近くのビルに突っ込もうとしていた。

 

 

(やべえ!)

 

 

 悟空はそう思い手の平に気を集中。

 気弾をブロリーの顔面目掛けて放つ。

 結果、ブロリーの顔面に直撃した気弾は爆発を起こすがブロリーの勢いは少しも衰えない。

 そのままブロリーと悟空はビルに直撃、ビルを貫いて今度は地面に突っ込んでいく。

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 ズガガガガッと音を立て地面に叩きつけられる悟空。

 ブロリーは急ブレーキをかけると悟空を振り回し別のビルに投げつけた。

 さらにそこへ追撃の気弾を放つ!

 気弾はビルに直撃し爆発。

 ビルは崩れ落ち悟空はその下に生き埋めになってしまう。

 が、サイヤ人の屈強な肉体はこの程度でどうこうなるものではない。

 現に瓦礫の山からは悟空が飛び出してきて、あちこちに傷を負いながらも元気な姿を見せている。

 

 

「いちち……ブロリー、おめえやるな……ならこっちも切り札を使わせてもらうぞ!」

 

 

 悟空はそう言って気を溜め込み力を一気に解き放っていく。

 ゾワリと髪が逆立ち、髪の毛が点滅する。

 

 

「ぐぎぎぎ……だらあああああっ!!」

 

 

 悟空の叫びと共に髪の毛は完全に逆立ち、髪色は金にオーラも黄金に輝く超サイヤ人への変身が完了する。

 変身が完了した悟空は即座に構えを取った。

 

 

「待たせたな……ここからはオラもおめえも本領発揮だ、思いっきりやんぞ! ブロリー!」

 

「ウオアアアアアッ!!」

 

 

 二人は同時に駆け出す。

 互いの拳がぶつかり合う。

 二つの力はせめぎ合い、行き場を失った力は爆発を起こす。

 煙の中から飛び出す悟空とブロリー。

 互いに上空へと昇って行き何度も何度もぶつかり合っては離れてを繰り返す。

 ブロリーのラッシュを避けつつ悟空は反撃に転じる。

 拳を思いっきり突き出し殴り飛ばす。

 

 

「ぐうっ……!?」

 

「でえりゃあああああっ!!」

 

 

 悟空は一気に距離を詰めて拳や蹴りを連続で放つ。

 ブロリーはそれを腕を交差させて防御態勢となり防いでいく。

 だがじわじわとその体は後ろに下がっていった。

 とは言ってもただでやられるブロリーではない。

 咄嗟に防御を解除したブロリー、よく見ると口を大きく開けていた。

 

 

「やべえ!!」

 

「アアアアアッ!!」

 

「っ……波ぁっ!!」

 

 

 ブロリーが口から放ったのは気功波。

 悟空は咄嗟にかめはめ波を繰り出してその気功波を相殺する。

 爆発の煙がモクモクと立ち込める中、悟空はすぐに気の探知を行う。

 ブロリーの位置を探るために。

 その結果割り出したブロリーの位置は――正面。

 

 

「げっ!?」

 

 

 小細工などない。

 純粋なスピードとパワーで真正面から突っ込んできていた。

 悟空は防御態勢を取る。

 そこにブロリーは思いっきり拳を突き出した!

 

 

「ウオオオオアアアアアッ!!」

 

「ぐっ……う……!」

 

 

 吹き飛ぶ悟空の体。

 そこに容赦のない追撃が入る。

 ブロリーは両手に気を溜めて気弾を二発、悟空が吹っ飛んでいった方向に放った。

 大きな爆発が起き、大知が抉れる。

 だがブロリーはまだ気を抜かない。

 気で分かる、悟空はまだまだ元気であると。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 悟空の叫びと同時に黄金のオーラが勢いよく吹き出し周囲を漂っていた煙を吹き飛ばす。

 案の定悟空は健在だった。

 もっともダメージは受けているようだったが。

 

 

「参っちまうな……オラ達と同じで弱くはなってっけど、とんでもねえパワーだ」

 

 

 そんな事を言いつつ悟空はニヤリと笑う。

 それは戦いを心から楽しんでいる、そんな笑みだった。

 対しブロリーに笑みはない、衝動を抑えるのに必死なためか、それとも別の理由があるからか――それは定かではないが必死に歯を食いしばっている。

 悟空対ブロリー、この戦いはまだまだ終わらない。




 オッス! オラ、悟空!

 やるじゃねえか、ブロリー!

 でもよ、オラだって負けねえ――!?

 なのは……? ちくしょう、ちょっとやべえ状況かもしれねえな!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「襲撃者強し! 倒れゆく戦士!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十七 襲撃者強し! 倒れゆく戦士!

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 さて戦いが激化する其之四十七をどうぞ!


