上里空は勇者になり、魔道士でもある! (水甲)
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キャラ紹介

今更ながらのキャラ紹介です。また勇者であるシリーズの登場キャラを載せます


上里空

 

14歳

 

勇者と魔導師、両方の素質がある

 

武器 槍

 

デバイス アネモネ 

 

本作の主人公の一人

 

西暦時代では若葉たち勇者の鍛錬担当をしている。最初の頃は鍛錬について文句を言われたが、自分自身が無理な鍛錬ではないかとしっかり確かめたり、勇者たちが無理をしてないかとしっかり気遣っていることひなたが教えたことで、みんなと仲良くなったりしている

 

なのはたちの世界に訪れ、神樹から授かった3つの鍵、勇者の力と魔法の力と紡ぐ力で共に戦えるようになった。

 

戦闘面において近距離、遠距離の担当であり、また作戦などを考えることが出来る司令官みたいな立場。

 

妹のひなたとは仲がよく偶に一緒にお風呂に入ってる。

 

友奈のことが好きで、告白しようとするが中々出来ないでいる(しようとしてもタイミングが悪かったりしている)

 

精霊 妖狐

 

尻尾の数や体の色が変わったりしている。切り札時は3本 改は7本 満開は9本

 

 

 

 

 

 

 

上里夜空

 

12歳(AS編)14歳(ストライカーズ)

 

武器 

 

デバイス ランディニ

 

本編のもうひとりの主人公

 

空たちの子孫であり、勇者としての素質は低いが魔導師としては高い素質を持っている

友達である須美たちと共にバーテックスと戦うが、失いたくないことを思い、須美たちの勇者システムに危機的状況時に転移できるように組み込んだり、システムにカートリッジシステムを組み込んだりと仲間を守ろうとしていた。

 

AS編で空たちと出会い、その中で三体のバーテックスの行方を追ったりしていた。

特に空たちとは仲が悪いとはなく、兄弟みたいな感じになっている

 

妹の夕空とは中学に上がった頃会えなかったりしているが、時折連絡はとっていたりもする

 

樹と付き合っている。

 

 

精霊 大獄丸

 

満開時に金棒を持ち、衣装的には高嶋友奈の酒呑童子と似ている

 

 

 

 

 

上里陸都

 

天の神から伝えられた神の領域を超えた存在。赤嶺友奈と行動に共にしている。

また人型バーテックスを作り出し、疑似バーテックスなども作ったりもしている。

能力は全バーテックスの能力を扱え、また世界を渡り歩くことが可能

 

十二星座のバーテックスの力を武器としても扱える。キャンサーの盾やスコーピオンの針、レオの炎のなど……

 

また別世界の武器の能力を見て、理解し、扱うことも出来る。

 

目的としては自身を蝕む黒い鍵を取り外すこと。そのために必要なものが、レリック、聖王の揺り籠である。

 

リクト

 

陸都を蝕む存在。天の神曰く0番目と呼ばれる。能力的に天の神を超えている。陸都に黒い鍵を取り外す方法を教えるが……

その正体は0番目の大型バーテックス蛇遣い座型『アスクレーピオス』

天の神に一番最初に作られたバーテックスであるが、天の神の影のような存在。能力的には天の神と同じだが、言う事を聞かない為破棄されたが、自分の能力と存在を黒い鍵に移し、陸都たちの時代に転移させた。

目的は天の神への復讐。そして自分が支配しやすいように世界を破壊しようとしている。

 

 

自分の死の運命を変え、愛の力で戦った存在

 

ミナト・ユウ

 

武器 神具『呉越龍騎 レガオン』帝具『一斬必殺 村雨』

 

ある世界で腐った国を変えるために革命軍の『ナイトレイド』と呼ばれる組織に入った男。

ある戦いにて異世界に転移し、プリキュアたちと出会い、共に戦うことになった。

戦いの中でえみると結ばれ、愛の力にて世界を救った存在でもある

戦闘においては相手を挑発したりするため、年齢が低い人たちには聞かせられないことを言い、仲間に呆れられたり、怒られたりもしている。

 

天の神(自由)に強制的に転移させられて、怒ったりもするが自分の力が必要だと分かり、空たちに協力することになった。

 

戦闘中においてキスをすることに関しては気にしていない。そしてえみるのことがものすごく大好きでもある

 

奥の手 龍騎

 

レガオンを鎧に変え、能力的にかなり上がる。

 

狂龍騎

 

龍騎の力を更に開放した力だが、最初の頃は暴走し、全てを破壊するまで止まらなくなったりしていた。

現在は愛の力にて制御できるようになっている。

 

愛龍騎

 

レガオンの本来の姿とも言うべき姿。愛を受け取り、愛を育んだ人とのキスをすることで発動が可能。能力的には一撃で大体の敵を屠れるが、今まで戦ってきた相手には加減していたりも……

浄化の力もあり、プリキュアの助けにもなっていた。

 

 

○の○○

 

 

   

ミア

 

武器 桐一文字・改

 

ミナトが転移した世界から遠い未来の少女。未来のプリキュアと共に戦ってきたが、ある存在に負け、レガオン・レプリカを使って、ミナトと戦った。

最終決戦において、プリキュアに変身することができるようになり、キュアフュテュールとして最終決戦で活躍した。

その正体は本人曰くミナトの孫だというが、本人がうっかりミナトのことを〇〇と呼んでしまっていたりもする

 

現在は治療不可の傷を負わせられる『臣具・桐一文字』を使っている。

 

 

 

 

 

 

神宮桜

 

14歳

 

守人

 

武器 桔梗櫻……刀

 

空の親友であり、千景の友達である。千景に対して恋愛感情を抱いている。

千景の家族の問題で、千景の支えになりたいと言い、空が引きあわせた。

勇者の力はないが、魔力が宿った武器を扱うことが可能。それを元に守人システムを作り上げた。

 

守人システム

 

魔力が宿った武器(曰く付きのもの)を元に作り上げた勇者とは違うシステム。能力的には勇者システムに劣るがバーテックスと戦うことが可能

 

 

 

 

 

 

 

境界の勇者、女神の勇者、守り神の勇者

 

運命を変えた勇者たち。また神を超えた力を扱えたりできる。ある作品の主人公達

 

 

 

 

天の神(ポニーテール)

 

空となのはたちの住む世界の天の神。夜空たちからちょっとした未来から来た存在。基本的にお人好しであり、空、夜空たちに陸都をどうにかしてほしいと思い、協力していたり、助けにったりしている。

 

天の神(幼女)

 

ある世界の天の神。幼い見た目であるためか、幼女神とも呼ばれていたり……

自身がいる世界では、ある魔導師に対してトラウマを植え付けられ、世界を元に戻した(ある魔導師とは関わり合いになりたくないからという理由で)

 

天の神(自由)

 

ある世界の天の神、とある勇者が人の世界と天の世界を繋げたおかげで、神のランクが上がり、他の天の神より位が上になった存在。

自由に世界を渡り歩いており、他の勇者のことを知っている。他の勇者を導くことが出来る。更には天の神がいない世界にも渡り歩くことが出来る。

 

 

 

 

 

 

参戦キャラ

 

乃木若葉

 

上里ひなた

 

高嶋友奈

 

土居珠子

 

伊予島杏

 

郡千景

 

白鳥歌野

 

藤森水都

 

鷲尾須美→東郷美森

 

三ノ輪銀

 

乃木園子

 

結城友奈

 

犬吠埼風

 

犬吠埼樹

 

三好夏凜

 

楠芽吹

 

加賀城雀

 

弥勒夕海子

 

山伏 しずく

 

国土 亜耶

 

秋原雪花

 

古波蔵 棗

 

 

 

 



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無印編
01 突然訪れた場所


と言うか分けでゆゆゆの新しい小説……なのはシリーズのクロスとなります。以前活動報告で描いた時点ではvividの話でしたが、色々と考えた結果、この三シリーズの話となります


「……きろ……」

 

「……てください」

 

「起きて……」

 

「ん?」

 

誰かの声が聞こえて、僕は体を起こすと僕の顔を覗き込む、乃木若葉、妹の上里ひなた、そして高嶋友奈がいた。

 

「どうしたんだよ……ってあれ?」

 

僕はすぐに異変に気がついた。僕たちは確か……壁の外の調査のため四国から出て……でもあたりを見渡すと

 

「ビルとかが壊されてない?」

 

「気が付いてすぐに状況を確認できたのは良いことだ」

 

「お兄ちゃんの良いところですね」

 

「僕の良いところはそこだけなのか?」

 

「空くん、大丈夫だよ。空くんは他にもたくさんいい所あるから」

 

「友奈……」

 

友奈は僕の手を握りながらそう言ってきた。だけどちょっとした違和感を覚えた。

 

「あれ?千景、珠子、杏の三人は?」

 

「どうやらはぐれたみたいだな」

 

「今は合流することを考えましょう。合流後にこれからどうするか考えましょう」

 

「だな」

 

まずは合流。その後はここがどこなのかを知ることだな。

ふっと何故かポケットのの中に何かがあった。僕はそれを取り出すと三本の鍵があった。

 

「これは……なんだろう?」

 

家の鍵って言うわけじゃないし……まぁ考えるのは後にしておくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周辺をくまなく探しているが、千景たちは見つからなかった。僕が起きたときには夕方だったけど、既に夜になっている

 

「とりあえず野宿を考えるべきなんだろうけど……」

 

「人の目があるから難しいだろ」

 

若葉の言うとおり、人の目がある。千景たちを探している間に色々と調べてわかったけど、ここは本当に平和な世界なんだな。

下手に野宿とかしていたら補導されてしまいそうだな

 

「何だか補導されたほうがいいかもしれないな」

 

「お兄ちゃん、たしかにそのとおりですけど……」

 

「あはは……あれ?」

 

友奈はなにかに気が付いた。僕も友奈が見ている方を見ると小学生くらいの女の子がどこかへ走っていくのが見えた。

いくらなんでもこんな夜に出歩くのはまずいよな……

 

「友奈、気になるんだろ」

 

「うん、どうしたんだろ?」

 

「それじゃまずは追っていくか」

 

僕らは女の子を追いかけていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子の跡を追いかけていくと大きな音が響いてきた。音の方へ行くとそこには黒い巨大な何かとさっきの女の子がさっきまでとは違う白い衣装に杖を持った姿になり、その近くには小動物がいた。

 

「あれ?なんだろう?」

 

「バーテックスというわけでもなさそうだな。それに……」

 

「あの子、勇者って言うわけじゃないみたいですね」

 

「だからってほうっておくべきじゃないな。若葉、任せていいか?」

 

「あぁ、空とひなたは下がって……」

 

若葉が何かを言いかけた瞬間、突然僕の鍵の一つが光だし、僕の体をまばゆい光に包み込んだ。そして気がつくと灰色のコートを羽織り、手には一本の槍が握られた姿に変わった。

 

「この姿って……まぁいい。後で考える!行くぞ!」

 

「あぁ!」

 

「いっくよ~変身!」

 

若葉と友奈の二人は勇者に変身し、女の子の前に出た。

 

「えっ?誰?」

 

「その姿……まさか……魔導師?」

 

「魔導師?違う。私達は」

 

「勇者だよ」

 

「僕は勇者なのかよく分からないけど……とりあえず手を貸すよ」

 

黒い何かがこっちに向かって触手を伸ばしてきた。だが若葉はすぐに前に出て生太刀で切り裂いていき、黒い何かが怯んだ隙に友奈が思いっきりぶん殴り、僕は追撃に槍を突き刺すと黒いなにかの中に不気味に光る何かが見えた。

 

「あれは……」

 

「なのは、今だ!封印を!」

 

「うん!ジュエルシード!封印!」

 

女の子が杖から何かが発射すると黒い何かが消え、小さな宝石が現れ、女の子はそれを回収した。

 

「えっと、ありがとうございます」

 

「一体今のは何だったんだ?」

 

「バーテックスとかじゃないみたいだし……」

 

「というかさっきから気になってるんだけど……」

 

「そちらのイタチ、喋っていますね」

 

「えっと僕はユーノ。何というかイタチではないんだけど……」

 

「私は高町なのはって言います」

 

「乃木若葉だ」

 

「高嶋友奈です」

 

「上里ひなたです」

 

「ひなたの双子の兄で、空だ。とりあえずなのは……色々と聞きたいことがあるから……僕らを君の家に泊めてくれないか?」

 

せっかくの縁だ。今日のところは宿泊できる場所が見つかってよかった。とはいえ

 

「空……お前……」

 

「お兄ちゃん……お願いだから……」

 

「えっと、あはは……」

 

若葉たちは思いっきり呆れていたのだった。

 

 

 

 

 



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02 居候と説明

高町家の庭にある道場にて僕らは布団を敷いていた。

 

「まさかしばらく泊めてくれることになるとは……」

 

「なのはちゃんのおかげだよね」

 

「というよりお兄ちゃんがおかしな理由で泊めてもらうようにしなかったのは驚きですが……」

 

「おいおい、どういうことだよ。ひなた」

 

三人から離れた場所で布団を敷く僕。一応それなりに気を使わないといけないから大変だな。

それに僕は別に変な理由を言うつもりはなかった。ただ正直に何人かで旅をしていたら、旅のメンバー数人とはぐれてしまい、探している途中でなのはのことを見つけたということを伝えただけだから

 

「それにしてもお兄ちゃん……鍵を見せてもらっていいですか?」

 

ひなたがそう言い、僕はポケットに仕舞ってある鍵を渡した。そういえばこれは一体何なんだろうか?

 

「……微かに神樹様の力を感じる……これは神樹様が作り出したもの?」

 

「それは本当か?」

 

「えぇ、何となく感じ取りましたが……」

 

「そもそも私達はどうしてここに来たんだ?」

 

「あの光……何だったんだろ?」

 

全員で悩むが特に思いつかなかった。するとパジャマ姿のなのはとなのはに抱かれたユーノが道場に入ってきた。

 

「あの大丈夫ですか?」

 

「あぁいいよ」

 

僕らはなのはを招きいれるとユーノはなのはから降り、僕らに話を始めた。

 

「色々と話したいことと聞きたいことがあるんだ」

 

「私達の方もですね。まずはユーノさんは……何者なんですか?」

 

「僕は異世界ミッドチルダ出身で、僕はジュエルシードと呼ばれるとても危険なものを回収して、封印するために来たんだ。だけどいろいろとあって……」

 

話を聞くとどうやらユーノが発掘したジュエルシードをどこかへ届ける最中に事故にあい、散らばってしまった。それらの回収をするのだがどうにもジュエルシードから生まれた怪物に襲われていたところをなのはや僕らに助けられたって言うことだった。

 

「なのはは魔導師の才能があったみたいで、魔法少女になれたけど……君たちは一体」

 

「私達は勇者だ」

 

「私は巫女です」

 

「僕は……勇者なのかな?」

 

「えっと勇者?」

 

「あのゲームとかで出てくるような?」

 

なのはの言葉を聞く限りだと本当にこの世界はバーテックスとは無縁みたいだな。

 

「そうですね。人類の敵と戦うために神様の力を借りて戦う存在という感じですね」

 

「それに私達の世界は……むがっ!?」

 

若葉が何かを言いかけるが、僕は咄嗟に手で口を抑えた。

 

「馬鹿!小学生に聞かせるような内容じゃないだろ」

 

「確かになのはさんの歳ではきついものですね」

 

「でもどう説明するの?」

 

「お兄ちゃん、おまかせします」

 

「僕かよ!」

 

小声で話し合い、僕が考えることになった。とりあえずは……

 

「まぁ僕らの世界はこことはちょっと違う感じで……色々と大変なんだ」

 

「「説明が雑すぎる!!」」

 

ひなたと若葉の二人に突っ込まれる僕。いや、だって……咄嗟に思いつかなくって

 

「えっと聞かないほうが良いってことですか?」

 

「うん、ちょっと色々と辛い話になるから……」

 

「詳しくは聞かないほうが良いね。それで君たちにお願いがあるんだけど」

 

「ユーノ、ここで会ったのは何かの縁だし、僕らも手伝うよ」

 

「えっ?まだ……」

 

話の流れ的に何となくわかったからな。それにもしかしたら千景たちとばったり会えるかもしれないし、この世界に来た理由もわかるかもしれないし

 

若葉たちもまた手伝うことに対しては反対してないみたいだしな

 

「ありがとうございます」

 

「空さん、ひなたさん、若葉さん、友奈さん、よろしくおねがいします」

 

こうして僕らは魔法少女の手伝いをすることになったのだった。

 

 




話がぜんぜん進んでなくってすみません。

次回、彼女が登場です


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03 なのはの友達ともうひとりの魔法少女との出会い

「というわけで今回はこの街の調査でも始めようと思う」

 

朝食を摂り終え、ひなたたちを集めてある議題を出していた。

 

「街の調査……」

 

「そういえば私達は全然この海鳴市を見て回ってなかったよね」

 

「ここに来たときは夜でしたから……それにこの一週間はなのはさんの家で家事や喫茶店のお手伝いだけでしたものね」

 

ひなたの言うとおりここ一週間は家事やら喫茶店での手伝い……あとは鍛錬やジュエルシード集めの手伝いだけで、街を見て回ることが出来なかった。今日は折角の機会なので調査を提案してみた。

 

「とりあえず全員で適当に見て回って……」

 

僕が言い掛けた瞬間、なのはがこっちにやってきた。

 

「空さん、あの少しいいですか?」

 

「どうかしたのか?なのは」

 

「えっと実は今日私……友達の家で遊ぶことになったんですけど、みなさんのことを紹介してほしいって……」

 

なのはの友達に会うってことか……別に構わないけど……みんな街の調査に乗り気だしな……

 

「お兄ちゃん、せっかくですから……」

 

「でも全員で行ったら迷惑だったりするだろ」

 

「それだったら二手に分かれないか?もしも何かあった場合は連絡を取り合えばいいだろ」

 

「うん、それがいいかも」

 

二手に分かれるか。それもいいかもしれないな

 

「えっとその……気にしなくても」

 

「とりあえずジャンケンで分かれるか」

 

「それでしたら、私と若葉ちゃんの二人で街へ行きますから、お兄ちゃんは友奈さんと一緒にどうですか?」

 

「ひなた?じゃんけんで……」

 

「いや、僕は構わないけど」

 

「それじゃ空くん、一緒になのはちゃんと行こう」

 

友奈と一緒か……ひなたの方を見るとひなたはウィンクしていた。気を使ってくれたのかな?

 

「それじゃなのは、僕と友奈で行くことになったから」

 

「えっと……その……」

 

なのはは苦笑いを浮かべていたけど、この組み合わせはまずかったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕らはすぐになのはの苦笑いの意味を理解した。僕と友奈の眼の前にはでかい屋敷だった。

 

「なのはの友達ってお金持ちだったの?」

 

「うん」

 

「大きなお屋敷だね~」

 

友奈は目をキラキラさせて言うけど、僕はと言うときっと庶民的な家だと思っていたからか。物凄い失礼なことを思っていて申し訳なかった。

 

「なのはちゃん」

 

「やっと来た。その子がなのはのペットと居候?」

 

こっちにやってくる長髪の子と金髪の子。彼女たちがなのはの友達か

 

「うん、ユーノくんに、高嶋友奈さんと上里海さん」

 

「初めまして、アリサ・バニングスです」

 

「私は月村すずかです」

 

「それでここはすずかちゃんの家なの」

 

「そっか、よろしくな。それとすずかだっけ?何だかごめん」

 

「ねぇ、何でこの人初対面なのにすずかに謝ってるの?」

 

「えっと……あはは……」

 

「空くん、気にしたら駄目だよ」

 

友奈に励まされながら僕らは屋敷の中へと入っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュエルシードの反応あった」

 

「それじゃこの周辺にあるみたいね」

 

「だとしても広い場所だから見つけるの苦労しそう」

 

「だったらタマたちに任せタマえ!!探し物ぐらいだったらすぐに見つけられるはず」

 

「っていっても未だに若葉さんたちを見つけられてないよね」

 

「本当にこっちに来ているか怪しいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の外でみんなとケーキを食べていると突然ユーノが茂みの中に入っていき、なのはがそれを追っていった。もしかしてジュエルシードでも見つけたのか?

 

「友奈、なのはだけじゃ心配だし」

 

「うん」

 

友奈は頬にクリームを付けながらそう言う。とりあえず僕はクリームを拭いてあげ、追いかけていくのであった。

 

なのはたちの後を追いかけていくとそこには巨大な猫と変身した状態のなのはがいた。あれって……

 

「なのは、どういうことだ?」

 

「えっと……」

 

「た、多分大きくなりたいという夢が叶ってあんな感じに」

 

「可哀相だけど、早くジュエルシード回収しちゃおう」

 

なのはが杖……レイジングハートを構えた瞬間、金髪の少女が突然現れた。

 

「え、魔道師」

 

「一体……」

 

「ジュエルシード、それに私と同じ魔道師。そしてあの人達は……」

 

「まさか、僕同じ世界から来た魔道士!?」

 

金髪少女を見てユーノは驚いた。他にも魔導師っているんだな

 

「じゃあ、狙いはジュエルシード」

 

金髪少女は木の上に降り、僕らを見つめ、手にしている斧型の杖から金色の刃が伸び始めた。

 

「申し訳ないけど、頂いていきます」

 

金髪少女がなのはに襲いかかってきた。なのはは咄嗟に攻撃を防ごうとするが間に合わず、攻撃を喰らってしまい、地面に落ちて倒れてしまった。

 

「…ごめんね」

 

金髪少女が巨大猫に魔法を当て、ジュエルシードを回収しようとしたが、僕と友奈の二人で金髪少女に襲いかかった。

 

「させるか!」

 

「勇者………きゃあ!?」

 

攻撃を仕掛けようとした友奈はどこからともなく現れた人物に吹き飛ばされてしまった。更に僕のところに円盤状の何かと矢が向かってきた。僕は槍で弾くと攻撃してきた相手が誰なのか理解した

 

「どこに行ったかと思ったら……ちゃんと説明してもらおうか。杏、珠子、それに千景……」

 

僕の前に現れた三人……こっちにきてはぐれた伊予島杏、土居珠子、郡千景を僕は睨みつけた。

 

「空さん……すみません。これは……」

 

「というか空、お前のその格好……いつの間に勇者になったんだ」

 

「高嶋さん……ごめんなさい……」

 

互いに対峙……若干一名攻撃した相手が親友だったことに対して落ち込んでいるけど

すると金髪少女が杏たちに近寄り

 

「帰ろう」

 

「あの空さん、事情はちゃんと説明しますので……」

 

「切り札発動!輪入道!」

 

珠子の衣装が神秘的なものに変わり、武器である旋刃盤が大きくなり、三人はそれに乗って金髪少女とともに撤退していった。

 

「あいつら……友奈、大丈夫か?」

 

「ん、うん、なんとか……なのはちゃんは?」

 

「なのはも無事みたいだ」

 

にしても今日だけで結構いろいろとあったな……帰ったらひなた達にも言っておかないと……

 

ただ心配なのは……

 

「千景の奴、思いつめてなければいいけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

「えっと……」

 

金髪の女の子……フェイトちゃんは膝を抱えて部屋の隅にいる千景さんのことを心配していた

 

「高嶋さん、ごめんなさい……ごめんなさい」

 

「いや、千景……気にするなって、友奈は怒ってないと思うぞ」

 

「そ、そうですよ……」

 

「許してくれるかな……」

 

「あの……無理には付き合わなくっていいんですよ。ジュエルシードを集めるのは私の目的だから……」

 

「ううん、フェイトちゃん。大丈夫ですよ」

 

「タマたちは恩返しをしたいからな」

 

「そうよ……そのためだったら……はぁ……」

 

千景さんは未だに落ち込んでいるけど、この落ち込みよう……まさか切り札の影響だったりということは……

一度空さんと話さないと……

 

 

 



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04 空式トレーニングと温泉と再会

もう一人の魔法少女と千景たちのことを帰ってからひなたと若葉の二人に報告した僕。二人はと言うと

 

「みなさんが無事ということですね」

 

「だが敵対することに……」

 

無事だったという安心感と敵対してしまっているという不安が二人は感じていた。

友奈はというと……

 

「でも事情があるから……」

 

「まぁそこら辺は後々聞くとして、僕としてはこの状況は丁度いいかもしれないな」

 

「ちょうどいいって……」

 

「あぁ、お兄ちゃん的には丁度いいかもしれませんね」

 

「そっか、空君はそうだもんね」

 

ひなたと友奈の二人は理解してくれたみたいだな。あっちでは僕の役割は勇者のサポートということで、訓練等のメニュー作りや教官としての役割を担っている。

とはいえ一般人なので模擬戦では若葉たちは勇者の姿ではなく、普通の格好での戦いになるから正確なことはわからないからな……

 

「これから先の事を考えて、朝の鍛錬のメニューも考え直さないとな……」

 

何だかワクワクしてきたな。

 

「お兄ちゃんの鍛錬メニュー……」

 

「正直千景たちが羨ましいが……」

 

「あはは、でもそんなにひどいものじゃないから大丈夫だと思うけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日が経ったある日、なのはにある話を聞かされていた。

 

「温泉旅行?」

 

「うん、今度みんなで温泉旅行に……それでお母さんたちが空さんも良かったらって」

 

「僕たちもか……居候なのにいいのか?」

 

「まぁまぁお兄ちゃん。いいじゃないですか。たまにはこういう休息も必要ですよ」

 

「そうだな……」

 

「あの所で……」

 

ユーノがある場所を見つめていた。ユーノが見つめていた先には倒れた若葉と友奈の二人がいた。

 

「何をしていたんですか?」

 

「鍛錬」

 

「お兄ちゃん式トレーニングです。お兄ちゃんはそういったことが得意だったりしますからね」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

「まぁ体がぶっ壊れない程度には抑えてるから大丈夫だよ」

 

僕がそう言うとなのはは苦笑いを、ユーノはもの凄く怖がっている様子だった。

 

「休息日ということでいいか。分かってると思うけどその間は鍛錬はやらないように!やった場合は……今日以上のメニューをやってもらうから」

 

「ひ、久しぶりとはいえ……きついな」

 

「あはは、でも空くんも大変だよね」

 

「あぁ、分かってる。鍛錬メニューを作るにあたって大変な思いをしているしな……」

 

「ほら、喋ってる暇があったらしっかり休憩を取れ」

 

「「はい」」

 

あのことがきっかけでみんなに知られてるせいか、結構恥ずかしいな……

僕がメニュー作りをするにあたって、自分自身で試していることとかを……

 

「そういえばお兄ちゃん、もう2つの鍵は何か分かったんですか?」

 

僕は3つの鍵を取り出した。一つは勇者の姿になれる鍵、あと2つはまだわからない……

 

「そのうち分かるだろ」

 

「そうですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

それからまた数日が経ち、温泉旅館に来た僕ら。早速温泉に入ることになった僕ら。

僕はというとなのはのお兄さんである恭弥さんとお父さんの士郎さんと一緒に入っていた。

 

「何だかすみません。僕らまで誘ってもらって」

 

「いや、君たちももう家族みたいなものだからね」

 

「それに鍛錬にも付き合ってもらってるからね」

 

恭弥さんと姉の美由紀さんとはたまに模擬戦やらなんやらしてるけど、この人達って一般人だよな。明らかに戦闘力が……

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

「あの、なのは、やっぱり、僕士郎さんと一緒の方に…」

 

「えぇ~、一緒に入ろうよ」

 

「いや、ほら、だって」

 

なのはさんとユーノくんが何か小声で話しているけど、聞き取れなかった。というよりかは私としてはこっちのほうが心配だった。

 

「「………」」

 

「みんなも来てたんだね」

 

「まさかこのような場所で会うことになるとはな」

 

「驚きですね」

 

温泉に入るとそこには杏さんたちも入っていた。千景さんは一緒に入ることを少し遠慮していたらしいからこの場にはいなかった。

 

「えっと……」

 

「まぁこうして再会できてよかったんだろうけどさ……事情とか聞かないのか?」

 

「珠子……事情は出来れば全員が集まってからだ。と空が言っていたからな」

 

「空くんはちゃんと全員で話し合おうって」

 

「それまでは私達は何も聞きません。それにお兄ちゃんはこの状況をいい機会だと思っていますから……鍛錬面として」

 

「あいつ、どんだけだよ」

 

「空さんらしいですね」

 

「そういえばぐんちゃんは?」

 

「千景はゲーセンにいるけど……そうだ!友奈、会いに行ってやれよ」

 

「そうですね。いいかもしれません」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「何してるんだ?」

 

温泉から上がり、適当にぶらついていると死んだ目をしてゲームをしている千景を発見した。

 

「上里さん……貴方がいるということは高嶋さん達もいるみたいね」

 

「あぁ偶然だけど……それでまだ気にしてるのか?」

 

「………」

 

未だに友奈を攻撃したことを気にしてるのか……にしては気にしすぎだ。これはもしかして前々から杏に言われていた切り札の影響でもあるのか?

 

「千景……」

 

「高嶋さんは怒ってるよね」

 

「……僕が言ってもお前は信じられないだろうな」

 

「………」

 

沈黙が重い……どうしたものか……

 

「見つけた!ぐんちゃん!」

 

すると浴衣姿の友奈がこっちにやってきた。千景は逃げ出そうとしたが、僕が腕を掴んだ。

 

「逃げるな」

 

「だって……」

 

「ぐんちゃん、どうして逃げるの?」

 

「高嶋さん……だって私、高嶋さんにひどいことを……」

 

「ひどいこと?ぐんちゃん、私にひどいことしてないよ?」

 

「でも……攻撃して……」

 

落ち込む千景。すると友奈は千景にチョップを喰らわした。

 

「痛い……」

 

「ぐんちゃん、私のことを信じてる?」

 

「高嶋さん……信じてるけど……」

 

「それだったら大丈夫だよ。あのときは私だって気づいてなかったから攻撃しちゃったんだよね。だから怒ってないよ……信じて」

 

「高嶋さん………」

 

「それにね。空くんはこうして私達が戦うのは悪いことじゃないって考えてるから……」

 

「……それは貴方的に鍛錬みたいなものだと思ってるから?」

 

「まぁな。それにお前たちにも何かしら事情があるんだろ。だったら別に気にすることじゃないからな」

 

「……貴方らしいわね」

 

「それと切り札だけど、なんか変な感じはないか?」

 

「変な感じ?」

 

「肉体疲労とかがあるのは分かってるけど、精神的に何か感じたりとかは?」

 

「精神的に……私の性格的な問題だと思っていたけど、何故か嫌な方向に考えてしまうようになっていたわ……それが切り札の後遺症だっていうの?」

 

「……わからないけど、後の二人にも伝えておいてくれ。精神的に辛くなったら気持ちを強くもてって」

 

「わかったわ」

 

千景の方はどうにかなったけど、千景たちがここにいるということはジュエルシードがあるということだよな。だったらなのは達にも言わないとな

 

 

 



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05 手にした魔法の力

友奈と共に若葉たちの所へと戻るとどうにもなのはが見知らぬ女性に絡まれたみたいだった。

 

「それで若葉が追い払ったのか?」

 

「いや、杏と珠子がその女性と話してすぐにどこかへ行ったみたいだ」

 

「もしかしたらこの間のあの子の知り合いなのかな?」

 

なのはが言うあの子って、あの金髪の子か……

千景にはその子がどういった理由でジュエルシードを集めているのか聞いてもらうことになったけど……

 

「とりあえず千景たちがここにいるって言うことはジュエルシードがあるっていうことだな。今晩あたりにでも探して見るか」

 

「うん」

 

「それはそうと……ユーノはのぼせたのか?」

 

「そうみたいですね」

 

僕とひなたはぐったりしているユーノを見つめた。のぼせるなんてまだまだ子供だな……

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、僕らは外に出てジュエルシードを探しているとそこには金髪の少女と赤毛の女性、そして千景たちの姿があった。

 

「ありゃりゃ、見つかったみたいだね。フェイト」

 

「うん、それにその人達は……」

 

「私達の仲間よ。だけど……」

 

「タマ達はフェイトに協力するから安心しろって」

 

「そういうことですから……空さんたちには悪いですけど……」

 

千景たちは武器を構えた。まぁそうするように僕が伝えたから仕方ないけどさ……さて相手するのは……

 

「若葉は千景を、友奈は珠子を、僕は杏と戦う。ひなたは下がってろ」

 

「わかりました」

 

戦う相手を決めるとなのははあることを言い出した。

 

「あ、あの……話し合いで何とかできないかな?」

 

なのははフェイトという少女を見つめながらそう言うが、フェイトは……

 

「…私達はジュエルシードを集めなきゃいけない。それは貴女も同じ事。だったら私達はジュエルシードを求めて争う敵同士って事になるね」

 

「だから!そんな勝手に決めない為に話し合いって必要なんだと思う!!」

 

フェイトの言葉に、なのはは声を大きくして言った。

だがフェイトは目を閉じ、

 

「言葉だけじゃ…何も変わらない……伝わらない!」

 

なのはたちも戦いを始めた。そして僕らもだった。

 

若葉と千景の二人は互いに武器をぶつけ合い、互いに一歩も引かなかった。

 

「やるな!千景!」

 

「こういう状況下であなたと本気で戦うなんて思っても見なかったけど……」

 

千景は大鎌を下から大きく振り、若葉は後ろへと下がる

 

「こうして戦ってみるのも悪くないわね」

 

「あぁ!」

 

若葉と千景の実力はだいたい同じくらいか……いや、千景のほうが少しだけ冷静な分、若葉を押してる感じだな。

さて友奈と珠子の方は……

 

「ハァ!」

 

「ヤア!」

 

珠子の攻撃を友奈は拳で防いでいく。珠子自身の攻撃は強力そうに見えてスピードがそこまで早くない。友奈は少しずつだけど距離を詰めていっている。

あっちは問題はなさそうだな。

 

さて僕の方はと言うと……

 

「物陰に隠れながら遠距離からの攻撃か……それに一度撃つごとに移動している……」

 

「空さんから教わったことですよ」

 

僕はどこからともなく襲ってくる矢を槍で防いでいった。居場所がつかめないとなると結構厄介だな……

 

「空さんが勇者になったのは驚きましたが、距離さえ取っていれば……」

 

「と思ってると痛い目にあうぞ」

 

「分かっています!」

 

矢をもう一度弾く。杏は教えたことをしっかり生かしているな。さてこのままだと負けてしまうな。僕にも遠距離の攻撃方法があればいいんだけど……

 

そんなときだった。三本あるうちの鍵の一つが白く輝き出した。

 

「これは……使ってみろか……それだったら!」

 

僕は勇者の姿から元の姿に戻り、鍵を手にした。その瞬間、白い衣装に変わり、鍵も白い杖に変わった。

 

「この姿……なのはと一緒か……」

 

『初めまして、マスター』

 

杖が僕に語りかけてきた。これってなのはの持つレイジングハートと同じインテリジェント・デバイスなのか?

 

「お前は?」

 

『名はありません。私は貴方の手にした力の一つです。お好きなようにお付けください』

 

「それだったら……アネモネってどうだ?」

 

『アネモネですか……』

 

「僕の好きな花だし、僕が勇者のときの紋章がそうだからな」

 

『わかりました。よろしくマスター』

 

僕は杖を構えると足元にアネモネの紋章が描かれた魔法陣みたいなものが現れ、杖の先からいくつもの魔力弾が現れた

 

「なのはみたいに扱えるってことか。それじゃ……」

 

魔力弾を飛ばした。とりあえずは杏の居場所を見つけないとな……

すると魔力弾の一つが空へと上がった。

 

「見つけたみたいだな。魔力弾全部……杏に向けて……」

 

放った魔力弾が杏のところへ向かい、しばらくしてから杏の悲鳴が聞こえるのであった。

 

「こっちは終わったみたいだな。さて……なのはは大丈夫か?」

 

なのはの方を見るとレイジングハートがジュエルシードをフェイトに出していた。

ということはなのはが負けちゃったということか……

 

「レイジングハート…何を!?」

 

「きっと主人思いの良い子なんだよ」

 

フェイトがジュエルシードを受け取っていると僕は彼女に近づいた

 

「悪いけど目的は達成した。戦うって言うなら」

 

「いや、やめておくよ。魔導師になったばっかりだし、正直勝てる気がしないな」

 

「そう……できればもう、私達の前に現れないで。今度会ったら、きっと加減なんて出来ない」

 

振り向かずに、なのはにそう言った。

 

「名前…あなたの名前は!?」

 

「フェイト。フェイト・テスタロッサ」

 

「わ…私は」

 

ファイトは話を聞かず、赤毛の女性は杏たちを回収してどこかへ消えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね。ユーノくん」

 

「いや、なのはが無事ならいいんだ。それにしても空さん」

 

「ん?」

 

「君が魔導師になったのは驚きだけど、彼女は君よりも強いってことなのかな?」

 

もしかして僕が勝てる気がしないって言ったことか?

 

「まぁ魔導師として戦うとしたら勝てる気はしないけど、勇者としてならまだ勝ち目がある。あのままだとまた戦うことになるからそう言うしかなかっただけだ」

 

「そうか……」

 

「若葉達は?」

 

「すまない。追い詰めはしたものの……」

 

「あはは、引き分けだったよ……杏ちゃん、空くんと戦いながら援護してたから」

 

「ふむ」

 

杏も中々やるもんだな。

 

「まぁ気持ちを切り替えて次頑張るか……」

 

 



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06 友奈の頑張り

この間の温泉旅行から数日がたった。僕は千景たちに連絡を取り近くの公園であっていた。

 

「それじゃ今のところは特に……」

 

「そうなんだよな~」

 

「すみません。あの子はお母さんのためって言って……」

 

「母親のために……」

 

千景は暗い顔をしていた。僕の役割上、みんなの家庭の事情やら何やら知っていたりするから、千景が暗い顔をしている理由がわかる

 

「あんまり思いつめたりするなよ。千景」

 

「分かってるわよ……」

 

「あの空さん、フェイトちゃんは今晩動くと言ってました。だから……」

 

「なのはたちにも伝えておくよ」

 

「はい、それと切り札のことなんですが……」

 

杏自身、切り札のことが気になってるみたいだな。僕も確定していないから予想した上での話をした。

 

「あくまで予想だけど、切り札はどうにも肉体の疲労……そして精神異常をもたらせる感じだと思う」

 

「やっぱり……控えたほうがいいですよね」

 

「千景、今の所は大丈夫そうか?」

 

「え、えぇ、前みたいに嫌なことを考えなくなったわ……」

 

「とりあえず全員、心を強く持ったほうがいい。これから先の考えればな」

 

千景たちが頷き、ここら辺で解散しようとした時、珠子があることを言い出した

 

「そういえば空は何で勇者になったり、魔導師になったりできるんだ?」

 

「ん?言ってなかったな。この鍵のおかげかも知れない」

 

僕は三人に鍵を見せた。この鍵を手にしてから僕は戦う力を手にしていた。とはいえ、魔導師としてはまだまだだけどね

 

「不思議な事があるものね……」

 

「よし、今晩の戦いは私と戦え!空!杏の敵討ちだ!」

 

「タマっち先輩、敵討ちって……」

 

「まぁいいぞ。油断するなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三人と別れて、家に帰ろうとすると友奈が待っていた。

 

「どうしたんだ?友奈?」

 

「あっ、空君。ぐんちゃんたちと会ってたんだよね」

 

「あぁ、友奈も会えばいいのに……」

 

「う~ん、会いたかったけど、空君の邪魔をしたら駄目かなって思って……」

 

「そっか」

 

僕は友奈のことをそっと撫でた

 

「空君…恥ずかしいよ」

 

「あ、ごめん」

 

ついついひなたにやる感じで頭を撫でてしまった……

 

「空君はいっぱい頑張ってるね」

 

「頑張ってるって……」

 

「私達の訓練メニューとか……私達が無理をしてないとか落ち込んでないとか……いつも気にかけてくれてありがとうね」

 

「友奈……」

 

友奈の笑顔はやっぱり眩しいな……僕の役割はかなりきついものだ。だけど友奈の笑顔を見るたびに……僕は前を向いていける。

 

「あのさ、友奈」

 

「何?」

 

「お前に伝えたいことが……」

 

「空さん~友奈さん~」

 

僕があることを言いかけた瞬間、なのはの声が聞こえてきた。なのはとユーノは僕を見つけてこっちに駆け寄ってきた。

 

「何かあったんですか?」

 

「ううん、ちょっと散歩してて……」

 

「あぁ、うん、何にもなかったよ……うん」

 

「空さん、何だか落ち込んでるけど大丈夫ですか?」

 

ユーノが心配そうに声をかけてきた。ユーノ、お前もいつかは分かるはずだからな……今は伝えないようにしておくよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはとユーノの二人に今夜またジュエルシードが現れることを話しておき、若葉たちと合流して警戒していると空が暗くなり、海では激しく雷鳴が轟いた。

 

「こ…これは!?」

 

別々に探してたユーノが街の異変に驚く。

 

「こんな街中で強制発動!?く…!広域結界!間に合え!」

 

ユーノの足元に緑色の魔法陣が展開され、街周辺に結界が張られた。これで街への被害はないということか

 

「街中でジュエルシードを発見させるためにって……」

 

フェイトって子は目的のために手段を選ばないのか?いや、考えられることとしたら……

 

「急いでる感じがする……」

 

僕は勇者に変身し、そのまま駆け出していくと珠子が僕の前に立ちはだかった。

 

「約束しただろ。今回は私と戦うって」

 

「あぁそうだったな……」

 

僕と珠子は戦いを始めるのであった

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

私はフェイトちゃんと戦っていた。お互い目的がある同士だから、ぶつかり合うのは仕方ないのかもしれない…

私は真っ直ぐフェイトちゃんを見つめた。

 

「この間は自己紹介できなかったけど…私、なのは!高町なのは!私立聖祥大付属小学校三年生!」

 

名前を告げるがフェイトちゃんはバルディッシュを鎌の形に変形させた。

 

なのは「!!」

 

レイジングハートを構え、ぶつかり合っていった。どうして……どうしてそんなに寂しい眼をしてるのか…

 

私ははフェイトちゃんの攻撃を避けながら後ろに回った。ディバインシューターを放つが、フェイトちゃんは障壁を張って攻撃を防いでいた

 

「フェイトちゃん!」

 

「!!」

 

「話し合いだけじゃ…言葉だけじゃ何も変わらないって言ってたけど…話さないと、言葉にしないと伝わらない事だってきっとあるよ!」

 

「…………」

 

「何も知らないのにぶつかり合うのは私、嫌だ!私がジュエルシードを集めるのは、それがユーノ君の探し物だから。最初はユーノ君のお手伝いで集めてたけど、ジュエルシードの力で街の人や大切な人に危険が降り懸かったら嫌だから!」

 

「…………」

 

私は自分の想いを必死にフェイトちゃんに伝えた。

 

「これが…私の理由!」

 

「…私は……」

 

フェイトちゃんは戸惑いながら口を開こうとした瞬間、

 

「フェイト!答えなくていい!!」

 

ユーノくんと戦っていた女の人が止めに入った。

 

「優しくしてくれる人達の所で、ヌクヌクと甘ったれて過ごしてきたガキんちょに何も教えなくていい!!あたし達の最優先事項はジュエルシードの捕獲だよ!」

 

さっきまで戸惑っていたフェイトちゃんは急いで封印したジュエルシードのところへ向かった。私もすぐに追いかけ、同時にジュエルシードの前で自分たちのデバイスがぶつかりあった瞬間、互いのデバイスにヒビが入り、ジュエルシードから強烈な光が放たれてきた。

 

「フェイト!」

 

「なのは!」

 

ユーノくんたちが声を掛ける中、フェイトちゃんはデバイスを待機状態に戻し、ジュエルシードを掴み取って抑え込もうとしていた。

 

「フェイトちゃん!?」

 

「あれは……珠子!戦いは中止だ!あのフェイトって子が無茶をしてるぞ」

 

「あいつ……杏!千景!」

 

「若葉!友……」

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

ジュエルシードを抑え込もうとするフェイトだったが僕が友奈の名前を呼ぼうとした瞬間、フェイトを突き飛ばし、代わりに友奈が抑え込もうとしていた。

 

「無茶だ!?魔導師じゃないのにジュエルシードを抑え込もうとするなんて……」

 

「高嶋さん!?」

 

「……切り札発動!!一目連!!」

 

友奈の衣装が変わり、片目を隠した姿へと変わった。あれが友奈の……精霊を肉体に宿すことで発現する……切り札一目連。

 

友奈が必死に抑え込んでいくとジュエルシードの光が消えていった。

 

「……貴方は……」

 

「私は高嶋友奈……これ、もう大丈夫だよね」

 

友奈は笑顔でフェイトにジュエルシードを渡し、フェイトは困惑しながらもジュエルシードを受け取り、どこかへ帰っていった。

 

「高嶋さん……」

 

「おい、千景、帰るぞ」

 

「あの空さん、後で」

 

「分かってる」

 

僕は千景たち三人と赤毛の女性を見送り、友奈に近寄った

 

「友奈……お前……」

 

「あはは、何とかなったね……」

 

友奈は弱々しい笑顔でそう告げた瞬間、血を流しながらその場に倒れ込んだ

 

「友奈!?」

 

「切り札の反動!?」

 

「いや、違う……友奈さんはもしかして無理やりジュエルシードの暴走を抑え込んだからその反動が……」

 

「そんな……ユーノくん……」

 

「僕は回復魔法は……」

 

僕、若葉、なのは、ユーノが困惑する中、ひなたはそっと倒れた友奈に触れた。その瞬間、友奈の傷がふさがっていった。

 

「ひなた……お前……」

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃんが勇者の力と魔法の力を手にしたように……私も……」

 

ひなたは僕らに桃色の鍵を見せた。僕が持っている青、赤、白の鍵と同じ……

 

「この力は巫女としての力を上げているのかもしれません。だから……」

 

友奈の傷は全てふさがっていくと同時にひなたはそのまま倒れ込んでしまった。

 

「この鍵……本当になんなんだよ」

 

僕はただただそうつぶやくしか出来なかった。

 




空のもつ鍵……青は勇者に変身し、赤は魔導師。白はそのうちです



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07 新たな魔導師

「ん……」

 

「ようやく起きたか。ひなた」

 

眠り続けていたひなたが目を覚ました。あの時友奈を治してから意識がなくなっていて心配していたけど大丈夫そうだな

 

「お兄ちゃん……」

 

「鍵のこと……どうして黙ってた?」

 

「ごめんなさい……」

 

ひなたはうつむきながら謝っていた。まぁ僕らに心配をかけないようにしていたんだろうけど……

 

「これからはちゃんと話せ……僕らは兄妹なんだからさ」

 

「……はい」

 

ひなたは僕にそう言って微笑んだ。全く心配をかけさせる妹だな

 

「ひなた、大丈夫か?」

 

「ひなちゃん、大丈夫なの?」

 

すると若葉と友奈の二人が道場に入ってきた。ひなたは二人に心配をかけたことを謝るのであった。

 

「そうだ。あいつらにも連絡しておくか」

 

僕は端末を取り出し、千景たちに連絡をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

上里くんから高嶋さんのケガのことや上里さんの力について連絡が入ってきた。無事で良かった

 

「どうしたんだい?千景」

 

「アルフ……友達が無事だったって連絡が入ったの」

 

「そっか……あの友奈って子、無事だったんだ」

 

「うん、そういえばフェイトは?あの子も心配してたけど」

 

「フェイトなら眠ってる……疲れちゃったんだろうね」

 

「そう……」

 

伊予島さんと土居さんの二人は出かけているから、今は私達だけしかこのマンションにいない。

するとアルフはうつむきながら私にあることをお願いしてきた。

 

「あの…さ……ちょっと頼み事があるんだ」

 

「頼み事?」

 

「あぁ、明日なんだけどフェイトの母親のところに行くんだけど……一緒に来てくれないか?」

 

「それだったら二人にも言って……」

 

「いや、出来れば千景だけ……千景だけにお願いしたいんだ」

 

「……わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

数日がたったある日のこと、なのはのデバイス、レイジングハートも修復が終わり、僕らは海が見える公園に来ていた。ユーノ曰くここにジュエルシードの反応があったらしい

 

「ここに、ジュエルシードがあるんだよね」

 

「うん、きっとあの子も来ているはずだよ」

 

「千景たちも来てるだろうけど……友奈、まだ本調子じゃないからひなたを守っていてくれないか?」

 

「えっ?でも……」

 

「この間みたいに無理したりして……千景の奴、泣きそうな顔をしてたんだから心配かけてやるなよ」

 

「お兄ちゃんも心配してましたよ」

 

「空の場合はひなたのこともあったからな」

 

ひなたと若葉が僕がからかう中、なのはがあるものを発見した。そこには木の化物が暴れまくっていた。

そして少し離れたところにフェイトと千景たちも来ていた。

 

「……なのは、ユーノ……今回は僕らが頑張る」

 

「頑張るって……」

 

「空さんと若葉さんの二人でですか?」

 

なのはが心配そうに僕らのことを見ていた。別に二人で戦おうとはしてない。前にユーノに教わった念話通信を千景たちに向かってやってみた

 

『聞こえるか?千景、珠子、杏』

 

『上里くんの声が頭に……』

 

『何だ?魔導師の力みたいなものか?』

 

『そんな所。変身してなくってもある程度のことはできるようになった』

 

『空さん……何だか色々とすごいですね』

 

『それで悪いんだけど、この木の化物は僕らで倒そうと思うんだけど手伝ってもらえないか?』

 

『まじかよ!?』

 

『私達だけで……』

 

『わかったわ。高嶋さんにもフェイトにも負担をかけられない』

 

珍しいな。千景が友奈の事以外気にかけたりするなんて……まぁいいや

 

『僕が指示を出す!もしも間違っていたらすぐに言ってくれ』

 

僕は通信を切り、若葉に指示を出した。

 

「若葉、みんなとうまい具合にあの化物にダメージを与えてくれ」

 

「わかった。お前は?」

 

「僕は……」

 

魔導師に変身し、僕は杖を構えた。

 

「やってみたいことがあるから……動かないでおく」

 

「わかった!」

 

若葉は生太刀を抜き、駆け出していった。木の化物は若葉に向かって幹をムチのようにしながら攻撃を仕掛けていったが、どこからともなく飛んできたものに切り裂かれていった。

 

「一緒に戦うのって何だか久しぶりだな。若葉」

 

「珠子……あぁ!」

 

若葉と珠子の二人は協力しながら木の化物の幹を切り裂いていく。

 

『千景!杏!あいつの注意を引け』

 

「わかったわ」

 

「わかりました」

 

千景は大鎌で木の化物を切りつけていき、杏は矢で牽制していく。

 

「すごい……みんなすごいよ」

 

「お兄ちゃんの指示でこんなふうに……」

 

「空さん、貴方は一体……」

 

「元々戦略を練るのとかは得意だからな……こうして実践でやるのは初めてだけど……さてそろそろ」

 

僕は杖の先に大きな赤色の魔力弾をため始め、その更に先には3つほどの小さな魔力弾を作り出し、魔力でつなぎ始めていき槍の形に変えた。

 

「全員!左右に避けろ!バスタースピア!!発射!」

 

砲撃が放たれると同時に若葉たちは左右に避け、僕が放った魔砲は木の化物を貫いた。

 

「なのは!今だ!」

 

「は、はい!ジュエルシード、シリアル7!」

 

「封印!」

 

なのはとフェイトの二人が同時にジュエルシードを封印し、二人は空に上って対峙していた。

 

「………ジュエルシードには衝撃を与えたらいけないみたいだ」

 

「うん。この間みたいになったら、レイジングハートも、フェイトちゃんのバルディッシュも可哀相だしね」

 

「…だけど、譲れないから」

 

「私は…フェイトちゃんと話がしたいだけなんだけど…」

 

なのはとフェイトの二人がデバイスを構え始めた。いや衝撃を与えたらいけないって言ってたのに、近くで戦うなよ……

 

「止めるしかないな……」

 

僕が魔力弾で二人を止めようとしたが、二人は既に互いのデバイスをぶつけ合おうとしていた。間に合わないと思った瞬間

 

「ストップだ!」

 

どこからともなく現れた黒いジャケットを着た少年が二人の間に入って止めてきた。

 

「時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか。二人とも、まずは武器を引くんだ」

 

クロノという少年に従うようになのはは引いた。管理局って……

 

「警察みたいなものなのか?」

 

「あぁそんな所……」

 

「このまま戦闘行為を続けるなら…」

 

クロノが何かを言いかけた瞬間、空からオレンジ色の魔力弾が降ってきた。あれはアルフって奴の魔法なのか?

 

「フェイト、みんな逃げるよ!」

 

「邪魔をすると言うなら」

 

クロノがフェイトとアルフの二人を何かで縛り上げた。あれってバインドだっけ?

 

「上里くん」

 

「千景?どうしたんだ?」

 

「……こんなこと頼むのはおかしいと思うけど、あの子達を逃してあげて………」

 

「………何か理由があるんだな」

 

「えぇ……」

 

「わかった」

 

僕はクロノに向かって魔力弾を放った。クロノは咄嗟に障壁を張って防いでいた。

 

「何のつもりだ!!」

 

「手が滑った」

 

「何だと!!」

 

クロノの注意を引いているとフェイトとアルフの二人はバインドから抜け出してどこかへ去っていった。

 

「逃したか……君たちは一体何のつもりだ」

 

「いや、手が滑ったんだよ」

 

「そんな言い訳が……」

 

怒っているクロノだが、急に何かに気が付いた。

 

「……聞きたいことがある。君たちは勇者なのか?」

 

何でこいつが勇者のことを知ってるんだ?僕は若葉たちの方を見て、みんなが頷いた。

 

「そうだけど……」

 

「だとしたら……悪いけど来てほしいところがあるんだ」

 

僕らはクロノの言うとおりにすることになり、彼に着いていくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦闘行動は迅速に停止。ロストロギアの確保も終了。よしとしましょう。事情もいろいろ聞けそうだしね」

 

緑色の長髪の女性がモニターを眺めながらそう言うと、その女性の後ろに二人の少女がいた

 

「もしかしたらって思ったら」

 

「うん、この人達は四国の……それにあの男の子が持ってる鍵って」

 

「みーちゃんが持ってるやつと一緒だね」

 

二人の少女の内、一人が手にしていたのは緑色の鍵だった。

 



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08 諏訪の勇者との再会

僕たちはクロノに着いていき、次元空間航行艦船『アースラ』に来ていた。

 

「ああ。もうバリアジャケットとデバイスを解除しても平気だよ」

 

「あっ、そうですね」

 

なのはが変身を解き、僕たちも変身を解くとクロノはユーノのことを見た。

 

「君も、元の姿に戻ってもいいんじゃないかな?」

 

「ああ、そういえばそうですね。すっかり忘れてました」

 

「え?」

 

僕たちが首を傾げると、ユーノの体は光り輝き、なのはとそう変わらない歳の少年に戻った。

 

「ふぅ。なのはにこの姿を見せるのは久しぶりになるのかな?」

 

「ふえええええええ!?」

 

なのはは思いっきり驚いていた。というかなのは知らなかったのか……

 

「な…なのは?」

 

「ユーノ君って…ユーノ君って…!人間だったの」

 

「どうやら君たちの間で、見解の相違があったみたいだね」

 

「えっと…なのは、僕達が初めて会った時、僕はこの姿じゃ?」

 

「ち…違う違う!最初からフェレットだったよ?!」

 

「ああっ!そういえば、この姿まだ見せてなかった」

 

「だ…だよね?ビックリした!?」

 

まぁ驚くのも無理も無いよな。僕らも驚いてるし……だけど珠子があることをいい出した。

 

「そういえばユーノって私らと温泉に入らなかったか?」

 

「タマっち先輩……たしかにそうだけど……」

 

珠子の言葉を聞き、なのはは顔を真赤にし、友奈、若葉、ひなたは苦笑いをし、千景から殺気が……溢れていなかった。

 

「何だ?怒ったりしないのか?」

 

「別に……彼の場合は動物の姿でやったことだし、お互い彼が人間だって知らなかったから事故みたいなものじゃないの?」

 

「ならいいけど……」

 

てっきり友奈の裸を見たことで怒り出すかと思ったんだけどな……とりあえず僕はユーノの肩を叩き

 

「ユーノ、今のうちだけだから女の子の裸を見て許されるのは」

 

「空さん、お願いだから変なことを……」

 

「まぁたまに私とお兄ちゃんは一緒にお風呂に入ってますから、兄妹ならまだ許されるんじゃないんですか?」

 

「そうだったな」

 

『いやいやいやいや、そっちもおかしいから』

 

若葉、杏、珠子の三人が思いっきりツッコミを入れるのであった。別に兄妹なんだし、それに嫌だったらひなたは拒否するから……

 

「んんっ、話はもういいかい?君たちには今から艦長にあってもらう」

 

「そういえばクロノ。何で僕らが勇者だってわかったんだ?」

 

「それについてもだ」

 

僕らはクロノに案内された部屋に入るとそこは、、盆栽やお茶の道具、畳や獅子脅しが置かれていた。そして畳の上には緑色の髪の女性と二人の少女が座っていた。

 

「艦長。来てもらいました」

 

「ようこそ。まぁ皆さんとりあえず座って楽にしてくださいね」

 

「はぁ……」

 

全員が畳に座る中、若葉だけは立ち尽くしていた。

 

「貴方は……白鳥さんか?」

 

「やっぱり乃木さんだったんだね」

 

白鳥?もしかして諏訪の勇者か?その隣りにいるのはもしかして巫女の藤森水都なのか?

