空飛ぶ山猫と重巡洋艦 (とある戦闘機好き)
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財団報告書
6つの報告書


これら6つの報告書の閲覧する条件は
・Aクラス以上の権限を持つ職員であること
・閲覧場所のセキュリティレベルが5以上であること
・O5メンバー2人以上の閲覧許可が確認できること
の3項目です。
満たす場合はこれらを記入して、確認が取れるまでお待ちください。
これらの条件を満たさない場合、閲覧を中止してください。満たさない者が閲覧した場合、即座に終了されます。














O5-1並びにO5-6の閲覧許可が確認されました。
閲覧を開始します。


N-001

 

オブジェクトクラス:thaumiel→1,8はketer、その他はthaumiel

 

収容プロトコル:存在しません→全てのオブジェクトに対しAクラス以上の職員による厳重な監視を徹底してください。

 

概要:N-001はNシリーズと呼ばれる複数のscpオブジェクトです。その特殊性からscpナンバーを振られることはありません。

Kクラス世界終焉シナリオの際に脱走したketerクラスのscpオブジェクトの破壊を行います。Nシリーズは並行世界に流れ着いた研究員によって発見された、scp-001-PE並びにscp-002-PEの技術を流用、発展させて作成されました。

主にscp-2000『機械仕掛けの神』と同時運用されます。

同時運用の手順は

 

1.脱走したketerクラスscpオブジェクトによるKクラス世界終焉シナリオの開始

2.O5評議会によるNシリーズ並びにscp-2000の起動に関する採決の承認

3.Nシリーズが起動

4.脱走したketerクラスscpオブジェクトの破壊を開始

5.keterクラスscpオブジェクト破壊確認

6.Nシリーズのシステムを凍結し財団本部地下に格納

7.scp-2000を起動し復興シナリオを開始

 

です。

N-001はN-001-1から8までが存在しそれぞれ形が違います。

1は戦闘機、2は四足歩行動物、3は二脚のロボット、4は四脚のロボット、5は大型魚類、6は大型鳥類、7は肉食恐竜、8は人

の形をとっています。

 

補遺1:現在、2〜7が財団の地下格納庫に休眠状態で安置されていますが、1と8の行方は不明です。そのため事情を説明された一部職員によって捜索されています。

 

補遺2:行方不明のN-001-1、N-001-8は一時的な措置として、keterに分類が変更されました。回収完了後、オーバーホールを行ったのちに再びthaumielへと分類が変更されます。

 

 

 

N-001-1

 

オブジェクトクラス:thaumiel→keter

 

収容プロトコル:存在しません→即時発見が望まれます。発見、収容後に大規模オーバーホールを行い半年間地下格納庫に封印、問題が無ければその他N-001同様に運用されます。

 

概要:Nシリーズ、N-001の一つです。

財団によって作られた一番最初のNシリーズであり、戦闘機の形をしています。

N-001-8と同時運用する前提で作成されており、同時運用時にN-001-8はN-001-1の搭乗員、並びに生体CPUとして機能します。

設計コンセプトは「全世界をカバーできる戦闘機」であり、通常巡航でもマッハ5をだし、アフターバーナー無しの最大速でもマッハ13をだします。アフターバーナーを使用した状態での航行実験は行われていません。

このオブジェクトには、scp-001-PE-1の技術を流用、発展させた熱核イオンジェットエンジンや、scp-002-PEの機体フレーム技術、財団独自の量子格納技術が使われており、現時点で世界最強の兵器と呼ばれています。

また、特殊なAIを搭載しており自律行動も可能です。

 

補遺1:現在N-001-8とともに行方が分からなくなっており、捜索されています。

 

補遺2:行方不明によりN-001-8とともに一時的な措置として、keterに分類が変更されました。

 

 

 

N-002

 

オブジェクトクラス:thaumiel

 

収容プロトコル:各支部の判断に委ねられます。

 

概要:N-002はNシリーズと呼ばれる複数のscpオブジェクトです。その特殊性からscpナンバーを振られることはありません。

N-001-3もしくはN-001-4をダウングレードした物であり、N-002-1〜16まで存在しています。

N-002は各支部ごとに2体ずつ配備されており、支部施設の地下格納庫に安置されています。

N-002の各支部の判断によって運用することが許可されています。主な運用方法は脱走したscpオブジェクトの回収、もしくは破壊です。オブジェクトの破壊は財団の理念によって勧められてはいないため、もっぱら回収に使用されます。

 

補遺1:行方不明となったN-001-1並びにN-001-8の捜索のため、偶数番号の機体は世界中にHASSモードで展開されています。

 

 

 

scp-001-PE

 

オブジェクトクラス:keter→safe

 

収容プロトコル:財団地下8000mに位置する40重の隔壁がある部屋に収容してください。外部汚染確認時、汚染区域は5年間封鎖されます。このオブジェクトの実験はAクラス職員以上の権限、並びにO5メンバー3名以上の許可が必要です。許可なき場合、どのクラス職員であったとしても即座に終了されます。

追記:フィルターシステムⅢによるscp-001-PE-2の無毒化の確認後、scp-001-PE-1を起動し財団本部の電力に使用します。

 

概要:scp-001-PEは直径1m高さ2m程の円柱の機械scp-001-PE-1並びに、そこから発生する副産物scp-001-PE-2の総称です。

scp-001-PE-1を起動すると莫大な電力と、その副産物としてscp-001-PE-2が発生します。

scp-001-PE-2は粒子の一種で、光子の崩壊現象により常に緑色に発光しています。scp-001-PE-2は有毒な粒子で、大気、水質、土壌汚染を引き起こします。汚染された場合、長期間人類には住むことができないほど汚れきった環境になることがわかっています。

また強力な安置能力を持ち、その集合体は外部から与えられた運動体の運動エネルギーを減衰させることが確認されています。ですがレーザーといった光学兵器などには効果が薄いことも確認されました。

scp-001-PE-1は莫大な電力並びにscp-001-PE-2の発生を目的として開発されたと考えられています。また、scp-001-PE-1はscp-002-PEに動力源、並びに防御機能「プライマル・アーマー」として搭載されています。

またscp-001-PE-1の外殻には「Akva-Bit」という文字が彫られていました。これについては現在調査中です。

 

補遺1:このオブジェクトはこの世界の物ではなく、別世界の物です。

 

補遺2:研究の結果によりscp-001-PE-2の無毒化を行うフィルターシステムⅢの開発に成功、scp-002-PEの実験が再開されました。

 

 

 

scp-002-PE

 

オブジェクトクラス:keter→safe

 

収容プロトコル:財団本部地下一番格納庫に大規模封印措置を施した上で収容してください。このオブジェクトに対してO5メンバー半数以上の許可がない限り封印措置の解除、並びに実験を行うことはできません。許可なき場合、どのクラス職員であったとしても即座に終了されます。

 

概要:scp-002-PEは全長10m程の人型の無機物です。色は主に水色と白色が使われており、カメラアイと見られる部分はマゼンダに近い色に発光します。

胸部には人が一人乗れる程のコクピットがあり、コックピットの椅子には首に当たると思われる位置に金属端子が存在します。そしてコックピット裏側には発見当時、scp-001-PE-1が配置されていました。

またオブジェクトの背部、脚部にはバーニアの様なものがありますが、そこに繋がるような燃料タンクに類似した物は存在しませんでした。そのため、scp-001-PE-2を推進力として使用したのではないかと推測されており、後の実験で推測が正しかったことが証明されました。

さらには全身の関節部(肩部、肘、膝、爪先など)に長さ30〜50cm程の棒のような取り付けられています。これは後の実験でscp-001-PE-2の制御に使われていたことが分かりました。

 

これまでの実験

1回目****年**月**日

実験主導者:****博士

内容:オブジェクトの起動、並びに運動実験

結果:オブジェクト起動と同時にscp-001-PE-1が起動し、scp-002-PE-2が発生し放出される。区域汚染が発生したため実験を中止。汚染者は全員が咳と倦怠感を申告。その後気管支の病気を起こし、半年後に全員が死亡した。

対策:scp-001-PE-2の研究を優先し、フィルターシステムの開発に取り掛かることで決定。それまではフィルターシステム関連以外のscp-002-PEの実験は不許可。

 

2回目****年**月**日

実験主導者:***博士

内容:フィルターシステムの有効性確認。参加者全員が除染服を着用。

結果:75%まで無毒化に成功。残り25%の原因を探るとして実験を完了。

 

3回目****年**月**日

実験主導者:***博士

内容:フィルターシステムⅡの有効性確認。参加者全員が除染服を着用。

結果:90%まで無毒化に成功。残り10%の原因を探るとして実験を完了。

 

4回目****年**月**日

実験主導者:***博士

内容:フィルターシステムⅢの有効性確認。参加者全員が除染服を着用。

結果:99.99%まで無毒化に成功。これによりscp-002-PEの起動実験の再許可が降りる。

 

5回目****年**月**日

実験主導者:*****博士

内容:オブジェクトの起動、並びに運動実験

結果:オブジェクトの起動に成功。その後運動実験にて歩行や飛行といった様々な実験を行い、その際に推進力としてscp-001-PE-2を使用していることを確認。

 

6回目****年**月**日

実験主導者:*****博士

内容:オブジェクトの構造解析、並びに関節部の棒状物体の解析

結果:オブジェクトの内部フレームが非常に人型に近いことが判明。さらに内部フレームが未解明の製造方法で作られていることが分かった。また、関節部の棒状物体はscp-001-PE-2の慣性制御や防御機能「プライマル・アーマー」に大きな効果を及ぼす物と判明。

追記1:この結果を受けてO5評議会は、このオブジェクトを流用、発展させた「Nシリーズ」の開発を行うことを決定した。

追記2:現時点でフレーム製造方法は解明済み。このフレームは強度並びに重量に優れているため、N-001の製造に利用。

 

7回目****年**月**日

実験主導者:*****博士

内容:オブジェクトの防御機能「プライマル・アーマー」の機能確認。

結果:55mmレベルの弾丸なら容易に慣性を減衰して弾くことを確認。また、既存の通常ミサイルすらも防ぐことが分かった。しかし、レーザーといった光学兵器は減衰ができないことが判明。

 

補遺1:O5評議会は7回目の実験終了後、必要なデータは揃ったとしてscp-001-PE-1の取り外し後にscp-002-PEの封印措置を開始。

*****博士並びに****博士を中心として極秘に「Nシリーズ」開発部門の設立を決定しました。

 

補遺2:scp-001-PE-1と同じ様にオブジェクトの各部パーツに「Akva-Bit」という文字が彫られていました。これについてはscp-001-PE-1と同様に目下調査中です。

 

 

 

 

 

 

 

 

N-001-8

 

閲覧禁止




これで内容が読み解けたら、すごいと思います。


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*****博士の『覚書』に関する報告書

この報告書の閲覧はO5メンバーのみ許可されています。O5メンバー以外の者が閲覧した場合、即座に終了されます。またO5メンバー以外に口外した場合、口外された者も含めて即座に終了されます。ご注意ください。











O5メンバーにおける閲覧プロトコル並びに閲覧許可パスコードを確認。

閲覧を開始します。


****年**月**日にN-001-1並びにN-001-8が行方不明になったことに続けて、『Nシリーズ』開発の主任であった*****博士と****博士が自殺したことは記憶に新しいものです。

ですが、N-001-1とN-001-8の行方不明と同時期に2人が自殺したことに私は違和感を覚えました。

これはそれを受けて貴方がたが私に捜査するよう命じ、*****博士の家宅捜査時に*****博士の机から発見された『覚書』と思われる、*****博士によって書かれたメモについて纏めた報告書です。

この報告書の内容はO5メンバー以外には口外しないようにしてください。お願いいたします。

 

 

これは『覚書』の本文です。

 

『これを読んでいる貴方にはこれらが有りもしない事だと思うでしょう。

ですが、ここに書かれている事はまぎれもない事実です。

 

上層部はscp -001-PEとscp -002-PEの実験を受けて、私と****博士に『Nシリーズ』と呼ばれる対keterオブジェクトを作る事を命じました。

始めは私も****博士も財団のためと喜んで参加していました。

しかし、これらに疑問を覚えたのはしばらくしてからの事です。

上層部は『N-001』として、8つのオブジェクトを作るよう、私達に命じました。ですが問題は8番目のオブジェクトでした。

そのオブジェクトは、『人』。

私はそれに酷い悲壮感を覚えました。

なぜオブジェクトが『人』のかたちをしているのでしょうか。

私はこの時、N-001-8を可哀想に思ってしまったのです。

 

私がN-001-8を可哀想に思ってからしばらく経った頃、上層部は『Nシリーズ』に意志を持ったAIを搭載する事を決めました。

私は居ても立っても居られなくなりました。

あの子が自我を持ってしまった時、私はどうあの子を見れば良いのか分からなくなりました。

ですが、私は決めました。

N-001-8をどうにかして逃がす事を。

 

手始めにN-001-1に****博士が作り上げた『次元移動システム』を極秘裏に搭載しました。

N-001-1をN-001-8の導き手にするために、次は私の意識をN-001-1用のAIにコピーし私の分身を作り上げ、N-001-1のAIとして搭載しました。

このAIのことを私は「オセロット」と呼びました。彼がそう呼んでくれ、と言ったからです。

彼はなぜか私とは性格が違いましたが、私の考えに理解し、協力してくれました。

 

そして、N-001-8にAIを搭載する前日。

私はN-001-1...オセロットにN-001-8に乗せました。私がタラップから降りる時、オセロットは聞いてきました。

『後悔はないのかい?』

私は答えました。

「ないわ。あの子を守れるなら。」

そう言うと彼は機体を起動させ、次元移動システムを起動させました。最後に彼はこう言ったのです。

『ありがとう。そして、さようなら』

そう言うと彼はN-001-8を乗せて消えていました。

 

上層部がこのメモを見つけた頃には、私は既にここにはいないでしょう。

私はそれほどのことを行いました。でも、私に後悔は何一つありません。

 

 

そして最後に一つ。

彼らの旅に、幸多からんことを。』

 

 

この内容から鑑みるに、N-001-1並びにN-001-8の行方不明の原因は*****博士の手引きによるものと思われます。

なぜ彼女がN-001-1とN-001-8を脱走させたのかは、彼女に聞かなければ分かりません。ですが現時点で彼女は自殺しているため、その意図は不明です。

 

