S.S.S.S:転生したら上条当麻だった件 (戸塚うさぎ)
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プロローグ

内容は上条さんが記憶を失ったシーンなので知ってる人はスルーして大丈夫です。



『起きろ!上条当麻!お前には使命がある!』

 

「はっ」

 

目が覚めた。

 

ここはどこだ?

 

 

薬品のにおいがする。

 

「起きたかい?」

 

カエル顔の白衣を着た男がいた。

 

「起きて早々だけど君の身体の状態を医者として説明する」

 

医者?という事は、ここは病院か?

 

身体中に包帯が巻かれている事にようやく気がついた。

 

「先生、オレ、交通事故にでもあったんですか?」

 

「違う。僕も詳細は分からない。ただ君を運んできた人達によると竜王の殺息(ドラゴンブレス)に触れてしまったという事なんだが、僕には彼らの言うことが理解出来なくてね。連れてこられた時は身体中に打撲と火傷、右手は特に酷くて骨は粉々で皮膚と爪が剥がれていたよ」

 

「えー」

 

ものすごく引いてしまった。何をしたらそうなるのか?

 

・・・ん?思い出せない。というか俺は誰だ?

 

「先生。オレ、自分の名前を忘れたみたい。あれ?」

 

「君の名前は上条当麻、普通の高校一年生だ」

 

「それがオレの名前」

 

「単刀直入に言うと君は記憶喪失だ」

 

「冗談、という雰囲気でもないですか」

 

「正確に言うと君のエピソード記憶が完全に破壊されている。未来永劫、君の記憶は戻る事はない」

 

まじかー。記憶ないのかー。やばいなー。

 

「さらに悪い知らせをもう一つ」

 

「まだあるんですか!?」

 

「シスターの少女が君を心配している」

 

オレの知り合いか?オレってカトリックとか?

 

「彼らの話より彼女の話の方が君にとって重要だ。彼女の名前はIndex-Librorum-Prohibitorum。通称魔道書図書館という10万3000冊の禁書目録を保管している少女」

 

インデックスって目次?ペットの名前?魔道書図書館って何?ゲームの話か?

 

「彼女はイギリス清教に《首輪》をつけられていてね。それを君が破壊したんだけど、彼女の中にある防衛システムが作動して君に襲いかかってきたんだよ。でも君は彼女を救うことに成功した。君の記憶と引き換えにね」

 

「そんな事、こんな怪我をする程の戦いでどうやって彼女を救えたんですか?」

 

「奇妙な話ばかりだけど、君の右手。それはあらゆる能力を打ち消す幻想殺し(イマジンブレイカー)だ。それを使って救った」

 

「イマジン、ブレイカー」

 

右手を見るが何も思い出せない。

 

「彼女は自分を酷く責めている。君を傷つけたことにね。・・・どうするかい?君は彼女に会うか?それとも会わないか?」

 

「会います!」

 

「いいのかい?彼女をこれ以上悲しませるかもしれない。しかも君は彼女のことを何も覚えていない。それでも会うのかい?」

 

「はい」

 

「・・・分かった。では彼女を連れてくるから待っててくれ」

 

パタン

 

カエル顔の医者は病室を出た。

 

何で会うと言ったのだろうか?

 

☆☆☆☆☆

 

数分後、トントンとノックがした。

 

「はい」

 

ガララ

 

入ってきたのは腰まである長い銀髪とエメラルドのような緑色の目をして、純白の布地に金色の刺繍が施され高級なティーカップのような印象の修道服を着た少女。

 

「とうま!」

 

彼女はオレを見て安堵した表情をして駆け寄ってきた。

 

「君、誰?」

 

「・・っ」

 

彼女は硬直した。

 

「病室を間違えていませんか?」

 

彼女は首を振る。

 

「君大丈夫?ひどく悲しそうだ」

 

「大丈夫。大丈夫に決まってるんだよ」

 

彼女はなにかを堪えるように言った。

 

「もしかしてオレたち知り合いだった?」

 

「覚えてない?学生寮のベランダで出会ったんだよ」

 

「オレ学生寮に住んでるの?」

 

「覚えてない?とうまの右手で《歩く教会》が壊されちゃったんだよ」

 

「それって散歩のクラブかなんか?」

 

「覚えてない?とうまは魔術師と戦ったんだよ」

 

「ごめん。全然分からない」

 

「覚えてない?インデックスは、とうまの事が大好きだったんだよ」

 

 

「インデックスって何?人の名前じゃないし、オレ犬か猫でも飼ってたの?」

 

 

彼女の表情は必死で悲しみを悟られないように笑みを浮かべていた。瞳の大粒の涙を堪えながら。

 

数秒の静寂

 

「なーんちゃて!!!」

 

「え?」

 

「引っ掛かったー!!何犬猫言われて泣いてるんですかー。もしかしてそういう趣味ご希望何ですかー?」

 

「え?え!?どういうこと?記憶ないんじゃ」

 

「その言い方だと記憶ない方が良かった見てーだなー」

 

「でも脳味噌が破壊されて記憶が」

 

「あの医者がオレの脳細胞が破壊されたって言ったんだろ?でも魔術でこうなったんなら、話は簡単。上条さんのイマジンブレイカーで触っちまえばもと通りにわけ」

 

「イマジン、ブレイカー?」

 

「そう、オレの右手のこと。まあ、あの医者がそう読んでたんだけどな」

 

「ほっ」

 

ストン

 

インデックスは床にへたり込んでしまった。

 

「それより犬猫言われて潤んだ瞳を見せるインデックスさんマジ天使」

 

「と・う・まーーーーー!!!!!!!!!!」

 

「ギャーーーーーーー!!!!!!!」

 

ガリッガリッゴリッ

 

骨を噛み砕く音が病室に響いた。

 

☆☆☆☆☆

 

インデックスは怒って出て行ってしまった。入れ違いでカエル顔の医者が来た。

 

「あらら。派手にやられたね」

 

オレの体に残った歯型を見て呆れたように言った。

 

「ははは」

 

 

 

「あれで良かったのかい?」

 

カエル顔の医者は病室のベットの横で真剣な顔で聞いてきた。

 

「彼女の泣き顔なんて見たくない。そう思えたんです。案外オレはまだ覚えてるのかもしれません」

 

「君の思い出は脳細胞ごと死んだ。いったいどこに君の思い出が残っているというだい?」

 

 

「心、じゃないですか」

 

 

この気持ちはただの自分のエゴかもしれない。

でもインデックスの笑顔を守りたいと心が叫んでいる。

ならこれはオレの使命だ。彼女を守れるのはオレにしか出来ない。

 

 

☆☆☆☆☆

 

学園都市。窓のないビル。その中に縦に長い水槽が1つ。その中に重力を無視し逆さまで佇む『人間』

 

その容姿は幼い少年にも大人な女性にも見え、病衣を着ている。

 

『ふふふ』

 

「何か嬉しいことでもあったのかい?学園都市統括理事長アレイスター・クロウリー」

 

『人間』に話しかけたのは赤髪に左目の下にはバーコードのタトゥー、耳にはいくつものピアスをつけタバコを咥え神父服を着た長身の少年だった。

 

『いいや。《計画(ぷらん)》は順調だということだ。ステイル・マグヌス』

 

『人間』は口を動かさずに意思を疎通した。それが魔術なのか超能力なのかステイルは気にしなかった。

 

「で、話とは?」

 

『錬金術師アウレオルス・イザードについて。まあ、君の方が知っているだろうが』

 

「あの時代遅れの魔術師がどうした?」

 

『彼が吸血殺し(ディープブラッド)を使い面白いことをしている』

 

「まさか!?ということはアレが実在していたのか!?」

 

『そうだ』

 

「こんなことをお前は隠していたのか。・・・あの子に何かあったらお前を殺す」

 

『ふふふ、早く手は打った方が良い』

 

 

「クソ、《吸血鬼》とは皮肉なものだな錬金術師」

 

 

☆☆☆☆☆

 

時は遡り異世界にて。

 

「なんだあの黒い霧は!?」

 

「きゃあ!?吸い込まれるー」

 

「不覚」

 

「助けてーリムル様ー!」

 

「ついに寿命かのう」

 

「おえっ何で俺も!?」

 

「ワオーン!」

 

連邦国ジュラ・テンペスト、中央都市リムルの住人が一夜にして消失。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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三沢塾

駄文注意。


「とうま、とうまー!」

 

「どうした〜」

 

「今、モクドナルドのラッキーセットを頼むとマジカル☆カナミンのストラップが五色のうちどれか手に入るんだってー」

 

「そうなのか〜」

 

「とうま、モック連れてって」

 

「・・・インデックスさん。あなた様は上条さんの財布がこれ以上軽くなってしまうことについて考えて頂きねえでしょうか?」

 

「ちょっと分からないかも」

 

「コラー!てめえ居候だろうが!少しは上条さんに気を遣いなさい!」

 

「むー。そんなこと言ったってモックに行きたい欲は抑えきれないんだよ!」

 

「意味わかんねー」

 

「カナミンストラップ欲しい!欲しい!欲しい!」

 

「ダメったら、ダメです!あんなぼったくりバーガー屋に行けません!」

 

「とうまのケチ」

 

そう言ってインデックスはふて寝をした。

 

この自分は悪くないのに悪いみたいなムードになる。しょうがない買ってやるか、いやいやいや。

 

これくらい言わなければこの後も付け込まれるに違いない。心を鬼にしなければ。

 

実際オレの残高はかなりやばい。当たり前だ。高校生の1ヶ月分の生活費で2人で生活しているのだ。

 

学園都市の学生には奨学金があるらしいが無能力者(レベル0)のオレには雀の涙程度しかない。

 

記憶を失う前のオレは家計簿をつけたり、スーパーのセール日をカレンダーに付けたりしていたみたいで、それを頼りに生活している。

 

そもそも何で彼女と生活しているのだろうか?インデックスは当たり前のようにオレの部屋にいる。

 

以前どんな関係だったんだ?もしや恋人?だがそれらしいフラグは今までなかったぞ。

 

うーん。バイトでもしようかな〜。つーかコイツ毎日部屋でゴロゴロしてるけどやることねえのか?

 

「あ、そう言えばとうま」

 

「なんだ?」

 

「雑誌のクロスワードを解いて応募したらショウヒンケンというやつが手に入ったんだよ」

 

「!?」

 

「でも、カナミンストラップがないと力が入らなくてとうまに渡せないかも」

 

「降参です。上条さんが悪かったです」

 

こうしてオレは尻に敷かれるのであった。

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区モクドナルド。

 

「申し訳ございません。マジカル☆カナミンストラップは完売になりました」

 

「不幸だ」

 

ウキウキで来たインデックスもこの世の終わりかのような顔をしている。

 

「完売だってさ。しょうがないけどバーガーで我慢しろよ」

 

「・・・」

 

ああ、いっそ上条さんの頭を噛み付いてくれ。そんな表情されたら上条さん何も言えないじゃないの。

 

 

 

「ねえ。カナミンストラップが欲しいの?」

 

 

いつから居たのかインデックスの隣に腰まである長い黒髪に巫女装束の少女がいた。

 

「これ。あげる」

 

「ふぇ、いいの?」

 

「構わない。私も。カナミン。好きだから」

 

「私、インデックスっていうだよ!」

 

「私は。姫神秋沙」

 

「あいさ。ありがとう!大切にする!」

 

「どういたしまして」

 

「あいさ、友達になろ!」

 

「うん」

 

「わーい!」

 

こうしてシスターさんと巫女さんのフレンド登録が完了した。

 

「オレは上条当麻。ありがとな姫神」

 

「あなたは。もっと彼女を大切した方が。いいと思う」

 

!?ぎくり。

 

巫女だからオレの心はお見通しなのか?図星を突かれて何も言えない。

 

「私は。もう行かなくちゃ」

 

「またねー。あいさー」

 

不思議な少女だ。そう思った時、彼女の周りに黒スーツの男たちが彼女を取り囲んだ。

 

「お前ら!姫神から離れろ!」

 

「大丈夫。彼らは私の塾の先生だから。上条君」

 

そう言って姫神は行ってしまった。

 

塾の先生だって?

 

いったい彼女は何者なんだ?

 

☆☆☆☆☆

 

帰り道。学校帰りの学生たちが歩いている道で。

 

 

「ふふふん♪ふふふふん♪ふ、ふ、ふーん♪」

 

インデックスはご機嫌にスキップしている。

 

彼女の嬉しそうな姿を見ているとオレまで嬉しい気持ちになる。

 

『あなたは。もっと彼女を大切した方が。いいと思う』

 

姫神に言われた一言が胸に刺さっていた。

 

大切にするって言ったってどうしたらいいんだ?

 

見ず知らずの少女に衣食住を提供してあげているのに、何でこんなにもあの言葉が頭を離れないんだろう。

 

悶々と考えているとインデックスを見失ってしまった。

 

「おーい、インデックスー。ったくどこ言っちまったんだ?」

 

走って探してもどこにもいない。

 

シスター姿だし誰か見た人に聞いてみるか。

 

そう思った時に異常に気がついた。

 

人が誰もいない。気配すらない。露店の店員すらいない。

 

「なんだ!?この状況」

 

 

 

「君も知っているだろう。《人払い》だ」

 

 

目の前に現れたのは赤髪、目の下にバーコードのタトゥー、耳にいくつものピアスをつけ神父の服を着た長身の少年。

 

誰だコイツ。前のオレの知り合い?

 

「は!?インデックスは!?」

 

「あの子は離れてもらったから心配するな。ったく、仮にも彼女の保護者なんだからしっかりしてほしいね上条当麻」

 

やはり、知り合いだ。だが殺気が肌で感じられる。

 

「改めて、僕はイギリス清教必要悪の教会(ネセサリウス)所属の魔術師ステイル・マグヌス。今日は君に用事があって来させてもらった」

 

「用事ってのは何だ?」

 

「三沢塾。君も名前くらい知ってるだろ?現在急成長している予備校だ。だがそこが宗教団体のアジトとなっていてね、元凶はアウレオルス・イザード。彼は三年前から行方不明だったが最近学園都市に現れたという情報が入った。彼は古来の魔術、錬金術を使う奴である計画を企てていることが分かったんだ」

 

「計画?」

 

「錬金術師の夢、世界のシュミレート。つまりあらゆるものを錬成させることができる技術。こんなものが出たら世界は終わる」

 

なんだと、分からん。

 

「この計画を企てるために奴は吸血殺し(ディープブラッド)を手に入れた」

 

「それは何だ?」

 

「呼び方は様々あるが、簡単に言うと吸血鬼を誘う人間のことだ」

 

「吸血鬼だって?」

 

「僕たち魔術師だって未確認の生物だ。だがもし奴に吸血鬼の力が手に入ったら大変にことになるだろうね」

 

ステイルは人ごとのように言ってのけた。

 

「単刀直入に言おう、僕はこれから三沢塾に乗り込む」

 

おう、頑張れよ

 

「何を人ごとのように聞いてる。君も来るんだよ」

 

「なんだって」

 

「拒否権はない。来ない場合は禁書目録をこちらで回収する」

 

「てめえ!!」

 

「ふん、そうだよ。その敵意の目、僕たちの関係はこうあるべきだ。で、どうする?」

 

「くそったれ。行ってやんよ」

 

オレは吐き捨てるように言った。

 

「そうだ。吸血殺し(ディープブラッド)の写真を渡す。名前は姫神秋沙、彼女の保護も仕事だ」

 

☆☆☆☆☆

 

インデックスと一緒に部屋に戻った。

 

「インデックス」

 

オレはこの異変を言わなければならない。

 

「なに?とうま」

 

「お前のお腹はいつのまに膨らんだ?」

 

インデックスのお腹が不自然に膨らんでいる。

 

「食べ過ぎちゃったかも」

 

ススス、膨らみは胸に移動した。

 

「いつの間に立派に成長したんだ?」

 

「成長期かも」

 

「にゃー」

 

インデックスの胸元から可愛らしい三毛猫の頭が出た。

 

「スフィンクス出てきちゃ駄目だよー」

 

「名前までつけてやがる!?」

 

「とうま、私はシスターだから迷える子羊は保護しないとなんだよ」

 

「じゃー、お前の服の中にトイレ用の砂を入れるか?」

 

「むー。とうまのイジワル」

 

そう言ってインデックスはベットの上でそっぽを向いてしまった。

 

その瞬間、姫神の言葉を思い出した。

 

「分かりましたよ!でも責任持って飼えよ!」

 

「わーい良かったねースフィンクスー」

 

「にゃー」

 

大切にするとはこういうことなのか?分からないが彼女が笑顔だし良しとしよう。

 

「そうだ。ちょっと留守番頼めるか?すぐ戻る」

 

「分かったんだよー」

 

インデックスはスフィンクスに夢中で軽く返事をした。

 

☆☆☆☆☆

 

寮の廊下に出るとステイルが星?五芒星のプリントされたカードを張っている。

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)は置いていく。彼女の護衛のためだ」

 

「お前ってインデックスのこと好きなの?」

 

「何をふざけたことを言う!?殺すぞ!」

 

こいつ絶対好きじゃん

 

「それより行くぞ」

 

「おう」

 

道中、ステイルは何度も引き返すなら今のうちだと警告してきた。

 

引き返して欲しいのか一緒に来て欲しいのか、天邪鬼なんだなコイツ。

 

「着いたぞ」

 

高層ビル丸々塾になっているらしい。

 

入り口から堂々と入る。

 

「なんだよ普通じゃん」

 

「当たり前だろ。ここは今でも予備校なんだから」

 

周囲を確認すると柱に何か倒れている。

 

「何だこれ?ロボット?」

 

鎧だろうかそれが倒れて赤い色が目立っていた。

 

「それかい?死体だよ」

 

「!?」

 

☆☆☆☆☆

 

三沢塾、最上階にて。

 

「警備は頼んだぞ。ゴブリンと獣共」

 

「了解」

 

錬金術師はさらなる力を手にしていた。

 

「これが異世界の力か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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黄金錬成アルスマグナ

安定の駄文。


 

「死体だって!?」

 

「正確に言えば鎮圧部隊の騎士のの死体だ。ここは戦場なんだから当たり前だろ?」

 

「生徒達は気づいていないのか?」

 

オレは周囲を見渡しながら言った。生徒たちは普通に歩いている。

 

「コインの表と裏と同じだ。彼らのいる表の世界からは僕たちのいる裏の世界を干渉することが出来ない。そういう術式がこの建物全域にかかっている。君の右手で触れても無駄だよ。核の部分を破壊しなければ解けないからね」

 

そう言うとステイルは亡骸に祈りを捧げた。

 

「行くぞ」

 

オレたちが戦う理由が増えた瞬間だった。

 

☆☆☆☆☆

 

オレたちは階段を上がっていた。

 

「なあ、エレベーター使わないのか?」

 

「さっきも言ったろ。裏の世界の僕達はこの建物内で表の世界に干渉できない。だからエレベーターのボタンを押せない」

 

「ふーん、じゃあ電話は?」

 

「こんな時に何の連絡をするんだ君は?」

 

「いいから、いいから」

 

自宅に電話をかけた。

 

プルルルル ガチャ

 

『はい、インデックスじゃなくて、カミジョウです!」

 

「おー、インデックス俺だー」

 

『とうま!会って話した方が効率的なのにわざわざ電話なんていう非効率な手段を使って連絡してくるなんてどんな要件かな?」

 

トゲのある言い方に苦笑するしかない。

 

「なんでもねえよ、腹減ってるだろうから冷蔵庫に」

 

『冷蔵庫にあったラザニアなら全部食べたよ』

 

「確か2人分あったはずだが。はっ!?待てよ、奥にプリンがあったがまさか!?」

 

『・・・ごめんなさい。でも美味しかったから仕方ないんだよ』

 

とんでもない理屈だ。

 

「ま、別にいいや。いま出かけてて遅くなるから留守番よろしくな」

 

『とうま!』

 

ピッ また何か言われそうだったので切った。

 

まったく世話がかかる。

 

「君たちは仲が良いんだな」

 

「妬いてんの?」

 

「勘違いしているようだが僕は彼女に対して恋愛感情はない。僕にとって彼女は大切な存在で僕の命に代えても守るべき人とうことだ。彼女は僕を覚えてはいないけどね」

 

「そんなに硬い絆だったのか?」

 

「僕だけじゃない。一年周期で記憶が消える彼女の隣には様々な人がいて、彼らは等しく彼女のために行動していた。例え彼女が全てを忘れてしまってもね。そして今は君がその席にいて、更に彼女の呪いを解いたんだ。彼女は君を恩人と思っても当然だ」

 

そんな歴史があったのか。彼女の笑顔はオレの知らない誰かに向けられていた。

 

インデックスを救ったのは前のオレだ。インデックスは今のオレに感謝しているわけじゃない。

 

何となく嫌な気持ちになった。なんて言うのか分からないが、心を抉られる気持ちになった。

 

☆☆☆☆☆

 

沢山の生徒が食事を取っている。食堂にて。

 

「意外とカルト教団でも普通の様子だね。てっきり教祖の額縁でも飾ってあるかと思ったよ」

 

ステイルはタバコをふかしながら気怠く言う。

 

「そんなもんじゃねーのか。そういや、戦いになったら生徒たちはどうする?避難させる計画とかあんのか?」

 

「そんなこと僕の知ったことではない」

 

「お前!」

 

そんなことを話していると生徒たちがこちらを見てきた。

 

「「「警告、侵入者アリ。警告、侵入者アリ。警告、侵入者アリ」」」

 

!?