 

「やはり知り合いだったみたいね。彼女たちは突然アースラに現れたの」

 

「僕らは彼女たちを保護し、事情を聞いたんだ」

 

「だから勇者について知っていたんだな」

 

そこら辺は納得いった。とりあえず若葉に再会を喜びあうのは後にするように伝え、話を聞くことにした。

 

「私は時空管理局提督『アースラ』の艦長、リンディ・ハラオウンです」

 

僕らは互いに自己紹介を終わらせ、ユーノがジュエルシードを集めていたことを話した

 

「まぁそうだったの。あのロストロギア、ジュエルシードを発掘したのは貴方だったんですね」

 

話を聞き終えたリンディが言った。

 

「…それで僕が回収しようと…」

 

「立派だわ」

 

「だけど同時に無謀でもある!」

 

「あの『ロストロギア』って何なんですか?」

 

僕らはロストロギアについて改めて説明を受けた。

次元空間の中には幾つもの世界が存在する。その中には他の世界よりも進化しすぎた世界がある。その世界を滅ぼした危険な技術の遺産。それらを総称して『ロストロギア』と呼ぶ。使い方によっては世界どころか次元空間を滅ぼす程の力になるらしい

 

「なるほどな。それで僕らが元の世界に戻る方法については?」

 

「それについては……」

 

「まだ調査中なのよね。貴方達の世界も大変みたいだし、なるべく急ぐわ」

 

「大変?」

 

「いい機会だし、なのはやユーノにはちゃんと話しておくか」

 

僕らの世界は突然現れた天の使い……バーテックスと呼ばれる化物に人類は滅ぼされかけた。そんな中人類を守ろうとするいくつもの土着神が集合した存在、神樹様に認められ、バーテックスと戦う力を授かったのは若葉たち勇者とひなたたち巫女だった。

僕らは大きな襲撃を何とか退け、他の地方の生存者を探すことになった。

 

「その時に僕らはこの世界に来たって言うことだ」

 

「次元転移系の何かに巻き込まれたということね」

 

「それに君たちの世界は言うなれば平行世界みたいだね……」

 

「まぁ帰るまでの間はジュエルシードの集めの方は手伝うよ。なのはもそうだろ」

 

「あ、はい」

 

「だが君たちは戦う力があっても……」

 

「まぁいいじゃない。彼らは断られても関わってくるみたいだしね。これからよろしくね」

 

リンディさんは握手を求めてきた。僕はそれに応じ、これからも協力することになったのだった。



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09 自分たちが成すべきこと

僕らがアースラに来てから数日が経った。今はアースラの食堂で、僕らは歌野たちからこっちに来た経緯について話を聞いていた。

 

「私達はバーテックスによって追い詰められてたんだけど……寸前の所でこっちに来たんだよね」

 

「本当にギリギリだった……それにうたのんは重症で保護された後は暫くの間治療されていたの」

 

「そうだったのか……だけどこうして会えたのは嬉しいと思ってるよ。白鳥さん」

 

「ノンノン、こうして出会えて、一緒に戦うことになったんだからさ。名字とかさん付けは良いと思うんだよね」

 

「そっか……では歌野。これからは一緒に」

 

「OK」

 

若葉と歌野の二人は互いに握手を交わすのであった。そしてひなたと水都の二人もまた

 

「お互い巫女同士ですから、二人みたいにね」

 

「は、はい」

 

何とか仲良くなれそうだな。するとクロノが食堂に入ってきて鍵を渡してきた

 

「君に言われて調べてみたけど、本当に妙なものだな」

 

「というと?」

 

「材質は木で出来ているが、その一つ一つに魔力とは全く違うものを感じ取っている。君たちの言う神樹様の力と言うべきなのか?」

 

「それじゃ空くんたちの鍵は神樹様が与えてくれたものなの?」

 

「だけど何で僕は勇者と魔導師、両方なんだ?それに3本目は……」

 

「悪いがそこら辺詳しいことはわからない。戻ってから神樹様とやらに聞いてみたほうが良いんじゃないのか?」

 

まぁそっちのほうが確かに早そうだな。

するとクロノは今度は千景たちにあることを聞いてきた。

 

「君たちに聞きたいことがある。彼女……フェイトという少女の目的を」

 

「目的ですか……」

 

「タマたちはただ保護してくれた恩を返すために協力してただけだ。目的とか知らんぞ」

 

「僕の方でも頼んでおいたけど、どうにも口が固いみたいでな。フェイトの目的については本当にわからないみたいなんだ」

 

「そうか……」

 

クロノはすぐに諦め、食堂から出ていった。するとその後に千景が出ていった。僕は友奈となのはの二人を連れて千景を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千景、何か知ってるのか?」

 

「……別に私は」

 

「あの千景さん、教えてください。私……フェイトちゃんがどうしてジュエルシードを集めているのか知りたいんです。もし出来たら協力できるかもしれないから……」

 

「ぐんちゃん……」

 

なのはと友奈が頼み込むが千景は黙り込んだままだった。僕はため息を付き

 

「口止めされているのか?」

 

「そういうわけじゃないわ……ただ……」

 

話しにくいってことか……それだったら

 

「僕はお前が話したくなるまで待ってるよ。だからもうこれ以上は聞かないことにする」

 

「……ありがとう。上里くん」

 

千景は優しい笑顔を見せ、自室に戻っていった。

 

「ぐんちゃん……」

 

「友奈、今は行ってやれ。千景は一人で思いつめ過ぎだからさ」

 

「うん、行ってくるね」

 

僕となのはは友奈を見送り、残った僕らは……

 

「友奈さんと千景さんって仲良しなんですね」

 

「まぁ出会ってからすぐに仲良くなったからな」

 

「私もフェイトちゃんと友達になれるかな……」

 

「なれると思うぞ。お前と友奈は似てる所あるし、千景とフェイトも似てるからな」

 

「似てますか?」

 

「あぁ」

 

何というか無邪気と言うか誰かのために頑張れるところとか……ちゃんとその人の気持ちも全て理解して上げているところとかな

 

「空さん」

 

「ん?」

 

「私が小さい頃にお父さんが仕事で大怪我しちゃって…しばらくベッドから動けなかった事があるの喫茶店も始めたばかりで、まだ人気はなかったから、お兄ちゃんやお母さんもずっと忙しくて」

 

なのは少し寂しそうな顔をしていた。僕は黙ったままなのはの話を聞いた。

 

「お姉ちゃんは、ずっとお父さんの看病で……だから私、割と最近まで家にいる事が多かったの。空さん、一人ぼっちの子にしてあげるのは、大丈夫って優しく言う事でも、心配する事でもないと思うんだ。同じ気持ちを分け合える事。悲しい気持ちも寂しい気持ちも半分こにできる事だと思うんです」

 

「そっか……」

 

僕はなのはの頭を撫でてやった。なのはは少し驚いていたが、なぜだか嬉しそうにしていた。

 

「だったら速い所どうにか終わらせないとな」

 

「はい」

 

なのはが笑顔で答えた瞬間、アースラ内に緊急事態のアラームが鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

ブリッジに向かうとそこではフェイトがジュエルシードの力によって起きた嵐に立ち向かっていた。

 

「フェイトちゃん」

 

「なんとも呆れた無茶する子達だわ!」

 

「無謀ですね。間違いなく自滅します」

 

クロノは言葉を聞いて、遅れてやってきた千景から殺気を感じた。だけど友奈が何か声をかけ、千景を落ち着かせた。

 

「あれは個人が出せる魔力の限界を越えている」

 

「あの…私急いで現場に行きます!」

 

「僕も行く。多少力になれるはずだ」

 

なのはと一緒にブリッジの転送装置に行こうとした時、

 

「その必要はないよ。放っておけば、あの子は自滅する」

 

「!?」

 

クロノが止めに入り、なのはは驚いた顔をしていた。そしてその場にいた全員もだ。

 

「仮に自滅しなかったとしても、力を使い果たしたところを叩けばいい。」

 

「でも…」

 

「今のうちに捕獲の準備を」

 

「了解」

 

クロノの指示を受けたエイミィが準備をする。

 

「私達は、常に最善の選択をしなきゃいけないの。残酷に見えるかもしれないけどこれが現実よ」

 

「何が現実よ!!」

 

突然千景が声を荒げ、勇者に変身した。クロノは咄嗟に身構えた

 

「貴方達はこの場でただ傍観しかしないくせに……今あそこで戦ってる子が何のために……つらい思いをしながら頑張ってる……私達がするべき事はここで見ていることじゃないはずよ!」

 

千景がここまで感情的になるなんてな……全く……

 

「千景、落ち着け」

 

「これが落ち着いてなんか……」

 

「落ち着けって……今は感情的になるべきじゃない」

 

「それじゃ上里くん……貴方は同じように見ているだけなの?」

 

「確かにリンディさんやクロノの言うとおりだ。それが正しいことかもしれない。だけどそれは管理局として意見だ。僕ら勇者としてやるべきことは……今必死に頑張ってるあの子を助けることがやるべきことだ」

 

僕がそういった瞬間、リンディさんたちは驚いていた。僕らは人々のために戦う。それがどんな人でも……

 

「というわけでなのは、行って来い」

 

「君たちは……」

 

「………クロノ。この場は彼らの言うとおりにしましょう」

 

「艦長!?」

 

「彼らはあくまで民間協力者……彼らに対して命令することは出来ないわ……」

 

「くっ!?」

 

「OKということだな。なのは、ユーノ、頼んだぞ」

 

「「はい!」」

 

「それと僕も行くけど……珠子、付いてきてくれないか?」

 

「タマもか?いいぞ」

 

僕ら四人は変身し、すぐに転送装置に乗り込むのであった。僕らが成すべきことをするために

 

 



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10 始まるために

荒れ狂う海上でフェイトはバルディッシュを構えて竜巻に突っ込もうとするが、弾かれてしまった。これで何度目なのか既に魔力がつきかけていた。

 

それでも諦めきれずにいた中、

 

「!?」

 

なのはと僕と僕に抱えられた珠子がフェイトのもとに来た。するとどこからともなくアルフがやってきて

 

「フェイトの邪魔するなァアア!!」

 

僕たちに襲いかかろうとしたが、寸前のところで魔法陣を展開させたユーノに止められた。

 

「待ってくれ!僕達は戦いにきたんじゃない!」

 

「えっ!?」

 

「今はジュエルシードの封印を!」

 

ユーノが鎖で竜巻を縛り上げていく。僕らはというと

 

「珠子!手伝うぞ!」

 

「切り札発動!!輪入道!」

 

珠子は切り札を発動させ、大きくなった旋刃盤を竜巻の周りを囲んでいった。

 

「一箇所にまとめて……珠子!戻せ」

 

「わかった」

 

珠子は旋刃盤の上に乗り、なのはたちに指示を出した。

 

「二人共!今だ!」

 

「フェイトちゃん!二人でジュエルシードを止めよう!」

 

レイジングハートはバルディッシュに魔力を送った。

 

一箇所に集まった竜巻をユーノとアルフの二人で竜巻を抑える。

 

「ユーノ君とアルフさんが止めてる今のうちに!二人でせーの!で一気に封印するよ!ディバインバスター、フルパワー!」

 

『All right,my master』

 

なのはの足下に巨大な桜色の魔法陣が展開された。フェイトもバルディッシュを構えて巨大な金色の魔法陣を展開する。

 

「せーの!」

 

「サンダー…」

 

「ディバイン…」

 

二人はデバイスを構え、

 

「レイジー!!!」

 

巨大な雷が竜巻に向かって放たれた。

 

「バスター!!!」

 

二人の砲撃を喰らい、竜巻はそのまま消えていきジュエルシードが現れた。

 

「えっと…半分こ…で良いよね?」

 

「…………」

 

二人はジュエルシードを封印し、その場にあった6つのジュエルシードを二人で分け合った。

フェイトは何も言わずにアルフと一緒にどこかへ消えるのであった。

 

「フェイトちゃん……」

 

「とりあえず戻るか」

 

「……はい」

 

僕らはそのままアースラへと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってすぐに僕らはアースラの会議室の呼び出された。どうにも何かがわかったみたいだ

 

「まったく。勝手にジュエルシードを半分ずつ分けて…」

 

壁に寄り掛かりながらクロノがため息をついた。

 

「す…すみません」

 

「クロノ、良いじゃないか」

 

「空さん、貴方も……」

 

「クロノ、やめなさい」

 

「はい……」

 

リンディさんに怒られるクロノ。とりあえず何があったのか知りたいんだけど……

 

「何かわかったのか?」

 

「えぇ、今回の事件の首謀者についてよ」

 

「エイミィ、映像を」

 

「はいはい」

 

エイミィが操作し、僕らの前のモニターに映し出されたのは一人の女性だった。

 

「あら」

 

その女性を見て、何故か千景だけは悲しそうな顔をしていた。あいつは知っていたみたいだな。とりあえず事情はあとでも聞けるから話を進めるか。

 

「この人は?」

 

「僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサだ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な大魔導師だったが、違法研究と事故によって放逐された人物です」

 

「テスタロッサって……」

 

「あのフェイトという少女はおそらく」

 

「プレシアの娘…ね」

 

リンディさんが険しい表情で呟いた。なのははプレシアの映像を見つめた

 

「この人がフェイトちゃんのお母さん…」

 

「プレシア・テスタロッサは、違法な素材を使った実験を行い失敗。中規模次元震を起こした事で中央を追放され、それからしばらくの内に行方不明となる。今わかってる事はこれくらいです」

 

「ご苦労様。貴方達は一休みした方がいいわね」

 

リンディさんは僕らの方を見てそう言ってきた。たしかにここ最近大変だったな。

 

「特になのはさんは、長く学校休みっぱなしにするのはよくないでしょう。一時帰宅を許可します。ご家族と学校に少し顔を見せた方がいいでしょう」

 

「は、はい」

 

「とりあえずみんな、ゆっくり体を休めろ。訓練をするのもいいけど無理はしない程度にな」

 

僕はみんなに、特に若葉の方を見てそういった。

 

「空、どうして私の方を見て……」

 

「お前が一番危ないからだ」

 

「うぐっ……」

 

若葉は落ち込み、みんなが笑う中、僕と友奈は悲しそうにしている千景を心配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時の庭園

 

フェイトとアルフはプレシアにこれまでの事を報告しにきた。プレシアは玉座に座り、フェイトは部屋の中心に立っていた。

 

「…ジュエルシードを、全ては回収できませんでした」

 

フェイトはひどく怯えていた。

 

「…回収したジュエルシードの数は…全部で九つ……」

 

「ご…ごめんなさい、母さん……」

 

「フェイト……貴方は休みなさい。残ったジュエルシードは後で全て回収しなさい」

 

「えっ……はい」

 

フェイトは何がなんだか分からずただその部屋から出ていった。残ったプレシアは口元を抑えながら咳き込み、血を吐いていた。

 

「私には…もう時間がないわ………短い間でも優しくしようと思ったけど……無理みたいね……」

 

プレシアはある人物を思い浮かべた。自分が間違っていたことを気づかせてくれた少女のことを……

 

「ごめんなさい……千景……私はフェイトのいい母親になれないわ……こんな私を許して……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの公園で僕はアネモネに話しかけていた。

 

「アネモネ……お前はなにか知ってるのか?」

 

『それはどういうことでしょうか?』

 

「お前はなのはが持っているレイジングハートみたいなインテリジェントデバイスだと思えない……はっきりとした心みたいなものがあるんだ」

 

『さすがはマスターですね。そこに気がつくとは……』

 

何となく思っていたけど、やっぱりか……

 

「お前の目的は?」

 

『それについてはまだお話できません。ただこれだけは言えます。マスター、貴方は他の勇者たちとは違う……運命を変える力を持っています』

 

「運命を変える……」

 

『いずれ分かることです』

 

アネモネはそのまま黙り込むのであった。本当にこいつは……

 

「あれ?空君、こんなところでどうしたの?」

 

すると友奈となのはの二人が僕のところに駆け寄ってきた。

 

「どうしたんだ?二人共」

 

「ちょっと散歩をしに」

 

「若葉さんたちはうどん屋に行っていて……」

 

「そっか……」

 

僕は立ち上がり、なのはを見つめた

 

「なのは、もしまたフェイトと会うことがあったら……今度は本気の戦いになるかもしれない……」

 

「はい……」

 

なのはの目を見る限り覚悟しているって感じだな。それだったら心配しなくてもいいな

 

「きっと私達は始まってなかったんです。だからこそ……」

 

「そっか、頑張れよ」

 

「はい!」

 

なのはは笑顔で力強く答えた。

 

「何だか空くんとなのはちゃんって兄妹みたいだね」

 

「そうか?」

 

「あはは」

 

「何だかいいなって……」

 

「いや、友奈、お前はなのはのお姉ちゃんだろ」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ」

 

友奈は何故か嬉しそうにしているけど、なのはは苦笑いを浮かべていた。

 

「私お兄ちゃんとお姉ちゃんいるんだけどな……」

 

そういえばそうだったな……

 

「そういえば友奈、千景は……」

 

「うん、何だか元気がないの……悩んでるみたいで」

 

「そっか……」

 

あいつはやっぱり何かを隠してるけど、一人で抱え込んでほしくないな。

 

「友奈、お前は千景のそばに居てやれ」

 

「うん……空君」

 

「ん?」

 

「私がぐんちゃんみたいに悩んでたらどうするの?」

 

「もちろん、力になるよ。友奈だからってわけじゃない、みんなが悩んでいたら僕は力になる」

 

「そっか……空君はそうだもんね」

 

友奈は嬉しそうに笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後 海鳴臨海公園

 

なのはと僕ら勇者組はある人物たちを待っていた。

 

「ここなら…いいよ」

 

なのはがそうつぶやいた瞬間、どこからともなくフェイトとアルフの二人が姿を現した

 

「………」

 

フェイトは千景、珠子、杏の三人を見つめた。千景は前に出て

 

「大丈夫。邪魔はしないから……」

 

千景の言葉を聞いてフェイトは頷くと、なのははレイジングハートを構えた。

 

「ただ捨てればいいってわけじゃないよね?逃げればいいってわけでもない」

 

なのはは真っ直ぐフェイトのことを見つめた。

 

「きっかけはジュエルシード…だから賭けよう。お互いが持ってる全部のジュエルシードを!」

 

レイジングハートとバルディッシュからこれまで集めてきたジュエルシードが周囲に集まった。

 

「それからだよ。全部それから、私達の全てはまだ始まってすらいない…だから、本当の自分を始めるために…始めよう。最初で最後の本気の勝負!」

 

二人の魔導師が戦いを始めるのであった。

 

 



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11 星の光

アースラ

 

ひなたSIDE

 

「戦闘開始みたいだね」

 

なのはちゃんとフェイトちゃんの戦いの様子を画面で見ながらエイミィさんが言った。隣にはクロノくんが立ち、私と水都さんの二人はその後ろで見ていた。

 

「ああ」

 

クロノくんとエイミィさんはただ観戦しているわけではなく、フェイトちゃんの母親であるプレシアさんの居場所を探っていた。

事前にお兄ちゃんにはそのことを話しておいたみたいだけど……

お兄ちゃん的には二人の戦いの邪魔にならなければいいと言っていた。

 

「頼りにしてるんだから、逃がさないでよ」

 

「おう!任せとけ!」

 

私達はこの戦いをただ見守るぐらいしか出来ない……

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

『Photon Lancer』

 

『Divine Shooter』

 

「ファイア!!」

 

「シュート!!」

 

二人の魔力弾が空を舞っていた。なのはは上下に動いてフェイトの魔力弾を避け、フェイトは障壁を張って防いでいたが、いつの間にかなのはがいないことに気がついた。

 

「シュート!!」

 

なのはがフェイトに向かって魔力弾を放つが、フェイトはバルディッシュを鎌の形に変形させ、なのはが放った魔力弾を切り裂いた。

 

「やっぱりフェイト……強いな」

 

「でもなのはちゃんは負けてないよ」

 

僕らはただ見守るだけしか出来ない。だからこそ応援するしかなかった。

 

するとフェイトの足下に、巨大な金色の魔法陣が展開された。

 

「あの感じ……一気に決着をつける気か?」

 

「もしかして大技を使うってことですか?」

 

杏もフェイトがやろうとすることに気がついていた。するとアルフが慌てて止めようとしていた。

 

「マズイ!フェイトは本気であの子を潰す気だ!」

 

アルフの慌てようを見る限り、本気でやばい攻撃だということか……

 

フェイトの周囲に無数の魔力弾が現れ、なのはは何とか相殺しようとするが、

 

「あっ!?」

 

突然両手両足に金色のバインドで動きを封じられてしまった。

 

「なのは!今サポートを!」

 

ユーノが助けに入ろうとするが、千景がユーノの前に出て大鎌の切っ先を首筋に当てた。

 

「邪魔はしないで……」

 

「で、でも……」

 

「千景、やめさせないと……」

 

「ユーノ、アルフ、千景の言うとおりだ。今は邪魔してやるな」

 

僕は二人を睨みながらそう告げた。

 

「「は、はい…」」

 

二人はすぐに黙り込むのであった。ふっと気がつくとなのはが僕と千景の方を見ていた。お礼でも言ってるんだろうけど……今は目の前のことに集中しろよ

 

「アルカス、クルタス、エイギアス…疾風なりし天神よ、今導きの元に撃ちかかれ。バリエル・ザリエル・ブラウゼル。フォトンランサー・ファランクスシフト!打ち砕け!ファイア!!」

 

無数の魔力弾がなのはに襲いかかり、なのはは動けないまま直撃を食らってしまい、なのはの周りに煙が立ち込めていた。

 

僕らが心配している中、煙が晴れていくと同時に今度はフェイトがバインドで縛り上げられていた。

 

「なっ!?」

 

「撃ち終わると、バインドってのも解けちゃうんだね」

 

煙の中から出てきたなのは……もしかして寸前のところで攻撃を防いだみたいだけど……それでも無傷って……

 

「今度は…こっちの番だよ!!」

 

なのはは上空に上がり、レイジングハートをフェイトに向けた

 

「受けてみて…ディバインバスターのバリエーション!」

 

『Starlight Breaker』

 

レイジングハートの先に巨大な魔力の塊が現れた。魔導師になったばっかりの僕でも分かる……あれはかなりの……

 

いや僕だけじゃなくっても

 

「あれは……」

 

「溜め込んでるの?」

 

「必殺技みたいね」

 

「あれをフェイトちゃんに撃ち込むの?」

 

「や、やりすぎじゃ……」

 

「だ、大丈夫なの?」

 

若葉、友奈、千景、杏、珠子、歌野の六人も引き気味でそんな事を言っていた。

 

「これが私の全力全開!スターライト・ブレイカー!!!」

 

発射される寸前でフェイトはバインドから抜け出し、障壁を張るが、なのはの放った桜色の閃光に飲み込まれていき、光が消えるとボロボロのフェイトは海へと落ちていった。

 

なのはは慌ててフェイトを助け出し、抱きかかえた。

 

「フェイトちゃん!!」

 

僕らも急いで二人の元へ駆け寄った。フェイトは自分が負けたことに落ち込み、暗い顔をしていると、千景が優しくフェイトを撫でた。

 

「千景……」

 

「落ち込むことないわ。貴方は頑張ったんだもん。だから次は負けないように頑張るだけ」

 

「千景……はい」

 

何というか千景は本当にフェイトの姉みたいな感じだな。するとバルディッシュからジュエルシードが吐き出され、その瞬間、フェイト目掛けて紫色の雷が落ちた

 

「ああああああ!!」

 

「「フェイト!?」」

 

アルフと千景の二人が叫ぶ中、九つのジュエルシードは雲に出来た歪みの中に消えていった。

 

 



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12 明かされた真実 千景の思い

時の庭園

 

「ハァ…ハァ…次元魔法は…もう体が耐えられないわね……」

 

プレシアは苦痛で顔を歪ませていた。既に管理局の武装局員がこっちに向かってきている

 

「フェイト…よくここまで戦ったわね……こんな母さんの為に……今まで、よく頑張ったわね…」

 

フェイトのことを思う中、プレシアは泣きながら自分に訴えかけてきた少女のことを思い出していた。

 

「ごめんなさい。千景……貴方との約束は守れそうにないわ……だから全てを終わらせる」

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラに戻った僕らはモニターで状況を見守っていた。そしてフェイトも同じように……

 

『総員、玉座の間に進入。目標発見』

 

武装局員がプレシアのいる部屋に突入していた。

 

『プレシア・テスタロッサ。時空管理法違反の容疑で逮捕します』

 

『速やかに武装を解除してください』

 

プレシアは何も言わずただ動じずに玉座に座っていた。すると局員が玉座の後ろに回り込んだ瞬間、プレシアは睨みつけていた。

 

「だ……め……」

 

千景が小さな声で何かをつぶやいていた。一体何があるんだ?

局員が玉座の後ろにある隠し通路を見つけた瞬間、千景が叫んだ

 

「映さないで!!」

 

千景が叫んだ瞬間、モニターに映し出されたのはフラスコに入ったフェイトそっくりな少女だった。

千景以外の僕らはただただ驚きを隠せないでいた。

 

『ぐわぁああ!!』

 

局員がプレシアによって弾き飛ばされていった。

 

『私のアリシアに近づかないで!!』

 

プレシアが局員たちを吹き飛ばしていき、リンディさんは撤退命令を下していった。

 

「アリ……シア……」

 

フェイトはモニターに映し出された少女を見つめていた。フェイトは知らなかったのか……

 

『もうダメね…時間がないわ…たった九つのジュエルシードで、アルハザードに辿り着けるかわからないけど………フェイト。そこにいるんでしょ?』

 

プレシアに名前を呼ばれてフェイトは体を小さく震わせた。

 

『貴女はね…アリシアの代わりにしようと…私が造ったアリシアのクローンなのよ……』

 

クローンって……それに代わりって……なんなんだよそれ……

 

「…プレシアは最初の事故の時に、実の娘のアリシア・テスタロッサを亡くしているの。『フェイト』と言う名は、当時の彼女の研究につけられてた開発コードです」

 

エイミィが険しい表情でみんなに話した。

 

『よく調べたわね……フェイト。正直に言うわ……私ね…貴女を造りだした時から、貴女を好きになれなかったの……貴方は私のことを母さんと呼ぶということ、魔法の才能も……全部受け入れられなかった』

 

さっきまで険しい顔をしていたプレシアは優しく微笑んだ。

 

『でもねある人が……そこにいるでしょ千景』

 

プレシアの口から千景の名前が呼ばれ、僕らは全員千景のことを見た

 

『貴方は言ってくれたわね。子供のことを愛さない人を許さないって……そしてアリシアのことを知った貴方はこう答えたは……』

 

プレシアと千景の二人は同時にある言葉を言った。

 

「『代わりなんかじゃなくって、フェイトとして愛してあげて……』」

 

千景は涙を流していた。僕は千景の家の事情についてはある程度知っている……だからこそ千景はフェイトに自分みたいに家族の愛ということを知らないでいてほしくなかったんだ

 

『これからはフェイトを愛してあげてって約束したけど……ごめんなさい。もう間に合わないわ……アルフ。貴女もいるんでしょ?』

 

プレシアは涙を流しながらアルフに声をかけた。

 

『こんな私が頼めた義理じゃないけど……これからもフェイトをお願い…』

 

「プレシア…」

 

するとアラームが鳴り響いてきた。

 

「大変!屋敷内に魔力反応多数!」

 

「何だ!?何が起こってる!?」

 

屋敷の床から様々な形をした無数の傀儡兵が現れる。

 

「庭園敷地内に魔力反応!しかも50、80と数を増やしていきます!!」

 

「プレシア・テスタロッサ!一体何をするつもり!?」

 

『フェイト……貴方を愛しているわ……管理局局員、フェイトは私に操られていただけ……彼女には罪はないわ』

 

プレシアがそう告げた瞬間、アースラが……というより空間が揺れ始めた。

そしてジュエルシードからまばゆい光が溢れ始めていた。

 

 

「次元震です!中規模以上!!」

 

「振動防御!ディストーション・シールドを!」

 

「ジュエルシード九個発動!次元震、更に強くなります!」

 

「転送可の距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動!!」

 

「了解!」

 

「規模は更に拡大!このままでは『次元断層』が!!」

 

「次元断層?クロノ、何だそれは?」

 

「次元断層……いくつもの並行世界を壊滅させる程の災害だ。このままだと三十分足らずで起きてしまう」

 

「おまけにあの庭園の駆動炉も、ジュエルシードと同型のロストロギアでそれを発動させて、足りない出力を補ってる」

 

要するにかなりまずい状況だっていうのか。フェイトは泣き崩れ、千景も泣きじゃくっていた。このまま見ているだけってわけには……いかないよな

 

「クロノ、行くんだろ」

 

「あぁ、まさか君たちも……」

 

「当たり前だ。僕らは勇者だからな」

 

「あの、私も行きます。フェイトちゃんのお母さん助けたいです」

 

「僕も、駆動炉のエンジンを封印出来るはずだ」

 

今だ泣きじゃくる千景、すると友奈が千景の手を握りしめた。

 

「ぐんちゃん、泣いてちゃダメだよ。泣いてるだけじゃ助けられないから……」

 

「高嶋さん……」

 

「助けよう!みんなで!」

 

友奈が笑顔でそう告げた瞬間、千景は涙を拭き立ち上がった。そしてフェイトに手を差し伸べた

 

「このまま終わりにしたら駄目だと思ってるの?」

 

フェイトは顔を上げ、首を横に振った。

 

「それだったら何をするの?」

 

「私は……母さんを助けたい……」

 

「それだったら行きましょう……貴方のお母さんを助けるために」

 

「はい!」

 

フェイトは千景の手を掴み、立ち上がりバリアジャケットに着替えた。

 

「それじゃ勇者と魔導師……力を合わせていくぞ!!」

 

『オォ!!』



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13 空の切り札

時の庭園に訪れた僕ら。その前には大量の傀儡兵が待ち受けていた。

 

「敵がこんなに!?」

 

「くっ、急がないと行けないのに……」

 

なのはとクロノの二人が焦る中、僕らは二人の前に出た

 

「こいつらは僕らがなんとかする。お前らは温存しておけ」

 

「で、でも……」

 

「危ないよ」

 

フェイトの奴は千景たちと行動してたんだから分かってると思ったんだけどな……まぁいいか

 

「空、お前が指示を出せ」

 

「若葉、いいのか?」

 

「お前はそういうのが得意だっていうのは分かってるからな」

 

「そっか……それだったら全員……全力で目の前の道を切り開け!!」

 

「「「「「切り札発動!!」」」」」

 

僕と歌野以外が切り札を発動し、それぞれ衣装が変わった。若葉の切り札『義経』友奈の切り札『一目連』千景の切り札『七人ミサキ』杏の切り札『雪女郎』珠子の切り札『輪入道』

若葉たちは並び立ち、傀儡兵に向かっていった

 

「ハアアアアアアアア!!」

 

若葉は素早く動きながら傀儡兵を切り裂いていき、千景は分身して、七人で傀儡兵を倒していく。

 

杏は雪を降らせて傀儡兵の動きを止めていき、止まったところを珠子が全て撃退していく。

 

友奈は傀儡兵を殴っていき、さっきまで大量にいた傀儡兵を全て撃退していった。

 

「これが……勇者たちの力なのか……」

 

「空さん、これは……」

 

「僕ら勇者には精霊というものの力が宿っている。その力を発動し、とてつもない力を発動させるのが……切り札だ」

 

「これが切り札……」

 

なのはたちも驚きを隠せないでいるが、切り札には体に負荷がかかる。それに精神的にもだ……まぁ精神面は気持ちを強く持てば何とかなりそうだけど……

 

「とりあえず僕らも行くぞ。歌野」

 

「OK、若葉さんたちに負けてられない」

 

僕は槍で傀儡兵を貫いていき、歌野はムチで傀儡兵を破壊していった。しばらくして全て撃退し、僕ら奥へと進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入り、走っていくと床がところどころ穴が空いていて、覗き込むと空間が歪んでいた。

 

「クロノ、これは?」

 

「その穴『虚数空間』だから気をつけて!」

 

「虚数空間?」

 

「あらゆる魔法が一切発動しなくなる空間だ。落ちたら重力の底まで落下する。二度と上がってはこれない」

 

「気をつけて進まないとな」

 

「上里くん、貴方は特に気をつけて」

 

「千景、何で僕だけなんだよ。落ちそうなのは珠子だぞ」

 

「タマは一番気をつけてるだろ!」

 

「何で君たちは……」

 

僕、千景、珠子の三人の言い争いを見てクロノは呆れ、若葉、友奈、杏、歌野は……

 

「こういう時に……」

 

「でも変に気を張ってるよりかはいいかもしれないよ」

 

「えぇ少しは気を抜いてね」

 

「空さんが戦いに参加してからそういう風にできるようになった気がしますね……なのはちゃんとフェイトちゃんも、気を張りすぎないようにね」

 

「「はい」」

 

そうこうしているうちにある部屋にたどり着き、中にはいると大量の傀儡兵と上へと続く階段を見つけた。

 

「ここから二手に別れよう」

 

クロノの提案にみんなが賛成すると、杏が僕にあることを言ってきた。

 

「あの空さん」

 

「もしかして僕に別れるメンバーを決めろってか?」

 

「はい」

 

「わかったけど……フェイト、プレシアの部屋は」

 

「母さんがいる場所は多分あっちの方に」

 

フェイトが指を刺した方は階段とは別の道だった。だとしたら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕、フェイト、アルフ、千景、クロノ、友奈でプレシアの部屋まで向かうことになった。

 

「空君、どうしてこのメンバーなの?」

 

「ん?」

 

友奈は何故かこの振り分けに疑問を持っていた。まぁ戦力的にうまく分けたって言うこともあるし、それに……

 

「色々と言いたいことがある奴がいるからかな」

 

僕は千景の方を見ていうと、千景は黙り込んだままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

最上階にやってきた私達は大量の傀儡兵と対峙していた。

 

「防御は僕が、なのは、封印の方を」

 

「うん、いつも通りだね」

 

「え?」

 

「ユーノ君、いつも私と一緒にいてくれて、守っててくれたよね?」

 

ユーノに笑顔を向けながらなのはちゃんが言う。

 

「だから戦えるんだよ。背中がいつも暖かいから!」

 

なのはちゃんは嬉しそうにいい、ユーノくんは恥ずかしそうにしていた。

 

「何だかいいな~ああいうの……」

 

「杏、何言ってるんだ?杏の背中はタマに任せタマえ!」

 

「タマっち先輩……うん!」

 

「いいね。ああいうのも」

 

「あぁそれだったら私の背中を頼むぞ。歌野」

 

「OK!任せて!私達には背中を守ってくれる人もいるし、それに帰りを待ってくれる人がいるからね」

 

「あぁ!!」

 

私達は傀儡兵に向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

大きな部屋に出てくると壁を壊して今まで以上の大きさの傀儡兵が現れた。

 

「でかい!?」

 

「それにあの傀儡兵……障壁を張ってる……」

 

クロノとフェイトの二人が警戒していると、突然アネモネが喋りかけてきた。

 

『マスター』

 

「何だよ?魔導師に変わったほうがいいか?」

 

勇者の状態であれを倒すのは無理だっていうなら魔導師に変わるけど……

 

『いえ、今こそ使うべきです!三本目の鍵を』

 

「三本目……」

 

僕は三本目の鍵を手にすると白く輝き出した。

 

『三本目は絆ぐ力が宿してあります。それは世界を絆ぎ、勇者と魔法の力を絆ぐ……』

 

「なるほどな……それだったら」

 

僕は三本目の鍵をかかげて、叫んだ。彼女たちと同じ力を使えるように……

 

「切り札発動!!」

 

叫んだ瞬間、白い光が僕を包み込み、光が消えると右手には杖を、左手には槍を持ち、腰辺りには三本の尻尾みたいなものが生えていた。

 

「これが上里くんの……」

 

「切り札……」

 

「僕の精霊は妖狐みたいだな。さて……」

 

僕は駆け出し、巨大傀儡兵の右腕を槍で貫き、破壊した。

 

「障壁を!?」

 

「あんな簡単に!?」

 

「あいつ、化け物じみてないか?」

 

クロノ、フェイト、アルフが驚く中、僕は巨大傀儡兵の攻撃を避けながら、杖を構えた。その瞬間、三本の尻尾の先から銃口が飛び出し、

 

「フォーステイル・バスター!!」

 

四本の砲撃で巨大傀儡兵を破壊するのであった。切り札の力はすごいけど、結構体に負担が大きいな。

 

「空君、大丈夫?」

 

「切り札自体初めて使ったのだからあとは休んでいたら?」

 

「いや、僕は大丈夫だ……」

 

友奈たちはこの負担を抱えながら戦ってきたんだから、僕だけ休む訳にはいかないよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時の庭園 最下層

 

プレシアはアリシアの入ってるケースの隣に立っている。

 

「誰か乗り込んできたみたいね…」

 

上を見ながらプレシアは呟いた。

 

(恐らく乗り込んできたのは管理局の執務官…でも無駄よ。私を捕まえても…私はもう長くはない……)

 

悲しい表情を浮かべながら、プレシアはアリシアを見つめた。

 

「アリシア…ごめんなさい。こんな事になってしまって……フェイト…貴女だけでも幸せになって……」

 

プレシアがそう言った直後、背後から爆音が聞こえた。

 

「きたわね」

 

執務官が来たと思い、プレシアは杖を構えた。そこにいたのはバルディッシュを持ったフェイトとボロボロの僕たちだった。

 

「母さん」

 

「フェイト」

 




次回、無印編終了……できたら良いな……

無印編のあとは1話分幕間的な話をやるつもりです


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14 紡いだ手

最下層に降り立った僕らはプレシアの前に来ていた。

 

「フェイト……どうして来たの?」

 

プレシアは驚いた顔で目の前にいるフェイトを見つめた。

 

「母さん…」

 

フェイトは、ゆっくりとプレシアに歩み寄る。

 

「貴女…何しにきたの…?」

 

プレシアはフェイトを睨む。フェイトは思わず足を止めてしまう。

 

「私は…母さんを助けにきました」

 

プレシアは驚きを隠せないでいた。そしてその体は震えていた。

 

「母さん。私は、母さんに笑ってほしかった…母さんは…さっき私に笑ってくれた……けど、私が見たかった母さんの笑顔は…あんな悲しそうな笑顔じゃない!」

 

声が大きくなり、最下層にフェイトの声が響く。

 

「母さんには……楽しそうに…嬉しそうに笑ってほしいの……心からの、本当の笑顔になってほしいの!」

 

母に伝える娘の想い。フェイトの言葉がプレシアの心を揺り動かす。プレシアはこれまでフェイトにやってきたことを後悔している。だけどフェイトはそれでもプレシアを救いたいって思ってる

 

「一緒に帰ろう」

 

フェイトの言葉に、笑顔に、プレシアは目を見開き涙が出そうになる。フェイトは手を伸ばしたまま、プレシアの答えを待つ。プレシアは顔を俯いていた。

 

「フェイト…ごめんなさい」

 

プレシアは杖を掲げ、紫の雷をフェイトに放った。その瞬間、僕、友奈、千景の三人で雷を防ぎ、千景はプレシアの前に出た。

 

「あなたはまだ逃げる気なの?」

 

「違うわ……千景、貴方は知っているはずよ。私の病のことを」

 

「病?」

 

「何だよそれ……」

 

フェイトもアルフもプレシアの病気について知らないみたいだった。プレシアはゆっくりと語り始めた。

 

「私は不治の病に侵されている。今、こうしてフェイトの手をとっても……幸せにしてあげる時間は……」

 

ないっていいたいのか……

 

「ふざけんな」

 

僕はそう叫んだ瞬間、その場にいた全員が驚いた顔をしていた。

 

「幸せにしてあげる時間がないって言わせない……少しの時間でも良いから沢山幸せの時間を与えてやれよ……それに不治の病なんていうのは本当に治せないものなのか?そういうのは色々と試してからにしろ」

 

「そうだよ。きっとひなちゃんや水都ちゃんたちの力なら……」

 

「まだ可能性があるってことね」

 

「あ、貴方達は……どうしてそこまで……」

 

「僕らは勇者だからだ。勇者っていうのは人々のために……誰かのために戦い、救うんだ。僕はそう思っている」

 

「勇者……」

 

「フェイト、貴方はどうしたい?」

 

千景の問いかけにフェイトはゆっくりと息を吐き、

 

「私は母さんと幸せに暮らしたい。どんなに短い時間でも……」

 

「フェイト……」

 

プレシアがフェイトを抱きしめようとした瞬間、二人がいた足場が急に崩れだした。プレシアは咄嗟にフェイトを突き飛ばした

 

「母さん!?」

 

「フェイト……幸せに……」

 

「させない!」

 

虚数空間に落ちていくプレシアを千景が腕を掴んだ。

 

「離しなさい!貴方も……」

 

「約束……守ってもらっていない……フェイトのことを幸せにするっていうことを……だからこんな所で死なせたくない!」

 

「千景……」

 

千景が必死に助けようとするが、千景のいる足場も崩れだし、二人共落ちそうになったが、友奈が千景の手を掴み、僕が友奈の手を掴んだ。

 

「絶対に離さないよ。ぐんちゃん」

 

「高嶋さん……」

 

「ゆっくり引き上げるからな……ほらクロノ、アルフ、フェイト、お前らも手伝え」

 

「上里くん……ありがとう……」

 

全員で引き上げ、プレシアを救出することが出来た。アリシアが入っていたケースは虚数空間に飲み込まれたけど……

 

「母さん、母さん……母さん……」

 

「フェイト……」

 

二人の親子の絆は守れたって言うことだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから僕らは時の庭園から脱出し、アースラに戻ると僕だけクロノに呼び出された

 

「あのな……少しは休ませてほしんだけど……」

 

「すまない。君に相談したことがあるんだ」

 

「相談?」

 

「あぁ、実は言うと……」

 

クロノの話だとプレシアの犯した罪は重罪で、一生牢屋から出てこれないほどのものだった。

 

「管理局の立場としてはそうせざる負えない……だけど」

 

「お前とリンディさんは何とかしてあげたいっていうことか」

 

「あぁ特に母さんは……」

 

それで何かしらの意見をほしいっていうことか。まぁ確かに折角幸せな道を歩めるのにな……

だとしたら……

 

「いい方法がある」

 

「いい方法?」

 

僕はクロノに耳打ちをし、クロノは呆れた顔をした。

 

「そんなものが通じると……まぁ言ってみる」

 

「僕も行くよ」

 

僕らはリンディさんのところへ報告しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

報告を終え、僕らは医務室に来ていた。そこではプレシアの病をひなたと水都の二人が鍵の力で治そうとしていた

 

「ふぅ……」

 

「これ、疲れますね」

 

「あ、あの母さんは……」

 

「大丈夫ですよ。フェイトさん。プレシアさんの病は……」

 

「体が軽い……本当に治してしまったの?」

 

「巫女の力で何とかできましたね。ひなたさん」

 

「えぇ、これからはちゃんと母親として頑張ってください」

 

ひなたが笑顔でそう言うと、プレシアはうつむいていた。

 

「でも私は罪を犯したわ。一生フェイトのところにいることは……」

 

「母さん……私……」

 

暗い感じになったこの親子。するとクロノはある報告をした。

 

「プレシア・テスタロッサ。今回の件だが……貴方たち親子は管理局で保護することになった」

 

「「えっ?」」

 

二人が驚く中、僕はクロノの代わり報告をした。

 

「今回の件、ジュエルシードの回収はあくまで善意で集めようとしていたし、局員への攻撃ついても無断で侵入したためによる自己防衛で……災害の方も偶然起きたから……まぁ無罪というわけじゃないけど、罪は軽くなったみたいだな」

 

「そ、そんな事が……認められるものなの?」

 

「まぁそういう風に報告はしておいた」

 

話し終えるとプレシアとフェイトは涙をながすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、頑張りましたね」

 

次の日、部屋に訪ねてきたひなたと友奈の二人がやってきた。

 

「頑張ったって……」

 

「フェイトちゃんたちのことだよ」

 

「あぁ、僕はちゃんと救いたかっただけだから……にしてもいつになったら僕らは帰れるんだろうな」

 

『マスター、そのことですが』

 

僕の呟きに答えるかのようにアネモネが喋りだした。

 

『三本目の鍵を扱えたことによって、マスターたちは帰れます』

 

「帰れるって……そういえば三本目は世界を絆ぐ力があるって言ってたな……もしかして」

 

『マスターの思っているとおりです。鍵を使えば元の世界に帰れます』

 

何というか帰還する方法も分かってよかったのかな?

 

「みんなに知らせるか」

 

「はい」

 

「お別れだね……」

 

友奈は寂しそうにしていた。確かに別れるのは嫌だけど……

 

『大丈夫ですよ。自由に行き来できるので機会があれば』

 

「何というか万能すぎだな」

 

『そうでしょうか?』

 

いつでも会えるって聞いて、友奈は嬉しそうするのであった。

 

 

 

 

 

僕ら三人は若葉たちに帰れることを伝えに行こうとすると廊下でなのはとフェイトの二人が何かを話していた。

 

「ねぇ、フェイトちゃん。友達になろ」

 

「でも、私、友達出来た事ないから…どうすれば、友達になれるか…」

 

「簡単だよ。名前を呼べばいいの」

 

「名前?」

 

「うん。君とか貴女とかじゃなくて、その人の名前を呼んであげて。全部そこから始まっていくから」

 

「……なの…は」

 

「うん」

 

「なのは…」

 

「うん、もう私とフェイトちゃんは友達だよ」

 

「ありがとう、なのは」

 

「うん!」

 

二人は互いのリボンを交換するのであった。友達同士の約束みたいなものだな

 

「良かったね」

 

「そうだな」

 

「所でお兄ちゃん」

 

「何だ?ひなた?」

 

「友奈さんには言わないんですか?」

 

「私に?空君、何かあるの?」

 

「そ、それは……」

 

このタイミングで告白しろってか?それは恥ずかしすぎるんだけど……

 

「空くん?」

 

「あ、あのさ友奈……お前に伝えたいことがあるんだけど……」

 

「うん」

 

「僕はお前のことが……」

 

告白しようとした時、あることを思った。何で妹の前で告白をしないといけないんだ?

 

「ってできるか!!」

 

「しないんですか?」

 

「お前のいる前でできるか!!ほら、早くみんなに伝えに行くぞ」

 

「は~い」

 

「えっと、空君、言いたいことは……」

 

「友奈、あとでちゃんと伝えるから……それまで待っていてくれ」

 

「う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでみんなに帰れることを話した次の日、僕らはなのはたちに見送られていた。

 

「今回の協力、管理局代表として感謝するわ」

 

「私達は勇者として当然のことをしたまでだ」

 

「また会えるんですよね」

 

「うん、今度遊びに行くね」

 

「千景……」

 

「お母さんと仲良くね……フェイト」

 

「はい……」

 

お互い挨拶を交わす中、クロノが握手を求めてきた。

 

「今回は本当に助かった」

 

「クロノ、お前は少し肩の力を抜け」

 

「悪かったな。固い男で……」

 

「まぁそこがお前の良いところなんだけどな……何かあったら連絡は……できるのか?」

 

『えぇ私や巫女二人が持っている鍵に連絡をしてくれれば……』

 

本当に便利だな。まぁ何事もなければ良いんだけどな

 

「とりあえず何かあったら……すぐに連絡しろ。駆けつけるから」

 

「あぁ」

 

クロノと握手を交わし、僕はユーノにあることを伝えた。

 

「ユーノもありがとうな」

 

「僕は何も……」

 

「色々と助けてもらったりしてから……」

 

「空さん……はい」

 

僕は鍵を掲げると目の前に白い穴が開いた。そして見送ってくれるみんなに向かって……

 

「またな」

 

そう言って僕らは元の世界に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくとそこは丸亀城の前だった。帰ってきたんだな

 

「そういえばお兄ちゃん、調査のほうどうしましょう?」

 

そういえば僕らは外の調査をしていたんだっけ?まぁでも

 

「歌野たちの件を伝えておけばいいし、それに平行世界のことも言っておけば大丈夫だろ」

 

「本当に大丈夫なのか?」

 

若葉は心配する中、珠子があることに気がついた。

 

「ん?寄宿舎の前に誰かいるぞ?」

 

「大社の人かな?」

 

「だけど……あの子……」

 

寄宿舎の前には一人の少女がいた。少女は僕らに気がつき、駆け寄ってきた。

 

「おかえり。待ちくたびれちゃったよ」

 

少女が笑顔でそういうが、僕らはその少女を見て驚きを隠せないでいた。さっきお別れをしたフェイトと瓜二つの少女……この子はまさか……

 

「お前、まさか……」

 

「はじめまして、アリシア・テスタロッサです」

 

 

 




というわけで無印編終了です。

次回幕間、次次回AS編になります


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15 アリシアと理由

教室に集まった僕ら、何でこうして集まっているかというと……

 

「お前はアリシアで良いんだよな。フェイトの姉の……」

 

「そうだよ」

 

元の世界に帰ってきた僕らを出迎えてくれたのはフェイトの姉であり、死んだはずのアリシアだった。何で彼女がここにいるんだ?それに……

 

「私はカプセルに入った貴方を見たけど……少し成長してないかしら?」

 

確かカプセルに入っていたときはまだ5歳位だけど、今のアリシアは少し成長している

 

「そうだね。色々と話すべきだよね。そうだよね。アネモネ」

 

『はい』

 

僕のポケットからアネモネが出てきて、アリシアの横に来た。アリシアが生き返った理由を知っているのか?

 

「私はあの時……時の庭園の崩壊で虚数空間に落ちたんだ」

 

「うん、それは私も、ぐんちゃんも空君も見ていたから知ってるよ」

 

「虚数空間に落ちて、気がついたら私は真っ白で暖かな場所にいたの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシアはそこがどこなのか分からないでいた。すると人の言語とは思えない声が聞こえた。だが意味は理解できた

 

『命を失いし少女よ。我はこの世界で土着神が集まり一つになった存在……神樹と呼ばれるもの』

 

「神樹?」

 

『お前は虚数空間と呼ばれる場所へ落ち、我の中に流れ着いた。そしてお前に役割を与える』

 

「役割……」

 

『運命を変える事ができる存在に三本の鍵を……一つは勇者の力を、一つは魔導師の力を、一つは絆ぐ力を与えた。そして我の声を聴くことができる巫女には支える力を与えた』

 

アリシアいわく、その時急に頭の中に僕らのことが入ってきたらしい。

 

「この人達は……そっかフェイトとママを助けてくれた人だよね。それで私の役割は?」

 

『お前の役割は……彼らの力になってもらいたい。いや彼らだけではない。お前の家族、その友達の力にもなってほしい……運命を変えるために、そのために我は時を超え、彼女たちをも導いてきた』

 

「力になる……でも私は魔法資質とかないし……力になれることは……」

 

『安心しろ。お前にも彼と同じ力を与える。勇者の力で天の使いを倒し、魔法で守る力を……』

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして気がついたら私の手にはこの鍵があって、この世界に来ていたんだ」

 

「なるほどな。じゃあ、僕のこの鍵とひなた達の鍵は神樹様がくれたものなんだな……でも運命を変えるって……」

 

『マスター、貴方は運命を変えていますよ。特に死ぬはずの人間の運命を……』

 

それってつまりプレシアのことだよな。僕が……というより僕らが運命を変えたのか……

 

『そしてこれから先……いえ、これは言わないほうが良いですね』

 

「うんうん、言ったらショックを受ける人がいるからね」

 

アリシアとアネモネはこれから先のことをちょっと知ってる感じなのか?だとしたら頑張らないとな。

 

「空、これから私達は……」

 

「とりあえずこっちでやるべきことはやらないとな」

 

バーテックスとの戦いは終わっていないからな。そのためには僕も、それに若葉達も鍛えなければいけないしな

 

「大体のことは説明できたかな」

 

『そうみたいですね。それと巫女お二人、よろしいでしょうか?』

 

「はい?」

 

「えっと、なんですか?」

 

アネモネがひなたと水都の二人に声をかけた。すると二人の持っている鍵が浮かび上がり、錫杖に形を変えた。

 

「これは……」

 

「なのはさんやフェイトさんみたいなデバイス……」

 

『喋ることは出来ませんが、巫女の力を扱う際にサポートをすることが出来、癒やしの力の他に補助的な事ができます。それに体への負担も少なくなっていますのでご安心を』

 

「これはいいですね」

 

「うたのんたちのことを守ってあげられる……」

 

二人は本当に嬉しそうだな。とりあえず大体の説明も終わったことだし……

僕はアネモネを持ち、外に出た。

 

「みんなは今日のところは休息な。歌野と水都の部屋は空いてる場所があるからそこを使うように、アリシアは……」

 

「う~ん、折角だからフェイトがお世話になったことだし、千景の部屋にお世話になるよ」

 

「勝手に決めないでもらえないかしら……」

 

「駄目なの?」

 

アリシアは目をうるませながらいうと、千景はため息を付いた。

 

「強引に押し切られそうね……わかったわ」

 

「わーい」

 

部屋割りは決まったことだし、大社に報告して、あとは……

 

「アネモネ、ちょっと魔法の練習に付き合ってもらうぞ」

 

『えぇいいですよ。魔力弾関係ですか?砲撃関係ですか?』

 

「その両方。技のバリエーションを増やしたいし、それに出来れば……収束砲を撃てるようになりたいな」

 

『ブレイカーですか、良いかもしれませんね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大社にはそれとなく事情を説明、人々には生存者発見などの発表を行われるのであった。

 

そして月日が経ち……僕らは新たな戦いに巻き込まれるのであった。

 




次回、AS編スタートです


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AS編
16 新たな騒動の始まり


樹海にて、サソリの尻尾みたいなものが付いた大型バーテックスに向けて、僕は切り札を発動し、砲口を向けていた。

 

「手強いやつだったけど、これで終わりだ!!フォース・テイル・バスター!!」

 

4つの魔砲がバーテックスを撃ち抜き、トドメを友奈が刺すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。お兄ちゃん。杏さん、こちらに来てください」

 

「はい」

 

元の場所に戻るとひなたが杏の毒の治療を行った。あちら側に来てから数ヶ月が経ち、僕らはバーテックスとの戦いを続けていた。

 

「今回は危なかったな」

 

「下手すれば土居さんたちは死んでいたかもしれないわね」

 

「でも空君のおかげでなんとかなったよ」

 

「僕は特には……」

 

「ハードな戦いだったけど、何とかなったね」

 

「でもうたのん、油断しないでね。私達の治癒も死んだりしたら生き返ることとか出来ないから……」

 

水都は心配そうにいう。まぁそこら辺は本当に大変だったりするからな……

するとアリシアは疲れた顔をしていた。

 

「疲れた~千景お姉ちゃん、疲れたよ~」

 

「はいはい……」

 

あれからアリシアはこっちの生活に慣れ、同室の千景のことをお姉ちゃんと呼ぶようになった。

それに千景の方も色々とあったけど……

 

「むぅ~お姉ちゃん、冷たい。バラすよ」

 

「何をかしら?」

 

「許嫁の人と毎晩いちゃいちゃメールをしていることを!!」

 

「あなた……また勝手に!?」

 

「ぐんちゃん、良かったね。優しい人とお付き合いできて」

 

「高嶋さん!?あの人とは……」

 

千景に許嫁が出来た。まぁ家族関係でちょっと大変で落ち込むことはあったけど、その時に大社の関係者で僕の友達が千景を支えたいって言ってくれたからな

 

ふっと気がつくとアネモネの方に誰かから通信が入った。僕は出ると相手はなのはだった。

 

『お久しぶりです……あのボロボロですけど何かあったんですか?』

 

「ちょっと戦っていたんだけど……どうしたんだ?」

 

『えっと近況報告的なものを……こっちは大きな事件はないですけど、今度フェイトちゃんが遊びに来るって……』

 

なのはたちとはたまに連絡を取り合っている。フェイトも元気そうだな。

 

「そっか……」

 

『それで空さんたちはその……』

 

もしかして会えないかって言うことか?僕は治療に忙しいひなたに声をかけず、水都に声をかけた。

 

「敵の進行は?」

 

「えっと、ないみたいです。多分だけど大型バーテックスを倒されたことで一時撤退みたい」

 

だとしたら行けるな

 

「近い内に遊びに行くよ。それにフェイトには会わせたいやつがいるしな」

 

『はい、楽しみにしてますね』

 

通信を切ると、千景の後ろに隠れているアリシアが出てきた。

 

「ふぅ、全く通信中は隠れてないといけないから大変だよ」

 

「隠れる必要はあるのかしら?」

 

「千景お姉ちゃんは分かってないな~内緒にしておいたほうが後々みんなびっくりするんだよ」

 

「そういうものなのかしら?」

 

「でもアリシアちゃん、楽しみだね。会えるの」

 

「うん」

 

アリシアも楽しみにしているし、僕らもまたなのは達と会えるのが楽しみだな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

通信から数日後の夜、突然赤いドレスのような恰好で、手にはハンマーのような物を持っている子に襲われていた。

 

「どらぁあああ!!」

 

ハンマーを振り下ろしながら襲ってくる子、私は攻撃を避け

 

「いきなり襲い掛かられる覚えはないんだけど、どこの子!?一体なんでこんな事するの!?」

 

声をかけ続けるが、女の子は黙ったまま指の間に鉄球を出した。

 

「教えてくれなきゃ、わからないってばァ!」

 

ディバインシューターを放つが、女の子が全て防いだ。この子……強い

 

「このやろぉおおお!!」

 

女の子は怒りながらハンマーを振り上げて、襲い掛かる。振り下ろされるハンマーを、私は後ろに飛んでかわし、レイジングハートをシューティングモードにして、距離をとった

 

「話を聞いてってば!!」

 

女の子に向かってディバインバスターを放つ。ディバインバスターは女の子の左側を掠り、女の子のかぶっていた帽子が落ちてしまった。

落ちていく帽子を見て、女の子は怒りの形相で睨み、足下に赤い魔法陣を展開した

 

「グラーフアイゼン!カートリッジロード!!」

 

女の子が叫んだ後、ハンマーが撃鉄を打った音を立て、ハンマーの形が変わった。

 

「え…え!?」

 

ハンマーは片方の先の部分が尖って、もう片方の面は噴射口みたいだった。

 

「ラケーテン!」

 

片方の面がジェット噴射して女の子は回転する。回転の勢いを使って、攻撃を仕掛けてきた。私はすぐに障壁を展開するが簡単に破られ、レイジングハートに直撃してしまう。

 

「ハンマー!!!」

 

ハンマーを振り抜き、私はビルに向かって吹き飛ばされた。

 

「ああああ!!」

 

ビルの中まで吹き飛ばされた私。埃や煙が立ち込める中、立ち上がると

 

「でぇえええい!!」

 

ハンマーを構えた女の子が突っ込んできた。再び障壁を張って防ぐが……

 

「ぶち抜けェエエ!!」

 

『了解』

 

障壁は破られ、バリアジャケットも破壊され、私は壁に叩きつけられた。女の子が近づいてくる中、傷ついたレイジングハートを女の子に向けるが、女の子ははハンマーを振り上げた

 

(こんなので…終わり?嫌だ……ユーノ君…クロノ君…空さん…フェイトちゃん!!)