補遺1:彼女の意識をコピーしたAIは現在、N-001-1に搭載されていると見て間違いありません。そのため回収後もオブジェクトクラスはthaumielに戻さないことを、私は強く進言します。もしthaumielに戻すと判断されたのならば、システムを完全にすげ替える必要があると考えます。

 

補遺2:****年**月**日に、*****博士の協力者と思われる****博士の自宅に家宅捜査が行われましたが、N-001-1に搭載されたとされる『次元移動システム』についての情報は何一つ発見出来ませんでした。そのため我々が次元移動の方法を確立しない限り、N-001-1並びにN-001-8の捜索は現時点で不可能だと思われます。

 

 

 

報告は以上です。

 

記入日:****年**月**日

報告者:A-1027 エージェント・ジョシュア

 




閲覧終了後、直ちに閲覧許可パスコードを破棄してください。24時間後に新たな閲覧許可パスコードが発行されます。


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第1章 出逢い
Alt-1 空を行く山猫


サブバッテリー、オン

サブシステムスタート

空気圧縮機、サブバッテリーから電源を伝導、起動

第1熱核イオンジェットエンジン、起動。アイドルへ

サブバッテリー、オフ。電源の開始伝導を第1エンジンへ変更

メインシステム起動、電源の開始伝導をメインバッテリーへ変更。第1エンジン、待機状態(ステアリングモード)へ変更

メインシステムフレーム並びに機体状況の自己診断を開始...完了

サブシステム、オフ。続けてメインシステム、起動

武装選択

AIM-18 scalar(赤外線ミサイル)を8、

AIM-74 hyper phoenix(アクティブ・ホーミング・ミサイル)を6、

ASM-09 cyclone(対地・対艦ミサイル)を6、

ARAM-1 fang(10連多目的個別ミサイルパック)を5パック、

GAU-38 25mm4連装ガトリングを3300発

TLS(戦術レーザーシステム)...動作よし

搭載開始...量子格納完了

第1エンジン待機状態(ステアリングモード)からアイドルへ変更

第2熱核イオンジェットエンジン、起動。同じくアイドルへ

右フラップ、エルロン...動作よし

左フラップ、エルロン...動作よし

左右水平尾翼...動作よし

左右垂直尾翼...動作よし

可変後退翼...動作よし

両エンジン、リアクター許容範囲内での作動を確認。電源の開始伝導を両エンジンリアクターへ変更。メインバッテリー、オフ

ANJM/APAR-1x(オールサイド・フェーズドアレイ・レーダー) ...動作よし

GEN-Ⅸ HMD...動作よし

ECMシステム...動作よし

HASS(Hi Active Stealth System)...動作よし

 

F/A-114 Ocelot(山猫) 発進準備完了

 

「毎回思うが、長いな」

 

と呟き、機体を滑走路に勝手に進入させる。ここには自分の機体しか無いので、何か言われることも無い。

量子通信を開き管制塔に通信を送る。

 

「Control tower.

This is Rayven.

Please take-off excuse.」

 

『This is Control tower.

Give take-off excuse,Rayven.

Run Way01 Clear for take off

wind 137 4knot/h

Good lack.』

 

「Roger,cleared for take off.」

 

エンジンにアフターバーナーをかけ機体を発進、操縦桿を引く。すると機体はふわりと空へと舞い上がった。

 

(やっぱり、この感じは好きだ)

 

そう、空と一体になるこの感覚。空へ上がる度に高揚する気分。

 

10000mまで機体を上昇させインメルマン・ターンを決める。そこからスプリットSで下降して機体を水平にする。今度はバレルロールから左側へブレイクして機首を戻し、コブラ機動に入る。

さらにスロットルを切り海面まで急降下。機首をそのままにして、海面ギリギリでスロットルを最大にし水飛沫を上げて急上昇ー

 

「ふう」

 

機体状態を元に戻し滑走路へと戻る。可変後退翼を開き、STOL能力をフルに活用して短距離着陸する。

 

機体の可変後退翼の後退角を最大にし格納庫に収納。格納庫のブラストバリアーを展開させジェット排気を横へ逃す。

ここからも時間はかかる。

 

シャットダウンプログラム、起動

両エンジン、アイドルへ変更

各バッテリー、充電率確認

サブバッテリー充電率52%、メインバッテリー充電率23%...両エンジンリアクターから充電開始...完了、両エンジンを待機状態(ステアリングモード)へ変更

機体状態の自己診断、開始...完了

搭載武装の取り外し...完了

両エンジンの自己診断、開始...完了、問題なし

システム、シャットダウン

 

「やっと終わった」

 

と一息つき、機体から降りる。やはり1日に1回乗るのは欠かせない。

格納庫を閉じてロックを掛けつつ思う。

 

(しかし、なぜこの島には自分しかいないのだろう...)

 

そう、この島には彼しか人はいない。先程の管制塔の指示も、全てAIによる制御なのだ...

 

ここは日本の領海のどこかに位置する火山島。名前を「伊犂ノ島」という。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはとある戦闘機に魅せられた山猫(リンクス)と、意志を持ったとある重巡洋艦の、世界を旅する不思議なお話。




読んでくれてありがとうございます。書いて欲しい人がいたら書きます。いなくても多分書きます。


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Alt-2 山猫の過去

大海戦。

それは人類が霧の艦隊に屈した出来事である。人類側で生き残った艦艇は日本陸軍ミサイル駆逐艦「あきつ丸」だけであり、その他、戦闘に参加した艦艇は海へと身を沈めた。

その後人類は霧の艦隊による包囲戦略によって、シーレーンを失い島国は孤立。日本もその例外ではなかった。宇宙空間に上げられた通信衛星は破壊され、隣国との接触も難しくなってしまった。

圧倒的な資源不足に悩まされた日本は行政区画を函館、東京、長崎の三つの地域に分割。どこかの行政部が失われたとしても、統治が続く形へと変更された。しかし資源不足は変わらず、人々は日々の暮らしも安定しなくなってしまった。

東京行政府は横須賀海軍基地沿岸に大規模な防御稼働壁と地下ドックを建設、残った海軍兵力を温存することを決定。

その数年後、日本は霧の技術の一つである「侵食弾頭」を元にした新兵器「振動弾頭」の開発に成功したがー

 

 

(やはり、あの世界とは違う...)

 

彼はそこまで調べると、一度手を休める。

 

(AMS(アレゴリー・マニュピレイト・システム)やコジマ粒子が存在しないとは...)

 

そう、彼は元々別世界の人間である。荒廃した地球で企業が資源を求めて争う、そんな世界を彼は傭兵として生きてきた。そんな彼でも自分の生きて来た世界の歴史は知っている。

だがその世界に「霧の艦隊」や「大海戦」はなかった。

 

(もう一度、生きるチャンスが来るとはな...)

 

彼はそう思うと少し眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の過去の話をしよう。彼は人という存在と空を愛していた。

そして、何よりも戦闘機が好きだった。思想設計による可変後退翼やカナード翼、垂直尾翼の角度、そしてラファールの燃料給油管(アホ毛)の美しさに感銘を覚え、いつかは乗って空を駆けてみたいと思っていた。

だが、戦闘機は過去の産物。今の時代、空をそして戦場を駆ける物はアーマードコア・ネクストと呼ばれる人型兵器。でも彼は愛する空を駆けるために『企業連』の兵士となった。

そしてとある縁で毒舌だが優しいオペレーターとも知り合い、その人の教えで彼は兵士を辞め傭兵となった。

しかし、傭兵としてネクストを駆る山猫(リンクス)となってアームズ・フォート『SoM(スピリット・オブ・マザーウィル)』を沈めランクを一桁台に上げた頃、彼は現状にある危機感を抱いていた。

『このままでは人類はコジマ汚染によって絶滅してしまうのではないか』

彼が山猫(リンクス)として得た知識は、その事に警鐘を鳴らしていた。そう、未だ人類はコジマ汚染に対する、有効な対策を持ち得ていなかったのである。

彼は悩んだ。人という存在を愛する一人の「人」として彼は現状に悩み続けた。

その時、彼に声をかけた者達がいた。『ORCA旅団』。彼は現状を打破するためにそこへ入った。

組織の中核として行動し、しばらく経った頃、彼はリーダーにとある質問を受けた。

 

『お前は人類の為なら、命を落とせるか?』

 

彼は言った。

 

「自分は人という存在を愛している。その為なら命を落とすことさえ、厭わない。」

 

そこから彼の物語は大きく動いた。

組織の一機のネクストによるクレイドルの破壊事件。彼はそのネクストとして汚れ役を演じた。

自分の存在にヘイトを向ける事によって、『ORCA』と『企業連』に手を組まさせ現状を打開させる、その作戦を彼はリーダー、オペレーターと実行した。

罪なき人々を殺す、この事は彼の心を大きく傷つけた。だが、辞めるわけにはいかなかった。誰かが成さねば人類の絶滅は避けられない、それだけを考えた。殺した人々には贖罪の様に毎日祈りを捧げた。そしてー

 

企業連のインテイオル・ユニオンによるアルテリア施設襲撃依頼。そう、『騙して悪いが』の依頼。きっと戦場にはリーダーや企業連の高ランク、そしてオペレーターも来ているだろう。来るべき時が来た。自分の本心を知る者はあの2人だけでいい。彼は死へと赴いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー機体をパイルバンカーが貫く。もう身体さえ動かない。ぼんやりする頭でAMSを使い、何とか生きている通信を2人に繋ぐ。

『すまない...』

彼女は顔を伏せ、泣きそうな声でそう呟く。

『これで世界は、人類は救われる...汚れ仕事を押し付けてすまなかった...』

リーダーはしっかりと此方を見て呟く。その顔にはいつもの覚悟に満ちた表情は無かった。

「本心を知っている人は...2人で十分です...

ここから先は...お願いします...」

彼は途切れ途切れにそう呟いた。そしてー

 

 

 

「幸運を...死にゆく者より敬礼を...

そして...人類に...黄金の...時代を...」

 

 

 

機体が爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと目を覚ますと、彼は見た事もない格納庫の中に横たわっていた。顔を上げ、身体の各部に異常がないか確かめる。

 

(おかしい。自分は爆発で死んだはずだ...)

 

ぐるっと格納庫を見回す。そこにはー

 

「これは...⁉︎」

 

見た事もない戦闘機が佇んでいた。見た所F-14の系譜を継いだ機体形状をしている、可変後退翼の戦闘機。しかし各部に小型のスラスターの様な物が付いていたり、カナード翼が増えていたり、エンジンノズルが3次元推力偏向ノズルになっていたりと普通ではない。だがー

 

「美しいな...」

 

彼は一目見てその機体に釘付けになってしまった。かつての戦闘機好きの血が騒ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが数年前の出来事。

山猫(リンクス)山猫(Ocelot)の邂逅だった。




scpの名言を入れたかった。それだけ。


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Alt-3 山猫、出会う

ー名古屋沖

 

「負けた...か...」

 

そこには一隻の重巡洋艦が浮かんでいた。艦橋の上には人...ではなくメンタルモデルが腰掛けていた。

その名を「タカオ」、旧日本海軍高雄型重巡洋艦一番艦「高雄」を模した霧の重巡洋艦である。

タカオは動かなかった。いや、動けなかったと言うのが正しい。彼女は先程の戦闘を思い出していた。

 

 

 

数える事十数時間前、タカオは霧を離反し人類側についた「イ-401」潜水艦の横須賀行きを止めるため、「ロ-501」潜水観測艦とともに和歌山県沖に位置する台風の目の中にいた。

それに対し401は横須賀に行くためタカオ攻略戦を開始する。

持つ情報の量から圧倒的優位に立っていたタカオだったが、401潜の艦長である千早群像により501潜を喪失、自身の武装もロックされ名古屋沖へと移動させられた。

 

 

 

 

必ず勝利出来ると思っていたし、その条件も揃っていたはずだ。だが負けた。ならその敗北の原因は何なのか?

 

天候?...台風を利用し、終始有利に立ち回っていたはずだ。

自身の状態?...霧のメンタルモデル。そんな物は関係ない。

なら...

 

「戦術?」

 

言って気づいた、自分と401潜との明確な違い。それは戦略や戦術。

かつての大海戦は多対多の艦隊戦。持つ武装のレベルが双方で大きく違う場合、下手を踏まない限りどの様な行動を取っても勝てるだろう。実際にそうだった。

だが一対一の戦いならどうだろうか。今回の戦いは武装のレベルに差がない上に、あちらには人類が今日までに積み上げてきた「戦術・戦略」が存在していた。限られた情報から戦術を作り出す。霧にはそれが足りない。

 

「そうか。だからこそ総旗艦はメンタルモデルの生成を...」

 

演算領域の一部を使用するデメリットがあれども、人類に溶け込むことによって、その戦術や戦略を吸収できるという大きなメリットがある。

 

「人類の持つ戦術や戦略...それがあれば私も...」

 

401潜に遅れをとることはなくなるだろう。兵器としての考えはそれで十分なはずだった。だが...

 

「人類か...面白いな...」

 

彼女は人類そのものに興味を持ってしまった。その結末がどういうものになるのか、彼女はまだ知らない...

 

 

 

 

ー数日後

 

「あれは...何だ?島か?」

 

401潜による24時間の武装ロック解除後、彼女はとある海域へと移動し、観測用のリコンを発射させた。のだが...

 

「おかしい。この近くに島はないはず。どういうこと?」

 

その海域には島があった。かつて大海戦を行った時ここ周辺の海域を通ったが、こんな島は無かった。

 

「戦術ネットワーク、それに概念伝達まで使えないなんて...」

 

強力な地磁気やジャミングが発生しているのか、圏外に置かれた携帯の様になってしまった。だがリコンだけは動かせる。とりあえず島を調べるためにリコンを移動させる。

 

「滑走路...その近くには格納庫まで...

あれは畑?小屋も立っている...」

 

無人島にしては随分おかしい。さらに調べるためにリコンを島へと近づけると...

 

「ミサイル!?どこから!?」

 

地上からミサイルが発射され、リコンが撃墜されてしまった。彼女はリコンが最後に送信した映像を確認する。そこには...

 

「...戦闘機?」

 

戦闘機が格納庫から出てくるところが写っていた。

 

「まさか...迎撃を?」

 

 

 

ー伊犂ノ島 side山猫(リンクス)

 

格納庫の近くに作った小屋で調べ物をしているとアラームが鳴り響いた。

 

「なんだ!?」

 

すぐに格納庫まで行きOcelotを起動させ、ログを確認する。そこには...

