ヒロアカ 個性『トール』雷神の名を冠する者 (皐月の王)
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プロローグ
雷神の名を冠する個性


ドウモ=ミナサン 皐月の王です。今回からヒロアカを書いていきたいと思います。
よろしければ見ていってください!


事の始まりは中国で"発光する赤児"が生まれたと言うニュースがあった。以降は各地で「超常」は発見され、原因も判然としないまま時は流れ、いつしか「超常」は「日常」となりて、世界に認知された。現在では世界には『ヒーロー』が存在し『敵(ヴィラン)』と言う者も存在している。ヴィランは簡単に言うと犯罪者だ、ヒーローはそれの抑止力的な仕事だ。そしてこの世界は世界総人口の約8割が超常能力"個性"を持つに至った超人社会である。

 

―――――――――

 

中学三年の春。この時期となると、本格的に進路を考えていく時期となる。

何処の高校に行くかとか、人生の分岐となる大事な時期だ。そんな中なんだが。

 

「ヤバイ!寝過ごした!?」

 

そんな大事な時期に寝坊した少年、豊穣頼光は急いで着替える。

 

「スマホの充電が無い!クソ!通りでアラームが鳴らない訳だよな」

 

スマホの充電切れが引き起こした故の寝坊。コンセントに刺さって居なかったのだ。頼光はそれを拾い上げ

 

「個性を使って充電するしかないか、ミスったら終わりだけどな」

 

ビリビリっと指先から電気を慎重に出し、充電をする。バッテリーは直ぐに満タンになった。

 

「これでいいけど、朝飯は食ってるヒマはねぇな……仕方ないか」

 

頼光は家の鍵を閉め、学校に向かって走り出す。時刻は8:20分どう頑張っても遅刻は避けることは不可能だ。頼光は完全に諦めて、歩いて向かった。自分が通う中学校に

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

折寺中学校……進路のことを聞くためにプリントが配られようとしていた。

 

「えーお前らも三年生という事で、本格的に将来を考えていく時期!!今から進路希望のプリントを配るが皆……だいたいヒーロー科志望だよね」

 

その言葉と同時に教室内の学生達は、個性を発動させる。各自様々な個性があるのは今じゃ珍しい話では無い。世界の総人口の八割が個性を持っているのだから。ここ折寺中学校も例にもれず個性持つ学生が大半を占めている。

 

「うんうん皆良い"個性"だ。でも校内で"個性"発動は原則禁止な!」

 

先生は個性を発動した生徒に一応注意をする。そんな中、机に足を乗せた少年が言う

 

「せんせぇー『皆』とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな"没個性"共と仲良く底辺なんざ行かねぇよ」

 

「そりゃねーだろカツキ!!!」

 

揃ってブーイングをしながら抗議する。爆豪はそんなのを気にする素振りも見せず、売り言葉で返す

 

「モブがモブらしくうっせー!!!」

 

先生が爆豪の進路希望を知っていたのか

 

「あー確か爆豪は『雄英高校』志望だったな」

 

雄英高校と言う名前が出た途端クラスが騒がしくなる。それもそのはず雄英高校とはヒーローを養成学科がある国立の高校だ。

 

「国立の!?今年偏差値79だぞ!!?」

 

「倍率も毎度やべーんだろ!?」

 

「そのざわざわがモブたる所以ゆえんだ!模試じゃA判定!!俺は中学ウチ唯一の雄英圏内!!

あのオールマイトをも超えて俺はトップヒーローと成り!必ずや高額納税者ランキングに名を刻むのだ!!」

 

「あ、そういやあ緑谷と豊穣も雄英志望だったな」

 

爆豪は緑谷と豊穣を見る、が豊穣はまだ来ていない。他の皆も緑谷に注目する。そして笑いが起こる。

 

「はああ!?緑谷ぁ!?豊穣は兎も角、緑谷はムリッしょ!!」

 

「勉強出来るだけじゃヒーロー科は入れねんだぞ!!」

 

「そっ…そんな規定もうないよ!前例がないだけで…」

 

「こらデク!!」

 

BOOOM!!

 

「どわ!!?」

 

爆豪が緑谷の机を爆発する。緑谷はその影響で椅子ごと転ける。

 

「"没個性"どころか"無個性"のてめェがあ~!!何で俺と同じ土俵に立てるんだ!!?」

 

世界人口の八割は個性と言う超常能力を持つが逆を言えば、残りの二割はそれを持たない人達が居るということだ。そう、人は生まれながらに平等では無い。そう緑谷出久は無個性なのだ。

 

「待っ…違う。待ってかっちゃん。別に…張り合おうとかそんなの全然!本当だよ!」

 

緑谷は爆豪から逃げるように、座ったまま後ろへ下がる。だが、後ろは壁で直ぐに行き止まりに辿り着く。爆豪はゆっくりと距離を詰める

 

「ただ…小さい頃からの目標なんだ…それにその…やってみないとわかんないし…」

 

「なァにがやってみないとだ!!記念受験か!!てめェが何をやれるんだ!?」

 

「オイオイ、随分と騒がしいな。今日はそんな授業があったのか?」

 

教室の扉が開かれ、一人の少年が入ってくる。少年の容姿は背中まで伸びた長い金髪と相まって、どこか少女的な印象を受ける少年である。

 

「おーす、出久おはよう。で、なんだこれ?」

 

頼光は現在の教室の状況を見て、前髪をかきあげて、溜息をつき言葉を紡ぐ。

 

「勝己、内申気にすんなら、面倒起こさない方がいいぜ?」

 

「あ?ンだと!?やんのかよビリビリ野郎!」

 

手をパンパンと音を出して、怒りを顕にする爆豪。頼光も手から火花を散らしながら、応戦する準備をする。互いが睨み合うクラスのメンバーはこの一触即発の二人を見て冷や汗をかいているのが分かる。そんな中

 

「ふ、二人ともやめよう!受験があるのにこんな時に問題なんて起こしたらダメだよ!」

 

緑谷が間に入る。さっきまで言うがままだったが、この二人が喧嘩をしそうになって止めに入ったのだ。クラスのメンバーは緑谷が終わったと見ていたが。

 

「……そうだな。こんな大事な時期にやることじゃねえな。勝己もそれでいいだろ?」

 

「……クソが」

 

威嚇しながらも爆豪は機嫌が悪そうに、席につく。頼光はやれやれと肩をすくめ席に座る。そして授業があり、時間が過ぎて、放課後へと至る。

 

「さあて、図書館でも行こうか」

 

頼光は荷物をまとめ、教室を足早に出て、校内の図書館に足を運ぶ。図書館に着き、文化コーナーに行き、北欧神話の本を手に取り、とある神の所を読む。

 

「『トール』アース神族最強の戦士で今では『雷神』と言う面が目立ってきているが、農耕・季節・天候・災害などあらゆる全てを司った『全能神』でもあった……か。見れば見るほど凄い神だなトールは」

 

その本を読む頼光は目を輝かせて、子供がおもちゃを手にして喜んでいるかのようにも見えていた。しばらく時間が経ち、本当を閉じ元の場所を返した後に図書館から出て、帰路につこうとしていた。

 

「『トール』については大体把握はした……まぁそれと個性の全容が暴かれたかは別問題だな」

 

イヤホンを耳につけ、お気に入りの曲を聴いて、それを口ずさみながら歩いている。考えていることは個性の事もそうだが、緑谷と爆豪の事だ。頼光は小学校の時に二人に出会った。その時から二人は虐め虐められる関係だった。それでも緑谷は爆豪に着いて行ったのが気になっていた。それが見てられなくて、頼光が止めに入ったのがきっかけだ。それから紆余曲折を経て分かったことは、爆豪は根は悪くないが性格はあんな感じだのと、緑谷のヒーローへの思いは本物だという事だ。断りを入れていくと、頼光自身は爆豪と仲が悪くない。普通だが、頼光は緑谷を庇うので仲が悪く見えると言うのだ。

 

「もう少し、いがみ合うのなんとか成らないのか?勝己の奴……まぁ俺にどうこうできる域じゃねえだろうな。当人同士が本音を語り合うしか」

 

ポケットに手を突っ込みながら、空を見上げる。見上げて出るのは溜息しかなく、自分の事を棚に上げ二人を憂う少年がここにいる。すると、騒ぎがイヤホンの音楽に混じり、聞こえてくる。

それと同時に爆音まで聞こえる始末だ。その方向を見ると、人集りが出来上がってた。

 

「なんだよ?こんなに人が集まってよ」

 

頼光は目を凝らし、その先を見る。ヘドロの敵が暴れていたのだ。

 

「ヒーロー何で棒立ち?」

 

「中学生が捕まってんだと」

 

頼光は拳を握りしめていた。そんな所で何を見て突っ立てるンだと。俯きながら、自分ができることがないのを、恨んでいた。ヒーローじゃない人が個性を無闇に使うのはダメなのだから。

 

だが、見てしまった。そのヘドロの中に友達の姿を、そしてその顔が助けを求める顔に見えたのだ。その時には体が動いていた。

 

「オッサンこれ持っててくれ!」

 

「お?おい!?坊主!」

 

頼光は端末とバッグを無理矢理、近くにいたオッサンに押し付け、走り出す。

人混みを出る前に

 

「馬鹿ヤロー!!止まれ!!止まれ!!」

 

見覚えのある、緑髪の少年。緑谷出久が飛び出していた。

 

「出久!?」

 

頼光は驚き足を止める。緑谷は足を止めず、持ってたバッグをヘドロの敵へ向かって投げつける。バッグからノートや筆記用具やらが飛び出す。それらは宙を舞いヘドロの敵の目の部分に命中し、ヘドロの敵は怯む。そのスキを緑谷は逃すことなく、爆豪を助けるべく、ヘドロをかき分ける。その光景を見て頼光は少し笑い再び全速で走り出す。

 

「おい!君‼︎お前も危ないぞ‼︎」

 

「お前でもどうにもならないぞ‼︎」

 

頼光はそんな言葉を無視して、走り出す。目の前で友達が命をかけているのに、それを黙って見てられるほど頼光は大人しくない。

 

「行くぞ……!」

 

自身の肉体に雷を纏わせ、超高速移動を可能とさせ、電光石火の如く、走り出す。

 

「なんだ!?あの速さは!?」

 

緑谷にめがけ、ヘドロの敵の腕が伸びる

 

「もう少しなんだから、邪魔するなあ!!!」

 

その腕はその攻撃は緑谷に届くことは無かった。雷を纏った頼光が右腕を盾にして、防いでいたのだ。

 

「豊穣くん!」

 

「いい物見せてもらったぜ出久!やりゃできるじゃねえか!!今この場の誰よりもヒーローらしかったぜ!」

 

頼光はヘドロのその腕を振り振り払う。

 

「お前も邪魔するなら!吹っ飛ばす!」

 

再びヘドロの敵は腕を振るう。今度は頼光を目掛けて、吹き飛ばすつもりで全力で振るう。

 

「はっ!やってみなよ、(ヴィラン)ちゃん」

 

左手をヘドロの敵に向ける。指先に、青白い閃光が輝いていた。その個性の名を示すもの。分厚い鋼板を断ち切る、アーク溶断にも似た灼熱の雷光。ナイフぐらいまで伸びた青白い閃光を腕に合わせ振るう。その腕は切断される、普通の人なら重症だが、流動体なら問題は無い。だが痛みがない訳では無い。

 

「ウワァァァァ‼︎イテェぇぇぇ⁉︎」

 

「よし今だ‼︎」

 

頼光は出来たスキをつき、緑谷と爆豪を両手を使い引っ張り出し、後ろに飛ぶ。

 

「あとは任せたぜ!ヒーロー!」

 

「人に諭しておいて己が実践しない何て!!!」

 

入れ違いにヒーローが敵に向かい拳を振るう。

 

「プロはいつだって命懸け!!!!」

 

血を吐きながらも、その拳を振り下ろす。そのヒーローは誰もが知る平和の象徴

 

「DETROIT SMASH!!!」

 

拳一つが生み出した風圧は上昇気流となり、天候を変えた主の名前は

 

「右手一本で天気が変わっちまった!!!」

 

「すげえええええこれが……オールマイト!!!」

 

オールマイト。平和の象徴でNo.1のヒーローだった。

 



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受け継がれてきた個性

そのあと、散った敵はヒーロー達に回収された。そして無事警察に届けられた。緑谷と頼光はヒーロー達にものすごく怒られた。

 

「君達が危険を冒す必要は全く無かったんだ!!そして金髪の君だ‼︎無許可で個性を使ったらダメだと知ってるだろ!?」

 

人質解放した頼光はただ黙って怒られた。非常時とは言え許可なく個性を使用したのだ。怒られることくらい覚悟の上での行動だったのだ。後悔は無いが反省はするどの道を選んでも怒られただろうと、頼光は内心そう思ってた。逆に助けられた勝己は称賛されていた。

 

「すごいタフネスだ!それにその個性!!プロになったら是非事務所の相棒に!!」

 

だが、その爆豪の表情は浮かないものであった。時間が経ち日が傾き、夕方に差し掛かる。緑谷と頼光はヒーローの説教を終え二人で帰っていた。

 

「本当驚いたぜ、まさか俺より先に出久が飛び出すなんてな。驚いて足が止まったっての」

 

「ははは……でも僕一人じゃどうにもならなかったよ、助けてくれてありがとう豊穣君」

 

「気にすんな、友達二人を見捨てることを思えば、説教されても安いもんだぜ」

 

手をひらひらとして、気にするなと言う頼光。すると

 

「デク!!!ビリビリ!!!」

 

声に反応して後ろを見ると、そこには爆豪が居た。拳を握りしめ、俯きながら、言う

 

「俺は……テメェらに助けなんか求めてねぇぞ……!救けられてもねぇ!!あ!?なあ!?一人でやれたんだ。見下してんかねぇぞ俺を!!クソが!!」

 

言うだけ言って、踵を返し帰っていく。その光景を見て緑谷と頼光の思ったことは

 

「「(タフネス……!)」」

 

同じことだった。二人が帰ろと足を動かそうとした瞬間

 

「私が来た!!」

 

前の曲がり角からオールマイトが出てくる、緑谷と頼光はそれに驚きビクってなる。

 

「オールマイト!?何でここに……」

 

「さっきまで取材陣に囲まれてたんじゃねえのか?」

 

そう頼光が言うのに、オールマイトはさっきまで取材陣に囲まれていたのだ。

 

「抜けるぐらいワケないさ!!何故なら私はオールマゲボォッ!!!」

 

オールマイトは吐血しムキムキからガリガリになってしまう。緑谷はわー!!と慌てる。頼光は目を見張り驚く

 

「なっ……!?オールマイトがガリガリ!?」

 

「あっ!?」

 

そう、オールマイトの秘密を知っている人物は少数だ。知られては行けない秘密ではある。とある事で緑谷はそのことを知ったのだ。だが、頼光はその事を知らない。驚くのも無理はない。

 

「おっと、説明はあとにしたいのだ。先に話をさせてくれるかな?」

 

オールマイトは口元の血を拭い、話を進める。

 

「話だが、少年。礼と訂正……そして提案をしに来たんだ」

 

「へ?」

 

オールマイトが口にしたのは礼と訂正と提案と言ったのだ。緑谷はキョトンとする。

 

「君がいなければ…君の身の上を聞いていなければ、口先だけのニセ筋となるところだった!!ありがとう!!」

 

「そんな…いやそもそも僕が悪いです!仕事の邪魔をして…"無個性"のくせに生意気なこと言って……」

 

言葉が続く度、緑谷は顔を逸らした。頼光はそれを見ているしかない。だがオールマイトの言葉は

 

「そうさ!!あの場の誰でもない小心者で"無個性"の君だったから!!!私は動かされた!!トップヒーローは学生時代から逸話を残してきている……彼らの多くが話をこう結ぶ。『考えるより先に体が動いていた』と!!」

 

その言葉を聞いて緑谷は俯く。胸を抑え、涙を零す。緑谷の頭の中では母の言葉が流れていた。

 

『ごめんねぇ出久ごめんね……!!』

 

謝る母の言葉。

 

「君もそうだったんだろう!?」

 

「……うん……」

 

涙を零しながら、泣き崩れる緑谷。緑谷出久が望んだ言葉は謝罪では無く違う言葉だった。それは

 

「君はヒーローになれる」

 

No.1ヒーローの言葉。そして緑谷出久が最も言って欲しかった言葉だった。オールマイト話はここからだった。

 

「君なら私の"力"受け継ぐに値する!!」

 

そう本題は、オールマイトの個性の話だった。写真週刊誌などは幾度も怪力やブーストなど書かれインタビューでは爆笑ジョークで茶を濁してきたオールマイトの個性。それは聖火の如く引き継がれてきたものだった。オールマイトの個性は個性を譲渡する個性。その名は

『ワン・フォー・オール』それは救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶。オールマイトがこれを緑谷に託すのは、"無個性"でただのヒーロー好きな緑谷があの場では誰よりもヒーローだったからだ。

 

「まぁしかし君次第だけどさ!どうする?」

 

「出久こんなチャンス逃すわけないよな?」

 

頼光は確認するかのように緑谷に質問する。緑谷が涙を拭い

 

「お願い…します」

 

その言葉を聞いてオールマイトは笑いながら

 

「即答。そう来てくれると思ったぜ」

 

そして頼光もオールマイトの現状をそのあとで聞いた。五年前に敵の襲撃を受けて、前のようなヒーローとしての活動は一日三時間まで短縮されたことを知った。

 

「そんな事になってたなんてな。オールマイト」

 

「この事は他言無用で頼むよ少年!」

 

「おう、俺もバカじゃねぇ。そんなことするメリットが無いしな。その代わり出久を頼んだぜ?オールマイト」

 

「勿論そのためのトレーニングは積ませるさ」

 

そう会話をして頼光は「任せるぜ」と言い立ち去る。その間際に

 

「出久、必ず物にしろよ。そして雄英高校行こうぜ」

 

「うん豊穣君!」

 

手を振り、帰宅するのであった。帰ってからする事は、トレーニングも大事だが、勉強もしなければならない。豊穣頼光の模試の判定はB判定。雄英高校を受けるにはA判定にしておきたいのが頼光の心情だ。

 

「あー。一緒に行こうと言ったが、勉強がこのザマなら少し危ういなぁ。普段なら勝己に頼ったらいいんだが、雄英目指している以上首を縦に振るわけねえか」

 

平時のテストとかは爆豪などに聞いて乗り越えてきたが、今回はそう言う訳にも行かない。頼光は溜息をつきながら、黙々と勉強をする事にした。個性については、どうすることも無い。加減して出す方法を慎重に繰り返し、精密に充電を出来るようになってるし。大出力を出す方が個人的に簡単なのだ頼光的には。そんなこんなんで、月日が進み夏休み。動ける服装で海浜公園に行くと。緑谷が泳いでそれをオールマイトが見ていた。

 

「オールマイト」

 

「うん?やあ久しぶりじゃないか豊穣少年!元気にしてたかな?」

 

「まぁな。勉強が少し嫌になって、体を動かしている所だ。体作りは基本だからな」

 

そう言い緑谷の方を見てみる。彼は必死に泳いで頑張っているのが伝わって来る。夏休みが入る前から、オールマイトのトレーニングが始まったであろう時期から授業中寝てしまう事があったり、走り込みしてるのを通りすがりで見たりと、並々ならぬ努力をしているのが分かる。頼光はフゥと溜息をつき。

 

「じゃあ俺はこの辺で、出久に負けたくないし俺も仕上げていかないと行けないからな」

 

「緑谷少年に伝えておくよ」

 

「しなくていいっての!」

 

笑いながら頼光は言い再び走り出す。

そして、自宅に戻り、個性練習部屋に行き個性を発動させ、雷を体全身に流す。ビリビリと言う違和感の後にその違和感が消えた。

 

「……雷光にはまだ遠い、だけど、これでトレーニングだな」

 

そう呟き、ストレッチを中心にトレーニングをし動き回る。縦横無尽に壁や天井を飛び回り、さらに出力を上げる

 

「さっきより段違い、だけどこれじゃあダメだ。まだ行ける」

 

先ほどと同じようにトレーニングをする。そして、ピタリと止まり、個性を発動をやめる。

 

「……ここでの練習はここまでだな。これ以上出力を上げるわけに行かねぇな。この部屋どころか、家ごと壊しかねねぇしな」

 

汗をタオルで拭い大きく息を吐き、椅子に座る。

 

「半年近くある……まだ出来ることはあるよな……出久だって頑張ってるんだろうし、俺が足踏みしてるわけには行かないよな」

 

そう言い再び体を動かし個性を使う。そしてあっという間に時が流れ。二月二十六日。受験の日を迎える。

 



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雄英高校入試

何とか間に合った……


頼光は地下鉄を乗り継ぎ四十分をかけ、雄英高校にたどり着いていた。

 

「(思ってたよりでかいな……雄英高校。ここで名だたるヒーローが学んだのか……いい経験が出来そうだ。その前に受からないといけないけどな!)」

 

頼光は闘志を内で燃やしていた。この日が来たと燃えていた。

 

「それにしても流石に三百倍の倍率は伊達じゃねぇな。一般入試の受験者多すぎだっつーの」

 

苦笑いしながら周りを見渡す。全国から雄英高校を受験する受験者が集まっている。ヒーローになる為にここに来ている。今この場は皆が皆ライバルなのだ

 

「まぁ、これぐらい競い合いがないと拍子抜けだよな」

 

口角を上げ、笑いながら足を進める。そして指定された席に座って、実技の試験の説明を待つ。そして時間が経ち

 

「今日は俺のライブにようこそ!!エヴィバディセイヘイ!!」

 

 

ーーシーン

 

みんな緊張しているのか、静まり返っている。頼光は落ち着いた様子でその状況を見ている。

 

「こいつはシヴィーー!!受験生のリスナー!実技試験の概要をプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!!」

 

返答は再び来ず静まり返る。

 

「ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ凄い……!!ラジオ毎週聞いてるよ感激だなあ。雄英の講師は皆プロヒーローなんだ」

 

緑谷は説明をしてくれているプレゼント・マイクに感激している。爆豪は頼光のとなりで

 

「うるせえ」

 

と呟く。頼光は机に肘を立て、手に顔を乗せてそれを見ている。

 

「入試要項通り!リスナーはこの後!10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」

 

「同校同士で協力はさせねぇってことか」

 

「そうみたいだな。会場違うみたいだ」

 

「ホ、ホントだ。受験番号近いのに会場違うね」

 

三人は各々の受験番号と演習会場を見る。各自違う会場だった

 

「見んな殺すぞデク。テメェを潰せねぇじゃねぇか」

 

「落ち着けよ勝己」

 

「黙っとけビリビリ」

 

演習場には3種類の"仮想敵ヴィラン"が多数設置されており、それぞれの攻略難易度に応じポイントを設けているらしい。各々なりの個性で"仮想敵"を行動不能にしてポイントを稼ぐそうだ。行動不能つまり動かないようにすればいいということだ、壊さなくともいいと言う。更に、配られたプリントには0ポイントの第4仮想敵ヴィランがギミックとして大暴れすると書かれていた。

 

「質問よろしいでしょうか!? プリントには4種類目の敵が記載されております!誤載であるなら日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!我々受験者は規範となるヒーローの指導を求めてこの場に座しているのです! ついでにそこの縮れ毛の君!さっきからブツブツと気が散る!物見遊山のつもりなら、即刻この場からさりたまえ!」

