地味で最弱なパーティは最強の勇者パーティを超える (スーパーかみ)
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第一章 旅立ち
プロローグ1


初投稿になります。
よろしくお願いいたします!


「成神最悪だな……」

 

「キモッ」

 

「な、何でこんな事に……」

 

 黒髪の少年、成神勇綺(なるかみゆうき)は、教室の中のクラスメイト全員に陰口を叩かれつつ白い目で見られ、一人机の上で戸惑っていた。何故こんな事になったかと言うと、彼の目の前にいる三人の男女が原因だ。

 

「成神君、正直に答えてくれないかな? 君が愛鯉のアルトリコーダーを盗んだのかい?」

 

「嘘をついたりするんじゃねぇぞ? 糞オタ?」

 

「ま、正義君! 待って! まだ、成神君と決まった訳じゃ……」

 

 まず、初めに勇綺に声を掛けた少年の名は聖正義(ひじりまさよし)。身長は百七十八センチメートル程で、イケメンと呼んでも間違いないほど容姿は整っている。さらさらで茶髪のミディアムヘアと優しそうな黒い瞳は、正義に爽やかな雰囲気を出させていた。優れているのは容姿だけではない。

 困っている人に手を差しのべられる優しさと、警察官である父親譲りの悪を許さ無い強い正義感、そして勉強とスポーツと武道の両方を疎かにせず両立出来る程の高いスペックも持ち合わせている。容姿、性格、学力、身体能力のどれもこれも非の打ち所が無い、まさに《完璧超人》と言っても良いだろう。

 そんな彼の超人スペックに惹かれる女子生徒は多く、更に男子生徒や教師にも支持され、学校内には正義のファンクラブまで出来る程彼は人気者である。

 

 次に、背丈が百八十二センチメートル程あって、オタクである勇綺を馬鹿にしている態度の男子生徒は海道博孝(かいどうひろたか)という。

 正義の幼なじみであり、金髪でオールバックの髪に鋭い目付きと強面の顔が特徴だ。

 見た目は恐いが、意外にも彼は友情に熱く和を大事にする性格だ。

 幼なじみや友達を傷付ける者が居たら、彼はプロボクサーの父親から習ったボクシングを使って、心の無い連中から大切な人達を守ったりしている。

 彼のナイスガイな部分に支持する女子生徒は多いが、実は、男子生徒から圧倒的に多く支持されているらしい。

 

 そして最後に、正義を止めようとしている女子生徒の名前は、桃条愛鯉(とうじょうあいり)。身長は百六十センチメートル程で、学園のマドンナと言われており、男子生徒だけじゃなく女子生徒からも凄まじい人気を得ている美少女だ。

 綺麗な黒髪は腰まで届く程長く、左右の髪の毛は後ろ髪の方まで持っていって桃色のリボンで一つにまとめたハーフアップな髪型、やや垂れ気味な黒い瞳は優しげな雰囲気を出しており、薄い桃色の唇は彼女をより可愛くみせていた。

 明るくて誰にでも優しく、オタクというだけでクラスの中で孤立していた勇綺にも、嫌な顔をしたりせず友好的に接してくれている。

 その上、彼女は勉強もスポーツも万能であり家もお金持ちである。まさに《才色兼備》という言葉が相応しいといえよう。

 全てに恵まれている彼女は、クラスメイトの男子生徒によく告白されているだけじゃなく、他の学年の生徒や下の学年の生徒からにも告白されているが、全て断っているらしい。

 

 そんなリア充な三人に何故、勇綺は愛鯉のアルトリコーダーを盗んだ犯人として疑われてしまったかというと、それは数分前に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? あれ?」

 

 愛鯉が授業に使うアルトリコーダーを机の中から出そうと、その中にあるリコーダーが入ったケースに触れると違和感を感じた。彼女は違和感を感じたケースを徐に握ると、ケースの中に入っているはずのアルトリコーダーが無いことに気付く。

 愛鯉は慌てながら机の中の奥を覗いてアルトリコーダーを探したが、やはり見つからない。

 彼女はいつもアルトリコーダーを持ち帰らず、机の中に入れっぱなしにしていた。だから、机の中のアルトリコーダーが一人で何処かに消えるはずはない。昨日だって、愛鯉はアルトリコーダーの手入れをした後、机の中にアルトリコーダーを入れた事をはっきりと覚えている。

 愛鯉は、これだけ探してもアルトリコーダーが見つからない事に、ほとほと困り果てていた。

 そんな愛鯉の様子に異変を感じた幼なじみの正義は、同じ幼なじみの博孝と共に彼女の元へと歩み寄る。

 

「愛鯉、どうかしたかい?」

 

「お前、机の中を必死に何かを探してたけど……、なんか無くしたのか?」

 

「! 正義君……、博孝君……。えっとね……、机の中に入れていたアルトリコーダーが無くなってて……」

 

 愛鯉は自分の様子が変だった事に、心配して来てくれた正義と博孝に事情を話した。

 

「何だって! リコーダーが無い!? まさか、盗まれたのかい!?」

 

「おいおい! 本当かよ!?」

 

「落ち着いて二人とも。まだ盗まれたと決まった訳じゃ……。それよりも、余り大きな声を出さないで。他の人達に聞こえちゃうよ……」

 

 愛鯉の話を聞いた二人は大きく騒ぎ出す。

 しかし愛鯉は、余り事を大きくしたく無いのか、二人を落ち着かせようとするが……。

 

「桃条さんのリコーダーが盗まれたって本当か?」

 

「マジかよ……」

 

「誰が盗んだの!」

 

「桃条さんを悲しませるなんて! 最低!!」

 

「俺達の学園のマドンナのリコーダーを盗むなんて! 犯人許さねぇ!!」

 

「犯人! 出てきなさい!!」

 

 正義と博孝の声に、クラスメイト達も愛鯉のリコーダーが盗まれた事に気付いたらしく、クラスメイト達はリコーダーの犯人探しを始める。

 

(ど、どうしよ……、騒ぎが大きくなってるよ……)

 

「Zzz……」

 

 血眼になってリコーダーの犯人探しをするクラスメイト達に、愛鯉はおろおろしていた。

 そんな愛鯉とは逆に、クラスメイト達が犯人探しをしている最中、勇綺は机に顔を伏せてのんきに居眠りをしている。昨日、夜遅くまでテレビゲームしていたのが原因だろう。

 

「愛鯉、リコーダーを最後に見たのは、いつだい?」

 

「え? えっと……。昨日の放課後の時間辺りに、リコーダーの手入れをした時かな? 最後に見たのは……」

 

「ふむ……。昨日の放課後辺りまでは、リコーダーが有ったと……。ん? 昨日の放課後……? そういえば……」

 

 正義は愛鯉に聞き込みをした後、顎に手をあてながら考え始める。すると、正義は何かを思い出す。

 

「昨日の放課後、愛鯉以外にも教室に残っていた人物がいたな……。確か……、成神君……だったかな?」

 

「あっ! そういえば居たな! 確か、糞オタは宿題を忘れた罰として、反省文を書かされてたな!」

 

 正義と博孝は、勇綺が愛鯉と同じく放課後に残っていた事を思い出す。

 

「愛鯉、彼は君が下校する時には、まだ教室に残っていたかい?」

 

「え? う、うん……。確か私が下校をする時に、成神君はまだ居残りをしていたけど……」

 

「そうか……。じゃあ……、決まりだね……」

 

 正義は愛鯉に、勇綺が一人で教室に居残りをしていた事を聞き出すと、ある結論を出し始めた。

 

「成神君がリコーダーを盗んだ犯人かもしれない!」

 

「えっ!? 成神君が犯人!?」

 

「糞オタが犯人!? 確かに糞オタならあり得るな!! 愛鯉が下校した後も居残りをしてたし、リコーダーを盗む事が出来るしな!!」

 

 正義が出した結論に愛鯉は戸惑い、博孝は正義の言葉にすんなりと肯定する。

 

「成神君が桃条さんのリコーダーを盗んだ犯人……。あり得るかも……」

 

「桃条さんが下校した後も居残りしてたからなぁ……。盗むチャンスはいくらだってあるだろうな」

 

「それに、成神君はオタクだしね〜〜。桃条さんのリコーダーを絶対欲しがってそう」

 

「聖の言う通りだ! リコーダー泥棒の犯人は成神に決まってる!!」

 

 正義と博孝の言葉に、クラスメイト達は次々と便乗して、勇綺を犯人扱いしていく。

 

「よ〜〜し! 犯人が分かったなら早速、糞オタを締めに行くか!!」

 

「……」

 

「ちょっと! 二人とも待って!!」

 

 博孝と正義は、机に顔を伏せて居眠りしている勇綺の席に近付いて行く。

 そんな二人に、愛鯉はあわてながらも博孝と正義の後を追う。

 

「おら! 起きろ!! 糞オタ!!!」

 

「ふえっ!? な、何!?」

 

 博孝は寝ている勇綺に怒声を浴びせた。

 博孝のでかい怒声に、勇綺はびっくりして目を覚ます。

 

「何? この状況……」

 

 目を覚ました勇綺は周りを見ると、目の前にいる博孝と正義と愛鯉と三人の後ろにいるクラスメイト達が、白い目で自分を見ている。この異様な空気に勇綺は戸惑いだした。

 

 そして、今に至る……。

 

「さぁ、はやく答えるんだ! 君が愛鯉のリコーダーを盗んだ犯人なんだろ?」

 

「さっさと答えろや! 糞オタ!!」

 

「ま、待ってよ! 僕は、桃条さんのリコーダーなんか知らないし盗んでもいないよ!!」

 

 正義と博孝は、勇綺が犯人だと問い詰めるが、勇綺は自身が犯人ではないと二人に反論した。

 ……しかし。

 

「嘘をつくな! ゴミが!!」

 

「愛鯉が下校した後も、君は教室で居残りをしていたはずだよ。そんな君なら、愛鯉のリコーダーを盗む事が可能なはずだ!」

 

「そんな……」

 

 博孝と正義は勇綺の言葉に耳を傾けようとはせず、勇綺をひたすら疑いだす。

 勇綺は、そんな二人に呆れるしかなかった。

 




中途半端ですが、ここで終わります。
感想をお願いいたします!


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プロローグ2

すみません!
まだ異世界に転移しません……。


「お願いだ! 信じてよ!! 僕は盗んでない!!!」

 

 クラスメイト達がざわつく教室の中、勇綺は必死にリコーダー泥棒ではないと、正義と博孝に自身の無実を訴えるが……。

 

「はぁ……。まだ惚けるのかい? 仕方ない……。博孝! とりあえず成神君の机の中を調べて! その机の中は凄く怪しそうだ! 愛鯉のリコーダーが隠されているかもしれない!」

 

「おう!」

 

「!? ちょ、ちょっと!? 桃条さんのリコーダーなんて隠して無いよ!!!」

 

 正義は勇綺の訴えに全く耳を貸さず、彼の往生際の悪さに、正義は呆れてため息出した。正義はこれ以上勇綺との問答は無駄だと感じ取り、博孝に、愛鯉のリコーダーが隠されてそうな勇綺の机の中を調べるように指示を出す。

 博孝は、正義の指示に従い勇綺の机の中を調べ始める。

 勇綺は慌て、博孝に机の中を荒らすのを止めようとするが……。

 

「うるせぇ! 黙ってろ!!」

 

「うわっ!」

 

「!! 大丈夫!? 勇綺君!?」

 

 博孝は作業を邪魔する勇綺を、力ずくで突き飛ばす。

 突き飛ばされた勇綺は、そのまましりもちをついてしまう。

 突き飛ばされた勇綺に愛鯉は、慌て駆け寄り彼を気遣った。

 

「! 糞オタの机の中にリコーダーがあるぞ!!」

 

「! 本当かい!?」

 

「そ、それは、僕のリコーダーだよ! 僕はいつも、リコーダーを机の中に入れっぱなしにしているんだ! ほ、ほら! リコーダーケースに、僕の名前があるはず!」

 

 勇綺の机の中からリコーダーを見つけた博孝は、其を正義に見せる。

 勇綺は二人に、机の中のリコーダーが自分の所持品であると説明するが……。

 

「確かにケースには、糞オタの名前があるな……。おい! 正義! どうする!? 糞オタの机の中には、糞オタのリコーダーしか見つからなかったぞ!?」

 

「むぅ……。ならば、ケースの中身も一応調べて見よう。愛鯉のリコーダーケースには、中身だけが盗まれていたからね……。もしかしたら、成神君のリコーダーケースの中身は、愛鯉のリコーダーが入っているかもしれない……」

 

(どんだけ僕を犯人にしたいんだよ!)

 

 勇綺の机の中に愛鯉のリコーダーを見つけられなかった博孝は、正義にその事を報告する。

 すると正義は、勇綺の机の中に愛鯉のリコーダーが入って無かった事に納得がいかなかったのか、博孝に勇綺のリコーダーケースの中身も調べるように指示を出す。

 とことん勇綺を犯人扱いする正義に、勇綺は心の中で彼を非難した。

 

「おいおい! 正義! これを見ろよ!! ケースの中のリコーダーに貼られているシールに、愛鯉の名前が書いてあるぞ!!」

 

「! 愛鯉! 確か君のリコーダーにはシールが貼ってあって、其に君の名前が書いてあったよね!? このリコーダーは君の物の筈だ!」

 

「う、うん! 私のリコーダーには、私の名前が書いたシールが貼られていたよ! このリコーダーは、間違いなく私のリコーダーだよ!!」

 

「そ、そんな……、何で桃条さんのリコーダーが僕のリコーダーケースの中に……」

 

 正義の指示で、博孝はリコーダーケースの中のリコーダーを調べると、そのリコーダーには愛鯉の名前が書かれたシールが貼られている。

 正義は、このリコーダーが愛鯉の所有物であるかを愛鯉本人に確認させる為、彼女にリコーダーを渡す。

 正義によって渡されたリコーダーに愛鯉は、自分のリコーダーであると主張する。

 三人のやり取りを間近で見ながら、勇綺は自分のリコーダーケースの中に愛鯉のリコーダーが入っていた事に戸惑い出す。何故、自分のリコーダーケースに愛鯉のリコーダーが入っていたのか、勇綺は無い頭を一生懸命使って理由を考えるのだが、幾ら考えてもその理由を思い付く事は無かった。

 

「愛鯉のリコーダーが糞ヲタの机の中に入っていた……。犯人はてめぇで決まりのようだなぁ? 糞ヲタ? 覚悟は良いか?」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って! こんなのおかしいよ!! 濡れ衣だよ!!!」

 

「言い訳してんじゃねぇぞ!! 成神!!!」

 

「反省する気も無いのね! 女の敵!!」

 

「社会のゴミが!!」

 

「ケダモノ!!!」

 

 博孝は犯人が勇綺であると確定すると、両手をパキポキ鳴らしながら勇綺に近づいて行く。

 鬼のような形相となった博孝に、勇綺は身の危険を感じとり、何とか彼に説得を試みようとするが……。

 周りのクラスメイト達からは、反省の色がないと判断され、勇綺はブーイングの嵐を受けてしまう。

 

「桃条さん! お願いだ! 信じて! 僕は泥棒なんてして無いんだ!!」

 

「ひっ!」

 

「!? と、桃条さん……?」

 

 勇綺は、愛鯉にも説得をしようとしたが……。

 勇綺の机の中に愛鯉のリコーダーが入っていた事が決め手となったのか、今まで勇綺の事を心配してくれていた愛鯉までもが、勇綺を疑い始める。

 勇綺は味方になってくれそうな彼女までもが、こちらを疑い始めた事に、勇綺は動揺を隠せずにいた。

 

「おっと! 成神君! 愛鯉を脅すのは止めてくれ!!」

 

「なっ!? ち、違う!! 僕は桃条さんに話を聞いて欲しいんだ!! お願いだ! 桃条さんと話をさせて!!」

 

 正義は勇綺に言いがかりをつけながら、怯える愛鯉を守るかのように、勇綺と愛鯉の間に割り込んだ。

 正義の言いがかりに、勇綺は必死に其を否定しつつ、彼に愛鯉と対話をさせて欲しいと頼み込む。

 すると、クラスメイト達の中から勇綺に向かって野次を飛ばす者達が現れた。

 

「言い訳すんなよ〜〜? ク〜〜ズ♪」

 

「桃条さんのリコーダーは美味しかったですか〜〜?」

 

「感想を教えてくれよぉ〜〜? へんた〜〜い!」

 

(あいつらは無視だっ! 無視っ!! 今は桃条さんと話を……)

 

 勇綺に野次を飛ばしたのは三人組の男子生徒だ。初めに、茶色い長髪の少年の名前は犬井一也(いぬいかずや)といい、よく勇綺を虐めている三人組のリーダーである。次に、ボサボサの黒髪で鼻ピアスをした少年の名は猿山二郎(さるやまじろう)で、坊主頭の少年の名前は雉谷三太(きじたにさんた)という。この二人も一也と一緒になって、よく勇綺を虐めていた。

 必死に自身の無実を証明しようとしている最中に、ふざけて野次を飛ばしてくる三人組に勇綺は無視を決め込む。

 今はこの状況を何とかするため、勇綺は愛鯉と話し合おうとするが……。

 

「いい加減にしろ! てめぇと話し合う事なんて、もうねぇよ! 犯人はお前なんだからな!! 覚悟しろ!!!」

 

「ひぃっ!! ま、待っ……」

 

 いい加減自身が犯人である事を認めない勇綺に、博孝は痺れを切らして勇綺の対話を遮る。そして勇綺の制止を無視して拳を大きく振り上げ、勇綺に目掛けてその拳を振り下ろした。

 




何とか、プロローグ3で最後にしたいな……。
はやく主人公達を異世界に行かせたい……。


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プロローグ3

お待たせしました!
やっと異世界へ転移します!

それでは最新話をどうぞ♪


 勇綺は、振り下ろされた博孝の拳に、反射的に目をつぶり、彼の攻撃を受け入れる覚悟を決める……。

 

(……? あれ?)

 

 だが、いくら待っても殴られた感触や痛みが中々感じてこない。勇綺は閉じた目をゆっくり開けると、そこには……。

 

「あっぶね〜〜! ギリギリだったぜ……。大丈夫か? 勇綺?」

 

「勇綺の教室に遊びに来てみたら、この状況は一体何なのよ? 勇綺!」

 

「!! 龍哉!? 秋!?」

 

 勇綺の目の前には、博孝が勇綺に目掛けて振り下ろした拳を片手で受け止めている男子生徒と、勇綺を庇うように彼の前に立つ女子生徒がいた。博孝の拳を片手で止めた男子生徒の名は鉄龍哉(くろがねりゅうや)。隣のクラスの生徒で、勇綺の幼馴染みであり、勇綺と秋にとっては頼れる兄貴的な存在である。

 身長は百七十九センチメートルで、目付きは鋭く、サラサラの髪の毛には赤みがあり、全体的に近寄りがたい雰囲気を放っていた。

 こんな恐い見た目だが、以外にも女子生徒からは人気があるらしい。

 次に女子生徒の方の名前は、紫堂秋(しどうあき)という。彼女も龍哉と同じく勇綺の幼馴染みである。

 背は百五十九センチメートルで、髪色は橙。ボサボサのショートヘアは、彼女に活発な雰囲気を出させていた。

 彼女の持ち前の明るさとサバサバした性格は、意外にも男子生徒達から支持されているらしい。

 

「隣のクラスの奴か! そこを退け! そこのリコーダー泥棒をぶっ飛ばせねぇだろうが!!」

 

「あん? 何だって? 勇綺がリコーダー泥棒だとぉ? どういうことだ?」

 

「そこに居る成神君は、愛鯉のリコーダーを盗んだんだ。その証拠に、彼の机の中に愛鯉のリコーダーがあった! これは彼が犯人である事に間違いない筈だ!!!」

 

 博孝は、勇綺を庇う龍哉と秋を忌々しそうに見つめながら二人を批難した。

 龍哉は博孝の言葉から、勇綺がリコーダー泥棒の疑いを掛けられていた事を知らされ、博孝に勇綺を犯人扱いした理由を問いただす。

 すると、龍哉の問い掛けに答えるように、正義がドヤ顔で勇綺が犯人である理由を語り出すが……。

 

「はんっ! 勇綺の机に桃条のリコーダーが入ってたからって、勇綺を犯人だと決めつけるのは早計だと思うけどな!! 大体、盗んだリコーダーを机の中に入れっぱなしな事に、違和感を感じねぇのかよ?」

 

「そうよ! それに、盗んだ物を机の中に入れっぱなしにするより、持ち帰った方が疑われる可能性が低い筈よ? 後、犯人が桃条さんのリコーダーを盗む所を、誰も目撃した人が居ないんでしょ? それらを考えると、勇綺が下校した後、誰かが勇綺に濡れ衣を着せる為に、勇綺の机の中に盗んだ物を入れたって考えもできちゃうのよね!」

 

「龍哉……、秋……」

 

 龍哉は嘲笑いながら、正義の主張に疑問点を述べだす。

 そして龍哉に続くように秋は、勇綺が誰かに無実の罪を着せられるている可能性を主張して、二人に反論する。

 そんな最中、勇綺は自分を守ろうとしてくれている幼なじみ達に、顔を綻ばせていた。

 

「んなっ! てめぇらっ! 屁理屈言って、煙に巻こうとしているな!?」

 

「ふん、馬鹿馬鹿しい推理だ。 君達は、僕達の中に犯人が居ると言いたいのか?」

 

「でも、紫堂さんの言う通り、その可能性も有るかも……」

 

 秋に言い負かされた博孝は、狼狽えながらも龍哉と秋を批判する。

 狼狽えている博孝とは逆に、正義は秋の反論にまるで意に介していないようで、彼女の意見を冷静に言い返す。

 そんなひねくれた二人とは対照的に、愛鯉だけは秋の話を素直に聞いており、耳を傾けない博孝と正義に意見をするが……。

 

「愛鯉! 泥棒達の妄想に耳を傾ける必要何てない!! 正義はこちらにあるんだ!!!」

 

「その通りだぜ愛鯉! こんな屁理屈を言って、罪から逃げようとする奴等の話を鵜呑みにする必要なんてねぇ!! こういった糞共は、力ずくで自分達の過ちを気付かせた方が手っ取り早い!!!」

 

「ふん! 結局、力で解決か!? 良いぜ! かかってこい!!!」

 

(やばい……、どうしよ……)

 

 正義と博孝は愛鯉の意見を一蹴して、自分達の正しさを彼女に押し付ける。

 更に博孝は、秋達に言い負かされた事に相当腹が立っていたのか、かなり物騒な事をのたまいだす。

 そんな博孝の過激な発言に触発されたのか、龍哉は喧嘩腰になっており、今にも二人と喧嘩を始めてしまいそうな状態である。

 一触即発な状況に勇綺は、ただあわてふためく事しか出来なかった。

 するとその時……。

 

「!? な、何だ!? これは!?」

 

「!?」

 

「え? えっ!?」

 

「ちょっ!? 何っ!?」

 

「おいおい……、嫌な予感しかしねぇぞ!!」

 

「こ、これって、もしかして……」

 

 突然、博孝と正義と愛鯉の足元に、青く光る幾何学な模様が入った円形の魔法陣が出現。それと同時に、秋と龍哉、そして勇綺の足元にも黄色く光る幾何学な模様が入った円形の魔法陣が出現する。六人は突然現れた魔法陣によって、それぞれ動揺しだす。

 オタクである勇綺は、こういった展開のライトノベルを多く読んだ事があるためか、この状況がライトノベルとかによくあるシチュエーションに似ている事に気付く。

 そして、光輝く魔法陣は更に輝きだし、六人を眩い光で包み込む。

 六人が光に包み込まれて数秒程経つと、光が徐々に消えてゆき、そこには六人の姿が忽然と消えていた……。

 

「う、嘘……」

 

「は!? えっ!? マジかよ!!?」

 

「消えちゃった……の?」

 

「お、おいっ!? どうすんだよ!? これ!!?」

 

「私に聞かないでよ!!」

 

「これは夢だ!! 絶対、夢に決まっている!!!」

 

「わ、私!! 先生を呼んでくる!!!」

 

 六人が謎の光によって突然消えた事で、クラスメイト達が一斉にあわてふためく。クラスメイト達の中には、今起きた出来事を夢だと決めつけて現実逃避をする者や、担任の教師を呼ぼうとする者もいた。

 そんな異常な環境にも関わらず、空気を読まずにはしゃいでいる者達がいる。それは……。

 

「ハハハ! 糞オタ消えてるよ! 超うけるぅ〜〜!」

 

「あっ! 糞オタが消える瞬間を動画に撮っておけば良かったなぁ〜〜! アレを動画サイトに投稿すれば、視聴回数が相当な数になってるだろうなぁ〜〜?」

 

「ヒャッハ〜〜! すっげぇなぁ〜〜! こんな漫画みたいな展開って有るんだなぁ〜〜!」

 

 あわてふためいている他のクラスメイト達と違い、一也と二郎そして三太の三人は、勇綺達が消えたにも関わらず、取り乱したり心配する素振りすらも見せず、ヘラヘラと笑っている。まるで、この状況を楽しんでいるかのようだった……。

 




さてはて、消えた六人はどうなったのか?
次回もお楽しみに~~♪

後、感想もよろしくお願いいたします!


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第1話 自己紹介

異世界に転移しました!

それでは、最新話をどうぞ!


「おお! 遂に成功したかっ!!」

 

 教室に出現した魔法陣から発せられた光を遮る為に、両手で顔を覆いながら目を閉じていた勇綺は、誰かの声に反応して、ゆっくりと閉じた目を開く。

 

(……ここは?)

 

 勇綺は、周りを見渡すと部屋はとても広い。壁と天井には豪華な装飾がされており、床には大理石を使っているのか、綺麗な光沢が放っている。

 その大理石の床には、なにやら魔法陣のような物が描かれていて、勇綺達はその上に立っていた。よく見ると、その魔法陣は勇綺達の教室に出現した、黄色く光る魔法陣とそっくりである。

 次に勇綺の視界に入ったのは、目の前にいる、豪華な装飾をされた大きな椅子に座っている、優しい表情をした五十代後半の男性だ。その男性は、高そうな西洋風の衣服と沢山の宝石がちりばめられた王冠を身に着けており、まるでファンタジー系の創作物に登場する王様キャラクターを彷彿させている。

 その王冠の男性の側には、カールさせた巻き髭が特徴的な中年男性が立っていた。身に着けている衣服は、王冠の男性と同じく豪華な衣服を身に着けており、高貴な雰囲気を漂わせている。

 勇綺は、王冠の男性と巻き髭の男性から、周囲にいる人達に目を映す。そこには、重そうな青い鎧を纏い、その上に赤いマントを身に付けた男と銀色の鎧を纏った騎士達が立っていた。更には、黒いローブを身に着けた魔導師風の人達も居り、その魔導師風の人達は皆、魔法陣が描かれた床の周りに座り込んだ状態で、どこか疲れた表情を浮かばせている。

 

「う、嘘でしょ……? 何処なの? 此所?」

 

「マジかよ……」

 

 勇綺の背後で秋と龍哉は目を丸くしながら、勇綺と同じように周囲を見渡していた。突然、絢爛豪華な大広間やファンタジー系の衣装を纏った人達が目の前に出現したことで、二人は動揺を隠せずにいるのだろう。

 そして、この場所に来てから平静な表情をしている勇綺も、後ろの二人と同じように内心は動揺をしている。だが、こういった展開のファンタジー系の創作物をいくつも読んできた経験からなのか、後ろの二人よりは冷静でいられた。

 

「オホン! さて、そろそろ自己紹介を始めても良いかな? そなた達の名前を知りたいからのう」

 

「へっ!? あ……、は、はい!」

 

 この光景に愕然としている三人から視線を集める為に、王冠の男性は咳払いを一つして、目の前にいる勇綺に優しく話しかける。

 いきなり話しかけられて、勇綺は戸惑いながらも王冠の男性の問い掛けに返事をした。

 

「先ずは私から……。私はランドロック王国の王、オドワルド・ペブル・ランドロックと申します。以後、お見知り置きを……」

 

 オドワルドは穏やかな表情で、勇綺達に丁寧な自己紹介をする。

 

「では、そなた達の名を聞こうか?」

 

「え、えっと……、僕は、成神勇綺と言います!」

 

「あ、あたしは、紫堂秋です!」

 

「ハァ……。鉄龍哉だ……」

 

 オドワルドは自己紹介を終えた後、勇綺達に自己紹介を促す。

 オドワルドに自己紹介を促された勇綺は、彼が王様であるせいか、緊張気味に自分の自己紹介をする。

 勇綺に続くように秋も自己紹介をするが、彼女も勇綺と同じく、オドワルドが王様であったせいか緊張気味に自己紹介をしてしまう。

 戸惑いながら自己紹介をした二人とは対照的に、龍哉は何処か面倒くさそうな表情を浮かべながらため息をついた後、自己紹介をした。

 

「貴様! 王に向かってその態度は何だ! 無礼だぞ!!」

 

「あ? んだよ? てめぇ……」

 

「ひぃぃぃぃぃ!! 龍哉ぁぁぁぁぁ!! 何やってんのぉぉぉぉぉぉ!!! 王国の人に喧嘩を売らないでぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「あ、秋、落ち着いて!」

 

 勇綺達の周りにいる銀色の鎧騎士達と一緒にいた、青い鎧と赤いマントを身に付けた男が、龍哉の自己紹介をする態度が気にくわなかったのか、彼を怒鳴り付ける。

 龍哉は、怒鳴り付けてきた青い鎧の男を喧嘩腰で睨み付けた。

 そんな龍哉の態度に秋は、一瞬にして顔を青ざめる。そして、両手で両頬を押えた状態で叫びながら彼の態度を咎めた。

 勇綺は、大慌てをしている秋を何とか落ち着かせる為に、彼女をなだめようとする。

 

「止めんか! 兵隊長! 私は気にしとらん!!」

 

「う……。そ、そうですか……」

 

 今にも龍哉と一悶着起こしそうな青い鎧の男に、オドワルドが一喝。どうやらオドワルドは龍哉の無礼な態度については、特に気にしてはいないようだ。

 兵隊長と呼ばれた青い鎧の男は、渋々ながらオドワルドの指示に従う。

 

「すまんな……。兵隊長は少々真面目なんだ、許してやってくれないか?」

 

(良かった……。優しい王様で……)

 

「い、いえいえっ! そんなっ! 悪いのは、無礼な態度をとった龍哉が悪いのですから! 王様が謝る必要なんて無いですよ!! 寧ろ、無礼な態度をとった龍哉を寛大なお心で許して頂き、ありがとうございます!!!」

 

「ふぁ〜〜……」

 

 オドワルドは、兵隊長が龍哉に向かって怒鳴り付けた事について、勇綺達に謝罪をする。

 勇綺は、無礼な態度をとった龍哉を許そうとする、オドワルドの寛大さに胸を撫で下ろした。

 オドワルドからの謝罪に、秋は慌てふためきながら彼を気遣う。更に無礼な態度をとった龍哉を、寛大なお心で許して貰った事への感謝もした。

 秋がオドワルドに感謝をしている最中、事の発端である龍哉はと言うと、まるで悪びれる様子もなく、のんきに欠伸をしている。

 すると……。

 

「龍哉! 欠伸なんかしてないで、王様の寛大さに感謝をしなさい!! この、お馬鹿!!!」

 

「いてぇっ!! 秋っ! てめぇっ!!!」

 

 空気を読まずに欠伸をしていた龍哉に、秋は龍哉の頭をおもいっきりひっぱたく。

 頭をひっぱたかれた龍哉は、自分の頭を叩いた秋を睨み付けるが……。

 

「何?」

 

「……イエ、ナンデモアリマセン」

 

 龍哉に睨まれた秋は、負けじと龍哉を睨み返す。

 秋の放つ威圧感に圧倒されたのか、龍哉は言葉が片言になりながら大人しく引き下がった。

 

「よしっ! じゃあ、王様と兵隊長さんに、ちゃんと謝りなさい!! 良いわね?」

 

「うっ……。王様……、兵隊長……、失礼な態度をとって、す、すまなかった……」

 

(こえぇ〜〜……)

 

 そして秋は、威圧で大人しくさせた龍哉に、謝罪をするように促した。

 龍哉は秋に言われるがまま、渋々オドワルドと兵隊長に謝罪をする。

 幼なじみ二人のやり取りを見ていた勇綺も、龍哉を黙らせた秋の威圧感に、冷や汗をかきながら震え上がっていた。

 

「コホン! では、本題に入るとしようかの?」

 

「「「!」」」

 

 秋と龍哉のやり取りが終えると、オドワルドは此方に注目をさせる為に、再び咳払いをしてから話しを切り出す。

 勇綺、龍哉、秋は、咳払いをしたオドワルドに視線を移した後、彼の話に耳を傾けるのだった。

 




今回の話はここまで!

感想をお願いします!


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第2話 救世主

なんとか六月中に投稿できた……。

一ヶ月につき一話は、必ず投稿できるようにしなければ……。

それでは、最新話をどうぞ!


 静寂に満ちた豪華絢爛な部屋。

 その部屋の中で、勇綺、龍哉、秋の三人とオドワルドの臣下達が、張り詰めた空気を漂わせながら、オドワルドの話に耳を傾けていた。

 

「先ずは、お主達がここへ召喚された事から話そうか……。簡潔に話すと、お主達は世界を救う【救世主】として、このランドロック王国に召喚されたのだ」

 

「俺達が!?」

 

「私達が!?」

 

「「救世主!!?」」

 

(うわぁ……、テンプレだなぁ……)

 

 オドワルドは勇綺達がこの王国に召喚された事を、かいつまんで話し出す。

 オドワルドの話しを聞いた龍哉と秋は、自分達が異世界を救う救世主として召喚された事に、二人揃って目を丸くして驚いた。

 幼なじみの二人が王様の話を聞いて驚いている最中、勇綺はというと、オドワルドの話を聞いて微妙な表情を浮かべている。

 何故ならオドワルドの話が、ラノベのテンプレと同じ展開だったからだ。このようなテンプレ展開に対して勇綺は、これを笑うべきなのか、それとも話しに捻りがない事に呆れるべきなのか、色々な感情が入り混じった何とも言えない複雑な気持ちになってしまった為、王様の話しに微妙な表情を浮かべてしまったのである。

 この何とも言えない微妙な表情を浮かべている勇綺に、オドワルドは特に気付く事もなく話を続けた。

 

「この世界では、邪悪な魔物を束ねる闇の王達が人々を苦しめている。我々人間達は、闇のな王達の支配から逃れるために、武器を取って決死の覚悟で奴等に挑んだ。だが、奴等は恐ろしい程の強さだった……。奴等の圧倒的な力によって、いくつもの村や町、国が蹂躙されていった……。このランドロック王国も一度、奴等に狙われた時があってな……。その時は、何とか奴等を撤退させる事ができたのだが……、それと同時に多くの民の命も失われてしまった……。もしもまた、奴等がここを狙いに来たのなら……、恐らく、この国を守りきるのは難しいだろう……」

 

 落ち着いた表情で話を続けていたオドワルドの表情が、徐々に曇ってゆく。

 恐らく、闇の王の強さや戦いの中で散っていった民の事を思い出しているのだろう。

 

「……我々は、この状況を打破するために、最後の手段である【救世主召喚】を行う事を決めたのだ」

 

(話はテンプレだけど……、相当ヤバそうだなぁ……。確か王様は、闇の王《達》って言ってたよな……。RPGで例えると、魔王が複数いるって事かぁ……。もう、詰んでんじゃないのかなぁ……)

 

 オドワルドは、救世主召喚を行う事を決断した経緯を丁寧に勇綺達に話した。

 王様の話を聞いた勇綺は、闇の王と呼ばれる魔物の王が複数存在している事に、気持ちが萎縮して半ば諦めかけているようだ。

 

「あんた等が俺達を召喚した経緯は良くわかった……。つまりだ……、あんた等は救世主として召喚した俺達に、闇の王の退治をして欲しいって事だな?」

 

「……そうだ」

 

 王様が話した後、開口一番に口を開いたのは龍哉だった。龍哉は王様に、自分達に闇の王の退治をして欲しいのかと問い掛ける。

 オドワルドは、龍哉の問い掛けに表情を変えずに返答した。

 すると突然、秋が口を開く。

 

「龍哉! あんたまた、そんな口の聞き方を!! どうしてそんな物言いしか出来ないの!?」

 

「……」

 

「あ、秋、落ち着いて……。龍哉だって、悪気があって言っているわけじゃないと思うから」

 

 秋は顔を真っ赤にして怒りながら、龍哉を批難した。どうやら秋は、龍哉の上から目線の言い方に怒っているようだ。

 だが龍哉は、秋に怒られても何処吹く風のようであった。

 二人のやり取りに勇綺はおろおろしながら、龍哉に怒っている秋を、何とかなだめすかす。

 

「う〜〜、わかったわよ……」

 

(よ、良かった〜〜……)

 

 勇綺が一生懸命宥めた事で、秋は何とか落ち着いたようだが、その表情はどこか不満そうだ。

 とりあえず秋が落ち着いて、勇綺はホッと胸を撫で下ろす。

 

「……そろそろ話しても良いか?」

 

「あっ! す、すみません! 話の腰を折ってしまって!! ど、どうぞ!! 話の続きをお願いします!!」

 

「は、話を遮って本当にすみませんでした!!」

 

 オドワルドは勇綺と秋に、話を再開してもいいかどうかを、確認するかのように尋ねた。

 オドワルドに問い掛けられた勇綺は、話を遮ってしまった事を王様に謝罪をする。謝罪をした後、勇綺は、王様に話を再開するよう促した。

 勇綺に続くように秋も、頭を下げながら、王様の話を遮ってしまった事への、謝罪の言葉を口にする。謝罪をしている時の秋の表情は、トマトのように顔が真っ赤だ。話を遮って、王様に迷惑をかけてしまった事が、余程恥ずかしかったのだろう。

 

「……では、話を再開しようか。先程も言ったが、我々は救世主である君達に、闇の王の退治をして欲しいのだ。どうか、頼む!」

 

 オドワルドは勇綺達に、闇の王の退治を懇願した。

 すると……。

 

「あんた達の事情はわかった。だが、俺達には関係のない話だ。何の思い入れも無い、この世界を救ってやる義理は無いね!」

 

「!?」

 

「なっ、何だとっ!?」

 

「ちょっと! 龍哉!? 本気で言ってるの!!?」

 

(龍哉の言い方はアレだけど……、まぁ……、そうだよなぁ……)

 

 龍哉は、王様の懇願を迷いなく一蹴する。

 龍哉の発言に、オドワルドと彼の側にいる巻き髭の男は、目を丸くして驚いた。

 そして秋は、龍哉が王様達を見捨てようとする発言に動揺を隠せずにいる。

 だが勇綺は、龍哉の発言に納得していた。

 何故なら、無理矢理異世界から召喚された勇綺達が、友人や家族、親しい人達が居るわけでも無いこの世界を守る為に、命をかけて戦うのが可笑しな話なのである。

 それらを考えれば、龍哉が王様達の懇願を一蹴するのは仕方ないと言えよう。

 これがもし、ラノベ主人公のような正義感あふれる人物だったのならば、王様の懇願をすんなりと承諾していたのかもしれない。

 

「龍哉! 王様の話を聞いていたでしょ!? 王様達は困ってるのよ!? どうしてあんたは、そんな酷い事が言えるの!!?」

 

「俺が酷い? 酷いのは、どう見てもこいつらの方だろ? 勝手に、俺達の都合も考えずに救世主召喚とかで異世界に拉致した挙げ句、【闇の王】とかっていうヤバそうな連中を、俺達に退治させようとしてるんだぜ? それらを考えれば、どちらが酷いかなんて明白だろ?」

 

「うぐっ!? うぐぐぐ………」

 

(龍哉……。言っている事は正しいんだけど……。でも、そろそろ止めてあげて。王様の心はボロボロだよ……)

 

 龍哉が王様達を見捨てようとする発言に、またもや秋が怒りだす。そして秋は、鬼のような形相で龍哉を咎めた。

 しかし秋に咎められても、龍哉は全く動じていない。批判された龍哉は、屁理屈にも聞こえる正論で秋に言い返した。

 この龍哉の返答によって、思わぬ人物が、呻き声をあげながら苦い表情を浮かべてしまう。そう、王様だ。王様は、勇綺達を無理矢理召喚してしまった事に、負い目を感じていた。そんな状態の王様に、龍哉が秋に言い返した屁理屈にも聞こえる正論によって、王様は精神的なダメージをうけてしまったのだ。

 龍哉の正論に、勇綺は納得しているが同時に、王様の精神面の心配もしていた。何故なら、幼なじみの正論と言う名の暴力によって、精神的にフルボッコにされて苦しむ王様の姿を見てしまった勇綺は、流石に彼の事が不憫だと思えてしまったのだ。

 

「くうぅぅ〜〜……、悔しいぃぃ〜〜!」

 

「お、落ち着いて! 秋! ね? 一旦、落ち着こう?」

 

「あ! そうだ! 忘れてた! おい! 王様!」

 

「!? な、何だね!?」

 

 龍哉の正論によって言い負かされた秋は、言い返す言葉が思い浮かばず、唸り声をあげながら悔しがった。

 言い負かされて悔しがる秋を、またもや勇綺が宥めて落ち着かせようとする。

 勇綺が秋を宥めている最中、龍哉は何かを思い出したのか、大きな声で王様に呼び掛けた。

 龍哉に突然呼び掛けられたオドワルドは、彼に精神をフルボッコにされたせいなのか、内心ビクビクしながら返事をする。

 

「さっきも言ったけど、俺達はあんた等の世界を救う気はねぇ。だから、さっさと俺達を元の世界に戻しやがれ!」

 

「うぐっ!? そ、そ、それはだな……」

 

「王様?」

 

(おいおい、まさか……)

 

 龍哉は王様に、自分達を元の世界に戻すように催促する。

 龍哉の催促に、オドワルドは冷や汗をかきながら、しどろもどろに返事をしてしまう。

 様子がどこか可笑しい王様に、秋は、いぶかしむように首をかしげる。

 だが、勇綺だけはラノベを多く読んでいた経験があった為、王様が今から言おうとしている言葉に、何となくだが予測する事ができた。

 

「じ、実は……、わ、我々には、君達を元の世界に戻す事ができないのだ……」

 

「は!?」

 

「え!?」

 

(はぁ〜〜……、やっぱりこうなったか……)

 

 オドワルドは申し訳なさそうな表情で、勇綺達に元の世界へ戻れない事を告げる。

 王様から、元の世界へ帰れない事を知らされて、龍哉と秋は二人揃って顔を青ざめながら驚愕した。

 幼なじみの二人は元の世界へ帰れない事に驚いている最中、勇綺だけは、ある程度冷静のようである。勇綺はこういったシチュエーションのラノベを多く読んで耐性がついたので、龍哉と秋のように驚いたりはせずに冷静でいられたのだ。

 そして勇綺は、王様の告げた言葉が、自身の予測どおりであった事に、落胆しながらため息をつくのであった。

 




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第3話 元の世界に戻れない!!?

最新話です!
どうぞ!



「ふざけんじゃねぇぞ! てめぇっ!! 俺達が元の世界に戻れないってどう言うことだっ!! あぁっ!!?」

 

「龍哉! お願い! 止めて!!」

 

「龍哉! 暴力は駄目だって!!」

 

「お、お前達! お、王様をお守りするんだ!!」

 

「貴様! 王様に手出しはさせんぞ!!」

 

「あわわわ……」

 

 謁見の間全体に響き渡る怒声。その怒声の主は、龍哉だ。

 王様から元の世界へ戻れないと告げられた龍哉は、彼に怒号を放ちながら近づいて行く。どうやら龍哉は、身勝手な事をして自分達を元の世界へ戻れないようにした王様を、殴ろうとしているようだ。

 しかし、そんな龍哉の暴走を勇綺と秋が止めに入る。秋は龍哉の腕にしがみつき、勇綺は秋に続くようにして、龍哉の身体にしがみつく。そして龍哉の腕や身体にしがみついた二人は、王様を殴ろうとしている龍哉を落ち着かせようと、必死になって説得をする。

 勇綺と秋が龍哉の説得をしている最中、オドワルドの側で立っている巻き髭の男は、怒った龍哉がこちらに近付こうとしている様子から、彼が王様に危害を加えようとしていると感じとり、直ぐ様兵隊長や兵士達に王様の護衛をするように命令を出す。

 巻き髭の男からの命令によって兵隊長と兵士達は、王様を守るようにして王様の前へとズラリと横に並び立ち、こちらに近付こうとする龍哉の目の前を遮った。

 龍哉と睨みあっている兵隊長と兵士達の後ろで、オドワルドは龍哉の迫力に圧倒されてしまったのか、震えながら龍哉達と兵隊長達のやりとりを見ていた。

 

「龍哉! 今は一旦落ち着こう? ね?」

 

「秋の言う通りだよ! まずは落ち着こうよ? 龍哉の気持ちもわからなくも無いけど……、今ここで王様を責め立てても、どうにもならないと思うからさ……」

 

「……ちっ! わ〜〜たよ! 二人がそこまで言うんだったら、王様をぶっ飛ばすのをとりあえず止めるよ」

 

(た、助かった……)

 

 秋と勇綺の必死の説得により、激怒していた龍哉は落ち着きを取り戻す。そして冷静になった龍哉は、二人の懇願を聞き入れて、王様を殴るのを取り止めるのであった。

 龍哉の言葉を聞いたオドワルドは、自分が龍哉に殴られずに済んだ事に、胸の中で安心していた。

 

「兵隊長よ、私の事はもう心配ない。お前達は元の位置に戻りなさい」

 

「し、しかし! 王様!」

 

「「「「「王様!!」」」」」」

 

「王様……、兵達を下げても本当によろしいのですか?」

 

 オドワルドは、龍哉がこちらに攻撃する意志が無くなったと判断したのか、今、自分を護衛している兵隊長と兵士達に、護衛を止めるように命令を出す。

 だが兵隊長と兵士達は、王様の命令に不服なのか、王様に意見をする。おそらく、王様の事が心配なのだろう。

 そして王様の側にいる巻き髭の男も、兵隊長達と同じように、王様の事が心配なのか、王様に異議を唱えた。

 家臣達の意見に、王様はと言うと……。

 

「大臣、兵隊長よ。私は先程も言ったぞ?もう心配ないと。だから、兵隊長達は元の位置に戻りなさい。このまま兵隊長達が私の目の前で護衛を継続していたら、私や救世主達が、落ち着いて話し合う事が出来ぬではないか?」

 

「……そうですか、わかりました。元の位置に戻ります……」

 

「……」

 

 オドワルドは兵隊長に何とか説得して、彼を納得させた。

 王様に説得された兵隊長は、渋々ながら兵士達を引き連れて元の位置へと戻ってゆく。

 しかし、大臣と呼ばれた巻き髭の男は、王様の説得に何処か不満そうな表情を浮かべていた。

 

「あ、あの! 王様!」

 

「? 何だね?」

 

 すると突然秋が口を開き、王様に話しかけた。

 秋に話しかけられたオドワルドは、秋の方を見据える。

 

「先程王様は、私達を元の世界に戻せないと言っていました。どうして元の世界に戻せないのですか?」

 

「その事か……。この異世界転移の魔法は、異世界の人間を連れて来る事は出来るが、元の世界に戻す事は出来んのだ……」

 

「何じゃそりゃ……。ひでぇ魔法だな……。何でそんな、致命的な欠陥のある魔法を使ったんだよ……」

 

(そうだよなぁ……。龍哉の言うとおりだよなぁ……。異世界転移系のラノベでもそうだけど、この異世界転移魔法の欠点については、本当に酷いと思う……。そんな欠陥魔法に後先考えずに手を出した王様達は、ちょっと軽率だったと思うなぁ……。まぁ……、そんな欠陥のある魔法に頼りたくなる位までに、王様達は追い詰められていたんだろうな……。それを考えると、王様達が異世界転移魔法に手を出すのは仕方ない……かな?)

 

 秋は、自分達を元の世界に戻せない理由を王様に問い掛ける。

 オドワルドは秋からの質問に、異世界転移の魔法についての欠点を簡潔に説明した。

 龍哉は、致命的な欠陥のある異世界転移の魔法を使った王様達に、呆れ返っているようだ。

 そして勇綺は、異世界転移魔法と後先考えずに異世界転移魔法に手を出した王様達を、胸の中で酷評していた。だが勇綺は、王様達がこの異世界転移魔法に頼らなければならない位まで追い詰められていたって事を、ある程度は理解しており、彼等が異世界転移魔法に手を出すのも仕方がないと思っているようである。

 

「君達には、酷い事をしたと思っている……。私達の都合で君達を巻き込んでしまって、本当に申し訳ない事をした……。許してくれとは言わない……。だが、これだけはわかって欲しい……。私達は、この国や民達を何としても守りたいのだ! どうか頼む! 救世主達よ! 闇の王倒す為に、我々に力を貸してほしい!!」

 

「だから、言っただろ! あんた等の世界を救う気はねぇって! それに、こっちはそれどころじゃ無いんだよ! お前等のせいで元の世界に戻れねぇから、俺達は何とか元の世界に戻る方法を探さなきゃいけねぇんだよっ!!」

 

 オドワルドは勇綺達に謝罪をした後、再び彼等に、闇の王の討伐を頼み込む。

 またもや王様に闇の王の討伐をお願いされて、龍哉は王様のくどさに苛立ちを覚えながらも、先程と同じように王様の願いを一蹴する。そしてさらに龍哉は、異世界を救うよりも、元の世界に帰還する方法を探し出す事を優先していると、王様達に主張するのであった。

 

「……ねぇ、勇綺! あたし達の力を王様達に貸してあげましょう! こんなに困っている王様達を、あたしは見捨てる事なんて出来ないわ!」

 

「はぁっ!? 本気か秋!? 俺達の都合も考えない、こんな自分勝手な連中に力を貸すのかよ!? 止めとけって!! 録な目に合わねぇぞ!!? おい! 勇綺! お前も秋に説得してくれ!!!」

 

「え、え〜〜と……」

 

 すると秋は、困っている王様達に加勢する事を、勇綺に提案する。

 必死でこちらに懇願する王様を、秋は放って置く事が出来ないようだ。

 しかし秋の提案を聞いた龍哉は、王様達に力を貸す事に反対のようである。元々龍哉は、こちらの都合も考えずに自分達を異世界に呼び寄せた王様達の事を快く思っていなかったので、秋の提案に反論するのも当然と言えよう。しかし龍哉が秋の提案に反論したのは、それだけが理由ではない。一番の理由は、幼なじみ達を危険な目に合わせたく無いのだ。龍哉にとって勇綺と秋は、小さい頃から一緒に遊んだり、お互いに助け合ったりしてきた、大切な幼なじみ達なのである。だからこそ龍哉は、勇綺と秋を守る為にも、王様達の願いと秋の提案を聞き入れるわけにはいかないのだ。

 なんとしても大切な幼なじみ達を守りたい龍哉は、勇綺にも、秋の説得に協力するように促そうとする。

 幼なじみ達の意見に勇綺は、秋と龍哉のどちらの意見を選んだら良いのか判断できず、ただ戸惑うばかりであった。

 




今回はここまで!

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第4話 俺も、ついていくぜ!

またギリギリだ……

とりあえず最新話です!

どうぞ!



「え、えと〜〜……」

 

 勇綺は困惑していた。

 何故、勇綺が困惑しているかと言うと、それは……。

 

「勇綺! 王様達を助けましょう!」

 

「秋! 止めとけって! 王様達の事なんか俺達には関係ねぇだろっ!? 勇綺! お前も秋を止めてくれ!!」

 

(どっちを選べば良いんだ……)

 

 秋と龍哉の異なる意見によって、勇綺は板挟みになっていたのだ。

 

「あたしは絶対に嫌だからね! ここまで困っている王様達を、あたしは見捨てる事なんて出来ないわ! 勇綺もそう思うでしょ!?」

 

「正気に戻れって秋! あいつ等は俺達を拉致した連中何だぞ!? そんな奴等の為に、俺達が怪物共と戦うのはあり得ねぇだろうが!! 勇綺だってそう思うだろ!?」

 

「あ、いや、あの……、あはは〜〜……」

 

 秋と龍哉の二人に意見を求められた勇綺は、自身の性格が優柔不断であるが故に、直ぐには意見を出せる筈もなく、とりあえずその場をしのぐ為に、笑って誤魔化そうとするが……。

 

「勇綺……。真面目に答えてね……?」

 

「はひっ!? は、はいっ!! すみませんでしたっ!!」

 

(おっかねぇなぁ……)

 

(((((恐い……)))))

 

 秋は満面の笑みを浮かべながら、笑ってお茶を濁そうとする勇綺を、真面目に応答するように注意をする。

 勇綺は、満面の笑みを浮かべた秋の表情を見て身体を震わせた。何故ならば、彼女の表情は笑っている筈なのに、目だけは笑ってはいないのだ。

 勇綺は、秋の笑みから自身の身の危険を感じとり、直ぐ様必死になって彼女に謝罪をするのであった。

 ちなみに秋の笑顔の迫力に震え上がったのは勇綺だけではない。

 勇綺と秋のやり取りを見ていた龍哉と王様達も、秋の笑顔を見て震え上がっていたのだ。

 

「それで? 勇綺はどっちの意見に賛同するの?」

 

「……」

 

「「「「「……」」」」」

 

「えっと……、僕は……」

 

 秋にどちらの意見に賛同するかを問い掛けられた勇綺は、秋や龍哉、そして王様達に無言のままジッと見つめられた状態で、自身の頭の中から秋と龍哉のどちらの意見に賛同するか考えていた。

 

「僕は……、秋の意見に賛同しようと思う……」

 

「やったぁ! ありがとう! 勇綺! 勇綺なら、あたしの意見に賛同してくれると思っていたわ!!」

 

「「「「「おおおおおっ!!!!!」」」」」

 

「ゆ、勇綺……」

 

 そして考えた末、勇綺が選んだのは秋の意見のようだ。

 勇綺に、自分の意見が選んでもらえた秋は、周囲に人がいる事を忘れて大喜びしていた。

 秋につられるように、王様達は自分達の願いを聞き入れて貰えて、歓喜の声を上げていた。

 自分の意見が賛同されて喜んでいる秋とは対照的に、龍哉だけは呆然とした表情で勇綺を見つめている。

 龍哉は、勇綺ならきっと自分の意見に賛同して、一緒に秋の説得に協力をしてくれると思っていたからだ。異世界に召喚される前も龍哉は、よく勇綺と一緒に、そそっかしくて猪突猛進な所がある秋の暴走を、二人で止めたりする事が多かった。だから今回も、秋の行動を止める為に、勇綺は自分の意見に賛同してくれると思っていたのだが、勇綺が選んだのは秋の意見であった。この結果に、龍哉がこのような表情をするのは無理も無いだろう。

 

「勇綺……。何で、秋の意見に賛同したんだ? 秋の意見に賛同するって事は、闇の王とかって奴等と戦う事になるんだぞ? 止めとけよ! 何でお前まで、俺達を拉致した奴等の為に命をかけようとするんだよ!! 見ず知らずの赤の他人の為にそこまでする義理は無いだろ!!」

 

「龍哉! あんた、まだそんな事を言って……」

 

「……待って! 秋!」

 

 勇綺と秋が戦いに参加する事に、納得をしていない龍哉は、勇綺に秋の意見に賛同した理由を問いただす。

 未だに王様達を助ける事に反対している龍哉に、秋は彼を非難しようとするも、突然、勇綺に呼び止められてしまう。

 

「確かに龍哉の言う通り、無理矢理異世界へ拉致された無関係な僕らが、異世界の人達の為に戦うのは、可笑しいかもしれない……。でもね僕は、王様達の事情もある程度は理解出来るから、出来る限りの事はしてあげたいんだ……。それに、城の中に籠って元の世界へ戻る方法を考えても、この城の人達は元の世界に戻る方法は知らないと言っていたから、ここでは有力な情報は得られないと思うし、いくら考えても多分駄目だと思うんだ……。だから僕は、闇の王を倒す旅をしながら、元の世界へ戻る方法を探し出そうと思うんだ。その方が、いろんな人達と出会えて旅に役立つ情報とか得られるだろうし、もしかしたら元の世界へ戻る方法知っている人と出会える可能性があるかもしれないからね」

 

「! そこまで考えていたのか……。確かに……、城の中の連中は、俺達を元の世界へ戻す方法は知らないと言っていたから、ここで元の世界へ戻る方法を考えるよりは、闇の王を退治しながら、元の世界へ戻れる方法を知っている奴を探した方が良さそうだな……」

 

 勇綺は、無理矢理自分達を召喚した王様達に不満を持ってはいたが、同時に、ある程度は王様達の事情も理解していた為、秋の意見に賛同したようだ。だが、勇綺が彼女の意見に賛同した理由はそれだけでは無い。元の世界へ戻る方法を探しだす為でもあったのだ。

 龍哉は、勇綺が秋の意見に賛同した理由がただ単に人助けをするだけじゃなく、自分達の世界へ戻る方法を探しだす為だと知って、彼の考えに納得をするのであった。

 

「じゃあ、龍哉も一緒に闇の王を倒す旅について来てくれるのよね?」

 

「……そうだな、こっちの方が元の世界に戻る為の情報とか得られる可能性が高そうだしなぁ……。よし! 俺も、闇の王を倒す旅についていくぜ!」

 

 勇綺の意見に納得している龍哉に、秋は彼に闇の王を倒す旅についてきてくれるかどうか、確認を取ってみようとする。どうやら秋は、龍哉を闇の王を倒す旅に誘うつもりのようだ。

 秋の問い掛けに龍哉は、勇綺の意見によって考え方が変わったのか、あれほど乗り気でなかった闇の王を倒す旅に、ついていくと返答した。

 

「やったぁ〜〜! 龍哉! ありがとう!! 三人で一緒に旅が出来るわ!!」

 

「全く……、喜び過ぎだっての……」

 

「まぁ、そこが秋らしいんだけどね……」

 

 またもや秋は、周囲に人がいる事を忘れて大喜びをする。三人で一緒に旅が出来るのが余程嬉しかったのだろう。

 人目を憚らず大喜びをしている秋の姿に、龍哉と勇綺は呆れつつも、表情はどこか微笑んでいるようだった。

 




全然話が進まなくてすみません……。

出来る限り話を進められるように努力をします!


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第5話 闇の王

最新話です!
どうぞ!