 

「警報が作動したぞ。気を引きしめろ」

 

すると生徒たちの額から光の玉が出てきた。

 

「くそ!生徒に既に細工済みか。魔術による攻撃、頼んだよイマジンブレイカー」

 

「は!?」

 

そう言うとステイルは走って逃げた。

 

ふざけんな!あの不良神父!

 

オレはステイルの背中を追って追いかけた。いくつもの光の玉も付いてくる。

 

「何で一緒に逃げる!異能の力を防ぐのは君の専売特許だろ?」

 

「こんだけ数あったら右手だけで対応できねえよ!」

 

「使えないな」

 

「なんだと!」

 

「とりあえず僕は先に行くからね」

 

「あっ!」

 

ステイルは1人魔術を使って逃走した。

 

オレは次あったら奴をぶん殴ることを決意した。

 

多数の光の玉から走って逃げるがどこまでも追ってくる。

 

右手を使うか、そう思った時光の玉が突然消えた。

 

何が起こった?

 

カツンカツン

 

階段から降りてくる足音。

 

「姫神!?」

 

「また。会ったね」

 

「お前が止めたのか?」

 

「うん。今のうちに。逃げて」

 

「お前も一緒に来るんだ!オレ達はお前の力を悪用する奴からお前を助けにきたんだ!」

 

「どうして?私はこの力が憎かった。それを彼は彼の大切な人のために使うと言ってる。知ってる?吸血鬼は私達人間と何も変わらない。なのに私はこの力のせいでたくさん殺した。学園都市に来れば何とか出来ると思ったけど無駄だった。彼が私にとって最後の救いなの。だから助けなんて望んでない」

 

「だからって!」

 

その時、背後から女子生徒が現れた。彼女は食堂の生徒と同様に額から光の玉を出そうとしたが、そこで彼女の体から血が噴き出した。

 

「どうなってんだ!?」

 

そこで彼女は倒れた。

 

血が吹き出して危険な状況の彼女に対して出来ることは俺にない。

 

「どうすれば?」

 

「任せて。血の流れに関することなら私は得意」

 

そう言うと彼女はテキパキと応急処置を始めた。

 

☆☆☆☆☆

 

三沢塾、ある一角にて。ステイルは多数の生徒との戦いをして三沢塾に掛かっている術式の角の部分に到達していた。

 

そこに1人の男が近づく。

 

「自然。大きな術式でおびき寄せることが出来た。当然。侵入者は2人だったはずだが。現然。貴様の使い魔は死んだか」

 

整った顔にオールバック、白いスーツの白人。

 

「ふん、奴はこの程度で死ぬ玉ではない。ここに僕をおびき寄せてどうするつもりだ?錬金術師アウレオルス・イザード」

 

絶対的に勝利を確信しているステイルは言い放つ。

 

「当然。処理だ」

 

☆☆☆☆☆

 

「すげーな、こんなことも出来るのか」

 

女子生徒の処置が終わってオレは姫神に感心していた。

 

「私。魔法使いだから」

 

「は?」

 

そんなアホな会話の途中、奥からコツコツといくつもの足音が響いてきた。

 

「なんだ。あいつら」

 

オレは困惑した。彼らはそれぞれ人の形をしていた。だが耳は縦に長く、肌は土色をしていた。さらにそれぞれに人の腰ほどの大きさをした狼のようなツノの生えた獣を引き連れている。

 

「彼らは人鬼族(ボブゴブリン)、中心にいる屈強な1人はゴブリンキング。獣は黒嵐星狼(テンペストスターウルフ)。上条君。死にたくないなら逃げて」

 

「くそ!女の子の前で逃げられるわけねえだろうが!」

 

オレは彼らの群れに飛び込んだ。

 

テンペストスターウルフが竜巻を発生させこちらに放った。

 

一か八か、右手を構える。

 

触れた瞬間竜巻は消えた。

 

いける!右手の力が通用する相手だ。

 

相手が驚いている隙に近くのボブゴブリンを殴った。

 

だがそこで追撃が出来なくなった。他のボブゴブリンたちが消えた。

 

「どこ行った?」

 

「後ろ!」

 

姫神の声も虚しく背後からの一撃で倒されてしまった。

 

その後地面に屈服させられた。

 

「くそ!」

 

カツカツカツ そこへオールバックに整った顔つきの白いスーツを着た白人の男が歩いてきた。

 

「必然。私の兵隊が勝利した。憮然。少年よ、その程度か」

 

「てめえがアウレオルス・イザードか!姫神を解放しやがれ!」

 

「当然。躾のなってないガキは嫌いだ。口を閉じろ」

 

「!?」

 

何かの力が働きオレの口が開かなくなった。

 

なんなんだ、この力?

 

「憮然。つまらんな。吹き飛べ」

 

「待って!この少年は今日会ったばかりの見知らぬ私を助けるために来ただけ。その行為は間違いだけど、一般人を殺すなんてあなたがやりたい事は何なの?もし一般人を巻き込んで私の力を使うのではあれば私はいま私の舌を噛んで死ぬ!」

 

姫神!馬鹿野郎!

 

「ふん、必然。こんな所で時間を割く余裕なし。少年、案ずるな。今回は殺しはしない。ここで起きた事全て忘れろ!」

 

グサッ アウレオルスは突然自分の首に針を刺した。

 

目の前が真っ暗になる。

 

☆☆☆☆☆

 

学生寮にて。インデックスは入浴中とうまとの電話を思い出していた。

 

勝手に冷蔵庫のものを食べて怒らないのは様子がおかしい。

 

何か別のことで気にしている暇がないのでは?何か嫌な予感がする。

 

いてもたってもいられず、着替えて部屋から出た。

 

「何これ?ルーンのカードがこんなに」

 

学生寮の至る所にルーンのカードが貼られていた。

 

「この魔術師の痕跡をたどっていけばとうまに会えるかも」

 

彼女の脳内には10万3,000冊の魔道書が記憶されている。魔術の解析などお手の物だ。

 

辿っていくと大きな建物に入った。

 

「何なのこの場所。至る所に魔術の結界が張られているんだよ」

 

とうまはこんな場所に来て何をしているのか?心配でさらに奥に進もうとした時、オールバックで白いスーツを着た男が奥から出てきた。

 

「久しいな。覚えていないか、必然。アウレオルス・イザートという名にも聞き覚えはないな、否。それでこそ行幸だ、眠れ!」

 

インデックスは突然倒れてしまった。

 

☆☆☆☆☆

 

ある公園にて。

 

「はっ!?」

 

突然目が覚めた。どうやらブランコに乗っているようだが。

 

「目が覚めたか。その様子だと今の状況を把握出来ていないね」

 

横にはステイルがいた。

 

「オレ達何でここに?」

 

「分からない、しかし君といるという事は何かしなければならないことがあったのは間違えない。まあ忘れるような些細なことだろうさ」

 

「ん、そうなのか?」

 

記憶に何かあったのか?オレは自然と右手で頭を触った。

 

瞬間、全てを思い出した。

 

「そういうことか。ステイル待て!オレたちは今すぐやらなきゃいけないことがある!」

 

「なんだい、いきなり?」

 

「うるせえ!オレのことよくも囮にしてくれたなこの野郎!」

 

ガツン オレのパンチがステイルにクリーンヒットした。

 

☆☆☆☆☆

 

三沢塾前にて。上条とステイルが走ってくる。

 

だが建物周辺には数人の騎士が立っていた。

 

「あいつら!」

 

「騎士団の生き残りのようだ」

 

「何をするつもりなんだ?」

 

「きっと直伝の大型魔術でも建物に打ち込むんだろうさ」

 

「なんだって!?」

 

そう言っている間に騎士の剣が光を空へ放った。そして空から雷にも似た稲妻が建物に直撃した。

 

崩れる壁、割れる窓ガラス。建物は倒れていく。中の状況は悲惨な結末に向かうに違いない。

 

「あそこには姫神や無関係な人たちが!」

 

しかし突然、時間が戻ったかのように建物は修復した。

 

「今何が?」

 

「あれが僕たちの相手アウレオルス・イザードの力、黄金錬成(アルスマグナ)だ」

 

それでも行かなてはならない。進もうとした時、見慣れた修道女の帽子が落ちていた。帽子の下から三毛猫が出てきた。

 

「スフィンクス!まさかインデックスもあの建物の中なのか!?」

 

圧倒的な力を知りさらに守るべき少女も危険な状況だと分かった。

 

「状況は最悪だ。急ぐぞ」

 

オレたちは建物に入ろうとした時目の前の陰から1人のボブゴブリンが現れた。

 

「お前!またか!」

 

オレ達は臨戦態勢に入った。

 

「私は敵ではありません!私はボブゴブリンのリグルと申します!どうか助けては頂きませんでしょうか?」

 

なんとリグルと名乗る見た目青年のボブゴブリンは土下座をしてきたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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吸血殺しディープブラッド

駄文である


「お前、ゴブゴブリン!また襲いにきたのか!?」

 

オレは目の前にいるリグルと名乗るゴブゴブリンに言った。

 

「そのような恐れ多い気持ちは滅相もございません!先程は大変申し訳ない事を致しました!お許し頂けないことは承知の上で、お願いがございます!私の仲間たちを助けてください!どうかこの通り!」

 

リグルは頭を地面に押し付けて頼んだ。よく見ると額からだろうか、地面に血が濡れている。

 

「上条当麻。貴様の知り合いであっても僕の邪魔をするのではあれば容赦はしない。どかないなら殺すまでだ」

 

ステイルは手から出た炎を操りリグルへ放った。

 

リグルに当たる直前、右手を使い炎を消した。

 

「待ってくれ」

 

「なんだい?邪魔するなら君も殺す」

 

「オレは建物の中でコイツの言う仲間に襲われた」

 

「だったら」

 

「だったら利用価値がある。こいつから情報を引き出し先に進んだ方がオレたちの勝機が上がる」

 

「ふうん。一理ある。だがこいつが嘘の情報を言うかもしれない。それで死んだら元も子もない」

 

「ああ、だからリグル。オレたちがお前を信頼できる証を証明してくれないか」

 

オレはリグルに向かっていった!

 

「はっ!では神父殿先程の炎をもう一度出して頂きませんか?」

 

ステイルは言われた通り炎を出す。

 

 

 

リグルは何のためらいもなく両手を炎に入れた。

 

 

「何やってんだ!?」

 

慌ててオレは止めようとした。

 

「止めないでください!私の仲間の命がかかっているんだ!!」

 

リグルの目は本気だった。

 

ステイルは目の前光景に対して驚いた表情をしなかった。

 

「・・・炎よ、もっと燃えろ」

 

炎はさらに燃えた。

 

リグルの皮膚が焼ける匂いがした。

 

でもリグルは表情を変えない。

 

リグルの両手がただれ始めた時、炎は消えた。

 

「言え」

 

ステイルはリグルに尋問をするかのように言った。

 

「ボブゴブリンとテンペストフルフは影移動をします。移動範囲は自分の影が届くまで可能です。ただし影移動はボブゴブリンとテンペストウルフの間で十分な絆があってこそ出来ます。そこに勝機があります」

 

「勝機とは?」

 

「不思議な右手を持つ貴方様です」

 

リグルはオレに顔を向けて言った。

 

「オレ?」

 

「はい。まず最初になぜ私だけ自由に動けているか説明しなければなりません。時間がないので簡単に言うと、私は何かの能力で操られていました。意識はあるのに体が勝手に動くのです。ですが、あなた様の拳が私に当たった際、術が解けたのです」

 

「と言うことはオレの右手であいつら全員を触れば解けるっていうわけか」

 

「君の右手は個に特化し全に弱いだろ。集中攻撃されたら終わる」

 

「そ、そうか。ならどうすれば?」

 

「テンペストウルフを1匹でいいので触ってください。そうすればテンペストウルフの性質である《全にして個》が発動し全てのテンペストウルフに掛けられた術は解けるでしょう。そしてそれぞれボブゴブリンとテンペストウルフはパートナー同士なので彼らが主人を止めてくれるはずです」

 

ゲームの中に出るようなキャラクターの話だから疑いたくなる。

 

でもリグルの両手はもう使えないだろう。それ程までの覚悟を持っている彼を信じるのが情というものだ。

 

「分かった。では作戦を練ろうか」

 

「よろしく頼むぜ、リグル」

 

「はっ、この命に代えて」

 

☆☆☆☆☆

 

三沢塾、アウレオルス・イザードがいる部屋の近くの階層にて。ホブゴブリンとテンペストウルフ達が警備をしている。

 

そこへ赤髪の神父が現れた。

 

「ふうん。これがホブゴブリンにテンペストウルフか。いったい今までどこで生きていたのか。ま、今はどうでもいいか」

 

「侵入者発見。排除します」

 

「やってみろ」

 

ステイルは大量のルーンカードをばら撒いた。それぞれが彼の魔術の起点となる。

 

「巨人に苦痛の贈り物!」

 

大量の炎がホブゴブリンとテンペストウルフに向かう。

 

嵐の息吹(テンペストブレス)

 

しかしテンペストウルフ達から竜巻が放出された。

 

このままでは炎は消される。

 

しかし1人の少年が右手を構えて走り出す。

 

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 

炎と竜巻のぶつかる瞬間、ある場所だけが不自然に炎と竜巻が消えた。

 

そこから飛び出した少年は近くのテンペストウルフに触れた。

 

瞬間、一斉にテンペストウルフはゴブゴブリンを取り押さえた。

 

「カミジョウ殿!ゴブリンキングに触れてください!」

 

「おう!」

 

右手で触る。するとゴブリンキングからの殺気は消えた。

 

「よくやった、リグル。お二人ともここはもう大丈夫ですので先に行ってください」

 

ゴブゴブリン達は脳内で意思疎通を図ることが出来る種族であったため、意識の中の彼らは作戦を把握していた。体だけが操られていたので術さえ解ければ問題なかった。

 

「分かった!」

 

敵はアウレオルス・イザードのみ。二人の少年は少女達を救うため走り出す。

 

☆☆☆☆☆

 

姫神秋沙。彼女には生まれた時から吸血殺し(ディープブラッド)という吸血鬼を誘い吸ったものを灰にする能力に目覚めていた。

 

故郷は人里離れた集落。そこには大切な人たちがいた。

 

彼らは姫神秋沙を大切に育てた。そこには確かな絆があった。

 

しかし彼らは吸血鬼だった。姿形は人間なのに性質は吸血鬼、本当は人の血なんて吸いたくないのに吸ってしまったら死んでしまうのに彼らは姫神の肌に牙を立て吸ってしまった。

 

死んでいく吸血鬼たち。そんな光景を何度も姫神は見て自分の能力を憎んだ。

 

学園都市の能力開発で自分の能力に を消すことが出来るかもしれない。

 

そう期待してこの街に入ったが、学園都市さえ手に余る能力で測定不能の結果だった。

 

「もう死のう」

 

ビルから落ちようとした時、ある男が彼女の手を取り止めた。

 

「何で止めるの。私は生きてはいけない」

 

しかしある男、アウレオルス・イザードはこう言った。

 

「君の力で人を救うことが出来る」

 

「本当に。本当に私の力で誰も傷つけないで人を救うことができるの?」

 

その微笑みに嘘は無かった。あるのはたった一つの願い、愛する人を救いたいという思いだけ。

 

だから私は。

 

☆☆☆☆☆

 

アウレオルス・イザードの居場所はステイルが1度目の潜入の時に暴いていた。

 

それよりもオレは最後の決戦前にアウレオルス・イザードへの対抗策を振り絞って考えていた。

 

「くそ!言葉通りに何でも思い通りになるなんて反則じゃねえか!しかも姫神だけでなくインデックスまで捕まってるかもしれないのに」

 

「仮にあの子が迷い込んで捕まったとしても危害は加えられないだろうさ。なぜなら彼は・・・!?そうか!そういうことか!チッ、三年も潜伏していれば世情にも疎くなるわけだ」

 

ステイルは何かに気がついてイラついたようにタバコを捨てた。

 

何の事だ?

 

この後ステイルから語られたアウレオルス・イザードの目的に驚愕した。

 

☆☆☆☆☆

 

三沢塾、最上階にて。上条当麻とステイルはアウレオルスイザードと対峙する。

 

アウレオルス・イザードの側には姫神、その近くの長い机の上でインデックスが眠っている。

 

「姫神!インデックス !」

 

今すぐにでも助けに行こうと走り出すのをステイルが止める。

 

「アウレオルス・イザード。君の目的は残念ながら果たすことは出来ない」

 

「ふん、今更我が真意に気がついたのか。ならば己が無力に身を焦がすが良い」

 

「うまくいくなら焦がしあいもあるんだけどね、彼女を救うことは出来ない。インデックスを救うことはね」

 

「貴様は出来なかった。だが私は、私はこの子を。10万3,000冊の魔道書を背負いその呪縛から解けることが出来ない少女にも関わらずその運命を受けてもなお、他人の幸福のために祈りを捧げる少女」

 

三年前、アウレオルス・イザードはインデックスのパートだった。去年はステイル。そして今のオレが彼女のとなりにいるように。

 

「彼女は一年ごとに記憶を消さなければならない。そうしなければ彼女は生きてはいけない。そういう人には抗えぬ運命だった。しかし」

 

「逆に言えば人ならざるものを使えば解決するということだ」

 

「吸血鬼は無限の命を持つもの、無限の記憶を人と同じ脳に蓄え続けるもの。あるんだよ吸血鬼には、無限の記憶を蓄えたとしても自我が崩壊しない術が!」

 

「手に入らなかった場合は?」

 

「ふん、ならば彼女を吸血鬼にするまで」

 

なんだと!?生徒たちに魔術を使わせて姫神を利用して更にインデックスを吸血鬼にしようとしてるのか!!