 

眼鏡をかけた少年が、緑谷を注視し睨みつける。緑谷は小さくなり「すいません」と謝る。

 

「オーケーオーケー受験番号7111君ナイスなお便りサンキューな!4種類目のヴィランは0ポイント!そいつはいわばお邪魔虫!スーパーマリオブラザーズやったことあるか!?あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に1体、所狭しと大暴れしているギミックよ!」

 

「避けて通るステージギミックか」

 

「ゲームみたいだなこりゃ」

 

「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしようかの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!更に向こうへ!PlusUltra!! それでは皆、良い受難を」

 

その後各自それぞれの受験会場に別れる。雄英の演習場は街そのものが出来上がるくらい広かった。しかもこれ規模が他にもあるのだ。

 

「雄英すげぇな。こんなに敷地があるなんてよ。流石は名だたるヒーロー達の母校ってだけはあるわな」

 

演習場の入口で準備運動をしながら呟く。頼光に実技試験での緊張なんてものは無く、ただターゲットをぶっ壊すだけと考えていた。他のことを考えるとしたら

 

「(出久のやつ大丈夫かなぁ……間に合ったんだろうけど、不安だな。勝己は心配する必要性は無いから大丈夫だろうな )」

 

友人の心配をしていたくらいだ。軽くストレッチをして体をほぐしていると

 

『ハイスタート!』

 

プレゼントマイクの突然の実技試験開始の合図が告げられる。

 

『どうしたどうしたあ!実践じゃあカウントなんざねえんだよ!!走れ走れ!!賽は既に投げられてんぞ!!?』

 

「そりゃそうだよな!」

 

反応が少し遅れたが、頼光は飛び出す。形的には先陣を切って走り出す。

 

『標的捕捉!!ブッ殺ス』

 

頼光の眼前に仮想敵が現れる。1ポイントのタイプだ。頼光は拳を振りかぶり

 

「まず1ポイント!」

 

そのまま拳を振り抜く。仮想敵は拳1発で軽々と破壊する。

 

「流石は1ポイント、軽くでも軽々と壊せるな。よし、試しはこの程度で……『電光石火』」

 

バチバチという音が数回なり、雷を纏う。黄色い電気が纏っているように見える。

 

「……精々楽しませてくれよ?なぁ!」

 

そして、頼光は演習場を駆け抜ける。

 

ーーーーモニター室

 

モニタールームでは各試験の様子が映し出されそれを今回の審査員のプロヒーロー達が見ている。そしてその中の一人スーツを着たネズミ口を開いた

 

「この入試は受験生にヴィランの総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地、そこからあぶり出されるのさ」

 

「状況をいち早く把握するための情報力。あらゆる局面に対応する機動力。どんな状況でも冷静でいられる判断力。そして純然たる戦闘力」

 

「市井の平和を守るための基礎能力がポイント数という形でね」

 

雄英高校の校長であるこのネズミの言葉に続くように、他の審査員も口を開く。

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

 

「まだ分からんよ。真価が問われるのはこれからさ!!」

 

そう口にしながら、審査員は怪しげなスイッチを押した。そのスイッチは

YARUKISWITCHと書かれていた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「数え間違いがなければ、50ポイントか、そこそこ稼いだのか?」

 

3ポイント仮想敵を蹴り砕き、呟く。その声に疲労は無く、余裕さえある。

 

「さて……時間はまだあるがどうするかな……やばそうなやつの手助けでもするか。まぁ、お節介かもしれないけどな」

 

そう言いながらながビルを飛び降り、着地と共に再びは電光石火で駆け抜けようとするが轟音が響く、音源の方を見ると、そこには巨大な仮想敵が居た。その近くいた受験者は蜘蛛の子を散らす様に逃げる。仮想敵は頼光の前を歩いていた。さらにその先の進行方向に瓦礫に足を挟まれた少女が居た。頼光はそれが見えた。そして助けるため力を入れる。

 

「さぁ、行くか!」

 

纏う電気が一瞬、より激しくなり次の瞬間には巨大仮想敵の先に移動し、少女の近くに立った。

 

「大丈夫か?」

 

「ちょっと足を挫いたみたい……」

 

「そうか、じゃあ少し待ってろ。俺があいつを倒すまでな!!」

 

腕を回して巨大仮想敵を見上げる頼光。その表情は楽しみにしてたと言わんばかりにやる気に満ち溢れていた。

 

「まさか、アレを倒すつもり!?」

 

「勿論そのつもりだ、手応えのない奴ばっかりで困ってたところだからな。せっかく大きいヤツが出て来たんだからな!」

 

巨大仮想敵は頼光を補足し、殴り掛かる。ビルほどに大きいそれの一撃。土煙が舞い、轟音が響き渡る。少女も目を瞑る。

 

「何だよこんなもんか。お邪魔は図体がでかいだけじゃねえか」

 

落胆の声が聞こえた。少女はゆっくり目を開け驚く。頼光は片手でその仮想敵の一撃を受け止めていた。

 

「んじゃま……倒すとするか」

 

手を離し、巨大仮想敵の腕めがけて蹴りを放つ。その威力は凄まじく、仮想敵の腕が音を立て壊れる。

 

「ま、試験にしては思いの外楽しめたぜ。じゃあな!」

 

指先から青白い閃光が輝いていた。灼熱の雷光。指先から伸びる雷光の溶断ブレードを五本の指から伸ばし、右腕を伸ばしブレードを展開しながら、握るまでも行かず指先の間隔を狭め、仮想敵をバラバラにした。そして溶断ブレードを消し、一息つくのと同時に

 

『終了ーー‼︎』

 

プレゼント・マイクによる、実技終了の知らせが響き渡った。

 

 

 

 

 




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合格発表

今回は短いです


入試を受けて一週間が経った。頼光は何も変わら無い日常を過ごしていた。変わってることと言えば、緑谷がぼうっとしていたくらいだろう。理由を聞くと、実技試験で1ポイントも取れていないという事だった。頼光はかける言葉をどうしたらいいのか分からなかった。

 

「あんなに頑張ってたのにな……何とかなってるといいんだけどな……」

 

自室のベットに仰向けで寝転がりながら呟く。頼光自身もそこまで余裕があるわけじゃない。実技に関しては、大丈夫かもしれないが、筆記が自分の中では危ういと思っているのだ。筆記の方は自己採点で、ギリギリスレスレの合格ラインに達していると思う。それが頼光にとって怖いものだ。実技だけで通るのなら、苦労はしないのだ。

 

「出久の心配だけじゃなくて、自分の心配もしなくちゃな。あー前日寝てしまったのが超痛いわ」

 

試験前日に頼光がしていたのは、個性の特訓だ。その後疲れ果てるまで特訓したまでは良かったのだ。汗を流したあと、ベットに横になり、目を瞑ったら……朝の7:30になっていた。地下鉄の中で予習や復習などを行った始末だ。

 

「考えても仕方ないけど、考えちまうよな」

 

そう呟き、頼光はポストの中を確認するため、外に出る。すると、雄英高等学校と書かれた封筒が入っていた。それを手に取り、家に戻る。

 

「いざ来ると、緊張するもんだな……だけど開けないと結果は知れない……覚悟決めるか」

 

フゥと一息をつき封を切る。中には書類と手のひらサイズの機械が入っていた。

 

「あ?なんだこれ」

 

その機械を机に置くと……

 

『私が投影された!!』

 

いきなりオールマイトが出てきた。それに驚き、封筒を見直す。見直せでも書かれているのは雄英高等学校と書かれた封筒だった

 

「雄英高校からだよな……何故オールマイトが」

 

驚きながらも笑いながら映し出された映像を見る。

 

『久しぶりだね豊穣少年!何故、私が投影されたのかって?ハハハ!それは私がこの春から雄英に教師として勤めるからさ!さあ早速、君の合否を発表しよう!』

 

「この街に来てたのは後継者探しと、雄英高校で教師をするためだったのか……」

 

何回か頷きながら納得する頼光。

 

『おめでとう!合格だ!筆記試験はギリギリだったが、実技は敵Pが50点に加え、秘密にされてた審査制の救助活動Pが45点!ヒーローは人命を救出してこそのヒーローだからな! 95点!入試次席で合格だ!次席の理由は筆記と合わせると、僅差で二位だったからさ』

 

「やっぱり、筆記が響いたか……次からは気をつけないと行けないよな」

 

今回のことを頼光は反省していた。だがそれより合格した事実が、嬉しかった。

 

『さぁ、来いよ!豊穣少年ここがのヒーローアカデミアだ!』

 

「ああ、行かせてもらうぜオールマイト!」

 

映像はそこで消えた。そのあと、頼光のスマホが鳴り響く。相手は緑谷だった。

 

「もしもし、なんだ?出久」

 

『あ!豊穣君!どうだった?』

 

「俺は次席で合格だ筆記が響いてな主席は逃した。出久はどうだった?」

 

「じ、次席合格!?とても凄いね!僕も合格したよ!」

 

「まじか!良かったな出久!また高校でよろしく頼むな!」

 

『うん!それじゃあね』

 

プツッ 電話が切れた。頼光は緑谷が受かっているのなら爆豪も受かってるだろうと。先の高校生活が楽しみになる頼光は個性練習部屋に向かい個性を発動させる。興奮する体を動かすため、その表情は楽しみという表情だった。

 




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入学編
個性把握テスト


この作品を見る時は頭を空っぽにしてみてください


受験に合格し春休みが終わり、入学の時期を迎える。雄英高校の制服に袖を通し、バッグを持ち。スマホを手に持つ。表示には着信ありの表示があった。頼光はその相手に電話する。

 

「もしもし?」

 

『もしもし、頼光か。遅れず起きたみたいだな』

 

「まぁな。それより、親父と母さんはもう出てるんだな?その時に起こしてくれても良かったんだけどな」

 

頼光は肩をすくませながら言う。電話の向こうは特に反応は無く。

 

『母さんは隣で寝ているよ。だからあまり大きい声では話せないが、自分が思うようにやりなさい。仕事で家を殆ど空けることの多いお父さんとお母さんだが、お前を応援している。さぁ、行くんだ。初日から遅刻は許さないぞ?』

 

「いっけね、じゃあな親父。生活費とか諸々頼んだぞ」

 

そう言い頼光は通話を切る。イヤホンを耳に入れて曲をかけ、駅に迎え歩き出す。通勤、通学ラッシュなのか、人は多かったが、満員電車という程ではなかった。最寄りの駅で降り、雄英高校まで歩く。道中歩いていると。

 

「あ、入試の時ウチを助けてくれた人」

 

「あ?」

 

背後から声をかけられ頼光は振り向く、そこには頼光が助けた少女がいた。容姿は髪型は短めのボブカットで耳には個性なのかイヤホンのプラグのようなものがある。

 

「あの時のか、無事に合格していたんだな。そう言えば足は大丈夫だったか?」

 

「うん。おかげさまで、軽い捻挫みたいなものだったから。大事にならなかったよ。それより、あの時は言いそびれたけど、助けてくれてありがとう」

 

「どういたしまして。互いに合格出来てよかった。そういや、自己紹介まだだったな、俺は豊穣頼光だ、好きなように呼んでくれたらいいぜ」

 

「ウチは耳郎響香。これからよろしく豊穣」

 

「ああ、よろしくな耳郎」

 

二人は自己紹介を済ませ再び歩き始める。雄英高校に着き門を通り、校舎に近づくと案内板などが置かれていた。そこにはクラス表と教室の場所が書かれていた。

 

「1-Aか……耳郎は何組だ?」

 

「ウチはA組。そう言う豊穣は?」

 

「俺もA組だ。知り合いが居るのは気が楽で助かるな」

 

「そうだね、知り合いが居るだけでも、気分が楽になるしね。ほら教室行こう」

 

耳郎に促されるまま教室に向かうため、足を進める。

 

「(出久や勝己はどのクラスに入っているんだろうな?)」

 

しばらく歩き進めると、1-Aと書かれた教室に辿り着く。その扉はバリアフリーなのか、とてつもなく大きかった。

 

「バリアフリーとは言えこれは大きすぎない?」

 

「異形系の個性持ちのためか?個性は様々だしな。にしてもでけぇ」

 

そんな事を呟きながら頼光は扉を開ける。大きさに反し扉は重くなかった。中には数人の生徒が座っていた。頼光は耳郎とわかれ自分の席に座ろうとすると

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」

 

「思わねーよ、てめー!どこ中だよ端役が!」

 

頼光にとって聞き覚えのある声が聞こえる。頼光の前の席の人物に頼光は見覚えしかなかった。

 

「(勝己も同じクラスか、まぁ予想通りに受かってるわな。もう一人は出久に注意してたやつだったな。結構面白そうなクラスだな)」

 

面白そうだと考えていた。そんな事を考えていたら、緑谷が来ていて女の子と話していた。頼光はそれを見て後でからかおうと考えて居たところ

 

「お友達ごっこしたいなら他所へいけ。ここはヒーロー科だぞ」

 

『(なんかいるぅ~!!)』

 

寝袋に包まり、携帯栄養食品のゼリーを啜っている明らかにあやしい男が教室の入り口に寝転がっていた。

 

「はい、静かになるのに8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」

 

『(先生!!?)』

 

皆は黙っているが中では似たようなことを考えているようだ。頼光も例に漏れずその一人だ。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

『(担任!!?)』

 

担任こと相澤先生は寝袋をガサゴソとあさり学校指定の体操服を取り出し

 

「早速だが、体操服これ着てグラウンドに出ろ」

 

そして男女で更衣室に分かれ指示通りに体操服に着替え、グランドへ出る。

 

ーーーーーグラウンドーーーーー

 

 

『個性把握テストぉぉぉ!!!?』

 

「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまたしかり。ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈中学の頃からやってるだろ?"個性"禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まあこれは文部科学省の怠慢だよ」

 

そんな事を言いながら生徒達を見る。

 

「爆豪、中学の時ソフトボール投げ何mだった」

 

「67m」

 

相澤先生は爆豪にボールを投げ渡し、続ける

 

「じゃあ"個性"を使ってやってみろ、円から出なきゃ何をしてもいいよ。思いっきりな」

 

爆豪は軽くストレッチをした後、振りかぶって

 

「んじゃまぁ……死ねぇ!!!」

 

球威に爆風を乗せて投げる。勢いよく飛んでいくボールを眺めながら、緑谷と頼光は

 

『(……死ね?)』

 

ヒーローらしからぬ掛け声でボールは投げられた。そしてボールが地面にバウンドし転がる。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

携帯端末には705.2mと表記されていた。

 

「なんだこれ!!すげー面白そう!」

 

「705mってマジかよ」

 

「個性思いっきり使えんだ。さすがヒーロー科!」

 

「面白そう…か。ヒーローになるための3年間そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

 

先ほどまでの気怠げな印象はなくなり、冷たい氷と鋭いナイフを背中に突きつけられているものを感じる。

生徒達も、冷や汗を流し黙り込んでいた。

 

「よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」

 

 『はああああぁぁぁ!!??』

 

 

「生徒の如何は俺たちの"自由"。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

「最下位除籍って……!入学初日ですよ!?いや初日じゃなくても」

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵たち……いつくるかわからない厄災。日本は理不尽にまみれている。こういう理不尽を覆していくのがヒーロー。これから3年間雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。更に向こうへ…『PlusUltra』さ。全力で乗り越えてこい。こっから本番だ」

 

人差し指で挑発するように言う相澤先生。そしてクラスメイトたちの表情も変わる。そんな中個性把握テストが始まる。

 

第一種目 50m走。

頼光は屈伸をしながら準備をする。今の所最速は飯田の3秒04という記録だ。

 

「んじゃまぁ、行くか!」

 

雷を纏い構える。黄色い電光を纏っているようにも見えるそれは、頼光の準備が整っている合図でもある。

 

『START!』

 

スタートが告げられ走り出す。バチっという音を立て走り抜ける。

 

『1秒55』

 

「すげー記録塗り替えやがった!!」

 

「超えられてしまったか!」

 

走り抜けた頼光はフゥと息を吐き、一息をつく。それと同時に電光石火を解く。

 

第二種目 握力。握力の測定器を右手で軽く握り息を吐き。頼光はそれなりの力を入れて握力測定器を握る。数値は

 

『850kg』

 

障子の540kgを上回る記録をたたき出した。

 

「すげ!あんたゴリラかよ!!ゴリラ以上だよ」

 

「俺はゴリラじゃねぇよ!」

 

ゴリラかよという発言にゴリラじゃないと返す頼光。個性を使い力をあげていたのだ。

 

第三種目、第四種目は目立った記録は出せなかった。第三種目は溶断ブレードを使って飛ぼうと思ったのが、ミスって上に噴射しすぐに落ちてしまった。第四種目はいざ使い出すと以外にうまくいかなかった。そして第五種目ボール投げ

 

「セイ!!」

 

緑谷と話してた女子が投げたボールはフワーっと飛んでいく。勢いという勢いは無いが飛んでいき。携帯端末の記録は(むげん)を表示した。

 

(むげん)!?すげぇ!!(むげん)が出たぞ!!!」

 

頼光はそれを見て笑いながら

 

「マジかよ!?このあとどんな記録出ても霞むじゃねぇか」

 

自分の番が回ってくるまで待っていた。

言葉と裏腹にその目はやる気があり、腕を回していた。そしてその番が回ってくる

 

「ぶっ飛べ!!!」

 

雄叫びと共に投げ出されるボールは勢いよく飛んでいく。個性で強化された純粋な力で投げ飛ばした。記録は

 

『980m』

 

「すげぇ!(むげん)に劣るけどすごい記録出たぞ!」

 

「才能マンだ才能マン!」

 

頼光の番が終わり、ボール投げの順番は緑谷の番となったが記録は46m

 

「(まだ、制御出来ていないのか?そりゃ時間は短いからしかた無いけど、このままだと除籍だぞ!?)」

 

緑谷の記録に頼光は焦っている表情を浮かべる。緑谷は自身の手を見つめながら

 

「今確かに使おうって……」

 

「個性を消した。つくづくあの入試の試験は合理性に欠く。お前みたいな奴も入学できてしまう」

 

そこで言葉を発したのは相澤先生だった。先程までとは雰囲気が違い、髪が逆立ち、目を見開いて緑谷を見ていた。

 

「あのゴーグル……そうか、イレイザーヘッド!」

 

「イレイザー?俺…知らない」

 

「名前だけは見たことがある!アングラ系ヒーローだよ」

 

頼光もイレイザーヘッドというヒーロー名に聞き覚えはない。それより緑谷だ。今は指導を受けているみたいだが、見方によれば除籍宣告されているようなものにも見えた。

 

「個性は戻した…ボール投げは2回だ」

 

相澤先生は目を閉じ個性を解除する。頼光は飯田の近くに行き聞く

 

「なぁ、お前は見てたんだろ?入試の時の出久を」

 

「ああそうだが、俺の名前はお前ではない。俺には飯田天哉という名前があるんだ。……彼は少女を助けるために0P敵に突っ込んで0P敵を殴り倒したんだ!……そのあとは骨が折れて酷い怪我だった」

 

それを聞いた頼光はなるほどと頷き緑谷の方を見て言う

 

「そうか、0Pをはねのけるのなら、行けるだろ。あいつだってヒーロー目指しているんだ、この程度の困難超えられないわけがない」

 

信頼するように言う。そして緑谷もそれに応えるかのように、指先だけに個性を発動させ、ボールを投げる。記録は705mとヒーローらしい記録だ。

 

「先生……まだ動けます」

 

腫れ上がった指の痛みを堪えながらも、行動不能になってないと言う緑谷。最小限の負傷で、最大限の力を引き出したのだ。

 

「やっとヒーローらしい記録出したよー」

 

「指が腫れ上がっているぞ、入試の時といいおかしな個性だ、ビリビリ君は何か知らないか?」

 

「ビリビリって俺のことか、俺は豊穣頼光だ、以後よろしくな飯田。そうだな、出久の個性は俺も見たことがあまり無いから詳細なんて俺も知らない」

 

オールマイトの秘密をいう訳にはいかないし、緑谷の個性についても話すわけに行かないので、ある意味事実な見たことがないと言う。

 

「どういうことだこらワケを言えデクてめぇ!!」

 

「うわああ!!!」

 

爆豪が個性を発動させながら緑谷に突っ込む。がそれは相澤先生の個性と捕縛武器によって阻止される。そして残りの種目の終える。頼光が残りでいい記録を出せたのは持久走がトップで走り抜けた事くらいだ。頼光の結果は第二位にくい込んだ。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

 

相澤がポツリと衝撃の一言を落とした。理解が追い付かないA組全員が口を開けてポカンとしていた。

 

「君らの個性を最大限引き出す合理的虚偽」

 

「はぁああああああああ!?」

 

みんな驚く中、特に緑谷の驚きっぷりは群を抜いていた、頼光はそれを見て吹き出しそうになった。

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ…」

 

「そゆこと。これにて、終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類があるから戻ったら目を通しておけ。後、緑谷は婆さんの所に行って指を治してもらえ。明日からもっと過酷な試練が目白押しだ」

 

そう言い、保健室の利用書を緑谷に渡す。そして担任が言い出した個性把握テストは幕を下ろした。そして下校

 

「豊穣、駅まで一緒に帰ろう」

 

「いいぜ、せっかくだしな」

 

頼光と耳郎は駅まで一緒に帰っていた。

 

「それにしても、いきなり個性把握テストで、最下位は除籍とか勘弁して欲しいよね。ウチ内心怖かったんだから」

 

「合理的虚偽のおかげで誰も除籍にはならなかったけど、初日にやることじゃねぇよ」

 

今日の一日について話していた。

 

「それにしても、豊穣凄いよ。個性把握テストで二位なんて」

 

「ありがと。まぁ、でも、次は一位とる」

 

その後も二人は適当な話題で話をしながら帰っていた。

 

 

 

 




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実戦訓練

遅れまして申し訳ございません!