 王様達に力を貸す事を反対していた龍哉は勇綺の説得によって、龍哉も勇綺と秋の意見に賛同して、王様達の頼みを引き受ける事となった。

 

「あの……、王様」

 

「? 何だね勇綺殿?」

 

「「?」」

 

 勇綺は、王様に何か聞きたい事があるのか、王様を呼び掛ける。

 勇綺に突然呼び掛けられたオドワルドは、不思議そうな表情を浮かべながらも、彼の呼び掛けに答えるのであった。

 勇綺の呼び掛けに、不思議そうな表情を浮かべたのは、王様だけではない。勇綺の後ろにいる龍哉と秋も、突然王様に話しかけた彼の行動に、不思議そうな表情浮かべていた。

 

「僕達が戦う事になる闇の王達の情報について教えて貰えないでしょうか? 僕達は、この世界に召喚されたばかりで、闇の王達について全く知りません。敵の力を知らなければ、いくら優れた装備品やアイテムを整えたとしても闇の王達を倒すのは難しいと思います。もし、情報さえ有れば、奴等に対抗する為の策を練る事が出来ます。少しでも僕達が戦いを有利に進める為には、闇の王達についての情報が必要なんです。どうかお願いします! 王様!」

 

「成る程……、解った。救世主殿達に、我々が知っている限りの、闇の王達についての情報を話そう……」

 

 どうやら勇綺が突然、王様に話しかけたのは、闇の王達についての情報が欲しかったからのようだ。勇綺が言うには、敵の力を知らなければ、どんなに優れた装備品やアイテムがあったとしても、闇の王達を倒すのは難しいようである。だが、闇の王達の情報さえ有れば、闇の王達に対抗する為の策を練る事ができて、戦いを有利に進める事ができるらしい。

 勇綺の話に納得したオドワルドは、自分達が知っている限りの闇の王達についての情報を話始めた。

 

「……現在、我々が調査して姿が確認されている闇の王の数は五体だ」

 

「うへぇ……、以外と多いな……。二体位かと思ってたんだけどな……」

 

「大丈夫よ! 龍哉! 私達が力を合わせれば、闇の王が何体いようが、きっと何とかなるわよ!」

 

(何の情報もない僕達では、いずれ戦う事になる闇の王達には勝てない。こちらが有利に戦えるような情報を何とか手に入れないと……)

 

 オドワルド達が調査したところ、姿が確認された闇の王の数は五体らしい。

 王様の説明から闇の王の数を知った龍哉は、自身が思っていた数よりも闇の王が多く存在していた事に、心底面倒臭そうな表情を浮かべる。

 面倒臭そうにしている龍哉の隣では、秋が龍哉のやる気を出させる為に、彼を鼓舞していた。

 秋が龍哉のやる気を出させようとしている最中、勇綺は、いずれ戦う事になる闇の王達との戦いで、自分達が有利に戦えるような情報を手に入れる為に、王様の話を集中して聞いていた。

 

「先ずは……、闇の王の一体目、【甲王(こうおう)イッカク】について話そうか……」

 

 オドワルドの話によると、甲王イッカクは虫系統の魔物を引き連れている虫系の闇の王ようだ。イッカクは、圧倒的な数の虫の魔物を引き連れた、人海戦術を得意としている。この虫の王は、どうやら過去に一度、ランドロック王国を襲った事がある魔物のようである。しかも、この魔物はランドロック王国の近くにそびえ立つ山を越えた先にある森の中に、根城を建てているそうだ。

 

(一体目の闇の王で、それなりの情報が得られたな……。それにしても、人海戦術が得意な闇の王か……。創作物とかだと、集団で攻めてくる敵キャラは大抵、主人公達に蹴散らされて、弱いイメージがあるけど……。ここは、創作の世界じゃないからなぁ……。う〜〜ん……、どうやって集団で攻めてくる敵を攻略するべきか……)

 

「数の暴力が得意なのか……。ふん!おもしれぇ……。虫が何匹攻めてこようが関係ねぇ……。ケンカをふっかけてくる奴は、みんなぶっ飛ばせばいい……」

 

「うう……、虫……」

 

 王様の口から語られた情報によって勇綺は、甲王イッカクが人海戦術を得意としている事と、過去に一度、ランドロック王国を襲った闇の王がイッカクであった事や、更にランドロック王国の近くの山を越えた先の森の中に、イッカクの根城が建てられていた事等、それなりの情報を得る事ができた。

 だが、情報を得ると同時に、勇綺はイッカクの事で頭を悩ませてしまう。それは、イッカクが人海戦術を得意としているからだ。人海戦術は、兵の数で相手を圧倒する戦術で、創作物の雑魚敵等が良く使ったりしている。創作物の雑魚敵が良く使う戦術だから姑息で弱いイメージがあるが、実は相当厄介である。創作物とかでは人海戦術で攻める雑魚敵は、人数が少ない主人公達によって、圧倒的なチートパワーで簡単に倒されてしまう事が多いのだが、それは創作の世界だから可能なのであって、現実の世界では創作物の主人公達のような、圧倒的な戦闘能力やチートパワーを持っているはずも無いので、人海戦術で攻めてくる敵を、少ない人数で圧倒したりするのは、極めて難しいだろう。

 勇綺は悩みながらも、イッカクの戦術をどう攻略するか、頭の中で思案していた。

 イッカクをどう攻略するか悩んでいる勇綺とは対照的に、龍哉は相当張り切っているのか、右の拳を左の掌に打ち付ける。そして龍哉は、集団で攻めてくるイッカク達全員を、ぶっ飛ばすつもりのようだ。

 すると、龍哉の隣にいた秋が王様からの話を聞いた途端、何故か顔を青ざめながら震えていた。突然、顔を青ざめながら震える秋に、勇綺と龍哉だけじゃなく、この部屋の中にいる王様や臣下達全員が、彼女の状態に気付くものはいなかった。

 

「さて、残りの四体の闇の王についてだが……。我々は、イッカク以外の闇の王達とは戦ってはいない……。だから、残りの闇の王達については、余り詳しい事は話せない。一応、調査などをして情報を集めたりはしているのだが……、余り有益な情報は得られていない……。それでもよいか?」

 

「今は、闇の王達についての情報を少しでも多く欲しいので、奴等についての情報を得られるのならば、些細な情報でも構いません。お願いします!」

 

 オドワルドは勇綺達に、残りの闇の王達についての情報を話す前に、これから話す、残りの闇の王達についての情報が、余り有益とはいえない情報である事を告げる。

 王様から、残りの闇の王達についての情報が、余り有益な情報ではないと告げられた勇綺は、少しでも闇の王達についての情報を得るため、王様に残りの闇の王達についての情報を話すように頼み込む。

 

「そうか……、分かった。我々が調査した心もとない情報が役に立つか分からないが、残りの闇の王達についての情報も話すとしよう……」

 

 勇綺の頼みを了承したオドワルドは、残りの闇の王達についての情報を勇綺達に話始めた。

 




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第6話 すっかり忘れてた……

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 勇綺達は王様からの話によって、姿が確認されている五体の闇の王のうちの一体である、【甲王(こうおう)イッカク】についての情報を手にいれる。

 そして、残りの四体の闇の王の情報を手にいれるべく勇綺達は、これから王様の口から語られる、残りの闇の王達についての話に、耳を傾けるのであった。

 

「我々が調査した限り、手に入れる事ができた残りの四体の闇の王達の情報は、奴等の名前と種族だけだ……。まずは一体目、【爬王(はおう)アリゲイト】。強靭な顎をもった爬虫類系の王と聞いている。次に【鳥王(ちょうおう)シルフィーヌ】は、鳥系統の魔物を率いている、白く美しい翼をもった女の闇の王と聞いた。そして次に、巨人系統の王、【巨王(きょおう)ギガドルゴ】。この魔物は聞いた限りでは、相当狂暴で気性が荒い性格をしているらしい……。最後に悪魔系統の魔物を率いている闇の王、【魔王ベールゼルブ】。情報によると、この闇の王は、先程話した四体の闇の王よりも戦闘能力が上と聞いている……。我々が知っている情報は、これで全部だ……。」

 

(余り多くの情報は得られなかったけど……。それでも、残りの闇の王達の種族や特徴をある程度知ることができただけでも、良い収穫になったかな?魔物の種族や特徴が分かれば、ある程度の対策を立てやすくなるからね。)

 

 オドワルドは自分達が持っている、残りの四体の闇の王についての情報を勇綺達に全て話した。

 確かに王様が話した通り、残りの闇の王達についての情報は余り有益とは言えないが、勇綺によっては四体の闇の王達の種族を知る事ができただけでも良い成果だったようだ。何故ならば、勇綺は創作物やゲームの知識から、魔物の種族や特徴さえ分かれば、そこから魔物の弱点や魔物の能力等を予測して、ある程度の策を練る事ができるからである。

 

「魔王が一番強いのか……。ふん! それでも俺のやる事は変わらねぇ……。イッカクだけじゃなく、他の闇の王達や、一番強い魔王とやらも、俺がまとめてぶっ飛ばしてやる!!」

 

(強力な戦術をもつイッカクや、力が未知数な他の闇の王達、そして闇の王の中でも最強の力をもつベールゼルブの話を聞いても悲観せずに強気でいられるなんて……。ふふ、龍哉らしいなぁ……)

 

 龍哉は王様の話によって、魔王がイッカクや他の闇の王達よりも強敵と知ってもなお物怖じせずに、イッカクの話の時と同じように、右の拳を左の掌に何度も打ち付けながら、一番高い力をもつ魔王や他の闇の王達もまとめてぶっ飛ばすと言い放つ。

 勇綺は、イッカクや強さが未知数な残りの闇の王達、そしてベーゼルブについての話を聞いても怯えたり、絶望したりせずに強気な発言をする龍哉が、とても頼もしく思えると同時に、龍哉の方を見据えながら自身の顔をほころばせた。

 

「うぅ……、何で虫の魔物が……。あぁぁ〜〜……」

 

「? 秋? どうかしたか? 何か顔が青いぞ?」

 

(秋……?)

 

 甲王イッカクについての話を聞いてから小声でぶつぶつ呟き始めた秋に、彼女の隣にいた龍哉は、ようやく秋の状態に気付く。

 龍哉が秋の状態に気付くと同時に、勇綺も龍哉の声によって、彼女の様子がおかしい事に気付いた。

 

「大丈夫? 秋? 具合が悪いの?」

 

「体調が悪いのか?無理するな」

 

「! へ? あ……、だ、大丈夫! 大丈夫よ! 二人とも!」

 

 勇綺と龍哉は、秋が風邪でもひいたと思ったのか、顔を青ざめている彼女の体調を気遣おうとする。

 勇綺と龍哉に気遣われた秋は、二人に心配かけたくなかったのか、慌てながらも明るく振る舞い、幼なじみの二人を安心させようとした。

 

「秋が大丈夫なら別に良いんだけど……」

 

「何か納得いかねぇけど……、まぁ、いっか!」

 

「本当に心配かけてごめんね、二人とも」

 

 勇綺と龍哉は秋の説得によって、渋々ながらも納得して、これ以上彼女の体調について詮索するのを止めた。

 秋は、自身を気遣ってくれた幼なじみの二人に、心配かけさせてしまったのですぐに謝った。

 

「秋殿は、本当に体調は大丈夫なのかね!?」

 

「あっ! は、はいっ! わ、私は大丈夫です! 王様! 心配かけてごめんなさい!!」

 

 どうやら勇綺達のやり取りを見ていたオドワルドも、秋の体調を心配しているようだ。

 秋は慌てながらも明るく振る舞いつつ 、王様にも心配かけてしまったので謝罪の言葉を告げた。

 

「……そうか、大丈夫そうで何よりだ」

 

 オドワルドは、秋の体調に何の問題も無いことを知って安心したのか、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「さて、話を戻すが。闇の王についての情報は全て話した……。他に何か聞きたい事があるかね?」

 

「あの、王様? ちょっと、聞きたい事があるのですけど……」

 

 オドワルドは勇綺達に、闇の王について情報を全て話したと伝えてから、他に聞きたい事は無いか、彼等に確認をする。

 すると秋が、何か聞きたい事があったのか、王様を呼び掛けた。

 

「何だね? 秋殿?」

 

「異世界転移魔法で気になった事があるんです。数多くの人から何故、私達だけが異世界に転移されたのですか?」

 

(秋も僕と同じく、自分達だけが異世界に転移された事が気になっていたのか……)

 

 秋に質問されたオドワルドは、彼女の呼び掛けに答える。

 どうやら秋は異世界転移魔法で、多くの人間の中から、自分達だけがこの異世界に転移された事が気になっていたらしい。

 秋と同じく勇綺も、異世界転移魔法で自分達だけが異世界に転移された事が気になっていたようだ。

 

「勇綺殿達だけが、異世界に転移された理由だが……。この異世界転移魔法は、無差別に人を転移させている訳ではない。転移させる条件は、【魔力】だ。別世界に魔力を持っている人間が見つかれば、魔力持ちの人間のみに魔法陣が現れて、異世界に転移させる仕組みになっているのだ。転移できる人間の数は、転移魔法の使用者の魔力によって変化する。」

 

「そういう仕組みだったんですか……。教室で私達の足下だけに魔法陣が現れたのは、私達が魔力を持っていたからだったんですね……。ん? 教室……、足下に魔法陣……。あっ!!」

 

「!?」

 

「秋……?」

 

 オドワルドは秋達に異世界転移魔法の仕組みについて説明をする。

 王様の説明を聞いて、異世界転移魔法の仕組みを理解した秋は、何かを思い出したのか、突然大きな声を上げた。

 秋がいきなり大きな声を上げたので、龍哉は目を丸くしながら彼女の方を見据える。

 そして勇綺も、大きな声を上げた秋に驚きつつも、彼女を呼び掛けた。

 

「思い出した! 勇綺! 桃条さんと聖と海道がここにいないわ! 確か桃条さん達にも、あたし達と同じ魔法陣が足下に現れてたはずよ!?」

 

(あっ……、やべ……。自分達の事で一杯一杯だったから、桃条さん達の事、すっかり忘れてた……)

 

 秋が思い出したのは、勇綺と同じクラスの生徒である、桃条愛鯉と聖正義、そして海道博孝の事だった。リコーダー泥棒事件が起きた教室で、愛鯉と正義、そして博孝にも、秋達と同じ異世界転移の魔法陣が足下に現れていたのだ。王様の説明どおりならば、愛鯉達も秋達と同じように、ランドロック王国に転移されているはずなのだが、ここに愛鯉達はいなかった。

 秋に愛鯉達について聞かれた勇綺は、どうやら愛鯉達の事を忘れていたようである。何故ならば、異世界に転移された事や闇の王達の退治等で、心に余裕がなかったため、愛鯉達の事を忘れてしまうのも無理は無い。

 

「ああ、そういえば桃条達もいたな……。まぁ、あいつ等は放って置いてもいいだろう。どこかで元気にやっているはずさ!」

 

「おいこらっ! ふざけんなっ! 全然、よくねーーよっ!!」

 

 愛鯉達がいない事を知った龍哉は、彼女達の事を心配するのかと思いきや、爽やかな笑顔で愛鯉達を見捨てるような発言をする。

 そんな酷い発言をした龍哉に秋は、彼の頭に強烈なチョップを叩き込んだ。

 




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第7話 協力は難しい?

何とか間に合った……(汗)
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 龍哉の外道発言に怒った秋からの、強烈なチョップを頭に叩き込まれてしまった龍哉は、叩かれた箇所を両手で押さえると同時に、呻き声をあげながら床の上にうずくまってしまう。

 

「ぬぐおぉぉぉぉぉ……」

 

「ふんっ!」

 

 苦痛に顔を歪めて床の上にうずくまっている龍哉に、秋は彼を睨み付けながら鼻を鳴らす。

 

「あの……、王様。ランドロック王国の城に、桃条愛鯉さんと聖正義君、後、海道博孝君は転移されて来ていないでしょうか? この三人も僕達と同じように、足下に魔法陣が現れていたんです。だから、この場に転移されていると思うんですけど……。桃条さん達は、何処にいるのですか?」

 

「桃条……。聖……。海道……。ううむ……。すまぬが勇綺殿、そのような三人は、この城に転移されて来ていない……」

 

「「!!?」」

 

「いてて……。くそ〜〜……、強く叩きすぎだろ……。頭に、たんこぶができてんじゃねぇのか? これ……?」

 

 秋と龍哉のやりとりを他所に、勇綺は王様に愛鯉達が何処にいるのかを尋ねた。

 勇綺の質問にオドワルドは、愛鯉達が城の中に転移されて来ていない事を、申し訳なさそうな表情をしながら勇綺達に告げる。

 王様から、愛鯉達が転移されて来ていない事を告げられた勇綺と秋は、二人揃って目を大きく見開く。

 愛鯉達が転移されて来ていない事に、勇綺と秋が驚いている最中、未だに床の上にうずくまっている龍哉はと言うと……。秋に聞こえないように、頭を叩かれた事への文句を言っていた。

 

「桃条さん達……、何処へ転移されたのかしら……。心配だわ……」

 

(桃条さん……)

 

 愛鯉達が転移されて来ていない事を王様から告げられた秋と勇綺は、この場にいない愛鯉達の安否を心配する。

 すると……。

 

「勇綺殿? ちょっとよろしいでしょうか?」

 

「えっ!? は、は、はい!!」

 

 突然、王様の側にいた巻き髭の大臣が、勇綺に話しかける。

 勇綺は、今まで静観していた大臣にいきなり話しかけられたので、狼狽えながら大臣に返事をしてしまう。

 

「勇綺殿、桃条殿達の足元に出現した魔法陣の色を覚えておりますか?」

 

「へ? 桃条さん達の魔法陣の色? えっと……、確か……」

 

 大臣から、愛鯉達の足元に出現した魔法陣の色について質問された勇綺は、何とか魔法陣の色を思い出そうとする。

 

「あっ! そ、そうだ! 確か青だった! うん! 魔法陣は青く光ってました!!」

 

「……青? そうですか……。ふむ……」

 

 そして、愛鯉達の魔法陣の色を思い出す事が出来た勇綺は、その魔法陣の色を大臣に伝える。

 勇綺から愛鯉達の魔法陣の色を告げられた大臣は、顎に手を当てながら考えだす。

 

「……勇綺殿の記憶が間違っていなければ、桃条殿達はおそらく【アクアマリン王国】に転移されているかもしれませんね」

 

「「!?」」

 

 大臣が魔法陣の色だけで愛鯉達が転移した場所を特定した事に、勇綺と秋は驚く。

 

「魔法陣の色だけで、桃条さん達が転移した場所が分かるのですか!?」

 

「おほん……、桃条殿達の居場所を特定する事ができた理由について、お答えしましょう。先ずは、魔法陣が放つ光の色について説明します。転移魔法が発動した時に現れる魔法陣の光の色は、【王族の血】によって魔法陣が放つ光の色が違うのです。この、王族の血とは言葉通り王の一族の血です。王の一族の血は、転移魔法を発動させるのに必要な物。ランドロック王国の王族である、オドワルド王の血を聖杯に入れて、それを魔導師達が長時間、膨大な魔力を注ぎ続けて転移魔法を発動させると、魔法陣は黄色い光を放ちます。そして、アクアマリン王国の王族の血が入った聖杯に、膨大な魔力を長時間注いで転移魔法を発動させたら、魔法陣は青い光を放つと言われています。ですから私は、青い光に包み込まれた桃条殿達は、アクアマリン王国に転移していると判断したのです」

 

(王族の血によって、魔法陣の光の色が違うのか……。なるほど……。しかし、転移魔法を発動させるには、王族の血が入った聖杯に、魔導師達が膨大な魔力を長時間注ぎ続けるとはねぇ……。つまり、僕らの周りに座っている魔導師達が、先程から疲れた表情をしていたのは、転移魔法を発動させるのに長時間、魔力を使ったせいなのね……。この辺は、ゲームとか創作物とかと一緒だな。魔力を使うと、やっぱり疲れたりするんだなぁ……。なんと言うか……、魔導師達の皆さん、長時間の魔力の使用、お疲れ様……)

 

 秋は大臣に、魔法陣の色だけで愛鯉達が転移した場所を、特定する事ができた理由について質問をする。

 大臣は秋の質問に答えるべく、一度、咳払いをしてから秋達に愛鯉達の居場所を、特定する事ができた理由について丁寧に説明をしていく。

 大臣の話を興味津々に聞いていた勇綺は、大臣の話によって、自分達が立っている魔法陣の周囲に座っている魔導師達が、先程から疲れた表情をしていた理由を察する。どうやら勇綺は、この城に転移してから、先程から疲れた表情をしていた魔導師達の事を、一応気にはなっていたようだ。かなり大変そうな仕事をこなした魔導師達に、勇綺は心の中で労いの言葉をかけていた。

 

「じゃあ、桃条さん達は無事なんですね?」

 

「はい。アクアマリン王国の王は、とても穏やかな人ですから、桃条殿達を丁重に扱うはずです。ですから、桃条殿達はきっと無事だと思われます」

 

 秋は大臣に、アクアマリン王国に転移した愛鯉達が、無事かどうかを質問する。

 秋の質問に、大臣は彼女を安心させる為に、アクアマリン王国の王についての人柄を説明した。

 

「良かった〜〜……。桃条さん達が無事で」

 

(桃条さん達が無事なのは良いんだけど……。どうしよ……。できれば桃条さん達と、合流したいんだけど……。でも、やっぱ無理かなぁ……。リコーダー泥棒の事があるしなぁ……。特に、聖君と海道君は、僕達と協力するのを絶対に断るだろうな……。この二人は、いくら話し合っても、僕の事をリコーダー泥棒の犯人だと疑っていたし……。ああ、本当に困ったなぁ……)

 

 大臣の口から愛鯉達の無事を聞いた秋は、ホッと胸を撫で下ろす。

 愛鯉達の無事を喜んでいる秋とは対照的に、勇綺の表情は何故か曇っていた。愛鯉達が無事である事に、勇綺は不満があるわけではない。では、どうして曇った表情をしていたかと言うと。この世界に転移する前に、学校で愛鯉達とリコーダー泥棒の事で、一悶着があった事を思い出したのだ。勇綺は、できれば愛鯉達と合流して、お互いに協力したいのだが、リコーダー泥棒の事で一悶着があった事や、未だに勇綺を犯人だと疑っている可能性がある正義と博孝の存在によって、それが難しい事に頭を悩ませるのであった。

 




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第8話 チートが欲しい……

今年も何とか間に合った……
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 愛鯉達と協力するのが難しい事に、勇綺が頭を悩ませている最中、秋が大臣に質問をする。

 

「アクアマリン王国へ行くには、どうすればよろしいのですか?」

 

「! アクアマリン王国への行き方です……か? ううむ……。ランドロック王国から船で海を渡ってアクアマリン王国へ行くのが一番近い道なのですが……」

 

「何だよ? 何か問題が有るのか?」

 

「……」

 

 秋の質問に大臣は、歯切れが悪そうにしながら、アクアマリン王国への交通手段について返答をする。

 秋に叩かれた箇所の痛みがようやく引いた龍哉は、大臣の奥歯に物が挟まったような言い方が気になり、彼を問いただす。

 そして勇綺も大臣の返答が気になったのか、一旦、愛鯉達について考えるのを止めて、彼の方を静かに見据える。

 

「実は……、王国が使っている船は現在……、海上の警備の為に船を全て出航させております……。ここ最近、海の魔物や密漁者……、そして海賊達の動きが活発化していますので……、海の治安を守る為にも、多くの船を海上の警備に回さなければならないのです……。それゆえ、救世主殿達に貸す事ができる船は、一隻もないのです……」

 

「海賊とかも居んのか……。でもよ、今、警備している連中から、何とか船を一隻くらい、こっちに寄越せないのかよ?」

 

「ちょっと龍哉! 止めなさい!! 向こうにも船を貸せない事情があるのよ!?」

 

(海の魔物や密漁者、そして海賊達の動きが活発化しているのならば、僕達に船を貸せないのも仕方ない……かな? もし、船を僕達に貸したせいで、海上を警備している兵士達の戦力が落ちて、兵士達に被害でも受けたりしたら、何か気分が悪いしなぁ……)

 

 大臣は、船を龍哉達に貸せない理由を、申し訳なさそうな表情で、ぽつぽつと語りだす。

 大臣から船を貸せない理由を聞かされて、納得がいかない龍哉は、海上を警備している船を一隻寄越せと、大臣に要求をするのであった。

 秋は、既に出航している船を寄越せと、大臣に無理な要求をする龍哉を、たしなめようとする。

 大臣の話に納得がいかない龍哉とは対照的に、勇綺は船を貸せない理由に、一人で納得をしていた。

 

「船を貸したいのは山々なのですが……。最近の海の魔物や海賊共は、とても手強くなっていますので、今の我々には、救世主殿達に船を貸す余裕がないのです……。ですから何卒……、ご理解くださいますようお願いいたします……」

 

「向こうも大変なんだから、わかってあげなさいよ! 龍哉!」

 

「……チッ! わ〜〜たよ! 仕方ねぇ〜〜な……」

 

 大臣は、船を貸せない理由に納得できない龍哉を、何とか納得してもらえるように頼み込む。

 必死になって龍哉を、納得してもらえるように懇願する大臣に続くように、秋は龍哉の説得をする。

 二人の言葉に、龍哉は、しぶしぶと船を要求するのを諦めるのであった。

 

「じゃあ、王国側に船を貸してもらえないのなら、どうやってアクアマリン王国に行くんだよ?」

 

「そうねぇ……。あっ! だったら、民間の客船とかを使えば良いんじゃないかしら? きっと、アクアマリン王国へ向かってくれる客船があるはずよ!」

 

 王国側に船を要求するのを諦めた龍哉は秋に、アクアマリン王国への行き方を問い掛ける。

 龍哉の問い掛けに秋は、一度考えてから直ぐに何かを閃く。秋が閃いた案は、民間人が乗る客船で、アクアマリン王国へ行くようである。それを、龍哉に提案をするのだが……。

 

「それは、無理でございます。秋殿」

 

「え? どうしてですか?」

 

 大臣が突然、秋の提案に反対をする。

 提案を反対された秋は、大臣にその理由を問い掛けた。

 

「民間人が乗る客船の方は、海の魔物の攻撃によって船が破損してしまい、現在は造船所で修理をしていますので、しばらくは客船に乗り込む事は出来ないのです」

 

「そんな……」

 

(船でアクアマリン王国へ行くのは、無理そうだな……)

 

 どうやら大臣が秋の提案に反対したのは、客船が現在、造船所で修理中であるからのようだ。

 大臣から客船を使う事が出来ないと告げられた秋は、残念そうな表情を浮かべる。

 勇綺も秋と同じく、客船を使う事が出来ないと告げられて、残念そうな表情を浮かべながら、小さく溜め息をついた。

 

「王国の船を借りれないだけじゃなく、客船までも修理で使えないのなら、どうやってアクアマリン王国に行くんだよ! おい! 大臣!! 何か他に、アクアマリン王国へ行く方法は、ねぇーーのかよ!?」

 

 龍哉は王国の船だけじゃなく、客船までもが使えない事に、腹をたてながら叫んだ。そして龍哉は乱暴な言葉遣いで、大臣に、他の方法でアクアマリン王国への行き方を問いただす。

 

「アクアマリン王国への交通手段は、他にもあるには、あるのですが……」

 

「何だよ! あるんじゃねぇーーか!! それでっ!? また何か問題があるのかよ!!」

 

「ちょっと! 龍哉! 少し落ち着きなさいよ!」

 

 龍哉の問い掛けを、またもや大臣は歯切れが悪そうに答える。

 再び奥歯に物が挟まったような言い方をする大臣に、龍哉は腹を立てながら彼を問い詰めた。

 苛立ちを覚えている龍哉に秋は、彼を何とか落ち着かせようとする。

 

「……イッカクの根城がある森を通り抜けたすぐ先に、【ランドロックトンネル】と呼ばれる洞窟があります。この洞窟を通り抜ければ、アクアマリン王国にたどり着く事ができます……。しかし……、ランドロックトンネルの内部には、手強い魔物が多く住み着いており、相当危険な洞窟になっております。冒険者でなければ、この洞窟を通り抜けるのは難しいでしょう。……昔は今よりも、強い魔物が、この洞窟に住み着いてはいなかったので、冒険者だけじゃなく、民間人も使っていたのですが……。今では、この洞窟を通り抜けようとする者は、冒険者達ぐらいです」

 

 大臣は龍哉達に、ランドロックトンネルについての場所と洞窟内部の危険性を語りだす。

 

「成る程ね……。そのトンネルが危険な場所だって事は、よくわかった……。一応聞いとくけど、他にアクアマリン王国への交通手段は、このトンネルを通り抜ける以外に、もう無いんだよな?」

 

「はい、船が使えない以上、アクアマリン王国への交通手段は、この危険なトンネルを通り抜けるしかありません……」

 

 ランドロックトンネルについての話を聞いた龍哉は大臣に、トンネルを通り抜ける以外で、他にアクアマリン王国への交通手段が無いのか質問をする。

 龍哉からの質問に大臣は、船が使えない状況では、トンネル以外にアクアマリン王国への交通手段は、他に無いと返答をするのであった。

 

(やれやれ……。桃条さん達とのいざこざや厄介な戦術を持つイッカクだけでも、攻略するのが面倒なのに、危険なトンネルも攻略しなければならないのか……。どれもこれも面倒なイベントばかりだなぁ……。あぁ……、チートが欲しい……)

 

 勇綺は次々と起こる面倒なイベントに困り果てると同時に、再び溜め息をつく。そして、この面倒なイベントを何とかできるチートが欲しいと、無い物ねだりをするのであった。

 




話、全然進まねぇ……。
何とか、メインヒロインやイッカクをはやく登場させたいですね。

それでは皆様!
良いお年を!!


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第9話 アイテム

新しい年もギリギリ投稿になりました……(汗)
最新話です!
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 アクアマリン王国への交通手段や愛鯉達とのいざこざ、そしてイッカクの対策等、面倒な問題が次々と増えていく事に、勇綺は頭を悩ませていた。

 すると……。

 

「さて、大臣よ。救世主殿達に【アレ】を渡してくれ」

 

「はい! かしこまりました!」

 

「「「アレ?」」」

 

 オドワルドが大臣に、あるものを勇綺達に渡すように命令をだす。

 命令を受けた大臣は、軽く会釈しながら王様に返事をする。

 王様と大臣のやり取りを見ていた勇綺達は、王様が先程口にしていた【アレ】という言葉に、三人は同時に首を傾げていた。

 

「使用人達よ! 入れ!!」

 

 大臣は、勇綺達の背後から見える、大きな扉の向こう側で待機している使用人達を呼び出す。

 大臣の呼び出しと共に扉が開くと、三人の美少女メイド達が姿を現す。一人目の美少女メイドは、前髪を水平に一直線に切っており、腰まで伸びた黒髪のロングヘアーで、おっとりとした雰囲気を漂わせていた。次に、二人目の美少女メイドは、金髪で腰まで伸びた髪が波打っており、全体的におとなしそうな様子である。そして、三人目の美少女メイドは、茶髪のセミロングで、クールな佇まいをしていた。三人の美少女メイド達は、無言のまま軽く会釈をした後、王様達がいる部屋へと入って行く。

 

(美少女メイドだぁ……)

 

「へぇ〜〜、ラノベに登場する美少女メイドって、本当に居るんだなぁ……」

 

(何よ! 二人とも! メイドの女の人に鼻の下を伸ばしちゃって! 全く……)

 

 勇綺と龍哉は、部屋に入ってきたメイド達を凝視していた。勇綺と龍哉も思春期の男子であり、こういった美少女メイドに目移りをしてしまうのも無理は無い。

 美少女メイドを興味津々に凝視している勇綺と龍哉に対して秋は、デレデレしている二人に冷たい視線を送っていた。

 

「使用人達よ、王様からの命令だ。救世主殿達に【アレ】を渡すのだ」

 

 大臣からの命令を受けた美少女メイド達は、指示された物を勇綺達に渡してゆく。

 

(か、可愛い……)

 

「?」

 

 勇綺は黒髪ロングヘアーのメイドから渡された品物に目もくれずに、心臓をバクバクさせながら、目の前の黒髪ロングヘアーのメイドを凝視していた。

 大臣に指示された物を救世主達に渡していた、美少女メイドの一人である黒髪ロングヘアーのメイドは、目の前にいる勇綺から視線を向けられている事に気付く。黒髪ロングヘアーのメイドは、こちらを凝視している勇綺に、視線を移そうとするが……。

 

「!?」

 

「??」

 

 目の前の黒髪ロングヘアーのメイドに見惚れていた勇綺は、彼女がこちらに視線を移そうとすると、慌てふためきながら彼女からの視線を逸らした。

 黒髪ロングヘアーのメイドは、そっぽを向いた勇綺に、ただ首を傾げるだけであった。

 

「ぷくく……」

 

「……」

 

 慌てふためいている様子の勇綺に、龍哉は必死に笑いを堪えていた。

 笑いを堪えている龍哉の隣では、秋が、慌てふためいている勇綺を凝視しながら笑みを浮かべている。だが、秋の目は全く笑っていない。しかも、背後からドス黒いオーラを出していた。

 大臣に指示された物を勇綺達に渡し終えた美少女メイド達は、王様達に軽く会釈をすると、そのまま部屋から退出して行く。

 

「茶色の袋と何かの薬かしら? それに……、金属板? 何に使うの? これ?」

 

「武器って感じじゃ無さそうだなぁ……」

 

(もしかして……、これは……)

 

 秋達がメイド達に渡された品物は、魔法陣が描かれた茶色な布製の袋と謎の透明な液体が入った小瓶、そしてB5サイズのノートと同じ大きさで、五百円硬貨が入りそうな丸いくぼみが三つと親指サイズの楕円形のくぼみが一つ付いた、銀色に輝く金属板だった。

 秋と龍哉は、メイド達に渡された品物に、当惑しながら凝視していた。

 渡された品物に当惑している秋と龍哉とは対照的に、勇綺は多くの創作物を読んだ経験によって、メイド達に渡された品物の正体に感付く。

 すると……。

 

「兵隊長! 救世主殿達に渡したアイテムについての説明をしなさい!」

 

「はいっ!!」

 

 大臣は、勇綺達の周囲で静観していた兵隊長に指示を出す。

 兵隊長は、大臣の命令に返事をした後、勇綺達の前まで移動をする。

 

「救世主殿達に渡したアイテムについての説明を、この私、兵隊長であるライノ・クラックが担当させてもらいます」

 

 兵隊長のライノは、勇綺達に軽く会釈をした後、自己紹介をする。

 

「それでは、救世主殿達に渡したアイテムについての説明を始めます」

 

 そしてライノは、勇綺達に渡したアイテムについての説明を始めた。

 

「先ずは、小瓶について話します。その小瓶の中に入っている液体は、旅の必需品【ポーション】と言います。このポーションを服用すれば、身体の傷を癒す効果があります」

 

「マジか!? RPGとかに良く登場する回復アイテムが本当にあったのかよ!!?」

 

(やっぱり、ポーションだったか……。)

 

「でも……、本当に、これを飲むだけで傷が治るのかしら……?」

 

 ライノから小瓶に入った液体、【ポーション】についての説明を聞いた龍哉は、テレビゲームの中だけの存在であった回復アイテムが、現実に存在していた事に相当驚いていた。

 ポーションが存在していた事に驚いていた龍哉とは対照的に、勇綺は、ライノからの説明を聞いても、特に驚いてはいないようである。元々、ファンタジー系の創作物の知識を持っていた勇綺は、メイド達にアイテムを渡された時からすでに、小瓶の正体や他のアイテムの正体に感付いていたのだ。だから勇綺は、ライノからの説明を聞いても、特に驚いたりはしなかったのである。

 ライノからの説明に、ノーリアクションである勇綺の後ろ側にいた秋は、ポーションの効果に疑いの目で見ていた。何故ならば秋は、ファンタジー系の創作物にあまり興味が無かった為、こういった知識は乏しく、ポーションの効能を知っても、いまいち信用できずにいたのだ。

 

「次は、この茶色の袋について説明をします」

 

「一度、ゲームに登場するポーションを、飲んでみたかったんだよな〜〜」

 

「龍哉……、あんた……。そんな怪しい薬を本当に飲む気なの……?」

 

 ライノは、次のアイテムである茶色の袋についての説明を始める。

 ライノが次のアイテムの説明を始めようとする最中、龍哉は、手に持っているポーションが入った小瓶を興味津々に見つめていた。どうやら龍哉は、RPGに登場するポーションに相当興味があったらしく、一度は飲んでみたいと思っていたようである。

 ポーションを興味津々に見つめている龍哉に、秋は、怪しい薬を飲もうとしている彼を、呆れた表情で見つめるのであった。

 




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※一部の文を修正しました

修正前:五百円硬貨が入りそうな丸いくぼみが二つと親指サイズの楕円形のくぼみが一つ付いた、銀色に輝く金属板だった。

修正後:五百円硬貨が入りそうな丸いくぼみが三つと親指サイズの楕円形のくぼみが一つ付いた、銀色に輝く金属板だった。


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第10話 マジックポーチ

はい、またギリギリ投稿です。

最新話をどうぞ!


 怪しい薬のように見える回復アイテム、【ポーション】を飲む気でいる龍哉に、秋が呆れている最中、兵隊長のライノは、勇綺達に渡したアイテムについての説明を続けていた。

 

「救世主殿達に渡した、この茶色の袋は、どんなアイテムも収納できる魔法アイテム、【マジックポーチ】と言います。この袋には魔法がかけられていて、入れ物よりもサイズの大きいアイテムを収納できるだけじゃなく、重いアイテムを収納しても重さを感じさせません。更に、食材や料理アイテムを収納すると、鮮度や温度を保つ事ができる優れものなのです」

 

「へぇ〜〜、この袋、そんなにすげぇアイテムだったのか!」

 

(僕らに渡した袋は、やはり、マジックポーチだったか!)

 

 ライノからマジックポーチの説明を聞いた龍哉は、手に持っているマジックポーチを見据えながら感心していた。

 マジックポーチに感心している龍哉の左斜め前に座っていた勇綺は、茶色の袋の正体も、ライノに説明されるよりも前から、既に気付いていたようだ。くどいようであるが、勇綺にはファンタジー系の創作物の知識を持っていたので、メイド達からポーション入りの小瓶と一緒に茶色の袋を渡された時から、この袋の正体がマジックポーチであると、感付いていたのである。

 

(よしっ!! マジックポーチが貰えたのはありがたい! 旅に出れば、色々とアイテムを買い込んだりすると思うから、この袋があれば、アイテムの持ち運びが楽になるぞ!!)

 

 ライノからの説明を聞いていた勇綺は、ファンタジー系の創作物とかでも有用で高価なアイテムとされている、マジックポーチが手に入った事に、心の中で歓喜していた。

 

「本当にこの袋には、どんなアイテムも収納する事ができるのかしら……? どうみても、普通の袋にしか見えないんだけど……」

 

 ファンタジー系の創作物の知識があまり無い秋は、ライノからの説明を聞いても、マジックポーチの力にいまいち信用できないだけでなく、懐疑的な意見も呟いてしまう。

 

「確かに、魔法がない世界から転移して来た人から見れば、マジックポーチの力に疑ってしまうのも無理は無いですね」

 

「へっ!? あっ! いや……、そ、その〜〜……、え、え〜〜と……。し、失礼な事を言って! ご、ごめんなさい!!」

 

 秋が呟いた意見を聞いても、ライノは、怒ったり、不快な表情をしたりせず、彼女の言い分に納得をする。

 懐疑的に呟いてしまった意見をライノに聞かれてしまった秋は、申し訳無い気持ちでいっぱいになり、慌てながらも深々と頭を下げつつ、彼に謝罪をするのであった。

 すると……。

 

「それでしたら秋殿、マジックポーチを一度、試しに使ってみてはどうでしょうか? 一度使用すればきっと、秋殿も、マジックポーチの力を信用していただけるかと思います」

 

「……。分かりました……。使ってみます……」

 

 ライノは、マジックポーチの力を秋に信用してもらうべく、彼女にマジックポーチの使用を勧める。

 ライノからマジックポーチの使用を勧められた秋は、顎に手を当てながら少し考えてから、彼の提案を聞き入れた。

 

「それでは、これをマジックポーチに収納してみて下さい」

 

「これは……?」

 

 ライノは、腰についている筒上の入れ物から、くるくると巻かれた紙を取り出すと、それを秋に手渡す。

 手渡された物が気になった秋は、ライノに巻き紙について質問をする。

 

「それは、この世界の地図です。マジックポーチの力を試すのに、丁度いいサイズだと思いましてね。さぁ、その地図をマジックポーチに収納してみて下さい!」

 

「……分かりました」

 

 秋は、ライノに言われるがままに、手渡された世界地図を、マジックポーチの中に収納してみようとする。

 

「嘘でしょっ!? 地図がマジックポーチの中に、どんどん入っていく!!?」

 

「「おぉぉ〜〜! すげぇ〜〜!!」」

 

 マジックポーチよりもサイズの大きい世界地図が、まるで底なし沼に飲み込まれているかのように、マジックポーチの中へと収納されてゆく。マジックポーチを試しに使った秋は、その性能を目の当たりにした事で、目を丸くしながら驚いた。

 秋が、マジックポーチを試しに使用している光景を目の当たりにしていた勇綺と龍哉は、マジックポーチの力に目を輝かせながら感心していた。

 

「どうですか? これで、マジックポーチの力を信用して頂けたでしょうか?」

 

「! は、はい!」

 

 ライノは、マジックポーチの力を信用して貰えたかを確認する為、秋に質問をする。

 ライノからの問い掛けに秋は、先程のマジックポーチの試用によって、マジックポーチの力を信用してくれたようだ。

 

「あの! ライノさん! マジックポーチの中に収納したアイテムを取り出すには、どうすればいいのでしょうか?」

 

「今の秋殿のマジックポーチの中に収納されているアイテムは、世界地図だけですので、そのまま袋から世界地図を取り出すだけで問題ありません。ただし、マジックポーチの中に収納されているアイテムが2つ以上の場合は、取り出したいアイテムをイメージしながら、マジックポーチの中からアイテムを取り出して下さい。それをしないと、マジックポーチの中から、適当なアイテムを取り出してしまいますので注意して下さい」

 

 秋はライノに、マジックポーチの中に収納されたアイテムを、取り出す方法について質問をする。

 秋からの質問にライノは、マジックポーチの中に収納されたアイテムの取り出し方と、アイテムを取り出す時の注意点を彼女に説明をするのであった。

 

「ライノさん! 世界地図をお返しします。貸していただき、ありがとうございます!」

 

 ライノの説明を聞いた後、秋は、マジックポーチの中から世界地図を取り出す。秋は、取り出した世界地図を、ライノに返却すると、彼にお礼の言葉を口にする。

 

「その世界地図は、秋殿に差し上げます。冒険の役に立てて下さい」

 

「えっ!? 貰ってもいいんですか!?」

 

 秋から返却された世界地図を、ライノは受け取らなかった。どうやらライノは、秋に世界地図を譲るつもりのようである。

 突然、ライノから世界地図を譲られて、秋は目を大きく見開きながら驚いていた。

 

「問題ありません。世界地図の予備は、いくつも有りますので、どうか貰って下さい」

 

「分かりました! ライノさん! ありがとうございます! この世界地図を、ありがたく使わせて貰います!」

 

 世界地図を譲っても問題がないライノは、秋に世界地図を受け取るように懇願する。

 ライノの言葉に納得した秋は、お礼の言葉を口にした後、彼から譲り受けた世界地図を、マジックポーチの中に収納するのであった。

 




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第11話 ステータスプレート

はい、またギリギリ投稿です(汗)
本当に遅くてすみません……

最新話をどうぞ


 譲ってもらった世界地図を、秋がマジックポーチの中に収納すると同時に、ライノは残りのアイテムについての説明を再開する。

 

「それでは最後に、この金属板についての説明をします」

 

「「「……」」」

 

 ライノが最後のアイテムである、金属板についての説明を始めようとすると、勇綺達は彼の話に耳を傾ける。

 

「この金属板のようなアイテムは、【ステータスプレート】と言います。プレートの所有者の能力を数値化させるだけでなく、健康状態や職業、更にスキルなども確認する事ができます。他にもパーティーの登録や、モンスターのデータを記録するモンスター図鑑などの機能も付いております。これら以外にも、まだまだ色んな機能がありますので、試しながら使って見てください」

 

(ステータスやスキルを確認できるだけだじゃなく、色んな機能が付いているんだな。これは、相当高性能なアイテムだ!)

 

 ライノは、勇綺達にステータスプレートの機能について説明をしていく。

 ライノからステータスプレートについての説明を聞いていた勇綺は、ステータスプレートの高性能に驚きを隠せずにいた。

 

「それと、このステータスプレートは、身分を証明する為のアイテムでもあります。これが無いと、入国できない国や利用できない施設等がありますので、くれぐれもプレートを無くしたりしないように注意して下さい」

 

(成る程……。このステータスプレートは、身分証明書として使う事もできるのか……。他にもどんな機能があるんだろう……。はやく、使って見たいな……)

 

 更にライノは、ステータスプレートが身分証明書の役割を持っていると勇綺達に説明をする。

 ライノからの説明を聞きながら勇綺は、にやりとした表情でステータスプレートを見つめていた。おそらく勇綺は、ステータスプレートの多種多様な機能に、心が引かれているのだろう。

 

「おいっ! 兵隊長!! このプレート、何の反応もねぇぞ!? 壊れてんのか!!?」

 

「貴様の、その生意気な言葉遣いは、何とかならんのか? まぁ、良い……。ステータスプレートを起動するには、先ず、プレートの所有者登録をする必要がある。ステータスプレートに楕円形のくぼみがあるだろ? くぼみの底に指を押し当てると、プレート所有者の指紋から、体内にある魔力情報をプレートが読みとっていく。プレートに【登録完了】の文字と楕円形のくぼみの底に魔法陣が浮かび上がれば、ステータスプレートの所有者登録がされる。そして所有者登録をしたら、魔法陣が浮かび上がった楕円形のくぼみの底に、指を押し当てて【メニューオープン】と唱えると、プレートの機能についての選択項目がプレートに表示される」

 

 龍哉は、ステータスプレートが何の反応も無い事にイラついていたのか、生意気な言葉遣いでライノに、ステータスプレートについての文句を言いだす。

 龍哉の生意気な言葉遣いに、ライノは不快そうな表情を浮かべながらも、龍哉達にステータスプレートの起動させ方を説明していく。

 

「楕円形のくぼみの底に押し当てる指は、どの指でも大丈夫でしょうか?」

 

「楕円形のくぼみの底に押し当てる指は、くぼみの底に指紋を押し当てさえすれば、どの指でもプレートは、体内の魔力情報を読みとる事ができますので、人差し指や小指、足の指でも特に問題無く登録する事が可能です」

 

 楕円形のくぼみの底に押し当てる指についての質問をした勇綺は、ライノの口から、くぼみの底に押し当てる指は、指紋をくぼみの底に押し当てさえすれば、どの指でも登録が可能であると教えられる。

 

(所有者の登録方法が、現実とファンタジーが合わさった感じで面白いな……。とりあえず、親指で登録!)

 

「どの指でも登録が可能なら、小指で登録してみっか!」

 

「私は、人差し指でやってみよ」

 

 勇綺は、ステータスプレートの登録方法に心嬉しく思いながらも、プレートのくぼみの底に指を押し当てる。

 勇綺に続くように、龍哉と秋もステータスプレートの楕円形のくぼみの底に指を押し当てていく。

 すると……。

 

「「「!!!」」」

 

 勇綺達のステータスプレートに、【登録完了】の文字と楕円形のくぼみの底に魔法陣が浮かび上がる。しかも、浮かび上がった魔法陣は三人とも、それぞれ色と形が異なっていた。勇綺の魔法陣は、明るく薄い黄緑をした若草色の魔法陣。次に龍哉の魔法陣は、濃い赤色をした紅色の魔法陣。そして秋の魔法陣は、青空をイメージさせる、薄い青色をした空色の魔法陣である。

 

「これが魔法陣……? 勇綺と秋の魔法陣と比べると、色と形が違うな……」

 

「本当だ! 私達の魔法陣の色と形が、それぞれ違うわね?」

 

(僕達の魔法陣の色と形がそれぞれ違うのは、体内の魔力情報が関係しているからだろうか? 魔力情報は指紋と同じように、一人一人違うから、浮かび上がった魔法陣の色と形に、違いがでるのかもしれない……)

 

 ステータスプレートの所有者登録を完了した勇綺達は、プレートに浮かび上がった色の付いた魔法陣をお互いに見せあう。

 龍哉と秋が、お互いのステータスプレートに浮かび上がった魔法陣を見比べている最中、勇綺は、プレートに浮かび上がった魔法陣の色と形に違いがでる理由について考えていた。

 

「おっと! そうだ! 今は魔法陣よりも、ステータスプレートを起動させねぇとな。勇綺! 秋! 準備はいいか?」

 

「! うん! 僕は、準備できているよ!」

 

「あたしも、いつでもプレートを起動できる準備ができているわよ!」

 

 ステータスプレートを、起動させようとしている途中であった事を思い出した龍哉は、楕円形のくぼみの底にある魔法陣に指を押し当てた後、勇綺と秋にプレートを起動させる準備が整っているか声をかける。

 龍哉に声をかけられた勇綺と秋は、すでに楕円形のくぼみの底に浮かび上がった魔法陣に指を押し当てており、いつでもステータスプレートを起動できる準備がされていた。

 そして……。

 

「「「メニューオープン!!!!!」」」

 

 勇綺達は、プレートを起動させる為の言葉を唱える。

 

「すごい……」

 

「おおっ!? すっげぇっ!!?」

 

「!!?」

 

 プレートを起動させる言葉を唱えた勇綺達のステータスプレートには、プレートの機能についての選択項目が表示されて、三人は驚きを隠せずにいた。

 

(ライノさんが説明したとおり、ステータスやモンスター図鑑、パーティー登録の他にも、色々な機能が付いているな……。ヤバい! プレートが本当に高性能過ぎる!!)

 

 ステータスプレートに表示されている様々な機能についての選択項目を目にした勇綺は、プレートの高性能に笑みを浮かべていた。

 




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第12話 救世主達のステータス

はい、またギリギリ投稿です。

では、最新話をどうぞ!


 ステータスプレートを起動させた勇綺達は、プレートに表示されている、様々な機能についての選択項目を凝視していると、ライノがステータスプレートの説明を再開させる。

 

「どうやら、ステータスプレートを起動させる事ができたようですね。もし、ステータスプレートの使用するのを止めたい時や、プレートに表示されている情報を盗み見されたくない時は、プレートを起動させた時と同じように、魔法陣が浮かび上がった楕円形のくぼみの底に、指を押し当てて【メニュークローズ】と唱えると、プレートの画面を閉じる事ができます」

 

「「「……」」」

 

 ライノがステータスプレートについての説明を再開すると、勇綺達は一旦、ステータスプレートの画面から目を離して、彼の説明を静かに聞いていた。

 

「救世主殿達よ、ちょっと良いかな?」

 

「「「?」」」

 

 ライノからの説明を聞いていた勇綺達に、オドワルドが突然話しかける。

 勇綺達は、話しかけて来た王様の方へと視線を移す。

 

「救世主殿達の職業を教えて貰えぬか? ステータスプレートで、職業を確認できるはずだ。はやく、そなた達の力が知りたいのだよ!」

 

「えっ!? 職業!!? あ、あ、ちょっと、待って下さい! えっと……、職業の確認……。あ、あれ? どうやって、このプレートを操作すれば良いんだろ……」

 

 オドワルドが勇綺達に話し掛けたのは、彼等の職業を知りたかったからのようである。

 王様に話し掛けられた勇綺は、彼の、こちらに何かを期待しているような眼差しに、戸惑いながらもプレートの操作方法を模索していた。

 すると……。

 

「職業を確認したいのでしたら、ステータスプレート画面に表示されている、【ステータス】の項目を指で触れれば、ステータスと職業の確認ができますよ」

 

 ステータスプレートの操作に悪戦苦闘をしている勇綺達に、ライノがプレートの操作方法を教える。

 勇綺達は、ライノの言葉に従い、ステータスプレートの画面に表示されている【ステータス】の項目を指で触れてみると……。

 

「あっ! プレートに、職業とステータスが表示された!」

 

「これが、俺の職業か!」

 

「へぇ〜〜」

 

「おお! それで!? 救世主殿達の職業は何だね!? はやく、ステータスプレートを見せておくれ!!」

 

 ステータスプレートの画面に表示されている職業に、勇綺達は興味津々といった感じで凝視していた。

 勇綺達のステータスプレートに表示されている職業が相当気になるのかオドワルドは、期待に胸をふくらませながら勇綺達に近付く。

 

「え、えっと……。は、はい……、ど、どうぞ……」

 

 期待に満ちた眼差しをこちらに向けながら近づいてきた王様に、勇綺は戸惑いながらも、彼に言われるがままステータスプレートを渡す。

 オドワルドは、勇綺に渡されたステータスプレートを、ほくほくした表情で拝見する。

 

 

 

 

 

 

名前:成神勇綺

種族:人間

年齢:17歳

性別:男

職業:園芸師

 

SL:0

LV:1

HP:34/34

MP:13/13

攻撃力:7

防御力:3

回避力:5

攻撃成功値:12

魔法防御:1

魔法回避:2

 

腕力:28

頑丈:26

体力:28

敏捷:25

器用:27

命中:24

魔力:18

知力:20

精神:27

幸運:20

 

 

 

 

 

 

(な、何だと!? 戦闘職じゃなく、採取系職業だとぉ!!?)

 

「あ、あの……。お、王様……?」

 

 勇綺から渡されたステータスプレートに表示されている職業を拝見したオドワルドは、ほくほくした表情から一変して、険しい表情へと変わる。

 王様の表情の変化に戸惑いつつも勇綺は、ステータスプレートを睨み付けている王様に、恐る恐る話し掛けようとするが……。

 

「秋殿!! そなたのステータスプレートも見せておくれ!!!」

 

「ひっ!? は、はい!! どど、どうぞ!!!」

 

 オドワルドは勇綺の声を無視して、秋のステータスプレートに表示されている職業を見るために、鬼気迫る表情をしながら彼女に近付く。

 王様の表情に怖じ気付いた秋は、びくびくしながら彼にステータスプレートを渡す。

 オドワルドは、秋に渡されたステータスプレートを睨むように拝見する。

 

 

 

 

 

 

名前:紫堂秋

種族:人間

年齢:17歳

性別:女

職業:バード

 

SL:0

LV:1

HP:30/30

MP:16/16

攻撃力:6

防御力:3

回避力:5

攻撃成功値:11

魔法防御:1

魔法回避:2

 

腕力:19

頑丈:16

体力:20

敏捷:29

器用:26

命中:22

魔力:28

知力:28

精神:32

幸運:22

 

 

 

 

 

 

(くっ……、この娘も戦闘職じゃ無いのか!!)

 

(え、えっと……)

 

 秋のステータスプレートを拝見したオドワルドは、彼女の職業も戦闘職ではなかった事に苦渋の表情を浮かべる。

 秋は王様が難しい顔をしている事に、ただ戸惑うばかりであった。

 

「おい、王様! 俺のステータスプレートも見るのか?」

 

(! そうだ! まだ、龍哉殿がいた! 龍哉殿に全てを賭けよう!! 龍哉殿ならば、きっと戦闘職の筈だ!!!)

 

 ステータスプレートの画面を見つめながら難しい顔をしている王様に、龍哉は気にすることなく堂々と話し掛ける。

 龍哉に話し掛けられたオドワルドは、まだ職業を確認していない彼が、戦闘職である事に望みを賭けるのであった。

 

「龍哉殿! もう、そなただけが頼りだ! ステータスプレートを渡しておくれ!」

 

「? 何か良く分からねぇけど……。ほらよ」

 

 龍哉に望みを賭けたオドワルドは、彼にステータスプレートを渡すように呼び掛ける。

 王様の言葉に違和感を感じながらも龍哉は、彼にステータスプレートを渡す。

 オドワルドは心を落ち着かせるために一旦、目を閉じて深呼吸をした後、ゆっくりと目を開けていく。そして、龍哉から渡されたステータスプレートを拝見すると……。

 

 

 

 

 

 

名前:鉄龍哉

種族:人間

年齢:17歳

性別:男

職業:骨細工師

 

SL:0

LV:1

HP:33/33

MP:10/10

攻撃力:7

防御力:3

回避力:5

攻撃成功値:12

魔法防御:1

魔法回避:2

 

腕力:30

頑丈:26

体力:27

敏捷:23

器用:26

命中:25

魔力:18

知力:23

精神:21

幸運:23

 

 

 

 

 

 

「は、ははは……、貴様もかよ……」

 

「「「「「「「王様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」」」」」」」

 

 龍哉のステータスを拝見したオドワルドは、顔を青ざめながら白眼をむいた状態で床に倒れこむ。

 王様が突然気絶した事に、大臣やライノ、そして周囲の臣下達は慌てふためくのであった。

 




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第13話 豹変

またまた、ギリギリ投稿です。

なんとか話が進んだ……。

では、最新話をどうぞ!


 勇綺達のステータスプレートを拝見した王様が突然、顔を真っ青にしながら白眼をむいた状態で気絶してしまい、ライノや大臣、そして周囲の臣下達は慌てふためく。

 そんな異様な光景を見ていた勇綺と秋は、ただ戸惑うばかりであった。

 

「王様……、大丈夫かしら……? 何で倒れたんだろう……?」

 

「さぁね? その辺に落ちている、変な物でも食べたんじゃねぇの?」

 

(王様が倒れてしまったのは……、やっぱり僕らの職業が原因か?)

 

 秋は、気絶している王様を心配していた。王様が倒れた原因について、龍哉に話し掛けるのだが……。

 龍哉は王様が気絶した事に余り興味が無いのか、話し掛けてきた秋に適当な返答をする。

 秋と龍哉が話し合っている最中、勇綺は創作物の知識によって、王様が倒れた原因について察しがついていた。

 

「お、王様! 大丈夫ですか!? 王様っ!!」

 

 大臣は慌てながらも、倒れてしまった王様を起こそうとする。必死に王様の身体を揺すったり、声を掛けたりしていると……。

 

「う……、だ、大臣よ……。こ、これを……」

 

「!? こ、これは!!?

 

「……」

 

 大臣の呼び掛けによってオドワルドは、何とか目を覚ましたようだ。しかしオドワルドの顔は、まだ青ざめていた。オドワルドは弱々しい声をだしながら、勇綺達のステータスプレートを大臣に渡す。

 大臣は、渡されたステータスプレートを拝見すると、王様と同じように険しい表情を浮かべる。

 勇綺達のステータスプレートを拝見している大臣の隣では、ライノも勇綺達のステータスプレートを拝見していた。

 だが、王様や大臣とは違いライノは、勇綺達のステータスプレートを拝見しても険しい表情を浮かべておらず、無表情のままプレートを拝見しているようである。

 

「あの〜〜……? 私達のプレートに何かあったのですか?」

 

「「「!!?」」」

 

 険しい表情でステータスプレートを拝見している王様達に、秋は恐る恐る話し掛ける。どうやら秋は、王様達が何故、苦虫を噛み潰したような顔でプレートを凝視しているのか、その理由が気になったようだ。

 話し掛けられた王様達は、ステータスプレートから目を離して秋達の方へと視線を移す。

 

「「……」」

 

「……」

 

「あ、あの……、ど、どうかしたのですか?」

 

「何で俺達を睨み付けてるんだ! てか、兵隊長は無表情でこっち見んな!」

 

(あ……、これは、嫌な予感がする……)

 

 勇綺達を凝視する王様と大臣の表情は、いかにも不機嫌そうな表情を浮かべていたのだ。

 不機嫌な表情を浮かべる王様と大臣とは対照的にライノは、勇綺達を無表情のまま凝視していた。人によっては、不機嫌な表情を浮かべる王様や大臣よりも、無表情で凝視しているライノの方が恐く感じてしまうかもしれない。

 不機嫌な表情をした王様と大臣、そして無表情のライノに凝視されて、秋は戸惑い、龍哉はご機嫌斜めとなっていた。

 王様達に凝視されている異様な光景の中、勇綺の頭の中では、警鐘が鳴り響いている。多くの創作物を読んできた経験からか、勇綺は、この状況が危険だと判断したようだ。

 

「まさか……、貴様等の中に戦闘職が一人も居ないとは……。なんと言うことだ! 貴様等を呼び寄せるのに、どれだけ苦労したとおもっているんだ! 戦力にも、肉壁にもならない期待外れの糞ガキ共め!! 恥を知れ!!!」

 

「全くだ! 我々の顔に泥を塗りおって! 恥を知れ! 恥を!! 戦闘職じゃない貴様等は、カスだ! ゴミだ!! この、役立たず共が!!!」

 

「はぁ!? ふざけんなっ!! てめぇら!!! 戦闘職じゃないだけで、何で俺達がここまで罵倒されなきゃいけねぇ〜〜んだよ!!!」

 

「な、なんなのよ……、一体……」

 

(はぁ……、やっぱりこうなったか……)

 

 オドワルドと大臣は、まるで人が変わったように勇綺達を理不尽に罵倒する。それほどまでに、勇綺達が戦闘職持ちではない事が、オドワルドと大臣にとって許せなかったようだ。

 何故ならば、オドワルドと大臣は、呼び寄せた救世主達が強力な戦闘職の力で、闇の王達を全て倒して世界を救ってくれると、大きな期待を寄せていたのである。だが、現実は非情だった。呼び寄せた救世主達には、戦闘職が一人もいなかったのである。期待していた救世主達が、世界を救える力を持っていないとわかれば、オドワルドと大臣が怒るのも無理はないだろう。

 しかし、龍哉からしたらオドワルドと大臣の事情なんて知ったことではない。理不尽にこちらを罵倒する王様と大臣に、龍哉は負けじと批判をする。

 理不尽に罵倒されて怒っている龍哉とは対照的に、秋は、優しかった王様と大臣が豹変して、こちらを罵倒してきた事に、戸惑いを隠せずにいた。

 秋が戸惑っている最中、勇綺は深くため息をつく。どうやら勇綺は、嫌な予感が的中してしまった事に落胆しているようである。

 

「え〜〜い! 黙れ! 黙れ! 期待外れの貴様等の顔など、もう見たくない!! さっさと、この城から出て行け!!!」

 

「ちょっと……、嘘でしょ……?」

 

「勝手に召喚しといて、城から出ていけとか、どんだけふざけてんだ!! ゴラァッ!!! てゆ―ーか! 無一文で追い出すとか、鬼畜か!! おめ―ーらはよ!!!」

 

「うるさい奴め……。そんなに金が欲しいのか? 卑しいゴミ共め……。ほら、ワシの金を少しだけくれてやる……。ありがたく思え!」

 

 龍哉からの批判に激怒したオドワルドは、勇綺達に城から出ていくように命令を下す。

 王様の理不尽な命令に、秋は悲しげな表情を浮かべた。

 悲しげな表情を浮かべている秋の隣では、無一文で追い出そうとする王様に、龍哉は批判をする。

 大臣は、王様に批判をする龍哉を黙らせる為に、ポケットからお金が入った袋を取り出す。大臣は、その袋から五百円硬貨と同じサイズの銅貨を三枚取り出して、それを龍哉に投げ渡した。

 

「ふんっ! 勇綺! 秋! さっさと、こんな不愉快な城から出て行くぞ! じゃーーな!! 糞共が!!!」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 龍哉!!」

 

「ま、待ってよ! 龍哉!!」

 

 大臣から五百円硬貨と同じサイズの銅貨を投げ渡された龍哉は、それを受け取ると、美少女メイドから渡されたマジックポーチの中へと収納した。更に、ステータスプレートとポーションも忘れずにマジックポーチの中に収納する。

 そして龍哉は、王様達を罵倒した後、急いで部屋から出ていく。

 秋と勇綺は、美少女メイドに渡されたアイテムを、マジックポーチの中に収納すると、部屋から出て行こうとする龍哉の後を急いで追いかけるのであった。

 




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第14話 城下町

変わらず、ギリギリ投稿です。

う~~ん、前書きって他に何を書けば良いんだろうか……(汗)

では、最新話をどうぞ!


 勇綺達が城から出ていった後、王様達が居る絢爛豪華な大広間は、静寂に包まれていた。

 そんな中、ライノが大臣に話し掛ける。

 

「大臣、彼等を追い出して本当に良かったのでしょうか? それに何故、【女神の宝石】の存在について彼等に、教えて差し上げなかったのでしょうか? 確かに彼等は非戦闘職ですが……、あの宝石を入手すれば、戦闘職ではない者も、多少は戦力になると思うのですが……」

 

「確かに【女神の宝石】を入手すれば、ゴミ共も多少は、戦力になるかもしれないだろう……。だが兵隊長よ……、奴等は所詮、戦力にならない非戦闘職だ。この世界の何処かに散らばっている【女神の宝石】を、非戦闘職の屑共が入手できると思うか? ふん! まず、無理だろう……。だから私は【女神の宝石】の存在を、将来性の無いウジ虫共に教えなかったのだよ……。こんな糞共に支援をしたところで、結果なんてまず出ないだろうし、時間や金の無駄になるだけだから、追い出した方が正解に決まっとる!」

 

 ライノの意見を一蹴した大臣は、この部屋から出ていった勇綺達を再び罵倒する。

 

「大臣! 兵隊長! あの無能共の話をするな! 私は、奴等の顔を思い出したくもないのだ!!」

 

「「も、申し訳ありません!!」」

 

 オドワルドは、勇綺達を追い出した事について、話し合いをしている大臣とライノを叱り飛ばす。大臣とライノの話し合いによってオドワルドは、自分達の期待を裏切った勇綺達の事を思い出してしまうのが、相当不快に感じてしまったようだ。

 叱られた大臣とライノは、慌てながらも深々と頭を下げて、オドワルドに謝罪をする。

 

「それよりも大臣よ! あの無能共に代わる、新たな救世主を早く探し出すのだ!!」

 

「しかし王様……、新たな救世主を探すにしても、今は、救世主召喚を行う事は不可能です。救世主召喚を再び行うには、約一年程待たなければなりません……」

 

 話を切り出したオドワルドは大臣に、勇綺達の代わりになる、新たな救世主を探すように命令を下す。

 王様の命令に大臣は、表情を曇らせる。何故ならば、救世主を探し出すための手段であった救世主召喚は、現在、使用できないのだ。大臣は、王様に救世主召喚が使用できない理由を説明するのだが……。

 

「冗談じゃない! 救世主召喚を再び行うのに、約一年も待っていられるか!! 良いか! 大臣よ! 救世主召喚が行えなくても、この世界を救ってくれる新たな救世主を、どんな手を使ってでも探し出すのだ!! もし、探せなかったら、貴様はクビだからな!!? わかったか!!?」

 

「!? そ、そんな!!? 待って下さい!!! いくらなんでも、むちゃくちゃですぞ!!? 王様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 大臣から、救世主召喚が使用できない理由を知らされたオドワルドは、苛立ちを覚える。怒りによって冷静さを失ったオドワルドは、大臣に理不尽な命令を下す。

 むちゃくちゃな命令を下した王様に、大臣は、涙を滝のように流しながら批判をする。

 

(果たして、非戦闘職の彼等を追い出して正解なのだろうか? どうも納得がいかないなぁ……。非戦闘職でも、戦い方によっては、戦闘職に負けない位の活躍が出来ると思うんだけどなぁ……。まぁ、後ろから指示だけしている、無能な王と大臣では、そこまで考えられるわけがないか……)

 

 王様と大臣がやり取りをしている最中、ライノは顎に手を当てながら、勇綺達が追い出された事に納得できずにいた。何故ならばライノは、非戦闘職でも戦い方によっては、戦闘職に匹敵する程の活躍が可能であると考えていたからだ。

 だが、王様と大臣は、短絡的な考えで勇綺達を追い出してしまう。ライノは、そんな王様と大臣を、胸中で扱き下ろしながら見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ〜〜! これが、異世界の町か!!」

 

「うお〜〜! 見ろよ! 勇綺! 建物がRPGの世界と同じだぜ!?」

 

「わ〜〜……、小さい頃に読んだ、絵本の世界に迷いこんでいるみたいだわ……」

 

 城から飛び出した勇綺達は現在、ランドロック王国の城下町にやって来ていた。石畳の道に、オレンジ色の屋根の、石造りの建物が続く城下町の町並みは、中世の古い町並みをイメージさせている。

 ファンタジー系の創作物が好きである勇綺と龍哉は、城下町の町並みに目を輝かせていた。

 勇綺と龍哉が目を輝かせている最中、秋は、小さい頃に読んだ絵本の世界を想像させる、幻想的な城下町の町並みに、うっとりしているようである。

 

「あ! 武器を持っている人がいる! 流石、異世界だね!」

 

「やっぱ異世界だから、武器を持っている人が結構多いな!」

 

「何だか、物騒ね……」

 

 数分間程、城下町の町並みを眺めていた勇綺達は、次に城下町を歩く通行人に視線を移す。城下町には、多くの人々が行き交っていた。行き交う人々の中には、剣や槍、弓、そして斧等、武器を装備して歩いている人が多いようである。

 勇綺と龍哉は、武器を装備して歩いている人達を、興味津々に見つめていた。

 武器を装備して歩いている人達を、興味津々に見つめている勇綺と龍哉とは対照的に秋は、武器を装備して歩いている人達に危機感を抱く。秋達が住んでいる世界では、目の前に武器を装備して歩いている人は、滅多にいない平和な世界なのだ。だから秋が、武器を装備して歩いている人達に危機感を抱くのも、仕方がないだろう。

 

「あ! そうだ! 勇綺! 龍哉! 私達、王様達から追い出されちゃったけど……。闇の王は、どうする? 退治する?」

 

「う〜〜ん……、そうだなぁ……。僕らは、救世主をクビになっているようなもんだしなぁ……。どうしようか……」

 

 王様達に追い出された事を思い出した秋は、闇の王の退治をするかどうか、勇綺と龍哉に相談をする。

 王様達から理不尽に追い出された秋は、この理不尽な世界を救う事に迷いが生じたようだ。

 相談された勇綺も、秋と同じく、この世界を救うべきか悩んでいた。

 すると……。

 

「闇の王の退治? はん! そんなの決まってるだろ! 俺は、闇の王をぶっ潰すぜ!!」

 

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」

 

 秋と勇綺が異世界を救う事に迷っていると、龍哉だけは、異世界を救うつもりのようである。

 勇綺と秋は、龍哉の言葉に、目を丸くしながら驚くのであった。

 




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第15話 イベント発生?