 

『未確認飛行物体を確認。島の情報流出を防ぐため、Aサイトから対空ミサイルを一発発射する。発射許可を』

 

「どういうことだ?島の情報流出って...」

 

頭を傾げる。が...

 

「まさか...」

 

急いで島のレーダーサイトに接続する。そこには重巡洋艦の姿があった。

 

「霧か!?ミサイル発射許可、それと迎撃に上がるぞ!」

 

そう言うとOcelotは最適な武装の搭載候補を挙げる。

 

「取り敢えずASM-09を4発、弾頭はACFだ!それとAIM-18を6、ARAM-1を3パックを搭載!」

 

すぐにOcelotが搭載を開始する。その間に専用スーツを引っ張り出し、着用。操縦席に滑り込みRed Alertのシステムを立ち上げる。

 

Red Alertシステム、起動

メインバッテリー通電、空気圧縮機から両エンジンに空気投入。

両エンジン、起動。自己診断を最大出力で開始、完了。問題なし。両リアクターを使用電源に設定変更。

武装搭載完了。

TLS...動作よし。

ANJM/APAR-1x オールサイド・フェーズドアレイ・レーダー...動作よし。

GEN-Ⅸ HMD...動作よし。

ECMシステム...動作よし。

HASS...動作よし。

 

F/A-114 Ocelot 発進準備完了

 

「出るぞ!」

 

即座に滑走路に機体を進入させる。そこで上空に爆発が起こった。

 

『未確認飛行物体の撃墜を確認』

「よし!」

 

スロットルをアフターバーナーに入れ、即座に離陸。距離と方角を確認する。

 

「Control tower.

This is Rayven.」

『Rayven.

This is Control tower.

Start the counter attack mission.』

「Roger.」

 

機体は音を残して超音速飛行を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空飛ぶ山猫と重巡洋艦。ここから物語は始まる。



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Alt-4 山猫vs重巡洋艦

sideタカオ

 

「なんなのあれ!?マッハ5!?おかしいでしょ!?」

 

島を飛び立つ機影はレーダーで確認できた。だがおかしいのは、その機体が持つスピード。なんとマッハ5である。現在人類によって作られた航空機の中でマッハ5を超える機体なんて存在しないはず...いや、目の前の機体はその速度を出している。

 

「迎撃開始!対空防御迎撃プログラムLevel5!」

 

船体から迎撃用のミサイルやレーザーが発射される。しかし...

 

「当たらない!?」

 

その機体はレーザーを発射し自身に飛んでくるミサイルを迎撃、そしてレーザーを難なく躱してくる。そしてミサイルを発射。迎撃が間に合わずクラインフィールドで受けるが...

 

「1発で稼働率50%!?」

 

たった1発のミサイルでクラインフィールドを50%まで稼働させられる。

そしてあの機体は海水ギリギリを飛翔しさらにもう一発ミサイルを発射する。

 

「まずい!」

 

即座に迎撃シフトを変更し、優先目標をミサイルに変更する。何とか撃墜してあの機体を探すが...

 

「どこに行った...?」

 

跡形もなくあの機体が消えた。レーダーで探すが見つからない。

 

「真上からミサイル!?」

 

真上からミサイルが飛翔し、クラインフィールドに刺さる。クラインフィールドが飽和され、防御機能が正常に働かなくなる。

 

「また...負ける...!?」

 

彼女は沈没()を意識した。が、そこに通信が入る。

 

『よう、まだ生きてるか?』

 

そんな拍子抜けな言葉に、彼女は怒りすら通り越して呆れを覚えた。

 

 

side山猫

 

「よう、まだ生きてるか?」

 

そう通信機に語りかける。自分でもどんな嫌な奴だと思ったが...

 

『ええ...まだ、生きているわ』

 

返答が来るとは思わなかった。

 

「こちらRayven。貴艦の所属、船名を明らかにされたし」

『...霧の艦隊東部第一巡洋艦隊所属、重巡洋艦タカオ』

 

タカオ...?たしか和歌山沖にいたはずだ。

 

「タカオ...了解した。貴艦の伊犂ノ島への接近目的を明らかにされたし」

『この海域へ来たのは偶然。だけどかつてここに来た時には島は存在しなかった。そのための調査として接近しリコンを発進させたわ』

「そうか...」

『で、これから私をどうするつもり?』

 

えっ...?

 

「どういうことだ?」

『今ならあなたは私を殺せる。私はあなたに従う他に生きる方法がないの』

「...こちらのことを霧に報告しないなら、どうして貰おうが構わない」

『えっ?』

「どうした?」

『どうして?』

 

どうしてと聞かれてもな...

 

「...こちらもそちらの相手をするのは面倒なんだ」

『そう...なら、あなたに着いて行くっていうのは?』

「...なんだって?」

『あなたに着いて行くって言ってるの!』

「なぜそうする必要がある!?」

『私には戦術の考え方やそれに対する知識もないの。それをあなたに教えて欲しいの。だから、あなたに私の艦長になって欲しいのよ。』

「その様に頼む狡い知識はあるのか...」

『何か言った?』

「いや、なにも。」

『なら良いわよね?』

「ったく、しょうがない...霧に繋がる全てのネットワーク関係のものを切れ。そうしたら考えてやるよ。」

『わかったわ』

 

取り敢えず移動させないとまずい。というかうちの島に地下ドックがあるのは知ってるけど、それに進入するための港の位置が分からん。

 

『島北部に規模は小さいが港あり。そこから地下ドックに進入可能』

 

まるでこの状況を読んでいたかの様に、Ocelotから情報がくる。

 

「タカオ、聞こえるか?」

『何?』

「島の北部に港がある。そこの右側のバースに艦を寄せてくれ。そこから地下ドックへ案内する」

『了解したわ』

 

そう言うとタカオは船体を動かし始める。こちらもさっさと戻って案内の準備をしなくては...

 

 

「それとクラインフィールドのエネルギー、放出しとけよ」

『分かってるわよ!』

 

...余計なお世話だったらしい。



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Alt-5 山猫、地下ドックに行く

どうも。本編再開です。

お気に入り増えてる...!
ありがとうございます!


ーside山猫

 

機体を格納庫に戻すと小屋から一冊の分厚い本を取り出し、港へと走る。港へ着くとタカオが入港するところだった。丁度いいタイミングだったようだ。

 

「ここでいいの?」

「ああ、そこに泊めてくれ」

 

そう言ってタカオの甲板へ上がる。

 

「ちょっと、艦長。今、跳んで来なかった?」

「気にするな」

 

その間にバースのサイドから固定アームが伸びてきた。固定が終了すると出口にシャッターがかかり海水が排出された。

 

「なるほど。乾ドックってわけね」

「とはいっても今まで一度も使わなかったから、こんな物がこの島にあるなんて初めて知ったけどな」

「そうなの?」

「第一この島に船なんてないしな」

 

そう言うとなぜかタカオは少し嬉しそうに笑う。

 

そう、私が艦長の最初の艦なのね...

「なんか言ったか?」

「いいえ、なにも」

 

しばらく経つと海水が完全に排出され、地下へと動き始めた。

 

「どうなってんの、これ?」

「さっき言っただろう?地下ドックがあるって」

「いや、だから動力ってなんなのかなって」

「わからん」

「えぇ...」

「そういうことはオセロットが知ってると思う」

 

そう、気づいたらここにいた俺が知っているわけないのだ。

 

「オセロットって?」

「俺の相棒。あの戦闘機に載ってる自我を持ったAI」

「自我を持ったAI!?そんな物この世界には存在しないわよ!?」

「でも実際に存在するからなぁ」

「...とにかく艦長達が規格外ってことは、よく分かったわ」

「まあ、俺も半分サイボーグみたいなもんだし」

「...はい?」

「だから、俺も半分サイボーグみたいなもんだって」

「えぇ!?艦長って本当にこの世界で生まれたの!?」

「わからん、気づいたらここにいたからな」

 

オセロットならよく知っているだろうけど。

 

「てか艦長じゃなくて名前で呼べよ」

「艦長の名前はまだ聞いてないわよ。TACネームはRayvenって聞いたけど」

「リンクスだ」

「リンクス...山猫?」

「そういうこった」

 

そうすると地下ドックへ到着する。

 

「...ねぇ」

「...なんだ」

「港はあんなに小さいのに、なんで地下ドックはこんなに広いの?」

「...俺が知りたい。取り敢えず1番ドックに入れてくれ」

「わかったわ」

 

船体が1番ドックに固定されると、タカオと船から降りた。

 

「それで、リンクスは私にどんなことを教えてくれるのかしら?」

「戦略、戦術とか言う前に知っとかなきゃならんこともある。これ読んどけ」

 

そう言うと小屋から持ってきた分厚い本をタカオに投げる。

 

「ちょっ、なにこれ?」

「クラウゼウィッツの『戦争論』」

「どういうつもりかしら?」

「戦略、戦術とか言う前に、戦争の本質ってやつを知っといたほうがいい。読み終わったら感想をくれ」

「なるほどね...わかったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside霧

 

「なに?タカオの反応が消えただと?」

「はい、コンゴウ。タカオは今現在、戦術ネットワークに繋がっておりません」

「概念伝達もか?」

「そのようです」

 

白い空間に白いテーブルと白い椅子。概念伝達の際に霧のメンタルモデル達が出会う場所。そこには2人のメンタルモデルがいた。

紫色のドレスを着た大戦艦「コンゴウ」とチャイナドレスに似た服を着る潜水艦「イ-402」。

イ-402はコンゴウにタカオの反応が消失したことを伝えていた。

 

「タカオに何があったというのだ...」

「そういえばタカオはイ-401に敗北後、自分の艦長を探すと言っていましたね」

「だがこれと何の関係があると言うのだ?」

「何の関係もないとは言い切れないのでは?」

「霧を離反したと?」

「私はそう考えます」

「...なるほどな」

「...どうかしましたか?」

「いや、なんでもない。引き続きタカオの捜索を頼む」

「了解しました。では失礼します」

 

そう言うとイ-402はいなくなっていた。

 

「まさかタカオほどの者が霧を離反するとはな...いや、実際に離反したと考えるのはまだ早いか」

 

メンタルモデルの利点。それについては自分も理解している。だがメンタルモデルによるデメリット、感情の発生については早急に対策を立てる必要がありそうだ。

 

そう考えるとコンゴウは現実世界へと意識を帰還させた。



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Alt-6 山猫、考える

連日投稿じゃい!


ーside山猫

 

「この島、結構広いのね」

「たしか大体10平方キロメートルくらいある」

 

タカオが島に着いた翌日。

地下ドックから地上へ出た後、タカオに島の案内をする事にした。

 

「あそこが自給自足の畑、あっちが格納庫と滑走路、それでここが発電所」

「発電所もあるって...」

「この島は火山島だからな。地熱発電やマグマを利用した発電もできる」

 

火山島だからできる強みだ。

 

「少しいい?」

「なんだ?」

「この島の海域、たしか沿岸から20kmくらいだったかしら。海域に入った途端、いきなり戦術ネットワークと概念伝達が使えなくなったのよ」

「使えなくなった?」

「ええ」

「...オセロットなら知ってるかも」

 

取り敢えずオセロットに聞くために格納庫へと向かった。

 

「オセロット、起きてるか?」

『どうした、相棒?』

「この島ってジャミングとかのECM関連の施設ってあったか?」

『そんな物はない。が、この島が特殊なんだ』

「どう言うことかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この島は【異空間】に位置している』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...えっ?」

「なるほどな」

『どうやら相棒は理解したみたいだな』

「つまり【scp オブジェクト】に指定されるような島だと言いたいわけか」

『そう言うことだ』

「...話が飛躍しすぎて意味がわからないけど、【scp オブジェクト】ってなんなの?」

『【scp オブジェクト】は確保、収容、保護すべきとされる異常性を持った物体、生物、概念の事だ。それ以上の事は分からない』

「それで、なんでこの島はそれに指定される様なものだと?」

「異空間の発生が普通の現象だと思うか?」

「あっ」

『異空間にこの島が位置するから、タカオの言う戦術ネットワークや概念伝達が使用できないと推測するべきだ』

「...なるほどね」

 

しかし伊犂ノ島が異空間にあるとか初めて知ったんだが...

 

「なあ、オセロット」

『どうした?』

「ここに入る条件って何なんだ?」

『それは分からない。だが、とある海域に一定の方向から進入する事によって転移するのではないかと推測する』

「じゃあ、あの時私は」

『それによって転移したと考えられる。それによって推測は条件足りうると判断した』

 

タカオによって条件が証明されるとはな...

 

「原因も分かった事だし、これからの事も考えないとな」

『これからの事か?』

「ああ。うちにタカオが来た以上、世界情勢と無関係ではいられないだろうな」

『確かにな。どうするつもりだ、相棒』

「それを今から話し合うんじゃないか」

『それもそうか』

 

そう、問題はここからだ。タカオが来た以上、世界情勢は自分らの無関係を許す事はないだろう。何かされる前に手を考えなくては...

 

「リンクス、ちょっといい?」

「どうしたよ?」

「『戦争論』、読み終わったわ」

「早いな。流石は霧といったところか」

「それで感想なんだけど...」

「...言いたい事は分かる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「内容が所々で矛盾してない?」

「それはしょうがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでよ!?」

「その本、クラウゼウィッツが亡くなった後に出版されたからな。纏めたのはクラウゼウィッツの奥さんと部下の方々だし」

「彼は纏めようと思わなかったの?」

「彼は内容が矛盾しているのは知っていた。その上で編集して出版しようと思っていたんだが、その前に亡くなられたのさ」

「じゃあ、これは...」

「その遺志を様々な人が受け継いで作り上げたってわけ。内容が矛盾しているのはしょうがない。描いた本人ほど内容を知っている人はいないからね」

「なるほどね...でも内容については理解できるわ」

「ならいいんだ」

 

これで次の段階へと移れるか...?