「だありゃあああああっ!!」

 

「ウアアアアアッ!!」

 

 

 悟空とブロリーが激突する。

 それだけで大気が振動し地面も揺れ、衝撃で煙が上がり、地面は砕ける。

 サイヤ人同士の戦いにより結界内部はどんどんと破壊されていく。

 それを見ていたなのはと襲撃者は。

 

 

(超サイヤ人の悟空くんとあれだけ戦えるなんて……あのブロリーって人やっぱり強いんだ)

 

(ブロリーのあの姿は初めてみるけど……とんでもないな、ブロリーもあいつも……だけど今は目の前の敵に集中だ)

 

 

 襲撃者の少女は鉄球のようなものを再び四つ取り出すとそれを一斉にハンマーで打ちだし魔力を纏わせる。

 対しなのはは空中を自在に飛び回り避けつつ何とか逃げ切ろうとするが敵が放ったのは誘導弾。

 どこまでも追ってくる。

 ならばとなのはは急ブレーキ。

 プロテクションを発動し四つの球を受けきる。

 爆発が発生するがなのはは無傷。

 それを見て襲撃者の少女は悔しそうに舌打ちした。

 

 

(かなり固い奴だ……防御特化の魔導師ってところか、弾数重視の攻撃は効きそうにねえ)

 

「……もう終わり? だったらお話し聞かせてほしいんだけど」

 

「なめんな! まだまだこれからだ……それにお前なんかと話す事は何もないんだよ!」

 

 

 そう言って襲撃者の少女はなのはに迫っていった。

 なのはもまた少々残念そうにしながらレイジングハートを構える。

 こちらもこちらで激闘は続いていた。

 

 

 

「だだだだだっ、だりゃあっ!!」

 

「ぐううううう……ウラアアアアアッ!!」

 

 

 重たい一撃一撃を悟空とブロリーは高速で放つ。

 ぶつかりあう二人の攻撃。

 その余波は周囲に伝わるほどだった。

 激しい攻撃の打ち合い、どちらも一歩も退く事なく相手に攻撃を叩き込もうと拳や蹴りを放ち続ける。

 やがて――その攻撃が互いの攻撃をすり抜けヒットする。

 

 

「がっ……!」

 

「ぬぅ……っ!」

 

 

 互いの拳が相手の頬にめり込む。

 衝撃でそれぞれ反対方向に吹き飛ぶ悟空とブロリー。

 だが即座に体勢を立て直し口から流れる血を拭った。

 

 

「やっぱおめえは強ええや……一瞬たりとも気を抜けねえ」

 

「ウゥゥゥ……カカロットも強い、でも……」

 

「あぁ負けねえ、負けるわけにはいかねえんだ! そんでもって答えてもらうぞ、おめえ達の目的は何かを!」

 

「言えない……言うわけにはいかない、そう約束した!」

 

 

 再び二人が目の前の相手目掛けて突撃する。

 二人のサイヤ人は拳と拳をぶつけ合う。

 パワーではブロリーが勝りスピードとテクニックでは悟空が勝る。

 そんな二人の攻防は一進一退だった。

 どちらかが押せば、押された方が押し返す。

 

 

「ぐっ……だらあっ!!」

 

「ぎっ……ウアアアアアッ!!」

 

 

 雄たけびを上げながら殴り合い、蹴り合いは続く。

 普通に打ちあっていてはパワーで劣る悟空は分が悪い。

 故に悟空は時に攻撃を受け流したり、他にも。

 

 

「はぁっ!!」

 

「ぐうぅ……」

 

 

 回し蹴りでブロリーを吹き飛ばしてから悟空は両掌に気を溜める。

 そして体勢を立て直すと同時に連続して気弾を放った。

 勢いよく放たれる気弾は次々にブロリーに直撃し爆発を起こしていく。

 そのまま勢いよく近くの建物に叩きつけられるブロリー、それでも尚、気弾の勢いは止まらない。

 

 

「だあああああっ!!」

 

「ぐ……くっ……!」

 

 

 ブロリーは歯を食いしばりながら耐える。

 だが一向に気弾は止まない。

 このままではまずい、そう考えたブロリーは体中の気を圧縮。

 それを一気に外に排出する。

 

 

「ガアアアアアッ!!」

 

 

 爆発波、体内の気を体外に一気に放出する事で文字通り爆発のような現象を起こす技。

 それによりブロリーは悟空が放つ気弾を掻き消したのだ。

 

 

「ハァ……ハァ……ちぇっ……やっぱりこれじゃ決まらねえか」

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

 

 双方が再び睨み合う。

 並大抵の攻撃では目の前の相手を倒す事は出来ない。

 ならば最大の一撃を叩き込むしかあるまい。

 互いに構えを取る。

 今放てる最大の一撃を放つために。

 だがその時。

 

 

「……!?」

 

 

 ビルに何かが突っ込む音がした。

 と同時に一つの気が小さくなるのを感じる。

 

 

「なのは……!?」

 

 

 

 少し時を遡る。

 悟空とブロリーが激闘を繰り広げる中でなのはと襲撃者もまた一進一退の攻防を繰り広げていた。

 と言ってもこちらは明確に優劣が見えていたが。

 優勢なのは――襲撃者の方だった。

 

 

(この子……強い! 一撃一撃が重い! 悟空くんと一緒に修行してたから私も強くなってるはずなのに……それにあの妙なシステム……)

 

 

 劣勢に立たされながらもなのはは相手を冷静に分析する。

 小柄な体からは想像出来ないパワーも脅威だがやはり一番は己のデバイスの出力を上げると思われるカードリッジの存在だった。

 いくら防御特化のなのはでも、あのカードリッジで強化された一撃を受ければ撃墜されてしまうだろう。

 そう考えるとゾッとする。

 だからこそ距離を取りたいところなのだが。

 

 

「シュワルベフリーゲン!」

 

 

 相手が放つのは大型の魔力弾。

 どうやら大きな単発の魔力弾を放つか、複数個の魔力弾を放つか選択できるタイプの魔法らしい。

 厄介な事にこの相手、接近戦も遠距離戦もこなせるオールラウンダーのようだった。

 なのはは急いで縦横無尽に空を飛び回り逃げようとするが魔力弾はどこまでも追跡してくる。

 

 

(駄目、逃げきれない……でもあれを防いだら動きが止まって別方向から攻撃される……)

 

 

 ならばどうするか、どうにか動きを止めずにあの魔力弾の対処をするしかない。

 なのはは自らの周囲に魔力球を生成する。

 そしてそれを――放つ!