個性把握テストを受けた次の日から、普通の授業が始まる。午前は必修科目の英語等の授業がある。英語の担当はプレゼントマイクだ。

 

「んじゃ次の英文のうち間違っているのは?おらエヴィバディヘンズアップ、盛り上がれ――!!」

 

授業自体はとても普通である。生徒の大半は普通だ……と考えたことだろう。頼光は欠伸をしながらもノートに書き写していた。昼は大食堂で一流の料理を安価でいただくことが出来る。頼光はコンビニで買ったサンドイッチを食べ適当に済ませていた。

 

そして昼からの授業。大半の皆が待ちに待ったヒーロー基礎学の時間。担当の先生は

 

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」

 

高笑いとともに教室の扉を開けるオールマイト。オールマイトの登場に皆が盛り上がる。

 

「オールマイトだ!!すげえや本当に先生やっているんだな…!!!」

 

「しかもあのコスチューム銀時代のだ!!」

 

「画風が違いすぎて鳥肌が……!」

 

意気揚々と教壇に立ったオールマイトは力を溜めるポーズを取りながら

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為様々な訓練を行う科目で単位数が最も多いぞ!!」

 

今日の課題が書かれたプレートを力強く突き出す。そこには『BATTLE』と書いてあった。

 

「早速だが、今日はコレ!戦闘訓練!!」

 

「戦闘……訓練……!」

 

「そしてそいつに伴って……こちら!入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた…戦闘服コスチューム!!」

 

『おおお!!!!』

 

「着替えたら順次グランド・βに集まるんだ!! 」

 

『はーい!!!』

 

そして各自が自分達の戦闘服に着替える。そしてグランドに集結する。

 

「格好から入る事も大事だぜ、少年少女!自覚するんだ、今日から君達はヒーローだと!」

 

頼光の戦闘服は黄色と黒を基調としたぴったりとした上着とズボンを着用し、肩にはストールを纏って穴の空いた手袋をつけている。

 

「要望通りのやつだな」

 

戦闘服を気に入ったのか楽しそうに呟く。ふと後ろを見ると緑谷が走ってきた。その戦闘服を見て頼光は口元を抑える

 

「ぷっ……分かりやすいぞ出久」

 

「わ、笑うこと無いじゃないか。」

 

「わりぃわりぃ。でも似合ってるぜ」

 

フゥと息を吐き出久の戦闘服を褒める。出久はありがとうと言う。

 

「あ、デクくん!?かっこいいね!!地に足がついた感じで」

 

「麗日さ……うおお……!!」

 

そこにはSFチックな戦闘服を来てバイザーが着いたヘルメットを被っている麗日が居た。

 

「えーと、麗日だっけ?すげー戦闘服だな」

 

「えーと確か、ビリビリ君だよね!」

 

「ビリビリって……確かに飯田が言ってけど、俺は豊穣頼光だ、出久と勝己…爆豪と同じ中学出身だ、よろしくな。」

 

「よろしくなー。それにしても豊穣君の戦闘服って凄い軽装やね」

 

「それ僕も思ったよ、豊穣君の個性は電気系と増強系の複合のはず。服装からそれをサポートする装備があるとは思えないし、でも見ただけではわからない何かが……」

 

ブツブツと一人で考察を立てていく。頼光は肩を落とし麗日は少し驚く

 

「出久いつもの癖が出てるぞ。考察もいいが、そろそろ説明とか始まると思うから聞いとけよ」

 

「あ、ごめん」

 

「うんうん、良いじゃないか!全員カッコいいぜ!」

 

「先生!ここは入試の演習場ですがまた市街地演習を行うのでしょうか!?」

 

ロボットみたいな戦闘服に身を包んだ飯田が先生に質問する。

 

「いいや、もう二歩先に踏み込み屋内の対人訓練さ!!敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪敵の出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売……真に賢しい敵は屋内にひそむ!!君らには『敵組』と『ヒーロー組』に別れて二対二の屋内戦を行ってもらう!!」

 

「勝敗のシステムはどうなっているのでしょうか?」

 

「ぶっ飛ばしても良いんすか?」

 

「また相澤先生みたいな除籍とかは‥‥?」

 

「別れ方とはどのように決めるのでしょうか?」

 

「んんん〜〜〜聖徳太子ィィ!!」

 

オールマイトはポケットから紙を取り出しそれを見る

 

「状況の設定だが、『敵』が『核兵器』を隠していて『ヒーロー』はそれを処理しようとしている!『ヒーロー』は制限時間内に『敵』を捕まえるか『核兵器』を回収する事。『敵』は制限時間まで『核兵器』を守るか『ヒーロー』を捕まえる事」

 

そう説明しどこからともなく箱を取り出し

 

「コンビ及び対戦相手はクジだ」

 

「適当なのですか!?」

 

飯田がツッコミを入れるが

 

「プロは他事務所ヒーローと急造チームアップすることが多いし、そういうことじゃないかな?」

 

と考えられることを言う。それを聞いた飯田は

 

「そうか!先を見据えた計らい…失礼しました!」

 

オールマイトは笑いながら左拳を突き上げ

 

「いいよ!!早くやろう!!」

 

そして、クラス全員がクジを引く。頼光は『I』というクジを引いて尾白猿夫という生徒とコンビになった。そして第一戦目はヒーロー側は緑谷出久と麗日お茶子に対してヴィラン側は爆豪勝己と飯田天哉となった。頼光はその組み合わせに眉をひそめた。クジによる組み合わせで決まったため運なのだが、早速あの二人がぶつかると思うと頭が痛いものだ。

 

「(まじかよ、いきなり何でもあの組み合わせかよ。勝己の事だから、あんなに無個性とバカにしてた出久が実は個性がありました、なんて思えば、見下してたと解釈しかねぇよな) 」

 

大きくため息をつき頭を横に振る。いざ訓練が始まると。派手で危険なものとなった。怪我を恐れるなとオールマイトは言っていた。言っていたが爆豪の緑谷を殺さんとする勢いで攻撃し建物の一角を吹き飛ばすほどの爆破をも使って緑谷を追い詰めたが。緑谷と麗日は機転を利かせて、緑谷が下から拳を突き上げその衝撃でう麗日のいる所まで衝撃を貫通させ、麗日が瓦礫を柱で打ち、飯田が怯んでいるスキに核兵器に回収タッチする事に成功。緑谷・麗日チームの勝利となった。

そして第2戦はヒーロー側は轟焦凍と障子目蔵に対してヴィラン側は豊穣頼光と尾白猿夫だ。訓練だが実践の気持ちでやるように言われた、が先程の訓練の様子を踏まえてやりすぎないようにと注意も促された。そして頼光は建物内へ入る。そこでコンビの尾白が話しかけてくる。

 

「よろしくな、豊穣。俺の個性は見ての通り『尻尾』だ、あとは武術に心得がある。前衛は任せてくれ。豊穣の個性はなんだ?上鳴と似た個性と言うのは分かるんだが……」

 

「俺の個性は『トール』北欧の神様と同じ名前の個性だな。簡単に言えば、雷と力自慢だぜ」

 

「複合個性か!それにしても神と同じ名前の個性って強個性じゃないか!」

 

頼光の個性を聞いて驚く尾白。それよりも、と言い言葉を続ける

 

「対戦相手だが、轟と障子だったよな。取り敢えず、やる事は各個撃破だ、俺達はコンビとなってるが、そこまで互いを知ってるわけじゃねぇからな。轟の個性は昨日のやつを見る限り、分かるよな?」

 

「ああ、氷とそれを溶かしていたから熱もあると考えた方がいいな、障子は腕を増やして握力測定500kg出てたよな」

 

頼光は尾白の言葉に「うん?」と?を浮かべる

 

「待ってくれ尾白。轟が氷を溶かしていたのか?」

 

「見てなかったのか?左手で溶かしていたぞ?」

 

頼光はそれを聞き面白いことを聞いたと言う表情を浮かべる。

 

「轟は氷も使えて溶かせるのか、熱関連の個性か?……ヒーローチームに核を回収されないようにしないとな……核……。尾白!初手の氷には気をつけろ!氷なら核に特にダメージなく俺たちを無力化できるはずだ!」

 

「わ、分かった!」

 

面白がっていた表情は消え、真剣な表情で尾白に危険を伝える。尾白もそれを分かったと言う。その直後建物が凍る

 

 



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雷と氷

「案の定初撃で氷来たか!そっちは大丈夫か?」

 

「ああ、読んでいたおかげでなんとかなった!」

 

二人は間一髪凍結に巻き込まれることなく回避に成功した

 

「この部屋だけじゃなくこの速さなら、建物全体だろうな!」

 

轟の凍結を警戒していた、いたのだが、あまりにも早く建物全体を凍らせるなんて予想外だった。

 

「この部屋の状態は悪いな、尾白もう一度飛んでくれ」

 

そう言うと頼光は雷を迸らせる。その雷は部屋全体の氷を砕く。

 

「ありがとう豊穣。これで動けるようになったぞ!」

 

「ああ、あとは手はず通りに、俺は轟の迎撃に行く。核の防衛頼んだぞ!」

 

そういい頼光は轟を迎え撃つため、核の部屋から出る。一方、モニター前のオールマイトとクラスメイトは轟が建物を凍らせた影響で寒さに震えながら轟を賞賛していた。音声はオールマイトにしか聞こえていないが、モニターには訓練している四人がモニタリングされている

 

「仲間を巻き込まず核兵器にもダメージを与えず尚且つ敵も弱体化、敵チームが予測して回避しなかったら、決着はついていたかもね!」

 

「最強じゃねぇか!!俺は氷を無理に引きはがすことは出来なくはないが、瀬呂はどうだ?」

 

「俺は無理かも」

 

オールマイトの言葉に切島と瀬呂のコンビは難しいそうに考える。他のコンビもどう切り抜けるか考えてみるが、難しい顔をする。

 

「見たまえ!轟少年と豊穣少年がぶつかるぞ!」

 

「氷対雷!昨日のテスト三位と二位の戦いだ!熱くないわけないぞ!」

 

モニター前はざわざわと騒ぎ出す。注目の一戦が始まるのだから。

 

3階のに登る階段で頼光は仁王立ちし2階から上がってくる轟を待ち構えていた。だがそこには障子の姿は見えなかった。

 

「どうやって切り抜けたか知らねぇが、あっさりといやがるな」

 

「切り抜け方は案外力技だぜ?読んでいたが、注意し始めた瞬間にくるもんだから焦ったぜ」

 

ヒヤヒヤしたと手をぶらぶらとする頼光。

 

「こちら轟と会敵。今から戦闘に入る、だが障子の姿は見れない、注意されたし」

 

通信機からは『了解、轟は頼んだぞ』と尾白から返ってくる。轟は右手から冷気を出し、頼光は全身から電気を迸らせる

 

「…行くぞ」

 

「おう、いっちょやろうか」

 

先手を仕掛けたのは轟だった。右足からノーモーションでの冷気の放出し攻撃をする。頼光は左腕に雷を纏いそれを放つ。両者の攻撃はぶつかり合い、相殺され、爆発し煙で視界が塞がる。轟は舌打ちをして警戒する。が

 

「いつまで階段見てんだよ!」

 

轟は引っ張られ、二階の通路めがけて投げ飛ばされる

 

「くっ!?」

 

轟は凄まじい勢いで投げ飛ばされるも、受け身を取り階段と通路の繋がる道を見る。煙の中から、電気を纏った頼光が現れる。

 

「階段の踊り場もいいけど、やっぱり少し広い通路の方がいいよな」

 

右手の指先からバチバチと音を立て青白い閃光が輝いていた。長さは二十センチ程伸ばし、轟に迫る。轟は右手を振るい氷を出す。今度は先程よりも強めだ。頼光も溶断ブレードをぶつける。拮抗するが物量で勝る轟が徐々に押し始める。

 

「はっ!そう来なくちゃなぁ!!オラァ!!」

 

意気揚々と叫ぶ頼光。それに呼応するかのように溶断ブレードが膨張する。それは氷を溶かしながら貫通し、轟に迫る。轟は舌打ちをしながら、転がるようにして曲がり角に避ける

 

「(あれだけの威力の物を出すには、それなりのリスクもあるはずだ。だが、見た感じそれが分からないな。それに、あれが伸びる距離が奴の射程距離のはず。今がもし最大じゃないとすると厄介の一言に尽きるな)」

 

曲がり角に入るのを見て、頼光は溶断ブレードを20センチまで縮小させる

 

「(やっぱり閉鎖空間じゃ前後にしか使えねぇ。接近戦に持ち込む方が手っ取り早そうだ。氷ならいくらでも避けようがある)」

 

そう考え、頼光は走り出す。行き先は勿論轟のいる曲がり角だ。轟も来ることはわかっているため、飛び出し、攻撃に移る。足から手で出した威力を上回る氷を放つ。

 

「ッ!」

 

頼光は咄嗟に溶断ブレードを消し、雷をまとわせ、それを殴りつける。その衝撃は二人を吹き飛ばす。蒸気の煙でモニターは見えなくなる。

 

「轟の奴すげーな、あのブレードにビビることなく的確に対処して、自分から正面に立って、氷を出すなんてよ!!」

 

「それに咄嗟に対応する豊穣君も凄いよ!」

 

「(あのブレード、あの時より短い……まだ手の内を隠しているな豊穣は)」

 

クラスメイトはモニターを熱心に見つめ、時にコンビや友達と議論を交わす。耳郎はブレードを見て入試の時を思い出していた。

やがて煙は晴れ二人の姿が、はっきりと映し出される。互いに距離は離れているものの、頼光の右拳は完全に氷に覆われていた。轟は体に霜がおり尚且つ、腹部を抑えていた。

 

「……ハッハハハハハ!!!あーやられたぜちくしょう。右は使い物にならねぇな。無理に使えば一生モノだな」

 

高笑いし、楽しそうに頼光は言う。しかし真剣な表情になり

 

「轟、なんで左を使わねぇんだ?熱も出せば手札が増えるだろうによ。今思い出したんだが、轟と言えば、No.2ヒーローエンデヴァーの本名じゃねぇか。つまり、左は炎か」

 

「…黙れ、俺が誰の子供だろうとお前には関係ないだろう。俺は戦闘で左は絶対に使わねぇ。お前は…右だけで倒す」

 

エンデヴァーの話題を出した瞬間、轟の機嫌は目に見えて悪くなった。その言葉に頼光は眉をひそめる

 

「つまり、轟は炎を絶対に使わないという解釈でいいんだな?」

 

「ああ、それで俺はあいつを全部否定する」

 

頼光には轟の言うあいつというのが誰かとは分かった、それで何かしらの因縁めいたものもあることが分かった。頼光は溜息を付き言う

 

「はぁ……まぁ、仕方ないよな。何があったかまでは知り得ないし、それなりの覚悟を持ってやっているのも分かる……分かるけどよ……」

 

纏う雷光が一瞬強くなると同時に、轟の後ろを取った。轟はその速さに反応出来なかった。

 

「萎えた、今のお前じゃこれ以上の経験値を得ることはできそうにもねえ、早々に落ちやがれ」

 

真後ろから大きく振りあげた足で、轟の側頭部を薙ぎ払った。その強打と共に轟の意識が完全に断たれたのは誰が見ても明らかだった。一瞬の出来事だった。一呼吸の間に一蹴りで仕留めて見せた。

 

「こちら豊穣、轟を確保した。すぐにそっちに向かうぜ、腕の氷を何とかしたら行くぜ」

 

『ああ、頼んだ!出来るだけ早く来てくれ』

 

頼光は「ああ」と返事をし、左手で溶断ブレードを出し、右手の解凍を始める。

 

「蹴り倒したのは不味かったか……まぁ後でリカバリーガールのところ行くしかねぇな」

 

腕の氷を溶かしたところで

 

『ヒーローチーム、WIN!』

 

オールマイトの声が建物全体に響き渡り……頼光と尾白チームが敗北した。

 

頼光は尾白と合流し話す。

 

「すまない、障子に捕まって、核を回収された」

 

「気にするな、俺も片腕凍傷寸前だ。それにしても、階段付近は俺と轟が戦っていて、少なくとも注意はしていたんだがな。どこから登ったんだ?」

 

「最上階に行く手段は階段だけではない、と言う事だ」

 

障子が言葉を発する。しかし口からではなく、腕に作られた口からであった。

 

『さぁ、3人ともモニタールームに戻ってきてくれ。講評の時間だ!』

 

轟は気絶しているため、ロボットで保健室に運ばれた。そしてモニタールームにて

 

「今回のベストは障子少年だ。理由は核を回収しただけではなく、個性を利用し索敵をし、階段付近がダメと分かると外からの侵入を試みる決断力。情報共有も素晴らしかったぞ。尾白少年も豊穣少年と役割を決め果たそうとしていたし、障子少年から核をしっかし守っていたナイスファイトだったぞ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

モニタールームでオールマイトは障子と尾白で褒める。障子は無言ながらも深々と頭を下げた。尾白は嬉しそうに返事をした。

 

「うむ!では改めて第2戦を振り返っていこう!」

 

その後、第2戦の講評は滞りなく終わる。もう少し二人の間の連絡が大事だと頼光と尾白は思った。四戦目が終わる頃に轟が保健室から帰ってきて、それからの五戦目も終わった。

 

「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我も無し!しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!はいこれ、豊穣少年は後でリカバリーガールのところへ行き、右手の処置を受けるんだよ」

 

オールマイトは頼光に保健室の利用書を渡し

 

「それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば。皆は着替えて教室にお戻り!」

 

 オールマイトはそう言い残して急ぐように走り去っていった。頼光も腕の事があるので、リカバリーガールのとこに行き、処置を受け授業に出た。そして放課後。

 

「なぁ!放課後に今回の訓練の反省会しようぜ!」

 

「あ、それいいじゃん!やろうやろう!」

 

「お、いいねぇ。参加するぜ」

 

「あ、俺も」

 

そう言い出したのは切島だ。その呼び掛けに芦戸が手を挙げ参加する意思を表明しそれを皮切りに多くが参加することになった。爆豪は緑谷に負けたことを引きずってか、無言で帰り、轟も用事があるらしく帰った。

 

「なぁ!豊穣はどうだ?」

 

「勿論いいぜ?特に予定とかないしな」

 

頼光は断る理由もないから誘いを受ける。

 

「よし!じゃあ今回オールマイトに言われた事を踏まえて話し合っておきたくてな。自分では知り得なかった新しい発見とかあるかもだしよ。全員が全員言葉を交わしたわけでも無いだろうしな交流会も交えながら行こうぜ!」

 

切島の言葉から反省会は始まった。傍目から見たら騒いでいるように見えるが、内容はしっかりと訓練の振り返りをしていた。

 

「それにしても第1戦と第2戦が特に凄かったよな!何喋ってんのか分かんなかったけどよ!」

 

「緑谷はまだ保健室だしな。大丈夫かよアイツ……」

 

緑谷は爆豪との一戦から保健室に行き帰ってきていない。右腕は自身の個性でボロボロとなり、もう片腕は爆豪の爆破を受け酷い火傷を負っていた。クラスメイトとなり日は浅いが緑谷を心配している生徒は多かった。

 

「戻ってこなかったら後で保健室に見舞いに行こうぜ!第二戦だが尾白と障子には悪いけど、豊穣と轟の一戦が凄かったよな!」

 

「マジでそれな!最後はあっという間に終わっちまったけど凄かった!豊穣の個性はなんなんだ?」

 

上鳴の言葉で頼光に注目が集まる。頼光はそれに驚きながらも答える

 

「俺の個性か?俺の個性は『トール』だ」

 

『トール』と言う言葉に馴染みないのか大半の生徒は頭をかしげる。しかし、

 

「『トール』聞き覚えがありますわ。確か北欧神話に出てくる雷神のはずですわ。まさかその『トール』なのですか?」

 

そう言ったのは八百万だった。頼光はそれに驚き

 

「ああ、そうだ。北欧神話のNo.2の神様『トール』と同じ名前の個性だ」

 

教室が静まり返り

 

「マジかよ!?神様と同じ名前の個性か!すげーかっけぇええ!!」

 

「そりゃつえぇわけだ!!」

 

そのあとは少し盛り上がり、ギプスをつけた緑谷が戻ってきて、直ぐに爆豪を追いかけて行った。緑谷の無事も確認でき、反省会もある程度終わり、少しの雑談をし終えて解散となった。頼光は右手の包帯を見て、轟との一戦を頭に再生しながら、帰路についた。その表情はどこか面白そうに笑う笑があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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USJ編
暗雲の兆し


「教師としてのオールマイトはどんな感じですか?」

 

 オールマイトが雄英高校の教師に就任した事は大きな話題となった。連日朝雄英の正門の周りには多くの報道陣が押し寄せる騒ぎになっていた。

 

「あ?そうだな、見た感じ新米教師って感じでした」

 

「はい、ありがとう」

 

頼光は適当に答えマスコミをやり過ごし中に入る。マスコミはまた別の生徒を見つけそっちに行く。

 

「流石はナンバーワンヒーローだな。凄いことになってるな」

 

そんなことを呟きながら玄関口に向かう。すると後ろから声が掛かる

 

「豊穣おはよう」

 

「おっ?耳郎か、おはよう。外凄いことになってるな」

 

「そうだよね、ウチもオールマイトについて聞かれたよ」

 

「俺もだ、取り敢えず話しながら教室に行こうぜ」

 

「いいよ」

 

二人は他愛のない話をしながら教室に向かった。そしてホームルームにて

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。ブイと成績見させてもらった。爆豪、お前もうガキみたいなマネするな。能力あるんだから」

 

「……分かってる」

 

「で緑谷、腕壊して一件落着か。個性の制御が出来ないから仕方ないじゃ通さねえぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。それさえ出来ればやれる事は多い。焦れよ緑谷」

 

「はい!」

 

爆豪への行動の注意と緑谷の個性制御の注意を言う。爆豪は俯きながら、緑谷ははっきりと返事をした。

 

「さて、ホームルームの本題だが…急で悪いが今日は君らに…」

 

担任の言葉にまたテストではないかと大半の生徒は身構える。が

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

『学校っぽいのキター!!』

 

そう、まだこのクラスには学級委員長が居ないのだ。

 

「委員長やりたいですソレ俺!!」

 

「ウチもやりたいス」

 

「リーダーやるやるー!!」

 

普通科なら雑務というイメージがある学級委員長だが、ヒーロー科では集団を導くと言うトップヒーローの素地を鍛えられる役割でもある。

 

「静粛にしたまえ!"多"をけん引する責任重大な仕事だぞ…!『やりたい者』がやれるものではないだろう!!」

 

彼の案は民主主義に則った投票にしようということだった。だがその手は明らかにそびえ立っていた。担任の相澤先生は時間内に決まれば何でもいいと言うということで生徒達に任せた。結果は緑谷に三票獲得で委員長で八百万は二票獲得で副委員長となった。

 

「い、一票入っている…!」

 

飯田は自分に一票が入っていることに驚いていた。そして時間が流れお昼。緑谷達に誘われ今回は学食を食べる頼光だが

 

「意外や、豊穣君あんま食べへんのや」

 

「そうか?」

 

頼光が食べているのはサンドイッチと珈琲と言う軽食である。

 

「まぁ、昼からヒーロー基礎学だからな、満腹にしたら意識が飛ぶからな」

 

「つまり寝るんだね、豊穣君」

 

「うん。中学校時代もお昼を食べた場合ほとんど寝てたからね」

 

「学校は寝るところじゃないぞ豊穣君!」

 

「だから少なくしているんだろ?」

 

「ムムそうか」

 

何だかんだ混ざりながらお昼を食べていた。そして緑谷は委員長になった事に不安をこぼす。飯田はそれを励ましていた。その際に飯田の一人称が「俺」では無く「僕」になったのを三人は聞き逃さなかった。そして飯田の家は代々ヒーローをやっており、ターボヒーローインゲニウムは飯田の兄だと言う。緑谷にとってのオールマイトは飯田のインゲニウムということなのだろう。その時警報音が鳴り響いた

 

「警報!?」

 

《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください》

 

と言うアナウンスが放送された。

 

「セキュリティ3て何ですか?」

 

「校舎内に誰かが侵入してきたってことだよ!三年間で初めてだ!君達も早く!」

 

雄英生徒はパニックに陥り、後ろから後ろからと人が流れていく。頼光は人の流れに流され出口付近まで来ていた。

 

「いったいどういうことだ」

 

遠い目をしながら壁に押し付けられている。そんな時

 

「皆さん…大丈ー夫!!タダのマスコミです!何もパニックになる事はありません大丈ー夫!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」

 

その体制は非常口を連想させるものだが、それは短く端的に、目立っていた。それは皆が落ち着く要因になる。そして学級委員長の緑谷はその任を辞退し、新たな委員長として飯田を指名した。非常口飯田の名前はクラス内で使われるだろう。頼光は外を見ながら考えていた。