 

「で、何を話していたのよ?」

「うちがこの世界で、どう行動するべきかってトコ」

「そうね...まだ、世界に認知されるのは早いんじゃない?」

「だよなぁ...」

 

 

 

『なら、バレない様に行動すればいいじゃないか』

「「それだ!」」

 

 

 

オセロットの意見に声が揃った。

 

「私も人がどの様に生活しているのか、知りたいんだけど」

「知らんかったんかい!」

『タカオ...それは...』

「まぁ、取り敢えずタカオが霧やイ-401から認知されない様にしないとな...」

「どうにかできるの?」

『1日だけ待ってくれ』

「ん?」

『私が考えておこう』

「なら頼んだ、相棒」

『任された、相棒』

「そういやタカオ」

「なに?」

「俺を艦長にするって言ってたけど、オセロットをどーすんの?」

 

 

 

「あ」

 

 

 

「考えてなかったんかい!?」

『それも私が考えておこう...』




次から横須賀編に入るかも


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Alt-7 重巡洋艦、改装を準備する

いつの間にかUA1000超えてた。
見てくれる人、ありがとうございます!

これからも頑張ります!

2/12 タイトル名を変えました。こっちの方がしっくりくるかも。


ーside山猫

翌日。

結局オセロットが何を考えたのか...

 

「それで、どーなった?」

『その前にタカオに一つ質問しなければならない』

「なにかしら?」

『君はこの先、霧に戻るつもりはあるのかい?』

 

...確かにそうだ。このまま自分達の技術を渡して、霧に帰られても面倒だな。

 

「...私は霧に戻るつもりはないわ。でも霧と敵対しようとも思ってない。難しいところなのよ」

『取り敢えず、我々を裏切る事はないと?』

「ええ、そうね。私の艦長はリンクスだけだもの」

「霧を離脱する覚悟は出来た、という事でいいのか?」

「第一、今の状態とそう変わらないわよ」

 

そう言うとタカオは微笑んだ。

 

『なら、話を進めるとしようか』

「それでオセロット、考えっていうのは?」

『そう急かすな。それで私の出した結論だが、【タカオの改装】という事に落ち着いた』

「なるほど。でも島を出ている間の管理はどうする?」

『管制塔AIシステムの流用だ。島全域並びに一定の海空域に警戒網を敷く』

「俺に作れってか」

 

管制塔AIシステムは確かに自分が作ったが、いまさら改良しろとか鬼畜の所業か何かか?

 

「んで、タカオの改装の要点は?」

「私にとっても重要ね...」

『取り敢えず

 

・兵装関連、特に誘導弾弾頭。

・F/A-114と同様の装甲の搭載による防護面の強化。

・クラインフィールドによる吸収したエネルギーの再利用方法の確立。

・航空機格納庫並びに機体展開用甲板による、船体の一部再設計。

・機関の変更による足回りの強化。

・HASS並びにECMの搭載による電子攻撃面の強化。

・オールサイド・フェーズドアレイ・レーダーの搭載。

 

ってところだ』

 

取り敢えず言いたい事。

 

「大盤振る舞いだなおい。航空巡洋艦化する気か」

 

「これ大丈夫なの...?よく分からない物もあるし、明らかに私の演算量超えてると思うけど...」

『分からない物については説明しておこう。演算量については量子格納ドライブで、演算領域を追加するつもりだ』

「つまり、私のコアを弄るってこと?」

『手術みたいなものだ。コアにドライブを載せるだけだから、数秒あれば終わる』

「わかったわ。それでわからないところは?」

『今データを送った』

「...今確認、内容は把握したわ。じゃあ頼んでいい?」

『任された』

「そういやオセロット。時間はどの位だ?あとマテリアル足りるか?」

『今から始めれば一日ってところだ。マテリアルの貯蔵は十分にある』

 

 

「...ナノマテリアルもあるの?」

「不活性化した銀砂から作り出したやつがある」

『他にもナノマテリアルを改良させた、生体ナノマテリアルってのもある』

「何なのそれ?」

『DNA配列を記憶でき、人間の身体にもなるナノマテリアルだ』

「またとんでもない物が...」

「俺も体の一部をそれに変えてある」

「えぇ...って、それ普通のナノマテリアルと同様に使えるの!?」

『不活性化の条件は異なるが、ほぼ同じだ』

「...私にもくれない?」

「...理由は?」

 

「実はね、私のコアの中にとあるDNAが保存されているのよ」

『まさか...』

 

 

 

 

 

 

 

「そのまさかよ。私のメンタルモデルはそのDNAを興したものなの」

 

 

 

 

 

 

「つまり、そのDNAを生体ナノマテリアルに記憶させたいと?」

「そう言う事。生体ナノマテリアルは普通の人間の身体にもなれるんでしょ?」

「そうだが、艦とは独立した身体を持ちたい訳か」

「そうよ」

「はぁ...オセロット」

『ああ、相棒』

「タカオの生体ナノマテリアルを用意してくれ」

『了解した』

「それと、タカオ」

「なに?」

「あの改装計画で本当にokか?」

「ええ、お願いするわ」

「わかった。オセロット、始めてくれ」

『任された。では1日後に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういや明日のこの時間には出港するからな」

「『どう言う事よ(だ)』」

「なんか面白い予感がする。それも横須賀だ」

「横須賀って事は401関係?」

「多分な。それじゃ」

「あ、ちょっと!?」

 

さっさと小屋に戻り、管制塔AIシステムの改良をしよう。理由を求められても困る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時、横須賀には二隻の戦艦がゆっくりと歩みを進めていた。




タカオの思惑に気づけた人はすごい。


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Alt-8 重巡洋艦、改装終了

これにて1章、出逢い編おしまい。タカオが島に来てからが長かった...


ーside山猫

「アングルドデッキタイプか...旧ソ連のキエフ級航空巡洋艦みたいだな」

『そうだ。F/A-114はVTOLも出来るが、この方がより航空機を搭載できるし、発艦も容易になる』

「まさかUAVでも載せるつもりか?」

『その通りだ』

「タカオに了承は?」

『...タカオ、いいか?』

「えっ?ええ...」

「取ってなかったんかい」

 

伊犂ノ島地下一番ドックではタカオの船体と艤装の改装が行われている。

そしてドックに入っているタカオは全長が約1.5倍ほど伸ばされ、後部甲板の艤装は全て取り外されてアングルドデッキが作られていた。

 

「これ、本当に重巡洋艦?」

『まあ、見てくれは航空戦艦レベルに見えるだろう。だが搭載する主砲は今まで通り8インチ、つまり20.3cm二連装砲だから重巡洋艦だ』

「たしかロンドン海軍軍縮条約だったかで重巡洋艦の区分が決められたんだっけな」

「えっと...補助艦のうち6.1インチ以上8インチ以下の主砲を搭載する場合、重巡洋艦に区分されるんだったっけ?」

「そうだ。どれだけ船体が大きくても、搭載する主砲が6インチ以下とかだったら軽巡洋艦とか駆逐艦に区分される」

 

ロンドン海軍軍縮条約。

知っての通り旧日本海軍が個艦優秀主義に向かっていった象徴的な出来事である。

 

「にしてもこれ、あと半日で終わるのか?」

『予定は順調だ。あと6時間程で全て完了、残り時間は航行試験に入る』

「UAVも含めて?」

『...そのつもりだ』

「お前忘れてたな。俺が設計と開発やっとく」

『すまない、相棒』

「気にすんな。たまには頼れ、相棒」

 

さっさとUAVの設計開発するか...

 

 

 

 

 

 

 

6時間後。

 

やっとUAV合計11機の開発が終わった。だるい...

するとー

 

『おわったぁぁぁぁぁ!』

「うるせぇ!」

 

オセロットから声があがる。どうやら終わったらしい。急いで船体まで行くと、既にタカオは到着していた。

 

「今の声聞くとほんと人間っぽいわね、オセロットって」

『私はAIだが?』

「そうは見えないけどね」

「それでオセロット。どうなった?」

『船体並びに機関、各兵器軍、レーダーシステムの改装は終了。あとは航行試験だけだ』

「ok。こっちもUAVの開発は終わった。んでUAVはどっちが使うんだ?」

「そうね...オセロット、あなたに頼んでもいい?」

『了解だ。私もそのつもりだったからな』

「じゃ、始めますか」

 

 

ー伊犂ノ島近海

 

島の近海にアングルドデッキを備えた艦が航行する。微速から全速、全速から微速と増減速を確かめ、蛇行など様々な機動を行っていた。

「どうだ?タカオ」

「演算がすごく軽い。しかも簡単に増減速できるし機動力もいいわね。あと一部兵器の試射とか改良したクラインフィールドの性能実験とかしてもいい?」

「いいぞ。それとオセロット!そっちはどうだ?」

『UAVについては十分な性能だ。感謝する、相棒。だが...』

「どうしたよ?」

『名前とかつけないのか?』

「あー、型番なら考えてある」

『なんと?』

「無人多目的戦闘機1型、Unmanned Multirole Fighter Ⅰの頭文字をとって『UM/F-1』だ」

『なるほど、いい名前だな』

「お褒めに預かり恐縮至極だ」

 

そう言われると何かくすぐったい様な気分になる。

しばらくオセロットはUMF11機を管制し特殊機動をしていた。ああ、『変態が編隊を組み変態機動でやって来る』とは、こういう事を指すのか。納得した。

 

「リンクス、こっちの試験はすべて終わったわ。UMFを降ろして大丈夫よ」

「了解。聞こえたな、オセロット!」

『ok。1番機から順番に降ろす』

 

そして数分。全機が着艦を終了した。

 

「さて、予定通りだな」

『行くのか?横須賀に』

「まあ、おおよそ401と霧の誰かがドンパチする直前だろうさ。それを元に戦術とか教えるつもりだが、いいか?」

「ええ、いいわ。どうせなら殴り込んでみる?」

「随分と過激なこった。それは状況を見て判断しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では行くか?』

 

 

「ああ、行こう。

HASS並びにECMを起動。航空重巡洋艦タカオ、発進する!目標は横須賀だ!」

 

 

「了解、両舷前進微速。目標、横須賀!タカオ、発進します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2+1人を乗せた艦は伊犁ノ島を出港した。

目標地点は横須賀。401vsハルナ、キリシマの戦いが始まる直前を目指して。




次話から2章、横須賀動乱編にはいります。お楽しみに。
(2話位前に次から横須賀とか言ってたけど、すみません!)


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第2章 横須賀動乱
Alt-9 山猫、急襲する


横須賀動乱編、突入。どんくらい長くなるかは不明。


ーside霧の大戦艦

 

「終わりだ!401ィ!」

 

横須賀の海上では巨大な艦が、今にも401に超重力砲を放とうとしていた。

その艦はハルナとキリシマ。二隻は合体して一隻となり、超重力砲は出力を増していた。だがー

 

「なんだ、この反応?」

 

その401を固定するロックビームに正面から入って来る4つの反応。ハルナは咄嗟に危険を感じ取った。

 

「キリシマ!超重力砲発射シークエンスを中断しろ!」

「どうして!?」

「正面から何か来る!」

 

キリシマは急いで発射シークエンスを中断する。その瞬間ー

 

「ミサイル!?」

 

4つの反応から1つずつ、計4発のミサイルが放たれる。ただのミサイルなら何も怖くはないが、そのミサイルは...

 

「クラインフィールドが!?」

 

クラインフィールドを破るACF弾頭搭載型の対艦ミサイル。大戦艦級でも3発、合体しているなら6発でクラインフィールドを飽和できる。今の状態なら401によって損耗しているため、4発でクラインフィールドが飽和してしまった。

 

「クラインフィールドが飽和しきった!?ハルナ、何が起きた!」

「わからない...でも私達を沈められる何がいることは、確かだ...」

 

今まで霧を沈められたのは、目の前にいる401だけだ。だが、これは何なんだー

 

 

 

 

ーside山猫

 

これは丁度数十分前のこと。

 

「確かに401の動きは、大戦艦二隻を相手取るなら十分だ。だがやはり侵食弾頭の損耗は抑えているな。上手いやり方だ」

「あれって持久戦の動きよね」

「おおよそ横須賀から引き離そうとしているんだろう。もう少し上手くやれば撃沈する事も出来るだろうな。そこはしょうがないか」

「なら?」

「殴り込もうか。タカオ、準備を頼む」

「了解。上げる機数は?」

「俺とUMFを3機の計4機だ」

『聞いていた。UMF-1の1から3号機の準備は完了している』

「ok。エレベーター起動。F/A-114とUMF-1を3機デッキへ移動開始!」

「行って来る。航空管制は頼むぞ」

「わかったわ。いってらっしゃい」

 

ロッカーから専用スーツを取り出し、着用。機体まで走り、HMDヘルメットを被り操縦席に滑り込んでキャノピーを閉じる。

 

「オセロット!」

『機体準備は完了だ。いつでも行ける』

「ok。タカオ、管制開始。」

【了解。こちら航空管制。第一カタパルトにF/A-114、第二カタパルトにUMF-1の1号機を固定。機体状況知らせ!】

「こちらRayven。機体状況オールグリーン」

『こちらオセロット。各UMF-1と接続を確認。全機オールグリーン』

【確認。風速は20ノット、風向は艦進行方向0度。リニアカタパルト、電圧上昇。500、600、700、発艦許容範囲に到達。発進どうぞ!】

 

 

「Rayven、クリアードフォーテイクオフ!」

『オセロット、1号機テイクオフ』

 

 

身体にカタパルトの加速Gがかかる。一気に空へと出ると高度を上げる。

 

【Rayvenと1号機は高度5000ftまで上昇、艦後方で旋回を開始。後続が上がるまで待機】

「了解、旋回開始」

【続けて2号機、3号機をカタパルトに固定。電圧上昇、発艦許容範囲に到達。発進どうぞ!】

『了解。オセロット、UMF-1 2号機、3号機、テイクオフ』

【全機上空待機解除。編隊を組み方位45へ急行。現場の状況はこちらから逐一報告します】

「了解。各機、エレメントを組め。俺と1号機、2号機と3号機だ」

『了解。エレメント完了。飛行開始』

 

4機の戦闘機が編隊を組み、空を駆ける。

 

 

 

 

 

そして現在。

 

「こちらRayven。霧の大戦艦級にACF弾頭の09式ASMを4発ほど食らわせた。映像を送る」

【確認したわ。これはハルナとキリシマね。合体してる】

『随分と奴らはフットワークが軽いな』

【ええ。コンゴウ麾下の艦隊で、2人はかなりの自由行動権があるのよ】

「なるほど...だから401を追って横須賀まで来たって事か...」

【そういうことになるわね】

『にしても合体した大戦艦級のクラインフィールドが普通4発で飽和するか?』

「401の攻撃で損耗していたからな。ん...401がフルファイアに入った」

【終わりそう?】

「少し足りないな。タカオ、そっちから2発程撃てるか?」

【最終誘導してくれるなら出来るわ】

「了解だ。オセロットは最終誘導準備に入ってくれ。その間はUMFはこっちが受け持つ」

『ok。UMF操縦権をRayvenに譲渡』

「譲渡確認。レーダーシステムをオセロットに連動、確認」

 

