Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~ (セム)
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第一章 蘇りしサイヤ人編 其之一 摩訶不思議な出会い! 光の中から現れた謎の少年、孫悟空!

 というわけで始まりました、Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~。

 劇場版ドラゴンボール超を見てテンション爆上げしつつの投稿になります。

 こちら完全に不定期な更新となりますし至らぬ点もまだまだあるとは思いますが完結まで頑張って書きますのでどうぞ応援よろしくお願いします。

 長い挨拶は活動報告の方でするとして、それでは記念すべき其之一をどうぞ。


 時は流れゆく。

 

 あの頃のメンバーはもういない。

 

 しかしだからと言って物語は、戦いは終わりはしない。

 

 さぁここから始めよう、とある戦闘民族が紡いでゆく新たな物語を。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 ――海鳴市。

 ビルなどの建造物と海や山、木々と言った自然が上手く共存したとても平和な地方都市。

 そんな市内の綺麗に舗装された道の上を一人の男がのんびりと歩いていた。

 

 

「ふぅ……いい朝だな」

 

 

 軽く空を眺めながらそう小さく呟いた男の名は高町 士郎。

 喫茶翠屋というそれなりに人気な喫茶店のマスターである彼は現在、早朝の散歩中だった。

 別に早朝の散歩が彼にとっての日課というわけではない。

 ただ今日は何となくそんな気分だったというだけの話だ。

 誰にだってあるであろう、ふとした気まぐれからの行動である。

 だがその気まぐれが――思わぬ事態との遭遇を引き起こす。

 士郎は平和な時間を謳歌しながら何となく周囲を見回した。

 すると――。

 

 

「ん……!? な、なんだ!? あれは……!」

 

 

 その眼は大きく見開かれ瞬時に驚愕の色に染まった。

 それも当然である、何せ士郎のいる場所の近くで音も無くだが天高く、雲をも突き抜けるほどの巨大な光の柱が上がっていたのだから。

 何が起こっているのか、士郎はそう考えながらもとりあえず走り出しその光の柱の傍へと近づいていく。

 結果、数分足らずで光の柱の目の前まで辿り着く事が出来た士郎。

 ――光を凝視する、少々眩しくはあったがそれよりもこの光が何なのか、それが気になった。

 目の前で起きてる現象のように光が自然に発生し柱のように天高く上がるなんて事はまずあり得ないし聞いたことも無い。

 とは言え流石に何が起こるか分からない以上、安易にその光に触れるわけにもいかず、かと言って放っておくことも出来ず――ただただ呆然と見つめていると光が徐々に収縮していくのが感じられた。

 光の柱は少しずつ小さくなり、細くなり、そして消え去る。

 そして光の柱の跡地、そこには――。

 

 

「え……?」

 

 

 一人の少年が倒れていた。

 着用している派手な山吹色の道着のような服の左胸には白丸のマークが描かれており、その中に“悟”の文字が刻まれている。

 それに加えて青いアンダーシャツと腰の辺りに巻かれた結び目のある青い帯、青いリストバンドにブーツ状の靴、くわえて黒い髪が四方八方にツンツンと跳ねた特徴的な髪形が印象的なその少年は気を失っているのだろうか、微動だにする事なく倒れ込んでいる。

 暫く呆然としていたが不意にハッと我に返った士郎は急いでその少年に駆け寄った。

 

 

「き、君、大丈夫かい!? しっかりするんだ!」

 

 

 慌て混乱している心を何とか押さえつけ冷静さを失わないよう心がけながらその少年の体を軽く揺さぶる。

 しかし――。

 

 

「んん……ムニャムニャ……ぐごごご」

 

「ね、寝てる……?」

 

 

 少年は眠っていた、それも大きなイビキをたてながら――熟睡、いや爆睡である。

 一体この子は何者なのか、それはさっぱり分からなかったが一つだけ言える事があった。

 

 

(普通の子、ではないよなぁ)

 

 

 光の柱の中から現れた少年、その派手な恰好といい、寝てても感じられるどこか浮世離れしてる感じがする独特の雰囲気といい、どう考えても普通ではなかった。

 これが普通の子供だったなら警察に連絡して彼を引き取ってもらい親を探してもらうところなのだが――摩訶不思議な現象により現れたこの少年の場合それはまずい、そんな気がした。

 かと言って放置という選択肢は無しだ、そんな真似が出来るほど士郎は薄情な人間ではない。

 

 

「……しょうがない、か」

 

 

 とりあえずこのままここにいて考えていても埒が明かない。

 士郎は気持ちよさそうに眠っている少年を起こさないようにそっと抱きかかえ背負う。

 考えた末に士郎の下した決断、それはこの少年を自宅へと連れ帰るという事だった。

 警察沙汰にするのもまずく、放置も出来ないとなると士郎に取れる選択肢はこれしかなかったのである。

 

 

「それにしても……」

 

「ぐごごごご……すぴー……」

 

「よく眠ってるなぁ……」

 

 

 こうして間近で見て背中越しとは言え触れてみると分かる事がある。

 それはかつてボディーガードとして働き、日々鍛え、戦っていた士郎だからこそ理解出来る事だった。

 

 

(この少年、筋肉の付き方からして、よく鍛えられているな……服装も派手だが道着っぽいし武道の経験でもあるんだろうか)

 

 

 なんてことを考えつつも士郎は少年を背負いながら我が家へ向けて歩き始める。

 もしかしたらさっきの光の柱を見た他の誰かがこちらに向かってるかもしれないし、下手したら通報されているかもしれない。

 そう考えると自然と足は普段よりも速く動いた。

 当然少年を起こさないように細心の注意を払いながらだが。

 

 

 

 ――高町家。

 大きめの敷地内に二階建ての家と道場が建てられているため普通の家よりも立派な佇まいをしている、そんな自宅に士郎は帰ってきた。

 さて、連れて来てしまったのはいいものの家族にはどう説明したものか、なんて考えながら士郎は戸を開ける。

 すると――。

 

 

「あなた、お帰りなさい」

 

 

 わざわざ玄関まで出迎えてくれたのは明るめの茶色の長く美しい髪と若々しく可愛らしい外見が特徴的な女性、彼女こそが士郎の妻の高町 桃子、喫茶翠屋のパティシエ兼経理担当でもある非常に優秀な人物でもある。

 桃子は笑顔で士郎を出迎えてくれたが、その背に抱えられた存在に気づきすぐに首をかしげる。

 

 

「あら? あなた……その子は?」

 

「あー……何て言えばいいのかな、とりあえず中に入ってもいいかい? 詳しい事は……」

 

 

 この子を部屋で寝かせてから話したい、そう言おうとした最中だった。

 ピクリ、と士郎は背中で何かが動いた感触を感じ取った。

 そして――。

 

 

「ん……んん……うん?」

 

「……あれ、起きちゃったかぁ、調子はどうかな?」

 

 

 聞こえてくる声、どうやら背負っていた少年が起きたらしいと士郎は判断した。

 相手は少年、出来るだけ怖がらせないように優しい声音でどこか異常があったりしないかを問いかける。

 対し少年はと言うとキョロキョロと周囲を見回した後。

 

 

「おめえ達……誰だ?」

 

「僕は高町 士郎、それでこっちにいる人は……」

 

「高町 桃子よ、よろしくね。貴方のお名前は?」

 

 

 桃子が笑顔で優しく問いかける。

 流石と言うか何というか、夫が突然連れて来た男の子にもこれだけの優しく平然とした対応が出来る辺り、人としても妻としても出来た人である。

 二人の自己紹介を受けて少年もまた名乗る。

 

 

「オラか? オラの名前は悟空だ、孫悟空」

 

「孫悟空……」

 

 

 その名を聞いて士郎が真っ先に思い出したのは西遊記というお話に出てくる猿の孫悟空の姿。

 あり得ないはずなのに何か関わりがあったりするのかな、なんて考えてしまうのは少年――悟空が摩訶不思議な現れ方をしたからだろうか。

 

 

「悟空くん、ちょっと君に聞きたい事が……」

 

「あなた、とりあえず中に入ったらどうかしら? ずっと立ち話もなんだし」

 

「……それもそうだなぁ。じゃあ悟空くん、君に少し聞きたい事があるから良かったら上がっていってくれないかい?」

 

「何が聞きたいのかは知らねえけんどオラは構わねえぞ? ところでよ、悪りいけんど下ろしてもらっていいか? 家に入んなら靴脱がねえといけねえしな」

 

「あぁそれもそうだね」

 

 

 士郎はそっと悟空を抱えていた腕の力を緩める。

 すると悟空は軽々とした動きでひょいっと飛び降り華麗に着地した。

 

 

「おぉ身軽だね、悟空くん」

 

「へへっ、結構鍛えてるかんな。これくらい朝飯前だぞ」

 

 

 やっぱりか、と士郎は思いつつも桃子と共に悟空を自宅へと招き入れる。

 そして予備の椅子を用意してそこに悟空を座らせて自分達もまた自らの席についた。

 士郎は、まずは現状の再確認と桃子への説明を兼ねて悟空を発見した際の状況を説明する。

 

 

「まず……僕はさっきまで普通にこの近所を散歩していた、すると近くで光の柱みたいなのが天高く上がっているのが見えたんだ」

 

「光の柱? あなた、それって一体……」

 

「……分からない、僕にもさっぱりだ。ただその光の柱が消えた後、そこには悟空くんが倒れていた……悟空くん、この現象について何か心当たりはあるかい?」

 

「んー……正直言うとオラにもさっぱり分からねえや、ところで士郎、桃子、一つ聞きてえ事があるんだけどよ」

 

「ん? なんだい?」

 

「どうしたの?」

 

「オラの頭の上にさ、天使の輪っかみてえなの付いてっか? 自分じゃよく見えねえから一応確認してえんだ」

 

「「え?」」

 

 

 正直言ってその質問の意図は二人には分かりかねた。

 ただ聞いてくる以上は何かしら意味があるのだろうと思い二人は悟空の頭の上に視線を向ける。

 だがそこには――何もない。

 だから二人は正直に「何もないよ」と伝えた、すると悟空は眉間に皺を寄せて腕を組み難しい顔をする。

 

 

「そっか……オラ確かに()()()()はずなのに何で生き返ってんだ?」

 

「え、死、死んでた!?」

 

「悟空くん、それってどういう事なの?」

 

「お? そのまんまの意味だぞ? オラ年くって死んじまって天国にいたはずなんだけどよ、なんでかは知らねえけど今は生きてるみてえだし、ついでに体も若返っちまってる、どうなってんのかなぁ……」

 

 

 悟空のその言葉を聞いて士郎と桃子は大いに混乱した。

 はっきり言って今、悟空が言った言葉の意味がまるで理解できなかったからだ。

 死んでた、天国、体が若返ってる、正直今の短い発言の中だけで考えても気になる部分がありすぎて逆に言葉が出ない。

 しかも悟空が嘘を言ってるようには見えないというのが余計にたちが悪かった。

 当の悟空は二人が混乱している間も難しい顔をしながら何かを考え――そしてその状態のまま数秒ほど経過した後。

 

 

「……まぁいっか!」

 

 

 けろっと表情を変えて笑顔でそう言った。

 これには思わず士郎はズッコケそうになってしまう。

 

 

「い、いいのかい!? 君の話を聞く限りとんでもなく深刻な状況だと思うんだけど……」

 

「あぁ! 確かにとんでもねえ状態だし何でこうなってるのかもさっぱりだけんど、はっきり言ってどうしようもねえからな、考えるのはやめにした!」

 

「え、えぇ……そんなあっさりと……」

 

「ふふっ、悟空くんは面白いわね」

 

 

 ガクリと項垂れる士郎に対して桃子はクスクスと笑っていた。大物である。

 悟空も普通だったら慌てそうな状況にあるにも関わらず、あははと屈託なく笑っている。

 だがこのまま項垂れててもしょうがない、悟空本人がそれでいいと言ってるのだから、一先ずはそれでいいという事にしておいて別の話題を切り出す事にする。

 

 

「そういえば悟空くんのその恰好……もしかして君は武道家だったりするのかな?」

 

「んーまぁそんな感じだな、オラつええ奴と戦ったりするのが何よりも好きなんだ。なんだかんだ言ってオラもサイヤ人だからかな、だから普段から鍛えてんだ」

 

「……サイヤ人?」

 

「あぁ戦闘民族ちゅう奴でもう殆ど滅んじまったんだけどさ、えーっと何ていえばいいんかな……そう! 宇宙人ってやつだな」

 

「宇宙人……!?」

 

「あら、とてもそうは見えないけれど……」

 

「嘘じゃねえぞ? と言ってもオラの場合は地球育ちのサイヤ人だから地球人扱いでも別にいいんだけどな、ははっ!」

 

 

 そう言ってまた悟空はニカッと笑った。

 何というか質問すればするほど、話せば話すほど衝撃の事実が明らかになっていき同時に悟空に関する謎が増えるのは気のせいだろうか、と士郎は思わず頭を抱えたくなった。

 と、ここで一つ、先ほどの悟空の発言に違和感を覚える。

 

 

「ん……? 滅んだって事は……」

 

「あぁフリーザっちゅう奴に故郷の星を破壊されたんだ、オラの両親も多分それで死んじまった。でもサイヤ人も散々悪りい事してきたみてえだからな、滅ぶべくして滅んだんだとオラは思ってる」

 

 

 悟空はそんな重たい話をサラッと喋った。

 場の空気が一気に重くなる。

 というか星を破壊された、なんてスケールがデカすぎて若干ついて行けないというのが士郎の本音だった。

 いや、宇宙人って時点で話のスケールは十分にデカいのだが。

 

 

「ま、まぁサイヤ人云々も一旦置いておくとして……悟空くんはこれから行く当てとかあるのかい?」

 

「それなんだけどよ……パオズ山って知ってっか? そこにオラの家があるんだけんど」

 

「パオズ山? 母さん聞いた事あるかい?」

 

「いいえ、無いわね……」

 

「そうか……よし、とりあえず地球一周して探してみっか!」

 

「ち、地球一周!?」

 

「悟空くん、それ凄く時間がかかるんじゃないの?」

 

「ん? そうでもねえぞ、小さくなって大分力は落ちちまってるみてえだけど多分舞空術は使えっからな、数分もありゃあ一周出来るはずだ」

 

「「す、数分……?」」

 

 

 またもや一般人からしてみればとんでもない事をさらっと言ってのける悟空。

 そして相変わらずその眼にも言葉にも嘘は微塵も感じられない。

 もしそんな事が可能だとするならば先ほどの“戦闘民族”や“宇宙人”という単語もある程度納得がいく――かもしれない。

 なんてことを二人が考えていると突如ぐぎゅるるるるうう~とデカい音が鳴り響いた。

 出どころは――悟空、の腹だ。

 悟空は自分の腹を押さえながら笑う。

 

 

「ははは! 悪りい、悪りい、腹が減っちまって、つい……」

 

(凄い音だったな……)

 

「あらあら、確かにもう朝ごはんの時間だものね……それじゃあそろそろ用意を始めようかしら、悟空くんも良かったら食べていって?」

 

「え、いいんか!?」

 

「勿論よ、何となく今日は多めに作っておいたしね。あなたもいいでしょ?」

 

「あぁこうして出会ったのも何かの縁だしね、歓迎するよ。悟空くん」

 

「サンキュー! 士郎、桃子! 恩に着るぞ」

 

 

 こうして孫悟空は高町家に拾われて朝ごはんをご一緒する事になったのだった。

 暖かな日差しに照らされた春の日の朝、この日、孫悟空と言う名の一人のサイヤ人は新たな出会いを経て繋がりを得た。

 そしてこの日から運命の歯車は回り始め物語が再度動き出したという事に当の悟空が気づく事はなかった――。




 オッス! オラ悟空!

 いやぁ桃子の作るメシ楽しみだぞぉ!

 ん? 誰だ、おめえ……ははっ桃子にそっくりだなぁ!

 おっと、それもいいけんどオラもオラで色々やったり考えたりしねえと……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「ここは別の宇宙!? 悟空が立てた仮説!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二 ここは別の宇宙!? 悟空が立てた仮説!

 光の中から現れた少年、孫悟空。

 悟空は高町 士郎に拾われて高町家へと招かれる。

 だが複雑な自分の現状を再確認しつつ悟空は「まぁいっか!」と考えるのをやめてしまうのだった。


 朝ごはんの良い香りが漂う高町家。

 そんな高町家内にトテトテと足音が響く。

 足音の正体はこの家の次女、高町 なのはである。

 彼女はいつも通り――と言っても朝が苦手なので時折寝坊するのだが――起きると一階に下りて鏡の前でリボンを使い母親ゆずりの綺麗な茶色の髪を結び、しっかりと身だしなみを整えるといつも通りにリビングに顔を出す。

 そこにはいつも通りなら父と母がいるからだ、朝の挨拶はちゃんとしなくてはいけない、そこら辺の躾はちゃんとされている。

 

 

「おはよう、お父さん、お母さ……ん?」

 

「おぉおはよう、なのは」

 

「あら、おはよう。なのは」

 

「ん?」

 

「……え?」

 

 

 そこに広がるのはいつもの光景――じゃなかった。

 確かにいつも通り父がいる、母もいる、だが明らかに違う事が一つだけ。

 なんか知らない男の子がいつもの光景に混じってるのだ。

 しかもどういうわけか結構馴染んでる上に父も母もまるで気にしていない。

 当然なのはの視線はその謎の男の子に集中する。

 

 

「えーっと……」

 

「おめえ誰だ?」

 

「そ、それはこっちのセリフなんだけれど……」

 

「あ、悪りいな。オラの方から名乗った方が良かったんか、オラは孫悟空だ。で、おめえは?」

 

「あ、えっと高町 なのはです」

 

「なのはかぁ、よし、覚えたぞ!」

 

 

 そう言って悟空はニカッと笑う。

 何というか、太陽みたいに明るい笑顔をする子だな、というのがなのはの悟空に対する第一印象だった。

 それはいいのだが、何故悟空が高町家にいるのか、その疑問は解消されていない。

 

 

「その……悟空くんはどうして家にいるの?」

 

「んー? なんて言えばいいんかなぁ……オラが道で倒れてるところを士郎に助けてもらって連れて来てもらったんだ」

 

「え、倒れてたって……お父さんそういう事なら救急車とか警察とか呼んだ方がいいんじゃ……」

 

「あー……その事なんだけどな、ちょっと話すと長くなる事情があってさ……なのは、とりあえず恭也と美由希を呼んできてくれないかい? 詳しい事は皆がいる朝食の時に話すよ」

 

「う、うん……」

 

 

 その言葉を受けてなのはは一旦リビングを出ていく。

 そして家の隣にある道場へと向かって行った。

 それから数分後、ガチャリと音を立ててリビングの戸が再び開く。

 

 

「あ、本当だ! なのはの言う通り知らない男の子がいる!」

 

「父さん……一体どういう事だよ……」

 

「あ、あはは……」

 

「オッス! オラ悟空、おめえ達が恭也と美由紀か?」

 

「いきなり呼び捨てか……まぁいいが、そうだ。俺が高町 恭也だ」

 

「私が美由希だよ、よろしくね」

 

 

 恭也と名乗った青年は若干警戒した眼で悟空を見ており、対する美由希は対称的にそう言った警戒心とか無さそうな顔で悟空に挨拶をしてくる。

 そこへ桃子が料理をテーブルへと運んできた。

 

 

「さて自己紹介も済んだ事だし朝ごはんにしましょうか、皆座って?」

 

「おー! 待ってたぞぉ!」

 

 

 大はしゃぎする悟空。

 そんな悟空の姿を見て色々な思いを抱きながら三人の子供達は一先ず自分の席に着くのだった。

 

 

 

「つまりこの悟空って子供は光の中から現れたと?」

 

「ガツガツガツ……!」

 

「あぁ……信じられないかもしれないが本当なんだ」

 

「モグモグモグ……」

 

「まぁお父さんがそんな嘘吐くとは思えないし、信じるしかないと思うけど……」

 

「うんめぇ~! 桃子の作る飯、すげえうめえぞ!」

 

「あらあら、ふふっありがとう、悟空くん」

 

「「「……」」」

 

「にゃ、にゃははは……」

 

 

 士郎、恭也、美由希が真面目な話をしてる横で、これでもかと朝ごはんにがっつく悟空。

 そんな悟空に対して何とも言えない視線を送る三人だったが悟空は目の前のご飯に夢中で気づく事はない。

 そしてそんな悟空を微笑ましそうに見つめる桃子に苦笑いを浮かべるなのは。

 高町家の朝食の雰囲気は何とも混沌としていた。

 悟空の前に置かれた大盛りの朝食はみるみるうちに減っていき、あっという間に綺麗さっぱり無くなる。

 だが桃子は見逃さなかった、悟空の物足りなさそうな顔を、僅かな表情の変化を、故に。

 

 

「悟空くん、おかわりはいる?」

 

「いいんか!? じゃあおかわりー!」

 

 

 こうして悟空は二杯目のご飯をガツガツと食べ始めた。

 さらに三杯目、四杯目とおかわりは続いていく。

 とてもじゃないが炊飯器のご飯だけでは足りず冷凍庫内の冷凍ご飯まで総動員して悟空の腹を満たしていく。

 桃子を除いた面々は目を丸くして驚いた、その小さな体のどこにそんなに入るのだと思わざるを得ないほどの底なしの食欲に。

 ついでにその遠慮のなさにも、まぁおかわりはいるかと聞いたのは桃子なので悟空に非があるわけではないのだが。

 そして何のかんので朝食を食べ終えた子供達はそれぞれ準備に入る。

 

 

「お母さんお弁当は?」

 

「勿論用意してるわよ、はい。どうぞ」

 

「ありがとう! 行ってきまーす!」

 

「「行ってきます」」

 

 

 そう言ってなのは、恭也、美由希の三人は家を飛び出していった。

 ともなれば高町家に残るのは士郎、桃子、そして悟空のみ。

 そんな中、悟空は空気を目いっぱい入れたボールのようにパンパンに膨れ上がった腹を擦りながら尋ねた。

 

 

「なのは達はどこ行ったんだ? 皆弁当持ってったみてえだけど」

 

「それは勿論学校だよ」

 

「ひゃーそうか、学校かぁ……大変(てぇへん)だなぁ」

 

「そう言えば……悟空くんは学校とか通った事はあるの?」

 

「いや、オラはじいちゃんに拾ってもらった後は山暮らしだったしさ……じいちゃんが死んじまった後も暫くは山から出なかったからな、学校なんて通った事ねえぞ」

 

「そう……悟空くんは大変な人生を歩んできたのね」

 

「ん? まぁ普通じゃねえのは確かだけんど、なんやかんやで楽しかったからな、特に問題はねえとオラは思う」

 

 

 それに学校は勉強するところなんだろ? オラ勉強とか苦手だしな、と悟空はまた笑う。

 何というか底抜けに明るい子だな、というのが士郎と桃子の抱いた感想だった。

 しかもただ明るいだけじゃない、その明るさで周りの人の心も照らしてくれそうなそんな不思議な少年。

 なのはが太陽のような笑顔と思ったのもある種納得のできる話であった。

 

 

「そんじゃ、そろそろオラちょっくら行ってくっかな」

 

「地球一周……だったかな、本気でやるつもりなのかい?」

 

「あぁ勿論だ、でもすぐ帰って来るから心配はいらねえぞ?」

 

 

 そう言って悟空は玄関へと歩き出しブーツ状の靴を履く。

 そしてその後を追ってきた士郎と桃子が見つめる中――悟空の体は自然と、さも当然のように宙に浮いた。

 ジャンプしたわけではない、本当にスゥーッと、まるで膨らませた風船かのように自然に浮いたのだ。

 

 

「と、飛んでいる……!?」

 

「悟空くん凄いわ……そんな事が出来るのね」

 

「へへっ、これが舞空術だ! そう難しい技じゃねえぞ? そんじゃちょっと行ってくる!」

 

 

 悟空がそう言うとその体から白いオーラのようなものが吹き出し、その小さな体は自動車も真っ青なスピードで飛んでいった。

 ただでさえ小さいその姿がどんどんと小さくなり空へと消えていくのを士郎と桃子はただただ見つめていた。

 その過去の一端を聞いた時から思っていたがとことんまで規格外な少年だ、と改めて思う。

 そして数分後――。

 

 

「ただいまー!」

 

「早い!? もう一周してきたのかい!?」

 

「ん? 数分で一周できるって言ったじゃねえか」

 

「いや、言葉で聞くのと実際見るのとでは大分衝撃が違うんだけど……」

 

「まぁまぁあなた、良いじゃない。それで悟空くん、パオズ山って言うのは見つかったの?」

 

「それがよぉ……あちこち見て回ったんだけんど見つからなかった! ハハッ!」

 

 

 笑ってる場合じゃないはずなのに、やはり笑顔を見せる悟空。

 それが強がりゆえのものではないという事は見ている士郎と桃子には分かった。

 能天気というか何というか、どんな苦難も笑い飛ばせる強さが彼にはあるのだろうと言うのを二人は感じた。

 それはそれとして――。

 

 

「それじゃあこれから行く当てはあるのかい?」

 

「いや、ねえぞ? しょうがねえからどこかで野宿でもすっかなぁ」

 

 

 それを聞いた時、士郎は妻である桃子と目を合わせる。

 それだけで意図を汲んでくれたのだろう、桃子は笑顔で頷いた。

 考えた事がそれだけで伝わる、長い夫婦関係で育まれた確かな絆がそこにはあった。

 

 

「それじゃあ悟空くん、君さえ良かったら……家で暮らさないかい?」

 

「……いいんか?」

 

「勿論よ、それにここでお別れなんて寂しいもの。ねえ? あなた」

 

「あぁ、もちろん悟空くんさえ良ければ……だが、どうだろう?」

 

「オラとしては寝れる場所貰えるだけでも十分ありがたいんだけんど……本当に頼んでもいいんか? 士郎、桃子」

 

「あぁ僕達は君を歓迎するよ、悟空くん」

 

「改めてようこそ、高町家へ」

 

「……へへっ、ありがとうな」

 

 

 こうして優しい二人に迎えられ、悟空は暫くの間、高町家に住む事になった。

 その選択を士郎と桃子は後悔していない。

 行く当てのない子供を放り出す事なんて出来なかったし何となくだが悟空にはまだここにいてほしい、そんな思いがあったから。

 問題があるとすれば――食費ぐらいだろうか。

 受け入れたはいいものの、今後の出費は大丈夫だろうかと士郎は後になって心配になってきた。

 ――それから暫くの時が経ち、士郎と桃子が仕事のため喫茶翠屋に行く時間が訪れる。

 

 

「僕達はこれから仕事だけど……悟空くんはどうする?」

 

「そうだなぁ……それなら道場貸してもらえねえか? オラ、修行してえしよ」

 

「そうか、そう言う事なら好きに使ってくれていいよ」

 

 

 というわけで悟空は一人高町家に残り道場で修行を開始する事にした。

 早速道場に入った悟空はその立派な佇まいに少し驚いた。

 広さは十分、これなら心置きなく修行が出来そうだと感じた。

 後は壊さないように気を付けておけば問題はないだろう。

 とりあえず最初は基礎的な訓練を積み重ねる悟空。

 地味だが己を鍛えるにあたって何よりも大事なのは基礎だ、それを悟空は長年の経験から嫌と言うほどに理解している。

 だが――。

 

 

(やっぱり力はかなり落ちてんなぁ……これは元に戻るまでちょっと時間がかかりそうだぞ)

 

 

 思わずそんな事を思ってしまうほどに彼の肉体と気の弱体化は激しかった。

 これでは神の気を使うどころか普通の超サイヤ人にもなれはしないだろうというのが、ここまでの特訓での悟空の判断だ。

 実際その判断は間違っていない。

 変身の感覚こそ覚えているものの、いくら力を込めても、背中をゾワゾワさせても超サイヤ人にはなれなかった。

 変身するのに何かが足りないらしい、と悟空が理解するのにそう時間はかからなかった。

 それが単純な肉体の強さか、それとも気の強さかまでは分からなかったが。

 だがそれぐらいでへこたれる孫悟空ではなかった。

 弱くなったのならまた修行に打ち込み元の強さ――いいや、それ以上の強さを得ればいいだけの話なのだ。

 幸い時間はたっぷりあるし、今の自分の肉体が何歳相当なのかは分からないがサイヤ人は肉体の若さを長期間保てるというのもあり焦る必要性はどこにもない。

 故に前向きにトレーニングを積み重ねる悟空。

 拳を突き出す、蹴りを放つ、単純に思われる作業を繰り返して自分自身という原石をひたすらに磨いていく。

 そんな中、悟空は思う。

 

 

「やっぱりここ……別の宇宙なんかなぁ」

 

 

 気になるのはパオズ山が見つからなかった事。

 知ってる気や、それに類似した気が感じ取れないのはまだしも山そのものがどこにも存在しなかったというのは奇妙に思えた。

 そもそもの話、この地球、パオズ山の有無を除いても悟空が知る地球とは大きく異なっているというのも印象的だった。

 見たところホイポイカプセルなども存在しないようだし、地名など、何か根本的なところから違うような気がするのだ。

 ならば考えられる理由は一つ、ここは自分が住んでいた地球とはまた別の地球なのではないか、という事だ。

 そもそも宇宙とはこの世界に十二もの数が存在する、というのを悟空はしっかり覚えていた。

 かつてはそんな他の宇宙の猛者たちとしのぎを削り合い自分の腕を磨いた事だってあるからだ。

 つまりは、そのうちのどれか一つに飛ばされた――という可能性も捨てきれはしないという事である。

 それでもどうやって飛ばしたのかとか飛ばした存在の目的は何なのか、何故若返れたり生き返れたりしたのか等、色々疑問は残るわけだが。

 

 

「ま、考えててもしょうがねえか! 今はとりあえず修行に専念しねえとな!」

 

 

 その言葉と共に思考は打ち切られ、悟空はその後も一人で一心不乱に修行に打ち込むのだった。




 オッス! オラ悟空!

 いやぁ修行すんのはやっぱりいいな!

 力も気も大分落ちちまってるから、いっそう頑張って強くならねえと!

 ……ん? なんだ? 何かどっからか声が聞こえっぞ……?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「誰かが呼んでいる!? 悟空に届いたテレパシー!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之三 誰かが呼んでいる!? 悟空に届いたテレパシー!

 想像以上にお気に入りの数が増えて驚いております。

 まだ二話しか投稿してないと言うのに……。

 しかももう評価も貰えましたし本当に嬉しいです!

 お気に入り登録してくれた方々、感想をくださった方々、そして評価をくださったカルなさん本当にありがとうございます。

 おかげでモチベーションはいい感じに維持出来ております、よろしければ今後もお付き合いください。

 では其之三をどうぞ。


 日が沈み始め夕暮れ時が近くなってきた。

 悟空はと言うと。

 

 

「はっ! ほっ! でりゃあっ!」

 

 

 今なお修行を続けていた。

 それも一分、一秒とて休むことなくだ。

 その額には汗の粒が浮かんでいるが悟空がその手を、そして足を止める気配はない。

 それほどに今の彼は修行に夢中になって同時に集中していた。

 この集中力とひたすら修行に打ち込める根性、ひたむきさもまた、悟空の強さの秘訣なのかもしれない。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 今度は軽く飛び上がって連続で拳を繰り出す。

 そして着地すると同時に今度は蹴りの連打を放つ。

 それを何度も繰り返した後、悟空は不意に動きを止めた。

 

 

「……うーん、やっぱりいまいちキレがねえなぁ、しょうがねえけど……よし、じゃあそろそろ……」

 

 

 修行は終わりか――と思わせておいて。

 

 

「イメージトレーニングでもすっかなぁ!」

 

 

 悟空の修行はまだまだ終わらない、寧ろ今までのは前座と言わんばかりだった。

 そっと目を閉じる。

 脳裏に浮かべるのはかつて戦った強敵達の姿。

 ――そもそもの話、孫悟空とは本人は自慢する気はさらさらなさそうだが何度も地球を危機から救い戦い続けて来た英雄と呼ぶに相応しい人物だ。

 故にイメージトレーニングの相手にも困りはしない。

 何せ幾度も経験した激しい、命がけの戦いの中でぶつかり合った強敵の数は計り知れないからだ。

 

 

「……!」

 

 

 無言で構えを取る悟空。

 今彼の眼には彼にだけしか見えない強力な戦士達の影が映っていた。

 そのうちの一人が悟空に向かって接近してくる。

 

 

「ふっ……はぁっ!!」

 

 

 その攻撃を軽くいなした悟空は掌底で反撃。

 相手の顎を捉えて脳を揺さぶる。

 そしてすかさず足払いを仕掛けて体勢を崩させた。

 そこへ――。

 

 

「でりゃあっ!!」

 

 

 渾身のパンチが相手の頭部に炸裂する。

 それを受けた相手の頭部はパンッと破裂してしまい、頭を失った体はそのまま倒れ込む。

 その姿を見届けた悟空はため息を吐いた。

 

 

「いくらオラが弱くなってるって言ってもピッコロ大魔王レベルじゃ相手になんねえか……じゃあもう少し相手のレベルを引き上げてみっかな……!」

 

 

 次に悟空が脳裏に浮かべるのは緑と黒のカラーリングが特徴的な怪物。

 その名は――セル。

 かつて悟空の息子である孫悟飯が倒した何人もの戦士の細胞とデータから生み出された究極の人造人間だ。

 先ほどのピッコロ大魔王とは比べ物にならない殺気と迫力。

 悟空の目つきは一層鋭くなる。

 だがその顔はどこか楽しそうでもあった。

 そして――暫しの静寂の後、イメージ内のセルが動き出す。

 

 

「――っ!」

 

 

 セルの腕と悟空の腕がぶつかり合う。

 即座に悟空は力任せにセルの腕を弾き懐に入り込む。

 体が小さくなるという事はそれだけリーチも短くなるという事、故に今の悟空が相手に攻撃をするためには極限まで相手に接近しなくてはならないのである。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 懐に入り込んだ悟空は殴りと蹴りが混じったラッシュを叩き込む。

 しかし――。

 

 

「くっ……!」

 

 

 悟空の放った渾身のラッシュをセルは片手だけで防いでしまう。

 イメージのセルの顔に浮かぶ余裕という二文字、だが悟空とて歴戦の戦士、このままでは終わらない。

 左の拳がセルに掴まれる。

 そこですかさず右の拳でアッパーを繰り出しセルの顎を捉え体を宙に打ち上げた。

 そのまま悟空は隙だらけの胴体に連打を打ち込む!

 

 

「でえええりゃあああああっ!!」

 

 

 最後に回し蹴りを腹部に打ち込んで吹き飛ばした悟空。

 だが着地と同時に悟空は再び構えを取る。

 その眼にはまだ闘志の炎が燃えていた。

 この程度で倒せるほど柔な相手でない事を悟空は嫌と言うほど知っていたからだ。

 現にセルを飛ばした方向からは――高速のビームのようなものが飛んできた。

 

 

「やべえ!」

 

 

 それを体を逸らして何とか避ける悟空。

 しかしビームは次から次へと飛んでくる。

 それを体を曲げて、時には飛ぶ事で避ける――が。

 

 

「はっ!?」

 

 

 気が付けばビームの嵐は止みセルの姿もどこかへと消えていた。

 警戒しながら周囲を見回す、だがどこにもセルの姿はない。

 が、悟空の長年の戦闘で鍛えた勘が、危機察知能力がセルの居場所を教えてくれた。

 にじみ出ている僅かな殺気、それを頼りに――悟空は背後に渾身の蹴りを放つ!

 と、そこまでは良かったのだが。

 

 

「いいっ!?」

 

 

 悟空の渾身の蹴りは受け止められてしまっていた。

 しかも足はガッチリと掴まれて離れる事が出来ない。

 そこへセルは何も掴んでいない自由なもう片方の手を大きく開き悟空へと向けるとエネルギー波――気功波を放つ。

 悟空は足を掴まれているため避ける事も出来ずその気功波に飲まれた。

 勝敗はここに決した。

 

 

「ふはぁ~……」

 

 

 その場に倒れこむ悟空。

 汗の粒をいくつも浮かべ息を切らしながら悟空は上半身だけを起こす。

 

 

「めえったなぁ……何となく分かっちゃいたけど今のオラじゃセルにすら勝てねえんか……」

 

 

 せめて超サイヤ人になれればなぁと悟空は一人考える。

 だがすぐにそんな事を考えていても仕方ない、と思考を切り替えた。

 と、その時何か胸の辺りに違和感を感じた。

 

 

「ん? なんだ、何か入ってるんか?」

 

 

 悟空はそう言いつつゴソゴソと胸元に手を突っ込み探る。

 するとコツンと何かが手に当たった。

 悟空はそれを掴んで勢いよく引っ張り出す。

 

 

「あっ!? こ、これは――」

 

 

 出て来たのはオレンジ色に輝く半透明の球。

 中には赤い星が入っておりどこか神秘的な雰囲気を漂わせるそれは悟空にとってはとても馴染み深いものだった。

 

 

「ドラゴンボール! しかも四星球(スーシンチュウ)じゃねえか、ははっ!」

 

 

 四星球(スーシンチュウ)を見た時、悟空は何とも言えない嬉しさを感じ思わず笑みを零した。

 ドラゴンボールという物は悟空にとってはとても縁が深いもので、さらにその中でも四星球(スーシンチュウ)は育ての親とも言えるじいちゃん、孫悟飯の形見でもあるから尚更馴染み深い。

 何故こんなところに四星球(スーシンチュウ)があるのか、それは分からなかったが何はともあれ嬉しいというのが悟空の思いだった。

 

 

「ずっと懐に入ってたんかぁ……飯や修行に夢中で全然気づかなかったぞ」

 

 

 しかし四星球(スーシンチュウ)がここにあるという事は残り六つのドラゴンボールもどこかにあるのだろうか、と一瞬考えたが悟空はすぐに考えるのを止めた。

 どの道ドラゴンレーダーが手元に無い以上探しようがないわけだし考えても無駄だと思ったからだ。

 とりあえず手持ちの袋に四星球(スーシンチュウ)はしまっておく事にした悟空。

 彼はその袋を道着の帯に結び付けると一呼吸おいて――。

 

 

「よし! 修行再開すっかぁ!」

 

 

 なんて事を言いだした。

 あれだけやってもまだまだ足りないらしい。

 というわけで早速再度イメージトレーニングに入ろうとした、その瞬間。

 

 

(誰……か……)

 

「ん? なんだ……声が聞こえっぞ、いや、違えな……頭の中に声が響いてきてんだ」

 

(誰か、助けて……)

 

「!!」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、悟空は道場を飛び出して舞空術で空を飛び、全速力でどこかに向かい始めた。

 悟空は気を探る、だが――。

 

 

「……駄目だ! 人が多いからどれが声の主か、さっぱり分かんねえ……だけんど!」

 

(誰か……お願い、します……)

 

「待ってろ、すぐに行くかんな」

 

 

 今にも死んでしまいそうな弱弱しい声。

 とても放ってはおけなかった、お人好しとも言われる悟空にとっては尚更だ。

 悟空は逆探知のように声の発生源を辿りながら空中を高速で移動する。

 そして。

 

 

「あそこだな……!」

 

 

 辿り着いたのは木々の生い茂った舗装のされてない荒い一本道。

 悟空が気を探るとその道の先に弱弱しい気が一つあるのが感じ取れた。

 上空からじゃ木が邪魔でよく見えないのでここからは着地して走る、ただひたすらに走る。

 修行の疲れなど何のその、悟空は走り続けて――遂に見つけた。

 

 

「キュウ……」

 

 

 そこにいたのは一匹のイタチ? フェレット? とりあえずそれっぽい動物だった。

 よく見なくても体は傷だらけで鳴き声も弱弱しい。

 

 

「おめえか、オラに呼びかけてたんわ……ひでえ傷だ……気も弱くなってるこのままだと少しやべえな」

 

 

 悟空はそのフェレットもどきをそっと手の平に乗せる。

 生憎と治療用の道具は持ってないし、万能の回復薬とも言える仙豆も手元にはない。

 薬草でもあれば治療用の薬の調合くらいは出来るかもしれないが近くには見当たらない。

 ならば出来る事はただ一つ。

 

 

「はあぁぁぁぁぁ……」

 

 

 暖かな光がフェレットもどきを包み込む。

 悟空がやってるのは気の分け与え、と言っても大量に分け与えると害になりかねないから少しずつではあるが。

 これで少なくとも小さくなってる気は回復するはずである、現に。

 

 

「キュ……?」

 

「お、目ぇ覚めたか? おめえだろ? 助けてくれって言ってたの」

 

「キュキュ!?」

 

「おっとっと、あまり動かねえ方がいいぞぉ。オラの気を分けたって言っても傷は治ってねえんだからよ」

 

「キュ?」

 

 

 問題はここからだ。

 このまま逃がしてもこの傷では生き残るのは難しいだろう。

 やはりある程度治療はしなくてはいけない、だがその手立てがない。

 そこへ――。

 

 

「ちょっと――どうしたのよ!?」

 

「――ちゃん!?」

 

「ん? この気は……」

 

「キュ……?」

 

 

 悟空は声が聞こえ気を感じた方向に振り向く。

 声は聞いた事のない声だったがこちらに近づいてくる気は知ってるものだったから。

 すると向こう側から現れたのは。

 

 

「はぁっ……はぁっ……あれ? 悟空……くん?」

 

 

 朝に出会った少女、高町 なのはだった。




 オッス! オラ悟空!

 やっぱりなのはだったかぁ、へ? おめえも呼ばれたからここに来たんか?

 ……まぁいいや、で。そっちにいるんがなのはの友達だな。

 ん? どーぶつびょーいんってところに行けばこいつの治療が出来るんか、そんじゃ急ぐとすっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「悟空となのは、二人を呼ぶ謎の声!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之四 悟空となのは、二人を呼ぶ謎の声!!

 新たにお気に入り登録をしてくださった方々、感想をくださった方々、評価をくださった一神龍さんとバウさんありがとうございます!

 おかげさまで非常にテンションが高まり溢れております。

 書き溜めも溜まる溜まる……この調子でジャンジャン書いていきたいもんです。

 では其之四をどうぞ!


