乃木さん家の園子さんに構われたすぎて夜しか眠れない (みそぎんちゃく)
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乃木さん家の園子さんに構われすぎて夜しか眠れない
とある建物内の、形代が壁、床、天井の至る所に貼られた不気味な部屋。
その部屋の中央には背後に心電図や点滴が設置されている病院に置かれるような大きなベッドがひとつ置かれている。
部屋の様子に対してあまりにも現実感のあるベッド周りは、ある意味異様な雰囲気を醸し出していた。
「はいみーちゃん、あ〜んだよ〜?」
そんな形容しがたい部屋に、場違いなほど可愛らしいのんびりとした声が響く。
声の発信源は、ベッドの脇に置かれたパイプ椅子に座った、薄い金髪の少女。
少女は、その手に持ったフォークを、ベッドの上の人物の口元へと届ける。
ベッドの主は、黒く長い髪の毛を伸ばしっぱなしにし、形代によく似た服に身を包まれた少女だ。
明らかに体のサイズに対して丈の長いその服は足先を隠し、かろうじて開いた袖口から手が見える程度。覗いている手は包帯でぐるぐる巻きにされており、顔もまた同じように片目を出すようにして包帯を巻かれている。
「ほ〜ら〜、この数の子の食感、凄くいいよ?」
「いや、べつにいい……」
「じゃあこのクラゲは〜?これもコリコリしてて美味しいんだよ〜」
「だから、食べ物は……」
「も〜!散華で食べなくても良くなったとは言ってもものを食べるのは人にとって大切なことなんだよ?」
「………………わかった
どうしてこうなった……」
これは、寝たきりの少女、郡 美影のほんの少しの日常の話。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
寝たきりの生活、手も足も動かなく、内臓もほとんどが存在せず、もはや人と言えるのかわからないほどだが、なんとか生きている。
これは俺が転生という体験をしてから12年してからの出来事だ。
転生、ネット小説でよく見かけ、最近はアニメというジャンルでも見かけるようになったこの現象に巻き込まれる前までは普通の大学生をしていた俺は、決して自分は体験することがないであろうと思っていた電車の人身事故というものに巻き込まれたのだ。
携帯片手に電車を待っていた時、電車がホームを通り過ぎようとすると同時に、酔っ払いが横から絡んできたのだ。
あっという間に体をひき肉へと変えられたと思ったら、痛みも何も感じず、瞬きをするかのように一瞬にして赤ん坊の姿になっていた。
よく聞く神様転生のようになにか神様にも神様のようなものにも、ましてや悪魔にも出会わなかった。
赤ん坊というのは本当に暇で何もすることがなかったために、いきなり起こった転生や、前世での死に対する心のけじめはきちんと付けることが出来た。
それからは、来る日も来る日も小さい子供として違和感ないよう過ごし、成長していったのだが、首が座り、視界もはっきりしてきた頃に気がついたソレにはかなり愕然とさせられたものだ。
前世で男子大学生だった俺が、今世では女の子になっていたのだ。
これに気がついた時は、今世の清楚で大人しめな母親が爆笑するような、間抜けな表情をしていたらしい。
まぁ、閑話休題。
何やかんやで小学生になったのだが、学校での勉強が始まり、今世の異様さに気がついた。
いや、異様さについてはもっと前から気がついていたのだが、原因がわかったと言った方が正しいかもしれない。
この世界にはもう四国の外は謎のウィルスで壊滅しており、海の沖にある巨大な壁で守られているらしい。
この壁は神樹と呼ばれる神の力で出来たものらしく、壁の内側を今も守り続けていたようだ。
そしてある時、そんな神樹を崇め奉っている実質この四国を治めている組織、大赦から4人の少女が呼び出された。
一人目は乃木園子
二人目は鷲尾須美
三人目は三ノ輪銀
そして最後の一人が俺、郡美影。
呼び出された俺たちは神樹や、バーテックスと呼ばれる神樹を狙う敵のことを聞かされ、そして資格を持ったという理由から『勇者』として、神樹様を守る事を命じられた。
実際にはお願いという形手間はあるのだが、受ける以外の選択肢を用意していない時点で命令と同じだろう。
それからは、園子や須美、銀たちと共に戦い、時には遊び、怖くはあったけども充実した日々を過ごしていた。
だけど、ずっとは続かなかった。
遠足の帰り、もう慣れてきたあの時間の止まる瞬間を経て世界が極彩色に呑まれた先に見えたのは三体ものバーテックス。
連携を学び、経験を得た俺達だったが、園子と須美がやられて気絶してしまったのを安全な場所に連れていくと、俺と銀の二人でバーテックスを追い返すために戦った。
戦ったのだ。
追い返すことは出来たが、俺はかなりの傷を負って気絶、気絶する間際、手を伸ばした先に見えたのは光に貫かれる銀の姿だった。
目が覚め、銀が亡くなったことを聞く。
何となく、そんな気はしていた。
心の準備が出来ていたからか、思いの外あっさりとその事実を受け入れることが出来ていた。
ただ、園子と須美があまりにも心配そうな顔をしていたから、なんとか大丈夫だよと、声をひねり出したが、今にして思えば受け答えとしてあれは全然大丈夫じゃ無かったな。
その後、勇者システムのアップデートを経て、次のバーテックス襲来を迎えた。
銀の葬儀の最中の事だった。
新システムのバリアはとても優秀で、あらゆる攻撃を防いでくれた。
そして満開を使ったタイミングで、ふと、嫌な予感がしたのだ。
こんなに強力な力を代償無しで使えるのか?