 

 

「シュートッ!!」

 

 

 四発全てが魔力弾に迫っていく。

 そして直撃と同時に爆発を起こした。

 だがなのはの表情は晴れない。

 

 

(四発当ててやっと一発止められる……パワーに差がありすぎる!)

 

 

 そんなことを考えている内に背後に感じる気配。

 なのはは急いで振り返りつつラウンドシールドを生成する。

 

 

「テートリヒ・シュラークッ!!」

 

 

 相手のハンマー、グラーフアイゼンとラウンドシールドがぶつかりあう。

 拮抗する力と力。

 それも長くは続かなかった。

 

 

「……っ!」

 

 

 ピシリとラウンドシールドにヒビが入る。

 それに驚くのも束の間、ラウンドシールドは破壊された。

 

 

「きゃあああああっ!?」

 

 

 衝撃で吹き飛ぶなのは。

 それでも何とか体勢を立て直す。

 しかし相手も既に追撃の構えに入っていた。

 

 

「カードリッジロード!」

 

 

 再びグラーフアイゼンが形を変える。

 まずい、単純にそう思った。

 相手との距離を考えても避けきれそうにない。

 ならば――こういう時こそ攻撃は最大の防御となる。

 

 

「くらいやが――!?」

 

「ディバイン……!」

 

 

 襲撃者の少女の視界には桜色の光が広がっていた。

 なのははこの短時間でチャージを完了させていたのである。

 そしてその光は襲撃者に向かって解き放たれる。

 

 

「バスタアアアアアッ!!」

 

「ぐ……あああああっ!?」

 

 

 襲撃者の少女の体が砲撃に飲み込まれる。

 そのまま砲撃は空高くへと昇って行き消えていった。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 

 なのはは息を切らしながら砲撃の光が飛んでいった方向を見つめる。

 完全に勘だったがこれぐらいでは倒せないと、そう思っていた。

 そんな容易い相手ではない事は今まで戦ってたなのはだからこそ分かる。

 恐らくはもうちょっとしたらまたやって来るだろう。

 その時のためにありったけの魔力を溜めておく。

 なのはからすれば、あんまり乱暴な真似はしたくないのだが向こうが襲ってきた理由を話さず攻撃してくるのならこれしか手立てはない。

 それから数秒して。

 

 

「テメエエエエエッ!!」

 

 

 案の定襲撃者の少女は飛んできた。

 帽子は吹き飛んでおり、その表情は怒りを前面に押し出している。

 そしてその手には変形したままのグラーフアイゼン。

 勢いよくロケット噴射をしながらグルグルと回転する襲撃者の少女。

 

 

「こいつでぶっ潰す! ラケーテンハンマアアアアアッ!!」

 

 

 迫りくる巨大なハンマー、なのははそんな少女目掛けてありったけの魔力を込めてレイジングハートを向ける。

 

 

「ディバイン……バスタアアアアア!!」

 

「なめんな! その程度の砲撃魔法でラケーテンハンマーが止まるわけねえだろ!」

 

 

 激突するディバインバスターとラケーテンハンマー。

 押しているのは圧倒的にラケーテンハンマーの方だった。

 だが、なのはは諦めない。

 

 

「ぐ、く……っ」

 

 

 なのはは認めざるを得ない、魔導師としての実力が自分の方が劣っていると。

 だからと言って負けを認めるつもりはないが。

 何故なら諦めない、その大事さを、その思いからくる強さをなのはは知っている。

 だからこそ、このディバインバスターにありったけの力を込める。

 しかし状況は一向に良くならない。

 ディバインバスターがどんどんと裂かれ、ハンマーが迫って来る。

 

 

「うあああああ!!」

 

 

 なのははさらに出力を上げた。

 ――が、限界は訪れる。

 遂にディバインバスターは掻き消され少女のラケーテンハンマーがなのはに迫る。

 対しなのはは即座にラウンドシールドを展開、何とかラケーテンハンマーを受け止めるのだが、それも粉砕される。

 

 

「きゃあああああっ!?」

 

 

 グラーフアイゼンはなのはを直撃。

 衝撃でなのはは吹き飛ばされ近くのビルに勢いよく突っ込んだ。

 だが襲撃者の少女は舌打ちする。

 

 

(チッ……浅い!)

 

 

 なのはのディバインバスターとラウンドシールド、それによりラケーテンハンマーの威力は想定よりも遥かに落ちていた。

 つまり今の一撃、勝負を決するほどの一撃にはなり得なかったのである。

 少女はなのはを追ってビルに突撃する。

 それを察知した悟空はすぐになのはのもとに向かおうとするのだが。

 

 

「なのは! ……ぐっ!?」

 

「……いかせない!」

 

 

 ブロリーに背後からガッチリと捕まってしまい向かう事が出来なかった。

 一瞬でも目を離し背を見せてしまったが故の結果だった。

 

 

「ち、ちくしょう……! ブロリー、離してくれ!!」

 

「出来ない……邪魔はさせない!」

 

「ぐくっ……ぎぎぎぎぎっ」

 

 