 

「(ただのマスコミがどうやって、ここに侵入するんだろうな……こりゃ何かあるだろうな)」

 

そして次の日、昼からのヒーロー基礎学の時間。

 

「俺とオールマイト、そしてもう一人に三人体制で見ることになった。」

 

「(なった?特例なのかな?)」

 

なったと言う言葉は緑谷は少し疑問に思った。

 

「ハーイ!何するんですか!?」

 

緑谷の隣の瀬呂が手を挙げ質問する。相澤先生はレスキューと書かれたカードを出し

 

「災害水難なんでもござれ、人命救助訓練だ!!」

 

「レスキュー……今回も大変そうだな」

 

「ねー!」

 

「バカおめーこれこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ腕が!」

 

「水難なら私の独壇場ケロケロ」

 

「おいまだ途中」

 

相澤先生は睨みつけ、騒がしくなっているのを注意する。手に持つリモコンを操作し生徒のコスチュームを出す。

 

「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れたバスに乗っていく。以上だ、準備開始だ」

 

各々が自分のコスチュームを手に取り着替える。そしてバスに乗るため駐車場に向かう

 

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」

 

 準備を済ませてバスが待機している場所へ行くと、飯田がキビキビとした動きでクラスメイトを並ばせていたのだが、いざ乗り込んでみるとバスの席は対面するタイプだったので意味は無く飯田は落ち込む。

 

「こういうタイプだったくそう!!!」

 

「イミなかったなー」

 

バス内では緑谷の個性がオールマイトに似ているという話になり緑谷は凄く取り乱していた。話の間に爆豪がキレて人気が出ないという話になって騒がしくなり、話がそれて行った。到着した場所の訓練場はまるでテーマパークのようなものだった。

 

「すっげーー!!USJかよ!!?」

 

「水難事故、土砂災害、火事etc。あらゆる事故や災害を想定し僕がつくった演習場ですその名も……ウソの災害や事故ルーム!!」

 

その説明をしてくれたのはプロヒーローの一人スペースヒーロー13号。宇宙服に似たコスチュームを着ていて素顔は見えないが、災害救助の場でめざましい活躍をしており、紳士的なヒーローとしても人気が高い人物である。

 

「えー、訓練を始める前に、お小言を一つ二つ…三つ……四つ……」

 

『増えている……』

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の個性は"ブラックホール"どんなものでも吸い込んでチリにします」

 

「その個性でどんな災害からでも人をすくい上げるんですよね」

 

「ええ……しかし簡単に人を殺せる力です皆の中にもそういう個性いるでしょう。超人社会は個性の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているように見えます。ですが一歩間違えれば容易に人を殺せる"いきすぎた個性"を個々が持っていることを忘れないでください。相澤さんの体力テストで可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したと思います。この授業では心機一転、人命のために"個性"をどのように活用するかを学んでいきましょう。君達の力は人を傷つけるためにあるのではない。救けるためにあるのだと心得て帰ってくださいな」

 

『(……13号カッコイイ)』

 

13号の話を聞いて大半の生徒は同じ事を考えた。

 

「以上!ご清聴ありがとうございました」

 

「そんじゃあ、まずは…。……?」

 

授業を開始しようとした瞬間相澤先生はなにかに気づいた。広場の噴水前の空間に黒いモヤが現れ徐々に大きくなっていく。それは渦を巻き大きな穴へと姿を変え、中から悪意に満ちた瞳が現れる。

 

「一固まりになって動くな!13号、生徒を守れ!」

 

さらにモヤが大きくなり、悪趣味な服装した集団が姿を現す。刃物を持った者もいる。見るからに普通じゃない。

 

「動くな!あれは敵だ!」

 

そう、敵が襲撃してきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 



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ヴィラン襲撃

「敵ンン!?バカだろ!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるだろ!」

 

上鳴が思わず言う。確かにヒーローの学校に襲撃してくるのはどうかしているだろうが、そこが問題じゃない。侵入したというところが問題なのだ

 

「先生侵入者用センサーは!」

 

「もちろんありますが……!」

 

そう警報音が鳴らないのだ。平常ならこういう事態になれば警報音がなるはずなのだ。マスコミが流れこんできた時のように、だが今それが鳴らないという事はそれを妨害する個性を持つ人物が向こうにいるということだ。轟は広場の方を見ながら

 

「現れたのはここだけか学校全体か……何にせよセンサーが反応しねぇのなら、向こうにそういうことが出来る個性がいるってことだな」

 

「だよな、校舎と離れた隔離空間にそこに入るクラス。あいつらはバカだろうけど、ただのバカじゃねぇよな。目的を以て用意周到に来てんだろうからよ」

 

頼光も轟の読みに同意見と言いながら、敵を観察する。

 

「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサー対策も頭にある敵だ電波系の個性が妨害している可能性がある。上鳴お前も個性で連絡試せ」

 

「っス!」

 

相澤先生は的確に指示を出して、階段の方に歩く。首にある捕縛武器に手をかける

 

「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら個性を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……!!」

 

緑谷はヒーローの事をよくまとめている。それでイレイザーヘッドの戦闘スタイルも分かるんだ。だが相澤先生は

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号、生徒を任せたぞ」

 

そういうと相澤先生は階段を飛び降り、大勢の敵へと真っ直ぐに向かう。個性を消されて混乱している敵を捕縛武器で絡め取り、更に打撃を与えて次々に沈黙させていく。消せない異議型も素手と捕縛武器で黙らせていく。

 

「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

 

「分析してる場合じゃない!早く避難を!」

 

「(あの武器と先生の個性……多対一が得意分野じゃねぇだろ。俺が考えるに……先生は正面切っての集団戦は好かない筈だ。生徒の俺達を安心させるためか、流石はプロヒーローだ)」

 

先生の考えを察したのか頼光は戦っている光景を見ていた。飯田に急き立てられ頼光は緑谷と並走しながら避難する。しかしその途中正面に黒いモヤが立ち塞がる

 

「初めまして。我々はヴィラン連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは平和の象徴、オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして」

 

敵連合と名乗るモヤが告げたのは衝撃的な事だった。オールマイトを殺しに来たというのだ。敵がここまで用意周到に襲撃してきたのだからその目的を達成させる算段をつけているはず、そう目的がオールマイトを殺すということであれば、それを出来るということにも繋がるのだ。

 

「まあ、それとは関係なく私の役目はこれ」

 

モヤが何かをしようとするが、その瞬間先手必勝とばかりに切島と爆豪が攻撃を仕掛ける。そこは13号の射線上でもある

 

「その前に俺たちにやられる事は考えてなかったか!?」

 

「ダメだ!どきなさい2人とも!」

 

「危ない危ない。そう、生徒といえど優秀な金の卵。散らして、嬲り、殺す」

 

二人の攻撃はまるで聞いている様子もなく、モヤは広がる。そしてそのモヤは生徒を飲み込む。

 

――USJ・山岳ゾーン――

 

黒いモヤにより頼光は移動させられた。そこは山岳ゾーンと言われる施設の一角だ。だが飛ばされたのは頼光以外にもいる

 

「なに……どうなったの?」

 

「ここは…?あ、豊穣さん!」

 

「あ、豊穣!お前もここにいたか!」

 

「耳郎に八百万それに上鳴もここに飛ばされたのか」

 

四人は合流を果たした。だが悠長に話している時間はない

 

「おっ? 来たぞ来たぞ!!」

 

「獲物の登場だ!」

 

敵に囲まれていた。頼光達にヴィラン達が周囲を囲んでいる完全包囲。完全に敵の策にはめられたようだ

 

「囲まれてんぞ!?」

 

「マズくない……?」

 

「えぇ。先程のヴィランの個性はワープの類だったのでしょう、罠に掛かってしまいました…」

 

「散らして殺すの意味はこういう事ね」

 

四人は死角を無くすために背中を合わせる。かなりの数を揃えるが仮に一人一人が弱かったとしてもかなりの数がいるから厄介、八百万は素早く個性で武器を精製し、自分と耳郎がそれを手に持った。

 

「ちょ!俺にもなんか武器を作ってくれ‼︎」

 

「そうしたいのは山々なのですが…」

 

「流石にもう隙がないよ」

 

「まじかよ!?俺いまジャミングしてて録に戦えねぇぞ!?」

 

そんなことを話していると、頼光は敵に歩み寄る。

 

「なんだ?怖くて頭がおかしくなったのかな?」

 

「関係ねえ、殺っちまうぞ!」

 

その声とともに敵二人が頼光に襲いかかる。

 

「お、おい豊穣!?」

 

「豊穣さん!?」

 

「豊穣!?」

 

三人が頼光の方を見る。頼光は口角を上げ。襲い来る二人の敵を蹴りで一蹴する。

 

「ぐあ!?」

 

「ぬああ!」

 

その蹴りは並の威力ではなく壁に激突しめり込む。敵はそれを見て固まる。三人もそうだった。当の本人は両手を広げ言う

 

「さぁ、始めようぜ敵。まどろっこしい事は言いっこなしだ。俺が一人でお前らの相手をしてやる」

 

自らの力を誇示する格好で言い放つ。その表情は楽しそうに笑っていた。敵もそこまで言われて黙ってるわけもなく

 

「やってやる、やるよ!この糞ガキ!」

 

「後悔して泣き叫んでも知らねぇからな!ぶっ殺してやる!」

 

一斉に襲いかかってくる。頼光は拳を握り、雷を纏い歩く。

 

「ああ、楽しませろよ敵ちゃん!」

 

敵の攻撃を最低限の動きで躱し、拳を叩き込んでいく。敵は剣みたいな武器を頼光に振り下ろすが、頼光の指先から出た溶断ブレードがそれを切断する

 

「なに!?」

 

「はっ!甘いぜ!」

 

その敵の手首を掴み、引っ張り寄せ殴り抜く。敵は頼光のスキのなさに標的を変えようとする

 

「俺らヤベェんじゃねぇか⁉︎」

 

「なら俺はそこにいる三人を!」

 

「おっと、させると思うか?」

 

右手のより溶断ブレードを出す。それは爆音が炸裂した。五指から伸びる溶断ブレードが、一気に二十メートル以上に伸長する。それだけで空気が膨張し、烈風のようなものが撒き散らされる。それを敵の目前めがけて振り下ろす。

 

「ヒィィィィィィィ!?!?逃げろ!!」

 

敵の声を皮切りに、その溶断ブレードから逃げるように回避する。その衝撃により敵は吹き飛ばされ、地面にたたき落とされる。追撃で三人に及ばないように雷を放ち、敵を気絶させる。

 

「す、すごいですわ」

 

「これが、豊穣の実力」

 

「本当に一人で片付けてしまったぞ、あいつ」

 

その惨状は、一つの嵐が過ぎ去ったかのように静まり返っていた。その中心で頼光は立っていた。

 

「片付いたな。よしみんなに合流しようぜ」

 

頼光は三人に声をかける。三人はハッとして

 

「え、ええ。皆さんと合流しましょう」

 

「そ、そうだな。他の奴らも心配だし」

 

「うん、他のところの救援する為にも行こう」

 

「それでは、一度広場に行くのはどうでしょうか?」

 

八百万の意見はこの施設の中心は広場なのだからだ。そこからだと、13号やほかの散らされたクラスのメンバーとの合流のできるかもしれないから、目指すべきというものだった。ほかの三人もその意見を聞き行くこととなった。広場近くに来た時有り得ないものを見た。

 

「なっ……!」

 

「ウソ……」

 

「相澤先生……」

 

「………」

 

そう、相澤先生が脳の剥き出しになった敵にやられていたのだ。

 

 

 

 

 




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雷神の本領と槌

節目の10話ですやりたいことをやりきった感があります。
お気に入り500件超えました!ありがとうございます!
過去最高で嬉しいです!


衝撃的な光景に頼光以外は絶句していた。

 

「嘘……」

 

「相澤先生が……」

 

「どうすんだよ……先生ですらこうなってんだぞ、俺達どうなるんだよ……」

 

頼光は脳が剥き出しのヴィランを観察していた。

 

「(個性を消すことの出来る相澤先生が負けたとなると、見た目通りにパワータイプで個性は関係無いと見た方がいいか?)」

 

考えながら、そのヴィランの付近を見渡す近くに緑谷達が居た。それと同時にもう一度広場のヴィランを見て

 

「耳郎、八百万、上鳴は先に避難しとけ」

 

と軽く言う。その目はヴィランを写していた。耳郎は頼光が何をしようとしているのか疑問に思い言葉にする

 

「豊穣はどうするの?」

 

「俺はあいつと戦う」

 

衝撃的な言葉を吐く。相澤先生がやられたのを見て頼光が紡いだ言葉は戦うという言葉だ。その場の三人は止めようとする

 

「豊穣さん危険すぎます!!」

 

「そうだよ!いくら豊穣が強くても相澤先生がやられたんだよ!?」

 

「そうだぞ!相澤先生がやられてやべーんだぞ!」

 

だが、頼光はそれでは避難をしようとせず

 

「大丈夫大丈夫、負けるつもりなんてねぇし。それに……」

 

言葉を続ける、笑いなが

 

「俺と言う奴はああいうものを見ると……ほっとくわけにも行かねぇと思うだよな。それに、そこにいるヴィランと戦いたいと思うんだわ」

 

そう言い、広場の方に視線を向け体に雷を纏い、動き出した。

 

所変わって噴水近く、出久達が相澤先生が戦っている場所の近くにある水難ゾーンの岸近くで見ていると、ヴィランは相澤先生の腕を小枝を折るように折った。そして顔面を地面に叩きつけた。

 

「死柄木弔」

 

「黒霧、13号はやったのか?」

 

「行動不能にはできたものの散らし損ねた生徒がおりまして…一名、逃げられました。」

 

「………は?」

 

死柄木と言われるヴィランは素っ頓狂な声を出す

 

「ハァーーー……」

 

最初は片手でそして両腕で首をガリガリと掻き続ける、首の肌はもう既にボロボロなのだがそれでも掻き毟る

 

「黒霧おまえ……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしてたよ……さすがに何十人ものプロ相手じゃかなわない………ゲームオーバーだ……あーあ今回はゲームオーバーだ。帰ろっか…」

 

「………?帰る?帰るってのか今??」

 

「そう聞こえたわ」

 

「やっやったぁ助かるんだ俺たち!」

 

ヴィランの一人が帰ると言った。峰田は喜んで蛙吹に抱きつく。その際に胸部に触れた。蛙吹は峰田を水に沈めながら

 

「でも、気味が悪いわ緑谷ちゃん」

 

「うん……これだけのことをしておいて、あっさりと引き上げるなんて(オールマイトを殺したいんじゃないのか!?ここで帰れば雄英の危機意識が上がるだけだぞ!!ゲームオーバー?何だ……何を考えているんだこいつらは!!)」

 

ヴィラン達の言動に言い知れぬ恐怖を感じた緑谷

 

「けどその前に、平和の象徴の矜持を少しでも……」

 

死柄木は一気に出久達に近づき手を伸ばし

 

「へし折って帰ろう‼︎」

 

蛙吹の顔に死柄木の手が触れる距離まで近づいた。だがその手が触れることなく

 

「オラァ!!」

 

突然現れた頼光の蹴りが死柄木の腹部を捉え、黒霧と言われたモヤの所まで思いっきり蹴り飛ばされる。

 

「よぉ!間一髪だったな!」

 

「豊穣君!」

 

吹き飛ばされたヴィランは腹部を抑え、咳き込みながら

 

「ゲホゲホ!イッテェなぁー……んだあのガキなんつーパワーだよ」

 

「まだあんな学生がいたなんて」

 

ヴィラン達が頼光を見ながら話しているスキに頼光は脳が剥き出しのヴィランを掴み投げ飛ばした。

 

「おーい、先生大丈夫か?」

 

「危ないのに……来るな、早く避難しろ!」

 

相澤先生は目を見開き言う。頼光はやれやれと首を振り

 

「悪ぃがそれは出来ねぇな。目の前で危機に陥っている人を見捨てられる性分じゃねぇんだよ。怪我人は黙ってな」

 

「……っ!」

 

「まぁ何だ、かっこよかったぜイレイザーヘッド。あとは任せな」

 

「……無理は、するな」

 

そう言い相澤先生は気を失った。頼光は相澤先生を軽々と背負い、緑谷達と合流し相澤先生を預け

 

「出久!相澤先生を頼んだぜ」

 

「分かった!豊穣君はどうするの?」

 

「あ?あいつらと戦うに決まってんだろ?」

 

頼光の返しに三人は驚き

 

「豊穣!!いくらお前でも勝てねぇよ!!逃げようぜ!!」

 

「峰田くんの言う通りだよ!豊穣くんも逃げようよ!」

 

「悪いがお断りだ。俺はあいつらと戦いたいんだよ。ハナから負けるために挑むわけねぇだろ?勝って思惑を潰してやるよ」

 

そう言い頼光はヴィラン達の方へ歩いて行く。

 

「へぇーカッコいいなぁお前…仲間を庇うなんてなぁ…流石はヒーローの卵だなぁ……」

 

死柄木は頼光を見ながら言う。両手を広げ煽るように言う。頼光は笑いなが

 

「そうかよ、でもそれだけじゃないんだよ。先生を倒したそこの脳が剥き出しのヴィラン。そいつを倒したら経験値を得られそうだからな。あんなチンピラを倒しても大した経験値なんて手に入らねぇし。第一そんな奴に戦わせて高みの見物を決め込んでいるやつが、俺は強いと言われてもなぁ……」

 

やれやれと首を振り、呆れたと言わんばかりの溜め息もついて見せた。

 

「うるせぇよ、もういいお前死ねよ。殺れ、脳無」

 

死柄木の指示で脳無が動き出した。頼光の方に向かい拳を振り上げる。頼光もそれを迎え撃つべく拳を構える、そして二人の拳は激突する。

 

「クッ!」

 

頼光は後ろへ飛ぶ。そして迎え撃った左腕を見る

 

「(なんつう力だ、今の俺が打ち負けた……はっ!おもしれぇ。腕は動くしこれからだ)」

 

手をプラプラと振り、再び脳無に向かう。脳無も頼光に向かい行動を起こす。脳無はその剛腕を振るう。その一撃はまともに貰えば危険この上ないだろう。そうまともに貰えばだ、頼光はギリギリでそれをかいくぐり、腹部をめがけて拳を叩きつける。クリーンヒットだ。しかし脳無は微動だにせず立っていた。脳無は再び拳を振るう、頼光はそれに反応し交わし、再び拳を叩きつける。

 

「効いてないのか?」

 

頼光の反応に楽しげに死柄木は言う

 

「そりゃそうだろ、そいつの個性はショック吸収だからな。お前の攻撃は効かねぇよ」

 

「なるほどな!」

 

頼光は次に溶断ブレードを出した。姿勢を低くし脳無の股下を潜り、アキレス腱を切る

 

「これで満足に動けないだろ」

 

そのままスライディングの勢いで走り抜け、脳無を観察する。アキレス腱を切られた脳無は膝をつくが、切られた断面がすぐに再生した

 

「なに!?」

 

「あー、こいつは超再生だなぁ。オールマイトを殺すための改人脳無だ。お前みたいなガキの攻撃は効かねぇんだよ」

 

死柄木は頼光の反応を面白がって、個性を明かす。しかし頼光は

 

「ショック吸収に超再生か……なら、少し強めてもいいよな!」

 

頼光は右手に雷を纏う。それは巨大なものとなり、バチバチと音を立てている。なお雷の勢いは衰えることなく増大する。そして頼光は一撃を脳無に叩きつけるべく走り出す

 

「喰らいやがれ!!雷神の槌(ミョルニル)!!」

 

その一撃が脳無の体に命中した瞬間。凄まじい轟音と衝撃、風圧が放たれる。その衝撃は死柄木達と緑谷達まで届くものとなった。

 

「これは豊穣くんの力⁈まさかこれほどまであるなんて⁉︎」

 

「っ!何なんだよ!?あの金髪ビリビリ野郎チートじゃねぇか!!」

 

「まさかこれほどまで力を持った生徒がいるとは予想外ですね」

 

煙が晴れる。そこには拳を放った体制で脳無を見据える頼光と身体に風穴が空いた脳無が頼光と距離があると言うことで、飛ばされたのだろう。しかし脳無の風穴はすぐさま塞がる

 

「チッ。これじゃ決定打にはなり得ないか……思いのほかタフで結構だぜ」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる頼光

 

「そりゃそうだろ…なんせコイツは対オールマイトに作られた先生の最高傑作だからなぁ……そろそろ終わらせろ、殺れ、脳無」

 

その言葉と共に脳無は先程より早く動き、頼光に接近する。頼光は死柄木の先生という言葉に思考を走らせていたため反応が遅れる

 

「(さっきより速い!迎撃は間に合わねぇ!ガード……間に合わない!)」

 

頼光はガードをしようとしたが、出遅れてしまい、脳無の一撃をまともに貰ってしまい、吹っ飛ばされる

 

「グッ!」

 

吹っ飛ばされた先の噴水に叩きつけられる。

 

場面は変わり、耳郎達は出口に向かっていた。耳郎達は頼光が心配だが先に進むしかなかった

 

「豊穣……大丈夫だよね」

 

耳郎の中では言い知れぬ不安があった。相澤先生がやられた姿を見て、頼光も同じようにやられるのではないかと。その直後、雷が轟いたような轟音と衝撃が耳郎達まで届く

 

「雷……まさか豊穣か?すげぇーな本当にやっつけちまうなんてな!」

 

その衝撃と轟音で上鳴はテンションが上がる。八百万も凄いと感嘆の声を漏らす。耳郎もすごいと思うのだが、何故か不安が消えることは無い。その時耳郎の視界に写った。頼光が脳無の一撃をまともに貰い、噴水に激突する様を

 

「豊穣ッ!」

 

耳郎は気づくと走り出していた。みんなの制止を振り切って、頼光の元に走る。

 

噴水の瓦礫をどけて、頼光は膝を付きながら、脳無を見る

 

「(さっきより速くなりやがった。まだ隠していたのか……クソ、さっきので骨がイったな……あのパワー、ガード越しでも効くだろうな……いいねいいね、そう来なくちゃなぁ)」

 

目に入りそうになった血を拭い、少々フラつきながら立ち上がる。その目に絶望などなく、楽しんでいるようにも見え、嬉しそうにも見える。

 

「脳無の攻撃に耐えたなんて、かっこいいなぁ…ムカつく位に」

 

死柄木は余裕そうに言う。それもそうだろう、頼光は旗から見ればボロボロだ。そんな時声が掛かる。

 

「豊穣!」

 

さすがの頼光も驚く。その声の主は耳郎だった。

 

「(バカ!なんできやがった!)」

 

死柄木はそれを見てニヤリと笑う。

 

「イイねぇ、熱い友情ごっこは。感動するじゃないか、心配してくれてるぞ?ほら頑張れよ、脳無あの女殺せ」

 

脳無は命令通りに耳郎を殺すべく凄まじい速度で迫る。

 

「あ……」

 

耳郎は動けなかった。咄嗟のことと、恐怖で動けなかった。耳郎は死を覚悟し目を瞑る。しかし痛みは来なかった。

 

「…本当かっこいいねぇヒーローの卵……本当にイライラするよ…お前」

 

恐る恐る目を開けると脳無フルスイングを腕を受け止めている頼光が居た。

 