しばらくするとタカオから2発ほど09式対艦ミサイルが発射され、こちらへ飛翔してきた。

 

【後はお願いね】

「ok。オセロット」

『レーダーシステムとミサイルの連動を確認。最終誘導開始。目標、敵艦機関部』

 

オセロットの正確な誘導で直撃コースに入る。そしてー

 

『直撃を確認。敵艦の機関部が暴走を開始した。もう持たないだろう』

「ok、UMF操縦権をオセロットに譲渡」

『譲渡を確認』

「戦闘終了。全機HASS並びにEMS起動。帰還する」

 

タカオへと帰還しようと各機を纏めて編隊を組むと、その瞬間後方から閃光が走った。

 

「さて、もう少し様子を見ようか」

 

まだまだ面白い事が横須賀では起きるだろう。どう関わってやるか楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside401

 

「なんだったんだ、あれは」

 

対ハルナ、キリシマの戦闘を終えた401艦長、千早群像はそう言うと溜息をついた。

 

「ええ、明らかに普通じゃありませんね」

「たった4発のミサイルで大戦艦級のクラインフィールドを飽和させたんだぞ!?只者じゃねーじゃん!」

 

401副長の織部僧は冷静に判断するが、火器管制担当の橿原杏平は見たものが信じられないかの様に騒ぎ立てていた。

 

『てか発射した機体も大概だよ!明らかに人が耐えれる限界を超えた機動してたし!』

「離脱する時にも、即座に反応が消えましたね」

 

機関担当の四月一日いおりとソナー・センサー担当の八月一日静は、発射した機体について議論していた。

 

「イオナ」

「なに?群像」

「あの機体、見た事あるか?」

「ない。むしろ私の方が群像たちに聞きたい」

「俺たちはみんなこんな反応だ。誰も見たことはない」

 

全員が全員、あの機体について首を傾げていた。

 

「杏平、三笠に置いておいたキャニスターを戻せるか?」

「ああ、まだ三笠が崩落してないから戻せるぜ」

「なら戻しておいてくれ。それと静、映像はあるか?」

「はい、正面スクリーンに出します」

 

正面スクリーンに先程の戦闘の様子が映し出される。

 

「先頭の機体、F-14に似ていますね」

「ああ、だがF-14にカナード翼や傾いた水平尾翼はない。他の機体についてはキャノピーすらない」

「ってことは先頭の機体以外は無人機か?」

「その可能性はありそうですね」

「ヒュウガに映像データを送って、両機のおおまかなスペックを割り出すように伝えてくれ」

「わかりました」

 

謎の機体についてメンバーが対応を進める中、

 

「...タカオ、貴方なの?」

 

とイオナは小声で呟いた。




いきなり横須賀動乱編のクライマックスぽかったけど、まだまだ続きます。


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Alt-10 山猫、予定を立てる

もうすぐテストなんで来週は2.3日に一話、再来週は投稿できないかもしれないです。


ーside山猫

 

「こちらRayven。着艦許可を」

【こちら航空管制。現在、3号機が着艦ルートに入った。3号機の着艦移動後、再度指示を出す】

 

タカオの指示によりUMF-1の3号機が着艦に入る。現時点で1号機と2号機は着艦済み、空に残っているのはリンクスのF/A-114だけだった。

 

【こちら航空管制。3号機の着艦完了。Rayven、着艦を許可する。風速は15ノット、風向は艦進行方向5度】

「了解。着艦を開始する」

 

ランディング装置とフラップ、着艦用フックを展開。スロットルを絞る。高度よし。残り150...100...50...0。

着艦用フックが制動ワイヤーを捕らえ、急制動がかかる。スロットルを最大まで入れてフックがワイヤーを捕らえているか確認する。

 

「着艦完了」

 

スロットルを戻して、エンジンをアイドリングさせる。

 

【Rayven。そのままエレベーターまで進み、固定してください】

「了解」

 

エレベーターまで進み機体を固定。コックピットから降りるとタカオがやって来た。

 

「艦長、お疲れさま。どうだった?」

「最初にしては良かったな。まだオセロットが11機全て操縦してないもんで、微妙なところだが」

 

エレベーターから離れて甲板から艦橋へ上がる。その途中でロッカーに専用スーツをしまい、航空服に着替えた。

 

「タカオ、状況は?」

「大戦艦ハルナとキリシマの撃沈を確認。こちらの損害はなし。消耗は09式が空艦合わせて6発ってところね」

「ハルナとキリシマはどうなったか分かるか?」

「現在ユニオンコアの反応はなし。多分休止状態に入ってると思う。最後の反応は横須賀の海岸に位置している大邸宅の敷地内よ」

「誰のところだよ...」

『こちらで確認した。あそこは刑部という家の土地だ』

「刑部か...タカオ、知っているか?」

「知ってるも何も、刑部家の主人は振動弾頭の開発主任よ。既に故人だけどね。現在は子供が1人、あの屋敷に住んでいるようね」

「振動弾頭か...人類の希望ねぇ...」

 

そういうと溜息をつく。どうやら厄介な事になりそうだ。楽しそうだけど。

 

「取り敢えず横須賀に行くか。HASSを起動して横須賀近くの立ち入り禁止エリアの廃港に横付ける」

『...ちょっと待ってくれ』

「どうしたの、オセロット?」

『タカオ、ハイパーリコンを一機、リンク状態で上げてくれるか?』

「ええ、いいけど」

「相棒、何か面白い物でも見つけたか?」

『ああ、そうだ。でもまだ分からない事が多い。調べてみよう。暫く集中するから他ごとは頼む』

「了解だ。タカオ、ハルナとキリシマが子供と接触するかもしれない。そうなるとどうなると思う?」

「...おおよそ軍部が出しゃばって、暗殺しに来るんじゃない?」

「同感だ。だもんでアンチマテリアルライフルを一丁、作成してほしい」

「あー、また殴り込むの?」

「接触しただけで暗殺しに来る方が可笑しいと思うもんでね。ちょいと奴らにお灸を据えてやるだけだ」

「狙撃するなら観測員もいるけど?」

「なら来るか?」

「そうさせてもらうわ」

 

という事で次の行動が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside蒔絵

 

私は刑部蒔絵。この広い家にメイドさんと住んでいるの。お母さんは知らないし、お父さんは少し前に亡くなっちゃった。そして私には秘密のお仕事があるから、あんまり家に居れない。

でも今日の朝の散歩で、敷地の倉庫に人型の穴が空いていたのを見つけたの。気になって倉庫を開けたらびっくりしちゃった。だって金髪ツインテールのおねえさんが下着姿で倒れていたんだもの。そしてそのおねえさんの近くには大きな黒地のコートととっても軽い金属の塊が落ちていたの。でも私1人では運べないから、メイドさんに手伝ってもらってなんとか家まで運んで、おねえさんを私のベッドに寝かせてあげた。

私にはお仕事があるから起きるのを待ってあげられないけど、帰ってきたら起きているかな?起きていたら、おねえさんといーっぱいお話しするんだ!




お気に入りが30を超えました。ありがとうございます!


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Alt-11 大戦艦、出会う

今回のメインはハルナと蒔絵。結局最後は山猫達だけど。


ーsideハルナ

 

「...ここは?」

 

私が目を覚ますと、大きなベットに寝かされていた。...状況がわからない。

 

「あ、起きた?」

 

目の前に女の子が入ってくる。

 

「あんた、うちの敷地の倉庫に倒れていたんだよ?覚えてる?」

「いや...」

「まあ、いいや。私は刑部蒔絵。あんたは?」

「...ハルナ」

「なにハルナさん?」

「...ハルナ」

「そっか。このコートとこれ、あんたの?」

「ああ、返してくれないか?」

「いいけど。にしてもこれ、とっても軽いね。素材は金属みたいなのに」

 

蒔絵からキリシマのユニオンコアを受け取ると通信を開始する。

 

(キリシマ、聞こえるか?)

(ああ、なんとかな。ユニオンコアに損傷がなかったから良かったが。ここはどこだ?)

(刑部蒔絵の家だ。彼女がここに運んでくれたらしい)

「ハルハル?」

 

いきなり蒔絵に声をかけられた。

 

「いきなり黙っちゃったもんから、どうしたかと思ったよ」

「少し考え事をしていた。にしてもハルハルとは...?」

「あんたのあだ名。ハルナだからハルハルって。それよりもハルハル、その格好で外に出るのはまずいよ。コートの下は下着なんて」

「まずいのか?」

「うん、すごく」

 

鏡に向かい、自分の状態を確認する。

 

(人類の服飾史のデータを送った。そこから考えるにすごくまずい格好をしているぞ)

(確認した。確かにまずいな)

「だから私の服をハルハルにあげるよ。ハルハルに合うサイズの物も沢山あるんだ!」

 

そう言って蒔絵はタンスの中を物色し始める。

 

「蒔絵」

「なーに、ハルハル?」

「なぜ私を助けた。なぜここまで世話を焼いてくれる?」

「んー、なんとなくかな。これも何かの縁だし」

「縁、人と人との繋がり。タグ添付、分類、記録」

「ハルハルって国語辞典みたいな喋り方をするね」

「気にするな」

 

 

 

 

 

 

そして数十分後...

 

「堪忍してつかぁさい...」

「だめだよハルハル!もっとオシャレしなくちゃ!」

 

現在、私は蒔絵に着せ替え人形にされていた。せめてコートを羽織らせてくれ...

 

「もう、堪忍してつかぁさい...」

「だーめ!今度は服に合うように髪型も変えなくちゃ!」

 

そう言われて蒔絵に引きずられ、ドレッサーの前に座らされる。

 

「これか?これかな?これもいいな」

 

蒔絵がどんどん髪型を変えていく。一通り様々な髪型を試した後、メイドが部屋に入ってくる。

 

「お嬢様、検査の時間でございます」

「はーい、今行くー!ハルハル、逃げちゃだめだよ!」

 

そう言うと蒔絵は部屋から出て行った。

 

(ハルハルー、ハルハルーだって)

(...何が言いたい)

(いや、随分とあの子に気に入られたと思って。それよりもハルナ、ナノマテリアルを少しばかり分けてくれないか?この状態のままだと行動しずらい)

(わかった)

 

 

ナノマテリアルを分けると、キリシマは近くのぬいぐるみを仮の体としてメンタルモデルを作り上げた。

 

「これで取り敢えずなんとかなるか。ハルナ、屋敷を探索しよう。刑部と言えば振動弾頭の開発主任だ。何かしらのデータがあるかもしれない」

「そうだな」

 

私たちは蒔絵の部屋を出た。随分と広い屋敷だが生体反応がほとんど感じられない。

 

「妙だな、ここまで生体反応がないとは」

「だが地下にわずかな反応がある。行ってみるか」

 

取り敢えず地下へ向かおうとしたその時、

 

「お客様」

(死んだふり!)

 

どうやらメイドが戻ってきたようだ。キリシマは外見がぬいぐるみなのでそのまま倒れる。

 

「お食事の準備が出来ました。お嬢様がお待ちしておりますので、食堂へ案内させていただきます」

「...わかった」

 

メイドについて行こうとするとキリシマから声がかかる。

 

(...ハルナ、置いていかないでくれ)

(...)

 

無言でキリシマを拾い上げてメイドについて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside山猫

 

タカオと横須賀に上陸した。そこで刑部邸を捕捉できる高台を探す。がー

 

「...ないな」

「あっても殆どが政府や軍部関係の建物ばかりね。ヘリコプター使った方がいいんじゃないの?」

「最終手段だが、それしかないか...」

「今から作る?」

「なるべく安定性とステルス性を高くしてくれ。その他はある程度でまとめてくれればいい」

「わかった」

 

艦に戻ると、オセロットから通信が入る。

 

『相棒、調べ終わったぞ』

「結果は?」

『屋敷の地下に生体反応があった』

「で?」

『誰だと思う?』

「刑部藤十郎か?」

「でも彼は故人よ?」

『相棒の言った通り、刑部藤十郎その人だよ』

「生きていたってこと?」

「自分の死を偽装したんだろうな」

「でも何のために...?」

『それともう一つ報告がある』

「聞こうか」

『現在の刑部邸に住んでいるあの子供、人間ではなかった』

「なんですって!?」

「あーなるほど。デザインチャイルドか」

「それって?」

「先天的に高い知能を持った人類を作り出す『デザインチャイルド計画』で作り出された人間の事だ」

「そんな物があったなんてね...でも何のために?」

「ヒントは振動弾頭かな?」

『その通りだ、相棒』

「...振動弾頭の開発のため、かしら?」

『多分そうだろう。刑部氏の頭脳だけでは作る事が出来なかったんだろうな』

「でも、なんでその子が刑部邸に?」

『私の予想では、生き残ったその子を刑部氏が引き取った、と考えている』

「刑部藤十郎には連絡が付くか?」

『セキュリティが厳しくはあるが、問題はない。回線に割り込むか?』

「もう少し後にしよう。ハルナ達が刑部氏と接触する直前にする」

 

その方がインパクトが出るだろう。俺たちのお披露目と行くか。




次回は未定。来週半ばまでに出せればいいなと考えています。


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Alt-12 大戦艦、食事する

きちんと投稿。多分もう一話投稿するかも。


ーside大戦艦

 

「ハルハル、それ気に入ったの?」

「いや、そういう訳では...」

 

食堂に入ると蒔絵が待っていた。確かに私はぬいぐるみを抱えてはいたが、ぬいぐるみがキリシマだから持ってきた...いや、言うわけにもいくまい。

 

「ハルハル席について。ご飯食べよ?」

「ああ」

 

席に着くと食事が配膳された。蒔絵は私が持ってきたぬいぐるみ(キリシマ)も席に座らせると、自分の席に着いて皿に何か出し始めた。

 

「蒔絵、それは?」

「おくすり。飲まないと大変な事になっちゃうから、先に出しておくの」

 

解析したところ消化を助ける成分が多い。先天的に消化不良なのか?いや、私が気にしてもしょうがない。食事を頂こう。

 

「これは...」

 

人が言うところの豪勢な食事とはこの事だろう。今となってはこの様な食事を摂れる人は少ないだろうが。

 

「ハルハルどうしたの?食べないの?もしかして人参嫌い?」

「いや、そう事じゃ...」

「だめだよー!ちゃんと食べないと大きくなりませんよー!ね、ヨタロウ!」

 

そう言うと蒔絵はヨタロウ(キリシマ)に人参を差し出した。

 

(そっか。こいつヨタロウって言うのか...)