「お? オッス! なのはじゃねえか」

 

「どうして悟空くんが……」

 

「いや、実は助けを呼ぶ声が聞こえてよ。急いで来てみたらこいつがいたんだ」

 

「キュー……」

 

 

 悟空はそう言って手の上に乗っけたフェレットのような生き物をなのはに見せる。

 フェレットと思われるその生き物は悟空の手の上で小さく弱弱しく鳴いた。

 

 

「声って悟空くんも……? いや、それよりもこの子フェレット、かな。酷い怪我してる……」

 

「へぇこいつフェレットって言うんか……まぁいいや、それよりもこいつをこれからどうするか今考えててよ……」

 

「んー……確かに動けそうではあるけどこの傷のまま放っておくのはね……あ、それなら動物病院に――」

 

「なのはー!」

 

「なのはちゃーん!」

 

 

 なのはの言葉は途中で後方から聞こえて来た声によってかき消された。

 悟空となのはは揃って声がした方向に顔を向ける。

 するとそこにいたのは金色の髪をした少女と紫髪の少女という何ともカラフルな印象を受ける二人組だった。

 二人はそれぞれ大なり小なり息を切らしながらなのはの側まで寄ってきて足を止める。

 

 

「はぁ……はぁ……一体どうしたのよ、急に走り出して……」

 

「そうだよ、なのはちゃん……」

 

「あ……ご、ごめんね。二人とも」

 

 

 二人に対し謝るなのは。

 そんな光景を悟空はフェレットを手に乗せながら眺めていた。

 

 

「ところで……誰よ、そいつ? なのはの知り合い?」

 

「ア、アリサちゃん……もうちょっと言葉を優しく……」

 

「にゃはは……えっと、この子は悟空くん、今朝話したでしょ? お父さんが拾ってきた男の子だよ」

 

「オッス! オラ悟空、なんだ。なのはの友達か?」

 

「うん、こっちがアリサちゃんで、そっちがすずかちゃん。私の友達だよ」

 

 

 なのはがそう言うと一応二人は挨拶を始める。

 まずは金髪の少女、アリサと呼ばれた子から。

 

 

「ふーん、あんたがねぇ……私はアリサ・バニングスよ」

 

「私は月村 すずか。よろしくね」

 

「おう、よろしくな! ……おっとこいつを忘れるところだったぞ、早く治療してやんねえと」

 

「あ、そうだったね。とりあえず近くの動物病院に行こう? そこでなら治療してもらえるはずだよ」

 

「どうぶつびょーいん……そんなのがあるんか、じゃあ悪りいんだけんど案内頼んでいいか?」

 

「うん、勿論!」

 

「よく分からないけどそのフェレットのために動物病院に向かうってわけね、いいわ。私達も付き合う」

 

「この子元気はあるみたいだけど怪我は酷いね……急ごう?」

 

 

 こうして悟空と三人の少女は動物病院へと向かって歩き出した。

 傷だらけのフェレットは弱弱しく鳴く。

 そんなフェレットを悟空は小さくなった自分の手でそっと抱きながら歩くのだった。

 

 

 

「暫くは安静にしてた方がいいけど……もう大丈夫よ、どういうわけかあまり衰弱もしてなかったし」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

「もう大ぇ丈夫だってよ、良かったな」

 

「キュー……」

 

 

 結果、フェレットは無事治療してもらう事が出来た。

 衰弱していなかったのは悟空が気を分けたおかげなわけだが悟空にとってはそれはどうでもよく、無事ならばそれで十分だった。

 一応明日まで預かっておくという動物病院の先生に改めてお礼を言って四人は病院を出る。

 

 

「もうこんな時間……フェレットも無事だったし帰ろうかな」

 

「おう、そうだな!」

 

「あれ、そう言えば悟空くんは……」

 

「あり? そういや言ってなかったか、オラ暫くはなのはの家に住まわしてもらう事になったんだぞ?」

 

「えぇ!? そうなの!?」

 

 

 突然の居候宣言になのははただただ驚くしかない。

 対し悟空は頭を掻きながら笑っていた。

 

 

「なのはも大変ね……ところであのフェレットどうする? 私の家は犬がいるから厳しいし……」

 

「私の家も猫達が……」

 

「うーん……うちも食べ物取り扱ってるから厳しいかもしれないけど一応聞いてみる!」

 

 

 なのはは気合を入れてそう言った。

 もし駄目であれば可哀想な事にあのフェレットの行く当てが無くなってしまう。

 何とかして許可を貰わなければ、なのはは密かに決心を固め燃えていた。

 

 

「んじゃ、帰っか」

 

「うん、それじゃあね。二人とも、また明日!」

 

「えぇ、また明日」

 

「またね、なのはちゃん。悟空くんも」

 

「あぁまたなー!」

 

 

 こうして帰路に就いた悟空となのは。

 悟空は舞空術で飛んでいっても良かったのだが特に急いで帰る用事も特に無かったのでなのはに合わせて徒歩で帰る事にした。

 二人は何気ない会話を交わしながら高町家へと歩を進めていく。

 そして――。

 

 

「ただいまー」

 

「たでえまー! 帰ったぞぉ」

 

「おっ、お帰り。なのは、悟空くん。二人一緒だったのかい?」

 

「うん、ちょっとね」

 

「偶然会ったからよ、一緒に帰って来たんだ!」

 

 

 出迎えてくれた士郎に対し悟空となのははそう言って靴を脱いで家に上がる。

 そのままリビングへと行き桃子達にもただいまを言った後、手洗いうがいをちゃんと行い、なのはは意を決して言葉に出した。

 ちなみに恭也と美由希は悟空の居候の件はもう聞かされていたのだろう、特に驚く事もなく悟空の事を受け入れていた。

 

 

「あの……ちょっと皆にお話があるんだけど……」

 

「なんだい、なのは。改まって」

 

「そうだぞ、らしくもない」

 

「お話って何? なのは」

 

「えっとね……」

 

 

 なのはは話す、悟空と共に傷だらけのフェレットを見つけた事。

 そしてそのフェレットを治療して今は動物病院に預けている事。

 ――そのフェレットを高町家で預かれないかという事を。

 それを聞いた一同の反応は。

 

 

「ん~……フェレット、動物かぁ」

 

 

 何とも微妙なものだった。

 それもそうだろう、喫茶店と言う飲食に関係する職業に就いてる以上、衛生面的な観点から動物を飼うというのは頷きがたいものがある。

 分かってはいた事だ、それを承知の上でお願いしたのだから。

 ここは援護射撃を求めるしかない、なのははそう考えて悟空の方を向く。

 

 

「ご、悟空くんも一緒にお願いしてくれないかな?」

 

「そうは言ってもよぉ……オラも拾われた身だかんなぁ……なぁ士郎、桃子、駄目か?」

 

 

 その言葉が今、悟空に出来る精いっぱいの援護射撃だった。

 対し士郎はまだ「ん~」と頭を悩ませている。

 出来る事なら二人のお願いは聞いてやりたい、だが先ほど言ったように飲食物を提供する身である以上動物は……と言う気持ちもある。

 そんな気持ちの競り合いの中で士郎が悩む中、桃子は。

 

 

「いいんじゃないかしら? ちゃんとお世話するなら私は賛成よ?」

 

「本当!?」

 

「えぇ、あなたもそんなに悩むくらいなら二人のお願いを聞いてあげたらどう?」

 

「うーむ……そうだな、分かった。許可しよう」

 

「ありがとう、お父さん、お母さん!」

 

「二人とも悪りいな、我儘言っちまってよ」

 

「いいんだよ、気にしなくて。今日からは君も高町家の一員なんだから」

 

「うふふ、そうね。さぁ問題も解決したところでご飯にしましょうか」

 

「飯!? 飯か! 桃子の作る飯は美味いからな、楽しみだぞぉ!」

 

 

 はしゃぐ悟空。

 そんな悟空を見ながら高町家の面々は微笑んでいた。

 孫悟空という少年は、出会ったばかりとは言えその笑顔と人柄で周りを明るく照らしてくれる、そんな存在だと高町家の面々は思い始めていた。

 というわけで早速一同は席に着く。

 テーブルの上に並ぶのは豪勢かつ家庭的な料理の数々。

 桃子曰く悟空が高町家に来た記念として今日は多めに尚且つ豪華に作ったらしい。

 もちろんご飯もたっぷり炊いてある、これもまた完全に悟空対策だった。

 

 

「今日も最高に美味そうだなぁ、それじゃ皆食べようか」

 

 

 士郎の言葉を聞いて両手を合わせる。

 そしてその口から「いただきます」という言葉を紡ごうとした瞬間だった。

 

 

(誰か……助けて!)

 

「え――!?」

 

「お? この声……」

 

 

 聞き覚えのある声が脳裏に響いた。

 だが。

 

 

「ん? どうかしたかい? なのは、悟空くん」

 

「何かあったの? 二人とも」

 

 

 どうやら聞こえていたのは悟空となのはだけのようだった。

 その証拠に突然動きを止めた二人に他の四人は不思議そうな視線を送っている。

 困惑するなのは、ポカンとする悟空。

 さらに声は響いてくる。

 

 

(お願いします、誰か!)

 

 

 その声をもう一度聞いたその瞬間、なのはは動き出していた。




 オッス! オラ、悟空!

 なのはの奴飛び出していっちまった。

 それに、なんだ……? すげぇ嫌な気を感じっぞ。

 なのはは嫌な気のある方向に向かってる……こりゃ放っておくわけにはいかねえな、飯早く食いてえけどオラも行くとすっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「二人に迫る脅威!? 現れた謎の怪物!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之五 二人に迫る脅威!? 現れた謎の怪物!

 新たにお気に入り登録をしてくださった皆さんに評価を入れてくださった« 誘宵 »さんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあっていい感じにこの小説の続きも書けております。

 テンション任せに書いたので後で細かい修正は必須ですが……。

 それはそうと、其之五をどうぞ!


「ちょ、なのは!?」

 

「おい、どうしたんだ!?」

 

「ごめんなさい、ちょっと行ってくる!」

 

「行くってどこへ――」

 

 

 家族の制止も振り払いなのはは家を飛び出した。

 突然の出来事。しかも普段こんな真似は絶対にしない、なのはの行動と言う事もあり高町家の面々は混乱していた。

 そんな中、悟空だけは混乱せずに冷静に気を探っていた。

 

 

「……嫌な気を感じっぞ」

 

「「「「え?」」」」

 

 

 視線が悟空に集まる。

 そして高町家の面々はさらに驚いた、悟空の表情は見た事ないほどに真剣そのものだったからだ。

 朝から何度も見て来た能天気な顔も明るい笑顔も今は隠れてしまっている。

 その表情の変化に只事ではない事は何となく察せた。

 

 

「多分動物病院のとこだ、なのははそこに向かってる……オラも行ってくる」

 

「ま、待て! 何でそんな事が分かるんだ!?」

 

「気を感じっからさ、なのはの気が向かう先に嫌な気を感じる。これは多分偶然じゃねえ」

 

「気……? 悟空、お前何を言って――」

 

「まぁ待ちなさい、恭也。悟空くん、それはつまりなのはが危ないって事でいいのかな?」

 

「あぁ、多分な。でもオラなら何とか出来る」

 

 

 その眼には相も変わらず迷いも嘘も感じられなかった。

 士郎は少しだけ目を瞑り考える。

 そして一度溜め息を吐くとこう言った。

 

 

「悩んでる時間はないか……悟空くん、悪いけどなのはの事頼めるかい?」

 

「父さん!?」

 

「お父さん!?」

 

 

 父である士郎の言葉に恭也と美由希は驚く。

 無理もないかもしれない。

 二人にとって悟空は見た目からしてなのはとそう歳の変わらない、ちょっと変なだけの男の子なのだから。

 そんな子供になのはの事を任せる、それは到底納得のいく話じゃなかった。

 

 

「落ち着くんだ、二人とも。悟空くんなら大丈夫なはずだ、僕にはその確信がある」

 

「確信って……」

 

「……悟空くん、なのはの事お願いね? 出来るだけ早く帰って来るのよ?」

 

「お母さんまで……」

 

「サンキュー、二人とも。そんじゃちょっくら行ってくっぞ!」

 

 

 そう言って悟空は飛び出した。

 その後ろを恭也が追う。

 

 

「待て、悟空! 俺も――!?」

 

「はあああああっ!!」

 

 

 恭也は思わず自分の目を疑った。

 悟空の体から吹き出すもの、それは白いオーラ。

 さらに悟空の体は宙に浮かび流星の如きスピードで飛んでいった。

 人が空を飛ぶ、そんな非現実的なその光景に思わずポカンとしてしまう恭也。

 だがすぐに我に返り一旦リビングへと戻る。

 

 

「父さん、俺も行ってくる! やっぱり心配だ、動物病院ならここからそう遠くはない!」

 

「待つんだ、恭也!」

 

「悟空が行って良くて俺が駄目って事はないだろう? それに一応武器は持ってくから大丈夫さ! それじゃあ行ってくる!」

 

 

 そう言って恭也もまた二人を追って家を飛び出した。

 もはや静止の声は届かない。

 士郎はやや厳しい面持ちで頭を掻く。

 そんな夫に妻である桃子は。

 

 

「大丈夫よ、あなた。なのはも恭也も――悟空くんも」

 

「あぁ……そうだね、今は信じよう。あの三人を」

 

「恭ちゃん、なのは、悟空くん……」

 

 

 三人は多数の料理が並ぶ食卓でただただ祈る事しか出来なかった。

 だが士郎と桃子の胸中には心配だけじゃなく何故か安心感もあったのは紛れもない事実である。

 それはきっと――孫悟空が向かってくれたからだろう。

 あの不思議で非常識な少年ならきっと何があっても大丈夫、そんな謎の信頼感がそこにはあった。

 

 

 

 海鳴市上空。

 そこを悟空は高速で飛行していた。

 まだ春という事もあり少々肌寒くはあったが気にしてる暇はない、悟空は飛びつつ気を探る。

 そしてあっという間に見つけた。

 

 

「おーい! なのは!」

 

「えっ、悟空くん……? あれ、どこ?」

 

「上だぞ」

 

「上……!? ご、悟空くんが飛んでる!?」

 

「へへっ、驚れえたか? 舞空術っちゅう基本的な技なんだけどなぁ」

 

「基本的って……私、空を飛ぶ人なんか見た事ないんだけど……」

 

 

 なのはの中で悟空という存在はますます不思議な存在となっていた。

 光の中から現れたとされ、空も飛べる。

 そう考えると何ともミステリアスというか摩訶不思議な少年である。

 

 

「まぁいいじゃねえか、細かい事はさ。それよりも……動物病院に向かってるんか?」

 

「え? うん……何だか呼ばれてる気がするから」

 

「なのはもか……でも悪い事は言わねえ、今のうちに家に(けえ)れ。動物病院の方向には嫌な気を感じる、行ったらきっと危ねえ目に遭うぞ」

 

「嫌な気……?」

 

 

 悟空が何を言っているのか、なのはには分からなかったがこの先に危険な何かがある、というのは何となく理解出来た。

 だが――。

 

 

「ごめん、それは出来ないよ……だって呼んでるんだもん、助けてって……誰かが私を呼んでるんだもん!」

 

「……なのは、おめえ」

 

「ごめんね、悟空くん。もう私は行くから――」

 

「そういう事ならしょうがねえな、オラも行くぞ!」

 

「えっ……いいの?」

 

「いいも何も最初っからオラは動物病院に行くつもりだったからな、出来ればなのはは帰したかったんだけんど帰る気がねえならしょうがねえ、オラが守ればいいだけの話だ」

 

「悟空くん……ありがとう」

 

「へへっ、そんじゃ急ぐぞ、なのは!」

 

「うん!」

 

 

 二人は走り出す。

 動物病院までの距離はもうそう遠くはない。

 地面を蹴り駆ける、駆ける、ひたすらに暗くなり街灯に照らされた道を駆け抜ける!

 その結果。

 

 

「ご、悟空くん……ちょ、ちょっと待って……」

 

「……なのは、おめえ足遅えぞ」

 

 

 なのはは悟空に置いていかれていた。

 そもそもの話、なのはは運動音痴だ。

 そして悟空は武道家で体を鍛えているため足は相当に速い。

 その二つの要素が合わさった結果こうなってしまったのである。

 なのはは息を切らしながらも言葉を紡ぐ。

 

 

「ご、悟空くんが速すぎるんだよ……!」

 

「しょうがねえなぁ、ほれ。なのはのスピードに合わせてやっから急ぐぞ」

 

「う、うん……」

 

 

 悟空はなのはのスピードに合わせながら走りだした。

 これなら置いていかれる心配はないだろう。

 そして二人はそのまま駆け抜け、ついに動物病院に辿り着いた。

 

 

「つ、着いた……」

 

 

 夕方にもここには来たが今はその時とはまるで違う、何か嫌な空気みたいなものが充満しているように感じられた。

 なのはは息を切らしつつも周囲を見回す。

 そして悟空は周囲の気を探った。

 

 

「さてと、嫌な気の出どころは……!」

 

 

 だがなのはにとっては一難去ってまた一難。

 突然目の前の動物病院の壁が吹き飛んだのである。

 咄嗟に悟空がなのはの前に立ち、飛んでくる瓦礫などを跳ね除ける。

 

 

「大ぇ丈夫か、なのは!?」

 

「うん……ありがとう悟空くん、でも一体何が――」

 

「キュゥー!!」

 

「「あっ!!」」

 

 

 その鳴き声には聞き覚えがあった。

 間違いない、先ほど助けたフェレットだ。

 そのフェレットは全身の至る所に包帯を巻いた姿のまま病院内から飛び出してくる。

 そんなフェレットを追い飛び出してくる、影が一つ。

 

 

「おめえ、こっちに来い! 早く!」

 

「キュッ!?」

 

 

 なのはを守るために側を離れるわけにもいかない悟空はフェレットに対して声をかける。

 その声を聞いたフェレットはちゃんと反応を示し、悟空の方に走りだした。

 しかしそれは同時にフェレットを追う影をもこちらに引き寄せるという事。

 だが悟空とて馬鹿ではない、しっかりと対策は考えていた。

 

 

「そのフェレットを虐めてるんは……おめえかあっ!!」

 

 

 悟空はそう言いながら標的を睨み付ける。

 そして拳をゆっくりと構えた。

 次の瞬間!

 

 

「はぁっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 悟空は勢いよく拳を突き出す。

 それから間もなくフェレットを追いかけていた影は吹き飛び近くの塀に激突した。

 砂煙が上がる。

 その間にフェレットは悟空のもとに辿り着きその肩の上に乗った。

 

 

「もう大ぇ丈夫だぞ」

 

「ありがとうございます……来てくれたんですね」

 

「ふぇ、フェレットが喋った!?」

 

「ん? そんなに驚くような事なんか?」

 

「え、えぇ……」

 

 

 フェレットが喋ったと言う衝撃的な事実になのはは眼を丸くしつつ悟空のけろっとした反応に困惑する。

 悟空からしてみれば喋る動物など珍しくもなんともない。

 喋る恐竜やら、イルカやら、ウミガメやら様々な生き物と関わり合いになった経験は伊達ではなかった。

 それはそうと――。

 

 

「ところで悟空くん、今何したの?」

 

「簡単だぞ、拳を突き出した時に発生する衝撃波であいつをふっ飛ばしただけだ」

 

 

 何という非常識な戦い方。

 もしかして悟空くんってもの凄く強いのでは? なんて疑問がなのはの中には浮かんでいた。

 しかしのんびりと会話している暇はない。

 

 

「ギシャアアアアアッ!!」

 

「「「!!」」」

 

 

 気が付けば土煙の中からは真っ黒な謎の生き物――いや、怪物が飛び出してきており雄たけびを挙げていた。

 そんな怪物に対し悟空はそっと構えを取る。

 その眼は能天気でも何でもない闘志に満ちた戦士の眼だった。




 オッス! オラ、悟空!

 なんだ、ありゃ。見た事ねぇ生き物だなぁ。でもあいつが嫌な気の出どころみてぇだ!

 いぃっ!? こいつ攻撃を与えても再生しちまうぞ!?

 しょうがねぇ……こうなったら久々にアレ、使ってみっか!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「これがオラの十八番(おはこ)! 放て、必殺のかめはめ波!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之六 これがオラの十八番(おはこ)! 放て、必殺のかめはめ波!!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さん、感想を書いてくださった方々、評価を入れてくださった蜂蜜野郎さん、ひまじんホームさん、ラットイコールトリさん、カラエフフさん、ぼるてるさん、ありがとうございます!

 これだけの評価や感想、お気に入り登録をいただけるとは思わず滅茶苦茶驚いております。

 しかも日間ランキングにも一時的に乗る事が出来ましたし、これも応援してくださってる皆様のおかげ、本当にありがとうございます!

 さて長い話は活動報告の方でやるとして今年最後の投稿となる其之六をどうぞ!

 あ、よろしければ来年も引き続きよろしくお願いします!


「な、何あれ……」

 

 

 なのはは思わず後ずさる。

 それもまた当然の反応だった。

 目の前にいる怪物は明らかに非日常の存在、ごく普通の日常の中で生きて来たなのはにとっては恐怖以外の何者でもない。

 だが孫悟空は違う。

 

 

「なのは、悪りいけどこいつ預かっててくれ」

 

「え……う、うん」

 

「な、何する気ですか!?」

 

 

 なのはに手渡されたフェレットから心配の声が上がる。

 なのはもそれには同意見だった。

 そんな一人と一匹に対し悟空はさらっと言ってのける。

 

 

「このまま放っておく事は出来ねえからな、あいつをぶっ倒す!」

 

「「えっ!?」」

 

 

 一人と一匹が驚くのも束の間、悟空は駆けだしていた。

 静止する暇など当然ない。

 凄まじい速度、まるで自動車のようなそんなスピードと勢いで駆ける悟空はあっと言う間に怪物との距離を縮める。

 あまりの速さに怪物はその眼を見開かせた。

 それはつまり悟空のスピードについて行けてないという事、という事は当然――隙は生まれる。

 

 

「だりゃあっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 悟空の助走をつけた拳が怪物の顔面にめり込み、その巨体を吹き飛ばす!

 さらに悟空の体から白いオーラが噴出、悟空は宙を飛びながら怪物が飛んでいった方向に先回りして今度はその体を天高く蹴りあげる。

 まだ攻撃は終わらない、悟空はもう一度宙に浮かび先回りし、かかと落としを叩き込む。

 防御する暇などなく地面に勢いよく落下する怪物。

 衝撃でアスファルトは砕け土煙が上がる。

 そんな一連の悟空の攻撃をなのはは電柱の影に隠れながら何とか目で追っていた。

 

 

「す、凄い……」

 

「こんな人がいるなんて……でも駄目です! あいつは……!」

 

「え?」

 

 

 フェレットの言葉の意味をなのははすぐに理解する事になる。

 土煙が吹き飛ぶ。

 中から現れたのは当然怪物、だが問題はその姿だった。

 あれだけの攻撃を加えられたのにピンピンしているのだ。

 目立った傷も見当たらない。

 絶望がなのはを襲う、あんな凄い悟空の攻撃があまり効いてないのだからしょうがないだろう。

 だが――。

 

 

「ひゃー、あれだけオラの攻撃を受けて殆どダメージないんか。おめえ中々やるじゃねえか」

 

 

 悟空は――笑っていた。

 それはまるで戦いを楽しんでいるようにも見えて、なのはは悟空という存在をますます不思議に感じる。

 自分の攻撃があまり効いてないのにどうして笑っていられるのだろう。

 そんな事を考えてるなのはに魔の手が迫る。

 

 

「ギ……ッ!!」

 

「えっ……!?」

 

 

 突如として怪物の大きな目がギョロリとなのはの方を向き同時にニヤリと笑ったような気がした。

 それに違和感を感じたのも束の間、怪物の体から触手のようなものが伸びてなのはの方に迫る。

 

 

「きゃっ!?」

 

「あ、危ない!」

 

 

 思わず目を瞑るなのは、だがいつまで経っても衝撃は来なかった。

 恐る恐る目を開ける、するとそこには。

 

 

「大ぇ丈夫か? 二人とも」

 

 

 悟空がいた。

 上空にいたのにも関わらずいつの間にかなのはの目の前に移動して飛んできた触手全てをその両手で握りしめて受け止めている。

 怪物は必至に触手を引っ張って抜け出そうとしているがビクともしない。

 

 

「汚ねえ奴だ……戦えねえ、なのはの方を狙うなんて、オラちっとばかし怒ったぞ!!」

 

 

 顔が見えなく背中しかなのはには見えなかったが悟空の怒りが伝わって来る。

 それが頼もしくもあり、同時に少し怖いとも思ってしまったなのはの事は誰も責められまい。

 それだけ今の悟空の迫力は凄まじかった。

 そこへ――。

 

 

「なのは、悟空! 無事か!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「お、恭也じゃねえか」

 

 

 やって来たのは木刀を手に持った恭也だった。

 悟空に遅れて家を飛び出した恭也がようやく追いついたのである。

 だが恭也はすぐにその眼を見開く。

 

 

「な、なんだ……あの化け物は」

 

 

 現在悟空に触手を掴まれているため身動きが取れなくなっているとは言え見た事もない怪物がそこにいたのだから無理もない。

 だがそんな恭也を余所に悟空は何かを思いついたように頷いた後、こう言った。

 

 

「恭也! なのはとフェレットの事、頼めっか?」

 

「え、あ、あぁ……」

 

「サンキュー! これで心置きなく戦えっぞ!」

 

 

 悟空はそう言うと鋭い目つきで怪物を睨み両腕に掴んだ触手を思いっきり引っ張った。

 凄まじい馬鹿力に引っ張られた怪物の巨体はそのまま悟空の方へと引き寄せられて――。

 

 

「でりゃあっ!!」

 

 

 ギリギリまで接近したところでその胴体に悟空の蹴りがめり込んだ。

 と同時に悟空は触手から手を離す事で怪物は吹っ飛んでいく。

 さらにそんな怪物に悟空は凄まじいスピードで追いすがり、その拳を強く握る、そして!

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

「グガアアアアアッ!?」

 

 

 叩き込まれるラッシュ。

 怪物の体はところどころ陥没し、その眼が苦痛で歪む。

 さらに数え切れないほどラッシュを叩き込んだ後、悟空はその場でクルリと回転し。

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

 

 回し蹴りを怪物の側面に叩き込んだ。

 怪物は近くの塀に勢いよく激突、再び砂埃を舞い散らせる。

 そんな悟空の戦いっぷりを、見るからに重たい攻撃の数々を見ていたなのはと恭也、そしてフェレットは誰もがポカンと口を開けて、少し間抜けな表情を浮かべていた。

 

 

「やっぱり悟空くん強い……」

 

「なんなんだ、あいつ……本当に人間か?」

 

「……気を付けてください! そいつは普通の攻撃じゃそう易々とは倒せません!」

 

「えっ、そうなの!?」

 

「アレでも倒せないって言うのか……? ……ってフェレットが喋った!?」

 

 

 恭也の驚きなど何のその、なのはは心配そうに悟空を見つめる。

 対し悟空は土煙の方を睨み付けたまま構えていた。

 あれで倒せていないのは気を察知すれば容易に理解する事が出来るから気は一切抜いていない。

 そこへ、今度はこちらの番と言わんばかりに土煙から怪物が飛び出して来た。

 高々と飛び上がった怪物は空中で一瞬静止、そして隕石の如く悟空目掛けて体当たりを行う。

 

 

「よっ」

 

 

 悟空はそれを軽々と回避、だがそんな悟空に対し怪物の追撃が入る。

 伸びて来たのは無数の触手、それら一つ一つが悟空の体を貫かんとばかりの勢いで迫って来る。

 だが悟空は冷静に対処を行っていく。

 

 

「はっ! だっ! でりゃあっ!」

 

 

 拳が、蹴りが、触手を弾いていく。

 それを見て触手攻撃は通じないと判断したのか怪物は今度は真っすぐ体当たりをしてきた。

 しかし悟空はそれも予想していたのか、まるで動じずに両手を前方に伸ばす。

 そのまま悟空の両手にぶつかる怪物の巨体。

 だが悟空は僅かに後ろに下がっただけでその体当たりを苦も無く受け止めた。

 これには怪物も驚愕の色を浮かべる。

 

 

「ギギッ!?」

 

「へへっ、この程度じゃオラは倒せねえぞ……だりゃっ!」

 

 

 驚愕で動きが止まっていた怪物に対し悟空はその巨体を軽々と蹴りあげた。

 そして重力に従い落下してくるその巨体を睨みながら右の拳を強く握る。

 そのまま落ちて来た怪物に目掛けて悟空は拳を突き出す!

 

 

「だあっ!!」

 

「グギャッ!?」

 

 

 真っすぐ吹き飛んでいく怪物。

 地面を転がりながら怪物は何とか体勢を立て直す。

 今度のはそれなりにダメージが入ったようだがまだまだ動けそうだった。

 そんな怪物を見ながら悟空は言う。

 

 

「こりゃこのままじゃいつまで経っても終わらねえな……しょうがねえ!」

 

 

 そう言って悟空は独特な構えを取る。

 そんな悟空を見ながらフェレットは思った。

 このままではいけない、今こそ優勢ではあるが相手には再生能力がある、ともなればいずれジリ貧となるのは明白だった。

 だからこそフェレットは今、自分を抱きかかえてくれてる少女――なのはに声をかける。

 

 

「お願いします、僕に力を貸してください!」

 

「え、わ、私!?」

 

 

 現状を打破するにはあの怪物を止められる存在が必要だ。

 それこそ倒すのではなく封印する事が出来る存在が。

 そしてフェレットはこの少女と今戦ってる少年にならその資質があるだろうと踏んでいた。

 何故ならこの二人はきっと自分の念話を聞いてここにやって来てくれたのだから、と。

 

 

「今戦ってくれてるあの人――悟空さん、でしたっけ。彼か貴方にしか出来ない事なんですが、とてもじゃないけど彼にやり方を教えてる時間はないんです、お願いします! 卑怯な言い回しかもしれないけれど彼を救うためにも、ジュエルシードを封印するためにも貴方の、魔法の力を貸してください!」

 

「え、えぇ!?」

 

「魔法? おい、一体何を……」

 

 

 突然そんな事を言われても、混乱してしまうのが普通というものだ。

 恭也も捲くし立てるように喋るフェレットを制止しようとしている。

 ――だがなのははチラリと悟空の方を見た。

 そこには独特の構えを取ったまま怪物と相対する悟空の姿があった。

 彼を救う? 自分が?

 そんな事が本当に出来るのだろうか、という気持ちもあったが――。

 

 

「……分かった、何すればいいの?」

 

「おい、なのは!?」

 

「いいの、お兄ちゃん。よく分からないけど私やるよ」

 

 

 なのははフェレットの提案に乗る事を決めた。

 兄の静止を聞かずにそう決断したのは提案してきたフェレットが悪い子には見えないというのもあるが一番はあの太陽のように明るい少年の助けになりたいという気持ちだった。

 自分なんかでも力に、助けになれるのなら――なのはは勇気を振り絞って一歩踏み出せる。

 

 

「ありがとうございます……それじゃあこれを」

 

「何これ……宝石? 綺麗……」

 

「かー……」

 

 

 なのはがフェレットに手渡されたのは赤い宝石だった。

 一見ただの宝石に見えるがその実、全然違う事が手に持ってるなのはには分かった。

 何というべきか、宝石なのにどこか温かみがあるのだ。

 その不思議な宝石をなのははそっと握りしめる。

 

 

「眼を閉じて……心を澄ませて、僕の言った言葉を続けてください!」

 

「う、うん!」

 

「我、使命を受けし者なり」

 

「われ、使命を受けしものなり……」

 

「契約のもと、その力を解き放て」

 

「契約のもと、その力を解き放て……」

 

「風は空に、星は天に」

 

「風は空に、星は天に……!」

 

「めー……」

 

 

 言葉を紡いでいくと手に持った宝石がドクン、ドクンとまるで心臓のように脈打つのが感じられる。

 さらになのはとフェレットは言葉を、呪文を紡ぐ!

 一方で悟空もまた言葉を紡ぎ体に力を込めていた。

 それに気づいているものは未だにいない、なのはやフェレットは勿論、妹に何が起きるか気が気でない恭也もそちらに夢中なので気づいていない。

 気づいているとすれば相対している怪物ぐらいだろう。

 

 

「そして不屈の心はこの胸に」

 

「そして不屈の心はこの胸に!」

 

「「この手に魔法を。レイジングハート、セットアップ!」」

 

「はー……」

 

 

 瞬間、なのはの体は光に包まれた。

 それは優しい桜色の光。

 その光はやがて収縮していき中から現れたのは――白い服に身を包み大きな杖を持ったなのはだった。

 

 

「な、なのは……その姿は……」

 

「え? えっ、何これ!?」

 

「それこそが君のイメージを具現化した戦闘服、バリアジャケットだよ。早速だけどやり方は教えるから悟空さんの援護を!」

 

「う、うん! ……え?」

 

「めー……」

 

 

 早速援護に向かおうとなのはは目を疑った。

 悟空の両手の間から青白い光が放たれていたからだ。

 先ほど自分を包み込んでいた優しい桜色の光とはまた違う、力強い光。

 その光を見てなのはに限らずその場にいたものは眼を丸くした。

 

 

「悟空の奴、一体何を!?」

 

「ま、まさか……砲撃魔法!? いや、魔力は感じない……じゃああれは一体!?」

 

「ほ、砲撃魔法!? なにそれ!?」

 

 

 動揺する三人。

 そんな三人を置いて悟空は溜め込んだ力を一気に解放する!

 

 

「波あああああーっ!!」

 

「きゃっ!?」

 

「うわっ!?」

 

「くっ……!」

 

 

 放たれた青白い光の波動。

 その衝撃波凄まじく三人は思わずその場にしゃがみこんだり、尻もちをつく。

 これこそが亀仙流の奥義であり悟空お得意の必殺技、かめはめ波である。

 かめはめ波はそのまま怪物に迫り、そして。

 

 

「ギャアアアアアッ!?」

 

 

 その巨体を光の中に飲み込みあっと言う間に消し飛ばした。

 海鳴市の夜空に一筋の光が撃ちあがる。

 ――流れる静寂。

 それを破るように宙からは一つの宝石が落ちて来た。

 悟空は淡い光を放つそれを見ながら首を傾げる。

 

 

「ん? なんだ? あれ」

 

「えっと……あれはジュエルシード、あの怪物の発生源です」

 

「へぇ、あんな石ころが……すげえなぁ」

 

 

 いつの間にか隣に来ていたフェレットの言葉に悟空は感心する。

 攻撃力はともかくとしてタフさに関しては驚くものがあった。

 その発生源があんな宝石一つだとは思いもしなかった、だから感心したのである。

 フェレットからしてみれば怪物をいとも容易くふっ飛ばしてしまった悟空の方がよっぽど凄いのだが――今はそれよりもやるべき事がある。

 

 

「そ、それじゃあ早速封印を、早く封印しないと復活しちゃうかもしれないから」

 

「う、うん。分かった」

 

「お? なんだ、なのは。おめえ着替えたんか?」

 

「ちょ、ちょっと色々あってね……とりあえずあのジュエルシードって言うの封印してくるね」

 

 

 なのははそう言ってジュエルシードに駆け寄りフェレットに言われるがままに杖を振り上げる。

 正直こういう役目がまだ残っていて良かったと心から思う、もしこの役目すら残ってなかったら先ほどの決意も手に入れた力も全部無駄になるところだったから。

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード封印!」

 

 

 そう言ってなのはが杖を振り下ろすとジュエルシードは杖へと吸い込まれ消えていった。

 こうして騒動は一旦の収まりを見せたのである。




 オッス! オラ、悟空!

 とりあえず一件落着だな! ははっ!

 ん? なんだ、なのは、恭也、移動するんか?

 今度は何だ? ジュエルシードについての説明? オラ、小難しい話は苦手なんだけんど……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「おめえはどうしたい? なのはの思い」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之七 おめえはどうしたい? なのはの思い

 明けましておめでとうございます!

 今年最初の投稿となります。

 新たにお気に入りに登録してくださった皆さんに、感想をくれた方々、誤字報告をしてくれた方に評価を入れてくださったグンマーさん、アマッカスですが?さん、おかゆフィーバーさん、Spopoさん、ミミズク33さん、きりたちのぼるさん、皆さんに心からの感謝を!

 今年もDragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~をよろしくお願いします。

 それでは其之七をどうぞ。


「とりあえず一件落着、かな」

 

 

 封印を終えたなのははそう呟く。

 よくよく考えれば大変な事に巻き込まれたものだが悟空のおかげもあり何とか切り抜ける事が出来た。

 だが恭也は難しそうな顔をしながら眉間に皺を寄せている。

 

 

「恭也、どうかしたんか?」

 

「ん、あぁ……ジュエルシードって言ったか、何であんな危険なものがこの街にあるのかと思ってな」

 

「それは……」

 

 

 その疑問を聞いたフェレットは俯き何かを言いよどむ。

 それだけで恭也は何となく察する事が出来る。

 このフェレットはジュエルシードがこの街にある理由と何かしら関係していると。

 

 

「……知ってる事、話してもらうぞ」

 

「……はい」

 

 

 重々しい空気が両者の間に流れる。

 そんな空気をぶった切ったのは――悟空だった。

 

 

「そんな事よりよ、オラ達ここにずっといていいんか? 何か周りも騒がしくなってきてるしよ」

 

「えっ」

 

「……そういえば」

 

 

 それを聞いたなのはと恭也は周囲を見回す。

 大きな穴が空いた動物病院、あちこち崩れてしまってる塀、陥没している道路。

 あえて言おう、大惨事である。

 こんなところを仮に警察に見られたら――間違いなく面倒事になるのは目に見えていた。

 

 

「に、逃げるぞ!」

 

「う、うん!」

 

「ん? 逃げるんか?」

 

「悟空くん、急いで!」

 

 

 恭也となのはは急いで駆け出し、そんななのはに手を引っ張られ悟空も駆けだす。

 こうして一行は面倒事になる前にその場から離れる事に成功した。

 ちなみにフェレットはなのはの肩に乗っかっている。

 そして暫くの間我武者羅に走った後、三人と一匹は近くの公園に辿り着いた。

 

 

「と、とりあえずここで休憩しよう」

 

「さ、賛、成……」

 

「なのは、おめぇ運動オンチってやつだな」

 

 

 恭也の提案になのはは盛大に息を切らしながら答える。

 なお、悟空はあれだけ戦った後に全力疾走したというのにケロッとしていた。

 これぞまさに鍛え方が違うという奴だろう。

 とりあえずベンチに腰掛けるなのは。

 と同時にフェレットはなのはの肩から降りる。

 そして三人に向き直り、一人一人の顔を見ながら言った。

 

 

「えっと、まずはお礼を言わせてください。ありがとうございます、悟空さんと――えーっと」

 

「俺か? 俺は恭也だ」

 

「私はなのは、高町 なのは。なのはって呼んで?」

 

「それじゃあ悟空さん、恭也さん、なのは、本当にありがとうございました。おかげでジュエルシードを封印する事が出来ました」

 

 

 そう言ってフェレットはペコリと頭を下げる。

 そんなフェレットに対し悟空は。

 

 

「気にすんなって、オラは単に嫌な気を出してる奴を倒しただけだしよ」

 

 

 そう言って笑った。

 そんな風に言ってもらえたおかげか気持ちが幾分か軽くなったのをフェレットは感じていた。

 そして気づく、そう言えばまだ自己紹介もしていないと。

 

 

「自己紹介が遅れました、僕の名前はユーノ・スクライアって言います」

 

「ユーノくんかぁ、可愛い名前だね」

 

「ハハハ……か、可愛いかぁ……ありがとう」

 

 

 可愛いと言われて遠い目をしながら軽くしょぼくれるユーノ。

 そんなユーノの反応になのはは首を傾げる。

 まぁそれは置いておいて恭也が切り出した。

 

 

「それじゃあ話してもらえるか、ジュエルシードとやらについて」

 

「……はい」

 

 

 そうしてユーノは語りだす。

 ジュエルシードはそもそも自分達が発掘したものである事。

 とある事故でジュエルシードがこの海鳴市周辺にばら撒かれてしまった事。

 それを集めるために頑張ったが返り討ちにあい負傷してしまった事。

 ここに至る経緯を全て。

 それを聞いた三人の反応はまさに三者三様だった。

 恭也の表情は険しく、なのはは困惑した顔をしており、悟空にいたっては理解しているのかしてないのか表情を変えずに首を傾げている。

 

 

「巻き込んでしまった事は申し訳ないと思っています、でもこの街に散らばったジュエルシードを集めるには魔法の力が……なのはの力が必要なんです、どうか力を貸していただけませんか?」

 

 

 それは必死の懇願だった。

 本当は認めたくないが認めざるを得ない自分自身の無力を認め、ひたすらに頭を下げる。

 だが――。

 

 

「話は分かった……だが俺は賛成出来ない」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「……」

 

「危険な代物だという事はさっきのを見れば嫌でも分かる、だけどな、それと妹を危ない目に遭わせる事に関しては別問題だというのは分かってくれるよな?」

 

「……はい」

 

 

 当然の話だ。

 確かに誰かがやらねばならない事ではあるのだろう。

 だがその役目を担うのが実の妹ともなれば納得はし難いと言うのが家族として、兄としての恭也の感情だった。

 ユーノは俯く。

 恭也のその感情は、言ってる事は間違っていないと感じた。

 とてもじゃないが、ここから彼を説得するだけの材料をユーノは持ち合わせていない。

 こうなったらしょうがない、時間はかかるが自分だけ何とかして――そう思った矢先だった。

 今まで黙っていた悟空が口を開いた。

 

 

「そんな顔すんなよ、大ぇ丈夫さ、オラがおめえの力になってやる」

 

「え……?」

 

 

 ユーノが顔を上げる。

 するとそこにはニカッと笑った悟空の顔があった。

 悟空はユーノをそっと抱えると頭の上に乗っけて言う。

 

 

「要はそのジュエルシードってのを集めればいいんだろ? オラそういうの昔から結構やってたから得意だしな」

 

 

 思い出すのは若い頃から幾度となく行ってきたドラゴンボール集めの日々。

 ドラゴンボールと違ってレーダーがないから厳密に言えば違うのだろうがそれでも悟空は何とかなると踏んでいた。

 だがユーノからすれば嬉しい反面申し訳ない気持ちも出てくる。

 

 

「で、でもどんな危険が伴うか分からないんですよ!? 今回は勝てましたけど次は上手くいくかどうか……」

 

 

 だからこそユーノは改めてこの件に関わる危険性を説明した。

 それに対し悟空は闘志に満ちた眼でこう言う。

 

 

「望むところだぞ! オラ、役に立てておまけに強え奴と戦えるなら願ったり叶ったりだ!」

 

「え、えぇ!?」

 

 

 そう、ユーノはまだ理解してなかった、孫悟空という人間を。

 彼は自身に危険などが迫ってくれば逆に燃え上がるタイプなのである。

 そうとは知らず悟空の闘志の炎にガソリンを投下してしまったユーノはただただ困惑していた。

 

 

「それによ? おめえ一人じゃ厳しいんだろ? オラが手伝えばそれだけ上手く行く可能性も上がるじゃねえか」

 

「そ、それは……そうですけど……本当にいいんですか?」

 

「あぁ、勿論だ! これからよろしくな、ユーノ!」

 

「あ……ありがとう、ございます……!」

 

 

 心強い味方を得る事が出来た、その事実にユーノは思わず涙ぐむ。

 悟空の心強く優しい言葉一つ一つがユーノの心を揺さぶっていた。

 だがなんとかその涙を堪えてお礼を言う。

 そんな一人と一匹の会話を聞いていたなのははと言うと。

 

 

(私は……)

 

 

 まだ自分の気持ちに結論が出せていなかった。

 自分には悟空ほどの力は無い。

 それに危険だから反対だという兄の気持ちを蔑ろにはしたくはない。

 でも、だからと言ってこのまま引き下がってしまっていいのか? という気持ちはあった。

 成り行きとは言え手にした魔法という特別な力。

 今の自分ならユーノの、悟空の力になれる……かもしれない。

 そう考えるとますます悩んでしまう。

 そんななのはに悟空は問いかける。

 

 

「なのは、おめえはどうする?」

 

「え、わ、私?」

 

「……悟空、さっきも言ったが俺は反対――」

 

「んー恭也の言いてぇ事も分かるけどよ? なのは本人の気持ちをまだ聞いてねえだろ? こういうのは本人の意志が大事なんじゃねえのか?」

 

「それはそうだが……」

 

 

 視線がなのはに集まる。

 まだ自分の中でも答えは出てないのにそんな視線集められても困るというのが正直なところだったが、なのはは考える。

 出来る事なら自分も力になりたい、それは偽らざる本心だ。

 だが自信のなさと心配してくれている兄への思いから最後の一歩が踏み出せないでいた。

 そんな時、悟空が言った。

 

 

「無理にとは言わねえけんど悔いのねえようにな? どっちを選んだってオラ達は別に恨みも怒りもしねえから安心して選んでくれていい」

 

「悟空くん……」

 

 

 不思議な子だな、と改めて思う。

 普段はどこか子供っぽくて、食いしん坊で、でも規格外に強い変な子だけど今みたいに大人びたところも時折見せてくる。

 そしてそんな悟空の言葉が、なのはに最後の一歩を踏み出させた。

 

 

「私は……私もユーノくんの、悟空くんの力になりたい。この魔法の力で……!」

 

 

 ――それは勇気を振り絞って紡ぎ出した言葉だった。




 オッス! オラ、悟空!