「うぉぉおおおうらああああ!!!」

 

脳無の腕を掴み噴水の所まで投げ飛ばす。頼光は肩で息をし膝を地面につく

 

「ほ、豊穣……ウチ……」

 

耳郎はへたり込む、助けに来たつもりが逆に助けられた。負わなくてもいい負担を負わせたと思うと申し訳なさで涙が出る。しかし頼光の言葉は

 

「……怪我は……無い見たいだな……よかった。たく、無茶しやがって」

 

笑いながら言う。耳郎からすると、それはこっちのセリフと言いたいのだが、言えなかった。頼光は脳無が立ち上がるのを見て

 

「さて……決着をつけるとするか」

 

「豊穣もう無理だよ!無茶だよ!そんな体で戦えばどうなるか……」

 

「大丈夫。さっきまでは、手加減していたんだよ。アイツ相手なら大丈夫だろ」

 

それを聞いた死柄木は心底ウザそうに

 

「ハァ?ボロボロのくせに言うよ、もういい、今度こそ殺すよ」

 

「殺れるなら殺れるもんならな。さぁ、加減はやめてやる。精々楽しませろよ?ヴィランちゃん!」

 

その言葉を紡いだ瞬間、頼光の目の色が変わった、その髪に、指先に、青白く淡い光が点いていく。そしてベルトを正しい形にする。

 

「手っ取り早く終わらせてもらうぜ。どぉーも、今から殴りあっても、面白い経験値は得られないだろうからな」

 

「あーうざったいな、お前。殺れ脳無」

 

脳無は言われた通りに頼光めがけて飛びかかり、殴り掛かる。それを頼光は拳で迎え撃つ。先程より凄まじい衝撃が伝わる。しかし、脳無が大きく下がる。再び殴り掛かるが頼光の拳はそれより速く脳無の腹部を捉え、凄まじい勢いで殴り飛ばす。

 

「オラオラァ!どうしたんだよ、そんなもんかよ!ショック吸収なんて言う代物はよぉ!!」

 

「何なんだよあいつ!さっきまで死にかけだったじゃねぇか!!脳無!さっさと殺せ!」

 

「落ち着いてください!死柄木弔」

 

脳無が攻撃を当てようとするが、全て受け流され、一撃、また一撃と叩き込む。ショック吸収を持つ脳無だが、動きが格段に悪くなっている。

 

「どうなってんだよ!ショック吸収のはずだろ!なんで脳無のやつやられてんだよ!」

 

死柄木はイライラして首をかきむしる。

 

「雷神トールは怪力の神だ。北欧通しても、クソ重い雷槌ミョルニルを取り扱えるのは二人しかいないほどにな。こちとら加減をやめて"あの帯"までつけ直してやったんだ。フェンリルの顎を上下に裂く神より強大と言われた軍神の名を冠する個性だぜ?ショック吸収……少し期待したんだがなぁ!!この程度かよ!?」

 

雷を纏った拳を叩き込む、脳無の顔が上がる。頼光は踏み込みながら体をひねり、相手を高く蹴り上げる。それは天井に悠々と届き落ちてくる。それに合わすように頼光は構える。雷が迸り、それは大きな槌の形をなす。脳無の落下に合わせそれを振るう

 

「吹っ飛べ、地の果てまで……悉く打ち砕く雷神の槌(ミョルニル)!!!」

 

黄色い凄まじい雷光が脳無の体を包みながら、USJの天井に大穴を作り貫き飛んでいく。

 

「死柄木弔!脳無が完全にやられたました‼︎」

 

「なんでだよ…!なんでやられてんだよ‼︎あんな野郎に‼︎」

 

死柄木はこれでもかという位に首を掻きむしりながら逆上した

 

「どうしたんだ、オールマイトを殺るんだろ?俺一人も殺せてねえぞ?」

 

「クソ……終われるかよ、黒霧!俺とお前であいつを殺すぞ!」

 

「しかし死柄木弔、彼はイレギュラーがすぎます!撤退すべきです!」

 

「五月蝿い!あいつだけは絶対に殺す!」

 

怒りの殺意を頼光にぶつけるが

 

「(チッ、受けてたダメージが大きいか……消耗が激しいな、それにそろそろか)」

 

噴水広場に衝撃が起こった、煙が晴れると、

 

「もう大丈夫だ、何故って?私が来た!」

 

平和の象徴オールマイトがそこに立っていた。

 

「遅刻だぜオールマイト。大物は俺が倒したぞ」

 

「嘘だろ豊穣少年!?」

 

「どうせあんたのことだろうから、活動限界で来れなくて、最後の方に顔を出すつもりだっただろ?」

 

「ギクッ!?」

 

「しっかりしろよヒーロー」

 

死柄木達はオールマイトの登場に苦虫を噛み潰したような反応を示し

 

「ここでオールマイトか……退くぞ黒霧」

 

「分かりました」

 

黒霧はワープゲートを発動させ、死柄木はその中に入る。そして去り際に

 

「次は殺すぞオールマイト。そしてそこのガキも」

 

呪詛を振りまき姿を消した。それを見届けた頼光は膝から崩れ落ち、前のめりに倒れる。

 

「(……案の定、ダメージで加速した消費でガス欠を起こすか……まだまだ、制御しきれてないな……バックファイヤでダメージが来なかっただけ……ましか)」

 

周りから声が聞こえるが、予想以上のダメージと個性の負荷により限界を迎えていた。頼光は周りの声が遠くなっていくのを感じながら、目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はかなり無茶したのと、色々参考にしながら書きました。思ったよりかなり難しかったです。


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襲撃の後……

今回は遅れて申し訳ございません!


怪我を負ったヒーロー、イレイザーヘッドと13号は共に病院へと運ばれた。頼光に関しては二人のヒーローよりマシだが、消耗が激しいのでリカバリーガールの治癒を受けることが叶わないが、保健室に運ばれた。そこには、耳郎が居た。近くの椅子に座り、俯いていた

 

「ごめん……豊穣……ウチのせいで……ウチが来たから」

 

拳を握りしめ言う耳郎。頼光はオールマイトが来てヴィラン逃げたと同時に、俯けに倒れた。呼びかけても反応がなく死んだようにぐったりしていた。それを見た耳郎は動くことが出来なかった。オールマイトは頼光を抱え、保健室に運んで行った。そのあと頼光の状態を聞いた。肋骨は5本折れて、左腕もヒビが入っているものだった。二人のヒーローに比べたらマシなのだが、リカバリーガールは治癒出来ないでいた、その原因は疲労だ。頼光の個性は体に負荷がかかり、体力の消費も少々大きいのだ。轟との一戦や飛ばされた時に戦った連中の時の状態なら、負荷も小さく、体力もそこまで激しくは減らない。だが脳無との最後の状態は、ダメージを負ってる状態での出せる力を出した。その結果、体力を消費しダメージ、負荷が一気に来て気を失ったというわけだ。耳郎はただ、頼光が目を覚ますの待った。無意識に頼光の手に自分の手を乗せて……

 

それから少しの時間を経て頼光は目を覚ます。

 

「(……んあ?何処だここ?)」

 

体を起こそうとするが、凄く重くそして脇腹に痛みが走り、身体を起こすのを中断する

 

「(張り切りすぎた結果だろうな。すごい体が重く感じる。それにしても右手温かいな)」

 

右手の温もりを感じ取り、首をその方向に動かすと、手を添えて寝ている耳郎が居た。頼光はその寝顔を見て

 

「(……!?耳郎か驚いた、見た感じ耳郎が看病してくれたのか……起きたら礼を言わねぇとな)」

 

そんなことを考えて痛みを噛み殺しながら体を起こす。耳郎の寝顔を見ていると、耳郎が目を覚ます

 

「……うん?あ!豊穣起きたの!?」

 

「ああ、今起きた。それより看病してくれたんだろ?ありがとうな」

 

耳郎は頼光の胸に顔をうずめ、泣いているような声で

 

「ウチ……心配したんだ、豊穣がヴィランと戦って、やられているのを見て、助けたくて来たのに、逆に助けられてそしてそのあと豊穣が倒れて、死ぬんじゃないかと思った……怖かった」

 

声が震えていた、泣いている声も聞こえる。頼光は自身の頭をかき、どうしたらいいか考え、耳郎の頭に手を置いた。

 

「……え?」

 

「まぁ、なんだ。心配かけて悪かった。でも今回のことは気にするなよ。俺っていう生き物は楽しくなっちまうと、個性の負荷や、戦闘のダメージなんてもんはなどうでもよくなっちまうんだ」

 

「……っ!」

 

耳郎は顔を上げ、頼光に文句を言おうとするが、頼光は言葉を続ける

 

「何故っていう顔をしているな、単純だ手が届くからだ」

 

「え?」

 

言おうとしていた言葉が耳郎から失われる。

 

「途方もない所なら諦めもつく、だが俺は違った。一つ一つ積み重ねてきたら、神話の一端に手が届いたんだ。多少の危険は伴うけど台に乗ってものをとるのと変わらねぇだろ?わざわざ親を頼る必要性はねえしな……でもな。耳郎の言葉を聞いて、なんかそれだけじゃダメなんだろうなとは思った。ヒーローってのは人を安心させるものだろ?でも今回の俺は少なくとも耳郎を不安にさせたし怖い思いもさせた。だからこれからだ、そういう思いをさせねぇヒーローを目指す」

 

耳郎は涙を袖で拭い、頼光の顔を見ながら言う。

 

「分かった。頼光がそう言うならウチはその言葉を信じるよ。そういうヒーローを目指すっていう言葉を」

 

「おう、出来る限りだけどな!」

 

「それはなしだよ頼光!」

 

二人は笑っていた。その後頼光と耳郎は教室に行った。クラスのみんなは頼光を心配したが、頼光は大丈夫だと言う、耳郎は頼光を横っ腹肘でつついて頼光が飛び上がったのは別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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体育祭編
新たな戦い


遅れました!誠にすいません!次は出来るだけ早く挙げれるようにしたいと思ってます!


ヴィラン襲撃の翌日、学校は臨時休校と成った。頼光はあのあとリカバリーガールの治癒を受けて、一人で歩くのが困難なレベルまで疲弊した、その後、耳郎に入口まで支えてもらい、タクシーで帰った。その日と臨時休校の日は1日寝ていた。そしてさらに翌日にはスッキリ起きれたので朝ごはんを済ませ、学校に登校する。

 

「よう、出久おはよう」

 

「あ!豊穣君!身体大丈夫なの!?」

 

「ああ、リカバリーガールに治癒してもらって昨日一日寝てたからバッチリだ。完全復活ってやつだ」

 

「もう心配したんだよ!?ヴィランと戦いたいとか言い出すし!何考えているんだよ!?」

 

緑谷と遭遇し挨拶を交わしたら怒られる始末だった。それに関しては当日しっかりと耳郎に言われたので頼光は、緑谷の言葉を適当にあしらいながら、宥めて席につかせる。

 

「(流石に耳郎に言ったことを出久に言ったら……まぁ十中八九怒られるか何かはあるだろうな。うおぉぉ想像したくねぇ)」

 

嫌そうな顔をしながら席に座り、頬杖をつきながら外を眺める。

 

「皆ーーーーー!!朝のHRが始まる席につけーーー!!」

 

飯田が前に立ち皆に向かって言うが皆は席に座っている。そう、立っているのは飯田だけである。

 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

飯田は渋々席に着いた。頼光はそんなやりとりをしているのを気にもとめず外を見ていた。一昨日の経験を頭で何度も反芻していた。そして教室のドアが開けられ、まるでミイラ見たいに包帯がぐるぐる巻にされた相澤先生が入ってくる。

 

「おはよう」

 

《相澤先生復帰早ぇぇえ!!!》

 

「先生無事だったのですね!!」

 

飯田がそういうが、どう見たって無事のそれじゃない。よろよろと歩いているし、無事とは程遠いものである。そのまま相澤は教壇に立ち

 

「まだ戦いは終わってねぇ」

 

「戦い?」

 

「まさか……」

 

「またヴィランが!!?」

 

そして相澤先生から告げられた次の戦いとは

 

「雄英体育祭が迫っている!」

 

《クソ学校ぽいの来たァああ!!》

 

「待って待って!ヴィランに侵入されたばっかなのに大丈夫なんですか!?」

 

「逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと示す…って考えらしい警備は例年の五倍に強化するそうだ。何より雄英の体育祭は……最大のチャンス、ヴィラン如きで中止していい催しじゃねぇ」

 

そのあとも説明が続き、雄英高校の体育祭は日本のビックイベント一つでそれは、過去のオリンピックがスポーツの祭典であったように、規模と人口も縮小して形骸化したが、日本においてかつてのオリンピックに代わったのが雄英体育祭となる。プロのヒーローも観るのだ目的はスカウトが主だ。

 

「時間は有限プロに見込まれれば、その場で将来が拓けるわけだ。年に一回……計三回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

 

そして時間が流れて、教室内は盛り上がっていた。

 

「なんだかんだテンション上がるなオイ!!」

 

「活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」

 

教室の後ろの方では、切島達が盛り上がっていた。

 

「皆すごいノリノリだ……」

 

「君は違うのか?ヒーローになる為在籍しているのだから燃えるのは当然だろう!?」

 

そう言う飯田は独特な燃え方をしている。そして麗日はキャラがおかしくなるくらいに燃え上がっていた。

 

「皆!!私!!頑張る!」

 

「おお!!けどどうした、キャラがフワフワしてんぞ!」

 

その後更に、放課後まで流れて。教室の周りには、A組以外の生徒が押しかけて出られない状況になっていた。

 

「何ごとだあ!!!!?」

 

「出れねーじゃん!何しに来たんだよ」

 

「敵情視察だろザコ。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな体育祭前に見ておきてえんだろ」

 

爆豪は制服のポケットに手を突っ込みながら歩く。峰田は爆豪を指差し震えていた。緑谷はそれに対し「あれがニュートラルなの」と説明する。

 

「偵察なんて意味ねぇからどけ」

 

爆豪は睨みながら、どけと言う。すると人混みの奥から声が聞こえる

 

「どんなもんかと見に来たが随分偉そうだなぁ。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのかい?」

 

「ああ!?」

 

その言葉に緑谷と飯田ほかメンバーは全力で首を横に振る。そして人ごみを押し退け、気だるげな顔つきの生徒が前に出た。

 

「こう言うの見ちゃうと幻滅するな。普通科にはヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構多いんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、俺達のヒーロー科への移籍、あんたらにはその逆があり得る。敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え調子に乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞって宣戦布告に来たんだけど」

 

堂々と宣戦布告をした普通科の少年、それを見てA組のメンバーは大胆不敵だなと思っただろう。そして、さらに人混みの中から

 

「隣のB組のモンだけどよぅ!!敵と戦ったっつうから話聞こうと思っていたんだがよ!!エラく調子づいちゃってんなオイ!!!本番で恥ずかしい事んなっぞ!!」

 

B組の少年も現れて大きい声で勢いよく言う。頼光が爆豪の隣から出て

 

「宣戦布告も良いけどよぉ、ヒーロー目指してる奴らが、教室前に集まって下校の邪魔してる時点で考えろよ、それはヒーローを目指してる奴らのする事かどうかくらいよ」

 

大きくため息をつき、髪をかきあげながら、けだるそうにいう。

 

「んじゃ、俺は保健室に用があるんでな、悪ぃけど退いてくれないか?」

 

その言葉を聞いた生徒達は、ぞろぞろと道を開ける。

 

「ありがと」

 

短く礼を言いながら、頼光は堂々と保健室に向かう。その途中に

 

「昼休みに訓練室の使用許可は取ったし、あいつも呼んでおかないとな」

 

知り合いに連絡を送り、連絡端末をポケットに仕舞い、保健室に行く。

 

「チューー」

 

リカバリーガールに腕を治癒してもらい完治はした。頼光は腕の感触を試し

 

「バッチリだ、ありがとなリカバリーガール。おかげでバッチリだ」

 

「私は保健室の先生だからね、これくらいなんてことないよ。だけど、あまり無理して体は壊すもんじゃないよ」

 

「わかってますよーっと。失礼します」

 

立ち上がり、礼を言い頼光は保健室から出ていき許可を取った、練習室に向かう。扉を開けると少年が居た

 

「よ!ちゃんと来たみたいだな……出久」

 

「うん、大事な話があるってLI〇Eに送られてきたからね、何だろうかと思って、しかも体操服でって言ってたし」

 

その少年は緑谷出久だった。頼光が指定した通り体操服で居た。頼光はうんうんと頷き

 

「話は簡単だ出久、お前まだ個性扱い切れてないよな?」

 

「う、うん。まだ使う時、調整できなくて」

 

「でだ、体育祭までのあいだ、俺が手伝ってやる。もちろんただ手伝うなんて俺にメリットはないから、軽く組手をしながらだけどな!」

 

そう言いながら、頼光は制服を脱ぎ、体操服の姿になる。緑谷は驚いて

 

「ちょちょ!!待ってよ!豊穣くん!!」

 

「時間とヴィランは待ってくれないぞ!そら!行くぞ!!」

雷を拳に纏い緑谷との特訓が始まる。

 



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開幕 第一種目 障害物競走

遅れて本当にすいません!!言い訳をするとGE3をやったり、FGOのイベントがあったりと……本当に申し訳ない!


雄英体育祭当日。出場予定の生徒達は各クラスに分けられた部屋に待機して、入場時刻を待っていた。頼光のクラスA組の面々は各々、柔軟体操をして体をほぐしたり、張を抑えようと深呼吸を繰り返していたり、いつも通り友達と話したりと過ごしていた。

 

「コスチューム着たかったなー」

 

「公平を期す為、着用不可なんだよ」

 

そう、雄英体育祭ではコスチュームの着用は認められていないのだ。例外としてサポート科は自分で制作したコスチュームとアイテムは持ち込みが認められている。

 

頼光は椅子に座り音楽をイヤホンでながしながら目を瞑っていた。体育祭までの時間は頼光にとって、そこそこ有意義な時間だった。この体育祭で遅れをとるつもりなど毛頭ないし、寧ろ上を目指している。力を振るうことが出来るのが楽しみのと、クラスの連中や他のクラスの連中と戦う機会があると思うと、テンションが上がってくるというものだ。

 

入場時間まで残り僅かとなったところで、轟が緑谷に話しかけに言った。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

 

「へ!?うっうん……」

 

びくっとなりながらも話しを聞く。轟は、続ける

 

「おまえ、オールマイトに、目ぇかけられてるよな、別にそこ詮索つもりはねぇが……お前には勝つぞ」

 

轟は緑谷に対して宣戦布告をする。それを見たクラスはざわつき出す

 

「おぉ!?轟が緑谷に宣戦布告!!?」

 

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって……」

 

「仲良しごっこじゃねぇんだ何だっていいだろ」

 

止めに来た切島の腕を振り払う轟。緑谷は俯きながら

 

「轟くんが、何を思って勝つって言ってんのか……はわからないけど……そりゃ君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う。客観的に見ても」

 

「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねぇほうが……」

 

「でも……!!皆…他の科の人も本気でトップを狙っているんだ。僕だって…遅れをとるわけにはいかないんだ。僕も本気で獲り行く!!」

 

緑谷も覚悟を決めたように、轟を見据えて獲るといい、轟の宣戦布告を受けた。

 

「お前もだ、豊穣」

 

「あ?」

 

緑谷と轟のやり取りが気になって、イヤホンを外していた頼光にも宣戦布告をする。頼光はA組最強候補の一人であり、最初の実技授業で轟を倒している。氷結の個性のみで下し、雄英体育祭の優勝を手に入れて、父を否定する事が轟の目的。そしてその最大の障害になりうる人物が豊穣頼光と轟焦凍は捉えていた。

 

「お前にも、俺は勝つ」

 

頼光は何となく前回のやりとりで、轟の目的はわからなくもない、だが頼光からしたら、どうでもいい話だ。ただ、強敵が態々宣戦布告をしてきたのだ、頼光からしたら応えないわけには行かない。

 

「ああ、イイぜ!!俺も負けるつもりなんてねぇ、本気で来いよ轟ちゃん!!」

 

馴れ馴れしくちゃん付で言う頼光。轟は頼光を睨みつけ、踵を返して元の場所へと戻っていった。そんな轟を爆豪が睨み付けている。頼光はi〇odを片付けて、軽くストレッチをする。そして時間が来た。

 

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』

 

通路からも聞こえる歓声と実況。そして入口で一度止まり、そして会場に入る

 

『ヒーロー科!1年A組だろぉぉ!!?』

 

入場と共に大きな歓声が上がった。会場360度からの歓声が放たれる。

 

「わあああ……人がすごい……」

 

「逆に少なかったらやべぇだろ。むしろ上がってくるだろ!!」

 

緊張している緑谷の背中を叩きながら頼光は笑い飛ばす。

 

「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるのか、これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」

 

そして会場の中心に集まり、各クラス事に整列し開会式が始まる。

 

「選手宣誓!」

 

1年生が揃うと、ミッドナイトがムチを鳴らして壇上に上がった。またも観客から歓声が上がる。

 

「18禁なのに高校にいていいものか」

 

「別に行動とか発言は18禁じゃねえしいいじゃねぇの?」

 

「いい!!」

 

常闇がいいのかと呟き、頼光は別に言動に問題ないしいいじゃない?と言い、峰田は即答で"いい"と答えた。そんなこんなで騒がしい生徒を静かにさせるためにムチを一度鳴らし、黙らせ、選手代表の名を読み上げた。

 

「選手代表!1年A組、爆豪勝己!」

 

「え!?かっちゃんなの!?」

 

「あいつ一応入試一位通過だったからな」

 

爆豪は呼ばれ、ミッドナイトのいる台まで歩いていく。両手をズボンのポケットに入れながら歩く。一段一段上がり、マイクの前に立ち

 

「せんせー俺が一位になる」

 

『絶対やると思った!!!』

 

A組メンバーは嫌な予感はしていたが、その通りにやらかした。他のクラスのブーイングが嵐のように降り注ぐ。そんな中頼光は腹を抱えて大笑いする。

 

「ダメ……あんなの耐えらんねぇよ!!ギャハハハ!!!」

 

「豊穣君!笑い事じゃないぞ!!」

 

ツボに入ったのか分からないが、馬鹿みたいに大笑いをする頼光がここに居た。そしてそれを注意する飯田

 

「どんだけ自信過剰だよ!!この俺が潰したるわ!!」

 

B組の一人のそのセリフを聞く頃には、頼光は笑い終え、ふーっと呼吸を整えて

 

「(中学の頃ならああいうのは笑って言うのにな……真剣じゃねぇの。自分を追い込んでいるな)」

 

「さーてそれじゃあ、早速第一種目行きましょう!いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!さて運命の第一種目!今年は……障害物競走コレ!!」

 

「障害物競走……!」

 

「小学校の時走ったよな、バットで十回回って平均台の上歩いたり、そんな類か?」

 

「雄英の事だからそんなんじゃないと思うよ?」

 

スクリーンにデカデカと『障害物競走』の文字を見ながら、頼光は緑谷と話しながら見る。頼光はいよいよ始まるんだなと、静かに闘志を燃やしている。

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周、約4km!我が校は自由さが売り文句!コースさえ守れば何をしたって構わないわ!さあさあ、位置につきまくりなさい……」

 

スタジアムのゲートの一つが音を立てて開かれていく。11クラスがスタート位置に並ぶ。

 

「頼光!いよいよ始まるね」

 

移動の最中に耳郎が話しかけてきた。

 

「おう!そうだな。いよいよだ、早く始まんねぇかワクワクしてたんだよな!!轟の宣戦布告、爆豪の選手宣誓、やべぇな!!早く始めたくてうずうずしてくるぜ!!」

 

「はは、何か頼光らしいよ。ウチだっ負けるつもりなんてない!全力で挑むよ頼光に!」

 

そういい、耳郎は前の方に行く。その言葉を聞いて頼光は口角を吊り上げ

 

「いいねいいね、やっぱり祭りはこうじゃねぇとな……」

 

頼光は後方に陣取り、準備体操をする。

 

生徒全員が位置についたところで、スタートシグナルの明りが音を立てて、一つ消えた。残りは2つ。

 

脱力し、左手をズボンのポケットに入れ、右手をぷらぷらと揺らし体をほぐし、目を瞑る。また明りが一つ消えた。残り一つ。スタート位置のざわめきは消え失せる。各々がスタートの合図に身構え、その時を待っているのだ。そしてその時が、来る

 

スタートのシグナルは最後の光を消し、そのタイミングと共に

 

『スタート!!』

 

その合図で生徒達が、いっせいに走り出した。頼光は静かに目を開けて個性を発動させる。バチバチと音を立て、そして黄色い光を雷を纏い左手も出して準備完了。"雷神"が今動き出す。



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決着 第一種目障害物競争

遅れて誠に申し訳ございません!!
落第騎士の方も今週中に上げれたら上げたいと思います!!