 

咄嗟に目をつぶった瞬間、何かがぶつかりあう音が聞こえた。目を開けるとそこには黒いマントを羽織ったフェイトちゃんがいた。そして私のそばには

 

「ごめん。なのは。遅くなった」

 

「ユーノ君…」

 

「く…!仲間か!?」

 

女の子はフェイトちゃんを警戒しながら後ろに下がった。フェイトちゃんは優しい声で

 

「友達だ」

 



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17 新たな戦いへと

フェイトSIDE

 

バルディッシュを構えながら、私は目の前の襲撃者に問いかけた。

 

「民間人への魔法攻撃。軽犯罪では済まない罪だ」

 

「なんだテメェ?管理局の魔導師か?」

 

ハンマーを構えながら襲撃者は睨んできた。

 

「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。抵抗しなければ、弁護の機会がキミにはある。同意するなら武装を解除して」

 

バルディッシュを構えながら、そう言うと

 

「誰がするかよ!」

 

襲撃者は外へと逃げ出していく。私はなのはに付いているユーノに声をかけた。

 

「ユーノ、なのはをお願い!」

 

「うん!」

 

私は襲撃者を追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中で襲撃者と対峙する私。

 

「バルディッシュ」

 

魔力刃を襲撃者に向かって放った。襲撃者は鉄球を放ち、魔力刃を障壁で防いだ。

私は鉄球を避け続けるが追尾型の魔法なのか振り切れない。するとアルフが襲撃者に攻撃を加え、襲撃者の意識がそらした瞬間、一気に距離を詰めて攻撃を繰り出した。

 

「ちっ!」

 

「アルフ!」

 

「あいよ!」

 

私が後ろへ下がるとアルフは襲撃者をバインドで拘束した。

 

「終わりだね。名前と出身世界、目的を教えてもらうよ」

 

バルディッシュを向けたそういった瞬間、どこからともなく現れた剣を持った女性の横薙ぎの一閃を喰らい、私は吹き飛ばされた。

 

「シグナム!」

 

「おおおおお!!」

 

別方向から別の襲撃者がやってきて、アルフに蹴りを放った。

 

「ああっ!」

 

アルフは防御するが吹き飛ばされてしまった

 

「レヴァンティン。カートリッジロード」

 

女性の持つ剣が撃鉄を起こし、剣が炎に包まれた。

 

「紫電一閃!!!」

 

鋭い斬撃が襲ってきた。私はバルディッシュで剣撃を防ごうとするがバルディッシュは真っ二つに斬れてしまった。

襲撃者が再び剣を振り下ろし、私は防御するが攻撃の勢いが強くビルの屋上に叩きつけられた。

 

「フェイト!!」

 

獣の耳をつけた男がアルフの行く手を遮っていた。この襲撃者たち……強すぎる

 

 

 

 

 

 

クロノSIDE

 

アースラ

 

突然の襲撃者と戦うフェイトたち。音声は拾えるが映像が結界で妨害されてしまい見れない。

 

「術式が違う。ミッドチルダ式の結界じゃない」

 

「そうなんだよ……」

 

「フェイト……」

 

砂嵐の映像を見つめることしか出来ずにいるプレシアはフェイトのことを心配していた。

このままだと……

 

「……どうすれば……」

 

どうすれば良いのか分からないでいる。そんな時ある人の言葉を思い出した。

 

『とりあえず何かあったら……すぐに連絡しろ。駆けつけるから』

 

頼もしく感じる声で彼はそう言ってくれた。きっとこの状況を彼なら……いや、彼らなら打破できるかもしれない

 

「エイミィ……通信をつないでほしい」

 

「通信って……誰に?」

 

「彼らに……勇者たちにだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたヴィータ?油断でもしたか?」

 

「うっせーよ。こっから逆転するとこだったんだ!」

 

「そうか。それは邪魔したな。だが、あまり無茶はするな。無茶をして怪我でもしたら、我らが主が心配する」

 

「わーってるよ!」

 

「それに今回は彼女たちも来ている……何かできることがあるんじゃなかと」

 

「あいつらか……家にいてもらえれば良いんだけどな……」

 

「彼女たちなりに気遣っているのさ。事情を知った上で協力をしているからな」

 

「あっそ……」

 

襲撃者達が何かを話し、赤毛の子はユーノと対峙、獣の耳の男はアルフのところに、そして剣を持った人は私のところに降り立った。

 

「じっとしていろ。抵抗しなければ、命までは取らない」

 

そう言って剣を上に掲げる。

 

「だ…誰が……!」

 

足に力を入れて立ち上がろうとするが、立ち上がれずにいた。

 

「いい気迫だ。だが…残念だがここまでだ」

 

咄嗟に私が目をつむった瞬間、何かがぶつかりあう音が聞こえた。

 

「何者だ!」

 

私は目を開けるとそこには青い衣装を纏い、刀を持った人物が襲撃者の件を止めていた。彼女は目の前の襲撃者を睨みながら……

 

「勇者だ!」

 

「若葉!?」

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

アルフと戦っている人の前に来た私。それにしても未だに空を飛ぶっていうのは慣れないな……

 

「友奈!?あんた、どうしてここに!?それに空を飛んで……」

 

「えっと色々とあって……説明したいけど今はこの人を倒そう」

 

「何者だか知らないが……容赦はしない」

 

「ちなみに悪いけど、三対一だよ。ワンコくん」

 

私と歌野ちゃんとアルフは目の前の人を取り囲むのであった。

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

「こいつら……結界を抜けてやってきたのか?」

 

ユーノと戦っている赤毛の子は私と土居さんを警戒しながらハンマーを構えた。

 

「君たちは……」

 

「全く夜中に起こされて、迷惑なやつだな!まぁでも千景と組むのは珍しいな」

 

「彼なりに考えた結果よ。それに私としては納得行く感じね」

 

「ぶつくさと……邪魔をするならぶっ潰す!!」

 

「できるもんならやってみろ!」

 

「えぇ鏖殺してあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

「あれって……」

 

襲撃者達の前に現れたのは友奈さんたち、勇者だった。すると私のところにひなたさんと水都さんがやってきた。

 

「大丈夫ですか?友奈さん」

 

「怪我は?」

 

「は、はい、大丈夫です……でもどうしてみなさんが……それに空も飛んで……」

 

「そうですね。説明すると連絡を受けたんですよ。あなた方を助けてほしいって」

 

「空を飛んでるのは、隠れてサポートしてくれている子のおかげなんだよ」

 

「サポート?そういえば杏さんと空さんは?」

 

「杏さんは地上で援護をし、お兄ちゃんは」

 

私はひなたさんが指を指した方を見るとそこには空に浮かび腕を組んだ空さんを見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「全くこんな形で再会はしたくなかったな。まぁいいや、全員……戦闘開始してるし……アリシア、敵の数は三人で良いのか?」

 

『ううん、隠れて行動しているのは……離れた所で一人……あとは三人で固まってる人達がいるよ』

 

「離れたところの奴は補助的な奴だな。その三人で固まってるのは気になるけど……」

 

アリシアのサポート魔法にはいろんな物がある。空を飛べない若葉たちを飛べるようにしたり、索敵……おまけに攻撃魔法も十分すごい……

 

「杏、地上での援護射撃のタイミングはお前に任せる」

 

『はい!空さんは?』

 

「僕は……準備にかかる」

 

僕はアネモネをかかげ、魔力弾を作り出した。

 

「サーチアンドシュート・レイン!!」

 

さて新たな戦いを始めるとしようか

 

 



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18 不思議な三人組

少し時間がさかのぼり、

 

自室でトレーニングメニューを考えていた僕。するとひなたが僕にお茶を出してくれた

 

「お兄ちゃん、あんまり根を詰めると次の日大変ですよ」

 

「悪い……ただこの間の戦いのことを考えてな……」

 

サソリのバーテックスとの戦いは何とか勝つことが出来たけど、それでも何とかだ。

これから先のことを考えると若葉たちにも力をつけてもらう必要があるな。特に若葉と友奈の二人には……

 

「大天狗と酒天童子……完璧に扱えるようになってもらいたいけど……」

 

ただ訓練を積むだけじゃ扱えるようにならない。それに僕自身も強くならないとな。

 

「考えがまとまらないし……今日は寝るか」

 

「そうですね」

 

そう思い、立ち上がった瞬間、アネモネを通じて連絡が入った。相手は誰だろう?

 

『久しぶりだ。空』

 

「よぉ、お前からだなんて珍しいな。クロノ。何かあったのか?」

 

『あぁ実は……君たちにこんなことを頼むのは気がひけるんだが……』

 

「はぁ」

 

クロノが何かを言いかけた瞬間、僕はため息を付いた。全くこいつは……

 

「何かあったんだな。それで僕らの手を借りたいってことか……」

 

『すまない。君たちは君たちで……』

 

「いいから……友達の頼むを断ることはしないし……お前はたった一言言えば良いんだよ」

 

『………頼む。なのはたちを助けてくれ』

 

「わかった」

 

通信を切り、僕は念話で勇者たちに連絡をした。

 

「みんな!出動だ!なのはたちがピンチみたいだ」

 

僕はそういった瞬間、全員文句なんて言わずにわかったと返事をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

犬耳の攻撃を避けていた。強烈な一撃を食らわせようとした瞬間、歌野ちゃんが鞭で腕を縛り上げ、私はその隙にパンチを繰り出した。

 

「ぐうう」

 

「ワオ!流石だね」

 

「ううん、歌野ちゃんのおかげだよ」

 

「強い……友奈たち……前よりも強くなってる」

 

「あれからみんな鍛錬を続けてるから」

 

「最初はきついと思ったけど、結果が出てきた時は本当にびっくりしたよ」

 

私達は楽しそうに話していると、犬耳の人は私達を睨んでいた。

 

「お前たちは何者だ?魔導師には見えないが」

 

「私達は勇者だよ」

 

「そうそう、こう見えて世界を守るために戦ってるんだ」

 

「勇者……なるほど彼女たちと同じか」

 

あれ?何だかこの犬耳の人、気になることを言ったような……

 

「だがここでやられる訳にはいかないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

「うおおおおおおおおおお」

 

「だりゃああああああああ」

 

赤い子の突撃を土居さんが防ぐ。それも何度も繰り返していた。

 

「てめぇ、何ていう硬さだよ!」

 

「お前こそチビのくせにやるじゃないか。タマの手下にしてやってもいいぞ」

 

「断る!私達にはやるべきことがあるんだ!」

 

赤い子は距離を取り、もう一度突撃をしてきた。土居さんは防ごうとするけど……そろそろかしら

 

赤い子の攻撃が土居さんに当たる寸前、私は横から大鎌で赤い子を吹き飛ばした。

赤い子はそのまま倒れると私は首筋に切っ先を当てた。

 

「ゲームオーバーね」

 

「てめぇ、横からしゃしゃり出てきやがって……」

 

「はっきり言うけどこれは一対一の戦いじゃない」

 

「千景さん、さすがです……」

 

「たくっ、防ぐのも結構きついな……」

 

「まぁこれも全て彼が呼んでいたことだけどね」

 

「彼?」

 

赤い子は誰のことか分からないでいた。私はそっと指を指した。

 

「あそこにいる人よ。ここに来て彼はすぐに状況を読み、相手の対応をどうするか考えた。まぁ情報が少なくって単純な考えだったけどね」

 

「まぁそのままの通りだったけどな。『あの赤い奴は単純そうだから珠子をぶつけて、熱くなった所で千景が倒す』だっけ?」

 

「えぇ」

 

何というか彼は思いっきり馬鹿にしてる気がするけど……まぁ襲ってきた相手に同情するつもりはないわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉SIDE

 

「ハアアアア!!」

 

「ハアアアア!!」

 

これで何度目になるかわからない。何度も何度も剣撃がぶつかり合っていた。フェイトは折られたバルディッシュを握りしめながら戦いを見つめていた。

 

「ここまで互いの剣をぶつけ合ってわかった。お前は強い……名前は?」

 

「乃木若葉だ」

 

「乃木?彼女の関係者か?まぁいい。悪いがここで捕まる訳にはいかない……レヴァンティン!」

 

レヴァンティンと呼ばれる剣が返事をし、刀身が炎に包まれた。

 

「私は剣の騎士!シグナム!この一撃でお前を見極める!紫電一閃!」

 

シグナムの斬撃が襲いかかってきた。私は咄嗟に避けようとしたが今のままじゃ間に合いそうになかった。だったら……

 

「……避けたか」

 

シグナムがそう呟いた。私は切り札を発動し、咄嗟に後ろへと回り込んだ。

 

「後方に回り込んで攻撃を与えないというところは武人らしいな」

 

「あぁ武人と認めてもらえて光栄だ。だが……悪い」

 

「?」

 

「私は一人で戦っているわけじゃないんだ」

 

私が笑みを浮かべた瞬間、いくつもの魔力弾がシグナムを襲ってきた。シグナムは突然のことで避けられずただ魔力弾を防ぐだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「全員命中だな。ていっても居場所のわからない奴ら以外だけど」

 

僕は一人でそう呟いているとどこからともなく矢が飛んできた。僕は障壁を張って防いだ。

 

「自分たちから居場所をばらしてくれるなんてな……アネモネ、勇者に変わりつつ、行くぞ」

 

『はい、マスター。形態変化しつつ接近します』

 

空を飛びながら矢が飛んできた方向へ行くとそこには黒髪の女の子、金髪の女の子がいた。おかしい。例の三人組だとしたらあと一人は?

 

「うりゃああああああああ!!」

 

横から赤い服に2つの斧を持った女の子が迫ってきた。僕は咄嗟に障壁で防ごうとするが勇者に変身し終えていたため無理そうだった。

 

「だったら!!切り札発動!!」

 

切り札を発動し、3つのしっぽで赤い服の女の子を地面に叩きつけた。

 

「銀!?」

 

「よくもミノさんを!!」

 

今度は金髪の女の子が槍を構えて迫ってくる。僕は3つのしっぽで槍を掴み、左手に持った杖を向けた。

 

「テイルバスター!!」

 

砲撃を放ち、金髪の女の子を吹き飛ばす。残ったのは黒髪の女の子だけ。

 

「二人をよくも……ってあなたは!?」

 

何故か黒髪の女の子は僕のことを見て驚いた顔をしていた。なんでだ?

 

「似てる……でも……」

 

「よく分からないけど、アイツラの仲間ならしっかり捕まえて話を聞きたいな。というか……」

 

この三人組の格好……魔導師というよりかは勇者に近い。まさかと思うけど……

 

「きゃあああああああ!?」

 

突然なのはの悲鳴が聞こえ、僕はアリシアに連絡を入れた。

 

「どうした?」

 

『ごめん。なのはを狙われたみたい!?』

 

「くそ、おい、お前!」

 

「は、はい!?」

 

「何をするつもりだ?なのはたちの命を奪うつもりなら……殺すつもりで戦うぞ」

 

「え、えっと……多分ですけど命を奪うようなことはしないと思います」

 

黒髪の少女は怯えながら答えた。嘘を付いてる気はしないな。仕方ない……

 

「わかった。信じる……お前は?」

 

「わ、私は鷲尾須美です」

 

「僕は上里空だ」

 

「上里……それじゃやっぱり!?」

 

須美が何かに気がついた瞬間、結界が消え始め、須美達三人はどこかへ転移したのかいなくなっていた。

 

「とりあえず退けた感じかな?」

 

 



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19 再会と三人のこと

時空管理局本部

 

僕らは戦いを終え、フェイト、若葉、クロノと共に医務室でなのはの様子を見ていた。

 

ひなたの話では突然なのはの胸から誰かの手が伸び、何かの結晶みたいなものから何かを吸い取っていたみたいだった。

 

「リンカーコアから魔力を吸い取ったって感じだな。命に別状はないがしばらくは魔法を使うことができない」

 

クロノの言葉を聞いて、僕らは安堵していた。にしても……

 

「あいつらは何者なんだ?」

 

「わからない。だが襲撃者の使っていた結界はミッド式のものじゃなかった」

 

「あの襲撃者……シグナムという人はかなり強かった。切り札を使って戦っても私は勝てていたかどうか……」

 

若葉がそう言うなら本当にそうかもしれないな。ただ僕としては気になったのは……

 

「アネモネ。悪いけど映像を出してもらいたい」

 

アネモネから映し出されたのは僕が戦った三人組だった。

 

「彼女たちは?」

 

「襲撃者たちの仲間みたいだけど……格好を見る限り勇者っぽいな。おまけに……」

 

何故か僕を見て驚いていたし……

 

「彼女たちは君たちの仲間じゃないのか?」

 

「それだったらちゃんと話すよ」

 

「だとしたら……」

 

「気になることはもう一つ、私の名前を聞いてシグナムは反応していた」

 

僕を見て、若葉の名前を聞いて反応……一体彼女たちは何者なんだ?

 

そうこうしているうちになのはが医務室から出てきた。

 

「空さん、みなさん……」

 

なのはは特に体に異常はないみたいだけど、暗い顔をしていた。やっぱりレイジングハートとバルディッシュの事が気になるんだな

 

「大丈夫だ。僕らが来たんだから……」

 

「は、はい……」

 

「そういえば空」

 

「何だ?フェイト」

 

「聞いたんだけどもうひとり仲間がいるって……」

 

仲間……そういえばあいつはどこに行ったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

用意された部屋で物陰に隠れるアリシア。何で隠れる必要があるのかしら

 

「アリシア」

 

「な、何?お姉ちゃん……」

 

「フェイトとプレシアに会いに行くわよ」

 

「えっと……それは……」

 

いつもと違い弱々しい。まさかと思うけど……

 

「どんな顔をして会えば良いのかわからないって感じかしら?」

 

「う、うん……」

 

本当にサプライズだの何だの言っていたくせに……私はため息をつき、アリシアの頭を撫でた。

 

「私だって両親のことを聞いて……みんなにどんな顔をすれば良いのか分からなかったの。でも貴方はそんな時に言ってくれたじゃない……きっとみんな、優しく向かえてくれるって……それにあの人も……」

 

「お姉ちゃん、惚気はいいから……」

 

だって両親の件で私はどうしたらいいのか分からなかった時に……彼は……

 

「優しく向かえてくれるか……そうかもね。それじゃ会いに」

 

『千景、今大丈夫?』

 

アリシアが立ち上がろうとした時、扉越しからフェイトの声が聞こえた。

 

「えぇどうしたの?」

 

『何だか空から行くようにって、それも母さんと一緒に』

 

『何かあるのかしら?』

 

「えぇとりあえず入ってきて」

 

私がそういった瞬間、アリシアは逃げ出そうとしたが、私は逃げられないように腕を掴んだ。

 

「お邪魔しま……」

 

「……嘘……」

 

フェイトとプレシアはアリシアのことを見て驚きを隠せないでいた。それはそうよね

 

「えっと……あはははは……こういう時なんて言ったら良いのかな?」

 

「ただいまで良いんじゃないの?」

 

「そうだよね……フェイト、ママ。ただいま」

 

「「アリシア!!」」

 

フェイトとプレシアはアリシアのことを抱きしめた。ここにいたら邪魔になるし、外に出ると

 

「貴方は行かないの?」

 

「千景……まぁ今は親子の再会だからさ」

 

アルフは三人の様子を見ながら涙を流していた。本当に良かったわね。フェイト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

須美SIDE

 

私達はシグナムさんたちと一緒にある場所へと帰っていた。

 

「おかえり。何や園子ちゃんと銀ちゃんの二人ボロボロやけどどうしたんや?」

 

出迎えてくれたのはこの家の主である八神はやてであった。

 

「えっと……」

 

「ちょっと二人して転んで」

 

「あかんよ。気ぃ付けなきゃ……すぐに救急箱を」

 

「あ、それでしたら私が」

 

シャマルさんがそう言って救急箱を取りに向かった。するとシグナムは……

 

「怪我は大丈夫そうだな」

 

「まぁ、何とかだけど……」

 

「あの人強かったね~」

 

銀とそのっちの二人は私達が戦った彼のことを話した。正直彼はものすごく強かった。それに怖かった

 

とりあえず私達ははやてが作ってくれた夕食を食べ、自分たちの部屋に戻った。

 

「なぁ須美、あの人、なんなんだ?」

 

「わからないわ。でも服装を見る限り勇者みたいだったし、それに……」

 

「それに?」

 

「あの人の名前……上里って言うんだけど……」

 

「上里……」

 

「よっくんと同じだね~」

 

そのっちの言う、よっくん。私達と同じクラスの子であり、私達のサポートをしてくれる男の子。彼はこの場に来ていれば何かしらの話を聞けるのだが……

 

「もう一度あの人に会えないものかしら」

 

「そしたら色々と話を聞けるね~」

 

「それにしても……私達はいつになったら帰れるんだろうな……まぁ私は帰れるかどうか……」

 

銀が明るく言うが、私とそのっちは涙を必死にこらえていた。銀はバーテックスとの戦いで私達を守るために必死に戦った結果……

 

「おいおい、須美も園子もそんな顔するなよ……」

 

「だって~」

 

「悪いかったな。ほら、私と園子は後でシャマルさんに治療しに行こうな」

 

「うん……」

 

正直どうしてこの世界に来てしまったのかわからない。やはりあの人とまた会えば……まぁそうそう会えるかどうか……

 

 

 

 

 

 

 

シグナムSIDE

 

「それじゃシグナムちゃんが戦ったのは」

 

シャマルがカートリッジに魔力を込めながら驚いていた。私が戦った少女……彼女は乃木と同じ名字だった。だとしたら……

 

「何かしらの関係者だと思えるが……」

 

「あの子達の関係者……あの子達が来た世界では魔法についても知っていたのも気になるけど……」

 

彼女たちいわくサポート役の人間は魔法を使えるらしいが、どういった理由なのかは彼女たちは知らなかったみたいだった。

 

「シャマルも危なかったな」

 

「まぁ、かすり傷ですけど……」

 

シャマルは白い魔導師から蒐集した時、どこからともなく矢が飛んできたり、更には魔力弾が襲ってきたらしい。

 

「彼女たちも勇者であるならば……また戦うことになるだろうな」

 

「シグナムちゃん、嬉しそうね」

 

「あぁあの金髪の魔導師の一撃も、若葉の一撃も素晴らしいものだった」

 

金髪の魔導師から一撃を受け、若葉の一撃でレヴァンティンに小さなヒビを入れられたのであった




最初は彼らを出そうかなと思いましたが、やめました。


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20 出会いと再会

時空管理局

 

僕、なのは、フェイトの三人はクロノのあとをついて行っていた。どうにもクロノは僕らに紹介したい人がいるらしいが……

 

「ここだ。失礼します」

 

クロノに案内された部屋に入るとそこには初老の男が待っていた。

 

「ん、久しぶりだなクロノ。君たちがなのは君とフェイト君と上里君だね」

 

「あ、初めまして、えっと」

 

「あぁ、私はギル・グレアムだ。上里君、君が噂の勇者と呼ばれる……」

 

「まぁ僕の場合は成り立てだったりしますけど……」

 

「君たちのおかげでプレシアさんやフェイトくんの問題が解決したんだ。私からもお礼をいいたい」

 

グレアムさんは深々とお辞儀をしてきた。別に僕らのおかげじゃないけど……

 

「あ、あの、グレアムさんはお母さんのこと知ってるんですか?」

 

「あぁ知り合いでね。それに聞いた話では君の姉……アリシア君も生き返ったと聞いたが」

 

「はい」

 

「信じられませんが……それにどうしてそのことを今まで黙っていたんだ?空」

 

「アリシアが中々踏ん切りつかなくってな……」

 

それからグレアムさんと他愛のない話をし、僕らは部屋から出ていくのであった。

 

「何だか優しい人だったね」

 

「うん」

 

「……」

 

「空さん、どうしたの?」

 

「いや、まぁあんまり気にしないほうが良いよな」

 

「「?」」

 

正直僕はあのグレアムさんを心から信用できないでいた。まぁこれまで会ってきた大社の大人の所為だったりもすんだけど……

 

「まぁなのはの両親みたいに本当に優しい人がいるからいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

今回の事件はアースラメンバーが受け持つことになったのだが、アースラは整備中なので司令部はなのはの近所のマンションになった。

 

「うわ?!凄い近所だ」

 

「本当?」

 

「うん。ほら、あそこが私の家」

 

「よし、フェイト、今度遊びに行っちゃおうね」

 

「うん、アリシア」

 

「あー、またアリシアって呼んだ~お姉ちゃんって呼んでほしいのに」

 

なのはとフェイトとアリシアの三人がベランダではしゃいでいた。僕らはというと荷解きをしていた。

 

「にしてもリンディさんもまさか僕らの部屋まで用意してくれるなんてな」

 

「君たち大人数を泊める場所がないからな。母さんなりに考えた結果だろ」

 

「まぁ何かあったらすぐに対応できるからいいけどな……にしても、クロノ」

 

「何だ?」

 

「フェイトとプレシアも一緒に住むんだっけ?」

 

「あぁ一応こっちでは彼女たちは僕の親戚となる」

 

「男一人で大変だったら、すぐに言え。泊まらせてやる」

 

「大変って……」

 

クロノの場合は気がついてないけど、女性陣と一緒に暮らすことはかなり気を使う。ひなたはまだいい。妹だから女の子として見たりしてないけど……

 

「いいか、もしフェイトあたりがバスタオル姿で歩いていたらすぐに注意するんだからな」

 

「あ、あぁ……」

 

僕はクロノの肩を掴み、女の子と一緒に暮らすことの注意事項を教え込むのであった。

 

そんなことをしている中エイミィはアルフとユーノを見つけた。

 

「ユーノ君とアルフはこっちではその姿なんだ」

 

「新形態子犬フォーム!」

 

「なのはやフェイトの友達の前ではこっちの姿でないと…」

 

アルフは子犬姿で、ユーノは久々のフェレット姿になっていた。

 

「わぁアルフちっちゃい!どうしたの?」

 

「あら、本当!」

 

「前の姿も良かったけど、今の姿もいいよね」

 

「ユーノ君もフェレットモード久しぶり!」

 

「可愛いだろ」

 

「うん!」

 

みんながはしゃいでる中、僕はユーノを見つめていた。何というかユーノ……

 

「な、なんですか?空さん」

 

「いや、その頑張れ。なのはにペット扱いされても僕は人間として見てるからな」

 

「あ、うん、ありがとうございます」

 

とりあえずこっちの荷解きも何とか片付いてきたし、他のみんなの様子でも見てくるか

 

 

 

 

 

 

司令部の隣の部屋に行くととりあえず片付けは終わっているみたいだった

 

「空、あっちの方は終わったのか?」

 

「一応は……にしてもまとめて一緒に暮らすことになるとは……」

 

若葉たち女性陣はまとめて一部屋。まぁ広いマンションだからいいけど……

 

「でも空くんは一人で寂しくないの?」

 

「友奈、一人のほうが色々と気を使わなくって良いんだよ……」

 

「まぁ上里君も男の子ということね」

 

「今更気を使わなくってもいいだろ。なぁ杏」

 

「タマっち先輩……色々と気を使おうよ」

 

「まぁお兄ちゃんなりの気遣いですからね」

 

「そういえば歌野と水都は?」

 

この場にいないのが少し気になるんだけど、あいつらどこに行った?

 

「二人ならリンディさんに頼み込んで屋上で畑を作っていたな」

 

あいつら……本当に自由だな。まぁあとで連絡しておくか。

 

「とりあえず今後のことを話しておくけど、敵……シグナム達は今後またなのはのことを狙ってくる可能性がある。そのために各自交代で警備につくことになった」

 

「警備……」

 

「なのはちゃんが学校にいる時は?」

 

「アリシアとフェイトの方で学校内は大丈夫みたいだ。僕らは外から」

 

「警備か。まぁタマたちがいれば安心だな」

 

「ちなみにどういう振り分けで?」

 

「戦力やら何やら考えたいけど……若葉&ひなた。友奈&千景。歌野&水都。僕&杏&珠子だな」

 

「空さんと私達で?」

 

「まぁ色々と相談できるからそういう感じにしただけだ」

 

戦略や戦術とかの相談は杏と色々と話し合うことができるからな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、僕らはなのはたちの通う学校の近くのビルの屋上で警備をしていた。特に問題は起きず、僕らは交代することにした。

 

「これからどうする?一旦戻るか?」

 

「それもいいけど……」

 

「あのそれでしたら図書館に行きたいなって……こっちの世界の本とか読んでみたいから」

 

「それもいいけど……珠子は我慢できるのか?」

 

「杏のためだったら我慢する」

 

それならいいけど……とりあえず僕らは図書館に行くことにした。

 

 

 

図書館に行くとなのはの友達のすずかと車椅子の少女が何かを話しているのを見かけた。

 

「あっ、空さんでしたっけ?」

 

「すずかだっけ。久しぶり」

 

「なのはちゃんたちの友達?」

 

「はい、えっと……」

 

「伊予島杏です」

 

「土居珠子だ。よろしく」

 

「すずかです。こっちは」

 

「八神はやてって言います」

 

車椅子の女の子……はやてか。足でも悪いのか車椅子に座ってるけど……聞くのは失礼だよな

 

「そや、すずかちゃん。今日な一緒に来てるんよ」

 

「もしかしてお姉さんたち?」

 

「そや、丁度来たみたいやな。シグナムー」

 

ん?何だか聞き覚えのある名前が……僕らははやてが向いたほうを見るとそこには……

 

「なっ!?」

 

「あっ!?」

 

「あの人って……」

 

「何でこんなところに……」

 

僕らの前にやってきたのは、前の襲撃者の一人、シグナム、それとあの時僕に襲いかかってきた三人の女の子だった。

 

『珠子、杏、下手に動くなよ』

 

僕はすぐに二人に指示を出した。こんな場所で、しかも一般人の前で戦うことはできない

 

「シグナム?なんや知り合いなのか?」

 

「い、いえ……」

 

「須美ちゃんたちは?」

 

「えっと知り合いに似てて……」

 

「うんうん、そうなんよ~」

 

「あははは……」

 

お互い戦う意志がないってことでいいのか?

 

 

 

 

 

 

 

近くの公園で離れた場所ですずかとはやての二人が話しているうちに僕らは近くのベンチに座っていた。

 

「お前たちは若葉の仲間だな」

 

「あぁ……とりあえず戦う意志はないみたいだな」

 

「まぁ襲ってきたらタマたちがぶっ飛ばすけどな」

 

「タマっち先輩……」

 

「それでそっちは?えっと須美だっけ」

 

僕は須美たちの方を見た。須美の他に園子と銀だっけ?

 

「はい。あのお聞きしたいことがあるんですが……空さんたちは勇者で良いんですよね」

 

「僕は勇者と魔導師だけどな」

 

「にしてもやっぱ似てるよな」

 

「うんうん、よっくんそっくり~」

 

その僕は一体誰と似てるんだよ。とりあえず気になっていることを聞くべきだな

 

「お前たちは勇者で良いのか?」

 

「はい……ただ……空さんたちは……神世紀の人なんですか?」

 

「神世紀?」

 

「私達は西暦だけど……」

 

「なんだ?その神世紀って?」

 

「やっぱり……あの信じられないですけど、私達は空さんたちがいる時間から未来の世界から来たんです」

 

須美たちが未来から……だとしたらさっきから聞くよっくんって……

 

「そのお前たちの言うよっくんは……」

 

「上里夜空。私達の仲間で魔導師なんだ」

 

「それにシグナムんが戦った若葉って人は私のご先祖様なんよ~」

 

何だか色々と衝撃的な事実が出てきたけど……このほんわかしている園子が若葉の子孫……何だかすごい話すぎて大変になってきたな



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21 闇の書というもの

「それで……お前たちは何なんだ?」

 

須美たちが未来から来たということはわかったけど、シグナム達は一体何者なのか知りたい

 

「私は……いや私達はロストロギア・闇の書を守る守護騎士だ」

 

「闇の書……」

 

「闇の書は魔力蓄積型のロストロギア。魔導師の魔力の根源であるリンカーコアを食って、全666ページを埋めるとその魔力を媒介に真の力を発揮するものだ」

 

「それでその所有者は……はやてということか……にしては」

 

僕ははやての方を見た。はやてはすずかと楽しそうに話している。そんな力を欲しがるようには見えない

 

「……闇の書を完成させなければ、主は死んでしまうからだ」

 

「「「はぁ?」」」

 

僕ら三人はシグナムの言葉を聞いて驚いていた。死ぬって……どういうことだよ

 

「あの空さん。はやての足は病気じゃなくって、闇の書の呪いなの。その呪いは日が経つに連れて体中を蝕んでいくの。それを止めるためには闇の書を完成させる必要があるの」

 

「それじゃそのためにお前たちは……」

 

「そうだ。主を救うために……」

 

はやてをただ救いたいためだけに……須美達もそのことを知っていて協力しているってことだな

 

「こんなことを言えた義理ではないが……出来れば管理局にはこの事を黙っていてほしい……」

 

「僕たちは管理局に協力している。もしかしたらまたお前たちと戦うことになるかもしれない。それでも良いのだったら……」

 

「あぁ……」

 

正直悪事のためじゃないだけいいかもしれないな。杏と珠子は黙り込んだまま頷いている

 

「わかった。はやてのことは言わないよ」

 

「すまない」

 

「シグナム。話し終わったんか?」

 

「主、えぇ」

 

「そっか、そろそろ帰ろうか」

 

「はい」

 

僕らははやてたちを見送るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シグナム達と話した公園で僕ら三人は今後どうするか考えていた。

 

「どうするんですか?」

 

「事情が事情だからな……」

 

「だけど今あいつらを捕まえたらはやては助からない。私達はあえて手を抜いてあいつらを見逃す……それじゃ駄目だと思うぞ」

 

珠子の言うとおりだ。事情を知る僕らは手を抜いたりしたらきっとシグナム達は怒るだろうし……

おまけに若葉たちはどう思うかだ

 

「ひなたさんたちの巫女の力を使って呪いを……」

 

「ああいう呪いは元凶である元をどうにかしないと駄目だと思う……打ち消しても闇の書が再度呪う……」

 

「それじゃ……」

 

「とりあえず僕らはシグナムたちが戦いを挑んできたら全力で食い止めるだけだ。ただそれだけ……」

 

「……」

 

珠子は黙り込んでいたけど、今は本当にそうするしかない。

そんなときだった。エイミィから通信が入った

 

「空君達、緊急事態」

 

「襲撃者か……わかった。すぐに行く」

 

「空さん……」

 

「今は戦うことだけに集中しろ。若葉たちには僕の方から話しておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空の上では二人の襲撃者……守護騎士を局員が取り囲んでいた。

 

「管理局か」

 

「でもチャラいよ、コイツら。返り討ちだ!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンを構える。すると局員達は、一斉にヴィータ達から離れた。

 

「え?」

 

「上だ!」

 

ザフィーラが叫んだ瞬間、上空に無数の青い魔力の刃があった。その中心にクロノがいた。

 

「スティンガーブレイド!エクスキューションシフト!!」

 

クロノは杖を振り下ろし、魔力の刃の雨がヴィータとザフィーラに降り懸かる。

 

「ちっ!」

 

ザフィーラがヴィータの前で障壁を張る。障壁に無数の刃の雨がぶつかり、青色の爆発が起きた。

 

「…少しは通ったか?」

 

煙が晴れてきて、ザフィーラ達の姿が見えてきた。ザフィーラの左腕に、数本の刃が刺さっていた。

 

「ザフィーラ!」

 

「気にするな。この程度でどうにかなる程…ヤワじゃない!!」

 

「上等!」

 

ヴィータは上空にいるクロノを睨んだ。クロノも杖を構える。その時、エイミィから通信が入った。

 

『クロノ君、現場に助っ人を転送したよ』

 

「え?」

 

屋上には僕ら勇者組となのは、フェイト、アリシアの姿があった。

 

「あいつら、」

 

「この前の奴らもいるな」

 

「レイジングハート!」

 

「バルディッシュ!」

 

「セーットアップ!!」

 

「レイジングハート・エクセリオン!!」

 

「バルディッシュ・アサルト!!」

 

二人は自分のデバイスの新しい名前を叫んだ。二人の体が光に包まれ、新しいバリアジャケットを身につけ、生まれ変わったデバイスを手に持つ。

 

「二人共格好いいよ。それじゃ私も!魔導外装!!勇者武装!!」

 

アリシアは黄色と水色の衣装に変わり、両手には二丁の銃が握られた姿に変わった。

 

「あいつらのデバイス…!アレってまさか!?」

 

二人のデバイスを見て、ヴィータは驚いた。二人のデバイスに新たに付けられたのは、カートリッジシステムだった。

 

「私達はあなた達と戦いに来たわけじゃない。まずは話を聞かせて」

 

「どうして闇の書を完成させようとしてるの?」

 

フェイトとなのはがヴィータ達に尋ねた。

 

「あのさぁ、ベルカの諺にこういうのがあんだよ。和平の使者なら槍は持たない」

 

それを聞いたなのはとフェイトは、顔を見合わせて首を傾げた。どういう意味だ?

 

「話合いをしようってのに、武器を持ってやって来る奴がいるか馬鹿って意味だよ。バカ!」

 

「なっ!?い、いきなり有無を言わさず襲い掛かって来た子がそれを言う?」

 

うん、まぁ確かにいきなり襲ってきたやつには言われたくないよな。

 

「それにソレは諺ではなく、小話のオチだ」

 

ザフィーラがヴィータにツッコんだ。

 

「うっせー!いいんだよ細かい事は!」

 

「細かくはないだろ。まぁいいや……とっとと……」

 

僕は槍を構えた瞬間、僕らの前には須美たちが、そしてなのはたちの前にはシグナムが現れた。

 

「すみません……止めさせてもらいます」

 

「お前たちか……アリシア、なのはたちをサポートしていてくれ」

 

「うん、わかったよ」

 

アリシアを送られ、僕らは武器を構えた。

 

「数ではこっちのほうが多いけど……止める方法はあるのか?」

 

「はい……」

 

「わっしー、もしかして例の……」

 

「それって……ちょっと待った!?あれは危険だって前に夜空が……」

 

「わかってるけど……今日は早めに終わらせないと行けないから……」

 

須美はポケットから弾丸みたいなものを取り出した。あれってシグナムたちが使っているカートリッジ……まさか!?

 

「300年前に伝わったカートリッジシステム。夜空くんみたいな魔導師のみ扱うことはできるけど……大赦は勇者にも扱えるように組み込んでくれた。勇者システムに隠された機能に対しての後遺症をなくすために……」

 

「駄目だよ……それはまだ実験段階だってよっくんが……」

 

「須美……お前……」

 

「ごめんね。二人共……この人達を止めるためには必要だから……それに私は言ったら聞かないって……知ってるでしょ」

 

須美は優しく園子たちに微笑んだ。まずい……このままだと須美は……

 

「やめろ!?」

 

「カートリッジロード!!満開!!」

 

 




カートリッジによる満開は、あの満開みたいな後遺症は出ませんが……かなり負担がかかる感じになっています。

次回、満開vs切り札の戦いになります


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22 夜の空

「でぇえええい!!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンで、なのはに攻撃する。なのはは障壁を張って防御する。障壁は以前より硬く、グラーフアイゼンの攻撃を防いだ。なのははアクセルシューターを使って、ヴィータを追い詰める。

 

フェイトとシグナムも激しい空中戦をしていた。バルディッシュとレヴァンティンが火花を散らせてぶつかり合う。フェイトが、複数の金色の魔力の槍プラズマランサーを放つ。それをシグナムはレヴァンティンの炎で掻き消す。

 

 

空中でアルフとザフィーラは、互いに拳をぶつけ合って戦っていた。

 

(状況はあまりよくないな。言われた通り空中で戦う事によって、あの勇者たちとの戦闘は避けられた。だが魔導師達のデバイスが強化されていて、シグナム達も苦戦している)

 

ザフィーラは表情を険しくした。そんな中、まばゆい光が結界内を照らしていた。

 

「あれは……」

 

「あの子達……空たちと同じ切り札が使えるの?」

 

『フェイト、違うみたい……』

 

「おい、須美が持ってるのって!?」

 

「あぁカートリッジだが……」

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「満開!!」

 

須美が神秘的な衣装に身を包み、巨大な砲台に乗った姿に変わった。

 

「満開……」

 

「切り札とは違うみたいね」

 

「時代が違うから……勇者システムも進化しているみたいだな。みんな、ここは僕がやる!切り札発動!」

 

僕は切り札を発動し、須美に向かっていく。須美は僕に近づかせようとしないように、砲撃を放ち続けていった。僕は障壁を張って防いでいく

 

「ハァ、ハァ……邪魔をしないでください」

 

「見る限り強力な力みたいだけど……負担が大きいみたいだな」

 

「……本来の発動の仕方ではないですから……でも、それでも今日は……」

 

「無茶ばっかりして……お前の友達は泣きそうだぞ」

 

須美の砲撃をくぐり抜けていき、大砲の一つを槍で破壊した。

 

「くっ!?」

 

須美は反撃を行っていくが、外れていた。何なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

シャマルは屋上から様子を見ている。

 

(私の力じゃこの結界は破れない…)

 

シャマルは闇の書の力を使って、結界を破るか迷っていた。今日は、はやてちゃんとの大事な約束がある。ソレを護るためにも、一刻も早く結界を破って離脱しなければいけない。その時、背後に気配を感じた。

 

「捜索しているロストロギアの所持、使用の疑いで貴女を逮捕します」

 

シャマルの背後で、杖を突き付けて言ったのはクロノだった。その時、乱入者が現れた。突然現れた仮面を付けた男が、クロノを蹴り飛ばした。クロノは隣のビルの屋上まで飛ばされた。

 

「な…仲間!?」

 

「あ…貴方は?」

 

「使え」

 

「え?」

 

「闇の書の力を使って結界を破壊しろ」

 

「でもアレは…!」

 

「使用して減った頁はまた増やせばいい。仲間がやられてからでは遅かろう」

 

少し戸惑ったが仮面の男の言葉でシャマルは、闇の書を使う事にした。

 

(みんな、闇の書で結界を破壊するわ!うまくかわして撤退を!)

 

シャマルが念話でシグナム達に伝えた瞬間、どこからともなく仮面の男目掛けて砲撃が襲いかかってきた。

 

「ちっ、何者だ?」

 

仮面の男が砲撃がきた方向を見るとそこにはまだ小学生くらいの男の子が真っ黒な衣装を身にまとい、その手には杖を持っていた。

 

「仮面つけて……明らかに怪しいやつだな」

 

「邪魔が入ったな」

 

仮面の男はそう言って姿を消した。少年はシャマルに近寄り

 

「大丈夫ですか?」

 

「え、えぇ、あ、貴方は管理局の?」

 

「管理局?あぁ先祖が昔世話になっていたっていう……僕は管理局の人間じゃないです。大赦の人間で魔導師で……勇者たちの友達です」

 

「大赦……もしかして須美ちゃんたちの?」

 

「知ってるんですね。それだったら……」

 

少年は杖を構え、魔力をため始めた。

 

「突き抜けろ!!シャドウバスター!!」

 

紫色の魔砲が結界を破壊した。

 

「さてと……ってあのバカ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

突然結界が破壊され、僕はクロノに聞いてみた。

 

「どうしたんだ?」

 

『すまない。突然仮面の男に……それに別の魔導師が……』

 

「別の魔導師?」

 

他にも敵がいるのか……でも今は目の前の須美だ。大砲はほとんど破壊され、須美の顔色が悪い。このままだとやばいことになりそうだな

 

「わっしー!?もう結界は壊れたんだよ」

 

「そうだよ。早く戻れ」

 

「ハァ、ハァ……」

 

園子と銀の声が聞こえていない。疲労でかなりやばいということか?だとしたら……

 

「一回気絶させて………」

 

「この馬鹿須美がぁぁぁぁぁ!!」

 

どこからともなくやってきた少年が疲労困憊の須美を思いっきり蹴り飛ばした。園子と銀の二人はそいつを見て驚いていた。

 

「嘘……」

 

「あいつ、来てたのかよ!」

 

「そのっち!須美を連れてけ。僕はこいつを抑える」

 

「うん」

 

少年は蹴り飛ばした須美を二人に頼み、僕の前に立ちはだかった。やる気満々だけど……

 

「逃げられたみたいだし、こっちも時間切れだ」

 

「なんだ……まぁ三人が逃げられたならいいか。なぁランディニ」

 

『そうですね。それに貴方からしてみれば彼らといたほうが都合がいいみたいですね』

 

「お前……何者だ?」

 

「僕?僕は上里夜空」

 

「そっか……ということは話に聞いてた奴だな。僕は上里空だ」

 

まさか子孫とこんな所で出会うなんて思っても見なかったな。そのあとなのはたちも逃げられたみたいだけど、とりあえず全員無事みたいだな

 

 



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23 先祖と子孫と……

園子SIDE

 

八神家に無事に戻ってきた私達。なるべくはやてちゃんの事を一人にしたくないから、早めに戻ってこれてよかったけど……

 

「園子ちゃん、須美ちゃんの具合どう?」

 

「うん~落ち着いたみたいだよ~」

 

ベッドに横たわるわっしー、はやてちゃんには出かけていた時に具合が悪くなったと伝えておいたけど……やっぱりカートリッジシステムでの満開は体に負担が大きいみたいだった

 

「もうびっくりしたよ。すずかちゃんと一緒に帰り待ってたらぐったりした須美ちゃんを連れてみんな戻ってきたんやから」

 

「あはは~わっしー、こっちに来たばっかりだから疲れが溜まってたんよ」

 

「でもなんや怪我してるみたいやけど……」

 

わっしーの怪我……あれはよっくんが蹴ったところだけど……全くよっくんは相変わらず止め方が容赦ないな……

 

「わっしーの事、私とミノさんで見ておくから大丈夫」

 

「そっか、何かあったらすぐ呼んで」

 

はやてちゃんが部屋から出ていくのを見送った私。それにしても……

 

「よっくんもこっちに来てんたんだ……それに……」

 

こっちに来た時の事を私は思い出していた。

 

 

 

 

 

 

それはこっちでは6月位の頃、私とわっしーはミノさんの葬式の最中に襲来したヴァルゴバーテックスとの戦いを終わらせたあと、気がついたらこの八神家の前にいた

 

「ここは……」

 

「わからないけど……大橋の近くじゃ……つぅ」

 

私達はお互い傷だらけで、動けそうになかった。すると私達の前に何かが空から落ちてきた。それは傷だらけのミノさんだった

 

「ハァ、ハァ……バーテックスは?って園子!?須美!?どうしたんだ?その格好!?」

 

「ミノ……さん?」

 

「ぎ……ん?」

 

私達はミノさんのことを涙を流していた。またこうして出会えるなんて思っていなかった

 

「な、何だよ!?って抱きつくなよ!?き、傷がぁぁぁ」

 

ミノさんに抱きつく私達。そんな光景を見ていたのは……

 

「外が騒がしいと思っていたが……」

 

「誰だこいつら?」

 

「何や怪我してるみたいやし……家の前で会ったのも何かの縁やからな……」

 

「分かりました。ヴィータ。シャマルを呼んでこい」

 

「はいはい」

 

私達は八神家に保護されるのであった。怪我の治療をしてもらい、信じてもらえるか分からなかったけど、事情を話すとはやてちゃんはすぐに信用してくれて、帰還方法がわかるまではいてもいいと言ってくれた。

 

そんな優しい子の命が危ないと知った私達は、悪いことだと知っていても守護騎士のみんなに協力することにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

突然現れた夜空から僕らは事情を聞くことにしたのだが……

 

「えっと、つまり空さんとひなたさんは僕の先祖って言うことになるの?」

 

「まぁそうなるな」

 

「にしても本当に似ていますね……夜空くんはお兄ちゃんの血が濃いのでしょうか」

 

「いや、ひなたにも似てる気がするけど……」

 

何だかこうして自分たちの子孫と会うのは初めてだな。というか子孫と言うか弟みたいだし……

 

「300年後の未来からか……話を聞く限りではあの槍を持った子は私の子孫になるんだな」

 

「雰囲気はちょっと似てたね。若葉ちゃんと……あれそれじゃ私達の子孫はいたりするのかな?ねぇぐんちゃん」

 

「多分いるんじゃないかしら」

 

「友奈と千景の子孫か……どんな奴らなんだろうな」

 

「それに私達の子孫……会ってみたい気がするけど」

 

「ねぇねぇ、夜空くんだっけ?300年後は蕎麦が浸透してたりとかは?」

 

「えっと……」

 

「うたのん、あまり未来のことを聞くのはやめようよ」

 

何だか夜空もこうして囲まれていて戸惑っていた。とりあえず聞きたいことを聞いておくか

 

「カートリッジシステムでの満開だっけ?あれは……」

 

「あぁあれは……上里の魔導師が作り上げた勇者システムの一つです。本来の満開………これは僕らの世界では大赦の大人と僕くらいしか知りませんが、満開の後遺症として体の一部を神樹様に差し出す……花が咲き誇り、散る……散華と呼ばれるものなんですが……どうにも上里家の古文書ではその事を知っていたみたいで……」

 

「カートリッジシステムでの満開を作ったって言うことか」

 

「でも勇者が扱うには体の負担が大きく、勇者と魔導師の2つの素質がある人間なら負担は少ないみたいなんです。僕も勇者としての素質は低いですが、魔導師の素質は高く扱うことができます」

 

だとすれば須美はカートリッジ・満開の事を夜空から聞かされていたって言うことか……にしてもその古文書書いたのは……

 

「………いやいやまさか」

 

僕だったりとかしないよな。あははは………

 

「あと聞きたいことは?」

 

「そうだな……」

 

「あの……」

 

杏が手を上げてあることを聞こうとしていた。

 

「あの子達……未来の勇者たちはどうしてこの世界に?」

 

それは確かに聞こうと思っていたことだ。僕らは鍵の力を使ってこっちに来ている。でも須美達や夜空はどうやってこっちに来たんだ

 

「……こっちに来れた理由としてはこれを使いました」

 

夜空はポケットから黒と赤の鍵を見せた。あの鍵……僕の持っているアネモネと同じ……

 

「魔導師の資格があるものにだけ神樹様から授けられる鍵……それが僕の持つランディニです」

 

『はじめまして、ランディニです』

 

『私の子孫ということですね』

 

まぁそういう関係になるのか?

 

「須美たちがこっちに来た理由としては……ランディニの調整中に起きた事故ということになります。ただ銀に関しては……」

 

「……お前が送ったっていうのか?」

 

「はい……嫌な予感をしていたので、何かが起きたときのために、銀の命が危ない時に発動できるように……銀の葬式には遺体はない状態で行われましたが……」

 

こいつも友達を救うためにどうにかしようとしていたんだな。

 

「お兄ちゃんと本当に似ていますね。助けるためにどうにかしようとしているとこが」

 

ひなたは嬉しそうにしているけど、夜空の表情は暗かった。どうしたんだ?

 

「銀は死に際にこっちに来たのは良かったかもしれませんが……ただ気になることが……」

 

「気になること?」

 

「須美たちから銀と戦っていたバーテックス3体は既にいなくなっていたって……撤退したのかと大赦や須美たちは思っているんですが……」

 

まさかと思うが……バーテックスがこっちに来ているかもしれないっていうことか?

 

「僕は須美たちを向かえに来たのとバーテックス三体がこっちに来ていないか調べているんです。出来れば……」

 

こっちに来てバーテックスと戦うことになるとはな……仕方ない

 

「そのバーテックスの特徴やら何やら教えろ。僕らも時代は違うけど勇者だ。手を貸してやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

夜空はお礼を言い、これからは僕らに協力+須美たちの保護をすることになった。とはいえ……

 

「カートリッジシステム……それに満開……相談してみるか」

 

僕はエイミィさんにあることを相談しに行くのであった。もしもの事を考えて……



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24 無限書庫と強化

時空管理局本部

 

ユーノとクロノ、エイミィと僕、杏である場所に向かっていた。

 

「じゃあその無限書庫で闇の書について調べればいいんだね」

 

「ああ、これから会う二人は、その辺に顔がきくから」

 

「あ、あの私も一緒に調べていいんですか?」

 

「空曰く貴方は本を読んだりするのが得意みたいだからな。空の勧めだ」

 

「まぁ多少は力になるだろうな」

 

「よろしくおねがいします。杏さん」

 

「が、頑張るよ」

 

そんな事を話しているとある部屋の前にたどり着いた僕ら。部屋に入るとそこには猫耳と尻尾の二人の女性がいた。

 

「リーゼ。久しぶりだ。クロノだ」

 

「わぁお!クロすけ、お久しぶりぶり?!」

 

いきなりその一人、ロッテがクロノの顔を胸の方に抱き寄せた。

 

「ロッテ!離せコラ!」

 

「何だとコラ!久しぶりに会った師匠に冷たいじゃんかよ?」

 

「アリア!これを何とかしてくれ!!」

 

「久しぶりなんだし、好きにさせてやればいいじゃない。それに、満更でもなさそうだし」

 

「そんな訳ないだ…」

 

「ニャー!!」

 

僕らはその光景をただじっと見つめていた。

 

「アルフみたいな感じなのか?」

 

「そっ、二人はグレアム提督の使い魔で、クロノの師匠だよ」

 

「話はグレアム提督から聞いてるはずだ。ユーノと杏さんの協力を頼む」

 

「闇の書についてだっけ?いいよ。無限書庫での調べごとの協力任された」

 

「さて、それじゃ僕はメンテナンス室に行ってくるよ」

 

「あぁ、終わったら連絡をしてくれ。迎えに行く」

 

僕はみんなと別れ、開発室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンテナンス室にはメガネをかけた白衣の女性が待っていた。

 

「君がこの子のマスターだね。はじめましてマリエル・アテンザです。気軽にマリーでいいよ」

 

「上里空です。それでアネモネの件は……」

 

「このデバイス……アネモネは私達が知っているデバイスと違うから普通のやり方じゃ結構大変だったんだけどね」

 

『ランディニから受け取ったデータと私に宿った神樹の力を使い、何とかカートリッジシステムを組み込むことができました』

 

「本当に君のデバイスはすごいよね~もう少し詳しく調べてみたいんだけど」

 

あれ?この人……もしかしてマッド的な?いやいやまさか……

 

「試運転したいから……クロノあたりにでも頼んでみるか」

 

そう思った瞬間、突然通信が入った

 

「どうした?クロノ」

 

『例の奴らが現れた!今フェイトと若葉さんたちが向かってる』

 

「わかった。僕も行く」

 

通信を切り、アネモネを握りしめた。

 

「試運転が本番になるとはな……それもいいかもな」

 

『えぇそうですね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉SIDE

 

砂漠の世界で巨大な蛇みたいなものと戦うシグナム。フェイトは咄嗟に魔法を放ちシグナムを助けた。

 

『フェイトちゃん!助けてどうするの!捕まえるんだよ!』

 

エイミィに通信で怒られていた。

 

「あっ、ごめんなさい。つい…」

 

「礼は言わんぞ、テスタロッサ」

 

「お邪魔でしたか?」

 

「蒐集対象を潰されてしまった」

 

言いながらシグナムは、カートリッジをロードする。

 

「まぁ、悪い人の邪魔が私の仕事ですし」

 

「そうか…悪人だったな、私は……そして二人相手か……」

 

「若葉……出来れば……」

 

「わかった。危ないと思ったら交代だ」

 

「はい!」

 

フェイトがバルディッシュを構え、シグナムとの戦いを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

司令部で私達はフェイトちゃんたちの戦いを見守っていると赤い服の子、ヴィータちゃんの情報が入った

 

「本命はこっち!なのはちゃん」

 

「はい!」

 

なのはちゃんはすぐに現場へと向かっていくのであった。

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

私はヴィータちゃんと対峙していた。

何とかヴィータちゃんの話を聞こうとするが、ヴィータちゃんは赤い魔力球を出した。グラーフアイゼンで赤い魔力球を砕き、赤い閃光を放つ。閃光で目くらましをして、離れた。

私はレイジングハートをヴィータに向けて魔力を溜め始めた。

 

「まさか…!撃ってくるのか!?」

 

レイジングハートから、桜色の閃光が放たれた。閃光は真っ直ぐにヴィータちゃんに迫り、爆発した。煙が晴れていくと煙の中から、障壁を張った仮面の男が姿を現した。

 

「あ…あんた…」

 

「行け。闇の書を完成させるのだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若葉SIDE

 

フェイトとシグナムの激闘は続いていた。フェイトはスピードを活かした攻撃を繰り出し、シグナムは剣と鞘を巧みに操って攻撃を防ぎ、反撃する。両者は、一旦距離を離して動きを止めた。二人とも息が乱れている。

 

「流石に速いな……目で追えない攻撃が出てきた」

 

「今はスピードで翻弄してるけど、長くは続かない」

 

「強いな、テスタロッサ。それにバルディッシュも」

 

「シグナムとレヴァンティンも」

 

二人は、互いの強さを認め合う。シグナムはレヴァンティンと鞘を構える。フェイトもバルディッシュを構える。

 

(フェイトはきっと、シグナムに勝ちたいと思っている。だからこそ全力で向かうところだな)

 

フェイトが動き出そうとした瞬間、仮面の男が現れ、背後からフェイトのリンカーコアを取り出した。

 

「え……?」

 

フェイトは呆然となって、自らの体を貫いてる腕を見た。

 

「貴様!!」

 

シグナムが仮面の男に向かって叫ぶ。だが仮面の男はそんな事、気にも止めない。

 

「さぁ、奪え」

 

仮面の男が、フェイトのリンカーコアを差し出す。シグナムは仮面の男を睨んだ。

 

「どうした?早く奪え」

 

「邪魔をするな!!」

 

私は生太刀を抜き、仮面の男へ切りかかった。仮面の男はフェイトを突き飛ばし後ろへと下がった。

 

「勇者か……邪魔をするなら容赦は……」

 

「容赦しないのはこっちのセリフだ!!」

 

上空から何十発もの魔力弾が仮面の男に向かって放たれてきた。仮面の男は障壁で防いでいく

 

「貴様は!?」

 

「上里空だ。試運転だから……加減はできない!!アネモネ!」

 

『カートリッジロード!!切り札!』

 

空は切り札を発動し、今まで三本の尻尾が6本に変わっていた。あれが強化された空なのか……

 

「くらいやがれ!!」

 

7つの魔砲が仮面の男に降り注いだ。仮面の男がいた場所に煙が立ち込め、晴れていくとそこに仮面の男はいなかった。

 

「ちっ、逃げられたか」

 

「空、大丈夫か?」

 

「あぁ……フェイトは……」

 

フェイトの方を見るとシグナムが抱えていてくれた。

 

「シグナム。あの仮面の野郎は?」

 

「わからない。ただ我々に協力してくれているみたいだが……」

 

シグナムの顔を見る限りじゃ信用していないみたいだな

 

「とりあえず逃げていいぞ。フェイトのこともあるし」

 

「すまない」

 

私と空はシグナムを見送った。

 

「空、お前はなにか隠してるのか?」

 

「何って?」

 

「ここ最近、お前と杏、珠子は何かを隠しているように見える。あのシグナムたちのことか?」

 

「……あとでちゃんと話すよ」

 

「あぁ」

 

 



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25 闇の書に潜むもの

フェイトを助けた僕ら、フェイトは特に命に別状はないみたいだった。なのはたちが医務室でフェイトのお見舞いをしている中、僕は若葉たちと夜空にシグナムたちのことを話した

 

「……呪いか……」

 

「あの守護騎士達は悪いことだってわかった上で、主を助けるために……ね」

 

「で、でもクロノ君たちに事情を話せば……」

 

「友奈、クロノたちが分かったとしても、他の管理局員が納得するかどうか……」

 

「組織というものはそういうものなんですよ。高嶋さん」

 

「でもみーちゃんたちの力でなんとかできてたりしないの?」

 

「うたのん、多分だけど呪いをどうにかしても元であるものをどうにかしないと駄目だと思う」

 

みんなは考え込む中、夜空は僕に話しかけてきた

 

「須美たちはその事を知って、だから手を貸してるってことでいいのか」

 

「あぁ、事情も知ってるみたいだからな」

 

「そっか……」

 

ため息をつく夜空。こいつもこいつなりに心配してるんだろうな。にしても……

 

「珠子、さっきから黙ってどうしたんだ?」

 

「ん?あぁ……ちょっとな……こうイライラしてるっていうか何というか……」

 

珠子がイラつくって……何に対して苛ついてるんだ?

