レオリオという者だが、質問あるか?【再連載】 (義藤菊輝@惰眠を貪るの回?)
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嵐×船×始まり

 再連載だよー。性懲りもなく書いちゃうよー。
 もう駄目だ笑。


「巣を守り続けるか、巣を壊すか……」

 開いた相棒(携帯電話)の画面。短く記された文面には威圧感が存在しており、自らの手で提示された道を選択しろという意味を言外に突きつける。

 この世界に転生してから19年。始まりから原作が崩壊していたこの世界で、俺は思考を停止するままに言われるがままのレールを走る人生を送ってきていた。

 胸元に入れた刺青が、この世界での俺を縛り付けている。まったく、なぜこうなったのか。

 まだファイルを開いていないメールの差出人は幼馴染み。兄であり姉であり、弟であり妹であり、さらには悪友のような数奇な運命共同体たち。

「シズクからのメールが一番多いな……。次はシャルか。げっ、それにパクまで……」

 件名の殆どは『どうする?』と尋ねる質問。

「どうしようかねぇ」

 カブトムシの形をした携帯。機種名をビートル07型の羽根を閉じることでモニター消してポケットにしまう。

 自らの道は自らの力で切り開く。家族のような仲間にはそう伝え、俺は今、嵐で揺れる船にいる。

「確かこの後でけぇ嵐が来るんだったよな……。酔い止めでも飲んでエロ本でも読むとするか」

 黒と赤の特徴的なデザインをしたアタッシュケースから酔い止めとペットボトルに入った水を取り出すと、二錠だけ口に放り込み喉の奥へと水とともに流す。

「ねぇねぇおじさん」

「あ? 誰がおじさんだ」

 サングラスの位置を整えてエロ本をアタッシュケースから取り出そうとした瞬間、隣から子供特有の高い声が聞こえてきた。失礼な言葉のせいで意識を引かれ振り向くと、そこに居たのは、緑色の服を着たツンツン頭の少年。

「さっき飲んでた薬って酔い止めだよね? 予備があったら皆にあげたいだけど」

「なんでだ? ここに居る奴はハンターになりたくて会場へ最寄りとなる港に行く船に乗ってんだ。ここの船に乗る乗組員に航海ルートを聞けば教えてくれたし、そこを調べれば一般的には使われない天候の変わりやすい場所を通ることも分かっていた。酔い止めすら準備してねぇ奴を助ける必要はねぇと思うがな」

 ハンターって言う富も名声も手に入れることが出来るハイリスクハイリターンの就活をしてる上で対策ぐらいしてくるべきだろう。それすら出来ないなら、端っからやめさせれば良い。

「え~! どうしても駄目なの!?」

「あのなぁ……。そもそも、それが人にものを頼む態度とは思えねぇがな」

「ご、ご免なさい」

 自分の非を直ぐに素直に謝れることは美徳だ。良いことではあるが、優しさが首を絞めることにもなる。

「俺の持ってる酔い止めは強力だが遅効性だ。大体は薬を飲んでから30分前後に効き始める。」

 そう言って俺は、少年に向かって人差し指を立てる。

「さらに、俺が持ってる酔い止めの総数は50粒。お前さんの言い方だと、使える数全部使うつもりだろう? なら25人に使えるが、軽く100人は居るこの船全員のハンター志望には使えない」

 人差し指に続づけて中指も立てる。すると、少年はウグッと言葉を詰まらせる。

「そして何よりもな理由だが、俺は医者として最低限の準備は必要だと思っているんでな。酔い止めや頭痛薬。痛み止め。それに便秘薬に下痢止め。たった一回分だけでもかさばらねぇものを持っておけば、何日かかるか分からねぇ長旅でどんな体調変化が起きたときでも対応できる。人としてするべきことができてねぇ」