ま、間に合った……(汗)

では、最新話をどうぞ!


 勇綺と秋は、龍哉を見据えながら驚いていた。何故ならば、王様達から理不尽に追い出されていたにもかかわらず、龍哉は、この理不尽な世界を救おうとしていたからだ。龍哉の性格を考えると、この世界を救う事に、迷いが生じても可笑しくない筈なのだが……。

 

「え〜〜と……、龍哉? 僕達は、王様達から理不尽に追い出されたんだよ? どうして迷いもなく、この世界を守る為に戦おうと思ったの? もしかして、正義感に目覚めたとか?」

 

「あんたにしては、意外ね……」

 

 勇綺と秋は、龍哉がこの世界を救おうとしている事に、疑問を感じていた。二人は、その疑問を龍哉に問い掛ける。

 

「あん? 正義感? んなわけねぇ〜〜だろ! あいつらを見返すんだよ! だって悔しいじゃねぇか! あの糞共は、理不尽に召喚しておきながら、俺達を馬鹿にして追い出しやがった!! 俺は、泣き寝入りなんて嫌だね! 成り上がって、あの糞共をざまぁさせてぇんだよ!!」

 

「うわ……、何て邪悪な理由なんだ……。正義感に目覚めたとか言っていた自分が、馬鹿みたいじゃんか……。まぁ……、でも……、なんと言うか……。龍哉らしい理由で、納得もできちゃうんだけどね……」

 

「まぁ……、確かにね……」

 

 どうやら龍哉が、この世界を守ろうと思った理由は、王様達を見返す為であったようだ。王様達から理不尽に扱われた事に、龍哉は相当根に持っていたようである。

 勇綺は、邪な理由で世界を守ろうとする龍哉に、呆れかえっていた。だが同時に、勇綺は内心、負けず嫌いな性格である龍哉が、王様達を見返す為に世界を守ろうとする事に、納得もしていたのである。

 そして秋も勇綺と同じく、王様達を見返す為に世界を守ろうとする龍哉に、呆れかえると同時に、納得をするのであった。

 

「それよりも、勇綺! 秋! お前等は、悔しくないのか? 勝手に召喚して、勝手に失望して、理不尽に俺達を馬鹿にしやがった糞王達に、一泡吹かせたいと思わないのか? このまま泣き寝入りをしても良いのか? 良いわけねぇだろ? 糞王達に、俺達の力を見せつけてやろうぜ!!!」

 

「……そうだね。龍哉の言うとおりだ! 僕も、王様達を見返す為に戦うよ! 理不尽に馬鹿にされたまま、泣き寝入りするのは悔しいからね!」

 

「あたしも、一緒に戦うわ! ただ、あたしは王様達を見返したいって訳じゃないけど……。闇の王達に苦しめられている人達を見捨てたりしたら、あたし達を追い出した王様達と、同レベルになるのだけは嫌だからね!」

 

 龍哉は、世界を守る事に迷っている勇綺と秋に発破をかける。

 龍哉の叱咤激励によって、勇綺と秋は迷いを振り払う。そして勇綺と秋は新たな決意で、世界を守る為に戦う事を決めた。

 

「よしっ! 二人共、やる気になったようだな! あの糞共を絶対に見返してやろうぜ! それじゃあ早速、闇の王達をぶっ飛ばしに行くぞ!!」

 

「あっ! 待って! 龍哉! 冒険に出る前に、色々と準備をした方が良いと思うんだ! 魔物や闇の王を倒す為の武器を買ったりとか……、後、僕らの服装も早く何とかしないと……。今の僕らの服装は学校の制服だから、この異世界の中では、かなり目立つからね……」

 

「確かに……。城下町の人達の服装と比べると、あたし達の服装は、かなり目立つわよね……。怪しい連中とかに目を付けられて、トラブルに巻き込まれるのも嫌だし、さっさと異世界の服を買った方がいいわよね」

 

 王様達を見返す事に勇綺と秋が賛成すると、龍哉は早速、意気揚々と闇の王を倒す冒険に出ようとする。

 しかし勇綺は、冒険に出ようとする龍哉を呼び止めた。

 どうやら勇綺は、冒険に出る前に、武器や服装を整えたいようである。これから、魔物や闇の王と戦うことになるのだから、武器を整えるのは必須だろう。そして服装も武器と同じく、整えるのは必須である。

 何故ならば、今の勇綺達の服装は、学校の制服を着たままなのである。勇綺達は、学校の制服を着たまま異世界に召喚されてしまったのだ。この異世界で、学校の制服着ている人間は、間違いなく目立つだろう。もしも学校の制服を着たまま冒険に出たりしたら、余計なトラブルに巻き込まれる可能性が高くなるかもしれない。

 余計なトラブルを回避するためにも、勇綺は、なるべく早めに服装を整えたいのである。

 そして秋も、今の服装が目立っている事に気付いていたのか、勇綺の意見に賛同した。

 

「確かにそうだな……。今の俺達の服装だと、かなり目立つよなぁ……。よしっ! 分かった! じゃあ、先ずは服を買う為に服屋を探すぞ!」

 

「うん!」

 

「異世界の服屋は、どんな服があるのかしら? 楽しみだわ!」

 

 二人の意見を聞き入れた龍哉は、服屋を探そうと歩き出す。

 勇綺と秋は、歩き出した龍哉の後ろを、カルガモの子供のように付いて歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが服屋か……」

 

「優しい現地人に服屋の場所を教えてもらったおかげで、目的の店が早く見つかって良かったよ」

 

「じゃあさっそく、お店の中に入りましょう!」

 

 勇綺達は、服屋の入り口前に立っていた。どうやら目的の店に到着したようだ。目の前の服屋は、お洒落で綺麗な外観をしていて、とても幻想的であった。

この服屋に到着する前に勇綺達は、優しい現地人に店の場所を教えて貰ったおかげで、目的の服屋に早く到着することができたようである。

 そして、服屋の外観を見つめていた龍哉と勇綺は、秋に促されながら店の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、どうしましょう! どうしましょう! どうしましょう! どうしましょう! どうしましょう! クランは、クランは、クランは、クランは、クランは、一体何処に行ってしまったの!!?」

 

「て、店長! 落ち着いて下さい!」

 

「何だ? この状況は? クランクランクランクランクランって、訳がわかんねぇよ……」

 

「何かあったのかしら? 誰かを探してる?」

 

(う〜〜ん……。これは……、イベントか? イベントが発生したの……かな?)

 

 勇綺達が服屋の中に入ると、店の中には二人の女性が居た。

 一人目は、金色の髪を肩まで伸ばしたセミロングヘアーの女性で、顔を青ざめながらオロオロしているようである。

 二人目は、紫色の長い髪を三つ編みにした女性で、オロオロしている女性を落ち着かせようとしていた。

 このオロオロしている女性は、どうやら服屋の店長のようだ。

 龍哉と秋は、二人の女性のやり取りを、戸惑いながら見据えている。

 戸惑う龍哉と秋とは対照的に、勇綺は、二人の女性のやり取りを冷静に見据えるのであった。

 




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第16話 クランを探せ!

ギリギリ……(汗)

では、最新話をどうぞ!


 オロオロしている服屋の女性店長と店長を落ち着かせようとしている三つ編みの女性のやり取りを、勇綺達は見据えていた。

 すると……。

 

「ねぇ、勇綺? 龍哉? 私達で何とか、あの人達を助けてあげられないかしら?」

 

「え? う、う〜〜ん、そうだなぁ……。この状況を見る限り、とても服を買えるような雰囲気じゃないみたいだし……。困っている人を見捨てるのも、何だか心苦しいからなぁ……。……よし! わかった! あの人達を助けようか!」

 

「勇綺も秋も、人がよすぎるだろ……全く……。はぁ……、仕方ねぇから俺も、秋の提案に賛同するよ……。まぁ、ここで困っている奴を見捨てたりしたら、糞王共と同レベルになっちまうのは嫌だしな……」

 

 秋は、自分達で困っている女性店長達を何とか助ける事ができないか、勇綺と龍哉に提案をする。どうやら秋は、女性店長達を助ける気満々のようだ。

 提案された勇綺も、秋と同じ考えであり、困っている女性店長達を助けるつもりのようである。

 龍哉は、見ず知らずの女性店長達を助けようとする、勇綺と秋の人のよさに呆れていた。

 呆れながら溜め息をつく龍哉であったが、結局は秋の提案に賛同するようである。何故ならば龍哉も勇綺と秋と同じくお人好しであり、困っている女性店長達を見捨てる事ができなかったようだ。

 

「勇綺、龍哉、ありがとう! じゃあ早速、あの人達から事情を聞きに行くわよ!」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

 秋は、提案に賛同してくれた勇綺と龍哉に感謝をすると、早速、女性店長達に近付く。女性店長達が何故困っているのか、その理由を聞く為だ。

 勇綺と龍哉は、女性店長達から事情を聞きに近付こうとする秋の後ろを、ついて行くのであった。

 

「あの〜〜、何かあったのですか?」

 

「!? え? あ、あなた達は……、だ、誰?」

 

「!?」

 

 秋は、困っている女性店長達に、恐る恐る話しかける。

 突然、声をかけられた女性店長と三つ編みの女性は、驚いた表情をしながら、秋達の方へと視線を移す。

 

「私は、紫堂秋といいます」

 

「僕は、成神勇綺です」

 

「俺は、鉄龍哉だ」

 

 秋達は、こちらを見据える女性店長達に自己紹介をすると……。

 

「……私は、《ティエラの服屋》の店長、ラズ・ティエラと言います」

 

「私は、この服屋で売り子をしている、チョコ・グラウンドです!」

 

 秋達が自己紹介を終えると、次は、女性店長達が自己紹介を始めた。金色の髪を肩まで伸ばしたセミロングヘアーの女性の名は、ラズ・ティエラ。この店の店長である。次に、紫色の髪を三つ編みにした女性の名は、チョコ・グラウンド。ティエラの服屋で売り子をしているそうだ。

 

「あの……、私達、ラズさん達の話を聞いてしまったんです。ラズさんは何故、困っているのですか? 差し出がましいとは思いますが、良かったら私達に困っている理由を、話してもらえないでしょうか? 私達、ラズさんの力になりたいんです!」

 

「! 助けてくださるのですか……? あ、ありがとうございます! 実は……、娘のクランが店に居ないんです! クランはいつも、店の手伝いで、チョコと一緒に売り子をしていました……。でも、私とチョコが新しい服の製作で数分間、目を離していたら、クランが店から居なくなっていたんです……」

 

 秋は、ラズから困っている理由を聞き出す。

 ラズが困っていた理由は、店の売り子をしていた娘のクランが、店から居なくなってしまったからだ。ラズとチョコが新しい服の製作をしている最中に、クランは、店から居なくなってしまったようである。

 

「ラズさん! チョコさん! クランさんが行きそうな場所に、何か心当たりがありませんか?」

 

「クランが行きそうな場所……? ………………すみません。全く心当たりがないです……」

 

「クランちゃんが行きそうな場所……。………………あっ!!!」

 

 勇綺は、クランを探す為の手掛かりを、ラズとチョコから聞き出そうとした。

 勇綺からの質問にラズは、クランが行きそうな場所に心当たりがあるか必死に考える。しかし、いくら考えてもクランが行きそうな場所に、心当たりがなかった。

 すると、ラズの隣で思案をしていたチョコが何かを思い出したのか、突然声を上げる。

 

「もしかしたらクランちゃんは、ランドロックの森の中に入ったのかも!」

 

「ランドロックの森? 何でその森の中に、クランが居ると思えるんだ?」

 

 クランが行きそうな場所にチョコは、心当たりがあったようだ。チョコは、クランが行きそうな場所を勇綺達に伝える。

 クランがランドロックの森の中に居る情報に、疑問を持った龍哉は、その理由をチョコに尋ねた。

 

「実は昨日、仕事の休憩中にクランちゃんが、ランドロックの森に生息している魔物、ホワイトラビットと友達になりたいと、魔物図鑑のホワイトラビットの絵を見ながら呟いていたんです。だから、クランちゃんがランドロックの森の中に、入ろうとする可能性が十分にあると思うんです!」

 

「……なるほど」

 

 チョコは、クランがランドロックの森の中に入ったと思える、根拠を語りだす。

 龍哉は、チョコが語りだした根拠に、納得をするのであった。

 

「ホワイトラビットって、どんな魔物なんですか?」

 

「ホワイトラビットですか? ホワイトラビットは、ランドロックの森に生息している、ウサギの魔物なんですが……。出会うのが難しいだけじゃなく、すぐに逃げちゃったりする、倒すのが難しいレアな魔物なんですよ。もしも倒せたら、珍しいアイテムなどが入手できるだけじゃなく、はやくレベルアップもできるらしいですよ」

 

 勇綺は、ホワイトラビットが気になったのか、チョコにその魔物について質問をする。

 質問されたチョコは、勇綺達に、ホワイトラビットについての話をした。

 

「チョコさん。ランドロックの森は、どの辺りにあるのですか?」

 

「ランドロックの森ですか? ランドロック城下町を出てから、まっすぐに進むと、ランドロックの森にたどり着く事ができます」

 

 勇綺に続いて秋も、チョコに質問をする。ランドロックの森の場所について、教えてもらうためだ。

 秋からの質問にチョコは、ランドロックの森の場所を教える。

 

「よしっ! 勇綺! 秋! ランドロックの森の場所が分かった! さっさと、クランを探しに行くぞ!!」

 

「待って! 龍哉! 僕達は、まだ武器を持っていない。そんな状態で、魔物が住んでいるランドロックの森の中に入るのは、危険だと思う。だから森に入る前に、先ずは身を守るための武器を買いに行こうよ!」

 

 ランドロックの森の場所が分かった龍哉は、クランを探そうと張り切りながら、店から出ようとした。

 しかし勇綺は、店から出ようとする龍哉を呼び止める。何故ならば勇綺達は、まだ、武器を持っていない。これから入る森の中には、魔物が住んでいるのだ。だから勇綺は、龍哉に武器を買うように提案をする。

 

「そうだな! じゃあ、先ずは武器屋に行くか!」

 

「「うん!」」

 

 勇綺の提案に賛同した龍哉は、意気揚々と店から出ていく。

 勇綺と秋は、店から出ていく龍哉の後を、追いかけるのであった。

 




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第17話 異世界の貨幣

あ~~ギリギリ!

では、最新話をどうぞ!


 服屋から出ていった勇綺達は現在、武器屋に立ち寄っていた。これから向かうランドロックの森には魔物が住んでおり、それらから身を守るための武器を買うため、武器屋に立ち寄ったのである。

 

「今……、俺達が持っている所持金は、銅貨が三枚……。なぁ、勇綺?」

 

「?」

 

 龍哉は銅貨三枚を手のひらにのせながら、店内の棚に並べられている武器を眺めていた勇綺に話しかける。

 武器を眺めていた勇綺は、話しかけてきた龍哉に目を移す。

 

「この世界の銅貨一枚の価値は、どれくらいになるんだ?」

 

「う〜〜ん……。創作物とかだと作品によっては、銅貨一枚の価値が色々と違うからなぁ……。やっぱ、この世界の貨幣の事は、この世界の人に教えてもらった方が良いんじゃないかな?」

 

 龍哉は、この世界の銅貨一枚の価値について気になったのか、勇綺に問い掛ける。

 龍哉からの質問に、多くの創作物を読んできた勇綺は、銅貨一枚の価値について答える事ができなかった。何故ならば勇綺が読んできた創作物では、銅貨一枚の価値が作品によって色々と違っていたのだ。だから勇綺は、龍哉の質問に答える事ができないのである。それゆえ勇綺は、龍哉に、異世界の貨幣の価値を、現地人に教えてもらう事を提案するのであった。

 

「そうだな……、その方が良いかもしれねぇな。よしっ! じゃあ、カウンターにいる、あのおっさんに金の価値について聞いてくるか!」

 

 勇綺の提案に龍哉は賛同するとすぐさま、カウンターで本を読んでいる四十代前半の、坊主頭の男性の方へと歩み寄る。

 

「秋? 僕達も行くよ?」

 

「へ? あ、う、うん!」

 

 勇綺は、棚に並べられた武器を眺めている秋を呼び掛けると、すぐに龍哉の後をついて行く。

 呼び掛けられた秋は慌てながら、坊主頭の男性に歩み寄る、龍哉と勇綺の後をついて行くのであった。

 

「おい! おっさん! ちょっと聞きたい事があるんだけど良いか?」

 

「あん? 何だ? てめぇらは?」

 

((二人とも態度が悪い……))

 

 龍哉は、カウンターで本を読んでいる坊主頭の男性に話しかける。

 話しかけられた坊主頭の男性は、静かに本を閉じると、龍哉達に目を移す。だが、坊主頭の男性の目は、まるで龍哉達を睨み付けているようである。

 勇綺と秋は、龍哉と坊主頭の男性の態度の悪さに困惑していた。

 

「この、銅貨一枚の価値を教えてくれ! 俺達は、この世界の金の価値が分からねぇんだよ!」

 

「はぁ? な、何? 銅貨一枚の価値が分からねぇだと? 一体、何の冗談だぁ?」

 

 龍哉は手に持った銅貨一枚を見せつけながら、坊主頭の男性に、異世界の貨幣の価値について教えてもらおうと頼み込む。

 坊主頭の男性は、龍哉の頼みに困惑していた。いきなり見ず知らずの少年に、金の価値について教えて欲しいと頼み込まれたら、困惑するのも無理は無いだろう。

 

「いや、冗談なんて言ってねぇよ! 俺達は、異世界に転移したばかりだから、この世界の金の価値が本当に分からないんだよ……」

 

 龍哉は坊主頭の男性に、異世界の貨幣の価値が分からなかった事情を話す。

 すると……。

 

「異世界に転移……? まさかお前らが、ランドロック王様達に召喚された救世主か!!?」

 

「え!? あ、ああ……、そうだけど……。でも、俺達は救世主クビになってんだよな……」

 

 突然、坊主頭の男性が期待に満ちた表情で、龍哉達に問い掛ける。

 坊主頭の男性の問い掛けに、龍哉は、自分達が既に救世主をクビになっている事を話すと……。

 

「はぁ!? 救世主をクビになっただと!!? お前ら、一体何をやらかしたんだ!!?」

 

「何もやってね〜〜よ!! 王様達が、戦闘職じゃない奴は顔も見たくないから出ていけとか言って、俺達を勝手に追い出したんだよ!!」

 

「龍哉の言っている事は、本当です! 僕達は、戦闘職じゃない理由だけで、理不尽に救世主をクビになったんです!」

 

「何で戦闘職じゃなかったら、救世主をクビにならなければいけないのよ!? 本当に訳がわからないわ!!」

 

 龍哉から、救世主をクビになった事を聞いた坊主頭の男性は、目を大きく見開く。そして龍哉達に、救世主をクビになった理由を問い詰める。

 龍哉と勇綺と秋は、坊主頭の男性に、救世主をクビになった理由を話す。

 すると……。

 

「嘘だろ……? お前ら、救世主のクセに戦闘職じゃない……だと? ふざけんな! 救世主をクビになって当然じゃね―ーか!! 役立たずの糞ガキ共が!!!」 

 

「てめーーも、あの糞共と一緒かよ! ふざけんな! この、糞ハゲ!!」

 

 クビになった救世主が戦闘職じゃないと知った坊主頭の男性は、龍哉達を理不尽に罵倒する。

 こちらを理不尽に罵倒する坊主頭の男性が、オドワルド達と同じである事に、龍哉は怒りを露にした。怒った龍哉は、自分達を罵倒する坊主頭の男性を、口汚く罵る。

 

「龍哉! 落ち着いて! 今は、この人と言い争っている場合じゃないよ!!」

 

「怒りたい気持ちは分かるけど、今は、この人から異世界のお金の価値について、教えてもらうのでしょ!!」

 

「くっ……! あ〜〜、もうっ! 分かった! 分かりましたよ! 畜生!!」

 

 勇綺と秋は、怒りを露にした龍哉を落ち着かせようと説得をする。

 勇綺と秋の説得によって龍哉は、しぶしぶながらも納得したようだ。

 

「おい! おっさん! さっさと、異世界の金の価値について、お・し・え・て・く・だ・さ・い!!」

 

「ちっ……。何て、頼み方だ……。全く……。まぁ、良い……。例え、救世主をクビになった役立たずな連中でも、客は、客だ。仕方ねぇから、異世界の金について教えてやる。ありがたく思え!」

 

 龍哉は、再び坊主頭の男性に異世界の貨幣について、教えてもらおうと頼み込む。だがしかし、龍哉の頼み込む態度は、かなり悪かった。やはり勇綺と秋の説得があっても、龍哉の怒りを完全に払拭は、できなかったようだ。おそらく、先程のやり取りで坊主頭の男性から罵倒された事に、龍哉は、かなり根に持っているのだろう。

 坊主頭の男性は、龍哉の態度の悪い頼み方に呆れていた。だが、坊主頭の男性にも多少の良心があったのか、龍哉達に異世界の貨幣について、しぶしぶながらも教えくれるようだ。

 

「良いか? よく聞けよ? ここに八枚の硬貨がある」

 

「「「……」」」

 

 坊主頭の男性は、机の上に八枚の硬貨を並べる。並べられた硬貨の大きさは、百円硬貨と同じサイズの硬貨と、五百円硬貨と同じサイズの硬貨が四枚ずつあった。それぞれの硬貨には、薄茶色、黒色、灰色、銅色の四色があって、百円硬貨サイズの硬貨と五百円硬貨サイズの硬貨に、それらが一色ずつある。

 龍哉達は、机の上に並べられていた硬貨を無言のまま見据えていた。

 




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第18話 貨幣の説明

間に合った……。

それでは!
最新話をどうぞ!


 勇綺達が机の上に並べられていた八枚の硬貨を見据えていると、坊主頭の男性は、その中から二枚の硬貨を手に取る。坊主頭の男性が手に取った二枚の硬貨は、百円硬貨と同じサイズの薄茶色の硬貨と五百円硬貨と同じサイズの薄茶色の硬貨だった。

 

「先ずは、この二枚の【陶貨(とうか)】について説明をする。小さい陶貨は【小陶貨】で、この大きい陶貨が【大陶貨】だ。小陶貨一枚の価値は一ゴルドで、大陶貨一枚の価値は五ゴルドになる」

 

 坊主頭の男性は、手に取った二枚の陶貨について説明して行く。百円硬貨と同じサイズの陶貨は、小陶貨と呼ばれていて、この硬貨一枚の価値は日本の一円硬貨と同じ価値のようである。次に、五百円硬貨と同じサイズの陶貨は、大陶貨と呼ばれていて、小陶貨の五倍の価値があるようだ。

 

「次は、【鉄貨(てっか)】と【錫貨(すずか)】についての説明だ。サイズが小さい鉄貨は【小鉄貨】。小鉄貨よりも大きい鉄貨は、【大鉄貨】と呼ばれている。小鉄貨一枚の価値は十ゴルド。大鉄貨一枚の価値は、小鉄貨の五倍の五十ゴルドだ。この大鉄貨よりも価値がある、小さな錫貨は【小錫貨】と呼ばれていて、一枚の価値は百ゴルドになる。更に、この小錫貨よりも価値がある、大きな錫貨は【大錫貨】と言って、価値は小錫貨の五倍の五百ゴルドだ」

 

 坊主頭の男性は次に、黒色の硬貨二枚と灰色の硬貨二枚を手に取る。坊主頭の男性の説明によると、手に取った二枚の黒い硬貨は、小鉄貨と大鉄貨と呼ばれているようだ。

 小鉄貨のサイズは、先程説明した小陶貨と同じ、日本の百円硬貨と同等のサイズであった。次に大鉄貨も先程説明した大陶貨と同じ、日本の五百円硬貨と同じ大きさのようである。

 小鉄貨の一枚の価値は、日本の十円硬貨と同じ価値であり、大鉄貨は一枚の価値が、小鉄貨の五倍の価値を持っていた。

 鉄貨の説明を終えた坊主頭の男性は、続いて二枚の灰色の硬貨についての説明を始める。二枚の灰色の硬貨は、それぞれ小錫貨と大錫貨と呼ばれているようだ。

 二枚の錫貨の大きさはそれぞれ、小錫貨が小鉄貨と同等のサイズで、大錫貨は大鉄貨と同じサイズのようである。

 そして二枚の錫貨の価値は、日本の硬貨に当てはめると、小錫貨一枚の価値が日本の百円硬貨と同じ価値で、大錫貨一枚の価値は日本の五百円硬貨と同等の価値を持っていた。

 

「続いて、【銅貨】についての説明だ。小さい銅貨は【小銅貨】で、この大きい銅貨は【大銅貨】と呼ばれている。この二枚の銅貨の価値は、小銅貨が一枚千ゴルド。そして、大銅貨が一枚五千ゴルドの価値を持っている」

 

 鉄貨と錫貨の説明を終えた坊主頭の男性は、二枚の銅色の硬貨についての説明をしていく。二枚の銅色の硬貨はそれぞれ、小銅貨と大銅貨と呼ばれていた。

 小銅貨の大きさは他の小さい硬貨と同じく、日本の百円硬貨と同等のサイズであり、大銅貨も他の大きい硬貨と同じで、日本の五百円硬貨と同じ大きさだ。

 この二枚の銅貨の価値は、先程説明した錫貨の十倍の価値を持っているようで、小銅貨が日本の千円紙幣と同等の価値があり、大銅貨は日本の五千円紙幣と同じ価値を持っていた。

 

「最後は、この銅貨よりも価値がある【銀貨】と【金貨】についての説明をしたいのだが……、生憎、今の俺の手持ちには銀貨と金貨は持っていない。だから、お前らに実物を見せずに説明をさせてもらうが……、良いよな?」

 

「ああ、別に構わねぇ」

 

「私も、問題ないです」

 

「僕も、説明だけでも構いません」

 

 坊主頭の男性は銀貨と金貨の実物を、手持ちに持っていないらしく、それらを見せずに硬貨の説明を龍哉達にするようである。

 龍哉、秋、そして勇綺の三人は、坊主頭の男性が銀貨と金貨の実物を見せずに説明をする事に、特に不満もなく承諾をするのであった。

 

「良し! じゃあ、【銀貨】の説明からしようか。銀貨は、俺達みたいな庶民には手に入りにくい硬貨でな、主に貴族等が持っている事が多い。それで、銀貨の価値についてだが……。【小銀貨】一枚の価値は一万ゴルドで、【大銀貨】一枚の価値は五万ゴルドだ」

 

 坊主頭の男性の話によると、銀貨は庶民には手に入りにくい硬貨で、主に貴族等が持っている事が多いようである。

 この銀貨の価値については、坊主頭の男性の説明によると、小銀貨一枚の価値は、日本紙幣の一万円紙幣と同等の価値を持っていた。次に、大銀貨一枚の価値は、小銀貨の五倍の価値を持っているようである。

 

「最後は、【金貨】についての説明だ。金貨は、硬貨の中でも一番価値がある硬貨で、主に王族等が持っている事が多いんだ。それで金貨の価値だが……。【小金貨】一枚の価値が十万ゴルド。そして、【大金貨】一枚の価値が五十万ゴルドって所だな。……どうだ? 分かったか?」

 

「おう! 分かった! 分かった!」

 

「はい!」

 

「大丈夫です! 全部覚えました!」

 

 銀貨の説明を終えた坊主頭の男性は、次に金貨の説明を始める。金貨と呼ばれる硬貨は、硬貨の中でも一番の価値を持っており、主に王族等が所持している事が多いようだ。この金貨の価値は、小金貨一枚で十万ゴルド。そして、大金貨一枚が小金貨の五倍の、五十万ゴルドの価値があるようだ。

 一通り硬貨の説明を終えた坊主頭の男性は、自分の説明を理解しているかを確認する為、龍哉達に質問をする。

 坊主頭の男性からの問い掛けに、龍哉、秋、勇綺の三人は、元気よく返事をした。どうやら坊主頭の男性の説明を、しっかりと理解できていたようである。

 

「そうか……、俺の説明が理解できたのならば、もうここに用は無いな。さぁ、店から早く出ていってくれ! この無能な救世主共が!!」

 

 確認を終えた坊主頭の男性は悪態をつきながら、龍哉達を店から追い出そうとする。

 

「はいはい、分かってますよ! この糞ハゲ!! 武器を買ったらこんな店、すぐに出ていってやるよ!! 勇綺! 秋! さっさと武器を買うぞ!!!」

 

「う、うん!」

 

「硬貨の説明ありがとうございます! あっ! 二人とも待ちなさい!」

 

 龍哉は、こちらに悪態をつく坊主頭の男性を罵倒した後、買いたい武器を探すために、店の中を歩き出した。

 勇綺は、歩き出した龍哉の後を、戸惑いながらもついて行く。

 そして秋は、坊主頭の男性に感謝の言葉を伝えると、龍哉と勇綺の後をついて行くのであった。

 




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第19話 お買い物タイム

はい、間に合いました。

でも、あまり話は進んで無いかも……(汗)

それでは、最新話をどうぞ。


 坊主頭の男性から硬貨についての説明を聞き終えた勇綺達は現在、店内の棚に並べられている武器を眺めていた。勇綺達はここで当初の目的である、身を守る為の武器を探しているのだ。

 店内の陳列棚の配置は、一列目と四列目の棚は、壁に沿うように置かれている。次に、中央部の二列目と三列目の陳列棚の配置は、2個ずつの棚が背中合わせになって置かれており、真ん中には通り道が空けられていて、二人の人が横に並んでも通れる位の幅になっていた。

 

(このステータスプレートの情報によると、僕が扱える武器は……、鎌と鍬、そしてピッチフォークか……。はぁ……。園芸師だから仕方ないんだろうけど……。鎌とか鍬で戦うって、何か地味でダサ過ぎる……。剣や槍みたいな、カッコいい武器を装備したかったなぁ……)

 

 勇綺は、ステータスプレートに表示されている情報を見ながら、真ん中が通り道になっていて、両面の棚に商品がおかれている二列目と三列目の陳列棚の中から、自分が扱える武器を探していると、突然ため息をついた。

 勇綺が突然ため息をついたのは、ステータスプレートに表示されている情報に原因があるようだ。プレートの情報によると、職業が園芸師である勇綺が扱える武器は、鎌と鍬、そしてピッチフォークの三種類である。この三種類の武器を装備して戦う自分の姿を想像した勇綺は、余りにも地味でダサ過ぎた事に呆れたから、ため息をついてしまったのだ。

 ため息をついた勇綺は、剣や槍みたいなカッコいい武器を装備したかったと、胸の内で愚痴をこぼしていると……。

 

(! 園芸師が扱える武器だ……)

 

 愚痴をこぼしながら武器を探していた勇綺は、陳列棚の中から、園芸師が扱える武器を見つける。

 

(さて、鎌と鍬、そしてピッチフォーク……。どの武器を買うか……。う〜〜ん……)

 

 勇綺は、目の前の棚に並べられている鎌と鍬、そしてピッチフォークを見据える。この三種類の武器の中から、どれを買うべきか勇綺は顎に手を当てながら考えていると……。

 

「どうだ? 勇綺? 武器は見つかった?」

 

「! 龍哉……」

 

 約一メートル程、離れた位置で武器を探していた龍哉が、顎に手を当てながら考えている勇綺に声を掛ける。龍哉も勇綺と同じく、真ん中が通り道になっている二列目と三列目の陳列棚の中から、武器を探していたのだ。

 声を掛けられた勇綺は、龍哉の方へと振り向く。

 

「うん、僕が扱える武器は見つかったよ。鎌と鍬とピッチフォークの三種類の武器が扱えるみたい。この三種類の武器の中から、どれを買うか迷っているんだ……」

 

「へぇ〜〜、勇綺が扱える武器は、鎌と鍬とピッチフォークなのか! ワイルドで、かなり強そうだな!」

 

 勇綺は龍哉に、目の前の棚の中に並べられている鎌と鍬、そしてピッチフォークの三種類の武器の中から、どれを買うか迷っている事を伝える。

 話を聞いた龍哉は、勇綺が扱える武器に感心していた。

 

「そ、そうかなぁ? そんなに強そう……かな? 僕の武器は?」

 

 龍哉の言葉に、勇綺は照れくさそうに笑みを浮かべていた。自分が扱える武器を誉めて貰えたのが、余程嬉しかったのだろう。

 

「それに比べて、骨細工師の俺が扱える武器は、プレートの情報だと、彫刻刀とスリグショットだぜ? 酷いと思わないか?」

 

「え、え〜〜と……」

 

 勇綺が照れくさそうにしている最中、龍哉は憂鬱な表情をしながら、店内の陳列棚の中に並べられていた二つの武器を両手に持つ。龍哉が手に持った武器は、彫刻刀と、石や木の実等をゴムの力で飛ばす武器、スリングショットの二種類である。ステータスプレートの情報によると、職業が骨細工師の龍哉は、この二種類の武器を扱えるようだ。龍哉は、両手に持った二つの武器を、勇綺に見せながら近づいて行く。

 勇綺は、龍哉に見せられた二つの武器に、戸惑いを隠せずにいた。

 

「あ! た、確か、スリングショットは狩猟に使われていた武器らしいから、意外と威力が有るかもしれないよ? それと、彫刻刀も案外、凄い力が秘められているかも? ここはファンタジーの世界だし、その可能性があるんじゃないかな?」

 

「! 確かに、その可能性があるかもしれねぇな……。ゲームとかでも、一見ショボそうな武器やアイテムには、凄い力があったりするしなぁ……。よしっ! じゃあ、彫刻刀とスリングショットを買ってみるか!」

 

 憂鬱な表情をしている龍哉を、勇綺は何とか元気付けようと、彼が持っている頼り無さそうな二つの武器を必死に誉めようとする。

 勇綺の言葉を信じたのか、龍哉は頼り無さそうな二つの武器を買う事にしたようだ。

 

「二人共……、どう? 武器は見つかった?」

 

「「秋!」」

 

 勇綺と龍哉がやり取りをしていると、秋が二人に声を掛ける。秋は、壁に沿って配置されている一列目の陳列棚で武器を探していたのだが、何故か勇綺と龍哉がいる場所まで移動していたのだ。

 勇綺は、声を掛けた秋がいる後ろの方へと振り向く。

 勇綺の正面にいた龍哉も、秋がいる方へと目を移す。

 

「ああ、俺は武器が見つかったぜ! この、二つの武器を買う事にしたぜ!」

 

「僕も……、見つかったよ。地味な武器だけど……、鎌と鍬とピッチフォークを買ってみようかな……と思う」

 

 龍哉は、両手に持っていた彫刻刀とスリングショットを、ドヤ顔で秋に見せる。この両手に持っている二つの武器を、龍哉は買うつもりのようだ。

 龍哉に続いて勇綺も、武器が見つかったようである。勇綺が買おうとしている武器は、地味でダサいと思っていた、鎌と鍬とピッチフォークの三種類だ。勇綺は、この三種類の武器を購入しようとしている事を秋に伝える。

 

「秋の方は、どうだ? 確か……、秋の職業はバードだったよな? バードのお前が扱える武器は見つかったのか?」

 

「まぁ、ステータスプレートの情報のおかげで、バードのあたしが扱える武器を見つける事はできたけど……。でも……、リュートとナイフのどれを買えばいいのか迷ってるのよ! 勇綺! 龍哉! どれが良いと思う?」

 

 龍哉は秋に、バードの職業が扱える武器を見つけられたのかを問い掛ける。

 龍哉の問い掛けに秋は、ステータスプレートの情報のおかげで、バードが扱える武器を見つけることができたようだ。

 だが秋は、バードが扱える武器である、弦楽器のリュートとナイフのどちらを買えば良いのか迷っていた。一人で決められない秋は、勇綺と龍哉に、リュートとナイフのどちらの武器を買うべきか、相談をする。

 おそらく秋は、二つの武器の中から、どちらを買うべきか、一人で決められなかったから、勇綺と龍哉に相談をする為に、二人がいる陳列棚の所へ移動したのだろう。

 

「迷っているんだったら、両方とも買えば良いんじゃないかな? もしも、片方の武器が壊れたら、もう片方の武器で戦う事ができるし。それに、武器が多いと色々な状況に対応できるからね」

 

「俺も勇綺と同じだ。迷ってるんなら、2つとも買えば良いんじゃね? 金なら糞大臣から多めに貰ってるから、金の事なら心配すんな!」

 

「勇綺と龍哉がそう言うんだったら、両方共買ってみるわ!」

 

 相談された勇綺と龍哉は秋に、二つの武器を両方共買う事を勧める。

 勇綺と龍哉の意見に秋は、リュートとナイフを両方共買う事にするのであった。

 




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第20話 戦闘開始!

今年も何とか間に合いました!

そして、ようやくモンスターが登場します。

それでは、最新話をどうぞ!


 陳列棚から、自分達の職業に適している武器を見つけた勇綺達は現在、カウンター席にいる坊主頭の男性から、商品の会計をしてもらっていた。

 

「鉄の鎌は百十ゴルドで、鉄の鍬は百六十ゴルド。そして、ピッチフォークが百三十ゴルド。次に、彫刻刀は七十ゴルドで、スリングショットが六十ゴルド。最後に、リュートは三百ゴルドで、果物ナイフが八十ゴルド……。合わせて、九百ゴルドだ! これだけの数の商品を買うからには、ちゃんと金は持っているんだよなぁ? 言っておくがよぉ、代金を踏み倒して、うちの商品を持ち出そうなんて考えはするなよ? そんなことをしたらブチ殺すからな? さぁて……、救世主をクビになった糞ガキ共に、金が払えるかな?」

 

「はんっ! 馬鹿にしていられるのも今のうちだぜ!? く・そ・ハ・ゲ!!」

 

 商品の会計を終えた坊主頭の男性は、勇綺達が代金を踏み倒して商品を持ち出したりしないように、睨み付けながら釘をさした。どうやら坊主頭の男性は、救世主をクビになった勇綺達が、商品の代金を支払えるわけがないと思っているようだ。

 

 坊主頭の男性の言葉に龍哉は、不敵な笑みを浮かべながらも、マジックポーチの中から大銅貨一枚を取り出して、それをカウンター席に強く叩き付ける。

 

「なっ!? それは……、大銅貨!!? チッ! 救世主をクビになった役立たずな糞ガキ共の癖に、この世界の金を持っていたのか!?」

 

「どうだ! 糞ハゲ! 参ったか!! 俺達を舐めるなよ!? 悔しいか? 悔しいだろ? お? お? ふははははははは!!!!!!」

 

 坊主頭の男性は、龍哉がカウンター席に叩き付けた大銅貨に、目を大きく見開く。龍哉達が、カウンター席に並べられている商品を、支払える程の代金を持っていた事に、坊主頭の男性は驚いたようだ。

 龍哉は、目を大きく見開きながら驚いている坊主頭の男性を、調子にのってやたらと煽りまくる。こちらを馬鹿にしていた坊主頭の男性に、一泡吹かせた事が相当嬉しかったのだろう。

 

「何、調子にのって煽ってんのよ! この、お馬鹿!!」

 

「ぶへあぁっ!!?」

 

「ははは……」

 

 調子にのって坊主頭の男性を煽りまくっている龍哉に、秋が怒りだす。そして龍の頭に、おもいっきりチョップを叩き込む。

 秋に、頭を叩かれた龍哉は珍妙な断末魔をあげる。

 龍哉と秋のやり取りに、勇綺はただ苦笑いを浮かべていた。

 

「糞っ! 釣りの百ゴルドだ! さぁ、ここにはもう用がないはずだ! さっさと出ていってくれ! そして、二度とこの店に来るな!! 良いな!!?」

 

「いてて……。ふん! もう用が済んだし、こんな店二度とこねぇ〜〜よっ! じゃあな! 糞ハゲ!! 行くぞ!!」

 

「う、うん!」

 

「はぁ……」

 

 やたらと煽られた坊主頭の男性は、悔しそうな表情をしながら龍哉に、釣り銭の小錫貨を渡す。

 そして龍哉達に、店から出ていくように促した。

 秋に叩かれた箇所を、擦りながら釣り銭を受け取った龍哉は、こちらを追い出そうとする坊主頭の男性を罵倒した後、急いで店から出て行く。

 店から出て行こうとする龍哉の後を、勇綺は戸惑いながらも追いかける。

 勇綺に続くように秋も、店から出て行く龍哉に呆れながらも、二人の後を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに広い平原だと、モンスターとか出てきそうだよなぁ……。そうだ! ファンタジーと言えば、やっぱモンスターとのバトルだよなっ! 俺、ファンタジーとかに登場するモンスターと、戦って見たかったんだよなぁ……。どんな強ぇモンスターが出てくるか、俺は、わくわくするぜ! オラオラっ! モンスター共! 何処からでもかかってこい!! 俺は、逃げも隠れもしねぇぜ!!」

 

「龍哉、今はモンスターと戦っている場合じゃ……」

 

「勇綺の言うとおりよ! 何言ってんのよ、この馬鹿龍哉! 今は、そんな事をしている場合じゃないでしょ? はやく、ラズさんの娘さんを探さないと……」

 

 武器屋から出ていった龍哉達は現在、城下町を離れて、広大な平原を歩いていた。辺り一面に緑色の絨毯が敷き詰められているような平原の所々には、小さな白い花や木々が生えている。風が通り抜ける事で、花や木々の枝がゆらゆらと動きだし、まるで踊っているかのようだ。

 そんな平原の中で龍哉は、モンスターと戦える事にわくわくしていた。何故ならば龍哉は、ファンタジー系の創作物を読んでいく内に、いつかモンスターと喧嘩をしてみたいと思うようになっていたのだ。そして今、その願いが叶った為、龍哉がモンスターと戦える事に、わくわくするのは仕方がないと言えよう。だが今は、モンスターと戦っている場合ではない。どうも龍哉は、本来の目的を忘れているようだ。

 勇綺と秋は、本来の目的を忘れているようにも見える龍哉に、注意をする。

 すると……。

 

「おい、アレを見ろよ」

 

「「?」」

 

 龍哉は何かを見つけたのか、おもむろに指を差す。

 勇綺と秋は首を傾げながら、龍哉が指を差した方へと振り向く。

 そこには身体全体が緑色、尖った両耳、額に生やした一本の角、片手には木製の棍棒が握られており、腰の周りには、毛皮で作られた腰巻きを巻いた、身長が九十センチメートル位の三体の小鬼が、勇綺達の方へと近付いてくる。三体の小鬼達の名前は、ゴブリン。この世界の最弱モンスターである。

 

「うぇぇぇっ!!? 何あれっ!? 何あれっ!!? 人間じゃないよねっ!? 絶対!!!」

 

「多分ゴブリンだぜっ! あれはっ! よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! かかって来いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

「いやいや、龍哉。戦うのは、駄目だってば……。早急も言ったけど、僕達はモンスターと戦っている場合じゃ無いんだって……」

 

 秋は、こちらに近付いて来るゴブリン達に、慌てふためく。

 慌てふためいている秋とは対照的に龍哉は、こちらに近付いて来るゴブリン達と戦う気満々のようだ。

 そして勇綺は、ゴブリン達と戦おうとする龍哉を、何とか止めようとする。

 

「ニンゲン……、コロス!」

 

「コロス! コロス!」

 

「グゲゲ……、コロス!」

 

 三体のゴブリンは、棍棒を振り回しながら勇綺達に突撃する。

 

「お〜〜、お〜〜、向こうは殺る気満々だなぁ〜〜……。勇綺! 秋! 喧嘩だっ!! 行くぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ちょっと待てっ! この馬鹿龍哉!!」

 

「ま、待ってよ! 二人共〜〜!!」

 

 龍哉はマジックポーチの中から、武器屋で買ったばかりの彫刻刀を取り出す。取り出した彫刻刀を右手に持つと、龍哉は三体のゴブリンに勢いよく突撃する。

 秋は、三体のゴブリンに突撃する龍哉を、何とか止める為に走り出す。

 勇綺は、走り出した龍哉と秋の後を、急いで追いかけるのであった。

 




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それでは皆様!
良いお年を!!


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第21話 初めての戦闘

間に合いました!

勇綺達は、ゴブリン達に勝てるのか!?

それでは、最新話をどうぞ!


 三体のゴブリン達に突撃した龍哉は、右手に持った彫刻刀を、瞬時に逆手に持ち変える。そして、逆手で持った彫刻刀を、真ん中にいるゴブリンの頭に降り下ろす。

 

「!」

 

「!? チッ! 外したか!」

 

 真ん中にいたゴブリンは、龍哉が降り下ろした彫刻刀を、素早くバックステップで回避する。

 龍哉は、真ん中のゴブリンに攻撃を回避されて、軽く舌打ちをした。

 

「シネッ!!」

 

「コロスッ!!」

 

(や、やべっ!! 二体同時かよ!!?)

 

 真ん中のゴブリンがバックステップで、敵の攻撃を回避すると同時に、左右にいた二体のゴブリンは、棍棒を振り上げながら龍哉に襲い掛かる。

 二体のゴブリンが同時に襲い掛かって来て、龍哉は焦り出す。

 

「龍哉! 危ない!」

 

「くぅおのぉっ!!」

 

「グギョッ」

 

「ガベッ」

 

「勇綺! 秋!」

 

 勇綺と秋は龍哉を助けようと、二体のゴブリンに攻撃を仕掛ける。右のゴブリンには、勇綺が勢いよく体当たりをぶちかます。そして左のゴブリンには、秋がドロップキックを放つ。

 龍哉に襲い掛かった二体のゴブリンは、勇綺と秋の攻撃によって勢いよく吹っ飛ぶ。

 龍哉は目を丸くしながら、勇綺と秋を見据えていた。

 

「全く……。何やってんの! 龍哉! あたし達は、こんな所で魔物と戦っている場合じゃ無いのよ!?」

 

「あ、ああ……。悪かった! 一人で突っ走って、本当に悪かった!! 後、助けてくれてありがとな! 勇綺! 秋!」

 

 秋はゴブリンを吹っ飛ばした後、一人で突っ走った龍哉を叱り飛ばす。

 叱られた龍哉は謝罪をした後、秋と勇綺に、助けてくれた事への感謝をする。

 

「秋! 龍哉の説教はそれくらいにして、今はこのゴブリン達を何とかしないと!」

 

「何言ってんの! あの魔物達を何とかするよりも、この場から逃げるべきよ! 今、私達が先にするべき事は、ラズさんの娘さんを探す事でしょ! あの魔物達は、とにかく無視! はやく、この場から逃げるわよ!」

 

 勇綺は、秋に龍哉の説教を止めさせようとする。今は龍哉の説教をするよりも先に、目の前のゴブリン達を何とかしなければならないからだ。

 勇綺の言葉に秋は、反論をするのだが……。

 

「グゲゲ! ニガサン!」

 

「ニガサン! ニガサン! グギャギャギャ!」

 

「グシシシ! エモノ、ニガサナイ!」

 

 ゴブリン達は棍棒を振り上げながら、言い合いをしている勇綺達に、勢いよく突撃する。どうやらゴブリン達は、勇綺達を逃がすつもりは無いようだ。

 

「うわっ!!?」

 

「このっ!! このっ!! こなくそ!!」

 

「ああ! もう!  これじゃあ、逃げられないじゃない!!」

 

 勇綺は、一体目のゴブリンが降り下ろした棍棒を、ぎりぎりの処で身体を反らして回避する。

 勇綺がゴブリンに襲われている最中、龍哉は突撃してくるニ体目のゴブリンに、彫刻刀を振り回す。だがしかし、龍哉の攻撃はゴブリンに全て回避されてしまう。

 そして秋は、三体目のゴブリンの降り下ろした棍棒を、マジックポーチの中から取り出したリュートで受け止めながら、愚痴をこぼしていた。

 

「ぼ、僕達は……、こんな所で殺られる訳には、いかないんだ! くぅおのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「グギッ!!?」

 

 勇綺はゴブリンの攻撃をかわしながら、マジックポーチの中からピッチフォークを取り出す。そして、取り出したピッチフォークを使って、勢いよく薙ぎ払う。勇綺が薙ぎ払ったピッチフォークは、ゴブリンの左脇腹に直撃。

 ゴブリンは勇綺の攻撃によって、勢いよく吹っ飛ばされる。

 

「グギギギ……」

 

(!? 動きが鈍い!? 早急の攻撃が効いた……のか? チャンスだ! 今なら、倒せそうだ!)

 

 勇綺の薙ぎ払いが効いたのか、ゴブリンは左手で激痛が走る左脇腹を押さえながら、苦しげな表情を浮かべていた。左脇腹の痛みを必死に耐えているゴブリンは、ゆっくりと立ち上がろうとする。

 動きが鈍くなったゴブリンを、今ならば倒せそうと思った勇綺は、ピッチフォークを前に構えながら走り出す。

 

「グギャアァァァァァァァァ!!!!!」

 

(なっ!? そんな馬鹿な!? かなり深い傷を負わせたのに、まだ倒れないのか!!?)

 

 ゴブリンの胸に、勇綺のピッチフォークの先端が深々と突き刺さる。すると、ゴブリンの鼻や口、そして胸から赤い血が流れ出す。

 身体中が焼けるような痛みにゴブリンは、両手で耳を塞ぎたくなる程の大きな叫び声を上げる。

 だがゴブリンは、胸にピッチフォークの先端が深々と突き刺さっても、まだ倒れる気配が無い。

 胸に深い傷を負っても倒れないゴブリンに、勇綺は驚きを隠せずにいた。恐らくゴブリンが深い傷を負っても倒れなかったのは、まだ勇綺のレベルが足りなかったのが原因だろう。

 

「だったら……!! この武器ならどうだ!!!」

 

「!!!!!?」

 

 胸に深く突き刺さったピッチフォークに、苦しんでいるゴブリンの目の前で、勇綺はマジックポーチの中から、城下町の武器屋で買った鉄の鎌を取り出す。その鉄の鎌を右手で握り締めると、勇綺は目の前で苦しんでいるゴブリンの首を、横薙ぎに勢いよく切り裂いた。

 勇綺の攻撃によってゴブリンは、首から血飛沫を勢いよく噴き出しながら、叫び声を上げずに絶命する。

 

「た、倒した……のか? まさか……、死んだふり何てしてない……よね?」

 

 勇綺は敵の生死を確める為に、恐る恐る人差し指で仰向けに倒れたゴブリンの身体を突っつく。

 

「し、死んでる……。はぁ……、良かった……。倒せたんだ……」

 

 勇綺に人差し指で突っつかれたゴブリンの身体は、ピクリとも動かなかった。

 ゴブリンが死んでいる事を確認出来た勇綺は、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「そうだ! 龍哉と秋は、まだ残りのゴブリン達と戦っている筈! はやく助けないと!」

 

 だが安心したのも束の間、勇綺は直ぐ様、残りのゴブリン達と戦っている龍哉と秋の加勢に向かった。

 

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!! ちっくしょおぉぉぉぉぉぉ!!! 当たらねぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「グシシシ……。オマエ、ノロマ! ノロマ! オマエノ、コウゲキ、アタラナイ! アタラナイ! グシシシ……」

 

 勇綺の近くで戦闘をしていた龍哉は、目の前のゴブリンに、彫刻刀をがむしゃらに振り回していた。だがしかし、龍哉の攻撃は全てゴブリンに回避されてしまう。

 ゴブリンは、こちらに攻撃を当てられない龍哉を、嘲笑っていた。

 すると……。

 

「うおりゃあぁぁぁぁぁぁ!!! 隙ありぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

「グギュガアァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

「!? うえぇぇぇぇぇぇ!!? ゆ、勇綺ぃぃぃぃぃぃ!!?」

 

 勇綺は、龍哉の攻撃を避けていたゴブリンの背中を、鉄の鎌で切り裂く。

 勇綺の不意打ちによる攻撃に、背後を切り裂かれたゴブリンは、背中の痛みに叫び声を上げる。

 龍哉は、突然現れて、背後からゴブリンを鉄の鎌で攻撃した勇綺に、目を大きく見開きながら驚いていた。

 




戦闘シーンは書いてて、楽しかったです。

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第22話 戦闘終了

間に合いました!

※嘔吐描写があります

食事中の方は、特に注意して下さい。

それでは、最新話をどうぞ!


 ゴブリンの背後を攻撃した勇綺は、こちらを見据えている龍哉の方へと駆け寄る。

 

「龍哉! 大丈夫!? 何処か怪我はしてない!?」

 

「あ、ああ……、大丈夫だ……。怪我は、していない」

 

 駆け寄った勇綺は、龍哉の身体を気遣う。

 龍哉は、こちらを心配する勇綺を安心させようと、身体に怪我が無い事を伝える。

 

「ちょっと! 二人供! はやく助けて!! こいつチビなのに、意外と力が強いんだけど!!?」

 

「「!? 秋!!」」

 

 秋は、ゴブリンの攻撃をリュートで防ぎながら、勇綺と龍哉に助けを求める。

 勇綺と龍哉は、助けを求める秋の方へと振り向いた。

 

「勇綺! 秋を助けに行ってくれ! 俺は、勇綺の攻撃で弱っているゴブリンを片付けてから、二人の加勢に向かう!」

 

「う、うん! わ、分かった!」

 

 龍哉は勇綺に、秋の加勢に向かうように促そうとする。勇綺が秋の加勢をしている間、龍哉は再び、先程戦っていたゴブリンの相手をするみたいだ。そのゴブリンを倒した後、龍哉も秋の加勢に向かってくれるようである。

 龍哉の言葉に従った勇綺は、急いで秋の加勢に向かう。

 

「うぉりゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「!? ゲゲッ!!」

 

「!? 勇綺!!」

 

 勇綺は、不意をついてゴブリンの背後に、鉄の鎌を降り下ろす。

 だがしかし、ゴブリンは勇綺の不意打ちによる攻撃を、バックステップで避けてしまう。

 秋は、加勢に来た勇綺に顔をほころばせていた。

 

「秋! 大丈夫!?」

 

「ええ! 大丈夫! 特に怪我一つ、していないわ!」

 

 勇綺は秋を庇うようにして、ゴブリンの前に立ち塞がる。そして、目の前のゴブリンを見据えながら勇綺は、背中越しにいる秋の身体を気遣った。

 秋は、自身の身体に怪我を全くしていない事を、目の前の勇綺に伝える。

 

「秋! 僕が、あのゴブリンの注意を引きつけている間、秋は、ゴブリンの動きをスキルで止めて欲しい! バードは援護が得意な職業だから、敵の動きをスキルで止める事が出来る筈だ!」

 

「分かった! やってみる!」

 

 勇綺は秋に、目の前のゴブリンの動きを止めるように指示を出す。

 勇綺の指示に従った秋は、首を縦に振る。

 

「グゲゲゲ! コナイナラ コッチカラ イクゾ!!」

 

「!? 来たか!! うおぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 敵が中々攻めてこないから、しびれを切らしたゴブリンは、勇綺達に棍棒を振り上げながら突撃。

 こちらに突撃してくるゴブリンに、勇綺も鉄の鎌を振り上げながら突撃する。

 

「この野郎っ! とりゃっ! くそっ!! 当たれ!!」

 

「グゲゲゲ! ドウシタ? ソノテイドカ? ニンゲン? オマエ オレノ テキジャナイ!」

 

「よしっ! 勇綺があのチビ鬼の注意を引きつけている間に、あたしも準備しないと……」

 

 勇綺は悪態をつきながら、目の前のゴブリンに、勢いよく鉄の鎌を振り回す。だがしかし、勇綺の攻撃は全てゴブリンの棍棒によって弾かれてしまう。

 振り回されていた鉄の鎌を、棍棒で弾いていたゴブリンは、こちらに攻撃を当てられない勇綺を、扱き下ろしていた。

 勇綺がゴブリンの注意を引きつけている最中、秋はリュートを構える。

 

「バードスキル〝うたう〟発動! 〝子守唄〟!!」

 

 秋は、構えていたリュートを爪で弾く。すると、秋の身体の周りが白く光った。更に複数の、音符の形をした白い魔力弾が、空中に漂いながら出現する。

 

「♪」

 

「グ……、グゲ……、ゲ……、Zzz」

 

「ギギ……ギ……、Zzz」

 

 秋がリュートで演奏しながら歌をうたうと、空中に漂っていた複数の音符の形をした白い魔力弾が、まるで意思を持っているかのように、勇綺の攻撃を棍棒で弾いているゴブリンと、龍哉が相手をしているゴブリンの方へと飛んで行く。飛んでいった、音符の形をした白い魔力弾は、ニ体のゴブリンに着弾。

 音符の形をした白い魔力弾が命中した二体のゴブリンは、強烈な眠気に襲われる。突然の眠気の前に二体のゴブリンは成す術無く、勇綺と龍哉の目の前で、いびきをかきながら仰向けに眠ってしまう。

 

「やった! ゴブリンの動きが止まった!」

 

 秋の歌によって眠ってしまったゴブリンに、勇綺は歓喜の声を上げていた。

 

「? な、何だ? ゴブリンが眠って……る? 何で?」

 

 勇綺達とは少し離れた場所でゴブリンと戦っていた龍哉は、目の前の敵が突然、いびきをかきながら眠ってしまった事に戸惑っているようだ。

 

「Zzz……」

 

「まぁいっか! 今の内に仕留めるか!」

 

 戸惑っていた龍哉は直ぐ様、迷いを捨てて、眠っているゴブリンの首に、彫刻刀を深く突き刺した。

 龍哉の攻撃によってゴブリンは、叫び声を上げずに眠ったまま絶命する。

 

「Zzz……、Zzz……」

 

「よし! ゴブリンが眠っている! 今の内に、ゴブリンを倒そう!」

 

「! 分かった!」

 

 龍哉が二体目のゴブリンを仕留めている最中、勇綺は、眠っている三体目のゴブリンを仕留めるべく、鉄の鎌を構えた。

 勇綺に続くように秋も、マジックポーチの中から取り出したナイフを構える。

 勇綺と秋は、鎌とナイフを使って、眠っているゴブリンの首と胸を、何度も突き刺す。

 勇綺と秋の攻撃によって、気持ちよさそうに眠っていたゴブリンは、そのまま永遠の眠りについた。

 

「はぁ……、はぁ……。か、勝った……」

 

「はぁ……、はぁ……」

 

 勇綺と秋は、息を切らしながら、血塗れのゴブリンの死体を見据えていると……。

 

「うぷっ……」

 

「秋?」

 

 血塗れのゴブリンの死体を見据えていた秋は、突然、右手で口を押さえる。そして、隣にいた勇綺から離れるように秋は走り出す。

 秋が突然走り出した事に、勇綺は戸惑っていると……。

 

「オロロロ……」

 

「秋!!?」

 

 走り出した秋は、勇綺から一定の距離をとると、突然、その場に座り込む。そして秋は、口から盛大に吐瀉物を吐き出した。

 魔物とはいえ、初めて意思を持った生き物の命を奪ってしまったのだ、秋にとっては、それが相当なストレスとなって嘔吐してしまったのだろう。

 突然嘔吐する秋に、勇綺は目を丸くしながら驚いていた。

 

「だ、大丈夫!? 秋!?」

 

 勇綺は介抱しようと、嘔吐している秋の方へと駆け寄ろうとするが……。

 

「うげぇ〜〜……、ごないでぇ〜〜……。オロロロ……」

 

「なに言ってるんだよ! 苦しんでいる秋を、放っておけないよ!」

 

 秋は、こちらに駆け寄ってくる勇綺を遠ざけようとする。

 秋は、大雑把で男勝りな性格だが、ちゃんと恥じらいがある女の子だ。それ故秋は、嘔吐している自分の姿を、幼なじみに見せたくないのだろう。

 だが勇綺は秋の言葉を一蹴して、嘔吐している彼女の背中を擦った。

 

「お〜〜い! 勇綺〜〜! 秋〜〜! そっちは終わったか〜〜?」

 

「! 龍哉!」

 

 ゴブリンとの戦闘を終えた龍哉は、幼なじみの二人の名前を呼びながら、勇綺達の方へと駆け寄る。

 勇綺は、嘔吐している秋の背中を擦りながら、こちらの名前を呼びながら駆け寄ってくる、龍哉の方へと振り向いた。

 




主人公達、なんか容赦がない……(汗)

それでは、感想や評価をお願いします!


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第23話 ランドロックの森

新しい魔物が登場します!

それでは、最新話をどうぞ!