 

「ふざけんじゃねぇ!!」

 

「必然。この子が救われることより大事なことはない。あの子が記憶を消される直前、あの子は言ったのだ!忘れたくないと。もう指一本動かせない状況で!笑顔で告げたのだ!分かるか!?あの子の悲劇を止めるためには手段など選んでいる場合ではない!!」

 

ステイルはタバコに火をつけて吹かしながら聞いていた。

 

「なるほどね、けどその計画には致命的な欠陥がある。上条当麻行ってやれよ」

 

「てめえ、いったいいつの話をしているんだ」

 

「何?」

 

「インデックスはもう既に救われているっていうことだ。彼の右手に宿る人のならざる能力イマジンブレイカーによってね」

 

「そんなまさか!」

 

「良かったな、君の望む通り彼女は幸せそうだよ。彼の隣で寝でね」

 

「くっ」

 

そうなのだ。アウレオルス・イザードの目的はインデックスの一年周期で記憶を消される呪いを解くこと。それは前のオレが解決した。

 

だからそもそも争う必要なんてなかったのだ。

 

「う〜ん、とうま」

 

インデックスが寝言を言った。

 

「とうま、お腹すいた〜。りんごが食べたいんだよ〜。むにゃむにゃ」

 

戦場の空気が一変して和んだ。

 

「はははは」

 

ステイルはバカらしくて笑った。

 

「はは」

 

オレも力が抜けて笑ってしまった。

 

「フハハハハ」

 

アウレオルスも笑い声を上げた。

 

 

「フハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!倒れ伏せ侵入者共!」

 

 

狂った笑い声をあげ言った。

 

瞬間オレたちは倒れ臥す。

 

「ぐっ」

 

「我を嘲笑い、苔にしよって!よかろう、貴様らの死によって償ってもらおう!!!」

 

「待って!」

 

姫神が庇うように立ち塞がる。

 

「やめろ!姫神!」

 

オレはどうにか右手に噛み付いた。

 

「死ね」

 

だが遅かった。姫神が倒れる。

 

「姫神ーーーーーーー!!!!」

 

オレは全力で走り姫神を抱きかかえた。右手が触れた瞬間、姫神の息が戻った。

 

「あ。私」

 

「もう大丈夫だ、姫神。後は任せろ」

 

姫神は糸が切れたかのように気を失った。そっと抱きかかえ安全な位置に寝かせる。

 

「アウレオルス・イザード!!てめえが、自分の目的のために何の罪もない女の子が死んでもいいっていうんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!!」

 

最終決戦、今まで背負ってきた負けられない理由を背負い少年は拳を握る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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リムル・テンペスト登場

駄文だよ


「あー床冷てー」

 

ステイルが床に突っ伏しながら場違いなことを言う。

 

ここは戦場、オレはアウレオルス・イザードと対峙している。

 

「憮然。ゴブリンと獣が殺していればこんな面倒ごとにならなかった。当然。これが終わったらヤツを殺し、金を取り戻す」

 

「ヤツ?金で買ったって言うのか!?」

 

「自然。あんな代物、どこでもいるものではない。ヤツはたくさん持っていると言っていたが、ヤツを殺した後にでもそれで私が一儲けするのも悪くない」

 

「てめえ!!!リグル達は物なんかじゃあねえ!!オレたちと何も変わらない誰かを守りたいって心を持ってるんだ!!」

 

「理解出来ぬな。吸血鬼同様、私の駒として使い続けてやる」

 

「この野郎!!!」

 

オレはアウレオルスに向かって走り出した。

 

「窒息死」

 

アウレオルスはクビに針を刺し言った。

 

「ぐ!!」

 

息が出来ない!右手を自分の首に何とか持っていき打ち消す。

 

「感電死」

 

目の前から来る電撃を右手で打ち消す。

 

「圧殺」

 

頭上から落ちてくる自動車を右手で打ち消す。

 

「ハアハア」

 

右手が通用する。これならいける。

 

「なるほど、その右手は我が黄金錬成(アルスマグナ)さえも打ち消すのだな。ならば右手で反応できない攻撃をすれば攻略できる」

 

アウレオルスがクビに針を刺す。

 

「我が手に弾丸を込めた銃を、弾丸は魔弾、用途は射出、人間の動体視力を超える速度にで発射!」

 

ピューン ゴシャア!!!顔をかすめ後方で破壊音が聞こえた。

 

反応出来なかった。今のが当たっていたら死んでいた。

 

「簡単には殺さん。痛ぶってから殺してやる。先の手順を量産、両の暗器銃にて同時射出!」

 

「ぐはっ!!」

 

もろに当たり後方に吹っ飛んだ。

 

「ぐ、あれ、傷がない?」

 

「フハハハハ!!言ったろう、簡単には殺さぬと。準備は万端、両の暗器銃を射出」

 

「ふん、それは本当に言葉一つで現実を歪めているみたいじゃあないか」

 

ステイルがアウレオルスの言葉を遮り言った。

 

「当然。黄金錬成(アルスマグナ)は錬金術の到達点。今や世界を」

 

「だったらなぜ吸血殺し(ディープブラッド)を必要とする」

 

またも遮りステイルは言った。

 

アウレオルスは意をつかれた表情をした。

 

なんだ?ステイルは何を言おうとしている?

 

「何で吸血鬼なんか必要としている。作ればいいだろ吸血鬼くらい、言葉で命じるままに」

 

アウレオルスの顔はみるみる青ざめる。

 

「なぜしない錬金術師。いやそれ以前にこんな遠まりをせず言えば良かっただろう、全てを言葉のままに歪められるなら」

 

「ロンドンの魔術師よ宙に舞え、そしてはじけろ!!」

 

ブシャァ ステイルは全てを剥がされ肉塊のみになった。

 

「小僧、遊びは終わりだ」

 

そうだ、最初から言えば良かったんだ。インデックスの救いを。

 

でも言うことは言わなかった。インデックスの救いを命じることは出来ないと思ったんだ。

 

思えなかった?だから口に出来なかった?

 

そうかコイツの力は言葉のままに現実を歪めることじゃない!

 

「貴様の右腕を切り落としてやる。暗器銃の銃撃を中止、銃口に剣を装填、対象者の右腕を切り落とすように射出!」

 

ズシャアアアアア!!

 

切り落とされた右肩から大量の血液が出た。

 

「フハハハハハ!!!」

 

アウレオルスは勝利の笑い声をあげる。

 

 

「ククク」

 

 

☆☆☆☆☆

 

アウレオルスは上条当麻の右腕を切り落として勝利を確信した。

 

「なぜ貴様は笑って立っているんだ!?」

 

アウレオルスは理解出来なかった。なぜ少年が不敵な笑みを浮かべて立っているのか。少年は不敵な笑みを浮かべてアウレオルスの方にに近づいてきた。

 

「ふう、やっと出られたぜ。やっぱりイマジンブレイカーのせいで出られなかったんだなー、カミジョウさんごめんよーショックで気絶してんのかな?全然反応ないけど」

 

少年は不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

「よし手始めに《擬態》テンペストウルフ」

 

少年が体長6メートルにもなる狼のような獣に変化した。

 

「うっ、先の手順で対象者の首を跳ねるように剣を射出!」

 

「《擬態》ブラックスパイダー」

 

天井に届きそうなほど大きな黒い蜘蛛に変化し剣は行き先を見失ってあらぬ方向に向かう。

 

「なっ、先の手順を量産、両の銃から剣を射出!」

 

「《擬態》終了。真の姿へ」

 

シュンシュンシュン。しかし再び剣は空を切る。

 

「おい、錬金術師。まさか右腕を切っただけで勝てると思ったのか?」

 

巨大蜘蛛が消え声だけが聞こえた。

 

「オレはキレてんだ。容赦しないぜ」

 

 

足元にスライムがいた。

 

 

「ヒィ!!」

 

アウレオルスは驚いて尻餅をついた。

 

何故姿がころころ変わる!?奴は魔術師だったのか!?だったらまた集中し直さなければ!

 

そう思って懐から針を出そうとした瞬間、スライムから出た糸がアウレオルスの手を拘束する。

 

「それが無いと雑念を振り払えないもんな?どうした?言葉のままに歪めてみろよ」

 

「ひっ!!」

 

スライムの姿が変わった今度は銀髪の少年のようにも少女のようにも見える人間の姿になり、アウレオルスを見下ろした。

 

「言葉のままに歪めてみろよ」

 

姿とは裏腹にとてつもないオーラを感じた。

 

アウレオルスは絶対的に勝てないと考えてしまった。

 

「ぐはっ」

 

アウレオルスは自分の想像力で作ったイメージに押しつぶされ気絶した。

 

☆☆☆☆☆

 

ステイルはアウレオルスの術が解けた瞬間、インデックスを救出し、アウレオルスと突然現れた人物の戦いの結末を見ていた。

 

「君は誰だ?」

 

 

 

「オレの名前はリムル・テンペスト。味方だよ、ステイル少年」

 

 

 

「上条当麻はどこへ行った?」

 

「彼は今はオレの中で眠っている。出血は止めたけど、危険であるのは変わらない。早く病院に行かないとね」

 

「それはどういう」

 

「リムル様!!」

 

ステイルの質問を遮りゴブゴブリンとテンペストウルフ達が入ってきた。

 

「おー!みんな〜無事だったか!」

 

「はい!リムル様もご無事で何よりです!」

 

「そうだ、リグルの手を治さないとな。ほれ」

 

「ありがとうございます!」

 

リムルが出した塊がリグルの手の火傷を一瞬で治した。

 

「なんなんだ!それは!?」

 

ステイルは驚く。

 

「言っても分からないし時間の無駄だと思う。それよりもステイル少年、君にオレたちのことを話さないとね」

 

ステイルは改めて目の前にいるゴブリンと獣、それと先程から膨大な魔力を感じる人物を見た。

 

「君たちのこと?」

 

「そうさ、オレたちは元々こちら側の世界とは違う世界。異世界に住んでいたんだ」

 

「異世界?」

 

「だがある日突然オレたちの住む街が襲われた。黒い霧が目の前を覆い、気づいたら上条当麻の意識に入っていたんだ。どうやらその時上条当麻は大怪我をして入院をしていた。10日前のことだ」

 

10日前、と言うことは上条がインデックスを救って入院していた頃か。

 

「10日間、この世界を上条当麻の意識から観察した結果、異世界転生をした可能性があると思った。そしてオレの仲間であるリグル達と出会って確信した。オレの仲間たちも同様にこちらに転生していると」

 

「そんな事あり得るのか?」

 

異世界に転生する魔術など聞いたことがない。

 

「この世界は知らないけど、オレの世界には転生者という人が稀にいるんだ。だからありえない話じゃない。しかもアウレオルス・イザードが接触した人物はまだたくさん持っていると言っていた。ということはオレの仲間がそいつに捕まっている可能性が高い」

 

そう言うとリムルはアウレオルス・イザードに何か鱗粉のような物をふりかけた。

 

するとアウレオルスは目覚めた。

 

「はっ」

 

「よお、錬金術師。起きて早々なんだが答えてくれ、オレの仲間であるゴブリンたちを渡した奴について教えてくれ」

 

「・・・直接は会った事は無い。だから奴の場所は分からない、おそらくテレポート系の能力者を使いに出していた。そいつはいつもフードを被っていて顔は分からない」

 

「奴について何でもいい思い出してくれ」

 

「・・・奴は、世界を変えると言っていた。異世界の力を使い魔術サイドと科学サイドを壊しこの世界をを支配するつもりかもしれない。そう言えばフードのテレポーターは奴のことを《魔王様》と呼んでいたが。これ以上は知らない」

 

「魔王か」

 

アウレオルスはリムルを見て攻撃をする気がないのか、死んだような目をして質問に答えた。

 

「よし!リグルド、みんなを二手に分かれさせろ。片方は学園都市に潜伏、もう片方はステイル少年について魔術サイドに行って調査だ!」

 

「かしこまりました」

 

「待て待て待て僕がこいつらの面倒を見るのか?」

 

ステイルは慌てて言った。

 

「安心しろ!みんな強いし頼れる!みんな〜ステイル少年の言うことをよく聞くように!」

 

「はーい」

 

「おい!」

 

「細かいことを説明している時間はないんだ。早く病院に行かないとオレの中でカミジョウさんを死なせたくない!ランガ!」

 

「我が主人!」

 

「ステイル少年。事後処理任せたー!」

 

そう言うとリムルは狼のような角の生えた獣に乗って出て行ってしまった。

 

「何だったんだ」

 

ステイルは状況の展開に追いつけなかった。

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区、病室にて。上条当麻はカエル顔の医者と話している。

 

「10日間に二度も入院とはよっぽどこの病室が気に入ったんだね。それともナースフェチ?」

 

「違いますよ!」

 

「そうなのか、残念だね。まあ何より君の右腕綺麗にくっついて良かったよ」

 

「はあ、ありがとうございます」

 

カエル顔の医者が出て行った。

 

「正直、右腕ぶった切れてそこから記憶ないんだけど、勝ったのか?」

 

「勝ったよ」

 

「うわっ!」

 

突然、ベッドの横に銀髪の少年のような少女のような人物が現れた。

 

「お前誰だ!?」

 

「色々事情があるから彼が説明するよ」

 

「元気そうだな上条当麻」

 

病室の入り口から現れたのはステイルだった。

 

「ステイル!コイツは誰だ?」

 

「彼の名前はリムル・テンペスト。異世界の住人だ」

 

☆☆☆☆☆

 

「やばい、頭が追いつかない」

 

大量の情報を一気に入れられて頭がショートしそうになる。

 

「とりあえず姫神もインデックスもみんな無事だっていうことだな!」

 

「そうだ、姫神秋沙は我々イギリス清教の保護下にし《歩く教会》と同等の十字架を渡した。それがあれば彼女の力を抑えることができる」

 

「アウレオルスは?」

 

「彼はこちらの都合で顔を変えさせて自由にさせたよ。目も当てられないほどになっていてね、同情による釈放だ。二度と魔術に関わらないだろうさ」

 

「で、そいつが異世界から来たって?」

 

「そうさ!」

 

ステイルの代わりにリムルが返事をした。

 

「信用できないけど?」

 

「ならこれを見よ!」

 

そう言うとリムルは姿を変えて俺のベッドに乗ってきた。

 

「スライム?」

 

「うん!オレの真の姿はスライム!これで信じたか?」

 

スライムなんか架空の生き物、この世界にいない。ステイルもリムルの事を信用しているようだし信じてみよう。

 

「分かった信用する」

 

「よろしく!上条ちゃん!これからオレたちマブダチだな!」

 

妙に馴れ馴れしいスライムだな。

 

「上条当麻、僕はこれからリムルの仲間を連れてイギリスに戻るよ」

 

「おう、ってリムルはどうするんだ?」

 

「あん?話聞いてなかったのか?」

 

「え?」

 

「リムルは何故か君から半径3メートルの位置から出ることができないんだ。これは君の右手でも打ち消せない、きっとどこかに力の核があるんだろうが、これが魔術なら僕には分かるけどどうやら魔術ではないみたいだし、しばらく君がこのスライムを預かれ」

 

「多分上条ちゃんの中にいた時の後遺症みたいなものだと思う。だからしばらくよろしくな!」

 

「そんな〜、不幸だ」

 

ステイルが病室から出て行った。俺とリムル2人っきりになった。

 

「リムルの仲間が捕まっているかもしれないんだな?」

 

「ああ。だから面倒かけるかもしれない」

 

「分かった。なら協力する、一緒にお前たちが元の世界に戻れるように頑張ろうぜ!」

 

「おう!」

 

俺とスライムは握手して誓った。俺は左手、リムルは体から伸びた腕のようなもの、触るとやはりスライムのようにプニプニしていた。

 

「とうま!!!」

 

突然病室にインデックスと姫神が入ってきて、少し、いやかなり騒がれたが、全部説明して納得してもらった。

 

これからまた戦いがあるかもしれない。でも彼女たちを守っていく。それが上条当麻の使命だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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とある日常

駄文


 

わたくし上条当麻は7月28日、記憶喪失になった。

 

頭の中に10万3,000冊の魔道書を保持する少女、インデックスの悲劇を止めた代償であった。

 

はじめて目覚めた日、彼女に記憶喪失のことを彼女のためよりも自分のために隠した。

 

それから10日後再び事件に巻き込まれた。吸血殺し(ディープブラッド)という力のせいで死を覚悟した少女姫神秋沙の運命を止めた。

 

その時、俺の中から突然リムル・テンペストという異世界の住人が出てきた。しかもそいつの仲間もこっちの世界に転生されていて助けださなければならない。

 

リムルは俺の近くから離れられない状況でそれも解決しなければならない。

 

 

 

しかし俺にはやらなければいけない使命がある!

それは・・・補習だ

 

 

 

本来なら7月中に終わっているはずなのだが、以前の俺は一度も来ていないらしく現在8月19日夏休み真っ只中にも関わらず猛暑の中、学校に登校しているのである。

 

「おっす〜上やん、リムル!今日もお似合いカップルだにゃー!ふべし!」

 

「カップじゃないって言ってるだろ!シスコン野郎!」

 

リムルをからかって殴られた金髪にサングラスをかけた胡散臭い少年は土御門元春。

 

彼は実は俺の部屋の隣に住んでいる。だが毎日妹の土御門舞花が彼の部屋に通っており兄妹ともにシスコン、ブラコンだった。

 

「リムル〜今度ワイのコレクションのゴスロリ着てくれへんか〜?ふべし!」

 

「青髮!それ以上言ったら今度殺すからな!」

 

もう1人リムルをからかって殴られた青髪にピアスをつけた少年は青髪ピアス。

 

彼は誰から見てもやばい女好きだった。何でもいけると彼は言う。逮捕されないか心配だ。

 

「まーまー落ち着けリムル。こいつのロリコンは病気なんだよ」

 

「ロリコンやないで、ロリも好きなんやで〜!」

 

「はーい、授業始めますよー!席に着いてくださーい!」

 

そして教壇に立ったのは身長135センチのミニマム女教師、月詠小萌先生。彼女は見た目は小学生なのに中身は大人である。

 

「はーい!」

 

元気に返事をするリムル。リムルは人の姿で基本的に活動しておりスライムであることは俺とインデックス、姫神、ステイル以外に誰にもばれていない。

 

でも俺とリムルは訳あって3メートル以上離れることはできない。だから学校にもこうしてついてくるしかなかった。

 

ではなぜリムルが学校に馴染めているかというと、リムルは俺の親戚扱いで夏休みの間、俺の家で預かっていて日中暇だから俺の学校に来ているという嘘をついた。

 

正直バレると思ったが小萌先生の粋な計らいで教室にいることが許された。

 

リムルは持ち前の明るさや気さくな性格もあってかすぐに彼らと仲良くなった。

 

しかもリムルは頭がいいのか授業内容をどんどん吸収していった。本人が言うには最初はこの世界を知るためだったが今では純粋に好きで勉強しているらしい。

 

「小萌先生今日の授業は何ですか?」

 

「そうですねー。今日は1992年に行われたESPカード実験についての授業です。この実験の必須条件のおさらいをしましょう。ここで大事なのは素材がABS樹脂に変更されていることですね。これは表面に着く指紋によってカードのトリックが分かってしまう事に対するものでー、って上条ちゃん早速寝ないでください!」

 

俺はリムルと違い勉強は苦手で授業のやる気も失せていた。

 

「聞いたとこでレベル上がるわけないでしょ先生、イタッ」

 

「授業を聞けよ、上条」

 

授業を妨害されてイラつくリムルに叩かれた。

 

「カミやんレベル0だからなー」

 

「伸びないものは伸びないんだにゃー」

 

しかしバカ達は騒ぐ。

 

「でもでもー、そんなことは悲観していては上がるものも上がりませんよ。常盤台中学の御坂美琴さんは元々レベル1だったのですけど頑張って頑張って今では学園都市レベル5の第3位になったのですよー」

 

「うわー会ってみてー」

 

「ワイもやで、リムル。常盤台といえばお嬢様学校そんな子に会ったら僕はふべし!」

 

「青髪自重しろ」

 

「時代はお嬢様じゃなく義妹ぜよ!ふべし」

 

「お前もだよ!」

 

「むにゃむにゃふべし」

 

「起きろ!上条!」

 

「わー!喧嘩はダメですよー!」

 

教室の中は大乱闘になり小萌先生が必死で止める。

 

結局小萌先生が泣き出し喧嘩は止まって俺たちはボロボロの中授業を受けたのだった。

 

不幸だ。

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区、図書館にて。俺とリムルは勉強していた。

 