スタート同時に一斉に走り出す。頼光も例外では無い。だが、スタート位置の通路は狭くぎゅうぎゅうで通勤ラッシュの電車の様に密集している。頼光は面白そうにつぶやく

 

「なるほどな、つまりこれが、最初のふるいというわけだな」

そう呟くと同時に前方から冷気を感じ取った。頼光は人の上を跳び越える。轟の氷結攻撃をかいくぐることに成功した。前を見るとクラスの連中が飛び出していた。

 

「クラスの連中は誰一人捕まっていねぇみたいだな。そう来なくちゃなぁ!!」

 

着地し雷を少し気持ち抑え気味に走り出す。

 

『さーて実況していくぜ!解説Aer you ready!?ミイラマン!!』

『無理矢理呼んだんだろうが』

実況席ではプレゼントマイクが実況し現ミイラマンの相澤先生が解説として居た。もっとも相澤の機嫌はあまりよろしくない。メディアの露出を控え、ヴィランの傷も癒えてはいないのに解説役を押し付けられてたまったもんじゃないが、それでも相澤は引き受けている、そのあたりを見ると人がいいのだろう。

 

『さぁ!スタートダッシュで先頭に立ったはAクラス轟だ!さらに後続の妨害に氷結攻撃!しかし実力者はそれを躱し轟を追いかける!!さぁいきなり障害物だ!!まずは手始め……第一関門ロボ・インフェルノ!!』

 

一般ヒーロー科の入試の時にお邪魔ヴィランとして立ちはだかった巨大ロボが今回もお邪魔としてコースに立ちはだかる

 

「入試んときの0ポイントヴィランじゃねぇか!!!」

 

「まじか!ヒーロー科あんなのと戦ったの!?」

 

「多すぎて通れねぇ!!」

 

「一般入試用の仮想敵ってやつか」

 

「どこからお金出てくるのかしら……」

 

轟は見上げながら冷静に分析し、八百万はお金の使い方に若干の呆れている様子だった。その直後

 

「モタモタしてるとおいてくぜ?」

 

その言葉と同時に雷を纏い直した頼光が跳び出し、前に回転してロボ・インフェルノの頭部を蹴り砕く。豪快な破壊音を轟かせ、蹴りの一撃でロボ・インフェルノは仰向けに倒れる。倒れるまで待つこともなく、そのまま再び跳び行く手を阻むロボ・インフェルノを同様に蹴り砕く。

 

『1-A豊穣!後方から猛スピードでロボ・インフェルノを一撃で蹴り砕き、一瞬で抜き去ったぁぁ!!何ていうパワーだ!!!すげぇな!!一抜けだ!!』

 

(電気で速く成れてパワーも上がる個性だったな、アイツの個性は……この競技一位で逃げ切り立ったが仕方ねぇ)

 

頼光はスタートの時後ろに居たのは確認していた。凍結も当たるとは思っていなかったが、予想以上に早く来て追い抜いて行った。今は空中に居るのだから着地と同時に凍結させればいいのかもしれないが、それで時間を食うのは惜しいと考えた轟は目の前の障害に目を移した。一方、着陸した頼光は雷をより強く纏い走り出す。立ちはだかるロボを文字通り薙ぎ払いながら。そんな頼光だが雷を纏うのを解き、ブレーキをかけて踏みとどまる

 

『第二関門に到着だ!!第一関門は余裕か?んじゃあ第二のこれはどうよ!!落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!ザ・フォール!!』

 

第二の関門ザ・フォールは一言で言えば綱渡りフィールドである。ただ下が見えないくらいに断崖なのを除けば。そしてルートも分かれており、綱の間隔が長いものから短い所もある。

 

「こんなの馬鹿正直に渡っていたら、勝己や轟においつかれるかもな……」

 

後ろから迫ってくる後続を見ながら面白そうに言葉を漏らす。後ろに下がり加速するに十分な距離を取る。

 

「《電光石火》」

 

電気を強く纏い準備が出来上がる。これからやろうとしていることは至極簡単。馬鹿正直に渡ると時間がかかるのであれば、加速をつけて跳べば良い。一番奥まで行かなくとも、間に足場は何個もある其処に目掛けて走って跳び続ければいいと考えた。そしてそれを行動に移す。頼光は凄まじい速さをもって加速し、踏み切って飛ぶ、そして次の所に着地と同時にスピードを殺さないように走りまた跳ぶ。それを繰り返し自身の最速で第二関門を突破する

 

『なんていう攻略だ!!綱を渡らず走り幅跳び見てぇに攻略したぜぇぇ!!』

 

『綱を渡っていたら追いつかれると判断したんだろう』

 

頼光は後続との差を更に広げていく。観客は大いに盛り上がるしスカウト目的で見に来たプロヒーロー達もまた、盛り上がりながらレースの様子を観戦していた。

 

「一位の奴圧倒的じゃんか」

 

「個性もそうだろうけどそれ以上に」

 

「判断力と決断力、それを行動に移す力もあるぞ」

 

「あれが噂のエンデヴァーの息子か?」

 

「いや、エンデヴァーの息子は今二位のやつだよ、一位の奴は全く違うやつだ」

 

「エンデヴァーの息子を抑えて一位かすげぇな!」

 

そしてマイクの実況が会場に響き渡る

 

『さあ、トップは早くも最終関門!!かくして実態は一面の地雷原、怒りのアフガンだ!!!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!!足と目を酷使しろよなぁ!!ちなみに地雷の威力は大したことはねぇが音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!』

 

『人によるだろ』

 

そんな声を聴きながら頼光は地面をよく見た。確かに埋めてあるだろう位置は分かるようになっている。

 

「まさかの地雷がくるなんてな、全くエンターテインメントしてくれるぜ、まぁ俺には関係ねぇけどな!!」

 

纏う雷がより一層強く迸る、そして頼光は地雷に構う素振りを見せることなく走り出す。そして地雷を踏むが爆破する前にはもうその場には居ない圧倒的な速度で地雷原をただ真っ直ぐに突っ切て行く。

 

『地雷が爆発するより走ってるぜぇ!!何ていう個性だぁ豊穣!!』

 

先ほどと同じように力技で攻略する頼光。後ろでは自分が踏んだ地雷が爆発するがそんなのはお構いなしの速さで地雷原を突っ切る。地雷原を抜けラストスパートにかかり雷纏いを解き走りスタジアム目前まで来たと同時に。はるか後方で大きい爆発音が聞こえ後ろを振り向く。そこには緑谷が必死にこっちに走ってきているのを見た。さらにその後ろに轟と爆豪が走っていた。

 

(やるじゃねぇの出久。轟と勝己が後ろかと思ったが、あの二週間は無駄じゃなかったということか?まぁ一位は俺が貰うけどな!)

 

直ぐに前を向きスタジアムの中に走って入りそして

 

『雄英体育祭!一年ステージ!!序盤に先頭に立ちゴールまでトップを独走!!緑谷の追走も届かず!!今一番にこのスタジアムに帰ってきたのは、1-A豊穣頼光だぁぁぁぁ!!!』

 

プレゼントマイクの実況がスタジアムに響き渡り大歓声が巻き起こる。頼光はそれに応えるように右腕を天に突き上げた。

 




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開幕 第二種目 騎馬戦

お久しぶりです!おまたせしました


「どう思う?」

 

教師陣席の後ろ、経営科の席で1人の生徒が他に向けて声を発した。基本的に体育祭に参加するメリットが無い経営科は、売り子や経営戦略等のシミュレーションなどで勘を培っている。

要するに基本的には暇なのだ。

 

「とりあえず緑谷と豊穣の株価急上昇だね。エンデヴァーの息子の轟と、ヘドロ事件の爆豪の二人を抑えてのゴールだからね。豊穣は実力とルックスどっちもいける。緑谷は個性をみせてないとなると先が読めないなー」

 

雷を纏い圧倒的なパワーとスピードでの障害物の蹂躙。全てを上からねじ伏せるかのようなパワープレーで押し切った。緑谷はというと未だ個性を使用して居らず、障害物の突破方法も泥臭いモノであった為、未だ評価が定まっていない。

 

「事務所経営を請け負ったと仮定して、豊穣は十二分に行けるけど、緑谷が難しいよね」

 

「見た目じゃまず無理だね。実力面や彼なりのアーティスティックなこだわりがあれば、そこを押し出せるけど、材料が揃わない事には難しいと思うよ」

 

 という経営科の意見であったが、プロヒーローの目からしても、その意見に大きな差はない。実際、材料が本格的に揃い始めるのは次の本選からだろう。第一種目の障害物競走は予選であり、ただの篩い落とし。

 

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!」

 

障害物競走は予選。次からが本番、ここから幕が開ける。

 

「そして次からいよいよ本選よ!ここからは取材陣も白熱してくるよ!キバリなさい!さーて、第二種目よ!私はもう知っているけど~~何かしら!?言ってるそばから…騎馬戦よ」

 

スクリーンには騎馬戦と表示された。

個人競技では無く、協力しての競技となった。参加者は様々な反応を見せるが、頼光は微妙な表情を浮かべていた。

 

「(ヤバイな……この競技、俺に向いてないぞ……)」

 

頼光は大きくため息をついて、どうするかを考える。パワーとスピード、雷を扱う頼光。騎馬戦となると、機動力が生きにくくなる。雷を纏えば、騎馬をするにあたって仲間に被害が出てしまう。

 

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、異なる点も有るわ。まずはポイント。第一種目の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられるわ!」

 

組み合わせによって騎馬のポイントがそれぞれ異なり、それを奪い合うポイント稼ぎ方式である。ミッドナイトは説明を続ける。

 

「1位に与えられるポイントは、1000万!上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!」

 

頼光に視線が集まる。頼光はどうするかを考えていて聞いていなかったため、なぜ視線が集まったか気づいていない。

 

「あ?なんでこんなに視線が集まってんだよ?」

 

「頼光きいてなかったの?予選の順位でポイントがあって3位のポイントは200P、2位は205Pだというのに、1位は1000万だって……」

 

耳郎は頼光に教える。頼光はポカンとしてミッドナイト

 

「制限時間は15分。振り当てられたPの合計が騎馬のPとなり、騎手はそのP数が表示されたハチマキを装着!終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競い合うのよ。取ったハチマキは首から上に巻くこと。取りまくればとくりまくるほど、管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても騎馬を崩されてもアウトにはならないところ!」

 

「(騎馬は別に崩れてもいいし、ハチマキも取り返せば何ら問題は無いということか。なるほどな……面白そうじゃねぇの!)」

 

「個性発動アリの残虐ファイト!でも……悪質な攻撃はレッドカードで一発退場!それじゃあ15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」

 

ミッドナイトの合図でチーム決めの話し合いが始まる。

 

「……みんな、避けるなぁ」

 

序盤中盤とハチマキを保持し、終盤で奪いにかかる戦法の方が理にかなっている。そんな騎馬で、態々狙われるリスクがある1000万ポイントの頼光と組む利点は少ないものだ。そんな中、頼光の目にある人物が目に止まる。

 

「なぁ、俺と組んでくれないか?常闇ちゃん」

 

「豊穣か。俺は良いが、ほかのメンバーはまだ居ない見たいだな」

 

「まぁ、そうだな。今から、残りを探しに行くところだ」

 

頼光が探しに行こうとした時、声が掛かる。

 

「豊穣君、常闇君。僕達と組んでくれない?」

 

声のする方を、頼光と常闇は向きその人物を見る。その人物の顔を見て頼光は口角を吊り上げ

 

「ああ、良いぜ!こっちも人手が足りなかった所だ。なぁ、良いだろ?常闇ちゃん」

 

「ああ、異論は無い」

 

「んじゃあ役割キメようか……なぁ、緑谷、麗日、常闇」

 

四人が顔を合わせ話し始める。1000万ポイントをどう守るか、どう騎馬戦を乗り切るかを

 

「前馬は常闇くんがいいと思う。僕と豊穣君が騎馬になると、出来ることが限られてしまう。でも、常闇君の黒影なら、騎馬をしていても自在に個性を使える」

 

「フッ……面白い。俺の個性に攻撃不要とは、この中じゃ特殊な選択だぞ。俺を使ってみろ、託すぞ緑谷」

 

「緑谷の個性は俺は知ってる。その上で俺が騎手をさせて貰うぜ?俺なら中距離攻撃もあるし、騎手にうってつけだと思うぜ」

 

雷撃、溶断ブレード、様々な手札は頼光にはある。まだ、出していない技ももちろん存在している。得意なのは近距離戦だが、中距離の差し合いの技もある。

 

「うん、豊穣君に騎手を任せるよ。じゃあ僕と麗日さんは騎馬をする。麗日さんは、騎馬をしながら、豊穣君を軽く浮かせることをお願いしたいんだけど行ける?」

 

「大丈夫!任せておいて!」

 

おおよその立ち回りが決まり出す。主に常闇の黒影が防御をしてくれているあいだは頼光は警戒し、常闇の黒影が弱まれば、頼光が近中距離で個性を使い出すというものだ。黒影の弱点が光である以上同時に使う事は避けたい。だが、騎手の近中距離の攻撃が出来る手段を減らすのは得策とは言えない。だから、この四人の中では頼光が騎手に一番適しているということだ。

 

「じゃあ、いっちょやりますか!」

 

そしてプレゼントマイクのカウントダウンが始まる。

 

『よぉーし!組み終わったな!!?準備はいいか聞かねえぞ!!行くぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!3!!2!!1!!START!!』

 

豊穣チーム

緑谷 205P

麗日 130P

常闇 175P

豊穣 1000万P

 

今、次に進むためのチーム戦が始まる!

 

 

 

 



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決着 第二種目 騎馬戦

スタートの合図で騎馬戦の幕が上がる。

 

「実質それの争奪戦だ!!!」

 

「はっはっは!!豊穣くんいっただくよーーーー!!」

 

「覚悟してよね頼光!」

 

二組が仕掛けてくる。一組はB組でもう一組は耳郎達の騎馬だ。両方とも前方から距離を詰めてくる。先手必勝と言わんばかりに突撃してくる二組に対し、面白そうに見据える。

 

「いきなり襲来とはな……まず二組。追われし者の宿命……選択しろ豊穣!」

 

「おっし、迎撃するか!常闇は黒影を出すなよ!騎馬は少し下がりながらで頼む!」

 

「「分かった!」」

 

頼光は騎馬に指示を出し、迎撃の手段をとる。手に雷を集約させ、野球ボールサイズの玉を手のひらに作り出す。

 

「悪質じゃなく、維持出来ないような攻撃じゃないなら良いよな!楽しんでくれよ?ベイビー。炸裂エレキボール!!」

 

手榴弾を投げるように、炸裂エレキボールを放つ。そのエレキボールは二組の間に落ち炸裂し、放電する。

 

「ぐっ~〜〜!!!」

 

「あばばばばば!!!」

 

「頼……光!!」

 

炸裂したエレキボールは約100万ボルトの放電となり、二組の動きを確実に止め、相手の個性の発動を妨害した。

 

「そう簡単に取られると思うなよ?」

 

「それはオイラにも言えたことだぜ豊穣!!」

 

今度は横から障子が接近してくる。

 

「障子くん!?一人!?騎馬戦だよ!?」

 

未だに囲まれそうになっている状況が続く、そこでさらに障子の襲来。

 

「一旦距離を取れ!とにかく複数相手に立ち止まっては!」

 

「……!止まれ!三人!足元を見ろ!」

 

頼光が叫ぶ、三人が足元を見ると峰田の球体が落ちていた。踏めば引っ付いて離れなくなる個性の代物だ。もし踏んでしまえば、その場に釘付けになっていただろう。

 

「峰田くんの!!一体どこから……!」

 

「ここからだよ豊穣、緑谷ぁ……」

 

「んなのアリかよ!!」

 

障子が峰田をすっぽり覆い隠しているのだ。個性を生かした騎馬なのだが、どうやって奪えというのだろうか。手を伸ばして取れるというものではない。確実に鞭やその手の個性が必要とされるだろう。

 

攻撃は止まず更に障子の複製腕の影から鞭のように舌が伸びてくる。

 

「うお!?」

 

頼光は何とか上体を逸らし、回避に成功する。攻撃が飛んできた方向を頼光は見据え驚く。

 

「さすがね豊穣ちゃん……!」

 

「蛙吹もあの中にいるのかよ」

 

「蛙吹さんもか!!凄いな障子くん!!」

 

周りを見ると、1000万を狙っている騎馬が集結しつつある。このままだと包囲網的な何かが完成してしまい逃げ場がなくなる。

 

「感心している場合じゃねぇな!俺の溶断ブレードで飛ぶぞ!麗日準備いいな?」

 

「いつでも!!」

 

「んじゃ行くぜ!!そらぁ!!」

 

十本の指から溶断ブレードを一気に噴出させ、空気の膨張を利用して騎馬ごと飛び上がる。

 

「スキだらけだぞ!!ビリビリ!!」

 

空中にいるのに、爆豪が後方より接近してきていた。騎馬から離れ直接奪いに来たのだ。

 

「ッ!来たか、爆豪ちゃん!防御頼んだ!常闇!」

 

「承知した!」

 

頼光の指示に応え、爆豪の攻撃を常闇の黒影が防御する。

 

「何だ……こいつ―――……」

 

爆豪は訝しげに自分の攻撃を防いだ黒影を見る。その後ろでテープが伸びてきて、回収される。

 

『やはり狙われまくる一位と猛追を仕掛けるA組の面々共に実力者揃い!現在の保持Pはどうなっているのか……7分経過した現在のランクを見てみよう!……あら!!?』

 

実況の声が詰まる。不思議なことが起きてるのだ

 

『ちょっと待てよコレ…!A組豊穣以外ぱっとしねぇ……って爆豪あれ……!?』

 

爆豪はB組の物間に取られてしまった。そして物間の煽りに頭に来て、豊穣を狙うのを中止して、物間との決着をつけることを選択する。

 

「(クラスぐるみでよくやるなぁ。まぁ、チームワークがいいといえば、そういうことになるだろうな)」

 

頼光は特に興味なさげに、目を離し騎馬に声をかける。

 

「とりあえずここまでは順調だ、この調子なら……」

 

豊穣達の騎馬の前に別の騎馬が立ちはだかる。

 

『さァ残り時間半分切ったぞ!!』

 

実況が残り時間が半分切った事を言う。対面している豊穣は息を小さく吐き

 

「そう簡単に、終わらしてくれねぇ見たいだな……構えろよ、楽しめそうなやつが来たぞ」

 

対面した騎馬は轟チームだ。轟は頼光を見据えて、息を吐き言う。

 

「そろそろ、奪るぞ」

 

「もう少々終盤で相対するのではと踏んでいたが……買われているな豊穣」

 

「ああ、そうみたいだな!」

 

頼光は嬉しそうに目を輝かせ答える。緑谷は

 

「時間はもう半分!ここからは足を止められない!仕掛けてくるのは1組だけじゃない!」

 

その言葉と同時に、轟チームの上鳴が動いた。

 

「しっかり防げよ……!無差別放電130万V!!!」

 

上鳴の放電は近くにいる周りのチームに無差別に当たる。轟チームの面々は、八百万が作った絶縁体のマントで被害をゼロに抑えた。

 

「騎馬はやらせねぇぞ!」

 

頼光は自分のところに迫る放電を、自身に引き寄せガードする。

 

「悪いが、我慢しろ」

 

しかし、攻撃の手は緩めない。次が八百万が放電の事前に作った、熱伝導率の良い金属棒を轟に渡した。それを受け取った轟は氷結の個性を使い、各チームの騎馬を行動不能にした。

 

「放電で確実に動きを止めてから氷結か……!」

 

「前来とるよ!」

 

「牽制する!」

 

常闇が黒影で牽制する。その牽制を轟は八百万に指示を出す。

 

「八百万!」

 

「させません!」

 

創造で盾を作り出し、黒影の牽制をいなす。

 

「牽制としてナイスだぜ。態々無理に突破する必要は無い。大事なのは黒影の射程と俺の射程だ。そして……」

 

「相手の行こうとするリズムに合わせて動き、左側を意識するんだよね」

 

頼光は頷く。轟が左を使わない限りこの立ち回りはかなり有効に働き……

 

『残り時間約1分!!轟フィールドをサシ仕様にし……そしてあっちゅーまに1000万奪取!!!とか思ってたよ5分前までは!!豊穣なんとこの狭い空間で5分間逃げ切っている!!』

 

そう、5分間時間を稼ぐことに成功しているのだ。

 

「(常に距離を置いて左側に……よく見てやがる。これじゃあ最短で凍結させようにも飯田が引っかかる。こうも動かれたら無闇な凍結は自分の首を絞めるな……それに、上鳴の放電も豊穣に一極に集められ無効化されちまう……残りの1分でどう動くか……!)」

 

「(轟が右だけに拘っているからこうして保てているが、いざこざがなければ左側も攻撃してきただろうな。けど、このまま終わるとは思えねぇ。飯田がいる以上なにか仕掛けてきそうだ)」

 

逃げている側も気を張り詰めている。その集中力の高まりは、並のものじゃない。飯田の目を見て頼光は瞬時に騎馬に声をかける。

 

「三人とも、少し痺れるかもしれねえけど。我慢してくれよ?」

 

「ここまで来たら、信じるぞ豊穣」

 

「何かするんだよね!ウチら我慢するからやってもいいよ!」

 

「うん!豊穣君任せるよ!」

 

三人からの了承を得て、小さく息を吐き集中力を高める。微かに、パチパチと言う弾けるような音が頼光の周りから聞き取れる。

 

「皆、残りの1分弱……この後、俺は使えなくなる。頼んだぞ」

 

「飯田?」

 

飯田覚悟を決め、目の前の豊穣チームを見据える。

 

「しっかり掴まっていろ。そして取れよ轟君!」

 

その言葉を聞いて轟は身構える。頼光も

 

「行くぞ、しっかり支えてくれよ!出久!麗日!常闇!」

 

そして、一瞬の勝負が行われた。速さの勝負が

 

「トルクオーバー!!」

 

「ライトニングアクセル……!」

 

技の準備が一瞬で行われ、そして一瞬の攻防が行われる。

 

「レシプロバースト!!」

 

「20%電光石火!!」

 

飯田のレシプロバーストは爆発力がある瞬間的な速さで、頼光の騎馬目掛け走る。そして轟はその速さに合わせて、ハチマキをとるというものだ。だが……

 

「あの野郎……!」

 

轟は忌々しげに上を見る。そこには雷を纏った頼光が空中に居た。

 

「あれを避けたのか!?」

 

飯田は驚きながら、頼光を見上げる。頼光は下のメンバーに当たらないように、溶断ブレードで滞空していた。

 

「危ねぇな!こんなの隠してたのかよ!飯田!!」

 

頼光は嬉しそうに飯田に向かい言う。まさかこんな手を隠しているとは頼光も思わなかった。なにかしてくる程度の考えだったからというのが大きい。

 

頼光は再び騎馬の上に着地する。

 

『ここに来て怒涛の攻防ーッ!!しかし轟チーム、1000万は奪えず!そろそろ時間だカウントいくぜ!エヴィバディセイヘイ!10!9!8!―――……』

 

「奪えなかったか……」

 

減りゆくカウントダウンを聞きながら呟く轟。

 

「すまない!力及ばずだ!」

 

「申し訳ございません、お力になれなくて……」

 

「ウェーイ……」

 

三人が轟に対して謝罪をする。轟は首を横に振る

 

「いいや、お前達のせいじゃねえよ。俺の力不足だった。だが、このままは終わらねぇ。最終種目で決着をつけてやる」

 

己が目的の為、超えなければならない壁を超えるため、頼光と緑谷を見据えたまま、制限時間を迎える。

 

『TIME UP!!』

 

第二種目、騎馬戦の幕は下りた。

 



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昼休憩と電話

皆様のおかげで、この作品のお気に入りが900超えました!
ありがとうございます!