 幼なじみ達の元へ駆け寄った龍哉は、嘔吐している秋の背中を、勇綺が擦っている光景に戸惑っていた。

 

「な、何があったんだ? 勇綺? 秋は、何でこんな状態になってんだ?」

 

「あ〜〜、うん、まぁ……、僕と秋の二人でゴブリンを倒したんだけど……。そしたら秋が突然、体調を崩してしまったんだ……。おそらくだけど……、ゴブリンの命を奪ってしまった罪悪感によるストレスで、秋は体調を崩したんだと思う」

 

 龍哉は勇綺に、秋が体調を崩した理由を問い掛ける。

 問い掛けられた勇綺は龍哉に、秋が体調を崩してしまった理由を話す。

 

「大丈夫か? 秋? 少し休もうか?」

 

 龍哉は、体調を崩している秋を気遣おうとするが……。

 

「はぁ……、はぁ……、だ、大丈夫よ……。は、はやく、先へ進むわよ……。あたし達は、ラズさんの娘さんを、探さないといけないんだから……。こんな所で、立ち止まっている暇なんて、無いわよ……」

 

「お、おい! 待てよ! 秋!」

 

「あ! 待ってよ! 二人共!」

 

 秋は、こちらを気遣おうとする龍哉と背中を擦ってくれている勇綺に、体調の方は問題無い事を伝える。そして二人に、先へ進むように促そうとする秋は、その場からゆっくりと立ち上がると、重い足取りで歩き出す。

 龍哉は、戸惑いながらも秋の後をついて行く。

 そして勇綺は、死体となったゴブリンの体に突き刺さっているピッチフォークを、マジックポーチの中にしまうと、急いで二人の後を追い掛けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!」」」

 

 平原を歩き続けて数分後、勇綺達の目の前には、鬱蒼とした森が広がっていた。

 

「ここが、ランドロックの森のようだな……」

 

 龍哉は、森の入り口の端に立てられている木製の看板を見据えながら呟いた。

 

「それじゃ、行くぞ! 勇綺! 秋!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

 龍哉は、勇綺と秋に声を掛けると、ランドロックの森の中へ足を踏み入れる。

 声を掛けられた勇綺と秋は、森の中へ入ろうとする龍哉の後を付いて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい不気味ね……。何か、幽霊とか出てきそう……」

 

「何だ……? 変な鳴き声が聞こえるぞ……?」

 

「魔物の鳴き声……かな?」

 

 ランドロックの森の中へ入った勇綺達は、辺りを見回す。森の中は昼前でも薄暗く、目の前には、太い幹の木々や草むらばかりだ。更に森の中では、正体不明の不気味な鳴き声が聞こえていた。

 森の中から漂う不気味な雰囲気によって、秋は不安に襲われる。

 秋が不安に襲われている最中、龍哉と勇綺は、森の中から聞こえてくる不気味な鳴き声に戸惑っていた。

 すると……。

 

「「「!!?」」」

 

 目の前の草むらが、まるで風に吹かれているかのように、ガサガサと揺れていた。

 突然、音をたてながら揺れていた目の前の草むらに、勇綺達は武器を構えて臨戦態勢をとる。

 

「ゲゴゴゴ……」

 

「……」

 

「マシュ〜〜」

 

 

 揺れていた目の前の草むらの中から現れたのは、三体の魔物だった。

 まず、一体目の魔物の名前は、ミドリガマ。名前の通り体の色は緑色で、体長が百四十センチメートル位の、大きな蛙型の魔物だ。大きさ以外は、勇綺達の世界に生息している雨蛙とそっくりである。

 次に、プルプルと身体を揺らしている、二体目の魔物の名前は、ブルームース。体長が六十センチメートル位で、身体の色は透明な青色をしている。手足や頭の部位もない、透き通った半球体の体の中には、人間の頭蓋骨が入っていた。

 そして三体目の魔物は、体長が25センチメートル位の、キノコ型の魔物だ。名前は、おおなめこ。キノコのトレードマークでもあるカサの色は、オレンジ色で、白い斑点模様がついている。柄の部分には、つぶらな瞳と口、短い手足がついた、どこか愛嬌がある姿をしていた。

 

「はぁ……。どうやら、こいつらを倒さないと、先へは進めなさそうだな……。仕方ない、倒すか……」

 

「よ〜〜し! じゃあ、さっさと目の前の魔物を倒しますか!」

 

「う〜〜ん……、でかい蛙と骸骨ゼリーを倒すのは良いんだけど……、キノコを倒すのは……」

 

 草むらの中から現れた三体の魔物を、勇綺と龍哉は倒す気満々のようである。

 戦う気満々である勇綺と龍哉とは対照的に、秋は、キノコ型の魔物だけは、倒す事に迷っていた。

 何故ならば秋は、おおなめこの愛嬌がある姿に、心を奪われてしまったのだ。こう見えても秋は、可愛い物が好きなのである。だから秋が、おおなめこを倒す事に、迷ってしまうのも無理はないだろう。

 

「ゲゴォ〜〜!!」

 

「……」

 

「マシュ〜〜!!」

 

「来た! 龍哉! 秋! 行くよ!!」

 

「おっしゃあぁぁぁ!! 行くぜぇぇぇ!!」

 

「ちょっと! あの可愛いキノコ、あたしの方に来るんだけど!? どうすればいいの!!?」

 

 三体の魔物は目の前の敵を倒そうと、勇綺達に突撃する。

 こちらに突進するミドリガマに、勇綺は両手で鍬を構えながら迎え撃つ。

 龍哉は、襲い掛かってくるブルームースに、右手に握られていた彫刻刀を構えたまま突撃する。

 そして秋は、短い手をぐるぐる回しながら、こちらに突進する、おおなめこに慌てふためいていた。

 

「たあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 勇綺は両手で構えていた鍬を、突撃してくるミドリガマに、勢いよく降り下ろす。

 

「ゲゴォッ!!」

 

「なっ!? くそっ!!」

 

 ミドリガマは、勇綺が勢いよく降り下ろした鍬を、左側に跳びはねて回避する。

 勇綺は、ミドリガマに攻撃を回避されて悪態をつく。

 

「オラァッ!! さっさと倒れろっ!! 骸骨スライム!!!」

 

「!!!」

 

 突撃した龍哉は、ブルームースを彫刻刀で何度も突き刺す。

 ブルームースは身体をプルプルと揺らしながら、龍哉の攻撃を受け続けていた。

 

「あぁぁぁぁぁぁっ!! もうっ!! こんな可愛い魔物をボコボコにするんなんて無理っ!! あたしは、あなたを倒したくないの!! お願いだから、どっかに行ってよ〜〜!!!」

 

「マシュ〜〜! マシュ! マシュ! マシュ〜〜!!」

 

 秋は喚き散らしながら、おおなめこから逃げ回っていた。余程、可愛らしい姿をしている、おおなめこを倒したくないようだ。

 だが、おおなめこからしたら、秋の都合など知ったことではい。おおなめこは、短い両手をぐるぐると回しながら、逃げ回る秋を追いかけるのであった。

 




頭蓋骨が中に入っているスライムって、何か強そうに見えない?

それでは、感想や評価をお願いします!


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第24話 強敵!森の魔物達!!

森の魔物達の実力は、どれ程あるのか?

それでは、最新話をどうぞ!


 勇綺と龍哉、そして秋の三人は現在、ランドロックの森の中で三体の魔物と戦っていた。

 

「ゲゴォッ!!」

 

「うぁっ!!」

 

「勇綺っ!」

 

「ゆ、勇綺!? だ、大丈夫!!?」

 

 ミドリガマは、大きく開いた口の中から、ピンク色の長い舌を鞭のように勢いよく振り回す。その振り回した舌は、勇綺の左側の脇腹に直撃。

 勇綺は、ミドリガマの舌を使った攻撃によって、勢いよく吹っ飛ばされてしまう。

 龍哉は、ブルームースへの攻撃を止めて、ミドリガマの攻撃を受けてしまった勇綺の安否を心配する。

 おおなめこから逃げ回っている秋も、魔物から攻撃を受けてしまった勇綺を気遣っていた。

 すると……。

 

「!!」

 

「!? うおっ!!? あっぶねっ!!? 何だ!!?」

 

 龍哉が攻撃を止めた事でブルームースは、一瞬の隙をついて身体から青色の液体を勢いよく吹き出す。

 ブルームースが吹き出した液体を、龍哉は間一髪のところで回避する。

 龍哉が回避した青色の液体は地面に付着。すると、液体が付着した地面は、煙を上げながらドロドロに溶けてゆく。

 

「おいおい……、マジかよ……」

 

 龍哉は、ブルームースが吹き出した液体によって、溶けてゆく地面を見据えながら戦慄していた。

 どうやらブルームースが吹き出した青色の液体は、溶解液のようだ。

 

「!!」

 

「!? ちょっ!? お、おいっ! こらっ! 馬鹿っ! 止めろっ!! てめぇっ!!」

 

 ブルームースは更に青色の溶解液を、龍哉に目掛けて連続で吹き出し続ける。

 龍哉は慌てながらも、ブルームースが連続で吹き出した溶解液を何とか上手く避けて行く。

 龍哉がブルームースの溶解液を回避している最中、秋は未だにおおなめこから追いかけ回されていた。

 

「マシュ〜〜!!」

 

「うげぇっ!? な、何っ!? うわっぷ!!?」

 

 おおなめこは、逃げ回る秋の足下に、口から透明な粘液を勢いよく吐き出す。

 おおなめこが吐き出した透明な粘液によって、逃げ回っていた秋は、足を滑らせて地面の上に前のめりに転んでしまう。

 

「いったぁ〜〜……。な、何……? この……、ぬるぬるした液体は……?」

 

 粘液によって地面の上に滑って転んでしまった秋は、何とか体を起こす。そして、足に付着した粘液を訝しみながら見据える。

 

「秋! あぶねぇっ!!」

 

「へっ?」

 

 粘液を見据えている秋に、龍哉が呼び掛ける。

 幼なじみの呼び掛けに反応した秋は、龍哉の方へと振り向こうとするが……。

 

「マシュ〜〜! マッシュ〜〜!!」

 

「うどっ!?」

 

 おおなめこは短い手で、粘液によって動きが止まってしまった秋の左頬を、殴り飛ばした。

 秋は、おおなめこの攻撃によって大きく吹き飛ぶ。

 

「秋!?」

 

 龍哉は、おおなめこに攻撃された秋の加勢に向かおうとするが……。

 

「!!」

 

「うわっ!? あぶねっ!! 糞っ!! 邪魔すんじゃねぇよ!! 骸骨スライム!!!」

 

 秋の加勢に向かおうとする龍哉の邪魔をしようと、ブルームースは溶解液を勢いよく吹き出した。

 龍哉は溶解液を横跳びで回避すると、こちらの邪魔をするブルームースに悪態をつく。

 

「わりぃけどなぁ……、てめぇの相手をしている暇は……、ねぇぇぇんだよ!! 糞スライムゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

「! !?」

 

 龍哉は素早くブルームースに突撃。そして、ブルームースのプルプルした身体を鷲掴みにして持ち上げるとそのまま、おおなめこの方へと投げ飛ばす。

 投げ飛ばされたブルームースは、何処か慌てふためいていた。

 

「!!?」

 

「マジュッ!!?」

 

 龍哉に投げ飛ばされたブルームースは、おおなめこに激突する。激突したブルームースは、身体をプルプルと揺らしながら地面に倒れる。

 投げ飛ばされたブルームースに激突したおおなめこは悲鳴をあげると、目をぐるぐると回しながら気絶してしまう。

 

「秋! 大丈夫か!?」

 

「いたたた……。な、何とか、大丈夫よ……」

 

 二体の魔物を気絶させた龍哉は、秋の方へと駆け寄る。そして龍哉は、秋の身体を気遣った。

 こちらを心配する龍哉に、秋は左頬を擦りながら、自身の身体に問題無い事を伝える。

 

「秋! 気絶している、あのキノコと骸骨スライムは、俺がぶっ倒す! お前は、勇綺の加勢に行ってくれ!!」

 

「うん! 分かったわ!」

 

 龍哉は秋に、勇綺の加勢に向かうように指示を出す。

 龍哉の指示に従った秋は、首を縦に振ると直ぐ様、勇綺の加勢に向かった。

 

「う、ぐぅ……。い、痛い……。くそぉ……」

 

 勇綺は左手で、魔物に攻撃された左側の脇腹を押さえながら、こちらを睨み付けているミドリガマに、小さく悪態をついていると……。

 

「ゲゴォッ!!」

 

「くっ!!」

 

 ミドリガマは再び、長い舌を鞭のように勢いよく振り回す。

 勇綺は、ミドリガマが振り回した長い舌による攻撃を、何とかバックステップで回避するが……。

 

「ゲッゴォォォォォォ!!!」

 

「ぐはぁっ!!!」

 

 舌攻撃を回避した勇綺に、ミドリガマは飛び蹴りを繰り出す。

 勇綺は魔物に左頬を蹴られて、大きく吹っ飛ばされてしまう。

 

「う……、ぐ……、つ、強い……。ぐぅ……」

 

 蹴り飛ばされた勇綺は、何とか立ち上がろうとするも、それが上手く出来ず、ガクッと地面に膝をついた。おそらく、ミドリガマの強力な攻撃を二度も受けてしまったせいで身体が弱ってしまい、上手く立ち上がれないのだろう。

 

「ゲェゴォッ!!!」

 

「! ぐっ……、ぐがぁっ……、あぁ……」

 

 ミドリガマは長い舌を使って、身体が弱って動けない勇綺の首を強い力で絞めてゆく。

 勇綺は首を絞めている、ミドリガマの長い舌を引き剥がそうとするが……。

 

(!? 嘘だろ!? ぬるぬるしてて、魔物の舌が引き剥がせない!!?)

 

 勇綺の首を絞めている魔物の長い舌には、ぬるぬるした液体がついていた。それによって勇綺は、首を絞めている魔物の舌を、上手く引き剥がす事が出来ないのだ。

 

「ゲェゴォ……」

 

(あ……、ヤバい……、意識が……)

 

 ミドリガマは更に、勇綺の首を絞めている長い舌に力を入れる。すると、ミドリガマが力を入れた事で、長い舌が勇綺の首を一段と強く絞めてゆく。

 魔物に首を強く絞められた事で、勇綺が意識を朦朧とさせていると……。

 

「バードスキル〝うたう〟発動! 〝子守唄〟!!」

 

 秋がリュートを爪で弾くと、音符の形をした白い魔力弾が、空中に漂いながら出現する。

 

「♪」

 

「ゲ……、ゲゴォ……、Zzz」

 

 秋のリュートによる演奏と歌によって、空中に漂っている音符の形をした白い魔力弾が、ミドリガマの方へと飛んでゆく。飛んでいった音符の形をした白い魔力弾は、ミドリガマに着弾する。

 魔力弾が着弾したミドリガマは、勇綺の首を絞めている長い舌を口の中に戻すと、そのままいびきをかきながら眠ってしまう。

 

「勇綺!」

 

 ミドリガマを眠らせた秋は、勇綺の方へと駆け寄る。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「ゲホッ、ゲホッ……、あ、秋……。な、何とか、だ、大丈夫だよ……」

 

 秋は、ミドリガマに攻撃された勇綺の安否を心配する。

 勇綺は咳き込みながらも、こちらを心配する秋を安心させようと、穏やかな笑みを浮かべていた。

 




意外と強かった森の魔物達。

さて勇綺達は、この強敵達に勝てるのか?

それでは、感想や評価をお願いします!


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第25話 あばよ!害悪!!

さて、勇綺達は森の魔物達を倒せるのか?

それでは、最新話をどうぞ!


「助かったよ! ありがとう、秋!」

 

「はぁ……、良かった……。大丈夫そうで……」

 

 勇綺は、ミドリガマに絞殺されかけたところを、助けてくれた秋に感謝をする。

 こちらに笑顔を浮かべて感謝をする勇綺が、無事である事を認識した秋は、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「あ、そうだ! 今のうちに、この魔物を倒さないと……」

 

「Zzz……」

 

 秋に感謝をした勇綺は、ミドリガマの方を見据える。

 ミドリガマは秋のスキルによって、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。

 

「いくぞ……。 はぁっ!!」

 

 勇綺は、眠っているミドリガマに、両手で構えた鍬を降り下ろす。

 勇綺が降り下ろした鍬の一撃によって、スヤスヤと眠っていたミドリガマの首は切断される。

 

「どうだ……、死んでる……か?」

 

「うぷっ……」

 

 勇綺は敵の生死を確認しようと、首が切断されたミドリガマの身体を鍬で突っつく。

 勇綺がミドリガマの身体を鍬で突っついている最中、秋はまたもや体調を崩してしまう。

 

「良かった……、死んでる……。ふぅ……、何とか勝った……」

 

 ミドリガマの生死を確認し終わった勇綺は、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「よしっ! 秋! 龍哉の加勢に行こう!」

 

 勇綺は秋がいる方へと振り向く。そして、秋を呼び掛けようとするが……。

 

「うぅぅ……」

 

「あ、秋!? だ、大丈夫!?」

 

 勇綺に呼び掛けられた秋は、両手で口を押さえながら、その場に座り込んでいた。

 勇綺は慌てながらも、体調を崩した秋の方へと駆け寄る。

 

「はぁ……、はぁ……、もう、だ、大丈夫……。魔物の死体を見て、ちょっと気分が悪くなっただけだから……。それよりもはやく、龍哉を助けに行かないと……」

 

「大丈夫なら良いんだけど……。でも、無理だけはしないでね?」

 

 秋は、こちらを気遣おうとする勇綺に、体調の方は問題無い事を伝える。そして勇綺に、龍哉の加勢に向かうように促そうとする秋は、その場から立ち上がると、重い足取りで歩き出す。

 勇綺は心配しながらも、龍哉の加勢に向かおうとする秋の後をついて行く。

 

「さて……、どちらから先に倒すか……」

 

 龍哉は気絶している二体の魔物、ブルームースとおおなめこを見据えていた。

 

「やっぱ溶解液を吹き出してくる、骸骨スライムから倒すか……」

 

 龍哉は、気絶しているブルームースに狙いを定めて、右手に逆手で持った彫刻刀を降り下ろす。

 すると……。

 

「!」

 

「何っ!?」

 

 気絶していたはずのブルームースが突然、龍哉に目掛けて身体から溶解液を勢いよく吹き出す。

 龍哉は、ブルームースの不意打ちによる溶解液攻撃を、バックステップで回避する。

 回避された溶解液は地面に付着。そして、煙を上げながら、液体が付着した地面を溶かしてゆく。

 

「あ、あぶねぇ……。この野郎……。骸骨スライムの癖に、気絶したふりをしていたのかよ……」

 

 ギリギリのところで溶解液をかわした龍哉は、心臓をバクバクさせながら、ブルームースを睨み付ける。

 

(しかし……、どうやってこいつを倒す? 溶解液のせいで近付く事が出来ねぇし……。また意表を付いて、ぶん投げてみるか? いや、こいつは気絶したふりをして、俺を油断させるような知恵を持っている。同じ手は通用しない……。もし投げようとしたら、溶解液の餌食になっちまうだろうな……。う〜〜ん……)

 

 龍哉は、ブルームースをどうやって倒すか、頭の中で思案していると……。

 

「!」

 

「!? うおっと! てめぇっ! 今、こっちは、てめぇを倒す方法を考えている最中なんだから、少しは大人しく待ってろよ!!」

 

 ブルームースは、思案している最中の龍哉に目掛けて、容赦なく身体から溶解液を吹き出した。

 龍哉は右の方へと横に跳んで溶解液をかわすと、こちらに攻撃をしてきたブルームースに理不尽な文句を言い出す。

 

(糞っ! 溶解液のスピードはそんなに、速くねぇんだけど、近付かないと彫刻刀で攻撃が出来ない俺にとって、やっぱ溶解液は厄介だ……。いくら溶解液のスピードが遅くても、近くで戦い続けていたら、いずれは回避しきれなくて、溶解液の餌食になっちまう……。離れた状態で攻撃さえできれば、溶解液なんか恐くねぇんだがなぁ……。んっ? 離れた状態で攻撃……? あっ! そうだ! アレがあった! アレなら離れた状態で攻撃ができる!!)

 

 ブルームースの溶解液攻撃に頭を抱えていた龍哉は、離れた状態で攻撃する方法を思い付く。

 

「この、スリングショットならば、離れた状態で攻撃が出来る!」

 

 龍哉は急いでマジックポーチの中から、スリングショットを取り出す。

 

「この辺りで良いかな?」

 

「?」

 

 ブルームースから二メートル程離れた位置に立っていた龍哉は、其処から更に五メートル程距離を空ける。

 ブルームースは、こちらから距離を空けようとする龍哉の行動を、いぶかしみながら見据えていた。

 

「弾は、こいつで良いかな?」

 

 ブルームースから距離を空けた龍哉は、足下の回りに落ちている小石を四つ程、右手で拾い上げる。龍哉は直ぐ様、左手に握られたスリングショットの弾受け部分に、拾った小石を一つ包む。小石が包まれた弾受け部分を、龍哉は右手の人差し指と親指でガッチリと挟んだ。

 

「喰らえ! オラァッ!!」

 

「!!?」

 

 龍哉は、約九十度程傾けたスリングショットを握った左手を、ブルームースがいる前方へ力一杯伸ばす。次に、弾受け部分を人差し指と親指で挟んだ右手は、右肩のあたりまで引っ張って行く。

 スリングショットを撃つ準備が出来た龍哉は、ブルームースに目掛けて、弾受け部分に挟んだ小石を放った。

 放たれた小石は、ブルームースに直撃。小石が命中した事で、ブルームースは、身体をプルプルと揺らしながら後方へと退いた。

 

「!!」

 

 攻撃を受けたブルームースは反撃しようと、龍哉に目掛けて身体から溶解液を吹き出そうとするが……。

 

「溶解液なんて出させるかよ! 骸骨スライム!!」

 

「!!?」

 

 龍哉は、ブルームースが溶解液を吹き出す前に、スリングショットで小石を放つ。放たれた小石は、ブルームースに直撃。

 ブルームースの反撃は、龍哉が放った小石によって妨害されてしまう。

 

「遠距離から攻撃さえ出来れば、てめぇの溶解液にビクビクせずに安心して攻撃が出来るぜ! ほらよ! もう一発!!」

 

「!!」

 

 ブルームースの反撃を妨害した龍哉は、続けてスリングショットで小石を放つ。

 龍哉が続けて放った小石に、ブルームースは防御も出来ずに直撃してしまう。小石が命中した事でブルームースは、身体をプルプルと揺らしながら後ずさる。

 

「こいつで、止めだ! あばよ! 害悪!!」

 

「!!!」

 

 龍哉はブルームースに狙いをつけて、残りの小石をスリングショットで放つ。

 龍哉が放った最後の小石は、ブルームースの身体を貫く。

 すると、小石が貫通したブルームースの身体は、液状にドロドロと溶けて行くと、その場で水溜まりが出来上がる。水溜まりが出来上がった場所には、ブルームースの身体の中に入っていた、人間の頭蓋骨が転がっていた。

 

「はぁ……、何とか倒した……。てこずらせやがって……。糞が……」

 

 龍哉は、水溜まりの上に転がっている頭蓋骨を見据えながら、悪態をついていた。

 




スライム系の魔物、ちょっと強くし過ぎた……かな?

まぁ……、いっか。

それでは、感想や評価をお願いします!


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第26話 行く手を阻む魔物

何か今回、ちょっとはやく投稿できました。

それでは、最新話をどうぞ!


 ブルームースを撃破した龍哉は次の魔物を倒すべく、気絶しているおおなめこの方へと見据えるが……。

 

「!? いねぇし……。あの、糞キノコ何処へ消えやがった?」

 

 龍哉が見据えた先には、気絶していた筈のおおなめこが、その場から消えていたのだ。

 どうやらおおなめこは、龍哉がブルームースと戦っている最中に、気絶した状態から目を覚まして、こっそりと何処へ逃げてしまったようである。

 

「さては糞キノコめ……、仲間を見捨てて、逃げやがったな……。何てズル賢い奴なんだ……。糞っ!」

 

 龍哉は直ぐ様、おおなめこが仲間を見捨てて逃げ出していた事に気が付く。逃げ出したおおなめこに、龍哉は悪態を付きながら地面を蹴飛ばしていると……。

 

「龍哉!」

 

「!? 勇綺? 秋?」

 

 ミドリガマを倒した勇綺は、こちらに背を向けながら、地面を蹴飛ばしている龍哉を呼び掛ける。

 呼び掛けられた龍哉は、勇綺と秋がいる方へと振り向く。

 

「加勢しに来たわ! 魔物は何処にいるの?」

 

「何処かに隠れているのかな?」

 

 龍哉の加勢しに来た秋と勇綺は、魔物を探そうと辺りをキョロキョロと見渡していた。

 

「骸骨スライムは、もう倒した。でも、糞キノコ野郎は仲間を見捨てて逃げやがった……。すまねぇ……、二人とも……。魔物に逃げられちまって……」

 

「そうなんだ……。逃げられたものは仕方ないよ……。気にしないで、龍哉」

 

「勇綺の言う通りよ! そんな事で気にする必要なんてないわよ、龍哉! あんたは良く頑張ったわ!」

 

 龍哉は、ブルームースを撃破した事や、おおなめこに逃げられてしまった事を、悔しそうな表情をしながら勇綺と秋に伝える。

 話を聞いた勇綺と秋は、魔物に逃げられて落ち込んでいる龍哉を元気付けようとしていた。

 

「励ましてくれて、ありがとうな。二人とも!」

 

 励まされた事で元気が出た龍哉は、元気付けてくれた勇綺と秋に感謝をする。

 

「よしっ! 龍哉が元気になったようだし、はやくラズさんの娘さんを探しに行きましょう?」

 

「おう!」

 

 龍哉が元気を取り戻すと秋は、ラズの娘を探しに行こうと、森の奥へと歩き出した。

 龍哉は、森の奥へと進もうとする秋の後をついて行こうとすると……。

 

「ちょっと待って! 二人とも!」

 

「? な、何?」

 

「ど、どうした? 勇綺?」

 

 突然勇綺は、森の奥へと進もうとする秋と龍哉を呼び止める。

 呼び止められた秋と龍哉は、戸惑いながらも勇綺がいる方へと振り向く。

 

「秋。君と僕は、先程の戦闘で怪我をしている。ダメージを受けている状態で先に進むのは危険だ。そんな状態で、もし魔物に襲われたら、僕達に勝ち目はないよ……。先ずは魔物がいない内に、ポーションで傷を治してから、森の奥へ進もうよ」

 

「確かに、そうね……。わかったわ、先ずは怪我を治しましょう! 怪我を治さないまま、戦うのも何か不安だしね!」

 

「俺は魔物からダメージを受けてねぇから、その辺からスリングショットの弾に使えそうな、小石や木の実でも拾ってるか」

 

 呼び止めた勇綺は、森の奥へ進む前に、先程の戦闘で傷付いた身体を治す事を秋に提案する。おそらく勇綺は、ダメージを受けている状態で先へ進むのが不安なのだろう。

 勇綺からの提案を聞いた秋は、傷を治してから先へ進む事に納得する。どうやら秋も、怪我を治さないまま、先へ進むのは不安だったようだ。

 先程の戦闘でダメージを受けていない龍哉は、勇綺と秋が怪我を治している間に、スリングショットの弾を集めるようである。

 

「え〜〜と……。確か、ここに……。あった!」

 

「この薬で、傷を治せるのよね?」

 

 勇綺と秋は、マジックポーチの中から透明な液体が入った小瓶を一本取り出す。勇綺と秋が取り出した小瓶は、ランドロック王国の人達から貰った回復アイテム、ポーションである。

 勇綺と秋は、ポーションが入った小瓶を口に含むと……。

 

「オゲッ! マッズッ! 何これ!? このポーションって薬、マズ過ぎない!?」

 

「ウゲッ! ま、まぁ……、ポ、ポーションは薬だし……、お、美味しくないのは、し、仕方ないよ……」

 

「♪」

 

 勇綺と秋が口に含んだポーションは、凄く不味かった。何故ならばポーションを口に含んだ瞬間、爽やかな苦味が口の中いっぱいに広がり、ハーブの薬臭さが鼻の中を抜けて行くのである。それらによって勇綺と秋は、小瓶一本のポーションを飲み干すのも苦労していた。

 その余りの不味さに秋は、涙目になりながらポーションに文句を言い出す。

 文句を言っている秋とは対照的に勇綺は、ハーブの薬臭さと爽やかな苦味に耐えながら、ポーションの不味さに納得していた。

 秋と勇綺がポーションを飲み干すのに苦戦している最中、龍哉は鼻歌を歌いながら、地面に転がっている小石や木の実を拾い集めて、マジックポーチの中に入れてゆく。

 

「ウェ……、の、飲んだ……。ん?」

 

「オエッ……。マズ……。あれ?」

 

 ポーションをなんとか飲み干した勇綺と秋は、自身の身体の異変に気付く。

 

「身体の痛みが……、引いてゆく……。これがポーションの力……。す、凄いな……」

 

「左頬の痣が消えていくわ!? 味は不味いけど……、効き目は凄いのね……」

 

 勇綺と秋の身体の傷は、ポーションの効果によって、みるみるうちに消えていったのだ。

 ポーションの効果に、勇綺と秋が感心していると……。

 

「おい! 二人とも!」

 

「「!」」

 

 スリングショットの弾を拾い集め終わった龍哉は、ポーションの効果に感心している勇綺と秋を呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺と秋は、龍哉がいる方へと振り向く。

 

「怪我は治ったか? はやく先へ進もうぜ!」

 

「うん! 分かった! 行こう、秋!」

 

「ええ!」

 

 勇綺と秋を先へ進むように促そうとする龍哉は、意気揚々と森の奥へと進んで行く。

 森の奥へ進んで行く龍哉の後を、勇綺と秋は急いで付いて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴォォ……」

 

 勇綺達が薄暗い森の中を進んで行くと、その途中で一体の魔物と遭遇する。魔物の名前はペブルウォーク。体長は、約二十センチメートル位の、身体全体が石で出来た魔物だ。身体の色は黄土色。一頭身の身体には、つり上がった白い目と口、そして短い手足がついていた。

 ペブルウォークは、目の前に現れた勇綺達に、うなり声を上げて威嚇する。

 

「僕達は、先へ進まないと行けないんだっ!」

 

 行く手を阻むペブルウォークに勇綺は、鉄の鍬を両手に持って突撃する。

 

「!? 何っ!?」

 

「ゴッゴッゴッ……」

 

 ペブルウォークに、勇綺は両手で持った鍬を勢いよく降り下ろす。だがしかし勇綺の攻撃は、身体が石のように硬いペブルウォークに、あまり効いていないようである。

 こちらに大したダメージを与えられない勇綺を、ペブルウォークは嘲笑っていた。

 

(くっ……、なんて身体が硬い魔物なんだ! 攻撃魔法を持っていない今の僕達では、こいつを倒すのに時間が掛かる……。どうすれば、いいんだ……)

 

 身体が石のように硬いペブルウォークに、大きなダメージを与える手段を持っていない勇綺は、頭を悩ませるのであった。

 




また、魔物と戦います。
うちの主人公達、運が無いなぁ……。

それでは、感想や評価をお願いします!


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第27話 ペブルウォーク

また、ちょっとはやく投稿できました。

それでは、最新話をどうぞ!


 ペブルウォークの高い防御力に、勇綺が頭を悩ましていると……。

 

「ゴォォォォォォ!!!」

 

「うわっ!」

 

「おっと!」

 

「わわっ!」

 

 ペブルウォークは勇綺達に向かって、唸り声を上げながら勢いよく突進。

 勇綺と龍哉、そして秋は、ペブルウォークの突進攻撃を、何とか横跳びで回避する。

 

「勇綺! 秋! あの石野郎を三人で袋叩きにするぞ! いくら石野郎の身体が硬くても、三人で袋叩きにすれば、きっと大きなダメージを与えられるはずだ!」

 

「分かった!」

 

「ええ!」

 

 龍哉は、勇綺と秋に、ペブルウォークを袋叩きにする事を提案する。おそらく龍哉は、防御力が高いペブルウォークを、三人で攻撃すれば、大きなダメージを与えられると考えたのだろう。

 龍哉の提案に、勇綺と秋は賛同する。

 

「ゴォッ?」

 

 勇綺達は目の前の敵を袋叩きにしようと、ペブルウォークの周囲を素早く取り囲む。

 勇綺達に取り囲まれたペブルウォークは、周囲をキョロキョロと見回しながら警戒する。

 

「行くぞ!」

 

「ゴォッ!?」

 

 龍哉は右手に彫刻刀を持って、ペブルウォークに突撃。

 声に反応したペブルウォークは、龍哉がいる方へと振り向こうとすると……。

 

「オラァッ!」

 

「ゴォッ!!?」

 

(彫刻刀の刃が突き刺さった!? 龍哉の攻撃が効いているのか!? 武器の攻撃力なら、彫刻刀よりも鉄の鍬の方が高いはずなのに……。何で?)

 

 龍哉は右手に持った彫刻刀を、瞬時に逆手に持ち変える。そして逆手で持った彫刻刀を、ペブルウォークに勢いよく降り下ろす。すると、ペブルウォークの硬い身体に、彫刻刀の刃がいとも簡単に突き刺さる。

 身体に彫刻刀の刃が突き刺さったペブルウォークは、目を大きく見開きながら龍哉を見据えていた。おそらくペブルウォークは、自慢の硬い身体を簡単に傷をつけた敵の力に、驚いているのだろう。

 だが、龍哉に驚いているのは、ペブルウォークだけではない。勇綺も、ペブルウォークの硬い身体を簡単に傷をつけた龍哉の力に、胸の中で驚いていたのだ。何故ならば、購入した武器の中で一番高い攻撃力を持った鉄の鍬で攻撃しても、平然としていられる程の頑丈な身体を持った魔物に、彫刻刀の小さな刃が突き刺さったのである。

 通常なら龍哉の彫刻刀よりも、勇綺の鉄の鍬の方が攻撃力が高く、魔物に大きなダメージを与えられるはずなのだ。しかし、ペブルウォークにダメージを与えたのは、勇綺が装備している鉄の鍬ではなく、龍哉が装備している彫刻刀だった。これには、勇綺が驚くのも無理はないだろう。

 

「よっと!」

 

「ゴゴォォォ……」

 

 ダメージを与えた龍哉は、ペブルウォークからバックステップで距離をとる。

 ペブルウォークは、唸り声を上げながら龍哉を睨み付けていると……。

 

「今だっ! 隙あり!!」

 

「ゴォッ!!? ゴゴゴ……」

 

(なっ!? 龍哉の攻撃だけじゃなく、秋の攻撃も効いているのか!!?)

 

 龍哉とペブルウォークが睨みあっている最中、秋は構えていたリュートの弦を爪で弾く。すると、リュートから複数の音符の形をした灰色の魔力弾が、勢い良く飛び出す。リュートから飛び出した、複数の音符の形をした灰色の魔力弾は、龍哉に気をとられているペブルウォークの背中に着弾。

 音符の魔力弾が着弾すると、ペブルウォークの背中には、蜘蛛の巣のようなヒビが入る。ヒビが入ったせいで身体が弱ってしまったのか、ペブルウォークは足元をふらつかせていた。

 龍哉に続いて秋の攻撃も、ペブルウォークにダメージを与えられた事に、勇綺はまたもや胸の中で驚いてしまう。

 すると……。

 

「ゴゴゴォォ……」

 

「! な、何よ! あたしを狙うつもり!? こ、こっちに来たら、ぶ、ぶっ飛ばすよ!?」

 

(! 秋を睨んでるの? まさか、秋を狙うつもりか!? そうはさせない!!)

 

 ペブルウォークは、唸り声を上げながら秋を睨み付ける。おそらくペブルウォークは、自慢の硬い身体にヒビを入れた秋に、相当怒っているのだろう。

 今にもこちらに襲い掛かって来そうなペブルウォークに、秋はビビりながらもリュートを構えて臨戦態勢をとる。

 秋を襲い掛かろうとするペブルウォークに、勇綺は鉄の鍬を両手で持ちながら素早く突撃。

 

「「勇綺!?」」

 

「うりゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 ペブルウォークに突進する勇綺に、龍哉と秋は目を丸くしながら驚いていた。

 突撃した勇綺はペブルウォークに、両手で持った鉄の鍬を、力一杯降り下ろすが……。

 

「?」

 

「くっ……。やっぱ、僕の攻撃だけは効いていないのか……」

 

 勇綺が降り下ろした鉄の鍬に直撃したペブルウォークは、痛がる素振りすら見せず無表情だった。やはり勇綺の攻撃だけは、ペブルウォークに効いていないのだろう。

 勇綺は、自分の攻撃だけが効かないペブルウォークを、悔しげな表情で見据えていると……。

 

「隙ありだ! 石野郎!」

 

「ゴッ……ガッ……」

 

 勇綺に気を取られて隙だらけになったペブルウォークに、龍哉は突撃する。そして、右手で逆手に持った彫刻刀を、ペブルウォークの脳天に突き刺した。

 龍哉から脳天に彫刻刀を突き刺されたペブルウォークは、身体全体に無数のヒビが入って行く。すると、ヒビが入ったペブルウォークの硬い身体はボロボロと崩れて行くと、その場には、いくつもの黄土色の石の破片だけが残されていた。

 

「な、何、この魔物……? 石で出来ていたの? どうなってんのよ……。何で石が動くのよ……」

 

(龍哉と秋の攻撃は効いて、何で僕の攻撃だけは、この魔物に効かなかったんだ? 一体、何が原因だ?)

 

 秋は、地面の上に転がっているペブルウォークの破片を見据えながら驚いていた。先程倒した魔物が、石で出来ていながら動いたりしていれば、ファンタジー系の創作物に詳しくない秋が驚くのも無理は無いだろう。

 秋が驚いている最中、勇綺は、ペブルウォークの破片を見据えながら思案していた。どうやら勇綺は、龍哉と秋の攻撃にダメージを受けたペブルウォークが、自分の攻撃だけは効かなかった原因について考えていたようである。

 

「「「!?」」」

 

 すると突然、龍哉の後ろの草むらが、ガサガサと揺れる。

 龍哉は、ガサガサと音がした後ろの方へと振り向き、勇綺と秋は草むらの方へと目を移す。

 勇綺達は、揺れる草むらを見据えながら武器を構えると……。

 

「何処だ……」

 

「「「えっ!!?」」」

 

 揺れる草むらの中から現れたのは、四つん這いになった少女だった。年齢は、十歳位だろうか。髪の毛の色は金色で、髪型は赤いリボンで結ばれたピッグテール。服装は、緑色の半袖の服の上から茶色のベストを纏い、下には白いロングスカートを履いており、肩には水色の布製のショルダーバッグを、斜め掛けにしていた。

 草むらの中から現れたのが少女だった事に、勇綺達は目を大きく見開く。

 

「う〜〜ん……、見つからないなぁ……。何処へ行ったんだろう……」

 

 草むらから四つん這いになって現れた少女は、何かを探しているのか、辺りをキョロキョロと見回していた。

 




新キャラが登場しました!

さて、この少女は一体何者なのか……?

それでは、感想や評価をお願いします!


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第28話 クラン

またまた、はやく投稿できました。

それでは、最新話をどうぞ!


 四つん這いになってキョロキョロと一心不乱に何かを探している少女を、勇綺達が見据えていると……。

 

「! ……何よ? お兄さん達? 人をジロジロと見て……」

 

「えっと……。君は、もしかして……、ラズさんの娘さんのクランちゃん……かな?」

 

 視線に気付いた四つん這いの少女は、ゆっくりと立ち上がると、怪訝な表情を浮かべながら勇綺達に問い掛ける。どうやら少女は、こちらを見据える勇綺達に警戒しているようだ。余り人が立ち入らない森の中で、見知らぬ人間がこちらを見据えていれば、少女が勇綺達に警戒するのも仕方がないだろう。

 こちらを警戒する少女に、勇綺は戸惑いながらも名前を聞こうとするが……。

 

「人に名前を聞く前に、先ずは自分から名乗るのが礼儀じゃないの?」

 

「え、え〜〜と……」

 

「この野郎……、何て生意気な小娘なんだ……」

 

「はぁ……、あの娘は、別に間違った事は言ってないでしょう? 子供に正論を言われたぐらいで怒るんじゃないわよ……。大人気ない……」

 

 名前を聞かれた少女は素っ気ない態度で、勇綺の方から名乗れと指摘する。

 少女の指摘に、勇綺は戸惑っていた。まさか、十歳くらいの少女から礼儀について駄目出しされるとは、勇綺は夢にも思っていなかったのだ。

 戸惑っている勇綺とは対照的に龍哉は、少女の発言と態度に、不愉快そうな表情をしながら悪態をついていた。

 少女に悪態をつく龍哉を、秋は呆れながらもたしなめようとする。

 

「ご、ごめんね。じゃあ、自己紹介するね。僕の名前は、成神勇綺」

 

「あたしは、紫堂秋! よろしくね!」

 

「……俺は、鉄龍哉だ」

 

 勇綺と秋は、こちらを警戒している少女を安心させようと、笑顔で自己紹介をする。

 勇綺と秋とは対照的に、龍哉は嫌そうな表情をしながら少女に自己紹介をしていた。おそらく龍哉は、先程の少女の発言と態度に、相当根に持っているのだろう。

 

「あたしは、クラン・ティエラ! ティエラの服屋の店長、ラズ・ティエラの娘よ!」

 

 名乗り終えた勇綺達に、少女は元気よく自己紹介をする。

 

「クランちゃん! 僕達は、君の事を探しに来たんだ。ラズさんが君の事を心配しているよ? 僕達と一緒にラズさんの所へ帰ろう?」

 

 勇綺はクランに、一緒にラズの元へ帰るように促そうとするが……。

 

「お母さんが心配しているのは、分かったわ。でも悪いけど、あたしは、お兄さん達と一緒には帰れないよ。だって、お兄さん達が信用できる人達なのか分からないもん」

 

 クランは、まだ警戒しているのか、勇綺の誘いを断ってしまう。

 

「面倒くせぇ、小娘だなぁ……。なぁ勇綺、秋? こいつ、力ずくで連れて帰ろうぜ?」

 

「なに、アホな事を言ってんのよ! お馬鹿!!」

 

「はは……」

 

 こちらをまだ警戒しているクランに、苛立ちを覚えた龍哉は、勇綺と秋に物騒な提案をする。

 秋は、物騒な提案をした龍哉を、睨み付けながら叱り飛ばした。

 龍哉と秋のやり取りに、勇綺は苦笑いを浮かべていると……。

 

「! ちょっと、お兄さん達! 後ろ! 後ろを見て!!」

 

「「「?」」」

 

 突然クランが焦ったような表情をして、勇綺達に呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺達は首を傾げると、クランに促されながら後ろの方へと振り向く。

 後ろを振り向いた勇綺達の目の前には、草むらがガサガサと揺れていた。

 

「糞っ! また魔物か!?」

 

「秋! 君は、クランちゃんを守っててくれ!」

 

「分かった! クランちゃん! あたしの後ろに隠れて!! 離れちゃ駄目よ!!」

 

「えっ!? う、うん……」

 

 揺れている草むらに、龍哉はスリングショットを構えながら悪態をつく。

 勇綺は秋に、クランの護衛をするように指示を出す。

 勇綺の指示に従った秋は、クランをこちらの後ろに隠れるように呼び掛ける。

 呼び掛けられたクランは、戸惑いながらも秋の背後に身を隠す。

 クランが秋の後ろに隠れている最中、勇綺と龍哉は武器を構えながら揺れている草むらを見据えていると……。

 

「カチカチカチカチカチカチ……」

 

「ジュルル……」

 

「グギャギャギャ、ニンゲンダァ……」

 

 揺れている草むらの中から、三体の魔物が姿を現す。

 一体目の魔物の名前は、ガイコツ。人間の死体が白骨化した骸骨系の魔物であり、体長が百七十八センチメートル位で、上の歯と下の歯を素早くカチカチと鳴らしながら勇綺達を見据えている。

 次に二体目の魔物の名前は、ジャイアントスネイル。体長が百三十センチメートル位の、かたつむり型の魔物だ。身体の色は肌色で、殻の色は焦げ茶色であり、大きさ以外は勇綺達の世界のかたつむりとほとんど姿が同じである。

 そして三体目の魔物は、醜い顔をした妖精、ゴブリンだ。勇綺達が、平原で一度戦った事がある魔物である。ゴブリンは勇綺達と目が合うと、醜悪な笑みを浮かべていた。

 

「こっち見んな! ボォケッ!!」

 

「グギャッ!!?」

 

「ジュルルッ!!?」

 

「カチカチカチカチカチカチ……」

 

 龍哉は悪態をつきながら、こちらを見据えるゴブリンの顔面に、スリングショットで小石を放つ。放たれた小石は、醜悪な笑みを浮かべているゴブリンの額に直撃。

 龍哉の不意打ちによって放たれた小石が、額に直撃したゴブリンは、地面の上に仰向けになりながら倒れてしまう。地面の上に倒れたゴブリンは、額から血を流したまま絶命する。

 先程まで生きていたゴブリンが、突然絶命してしまった事に、ジャイアントスネイルは戸惑いを隠せずにいた。

 戸惑っているジャイアントスネイルとは対照的に、ガイコツは絶命したゴブリンを気にもせず、歯をカチカチと鳴らしながら勇綺に向かって突撃。

 

「たあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 こちらに突撃するガイコツに、勇綺は両手で持った鉄の鍬を勢いよく降り下ろす。だがしかし、勇綺が降り下ろした鉄の鍬は、柄の部分をガイコツに、両手で受け止められてしまう。

 

「くっ……、このぉっ!! 離せっ!!」

 

 勇綺は、受け止められている鉄の鍬を、ガイコツから何とか引き剥がそうとする。

 

「さぁて、ゴブリンの次はてめぇだ……」

 

「ジュルルル……」

 

 勇綺がガイコツから武器を引き剥がそうとしている最中、ゴブリンを倒した龍哉は口角を吊り上げながら、ジャイアントスネイルと対峙していた。

 ジャイアントスネイルは、龍哉に唸り声を上げながら威嚇する。

 

「こいつをくらえっ!! ノロマのデカつむり!!」

 

 龍哉はジャイアントスネイルの顔に、スリングショットで小石を放つが……。

 

「んなっ!? はやっ!? 何で、かたつむりが素早いんだよ!!! お前は、ノロマじゃなかったのか!!?」

 

 なんとジャイアントスネイルは、自身の身体を素早く殻の中に引っ込めたのだ。身体を引っ込めた事で、龍哉が放った小石はジャイアントスネイルの顔には当たらず、殻に直撃してしまう。だが、殻は意外と頑丈だったのか、小石が直撃しても傷一つ付いていなかった。

 龍哉は、ジャイアントスネイルが素早く殻に潜り込んだ事に、目を大きく見開く。何故ならば龍哉は、ジャイアントスネイルが、こちらの攻撃を素早く殻で防ぐとは思っていなかったのだ。おそらく龍哉は、ジャイアントスネイルが、地球のかたつむりと同じで、スピードが遅い生き物だと思っていたのであろう。だが、目の前のジャイアントスネイルは、地球のかたつむりと違って、意外にも素早かったのである。これには、龍哉が驚くのも無理は無いだろう。

 

「おいっ! こらっ! 出てこい! 卑怯だぞ!! 糞つむり!!!」

 

 龍哉は、殻の中に潜ったジャイアントスネイルを、何とか外に引きずり出そうと、踏みつけながら罵倒する。

 しかし、いくら龍哉が踏みつけたり、罵倒したりしても、ジャイアントスネイルは殻の中から顔を出す事はなかった。

 




自分で書いといて言うのもあれですが……。

まだ序盤なのに、敵が何か手強いなぁ……。

それでは、感想や評価をお願いします!

※一部の文を修正しました

第28話
修正前:人間の死体が白骨化した不死系の魔物であり、体長が百七十八センチメートル位で、上の歯と下の歯を素早くカチカチと鳴らしながら勇綺達を見据えている。

修正後:人間の死体が白骨化した骸骨系の魔物であり、体長が百七十八センチメートル位で、上の歯と下の歯を素早くカチカチと鳴らしながら勇綺達を見据えている。


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第29話 さっさと脱出するわよ!

それでは、最新話をどうぞ!


 殻に潜ったジャイアントスネイルを、悪戦苦闘しながらも何とか引きずり出そうとしている龍哉を、秋が不安げな表情で見据えていると……。

 

「秋!」

 

「へ?」

 

 ガイコツに捕まれている鉄の鍬を、必死になって引き剥がそうとしている最中である勇綺が、突然、秋に呼び掛ける。

 クランの護衛をしながら龍哉を見据えていた秋は、こちらを呼び掛ける勇綺の方へと視線を移す。

 

「バードのスキルで、この二体の魔物を眠らせて!」

 

「わ、分かった!」

 

 勇綺は秋に、ガイコツとジャイアントスネイルを、バードのスキルで眠らせるように指示を出す。

 勇綺からの指示に従った秋は、戸惑いながらも首を縦に振る。

 

「さあ、眠っちゃいなさい! バードスキル〝うたう〟発動! 〝子守唄〟!!」

 

 秋はリュートを爪で弾くと、空中に漂う、音符の形をした白い魔力弾を出現させる。

 

「Zzz……」

 

「ね、寝てやがる……。ゴブリンの時と同じだ……。何で?」

 

 秋のスキルによって出現した、空中に漂う、催眠効果を持った白い音符型の魔力弾は、ジャイアントスネイルとガイコツの方へと飛んでゆく。飛んでいった白い音符の魔力弾は、ジャイアントスネイルとガイコツに着弾。

 魔力弾が着弾したジャイアントスネイルは、殻に潜ったまま、いびきをかきながら眠ってしまう。

 龍哉は、殻に潜ったジャイアントスネイルが、突然、いびきをかきながら眠ってしまった事に戸惑っていた。どうやら龍哉は、平原のゴブリンの時と同じように、ジャイアントスネイルが眠ってしまったのは、秋の仕業であると、未だに気付いていないようである。

 

「まぁ、眠っているならこのまま放置しても大丈夫そうか……。それよりも今は、勇綺達の加勢に行かねぇと!」

 

 龍哉は、殻に潜ったまま眠っているジャイアントスネイルを、その場に放置しても問題ないと判断すると、直ぐ様、勇綺達の加勢に向かう。

 

「カチカチカチ……」

 

「なっ、何で、こいつだけ眠ってないんだ!?」

 

「嘘っ!? 何で!!?」

 

 いびきをかきながら眠っているジャイアントスネイルとは対照的に、ガイコツは、秋が飛ばした催眠効果を持った音符型の魔力弾が着弾しても、全く動きを止めていなかったのだ。

 秋の子守唄が効かないガイコツは、勇綺を見据えながら歯をカチカチと鳴らしていた。まるで、勇綺を嘲笑っているかのようである。

 催眠攻撃を受けても平然と動いていられるガイコツに、勇綺と秋は目を丸くしながら驚いていた。まさかガイコツが、催眠攻撃を受けても平然としていられるとは、勇綺と秋は想像すらしていなかったのである。

 

「うげぇっ!!?」

 

「勇綺!!?」

 

 ガイコツは右足で、こちらに目を丸くして隙だらけになっている、勇綺の腹部を蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた勇綺は、ガイコツに捕まれていた鉄の鍬を、両手から手を放してしまうと、そのまま地面の上に仰向けになって倒れてしまう。

 秋は、倒れた勇綺の安否を心配すると……。

 

「!! 勇綺!!? この、骨野郎っ!! 何してくれとんじゃあぁっ!! てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「龍哉!?」

 

 加勢に向かった龍哉は、勇綺を攻撃したガイコツに怒りを露にする。

 秋は、怒りを露にした龍哉の方へと振り向く。

 

「ぶっ飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 勇綺を蹴飛ばしたガイコツに、龍哉は攻撃を仕掛けようと突撃する。そして龍哉は、ガイコツの頭部に飛び蹴りを放つ。

 

「!?」

 

「んげっ!? 頭が取れても立ってるし!? 何なのよ、こいつ!!?」

 

 龍哉の飛び蹴りによって、ガイコツの頭部は草むらの方へと飛んで行く。だが、頭が取れたガイコツの胴体は、絶命して倒れる事はなく、その場に立っていた。

 龍哉と秋は、頭部を失っても立っていられるガイコツの生命力に、目を大きく見開く。

 龍哉と秋が驚いている最中、胴体だけになったガイコツは、勇綺から引き剥がした鉄の鍬を地面に放り投げると、頭部があった箇所を両手で触れる。すると、両手で触った箇所に、自身の頭部が無い事にガイコツは気付く。

 そして、飛んで行った頭部を探そうとガイコツは、よろめきながら歩き出す。

 だがしかしガイコツは、頭部が飛んで行った草むらの方向とは、逆の方へと歩いていた。おそらくガイコツは、龍哉の攻撃によって頭部が飛んで行ってしまったので、目の前が見えてい無いのだろう。

 胴体だけになって目の前が見えていないガイコツは、勇綺達と頭部が飛んで行った草むらの方向から、どんどん離れて行く。そしてガイコツは、頭部が飛んで行った草むらとは、逆方向の草むらの中に入ると、そのまま森の奥へと消えていった。

 

「「勇綺!」」

 

 龍哉と秋、そしてクランは、勇綺の方へと駆け寄る。

 

「大丈夫か!?」

 

「怪我は無い!?」

 

「いてて……。腹部辺りに、まだ痛みが少しあるけど……、この程度なら問題なく動けるし、大丈夫だよ……。だから、心配しないで二人共」

 

 駆け寄った龍哉と秋は、勇綺の身体を気遣う。

 こちらを心配する龍哉と秋を安心させようと勇綺は、自身の身体の怪我が軽傷であった事を伝える。

 すると……。

 

「勇綺お兄さん……。これ……、使って……」

 

「「「!?」」」

 

 クランは、肩に斜め掛けにしていた水色の布製のショルダーバッグから、透明な液体が入った小瓶を一本取り出す。クランが取り出した小瓶は、回復アイテムのポーションだ。

 取り出したポーションを、クランは勇綺に手渡す。

 勇綺達は、クランの行動に目を大きく見開く。つい先程まで、こちらに警戒していたクランが、怪我をした勇綺にポーションを手渡したのである。これには、勇綺達が驚くのも無理は無いだろう。

 

「え……、あ、ありがとう……。クランちゃん」

 

 手渡されたポーション入りの小瓶を受け取った勇綺は、戸惑いながらもクランに感謝をする。

 そして勇綺は、クランから手渡されたポーションを、一気に飲み干す。すると、勇綺の口の中に、ポーションの爽やかな苦味が広がって行く。

 

「うぁぁぁ……」

 

「だ、大丈夫か? 勇綺?」

 

 口の中に広がったポーションの苦味に、勇綺は顔をしかめる。

 龍哉は、苦味に顔をしかめている勇綺の身体を、戸惑いながらも気遣う。

 

「クランちゃん……。もしかして、あたし達の事を信用してくれ……たの?」

 

 ポーションの苦味に顔をしかめている勇綺を龍哉が気遣っている最中、秋はクランに恐る恐る、こちらを信用してくれたかどうか、問い掛けると……。

 

「うん、まぁ……、一応……ね? あたしの事を命懸けで守ってくれたし……。秋お姉さん達の事を少しだけ信用するよ……」

 

 どうやらクランは、こちらを命懸けで守ってくれた秋達の事を、一応信用してくれたようである。

 

「じゃあ、クランちゃん。お願い、あたし達と一緒にラズさんの所へ帰ろう? ラズさんが心配しているよ?」

 

 秋は優しく微笑みながらクランに、ラズの所へ一緒に帰るようにお願いすると……。

 

「う〜〜ん……、ホワイトラビットを、まだ見つけてないけど……。でも、これ以上探しても見つかりそうも無いから、秋お姉さん達と一緒にお家に帰るよ……」

 

 秋からの頼みにクランは、しぶしぶながらも聞き入れる。

 

「勇綺! 龍哉! はやく、クランちゃんと一緒に帰るわよ!」

 

「あ、うん!」

 

「おう!」

 

 クランがこちらの頼みを聞き入れると秋は、勇綺と龍哉を呼び掛ける。

 勇綺は、地面に放り投げられた鉄の鍬を回収すると、龍哉と一緒に、こちらを呼び掛ける秋の方へと歩き出す。

 

「じゃあ、この森からさっさと脱出するわよ!」

 

 秋達はクランを連れて、急いで森から脱出するのであった。

 




ヒロインを登場させたい……
ヒロインを登場させたい……
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あっ、感想や評価をお願いします!


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第30話 ラズからのお礼

最新話で―ーす!

どうぞ!


 ランドロックの森から脱出した勇綺達はクランを連れて、ランドロック城下町にある、ティエラの服屋に到着した。

 服屋に到着した勇綺は、ラズが待っている店の扉を開ける。

 扉を開けると、勇綺達はクランを連れて、店の中に入って行くと……。

 

「お母さん!」

 

「!?」

 

 クランは、店の中で待っていたラズを呼び掛ける。

 ラズは、店の中に入ってきて、こちらを呼び掛けるクランに、目を大きく見開く。するとラズは、クランの元へ急いで駆け寄ると……。

 

「クラン! ああ、クラン! 心配したんだからっ! もう一人で、森の中に入ったりしないで? もし、クランに何かあったら、私……、私……。ううぅ……」

 

「あう……。お母さん……。ぐすっ……、心配かけちゃって、ごめんなさい……。ぐすっ……」

 

 駆け寄ったラズはクランを抱き締めながら、大粒の涙を流す。そして、涙を流しながらラズは、クランに説教をする。

 ラズに説教されて、クランはしゅんと落ち込んだ。おそらくクランは、ラズを心配させてしまった事に、相当後悔したのだろう。するとクランはラズに、心配を掛けてしまった事について、目に涙を浮かべながら謝罪をする。

 

「一件落着かな?」

 

「うん」

 

「ああ」

 

 ラズとクランのやり取りを、秋と勇綺と龍哉、そして売り子のチョコは、嬉しそうに見据えていた。

 

「クランを探していただき、本当にありがとうございます!」

 

「ありがとう! 秋お姉さん、勇綺お兄さん、龍哉!」

 

「ありがとうございます!」

 

「おい、俺だけ呼び捨てかよ!? この小娘!?」

 

 ラズとクラン、そしてチョコは勇綺達に、会釈しながら感謝をする。だが何故かクランは、龍哉にだけは呼び捨てにしたのだ。

 勇綺と秋には敬称で呼んで、こちらには呼び捨てにするクランに、龍哉は悪態をつく。

 

「ふんっ! ランドロックの森で、あんたが、あたしを小娘呼ばわりした事、あたしは許さないんだから! レディーを小娘呼ばわりする奴は、呼び捨てで十分だよ! べぇ〜〜だっ!」

 

「はぁ……。何だお前……、ランドロックの森で、小娘呼ばわりされた事を、気にしていやがったのかよ……。反応ねぇから、てっきり気にしてねぇと思ってたんだけどなぁ……。全く、そんな事で根に持つとは、やっぱ小娘だな……」

 

 どうやらクランは、ランドロックの森で龍哉に小娘呼ばわりをされた事が、相当不愉快に感じていたようである。クランは背伸びをしたい年頃であり、小娘呼ばわりをして、こちらを不愉快にした龍哉に、生意気な態度をとってしまうのも仕方がないと言えよう。

 するとクランは、龍哉に向けて、右目の下まぶたを人差し指で引き下げながら舌を出して挑発をする。

 子供っぽい挑発をするクランに、龍哉は溜め息をつきながら呆れていた。更に龍哉は、またもやクランを小娘呼ばわりをしてしまう。

 

「あ―ーっ!! また、あたしを小娘と言ったぁぁぁっ!! うわぁぁぁん、お母さ〜〜ん、あの糞馬鹿アホタレ最悪ぅぅぅ!!」

 

「クラン、あなたを助けてくれた人に、悪口を言っちゃ駄目でしょ?」

 

「ガハハハハハハ、そうだぞ〜〜。小娘〜〜」

 

 龍哉から、またもや小娘呼ばわりされたクランは、目から涙を浮かべながら怒りを露にする。するとクランは、ポロポロと涙を流しながらラズにしがみついた。そして、小娘呼ばわりをしてこちらに不愉快な思いをさせた龍哉に、クランは指を指しながら悪態をつく。

 涙を流しながら龍哉に悪態をつくクランに、ラズは優しくたしなめようとする。

 龍哉は、ラズに優しくたしなめられているクランを見据えながら、ヘラヘラと笑っていた。おそらく龍哉は、小娘と呼ばれて怒りを露にするクランを、からかって楽しんでいるのだろう。

 すると……。

 

「女の子を泣かせて、ヘラヘラと笑ってるんじゃないわよ! この、お馬鹿!!」

 

「オボァッ!!?」

 

 クランをからかってヘラヘラと笑っている龍哉に、秋は怒りを露にする。すると秋は龍哉の後頭部に、強烈なチョップを叩き込んだ。

 秋にチョップを叩き込まれた龍哉は、断末魔をあげる。

 

「もう大丈夫よ、クランちゃん。あの糞馬鹿アホタレは、あたしがやっつけたから!」

 

「ありがとう! 秋お姉さん!」

 

 龍哉にチョップを叩き込んだ秋は宥めるように、泣いているクランの頭を、優しく撫でながら微笑んだ。

 宥められて泣き止んだクランは、龍哉を叩きのめした秋に、笑顔で感謝をする。

 

「あの……」

 

「「「?」」」

 

 クランが秋に感謝をした後、ラズが勇綺達に呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺と秋、そして、叩かれた箇所を擦っている龍哉は、ラズの方へと視線を移す。

 

「勇綺様達は、クランを探してくれました。だから、そのお礼として当店の服を一人一着、無料でお売りします。どれか好きな服を選んで下さい!」

 

「「え!?」」

 

 どうやらラズはクランを探してくれたお礼として、勇綺達に服を一人一着、無料で売ってくれるそうだ。

 ラズの言葉に勇綺と秋は、目を大きく見開く。元々勇綺達は、ティエラの服屋で、異世界の服を買うつもりだった。だが、まさか異世界の服を、人助けをしたお礼として、只で入手できるとは、勇綺と秋は思ってもいなかったのだ。

 

「只で貰っても……、良いのかな? 勇綺?」

 

「う、う〜〜ん……、お店の商品を只で貰うのは……。何かねぇ……」

 

 ラズから、異世界の服を無料で売ってもらえる事に、秋と勇綺は気が引けていた。いくら、助けてくれたお礼だからと言って、只で店の商品を素直に受け取れる程、勇綺と秋は図々しい性格はしていないのだ。

 すると……。

 

「何、遠慮してんだよ? 二人とも? ラズさんが、お礼として服を只で売ってくれるって言ってんだ。だったら、ラズさんからのお礼を素直に受け取ろうぜ? ここで、お礼を受け取らなかったら、ラズさんが心苦しいだろ?」

 

「龍哉様の言う通りです。私達に、遠慮はしないで下さい。助けてもらっておいて、何のお礼もしないのは心苦しいんです。私達は、危険を顧みずクランを探してくれた勇綺様達に、是非ともお礼がしたいんです! どうか、私達からのお礼を受け取って下さい! お願いします!」

 

 遠慮をしている勇綺と秋に、龍哉とラズは、お礼を受け取るように説得をする。

 

「じゃ、じゃあ……、お言葉に甘えよう……かな?」

 

「う、うん……」

 

 先程まで遠慮をしていた秋と勇綺は、二人の説得に根負けをしたのか、ラズからのお礼を受け取る事に納得する。

 

「よっしゃっ! じゃあ、服を選びますか!」

 

「うん!」

 

「ええ!」

 

 龍哉と勇綺、そして秋は、欲しい服を探そうと、店の中を意気揚々と歩き出した。

 




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第31話 服選びは、時間が掛かる?