 よし決まりだな! ジュエルシードはオラとなのはで何とかする!

 ところで今日のオラの寝床は……そっか、なのはの部屋だな、分かったぞぉ。

 ん? なんだよ、なのは。オラに聞きてえ事でもあるんか?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「夜の語り合い、悟空の人生(これまで)

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之八 夜の語り合い、悟空の人生(これまで)

 新たにお気に入り登録してくださった方々、感想をくれた方、評価を入れてくださったタカtさんとケチャップの伝道師さんに感謝を。

 八話目にしてようやく初日が終了。

 思った以上にスローペースな本作ですが、今後もお付き合いいただけると幸いです。

 では其之八をどうぞ。


「お、おい。なのは!?」

 

「ごめん、お兄ちゃん。でも私……放っておくなんて出来ないよ、ユーノくんのお手伝いがしたい」

 

 

 そう告げたなのはの眼に迷いはなかった。

 これは何を言っても聞かない眼だ、そう即座に理解出来たのは兄妹であるが故か。

 だから恭也も腹をくくった。

 

 

「はぁ……分かった、そういう事なら俺も出来る範囲で協力する」

 

「え、お兄ちゃん!?」

 

「お? なんだ、恭也も一緒にやるんか?」

 

「あぁ、自分で言うのもあれだが妹と悟空にだけ任せて後は我関せず……とはいかない性格なんでな」

 

 

 それに最初っから俺が手伝うつもりではいたんだ、と恭也は笑った。

 妹であるなのはが自ら首を突っ込みこの一件に関わっていく事を決断したと言うのは正直言って予想外だったが、彼もまたこの件を放っておけない優しい心と正義感を持っていた。

 それにこの海鳴市――自分達が育った街には相応に思い入れもある、そこにジュエルシードのような危険な代物がばら撒かれてるともなれば放っておくという選択肢は自然と除外されると言うものである。

 そしてその話を聞いていたユーノはと言うと。

 

 

「皆さん……本当にありがとうございますっ! うう……」

 

「ん? ハハッ、何泣きそうになってんだ? ユーノ」

 

 

 また泣きそうになっていた。

 そんなユーノに悟空は笑顔を向ける。

 そんな一人と一匹を見てなのはと恭也は微笑むのだった。

 

 

「ところでよ、なのは。おめえいつまでその恰好してんだ?」

 

「え、あっ! わ、忘れてた……これどうやって戻るの?」

 

「グスッ……スッと力を抜けば戻れると思うよ」

 

「スッ、と……?」

 

 

 なのはがユーノに言われるままに体の力を抜いた瞬間、なのはの体は光に包まれ服装は元に戻っていた。

 とりあえずこれで今度こそ一件落着。

 ともなれば――。

 

 

「お、戻ったな。そんじゃ……帰っか! 腹も減ったしよ」

 

「あぁ」

 

「にゃはは、うんっ!」

 

「えっと、僕も行って良いんでしょうか?」

 

「ん? 何言ってんだ? 当たり前だろ?」

 

「ユーノくんを飼う許可は貰ってるから大丈夫だよ」

 

 

 こうして三人と一匹は高町家に向けて歩き出した。

 暫く歩くとぐぎゅるるると大きな音が鳴る。

 当然悟空の腹の音である。

 

 

「悟空くん、凄い音だね……」

 

「しょうがねえだろ? まだ晩飯食ってねえんだから」

 

「やれやれ……だが確かに腹が減ったな、少し急ぐか。父さんたちも待っててくれてるだろうし」

 

 

 

 ――数分後。

 一行は高町家へと無事辿り着き、玄関の戸を開いた。

 

 

「「ただいまー」」

 

「たでえまー!」

 

 

 三人のその声が響いてから数秒後、高町家の中からはドタドタという足音が聞こえてくる。

 そして士郎達が顔を出した。

 

 

「三人とも無事だったか、良かった……」

 

「へへっ、悪りいな。心配かけちまったみてえでよ、でも誰一人怪我せずに終わったぞ」

 

「恭ちゃん、なのは、何があったの?」

 

「あー……なんと言ったらいいか……」

 

「えーっと……」

 

 

 恭也となのは兄妹は美由希の言葉にどう返したらいいものか分からず言葉を詰まらせる。

 怪物と遭遇して悟空がそれと戦いましたとか、なのはが魔法の力を手に入れましたとか、先ほど起こった出来事を馬鹿正直に伝えるのはどうかと思ったからだ。

 かと言ってパッといい感じの嘘が思い浮かぶ事もなく二人は頭を悩ませる。

 それを察してか否か、桃子が口を開いた。

 

 

「色々あるんでしょうけど、とりあえずご飯にしましょ? 悟空くんなんか相当お腹空かせてるでしょうし」

 

「飯! ようやく食えるんかぁ!」

 

 

 見るからにウキウキしている悟空。

 確かに相当お腹を空かせてそうだった。

 そんな姿を見て士郎は思わず笑う。

 

 

「ははは、確かに待ちきれなさそうだ。三人ともとりあえず手を洗って……おや? なのは、その動物は……」

 

「あ、この子がさっき話に出したフェレットで……ちょっと色々あって連れて来たの」

 

「わー! 可愛い!」

 

「キュー!?」

 

 

 美由希に抱きしめられてジタバタもがくユーノ。

 そして脱出したと思いきや今度は桃子に抱きしめられる。

 とりあえずユーノはその可愛らしい外見を活かして高町家に何とか溶け込んだのだった。

 その間に先ほどまで外に出ていた三人は手を洗い席に着く。

 こうして全員が揃ったところで高町家は少し遅い夕食の時間に突入した。

 

 

「ガツガツガツ! うんめえ~! やっぱり桃子の作る飯は凄くうめえや!」

 

「ふふっ、ありがとう。おかわりいっぱいあるから遠慮せずに食べてね」

 

「にゃはは、朝も思ったけど凄い食欲……悟空くん、詰まらせないようにね」

 

「モガ? んぐんぐ……心配いらねえぞ、よく噛んでるからな!」

 

「その割には食うスピードが……どんな速度で噛んでるんだ……お前は」

 

 

 というわけで夕食の時間は楽しく過ぎ去った。

 大量に炊いたご飯は悟空が多めにおかわりした事で見事に空っぽになったという。

 

 

「……ねぇお父さん、我が家の食費大丈夫なのかな?」

 

「だ、大丈夫だろう。問題ないさ、多分」

 

「ふふ、あれだけ食べてくれると作りがいがあるわね」

 

 

 その裏でそんな会話があったのはまた別の話である。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 夕食後、風呂をあがったなのはは自室で自らの携帯電話をいじりメールを送っていた。

 フェレット――ユーノの事を友人であるアリサとすずかに報告するためである。

 そんななのはの姿をベッドの上に座ってるユーノは見つめている。

 それから数分、一通りメールでの会話を終えたなのはは携帯電話を閉じた。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 思わず溜め息が漏れる。

 今日は色々ありすぎたから少し疲れてしまったのかもしれない。

 だが眠るには妙に眼が冴えてしまっていた。

 なのはは枕に顔を埋めて今日一日に遭遇した出来事を思い返す。

 

 

(ユーノくん、怪物、ジュエルシード、魔法……)

 

 

 こうして考えてみると何という濃密な一日だろうか。

 たったの二十四時間の間にこれほどの未知との遭遇があった。

 だが一番印象深かったのは――。

 

 

「悟空くん、かなぁ……」

 

 

 正直言って不思議な子だと思う。

 魔法の力なんて非常識な力を手にしたなのはが言うのもアレだが、なのはから見た悟空はそれ以上に非常識だった。

 空は飛べるし、ビームみたいなのも撃てる、人間か疑わしくなるくらい食欲も旺盛だ。

 その上、太陽のように明るい笑顔を見せる時もあれば怖いくらいの怒りを見せる時もあるし、子供とは思えない大人びた顔を見せる事もある。

 いろんな顔を持った不思議な少年、それがなのはが今日一日で悟空に抱いた印象だった。

 そんな悟空とも出会ってまだ一日も経過してないと言うのだから驚きである。

 

 

「はぁ……」

 

「なのは……」

 

 

 また溜め息が漏れる。

 それがどういった意味合いの溜め息なのかは吐いた本人であるなのはにも分からなかった。

 ただ何となく悟空の事が頭から離れなかった。

 それだけ悟空という存在が印象深くかつ心の奥底に刻まれたからかもしれない。

 そんな状態のなのはをユーノは心配そうな顔で見ている。

 中々眠れそうにはないがもう寝てしまおうか、なんて考えていると――。

 

 

「おーい、なのは! 入っぞー!」

 

「え? この声……悟空くん?」

 

 

 ドアが開く。

 そこには布団を抱えた悟空が立っていた。

 どういう事か理解が追い付かずなのはは思わず首を傾げる。

 

 

「えっと、悟空くんどうしたの? というかそのお布団なに?」

 

「おう! 士郎達がなのはの部屋で寝ろって言うからよ、布団持ってきたんだ」

 

「えぇ!? 部屋の主である私の意志は!? 問答無用!?」

 

「ん? なんだ、オラがいると嫌なんか?」

 

「そ、そういうわけじゃないけど……」

 

「じゃあ決まりだな!」

 

 

 そう言って悟空は空いたスペースに布団を敷き始める。

 同じ部屋で寝るのはちょっと恥ずかしいだけで別に良いし歳の事も考えて一番近そうで仲良さそうな、なのはの部屋に寝かせる事にしたのは分かるのだが部屋の持ち主である自分に一言ぐらい言っておいてほしかったなぁとかなのはが考えている内に悟空はあっという間に布団を敷き終わったようで布団の上に笑顔で寝っ転がっていた。

 ――だがこれはいい機会かもしれない、なのははふとそんな事を思う。

 そもそもの話、色々と聞いてみたい事はあったのだ、明日以降にするつもりだったが折角同じ部屋にいるのだ今聞くのも悪くはないだろう。

 

 

「ねぇ悟空くん……」

 

「ん? どうかしたんか?」

 

「悟空くんは……どうしてそんなに強いの?」

 

「どうして強えのかって? 今のオラなんてまだまだだと思うけんど……強く見えんならそりゃあ鍛えてるからじゃねえかな? 自慢じゃねえけどオラ修行も大好きだからな!」

 

 

 一体どういう修行をすれば空を飛んだりビームみたいなのを撃てるようになると言うのか。

 なのはの悟空に対する謎は深まるばかりだった。

 だから少し質問の形を変えてみる事にする。

 

 

「それじゃあ悟空くんは一体どんな生き方をしてきたの?」

 

「お? なんだ、なのはおめえ……そんな事が気になるんか?」

 

「うん、凄く気になる……かな?」

 

「あ、それは僕も聞きたいです。悟空さんみたいな人見た事ないですし」

 

 

 ユーノもそれに便乗して悟空に尋ねる。

 悟空は腕を組んで少し考え始めた。

 

 

「ん~……どこから話したらいいんかな……まずオラは小せえ頃にじいちゃんに拾われてよ、その時孫悟空って名前を付けてもらったんだ」

 

「え……」

 

「拾われたって……悟空さん、それじゃあご両親は」

 

「多分死んじまったんじゃねえかな、オラ昔に頭を強く打った事があってよ、そのせいで記憶も飛んじまったから顔も覚えてねえんだけどさ」

 

 

 軽い気持ちで尋ねた事だったのだが想像以上に重たい話が返ってきた。

 孫悟空、彼はその性格に反して背負ってる物は中々に重かったのである。

 そんななのはとユーノを余所に悟空は話を続ける。

 

 

「んで、それからはじいちゃんに育ててもらってさ。その時に戦い方とか色々教えてもらったんだ。それがオラの原点ってやつだな」

 

「その……おじいさんは……」

 

「ん? あぁ……もう随分前に死んじまった、それからは暫くの間は山で一人で暮らしてたんだ」

 

 

 悟空はどこか遠くを見るような眼でそう言った。

 何というべきか、その雰囲気や性格に見合わず壮絶な人生である。

 なのにどうしてそんな平気そうな顔が出来るのだろうか。

 なのはには、そしてユーノにも分からなかった。

 そんな一人と一匹の雰囲気を察してか悟空は問いかける。

 

 

「オラはまだ話してもいいけんど……どうする? おめえ達まだ聞くか?」

 

「……うん、良ければもう少しだけ聞かせてほしいな」

 

 

 そう言ったのはなのはだった。

 もう少し、もう少しだけ悟空の事が知りたい。

 そう思ったが故の言葉だった。

 そんななのはに対し悟空はニカッと太陽のような笑みを見せる。

 

 

「よし、分かった! そんでよ? 暫くの間山で暮らしてたんだけんどある日よ――」

 

 

 悟空の話す昔話はなのはとユーノが自然と眠りにつくまで続いたという。




 オッス! オラ、悟空!

 ははっ! なのはのやつ遅刻しそうになってら!

 ……ん、嫌な気だ。ジュエルシードが発動したみてえだな。

 今回の奴はこの前の奴より強えのか……よっし、行くぞ。なのは、ユーノ! まずはジャンケンだ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「猛獣襲来!! 悟空となのはタッグの初陣?」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之九 猛獣襲来!! 悟空となのはタッグの初陣?

 新たにお気に入りに登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れてくれた深々さん、虚気さん、アルトアイゼン・ナハトさんありがとうございました!

 今回から本格的にジュエルシード集め開始となります。

 それでは其之九をどうぞ!


 ――朝。

 温かな日差しが天から降り注ぎ、小鳥達が囀る、そんな平和な時間帯。

 そんな時間帯に高町家はと言うと。

 

 

「ち、遅刻、遅刻ー!?」

 

「モガモガ……おかわりぃー!」

 

「はい、ちょっと待っててね♪」

 

「ハハハ……」

 

 

 何とも混沌とした朝を迎えていた。

 なのははバタバタしてるし悟空は相変わらずの食欲だし、桃子はマイペースに悟空のお茶碗にご飯をよそってるし、士郎は苦笑いを浮かべている。

 何でこんな事になっているか、理由は至極単純。

 今朝はなのはが寝坊した、ただそれだけである。

 ただでさえ朝が弱いなのはだ、それに加えて昨日は限界まで悟空から話を聞いていたため寝るのがいつもより少々遅かった。

 ともなれば寝坊するのはある種必然だろう。

 

 

「もー! 悟空くん、早く起きたなら私も起こしてよぉ!」

 

「もが? んぐんぐ……って言ってもよぉ、なのは、おめえ起こしてくれなんて言ってなかったじゃねえか」

 

「そ、それはそうだけど……もぉー!」

 

「あんまりモーモー言ってっと牛になっちまうぞ?」

 

 

 ちなみにこの会話から察する事が出来る通り悟空は早起きして朝からトレーニングを積んでいた。

 なのはとは対照的なまでに朝に強い悟空であった。

 とりあえずなのはは急いで身だしなみと準備を整える。

 

 

「お母さん、お弁当!」

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう! それじゃあ行ってきまーす!」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

「ガツガツ……!」

 

 

 ダッシュで家を飛び出したなのは。

 一方で悟空はお茶碗にたっぷりと盛られたご飯を平らげて――。

 

 

「おかわりー!」

 

 

 そう元気な声を響かせるのだった。

 余談だが今日も釜の中にあった大量のご飯は全て食されたと言う。

 

 

 

 食事を摂ったらその分運動も行うのが健康な体を維持するための基本である。

 それは悟空にも当てはまる。

 と言っても悟空の場合は健康のため、などではなく強くなるために行うわけだが。

 悟空は道場内で軽く準備運動をする。

 その様子をユーノは道場の入り口付近で見つめていた。

 

 

「よし、準備運動終わったぞぉ! 始めるとすっか……ユーノ、おめえもやるか?」

 

「え!? い、いえ僕は遠慮しておきます」

 

 

 悟空の提案をユーノはやんわりと断る。

 まだ体の怪我が治っていないため本調子じゃないというのもあるが悟空の修行、それを聞いただけで並の人物は付いて行けないだろうと思ったからだ。

 なので今回は見学に徹する事にしたのである。

 

 

「そうか? じゃあオラだけでやるかな……はっ!」

 

 

 悟空はそう言うと両手を胸の前辺りに持って来て力を軽く込めた。

 するとどうだろう、悟空の両手の間に一つの光球――気弾が発生したのだ。

 悟空はそれを誰もいない方向に放つ。

 と、気弾は自動的に方向を転換、悟空に向かって高速で接近してきた。

 

 

「よっ!」

 

 

 悟空はそれを最低限の動きで回避する。

 そして躱された気弾はそのまま真っすぐ飛んで――とはならず再び方向転換し、悟空に迫りくる。

 悟空はそれを今度はアクロバティックな動きで回避。

 これを繰り返していく。

 ユーノは悟空のその凄まじく軽い身のこなしに改めて驚かされる。

 

 

(悟空さんはやっぱり凄いや……ただ……)

 

 

 不思議な事が一つ。

 それは悟空からは魔力を感じないという事だった。

 最初、ユーノは自分の呼びかけに答えてくれたなのはと悟空、双方に魔法の才能があると見込んでいた。

 だが冷静になり落ち着いて見極めてみるとなのははともかく悟空にはまるで魔法の才能がなさそうだったのだ。

 だとしたら何故自分の呼びかけ――念話を悟空が聞く事が出来たのか。

 それがどうしても気になった。

 なのでもう一度試してみる事にする。

 

 

(えっと……悟空さん、聞こえますか?)

 

「よっ、ほっ! なんだ? ユーノ」

 

(あれ、やっぱり聞こえてる……悟空さんに魔法の才能は無さそうなのに何で……)

 

「何でって言われてもなぁ……オラ超能力も少しは使えっからな、そのせいじゃねえか?」

 

「超能力……ですか?」

 

「あぁ、試してみっか?」

 

 

 悟空はそう言うと相変わらず気弾を回避しつつユーノに言葉を送る。

 

 

(どうだ? 聞こえっか?)

 

「わっ!? ほ、本当だ。まるで念話みたいに頭の中に声が響いてくる……」

 

(こういう能力の応用でユーノの声も聞こえたんじゃねえかって思うんだ、まぁオラには小難しい事は分かんねえけど)

 

 

 なるほどな、とユーノは一応の納得を見せる。

 こう言った普通じゃない能力まで持ち合わせているならば聞こえても不思議じゃないかもしれない。

 というか悟空と言う存在はどこまで規格外なのかとユーノは悟空に対し唖然とするしかなかった。

 そして唖然としている間に気が付けば悟空を襲う気弾の数は三つに増えている。

 悟空はそれらの動きを冷静に見極め、先読みし、的確で最小限の動きを持って回避していく。

 飛び交ってる気弾のスピードからして普通に考えれば超人的な技である。

 だが悟空にとっては何てことない普通の修行の一環だった。

 そんな修行がどれほど続いただろうか。

 気が付けば時間は過ぎ去り、流石の悟空の額にも汗が浮かんでいた。

 その時である。

 

 

「……! この嫌な気は……」

 

「えっ? 悟空さんどうしまし――!? この気配、ジュエルシード!?」

 

「行くぞ、ユーノ!」

 

「は、はい!」

 

 

 悟空はユーノをそっと抱えると舞空術で大空へと飛び上がった。

 そして白いオーラを体から吹き出しながら嫌な気が感じた方向へと飛んでいく。

 ちなみに瞬間移動の事はすっかり忘れていた悟空だった。

 まぁそう遠い距離ではないので支障は無かったが。

 

 

「なのはにも念話で連絡を入れました! 今向かってるみたいです」

 

「そうか、分かった! そんじゃもう少し急ぐとすっか!」

 

 

 悟空はそう言うと体に気を込めてさらにスピードを上げる。

 それはつまり体にかかる負荷も上がるという事であり、それは同時に悟空に掴まってるユーノにもその負荷が同じくかかるわけで。

 

 

「ご、ごごご悟空さん! もう少しスピード落としてくださいぃぃぃぃっ!?」

 

「あ、悪りい、悪りい……ちょっとばかし張り切りすぎちまった、とりあえず急ぐぞ」

 

 

 少しスピードを落としながらも悟空とユーノは空を切り裂くように飛んでいく。

 そして数分もしないうちに辿り着いた場所は神社だった。

 海鳴市の高台にある神社、そこには巨大な犬のような獣と――バリアジャケットを纏い杖を構えるなのはがいた。

 

 

「なのはー!」

 

「あ、悟空くん! ユーノくんも!」

 

 

 空から降りてなのはの隣に着地する悟空とユーノ。

 なのははそんな悟空達の登場に流石にもう驚く事なく笑顔を見せる。

 対し悟空は着地と同時に獣の方を睨み付けるのだった。

 

 

「あいつか……嫌な気の出どころは、昨日の奴とはえれぇ違いだな」

 

「昨日のはジュエルシード自身が生み出した怪物、対してあれは生き物の願いをジュエルシードが歪んだ形で叶えた結果生まれた怪物です、昨日の奴よりも強力だと思いますから気を付けて!」

 

「昨日の奴より強ええのか! オラ何だかワクワクしてきたぞ!」

 

「もう悟空くんってば……とりあえず気を抜かずにいこうね」

 

「おう、分かってっさ! ところでよ、なのは」

 

「え、なに?」

 

「どっちが戦う? ジャンケンで決めっか?」

 

「「えっ」」

 

 

 なのはとユーノは悟空の言葉の意味がよく理解出来なかった。

 何故どちらか一方だけが戦うという話になっているのだろうかと。

 

 

「普通ここは二人一緒になって戦うものなんじゃないの……?」

 

「そ、そうですよ、悟空さん!」

 

「でもよぉ、相手は一体なんだし二対一ってのは卑怯じゃねえか?」

 

「そんな事言ってる場合じゃないよ!?」

 

 

 そう、そんな事言ってる場合じゃないのだ。

 だが悟空は色々と普通ではないのでこういう所には少し拘りを見せてしまう。

 そんな二人と一匹の話してる姿を見て好機と判断したのか獣が二人に襲い掛かった。

 

 

「おっと……はっ!!」

 

 

 しかしその突撃は悟空の手のひらから放たれた気弾によっていとも簡単に防がれてしまい、体はそのまま勢いよく吹っ飛ぶ。

 そしてそれを確認した悟空は一歩前に出た。

 

 

「しょうがねえな、なのははまだ戦闘経験もねえだろうし今回もオラがやる」

 

「ご、悟空くん、でも……!」

 

「その代わりオラの戦い方をよく見ておくんだぞ、なのは。オラとなのはじゃ戦闘スタイルはちげえだろうけど少しは参考になると思うしよ」

 

 

 悟空はそう言うと地面を勢いよく蹴って駆け出した。

 一方で何とか体勢を立て直した獣も悟空目掛けて駆け出す。

 縮まっていく双方の間の距離。

 先に攻撃を仕掛けたのは――獣の方だった。

 獣はそのナイフのように鋭い爪を悟空目掛けて振り下ろす。

 が、その一撃は悟空の腕によって止められた。

 衝撃で地面が砕ける、それほどに重い一撃を受けているにも関わらず悟空は何てことなさそうな平然な顔をして、そっともう片方の手を大きく開き獣に向けた。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 悟空の手のひらから放たれたのは一つの気弾。

 気弾はそのまま真っすぐ飛んでいき獣の頭部に直撃、爆発を起こす。

 と同時にその衝撃に怯み獣の腕から力が抜けた。

 その隙に悟空は獣の懐に入り込み、そして!

 

 

「でぇりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

 

 

 拳と蹴りを何度もその胴体に叩き込む!

 衝撃で宙に浮かぶ獣の巨体。

 悟空はその飛んでいく巨体に対し舞空術で先回りして両腕に力を込める。

 そのままハンマーのように腕を振り下ろして獣を地面に向けて吹き飛ばした。

 獣が勢いよく落下する事により砕ける地面。

 舞い上がる土煙。

 そんな中、悟空はゆっくりと地上に降り立った。

 目の前には痙攣しながら倒れ込む獣の姿。

 これは誰がどう見ても再起不能だろう。

 と、こうして勝敗はあっさりと決した。

 後は――。

 

 

「なのは! 封印お願いできっか?」

 

「あ、うん……流石悟空くんだね、あっさり倒しちゃった」

 

「確かに思ったより手ごたえはなかったなぁ……ちょっと力入れすぎちまったかな?」

 

「にゃ、にゃはは……」

 

 

 なのははあんな戦いをした後にケロッとしている悟空に思わず苦笑いを浮かべざるを得なかった。

 と同時に思う。

 あんな戦い方のどこをどう参考にすればいいと言うのか、と。

 まぁそれは置いておいて、なのはは杖――レイジングハートを高々と振り上げる。

 

 

「リリカルマジカル! ジュエルシード……封印!」

 

 

 そう言ってレイジングハートを振り下ろした次の瞬間、辺り一面が光に包まれる。

 すると獣からはジュエルシードが排出されレイジングハートの中へと吸い込まれていく。

 後に残ったのは一匹の子犬だけだった。

 このようにして悟空となのはは二つ目――ユーノが最初に持っていた一個と合わせれば三つ目のジュエルシードの封印に成功した。

 残りは十八個、果たしてこのまま難なく集めきる事は出来るのだろうか。




 オッス! オラ、悟空!

 もう夜中だってのに嫌な気を感じる……またジュエルシードか?

 ……ん? 嫌な気が二つ……って事は今回の敵は二体って事だな。

 ちょうどいいや、なのは! ここは平等に半分こだ、片方はおめえに任せっぞ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「学校での戦い! まさかまさかの魔獣二体!?」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十 学校での戦い! まさかまさかの魔獣二体!?

 新たに本作をお気に入り登録をしてくれた方々、感想をくれた方ありがとうございます!

 本作も今回でもう十話目となります、早いもんです。

 これからもDragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~をよろしくお願いします!

 それでは其之十をどうぞ。


 その日、悟空となのはは夕食を終え、風呂に入った後、部屋で談笑していた。

 あれから数日、これと言ってジュエルシードの反応はない。

 悟空も嫌な気を探ってみるが成果は得られなかった。

 どうやら嫌な気を放つのはジュエルシードの発動後のみらしい。

 ジュエルシードは危険な代物だ、この街のためにも、そこに住む人々のためにも一刻も早く見つけなければという思いもあるにはあるが、広大な海鳴市から発動前のジュエルシードを見つけるのは至難の業、故にこればっかりは発動してもらわないと探し様がなかった。

 だから今はこの平和な一時を謳歌する事にする。

 

 

「それでね、その時アリサちゃんが怒って――」

 

「ははっ、そりゃおっかねえや!」

 

 

 いつからだろうか、気が付けば寝る前にユーノも交えてこうして会話するのが日課のようになっていた。

 悟空が高町家に来てからまだ数日、一日も欠かす事なく寝る前にはこうして会話をする。

 ちなみに基本的に話し手はなのはで聞き手は悟空だ。

 大体はその日に起こった出来事を、時には昔の話を混ぜて話して二人で笑い合う。

 なのはは何気ないこの時間がとても好きだった。

 何故かはなのはにもよくは分からない。

 ただアリサやすずかと言った友人と過ごす時間、家族と過ごす時間とはまた違った楽しみがそこにはあった。

 勿論優劣は付けられはしないが。

 

 

「なのは、悟空さん、そろそろ寝た方がいいと思うよ?」

 

「あ、本当だ……もうこんな時間、そろそろ寝ないとね」

 

「だな! でないと、なのはがまた寝坊しちまう」

 

「もう、悟空くん!」

 

 

 また笑い合う二人と一匹。

 だが確かに寝坊なんかしたら大惨事だ、主になのはが。

 悟空となのははそれぞれの布団に包まる。

 

 

「それじゃあ悟空くん、ユーノくん、おやす――」

 

 

 おやすみと言おうとした、その時だった。

 急に現れた嫌な気配を、嫌な気をそれぞれが感じ取る。

 

 

「ユーノくん、これって……!」

 

「間違いない、ジュエルシードだ!」

 

「……よし、行くか!」

 

 

 すぐに悟空となのはは着替えてそっと部屋を出た。

 こんな時間だ、家族に見つかるのはまずい。

 事情を知る恭也も起こそうかともなのはは一瞬考えたが、これまでのジュエルシードの戦闘を思い返し悟空と自分が揃っているならば無理に起こす必要はないだろうと考え今回は二人と一匹だけで外に出る。

 そして走りだそうとした矢先、悟空が言った。

 

 

「なのは、ユーノ、今回は飛んでいくからオラに掴まれ」

 

「え、飛んでいくって……どうして?」

 

「簡単だぞ。走っていくより飛んでいった方が早えだろ?」

 

「それはそうですけど……」

 

「考えてる時間はあんましねえんだ、ほれ。行くぞ」

 

「わっ!?」

 

「きゃっ!? ご、悟空くん!?」

 

 

 悟空はそう言うとユーノを頭の上に乗せてなのはをお姫様抱っこで抱えた。

 そして舞空術でゆっくりと浮上する。

 なのはからすれば急に抱きかかえられるわ、宙に浮かぶわで恥ずかしいやら怖いやら色々と複雑な心境だったがジタバタして落っこちたら元も子もないのでしっかりと悟空にしがみ付く。

 

 

「お、落とさないでね……?」

 

「大ぇ丈夫だ、おめえ達が手を離さない限りオラは落とさねえさ……そんじゃ行くとすっか!」

 

 

 悟空がそう言うといつものように白いオーラが吹き出し空を凄まじい速度で飛び始めた。

 暗くなった夜空をまるで流れ星のように白い光が切り裂いていく。

 風を浴びながら空を移動するというのは妙に新鮮で、さらに星空が近くに感じられるという事もあってこんな時になんだが少し楽しいとなのはは感じていた。

 そして飛んで一分もしないうちに悟空はその速度を緩やかに落とし停止した。

 

 

「なのは、ユーノ、着いたぞ」

 

「あ、ありがとう悟空くん……あれ、ここって……」

 

「なのは?」

 

「どうかしたんか?」

 

「あ、ううん。ただここ私が通ってる学校だったから少しびっくりしちゃって」

 

「ひゃー、ここがなのはが通ってる学校だったんか……なら壊されねえうちに急いで封印しねえとな、降りるぞ」

 

 

 そう言うと同時に悟空の高度は下がり地上に降り立つ。

 なのはは首にかけているレイジグハートを握りしめて言葉を紡いだ。

 

 

「レイジングハート、セットアップ!」

 

 

 するとなのはの体が桜色の光に包まれて服装がバリアジャケットに変化する。

 杖へと変化したレイジングハートを強く握りしめ周囲に目をやる。

 一方、悟空も真剣な表情で気を探っていた。

 と、ここで悟空が一点、いつもとは違う事に気が付く。

 

 

「あり? よくよく感じ取ってみっと嫌な気が……二つあっぞ?」

 

「「え?」」

 

 

 その言葉になのはとユーノが振り向いた瞬間。

 

 

「「グルアアアアアッ!!」」

 

「「っ!?」」

 

「やっぱり二体いやがったな……!」

 

 

 現れたのは二体の怪物。

 そう、ここにあるジュエルシードは二つ。

 それが同時に暴走を起こし二体の怪物を生み出したのである。

 悟空となのはは急いで構える。

 そこで悟空はこう言った。

 

 

「ちょうどいいや、なのは、一体はおめえに任せる。もう一体はオラが相手するからよ」

 

「えぇ!? た、確かに数を考えたらそうなるかもしれないけど、でも……」

 

「悟空さん、なのはに一対一をやらせるのはマズいんじゃ……」

 

 

 なのはは躊躇しユーノも反対する。

 何せまともな戦闘経験など、なのはにはないからだ。

 怖いという思いもあれば、自信がないというのもある。

 だが悟空はそんななのはの不安を吹き飛ばすかのようにニカッと笑う。

 

 

「大ぇ丈夫だ、危なくなったらオラが助けてやる。こういうのは何事も経験って言うだろ? それにおめえの魔法の力があればそんなに苦戦はしないとオラは思う」

 

「悟空くん……わ、分かった。やってみる!」

 

「なのは!?」

 

「よし、決まりだな! 行くぞ、なのは!」

 

「うん!」

 

 

 会話を終えると二人は臨戦態勢に入る。

 そして怪物が動き出す前に――悟空が動いた。

 

 

「だりゃあああああっ!!」

 

「グガッ!?」

 

 

 裂帛の気合とともに痛烈な一撃が片方の怪物に決まる。

 たまらず怪物は吹き飛んでいき、悟空はそれを追って行った。

 とりあえずこれで分断には成功した。

 後はなのは次第だ。

 

 

「ギシャアッ!!」

 

「くっ!」

 

 

 襲い掛かる怪物の巨体をなのははギリギリ回避する。

 悟空のように鍛え抜かれた肉体ならともかくなのはのような女の子があんな攻撃をまともに受ければバリアジャケットがあると言ってもダメージは免れない。

 だが怪物はすぐさま方向転換しなのはに迫る。

 想像以上に方向転換が早かったため今度は避けられない。

 ――だが。

 

 

「ギッ!?」

 

「……っ!」

 

 

 怪物の体当たりはなのはが魔法で作り出した防御壁によって防がれ、その巨体は弾かれた。

 プロテクション、対象を弾き飛ばす防御壁を展開するなのはの魔法である。

 さらに吹き飛んだ怪物目掛けてなのはは手のひらを向ける。

 イメージするのは悟空の気弾、あれと同じような事が出来れば――そう考えた。

 そしてその考えは。

 

 

「ええいっ!!」

 

「ギイイイイイッ!?」

 

 

 見事に成功していた。

 放たれたのは一つの桜色の魔力弾。

 その魔力弾は怪物の体を穿ち、明確なダメージを与える。

 たまらず逃げようとしたのか、距離を取ろうとしたのか、とにかくなのはから離れようとする怪物。

 しかしその対処もまた、なのははしていた。

 

 

「逃がさないよ!」

 

「グッ!?」

 

 

 気が付けば光の輪が出現しており怪物の体を拘束する。

 これで怪物はもう動く事が出来ない。

 これがレストリクトロック、範囲対象の捕獲魔法である。

 ――なのはとて何も戦いを全部悟空に任せている事を良しと思っていたわけではない。

 なので人目が付かないところでレイジングハートの指導のもと魔法の訓練を行っていたりする。

 その成果が今回使った魔法達なのである。

 そして動けなくなればこちらのもの、なのははゆっくりと怪物へと近づいていった。

 一方で、悟空はと言うと。

 

 

「やるなぁ、なのはの奴!」

 

 

 そんななのはの戦いっぷりを見て嬉しそうに笑っていた。

 勿論怪物の触手攻撃を軽々と回避しながらである。

 

 

「オラも負けてらんねぇ! そろそろ行くぞ!」

 

「グギッ!?」

 

 

 悟空の目つきが変わった瞬間、その姿が怪物の視界から消えた。

 そして気が付けばとんでもなく重い一撃が怪物のボディに決まっていた。

 

 

「でやあっ! だりゃりゃりゃりゃりゃ! だあっ!!」

 

 

 悟空の拳が、蹴りが確実に怪物にヒットし追い詰めていく。

 そして何度目かの蹴りで怪物の体は宙に舞い上がった。

 さらに悟空は目にも止まらぬ高速で怪物が飛んでいった方向に先回り。

 地面目掛けてその巨体を吹き飛ばす!

 

 

「グ、ググ……」

 

 

 ピクピクと動きながら何とか這い上がり態勢を立て直す怪物。

 すぐさまその眼の空中に向けるが、もうそこに悟空はいなかった。

 そして怪物は気づく、自分の後方に気配がある事に。

 だが気づいたところでもう遅い。

 

 

「だらあっ!!」

 

「グガッ!」

 

 

 強烈な蹴りが怪物を背後から襲う。

 吹き飛び、砂煙を上げながら地面を転がる巨体。

 それを睨みながら悟空は構えを取った。

 

 

「かぁー……めぇー……」

 

 

 青白い光が手と手の間に集まっていく。

 体中を巡る強力なエネルギーを集中させて必殺の一撃を放つ準備を整える。

 だが怪物も足掻きをみせる。

 どうにか体勢を立て直した怪物は地面を蹴ったのか、凄まじい速度で悟空に迫る。

 

 

「はぁー……めぇー……」

 

 

 対し悟空は微動だにしない。

 ただその怪物の動きを眼で追いながら気をさらに溜め込んでいく。

 そしてぶつかるか、ぶつからないかという距離にまで怪物が接近してきた瞬間!

 

 

「波あああああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

 凝縮された気の砲撃が悟空の手の平から放たれた。

 気は青白い光となりて突き進み、怪物を飲み込む。

 そして空高く上がっていき――爆発を起こし散った。

 

 

「ふぅ……」

 

 

 悟空は息を吐きながら落ちて来た青い宝石、ジュエルシードを掴む。

 そのままそれをなのはの方へと向けた。

 その頃なのはもまたレイジングハートを高々と掲げる。

 

 

「リリカルマジカル、ジュエルシード……封、印!!」

 

 

 なのはの目の前にいた光の輪で縛られた怪物が姿を消す。

 もう怪物はどこにもいない、その場に残ったのは二つのジュエルシード。

 それらは一緒にレイジングハートへとゆっくりと吸い込まれていった。

 

 

「お、終わった……お疲れ様、悟空くん」

 

「おう! それにしてもなのは、おめえすげえじゃねえか! もうあれだけ戦えるなんてよ」

 

「え、そ、そうかな?」

 

 

 褒められて悪い気はしない、なのは。

 少しはにかみながら笑顔を見せる。

 

 

「どうだ? 今度オラと戦ってみねえか?」

 

「そ、それはちょっと遠慮したいかも……」

 

 

 そんな会話を交わす二人をユーノはただただ呆然と見つめていた。

 呆然としていたのには相応の理由がある。

 

 

(悟空さんもだけど……なのはも凄い、二人とも才能がある証拠だ)

 

 

 類まれなる戦闘力を持つ悟空。

 魔法を手にして数日であれほど戦えるなのは。

 どちらも天才と評しても問題ないとユーノは思う。

 それだけあの二人の戦いっぷりは凄まじかった。

 

 

(この二人が手伝ってくれるなら、きっとこれからのジュエルシード集めも……)

 

「ユーノくん? どうかした?」

 

「おーい、ボーッとしてっと置いてくぞぉ!」

 

「あ、待ってくださいよ!」

 

 

 こうしてユーノは考えるのを中断して二人のもとへと駆けていったのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 サッカーの応援かぁ、楽しんで来いよ、なのは! オラ? オラは修行だ!

 ……ん? この気……ジュエルシードか! しかも今までよりもでけえ……。

 なのは、ユーノ、行くぞ! ……あり? どうした、なのは。元気ねぇみてえだけど。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「固まる決意! おめえはよく頑張った」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十一 固まる決意! おめえはよく頑張った

 お気に入り登録をしてくださった方々、感想をくれた方々ありがとうございます!