 悟空は足掻く、だがブロリーのパワーから抜け出すのは至難の技だった。

 一方でなのはは。

 

 

「う……」

 

 

 ゆっくりと眼を開ける。

 そこには一歩、また一歩と近づいてくる襲撃者の少女の姿があった。

 

 

(体はまだ動く、けど……)

 

 

 ダメージは中々に深刻だった。

 何とか動こうとする、が体の至るところが痛い。

 息も苦しいし魔力も残り少ない。

 勝機は――薄かった。

 

 

(悔しいけど……このままじゃ勝てない、どうすれば……)

 

 

 なのはは考える。

 まだ諦めてはいなかった。

 何とか攻略の糸口を探る。

 そしてそんな諦めの悪い者にこそ――救いは訪れる。

 

 

「え……?」

 

「なんだ……!?」

 

 

 なのはと襲撃者の少女は驚く。

 突然足元に魔法陣が発生、光が放たれ中からは三つの影が現れた。

 

 

「なのは、大丈夫!?」

 

 

 一人はユーノ・スクライア。

 悟空やなのはの頼れる友達。

 そして残りの二人は――。

 

 

「……仲間か?」

 

「フン、どうだかな。少なくとも貴様の味方でないのは確かだ」

 

「私達は……仲間じゃない、友達だ」

 

 

 誇り高いサイヤ人の王子ベジータとフェイト・テスタロッサ。

 頼れる援軍の到着の瞬間だった。




 オッス! オラ、悟空!

 ベジータ、フェイト、アルフ! 来てくれたんか!

 けど手は出さねえでくれ、ブロリーの相手はオラがする!

 とは言ったものの、このままじゃやべえな……しょうがねえ、なのはの避難のためにはアレをやるしかねえ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「己の誇りのため、大事な友のため! 帰って来た戦士達!!」

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其之四十八 己の誇りのため、大事な友のため! 帰って来た戦士達!!

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 では其之四十八をどうぞ!


「友達……だと?」

 

「どっちでもいいだろう、とりあえずこれは貴様へのプレゼントだ……受け取れ」

 

「なに……うわあああああっ!?」

 

 

 襲撃者の少女が反応するよりも早くベジータの手のひらからは気弾が放たれた。

 気弾は勢いよく少女に突撃。

 そのまま少女の体をビルの外に押し出して大きな爆発を起こす。

 

 

「ベジータ、容赦ないね……」

 

「襲撃してきたのは向こうだろう、やり返すのは当然だ」

 

「あ、あはは……それよりもなのは、無事?」

 

「う、うん……私なら大丈夫」

 

 

 ユーノの言葉になのははそう言って立とうとするが体はふらついている。

 そんななのはをフェイトは止めた。

 

 

「なのはは少し休んでて、敵は私達で何とかするから」

 

「うん……ごめんね……あ、そうだ! 悟空くんが……」

 

「カカロットの援護にはアルフが向かった、問題は無い……しかしこの気、ブロリーか……敵になられると厄介な奴だ」

 

「ベジータ、ブロリーって……」

 

「詳しい話は後だ、今はこの状況を脱するぞ」

 

「うん、それもそうだね……ユーノ、なのはをお願い」

 

 

 そう告げてフェイトとベジータはビルから飛び出した。

 襲撃者の少女を追うために。

 

 

 

 一方で悟空は未だにブロリーの腕から抜け出せずにいた。

 そこへ突如としてオレンジ色の魔力弾が降り注ぐ。

 

 

「っ!?」

 

「今だ……だりゃあっ!!」

 

 

 ブロリーの注意が僅かに逸れたのを切っ掛けに悟空は気を開放。

 ようやくブロリーの腕から抜け出す事に成功した。

 そんな悟空の横に降り立つ者が一人。

 

 

「悟空、無事かい!?」

 

「あり? おめえアルフじゃねえか! ベジータやフェイト、ユーノの気も感じる……来てくれたんだな」

 

「当然さね」

 

「って事はなのはも無事か……本当に良かったぞぉ」

 

 

 悟空は心から安堵した。

 またスラッグの時のような事にならずに済んだと。

 再度構えを取る悟空。

 その横でアルフも戦闘態勢を取るのだが――。

 

 

「アルフ、悪りいけどこれ以上手は出さないでくれ。ブロリーの相手はオラだ」

 

「……やれやれ、本当にサイヤ人ってのは……分かったよ、でも本当に危なくなったら私も参加するよ?」

 

「しょうがねえなぁ……じゃあそれでいいぞ」

 

 

 会話を終えるとアルフは横に歩いていき座った。

 悟空とブロリーは再度睨み合う。

 

 

「待たせたな、ブロリー……続きやろうぜ!」

 

「ウウゥゥ……カカロット……!」

 

 

 二人はほぼ同じタイミングで地面を蹴り前方に向かって飛んだ。

 腕と腕をぶつけ合う二人のサイヤ人。

 その衝撃は周囲にも伝わるのだった。

 

 

 

「ぐ、く……」

 

 

 襲撃者の少女は建物の壁にめり込んでいた。

 ダメージは想像以上に大きい。

 なのはから受けたダメージもそれなりだったのにベジータの気弾のおかげでさらにダメージは増量。

 はっきり言ってボロボロである。

 それでも彼女は動く、成し遂げなければならない事のために。

 そこへ現れる二つの影。

 と同時にバインドで少女の体は縛られる。

 

 

「ここまでだね……話してもらうよ、全てを」

 

「……! フェイト!」

 