 

おいキリシマ何を...

 

 

 

 

 

ぱくっ。

 

 

 

 

 

やってしまった...

 

「えっ?」

(あ)

(キリシマ...ぬいぐるみは...人参を食べない...)

(...熟知している)

 

まさかこんなにも早く正体がばれるとは...

 

(かくなる上は...許せ、蒔絵!)

 

キリシマは何を考えたのか蒔絵に襲いかかった。急いで止めようとするが...

 

「すっごい!」

 

蒔絵はヨタロウ(キリシマ)に抱きついた。

 

「すごいすごいすごいよ!これ、ハルハルが作ったの!?」

「あ、ああ...」

「いつの間に!?すごいよ!もしかしてハルハルってロボット博士?わたしみたいに秘密のお仕事関係者?」

「え、あ...うん...」

「やっぱりね!そっかー。わたしと同じかぁー」

「同じ...」

「それにしても本当にすごいね!びっくりしたよ!」

「それ、あげる」

「ほんと!?」

「色々して貰ったお礼」

「やったー!!」

(あのーもしもし、ハルナさん?)

「よかったねヨタロウ!お前は自分の足で動ける自由を手に入れたんだよ!」

(よかったな。ヨタロウ)

(うるさい!ハルハル!)

 

その後蒔絵と一緒にお風呂に入った。が、この時の事は思い出したくもない...

堪忍してつかぁさい...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside山猫

 

「どうだ、相棒」

『ハイパーリコンが刑部邸に近づく不審車両を捉えた。おおよそ例の特殊部隊だろう。それともう一つ』

「なんだ?」

『近くの陸軍基地の様子が騒がしいんだが』

「下手したら戦車でも出てくるんじゃないの?」

「そうだな...『岩蟹』が出てきたら面倒な事になりそうだ。」

 

『岩蟹』とは陸軍が作り上げた多脚戦車の事だ。豊富な兵装と優秀な地形踏破能力を持つ優秀な兵器なので、これが出てくるとなると非常にやりにくい。

 

「タカオ、武器の用意は?」

「ご注文通りのアンチマテリアルライフル1丁と、もしもの時のアサルトライフルを2丁、対戦車ミサイルランチャーを用意したけど」

「パーフェクトだな。ヘリの方は?」

「長距離狙撃なら攻撃型より輸送型の方がいいと思って、タンデムローター型にしたわ」

「よし。ではそろそろ行くか。相棒、留守番を頼む」

『任された』

「タカオ、途中で刑部邸の回線に割り込むぞ。準備はいいな?」

「準備は大丈夫よ。いつでも!」

 

黒一色に染められたヘリコプターが無人操縦により甲板を離れる。

 

「行くぞ!」




ヨタロウが人参を食べるシーン見たときほんと笑った。


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Alt-13 大戦艦、決断する

そろそろ横須賀動乱編の終わりに近づいてきました。


ーside刑部藤十郎

 

【まさか蒔絵の最初の友達がメンタルモデルになるとはな...】

 

刑部邸地下の一室。現在、私はここに横たわっている。目の前の大画面スクリーンに出ていたのは、娘の蒔絵と2人のメンタルモデル。

 

(これが新たな絆となるだろうか...)

 

そう思うと、回線に何者かが入り込んだという警告が出てきた。

 

(なんだ?私の存在は公には死んだ事になっている。一体誰が...)

 

すると通信ウィンドウがスクリーンに開かれる。『SOUND ONLY』の表示。どうやら音声通信らしい。

 

『お初にお目にかかります。刑部藤十郎博士。いや音声だけだからお目にかかると言うのもおかしいですかね』

 

随分と若い声だ。

 

【...何者だ?わざわざ私の回線に割り込んできて何をするつもりだ】

『名乗る程の者ではありません。ここではLとさせて頂きましょう。私は一つそちらに警告がありまして』

【そうか。その内容は?】

『ではこちらのデータを見て頂きたい』

 

Lがそう言うとデータが送られてくる。

 

【これは...】

『現在の刑部邸周辺、半径5kmに不審な車両が幾つも有ります。そしてこちらは最も近い陸軍基地の上空写真です』

【岩蟹までも...まさか...】

 

 

 

『軍部はここに襲撃をかけるつもりです。そしてその目的は貴方の娘、刑部蒔絵でしょうね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーsideハルナ

 

蒔絵がやっと寝付いた。眠りの深さを確認しベッドを出る。

 

(準備はいいか、キリシマ?)

(ああ、行くぞ)

 

ゆっくりと部屋を出ると地下への入り口を探す。すると...

 

パッ、パッ、パッ、パッ

 

廊下に光がつく。その先にはメイドが立っていた。

 

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

「...わかった」

(おい!ハルナ!?)

 

メイドについて行くと廊下の行き止まりに着いた。壁に手を着くと電子パネルが現れ、メイドはそれを操作すると、壁が開いた。

 

(エレベーター...こんな物まで)

「お乗りください」

 

エレベーターに乗り扉が閉まると、地下へと動き始める。30秒程乗ると止まり、扉が開いた。

 

「ここは...」

 

刑部邸とは思えない近未来的な廊下が現れる。人の言う宇宙船とやらの廊下みたいだ。その廊下を進むと一つの扉が現れた。その前に立つと自動で扉が開く。

 

 

【よく来たね、霧のメンタルモデル達】

 

そこには1人の男が横たわっていた。そして後ろのスクリーン、あのウィンドウは...?

 

「お前は...」

【刑部藤十郎。ここの主人だ】

「死んだのではなかったのか?人間のデータ上もそうなっていたが。いや、生きていたなら都合がいい。振動弾頭のデータを渡してもらおうか」

【振動弾頭、か。あれは私が開発した物ではない】

「どう言う事だ?」

「...蒔絵か」

【そうだ。あの子は私などよりも遥かに高い知性を持っている。なぜなら、人間ではないのだからな...】

「な!?」

 

そう言うと刑部藤十郎は別のスクリーンに情報を映し出した。そこから彼が話し始めたのはデザインチャイルドとして生まれてきた蒔絵の過去。彼女がいかにして生まれてきたか、それを全て話した。

 

【...最終的に政府は蒔絵のバックアップを作るよう私に命じた。政府内では非人道的だと否定する意見もあったらしいが、結局は古いコンピューターの様にあの子の廃棄を決めた】

「...」

【私は自らを事故死に見せかけ、全てのデータとともに姿を消した。あの子をただ一つの存在とするために...】

「わからんな。なぜそうまでして貴様は生きる?バレたら余計立場が悪くなるだろうに」

【それは未練というものだ...】

「未練。心残り。思い残したもの。タグ添付、分類、記録」

【私は、あの子の成長を見守っていたかったんだ。たとえ側に入れなくとも...】

「...人間というのは随分と自分勝手なものだな」

【ああ、私もそう思うよ。だが、だからこそ辿り着けることもある...】

「なに?」

【私がそう考えているだけだ。気にしないでくれ】

「...」

【見ての通り私はもう長くはない。そこで君達に頼みがある】

「...頼みとは?」

【蒔絵の友達になってやってくれないか...?】

「...本当に勝手なやつだ。友達になってくれなどと...」

「...それは私が霧と知ってのことか?」

【蒔絵は君達と過ごして、たくさん笑ってくれた。それで私は十分だ】

 

 

 

 

 

 

 

長い沈黙が続く。駄目だ。処理しきれない。

 

(キリシマ、この処理しきれない自分の情報が人間の言う『感情』なのだろうか...?)

(...ハルナ?)

(...私は今、どう答えたら良いのか分からない。霧としての意識は否定するが、私個人の意識では...)

(...ハルナ、それがお前の...)

(...そうだ。私は...)

 

 

 

 

 

 

 

(いいんじゃないか?それで)

(...えっ?)

(私達はメンタルモデル。仮初めとはいえ意識を持った存在。なら、これは人間というものに近付けた証拠じゃないのか?)

(...そうか。なら、やっと分かった。)

(なにが?)

(これが人の『悩む』という行動なんだ。様々な選択肢をどれも選べない状態。だが、結局は...)

(決断しなければならない、か?)

(ああ、そうだ。そして決断したよ)

(ならいいさ。私はハルナについて行くだけだ)

(...ありがとう、キリシマ)

(気にするな、ハルナ)

 

私は刑部藤十郎の頼みに応える。

 

「...わかった、刑部藤十郎。私達は蒔絵の友達になる。そして貴方が成し遂げられなかった事を、未練を、私達が成し遂げてみせよう」

【...そうか。よく決断してくれた。ありがとう】

 

そして私達は部屋を去ろうとするが...

 

『刑部博士、やっと終わりましたか?』

 

若い男の声が流れる。

 

【ああ、これで次に移れる...】

「どういう事だ?そしてお前は...?」

『お久しぶりだね。大戦艦ハルナ、キリシマ』

「...私達はお前に会った事は無いが」

『あらら...忘れちゃったか。つい先日の事なんだが』

「先日ってまさか...」

『そのまさかだ。俺はあの戦闘機のパイロットだ。ここではLと呼んで欲しい』

「お前が...?」

 

まさかあの戦闘機のパイロットとは...

 

『まず、あの時の事は謝罪させて貰おう。本当に済まなかった』

「...なぜ敵であるお前が謝る?」

『こちらは敵対する気はなかったが、横須賀の街を攻撃されるのは見てられなくってね。それで攻撃してしまったからな』

「...なるほど。それで何の用だ」

『この後に起こる事に対して協力して欲しい』

「...内容によるが」

『後30分程で軍部の特殊部隊がこの屋敷を制圧しに来る。目的は刑部蒔絵だ』

「な!?」

 

キリシマは驚いた様に声を上げた。無理もない。私も驚いた。

 

「私達メンタルモデルに接触したからか?」

【蒔絵が振動弾頭の開発者である事を知っているのだろう。霧にそのテクノロジーを流出させる事を彼らは恐れている】

「つまり流出する前に確保しろと?」

『特殊部隊の参加から見れば殺害もありうる。奴ら、多脚戦車まで使うつもりだしな』

「それで私達は何をすればいい?」

「ハルナ!?いいのか信じて!?」

「キリシマ、私達の目的は蒔絵の安全だ。違うか?」

「確かにそうだが...信用出来るのか?」

『信用させられればいいのか?おい、少し代わってくれ』

 

Lはどうやらその方法があるらしい。

 

『あー聞こえる?ハルナ、キリシマ』

「タカオ!?どういう事だ!?」

『失礼したわね。Lは私の艦長よ。これで信用できるかしら?』

「あ、ああ...」

 

まさか、あのタカオを味方につけているとは...

 

『これでいいかい?』

「...あとで話を聞かせて欲しい」

『わかった。それで君達には刑部蒔絵の護衛を担当してもらう』

「そちらは?」

『ヘリによる現場の制圧を担当する。それと多分401も来るだろう。そちらで保護してもらってくれ』

「味方であるという保証は?」

『こちらで話をつけておく。401離脱後に落ち合う予定だ。その時こちらに合流してくれ』

「了解した」

『刑部博士、これでよろしいですね?』

【ああ。予定通り蒔絵と彼女達を頼む】

『了解しました』

 

 

 

 

決戦は今夜になりそうだ。必ず、蒔絵を守ってみせる。




頑張れたら明日、無理なら明後日に投稿する予定。そこから向こう一週間は投稿できませんのでご容赦のほどを。


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Alt-14 401、依頼を受ける

次の投稿は再来週になります。ご容赦のほどを。


ーside401

 

振動弾頭のサンプルを積み込み、横須賀港を出た夜。

 

「暗号通信?」

 

それは突然だった。

 

「艦長。送信先が不明の暗号通信が来たのですが...」

「なんだって?」

「モニターに出します」

 

モニターに出てきたのは謎の言語の羅列。どういう事だ...

 

「僧、分かるか?」

「いえ、流石に...ここまで複雑な物は初めて見ましたね」

「...群像」

「どうしたイオナ?」

「これ、霧の暗号」

「なんだって!」

 

いったい誰がこんな物を...