午前の部が終わって、昼休憩になる。頼光は昼食の前に手洗いに行き、その帰りを歩いている。

 

「雁字搦めの社会で幾度手を……お?」

 

その視界の先には爆豪勝己が立っていた。頼光を待ち受けていた。という訳ではなくて、なにか聞いているような感じだった。頼光は特に気にすることなく

 

「おーい勝己ー飯食いに……」

 

「しっ!」

 

爆豪は人差し指を唇に当て、頼光に言葉を飲み込ませた。

 

(あん?)

 

少し怪訝そうな顔を浮かべ、爆豪の近くに行き

 

「何かあるのか?」

 

「気づかれるだろ、黙ってろ」

 

曲がり角の先の方へ顎をしゃくり、見るように促す。頼光は覗き込む様に見る。そこには、そこには轟と緑谷が向かい合っている光景が見えた。

 

「んだこれ?」

 

「俺に聞くなビリビリ」

 

互いに顔を見合わせて、轟と緑谷を見る

 

「緑谷、お前、オールマイトの隠し子か何かか?」

 

轟の話し声が唐突に聞こえてきた。

 

「ち、違うよそれは!って言っても、もし本当に隠し子だったら違うって言うに決まってるから納得しないと思うけどとにかくそんなんじゃなくて……そもそも、その、逆に聞くけどなんで僕なんかに?」

 

「そんなんじゃなくて、って言い方は少なくとも何かしら言えない繋がりがあるってことだな?」

 

「……っ!?」

 

緑谷に追求する轟。この一連の会話で頼光は目の前の光景についておおよその見当が付ける。

 

(控えの続きか……どんな話が始まるんだろうな)

 

体育祭開会式前、控え室で行われた轟が緑谷に突っかかった時の事を思い出す。恐らくその話の続きだろう、あの時は切島が止めに入ったし、ギャラリーも多くいたからそれ以上は無かったが。轟は話を続ける。

 

「俺の親父はエンデヴァー。知ってるだろ、万年No.2のヒーローだ。お前がNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は尚更勝たなきゃならねえ」

 

そこから話されたのは、轟焦凍の過去、No.2ヒーロー轟の父・エンデヴァーの話だった。自分ではどんだけ頑張ってもNO.1ヒーロー、オールマイトは超えられない。それを超える逸材を生み出すために、『個性婚』に出たという。個性婚は自身の個性をより強化して子供に継がせる為だけに配偶者を選び、結婚を強いること。実績と金があったエンデヴァーは轟の母方の親族を丸め込み、母親の個性を得たという話だ。

 

「お前がオールマイトの何であろうと俺は右だけでお前の上を行く。時間取らせたな」

 

最後にそう言い残しその場を去ろうとする。だが、

 

「僕は……!僕はずっと助けられてきた。さっきだってそうだ。僕は誰かに助けられてここにいる。オールマイト……彼のようになりたい!その為には一番になるくらい強くならなきゃいけない。君に比べたら些細な動機かも知れない。でも僕だって負けられない。僕を助けてくれた人達に応えるためにも……!」

 

去りゆく轟を追いかけ、そして宣言する。

 

「さっき受けた宣戦布告、改めて僕からも。僕も君に勝つ!」

 

堂々と轟を見据えて緑谷は宣言する。轟も緑谷を見つめていたがその後何も言わずに去って行った。

 

「なんか、凄いもの聞いたな……どうすんだよ……」

 

「どうすもこうするもねぇよ!聞かれるほうが悪いんだよ!」

 

と言う爆豪だが、罪悪感があるのか、脂汗が出ている。そんな話を聞くつもりは無かった、だが聞いてしまった。それが、現実でどうしようもないことだ。

 

「まぁ、そりゃそうだよな。俺達にはどうしようもねぇな」

 

爆豪は少し驚いた表情を頼光に向ける。頼光は心外だなという表情を浮かべ

 

「別に何も思わなかったわけじゃないけど、俺も上を目指してるし戦うことが楽しみなんだぜ?そこに家の事情なんて入る余地ねぇだろ?まさか、勝己あの話を聞いて譲るつもりなのか?」

 

頼光に煽られて爆発する爆豪

 

「ンなわけねぇだろ!!関係ねぇに決まってるだろ!相手が、デクだろうとお前だろうとぶっ飛ばして俺が頂点に立つ!!」

 

爆豪はそう言いその場を立ち去った。頼光はその背中を見送り……

 

「いいねぇ!上等じゃねぇの!それでこそだぜ勝己!それでこそ、俺のライバルだぜ」

 

バチバチと電気を鳴らす。やる気のボルテージが最大まで上がっているのだ。昼飯を食べるために、食堂に行く。心を落ち着かせながら

 

 

《レクレーションが終われば最終種目!!進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!!一対一のガチバトルだ!!》

 

昼休憩が終わりいよいよ午後の部開始の時間となる。会場の実況者プレゼント・マイクの声が響き渡り盛り上げる。

 

形式は異なるが、毎年サシで競っているのは共通らしい。

 

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始となります。レクに関しては進出者16名は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も、温存したい人もいるしね!じゃあ一位のチームから」

 

「すいません、俺辞退します」

 

尾白が手を挙げて辞退を申請する。

 

「尾白君何で!?」

 

「せっかくプロに見てもらえる場なのに!」

 

「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分ヤツの個性で……。チャンスの場だってのは分かってる。それをふいにするなんて愚かなことだってのも。でもさ、皆が力を出し合って争ってきた場なんだ。こんな……訳分かんないままそこに並ぶなんて俺には出来ない。これは、俺のプライドの問題の話だけど、俺が嫌なんだ……!」

 

「僕も同様の理由から棄権したい!実力如何以前に……何もしていない者が上がるのは……この体育祭の趣旨に反しているのではないだろうか!」

 

B組の庄田二連撃という人物も尾白猿夫に続いて棄権を申請する。皆がミッドナイトを見つめる。

 

 「そういう青臭い話はさ……好み!!!庄田、尾白の棄権を認めます!」

 

 

ということで二人の辞退は認められた。その代わりとして鉄哲と塩崎が繰り上がってトーナメント進出という形になった。そしてくじ引きが再開され、全員が引き終えた。

 

1回戦: 心操VS緑谷

 

    轟VS瀬呂

 

    塩崎VS上鳴

 

    飯田VS発目

 

    芦戸VS豊穣

 

    常闇VS八百万

 

    鉄哲VS切島

 

    麗日VS爆豪

 

と言う組み合わせになった。

 

「まずは芦戸か……(準決勝で勝己と当たるか……楽しみじゃねぇか)」

 

その前に、1回戦だなと呟く頼光と

 

「ウソ!初戦から豊穣じゃん!終わったーー!!」

 

頼光に当たって嘆いている芦戸

 

決まった組み合わせは変わることは無い。最終種目が始まるまで、各々時間を潰すことにする。

 

神経を研ぎ澄ます者、緊張を解きほぐそうとする者。それぞれの思いを胸に時間は迫る。

 

頼光の携帯端末に着信が来る。

 

「誰からだ?」

 

頼光は着信の主を見る。そこには

 

『妹:雷華』

 

と書かれてた。

 

「……もしもし?」

 

頼光は電話に応じる

 

『もしもし、兄さん?久しぶり。元気にしてた?体育祭見てるわよ!』

 

テンション高めで電話をかけてきた妹。頼光は笑いながら答える。

 

「そうかよ、中々やるもんだろ?雷華のお兄ちゃんは」

 

『そうね、あそこまで個性が使えるようになってるなんて思わなかったよ!小学生の時は、すぐに体を壊してたのに』

 

「何のことかな?記憶にないな」

 

しばらく談笑する。兄妹で、携帯端末越しにだが。

 

「もう、そろそろ時間だな。じゃあな、雷華。寮生活頑張れよ」

 

『分かってるわよ!兄さんも頑張って!一位取るんでしょ?』

 

「勿論な」

 

妹に一位を取ると言い、通話を切る。大きく深呼吸して戻る。口角を釣り上げながら……

 

 

《ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局はこれだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくともそんな場面ばかりだ!分かるよな!!心・技・体に知識、総動員して駆け上がれぇ!!!》

 

プレゼント・マイクが会場のボルテージを最大限まで盛り上げる。

 

そしてフィールドの四方の隅から炎が吹き出すと、いよいよ一回戦第一試合のアナウンスが流れる。

 

《第一回戦!成績の割には何だその顔!ヒーロー科・緑谷出久!VSごめん、まだ目立つ活躍なし!普通科・心操人使!》

 

紹介された両選手は大勢の歓声を浴びながら入場する。

 

《ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは「まいった」とか言わせたもん勝ちのガチンコだ!!怪我上等!!こちとらリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨て置け!!だがまぁもちろん命に関わることよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローは敵を捕まえるために拳を振るうのだ!》

 

頼光はクラスの席に座り、試合を観戦する。1回戦目から緑谷の戦いだ、気にならないわけがない。しかし、何かを話して緑谷が心操に近づくとピタリと止まってしまう。

 

《オイオイどうした!?大事な初戦だ。盛り上げてくれよ!緑谷!開始早々完全停止!?》

 

とマイクも困惑気味に実況する。

 

「折角忠告してやったのに!!」

 

「なぁ、尾白。あいつ、心操の個性はなんだ?」

 

頼光は辞退した尾白に聞く。

 

「多分、操る個性だと思う。質問に答えたら発動する系の……」

 

「なるほどな、初見殺しもいいところだな」

 

「でも万能ってわけでもなさそうだ。騎馬戦の時、終盤に鉄哲のチームとぶつかったんだが、その時に目覚めた。だから衝撃を与えれば洗脳は解ける。って緑谷にもちゃんと言ったんだが」

 

「まぁ、タイマンで衝撃なんて期待できないよな……こんな所で終わるのかよ?」

 

頼光が悔しそうに呟いた瞬間。衝撃波がフィールドを襲う。強い風が吹き荒れる。そしてその風が収まるとそこには後一歩で場外になる所だった緑谷が居た。

 

《緑谷とどまったァァァ!!!》

 

(あの野郎、暴発させやがった。無茶しやがるな!)

 

そして緑谷は心操を背負投をし、場外にして勝利を収めた。

 

こうして緑谷は2回戦進出を決めた

 

《続きましてはこいつらだ!優秀!優秀なのに拭いきれないその地味さは何だ!?ヒーロー科瀬呂範太!VS予選3位2位と推薦入学者の名に恥じぬ成績のこの男!同じくヒーロー科轟焦凍!!それでは最終種目第二試合レディースタート!》

 

開始の合図と共に、瀬呂はテープを射出し、轟に巻き付ける。そして、一気に場外に出そうとする。場外狙いの早業、このまま場外に出すことができれば、瀬呂の勝ちだった……

 

キィン!!!!

 

決着は瀬呂の勝ちにならなかった。轟の氷結が瀬呂を仕留めた。しかし、規模が会場に収まりきらず、天井も突き抜けるほどの規模だった。その光景に観客も、実況も呆然とした。

 

「瀬呂君行動不能!轟君二回戦進出!」

 

ミッドナイトが半身を凍らせながらそう宣言する。そして自然と沸き起こるドンマイココール。そんな光景を見ながら

 

「楽しみになるじゃねえの」

 

楽しみと笑う頼光が居た。

 

 

 



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開幕 最終種目 第1回戦

今週のジャンプを見て再燃しました。この炎いつまで続くだろうか


最終種目一回戦戦第三試合は上鳴VS塩崎の試合となった。開幕早々に上鳴が放電攻撃を仕掛けたが、塩崎の個性・ツルによって防御されてしまった。そして、上鳴は電気を使いすぎてショートし、ツルに拘束され身動きが取れなくなり、この勝負は塩崎の勝ちとなった。

 

試合が始まる前に上鳴は

 

『多分この勝負、一瞬で終わっから』

 

と言っていた。まさか自身の敗北で一瞬で決着が着くとは思っても見なかっただろう。

 

「初手ブッパで勝てたら苦労はしねぇな。少し考えが甘かったな」

 

頼光は今の勝負を見ながら苦笑いをして感想を呟く。そして試合は引き続き行われていく。第四試合は飯田VS発目。この試合は先ほどまでの試合とは異なり、発目のサポートアイテム披露会となった。サポート科の発目にとってこの場は自分の発明品を売り込むのに最高の舞台である。飯田の真面目な性格を利用した売り込み根性は大したものであり、10分に渡り追いかけっことアイテムのプレゼンが行われた。その末は満足した発目が自ら場外に出て決着が着いた。

 

飯田はうまく乗せられただけの試合となった。第四試合の決着はこのように着いた。

 

そして、第五試合の幕が開けようとしていた。

 

《立て続けにいくぜぇ!第五試合!あのツノから何か出んの?ねぇ出んの?ヒーロー科芦戸三奈!VS予選順位ダブル一位!纏うは雷、振るうは剛腕てか!?ヒーロー科豊穣頼光!》

 

第五試合芦戸VS豊穣。両者がフィールドに出て準備を整える。緑谷は観客席から自作のノートを見ながら試合展開を予想する。

 

「豊穣君と芦戸さんの対戦……。二人の個性から考えるに、互いに接近戦が鍵を握る……。でも、豊穣君には中距離に対応した技がある。芦戸はそれを掻い潜り接近戦に持ち込まないと勝機は薄い……けど、近接戦に持ち込んだ所で豊穣のを攻略できるかといえば……」

 

緑谷はノートを見ながら何時もの癖の様にブツブツと分析をする。

 

「豊穣やっちまえーー!!格闘ゲームみたいに服が破ける感じで倒せー!!」

 

「クソかよ!」

 

峰田のゲスい叫びにツッコミをいれるのは耳郎である。そして

 

《さあ行ってみようか!第五試合スタート!》

 

芦戸は足から酸を出し、滑る様にフィールドを移動を開始する。目的は機動力で攻めようとの考えだろう。

 

(接近戦は向こうも強いし、探りながら行くしかないね!)

 

それ自体は悪くない考えであった。無策に突っ込めば狩られるのは明白であり、機動力から翻弄し倒しにかかるのは当然の策であろう。

 

「悪いけど遊ぶつもりは無いから、早々に決めさせてもらうぜ?芦戸ちゃん!」

 

指を親指から中指まで伸ばして芦戸に向ける。指先に電気が集まり、バチバチと音を立てスパークし光弾を形作る。

 

「何するつもりか知らないけど、こう動いていたら当てられ無いんじゃない!?」

 

悠長に構える豊穣に対して芦戸は手から酸を出して豊穣の後ろから攻撃をする。しかし、

 

「雷の方が速いんだぜ?それに、足止めたら機動力の意味が無いぜ!」

 

豊穣は芦戸の方を向き手から雷球を放つ。迫り来る酸を突き破り

 

「うそ!?」

 

芦戸に着弾する。着弾と同時にスパークを起こし電撃が芦戸を襲う。

 

「あばばばば!?」

 

芦戸の体は電撃により痺れ、思うように動けなくなってしまう。

 

「か、体が痺れて…う、動けない……!」

 

「そりゃ加減をしたが、それなりの電圧で攻撃したからな。少なくてもこの勝負中は動けないだろうよ。と、言うわけで」

 

芦戸の体操服の襟を掴み、場外に出した。

 

「芦戸さん場外!二回戦進出!豊穣君!」

 

ミッドナイトの声が響き渡る。ロボットが来て痺れて動けない芦戸を運んでいく。

 

《豊穣頼光快勝!電撃で相手を動けなくし、場外まで確実に運ぶ!!意外に紳士かつ、手堅いぜ!!!》

 

(女の子だからってと言うのはダメなんだろうけど、やっぱり気が引けるよな。というか、案外この技使えそうだな)

 

第六試合は、八百万と常闇との試合であった。八百万は個性の創造で何かを作ろうとしたが、常闇のダークシャドウがそれを許さない猛攻を仕掛け、考える暇を与えず、気がついやら場外に押し出されていたと言う決着が着いた。

 

(ノータイムで攻撃できる常闇と考えてから創造する八百万だと、八百万には厳しいな。予め何を創ってどう攻めるか考えていたらまた違った結果だったろうな)

 

豊穣は軽く分析しながら次に戦うであろう相手を確認する。そして、第七試合は切島と鉄哲による個性被りの面殴り合い。一進一退の攻防は泥臭くも思えるが、全くの互角で見るものを熱くさせる試合だった。最後は互いにダウンし引き分けとなり、回復次第腕相撲で決着がつけることとなった。

 

一回戦第八試合、見るものに緊張を与える試合が幕を開けようとしていた。その対戦カードは爆豪と麗日の対戦カードだった。回復を待つ間に最後の試合が行われるのだが、

 

「次 ある意味最も不穏な組みね」

 

「ウチなんか見たくないなー」

 

蛙吹と耳郎が不安を漏らす。それもそのはず爆豪の強烈さを容赦の無さを知っているからだ。だが試合はもうすぐ開幕だ。

 

《中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねえヒーロー科爆豪勝己!VS俺こっち応援したい!!ヒーロー科麗日お茶子!》

 

爆豪と麗日がマイクの紹介の中フィールドに入場する。

 

「この試合どうなると思う?豊穣君」

 

緑谷が豊穣に声をかける。豊穣はフィールドの2人を見ながら

 

「事故でもまぐれでも、麗日が触れることが出来れば勝てるだろうな。けど、勝己はそれを許すほど甘くねえな。厳しい勝負になるだろうな」

 

豊穣は知っている。爆豪がこう言う時、油断も隙も無く、戦うだろうことを。そして戦いの火蓋が切って落とされた

 

《第八試合スタート!!!》

 

合図と共に麗日は爆豪に向かって突っ込む。速攻を仕掛けたのだ。まぐれでも、事故でも触れることが出来れば主導権を握る事が出来る。そして爆豪の選択肢は、回避ではなく迎撃。それを狙っている麗日。最初の一撃は右の大振りが来るのは知っていたため回避して触れようとするが、それでも避けること叶わず。

 

再度突っ込む麗日。煙に紛れた攻撃に反応して攻撃するが、それはジャージの上着のみであった。麗日が浮かせて囮に利用したのだ。背後から浮かせるべく手を伸ばすが、爆豪その行動を見てからすぐさま爆発で迎撃する。類稀なる反応速度を以て迎撃を成功させる。

 

触れなきゃ個性を発動出来ない麗日と見てから反応し爆発で迎撃が出来る爆豪では相性は良くない。だが、麗日は諦めることなく突進をする。姿勢を低くし爆豪に触れようと手を伸ばし、その度に爆豪は爆発で迎撃する。油断すること無く確実に。その光景はあまりにも一方的な試合展開である。観客席からブーイングが巻き起こるレベルである。しかし

 

《今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?素面で言ってんならもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうしてるからこそ、手加減も油断も出来ねえんだろうが》

 

マイクを通して観客席へ怒気を含めた声で言う。豊穣は緑谷に声掛けた。

 

「麗日、無策で突っ込んでいたと思うか?俺ら観客席からなら気づいて当然の光景が見えるぜ?」

 

「え……?あ……!!」

 

低姿勢で突進をしていたのは爆豪の打点を集中させるため、それは武器を作り出すためでもある。さらに爆煙と突進は視野を狭める。

 

「あんな捨て身の策を!?麗日さん!!!」

 

「勝あアアアァつ!!!」

 

空中にはフィールドの破片が無数に浮いていた。全てが爆豪が壊したものであり、麗日が浮かしたものである。麗日は個性を解除し破片を落とす。降り注ぐ破片の中、麗日は爆豪に接近する。迎撃にしろ、回避にしろスキが生まれるこの瞬間を狙っていたのだ。

 

爆豪はゆっくりと破片を見据え左手を構え

 

バオォォォォォォン!!!