「だからフリーエネルギーを見つけたニコラスが世紀の発明家であってエジソンじゃないんだよ」

 

「ふーん」

 

俺はリムルの話を聞き流していた。

 

「あ、そうだ今度このツリーダイアグラムについて調べようぜ」

 

「なあ、リムルって元の世界でもこういう科学について詳しかったのか?」

 

「え?あー、オレ元の世界が生まれた世界じゃないんだ」

 

「どういうこと?」

 

「俺は元々普通の世界、RPGのような魔物もいない、SFのような魔術も能力も存在しない。学んだことだって普通だよ。普通に生きていてゼネコンで働いてたんだ。でもある日通り魔に刺されて死んじゃったんだ」

 

「え?」

 

「死んだ後、目が覚めたら異世界に転生していてね。しかも姿はスライム。まあ二度目の人生楽しくスライム人生過ごそうかなって思ったら、沢山の出会いをして仲間が出来てそいつらと色々な問題を解決していくうちに大きなコミュニティになって国まで作ってしまったんだ。しかもオレはそこの主人」

 

「お前偉かったんだ」

 

「そうだぞもっと敬え、えっへん」

 

リムルは胸を張って言った。全然偉くなさそうなんだが。

 

「そういや、ゴブゴブリン達今何やってんだ?確か学園都市にいるはずだよな」

 

「あいつらか、じゃあ行ってみようぜ!」

 

「行くってどこに?」

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区、ショッピングセンターの一角。

 

そこは平日の夕方に関わらず人が並んでいた。

 

「ここが関係あんのか?」

 

「まあ見てな」

 

俺たちは店舗の中を覗いた。

 

何とゴブゴブリンの女の子がセレブそうな女性の接客をしている。

 

「いらっしゃいませー!本日はマッサージと犬カフェどちらになさいますか?」

 

「じゃあ今日は奮発してどっちもいいかしら?」

 

「ありがとうございます!ダブルプランなので5000円引きで合計25000円です!」

 

「はい」

 

「ありがとうございます!お客様入りまーす!」

 

「わんわん」

 

「あらーランガちゃん相変わらず可愛いわねー」

 

セレブそうな女性を迎えたのはあの恐いテンペストウルフだったが、今目の前にいるのは小さくなって普通の犬みたいになっていた。

 

「なんなんだアレ?」

 

「あいつらが生きていくためにはじめた商売だよ。主にマッサージと犬カフェをやって普段からストレスを抱えるキャリアウーマンとか名門校の学生をターゲットにしているんだ」

 

「いいのかよそんなことやって」

 

「統括理事長から許可もらってるからな大丈夫だろう」

 

「お前いつのまに統括理事長とコネクション作ったんだ」

 

「あははー」

 

笑って誤魔化さられた。

 

そんなリムルの凄さに気づいた俺だった。

 

☆☆☆☆☆

 

夜、上条当麻の学生寮にて。

 

「わーやめろーインデックスー」

 

「プニプニしてて気持ちいいんだよー」

 

スライム状態のリムルはインデックスに弄ばれていた。

 

「助けてくれー上条ー」

 

「すまない、リムル。今のうちに上条さん晩飯作るからつまみ食いされないようにそこで時間稼いでくれ」

 

「そんな〜」

 

リムルは女の子に弱いみたいであまり抵抗出来ないらしい。

 

そんなこんなで賑やかに夕食を食べて三人でゲームをして上条さんの1日は終わった。

 

☆☆☆☆☆

 

深夜、第七学区。

 

ズドン!バギン!

 

銃声が響いた。

 

15分後、路地裏には常盤台中学の制服を着た少女の死体があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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お姉様ミサカミコト

駄文


 

8月20日、第七学区の公園にて。上条とリムルは学校の帰り道。

 

「今日も暑いなー、というかリムル汗ひとつ描いてないけど暑くないのか?」

 

「ああ、オレは色々耐性があるからな、痛みだって感じないぞ」

 

「それって無敵じゃん」

 

「いいやそうでもないよ、オレより強い奴なんか前の世界にたくさんいるから。それより暑いならそこの自販機で飲み物買ったら?」

 

「ナイスタイミング」

 

喉がカラカラで仕方なかった。財布を取り出すと2000円札しか入っていなかった。

 

「・・・ええい、ままよ!」

 

「ちょっ、待て!2000円札なんか入れたら」

 

ウィーン 暑さに負けてお金を入れてしまった。

 

リムルがなんか言った気がするがどうでもいい。これでやっと喉を潤せる。俺は何とかサイダーのボタンを押した。

 

ぴっ ・・・・反応なし

 

ぴっ・・・ぴっびっ・・・ぴっぴっぴっぴっぴっぴっぴっぴっぴっ

 

何度ボタンを押してもジュースが出ない。

 

ガタガダガダガタ

 

返金のレバーを引いてもお金は戻ってこない。

 

「不幸だ」

 

「あーあー言わんこっちゃない。2000円札なんか入れるから」

 

ジュースを飲みたかったのに逆にお金を飲まれた。

 

ショックで自販機の前で固まってしまった。

 

 

「ちょろっと、買わないならどいてくれる?」

 

 

返事も待たずに肩を押されて自販機の横に移動させらた。

 

「おい上条あの子常盤台中学の制服着てるぞ、いやー青髪たちが可愛いって言うのも分かるなー」

 

リムルがこっそり耳打ちしてくる。

 

見ると、容姿端麗で茶髪ショートカットのピンク色を基調とした夏用の制服を着た少女がいた。

 

「で、何なのコイツ」

 

「わ・た・し・に・は!!御坂美琴って名前があんのよ!!!いい加減覚えろど馬鹿!!!」

 

突然少女の周りに電気が発生しその集合体が一直線に俺の元へと放たれる。

 

「ひっ」

 

俺はとっさに右手を構えて電撃を打ち消した。

 

「ハアハア、その右手本当に憎ったらしいわね」

 

御坂美琴と名乗る少女はどうやら俺の事を知っているらしい。

 

「おいおい、御坂美琴って第3位の能力者だろ?どんな関係だったんだよ?元カノとか?」

 

「知らねーよ!記憶失ってんだから」

 

俺とリムルは小声で話した。

 

学園都市第3位の能力者から攻撃を受けるって前の上条当麻は何したんだ?

 

「何コソコソ喋ってんのよ?」

 

「何でもないです!それよりその自販機お金飲み込むっぽいぞ」

 

「知ってるわよ。裏技があんのよ、お金入れなくてもジュースが出る裏技が」

 

美琴はそう言うと準備運動をするかのように上下に小さくジャンプをする。

 

裏技?と思った瞬間、美琴は思い切り回転して自販機に回し蹴りをした。

 

一瞬スカートの中が見えたが、短パンを履いていた。

 

「チェイサー!!!」

 

バコン!、ガタン。

 

衝撃音の後にジュースが出てきた。

 

「ここの自販機バネ緩んでんのよねー。何が出るかは決めれないのが難点だけど。ってアンタの隣にいる銀髪の子誰なの?」

 

「え、オレはリムル。上条の親戚で夏休みの間こっちに来てるんだ!よろしくな!」

 

「よろしく。でも何で親戚なのに苗字で呼んでんのよ?」

 

ギクゥ!

 

「そ、それより常盤台ってお嬢様学校だろ。みんなそんなことしてんのか?」

 

何とか俺は別の話題に逸らした。

 

「女子校なんてそんなもんよ。大して夢見んな」

 

美琴はそう言うとジュースを飲んだ。

 

「ばあ〜、生き返る〜。アンタ達買わないの?」

 

「・・・」

 

「もしかして飲まれた?」

 

「・・・」

 

「いくら飲まれたの?」

 

美琴は目をキラキラさせて聞いてくる。

 

「2000円」

 

「あははは!2000円って二千円札の事?あんなのまだ使ってたの?そんなの入れたら自販機バグるに決まってるじゃない!ははははは」

 

「ドンマイ、中学生に馬鹿にされてるな」

 

「うわー、何も言うなー」

 

美琴は大笑いしリムルは哀れみの目を俺に向け俺は悶える。

 

「じゃー取り返してあげる」

 

「え、どうやって?」

 

「こうやって」

 

美琴は自販機に手を当てて電気を流した。

 

すると自販機から次々とジュースが出るではないか。

 

「あれーいっぱい出てきたー。お金は取り戻せなかったけど、間違えなく2000円以上出てきたからこれでOK」

 

美琴が笑顔でなんか言ってる隙に俺とリムルは逃げ出した。

 

「何思い切り逃げてんのよ!」

 

ビービーと後方から警報音が鳴っているのが聞こえた。

 

☆☆☆☆☆

 

俺とリムルは何とか逃げ切り俺は疲れてベンチに座った。

 

「ハアハアなんだったんだアイツ」

 

「あはは面白い奴だったな!」

 

「面白くねーよ!いきなりビリビリするか普通!?」

 

「当麻ッチは何も分かってねーなー」

 

「あん?何のことだよ?」

 

「いやこれは言わないでおこう」

 

何やらリムルはニヤニヤしているが俺には何のことかさっぱりだった。

 

「ちょっと運ぶの手伝いなさいよ」

 

いつの間にか美琴は俺たちに追いついた。学生カバンをお盆がわりにして大量のジュースを持っている。

 

もう追いついてきやがった。

 

「ほら」

 

美琴が俺に向かってジュースを投げてきた。

 

「おっと、黒豆サイダー?」

 

まったく美味しそうではない。

 

「愉快に現実逃避してないで、アンタの取り分なんだから持ち帰りなさいよ」

 

そう言いながら美琴はどんどんジュースをパスしてくる。

 

これを受け取ったら自販機破壊の共犯者になるのではないか?

 

「なー当麻ッチ、一本頂戴」

 

「あ、私もヤシの実サイダーいらないなら貰うわよ」

 

2人とも俺が良いとも言ってないのにジュースを取った。

 

コイツら。と呆れて空を見上げると飛行船が見えた。

 

学園都市では液晶画面がついた飛行船が飛んでいてニュースが映し出されている。なにやら筋ジストロフィーについてだが内容は分からなかった。

 

「何で美琴ッチは当麻ッチにそんなにツンツンしてるの?」

 

「こいつが本当は強いくせに、いつも私にビクビクしてるからイラつくのよ。このレベル5の御坂美琴様を打ち負かしたっていうのにね。本当だったら責任くらい取ってもらわないと困るのよね」

 

「なるほどー」

 

美琴とリムルが俺のことを話す。

 

え、コイツを打ち負かしたって、何で?ゲーム、スポーツ?女の子が責任を取ってもらわないと困るって言うと何だか別の意味を想像してしまうというか・・・。

 

「うーん」

 

「何頭抱えんてんのよ」

 

はっ。いかんいかん。

 

「それよりジュースお飲み、美琴先生直々のプレゼントなんかうちの後輩だったら卒倒してるのよ」

 

「それは少女漫画の読みすぎだろ」

 

「・・・少女漫画程度で済むなら良いのにね」

 

「どうした美琴ッチ急に暗くなって??」

 

「私が常盤台の中で何て言われているか知ってる?」

 

 

「お姉様?」

 

 

現れたのは美琴と同じ制服を着たツインテールの少女だった。

 

「黒子!?」

 

「まあお姉様。まあまあお姉様。最近補習なんか似合わないことをされていると思いましたけど、この為の口実でしたの?」

 

「一応聞くけど、この為ってどの為?」

 

「決まっています。そこの殿方との密会するためですわ」

 

密会?何を言ってんだ?リムルもいるのに。

 

「ってあれ?リムルがいない?」

 

「はじめまして。わたくしお姉さまの露払いをしている白井黒子と申します。もしお姉様にちょっかいをかけるおつもりならまずわたくしを通してくださいな」

 

「あーんーたーはー、このヘンテコが私の彼氏に見えんのかーーーーー!!!!」

 

ビリビリビリ

 

俺はビクッと一瞬目を閉じて開けたとには白井はいなかった。

 

「いない?」

 

「ですわよねー!わたくしのお姉様に限って」

 

声の方を向くと離れた電灯の上に白井は立っていた。

 

「それではくれぐれも過ちは犯さぬようにして下さいな、お姉様」

 

「黒子ー!!」

 

美琴が白石の方に電撃を放つが白井は突然消えた。

 

「テレポート」

 

 

 

「お姉様」

 

 

「またか!」

 

声の方を向くと御坂美琴と瓜二つの少女がいた。

 

「増えてる?御坂二号?」

 

「妹です、とミサカは間髪入れずに申し上げます」

 

「妹?」

 

「アンタ!!何でこんな所いんのよ!?」

 

何で一人称ミサカなの?と思っていると美琴が突如血相を変えて言った。

 

「研修中です、とミサカは簡潔に申し上げます」

 

「あー研修?そうねー、そうだったわ。よし妹、こっちに来なさい」

 

「でも今は、ミサカは」

 

「いいから!・・・来なさい」

 

そう言って2人は行ってしまった。

 

「複雑な家庭なんだな」

 

「リムル!今までどこに?」

 

「ちょっとこのジュース不味くて吐いてた」

 

見るとイチゴおでんと書いてあった。

 

☆☆☆☆☆

 

沢山のジュースを抱えて俺とリムルが帰宅する途中。

 

「御坂?」

 

「ゴーグル持ってるし妹の方だろ?」

 

「はい、とミサカは答えます」

 

御坂妹と再び出会った。

 

「妹ちゃん、美琴ッチと一緒じゃないのか?」

 

「ミサカはあちらから来ただけです、と答えます」

 

俺たちが来た道とは違う方向を指す。

 

「何で軍用ゴーグルなんか持ってるんだ?」

 

「ミサカはお姉さまと違い電磁波が肉眼で見えないので専用のゴーグルを装着します、とミサカは答えます。それより運ぶのを手伝いましょうか、とミサカは尋ねます」

 

「いいよいいよってうわ!」

 

急に足元に転がってきたボールで転んでしまった。

 

「気をつけて歩けよ当麻ッチ」

 

「イテテ、ん!?」

 

転んだ時にちょうど下から御坂妹のスカートの中が見えた。縞パン。

 

「手伝いますか?とミサカは再度尋ねます」

 

と言いながら御坂妹はジュースを拾いながら屈む。でもしゃがんだら今度は隙間から再びパンツが見えた。

 

「!?」

 

「手伝ってもらったら?当麻ッチまた転んだらジュースもったいないぜ」

 

「いやその」

 

「早くしなさい」

 

「お願いします」

 

こうして三人で寮まで帰った。

 

 

寮に帰ると土御門の義妹、土御門舞香に家出少女を匿ってると誤解されて、部屋の前に行くとシスターさんと巫女さんが猫のノミ取りに奇想天外な方法をしようとしていたところを御坂妹が助けてくれた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

8月21日、夕方。見晴らしのいい公園にて。

 

俺たちは再び御坂美琴に出会った。

 

「おーい美琴ッチ!」

 

「・・・あ、あんた達か」

 

風景からゆっくりと俺たちの方に顔を向けて言った。

 

「反応薄!」

 

リムルは軽くショックを受けていた。

 

「私、あの飛行船って嫌いなのよね」

 

「何でだよ?」

 

「機械が決めた政策に人間が従っているからよ」

 

樹形図の設計(ツリーダイアグラム)だっけ?」

 

樹形図の設計(ツリーダイアグラム)。学園都市が打ち上げた衛星に搭載された世界最高のスーパーコンピュータ、何て言われてるけど本当に存在するのかしら?」

 

「?イテッ」

 

突然美琴からチョップされた。

 

「なんてね、あはは詩人か私は。もうすぐ門限だから帰るわね」

 

行ってしまった。

 

「何だったんだ、あいつ」

 

「・・・」

 

「どうした?リムル」

 

「彼女、なんか昨日と雰囲気違うような」

 

「気のせいだよ。どうせ腹減ってるだけだろ。それよりインデックスの飯作らないといけないし帰ろうぜ」

 

「あ、ああ」

 

帰ろうとすると御坂妹を見つけた。

 

「何やってんだお前?って捨て猫か」

 

「そのパンあげないの?」

 

御坂妹は段ボールに入った黒猫に千切ったパンをあげようとしていた

 

「ミサカはお姉さまと同様に体から微弱な電磁波が発生しているので小動物に近づくことは出来ません、とミサカは答えます」

 

「ふーん」

 

「このままだと保健所に回収される恐れがあります」

 

「まあそうだな」

 

「回収された後どうなるか分かりますか?とミサカは問い詰めます」

 

「・・・」

 

☆☆☆☆☆

 

結局黒猫は俺が持ち三人で今日も寮に帰る。途中で猫の名前会議が開かれたがいろいろあってこの黒猫の名前はまだない。

 

「そうだ当麻ッチ買いたい本あるからここ寄ってきたい」

 

「おう、俺もちょうど来たかったんだ」

 

「猫の飼育に関する書籍の購入ですかと、ミサカは確認をとります」

 

「昨日のシスターと巫女さん見ただろ」

 

「一応言いますが動物愛護法で動物の虐待は罪になります、とミサカは警告します」

 

「怒ってる?」

 

「怒っていません。ただ自分は関わっていないから罪はないと言うわけではないとミサカは再度警告します。

 

「分かってるよ、というかリムル先行くな!おっと、そう言えば猫を連れて店に入ってもだいしょうぶなのかなー?」

 

「そんな見え見えの言い方で猫をミサカに預けることはご遠慮願いますとミサカはあっ」

 

「磁場の影響で近づけないって。ならそれを乗り越えて真の友情は芽生える」

 

俺は御坂妹に向かって黒猫を投げた。

 

しっかり友情育めよ

 

☆☆☆☆☆

 

御坂妹は投げられた黒猫を抱きながら生き物の命の尊さを感じていた。

 

まったくあの少年は命をなんだと思っているか。と呟いた途端、後方から殺気を感じた。

 

白い悪魔のような人間が不気味な笑みで立っている。

 

御坂妹は黒猫を置いてそちらに歩いて行った。

 

 

 

 

 



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御坂妹シスターズ

短い駄文


 

第七学区、書店にて。

 

リムルは近くの殺気に気が付いた。

 

「当麻っち!外に何かとんでもない奴がいる!!」

 

「は?」

 

「行こう!」

 

そう言うと走ってリムルは走り出した。

 

「待てよ!」

 

リムルと3メートル以上離れられないので俺も続いて外に出る。

 

「突然どうした?」

 

「妹ちゃんがいない!」

 

外で待っているはずの御坂妹がいなかった。黒猫だけがいた。

 

「きっとさっきの奴と何かあったのかもしれない!」

 

「なあ、さっきから言ってることが分からないんだが」

 

「時間がない!ランガ出てきてくれ!」

 

リムルの影からテンペストウルフが出た。

 

「我が主人!」

 

「この黒猫についている女性の匂いを辿ってくれ!」

 

「おいリムル説明しろ!」

 

「移動しながら説明する!乗ってくれ!」

 

俺たちはランガに乗った。

 

周りの人たちは驚きながら俺たちに道を開ける。

 

「いったいなんなんだ?」

 

「殺気を感じた、しかもかなりヤバイ奴だった。アレは魔王級に近い。それが現れた瞬間妹ちゃんがいなくなったんだ。ヤバイ予感がする、クソ!オレの予感は良く当たるんだ!悪い方にな!」

 

リムルは普段とは違い、凄く焦っているような感じだ。

 

御坂妹に危機が迫っている。俺たちはそう直感した。

 

☆☆☆☆☆

 

時刻は午後6時30分。辺りは真っ暗の中俺たちは路地裏に入る。

 

「我が主人、血の匂いがします。ここからは野生の勘で危険でございます。進みますか?」

 

「進んでくれ」

 

ただならぬ雰囲気を俺は感じ唾を飲み込んだ。

 

嫌な予感がする。

 

路地裏の道を曲がると、大量の血が辺りに飛び散っていた。

 

そこに白い少年が立っていた。

 

「あン?」

 

少年はルビーのように深い赤色の目をこちらに向ける。

 

白い少年の足元に赤く染まった塊があった。

 

それは人間の形をしていた。

 

 

それは御坂美琴に瓜二つの少女の死体だった。

 

 

「ゲホッ!ガハッ!」

 

俺は死体を見た瞬間倒れこみ嘔吐した。

 

!?!?美琴の死体?何なんだあの少年は!?アイツが殺したのか?