 

「解読出来るか?」

「出来る。今、終わった」

「それでなんてあったんだ?」

「...『とある子供とメンタルモデルが接触した事により、その家に軍部の特殊部隊が急襲する手筈になっている。君達に彼女らの救出、保護に手を貸して欲しい。保護後に再度連絡する。合流後に報酬を渡すつもりだ。報酬は我々の持つナノマテリアルの一部と侵食弾頭の補給。受けてくれるなら連絡をしてくれ。重巡洋艦タカオ』って」

「あいつが!?」

「どういう事でしょうか...?」

「確かにナノマテリアルや侵食弾頭の補給は嬉しいが、なんかありそうな気がすんだよな」

 

そうだ。あまりにも話が出来すぎている。が、問題はそこではない。

 

「人とメンタルモデルが接触した方が大事だ」

「そうですが...多分接触したのはハルナ達でしょうね。私達にも責任はある」

「そして依頼主はタカオ...皆、この依頼どう思う?」

「騙して悪いが感も否めませんが...」

「それはいつもの俺たちじゃん」

「どうでしょうか...」

「微妙な所だよね」

「...群像」

「イオナ?」

「きっと大丈夫。タカオは多分接触した子の保護を優先している」

「...保証は?」

「じゃないとこんな依頼は出さないと思う」

「...そうか。皆、この依頼を受けようと思う」

「了解。一応火器管制立ち上げておく」

「わかりました。センサー類準備は完了です」

「機関部も準備完了。いつでもいけるよ」

「イオナ、タカオに連絡をとってくれ」

「了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーsideタカオ

 

予測される特殊部隊の刑部邸襲撃まで残り15分。現在の位置は刑部邸の沿岸から南に5海里、上空500m。

 

「タカオ、401から連絡は?」

「そろそろ...きた」

 

401から概念伝達による連絡が来る。

 

「概念伝達が来たわ」

「作戦と報酬の引き渡しについて説明してくれ」

「了解よ」

 

そう言って概念伝達の場所へ意識を移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白い空間。相変わらず何かの庭園でも模しているのだろうか。椅子に座ると向かい側に401のメンタルモデル、イオナが現れる。

 

「タカオ」

「きたわね、401」

「私達は依頼を受けさせてもらう」

「そう、ありがとう」

「...タカオ」

「なに?」

「なぜ貴方は私達がハルナ、キリシマと戦った時に助けてくれた?」

「よく分かったわね。だけど、それは私の意思じゃないわ」

「えっ?」

 

いつも無表情なイオナは驚いた顔をする。それだけ驚いたという事だろう。

 

「私の艦長の意思よ。私はそれに乗っかっただけ」

「貴方も艦長を?」

「ええ。それについては後で話しましょ。作戦について説明するわ」

「わかった」

 

作戦の概要を説明する。あまり残った時間はない。

 

「今回の目的は霧の大戦艦ハルナ、キリシマ並びに接触した民間人、刑部蒔絵の3人。貴方達にはこの3人の保護を担当してもらうわ」

「状況は?」

「少し急ぎましょうか。後15分程で刑部蒔絵の邸宅に陸軍の特殊部隊が制圧を開始するわ。私達は空から敵部隊の制圧を、貴方はハルナ、キリシマと協力し刑部蒔絵を護衛して401まで運んで。ハルナ達には話は通してあるから問題はなし。貴方達の離脱完了を確認し次第、私達も離脱するわ。

これ、作戦詳細ね」

 

401へ作戦詳細のデータを送る。

 

「艦の待機場所については?」

「特にこちらからの指定はなし。でも、なるべくバレない方がいいかもしれないわね」

「離脱後については?」

「こちらから再度連絡させてもらうわ。その時に合流場所を指定するわね」

「報酬は?」

「合流完了後にお支払いするわ」

「わかった。ではこちらも作戦行動に入る」

「ええ、お願いね」

 

少し目を離すとイオナは消えていた。自分も意識を戻す。

 

 

 

 

 

「おわったわよ」

「ok。では作戦を開始する」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーside401

 

「...群像」

「どうだイオナ?」

「タカオから作戦詳細を預かった。目的は3人の保護。メインモニターに出す」

「結構な作戦だな。軍を敵に回す事になるかもしれないが...この作戦をタカオが?」

「わからない...でもタカオには艦長がいると」

「なんだって!?」

「まさかタカオもですか...」

「でもそう考えればこの作戦もそいつが考えたって事じゃねーの?」

「確かにその線はあり得る。...いや、それよりも依頼だ」

「そうですね。準備の方は出来ています」

「なら作戦を開始しよう。イオナ、準備はいいか?」

「いつでも」

「よし。401、発進する!」




次は戦闘シーン。上手く書けるかどうか...


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Alt-15 ハルナ、脱出する 前編

読者よ、私は帰って来たァァァァァ!

冗談はさておき、皆様お久し振りです。覚えてますかね?
という事で


撤退戦、始まります。


ーsideハルナ

 

刑部藤十郎の部屋を出ると、急いで部屋に向かい蒔絵を起こす。

 

「蒔絵、起きろ」

「うーん...なにーハルハル?まだ眠いよ...」

「早く目を覚ませ!ここを出る準備をしよう」

「うーん...えっ?どういうこと?」

「私達と蒔絵が会った事が原因で、軍の特殊部隊がここに襲撃をかけてくる。その前に脱出するんだ」

「それって...?」

 

辛い事になるかもしれないが、言わなければならない。

 

「蒔絵、隠しておいて悪かった。私は...いや、私達は『霧』のメンタルモデルなんだ。今まで隠していて、本当にすまない...」

「...ううん、ハルハルだけが謝る事じゃないよ...私も謝らないといけないかも...」

 

やはりあの事か...

 

「霧への対抗策として作られた振動弾頭は私が作り出したものだから...」

「...なら、おあいこだな」

「えっ?」

「蒔絵も私も秘密にしていた事を話したんだ。だろう?」

「そう、だね...ならハルハルはずーっと私の友達でいてくれる?」

「ああ、約束だ。私は蒔絵の友達として、蒔絵を守り続ける」

「ん!」

 

蒔絵は小指を立てる。どういう事だ?

 

「ハルハル知らない?人って約束する時は『ゆびきりげんまん』をするんだ!」

「そうなのか...?」

「そうだよ!ね?約束だよ!」

「そうだな...」

 

なら...

 

 

「「ゆびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんのーます!ゆびきった!!」」

 

 

するのも悪くないかもしれないな。

 

(ハルナ、急げ!奴らがもう屋敷の塀の近くまで来ている!)

(わかった)

「取り敢えず蒔絵!準備を急いでくれ!」

「ここにあるリュック1つあれば十分だよ!」

「そうか...キリシマ!」

「なんだ?」

「おう!?ヨタロウ喋れるの!?」

「あ、それは後にしてくれ。頼むから!!」

「キリシマ、蒔絵を連れて崖下の倉庫がある海岸線まで行ってくれ」

「ハルナ、お前は?」

「蒔絵のダミーを作って引き付ける。後で合流しよう」

「わかった。蒔絵、行こう!」

「うん!」

 

 

 

 

ーside山猫

 

「タカオ、ハルナ達は?」

「予定通りね。キリシマが蒔絵ちゃんを連れて崖下の海岸線へ脱出を始めたわ。ハルナはダミーを連れて囮に入った。作戦を始める?」

「ああ。もしかしたら俺も下に降りるかもしれない」

「その時は火力援護で良いのね?」

「ああ。岩蟹にありったけのロケランをぶち込んでくれ」

「了解したわ」

 

「では...作戦を開始する!」

 

 

 

 

ーside401

 

「例の屋敷の崖下の海岸線につけてくれ」

「わかった」

「なあ群像。ここまでギリギリにつけるのか?」

「ああ。キリシマはともかく、子供の方はかなり体力を消耗していてもおかしくはない。イオナ!迎えに行けるか?」

「大丈夫。行ける」

「彼女らを頼むぞ!」

 

 

 

 

ーsideハルナ

 

残存のナノマテリアルで蒔絵のダミーを形成。現在キリシマ達は順調に脱出している。なら私は敵を正面に引き付ける...!

 

「メンタルモデルを発見!刑部蒔絵も共にいます!」

「落ち着け!大戦艦ハルナのメンタルモデルだな?」

「そうだ...」

「刑部蒔絵をこちらに引き渡し、おとなしく同行しろ」

「おとなしく同行しろ...だと?」

「そうだ。あくまでも私達の目的は刑部蒔絵の処分だ」

 

やはりか...なら私は蒔絵を守るだけだ。その意思を示すためにサークルを出す。

 

「おっ落ち着け!私達にはお前と積極的に交戦する意思はない!」

「『意思』か...なら、その定義を今からお前達に教え込んでやる...!」

 

クラインフィールドの壁を多数作り出し、兵士達に叩きつける。

 

「ぐあっ!」

「これが私の意思だ。お前達に従うつもりなど毛頭無い!」

「くっ、くそ!攻撃開始!!」

 

部隊長と思われる人物の号令により、銃撃が開始される。5.56mm弾が多いが榴弾もある。ダミーを形成した分、残存のナノマテリアルの量が少ない。持久戦は少しまずいかもしれないな...

 

「撃てー!撃ち続けろー!」

「反撃の隙を与えるなー!」

 

そんな中で1つ通信が入る。

 

『こちらL。現着した。攻撃を開始する』

「こちらに当ててくれるなよ!」

 

そう言うと、上空から援護が入る。さらにロケットランチャーによる火力援護まで。本当に来るとは...

 

「なんだ!どこからの射撃だ!」

「上空からですが、発射点は不明です!」

「ヘリを寄越せ!」

 

まずい!ヘリを寄越されると上空からの援護が消える!

 

『こちらシャーク1。上空援護に...うわぁぁぁぁぁぁ!』

「どうした、シャーク1!」

『』

「シャーク1?シャーク1!?応答しろ!」

 

...まさか堕としたのか?

 

『こちらL。敵機撃墜を確認。援護を再開する』

「なら、地上に1人援護をくれるか?そろそろ多脚戦車が来る」

『了解。タカオ、後を頼む』

『わかったわ』

 

 

 

 

ーside山猫

 

「じゃあ行って来る。援護頼むぞ」

「気をつけてね」

 

アサルトライフルを2丁装備するとヘリから飛び降りる。そのままハルナの方にやって来る岩蟹に着地する。

 

「こんにちは。そしてさようなら!」

 

すぐさま手持ちの爆薬を仕掛け、別の岩蟹に飛び移りさらに爆薬を仕掛ける。

 

『なんだ!?』

『岩蟹が爆発しました!』

『一体何が起きたんだ!!』

 

全ての岩蟹を爆破させ、今度は歩兵部隊の鎮圧にかかる。

 

「ガッ!」

「おい、大丈夫か!?」

「武器を置いて手をあげろ」

「な、貴様...」

 

敵兵が振り向くと同時に後頭部を殴り、気絶させる。

 

「ハルナ、大丈夫か?」

「お前がLか...?」

「そいつは偽名だ。取り敢えず脱出するぞ」

 

 

 

 

ーsideイオナ

 

「確かこっちに...」

屋敷の崖下の海岸線から上陸し、こちらに向かっているキリシマを探す。一体どこに...

 

「はぁ、はぁ、はぁ...」

「大丈夫か蒔絵?」

 

いた!

 

「キリシマ!...えっ?」

「401!すまない。迷惑をかける...後、訳は聞かないでくれ...」

「...わかった。こっちに」

「ああ。まだこちらは気づかれていない。急いで行こう」

 

取り敢えず離脱して艦へ運ばないと...




長いから分けます。(本当はまだ書けていない)


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Alt-16 ハルナ、脱出する 後編

後編スタート


ーsideイオナ

 

「こっちに!」

「蒔絵!着いてこれるか?」

「うん...まだだいじょうぶ...」

 

なんとか、まだ見つかってはいない。やっと海岸線まで辿り着く。

 

「群像!」

「わかった!」

 

船体からタラップを出し、地上へ繋げる。

 

「早く乗って!」

「待て!ハルナは!?」

「タカオ達が連れて来てくれる!」

「くっ...」

 

キリシマと蒔絵を艦に乗せると、タラップを仕舞いハッチを閉じる。

 

「イオナ、お疲れ様だ」

「うん、早く離れよう」

「ああ。401、発進するぞ!」

 

 

 

 

ーside山猫

 

『キリシマ並びに蒔絵ちゃんの401収容を確認したわ。こっちも撤退しましょ』

「了解。ラペリングするから準備をしてくれ!それとあそこの塀に効力射を!」

『わかった』

 

発信機にそう告げると、きれたマガジンを交換し、敵残存部隊が隠れている塀に7.62mm弾を撃ち込む。上空のヘリからはロケットランチャーが撃ち込まれ、塀に穴が開く。

 

「ハルナ、準備はいいか?」

「待て、蒔絵は!?」

「既に401が確保してくれた。こちらも撤退するぞ」

「そうか。なら...」

「耳塞いどけよ!!」

 

塀の穴にスタングレネードを2つ程投げ込むと、回収に来たヘリにワイヤーを飛ばす。その瞬間、選考と激しい音が周りを包む。

 

「固定出来てるか?」

『オーケー!バランス制御最大!』

「ハルナ、しっかり掴まっとけ!」

「あ、ああ...」

 

ハルナが掴まった事を確認すると、ワイヤーを自動巻き取りで戻す。

 

「うわっ!」

「あんまり声を出すな。今の所スタングレネードでバレてはいないが、バレるぞ!」

 

そうこうしているうちにヘリまで到達。タカオにハルナの収容を手伝ってもらうと、自分もヘリに乗り込む。

 

「これで作戦完了?」

「いや、艦に着くまでが作戦だ。ぬかるなよ?」

「わかってるわよ」

 

ヘリの機首を艦へ向け、自動航行を開始する。そんな中でタカオと駄弁っていると、ハルナは少し驚いた顔をしていた。

 

「どうした?そんな惚けた顔して?」

「いや...まさかタカオが人間と行動しているとは思わなくてな」

「まあ、そんなこともあるわよ。まだまだ艦長については知らない事もあるし」

「だから、本名で呼べと...」

「そう言えば『L』と言うのは偽名だと言っていたな。本名はなんと言うんだ?」

「やっぱ気になるよね...自己紹介しようか。俺は航空重巡洋艦タカオの航空部隊のパイロットのリンクスだ。よろしく」

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

そんな事を言っていると、どうやら艦の近くへと戻って来た。だが艦は見えない。

 

「タカオ、HASSをオフに。見える状態にしろ」

「了解よ」

 

タカオがHASSをオフにすると艦が現れ、装甲に白いラインが入ったテクスチャが貼られていく。

 

「これが今のタカオ...なのか?」

「そう、これが今の私。航空重巡洋艦タカオよ」

 

ハルナが驚くのも無理はないか。今のタカオは全長約300mの巨大艦だ。かつてこの世界であったというWW2の軍艦よりも大きい。さらに言えば現在残存している現代軍艦の中で、これより大きい物はアメリカが保持している原子力空母ぐらいだろう。

 

「着艦するわよ」

 

ヘリは徐々に高度をさげ飛行甲板へ降下していった。そして着艦。

 

「やっと終わったー」

「そうね。艦も異常なし」

『そりゃひどいな。私が留守中に何かするとでも?』

「相棒ならしかねないから怖い」

「なんだ今の!?」

「ああ、すまない。紹介し忘れていたな。俺の相棒のオセロットだ」

『初めまして。私はリンクスの相棒を務めるAI、オセロットだ。よろしく頼むよ』

「あっ、ああ。ハルナだ。よろしく頼む」

 

さて一通り紹介も済んだ事だし、次に移らなければ...