 

「とりあえず事情を知ったからって、変に気遣う必要はない。あいつらもそこら辺わかってるから」

 

「あとはこっちに来てるかもしれないバーテックス……かなりの強敵だから変なタイミングで来なければいいんだけど……」

 

夜空の言うとおりだ。こっちに来ているバーテックス……本当に変なタイミングで現れないよな……

それに聞いた限りだと前に僕らが戦ったあの尻尾みたいな大型バーテックスが夜空の世界じゃ当たり前みたいだしな……

 

「もしもの時を考えておかないとな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

無限書庫でユーノくんと一緒に闇の書を調べているとクロノくんが訪ねてきた

 

「ユーノ、調査は順調か?」

 

「あぁ、色々と分かったことがあったよ。まず、『闇の書』っていうのは本来の名前じゃない。古い資料によれば正式名称は『夜天の魔導書』。本来の目的は、各地の偉大な魔導師の技術を蒐集して研究するために作られた、主と共に旅する魔導書。破壊の力を振るうようになったのは、歴代の持ち主の誰かがプログラムを改変したからだと思う」

 

「ロストロギアを使って、無闇矢鱈に莫大な力を得ようとする人が今も昔もいるってことね」

 

アリアさんが呆れながらそういった。

 

「転生と無限再生はその改変が原因か」

 

「一番酷いのは、持ち主に対する性質の変化。一定期間蒐集がないと持ち主自身の魔力や資質を侵食し始めるし、完成したら持ち主の魔力を際限なく使わせる。無差別破壊のために。だから、これまでの主はみんな完成してすぐに……」

 

「ああ。停止や封印方法についての資料は?」

 

「それは今調べてる……ただ……」

 

「ただ?どうした?」

 

ユーノくんは私の方を見た。この事は言うべきことだと思う

 

「気になる文面があったんだ……途切れ途切れなんだけど………『……書に……いんされた……使い……呪に……者……呼ばれるものが……存在したときのみ』って…‥‥‥」

 

「気になる文面だが……十一年前は特に何も起きなかった」

 

「十一年前?」

 

「十一年前、僕の父親が闇の書の封印に失敗したんだ。グレアム提督も関わっていた」

 

「お父様は、その時のこと凄く気にしてたよ」

 

(十一年前……グレアムさんが関わってた……そういえばこの間の戦いでどんなに離れた場所でも仮面の男は一瞬で移動してたって……その時って確か……)

 

私はあることに気が付き、ある人物を見た。もしかして……ううん、まさか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

須美SIDE

 

ようやく体調が良くなり、看病をしてくれたはやてにお礼を言いに行こうと部屋の前に来た私。

 

「はやて、入っても……」

 

声をかけた直後、部屋から何かが倒れる音が聞こえ、私は部屋に入るとはやてが胸を抑えながら倒れていた。

 

「はやて!?」

 

「どうした須美?主!?」

 

「急いで病院に」

 

駆けつけてきたシグナム達は急いで病院に連絡をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

病院で検査を受けたはやて……主治医である石田先生は

 

「もう大丈夫みたいね。良かったわ」

 

はやては病室のベッドにいて、今は落ち着いた様子をしている。私、そのっち、銀とシグナム達は一緒に病院に来ていた。

 

「はい。ありがとうございます」

 

「良かった……」

 

「せやから、ちょい目眩がして胸と手がツッただけって言うたやん。もう、皆して大事にするんやから」

 

「あの時のわっしー、すごくオロオロしてたもんね~」

 

「まぁ須美の心配性は今に始まったもんじゃ……いたたたた」

 

「その原因は一体誰だったかしら?」

 

私は銀の頬引っ張った。今は特に問題はないみたいだけど……でもこれって……

 

「まぁ来てもらったついでに、ちょっと検査とかしたいから、もう少しゆっくりしていってね」

 

「はい」

 

「さて、シグナムさん、シャマルさん。ちょっと……」

 

シグナムとシャマルが先生に呼ばれて、出ていった。きっともうはやては……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の近くで私、そのっち、銀はベンチに座ってたそがれていた。

 

「はやてちゃんの症状……悪化してるんだね」

 

「だな……」

 

「……どうして私達は勇者なんだろう?」

 

「どうしたんだ?須美」

 

「だって……勇者じゃなくって魔導師だったら」

 

私達のリンカーコアをあげて、少しでも闇の書の完成に近づけられるのに……

 

「わっしー、それでも私達なりにできることはあるんよ」

 

「そうだ。もしかしたら勇者の……神樹様もパワーで奇跡が起きてとか……」

 

「だけど……」

 

どうしても嫌な考えが頭の中をぐるぐる回っている。どうして私はこうして悩んでいることしかできないんだろうか……

 

「全く相変わらず考え込んでるな。須美」

 

突然聞き覚えのある声が聞こえ、顔をあげるとそこには夜空くんがいた。それにその後ろには空さんが……

 

「久しぶりだな。というか体調は大丈夫なのか?」

 

「え、あ、はい……どうして夜空くんが空さんと一緒に……」

 

「お前らを探すのに協力してもらってるんだよ。してもらってたんだけど……」

 

「えへへ~連絡したんよ~」

 

そのっちが笑顔で端末を見せた。そういうのは最初からやってほしかったのだけど……

 

「それではやての症状は」

 

「実は……」

 

私は夜空くんと空さんにはやての症状について話した。二人は考え込み……

 

「現状はやっぱり……」

 

「何というか本当に……」

 

「私は……ただこうして見ているだけしかできないのが本当に悔しいです」

 

「須美……」

 

「見ているだけでいいのか?」

 

「えっ?」

 

空さんは真剣な目で私を見ていた。

 

「ただ見ているだけで、こうして考えるだけでいいのか?そうじゃないだろ。まずは行動してみろ」

 

「行動……」

 

「行動して他の方法を探すんだよ……それぐらいはできるんじゃないのか?」

 

「そのために僕はお前たち三人にこれを渡しに来たんだよ」

 

夜空くんは私達にカートリッジを渡してきた。これって……

 

「前にお前が馬鹿みたいに無茶したからな。威力は低くなってるけど、体への負担は少なくなってる。ただ数は三人合わせて3つだけだ」

 

「3つ……」

 

「それと夜空から聞いた話だけど、こっちにもバーテックスが来ているらしい。もしものときは手伝ってくれ」

 

「「「はい」」」

 

バーテックスが来ている。まさかと思うけどあの時の三体が……戦うことになったら今度は……銀もそのっちも死なせない

 

 



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26 それぞれの思い

12月23日。

 

すずか『明日の終業式の帰りの件。みんな大丈夫ですか?』

 

フェイト『はやてにプレゼントを渡しに行くんだよね』

 

なのは『でも、内緒で行って大丈夫かな?』

 

アリサ『まっ、もし都合が悪かったら、石田先生に渡してもらえばいいし』

 

すずか『あの人達も誘ってみよう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

須美SIDE

 

12月24日。はやての病室。

 

私達三人とシグナム、シャマル、ヴィータがお見舞いに来ていた。

 

「はやて…ごめんね。あんまり会いに来れなくて」

 

「ううん。元気やったか?」

 

「めちゃめちゃ元気!」

 

何だか微笑ましい光景だった。この光景をどうにかして守らないと……

 

「こんちには」

 

ドアの向こうから、すずかの声が聞こえた。シグナム達は焦っていた。きっと連絡がなかったから来ないものかと思っていたのかもしれない。

 

「あれ?すずかちゃんや。はーい、どうぞ」

 

「こんにちは」

 

ドアが開かれて、すずかと他にも友達が病室に入ってきた。

 

「あ、今日は皆さんお揃いですか?」

 

「こんにちは、はじめまして」

 

「「あっ!?」」

 

中に入ってきた友達の中に見覚えのある人たちがいた。彼女たちは空さんの……

 

「えっ!?」

 

シャマルたちも驚きを隠せないでいた。そして空さんと夜空くん、杏さん、珠子さんは思いっきり顔をそむけていた

 

「あ、すみません。お邪魔でした?」

 

「い、いや、そういうわけじゃ……」

 

「本当に驚きました。いらっしゃい」

 

シグナムとシャマルはなんとか誤魔化す

 

「なんだ。よかった」

 

「驚かせてすみません」

 

「ところで今日はみんなどないしたん?」

 

はやてがすずか達に尋ねた。すずかとアリサは、笑顔で互いに顔を見合わせ、

 

「せーの!」

 

二人は同時に、コートで隠していたプレゼントを出した。

 

「サプライズプレゼント!」

 

プレゼントをはやてに差し出した。はやては嬉しそうな笑顔になる。

 

「今日はイヴだから、はやてちゃんにクリスマスプレゼント」

 

「わあ、ほんまか。ありがとうな」

 

お礼を言いながら、はやては二人からプレゼントを受け取った。

 

「みんなで選んできたんだよ。後で開けてみてね」

 

アリサ達は楽しそうに話をしている。ヴィータはまだなのはを睨んでいて、なのはは困った顔をしている。隣にいるフェイトも同じ表情をしている。

 

「ああ、みんなコートを預かるわ」

 

シャマルがみんなのコートを預かるのであったけど、この状況どうしよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

なのはたちに誘われて、はやてのお見舞いに来たのはいいけど……まさかの遭遇だった。

夜空も杏も珠子もどうしたらいいのか分からないでいる中、僕はシグナムに声をかけた

 

「なぁ何で今日いるんだよ」

 

「す、すまない……主に心配をかけたくなくって……」

 

「だからって、ほら、ヴィータだっけ?あいつ睨んでるからな」

 

「えと…あの…そんなに睨まないで…」

 

「睨んでねーです。こういう目つきなんです」

 

そんなヴィータをはやてが怒った。本当にこれはもう誤魔化しようがないな。

すずかたちが出ていったあと、シグナム達は近くのビルで話があるといい、僕は待機している若葉たちに連絡を入れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くのビルでシグナム達はなのはたちに事情を話した

 

「はやてちゃんが、闇の書の主…」

 

シグナム達から話を聞いたなのはが呟いた。フェイトも困惑の表情を浮かべている。

 

「悲願は後わずかで叶う」

 

「邪魔をするなら、はやてちゃんのお友達でも」

 

「待ってください」

 

須美が話に割り込んできた。きっとこの状況をどうにかするために……

 

「これ以上は戦う必要は……」

 

須美が言い掛けた瞬間、ヴィータがグラーフアイゼンを須美に向けた。

 

「悪いが、アタシたちはもう止まることが出来ないんだ」

 

「シャマル、離れて通信妨害をしていろ。須美、私達はもう後戻りはできない」

 

シグナムがレヴァンティンを抜き、なのはたちが身構えた

 

「我ら守護騎士は…主の笑顔のためならば、騎士の誇りさえ捨てると決めた」

 

シグナムがバリアジャケットに着替えた瞬間、珠子が攻撃を仕掛けた。

 

「タマっち先輩!」

 

「事情を聞いてからどうにも苛ついてたんだよな……それにさっき後戻りができないだのなんだのって……」

 

珠子は切り札を発動し、シグナムたちに向かっていく。シグナム達は攻撃を避けていく。

 

「ふざけんな!!」

 

「うるせぇ!!」

 

ヴィータがグラーフアイゼンで珠子を殴りかかる。珠子は防ごうとせずただ直撃を食らった。だがそれでも珠子は立ち続けていた。

 

「じゃあどうすればいんだよ!!あたしらはそいつらや他の魔導師を襲ったんだ!!今更協力してくれるわけ……」

 

「してやる!!タマに任せタマえ!!」

 

珠子が力強く答えた瞬間、ヴィータは思いっきりひるんだ。

 

「いくらでも協力してやるし、それに闇の書とやらを完成だって……タマが管理局の魔導師に言って協力させる!たった一人の女の子のために手伝ってくれって」

 

全く珠子は……

 

「仕方ない。話を聞かないやつがいたら僕がぶっ飛ばしてやる」

 

「まぁあくまで協力者ということですからね。僕らの場合は特に怒られることはないですもん」

 

「それだったら私達も」

 

「うんうん、手伝うよ~」

 

「それに困ってる奴らがいるんだから協力しないやつはいないからな」

 

僕らも珠子の意見を聞き、協力すると伝えた。シグナム達は武器をおろしていた。もうこれ以上は戦う必要はないな。

そう思った瞬間、僕らはバインドで縛られた

 

「これは!?」

 

「拘束完了」

 

「よくやった」

 

僕らの前に仮面の男が二人現れた。

 

「では、始めるとするか」

 

仮面の男が右手を上げた。すると闇の書が現れた。

 

「いつの間に!?」

 

シャマルが驚く中、杏が仮面の男二人を睨みながらあることを告げた

 

「二人いたんですね。いえ、当然ですよね。ロッテさん、アリアさん」

 

杏の言葉を聞いて、僕らは驚いていた。この二人がリーゼさんたちだっていうのか?

 

「離れた場所を一瞬のうちに移動することはどう頑張っても無理ですよね。だから思ったんです。きっと二人いるって、それにグレアムさんが昔闇の書事件に関わっていたことを聞いたんです。もしかしたらこれは……」

 

「こいつ、気づいていたのか」

 

「く…構うな。何を知っていても、今の状態では我々の邪魔はできん」

 

闇の書が開くと紫色に光る。

 

「う…うああっ!!」

 

シグナム達から、それぞれ光の玉が現れる。

 

「最後のページは、不要となった守護者自らが差し出す」

 

「あああああ!!」

 

シャマルが闇の書に蒐集され、姿が消えた。次にシグナムの蒐集が始まる。

 

「ああああ!!」

 

シグナムたちが消えていく。

 

「何なんだ?何なんだよテメーら!?」

 

「プログラム風情が、知る必要はない」

 

「くそが!切り札発動!!」

 

 



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27 目覚めたもの

切り札を発動し、バインドを破った僕は、仮面の男二人に向かっていくが、

 

「お前と戦うのは骨が折れる」

 

「それだったら……もう二度と破られないように何重にも縛り上げておこう。バインド」

 

いくつものバインドで縛り上げ、更にはチェーンバインドで僕を振り回していき、そのまま屋上へと放り投げた

 

「やばっ!?」

 

「さよならだ」

 

「空!?」

 

「空さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上から落とされた僕は何とかバインドを破ろうとするが、中々それができない。このまま落下の衝撃で僕は……

 

「切り札発動!!一目連!」

 

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、誰かが僕をキャッチしてくれた。

 

「友奈!?」

 

「じっとしていなさい」

 

更に千景が大鎌でバインドを切り裂いた。普通魔法での拘束を切れないだろ

 

「拘束系の無効化。どう頑張っても?千景姉」

 

アリシアが笑顔でそう言ってきた。なるほどな。アリシアの補助魔法なら……

 

「空、何があった?」

 

「かくかくしかじかで結構やばい状況だ」

 

ひなたから教わったけど、かくかくしかじかは本当に便利だな。一発で説明できるなんて

 

「闇の書が完成……」

 

「それに伊予島さんの推理だと仮面の男の正体は……」

 

「ほとんどはそのグレアムって言う人がブラックカーテンってことね」

 

「うたのん、ブラックカーテンって」

 

「黒幕って言うことですね」

 

「とりあえず急いで戻らないと……」

 

その時屋上から爆発音が聞こえ、全員で空を見上げた瞬間……

 

「あれは!?」

 

空には巨大な生物が三体いた。まさか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

仮面の男二人ははやてを連れ出し、目の前でヴィータとザフィーラを消し去り、闇の書を完成させた。

そしてその依代とされたはやては銀髪に黒い羽をはやした女性に変えた。

 

「はやて……ちゃん?」

 

「なのは、今は……」

 

「勇者確認!封印解呪の条件に基づき、封印を解呪!」

 

女性は闇の書を広げた瞬間、3つの光を僕らの前に出した。3つの光は形を変え続けていき……

 

「あれって!?」

 

「そんな!?」

 

「おいおい、まさかと思うけど……」

 

「封印がどうとか言ってたけど……まさか闇の書に封印されていたって言うことか?」

 

僕らの目の前に現れたのは銀を殺したスコーピオン、サジタリウス、キャンサーのバーテックスだった。こんな状況で出てくるなよ!!

 

「須美、銀、園子……こいつらは僕がなんとかする。お前らは……」

 

「ううん、一緒に戦おう」

 

「ミノさんの仇だもんね」

 

「まぁ生きてるんだけどさ……とりあえずリベンジだ!!」

 

「夜空君……」

 

「なのはたちはあれをどうにかしろ!」

 

「気をつけて」

 

なのはとフェイトの二人は闇の書の意思に向かっていくのであった。

 

「全員!気を引き締めろよ!」

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

夜空君たちがバーテックスに挑む中、タマっち先輩は闇の書の意思に向かっていった。

 

「お前!!」

 

タマっち先輩の攻撃を闇の書の意思は障壁で防ぎ

 

「また、全てが終わってしまった。決して終わらせる事が出来ない悲しみ…」

 

闇の書の意思は涙を流しながら言った。闇の書は片手を上に掲げると、黒い球体を作り出した。

 

「デアボリック・エミッション」

 

闇の書の意思の言葉の後に、黒い球体が大きくなっていく。

 

「空間攻撃!」

 

「闇に…染まれ……」

 

黒い球体はどんどん大きくなる。なのははフェイトの前に出て、障壁を展開した。何とか、防ぎきったなのはたちはビルの陰に隠れていた。私はタマっち先輩が炎の盾で守ってくれたけど、タマっち先輩はもう限界に近い

 

「なのは、ゴメン。ありがとう。大丈夫?」

 

「うん。大丈夫」

 

「あの子、広域攻撃型だね。避けるのは難しいかな。バルディッシュ」

 

フェイトはバリアジャケットを変えた。レイジングハートをなのはに渡す。

 

「……はやてちゃん」

 

「なのは!」

 

「フェイト!」

 

ユーノとアルフが二人の所にやってきた。直後、突風が起こり、街を何かがスッポリと覆った。

 

「前と同じ、閉じ込める結界だ」

 

「やっぱり、私達を狙ってるんだ」

 

「今、クロノが解決法を探してる。それにプレシアさんも」

 

「母さんも?」

 

「それまで、僕達で何とかするしかない」

 

「うん」

 

「タマっち先輩……下がってて、ここは私が」

 

「杏……タマはまだ」

 

「もう限界だよ。ユーノ君」

 

「は、はい」

 

タマっち先輩をユーノくんに任せた私は、前へと出て

 

「切り札発動!雪女郎!」

 

切り札を発動し、闇の書の意思の動きを封じていく。それにバーテックス三体の動きを……

 

「範囲を絞りつけていけば……」

 

「無駄だ!」

 

闇の書の意思がそう呟いた瞬間、空から無数の矢が降り注いできた。私は避けるが足に何本か矢が突き刺さった

 

「痛っ!?」

 

「杏!?あの野郎!バーテックスを操れるのかよ!」

 

「長い間封印していたから……洗脳したのかな?でもそれでもまだ……」

 

更に矢が降り注ぎ、タマっち先輩、なのはちゃん、フェイトちゃん、ユーノ君、アルフさんが防いでくれたけど、尻尾付きのバーテックスが私達を薙ぎ払った。

 

倒れた私達。矢を放ったバーテックスは私達に向けて巨大な矢を向けた。

 

「うくっ……」

 

もう終わり……なの?私は目をつぶった瞬間

 

「目をつぶるなよ!最後まで」

 

目を開けた瞬間、7つの魔砲がバーテックスに直撃させた。

 

「空……さん」

 

「さぁて……バーテックスに闇の書か……相手に不足はない!」



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28 空の全力全開

アリシアSIDE

 

フェイトたちが戦っている場所から離れた所で、仮面の男が二人、何かを話していた。

 

「ディランダルの準備は?」

 

「大丈夫だ。これで……」

 

「おっと、そこまでだよ。歌野さんに拘束補助!」

 

「はい、捕まえたっと」

 

歌野さんの鞭に縛られる仮面の男二人。更にクロノのバインドで二重に拘束をされた。

 

「ロッテ、アリア。やっぱり君たちだったんだね」

 

仮面の男二人の姿がみるみる内に元の姿へ戻っていった。

 

「クロノ、あんた気がついてたのね」

 

「あぁ杏さんから言われた時は半信半疑だったが……調べていて……確信に至った。さぁ話してもらうよ。グレアム提督と共に」

 

「クロノ、私も一緒に行くよ。ちゃんと話を聞きたいからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

闇の書の意思と対峙する僕。倒れた杏に近寄り

 

「杏、動けるか?」

 

「あ、足が……」

 

「珠子は?」

 

「タマは杏を連れて行くくらいなら余裕だ」

 

「それだったら杏を連れてひなたと水都の所に連れて行ってくれ。まずは治療が先だ」

 

「よし、任せタマえ」

 

「で、でも、空さん、あの人は……」

 

「僕がなんとかする」

 

僕は闇の書の意思をにらみつけると、闇の書の意思は本を開き

 

「サジタリウス小破。元の姿に戻れ」

 

そう命じた瞬間、三体のバーテックスが無数の星屑に別れた。

 

「数が多くしたか……若葉!友奈!千景!須美!園子!銀!星屑は任せた!なのは、フェイト、夜空!僕と一緒にやるぞ」

 

『了解!』

 

全員がそれぞれ動き出し、僕ら四人は闇の書の意思の前に出た

 

「これ以上、主の願いを邪魔するな」

 

「邪魔か……本当に邪魔をしているのはどっちだろうな!!」

 

6本の尻尾が6つの槍に変わり、僕の手に持っている槍を合わせて7つの斬撃を喰らわしていくが、奴は障壁を張って防ぎ、右手を僕の方に向けた

 

「ブラッティーダガー」

 

赤いナイフが僕の体に突き刺さっていくが、背後からなのはのアクセルシューターとフェイトのプラズマスマッシャーを放つが、それすらも防いでいく。

 

だが

 

「距離を詰めれば……」

 

背後に気を取られた闇の書の意思の隙をつき、夜空が至近距離でランディニを向けた。

 

「ゼロ距離!シャドウバスター!!」

 

紫色の魔砲が命中するが、闇の書の意思は……無傷だった。

 

「ゼロ距離でも駄目か!?」

 

「だけどまだ諦めてないよな。お前ら」

 

「「「うん!!」」」

 

まだみんなは諦めていない。だったら……

 

「……どんなに頑張っても主の悲しみは無くならない。咎人達に…滅びの光を」

 

「まさか、あれは…」

 

「私のスターライトブレイカー」

 

「なのはは一度、闇の書に蒐集されてる。その時に魔法をコピーしたんだ!」

 

コピーできるってかなりやばくないか?このままだと本気でやばい……

その時、エイミィから通信が来た。

 

「大変、結界の中に取り残された一般人が…」

 

「早く助けに行かないと」

 

「仕方ない。ユーノ、アルフ、聞こえるか!」

 

『は、はい』

 

『なんだい?』

 

「お前らはひなたたちを連れて遠くに離れるんだ。なのは、フェイト、夜空はその一般人の保護を頼む!」

 

「空さんは?」

 

「まさか切り札の力で防ぐつもり?無理だよ。一度喰らってわかったけどあれは防いでも……」

 

「誰が防ぐって言った?アネモネ!モード!フルバスター!」

 

7つの槍がアネモネにくっつき、金色の杖へと変わった。僕は杖の先に魔力をかき集め

 

「まさか!?」

 

「空も……」

 

「相殺してみせる!だからお前らは早くいけ!!」

 

僕のことを信じ、なのはたちは直ぐ様離れていくのであった。

 

「星よ集え…全てを撃ち抜く光となれ」

 

「神樹様から授かりし槍。精霊の槍よ!杖と一つになり、全てを打ち破る力を見せろ!!」

 

「貫け…閃光、スターライトブレイカー!!」

 

「撃ち抜け!全力全開フルテイル・ブレイカー!」

 

2つの収束砲がぶつかり合い、周りが光りに包まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシアSIDE

 

ある部屋で、私、クロノ、ママ、グレアム提督とアリア、ロッテがいた。

 

「二人に指示を出したのはあなたなんですね。グレアム提督」

 

「違うよ。クロノ」

 

「これは私たちの独断だ」

 

クロノの言葉に二人は反論するが、

 

「あなた達は黙っていなさい」

 

ママはプレッシャーを放ちながら二人を黙らせる。怒ってるママを見るのは初めてだった。でも、怒るのも無理もない

 

「二人ともいいんだよ。二人はもうあらかた掴んでいる」

 

「あなたは闇の書の転生先を調べていたんですね。そしてたどり着いたのは闇の書の現在の在処と今の主である八神はやてを」

 

「…両親に死なれ、体を悪くしたあの子を見て、心は痛んだが……運命だとも思った。孤独な子であれば、それだけ悲しむ人は少なくなる」

 

「それはおかしいよ」

 

グレアム提督の言葉を聞き、私は反論した。悲しむ人が少なくなるのは駄目だ。だって少なくっても悲しむ人はいるんだから

 

「私は知ってるもん。その人達の悲しみの重さを」

 

「アリシア……」

 

「彼女の生活の援助をしていたのも貴方ね?」

 

「永遠の眠りにつく前くらい、せめて幸せにしてやりたかった…」

 

「偽善です」

 

「封印の方法は闇の書を主ごと凍結させて、次元の狭間にでも閉じ込める。そんなところかしら?」

 

「ああ。それなら闇の書の転生機能は働かない」

 

本当にそれが正しいことだって思えない。他にも方法があるはずだから

 

「これまでの闇の書の主だって、アルカンシェルで蒸発させたりしてんだ。それと何にも変わんない!」

 

「プレシアさん。私達を解放して。凍結がかけられるのは暴走が始まる数分だけなんだ」

 

「あなた達がやろうとした事は、単なる復讐です。八神はやてはあなた達の復讐の道具ではない」

 

「そうだな。自分たちがやろうとした事がただの復讐でしか無いと本当に気がついたのは、プレシア女史の事件を聞いてからだ」

 

「えっ?」

 

「君は娘であるフェイトくんを道具としか扱っていなかった。だが、その考えもある少女と出会ったことで変わった」

 

「千景ね……もしも彼女が言ってくれなかったら私はあの子を道具として扱わなかった。それにアリシアとこうして会うこともできなかった。だけど……」

 

「もし彼女と出会うのがもっと早かったら、考えを変え、彼女を最高の形で救うことを考えたのかもしれない。クロノ、これを…」

 

グレアム提督はクロノにディランダルを渡した。

 

「これをどう使うかは、君次第だ。」

 

「はい、アリシア、一緒に行こう」

 

「うん、あぁそれとねグレアム提督。まだ考えは変えられるよ」

 

「それは……」

 

「ママを救ったのもフェイトを救ったのも千景お姉ちゃんかもしれないけど、一番運命をかけられる人がもう一人いるの」

 

「それは一体……」

 

「勇者たちの中で一番頑張って、一番後悔してきて、そして運命を変えた人……上里空って人だよ」

 

きっと今回もどうにかしてくれるよね。空お兄ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

結界内に取り残された人たちは、なのはとフェイトの友達二人だった。二人を無事に避難させた後、まばゆい閃光があたりを包み込み、光が消えた。

 

「戻ろう。空さんが……」

 

「うん」

 

「大丈夫だといいけど……」

 

僕らは急いで元の場所に戻るとそこにはボロボロの空さんとほぼ無傷の闇の書の意思がいた。だが何故か闇の書の意思は泣いていた

 

「なぜ……立っていられる」

 

「まだ立っていられるんだよ……悲しむ人がいるから……僕たちは勇者だから悲しむ人を助けてあげないといけないからな」

 

「空くん!?」

 

どこからともなくやってきた友奈さんは倒れそうになる空さんを支えた

 

「ゆう……な……バーテックスは?」

 

「あの閃光のあと、姿がなくなったの」

 

「奴らは闇の書の中に戻った。更に進化をするために……」

 

「だったら……早い所なんとかしないとな」

 

「もう無理だ。もうお前は戦うことは……」

 

「だったら早く泣きやめよ」

 

「これは……主の……」

 

「それだったら……はやてのところに連れてけ。泣き止ませる」

 

「私も……‥一緒に行くよ」

 

「……出来るものなら……」

 

闇の書の意思は黒い魔法陣を展開させ、空さんと友奈さんを消した。もしかして取り込まれたっていうのか?



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29 幸せな世界

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

 

「ん?ひなた……」

 

目を覚ますとひなたの顔が一番に目に入った。

 

「珍しいですね。お兄ちゃんが寝坊するなんて」

 

「あぁ……昨日……」

 

僕は昨日何かをしていて寝坊したんだっけ?それに……何か大切なことを忘れているような……

 

「今日は私の買い物に付き合ってくれるんですよね」

 

「あ、あぁ……」

 

僕は何かを忘れている気がする……とても大切なことを……

 

 

 

 

 

 

ひなたの買い物が終わり、適当に街を歩いている中、ずっと違和感を感じていた。

 

「何だか平和だな……」

 

「ん?平和って?」

 

「いや、だって……」

 

何でこんなに平和なんだ?いや、良い事なんだろうけど……何かがおかしい気がする

 

「……ねぇお兄ちゃん。どうしたの?」

 

急に声の感じを変えてきたひなた。僕はひなたをじっと見つめながら話を聞き続けた。

 

「……違和感しかないんだ。平和なのはいいことなんだろうけど……何かが違う気がする」

 

「何って?だってみんなが平和に過ごしているのが何が違うの?」

 

あぁそっか……ようやく気がついた。全くこれって何かの試練か何かか?

 

「お兄ちゃん?」

 

「確かにこうして何事もなく平和な日々が続くのはいいことだけど……それじゃ駄目なんだ。僕たちはその平和を取り戻すために戦ってるんだからさ」

 

「……やっぱりお兄ちゃんはすごいね」

 

ひなたは笑顔でそう言うと、僕らの目の前に光の扉が現れた

 

「これは闇の書が見せている幸せな夢……人は幸せな夢を見続けることで現実へ戻ろうとしない。だけどお兄ちゃんはそれを乗り越えた。あの子と一緒だね」

 

「あの子……あぁ」

 

「お兄ちゃん、救ってあげて……悲しんでるあの子を」

 

「わかった」

 

僕は扉を開け、この幻想空間から抜け出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想空間から抜け出すと友奈が待っていてくれた。

 

「待っててくれたのか」

 

「うん、空くんなら大丈夫だと思って……それに……」

 

友奈は何故か顔を赤らめていた。何だ?どうしたんだ?

 

「私が見たの……その……えっと……」

 

一体何を見たっていうんだよ……

 

「空くんとお付き合いしてる幻想で……すごく幸せだったんだけど……」

 

何ていう幻想を見せてるんだよ……闇の書のやつは……

 

「私って、ぐんちゃんみたいにきれいじゃないし、杏ちゃんみたいに可愛くないし、若葉ちゃんやタマちゃんみたいに格好良くないから……空君と付き合うのはおかしいかなって思って……」

 

「何言ってるんだよ。おかしくないからな」

 

「えっ?」

 

「だから付き合うのはおかしいことじゃないからな。だって僕はお前のことが好きだから……」

 

「えぇ!?」

 

あれ?なんかとんでもない事言ってないか僕……

 

「えっと、空君……」

 

友奈はさっきよりも顔が真っ赤だし……これは……

 

「その答えは後でいいから……今はほら、早く行こう」

 

「う、うん」

 

とりあえず今ははやての所に行かないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

二人で先へと進んでいくとそこには闇の書とはやての二人がいた。

 

「空さんとえっと……」

 

「あ、はじめまして、高嶋友奈です」

 

「八神はやてです。その空さんたちはもしかしてこの子が迷惑をかけたから……」

 

「まぁそんな所だけど……」

 

「あのこの子は悪くないんです。ただ色々と不幸が重なって……」

 

はやてが闇の書から聞かされたことを僕らに話した。今までのこと、自分が闇の書と呼ばれた理由……

 

「そっか……」

 

「それではやてちゃんはどうするの?」

 

「私はこの子の主やからな。ちゃんと迷惑かけた人たちに謝らんといけないし、それに……この子は闇の書って名前のままじゃ可哀想やから……名前をつけたる」

 

「主……」

 

何というか本当に優しい子だな。はやての奴……

 

「とりあえず外の人にここを抜け出す方法と止める方法を教えないと……」

 

はやてがそう言った瞬間、闇の書が白い魔法陣を展開させた。

 

「外の方!管理局の方!そこにいる子の保護者、八神はやてです!」

 

『はやてちゃん!?』

 

『はやて!?』

 

なのはとフェイトの声が聞こえてきた。どうやら上手くいきそうだな

 

「えっ!?なのはちゃんとフェイトちゃん!?」

 

『うん!なのはだよ』

 

『いろいろあって、闇の書と戦ってるの』

 

二人ははやてに返事をした。すると今度は……

 

『もしかしてそっちに空さんたちもいるのか?』

 

「あっ、その声、須美ちゃんたちの友達の人やろ。おるで」

 

『良かった。こっちは勇者全員で戦ってるんだけど……どうすればいいんだ?』

 

「ごめん、何とかその子止めてあげてくれる?」

 

『え?』

 

「魔導書本体からはコントロールを切り離したんやけど、その子が走ってると管理者権限か使えへん。今そっちに出てるのは、自動行動の防御プログラムだけやから。管理者権限が使えれば、空さんたちも出てこれる」

 

『わかった。魔力ダメージを与えればいいんだね』

 

『やろう、フェイトちゃん!』

 

何だかノリノリだな。この二人……まぁあっちは任せるとして……

 

「はやて、この中にいるバーテックスのことなんだけど……」

 

「バーテックス?」

 

「主、感じませんか?異物みたいなものを」

 

「あぁ感じる……でも防御システムの方だから切り離すことは可能や」

 

「だったら安心だな」

 

「バーテックスが残された嫌だもんね」

 

あとは外へと出てその防御システムとバーテックスをどうにかするしかないな。はやては早速準備にかかった。

 

「夜天の主の名において、汝に新たな名を贈る」

 

はやては両手を闇の書の顔に添える。

 

「強く支えるもの、幸運の追い風、祝福のエール。リインフォース」

 

「新名称『リインフォース』認識。管理者権限の使用が可能になります」

 

「うん」

 

「ですが、防御プログラムは止まりません」

 

「まぁ何とかしよ。行こか。リインフォース」

 

はやてはリインフォースを抱いた。

 

「はい。我が主」

 

「それじゃ終わらせようか……全部」

 

「うん」

 

僕らはまばゆい光に包まれるのであった。



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30 vs交わりしもの

今回、詰め込みすぎました


夜空SIDE

 

なのはとフェイトの二人の魔砲が闇の書に直撃した瞬間、闇の書にあった場所に白い球体が、そして海の方には黒い球体が現れた

 

「お~い、夜空~」

 

すると銀たちが何だか巨大な円盤に乗ってやってきた。

 

「状況は?」

 

「えっと……闇の書と防御システムを切り離したって言うことでいいのか?」

 

「うん、はやてちゃんの言うとおりなら」

 

「だとしたらあそこにあるのは……」

 

若葉さんは黒い球体の方を見つめた。あれが防御システムだとしたら……

すると白い光の周りに、4つの魔法陣が展開された。

 

「おいで…私の騎士達…」

 

「我等、夜天の主の下に集いし騎士」

 

「主在る限り、我等の魂尽きる事無し」

 

「この身に命在る限り、我等は御身のもとに在る」

 

「我等が主、夜天の王、八神はやての名の下に」

 

「シグナム!」

 

「ヴィータちゃん!」

 

復活したシグナムさん達を見て、なのはたちは嬉しそうにしている。更に白い光から声が続く

 

「リインフォース。私の杖と甲冑を」

 

「はい」

 

はやては黒いバリアジャケットを見につけ、杖を手にした。直後、光は消えて、中からはやてが姿を現した。

 

「夜天の光よ、我が手に集え!祝福の風リインフォース。セーットアップ!!」

 

髪の色が変わり、騎士甲冑をイメージしたようなバリアジャケットを身に纏い、背中には翼のようなものが生えた。

 

そしてその両隣には空さんと友奈さんの二人がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「戻ってこれたな」

 

「うん」

 

はやてのおかげで戻ってこれた僕ら。するとはやてたちは……

 

「はやて…」

 

ヴィータは目に涙を浮かべている。はやては優しく微笑んだ。

 

「すみません」

 

「はやてちゃん……あの…ごめんなさい」

 

シグナムとシャマルが、はやてに謝った。はやては首を横に振った。

 

「ええよ。みんなわかってる。リインフォースが教えてくれた。そやけど細かい事は後や、おかえり。みんな」

 

「う……うあああああ!!」

 

はやての温かい言葉を聞いた後、ヴィータが泣きながら抱き付いた。

 

「はやて!はやて!はやてぇぇぇぇ!!」

 

涙を流しながら、ヴィータははやての名前を叫んだ。はやては優しくヴィータを抱いて、頭を撫でた。

 

「なのはちゃんとフェイトちゃんもゴメンな。ウチの子達がいろいろ迷惑掛けてもうて」

 

「ううん」

 

「平気」

 

「空、傷が治ってないか?」

 

「そういえば……」

 

「あぁこっちに戻る時に治せるかなって思って治したんや」

 

はやてのおかげということか……するとクロノとアリシアがこっちにやってきた。

 

「すまないが、ゆっくり話している時間はない」

 

「あと数分であの闇の書の防衛プログラムが後数分で暴走を開始しちゃうの。どうにかして止めないと……」

 

「停止のプランは現在二つある」

 

クロノは待機状態のデュランダルを取り出した。

 

「まず一つは、極めて強力な氷結魔法で停止させる。二つ、軌道上に待機してあるアースラの魔導砲『アルカンシェル』で消滅させる」

 

「これ以外に他にいい手はないか?」

 

クロノが他に意見を求めた。シャマルが手を挙げた。

 

「えーと…最初のは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは、魔力の塊みたいなものですから」

 

「凍結させてもコアがある限り、再生機能は止まらん」

 

「アルカンシェルも絶対ダメ!こんな所でアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんか!!」

 

「そ…そんなに凄いの?」

 

「発動地点を中心に、百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら、反応消滅を起こさせる魔導砲。っていうと大体わかる?」

 

「あの、私もそれ反対!」

 

「同じく!絶対反対!!」

 

「僕も艦長も使いたくないよ。でもあれの暴走が本格的に始まったら被害はそれより、遥に大きくなる」

 

『はい、みんな!あと十五分しかないよ』

 

どうにも話がまとまらなくなってきたな。それにあの防衛システムには……

 

「バーテックスもいるから、かなり厳しい戦いになるけど……」

 

「勇者の力でって言うのも無理そうですからね……」

 

僕と夜空も思いつかないでた。すると珠子があることをいい出した

 

「あぁもう、適当な場所まで誘導してぶっ飛ばすとかできないのかよ!」

 

「タマっち先輩……そんな単純なことじゃ……あれ?」

 

すると杏が考え込んだ。何か思いついたのか?

 

「クロノくん……聞きたいことがあるんだけど、アルカンシェルはどんな場所でも撃てるものなの?」

 

「えっ?それは……」

 

「杏、方法が見つかったのか?」

 

「はい、この場所で撃つのはだめだけど……アースラがある宇宙空間で撃てば……」

 

なるほど、それなら確かに被害は少ない。でも……

 

「可能なのか?」

 

『管理局のテクノロジー、ナメてもらっちゃ困りますなぁ。撃てますよ。宇宙だろうが、どこだろうが!』

 

エイミィが通信で自信満々に答えた。

 

「オイ!ちょっと待て君ら!ま…まさか……!」

 

「クロノ、やって見る価値はあるだろ」

 

「でも、あのバーテックスとかいうのは?」

 

「それは私達の出番だ。空、出し惜しみをしている場合じゃない」

 

「うん、私達も全力全開で」

 

若葉と友奈の二人は力強い目でこっちを見た。出し惜しみはなしだな。

 

「あぁ全力でやっていいぞ。須美たちもな」

 

「はい」

 

「みんなで一気にいっくよー!」

 

「それじゃ早い所始めようぜ」

 

「個人の能力頼りで、ギャンブル性の高いプランだが……やってみる価値はある」

 

「防衛プログラムのバリアは、魔力と物理の複合四層式。まずはソレを破る」

 

「バリアを抜いたら本体がむけて、私達の一斉攻撃でコアを露出」

 

「そしたらユーノ君達の強制転移魔法で、アースラの前に転送!」

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラ

 

「まぁ、発想がすごいわね」

 

リンディは驚き半分呆れ半分の、複雑な笑みを浮かべた。

 

「計算上では実現可能というのが、また恐いですね」

 

「だけど賭けてみましょう。彼女たち魔導師と勇者たちの力を!アルカンシェル!チャージ開始!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が持ち場に着くと、僕、須美、園子、銀、友奈、若葉、夜空は並び立ち……

 

「それじゃ行くぞ!」

 

「「「「「カートリッジフルロード!!」」」」」

 

「「切り札発動!!」」

 

「「「「「満開!!」」」」」

 

「大天狗!!」

 

「酒呑童子!!」

 

若葉と友奈の切り札……これまで使ってきたものよりも大幅に強化され、発動すれば何者にも負けない切り札。

 

須美たちは神秘的な衣装に変わり、園子は巨大な船、銀は4つの巨大な腕に4つの斧が握られた姿に変わった。

 

夜空は友奈の酒呑童子と似たような姿に変わったが、右手にはランディニと左手には巨大な金棒を持った姿に変わった。

 

僕は9本の尾に、槍とアネモネが一つになった槍杖が握られた。

 

「僕らの満開は須美たちと違うみたいだな」

 

「僕らの場合は魔法との融合ですから……精霊ベースの方が扱い易いみたいですよ。空さんは九尾、僕は大嶽丸みたいですね」

 

とりあえずこれで僕らの準備は完了だ。

 

防衛プログラムの周辺に数本の禍々しい黒い柱が立つ。防衛プログラムが暴走を開始する。

 

「夜天の魔導書を、呪われた闇の書と呼ばせたプログラム。闇の書の『闇』」

 

はやてが呟いた。黒い球体が消え、中から防衛プログラムが姿を現した。カニのような足があり、カラスのような黒い翼が生えていて、獣のような鋭い爪を持った前足、幾つかの動物を合わせたような機械の怪物だった。頭部には、紫色の女性のようなモノがあった。

 

更にはキャンサー、スコーピオン、サジタリスが一つになったバーテックスが防衛システムに並び立った。

 

「あっちはコアが再生とかなさそうだな」

 

「あのバーテックスは防衛システムと繋がっとるから、防衛システムのコアを破壊すれば」

 

「ならやることは簡単だ!」

 

「チェーン・バインド!!」

 

「ストラグル・バインド!!」

 

アルフのオレンジ色のバインドと、ユーノの緑色のバインドが、防衛プログラムの周りにある尻尾のようなモノを捕らえる。

 

「鋼のくびき!!」

 

ザフィーラから白い魔力の線が出る。白い線は複数の尻尾を斬った。

 

「レイジングハート!エクセリオンモード!!」

 

レイジングハートの形が変形する。ヴィータがグラーフアイゼンを構えて近寄る。

 

「ちゃんと合わせろよ!高町なのは!!」

 

「ヴィータちゃんもね!!」

 

「『鉄槌の騎士』ヴィータと、『鉄の伯爵』グラーフアイゼン!!」

 

グラーフアイゼンは巨大なハンマーになる。

 

「轟天爆砕!!ギガント・シュラァアアアク!!!」

 

巨大ハンマーを、防衛プログラム目掛けて振り下ろす。防衛プログラムはバリアを張って、巨大ハンマーとぶつかる。衝撃で波が荒れる。バリアは、ヴィータの巨大ハンマーによって砕かれた。

 

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン、行きます!」

 

足下に桜色の魔法陣を展開する。カートリッジロードをする。レイジングハートから桜色の翼が出る。防衛プログラムに向けて構える。

 

「エクセリオンバスター!!ブレイク・シュート!!!」

 

桜色の閃光を放ち、防衛プログラムのバリアに直撃した。桜色の閃光はバリアを破った。

 

「『剣の騎士』シグナムが魂、『炎の魔剣』レヴァンティン!刃と連結刃に続く、もう一つの姿」

 

鞘とレヴァンティンを合わせる。撃鉄を起こして、レヴァンティンと鞘は合わさって『弓』になった。

魔力で矢を作り、防衛プログラムに向けて構える。

 

「翔けよ、隼!!!」

 

矢は紫色に輝き、防衛プログラムに向かって放たれた。バリアに当たった矢は爆発し、バリアを砕いた。

 

「バルディッシュ!ザンバーフォーム!!」

 

「フェイト・テスタロッサ、バルディッシュザンバー!行きます!!」

 

足下に金色の魔法陣が展開される。バルディッシュを上に掲げ、撃鉄を起こす。

 

「撃ち抜け、雷神!!!」

 

バルディッシュを振り下ろし、金色の魔力刃が伸びる。伸びた金色の魔力刃は、バリアを破って防衛プログラムを斬った。防衛プログラムからミミズのようなモノが現れ、光線を放とうとしていた

 

「『盾の守護獣』ザフィーラ!攻撃など撃たせん!!」

 

ザフィーラが白い魔法陣を展開する。白い魔力の柱が、攻撃を阻止した。

すると今度は合体バーテックスが無数の矢を放とうとしてきたが、珠子と銀が前に出て

 

「撃たせて!」

 

「たまるか!!」

 

珠子は炎をまとった旋刃盤を銀の前に出し、銀はそれを盾にしながら突き進み、四本の斧で矢の発射口を破壊した。だが……

 

「こいつ、再生しているぞ!」

 

「なら……切り刻むだけね」

 

「そのためには動きを封じないとね」

 

「それだったらアリシアちゃん」

 

「OK」

 

アリシアが歌野に強化魔法をかけると、歌野の鞭は巨大なものに変わり、バーテックスを縛り上げた。更に杏の雪女郎でバーテックスの傷口を氷で覆い、千景が切り刻んでいく

 

「あいつら、えげつないことをするな……」

 

「切り刻んで、再生しようとしたところを凍らせるって……」

 

杏たちが離れると、バーテックスは巨大な盾と巨大な尻尾を構え始めた。

 

「友奈!あれを打ち破れるか?」

 

「うん、任せて!全力全開の!」

 

友奈は拳を構え、巨大な盾に向かっていく

 

「勇者パンチ!!」

 

友奈の一撃で盾はすぐに破壊され、更に若葉は巨大な尻尾を切り刻んでいく

 

「止めを頼んだぞ!」

 

攻撃や再生を封じられたバーテックス。すると園子が船からオールみたいなものを発射し、突き刺していく。

 

「わっしー、お願いね」

 

「えぇ、銀の仇よ!!砲撃!」

 

バーテックス目掛けて放たれた巨大な砲撃。バーテックスはところどころ穴だらけになり行動不能になった。

 

「彼方に来たれ、宿り木の枝。銀月の槍となりて撃ち貫け!!」

 

はやては白い魔法陣を展開する。防衛プログラムの上空に、七ツの白い光を出す。

 

「石化の槍、ミストルティン!!!」

 

白い槍は防衛プログラムを貫き、防衛プログラムを石化させる。すると、石化した防衛プログラム内から、獣の顔をした機械やら尻尾やらが無茶苦茶に出てきた。

 

「うわ!?なんか凄い事になってるよ!」

 

『やっぱり並の攻撃じゃ通じない!』

 

「だが、攻撃は通っている。プラン変更はなしだ!」

 

クロノが氷結の杖・デュランダルを構えて、エイミィに応えた。

 

「悠久なる凍土、凍てつく柩の地にて、永遠の眠りを与えよ」

 

クロノがデュランダルを振った。直後、海が凍っていく。

 

「凍てつけ!!!」

 

そのまま防衛プログラムまで凍らせた。

 

「それじゃやるぞ!!」

 

「はい!」

 

僕と夜空は並び立ち、デバイスを構えた。

 

「行くよ、フェイトちゃん、はやてちゃん!」

 

「うん!」

 

なのはの言葉に、二人は頷いた。なのはの前に魔法陣が展開され、桜色の魔力が集束される。

 

「全力全開!スターライト――」

 

「雷光一閃!プラズマザンバー――」

 

足下に金色の魔法陣を展開し、バルディッシュを構える。空から紫色の雷が落ちて、金色の魔力刃に当たる。はやては杖を空に掲げて魔力を溜める。

 

「ごめんな…おやすみな……」

 

防衛プログラムを見つめ、はやては辛い顔をして呟いた。

 

「響け終焉の笛、ラグナロク――」

 

「フルテイル!」

 

「黒き咆哮!!すべてを砕け!!シャドウ・オーガ!!」

 

「「「「「ブレイカーーーーーーーーー!!!!」」」」」

 

5つの閃光が防衛システムに直撃し、大爆発が起きた。これ……下手すれば地形が変わりそうだな……

 

「捕まえた!」

 

シャマルが防衛プログラムのコアを捕らえた。

 

「長距離転送!」

 

「目標軌道上!」

 

「転送!!!」

 

シャマル、ユーノ、アルフの三人によってコアは転送された。

 

 

 

 

 

 

「アルカンシェル、バレル展開!」

 

キーボードを操作しながらエイミィが言った。リンディの前に発射装置が現れた。

 

「命中確認後、反応前に安全距離まで退避します。準備を!」

 

「了解!」

 

「アルカンシェル発射!」

 

キーを回す。アースラからアルカンシェルが発射された。光の中に飲み込まれ、コアは完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『現場のみんな、お疲れ様!無事に終了しました!』

 

エイミィからの知らせを聞いて、みんなが喜び合う。結構きつい戦いだったな。バーテックスも処理できたし……

 

「本当にすごいものだね。人の子は」

 

全員が喜び合う中、聞き覚えのない声がその場に響いた。そして僕らは声が聞こえた場所を見るとそこには真っ赤な髪をポニーテールにした一人の少女がいた。

 

「平行世界からの使いをどうにかしようと思っていたけど、やるものね。流石は神に抗う人の子と魔導の子たちね」

 

「お前は……誰だ!?」

 

僕らは全員武器を構えると、少女は笑みを浮かべた

 

「お前たちにわかりやすく言ってやろう。この世界の天の神だ」




AS編もあと数話です。終了後は幕間を書いてStrikerS編に行きます


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31 天の神

戦いを終えた後、突如現れた一人の少女……それは天の神だった。僕らは武器を構えたが……

 

「止めておいたほうがいいわ。別に戦うつもりはないから……」

 

天の神が指を鳴らした瞬間、はやてが白い炎に包まれた。戦うつもりがないって言ってる割には……

 

「あれ?なんや?体が……」

 

「主……これは……」

 

はやてとリインフォースの二人はなぜか驚きを隠せないでいた。天の神は笑みを浮かべていた。

 

「そやつの蝕んでいたもの……それとそこの融合機も存在を維持できるようにしておいたぞ」

 

「おいおい、須美たちから聞いてた割には、この天の神ってやつ良い奴じゃないか?」

 

「だが何のために……神というのは無償で人を救うものなのか?」

 

シグナムの言うとおりだ。こいつ、何を考えている。

 

「謝罪の意味を込めてやったことよ。本来はこっちの世界にバーテックスが現れることはなかったけど、どっかの誰かが面倒なことをしてね……」

 

天の神は夜空のことを見つめた。そういえば銀を助ける時に一緒にバーテックスが巻き込まれたって言ってたな

 

「でも、夜空くんは銀を……」

 

「そうだよ。悪いことをしたわけじゃないし……」

 

「えぇ分かってるわよ。それに世界を繋げたとしてもバーテックスは行き来できないようにしてあるんだけど……そっちの土着神が渡した鍵の影響なのか……もしくは例の存在かしら」

 

一人でぶつくさ言ってる天の神。さっきからどうにも気になってることがあるんだが……

 

「聞きたいことがあるわ」

 

「あら?何かしら?」

 

「天の神は人々に罰を与えた割には、どうにもフレンドリーな気がするけど」

 

千景が僕が気になってることを言ってくれた。そうだよな。天の神と僕らは敵同士だよな。なのにこうして話すのって……

天の神は笑みを浮かべ……

 

「そりゃそうよ。私の場合は貴方達より遠い未来から来ている。その未来では既に決着が付いているのよ」

 

『はい!?』

 

その場にいた勇者全員が同時に声を上げた。決着が付いているって……未来の情報を話していいものなのかよ……

 

「えっと、それじゃ神様は……」

 

「人を恨んでないってこと?」

 

「そやったらええことやね」

 

なのはたちはそう言うけど、正直僕らはどんな反応をすればいいんだよ……

 

「えっと、まぁそこら辺はもう置いといて……例の存在って……」

 

「そうね……まずは色々と話しておきたいから少しゆっくり話できる場所に連れて行ってもらえないかしら?」

 

僕らはリンディさんに連絡し、アースラで天の神と話をすることになった。ただ人数が多いため、代表として僕、夜空、リンディさん、クロノ、なのは、若葉の6人で話を聞くのであった。

 

「あ、あの、私、いていいのかな?」

 

代表に選ばれたことを不思議がっているなのは。そんななのはに僕は

 

「まぁなのはの場合は一番最初から関わっていたって言うことだから……」

 

「そういう理由で……」

 

「とりあえず話を勧めてもいいかな?」

 

天の神はお茶(角砂糖入り)を飲みながら、語りだした。

 

「まず例の存在に話す前に、世界というものについて話そうか」

 

「世界……いきなり壮大だな」

 

夜空の言うとおり、いきなり世界についてって……

 

「知っている人間はいると思うけど、世界というものは数え切れないくらいある」

 

「平行世界というものね」

 

「えぇ、平行世界の数……というより天の神が人に罰を与えた世界の数はかなり多いわ。まずこの世界……勇者たちのいる世界と魔導師のいる世界を管理しているのはこの私ね」

 

「待ってくれないか?管理しているということは……どうしてこちらでは天の神は……」

 

「こちらは管理局というものがあるじゃない。人が神の領域に触れようとしたら、裁くという組織がね。だけどそちらの世界にはいない……だからこそ私は罰を与えた」

 

2つの世界……そんな違いが……

 

「管理しているのがお前ということは……他にも天の神はいるのか」

 

「えぇ生意気そうな貴方の言うとおりよ」

 

「生意気そう……」

 

天の神に生意気そうって言われてちょっとイラつくクロノ。まぁクロノもここで怒らないように我慢してくれているから大丈夫だな

 

「平行世界の数だけ天の神はいる。まぁこうして人の前に現れて話をしたりするのは少ないけどね」

 

「その他の神様って似たような感じなんですか?」

 

「そうね……例えばある世界の天の神は色々とあって位が上がって自由に平行世界を渡り歩いたりしたり、またある世界ではとある魔導師に怯えたりしてる奴もいるわ。まぁ今回の件に関しては自由な天の神に教えられたのだけどね」

 

天の神にも色んなやつがいるんだな。ただそのとある魔導師に怯えた天の神って……それってどんな天の神だよ

 

「お前が言う例の存在……一体何なんだ?」

 

「そいつは神の領域に深く踏み込み、天の神すら滅ぼす存在……現在はなにかの目的のために世界を渡り歩いているらしいけど、そいつの影響なのか、今回こちら側にバーテックスが転移した可能性があるわね」

 

「神の領域に深く踏み込んだ……夜空は何か聞いたことないのか?」

 

「いえ、そんな話は……」

 

夜空自身知らないか……一体どんな奴なんだ

 

「はっきり言わせてもらうとそいつと戦わないほうがいいわ。貴方達では勝てないわ」

 

はっきりと断言しやがった。そこまでやばい奴なのか……

 

「まぁそいつに対抗できる人間がいるとしたら、神から武器を授かり、運命を変えた人間くらいかしらね」

 

「そんな人がいるのか……」

 

「というか神からって……」

 

僕と夜空の二人がそう言うと、天の神は笑みを浮かべた。

 

「知る限り三人ね。未来のことになるから詳しくは言えないけど……」

 

「あの、神様を怯えさせた魔導師の人は?」

 

「彼女の場合は……どうかしらね。とりあえずそっちの貴方にこれを渡しておくわ」

 

天の神はなのはに一本の鍵を渡した。これって僕らが持っているものと同じ……

 

「もし魔導の力で太刀打ちできなかったら、そのデバイスというものに使ってみなさい。あとこれさえあればそっちの三本の鍵を持つ人間の世界に行けるわ。それじゃ」

 

天の神はそう言い残して姿を消すのであった。何というか言いたいことを言って帰っていったな……

 

「夜空たちがいた時間より少し未来で……決着が着くのか」

 

「何だか長い戦いですよね。空さんや若葉さんたちから始まって……」

 

「まぁどんな結果になるのかは夜空、須美、園子、銀だけが知るのか……応援してるぞ」

 

「はい」

 

夜空を応援しながら、天の神との話し合いは終わりを告げるのであった。




新たな敵の存在を出しつつ、次回でAS編は終了。幕間を挟んでStrikerS編となります。

例の存在と対抗できる人間は……まぁ彼らのことですね。


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32 それぞれの世界へ

「それじゃ先に帰るんだな」

 

「はい」

 