 

脳内が状況に追いつくまでかなりの時間がかかった。

 

「彼女を君が殺したのかい?」

 

「たかが実験動物(モルモット)の1匹殺したぐらいで何騒いでんだァ?」

 

「お前、ふざけるな!自分がした事を分かっているのか!?」

 

「オイオイ、俺様を見てそんな目を向けてくるとはなァ。よっぽど愉快なオブジェになりたいよォだ」

 

「彼女を返してもらうぞ!」

 

「死体趣味か?イイぜ、受け取れ」

 

白い少年は少女の死体を蹴った。

 

少女の死体は蹴られた衝撃に耐えられずバラバラに飛び散った。

 

「アーア、死体を蹴る加減なんか知らねェからよ。バラバラになっちまったぜ。まぁこれで回収しやすくなったんじゃねェか?」

 

「ランガ行くぞ!」

「はい主人」

 

炎火爆獄陣(フレアサークル)

黒雷嵐(デスストーム)

 

白い少年が炎で包まれさらに竜巻がそこで発生し雷が落ちた。

 

「すごい」

 

彼らの攻撃が白い少年に直撃した。少しやりすぎではないのか?

 

「・・・」

 

しかしリムルとランガは白い少年から目を離さなかった。

 

「ククク、ギャハハ!」

 

「おい冗談だろ」

 

炎と竜巻が発生している中から不気味な笑い声が聞こえた。

 

すると炎と竜巻さらに受けたはずの雷が白い少年の頭上に集まる。

 

「ギャハハハハ!何だァ、何だァ。もしかしてサプライズでボーナスステージか?イイね、イイね最高じゃねェか。雑魚ばっか相手してて退屈だったところだ。てめえらで遊んでやるよ」

 

「攻撃が、きいてない!?」

 

「ちゃんと楽しませろよ」

 

白い少年は頭上の集合体をこちらに放った。

 

「ユニークスキル《捕食者》発動」

 

リムルはスライムに戻り白い少年の攻撃を食べるように防いだ。

 

「大丈夫ですか主人?」

 

「もぐもぐ、ごくん。大丈夫だ、それよりコイツ手強いぞ。オレたちの攻撃を何倍も増幅させて返してきやがった」

 

「ゲヘヘ誰だか知らねーが、俺様の攻撃を防ぐっつー事はテメエもレベル5だな?じゃあお次はこれだ」

 

トン 白い少年は近くにあったゴミ箱につま先を当てる、するととてつもないスピードでランガの方へ飛んでいく。

 

ランガはそれに反応できず、当たる直前にリムルが前に立ち塞がった。

 

「ユニークスキル《捕食者》はつど」

 

「キヒ」

 

飛ばされてきたゴミ箱の上から白い少年が現れた。彼は自分が蹴ったゴミ箱よりも早くリムルに接触した。

 

「どんな能力か知らねェが、粉々にしてやるよ」

 

白い少年がリムルに触れた途端、リムルの体は四方八方に飛び散った。

 

リムルの盾を失いゴミ箱がランガに直撃して後方へ吹っ飛んだ。

 

「リムル!ランガ!」

 

「あっけねーな、これで終わりかよ」

 

「てめえええええええええ!」

 

「おっと、まだいたのか三下。楽に殺してやるよ」

 

白い少年の手が俺に向けられた時だった。

 

 

「お待ちください」

 

 

「計画外の戦闘は予測演算の誤差が生じる場合があります、とミサカは警告します」

 

俺の後ろから御坂妹の声がした。

 

そこには沢山の御坂妹が立っていた。

 

「!?」

 

「あァ?コイツら関係者じゃねえのか?」

 

「彼らはこの実験とは部外者です、とミサカは答えます」

 

別の御坂妹が言った。

 

「チッ、また説教するつもりかァ?コイツらから喧嘩売ってきたんだ、正当防衛だよ」

 

「計画外の戦闘は実験に誤差が生じる場合が」

 

「わーったよ。リレーして喋んな」

 

そう言うと白い少年は路地裏から出て行った。

 

「黒猫を置いてきてしまって申し訳ありません、とミサカは謝罪します」

 

「ですが無用な戦いに動物を巻き込むことは気が引けました、とミサカは理由を述べます」

 

「お前らいったい誰なんだ!?」

 

「学園都市第3位のレベル5御坂美琴お姉様の細胞から生まれたクローン、御坂妹(シスターズ)ですよ、とミサカは答えます」

 

「お前たちは何をやっているんだ?」

 

「詳細は機密ですが、ただの実験なので事件性はありませんとミサカは答えます」

 

「本日まであなたと過ごしていたのは10032号のこのミサカです、とミサカは言います。ミサカたちはネットワークで繋がっているので情報が共有できます、とミサカは説明します。ですが今回は部外者であるあなたたちを巻き込んでしまって申し訳ありません、とミサカは謝罪します」

 

「では猫をお願いします」

 

と言って御坂妹たちは路地裏から出て行った。いつのまにか血の跡も肉塊も無くなっていた。

 

「実験だって?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですよ、



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レベル6シフト計画

遅れてすみません。相変わらず駄文です。


8月21日午後7時、第七学区とある路地裏にて。

 

「実験?クローン?」

 

俺は御坂妹に言われたことを完全に把握するまで時間がかかった。それくらいわけがわからない話だった。

 

「アイツは、御坂はこの事を知っているのか?」

 

そう思ったらいてもたってもいられなかった。駆け出そうとするが体が動かない。

 

「そうだ、リムル!」

 

先ほどの出来事で頭がいっぱいだったが、リムルの事を思い出した。

 

そうだ、リムルは奴にバラバラにされたんだ。

 

辺り一面にリムルのカケラが落ちている。

 

リムルはまだ生きている。死んでいたら俺は自由に動けるはずだ。

 

「リムル生きてるんだろ!?返事しろ!!」

 

「・・・と、ま、ち」

 

「リムル!!」

 

リムルの声がした。やっぱり生きている。

 

リムルのカケラを見てみると少しずつだが修復しているみたいだ。

 

「当麻っち・・・オレは、大丈夫だ。・・・ただ損傷が激しくてな、修復に時間がかかりそうだ。・・・クソ油断した。奴の能力を甘く見ていた」

 

「リムル喋るな!回復に専念しろ!」

 

「いや、そんな悠長な事言っている場合じゃあないぜ。・・・一刻も早く美琴っちを見つけてくれ・・・彼女が危ない」

 

そこでリムルの声が消えた。それでも少しずつだがリムルの体は元に戻っていた。

 

「リムル!!・・・くっ」

 

俺はリムルの体を近くのゴミ箱に入っていた袋に集めた。右手が作用すると危ないので左手で集めた。

 

「ランガ!起きてるか!?」

 

吹っ飛ばされたランガを見に行くと予想以上にやられていた。

 

「か、上条殿」

 

「お前はここで休んでいてくれ、お前の仲間に連絡して助けてもらえ。俺は先に行く」

 

「面目無い」

 

俺はランガの頭を撫でてやった。

 

主人を守れなくて相当悔しいだろう、その思いを右手に込めた。こいつの分まで俺はやらなくてはいけない。

 

この使命を果たさなくてはいけない。

 

☆☆☆☆☆

 

同時刻、第七学区、とあるオンボロアパートの月詠小萌の部屋にて。

 

月詠小萌とその部屋に居候している姫神は焼肉をしていたが、そこにお腹を空かしたインデックスが乱入して色々あった後インデックスが小萌にある質問をした。

 

「超能力とな何なのか、ですか?」

 

小萌が焼肉を食べるのを止めて言った。

 

「簡単に言えば、シュレディンガーの理論なんですけどー」

 

「シュレディンガー?」

 

「ここに箱があります。この箱の中には何が入っているでしょうか?」

 

小萌はよくあるチョコのお菓子の箱を見せて言う。

 

「むー、チョコの箱なんだからチョコが入っているに決まっているんだよ」

 

「残念でしたー!飴玉が入っているのです!」

 

「えー、なにそれ」

 

「この箱には何が入っているでしょうか?」

 

小萌はさっきと同じことを繰り返した。

 

「飴玉が入っているって自分で言ったじゃん」

 

「言いましたけど、先生が嘘を言っている可能性があります」

 

「むー」

 

「チョコ50%、飴玉50%開けてみないと分かりません。はいどうぞ」

 

小萌は箱を開けて中身を見せるとチョコが一つ入っていた。

 

そして閉めてもう一度聞く。

 

「はい、シスターちゃん。この箱の中には何が入っているでしょうか?」

 

「・・・チョコ入ってるの見たもん」

 

「確かにさっきチョコを見たことでチョコ100%だと普通の人は思うでしょう。・・・でも飴玉が入っていると思う人がいたら?それを信じてそれを手に入れたら?」

 

小萌は一拍おいて核心を言う。

 

「まともな現実から切り離され自分だけの現実を手に入れた人を私たちは超能力者と呼ぶのです」

 

☆☆☆☆☆

 

午後7時半、第七学区常盤台中学女子寮前にて。

 

俺は美琴と同室の白井黒子の協力のもと、美琴の部屋に入ることに成功した。しかし美琴は外出中だった。待っている間に白井から美琴と普段から諍いを起こしていているのかと聞かれたが何だったのだろうか。

 

そんな世間話をしていたら寮の見回りの時間になり俺は美琴のベッドの下に隠れることになった。白井は寮監と外に出て行った。

 

「いってー、ん何だこれ?」

 

ベッドの下には君の悪いクマのぬいぐるみがあって、それのファスナーの隙間からプリントがはみ出ていた。

 

そこにはシスターズの文字が書かれていた。

 

 

 

量産異能力者(レディオノイズ)妹達(シスターズ)の運用による一方通行(アクセラレータ)絶対能力者(レベル6)への進化法』

 

 

 

樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)による演算結果、レベル6に到達できる能力者はアクセラレータただ1人と判明。特定の戦場を用意し実験を進めることで実戦における成長を促す・・・くっ」

 

プリントの裏を見ると地図がありいくつもばつ印が付いている。

 

「なめやがって」

 

☆☆☆☆☆

 

御坂美琴、彼女は幼少期の頃から能力に目覚めていた。それは微々たる現象だったが学園都市の研究者は筋ジストロフィーの治療に役立つと言った。

 

自分の能力は人の役に立つんだ、そんな誰にでもある良心を持って学園都市に自分の能力を授けた。

 

それから順調に能力を上げてレベル5、学園都市第3位超電磁砲(レールガン)の異名を持つ程になった。

 

常盤台では尊敬の眼差しを持たれいつも疎外感を持つようになった。

 

でも白井黒子という友人を介し初春飾利、佐天涙子という友人に恵まれた。

 

ある不思議な右手を持った少年と夜通し追いかけっこした。

 

そんなある日、自分のクローンが作られているという噂を聞いた。

 

最初は冗談だと思ったが、段々と興味が湧き調べてみた。

 

実際クローンは存在した。会った時は見た目はそっくりなのにぼけっとしていてなのになぜか強情でわがままで全然自分と似ていなかった。

 

しかしある資料を発見してしまった。

 

 

絶対的能力者進化計画(レベル6シフトけいかく)

 

 

目の前で自分のクローンを殺された。殺したのは学園都市第1位一方通行(アクセラレータ)、彼には絶対に勝てないと確信した。

 

そこから彼女の孤独な戦いは始まった。

 

実験を止めるため研究所を破壊していった。レベル5の刺客と戦った時もあった。

 

そして全ての研究所を破壊し、実験を止めたと思っていた。8月20日にもう一度御坂妹と出会うまでは。

 

彼女は言った、まだ実験は続いていると。現在進行形で御坂妹は殺されていると。

 

美琴は絶望した、絶望しながらも実験をしている研究所を突き止めて破壊した。

 

でも無駄と分かって彼女の心はどん底に落ちた。

 

最後の手段を取るしかない。自分が死んで終わらせよう。

 

この悲劇を止めてくれる都合の良いヒーローなんていないんだから。

 

☆☆☆☆☆

 

「何してんだよ、お前」

 

午後8時、第七学区鉄橋で御坂美琴は死ぬ覚悟を決めた時、後ろから知っている少年の声が聞こえた。

 

こんなタイミングよくヒーローなんて来るはずない。でもアイツは、上条当麻は来た。

 

「いきなり説教?こんな時間にどこ歩いてよーが私の勝手でしょ。不良が来たって私の電撃でイチコロよ」

 

美琴は上条に自分の気持ちを勘付かれないように誤魔化した。アイツは来てはいけない。

 

「2万体の軍用クローンシスターズを使って2万通りの戦いを行いアクセラレータはレベル6に到達する」

 

上条は資料を取り出し言った。

 

「!?」

 

アイツはこの事を知ってしまっていた。ああ、アイツのことだから死んでも私のことを止めるだろう。

 

しかしそんな事はやらせない。アイツはこの実験に関係ない。

 

「昨日あの子に会ったばかりなのにそこまで調べるなんて。それ持ってるていう事は私の部屋に勝手に入ったってわけね。本来なら死刑よ死刑。でそれ見て私のことどう思った?」

 

「心配したに決まってんだろ」

 

は?心配?怒りとか呆れではなく?私が自分の細胞を学園都市に提供した事や研究所を破壊していたことを知ってそんなこと言えるの?

 

「・・・嘘でもそう言ってくれる人がいるなんてね」

 

「嘘なんかじゃねえよ」

 

「え?」

 

「嘘じゃねえって言ってるだろ!!」

 

美琴はそこで初めて上条と目を合わせた。彼の目は本物だ、本気で美琴の事を考えている目だった。

 

それを見てこれ以上上条と一緒にいてはいけないと思った。

 

「はいはい分かったわ。でも私はレベル5の超能力者よ、大丈夫アクセラレータは私が止めるから」

 

そう言って上条の隣を通り過ぎようとした。

 

「お前、死ぬ気だろ」

 

前を塞がれて上条に核心を突かれた。

 

「だったら何?私があまりにも無様に負ければ、御坂美琴は弱いから今のままでは実験を行ってもレベル6に上がるか分からなければ実験は中断する」

 

「再演算されたら」

 

「それはないわ。数週間前に樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)は破壊されているの。再演算は出来ない」

 

「それでも、また誰かが同じことを繰り返そうとするだろ」

 

「うるさい!!私1人死ねばこの実験は止まってあの子たちがこれ以上殺されなくて済むの!!だからどきなさい!!!」

 

「どかない」

 

「アンタ!!クローンだからって死んでいいと思ってんの!?」

 

「違う」

 

「だったら!!」

 

「どかない」

 

「くっ!!中途半端な気持ちで人の気持ち踏みにじってんじゃないわよ!!!力尽くでも通させてもらうから!!」

 

「お前とは戦わない」

 

その瞬間美琴は電撃を上条に当たるギリギリに放った。

 

「拳を握りなさい!!」

 

「嫌だ。お前とは戦う理由がない」

 

「ぐっ!!今度は手加減しないから」

 

美琴の電撃が上条にまともに当たる。上条は吹っ飛んだ。

 

「そんな半端な気持ちで私の前に立ちふさがるから・・・!?」

 

しかし上条はフラフラになりながら起き上がった。

 

「行かせ、ないぞ御坂」

 

「何で?1人の命で1万人が救われるならそれは素晴らしいことでしょう?」

 

 

 

「お前が救われないだろ」

 

 

 

そんな優しい言葉をかけないで。

 

もうこれ以上私を苦しめないで。

 

「やめて。・・・もうやめて。もうやめてええええええええええええええ!!!!!!!!」

 

美琴は特大の電撃を上条に放つ。鉄橋から大規模な放電が広がる。

 

あの少年はタダでは済まないだろう。不思議な右手があるのにそれを使わずに美琴を止めようとした。

 

「バカなやつ」

 

☆☆☆☆☆

 

「にゃー」

 

目を開けると黒猫が見えた。

 

「アンタ、バカでしょ」

 

見上げると美琴の顔があった。頭の下に柔らかい感触がある。どうやら膝枕されているみたいだ。

 

「アンタはこの実験とは関係ないじゃない。目をつぶって知らないふりをすればいつもと変わらない日常に戻れるのに、こんなボロボロになって。短い間だけど心臓も止まってたかもしれないのに」

 

「はは」

 

「何でそんな顔で笑ってられるのよ?」

 

美琴は涙声で言った。

 

 

「お前の味方で良かったって思ったからさ。だから泣くなよ」

 

 

泣いている美琴の頭を撫でた。もうこれ以上一人で苦しまなくて大丈夫だ、美琴。

 

「実験を止める方法は一つだけある。実験はアクセラレータが最強であることを前提として行われている。なら、実はアクセラレータはめちゃくちゃ弱かったら?レベル0の最弱に負けるほど弱かったら?実験は中止になるんじゃねぇか」

 

俺は身体中痛むのを感じながら立ち上がり言った。

 

「待ってよ。それって」

 

「俺が戦う」

 

「ダメよ!アイツは私とは比べられないくらい強いのよ!世界中の軍隊を敵に回してもケロリとしているやつなのよ!そんなのと戦ったら今度こそ本当に!・・・お願い、私のせいで始まったこの実験に誰も巻き込めない!これは私が一人で終わらせないといけないの!」

 

 

 

「なら協力してくれよ。何一つ失うことなくみんなで帰るっていうのが俺の夢だ。それが叶うように協力してくれよ」

 

 

 

美琴は泣き叫んだって駆けつけてくれるヒーローなんていないとずっと思っていた。でも今目の前には・・・。

 

「待っててくれ。御坂妹は絶対に救ってみせる。約束するよ」

 

ヒーローがいる。



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最弱かみじょうとうま

8月21日 午後8時28分 第七学区 操車場にて。

 

ミサカ10032号は昨日御坂美琴に言われたことを考えていた。

 

『やめてよ、やめてよ!もうその声で、その姿で、私の前に現れないで!』

 

御坂美琴は頭を抑えてとても苦しそうに訴えていた。

 

自分は御坂美琴の体細胞から作り出された軍用クローンであり、実験で殺されるためだけに生まれてきた単なるモルモット。

 

だから何を言われようと何をされようと例え1万回以上殺されようと何も感じないはずだ。

 

 

 

「ですが、なぜこんなにも胸が苦しいのでしょうか、とミサカは胸に手を当てて考えます」

 

 

実験開始まで残り1分、第10032次実験がアクセラレータの登場により開始された。

 

☆☆☆☆☆

 

上条当麻は全力で実験場まで走っていた。

 

「がっ!!」

 

だが足が追いつかず転んでしまう。さっきの美琴の電撃が思っている以上に体に響いていた。

 

「くそっ!時間がねぇのに!」

 

携帯を開くと午後8時14分、ギリギリ間に合うか。

 

と思ったところで近くのデパートの電光掲示板をふと見ると

 

「8時34分だって!?・・・そうかさっきの電撃で携帯がフリーズして!」

 

くそっ!!自分の足を叩いて気合いを入れる。頼むから動いてくれ!!