 別に次回から章が変わる、というわけではないのですが今回の話は一章の中でも一つの節目って感じですかね、多分。

 ちなみに地味に難産でした、今回の話。

 では其之十一をどうぞ。


 ――二つのジュエルシードの封印を一気に成功させた日の翌日。

 

 

「なのはー! もう朝だぞ、起きろー!」

 

「んん……後五分……」

 

 

 悟空となのははそんなテンプレ的な会話をしていた。

 そんななのはの言葉を聞いて悟空は首を傾げる。

 

 

「おめえがどうしてもそうしてえってんならオラも文句はねえけどさ……なのは、おめえ今日用事があるとか言ってなかったか?」

 

「……あ、そ、そうだった!」

 

「ははっ、何だ。忘れてたんか?」

 

 

 悟空の一言で今日の用事を思い出しガバッと布団から飛び出すなのは。

 そんな慌ただしいなのはの姿を見て悟空は笑っていた。

 

 

「す、すぐに着替えるから悟空くんは部屋の外に出てて! それと起こしてくれてありがとう!」

 

「おう、ユーノ。おめえも起きろ、朝飯食うぞー」

 

「ムニャ……はい、悟空さん」

 

 

 こうして悟空はユーノを連れて部屋を出ていった。

 出た後の部屋の中からはバタバタと慌てふためくなのはによる騒音が響いていた。

 ただ悟空も多少は学習する、これは高町家ではよくある光景だ。

 なので放っておいてユーノと共に一階に下りていく。

 ――ちなみに一回だけバタバタという音が気になってノックもせずに部屋に入ったところ、着替え中のなのはを見てしまい悲鳴とともに物を投げつけらたという事件があったりしたがそれはまた別の話だ。

 

 

「なのは、あぁ見えて怒るとおっかねえからなぁ……チチにも負けてねえかもしれねえな」

 

「……悟空さん、どうかしました?」

 

「いや、何でもねえさ。行くぞ、ユーノ」

 

 

 懐かしい記憶を思い起こしながら、まだ若干寝ぼけ気味のユーノを頭に乗せて悟空は階段を下りていく。

 一階に下りれば食欲をそそる美味しそうな匂いが漂ってくる。

 もうすっかり嗅ぎ慣れた、桃子の作るご飯の匂いだった。

 まぁ嗅ぎ慣れたと言っても、まるで飽きはしないし悟空にとっては毎日の楽しみなわけだが。

 悟空は戸を開ける、そしていつもの挨拶を口にする。

 

 

「オッス! 士郎、桃子!」

 

「おぉ、おはよう。悟空くん」

 

「おはよう、悟空くん。なのはを起こしてくれてありがとうね」

 

「気にしなくていいぞ、なのはからも頼まれてた事だしな。それよりも今日の朝飯なんだ!?」

 

「ふふっ、今日はね――」

 

 

 桃子の朝食のメニューの説明を聞きながら悟空はヨダレが溢れるのを必死に堪えた。

 パオズ山とはまた違った温かく優しい場所。

 それが悟空の高町家に対するイメージ。

 要はこの場所が、この雰囲気が悟空はすっかり好きになっていたのだった。

 

 

 

 朝食時。

 皆で揃って朝食を食べる、高町家の朝のいつもの光景。

 勿論――。

 

 

「ガツガツガツ……!」

 

 

 底なしの食欲でご飯にがっつく悟空も、ここ最近ではいつもの光景の一部となっていた。

 そんな悟空だが気になる事がありなのはに問いかける。

 

 

「そういえばよ? なのは」

 

「え? 何?」

 

「おめえ、今日は学校は休みなんだろ? 用事ってなんなんだ?」

 

「あぁそれはね、お父さんがコーチ兼オーナーをしてるサッカーチームの応援にいくんだ、アリサちゃんとすずかちゃんも一緒にね」

 

「サッカー……オラ知ってっぞ。確か球蹴ってゴールに入れるっちゅうやつだろ?」

 

「にゃはは……まぁ間違ってないかな」

 

 

 正解したからか、少し嬉しそうにご飯を食べ進める悟空。

 なのははそんな悟空を微笑みながら見つつ何かを思いついたような顔をした。

 

 

「そうだ! 悟空くんも一緒にいかない?」

 

「オラもか?」

 

「うん!」

 

「ん~……誘ってくれんのは嬉しいんだけどよ、オラじっと応援すんのはどうにも性に合わねえし修行もしてえからな、やめとくぞ」

 

「そっか……」

 

「悪りいな、なのは。あ、桃子! おかわりー!」

 

「はい、ちょっと待っててね」

 

 

 なのはの落ち込む姿に流石の悟空も若干心を痛めたものの、じっとしてるのが性に合わないのも修行をしたいのも事実だったためしょうがないと割り切った。

 こうして賑やかな朝食の時間は過ぎ去っていく。

 

 

 

「よっ、ほっ……」

 

 

 なのはやユーノ達が出かけた後、悟空の姿は道場にあった。

 修行前の準備運動中である。

 そして準備運動を終えた悟空は気合を入れて構えを取った。

 

 

「よっしゃ、今日もいっちょやってみっかな!」

 

 

 ――悟空の修行が始まった。

 基礎トレーニング、気弾を利用した回避のトレーニング、仮想敵と戦うイメージトレーニング、様々なトレーニングを休む事なく行っていく。

 悟空はこのようなハードなトレーニングを毎日のように行い腕を磨いている。

 それはジュエルシードから生まれる怪物に負けないため。

 何より今後今相手にしている怪物とはまた違った強者が現れた時に、その強者に負けないためのトレーニングだった。

 正直なところ、そんな強者が存在するのかは悟空本人にも分からない。

 だが宇宙は広大だ。

 どんな強者が存在するか、なんて誰にも分からないし、そんなの絶対にいないとは言い切れない。

 それを理解しているからこそ鍛錬は怠れない。

 

 

「もしかしたら今まで見た事もねえ強え奴と出会って戦えるかもしれねぇんだ……今からワクワクすっぞ」

 

 

 その時になって後悔しないためにも一刻も早く強さを取り戻す――いや、それ以上を目指す必要がある。

 だから悟空は今日もひたむきに特訓に打ち込める。

 そんな折、突如として嫌な気を感じた。

 それも今までの怪物とはまた違う、大きな気だった。

 

 

「この気は……やべえかもな、急がねえと!」

 

 

 悟空は道場を飛び出す。

 そこでバッタリと遭遇したのは、なのはとユーノだった。

 ちょうど応援を終えて帰って来ていたのである。

 

 

「悟空くん!」

 

「悟空さん!」

 

「なのはにユーノか、おめえ達も来るんだろ?」

 

「う、うん!」

 

「勿論です!」

 

「よし、じゃあ急ぐぞ。オラに掴まれ、こんぐらいの距離ひとっ飛びだ」

 

 

 なのはは頷くと悟空に抱き着き、ユーノもまた悟空の頭の上に乗る。

 そしてなのはをしっかりと抱き抱えると悟空の体は宙に浮かび――現場に向かって飛んでいく。

 瞬間移動を使っても良かったが相手の様子を遠方から見れるという意味でも今回も舞空術での移動を選択した悟空であった。

 

 

 

 ――そこに広がる光景はあまりにも悲惨だった。

 平和なはずの街並みは見た事もないほどの巨木によって破壊されていた。

 ビルは貫かれ、地面は根によって隆起し、巨木は未だに成長を続けているのか枝や根を伸ばしている。

 

 

「ひゃー、でっけえなぁ……こりゃとんでもねえぞ」

 

「多分人間が発動させたんだと思います、でなきゃこんな大きさには……」

 

「人間……そんな……やっぱりあの時……」

 

「なのは? どうかしたんか?」

 

「……なんでも、ない……それより早く止めないと」

 

「よし、そう言う事ならまずはオラから試してみっか!」

 

 

 悟空はそう言うと近くのビルの上になのはとユーノを下ろし構えを取る。

 両腕に青白い光が灯る。

 悟空はそれを――勢いよく連続で打ちだした。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃ、でやあっ!」

 

 

 連続で放たれた気弾は伸びる枝を巻き込み消滅させていく。

 だが消滅した傍から枝は伸び、また元の長さに戻ってしまった。

 

 

「あちゃー……駄目か、こうなったらしょうがねえ、全力のかめはめ波で……」

 

「だ、駄目ですよ。悟空さん!」

 

 

 かめはめ波の構えに入ろうとした悟空を止めたのはユーノだった。

 悟空は止める意味がよく分からずに首を傾げ疑問を口にする。

 

 

「なんで止めんだ? ユーノ」

 

「さっきも言いましたけど今回のは恐らく人間の願いによって発生した暴走です! 悟空さんの攻撃であの木を全部消し飛ばしてしまったら……」

 

「願い事をした人間まで消し飛ばしちまう可能性があるっちゅう事か……」

 

「は、はい。そうです……」

 

「まいったな、そうなると手出しが出来ねえぞ」

 

 

 頭を掻きながら困った顔を浮かべる悟空。

 そんな中で前に出たのは――なのはだった。

 

 

「……私がやる」

 

「……出来るんか? なのは」

 

「うん、試したい事もあるから……」

 

「……分かった、じゃあオラはあの枝や根っこの足止めをする。その間に頼むぞ」

 

 

 悟空はそう告げると飛び立つ。

 そして両手に気を溜めてそれを連続で発射。

 木や根を一時的に消滅させて、これ以上の被害が出ないように食い止める。

 ――なのはの様子がおかしいのは悟空とて気づいている。

 だがだからと言って聞いてる暇は今は無かった。

 一方でなのははバリアジャケットを装備しレイジングハートを構える。

 

 

<Area Search>

 

 

 無数の光がなのはの周囲、巨木の方面へと放たれる。

 エリアサーチ、魔力で出来たサーチャーと呼ばれる端末を飛ばし中範囲を視る事が出来る中距離探索魔法だ。

 これにより、なのははこの巨木の元、ジュエルシードがある場所を探る。

 効果はてき面で数分もしないうちに。

 

 

「見つけた!」

 

 

 なのははジュエルシードを発見した。

 それに気づいたのか巨木はその枝をなのはの方へと伸ばす。

 だが、そうはいかない。

 

 

「はあっ!!」

 

 

 横から飛んできた気弾が枝を消し飛ばしていく。

 言わずもがな、悟空である。

 悟空がいる限り危険はない、そんな信頼感がなのはの中にはあったから、なのはは枝が迫って来ても微動だにしなかった。

 さらになのはは攻撃の準備に入る。

 

 

「お願い! レイジングハート!」

 

 

 主の呼びかけに応えるようにレイジングハートがその形を変える。

 光の翼が生え、四つの環状魔法陣に取り巻かれたその姿は最早杖と言うよりは砲のように見えた。

 なのははその先端を真っすぐ、ジュエルシードのある方向に向ける。

 先端に魔力が溜まっていく。

 

 

「行くよ!!」

 

 

 その叫びと共に放たれたのは桜色の砲撃だった。

 この時なのはの脳裏には悟空のかめはめ波が浮かんでいた。

 あれとは違うが自分なりにああ言った事が出来ないかと考え辿り着いたのがこれだった。

 砲撃はそのまま巨木の一か所に激突。

 さらになのはは、そのまま封印に入る。

 

 

「リリカルマジカル! ジュエルシード……封印!!」

 

「わっ!?」

 

 

 その言葉が紡がれると共に桜色の光は周囲を包み込む。

 そして気が付けば巨木の姿は完全に消え去っていた。

 残ったジュエルシードはゆっくりとレイジングハートに吸い込まれ消えていく。

 

 

(やっぱりなのはは凄い……まさか砲撃魔法まで撃てるようになるなんて)

 

 

 ユーノはなのはのその才能に改めて驚かざるを得ない。

 そもそも砲撃魔法とは並大抵のものでは使えない代物だからだ。

 現に悲しい話ではあるがユーノにはとてもじゃないが使えない。

 それを魔法を覚えてまだ僅かなのにも関わらず会得、使用してみせたなのはは十分規格外だった。

 まぁ気なんて言う魔法とは別の力を使いあれだけの戦闘力を誇る非常識の塊のような悟空のせいで若干霞みはするが。

 

 

「なのは、お疲れ様……なのは?」

 

「なのは、おめえやるなぁ! あんな技を持ってたなんてよ、やっぱり今度オラと……あり? どうした?」

 

「悟空くん、ユーノくん……私、私……」

 

 

 なのはは語りだした。

 俯きながら、悲しそうに、自分を責めるように。

 ジュエルシードの存在に実は何となくではあるが気づいていたという事を。

 それを気のせいだと思い見逃してしまった事を。

 

 

「私がもっとしっかりしてればこんな事には……」

 

「なのは……」

 

「……でもよ? 不幸中の幸いっちゅう奴なんだろうけど死人は出てねえぞ?」

 

「でも街は壊れちゃった……」

 

「壊れたなら直せばいいじゃねえか」

 

「そんな簡単に……!」

 

「簡単な事だろ? おめえは難しく考えすぎだと思うぞ? ここじゃ命は元には戻せねえけど物なら時間はかかっけど直せる。それによ、確かにおめえが見過ごした結果がこれなのかもしれないけんど……これだけは言えっぞ」

 

「悟空くん……?」

 

 

 気が付けば悟空の手はなのはの頭の上にあった。

 そしてそのまま優しく頭を撫でる。

 まるで大人が子供を慰める時のような優しい撫で方だった。

 

 

「なのは、おめえはよく頑張った、それをオラ達は知ってる。そん中で失敗の一つや二つあったってしょうがねえとオラは思うんだ。おめえは元々一般人なわけだし尚更だな。色々足りてねえもんもあるんだろうし、だからよ? あまり自分の事を責めすぎんなって、責めたっておめえが傷つくだけだし、そもそも失敗なんてもんは誰にでもあんだしよ」

 

「……悟空くんもあるの? 失敗した事」

 

「あぁいっぱいあるぞ。それこそ何度だってな、その度に反省して次に生かすんだ、まぁそれでも失敗する事もあんだけどよ、あはは!」

 

「……ふふっ」

 

「お、やっと笑ったな? やっぱなのはは笑顔なのが一番いいや!」

 

「悟空くん……ありがとう」

 

「ん? ……おう!」

 

 

 二人は笑い合う。

 ただしなのはの目尻には涙が溜まっていた。

 

 

(失敗を次に生かす……今私がやるべきなのは自分を責め続ける事じゃなくて二度とこんな事が起きないように、こんな失敗をしないように気を付ける事……生半可な、お手伝い気分じゃなくて本当の本当に私の意志でこのジュエルシードの事件を解決するために改めて頑張っていこう……悟空くん達と一緒に)

 

 

 不屈の心を持つ少女は夕日を見ながら、頭に残った悟空の温もりを感じながらそう決意を固める。

 この日、悟空となのはの間の距離は心なしか縮まり、なのはは精神的に少し成長したのだった。

 ――しかしそう易々といかないのが世の中というものである。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「……ねぇ、本当にいいの?」

 

「くどいぞ、協力はしてやると言っているだろう。俺も地球には少し用があるしな」

 

「ったく、相変わらず口の悪いガキンチョだねぇ」

 

 

 新たな戦士達の影がすぐそこまで迫っているのだから。




 オッス! オラ、悟空!

 ここがすずかの家か、でっけえなぁ! ブルマの家とどっちがでけえかな?

 菓子もうめえ! オラ大満足だぞぉ! ……ん?

 気を感じる……ジュエルシードもあっけど近くにある二つの気も結構つええ、特に片方の気は――待てよ? この気……!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「現れたライバル!? 二人の新戦士!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十二 現れたライバル!? 二人の新戦士!

 お気に入り登録してくださった皆さん、感想を書いてくれた皆さん、評価をくださったパンナコッタ11さんとyouheiさんありがとうございます!

 おかげさまでランキングにも乗れましたし、自分の調子もいい感じです。

 どんな形であれ皆さんの応援が自分の力となります。

 今後とも応援よろしくお願い致します!

 では其之十二をどうぞ!


 ――週末。

 多くの人が普段の生活から解放され休みを謳歌するこの日、高町家ではなのはが悟空を誘っていた。

 

 

「ねぇ悟空くん、良かったら一緒に来ない?」

 

「ん? なんだ、またサッカーか?」

 

「ううん、違うよ。今日はすずかちゃんの家に遊びにいくの……それでね? その……悟空くんも一緒にどうかなって」

 

 

 少し頬を赤らめながらそう告げるなのは。

 だが当の悟空の表情はあまりよろしくない。

 

 

「んー……でもよぉ、オラ修行が――」

 

「おいしいお菓子もあるってよ?」

 

「美味い菓子!? それならオラ行くぞ!」

 

「にゃ、にゃはは……」

 

 

 悟空を誘う事に見事成功したなのは。

 だが食べ物で釣るような形になってしまったので正直言うと不満はあった。

 出来ればそういうの無しで付いてきてもらいたかったなぁと言うのがなのはの思いだったのだ。

 と同時に心配になる。

 この調子じゃ悪い人にも食べ物で釣られたらホイホイ付いていってしまうのではないかと。

 まぁ悟空なら悪い人程度簡単に倒してしまうだろうが。

 ちなみにこの一連の悟空となのはの会話を聞いていた高町家の面々はと言うと。

 

 

(あの二人いつの間にか随分と仲良くなったなぁ……というかなのは、まさか……)

 

(あらあら、なのはったら。頑張ってるわね)

 

(こういう時どういう顔をしたらいいのやら……)

 

(面白い事になってきた予感!)

 

 

 程度の差こそあれど基本的に二人の、というよりなのはの態度の変化を面白がっていたりする。

 

 

 

 というわけで出発の時間。

 準備を整えたのは悟空、なのはに加え恭也とユーノもだった。

 

 

「ん? なんだ、ユーノはともかく恭也も行くんか?」

 

「あぁ俺も用事があるんでな」

 

「ふふっ、実はね。お兄ちゃんとすずかちゃんのお姉ちゃんは恋人同士なんだよ」

 

「おい、なのは……」

 

「ひゃー! そうなんか! で、いつ結婚すんだ?」

 

「気が早すぎるわ! 何でそんな話になるんだ!」

 

「ん? そういうもんなんか?」

 

 

 きょとんとする悟空に対し若干顔を赤くしながらブツブツ文句を言う恭也。

 そんな姿を見ながらなのはは微笑む。

 

 

「にゃはは、お兄ちゃん照れてる」

 

「う、うるさい。それよりもだ……ジュエルシードはいくつ集まったんだ?」

 

「えっと、ユーノくんが最初から持ってた一個と私が封印したのは五個だから合わせて六個だね」

 

「全部で二十一個あんだったな、まだまだ先は長そうだぞぉ」

 

「そうか……何か手伝える事があったら言ってくれ、微力だが力になる」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

「ありがとうございます、恭也さん」

 

「サンキュー、恭也。そんじゃ出発すっか!」

 

 

 こうして三人と一匹は高町家を出発した。

 目指すは月村邸。

 悟空は初めて行くから知らなかったが、どうやら距離が結構あるようで徒歩からバスに乗る。

 バスに揺られながら悟空はふと呟いた。

 

 

「思ったんだけどよ。わざわざバスに乗んなくてもオラがおめえ達を運べばいい話じゃねえのか?」

 

「それも考えたんだけど流石に私とお兄ちゃん二人を抱えさせるには悟空くんの体が小さすぎるというか……」

 

「万が一にでも落っこちたらシャレにならないからな」

 

「キュー……」

 

「あ、そういや瞬間移動の事話してなかったか」

 

「「瞬間移動?」」

 

「そだぞ、覚えるのにすげえ苦労したんだけどよ。オラ知ってる奴の気がある場所になら自由に瞬間移動が出来んだ、すずかとは一回会って気を覚えてっからな、多分使えると思う……最近は舞空術ばかり使ってたからすっかり忘れてたぞぉ」

 

「そんな事も出来るんだ……あ、でもバスに乗っちゃったし……」

 

「わざわざ降りるのもあれだしな、それにあまりそう言う技を人前で使うもんじゃないぞ。騒ぎになる」

 

「そうけ? じゃあやめとくか」

 

 

 そんな会話をしているとバスが目的のバス停に到着する。

 バスを降りた一行は、その後談笑しながら徒歩で暫く移動を続けるとようやく目的の家が見えて来た。

 そこにあったのは――豪邸と呼ぶに相応しい巨大な屋敷。

 高町家も十分に立派な佇まいをしているのだが月村家は格が違うと表記するのが相応しいほどに立派な外見をしていた。

 

 

「でっけえなぁ! こんなでっかい家久々にみたぞぉ」

 

「久々って事は見た事はあるんだ……」

 

「あぁブルマっちゅう奴の家もここに負けねえくらい立派だったかんな」

 

「ブルマ……あぁ悟空くんの友達だっけ」

 

 

 何度聞いても面白い名前だなぁとかなのはは思いつつインターホンを押す。

 すると出て来たのは見た目を美しいメイドさんだった。

 

 

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。なのは様、恭也様、そして――」

 

「ん?」

 

「貴方様が孫悟空様ですね、お話は伺っております。私はこの家に仕えるメイドのノエルと言います、以後お見知りおきを」

 

「ノエルか! よし、覚えたぞ! よろしくな!」

 

「ふふっ、はい。では屋敷内にご案内しますのでこちらへどうぞ」

 

 

 ノエルに案内されるがままに屋敷の内部に入る一行。

 流石に豪邸だけあり外面だけじゃなく内装も立派なものだった。

 慣れたようにノエルに付いていくなのはとキョロキョロする悟空とユーノ。

 と、ここで恭也はノエルと何かを話して一人別方向へと歩き出す。

 当然それが気になった悟空は問いかけるわけで。

 

 

「恭也、おめえどこ行くんだ?」

 

「ここからは俺は別行動だ、帰る時は一緒だがな」

 

「悟空くん、さっきも言ったけどお兄ちゃんは恋人の忍さんのところにいくんだよ」

 

「なんだ、そういう事か、分かった。じゃあ恭也また後でなー!」

 

「あぁ」

 

 

 こうして恭也と別れなのは、悟空、ユーノはノエルの後ろを付いていく。

 暫くすると目の前に広がるのは日差しが差し込む暖かいテラスだった。

 そんな日差しが気持ちいいのか至る所で猫がくつろいでいる。

 と、そこに知ってる顔が二人。

 

 

「お二人をお連れしました」

 

「あ、やっと来たわね」

 

「なのはちゃん、悟空くん!」

 

「にゃはは、おはよう。それと誘ってくれてありがとう。アリサちゃん、すずかちゃん」

 

「オッス!」

 

 

 こうして集まった四人と一匹。

 と、ここで。

 

 

「キュー!?」

 

「え? ユーノくん?」

 

「ははっ! ユーノの奴やるなぁ。猫達とすっかり仲良くなってら!」

 

(ちーがーいーまーすーっ! 追われてるんです、助けてー!!)

 

「……なんだ、逃げてるだけだったんか。しょうがねえなぁ」

 

 

 悟空はユーノに追い付くとひょいっとその体を抱え頭の上に乗せた。

 猫達はちょいちょいと手を伸ばすが流石にこれではユーノには届かない。

 

 

「悪りいな、おめえ達。こいつはオラの友達だからよ」

 

(た、助かった……)

 

「……あんた、身のこなし凄く軽いわね」

 

「うん、あんなにあっさり追いついて素早くユーノくんを救出するなんて……」

 

「ん? これぐらい普通じゃねえのか?」

 

「悟空くん、それは流石に……」

 

 

 悟空からしてみればこれぐらい出来ない方が不思議だったらしいが傍から見てその早業は並大抵の人間が出来る事ではなかった。

 なのはからツッコミを受けたものの悟空はニカッと笑って言う。

 

 

「まぁ細かい事はいいじゃねえか」

 

「細かい事ってあんたねぇ……」

 

「あはは……何となく悟空くんって人が分かって来たかも」

 

「にゃはは、うん。悟空くんはこういう子なんだよ」

 

 

 すっかり慣れたのだろう、なのはだけは普通に対応していた。

 その後メイドにより運ばれてきたお茶菓子を食べながら軽い雑談タイムに入った。

 そもそもの話、何故急にお呼ばれしたのかとなのはが聞いてみると最近なのはの雰囲気が変わり心配だったからと二人は告げた。

 

 

「何か悩みがあるなら遠慮なく話しなさいよ? 友達なんだから」

 

「そうだよ、なのはちゃん。無理強いはしないけどいつでも頼ってほしいな」

 

「二人とも……ありがとう」

 

「モグモグ……うんめぇ~!」

 

 

 自分は良い友人を持ったとなのはは再度実感した。

 そしてこの時、僅かながらに魔法の事を打ち明けてしまおうかという気持ちも芽生えたが、なのははあえて言葉を飲み込む。

 二人を巻き込むわけにはいかない、勿論気持ちは心底嬉しいわけだがそこは譲れなかった。

 

 

「私なら大丈夫! どうって事ないよ」

 

「なのは……」

 

「なのはちゃん……」

 

「でも、もし本当に何か耐えきれない事があったら相談するね」

 

「ガツガツ! もごもご……」

 

「「「……」」」

 

(ご、悟空さん……)

 

「ん?」

 

 

 三人が真面目な話をしている横で菓子にがっつく悟空。

 当然一同の視線は悟空に向けられる。

 だが悟空はそんな視線などまるで気にしてないように首を傾げるのだった。

 

 

「どうしたんだ? おめえ達」

 

「どうしたんだ? じゃないわよ! 雰囲気ぶち壊しじゃない!」

 

「ア、アリサちゃん落ち着いて……」

 

「にゃはは……まぁ悟空くんだしね」

 

 

 そんな感じで楽しい時間は少しずつ過ぎていく。

 だが――その楽しい時間はただでは終わらなかった。

 

 

「「「!」」」

 

 

 突如として発生した嫌な気配、気を悟空となのは、ユーノは感じ取る。

 

 

(これは……間違いない、ジュエルシード!)

 

(それもかなり近えぞ)

 

(そんな……アリサちゃんやすずかちゃんもいるのに……!)

 

(とりあえず僕が先行するから二人は後から!)

 

 

 ユーノはそう告げると悟空の頭の上から飛び降りる。

 そして全速力で飛び出し、外へと逃げていった。

 

 

「あ、ユーノくん!?」

 

「なになに? どうしたのよ?」

 

「何かあったのかな?」

 

「わ、私ちょっと追いかけてくるね!」

 

 

 そう言ってなのはも走り出す。

 そして残った悟空はと言うと――。

 

 

(嫌な気、だけじゃねえ……近くに知らない気が一つと……もう一つでけえ気がある)

 

 

 その気が問題だった。

 何せその気はこの世界に来てから久々に感じる強い気だったからだ。

 今の自分と拮抗するか、あるいはそれ以上と思われる――そんな強い気。

 さらに問題なのはその気に覚えがあった事だ。

 

 

(まさか、この気……!)

 

「……悟空くん、大丈夫?」

 

「ん? ……あぁ、オラもちょっと行ってくる」

 

「過保護ねぇ、ユーノもなのはも放っておいてもすぐに戻って来ると思うけど」

 

「かもな、でもなのはは運動オンチだからなぁ……やっぱりオラが行かねえと、そんじゃすぐ戻ってくっからよ!」

 

 

 悟空はそう言って駆けだした。

 そんな悟空の背中を見ながらすずかは呟く。

 

 

「悟空くんってああいう顔も出来るんだね……」

 

「確かにえらく真剣な表情だったわね……」

 

 

 

 悟空は走る。

 全速力で駆け抜ける。

 舞空術を使うほどの距離でもなく、アリサやすずかの眼もあった事から瞬間移動も使わずに走り抜ける。

 どうしても気になる、大きな気の正体が。

 気のせいでなければ、その正体は恐らく――悟空の知ってる人物だ。

 そう思うと自然とスピードは上がっていた。

 そのまま少しの間駆け抜けた悟空の眼に映ったものは。

 

 

「ニャー……」

 

「……でけえ猫だなぁ、すずかの家にはこんなのまでいるんか」

 

「違うよ! あれジュエルシードのせいでああなっちゃったみたい」

 

「お、なのは。そうなんか……じゃあ早く戻してやらねえと……でもその前に、だ」

 

「え?」

 

「悟空さん?」

 

「……いるんだろ? 出て来いよ」

 

 

 悟空のその呼びかけに応じるように二つの影が上空に現れた。

 

 

「……」

 

「え、あの子……」

 

 

 一人は金髪赤眼の女の子。

 黒い服にピンクのスカート、黒のマントという服装でその手には黄色の宝石が輝く黒の杖が握られている。

 なのはが反応するのも無理はない。

 何となくだが察せてしまったのだ、彼女が自分と同じ魔導師であるという事を。

 そしてもう一人は――逆立ったツンツンヘアーとM字の生え際が特徴的で上半身がノースリーブ状になっている黒のアンダースーツと白い手袋とブーツを着用した男の子。

 その男の子は悟空を見据えて口を開く。

 

 

「まさかとは思ったが……やはり貴様だったか」

 

「やっぱりか……何となくそうなんじゃねえかって思ってたんだ、おめえも来てたんか」

 

「どうやら貴様とは切っても切れない因縁があるらしい」

 

「だな、この場合喜んでいいのか分からねえけど……なぁ?」

 

 

 会話を交わしながら互いに僅かながら笑みを零す。

 何となくだが嬉しかった、こうして出会えたという事はまたしのぎを削る事が出来る証だから。

 それだけ互いに目の前の相手を認めている証拠だった。

 男の子はニヤリと笑いながら言い放つ。

 

 

「――久しぶりだな、カカロット!」

 

 

 それを受けて悟空もまた口を開いた。

 

 

「あぁ、またおめえに会えるとは思わなかったぞ……ベジータ!」

 

 

 そう、その男の子の名はベジータ。

 誇り高き戦闘民族サイヤ人の王子にして悟空のライバル、そのベジータが悟空同様に子供の姿となって謎の少女と共に今、悟空達の目の前にいた。




 オッス! オラ、悟空!

 ベジータ! またおめえと戦えるなんてな! オラ、ワクワクすっぞ!

 だけんどジュエルシードは渡すわけにはいかねえ、これはなのはとユーノが頑張って集めてるもんだからな。

 だからよ……行くぞ、ベジータ! 勝負だ!!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「再会、激突、超激戦! 悟空VS(たい)ベジータ!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十三 再会、激突、超激戦! 悟空VS(たい)ベジータ!!

 お気に入り登録してくれた皆さま、感想を書いてくれた皆さま、メッセージをくれた方、評価を入れてくださったメイジンAトモヤさん、とあるゴリラさん、MinorNoviceさん、enigmaXさん、ヨ=グルトソースさん、輝く航海さんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあって昨日の日間で二位に載る事が出来ました、心から感謝いたします。

 ベジータ達も登場し賑やかになり始めた本作、今後もお付き合いいただけると幸いです。

 ちなみにどうでもいい豆知識というか前回描写しましたが本作のベジータの服装は魔人ブウ編の服装の黒バージョンだったりします。

 では其之十三をどうぞ!


「……悟空くん、あの男の子と知り合いなの?」

 

「あぁあいつの事はよく知ってっぞ、けどよ説明してる暇はなさそうだ……!」

 

 

 悟空はそう言うと構えを取る。

 それとほぼ同時にベジータも空中で構えを取った。

 独特の構えを取りながらニヤリと笑う二人。

 

 

「ベジータ、構えるって事はおめえ達もジュエルシードを狙ってるって事でいいんだな?」

 

「無論だ、でなければ他人の敷地内にわざわざ足を踏み込んだりはしない」

 

「そうか……でもよ、ジュエルシードはなのはとユーノが必死に集めてるもんだ。そう易々とは渡さねえぞ?」

 

「ならば力づくで貰っていくのみだ……!」

 

 

 そこまで会話を終えると二人は気を開放する。

 白いオーラが吹き出し大気が震えるのをなのは、ユーノ、そして謎の少女は感じていた。

 こんな悟空を、なのはは初めてみた。

 とても嬉しそうで、同時にとてつもなく真剣なその瞳を見ると言葉が出ない。

 そんな中、謎の少女はベジータに声をかける。

 

 

「ベジータ……」

 

「あの男は俺様が相手をする、お前はもう一人の方と戦え……気が向かんのならそれでもかまわん、その時は俺一人で二人を相手にすればいい話だからな」

 

「……ううん、私も戦う」

 

「……そうか、なら行くぞ!」

 

「うん」

 

 

 そう言って少女は杖を構える。

 その眼はなのはに向けられていた。

 綺麗で寂しそうな瞳がなのはを映す。

 

 

(あの子……)

 

「なのは! 来るぞ!!」

 

「う、うん……!」

 

 

 なのははバリアジャケットを纏い杖を構える。

 それが合図となりベジータと謎の少女は飛び出した。

 

 

「はあああああっ!!」

 

「ぐっ……!」

 

 

 ベジータと悟空の腕がぶつかり合う。

 そして次の瞬間、二人の姿はその場から消え去っていた。

 ドン、ドンと何かがぶつかり合う音だけが周囲に響き渡り白濁する空気の球がいくつも生まれては消えていく。

 さらにそれが治まったかと思えば今度はビュッ、ビュッと空気を切り裂く音が聞こえ二人の姿が現れては消えていく。

 それがまた見えなくなったかと思えば再びぶつかり合う音とともに特大の空気の球が発生した。

 気が付けばその空気の球の中心には悟空とベジータの姿があり互いの拳を相手の顔面に叩き込んでいる。

 ダメージはそれなりにある、だが双方すぐに体勢を立て直し二人は再度ぶつかりあった。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだだっ!!」

 

 

 拳が、蹴りが、今までにないほどの勢いで放たれぶつかり合い衝撃で空気の球を作り出す。

 互いに右の拳を突き出し左手で相手の拳を受け止める。

 その状態で腕に力を込める事でパワー勝負に持ち込んだ。

 

 

「これが今の貴様の力か! 弱くなったものだな、カカロット!」

 

「おめえだって人の事言えねえじゃねえか……! オラの知ってるベジータはもっと強かったぞ!」

 

「ふん、今に見てろ。すぐにあの頃と同じ……いや、それ以上の強さを手に入れてみせる!」

 

「それはオラだって同じさ!」

 

 

 二人はほぼ同時に膝蹴りを放つ。

 互いの膝がぶつかり合い、同時に二人は相手の拳から手を放しクルクル回転しながら着地。

 再び構えながら睨み合う。

 そして即座に飛び上がり拳や蹴りをぶつけ合い始める。

 

 

「ところでカカロット、貴様気づいているか! ここが俺達の過ごした地球とは別の地球だと!!」

 

「あぁ気づいてっさ! 多分別の宇宙――十二ある宇宙のどれかにある地球だろ!?」

 

「……俺の推測が正しければそれは違う! この地球は別の十二の宇宙にある地球でもない!!」

 

「なんだって!?」

 

「不自然だとは思わんか! どれだけ広域に気を探しても界王神や破壊神、それどころか生物の気も殆ど感じられない……ここは十二の宇宙どれでもない全く別の宇宙の可能性がある!」

 

「……難しい事はオラよく分からねえぞ」

 

「……貴様に説明した俺が馬鹿だった! くそったれめ!!」

 

「うわあああああっ!?」

 

 

 ベジータの怒りが籠った渾身のパンチが悟空の胴体を捉えて吹き飛ばす。

 さらにベジータは飛んでいった悟空に追いすがり上から下へ向けた蹴りを放つ!

 悟空は何とか体勢を立て直しつつ、その蹴りを腕を交差させて防御するが衝撃までは殺しきれず吹き飛ばされてしまう。

 地面に激突するかと思いきやギリギリで踏ん張る悟空、その衝撃だけで多くの砂煙が舞い上がる。

 

 

「ふー、危ねえ、危ねえ……一応ここもすずかの家だもんな、壊すわけにはいかねえ」

 

「ふん……どうやらここでの地上戦では貴様は存分に戦えないらしいな、ならばとっとと空中に来い、カカロット! 地上だろうと空中だろうと俺は貴様を倒してみせる」

 

「へへ、わざわざそんなところにまで気を遣ってくれるなんてよ……でもおかげで思いっきりやれそうだ!」

 

「そうでなくてはこちらが困る、さぁ来い!」

 

 

 再度ぶつかり合う二人。

 拳と蹴りの連打がぶつかり合い衝撃で木々が、そして空気が揺れる。

 その攻防はとても激しかった、これこそが戦闘民族サイヤ人の真骨頂と言わんばかりの暴れっぷりだった。

 

 

「でぇりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!

 

「はぁっ! だあああああっ!!」

 

 

 攻撃、防御、回避、攻撃、防御、回避、凄まじい連続攻撃が双方から放たれ、だがその全てが決定打足りえない。

 それほどに互いの実力は拮抗していた。

 そして何度目かの衝突で二人は一旦距離を取る。

 

 

「やっぱやるなぁ、ベジータ。こんなにワクワクすんの、オラ久々だぞ!」

 

「ふん……だが準備運動はこれぐらいで十分なはずだ、そろそろ全力で来い……カカロット」

 

「やっぱお互い様子見だったわけだ。しょうがねえ……はあああああっ!!」

 

「……はあああああ……!」

 

 

 気が高まっていく。

 二人の体を包む白いオーラは膨れ上がり振動が遠くまで伝わっていく。

 一瞬の閃光が周囲を包み込む。

 気が付けば強烈なまでのオーラを放つ悟空とベジータが空に浮かんでいた。

 何度目かの睨み合い。

 だがベジータはどこか苛立たし気だった。

 

 

「カカロット、貴様……ふざけているのか?」

 

「何のことだ?」

 

「あの技はどうした、今の貴様は超サイヤ人にはなれないのかもしれんがあれは使えるはずだ!」

 

「オラにも色々考えがあんのさ……さぁ始めっぞ、ベジータ!」

 

「チッ、ふざけやがって……いいだろう、後悔するなよ!」

 

 

 二人は構える。

 ほんの少しの間の静寂の時が流れ、気が付けばどちらからともなく動き出していた。

 

 

「ふっ! はっ! でりゃあっ!!」

 

「だだだだっ! でやあっ!!」

 

 

 ぶつかりあう力と力、技と技、速さと速さ。

 そのどれもが互角――かと思われた。

 だが実際は違う、優勢なのは。

 

 

「ぐあっ!?」

 

 

 ベジータだった。

 吹き飛んだ悟空に対しベジータは両手に気を溜め込み追撃の用意に入る。

 

 

「だだだだあああああっ!!」

 

「! やべえっ!!」

 

 

 放たれたのは連続の気弾。

 連射された気弾の数々はまるで降り注ぐ雨の如く悟空目掛けて迫りくる。

 明確な技名こそないものの、これはベジータの得意技とも言っていいものだった。

 勿論その威力を悟空はよく知っているし一発当たるだけでもダメージは免れない事から体から白いオーラを吹き出し回避に専念せざるを得ない。

 だが気づけば気弾の嵐は止んでいた、その代わり。

 

 

「ぐ……っ、かはっ」

 

「フン……だあっ!!」

 

「うあああああっ!?」

 

 

 気が付けば接近していたベジータによる腹部にパンチをもろに受けた悟空は一瞬の隙を見せる。

 その隙を見逃すベジータではない。

 すかさず放った蹴りは見事に悟空に命中。

 悟空は吹き飛んでいく。

 何とかブレーキをかける悟空だったが、またもや気が付けば目の前にはベジータがいた。

 

 

「くっ……!」

 

 

 再び襲い来るパンチを悟空は何とか受け止める。

 そしてこんな状況であるにも関わらず――悟空は笑った。

 

 

「まいったな……オラもこっちに来てから相当修行したつもりだってのに、ベジータ、おめえどんな修行してきたんだ?」

 

「言う必要はない、ただ言える事があるのならばそれは一つ、俺は間違いなく貴様以上の鍛錬を積んできた……死にもの狂いでな! ただそれだけだ!」

 

 

 ベジータはそう言うと悟空に向かって頭突きを放った。

 ゴツンと言う固いものがぶつかり合う音が響く。

 

 

「いっ!?」

 

「隙だらけだ、フンッ!!」

 

「うあっ!?」

 

 

 ベジータの蹴りが悟空をとらえ再び吹き飛ばす。

 戦いの流れは確実にベジータが掴んでいた。

 

 

 

「悟空くんが……あんなに苦戦するなんて」

 

「一体何者なんだ、あの人は……悟空さんも相当強いはずなのに、いや、それよりも……なのは!」

 

「う、うん……!」

 

「……」

 

 

 なのはが視線を向けた先にいるのは金髪の同い年くらいの少女。

 少女はなのはがこちらを向いたのを察知すると悟空とベジータの方を見ていたのを中断してなのはに視線を向ける。

 そして。

 

 

「バルディッシュ」

 

 

 そう呟くと彼女の斧のような杖は鎌のような形に変化した。

 それだけで察する事が出来る、彼女の得意分野は接近戦だと。

 そして対策を講じるよりも早く、金髪の少女はなのはに接近、その鎌を振るった。

 

 

「くうっ!?」

 

「……」

 

 

 何とかその一撃を受け止めるなのは。

 なのはは少女に問いかける。

 

 

「どうしてこんな事をするの!? なんで急にこんな……!」

 

「答えても多分意味はない」

 

 

 その声音は冷たかった。

 本気でこちらを倒しに来ている、なのははそう感じ取る。

 怪物とはまた違う、人と戦う緊張感。

 それがなのはの行動を遅らせ後手に回らせる。

 

 

「くうっ……」

 

 

 力任せに弾かれる。

 そこで少女は一旦距離を取り鎌を杖に戻して、その砲口をなのはに向けた。

 

 

「あ……」

 

「……ごめんね」

 

 

 小さな声だった。

 なのはにははっきりとは聞こえなかったが、それでも何が言いたいかは何となく理解出来た。

 そして――無情にも雷の砲撃が放たれる。

 なのはは思わず目を瞑る、だが。

 

 

「なのはあああああー!」

 

「え……?」

 

 

 聞き覚えのある声と共になのはの前に影が現れる。

 それは他でもない、悟空だった。

 悟空はなのはの前に立つ事で盾となり雷の砲撃をその身に受ける。

 

 

「ぎゃっ!?」

 

 

 その電撃の強さには流石の悟空も思わず動きを止める。

 ダメージは大して無いが痺ればかりはどうしようもなかった。

 そこへ――。

 

 

「相変わらず甘いな……まさか自ら隙を晒すとは」

 

 

 今度はベジータが悟空の前に現れた。

 そして痺れてまだ上手く動けない悟空に対し手の平をそっと向ける。

 

 

「こんな形での勝利など不本意ではあるが貴様の負けだ、カカロット」

 

「や、やめて――!」

 

 

 なのはの叫びも虚しくベジータの手のひらからは気功波が放たれた。

 気功波はそのまま悟空に直撃、悟空の体は吹き飛ぶ。

 

 

「うわあああああっ!!」

 

 

 悟空の叫びが木霊する。

 そのまま吹き飛んだ悟空は地面を転がり動かなくなる。

 なのははその様を呆然と見つめていた。

 そこへユーノも駆け寄る。

 遅れてなのはもハッと我に返り悟空に駆け寄った。

 

 

「ご、悟空くん!!」

 

「悟空さん!!」

 

「……安心しろ、そいつはその程度で死ぬほどヤワじゃない」

 

「え……?」

 

「だがカカロットが倒れた今、この戦い貴様らに勝ち目はない……ジュエルシードはもらっていくぞ」

 

 

 ベジータはそう言うと金髪の少女に目を向ける。

 その視線を受けて少女は頷き巨大化した猫に杖を向ける。

 

 

「ジュエルシード、封印」

 

 

 その言葉とともに猫は元のサイズに戻り、ジュエルシードは少女の杖へと吸い込まれていく。

 回収を確認したベジータと金髪の少女はふわりと浮かぶとなのは達には目をくれず空を飛び姿を消した。

 なのはは悟空の側に付きながら二人が飛んでいった空を見つめる。

 

 

「なのは! 僕が悟空さんに回復魔法をかける!」

 

「え、あ、うん……お願い……!」

 

 

 今はそれよりも悟空の事だ。

 ただどうしてもなのはは気になっていた。

 寂しげな少女のあの眼も、厳しさの中に確かな優しさと寂しさを持ってそうなあの少年も。

 悔しさ、悲しさ、怒り、気になる気持ち、色んな感情がない交ぜになってグチャグチャになってしまい、なのはは悟空の傷が癒えるまで、ただただ俯くことしか出来なかった。




 オッス! オラ、悟空!

 オラ達の前に現れてジュエルシードを持って行った謎の子供とベジータ。

 何でベジータはあの子供の味方をするのか、ジュエルシードを集める二人の思いはどんなもんなのか。

 それを紐解く二人の出会いが明かされる!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「少女とベジータ、二人の出会い!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十四 少女とベジータ、二人の出会い!

 新たにお気に入り登録してくれた皆さんに感想をくださった皆さん、メッセージをくれた方に評価を入れてくださったNKーYAYOIさんありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげでモチベーションも高めに維持でき、もうすぐ一章の書き溜めが書き終わりそうな勢いです。

 それでは其之十四をどうぞ!