「え……きゃっ!?」

 

 

 不意にベジータはフェイトを突き飛ばす。

 それから間もなく現れた新たな影がベジータ目掛けて剣を振り下ろした。

 ベジータは左手でフェイトを突き飛ばした後、即座に右手に気を集中、振り下ろされた剣を右手で受け止めた。

 ギリギリと音を立てて力が拮抗する。

 そんな中でベジータはフッと笑った。

 

 

「援軍というわけか……そこにいる赤いガキもだが貴様らそれなりの実力者のようだな」

 

「……シグ、ナム?」

 

「よく頑張ったな、ヴィータ。後は我々に任せておけ」

 

 

 シグナムと呼ばれた桃色の髪の剣士は襲撃者の少女――ヴィータにそう言って剣に力を込める。

 それとほぼ同時にベジータに迫る気が一つ。

 

 

「うおおおおおっ!!」

 

「ほう……! もう一人か!」

 

 

 突っ込んできたのはガタイのいい白髪の男性だった。

 ベジータはそんな男の突撃を片手で受け止める。

 男は眼を見開く。

 その小さな体からは想像出来ないパワーを感じたからだ。

 対しベジータは体に力を込める。

 

 

「ぐううううう……だあああああッ!!」

 

 

 瞬間、ベジータの髪は金色に染まった。

 超サイヤ人に変身したのだ。

 そこからの行動は早かった。

 まずは剣を鷲づかみにしてガッチリと掴むと勢い任せに、そして軽々と二人を振り回し投げ飛ばす。

 そこでさらに気弾の連射を行い追撃する。

 

 

「くっ……無事か、ザフィーラ」

 

「ぐう……! 問題ない」

 

 

 シグナムとザフィーラと呼ばれた男性は何とか耐えきり爆発の煙から脱する。

 その間にベジータの隣にフェイトは移動していた。

 

 

「ベジータ、ありがとう」

 

「フン、こういうのは得意分野だ。気にする事はない」

 

 

 それだけの会話を交わして二人は構えを取る。

 数は二対二、数の上では互角の状況。

 だがベジータの顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

「気を抜くなよ、フェイト」

 

「うん!」

 

 

 そう言うと二人は揃って飛び出した。

 前方にいる敵に向かって。

 フェイトはシグナムにベジータはザフィーラに攻撃を仕掛ける。

 当然応戦するシグナムとザフィーラはその攻撃を受け止めた。

 

 

「……!」

 

「なるほど……中々やるじゃないか」

 

 

 受け止められた二人の反応はそれぞれ違った。

 フェイトは驚き、ベジータは感心したような声を漏らす。

 そこから間髪いれずシグナムとザフィーラの反撃が始まる。

 

 

「はぁっ!!」

 

「おおおおおっ!!」

 

「くぅっ……!」

 

「フン……」

 

 

 その反撃を何とか受け止めるフェイトに余裕を持って受けるベジータ。

 さらに攻撃は続く。

 斬撃と打撃が飛び交いベジータとフェイトは回避に専念する。

 が、すぐに状況は動く。

 動かしたのは――シグナムだった。

 

 

「レヴァンティン、カードリッジロード」

 

 

 シグナムの持つ剣――レヴァンティンが炎を纏う。

 そんな剣をしっかりと握りしめシグナムは構える。

 さらにあっという間にフェイトとの間にあった距離を詰めた。

 フェイトはその速さに眼を見開きつつ防御態勢を取る。

 

 

「紫電……一閃!」

 

「くっ……なっ!?」

 

 

 放たれた必殺の一撃、紫電一閃は防御のために突き出したバルディッシュを両断。

 そのままフェイトは威力に負けて吹き飛び近くのビルに突っ込む。

 

 

「フェイト!」

 

「仲間の心配をしている場合か?」

 

「!」

 

 

 シグナムはそう言ってベジータにもレヴァンティンを振るう。

 だがベジータは人差し指と親指で振るわれたレヴァンティンを挟み受け止める。

 これにはシグナムも驚愕する。

 

 

「なに!?」

 

「貴様こそ……優位に立った気分になってる場合か?」

 

「っ!!」

 

 

 レヴァンティンを引こうと思っても動かせない。

 圧倒的パワーにさらに驚愕する中ベジータはもう片方の手に気を溜める。

 その手をシグナムにゆっくりと向けた。

 

 

「くっ……レヴァンティン、私の甲冑を!」

 

 

 避けられないと判断したシグナムは魔力によるバリアを身に纏う。

 その直後に気功波がシグナムを飲み込み吹き飛ばした。

 だがそんなベジータの背後からはザフィーラが襲い掛かる。

 

 

「ぐおおおおおっ!!」

 

「……甘いな」

 

「ぐっ……!?」

 

 

 ベジータはその拳を受け止めてザフィーラを勢いよく殴りつけた。

 痛みによりザフィーラの顔が歪みその体は吹き飛ぶ。

 そこにすかさずベジータは気弾を投げ飛ばした。

 

 

「っ!!」

 

 

 ザフィーラは防御態勢を取る。

 それから数秒もしないうちに気弾は着弾、大きな爆発を起こした。

 ベジータはそれを確認するとフェイトが吹き飛ばされたビルの方へと飛んでいく。

 と、そこにはしっかりと両足で立つフェイトの姿があった。

 

 

「無事のようだな」

 

「うん、私は大丈夫だよ。心配してくれたの?」

 

「……フン、さぁな」

 