それは満開を解除したタイミングで嫌な予感が的中したのを悟った。
片腕が動かなくなったのだ。
だが、壁の外からは今まで以上にたくさんのバーテックス達。
須美は二度の満開を通して戦闘不能、園子が三度目の満開を使ったところで覚悟を決める。
もう一度満開を使った俺は、目の前で友達を失いたくない一心で、園子を神樹の方へと吹き飛ばし、距離を取らせ
計22回の満開を行ったのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
口の中の果物の食感を感じながら今までの事を思い出していると、園子がまた話し始める。
「……わっしーはね、今勇者部っていう所でまたお友達と楽しく過ごせているみたいだよ」
「…………そう」
「前に一度近くまで行ってみたけど、やっぱり記憶は戻っていないみたい……」
「…………そう」
「も〜!聞いてる〜?」
「聞いてはいるけど……」
そんなに悲しそうな話を聞かされても……。
「あー、園子さんの小説は最近は書かれているのですか?」
「え?ん〜暇な時に、というか、暇な時間はいくらでもあるからね〜この間も新作を書いたのです!」
こちらの話題を変えたいという意思を感じとってくれたのか、こちらの質問に明るく答えてくれる。
うん、園子は笑っていてくれた方が良い。
「それよりも〜、みーちゃんはもっと砕けた話し方をしよう?」
「……いえ、その……これが素なので」
「そっか〜、戦ってた時の勇ましいみーちゃんも好きだったんだけどな〜」
素、というのは嘘だ。
園子が言っている戦っていた時は、余裕がなく、思わず男口調が出てしまった時のことで、そっちが素なのだが、女の子になってしまった以上、そちらに合わせたいため、このように喋っている。
それより……
「園子さん、その、毎日こんなに私なんかの相手をしなくても良いのよ?まだ学生なのだから、学校の友達と遊んだりとか……」
「友達と遊んでるよ〜?いま!」
そう言ってドヤ顔をしている園子に、嬉しくなると同時に、悲しくもなる。
「……でも、私はこんなんだし、テレビも見ていないからあんまり話もできないし……イネスみたいなショッピングモールとか回りたいんじゃないの?」
「んーん、私はみーちゃんと一緒にいると楽しいよ?」
そう言って四肢の中で唯一感覚の残っている人差し指に手を添えてくる。
感じることが出来る温かさに、思わず温かい気持ちに溺れそうになるが、なんとか押し込めて、否定の言葉を送る。
「わ、私は別に……た……楽しくなんて無いから構わないでいいのよ」
ここまでハッキリと言えば十分だろう。
罪悪感を感じつつも完璧に演技できたと思い、園子を見ればニマニマとした表情を浮かべながら、椅子からたつとベッドへと乗ってくる。
「な、なに?」
「みーちゃんは本当に可愛いな〜!!!」
「なぁっ」
園子の思いの外豊満に育った胸で顔を抱かれてしまう。
「みーちゃんってば顔にすっごく出てるよ〜?指を触った時なんてトロトロになっていたし、楽しくないって言った時なんて死にそうな顔してたよ〜?」
ば、馬鹿な……!
きちんと無表情に務めることが出来ていたはずなのに!?
「やっぱりみーちゃんはわかりやすいし可愛いなぁ〜」
くっころ!