防衛システムとの戦いから数日が経った。僕らも元の世界に帰ることになった。

 

「本当にいろいろとありがとうね。はやて」

 

「ええんよ。須美ちゃん。またいつでも遊びにね」

 

「よっくん、そこら辺は?」

 

「まぁ大丈夫だと思うけど……」

 

「なぁ夜空、私は本当に戻っていいのか?一応死んだことになってるし……」

 

「一応前もって大赦には死んだことにしないようにって言っておいたから大丈夫だと思うけど……」

 

「僕らもそうだけど、お前らの方も頑張れよ」

 

「空さん……空さんたちも頑張ってください」

 

僕と夜空は互いに拳を合わせた。本当に未来のことは任せたぞ。夜空

 

「それじゃ帰ろうか。ランディニ」

 

『はい』

 

夜空がランディニを使い、白い扉を開いた。四人は扉の中へと入り……

 

「それじゃまた」

 

手を振りながら元の場所へと戻っていくのであった。

 

「帰っちゃったな……」

 

「まぁまた遊びに来るって言ってたしな……」

 

「せやな」

 

「それでテスタロッサたちの方は大丈夫なのか?」

 

シグナムがフェイトたちの事を聞いてきた。フェイトたちの場合は……まぁ千景が何とかしてくれるだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

アリシアの今後の事が気になり、私はアリシアの所に訪れていた。

 

「それで結局貴方はどうするの?」

 

「どうするって……」

 

「プレシアとフェイトと再会できたのだから、こっちに残っていいのよ」

 

「あ~実は言うと私ね。千景お姉ちゃんたちと一緒に残ろうと思ってるの」

 

「貴方……本当にいいの?折角……」

 

折角再会できたのだから家族一緒に住んでもいいのに……

 

「うん、このことはね。ちゃんとママたちと話し合ったの。私にはまだやるべきことがあるから……まだ帰れないって」

 

やるべきこと……バーテックスとの戦いのことね。確かに彼女の場合はそういう役目を担うようになっていたわね

 

「中途半端で終わりにしていいものじゃないから……それに空が言ってた例の存在っていうのも気になるから……」

 

「そう……」

 

この子はきっと考えて考えて、ちゃんと答えを出したんだ。だから私はこれ以上色々と言う必要はない。

 

「それにね。千景お姉ちゃんの恋人との関係が気になるから」

 

「それは気にならなくていいから」

 

「えぇ~お姉ちゃん、こっちに来てから偶に端末の写真を見てるじゃない。ものすごく会いたいんでしょ」

 

「貴方ね……」

 

呆れながら私はアリシアの頭を撫でるのであった。

 

「えへへ~そういえば聞いた?」

 

「何を?」

 

「実は……」

 

アリシアから語られたこと、それは……上里くんと高嶋さんのことについてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

帰る準備をしている中、部屋に友奈が訪ねてきた。

 

「どうしたんだ?準備終わったのか?」

 

「うん、何とか……それで……その……」

 

「ん?」

 

「この間のお返事なんだけどね」

 

「返事……」

 

返事って言われて最初は何のことか分からないでいた。頑張って思い出していくと……

 

「返事って……あっ……」

 

「空くん、忘れてたの?」

 

「いや、色々とあったから……そ、それで……」

 

「う、うん……その……私、高嶋友奈は……」

 

友奈は顔を赤らめながら、僕のことをじっと見つめた。そして友奈はずっと悩み続けて出した答えを告げた。

 

「空くんの事が好きです。だから……お付き合いしてください」

 

「友奈……」

 

僕はそっと友奈の事を抱きしめた。友奈は体を震わせていた。

 

「お付き合いしてくださいって……」

 

「えへへ、だってなんてお返事すればいいのかわからないから……」

 

「そっか……」

 

「ちゃんとみんなに言ったほうがいいよね」

 

「そうだな。特に……」

 

千景としっかり話し合わないと行けない気がするからな……

 

「空さん、少しお聞きしたことが……」

 

すると突然部屋になのはが訪ねてきた。なのはは僕らの現在の状況を見て顔を真赤にさせていた。

 

「え、えっと……お邪魔しました」

 

なのははものすごい勢いで扉を締めるのであった。何というか……申し訳ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから僕らの帰還の日、その前の日には友奈と付き合うことになったことをみんなに伝え、千景には泣かせたりしたら許さないと釘を差されたりした。

 

「今回も助かった」

 

「いいってことよ。今度はそっちから遊びに来いよ」

 

「それもいいですね。せっかくですからその時はみんなで温泉にでも入りましょうか」

 

ひなたが笑顔でいう中、なのはは僕にあるものを見せた。

 

「確かこの鍵で行けるんですよね」

 

「あぁ、あとはレイジングハートに差し込めば、何かしら出来るって聞いたけど……」

 

「それと昨日、あの神様がいい忘れたことがあるって言って……」

 

「いい忘れたこと?」

 

「はい、『他の人間に渡してもいいが、その時はちゃんと適正があるか確認するように』って」

 

適正って……何のだよ

 

「まぁ使わないことがあればいいな」

 

「はい」

 

なのはの持っている鍵……どんな力が宿っているのか気になるけど……そのうち分かるだろうな。

僕は鍵を使い、扉を出現させた。

 

「それじゃまたな」

 

みんなにそう告げ、僕らは元の世界に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前

 

海上に2つの影があった。

 

「バーテックスが合体するなんてね……本当に驚きだよ」

 

「魔法の力が混ざりあったから……」

 

「でも良かったね。これで全部だよ」

 

「あぁ……後は……」

 

「また時を渡らないとね。りっくんを元に戻すために」

 

「本当にいいんだぞ。これは僕の……」

 

「だめだよ。好きな人が苦しんでるんだから……それにその鍵が言ってたんだからさ。助けるために必要なことだって」

 

「あぁ」

 

「それじゃ行こうか。この世界の十年後あたりね」

 

 

 

 

 




次回は幕間をはさもうかと思いましたが、StrikerS編になります


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StrikerS編
33 転移した場所は……


空SIDE

 

元の世界から戻ってから一ヶ月がたった。バーテックスの進行はなく、僕らは平穏の中を過ごしていたのだが……

 

「何で急にあの世界に?」

 

「やっぱり前にひなちゃんたちが見た神託のことなの?」

 

友奈が言う神託。これまで以上の数と大型のバーテックスが数体、現れるということだった。そのため僕はあの世界に行き、少しアネモネの調整をしてもらおうとしていた。

 

「備えておく必要があるからな。まぁちょっと遊びに行く感じだから」

 

「良かったわね。アリシア」

 

「うん、フェイトたちに会えるから楽しみ~」

 

「タマはヴィータに会うのが楽しみだな」

 

「タマっち先輩とヴィータちゃん、仲いいもんね」

 

「みーちゃん、あっちに着いたらなのはたちに任せた畑の様子を見に行こう」

 

「うん、うたのん」

 

みんな、あっちに行けるのが楽しみだった。とりあえず僕は扉を出現させ、あちらの世界に行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

ある日の事。僕は部室にみんなを呼び出していた。

 

「どうしたのよ?急に呼び出して……」

 

「夜空君、何かあったの?」

 

「もしかして大赦から壁を破壊したことの……」

 

風先輩、友奈、東郷がそんな事をいう中、僕の隣にいる園子がケースを開けた。そこには勇者に変身するための端末が入っていた。

 

「もしかしてバーテックス絡み?」

 

「で、でもしばらくは戦うことがないって……」

 

夏凜、樹が心配そうにいう中、園子は首を横に振った。

 

「今回みんなに頼みたいことはね。改造した端末の試運転をしてもらいたいの」

 

「「「「「改造?」」」」」

 

「前に言ったけど、この間の戦いに使っていたのはまだ未調整の勇者システムだった。それでみんなに辛い思いをさせたから……そのために頑張って改造して……カートリッジシステム付きで完全に体に負担が少ない勇者システムを作ったんだ」

 

「わっしーは知ってるよね。前に使ってたから」

 

「え、えぇ……でも私達の場合は……」

 

「体の負担が少なくしておいたし、散華は無くした。精霊防御もちょっと前よりかは落ちてるけど……」

 

僕はそう言うと、樹が端末を取った。

 

「夜空さん、私は夜空さんのことを信じます」

 

「樹……」

 

「あんたら、いちゃつかないでくれない?」

 

「本当に……樹も好きな人の前で積極的になってよかったわ」

 

風先輩はそう言いながら、端末を取った。そして他のみんなも……

 

「それじゃ早速やってみるか」

 

「「「「「「変身」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変身したはずなのに気がついたら電車の中にいた僕ら……

 

「見た目は変わってないみたいね。でも武器に何だか変な装置が……ってここどこよ!?」

 

「先輩、ツッコミ遅いですよ」

 

「夜空!ここどこよ!?」

 

「電車の中みたいですね」

 

「システムの調整ミスかな?」

 

園子の言う通りかもしれないけど、何でいきなり電車の中に転移するんだよ……

 

「電車だよね?でも……」

 

「まぁ貨物列車みたいなものじゃない?とりあえず運転手に事情を話して……」

 

「みなさん!?見てください」

 

樹が窓の方を指さした。僕らも見てみると何だか空の色が違う……樹海とは違うし……

 

「ここ本当にどこよ!?」

 

「ランディニ、現在地の確認を!」

 

『了解!』

 

ランディニが作業を始める中、園子があることに気がついた

 

「もしかしてここって、ミッドチルダじゃない?」

 

「ん?あぁなるほど」

 

「私達が飛ばされるとしたらそれしかないわね。夜空くん、連絡をしたほうが」

 

「そうだな」

 

「ってあんたらだけで話を進めんじゃないわよ!!」

 

「もしかして前に言ってた平行世界ってところなの?」

 

「それじゃ前に二人が言ってた友達に会えるんだね」

 

友達って言うか……僕らよりもちょっと年下の子達だからな……

 

「でも折角会いに行くんだったらミノさんも連れてくればよかったね~」

 

「銀は今……」

 

「防人組の方で忙しいみたいだからな……」

 

そんな事を話していると、突然前の方から変な機械が数十体現れてきた。

 

「警備ロボってところかしら?」

 

「えっと、あの私達は……」

 

友奈が事情を話そうとしたとき、ロボットからビームが発射された。僕は咄嗟に障壁で防ぎ、東郷が撃ち抜いていった。

 

「友奈ちゃんが説明しようとしているのに……問答無用で襲いかかるのは良くないと思うわ」

 

東郷の警告を無視して、ロボットが襲いかかってきた。僕らは武器を構え、ロボットを破壊していく。

 

「後でリンディさんに言って、弁償してもらおう」

 

「その方がいいよね~」

 

「あんたら、そういいつつ楽しそうに破壊してるじゃない」

 

いや、だってこういうのって高そうだから……すると後ろの方から誰かがやってきた。

 

「あれ?ねぇ、ティア、人が乗ってるよ」

 

「おかしいわね。リイン曹長は人が乗ってないって……」

 

青い髪に、手には拳具を装備した少女とオレンジ髪に2つの銃を持った少女が僕らの方を見ていた。

 

「夜空、あんたの知り合い?」

 

「いや、知り合いじゃないけど……」

 

「何だか聞き覚えのある名前が聞こえたけど……」

 

リインって、リインフォースのことだよな?この子達は知っているのか

?すると奥の方から球体のロボットが現れた。

 

「ガジェットが!?」

 

「そこの人たち、逃げ……」

 

「ランディニ。シャドウ・バスター!!」

 

球体に向かって砲撃をし、破壊することができた。すると何故か二人の少女は驚いていた。

 

「嘘……魔導師なの?」

 

「でも今回の作戦は六課が担当だって……」

 

何だかよく分からないけど、この二人は管理局の人って言うことでいいのか?まぁ色々と話をしたいから……

 

「みんな、僕の後ろに……空さん直伝!!サーチアンドシューティング!!」

 

無数の魔力弾を発射し、前の方にいるロボットを破壊していく。だけど……

 

「どうにも魔法が効きにくい気がするんだけど……まぁいいか。ランディニ、敵反応は?」

 

『すべて破壊してあります。敵機は魔法を多少無力化する力があるみたいですが……魔法を打ち消しても勇者の力が宿っている時点で意味はなかったみたいですけどね』

 

魔法を打ち消すか……それでもほんの少しの勇者の力が上手く反応できているみたいだな。

 

「とりあえず色々と終わったみたいだし、ランディニ。連絡をは取れたのか?」

 

『ふむ、どうにも難しい感じですね。ここに来た時に故障したのでしょうか?』

 

故障って……まぁいいや。

 

「そこの二人、悪いんだけどある子に連絡をしてほしんだ」

 

「ある人?」

 

「高町なのはって奴に、上里夜空が……」

 

「「なのはさん!?」」

 

何故かなのはの名前を出したらすごく驚かれたんだけど……というか明らかになのはより年上だよな。この二人……

 

すると列車が停まり、僕らは二人の少女……青髪の方はスバル、オレンジ髪はティアナの二人に案内され、外に出た。するとそこには……

 

「ガジェットの反応が急に消えたと思ったら……お久しぶりです」

 

白いバリアジャケットに、見覚えのある杖を持った女性が待っていた。まさかと思うけど……

 

「えっと」

 

「もしかして……」

 

「そんなことって……」

 

僕、園子、東郷の二人は驚きを隠せないでいた。まさか目の前にいる女性が……

 

「はい、お久しぶりです。夜空さん」

 

「「「なのは!?」」」

 

 



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34 十年越し、二年越しの再会

僕、東郷、園子は突然の再会で驚きを隠せないでいる中、友奈、風先輩、樹、夏凜、スバル、ティアナたちはと言うと……

 

「あれ?知り合いじゃないの?」

 

「でも前に聞いた話じゃまだ9歳位の女の子だって……」

 

「どうみても私達より年上じゃない!?」

 

「それに……」

 

樹は自分の胸となのはの胸を見比べていた。いや、いちいち比べなくていいから……

 

「知り合いじゃないの?」

 

「何だか複雑な事情でもあるのかしらね?」

 

「えっと……なのはでいいんだよな」

 

「はい」

 

「なのちゃん、二年ですごく成長したね~」

 

「そのっち、二年じゃないと思うけど……」

 

「二年?あの夜空さんたちと会うの十年ぶりなんですけど」

 

「「「十年!?」」」

 

何なんだこの時間の違いは……すると金髪の女性と赤髪の少年、ピンク髪の女の子がこっちにやってくるのが見えた

 

「なのは、どうかしたの?ってもしかして夜空たち?」

 

「その声……フェイトでいいのか?」

 

「フェイタンも十年後みたいだね~」

 

「夜空君、もしかしてシステムの不具合で十年後の未来に転移したとか?」

 

「かもしれないな……」

 

とりあえず僕らはなのはたちに色々と落ち着いて話したいと言うと、自分たちが現在所属している舞台の部署まで連れて行ってくれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはとフェイトの二人に僕らは部隊長室に案内された。機動六課の部隊長……まぁなのは、フェイトと来たんだから……

 

「久しぶりやね。夜空さん、須美ちゃん、園子ちゃん」

 

やっぱりはやてだったか……というか部隊長って……

 

「須美って、東郷の昔の名前だっけ?」

 

「はい、あのはやて、今は鷲尾須美じゃなくって東郷美森なの」

 

「ん~なんか色々とあったみたいやね。それに一緒に来た子たちの中に見覚えのある子がおるんやけど……」

 

はやては友奈のことをじっと見つめていた。まぁ僕も初めてあった時は驚いたけど……

 

「えっと……」

 

「高嶋友奈さんじゃないんよね?」

 

「えっと、私、結城友奈です」

 

「何だか夜空が入部したときみたいな感じね」

 

「確か夜空たちが平行世界であった300年前の勇者の一人に友奈そっくりな奴がいたって話だっけ?」

 

「写真とかないんですか?」

 

写真は……僕らは持ってないな。

 

「なのはちゃんたちから聞いた話だと、夜空さんたちは、前に会ったときから二年後……」

 

「私達からしたら十年……」

 

「時間の流れなのかな……夜空さんたちはこの二年間何があったの?」

 

「この二年間……」

 

僕は東郷、風先輩の方を見た。二人はただ黙ったまま頷いた。話すべきだよな

 

「まず……色々と話す前に僕らの世界のこと話すべきだよな」

 

「確かバーテックスに進行されていて……夜空さんたちはバーテックスと戦ってるんだよね」

 

「うん、だけど僕らの世界は……四国だけしか残ってないんだ」

 

「四国だけって……」

 

「でも、空の話じゃ街は壊滅してるけどって……」

 

「あの天の神やね。何かしらの力を発揮したって言うことって考えてええの?」

 

「あぁ」

 

300年前、勇者たちが大規模侵攻でバーテックスと戦っている最中に隙をつかれ、四国以外の全てが炎の世界へと作り変えられた。

それから長い歴史の中でバーテックスとの戦いを繰り広げていった。

 

そして僕らが帰還し、少ししたあとのこと……

 

「それじゃ銀は……」

 

「あぁ大赦側は、銀を勇者から下ろすって話になった」

 

「それって……納得は……」

 

「わっしー、落ち着いて、これは別に悪いことじゃないんだよ。ミノさんは勇者じゃなくなったわけじゃなくって、ミノさんが使っていた勇者システムを改良。ミノさんには新たな勇者システムを作り上げるまでの間、休んでもらうことになってるの」

 

「新たな勇者システム……」

 

「あっちで使っていたカートリッジ式はまだ不安定だからな。負担を減らすば威力は落ち、威力をあげれば負担が大きい……安定させるために銀にはシステムの実験に付き合ってもらうことになってる。まぁそれだけじゃないけどな……」

 

壁の外の調査ということで、現在作られている防人システムの調整を手伝ってもらっている。それに銀には防人に選ばれた子たちの鍛錬教官をしてもらうために、今も頑張ってくれているからな。上里家に残されたトレーニングメニューを使って

 

「システムの安定のため、しばらくはカートリッジ無しでの戦いになるけど……二人共絶対に無理だけはするなよ」

 

「それは……」

 

「夜空くんもだよ」

 

言われてしまった……いや、僕は無理は……結構してるかもしれないな

 

「とりあえず次の戦いはかなり大きいものになるから……気を引き締めていこう」

 

「「おぉー」」

 

それからバーテックスの大規模な進行が始まった。敵の力は強大で、須美と園子は満開を使わざるおえなかった。

満開には後遺症として散華と呼ばれる体の一部が欠損してしまうものがある。

須美は二回使用し、両足の機能と記憶を失い、園子は20回満開を行い、動けない体になってしまった

 

僕は二人に大きな負担をかけてしまったことを悔いた……もう誰にもこんなつらい思いをさせたくない

だから……

 

 

 

 

 

 

「そんな事が……」

 

「でも須美は……じゃなかった。東郷は私達のことを覚えてるってことは……」

 

「はい、記憶は戻ってます」

 

「そこら辺の話もしないとね。ここにいる勇者部のみんなのことを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

二年後

 

僕は勇者になる確率が最も高い讃州中学の勇者部に所属することになった。

風先輩は大赦の関係者のため、僕の事情を知っていたけど……

 

「えっと結城友奈です」

 

「あぁ、ごめん。知り合いに似てたから……」

 

記憶を失った須美の友達である友奈と初めて会った時は本当に驚いた。友奈さんにそっくりだったから……

 

そしてバーテックスの進行で友奈たちは勇者になり、僕は魔導師としてバーテックスと戦うことになった。

 

だけどまた大規模侵攻で、夏凜以外のメンバーは満開をしようし、散華を受けた。

そして園子は友奈と東郷の二人に満開と散華の事を話し、東郷には壁の外のことを話した。

 

このとき使っていた勇者システムは精霊は主を絶対に死なせないようにしているが、それは死ぬことなく戦い続けることだと気がついた東郷は、世界を破壊しようとした。

僕らは東郷を説得し、友奈の活躍によって何とかバーテックスの進行を止めることができた。

 

 

 

 

「美森ちゃんは無理するな~」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「でも何となく分かるよ。友達のためになんとかしようとしてたのって、うちの子たちと同じやから……」

 

はやては守護騎士たちのやったことと東郷がやったことを重ねていた。確かに誰かのために、悪いことだってわかった上で行動するところは似てる気がする……

 

「それでその完全に安定した勇者システムの実験で、こっちに転移したってことでいいのかな?」

 

「そうなんだよ。鍵の力を使えば戻れると思ったんだけど、どうにも無理そうだし……」

 

「それじゃはやてちゃん」

 

「せやな。勇者部の部長さん」

 

「ん?」

 

「こっちにいる間でいいんだけど、協力してもらっていいかな?私達も今はある事件を追ってるんや。そのためには魔導師だけじゃなくって、もしかしたら勇者の力が必要になるかもしれへん」

 

「断ったら追い出すとかは?」

 

「しないよ。そんな事、絶対に」

 

フェイトは力強く答えた。すると風先輩は笑みを浮かべた

 

「まぁここで協力しないって言ったら部員全員に怒られるしね。それに私自身、断る気はないから!協力するわ」

 

こうして僕らは機動六課に協力することになった。とはいえ……

 

「所で夜空さんにちょっと聞きたいことがあるんやけど」

 

「何だよ?」

 

「夜空さんも年頃やから勇者部の誰かとお付き合いとかしてるん?」

 

はやて……お前な……

 

「まぁいるけど……」

 

「そこら辺、詳しく聞きたいな~」

 

何だか絶対に誂われるなこれ……僕は黙ることにしたのだった。

 

 




空たちの出番は……いつになるのか……


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35 空が未来に残したもの

機動六課に協力することになったのはいいけど、なぜか僕らは訓練場に来ていた。

 

「なぁ、なのは。何でこんなところに連れてきたんだ?」

 

「ほら、夜空さんたちがこれから協力することになったからみんなのことを紹介しようと思って」

 

なのはに案内された所にはスバル、ティアナの他に二人と見覚えのある二人がいた。

 

「よぉ、夜空、須美、園子じゃんか」

 

「久しいな」

 

「シグナムさん。お久しぶりです」

 

「ヴィーたんも久しぶり~」

 

「おい、園子、その呼び方やめろ」

 

「えぇ~」

 

シグナムさんとヴィータの二人は変わってないな……まぁプログラムみたいなものだから成長とかしないんだろうな

 

「機動六課の部隊についてちょっと説明するとね。スターズ、ライトニング、ロングアーチの3つに別れてるの。スターズは私が隊長で、副隊長はヴィータちゃん。ライトニングの隊長はフェイトちゃん、副隊長はシグナムさん。ロングアーチは部隊長のはやてちゃん、補佐としてリインフォースさんとリインちゃん。リインフォースさんはちょっと今度の任務の準備をしてて今はいないけど……」

 

「はじめまして、リインフォースⅡです。夜空さんたちのことは聞いてます」

 

ちっちゃいリインフォースが僕らの前に出てきた。もしかしてリインフォースの妹的な存在か?

 

「精霊って……訳じゃなさそうね」

 

「でもちっちゃくって可愛い……」

 

「風先輩、リインフォースさんはユニゾンデバイスと言って……」

 

「わっしー、それ長くなるから~簡単に言うと物凄い子なんだよ~」

 

園子、説明を面倒くさがるなよ……

 

「それで……スバルとティアナはもう会ったよね。この子達はスターズの子で、ライトニングの子たちは」

 

「はじめまして、エリオ・モンディアルです」

 

「キャロ・ル・ルシエです。この子はフリードです」

 

赤い髪の子はエリオで、桃色の髪の子はキャロで、ちっちゃい龍はフリードか……そうだよな。普通にドラゴンとかいる世界だもんな……絶対に銀あたり喜びそうだな

 

「それでちょっとお願いがあるんだけど……」

 

「お願い?」

 

「折角だから模擬戦やってもらえないかな?」

 

模擬戦って……まさかこのために僕らをここに連れてきたって言うことか。まぁ僕らの実力を見たいって言うのもあるんだろうな。僕は先輩の方を見た。

 

「面白そうじゃない。でもそっち人数が少ないけど大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

「それじゃ始めるか」

 

「じゃあ私がスタートの合図をしますね。スタート!」

 

リインが合図を出した瞬間、友奈、園子はスバルへ向かっていき、夏凜、先輩はエリオのところへ、樹、僕、東郷の三人は後ろへ下がり援護することになった。

 

「ウィングロード!」

 

スバルが地面を思いっきり殴ると同時に空色の道路が出来上がり、スバルは友奈から逃げていく。自分の得意なフィールドで戦うつもりか……それだったら……

 

「シュート!」

 

僕は魔力弾を放ち、スバルの動きを止めていくが、放った魔力弾はティアナに撃ち落とされていく

 

「射撃ね。それだったら私の出番!」

 

東郷が二丁の銃を取り出し、ティアナの魔力弾を撃ち落としていく。先輩たちの方は、エリオのスピードに対して先輩が大剣でルートを防いでいって、夏凜が攻撃を仕掛けていく。園子は友奈の動きに合わせて上手くサポートに回ってるし、樹は補助に回ってるキャロの妨害……

 

「みんな上手く立ち回ってるけど……」

 

みんなの動きを見ながら、僕はあることに気がついた。どうにもみんな……特に友奈、先輩、樹の三人は攻撃することを躊躇ってるな……原因は何となく分かってる

 

逆に東郷、園子は十年前に空さんたちと戦ったし、夏凜は訓練していたからか慣れてるな。

僕はなのはの方を見ると、なのははすぐに模擬戦中止するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

模擬戦が終わり、僕はなのはに呼び出された。

 

「あの子達は……対人戦の経験はないみたいだね」

 

「まぁ今まで化物と戦ってきたからな……」

 

「須美……東郷さんと園子さん、夜空さん、夏凜さんは慣れてるみたいだけど……」

 

「僕らの場合は前から経験してるし、夏凜は勇者になる前の鍛錬で対人戦を経験してるから……空さんが残してくれた鍛錬本の言うとおりにして……」

 

上里家に伝わる鍛錬本……今では勇者たちの育成に必要なものになってる

 

「そっか……実はね私も空さんからもらったものがある」

 

なのはは一冊のノートを僕に見せてきた。これって……大赦にある鍛錬本……

 

「あの戦いの後に私達は空さんたちの所に行ったの。その時、この本をもらったの。もしかしたら必要になるかもしれないって……この本に書かれたものを基盤として、今はフォワードのみんなに教導してるんだよ」

 

なのはは嬉しそうに語っていた。時間の違いで会えないけど、空さんが残してくれたものは未来で大きく役に立ってるんだな……

 

「そういえばはやてちゃんから聞いたけど、あの樹ちゃんとお付き合いしてるんだっけ?」

 

「あいつ……というかなのはもそういうのが気になるタイプか?」

 

「気になると言うか……てっきり東郷さんたち三人の誰かとお付き合いするのかなって思ってたんだよね。どういった経緯で付き合うことになったの?」

 

これは話さないといけないのか……仕方ないか……というかいつの間に僕が樹と付き合ってること知ってるんだよ

 

「なのは、誰から聞いた?」

 

「ん?はやてちゃんがそうじゃないかなって言ってたよ」

 

あの野郎……まぁなのはに話しても大丈夫そうだな

 



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36 夜空と樹

あれは夏凜が讃州中学に来る前あたりのこと……

 

依頼の関係なのかその日は僕と樹しかいなかった。だからなのか……

 

「………」

 

「………」

 

会話がない。樹も自分から話すような子じゃないし……僕から話せばいいんだけど……何を話せばいいのか分からないでいた。

 

「あの……」

 

「ん?何だ」

 

珍しい……樹から話しかけてくるなんて……

 

「夜空さんって、勇者じゃなくって魔導師なんですよね」

 

「あぁ、そうだよ。一応勇者の素質はあるけど、それでも魔導師の素質のほうが高くって……」

 

「あのやっぱり戦うのって怖いんですか?」

 

「……そうだな」

 

樹の質問……未だにバーテックスとの戦いは怖いよな。だけどそれが正しいことだ

 

「怖いって言うよりかは一緒に戦う仲間を守ってあげないとっていう気持ちが強かったな」

 

「守る……ですか?」

 

「前にも話したけど、僕は勇者部のみんなよりも前にバーテックスとの戦いを経験したことがあるんだ。最初は怖いって思ったけど……人々のために戦う子たちのことを見ていて思ったんだ。彼女たちが人々を守るなら僕は彼女たちを守らないとって……」

 

だからこそ銀を別世界に送ったりしたし、満開の後遺症をなくそうとカートリッジシステムを組み込んだりしたけど……結果的には……

 

「あのだからでしょうか?たまに辛そうにしているのって……」

 

「辛そうか……そうかもしれないな」

 

僕は今度こそみんなを守りたいって思ってる。そのたびにベッドで動けないでいる園子のことを思い出してしまう。もうこんな風につらい思いはさせたくなって……

 

「あのもし私で良ければなんですけど……力になります」

 

「樹……ありがとうな」

 

僕は樹の頭を撫でた。樹は少し恥ずかしそうにしていた

 

「あっ、ごめん。つい妹にやる感じで……」

 

「妹さんですか?」

 

「あぁ今は12歳で、大赦の方で同じ歳の子と一緒に巫女の役目をやってる」

 

今はゴールドタワーでお役目をしてるって言ってたな。

 

「なんて名前なんですか?」

 

「ん?夕空って書いて、『ゆら』だよ」

 

それから樹とは他愛のない話で盛り上がった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、大規模侵攻の後、夏凜以外のみんなが満開を行い散華をしてしまったある日

 

「樹?どうしたんだ?急に呼び出して」

 

急に樹から呼び出され、校舎裏にやってきた僕。すると樹はスケッチブックを取り出し、何かを書き始めた。

 

「樹……」

 

樹が僕にある文字を見せた。それは……

 

『好きです』

 

「好きって……急にだな」

 

『ずっと言いたかったんです。でも勇気が出なくって……』

 

勇気が出ないか……いつから僕のことを好きだったのか気になるけど……

 

『でもちょっと残念です』

 

「残念?」

 

『文字じゃなくって、ちゃんと私の声で好きって言いたかったです』

 

樹は申し訳なさそうにしていた。僕はそんな樹をギュッと抱きしめた。

 

「大丈夫。ちゃんと伝わってるから……付き合おう」

 

僕がそう告げた瞬間、端末にメッセージが入った。それは風先輩が大赦に向かっているというものだった。何が起きたのかわからないけど……

 

「止めに行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁそれから大きな戦いの後、樹の声が戻ってちゃんと付き合うことになったんだよ」

 

「へぇ~でも話を聞いてると、本当に大変な戦いだったんだね……」

 

「あぁ300年前から続いてる戦いだったからな……」

 

「そういえば樹ちゃんのお姉さんには何かしら言われたりしなかったの?」

 

「ん?まぁ言われたけど……」

 

樹をいじめたり、浮気したりしたらぶっ飛ばすからと脅されたな……

 

「そういえば樹ちゃんが声が出るようになってから改めて告白されたりしたの?」

 

「……それは秘密だよ。特に扉の後ろで隠れて盗み聞きしてる二人には訊かれたくないからな」

 

僕は扉の方を見るとそこにははやてと園子の二人がいた。こいつら……

 

「あはは、バレてもうたな。園子ちゃん」

 

「私達としてはちゃんと聞きたいところだったんだけどね~」

 

「お前らな……」

 

お説教を始めようとするが、すぐに二人は逃げ出すのであった。

 

「とりあえず機会があったらな」

 

「その時は楽しみにしておくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはと別れた後、廊下で樹が待っていた。

 

「夜空さん、どこに行ってたんですか?」

 

「ん?まぁ色々と話しをしに……」

 

「そうですか……」

 

何だか樹の様子がおかしい。まぁ理由は分かってる。僕はそっと樹の頬に触れ

 

「大丈夫だよ。僕は樹のことが大好きだから……」

 

「夜空さん……はい、私は夜空さんが私のことが好きになる前から好きです」

 

樹が笑顔でそう告げた。声が戻った後に言ったあの言葉を……

 

 




次回は次の任務の話になります


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37 はじめての任務

僕らが機動六課に来てから数日が経った。そんなある日、なのはからある任務に参加してほしいと言われて、ヘリに乗って移動していた。

 

「任務って……私達も来てよかったのかな?」

 

「まぁ聞いた感じだと警備の仕事だって言うらしいけど……」

 

友奈と夏凜の二人がそんな話をしている中、ヘリの窓からホテルが見えてきた。

 

「あれがホテルアグスタだよ」

 

ヘリはホテルに着き、僕らは早速警備に着くのであったのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

オークションが行われる会場の入口では、チケットを受付の男に見せて次々と人が入っていく。はやてがチケットではなく、機動六課の身分証を見せた。

 

「あっ!」

 

身分証を見た受付の男は驚いた。

 

「こんにちは。機動六課です」

 

はやて、フェイト、なのは三人がドレス姿で受付の前に立っている中、なぜか僕はスーツ、園子はドレス姿で一緒にいた。

 

「何で僕らも?」

 

「中の方にも何かしらあるかもしれないからって思って」

 

「もしものことを考えてって、事前に風に話しておいたから大丈夫だよ」

 

フェイト、そうは言うけど……こういう格好はあんまり着慣れてないんだけどな……

 

「まぁ何事もなければいいよね」

 

なのはの言う通りかもしれないけど……ふっと気がつくと来客者の中に友奈みたいな後ろ姿を見つけた。追いかけようとしたけどすぐに人並みに隠れてしまった

 

「気の所為か?」

 

「どうしたん?」

 

「いや、なんでもない」

 

「そういえば~リインフォースも来るんだよね~」

 

「そや、ちょっと遅れてるみたいやけど、夜空さんたちに会うの楽しみにしてるよ」

 

リインフォースと会うのか……まぁ楽しみにしておいてもいいな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこんな所に来るなんてね~まぁいいや。騒動が起きたら関係ないもんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアナSIDE

 

(今日は、八神部隊長と守護騎士団全員集合かぁ)

 

(そうね。あんたは結構詳しいわよね?八神部隊長とか副隊長の事…)

 

スバルと念話で話をしながら周辺を確認しながら、スバルに聞いた。

 

(うん。お父さんやギン姉から聞いたことぐらいだけど……。八神部隊長が使ってるデバイスが魔導書型で、それの名前が夜天の書。副隊長達とシャマル先生、ザフィーラは八神部隊長個人が保有してる特別戦力。で、それにリインフォース部隊長補佐とリインさんを合わせて七人揃えば、無敵の戦力って事。まぁこんな所かな。ティア、何か気になるの?)

 

(別に)

 

(そ。じゃ、また後でね)

 

スバルとの念話は終わり、一人考え込んだ。六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。隊長格全員がオーバーS、副隊長でもニアSランク。他の隊員達だって、前線から管制官まで未来のエリート達ばっかり。あの年で、もうBランクを取ってるエリオと、レアで竜召喚士のキャロ。危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性の塊で、優しい家族のバックアップのあるスバル。そして十年前になのはさんたちと共に戦った勇者たち……

 

(やっぱり…うちの部隊で凡人は私だけか………)

 

一人で落ち込む。だけどそれでも私は立ち止まるワケにはいかないんだ。

 

そう決心していると夏凜がこっちにやってきた。

 

「真面目にやってるみたいね」

 

「任務だから……夏凜は?」

 

「ヴィータに言われて他の方の様子を見にね。まぁ気楽にやってるみたいね」

 

「気楽って……」

 

「仕方ないでしょ。私達は別に軍人とかそういう訳じゃないんだからさ」

 

「そうだけど……」

 

「でもやる時はやるから安心しなさい」

 

二人でそんな事を話していると突然クロスミラージュから警告音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シャーリー!」

 

「はい!」

 

管制室にいるロングアーチのメンバーのシャリオ・フィニーノ、通称シャーリーが返事をした。管制室でも、ホテルに接近しているガジェットを感知した。ティアナがシャマルの近くまで駆け上がった。

 

「シャマル先生!私も状況を見たいんです。前線のモニターもらえませんか?」

 

「了解。クロスミラージュに直結するわ」

 

モニターを見ると大量のガジェットが姿があった。隊長たちも応戦している。

 

「私達も行くわよ!」

 

「えぇ」

 

私と夏凜はすぐにみんなと合流しに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

外が騒がしくなってきた。僕と園子は互いに顔を見合わせ……

 

「なのは、僕らは外に行く」

 

「みんなことが心配だからね~」

 

「わかった。何かあったらすぐに知らせて」

 

僕らは急いで外へと出て、みんなと合流した。どうにも別方向から転移してきたみたいだし、数も多く大変みたいだった。

 

(防衛ライン!もう少し持ちこたえてね!ヴィータ副隊長が、すぐに戻ってくるから!)

 

シャマルさんが念話で、スバル達に伝えた。ティアナの表情が険しくなる。

 

「守ってばっかじゃ息詰まります!ちゃんと全部倒します!」

 

(ちょっと…ティアナ大丈夫?無茶はしないで!)

 

「大丈夫です!毎日朝晩、練習してきてんですから!」

 

そう言いながら、クロスミラージュを構える。ティアナは、エリオとキャロに顔を向けた。

 

「エリオ、センターに下がって!私とスバルのツートップでいく!」

 

「は、はい!」

 

「スバル!クロスシフトA、いくわよ!」

 

「おお!」

 

スバルはウイングロードを使って、怪物達の注意を引き付ける。その隙にティアナは、カートリッジを四発もロードした。

 

(証明するんだ。特別な才能や凄い魔力がなくたって…どんなに危険な戦いだって)

 

ティアナの周りに、複数のオレンジ色の魔力弾が現れる。

 

「私は…ランスターの弾丸は、ちゃんと敵を撃ち抜けるんだって!」

 

クロスミラージュを構える。

 

「クロスファイヤーシュート!!」

 

無数の魔力弾が放たれ、ガジェットを破壊していく。だが一発だけそれてしまい、スバルに迫っていた。

 

「まずい!」

 

僕と駆けつけてきたヴィータが魔力弾を弾こうとするが、間に合わない。だけど一発の弾丸が魔力弾を相殺した。

 

「今のって……」

 

「間に合ってよかった。」

 

東郷が銃を持ってこっちにやってきた。東郷のおかげで何とかなったけど……

ティアナは自分がやったことに関して落ち込んでいた。

 

「ティアナ…お前……」

 

「ヴィータ、今は……」

 

叱ろうとするヴィータを止めようとした瞬間、ランディニから警告音が鳴り響いた。

 

『反応確認!』

 

「反応?何のだ?」

 

僕がそう聞いた瞬間、友奈たちの端末からアラームが鳴り響いた。

 

「これって樹海化警報?」

 

「でも音がいつもと違う……」

 

「何だか嫌な予感がするわね……」

 

「こっちにはいないって……」

 

「分からないけど、やるしかないわね」

 

「ヴィータん、悪いんやけどスバルんたちを下がらせたほうがいいよ。慣れてないと危ないから」

 

「おい、まさか……」

 

森の奥からなにか白いものが無数に姿を見せてきた。あれは星屑……

 

「バーテックスがなんで!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森のなかで、紫色の髪の少女とフードをかぶった男と赤髪の少女がいた。

 

「あれは?」

 

「バーテックスだよ。まぁあの白いの星屑って呼んでるけどね」

 

「お前が呼んだのか?」

 

「そう、まぁ呼んだのはりっくんだけどね。因みにちょこっとドクターに改造してもらったけどね」

 

「目的は何だ?」

 

「う~ん、挨拶代わりかな?」



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38 新種のバーテックス

突如現れた星屑。僕はランディニを構えて魔力弾を撃ち続けていった。だけど一発では倒されない

 

「硬い!?魔法耐性でもあるのか?」

 

「夜空くん、それだけじゃないみたいよ」

 

東郷が銃弾を撃つが、一発で消し飛ばない。単純に防御力が上がってるのか?

 

「たかが硬いだけで!!」

 

「私達を倒せると思うな!」

 

先輩と夏凜の二人がバーテックスを圧倒していく。確かにただ硬いだけならまだ倒すすべはある

 

僕はランディニを構え

 

「ランディニ!モード2で行くぞ!」

 

『了解』

 

「カートリッジロード!」

 

カートリッジをロードした瞬間、ランディニが杖の形から拳具に変わり、僕はそれを装着し、星屑を殴った。殴った瞬間に魔力弾をゼロ距離で当てれば硬さなんて関係ない

 

「やぁ!」

 

樹がワイヤーで縛り上げ、園子と友奈の二人が星屑を倒していく。連携ならまだなんとかなるけど、数が多いな

 

 

 

 

 

「……」

 

「ティア……ねぇ私達は見てるだけなの?」

 

「見てるだけしかできないけど……」

 

「でもただ見ているだけじゃ……夜空さんたちも倒していってますけど」

 

「私達も戦わないと……」

 

「ティア、後でみんなでヴィータ副隊長に怒られよう」

 

「スバル……全くそうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇやるね。流石は前まで前線で戦ってきた子たちだね」

 

「力貸す?」

 

「ルーちゃんやゼストのおじさまは目的のものを手に入れておいたほうがいいんじゃない?それにこれは挨拶代わりだから……行って、アタッカくん、フェルマータくん」

 

 

 

 

 

 

 

 

数が多い。このままじゃこっちの体力が持たない。ふっと気がつくと目の前に星屑が迫ってきた。僕は咄嗟に後ろへと下がろうとした瞬間、スバルとエリオの二人が星屑を倒した。

 

「お前ら……」

 

「てめぇら!下がってろって!」

 

「すみません!?」

 

「でも見てるだけなのは嫌なんで!」

 

するとオレンジ色の魔力弾が星屑に直撃していく。見てみるとティアナとキャロの二人が後ろで援護をしていてくれた。なるほど、キャロの補助魔法で威力を上げてるのか

 

「ヴィータ、怒ってやるなよ。今は手がたくさん欲しいところなんだから……」

 

「分かってる……」

 

「夜空くん、何だか変なのが出てきたよ?」

 

友奈の言葉を聞いて、森の方を見るとそこには魚型と鳥型のバーテックスが何体か現れた。新型なのか?

 

「新型だろうがなんだろうが!関係ない!」

 

夏凜は気にせず攻撃をし続けていく。そうだな。

 

「ヴィータ。シグナムさんとザフィーラさんは?」

 

「あいつらの方にもバーテックスが現れたみたいだが、問題ねぇだろ」

 

それならいいけど……正直イヤな予感がしてきたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リインフォースSIDE

 

主たちと直ぐ様合流するために空を飛んでホテルへと向かっている私。その途中、シグナムたちがバーテックスと戦っていた。私は広域魔法でバーテックスを倒していくが……

 

「引いていく?」

 

「逃げたのか?」

 

「いや、逃げると言うよりも合流しに行くみたいだな。聞いた限りではあれは融合すれば大型へと変化するみたいだ」

 

「だとすれば危険だ!すぐに向かわないと……」

 

三人でホテルへと急ごうとするが、突然何かのケージに閉じ込められた。

 

「これは!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?りっくん、気を利かせてくれたのかな?」

 

「どうかしたの?」

 

「りっくんが作った子たちが足止めしてくれてるみたい。すごいよね。人型のバーテックスを作っちゃうなんてね。それも二体も」

 

「足止めということは、ホテルの方もか?」

 

「そうみたいだね。さてとせっかくの機会だから………合体しちゃって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

突然バーテックスの動きが止まった。すると星屑が二箇所に集まっていく。これはまさか……

 

「東郷!ティアナ!少しでも数を減らしてくれ」

 

「えっ?」

 

「合体する気みたい……だとしたら……」

 

ティアナと東郷の二人が星屑を倒していくが、合体は止められず、二体の大型バーテックスが現れた。僕は端末で名称を確認した。

 

「ヴァルゴとライブラ……」

 

ヴァルゴは尻尾みたいなところからミサイルを放っていった。僕らはミサイルを防いでいく。

 

「なんですかあれ?」

 

「スバル、気をつけろ。僕らが戦ってきた奴で、強敵だよ」

 

「でも退くわけには行きません!」

 

エリオがデバイスを構え、ヴァルゴに突っ込んでいった。だがヴァルゴの前にライブラが立ちはだかり、大きく回転し、竜巻を発生させ、エリオを弾いた

 

「かはっ!?」

 

「エリオ君!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだだね……それと合体した奴も強化されてるよ。例えば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァルゴが一発のミサイルを発射してきた。東郷がミサイルを撃ち落とし、爆発するが、その中から大量のミサイルが発射してきた。とっさのことで僕らは避けることが出来ず、吹き飛ばされていく

 

「ぐうう……」

 

「このやろう……」

 

バーテックス二体はゆっくりとホテルの方へと向かっていく。このままじゃ……

 

「夜空くん……満開って出来るんだよね。それだったら……」

 

友奈が立ち上がり、満開をしようとした。だけど僕はそれを止めた。

 

「いや、まだ使うな。みんなの満開は火力があるけど……一度使えばしばらくは使えなくなるから……ここは僕があいつらにダメージを与えておく!!カートリッジ……」

 

満開をしようとした瞬間、ヴァルゴがミサイルを僕に向けて発射してきた。まさかと思うけど阻止するつもりか?それだったら……

 

「やれるもんならやってみろ!!」

 

僕がそう叫んだ瞬間、ミサイルが爆発した。誰かがミサイルを撃ち落としたっていうのか?でも東郷もティアナも動けないはずなのに……

 

「全くいきなり変な場所に連れてこられたと思ったら……面倒事に巻き込まれたな」

 

「だが窮地を救えた」

 

「そうだぞ!というか面倒事とかいうなよ!」

 

「言ってみただけだよ」

 

聞き覚えのある声が聞こえた瞬間、ヴァルゴに向かって槍が突き刺さった。

 

「普通なら槍で突き刺すのに苦労しそうだけど……アリシアに頼んで威力上げてもらってよかったな」

 

やりを突き刺したまま、ヴァルゴを真っ二つに切り裂いた。全く来てるなら早めに来てほしいな

 

「よぉ、久しぶりだな。夜空」

 

「空さん……」

 

僕らの危機を救ったのは空さん、若葉さん、珠子さんの三人だった



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39 西暦の合流

空SIDE

 

アネモネの調整のために海鳴市に来たはずなのに、たどり着いた場所はどこかの森だった

 

「ここ……どこだろう?」

 

「海鳴市のどこじゃないかしら?」

 

友奈と千景の二人があたりを見渡す中、杏があることに気がついた。

 

「何だか空がちょっとおかしいですね」

 

「僕がおかしいって?」

 

「いえ、空さんじゃなくって……」

 

「分かってる。言ってみただけだ」

 

杏の言うとおり、空がちょっと違う気がする……もしかして転移の事故でミッドチルダに来たのか?まぁそれなら丁度いいかもしれないな

 

「アネモネ。クロノに連絡をしてくれ」

 

『了解しました』

 

連絡して、迎えに来てもらえばいいと思った。だけどいつまで経っても繋がらない

 

「故障か?」

 

『かもしれませんね』

 

「じゃあどうするんだよ」

 

「あのまずは森から出たほうが」

 

「みーちゃんの言うとおりね。そっちのほうが早いわ」

 

「ん?空、あっちに建物があるぞ」

 

若葉が指さしたほうを見ると、何だかホテルみたいな場所がある。それだったらあっちまで行って事情を話せば……

そんなとき、突然ひなたと水都の二人が頭を抑えた。

 

「うぅ」

 

「これって……」

 

「どうした?」

 

「バーテックスが……」

 

「来ます」

 

二人がそう告げた瞬間、僕らの方に向かって奥から星屑の群れが現れた。僕らは変身し、星屑を倒していく。

 

「なんでこっちにいるんだよ……」

 

「分からないけど……関係ないわ」

 

「千景姉!?何だかホテルの方が様子がおかしいよ」

 

アリシアは何かを感じ取ったのか、僕らはホテルの方を見るとそこには二体の大型が見えた

 

「僕らに対してってわけじゃないな。ホテルの方にいる人たちが心配だ……」

 

僕は考えた。この状況でいい方法は……

 

「僕、若葉、珠子の空を飛べる三人で先行する!友奈たちは地上から向かってくれ」

 

「地上からって……」

 

「お兄ちゃん、森の中からあっちに向かうのは無理なのでは?」

 

「普通だったらな。友奈、酒呑童子を使っていいから真っ直ぐ向かってくれ」

 

「真っ直ぐ……うん、わかった」

 

「上里くん……考え方が土居さんに似てるわね」

 

そういうなよ。緊急事態なんだから、効率的にはこういう力技が一番なんだから……

 

「それじゃ行くぞ!」

 

「「切り札発動!!」」

 

僕らは空からホテルへと向かった。ホテル近くに行くと大型バーテックスの近くに何人か倒れている人物が見えた。

 

「管理局か?遠くて見えないけど、助けておくか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大型を一体倒し、その側にいた夜空の近くに僕らは降り立った。

 

「空さん……どうしてここに?」

 

「分からない。僕らはアネモネの調整のために来たんだけど……お前、何で成長してるんだ?」

 

「僕は前に会ったときよりも二年先から来てるんですよ」

 

時の流れって言うことか……色々と聞きたいことがあるけど、目の前の大型が回転を始めた。

 

「気をつけてください!あいつは回転して竜巻を……」

 

「空、どうする?竜巻を切り裂くのは無理そうだぞ」

 

「だったら私が回転して……」

 

竜巻と竜巻をぶつけるのもいい作戦かもしれないけど………他にも方法があるんだよな

 

「竜巻相手なら……」

 

僕は空へと上がり、竜巻の上まで行った。

 

「やっぱり……竜巻の中心は大丈夫そうだな!」

 

アネモネを構えて、魔力をため始めた。先には3つほどの小さな魔力弾を作り出し、魔力でつなぎ始めていき槍の形に変えた。

 

「バスタースピア!シュート!」

 

砲撃をし、大型に直撃した瞬間、爆発し、大型は消えていった。

 

「空さん……流石ですね」

 

「いや、僕らがここに来る前にみんながダメージを与えてくれたからな……さて」

 

僕はアネモネを構え、森の方へと向けた。何となく気配を感じたけど……逃げられたか?

 

「空さん?」

 

「ん?もう敵はいないみたいだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、すごいね。バーテックスを撃破しちゃうなんてね。まぁ挨拶できたからいいけどね。さてさて次くらいにはちゃんと挨拶しないとね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の反応も消え、友奈たちの事を待っている間、僕は夜空たちから事情を聞くことにした

 

「なるほどな……ここは十年後の世界か……」

 

「やっぱり驚きますよね」

 

「まぁそれも驚いてるけど、お前も二年後から来てるし、おまけに……」

 

僕は結城の方を見た。やっぱり似てるよな……まぁ結城の方は友奈より幼い感じがするけど……

 

「空く~ん」

 

ふっと森の中から友奈たちが木を倒しながらやってきた。真っすぐ進んできたんだろうけど……やっぱり木を倒しながらは時間がかかるよな

 

「もう戦いは終わって……えっ?」

 

「あっ?」

 

友奈と結城の二人が驚きを隠せないでいた。まぁ予想はしていたけど……

 

「千景から見てどう思う?」

 

「似てるけど違う気がするわね」

 

「あの何だか夜空さんがいるんですけど、何かあったんですか?」

 

とりあえずみんなに事情を話しつつ、なのはたちに会わないとな……

 



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40 それぞれの再会

空SIDE

 

戦闘の後処理ということで、みんなが片付けをしている中、僕、友奈、結城の三人はなのはとユーノの二人に会っていた

 

「ユーノもここに来てたんだな」

 

「あぁゲストとして呼ばれてね。それにしても空さんたちがあの頃から変わってないことも驚きだけど……友奈さんが二人も……」

 

「でも別人なんだよね」

 

「うん」

 

「でも何だかやっと納得したって思うよ。たまに夜空くんが私のことをさん付けするの。私と会うよりも前に高嶋ちゃんと会ってたんだね」

 

「私も最初はびっくりしたけど、でも何だか仲よくなれそうでよかったよ」

 

会ってすぐに意気投合って……何というか友奈らしいな

 

「なのはやユーノがここまで成長してるのは驚いたけど、あんまり変わってない感じだな」

 

「うん」

 

「空さんたちは僕らがあっちに行ってから一ヶ月経った後ですけど……やっぱり僕らからしてみたら時間の流れがすごく感じますよ」

 

時間の流れか……確かにそうかもしれないな。

ただ一番時間の流れで残酷なことになってるのは……アリシアだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

「ふぇ、フェイト……何だよね」

 

「うん、アリシア、久しぶり……」

 

十年の月日が経っているせいもあるから、いくら姉妹でも妹にここまで成長されたらショックよね。

 

「えっと、あのちっこいのがフェイトの姉って言うことでいいの?千景」

 

「えぇ」

 

「これも時の流れなんですか?」

 

「そうなるわね」

 

犬吠埼さんたちもこの状況でどうしたらいいのか考えていた。正直アリシアに対して私もどう声をかければ……

 

「フェイト……大人っぽくなったね。お姉ちゃん嬉しいよ」

 

アリシアは嬉しそうにフェイトに抱きついた。そういえばこの子はこういう子だったわね

 

「フェイトがこんなに立派になってお姉ちゃんは誇りに思うよ」

 

「アリシア……」

 

「でもフェイトが大人になっても、私はフェイトのお姉ちゃん。そこは変わらないからね」

 

「うん」

 

姉妹の問題はこれで解決でいいのかしらね

 

「本当にいい姉妹ね」

 

「お姉ちゃん……もしも私がフェイトさんたちみたいな感じになっても……」

 

「樹、分かってるわよ。私は樹のお姉ちゃんなのは変わらないからね」

 

「うん」

 

「まぁでも樹に先に彼氏を作られたのはショックだったけどね」

 

「そ、それは……」

 

本当に姉妹っていいものね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

杏SIDE

 

「ヴィータ、久しぶりだな」

 

「珠子もな」

 

「ヴィータさんたちは年を取らないんですね」

 

「まぁあたしらは夜天の書のシステムみたいなもんだからな。そこら辺は仕方ないけど……」

 

「でも~ヴィータんたちが変わってないだけで私達は嬉しいよ~」

 

「そうね。変わらないことがこんなに安心できるなんてね」

 

須美ちゃんや園子ちゃんたちがこうして大きくなっているのは驚きだったけど、でも変わってないところがあるのは嬉しいな

 

「そういえば銀は?」

 

「ミノさんは別行動だよ~今は教導官として頑張ってる」

 

「そっか、須美や園子たちに会ったんだから、銀にも会いたかったな」

 

「そうね……きっと銀も珠子さんたちに会ったら喜ぶと思うわ」

 

銀ちゃんか……本当に会えたら楽しみだな~

 

「そういえば須美って今は名前は違うんだろ。東郷って呼んだほうがいいのか?」

 

「そっちのほうがいいけど、ヴィータさんたちは須美って呼んでくれてるから……」

 

「タマっち先輩、好きに呼んだほうがいいかもしれないね」

 

「だな。じゃあ東郷って呼ぶよ。わたしは」

 

「私もそうするね」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

「ひなたさんたちとこうして会うのは何だか本当にひさしぶりね」

 

「はい、シャマルさん、ザフィーラさん」

 

「ザフィーラさんは犬のままなんですか?」

 

「あぁ、こちらのほうが良いと思ってな」

 

「ひなたさん。怪我の治療の方ありがとうね。治療専門でも一人だと手が回らないから」

 

「いえいえ、私達も」

 

「出来ることがあれば……」

 

こうして私達も役に立てることがあるのは本当に嬉しいことだった。すると歌野さんがシャマルさんにあることを聞いてきた。

 

「ねぇあっちで作った畑の方は大丈夫なの?」

 

「畑ですか?えぇ、こっちに来る前ははやてちゃんやなのはちゃんたちが頑張ってくれました。今はお友達のすずかちゃんたちに任せていますし、プレシアさんも手伝ってくれていますよ」

 

「OK。それは安心ね。後で様子を見に行かないとだけどね」

 

「その時はみんなで行きましょうね」

 

十年間守ってくれたこともあるし……色々と感謝をしないといけないわね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

「そうか……300年の間に……」

 

「あんまり未来のことは話したらいけないと思っていたんですけど……」

 

僕は若葉さんに300年後の未来について話した。外の世界についてや何故そうなったのかを……

 

「いや、聞く限りでは天の神が隙をついてきたのだから……」

 

「でも300年の間、若葉さんや空さんたちが残してくれたものがあるので……何とか頑張ってこれたんだと思いますよ」

 

「そうだな」

 

「こうして若葉たちと会うのは久しぶりだな。後で一戦どうだ?」

 

「あぁまだ決着はついてないからな」

 

そういえばこの二人って武道派だったな……巻き込まれない内に逃げとかないと……

 

「シグナム。一戦するのはええけど、ちゃんと空さんたちの部屋の準備を済ませた後じゃないとあかんよ」

 

「はい、主」

 

「主、剣の騎士と出会った敵についてですが……」

 

リインさんが言うには白いコードの人物に動きを封じられたらしい。もしかしたら今回のバーテックス出現についても関わってるみたいだな

 

「うん、ガジェットにバーテックス。厄介な事になってきてるみたいやし、これまで以上に頑張らないと……」

 

「とはいえ主。無茶は駄目ですよ。私とⅡで見張りますからね」

 

「えっと……そこは堪忍で……」

 

「駄目ですよ~はやてちゃん」

 

何というかリイン二人ははやての保護者みたいなものだな。一応はやてが八神家のトップなんだろうけど……

 

「そういえば夏凜は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏凜SIDE

 

「あんた、何を落ち込んでるのよ」

 

「……夏凜」

 

あの時の失敗を気にしてるみたいだけど、失敗なんて誰だってあることなんだから気にしないほうがいいのに……

 

「別に落ち込んでるわけじゃ……」

 

「見てる限りじゃあんたはよくやってると思うわ」

 

「夏凜……あんたに何が……」

 

「そうね。私にはあんたが気にしてることはわからないわ。でもね、自分のことをよく考えたほうが良いわよ」

 

「………」

 

 



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41 空の気付き

空SIDE

 

ヘリでなのはたちの今の本拠地である機動六課にやってきた僕ら。なのはの話ではすでに僕らの部屋の準備はできているらしい。何というか早すぎだろ……

 

「今日の午後の訓練はお休みね」

 

「ゆっくり休んで、明日に備えてね」

 

「はい!」

 

なのはとフェイトの言葉に、新人のスバル達は声を揃えて応えた。みんなが隊舎に戻っていく中、新人の一人、ティアナが足を止めていた。

 

「スバル。私これからちょっと一人で練習してくるから…」

 

「自主練?私も付き合うよ」

 

「じゃあ僕も」

 

「私も」

 

全員がティアナの練習に付き合おうとしていたが、ティアナは……

 

「ゆっくりしてねって言われたでしょ?アンタ達はゆっくりしてなさい。それにスバルも…悪いけど一人でやりたいから」

 

「…う…うん…」

 

何だかあのティアナって奴……どうにも思いつめてるな……

 

「ねぇ、空だっけ?」

 

すると神世紀の勇者の一人、夏凜が僕に声をかけてきた。

 

「何だ?」

 

「あんたって、あの上里空でいいのよね」

 

「あぁ」

 

「なのはの教導の基盤になっていて、300年後の勇者育成のトレーニングメニューを手がけた」

 

「待て、僕のって未来でそんな事になってるのか!?」

 

僕は近くにいた夜空の方を見た。夜空は僕の視線に気がつき、頷いていた。

 

「まぁその未来でのことは夜空から聞いたりしたら?私としては、教導官として今のティアナの事をどう思う?」

 

教導官としてか……今のティアナはどうにも見えていない気がするな

 

「自分のことが見えなくなっている。というか周りがすごいから余計にな」

 

「やっぱり……」

 

夏凜は何かを納得し、すぐにどこかへ行くのであった。

 

「何というか未来でかなりの影響を与えてるんだな……僕って……」

 

「そこがお兄ちゃんの凄いところだと思いますよ」

 

ひなたが笑顔でそう言うけど……僕としてはそんな偉大なことをしていたつもりはない……

 

「あぁそうだ……ひなた、先に部屋に戻っておいてくれないか?ちょっとなのはに聞きたいことがあるんだ」

 

「えぇ……」

 

どうにもなのはに関してある違和感を覚えた僕はすぐになのはに会いに行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というかなのはの居場所……フェイトあたりに聞いておけばよかったな……」

 

隊舎内を回ってみても、なのはの姿を見つけることが出来なかった。しょうがない、戻ろう

そう思った瞬間、近くの部屋から人の気配を感じ、僕はすぐにその部屋に入った。

 

「あれ?部屋教えたっけ?」

 

どうやらここはなのはの部屋……というより部屋のものを見る限り、なのはとフェイトの部屋みたいだな。

 

「いや、ちょっとお前に聞きたいことがあって……」

 

「聞きたいこと?」

 

「どうにも再会してから気になってたんだけど、お前、どこか怪我したりしてるのか?」

 

「!?」

 

なのはは驚いた顔をしていた。やっぱりか……

 

「怪我しているというよりかは……前に大怪我をしたことがあるなって言ったほうが良いな」

 

「……どうしてわかったの?」

 

「お前の仕草とか見ていてな……こう見えて、若葉たちの訓練の教導官だからな。ちょっとしたことでも気がつけるようにしてるんだよ」

 

無理をしていないかとか怪我をしているのに隠しているとか……

 

「どうにも怪我したところを無意識にかばってる感じがするし、フェイトとかの表情もちょっと心配そうにしている感じがしてな」

 

「あ、あはは、空さんってすごいね……」

 

「それでどうなんだ?」

 

「うん、空さんの言うとおりだよ」

 

なのはは僕に話した。ジュエルシード事件と闇の書事件での度重なる無茶と負担で、11歳の頃、ちょっとした反応の遅れで大怪我をしたことを。

その大怪我でもう二度と空を飛べないと言われて、つらい思いをしたことを……

 

「だからかな。自分の生徒たちには無茶をしてほしくないんだよね……それで空さんがくれた訓練書を読み返して……空さんも無茶をしてほしくないって思ってたんだね」

 

「まぁ最初の頃は若葉と友奈以外には文句を言われてたけどな」

 

「あはは……」

 

「今はどうなんだ?」

 

「うん、無理をしない程度には動けるよ」

 

「そっか、とりあえず無理だけはするなよな」

 

「空さんもね」

 

「あぁ」

 

お互い笑い合うのであった。とりあえずなのはは大丈夫そうだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏凜SIDE

 

「はぁ、はぁ……」

 

「4時間もぶっ続けで……よくやるわね」

 

「夏凜……」

 

帰ってから訓練を続けるティアナに私はタオルを渡した。

 

「あんた、どうしてそこまで頑張るの?」

 

「………………私には……スバル達みたいな才能もないし…キャロみたいなレアスキルもない…だから私は…少しぐらい無理をしないと、強くなれないんです!!」

 

「あんた………はぁ」

 

私はため息を付いた。何というか馬鹿らしい考えだ。

 

「無理をしないとね……本当にそれで強くなれると思ってる?」

 

「夏凜は才能が……」

 

「才能とかそんなの関係ないわよ。特に私はそれを知ってるから……それにあいつも……」

 

「あいつ?」

 

「今のあんたには話せないわね……それじゃ」

 

私をそう言い残してその場から去った。才能がないとか……無理をして強くなるとか……何というか三ノ輪銀の言葉を思い出すな……

 

「無理をして強くなることはない。才能がないとか思わない……か。何だか空の奴が教えてそうな言葉ね……」

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

ホテルでの一件から数日が経った。特に大きな事件もなかったのだけど……

 

それはスバルたち、スターズの模擬戦を見ていた時だった。

 

「遅れてごめん」

 

「フェイト、忙しそうだな」

 

「色々とあってね」

 

遅れてやってきたフェイトとそんな話をする中、フェイトは何故か心配そうな顔をしていた。

 

「本当はスターズは私がやろうと思ってたのに……」

 

「あいつ最近無理しすぎだ。少し休ませねぇと」

 

まぁ確かになのはの奴、頑張り過ぎな気がするけど……フェイトとヴィータが心配すぎっていうのが気になるな……

 

「………」

 

それに空さんの訓練を見つめる姿が何だか怖いんだけど……

 

さっきからスバルがなのはに突っ込んでいってる。普通ならティアナの魔法で幻術を作って意識をそらしたりするのに……

 

「スバル駄目だよ!そんな危ない軌道!」

 

「すみません!でもちゃんと避けますから!」

 

スバルが別のウイングロードでなのはから離れる。ティアナの姿が見当たらないので探すと、ビルの向こうで砲撃を放とうとしていた

 

「ティアナが……砲撃!?」

 

スバルはなのはのアクセルシューターを避けながら突っ込む

 

「でりゃあぁぁぁ!」

 

スバルが攻撃するがなのはの防御魔法に阻まれる。その瞬間ティアナの姿が消えた

 

「あれは幻術!?」

 

「じゃあ本物は!?」

 

ティアナはウイングロードを走り、カートリッジを消費しながら魔力刃を出しなのはに突っ込んでいった

 

「一撃必殺!でえぇぇぇぇぇい!」

 

ティアナが突っ込んでいき、あたりが煙に包まれた。そして煙が晴れると……

 

「………」

 

さっきまで一緒に訓練を見ていた空さんがいつの間にかなのはの近くにいて、ティアナの魔力刃を素手で受け止めていた。

 

「さっきから見ていて思ったけど……何だお前ら?」

 

その言葉から感じたの怒りだった。空さんは動揺するティアナとスバルの二人を睨みつけた。

 

「空さん……あの……」

 

「なぁなのは、お前の教導っていうのはこんな無茶と無理をやらせることなのか?」

 

「……ううん」

 

「そっか……なぁお前ら……練習でこんなことをやって、本番でうまくいくと思ってるのか?なのはの教えは間違ってると思うのか?」

 

ティアナは空さんから離れ、カートリッジロードした。

 

「私は!傷つけたくないから!もう無くしたくないから!」

 

ティアナが泣き叫ぶ

 

「だから強くなりたいんです!」

 

「………なら見せてやるよ……お前がいつか辿るかもしれない未来っていうのを!!カートリッジロード!!切り札・改!!」

 

まばゆい光に包まれた空さんの姿は真っ黒な7本の尻尾に、真っ黒な勇者の槍、真っ黒なアネモネを手にしていた。

 

「お兄ちゃん!?その姿は!?」

 

「あいつ……」

 

ひなたさんと若葉さんの二人が驚きを隠せないでいた。いや、西暦組の勇者全員が驚いていた。あの姿が何なのか知ってるのか?