「ふふっ」

 

 

 フェイトは少し嬉しそうに笑いながら両断されたバルディッシュに魔力を込める。

 幸いにも斬られたのは持ち手の部分のみ、他の個所もボロボロだが、これなら魔力を流して自己修復をさせる事で直す事が出来る。

 現にフェイトの魔力を流し込んだところバルディッシュの傷はみるみるうちに直った。

 バルディッシュの回復に微笑むフェイト。

 そんなフェイトにベジータは尋ねる。

 

 

「フェイト、貴様はあとどれくらい戦える」

 

「うん……弱音吐くみたいでちょっと嫌だけど長期戦は厳しいかな、あの人達強いから」

 

「……なのはもあの様子じゃ回復は出来ても再戦闘は厳しいだろう、だが向こうも退きはしないはずだ……ならば少々癪ではあるがこちらが退くしかないか」

 

「でも結界があっちゃ外への転送は……」

 

「あんなもの……壊してしまえばいいだろう、隙を見て俺が破壊する」

 

「普通ならこんな巨大な結界壊すなんて無理なんだけど……ベジータなら出来そうだね、分かった。アルフにも連絡入れておくね」

 

「あぁ頼むぞ」

 

 

 そうこうしているうちに上空に感じる気配。

 ベジータとフェイトは頷き合うとゆっくりと上昇していった。

 そこには傷を負ったとはいえまだまだ戦えそうなシグナムとザフィーラの姿。

 そんな二人にベジータは言う。

 

 

「まだやる気のようだな、その闘志は褒めてやる」

 

「当然だ……我々にも譲れないものはある、しかし凄まじい気迫だな……私はベルカの騎士でありヴォルケンリッターが将シグナム、そして我が剣レヴァンティンと同じくヴォルケンリッターのザフィーラ……お前達の名は?」

 

「……私はミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託のフェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ……こっちは……」

 

「……ベジータだ、サイヤ人の王子ベジータ……よく覚えておく事だな」

 

「テスタロッサ、バルディッシュ、そしてベジータか……」

 

 

 そう呟くとシグナムとザフィーラは構える。

 フェイトとベジータもまた構えを取る。

 こうして再び双方はぶつかり合う。

 攻撃を捌きながらベジータは結界を壊すタイミングを見計らっていた。

 一方で悟空も。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「ウオアアアアアッ!!」

 

 

 ブロリーとの打撃の打ち合いは続いていた。

 大きな音を立てながらの激しいぶつかりあい。

 その中で悟空は思う。

 

 

(最高に楽しいけどよ……ブロリーの体力はとんでもねえ、このままじゃジリ貧だな、それになのはも避難させてえけど結界がある以上は無理だ……だったら!)

 

 

 至った結論はベジータと同じだった。

 故に悟空とベジータは隙を見て同時に必殺技の構えを取る。

 

 

「か……め……は……め……!」

 

「ビッグバン……!」

 

「「!!」」

 

 

 それを見てブロリーやシグナム、ザフィーラは防御態勢を取った。

 大きな一撃が来る事は誰が見ても明白だったからだ。

 気が高まっていく。

 そして強大な一撃が――。

 

 

「波あああああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「アタック!!」

 

 

 上空目掛けて放たれた。

 それを見たブロリーやシグナム達は唖然とする。

 

 

「……まさか!?」

 

 

 シグナムが声を上げた。

 ここでようやく攻撃の意図に気づいたのだ。

 止めようにももう間に合わない。

 かめはめ波とビッグバンアタックは結界へと直撃。

 大きな爆発を起こすと同時に何かが砕ける音が響き渡った。




 オッス! オラ、悟空!

 よし、結界は破壊したぞぉ。

 ……いっ!? おめえ達まだ諦めねえんか!?

 やべえ、なのはが襲われてる……急ぎてえけどブロリーがその隙を与えてくれねえ、どうする……!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「なのはに迫る魔の手!? 襲撃者の思惑!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四十九 なのはに迫る魔の手!? 襲撃者の思惑!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さんに感想をくれた方々、ありがとうございます!

 さて、ここでご報告です。

 これまで定期更新を続けてきた本作ですが書き溜めが遂に尽きた&作者が新人賞に応募するためのオリジナル小説を書かなきゃいけないという理由から今回を最後に不定期更新に変更させていただきます。

 楽しみにしていただいてる皆さまには申し訳ないのですが、これも作家になるという夢のためには必要なこと、ご理解いただけると幸いです。

 次の更新日は未定ですので気長にお待ちいただけたらなと思います。

 勿論中途半端に終了するつもりはありません、ちゃんと続ける気はありますのでご安心ください。

 長くなりましたが其之四十九をどうぞ。


「馬鹿な、結界が!」

 

 

 シグナムの叫びが響く。

 驚くのも無理はない。

 この結界は非常に堅牢だ。

 それこそなのはやフェイト以上の実力を持つシグナム達ですら破壊は出来ないほどに。

 それを破壊してみせた二人の力に襲撃者一行は驚きを隠せない。

 

 

「カカロット……!」

 

「悪りいな、ブロリー……おめえと戦うのは楽しいけどよ、それよりも優先させなきゃなんねえ事があんだ」

 

 

 悟空とブロリーは睨み合う。

 一方でベジータとフェイトは。

 

 

「やったね、ベジータ」

 

「フン、この程度当然だ」

 

 