はい、最新話です!

それでは、どうぞ♪


「どれにすっかな……」

 

「え〜〜と……」

 

「う〜〜ん、服がこんなにあると、迷うわね……」

 

 ラズからのお礼で、衣類を一人一着、無料で売ってもらえる事になった龍哉と勇綺、そして秋は、店内の棚や木製のハンガーラックに並べられている、異世界の服を眺めていた。勇綺達は、この中から異世界で生活して行く為に必要な衣服を探しているのである。

 龍哉と勇綺は、店内の壁側に配置されている陳列棚の中から服を選んでおり、そして秋は、中央に二列ずつ配置されている木製のハンガーラックの一列目と二列目の真ん中にある、二人の人が横に並んでも入れそうな位の幅になっている通り道で、ハンガーラックのポール部分にかけられている沢山の衣類の中から、欲しい衣服を選んでいた。

 

「これにすっかな……」

 

「僕は、この服にしようかな?」

 

 龍哉と勇綺は、陳列棚の中にある衣服を手に取る。

 棚の中から選んだ服を手に持ったまま二人は、店内の奥に設置されている、三つの試着室に向かって歩き出す。勇綺が、右側の試着室のカーテンを開けて部屋の中に入ると、龍哉は、一番左側の試着室のカーテンを開けて部屋の中へと入って行く。

 試着室の中に入った勇綺は、学校の制服を脱ぐと、陳列棚の中から選んだ異世界の衣服に着替える。

 着替え終わった勇綺の服装は、オレンジ色のワイシャツの上に黄土色のベストを纏い、首の回りには赤いスカーフが巻かれていて、下半身には青いズボンを着用しており、足には灰色のロングブーツを履いていた。

 異世界の衣服に着替えた勇綺は、脱いだ学校の制服をマジックポーチの中に収納すると、試着室のカーテンを開けて、部屋の中から出て行く。

 

「お! 着替え終わったな?」

 

「!」

 

 試着室から出てきた勇綺は、声を掛けられた方へと振り向くと、既に異世界の衣服に着替え終えていた龍哉が、一番左側の試着室の出入口近くに立っていた。

 声を掛けた龍哉は、勇綺の方へと近付く。

 勇綺の視線にいる龍哉の服装は、白いワイシャツの上に黒いベストを纏い、頭には黒いバンダナが巻かれていて、首と手首には、動物の骨や牙で作られたアクセサリーを身に付けており、下半身には焦げ茶色のズボンを着用していて、足には黒いブーツを履いていた。

 

「後は、秋だけか……。全く……、適当な服を選べば良いのに……。服を選ぶのに時間掛け過ぎだろ……」

 

「まぁ、これだけ服がいっぱいあるんだから、欲しい服を一着だけ選ぶのに、時間が掛かるのは仕方がないんじゃないかな?」

 

 龍哉は、未だに欲しい服を一着選ぶのに時間を掛けている秋を見据えながら、ため息をつく。

 ため息をついている龍哉とは対照的に勇綺は、欲しい服を選ぶのに時間を掛けている秋に、余り気にしていないようである。

 

「う〜〜ん……、欲しい服が全然決まらない……」

 

 龍哉と勇綺がやり取りをしている最中、秋はハンガーラックのポール部分にかけられている沢山の衣類の中から、欲しい衣服を一着だけ選ぶのに手間取っていると……。

 

「おい、秋!」

 

「!」

 

 龍哉は、服を選ぶのに手間取っている秋に呼び掛ける。

 呼び掛けられた秋は、龍哉がいる方へと振り向く。

 

「いつまで服を選ぶのに、時間を掛けているんだよ? はやく選べ!」

 

 服を選ぶのに手間取っている秋に、龍哉は、はやく選ぶように促そうとするが……。

 

「そんな事を言われても、こんなに沢山服があると、どの服を選べば良いのか迷っちゃうのよ!」

 

「逆ギレかよ!?」

 

 こちらに文句を言い出す龍哉に、逆ギレした秋は負けじと言い返す。

 龍哉は、逆ギレした秋に目を丸くしながら驚いた。

 

「そんなに文句を言うんだったら、あんたがあたしの服を選びなさいよ!」

 

「!? ちっ、面倒くせぇな……。まぁ……、このまま秋に服を選ばせたら、時間が掛かりそうだし、仕方ねぇから俺が選んでやるよ」

 

 怒った秋は龍哉に、自分の代わりに服を選べと、理不尽な要求をする。

 龍哉は秋の理不尽な要求に、しぶしぶながらも従った。

 

「え〜〜と……、お、これだな!」

 

「はやっ!」

 

 龍哉は、ハンガーラックに掛けられている沢山の衣類の中から、何の迷いもなく一着の衣服を手に取る。そして、選んだ衣服を手に持ったまま、秋の方へと近付く。

 龍哉の衣服を選ぶスピードに、秋は目を丸くしながら驚いていた。

 

「ほいっ!」

 

「何かその顔、スッゴくムカつくんだけど……。挑発してんの?」

 

 手に持った衣服を、龍哉は得意気な表情で、秋の目の前に突き付ける。理不尽な要求をした秋に、一泡吹かせた事が相当嬉しかったのだろう。

 服を目の前に突き付けられた秋は、得意気な表情をしている龍哉に、苛立ちを覚えながら悪態をつく。どうやら秋は、龍哉の得意気な表情が、こちらを挑発しているように見えたようである。

 

「どうだ、秋? 言われた通り、俺が、お前の服を選んでやったぜ? 心を込めてありがた〜〜く感謝しろよ? ほれ? 恥ずかしがらずに言ってみろ。お? お?」

 

 こちらに苛立つ秋に、龍哉は面白く感じたのか、調子にのってやたらと煽りまくる。

 すると……。

 

「調子に乗んな! お馬鹿!」

 

「ぶべらっ!?」

 

 調子にのってこちらを煽りまくっている龍哉に、秋はついに怒りだす。そして龍の頭に、おもいっきりチョップを叩き込んだ。

 秋に、頭を叩かれた龍哉は、珍妙な断末魔をあげる。すると、秋に頭を叩かれた衝撃で、龍哉は右手に持っていた衣服を床の上に落としてしまう。

 

「ふん!」

 

「うごごご……」

 

「りゅ、龍哉、だ、大丈……夫?」

 

 龍哉の頭を叩いた秋は、床の上に落ちている衣服を拾う。そして、叩かれた箇所を両手で押さえながら呻き声をあげて、床の上にうずくまっている龍哉を、秋は一瞥した後、鼻を鳴らして試着室の方へと歩き出す。

 秋が歩き出すと同時に、勇綺は龍哉の方へと慌てながら駆け寄る。呻き声を上げて、うずくまっている龍哉が心配になったのだろう。勇綺は恐る恐る、うずくまっている龍哉に声を掛けると……。

 

「くっそ〜〜、秋の奴……。今日で何度目だよ……。全く、容赦なく何度も頭を叩きやがって……。今時、理不尽暴力ヒロインなんて流行らねぇぞ……」

 

「理不尽暴力ヒロインって……。そもそも龍哉が調子に乗って、秋を煽ったりするから叩かれるんじゃないのかなぁ? とりあえず、ちゃんと秋に謝っときなよ?」

 

 叩かれた箇所を龍哉は右手で擦ると文句を言いながら、試着室に入って行く秋を見据えていた。

 頭を叩いた秋に文句を言っている龍哉に、勇綺は、たしなめようとする。

 

「はぁ……。あ〜〜、はいはい。わかった、わかった。後で謝っとくよ……」

 

 勇綺の説教に龍哉は、しぶしぶながら納得する。

 勇綺と龍哉がやり取りをしている最中、秋は試着室で学校の制服を脱いでいた。

 

「龍哉が選んだ服……。何か地味ね……。もうちょっと、可愛い服を選べなかったのかしら?」

 

 制服を脱いで下着姿になった秋は、龍哉が選んだ衣服を手に取る。だが秋は、龍哉が選んだ服があまり気に入っていないのか、愚痴をこぼしながら不満げな表情で、手に持っている異世界の衣服を見据えていた。

 




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第32話 チョコからのお願い

今年も間に合いました!

それでは、最新話をどうぞ♪


「う〜〜、龍哉に、服を選び直せようかしら? いや、逆ギレして龍哉に無理矢理服を選ばせたあたしが、今更、服が地味だから選び直せなんて、そんな身勝手な事は言え無いわよねぇ……。はぁ……。自分で服を選ばないで、無理矢理龍哉に服を選ばせた、あたしの自業自得か……」

 

 試着室の中で秋は、龍哉に異世界の衣服を選び直させようと考えていたが、今更、そんな身勝手な事が言える筈もなく、溜め息をつきながら、幼なじみに無理矢理服を選ばせてしまった事を後悔していた。

 

「後悔しても仕方ない……、せっかく龍哉が選んでくれたんだし……、着てみるか……」

 

 このまま後悔していても仕方ないと思った秋は、しぶしぶながら龍哉が選んでくれた異世界の衣服に着替える。

 着替え終わった秋は、試着室の壁に取り付けられている鏡に視線を移す。鏡に映った秋の服装は、オレンジ色のへそ出しノースリーブの服の上に、白いマントを纏い、両腕には焦げ茶色の振り袖風のアームカバーが付けられていて、下半身にはベルト付きの焦げ茶色のショートパンツを着用しており、足には黄土色のブーツを履いていた。

 

「はぁ……。やっぱ、地味ね……」

 

 鏡に映った、異世界の衣服に着替えた自分の姿に、秋は溜め息をつきながら愚痴をこぼす。しぶしぶながら着替えてはみたものの、やはり秋は、龍哉が選んだ地味な衣服を、どうしても気に入ることが出来なかった。

 秋は、鏡に映った、異世界の衣服に着替えた自分の姿に愚痴をこぼした後、脱いだ学校の制服をマジックポーチの中に収納すると、試着室のカーテンを開けて、部屋の中から出て行く。

 

「秋!」

 

 試着室から出てきた秋を、勇綺が呼び掛ける。

 

「勇綺!」

 

 呼び掛けられた秋は、勇綺と龍哉がいる方へと歩き出す。

 

「二人共、待たせてごめん!」

 

 秋は着替えている間に、勇綺と龍哉を待たせてしまった事について謝罪をする。

 

「そんなに長く待たされていないし、特に気にしてはいないよ」

 

 勇綺は、長く待たされた事について特に気にしておらず、こちらに謝罪をする秋を元気付けようとする。

 

「ありがとう、勇綺」

 

 こちらに元気付けてくれた勇綺に、秋は微笑みながら感謝をすると……。

 

「秋、ちょっと言いか?」

 

「?」

 

 龍哉が突然、秋に呼び掛ける。

 秋は、こちらに呼び掛けた龍哉の方へと視線を移す。

 

「え〜〜と……、あのさ……。さっき、お前の事を煽ったりして悪かったな……。本当に、ごめん……」

 

「あ〜〜、あれね……。別に、もういいわよ。気にしてないから」

 

 龍哉は秋に、調子に乗って煽ってしまった事について、謝罪をする。

 秋は、煽られた事について許してくれたのか、こちらに謝罪をする龍哉に優しく微笑んだ。

 

「そうか、気にしてないか……。良かった……」

 

 煽られた事について許してくれた秋に、龍哉は、ほっと胸を撫で下ろす。

 

「二人共、ちょっと良いかな?」

 

「「?」」

 

 やり取りをしていた龍哉と秋に、今まで静観していた勇綺が突然呼び掛ける。

 呼び掛けられた龍哉と秋は、勇綺がいる方へと視線を移す。

 

「着替えた後の事だけど……。これから図書館によって行って、闇の王や魔物を倒す為の情報を集めようと思う。今の僕達は、雑魚モンスターに苦戦する程弱い。はっきり言って、このままじゃ闇の王や魔物を倒すのは、到底無理だと思う。弱い僕達が、闇の王や魔物に勝つには、敵の情報が絶対に必要だと思うんだ!」

 

 勇綺は、こちらを見据える龍哉と秋に、図書館に行って闇の王や魔物を倒す為の、情報を集める事を提案する。今のパーティーの戦力を考えれば、敵の情報を集めるのは妥当な判断だろう。

 

「確かに、今の俺達は弱いよなぁ……。雑魚モンスターに苦戦しまくっている俺達は、これから戦う敵の事を、知った方が良いかもしれねぇな……」

 

「勇綺の言うとおりかもね……。魔物に苦戦して、あたし達、何度も危ない目にあってるし……。それを考えると、戦う相手の事を調べた方が良いかも……」

 

 勇綺からの提案に龍哉と秋は、今までの魔物との戦いを思い返しながら納得すると……。

 

「あの〜〜……」

 

「「「!」」」

 

 やり取りをしていた勇綺達に、売り子のチョコが突然呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺達は、チョコがいる方へと視線を移す。

 

「勇綺様が先程……、《闇の王や魔物を倒す》と言っていましたけど……。勇綺様達は……、闇の王と戦うつもり……なのですか?」

 

 こちらを見据える勇綺達に、チョコが恐る恐る問い掛ける。

 

「え……、ま、まぁ……」

 

「お、おうよ……」

 

「そ、そうだけど……」

 

 突然チョコに問い掛けられて、勇綺と龍哉、そして秋は、戸惑いながら返答する。

 すると……。

 

「勇綺様、お願いします! 私の大切な幼なじみを助けて下さい!」

 

「「「えっ!?」」」

 

 チョコは、深々と頭を下げながら勇綺達に頼み込む。

 突然、チョコからのお願いに、勇綺達は目を大きく見開きながら困惑する。

 

「ちょ、ちょっと、待って下さい! い、いきなり、頼み込まれても困ります! ま、先ずは、事情の説明からお願いします!」

 

「あ、そ、そうですね……。突然、事情も言わず、頼み込んでも駄目ですよね……。ごめんなさい」

 

 勇綺は慌てふためきながらチョコに、事情を説明するように頼み込む。

 事情も説明せず、突然頼み込んでしまった事について、チョコは恥ずかしさのあまり、顔を赤らめながら勇綺達に謝罪をする。

 

「えっと……。実は、私の幼なじみ、【バニラ】が家族の仇をとる為に、闇の王の一人、【甲王(こうおう)イッカク】の退治に、協力してくれる仲間を探しているんです……。でも仲間探しは、思うように上手くいかず、バニラは困ってて……。それで私は……、困っているバニラの力になりたくて……、こうしてイッカク退治に協力してくれそうな人を、呼び掛けたりしているんです……。そんな時に勇綺様が闇の王を倒すと言っていたので、私は嬉しさのあまり事情を説明せず、勇綺様に助けを求めてしまったのです……」

 

「成る程ね……、あんたの事情はよく分かった。おい、勇綺!」

 

 謝罪をした後、チョコは勇綺達に事情を説明する。

 チョコの事情に龍哉は納得すると、勇綺の方へと視線を移す。すると龍哉は、勇綺に呼び掛ける。

 

「どうする? 元々俺達は、闇の王を倒すつもりだったし……、バニラって奴のイッカク退治に、協力してみるか?」

 

 龍哉は勇綺に、バニラのイッカク退治に、協力するべきか意見を求める。

 

「そうだなぁ……。僕は、バニラさんと協力してイッカクを退治をした方が良いと思うな。今の僕達は、イッカクに対抗する為の情報が余り多くない。このままだと、イッカクを倒せないだけじゃなく、アクアマリン王国にいる桃条さん達と、合流は難しいと思う。でも、バニラさんと協力すれば、イッカクの情報が手に入って、イッカクとの戦いが楽になると思うんだ」

 

「成る程……、確かにそうだな……。よし、分かった。俺も、イッカク退治に協力するぜ!」

 

 こちらに意見を求める龍哉に、勇綺はバニラのイッカク退治に、協力する事を提案する。

 勇綺の提案に納得した龍哉は、イッカク退治に協力する事を賛同するのであった。

 




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それでは皆様!
良いお年を!!


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第33話 白い少女

あけましておめでとうございます!

そして、大変長らくお待たせしました!

やっと、ヒロインが登場します!

それでは、最新話をどうぞ♪


 バニラのイッカク退治に協力する事に賛同した龍哉は、秋がいる方へと視線を移す。

 

「秋、お前もバニラのイッカク退治に協力するよな?」

 

「無理……、無理よ……、どうしよ……」

 

 龍哉は秋に、イッカク退治に協力をするか問い掛ける。

 だが、龍哉の問い掛けに秋は返事をせず、ぶつぶつと独り言を呟いていた。

 

「おい、秋!」

 

「へあっ!? え、え、あえ!?」

 

 問い掛けても返事をしない秋に、龍哉は大きな声で呼び掛ける。

 すると、突然呼び掛けられた秋は、慌てふためきながら龍哉がいる方へと振り向く。

 

「はぁ……。何、ぶつぶつ独り言を言ってんだよ? それよりも、秋もイッカク退治に協力するよな?」

 

 呼び掛けられて慌てふためく秋に、龍哉は呆れながらため息をつく。そして、こちらを見据える秋に、龍哉は再びイッカク退治に協力をするか問い掛けると……。

 

「へっ!? え、え〜〜と……、そ、それは……」

 

「お、おい……、どうした……? まさか……、イッカク退治に協力するのを迷っている……のか?」

 

 龍哉の問い掛けに秋は、顔を青ざめながら返答に戸惑っていた。

 戸惑う秋に、違和感を感じた龍哉は、恐る恐る問い掛ける。

 すると……。

 

「な、何、言っているのよ! おほほほほ! あ、あたしが、イ、イッカク退治に協力するのを、ま、迷うわけが無いでしょ!? や、や〜〜ね〜〜、龍哉は〜〜。お、お〜〜ほっほほっほっほっ!!」

 

「だよな。秋が、人助けを断るわけがないよな」

 

「……」

 

 龍哉の問い掛けに秋は、何かを誤魔化しているのか、わざとらしい笑い方で返答をする。

 龍哉は、わざとらしい笑い方をする秋の言葉に、何の疑いもなく納得してしまう。

 龍哉とは対照的に勇綺は、わざとらしい笑い方をしながら返答をする秋に、懐疑的な目で見据えていた。おそらく勇綺は、秋が何かを隠していると感じたのだろう。

 

「ありがとうございます! バニラも、きっと喜ぶと思います!!」

 

 勇綺達がイッカク退治に協力してくれる事に、チョコは顔を綻ばせながら感謝をする。

 

「それでは早速……、勇綺様達にバニラを紹介したいのですが……、その前に……。ラズさん!」

 

「「「?」」」

 

 チョコは勇綺達にバニラを紹介する前に、ラズが居る方へと振り向く。

 突然ラズを呼び掛けたチョコを、勇綺達は首を傾げながら見据えていた。

 

「ラズさん! 私、少しの間だけ外出をしますので、許可をお願いします!」

 

「はい、良いですよ〜〜。行ってらっしゃ〜〜い♪」

 

 どうやらチョコがラズを呼び掛けたのは、外出許可を貰う為だったようである。

 呼び掛けられたラズはチョコの外出に、すんなりと許可を出した。

 

「では、バニラの家に案内しますので、私について来て下さい!」

 

 外出許可を貰ったチョコは、勇綺達に付いて来るように促すと、意気揚々と店から出て行く。

 勇綺達は、店から出て行くチョコの後を、見失わないように駆け足で付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティエラの服屋から出ていった勇綺達は町中で、バニラの家に案内をしてくれているチョコの後を付いて行くと……。

 

「おい……、勇綺……」

 

「? 何?」

 

 突然、龍哉が歩きながら小声で、勇綺を呼び掛ける。

 歩いている最中の勇綺は、いきなりこちらを呼び掛けた龍哉が居る方へと振り向く。

 

「店内の時、気付かなかったけど……。見ろよ……、チョコの姉さんの尻……。桃尻だ……。桃の様な良い形をした、けしからん美尻だと思わねぇか……? へへへ……」

 

「!? え……、あ……、う、うん……、まぁ……、そう……だね……」

 

 勇綺を小声で呼び掛けた龍哉は、先頭を歩いているチョコの尻に指を指す。どうやら龍哉が呼び掛けたのは、チョコの桃尻に注目させて、勇綺の返答を知る為だったようである。

 龍哉は、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしながら、チョコの桃尻を凝視していた。おそらく龍哉は、チョコの桃尻に相当魅了されてしまったのだろう。

 龍哉が指を指した先で、先頭を歩いているチョコの桃尻に、勇綺は顔を赤らめながら凝視する。おそらく勇綺も、チョコの美しいお尻に惹き付けられてしまったのだろう。

 すると……。

 

「何、鼻の下を伸ばしてデレデレしてんのよ! エロ男子共!」

 

「いたっ」

 

「いてっ」

 

 秋は、チョコの美尻に、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしながら凝視している勇綺と龍哉の頭に、チョップを叩き込んだ。おそらく秋は、女性のお尻をニヤニヤしながら凝視している勇綺と龍哉が、余りにもだらしないと思い、二人の頭を叩いたのだろう。

 頭を叩かれた勇綺と龍哉は、叩かれた箇所を擦りながら秋が居る方へと振り向く。

 

「全く……。女性のお尻を見てデレデレしながら歩いていないで、ちゃんと真面目に歩け!」

 

「ひっ! は、はい!」

 

「!? お、おうっ!」

 

 秋は、こちらを見据える勇綺と龍哉に、呆れながらも叱り飛ばす。

 叱られた勇綺と龍哉は、秋の怒った表情にびびりながら、先頭を歩いているチョコの方へと振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チョコの道案内によって勇綺達は、町中を数分程歩いていると、目的の場所であるバニラの家に到着する。

 バニラの家は路地裏に建っており、外観は、中世の家屋をイメージさせるような、石造りのレンガで出来ていて、入り口には木製の扉が取り付けられていた。

 

「バニラ、居る? チョコよ! 話があるの!」

 

 チョコは、木製の扉に三回程ノックをしながら、バニラの名前を呼び掛ける。

 するとチョコの呼び掛けで、音をたてながらゆっくりと木製の扉が開くと、家の中から一人の少女が姿を現す。扉を開けた少女の年齢は十七歳位だろうか。身長は百六十一センチメートル程で、雪のように白い肌と腰まで伸ばした白い髪、そして宝石のサファイアをイメージさせるような青い瞳は、彼女に物静かで神秘的な雰囲気を出させていた。次に少女の服装は、黒い十字マークがついたナースキャップを頭に載せ、身に纏っている服は、アームホールと裾の縁部分には黒いライン模様がついていて、服の前部分には白い十字模様が描かれている黒いボタンが十個取り付けられた、ノースリーブのナース服である。両腕には黒いアームカバーが付けられていて、両足には黒いサイハイソックスを着用しており、足には白色のブーツを履いていた。

 

(か、可愛い……。綺麗だなぁ……)

 

(勇綺ったら……、メイドの時と同じように、また美少女に鼻の下を伸ばして……)

 

 家の中から姿を現した、物静かで神秘的な雰囲気を出している白い少女に、勇綺は心臓をバクバクさせながら見とれてしまう。

 秋は、美少女メイドの時と同じようにデレデレしている勇綺に、頬を膨らませながら睨み付けていた。

 

「なぁ、チョコの姉さん? この美少女がバニラさんか?」

 

「えっと……。この娘の名前は、マシロ・ホワイトスノウ。バニラが造ったホムンクルスよ」

 

 龍哉はチョコに、目の前の白い少女について問い掛ける。

 龍哉の問い掛けにチョコは、目の前の白い少女について返答するのであった。

 




やっと、ヒロインが登場できたぁ……。

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第34話 天才錬金術師バニラ・コールド

ずっと使っていたガラケーが壊れてしまったのでスマホに変更しました。

これからはスマホ投稿になります。

それにしても、スマホ使いづらい……(汗)



「この美少女が、ホムンクルスなのかよ……。ファンタジー系の創作物の中だけの存在じゃなく、マジで居たのか……」

 

「凄い……。創作物じゃない、本物のホムンクルスが本当に存在していたなんて……」

 

「人が人を造るって……。何でも有りなのね……、異世界って……」

 

 龍哉と勇綺は、ファンタジー系の創作物に登場するホムンクルスが、目の前に存在していた事に、目を大きく見開く。

 秋は、目の前の少女が人によって造られた存在である事を知って、異世界の技術に目を丸くしていると……。

 

「ゴホッ、ゴホッ……。マシロ? 誰か来ているの?」

 

 マシロに驚いている勇綺達の前に、一人の女性が疲れた表情で、咳き込みながら家の奥から姿を現す。姿を現した女性の顔はマシロとそっくりであり、年齢は二十代前半位だろうか。身長は百六十一センチメートル。髪型はマシロと同じく、腰まで伸ばしたロングヘアーで、髪の色は黒色。瞳の色は、火をイメージさせるような赤色であり、彼女に攻撃的な雰囲気をださせている。服装はフード付きの緑色のケープを、白いワイシャツの上に纏い、下半身には緑色のロングスカートを着用しており、足には黒色のブーツを履いていた。

 

(マシロとそっくり……)

 

(マシロとそっくりね……)

 

(マシロとそっくりだな……)

 

 勇綺と秋、そして龍哉は、マシロと黒髪の女性の顔がそっくりである事に、目を丸くしていると……。

 

「バニラ!」

 

「! チョコ? そちらの人達は誰?」

 

「「「!」」」

 

 チョコは、家の奥から姿を現したバニラを呼び掛ける。

 呼び掛けられたバニラは、チョコが居る方へと視線を移す。するとバニラはチョコに、勇綺達について問い掛ける。

 勇綺達は、こちらの事についての話し合いをするチョコとバニラの方へと視線を移す。

 

「この人達は、あなたのイッカク退治に協力してくれる仲間よ!」

 

 問い掛けられたチョコは、勇綺達がイッカク退治の協力者である事をバニラに伝える。

 すると……。

 

「え!? ゴホッ、ゴホッ……。それは、本当!? この人達が本当に、イッカク退治に協力してくれるの!? 間違いは無い!?」

 

「ええ、大丈夫! 間違いは無いわ。勇綺様達が、《闇の王や魔物を倒す》と、この耳でちゃんと聞いたんだから!」

 

 チョコの返答に、バニラは目を大きく見開く。するとバニラは、咳き込みながら勇綺達が本当にイッカク退治に協力してくれるのか、チョコに問い質す。

 こちらに問い質すバニラに、チョコは自身の右耳に、右手の人差し指を差しながら自信満々に返答をする。

 

「ゴホッ、ゴホッ……。……ねぇ、あなた達?」

 

「は、はい!」

 

「え、は、はい!」

 

「お、おう!」

 

 チョコの返答を聞いたバニラは、咳き込みながら視線を勇綺達に移す。するとバニラは、突然勇綺達を呼び掛ける。

 二人のやり取りを黙って見据えていた勇綺と秋、そして龍哉は、バニラに突然呼び掛けられて、驚きながら返事をしてしまう。

 

「イッカクは恐ろしく強いわよ? もしかしたら、死ぬかもしれない……。それでも、イッカク退治に協力する覚悟はある?」

 

「はい! 覚悟は出来ています!」

 

「おうよ! 覚悟なんてとっくに出来ている! イッカクなんてバッキバキのボッロボロの肉団子にしてやんぜ!」

 

「え、あ、は、はい……。が、頑張ります……」

 

 バニラは、勇綺達にイッカク退治に協力する覚悟を問い掛ける。おそらく勇綺達が、イッカク退治にどれほど本気で協力してくれるのか、確認する為なのだろう。

 バニラの問い掛けに、イッカク退治に協力する覚悟が出来ていた勇綺と龍哉は、威勢よく返答をする。

 威勢よく返答をする勇綺と龍哉とは対照的に秋は、どこかぎこちなく返答をしていた。

 

「ゴホッ、ゴホッ……、そう……、分かった……。あなた達の覚悟を信じるわ……。とりあえず、家の中に入りなさい。家の応接室で、イッカク退治について色々と話したいからね……。マシロ、来なさい……」

 

「はい……、御主人様……」

 

 勇綺達の返答に、バニラは咳き込みながら納得する。そしてバニラは、勇綺達に家の中に入るように促すと、マシロを呼び掛けてから自身は家の奥へと歩き出す。

 呼び掛けられたマシロは、歩き出したバニラの後をついて行く。

 

「じゃあ、私達も中に入りましょう?」

 

「「はい」」

 

「おう」

 

 チョコは、勇綺達に声を掛けると、バニラの家の中へと足を踏み入れる。

 声を掛けられた勇綺と秋、そして龍哉は

、バニラの家の中に足を踏み入れたチョコの後を付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バニラの家の中に足を踏み入れた勇綺達は、チョコ達の後をついて行きながら、この家の廊下をキョロキョロと見回していた。廊下の壁は、染みや汚れ等が無い清潔感の有る白色。窓から差し込む日の光に照らされて床はピカピカに光っており、白い壁には絵画が掛けられていた。

 すると、先頭を歩いていたバニラが、白い壁に取り付けられている茶色の扉の前に立ち止まる。おそらく、この茶色の扉の先にある部屋が応接室なのだろう。

 

「マシロ。あなたは、お茶とお菓子の用意を御願いね」

 

「はい、畏まりました……」

 

 バニラは部屋に入る前に、マシロにお茶とお菓子の用意をするように指示を出す。

 指示に従ったマシロは、お茶とお菓子を用意しようとバニラ達から離れると、廊下の曲がり角を曲がって行く。そして、曲がり角を曲がったマシロの姿は、勇綺達から見えなくなる。

 

「私達は先に、応接室に入りましょう。さぁ、入って」

 

 マシロが廊下の曲がり角を曲がって姿が見えなくなると、バニラは、勇綺達に応接室に入るように促してから、その部屋の中へと入って行く。

 促された勇綺達は、バニラの後に続くように、応接室の中へと足を踏み入れる。

 応接室に足を踏み入れた勇綺達は、部屋の中を見回す。オレンジと茶色を基調とした壁には、廊下の白い壁と同じく絵画が掛けられている。床の上には、蔓のような植物の模様が黄色い糸で刺繍された、赤い絨毯が敷かれており、その絨毯の上に、六台の一人掛けのソファーが、茶色の長いテーブルの片側に三台ずつ対面になるように設置されていた。

 

「さぁ、座って」

 

 応接室に入ったバニラは、先にソファーに腰を掛ける。そしてバニラは勇綺達に、ソファーに座るように促す。

 バニラに促された勇綺達は、空いているソファーに腰を掛けてゆく。

 

「そう言えば、まだ自己紹介をしていなかったわね……。ゴホッ、ゴホッ……。私は、天才錬金術師バニラ・コールド。よろしくね」

 

(((自分で自分を《天才》って言ってるし!?)))

 

 勇綺達がソファーに腰を掛けると、バニラは咳き込みながら自身の自己紹介をする。

 バニラの自己紹介に、勇綺達は目を丸くしながら驚いた。まさか自己紹介で、自分自身を天才呼びするとは思ってもいなかったのだ。

 

「えっと……、ぼ、僕は、成神勇綺……です。よ、よろしくお願いします……」

 

「お、俺は、鉄龍哉だ。よ、よろしく……」

 

「わ、私は、し、紫堂秋といいます……。よ、よろしくお願い……します……」

 

 バニラの自己紹介に驚いた勇綺と龍哉、そして秋は、戸惑いながらも、それぞれ自己紹介をするのであった。




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第35話 切り札

最新話です!
どうぞ!


「お互いの自己紹介を終えたし……、イッカクについての話をする前に……。先ずは、成神君、鉄君、紫堂さん……」

 

「「へ? は、はい!?」」

 

「お、おう!」

 

 お互いの自己紹介を終えると、バニラは突然、勇綺達の名前を呼び掛ける。

 突然バニラに名前を呼び掛けられた事で、勇綺と秋、そして龍哉は慌てながら返事をしてしまう。

 

「ゴホッ、ゴホッ……。これからは、共にイッカクを退治する仲間なんだし、あなた達の職業を教えてくれないかしら? あなた達の事を予め知っておかないと、作戦を練る時や、戦闘中に支障が出るかもしれないからね」

 

「え、えっと……、それは……」

 

「いや、職業は……。う〜〜ん……」

 

 バニラは勇綺達の職業について、咳き込みながら問い掛ける。

 バニラから問い掛けられて、勇綺と龍哉は、自分達の職業を教える事に迷っていた。何故ならば、こちらの職業を教えた事で、バニラがオドワルド王や武器屋の店主のように態度を豹変させて、戦闘職じゃない自分達を理不尽に責め立てて、不愉快な思いをさせてくる可能性があるかもしれないからだ。だから勇綺と龍哉がバニラに、自分達の職業を教える事に迷ってしまうのも無理はないだろう。

 すると……。

 

「あの……、その……。私の職業は……、バードです……」

 

「「えっ!?」」

 

 自分の職業を教える事に迷っている勇綺と龍哉とは対照的に、秋は、自身の職業をバニラに教えてしまう。

 勇綺と龍哉は目を丸くしながら、自身の職業をバニラに教えた秋が居る方へと振り向く。

 

(教えちゃった……。秋が、職業を教えちゃった……。ど、どうしよ……。王様達みたいにバニラさんも豹変して、戦闘職じゃない僕等を追い出そうとするんじゃ……)

 

(秋……、おまっ! ヤバい、ヤバい、ヤバい! これは、やべぇぞ!? このままだとまた、糞王や武器屋のおやじの時みたいに、このねぇちゃんも豹変して俺達に、《戦闘職じゃない役立たずな雑魚共は、お呼びじゃないんだよ! 帰れ!!》とか言うんじゃねぇか!?)

 

 秋の方へと振り向いた勇綺と龍哉は、戦闘職じゃない自分達がバニラに追い出される場面を、頭の中で想像しながら慌てふためいていると……。

 

「へぇ……、紫堂さんの職業、広域サポートが得意なバードなのね……。良い職業じゃない。あなたの職業は、きっと、イッカク退治の時に、私や勇綺君達の助けとなるわ!」

 

「そ、そうですか? えへへ……」

 

「「へ!?」」

 

 勇綺と龍哉が慌てふためいている最中、バニラは秋の職業を高く評価する。

 秋は、自身の職業を褒めてもらえて、相当嬉しかったのか、顔をニヤけさせてしまう。

 勇綺と龍哉は、秋の職業を称賛したバニラに目を大きく見開く。まさか、戦闘職じゃない秋を称賛するとは思ってもいなかったのだ。今までの人達は、戦闘職じゃない勇綺達を理不尽に責め立てて、不愉快な思いをさせてきた。だから勇綺と龍哉が、戦闘職じゃない秋を称賛するバニラに、驚くのも無理はないだろう。

 

「じゃあ……、成神君と鉄君……。あなた達の職業も、教えてもらえないかしら……?」

 

 秋から職業を教えてもらったバニラは、勇綺と龍哉に視線を移す。そして、二人の職業について問い掛ける。

 

(戦闘職じゃない秋を責め立てなかった、この人なら、大丈夫……かな?)

 

(戦闘職じゃない秋の職業を高く評価した、この、ねぇちゃんなら、俺の職業を教えても問題はなさそうだな……)

 

 問い掛けられた勇綺と龍哉は、バニラに自分達の職業を教える事を決意する。おそらく勇綺と龍哉は、秋の職業を高く評価してくれたバニラが、自分達の職業が戦闘職じゃないと知っても、理不尽に責め立てたりする人物ではないと判断したのだろう。

 

「俺の職業は、骨細工師だ」

 

「えっと……。僕の職業は、園芸師です」

 

 龍哉と勇綺はバニラに、自分達の職業を教えると……。

 

「鉄君は、骨細工師か……。あなたの職業は、かなり面白い職業よ……。私、骨細工系の武具、けっこう好きなの……。骨細工師はね、魔物の部位を素材にして、それらを使って武器や防具を作ったりする事ができるわ……。素材によっては……、魔物と同じ特殊能力が発動できる武器や、魔物と同じ耐性を持った防具とかも作ったりする事ができるの……。更に骨細工師は戦闘で、敵の能力を下げるスキルが使えるのよ」

 

「ほぅ……、魔物と同じ特殊能力や耐性を持った、武器や防具が作れるだけじゃなく、戦闘では敵の能力を低下させるスキルが使えるのか……。なる程……。確かに、そいつは面白そうだな……」

 

 龍哉の職業を相当気に入っているのか、バニラは嬉しそうに骨細工師についての説明をする。

 龍哉は顎に手を当てながら、バニラの説明を興味深そうに聞いていた。

 

「そして、成神君。あなたの職業、園芸師だけど……。園芸師は、木材や薬草、野菜と果物、そして繊維作物を採取するのが得意な職業なの。戦闘では、植物系の魔物相手ならば有利に戦えるスキルを持っているわ。更に、この園芸師は【スキルレベル】が高くなると、イッカクを倒す切り札になり得る可能性を秘められているスキルを覚えるのよ……」

 

「「「えっ!?」」」

 

 骨細工師の話を終えたバニラは、勇綺の職業についての話を始める。

 バニラの話を聞いた勇綺達は、目を大きく見開く。植物を採取するのが得意な園芸師が、イッカクを倒す切り札になり得る可能性を秘められていた事に、勇綺達は驚いてしまったのだ。

 

「バニラさん、教えて下さい! イッカクを倒す切り札になり得る可能性を秘めている園芸師のスキルは、どんな力があるんですか!?」

 

 勇綺はバニラに、園芸師のスキルについて問い掛けると……。

 

「イッカクを倒す切り札になる可能性を秘めている園芸師のスキルは、武器に虫系特効を付与する戦闘スキル、【防除】と、虫系特効を高める補助スキル、【バグキラー】。そして、虫系の魔物に攻撃する時のみ、攻撃力を一瞬だけ強化する補助スキル、【バグハンター】の三つよ。この三つのスキルを持った園芸師が居れば、虫系統の闇の王であるイッカクに、勝てる可能性が高くなるはずだわ……」

 

 バニラは勇綺達に、切り札となる園芸師の三つのスキルについて話す。

 

「すげぇな、園芸師って……。虫系統の魔物相手に有利に戦えるスキルを持つ園芸師をもっと多く集めれば、イッカクに勝てる可能性を更に高く出来そうだな……。なぁ、バニラのねぇちゃん。どうなんだ? イッカク退治に協力してくれる園芸師って、勇綺以外にどれくらい居るんだ?」

 

 話を聞いた龍哉はバニラに、イッカク退治に協力してくれる、園芸師の数について質問をすると……。

 

「成神君以外で、イッカク退治に協力してくれる園芸師は……、二人だけしか集められなかったわ……」

 

 龍哉からの質問にバニラは、どこか悔しげな表情を浮かべながら返答をする。

 

「そんな……。どうして、他の園芸師の人達は、イッカク退治に協力してくれないんですか? 自分達の世界が危ないんですよ?」

 

 秋はバニラに、他の園芸師の人達がイッカク退治に協力してくれない理由について問い掛ける。

 

「ゴホッ、ゴホッ……。皆んな、イッカクを恐れているのよ……。多くの園芸師の人達が私に、《レベルの高い戦闘職でも勝てない、あんな化け物と戦うなんて無謀だ!》 とか、《イッカクを倒すなんて無理だ! 他人を巻き込むな!!》とか、後、《あんたは、頭イカれているのか!?》とかも、言っていたわ。まぁ、イッカクは、腕利きの戦闘職を何人も血祭りに上げてるからね……。戦闘職じゃない園芸師の人達がビビって、イッカク退治に協力してくれないのも仕方がないわ……」

 

 秋からの問い掛けにバニラは、他の園芸師の人達がイッカク退治に協力をしなかった理由について、咳き込みながら話すのであった。




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第36話 スキルストーン

最新話です!
今回は、便利なアイテムについての説明です。
それでは、どうぞ!


「そんな……」

 

「くっ……」

 

「はぁ……、マジかよ……。糞が……。ビビってる場合じゃねぇだろぉが……。とんでもねぇ腰抜け共だなぁ……。全く……」

 

 他の園芸師の人達がイッカクに恐れて、こちらに協力してくれない事をバニラから聞かされて、秋と勇綺は落胆の表情を浮かべる。

 龍哉は、イッカク退治に協力をしない園芸師の人達に、ため息を付きながら悪態をつくと……。

 

「園芸師の【スキルストーン】があればね……」

 

「「「!?」」」

 

 今まで、バニラの隣のソファーに座って静観していたチョコが、突然ポツリと呟く。

 勇綺達は、突然呟いたチョコの方へと視線を移す。

 

「あの……。スキルストーンって、何ですか?」

 

 勇綺はチョコに、スキルストーンについて問い掛ける。

 

「え〜〜と……、これです!」

 

 問い掛けられたチョコは、スカートについているポケットの中から、五百円硬貨と同じくらいの大きさの円形の透明な水色の石を取り出すと、それを勇綺達に見せるようにテーブルの上に置く。テーブルの上に置かれた透明な水色の石には、数字の五十四と刻まれていた。

 

「えっとですね……。スキルストーンは、職業のスキルが内包されている石なんです。その石をステータスプレートに、はめ込めば、他の職業のスキルが使えるようになるんですよ。例えばですけど、生産職の龍哉様が、戦闘職のスキルストーンをステータスプレートにはめ込めば、戦闘職と同じスキルが使えるようになります。後、戦闘職のスキルストーン以外にも、専門職のスキルストーンや生産職のスキルストーン、そして採取職のスキルストーンなどもあります」

 

 透明な水色の石をテーブルの上に置いたにチョコは、スキルストーンについて、勇綺達に説明をする。

 

「そんな便利なアイテムがあったんだ……」

 

「まじかよ……。すげぇな……」

 

「凄いアイテムなのね……。その、スキルストーンって……」

 

 チョコの説明を聞いて勇綺と龍哉そして秋は、テーブルの上に置かれたスキルストーンの力に目を丸くしていた。

 

「なぁ、バニラのねぇちゃん?」

 

「ん? 何だい?」

 

「「「?」」」

 

 チョコからの説明を聞いた後、龍哉は突然、バニラを呼び掛ける。

 呼び掛けられたバニラは、龍哉が居る方へと視線を移す。

 バニラに続くように、勇綺と秋、そしてチョコは、龍哉が居る方を見据える。

 

「スキルストーンの中に、多分だけど……。園芸師のスキルストーンもあるはずだよな? だったらさ、他の園芸師を集めるのが難しいなら、園芸師のスキルストーンを集めれば良いんじゃねぇか? 園芸師のスキルストーンがあれば、他の職業が園芸師の代わりになれると思うんだが……」

 

 龍哉は、イッカク退治に協力してくれる園芸師の人達を集めるのに苦労しているバニラに、園芸師のスキルストーンを集める事を提案する。確かに龍哉の提案ならば、わざわざ園芸師の人達を集める必要もなく、園芸師のスキルストーンの力によって、どんな職業でも園芸師の代わりになる事ができるだろう。

 だがしかし……。

 

「残念だけど、それは無理なのよ……。鉄君……」

 

「何でだよ? 何か問題があるのか?」

 

 バニラは、どこか悔しげな表情を浮かべながら、龍哉の提案を退ける。

 龍哉はバニラに、提案を退けた理由について問い掛けると……。

 

「切り札になる可能性を秘めている、園芸師の三つのスキルは現在、スキルストーンが売られている店では、売り切れている状態なの。攻撃系スキルストーンと攻撃強化系スキルストーンは、戦闘職の人達や貴族達、そして王族達に、特に人気があってね……。そいつらが、攻撃系スキルストーンと攻撃強化系スキルストーンを買い占めちゃうから、スキルストーンが売られている店では、いつもその二つのスキルストーンだけが売り切れている状態なの……。切り札になる三つの園芸師のスキルストーンも、攻撃強化系のスキルストーンだから人気があって、中々手に入りにくいのよ……、」

 

 問い掛けられたバニラは龍哉に、提案を退けた理由について説明をする。

 

「チッ、マジかよ……。他の人達の分まで、買い占めてんじゃねぇよ……。糞共が……」

 

「園芸師の人達が協力してくれないだけでもピンチなのに、園芸師のスキルストーンが手に入らないって……。どうすんのよ……。これ……。勝てないじゃん……」

 

「う、う〜〜ん……」

 

 バニラの説明を聞いて龍哉は、園芸師のスキルストーンを買い占めた、戦闘職の人達や貴族達、そして王族達に、舌打ちをしながら悪態をつく。

 秋と勇綺は、園芸師の人達が協力してくれないだけじゃなく、園芸師のスキルストーンも手に入らないこの状況に、頭を悩ませていると……。

 

「御主人様……。お茶とお菓子をお持ちいたしました……」

 

 勇綺達が頭を悩ませている最中、応接室の扉からコンコンと扉をノックする音が聞こえる。勇綺達は、ノックされた扉の方へと振り向く。

 扉の先からは、バニラからの指示で、お茶とお菓子を用意しようと勇綺達から離れたマシロの声が聞こえた。どうやらマシロは、お茶とお菓子を持ってきてくれたようである。

 

「ゴホッ、ゴホッ……、入りなさい。マシロ……」

 

 バニラは扉の先に居るマシロに、咳き込みながら応接室の中に入るように促す。

 バニラの言葉に促されたマシロは、扉を開けると、応接室の中へと足を踏み入れる。

 応接室の中に足を踏み入れたマシロは、お茶とお菓子が載せられた銀製のトレイを

持ちながら、茶色の長いテーブルの片側に設置されている、六台の一人掛けのソファーに腰を掛けたバニラ達の方に向かって歩き出す。バニラ達に近づいたマシロは、茶色の長いテーブルの上に、お茶とお菓子を黙々と置いてゆく。

 テーブルの上に置かれたお茶とお菓子は、紅茶と、生クリームたっぷり塗られているスポンジケーキの上に、宝石のようなフルーツが乗っかった、フルーツケーキである。

 

「ありがとう、マシロ。あなたも、ソファーに座りなさい」

 

「はい……」

 

 お茶とお菓子をテーブルに置いたシロに、バニラは感謝をする。感謝をした後、バニラは、マシロにソファーに座るように指示を出す。

 指示を出されたマシロは、バニラの隣のソファーに腰を掛ける。

 

「うわ〜〜、美味しそう〜〜」

 

(これは……、紅茶とフルーツケーキか? へぇ〜〜、この世界の飲み物と食い物は、俺達の世界と同じなのか……)

 

(雪のように白くて、綺麗だなぁ……。それに、可愛い……)

 

 テーブルの上に置かれた紅茶とフルーツケーキに、甘い物が大好きな秋は、目を輝かせていた。

 龍哉はテーブルの上に置かれた飲み物と食べ物が、自分達が住んでいた世界と同じ物である事に、興味深そうに見据える。

 秋と龍哉がテーブルの紅茶とフルーツケーキを見据えている最中、勇綺は目の前のソファーに腰を掛けたマシロに、またもや心臓をバクバクさせながら見とれていた。

 するとマシロは、目の前のソファーに座っている勇綺から視線を向けられている事に気付く。視線が気になったマシロは、こちらを凝視している勇綺に視線を移すと……。

 

「あっ!?」

 

「??」

 

 マシロからの視線を、勇綺は慌てふためきながら視線を逸す。

 そっぽを向いた勇綺にマシロは、ただ首を傾げるのであった。




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※一部の文を修正しました

修正前:テーブルの上に置かれた透明な水色の石には、数字の五十ニと刻まれていた。

修正後:テーブルの上に置かれた透明な水色の石には、数字の五十四と刻まれていた。


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第37話 氷の魔法

最新話です!
それでは、どうぞ!


「う〜〜ん、美味しい〜〜♪」

 

「うおっ! うめぇっ!」

 

 勇綺がマシロからの視線を慌てふためきながら逸らしている最中、秋と龍哉はフォークを使って、テーブルの上に置いてあるフルーツケーキを口の中へと運ぶ。すると、頬張ったケーキのフルーツの甘酸っぱさと生クリームの甘さが口の中いっぱいに広がり、秋と龍哉の顔を綻ばせてゆく。

 

「ん? おい、勇綺! ケーキ食べねぇのか?」

 

 フルーツケーキの美味しさに顔を綻ばせた龍哉は何気に、テーブルの上に置いてある勇綺のケーキの方へと視線を移す。勇綺のフルーツケーキは、マシロがテーブルの上に置いた時から、量が全く減ってはいなかったのだ。気になった龍哉は、勇綺に問い掛ける。

 

「へ? あ……、う、うん! た、食べるよ! うん、美味しいね! これ! いくらでも食べられちゃうよ!」

 

「お、おう……。そ、そうか……」

 

(こいつ……。誤魔化してる……。まさか……、また、マシロに見惚れていたな……)

 

 突然の問い掛けに勇綺は、先程までマシロに見惚れていた事を龍哉に悟られないように、笑顔で誤魔化しながら返答すると、フォークを使ってケーキを急いで口の中へと頬張ってゆく。

 何かを誤魔化すかのように、わざとらしい笑顔で返答した後、ケーキを急いで食べる勇綺に、龍哉は戸惑いながらも納得する。

 戸惑いながらも納得した龍哉とは対照的に、秋はケーキを食べながら勇綺を睨みつけていた。どうやら秋は、笑顔で何かを誤魔化してる勇綺が、先程までマシロに見惚れていた事に気づいたようである。

 

「成神君、鉄君、そして紫堂さん。話の続きだけど……」

 

「「「!?」」」

 

 勇綺と龍哉がやり取りをしている最中、バニラが話を切り出す。

 話を切り出されて、勇綺と龍哉、そして秋は、バニラの方へと振り向く。

 

「今の私達は、園芸師の虫系特効のスキルストーンを集められないだけじゃなく、イッカク退治に協力してくれる園芸師達や仲間を多く集める事もできていない……。かなり苦しい状況なの……。できれば成神君達にも、イッカク退治の協力者を集めるのを手伝って欲しいんだけど……。駄目かしら? 成神君達が、イッカク退治に備えての準備や、強くなる為のレベルアップとかで色々と忙しいのも分かっているわ……。でも今は、協力者を集めるのに人手が欲しいの……。私達だけでは、協力者を集めるのも限界があるのよ……。レベル上げやイッカク退治の準備との両立は難しいと思うけど……。どうか……、お願いします……」

 

 今の自分達の状況を説明したバニラは、心苦しそうにしながら勇綺達に、イッカク退治の協力者集めを手伝って欲しいと頼み込む。

 

「お願いします!」

 

「お願いします……」

 

 協力者集めを手伝って欲しいと頼み込むバニラに続くように、チョコとマシロも勇綺達に頼み込んだ。

 

「龍哉、秋」

 

「「!」」

 

 バニラの頼みに勇綺は突然、龍哉と秋を呼び掛ける。

 呼び掛けられた龍哉と秋は、勇綺の方へと振り向く。

 

「僕は、イッカク退治の協力者集めを手伝おうと思うんだ……。確かにバニラさんの言うとおり、今の僕達は、レベル上げや情報集めとかで両立は難しいと思う……。でも、人手が多いほうが、協力者集めが捗り、戦力を多く増やす事ができると思うんだけど……。二人は、どうかな?」

 

「そうだな……。人が多いほうが、協力者を集めやすくなるだけじゃなく、戦力を増やせるかもな……。よしっ! 分かった! 俺も協力するぜ!」

 

「あたしも、協力するわ!」

 

 勇綺は、こちらを見据える龍哉と秋に、イッカク退治の協力者集めを手伝う事を提案する。

 勇綺の言うとおり、人集めを手伝えば、バニラが苦労していた、イッカク退治の協力者集めが今よりも捗り、戦力を増やす事ができるだろう。

 勇綺の提案に納得した龍哉と秋は、イッカク退治の協力者集めに手伝う事を賛同する。

 

「ありがとう……。成神君、鉄君、そして紫堂さん……」

 

 勇綺達が、イッカク退治の協力者集めを手伝ってくれる事に、バニラは顔を綻ばせながら感謝をすると……。

 

「あの、バニラさん!」

 

「?」

 

 勇綺が突然、バニラを呼び掛ける。

 呼び掛けられたバニラは、勇綺の方へと視線を移す。

 

「協力者は、どれくらい集めれば良いのですか?」

 

「そうね……。イッカクの部下は、かなり多いわ……。それよりも多くの協力者が欲しいけど……。現実的に考えて、そこまで集めるのは難しいでしょうね……。出来れば、五百人位……。五百人が無理なら、最低でも、百人位の協力者が欲しいわね……。後、氷の魔法を使える人を、なるべく多めに集めて欲しいかな……。数で攻めてくるイッカクの部下に対抗するには、氷の魔法を使える人が多く必要になるわ……。イッカクの部下はイッカクと同じ虫系統だから、虫系特効のスキルに弱いだけじゃなく、氷属性の魔法や武器がよく効くのよ……。氷魔法が使える人を多く集めるのは大変だと思うけど……、お願いね……」

 

 呼び掛けた勇綺は、協力者をどれくらい集めれば良いのか、バニラに問い掛ける。

 問い掛けられたバニラは勇綺に、協力者をどれくらい集めるのか答えた後、更に、氷の魔法が使える人を多く集めて欲しいと頼み込む。

 

「なぁ、バニラのねぇちゃん? 虫系統の魔物に氷の魔法がよく効くんだったら、虫系統に強い園芸師や虫系特効のスキルストーンを、集める必要がなかったんじゃねぇのか? 氷の魔法が使える奴だけを集めれば良いのに、なんで、人を集めるのが難しい園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める必要があるんだ?」

 

 虫系統の魔物が冷気に弱いなら、氷の魔法が使える人だけを集めれば良いのに、園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める事に疑問を感じた龍哉は、バニラに問い掛ける。

 すると……。

 

「氷の魔法だけでは駄目なのよ……。氷の魔法は、魔法だから広範囲攻撃ができて、数で攻めてくるイッカクの部下に対抗出来るけど……。でも、イッカクには、氷の魔法を使ってはいけないのよ……。もしもイッカクに、氷の魔法で攻撃をしたら、イッカクは冷気を吸収して、氷属性に強くなってしまうだけじゃなく、ステータスがパワーアップしてしまうの……。だから、イッカクが無効化する事ができない、虫系特効のスキルが使える園芸師や虫系特効のスキルストーンを集める必要があるのよ……」

 

 問い掛けられたバニラは龍哉に、園芸師と虫系特効のスキルストーンを集める理由を話す。

 

「なる程ね……。良く分かったぜ! んじゃ、言われたとおり、氷の魔法が使える奴を探してみるよ! 勇綺! 秋! 早速、イッカク退治の協力者集めをするぞ!」

 

 バニラの話に龍哉は、イッカク退治の協力者集めをしようと、勇綺と秋を呼び掛けると……。

 

「うん、協力者集めもするけど……、レベルアップの為に退治する魔物の情報も集めたいかなと思う……。今の僕達は弱いから、少しでも戦闘を楽にする為には、魔物の情報が絶対に必要だと思うんだ……。だから、今日は、協力者と情報の二つを集めよう!」

 

 呼び掛けられた勇綺は、龍哉に、協力者集めと魔物を倒す為の情報を集める事を提案する。

 

「そっか……。確かに、そうだな! 分かった! んじゃ、イッカク退治の協力者集めと魔物を倒す為の情報を集めに行こうぜ!」

 

「あっ、こらっ! 待ちなさい! 龍哉!!」

 

 勇綺の提案に賛同した龍哉は、意気揚々と部屋から出てゆく。

 部屋から出ていく龍哉の後を、秋は急いで追いかける。

 

「あっ! 待って! 成神君!」

 

「?」

 

 龍哉と秋の後を追いかけようとする勇綺を、バニラが突然、呼び止める。

 呼び止められた勇綺は、バニラの方へと振り向く。

 

「お礼を忘れるところだったわ……。これ、イッカク退治に協力してくれたお礼の前金よ! イッカクを退治できたら更に報酬をだすから、部屋から出て行った鉄君と紫堂さんに、この事を伝えてね!」

 

「は、はい! ありがとうございます!!」

 

 呼び止めたバニラは、ソファーから腰を上げると、勇綺の方へと近付く。そして、目の前にいる勇綺に、バニラは、お金が入った袋を渡す。どうやらバニラは、勇綺に前金を渡す為に呼び止めたようである。

 前金が入った袋を受け取った勇綺は、バニラに感謝をするのであった。




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第38話 恐いおっさんと美人エルフ

最新話です!
それでは、どうぞ!


 バニラから前金を受け取った勇綺は、龍哉と秋の後を追いかけようと、急いで応接室から出てゆく。そして、勇綺がバニラの家から出ると、外では龍哉と秋が待っていた。

 

「勇綺!」

 

「おっ、来たか! 勇綺!」

 

 バニラの家から出てきた勇綺を、秋と龍哉が呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺は、秋と龍哉の方へと近付く。

 

「出て来るのが遅かったな? どうかしたのか?」

 

 龍哉は勇綺に、バニラの家から出て来るのが遅くなった理由について問い掛ける。

 

「あ、うん、バニラさんに、これを渡されて……」

 

「ん? うおっ、金だ!」

 

「うわぁ……、お金だわ……」

 

 問い掛けられた勇綺は、バニラからお礼として貰った前金が入った袋を、龍哉に渡す。

 渡された袋の中身を見て、龍哉と秋は目を丸くしてしまう。

 

「おいおい……、どうしたんだ? この金?」

 

 袋の中に入っていたお金について、龍哉は再び勇綺に問い掛ける。

 

「バニラさんから、イッカク退治に協力をしてくれたお礼として、前金を貰ったんだ。更に、イッカクを退治できたら、報酬も出してくれるみたいだよ」

 

 再び問い掛けられた勇綺は、龍哉と秋に、袋の中に入ったお金とイッカク退治をした後の報酬についての説明をする。

 

「へぇ〜〜、前金だけじゃなく、イッカクを退治したら報酬までくれるなんて。バニラさん、気前がいいのね」

 

「マジかっ! 前金だけじゃなく、イッカクを倒したら報酬までくれるのかよ! やっふぅーー! バニラのねぇちゃん、最高だぜ!」

 

 勇綺の説明を聞いて秋は、バニラの気前の良さに感心する。

 龍哉は、勇綺の説明を聞いて、バニラから前金だけじゃなく、報酬も貰える事に歓喜していた。

 

「龍哉、秋。とりあえず、路地裏から出ようよ。ここは、人がいないから図書館の場所を尋ねる事が出来ない。先ずは、人通りの多い場所に移動して、その辺の現地人から手当り次第、図書館の場所を尋ねてみよう!」

 

 龍哉と秋を呼び掛けた勇綺は、路地裏から出て、人通りの多い場所で、現地人から図書館の場所について尋ねる事を提案する。

 

「おう、そうだな。確かに、人があんまり見かけねぇ路地裏だと、図書館の場所を尋ねるのは難しそうだよなぁ……。んじゃ、人通りの多い場所に移動しますか!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

 勇綺の提案に龍哉は納得すると、人通りの多い場所に移動しようと歩き出す。

 秋と勇綺は、歩き出した龍哉の後を付いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし。それじゃあ、聞き込み開始だ!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

 薄暗い路地裏を数分程歩いて、喧騒に包まれた人通りが多い表通りに出た勇綺と龍哉、そして秋は、早速、石畳の道を歩いている通行人達に図書館の場所について聞き込みを開始する。

 

「あ、あの〜〜、す、すみません……」

 

 勇綺達は先ず、一人目の通行人に近付く。勇綺達が近付いた通行人は、身長がニメートルもあり、瞳の色は赤色で、目つきは鋭く、黒色の髪をオールバックにした、年齢が三十代前半位の筋骨隆々な大男だ。服装は、黒いノースリーブの服の上に金属製の重鎧を装備していて、更にその上には、薄汚れたボロボロの焦げ茶色のマントを身に纏い、両腕には金属製の籠手が装備されている。下半身にはダークグレーのズボンを着用していて、足には黒色のブーツを履いており、更にその上には金属製のレガースが装備されていた。装備している武器は、身長と同じ位の背中に背負った両手剣と、腰辺りに装備された曲刀の二つである。顔や腕には、いくつもの傷跡が付いており、ボロボロの服装と合わさってか、大男からは歴戦の戦士のような風格を漂わせていた。勇綺は、恐る恐る傷跡の大男に声を掛けると……。

 

「? 何だ……? 小僧……」

 

(こ、恐い……)

 

(ひぇぇぇぇぇぇ! こ、こわっ!)

 

(こ、この、おっさん……。な、何か、すげぇ、や、やべぇぞ……。これは……)

 

 声を掛けられた大男は足を止めると、勇綺達を見据えながら問い掛ける。

 問い掛けられた勇綺と秋は、大男の身長と風格に立ちすくんでしまう。

 大男の雰囲気に、龍哉は何かを感じたのか、恐怖に包まれながらも警戒をする。

 

「あ、あの……。ぼ、僕達……、と、図書館を探しているんですけど……。図書館の場所をし、知っています……か?」

 

 恐怖に包まれて、しどろもどろになりながらも勇綺は、大男に図書館の場所について尋ねようとすると……。

 

「図書館? 知らんな……。他をあたってくれ……」

 

 尋ねられた大男は勇綺達に、図書館の場所は他をあたれと冷淡に返答をすると、その場から立ち去ってしまう。

 

「「「ふぅ……」」」

 

 立ち去る大男の後ろ姿を見据えていた勇綺達は、ほっと胸を撫で下ろす。おそらく勇綺達は、何かヤバそうな雰囲気を漂わせている大男が立ち去った事に安心したのだろう。

 

「こ、恐かったぁ……」

 

「ああ……。全く、とんでもねぇ恐怖を与えてくる、やべぇ、おっさんだったぜ……」

 

「本当にねぇ……。殺されるかと思ったわ……」

 

 恐怖を与えてくる存在が居なくなった事で安心した、勇綺と龍哉、そして秋は、立ち去った大男についてのやり取りをする。

 

「次は、やべぇおっさんじゃなく、まともな人に尋ねようぜ? おっ、あの人とかなら大丈夫そうだな!」

 

「「?」」

 

 尋ねても大丈夫そうな人を見つけた龍哉は、道を歩いている一人の通行人に指を指す。

 勇綺と秋は、龍哉が指を指した方へと振り向く。

 龍哉が指を指した通行人は、年齢が二十代前半位の、長く尖った耳が特徴的のエルフの女性だ。身長は百六十六センチメートル程で、肌は白く、金色の髪は腰の辺りまで伸ばしており、宝石のエメラルドをイメージさせるような緑色の瞳は、彼女に優しそうな雰囲気を出させていた。次にエルフの女性の服装は、長袖の白いシャツの上にノースリーブの丈が長い黄緑色の服を身に纏い、更にその上には、赤いマントを羽織っている。両足には白いサイハイソックスを着用しており、足には青色のブーツを履いていた。装備している武器は、腰辺りに装備されているレイピアの一つだけである。

 

「うわ〜〜、エルフだ! 本当に、エルフは存在したんだ!」

 

(何よ! 勇綺ったら、美人エルフに、みっともなく、はしゃいじゃって……。ただ、耳が尖っているだけじゃない! 馬鹿っ!!)