 

「フェイト、すぐに動ける準備しておいたほうが良いかもしれないよ」

 

「アリシア?」

 

「空のあの姿……結構やばいから……」

 

「やばいって……」

 

「おいおい、普通に切り札を使ってるんじゃ……」

 

「あれはね。空が無理やり魔力を暴走させながら切り札を発動させた……敵を殲滅させることだけを考えた姿……切り札・改『黒狐』だよ」

 

「すぐに理解させてやる!」



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42 空の教え

空SIDE

 

「切り札と満開の強化?」

 

闇の書事件が終わり、元の世界に戻ってきてから一週間後のこと、僕はアリシアにある相談をしていた

 

「あぁ、若葉たちみたいに勇者の力のみだと難しいけど、魔力を持った僕なら出来ると思ってな」

 

「いや……アネモネはなんて言ってるの?」

 

『一応マスターに可能かどうか調べるように言われ、可能と答えました。それが?』

 

「可能なんだ……」

 

アリシアはものすごく呆れた顔をしていた。いや、最初僕だって思いついた時は、話したら呆れるだろうなって思っていたからな

 

『とはいえ可能なのは切り札のみですね。満開に関してはこちらの時代ではまだ出来上がっていないシステムです』

 

「まぁ変に弄って大変なことになったりしたら嫌だからね……」

 

「とりあえずアネモネが考えてくれたシステムを見てほしい」

 

僕はアネモネが作ったシステムの詳細を紙に書いたものをアリシアに見せた。アリシアはしばらく読み続け……

 

「……はっきり言うけど体への負担が満開以上だからね。それにこれを見る限り、三モードあるけど……その一つの殲滅モードは本気で危ないよ」

 

「分かってるよ」

 

「分かってないよ!!いい、この殲滅モード『黒狐』は自分の中の魔力を無理やり暴走させるって言う時点でかなりの負担がかかるんだよ!そんな状態で動けるのは精々5秒ぐらいだよ!どうしてそこまでやる必要があるのかな……」

 

アリシアは僕の方を見て怒った顔をしていた。僕はため息を付いた。

 

「前に話しただろ。天の神が言う、神の領域を超えた存在……もしも今後出会うことがあったら……僕では……いや僕らでは勝てないらしい。だけど僕はそんなことで諦めるわけにはいかないから……勝てるまで行かなくても、多少傷を負わせるぐらいはしておきたいから……」

 

そのための切り札の強化だ。無理をするということは分かってるけど、もしものときに必要だと思うからだ

アリシアは思いっきり呆れた顔をして……

 

「わかったよ。システム調整をしておくけど、黒狐は本当に必要なとき以外は使ったら駄目だからね」

 

「あぁ……」

 

「約束破ったら怒るからね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティアナは僕の姿を見て怯えていた。この黒狐……思った以上に負担が大きい。アリシアはきっと怒るだろうけど……悪いな。これは僕にとって必要なときだから……

 

「セブンテイル……バスター!!」

 

七本の尻尾から砲撃を放ち、その全てがティアナを掠めた。ティアナは反応できずそのまま尻餅をついた。僕は切り札を解除し、ティアナの傍に近寄った。

 

「ただ無理をして強くなるためだけなら誰だって出来る。だけど無理をした結果、自身に帰ってくるものがどれぐらいのもの分かっているのか」

 

「あ……」

 

「なのはは無理をした結果を知っているからこそ、お前たちに無理をさせないようにしている。それにティアナ、お前は自分に才能がないとか思っているけど、ちゃんとした才能はあるぞ。お前はそれを見えていないだけだ」

 

「見えてないだけ……」

 

「スバルあたりにでも聞いてみろよ。お前の凄い所をさ」

 

「………はい」

 

ティアナは俯きながら返事をした。さてこれでティアナは大丈夫だろうけど……正直……僕自身……きつくなってきたな……

 

意識がだんだんと薄れていき、僕はそのまま倒れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やぁ、目覚めたかい?』

 

聞き覚えのある声が聞こえ、目を覚ますとそこには天の神がいた。ここは僕の意識の中だよな……

 

『意識を失った君の魂を一時的に私がいる空間に招いたのだよ』

 

何でまた……

 

『いい情報を教えてあげるよ。以前私が言った神の領域を超えしもの……近い内に君たちの前に現れるだろうってことをね』

 

予知とか出来るんだな。天の神って……

 

『まぁね。ただその前に神の領域を超えしものの友達が現れるけど……驚くだろうね。君たちは』

 

友達?

 

『いずれ分かるさ。それと他の天の神から伝言だよ。もしも力がほしい時はすぐに言うように。神から武器を授かり、運命を変えた人間を手助けさせると言っていたよ』

 

そんな簡単に言うけど……僕らはそれを望まないかもしれない

 

『それはどうしてだい?』

 

僕らの戦いに他のやつが関わるのは駄目だと思ってるから……出来る限りのことは僕らだけでやりたいからさ

 

『ふふ、本当に面白いよ。それじゃまた会う時があったら会おうか』

 

天の神は指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がつくと僕は医務室のベッドで眠っていた。その近くには怒った顔をしているひなたがいた。

 

「えっと……おはよう」

 

「おはようじゃありません!お兄ちゃんは無茶をしすぎですよ!」

 

メッチャクチャ怒ってる……いやだって……

 

「ティアナさんに教えるためだけに、無茶なことをして……お兄ちゃんは私達のことを考えてください」

 

「は、はい」

 

「アリシアも怒っていますよ。きっとお兄ちゃんのことだから色々と理由をつけて約束を破ったことにしないだろうって!!私から見ても明らかに約束は破ってますからね」

 

「はい……」

 

「お願いですから……無茶をしないでください………」

 

ひなたは泣きそうになりながら僕のことを見つめた。僕はため息を付き、

 

「ごめんな。ひなた」

 

「いえ、謝ってくれたから良いですよ」

 

「そういえばティアナは?」

 

「あの後、なのはと話をして……無茶なことはしないって言ってましたよ」

 

「そっか……」

 

こうしてティアナの問題は解決できたみたいだけど……ただ気になるのは……天の神が言っていた『友達』って誰……

 




次回フォワードメンバーの休日という名のデート回となります


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43 それぞれの休日

夜空SIDE

 

ティアナの一件から一週間が過ぎた。空さんの方も切り札・改の後遺症で倒れたけど、復活できて良かった。良かったのだけど………

 

『………』

 

「とりあえず今日の訓練は終了で良いのかな?」

 

「そうだね。みんな、お疲れ様」

 

スバルたちの訓練に参加することになった僕ら勇者部の面々と西暦組のみんな……ただ教導官に空さんが混じっていた。

 

「これが……原点なのね……結構きつい……」

 

「私達のときも似たようなことをしましたけど、それ以上だったわ……」

 

「時の流れで多少加減してたんだね~」

 

「多少と言うか大幅に加減してるだろ……」

 

倒れている夏凜、東郷、園子、僕らは訓練の経験者だったけど……それでもこれはかなりきつい

ただ気になるのは……

 

「あの空さん……」

 

「何だ?」

 

「何で友奈、先輩、樹の三人とメニューが違うんだ?」

 

三人だけただの走り込みだけで終わった。なんだかちょっとずるい気がするんだけど……

 

「三人は訓練を受けずに勇者になったんだろ。それだったらいきなりハードメニューよりかは少しずつ体を慣らしていったほうが良いと思ってな」

 

確かに最初からハードメニューはきついだろうけど……西暦組は流石というべきか……

 

「何というかあっちは本当に大変みたいだね」

 

「こっちも結構厳しいけど……」

 

「お前ら言っておくけど、基礎練関係は今後空にやってもらうことになってるからな」

 

ヴィータの言葉を聞いて、スバルたちが顔を青くしていた。うん、何というかご愁傷様と言うべきか……

 

なのはから連絡事項として、スバルたちの今回の訓練は第二段階へのステップアップのためのものだったらしい。そのため、この後はスバルたちは休日となった。

 

「それと空さんたちも休んで大丈夫だよ」

 

「僕らも?」

 

「ここに来てから大変だったからね。少しでもね」

 

「そっか、ありがとうな。なのは」

 

休日か……僕はチラッと樹の方を見た。樹は僕の視線に気が付き……恥ずかしそうにしていた。

 

「まぁいい機会だから行ってきたら良いんじゃないのか?デート」

 

空さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。この人は……

 

「空さんはいいんですか?」

 

「僕は行くよ」

 

何でこう恥ずかしげもなく言えるんだよ……この人は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

「それじゃぐんちゃん、行ってくるね」

 

「えぇ、楽しんできてね。高嶋さん。上里くん、ちゃんと高嶋さんのことを」

 

「分かってる」

 

私は二人を見送るとアリシアが私の服を引っ張ってきた。

 

「何?」

 

「千景姉は出かけないの?」

 

「別に出かける用はないから……」

 

「こういう時に千景姉の彼氏さんも来てればいいのにね」

 

「アリシア……」

 

何でこうあの人のこと話し出すのかしら……でもあの人がこっちに来ていたら……

 

「駄目よ。あの人は今、忙しいって言ってたわ」

 

「何だっけ?勇者と魔導師とは違う力を扱えるようにするシステムを作っているんだっけ?」

 

「えぇ、未来では防人と言われているけど、その防人の原型というべきものを作ってるわ」

 

確か名前は………守人だったかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

僕と樹は一緒に街を見て回っていたけど……全く会話がなかった。いやだって……初デートなんだぞ。これ……

 

「あ、あの」

 

「な、何だ?樹」

 

「なんだか話したいことがたくさんあるのに……いざっていう時って話せないんですね」

 

「あぁ……」

 

さっきから樹が僕の手を握ろうとしているけど、恥ずかしいのかなかなか手を繋げずにいた。

僕は樹の手を握った。

 

「夜空さん……」

 

「痛かったか?」

 

「いえ」

 

なんだか手を握るだけでもかなり恥ずかしいんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

「夜空くんと樹ちゃん、楽しそうだね」

 

「本当にね」

 

「初々しいよ~手を握るだけでこうなんだもん~」

 

「というか何で尾行なんかしてるのよ……私は若葉とシグナムと模擬戦をしようとしてたのに……」

 

「夏凜、何を言ってるのよ。あの二人が健全な付き合いをしているかどうかしっかり確認しないと」

 

「でも夜空くんは大丈夫だと思うけど」

 

「うんうん、フーミン先輩は心配性だね~」

 

「ほら、付き合いが長い二人がそういうんだから、信用しなさいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

海岸沿いの公園で二人で特に何もすることもなくただ話していた。

 

「そういえば夜空くんと樹ちゃんは初デート何だっけ?」

 

「そうみたいだな。まぁあの二人は結構大変だったみたいだからな」

 

「満開の後遺症……散華……」

 

供物を与えるということだよな。でも今は元に戻ってるけど……

 

「どういう原理なのかは気になるけどな……」

 

「でも神樹様は私達のことを見守ってくれてるから……ちゃんと返してくれたんだよ」

 

「そうだな……」

 

すると急に友奈が怒った顔をして、僕の額にデコピンをしてきた。

 

「友奈?」

 

「難しい顔をしてるよ。空くん、今日は楽しまないと」

 

そうだったな。今日ぐらいは楽しまないと……

 

「難しい顔をしてごめんな。友奈」

 

「ううん」

 

お互い笑顔になるけど、友奈は目を閉じ始めた。僕はそっと友奈にキスをしようとしたが……

 

『空さん、今……ごめんなさい』

 

突然なのはから連絡が来たのだけど、間が悪かったな……

 

「すまん、なのは……」

 

「えっと、どうかしたの?」

 

『実はエリオとキャロの二人がレリックの入ったケースを持った少女を救助したみたい。もしかしたら……』

 

「他にもレリックがあるっていうのか……」

 

『場所はアネモネに送るから、すぐに向かって』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしてもここはどこだ?」

 

「教官、やっぱり私達みたいだけですね」

 

「あわわわわ、どうするのこれから?こんな暗い場所を進んでくの?メブ」

 

「とりあえず外へと出ません?いつまでもこんな薄暗い所にいるのは私としては……」

 

「……なにか引きずってきた跡がある」

 

「教官、どうします?」

 

「そうだな……とりあえず外へと出る道を探しつつ、この跡に何があるか調べるか。そっちの三人もそれでいいか?」

 

「こっちはOKよ。にしてもなんだか慣れてるわね」

 

「こういった状況はよくあることなのか?」

 

「まさか。まぁ前に似たようなことがあっただけだよ。それで亜弥と夕空の方はあんたに任せて良いのか?」

 

「えぇ勿論。こう見えて多少戦える力を持っていますから」

 

 

 

 



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44 防人と教官と3人目

夜空SIDE

 

なのはからの連絡を受け、僕らはすぐにスバルたちと合流した。スバルはエリオとキャロが発見した金髪の女の子を抱えていた。

 

「その子がレリックを運んでいたっていうのか?」

 

「うん、なんだか鎖で繋がれてて……」

 

何かしらの事情があるのかもしれないけど、聞ける状態じゃないことは確かだな。スバルたちはヘリでやってきたシャマルに女の子を頼んだ。

 

「とりあえずまだレリックがこの下水道の先にあるっていうことでいいのか?」

 

「うん」

 

今の所集まってるのは僕ら勇者部とスバルたちフォワードとシャマルと一緒に来た千景さんとアリシアだけか……

 

「空さんたちは?」

 

「あとで合流するって、何だかどっかの部隊の……」

 

「多分だけどギン姉かな?」

 

「ギン姉?」

 

「ギンガさん。スバルの姉よ。とりあえず私達は先を急ぐわよ」

 

ティアナに言われ、僕らは下水道の中へと入っていくのであった。それにしてもギン姉って……最初あいつのことを言ってるのかと思ったよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっくしょん!」

 

「教官?風邪ですか?」

 

「いや、誰かが噂してるのかもしれないな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下水道を進んでいくと、何十体ものガジェットが姿を現した。レリックを狙って現れたって言うことなのか?

 

「あのロボットがまた出たみたいね!!ここは!」

 

先輩が大剣を大きく振りかざしたが、場所が場所だから大剣が天井に当たってしまった。

 

「先輩、狭い場所だと……」

 

「ここは私がやるわ!東郷!ティアナ!援護を頼むわよ!」

 

夏凜が前に出て、ガジェットを倒していく。援護としてティアナと東郷の銃撃で倒していくけど……

 

「前みたいにバーテックスが出てくるって感じじゃないみたいだな……」

 

「う~ん、つながりはないってことでいいのかな~」

 

「でも油断はしないほうが良いわ」

 

千景さんが大鎌でガジェットを切り裂いていく。とりあえず今はレリックの回収を急がないとな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「はじめまして、陸士108部隊のギンガ・ナカジマです。機動六課の民間協力者の方々ですよね」

 

「まぁそうなってるな。僕は上里空」

 

「高嶋友奈です」

 

「妹から話を聞いてます」

 

「なら詳しく話す必要はないな。みんなと合流しないとな」

 

「動けるのは私達だけみたいだからね」

 

若葉たちは念の為待機している。現状では僕らで何とかするしかないけど……

 

「スバルたちからの連絡ではガジェットと交戦しているみたいです」

 

「バーテックスは出てこないか……」

 

「でも何が起きるかわからないから急ごう」

 

僕ら三人は急いでスバルたちと夜空たちのところへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

下水道を進んでいくと広い場所に出てきた。

 

「敵は?」

 

「確認は出来ないわね」

 

「全部倒しちゃったって言うことなのかな?」

 

友奈が安堵していると、キャロがケースが落ちているのを発見した。

 

「あれでしょうか……」

 

キャロが近付こうとした瞬間、キャロに魔力弾が迫ってきていた。エリオは咄嗟にキャロを助けに入ると、ケースの近くに紫髪の女の子がいた。

 

「誰?」

 

「これは渡せない……」

 

女の子が手をかざした瞬間、ガジェットが現れた。まさかガジェットを操っていたのはこいつなのか?

 

「カートリッジロード!ランディニモード2!エリオ!一緒に行くぞ」

 

「はい!」

 

「しょうがない。スピードアップさせておくね」

 

アリシアが補助魔法を僕らにかけ、僕とエリオの二人でガジェットの群の間を抜けていき、女の子の近づいた。

 

「ガリュー」

 

女の子が小さく呟いた瞬間、僕らは何かに蹴り飛ばされた。そこには四つ目に赤いマフラーを身にまとった人型の龍がいた。

 

「あれって!?召喚獣?」

 

「それじゃあの子は私と同じ……」

 

「ガリュー、お願い」

 

ガリューと呼ばれた存在は僕らに向かってくる。僕らはガリューの攻撃を防いでいくが……

 

「夜空さん!」

 

「分かってる。補助魔法でスピードが上がってるのに……こいつ、ついてきている……」

 

「……あの人の仕業?」

 

「みたいだよ。ルールー」

 

今度はリインみたいな奴が出てきたよ……

 

「アギト」

 

「それにしても管理局も暇だね。こんなところにまで来るなんてね。まぁいいや、あいつから借りてきた戦力も使わせてもらうよ」

 

アギトが指を鳴らした瞬間、どこからともなく大量の星屑が現れ、僕らに襲いかかってきた。

 

「バーテックス!?」

 

「何だかんだ関係はあったみたいね!」

 

みんながガジェットと星屑を相手にしていく中、女の子はレリックが入ったケースを拾い上げ、

 

「それじゃ……」

 

立ち去ろうとしていた。だが突然女の子に向かって槍と銃撃が放たれた。女の子は咄嗟に星屑を盾にしたが……

 

「誰?」

 

「バーテックスを操ってるって言うことは私達の敵って言うことでいいのかな?」

 

「だとしてもどういった関係なのでしょう?」

 

女の子の前にはメガネを掛け、槍を持った女の子と白い鎧を纏った人がいた。あの装備って……

 

「防人?」

 

僕がそう呟いた瞬間、周辺にいたガジェットと星屑が倒されていった。そこには防人の装備をしているのが三人と見覚えのある赤い戦装束を纏った奴とヌンチャクを持った女の子がいた。

 

「あれって……」

 

「うん、来てたんだ~」

 

「よぉ、須美、園子、元気そうだな。って須美は今は東郷だっけ?」

 

「「銀!?」」

 

「銀って東郷さんのお友達で……」

 

「確か夏凜さんの教官だった人ですよね」

 

「えぇそれにあの白い鎧を着てる奴に見覚えがあるやつがいるわ」

 

夏凜は防人の一人に近寄った。防人の一人も夏凜に気がつき

 

「三好夏凜、久しぶりね」

 

「芽吹……本当にね」

 

「状況はわからないけど、あの子は敵ということでいいのかしら?」

 

「まぁそうみたいね」

 

夏凜と芽吹の二人が星屑を倒していく。何でまたここにいるんだよ……

 

でも戦力が増えた。このまま行けば……

 

「人が増えちゃったみたいだね。仕方ない……」

 

突然馴染み深い声が聞こえた瞬間、僕ら全員は何かに吹き飛ばされた。そしてレリックを持った女の子とアギトの前に……

 

「これもりっくんの力が強くなってるからかな?それとも危機を感じて神樹様が送り込んだって言うことでいいのかな?」

 

赤い髪に褐色の肌……そして赤と黒の戦装束を身にまとった少女……

 

「私達の時は……ううん、りっくんの時は助けてくれなかったのに、神樹様は不公平だね。まぁいいや。はじめまして、私の盟友の子孫、お姉さま、後輩ちゃん、そして表のりっくんの子孫……」

 

その少女は友奈にそっくりだった。そして少女は笑みを浮かべ……

 

「はじめまして、私は赤嶺友奈」



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45 赤嶺と守人

ちょっとタグの方をいじりました。


空SIDE

 

下水道を走っていく僕ら三人だけど……何というかこの下水道は迷路みたいだな

 

「アネモネ。目的地まであとどれくらいだ?」

 

『まだかかります』

 

「急がないとね。何だか通信だとバーテックスが出てきたみたいだよ」

 

「バーテックス……空さんたちの敵ですよね」

 

「あぁただそれだけじゃない気がするんだよな……」

 

何となくだけど嫌な予感がする。急いでみんなの所に行かないと……だけどこのまま普通に進んでいったら……

 

僕は立ち止まり、考え込んだ。

 

「空くん?」

 

「空さん?」

 

「……アネモネ、ヴィータにつないでくれ」

 

『了解』

 

『どうしたんだ?空』

 

ヴィータに通信をつなぎ、あることを聞いた。

 

「お前、今何処ら辺だ?」

 

『そろそろ着く頃だな』

 

『空さんたちも急いで下さい』

 

ヴィータとリインの二人はもうたどり着きそうだな。それなら……

 

「僕らは別ルートから行く。そっちは頼んだぞ」

 

『別ルートっておいっ!?』

 

僕は通信を切り、友奈とギンガの方を見た。

 

「一旦上に戻るぞ」

 

「上?地上から行くの?」

 

「地上からって……でもスバルたちがいる場所は上からじゃ……」

 

「行けないわけ無いだろ。まぁちょっと色々と壊しちゃうけど……敵のせいにでもしておくか」

 

「えっと……それは……」

 

ギンガが思いっきり苦笑いをしてるけど、まぁ大丈夫だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

突然僕らの前に現れたのは友奈にそっくりな女の子だった。それに彼女の名字……聞き覚えがある

 

「赤嶺って……大赦で有名な……」

 

「あはは、未来でも名前が残ってるんだね」

 

「……お姉さまと言うが、私には妹はいないのだが……」

 

ヌンチャクを持った人が不思議そうにしながら言うと、赤嶺は笑みを浮かべていた。

 

「古波蔵棗……沖縄の勇者だよね。貴方は沖縄から四国まで人々を導いた勇者だからね。敬意を込めてお姉さまって呼んでるんだよ」

 

「それじゃ盟友の子孫というのは……」

 

「弥勒夕海子。私の盟友のレンチの子孫だよね」

 

話を聞く限りじゃ彼女は僕らの世界の人間みたいだな。ただ気になるのは……こいつはどの時間軸から来たんだ?それに……

 

「表って、夜空、あんたの家ってそんな複雑だったりするの?」

 

「先輩、そういうわけじゃないんだけど……園子は知ってるか?」

 

「ううん、知らないよ。表って言うなら裏もあるっていうことだけど……」

 

「そうだね~気になることがたくさんあるみたいだけど……今回は時間を稼がせてもらうよ。というわけでルーお嬢様、アギト、時間稼ぎは任せてね」

 

「わかった……」

 

「そんじゃまたな」

 

ルーテシアとアギトが撤退し、僕らが後を追おうとしたが、赤嶺が僕らの前に立ちはだかった。

 

「この人数相手に時間稼ぎなんて出来るのかしら?」

 

「悪いが話を聞かせてもらうぞ」

 

夏凜と芽吹の二人が武器を構えると、赤嶺は笑っていた。

 

「そうだね~だからさこっちも人数を増やさせてもらうよ」

 

赤嶺が指を鳴らした瞬間、どこからともなく真っ白なフードをかぶった二人が現れた

 

「この子達はりっくんが作った人型のバーテックス。強さ的には……スコーピオンくらいかな?」

 

フード姿の二人が動き出し、一時的に僕らを分断してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千景SIDE

 

私の方には白い鉄の棒を持った奴が立ちはだかっていた。私、犬吠埼さん、防人の弥勒という人、スバル、ティアナ、東郷が相手することになったのだが……

 

「強さ的にはスコーピオンと変わらないって言ったけど……」

 

「あのサソリって結構強かったよね」

 

「千景さんたちの時代からかなりの強敵だったらしいですよ。それに銀のときも……」

 

「ですが人型ですから楽勝ではないのでしょうか?」

 

「そうだよ。こっちは人数が多いから……」

 

「スバル、油断はしないで!それと弥勒だっけ?悪いけどこっちの動きに合わせてもらうわよ」

 

「えぇ、分かりましたわ」

 

全員が構え始めると、フードの人物は棒を構え……

 

『勇者、魔導師、防人……相手に不足はないな……』

 

人型バーテックスが喋った?いや知能はあるというから喋るのは不思議ではないけど……

 

『来ないなら……こちらから』

 

人型バーテックスが私達に攻撃を仕掛けてきた。私達は武器で攻撃を防ごうとしたが、一瞬の内に私達は吹き飛ばされてしまった。

 

「ちょ!?何、今の?」

 

「ほぼ同時に私達に攻撃を……」

 

「しかも見えませんでしたわ!?」

 

『見えない?見ないようにしていたのじゃないのか?』

 

棒を回転させながら私達へと向かってくる。するとティアナがデバイスを構え……

 

「スバル!」

 

「わかった!!」

 

スバルが人型バーテックスに接近し、拳を繰り出していく。人型バーテックスは棒で防いでいく。するとスバルがちょっとした隙を見せた

 

『隙あり………』

 

「こっちがね!」

 

人型バーテックスが大きく棒を振った瞬間、スバルがリボルバーナックルで棒を掴んだ。

 

「ティア!」

 

「分かってる!シュート!」

 

武器を抑え込んだ瞬間に、ティアナが魔力弾の軌道を操作しながら人型バーテックスに命中させた。スバルは私達の方へ下がり、

 

「弥勒さん」

 

「えぇ追撃を」

 

更に東郷さんと弥勒さんの二人が遠距離から砲撃を与えていき、あたりが煙に包まれていった。

 

「やったの?」

 

「犬吠埼さん、そういったセリフはあまり言わないほうが……」

 

突然煙の中から人型バーテックスの持っていた棒が私のお腹に当たり、近くの壁に抑え込まれた。

 

「ぐううう」

 

『良い攻撃だったが……かすり傷程度だな』

 

ゆっくりと煙の中から人型バーテックスが現れた。かすり傷って……かすり傷すらついてないじゃない

 

『まず一人……』

 

「うくっ……!?」

 

人型バーテックスが力を込め、私はお腹に激痛を感じた。このままだと……死ぬ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させませんよ」

 

突然声が聞こえた瞬間、人型バーテックスに向かって誰かが切りかかってきていた。人型バーテックスは攻撃を避けた。私は解放され地面に倒れ込んだ。

 

「大丈夫ですか?千景さん」

 

「貴方は………」

 

『何者だ?』

 

人型バーテックスは私の近くにいる彼を見つめていた。彼は刀を握りしめ、白い戦装束を身にまとっていた。

 

「僕は……神宮桜……守人ですよ」

 

 



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46 脅威

千景SIDE

 

突然現れたのは私の彼……友達の神宮くんだった。

 

「貴方……どうして……」

 

「色々とあってこっちに連れてこられたんですよ。まぁ防人の方々と合流でき、貴方を助けることが出来ました」

 

彼は優しく笑うと何故か私は安心できた。

 

「千景さんは休んでいてください。ここは僕がやります」

 

『守人……防人と呼ばれる前の存在』

 

「未来ではそうみたいですね。とはいえ未来のことは関係ないですよ。今は僕の大切な人を傷つけた罪を……償ってもらいますよ」

 

『面白い』

 

人型バーテックスと神宮くんがぶつかりあい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

園子SIDE

 

私達の前にいる人型バーテックスはどこからともなく二対の鉄扇を取り出した。

私、ミノさん、キャロちゃん、エリオくん、にぼっしー、メブちゃん、ちゅんすけ、しずくん、ヌンチャクの人、槍の人が攻撃を始めるが、人型バーテックスは攻撃を受け止め、私達を吹き飛ばしていく。

 

『この程度で勇者と名乗るのか……』

 

「何だか舐められてるわね」

 

「舐められているなら……舐められないようにするだけよ」

 

にぼっしーとメブちゃんの二人が突っ込んでいこうとしたが、ミノさんがそれを止めた。

 

「夏凜、芽吹、突っ込むな!」

 

二人はミノさんの言葉を聞いて、突っ込むのを止めた。

 

「前に教えただろ。無謀なことはしないようにってさ」

 

「分かってるわよ」

 

「だがどうすればいいんですか?教官」

 

「無謀じゃない時を狙うんだよ」

 

「「了解」」

 

何だかミノさんが本当に頼もしく感じるよ。すると槍の人……名前は確か……

 

「えっとせっちゃん?」

 

「それあだ名?まぁ良いけどさ……そっちの教官してる子はすごいわね」

 

「三ノ輪銀。銀でいいよ」

 

「私は秋原雪花。よろしくね。それでどうするのさ?アレ、結構強いよ」

 

「そうだな……キャロは補助的なこと出来るんだっけ?」

 

「は、はい。あと召喚魔法を……」

 

「それだったら……ごにょごにょ」

 

「……分かりました」

 

「雪花さんは遠距離からお願い。私、園子、棗さん、エリオ、しずくで隙を作るから」

 

「あれ?私は?まぁ役目がないならいいんだけど……」

 

「雀は夏凜と芽吹がダメージを喰らわないように盾で守るように」

 

「盾役!?」

 

「期待してるわよ。雀」

 

「うぅ~」

 

ミノさん、やっぱり凄いな……防人の子たちからも信頼されてるんだ~

 

「それじゃ行くよ!」

 

ミノさんとしずくんが先に前に出て、人型バーテックスに攻撃を繰り出していく。人型バーテックスは鉄扇で防いでいくが……

 

「おらおらおら!!防いでるだけか!」

 

何だかしずくんの性格変わってない?もしかして戦いになると変わるタイプ?

 

「シズク!もっと押して行くぞ!」

 

「分かってるよ!」

 

二人の攻撃が人型バーテックスの鉄扇を一つ弾くと、エリオくんが突撃していき、人型バーテックスを抑え込もうとしていた。

 

『良い突撃だが……その程度!!』

 

「ハッ!!」

 

エリオくんを鉄扇で殴ろうとした瞬間、棗がヌンチャクで鉄扇を弾いた。

 

「今だ!!」

 

にぼっしーとメブちゃんがミノさんの号令を聞き、人型バーテックスに斬撃を喰らわした。人型バーテックスは傷を押さえずに……

 

『良い攻撃……いや、良いコンビネーションだ。指導者がいいみたいだな』

 

「こう見えて、須美達のためになにか出来ないかって頑張っていたんだよ。空さんが残してくれたトレーニングメニューやフォーメイションとか色々とな。あと……私達だけ見ていないほうが良いぞ」

 

ミノさんがそう告げた瞬間、入口の方からグラーフアイゼンを構えたヴィータんが飛び出してきた。

 

「アイゼン!カートリッジロード!ラケーテン・ハンマー!」

 

回転しながら人型バーテックスを思いっきり殴り飛ばしていった。

 

「ヴィータさん、お久しぶりです」

 

「銀?何だ?人が増えてねぇか?」

 

「もしかして転移してきたのでしょうか?」

 

「リイン、そこら辺は後だ。今は吹き飛ばしたやつのことを気にしてろ」

 

吹き飛んだ人型バーテックスのところは煙に包まれていたが、煙の中から無傷の人型バーテックスが歩いてきた。

 

『やりますね……』

 

「無傷っていうのは気に入らないな」

 

『まぁ無傷に見えますが、ダメージは受けていますよ』

 

落ちた鉄扇が塵に変わり、人型バーテックスの手には新しい鉄扇が握られていた。

 

『私達を倒すなら御霊を破壊しないと……』

 

人型バーテックスはフードを取ると、顔は黒い目が描かれた仮面をかぶっていた。

 

『自己紹介がまだでしたね。私は三号。あちらで戦っているのは四号。他には遠距離中心の二号と全体能力が高い一号がいます』

 

「ずいぶんとおしゃべりだね~」

 

『私はそういうものなので……私達の主の事は聞いていますね』

 

「神の領域を超えた奴だろ。天の神が教えてくれたらしいな」

 

『えぇ、主は凄いですよ。天の神を殺し、ありとあらゆる世界を渡り歩きました。その最中に面白い世界を見つけました。凶暴な生物が住み、その世界にある国の一つは恐怖で人々を支配している国を……こちらとは関わりがなかったのですが、主はあるものに興味を示しました』

 

「興味?」

 

『ある武器ですよ。それもまた神の領域を超えていたりしますね……またある世界は邪悪な存在を浄化する戦士もいましたね』

 

三号はそう言い残して姿を消すのであった。何だか気になることが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

赤嶺と対峙する僕、樹、友奈、アリシアの四人。友奈は思いっきり拳を振りかざし、

 

「勇者……」

 

「合わせてあげるよ。勇者……」

 

「「パンチ!!」」

 

赤嶺も同時にパンチを繰り出した。だけど友奈は吹き飛ばされた。

 

「友奈さん!?」

 

「ちっ!モード2!」

 

ランディニの作り出した拳具で僕は殴りかかるが、赤嶺はそれを避けると

 

「勇者キック!」

 

鋭い回し蹴りを食らわしてきた。僕は防御するが、防御が崩され、右腕に激痛が走った。

 

「痛っ!?」

 

「夜空さん!?」

 

「私と同じ技……」

 

「似てるからかな?」

 

「それでも威力は違うみたいだな」

 

「あはは、こう見えて強化されてるからね」

 

「強化?」

 

「りっくんからの愛の力でね」

 

愛の力とか……それだったら……

 

「僕と樹の愛の力を!」

 

「いや、惚気けなくていいからさ……」

 

アリシアに思いっきり突っ込まれてしまった。

 

「あはは、表の子孫は面白いね……幸せだからかな?本当に……憎らしいよ」

 

赤嶺から感じる殺気……表って何なんだよ……

 

「ここで殺すのは簡単だけど……そろそろルーお嬢様が始めるかもね」

 

赤嶺が指を鳴らした。僕らが身構えるが……何も起きなかった。

 

「あれ?どうしたんだろ?」

 

赤嶺が不思議そうに思っている瞬間、赤嶺のちょうど真上の天井を突き破って、切り札を発動した空さんが現れた。

 

「セブンテイル・バスター!!」

 

7つの魔砲が赤嶺に襲いかかるが、赤嶺は魔砲を避けていった。

 

「ここで来るとはね。表の先祖が……」

 

「表?というか友奈にそっくりだな……そのうち第四、第五の友奈とか現れたりしないよな」

 

「さぁてね。とりあえず自己紹介。赤嶺友奈だよ」

 

「僕のことは知ってるみたいだな。なら自己紹介はいらないな」

 

「そうだね。因みにルーお嬢様とアギトは?」

 

「ん?あの虫で遊んでいた子か?怪しいから捕縛しておいた。今は友奈とギンガの二人が抑え込んでるし、他に仲間がいることを考えて、若葉たちが警戒してる」

 

「へぇ、天井を突き破ってくるとか凄いと思うけど……今回はここで撤退させてもらうよ。ナンバーズの子たちにも連絡は行ってるから大丈夫だよね」

 

赤嶺が逃げようとしたが、空さんは6つの尻尾で赤嶺を囲んだ。

 

「逃がすと思ってるのか?」

 

「思ってないよ。でも気をつけたほうが良いよ」

 

どこからともなく無数の矢が降り注いできた。空さんと僕、アリシアは咄嗟に障壁を貼り、矢を弾いていった。

 

そして気がつくと赤嶺の姿はなく……

 

『一応言っておくけど、今のはサジタリウスじゃなくってりっくんの攻撃だからね』

 

りっくんって……まさかと思うけど……

 

「バーテックスの力を扱えるって思ったほうが良いのか?」

 

「そうみたいですね」

 

こうして僕らの休日は終わりを告げるのであった。だけど……敵が強大な力を持っていて、僕らは脅威を感じるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天の世界

 

「厄介なことになったな……」

 

「厄介って何が?」

 

私の目の前にフードをかぶった女の子が姿を見せた。彼女は私達天の神と同じだが、位が上になった自由な天の神だ。

 

「例の存在の力が思っていたよりも強いわね」

 

「それだったら彼らの力を借りるべきだね」

 

「彼には断られたけど……神様っていうのは勝手だったりするからね。お願いできるかしら」

 

「えぇ、いいわよ………と言いたいけど彼らを送ることができなくなったわ」

 

自由な天の神は残念そうに言った。できなくなったって……

 

「例の存在……これを予想していたのか。鍵をかけたみたい。彼らが来れないようにね」

 

「では……」

 

「えぇ、彼らを連れてくることができなくなったわ」

 

「こっちとしては本当にありがたいことだけどね」

 

今度は私達より幼い天の神が姿を現した。通称幼女神

 

「彼らの他にあの魔導師を連れて来いって言われたけど、正直トラウマな相手と話したくないからね!」

 

「残念ね……怯える貴方を見るのが楽しみだったんだけど……」

 

さてどうしたものか……現状では例の存在に勝つことができなくなった。彼ら……境界の勇者、女神の勇者、守り神の勇者みたいな存在はもう……

 

「まぁまだ手があるわ」

 

自由な天の神が笑みを浮かべた。手って……

 

「勇者だけじゃないわ。運命を変えた存在はね。そいつは自分の死の運命を変え、愛の力で戦った存在……私達とは関わりがないけど……手を貸してくれないか言ってみるわ」

 

その存在……一体何者なのかしら?




凶暴な生物が住み、その世界にある国の一つは恐怖で人々を支配しているとある世界は邪悪な存在を浄化する戦士と自分の死の運命を変え、愛の力で戦った存在は自分のある作品のオリ主です。

出すかどうか迷いましたが、出すことにしました。

ヒントはタグにかかれています

また個人的なイメージですが、結城・高嶋の勇者キックは飛び蹴りというイメージがあり、赤嶺は回し蹴りというイメージが着いている感じです


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47 歴史から消された事実

空SIDE

 

赤嶺一派たちとの戦いから数日後、僕、なのは、ひなた、夜空、スバルはヘリで聖王協会へと向かっていた。

 

「今回の件、スバルが保護した女の子、あと空さんが確保した女の子と融合機の子……赤嶺たちの事を知ってるみたいだな」

 

「うん、色々と調査した結果だと、今回のレリック事件にはスカリエッティって言う人が関わってるみたいだから……‥そこら辺の事情を聞ければ良いんだけど……」

 

なのはと夜空がそんな事を話す中、僕とひなたはというと……

 

「桜さんが来ているんですね」

 

「そうみたいなんだよ。それに聞く限りだと防人という集団と西暦時代の勇者たちもな」

 

「北と南……前に反応があった勇者たちですね……」

 

今その一団は聖王協会にて保護しているみたいだ。まぁ後々機動六課預かりになるみたいだけど……

 

「これも神樹様が導いたことでしょうか……」

 

「多分な……ただ……」

 

僕はこの間の戦いの映像を映した。そこには赤嶺友奈、三号、四号と呼ばれる人型バーテックス……

 

「かなり強い奴らみたいだな。おまけに人型バーテックスは傷を負わせることが出来ない……」

 

「核である御霊を破壊しないとダメみたいですね」

 

だとしても戦うことになったら、全力で戦うしかないみたいだし……それに赤嶺が言う『りっくん』って奴の力は……

 

「天の神が言っていた領域を超えた存在……バーテックスの力を扱えることだったんだな」

 

「それだけじゃない気がしますが……」

 

ひなたは不安そうにしていた。確かにそれだけじゃなくってもっと他の力を扱えそうな気がするな……

 

「あの空さん……」

 

「どうした?夜空?」

 

夜空は思いつめた顔をしていた。一体どうしたんだ?

 

「勇者部のみんなと話したんですが、僕ら……もっと強くならないと駄目みたいです。だから帰ったら……訓練をお願いします」

 

「あぁわかった」

 

夜空も今回の敵の脅威を分かっているみたいだな。だとしたら……メニューを考え直さないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖王協会の病室に行くと何だか騒がしかった。話を聞くとスバルが保護した女の子がどこか行ったみたいだった。

 

「私とスバルで探してくるね」

 

「あっちの子の事、お願いします」

 

僕らにそう言ってなのはたちは去っていった。さて僕らはあの二人だな

 

例の二人がいる病室に行くとそこには既に桜がいた。

 

「久しぶりだな。桜」

 

「えぇお久しぶりです。空」

 

「えっと二人は知り合いなんですか?」

 

「お兄ちゃんと桜さんは親友同士ですね。お兄ちゃんは勇者たちの鍛錬を担当、桜さんは勇者たちの力になるために新たなシステムを作っている方ですよ」

 

そのシステムが守人システム……勇者システムは神樹様の力を借り、守人は武器に宿った魔力を借りたものだ。

十年前に元の世界に帰った後、魔法について話していた時に、桜がこの世界に魔力を持った人がいないかもしれないけど、魔力が宿った武器とかがあるのではないかと言い出し、一緒に探して色々と見つかった。

 

「未来では防人と呼ばれているけど、守人はプロトタイプって思ってくれればいいよ」

 

「それでお前はそっちの二人に何か聞きたいことがあったのか?」

 

「いや、ここにいれば会えると思ってね」

 

相変わらず先読みが凄いやつだな。さてとりあえずこの二人から話を聞かないとな

 

「僕は上里空。こっちは妹のひなた。子孫の夜空だ。君は?」

 

「……ルーテシア」

 

「ルールー、簡単に心を許すなよ!こいつらは赤嶺が言っていた奴らと同じ奴らかもしれないんだぞ」

 

「アギト……でもこの人達は優しいよ。普通だったら牢屋とかに入れたりするのに、この人達は違った」

 

「まぁ信用してくれないのはしょうがないけど……」

 

でも話してはくれるみたいだな。するとアギトは呆れながら……

 

「ま、まぁこいつらはそうだけど……というか私らは戻らないとな……」

 

「ルーテシアたちはどうしてレリックを集めていたのか教えてくれないか?」

 

僕がそう聞くとルーテシアとアギトの二人は小声で話し合い、事情を話してくれた。

 

ルーテシアは母親を目覚めさせるために、例のスカリエッティという人物に協力しつつ、必要なXI番のレリックを探していた。

それを共にしていたのはアギトとゼストと呼ばれる男だった。

 

「きっと旦那も心配してるだろうな……」

 

「うん、でもゼストもこの人達に会ったら……分かってくれると思う」

 

二人はゼストって言う人のことを心配してるみたいだけど、まぁ出会ったら二人が無事だと伝えるか……

 

「お前の母親の件だけど、僕らの方でもレリックを探してみるよ」

 

「いや、お前、管理局だろ?手に入っても何だかんだ言って……」

 

「何だかんだ言って、消えたとか言っておくよ」

 

「おい、こいつ、管理局だよな……」

 

「私達は民間協力者ですから」

 

「というか普通にはやてたちに言えばいいのに……」

 

「空は変わらないですね」

 

あれ?何だかバカにされてるんだけど……

 

「話は変わるけど、赤嶺の事はなにか知ってるか?」

 

「……」

 

「というかお前らは知らないのか?あいつの友達がやられたこと……」

 

「どういうことだ?」

 

アギトは語りだした。赤嶺が言っていたことを……

 

赤嶺友奈は神世紀72年、天の神の圧倒的な力に魅せられた一部の人間達が四国全土で大規模なテロ事件を引き起こした際に、弥勒家と共に反乱を鎮圧して四国を救った人間……僕らよりも何十年も後の人間なんだな

 

「僕らの方でもそこら辺の話は聞いている。だけど表と裏って……」

 

「りっくんって奴は、その大赦とかいうやつらが人間を制圧するための最終兵器として実験体にされたやつらしい」

 

大赦は強制的に人々を抑え込むために、りっくんという人物に天の神の力を宿らせた。実験は上手くいき、テロは終わらせたらしいが……

 

「どうにも人間ってやつはそいつを処分しようとしたみたいだ。いつか自分たちに反乱を起こさせないために……」

 

処分されようとした時に、赤嶺が色々とやったらしいけど…結果は……

 

「歴史から消されたのか……」

 

「だけどその天の神が言っていた神を殺害したって言うのは……」

 

「もしかしたら処分された後、その人は平行世界に転移し、原因となった天の神を殺したのでしょうね……その人自身も天の力を扱えるのですから……」

 

「……赤嶺友奈はあの人のことを助けるために、ドクターに協力してるみたい」

 

何というか大赦の闇が見えたな。いや、夜空たちの話じゃ大赦も色々と大切なことを話したりしてなかったみたいだからな……

 

「赤嶺は管理局も大赦の人間も勇者も信じるなって言ってたけど……」

 

「私達は貴方達のことを信用できる……」

 

「そっか……」

 

大赦ではなく僕らのことを信じるか……それもいいかもしれないな

 

するとなのはとスバルが病室に入ってきた。おまけになのはに抱っこされているのは保護された女の子だった。

 

「話は終わったの?」

 

「あぁ、なのは、出来ればだけどこいつらのこと、六課で……」

 

「うん、分かってるよ。空さんたちなら保護してくれないかって言うって思ってたから……」

 

「それとこの子達の保護者のゼストさんと言う方のこともお願いできませんか?」

 

「うん、いいよ。あと少しだけ付き合ってもらっていいかな?聖王協会の人が空さんたちに会いたいって」

 

「僕らに?」

 

「うん、それと夜空さんに会わせたい子がいるんだって」

 

「僕に?」

 

「あぁ彼女ですね」

 

桜は何かしら事情を知ってるみたいだな。



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48 予言と未知なるもの

なのはに案内された部屋に入るとそこには金髪の女性と桃色のシスターと見覚えのある青年、はやて、フェイト、銀、あと巫女装束の二人の少女がいた。

 

「お待たせしました」

 

「ええんよ、なのはちゃん。うちらも今来たばっかやから」

 

「空、紹介するね。この人は聖王協会の騎士で」

 

「カリム・グラシアと言います。こちらはシャッハ・ヌエラ。シスターです」

 

「始めまして」

 

「それとこっちの二人は……」

 

「国土亜弥です」

 

「それと……」

 

「夕空?」

 

フェイトが紹介しようとしたとき、夜空がその少女の名前を告げた。少女は嬉しそうにしながら……

 

「お兄ちゃん。久しぶり。会いたかったよ」

 

「あぁ、僕もだよ……」

 

夕空という子は夜空に抱きついた。もしかして夜空の妹か?すると亜弥が嬉しそうにしながら

 

「夕空ちゃん、良かったですね。ずっと会いたかったんだもんね」

 

「亜弥ちゃん、それは……」

 

なるほど……夕空は夜空のことが大好きなんだな。というかこれも血筋か?