 作戦の成功を喜んでいた。

 だがまだ気は抜けない。

 敵はまだ目の前にいるのだから。

 結界が徐々に消えかける中で空気が張りつめる。

 そんな空気は休憩中のなのは、ユーノにも届いていた。

 なのはは回復魔法のおかげでダメージは大分回復していたが疲労までは抜けきっていない。

 

 

「皆……」

 

「大丈夫だよ、なのは。もうすぐ皆をアースラに転送してもらって……!」

 

 

 ユーノは突如として殺気を感じた。

 すぐに防御壁を張り体勢を整える。

 そこに襲い来る――ハンマーによる痛烈な一撃。

 

 

「くっ……!?」

 

「邪魔、すんなあああああっ!!」

 

「うわあっ!?」

 

「ユーノくん!?」

 

 

 防御壁が砕かれ、衝撃でユーノが吹き飛ぶ。

 ハンマーを振ってきたのは当然と言えば当然だがヴィータだった。

 ボロボロの体に鞭を打ち再び攻撃を仕掛けてきたのだ。

 なのはとヴィータは双方ボロボロの中で再び対峙する。

 

 

「まだ……やるって言うの?」

 

「当たり前だ……まだだ、ここまでやったんだから諦めねえ!」

 

 

 その言葉が開戦の合図。

 なのはもまたダメージの残る体を無理にでも動かし魔力球を作り出す。

 

 

「シュートッ!!」

 

「この程度……ッ!」

 

 

 飛んでくる魔力球を弾こうとするヴィータ。

 だが弾こうとした瞬間に体に激痛が走る。

 既にヴィータも限界は超えていた。

 結果、魔力球はヴィータに直撃し爆発を起こす。

 その爆発を見て睨み合ってた一同も視線をそちらに向ける。

 

 

「なのは!?」

 

「ヴィータ……!」

 

 

 すぐさまなのはのいる方へ向かおうとするフェイト達。

 だがそこにシグナムとザフィーラが立ちふさがる。

 

 

「どいてください……!」

 

「……そうはいかん、こちらにも譲れぬものがある」

 

「チッ……アルフ!」

 

「あいよ! ようやく出番かい!」

 

「フェイトと共にこいつらの足止めをしろ! 俺が向こうに向かう!」

 

 

 ベジータはそう言うとシグナムとザフィーラの相手を二人に任せ黄金のオーラを吹き出しながらなのはのいる方向へと向かう。

 だがそこにまたも立ち塞がるものが一人。

 

 

「なにぃっ!?」

 

「ウオアアアアアッ!!」

 

「くっ……!!」

 

 

 突然飛び出して来た繰り出された拳。

 それをベジータはギリギリで回避して少し距離を取った。

 

 

「ブロリー……!」

 

「行かせない……!」

 

「ベジータ! 大ぇ丈夫か!!」

 

「俺の心配をしている場合か、カカロット! 貴様は早くなのはのところに……!」

 

「ウアアアアアッ!!」

 

 

 ブロリーが雄たけびを上げながら気弾の連射をする。

 悟空とベジータは即座に回避行動に入った。

 凄まじい速度と勢いの気弾連射。

 これでは先に進めない。

 

 

「カカロット! 瞬間移動を使え! ここは俺が食い止めてやる!」

 

「そうしてえんだけどよ……瞬間移動する暇さえも……与えてくれねえんだ!」

 

「チィッ!!」

 

 

 悟空とベジータがブロリー相手に足止めを受ける中で爆発の煙の中からは二つの影が飛び出した。

 なのはとヴィータだ。

 なのはは疲労を、ヴィータはダメージを残しながらも二人は空中で幾度となくぶつかり合う。

 

 

「くぅ……!」

 

「私らには目的がある、そのために……! ここで諦めるわけにはいかねえ!」

 

「だからその目的を教えてってば!」

 

「誰が教えるか!」

 

 

 ヴィータが手に持ったハンマー型のデバイス――グラーフアイゼンを振るう。

 なのははプロテクションで防御するが疲労のせいでプロテクションの防御力は激減しておりあっさりと砕かれて吹き飛ばされる。

 だがただで吹き飛ばされはしない。

 なのははレイジングハートを構える。

 

 

「ディバイン……バスター!!」

 

「ぐうっ……! パンツァーヒンダネス!」

 

 

 なのはのディバインバスター、それをヴィータは全方位の防御壁を張る事で防いで見せる。

 その時だった。

 ピシリと嫌な音が響いた。

 

 

「レイジングハート!?」

 

 

 よく見ればレイジングハートにヒビが入っていたのだ。

 なのはも限界ならばレイジングハートも限界だった。

 寧ろここまでよく耐えたとも言える。

 これ以上の攻撃は厳しい。

 なのははそう考え転送されるまで逃げる事で時間を稼ごうとするわけだが、そうはいかない。

 

 

「うらあああああっ!!」

 

「きゃあああああっ!?」

 

 

 グラーフアイゼンの一撃がなのはに確かに直撃し撃墜させた。

 近くのビルの屋上に勢いよく突っ込み倒れるなのは。

 それでも何とか立ち上がろうと体に力を込める。

 そして何とか両足に力を込めながら立ち上がったその時だった。

 

 

「う……!?」

 

 

 凄まじい違和感と不快感、苦しさと言った嫌な感覚が一斉になのはを襲った。

 なのはは恐る恐る違和感の原因であると思われる胸の部分に眼をやる。

 するとそこからは――誰かの腕が生えていた。

 

 

「か……は……」

 

 

 息が苦しい。

 恐い、辛い。

 何とか立ち上がっていたなのはだがここで遂に膝をついた。

 

 

(なのはの気が……小さくなっていく!)