 

麗日の秘策を文字通り、一撃で正面から力づくでねじ伏せてみせた。

 

破片を吹き飛ばすだけではなく、その衝撃で近づいていた麗日も吹き飛ばした。それでも諦めず、麗日は挑もうとした、爆豪も構え受けて立つつもりだったが、その前に麗日が許容重量を超え、身体は限界を迎え倒れ込む。

 

「麗日さん…行動不能。二回戦進出爆豪君!!!」

 

ミッドナイトが爆豪の勝利を告げ、一回戦の幕を閉じたのであった。




職場体験どこに行けばいいんだろう。


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最終種目 第二回戦

第二回戦は緑谷と轟の一戦からスタートした。因みに、二回戦が始まる前に、切島と鉄哲の腕相撲は切島の勝利に終わり、二回戦での爆豪の相手は切島となっていた。

 

《二回戦第一試合!今回の体育祭両者トップクラスの成績!緑谷対轟!!スタート!!》

 

プレゼントマイクの開始宣言と共に轟は氷結攻撃を仕掛ける。緑谷は指を犠牲にした迎撃をする。生半可な調整では轟の氷結攻撃は防げないと判断しての迎撃だ。その衝撃は凄まじいもので轟が後ろに氷を出して壁を作り出すほどである。再度轟は氷結攻撃を仕掛け、それを指を犠牲にして迎撃する緑谷。気がつけば、右手の残弾が底をついていた。もう自損覚悟の打ち消しは行えない。

 

だからと言って手を緩める轟では無い。さらなる追撃を仕掛ける。ついには足を捕まえることに成功したのだが、左腕を100%の力を使い放った。指よりも凄まじい威力で轟を突き放す。しかし、場外には届かずフィールド内にとどまってしまう轟。

 

トドメを刺そうと轟は氷結攻撃だすが、思いもしなかった衝撃が再度襲いかかる。それはA組のみならず見ている人を驚愕させるものでもある。

 

「あ、出久のやつ!壊れた指でやるかよ!」

 

「何でそこまで……」

 

フィールドにいる轟ですらそう呟く。壊れた指で行使したため指がさらに悪化し痛々しい色に変色をする。それでも、その指ごと右手を握りしめ叫ぶ。

 

「全力でかかって来い!!」

 

轟の表情が変わる。明らかに苛立ちを感じている。そしてトドメをさすべく近距離戦を仕掛けるが、緑谷も突っ込んでいた。そのタイミングで頼光は気づいた

 

(氷を使い続けると身体能力下がってるな。左使えばすぐに解決できるだろうに。轟の奴まだ使わない気かよ)

 

思わずため息を漏らす豊穣。そんな溜息に反応して

 

「どうしたんだよ豊穣?溜息なんてついて、今緑谷と轟が戦っているだぜ!?」

 

切島が尋ねてきた。豊穣は二人が戦う姿を見ながら

 

「最初の実技で轟と戦っただろ?俺」

 

「そういえばそうだったな。でも、それがどうかしたのか?」

 

「今のままの轟と戦っても何の経験値も得られないだろうなぁとな。前回と変わってなければ、得られるものなんてないからな。そりゃ溜息の一つも出るってもんだ。まぁ、俺の話は置いておいて続きみようぜ」

 

豊穣は話を切り上げて試合を再度見る。轟は緑谷の気迫と攻めで押されている形になっていた。しかし、緑谷の両腕は悲惨なものであり押していると言い難い状況だ。しかし、緑谷が轟にダメージを与えているのは事実である。

 

そして訴える様に緑谷は叫んだ

 

「君の!力じゃないか!」

 

緑谷が轟に言い放つ。すると、轟の身体からすさまじい量の炎が一気に放出される。誰も見たことの無い左の炎

 

「これが、轟の炎か!」

 

観客席まで届く熱、そして緑谷と轟は何かを話す。言葉は多くなく、すぐに決着をつけるべく攻撃の態勢へと移る。轟は炎を出しながら氷結攻撃を行う。それを緑谷は個性を発動させた跳躍で回避して轟との距離を詰める。迎え撃つべく炎を構える轟と渾身の一撃を以て勝とうとする緑谷。

 

二人の大技が激突し……

 

ドォォォォォン!!!

 

轟音を響かせ、衝撃を撒き散らした。迫り来る爆風に耐え、収まると同時にフィールドに目を向けると、場外で倒れている緑谷とフィールド上で立っている轟がいた。決着は着いた

 

「み、緑谷君場外。轟君三回戦進出!!」

 

轟の勝利として

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二回戦第二試合は塩崎VS飯田だった。飯田は得意の機動力を使い、塩崎の後ろを取りそのまま押し出して勝利を掴んだ。そして二回戦第三試合。豊穣VS常闇。両者がプレゼントマイクのアナウンスの中フィールドに入場し向かい合う。

 

(先の騎馬戦でダークシャドウの弱点をさらけ出してしまっている。豊穣の個性は『トール』雷神と同じ名前を持つ個性、雷光で対策されたら厄介だ。そうならないために速攻しかない!)

 

常闇が豊穣に勝つ為に算段をつけている。豊穣は豊穣で緑谷と轟の戦いが脳裏に焼き付いていた。

 

(あんな全力を出す戦いしてみたいもんだな。来いよ、常闇ちゃん俺を楽しませてくれよ?)

 

(っ!?何という重圧!)

 

《二回戦第三試合スタート!!!》

 

試合開始の宣言がなされる。常闇は頭を振り、すぐさまダークシャドウを出し豊穣に攻撃を仕掛ける。

 

「行け!ダークシャドウ!!」

 

『あいよ!』

 

迫り来るダークシャドウ。眼前まで迫り、ダークシャドウは対象を打ち倒すべくその腕を振るう。が、

 

「何!?」

 

ダークシャドウの攻撃は豊穣の両手で止められていた。ダークシャドウの両手を自身の両手で掴んで止めているのだ。

 

「攻撃能力は知っている、八百万との試合での速攻も見ていた。弱点も騎馬戦で共有したよな?」

 

そのまま膝でダークシャドウの頭をかち上げ、手を離し、ダークシャドウの頭を掴み地面に叩きつける。ダークシャドウの半身をフィールドに突き刺す形になっている。

 

「なっ!ダークシャドウ!?」

 

《あーーっと!!ダークシャドウを正面からねじ伏せてフィールドに埋めたぞ!?どう言う力してんだ!?》

 

ダークシャドウは両腕を使い何とか抜け出す。ダメージは無いようだ。

 

「ダメージは無いようだな。脳無殴っているより手応えが無いか?効かねぇなら、本人を狙いしかないようだな!」

 

「相手は目の前だダークシャドウ!!!」

 

『アイヨ!』

 

再びダークシャドウが豊穣に襲いかかるが、

 

「遅いぜ!」

 

伸びてくる腕よりも早くダークシャドウ顎に蹴りを入れ、カカト落としで再度地面に埋め、姿勢を低くし一気に常闇の懐に入る。

 

「なっ!」

 

「ダークシャドウは攻守、射程に優れているよな。それは絶対的なアドバンテージだぜ、けど俺みたいな懐に突っ込んでくるやつ相手に懐に潜られたら、どうしようもねぇよな!」

 

そのまま腹部に拳を叩きつける。常闇の体はくの字に折れる。

 

《豊穣のボディーが常闇にささるゥゥゥ!!!思わずく身体がくの字に折れる!!!》

 

「ガハッ!!……つ、掴め…ダークシャドウ……!」

 

腹を抑え片膝をつきながらもダークシャドウに指示を飛ばす。しかし最低限の動きで回避される。豊穣は手に雷を集約させ、

 

「良いもんあげるぜ!ダークシャドウ!!」

 

ダークシャドウにぶつける。凄まじい雷が迸り、雷光がダークシャドウを弱らせる。

 

(弱点が知られているとは言え……なんという差だ……たった一撃で足がまともに動かないとは……!)

 

ダークシャドウは光が弱点であり、それ以外はさほど効果は無い。が、今の雷光で弱り、常闇自身も豊穣の一撃を貰いしんどい状況である。

 

「攻めろ!ダークシャドウ!!!」

 

ダークシャドウは豊穣を何度も攻め立てる。しかし触れる直前で雷の光で迎撃される。ダークシャドウの体力も確実に削られる。豊穣は足に雷を纏い、ダークシャドウを踏みつけ、一気に常闇との距離を詰める。

 

「いい経験が出来たぜ、常闇ちゃんサンキューな……!」

 

「しまっ―――――!?」

 

雷を纏った一撃を常闇に叩き込む。衝撃は後ろに貫通し、常闇は勢いよく吹き飛びフィールドの外の壁に激突する。

 

「常闇君場外!豊穣君三回戦進出!」

 

ミッドナイトの宣言に右手を上げる豊穣。

 

そして二回戦第四試合は爆豪VS切島の試合が行われた。序盤は切島が硬化を用いて攻め立てていた。試合が長引けば不利になると分かっているのかは分からないが速攻を仕掛けていた。爆豪の爆発でもよろける所か微動だにせず攻撃してくる。爆豪が防戦一方に見えるが、硬さに綻びが生じ始めた。それを見逃す爆豪では無かった。爆豪の猛攻が爆発する。連打で徹底的に叩く。そして最後の一撃をくらい切島はダウンする。

 

「まァ俺と持久戦やらねえってのもわかるけどな」

 

これで準決勝のカードは出揃った。一年生最強の座も四人まで絞られた。それぞれの思いを胸に対戦カードが出揃った。第一試合は轟VS飯田に決まり、第二試合は豊穣VS爆豪に決まった。

 

「思ったより早かったな……ビリビリ!」

 

「ああ、こっちのセリフだぜ!爆豪ちゃん!」

 

一二を争う好戦的な二人、小学から中学・高校まで一緒だった二人の激突が、試合が始まる前から燃え上がっていた。

 




公式キャラクターブック2買ってステータスを作ってみました。
もしも見たいという声があれば次回の後書きに、簡単にのせます!


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最終種目 準決勝

節目の20話が……二年後って……

大変おまたせしました!!!


準決勝の第一試合は飯田と轟の勝負となった。

 

 

勝負は轟も氷の攻撃を躱して接近し、騎馬戦で見せたレシプロバーストの加速を活かした高速の蹴りで轟の頭部を蹴りつけ、そのまま場外に運ぼうとするが、エンジンノズルの所をピンポイントで凍らされ、動きが鈍る。

 

「なっ……!いつの間に!!!」

 

「蹴りん時……!」

 

そのまま轟が飯田を凍らせて試合終了。少し危ない場面が見られたが、終わってみれば早期決着の試合だった。範囲攻撃ばかり見せていた轟が一枚上手だった試合だ。

 

そして……。A組、B組……いや、この会場の全てが次の試合カードに息を飲んでいた。

 

『さぁーー準決勝第2戦!始まるぜぇぇぇ!!!A組トップの好戦的な二人の決戦だぜぇぇぇ!!!強力な個性で並み居る相手を爆破!!!爆豪勝己!!対、体育祭全ての競技をトップで通過し、立ちはだかる相手を雷で粉砕!!!豊穣頼光!!!』

 

二人の少年がステージに上がる。小学校からの付き合い、少しいがみ合う事もある二人、互いにライバルで対等だとみとめているもの同士……そして、互いに手加減なんて許さない者同士。

 

「よう、ビリビリ……覚悟はできてんだろうなぁ?」

 

「はっ!それはこっちのセリフだぜ爆豪ちゃん。全力で取りに来いよ?じゃねぇと、勝負は一瞬だぜ?」

 

そう言葉を交わしたあとは互いに臨戦態勢を取る。爆豪は手をパチパチと小さな爆発を生み出し、豊穣は電気を纏う。

 

「ねぇ、デクくん、この勝負どうなると思うん?」

 

「正直に言うと分からないかな。かっちゃんの個性は長期戦になればなるほど強力になるし、かっちゃん本人もタフだからそれが強力な武器になる。一方の豊穣くんは雷を纏った高速移動、剛力と雷のブレードがある。けど、本人曰く体力の消費が大きいらしいから、長期戦は得意じゃないと推察できる……でも」

 

「でも?」

 

緑谷の発言に皆が注目する。緑谷はステージに立つ二人を見て

 

「互いに最初からぶつかり合うと思う。だって、あの二人はライバルだから……」

 

その言葉で締めくくられた。

 

「分かってんだろうな?」

 

「そっちこそ……」

 

再びステージの二人は喋り始める。

 

「加減なんてしねぇ」

 

「当たり前だろ?」

 

言葉を交わす度に爆破と雷な荒々しくなる。

 

「全力で」

 

「加減なく……」

 

会場は静まり変える。試合が始まっても居ないのに空気が貼り詰められていく。

 

『ぶっ飛ばす!!!』

 

《START!!!》

 

マイクの号令と共に両者が飛び出す。爆豪は爆破で加速し、頼光は雷を纏い加速し、距離を詰め互いの個性を一撃を……

 

「死ねぇ!」

 

「オラァ!」

 

ぶつける。爆破と雷が互いに衝突し土煙が舞い上がる。

 

「ぬあああ!!いきなりかよぉおお!」

 

「豊穣と爆豪なんて派手な!」

 

その衝撃は観客席まで届いていた。そしてステージの真ん中では

 

「死ねぇ!!!」

 

爆豪が爆破で頼光を仕留めるため攻撃するが、

 

「おっと!」

 

それを蹴りで対処しブレードで爆豪を切り払おうする。そしてそのブレードに対して、瞬時に反応し、爆破の勢いを使い後ろに大きく距離を置く。次に頼光を視界に捉える時にはブレードを噴射させて眼前まで接近する。そして、そのままの勢いを利用し、爆豪にかかと落としをする。

 

(速ぇ、だが、舐めんなよビリビリィ!)

 

空いていた手をそのまま爆破の個性を使い避ける。咄嗟の判断ゆえに乱雑な爆破による勢いは受身を取るのに困難するが、

 

凄まじい轟音と共に入るステージの亀裂に比べれば安い話である。爆豪はすぐさま体勢を立て直し

 

「爆速ターボ!!!」

 

りょうの手のひらを爆破させて接近しその勢いのまま膝蹴りを頼光に叩き込む。深々と右横腹に突き刺さり、メキメキと嫌な音が耳に入る。

 

「うっ……ぐぅ!」

 

 

思わず息が詰まるが、蹴りが当たる距離という事はそこは頼光の距離でもある。爆豪がその事に気づいた瞬間、

 

「お返しだ、オラァ!」

 

頼光の雷を纏った拳が右横腹に命中する。

 

「がはっ!?」

 

互いに息が詰まりそうになるのを堪え、1歩下がり再び雷と爆破をぶつけて距離を開け、土煙から出てくる。

 

『す、スッゲエエエエゼェェェ!!!音だけでしか認識できなかった!中々にクレイジーな攻防が繰り広げてられていた見たいだぜぇぇ!!!』

 

そのマイクの実況に観客は大盛り上がり。

 

「すげぇ、すげぇよ!緑谷!爆豪と豊穣の戦い!」

 

切島が緑谷に言う。細かい攻防は爆煙で見えていないが、互いに挨拶程度の攻防は済ました感じに見えた。

 

「うん、あの二人はライバル同士だからね」

 

どこか寂しそうに言う緑谷。

 

「小さい時から競ってたの?」

 

「ウチも気になる聞かせてよ」

 

麗日と耳郎も緑谷に話を聞く。緑谷は少しぼかしながらも話し始めた

 

「小学生の時に豊穣君と会ったのかな。それで、かっちゃんと上手くいっていない時があったんだよね」

 

「え?」

 

「今もそうなんじゃないの?」

 

「ううん!そんな事ないよ!そりゃ、傍から見たらそうかもしれないけどさ!それで、小学生の頃の二人が個性を使って喧嘩したんだよ」

 

緑谷は苦笑いしながらに言う。勝己は自分を虐め、それを頼光が割って入る。そこから始まった奇妙な縁。

 

「その喧嘩はどうなったんだ?」

 

「うん、豊穣君が勝ったよ。でも、豊穣君の骨が折れたり、爆破の裂傷とか、かっちゃんも身体が痺れて数日動けなかったとか……色々あったね」

 

「凄すぎだろ……。でも、アイツら今、そんなに仲悪くねぇよな?」

 

切島が再度、緑谷に聞く。緑谷は苦笑いしながら

 

「豊穣君がさっぱりしてると言うのもあるし、何より、互いに互いを認めてるし、互いに競え合うことができいるからかな、それ故に、豊穣君の勉強をかっちゃんが見たりとか」

 

「え!?」

 

「はぁ!?」

 

その事実に皆が驚く。

 

「あの爆豪が!?豊穣に勉強を教える!?」

 

「そんな一面があるんやぁ……」

 

「話もいいが、二人が動き始めたぞ」

 

常闇が皆に言う。それと同時にステージでは殆どゼロ距離の攻防が繰り広げられていた。爆破する手を弾く頼光と迫り来る電撃の手を爆破で迎え撃つ爆豪。当たればダメージ必定の攻撃を放つ。

 

「いいね!いいね!ギアが上がってきてんじゃねえの爆豪ちゃん!ようやっと本領発揮か!」

 

「余裕ぶっこいてんじゃねぇよ!」

 

「余裕?そんなのこいてねぇぜ?」

 

そう言うと頼光は爆豪に指先を向ける。バチバチと音を立てて、溶断ブレードが五指から伸びる。それも牽制で使っていた規模ではなく、一気に二十メートル以上に伸長させて空気を膨張させ烈風を撒き散らす。

 

「クソが!」

 

爆豪は瞬時の判断と烈風を利用して距離を置く。

 

『バカ長ぇブレードが爆豪から距離を置かせるぅぅ!!!つうか!何メートルあんだよ!!!』

 

「これは!USJで見せた!」

 

「ウチも、入試で見た大規模ブレード……!」

 

頼光はそれを更に両手で展開し徹底的に距離を取らせた。

 

「さぁ、互いに準備体操は出来たろ?爆豪ちゃん。余裕って言ったけどさぁ。そりゃ、爆豪ちゃんも同じだろ?麗日戦で見せた大規模爆破を使わずに俺に勝てると思ってる?」

 

「……はっ、そんな訳ねぇだろビリビリ野郎!オレはお前も超えて、デクよりも上に行かねぇと行けねぇんだ!!!そんぐらい分かってんだろ!!!」

 

「だからこそだろ?全力じゃないと楽しめない。本気じゃないと意味が無い……!俺達の共通点だろ!なら、何も変わんねぇだろ、いつも通りだ」

 

頼光はブレードを消して構える。右手を後ろに引き、その拳を左手で覆う。貯めの体勢をとる。拳には電気が集約されていく。緑谷や脳無との戦いを見ていたクラスメイトは瞬時にわかる。最初に脳無に叩き込んだ技だと

 

「いいぜ!それを待ってたんだよぉ!!!正面から……ぶち抜いてやる!!!」

 

爆豪は爆破の個性を使い走り出し、跳躍し両手を左右逆方向に向けて爆発を連続発生させ、その反動で錐揉み回転しながら頼光に迫る。

 

「衝撃くるぞ!」

 

「伏せろ!」

 

プロヒーローやA組、B組、ほかのクラスの生徒たちが衝撃に備える。それは

 

榴弾砲(ハウザー)……!!」

 

雷神の(ミョル)……!!」

 

好戦的な二人が互いに必殺技とも言える技をぶつけ合う。そんな瞬間が来るのだから

 

着弾(インパクト)!!!」

 

(ニル)!!!」

 

それは、誰もが予想していた衝撃を生み出すが、予想外なのはその規模だった。緑谷、轟戦の最後の攻防よりの凄まじい衝撃が会場を走る。

 

「何これぇぇぇ!!!」

 

峰田は再び飛ばされそうになるのをキャッチしてもらい、その他のメンバーも直視は叶わない。そんな中

 

「豊穣……!」

 

耳郎は豊穣の心配をしていた。だが、当の本人達は

 

(ここだ!奴を潰すにはここしかねぇ!!!)

 

(必ず来るよな!だったら迎え撃つ!)

 

この姿勢の差が次の命運を分けることになる。頼光はブレードを出し待ち構える。爆豪は突っ込んでくる。それを迎え撃とうと手先を向ける。が、爆豪は急ブレーキをかけて両手を頼光に向ける。

 

(にゃろう!)

 

「らしくないなビリビリ!何時もならてめぇから来るのに待ちやがったな?閃光弾(スタングレネード)!!!」

 

至近距離の爆破の閃光。衝撃の煙の中でもその閃光は大きく見える。

 

(くっ!目が!)

 

視界を奪われた頼光は動きが鈍る。爆豪は頼光の両手首を掴む。

 

「てめぇのウザってぇブレードは此処でへし折らせてもらうぜ!!!」

 

「させると……!」

 

「遅せぇよ!!!」

 

直後二度爆破し、頼光は凄まじい激痛に襲われる。思わず叫びを挙げそうになるが、舌を噛み、その衝動を抑え、

 

「っ!その距離なら避けれねぇな!」

 

出力をあげた蹴りで爆豪の腹部を捉える。

 

「がはっ!?」

 

爆豪は凄まじい勢いでステージを転がりあわや場外になるというところで爆破の個性使い勢いを殺して場外を免れる。

 

「爆豪がぶっ飛んできた!」

 

「て言うことはあの中で豊穣がぶっ飛ばしたという事だよな!」

 

徐々に煙がはれ頼光の姿が顕になる。その姿に驚愕する。そして爆豪はニヤリと笑う。

 

頼光の両腕、手首の辺りが爆破の攻撃を受けたのか火傷のような怪我をし、血を流していた。

 

頼光の額には嫌な汗をかいていた。血がポタリ、ポタリと落ちている。

 

『煙の中での攻防で無敵と思われた豊穣が手痛い傷を受けるぅぅぅ!!!つうか大丈夫かあの傷!』

 

『爆破の傷……動かしば激痛を伴うだろうな。爆豪の意地があのダメージに繋がったんだろう。だが、爆豪も手痛い反撃を貰っているな。その証拠に、膝を着いて攻め立てようとしていない』

 

相澤の推察通りであった。爆豪は頼光の蹴りを腹部にまともに貰い、足に来ていた。

 

(野郎……相変わらずどんな一撃だよ……!足が上手く動かねぇえ!あと少しなのに!!!)

 

「はははは。はははははは」

 

頼光は笑っていた。笑い声が響いていた。

 

「……やりやがったな」

 

「ああ……。宣言通りだろビリビリ野郎……!」

 

「ああ、ほんとにヤダね。てっきりこれでチェックメイトだと思ったんだが、らしくない事したら痛い目にあうわけだ。まぁ、それがこれならいい経験になるわけだ」

 

頼光は両手を広げる。翼のように大きく広げたそれは折れていた。電灯が寿命を迎えたように、頼光の指を彩るブレードは何度か瞬くと同時に空中に溶けて消える。

 

互いに継続は厳しい筈だが

 

「続行だよな?」

 

「あたりめぇだろ……!」

 

爆豪は足に力を入れて立ち上がる。そして歯を食いしばり、ゆっくり歩きはじめる。

 

「俺が欲しいのは完膚無きまでの勝利だ!」

 

歩みは走りになり、更には爆速ターボを使って距離を詰める。爆豪は頼光の懐へ飛び込む。トドメを指すために。

 

「……悪い、爆豪ちゃん」

 

その時、ぽつりと、頼光が呟く。しかし、爆豪は、頼光の懐に踏み込んでいる。いくら頼光でも迎撃が間に合う筈のない距離だ。例えどんな攻撃を爆豪が放っても頼光を倒せる。だから

 

「トールってのはさ、たかだか雷神如きで収まる器じゃねえんだわ」

 

鈍い音が炸裂する。誰もが驚愕する。なぜなら、宙に浮いた爆豪の体が、勢いよく場外の地面に叩きつけられたのだから。

 

(何……が……?何を……しやがった……?)

 

意識が朦朧とする。ぼんやりと揺らぐ景色が青空の青に埋まっていた。それで、自分が仰向けに倒れてたのだと気づくまでに時間がかかる爆豪。自分がどうなって、何を受けたか考えるが思考がまとまらない。

 

「俺にここまで出させたのは……お前が初めてだぜ爆豪ちゃん。誇っていい、爆豪ちゃんは今まで戦ってきたやつの中で最もいい経験ができたぜ」

 

「ビ……リ……ビリ……!」

 

何かを言おうとした爆豪はそこで意識を失う。

 

「爆豪くん場外!豊穣君!決勝進出!!!」

 

ここに決勝のカードが決まる。そのカードは奇しくも、最初の訓練のリベンジマッチとなる。

 




遅ればせながら頼光のステータスです!
名前:豊穣 頼光
TYPE 近接/遠距離 個性:トール
パワーS(全開時S+) 誕生日:11月11日
スピードS(全開時S+ ) 身長:170cm
テクニックA 血液型O型
知力B- 性格:バトルマニア
戦闘意欲A+

と、思っています。

この作品の爆豪はワンチャンダイブをしてませんし、ノートも爆破はしてないとしていますw


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