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
先程までとはうって変わり、疲れたのか寝てしまったみーちゃんを見る。
顔に出やすい、と言ったのは嘘だ。
彼女の表情は、ほぼずっと無表情だった。
何年も一緒にいた私でも、最近ようやく雰囲気から喜怒哀楽を察せるようになっただけで、彼女のポーカーフェイスは健在だ。
それでも、指を触った時、顔を抱きしめた時、たぶん体温を感じることが出来た時には、本当に少しだけ目元が下がるのだ。
そんな、彼女の変化を見付けるのが楽しく、いつも構ってしまう。
好物はうどん。
最近の好物は数の子。
髪を撫でると視線が下がって恥ずかしがるし、ほっぺたを触ると目を彷徨わせる。
体を拭こうとすると必死になって口で抵抗してくるけど、決して嫌がらない。
あーんをしてあげると目を逸らしつつも人差し指をベッドにすりすりと擦り付けるetc……
そんな一つ一つの感情の現れる動作を見つける度、彼女が可愛らしく見えて仕方がない。
そして何より、そんな彼女を独り占めできるこの時間は堪らなく、嬉しいのだ。
名前でわかるかもしれないけど、ぐんちゃんの子孫だったり、満開の内容だったり、武器だったり、モチーフの花だったり、出てない設定が沢山あるけど続くかは未定(真顔)
もしゆゆゆい時空に行くと高確率ででっかい園子に甘やかされたり、でっかい東郷さんに甘やかされたり、ぐんちゃんとたかしーに甘やかされたり、銀を甘やかしたりする。
あと貧乳です。
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また来るね
続くと思わなかったけどモチベがまだ続いてたから今書いた()
あくまで主人公は寝たきりだからね、場面があの部屋から動かないからめちゃくちゃ書くのがきつい。さっさとゆゆゆいに移らせるか勇者の章に行くか……どっちかにしないと
「みーちゃん」
「みーちゃん」
「みーちゃん」
そんな声が耳元につけたイヤホンから聴こえてくる。
指先の位置に固定されたタブレットを操作すればその声も少し大きくなり、目をつぶった今、世界の全てが彼女の声で満たされる。
部屋のお香も、彼女が部屋で炊いているというものをわざわざ大赦に用意してもらったものだ。
しかし、指先の温もりだけは、園子の温かさだけはどう頑張っても無理だ。
そんなもどかしさを感じつつも、耳元から聞こえる声に没頭する。
そして……
「み〜〜ちゃ〜ん!今日も来たよ〜!」
そんな陽気な声が聞こえた瞬間、自己ベストではないかという速度で手元のタブレットを操作し、音声ファイルをセキュリティの奥底へとしまい込み、冷静な声で返事をする。
「園子さん、こんにちは」
「はいは〜いこんにちは。と言ってもまだおはようの時間だよ?」
「あんまり時計を見る習慣がないから……」
「そっか〜……と!それより今日はいいものを持ってきたよ!じゃ〜ん!」
その手に持っているのは……なんだろうか?果物に見えるが変わった形をしている。
「それは?」
「ふふふ〜これはね?スターフルーツっていう果物なんだよ!」
ドヤ顔をしつつ、ベッドの横に置いてある最早、園子専用となっている棚から食器を取り出すとそこにスターフルーツをスライスして並べていく。
「これは……」
「ふふふ、可愛いよね〜」
スライスされたソレは、名前の由来になったであろう星の形をしており、鮮やかな黄色が映えて視覚的にも楽しめるものらしい。
「はい、それじゃあ食べよっか、私も実は今日初めて食べるんだ〜」
「う、うん」
前世も含め、初めて口にする果物には味覚がない身としても、やはり好奇心がくすぐられる。
全て切り終え、園子は、両手につまむと口元へと運んでくれる。
「じゃあ頂きま〜す、あむ」
「はむ……」
咀嚼すると、独特のシャクシャクとした食感が口の中で踊り始める。香りはそこまで強いものではなく、ちょっとした甘い香りが鼻から抜けていく。
これは……
「うん、美味しい」
「そう!?よかった〜」
感想を端的にだが述べれば、彼女は可愛らしく花の咲いたような笑みを浮かべる。
口の中のフルーツを飲み込めば、また次を口元まで持ってきてくれる。
しばらくそうして黙々と食べていると、唐突に園子が質問をなげかけてきた。
「そういえば、みーちゃんはさっきまで何を聞いていたの〜?」
っ
「どうしました?いきなり」
「いやぁ、入ってきた時にタブレットを操作していたから気になっちゃって〜」
「えっと、クラシックだよ……名前とかはよく分からないけど、聴きながら目をつぶって居るとすっごく……すっごく気持ちよくなれるんです」
「へぇ〜私もやってみようかな〜」
「私が好きってだけですので、他の人がどうかはわからないけれど……一度、やってみて下さい」
もしも園子が『園子さん』という呼び掛けをループして聴いていたら……と想像をするとなんとも言えない快感を感じるが、なんとかその妄想を振り払う。
「そういえば、園子さんは最近何か変わったことはありましたか?しばらく来なかったですが……」
「実はね〜近々転校することになりそうなんだよ〜その手続きでちょっとね〜」
転……校……?
「その、転校ということはあまり会えなくなるんですか……?」
「……ん?べつにそんなことないよ〜?結構近くの学校だから。ただ、勇者関連のことでね〜」
勇者……
勇者!?
「園子さんがまた戦うんですか!?」
「うぇ!?ん〜まだきちんと決まって居ないけど、戦うことにはなる……かも?」
「そんな、の」
あんなに戦ったのに……?
「た、戦わないでください!」
「えぇ!?いや〜でも戦わないって訳にも〜」
「そ、園子さんの代わりに私が戦いますから!ほら、私は精霊も沢山いますし!」
「だめだよ!!」
「みーちゃんはあの時私の代わりにいっぱい戦ったんだよ?だから、今度は私が頑張るから、それに今はバリアもあるし、他に勇者が五人もいるから大丈夫だよ〜?」
「他の……勇者?」
「うん、その勇者達が通っている学校に私も行くことになったの。あの時は三人で戦っていたけど、今回は私も入って六人もいるから大丈夫」
「…………」
「だから、ね?」
でも、いや、これ以上言うのは園子に迷惑か。
それに彼女も戦いたい訳じゃないはずだけどそれでも行くって言っているのだから、ここは友達として応援「あ!あと」
「え?」
「わっしーも新しい勇者の中に居るんだよ!」
は?