 

 ファンタジー系の創作物が好きな勇綺は、物語等に登場するエルフが実在していた事に歓喜する。

 秋は、美人エルフに歓喜する勇綺に冷たい視線を送っていた。

 

「確かに、あの人なら優しそうだし、綺麗だし、大丈夫そうかも!」

 

「だろ? さっきのおっさんと違って、優しそうで、すげぇ美人だし、それに何かエロそうだしな!」

 

 勇綺と龍哉は、エルフの女性の美しさに鼻の下を伸ばしてニヤニヤしながら凝視していると……。

 

「また、鼻の下を伸ばして、デレデレしてんじゃないわよ! この、馬鹿共!」

 

「うげっ!」

 

「んごっ!?」

 

 秋は、美人エルフに、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしながら凝視している勇綺と龍哉の頭に、チョップを叩き込んだ。

 頭をいきなり秋に叩かれた勇綺と龍哉は、間抜けな悲鳴を上げる。

 

「全く……、美人エルフにデレデレしてないで、さっさと、聞き込みをするわよ!」

 

「いたた……。う、うん!」

 

「いつつ……。へぇ〜〜い……」

 

 勇綺と龍哉を呆れながら叱り飛ばした秋は、図書館の場所について尋ねようと美人エルフに近付く。

 叱られた勇綺と龍哉は、叩かれた箇所を擦りながら秋の後を付いて行った。




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第39話 女の勘?

最新話です!

新キャラが登場します!

それでは、どうぞ!


「あの〜〜、すみませ〜〜ん!」

 

「ん?」

 

 石畳の道を歩いている美人なエルフの女性に、図書館の場所を尋ねる為に近付いた秋が声を掛ける。

 声を掛けられた美人なエルフの女性は、秋達が居る方へと振り向く

 

「私に、何か用かしら?」

 

(ぬぐぐぐ……。こうして近付くで見ると、確かに勇綺達が言っていた通り、美人ね……。それに、さっきのおっさんと違って、何か優しそう……。う〜〜、何か凄くムカついてきた……)

 

((綺麗だなぁ〜〜……))

 

 美人なエルフの女性は、こちらに声を掛けてきた秋に問い掛ける。

 問い掛けられた秋は、目の前のエルフの女性の美しさに嫉妬してしまう。

 嫉妬している秋とは対照的に、勇綺と龍哉は、エルフの女性の美しさに、鼻の下を伸ばしてニヤニヤしながら凝視していた。

 

「えっと……。私達は、図書館を探しているんです。図書館の場所を知っていますか? 知っていたら教えて下さい! お願いします!」

 

 秋は、目の前のエルフの女性に、図書館の場所について教えて欲しいと頼み込むと……。

 

「え〜〜と……。私は、この国に初めて来たばかりだから、図書館の場所は知らないのよ……。ごめんなさいね、力になれなくて……。それじゃ!」

 

 エルフの女性は秋の頼みをに、申し訳無さそうな表情をしながら断ってしまう。どうやらエルフの女性は、このランドロック王国に初めて来たばかりなので、図書館の場所は知らないようである。頼みを断ったエルフの女性は力になれなかった事を秋達に謝ると、その場から立ち去ってしまう。

 

「ああ……」

 

「貴重なエルフが……。もっとエルフの美しさを堪能したかった……」

 

 立ち去るエルフの女性の後ろ姿を、勇綺と龍哉は、名残り惜しそうに見据えている。おそらく勇綺と龍哉は、エルフの女性の美しさをもっと眺めていたかったのだろう。

 すると……。

 

「全く……。今はエルフのお姉さんを眺めるよりも、他にやるべき事があるでしょう!! ほら、さっさと図書館の場所を知っている人を探すわよ! この、バカチン共!!」

 

「う、うん……」

 

「へ〜〜い……」

 

 秋は、立ち去るエルフの女性の後ろ姿を未練がましく見据える勇綺と龍哉を、呆れながらも一喝する。そして、図書館の場所を知っている人を探しに行こうと秋は、勇綺と龍哉を呼び掛けながら歩き出した。

 呼び掛けられた勇綺と龍哉は、エルフの女性の事がまだ諦めきれていないのか、渋々ながらも歩き出した秋の後をついて行く。

 

「中々、図書館の場所についての情報が得られねぇな……。なぁ、勇綺、秋? 次は、どの通行人に聞き込みをするんだ?」

 

「ん〜~、そうだなぁ……」

 

 龍哉は歩きながら、次は、どの通行人に聞き込みをするべきか、勇綺と秋に問い掛ける。

 龍哉の問い掛けに勇綺は、図書館の場所についての情報を、どの通行人から尋ねるべきか、歩きながら顎に手を当てて悩んでいると……。

 

「あ! あの人なら、図書館の場所を知っていそうじゃない?」

 

「「?」」

 

 勇綺が悩んでいる最中、秋は、図書館の場所を知っていそうな人を見つけたのか、道を歩いている一人の通行人に指を指す。

 勇綺と龍哉は、秋が指を指した方へと振り向く。

 秋が指を指した通行人は、年齢が十九歳位の銀縁眼鏡をかけた男性だ。身長は百七十八センチメートル程あり、瑠璃色の髪は、ミディアムヘアのセンターパートで、青色の瞳は、彼に大人しそうな雰囲気を出させていた。次に銀縁眼鏡の男性の服装は、青い角帽を頭に載せ、首には紺色のネクタイを巻いており、白いシャツの上には、青いガウンを身に纏っている。下半身には紺色のズボンを着用していて、足には紺色の靴を履いていた。

 

「なぁ、秋? 何で、あの眼鏡が、図書館の場所を知っていると思えるんだ?」

 

 龍哉は秋に、銀縁眼鏡の男性が、図書館の場所を知っていると思われる理由について問い掛ける。

 

「あたしの女の勘よ! あの人、学者っぽい服装をしているし、頭も良さそうだから、きっと、図書館の場所も知っていると思ったのよ!」

 

「女の勘って……、お前なぁ……。馬鹿だろ? マジで? そんな勘、当たんねぇよ! あの眼鏡が、図書館の場所を知らない可能性もあんだろうが! てゆーーか、女の勘って言葉、こういう時に使うんだっけ?」

 

「う〜~ん、確かに龍哉の言うとおりだと思うよ? ここは異世界だから、もしかしたら、学者っぽい服装をしているだけの、本とかあまり読まない人で、図書館の場所を知らない可能性もあるから、勘だけで、あの人が図書館の場所を知っていると判断するのは難しいんじゃないのかな? 後、女の勘の使い方、間違っているような気が……」

 

 どうやら秋は、女の勘だけで、学者っぽい服装をしている銀縁眼鏡の男性が、図書館の場所を知っていると思ったようである。

 秋の言葉に、納得する事ができなかった龍哉と勇綺は意見をすると……。

 

「全く、ひねくれた考え方をするわねぇ……。まぁ、あたしの女の勘が当たっているかどうかは、とりあえず尋ねてみれば分かるわよ! さぁ、行きましょ!」

 

「はぁ……」

 

「はぁ……、しょうがねぇな……。尋ねてみっか……」

 

 龍哉と勇綺のひねくれた意見に、秋は気にもせず、図書館の場所について尋ねようと、銀縁眼鏡の男性に近付く。

 勇綺と龍哉は呆れながらも、こちらの意見を気にしない秋の後を付いて行った。

 

「あの〜〜、すみませ〜〜ん! ちょっと、良いですか?」

 

「え? は、はい?」

 

 秋は、石畳の道を歩いている銀縁眼鏡の男性に、図書館の場所について尋ねようと声を掛ける。

 声を掛けられた銀縁眼鏡の男性は、秋達の方へと視線を移す。

 

「え、えっと……、き、君達は?」

 

「私は、職業のバードをやっている、紫堂秋といいます!」

 

「僕は、成神勇綺です。職業は、園芸師です」

 

「俺は、鉄龍哉。ただの、骨細工師だ。まぁ、よろしくな!」

 

 銀縁眼鏡の男性は、突然声を掛けた秋達に恐がっているいるのか、おどおどしながら問い掛ける。

 問い掛けられた秋達は、こちらをおどおどしながら見据える銀縁眼鏡の男性を安心させようと、フレンドリーに自己紹介をすると……。

 

「ぼ、僕は、え、えっと……。れ、レグルス・バランガ……です。しょ、職業は、せ、雪氷学者……です」

 

 フレンドリーに自己紹介をする秋達に、少しは安心したのか、銀縁眼鏡の男性は、おどおどしながらも自身の紹介をする。

 

「あの……、私達は、図書館を探しているんです。図書館の場所を知っていますか? 知っていたら教えて下さい! お願いします!」

 

 秋は、目の前の銀縁眼鏡の男性に、図書館の場所について教えて欲しいと頼み込む。

 すると……。

 

「あ、え、えっと……。ぼ、僕は、こ、これから、と、図書館に向かうところだけど……。き、君達が、い、嫌じゃなければ、ぼ、僕が、図書館の場所を、あ、案内する……よ?」

 

((秋の女の勘が当たった!?))

 

「案内してくれるんですか! ありがとうございます!」

 

 頼み込まれたレグルスは、秋達に、図書館の場所を案内すると提案する。

 勇綺と龍哉は、レグルスが、秋の勘どおり、図書館の場所を知っていた事に、目を丸くしながら驚いていた。

 勇綺と龍哉が目を丸くしながら驚いている最中、秋は、レグルスが図書館の場所を案内してくれる事に、歓喜しながら感謝をする。

 

「じゃ、じゃあ……、ぼ、僕の後を、つ、付いてきて……」

 

 レグルスは秋達に、こちらの後を付いてくるように促すと、図書館を目指して歩き出す。

 勇綺達は、歩き出したレグルスの後を、見失わないように付いて行くのであった。




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第40話 図書館で情報探し

いや〜~、夏ですね〜~。
本当に暑い……(汗)

あ、最新話です!
それでは、どうぞ!


 町の表通りで出会った雪氷学者のレグルスの案内によって、勇綺達は、目的地である図書館に辿り着く。目の前の図書館の外観は、石で造られた西洋の宮殿をイメージさせるような建物であった。

 

「す、凄い……。これが……、図書館……」

 

「う、うおぉぉ……。何か、かっけぇぇ……」

 

「お、大きいわねぇ……」

 

 勇綺と龍哉、そして秋は、図書館の外観と建物の大きさに、目を丸くしていると……。

 

「あ、あのぉ……」

 

「「「?」」」

 

 目を丸くしている勇綺達に、レグルスが突然声を掛ける。

 声を掛けられた勇綺達は、レグルスがいる方へと振り向く。

 

「と、図書館の中に……、は、入ろうか?」

 

「あ、は、はい!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

 レグルスは、勇綺達に図書館の中に入るように促してから、その建物の中へと足を踏み入れる。

 促された勇綺と龍哉、そして秋は、図書館の中に足を踏み入れたレグルスの後を付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「おおぉ……」」」

 

 図書館の中に足を踏み入れた勇綺達は、またもや目を丸くしてしまう。何故ならば図書館の内部が、まるで童話の世界の中だと見間違ってしまう程、幻想的で絢爛豪華なのである。まず初めに、勇綺達の目に飛び込んだのは、吹き抜けになっている部屋の高い天井と縦溝に彫られた白く太い大きな柱だ。バロック様式の建築物のように、天井には派手な絵画が描かれており、縦溝に彫られた柱の柱頭部分には、何かの植物の葉のような模様が細かく彫り込まれていた。次に勇綺達は、部屋の中を見回す。広々とした部屋の中央には、レグルスと同じ学者のような服装をした、白い大理石で作られた男性の石像が置かれており、壁には、綺羅びやかな装飾が施された本棚が隙間無く並べられていて、左右の広い通路の真ん中には、大きな地球儀のような置き物がいくつも配置されている。大理石の石像の奥には、吹き抜けになっている上の階へと続く幅の広い階段が二箇所あり、左右の広い通路の奥の部屋には、図書館の利用者が読者できる部屋になっており、その室内では多くの人達が読書に夢中になっていた。

 

「あ、あの……」

 

「「へ?」」

 

「ん?」

 

 図書館の内部に目を丸くしている勇綺達に、レグルスがおどおどしながら声を掛ける。

 声を掛けられた勇綺と秋、そして龍哉は、レグルスが居る方へと振り向く。

 

「と、図書館の場所の案内は、お、終わったから……、ぼ、僕は、む、向こうの本棚で、し、調べ物を、し、してくる……ね?そ、それじゃ……、ど、読書、楽しんで……ね?」

 

 図書館の場所の案内を終えたレグルスは勇綺達に、自身は調べ物をする事を伝えると、壁に本棚が隙間無く並べられている左側の幅広い通路の方へと歩き出す。

 

「あっ! レグルスさん!」 

 

「え?」

 

 歩き出したレグルスを、秋が突然呼び掛ける。

 呼び掛けられたレグルスは一度、足を止めると、秋が居る方へと振り向く。

 

「図書館の場所の案内をしてくれて、ありがとうございます!」

 

「あ……、う、うん……。ど、どういたしまして……」

 

 秋は、図書館の場所を案内してくれたレグルスに、感謝をする。

 図書館の場所を案内してくれた事について、こちらに感謝をする秋に、レグルスは照れながら返答すると、再び左側の幅広い通路の方へと歩き出す。

 

「んじゃ、勇綺! 秋! 俺達も早速、図書館で魔物を倒すのに使えそうな情報を集めるとすっか。とりあえず手分けして、戦いに使えそうな情報がある本を探そうぜ? ここの図書館は馬鹿広いから、三人で同じ場所を探すよりも、手分けして本を探した方が、欲しい情報を効率良く集められると思うんだけど……。どうだ?」

 

 レグルスが立ち去ると、龍哉は勇綺と秋に、魔物を倒す為の情報収集を、手分けして探す事を提案する。龍哉の言うとおり、この広い図書館を、三人で同じ場所を探すよりも、手分けして探した方が、魔物との戦いに使えそうな情報が、効率良く集められるだろう。

 すると……。

 

「確かに、この図書館の広さだと、三人で同じ場所を探すよりも、手分けして探した方が、欲しい情報が集まりやすいかもね……。よし、分かった! 手分けして情報を探そう!」

 

「あたしは、手分けして情報を探しても、別に問題は無いわよ!」

 

 龍哉の提案に納得した勇綺と秋は、手分けして情報収集をする事に賛同する。

 

「それじゃあ俺は、右側の幅広い通路の方に並べられている本棚で、魔物を倒すのに使えそうな情報がある本を探してくる」

 

「僕は、上の階で情報を探そうかな?」

 

「じゃあ、あたしは……、レグルスさんがいる、左側の本棚で情報を探してくるわ!」

 

 龍哉と勇綺、そして秋は、お互いに情報を探す場所を伝え合う。

 

「もし、使えそうな情報が見つかったなら、その情報がある本を持って、中央に置いてある石像の前に集合な!」

 

 情報を探す場所を伝えた龍哉は、更に、情報を探した後の集合場所を勇綺と秋に伝える。

 すると……。

 

「うん、分かった!」

 

「ええ、分かったわ!」

 

 龍哉が指定した集合場所に、勇綺と秋は賛同する。

 

「よし! じゃあ、情報を探してくるぜ! それじゃあな!」

 

 集合場所を指定すると龍哉は、早速、目的を果たしに右側の幅広い通路の方へと歩き出す。

 

「じゃあ僕も、情報を探してくるよ!」

 

「あたしも!」

 

 龍哉が歩き出すと勇綺と秋も、情報を探しに目的の場所へと歩き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この本は……、違うな……。ふぅ……、中々使える情報が見つからんなぁ……。調べていない本も、まだまだけっこう有るし……。この大量の本棚の中から、魔物を倒すのに使えそうな情報がある本だけを探し出すのは、か〜〜な〜〜り骨が折れそうだなぁ……」

 

 左側の幅広い通路の方で情報収集をしていた龍哉は、壁に隙間無く並べられている本棚を見据えながら頭を悩ませていた。何故ならば、沢山の本棚の中から、魔物退治に役立ちそうな本が、中々見つからないのである。

 

「糞……、俺は諦めねぇぞ……。絶対に情報を見つけてやる!」

 

 悪態をつきながらも龍哉は、自身に気合いを入れると、再び、隙間無く並べられている本棚の中から情報探しをするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜~ん……、魔物退治に役に立ちそうな本が中々見つからないわね……。はぁ……」

 

 情報探しに苦戦している龍哉と同じく、右側の幅広い通路の方で情報収集をしていた秋も、壁に隙間無く並べられている本棚の中から魔物退治に役立ちそうな情報が見つからない事に、頭を悩ませながら溜め息をついていると……。

 

「あ、そうだ! レグルスさんに聞いてみよ。レグルスさんならきっと、魔物退治に役に立ちそうな本がある場所を知っているはずだわ!」

 

 秋は、レグルスから魔物退治に役立ちそうな本がある場所を教えて貰う事を思いつく。

 

「え〜~と、レグルスさんは……。いたいた!」

 

 秋は、レグルスを探そうと部屋の中を見回す。すると、読者部屋の入り口近くに置いてある本棚で、本を探している最中のレグルスを発見する。秋は、早速、魔物退治に役立ちそうな本がある場所を教えて貰おうと、レグルスに近付くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秋が、本探しに夢中になっているレグルスに近付いている最中、図書館に一人の人物が入館する。その図書館に入り込んだ人物は、ホムンクルスのマシロであった。




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第41話 戸惑うレグルス

暑い……、暑いんだけど……。
朝は、何か寒い……。
う〜~ん……。

とりあえず、最新話です。
それでは、どうぞ!


「おお……」

 

「美しい……」

 

「か、可愛いな〜~……」

 

 図書館の利用者達は、館内の入り口近くに立っているマシロに注目する。恐らくマシロの神秘的な雰囲気と美しさに、男性の図書館利用者達は心が奪われてしまったのだろう。

 

「綺麗……」

 

「お人形みたいに可愛い……」

 

 更に、マシロに心を奪われたのは男性の図書館利用者達だけではない。女性の図書館利用者達も、同じ女性であるマシロの美しさと神秘的な雰囲気に、ぼーっとしながら見惚れてしまっていたのである。

 男性利用者達や女性利用者達からも注目されてもマシロは、特に気にもせず、大理石の石像の奥にある、上の階へと続く幅の広い階段の方へと向かってゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上の階も、本が沢山あるなぁ……」

 

 階段を使って図書館の上階に上がった勇綺は、部屋の中を見回していた。上の階の部屋も下の階の部屋と同じく、綺羅びやかな装飾が施された本棚が隙間無く並べられている。違う箇所が有るとすれば、この上階には、読者できる部屋が無い代わりに、本棚の近くには、ソファーが配置されており、それに腰を掛けた多くの利用者達が読書に夢中になっていた。

 

「よし! 探すか!」

 

 勇綺は早速、魔物についての本を探そうと、本棚に近付く。

 

「ん〜~……。魔物……、魔物……、魔物についての本は……」

 

 勇綺は目を皿のようにして、本棚の中から魔物についての本を探していると……。

 

「ん? この本は……」

 

 魔物について本を探していた勇綺は、本棚の中から、一冊の本が目に入る。勇綺の目に入った本のタイトルは、【錬金術とホムンクルス】と書かれていた。

 

(この本は、錬金術とホムンクルスについて書かれているのかな? そういえば……、何でマシロは、バニラさんと姿が似ているんだろ……? う〜~ん……。気になってモヤモヤしてくる……。もしかしたら……、この本を読めば何か分かるかもしれない……)

 

 本のタイトルを見て勇綺は、ホムンクルスのマシロの姿が、錬金術師のバニラとそっくりである事を思い出す。マシロが何故、バニラと姿が似ているのか、そこが気になってしまった勇綺は、その謎を知る為に、当初の目的を忘れて、錬金術とホムンクルスについての本を手に取ってしまう。

 本を手に取った勇綺は、本棚の近くに配置されているソファーに腰を掛けると、マシロの姿について調べる為に読書を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『図書館の場所の案内をしてくれて、ありがとうございます!』

 

(初めてだ……。女の子に感謝されたのは……)

 

 勇綺がマシロの姿について調べる為に、錬金術とホムンクルスの本を読んでいる最中、右側の読者部屋の入り口近くに置いてある本棚で本を探していたレグルスは、秋からの感謝の言葉を思い出しながら物思いに耽けっていた。

 

(本を読むことしか取り柄がない、根暗で友達が一人もいない僕に、嫌そうな表情を一つもせずに親しく話しかけてくれた秋さんは、何て、心の優しい娘なんだろう……。あうぅ……、秋さんの事を考えると何だか胸がドキドキする……。どうしたんだろう……、僕は……)

 

 秋の事を考えていたレグルスは、ドキドキする心臓に戸惑いを隠せずにいると……。

 

「あの〜〜? レグルスさん?」

 

「へっ!? ひゃ、ひゃい!?」

 

 突然呼び掛けられたレグルスは、慌てふためきながら、こちらに話し掛けてきた人物がいる方へと振り向く。

 

「あ、え、え〜〜と……、その〜~。本探しの邪魔をしちゃってごめんなさい……」

 

 レグルスが振り向いた先には、先程別れたばかりの秋が、申し訳無さそうな表情をしながら立っていた。

 

「あ、秋……さん? ど、どうか……、し、しまし……たか?」

 

 レグルスは、こちらを呼び掛けた秋に、恐る恐る問い掛ける。

 すると……。

 

「あの実は……、魔物についての本を探しているんですけど……。でも、その本が中々見つからなくて……。それでレグルスさんに、魔物についての本がある場所を教えてもらいたいんですけど……、駄目でしょうか?」 

 

 どうやら秋がレグルスを呼び掛けたのは、魔物についての本が収納されている場所を教えてもらう為だったようである。こちらに問い掛けるレグルスに、秋は、魔物についての本の在り処を教えてもらおうと、恐る恐る上目使いで頼み込むと……。

 

(ぐはっ! う、上目使い! か……、可愛い……! 可愛い過ぎる!!)

 

 上目使いでこちらに頼み込む秋の姿に、女性への免疫がないレグルスは骨抜きにされてしまう。

 

「え、えと……、ま、魔物についての本がある、ば、場所は……、う、上の階に、あ、あります!」

 

 骨抜きにされたレグルスは、恥ずかしさの余りしどろもどろになりながら、秋に魔物についての本の在り処を教える。

 

「ありがとうございます! レグルスさんは、本当に優しくていい人だわ!!」

 

「ふぉっ!?」

 

 魔物についての本の在り処を教えてくれたレグルスに、秋は、彼の右手を両手で握りながら感謝をする。

 秋に、いきなり手を握られたレグルスは、目を大きく見開きながら奇声を出してしまう。

 

(ぼ、ぼぼぼぼぼっちの僕がっ! お、おおおおお女の子に、は、ははは初めて、て、てて手を握られたっっっ!!)

 

 どうやらレグルスが奇声を出したのは、初めて女の子に手を握られたからのようである。今まで、友達が一人もいないレグルスは、女性とお喋りをしたり、手を握ったりする経験が全く無かった。だから、女性への免疫ができないまま成長してしまったレグルスが、女の子に手を握られて奇声を出してしまうのも仕方がないと言えよう。

 

(や、柔らかい! お、女の子の手は、こ、こんなに、や、柔らかいのかっ!? あわわわわわわ!!!)

 

 秋に手を握られた事でレグルスは、トマトのように顔を真っ赤にしながら、頭の中で慌てふためいていると……。

 

「この情報を早速、龍哉にもしらせないとね! レグルスさん、調べ物頑張って下さい! それじゃ!」

 

 魔物についての本の在り処を教えてもらった秋は、レグルスにエールを送ると、龍哉がいる場所へと歩き出す。

 

(ま、また……、胸がドキドキしてる……。 ほ、本当に、ど、どうしちゃったんだ……。僕は……)

 

 エールを送られたレグルスは、またもや、ドキドキする心臓に戸惑いながら、その場から立ち去る秋の後ろ姿を見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この本は違う……。この本でもない……。ぬおぉぉぉぉぉぉ……、何で見つからねぇんだよ! 糞が!」

 

 左側の幅広い通路の方で、未だ情報収集に苦戦を強いられていた龍哉は、壁に隙間無く並べられている本棚を見据えながら悪態をついていた。

 すると……。

 

「龍哉!」

 

「!? この声は……」

 

 突然呼び掛けられた龍哉は、声が聞こえた方へと振り向く。

 

「秋か! お前、何でここにいるんだ? てゆーーか、俺に何か用か?」

 

 龍哉は、こちらを呼び掛けた秋に問い掛ける。

 

「魔物について本の在り処が分かったわ! はやく、上の階へ行くわよ!」

 

「え? マジ? あ! お、おい、ま、待てよ!」

 

 問い掛けられた秋は、龍哉に上の階へ向かうように促すと、意気揚々と目的の場所へと歩き出す。

 龍哉は歩き出した秋の後を、慌てながらついて行くのであった。




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※一部の文を修正しました

修正前:何でマシロさんは、バニラさんと姿が似ているんだろ……?

修正後:何でマシロは、バニラさんと姿が似ているんだろ……?


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第42話 静かにして下さい

最新話です!
それでは、どうぞ!


(ん〜~……、魔法道具の製造法? 魔法と同じ効果がある道具の作り方か……。これは、ホムンクルスの情報とは関係無さそうだな……。む〜~、どこだ……。ホムンクルスの情報が載っているページは……)

 

 勇綺は本棚で見つけた本、【錬金術とホムンクルス】を読みながら、何故マシロがバニラと同じ姿をしているのか、その謎について調べていた。

 

(ん!? こ、これは……! ホムンクルスの製造法!?)

 

 黙々と本のページをパラパラとめくっていた勇綺は、目を大きく見開く。何故ならば、探していた、ホムンクルスについての情報が記載されているページを発見したからだ。

 

(やった! 見つけた! きっと、この情報なら、マシロの姿についての謎が解けるはず!!)

 

 ホムンクルスの情報が記載されているページを見つけた勇綺は、胸の中で喜ぶ。

 早速勇綺は、ホムンクルスについての情報が記載されているページを読み始める。

 

(なになに……。《ホムンクルスとは、錬金術師が錬金魔法によって作り出した人造生命体である。作り方は、フラスコに人間の血肉と骨粉、それと数種類のハーブの粉末と魔草の粉末に、聖油とエリクサーを加えて、それらを百二十日密閉して材料を腐敗させた後、その腐敗した物を錬金魔法で錬成して、フラスコ内にゲル状の赤黒い生物が出来上がればホムンクルスの完成である。》なるほど……、マシロは生まれた時から、バニラさんと同じ姿をしていたわけじゃなかったのか……。しかし……、このページは、ホムンクルスの姿についての情報がほんの僅かしかないな……。う〜〜ん、この僅かな情報だけじゃあ、マシロの姿についての謎が調べられない……。ならば、次のページを開いてみるか……)

 

 ホムンクルスの製造法を読んだ勇綺は、このページに記載されている情報だけでは、マシロの姿についての謎を解く事が出来なかった。勇綺は、ホムンクルスの姿についての情報を更に集めようと、読んでいた本のページを一枚めくる。

 

(このページには、ホムンクルスの育て方が記載されているな……。ん? あ、あった!! マシロの姿についての情報が!!?)

 

 本をめくった次のページに、勇綺は目を大きく見開いた。何故ならば、そのページには、ホムンクルスの育て方だけではなく、マシロの姿についての情報が記載されていたからだ。

 勇綺は早速、探していた情報が記載されている部分を読み始める。本の情報によると、一年間、動物性の流動食を与え続けて、ゲル状の生物から人の姿の生物に成長したホムンクルスの職業と姿は、材料に使われた人間の血肉と骨粉から受け継がれるらしい。更に、受け継がれるのは職業と姿だけじゃなく、極稀にだが、記憶や性格も継承される事があると記載されていた。

 

(なるほど……、マシロの姿がバニラさんに似ていたのは、バニラさんが自分の血肉と骨粉を材料に使ったからか……。でも、何でバニラさんは、自分自身を傷付けてまで、自分にそっくりのホムンクルスを作ろうとしたんだろうか? う〜〜ん……)

 

 本に記載されていた情報によって、マシロの姿がバニラと似ていた理由に、勇綺は納得する。

 だがしかし、この本に記載されている情報を読んだことで、勇綺の中に新たな謎が生まれてしまう。何故、バニラは、自分自身の身体の一部を材料にしてまで、自分の姿にそっくりなホムンクルスのマシロを作ろうとしたのか。勇綺は、ホムンクルスを作ろうとしたバニラの目的について、頭を悩ませていると……。

 

「おい、見ろよ……」

 

「おわ、かっわいい〜~」

 

「どこの娘かしら……? それにしても綺麗……」

 

「肌が白い……。美しいな……」

 

(? 何だ? 何だ?)

 

 勇綺が頭を悩ませていると、図書館の利用者達の話し声が聞こえてくる。話し声が気になった勇綺は、読書を一旦中断して、一方向を凝視している利用者達の方へと近付く。

 そして……。

 

(!? マ、マシロ!?)

 

 一方向を凝視していた利用者達と同じ方向を見据えた勇綺は、目を大きく見開く。何故ならば勇綺が見据えた先には、マシロがいたからである。

 マシロは、勇綺と図書館の利用者達の視線を気にもせず、本棚の中から本を探していた。

 

「お、俺、声掛けてみよう……かな?」

 

「なっ!? 抜け駆けをする気か!? 俺が声を掛ける!」

 

「いんや! あの美しい娘は、オラが声を掛けるだーーよっ!!」

 

「何を言っているんだね? 君達? 彼女に声を掛けるのは、僕が先だ! 君達は、黙っててくれ!!」

 

「ウヒヒッ、ぼ、ぼぼ僕が、あ、あの娘に声を掛けるんだ! あ、あの娘は、ぼ、僕の嫁だっ!! ヒヒッ」

 

(ウェェ……。突然、な、何いってんだ? こ、こいつらは!?)

 

 視線の先にいるホムンクルスの神秘的な美しさに、すっかり魅了された利用者達は、マシロを巡って言い争いを始めてしまう。

 勇綺は、突然、しょうもない事で言い争いを始めた利用者達に、戸惑いを隠せずにいると……。

 

「あの……」

 

「「「「「へ!? は、はい!!?」」」」」

 

(? マシロ?)

 

 口論をしている利用者達に、マシロが突然、呼び掛ける。

 呼び掛けられた利用者達は、慌てふためきながらマシロの方へと振り向く。

 勇綺も、口論をしていた利用者達に続くように、マシロがいる方を振り返る。

 

「図書館内では、静かにして下さい……。他の利用者の方の迷惑になりますので……」

 

 どうやらマシロが呼び掛けたのは、口論をしている利用者達に注意をする為だったようだ。

 

「う、うう……」

 

「え、え〜~と……」

 

「あわわわ……」

 

「うぐぐ……」

 

「は、はひ……」

 

 マシロに注意をされて、動揺をしたマナーの悪い利用者達は、辺りを見回すと……。

 

「あの娘の言うとおりだよな……」

 

「うるさいよなぁ……」

 

「静かにしろよ……」

 

「ルールも守れないのかしら……」

 

「迷惑をかけるんなら、出ていってほしいわ……」

 

「最悪……」

 

 周囲にいた利用者達は、マナーの悪い利用者達に、冷たい視線を向けながら愚痴をこぼす。

 多くの人達の冷たい視線に、居心地が悪く感じたマナーの悪い利用者達は、まるで逃げるかのように、この場から去ってゆく。

 

(やっぱ綺麗だなぁ……、マシロは……。雪のように白い髪と白い肌は、凄く美しいし……。それに、スタイルも良い……。こんな可愛い娘と一緒に冒険ができたら、きっと楽しいんだろうな……)

 

 マナーの悪い利用者達が去った後、勇綺は、またもやマシロに見惚れてしまう。

 

「勇綺様? どうかしましたか?」

 

「へあっ!? べ、別に、な、何でもないよ。あ、そ、そうだ。マ、マシロは、どうして図書館に居るんだい?」

 

 こちらに視線を向ける勇綺に、マシロは問い掛ける。

 問い掛けられた勇綺はマシロに、先程まで見惚れていた事を悟られないように、笑顔で誤魔化しながら、図書館に訪れた理由を問いただす。

 

「私が図書館に来たのは……、薬を作るのに必要な薬草について調べる為です……」

 

 勇綺の問い掛けにマシロは、図書館に訪れた理由について返答をする。

 

「あ〜~。そ、そうか……。じゃ、じゃあ、調べ物、が、頑張ってね? 僕も、そろそろ、魔物についての本を探そうかなと思うから……。そ、それじゃ……」

 

 返答を聞いた勇綺は、マシロにエールを送った後、当初の目的を果たす為に、その場から立ち去ろうとすると……。

 

「待って下さい、勇綺様」

 

「え?」

 

 立ち去ろうとする勇綺を、突然、マシロが呼び止める。

 呼び止められた勇綺は、マシロの方へと振り向いた。




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第43話 マシロ、マジ天使!

最新話です。

それでは、どうぞ!


(な、何だろう……? 急に呼び止めて……。もしかして僕……、マシロに何か不快にさせるような事をしちゃったの……かな? いや、でも……。ほんの少し、会話をしただけだし……。そこまで不快にさせるような事は、していないと思うんだけど……。う〜~ん……、マシロは何故、僕を呼び止めたんだ……)

 

 勇綺は戸惑いながらも、マシロに呼び止められた理由について思案していると……。

 

「勇綺様は、魔物の本を探しているのですか?」

 

「う、うん……。僕達は弱いから、少しでも敵との戦闘を楽にする為に、魔物についての情報が記載された本を探しているんだ……」

 

 マシロは勇綺に、魔物の本探しをしている事について問いただす。

 問い掛けられた勇綺は、戦いを有利にする為に、魔物の情報が記載された本を探している事を、マシロに返答すると……。

 

「それでしたら確か、この辺りの本棚に……。有りました」

 

 マシロは、自身の側に置かれている大きな本棚の中から、一冊の本を取り出す。そして、取り出した本を、勇綺が居る方へと見せる。

 

「あ、ありがとう……。本を探してくれて……」

 

 感謝をした勇綺は、本を手に取ろうとマシロの方へと近付く。

 すると……。

 

「あ……」

 

「!?」

 

 本を手に取ろうと近付いた勇綺は、足がもつれてつまづき、近くにいたマシロを巻き込みながら床の上に倒れてしまう。

 

「いててて……。ん?」

 

 床の上に倒れてしまった勇綺は、ゆっくりと起き上がろうとすると、何やら右手に違和感を覚える。何故ならば、違和感を覚えた右手には、マシュマロのような柔らかい感触が伝わってきたのだ。

 

「んんっ!!?」

 

 勇綺は、この柔らかい感触の正体を確かめようと右手の方を見据えると、目を大きく見開いてしまう。何と勇綺の右手は、マシロの左乳房を鷲掴みにしていたのだ。おそらく足がもつれてつまづいて、近くにいたマシロを巻き込みながら倒れた時、偶然にも彼女の左乳房を鷲掴みにしてしまったのだろう。

 

「勇綺様……」

 

「!? あ、あ、あの……、こ、これは……、ち、違うんだ! わ、わざとじゃなくて……。え、えと……、そ、その……、ご、ごめ……」

 

 いきなり、こちらを押し倒しただけじゃなく乳房を鷲掴みにする勇綺に、マシロは怒ったり、叫んだりもせず、無表情のまま呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺は、女の子の胸を鷲掴みにした事でテンパってしまったのか、しどろもどろに自己弁護しながら、マシロに謝罪をしようとすると……。

 

「な、何やってんのよ……、あんた……」

 

「!?」

 

 突然、聞き覚えのある声に呼び掛けられた勇綺は、恐る恐る、こちらに話し掛けてきた人物がいる方へと振り向く。勇綺が振り向いた先には、図書館の下の階で魔物の本探しをしていたはずの秋と龍哉が、こちらを見据えながら立っていたのだ。

 

「レグルスさんに、魔物の本の在り処を教えてもらったから、ここに来てみれば……。あんた……、何、女の子を襲ってんのよ……」

 

 秋は、マシロを襲っているようにも見える勇綺に、鬼のような形相で睨み付けながら問い掛ける。

 

「はひっ!!? ち、違うんだ、秋! こ、これは……、お、襲っている訳じゃ……」

 

 問い掛けられた勇綺は、鬼の形相でこちらを睨み付ける秋に、ビビりながら自己弁護をしようとするが……。

 

「襲ってない? マシロの胸を鷲掴みにしながら、良くそんな言い訳ができるわね!」

 

「へ? あっ! そ、そうだった!」

 

 自己弁護をする勇綺に、秋は、未だにマシロの胸を鷲掴みにしている事を指摘する。

 秋からの指摘に勇綺は、自身が未だにマシロの左乳房を鷲掴みにしていた事に気付く。おそらく勇綺は、秋に、この状況を見られて焦ってしまい、今までマシロの胸を鷲掴みにしていた事を、頭の中から忘れてしまっていたのだろう。

 

「とりあえず言い訳なんかしてないで、マシロの胸から、さっさと手を放しなさい! この、お馬鹿!!」

 

「げふんっ!!?」

 

 目の前の幼馴染が、女の子の胸を鷲掴みにしている事に怒り心頭の秋は、勇綺の頭に強烈なチョップを叩き込んだ。

 秋から、強烈なチョップを頭に叩き込まれた勇綺は、変な断末魔をあげてしまう。すると、頭を叩かれた衝撃によって、マシロの胸から勇綺の右手が放れる。

 

「ううぅ……、襲ってないのに……。酷い……。理不尽だ……」

 

「ふん! 愚痴をこぼす前に、マシロに謝りなさい!」

 

 叩かれた箇所を擦りながら勇綺は、理不尽な仕打ちをした秋に愚痴をこぼしてしまう。

 愚痴をこぼす勇綺に、秋は鼻を鳴らすと、睨み付けながら言い返す。

 

「! う……、た、確かに……、そ、そうだ……。え、えっと……。マ、マシロ! さ、さっきは、ごめんなさい!」

 

 秋の言葉に納得した勇綺は、既に起き上がっているマシロに、土下座をしながら謝罪をする。

 すると……。

 

「勇綺様、先程の事について、私は気にしてはいません。一瞬ですが、勇綺様が足をもつれさせて、つまづいているところが見えましたので……。先程の事は、わざとじゃないと分かっています。だから、顔を上げてください……」

 

「!? ゆ、許してくれる……の? あ、ありがとう! マシロ!」

 

「おお、あっさり許した。心が広いねぇ……。マシロ、マジ天使!」

 

(いやいや、わざとじゃないからって、そう簡単に許せるもんじゃないでしょ……。文句の一つや二つくらい、言ったりするもんじゃないの? 何なのよ……、この娘……)

 

 胸を鷲掴みにされた事について気にしていなかったマシロは、土下座をしている勇綺に、顔を上げるように促す。

 許してくれたマシロに、勇綺は顔を上げながら感謝をする。

 勇綺が顔を上げて感謝をしている最中、龍哉は、胸を鷲掴みされた事について、あっさり許したマシロの心の広さに称賛していた。

 称賛する龍哉とは対照的に秋は、胸を鷲掴みにした勇綺をあっさり許したマシロに、目を大きく見開きながら戸惑ってしまう。

 

「あ、そうでした。勇綺様、この本を受け取って下さい」

 

「あ、これ……」

 

 秋が戸惑っている最中、マシロは手に持っている本を勇綺に手渡す。

 勇綺は、マシロから渡された本に視線を移す。渡された本は、勇綺達が探していた魔物の情報が記載されている書物であった。

 

「それでは私は、調べ物がありますので……」

 

 本を勇綺に渡したマシロは、ゆっくりと立ち上がると、再び本棚の中から薬草についての情報を探し始める。

 

(本を探すのに夢中になっている、マシロの横顔も可愛いな……)

 

 薬草についての情報収集をしているマシロの横顔に、勇綺が見惚れていると……。

 

「おい、勇綺? その本は、何だ?」

 

「へっ!? あ、ああ……。これは、僕らが探していた魔物の情報が記載されている本だよ」

 

 見惚れている勇綺に、龍哉が突然、マシロから渡された本について問いただす。

 問い掛けられた勇綺は、慌てながら立ち上がると、龍哉に、魔物についての情報が記載された本であると返答をする。

 

「おお、見つかったのか! やったな!」

 

「やったじゃん! 勇綺!」

 

 勇綺からの返答に、龍哉と秋は、目的の本が見つかって、嬉しそうに顔をほころばせるのであった。




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それにしても、まだ第一章終わんねぇな……。


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第44話 魔物対策 その1

今年も間に合いました!

最新話です!

それでは、どうぞ!


「よしっ! 目的の本が手に入ったし……。何処か、読書ができる場所を探しに行くとしますか!」

 

「ええ、そうね」

 

 マシロの協力によって目的の本を手に入れた龍哉と秋は早速、読書ができる場所を探し行こうと歩き出す。

 だが、勇綺だけは、その場から移動しようとはせず、マシロの方へと振り向く。

 

「あ、あの……、マシロ」

 

「?」

 

 振り向いた勇綺は、棚から本を探しているマシロを呼び掛ける。

 呼び掛けられたマシロは、本探しを一旦中断して、勇綺の方へと視線を移す。

 

「え、えっと……。し、調べ物、が、頑張ってね! そ、それじゃ!」

 

 こちらを見据えるマシロに、勇綺は照れながらエールを送ると、読書ができる場所を探しに歩き出した龍哉と秋の後を、見失わないように駆け足で付いて行く。

 エールを送られたマシロは、龍哉と秋の後を駆け足で付いて行く勇綺の後ろ姿を、見えなくなるまで見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無いな……」

 

「う〜~ん……」

 

「何処かしら……」

 

 マシロと別れた後、龍哉と勇綺、そして秋は、上の階で読書をする為の部屋をくまなく探していた。だが、この上の階には、下の階にあった、読書部屋が無かったのである。

 すると……。

 

「なぁ、勇綺、秋。どうも、この上の階には読書部屋がねぇみてぇだ……。わざわざ下の階の読書部屋まで、歩いて行くのは面倒いからよぉ……。仕方がねぇから、このソファーに座ろうぜ?」

 

 下の階の読書部屋まで歩いて、そこで読書をするのは面倒だと思っている龍哉は、勇綺と秋に、上の階の本棚の近くに配置されている三台の一人掛けのソファーに座って読書をする事を提案する。

 

「う〜~ん、そうだね……。くまなく探しても、この上の階には、読書部屋が無かったし……。下の階の読書部屋まで歩いて、そこで読書をするのも面倒だから……、このソファーに座って読書をした方が良いかな?」

 

「あたしも、龍哉の提案に賛成!」

 

 龍哉の提案に賛同した勇綺と秋は、早速、本棚の近くに配置されている三台の一人掛けのソファーに腰を掛けてゆく。

 ソファーに座ると、勇綺達は早速、手に入れた本、【魔物図鑑〜ランドロック編〜】を読み始める。

 

(((おお、ゴブリンのイラストが凄いリアルだ……)))

 

 図鑑を開いた勇綺達が最初に見たものは、ゴブリンのイラストだ。図鑑に描かれたゴブリンのイラストは、かなりリアルに描かれており、今にも本の中から飛び出して、こちらに襲い掛りそうな程、迫力があったのである。イラストの迫力に圧倒されながらも勇綺達は、ゴブリンについての能力と説明が記載されたページに視線を移す。

 

「え〜~と……。僕達が、平原で戦った魔物、ゴブリンだけど……。この図鑑によると、こいつは、この世界で最弱の魔物だけど……、戦闘職以外が戦ったりすると、それなりに手強いみたいだ……。でも、ステータスは全体的に低めだし、武器攻撃や魔法攻撃、更に状態異常への耐性が無いだけじゃなく、特殊能力も無いから、しっかりと対策さえ考えていれば、僕達でも簡単に倒せるみたい……。とりあえず、またゴブリンと戦う事になったら……、平原で戦った時と同じように、秋がスキルで眠らした後、その隙に眠ったゴブリンを倒そうと思う。どうかな? この作戦? この作戦なら、戦闘職じゃない僕達でも、安全にゴブリンを倒せると思うんだけど……」

 

「オーケー、わかったわ。次、ゴブリンに出会ったら、先手必勝であたしのスキルで眠らしてやるわ」

 

 勇綺は、平原で戦った時と同じように、ゴブリンを秋のスキルで眠らしてから倒す事を提案する。今の自分達の職業やステータスを考えると、ゴブリンを安全に倒すには、眠らせた敵の隙きをついて攻撃をするのが、最善な方法といえるだろう。

 勇綺の作戦に、秋は得意気な表情をしながら納得すると……。

 

「ちょっと、待て。今まで、ゴブリンやデカつむりが突然眠りだしたのは、秋がスキルで眠らせてたって事か?」

 

 二人のやり取りを聞いた龍哉は、今頃になって、ゴブリンとジャイアントスネイルが突然眠りだしたのは、秋の仕業である事に気が付く。

 

「え? 嘘……。あ、あんた……、あたしがスキルを使って魔物を眠らせた事に、今まで気付いていなかった……の?」

 

 ゴブリンとジャイアントスネイルがスキルによって眠らされていた事に、ようやく気が付いた龍哉に、秋は、目を大きく見開いてしまう。何故ならば秋はてっきり、龍哉は勇綺と一緒に、こちらがスキルを使って、魔物を眠らしている所を見ていると思っていたからだ。魔物をスキルで眠らせた事に今まで気付かなかった事について、秋は恐る恐る、龍哉に問い掛ける。

 すると……。

 

「あ〜~、すまん……。お前がスキルを使ってサポートをしている所は見ていなかったんだよなぁ……。あの時は、勇綺と秋を守る事しか考えていなかったしよ……」

 

 問い掛けられた龍哉は、幼馴染達を守る事で頭の中がいっぱいだった為、秋がスキルを使ってサポートをしている所を見ることができなかったようだ。

 

「何か、龍哉らしい理由だね……」

 

「はぁ……、それでも、あたしがスキルで魔物を眠らせた事に今頃気付くのは遅過ぎでしょう……」

 

 幼馴染達を守る事に集中して、秋がスキルを使っている所を見ていなかった龍哉に、勇綺は顔を綻ばせていた。

 勇綺とは対照的に秋は、幼馴染達を守る事に集中するあまり、こちらがスキルを使ってサポートをしていた事に、今頃気付いた龍哉に、ため息を付きながら愚痴をこぼす。

 

「気付くのが遅れて、本当に悪かったよ……。な、なぁ? 俺のことよりもさぁ……、次のページをめくろうぜ? はやく、魔物についての情報を集めねぇとな!」

 

「え、あ、う、うん……」

 

「まぁ……、確かに、それもそうね……」

 

 愚痴をこぼされて気まずくなった龍哉は、何とか話題を変えようと、勇気と秋に、魔物についての情報収集を再開するように促す。

 龍哉の言葉に、勇綺と秋は納得すると、再び情報収集を始めようとする。

 

「あの平原には、ゴブリン以外の魔物も棲息しているみたいだよ……。しかも、朝と夜では、出現する魔物が違うみたいだね……。え〜〜と、朝に出現する魔物は……、ゴブリン、意地悪兎、ワイルドボア、キラーチキン、リザード、人食い花、ブルームースが出現するみたいだ……。う〜~ん、なかなか多いな……」

 

「けっこうな種類の魔物が居たんだな……」

 

「うひゃ〜~、朝だけで、こんなに種類がいるの? 対策するの、めちゃくちゃ大変じゃん……」

 

 図鑑に視線を移した勇綺と龍哉、そして秋は、平原に棲息している魔物の種類の多さに、目を大きく見開いてしまう。

 

「う〜~ん、この図鑑の情報によると、獣系の魔物、意地悪兎とワイルドボアは、火属性攻撃が弱点で、更に武器攻撃や状態異常への耐性も無いみたいだ。ならば、この二体は、秋のスキルで何とかなりそうだな……」

 

「また、あたしのスキルで何とかなっちゃうの?」

 

「秋のスキル、すげぇ〜~」

 

 勇綺は、図鑑に掲載されている情報から、意地悪兎とワイルドボアの対策を思い付く。

 勇綺がひらめいた対策に、秋と龍哉は、バードのスキルの性能の高さに、目を丸くするのであった。




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それでは皆様!

良いお年を!!

※一部の文を修正しました

修正前:第44話 魔物対策(前編)

修正後:第44話 魔物対策 その1


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第45話 魔物対策 その2

あけましておめでとうございます!

今回の話は、書くのが苦労しました……。

それでは、最新話をどうぞ!


「秋のスキルは確かに強力だけど……、油断は出来ないよ。このブルームースの情報を見て、二人共」

 

「あ……、この骸骨ゼリーって、確か……。ランドロックの森にいた……」

 

「あの害悪スライム……。ブルームースって、名前だったのか……」

 

 バードのスキルの性能の高さに、目を丸くする秋と龍哉に、勇綺は、図鑑に記載されている、ブルームースについての情報に指を指しながら注目するように促す。

 秋と龍哉は、勇綺が指を指した魔物、ブルームースの情報に注目をする。本の情報によると、ブルームースは不定形種族の魔物で、平原や森、洞窟、無人の建物等に棲息しており、動きは全体的に遅く、体力と腕力も低めであるが、強力な溶解液を吹き出すようだ。このブルームースは強力な溶解液以外に、耐性の多さも厄介で、スタン系の状態異常と亡者属性状態異常の耐性や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)や呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の複数の状態異常の耐性を持っており、更に、鈍器や素手等の打撃属性と格闘属性の武器を無効化するだけでなく、土・病・精の三つの属性攻撃を無効化にする程の高い防御力まで持っているようである。

 

「うわぁ……? マジか……? あの害悪、睡眠に耐性があるだけじゃなく、他の状態異常にも耐性が有るのかよ……。こいつは、面倒だな……。糞が……」

 

「え、えっと……、つまり……。あたしの歌が……、この骸骨ゼリーには効かないって事? じゃあ、どうすんのよ……、これ……? どうやって倒すの?」

 

 ブルームースが多くの状態異常に耐性を持っていた事に、龍哉は苦虫を噛み潰したような表情をしながら悪態をつく。

 自分のスキルが通じない魔物がいた事に秋は、戸惑いながら勇綺に、ブルームースの対策について問いただす。

 

「う〜~ん……、この本の情報によると、ブルームースの弱点は……、火属性の武器や魔法、そして魔力にダメージを与えられる攻撃が良く効くみたいだけど……。今の僕達に、火属性の攻撃と魔力にダメージを与えられる攻撃が無い……。そうなると僕等は、今持っている武器で戦うしかないみたいだ……。とりあえず、こいつは、打撃属性武器と格闘属性武器を無効化するから、それ以外の武器属性で戦う事になるね。しかし、ブルームースは溶解液を吹き出すから、何も考えずに武器を振り回して戦うのは危険過ぎる。だから、ここは、遠距離武器を使って安全にブルームースにダメージを与えつつ、隙ができたら、近距離武器で強力な一撃を与えていこうと思う。先ずは、遠距離武器が無い僕は、厄介な溶解液を回避しながらブルームースの注意を引く。次に、遠距離武器を持っている龍哉と秋で、注意を引いて隙だらけになったブルームースに攻撃を仕掛けてくれ。そして、二人の遠距離攻撃で怯んだブルームースに、僕も近距離武器を使って攻撃を仕掛ける。動きの遅いブルームースに、この連携攻撃は、かなり効果的なはずだ。もし、これでブルームースが倒せなければ、また、この戦い方を繰り返せばいい。そうすれば、いずれはブルームースが倒れるはず……」

 

 秋の問い掛けに勇綺は、ブルームースの対策について説明をする。先ずは、飛び道具を持たない勇綺が、隙を作るためにブルームースの注意を引く。次に、龍哉と秋が遠距離武器で、注意を引いて隙だらけになったブルームースに攻撃。そして、二人の飛び道具によって怯んだブルームースに、先程まで注意を引きつけていた勇綺が、近距離武器で強力な一撃を与えるようである。この連携攻撃は、動きの遅いブルームースに、かなり効果的な作戦といえるだろう。

 

「なるほどな……。あの害悪スライムには、この作戦が、かなり効果的かもな……。よし、分かった。その作戦でいこうぜ!」

 

「ええ!」

 

 勇綺が提案した作戦に、龍哉と秋は頷きながら納得する。

 

「よし、じゃあ次は、キラーチキン、リザード、人食い花の対策をしよう!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

 ブルームース対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、他の平原の魔物の情報を集めようと、図鑑に視線を移す。勇綺達が注目した平原の魔物は、キラーチキンとリザード、そして人食い花の三体である。先ず一体目の魔物、キラーチキンは、図鑑の情報によると、種族は飛行系で、体長が百センチメートル位の、全身茶色の鳥の姿をした怪物だ。平原や山等に棲息しており、動きは全体的に速く、回避能力が高い。空を飛んでいるので土属性攻撃に耐性があり、更に、行動を数秒間封じるスタン系の状態異常にも耐性がある。この魔物の弱点は、風属性攻撃と射撃属性攻撃に弱いだけじゃなく、投擲属性攻撃と火器属性攻撃も弱点であり、そして、スタン系以外の状態異常攻撃には、かなり弱いようだ。次に、二体目の魔物、リザードは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は爬虫類系。全長が三百二十センチメートル位の、全身が緑色のオオトカゲの姿をした怪物である。平原や山、洞窟、無人の建物等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、爪や牙による攻撃は、魔法職や非戦闘職、防御力とレベルが低い戦士職を、一撃で倒す程の力を持っているようだ。更に、体力と斬撃属性攻撃への防御力が高めで、攻撃力が低い非戦闘職やレベルが低い戦士職では、間違いなく苦戦してしまうだろう。弱点は、爬虫類なので氷属性攻撃に弱く、更に、状態異常にも弱い。そして、三体目の魔物である人食い花は、図鑑の情報だと、種族が植物系で、全長が百八十センチメートル位の、無数の茶色の根を足のように動かして移動する、ピンク色の花の怪物だ。平原や森等に棲息しており、移動速度と腕力は、あまり高くない。だが、敵を暗闇状態にする花粉や、根っこを使って相手の行動を数秒間封じるスタン系の状態異常を得意としている。更に、木属性攻撃に耐性があるだけじゃなく、神経系とスタン系の状態異常にも耐性があり、幸運のステータスが少し高いので、他の状態異常も効きづらい。この魔物の弱点は、火属性攻撃と金属性攻撃、そして斬撃属性攻撃と斧撃属性攻撃に弱く、更に植物なので、植物系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり効果的だろう。

 

「先ずは、キラーチキンの対策からだ……。キラーチキンは素早いけど、状態異常に耐性が無いから、秋のスキルで眠らせた後、ボコボコにすれば、特に問題は無い。次にリザードも眠らせた後、斬撃属性以外の武器で攻撃すれば、高い攻撃力を発揮させずに問題なく倒せるだろう……」

 

 図鑑の情報を見据えながら勇綺は、キラーチキンとリザードの対策について、龍哉と秋に説明をする。この二体の魔物のスピードとパワーは、今の勇綺達にとって、かなり厄介だ。だが、精神系の状態異常に耐性が無いので、バードのスキルで眠らせてしまえば、非戦闘職の勇綺達でも、この二体の魔物が力を発揮させる前に、簡単に倒す事ができるだろう。

 

「ねぇ、勇綺?」

 

「ん?」

 

 キラーチキンとリザードについての対策を説明する勇綺に、秋が突然呼び掛ける。

 勇綺は、こちらを呼び掛ける秋の方へと視線を移す。

 

「キラーチキンとリザードの対策は、あたしのスキルで何とかなるのは、分かったわ。でも、人食い花は、どうやって倒すの? こいつは、状態異常が効きづらいから……、多分、あたしのスキルで眠らせるのは難しいんじゃないかしら?」

 

「う〜~ん……、こいつは……」

 

 どうやら秋が勇綺を呼び掛けたのは、人食い花についての対策が気になったからである。

 秋からの問い掛けに勇綺は、状態異常が効きづらい人食い花に、頭を悩ませるのであった。




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※一部の文を修正しました

修正前:第45話 魔物対策(中編)

修正後:第45話 魔物対策 その2

修正前:動きは全体的に遅く、防御力と腕力も低めであるが、強力な溶解液を吹き出すようだ。更に、鈍器や素手等の打撃属性と格闘属性の武器を無効化するだけでなく、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・忘却・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳)の状態異常にも耐性を持っているようである。

修正後:動きは全体的に遅く、体力と腕力も低めであるが、強力な溶解液を吹き出すようだ。このブルームースは強力な溶解液以外に、耐性の多さも厄介で、スタン系の状態異常と亡者属性状態異常の耐性や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の複数の状態異常の耐性を持っており、更に、鈍器や素手等の打撃属性と格闘属性の武器を無効化するだけでなく、土・病・精の三つの属性攻撃を無効化にする程の高い防御力まで持っているようである。

修正前:炎属性の武器や魔法が良く効くみたいだけど……。今の僕達に、炎属性の武器や魔法が無い……。

修正後:火属性の武器や魔法、そして魔力にダメージを与えられる攻撃が良く効くみたいだけど……。今の僕達に、火属性の攻撃と魔力にダメージを与えられる攻撃が無い……。

修正前:平原や森、山等に棲息しており、動きは全体的に速く、回避能力が高い。

修正後:平原や山等に棲息しており、動きは全体的に速く、回避能力が高い。

修正前:空を飛んでいるので地属性攻撃に耐性があり、更に、行動を数秒間封じるスタン系の状態異常にも耐性がある。この魔物の弱点は、風属性攻撃と射撃属性攻撃、そして、スタン系以外の状態異常攻撃には、かなり弱いようだ。

修正後:空を飛んでいるので土属性攻撃に耐性があり、更に、行動を数秒間封じるスタン系の状態異常にも耐性がある。この魔物の弱点は、風属性攻撃と射撃属性攻撃に弱いだけじゃなく、投擲属性攻撃と火器属性攻撃も弱点であり、そして、スタン系以外の状態異常攻撃には、かなり弱いようだ。

修正前:平原や森、洞窟等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、爪や牙による攻撃は、魔法職や非戦闘職、防御力とレベルが低い戦士職を、一撃で倒す程の力を持っているようだ。

修正後:平原や山、洞窟、無人の建物等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、爪や牙による攻撃は、魔法職や非戦闘職、防御力とレベルが低い戦士職を、一撃で倒す程の力を持っているようだ。

修正前:更に、神経系とスタン系の状態異常に耐性があるだけじゃなく、幸運のステータスが少し高いので、他の状態異常も効きづらい。この魔物の弱点は、炎属性攻撃と斬撃属性攻撃に弱く、更に植物なので、植物系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり効果的だろう。

修正後:更に、木属性攻撃に耐性があるだけじゃなく、神経系とスタン系の状態異常にも耐性があり、幸運のステータスが少し高いので、他の状態異常も効きづらい。この魔物の弱点は、火属性攻撃と金属性攻撃、そして斬撃属性攻撃と斧撃属性攻撃に弱く、更に植物なので、植物系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり効果的だろう。


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第46話 魔物対策 その3

今回の話も、書くのが苦労しました……。

それでは、最新話をどうぞ!


「なぁ、勇綺?」

 

「え?」

 

 こちらの状態異常攻撃が効きづらく、厄介な花粉攻撃を仕掛けてくる人食い花の対策で、頭を悩ませている勇綺に、龍哉が突然呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺は、龍哉の方へと視線を移す。

 

「そういえばお前、確か、バニラのねぇちゃんから、《戦闘では、植物系の魔物相手ならば有利に戦えるスキルを持っている》って、説明されてたよな? 人食い花は、植物系の魔物だから、そのスキルを使えば、何とかなるんじゃね?」

 

 こちらに視線を移す勇綺に、龍哉は、人食い花の対策に園芸師のスキルを使う事を提案すると……。

 

「あ……。そういえば、バニラさん……、そんな事を言っていたね……。情報収集する事ばかり考えていたから、うっかり忘れてたよ……」

 

「何、忘れてんのよ……。はぁ……」

 

「全く、うっかりさんめ!」

 

 龍哉からの提案によって勇綺は、自身が植物系の魔物相手に有利に戦えるスキルを持っていた事を思い出す。どうやら勇綺は、情報を集める事ばかり考えていた所為で、植物系特効のスキルを持っていた事について、うっかり忘れていたようである。

 植物系の魔物を有利に戦えるスキル持っていた事を今まで忘れていた勇綺に、秋は呆れながらため息をつく。

 呆れている秋とは対照的に、龍哉は、植物系特効のスキルを持っていた事について、うっかり忘れていた勇綺を、ニヤニヤしながら、からかっていた。

 

「え、え〜~と……。と、とりあえず、人食い花に対抗できるスキルが、どんな効果があるか、今、確認するね……」

 

 自身の能力についてうっかり忘れていた勇綺は、早速、人食い花に対抗できるスキルの効果を確認しようと、アイテムポーチから取り出したステータスプレートに視線を移す。

 

「僕が、今、使えるスキルは……。武器に植物系特効を付与する戦闘スキル、【伐採】が使えるみたいだね……。うん、このスキルの効果なら、人食い花に対抗できるかも……。ならば先ずは、龍哉と秋が遠距離武器で注意を引いて、人食い花の隙を作る。そして僕は、注意を引いて隙だらけになった人食い花を、スキルで植物系特効を付与した斬撃属性の武器で一撃で倒す。ちょっとばかしスピードとの勝負になるけど、この作戦なら、人食い花が厄介な花粉攻撃を仕掛けてくる前に、倒す事ができると思う……」

 

 ステータスプレートでスキルを確認した勇綺は、人食い花の対策について、龍哉と秋に説明をする。今の勇綺達にとって、人食い花の状態異常攻撃は、かなり厄介だ。戦闘力の低い勇綺達が、この状態異常攻撃を防ぐには、遠距離武器で怯ませてから、植物系特効を付与した斬撃属性武器で、人食い花が攻撃をする前に、一撃で倒すしか無いだろう。

 

「スピードとの勝負か……。少しのミスも許されねぇな……。だが、やってやるぜ!」

 

「殺られる前に、殺れって事ね……。良いわ、その作戦で人食い花に勝てるなら、やってやるわよ!」

 

 勇綺が提案した人食い花の対策に、龍哉と秋は、やる気に満ちた表情をしながら納得する。

 

「よしっ! これで朝の平原に出現する、七体の魔物についての対策は、ばっちりだな。次は、夜の平原に出現する魔物についての対策だ。勇綺、次のページをめくってくれ!」

 

「うん!」

 

 朝の平原に出現する魔物についての対策を終えて、龍哉は、夜の平原に出現する魔物についての情報を集めようと、勇綺に、図鑑の次のページをめくるように促す。

 龍哉の言葉に納得した勇綺は、図鑑の次のページをめくる。

 

「え〜〜と、夜に出現する魔物は……、インプ、ナイトファング、ジャイアントラット、ワイルドオウル、コープス、火の玉、ジャイアントアントが出現するみたいだね……」

 

「ほほう……。夜になると、出現する魔物が全て変わったな……。面白い……」

 

「!!?」

 

 めくった先のページに記載されている、夜の平原に出現する魔物についての情報に、勇綺と龍哉、そして秋は視線を移すと……。

 

「うひぃっ!! む、虫っ!?」

 

「「あ、秋?」」

 

 新しいページの図鑑に視線を移した秋は、突然、顔を青ざめながら奇声を上げる。

 勇綺と龍哉は、目を大きく見開きながら、奇声を上げた秋がいる方へと振り向く。

 

「うぅぅ……、虫はぁ……、無理ぃ……、嫌ぁぁぁ……」

 

(え? え? な、何? 何で、震えてんだ? どうしたんだ?)