 

 

 悟空は焦っていた。

 なのはの気が急速に小さくなっていくのを感じたからだ。

 そしてその焦りはベジータにも伝わっていた。

 故にベジータは動く。

 

 

「チッ、しょうがない……カカロット! 隙は作ってやるから瞬間移動で飛べ!」

 

「ベジータ……!?」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 ベジータはオーラで黄金の軌跡を描きながらブロリーに突っ込んでいく。

 気弾が当たろうと関係ない、ただひたすらに突っ込む。

 それに気づいたブロリーは気弾を撃つをの止めて迎え撃つ体勢に入る。

 

 

「ウガアアアアアッ!!」

 

 

 放たれるブロリーの拳。

 ベジータはそれを――ギリギリまで引き寄せた上で回避した。

 見切るのはベジータの得意分野だ。

 さらにベジータはブロリー目掛けて拳を突き出す。

 

 

「でやあっ!!」

 

「グオッ!?」

 

 

 これにはたまらず吹き飛ぶブロリー。

 ここでベジータは叫ぶ。

 

 

「カカロット!!」

 

「サンキュー……ベジータ!!」

 

 

 次の瞬間、悟空は消えた。

 そして気が付けばなのはの側にまで移動する。

 だが辿り着いた悟空は眼を見開いた。

 なのはの胸から腕が生えていたのだから無理もない。

 そこへ背後からヴィータが襲い掛かる。

 

 

「悟空……くん」

 

「邪魔は……させねえっ!!」

 

 

 悟空の頭部目掛けて振るわれるグラーフアイゼン。

 その一撃はそのまま悟空の頭部に勢いよく直撃した。

 ――が。

 

 

「なっ……」

 

 

 悟空は微動だにしなかった。

 それどころかグラーフアイゼンを掴み、その鋭い眼をヴィータに向ける。

 

 

(やばい!)

 

 

 そう思った時にはもう遅い。

 悟空の気合い砲がヴィータの胴体を直撃し吹き飛ばす。

 思わずグラーフアイゼンを離してしまったヴィータは近くのビルに叩きつけられた。

 さらに悟空は残ったグラーフアイゼンを投げ捨てる。

 

 

「なのは!?」

 

 

 その声で悟空に僅かに冷静さが戻る。

 声の主はダメージを受けながらもなのはを追いかけてきたユーノだった。

 

 

「ユーノ……これは一体どうなってんだ?」

 

「悟空さん……これは多分魔法で誰かが……」

 

「……分かった」

 

 

 悟空はそう言うと極力怒りを抑えながら気の探知を開始する。

 知ってる気と近くにいる敵の気以外に誰かいないかを探し出すために。

 すると。

 

 

「見つけた……見つけたぞ!」

 

 

 悟空は怒りの籠った眼でとある方向を向く。

 その方向にポツンと普通の人より強い気が一つ感じられた。

 恐らくその存在が襲撃者達の仲間で今なのはを苦しめている張本人。

 悟空は構えを取る、かめはめ波の構えを。

 

 

「か、め、は、め……波あああああっ!!」

 

 

 怒りの籠ったかめはめ波の青白い光が真っすぐ進んでいく。

 だが、そんなかめはめ波の前に飛び出す存在がいた。

 

 

「グウウウウウッ!!」

 

 

 ブロリーだ。

 ブロリーはかめはめ波を受け止めると押されながらもなんとか踏ん張る。

 さらにそのまま力任せにかめはめ波の軌道を曲げてみせた。

 

 

「……ブロリー」

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

 

 ブロリーは息を切らしボロボロになりながらも何とか空中に浮かんでいた。

 そうこうしているうちになのはの胸から生えていた腕が消える。

 

 

「あ……」

 

 

 それを最後になのはは崩れ落ちる。

 そんななのはを抱きとめたのは悟空だった。

 大好きな人の温もりを感じながらなのははそっと意識を失う。

 

 

「なのは!」

 

「大ぇ丈夫だ、ユーノ……気を失っただけみてえだ」

 

「そうですか……良かった……」

 

 

 安堵の溜め息を吐くユーノ。

 悟空もふぅと息を吐く。

 そこへベジータ、フェイト、アルフもやってくる。

 それを見ていたシグナムとザフィーラは。

 

 

「どうする、シグナム」

 

「……ヴィータとブロリーを回収して撤退だ、これ以上の戦闘継続は無理だからな」

 

 

 その言葉にザフィーラは頷きシグナムとザフィーラは仲間であるヴィータ、グラーフアイゼン、ブロリーを回収した後、闇夜に紛れ消えていった。

 

 

「チッ、逃げられたか……」

 

「こっちもこれ以上の戦闘は厳しかったからしょうがないよ……それよりも早くアースラに転送してもらおう?」

 

 

 フェイトはそう言うとバルディッシュに視線をやる。

 何とか戦えてはいたもののバルディッシュもボロボロだった。

 ところどころにヒビが入り見るからに限界を迎えている。

 結果突然発生したこの戦いは悟空達に大きな傷跡を残し終わったのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 時空管理局に運ばれたオラ達。

 いちち……とりあえず治療も終わったし、なのはの見舞いにでも行くか。

 ……ん? 奇遇だな、ベジータ。 おめえはどこに向かうつもりなんだ?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「改めての再会! 集う者達!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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