 

「タカオ!」

「なに?」

「401と連絡を取ってくれ。合流地点を伝えよう」




まあ、全長が300mくらいあったら驚くよね


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Alt-17 山猫、合流する

これにて横須賀動乱編は終わりです。


ーsideキリシマ

 

「タカオから通信。合流地点の指示が来ました。ここから南東20kmの海域です」

「合流までの時間は?」

「機関にも相談する必要がありますが、30分以内には可能です」

「よし。こちらも向かうぞ。」

 

依頼の達成により、本拠地に戻る前に補給の目処がついた401。クルーには安心した様子が見られるが、蒔絵はどうやら恐がっている。

 

「蒔絵、大丈夫か?」

「うん...でもほんとに、ハルハル迎えに来てくれるかな...」

「蒔絵、ハルナと約束したんだろ?ならハルナを信じてやれ」

「うん」

 

「ソナーに反応。目標海域に不明艦を発見。これは...大戦艦クラスです!艦長!」

「総員、第二戦闘配備。イオナ、タカオと連絡を!」

「待って群像。あの艦は多分タカオ」

「なにっ!?」

「待てよイオナ!タカオは重巡洋艦だろ!?」

「杏平、行けば分かる」

「群像!?ほんとに大丈夫か!?」

「イオナが言うんだ。タカオから聞いているんだろう?」

「うん。タカオは既に海域についているって」

 

 

 

ーside山猫

 

「来たな」

 

艦橋から海を見下ろすと401が浮上しているのが見えた。

 

「タカオ、401に連絡。こちらに横並びにするように言ってくれ」

「了解」

 

しばらくすると401がこちらの左側に横付ける形で浮上して来た。

 

「大分船体が損傷しているな...」

「まあ、補給も殆ど無いみたいだしね」

「オセロット、401の船体状況のスキャニングを。ナノマテリアル充填だけで修理は出来ないないと思う」

『了解した。スキャニングを開始』

 

そうすると401のハッチが開き、クルーが出てきた。こちらも艦橋から降り、タカオと飛行甲板へと出る。

 

「イ401艦長、千早群像だ。指示通り来たぞ」

「航空重巡洋艦タカオ艦長、リンクスだ。この度は依頼を受けて頂いて、感謝している」

「それについては構わない。達成報酬は?」

「はじめにそちらに乗艦している、大戦艦キリシマ並びに刑部蒔絵の引き渡しを行いたい」

「わかった」

 

千早艦長がそう言うとハッチから蒔絵とキリシマが出てくる。

 

「蒔絵!」

「ハルハル!」

 

感動の再会か...いや、感傷に浸っている場合では無いな。

 

「確認した。こちらからも報酬を渡そう。しかし...」

「どうかしたか?」

「401の船体、ナノマテリアル充填による修理だけじゃ治らんぞ?」

「...どう言う事だ?」

「オセロット」

『スキャニング終了。401の船体状況を把握。ナノマテリアル充填だけでは損傷箇所の修理は不可と判断した。損傷箇所が多過ぎるぞ。ここでは無理だ』

「...今のは?」

「うちのAIだよ。まあ、色々やってくれてる」

『失礼した。リンクスの相棒を務める、オセロットだ。よろしく頼む』

「あ、ああ。千早群像だ。よろしく」

「と言う事で、どこかしっかりした施設で修理した方がいいだろうな」

「そうか...」

 

そう言うと千早艦長は思案顔になる。その間、他のクルーはタカオの船体を見上げていた。

 

「デケェ...」

「ええ、まさか全長300mとは...」

「しかもアングルドデッキまでついてる」

「航空機の運用でもするのでしょうか...?」

「でも、霧って航空機は運用しないよな?」

「なあ、みんな...」

 

どうやら相談に入る様だ。こっちではハルナと蒔絵が抱き合っている。

 

「蒔絵...よかった。無事で...」

「ハルハル...!」

 

その横ではタカオとキリシマが話していた。

 

「なあタカオ、こう言うのを感動の再会って言うのか?」

「そうね。それを決めるのはあの子達だけど」

「しかしお前が人間の艦長を迎えているとはな...私はその方が驚いたぞ」

「まあね。ハルナにも言われたわ」

「でも何故、人間を?」

「最初は単なる興味だったわ。でもあの人の事を知ろうとすると、どんどんわからない事が出てくるのよ。今はそれを順番に解き明かしている最中ってわけ」

「なるほど...でもそれが船体を改造した事と何の関係がある?」

「それは秘密よ」

 

そんな事を聞いていると、向こうは考えが定まったらしい。

 

「済まない、少しいいか?」

「どうした、千早艦長?」

「これはこちらで話し合った結果なのだが、硫黄島までこちらを護衛してくれないか?」

 

ほう、そう来たか。こちらには何も問題は無いが...

 

「別に良いが、理由を知りたいな」

「さっきあなたが言った通り、今の401は損傷が酷い。それを考えると、ここで補給物資を貰うより、我々の本拠地で受け取り、そこで修理した方が良いと言う結論が出た。勿論、タダでとは言わない。こちらも硫黄島にて、補給出来るものは出そうと思う」

「わかった。そちらの依頼を受けよう。報酬の引き渡しは硫黄島で良いんだな?」

「ああ。宜しく頼む」

「了解だ。タカオ!硫黄島まで401を護衛する。準備はいいな?」

「硫黄島ね。了解よ」

 

そう言うと艦橋へと戻り、状況を確認する。

目的地は硫黄島だ。




二章は結局9話で完結。一章と似た様なもんですね。


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第3章 硫黄島
Alt-18 山猫、硫黄島に行く


硫黄島編、始まるよ!


ーside401

 

「まもなく硫黄島管制海域に入ります」

「しっかし群像、ほんとにあいつら連れて来て大丈夫か?」

「ああ。ハルナとキリシマに関してはタカオがキーコードを握っているし、握っているタカオもリンクス艦長が見ている。問題は無いと思うが?」

「なら良いんだけど...」

「タカオより連絡。入港について聞いてきています」

「タカオに返信。こちらに続いて入港、4番バースに着けるよう言っておいてくれ」

「了解しました」

 

 

ーsideハルナ

 

現在私たちはタカオに乗艦し、硫黄島へ入った。キーコードはタカオに預けたが、致し方ない犠牲と言うものだろう。この様な犠牲の事を人間は『コラテラルダメージ』と言うらしい。

 

「で、401からは?」

「後に続いて入港、4番バースに着けろって」

「そうか。クラインフィールド展開、姿勢制御いっぱい。ハルナ達は身体をシートに固定してくれ」

「わかった。蒔絵、大丈夫か?」

「うん。この程度なら」

「準備はいいな?潜水を開始するぞ」

 

艦が潜水してから数分後、無事に水面に浮上した。ここは...

 

「広いドックだな。うちの地下ドックとさほど変わらん」

「そうね」

 

広大な空間があり、6つ程のバースとガントリークレーンが置いてあった。

 

「うわぁ!すごい!」

(こんな所に401の基地があったとは...)

(島から強力な探知中和信号が出ている。近づかないと感知できないわけか)

(もしかしたらここでナノマテリアルによる身体の補填も出来るかも知れん...!)

 

呆れた。リンクスに言えば、補填させてくれるかもしれないのに...

 

(キリシマ、しばらくはそのままでいてくれ)

(はぁっ!?なんで!?)

(蒔絵にはその方がいい)

(うっ、まあ、そう言う事なら良いが...)

「ハルナ、キリシマ?」

 

リンクスに声をかけられる。

 

「先程から黙っている様だが、どうした?」

「いや、考え事だ」

「あまり変な事は考えないでくれよ?それと入港が完了したから降りるぞ。準備してくれ」

「わかった」

 

 

ーside山猫

 

艦から降り、401クルーと合流する。すると何やら卵型の浮遊物体が現れる。

 

「おかえりなさいませ、艦長。遅いご帰還でした」

「ヒュウガ、ご苦労様。半年間よくこのドックを守ってくれた。ありがとう」

「いえ。これも自身に課した役目ですから」

 

ヒュウガ、か...

 

「はぁっ!?イ、イ、イオナ姉様ぁぁぁぁぁ!」

 

なんか出てきた。何がどーなってんだこれ。

 

「姉様!ヒュウガは!ヒュウガは!一日千秋の思いでお帰りをお待ちしていましたァ!」

「離れて...」

「いやいやいやいや!」

 

おい、押し倒して腰まで振り始めたぞコイツ。頭大丈夫か...?

 

「何なのこれ...?メンタルモデルなの?」

「ヒュウガ...でしょうか...?」

「私は一年前、姉様に魚雷を次々と叩き込まれたあの日以来、姉様なしでは生きていけぬ身体に!演算能力の限界も超え、もうどうにかなってしまいそう...!」

「どうにかなってしまったんですね」

「本当にヒュウガの様ですね...」

「その様だ...」

 

...理解が追いつかん。タカオも同じ様だ。かなり引いている。

 

「んんっ!あなた達人間の思考を理解をするにはこうするのが最適だと思い、身体をクリエイトしました」

「メンタルモデル、ヒュウガか...」

「ええ。以後お見知り置きを。はっ!身体といえば!」

 

またヒュウガがイオナに組みついた。うーん...

 

「姉様!どこかにお怪我はっ!ヒュウガにお見せ下さいまし!身体の修復に長けたこのヒュウガに!」

ガンッ!

 

あっ、飛んだ。

 

「ヒュウガ、船体と超重力砲の修理、それと侵食魚雷の補給を。次の出航に向けて完全に備えたい」

「イ、イエッサー...」

「ヒュウガ、それとナノマテリアルと侵食魚雷に関しては依頼の報酬で、一部賄える。有効に使ってくれ」

「あら、何か見慣れない方々がいるのはそう言う事でしたの」

 

やっと興味の矛先がこっちに向いたよ。

 

「自己紹介しよう。航空重巡洋艦タカオ艦長のリンクスだ」

「ヒュウガよ。以後お見知り置きを。それでその報酬は?」

「艦に積んである。すぐに引き渡せるぞ」

「わかったわ。そう言えば艦長?」

「どうしたヒュウガ?」

「送られてきた映像から、あの機体の推定スペックを割り出せたけど?」

 

あー、もしかしてF/A-114の事か?

 

「タカオ、エレベーター起動。F/A-114を甲板に出してくれ」

「わかった」

「リンクス艦長、何を...?」

「いや、君達が見た機体は...」

 

エレベーターが動き、F/A-114が少しずつ現れる。

 

「コイツの事じゃないかと思ってね」




予定は前と同じくらい


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Alt-19 山猫、休む

読者の皆様、お久しぶりです。
リアルがすごく忙しくなってしまい、中々投稿できませんでした。


ーside群像

 

なんでこの機体がタカオから...

 

「型式番号N-001-1、No.F/A-114、ペットネームはOcelot。製造社は不明の戦闘機だ」

「なんでこの機体が...」

「なんでってこれが俺の機体だからなんだが」

「ってことは一緒に飛んでた機体も?」

「これか?」

 

リンクスはそう言ってタカオに指示すると、別のエレベーターからあの時の無人機を出す。

 

「UM/F-1。リンクスが設計したマルチロール機よ」

「じゃあやっぱりあの時助けてくれたのは...」

「まあそう言うことだ。その理由についても、戦ったハルナ達は許してくれている」

「そうか...」

 

どんな理由があったかは知らないが、自分達を援護してくれたのは確かだ。

 

「ヒュウガ?」

「どしたのハルナ?」

「お前があの映像から割り出したOcelotのスペックってどれくらいなんだ?」

「これよ」

 

ヒュウガはそう言うと空間にディスプレイを作り出し、F/A-114のスペックデータを映し出す。

 

「大分低く見積もられてんな...相棒、どう思う?」

『そうだな...まああれだけの情報でここまで推測したものだ』

「「「「えっ?」」」」

 

まさか、それ以上のスペックだとでも言うのか!?

 

「簡単に言えばドライ推力は単純に2倍相当はある。アフターバーナー推力はアフターバーナー自体やったことないから分からん。多分遥かに超えていると思うが...」

「そこまでなのか!?」

「今までに構築されてきた技術では再現できないんだ。主機は熱核イオンジェット、武装搭載システムは量子格納の情報体による無限に近い積載量。そして空だろうが海だろうが無視してサイティングする『オールサイド・フェーズドアレイ・レーダー』。そしてHASS。まさにこの時代におけるオーパーツなんだよ」

「そして製作者も分からないか...」

 

リンクスの説明にほぼ全員が圧倒される。

それほどまでの代物を目の前にしているのかと思うと頭が痛くなってくる。

 

「...もう1つの方は?」

「UM/F-1は頑張れば再現できるレベル、だけど世界がこんな状態じゃまず無理ね。唯一出来るのは伊犂ノ島くらいよ」

「伊犂ノ島?」

 

タカオが聞き慣れない島を挙げる。

 

「なぜそこでなら出来ると?」

「そこに私達の基地があるのよ」

 

なるほど...

 

「取り敢えず俺は上に行く。多分釣りでもやってるだろうから、何か決まったら声を掛けてくれ」

 

リンクスはそう言って出て行った。

 

 

 

 

 

ーside山猫

 

「これで良いか」

 

タカオに保管してあったナノマテリアルを一部拝借して釣竿を作る。

 

「よっと...」

 

完成した物の針先を海に投げ、しばらく待つ。少しすると背後から声がかかった。

 

「どう?」

「始めたばっかだしな。分からん」

 

やって来たのはタカオだった。自分の隣に腰掛けるタカオを横目に釣竿を睨む。

 

「ハルナ達はどうした?」

「ヒュウガに連れられてビーチの方に行ってるわ」

「楽しめりゃ良いんだけどな」

「私達も行く?」

「...いや、もうしばらくここにいるよ。行ってくるか?」

「そうね...私もいて良いかしら?」

「別に構わないさ」

 

そう言うと再び浮いているウキに目線を落とす。

 

「しかしこうもなるなんてね...艦長には予想できてたの?」

「バカ言え。まあ、横須賀で手を出した時点で予想はしてたさ」

「そう...これからどうするの?」

「さてね...『好きに生き、理不尽に死ぬ。』やる事なんてそれ位だ。元々そんな生き方をしてたんだから、当たり前だろ?」

 

そう言うとタカオはこちらを正面から見る。

 

 

「...私も着いて行ったら、だめ?」

 

 

「...それを決めるのは、タカオ自身だ」

 

 

「...それもそうね。私は艦長が何と言おうと着いて行くわ。私は艦長の艦だから」

 

そう言ってこちらを真っ直ぐ見るタカオ。その顔に手を伸ばし、頰を軽く抓る。

 

「ふぇ?」

「まったく。いきなり何を言い出すかと思えば...」

「何するのよ、抓るのやめて?」

「やだ」

 

右手でタカオを抓りつつ、左手で竿を操る。

未だに魚がかかる事は無いが、こうしているのも悪く無いと思った。




多分これから、週1か2くらいのペースで投稿することになると思います。

これからもどうぞよろしくお願いします。


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