 

己を鼓舞して前に進む。

 

☆☆☆☆☆

 

同時刻 第七学区 銭湯にて。

 

インデックス、小萌、姫神の一行はのんびりと先頭で過ごしていた。

 

「RSPK症候群。俗に言うポルターガイストは心的外傷や過度のストレスにより正しく現実を見ることが出来なくなった子供達が引き起こすものですしー、実験の中には様々な方法を使って現実を切り離すものもあります」

 

湯船に浸かりリラックスする一行。

 

「まともな現実から切り離された超能力者は私たちとは異なる自分だけの現実を手に入れます。異なる法則でミクロの現象を起こし手を使わずに物を動かしたり一年後の未来が読めたり出来る能力を手に入れることができるのです」

 

お風呂上がりの牛乳を飲んでスッキリする一行。

 

「学園都市で行われている能力開発とは自分だけの現実を作ることを指します。簡単に言えば薬物や暗示などを使い能力を発動するお手伝いをしているのです」

 

マッサージ機に順番で座って気持ちよくなる一行。

 

「だからカリキュラムを消化すれば誰にでも能力は発現するばずなのです。それにもかかわらず」

 

「あの少年みたいに発動しない人もいて」

 

「ん〜いや〜、むしろ上条ちゃんのような人の方が重要なんですけどねー」

 

「え!とうまの力を知ってるの?」

 

「あ、まー上条ちゃんは入学してきた時からやんちゃでしたかねー。色々あったのですよ色々。うふうふふふ」

 

「またか」

「あの野郎」

 

「レベル0が存在するってことはまだ発見されていない法則があるってことですから。それこそがsystemに繋がる鍵かもしれないのです。神ならぬ身にて天上の意思に辿り着く者(SYSTEM)。私たちには世界の真理は分かりません。ならば話は簡単で人間以上のステータスを持つ者が神様の答えだって理解できるのです!」

 

「ふーん、神様の答えかー」

 

☆☆☆☆☆

 

午後8時50分 アクセラレータとミサカ妹が戦闘中。

 

「オイオイ、これじゃ退屈しのぎにもなんねェぞ!オラッ!」

 

「ぐっ!!」

 

その光景はもはや勝負にもなっていなかった。アクセラレータによる一方的なリンチだった。

 

「お前ら全員ネットワークで繋がってんだろ、前回の実験で俺の能力のネタバレをしたのに関わらず、こんなもんかよ。くだらねー、そんなんだからお前らは死ぬことでしか価値がが無ェんだよ」

 

「ぐはっ」

 

アクセラレータはミサカ妹の腹を蹴っている。見た目は力を入れていないように見えるが彼の能力でミサカ妹が受けているダメージは深刻なほど負っている。

 

「あーあ、つまんねェ。死ねよ」

 

死ぬ、そう思った瞬間、一瞬御坂美琴の顔が脳裏に浮かんだ。

 

だがその時はやっては来なかった。

 

「オイ、あの野郎昨日の奴だろ」

 

アクセラレータはある一点を見ていた。

 

そこには一昨日会ったばかりのあの少年、上条当麻が立っていた。

 

「なんで」

 

「チッ、ちゃんと殺しておけよ!メンドォクセェことになってんじゃねぇか!!アアン!」

 

「ぐっ」

 

アクセラレータは上条を気にせずミサカ妹を痛ぶった。

 

「離れろよ」

 

上条はアクセラレータに向かって言う。

 

「アア?今なんつった?離れろだァ?お前何様?」

 

アクセラレータは鋭い目つきを上条に向けて言った。

 

「ごちゃごちゃ言ってねぇで今すぐミサカ妹から離れろっつってんだろ!!三下ァ!!!」

 

上条はアクセラレータの気を跳ね返すほどの剣幕だった。

 

「ほォ、テメェは俺様が学園都市第1位のレベル5と知ってそんなこと言ってやがんのか。いいぜ、ちゃんとキャッチしろよ」

 

そう言ってアクセラレータはミサカ妹を蹴り上げた。

 

上条は転がるようにギリギリのところでミサカ妹をキャッチする。

 

「ぐはっ、危ねえ」

 

転がった衝撃で咳き込む。ミサカ妹の様子を見ると既に血まみれの状態だった。

 

「あなたの行動は、理解しかねます。ミサカたちは薬品と機材があればボタン一つで生産できる実験動物なのに。作り物の体に借り物の心、在庫にして9968体も余りあるそんなもののためにあなたは」

 

「関係ねえ」

 

「え?」

 

 

「そんなちっせえ事情なんかどうでもいい。俺は世界で1人しかいないお前を助けるためにここに立っているんだよ。お前には文句が沢山あるんだ、勝手に死ぬんじゃねえぞ」

 

 

 

意識が遠のく中で目の前に立つボロボロの少年は一歩一歩アクセラレータの元へ向かっていった。

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区、操車場には貨物用コンテナやそれを運ぶためのレールやコンテナを運ぶための大型クレーンがある。

 

その中で上条当麻とアクセラレータは戦っていた。

 

一方は学園都市で1位の能力を持つ最強。

 

一方はレベル0の最弱。

 

誰が見ても戦力の差は歴然としていた。

 

「オラァ!!逃げてんじゃねェぞ三下ァ!!!」

 

「くそ!」

 

アクセラレータの追撃に手も足も出ない上条は必死に逃げてコンテナの陰に隠れた。

 

「チッ、手間かけさせやがって!三下!これで終わらせてやる!!」

 

アクセラレータは複数のコンテナを能力で操作して上条に放り投げた。

 

コンテナが落ちる地響きと砂埃は操車場の外からでも見えるくらい大きなものだった。

 

上条当麻はコンテナの下に埋まった。

 

☆☆☆☆☆

 

「うっ、あれ?」

 

俺はコンテナをかわしきれずに押しつぶされたはずだったが、かすり傷一つしていない。

 

それに自分の周りはぽっかりとコンテナが切り取られている。

 

「大丈夫か?当麻っち」

 

「リムル!」

 

俺の目の前にはスライムの姿をしたリムルがいた。

 

「リムル回復したんだな!」

 

「ああ、少し時間がかかったけどオレはもう大丈夫だ。それよりもアクセラレータの能力が解析出来たから言うぞ」

 

「おい、いつの間に?」

 

「あいつにバラバラにされた時だよ、とっさに《大賢者》に解析してもらってな。ってそんな事どうでもいいんだ、アクセラレータにオレが生きてることが知れたらまずい。時間もないし簡単に言うとアイツの能力はベクトル変換。文字通り全てのベクトルを操る力を持っている。簡単に言うと何か攻撃を受けても跳ね返せるし、むしろその跳ね返したエネルギーで攻撃も可能であるわけだ」

 

「それじゃあ触れられたら終わりなのか」

 

「そういうことだ。しかも今回の戦いはオレは参加できない、理由は当麻っちが一番知ってるよな?」

 

「無能力者の俺が超能力者のアクセラレータをぶちのめさないと実験は止められない」

 

「そうだ。・・・信じてるからな」

 

「任せろ」

 

そこまで話すとリムルは影に消えてしまった。

 

その瞬間 グシャ コンテナを潰すような音が聞こえた。

 

「中にいんのは分かってんだよ、三下!キヒヒ!早く出てこないとペシャンコになっちまうぜ」

 

その言葉を聞いたと同時に俺はとっさにコンテナの外に飛び出した。

 

ゴシャゴシャゴシャ 俺がさっきまでいたコンテナはゴミクズのようにぐちゃぐちゃになっていた。

 

「このアクセラレータを前にして息をしてるのは誇って良いぜ。だがなそろそろ楽になれ」

 

アクセラレータは夜空を抱えるように両手を広げる。

 

「選べ。右手か左手か、選んだ方の手でてめえの生体電気を逆流させて身体中から血の花を咲かせてやる。それとも両方か!!」

 

アクセラレータは真っ直ぐに俺に向かって走ってくる。

 

俺はそれに逆らわず真っ直ぐに右の拳をアクセラレータの顔面に打ち込む。

 

アクセラレータの手は俺に触れる前にアクセラレータは何メートルも吹っ飛んだ。

 

アクセラレータはしばらく倒れた後、突然騒ぎ出し再び突っ込んでくる。

 

でも俺はまた同じように顔面に拳を入れる。

 

「何なんだよ!その右手はァ!?」

 

「最強だって?一度も負けたことがないだって?なら喧嘩のやり方だって知らねえよな!三下!!」

 

「クソが!」

 

アクセラレータは地面を踏んで土砂を巻き上げシールドを張るが俺は下に回り込みその勢いでアッパーを入れた。

 

「シスターズだって精一杯生きてんだぞ!なのになんでお前みたいなのに食い物にされなくちゃならねえんだ!!」

 

アクセラレータは吹っ飛んで倒れた。

 

いける、勝てる

 

☆☆☆☆☆

 

御坂美琴は上条よりも遅れて操車場についた。

 

来る途中に大きな物が落ちる音がして心配だったが戦況を見て驚きに変わった。

 

上条の方が押している。彼は約束を守るために戦っている。

 

上条がアクセラレータを地面に拳で叩きつけアクセラレータは動かなくたった。

 

しかしアクセラレータが片手を上げると強風の嵐が起こった。

 

そして突然意味不明な叫び声を上げた時、風は周りのものを全て吹き飛ばした。

 

「うわっ!!」

 

美琴は近くの柵に捕まりどうにか吹っ飛ばされずに済んだ。

 

だが、上条は上空に上げられそのままクレーンに激突し地面に叩きつけられた。

 

「いや!」

 

美琴は上条の元に駆け寄った。

 

しかし上条はすでに身体中から出血がひどく体が少しもうごいていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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魔王登場

遅くなりました。駄文です


 

午後9時30分 第七学区 操車場にて。

 

アクセラレータは大気中の空気を頭上に集めて巨大なプラズマを形成していた。

 

もはや眼前で倒れている上条当麻の事などどうでもよかった。自分の力がどこまで巨大化しどれくらいの破壊をもたらすか、それにしか興味がなかった。

 

ーーー私じゃ止められない

 

御坂美琴はアクセラレータの様子を見てそう悟った。

 

ーーーあの少年はぼろぼろになってまでアクセラレータを止めようとしてくれたのにレベル5の私は何も出来ないのか

 

再び絶望しかけたが上条の言葉を思い出した

 

『みんなが無事に帰るってのが俺の夢なんだ』

 

ーーー諦めちゃダメよ。アイツの夢を叶えるために出来ることを考えるの

 

御坂美琴は周囲を見渡した。

 

ーーー大量のコンテナでガードする?違う。レールガンで相殺?違う。もっと根本的に止めるためにはどうすれば。

 

そこで目に入ったのは学園都市にいくつも有る風力発電機だった。

 

ーーーアクセラレータは空気を集めてプラズマを形成している。それを風力発電を使って乱すことができれば。しかし学園都市中の風力発電をどうすれば操ることができる?

 

頭のいい美琴はすぐに答えを見出した。しかしその方法は美琴にとって胸を引き裂かれる思いをすることになるに違いない。

 

ーーーでも、やるんだ!

 

御坂美琴はボボロになって倒れているミサカ10032号のもとに行った。

 

「お願い起きて!」

 

ミサカ10032号の体はもう冷たかった。

 

「・・・無理を言ってるのは分かるわ。でもやってもらいたいことがあるの!あなたにしか出来ないことなの!」

 

反応しない。この状況を見て美琴は嘆いた。

 

「なんて私は無力なの!?こんな状態のあなたにお願いしか出来ないなんて!」

 

ーーー常盤台のエース、学園都市第3位のレベル5であってもアイツの夢を叶えることもアクセラレータを止めることが出来ないなんて悔しい!

 

「・・・だから、お願いだから!アイツの夢を守ってあげて!!!」

 

 

 

「わか、分かりません。その言葉の意味は分かりかねます。しかし、その言葉はミサカのココロに響きました」

 

 

姉妹は手を取り合った。

 

☆☆☆☆☆

 

アクセラレータは異変を感じた。圧縮したプラズマが分解していったのだ。

 

「風邪を誰かが操っているのか?そういや風力発電ってのはモーターに特殊な電気を浴びせると回転するって聞いたことがあるぞ。まさかアイツらか!?」

 

1万体のシスターズがここにいる10032号をカメラにしてミサカネットワークで繋がりアクセラレータの計算を特殊な風で乱した。

 

「殺す」

 

「させると思う」

 

美琴がミサカ10032号の前に立ち庇う。

 

「ハッ!何ぬかしてんだァ格下。視力検査で2.0まで測れねェのと同じように能力のレベルは5までしか測れねェから俺はここにいるだけだ。俺とお前じゃ話にもならねェよ!」

 

アクセラレータは美琴が反応できないスピードで美琴の背後に回った。

 

ーーー死ぬ

 

そう思った時だった

 

 

「手を、出すな」

 

 

上条当麻(ヒーロー)は再び立ち上がった。

 

「そいつらにそれ以上近づくな!!!」

 

「ぐっ」

 

アクセラレータは一瞬後づ去った。

 

「・・・クハッ!クキキ!おもしれェ、最高におもしれェぞ!お前!!!」

 

アクセラレータは正面に両手を構えてとんでもないスピードで上条の方に突進した。

 

「ギャハハ!」

 

 

 

「歯を食いしばれ最弱(さいきょう)。俺の最強(さいじゃく)は、ちっとばっか響くぞ」

 

 

 

勝敗は決した。

 

アクセラレータは何メートルも吹っ飛び気絶した。

 

☆☆☆☆☆

 

「介入するならここかな」

 

突然の出来事で美琴は反応出来なかった。

 

上条の勝利で安心したが彼は電池が切れたかのように倒れてしまったところだったからだ。

 

「誰なの!?」

 

声のする方に顔を向けるとアクセラレータの側に黒い霧の塊が発生していた。

 

黒い霧はやがて人型になった。14.5歳くらいの幼い顔つきと健康的に発育した身体で、ボブくらいのピンク色の髪、夏服のブラウスに短めのスカートを履いた少女が現れた。

 

彼女が目を開けると宝石のようなブルーの瞳とグリーンの瞳を持っていた。それが月の光に反射して異質な雰囲気を醸し出していた。

 

 

「魔王よ、それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

 

魔王。おとぎ話に出てくる悪の王。なにかの能力の二つ名か、自分の名を知られたくないからか美琴には分からなかった。

 

「アクセラレータは頂く」

 

アクセラレータに黒い霧がかかるとそこにはもう彼の姿はいなかった。

 

「次はレールガンの番」

 

オッドアイの少女はこちらに手を向ける。

 

黒い霧が美琴を包み込みそうになる。

 

ーーー何これ!?アクセラレータが消えた!?一体何が!?

 

そう思った時、美琴は何かに引っ張られて黒い霧をかわした。

 

美琴が周りをよく見ると上条とミサカ妹も近くにいた。

 

そして巨大な狼のような姿をしたツノの生えている獣と数日前出会ったリムルという少年がいた。

 

 

「助っ人登場。美琴っち大丈夫か?」

 

 

美琴は驚いたがすぐに頭のスイッチを目の前の敵に切り替えた。

 

「アイツ、アクセラレータを何らかの方法で消したわ」

 

「ああ、おい魔王!オレのこと知ってるよな!」

 

するとオッドアイの少女は笑った。

 

「あなたが出てくるなんて嬉しいわ。でもあなたはまだここにいて欲しいし、戦うのも面倒ね。今日のところは引いてあげる」

 

すると再び黒い霧がオッドアイの少女を包んだ。

 

「待て!オレたちをこの世界に転生させた理由は何だ!?」

 

「これから戦いにあなたたちは何度も巻き込まれる、その中で答えは見つかるわ」

 

そう言うとオッドアイの少女は消えた。

 

☆☆☆☆☆

 

かくして最強と最弱の戦いは終わった。

 

実験はアクセラレータの敗北と消失によって中止、シスターズ達は定期的にメンテナンスを必要とするため世界中の学園都市系列の研究所に移動した。

 

美琴は罪の意識を抱えて生きていくことを誓った。

 

ミサカ妹は姉妹の愛を知った。

 

上条は自分の使命のために戦いに行くと言った。

 

リムルはこれからの戦いを考えていた。

 

「オレの仲間たちを早く探さなきゃ」

 

いつも気丈に振る舞うリムルだったが内心は苦悩していた。

 

魔王と名乗る少女は何か企んでいる。

 

それを止めなければいけない。

 

そんなことを上条の退院日に考えていた。

 

「どうしたリムル?調子悪いのか?」

 

「当麻っちに心配されたくないよ」

 

上条の体はまだ完治しいなかったが入院費が高いという理由で3日で退院した。

 

「あれは美琴っちじゃない?」

 

「おっほんとだ」

 

鉄橋の端から歩いてくる美琴は何かそわそわしていた。

 

「オレは隠れるわ」

 

「ちょっ!リムル!」

 

ーーー若者たちの青春を邪魔しちゃいかんよな。

 

リムルは上条の陰の中に隠れた。

 

影の中から二人の様子を伺うと美琴が何か大切なことを言おうとした時上条が意味不明なことを言っていた。

 

ーーー当麻っちはいつか女の子から刺されるな

 

そんなちぐはぐな二人を眺め思う。

 

ーーーこんな子供達が裏の世界で殺し合っている現実があるのか

 

以前の世界は戦争なんてよくある世界だった。しかしこの世界は少しきな臭いところはあるが基本的に平和で上条と美琴はまだ子供だ。

 

ーーー学園都市を調べる必要がある

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 



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天使崩しエンゼルフォール

駄文駄文。禁書の内容知ってる方はスルーでも大丈夫です


 

カモメの鳴き声が聞こえる。目を開けると一面の海と青空。オレ、リムル・テンペストは上条当麻、インデックスとともに学園都市を離れて神奈川県の海を訪れていた。

 

ーーー海水浴なんていつぶりかな。仕事忙しくて行けなかったもんなー

 

なぜオレたちが学園都市を離れているのかというと、先日当麻がアクセラレータを倒した影響なのか小萌先生から「上条ちゃんの立場が危ういのでー、今は外でおとなしくしてくれなのですー」と言われ準備してもらった旅館に数日泊まることになった。

 

ーーー当麻っちも休めて良かったよな

 

まだ子供なのに彼は夏休みに入ってから問題ばかりだった。夏休みも補修ばかりで遊ぶ暇もなかっただろう。一緒に過ごしていても彼の持ち前の不幸で色々あるからリフレッシュ出来て良かった。

 

ーーーインデックスかわいい、普段が修道服だからギャップでいいな!