 

 秋は何故か図鑑を見ようとせず、震えながら、両手で両目を覆っていたのだ。

 両目を両手で覆っている秋に、龍哉は目を丸くしながら戸惑ってしまう。

 

「あ……、そういえば……。チョコさんとバニラさんが、イッカクの話をした時、秋の様子が何だか変だったけど……。もしかして秋は、虫が苦手なの……かい?」

 

 勇綺は、チョコとバニラがイッカクについての話をした時、秋の様子が変だった事を思い出す。そして秋に、虫が苦手なのかを問い掛けると……。

 

「うぅぅ……、最悪よ……。アレは……。何か脚がいっぱいあるし……。模様も気持ち悪いし……。いきなり跳びはねたりするし……。しかも、気持ち悪い見た目で、集団で集まったりもするし……。うぇぇ……、思い出しただけで、寒気がしてきたわ……。何であんな不快な生物がこの世にいるのよ……。あ〜~……、嫌いよ……。虫なんて……」

 

 勇綺の問い掛けに秋は、虫に、不快そうな表情をしながら悪態をつく。秋の表情を見る限り、虫が相当苦手なのだろう。

 

「おいおい、嫌いとか言っている場合じゃねぇだろ? 何とか我慢して戦ってくんねぇか? 戦力の低い俺達が、魔物を倒すには、秋のスキルが必要なんだよ……。な? 頼むよ……」

 

「嫌よ。頼まれても嫌。絶対に嫌! あたしは、虫の魔物だけは、戦わない。死んでも戦わないから! 二人で何とかして! 良いわね!?」

 

 龍哉は呆れた表情をしながら、虫が苦手な秋に、我慢して戦うように頼み込む。

 だがしかし秋は、龍哉の頼みを何の迷いもなく一蹴してしまう。どうやら秋の決意は、相当固いようである。

 

「ガキかよ……、お前は……。はぁ……。おい、勇綺、どうする? 秋が使い物にならねぇんだけど?」

 

 頼みを一蹴した強情な秋に、龍哉は呆れながらため息をつく。困り果てた龍哉は、秋の事について勇綺に問いただす。

 

「う〜~ん……、虫が苦手な秋を、無理矢理、虫系の魔物と戦わせるのは危険だと思うよ? 秋の虫への恐怖心によって、連携が取れないだけじゃなく、魔物との戦闘が、かなり苦しくなる可能性があると思うんだ。だから、虫系の魔物は、僕と龍哉の二人で何とかするしかないと思う……」

 

「まぁ、確かに……。無理矢理、秋に、苦手な虫と戦わせたら、間違いなく俺達の足を引っ張る可能性が高いだろうな……。仕方ねぇ……、俺達で何とかすっか……」

 

 問い掛けられた勇綺は、秋を抜きにして、虫系の魔物を、自分と龍哉の二人で倒す事を提案する。秋の虫への恐怖心によって、二人の足を引っ張る可能性を考えると、虫系の魔物は、勇綺と龍哉が相手をした方が得策だろう。

 勇綺からの提案に、龍哉は、しぶしぶながらも納得するのであった。




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第47話 魔物対策 その4

今回も、魔物対策になります。

それでは、最新話をどうぞ!


「うう……、ありがとう……。二人共……」

 

 秋は、自分の代わりに、苦手な虫系の魔物の相手を引き受けてくれる勇綺と龍哉に、申し訳無さそうな表情をしながら感謝をする。

 

「んじゃ、夜の平原に出現する魔物についての情報収集を再開しようぜ!」

 

「うん」

 

「え、ええ……」

 

 秋の苦手な虫系の魔物についての話し合いを終えて、龍哉は勇綺と秋に、夜の平原に出現する魔物についての情報収集を再開するように促す。

 龍哉の言葉に納得した勇綺と秋は、再び情報収集を始めようとする。

 

「先ずは……、このインプについての対策をしてみようか」

 

「悪魔系か……」

 

「うわぁ……、如何にも悪魔っぽい姿をしているわね……」

 

 情報収集を再開した勇綺と龍哉、そして秋は、図鑑に掲載されている一体の魔物に視線を移す。勇綺達が注目したのは、夜の平原に出現する魔物、インプである。インプは、図鑑の情報によると、種族が悪魔系で、体長は百センチメートル。全身が紫色で、頭に二本の小さな角と蝙蝠のような羽を背中から生やしており、長い尻尾は、先端の部分が矢印みたいに尖っている小鬼の姿をした魔物だ。平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、性格はかなりずる賢く、夜の暗闇や物陰を利用した不意打ちと命乞いからのだまし討ちが得意である。スタン系の状態異常と闇属性攻撃に耐性を持ってはいるが、最弱の魔物であるゴブリンに毛が生えた程度の強さしかないので、ステータスは余り高くない。この魔物の弱点は、光属性攻撃と金属性攻撃に弱く、更に、悪魔系特効の武器やアイテム、そしてスキルがかなり効果的なようだ。

 

「このインプのステータスは、ゴブリンと大きな差はないみたいだね……。ならば、インプの不意打ちとだまし討ちさえ注意すれば、ゴブリン達と戦った時みたいに、秋のスキルで眠らせる作戦で問題は無さそうだな……」

 

 勇綺はインプを、朝の平原で戦ったゴブリンの時と同じように、秋のスキルで眠らせてから倒す事を提案する。インプはずる賢いが、ステータスはゴブリンと大きな差はないので、秋の眠らせるスキルを使った作戦で十分だろう。

 

「確かに、この程度の魔物なら、ゴブリンの時と同じ戦い方で問題無さそうだな……」

 

「ええ」

 

 勇綺が提案した作戦に、龍哉と秋は、ゴブリンの時と同じ方法でインプを倒す事に納得する。

 

「じゃあ……、次は……。ナイトファング、ジャイアントラット、ワイルドオウル、の対策だ!」

 

「ほう……。狼に、ネズ公とフクロウか……。面白い……」

 

「狼の魔物は、何か強そうね……」

 

 インプの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、更に情報を集めようと、図鑑に掲載されている、他の夜の平原の魔物に視線を移す。勇綺達が次に注目した夜の平原の魔物は、ナイトファングとジャイアントラット、そしてワイルドオウルの三体である。先ず一体目の魔物、ナイトファングは、図鑑の情報によると、種族は意地悪兎とワイルドボアと同じ獣系で、体長が百六十センチメートル位の、全身黒色の被毛で覆われている狼の姿をした怪物だ。平原や森、山等に棲息しており、スピードと回避能力が高く、牙を使った噛み付き攻撃の威力もかなり高い。この魔物の弱点は、朝の平原に出現する意地悪兎とワイルドボアと同じで、火属性攻撃に弱く、更に武器攻撃や状態異常への耐性も無いようだ。次に、二体目の魔物、ジャイアントラットは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は獣系で、体長が五十センチメートル位の、全身灰色の毛で覆われているネズミの姿をした怪物である。出現範囲が広く、平原や森、洞窟、山、無人の建物、街中等に棲息しており、動きは平均的なスピードで、前歯を使った攻撃はそこそこの威力だが、非戦闘職でも簡単に倒せる位、戦闘能力は然程高くはないようだ。弱点は、意地悪兎とワイルドボアとナイトファングと同じで、火属性攻撃と武器攻撃、更に状態異常が良く効くようである。そして、三体目の魔物であるワイルドオウルは、図鑑の情報だと、種族が飛行系で、体長が八十センチメートル位の、全身薄茶色のフクロウの怪物だ。平原や森等に棲息しており、スピードはあまり速く無いが、夜の闇を利用して足の爪を使った奇襲攻撃と、敵を暗闇状態にする魔法を得意としている。土属性攻撃とスタン系の状態異常に耐性があるだけじゃなく、更に、暗闇と睡眠の状態異常にも耐性があるようだ。この魔物の弱点は、風属性攻撃と射撃属性攻撃、そして投擲属性攻撃と火器属性攻撃に弱く、更に、スタンと睡眠と暗闇以外の状態異常等が有効だろう。

 

「ふむ、獣系の魔物は、耐性が少ないから戦いやすいな……。とりあえず、ナイトファングとジャイアントラットの弱点は、意地悪兎とワイルドボアと同じみたいだから……。こいつらも、秋のスキルで眠らせた隙に、攻撃をすればなんとかなりそうだね……。そして、ワイルドオウルだけど……。こいつは、キラーチキンと違ってスピードが速くないから、ワイルドオウルが攻撃をする前に、龍哉が持っている飛び道具で弱点を付いて速攻で倒せそうだけど……。暗闇状態にする魔法と奇襲攻撃には、注意をしたほうが良いね……」

 

「狼の魔物と鼠の魔物も、あたしのスキルで眠らせるのね? 分かったわ。任せて!」

 

「フクロウの魔物は、俺が持っている飛び道具で、速攻で倒せば良いんだな? 分かった。やってやるぜ!」

 

 勇綺は、図鑑に掲載されている二体の魔物、ナイトファングとジャイアントラットは、意地悪兎とワイルドボアと同じ方法で倒す事を、秋と龍哉に提案する。獣系の魔物は、耐性が少なく戦いやすいので、ナイトファングとジャイアントラットは、意地悪兎とワイルドボアと同じ方法で対策しても、あまり問題は無いだろう。そしてワイルドオウルの対策は、敵が攻撃をする前に、龍哉が持っている飛び道具を使って速攻で倒すようである。同じ飛行系の魔物で、スピードと回避能力が高いキラーチキンが相手ならば、飛び道具を使って速攻で倒すのは難しいが、動きの遅いワイルドオウルならば、この作戦は、かなり効果的だろう。

 勇綺が提案した対策に、秋と龍哉は、特に異論もなく納得する。

 

「さて、次の魔物の対策は、コープスと火の玉だね……」

 

「ゾンビと人魂……」

 

「ほう……」

 

 ナイトファングとジャイアントラットとワイルドオウルの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、情報収集を再開しようと、図鑑に掲載されている、二体の魔物に視線を移す。勇綺達が注目した二体の魔物は、コープスと火の玉である。先ず一体目の魔物、コープスは、図鑑の情報によると、種族は不死系。体長が百八十センチメートル位で、青色の身体には、ボロボロの白い衣服を纏っており、ホラーゲームとかに登場するゾンビにそっくりな怪物だ。平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、スピードと攻撃力は高く無いが、体力は中々高いので、レベルが低いと倒すのに時間が掛かってしまうだろう。この魔物の長所は体力以外に耐性も優秀で、一部のスタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の状態異常に耐性を持っているだけじゃなく、死属性状態異常と亡者属性状態異常の吸収耐性も持っており、更に、闇・精・病の三つの属性攻撃への耐性と吸収系の攻撃を逆に吸収する能力まで持っているようである。この魔物の弱点は、武器攻撃への耐性を持っていないだけじゃなく、火・光・土・金の四つの属性攻撃にとても弱く、更に、不死系特効の武器やスキル、そして回復アイテムと魔力にダメージを与える攻撃がかなり効果的なようだ。そして、二体目の魔物、火の玉は、図鑑に掲載されている情報によると、種族は霊体系で、大きさが二十センチメートル位の、赤い火の玉の姿をした怪物である。平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、体力は、あまり高く無い。見た目は弱そうな火の玉だが、火属性攻撃の魔法は、レベルが低い戦士職や非戦闘職を、一撃で倒す程の威力を持っているようだ。この魔物が優れている所は、火属性攻撃魔法の火力だけでなく、耐性と防御力も優秀で、スタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の状態異常への耐性を持っているだけじゃなく、亡者属性と炎上属性の二つの変化系状態異常の耐性も持っており、更に、火・土・闇・病・時の五つの属性攻撃の耐性と武器攻撃のダメージを最小限に低下させてしまう程の高い防御力まで持っているので、攻撃力が低い非戦闘職やレベルが低い戦士職では、倒すのが難しいだろう。弱点は、光・水・精・音・空の五つの属性攻撃と魔力にダメージを与える攻撃に弱く、更に霊体系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり有効なようだ。

 

(うへぇ……、状態異常に強いだけじゃなく、耐久力もあるとは……、中々厄介だな……。この二体の魔物は……。特に火の玉は、レベルが低い相手を一撃で倒す程の威力がある火属性攻撃の魔法を持っているから、かなりヤバいぞ……。う〜~ん……、さて、どうしたものか……)

 

 図鑑に掲載されている二体の魔物の面倒な情報に、勇綺は、頭を悩ませるのであった。




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※一部の文を修正しました

修正前:平原や洞窟、廃墟や森等に棲息しており、性格はかなりずる賢く、夜の暗闇や物陰を利用した不意打ちと命乞いからのだまし討ちが得意である。

修正後:平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、性格はかなりずる賢く、夜の暗闇や物陰を利用した不意打ちと命乞いからのだまし討ちが得意である。

修正前:出現範囲が広く、平原や森、洞窟、山、廃墟、街中等に棲息しており、動きは平均的なスピードで、前歯を使った攻撃はそこそこの威力だが、非戦闘職でも簡単に倒せる位、戦闘能力は然程高くはないようだ。

修正後:出現範囲が広く、平原や森、洞窟、山、無人の建物、街中等に棲息しており、動きは平均的なスピードで、前歯を使った攻撃はそこそこの威力だが、非戦闘職でも簡単に倒せる位、戦闘能力は然程高くはないようだ。

修正前:平原や森、洞窟、廃墟等に棲息しており、スピードと攻撃力は高く無いが、体力は中々高いので、レベルが低いと倒すのに時間が掛かってしまうだろう。

修正後:平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、スピードと攻撃力は高く無いが、体力は中々高いので、レベルが低いと倒すのに時間が掛かってしまうだろう。

修正前:更に、一部のスタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷)の状態異常に耐性を持っているだけじゃなく、闇属性攻撃や病属性攻撃にも耐性を持っているようである。

修正後:この魔物の長所は体力以外に耐性も優秀で、一部のスタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の状態異常に耐性を持っているだけじゃなく、死属性状態異常と亡者属性状態異常の吸収耐性も持っており、更に、闇・精・病の三つの属性攻撃への耐性と吸収系の攻撃を逆に吸収する能力まで持っているようである。

修正前:平原や森、洞窟、廃墟等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、体力は、あまり高く無い。

修正後:平原や洞窟、無人の建物等に棲息しており、動きは平均的なスピードだが、体力は、あまり高く無い。

修正前:動きは平均的なスピードだが、この魔物が得意とする火属性攻撃の魔法は、レベルが低い戦士職や非戦闘職を、一撃で倒す程の威力を持っているようだ。体力は、あまり高く無いが、武器攻撃への耐性が高めで、更にスタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷)の状態異常への耐性を持っているだけじゃなく、火属性攻撃と病属性攻撃の耐性も持っているので、攻撃力が低い非戦闘職やレベルが低い戦士職では、倒すのが難しいだろう。

修正後:動きは平均的なスピードだが、体力は、あまり高く無い。見た目は弱そうな火の玉だが、火属性攻撃の魔法は、レベルが低い戦士職や非戦闘職を、一撃で倒す程の威力を持っているようだ。この魔物が優れている所は、火属性攻撃魔法の火力だけでなく、耐性と防御力も優秀で、スタン系の状態異常や、精神系(睡眠・混乱・恐怖・激怒・鬱・愛護・弱気・魅了・不眠・忘却・悲観・怠惰)と呪術系(呪詛・呪縛・病難・死・憑依・災禍)、そして、毒素系(風邪・毒・猛毒)と神経系(麻痺・沈黙・鼻炎・耳鳴・激痛・暗闇・目眩・咳・出血・嘔気・挫傷・空腹)の状態異常への耐性を持っているだけじゃなく、亡者属性と炎上属性の二つの変化系状態異常の耐性も持っており、更に、火・土・闇・病・時の五つの属性攻撃の耐性と武器攻撃のダメージを最小限に低下させてしまう程の高い防御力まで持っているので、攻撃力が低い非戦闘職やレベルが低い戦士職では、倒すのが難しいだろう。

修正前:この火の玉の弱点は、光・水・精の三つの属性攻撃と魔力にダメージを与える攻撃に弱く、更に霊体系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり有効なようだ。

修正後:弱点は、光・水・精・音・空の五つの属性攻撃と魔力にダメージを与える攻撃に弱く、更に霊体系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり有効なようだ。


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第48話 魔物対策 その5

最新話です!
どうぞ!


「おいおい、かなり面倒だぞ。この二体の魔物……。どうする? 勇綺?」

 

 頭を悩ませている勇綺に、龍哉は二体の魔物、コープスと火の玉について問いただす。

 

「う〜~ん……、そうだな……。先ずは、コープスだけど……。こいつは、ブルームースと同じで、動きが遅くて状態異常が効かない……。でも、ブルームースと違って、武器攻撃への耐性を持っていないだけじゃなく、特殊攻撃や飛び道具も持っていない……。ならばここは、三人で、距離を取りながら飛び道具だけで攻めていこうと思う。この方法なら、動きが遅くて飛び道具を持たないコープスを反撃させないで、安全に倒す事ができると思うんだ」 

 

 勇綺はコープスを、距離を取りながら遠距離武器だけで倒す事を提案する。動きが遅くて、特殊攻撃や飛び道具を持たないコープスには、距離を取りながら遠距離武器で攻めてゆく作戦は、かなり効果が高いといえるだろう。

 

「作戦は、分かったけど……」

 

「距離を取りながら遠距離武器で攻めるのは、良いんだけどよぉ……」

 

 勇綺が提案した、三人で遠距離から攻めてゆく作戦に納得した秋と龍哉は、ある事について疑問に感じていた。

 それは……。

 

「お前、飛び道具なんて持っていないだろ? 遠距離戦は無理じゃね?」

 

「飛び道具を持っていない勇綺が、どうやって離れた所から攻撃するのよ?」

 

 どうやら龍哉と秋は、飛び道具を持っていない勇綺が、遠距離で戦おうとする事に疑問を感じていたようだ。二人は疑問に感じていた事について、勇綺に問いただす。

 

「離れた場所から、その辺に落ちている、大きめな石でも投げるよ。コープスは防御力が高く無いから、投石でもそれなりのダメージを与えられると思うからね」

 

 問い掛けられた勇綺は、遠距離から、その辺に落ちている大きめな石を投げて戦う事を、龍哉と秋に説明すると……。

 

「投石か……。なるほど……。それなら離れた所でも攻撃ができるな……」

 

「なら、作戦は大丈夫そうね」

 

 勇綺の説明に、龍哉と秋は納得する。

 

「それじゃあ、火の玉の対策だけど……。こいつは、多くの状態異常への耐性と武器攻撃のダメージを最小限にする程の高い防御力を持っているだけじゃなく、火属性魔法の火力の高さも持っている、かなり厄介な魔物だけど……、弱点もある……。図鑑によると、こいつの弱点に、音属性攻撃が効くと書いてある。ならば、秋が持っているリュートで攻撃すれば、きっと防御力が高い火の玉にもダメージを与えられると思うんだ。でも、火の玉の火属性魔法と秋のリュートで殴り合いをしたら、間違いなく秋の方が不利だ。だから、火の玉が秋に攻撃をして来ないように、僕と龍哉が飛び道具を使って、こいつの注意を引くんだ。そして、注意を引いて隙だらけになった火の玉に秋がリュートで攻撃を仕掛けてくれ。もし、音属性攻撃を受けて、倒れなかった場合は、また僕と龍哉が注意を引いて、その隙に秋が攻撃をするんだ。これを繰り返せば、この火の玉を倒す事ができるはずだ」

 

 コープスについての話し合いを終えた勇綺達は、次に、火の玉の情報に視線を移す。

 図鑑に掲載されている情報を見据えながら勇綺は、龍哉と秋に、火の玉の対策についての説明をする。先ずは、秋が敵から狙われないように、勇綺と龍哉が飛び道具を使って、火の玉の注意を引く。そして、注意を引いた事で隙だらけになった火の玉に、秋がリュートの音属性攻撃で敵の弱点を付いて倒すようである。かなり危険な作戦だが、今の勇綺達が火の玉を倒すには、この方法しかないだろう。

 

「この作戦で火の玉をぶっ飛ばせるんなら、俺は喜んで、勇綺と一緒に囮役をやってやるぜ!」

 

「この魔物にダメージを与えられるのは、あたしだけか……。責任重大ね……。でも、やってやるわ。こいつは、あたしが倒す!」

 

 勇綺が提案した火の玉の対策に、龍哉と秋は、特に迷ったりせず、やる気に満ちた表情で納得する。

 

「さて、次にジャイアントアントの対策だけど……。その前に……」

 

「秋……」

 

 火の玉についての話し合いを終えて、勇綺と龍哉は、ジャイアントアントの対策をする前に、一度、秋の方へと視線を移す。

 

「悪いけど、二人共。あたしは虫が嫌いだから、目隠しをするからね」

 

「お、おう……」

 

「あ……。う、うん……、分かった。じゃあ、ジャイアントアントの対策をするね」

 

 勇綺と龍哉が視線を移した先には、秋が、両手で自身の両目を隠していたのである。おそらく秋は、図鑑に掲載されている苦手な虫の魔物のイラストを見たくないから、両手で自分の目を隠したのだろう。

 両手で自身の目を隠して、虫を見る事を拒絶する秋に、龍哉と勇綺は戸惑いながらも納得すると、図鑑に掲載されているジャイアントアントの情報に視線を移す。

 勇綺と龍哉が注目したジャイアントアントは、図鑑の情報によると、種族が虫系で、全長は三十センチメートル。全身が黒色で、勇綺達が住んでいる世界の蟻に、そっくりな姿をした怪物だ。平原や洞窟、山等に棲息しており、ステータスは全体的に余り高いとは言えず、一体だけだと、そこまで強力な魔物ではない。だが、この魔物の恐ろしさは、仲間を呼ぶ能力だ。ジャイアントアントは、仲間を呼ぶ事で数を増やした後、その数の多さを利用して敵を倒すのが得意な魔物である。この、厄介な人海戦術で攻めてくる、ジャイアントアントの弱点は、打撃・格闘・氷の三つの属性攻撃と状態異常攻撃に弱く、更に、虫系特効の武器やアイテム、そして、スキル等がかなり有効なようだ。

 

「イッカクと同じく、人海戦術が得意な魔物か……。このジャイアントアント、一体だけなら、そこまで強くは無いみたいだけど……。数を増やされると相当厄介だな……。とりあえず、こいつの対策だけど……。一体だけならば、僕と龍哉の二人がかりで、力押しをすれば、苦戦する事なく倒せるだろう……。でも、こいつが複数出現したら、かなり厄介だ……。はやめにジャイアントアント達を倒さないと、仲間を次々と呼んでくるだろうからね。そうなったら、敵全体にダメージを与えられる攻撃を持たない僕達に、まず勝ち目はない……。そんな最悪な状況を回避する為にも、ジャイアントアントが複数出現したら、秋のスキルでこいつを眠らせるしかないと思うんだ……」

 

 勇綺は、仲間を増やして人海戦術で攻めてくるジャイアントアントを、秋のスキルで眠らせる事を提案する。全体攻撃を持たない勇綺達が、厄介な戦術を得意とするジャイアントアントに対抗するには、秋のスキルで眠らせる方法しかないだろう。

 すると……。

 

「え……? 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理! できない! あたしは、虫が嫌いだって言ったでしょ!? それに、虫の魔物は、勇綺と龍哉が二人で何とかするって、言ってたじゃん!? 言ったからには、二人で何とかして! あたしは、虫の魔物だけは絶対に戦わない! 断固拒否するわ!!」

 

 虫の魔物が嫌いな秋は、勇綺が提案した対策を、必死な表情で喚き散らしながら断るのであった。




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※一部の文を修正しました

修正前:平原や洞窟、山、森等に棲息しており、ステータスは全体的に余り高いとは言えず、一体だけだと、そこまで強力な魔物ではない。だが、この魔物の恐ろしさは、仲間を呼ぶ能力だ。

修正後:平原や洞窟、山等に棲息しており、ステータスは全体的に余り高いとは言えず、一体だけだと、そこまで強力な魔物ではない。だが、この魔物の恐ろしさは、仲間を呼ぶ能力だ。


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第49話 魔物対策 その6

はい、最新話です!
それでは、どうぞ♪


「おい、秋……」

 

「な、何よ?」

 

 喚き散らす秋に、龍哉が突然、気まずい表情をしながら呼び掛ける。

 勇綺の提案によって不機嫌になっている秋は、こちらを呼び掛ける龍哉の方へと視線を移す。

 

「少し、落ち着け……。ここは、図書館だぜ? 静かにしねぇと……。ほら、周りを見てみろ……。お前が喚き散らしたから、俺達は今、他の利用者達に、すげぇ睨まれて、かなり気まずい状況になってんだよ……」

 

「え……」

 

 気まずい表情をした龍哉が突然、呼び掛けたのは、他の図書館利用者達に迷惑をかけてしまっている事を、喚き散らした秋に注意をする為だったようである。おそらく龍哉が、先程から気まずい表情をしていたのは、他の利用者達に睨まれていたのが原因だろう。

 龍哉に注意をされた秋は、辺りを見回すと……。

 

「静かに読めないのかよ……」

 

「うぜぇ……」

 

「静かにできないなら、出ていって欲しいわ……」

 

「迷惑な奴等だな……」

 

「ルールを守れよ……」

 

「チッ……」

 

 周囲にいた利用者達は、勇綺達に、冷たい視線を向けながら愚痴をこぼしたり、舌打ち等をしていた。

 

「う、うるさくして……、す、すみませんでした……」

 

 こちらに冷たい視線を向けられて、気まずく感じた秋は、周囲にいた利用者達に、顔を赤らめながら謝罪をする。おそらく、喚き散らして多くの人達に迷惑を掛けてしまった事が、余程恥ずかしかったのだろう。

 

「と、とにかく……、勇綺が提案した虫の魔物についての対策だけど……」

 

 周囲にいた利用者達に謝罪した秋は、勇綺が提案したジャイアントアントの対策についての話を切り出す。

 

「あたしは、虫の魔物だけは絶対に戦わないから……。本当に、無理なのよ……」

 

 秋は、勇綺が提案したジャイアントアントの対策を、涙目になりながら断る。

 

(う〜~ん……。秋のサポートがないと、複数のジャイアントアントが出現した時、僕と龍哉だけで、この魔物の相手をするのは、かなり厳しい……。何かいい方法は、無いのか……? 虫嫌いの秋が戦えるようにするには、どうすればいいんだ……)

 

 ジャイアントアントの対策についての提案を断られた勇綺は、虫が苦手で戦えない秋に、頭を悩ませていると……。

 

「あ、俺、良いこと思いついた!」

 

「「え?」」

 

 勇綺が秋の事について頭を悩ませている最中、龍哉が何やら妙案を思い付く。

 勇綺と秋は、目を大きく見開きながら、何か良い案を思い付いた龍哉の方へと視線を移す。

 

「秋、お前、虫の姿が嫌いだから、虫の魔物とは戦いたくないんだよな? だったら、見なければ良いんだよ。目隠しをすれば、攻撃はできなくなるけど、苦手な虫の魔物の姿を見ないですむし、安心して歌で俺達のサポートができるだろ? どうだ? 良い案だろう?」

 

 龍哉は得意気な表情で、虫が苦手な秋に、目隠しをしながら歌う事を提案する。

 龍哉が思い付いた、この妙案に、勇綺と秋の反応は……。

 

「目隠しか……。なるほど……。それなら、虫嫌いの秋でも、歌で僕達のサポートができるね……」

 

「えぇぇ……。そう、上手くいくかしら……」

 

 龍哉の妙案に、勇綺は顎に手を当てながら納得する。

 納得する勇綺とは対照的に、秋は龍哉の妙案に懐疑的であった。

 

「俺のナイスアイデアが上手くいくかどうかは、虫の魔物と戦ってみればわかるさ。もし、駄目だった場合は、別の方法を考えれば良いだけだしな。だから、一度、やってみようぜ? な? 頼むよ、秋」

 

「秋、お願い。君の力が必要なんだ……」

 

 龍哉と勇綺は、秋を見据えながら、こちらに協力するように頼み込む。

 

「で、でも……、目隠しをしている間に、虫の魔物が襲ってきたりしたら……」

 

 秋は、目隠しをしている間に、苦手な虫の魔物に襲われる可能性を危惧しているのか、龍哉と勇綺の頼みを、中々頷く事が出来なかった。

 

「大丈夫だって。虫の魔物は、絶対、お前に近付けさせねぇからよ」

 

「秋は、僕達が必ず守る……。だから、僕達を信じて……。秋……」

 

 なかなか首を縦に振らない秋に、龍哉と勇綺は、こちらの頼みを納得してもらおうと必死に説得する。

 すると……。

 

「うぅぅ……、わ、わかったわよ……。や、やれば良いんでしょ……。やれば……。言っておくけど、失敗しても、あたしを責めないでよね……」

 

 二人の必死の説得に、秋は根負けしたのか、龍哉と勇綺の頼みを渋々ながら承諾する。

 

「よっし、そうこなくっちゃな」

 

「ありがとう、秋。僕、頑張るから」

 

 頼みを承諾した秋に、龍哉は喜び、勇綺は微笑みながら感謝をするのであった。

 

「んじゃ、情報収集を再開しようぜ。勇綺、次のページを頼む」

 

「うん」

 

 秋の説得を終えて、龍哉は情報収集を再開しようと、勇綺に、図鑑の次のページをめくるように促す。

 龍哉の言葉に勇綺は納得すると、図鑑の次のページをめくる。

 

「このページは……、ランドロックの森に出現する魔物についての情報が掲載されているね……。え〜~と、この森に出現する魔物は……、ミドリガマ、おおなめこ、ペブルウォーク、ガイコツ、ジャイアントスネイル、スパイダー、おおこがねむし、ホワイトラビット、ワイルドベアの他に、ゴブリン、ワイルドボア、ブルームース、人食い花、ナイトファング、ジャイアントラット、ワイルドオウル等も出現するみたいだね……」

 

「あの森には、かなりの種類の魔物がいたんだな……」

 

「ひっ、また虫がいるし……」

 

 勇綺と龍哉は、めくった先のページに掲載されている、ランドロックの森に出現する魔物についての情報に視線を移す。

 だが、秋だけは、めくった先のページに

苦手な虫の魔物が掲載されていたので、直様両手で自身の両目を覆い隠してしまう。

 

「とりあえず、ミドリガマ、おおなめこ、ペブルウォークから対策してみようか」

 

「こいつらか……。中々、手強かったよなぁ……」

 

 勇綺と龍哉が最初に注目したランドロックの魔物達は、ミドリガマとおおなめこ、そしてペブルウォークの三体である。先ず一体目の魔物、ミドリガマは、図鑑の情報だと、種族は両生類系で、体長が百四十センチメートル位の、雨蛙にそっくりな姿をした怪物だ。森や洞窟、無人の建物等に棲息しており、水属性攻撃への防御力が高く、更に、足と長い舌を使った攻撃がかなり強力である。この魔物の弱点は、火属性攻撃と氷撃属性攻撃に弱く、更に、状態異常攻撃には、かなり弱いようだ。次に、二体目の魔物、おおなめこは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は植物系。体長が二十五センチメートル位で、カサがオレンジ色、柄には可愛らしいつぶらな瞳がついている茸のような姿をした怪物だ。森や洞窟等に棲息しており、パワーとスピードは平均的だが、口から出す透明な粘液は、敵の動きを鈍らせる効果を持っている。更に、木属性攻撃と神経系・スタン系の状態異常への耐性があるだけじゃなく、幸運のステータスが少し高いので、他の状態異常も中々効きづらい。この、おおなめこの弱点は、火・金・斬撃・斧撃の四つの属性攻撃に弱く、更に植物なので、植物系特効の武器とアイテム、そしてスキルがかなり効果的である。そして、三体目の魔物であるペブルウォークは、図鑑に記述されている情報だと、種族は鉱物系で、体長が二十センチメートル位あり、一頭身の身体には、つり上がった白い目と口、そして短い手足がついた、石の姿をした怪物だ。森と洞窟、山、そして海岸等に棲息しており、鈍そうな見た目とは違って、意外と素早く、石のように硬い身体を使った体当り攻撃は、かなり強力である。このペブルウォークの強力な所は、攻撃以外に耐久力もかなり厄介で、斬撃・刺突・射撃・斧撃・投擲・火器の六つの属性攻撃への防御力がかなり高く、更に、一部のスタン系・毒素系・神経系・精神系・呪術系・石化・凍結・亡者・人形・宣告・切断・貫通の十二個の状態異常と病・精・時の三つの属性攻撃への耐性までも持っているので、レベルの低い戦闘職や非戦闘職は相当苦戦するだろう。この魔物の弱点は、魔法防御力が低いので魔法攻撃と魔力にダメージを与える攻撃にとても弱く、更に、打撃・格闘・土・金・空の五つの属性攻撃や鉱物系特効の武器とスキル等による攻撃が、かなり有効なようだ。

 

「この、ミドリガマは、足と舌を使った攻撃がかなり強力で厄介だったから、ランドロックの森の時と同じように、秋のスキルで眠らせてから倒した方が良いね……」

 

 勇綺は、ミドリガマを、ランドロックの森で戦った時と同じように、スキルで眠らせてから倒す事を、秋と龍哉に提案する。ミドリガマの脚力と舌による攻撃は、かなり強力なので、スキルで眠らせてから攻撃をするのが、今の勇綺達にとって、一番安全な倒し方といえるだろう。

 

「おう」

 

「ええ、わかったわ」

 

 勇綺が提案したミドリガマの対策に、龍哉と未だに虫を直視するのを避けるために両手で目隠しをしている秋は、頷きながら納得するのであった。




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第50話 魔物対策 その7

はい、第50話です。
それでは、どうぞ!


「これで、ガマ公の対策はバッチリだな! んじゃ、次は、キノコの対策といこうぜ?」

 

「うん」

 

 ミドリガマの対策についての話し合いを終えた龍哉と勇綺、そして目隠しをしている秋は、次の魔物の対策を始める。龍哉と勇綺が、次に視線を移した魔物は、おおなめこだ。この魔物について、勇綺と龍哉が対策を始めようとすると……。

 

「ちょっと待って、二人共」

 

「な、何だよ?」

 

「あ、秋?」

 

 次の魔物の対策を始めようとする二人に、秋は、今まで目隠しをしていた両手を下ろしながら呼び止める。

 急に呼び止められた龍哉と勇綺は、戸惑いながらも秋の方へと視線を移す。

 

「キノコって……、ランドロックの森にいた、あの可愛いキノコの魔物の事? あの子もやっぱ、倒す……の?」

 

 秋は、おおなめこを倒すかどうかについて、恐る恐る、勇綺と龍哉に問い掛ける。

 すると……。

 

「え? いや、まぁ、倒すだろ? あのキノコも魔物だし……。なぁ?」

 

「う、うん……。倒さないと、レベルは上がらないだろうし……」

 

 秋の変な問い掛けに、龍哉と勇綺は、不思議に思いながらも、おおなめこを倒すと返答する。

 

「た、倒すんだ……。あんなに、可愛い子を……。あんた達って、血も涙もないのね……。あたしは、嫌なんだけど……。あの子を倒すの……。可愛そうだし……」

 

 容赦のない返答する二人に、秋は難色を示す。何故ならば秋は、ランドロックの森で出会った、おおなめこの可愛らしい姿に、心を奪われてしまっていたのだ。だから秋は、可愛いおおなめこを、容赦なく倒そうとする二人に賛同できないのである。

 

「はぁ……。秋、お前なぁ……。相手は魔物なんだぞ? そんな甘さじゃあ、闇の王達に勝てねぇだけじゃなく、世界も救えねぇぞ? 覚悟を決めろよ」

 

 龍哉は、おおなめこに情けを掛けようとする秋の甘い考えに、ため息をつく。そして、戦う覚悟が無い秋に、龍哉は呆れながら苦言を呈する。

 

「う……、ぐうぅぅぅ…………」

 

 龍哉の苦言に、秋は、言い返す言葉が思い浮かばず、唸り声をあげながら悔しがってしまう。

 

「んじゃ、キノコの対策始めっぞ」

 

 秋を言い負かした龍哉と勇綺は、おおなめこの情報収集を再開しようと、図鑑に視線を移す。

 

「分かってるわよ……、あたしの考えが、甘い事ぐらい……。でも、それでも……、あの子を倒すなんて……、あたしには無理よ……」

 

 二人が図鑑に視線を移している最中、苦言をいわれた秋は、ぶつぶつと愚痴をこぼしていた。おそらく秋は、龍哉の苦言に、どうしても納得ができないのだろう。

 

「勇綺、俺は一応、この魔物と戦った事があるけど……。こいつ、中々ずる賢くて、仲間を見捨てて逃げ出したりするんだぜ……。俺は、こういう仲間を大事にしない卑怯な奴、嫌いなんだよな……。マジでムカつく、キノコだぜ……」

 

 愚痴をこぼす秋に、龍哉と勇綺は気にもせず、おおなめこの対策を始める。

 龍哉は、図鑑に掲載されているおおなめこのイラストに、不快そうな表情をしながら悪態をつく。おそらく龍哉は、仲間を見捨てて逃げ出した、おおなめこの卑劣な行動が、余程許せなかったのだろう。

 

「ふむ、人食い花と違って、厄介な攻撃は持ってないみたいだな……。それにスピードも、そこまで速くない……。ならば、龍哉と秋の飛び道具と、スキルで植物系特効を付与した僕の投石で遠距離から攻めれば、おおなめこを無傷で倒せそうだね……」

 

 悪態をつく龍哉と愚痴をこぼす秋に、勇綺は、おおなめこを遠距離武器だけで倒す事を提案する。おおなめこは、人食い花と違って、厄介な攻撃を持っていないだけじゃなく、スピードも速くないので、三人で遠距離から攻めれば、苦戦すること無く倒せるだろう。

 

「おう、分かった! やってやるぜ!」

 

(嫌だな〜~……)

 

 勇綺が提案した作戦に、龍哉は、得意気な表情をしながら納得する。

 だが、納得する龍哉とは対照的に、秋は、もの凄く嫌そうな表情をしていた。おそらく、まだ、おおなめこを倒す覚悟が出来ていないのだろう。

 

「それじゃあ、おおなめこの次は、ペブルウォークの対策だ。こいつの強さは、ランドロックの森で戦った時に、分かったけど……。防御力がとにかく高いから、今の僕達のレベルだと、かなり戦いづらい魔物だ……。非戦闘職の僕等が、こいつを力押しで倒すのは難しいから、弱点を突く必要がある。図鑑の情報によると、こいつの弱点は、魔法攻撃・魔力にダメージを与える攻撃・打撃属性攻撃・格闘属性攻撃・土属性攻撃・金属性攻撃・空属性攻撃・鉱物系特効攻撃が効くと書いてある。ふむ、なるほど……。ランドロックの森で、龍哉と秋の攻撃だけが、この魔物に効いていたのは、おそらく弱点を突いていたからか……」

 

「へぇ〜~。この彫刻刀、ただの彫刻刀じゃあなかったのか……」

 

「あたしが買った、この楽器、石の魔物に大ダメージを与えるほど凄い武器だったのね……」

 

 おおなめこについての対策を終えた勇綺達は、次に、石の怪物、ペブルウォークの情報に視線を移す。

 勇綺は、ランドロックの森で戦ったペブルウォークに、龍哉と秋の攻撃だけがダメージを与えられた理由に気付く。

 勇綺の言葉に、龍哉と秋は、自分達が買った武器の性能に目を丸くしていた。

 

「こちらがペブルウォークの弱点を突けられる武器を持っているのならば、作戦は、そうだな……。先ずは、僕が囮役になって、ペブルウォークの注意を引く。注意を引いて隙だらけになったペブルウォークに、龍哉と秋が彫刻刀とリュートで攻撃してくれ。二人の武器で弱点を突いていけば、高い防御力を持っているペブルウォークを、問題無く撃破する事が出来るはずだ」

 

 図鑑に掲載されている情報を見据えながら勇綺は、龍哉と秋に、ペブルウォークの対策についての説明をする。先ずは、勇綺が敵の隙を作るために、ペブルウォークの注意を引く。そして、注意を引いた事で隙だらけになったペブルウォークに、龍哉の彫刻刀による種族特効攻撃と秋のリュートを使った魔力攻撃で、敵の弱点を付いて倒すようである。この作戦ならば、高い防御力を持っているペブルウォークを、非戦闘職の勇綺達でも簡単に倒せるだろう。

 

「分かった。ダメージを与える役目は、俺と秋に任せろ」

 

「ええ、必ず倒してみせるわ」

 

 勇綺が提案したペブルウォークの対策に、龍哉と秋は、やる気に満ちた表情で承諾する。

 

「次は、この魔物の対策をしよう」

 

「こいつか……」

 

「名前がそのまんまね……」

 

 ミドリガマ・おおなめこ・ペブルウォークの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次の魔物の情報に視線を移す。勇綺達が次に注目した魔物は、人骨の魔物、ガイコツである。図鑑の情報によると、種族は骸骨系。体長が百七十八センチメートル位で、人間の白骨死体の姿をした怪物だ。森や洞窟、山等に棲息しており、スピードと攻撃力は平均的で、体術と自分の身体の一部の骨を投げつける技、【ボーンダート】が得意である。見た目が弱そうなガイコツだが意外にも、多くの初心者の冒険者達を、この二つの特技で苦しめているらしい。攻撃能力が強力なガイコツは、防御能力も強力で、一部のスタン系・精神系・呪術系・毒素系・神経系・素材・亡者・宣告・貫通の九つの状態異常への耐性と闇・精・病の三つの属性攻撃を無効化する程の高い耐性を持っているだけじゃなく、死属性状態異常の吸収耐性と吸収系攻撃を逆に吸収する能力も持っており、更に、斬撃・刺突・射撃・投擲の四つの属性攻撃に高い防御力まで持っているようである。このガイコツの弱点は、打撃・格闘・火・光・土・金の六つの属性攻撃に弱く、更に、骸骨系特効の武器やスキル、そして回復アイテムと魔力にダメージを与えられる攻撃がかなり効果的なようだ。

 

「このガイコツ……、あたしのスキルが効かなかったし、けっこう強かったわよね……。ねぇ、龍哉? あんた、骨の専門家だっけ? この魔物は骨でできているし、あんたの骨細工師のスキルで、何とかなったりしないかしら?」

 

 図鑑に掲載されているガイコツの情報を見据えながら秋は、龍哉に、骨細工師のスキルについて問い掛ける。

 

「え? 俺のスキル? 俺のスキルで……、このガイコツを何とか出来る……のか? ちょっと、待ってろ。スキルの確認をしてみる……」

 

 秋の問い掛けに龍哉は、自身のスキルの確認をしようと、アイテムポーチから取り出したステータスプレートに視線を移すのであった。




龍哉のスキルは次回になります!

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第51話 魔物対策 その8

最新話です!
それでは、どうぞ!


「え〜~と……、俺が使えるスキルは……。彫刻刀を装備している時に使える戦闘スキル、【彫骨撃】が使えるみたいだな……。お?」

 

「どう……したの?」

 

「り、龍哉?」

 

 ステータスプレートに視線を移した龍哉は、自身のスキルの情報を見据えながら目を大きく見開く。

 プレートを見据えながら目を丸くする龍哉に、秋と勇綺は、恐る恐る問いただす。おそらく、龍哉が見据えているプレートの情報が気になったのだろう。

 

「このスキルは、相手が骸骨系の魔物なら、彫刻刀の攻撃に防御無視効果と攻撃対象の腕力・頑丈・敏捷のステータスを減少させる効果が付与されるみたいだ。骸骨系の魔物限定だけど、この弱体化させる効果はかなり使えるぞ! このスキルを上手く使えば、ガイコツを楽に倒せるかもしれねぇ……」

 

 問い掛けられた龍哉は、自身のスキルについて勇綺と秋に説明をする。龍哉の説明によると、骨細工師のスキル、【彫骨撃】は、彫刻刀で攻撃した時、相手が骸骨系の魔物ならば、防御力を無視して高いダメージを与えられるだけじゃなく、腕力・頑丈・敏捷の三つのステータスを減少させる効果を持っているようだ。このスキルの効果を上手く使えば、ステータスや特技が弱体化したガイコツを、戦闘職が不在の勇綺達でも倒す事ができるだろう。

 

「なるほど……。確かに、そのスキルを使えば、強力なガイコツを簡単に倒せるようになるかもしれないね……。ならば先ずは、僕と秋が、ガイコツの注意を引くから、その隙に龍哉がスキルで、敵のステータスを弱体化させてくれ。弱体化させた後は、秋のリュートと僕の鍬、そして龍哉のスキルで、ガイコツを袋叩きにしよう。これで、ガイコツを倒せるはずだ」

 

 龍哉の説明を聞いた勇綺は、骨細工師のスキルで弱体化させたガイコツを、三人の攻撃で袋叩きにする事を提案する。卑怯くさい戦い方だが、この方法ならば、ステータスが低い勇綺達でも、確実にガイコツを倒す事ができるだろう。

 

「分かったわ」

 

「よし、まかせろ。ガイコツは必ず、俺が弱体化させてやるよ」

 

 勇綺が提案したガイコツの対策に、秋と龍哉は、首を縦に振りながら納得する。

 

「じゃあ、ガイコツの次は、この魔物の対策だ」

 

「あ、コイツは……」

 

 ガイコツの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次の魔物の情報を集めようと、図鑑に視線を移す。勇綺達がガイコツの次に注目した魔物は、ジャイアントスネイルである。このジャイアントスネイルは、図鑑の情報によると、森や洞窟、山等に棲息しており、種族は水棲系で、体長が百三十センチメートル位の、カタツムリの姿をした怪物だ。スタン系への耐性と水属性攻撃吸収耐性を持っているだけじゃなく、身体に付いている殻は敵の攻撃を弾いてしまう程、高い防御力まで持っており、更に、勇綺達が知っているカタツムリと違って、ジャイアントスネイルはスピードがとても速いので、ダメージを与えるのがかなり難しいようである。防御力と回避能力が優れているジャイアントスネイルは、攻撃も優秀で、高い素早さを利用した強力な【体当り】と透明な液体を吐き出して敵のスピードを低下させる補助技、【ネバネバ液】が得意であり、この二つの厄介な特技で、多くの冒険者達を苦しめているらしい。倒すのが難しいジャイアントスネイルだが、弱点はあり、スタン系以外の状態異常にとても弱く、更に、斬撃・刺突・斧撃・雷・木の五つの属性攻撃や水棲系特効の武器とスキル等による攻撃が、かなり効果的なようだ。

 

「防御力と回避能力の両方を兼ね備えた魔物か……。なるほど……。こいつは手強そうな魔物だけど……、状態異常が効くのならば、ペブルウォークやガイコツよりは戦いやすい。とりあえず最初は、秋のスキルでジャイアントスネイルを眠らせる。次に、眠っているコイツを、斬撃属性武器や刺突属性武器で弱点をついて攻撃をする。これで、ジャイアントスネイルを何とか倒せるはずだ」

 

 勇綺は、スキルで眠らせたジャイアントスネイルを、斬撃属性武器と刺突属性武器で弱点をついて倒す事を提案する。今の勇綺達の実力で、高い防御力と回避能力を持っているジャイアントスネイルに勝つには、スキルで眠らせた隙に倒す方法しか無いだろう。

 

「よし、あたしのスキルの出番ね? 任せて!」

 

「おう、その作戦で良いと思うぜ。コイツとは一度、戦った事があるけど……。カタツムリのくせに、かなり素早かったんだよなぁ……。コイツを放置したら、色々と面倒な事になると思うから、さっさと眠らせて倒すのが最善だな!」

 

 勇綺が提案した対策に、秋と龍哉は、ジャイアントスネイルを眠らせた隙に、弱点をついて倒す事に納得する。

 

「よし、ジャイアントスネイルの対策は、これで終わりだ。次は、この二体の魔物の対策をしよう!」

 

「次は、こいつらか……」

 

「げげ!?」

 

 ジャイアントスネイルの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、更に情報を集めようと、図鑑に掲載されている、二体の魔物に視線を移す。

 だが秋だけは、二体の魔物に視線を移した瞬間、直様、自身の両目を両手で覆い隠してしまう。何故ならば秋が注目したのは、苦手な虫系の魔物、スパイダーとおおこがねむしだからである。

 秋が必死に、両手で自身の両目を隠している最中、勇綺と龍哉が見据える一体目の魔物、スパイダーは、図鑑の情報によると、種族は虫系で、体長が六十センチメートル位の、蜘蛛にそっくりな姿をした怪物のようだ。森や洞窟、無人の建物等に棲息しており、攻撃力と防御力、そしてスピードは高く無いが、口から吐き出す糸は、敵の素早さを低下させる効果を持っている。この魔物の弱点は、斬撃・刺突・打撃・格闘・斧撃・氷の六つの属性攻撃と状態異常攻撃に弱く、更に、虫系特効の武器やアイテム、そして、スキル等がかなり有効なようだ。次に、二体目の魔物、おおこがねむしは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は虫系。体長が七十センチメートル位で、緑色の身体には光沢があり、勇綺達が知っている、こがねむしと姿が似ている怪物だ。森に棲息しており、攻撃力は低めで、スピードと防御力は平均的だが、冒険者達のお金を盗んだりするのが得意なようである。この、おおこがねむしの弱点は、打撃・格闘・氷の三つの属性攻撃と状態異常系の攻撃に弱く、更に、虫系特効の武器やアイテム、そして、スキル等で攻撃すると、かなりのダメージを与えられるようだ。

 

「この、スパイダーとおおこがねむしは、高いステータスや状態異常への耐性を持っていないだけじゃなく、強力な特技とかも持ってはいないみたいだから……、そこまで強力な魔物では無さそうだね……。ならば、秋のスキルで眠らせた後は、攻撃力の高い武器を使って叩くだけで十分かな?」

 

 勇綺は、秋のスキルで眠らせたスパイダーとおおこがねむしを、攻撃力の高い武器を使った力押しで倒す事を提案する。この二体の虫系の魔物は、ステータスが高く無いだけじゃなく、状態異常への耐性や強力な特技を持っていないので、スキルを使って眠らせた後は、攻撃力の高い武器による力押しだけで問題無く倒せるだろう。

 

「ガイコツやカタツムリよりは、楽そうだな。よし、その作戦でいこうぜ!」

 

「うう……、こいつらを頑張って、何とか眠らせるけど……。ちゃんと、あたしを守ってよね……?」

 

 勇綺が提案したスパイダーとおおこがねむしの対策に、龍哉は、やる気に満ちた表情で承諾する。

 やる気に満ちた龍哉とは対照的に、虫が苦手な秋は、勇綺の提案を、しぶしぶながらも納得するのであった。




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第52話 魔物対策 その9

暑さに負けず、頑張って書きました!
最新話です!
それでは、どうぞ!


「スパイダーとおおこがねむしの対策は、これで終わりだね。次は、この二体の魔物の対策だ」

 

「この魔物……。クランちゃんが探していた魔物ね……」

 

「あの森には、こんな強そうな熊公もいたのか……」

 

 スパイダーとおおこがねむしの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次の情報を集めようと、図鑑に掲載されている、二体の魔物に視線を移す。

 勇綺達が見据える一体目の魔物、ホワイトラビットは、図鑑の情報によると、種族は獣系で、体長が四十センチメートル位の、白ウサギにそっくりな姿をした怪物のようだ。ランドロックの森に棲息しているが、あまり人前に現れないので、出会うのがかなり難しいレアモンスターである。攻撃力と防御力は高く無いだけじゃなく、特殊能力も無いので、余り強力な魔物ではないようだ。だが、高めの幸運のステータスによって状態異常攻撃が効きづらく、更に、スピードのステータスが高いせいで、人前に現れては直ぐに逃げてしまう可能性があるので、倒すのはかなり難しいだろう。このホワイトラビットの弱点は、武器攻撃や状態異常攻撃への耐性を持っていないだけじゃなく、火属性攻撃が苦手であり、更に、獣系特効の武器やスキル等がかなり有効なようだ。次に、二体目の魔物、ワイルドベアは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は獣系。体長が二百九十センチメートル位で、全身茶色の被毛で覆われている熊の怪物だ。森や洞窟、山等に棲息しており、ホワイトラビットと同じく、余り人前に現れないので、出会うのがかなり難しいレアモンスターである。特殊能力は持っていないが、体力の低い冒険者を優先的に狙う厄介な特性を持っており、更に、攻撃力・防御力・体力・スピードのステータスが高いだけじゃなく、幸運のステータスも高いので、状態異常攻撃がかなり効きづらく、中途半端なレベルの冒険者では、ワイルドベアを倒すのがかなり難しいだろう。この、ワイルドベアの弱点は、魔法防御力が低いので魔法攻撃に弱く、更に、獣系特効の武器やスキル等で攻撃すると、かなりのダメージを与えられるようだ。

 

「先ずは、ホワイトラビットの対策だけど……。この魔物は、出会った瞬間、直ぐに逃げてしまうから……。敵の逃走を阻止するために、秋のスキルでホワイトラビットの動きを止めてから、僕達三人で、眠ったコイツに集中攻撃をして倒そうと思う。多少、運まかせになるけど……。今の僕達がコイツを倒すには、多分、この方法しか無いと思う……。次に、ワイルドベアだけど……。コイツは、他の魔物と違って桁違いに強いだろうね……。今の僕達では、間違いなく勝てないと思う……。もし、コイツに出会ってしまった場合は、秋のスキルで何とか眠らせて、その隙に逃げようと思うんだけど……。どう……かな?」

 

「あたしは、他の方法が思い付かないから、勇綺の提案に異論は無いわ」

 

「そうだな……。ウサ公は、運が良ければ何とかなるけど……。熊公は、状態異常が効きづれぇだけじゃなく、ステータスがかなり高そうだから、今の俺達のレベルで倒すのは、まず無理だろうな……。悔しいが、この熊公を倒すのは諦めて、さっさと逃げた方が良さそうだな……」

 

 勇綺は、逃げ足の速いホワイトラビットを、スキルで眠らせてから倒す事を、秋と龍哉に提案する。ステータスが低い勇綺達が、直ぐに逃げてしまうホワイトラビットを倒すには、状態異常で動きを止めるしかないだろう。そしてワイルドベアの対策は、秋のスキルで眠らせた後、その隙に、戦闘を回避するようである。今の勇綺達は、レベルが低いだけじゃなく、この魔物を倒す事ができる強力なスキルを持っていないので、ワイルドベアとの戦闘を回避するのは、仕方がないと言えるだろう。

 勇綺が提案したホワイトラビットとワイルドベアの対策に、秋と龍哉は、特に異論もなく納得する。

 

「よし、ランドロックの森の魔物についての情報収集はこれで終わりだな……。次のページを頼むぜ!」

 

「うん、分かった」

 

 ランドロックの森に出現する魔物についての情報収集を終えると、龍哉は勇綺に、図鑑の次のページをめくるように促す。

 龍哉の言葉に、勇綺は頷きながら納得すると、図鑑の次のページをめくる。

 

「このページは……、ランドロック海岸に出現する魔物についての情報が掲載されているみたいだ……。ん? この海岸の魔物達も、平原と魔物達と同じで、朝と夜では、出現する魔物が違うみたいだね。え〜~と、朝の海岸に出現する魔物は……、意地悪兎、ゴブリン、ペブルウォークの他に、意地悪カモメ、ゴブリンガード、人食いヒトデ、ジャイアントクラブ等が出現するみたいだね……」

 

「海岸にも、ゴブリンが出てくるのかよ……。しかも、ゴブリンの種類が増えてるし……」

 

「よしっ! 虫が居ない!」

 

 勇綺と龍哉、そして秋は、めくった先のページに掲載されている、ランドロック海岸に出現する魔物についての情報に視線を移す。

 すると秋は、めくった先のページに掲載されている魔物達を見て、笑みを浮かべる。どうやら秋は、ランドロック海岸に、苦手な虫系の魔物が出現しない事に、相当嬉しかったようだ。

 

「意地悪兎、ゴブリン、ペブルウォークの対策は、既に終えているから……。ん〜~、先ずは、この意地悪カモメとゴブリンガードについての対策をしてみようか……」

 

「ええ」

 

「ゴブリンガードか……。どれほど、強いのやら……」

 

 情報収集を再開した勇綺と秋、そして龍哉は、図鑑に掲載されている二体の魔物に視線を移す。勇綺達が注目したのは、朝の海岸に出現する魔物、意地悪カモメとゴブリンガードの二体である。先ず一体目の魔物、意地悪カモメは、図鑑の情報によると、種族が飛行系で、体長は八十七センチメートル。全身が白色で、翼と尾羽は黒ずんでおり、黄色い嘴に鋭い牙をはやした、カモメのような姿をした魔物だ。海岸や海等に棲息しており、同じ飛行系であるキラーチキンと比べると、全体的にステータスが低いので、余り強い魔物ではない。だが、空を飛んでいるので土属性攻撃には耐性があり、更に、行動を数秒間封じるスタン系の状態異常にも耐性がある。この魔物の弱点は、射撃・投擲・火器・風・雷の五つの属性攻撃に弱く、更に、飛行系特効の武器やスキル、そして、スタン系以外の状態異常攻撃がかなり効果的なようだ。次に、二体目の魔物、ゴブリンガードは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は妖精系で、身長はゴブリンと同じく九十センチメートル位の小鬼の怪物だ。見た目と服装は、ゴブリンと似ているが、身体全体は青色で、右手には棍棒の代わりに片手剣が握られており、左手には革製の小型の盾が装備されている。出現範囲は、草原、洞窟、海岸、山、森、無人の建物等に棲息しており、敵をスタン状態にする厄介な技、【休止剣】を持ってはいるが、全体的なステータスはゴブリンと比べると、ちょっとだけ高い程度なので、特殊能力があっても、それほど強力な魔物ではないようだ。このゴブリンガード弱点は、属性攻撃と状態異常攻撃への耐性を持っていないだけじゃなく、物理防御力と魔法防御力が低いので、非戦闘職の攻撃でも、かなりのダメージを与えられるだろう。

 

「それじゃあ、意地悪カモメとゴブリンガードの対策だけど……。この二体は、ランドロックの森の魔物達と比べると、そこまで強力な魔物ではないみたいだ……。ならば、この二体は、状態異常への耐性がないから、秋のスキルで眠らせた後、攻撃力が高い武器や弱点をつける武器等を使って攻撃すれば苦戦する事無く倒せると思う……」

 

 勇綺は、意地悪カモメとゴブリンガードを、秋のスキルで眠らせた隙に、威力が高い武器や弱点をつける武器等で倒す事を提案する。この二体の魔物は、森の魔物達と比べると、ステータスが高くないだけじゃなく、状態異常への耐性や強力な特殊能力持っていないので、秋のスキルで眠らせてしまえば簡単に倒せるだろう。

 

「ふ〜~ん……。海岸の魔物は、意外と強くねぇんだな……。よし、ならば、その作戦でいこうか!」

 

「あたしの出番ね? 分かったわ!」

 

 勇綺が提案した意地悪カモメとゴブリンガードの対策に、やる気に満ちた表情をしている龍哉と秋は、頷きながら承諾するのであった。




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第53話 魔物対策 その10

ね、眠い…………。
最新話です……。
それでは、どうぞ……。


「次は、この二体の魔物の対策だ」

 

「ヒトデと蟹の魔物か……」

 

「うわ……、ヒトデの化け物……。何かキモ……」

 

 意地悪カモメとゴブリンガードの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次の情報を集めようと、図鑑に掲載されている、二体の水棲系の魔物に視線を移す。

 勇綺達が見据える一体目の魔物、人食いヒトデは、図鑑の情報によると、種族は水棲系で、直径が六十センチメートル位の、星型の赤い身体の中心に、鋭い牙を生やした、ヒトデにそっくりな姿をしている怪物だ。海岸や海等に棲息しており、攻撃力は見かけによらず高いが、他のステータスは、あまり高くはない。だが、水属性攻撃への吸収耐性を持っており、更に、スタン系への耐性までも持っている。この人食いヒトデの弱点は、スタン系以外の状態異常への耐性を持っていないだけじゃなく、刺突・雷・木の三つの属性攻撃が苦手であり、更に、水棲系特効の武器やスキル等で攻撃をするとかなりのダメージを与えられるようだ。次に、二体目の魔物、ジャイアントクラブは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は水棲系。体長が百二十センチメートル位の、身体全体が真っ赤な殻で覆われている蟹の姿をした怪物だ。海岸や海等に棲息しており、動きが遅く、特殊能力等は持っていないが、高めの攻撃力と斬撃攻撃への防御力を持っており、更に水属性攻撃吸収耐性とスタン系への耐性までも持っているので、斬撃や水属性攻撃が得意な職業は間違いなく苦戦をするだろう。この、魔物の弱点は、打撃・格闘・斧撃・雷・木の五つの属性攻撃に弱いだけじゃなく、魔法防御力が低いので魔法による攻撃とスタン系以外の状態異常攻撃も有効であり、更に、人食いヒトデと同じ種族なので、水棲系特効の武器やスキル等で攻撃すれば、かなり高い効果を発揮させる事ができるようだ。

 

「先ずは、人食いヒトデの対策だけど……。こいつは攻撃以外のステータスが低いから、速攻で秋のスキルで眠らせよう……。その隙に、僕と龍哉が刺突武器を使って弱点を突きながら攻撃していけば、人食いヒトデは問題無く倒せると思う。次に、ジャイアントクラブは、人食いヒトデと同じ弱点を持っているから、秋のスキルで先ず眠らせる。そして、眠っているジャイアントクラブを、秋のリュートを使った魔力攻撃と僕と龍哉が持っている中で攻撃力が一番高い武器で袋叩きにしていけば、相手が高いパワーを発揮させる事無く安全に倒せると思うけど……。どうかな?」

 

 図鑑の情報に目を通した勇綺は、人食いヒトデとジャイアントクラブの対策について、龍哉と秋に説明をする。この二体の水棲系の魔物は、攻撃力は高いが、スタン系以外の状態異常への耐性が無いだけじゃなく、幸運のステータスも低いので、状態異常攻撃がかなり有効なようだ。秋のスキルで上手く眠らせた後、その隙に、人食いヒトデとジャイアントクラブの弱点を突ける武器で攻撃していけば、この二体の魔物が、高いパワーを発揮させる前に倒す事が出来るだろう。

 

「ああ、この二体は攻撃力が高いからなぁ……。そんな奴等の攻撃だけは、喰らいたくねぇから、秋のスキルで高いパワーを封じてから倒した方が良さそうだな……」

 

「そうね……。キモいヒトデの牙とデカい蟹の鋏に攻撃されたら、絶対に大怪我するだけじゃ済まないわよねぇ……。う〜~、こわっ」

 

 勇綺が提案した人食いヒトデとジャイアントクラブの対策に、龍哉と秋は、顔を青ざめながらも納得する。おそらく龍哉と秋は、この二体の魔物の高いパワーに脅威を感じてしまったのだろう。

 

「よし、朝の海岸に出現する、魔物についての対策は、これで大丈夫そうだね。じゃあ、次は、夜の海岸に出現する魔物についての対策だ」

 

 朝の海岸に出現する魔物についての対策を終えた勇綺は、夜の海岸に出現する魔物についての情報を集めようと、図鑑の次のページをめくる。

 

「えっと……。夜の海岸に出現する魔物は……、ペブルウォーク、人食いヒトデ、ジャイアントクラブ、ブラックゴブリン、ウミガメ、おばけ巻貝、マッドマンが出現するみたいだね……。」

 

「ほほう……。夜になると、泥みたいな魔物も出現するのか……」

 

「泥の魔物……。何か、あんまり強くなさそうね……」

 

 勇綺と龍哉、そして秋は、めくった先のページに掲載されている、夜のランドロック海岸に出現する魔物についての情報に視線を移す。

 

「人食いヒトデ、ジャイアントクラブの対策は、もう終えているから……。先ずは、ブラックゴブリン、ウミガメの対策から始めようか?」

 

「ウミガメか……。動きが鈍そうだから、倒すのが楽そうだな……」

 

「ここの世界のウミガメって、何か目つきが悪いわね……」

 

 勇綺と龍哉、そして秋が最初に注目した夜のランドロックの海岸の魔物達は、ブラックゴブリンとウミガメの二体である。先ず一体目の魔物、ブラックゴブリンは、図鑑の情報だと、種族は妖精系で、身長はゴブリンとゴブリンガードと同じく、九十センチメートル位の小鬼の姿をした怪物だ。見た目や服装、そして持っている武器等がゴブリンと似てはいるが、身体全体の色だけは、緑色ではなく、真っ黒な色をしている。海岸、洞窟、無人の建物等に棲息しており、ゴブリンと比べるとステータスは余り変わらないが、夜の闇を利用した奇襲攻撃と、敵の夜襲を防ぐ能力を持っているので、かなりの注意が必要だろう。更に、闇属性攻撃に耐性を持っているだけじゃなく、暗闇の状態異常攻撃への耐性までも持っているようである。このブラックゴブリンの弱点は、物理防御力と魔法防御力が低いだけじゃなく、光属性攻撃が苦手であり、更に、暗闇以外の状態異常攻撃がかなり効果的なようだ。次に、二体目の魔物、ウミガメは、図鑑に掲載されている情報によると、種族は爬虫類系。体長が百八十センチメートル位で、目つきが鋭く、水色の身体には黒くて硬い甲羅が覆われた、ウミガメのような姿をした怪物だ。海岸や海等に棲息しており、動きは鈍いが、斬撃・刺突・射撃・投擲の四つの属性攻撃への防御力がとても高く、更に、水属性攻撃を無効化してしまう程の高い耐性までも持っている。この魔物の弱点は、魔法防御力が低いので魔法攻撃に弱いだけじゃなく、雷・氷・打撃・格闘の四つの属性攻撃にも弱く、更に、幸運のステータスが低めなので、状態異常による攻撃もかなり有効だろう。

 

「先ず、ブラックゴブリンだけど……。こいつの、夜襲攻撃は、かなり厄介だ。今の僕達に夜襲攻撃を防ぐのは、まず難しいから、多少のダメージは覚悟したほうが良いと思う……。もし、夜襲攻撃に耐えることができたならば、ゴブリンとゴブリンガードと同じように、秋のスキルで眠らせた隙に、攻撃力が高い武器で攻めていけば、ブラックゴブリンを倒せるはずだ……」

 

 勇綺は、防ぐのが難しい夜襲攻撃に耐えた後、秋のスキルで敵を眠らせた隙に、攻撃力が高い武器を使って、眠っているブラックゴブリンを倒す事を提案する。敵の夜襲を防ぐ手段を持っていない今の勇綺達が、ブラックゴブリンを撃破するには、多少のダメージを覚悟しながら戦うしか無いだろう。

 

「多少のダメージを覚悟か……。まぁ、ゴブリンとそれ程ステータスが変わらん奴の攻撃なら、何とか耐えられそうかもなぁ……。よし、その方法でやってみるか……」

 

 龍哉は、敵の夜襲攻撃に耐えられる自信が有るのか、勇綺が提案したブラックゴブリンの対策に、異論もなく納得する。

 

「非戦闘職のあたし達が、魔物からの夜襲攻撃を受けても大丈夫かしら……? でも、夜襲を防ぐ方法が、今のあたし達には、無いしぃ……。はぁ……。やっぱ、覚悟を決めて、夜襲攻撃に耐えながら反撃するしか無いかぁ……」

 

 龍哉とは対照的に、魔物からの夜襲攻撃に耐えられる自信が無い秋は、勇綺の提案を、しぶしぶながらも納得するのであった。




感想や評価をお願いします……。

※一部の文を修正しました

修正前:「えっと……。夜の海岸に出現する魔物は……、ペブルウォーク、人食いヒトデ、ジャイアントクラブ、ブラックゴブリン、ウミガメ、ナイトシェル、マッドマンが出現するみたいだね……。」

修正後:「えっと……。夜の海岸に出現する魔物は……、ペブルウォーク、人食いヒトデ、ジャイアントクラブ、ブラックゴブリン、ウミガメ、おばけ巻貝、マッドマンが出現するみたいだね……。」


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第54話 魔物対策 その11

はい、最新話です!
それでは、どうぞ!!