 悟空が回復魔法で急いで治療されてる頃。

 金髪の少女とベジータは遥か上空を飛行し海鳴市から脱出、近隣にある遠見市へとやってきていた。

 ここに建てられたとあるマンションが彼らの地球での拠点だった。

 靴を脱いで部屋に上がった少女とベジータ。

 するとそこでは一人の人物が待っていた。

 オレンジの髪をしたスタイル抜群の女性、彼女は二人を――正確には少女を見ると嬉しそうに駆け寄って来る。

 

 

「フェイト! おかえり! あとベジータも」

 

「ただいま、アルフ」

 

「チッ、ついでみたいに言いやがって」

 

 

 フェイトと呼ばれた少女はアルフと呼ぶ女性の頭を撫でる。

 そんな光景をベジータは一歩引いた場所から眺めていた。

 

 

「そういえばジュエルシードは手に入ったんだろう?」

 

「うん、ちょっと邪魔は入ったけどベジータのおかげで何とかなったよ」

 

「フン、封印したのは貴様だろう、フェイト。俺は戦いたい奴と戦ったにすぎん」

 

 

 ベジータはそう言うとそっぽを向く。

 ただフェイトには一つ気になっていた事があった。

 それは――。

 

 

「ねぇベジータ……一つ聞いていい?」

 

「何だ、言ってみろ」

 

「あのベジータと競り合うくらい強かった男の子……知り合いだったみたいだけど……」

 

「奴は――」

 

 

 ベジータの脳裏には悟空との闘いと競い合いの日々が浮かび上がる。

 初めて地球に来て悟空と対峙した時の事。

 ナメック星でサイヤ人の誇りを託した時の事。

 セルゲームで力の差を見せつけられた時の事。

 バビディの洗脳にあえてかかり命がけの激突をした時の事。

 ――共に地球を守るために戦った日々の事を。

 それらを踏まえて自分と悟空の関係を表す言葉はこれぐらいしかないだろうとベジータは考える。

 

 

「奴は俺のライバルで……超えるべき壁だ」

 

「ライバル……超えるべき壁……」

 

「もし俺と奴が戦った事を気にしているのならそんな気遣いは不要だ、俺達は誇り高き戦闘民族サイヤ人。何よりも戦いを好む、例え相手が知ってる相手であろうがなかろうが関係ない」

 

「ベジータ……」

 

「……フン、まぁいい。腹が減った、今から飯を作るからちょっと待ってろ」

 

 

 ベジータはそう言うとキッチンに向かって行った。

 フェイトはその背中をただただ見つめる。

 その隣にアルフは立っていた。

 

 

「やれやれ、本当に戦いが好きな奴だね」

 

「……うん」

 

 

 料理をするベジータの背中。

 何故かそれがどこか寂し気にも見えて。

 フェイトは過去の記憶を思い返す。

 あれは――どれぐらい前だったろうか。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 ――時の庭園。

 フェイトとアルフ、そしてフェイトの母が暮らしている次元間航行なども可能な移動庭園だ。

 ある日の事だ、そんな時の庭園にちょっとした異常が発生した。

 

 

「フェイト! 大変だよ!」

 

「どうしたの? アルフ」

 

「いいからアレを見ておくれよ!」

 

 

 アルフに言われるがままにフェイトはアルフの指し示した方向を見やる。

 するとそこには。

 

 

「何、あれ……」

 

 

 巨大な光の柱が上がっていた。

 何かの異常か、もしくは無いとは思うが襲撃か。

 フェイトはバルディッシュを手にしバリアジャケットを纏うと光の柱が上がってる方へと駆けだした。

 

 

「ま、待ちなよ! フェイト!」

 

 

 アルフの静止する声が後ろから聞こえるがフェイトは止まらない。

 何故ならここには母がいるのだ。

 フェイトは母の事が大好きだった。

 近年、その母からはあまり愛情を向けられていないがフェイトの記憶には優しい頃の母親の姿がある。

 そんな母に万が一の事があってはいけない。

 母は自分が守るんだ、そんな思いを胸にフェイトは駆け抜けていた。

 そしてあっと言う間に光の柱の根元まで辿り着く。

 

 

「……」

 

 

 バルディッシュが杖から鎌へと姿を変える。

 フェイトはそれを構え臨戦態勢に入った。

 アルフも少し遅れてフェイトに追い付き同じく臨戦態勢に入る。

 これで万が一襲撃者が出て来ても戦える、そう思った。

 それからどれだけ待っただろう、数秒? 数分? とにかく待っていると光が収縮していく。

 緊張感が高まる。

 光は徐々に小さくなり、細くなり――そして消え去った。

 

 

「え……?」

 

「なんだい、ありゃ」

 

 

 フェイトとアルフは思わず臨戦態勢を解いてしまう。

 光の柱の跡地、そこには一人の少年が倒れているだけだったからだ。

 襲撃者……ではないだろうと即座に判断出来た、どう見ても彼は気を失っているのだから。

 フェイトはバルディッシュを杖に戻して少年に近づく。

 逆立ったツンツンヘアーが特徴的な少年は静かに眠っている。

 そんな少年の肩に手を置き軽く揺さぶる。

 すると、だ。

 

 

「ん……む?」

 

「あ、良かった。目を覚ました……」

 

 

 目をゆっくりと開けた少年とフェイトは目を合わせる。

 と、即座に少年は起き上がりアクロバティックな動きでフェイト達と距離を取った。

 少年は二人を睨みながら言う。

 

 

「何者だ? 貴様ら……」

 

「……ここは時の庭園、貴方こそ何者ですか?」

 

「そうだそうだ! 急に現れて……あんたこそ一体何なんだい!?」

 

「時の庭園……?」

 

 

 何だ、それはと少年は首を傾げる。

 だがとりあえずこう口にした。

 

 

「俺の名はベジータ……答えろ、ここは何だ? 天国か? それともまさか地球なのか?」

 

「……天国? 地球?」

 

「あんた何言ってんだい? ここは天国でも地球でもないよ」

 

「なに……?」

 

 

 ベジータは混乱する。

 天国でもなければ地球でもない? どういう事だ? そもそも自分は何故こんなところにいて、しかも体が縮んでいる?

 そんな疑問がグルグルと頭の中を巡る。

 そんなベジータに対しフェイトは一歩前に出る。

 

 

「私はフェイト、こっちはアルフ……ベジータは地球の出身なの?」

 

「出身はまた別の星だ、だが地球で暮らしていた時期はそれなりに長い」

 

「別の星?」

 

「……俺様の出身は惑星ベジータ、戦闘民族サイヤ人の星だ。まぁ滅んだ星の話はどうでもいいだろう、で? その言い方だと地球に行く方法はあるらしいな、どうすれば地球に戻れる」

 

 

 星が滅んだ、そんな重たい話をベジータは何てことなさそうな顔をしながら呟く。

 すると今度はアルフが疑問を口にする。

 

 

「故郷の惑星と同じ名前なんて大層な名を親に付けられたんだね」

 

「当然だ、俺様はサイヤ人の王子なのだからな。正式な名称はベジータ四世だ……だがそんな事は今はどうでもいい! 早く戻る方法を教えやがれ!」

 

「……その事なんだけど、普通のやり方じゃ地球には帰れないと思う」

 

「なにぃ!?」

 

 

 ベジータは苛立たし気に舌打ちをする。

 どうしたものか、そう考えているとフェイトはある提案をした。

 

 

「私達は近々地球に行く、それに同行すれば帰れると思う……ただ」

 

「ただ、なんだ?」

 

「その、母さんの許可を得ないと……私の独断で許可したら怒られちゃうから」

 

(あんな奴にわざわざ許可取る必要無いとは思うけどねぇ……)

 

「ほぅ……ならばその母親のところに案内しろ、直々に話を付ける」

 

「いいけど……出来る限り穏便にね? もし危害を加えるようなら――」

 

「ほぅ……やる気か? それはそれで面白いかもしれんな……冗談だ、俺の目的は帰る事……そのために必要な事である以上そっちが手を出さない限りはこちらも手を出さん、約束してやる」

 

「分かった……じゃあ付いてきて」

 

 

 そうして三人は歩き出した。

 フェイトの母のもとへ向かうために。

 そんな中足を動かしながらフェイトはベジータをチラリと見て思う。

 

 

(乱暴そうで、強そうで、でも寂しそうな子……)

 

 

 一方でベジータもフェイトを見ながらこう思っていた。

 

 

(しかしなんて寂しそうな眼をするガキだ……何があればあんな眼をする事が出来る、その母親とやらに原因があるのか?)

 

 

 奇しくも二人の考えてる事は大まかではあるが一致していた。

 互いに互いが寂しそうに見えて、それ故に何となく放っておけない――そんな思いを抱いていた。

 根っこの部分が優しい二人だからこその一致であったと言えるかもしれない。

 そして数分ほど歩いた後、三人は大きな扉の前に辿り着いた。

 

 

「母さん、入ります」

 

 

 フェイトはそう言うと扉を開ける。

 そこには椅子に座った一人の女性がいた。

 冷たい瞳をしたその女性がフェイトの母であるという事は何となく察する事は出来た。

 だが――。

 

 

(何だ、あれは。あの眼は自分のガキに向けるような眼じゃない……)

 

 

 それがベジータの抱いた感想だった。

 そしてフェイトの方を軽く見やれば、フェイトは少し怯えてるようにも見える。

 これだけでこの親子関係が真っ当なものではないという事は嫌でも理解出来た。

 そんな中、フェイトの母が立ち上がり言葉をかける。

 

 

「貴方がさっきの異変の元凶、みたいね」

 

「……貴様がフェイトの母親か」

 

「……で、何をしに来たのかしら」

 

「俺は地球に帰りたい、そのためにフェイトに同行する許可を寄越せ。用件はそれだけだ」

 

「礼儀と言うのを知らないのかしら? とても頼む側の態度ではないわね」

 

「フン……生憎とこういう性格でな、余程の事がない限り頭を下げるのは性に合わん」

 

「ベ、ベジータ……」

 

 

 一触即発の空気が流れる。

 何とか宥めようとフェイトはベジータに声をかけるがベジータは反応しない。

 ベジータは一目見てこの空気を感じ取った時から思っていた、目の前にいるこの女は気にくわないと。

 一方でフェイトの母親は何かを考え――急に杖を構えた。

 

 

「母さん!?」

 

 

 フェイトの驚きの声、杖の先端には雷が溜まっていく。

 だがそこで動きは止まった。

 よく見ればベジータが手の平を向けて気弾を作り出していたからだ。

 

 

「……驚いたわ、それは魔力じゃないわね……稀少技術(レアスキル)かしら?」

 

「稀少技術? 何のことだか分からんがこれは気というものだ……で、どうする? お望みとあれば打ち合っても構わんが?」

 

「……いいえ、止めておくわ。得体の知れない力とぶつかり合うのは避けたいもの」

 

「フン……」

 

 

 その言葉を皮切りに双方臨戦態勢を解いた。

 荒事にならずに済みフェイトは内心ホッとする。

 

 

「そうそう、同行の許可だったわね……別に構わないわよ、ただし条件があるわ」

 

「……なんだ」

 

「私にはね、どうしても欲しいものがあるの。フェイトを地球に送るのもそのため……それを集める協力をしてほしいのよ」

 

「え!?」

 

「ほう……つまりはフェイト達と協力して貴様のために働けと?」

 

「まぁそうとも言えるわね、どうかしら? 貴方は見たところ中々の実力を持ってそうだわ、その力を貸してほしいのだけれど?」

 

「……」

 

 

 ベジータは考える。

 地球に帰れる、それを考えれば多少働くぐらいはどうって事ないと思えた。

 それに――さっきから脳裏にフェイトのあの眼がチラつく。

 別に家族関係をどうにかしてやろうだとか、問題を解決してやろうだなんて微塵も思っちゃいない。

 だがあの少女をそのまま放ってはおけないと思ったのは紛れもない事実だった。

 

 

(甘くなったものだ……俺も。いや、今更か)

 

 

 ベジータはニヤリと笑う。

 かつては否定した自分の変化を正面から受け入れた男の笑みだった。

 そしてベジータは顔を上げる。

 

 

「いいだろう……だが勘違いするな、俺は俺の意志で動く、貴様の部下になるわけではない」

 

「えぇ、それで構わないわ……それともし裏切って途中で逃げ出したりすれば……少々痛い目にあってもらうわ」

 

「ほぅ脅しか? まぁいいだろう、この俺の誇りにかけて最後までフェイトに協力してやる」

 

「これで交渉成立ね……後は成果を期待しているわ」

 

 

 こうして交渉は終了した。

 フェイトは何事なく終わった事に心から安堵していた。

 所々でハラハラさせられはしたが。

 部屋を出た後、ベジータは口を開く。

 

 

「というわけだ、俺様は貴様達に同行する事になった」

 

「うん……よろしくね、ベジータ」

 

「フン……あぁ」

 

「しかし魔力じゃない力を持ってるとはねぇ……そのキってのはあんた固有の力なのかい?」

 

「……気は生きとし生ける者全てが持つ力だ、個人差はあれど鍛えれば誰でも使える」

 

 

 ベジータのその言葉にフェイトとアルフは感心する。

 先ほどベジータが気弾を生成した時、何とも言えない圧を感じた。

 それだけでベジータが実力者である事は何となく想像がつく。

 鍛えれば誰でも使えると言うが、そう言った張本人の彼は一体どれほどの鍛錬を積んだのだろうか。

 そんなことを考えながらフェイトはベジータとアルフと共に時の庭園内部を歩くのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 それから数日後にフェイトはベジータとアルフと共に地球に降り立ったのだ。

 ちなみにベジータは地球に降り立ってから数日、周辺を調査したり、慣れない図書館で地球について調べたりしていた。

 その結果至ったのがこの世界は自分が過ごした地球でも別の宇宙の地球でもない、という仮説だった。

 最初はショックに感じた部分もあった、だがすぐに気持ちを切り替えた。

 それ以降は暇が出来たら鍛錬に時間を費やしてきたのである、その結果が先ほどの悟空との戦いだ。

 そして実はフェイトはそんなベジータの頑張りをこっそり見ていたりする。

 一緒に過ごした時間はそんなに長くはないが今のフェイトは胸を張って言える、ベジータの事は信用していると。

 

 

「待たせたな、出来たぞ」

 

「うん、ありがとう。ベジータ」

 

「別に礼を言われるほどの事じゃない、貴様が栄養失調になって倒れたりしたら後が面倒だからな。ただそれだけだ」

 

「ベジータ! 肉、肉はあるかい!?」

 

「ええい、用意してあるからがっつくな!」

 

 

 そんなやり取りを見ながらフェイトはクスリと笑う。

 そしていつからか、アルフだけじゃなくベジータも傍にいるのが当たり前になっていた。

 一緒に過ごす時間が楽しかった。

 ベジータという存在がフェイトの中で段々と大きくなっていっているという事に本人も僅かながら気づいていた。

 だが今は何よりもジュエルシードを優先する。

 全ては母のために――優しかったあの頃の母に戻ってもらうために。

 尚、笑ったフェイトの顔を見てベジータもこっそりフッと笑っていた。

 

 

「さて、食うか」

 

「うん」

 

「おうさ!」

 

 

 こうして三人はそれぞれ目の前の食事に手を付け始めるのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 温泉旅行かぁ、どんな美味い飯が食えるのか楽しみだぞぉ! 

 ……なのは、おめえ大ぇ丈夫か? 最近様子がおかしいぞ?

 しょうがねえなぁ、この旅行で気分転換できるといいんだけんど。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「波乱の予感!? ドキドキワクワク温泉旅行!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十五 波乱の予感!? ドキドキワクワク温泉旅行!

 お気に入り登録してくださった皆様に感想をくださった皆様、評価を入れてくださったkatushiさんと氷樹.さん、ありがとうございます!

 一章の執筆は無事終了しました!

 現在は二章のプロット構成と執筆を進めております。

 と、そんな報告をしつつ其之十五をどうぞ!


 ――少しあの後の事を話そう。

 気絶した悟空、そんな悟空を心配そうに見つめるなのはとユーノ。

 傷はユーノの回復魔法によって治癒され、悟空は暫くして目を覚ました。

 その後、皆の元に帰った二人と一匹だったが時間かかりすぎだわ、悟空はボロボロだわで質問攻めにあってしまう。

 そんな中で悟空は。

 

 

「ちょっと色々あってよ、ははっ!」

 

 

 そう言って笑顔を見せ強引に誤魔化したのだった。

 嘘を付いても良かったのだが悟空の頭ではパッといい感じの嘘は思い浮かばなかったので結局こう言った強引な手段ならざるを得なかったのである。

 勿論それで納得したものは少なかったが悟空もなのはも本当の事など言えるはずもないためあえて黙ったままその日を終えた。

 

 

 

 それからさらに数日が経過した。

 あれからジュエルシードの反応はない。

 そんな中、高町家の面々は。

 

 

「さて、それじゃあ皆、出発するぞー」

 

 

 車を出してある所に向かっていた。

 よく見ればそれに付いてくる車が二台ほど。

 そんな一行の行き先は――海鳴温泉。

 何を隠そう、この連休を利用して二泊三日の温泉旅行に行くのだ。

 ちなみに同行している残り二台の車はそれぞれバニングス家と月村家の車である。

 毎年この時期にセッティングされた仲良し三家合同の恒例の行事、それがこの温泉旅行なのだ。

 というわけで勿論なのはもユーノも、そして悟空も温泉に行くため車に揺られている。

 そんな中で悟空が気にしている事が一つ。

 

 

「……」

 

「なのは、大ぇ丈夫か?」

 

「え? あ、う、うん。大丈夫だよ」

 

 

 あの少女とベジータとの交戦以降、なのはの様子がおかしいのである。

 いつも何かを考えているのかボーッとしている事が多くなり、周囲の人間もそれを心配していた。

 勿論悟空も心配している人間の一人なのだが何を聞いても「大丈夫」で済まされてしまうのでどうしようもない。

 そんななのはにユーノは念話で語り掛ける。

 

 

(なのは、色々気になる事もあるかもだけど休日くらいはゆっくりした方がいいよ?)

 

(うん……そうだね、ありがとう)

 

 

 その言葉を受けてなのはは少しだけ気持ちを切り替える。

 とりあえずは心配されない程度には明るく振る舞おう、そう思った。

 それでも気になる気持ちはまだ残っている、あの寂しそうな眼をした名前も知らない少女の事も悟空がベジータと呼んでいた少年の事も、見つからないジュエルシードの事も、そして何より自分を庇い怪我を負った悟空の事も。

 色んな事が気になってしまい頭の中をグルグルと回る。

 だけどここでいつまでも考えてたって埒は明かないと分かってはいるから、なのはは気分転換に隣に座っている悟空に質問してみる事にした。

 よくよく考えればここ数日は考えがまとまらず、あまり悟空とも会話していないし聞きたい事はいくつかあったから。

 

 

「ねぇ悟空くん」

 

「ん? どした?」

 

「この前会った男の子、ベジータくんだっけ……悟空くんの友達なんだよね?」

 

「友達? 友達かぁ……ちょっとしっくり来ねえなぁ、確かに嫌いじゃねえけどよ」

 

「え?」

 

 

 なのはは首を傾げる。

 友達、ではない。

 だとするならどういう関係なのだろうかと。

 

 

「オラとベジータは……うーん、そうだな。ライバルって言うのが一番しっくり来るかもしれねぇ……あいつはすげえ奴でよ? 戦いの天才なんだ」

 

「戦いの天才……」

 

 

 思い返すのは先日の悟空とベジータの戦い。

 あれだけ強い悟空を相手にして優勢を保つベジータの姿だった。

 

 

「悟空くんでも……敵わない人なの?」

 

「どうだろうなぁ……確かにベジータは強えぇし、この前も想像以上に強かったけどよ、オラだってあれからさらに修行したかんな、負けるつもりはねえぞ」

 

 

 悟空はそう言うといつものように笑顔を見せる。

 相変わらずの太陽のようなその笑顔は見ていると心を温かくさせてくれた。

 そういえば、となのはは先日の戦いを思い返して思いついた疑問を口にする。

 

 

「ベジータくんが悟空くんの事カカロットって呼んでたみたいだけど……」

 

「あぁカカロットってのはオラの本名だ」

 

「え? 悟空くんって外人さんだったの?」

 

 

 そんな質問に悟空は疑問符を頭に浮かべる。

 その顔は暗に「なに言ってんだ、おめえ」と言ってるように見えた。

 そして暫くしてあっと声を出す。

 

 

「悪りい、悪りい、そういや士郎と桃子以外には言ってなかったや。オラ宇宙人なんだ」

 

「へぇそっか、宇宙人――って」

 

「「「宇宙人!?」」」

 

 

 高町三兄妹の驚きの声が響き渡る。

 初耳だし、流石に悟空が非常識な存在と言ってもそこまでぶっ飛んだ話になるとは思ってもみなかった。

 そんな三人の反応に士郎は運転しながら苦笑いを浮かべ桃子はクスクスと笑い、悟空はキョトンとしていた。

 

 

「そ、それ本当なの!?」

 

「なんだよ、嘘ついてもしょうがねえだろ? サイヤ人っちゅう種族でさ、カカロットはサイヤ人としてのオラの名前で孫悟空っちゅうのはオラを育ててくれたじいちゃんが付けてくれた名前なんだ」

 

「へ、へぇ……そうなんだ……悟空くんが強いのは何でか少し分かった気がする」

 

「まさか宇宙人とは……本当に人を驚かせるのが上手い奴だ」

 

「この眼で本物の宇宙人を見る日が来るなんてねぇ……イメージと全然違うけど」

 

 

 高町家の中で悟空が宇宙人である事に疑問を持つものはいなかった。

 光の中から現れた、なんて時点で普通じゃないのは分かっていたし何よりも悟空は無駄な嘘はつかない人物だと信頼していたからだ。

 そんなこんなで騒がしくしながらも一行は温泉へと向かい進み続けるのだった。

 そんな中で悟空は少し考える。

 

 

(あれからベジータの気は感じねえ……気を抑えてんだな、オラの瞬間移動対策か。一緒にいた子供の気なら感じ取れっけどオラが向こうに行ったらベジータに攻撃されかねねえしなぁ)

 

 

 戦い自体は望むところな悟空だったが移動直後に襲われて怪我でも追ってしまえば後が面倒な事になるし怒られるのは目に見えている。

 それを分かっているから今は瞬間移動で会いに行くのはグッと堪えるのだった。

 

 

 

 そして車を走らせ続け一行はとうとう海鳴温泉に辿り着いた。

 悟空は早々に車から降りて旅館を見上げている。

 

 

「ひゃー……すずかの家の時も思ったけんど、こりゃまたでっけえ建物だなぁ」

 

「当たり前でしょ、旅館なんだもの」

 

「へぇこれが旅館って言うんか」

 

「悟空くんは旅館初めてなんだね」

 

「あぁ温泉は入った事あんだけど旅館ちゅうのは行く機会がなかったからな」

 

 

 そんな会話をしながら旅館の中に入る。

 そこには外見から想像できる通り広い空間が広がっており卓球台だとかゲームだとか色んなものが置かれていた。

 

 

「さて、とりあえず夕食までは自由行動にしようか」

 

「そうけ? じゃあオラ修行でも――」

 

(悟空さーん! 助けてー!!)

 

「ん?」

 

 

 頭の中に響いてきた知ってる声。

 悟空がクルリと振り向くとそこには――女湯に向かうなのは達と、そんななのはに抱えられたユーノがいた。

 ユーノはジタバタもがき、なのはの腕から抜け出すとダッシュで悟空のもとまで駆け寄って来てピョンッと悟空の頭の上に乗っかる。

 

 

「あ、ユーノくん!?」

 

「どうかしたんか? ユーノ。そんなに慌てちまってよ」

 

(女湯はどうしても嫌なんですー! 一生のお願いですから男湯に連れて行ってください!)

 

 

 こんなところで一生のお願いを使ってしまうユーノ。

 対し悟空はユーノがあまりにも必死すぎて思わず呆気にとられてしまった。

 

 

「しょうがねえなぁ……なぁなのは。ユーノ借りてもいいか? オラも風呂入ってくっからよ」

 

「えー、ユーノくん連れていっちゃうの?」

 

「しょうがねえだろ? 本人がそう言ってんだから」

 

「あんた何言ってるのよ? 動物が喋るわけないでしょ」

 

「ア、アリサちゃん……」

 

「オラ嘘は言ってねえんだけどなぁ、まぁいいや。とりあえずユーノは借りてくぞー」

 

「あ、悟空くん! 行っちゃった……」

 

 

 悟空は男湯に駆け込み、脱衣所で服を脱ぐと髪を洗い体を洗い、大きな風呂に浸かる。

 予定は狂ってしまったが、大きな湯船に浸かるというのは久々の感覚で悪くないと思えた。

 ちなみに幸いというべきか他に人は入っていない。

 そんな悟空を見て湯の入った桶に体を浸からせているユーノは申し訳なさそうに言う。

 

 

「すいません、悟空さん……ご迷惑をおかけして、それとありがとうございます。助かりました」

 

「ははっ、気にすんなって。おめえには恩もあるしよ、これぐらいどうって事ねえさ」

 

「恩?」

 

「オラがベジータにやられた時の傷、治してくれたのはおめえだろ? オラとしては何かしら恩返ししたかったんだ」

 

「そ、そんな! あれくらい当然ですよ、そもそも悟空さんがジュエルシード集めを協力してくれてる時点で僕の方が恩返しすべきなんですから!」

 

「そういうもんか? まぁ細けえ事はいいじゃねえか、オラとしては助かったのは事実だしな」

 

 

 悟空は笑いながらそう言った。

 事実として助かったのは本当だ、何故ならこの世界に仙豆はない。

 ともなれば怪我は自分の治癒力のみでどうにかすべきだったところでユーノの回復魔法には随分と助けられた。

 と、ここで悟空はある疑問を口にする。

 

 

「そういやよ? おめえ何であんなに女湯嫌がったんだ?」

 

「だ、だって僕は男ですし……目のやり場に困りますから……」

 

「へぇーおめえ男だったんか」

 

「え、今更!? これでも人間形態にだってなれるんですよ? 今は無理ですけど……」

 

「そんな事も出来るんか! 器用だな、おめえ」

 

「ご、悟空さんだって人の事言えないでしょうに……」

 

 

 そんな会話をしながら暫くの間、一人と一匹は湯に浸かり続けた。

 そして程よく体が温まったところで――。

 

 

「さて、そろそろ上がっか!」

 

「そうですね! これ以上はのぼせそうですし」

 

 

 悟空とユーノはそう言い合って風呂から上がる。

 体をよく拭き、髪を乾かし、服を着て、最後にユーノを頭の上に乗っけて男湯から出る悟空達。

 すると、知ってる顔が近寄って来る。

 

 

「あ、悟空くん、ユーノくん」

 

「オッス! なのは、おめえ達も上がったところか?」

 

「うん!」

 

 

 なのはとそんな会話を交わす中、二人と一匹に近づく影があった。

 それを察知し悟空はその方向を見やる。

 

 

「……悟空くん?」

 

「誰だ、おめえ? オラ達に何か用か?」

 

「……驚いた、話しかける前に察知されるとはね……それが気って奴かい?」

 

「へへっ、まぁそんなところだな」

 

 

 そこに立っていたのはオレンジの髪をしたグラマラスな美人の女性だった。

 女性は悟空を見た後になのはの方に眼を向け、そしてこう言う。

 

 

「アンタ達だろ? うちの子にアレしてくれちゃってるのはさ……」

 

「え……?」

 

「……おめえ何もんだ?」

 

 

 傍から見ても感じられる殺気。

 それを感じ取りなのはは思わず固まってしまい、悟空は目つきを鋭くさせて尋ねる。

 

 

「答える義理はないね、それにしても……そっちの男はともかく女の方は大した事なさそうに見えるねぇ」

 

「う……」

 

「言い返せないって事は自覚はあり、か。まぁ子供は――」

 

「何をしている、アルフ」

 

 

 その声がした方向に三人と一匹は顔を向ける。

 そこにいたのは――。

 

 

「げっ、ベジータ……」

 

 

 オレンジ髪の女性の言う通りベジータだった。

 ベジータは腕を組みながらアルフを見てこう言う。

 

 

「大方その眼で確認したかったというところだろうが……もう十分だろう、行くぞ」

 

「へいへい、分かったよ」

 

 

 背を向け去っていく二人。

 そんな二人を――いや、ベジータを悟空は呼び止める。

 

 

「待てよ、ベジータ」

 

「……なんだ、カカロット」

 

「おめえ……あの子のためにジュエルシード集めてるんか?」

 

「……さぁな、いちいち説明するのも面倒だ。貴様で勝手に想像してろ」

 

 

 ベジータはそう言うとアルフと呼んだ女性と共に去っていく。

 悟空はその背中を見つめていた。

 昔のベジータみたいにピリピリした感じはなかった、ならばきっと彼なりの善意で動いているのだろうと悟空は思う。

 すると悟空、なのは、ユーノの頭の中に声が響いた。

 

 

(子供はいい子にして家で遊んでなよ、じゃあね)

 

 

 その言葉はアルフのものだった。

 それを最後にベジータとアルフは視界から消える。

 その場に残るのはアルフが残した魔力と殺気。

 暫くの間立ち尽くす二人と一匹。

 そんな三名のもとに一歩引いたところから今までの様子を見ていたアリサとすずかが駆け寄って来る。

 

 

「大丈夫? なのはちゃん、悟空くん」

 

「まったく……なんなのよ、あの二人。ガラ悪いわね……」

 

「にゃ、にゃはは……私達なら大丈夫だよ、ね? 悟空くん」

 

「ん? あぁそだな」

 

 

 二人の応対をしながらなのはと悟空は考える。

 ベジータがいるという事は――それはつまりこの近辺にジュエルシードがあるという事ではないかと。

 そこまでは同じ考えだった、ただ。

 また戦いになる、そう考えると少し気が滅入るなのはとワクワクする悟空はある意味で対照的だった。




 オッス! オラ、悟空!

 でけえ気と嫌な気を感じる……この気、ベジータとジュエルシードか! 

 なのは、ユーノ! オラはベジータの相手をすっからそっちは頼んだぞ!

 ……と言っても普通にやったんじゃ今のベジータには勝てねえかもな、しょうがねえ……あれを使うしかねえ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「悟空の切り札! 見せてやれ、界王拳の力!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十六 悟空の切り札! 見せてやれ、界王拳の力!!

 お気に入り登録や感想をくれた方々、評価を入れてくれたぺちぷにさんに心からの感謝を!

 今回は色々悩みましたがこういう形にさせていただきました。

 では其之十六をどうぞ!


 その日の夜。

 悟空、なのは、アリサ、すずかは同じ部屋で寝る事になった。

 暫くの間、雑談をして過ごした後四人は眠りにつく。

 ――もっとも、寝たのはアリサとすずかだけでなのはと悟空はこっそり起きていたわけだが。

 そしてその近くにはユーノもいる。

 そんな中ユーノが切り出す。

 

 

「ねぇなのは、悟空さん……僕考えたんだけどやっぱり二人はジュエルシード集めから手を引いた方が――」

 

「ユーノくん、それ以上言ったら怒るよ?」

 

「そだぞ? 今更やめろってのは無しだ」

 

「……最初はお手伝い感覚だったけど今は自分の意志でやってる事だから、確かに戦いはあまりしたくないけど……それでも私は投げ出したりはしない」

 

「オラとしては戦いは大歓迎なんだけんど……どっちにしろ、向こうにベジータがいる以上戦力はいるだろ?」

 

「なのは、悟空さん……ありがとう」

 

 

 そう言葉を交わして笑い合う。

 その時だった。

 

 

「「「!」」」

 

 

 三人はジュエルシードの気配を感じ取る。

 加えて悟空は大きな気も感じていた、これは――ベジータの気だ。

 急いで支度をして部屋をそっと飛び出す二人と一匹。

 そのまま出入り口まで行き靴を履いたところで――。

 

 

「なのは、ユーノ、オラに掴まれ!」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

 二人がしっかりと掴まった事を確認すると悟空は己の額に指を当て気を探る。

 そして次の瞬間には悟空達の姿はそこから消えていた。

 

 

 

「よっ、着いたぞ」

 

「ありがとう悟空くん」

 

 

 ジュエルシードがあると思われる場所に辿り着いた悟空達。

 だがそこには怪物も何もいなかった。

 いるのはフェイトにアルフ、そしてベジータ。

 しかもフェイトの手の上にはジュエルシードが浮いている。

 この短時間で怪物を対峙し封印までしてしまったのだろう、それだけで彼女の、いや彼女達の実力の高さが計り知れる。

 一方でフェイトは急に現れた悟空となのはに対し内心驚いていた。

 それを察してかベジータが説明を入れる。

 

 

「奴の――カカロットの能力“瞬間移動”だ。気を感じとったところへならどこにだって飛んでいける」

 

「瞬間移動……そんな事が……」

 

「厄介な相手だねぇ、まったく」

 

 

 そんな会話を交わしながら悟空、なのは、ユーノとベジータ、フェイト、アルフは対峙する。

 高まる緊張感。

 その中で一番最初に構えを取ったのは悟空とベジータだった。

 

 

「なのは、オラがベジータの相手をする」

 

「奴の相手は俺が務める……残りは好きにしろ」

 

 

 二人はニヤリと笑う。

 そうして一気に飛び出そうとしたその瞬間。

 

 

「ま、待って! 悟空くん!」

 

「いっ!?」

 

「……」

 

 

 悟空の動きはなのはの声によって止められた。

 ベジータもまた悟空が動きを止めた事で一旦ブレーキをかける、その顔は何とも不満そうであり同時に不思議そうでもあった。

 そんな中でなのはは言う。

 

 

「出来れば……話し合いで解決したいの」

 

「なのは……けどよぉ」

 

 

 その言葉に最初に反応したのは――ベジータだった。

 

 

「フン……何かと思えば話し合いだと?」

 

「うん、私は話し合いで解決したい。教えて、どうしてジュエルシードを集めているの?」

 

「……カカロット、貴様と一緒にいるからまさかとは思ったが……貴様同様に甘い奴らしいな」

 

 

 ベジータはチラリとフェイトの方に目を向ける。

 それはフェイトの意志に任せるというベジータなりのメッセージだった。

 それをしっかりと受け取ったフェイトは――バルディッシュを構える。

 と同時にアルフもまた人型から狼のような姿に変わり威嚇する。

 そんなフェイト達になのはは尚も呼びかける。

 

 

「ま、待って! 私は――」

 

「言葉だけじゃ……」

 

「え……?」

 

「言葉だけじゃきっと何も変わらないし伝わらない」

 

 

 そのフェイトの言葉が開戦の合図だった。

 まずは先手必勝と言わんばかりにアルフが襲い掛かる。

 それを防いだのはユーノだった。

 魔力による防御壁による防御、ユーノの得意分野だった。

 アルフは一旦後ろに跳び走り出す。

 それを追うようにユーノも駆けだした。

 

 

「なのは、あの人の相手は僕がする!」

 

「ユ、ユーノくん待……っ!」

 

 

 なのはの言葉は届かず、途中で断たれる。

 何故ならなのはの目の前にはフェイトが迫っていたのだから。

 即座にバリアジャケットを纏い振るわれたバルディッシュをレイジングハートで受け止めるなのは。

 二人の力がせめぎ合う。

 

 

「私は何としてもジュエルシードを手に入れる……」

 

「だからその理由を……!」

 

「言う必要はない……そっちもジュエルシードが欲しいのなら――勝負しよう、互いのジュエルシードを一つ賭けて」

 

 

 一方でその戦いを見ていた悟空とベジータは。

 

 

「始まっちまったか……こりゃ結局やるしかなさそうだ」

 

「よく言う……貴様には分かっていたはずだ、戦うしかない事ぐらいな」

 

「あぁ、でもなのはの思いを無視したくはねえんだ。おめえだってあの子の思いを無視したくはねえだろ?」

 

「……チッ、相変わらずムカつく野郎だ。さぁ行くぞ! 勝負だ、カカロット!!」

 

「来い、ベジータ!!」

 

 

 互いに気を開放する。

 そしてほぼ同時に相手目掛けて突撃した。

 ぶつかり合う二つの超パワーで周囲の木々が揺れる。

 

 

「はあああああっ!!」

 

 

 先に仕掛けたのはベジータだった。

 拳による連打が勢いよく放たれる。

 悟空はそれを冷静に見極めつつ防ぎ、躱し、反撃に転じる。

 

 

「だあっ!!」

 

 

 悟空の蹴りがベジータを襲う。

 だがベジータはそれを受け止め力任せに勢いよく悟空の体を振り回し、さらに上空に投げ飛ばす。

 そこへ追撃と言わんばかりに手の平を向け――。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

 気弾を放つ。

 悟空は空中で気を使いブレーキをかけて体勢を整えつつギリギリでその気弾を回避する。

 だが悟空が急いでベジータがいた場所に眼を向けた時、既にそこにベジータの姿はなかった。

 悟空は気で探ろうとするがそれよりも早く。

 

 

「後ろだ」

 

「!!」

 

 

 背後からベジータの声がした。

 振り向く暇もなく、強い衝撃が悟空の体を駆け抜ける。

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 吹き飛んでいく悟空。

 そのまま地面に墜落するか、と思われたが何とか体勢を立て直し着地に成功する。

 背中を擦りながら悟空は言う。

 

 

「今のは効いたぞぉ……ベジータ、おめえこの前より強くなってるんじゃねえか?」

 

「当然だ、以前も言ったがサイヤ人の強さに限界などあってたまるか!」

 

「へへっ、そうだったな……」

 

 

 悟空はそう言うと両拳を腰の左右に持っていった。

 それを見たベジータはフッと笑う。

 

 

「ようやくそれを使う気になったか」

 

「あぁ……正直に言うとよ、体が縮んじまってどこまでの負荷に耐えられるか分かんなかったから出来るだけ使いたくなかったんだ……けどおめえを相手にするにはこれがねえと駄目だって事がよく分かった、だから――使わせてもらうぞ! はあああああ……っ!」

 

 

 悟空が気を溜めていく。

 大気が揺れ凄まじい圧が周囲を襲う。

 それは別の場所で戦闘中のなのはやフェイト、ユーノにアルフにも届いていた。

 

 

「悟空くん……!?」

 

「これは……!」

 

「これ……まさか悟空さんが!?」

 

「なんだい、この迫力は……!」

 

 

 誰もがその力に驚愕する中でベジータだけは笑っていた。

 寧ろワクワクしたような顔で悟空がそれを終えるのを待っている。

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 悟空の体が、勢いよく吹き出すオーラが真紅に染まる。

 これこそが界王拳。

 悟空がかつて界王様から伝授された技の一つであり自身の気や戦闘力を何倍にも膨れ上がらせる事が出来る技である。

 すると悟空はゆっくりとベジータを見て笑った。

 

 

「待たせたな……界王拳十倍、準備完了だ」

 

「そうだ、そいつとやりたかった……さぁ来い!!」

 

「そんじゃ……行くぞ!」

 

 

 悟空はそう言うと足に力を込める。

 そしてその力を一気に解き放つ!

 地面は砕け気が付けばベジータの目の前に拳を握った悟空がいた。

 

 

「!!」

 

「だりゃあっ!!」

 

「うおおっ!?」

 

 

 悟空の拳がベジータの横っ面に叩き込まれ、その体を遠くへと吹き飛ばす。

 さらに悟空は凄まじい速度で移動し飛んでいったベジータに追いすがる。

 

 

「はあああああ……だあっ!!」

 

「ぐおあっ!!」

 

 

 さらに叩き込まれた重たい拳はベジータを遥か上空にまでふっ飛ばした。

 そこへ悟空は右手に大量の気を溜め込み、気弾を放つ。

 気弾は真っすぐベジータの方へと飛んでいき直撃、爆発を起こした。

 だが悟空の目つきはまるで緩まない。

 分かっているのだ、今の相手は、ベジータはこの程度では倒れないと。

 実際爆発の煙の中から出て来たのは傷は負ってるものの、まだまだ平気そうな顔をしたベジータだった。

 

 

「やるな、そうでなくては面白くない……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう言うと体にありったけの力を込める。

 奥底に溜め込んでいた気を一気に開放する。

 ベジータの体から吹き出すオーラが膨れ上がっていく。

 と同時に悟空が界王拳を使った時にも負けない程の圧が周囲を襲った。

 悟空はそれに驚きつつも嬉しそうに笑う。

 

 

「やっぱおめえはすげえよ……ベジータ、オラますますワクワクしてきたぞ!」

 

「本当の勝負はここからだ……カカロット!」

 

 

 そう互いに告げた瞬間、二人の姿は消えていた。

 それから数秒もしないうちに空中では何かがぶつかり合う音と共に白い空気の球が発生しては消えていく。

 言わずもがな、この現象を発生させているのは悟空とベジータだった。

 二人は目にも止まらぬスピードで縦横無尽に飛び回り幾度となくその拳と蹴りをぶつけあっていたのである。

 互いに何度もぶつかり合い、時に吹き飛ばし、時に吹き飛ばされ、それを繰り返し最後に全速力で相手に突撃する。

 

 

「だああああありゃあああああっ!!」

 

「でやあああああっ!!」

 

 

 ギリギリまで接近する二人。

 ほぼ同時に拳を繰り出し、拳と拳をぶつけ合う。

 どちらも押されも引きもしない力と力の勝負。

 だが、やがて行き場を失った力は爆発を起こす。

 煙から飛び出し再び接近する双方。

 

 

「りゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだっだあああああっ!!」

 

 

 今度はラッシュによる手数の勝負。

 互いに攻撃を撃ち込み、防ぎ、躱し、ここでも互角の戦いが展開される。

 純粋なパワーだけなら界王拳を使用している悟空の方が上なのだろう、ベジータはその差を天性の勘や動きの見極め、何よりも技術でカバーしていた。

 悟空は思う。

 

 

(やっぱりすげえや……よっぽど厳しい修行をしてきたんだろうな、ベジータの奴……この戦いを続けるたびにオラも強くなってる感じがすっぞ……でもよ)

 

 

 同じくベジータも思う。

 

 

(やはりな、少々癪ではあるが貴様という存在が俺をさらに強くする! この戦い、一分一秒の間に強さが磨かれていく実感がある……だが!)

 

 

 二人は笑う。

 そして堂々と宣言してみせた。

 

 

「「勝つのは……」」

 

「オラだ!」

 

「このベジータ様だ!」

 

 

 二人は一旦距離を取る。

 このままでは埒が明かない。

 ならば自分の最大の最高の一撃をもって決める他ない。

 悟空の両手の間には青白い光が集まる、対しベジータの体全体からは紫の光が吹き出す。

 

 

「かぁー……めぇー……はぁー……めぇー……」

 

「……だあああああっ!!」

 

 

 互いにありったけの力を込める。

 この一撃で決着が着く。

 いや、着けてみせると決意を胸に溜め込んだありったけの気を――放つ!