「須美……さん?」
「うん!あ、でも今は東郷美森って名前だったっけ」
「東郷、美森……東郷……」
「わっしーはしっかり者だったし、今度もきっと頼りになってくれるよ〜」
「うん、それなら安心かな……園子さん……本当に気をつけてね?」
「まっかせなさ〜い!」
東郷……美森。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「それでね〜東郷さんが……」
東郷。
「フーミン先輩と東郷さんで……」
また東郷……。
「ゆーゆと東郷さんはいつも」
東郷、東郷……。
ギリッ
「みーちゃん?」
「っ!」
「ごめんね……今日はもしかして体調悪かった〜?」
「い、いいえ!大丈夫!それより、怪我とかは無い!?」
内心を知られたくない一心で、話題を変えると、急な転換にビックリしつつも答えてくれる園子。
「う、うん、乃木さん家の園子さんはとっても強いですから〜」
「そう、良かった……て、もう夜遅いけど大丈夫?」
だめだ、いくつもボロが出てしまう。
「あ〜もうこんな時間だったんだ、それじゃあ私そろそろ帰るね〜」
そう言って退出しようとする園子に向けて、務めて柔らかい声を出すように「またね」と言う。
「みーちゃん…………」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「失礼します」
「し、失礼しますっ」
いつもの空間、代わり映えのしない部屋に、久しくなかった変化が訪れた。
声に反応して入口を見れば、そこには長い黒髪の車椅子に座った少女と、赤い髪の毛をポニーテールにした少女が入ってきた。
「私もいるよ〜」
「園子さん……と?」
そんな疑問をぶつけると、見知らぬ二人が自己紹介を始める。
「初めまして、讃州中学二年結城友奈、勇者やってます!!」
「私は東郷美森、同じく勇者をしています」
「みーちゃん実はね、勇者部の皆に満開について話そうと思って」
「っ」
園子が何故此処に彼女たちを連れてきたのかは何となく分かった。
「ねえ、園ちゃん?この人は……」
「……自己紹介がまだでしたね、私は郡美影、園子さんと先代勇者として戦っていました」
「先代……」
「……勇者?」
「うん、私と〜みーちゃんと、あともう二人」
「園ちゃんは夏凜ちゃんが言っていたから知ってたけど……」
どうやら、先代である勇者の俺がこんな姿なのに疑問を持っているようだ。
「ええと、この体のことでしょう?これから話すことに関係があるから、それで園子さんはお二人を連れてきたんだと思いますよ」
「うん……ごめんね、みーちゃん」
満開の前例として、それについて謝っているのだろう。
「いえ、大丈夫だよ」
「えっとねーーーー
そこから一呼吸置き、園子が満開……いや、勇者システムそのものについて説明を始める。
満開
散華
供物
それを隠す大赦
園子が一つ一つの真実を話していくたびに、二人はその残酷さに言葉を失う。
今のこの部屋や自分のこの姿も、それが真実だと、彼女たちに思い知らせているのだろう。
そして東郷美森と名乗った彼女、須美も、自分の足のこと、記憶のことについて、少し悟ったのかもしれない。
途中、大赦の人間がこの部屋まで来たが、園子の一喝で彼等は下がる。
最後まで話し終えると、二人は大赦の者に連れられ、帰っていった。
「みーちゃん」
「なに?」
「わっしーのこと嫌い?」
「」
残った園子が、いつもの定位置に着くと、そう問うてきた。
「なんで……」
「いつも、わっしー……東郷さんの話をすると、なんだか悲しいような怒ったようなそんな目をしていたから……」
気付かれていた。
この理不尽で醜い心情を……?
園子に……?