「よし。次は、ウミガメの対策をしようか……」

 

「こいつか……」

 

 ブラックゴブリンの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次に、ウミガメの情報に視線を移す。

 

「このウミガメは、ブラックゴブリンと違って特殊能力を持っていないだけじゃなく、動きが鈍いから、速攻で眠らせた後、秋のリュートを使った魔力攻撃と僕と龍哉が持っている武器の中で一番攻撃力がある武器で攻撃をしていけば、特に問題無く倒せると思う……」

 

 勇綺は、ウミガメをスキルで眠らせた隙に、リュートによる魔力攻撃と攻撃力が高い物理系武器でダメージを与えてゆく事を、龍哉と秋に提案をする。非戦闘職の勇綺達が、状態異常を使わずに、防御力が高いウミガメを何も考えずに力押しで倒すのは、かなり難しい。それを考えると、秋のスキルで眠らせた後、その隙に攻撃していけば、非戦闘職の勇綺達でも安全にウミガメを倒す事ができるだろう。

 

「分かった。あたしに、任せて! ウミガメをぐっすりと眠らせてやるわ!」

 

「確かに、その方が、この、でけえ亀を安全に倒せそうだな。よし、さっさと眠らせて、ただのサンドバッグにしてやろうぜ!」

 

 勇綺が提案したウミガメの対策に、秋と龍哉は、特に異論も無く、得意気な表情をしながら納得する。

 

「じゃあ次は、この二体の魔物の対策をしようか!」

 

「このカタツムリの魔物は……、ジャイアントスネイルの仲間か?」

 

「この泥の魔物……。見た目は、なんか弱そうだけど……。強いのかしら?」

 

 ウミガメの対策についての話し合いを終えた勇綺と龍哉、そして秋は、次の情報を集めようと、図鑑に掲載されている、二体の魔物に視線を移す。

 勇綺達が見据える一体目の魔物、マッドマンは、図鑑の情報によると、種族は大地系。身長が百八十センチメートル位で、全身が泥で出来ており、上半身は人の形をしているが、下半身の方はドロドロに溶けている不気味な姿をした怪物だ。海岸や洞窟、山等に棲息しており、防御力とスピードのステータスは余り高く無く、他のステータスも低いが、攻撃力は平均的であり、体力のステータスは意外にもかなり高い。更に、病・精・時の三つの属性攻撃に耐性を持っているだけじゃなく、一部のスタン系・毒素系・神経系・精神系・呪術系・亡者・人形・宣告・束縛の九つの状態異常への耐性と土属性攻撃の吸収耐性までも持っている。このマッドマンの弱点は、斬撃・刺突・打撃・射撃・格闘・斧撃・投擲・火器・火・水・風・木・金・音・空の十五個の属性攻撃が弱点であり、更に、大地系特効の武器やスキル、そして魔法攻撃や魔力にダメージを与えられる攻撃がかなり有効なようだ。次に、二体目の魔物、おばけ巻貝は、図鑑に掲載されている情報によると、種族は水棲系で、体長は百三十センチメートル。姿は、ジャイアントスネイルに似ているが、身体の色はクリーム色で、棘のついた灰色の殻を背負っている。海岸や海等に棲息しており、動きは遅いが、防御力は少し高めであり、更に水属性攻撃吸収耐性とスタン系の状態異常耐性を持っているだけじゃなく、貝殻についている棘を飛ばす特技までも持っているようだ。この魔物の弱点は、魔法防御力が低いので魔法による攻撃とスタン系以外の状態異常攻撃が有効であり、更に、斬撃・刺突・斧撃・雷・木の五つの属性攻撃や水棲系特効の武器とスキル等で攻撃すれば、かなりのダメージを与えられるだろう。

 

「先ずは、マッドマンの対策からだ。こいつは状態異常が効かないけど、動きが遅く、特殊攻撃や飛び道具を持っていないだけじゃなく、十五個の属性攻撃が弱点のようだ……。ならば、僕の投石と龍哉のスリングショット、そして秋のリュートを使った音属性の魔力攻撃で、遠距離から弱点をつきながら攻撃をしていけば、動きが遅く、飛び道具を持たないマッドマンを、無傷で簡単に倒す事ができると思うんだけど……。どうかな?」

 

 図鑑の情報に目を通した勇綺は、マッドマンを、投擲・射撃・音の三つの属性攻撃の武器を使って、弱点をつきながら倒す事を龍哉と秋に提案する。このマッドマンは、コープスと同じように、動きが遅くて、飛び道具を持っていないだけじゃなく、射撃属性武器や投擲属性武器、そして音属性武器が弱点なので、勇綺達が距離を取りながら遠距離武器でダメージ与えてゆく作戦は、かなり効果が高いといえるだろう。

 

「のろまで弱点だらけのこいつは、接近戦でも簡単に倒せそうだけど……。安全性を考えるなら、飛び道具で攻めたほうが良さそうだな……」

 

「あたしも飛び道具で攻めてゆくのに賛成。接近戦だと、こいつを攻撃した時、泥とか飛び散って、絶対に服が汚れそうだしね……」

 

 勇綺が提案したマッドマンの対策に、龍哉と秋は特に異論もなく、首を縦に振りながら承諾する。

 

「それじゃあ、次は……、おばけ巻貝の対策だ。こいつの飛び道具は注意が必要だけど、動きは鈍いから……、秋のスキルで速攻で眠らせた後、刺突系や斬撃系の武器で弱点をつきながらダメージを与えていけば、そこまで苦戦することなく倒せると思う」

 

 マッドマンについての話し合いを終えた勇綺達は、次に、巻貝の怪物、おばけ巻貝の情報に視線を移す。

 勇綺は、図鑑に掲載されている情報を見据えながら、龍哉と秋に、睡眠耐性を持っていないおばけ巻貝を、バードのスキルで眠らせた後、刺突系と斬撃系の武器を使って撃破することを提案する。この作戦ならば、非戦闘職の勇綺達でも、飛び道具を持っているおばけ巻貝に、苦戦することなく安全に倒せるだろう。

 

「分かった。動きを止める役目は、あたしに任せて!」

 

「おう、眠らせた後は、フルボッコにしてやろうぜ!」

 

 勇綺が提案したおばけ巻貝の対策に納得した秋と龍哉は、やる気に満ちた表情で頷く。

 

「ランドロック海岸の魔物についての情報収集はこれで終わったから……。次のページを開くね?」

 

 ランドロック海岸に出現する魔物についての情報収集を終えると、勇綺は、図鑑の次のページをめくる。

 

「ふむ。このページは……、ランドロックの洞窟に出現する魔物についての情報が掲載されているみたいだね……。え〜〜と、出現する魔物は、ゴブリン、ブルームース、リザード、インプ、ジャイアントラット、コープス、火の玉、ジャイアントアント、ミドリガマ、おおなめこ、ペブルウォーク、ガイコツ、ジャイアントスネイル、スパイダー、ゴブリンガード、ブラックゴブリン、マッドマン、ワイルドベアの他に、いもむし等が出現するみたいだね……」

 

「この洞窟……。かなりの種類の魔物がいるなぁ……」

 

「うわぁ……、虫いるし……。しかも、新しい虫も追加されてるし……」

 

 めくった先のページに掲載されている、ランドロックの洞窟に出現する魔物についての情報に、勇綺と龍哉は視線を移す。

 図鑑の情報に視線を移している勇綺と龍哉とは対照的に、秋だけは、めくった先のページに大嫌いな虫の魔物が掲載されていたので、またもや両手で自身の両目を素早く覆い隠してしまう。

 

「この洞窟に新しく出現する魔物は、いもむしの魔物だけみたいだね……。じゃあ、この、いもむしの対策だけしようか?」

 

「おう!」

 

 秋が虫の魔物に怯えながら、両手で自身の両目を隠している最中、勇綺と龍哉が見据える一体の魔物、いもむしは、図鑑の情報によると、種族は虫系で、体長が百九十センチメートル位の、大きな青虫の姿をした怪物だ。森や洞窟等に棲息しており、攻撃力と防御力、そしてスピードは高く無いが、体力だけはそこそこ高いようである。この魔物の弱点は、斬撃・刺突・打撃・射撃・格闘・斧撃・投擲・火器・氷の九つの属性攻撃と状態異常攻撃に弱く、更に、虫系特効の武器やアイテム、そして、スキル等がかなり有効なようだ。

 

「この、いもむしは、体力だけはそこそこ高いけど、それ以外のステータスは余り高く無いだけじゃなく、強力な特技や状態異常への耐性を持っていないみたいだ……。ならば、ここは、スパイダーとおおこがねむしの対策と同じやり方で、この、いもむしを秋のスキルで眠らせた後は、攻撃力が高い武器で弱点をつきながらダメージを与えて倒そうと思う」

 

 勇綺は、秋のスキルで眠らせたいもむしを、攻撃力の高い武器で弱点をついて倒す事を提案する。このいもむしは、ステータスが余り高く無いだけじゃなく、状態異常耐性や特技を持っていないので、スパイダーとおおこがねむしの対策と同じやり方でも特に問題はないだろう。

 

「分かった。その作戦で、いもむしを倒そうぜ!」

 

「うう……。分かったわよ……。やるわよ……。やればいいんでしょ……。うう〜〜……」

 

 龍哉は、勇綺が提案した、いもむしの対策に、頷きながら納得する。

 迷いなく納得した龍哉とは対照的に秋は、虫が苦手なので、勇綺の提案を、嫌そうな表情をしながら承諾するのであった。




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第55話 協力者集め

最新話です!
ヒロインがまた登場します!
それでは、どうぞ!!


「ランドロック海岸の魔物についての情報収集はこれで終わり……。ねぇ、龍哉、秋」

 

「ん?」

 

「何?」

 

 ランドロック海岸に出現する魔物についての情報収集を終えると、勇綺が突然、龍哉と秋を呼び掛ける。

 呼び掛けられた龍哉と秋は、勇綺の方へと視線を移す。

 

「魔物についての情報が大分集まったし、情報収集を一旦中断して、そろそろイッカク退治の協力者集めでもしようかと思うんだけど……。どうかな?」

 

 魔物についての情報がかなり集まったと判断した勇綺は、情報収集をひとまず中断して、バニラに頼まれていたイッカク退治の協力者を集める事を、龍哉と秋に提案する。

 

「そう……だな。情報もけっこう集まったし……。そろそろ、協力者集めでもしますか!」

 

「そうね、協力者を集めに行きましょ!」

 

 勇綺の提案に納得した龍哉と秋は、笑みを浮かべながら頷く。

 

「うっし! んじゃ行くぞ!」

 

「ええ」

 

 早速龍哉と秋、そして勇綺は、協力者を集めに行こうと、腰を掛けていたソファーから立ち上がる。

 

「あ、そうだ……。僕は先ず、魔物図鑑を本棚に戻しに行かないと……。ごめん、龍哉と秋は、ここで待ってて……」

 

 これから協力者集めをしようとする時、勇綺は、右手に持っている図鑑を、まだ返却していない事に気が付く。そして勇綺は龍哉と秋に、先程、腰を掛けていたソファーの近くで、待機するように伝える。

 

「おう、分かった」

 

「……」

 

 勇綺の指示に納得した龍哉は、サムズアップしながら頷く。

 龍哉とは対照的に、秋は、何故か顎に手を当てながら何かを考え込んでいた。

 

「あ、あの……、秋? ど、どうしたの……」

 

 こちらの言葉に反応せず、何やら考え込んでいる秋に、気になった勇綺は、恐る恐る問いただすと……。

 

「あたしも、一緒に行くわ」

 

「へ? な、何で? 本を返却しに行くだけなのに、何で秋までついてくるの? ぼ、僕一人で大丈夫だから、秋は龍哉と一緒にここで待っててよ……。ね?」

 

 勇綺に問い掛けられた秋は、図鑑の返却について行くと言い出す。

 図鑑の返却について来ようとする秋に、勇綺は戸惑いながらも、やんわりと断ろうとするが……。

 

「勇綺に拒否権は無いわ。それとも、あたしと一緒だと、何か不味い事でもあるの? もちろん、無いわよねぇ……?」

 

「ひぃっ!? な、ないです……。い、一緒に、つ、ついてきて、く、下さい……」

 

(こえぇぇぇぇぇ……)

 

 秋は、図鑑の返却について来るのを断ろうとする勇綺に、鬼のような形相で睨み付ける。

 鬼のような形相でこちらを威圧する秋の迫力に、勇綺は余程恐ろしく感じたのか、身体を震え上がらせてしまう。そして、恐怖に包まれた勇綺は、しどろもどろになりながらも、本の返却に秋がついて来るのを容認する。

 二人のやり取りを静観していた龍哉も、秋の恐ろしい形相に、背筋を凍りつかせていた。

 

「よし。じゃあ、行きましょ♪」

 

「う、うん……」

 

 本の返却について来るのを容認された秋は、魔物図鑑があった本棚の方へと、意気揚々と歩き出す。

 嬉しそうに歩き出す秋の後を、勇綺は、しぶしぶながらも付いていく。

 龍哉は、秋と勇綺の後ろ姿を、見えなくなるまで見据えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なるほど……。この薬草は、この場所に……。そして、この薬草は、この薬草と混ぜ合わせると、この薬品が作れるのですね……)

 

 勇綺達と別れた後、目的の本を見つけたマシロは、本棚の近くに配置されている三台の一人掛けのソファーに腰を掛けながら、薬草や薬品について調べていた。

 

(薬草の情報は、大分集まりました……。今日の薬草の情報収集は、これで完了です……)

 

 薬草についての情報がかなり集まったと判断したマシロは、情報収集をひとまず中断する。そしてマシロは、本を元の場所に返却しようと本棚の方へと歩き出す。

 

(本を返却した後は……、協力者集めです……)

 

 マシロは歩きながら、本を返却した後の予定を考えていると……。

 

「あ!」

 

「げ……」

 

 目的の本棚の近くで、マシロは、勇綺と秋に鉢合わせする。

 勇綺は、また、マシロと出会ったのが嬉しかったのか、見る見るうちに顔が綻んでゆく。

 笑顔の勇綺とは対照的に、秋は、マシロと鉢合わせをすると、何故か嫌そうな表情をしていた。

 すると……。

 

「! 勇綺様……。魔物についての情報収集は、終わったのですか?」

 

 マシロは、勇綺が図鑑を持っている状態で本棚の近くにいたので、魔物についての情報集めが、既に終わったのだと解釈する。そしてマシロは、その事について、勇綺に問いただす。

 

(ああ、本当に綺麗だなぁ……。それに、やっぱ可愛い……。こんな娘が、僕の為に毎朝、味噌汁を作ってくれたら、毎日がハッピーだよなぁ……)

 

 だが、問い掛けられた勇綺は、返答もせず、キモイ妄想をしながら、目の前のマシロに見惚れていると……。

 

「マシロが話しかけているのに、いつまで、デレデレしているのよ! みっともない!」

 

「うげっ!?」

 

 秋は、マシロに見惚れている勇綺の頭に強烈なチョップを叩き込む。

 突然、頭を叩かれた勇綺は断末魔を上げる。

 

(全く……。直ぐ、可愛い女の子にデレデレするんだから……。勇綺の馬鹿……。一緒に来て正解だったわ……)

 

 両手で頭を押さえている勇綺に、秋は、頬を膨らませながら心の中で悪態をつく。どうやら秋は、勇綺がマシロに見惚れてしまわないようにする為についてきたようである。

 

「うう……、ひ、酷い……。叩かなくても……」

 

 勇綺は、痛みがある箇所を両手で押さえながら、秋の方へと振り向く。そして、いきなり頭を叩いてきた秋に、勇綺は文句をたれる。

 

「ふん! 鼻の下を伸ばしてマシロを見ていた勇綺が悪い! 反省しなさい! それよりも、マシロがあんたに話しかけているわよ!」

 

 こちらに文句をたれる勇綺に、秋は鼻を鳴らすと、睨み付けながら言い返す。

 

「う……、そ、そうだった……」

 

 秋の言葉に納得した勇綺は、マシロの方へと振り向く。

 

「え、えっと……。マシロの言うとおり、情報収集は、まぁ、一応終わったかな?」

 

 先程、こちらに問い掛けてきたマシロに、勇綺は、魔物についての情報収集を終えていると返答する。

 

「ほら、勇綺。さっさと、図鑑を本棚に戻すわよ。この後は、協力者集めをするんでしょ?」

 

「あ、う、うん、そうだね」

 

 マシロとやり取りをしていた勇綺に、秋は、はやく図鑑を返却するように促す。何故ならば、この後は、イッカク退治の協力者集めをしなければならないからだ。

 秋の言葉に、勇綺は頷きながら納得すると……。

 

「勇綺様達も、この後、協力者集めをするのですか……」

 

 二人のやり取りを見据えながら、マシロは、ポツリと呟いた。

 

「え? 《勇綺様も》って事は……、マシロも、この後、協力者集めをするの?」

 

 勇綺は、呟いたマシロの方へと振り向く。そしてマシロに、協力者集めについて問いただす。

 

「はい……。私も、本を返却した後は、イッカク退治の協力者を集めに行く予定です……」

 

 問い掛けられたマシロは自身も、本を返却した後、イッカク退治の協力者集めをする予定がある事を、勇綺と秋に返答する。

 

「そ、そうなんだ……。じゃ、じゃあ……、良かったらだけど……。この後、僕達と一緒に、協力者集めに行かない……かな?」

 

 すると勇綺は恐る恐る、マシロを、イッカク退治の協力者集めに誘おうとするのであった。




魔物対策は一旦中断します。

それでは、感想や評価をお願いします!


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第56話 下心

う〜〜、寒い……。
最新話です……。
それでは、どうぞ……。


(は? マジ? マシロと一緒に協力者集めをするつもりなの!? そんなの聞いてないんだけど!!?)

 

 勇綺の思いがけない発言に、秋は耳を疑った。まさか勇綺が、イッカク退治の協力者集めに、マシロを誘うとは思わなかったのだ。秋が勇綺の発言に、動揺を隠せずにいると……。

 

「分かりました……。一緒に、協力者を集めに行きましょう……」

 

「「え?」」

 

 勇綺の誘いに、マシロは何の迷いもなく承諾する。

 迷いもなく、こちらの誘いを承諾したマシロに、勇綺と秋は目を丸くしてしまう。

 

(マ、マジか……。マシロと、もっと一緒にいたいから、勢いで誘ってみたけど……。ま、まさか、本当に承諾してくれるとは……。い、勢いでやってみるものだなぁ……。と、とりあえず、今は、マシロを独り占めができる事に、喜ばないとね! ヤッフゥゥゥゥゥゥ!!)

 

 どうやら勇綺は、マシロがこちらの誘いに承諾してくれるとは、夢にも思っていなかったようである。そんな予想外の展開が起きた事に、勇綺は、戸惑いながらも胸の中で大喜びするのであった。

 

(嘘でしょ……? 冗談じゃ無いわよ……。あたし、この娘が苦手なのよ……。常に無表情で、何考えているのか分かんないし……。こんな得体の知れない娘と一緒に協力者集めをするなんて、何か無理かも……)

 

 胸中で喜んでいる勇綺とは対照的に、秋は、マシロと一緒に協力者集めをする事に、余り気が乗らないようである。おそらく秋は、マシロの神秘的で不思議な雰囲気が、どうも苦手なのだろう。

 すると……。

 

「勇綺様」

 

「へ? な、何……?」

 

 心の中で歓喜している最中の勇綺に、マシロが突然、呼び掛ける。

 いきなり呼び掛けられた勇綺は、ふと我に返ると、戸惑いながらもマシロに、恐る恐る問いただす。

 

「借りた本を、はやく棚に戻しませんか?」

 

 こちらを問い掛ける勇綺に、マシロは、借りた本をはやく返却するように促そうとする。

 

「あ、ああ……、そ、そうだね! は、はやく本を棚に戻そうか!」

 

 マシロに促された勇綺は、慌てふためきながら、右手に持っている魔物図鑑を本棚に戻す。

 そして勇綺に続くように、マシロも右手に持っている借りた本を、棚にしまうと……。

 

「えっと……。協力者集めに行く前に……、先ずは、待機している龍哉と合流するからね?」

 

「……」

 

 図鑑を棚に戻した勇綺は、協力者集めをする前に先ずは、待機させている龍哉と合流する事をマシロに伝える。

 するとマシロは、勇綺の考えに納得したのか、無言のまま頷く。

 

「よし、じゃあ、行こうか……」

 

「ええ……」

 

「はい……」

 

 マシロが納得すると、勇綺は龍哉が待機している場所へと歩き出す。

 秋とマシロは、歩き出した勇綺の後を、まるでカルガモの親子のように付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お? 来たか……。ん? あれは……、マシロ……? 何で、勇綺達と一緒にいるんだ?」

 

 情報収集の時に腰を掛けていたソファーの近くで待機していた龍哉は、こちらに近づく勇綺達を発見する。だが、勇綺と秋の後をついて来るマシロに、龍哉は首を傾げてしまう。何故なら、借りた本を棚に戻しに行った勇綺達が、まさかマシロを連れて帰ってくるとは思ってもいなかったのだ。

 

「おいおい、勇綺。何で、マシロと一緒に居るんだ?」

 

 疑問に感じた龍哉は、マシロを連れてきた事について勇綺に問いただす。

 

「え? ああ、うん……。本棚の近くで、たまたまマシロと鉢合わせしてね……。それで、マシロが本を棚に戻した後、協力者集めをする予定みたいだったんだ……。だから僕は、マシロに僕達と一緒に協力者集めをしないか何気なく誘ってみたんだ……。そしたら、マシロが僕達と一緒に協力者集めをしてくれると承諾してくれたんだよ……」

 

 問い掛けられた勇綺は、マシロを連れてきた理由について龍哉に説明をする。

 

「ほほう……。何気なくねぇ……」

 

 勇綺の説明を聞いた龍哉は、顎に手を当てながら、何故かニヤニヤしていた。

 

「な、何でニヤニヤしてるの……?」

 

 ニヤついている龍哉に、勇綺は不思議に思いながらも、恐る恐る問いただす。

 

「下心があった癖に……、俺の前では隠すなよ勇綺……。本当は、マシロとあ〜〜んな事とか、こ〜〜んな事とかやってみたいから誘ったんだろ……? ん?」

 

 すると、問い掛ける勇綺に、龍哉が静かに近づく。そして、龍哉は勇綺の耳元に小声で話しかける。どうやら龍哉は、勇綺が下心でマシロを誘っていると勘付いていたようだ。

 

「え、いいい、いや……、そ、そそそんな事は……、な、な、な、ななななななな無いよ……」

 

 下心があると見抜いた龍哉に、勇綺は、慌てふためきながら小声で否定する。勇綺が、これ程までに狼狽えている辺り、おそらくマシロを誘う時に多少の下心はあったのだろう。

 すると……。

 

「ちょっと、二人共?」

 

「「!」」

 

 突然、秋が、話し合いをしている最中の勇綺と龍哉を呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺と龍哉は、秋の方へと振り向く。

 

「二人でこそこそ、何を話してんの?」

 

 二人のやり取りが気になったのか秋は、勇綺と龍哉に問いただす。

 

「へ!? あ、え、え〜〜と……、そ、その……、た、大した話じゃ、な、無いよ! そ、それよりも、はやく協力者集めをしようよ!」

 

「お! そ、そうだな! 勇綺! 良いこと言った! さっさと協力者集めをしねぇとな! うん、うん!」

 

 突然、問い掛けられた勇綺は秋に、先程の話し合いで、マシロを誘う時に下心があった事を気付かれないように、笑顔で誤魔化しながら協力者集めをするように促そうとする。

 勇綺の言葉に便乗したのか龍哉も、こちらに問い掛ける秋を何とか誤魔化そうと、これから協力者集めをする事に、納得しながらわざとらしく頷く。

 

「ふ〜〜ん……。まぁ、確かに……。はやく協力者集めを始めた方が良いわね……」

 

 二人の内緒話に余り興味が無かったのか、秋は、勇綺と龍哉の言葉を何の疑いもなく納得する。

 

((ふぅ……、何とか誤魔化せた……))

 

 内緒話の内容を、秋に気付かれずに何とか誤魔化せた事に、勇綺と龍哉は安堵したのか、心の中でほっと胸を撫で下ろす。

 

「それじゃあ、さっそく協力者集めをするんだけど……。勇綺、どこで協力者集めをするつもりなの?」

 

 話を切り出した秋は勇綺に、どこで協力者を集めるべきかについて問い掛ける。

 

「う〜〜ん、そうだな……。イッカクを恐れている人は、間違いなく多いと思う……。だから適当な場所で探しても、協力者は中々集まらないだろうね……。う〜〜ん……」

 

 秋の問い掛けに勇綺は、協力者をどこで集めれば良いか、顎に手を当てながら悩んでいると……。

 

「勇綺様……」

 

「!」

 

 協力者を集める場所について悩んでいる勇綺に、今まで静観していたマシロが突然呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺は、マシロの方へと視線を移す。

 

「協力者を集める場所ですが……。この図書館の中で協力者を探してみませんか?」

 

 マシロは勇綺に、協力者を図書館の中で探す事を提案する。

 

「何で図書館の中から探すんだ?」

 

 図書館の中から協力者を探す事に疑問を感じた龍哉は、マシロに問い掛けるのであった。




一応ヒロインが仲間になりました。

それでは、感想や評価をお願いします。


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第57話 炎術師カエン・イグニート

あけましておめでとうございます!!
今年もよろしくおねがいします!

今回は、新キャラが登場します。

それでは、最新話をどうぞ!


「この図書館の中で協力者を探す理由についてですが……。この図書館には、初心者や上級者の戦闘職の人達が多く立ち寄ります……。もしかしたら……、レベルが高い氷属性使いの戦闘職の人達と、運良く遭遇できたら、仲間にできる可能性があるかもしれないからです……」

 

 質問されたマシロは、龍哉の方へと視線を移す。そして龍哉に、図書館の中から協力者を集める理由について説明をする。どうやらマシロの話しによると、このランドロック図書館には、レベルの低い戦闘職だけじゃなく、レベルの高い戦闘職も立ち寄る可能性があるらしい。マシロは、高レベルの氷属性使いの戦闘職を仲間にする為に、この図書館で協力者集めを提案したようである。

 

「「なるほど……」」

 

「確かに、周りを見ると、中々、強そうな奴等がたくさん居るな……。これだけ多くの人が居れば、一人や二人位は、高レベルの氷属性使いの戦闘職と遭遇できる可能性があるかもしれないな……」

 

 マシロの説明に、勇綺と秋は納得しながら頷く。

 そして龍哉も、マシロの説明に、納得しながら部屋の周りをキョロキョロと見回す。図書館には、マシロが言っていた通り、多くの利用者達が居り、この中から目的の人物達と遭遇できる可能性がかなり高いだろう。

 

「よし、分かった、マシロ。俺は、お前の提案に賛成するぜ。」

 

「うん、僕も」

 

「まぁ……、これだけ人が多いなら、図書館の中で協力者を集めても良いかもしれないわね……」

 

 図書館で多くの協力者を集められる可能性を感じた龍哉と勇綺、そして秋は、マシロの提案に賛同する。

 

「それじゃあ……、さっそく、協力者集めでもしますか! 先ずは、どの利用者に声を掛けてみようかなぁ……。お? あの何か強そうな、赤いローブの兄ちゃんに声を掛けてみようぜ!」

 

 マシロの提案を承諾した龍哉は、さっそく協力者集めを始めようと図書館の中を再びキョロキョロと見回す。すると龍哉は、本棚の近くに立っている、二十代前半位の、赤いローブを身に纏っている男性に目が入る。身長は百八十センチメートル程で、瞳は赤く、更に赤い髪は炎のように揺らめいていた。龍哉は、目に付いた赤いローブの男性に、声を掛ける為に近付こうとすると……。

 

「待って下さい、龍哉様……」

 

「!?」

 

「「マシロ?」」

 

 赤いローブの男性に近付こうとする龍哉をマシロが突然呼び止める。

 呼び止められた龍哉は、マシロの方へと振り向く。

 そして勇綺と秋は、首を傾げながら、突然龍哉を呼び止めたマシロを見据える。

 

「何だよ、マシロ? 急に呼び止めて……」

 

 こちらを急に呼び止めたマシロに、龍哉は、疑問を抱きながら問いただすと……。

 

「あの方の情報を覗きます……」

 

 問い掛けられたマシロは、赤いローブの男性を見据えながら呟く。

 

「「「情報を覗く……?」」」

 

 マシロの言葉に、理解出来なかった勇綺達は、不思議そうに首を傾げてしまう。

 

「薬師スキル〝診察〟発動……」

 

「なっ……」

 

「一体、何を……」

 

「な、何をする気なの……」

 

 マシロは、赤いローブの男性を見据えながら、薬師のスキル【診察】を発動させる。すると、スキルを発動させたマシロの身体の周りが、黄緑色に輝き出す。

 龍哉と勇綺、そして秋は、黄緑色に輝き出したマシロに、戸惑いを隠せずにいると……。

 

「「「何か、出てきた!?」」」

 

 勇綺達が困惑している最中、スキルを発動させたマシロの目の前に、空中に浮かんだ半透明のディスプレイが出現する。

 勇綺達は、突然、マシロの目の前に出現した、空中に浮かぶディスプレイに、目を丸くしてしまう。

 

(これが、あの男性のステータス……)

 

 マシロは、目の前に現れた空中に浮かぶディスプレイに映し出されている、赤いローブの男性の情報に視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前:カエン・イグニート

 

種族:人間

 

年齢:20歳

 

性別:男

 

職業:炎術師

 

LV:5

 

HP:82/82

 

状態異常:無し

 

状態異常耐性:毒素

 

敵対心:無し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(レベルは高くは無いですね……。ですが炎術師の火属性攻撃魔法は、魔術師よりも優れているだけじゃなく、敵を火傷状態にするスキルを持っていると聞いたことがあります……。レベルを上げれば、あの男性の火属性攻撃魔法と火傷状態にするスキルは、もしかしたら、イッカク退治の役に立つかもしれません……)

 

 ディスプレイに映し出されている情報を見据えながらマシロは、赤いローブの男性の力が、イッカク退治に役立つ可能性がある事に気が付く。

 すると……。

 

「お、おい……?」

 

(マシロ……?)

 

「??」

 

 映し出された情報を数分程拝見したマシロは、目の前にあるディスプレイを消すと、突然、赤いローブの男性が居る方へと歩き出す。

 突然、歩き出したマシロの後を、龍哉と勇綺、そして秋は、戸惑いながらもついて行く。

 

「あの……」

 

「ん?」

 

 マシロは、本棚の近くに立っている赤いローブの男性に声を掛ける。

 声を掛けられた赤いローブの男性は、マシロ達が居る方へと振り向く。

 

「何だね! 君達は!?」

 

(((声がデカッ!!?)))

 

 赤いローブの男性は、こちらに声を掛けてきたマシロに、大きめな声で問いただす。

 マシロの後ろにいた勇綺達は、赤いローブの声の大きさに、目を丸くしてしまう。

 

「申し訳ありませんが、ここは図書館ですので、声をなるべく小さくして下さい……」

 

(((初対面の人に、いきなりダメ出し!?)))

 

 大きな声で問い掛ける赤いローブの男性に、マシロは、初対面であることを気にもせず、声量についてダメ出しをする。

 最初に声を掛けてきたマシロが突然、初対面の赤いローブの男性にダメ出しをした事に、勇綺達は、またもや目を丸くしてしまう。

 

「む……、確かに、そうだ。大きな声を出して、すまなかった。どうも、私は、生まれ付き声が大きくてな!」

 

 ダメ出しをされた赤いローブの男性は、マシロに、大きな声を出した事についての謝罪をする。

 

「それで……。君達は、何者だね?」

 

 そして謝罪をした赤いローブの男性は、真剣な面持ちで、再び、マシロ達に問いただす。

 

「私の名前は、マシロ・ホワイトスノウといいます……」

 

「僕は、成神勇綺です」

 

「私は、紫堂秋といいます!」

 

「俺は、鉄龍哉だ。まぁ、よろしくな!」

 

 問い掛けられたマシロ達は、真剣な表情で、こちらを見据える赤いローブの男性に、それぞれ自己紹介をしていく。

 

「私は、カエン・イグニートだ。よろしく!」

 

 マシロ達が自己紹介をすると、赤いローブの男性は、快活な表情をしながら自身の紹介をする。

 

「カエン様、私達は今、イッカクの退治に協力してくれる仲間を集めています。もし、協力をしてくれましたら、お礼はちゃんとするつもりです。どうか、カエン様の力を貸してもらえないでしょうか?」

 

 お互いの自己紹介を終えるとマシロは、カエンに、イッカク退治に協力してほしいと頼み込む。

 すると……。

 

「おお、イッカクを退治する為に仲間を集めているのか! 実は、私も、イッカクを倒そうと思って、ここで情報を集めていたんだが……。まさか、ここでイッカク退治の同士と出会えるとは……。私は、運が良い! これも、なにかの縁だ。君達に協力をしようじゃないか!」

 

「ありがとう! カエンさん!」

 

「ありがとうございます! カエンさん!」

 

「サンキュー! カエンの兄ちゃん!」

 

 マシロの頼みに、カエンは快く承諾する。

 仲間が増えて嬉しかったのか、勇綺と秋、そして龍哉は、ここが図書館である事を忘れて、イッカク退治に協力してくれるカエンに、つい大きな声で感謝をしてしまう。

 

「勇綺様、秋様、龍哉様。ここは、図書館です。声を小さくして下さい……。他の人達に迷惑です……」

 

 嬉しさのあまり、つい大きな声でカエンに感謝をしてしまった勇綺達に、マシロは、またもや声量についてのダメ出しをする。

 

「う……、ご、ごめん……、マシロ……」

 

「お、大きな声を出して、わ、悪かったわよ……」

 

「でけぇ声を出して、すまねぇ……」

 

 ダメ出しをされた勇綺と秋、そして龍哉は、気まずそうにしながら、マシロに、大きな声を出してしまった事についての謝罪をするのであった。




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第58話 イサミ・ライデン

眠い……。

それでは、最新話をどうぞ……。


「カエン様、私からも感謝の言葉を言わせて下さい……。イッカク退治に協力して下さって、ありがとうございます……。これは、お礼の前金です……。何かのお役に立てて下さい……」

 

 図書館で大声を出した勇綺達にダメ出しをしたマシロは、カエンの方へと振り向く。そして、イッカク退治に協力してくれた事についての感謝をした後、マシロはカエンに、お礼の前金が入った袋を渡す。

 

「ん? ああ、ありがとう。お金を貰った以上、必ず君達の役に立てられるように頑張るよ!」

 

 お礼の前金が入っている袋を渡されたカエンは、マシロに感謝すると、貰ったお金をマジックポーチの中に収納する。

 

「先ずは一人目だな……。よし、この調子で、どんどん仲間を増やさねぇとな……」

 

 マシロとカエンがやり取りをしている最中、龍哉は、更に協力者を集めようと、図書館の中をキョロキョロと見回す。

 すると……。

 

「ん? おい、何だ、あれは?」

 

「「「「?」」」」

 

 辺りを見回していた龍哉は、本棚の近くに配置されている三台の一人掛けのソファーに腰を掛けている、一人の図書館利用者に指を指しながら勇綺達に呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺達は、龍哉が指を指した方へと振り向く。

 龍哉が指を指した図書館利用者は、年齢が三十代前半位の、顔の左半分と左腕が金属で覆われているサイボーグの男性だ。身長は大体、百七十七センチメートル程で、瞳は黄色く、身体全体には鎧武者のような和風デザインの黒い鎧を身に纏っており、腰辺りには、一振りの刀が装備されていた。

 

「あれって……、もしかして……。サイボーグじゃないかしら?」

 

 龍哉が指を指した利用者を見据えながら、秋は、恐る恐る呟く。

 

「まさか……。ここは、剣とか魔法とかがあるファンタジーな世界だぜ? サイボーグなんてありえねぇだろ……? あのおっさんは、多分、金属を身体に付けるのが趣味な人なんだと思うぜ……。なぁ、勇綺?」

 

「金属を身体に付けるのが趣味な人かは、わからないけど……。確かに龍哉の言う通り、SFの世界に登場するサイボーグが、剣と魔法の世界に存在するのは、ありえないと思うな……。そんな世界、ラノベでもほとんど見ないよ……」

 

 秋の呟きに、龍哉と勇綺は、剣と魔法の世界に、SF世界のサイボーグが存在している事について、呆れながら否定をすると……。

 

「あの方は、秋様が言っていた通り、【サイボーグ】なんですが……」

 

「「え? マジで?」」

 

 三人のやり取りを見据えながら、マシロは、ポツリと呟く。

 突然、衝撃の事実を呟いたマシロに、勇綺と龍哉は、目を丸くしながら問いただす。

 

「はい、マジです……。サイボーグは、科学の国、【サイバーワット王国】の科学者が、生物に人体改造手術をした事によって、誕生した種族なのです……」

 

「人体改造手術って……。ここは、俺達が知っている、剣と魔法の世界じゃないのかよ……」

 

「魔法の世界に、SF要素があるなんて……。む、無茶苦茶な世界だ……」

 

「やっぱ、あたしの言った通りじゃん。流石あたし。それにしても、本当に異世界は何でもありなのね……。まぁ、ホムンクルスが居るんだし、サイボーグが居ても不思議じゃ無いわね」

 

 問い掛けられたマシロは、サイボーグについて説明をする。マシロの説明によると、サイボーグは科学が発展した国、【サイバーワット王国】の科学者が、生物に人体改造をした事で誕生した種族のようだ。

 マシロの説明を聞いた勇綺と龍哉は、この世界が、自分達が知っている剣と魔法の世界とは違う事に戸惑っていた。何故ならば、勇綺と龍哉は、剣と魔法の世界に、こういったSF設定が混じっているゲームやライトノベルを余り見たことが無いのである。だから二人が、マシロの説明を聞いて戸惑ってしまうのも仕方がないと言えるだろう。

 戸惑っている勇綺と龍哉とは対照的に、自身の予想が的中した事で得意気な表情をしている秋は、マシロの説明を聞いても戸惑うことなく、SF要素が混じったこの無茶苦茶な世界に納得していた。おそらく秋は、異世界は何でも有りの世界だと思っているのだろう。

 

「ふむ、あの利用者の職業は……、和風の鎧を見たところ……。【侍】だろうか? もし、そうならば、力と耐久力が高いサイボーグに、刀を使った物理攻撃が得意とする侍は、中々相性が良いだろうな!」

 

 勇綺達がマシロとやり取りをしている最中、カエンは、龍哉が見つけたサイボーグの男性の職業について予想しながら呟く。

 

「あの方が侍かどうかは、情報を覗いてみれば分かるはず……。薬師スキル〝診察〟発動……」

 

 カエンの言葉が気になったのか、マシロは、サイボーグの男性を見据えながら、薬師のスキル【診察】を発動させると、目の前に空中に浮かぶ半透明のディスプレイが出現する。そしてマシロは、ディスプレイに映し出されたサイボーグの男性の情報に視線を移す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前:イサミ・ライデン

 

種族:サイボーグ

 

年齢:31歳

 

性別:男

 

職業:侍

 

LV:51

 

HP:5391/5391

 

状態異常:無し

 

状態異常耐性:無し

 

敵対心:無し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(カエン様が言っていた通り、侍でしたか……。しかも、今、私達が仲間にしている前衛職の人達よりも、レベルが遥かに高い……)

 

 ディスプレイに映し出されている情報を見据えながらマシロは、サイボーグの男性のレベルの高さに驚きを隠せずにいた。

 すると……。

 

「なぁ、マシロ?」

 

「? はい?」

 

 空中に浮かぶディスプレイとにらめっこをしているマシロに、龍哉が突然呼び掛ける。

 呼び掛けられたマシロは、視線をディスプレイから、龍哉が居る方へと移す。

 

「あのおっさん、仲間にするのか?」

 

 龍哉はマシロに、サイボーグの男性を仲間にするかについて問いただす。

 

「はい、あの方は、レベルが五十以上ありますので、何としても仲間に入れましょう……」

 

 問い掛けられたマシロは、目の前に浮かんでいるディスプレイを消した後、龍哉に、サイボーグの男性を仲間に入れると返答する。

 

「レベル五十以上……。た、高い……」

 

「あのおっさん、レベル五十以上もあんのかよ……。強っ!」

 

「レベル高っ!」

 

「これは、驚いた……。いつ死ぬか分からない、この世界で、レベル五十以上を上げるのは、かなり難しい……。それができた、あのサイボーグ侍の男は、相当な実力者だろうな……」

 

 マシロの返答に、勇綺と龍哉、そして秋とカエンは、サイボーグの男性の強さに目を丸くしていた。

 

「さぁ、皆様、行きましょう……」

 

 目を丸くしている勇綺達を呼び掛けたマシロは、ソファーに腰を掛けながら読書に夢中になっている、サイボーグの男性が居る方へと歩き出す。

 

「すみません、少しお時間よろしいでしょうか……?」

 

「!」

 

 マシロは、ソファーに腰を掛けながら読書に夢中になっている、サイボーグの男性に声を掛ける。

 声を掛けられたサイボーグの男性は、マシロ達が居る方へと振り向く。

 

「何だ……、お前達は? 俺に何かようか?」

 

 サイボーグの男性は、突然、見知らぬ人に声を掛けられて警戒しているのか、マシロに訝しみながら問いただす。

 

「先ずは、自己紹介からします……。私の名前は、マシロ・ホワイトスノウといいます……」

 

「えっと……。僕は、成神勇綺です」

 

「私は、紫堂秋といいます」

 

「俺は、鉄龍哉だ!」

 

「私は、カエン・イグニートだ」

 

 問い掛けられたマシロ達は、こちらを警戒しながら見据えるサイボーグの男性に、それぞれ自己紹介をしていく。

 

「俺の名前は……、イサミ・ライデンだ……」

 

 マシロ達が自己紹介をすると、サイボーグの男性は、まだ警戒をしているのか、訝しげな表情をしながら自身の紹介をするのであった。




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第59話 イサミからの条件

最新話です!
どうぞ!


「イサミ様、私達は、イッカクを倒すのに協力してくれる仲間を集めています。どうか、イサミ様の力を貸して下さい。もし、協力をしてくれましたら、お礼はちゃんとするつもりです。お願いします……」

 

 お互いの自己紹介を終えるとマシロは、カエンに、イッカク退治に協力してほしいと頼み込むと……。

 

「なるほど……。イッカク退治に協力してくれる仲間を集めているのか……。ふむ……。俺は、弱い奴等とはパーティを組みたくない……。足を引っ張られるのは嫌だからな……。それでも俺を仲間にしたいならば、条件がある……」

 

「「「「「条件?」」」」」

 

 こちらに頼み込んできたマシロに、イサミは、ある条件を提案する。

 突然、イサミから条件を提案されて、勇綺達は、首を傾げながら呟いてしまう。

 

「じょ、条件って……、な、何です……か?」

 

 条件の内容が気になった秋は、恐る恐るイサミに問いただす。

 

「お前達の実力が知りたい……。これから、お前達には、【ランドロックの洞窟】に向かってもらう……。そこで、洞窟の地下五階に住み着いているボス、【ビッグモール】を倒して、【ビッグモールの爪】と【ビッグモールの毛皮】を取ってこい……。もし、それが出来たならば、お前達の仲間になってやる……。どうだ? この条件を受けるか?」

 

 秋から問いただされたイサミは、イッカク退治に協力する条件について説明をする。イサミの説明によると、ランドロックの洞窟の地下五階に住み着いているボスモンスター、ビッグモールを倒して、その魔物から、ビッグモールの爪とビッグモールの毛皮を取って来なくてはいけないようだ。この二つの素材を取って来るのに成功出来れば、イサミはイッカク退治に協力してくれるようである。

 

「ほう……。あの洞窟に、ボスなんていたのか……。面白い……。どれほど強いんだろうか……」

 

(ランドロックの洞窟か……。虫がいる洞窟じゃん……。嫌だなぁ……)

 

 イサミの説明を、龍哉は顎に手を当てながら、興味深そうに聞いていた。おそらく龍哉は、洞窟のボスモンスターと戦ってみたいと思っているのだろう。

 洞窟のボスモンスターに、興味津々の龍哉とは対照的に、秋は、嫌そうな表情をしていた。何故ならば、ランドロックの洞窟には、苦手な虫の魔物が住み着いているのである。それ故、秋が、苦い顔をしてしまうのも、仕方がないといえよう。

 

「分かりました……。その条件を受けます……」

 

 秋がしかめっ面をしている最中、イサミからの条件にマシロは、迷いなく承諾する。

 

「よし、承諾したな……。俺は先に、ランドロックの洞窟の入口で待っている……。お前達がちゃんと、ビッグモールを倒しに行くか、確認するためにな……。逃げるなよ? じゃあな……」

 

 条件を承諾したマシロに、イサミは待ちあわせ場所であるランドロックの洞窟へ向かおうと、この場から立ち去ってしまう。

 

「さっそく、洞窟に向かうか? マシロ?」

 

 イサミが立ち去ると龍哉は、マシロに問いただす。

 

「そうですね……。洞窟へ向かう前に、色々と準備をしなければなりません……。私は、先ず、道具屋で薬を買いに行こうと思います……」

 

 問い掛けられたマシロは、洞窟へ向かう前に、道具屋で薬を買いに行くと返答する。

 

「マシロは道具屋か……。カエンの兄ちゃんは、この後、どうするんだ?」

 

 マシロの返答を聞いた龍哉は、次に、カエンがいる方へと視線を移す。そしてカエンに、この後の予定について問い掛けてみると……。

 

「ふむ、そうだな……。私も、洞窟に備えて、道具屋で魔力回復アイテムでも買っておこうと思う。私は、魔法を多く使うからね」

 

 龍哉の問い掛けにカエンは、顎に手を当てながら、この後の予定について返答する。どうやらカエンも、これから向かう事になる洞窟に備えて、道具屋で買い物をしていくようだ。

 

「カエンの兄ちゃんもか……。じゃあ、勇綺。俺達は、どうする?」

 

 カエンの予定を聞いた龍哉は、続いて、勇綺がいる方へと振り向く。そして勇綺に、この後の予定について問いただす。

 

「う〜〜ん……。あ……、そういえば、ランドロックの森でポーションを使ったっけ……。じゃあ、僕達も道具屋でポーションを買いに行こう……かな?」

 

 問い掛けられた勇綺は、一度、腕を組みながら考え込む。すると勇綺は、ランドロックの森で、ポーションをすでに使用していた事を思い出す。勇綺は、龍哉と秋に、道具屋でポーションを買いに行く事を提案する。

 

「そうね……。あたしも森で、ポーションを使ったし……。分かった、道具屋に行きましょ」

 

「おう、分かった」

 

 勇綺からの提案に納得した秋と龍哉は、笑みを浮かべながら頷く。

 

「それでは皆様、道具屋に向かいましょう……」

 

 先程やり取りをしていた勇綺達とカエンを呼び掛けたマシロは、目的の場所である道具屋へ向かおうと歩き出す。

 

「うっし、行くか!」

 

「うん」

 

「ええ」

 

「うむ!」

 

 歩き出したマシロの後を、龍哉と勇綺、そして秋とカエンは、意気揚々とついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 図書館から出ていった勇綺達は町中で、道具屋へ向かおうとしているマシロの後を付いて行くと……。

 

「なぁ、勇綺、秋……」

 

「? 何?」

 

「?」

 

 突然、龍哉が歩きながら小声で、勇綺と秋を呼び掛ける。

 歩いている最中の勇綺と秋は、いきなりこちらを呼び掛けてきた龍哉が居る方へと振り向く。

 

「何か俺達……、さっきから周りに見られてねぇか?」

 

「そういえば……」

 

「何か、視線を感じるわね……」

 

 勇綺と秋を小声で呼び掛けた龍哉は、町中を歩いている最中に、先程から通行人達の視線を感じていたのだ。

 龍哉の言葉に勇綺と秋も、通行人達から視線を向けられている事に気が付くと、周りをキョロキョロと見回す。

 

「あ、もしかして……」

 

「ん? 何だ?」

 

「何か、分かったの?」

 

 すると秋は、町中の通行人達が何故、こちらを注目しているのか、その理由に気が付く。

 理由に気が付いた秋に、龍哉と勇綺が問いただす。

 

「みんな……、あたしの可愛さに見惚れているのかも……」

 

 問い掛けられた秋は、何を勘違いしているのか、こちらに視線を向ける通行人達が全員、自分の可愛らしさに心を奪われたと思っているようだ。全くもって、勘違いも甚だしいと言えるだろう。

 

「それは無いと思う」

 

「んなわけねーーだろ? 夢を見るな! まな板! 絶壁胸! 恥を知れ、恥を!」

 

 勇綺と龍哉は、自惚れた秋の発言を、呆れながらバッサリと切り捨てる。

 すると……。

 

「何? 何か文句あんの!?」

 

「ヒィッ!? も、文句ありません! ご、ごめんなさい!」

 

「も、文句言って、す、すみませんでした! 秋様!」

 

 発言をバッサリと切り捨てた二人に、秋は、鬼のような形相で睨み付ける。

 ヒロインがしてはいけない形相でこちらを威圧する秋に、勇綺と龍哉は、余程恐ろしく感じたのか、身体を震え上がらせながら謝罪をしてしまう。

 

「君達」

 

「「「え?」」」

 

 秋が二人を威圧している最中、最後尾で歩いていたカエンが、突然、勇綺達を呼び掛ける。

 呼び掛けられた勇綺達は、カエンがいる方へと振り向く。

 

「もしかしてだが……、通行人達は皆、マシロ君に注目をしているのではないか?」

 

 先程のやり取りを聞いていたカエンは、勇綺達に、通行人達がこちらに視線を向けている理由について話す。

 

「あ、なるほど」

 

「それなら、納得だな」

 

 カエンの言葉に勇綺と龍哉は、疑問に思うことなく納得するのであった。




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第60話 秋と栄養満点クッキー

はい、最新話です♪
どうぞ!


「いやいや、何で簡単に納得してんのよ! あたし、全然納得できないんだけど!?」

 

 トマトのように顔を真っ赤にしながら怒っている秋は、カエンの言葉に納得している勇綺と龍哉に文句を垂れる。どうやら秋だけは、マシロが町中の通行人達から注目されている理由に納得できないようだ。

 

「はぁ……、仕方ない……。俺が分かりやすく教えてやる……。良いか秋、マシロは面が良いだけじゃなく、乳とケツがデカいんだ……。この三つが揃った女が道を歩いていたら、そりゃあ通行人達がマシロに視線を向けるのは当たり前なんだよ……。分かったか?」

 

 文句を垂れている秋に、龍哉は、呆れながらため息をつく。そして、マシロが通行人達から注目される理由について、龍哉が分かりやすく説明をするのだが……。

 

「いやいや、分からないわよ! スタイルの良い美少女が、皆から注目されるんだったら、あたしも注目されているはずでしょ? 何で、あたしを差し置いて、マシロだけ、通行人達の視線を独り占めしているのよ!」

 

 龍哉からの説明を聞いても秋は、全く理解していなかった。何故ならば秋は、スタイルの良い美少女の自分を無視して、通行人達がマシロばかり注目しているのが納得できないようである。何とも、しょうもない理由と言えるだろう。

 

「「はぁ……」」

 

 自分のスタイルの悪さに気付かず自惚れた発言をする秋に、勇綺と龍哉は呆れながらため息をつくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秋とのしょうもないやり取りを終えた勇綺達は、先頭を歩いているマシロの後を数分程付いて行くと、目的の場所である道具屋に到着する。目の前の道具屋の外観は、赤い煉瓦で覆われた二階建ての建物であり、その二階部分の建物には、液体が入った瓶の絵が描かれている鉄製の看板が取り付けられており、一階部分の建物の入り口には、黒色に塗装されている木製の扉が取り付けられていた。

 

「マシロ……。ここが……、道具屋……か?」

 

「はい……」

 

 龍哉は目の前の建物について、恐る恐るマシロに問いただす。

 龍哉の問い掛けに、マシロは、返答をしながら頷く。

 

「それでは、行きましょう……」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

「ええ」

 

「ああ」

 

 マシロは、勇綺達に声を掛けると、道具屋の中へと足を踏み入れる。

 声を掛けられた勇綺と龍哉、そして秋とカエンは、道具屋の中に足を踏み入れたマシロの後を、カルガモの子供のように付いて行くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ〜〜」

 

「おお、色々とあんな〜〜」

 

「へぇ〜〜、何か変わった商品がいっぱいあるわね♪」

 

 勇綺達が道具屋の中に足を踏み入れると、様々な商品が並べられている棚やテーブルが目に入る。

 初めて道具屋に訪れた勇綺と龍哉、そして秋は、先ず最初に、店内の壁側に配置されている木製の棚に視線を移す。棚の中には、怪しい液体が入った小瓶と謎の錠剤が入った小瓶、そして何が入っているのか分からない正方形の小さな黄色い箱と焦げ茶色の種のイラストが描かれたラベルが貼られている缶等がいくつも置かれていた。次に、視線を移したのは、木製のテーブルだ。テーブルの上には、棒の先端に布を巻き付けただけのアイテムと何かの鍵、そして小さなカラフルの球状のアイテムと袋詰された謎のアイテム等がいくつも並べられている。勇綺と龍哉、そして秋は、棚やテーブルの上に配置されている、数々の異世界の不思議な商品に、興味津々な表情をしながら眺めていた。

 すると……。

 

「マシロとカエンの兄ちゃん、買い物を始めるみたいだ。勇綺、秋。俺達も、さっさと買い物を始めようぜ?」

 

 三人が店内の商品を眺めていると、マシロとカエンが壁側に配置されている棚の方へとが歩き出す。

 歩き出した二人に気付いた龍哉は、勇綺と秋に買い物を始めるように促そうとする。

 

「ああ、そうだね。分かった。えっと……、ポーションは……、多分、瓶が並べられている棚の方にありそうな感じがするから……、そこで探してみようか」

 

 龍哉の言葉に納得した勇綺は、目的の物であるポーションを探そうと、壁側に置かれている木製の棚の方へと歩き出す。

 

「おい、秋」

 

「へ? 何?」

 

 勇綺がポーションを探しに行っている最中、龍哉は秋を呼び掛ける。

 テーブルの上に並べられている商品を興味深そうに見ていた秋は、突然、こちらを呼び掛けてきた龍哉がいる方へと振り向く。

 

「さっさと、買い物すっぞ?」

 

「ああ、そうだった! 分かったわ」

 

 秋に声を掛けた龍哉は、勇綺がいる方へと歩き出す。

 声を掛けられた秋は、歩き出した龍哉の後を付いて行くのであった。

 

「え〜〜と……、ポーション……、ポーション……。あ、この見覚えがある小瓶は……、ポーションだ」

 

 龍哉と秋が移動している最中、勇綺は、木製の棚の中に並べられている商品の中からポーションを、目を皿のようにしながら探していた。すると、陳列されている商品の中から見覚えがある小瓶を発見する。その小瓶は、勇綺が探していた回復アイテムである、ポーションだった。勇綺は、目の前の棚に並べられている、ポーションの小瓶に手を伸ばそうとすると……。

 

「勇綺」

 

「ん?」

 

 聞き覚えのある声に呼び掛けられた勇綺は、こちらに話し掛けてきた人物がいる方へと振り向く。勇綺が振り向いた先には、龍哉と秋が、こちらを見据えながら立っていた。

 

「ポーション、見つかったか?」

 

「え、ああ、うん、見つかったよ。僕の後ろの棚に、ポーションがあるよ」

 

 龍哉は、ポーションが見つかったかについて勇綺に問いただす。

 龍哉の問い掛けに勇綺は、ポーションが並べられている後ろの棚を、親指で指しながら返答する。

 

「そうか、見つかったか! んで、いくつくらい買う予定だ?」

 

「う〜〜ん……、そうだな……。ランドロックの洞窟は地下五階くらいあるからなぁ……」

 

 探していたアイテムが見つかった龍哉は、ポーションをいくつぐらい買うかについて、再び勇綺に問いただす。

 龍哉からの問い掛けに勇綺は、ポーションをいくつ買うかについて、顎に手を当てながら考え込む。

 

(棚の中の商品は、何かの薬が入った瓶がいっぱいあるわね……。ん?)

 

 勇綺と龍哉がやり取りをしている最中、秋は、棚の中に陳列された商品を、興味深そうに眺めていた。

 すると……。

 

(何かしら? この黄色い箱……? なになに、【エナジーブロック】? 裏に説明があるわね……)

 

 棚に並べられている商品の中から、黄色い箱が秋の目に入る。目に付いた黄色い箱の表面には、【エナジーブロック】と記載されていた。気になった秋は、目の前の謎のアイテムである、エナジーブロックと記載された箱に手をのばす。そして、手に取った箱の裏面に記載されている、商品についての説明を読み始める。

 

(この箱の説明だと……。《これは、ブロックタイプの栄養満点クッキーです。食べると、体力小回復に加えて、空腹の状態異常も回復します。お腹が空いた時や体力回復に、どうぞ召し上がって下さい。》ふ〜〜ん……、栄養菓子か……。美味しそうね……。あたし、お菓子とか甘い物、好きなのよね〜〜)

 

 エナジーブロックの説明を読んだ秋は、この栄養菓子に興味が湧いてしまう。何故ならば秋は、甘い物や菓子等が好きなのである。だから秋が、このアイテムに興味が湧いてしまうのも仕方がないといえよう。

 

(う〜〜ん、食べてみたい……。でも……、あたしは、ポーションを買いに来たのよね……。ここで、余計な物を買うわけには……。でも……、やっぱり……、食べてみたい……。うあぁぁぁぁぁぁ、どうすれば……)

 

 目の前にある好きなお菓子の誘惑に、秋は、エナジーブロックを買うかどうかについて、頭を悩ませるのであった。




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