 

インデックスも今日は水着だ。当麻と二人で久しぶりにはしゃいでる二人を見て和む。中身はおじさんやなー。

 

「ぎゃーーー!!!」

 

当麻の叫び声が聞こえた。どうやら顔面にクラゲを張り付けている。

 

「何やってんだよ」

 

当麻は叫びインテックスはオロオロしオレは冷静にクラゲを離し当麻を旅館に運んだ。

 

ーーーまったくこいつらは

 

弟と妹がいるみたいだよ

 

☆☆☆☆☆

 

当麻は女将さんから借りた軟膏を顔に塗っている。

 

どうやらインデックスはクラゲを帽子だと勘違いしたらしい。そんなことってあるのか?彼女はクラゲを見たことなくてすごく当麻に謝っていた。

 

旅館の女将さんはクラゲが多くてこの辺の観光客が少なくなってるらしい。どうりでオレたち以外の客を見ないわけだ。女将さんは耳をほじりながら愛想一つなく言うのでそれが原因だと思うのだが。

 

すると部屋に初老の旅館の主人が入ってきた。

「失礼致します。ゴホッゴホッ。お連れ様のご到着が遅れて明日になるそうです、ゴホッゴホッ」

主人は正座になり礼儀正しく言っていたが咳を客の前ですると丁寧な対応が台無しだな。

 

「えー当麻のお父さんとお母さんに会えると思ってたのにー」

インデックスが不満を言う。そう小萌先生からの配慮で普段会えない当麻の両親、上条刀夜、椎菜もこの旅行に来るそうだ。

 

「分かりました。ありがとうございます」

当麻は問題なくそう言ったが、内心安心してるだろう。当麻は夏休み以前の記憶がないのだ。だから両親との思い出も顔さえも分からない。

 

ーーー今日の夜にでも当麻っちの話聞いてやろう

彼が抱えているものは想像以上に重い。どうにかオレが軽くしなくちゃな。

 

☆☆☆☆☆

 

海から上がり旅館の温泉に行くことになった。インデックスが浴衣に着替えている間にオレたちは暇ができた。

 

「当麻っち卓球しようぜ!」

「おう!」

 

オレからのサーブを打った。当麻は難なく打ち返ししばらくラリーが続いた。

「当麻っち意外といけるじゃん、よっ」

「やった思い出ねーけど、前の俺はやってたかもなー、おっと」

「そういう時たまにあるのか?ほいっ」

「あー、料理する時とかかな。それっ」

「大変だな、あらよっと」

「ま、気にしたってしょうがねえよ。あらよっと」

「つーかどうすんの?ほい」

「何がだよ?」

「明日のことだよ」

「あー」

コーンコーン ラリーが終わりピンポン球が転がっていく。

「あーって気になんないの?」

「それゃ気になるけど会ってからじゃないとわかんねーだろ」

「そうか。まっお袋さん美人だといいな!!」

「おいっ!」

「しかも年下の従姉妹も来るしなー、どーせ当麻っちにメロメロだろ」

「何でだよ!」

「明日楽しみだなー」

「変なことしようとするなよ!」

 

「とうまーリムルーお風呂いこ!」

ちょうどインデックスがやってきた。浴衣姿もベリーキュート。

 

それから温泉に入って夕食を食べてみんなで寝た。当麻っちはインデックスと別に寝るというので襖を境にして布団を敷いた。

 

☆☆☆☆☆

 

ジリリリリリ 内線の音が鳴る。

「はい上条です」

「おはようございます。ゴホッゴボッお連れ様がご到着されたようです」

「あっはい」

 

俺の両親とついに会うことになった。リムルを起こし、インデックスは布団にくるまって寝息を立てているのでそっとしといた。

リムルに昨日気にしてるから聞かれてはぐらかしたが、内心記憶喪失だってばれないか不安だった。

 

となりにいるリムルはそわそわしながら待っている。

「俺より緊張してどうすんだよ」

「だってさーハーフの友達ってどう演じればいいんだよう」

「変なことさえしきゃいいんだよ」

「おっあの人じゃないか?」

 

旅館前の下り坂から上がってくる男性、途中でこちらに気づいたのか小走りで駆け寄ってくる。

「当麻!久しぶりだな。元気だったか?」

「うん、父さんも元気そうだね」

オールバックに少しくたびれた40代くらいの男性が俺の親父。やっぱり何も覚えてないようだ。

「こちらは当麻のお友達の」

「はじめましてリムルです!」

「いつも当麻がお世話になっています」

「いえいえこちらこそ仲良くさせて頂いてます」

なんだか恥ずかしいな

「そういや母さんたちは?」

「もうすぐ来るはずだぞ、迎えに行って荷物持ってくれないか?当麻」

「お兄ちゃーーん!!!」

遠くから走ってくる少女がいる

「乙姫ちゃんがちょうどきたようだぞ」

「へーあの子が」

「お兄ちゃーーーん!!!」

「ん?」

走ってくる少女はなんとなく見覚えのある顔をしていた。

「お兄ちゃーーーん!!!」

「え」

茶髪のショートカットに容姿端麗、どう見ても御坂美琴がこちらに走ってくる。

「うおっ!!!」

そして飛びつかれて抱きつかれて押し倒された。

「お兄ちゃん!会いたかったよー!」

「!?」

胸元が緩い服を着ているためかもう少しでみてはいけないものが見えそう。

「だー!!なんでここにいるんだビリビリ!!つーかそのわけわかんない妹属性やめろ!!!」

「きゃっ!ビリビリって何よう?」

「どうしたんだ?当麻。お前の従姉妹の竜神乙姫ちゃんだろ、久しぶりだから忘れたのか?」

「え?父さん、こいつがこのビリタ中学生が俺の従姉妹だって?」

「いかにも。当麻大丈夫か?」

やばい、頭がまったく追いついてない。御坂美琴にそっくりなこの少女が従姉妹だって?またクローンとかいうじゃないだろうな!

リムルを見ると何かを見て唖然としているようだった。

「あらあら、相変わらず二人は仲がいいわね」

聞き慣れた声の方を見るとインデックスがつば広の白い帽子におしとやかなロングのワンピースを着ていた。

「お前何やってやがんだ?」

「あらあら、当麻さん反抗期?かわいいわ」

「こらっ母さんに向かってお前とはなんだ!」

「・・・このR15からつまみ出されそうなガキが俺の母さんだって?」

「あらあら当麻さん的には母さん若く見えるのかしら」

「いかにも、お前の母さんだ」

「ふふふ、リムルドッキリだと言ってくれ」

「オレも分かんないよ」

「まじで?」

「うん」

なんなんだ一体?

 

混乱したままみんなで旅館に戻る。

「いらっしゃいませー。お待ちしてましたー」

ミサカ妹が耳をほじくりながら出てきた。

「どうぞゴホッゴボッお上りください」

ステイルが主人の格好で挨拶した。

「あっとうまーおはよう!」

インデックスの格好をした青髪ピアスが来た時、俺の我慢のスイッチが壊れた。

俺が青髪に掴みかかりそうになるのを大人たちに止められた。

 

そして今目の前で御坂美琴そっくりの少女がたつがみと書いてあるスクール水着を着て海ではしゃいでいる。

「なんなんだこれは」

海で泳いで頭を冷やせということでみんなで海に来ていた。

「オレだって意味不明だよ」

隣にいるリムルも混乱しているみたいだ。

「やっぱりドッキリ?」

「いいや、これは何か起こってるかもな」

リムルは言う。

「何か?」

「ああ」

「おーい」

ここで父さんがやってきた。

「落ち着いたか?当麻」

いつ見ても見慣れない顔が父親だっていうのは不思議な感覚だ。

「そうだこれ出張先で買ったお土産だ」

それは像の神様のストラップだった。

「どうも」

「なんだ今度は他人行儀になって」

なんかいろいろなことが起こってボロを出してしまった。

「あっ椎名さんまだですかね?」

リムルが話題を変えてくれた。

「そろそろだとお思うが、あっ来たぞ」

「!?」

インデックスがマイクロビキニを着ていた。

「ふんふんやっぱり似合うな!買った甲斐があった!」

「あらあら、そう?ありがとう」

親父は鼻の下を伸ばしてインデックスのマイクロビキニを眺めている。

「このロリコン親父!!!」

「ぐはっいきなりなんだ!」

「とうまー!」

「!?」

青髪がインデックスの水着を着て・・・もう見たくなかったので砂に埋めた。

 

☆☆☆☆☆

 

「なんなんだこの状況」

 

冷静になろうと思って宿に戻るってテレビを見ると海外中継のレポーターを小萌先生が、アメリカ大統領を白井黒子がやっていた。

 

「当麻っち、外に出てみよう!」

 

外に出ると幼稚園児の警察官、おばあちゃんの女子高生、セーラー服を着た相撲取り。

 

「まさか姿が変わっている?」

 

「お兄ちゃん!」

 

突然後ろから乙姫(美琴の姿)が抱きついてた。

 

「この写真お正月に撮ったんだよ、思い出してくれた?」

 

携帯の画像に俺と小学生くらいの黒髪の少女が写し出されてた。

 

「ちょっと頭痛いから宿に戻るな」

「大丈夫?」

「ああ、父さんに伝えておいてくれ」

 

姿が変わったのに自分自身は気づいていない。俺とリムルは宿に帰る道で今の状況を話し合った。

 

「おいなんかいるぞ、当麻っちの知り合い?」

全身拘束ベルトを服のように着た目が隠れるくらいの前髪でロングの金髪の少女が立っていた。

 

「変な奴全員知り合いかよ」

「とりあえず声かけてみれば?」

「よっ!ひさしぶ」

がきん! 突如少女はノコギリを俺のクビに斬りかかってくるのをリムルが刀で止めた。

 

「知り合いじゃないみたいだな当麻っち」

「ごくっ」

「質問一、この術式をかけたのはお前か?」

「やばいなこの子」

「怒らせるな!リムル」

 

「待ちなさい」

 

声のする方を見ると片足だけジーンズが完全にない、腰まである長い黒髪をポニーテールにした、白いシャツを着ていてもわかる豊満な胸が特徴的で、数本の刀を持った180センチくらいの女性ともう一人、見知った顔がいた。

 

「土御門!?」

 

「私はイギリス清教必要悪の教会(ネセサリウス)所属の神裂火織です。その少年達は術者ではありません」

 

そう言うと金髪の少女はノコギリを懐にしまった。

「上条当麻、まったくあなたはいつも問題の中心にいますね」

「そんじゃ説明してもらおうか、神崎」

 

☆☆☆☆☆

 

天使崩し(エンゼルフォール)?」

 

「その術式が昨日発生しこのような状況が世界中で生まれました。何者かがやった本来あり得ない天使を人間の体に落とすという術の影響です。私たちはとっさに影響を逃れましたが、ほかに影響を受けていないあなた達に今回の事件の容疑がかかっています」

 

世界中で起きてる、しかも俺たちが容疑者!?

 

「質問1を繰り返します。彼らが術者ではない理由は?」

 

「学園都市の能力者が魔術を使うと体に負荷がかかるけどその痕跡もない。しかもカミやんにはイマジンブレイカーという異能を打ち消す右手があるから魔術は使えないのにゃー」

 

「土御門何でそのことを!?」

 

「13 26 33 合わせて72」

 

「!?」

 

金髪の少女は呪文をつぶやき俺に攻撃してきた。それを間一髪右手で防ぐ。

 

「いきなり攻撃してすまなかった少年。私はロシア正教会殲滅白書所属サーシャ・クロイチェフ」

 

「こんなとこで殲滅白書のメンバーにお目にかかるとはラッキーだにゃー」

 

「おい土御門何でお前自然とこの会話に参加してんだよ?」

 

「あん?俺も必要悪の教会(ネセサリウス)だからだぜいカミヤん」

 



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父親カミジョウトウヤ

御使堕し(エンゼルフォール)
天使の精神を天界から人間界にひきづり下ろす術式。
上位セフィラから下位セフィラへと強制的に引きづり降ろされたため四界に影響あり。
天使が人間の肉体に入りまたその人間の精神が別の肉体に移動するので椅子取りゲームのように入れ替わる。
術の影響下にある人間は入れ替わった肉体ではなく本来そこに有る精神を持つものとして認識する。しかし術の影響外にある人でも誰が誰に入れ替わっているか分からない。


わたくし上条当麻はインデックスとリムルの三人で海水浴に来ていた。そこに俺の家族も合流したのだが母親はインデックスで従姉妹は御坂美琴でインデックスが青髪ピアスになっていた。そこにミーシャ・クロイチェフと名乗るロシア正教会の魔術師が現れ俺の命を狙ってきた。神裂火織と土御門元春に間一髪で助けてもらい事情を聞くと、これは御使堕し(エンゼルフォール)という術の影響みたいだ。しかも土御門は必要悪の教会(ネセサリウス)の一員だって!?もう頭がこんがらがってきたー!?

 

×××××××

 

夕方、旅館前のカキ氷屋で座る五人。

 

「なんだって!?土御門!!」

 

「考えても見ろよ、カミやん。科学は魔術の敵だぜ、俺は魔術側のスパイとして学園都市に潜入している。だから今まであった事件のこともカミやんのイマジンブレイカーも、リムルが異世界からやってきたことも知っている。ま、超能力のカリュキュラムを受けすぎて今は魔術を使えないけどな」

 

「私と土御門はとっさに結界を貼り術の影響を抑えることが出来ました。他人からは私たちとは違う人に見えていますけどね。今回の事件は規模的にも術の効果的にも被害は計り知れません。そこで術者を特定して拘束するのが目的です」

 

「そこで、魔術が効かない当麻っちに白羽の矢が立ったと」

 

「それもあるし、どうやら術の発信源はこの辺みたいでな。リムル、お前も術の影響を受けていないから犯人候補だ。俺たちはカミやんと同化していた影響でイマジンブレイカーの能力が作用したと推測しているが、そちらさんは納得するか?」

 

「回答1、それは100%の証拠ではない。だが犯人という証拠もない。つまりロシア正教会側からはリムルと名乗る彼を疑いが晴れるまで一時的拘束し無力化することを求める」

 

「なんだって!?」

 

「別にいいよ当麻っち」

 

「リムルお前!?何もやってないんだろ?」

 

「もちろん。けど当麻っちがこの事件の真相を解き明かしてくれるのを信じてる」

 

「けれどリムルお前聞いたところによるとスライムで大抵の攻撃を受けても平気だろ。ならカミやんと・・・そうだなイギリスにいるお前の仲間を人質にする。お前が何か攻撃をしようとした素振りを見せたら彼らを殺す。それでいいかにゃー?」

 

「回答2、それで構わない」

 

「オレも」

 

「くそっ!俺たちはただ家族と一緒に海水浴に来ていただけなのに」

 

「カミやん、その家族が全員入れ替わっているっていうのを忘れるなよ」

 

「・・・ああ」

 

×××××××

 

夜、上条当麻とリムルは客室から夜空を見上げていた。

 

「不幸だ」

 

「ははは!本当に災難だな!」

 

「なんで笑ってんだよ」

 

「面白くなってきたからなー」

 

「はあ?」

 

リムルの楽天的な思考に呆れてしまった。

 

「噂以上に肝が座った奴だにゃー」

 

「土御門」

 

いつのまにか後ろに土御門がいた。

 

「お前こそ魔術師だったなんてな。意外だよ」

 

「いやいや、リムルといる時内心バレるかヒヤヒヤしてたんだぜい。リムルの能力は未だ不明瞭なところが多いからにゃー・・・それでももし敵なら容赦しない」

 

「・・・さすが陰陽博士といったところか」

 

「やっぱりバレてたかにゃー。ただし御使堕し(エンゼルフォール)を防ぐために結界を張った影響で体はボロボロぜよ。もう一回魔術を使えば死ぬかもにゃー」

 

土御門はシャツをめくり傷を見せた。体の内部の血管が破裂していた。

 

「俺はいま一一一って言うアイドルに他人から見えるみたいでな。外を動くと騒ぎになるから自由に動けないんだにゃー」

 

「そうか、っていうことは神裂も」

 

「聞いたら笑えるぜ。ねーちんは何とステイルに見えるみたいなんだにゃー」

 

「それは・・・」

 

かわいそうに思えた。

 

「それより土御門、今後の動きはどうするんだ?」

 

リムルは声を少し低くして聞いた。

 

「それがこんな事態想定外のことだからにゃー。禁書目録にさえ記載されていないことだからどうすればいいか皆目見当もつかない。でも発信源はこの辺なんだ、儀式場さえ破壊すれば止められるはずだぜ」

 

「厄介だな」

 

「それとカミやん、ねーちんの前で不幸だって口にするのをやめてくれないか?」

 

「なんで?」

 

「ねーちんは聖人つー生まれながらにして神からの御加護を受けていてなそれ故に幸運体質。カミやんと逆で幸運で悩んでいるんだにゃー」

 

「幸運で悩む?」

 

不幸な俺には分からない悩みだった。

 

「自分が絶対に幸運になるっていうことは絶対に他人を不幸にしてしまうって思っているみたいぜよ。ねーちんは天草式という東洋の隠れ十字教の生まれにして、生まれた瞬間に女教皇(プリウステル)の地位についたみたいなんだがいろいろあったらしいからな」

 

「そう、なのか」

 

バタン!突然部屋のドアが開いて疲れている様子の神裂が現れた。

 

「ハアハア、少し頼みたいことがあるのですが」

 

××××××

 

旅館の温泉前にて。

 

どうやら神裂は父さんたちにステイルの特徴的な見た目で色々しつこく聞かれたらしく逃げてきたらしい。

 

「頼みというのは、実は少し疲れを取りたいと思いまして。しかし・・・」

 

「見た目がステイルだから女湯に入れないし、男湯に入るにしても誰か入ってきてほしくないから見張ってて欲しい」

 

「・・・はい。土御門は信用できませんしあなた方しか頼めなくて」

 

「いいぜゆっくりしてこいよ」

 

「ありがとうございます」

 

神裂は頭を深々と下げると男湯に入っていった。

 

「当麻っち待ってる間オセロしようぜ」

 

「いつの間に持ってきてたんだよ」

 

俺とリムルはパチっパチっとオセロをし始めた。俺が黒でリムルが白。

 

「火織っちって意外と可愛いところあるな」

 

「お前ってすぐにあだ名つけるよな」

 

「当麻っちはああいう子タイプじゃないのか?」

 

「うーん、どうだろうな。あんまり付き合うイメージ湧かないし」

 

「じゃあタイプは?」

 

「えー、なんかすべてを包んでくれる母性を持った寮母さんタイプかな?」

 

「ほおほお」

 

「リムルはタイプあるのか?」

 

「オレはー、エルフとかサキュバスタイプかな」

 

「・・・実際どうなの?」

 

「・・・色々凄いぜ」

 

その後オセロをしながらリムルから異世界のエロ事情を聞いた。

 

×××××××

 

小一時間ほど神裂は体の疲れを取り着替えていると突然男湯に上条刀夜と上条当麻、リムルが入ってきて驚いて刀を抜いてしまった。向こうは驚いて逃げてしまった。

 

「まったく」

 

「裸を見られたくらいで怒れる立場なのか」

 

外から土御門の声が聞こえた。

 

「カミやんはインデックスの命の恩人なんだぜい」

 

「・・・分かっています、分かっていますけど」

 

×××××××

 

旅館前の遊歩道のベンチにて。

 

息を切らして上条親子はベンチに座っていた。

 

「はあはあはあ」

 

「いやー当麻のお友達はユニークだな。男同士なのに裸を見られたくらいであの様子、ひょっとしてアッチ系か!」

 

「うるせえよ」

 

「それよりリムルくんいないな」

 

「先に帰ったんだろ」

 

いないのに気づいていたがどうせ近くに隠れているに違いないと思っていた。

 

「・・・」

 

「なんだよ」

 

父さんが俺の顔の方を見てきた。

 

「やっぱりお前の顔は母さん似だよ」

 

母親似と言われても見たことないし実感が湧かなかったが、少し心がほっこりした。

 

ーーー家族ってこういうもんか。・・・でもここにいる父さんもどっかの知らないおじさんなんだな

 

そう思うと切なくなった。

 

「ははは、昔母さんとデートをしていた時、母さんも帰り際になるとそんな表情をしていたな」

 

「・・・」

 

少し照れくさい。

 

「そんなお前にメキシコ土産の」

 

「いらねーよ」

 

「あれ?ひょっとしてあそこにいるのは当麻のお友達のミーシャちゃんじゃないか?」

 

「ああ」

 

視線の先、広場の中央でミーシャは一人、月を眺めていた。

 

「あの憂鬱な表情を浮かべる幼顔、将来いい女性になるぞ」

 

「なに言ってんだ!変態オヤジ!」

 

「グッドラッグ当麻」

 

そう言うと父さんはそそくさとどこかへ行ってしまった。

 

俺はしょうがなくミーシャに声をかける。

 

「こんな時間に何してるんですか?遠く離れたロシアのツンデレの大地を思い出しているとか」

 

「・・・」

 

くそ!俺の渾身のボケを潰された!