「みーちゃん!!!」
気付けば園子の顔が目の前にあった。
「園子……さん?」
「みーちゃん、私はみーちゃんの事嫌いになったりしないから、お話聞かせて?」
そう言うと、頬に手を添えてくる。
そんな優しさに思わず涙が流れ、彼女の手を濡らすが、気にせずずっと触れている。
こんなにも大切にしてくれているのに……
「わ、私は……」
「私は、園子さんが、私から離れてしまうんじゃないかって……」
「須美さんのことは、今でも大切に思っている……けど。でも東郷さんとして友達と囲まれて過ごしているのに、私にとって唯一な、園子さんを取られてしまうんじゃないかって」
「須美さんは大好きだけど……でも、東郷さんが妬ましくて……私と園子さんの唯一の時間に、東郷さんの名前が沢山出てきて……」
話していて涙が止まらなくなってくる。
園子が逢いに来てくれなくなるわけが無いのに。
「ごめんね〜、みーちゃん。不安にさせちゃったね」
「そんなこと!私がただ嫉妬していただけでっ」
「ん〜ん、みーちゃんだって、ずっとこんな所に閉じこめられて辛いのに、何も考えないで外でのこと話しちゃったし……」
「わ、私がお願いして聞いていた事なのに園子さんが謝ることなんて無い!」
「ふふっ、私が悪いと思ったんだけどな〜、じゃあ、おあいこだね〜?嫉妬しちゃったみーちゃんも、みーちゃんを不安にさせちゃった私も、ね?」
「ぞんなことっ」
「でね、みーちゃん。わっしーは東郷さんとしてとっても大切な護りたいものができてたんだ……ゆーゆ、結城友奈ちゃん。
私、乃木園子にとって今一番守りたいものは、みーちゃんなんだ〜だから、安心して?私は絶対にみーちゃんの前から居なくなったりしないから」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
抱きしめられ、声を上げて泣いてしまったのだが、涙が止まった今も抱きしめられていた。
「その……そろそろ離してもらっても……」
「えぇ〜?甘えん坊さんなみーちゃんは泣いちゃわないかな?」
「もう大丈夫!!……その、ありがとう…………ございます……」
そこまで言うとようやく話してもらえた。
自分でもわかるほどに顔に熱が集まっているのがわかる。
「いいよいいよ〜恥ずかしがっているみーちゃんだなんてレアだよ〜!」
「か、からかわないでく「ああっ!!」っ」
突然声を上げた園子。
「な、なに?」
「みーちゃんにとっての一番が私で〜私にとっての一番がみーちゃんなら、それってつまり"そ〜しそ~あい"ってやつだね〜!いやぁ、ラブラブですな〜私たち」
「なんっ」
「ほれほれ〜ほっぺたがほにゃほにゃになってるぞ〜?」
「な、動けないのにっやめっ」
「あっははは〜…………それじゃあそろそろ帰るとするよ〜」
「ぁ……えっと」
「みーちゃん、また来るね〜!!」
「っうん!」
あんな環境で病むなって言う方が無理な話ってそれ一番言われていry(
そのっちボイス録音フォルダにはありとあらゆるボイスが入っています。主人公のお気に入りは自分の名前を呼んでくれた部分を切り取って繋げたありとあらゆる「みーちゃん」呼びボイス。
編集?大赦の方(とあるMKさんのお兄さん)が一晩でやってくれました。
あと、スターフルーツって案外知らない人多いよね。私はあの食感は好きだけど味自体はなんかぱっとしなくて好きではないです。
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ちょっとだけ設定を垂れる回
明確に残っている部位とか時系列的にどの辺とか主人公のモチーフ花とかとか
設定というか話としてはもうすぎた部分だけど出していなかった部分を垂れ流すだけの回(今のところ出ているのと出してもへー来そうなところ)
主人公:郡 美影(こおり みかげ)
バストは平坦だけどぐんちゃんよりほんの少し大きいぞ!!
元々長めだった髪は伸ばしっぱなしだったためさらに長くなった。
カラーリングはぐんちゃんのまんま。
正直イメージとしては、ぐんちゃんの髪を結わないでくるぶしの辺りまで伸ばせばいいんじゃないかな……。前髪はさすがに切ってる。
衣装のモチーフ花は黒百合。
花言葉は、恋、呪い。
呪い要素はぐんちゃんの血筋が関係しているようで……?
正直彼岸花の花言葉やらのせいで彼岸花にしたかった。したかったけどやっぱり彼岸花はぐんちゃんのもの。
白い彼岸花の
また会う日を楽しみに
想うはあなた一人
とか好きすぎる……なんてこった。
満開22回。正直どこを残そうかと悩んだけどそのっちの笑顔とそのっちの匂いとそのっちの柔らかさを感じられる部分を残した。
そのっちの味も感じて欲しかったけど我慢した。絶対ホワホワとした甘さを感じるはず。いや感じる(確信)。
人差し指だけ残っているのはちょっとした物……というかとある指輪が原因というかご都合主義というかで関係している。
指輪がどんな物なのかはそのうち出てくるかもしれないしずっと出てこないかもしれない。そのっちとぐんちゃんの両方が関係しているかも。
それから、主人公は前世の記録も持っているのでそちらからも欠損が出ている。
転生し、記憶を記録として引き継いだけど本来子供が人格を形成していく上で必要な経験やら知識やら記憶やらを全部前世の記録から引用しているので、「俺」じゃないけど「俺(私)」。
すごく大雑把な説明をすると、二体のロボットがあって、片方(A)であれこれといじくり回して完成したプログラムを新しいロボット(B)にコピーした感じ。
AとBは体(ロボットのボディ)も魂(ロボットの記録媒体)も違うけど根本的な動きを決める部分は全く同じというアレ。
ぶっちゃけ難しく考えないで同一人物だと思ってもらってもいいけど根本的には同一人物では無いという矛盾的な言い回しをしてしまう自分の語彙力の低さに脱帽だ。絶望か。失望?