 受験生なら特にな。とそう言って薬指まで俺は立てた。

「以上三つが理由で、俺はお前の提案を却下する。何か質問や反論は?」

「ないっ!」

「潔いじゃねえか」

 スーツをピシッと整え、ネクタイを首の位置まで締め上げる。サングラスは少しだけ下ろして鼻にかけた状態にする。

「お前さん。名前は?」

「俺? 俺の名前はゴン! ゴン=フリークス!」

 そうか、と俺はゴンのツンツンした頭を撫でる。抑えつけたときの反発力と髪型が面白い。だが、こう言うことになれていないのか少し恥ずかしそうにしている顔は、年相応に思える。

「俺は、レオリオという者だが、質問あるか?」

 こうして俺の原作が始まった。



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回想×談話×決闘

 やべぇ、寝みぃ……。


 俺が捨てられていた日は、あいにくの曇天模様だった。らしい。

 ゴミが雨のように降る育ちの故郷では、所々で腐敗した生ゴミやらガスやらで自然発火が起こり、煙たさが無くなる日は無かった。

 自分が転生したことに気がついたのはその頃。左から右にブロンドヘアを流した少女を見たときだ。その女性は、貴方も不憫ね。とそれだけを言うと、クーファンから俺を引き上げていた。

 幻影旅団の姐御。俺にとって手厳しい姉であり、優しさをくれる母のような女性。パクノダその人だった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「えっと、お前の質問は俺が何者だったか。だっけか?」

 うん! と元気よく返事するゴンに気圧されるように、俺は当たり障りない範疇で自分の過去を話していく。

「俺はよぉゴン。孤児でな? なんて言うか、ゴミ溜めみたいな街で育ったんだよ。あれだ、スラムっていう奴だ」

 何もない街。いや、ゴミ以外何もない街が正しいが、そんな街で育った以上、欲しいものは奪うしかなかった。

 俺を育ててくれたパクノダは、子供を抱える母親に、物々交換の形で俺に母乳を与えてくれた。パクノダ自体は生年月日が不明だが、だいたい団長と年は近いはず。そこからすれば当時はまだ10歳前後だったろう。考えれば考えるほどよくやったと思う。

「病原菌はうようよ居るし、感染症なんかは日常茶飯事。そんな街で育ったこともあってよぉ、俺を除いて血の繋がってない10人の家族とは仲が良かったんだよ」

 この前喧嘩したがな。なんてガハハと大声を上げながら笑う。

「始めはただ欲しかった。奪うことでしか欲を満たせねぇ街だったからな。お前さんからしたら不思議なことだろうが、そう言う場所はいくらでもある。だからこそだ。家族とは関係ない友達が死んだとき。俺はあいつらと同じだった道から少しずつ逸れてったんだ」

 どういうこと? ゴンが首を傾げて聞き返す。そんな時だった。

『これからさっきの倍近い嵐の中を進む! 命が惜しい奴は、今すぐボートに乗って帰りやがれ! 良いな!』

 巫山戯るな! とか、何!? とか、考え得る限りの暴言と悲鳴を聞き流し、俺とゴンはその場を動かない。

「チビ助は降りた方が良いんじゃねえのか?」

「死ぬかも知れないところにお医者さんが行く方が駄目なんじゃない?」

 二人して、心にもないことを口にして笑い合う。

 あの日、あいつが俺の腕の中で死んだのは必然か偶然か。ただ、金が市場を支えていない街からやっとのこさ別の街の病院に行ったあいつが、金があれば助かるんだってさ。とそう言った顔が忘れられない。

 ハンター協会からやってきた2人のプロハンターに弟子入りして医者としての知識、そして免許を手に入れることが出来た俺が、今ここに居るのは運命だろう。勿論、原作主人公であるゴンと出会うのも。