 

 

「波あああああーっ!!」

 

「ギャリック砲!!」

 

 

 放たれた青白い気功波――かめはめ波。

 そして紫の気功波――ギャリック砲。

 両方とも悟空とベジータの代表的な技の一つである。

 初めてベジータが地球に来たあの日の再現のように、再度この二つの技が地球上でぶつかり合った。

 

 

「ぎぎ……ぎ……!」

 

「ぐぐっ、ぐ……!」

 

 

 木々が揺れる。

 大地が砕ける。

 大気が振動する。

 二人は血管を浮かび上がらせるほどに力を込め、どうにか相手の気功波を押そうとするがビクともしない。

 

 

「こうなったらしょうがねえ……界王拳の出力を二十倍に上げるしかねえ!!」

 

 

 悟空がそう言うと一気にかめはめ波の勢いが増す。

 界王拳はその出力を上げる事により、より高い戦闘力を引き出す事が出来る。

 だが大いなる力にはリスクが付き物だ。

 当然肉体にかかる負荷もあがるのだが……今はそんな事を気にしてる場合ではなかった。

 巨大化したかめはめ波はそのまま爆発的な威力をもってギャリック砲を押していく。

 

 

「ぐ……っ、まだだ、まだ負けんぞおおおおおっ!!」

 

 

 だがベジータも負けてはいなかった。

 ありったけの気を込めていたにも関わらず、さらにギャリック砲の威力を上げたのである。

 それは完全に火事場の馬鹿力だった。

 要は追い詰められた事で己の今の限界を超えたのである。

 ギャリック砲が一気に押し返していく。

 そして再び二人の中心で気功波は競り合い始めた。

 

 

「これでも……決まらねえのか……!」

 

「当然だ……! 俺様に同じような手が通用するとでも思っていたのか!」

 

 

 二人の力は再度拮抗する。

 どれだけの間力を込めただろうか。

 ぶつかり合いを続けた二つの気に限界が訪れようとしていた。

 スパークが走り、限界を超えたように膨張する巨大な気の球。

 そして――その時は訪れた。

 

 

「「!!」」

 

 

 二人の気がぶつかりあっていた、その中心地点が大爆発を起こしたのである。

 

 

「うわあああああっ!!」

 

「ぐあああああっ!!」

 

 

 当然近くにいた悟空とベジータもその爆発に巻き込まれ爆炎の中へと消えていく。

 先ほどまでうるさいくらいに騒がしかったその場は静寂に包まれた。

 落下していく二人。

 そんな二人のもとに近づく影があった。

 

 

「悟空くん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 なのはとフェイトだった。

 なのはは悟空を、フェイトはベジータを抱き抱え一旦距離を取る。

 そんな中で悟空はゆっくりと目を開けた。

 

 

「う……なのは?」

 

「悟空くん! 大丈夫!?」

 

「へへ……ちょっと頑張りすぎちまった、悪りい……」

 

「ううん……私の方こそごめん……ジュエルシード取られちゃった」

 

 

 そう、悟空とベジータの戦いの裏でなのはとフェイトの戦いも行われていた。

 結果は――フェイトの勝利。

 ジュエルシードは一個、なのはからフェイトの手に渡ってしまった。

 一方でベジータも目を開ける。

 

 

「ぐ……」

 

「ベジータ……大丈夫!?」

 

「……この程度問題はない……貴様の方はどうだったんだ」

 

「うん、一個取ったよ」

 

「そうか……」

 

「ベジータやアルフのおかげだよ、とりあえず今日のところはもう撤退しよう? アルフ!」

 

「あいよ!」

 

 

 フェイトの呼び声に応じてアルフも戦闘を止めてフェイトの側まで飛んでくる。

 そして三人は背を向けて去ろうとしたところに、なのはから待ったがかかる。

 

 

「あ、待って! あの、名前……!」

 

 

 せめてそれだけでも聞かせてほしい。

 どうしてそう思ったのかはなのは自身も分からなかったが、とにかく聞いておきたかった。

 フェイトは少しだけ悩んだ後に口を開き告げる。

 

 

「フェイト・テスタロッサ」

 

「あ……私は――」

 

 

 名乗ってもらえた以上は自分も名乗り返そう、そうした考えのもと喋ろうとした次の瞬間には既に三人の姿は視界から消えていた。

 その場に残ったのはなのはとユーノ、そして悟空だけ。

 

 

「……行っちまったか」

 

「うん……」

 

 

 脳裏を過ぎるは寂しそうなフェイトのあの眼。

 ただ今はボロボロの悟空をどうにかするのが先決だと思ったので気持ちを少しだけ切り替えるなのはだった。




 オッス! オラ、悟空!

 なのは、おめえまた元気がねえぞ。一体どうした? 

 そうか、アリサと喧嘩しちまったんか……でも何とかなるさ、だからそんな顔すんなって!

 そしてその頃ベジータ達はまたも動き出そうとしていた!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「どうすればいい? なのはの悩み」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十七 どうすればいい? なのはの悩み

 お気に入り登録してくれた人達に感想をくれた人達、評価をいれてくださったフォンバックさん、ありがとうございます!

 前回が戦闘回だったので今回は息抜き回……?

 というわけで其之十七をどうぞ!


 温泉旅行は無事? に終了した。

 悟空とベジータの戦いの影響で旅館の敷地内の一か所が破壊しつくされていたという事件こそありはしたし悟空の服がボロボロになったという小さな事件もありはしたが、とにかく無事に終わったのである。

 英気を養った一同はまた再び忙しい日常へと帰っていく。

 それから数日後――。

 

 

 

「ただいま……」

 

「お、オッス! なのは、帰ったんか」

 

「あ、悟空くん……」

 

「……どした? 何か元気ねえみてえだけど」

 

 

 悟空が気になったのはなのはの様子だった。

 帰宅して早々に暗いオーラを纏ってるというかあからさまに落ち込んでいるのが見て取れたのだ。

 なのはは少し悩みながらも言う。

 

 

「……聞いてもらってもいいかな?」

 

「おう、いいぞ! 何か悩んでる時は話しちまうのが一番だ」

 

「……ふふっ、ありがとう。実はね――」

 

 

 なのはは語る。

 なんでも今日学校でアリサと喧嘩してしまったのだと言う。

 原因はここ数日――正確に言えばあの温泉旅行からずっとなのはが心ここにあらずな状態だったからだった。

 なのはからすれば、この胸の内に燻る悩みは魔法も関係している事からアリサやすずかがどんなに大切な友達だとしても言うわけにはいかず、アリサからすれば大切な友達であるなのはの力になれないという事実が何とも苛立たしく思えてしまう。

 そんな事もあり互いに相手を大切に思ってるのは間違いないのに喧嘩になってしまったのである。

 と言ってもアリサが怒り、なのはがただ謝るだけという形の喧嘩だったが。

 

 

「そうか、アリサと喧嘩しちまったんか」

 

「うん……悪いのは私なんだけどね……仲直り、出来るかな」

 

 

 なのはは俯きながら小さい声で呟く。

 そんななのはに対し悟空は――笑顔を見せた。

 

 

「そんな顔すんな、大ぇ丈夫だって!」

 

「え……? でも……」

 

「おめえ達は友達なんだろ? 友達ちゅうんはそう簡単には離れらんねえもんだとオラは思うぞ?」

 

「悟空くん……」

 

「だからよ? あまり気にすんなって、きっと仲直りは出来っさ!」

 

「うん……ありがとう」

 

 

 気持ちが幾分か軽くなったような気がした。

 悟空の笑顔を見ていると、言葉を聞いていると心が温かくなっていくのが感じられる。

 不思議な感覚だった、だが悪い気はまるでしなかった。

 そんななのはを余所に悟空は問いかける。

 

 

「けどよ、何でボーッとしてたんだ? 考え事か?」

 

「それは……」

 

 

 なのはの脳裏に浮かぶのはフェイト、ベジータ、アルフの姿。

 そしてフェイトのあの寂しそうな眼だった。

 

 

「……気になるの、フェイトちゃん達の事が」

 

「気になる?」

 

「うん、だって寂しそうな眼をしてたから……フェイトちゃん、ベジータくんもどこか寂し気に見えたけど」

 

「ベジータも? オラ戦いに夢中だったから全然気づかなかったぞぉ」

 

「にゃはは……悟空くんらしいかも」

 

 

 なのはは苦笑いを浮かべる。

 一緒に過ごした時間はそんなに長くはないが悟空という人間がなのはも何となく分かって来ていた。

 と、ここで悟空は言う。

 

 

「まぁ気になるってんならしょうがねえな、ここは戦うか話すかしてみるしかねえ」

 

「やっぱりその二択だよね……」

 

「なのはは嫌なんか? 戦うの」

 

「……あまり積極的にやろうとは思えないかな」

 

「オラでも少し気持ちは分かっけどな、あのフェイトってやつもアルフってやつも悪い奴じゃねえってのはオラには分かる……けどある程度覚悟は決めとく必要はあると思うぞ? 向こうが話し合いに応じなきゃ選択肢は一つになっちまうんだからさ」

 

「うん……分かってる」

 

「そっか、ならこれ以上は何も言う事はねえや。おやつでも食うか! 桃子が鯛焼きを置いてってくれたからさ」

 

「……うん!」

 

 

 こうして二人はリビングへと移動するのだった。

 

 

「そういえばユーノくんは?」

 

「ユーノならジュエルシード探しにいったぞ? 最近はますます張り切ってんな、あいつ」

 

「えぇ!? 一人で大丈夫かな……」

 

「大ぇ丈夫さ、危なくなったらオラ達を呼ぶように言ってあるしな」

 

「そうなんだ、でも少し心配だから……食べ終わったら私達も探しにいかない?」

 

「そうだなぁ、オラは別にいいぞ?」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方その頃、フェイト達は拠点にいた。

 

 

「ベジータ……怪我の方は大丈夫?」

 

「……貴様、何度同じ質問をするつもりだ?」

 

「ご、ごめんね。でもどうしても心配で……」

 

「……フン、何度でも言うがこの程度の傷どうという事はない。俺はいつでも戦える……戦闘民族サイヤ人の王子である俺様をなめるなよ」

 

「そっか、良かった……でも、もし辛かったりしたら言ってね?」

 

「だから大丈夫だと……まあいい、飯の用意が出来たぞ」

 

「待ってました! 肉、肉、肉!!」

 

「ええい、アルフ、貴様! いつも二言目には肉、肉、肉と! 野菜も食え!」

 

「アタシは狼だから肉を食う! 野菜はベジータが食べなよ、野菜人なんだし」

 

「サイヤ人だ! ぶっ飛ばされたいか、貴様!!」

 

 

 騒がしい食事の時間。

 実のところ、こんな時間がフェイトは好きだった。

 そして思う。

 いつか母ともこんな風に賑やかな食卓を囲めたらな、なんて事を。

 フェイトは料理を口にする。

 こう言うのもアレだがベジータは意外と料理が上手い、と言っても凝った料理は作れず簡単な料理のみではあるが。

 本人曰く昔は卵すら満足に割れなかったらしいが修行の息抜きがてら練習した過去があったらしい。

 あのベジータの意外な一面にフェイトが思わず笑ってしまいそうになったのは誰も責められまい。

 そして、そもそも何故ベジータが料理を作ってるのかと言えばそうでもしないとフェイトが食事を摂らないからである。

 フェイトはどこか気を張りすぎている節がある、故に放っておくと殆ど食事もせずにジュエルシードを探しにいってしまうのだ。

 それを見過ごすベジータではなかった、という事だ。

 

 

(とことん甘くなったものだ……)

 

 

 思わず頭を抱えそうになるほどの自分の変化。

 過去の自分が見れば発狂するんじゃないだろうか、なんて思いながらベジータも食事を開始する。

 

 

(うむ、悪くない出来だ)

 

 

 なんて事を思いつつ食べ進めるベジータ。

 昔、ウイスに弟子入りする時に手料理を振る舞おうとした時は我ながら醜態を晒したものだが――今ならば自らの手料理だけで十分弟子入りを認めてもらえる、とまで考えて。

 

 

(いや、あの天使は割と舌が肥えてるだろうからな……この程度では満足しそうにない)

 

 

 結果、そういう結論に至る。

 結局のところベジータの料理は一般的な家庭料理の域を出ないのだ。

 これならばカップ麺の方が美味いかもしれないとも思うが、フェイトを見て思う。

 

 

(ガキはしっかり栄養を取らんといかんからな……カップ麺は確かに美味いが栄養バランスが偏りすぎる)

 

 

 変なところで常識的なベジータだった。

 まぁそのおかげもあってか地球に来てからのフェイトの体調はすこぶるいいわけだが。

 そしてベジータは知らない、ベジータが丹精込めて作った料理をフェイトが気に入ってる事を。

 フェイトにとってはカップ麺なんかよりもベジータの作ってる料理の方が何倍も美味しく感じられるのだ。

 そうこうしているうちに全員が食事を食べ終わる。

 

 

「皿を寄越せ、洗ってやる」

 

「あ、手伝うよ。ベジータ」

 

「フン……好きにしろ」

 

 

 そう言葉を交わし二人は台所に皿を持っていく。

 そしてベジータが皿を洗い、フェイトが拭くという役割分担を自然に行っていた。

 そんな中。フェイトは尋ねる。

 

 

「ねぇベジータ……」

 

「なんだ」

 

「どうして……ここまでしてくれるの? あっ、勿論嬉しいんだよ? だけど……ここまでする義理はベジータにはないのに」

 

「……さぁな、俺にも分からん」

 

 

 本当の事は言わないでおいた。

 あまりにもフェイトの眼が寂しそうで放っておけなかったからなんて、とてもじゃないが言えなかったのである。

 フェイトにはベジータの真意は分からなかった、だが彼が善意で協力してくれていると言うのは何となく理解出来た、だからこの言葉を贈る。

 

 

「……ありがとう、本当に感謝してるんだよ? ベジータ」

 

「フン、気が早いぞ。まだジュエルシードはまるで集まっていないんだからな」

 

「ふふっ、そうだね。でも――ううん、何でもない」

 

 

 この時間がずっと続けばいいのに、とは思っても言わないでおいた。

 それを言葉に出したらお終いな気がしたからだ。

 今はとにかくジュエルシードを集める事を第一に考えなくてはならないと自分を戒める。

 全ては母のために。

 

 

「……この後、ジュエルシード探しに行くんだけど……ベジータはどうする?」

 

「当たり前の事を聞くな、俺も行く。カカロットも必ず来るだろうからな」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 なのはと悟空は街中に出ていた。

 ジュエルシードを探すためである。

 だが一向に見つかる事なく時間だけが過ぎ、空は暗くなってきている。

 

 

「うーん……一回帰った方がいいかな?」

 

「だな。あんまり遅えと士郎達が心配すっぞ」

 

 

 そんな会話をして一旦帰る事に決めた二人。

 なのはは念話でユーノに連絡を取ろうとする、その時だった。

 

 

「「!!」」

 

(なのは、悟空さん!)

 

 

 二人がジュエルシードの気配を察知したのとユーノから念話が入ったのはほぼ同時だった。

 悟空は急いでなのはに手を差し出す。

 

 

「なのは! オラに掴まれ!!」

 

「うん!」

 

 

 なのははその手を強く握る。

 と同時に悟空は指を額に当てて気を探る。

 ここは一旦ユーノのところに飛ぶべきだろう、そう考えた悟空はユーノの気を探り――数秒で見つけ出す。

 そして次の瞬間、二人の姿はその場から消えていた。

 

 

 

 フェイトがジュエルシードを見つけ、バルディッシュに備えられた砲口をジュエルシードに向ける。

 それとほぼ同時に桜色の光が視界の隅に映った。

 フェイトは急いで魔力をチャージ、金色の光と雷が砲口に溜まっていく。

 

 

「リリカルマジカル!」

 

「ジュエルシード……!」

 

「「封印!!」」

 

 

 その叫びと共に放たれた二つの光。

 それはジュエルシードを中心にぶつかり合うのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 再び対峙するオラ達とベジータ達。 

 さぁ勝負だ、ベジータ! 今度はオラが勝たせてもらうぞ!

 ……ん? 何か嫌な感じがすんぞ? なんだこの感じ……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「地球の危機!? 暴走、ジュエルシード!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十八 地球の危機!? 暴走、ジュエルシード!

 お気に入り登録してくださった方々、感想をくださった方々、評価を入れてくださった(oゝД・)b!さん、ありがとうございます!

 皆さまの応援のおかげもあり総合評価1000pt超えを達成する事が出来ました!

 まだまだ未熟な作者と作品ではありますが今後ともお付き合いいただけると幸いです。

 それでは其之十八をどうぞ!


 ふよふよと宙を浮かぶジュエルシード。

 そのジュエルシードを挟んで二つの勢力が再び対峙していた。

 空中にいるのがベジータ、フェイト、アルフ。

 地上にいるのが悟空、なのは、ユーノ。

 両陣営は無言で暫くの間見つめ合う。

 そして、最初に動き出したのは――ユーノだった。

 

 

「なのは、悟空さん! ジュエルシードの確保を!」

 

「そうはさせるかい!!」

 

 

 対し仕掛けるのはアルフ。

 アルフの爪がなのは目掛けて振り下ろされる。

 だが黙ってそれを見過ごすほどユーノは甘くない。

 

 

「させない!」

 

「チィッ!!」

 

 

 魔力による防御壁。

 それはアルフの爪とぶつかり合い、弾け飛ぶ。

 その間もなのはの眼はフェイトに向いていた。

 見下ろすフェイトと見上げるなのは。

 なのはは勇気を出して一歩を踏み出す。

 

 

「この前は自己紹介出来なかったけど私の名前は高町 なのは。私立聖祥大付属小学校に通う小学三年生」

 

「……」

 

(アリサちゃんやすずかちゃんとだって最初は分かりあえていなかった、そして今日アリサちゃんと喧嘩しちゃったのは私の気持ちを伝えられなかったせい……だったらきっと……!)

 

 

 フェイトとだって分かりあえる、なのははそう信じた。

 伝えれば、伝わればきっと心は繋がると。

 そんななのはの足からは光の翼が生え、その体は宙に浮かんだ。

 フライアーフィン、悟空の舞空術を見て、フェイトとの戦闘を経てなのはが得た飛行魔法である。

 そんななのはに対しフェイトはバルディッシュを鎌に変え襲い掛かる。

 

 

「「っ!!」」

 

 

 ぶつかり合うレイジングハートとバルディッシュ。

 さらにフェイトは自慢のスピードを活かしなのはを翻弄しようとする――だが。

 

 

「!!」

 

 

 フェイトは眼を見開いた。

 なのはの姿が消えたのである。

 と同時に背後に感じる気配。

 フェイトは高速移動魔法ブリッツアクションを使用し即座にその場から離れ背後からの攻撃を回避、と同時に方向転換し案の定背後にいたなのはに斬りかかる。

 だがなのはの姿はまた消えた、これは姿を消しているのではない。高速移動の類だと言うのは分かったのでフェイトもまた同じく高速移動で追いかける。

 目にも止まらぬ速度でぶつかり合う二人。

 これがなのはが手に入れたもう一つの力、その名もフラッシュムーブ。

 フライアーフィンに魔力を込める事によって高速移動を実現する、フェイトのブリッツアクション対策に編み出した魔法だ。

 そんな二人の戦いを見つめるものが二人、悟空とベジータである。

 

 

「ほう……カカロット、貴様の連れであるあの娘……中々の成長スピードだな。フェイトとあそこまで張り合えるとは」

 

「へへっ、だろ? なのはの奴頑張ってたかんなぁ」

 

 

 悟空の脳裏を過ぎるのは魔法の修行をするなのはの姿だった。

 色んなものを試し、色んなものからヒントを得て魔法を編み出していくなのはの成長スピードは尋常ではなかった。

 

 

「フン、なるほど。奴もまた天才の類というわけか」

 

「まぁなのは本人はあんまり戦いは好きじゃねえみてえだけどな」

 

「才はあっても性格が戦いを拒む、悟飯を思い出すな……まぁいい、そろそろ俺達も始めるか」

 

「あぁ……今度はオラが勝つ!」

 

「抜かせ! 勝つのはこのベジータ様だ!!」

 

 

 そう言うと二人は構える。

 そして話ながらも溜め込んでいた気を一気に放出した。

 

 

「「はあああああっ!!」」

 

「界王……拳!!」

 

「だあああああっ!!」

 

 

 二人の気は爆発的に膨れ上がる。

 先日あれだけの戦いをしたのにも関わらず疲労の色は見えない。

 いや、寧ろ二人とも先日よりも強くなっていた。

 磨けば磨くほど強くなるサイヤ人の肉体と天性の才能。

 忘れてはならない、この二人もまた戦いの天才だったのだ。

 

 

「でりゃあああああっ!!」

 

「であああああっ!!」

 

 

 二人同時に突撃し拳を打ち付ける。

 とそこからすぐに二人の姿が消える。

 こちらもまた高速で移動し、ぶつかり合いを始める。

 殴っては殴られて、蹴っては蹴られて、吹き飛ばしては吹き飛ばされて――互角の戦いが続く。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「チッ……はぁっ!!」

 

 

 悟空の放つラッシュをベジータは受け流しカウンターを叩き込む。

 だがその攻撃は、悟空の体をすり抜けた。

 

 

「残像拳か!」

 

「そうだ! だりゃあっ!!」

 

「うおぉっ!?」

 

 

 背後から飛んできた一撃を避けきれずベジータは地面の方へと吹き飛ばされる。

 さらに悟空は真紅のオーラを吹き出しながら突撃、一気に追撃をしようという作戦だった。

 しかしベジータとてやられっぱなしでいるほど甘い男ではない。

 そっと悟られないように手の平に気を溜め悟空をギリギリまで引き付け――気功波を放った。

 

 

「!! うあああああっ!!」

 

 

 悟空は気功波に飲まれそのまま光と共に遠くへと吹き飛んでいく。

 が、何とか自力でその気功波から脱出。

 開いてしまった距離を詰めようとするのだが。

 

 

「だだだだだっ、だあああああっ!!」

 

「いっ!?」

 

 

 次に襲ってきたのはベジータの気弾の連射だった。

 悟空は高速で移動しながらその気弾の嵐を回避する。

 そしてその最中に悟空は額に指を当て、その場から消える。

 これは高速移動ではない、瞬間移動だ。

 悟空が瞬間移動した先、それは――ベジータの背後だった。

 

 

「後ろだっ!!」

 

「フン!!」

 

「がっ!?」

 

 

 だが背後からの攻撃はベジータの裏拳によって寧ろ反撃されてしまう。

 悟空はまともに攻撃を受けた顔面を押さえながら言う。

 

 

「いちち……読まれてたか」

 

「当然だ、貴様の対策を怠る俺様だとでも思ったか。瞬間移動など俺には通じん!」

 

「こりゃまたこれしかねえかな……!」

 

「フン、撃ちあいか……望むところだ。先日のようにはいかんぞ!!」

 

 

 悟空とベジータはそれぞれ独特の構えをとる。

 それは先日と同じ、気による砲撃を行うという合図だった。

 

 

「か、め、は、め……」

 

「ギャリック……」

 

「「!?」」

 

 

 だが二人の動きは途中で止まる。

 理由は単純。

 嫌な感じを二人の研ぎ澄まされた感覚が感知したからだった。

 

 

「おい、ベジータ……」

 

「貴様に言われなくても分かっている!」

 

 

 これは何だ? 二人がそう考えて真っ先に思い浮かぶのはジュエルシードだった。

 この嫌な感じはジュエルシードが怪物を生み出した時に感じる気と似ている。

 だがこの付近にあるジュエルシードは封印済みの一つのみのはずだ。

 他にあるのだったらなのはやフェイトも気づいているはずだが、この違和感を感じているのはどうやら悟空とベジータのみのようだった。

 ならば何故……?

 そんな二人を余所になのはとフェイトの戦いは続いていた。

 高速でぶつかり合いを続ける二人。

 その実力はほぼ互角、いや接近戦をしている時点でややフェイトに分があるだろう。

 だからなのははもう一つの新魔法を使う。

 

 

「ディバインシューター! シュートッ!!」

 

「!!」

 

 

 現れたのは桜色の魔力弾。

 ディバインシューター、ディバインスフィアと呼ばれる発射台を生成しそこから魔力弾を放つという魔法だ。

 弾速こそやや遅いが発射速度は早く、連射も可能という優れた魔法である。

 フェイトはその桜色の魔力弾達を回避しながらこちらも一つの魔法で対処する。

 

 

「フォトンランサー……ファイア!!」

 

 

 フェイトが使用した魔法はフォトンランサー。

 ディバインシューターと同じくフォトンスフィアという発射台から槍のような魔力弾を放つ魔法だった。

 桜色の魔力弾と金色の魔力弾がぶつかり合い相殺される。

 その爆発の中をなのははフラッシュムーブを使い潜り抜け、フェイトに向かって突撃する。

 

 

「くっ……」

 

 

 再び交差するレイジングハートとバルディッシュ。

 ギリギリと音を立てながら力と力は拮抗する。

 そんな中、なのはが口を開いた。

 

 

「フェイトちゃん、フェイトちゃんは言葉だけじゃなにも変わらないって言ってたけど……話さないと、言葉にしないと伝わらないこともきっとあるよ!」

 

「……っ」

 

「私がジュエルシードを集めるのはこの街に、大切な人達に危害が及ぶのが嫌だから! ……教えて? フェイトちゃんはどうしてジュエルシードを集めているの?」

 

「……わ、私は……」

 

 

 思わずフェイトが喋りそうになったその時だった。

 横から飛んできた声がフェイトの言葉を断つ。

 

 

「言わなくていい、フェイト!」

 

「アルフ……!?」

 

「アタシ達の最優先目標はジュエルシードの確保! 今はそれだけを考えるんだ! フェイトの望みを叶えるためにも!」

 

「……!」

 

「あっ……!?」

 

 

 フェイトはアルフの言葉を受けて口を閉じ、真っすぐ宙に浮かんだままのジュエルシードへと向かっていく。

 一方なのはもそれに気づき全速力でフェイトを追いかけた。

 二人は全速力でジュエルシードとの距離を詰め、杖を突き出そうとする。

 ちょうどその時だった。

 

 

「「……そうか!」」

 

 

 悟空とベジータは感じていた違和感の正体に気づいた。

 そして急いでジュエルシードのある方向に眼をやればそこには全速力でジュエルシードに向かうなのはとフェイトの姿が。

 

 

「やべえ! なのは、止まれ!!」

 

「フェイト、止せ!! そいつは……!」

 

「「え……?」」

 

 

 瞬間移動を使う暇もなかった。

 悟空とベジータの叫びに戸惑いの声をあげるなのはとフェイトだったが、少し遅かった。

 レイジングハートとバルディッシュがジュエルシードを中心にして交差する。

 瞬間、双方の杖にはヒビが入り――世界が揺れ、暴風が吹き荒れた。

 

 

「きゃあああああっ!?」

 

「くぅっ……うああっ!?」

 

 

 吹き飛ばされていくなのはとフェイト。

 

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

 

 だが即座に悟空とベジータが二人をそれぞれ抱きかかえて何とか事なきを得た。

 二人はそっと目を開ける。

 するとそこには安心出来る、大切な存在の顔があった。

 

 

「悟空くん……」

 

「大ぇ丈夫か? なのは」

 

「う、うん……ありがとう」

 

「ベジータ……」

 

「大丈夫そうだな、もう自分で空中制御できるだろう、手を放すぞ」

 

「うん。ごめんね……ありがとう」

 

 

 それぞれがそんな会話を交わしてるところにユーノとアルフも飛んでくる。

 

 

「なのは、大丈夫!?」

 

「フェイト、無事かい!?」

 

 

 そんな言葉に二人はそれぞれ大丈夫と告げる。

 だが悟空とベジータは厳しい目つきでジュエルシードを睨んでいた。

 あれはまずい、それは二人の共通の見解だ。

 予想外のところから来たとんでもない危機に悟空とベジータは対策を考えるのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 こいつはやべえな……どうしたらいいんかな。 

 っておい、ベジータ!? おめえ何するつもりだ!

 戻って来い! 流石のおめえでもそれは無傷じゃすまねえぞ!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「奴は気に食わん! ベジータの中で燃え盛る静かな怒り!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之十九 奴は気に食わん! ベジータの中で燃え盛る静かな怒り!!

 お気に入り登録、ならびに感想をくださった皆さんありがとうございます!

 現在、自分の活動報告にて本作の次回予告に関するアンケートを執り行っております。

 よろしければご参加、およびご協力をお願い致します。

 それでは其之十九をどうぞ!


 大気が揺れる、大地が、空が悲鳴を上げる。

 世界そのものが崩壊するかのような錯覚をその場にいた者達は抱いていた。

 それほどに果てしない災害だった。

 このままではシャレにならない事態に発展するのは目に見えていた。

 突然降って湧いた地球――いや世界の危機に悟空とベジータは考える。

 どうすればあれを抑えられるだろうか、と。

 そしていち早く決断し動いたのは――ベジータだった。

 

 

「アルフ」

 

「な、なんだい?」

 

「フェイトを頼む、今は貴様が守れ」

 

「ベジータ……? 一体何を……」

 

「アレを止めてくる、それだけだ」

 

 

 ベジータはそう言うと白いオーラを体から吹き出させジュエルシードに突撃する。

 それを見た誰もが目を丸くした。

 

 

「ベ、ベジータ! 駄目!! ベジータァッ!!」

 

「フェイト! 動いちゃ駄目だよ!」

 

 

 フェイトの必死の静止も最早ベジータには届かない。

 そしてベジータを止める者がもう一人、悟空だ。

 

 

「ベジータ! いくらおめえでもアレは無傷じゃすまねえぞ! 戻って来い!」

 

「フン、貴様の指図など受けるか……」

 

 

 ベジータはそう言って自嘲気味に笑った。

 確かにとんでもない量の気だ。

 悟空のかめはめ波やベジータのギャリック砲と同じくらい、もしくはそれ以上の迫力を感じる。

 だがだからと言ってベジータは止まらない。

 ベジータはプライドと守りたいもののために戦う男だ、そしてその守りたいものとはこの地球でありフェイトやアルフだ。

 この地球はベジータが過ごした地球とは別の地球だ、思い入れは殆どないしフェイトやアルフとの付き合いもそんなに長くはない。

 それでも守りたいと思ってしまうようになった辺り自分は大分毒されているのだろうとベジータは考える。

 やがてベジータはジュエルシードの目の前にまで辿り着いた。

 眩い光とともに暴風が吹き荒れ髪が荒々しく靡く。

 ベジータは意を決して右の拳に気を纏わせて――光の中へと突っ込む!

 

 

「ぐっ……」

 

 

 激痛が走る。

 実質片手でかめはめ波やギャリック砲並のエネルギーを受けているのだから当然だが。

 ベジータは意識を集中する。

 何とか右手がジュエルシードに触れたのを感じる。

 そのままベジータは手に纏わせた気をジュエルシードに移しジュエルシードを包み込むように気でコーティングしていく。

 魔導師ではないベジータには封印は出来ない、ならば封印に似た事をすればいい。

 要は暴走の力が外に出ないようにすればいいのだ。

 着用していた白い手袋がジュエルシードのパワーに耐えきれずに消え去る。

 手が焼け焦げるような感じを覚える。

 それでもベジータは気を抜かずにジュエルシードのコーティングを続けていく。

 

 

「くそったれめ、石ころ風情が……! このベジータ様をなめるなよ!! はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう叫びながら気を一気に放出しジュエルシードを気で包み込んだ。

 地球を壊しかねないほどの異変が治まっていく。

 

 

「はぁっ……はぁっ……!」

 

 

 ベジータは息を切らしながら自らの手のひらを見る。

 そこには何とか暴走を押さえ込めたジュエルシードが一つ。

 傷だらけの手でそれを握りしめるとベジータはゆっくりとフェイト達のもとへと戻る。

 

 

「ベ、ベジータ……」

 

「……お望みのもんだ、受け取れ」

 

 

 ベジータはぶっきらぼうにそう言いながらもフェイトにジュエルシードを投げ渡す。

 フェイトはそれを両手でギュッと握りしめると小さな声で。

 

 

「……ありがとう」

 

 

 そう呟きながら己の魔力でしっかりとした封印を施すのだった。

 ベジータはフンとそっぽを向き、悟空となのはの方へと目をやる。

 

 

「さて……俺達はこれで撤退させてもらう、追ってくるのであれば相手になってやるが……どうする?」

 

「それは……」

 

「……オラはやめとく」

 

「悟空くん!?」

 

「それはベジータが食い止めたもんだ、ならベジータ達が持ってくのが筋ってもんだとオラは思う、勿論いつかは取り返させてもらうつもりだけどよ」

 

 

 悟空の言い分はよく分かった。

 だがこのまま見過ごしていいのだろうか、そんな事をなのはとユーノが思っていると。

 

 

「行くよ、フェイト、ベジータ」

 

「……うん」

 

「あぁ」

 

 

 三人はどこかへと飛んでいってしまうのだった。

 結局なのは達はただただそれを見送るしか出来なかった。

 

 

 

 フェイト達の拠点である遠見市のマンション。

 その室内でフェイトはベジータの手に包帯を巻いていた。

 ジュエルシードを食い止める際に出来た傷の治療中である。

 

 

「……これでよし」

 

「治療などいらんと言ったはずだが」

 

「駄目だよ、傷は負ったんだからちゃんと治療はしないと……それにこれぐらいさせてほしいな、私がベジータに返せるものってこれぐらいしかないから……」

 

「……貸した覚えなどない、俺は俺の意志で動いている。別に恩に感じる必要はない」

 

「それでも、私はベジータに感謝してるし、何かを返したいと思ってるの……駄目かな?」

 

「……はぁ、勝手にしろ」

 

「うん、勝手にさせてもらうね」

 

 

 フェイトはニコッと笑い立ち上がる。

 そして、さらに告げる。

 

 

「ベジータは休んでて? 私とアルフは母さんに報告にいかなくちゃ」

 

「フェイト……」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「……うん、大丈夫だよ。だって四つも入手したんだから、怒られはしないと思う」

 

 

 そう言ってフェイトは笑う。

 その笑顔は儚げであり、フェイトの母に対し疑問を持っているベジータとアルフは一抹の不安が拭えずにいた。

 

 

「アルフ」

 

「皆まで言わなくていいよ、任せときな」

 

 

 どうやら思ってる事は同じだったようでそれだけで意思疎通が出来た。

 フェイトはその間に冷蔵庫に入れておいた菓子の箱を取り出していた。

 この日のために買っておいた母へのお土産である。

 フェイトはそれを手にアルフと共に玄関へと向かう。

 

 

「それじゃ行ってきます」

 

「行ってくるよ」

 

「……あぁ」

 

 

 二人が出ていく。

 ベジータは一旦気持ちを切り替え、この暇な時間をどうしたものかと考える。

 怪我をしてる事も考えればじっとしているべきなのだろうが生憎と生粋のサイヤ人の彼にとってはじっとしてる事など選択肢には入らない。

 

 

「しょうがない、修行でもするか」

 

 

 そう決めてベジータも戸締りをしてから部屋を出る。

 そして屋上を利用して修行を開始した。

 こちらも悟空同様に基礎を中心としたトレーニング、イメージトレーニングが中心だ。

 重力室や重りがあれば修行に活用できるのだが生憎とここにはない。

 重力室にいたってはこの世界の技術力では作れるかも疑問になるレベルだった。

 

 

「はぁっ!! だあっ!! でやあああああっ!!」

 

 

 ベジータはひたすらに掛け声を上げながら修行を続ける。

 脳裏を過ぎるのは当然悟空の姿だった。

 悟空の事だ、きっとさらなる修行を積んで再び目の前に現れるだろうとベジータは考えている。

 その時に悟空の強さを上回っている自分でありたいと、そう心から思う。

 

 

(奴だけは俺の先へは行かせん……俺はまだまだ強くなる、それは奴も同じだろうがそんな事は関係ない。勝つのはこのベジータ様だ!!)

 

 

 一心不乱に拳を、そして蹴りを放ち空を切る。

 怪我の事など忘れひたすらに修行に打ち込み己を磨く。

 そんな単調な作業だが自分が少しずつとは言え強くなっていく感覚というのは楽しいものがあった。

 ベジータはこの感じがたまらなく好きらしく、ニヤリと笑っている。

 ――どれだけやっていただろうか、気が付けば日が昇り始めていた。

 休むことなく寝る事もしないほどに夢中になっていたらしい。

 

 

(そろそろ部屋に戻るか……)

 

 

 どれだけ時間が過ぎたのかは知らないがフェイト達が帰って来てもおかしくない時間ではあるはずだ。

 その時間まで外にいて「怪我してるのになにしてるの!」なんて怒られるのも面倒だと、そう思った。

 ベジータは階段を下りて拠点となる部屋に戻る。

 そして軽く数時間ほど睡眠をとろうかと思った、その矢先。

 ガチャリとドアが開く音がした。

 

 

「帰ってきやがったか……ん?」

 

 

 ベジータはここで違和感に気づく。

 玄関にいるのは間違いなくフェイトとアルフの気だ。

 間違えるはずがない。

 だが――フェイトの気が小さすぎる。

 猛烈に嫌な予感がしてベジータはベッドから降りて玄関へと向かった、するとそこには。

 

 

「……」

 

「ベ、ベジータ……」

 

 

 ボロボロのフェイトとアルフがいた。

 それを見た瞬間ベジータはフェイトの母の顔を思い出していた、あの冷たい眼を思い出さざるを得なかった。

 額に血管を浮かび上がらせて、それでも極力冷静さを保ちながらベジータは問いかける。

 

 

「……何があった」

 

「うん、ちょっとね……怒られちゃった」

 

「フェイト……」

 

 

 フェイトは無理やり笑顔を見せる。

 その怪我も相まって痛々しい笑顔だった。

 アルフはそんなフェイトに対し何も言えなくなっている、大方私は大丈夫だからとか言われてしまったのだろう。

 そう言われてしまえばアルフもそれ以上は何も言えない。

 例えその内側に怒りを燻らせていたとしても。

 

 

「……チッ!」

 

 

 ベジータは苛立たし気に舌打ちをすると気を溜め込んだ手の平をフェイトに向ける。

 何をしようと言うのか、アルフが疑問に思っているとベジータの手の平から光が放たれフェイトを包み込んだ。

 力強い光がフェイトの傷だらけの体を包み、消えていく。

 

 

「あれ……?」

 

「俺の気を分けてやった、これで少しは楽になっただろう。だが――アルフ!」

 

「な、なんだい!?」

 

「フェイトの治療をしてやれ、流石に傷までは癒せんからな」

 

「あ、あぁ! 恩に着るよ、ベジータ」

 

「ベジータ……ありがとう」

 

「勘違いするな、俺は俺のやりたいようにやっただけだ」

 

 

 そこで会話を終えるとアルフはフェイトを抱えて部屋の奥へと消えていった。

 二人が奥へ行ったのを確認すると同時にベジータは歯を食いしばる。

 フェイトの傷だらけの姿とフェイトの母の顔が順番に脳裏をチラつく。

 

 

(これが……親が子にやる事か? くそったれめ!)

 

 

 ベジータ自身、過去には親とは思えない振る舞いをしていた時期がある。

 そんな自分を思い出してしまい、ますます腹立たしくなってきた。

 拳を握りしめる。

 怪我をしてようが関係ない、今はこの怒りを何かにぶつけるわけにはいかない。

 それを分かっているから必死に耐えるのだ。

 だがこの日、この時ベジータの中で一つの事柄が決定的なものになった。

 

 

(フェイトの母……俺は奴が……気に食わん!)

 

 

 今は敵対しない、彼女を敵に回すという事はフェイトやアルフも敵に回す事だ。

 誇りにかけてフェイトの味方であり続けると宣言した以上はこの一件が終わるまでは協力するつもりではいた。

 だが、この時からベジータの中で怒りの炎がメラメラと燃え盛っていたのだった。




 オッス! オラ、悟空!

 なのはの奴どうしたんだ? オラの修行が見てえなんてよ。 

 まぁでもレイジングハートも直ったみてえだし良かったぞぉ。

 だけどその頃、ベジータ達もまたバルディッシュを回復させてジュエルシード捜索を再開していた。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「バリアを突き破れ! 華麗なる連携プレー!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十 バリアを突き破れ! 華麗なる連携プレー!

 お気に入り登録してくださった皆さんとアンケートにお答えいただいた皆さんありがとうございます。

 引き続きアンケートは活動報告にて回答募集中です。

 それはさておき二十話目ですね。

 もう二十話、だけど一章はまだまだ続くと言う……。

 長くなりますがお付き合いいただけると幸いです、それではどうぞ。


「オラの修行をみたいだって?」

 

「うん……駄目かな?」

 

「別にオラはいいけんど……どうしたんだ? 突然そんな事言い出してよ?」

 

「にゃはは、ちょっとね……」

 

 

 なのはの突然の提案。

 それを悟空は了承した。

 というわけで二人は早朝に道場へと移動した。

 そこには恭也や美由希の姿もある。

 

 

「オッス! 恭也、美由希」

 

「おはよう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

「あぁおはよう……珍しいな、悟空はともかくなのはも一緒なんて」

 

「本当にねぇ、何かあったの?」

 

「う、ううん。何でもないよ? ただ何となく皆の練習風景を見たくなって……」

 

 

 そんななのはの異変に気付いた恭也は小声で悟空に問いかける。

 

 

「なのはの奴、何かあったのか?」

 

「んーオラにもよく分かんねえけど何か悩んでるみてえだ」

 

「そうか……」

 

「でも心配はいらねえとオラは思う。なのははああ見えて強ええ奴だからな」

 

 

 悟空はそう言って修行の準備に入る。

 恭也もまた心配な気持ちこそあったが今は練習に集中する事にした。

 そしてなのはが見つめる、その前で――悟空は動く。

 

 

「はっ! ほっ!」

 

 

 最初は軽い動きから。

 これにより少しずつ体を温めていく。

 そしてある程度体が温まってきたところでギアを上げていく。

 

 

「だりゃっ! だあっ!! ……!!」

 

 

 次の瞬間、悟空の姿がその場から消えた。

 ビュンビュンと空気を切り裂く音だけが道場内に響き渡る。

 そして暫くすると悟空が再び姿を現す。

 

 

「よし、準備運動終わったぞぉ!」

 

「……何度見ても非常識だな」

 

「本当にね……消えるくらいのスピードで移動できるって人間の域を超えてると思うんだけど」

 

 

 恭也と美由希も最初は度肝を抜かれたものだが何日も見ていると慣れてしまった。

 というか早々に慣れておかないと、一々驚いていたらキリがないと学習したのだ。

 それだけ孫悟空という存在は非常識の塊であり、他者に驚きを与える事に関しても天才的だった。

 

 

「ふぅ……だだだだだっ! でりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

 

 気が付けば悟空の顔は真剣なものに変わっておりまるで動きも何かと戦っているようなものに変わっていた。

 いつの間にかイメージトレーニングに移っていたのだ。

 悟空の目に映ってるのはかつて戦った強敵の姿。

 長い長い戦いの日々で培った戦闘経験、それをフルに活かし修行に応用していく。

 そんな悟空が思い浮かべるのはベジータの姿だった。

 

 

(あいつはきっとオラよりもずっと厳しい修行を自分に施してるはずだ……オラも負けてらんねえ!)