フーミン先輩がブチ切れた案件については、園子が勇者部と合流したのが、一回目の満開が行われたという理由からなので、樹ちゃんの声が出なくなったあとなのでセーフ。
アニメで東郷さんと友奈を呼んだ時の代わりのイベントが二話目。
正直メインがそのっちと主人公の絡みなので本短編では巻で進めました。
というか、あの部分は真実を知るだけなので全く同じ話をしても読者も別に楽しくないと思ったから……(←おい)
ぐんちゃんのバストサイズはベストな塩梅だと私は思います。
思います。(食い気味)
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貴方と微笑む
あー、もしかしてTSがお好きでない?確か前もそんなこと言った奴が居たな。え?そいつはどうなったか?やっこさん死んだよ、俺が殺した。
こんな風にな。
なんか感想とか誤字報告とか来てた。
続き書いた。
5000文字超えた。
でも蛇足だらけやんってなって半分以上けずってとりあえず一期の部分チャチャッと終わらせて花結の章までの繋ぎ回にしました。
短くてごめんね。
主人公はもっと重い方が良かったかな……これくらいがちょうどいいかな……
最近、新しい悩みが増えた。
自分の中の醜い心情を吐露したあの日。
あれ以来、園子はここに足を運ぶ頻度が増えた。
赦してくれたし、こんな自分のことを大切だと、護りたいと言ってくれたあの子に対して、やはり罪悪感があるかと聞かれれば、ある。
反面、構ってくれる、触れてくれる回数が増えたことに対して喜びもまたある。
あの日の出来事があったから、安心して園子を見送れるし、話も聴ける。
でもどうしても根っこは変わらないようで、安心しつつも嫉妬心は積もるし、園子をここに縛り付けたいという願いもやはり残っている。
言葉にすれば、園子は笑って答えてくれるだろうし、そうなれば気が楽になるのかもしれない。
でも。
「重い女だと思われたくない……っ」
これに限る。(重いというのはバレてる)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「みーちゃん、最近何か悩み事とかあるの〜?」
「い、いいえ?」
「そっか〜いいなぁ、私はいっぱい悩み事が有るんだよ〜」
いつもの様に話していると、急にぶっ込んできたため驚いてしまった。
園子はなんというか、ぽわぽわしているのに鋭いので油断出来ない。
「ええと、悩みって?」
「実はね、やっぱり満開について話したせいで、皆参っちゃっていて……」
「話さない方が良かった?」
「んーん、話して、知った上でやりたいことをやり切って欲しいんだ……私はみーちゃんやわっしー達と、やりたいことがたっくさん残っているから……」
「そう……ね……」
「それにね、わっしーがちょっと危ないんだ……」
危ない……?
「なんというか、このまま放っておいたら何かしでかしてしまうんじゃないかって……」
と、そこまで言った時部屋にアラームが鳴り響いた。
不気味なその音は途切れることなく鳴り響き続けている。
「わっしー!?」
携帯のマップを見ていた園子が、急に立ち上がる。
ちらりと見えたその端末には、無数の赤い点が壁から侵入しているのが見えていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
遠くでいくつもの満開の力を感じる。
満開を使いすぎた影響からそういったことを感知することが出来るせいで、自分の大切な人が体を捧げているのが分かってしまう。
「園子さん……」
端末は無く、ただ祈ることしか出来ない。
祈るべき神は、今や神樹しかいないが、それでも祈る。
…
…
…
どれほど経ったのか……戦いの気配が収まり、世界に時がもどるのを感じる。
彼女たちは勝ったのだろう、身体を供物として捧げながら。
瞼を開くと、ふと、視界を上から下へと通り過ぎるものが見えた。
「これは……花弁……?」
濃い紅紫の花弁が、体の上に散らばっている。それを認識すると同時に、意識が遠のいて行く。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……………………ん」
何かが聞こえる。
「…………ちゃ……」
これは、声?