そう思いながら、僕は青年の方を見た。面影あるからすぐにわかった。

 

「クロノ、でかくなったな」

 

「今は僕のほうが年上だからな。だけど久しぶりだ。空」

 

僕とクロノは拳を合わせた。まさかクロノがここまで大きくなるとはな

 

「今回、君たちを……長い付き合いであり、リーダー格でもある空、夜空、巫女のひなた、夕空、亜弥、そしてこの間の戦いで合流した防人の教官銀、守人の桜をこうして呼んだのはある予言についてだ」

 

「予言?」

 

「神託みたいなものか?」

 

「似たようなものですね」

 

「彼女のレアスキル『預言者の著書』は、最短で半年、最長で数年先の未来の出来事を散文形式で書き出した預言書になっているんだ」

 

カリムの代わりにクロノが説明し、カリムは予言について話した。

 

「予言では『領域を超えた存在、その下僕たちが彼者古き結晶を用いて、世界を滅ぼさんとする。なおかつ大地の法の塔は虚しく焼け落ち、それを先駆けに、数多の海を守る法の船も砕け落ちる――』とでました」

 

領域を超えた存在……その下僕っていうのは奴らのことか……

 

「古き結晶はレリックのことやね」

 

「この予言……スカリエッティのことは告げられてないみたいだけど……」

 

「滅びをもたらすのはスカリエッティではなく、神の領域を超えた存在ということだ」

 

予言にまでこうまで出てくるとは……

 

「そして最近になって新たな予言が出ました。『2つの力を扱えしもの倒れし時、その存在は表へと現れる。だがそれと同時に未知なる世界から来訪者が現れる』と……」

 

「2つの力を扱えしもの……それって……」

 

ひなたは僕と夜空のことを見た。2つの力……僕と夜空のことを指しているのだろうけど……

 

「僕か夜空のことだろうけど……予言なんてものはいくらでも覆す。そうだろ。夜空」

 

「はい、そうですね」

 

僕らは互いに笑いあった。ただ気になるのは……

 

「来訪者……こいつは敵なのか味方なのか分からないな」

 

「未知なる世界……一体どのような世界から……」

 

とりあえず答えが出ないまま、僕らは解散することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「騎士ゼストが行方をくらましているのか……」

 

「はい、もしかするとルーテシアお嬢様を探しているのかと」

 

「情報では彼女たちは機動六課に捕縛されたみたいだが……」

 

「迎えに行かせますか?」

 

「そうだな。だが強襲ではなく隠密だな。そして出来れば……」

 

モニターには空と夜空、そして勇者たちの姿が映し出された。

 

「彼らを招待してもらいたいものだな」

 

「分かりました。隠密行動向きのセインとチンクを向かわせます」

 

「それと彼らは?」

 

「特に動きはないですね。未だに疑うのですか?」

 

「念の為だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけだから……協力してくれるなら約束は守るよ」

 

「………外道が!」

 

「いくらでも罵っていいよ。私は目的のためだったら手段は選ばないからね。ねっ、りっくん」

 

「……友奈。ごめん」

 

「謝らないで……私はりっくんを助けたいから……体は大丈夫?」

 

「意識を持ってかれそうになること以外はな……」

 

「ごめんね。助けてもらって……」

 

「いいんだ。大好きな人を助けるのは当たり前のことだから……」

 

少年は赤嶺をそっと抱きしめようとするが、急に苦しみだした。赤嶺はすぐに声をかけようとしたが……

 

「大丈夫だ………」

 

「その黒い鍵……蝕んでるんだね……」

 

「友奈……そんな顔をするな。大丈夫だから……」

 

「心配だよ。大好きな人が苦しんでるんだから……」

 

「………お前たちの目的が何なのか知らないが、そいつを助けるためにお前はこういった手段を取ったのか」

 

「そうだよ。大好きの人のためだから……」

 

「ならば最初から言え。メガーヌの件を持ちかけずに……助けてといえばよかっただろう。騎士としていくらでも手を貸す」

 

「おじ様、ありがとうね」

 

「ありがとうございます。ゼストさん」

 

「それでどうするの?」

 

「準備は整った。あとは……スカリエッティを裏切るだけだ。そのための戦力は整え、近い力を持つ存在の来訪を防いだんだ」

 

「……始めよう。りっくんを助けるために……」



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49 誘い

空SIDE

 

聖王協会で予言を聞かされてから、一週間が過ぎた。僕は夜空に頼まれた強くなるための鍛錬を行っていた。

 

「一週間中に……50戦30勝……僕の勝ち越しだな」

 

「で、でも……ハァ、僕は20勝してますよ」

 

「分かってるよ。互いに能力と経験を上げていってるからな……お前は遠距離主体と近距離主体の両方を鍛え上げていってるし、僕は改の安定……結構行けるものだな」

 

これまでは基礎練習を中心に行ってきたけど、今は模擬戦(全力)が主にやっている。全力で戦うことで能力向上を出来るけど……

 

「まぁこの練習はあくまで勇者たちメインだったんだけどな……」

 

疲れ果てて倒れている中に、スバル達フォワードメンバーも混じっていた。うん、本当に混ざるなよ

 

「なのは、いいのか?」

 

「うん、特にみんな無理してないからね。でも一週間見ていて思ったけど、防人組の子たちも出来る子が多いね」

 

「まぁ私の教え……というより空さんが残してくれたメニューのたわものですよ」

 

銀は自慢げにそういうけど、こいつも結構体力が付いてるな……今立ってるのって僕となのはと銀くらいだしな……

 

「ママー」

 

するとルーテシアと一緒に前に保護した女の子……ヴィヴィオがこっちに駆け寄ってきた。今はなのはとフェイトのもとで預かっているけど、後々養子に迎えるみたいだな。

 

ヴィヴィオはなのはの元に駆け寄ろうとしたが、転んでしまった

 

「ヴィヴィオ」

 

ヴィヴィオに駆け寄ろうとしたフェイトを静止させるなのは。そして、なのははヴィヴィオに向かっていう。

 

「待って、ヴィヴィオ、自分で頑張って立ち上がってみて」

 

「うっ、」

 

「や、やっぱりだめだよ。」

 

我慢できず、ヴィヴィオを抱き上げるフェイト。それを見てなのはは

 

「もうフェイトママは甘すぎるよ」

 

「なのはママは厳しすぎです。」

 

「何だか強い子に育ちそうだな。ヴィヴィオの奴……」

 

「まぁ私らが面倒見てるからな。なぁルールー」

 

「うん」

 

ルーテシアとアギトの二人が僕の方に近寄ってきた。何でか知らないけど、懐かれてる……

あと色々と調べた結果、アギトはどうにもシグナムと相性がいいらしく、シグナムの良い相棒になろうと頑張ってる

 

「とりあえず今日の朝練は終わりでいいか?」

 

「うん、そうだね」

 

こうして朝練が終わるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を食べ終え、僕は外で改の調整を行おうとしたけど……

 

「2日前から気になってるけど、いい加減姿を見せたらどうだ?」

 

誰かに問いかけるように言うと、近くの物陰が二人の少女が出てきた。一人は水色の髪の子、一人は眼帯に銀髪の子だった。

 

「気がついていたのか」

 

「結構見つからないようにしてたんだけどね」

 

「殺気とか感じなかったからな。放っておいたんだけど……いつまでも見つめられるとな。それでお前らは?」

 

「私たちはナンバーズ。私はチンク」

 

「私はセイン。ドクタースカリエッティが作られた戦闘機人……いうなればサイボーグだよ」

 

「何だかサイボーグとか言われても今更驚かないな……それで何の用だ?ルーテシアでも取り戻しに来たのか?」

 

「接触をしましたが、こちらにいるということで…断られました。そして貴方と接触しようとしていたのは……ドクターが貴方に会いたいと言っていました」

 

「招待しに来たのか……その間襲撃をかけたりは?」

 

「しません。ドクターは話をしたいと」

 

あんまり信用はできないな。それだったら……

 

「条件をつけるなら、一つどっちか一人、こっちに残る。2つ、スカリエッティと話しているときはみんなに訊かせるようにしてほしい。3つ、僕だけじゃなくって他にも連れて行く。出来れば二人ほど……どうだ?」

 

「……分かりました。ではセインをこちらに残します」

 

「言い忘れたけど、4つ妙なことをしたら……」

 

「セインはそうそう無謀なことはしませんよ」

 

「わかった。と言うわけだからギンガ、後は頼めるか?」

 

「はい」

 

別の物陰からギンガが出てきた。ギンガは少し前に機動六課に合流してきた。そして僕はギンガにある事を頼んでおいた。

 

「まさか何かしらの接触があるかもしれないって言っていましたが……本当に……」

 

「予想通りだったから良かったけどな……」

 

「それで連れて行くのは?」

 

チンクがそう聞くと僕は考え込んだ。色々と考えた結果、連れて行くのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカリエッティのアジトの近くまで転送してきた僕、友奈、芽吹。もしものことを考えて実力がある二人を連れてきてよかったな。

 

「すみませんが、アジトの場所を把握できないように……」

 

「分かってる。なのはたちにも了解は取ってある」

 

「でもスカリエッティさんはどうして空くんに会いたいのかな?」

 

「興味があるというわけでは?」

 

興味か……まぁありそうだな。アギト曰く変わり者らしいから……

 

「もう少しすればアジトが……」

 

チンクが指を指した方を見た瞬間、突然爆破音が聞こえた。チンクは慌てて駆け出した。

 

「何があった?」

 

「この感じ……襲撃?」

 

「管理局の人?」

 

「いや、ここの場所は掴まれていないはず。それなら……」

 

僕らはチンクの後を追っていき、アジトの中に入った。アジトの中は無茶苦茶に破壊されていた。チンクはその中で倒れている人物に駆け寄った。

 

「ノーヴェ!?どうしたんだ?」

 

「チンク……姉……奴らが……」

 

奴ら……まさかと思うけど……

 

「おい、チンク。奴らってあいつらは仲間じゃなかったのか?」

 

「そのはずだったが……くっ……」

 

チンクは悔しそうにしながら、ノーヴェを抱えた。

 

「ノーヴェ、他のみんなは?」

 

「一発目の攻撃で全員……」

 

「すまないが、私は姉として……」

 

「分かってる」

 

僕らはチンクと別れ、奥へと進んでいった。そして奥へと進んでいくと白衣の男が腕を抑えながら目の前の男を睨んでいた。

 

「目的のものは取ったのだろう……なら……」

 

「あぁ目的は達成したが……どうやら客人だな」

 

男はゆっくりと僕らの方を向いた。白い髪、灰色の装束、そしてどことなく夜空に……いや僕らに似ている気がする

 

「お前がりっくんって奴か?」

 

「あぁそうだよ。ご先祖様。いやお祖父様って呼んだほうが良いかな?」

 

「どうして……仲間じゃなかったの?」

 

友奈が訪ねた瞬間、どこからともなく赤嶺と茶髪の男が姿を現した。

 

「仲間?違うよ。あくまで協力関係だっただけ。そして紹介してあげるね。彼こそが神の領域を超えた存在……歴史から消された裏の上里の人間」

 

「上里陸都だ」

 

「お前がそうなんだな……」

 

こんな所で出会うとは思ってなかったけど……戦いを避けることはできなそうだな

 

「遊んであげますよ。ご先祖様」

 

「遊びで済ませられると思ってるのか?」

 

僕は切り札を発動し、陸都に向かっていくのであった。



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50 神を超えた存在

僕が陸都に向かっていく中、赤嶺は友奈の方を、茶髪の男は芽吹に向かっていった。

 

「悪いけど邪魔はさせないよ」

 

「ハアアアア!!」

 

二人がそれぞれの戦いを始めた。僕は槍を構えると陸都は右手を掲げた。

 

「手始めに……こいつはどうだ?」

 

なにもない空間からミサイルが発射されてきた。僕は槍で切り裂いていく

 

「ヴァルゴの……」

 

「分かっているが、僕は扱えるんだよ」

 

陸都はキャンサーの盾とスコーピオンの針を取り出し、僕らはぶつかりあった

 

「バーテックスの力を扱えるし、武器に変えられるのか!」

 

「さぁ始めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友奈SIDE

 

「先輩相手だけど……負けるつもりはないよ」

 

「私だってまけない」

 

お互いに拳をぶつけ合っていく。お互い距離を置くこともしなかった。

 

「赤嶺ちゃんはどうして陸都くんに協力してるの?」

 

「愛する人のためにって言ったら?」

 

赤嶺ちゃんは悪戯っぽい笑顔で言ってきけど、何だかその言葉は信じられる

 

「すごいね。だったら私も大好きな空くんのために戦うよ!勇者キック」

 

「いいね。勇者キック」

 

互いに蹴りを放つけど、赤嶺ちゃんのほうが威力が強く私は吹き飛ばされた。

 

「愛する人のため頑張れば、いくらでも力は湧いてくる」

 

「それだったら私も大好きな人のために頑張る!」

 

「お互い愛する人のために……戦おうね」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

芽吹SIDE

 

眼の前の男の槍の一撃を受け止めていく。この男……強い

 

「名は何というのだ?」

 

「楠芽吹。防人だ」

 

「俺はゼスト。騎士だ」

 

「ゼスト……ならルーテシアの言っていた男だな。彼女が心配していた」

 

「そうか……だが俺は奴らに協力することにしたのだ。戻れたらそう伝えてくれ」

 

「ここで私を殺すということ?」

 

「そうだと言ったら?」

 

私を殺すか……だけど私は殺される訳にはいかない

 

「誰も失わないためには、自分自身も死ぬ訳にはいかない」

 

銃剣をゼストへと打ち込んでいく。ゼストは私の攻撃を弾いていきながら笑みを浮かべていた。

 

「騎士ではなく武士だな。面白い」

 

「ハアアアア!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

スコーピオンの針を避けながら、距離を置く僕。こいつ……全てにおいて僕を超えている

 

「それも天の神の力で身体能力を上げているのか?」

 

「いいや、素の力は君を超えているだけだよ」

 

「そうか……シュート!」

 

アネモネへと切り替え、魔力弾を放つ僕。だけど陸都は盾ですべてを受け止めた。

 

「この程度なわけ無いだろ」

 

「出し惜しみしている場合じゃないな………アネモネ!カートリッジロード!!」

 

カートリッジロードをし、僕はまばゆい光に包まれると、8つの尻尾に二本の槍を持った姿に変わった。

 

「切り札・改『槍狐』」

 

「槍狐?」

 

僕は二本の槍を構えながら、陸都に向かっていく。陸都はキャンサーの盾で攻撃を防いでいくが……

 

「その盾を壊れるまで……貫く!!」

 

二本の槍に、更には8つの尻尾の先が鋭く尖らせながら、9つの攻撃を繰り出していき、キャンサーの盾を破壊した。

 

「カートリッジロード!『魔狐』」

 

今度は二本の杖に代わり、10つの魔力をため始めた

 

「フルテイル・バスター!!」

 

10の砲撃を防ぐすべもなく、陸都は直撃を食らった。陸都は煙に包まれていくが、ゆっくりと歩いてきた。

 

「やりますね」

 

「無傷ってか……ふざけんな」

 

「ふざけてないですよ。今のは危なかったので、ジェミニの力で分身を盾にしたんですよ……とはいえ多少の傷は負いましたが」

 

陸都は左手を見せた。陸都の左手はみるみる内に再生していく。こいつ……

 

「再生能力か……」

 

「再生能力はこの鍵の力ですよ」

 

陸都は胸をはだけると、陸都の胸に黒い鍵が埋め込まれていた。これがこいつの大本だっていうのか?

 

「この鍵は偶に僕の意識を奪っていく。おまけに僕の頭に声をかけてくるんですよ……全てを支配し、全てを破壊しろって」

 

「だったらそれを外せばいいだろって言いたいけど、外せないのか?」

 

「えぇそのために色々と必要なんですよ。レリックや聖王の揺り籠やら……色々とね。そのために……スカリエッティと協力して、集まったのを確認した後、奪うことにしたんだよ」

 

「お前が世界を渡り歩いてるんだろ。だったらそれ以上のものが見つかったりしてないのか?」

 

「見つかったりしてますよ。でも鍵を外すことは出来ない……でも興味はあったりしますよ……例えば……」

 

陸都が軽く右手を振った瞬間、近くの地面がなにかに切られた

 

「ありとあらゆるものを切り裂いたり……」

 

指を鳴らした瞬間、どこからともなく氷が振ってきた。これはバーテックスの力じゃないな

 

「見て、力を覚え、扱えるようになりました。異世界の武器の能力ですよ」

 

「結構厄介だな」

 

「でもどれもこれも外すためのものじゃなかった……」

 

こいつは鍵を外すために色々とやっているんだな。だけど……

 

「じゃあ何で天の神を殺したんだ?それも必要なことなのか?」

 

「天の神を……それは一体……」

 

陸都が何かを言いかけた瞬間、突然苦しみだした。一体何が起きている?

 

「まずい!?意識が……」

 

友奈と戦っている赤嶺が異変に気がついた。すると陸都は笑みを浮かべた。

 

「ふふふ、ふははははは、宿主様は悠長に話しているから……奪えたな」

 

「お前……何者だ?陸都じゃないな」

 

「ん?俺はリクトだよ。今の所はな。さて質問に答えよう。俺が天の神を殺したのは……俺が天の神を超えるためだ!!」

 

リクトが両手を掲げた瞬間、巨大な炎の塊を生み出した。

 

「レオの炎……受けきってみせろ!!」

 

巨大な炎が迫り来る中、僕はカートリッジをロードし、

 

「黒狐!!」

 

黒狐を発動し、巨大な炎を破壊した。だがリクトは笑みを浮かべたまま……

 

「第二弾だ」

 

追撃に炎の塊を放ってきた。僕は防ごうとしたが、黒狐の時間制限が来てしまい、防ぐのが間に合わず直撃を食らった。

 

「があああああああああ!!?」

 

僕は地面に倒れそうになったけど、何とか踏みとどまった。

 

「まだ立つか……ならば!!」

 

リクトは12の光を一つに集め、一本の剣を作り上げた。

 

「死ね!」

 

リクトは僕を剣で切りつけ、貫いた。

 

「空くん!?」

 

「ここでお前は終わりだな……」

 

剣を引き抜いたリクトは歪んだ笑みを浮かべていた。

 

「……早く戻って……貴方には出てきてほしくないの」

 

「小娘が……だが戻る前に邪魔な存在は消しておくか」

 

リクトが剣を掲げた瞬間、真っ赤な炎がリクトの前を遮った。そして倒れた僕の近くにポニーテールの少女が現れた。

 

「天の神か。殺されに来たのか?」

 

「……まさか。この子はまだ死なせないよ。とりあえず撤退する手伝いをね」

 

天の神はそう言って指を鳴らすのであった。

 

「……逃げたか。さて宿主様に戻ってやるか」

 

「………りっくん」

 

「友奈……またあいつが……」

 

「それがお前が言っていた蝕むものか」

 

「……早く何とかしないとね。その手始めに……」

 

「分かってるよ……奴が言う破壊衝動を発散しつつ、残ったレリックの回収をしないと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天の世界

 

「あの子、助けに行っちゃったね」

 

「まぁ私でも行っていたわ。さて……」

 

「行くの?」

 

「えぇ私の役目は連れて行くことよ。ところで貴方の方は?」

 

「あぁ例の存在のこと?多分だけど……番目じゃないかな?」

 

「………番目……あの子が破棄した存在ね。全く面倒なものを……まぁいいわ。ちょこっと行ってくるわ」

 

「行ってらっしゃい~」



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51 残った人たちで出来ること

夜空SIDE

 

聖王協会の病院で、僕らは眠り続けている空さんを見つめていた。高嶋さんから話を聞く限りでは空さんはりっくんこと陸都にやられたみたいだ。

 

高嶋さんたちは天の神のおかげでナンバーズと呼ばれる女の子たちと一緒に撤退することが出来たけど……

 

天の神はまだやるべきことがあると良い、すぐに姿を消した。

 

「……」

 

「……」

 

高嶋さんとひなたさんは思いつめた表情をしていた。一命をとりとめたものの、未だに目が醒めない空さん……

僕もついていけば……

 

「夜空、そろそろ時間」

 

「はい、先輩」

 

僕らは今後のことを踏まえて作戦会議を始めることになった。待っていてくださいね。今度は僕ががんばりますから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「傷を負ったスカリエッティから事情を聞いた限りだと、陸都たちは次に本部襲撃を狙っているみたい」

 

はやてから聞かされたのは陸都たちの次なる目的。スカリエッティ曰く陸都を蝕んでいる存在の破壊衝動を解き放つために必要なことらしい。そして……

 

「また六課で回収してあるレリックの強奪……目的が分かっている以上はうちらも気を引き締めへんとな」

 

「だが敵は強大だ。地上本部、六課の防衛となると2チームに分ける必要がある」

 

若葉さんはそう言うと、なのははモニターにチーム分けを映し出した。

 

「陸都が来るとしたら、地上本部の方。だから私、フェイトちゃん、はやてちゃん、守護騎士のみんな、西暦時代の勇者、夜空さんを向かわせることになる」

 

「ということは私らも地上本部ってことだね」

 

「うむ、任された以上は守ってみせる」

 

「僕も地上本部で?」

 

桜さんがそう聞くとなのはは首を横に振った。

 

「桜さんは六課の方をお願い。六課は勇者部のみんな、防人のみんな、アリシア、桜さんでお願いします」

 

「任されたよ」

 

「こっちも負けてられないわ。勇者部気合を入れていくわよ」

 

全員が気合を入れていく中、僕はそっと会議から抜け出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空さんが負けた。それ以上に陸都は強敵だ。だったら……

 

「夜空さん?」

 

気がつくと樹が心配そうにしながら僕に声をかけてきた。

 

「樹……」

 

「どうしたんですか?」

 

「……樹、今のうちに謝っておく。もしかしたら凄く心配をかけることになるって……」

 

「心配をかける……何をするつもりですか?」

 

「ごめん……」

 

「夜空さん……お願いですから死なないでくださいね」

 

「分かってる」

 

「本当にですよ」

 

「あぁ」

 

僕は樹と指切りをした。陸都との戦い……僕は全力全開で戦うしかない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある世界

 

「始めたばっかりとは言え……依頼は来ないもんだな」

 

留守番しているのだけど、暇でしょうがないな。

 

あの一年にも渡る戦いが終わった後、俺は仲間たちと共に何でも屋的なものを始めた。始めたのは良いけど……まだ依頼は来なかった。

 

「気長に待つのです。私も手伝いますからね」

 

「ありがとうな」

 

二人でのんびりとしている中、突然ドアからノックが聞こえた。

 

「どうぞ」

 

部屋に招き入れるとフード姿の人物が入ってきた。怪しすぎる

 

「ここなんでも依頼を聞いてくれるんだよね」

 

「あぁそんなところだよ」

 

「じゃあお願いしたいことがあるの。丁度二人がいるしね」

 

フードの奴がそういった瞬間、まばゆい光に包まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

公開意見陳述会。地上本部、本局、各世界の代表が意見交換する会。それが今日、地上本部で行われることになった。陸都たちが現れるとしたらこの時だろうとはやてが言っていた。

 

「それじゃ私とフェイトちゃんは外を見回ってくるね」

 

「はい」

 

なのはとフェイトの二人が見回りに向かい、残った僕らは……

 

「ここで待機か」

 

「でもそうした方が何かあったとき動きやすいと思うよ」

 

「とりあえず、スバル、エリオ、キャロ。敵と遭遇したら戦わずに誰かと合流して、その後全員で戦うこと」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

「こちらも個人で戦わないようにしないとな」

 

「彼……大丈夫かしら」

 

「何だ?千景は桜のことが気になるのか?」

 

「そ、それは……別に……」

 

「タマっち先輩、茶化すのはやめようよ」

 

「六課の方は大丈夫かな?みーちゃんたちが待機してるけど……」

 

「きっと大丈夫だよ。先輩たちも強いですから……」

 

きっとみんななら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひなたSIDE

 

六課の一室で私は水都さん、夕空さん、亜弥さん、ルーテシアちゃんと一緒にヴィヴィオちゃんの側にいた。

 

「ママたち、大丈夫かな?」

 

「きっと大丈夫ですよ……」

 

「ひなたさん、休んでいたほうが良いんじゃ……」

 

「そうですよ。ここ最近眠れてないみたいですよ」

 

「もしかして空さんが心配なのですか?」

 

みんなに気が付かれていた……一命は取り留めたもののまだお兄ちゃんは目を覚まさない。もしもこのまま目を覚まさずにって考えると……

私は体の震えが止まらなかった

 

「ひなたお姉ちゃん」

 

するとヴィヴィオちゃんが私の手を握ってくれた。

 

「ヴィヴィオちゃん……」

 

「信じよう。きっと空お兄ちゃんは目をさますよ。それにヴィヴィオね、お守りに祈ってるから大丈夫」

 

ヴィヴィオちゃんは私に白い鍵を見せた。これって、以前天の神がなのはちゃんに授けた……

 

「そうね。何かご利益があるかもしれないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

みんな、緊張しているのか、会話がなかった。そのためかまるで嵐の前みたいだった。

 

「……桜教官……」

 

「何だ芽吹?」

 

「もしゼストと言うやつが現れたら……私と夏凜にやらせてください」

 

芽吹は強い目でそう言ってきたが、僕は首を横に振った。

 

「君たちだけ戦わせない。僕も戦うよ」

 

「教官……はい」

 

さて敵はいつやってくるのか……この神宮家に伝わる『桔梗櫻』で戦えきれるか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて準備は整ったよ。りっくん」

 

「あぁ……一号、三号は僕と友奈と共に地上本部へ、二号、四号はゼスト共にレリックの回収を」

 

『主様。向かってくる奴らは?』

 

「お前たちは僕が作り出した。そして僕と繋がってる。少しでも破壊衝動を発散させるために……向かってくるものを全て破壊しろ」

 

『了解』

 

「それじゃりっくん、入れ替わって」

 

「あぁ……さぁ始めよう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

警報が鳴り響いた瞬間、空を見ると大量の星屑が迫ってきていた。始まったか。

 

「全員!行くぞ!」

 

若葉さんの号令のもと、僕らが動き始めるのであった。そんな中、若葉さんの前に人型バーテックス三号が現れた。

 

『さぁて妨害しちゃおう』

 

「妨害?悪いけどするのは私達の方だ」

 

『そう、じゃあ楽しませてね』

 

若葉さんたちは三号と戦う中、シグナムさんたちが駆けつけてきた。

 

「大丈夫か!」

 

「人型バーテックスか。我々守護騎士も……」

 

『なら俺の相手をしてもらおうか』

 

シグナムさんたちがデバイスを構えていると、目の前に巨大な太刀を持った人型バーテックスが現れた。

 

『俺は一号』

 

「我ら守護騎士」

 

『騎士。相手に不足はないな』

 

守護騎士が一号と戦う中、地上本部の方から爆発が聞こえた。まさか……

 

「ティアナ!僕はあっちへ行くから」

 

「ちょっと夜空?」

 

「僕の相手はあいつみたいだからな……」

 

僕は爆発が起きた場所へと向かうのであった。

 

「まずいわね……戦力を分断された。それにこのバーテックスの数だと六課も気になる」

 

「ティアナさん、僕らが行きます」

 

「フリードで向かえばすぐに着くと思います」

 

「二人共……無茶をするんじゃないわよ」

 

「「はい」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

襲撃に気が付き、みんなのところへ向かおうとすると赤嶺さんが立ちふさがった。

 

「始めまして」

 

「赤嶺友奈ちゃん……」

 

「私達の相手って所?」

 

「そう、悪いけど……二人にはここに留まってもらうから……火色舞うよ」

 

赤嶺ちゃんが呟いた瞬間、力が解放される感じがした。これって……

 

「本気って言うことだね」

 

「行くよ。なのは」

 

「さぁ楽しもう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

『ふふふ、どうだった?見えない砲撃』

 

『とはいえ感じ取ったのか、全員が避けたな』

 

僕らの前には人型バーテックスが姿を見せていた。そして夏凜、芽吹の前には……

 

「楠か」

 

「ゼスト……」

 

「こいつがゼストね」

 

ゼストと向き合う二人。それじゃ僕の相手は……

 

『お前の相手は決まっているだろう』

 

三号が僕に武器を突きつけた。そうだな。だけど一人で戦わない

 

「桜さん、私らも」

 

銀、弥勒、雀、しずくが僕の前に並び立った。

 

『それじゃ私はこっちね』

 

「仮面つけてるから性別がわからないけど……」

 

「そもそも~性別ってあるのかな?」

 

「先輩、そのっち、集中」

 

「私達でここを守り抜こう」

 

「向こうで戦ってる夜空さんたちのために」

 

それぞれが敵と戦いを始めた。だけど……何故か嫌な予感がする。何だ?これは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

会議室に入ると、そこにははやてとカリムさん、シャッハさんが倒れ込んでいた。そして部屋の中心には一人の男がいた。

 

「お前が陸都か」

 

「あぁそうだ。俺がリクトだ。お前は……あぁ子孫か。先祖と一緒にボロ雑巾にしてやるよ」

 

「ふざけるなよ……お前は僕が倒す」

 

「出来るものならやってみろよ」

 

僕はランディニを構え、リクトに向かっていった。



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52 すべてを奪うもの

夜空SIDE

 

魔力弾を放ち続けていくが、リクトは魔力弾をサジタリウスの矢で撃ち落としていく。

 

「ほらほらどうしたんだ?この程度で倒すとかほざいたのか」

 

「黙れ!!」

 

僕は一気に距離を詰め、ゼロ距離から魔砲を食らわせ、距離を置くが……

 

「今のは良い攻撃だが……倒すほどじゃないな」

 

「化物か……」

 

「神を超えた存在だよ……」

 

今の状態だと僕が負ける……それだったら……

僕は持っているカートリッジを全てロードしていく。

 

「全力全開の満開!!『大獄丸』」

 

満開を発動し、連続で拳を食らわしていく。リクトは僕の拳を受け止めようとせずただ喰らうだけだった。

 

「舐めるな!!」

 

思いっきり力を込めたパンチを繰り出した瞬間、リクトはのけぞった。僕はその隙を突き、ゼロ距離から威力最大の魔砲を放つ

 

「シャドウバスター!!」

 

最大火力の魔砲を繰り出し、リクトは外へと吹き飛ばされた。今ので倒しきれなかったら……

 

「今のはいいが……」

 

声が聞こえ、顔をあげるとそこには真っ黒な翼を生やしたリクトがいた。

 

「ダメージとしては30%だな。次はこちらから行くぞ。サジタリウス、レオ、更に異世界の氷の武器」

 

炎を纏った矢と氷の矢が僕の方へと降り注いでいった。

 

「防ぎきってみろ。だがそうしている内に……レリックは奪わせてもらう」

 

「ぐううう、あそこにはみんながいる。みんななら……バーテックスを倒せなくっても、守り切ることが……」

 

「それはどうかな?戦力は隠しておくものだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

人型バーテックスと戦っている最中、隊舎の方がいきなり爆発し、そこからひなたさんたちが飛び出してきた。アリシアさんと樹さんは咄嗟にネットを作り、落下を防いだけど……

 

「一体何が……」

 

「もう一体……いたんです」

 

ひなたさんがそう告げた瞬間、隊舎の中から大きな人型バーテックスが現れた。

 

『俺、五号……レリック回収完了』

 

『ご苦労さま。それじゃあとは……』

 

『皆殺しをしたいけど、ゼストさん、何のつもり?』

 

気がつくとゼストが人型バーテックスに槍を向けていた。

 

「なるべく傷つけないようにと言われていたはずだ」

 

『あら、ごめんなさいね。五号はそういうの苦手だから』

 

「そもそもお前たちは守る気はなかった……赤嶺と陸都には悪いが……お前らを倒させてもらう」

 

『いい度胸をしている……が五号!!』

 

『重力発動』

 

五号がそういった瞬間、僕ら全員が地面に倒れ込んだ。これは……

 

『重力操作よ』

 

「ぐううう」

 

このままだとみんなが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてSIDE

 

目を覚ますと真っ黒な翼を生やした陸都の前にボロボロの夜空さんが立っていた。

 

「夜空さん……」

 

「くそ……」

 

「今頃五号が回収し終わっている。さていい加減ここを破壊するか」

 

巨大な炎の塊を作り出した。このままだとみんなが……

 

するとどこからともなくまばゆい光が現れ、形を変えるとそれは天の神だった。

 

「またこいつらを逃がすのか」

 

「えぇ死なせないためにね」

 

「そいつらでは俺を殺すことはできない。それに人型バーテックスもな。お前たちでは俺達に殺されるだけだ。それほどまでにも戦力差があるということだ」

 

「……」

 

「唯一の対抗手段としては三人の勇者たちだったが、それも宿主が道を封じたからな……俺を殺すものはもう存在しない。それともお前たち天の神が相手してくれるのか?」

 

「………今の貴方に勝つことは出来ないわ。0番目のバーテックスである貴方に……」

 

「0番目?」

 

「こいつは名もなきバーテックス。そして言うなれば私の影みたいなもの……そういう風に作ったのだけど……」

 

「俺はお前の言うことなんか聞けるか。お前はそれを感じ取り、俺を破壊したが……力の殆どを黒い鍵に移しておいたんだよ」

 

「私のミスね」

 

天の神は俯いていた。全ての発端が自分のせいだから……

 

「お前のミスのおかげで………この世界は終わりを告げる。何もかも終わりだからな。あはははははははははははははは」

 

リクトの笑い声が響く中、私は悔しさで泣きそうになった。だけど天の神は……

 

「ふふ、ふははは、あははははははははははははははは」

 

突然笑いだした。一体どうしたの?

 

「三人の勇者を封じたのは褒めてあげる。自由の天の神が悔しがってたわ。でもね……」

 

「何がおかしい?何がおかしい!!」

 

「未知なる世界を知っているかしら?その世界は私達天の神はいなかったりする……というか知ってるわよね。渡り歩いてきたのだから」

 

「………まさか!?貴様らは!!」

 

「そう貴方の予想通りよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

赤嶺ちゃんの攻撃の嵐を防いでいく中、どこからともなく一人の女の子が現れ、赤嶺ちゃんの拳を受け止めた。

 

「あなた誰?」

 

それは真っ白な衣装を身にまとった女の子だった。

 

「輝く未来を抱きしめて!!道を切り開く!光のプリキュア!キュアフュテュール!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

重力で動けなくなった僕ら。ひなたさんたちまで押しつぶされそうになっている。

するとエリオとキャロの二人がフリードに乗って駆けつけてきた。

 

「隊舎が……」

 

「オマエらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

エリオが怒鳴りながらストラードを構えて突っ込んでいくが、二号の砲撃を受け、倒れた。

 

『邪魔ね』

 

『ここを破壊してしまおうか。見る限りこいつらの拠り所みたいだからな』

 

『だったら潰す』

 

「駄目、私達の居場所を…壊さないでェ!!」

 

キャロの叫び声と共に、足元と背後にピンク色の魔法陣が展開された。

 

「『竜騎召喚・ヴォルテール』!!」

 

黒く巨大な龍が姿を現すが、四号が鉄の棒でヴォルテールを殴り倒した

 

『邪魔な龍だ』

 

キャロは涙を流しながら、動けずにいた。

 

『それじゃ五号』

 

『お、おう』

 

五号が隊舎を破壊しようと手をかざした。このまま僕らは見ているだけなのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思った瞬間、五号の胸を一本の刀が貫いた。

 

「何でこのタイミングなんだよ!救援ならもっと早く頼めばいいのに……」

 

「でも間に合ったのでしょうか」

 

「結果的には誰も死なずに済んだみたいですね」

 

『ご、が、がああ』

 

刀を引き抜くと五号の体は崩れ去った。もしかして御霊を破壊したのか?

 

『誰だお前?』

 

『あんたらみたいな奴らは知らないわよ』

 

そこにいたのは赤い色の衣装を身にまとった少女と紫色の衣装をまとった少女、そして一本の刀と赤い剣を持った男の子がいた。

 

「知らねぇのも無理もないよな。俺達は来たばっかりなんだから……名乗ってやるよ」

 

「「輝く未来を抱きしめて!!みんな大好き!愛のプリキュア!」」

 

「キュアマシェリ!」

 

「キュアアムール!」

 

「ナイトイェーガーズ・龍騎のミナト!」




うん、後悔はない


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53 未知なる世界の来訪者達

ミナトSIDE

 

ほんの少し前のこと、俺とえみるは気がつくと光りに包まれた世界に来ていた。そして目の前にはさっき依頼をしに来たフード姿の人物がいた。

 

「悪いわね。急にこんなところに連れてきて」

 

フードを取った姿は普通の女の子だったけど……俺は思いっきり胸ぐらをつかんだ

 

「悪いと思ってるならやるな!」

 

「ははは、胸ぐらをつかんでくるとは面白いね君は」

 

「ミナトさん……駄目ですよ。いきなり胸ぐらをつかんだりしたら……」

 

えみるに止められ、俺は手を離すと少女は笑みを浮かべていた。

 

「とりあえず自己紹介ね。私は天の神、まぁ神様ね」

 

「神様なのですか!?」

 

「神様って……まぁ神様だからこんな世界に連れてこれるってことか?」

 

「そういうこと。色々と説明すると、私はあなた達がいた世界とは違う世界の神……その世界では人々は神を怒らせ、滅びの道を歩むんだけど……」

 

「いや、いいよ。そういう説明は」

 

今、一番に知りたいのは俺達をここに連れてきた理由だ。一体何の目的で連れてきたんだ?

 

「そうね。説明しても理解できるかどうか怪しいしね」

 

「えみる、こいつ、殴っていいか?」

 

「だからミナトさん……」

 

何だか馬鹿にされてムカつく……村雨で切りたいけど神様だから効かなそうだしな……

 

「ある世界であるものたちが戦ってる。だけど敵の力は強大……対抗できる方法も封じられる中、別の方法を考えた」

 

「別の方法?」

 

「それは貴方よ。ミナト・ユウ。貴方は死ぬはずの運命を覆し、世界を救った。私が認める三人の勇者と同じように運命を変える力を持っている。だからこそ……力を借りたいのよ」

 

「力をか……」

 

「ミナトさん、やりましょう。ここはヒーローの出番なのです」

 

えみるは乗り気だけど……ちょっと不安なところがある

 

「今の俺が持ってる武器……村雨だけで何とか対抗できるとは思えないんだが、えみるも戦うにしたって……」

 

「そのために良いものを上げるし、あなた達だけで戦ってもらう気はないわ」

 

天の神が指を鳴らした瞬間、まばゆい光と共に見覚えのある二人が俺達の前に現れた。

 

「ここは……」

 

「あれ?何で……」

 

えみるは現れた人物を見て、涙を流した。そうだよな。また会うとしたらずっと未来まで待たないとな

 

「ルールー!?」

 

えみるはルールーに抱きついた。

 

「えみる……それにミナト……またこうして会えるなんて……」

 

「おと……おじいちゃん達も久しぶり」

 

ミア……またなんか気になることを言い掛けなかったか?

 

「これで戦力的に申し分ないでしょ。あとは……」

 

更に指を鳴らすと俺の目の前に一本の短剣が現れた。

 

「それは貴方が使っていたものを私が似せて作ったもの……ただし能力は同じよ。まぁそれは言うなれば神具って呼ぶべきね」

 

神様っていうのは色々と凄いな。俺は短剣を手にし

 

「また力を借りるぞ。レガオン」

 

これで準備万端って言うことだな

 

「早速で悪いけど、すぐに行ってもらうから……」

 

「あの一体何が……」

 

「事情は後で説明するから……」

 

俺達は天の神に導かれながら、戦いの場所へと向かうのであった。

 

「あぁそれと彼らに力を分け与えてくれない」

 

天の神が俺に渡したのは3つの光だった。なんだこれ?

 

「それは対抗できる力よ……発動の仕方は貴方たちが一番知っているはず」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向かったのは良いけど……本当にギリギリだったな。

 

『貴様ら……見覚えのない奴らだな』

 

『だけど五号を倒すなんてね』

 

俺達の前に仮面をつけた奴らが何か言ってるけど……

 

「似たような仮面をつけやがって……見分けつかないっていうことは雑魚戦闘員か何かか?」

 

『貴様……』

 

そっとアムールがマシェリの耳をふさいだ。俺は気にせず話を続けた。

 

「雑魚が調子に乗ってるなよ。おとなしくやられ役を演じてろよ。戦闘員雑魚」

 

『馬鹿にしてるわね……』

 

「馬鹿に?本当のことだろう……それとも雑魚以下のクソ野郎か?」

 

『貴様ァァァァァァァ!!』

 

棒を持った戦闘員が襲いかかってきたが、俺は村雨で攻撃を弾き、左腕を切り裂いた。

 

『ちっ!』

 

戦闘員は直ぐ様傷を修復し、棒を構えた。こいつ……

 

「毒が効かない……帝具人間みたいなものか……」

 

「そいつを倒すには……御霊と呼ばれるコアを破壊しないと駄目ですよ」

 

一人の男が俺の横に並び立った。その手には一本の刀を持っているけど……

 

「それじゃさっきのはコアを破壊したからか?」

 

「そうですね……力を貸しますよ」

 

「じゃあ頼むわ。マシェリ、アムールはけが人の方を頼んだぞ」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

『四号、面倒な相手よ。レリックは回収したのだから撤退するわよ』

 

『いや、こいつは俺達を愚弄した。撤退するならお前だけでもしていろ』

 

『はぁわかったわ』

 

戦闘員の一人が姿を消すと棒を持った奴が攻撃を仕掛けてきた。俺達は攻撃を防ぎ……

 

「お前、名前は?」

 

「神宮桜。桜でいいですよ」

 

「わかった。こいつには村雨が効かないとなると……こっちだな!」

 

俺は村雨を鞘に収め、レガオンを抜いた。そして叫んだ

 

「レガオン!奥の手!龍騎!」

 

真っ赤な鎧を身にまとった姿に変わった。久しぶりだなこれも……

 

「武器が鎧に……変わった武器を使ってますね」

 

「まぁな」

 

さて久しぶりの戦いだ。張り切っていくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

気がつくとリクトが悔しそうな顔をしていた。天の神はというと、笑みを浮かべていた。

 

「俺を倒すためにそこまでするのか!!」

 

「えぇそうよ。それにやり始めたのは自由な方よ。それに貴方の悔しそうな顔が見れて満足よ」

 

天の神はそう言って姿を消した。一体何があったんだ

 

「糞が……まぁいい。目的は達成したのだから戻るとするか……」

 

リクトはそのまま姿を消すのであった。

 

「くそ……すみません……空さん」

 

僕はそのまま倒れ込むのであった。リクトを倒す方法は一体どうすれば……

 

 

 

 

 

 

 

赤嶺SIDE

 

突然現れたキュアフュテュール。この子は一体何者なの?

 

「えっと貴方は?」

 

「魔導師……でも勇者でもない……」

 

なのはやフェイトも彼女のことを知らないみたいだ。するとフュテュールは……

 

「始めまして、えっと詳しい話はあとでお話します。そしてこの子は私が相手しますから」

 

フュテュールはパンチとキックを繰り出していく。私も防ぎながら、攻撃を仕掛けていくがそれでも彼女は……

 

「強いね。もしかして別の進化を遂げた勇者?」

 

「いいえ、私はプリキュアです」

 

「プリキュア?よく分からないけど可愛くって、かっこいいね。後輩ちゃんだったらものすごく喜ぶと思うよ」

 

「ありがとうございます」

 

「でも負けるつもりはないよ。私は愛する人のために戦ってるんだから!!勇者パンチ!!」

 

勇者パンチを繰り出し、フュテュールのガードを崩した瞬間、今度は勇者キックを繰り出す。必殺技を喰らえばどんなに強くても……

 

「いたた……でも頑張れる!」

 

「……効いてるよね?」

 

「効いてるよ。だけど私は頑張れるの……私を愛してくれている両親のために、友達のために……私はそう戦うように教えてもらえたから」

 

「誰かのために戦うのは良いことだね……」

 

「でもね。一番は愛する人のために戦うんじゃないの……愛する人と一緒に戦うことで奇跡が起きる。知ってた?」

 

「………知らないよ……そんなこと!!」

 

私は彼女に全力の勇者パンチを繰り出した。だけど彼女は私のパンチを受け止めた

 

「だったら教えてあげるね。ハアアアアアアア!!」

 

反撃のパンチを食らった私は、そのまま倒れ込み、更にバインドで縛られた。

 

「強い……」

 

「気がついたけど、その腰にある刀、使わないの?」

 

「えっと、これはとっても危険なもので……この人に対しては使ったら駄目だと思ったんです」

 

「そっか、ありがとうね。えっとフュテュールちゃん?」

 

「あ、本名はミアです」

 

「ミア……ありがとう。でもまだ戦いは終わってないから、急いで他のみんなの所に行かないと」

 

「あっ、多分ですけど大丈夫だと思いますよ。さっき天の神様から連絡があって、こっちのほうの敵は撤退したそうです。あと機動六課?というところには頼もしい人たちがいるので」

 

「「頼もしい人?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトSIDE

 

桜と協力して、戦闘員と戦うが……

 

「傷が直ぐに回復……おまけに急所を簡単に狙わしてくれないか」

 

「そうですね……ミナトくん、どうします?」

 

どうするっていわれても、他の奴らは傷ついて倒れてるし……マシェリとアムールも救護で頑張ってる。

 

『我々を馬鹿にしていたが、この程度か!!』

 

わかりやすい挑発だな……だったら……

 

「隙を作るから、止めは頼んだぞ。桜」

 

「えぇ」

 

「狂龍騎発動!!」

 

鎧の形を変え、俺は戦闘員にパンチのラッシュを繰り出していく。戦闘員が俺に集中している間に、桜が背後に回り込み、急所を狙おうとするが……

 

「硬い!」

 

『バカが!急所狙いなら装甲を固くすればいい話だ』

 

弾かれ、一旦距離を置く俺達。さて、面倒なことになったな

 

「桜、硬い相手に対してはどうするかわかるか?」

 

「えぇ同じ箇所を攻撃していけば、ほころびが出来ますね。ただ時間がかかりますよ」

 

「だな。だけどもう一つ……相手の装甲を破るくらいの威力を与えれば倒せるけどな」

 

「出来るんですか?」

 

「まぁな。マシェリ」

 

俺はマシェリを呼ぶとマシェリはこっちにやってきた。

 

「はい、ミナトさん」

 

「愛龍騎だ」

 

「わかり……えっ?その……」

 

「ん?」

 

「えっと……やるんですか?そのみんなが見てる前で……」

 

「いや、慣れてるんじゃ……」

 

「久しぶりですよ。それなのに……」

 

「緊急事態ということで……」

 

「それでも………あぁもう分かりました」

 

マシェリは俺にキスをした瞬間、鎧の色が真っ白に変わった。

 

「愛龍騎!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリシアSIDE

 

桜と戦っていた人がいきなり女の子とキスをしてるけど……

 

「ねぇあれって、真面目よね」

 

「うん、真面目みたいよ……」

 

「わっしー、ミノさん、凄いよ。キスで鎧が変わったよ。これはいっつんもよっくんにやるべきじゃ~」

 

「え、えぇ!?」

 

「もしかして樹ちゃんと夜空くんもキスで!?」

 

「樹ちゃんファイトよ」

 

「これは高嶋さんと空さんも……」

 

何だかツッコミが放棄されているけど、気にしないようにしよう。

 

「何というか……見せつけられている感じですね」

 

「何でキスで……」

 

「お、大人です」

 

「ヴィヴィオちゃんとルーテシアちゃんには早いね」

 

夕空ちゃんがヴィヴィオとルーテシアの目を塞いでいた。うん、正しいかも……

 

「メブ、何だか見ちゃ駄目なものを見たんだけど」

 

「真面目なのよね」

 

「戦闘中にいちゃつくのが真面目なのか?」

 

「ですがそういった戦い方かもしれませんわ」

 

というかどういった理由でキスをしているのかな?

 

「困惑しているみたいですが、あの姿は愛を受け取り愛を育んだ力……愛の力を秘めた姿です。愛の力は大きければ大きいほど力が増します。私とでも出来ますが、マシェリとのほうが一番力が上がっていますね」

 

「ようするにイチャイチャフォームってところでいいの?」

 

まぁなんでもいいか……

 

 

 

 

 

ミナトSIDE

 

『戦闘中にふざけるな!!これで終わらせる!』

 

「あぁ終わりだな……」

 

迫りくる戦闘員に対し、俺はゆっくりと拳を構え、解き放った瞬間、戦闘員の胸に穴が空き、崩れ去った。

 

『ば、馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁ』

 

「元が人間じゃないから……加減せずにやったけど……あの頃、加減せずに戦わなくってよかったかもしれないな」

 

戦闘員を倒して、とりあえず一旦戦いは終了か?さて……

 

「他の敵は?」

 

「わかりませんが……とりあえず連絡を待ちましょう」

 

「だな」

 

その後、連絡が入り敵は撤退したらしい。とりあえず俺達も事情とかを話さないとな




因みにキスしてフォームチェンジですが、これが本編では当たり前だったりします


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54 対抗する手段は愛?

空SIDE

 

目が覚めると見覚えのない天井だった。僕は何でベッドで眠っているんだ?

 

頑張って思い出すと……そうだった……

 

「陸都に負けた……いやリクトか……」

 

あのとき豹変した陸都に敗れて、あれからどれくらい経ったんだ?

ふっと気がつくと椅子に座りながら、ひなたは眠っていた。よく見てみるとひなたも所々処置した跡があった。これは……

 

「眠っていた間に何かあったな……」

 

「ん……んん、あれ?お兄ちゃん?」

 

「おはよう。ひなた」

 

「おはよう……ってお兄ちゃん!?」

 

目覚めたひなたは僕のことを見て、驚きを隠せないでいた

 

「寝坊ですよ……お兄ちゃん……」

 

「悪かったな。僕はどれくらい眠ってたんだ?」

 

「一週間です。お兄ちゃんは一週間眠り続けていました」

 

一週間もか……多分だけど切り札・改の後遺症みたいなものだろうな……

 

「一週間の間……何かあったのか?」

 

「えぇありました。色々と」

 

「お前のその怪我もその色々に入るのか?」

 

「そうですね……皆さんにお兄ちゃんが起きたことを伝える前に、この一週間で起きたことをお話します」

 

僕はひなたから一週間の間に起きた出来事について聞いた。

 

地上本部で行われた公開意見陳述会。そこに現れた陸都たち。陸都によって地上本部は半壊、死人が出るほどだった。陸都と戦った夜空は大怪我を負ったみたいだった。

 

「夜空のやつは?」

 

「怪我はシャマル先生が治してくれました。私達巫女の治癒能力は私達が怪我しているとどうにも治療できないみたいで……」

 

「そっか、まぁあと心配なのは……」

 

夜空の奴、落ち込んでなきゃいいけどな……

 

「本部襲撃の際、若葉ちゃんとシグナムさんたちは人型バーテックス二体と戦いましたが、かなり苦戦したみたいです」

 

人型バーテックス……そんなにか……

 

「スバルさんたちも星屑などと戦い、何とか被害を抑えたみたいですね」

 

更に話を聞くと機動六課に、三体の人型バーテックス、ゼストによって機動六課で回収したレリックを奪われたらしい。

なのはとフェイトの所には赤嶺が襲撃、今の二人は僕が思う限りでは、そうそう負けるような気がしないけど、赤嶺はその二人と互角に戦ったみたいらしい

 

「話を聞く限りじゃ、よくみんな生きてたな……」

 

「正直危ないところでしたが……ある人達のおかげで何とかなりました」

 

「ある人たち?」

 

「その一人は人型バーテックスを桜さんと一緒に戦って、二体撃退しました。もう一人は赤嶺さんを圧倒し、赤嶺さんを捕まえることが出来ました」

 

「何者だよ……そいつら」

 

「そうですね。会ってみた方がいいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋から出ると自分がいる場所がようやく理解できた。ここは聖王教会だったんだな。

ひなたに案内された部屋に入ると、はやて、なのは、フェイトの三人、夜空、桜、若葉が集まっていた。そしてその中に見覚えのない四人が混ざっていた。

 

「空さん、遅刻やな」

 

「寝坊したんだよ」

 

「良かった。何時も通りで」

 

「うん、本当に」

 

何というかいつもどおりみたいだな。

 

「空さん、すみません……僕……」

 

夜空は申し訳なさそうにしていたが、僕はデコピンを喰らわした。

 

「お互い一回負けただけだろ。次の戦いで勝てば良いんだよ」

 

「空さん……はい!」

 

やっぱり落ち込んでたか。

 

「空、目が覚めてよかった。友奈が心配してたぞ」

 

「後で謝らないとな」

 

「空、君に紹介したい人がいるんだ」

 

桜は見知らぬ四人の方を見た。こいつら、一体……

 

「ミナト・ユウだ」

 

「愛崎えみるです」

 

「ルールー・アムールです」

 

「ミアです」

 

「上里空だ」

 

お互いに自己紹介するけど、なんか一人、なのはと声が似てないか?

 

「彼らは以前カリムさんの予言で出てきた『未知なる世界からの来訪者』だよ」

 

「こいつらが……」

 

未知なる世界……もしかして陸都が使っていたありとあらゆるものを切り裂く能力とかの武器がある世界のか?

 

「あのふざけた天の神とかに無理やり連れてこられたんだよ」

 

ふざけた天の神?あいつ、ふざけてるようには思えないけど……

 

「まぁおかげで助かったんやけどね………それで今回の首謀者、上里陸都の事なんやけど、天の神が言うには、一番最初に作られたバーテックスが陸都の体を乗っ取っているらしいんや」

 

一番最初に作られたバーテックス……リクトの正体がそれなんだな

 

「奴の力は全てのバーテックスの他にも色んな力を扱えるみたいなの」

 

「正直勝てる方法は見つかってないんだ」

 

フェイトの言うとおり、リクトはかなりの強さだ。おまけに再生能力まで持っている……それに戦力である人型バーテックスも強敵だしな

 

「勝つ方法か……」

 

「それなら一つだけあるぞ」

 

ミナトがあるものを取り出した。それは白い光だった。これって……

 

「あの天の神が言うには、対抗できる力らしい」

 

「対抗できる力……」

 

「これを発現する方法は俺達が詳しいって言ってたけど……」

 

「あのもしかしてアレですよね」

 

「あれだな。この光に触れて何となくわかったけど……」

 

ミナトとえみるの言うアレって何だ?

 

「この力は……愛を受け取り、愛を育んだ結果、扱えるようになる力だ。発動できる人間は愛を育んだ人だけみたいだな」

 

「愛を育んだ……」

 

つまり恋人がいる人じゃないといけないってことか……だとしたら僕と夜空だけなのか?桜はまだ千景と付き合ってないし……

 

「僕と空さんですね」

 

「だな」

 

僕らは受け取ろうとすると、何故かミナトは渡そうとしなかった。

 

「まだ話の途中だからな。これを発動するためには鍵が必要だ」

 

「「鍵?」」

 

「その鍵は……お前らの恋人にキスをしてもらうことだ」

 

「「はああああああああああああああああああああああ!!?」」

 

何でキスしないと発動できない力なんだよ!?僕と夜空は驚きを隠せないでいた。

 

「まぁこの二人も戦いの最中にキスをしてましたから……」

 

「は、恥ずかしいのです」

 

「まぁ久しぶりだったからな」

 

ひなたとえみるは顔を赤らめる中、ミナトは平然とした顔をしていた。こいつ、どんだけだよ

 

するとはやてがあることを聞いてきた。

 

「因みに二人はキスはもうしたん?」

 

「あの僕と樹は付き合い始めたばっかりですし、デートもこの間が初めてで……」

 

「何というかタイミングが悪くてな……というかキスしていても、戦闘中に……」

 

「慣れろ」

 

「「なれるか!!」」

 

二人でツッコミを入れる中、はやてはニヤニヤしていた。

 

「まぁまぁミナト、二人はキスもまだみたいなんやから、いきなりキスをしないと駄目とかいうのはあかんよ」

 

「じゃあどうするんだ?」

 

「今は陸都たちの居場所を見つけるまで、みんなそれぞれ特訓をしている。ちょっとした準備期間や。だから……空さん、夜空さん、デートしてキスするんや」

 

「「はあああああああああああ!?」」

 

「因みに友奈さんと樹ちゃんには伝えてあるから、安心してな」

 

 

 

 

 



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55 交渉

ミナトSIDE

 

「ハアアアアアア!!」

 

「ハアアアアアア!!」

 

レガオンとレヴァンティンがぶつかり合い、互いに距離をとる俺とシグナム。

 

「ミナトと言ったか……強いな」

 

「シグナムだっけ?あんたもな」

 

現在陸都一派の居場所がわかるまでの間の準備期間、各々が鍛錬に励む中、俺はシグナムに模擬戦に誘われたのだった。

 

「模擬戦とは言え、お前の太刀筋からは全て殺気が感じる。そしてどれも相手を殺すほどに……」

 

「少し前までは暗殺者だったからな。模擬戦でも相手を殺すくらいじゃないとな」

 

「面白い男だ」

 

シグナムが笑みを浮かべる中、見学していたエリオの方を見た。

 

「どうだ?参考になったか?」

 

「い、いえ……その……」

 

「まぁ参考にならないよな。俺の戦い方はあくまで殺すための戦い方だからな」

 

「それでも……僕が強くなるための道が見えた気がします」

 

「そうか、とりあえず俺が教えられることは、確実に相手の急所を貫けだ」

 

「はい」

 

何というかこんなことを教えて良いものかどうか……俺自身、教える側になるのは慣れてないからな……

 

「ミナト、今回の戦い………勝てると思うか?」

 

シグナムがそんな事を聞いてきた。現状の戦力で戦いとなると……

 

「結構厳しいな。みんな、そう弱くはないけど、それ以上に敵が強すぎるからな……」

 

あの時戦った戦闘員の一人は隙を突き、もうひとりの方は挑発しまくっての桜とのコンビネーション+愛龍騎で勝てたけど、本気の相手となると……

 

「一対多人数となると誰かしら犠牲になるかもな」

 

「そうか……」

 

「まぁ戦力が多ければ何とか犠牲はなくせそうだけど……」

 

正直俺とえみるとルールーとミアの四人だけ呼ばれたのはきついな。メンバーの誰かしら呼んでくれれば良いものを……

 

ふっとある話を俺は思い出した。

 

「そういえば、なんとかエッティって奴に協力は頼めないのか?」

 

「スカリエッティにか?それは難しいだろう。確かに戦力が増えるのは良いが、協力してもらえるか……」

 

「そこら辺は俺に任せてもらっていいか?仲間に教わった方法を試すから」

 

俺はそう言って、シグナムとエリオの二人と別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

俺が訪れた場所は教会のある一室だった。本来の本拠地は壊されてしまい、一時的にここに仮の隊舎を置くことになった。

中に入るとそこにははやて、フェイト、なのはの三人がいた。

 

「ミナトさん、どうしたん?」

 

「何かあったの?」

 

「いや、ちょっと提案をな」

 

「提案?」

 

はやてたちが何のことか気になっていた。それにしても会った時から気になっていたけど、このなのはって奴の声、やっぱりルールーとあいつに似てるよな……というかバリアジャケットの格好も前にあいつがしていた格好に似てるし……

今はそこを気にするところじゃないな。

 

「今回の戦いに向けて、戦力を上げたほうが良いと思ってな」

 

「ミナトさんもそう思ってたんやね。もしかしてスカリエッティ一派に協力を?」

 

「そんなところだ」

 

「私達もそれは考えたんやけど……」

 

「頼んでも断られたよ」

 

もうすでに試した後か……

 

「陸都たちを倒すためとは言え、管理局に協力する義理はないって……」

 

「まぁ普通はそうだろうな」

 

こういう時、組織とかは真面目な頼み方をするな……だけど……

 

「俺にちょっと交渉させてくれないか?」

 

「「「はい?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカリエッティがいる独房まで来た俺。そこには例のスカリエッティがいた。

 

「やぁ君は誰だい?」

 

「俺はミナト・ユウ。異世界から来た人間だ」

 

「異世界ね……そんな君が私に何か用か?」

 

「分かってるんだろ。俺がここに来た理由は」

 

「そうだね。陸都たちを倒すために協力しろってことだね。はっきり言うが断る。機動六課の部隊長にも言ったが……」

 

「管理局という組織に協力する義理はないだろ」

 

「そうだ」

 

普通ならここで交渉は決裂なんだろうけど……俺はレガオンを抜き、スカリエッティの入っている檻を破壊し、首筋にレガオンを当てた。

 

「じゃあ、殺されたくなければ俺に協力しろ」

 

「脅しかね?悪いが脅されても管理局には……」

 

「あんたは管理局に協力する義理はないんだろ。だけど俺はその管理局の人間じゃない。ナイトイェーガーズだ」

 

「管理局じゃないから協力できるだろうってことかい?」

 

「あぁそれに……俺の持つ武器に興味はないか?これは魔法とかじゃない全く別の武器だ」

 

「異世界の武器か……確かに興味深いね」

 

「近くで見る分には協力するべきだと思うけどな」

 

取引材料としては良いものだと思った。スカリエッティは少し考え込み……

 

「いいだろう。君には協力しよう。それに魔導師の力を持った勇者たちがあの陸都を倒すところを見てみたいからな」

 

「交渉成立だな。とりあえずそっちの戦力、ナンバーズとやらを使わせてもらうぞ」

 

「あぁいいだろう……」

 

何というかやけにすんなりと交渉がうまくいったけど……何か裏があるのか?

 

「正直、君に興味が湧いたよ」

 

「あんた、マッドサイエンティストだったりするのか?」

 

「そう呼ばれていたりもするね」

 

「なんかそういう奴らに興味を持たれるな俺……」

 

まぁまだスカリエッティはまともそうだけど……知り合いのマッド二人に比べたら……

 

「そういえば彼女もここにいると聞いたが……」

 

「彼女?」

 

「赤嶺友奈だよ。彼女を捕縛したのだろう」

 

「あぁ、あいつなら俺の仲間が話してるな」

 

天の神から渡された残った光、渡すとしたら……



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56 協力ととある真実

赤嶺SIDE

 

聖王協会の病室にて保護された私。捕まった以上はもうこれ以上暴れることはしないようにしているけど……

 

「りっくん……私のことは気にしないでいいからね……」

 

一人、そう呟く中、誰かが扉をノックしてきた。

 

「どうぞ……あれ?私をボコボコにした子とその仲間でいいのかな?」

 

「ボコボコって……改めて自己紹介します。私はミアです」

 

「愛崎えみるです」

 

「ルールー・アムールです」

 

「三人で何の用?」

 

そう聞く私だけど、この三人が私を訪ねてきた理由はもう分かっている。何かしら情報を聞き出そうとしていることだ

 

「実は言うと……」

 

「お話に来ました」

 

えみると言う子は笑顔でそう言ってきた。お話……情報を聞き出すということかな?