 

 

 ライバル、その存在の大きさを改めて感じる。

 悟空は改めて思うのだ、ベジータの存在はやっぱり大きいものだと。

 競い合うライバルがいるからこそ自分はもっともっと強くなれる、それがたまらなく嬉しくて、楽しくて、次の戦いの機会が訪れるのを内心ワクワクしながら待ち望んでいた。

 そして次の機会を待つのは悟空だけではない。

 

 

「……」

 

 

 それは無言で三人の修行風景を見ているなのはも同じだった。

 なのはの脳裏にはフェイトやベジータの姿が映る。

 やはり――気になる。

 あの二人が、特にフェイトが何であんなに寂しそうな眼をしているのか。

 だが一番気になるのはその目的。

 未だにどうしてジュエルシードを集めているのか、それを知らないのだ。

 せめてそれを知りたい、なのはは心からそう思う。

 そうすれば少しは歩み寄れるかもしれないから。

 しかしフェイトはそう易々とは喋ってくれないだろう、ならば手段は一つ。

 

 

(こういう時は戦って――私の思いを理解してもらうしかないのかな……)

 

 

 そんな事を考えていると桃子の呼び声が耳に届く。

 それは朝ごはんが出来た合図。

 確かに気が付けば時間は大分過ぎ去っていた。

 こうして早朝の修行は終わりを告げたのである。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 夕暮れ時。

 建物の屋上から街並みを見下ろす少女が一人いた。

 少女の名は、フェイト・テスタロッサ。

 フェイトは自らの相棒であるバルディッシュを見る。

 先日のジュエルシードの暴走、その時にレイジングハート共々破損してしまったが自己修復機能のおかげで今では傷一つなくなっている。

 フェイトはそんなバルディッシュを見て微笑む、すると背後に気配を感じた。

 気配は二つ、よく知ってる、安心できる気配だった。

 

 

「ベジータ、アルフ」

 

「……バルディッシュの方は完全に治ったらしいな」

 

「うん、また一緒に戦ってくれるって言ってくれてるよ」

 

「そうか……」

 

「……ベジータ?」

 

 

 何か様子がおかしい、そう思った。

 自分達が報告から帰って来てからというもの、ベジータは少し雰囲気が変わった。

 というよりも何かを抑圧しているように見える。

 

 

「何でもない、気にするな。ところで……貴様の方はどうなんだ」

 

「……うん、私は大丈夫。この程度どうって事ないよ」

 

「フェイト……」

 

 

 フェイトは笑う。

 対しアルフは心配そうだった。

 だがベジータは――。

 

 

「貴様がそう言うのなら信じよう」

 

 

 そう、淡泊に返す。

 この時ベジータは自分の内側で燃え盛る怒りの感情を抑えるのに必死だった。

 フェイトが感じた違和感はこれである。

 それでも冷静さを保とうとしていたのは、ここで怒ってもしょうがないと分かっているからだ。

 だがいつか機会が来たら――ベジータは密かに決心を固める。

 そんなベジータの考えまでは読めないフェイトは首を傾げながらも、もう一度街並みに眼を向ける。

 

 

「ジュエルシードの発動が近い……行こう、二人とも」

 

「あぁ、気を抜くなよ」

 

「分かったよ、フェイト」

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 一方でなのははと言うと、今日も一人で家路に就いていた。

 アリサとの仲直りはまだ果たせていない。

 そんななのはの前に突如として人影が現れる。

 

 

「きゃっ!?」

 

「オッス! なのは」

 

「ご、悟空くん!? ユーノくんも!」

 

 

 現れたのは悟空とユーノだった。

 突然現れた理由は単純、瞬間移動で飛んできたのである。

 びっくりしているなのはに対してユーノはある物を差し出す。

 

 

(これ、修復が終わったみたいだから持ってきたんだ。一応急ぎで、と思って)

 

「これ……レイジングハート! そっか……治ったんだ、良かった」

 

 

 なのははギュッとレイジングハートを胸の前で握りしめる。

 そしてこう言った。

 

 

「また一緒に頑張ろうね、レイジングハート……今度は気を付けるから」

 

 

 それを聞いてレイジングハートはキラリと光るのだった。

 

 

「そんじゃ帰っか……!」

 

「「!」」

 

 

 その時だ、ジュエルシードの気配を二人と一匹が感知したのは。

 悟空はなのはに向かって手を差し出す。

 

 

「なのは、ユーノ掴まれ! 瞬間移動で飛んでいくぞ!」

 

「うん!」

 

(はい!)

 

 

 なのはとユーノが悟空に掴まる。

 悟空はそれを確認すると同時に指を額に当てて気を探った。

 その後、数秒で嫌な気の出どころを発見し悟空達の姿はその場から消えた。

 

 

 

 現場に辿り着いた悟空達。

 そこには巨大な木の怪物がいた。

 そして当然と言えば当然なのだが――。

 

 

「フェイトちゃん!」

 

「ベジータ!」

 

 

 フェイト、ベジータ、アルフもそこにはいた。

 フェイトは現れた悟空やなのはには目もくれずにその砲口を怪物に向ける。

 発生させた金色の魔力球を発射体にして放つ槍のような魔力弾。

 フェイトのフォトンランサーが怪物に襲い掛かる、だが。

 

 

「!!」

 

「なんだって!?」

 

 

 アルフは驚愕した。

 フェイトの実力を一番よく分かってるアルフだからこそ驚いた。

 フェイトの放ったフォトンランサー、それがバリアのようなもので弾かれたのである。

 フォトンランサーの威力はそう低くはない、今までだって当たれば殆どの相手を一撃で倒して来たほどだ。

 それが効かない、それが衝撃だった。

 

 

「どうやらあの化け物、中々の防御力を持ってるらしいな」

 

「そうみたいだね……ねぇベジータ……」

 

「フン、貴様に言われるまでもない……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータはそう言うと気を一気に放出。

 体から多量のオーラを吹き出させ怪物目掛けて突撃した。

 一方でなのは達はと言うと。

 

 

「フェイトちゃんの攻撃が弾かれるなんて……」

 

「なのは、オラが行く」

 

「え? 悟空くん……」

 

「トドメはおめえがさすんだ、あの防御壁はオラが何とかすっからよ。じゃ頼んだぞ……界王拳!!」

 

 

 悟空の体とオーラが真紅に染まり、悟空は猛スピードで飛び出す。

 すると丁度よく同じタイミングで突っ込んできたベジータと目が合った。

 ベジータは忌々し気な口調で告げる。

 

 

「チッ、カカロット……貴様も来たか」

 

「へへっ、どうやら考える事は同じみてえだな」

 

「気に食わんが今はしょうがない……やるぞ!」

 

「あぁ!」

 

 

 そう言うと二人は怪物に拳を叩き込んだ。

 だがその拳は防御壁により防がれる。

 あの二人でも壊せないのか、その場にいる面々は驚いた。

 だが二人は諦めない。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃっ!!」

 

「だだだだだ! だあああああっ!!」

 

 

 二人は連携などまるで考えずに自分のペースでラッシュを叩き込んでいく。

 するとどうだろう。

 防御壁にはビシリとヒビが入り、そのヒビはどんどん大きくなっていった。

 

 

「今だ! やるぞ、ベジータ!!」

 

「俺に……指図をするなあああああっ!!」

 

 

 なんて会話を交わしつつ二人はほぼ同時に必殺技の構えを取る。

 かめはめ波とギャリック砲。

 その発射準備はすぐに整った。

 二人は基本息が合わないはずなのに、こういう時に限っては同じタイミングで動く。

 

 

「「はあああああーっ!!」」

 

 

 同時に放たれる二種類の気功波。

 それはただでさえヒビが入っていた防御壁に直撃。

 そのヒビをさらに大きなものとして、甲高い音とともに崩壊させた。

 こうなってしまえば後はこちらのものだ。

 

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

「「うん!」」

 

 

 既に二人は準備を終えていた。

 最初こそ驚きはしたが二人は信じていた、自分のパートナーを。

 だからこそ相手に体勢を整える暇を与える事なく砲撃を放つ事が出来る。

 

 

「ディバイン……バスター!!」

 

 

 レイジングハートから放たれる桜色の魔力砲。

 

 

「撃ち抜け轟雷……サンダースマッシャー!!」

 

 

 バルディッシュから放たれる金色の魔力砲。

 その二つは怪物に同じタイミングで直撃し消し飛ばす。

 残ったのは一つのジュエルシードだけだった。

 

 

「「「「「「……」」」」」」

 

 

 流れる沈黙。

 誰も喋ろうとはしなかった。

 奇しくも連携する事にはなったが彼らは、彼女らはまだ敵同士なのだからしょうがないのかもしれない。

 ジュエルシードが浮かぶ夕暮れの公園、そこで悟空とベジータ、なのはとフェイト、ユーノとアルフは再び相対するのであった。




 オッス! オラ、悟空!

 さぁジュエルシードをどっちが持ってくか……勝負すっか! 

 そんなオラ達の前に現れた謎の人物。

 ん? なんだ、おめえ。見た感じ中々強そうだけんど……。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「三人目の魔法使い登場!? 動き出した時空管理局!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十一 三人目の魔法使い登場!? 動き出した時空管理局!

 お気に入り登録してくださった皆さんに感想をくれた皆さん、アンケートにお答えいただいた方々ありがとうございます!

 皆さんの応援、大変励みになっております。

 それでは其之二十一、どうぞ!

 あ、アンケートはもう少し続けるつもりですので興味がある方は活動報告へ。


「……封印済みと言ってもジュエルシードに衝撃は与えちゃいけないみたいだ」

 

「うん、この間みたいになるのは嫌だもんね。レイジングハートやバルディッシュも可愛そうだし……何よりベジータくんにまた迷惑かけたくないもの」

 

「……うん、あまり迷惑はかけたくない」

 

「大事なんだね、ベジータくんの事」

 

「……っ!」

 

 

 フェイトはそう言われると少しだけ顔を赤くして俯いた。

 ある意味で痛いところを突かれた、そんな感じだった。

 一方で悟空とベジータは。

 

 

「ははっ、なんだベジータ、おめえ大事にされてんなぁ」

 

「やかましい! 誰も大事にしてくれなどと頼んだ覚えはない!」

 

「そう言うなよ、いい事じゃねえか。大切なものが増えたって事はさ」

 

「チッ……いつもいつもムカつく野郎だ……」

 

 

 ベジータはそう言うと構える。

 悟空もそれを見ると笑いながら構えを取った。

 いつでもやれる、戦いの準備は双方ともに出来ていた。

 

 

「あいつら、やる気満々だねぇ……」

 

「あの二人は戦いが好きみたいだから……でも君もやる気なんだろう?」

 

「当り前さね、アタシはフェイトの使い魔。フェイトのためならどんな戦いだってやってやる!」

 

「僕はあまり戦いたくないんだけど……そっちがやる気ならしょうがない!」

 

 

 アルフとユーノもまた戦闘態勢に入る。

 こちらも用意は万全だった。

 後は――この戦いの要とも言える二人の魔導師の動き次第。

 その雰囲気を察知したフェイトは頭をブンブン振って頭の中を整理、気持ちを切り替える。

 

 

「……今はそれよりもジュエルシードの事。私は何があってもジュエルシードは譲れない」

 

「私はフェイトちゃんとお話ししたい、それとジュエルシードを集める理由を聞かせてほしいだけなんだけど……」

 

 

 そこまで話して二人は構えを取る。

 話し合いだけではどうしようもない事を双方理解していた。

 譲れないものがある、退けない理由がある。

 なのはは決意の籠った瞳をフェイトに向ける。

 

 

「私が勝ったら……ただの甘ったれた子じゃないって証明出来たら、お話ししてくれるかな?」

 

「……」

 

 

 フェイトは何も答えなかった。

 そして双方杖を握ったその手に力を込める。

 それは戦闘準備完了の合図だった。

 夕暮れの公園で三組それぞれが戦闘態勢を取る。

 そして――最初に動いたのはなのはとフェイトだった。

 

 

「「……!」」

 

 

 二人の振るう杖がぶつかり合おうとしたその瞬間。

 

 

「……ん?」

 

「……なんだ?」

 

 

 異変にいち早く気づいたのは悟空とベジータだった。

 よくよく見るとなのはとフェイト、二人の間には謎の魔法陣が出現。

 そこから一つの影が現れ、なのはとフェイト、二人の杖を制止する。

 悟空とベジータは構えながらその影を睨む。

 新たな敵である可能性も捨てきれない、そう思ったからだ。

 だが。

 

 

「……ストップだ! ここでの戦闘は危険すぎる」

 

 

 現れた影はその姿を晒すと同時にそう叫んだ。

 影の正体は黒いバリアジャケットに身を包んだ黒髪の少年だった。

 さらに少年は続ける。

 

 

「僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ、悪いが詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

「じくうかんりきょく……しつむかん? ベジータ、知ってっか?」

 

「何故貴様の疑問に俺が答えねばならんのだ……チッ、執務官はともかく時空管理局は聞いた事がないな」

 

 

 そんな会話をしている横でクロノはさらに続ける。

 

 

「これ以上戦闘行為を続けるのならば……!」

 

 

 だがその言葉は途中で途切れる。

 原因は空から降り注いだ魔力弾だった。

 その色は――オレンジ。

 放ったのはアルフである。

 

 

「フェイト、ベジータ、撤退するよ!」

 

「なに……? 退けというのか?」

 

「事情は後で話すよ! だから今は撤退するんだ!」

 

「……くっ!」

 

「フェイト!?」

 

 

 フェイトはアルフの言葉を聞いて飛んだ。

 逃げるためではない。

 空中に浮かんでいるジュエルシードを掴もうとしているのである。

 

 

「っ! させるかっ!!」

 

「あっ、駄目!!」

 

 

 なのはの制止の声も届く事なくクロノはフェイト目掛けて数発ほど水色の魔力弾を放った。

 その魔力弾は真っすぐフェイトに向かい、そのまま直撃――。

 

 

「ふんっ!!」

 

「え……べ、ベジータ……?」

 

 

 しなかった。

 ベジータがフェイトの盾になるように移動し魔力弾を一つ残らず弾いたのだ。

 自らの魔力弾が弾かれた事で目つきが鋭くなるクロノ。

 この相手は強い、それを認識し今度は手加減抜きで行こうとする。

 そんな中ベジータはフェイトの方を見る事なく話しかける。

 

 

「なにをしてやがる、さっさとそれを持って退きやがれ」

 

「で、でもベジータ……」

 

「心配はいらん、すぐに俺も追い付く」

 

「……フェイト、ここは退こう! ベジータを信じるしかないよ!」

 

「だ、だけど! 離して、アルフ!」

 

「……ベジータ、頼んだよ」

 

 

 アルフはそれだけ言うとフェイトを無理やり抱えて飛び去った。

 クロノの持っている杖の先がそんなアルフやフェイトに向けられる、だが。

 

 

「……くっ!!」

 

「俺様を前にして余所見とはな、随分と余裕じゃないか。執務官とやら」

 

 

 それはベジータの気弾によって防がれてしまう。

 さらにベジータは構えをとる。

 

 

「さて、楽しませてくれよ? カカロットとはまた違った刺激を与えてくれる事を期待させてもらうぞ」

 

「訳の分からない事を! 君が何をしたか、分かっているのか!」

 

「さぁな! 俺は俺の誇りと信念のもとに行動しているだけだ!」

 

「くっ、こうなったら君だけでも捕縛させてもらうぞ!」

 

 

 クロノはそう言うと杖を構えベジータを睨み付けた。

 対しベジータはそれを確認すると同時にクロノ目掛けて飛び出した。

 一瞬で詰められる距離。

 そのスピードにクロノは眼を見開き、ベジータは拳を突き出す。

 だがクロノはそれをギリギリのところで杖を使い防いだ。

 

 

「ほう……? やるじゃないか、気で何となく分かっていたが貴様はフェイトよりも上の実力を持っているようだな」

 

「なんてスピードだ……! だが!!」

 

 

 クロノは即座に距離を取る。

 今の一連の流れで、そして拳を受けとめた感じからして接近戦は危険だと判断した。

 なので可能な限り中距離、もしくは遠距離で攻める作戦である。

 だがそんなのはベジータとて察している、だからこそベジータはもう一度距離を詰めようとするのだが。

 

 

「はっ!!」

 

 

 クロノは接近させないように再度水色の魔力弾を放つ。

 スティンガーレイ、高速の魔力光弾を放つクロノの魔法。

 その弾速も去る事ながら威力もそれなりに高いという優れた魔法だ。

 無数の魔力弾がベジータに嵐の如く襲い掛かる。

 しかしベジータは冷静だった。

 これっぽっちも慌ててなどいなかった。

 

 

「なっ……」

 

 

 クロノから驚きの声が上がる。

 ベジータはなんと速度を落とす事なく、最小限の動きでクロノの魔力弾を躱し接近してきたのである。

 何とか我に返ったクロノは杖を使い防御態勢に入るが、その防御を潜り抜けるように拳は迫りクロノのボディにめり込む。

 

 

「かはっ……!」

 

 

 重たい拳による衝撃が体を駆け抜ける。

 クロノの体は必然的に後ろに吹き飛ぶ。

 が、何とか体勢を整えて腹部を押さえながらベジータを睨み付けた。

 

 

(この男、強い……! 力や速さだけじゃなく確かな技術も持ち合わせている! だが……)

 

「どうした? それが貴様の限界か」

 

「いいや、既に君はこちらの術中だ」

 

「なに……!?」

 

 

 クロノは笑いベジータは驚愕する。

 それも無理もない話だ、何故なら気が付けばベジータは魔力の鎖に縛り付けられていたからだ。

 ディレイドバインド、設置型の捕縛魔法でありクロノは予めこうなる事を予想して自分の目の前にこのバインドを設置していたのである。

 ベジータは脱出しようともがくが鎖はちぎれない。

 

 

「無駄だ、そのバインドには多めに魔力を込めた……君の馬鹿力でも壊れないような強度にするために」

 

「……」

 

「勝敗は決した、さぁ話を聞かせて――!?」

 

 

 クロノが捕縛したベジータに一歩近づいた、その時だった。

 凄まじい圧を感じて足が自然と止まった。

 圧を放っているのは当然ベジータだ。

 ベジータはニヤリと笑いながら言う。

 

 

「この程度で俺様を捕まえたつもりか……? 確かに少しは驚いたぞ、貴様はやはり中々出来る奴だ。だがな……はあああああっ!!」

 

 

 ベジータの気が膨れ上がる。

 それはつまりベジータのパワーも上がるという事。

 その結果、クロノのバインドは――いとも容易く千切られ破壊された。

 クロノは思わず後ずさる。

 渾身のバインドをああもあっさり破壊されてしまったのだから当然と言えば当然かもしれない。

 そんな中でベジータは気を探知する。

 

 

(フェイトとアルフは……拠点に戻ったか、ここらが潮時だな)

 

 

 ベジータはクロノの方に目を向ける。

 そしてフッと笑みを見せた。

 

 

「ここまでだ」

 

「なに……?」

 

「逃げるのは癪だが俺はここらで撤退させてもらう、中々楽しかったぞ、執務官。さらばだ!」

 

「ま、待て!!」

 

 

 飛び去るベジータ。

 そんなベジータを追いクロノは宙に浮かぶと魔力を溜め込む。

 そのまま杖をベジータに向けて――。

 

 

「ブレイズ――」

 

「もう止めとけ」

 

「!?」

 

 

 魔力砲を放とうとした時、クロノの杖は突如現れた悟空によって掴まれていた。

 その間にベジータの姿はどんどんと小さくなり、見えなくなる。

 クロノはそれを確認すると悟空に詰め寄った。

 

 

「何故邪魔をしたんだ!」

 

「あれ以上やるとなるとベジータはおめえを殺すつもりで反撃してくる、それを見過ごすわけにはいかねえんだ」

 

 

 悟空は真剣な表情でそう語る。

 ベジータは敵と見据えれば容赦はしないタイプだ。

 それを知ってるからこそ悟空は止めたのだ、無駄な犠牲を出さないために、ベジータの手を汚させないために。

 それでもクロノは納得いってなかった。

 だがここで。

 

 

『彼の言う通りよ、クロノ。残念だけどここは見逃して正解だわ』

 

 

 突如魔法陣が浮かび上がり、緑髪の女性の顔が映し出される。

 クロノはその顔を見て驚いていた。

 

 

「か、艦長!」

 

「ん? 誰だ、おめえ」

 

『いきなりでごめんなさいね。私達時空管理局は情報を求めています、よければ貴方達には話を聞かせてほしいのだけれど』

 

「って言われてもよ……なのは、ユーノ! どうする!?」

 

「え、えぇ!? そこで私達!?」

 

「……悟空さん、なのは。時空管理局は信用できると思います、僕は話をすべきかと」

 

「ユーノがそう言うならしょうがねえな、分かった。で、何を話せばいいんだ?」

 

『あ、ちょっと待って。立ち話も何だし貴方達を私達の艦に招待するわ。クロノ、案内をお願い』

 

「……分かりました、艦長」

 

 

 クロノは了承すると緑髪の女性は「頼んだわよ」と言って消えた。

 小さくため息を吐くクロノ。

 戦闘で昂った気持ちを落ち着かせているのだろう。

 そしてある程度落ち着いたところでこう言った。

 

 

「それじゃあ君達を艦に案内する、こちらへ来てくれ」

 

 

 クロノに言われるままに悟空となのは、ユーノはクロノのもとへと移動を始めるのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 クロノに案内されるままにオラ達がやって来たのは艦の中。

 そんなオラ達を待っていたのは――。

 ……なんだぁ? なんかヘンテコな部屋だなぁ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「衝撃の連続!? アースラ艦内での話し合い!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十二 衝撃の連続!? アースラ艦内での話し合い!

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 では其之二十二をどうぞ。


 クロノに連れられるままに悟空達がやってきたのは不思議な場所だった。

 少し薄暗さのある近未来的な通路、とでも言うべきだろうか。

 そんな場所をクロノに先導されながら悟空となのは、ユーノは歩いていた。

 

 

「うう……」

 

 

 なのはは若干ビクついていた。

 無理もないかもしれない、薄暗さもあって若干不気味さも感じるからだ。

 だが悟空はと言うと。

 

 

「なんだ、なのは。そんなにビクビクしちまってよ。大ぇ丈夫だって」

 

 

 相変わらずケロッとしていた。

 彼に怖いものとかあるのだろうか、なんて疑問を持ちながらも一行は進み続ける。

 そして一つの扉を通り抜けたところでクロノが言った。

 

 

「いつまでもその恰好じゃ窮屈だろう? バリアジャケットは解除しても平気だよ」

 

「あ、はい」

 

 

 なのはもすっかり忘れていたのだろう。

 体の力をスッと抜いてバリアジャケットを解除する。

 と、ここまでは良かったのだがクロノはユーノの方にも目を向けて。

 

 

「ほら、君もだろ?」

 

「あ、そうですね。ずっとこの恰好でいたからつい……」

 

 

 ユーノがそう言うと彼の体は光に包まれる。

 そして眩い光が止んだと思えばそこには――。

 

 

「なのはにこの姿を見せるのは久しぶり……悟空さんには初めてですね」

 

 

 人型になったユーノが立っていた。

 それを見た悟空となのははと言うと。

 

 

「ひゃー、それがおめえのもう一つの姿かぁ。やっぱユーノ、おめえ器用だな」

 

「あはは……ありがとうございます」

 

「……ふぇ? いや、ちょっと待って?」

 

「「ん?」」

 

「何で二人して普通に話進めてるの? そんな能力あるって私、聞いてなかったんだけど……」

 

「って言ってもよぉ、オラは前にユーノに聞かされてたしなぁ」

 

「あれ? 僕となのはが出会った時ってこの姿じゃ……」

 

「いや、違う違う! 最初からフェレットだったよ! あれ、私だけ仲間外れ!?」

 

 

 その叫びを聞いてユーノは暫し考える。

 そして数秒ほどして。

 

 

「あー……そういえば見せてはいなかった、のかな?」

 

「うぅ……私だけ知らなかった……悟空くんもユーノくんも酷いよ」

 

「落ち込むなよ、なのは……」

 

「な、なのは。ごめんね?」

 

「……ゴホン、そろそろいいかな? 艦長を待たせてるんだが」

 

 

 何だかしっちゃかめっちゃかになってしまった空気をクロノは咳払いして正常に戻そうとする。

 結果、なのはは何とか立ち直り再び歩き始める。

 すると今度は前方から一人の女性が歩いてきた。

 

 

「あ、来た来た。クロノくーん!」

 

「エイミィ、何故ここに……」

 

「あんまり遅いから私も迎えにきたんだよ、もう何してたの?」

 

「色々あったんだよ……」

 

 

 エイミィと呼ばれた茶髪の、つむじからピョンと飛び出たアホ毛が特徴的な女性はクロノにからかい混じりに喋りかけてくる。

 それだけでこの二人の関係性がかた苦しいものではない事は誰にでも理解出来た。

 クロノは眉間に皺を寄せつつも特に嫌そうにする事もなくエイミィの対応をしている。

 正直こんなに時間を食うとは彼も思っていなかった、迅速に艦長のところに行くつもりだったのだが先ほどの一騒動のせいで大幅に遅れてしまったのである。

 そしてここでエイミィは後ろにいた悟空達に眼を向けて近づいてくる。

 

 

「初めまして、私はエイミィ・リミエッタ。ここのオペレーターだよ」

 

「オッス! オラは悟空だ、孫悟空」

 

「あ、えっと……高町 なのはです」

 

「ユーノ・スクライアです」

 

「悟空くんになのはちゃん、ユーノくんか。よろしくね、それじゃあ艦長のところに行こうか」

 

「あ、こら! 僕を置いて行こうとするんじゃない!」

 

 

 そんなこんなで騒がしくしながらも一行は一つの扉の前に辿り着く。

 その扉が開かれた時、なのはは驚き、悟空は首を傾げた。

 

 

「艦長、連れてきましたよー」

 

「艦長、三人に来てもらいました」

 

 

 エイミィやクロノは普通にしていたが、この何とも言えない違和感。

 何というべきか、日本風だけどどこか間違ってる感のする部屋が今、悟空達の目の前には広がっていた。

 何でこんな部屋が、とかそう言った疑問も湧くがそれよりもだ。

 部屋の奥にいた一人の人物に視線は集中する。

 その人物は間違いなく先ほどの映像に映し出されていた艦長と呼ばれていた女性――リンディ・ハラオウンだった。

 尚、姓で分かると思うがクロノの実の母親でもある。

 

 

「ありがとう、クロノ、エイミィ。さて、いらっしゃい。皆さん……どうぞ楽にして?」

 

 

 リンディは柔らかい女神のような微笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 とりあえず全員が座ったところで話し合いは始まる。

 まずはある種の発端とも言えるユーノの話から。

 自らの力でジュエルシードを集めようとしていた事に触れ。

 

 

「立派ね、それだけの決断と行動が出来るのは大したものだわ」

 

「だが無謀すぎる」

 

「う……」

 

 

 リンディからはお褒めの言葉をいただいたもののクロノの言葉にユーノは俯く事しか出来なかった。

 実際今思い返してみて無謀なのはその通りだったからだ。

 ユーノもそれを理解してはいるから何も言い返すことはしなかった。

 次に話はジュエルシード、そしてロストロギアへと移る。

 ここでなのはが尋ねる。

 

 

「あの……そもそもロストロギアって何なんですか?」

 

「そうね……簡単に言うと、だけど。まず前提として次元空間の中には無数の世界があるの、そしてその中には進化しすぎた世界も存在する……その進化の果てに滅んでしまった世界の技術の遺産、それがロストロギアよ、貴方達が回収していたジュエルシードもその仲間。次元干渉型のエネルギー結晶体で特定の方法で起動すれば次元振を引き起こす危ない代物よ」

 

「君とあの黒衣の魔導師がぶつかった時の現象、あれが次元振だよ」

 

 

 クロノの言葉を聞き、なのはの脳裏を過ぎるのはあの時の世界が揺れたかのような現象。

 あの時はベジータが何とかしてくれた事で事なきを得たが、もしあの場に悟空やベジータのような規格外がいなかったらと思うとゾッとする。

 ――ちなみに悟空は。

 

 

「へぇ、あれって次元振って言うんか。結構やべえ状態だったからよく覚えてるぞぉ」

 

 

 呑気にそう言って笑っていた。

 その様にその場にいた面々は呆気にとられる。

 次元振の恐ろしさを間近で見ていながらなんで笑っていられるのかと。

 そこにクロノが補足を入れる。

 

 

「ちなみにあれでも何万分の一の威力だ、複数個集まってた状態で次元振を起こせばどうなるか……想像できるだろう?」

 

「ひゃー! あれで何万分の一なんか!? すげえや、本当にそうなったらオラやベジータが全力でやっても敵わねえかもしれねえな」

 

 

 あまりにも緊張感のない悟空にクロノは眉間に皺を寄せる。

 だがすぐに眉間を指で解した。

 ここで怒ってもしょうがない事は分かっていたからだ。

 ちなみになのはは慣れてるようで苦笑いを浮かべてる。・

 と、ここで今度はリンディが尋ねる。

 

 

「実はこちらも気になる事があるのだけれど……聞いてもいいかしら? 悟空くん」

 

「ん? オラか? 別にいいけんど小難しい話は苦手だぞ?」

 

「大丈夫よ、聞きたいのはシンプルな事だから……貴方とあのベジータくんと言う子、魔力を使ってないわよね? あの力は一体どういうもので貴方達は何者なのかしら?」

 

 

 それを聞いた悟空は、少しだけ「んー」と考えると喋りだす。

 

 

「まずオラ達が使ってる力は気っちゅうもんだ」

 

「……キ?」

 

「そだぞ、何ていえばいいんかな……生きとし生けるもの全てが持ってるエネルギーみてえなもんだな。人間はもちろん動物に木々や草花、星、色んなもんに宿ってる力だ。オラやベジータはそれを増幅したり操って戦うんだ」

 

「気……そんな力があるんだ」

 

「僕のバインドが破られたのも気を増幅して自身を強化したからというわけか……」

 

「そうだ、一応言っとくけどベジータのパワーはあんなもんじゃねえぞ? もっと上がる、それこそ星なんか簡単に破壊出来るぐらいにはな」

 

「「「「「星を破壊!?」」」」」」

 

 

 これにはなのはとユーノもリンディ達と一緒に眼を丸くする。

 強いとは思っていた、だがそこまでとは思ってなかったのである。

 と、ここでなのはは一つの仮説に至る。

 ベジータに出来るという事は、だ。

 

 

「悟空くんもその気になれば出来る……って事?」

 

「まぁな! 絶対にやらねえけどよ、星壊しちまったらオラも死んじまうし、ははっ!」

 

 

 悟空はこんな問いにも笑顔で答える。

 対しクロノは警戒の度合いを一気に引き上げ杖を取り出し立ち上がろうとする。

 だが、それはリンディに制された。

 

 

「艦長……!?」

 

「大丈夫よ、クロノ。この子は多分そんな事しないわ、私達が下手な真似をしなければ……ね?」

 

「……はい」

 

 

 クロノは再び座る。

 そしてリンディはもう一つの質問の方の答えを聞く事にした。

 

 

「それで、そんな事が出来る貴方達は一体何者なのかしら?」

 

「オラ達はサイヤ人だ、戦闘民族サイヤ人」

 

「サイヤ人……」

 

「サイヤ人……それが種族の名前なんだ」

 

「戦闘民族、だって? 穏やかではなさそうだな」

 

「まぁ気持ちはオラにも分かる、ちっとばかし長くなるけど我慢してくれよ?」

 

 

 悟空は話した、戦闘民族サイヤ人の歴史を。

 他人の星を侵略し、制圧した星を売る、そんな種族であった事。

 ある日からフリーザと呼ばれる者の下に着く事になった事。

 そして結局はそのフリーザに星を破壊されて殆どのサイヤ人が死んでしまった事を。

 

 

「そんな事が……」

 

「オラとしては自業自得な部分もあるとは思うけどな、で、そんなサイヤ人の数少ない生き残りがオラとベジータだ」

 

「貴方達も辛い人生を送ってきたのね……」

 

「そうでもねえさ」

 

「……え?」

 

「確かにオラもベジータも失ったもんはいっぱいあると思う、でも地球に来て得たもんもいっぱいあんだ。だからよ? 辛いとか悲しいとか、そういうのはオラはあまり感じねえかな」

 

「悟空くん……」

 

 

 悟空はニカッと笑みを見せる。

 それは嘘や強がりを言っている顔ではなかった。

 心からそう思っているのだ、この男は。

 失ったもの、得たもの、全部ひっくるめて受け止めている、そんな確かな強さが悟空にはあった。

 

 

「貴方は強いわね……」

 

「鍛えてるかんな! 腕っぷしには自信あるぞぉ」

 

「そういう意味ではないのだけれど……ふふっ、ありがとう。質問は以上よ」

 

「お? そうか?」

 

「さて……少し横道に逸れてしまったけれど本題に戻りましょうか」

 

 

 リンディはそう言うと悟空、なのは、ユーノの顔を見る。

 そしてこう言った。

 

 

「これよりジュエルシードの回収は時空管理局が全権を持ちます」




 オッス! オラ、悟空! 

 オラ達に突きつけられた突然の決定。

 でもそうは言われてもよぉ、ここまで関わっておいて忘れるなんて器用な真似出来ねえぞ。

 んー……なのはも悩んでるみてえだしどうしたもんかな。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「貫く思い! なのはの決意!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十三 貫く思い! なのはの決意!

 お気に入り登録してくださった皆さんに、感想をくれた方、評価を入れてくださったクマンさんありがとうございます!

 最近少し調子が悪いですがまだ定期的な更新が出来るだけの書き溜めはあるのでご安心ください。

 それと活動報告でのアンケートの方ですが近々締めきりたいと思っています。

 と言ってもまだ少しの猶予はあるので興味のある方は是非。

 それでは其之二十三どうぞ。


「え……」

 

 

 なのはは思わずそんな言葉を漏らした。

 頭が追い付かなかった。

 先ほどの悟空の話を聞いただけでもいっぱいいっぱいだったのに、ここに来てとんでもない発言を耳にしてしまった気分だった。

 そんななのはを余所にクロノがリンディの発言に続くように喋る。

 

 

「君達はジュエルシードの事は忘れて元の生活に戻るといい」

 

「で、でも……」

 

「次元干渉が関わる問題だ、民間人を関わらせるレベルの問題じゃない」

 

「でもよぉ……おめえ達だけでベジータに勝てるんか?」

 

「ぐっ……」

 

 

 痛いところを突かれて思わずクロノのうめき声があがった。

 だがクロノはすぐに落ち着いてこう続ける。

 

 

「何とかしてみせるさ、僕にだって意地がある。やられっぱなしで終わるつもりもない」

 

 

 それは正直言って強がりだった。

 短期間であれだけの実力の差を埋めるのは困難だ、それはクロノにも分かっていた。

 ただこれ以上民間人である彼らを巻き込むわけにはいかないという正義感と優しさからそう発言する他なかった。

 だがなのははまだ俯いている。

 そんななのはを見かねてリンディはこう提案した。

 

 

「急に言われても気持ちの整理はつかないわよね、一晩だけ待つからじっくり考えてみて? 今後も関わるかどうかを……クロノ、エイミィ、三人を送ってあげてちょうだい」

 

「はい」

 

「分かりました!」

 

 

 

 こうしてクロノとエイミィに見送られ、悟空、なのは、ユーノは元の場所に戻ってきた。

 夕暮れの海を眺めながらなのはは未だに考えている。

 

 

(私は……)

 

 

 本音を言えばここで元の生活に戻るなんてしたくない。

 フェイトやベジータ、アルフとは分かりあえていないし、このモヤモヤしたものを抱えたまま元の生活に戻ってもきっとアリサとも仲直り出来ないと思うから。

 だが同時にそれは我儘なのではないか、とも思うのだ。

 子供の我儘、相手を困らせるだけの自分勝手な考え。

 そう考えてしまうと躊躇してしまう自分がいるのも事実だった。

 そんななのはの思いを知ってか、知らずか。悟空が歩み寄る。

 

 

「なのは、おめえ何そんな難しい顔してんだ?」

 

「悟空くん……」

 

「何考えてんのかは分かんねえけどよ、やりたいようにやればいいじゃねえか」

 

「やりたい、ように……」

 

「あぁそれとよ、これは言っておきたかったんだ」

 

「え……なに?」

 

「小難しい事は分かんねえけどオラはなのはの味方だ、遠慮はいらねえ。おめえが思うままに動けばいいさ」

 

「……!」

 

 

 なのはは眼を見開く。

 対し悟空は相も変わらず太陽のように明るく優しい笑顔をなのはに向ける。

 それだけで不安なんてものは吹き飛ぶ。

 本当に不思議な子だと思った。

 あれだけ悩んでたのに一つや二つの言葉と笑顔だけで解決してくれるのだから。

 おかげでなのはの中で決意が固まった。

 

 

「うん! もう大丈夫、ありがとう! 悟空くん」

 

「ん、いい顔になったじゃねえか! そうでなくっちゃな」

 

「ははは、そうですね……それとなのは、ごめん。正体を隠してたみたいになっちゃって……」

 

「ふふっ、いいよ。びっくりはしたけどね……それじゃあ帰ろっか、まずは夕食を食べなきゃ」

 

「おう! 今日の夕飯はなんだろうなぁ、オラワクワクすっぞ!」

 

「うん、あ……そうだ」

 

 

 ユーノはそう言うとフェレット形態に戻った。

 そして悟空の頭の上に飛び乗る。

 

 

「僕はこの姿でいる事にするよ、地球じゃこっちの方が色々便利だしね」

 

「うん、そうだね」

 

「飯、飯ー! なのは、ボーッとしてっと置いてくぞー!」

 

「あ、待ってよ! 悟空くん!」

 

 

 

「ガツガツ!!」

 

 

 悟空がいつものようにご飯にがっつく音が響く。

 皆で集まって食べる、いつもの夕食の風景。

 よくよく考えればいつの間にか、そこに悟空がいるのが当たり前になっていた。

 家族と悟空と一緒に過ごす時間、それは尊いものだ。

 それは分かっているが今はその尊さから離れる覚悟を決めなければならない。

 アースラへの連絡はユーノに任せてなのはは家族に説明をする事にした。

 

 

「あ、あの……皆ちょっといい?」

 

 

 家族の視線がなのはに集まる。

 

 

「どうしたんだい? なのは」

 

「そうよ、もしかして美味しくなかったかしら?」

 

「ううん、そんな事ない! お母さんの料理はいつでも美味しいよ」

 

「あらあら、ふふっありがとう」

 

「……なのは、何かあったのか?」

 

「そうだよ、珍しい。何でも言ってみな?」

 

「モガモガ……!!」

 

 家族全員が優しい言葉をかけてきてくれて、なのはの話を待つ。

 ちなみに察せるとは思うが悟空はこんな時でも平常運転だった。

 なのはは語る。

 

 

「その……隠してた事なんだけど私には大切な友達と一緒に始めた事があって……危険かもしれないんだけどそれを最後までやり通したいって思ってるの、心配かけちゃうかもしれないし、それをちゃんとやり通すには学校も暫く休んで家から少しの間離れないといけないんだ……その、許可、もらえないかな?」

 

 

 それを聞いた高町家の面々は驚いていた。

 なのはは滅多な事ではこういう事は言い出さない子だ。

 我儘とかは滅多な事では言わず、自分の内にしまい込んでしまう子だ。

 だからこそ、なのはの、大事な家族の変化が驚きであり嬉しくもあり――多分そのきっかけを与えたのは今ご飯を頬張ってる彼なんだろうなというのも何となく皆察していた。

 

 

「しかし学校を休んでまで、か……」

 

「そりゃあもう心配よ、私達はなのはの事をいつでも心配してるわ」

 

「お父さん、お母さん……」

 

「……危険だと分かっているのに、本気で行くつもりなのか?」

 

「もう……恭ちゃん、なのはの眼を見れば分かるでしょ? もうなのはは決めちゃってる、迷い何て欠片もなさそうだよ」

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん……」

 

 

 個人差はあれど家族の反応は悪いものではなかった。

 少なくとも面と向かって大反対するものはいなかった。

 そこへ――。

 

 

「んぐんぐ……大ぇ丈夫だ」

 

「え? 悟空くん……」

 

「オラもなのはに付いていく、なのははオラが守っからさ!」

 

 

 悟空は意気揚々とそう言った。

 そんな悟空を見て高町家の面々は微笑む。

 

 

「そうか、悟空くんも行くか……少々寂しくはなるが心強くもあるな」

 

「えぇ、悟空くんが付いてくれてるのなら少し安心かもしれないわ」

 

「おう、任しとけ! ちゅうわけでなのは、改めてよろしくな!」

 

「う、うん! こちらこそ」

 

 

 その後、なのはと悟空は必要な物をある程度用意し準備を整えた。

 ユーノ曰く部屋などは用意してもらえるらしいが流石に着替えなどは持っていかなければいけない。

 なのはと悟空はそれぞれバッグに自分の荷物を詰める。

 ちなみに悟空のバッグは新しく買ってもらったものだ、着替えなども士郎や桃子から新たに買ってもらったものでありそれをバッグに詰め込んでいる。

 そして――その時がやって来た。

 

 

「それじゃあ行ってきます」

 

「じゃあな、行ってくっぞ!」

 

「あぁ行ってらっしゃい」

 

「二人とも気を付けてね」

 

「分かってると思うけど無茶はしないようにね」

 

「うん!」

 

「あぁ!」

 

 

 暗くなった道を二人は歩き出す。

 するとその二人に声をかける者がいた。

 

 

「なのは、悟空!」

 

「お兄ちゃん?」

 

「恭也? どした?」

 

 

 それは恭也だった。

 ジュエルシードの事を知っている恭也は今回の件もそれの類であると察していた。

 だからこそ――。

 

 

「……二人とも無事に帰って来るんだぞ!」

 

 

 それは恭也が送れる最大限のエールだった。

 正直言えば力になれてない自分が歯がゆくてしょうがない。

 本音を言えば付いていきたいぐらいだ。

 だがそれは出来ないと分かっているから、付いていったところで足手まといになってしまうと分かってしまうから、ありったけの思いを言葉に乗せて送った。

 

 

「……大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

 

 聞こえて来たのは大事な妹の声だった。

 少し前の妹からは想像もつかないほどに強さを秘めた、そんな声だ。

 

 

「私と悟空くんはちゃんと一緒に帰ってくるから!」

 

 

 なのはは確かにそう言って歩き出した。

 そして悟空はと言うと。

 

 

「……行ってくる、後は任してくれ」

 

 

 真剣な顔でそう言ってサムズアップをして去っていった。

 何とも心強い奴だと恭也は心から思う。

 あんなに小さいのに心身ともに強く、それとは別に人を安心させてくれる不思議な力があると。

 恭也は家族と共に小さくなっていく二人の背中を見つめていた。

 この日、なのはとユーノ、そして悟空はそれぞれの決意を胸にアースラに乗艦するのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 拠点に戻ってきたベジータ。

 そこで初めて知り得る情報とは?