「み………………ん!」
「みーちゃん!!!」
「っ!」
体を揺すられる感覚と、私を呼ぶ声に驚き、目を開くと、園子が泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「園子……さん?」
「みーちゃん、良かったよお~!!」
そう言って、涙をボロボロとこぼし始める園子。
その涙を手で拭ったところで違和感に気がつく。
揺すられる感覚……
涙を拭った手……
光を感じる両目……
「体が……治ってる……?」
「そうだよ〜みーちゃん」
泣きながら笑うと言う器用な表情を見せながら園子が抱きついてくる。
その温かさを、体全体で感じることが出来、ようやくその事を受け入れる。
「本当に……」
「うん!」
あんなにも望んでいたことなのに、いざ叶うと、何も言葉が浮かんでこない。
「……」
「みーちゃん?」
「なんだか、言葉が出てこなくって……」
それを聞いた園子は涙を拭い、微笑むと強く強く抱きしめてくれる。
「こ~んなふうに抱き締めた時にさ、暖かいってどんな気持ち?」
「それは……嬉しい」
「うんうん、私もす〜っごく嬉しいよ〜」
そう言ってあやす様に、背中をポンポンと叩かれる感覚に、ふと、視界が滲むのを感じる。
嬉しい……
そうか、嬉しいのか。
何度も抱き締め返したいと思っても動かなかった手が今なら動く。
もうすっかり弱ってしまった腕を持ち上げ、できる限りの力を込めて園子を抱きしめる。
やっと抱き締め返すことが出来た。
やっと体全体で園子を感じることが出来た。
やっと、やっと
ようやく胸いっぱいに溢れる嬉しさというものを実感し、喜びを表に出せたのを実感した頃には、顔がグチャグチャになっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「と、言うわけで〜」
「勇者部入部希望、郡美影です」
「わ〜!」
体が全て戻った後、弱っていた筋肉も、2年間寝たきりだったとは思えないほどすんなりと戻り、一週間程で回復して日常生活に戻ることに。
リハビリ中は園子が常にそばにいてくれたため、むしろもっと長く続いて欲しいという気持ちもあったが、鋼の精神でやり切った。
そして新学期、園子に誘われて普通の学園生活を送ることに決め、そのついでのように勇者部の仲間となったのだ。
そして。
「っ!?そ、園子さんが、二人!?」
「「「「そっち!?!?」」」」
ー次回花結の章、開ー
の「みーちゃんが1一人〜」(美影 上)
の「みーちゃんが二人〜?」(美影 下)
う「みーちゃんが三人!」(三都)
わ「来るぞ千景!」
ち「来ないわよ乃木さん」
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天国地獄
花結いのきらめきです。
「……」
「はぁ……」
樹界内部、そこで私は大きめの根の影に座り、いつの間にか一緒にいた精霊を揉み揉みしつつ身を潜めていた。
「どうして樹海にいるんだろう、私」
こんな事態に陥ったのはつい先程の出来事である。
「よおし! 勇者部一同、文化祭でやる出し物の練習に行くわよぉ!!」
という風先輩の掛け声に続き、練習のために借りた教室へと向かおうと扉に手をかけた瞬間、気がつけば樹海に一人佇んでいたのだ。
「端末もないし、連れはこの子だけ……」
膝の上でコロコロと転がる夜雀は、精霊の威厳……は他の子達も無いか、まあそんなもの無く、失われた野生タグを付けられそうな程のだらけっぷりだ。
改めて手持ちのバックを開き、中身を漁ってみてもやはり中身は何も無い……いや、唯一東郷さんから貰った絶品ぼた餅だけは残っていたのだが、つい先程夜雀と食べきってしまった。
「空にはちっちゃいキモイやつ、遠くには大きめのバーテックス、私は変身できず夜雀と二人? きり……はぁ……」
何度目かのため息。
ぼた餅を食べた後の夜雀は完全におねむのようで、手の中にすっぽりと収まると身動きひとつ取らなくなった。
もうやだ。
「貝になりたい……」
「千景さん?」
「ん?」
訳の分からない状況に思考を停止させていたが、そんな私の耳に樹海に居るはずのない人間の声が聞こえてくる。
視線を向けると、そこには三人の勇者装束を纏った少女達が立っていた。
「誰、ですか?」
「あれ? 別人……みたいですね。髪型が微妙に違う……」
「何? ということは、ただの一般人か? 何故こんな所に……巻き込まれたのか?」
はて? 今代の勇者は私たちだけのはず……とにかく、話を聞かないことには始まらないか。
「えと、私は郡美影といいます。貴女たちはその、一体……」
「名前まで千景にそっくりだなぁ。って、ん? タマ達のこと知らないのか? けっこー有名だと思うんだけどなあ」
「たまっち先輩、私たちのことを見た事ない人だって沢山いるんですから、知らない人だって普通にいますよ」
「そっか? いやでも若葉はテレビとか新聞とか出てただろ?」
「その辺にしておけ、郡……さんが困惑しているぞ」
よく分からないが、そんなやり取りをした後、あらためてこちらに向き直った若葉? さん達が自己紹介を始めた。
「すまない、私は乃木若葉。勇者をやっている」
「土居球子だ! タマって呼んでくれタマえ!」
「もうタマっち先輩ったら……えっと、私は伊予島杏といいます。よ、よろしくお願いします」
ん? 乃木?
「乃木若葉……土居球子、伊予島杏……? えっ! へ、平成の勇者じゃないですか!?!?」
何が一体どうなっているんだろうか?