 

「悪いけどりっくんの居場所を教えられないよ。私の目的はりっくんを助けることだから……その邪魔をさせない」

 

「こんな状態なのに……強気だね」

 

「ミアさん。ここは私が……」

 

「わかったよ……」

 

えみるは私の側に椅子を置き、座った。

 

「赤嶺さんはりっくんさんの事を助けたいんですよね」

 

「えぇそれが目的でいろんな世界を渡り歩いた。利用されるだけ利用して、怖くなったら処分するっていうやり方……りっくんにはこれ以上つらい思いはしてほしくないからね」

 

だから私は自分の手を汚し続けることを決めたんだから……

 

「赤嶺さんは大好きなんですね」

 

「……うん、好きだよ。りっくんのこと……」

 

「大好きな人のために頑張るっていう気持ちは私、よく分かります」

 

「まだ小学生なのにわかるの?」

 

「はい、私も大好きな人を助けるために頑張っていますから」

 

えっへんと胸を張るえみる。この子が言っていることは本当みたいだね

 

「よろしいでしょうか?」

 

「何?」

 

今度はルールーが話しかけてきた。

 

「あなた達の目的、それは上里陸都の体を蝕むバーテックスを解放することでいいのですか?」

 

「そうだよ。そのためにこの世界にあるレリックと聖王の揺り籠って言うものが必要なの。この間の破壊行為は奴が少しでも満足させるために……」

 

「どうやってそれを知ったんですか?」

 

「ん?彼だよ。りっくんを蝕むバーテックス。天の神が最初に作りあげたバーテックス。本来は十二星座型に組み込むはずだけど、天の神が力を注ぎこみすぎたせいで制御できなくなったから処分された。通称蛇遣い座のバーテックス『アスクレーピオス』だよ」

 

「蛇遣い座……」

 

「十二星座って……十三星座にならない?」

 

「ミアさん、もともとは十三星座だったんですよ。今は十二星座になっていますけど……」

 

「諸説はたくさんあるみたいですが……」

 

「まぁそれはどうでもいいでしょ」

 

りっくんの居場所は教えないけど、奴の情報は教えてもいいよね。やつに対しては早いところ出ていってほしいのだから

 

「つまり陸都の体から出る方法はそのアスクレーピオスが教えてくれたということですね」

 

「そうだよ。それが?」

 

「奇妙ではないでしょうか?」

 

ルールーが突然変なことを言い出してきた。奇妙って何が……

 

「アスクレーピオスは何故わざわざ自分を解放する方法を教えたのでしょうか?」

 

「それは……」

 

今言われてみればそうだ。何でわざわざ教えてくれたのだろうか?

 

「アスクレーピオスの本来の目的は……完全な姿に戻ることでは?そのために必要なものが……」

 

「レリックと聖王の揺り籠だっていうの?そんな事……」

 

だとしたら今頃、りっくんは……

 

私は騙されていたことに気が付き、涙を流していた。ただただりっくんを救うためにやってきたことが、理由されていたなんて……

 

「赤嶺さん、まだ何とかなりますよ」

 

「えみる……」

 

「助ければ良いんです。私達と力を合わせて」

 

「今更勇者たちや管理局の魔導師と一緒に……」

 

「いいえ、私達はプリキュアで、ミナトさんはナイトイェーガーズ。全然違うじゃないですか」

 

えみるの言葉を聞き、驚きを隠せないでいた。この子、本当に小学生なの?普通はこんなこと思いつかないんじゃ……

 

「私達に力を貸してください」

 

「………わかった。でもこれだけは約束して……りっくんを殺さないで……」

 

「はい、約束します」

 

えみるは笑顔でそう告げるのであった。本当に変わった女の子だ。

 

「因みにお聞きしたいことがもう一つ、彼の体に埋め込まれた鍵……それは一体どうやって入手したのですか?」

 

「あれは大赦の幹部がいつの間にかあったものを……多分、奴が自分を復活できるようにするために、転移したんじゃないのかな?」

 

「なるほど……」

 

「とりあえずよろしく……」

 

「よろしく……ミア」

 

私とミアは握手を交わし、一緒に戦うことを決めるのであった。そんな中、えみるがあることを聞いてきた。

 

「あのお聞きしたのですが……赤嶺さんとりっくんさんは……その恋人同士なんですか?」

 

「そうだよ。恋人同士だよ」

 

「それじゃキスは……」

 

えみる、年頃ね……

 

「さぁてどうかしら?何でキスの話?」

 

「ミナトがあなたに渡すべきだと言っていました。対抗できる力……その発動する鍵は愛の証……つまりキスです」

 

「なにそれ?」

 

何だか厄介な力みたいだけど……やって見る価値はあるかもしれない

 

「愛の力で勝つってことだね。乗ってみるよ。それに……そういえばりっくんのご先祖さまと子孫は?」

 

「えっとあの人達は……」

 

「デート中です」

 

デートって……こんなときに?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前……騙したのか?』

 

「普通なら教えると思っているのか?俺を解放する方法を……」

 

『僕と友奈は……それを信じて……』

 

「憎むのは勝手だが……もう遅い。レリックを使い、完全な姿に……揺り籠は天の神をすべて倒すための兵器へと作り変える……」

 

『くそ……』

 

「もう俺を倒すものは……誰もいない」

 

『いや、まだ彼らがいる。お前と戦ったあの二人が……』

 



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57 お互いの気持ち 夜空×樹

リクトに対抗できる力。それを発動するためにキスをしなければいけない。だから僕らはキスが出来るようにとはやてに言われたのだけど……

 

「………」

 

「あの、樹……」

 

「なんですか……」

 

樹がめちゃくちゃ怒ってる……これどうすればいいんだよ……

 

 

 

 

 

園子SIDE

 

「いっつん、めちゃくちゃ怒ってるね~」

 

「まぁ樹が怒ってる理由はわかるけど……」

 

私とフーミン先輩で尾行をしていたけど、いっつんが怒っている理由は……

 

『園子さん、そっちの様子はどうや?』

 

「はやちゃん、ちょっと厳しいかな?いっつん、怒ってるんよ~」

 

『あぁ、もしかして無茶したからかな?』

 

「それかもしれないね~フーミン先輩的には?」

 

「樹が怒ってる理由はそんなところね。何というか夜空は本気で無茶しまくりだから……というかこれって血筋なの?」

 

「上里の人間は無茶しやすいからね~」

 

『そっちでどうにか仲直りできそうには?』

 

「そうだね~」

 

「ここは見守るべきね。今回のことは二人がどうにかするしかないと思うし」

 

『そやね』

 

はやちゃんから通信が切れると、フーミン先輩は呆れた顔をしていた。

 

「何というか……はやては部隊長よね」

 

「そうだよ」

 

「尾行してて良いのかしら?」

 

「まぁはやちゃんは見守りたいからじゃないかな?」

 

「あとでリインたちに怒られなければいいけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

夜空SIDE

 

二人で歩いているだけとは、ずっと樹が口を利いてくれない……本当にどうすれば……

いや、どうすればいいのかは決まっている。

僕は前を歩く樹の腕を掴んだ

 

「……夜空さん?」

 

「樹……ごめん」

 

「……」

 

「僕は……お前に心配掛けたよな。死なないようにって約束したけど……それでもお前からしてみれば……心配でしょうがなかったよな……だからごめん……」

 

「………」

 

樹はずっと黙ったままだった。謝って済むことじゃないのは分かってるけど……

 

「夜空さん……謝らないでください」

 

「樹……」

 

樹は僕の手を掴み、強い目で僕のことを見つめた。

 

「夜空さんが傷だらけになりながらも頑張ってることは……心配ですけど、そうしないといけないことだって分かっています」

 

「樹……」

 

「ただ……私は自分に怒ってるんです」

 

「自分に?」

 

「夜空さんが頑張ってる。それもずっと一人で……私は夜空さんに守られているだけ……何もできない自分に怒っています。私はこれから夜空さんと一緒に戦いたいです。夜空さんを守りたい、力になりたい……」

 

樹は涙を流しながらそう告げた。そうか……僕は樹のことは何も知らなかったな……大好きな人なのに……

 

僕はそっと樹のことを抱きしめた。

 

「ありがとうな。樹」

 

「夜空さん……」

 

「一緒に戦ってくれ……お前は僕が守るから……お前は僕を守ってくれ……」

 

「はい」

 

互いの気持ちをしっかり伝えられてよかったかもしれない。何というかはやてはこのことを分かっていて、デートとか言い出したのか?

 

「あの……夜空さん」

 

「何だ?」

 

「はやてさんから聞いたんですけど……強くなるためにき、キスをしないと駄目って……」

 

「あ、うん」

 

いや、正直これで終わりじゃ駄目なのか?

 

「その……私とキスしてください」

 

「………樹、無理はしてないか?」

 

「してません……でも、恥ずかしいですけど……小学生のえみるちゃんが頑張っていたんですから……私も頑張らないと」

 

頑張るとこ間違ってる気がするけど……このまま嫌がっていたら駄目だよな

樹は目を閉じ、僕は樹にキスをした。

 

「ふあ……」

 

キスが終わると樹はそのまま座り込んでしまった。

 

「だ、大丈夫か?」

 

「何だかキスって……すごいですね……力が抜けちゃって……でも心がすごく暖かいです……」

 

「樹……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

園子SIDE

 

「キスしちゃったね~」

 

「何というか妹に先を越されたわ……全く夜空はちゃんと樹のことを大切にしなさいよね」

 

「フーミン先輩はぶれないね~」

 

『そっちどうや?』

 

「はやちゃん、こっちは成功みたいだよ」

 

『そうか……それは良かった……』

 

「そっちは?」

 

『えっと……普通にデートはしてたんだけど……何故か模擬戦に……』

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトSIDE

 

スカリエッティにレガオンを見せることになったけど……

 

「なるほど、この武器はオーバーテクノロジーだね」

 

「まぁ俺からしてみれば、そっちの技術がオーバーテクノロジーだと思うけど……」

 

「世界の違いというものだね……」

 

「そういえば聞きたかったことがあるのだけど……お前は何であいつらと話をしたかったんだ?」

 

いろいろと話しを聞かされる中、気になったことをスカリエッティに聞いてみた。スカリエッティは手を止め、俺の方を見た。

 

「彼らの勇者の力と魔法の力について調べてみたくってね」

 

「科学者としての血が騒いだんだな」

 

「それもあるが……気になるのは彼らに協力している天の神についてだ」

 

「まともな方がどうしたんだ?」

 

「リクトと戦うために協力しているみたいだが、気になったのは彼女がどこの時間軸で来たかだ」

 

「空とかの話だと全部終わった後だって……」

 

「なるほど……ならば例の開発は今回の件が終わってからでいいな」

 

「開発?」

 

「私もね。天の神と会ったのだよ。そして伝えられた……彼らが私と戦う際に、私が道を開くものを作って欲しいとね。最初は何の話かと思っていたが……」

 

「今回の戦いじゃなくって、その後の戦いの事を言ってるみたいだな……」

 

「まぁまずは今回の戦いに集中しようじゃないか」

 

 



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58 お互いの気持ち 空×友奈

「さて、全力で良いんだな」

 

「うん」

 

僕らは互いに勇者に変身し、向かい合っていた。何でこんな事になったのかは数十分前……

 

 

友奈とデートをしていたのだが、特に何事もなくただ普段どおりに話すだけだった。

 

「……空くん」

 

「ん?」

 

「そのはやてちゃんから聞いたよ」

 

もしかしてキスの件をか?だとしたら……

 

「何というか……こういうのは正直大切にしたいよな。お互い……その……」

 

初めてだからって言いたいけど、結構恥ずかしいな……

 

「うん、いざっていうときはその……ね」

 

何というかお互い一歩踏み出せないな。こういう時のためにミナトに参考に聞いたけど……

 

『戦いのときに咄嗟に必要だと思ってな……』

 

あいつのは参考にならない……というか咄嗟に必要になるってどういう時だったんだよ……

 

「ねぇ空くん、模擬戦やらない?」

 

「模擬戦?」

 

「うん、空くんが勝ったら……キスしていいよ」

 

「お前が勝ったら?」

 

「私のは勝ったら言うよ。あと全力でお願いね」

 

全力でか……仕方ないな。

僕らは隊舎に戻り、なのはから訓練場を貸してもらうことになった。

 

 

 

 

 

「それじゃ審判は私で」

 

「あぁ、でも何でみんな、観戦してるんだ?」

 

夜空、樹、ミナトたち、あと園子と風以外全員、見てるし……

 

「二人の全力の戦いをみんな、見たいんだよ」

 

「まぁそれはそれでいいけど……」

 

「行くよ!空くん」

 

「あぁ……」

 

僕は槍を構えた瞬間、なのはがスタートの合図をした。

合図と同時に友奈は動き出し、パンチを繰り出す。僕は槍で友奈の拳を防ぎ、距離をとった。

 

「重いな……強くなったな。友奈」

 

「大好きな人の教えがいいからだよ!」

 

恥ずかしいことを言いながら、蹴りを繰り出していく。僕の教えがいいって言うが……

 

「正直、彼女がここまで強くなってるのは本気で嬉しいよ」

 

僕の攻撃を友奈はギリギリで避けていく。

 

「えへへ、嬉しいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

「何というか……恥ずかしくないのですかね……」

 

「というかこれ、ただイチャイチャを見せつけられてるだけだよね……」

 

僕とアリシアは呆れながらそう言うと、ひなたさんは何故か笑っていた。

 

「お兄ちゃんたちらしい気がしますよ。面と向かって気持ちを伝えるのは恥ずかしいみたいですが、こうして戦ってというのが一番いいと思ってるんですよ」

 

「まぁ聞いてるほうが恥ずかしいけどな……」

 

「まぁ付き合いは短いけど、はっきりわかることはあるよ」

 

「……あの二人らしいやり方だって言うことは」

 

雪花さんも棗さんも空たちのことを理解し始めてるみたいですね

 

「とりあえず見届けましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

互いの攻撃を防ぎ、避けている。このままだと決着が付きそうにないな。ここは動くべきだな

 

「切り札発動!!妖狐!」

 

「切り札発動!!一目連!」

 

お互い切り札を発動した。友奈も今の状況を覆すために切り札を発動したんだな

 

「空くんのことはよく分かってるよ」

 

「大好きだからか?」

 

「うん」

 

「僕も大好きだ!」

 

友奈は拳の連打を、僕はアネモネに切り替えて魔力弾を放ち続ける。僕が放つ魔力弾を友奈は殴って相殺していく。

 

「行くよ!勇者!」

 

「フルテイル!」

 

「パンチ!」

 

「バスター!」

 

お互いの必殺技がぶつかり合った瞬間、爆発が起き、あたりが煙に包まれた。

 

「満開!!」

 

「切り札発動!酒呑童子!」

 

僕は満開を発動し、煙の中から飛び出すと友奈は酒呑童子に切り替わっていた。

 

「フルテイル!」

 

「全力全開!勇者!!」

 

「ブレイカー!!」

 

「パンチ!!」

 

僕のブレイカーを友奈はそのまま突っ込んでいく。ダメージ覚悟でやっているんだろうけど……どんだけだよ!?

 

ブレイカーを喰らってもなお、友奈は突っ込んでいき、僕の目の前に出てパンチを繰り出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パンチを食らった僕はそのまま地面に落ち、倒れるのであった。

 

「むちゃするな……友奈」

 

「空くんも無茶するよね」

 

お互い笑い合うのであった。こういった模擬戦はいいかもしれないな……

 

「そういえば友奈が勝ったときのは何なんだ?」

 

戦う前にそういった話になったけど……

 

「えっとね……」

 

友奈は恥ずかしそうにしながら、僕にキスをしてくれた。

 

「私が勝ったら、空くんとキスをするだよ」

 

「どっちみちキスするんだな……」

 

「えへへ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてSIDE

 

物陰に隠れながら、模擬戦の様子を見ていた私……ちゃんと任務完了やね

 

「さてと園子さんに報告を……」

 

「マスター見つけましたよ」

 

「サボりは駄目ですよ~はやてちゃん」

 

突然バインドで縛られた私、後ろを見るとリインフォースとリインの二人が怒った顔をしていた。

 

「えっと……堪忍……」

 

「さぁ戻りますよ」

 

「まだ仕事が溜まってるんですから」

 

「堪忍してぇぇぇ~」



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59 始まる戦い

空SIDE

 

諸々の準備が終わり、残ったのリクトの居場所だけになった。そんな中、僕らははやてに全員集まるように言われたのだが……

 

「はやて、何で仕事しながらみんなを集めたんだ?」

 

てっきり準備期間も終わったから、そろそろこっちから打って出ると言う話になるかと思ったんだけど……何故かリイン姉妹二人に見張られながら仕事をしているはやて……

 

「うぅ~」

 

「ほら、主。泣いてないで手を動かしてください」

 

「書類が終われば準備は完了ですよ。はやてちゃん」

 

「園子さん……詳細の方はあとで伝えるから……」

 

「はやちゃん……わかったよ~」

 

こいつら、何かしらやってたのか?まぁ気にしないほうがいいな。

 

 

 

 

それからしばらくしてから全員が集まり、はやてから今回、新しく加わった戦力について話が出た

 

「ミナトさんの交渉で、今回の戦いに協力してもらうことになったスカリエッティ一派と赤嶺さんや」

 

「はは、言っておくが君たち管理局には協力はする気はないぞ。私たちは彼に協力するのだからな」

 

「まぁ私も似たような感じだけどね」

 

何というか……大丈夫なのか?これ……

僕はミナトの方を見た。ミナトは言うと……

 

「まぁ俺たちには協力するから大丈夫だと思うぞ」

 

ちょっと心配だけど……戦力が大いに越したことないな

 

「それで赤嶺さん、リクトの居場所は?」

 

「さぁ?正直言うと私も何処にいるのかわからないんだよね……」

 

「多分だが奴は聖王の揺り籠の封印を解いている。執拗に聖王の揺り籠について聞いてきたからね。それに居場所を探すよりも……」

 

スカリエッティが何かをいいかけた瞬間、警報音が鳴り響いた。

 

「シャーリー!?どうしたんや?」

 

「隊長!?街上空に突然巨大な物体が……あれは……円盤?」

 

「どうやら来たみたいだね」

 

スカリエッティが笑みを浮かべる中、はやては全員に指示を出した。

 

「全員、出撃や!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてそろそろ始めようか……手始めにここら一体を破壊させてもらう」

 

『アスク様。どうやら邪魔者が来たみたいです』

 

『ありゃ戦艦か?』

 

『情報だとアースラっていう古い艦を出してきたみたいね』

 

「そうか……ではまずは邪魔な奴らを倒してしまおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースラで巨大な円盤の前に出た僕ら。にしてもアースラって解体されるはずだったものをよく使えるようにしたな……

 

「敵円盤よりなにか発射されてきます!あれは……」

 

「星屑やね……星屑の相手はクロノくんたちが率いる部隊が何とかしてくれるはずや……アースラ!敵機に突撃や!」

 

「突撃って……過激なことをよく思いつくな……いや、はやてらしいけど……」

 

アースラのスピードが上がり、円盤へと突っ込んでいき、アースラが円盤に突き刺さった。

 

「全員出撃!」

 

 

 

 

 

 

 

みんなで円盤の中に入り、警戒している中……

 

「敵の姿が見当たらないね……」

 

「出た瞬間に現れると思ったんだけど……」

 

なのはとフェイトの二人の言うとおり、まるでここに僕らが来ることを分かっていた感じだな。

 

「先へ進んだほうが……」

 

僕がそう告げた瞬間、どこからともなくまばゆい光があたりを包み込み、気がつくとその場には僕、夜空、友奈、樹、赤嶺の五人しか残された。

 

「みんなは!?」

 

「どこか別の場所に……」

 

「空くん、奥の扉が勝手に開いてくよ……」

 

「罠でしょうか?」

 

「ううん、罠って言うより……邪魔者を排除した感じだね……」

 

とりあえず僕らは奥へと進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜SIDE

 

気がつくと僕、友奈、風、しずく、園子、珠子、千景さん、雀、スバル、ギンガ、トーレ、オットー、ウェンディ、ディード、ノーヴェが闘技場みたいな場所に連れてこられていた。

 

「ここは……」

 

「もしかして敵のお誘いってことかな~」

 

「だとすれば……この場にいないメンバーも……」

 

トーレがそういう中、僕達の前に鉄扇を持った人型バーテックスが姿を見せた。

 

『ようこそ。ここがあなた達の戦いの舞台……そして死に場所』

 

「物騒なことをはっきり言うわね……」

 

「死に場所って……メブたちもいないのに~」

 

「おいおい、お前の死に場所じゃねぇのか?」

 

「シズクの言うとおりだな。何も私らの死に場所じゃないよな!」

 

『面白い子達………簡単に死なないようにね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはSIDE

 

広い場所に連れてこられたのは、私、ティアナ、東郷さん、杏さん、夕海子ちゃん、キャロ、ルーテシア、ディエチ、セイン、チンク、アリシアちゃん、雪花さんだけだった。

 

「このメンバー……いい感じに分けられた感じなのかな?」

 

「射撃、補助、隠密組って感じだね」

 

「ということは……私達の相手は……」

 

雪花さんがあたりを見渡すとどこからともなく声が聞こえてきた。

 

『ようこそ。私の処刑場へ。私は二号。あなた達をスナイプしてあげるわ』

 

「面倒相手ってことだね。でもこっちはただやられるわけじゃないけどね」

 

アリシアちゃんが笑みを浮かべるのであった。まずは……敵の居場所を見つけないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトSIDE

 

どこか和を思わせるような場所に連れてこられた俺、マシェリ、アムール、ミア、若葉、夏凜、芽吹、棗、ゼスト、セッテ、アギト、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、銀、はやて、ダブルリイン、歌野。

そしてその前には大型の太刀を持った人型がいた。

 

「来たみたいだな。さぁ始めよう」

 

「雑魚戦闘員……ってわけじゃないな。お前が戦闘員のリーダー格か?」

 

「一号だ。さぁ殺し合おうか」

 

「いいぜ。やろうか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スカリエッティSIDE

 

突然としてレーダーから侵入組の姿が消えた。

 

「どうやら全員転移させられたみたいだね」

 

「ドクター、どうします?」

 

「居場所の確認だけでもしますか?」

 

「そっちは管理局がやっているが……」

 

ウーノ、クアットロを手伝わせてもいいが……さてどうしたものか……

 

「あららお嬢様。巫女三人と避難していたほうがいいんじゃないの?」

 

ドゥーエが聖王のクローン……ヴィヴィオを連れてきた。

 

「ドクター、ママたちは?」

 

「現在見失っている……我々が出来ることは……」

 

「祈ることだけですね」

 

ヴィヴィオを追ってきたのか巫女三人が司令室にやってきた。祈ることだけか……

 

「……ママ」

 

ヴィヴィオが心配そうにしているが、現状出来ることは祈るだけ……彼女の力を目覚めさせればいいが……

 

そう考えた瞬間、彼女の持つ白い鍵が輝き出した。

 

「これは……」

 

「お守りが……」

 

この鍵……聞いた限りでは天の神から授かったものだと……だとすれば……

 

「ヴィヴィオと言ったかな?母親の力にならないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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60 桜の怒り、思い

桜SIDE

 

三号と戦う僕らだけど、友奈、スバル、ノーヴェ、ギンガのパンチを三号は鉄扇で受け止めていた。

 

『いいパンチだけど……私には届かない』

 

「固い……」

 

「弱点があるのは分かってるのに……」

 

「知っていても攻撃が通らない以上は……」

 

「だったら!通るまでやるだけだ!!」

 

「そうね!!」

 

シズクと風の二人が攻撃を繰り出すが、三号は鉄扇で攻撃を弾いていく。だけど後ろに回り込んだトーレ、オットー、ウェンディ、ディーの四人が攻撃を仕掛ける

 

『後ろから来るのは分かってる!!』

 

鉄扇を閉じ、仕掛けてきた四人を一瞬の内に吹き飛ばしていく

 

『悪いけどあんたたちの仲間が倒した四号、五号とは比べないでほしい……それ以上に強いんだから……』

 

三号は鉄扇を仰ぎながらそう告げる。

 

「や、やばいよ~結構やばい奴引いたかも~」

 

「やばくても……戦わないとね。よっくんたち……みんなの所に行かないと……」

 

「園子!よく言った!!」

 

「後ろからの攻撃を読むというなら……七人同時の攻撃はどうかしら?切り札発動!!」

 

千景さんが切り札を発動し、七人に別れた。千景さんは七人同時に攻撃を仕掛ける

 

『まずい……何ていうと思ったの』

 

三号が鉄扇を広げた瞬間、一瞬で千景さんたちを切り裂き、その一人の胸から血が吹き出した。

 

「つぅ!?」

 

『まず一人……』

 

「まだ……よ」

 

千景さんは血を流しながらも三号に組み付いた。

 

『抑え込んでどうするつもり?』

 

「土居さん!!」

 

「千景……悪い!!」

 

珠子が切り札を発動し、炎を纏った一撃を三号へと放った。まさか千景さんは……自分を……

 

「千景さん!!」

 

僕が叫んだ瞬間、攻撃が三号に当たり、黒い煙が周辺を包み込んだ。

 

煙が晴れていくとそこにはボロボロの千景さんが倒れ、三号は傷を再生していく。

 

『ソレをさけようとしていたみたいだけど、そのおかげで私を倒すことはできなかったわね……ソレは無駄死にってこと……』

 

三号が言いかけた瞬間、僕は三号の腕を切り裂いた。

 

『容赦ない……って感じね』

 

「千景さんのことをソレって呼ばないでほしいですね……」

 

『あら、あなた……彼氏か何か?』

 

「いや、まだ友達だけど……僕は彼女のことが大好きです……だから好きな人を侮辱するやつは許さない」

 

「桜教官……なんか怖い……」

 

雀がそう言うが、これが本当の僕らしい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前

 

「どうですか?」

 

ミナトと模擬戦をやっているときのことだった。

 

「……お前の刀って……何なんだ?」

 

「これは言うなれば妖刀みたいなものですよ……常識では計り知れない力を宿した刀……それを元に僕はこの守人システムを作り上げました」

 

「そうか……」

 

ミナトは不思議そうな顔をしていた。一体どうしたんだ?

 

「何だか感じ的には……魔法みたいなものが宿ったものだと思ってたんだけど……もっと違う感じがしてな」

 

「違う感じ?」

 

「言うなればレガオンみたいなものだな」

 

ミナトが持っている短剣……天の神が以前使っていた帝具を似せて作ったもの……神具だと聞いているが……僕の持つ桔梗櫻も似たような力を?

 

「あとやっていて思ったんだけど……お前……優しそうに見えて太刀筋からかなりの殺気が見え隠れしてるな」

 

「殺気……」

 

「気がついてないみたいだけど、お前の太刀筋からは確実に相手を殺すという殺気を感じる。まぁ普通の奴には感じ取れないけどな」

 

「……そうですか」

 

なんとも言えない気持ちになった。ミナトは暗殺者だったみたいだからそういうのには敏感みたいだけど……

 

「もしもお前が怒りのまま戦うとなると……凄いことになりそうだな」

 

「一応覚えておきます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今、僕は本気で怒っている。大切な人を侮辱し傷つけたバーテックスを許せない

 

「ハアアアアア!!」

 

斬撃を繰り出していき、三号の右腕を切り落とした。だが三号は両腕を再生していく

 

『太刀筋が変わったみたいね。だけど知っているわよね。御霊を破壊しなければ殺すことができないって……』

 

三号の体を切り刻んでいくが、すぐに再生していく。怒りのまま切り続けても……こいつを倒すことができない……

 

『もう終わり?それじゃそろそろトドメでも……』

 

三号が鉄扇を振り上げた。ただ怒りのまま切り刻んだ僕には避ける体力が残っていない……だけど……このまま切られた瞬間、三号の体を押さえつけ、僕ごと誰かが攻撃をすれば……

 

「桜!!」

 

鉄扇が振り落とされる寸前、千景さんの声が聞こえ、僕は咄嗟に桔梗櫻を構え、三号の胸に突き刺した。

 

『ぐうう……こいつ……』

 

「貫いた感触……御霊は破壊できたみたいですね……」

 

『御霊を破壊した所で……お前を切り裂く力は……』

 

「いいえ、これで終わりです」

 

刀を引き抜いた瞬間、三号の体が炎に包まれていく。ミナトが言っていたことが理解できた。

 

「この刀は昔、偶然に近い確率で完成した……僕らの世界の帝具と同じようなものですね。ただ今は神具と言うべきだけど……」

 

鞘に収めた瞬間、黒焦げになりながらもまだ動き続ける三号。

 

『まだ御霊は……』

 

「終わりですよ」

 

「ディバインバスター!!」

 

「勇者パンチ!!」

 

スバルと友奈の二人の攻撃を食らった三号は塵となって消えていった。

 

僕は珠子に支えられている千景さんのそばに寄った。

 

「大丈夫ですか?千景さん」

 

「……あなたの方こそ」

 

「僕は大丈夫ですよ」

 

僕は千景さんをお姫様抱っこすると園子さんが興奮していた。

 

「お姫様抱っこだ~ちーちゃん、よかったね~」

 

「ちょ、ちょっとやめなさい……」

 

「やめませんよ……だって好きな人の頼みでもやめるつもりはないですから」

 

「好きな人って……」

 

「千景さん、好きです。僕と結婚してくれませんか?」

 

「え、えっと……はあああああ!?」

 

「フーミン先輩、もういろいろと段階を乗り越えてるよ!?」

 

「何というか……戦いの最中だっていうのに……」

 

みんなに呆れられながら、僕らはこの場所から抜け出していくのであった




分かる人だけにはわかることですが……自分のゆゆゆシリーズに登場する神宮家の人間は、どんな場面でも告白したり、やらかしたりしています


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61 お守りの白い鍵

なのはSIDE

 

ティアナ、東郷さん、杏さん、夕海子ちゃん、キャロ、ルーテシア、ディエチ、セイン、チンク、アリシアちゃん、雪花さんで周りを警戒していくが、ティアナと杏さんの二人が突然攻撃を食らった。

 

「二人共!?」

 

「大丈夫です……」

 

「見えない砲撃……ここまで厄介だなんて……」

 

ティアナと杏さんの二人がすぐに立ち上がり、警戒するが……

 

「見えない攻撃って……ここまで厄介だなんてね」

 

さっきから私を含めた全員が二号の攻撃を喰らっている。二号を見つけ出さないといけないが、居場所がわからないでいる

 

「アリシアちゃん」

 

「補助魔法で何とかみんなのダメージを抑えてるけど……長くは持たないよ……」

 

どうする……どうすれば相手の居場所がわかる……考えろ。考えないと……

 

 

 

 

 

 

 

「ん?敵の居場所を知る方法?」

 

「はい」

 

これは十年前、空さんたちの世界に訪れた時、興味本位で空さんに聞いてみたことがあった。それは遠く離れて攻撃する相手の居場所を割り出すことだ

 

「ようするにスナイパーの動きを予測するっていうことだろ。いろいろと方法があるけど……」

 

「例えば?」

 

「そうだな。杏の切り札みたいに雪を降らして、相手の足跡をたどるとか……」

 

確かに杏さんの切り札はそういった相手を割り出すことが出来るけど……

 

「全本位の魔法とか……あとは結構難しいし、下手すればそのままやられることはあるけど……」

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。思い出した。空さんが教えてくれたこと。それは……

私は静かに前へと出た。

 

「なのはさん?」

 

「なのはちゃん?何を?」

 

「みんな、動かないで……敵の居場所は私が!!」

 

私はアクセルシューターを展開させた瞬間、どこからともなく攻撃を食らった。その瞬間……

 

「シュート!!」

 

敵の攻撃してきた位置。それは攻撃を食らった場所から考えれば!

アクセルシューターを発射し、二号へと向かって放った。

 

『ちっ!?』

 

掠めたのか遠くの方から声が聞こえてきた。もう別の場所へと逃げたかもしれないけど……ある程度の位置を絞り込み……

 

「ブラスターシステム!!リミット1!リリース!!ブラストーシュート!!」

 

ブラスターシステム。これは言うなれば空さんたちが使う切り札に近い、使用者の限界を超えた強化。長時間の使用はできないし、更には負担が大きいけど……相手が相手だ。全て出しきらないと……

 

『こんな砲撃!!』

 

砲撃が抑え込まれた。これは二号も砲撃を撃って相殺しようとしている。

 

「杏さん……魔砲を撃ち終えた後……お願いします」

 

「なのはちゃん……分かりました」

 

杏さんはみんなに二号が動けなくなった瞬間、全員で集中攻撃をするように指示を出した。

 

「ブラスター2!!」

 

更に限界を超え、出力を上げた。だけど二号の砲撃も出力が上がってきた。

 

『こんな魔砲なんて……』

 

「私は負けない……みんなと一緒に帰るために!!この戦いに勝つ!!」

 

『ぐ、ぐううううう!!?』

 

二号の砲撃を相殺し、私は膝をついた瞬間、杏さんたちが追撃を放った。

 

「当たった?」

 

「いんや、手応えがないね……」

 

雪花さんがそう告げた瞬間、私の後ろから声が聞こえた。

 

『悪いけど……私の能力は見えない砲撃だけじゃないのよね。相手に居場所を特定されないように……一瞬で移動できるのよ……だから』

 

寸前の所で私の背後に回り込んだって言うの……杏さんやみんなが叫ぶ中、私はあることを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ママ、この鍵何?」

 

ある日、ヴィヴィオが私が天の神からもらった白い鍵のことを聞いてきた。

 

「これ?ある人にもらったの。レイジングハートに使えば何かしらの力が発揮できるって聞いたけど……」

 

前に試したけど、全く変化がなかった。一体どうすれば使えるのかわからないけど……

 

ヴィヴィオが目をキラキラさせて見ている。

 

「ヴィヴィオにあげるね」

 

「いいの?」

 

「うん、お守り。きっとヴィヴィオのことを守ってくれるから」

 

「う~ん」

 

何故か嫌そうな顔をしているヴィヴィオ。どうしてだろう?嬉しくないのかな?

 

「ヴィヴィオだけじゃなくってママたちのことも守りたい。駄目かな?」

 

本当にヴィヴィオはいい子だな~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然ガラスが割れる音が聞こえた瞬間、誰かに殴られた。金髪のサイドテール、オッドアイの女性……どことなくヴィヴィオに似ている

 

「ママ。おまたせ」

 

「ヴィヴィオ?その姿は……」

 

『聞こえているか?潜入部隊』

 

レイジングハートからスカリエッティの声が聞こえてきた。もしかしてヴィヴィオをこんな姿にしたのは……

 

『誤解しているみたいだが、彼女の姿は白い鍵の力だよ。この世界と勇者たちの世界を繋ぐだけではなく、適応者……誰よりも守りたいと願っているものに力を与えるものみたいだね。そして今の彼女は魔導師であり勇者でもある存在だ』

 

「ヴィヴィオが……」

 

「ドクターがね。教えてくれたの。私は大昔の聖王のクローンだって言うこと……もしかしたらドクターに利用されて、ママと戦うことになっていたかもしれないけど……今は違うよ。今はママを守るために戦う!」

 

「ヴィヴィオ……」

 

『ごちゃごちゃと……一人戦力が増えた所で……』

 

『あぁそうそう。話している内にもう決着は付いてるみたいだよ』

 

スカリエッティがそう告げた瞬間、二号の胸を一発の槍が貫いた。

 

「ナイスだよ。アリシア」

 

「いろいろと話している内に御霊の場所をしっかり調べ終わってるからね

……ヴィヴィオ。ナイスだったよ」

 

「はい、アリシアさん」

 

『くっ、まさか……負けるなんてね……だけどあなた達の敗北は決まってる。アスク様には……』

 

「勝てるよ。空さんたちならきっと」



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62 その一撃に……

ミナトSIDE

 

俺、ミア、若葉、夏凜、芽吹、棗、ゼスト、セッテ、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、銀、歌野、エリオで一号へと攻撃を仕掛けるが、一号は太刀で攻撃を防ぎ、一振りで俺たちを吹き飛ばしていく。

 

マシェリ、アムール、はやて、ダブルリインで背後から攻撃を仕掛けるが、一瞬の内に五人を吹き飛ばした。

 

「リーダー格だけあって、強いな」

 

「お前的にはどれくらいの強さだ?」

 

シグナムがそう聞いてくるが、自分が今まで戦った相手と比べるとなると……

 

「上の下くらいだな。上の上はドs将軍だけど……」

 

とはいえ、こいつの強さはかなり厄介だな……一瞬の隙を狙って御霊を破壊するとなると……

 

「面倒な相手だ」

 

『悪いが俺は他の奴らとは違う……油断しているとお前たちはすぐに全滅だ』

 

太刀を構えながらそう告げる一号。さてどうしたものか……愛龍騎になって一気に勝負を決めたい所だけど、それでも倒しきれるかどうか……

 

『そちらが来ないなら……こちらから!!』

 

一号が接近してきた瞬間、若葉、夏凜、芽吹の三人が斬撃を防いだ

 

「重い!?」

 

「おまけにこっちの武器が……」

 

「一撃一撃の威力が強くても……」

 

三人が抑え込んでいる内にシグナム、棗、ゼスト、セッテ、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、銀、歌野、エリオが同時に攻撃を仕掛けるが

 

『甘い!!』

 

一号の体から黒い柱が伸びた瞬間、攻撃を仕掛けた全員が吹き飛ばされる。

 

「それだったら!!ディアボリックエミッション!!」

 

巨大な魔砲が一号に迫ってきたが、一号は大きく太刀を振った瞬間、魔砲が真っ二つに切り裂かれた。

 

『その程度か……残念だよ』

 

「ミナト、どうします?」

 

「やっぱり愛龍騎で……」

 

マシェリが心配そうにする中、俺は狂龍騎から元の姿に戻った。

 

『降参か?』

 

「いや、お前相手なら……レガオンを使うよりもこっちを使ったほうがいいな」

 

俺はレガオンを鞘に収め、村雨を抜いた。その瞬間、体中に痣が浮かびあ上がり、更には白いオーラが全身を包み込んだ。

 

「奥の手!役小角+愛の奇跡!!」

 

俺のもう一つの奥の手。これは強大な敵との戦いで一度っきりしか使えないはずだった。使えたとしても残った残滓を使うしかなかったけど……

 

「神具となったおかげで奇跡がもう一度起こせたな」

 

『奇跡などに頼るなんてな!!』

 

一号の斬撃を俺は片手で受け止めた。その場にいた全員がそれに驚いていたが……

 

「マシェリとの愛は無限なんだよ!!」

 

太刀を持った左腕を切り落とす。だが一号は太刀と共にすぐさま再生し始めた。

 

『無限などと言っているが……果たしてその状態にいられるのはどれくらいかな?』

 

こいつ、愛の奇跡が時間制限付きだっていうのを理解していやがる。だけどそれでも……

 

「愛の奇跡が勝つか、お前が勝つか……勝負だ!!」

 

互いに全力の斬撃を繰り出していくが、一号は全く引かず、俺も引かなかった。

このままだと……いい加減気がついてほしいものだな。俺はある人物の方を見た。

 

『よそ見をしている場合か!!』

 

一号の太刀が俺の腹を貫いた。これで終わりだけど……今の俺にはある程度の再生能力が備わっている。だから俺は一号の腕を掴んだ

 

『腕を掴んだ所で!!』

 

「これでいい」

 

『何?』

 

「一瞬でもお前の動きを止めることが出来れば……あとは」

 

俺が笑みを浮かべた瞬間、一号の胸をエリオのデバイス『ストラーダ』が貫いた。

 

『がああっ!?』

 

「よく気がついたな。俺のサインに」

 

「はい……きっとミナトさんならこうしてほしいと思ったんです」

 

「ナイスだ。エリオ。そして……終わりだな。一号!!」

 

『まだだ。まだ終わりには……』

 

一号が苦しみもがく中、俺は村雨で一号を真っ二つに切り裂いた。

 

「葬る!!」

 

一号はそのまま崩れ去っていき、消滅するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

夜空たちと奥へと進んでいくとそこにはリクトの……いやアスクが玉座に座って待ち構えていた。

 

「来たか」

 

「りっくんは?」

 

「奴はもう既にな……これで完全に奴が目をさますことはない」

 

アスクが笑みを浮かべ、赤嶺が悔しそうにする中、友奈が赤嶺の手を握った。

 

「大丈夫。まだ本当に消えたわけじゃない」

 

「……本当に諦めないね。先輩は」

 

「結城ちゃん曰く『なるべく諦めない』だからね」

 

「そうです。まだ助けることができます」

 

「それじゃ例の作戦をやるか」

 

「だな」

 

僕らは武器を構えた瞬間、アスクは立ち上がった。

 

「諦めないか……ならば諦めさせてやろうか」

 

「出来るものなら……やってみろ!!」

 

アスクが動き出すと共に僕らも動き出すのであった。これがアスクとの最後の戦いだ。

 

 



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63 愛の力 奇跡起こす

空SIDE

 

「サジタリウス!!」

 

無数の矢が降り注いでくる中、僕と夜空の二人で魔力弾を発射し、相殺していく。

 

「「勇者!!パンチ!!」」

 

友奈と赤嶺の二人が同時にパンチを繰り出すが、アスクは両手を広げて、キャンサーの盾を召喚して防ぐ。

 

「動きを封じれば……」

 

樹がワイヤーでアスクを縛り上げようとするが、アスクは地面に潜り込み、樹の後ろに回り込んだ

 

「ヴァルゴ!!」

 

後ろに回り込んでミサイルを発射しようとするが、寸前の所で夜空が魔砲を発射し、ミサイルを打ち消す

 

「よく俺の動きについて来れるようになったな」

 

「一度戦ったんだ。対策くらいはできる」

 

「空さんのおかげですね」

 

一度戦って、何となくだけど動きが読めるようになった。あとは一瞬の隙を付けば……

 

「なるほど。流石は宿主の先祖と言うべきだが……だが!!」

 

アスクは十二の光を一つに集め、一本の剣を生み出した。

 

「十二のバーテックスの攻撃を全て受け止められるかな?」

 

剣から放たれた十二色の魔砲が僕ら目掛けて襲いかかってきた。僕と夜空は前に出て障壁を貼り、友奈と樹の二人は僕らを後ろから支えた。

 

「たかがその程度で攻撃を防げると思っているのか?」

 

アスクは笑みを浮かべるが、赤嶺がアスクの背後に回り込み、アスクを抑え込もうとするが……

 

「お前が動くことは予測できている!!」

 

一瞬の内にアスクの姿が消え、赤嶺の背後に回り込み、赤嶺を地面に目掛けて蹴り飛ばした。

 

「うぐっ!?」

 

「俺をどうにか出来ると思っているなら……諦めろ!!お前たちはこのまま俺の支配する世界への礎となれ!!レオ!!」

 

巨大な炎の玉が生み出されていく中、僕はアネモネを握りしめた。

 

「………夜空!」

 

「はい!」

 

僕は黒狐を発動し、炎の玉を魔砲で相殺していく中、アスクは二発目を発射した。

普通なら一発目を相殺したら、僕らは二発目で焼き殺されてしまうが……

 

「大獄丸!!」

 

夜空が満開を発動し、魔砲で二発目を相殺した。

 

「コンビネーションで上手く相殺したつもりだが……」

 

三発目を放とうとした瞬間、アスクの体がワイヤーで縛り上げられた。縛り上げているのはカートリッジシステムで満開を発動し、神秘的な衣装に身を包んだ樹だった。

無数のワイヤーでアスクの動きを封じていくが、アスクは無理やり破ろうとしている

 

「この程度で!!」

 

「切り札発動!!酒呑童子!!」

 

友奈が酒天童子を発動し、拳の連打でアスクを封じていく。このままやっていけば倒せるが……

 

「今だよ!!赤嶺ちゃん!」

 

「ありがとう……先輩」

 

拳の連打を喰らい、一瞬動けなくなった所に赤嶺がアスクに近づき……

 

「可能性にかけてみる……りっくん、戻ってきて」

 

キスをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸都SIDE

 

深い、深い暗闇の中、僕はただそこにいるだけだった。もう僕の全てはアスクレーピオスに支配されてしまい、もう元に戻ることはできない。

 

そう思っていた中、一筋の光が指した。僕はその光に触れた瞬間、ある映像が映し出された。

 

『始めまして、赤嶺友奈です』

 

『上里陸都……』

 

『知ってる。大赦の中でトップの家系だよね』

 

『トップの家系だからって、僕は戦う力もない。ただの人だよ』

 

『……何だか悲しそうに言うね』

 

『だって、君みたいに可愛い子が戦っているのに、僕は……』

 

『かわいいって……恥ずかしいことをよく言えるね』

 

この記憶は……初めて友奈と出会った記憶……

 

更にもう一筋の光が指した。僕はそれに触れると今度は……

 

『大赦で見つかった勇者の力ではなく、天の神に近い力を得ることが出来る鍵……』

 

『陸都くんは……それをどうするの?』

 

『もう友奈たちだけが戦っているところ見ていたくはない。だから僕はこの鍵を……』

 

これは僕が黒い鍵を植え付ける前の記憶……

 

『ひどいよね。さんざん利用して……陸都くんを殺そうとするなんて……』

 

『友奈、お前は……もう僕に関わらなくていい。これは……』

 

『陸都くん……私はね。誰かのために戦おうとするあなたのことが……大好きだよ。私は大好きな人が苦しんでいるのを放っておけない……』

 

『友奈……』

 

『黒い鍵を外して……幸せになろう』

 

『……辛い道のりになるぞ。僕の体に宿った存在が言うには、色んな世界を渡り歩き、外すために必要なものを手に入れること。長い……』

 

『陸都くん……ううん、りっくん、私はそれでも一緒に行くよ……』

 

これは僕と友奈が初めて恋人同士になった時、そして長い旅立ちの始まり……

 

いろんな世界を見て回り、そしてこの世界にたどり着いた。時々アスクが暴走し、他の世界の天の神を殺したりもした……

 

「なんで今さらこんな……僕は……」

 

もう抗うすべはないのに……

 

すべてを諦めかけた瞬間、友奈の声が聞こえた

 

『りっくん、戻ってきて』

 

「友奈……」

 

まだ友奈は僕のことを救おうとしている。それに彼らも……

 

「何で……僕なんかのために……」

 

『そりゃお前のことを助けたいって思ってるからだろ』

 

聞き覚えのない声が聞こえた瞬間、闇の世界に白い影が現れた。

 

「誰?」

 

『名前を言ってもわからないから、名乗るつもりはないけど……強いて言うなら、運命を変えた勇者の一人かな?』

 

「どうして……君のいる世界と僕等がいる世界は繋げられないように封じたのに……」

 

『どっかの天の神が無理やり声だけを送れるようにしてくれたんだよ』

 

「そんなことが……」

 

『お前も上里の人間なんだろ。それだったら……抜け出そう。その闇の世界から……』

 

「抜け出す……」

 

『お前を支配する奴を拒絶する力は……もう受け取っているはずだ』

 

白い影が消えていく。この人は……

 

「あなたは?」

 

『僕は上里………』

 

白い影が消え、僕は目を閉じた。その瞬間、心の中に温かい何かを感じた。

 

「………戻るよ。友奈!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「ぐっ!?なんだ?体が……」

 

赤嶺がキスをした直後、アスクが苦しみだした。赤嶺はその場から離れると、アスクの体から黒い霧みたいなものが吹き出してきた。

 

「こいつ……今になって拒絶するなんて……もう出来るはずが……」

 

「お前にはわからないだろうな。これが愛の力って言うやつだよ」

 

僕がそう告げた瞬間、アスクの体から黒い霧が全部吹き出し、アスク……いや陸都がその場に倒れ込んだ。赤嶺は咄嗟に抱きかかえると……

 

「りっくん……」

 

「友奈……ごめん。心配かけて」

 

「大丈夫だよ……」

 

愛の力でアスクの支配から抜け出したんだな。さて後は……

 

『お前ら……よくも……』

 

黒い霧が一つになり、巨大な黒い蛇へと姿を変えた。

 

「これで心置きなくお前を倒せるな」

 

「行きましょう!空さん!」



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最終話 後日談と前日談が終わり……

今回で最終回です。

最終回なのにタイトルが不穏という……

理由はあとがきにて


陸都の体から抜け出してきた巨大な黒い蛇。あれがアスクの本来の姿。

 

僕と夜空は並び立つと、友奈と樹の二人が僕らの隣に立った。

 

「空くん」

 

「夜空さん」

 

「友奈……頼む」

 

「うん」

 

「樹……後は任せろ」

 

「絶対に……死なないでくださいね」

 

友奈は僕にキスを、樹は夜空にキスをした。その瞬間、僕らの戦装束が真っ白に変わった。これが愛の力……

 

「魔力も……体中の力が溢れている」

 

「愛の力……樹から受け取ったもので……お前を倒す!!」

 

「出来るものなら、やってみろ!!」

 

無数の矢を降らしてくるアスク。僕らは魔力弾を放つと、魔力弾は矢を破壊しつつ、アスクの体に命中した。

 

「威力も上がってるな!」

 

「でも……気を引き締めないと、暴走しそうだな」

 

ミナトのやつはこんな力を簡単に扱えるのは凄いな……いや、あいつの場合は愛の大きさが違うからか?

 

「だったら……僕らのほうが大好きだって言うことを証明してやるよ」

 

「空さん、目的が変わってないですか?」

 

アネモネとランディニを構えるとアスクは天井に向けて魔砲を放ち、穴を開けた。

 

「依代がなくなった以上!お前らと戦っている場合ではないな!他の世界で新たな依代を探させてもらおう!!」

 

アスクはそう告げ、逃げ出していく。

 

「「逃がすか!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスクSIDE

 

今のこの状態では魔力による攻撃を喰らえば、自身の体が滅びてしまう。今は他の世界へ行き、新たな依代を得なければ……

 

だが外には管理局の戦団があった。俺に向かって砲撃を放つが……

 

「その程度の攻撃は効かんぞ!!」

 

砲撃を放ち、空を目指した。このまま上を目指し、次元を超えれば……

 

「次なる世界は……あの浄化の力を持つ戦士たちの世界へと向かおうか!!」

 

次元を越えようとした瞬間、ポニーテールの少女が一人、俺の前に立ちはだかっていた。

 

「貴様!!天の神!!」

 

「ここで逃がすわけ無いでしょ……」

 

「今の俺はお前を殺すことが出来る!!お前程度の妨害なんぞ!!」

 

そう思った瞬間、俺と天の神との間になにかの障壁が現れた。これは……

 

「あなたの依代が、一時的に世界への道を塞いだわ」

 

まさか依代が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

「これで……あいつは逃げることはできない……あとは頼んだ」

 

「陸都……ありがとうな」

 

「行きましょう!!」

 

僕らは空へとデバイスを構え、周辺にある魔力をかき集めた。

 

「これが……お前への最後の一撃」

 

「喰らえ!!」

 

「フルテイル!!」

 

「シャドウ・オーガ!!」

 

「「ブレイカーーーーーーーー!!!」」

 

僕らの収束砲がアスクへと放たれた。アスクは魔砲を放ち、押し返そうとするが

 

「この魔砲は!?」

 

「愛の力を全て解き放つ!!」

 

「お前は魔法にも勇者の力にも対抗できる力を持ったけど……」

 

「愛の力には勝つことはできない!!」

 

「「愛の力は無限大だ!!」」

 

「ぐ、ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!?」

 

アスクは僕らの収束砲に飲み込まれ、まばゆい光が周辺を包み込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミナトSIDE

 

元の場所へと戻ってくると、戦艦内が地響きが鳴り響いた。それに何となくだけど……

 

「あいつら、何とかやったみたいだな」

 

「わかるんですか?」

 

なのはの奴がそう聞いてきた。何となくだけど、そんな感じがする

 

気がつくと何故か俺、えみる、ルールー、ミアの体が光りに包まれていった。

 

「……どうやら倒したみたいだな」

 

「ということはここでお別れですね」

 

「ルールーとミアともですね」

 

えみるが寂しそうにしている中、俺は頭をなでた。

 

「また未来でな。ルールー、ミア」

 

「はい」

 

「またね」

 

ルールー、ミアの二人が先に光になり、元の世界へ帰っていった。

 

「まだ調査したかったが、ここで君たちとはお別れみたいだね」

 

「スカリエッティ……あんたは何というか人を苦しめるような悪党には思えない」

 

「ふふ、それは暗殺者としての勘かい?」

 

「そんなところ……俺たちに切られるような悪党ぶりを見せたりするんじゃねぇぞ。まぁ純粋に世界征服でも狙ってろ。人々を苦しめないような感じで……」

 

「それは面白そうだね」

 

「それとなのは、あいつらに伝えておいてくれ。愛を育み続ければ……奇跡は起こせるって」

 

「そうです。きっとあのときのミナトさんと同じように……」

 

俺たちはそう言い残して、元の世界へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空SIDE

 

あの戦いから数日が経った。潜入したみんなの怪我も治療が終わり、みんなは復帰している。

 

「それじゃ結局スカリエッティは……」

 

「うん、あの戦い後、逃げられたんだよね。何人かのナンバーズを連れて」

 

愛の力の反動が大きくて、しばらく動けないでいたため、なのはからそれまでのことを聞いたけど……

 

「それじゃ今後は……」

 

「まぁスカリエッティを追うことになると思うけど……」

 

「でも何人かのナンバーズって……」

 

「どうにもスカリエッティが残した手紙を読み限りだと、更生の余地があるとかで……」

 

何というか思っていたよりかはまともに思えるけど……

 

「そういえばヴィヴィオにあの鍵を渡していたんだな」

 

「お守りとしてね。でもヴィヴィオが勇者の力を扱えるようになるなんてね……ちょっとビックリだったよ」

 

ヴィヴィオは白い鍵の力で、魔導師と勇者として戦う力を扱えるようになったみたいだった。戦い方は友奈たちみたいな感じだけど……

 

「教えてくんだろ。正しいことを」

 

「うん、娘が間違った道に行かないようにね」

 

この母親は変なところに気合を入れるから、ちょっと不安だけど……まぁ大丈夫だろ

 

「空さんたちは元の世界に?」

 

「あぁ、こっちでやることも終わったしな……」

 

「そういえばアリシアちゃん……」

 

「こっちに残るって……もっと自分を鍛えて、僕らと共に戦えるようになるってさ」

 

「そっか、千景さん、寂しがりそうだね」

 

「どうだろうな?」

 

面会に来たときに、桜から告白して付き合うことになったらしいから……あいつも幸せになるだろうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのはと別れた後、こっそり旅に出ようとする二人組を見つけた。

 

「挨拶もなしに行くのか?」

 

「あらら、見つかった」

 

「僕らはみんなに迷惑をかけたから……こっそり抜け出そうと思って……」

 

旅支度をした赤嶺と陸都の二人、この二人はこれからどうするんだか……

 

「どうするんだ?これから?」

 

「……二人で安住の地を目指そうと思ってます」

 

「まぁこっちだと追われることはなさそうだし、私達がやったことは、あの部隊長さんが誤魔化してくれてるみたいだしね」

 

「そっか……」

 

「もしも、何かあったときは……今度は僕らが力を貸します」

 

「助けてくれた恩返しとしてね」

 

恩返しとか別にいいのにな……

 

「まぁ期待せずに待ってるよ」

 

「えぇ~なにそれ~」

 

「一応まだ天の神の力は扱えますよ」

 

「お前たちの力に期待してないって意味じゃなくって、そんなことにならない平和な日々が続けばいいって話だよ」

 

「そっか……」

 

「そうだね……」

 

僕は二人を見送るのであった。この二人もこれから先困難とかなく、平和に過ごせればいいな……

 

そして僕らの戦いはまだ終わっていないから……そっちも終わらせて、夜空たちの未来に絆ぐようにしないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天の世界

 

「全部片付いたみたいね……」

 

今回の0番目の件が終わり、安心していると天の神(自由)がニタニタ笑っていた

 

「これであなたも安心ね。破棄したやつをちゃんと処分できて」

 

「えぇ、力は彼に残っているけど……彼もまた運命を変えられる存在だからいいわ」

 

「まぁ満足ならいいわ。私は元の世界の管理をしてくるわ……」

 

「あら、あなたの仕事はまだ終わってないわよ」

 

彼女を呼び止める私。彼女は不思議そうな顔をしていた。

 

「どういうこと?」

 

「以前、聞いたわよね。どうして邪魔をしたのかを。でもあなたは覚えがないって言っていた」

 

「あぁ……あのときの……なるほどね。今なのね」

 

彼女は理解した。そうこれは私にとっては後日談だが、彼らからしてみれば前日談となる。

 

「彼らにとってはこれからが本番よ」

 

私は笑みを浮かべるのであった。後日談と前日談が終わり……新たな戦いが始まるのだ




というわけで最終回っぽくはない最終回でした。

実は言うと、ストライカーズ編が終わったら、勇者の章をやろうと思っていましたが、少し考え、この『上里空は勇者になり、魔道士でもある!』はこれで終わりにしようとおもいます。

そして次回作としては……

『上里夜空は勇者になり、魔道士でもある!』が始まります。

内容的には勇者の章メインとなります。そして始まる日は未定ですが……

お楽しみに











予告

アスクとの戦いが終わり、僕らは元の世界へと戻るのであったが……

「やはり世界は炎に包まれましたね」

「まぁ変えられなかったっていうことだな」

「北と南の勇者たちが手伝ってくれたのにな……」

「だけどこれが始まりかもしれないな……」



「平和ですね。夜空さん」

「あぁ、だけど……」

夜空が感じる違和感。本当に平和なのか……

「みんな、覚えてないの?勇者部にはもうひとりいた事を……」

全てを思い出し、勇者たちは失ったものを取り戻しに行くのであった。

「教官、行ってください」

「ここは私たちが責任を取りますわ」

「三ノ輪……親友を助けろ」

「ここは死守しますから」

「みんな、ありがとうな」

防人組、銀も参戦

「それじゃ元六課メンバーで助けに行こう」

なのはたちもまた助けるために

「まだ終わってない……」

失ったものを取り戻すために、また失う

「呪い……昔の私みたいやね……」

「でもはやてとは違って、かなり悪質だ」

呪い

「すべて私のせいじゃない!天の神の怒りは収まっていなかった!私が受けるべき祟りなのよ!!」

悲しむ人たち……

「こんな時……空さんがいたら……」

「お前はいつまで空さんを期待してるんだ?夜空!!」

「あんたに何がわかるんだ!!陸都!!」

ぶつかり合う二人……

そして……

「僕がやるべきことじゃない。僕はここで道を作ってやる」

「先にいけ!!」

『さぁついにここに揃った!!運命を変えし、上里の勇者たちが!!』

「絶対、あの天の神、面白がってるだろ……」

『上里夜空は勇者になり、魔道士でもある!』

「僕は……上里……」


















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