 

御使堕し(エンゼルフォール)について何か分かったのか?」

 

「・・・」

 

また無反応、何か話題はないかとポケットをいじるとガムが入っていた。

 

「ガム食うか?」

 

俺はガムを右手の手のひらに乗せて渡すとミーシャは恐る恐るガムを取った。

 

「俺には天使とかよくわかんないけど、なんでまた術師は御使堕し(エンゼルフォール)なんか発動させたりしたんだろうな」

 

「・・・私見1、莫大な天使の力を手に入れるためか。あるいは自らが天使の位に居座るためか。・・・御使堕し(エンゼルフォール)は未完成」

 

「え?そうなのか」

 

御使堕し(エンゼルフォール)はバチカンを壊滅させるほどの力。完成したら世界に神話規模の厄災が起きる。その前になんとしても術者を特定し完成を阻止しなければならない」

 

「そうだな!ガムなんか食ってる場合じゃなかったな!悪い!」

 

世界の危機か。

 

×××××××

 

旅館への帰り道。

 

なぜか隠れていたリムルが俺と合流した。

 

「世界の危機が訪れるかもしれないか」

 

「まさかそんなことに当麻っちが関わることになるとはな」

 

「全然実感湧かねえよ」

 

「それゃそうか。・・・でもいざとなったら」

 

リムルが何かいいかけた時旅館の客室の方から声が聞こえた。

 

「あらあら刀夜さん、ちょっと!・・・あら刀夜さん的にはなにをそんなに元気になっているのかしら?」

 

「当麻の顔を見ていたらなんだか昔を思い出してね。いやーあいつも弟か妹が欲しかろうと」

 

「あらあらそうかしら?」

 

父さんとインデックス(中身は母さん)の聞き捨てならない声が聞こえてきた。

 

「リムル悪い。世界の危機よりも俺には差し迫った危機があったわ!ふん!」

 

「当麻!」

 

俺はリムルを引きずって父さんたちの部屋に走った。

 

「ちょっとストップ!ストップ!ストップ!」

 

「あっ!?当麻なんてところに!?」

 

俺はとんでもない危機を止めたのであった。

 

×××××××

 

次の日の朝。母さん(インデックス)が朝から部屋を慌ただしく飛び出した。

 

どうやら家の鍵を閉め忘れたらしい。電車で半日かかるらしく帰るのは夕方になるそうだ。

 

そこでなぜかミーシャが母さん(インデックス)に同行して俺の家に行くことになった。

 

それを見届けた父さんは俺のことをからかったが、そこで父さんが言った一言に違和感を感じた。

 

『今時奥ゆかしい子だ。お前の手に触れようともしないなんて』

 

ーーー何かおかしいぞ。

 

リムルも同じ気持ちだったので土御門と神裂を集めて事情を話した。

 

「ミーシャがそんなことを?」

 

「なあ、御使堕し(エンゼルフォール)の実態ってのは分からないんだろ?」

 

俺は聞いてみた。

 

「はい」

 

「英国図書館のどこにも記録されていない未知の現象ぜよ」

 

「そんなものが未完成なんてどうしてわかるんだ?」

 

俺はふと疑問に思ったことを口にした。

 

「!?」

 

一つ疑問を浮かべると枝分かれして次々と疑問が湧いた。

 

「完成したら厄災が起きるってどうしてミーシャに言い切れるんだ?ミーシャはどうして俺の右手に触れなかった。単に恥ずかしいからか・・・それとも」

 

「自らが発動させ」

 

「現在進行形で起きている御使堕し(エンゼルフォール)を打ち消されたくなかったから」

 

そしてパズルのピースをはめていくように疑問の答えが出てきた。

 

「カミやん!家に案内しろ!」

 

「おう!」

 

「オレもついていくぜ」

 

「私は待機しています!」

 

インデックスが危ない!ミーシャを止めないと!

 

×××××××

 

タクシーで3時間後、父さんに送ってもらった住所を頼りに上条家の新居にたどり着いた。

 

「ここが俺の家」

 

ドアは母さんが言った通り鍵が閉まっていなかった。どうやら母さんとミーシャよりも先に家に着いたようだった。

 

家の中はいたるところにどこかの神様の像や魔除けっぽいシンボルが置かれていた。父さんの海外からのお土産だろうか。

 

「あ」

 

父さんの部屋に入ると小さい頃の俺が書いたであろう家族の絵が壁に掛かっていた。

 

「当麻っち」

 

リムルが心配そうに俺に声をかけてきた。

 

「大丈夫」

 

なにも思い出せない、このことを意識すると心が虚しくなってくる。

 

一階に戻ると台所で土御門が虎のミニチュア像を見ながら考え事をしていた。

 

「どうした土御門」

 

「なるほどな」

 

「ん?これがどうしたんだ?」

 

「触るな!」

 

虎のミニチュア像に触れようとした時土御門に手を弾かれた。

 

土御門はリビングの方に行った。

 

「土御門!どうしたんだ?」

 

「・・・」

 

土御門は写真を眺めている。

 

「これは、家族写真。これが母さん」

 

母さんは奥ゆかしそうな優しそうな人に見えた。

 

「ん?ちょっと待てこれって」

 

リムルが写真に写っているもう一人の人物を指差す。

 

「当麻っちのお父さん入れ替わってないぞ!?」

 

「なんだって!どうして!?」

 

「入れ替わらないのはカミやんなどの例外を除いて、術者本人しかいない。早く戻るぞ!」

 

その直後、リビングのドアから母さん(インデックス)とミーシャが現れた。

 

「ひ、一一一!なんでここにいるのか分からないけどわたし的にはどうでもよかったりしてー!」

 

「うわ!」

 

母さん(インデックス)は土御門を別の誰かと勘違いして抱きついた。さらにミーシャは俺が持っている写真を見てすぐ家を出て行った。

 

「俺に構わず追え!上条刀夜が危ない!」

 

「おう!」

 

外に出るとミーシャの姿はなかった。

 

「ランガ!」

 

「我が主人」

 

俺とリムルは旅館に全速力で戻った。

 

ーーー父さん。どうしてオカルトなんかに手を染めちまったんだ!?

 

×××××××

 

夕暮れ、旅館にて。

 

全ての事情を神裂に話した。どうやら今父さんは砂浜を散歩しているらしい。

 

「分かりました。あなたはここで待機していて下さい。刀夜氏の身柄はこちらで拘束します」

 

「ああ火織っち任せるか?」

 

「はい」

 

神裂とリムルが話を終わらせようとする。

 

「待てよ!これは俺の問題なんだ!俺に行かせてくれ!」

 

「しかし」

 

「しかしじゃねえ!上条刀夜は俺の父さんなんだ!俺のたった一人の父親なんだよ!」

 

「当麻っち」

 

「リムルも手を出さないでくれ」

 

「・・・わかった」

 

「もし、刀夜氏から攻撃があった場合迅速に拘束しますからね」

 

「ああなんとして説得する」

 

父さん、俺はあんたが何の為にこんな事をしたのか分からない。けど止めてみせる。これが俺の使命だから。

 

××××××

 

日が沈む海水浴場の砂浜にて。

 

二人の親子は対峙していた。

 

「父さん」

 

「当麻」

 

今二人は何をおもうのだろうか

 

御使堕し(エンゼルフォール)

天使の精神を天界から人間界にひきづり下ろす術式。

上位セフィラから下位セフィラへと強制的に引きづり降ろされたため四界に影響あり。

天使が人間の肉体に入りまたその人間の精神が別の肉体に移動するので椅子取りゲームのように入れ替わる。

術の影響下にある人間は入れ替わった肉体ではなく本来そこに有る精神を持つものとして認識する。しかし術の影響外にある人でも誰が誰に入れ替わっているか分からない。




長い駄文を読んでいただきありがとうございます。やたら読みにくい話ですが次でエンゼルフォール編終わります。


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大天使カミノチカラ

駄文


夕暮れ、砂浜にて。上条当麻と上条刀夜の親子がいた。

 

「帰ってきたのか?母さんも一緒か?」

 

俺がなにも知らないと思って父さんは普通に話しかけてきた。

 

「・・・どうしてだよ」

 

「?。それより新しい家どうだ?前より広くなっただろう」

 

「・・・すっとぼけてんじゃねえよ!」

 

「何を言ってるんだ?当麻」

 

「分かってんだよ!父さん!どうして魔術なんていうものに手を出したんだ!?」

 

「・・・」

 

俺が言った事に父さんは少し驚いた表情をして空を見上げた。

 

「なんで!?どうして!?何かに悩んでいたんなら俺に一言言ってくれればよかったじゃないか!」

 

「・・・そうか。知ってしまったんだな・・・当麻、お前が小さい頃周りからなんて呼ばれていたか覚えているか?」

 

「?」

 

「厄病神。何故だか分からないがお前の周りで不幸なことがたくさん起こったんだ。お前はただその場所にいただけなのに周りの人間はそういう事に迷信を感じてなお前のことを厄病神と呼んでお前のことを忌み嫌っていた。お前を学園都市に入れた理由もそれだよ。迷信とかのオカルトとは無縁の科学の街ならお前のことを忌み嫌う存在もなく、暮らせるだろうと思ってな。でも科学でさえお前を拒んで不幸体質は変わらなかった。だから私は世界中のお守りやオカルト的なものを調べてお前の不幸をなんとかしようとしたんだ。皮肉なもんだ、オカルト的迷信からお前を離したのに、再びオカルトに頼っているなんて」

 

話をする父さんの顔には長年の苦労を感じさせるような哀愁が漂っていた。

 

「・・・・勝手に決めつけてんじゃねえよ。上条当麻が不幸な人生を生きていたなんて勝手に決めつけてんじゃねえ!!」

 

「当麻」

 

「俺は幸せだったんだ!父さんがいて母さんがいる、それだけで幸せだったんだ!そんな勝手な思い込みでオカルトなんか手を出してんじゃあねえよ!!」

 

「・・・・」

 

俺は前の俺を知らない。だから幸せだったかもちろん覚えていない。でも残っているんだ、俺の心に。上条当麻は優しい両親に愛されて育った、沢山の愛情を受けて幸せに生きていた、それだけは心にあるんだ!

 

「はは、何を俺は悩んでいたんだろうな。愛する息子に気づかせてもらうなんて、ああもうこんなバカらしいことやめるよ」

 

父さんに俺の思いが伝わったようだ。

 

「父さん、じゃあ御使堕し(エンゼルフォール)を解除してもらえないか?」

 

「?なんのことだ、それは」

 

「とぼけるなよ父さん。さっきやめるって」

 

「ん?お土産で買っているお守り集めのことだろう?」

 

え?どういうことだ?父さんが術を発動させたんじゃないのか?

 

「ひとつ聞く、母さんは今どこにいるか分かるのか?」

 

「母さんはお前と一緒だったんだろう。お前の方が知ってるんじゃないのか?」

 

入れ替わりに気づいていない?

 

「あ、ミーシャちゃん。さっきは母さんに付いてってくれてありがとう」

 

するとミーシャが現れた。だがミーシャの様子は世間話をする感じではなかった。

 

「ミーシャ!少し待ってくれ!父さんも入れ替わりに気づいていないんだ、これって!?」

 

「回答1、標的を捕捉。私見1、まったく無駄なことだった」

 

ミーシャは俺の話を聞かず懐から鉈を取り出した。

 

「あなたは神の命なしに人を殺められる立場にいつなったんでしょうか」

 

神裂が現れた。

 

「神裂!ミーシャは誤解しているんだ!」

 

「上条当麻!上条刀夜氏を連れてここから直ちに去りなさい!」

 

「神裂!」

 

神裂が戦闘態勢でミーシャの前に立ちふさがった。

 

「神裂、ミーシャに父さんは術者じゃないって言ってくれ!」

 

「いいえ、言っても無駄です。状況はそう単純なものではなくなったようです」

 

「どういうことだ!?」

 

「先程、ロシア正教会に問い合わせたところミーシャ・クロイチェフという人間は所属していないことが判明しました」

 

「じゃあ彼女は誰なんだ?」

 

「彼女の本当の名前はサーシャ・クロイチェフ。まったくミーシャなど分かりやすい天使の名前を使うなど、堂々としていますね」

 

「天使だって!?・・・・そうか、御使堕し(エンゼルフォール)は天使の精神を人間の肉体に堕とす術式。ということは」

 

「その通りです。本来なら天使という人外の代物が人間の体に宿るなどあり得ませんが、今目の前に存在し我々に牙を向いている。そして彼女は術者の命を狙っていた。だから上条当麻、ここから上条刀夜を連れて離れてください!」

 

「そんなことできねえ!俺も戦う!あいつは俺の右手を避けた、だったらイマジンブレイカーが使える!」

 

「ふふ、やはりあなたはそういうと思いました。しかし聖人の私でさえ天使に勝てるほどの力はありません。せいぜい時間稼ぎが限界でしょう。だから上条当麻、御使堕し(エンゼルフォール)の儀式城を破壊してこの状況を止めてください。・・・・インデックスの命を救った時のように私の命を守ってくれませんか?」

 

神裂は何かを覚悟したように言った。

 

「分かった!勝手に死ぬなよ!」

 

☆☆☆☆☆☆

 

空が一瞬にして暗闇に変わった。

 

神裂はミーシャと対峙している。

 

「なるほど自身の属性強化のための夜ですか。水の象徴にして青を司る、月の象徴にして後方を加護するもの。その名は《神の力》」

 

ミーシャの背中から氷のような翼が生えて空中に移動した。そして夜空一面に術式が張られた。

 

《一掃》。かつて堕落した文明の国を滅ぼすため、構築された広範囲に破壊を行う火矢を放つ術。

 

ーーーまともに食らえば私でさえ致命傷でしょう。あなたは天上に帰るという命のために国一つ滅ぼすつもりなのですか。

 

神裂はこれからの戦いに覚悟を持って己の魔法名を言った。

 

救われぬものに救いの手を(salvale000)

 

☆☆☆☆☆

 

夜空を見上げる金髪サングラスの胡散臭い少年、土御門が立っていた。

 

「さーて、まずいことになってきたぜいカミヤン。どーもこの事態を収拾するには誰か一人を生贄にしなくちゃならないみたいだ」

 

☆☆☆☆☆

 

神裂火織は十字教の信徒である。それ故に己が信仰する神の使いである天使に攻撃はできない。

 

しかし日本にはかつて隠れキリシタンという独自の方法でキリストに祈りを捧げていた団体があった。

 

その名は《天草式十字正教》、その真髄は多角宗教融合型。弾圧を逃れるため仏教などの日本古来の宗教を取り入れたいわばオリジナル。

 

そして彼女はその団体の女教皇。

 

「日本神道の術式には対神格用の術式さえもあるのです。その戒めの中に『神を傷つけてはならぬ』というのがありますが。さていったいどうしてそんなものを作る必要があったのでしょうね」

 

ミーシャは神裂の言葉を切るように巨大な氷をメイスのような形にして放ってくる。

 

それをギリギリのところで七天七刀で切り落とす。

 

だが攻撃は一つだけではない何十も何百もの氷の矢が放たれる。

 

ーーーっく。天使に立ち向かうなど無謀でしたか。しかしここで止めなくてはいけません。上条当麻、一刻も早く御使堕し(エンゼルフォール)を止めてください!

 

そこにまた一つ人外の影が現れた。

 

 

 

「《暴食者》発動」

 

 

 

放たれた数百の巨大な氷の矢をそれは飲み込んだ。

 

☆☆☆☆☆

 

上条当麻は上条刀夜を連れて旅館に帰ってきてきていた。旅館にいる人々が倒れて眠っていた。

 

俺は父さんに御使堕し(エンゼルフォール)を止めるように言ったが父さんは何を言われているか分からないみたいだった。

 

「言っても無駄ぜよカミやん」

 

土御門が部屋に入ってきた。

 

「どういうことだ土御門。じゃあ父さんは発動しせていないのか?」

 

「いいや発動させたのは上条刀夜で間違いない。本人は自覚ないけどな。儀式場はカミやんの家ぜよ。見ただろうあの沢山のお守りやオカルトグッズ。お守り一つで力はないが、一つ一つがそれぞれ適切な位置に配置され相乗効果を生み出し儀式場が完成された。そして上条夫妻が家を出た際に御使堕し(エンゼルフォール)が起動した」

 

「そんな偶然て」

 

「そう偶然だ。一つ間違っていたらさらに悪い状況になっていた」

 

「でもそしたら」

 

御使堕し(エンゼルフォール)を止めるためには術者を殺すか儀式場を破壊するしかない。しかし儀式場を下手に触れば状況はさらに悪くなる」

 

「土御門・・・お前何をしようと」

 

「止められるものなら止めてみろカミやん。ここからは素人が出る幕じゃない」

 

☆☆☆☆☆

 

ミーシャと神裂との戦いに乱入者が入った。

 

超巨大な口のようなものがミーシャが放った攻撃を残らず吸収?した。

 

「あなたは・・・・リムル・テンペスト!?」

 

「お邪魔するよ火織っち」

 

この戦場に人外、いや魔物に分類されるスライムが現れた。

 

「あなたは上条当麻から半径3メートル以上離れられないはずでは?」

 

「その《設定》なら事情があって今はoffにしているよ」

 

「設定?」

 

「うん。この世界でオレが自由に動くと色々な奴から狙われる可能性があったから、当麻っちのイマジンブレイカーの特性を利用させてもらっていたんだ。オレの中にいる《大賢者》に頼んで自動設定で当麻っちの側にいたんだけど、今ならオレを狙う奴も手を出して来ないし自由に動き回れる」

 

「・・・・」

 

「騙したなんて考えないでくれよ。知らない土地に来たら誰だって警戒ぐらいするさ」

 

「分かりました。しかし後で詳しく聞きますからね」

 

「いいよ、オレもあんたらに話があるしね。今は協力してこの状況を止めよう」

 

☆☆☆☆☆

 

上条当麻と上条刀夜は土御門からの猛攻に手も足も出なかった。二人は床に突っ伏し起き上がれなくなってしまった。

 

「ぐっ・・・土御門てめえ」

 

土御門は倒れている俺を無視して懐からカプセルを取り出した。

 

その中には細切れになった紙が入っている。

 

「さてと、それでは皆さんタネも仕掛けもあるマジックショーの開幕です」

 

土御門はカプセルから紙を撒いた。

 

「まずはめんどくセー下拵えから」

 

撒かれた紙からチラチラと光を放った。

 

「それでは我がマジック一座のご紹介です。働け馬鹿ども。朱雀、白虎、青龍、玄武」

 

規則正しい位置に4種類のカプセルが置かれる。それはまさに儀式場を作るような作業に見えた。

 

そして土御門は何かを唱え始めた。

 

「おい・・・・土御門。お前・・・・魔術が使え・・・ないんじゃ」

 

その瞬間、土御門は多量の血を吐いた。

 

「言っただろカミやん。御使堕し(エンゼルフォール)を止めるためには術者を殺すか儀式場を破壊する。俺の魔術なら家を一軒まるごと消滅させるくらい朝飯前ぜよ。ゴホッゴホッ、はあ、こんな方法、神裂に似ているお前なら全力で止めたに違いない」

 

「やめ・・・ろ」

 

 

 

「カミやん。俺って実は嘘つきなんだぜい」

 

 

土御門の周りから光の集合体が発生しどこかへ飛んで行った。それと同時に土御門の身体中から血が吹き出して彼は屍のように倒れる姿を俺は意識が遠のく中で見た。

 

☆☆☆☆☆

 

第七学区、いつもの病院にて。上条当麻は今日も入院していた。

 

「土御門、お前がいないんじゃ意味ないだろ」

 

世界の危機が救われたのに俺は友人をなくした思いで悔しかった。

 

「かみやーん!元気にしてるかー?」

 

金髪サングラスにアロハシャツを着た胡散臭い少年、土御門元春が病室のドアを軽快に開けて元気よく現れた。

 

「土御門!?」

 

「なんだその幽霊でも見た顔は?」

 

「だ、だってお前魔術を使って死んだんじゃ」

 

「あーあれ嘘!」

 

「はあ?」

 

「俺の能力は貧弱ながら肉体再生ってやつでね。後何回かは魔術を使っても大丈夫なんだけど、いちいち説明するのもめんどいしー」

 

「はあ!?」

 

「土御門さんは基本的に嘘つきぜよ。学園都市に紛れ込んだスパイってのも嘘。実はイギリス清教を調べる逆スパイ。しかもそれも嘘で実は様々な機関から依頼を受ける多重スパイだったんだにゃー」

 

「あのなー!!」

 

「終わりよければ全て良し!」

 

それから父さんと本物の母さんがお見舞いにやってきた。本当の姿の母さんに会えて良かったが、俺の新居がいきなり消滅したらしい。土御門を探したがもう病室にはいなかった。そのあとインデックスがやってきて俺が首を絞めたり土に埋めたりした件についてお怒りをぶつけて俺の頭を噛み砕いた。

 

「不幸だー!!」

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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