「ん? 一応知ってはいたみたいだな、しかし、平成の勇者? 勇者は私達と長野の彼女くらいしか……」
「えっと、信じられないかもしれないですけど……かくかくしかじかで……」
「なるほど……いや、良くはわらないんだが」
「つまり、要約すると美影さんは私たちよりもあとの時代で勇者をやっていて、気がついたら樹界にいたということでしょうか?」
「そうなります……」
「しっかし、タマ達の後の時代だなんて想像出来ないなー」
一通り説明を終えると、それぞれ反応を示しはするが、疑ったりはあまりされていないようだ。
「あの、疑ったりとかは……」
「ん? ああ、それに関してはまずその精霊? が郡の元に居るから勇者関係者だと言うのはわかる、実態化していることには驚いたが……それに勇者や精霊、神樹様みたいに、不思議な存在が普通に存在しているんだ、有り得なくはないだろう」
たしかに。
「それに、郡さんは嘘をついているように見えませんでしたし……」
とりあえず、話のわかる人たちでよかった……。
「それでなんだが、話した感じ知らなさそうだけど一応聞いておきたいんだが、他に誰か見なかったか? 実はもう二人仲間が居るんだがはぐれてしまってな……」
仲間? もしかして。
「先程私に声をかけた時に言っていた千景という方ですかね?」
「ああ」
「すみません、私も今回は乃木さん達以外には……」
「いや、気にしなくていい。とりあえず今は変身ができないんだったな? 私たちから離れないようにしてくれ」
「はい、よろしくお願いします」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「それで千景のやつがな!」
「あはは……タマっち先輩、バレたら怒られちゃうよ」
「おおっと、それはタマったもんじゃないぞ! 美影、今の話は聞かなかったことにしてくれ!」
「たのむ!」とん言いつつ手を合わせて懇願してくる球子さんに苦笑いをしつつ、少し気になっていたことを聞いてみることに。
「そう言えば、西暦の勇者たちはどんなふうに勇者装束に着替えていたんですか?」
大赦では、勇者システムの改良などを行っていると聞いたため、過去から何が変わったのかが気になったのだ。
「ん? 私たちか? 私たちの場合はこの携帯アプリでだな……」
「あれ? ……これは……若葉さん、タマっち先輩。このアプリって入っていますか?」
「どうしたんだ? あんず」
「これは、初めて見るな……」
?
「どうかしましたか?」
「いや、実は知らぬ間にスマホの中に初めて見るアプリが入っていてな……」
「何でしょうか……これは、私たちの使ってる樹界の地図?」
「どれどれ……?」
あ
「これ、私たちが使っているアプリですね……」
「何?」
「一体どうなっているんだ!? よく分からないぞ!?」
確かに、知らぬ間に勝手にアプリが入っているだなんてどんなホラーだ……。
だけど
「ちょうど良かったです」
「?」
「実はこのアプリ、他の端末を持っている勇者の居場所が分かるんです。だから他の皆を探す手間が省けるんですよ」
「ああ、タマ達の使っていたのと同じ感じか! でも、あれってここまで範囲広くなかったよな?」
「まあ、乃木さん達の時代から多少は勇者システムもアップデートされていますし」
「こうすると……? すごい、こんなに遠くまで把握できるだなんて……仲間と敵の場所を細かく把握できるだけで、できることは全然違ってきますね」
各々がアプリにあーだこーだ言いつつ弄っていると、その中に他の勇者たちの名前を見つけたようだ。近くには見覚えのある名前も見えたので、どうやら先輩や園子さん達と合流していたらしい。
「さて、それなら話は早い。早く千景や友奈達と合流しよう」
パンパンと乃木さんが手を鳴らして注目を集めると、次の行動方針を口にする。
もちろん皆異論はなく、名前のあった方へと歩みを進めようとしたときに珠子さんが「あっ」と声を上げた。
「どうした?」
「赤い点ってバーテックスだよな?」
そう言って土居さんが見せてきた画面には、密集しすぎて見えづらいが、多量の赤い点に囲まれ始めている勇者達の名前が表示されていた。
「そ、そうです! つまり……」
「囲まれているな、援護しに行くぞ!」
「それじゃあ急いで……あー」
勇者の身体能力で一気に行こうとしたのだろう乃木さんが、こちらを見て踏みとどまった。
(すみません足手まといで……)
「若葉、杏! 美影のことはタマが背負うからもし敵が出てきたら頼むぞ!」
「すみません……」
「郡は気にするな、変身できないのではどうしようもない……いくぞっ」
「「「はい! (おう!)」」」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ちっ数が多い」
「まあでも、これくらい気合と根性と女子力で何とかなるわ!」
少し離れたところから聞きなれた声が複数聞こえてくる。
(((女子力って……?)))
風先輩の発言に慣れていないメンバーが固まった一瞬の隙に、樹さんの後ろにバーテックスが迫っているのが見えた。
「樹! 後ろ!」
「え? きゃあっ!」
「はあああああ!」
何とか若葉さんが敵と樹さんの間に割り込み一閃。
「無事か!?」
「えっええあああはい!! どちら様で「樹ぃぃいい!」お、お姉ちゃん」
状況を呑み込めていない樹さんへと風先輩が飛びついたことでさらに混乱しているのを尻目に、こちらを認識していなかった敵たちを横から伊予島さんが射抜いてゆく。
一度包囲網を崩せたおかげか、そこからは一方的に敵を殲滅することが出来た。
念の為にと小さなからだで私を姫抱きにして立ち回っていた球子さんに下ろしてもらうと、淡い金と紫色の影が音もなく"二つ"飛びついてくるのが一瞬見え_______
「うぐっ」
左右からの容赦ないサンドイッチ攻撃により、変身していなかった私は意識を刈り取られるのだった……
あ、やわっこいい匂________
「「ごめんなさい〜…………」」
(私は悪い子ですの看板を首から提げながら。)
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