 そしてベジータはフェイトに問いかける!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「貴様はどうしたい? ベジータの問いかけ」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十四 貴様はどうしたい? ベジータの問いかけ

 新たにお気に入り登録してくださった皆さまに感想をくれた方々ありがとうございます!

 アンケートで意見を募集した次回予告の件ですがこの調子で行くとこのまま三行ぐらいの予告を継続する事になりそうかな? って感じですね。

 勿論今後は極力中身のネタバレにならないように気を付けますが。

 それと二章以降短くなる可能性もあります、とだけ。

 それはそれとして其之二十四です、どうぞ!


 遠見市のマンション。

 そこにベジータは帰って来た。

 追跡はされていない。

 気は感じないし、仮に気を感じない追跡をされていたとしてもこちらに手を出してくるなら返り討ちにしてやればいい、そう考えていた。

 いつも通り、いつもの部屋のドアの前に立ちガチャリと戸を開ける。

 するとそこには。

 

 

「グルルルル……ってベジータ!?」

 

「……何の真似だ、アルフ」

 

 

 入口に向かって威嚇してるアルフがいた。

 ベジータは若干呆れ気味にそう呟きながら部屋に入る。

 

 

「追手かと思ったんだよ! というかアンタよく逃げてこれたね、管理局の執務官相手に……」

 

「フン、中々骨のある奴ではあったが俺様の敵ではない」

 

「頼もしいよ、ほんと……」

 

「……フェイトはどうした?」

 

「部屋の奥にいるよ、早く顔を見せてやっておくれよ。アンタを心配してたんだ」

 

 

 ベジータはそれを聞くと部屋の奥に足を踏み入れる。

 と、そこではフェイトが月明りに照らされていた。

 よくよく見ると目からは大粒の涙が零れている。

 

 

「ベジータ……?」

 

「他に誰に見え――」

 

「ベジータァ!!」

 

 

 ベジータが言い終わる前にフェイトはベジータに抱き着いていた。

 涙を流しながらフェイトは力強くベジータに抱き着き、その胸で泣く。

 

 

「良かった、無事で……本当に良かった」

 

「……チッ、アルフといい貴様といい余計なお世話だ。俺様が遅れをとるとでも思っていたのか」

 

「管理局の執務官は腕利き揃いだって聞くからどうしても心配で……ごめんね、でも無事に帰って来てくれてありがとう」

 

「……フン」

 

 

 ベジータはフェイトを引きはがすと椅子に腰かける。

 それを見てフェイトも椅子に腰かけた。

 同じくアルフも座る。

 

 

「教えろ、時空管理局とはなんだ? そんなに厄介な相手なのか」

 

「うん……時空管理局って言うのは次元世界をまとめて管理してる、簡単に言えば警察と裁判所が一緒になったところだよ」

 

「次元世界?」

 

「ベジータなら分かると思うけど……世界って言うのは無数にあるの、この地球とはまた違う世界が次元世界には数え切れないほどいくつも存在してるんだ」

 

「……なるほど、要は今の俺達はそんな世界をまたにかける巨大規模の警察に追われる犯罪者、と言ったところか」

 

 

 ベジータの言葉にフェイトとアルフは黙って頷く。

 さらに。

 

 

「……ごめんね、ベジータ」

 

「……謝る理由を聞かせてもらおうか?」

 

「本当はこうなる前に全部終わらせたかった、結局ベジータまで巻き込んで犯罪者にしちゃって……」

 

「……くだらん」

 

「え?」

 

「ここまで貴様らに付いてきたのは他でもない俺の意志だ、誰に強制されたわけでもなくな。貴様らが謝るような事は何もない」

 

 

 ベジータは腕を組みながらそう言った。

 確かにフェイトの母からの脅しなどもあったが、そんなのは些細な事だ。

 ベジータはここまで自分のやりたいようにやってきた。

 故に、その果てに悟空と敵対しようと、何かを傷つける事になろうと、犯罪者として扱われようと悔いる事はない。

 

 

「だけど、もう駄目だ。おしまいだよ……管理局が出てきたらもう……フェイト、ベジータ! もうジュエルシード集めなんか放棄して三人で逃げようよ! 冷たくて理不尽なあいつの言う事なんかもう聞く事ないじゃないか!」

 

「……」

 

「フェイト、貴様はどうしたいんだ?」

 

「私は……」

 

 

 ベジータの問いかけにフェイトは俯く。

 そして暫くの間考え込んで――口を開いた。

 

 

「投げ出すわけにはいかないよ、母さんのためにも私はジュエルシードを集めを続ける」

 

「……そうか」

 

「フェイト……」

 

 

 ベジータはそれを聞いて立ち上がる。

 そんな姿を見てフェイトはさらに続けた。

 

 

「でもベジータは無理に付き合う事ないんだよ? 今ならまだ――」

 

「俺は俺の誇りにかけて誓った、フェイト、最後まで貴様の味方であるとな。ならば俺も投げ出すつもりはない」

 

「……ベジータは本当に誇り高いね」

 

「当然だ、誇りがあってこその俺様だからな。しかし腹が減ったな……待ってろ、飯を作って来る」

 

 

 ベジータはそう言ってキッチンへと歩いていく。

 するとそんなベジータの後ろを付いて歩くものが一人。

 フェイトである。

 

 

「……今度はなんだ?」

 

「お手伝いしたいと思って……駄目、かな?」

 

「好きにしろ、さっさと作ってしまうぞ」

 

「うん、ありがとうベジータ」

 

「……礼を言われる覚えはないがな」

 

「ベジータにとっては何気ない事かもしれないけど……私にとっては礼を言うに値する事なの」

 

 

 それを聞いてベジータは、とりあえず礼を受け取っておく事にした。

 この日、終始フェイトは嬉しそうで。

 対しアルフはどこか落ち込み気味だった。

 アルフが望んでいるのはフェイトの幸せだ。

 だがあの母親のもとにいて本当にその幸せが得られるのか、そう悩んでいるのだ。

 もっともフェイトはそんな母親の側にいる事を望んでいるわけだが。

 

 

 

 その後、フェイト達が寝たのを確認するとベジータはこっそり部屋を出て屋上に向かった。

 いつものように寝る時間も惜しんでの修行である。

 もっとも、この事がフェイト達にバレれば面倒な説教を受けるはめになるだろうから内緒にしているが。

 

 

(重力室さえあれば、寝る時間を割いてまで修行せずに済むんだがな……)

 

 

 ベジータは思わずそんな事を考えながらも修行を開始する。

 いつも通り基礎やイメージトレーニングを中心にした特訓を淡々とこなしていく。

 

 

「だだだだだっ! だあっ!!」

 

 

 闇夜にベジータの叫びが木霊する。

 そんな中でベジータの脳裏を過ぎるのはフェイトの姿だった。

 そしてフェイトやアルフに聞いた話を思い出す。

 

 

(時空管理局か……規模は大きく、その中でも腕利きの執務官があのレベルとなると……数で押し切られたら少々キツイものがあるかもしれんな)

 

 

 それがベジータが時空管理局に下した評価だった。

 クロノと戦ったベジータは思う。

 一人や二人程度なら問題ないが、あのレベルの人間がさらに多くの数を伴ってかかってきたら対処するのは面倒だと。

 それぐらいにはクロノの実力をベジータは評価していた。

 当然、負ける気は毛頭ないし弱気になる事もないが。

 

 

(ただ気になるのは……)

 

 

 今度脳裏に浮かぶのはフェイトの母の顔だ。

 あの冷たく、気にくわない顔を思い出すだけで思わず舌打ちをしてしまう。

 

 

(あの女……こうなるのも想定の上でフェイトにジュエルシード集めをさせてやがったのか? 娘が犯罪者として追われる事になっても構わないというのか?)

 

 

 そう考えるとますますあの女の事が嫌いになってくる感じがした。

 それに加えて気になる事がもう一つ。

 

 

(そこまでしてジュエルシードを集めさせて……その果てに奴が思い描くものはなんだ? 何を目的としている?)

 

 

 そこはずっと疑問だった。

 一度フェイトに聞いてみたがフェイトも聞かされていないという。

 そこまで秘密にして進めるフェイトの母の計画。

 それがベジータにはどうにも気がかりで、少し嫌な予感がしていた。

 何せジュエルシード一個の暴走であの規模だ。

 それを複数個集めて進める計画など碌なものではない事は誰にだって分かる。

 

 

「気のせいであればいいんだがな……」

 

 

 ベジータは思わずそう呟いて特訓を続ける。

 今はとにかく少しでも強く。

 そう思いながらひたすらに腕を磨く。

 今後は悟空だけでなく管理局も相手にしなければいけないから、というのもあるがフェイトやアルフを守るため、いざとなったらフェイトの母を止めるためにも力は必要であると思えたからだ。

 結局その日、ベジータは寝る時間の殆どを特訓に割いたのだった。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

 時の庭園。

 その奥でフェイトの母――プレシア・テスタロッサは座っていた。

 その眼に映る景色は何か、少なくとも目の前の景色や遠くで頑張っているフェイトを映しているわけではないのは確かだった。

 

 

「早くなさい、フェイト……アルハザードが、私達の救いの地が待っているのだから」




 オッス! オラ、悟空! 

 あれからもう十日かぁ早えなぁ。

 ジュエルシード集めは順調だけんどこのまますんなり行くとは思えねえ、気合入れてかねえとな。

 ん? なんだ、なのは。オラに聞きてえ事でもあるんか?

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「もっと知りたい! 悟空の秘密!」

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其之二十五 もっと知りたい! 悟空の秘密!

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 それでは其之二十五をどうぞ!


 あれから十日ほどが経過した。

 悟空達はと言うと――。

 

 

「ピギイィィィィッ!!」

 

「あいつか……」

 

「おっきいね……」

 

「うーん、もう少しスピードが遅ければ縛れるんだけど……」

 

 

 黄金の巨鳥と相対していた。

 言わずもがな、この巨鳥もまたジュエルシードの暴走により生まれた怪物だ。

 アースラにいた三人は突如として呼び出されてこの巨鳥と戦うよう指示されたのである。

 この状況、まず最初に一歩踏み出すのは当然――悟空だった。

 

 

「よしっ、まずオラが行く!」

 

「気を付けてね、悟空くん」

 

「あぁ、分かってっさ!」

 

 

 悟空はそう言うと額にそっと指を当てる。

 次の瞬間、ビュンという音と共に悟空の姿は消えた。

 そして気が付いた時には悟空の姿は巨鳥の後ろにあった。

 巨鳥は気配で背後の悟空に気づく。

 

 

「ピギッ――!?」

 

「隙だらけだぞ、おめえ……だりゃあっ!!」

 

「ギィッ!?」

 

 

 巨鳥の、その大きな体を軽々と蹴とばす悟空。

 小さな体に見合わないパワーから放たれた痛烈な一撃は巨鳥に想像以上のダメージを与える。

 そこへ――。

 

 

「今だ!!」

 

 

 ユーノがバインド系の魔法で巨鳥を縛り付けた。

 この数日の間にユーノも体の調子が完全に戻りこうして戦力として活躍できるようになっている。

 巨鳥はもがく、だが抜け出せない。

 バインドや防御魔法、回復魔法はユーノの得意分野だ。

 この分野ならばなのはにも負けてはいないだろう。

 故に巨鳥の運命は既に決まっている。

 ゆっくり近づいてきた一人の少女――なのはが最後を決めようと杖を振りかぶっていた。

 

 

「リリカルマジカル……ジュエルシード、封印!!」

 

 

 そうして振り下ろされた杖――レイジングハートが光を放つ。

 巨鳥の体は光に貫かれ、中からは青い宝石、ジュエルシードが飛び出して来た。

 そのジュエルシードはゆっくりとレイジングハートに吸い込まれ消えていく。

 

 

「お疲れ、なのは」

 

「にゃはは、私は特に何もしてないけどね」

 

「んー……物足りなかったぞぉ」

 

「ご、悟空くん……」

 

 

 

 アースラ艦内。

 そこではオペレーターが悟空達に通信を入れていた。

 

 

「ジュエルシード確保を確認、三人ともお疲れ様」

 

『あ、はーい。お疲れ様です』

 

「今ゲートを作るからちょっと待っててね」

 

 

 そんな会話を聞きながらリンディは思う。

 

 

「それにしても三人とも優秀よねぇ、このままうちに欲しいぐらいだわ」

 

「本当ですよねぇ、クロノくんと比べても見劣りしないぐらいじゃないですか?」

 

「むっ」

 

 

 エイミィの発言にクロノは顔をしかめる。

 そしてこう口にした。

 

 

「確かに三人は優秀だ、だが僕だって負けてるつもりはない。こういうのは総合力がものを言うんだ」

 

「ま、そうだよねぇ。何たってうちのエースなんだから。でも悟空くんに勝てる自信はある?」

 

「ぐっ……」

 

 

 クロノはそう言われると何も言い返せなかった。

 悔しいが悟空、そして敵であるベジータは規格外と言えた。

 優秀な執務官であるクロノでも勝てるビジョンが見えてこない、それほどの強さだ。

 それでもクロノにだって意地がある。

 易々と負けを認めるのは何となく癪だったので、それ以上は何も言わずにそっぽを向くのだった。

 さらに強引に話題を変える。

 

 

「それよりも、だ! エイミィ、情報は纏めてあるのか? 見せてくれ」

 

「はいはい、もちろんだよ。これだね」

 

 

 そう言って映し出されるのはフェイト、アルフ、そしてベジータの姿。

 特にフェイトに関しては気になる部分があった。

 

 

「かつて追放された大魔導師と同じファミリーネーム……」

 

「やっぱりその人の関係者なのかな?」

 

「どうかな……偽名の可能性もあるから現状は何とも言えないな……」

 

 

 そんな会話の裏でフェイト達の事を気にしているものがいた。

 なのはである。

 

 

「どうしたの? なのは」

 

「ベジータ達が出てこなかったの気にしてるんか?」

 

「うん……」

 

 

 この十日間で見つけたジュエルシードは先ほどのも合わせて五個。

 うち三つを悟空達が回収し、残り二つはベジータ達がかっさらっていった。

 アースラは三人の追跡を行おうとしたが失敗。

 クロノ曰く強力なジャマ―結界が張られているそうだ。

 悟空ならばフェイトの気を察知して探知は可能だが、それはやめておいた方がいいだろうな。というのが悟空の判断だったのであえて何も言わなかった。

 そもそもの話、探知して拠点と思われる場所に局員を送ったとしても返り討ちにあうのがオチだ。

 悟空が三人を確保するための部隊に加わればなんとかなるかもしれないが、その場合ベジータは本気で戦おうとするだろう。

 するとどうなるか。

 戦いに巻き込まれて死人が出る恐れがあるのだ。

 現在のベジータという男は好き好んで相手を殺す事はしないが止む終えないと感じれば躊躇なく殺しにくるタイプだ。

 つまり下手をすれば死体の山を築く事になる、それは避けたいというのが悟空の考えだったのである。

 

 

「大ぇ丈夫さ、そのうち会える。今日も近くまでは来ていたみてえだしな」

 

「え、そうなの?」

 

「あぁ気を感じた、ただ今回は諦めたみたいだけんど」

 

 

 それを聞いたなのはは「そっか」と言って少しだけ表情を明るくした。

 とりあえず元気でいる事は間違いなさそうで、少し安心したのである。

 ――残りのジュエルシードは六個。

 長いような短いような、そんなジュエルシードをめぐる戦いも終わりが近い。

 一行は次のジュエルシードの反応があるまで各々、別のやり方で時間を潰す事にした。

 

 

「はっ、だっ、でりゃあっ!」

 

 

 悟空は当然修行だ。

 汗水流し、ひたすらに己を鍛える。

 その様はアースラ搭乗員の間でも話題になるほど凄まじく一緒に修行しようとして途中で挫折したものも少なくないと言う。

 そんな悟空に話しかけるものが一人。

 

 

「悟空くーん!」

 

「ん? なのはじゃねえか、どうした?」

 

 

 悟空は動きを止めて声がした方向を見ながらそう言った。

 なのはは悟空に駆け寄り少し息を切らしつつ告げる。

 

 

「何かお菓子あるみたいだから一緒に食べない?」

 

「菓子か、確かにちっとばかし腹も減ったしなぁ。いいぞ、オラも一緒に食う」

 

 

 少し腹を満たした方が修行にも集中出来るだろう。

 そう考えて悟空はその提案を了承した。

 それを聞くとなのははパァッと明るい笑みを見せる。

 

 

「それじゃ行こうか!」

 

「あぁ!」

 

 

 こうして二人は食堂へと移動する。

 そこではユーノも待っており、三人は揃ってクッキーを手にし食べ始めた。

 と、ここでユーノがなのはに尋ねる。

 

 

「ねぇなのは……」

 

「なに? ユーノくん」

 

「なのははさ、寂しかったりしない? 大丈夫?」

 

 

 この十日間家族と離れてしまっている事を言っているのだろう、という事は誰にでも察せた。

 普通に考えてなのはぐらいの歳の子が親から離れて十日間も過ごすというのは精神的に負荷がかかってもおかしくはない。

 だがなのはは「大丈夫」と言って、こう続けた。

 

 

「私は一人じゃない、悟空くんやユーノくんもいるし……それに一人って言うのも結構慣れてるから」

 

 

 その昔、士郎がボディーガードの仕事中に大怪我を負い入院した事があった。

 結果幼かったなのはを除く家族全員が忙しくなり、なのはは一人でいる時間が多くなってしまった。

 しょうがないという気持ちと構ってほしい、寂しいという気持ち。

 心の中がグチャグチャになり、なのははいつも一人で泣いていた。

 そして結果的にこの経験が現在の子供なのに、所々が子供らしくないなのはの性格を形成したと言えるだろう。

 

 

「そういえば私、ユーノくんの家族の話ってあまり聞いた事ないかも」

 

「あぁうん、僕は元々一人って言うか……両親はいないんだ。だから育ててくれた部族の皆が家族みたいなものかな」

 

「そっか……そういう意味じゃユーノくんと悟空くんは同じなんだ」

 

「モガ?」

 

「ははは……そうだね、少し近いかも」

 

 

 悟空はクッキーを頬張りながらも首を傾げユーノは笑う。

 そしてなのははこう続けた。

 

 

「じゃあ次は悟空くんのお話し、聞きたいな」

 

「んぐんぐ……なんだ、オラも何か喋るんか?」

 

「うん、ほら最近夜中のお話しは出来てなかったし、たまには悟空くんの話の続きも聞きたいなって」

 

 

 アースラに来てからは悟空、なのは、ユーノにはそれぞれ個室が割り当てられていた。

 当然寝るのはその部屋でとなるわけであり、すっかり日課となっていた寝る前のお話し会はこの十日間は実施されていない。

 それになのははもっと悟空が知りたかった。

 思えばいつも話しているのは自分で悟空の過去は出会ったあの日の夜に少ししか聞いた事がない。

 故にもっと悟空を知りたい、知る事によりもっと近づきたいという思いがなのはにはあった。

 

 

「んーそだなぁ、どこまで話したっけかなぁ」

 

「ブルマって人に誘われて旅に出て色んなところに行った、ぐらいまでですね」

 

「あぁそうだったそうだった! そんでよ、オラその旅が一段落したところで亀仙人のじっちゃんのところに弟子入りしたんだ」

 

「仙人!?」

 

「おう、そうだぞ! オラに色々教えてくれて鍛えてくれたんだ。ちょっとエッチだけどな。かめはめ波はじっちゃんの教える亀仙流の奥義なんだぞ?」

 

((ス、スケールが大きすぎる……))

 

 

 なのはとユーノは自分から聞いておいてなんだがそう思わざるを得なかった。

 まさか仙人が出てくるとは思わなかった。

 だが悟空が強いのもそれなら納得がいく、そんな凄そうな人を師匠に持つのなら――。

 

 

「まぁオラの師匠は亀仙人のじっちゃんだけじゃないんだけどよ」

 

「「えっ」」

 

「後カリン様だろ? 神様に……界王様、後は天使のウイスさん、まぁこんなところだな」

 

「待って、ちょっと待って」

 

「ん? どした? なのは」

 

「いや、理解が追い付かないというか……仙人もだけど神様とか天使って……実在するものなの?」

 

「おう、実在すっぞ! 実際鍛えてもらったオラが言うんだから間違いねえ」

 

 

 改めて言おう、スケールが大きすぎる。

 一体何をどうしたらそんな超常の存在に師匠になってもらえるというのか。

 そしてどんな特訓を施してもらうというのか、何もかもが想像も付かなかった。

 とりあえず言えるのは――。

 

 

(悟空くんはだから強いのかな……)

 

(やっぱり悟空さんは何というかエピソードも格が違うなぁ……)

 

 

 と、そんなところだった。

 さらに悟空は追い打ちをかける。

 

 

「あ、でもここはオラが生きた宇宙とは別の宇宙だろうから仙人も神様も天使もいねえかもな。悪りい、悪りい」

 

「「え……?」」

 

 

 二人は一瞬悟空が何を言ったのか理解出来なかった。

 それはどういう事か、問おうと思って口を開きかけた、その瞬間。

 艦内にアラートが鳴り響く。

 

 

『エマージェンシー! 捜索域の海上にて大型の魔力反応を感知しました!』

 

「……何かやべえ感じがすんな。なのは、ユーノ、行くぞ!」

 

「う、うん……!」

 

「分かりました!」

 

 

 気になる事は山ほどある。

 聞きたい事もたくさんある。

 だけど今、優先すべき事は分かっているからこそ悟空の背中を追いなのはとユーノは駆けだすのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 オラ達が見たもの、それはジュエルシードに立ち向かうフェイトの姿だった。

 でもありゃまずいな……かなり消耗してっぞ。

 リンディやクロノは止めっけど放っておくわけにもいかねえな、これは。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「海上の激突! 協力してジュエルシードを回収せよ!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十六 海上の激突! 協力してジュエルシードを回収せよ!!

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 では其之二十六をどうぞ!


 悟空、なのは、ユーノの三人はブリッジにやって来た。

 状況を知るにはここが一番だからだ。

 そしてモニターに映っていたのは。

 

 

「フェイトちゃん!?」

 

 

 なのはは思わず叫んだ。

 そこに映っていたのは荒れ狂う海、発生した無数の竜巻、吹き荒れる暴風、そして――そんな中で封印を試みようとしているフェイトの姿だった。

 恐らくではあるが残った六つのジュエルシードは全て海の中にあり、フェイトはそれを無理やり発動させたのだろう。

 ハッキリ言って無茶すぎる計画だった。

 現に映像に映ってるフェイトは既に息を切らしている。

 とても見ていられずなのはは言う。

 

 

「あ、あの! 私、すぐに現場へ」

 

「いや、その必要はない」

 

「え……?」

 

 

 クロノの言葉になのはは眼を見開き固まる。

 対しクロノは続けた。

 

 

「放っておけば彼女は自滅する、仮に自滅しなかったとしても完全に消耗しきったところを確保する」

 

「そんな……」

 

「……なのはさん、残酷に見えるかもしれないけどこれが現実よ」

 

「……」

 

 

 リンディの言葉も受けてなのはは俯いてしまう。

 クロノとリンディは間違った事は言ってない。

 いや寧ろ正しいとさえ言える、フェイトは犯罪者でありクロノ達が警察だとするのなら、これ以上ないくらいに的確な判断だ。

 そして悟空達は命令無しで動かないようにという約束を管理局の面々と交わしている、これでは動く事は出来ない。

 ――だが、一つ穴がある。

 

 

「そいつはちっと無理があんじゃねえか?」

 

「なんだって?」

 

「悟空、くん?」

 

 

 悟空の言葉を受けて視線が集まる。

 そんな中で悟空は自分の意見を語った。

 

 

「フェイトちゅう子がいるって事はさ、ベジータだっているって事だろ? ベジータがおめえ達への対策を考えてねえはずがねえ。下手に手を出せば……全滅すっぞ?」

 

「……ならば確保時に君を投入すれば――」

 

「ベジータは戦闘の天才だ、オラと戦いながらでも仲間を守るなんて事も簡単に出来ると思う。そしてベジータは本当に敵と見据えた相手には容赦しねえ、そんなに死人を出したいんか? おめえ達は悪い奴じゃねえ、だから言うんだ、オラはおめえ達を死なせたくはねえ」

 

「悟空くん、貴方……」

 

「ってわけだからよ、なのは、ユーノ! オラに掴まれ!」

 

「え、う、うん!」

 

「は、はい!」

 

 

 二人が掴まったのを確認すると悟空は指を額に当て気を探る。

 それを見てまずいと思ったのかクロノは駆けだす。

 

 

「待て! まだ許可を出した覚えは――」

 

「悪りいな、時間がねえんだ、待てねえや。じゃ、また後でなー!」

 

 

 悟空はその言葉を最後に、なのはとユーノ共々姿を消した。

 クロノの手は空を切り、思わずそのまま頭を抱えるのだった。

 

 

 

「くっ、フェイト……」

 

「……」

 

 

 フェイトに迫りくる電撃や竜巻、水流を破壊し続けるアルフとベジータ。

 だがいくら破壊してもキリがない。

 そこへ――。

 

 

「オッス!」

 

「!? アンタ達は……!」

 

「……来たか、カカロット」

 

 

 やって来たのは悟空達だった。

 ちなみに今いるのは空中のため、なのはは急いでバリアジャケットを纏った。

 そんな三人に対しアルフは牙を剥き出しにして威嚇する。

 

 

「フェイトの邪魔を――!!」

 

「待て、アルフ!」

 

「ベ、ベジータ!? なんで止めるんだい!」

 

「……貴様も気づいているはずだ、今回はフェイト一人では止めきれん……あいつは大丈夫だとか言っていたがどう考えても無理だ」

 

「……っ、フェイト……」

 

 

 アルフはフェイトの方へと目を向ける。

 そこには明らかに消耗しきったフェイトの姿があった。

 対してベジータはチラリとだけフェイトを見た後、悟空の方に顔を向ける。

 

 

「ここに来た理由を言え、助太刀か? それとも俺達の確保か?」

 

「おめえなら分かってんだろ、今回は助太刀さ」

 

「フン、貴様らの甘さには反吐が出るぜ……だが丁度いい、利用させてもらうぞ」

 

「あぁ! なのは、行ってこい!」

 

「うん……ありがとう! 皆!」

 

 

 なのははそう言うとジュエルシードの暴走により発生した異常現象を回避しつつフェイトのもとへと飛んでいった。

 近づいてきたなのはにフェイトは警戒心を覗かせる。

 そんなフェイトになのはは言った。

 

 

「フェイトちゃん、協力して! 皆でジュエルシードを止めよう?」

 

「皆で……?」

 

 

 その会話が終わると同時にレイジングハートから光の帯が放たれてバルディッシュへと吸い込まれ消えていく。

 ディバイドエナジー、対象に魔力を分け与える魔法である。

 これによりなのはの魔力はフェイトに分け与えられた。

 

 

「これで二人できっちり半分こ、だよ」

 

「……」

 

 

 一方で悟空やベジータ達もまた動き出そうとしていた。

 

 

「よっしゃ、やるか! ユーノ!」

 

「そしてアルフ! 貴様達は竜巻の足止めをしろ!」

 

「わ、分かりました!」

 

「……分かった、こっちは任せてアンタ達はアンタ達の役割に徹しな!」

 

 

 そう言うとユーノとアルフは魔力の鎖を作り出し発生している竜巻を縛り上げ食い止める。

 これで竜巻がなのはとフェイトを襲う事はないだろう。

 後は――。

 

 

「さっきからうっとおしい、電撃と水の鞭の対処が俺達の役目だ」

 

「あぁやるぞ、ベジータ!」

 

「俺に指図するな! 言われなくてもやってやる!」

 

 

 そんな会話を交わしながら二人は両手に気を溜める。

 見据えるはなのはとフェイトに迫りくるジュエルシードの攻撃達。

 

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃあああああっ!!」

 

「だだだだだっ、でやあああああっ!!」

 

 

 二人は気弾を撃ちまくる。

 放たれた気弾は雷やせり上がって来ていた海水に直撃し、爆発を起こす。

 結果、ジュエルシードの暴走による攻撃は一撃たりともなのはとフェイトには届かない。

 

 

「悟空くんが、ベジータくんが、ユーノくんが、アルフさんが止めてくれてる今のうち! 二人でせーので一気に封印、だよ!」

 

 

 なのはの言葉を受けてバルディッシュは自動的に変形する。

 フェイトはそれを見て驚いた、今までこんな事はなかったからだ。

 そしてそれは主人であるフェイトの背中を押してくれているようにも見えた。

 

 

「ディバインバスター・フルパワー……行くよ、レイジングハート!!」

 

「……バルディッシュ、行くよ」

 

 

 ここでようやくフェイトも意を決し、バルディッシュを構える。

 なのはの足元に桜色の魔法陣が、フェイトの足元に金色の魔法陣が浮かび上がる。

 準備は万端だった。

 なのはは声を上げる。

 

 

「せーの!」

 

「サンダー……!」

 

「ディバイン……!」

 

「レイジ!!」

 

「バスタアアアアアッ!!」

 

 

 金色に輝く雷が降り注ぎ、桜色の魔力砲が飛んでいく。

 二つの力は混ざり合い、大きな爆発と衝撃を生む。

 ジュエルシードのものとはまた別の暴風が吹き荒れ空を覆っていた分厚い雲は割れて暖かな日の光が降り注ぎ、そして爆発の影響で宙に舞い上がった海水達がまるで雨のように降り注ぐ。

 もう暴走の気配は無くなっている、ジュエルシードの封印は為された。

 

 

「ひゃー、なのはの奴やっぱやるなぁ……今のは中々の威力だったぞ」

 

「フン、フェイトも負けてはいないがな。俺達とは分野が違うが中々見どころのある奴らだ」

 

 

 悟空とベジータも気を抜いて思わずそんな会話を交わしていた。

 ライバルだしベジータは日頃からツンツンしてるが、何やかんやでこういう何気ない会話も出来る間柄なのがこの二人である。

 だがここで一件落着、とはいかない事は悟空もベジータも分かっていた。

 

 

「ジュエルシードも綺麗に半分ずつ、とはいかねえよなぁ、やっぱ」

 

「当然だ、俺達は双方とも一つでも多くのジュエルシードを欲している、仲良しこよしはここまでだ。後はどちらがジュエルシードを持っていくか……それを決める必要がある」

 

 

 空気がピリピリとしていくのを悟空もベジータも感じていた。

 互いにいつだって仕掛けられるし、いつだって動ける。

 だが――。

 

 

「ベジータ、もうちっと待ってくれ。なのはがまだ言いたい事があるみてえだからよ」

 

「……フン、とことん甘い奴らだ」

 

 

 悟空のその一言で戦いは先延ばしとなった。

 ベジータもそう言ってそっぽを向く。

 一方でなのはとフェイトは。

 

 

「「……」」

 

 

 海上で相対していた。

 どちらも言葉を発する事なく、ただただ相手の眼を見ている。

 そんな中でなのはは思った。

 

 

(ずっと不思議だった、この気持ちは何なのかって……)

 

 

 思い返すのはフェイト達との出会いから今日に至るまでの出来事の数々。

 だがここでようやく答えが出た。

 そうだ、なのはの思いとは――。

 

 

「フェイトちゃん、私ね……」

 

「……」

 

 

 ごくごくシンプルなものだった。

 

 

「あなた達と……友達に、なりたいんだ」

 

 

 そうして思いは真っすぐな言葉となって放たれた。




 オッス! オラ、悟空! 

 なのはが言った言葉がフェイトの心を動かす。

 だけどそこに邪魔が入っちまった。

 ちくしょう! 防御する暇も、打ち消す暇もねえ! こうなったら――!

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「フェイトの涙、あまりにも脆い親子の絆!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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其之二十七 フェイトの涙、あまりにも脆い親子の絆!

 新たにお気に入り登録してくださった皆さん、感想をくれた方々、評価を入れてくださった魔神皇帝Zさんありがとうございます!

 おかげさまで久々に日間ランキングに入れました。

 何やかんやで凄く嬉しくてテンション上がっております。

 それはそれとして其之二十七です、どうぞ!


「……!」

 

 

 友達になりたい、そう聞いた時フェイトは僅かに眼を見開いた。

 そんな言葉をかけられるとは思わなかった。

 だからこそ僅かに気が動転して言葉が中々出てこなかった。

 だが、それも少しの間だけの事。

 やがて気持ちは落ち着き、口を開く。

 

 

「私は――!?」

 

 

 言葉を返そうとしたその時だった。

 フェイトは突如上空に眼を向ける。

 するとそこに広がる光景は――紫色に染まった空だった。

 

 

「おい、ベジータ……あれやばくねえか?」

 

「貴様に言われんでも分かっている! 行くぞ!!」

 

「あぁ!」

 

 

 ベジータはいち早く飛び出し、悟空もそれに続く。

 ベジータの中で嫌な予感がムクムクと膨れ上がっていた。

 あの紫色の空、元凶に心当たりがあった。

 そしてこれからしようとしている事も何となくだが察する事が出来た。

 だからこそ全速力で飛ぶ。

 すると――悟空とベジータの到着を待たずに紫の雷が落ちてくる。

 

 

「母さん……!?」

 

 

 雷はそのまま真っすぐにフェイトとなのはに襲い掛かった。

 だが。

 

 

「なのは!」

 

「悟空くん!?」

 

「フェイト!」

 

「ベジータ!?」

 

 

 ギリギリのところで間に合った悟空とベジータが自らの体を盾にする事で二人を守った。

 雷撃はそのまま二人に襲い掛り強力な電撃を流し込む。

 

 

「うあああああっ!?」

 

「ぐあああああっ!?」

 

 

 やがて雷は止んで空は元に戻る。

 残ったのは体から黒い煙を出しながら何とか耐えきった悟空とベジータだった。

 なのはとフェイトはすぐに駆け寄る。

 

 

「悟空くん! 大丈夫!?」

 

「へ、へへ……不意を突かれちまった……でもおめえが無事で良かった、ぞ……」

 

「ベジータ……ベジータ! しっかりして!」

 

「……大声を出すな……聞こえている、俺は問題、ない……ったくこれではカカロットの事を甘いなどと言え、んな……」

 

 

 悟空はなのはに、ベジータはフェイトに抱えられる。

 そうでもしなければ落ちていってしまいそうなほど酷い状態だった。

 一方でアルフはと言うと。

 

 

(ベジータ、ごめんよ……そしてありがとう。アンタの頑張りに応えるためにもジュエルシードは私が……!)

 

 

 アルフは手を伸ばす。

 今ならば止められる人間はいない、はずだった。

 しかし。

 

 

「……ッ!?」

 

 

 そこに現れたのはクロノ。

 クロノはアルフの手を止める。

 だがアルフは止まらない、止まるわけにはいかない。

 フェイトの願いのために、身を挺してフェイトを庇ってくれたベジータのために、ここで止まるわけにはいかないのだ。

 

 

「邪魔を、するなあああああっ!!」

 

「ぐっ!?」

 

 

 底力を発揮しクロノを吹き飛ばすアルフ。

 そして改めてジュエルシードに手を伸ばそうとするのだが――。

 

 

「……!?」

 

 

 そこにあるジュエルシードは三つだけだった。

 六つあったはずなのに半分が消えていたのだ。

 そしてよくよく見ればその三つはクロノの手にあった。

 アルフは悔しさを滲ませた顔をしながら歯を食いしばり――叫ぶ!

 

 

「うあああああっ!! ぐうぅぅぅ……フェイト、撤退するよ!」

 

「う、うん……!」

 

 

 アルフが魔力弾を海に打ち付けて大きな水柱を発生させる。

 そして気が付いた時にはベジータもフェイトもアルフも、その姿を消していた。

 

 

 

 ☆ ☆

  ☆ ☆

 

 

 

「「……」」

 

 

 部屋に備えられたベッドの上に治療したベジータを寝かせてフェイトとアルフは部屋を出た。

 本当なら付き添っていたい、だがその気持ちを抑え込んで歩を進める。

 母――プレシアに報告に行く必要があったからだ。

 

 

「……フェイト、本当に行くのかい?」

 

「……うん、いらないかもしれないけど報告はちゃんとしておかないと」

 

「……」

 

 

 そう言われてしまうとアルフには何も言えない。

 本当は止めたい、あんな母親のところには行かなくていいと言いたい。

 だがフェイトの気持ちも伝わって来るからそれすらも言えなかった。

 だったらせめてフェイトが酷い目に遭いませんように、アルフは心の中でひっそりとそう祈った。

 ――だが現実は無慈悲だった。

 

 

「うあ……っ! ああ……っ!!」

 

 

 時の庭園にフェイトの悲鳴と鞭の音が響き渡る。

 アルフはそれを扉の前で歯を食いしばって耐える事しか出来なかった。

 そして扉が開いた時、アルフの眼に映ったのは――。

 

 

「フェイト!」

 

 

 傷だらけで倒れているフェイトと部屋の奥へと去っていくプレシアの姿だった。

 アルフはフェイトを抱き上げながらプレシアの背を睨み付ける。

 今ここで改めて確信した、自分は奴が大嫌いだと。

 そして思った、この怒りはぶつけなければ気がすまないと。

 アルフはフェイトをそっと置くとズンズンとプレシアが去っていた部屋の奥まで歩いていくのだった。

 

 

 

「ゴホッゴホッ! はぁ……はぁ……」

 

 

 ジュエルシードを眺めながらプレシアは咳き込んでいた。

 口から流れ出た血が床に落ちる。

 

 

「もう時間がないわね……私にも()()()()にも」

 

 

 その時だった。

 プレシアの背後の壁が突如として吹き飛んだ。

 そこに立っていたのは――アルフ。

 アルフはプレシアを睨み付けながら一歩、また一歩と距離を詰めていく。

 そのまま進みある程度距離を詰めたところで、アルフは動いた。

 

 

「うあああああっ!!」

 

 

 自慢の拳を振るう。

 ベジータほどではないがその威力は相当なものだと自負していた。

 だが。

 

 

「ッ!?」

 

「……」

 

 

 その拳はプレシアが張った魔法の防御壁によって防がれる。

 だがたった一発防がれた程度で諦めはしない、止まれはしない。

 今アルフの中で燃えている怒りの感情はもはや止まる事を知らなかった。

 

 

「だあああああっ!!」

 

 

 何度も、何度も、何度も――その拳を打ち付ける。

 やがて防御壁にはヒビが入り始める。

 いける、そう思いアルフは渾身の一撃を繰り出した。

 すると防御壁は綺麗に割れる。

 これでプレシアを守るものは何もない。

 アルフは即座に動きプレシアの胸倉を掴んだ。

 

 

「あの子は……あんたの娘だろ! そしてあんたは、あの子の母親だろ!? 何で……何であんな事が出来るんだい! あんなに頑張ってる子に、一生懸命な子に、あんたは!! 挙句の果てにここまで協力してくれたベジータにも怪我をさせて……私はあんたを許さな――!?」

 

 

 アルフは気づいた。

 プレシアの眼には確かに自分が映っているがプレシアは自分の事を見ていないという事に。

 今の叫びもまるで響いていないという事に。

 そしてその身から殺気が満ちている事にも。

 まずい、と思った。

 即座に後ろに跳ぶアルフだったがプレシアの雷撃は的確にアルフの腹部に直撃する。

 結果アルフの体は吹き飛び、地面に転がる。

 

 

「がああああっ!?」

 

「……あの子は使い魔の作り方が下手ね、余分な感情が多すぎるわ」

 

「ぐ……うぅ……っ、フェイトはね……あんたに笑ってほしいから……優しい頃のあんたに戻ってほしいから……あんなに頑張って……!」

 

「ふん……あなた邪魔よ、消えなさい」

 

 

 冷たい声音と共にプレシアはアルフに魔法を放つ。

 それを身に受けてボロボロになったアルフは時の庭園の外へと投げ出され落ちていく。

 このままでは死ぬ、アルフはそう考え最後の力を振り絞り転移の魔法を発動させた。

 

 

(どこでもいい、転移を……フェイトごめんよ、少しだけ待ってて……ベジータ、フェイトを頼んだ、よ……)

 

 

 アルフの意識はそこで途絶え、アルフの姿もその場から消え去った。

 

 

 

 アルフとの一戦を終え、プレシアは再びフェイトのもとへと赴いた。

 フェイトはボロボロだが既に起きていた。

 

 

「フェイト、ジュエルシードはこれでは足りないわ。最低でも後五つは獲ってきなさい」

 

「……はい、あのアルフは……」

 

「あの子なら逃げ出したわよ、とんだ使い魔を持ったものね……さぁ話は以上よ。行きなさい」

 

 

 逃げ出した、それが嘘である事はフェイトには分かった。

 でも逆らう事も出来ず、フェイトはただただ「はい」と言って頷き出ていく事しか出来なかった。

 

 

 

 遠見市のマンション。

 そこに帰ってきたフェイトはフラフラと歩きながら自分達の拠点となっている部屋に入った。

 するといい香りが漂ってくる。

 フェイトがその出どころであるキッチンに足を運ぶとそこにはベジータの後姿があった。

 

 

「帰ったか……フェイト」

 

 

 ベジータが振り向く。

 その顔を見た瞬間、フェイトは耐えきれなくなりベジータの胸に飛び込んだ。

 

 

「ベジータ……ベジータァ……!」

 

「おい、あまりくっ付くな! というか貴様、また傷だらけだな……それにアルフはどうした」

 

「アルフは……多分、私のために母さんに逆らって、それで……」

 

「……そうか」

 

 

 ベジータはひっそりと拳を強く握りしめる。

 プレシアに対する怒りはますます強く燃え盛っていた。

 もっとも表には出さないようにしていたが。

 そんな中でもフェイトはがっちりとベジータに抱き着いたまま離れようとしない。

 

 

「私、私は……!」

 

「……フェイト、貴様は貴様の譲れないもののために戦えばいい。それが何であろうと今は味方をしてやる」

 

「今はって事は……いつか敵になるって事……?」

 

「さぁな……それは貴様達次第だ」

 

 

 ベジータはそう言うとフェイトを引きはがす。

 

 

「さて、まずは治療だ、そして飯、これからの事はその後に考えるぞ」

 

 

 ベジータはそう言うと救急箱を取りにいった。

 そんな不器用ながらに味方であってくれる頼もしいベジータの背中をフェイトは涙混じりの眼で見つめながら少しだけ微笑む。

 傷ついた身と心に、ベジータの優しさはとても沁みたのだった。




 オッス! オラ、悟空! 

 リンディに説教を受けたり、プレシアについて説明されたオラ達。

 そんなオラ達に一時帰宅の許可が下りた。

 士郎や桃子と会うのも久々だなぁ、楽しみだぞぉ。

 次回! Dragon Ball Lyrical ~蘇りしサイヤ人~

「全てのジュエルシードを賭けて……最終決戦開幕!!」

 ぜってぇ見てくれよな!


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