『船から降りる気のねぇ奴は、今すぐ操舵室に来い! 良いな!』

「あの髭面の野郎……」

「ここで愚痴ってても仕方ないよ。行こうレオリオ」

 ゴンに袖を引かれるまま俺は歩き出す。客室を出て、通路を進み、乗組員にニヤニヤと笑われながら。

「残った客は三人か……。名前は?」

「オレはレオリオという者だ」

「俺はゴン!」

「私の名はクラピカ」

 一番左にいたオレから順番に、金髪の小柄な少年へと順番に名を述べていく。

「お前ら、なぜハンターになりたい」

「なぜ私たちが一船長である貴方に志望理由を聞かれなくてはならない」

「良いから答えろ」

 ギシギシと船が歪む音が響く中、唐突な話によって生まれた沈黙を破ったのはゴンだった。

 ゴンのハンターになりたい志望動機は未知への探究心。その殆どが、自分を捨てた父が見たものを見るためというのが中々にどうかと思うが。

「オレは……。あんまり人に言えるような事じゃないんでね、答える気はない。決闘してでもな」

「えぇ? 良いじゃんレオリオ、理由くらいさ」

「私もレオリオに同じくだ。虚偽は強欲と同じく恥ずべき行為。私の志望動機は初対面の人間に告白できるほど浅くない。この場では答えることができない」

 そう言った俺達に船長が言った言葉は単純明快だった。

「降りろ」

 その一言で、クラピカの目が変わる。

「試験はもう始まってんだ。ハンター試験を受けてぇ奴は星の数ほど居る。分かるか? そんな数を予め篩にかける。それが俺達だ」

 俺自身は分かっていたこと。だからこそ文句を言ったわけだ。何処まで話せば良いかを見極めるために。なんせ、

「私はクルタ族の生き残りだ」

 クラピカの同胞を皆殺しにした盗賊グループ、幻影旅団のメンバーであるから。

「幻影旅団への仇討ちなんかやめとけ」

「どういう意味だ? レオリオ」

「せめて〝さん〟くらいはつけて欲しいもんだな……。礼儀がなってねぇ。次はないぞ」

「だからどういう意味だと聞いている! 死など厭わない、恐れない! この怒りが心に火を灯す限り私は彼奴らを追い続ける」

「無駄死にするだけだ。医者として言う。怒りを燃料に動く体なんざ、生きるために抗う事より愚かで無意味だね。賭けるか?」

「喧嘩してる場合か! 言わなきゃなんねぇのはレオリオだけだ」

 チッと、舌打ちを打った俺は、金だと答えた。

「金があればなんでも出来る。欲しいものも手に入る。でかい家、良い車、うまい酒。それに  

  品性は金では買えないぞ。()()()()

 どうしてこれほどに苛立つのか自分でも分からない。ただ言えるのは、品性は金では買えないとそう言いながらも、年上であるはずの俺に最低限の礼儀を怠っていると言うこと。

「3度目だ。幻影旅団に代わってそのクルタ族の血を絶やしてやる。お前の眼は高く売れるだろうな」

「取り消せレオリオ」

「4度目だ。表に出ろ」

 望むところだとそう言ったクラピカは、俺の少し後ろを着いてデッキへと出る。船長が待てとかなんとか大声で言ってるが無視だ。〝念〟も知らねぇ今のコイツが俺達に敵うことは絶対にあり得ない。ウボォーに叩き潰されて終わりだ。

「今すぐ訂正すれば許してやるぞ、レオリオ」

「テメェの方が先だ。俺は譲らねぇ」

 デッキを埋め尽くすような大波に煽られて蹈鞴を踏む乗組員は意識から除外され、やかましい声を無視してクラピカが突進してくる。

「行くぞ!」

「来いよ」

 ヌンチャクのように繋がった二振りの木刀を構えたクラピカに対してバタフライナイフを開いて低く構える。

 医者が人を傷つけるのか何て声は聞かない。医者は医者でも闇医者だ。秩序は最低限守れば良い。

   バキッ!!

 耳障りな騒音に気を取られた俺達は続く悲鳴がした方へと目を向ける。

「カッツォ!!」

 強風で船が傾き、カッツォと呼ばれた船乗りが足を滑らせ甲板から海へと落ちかける。そこに追い打ちをかけるように、強風で折れたマストの一部が顔面にぶつかる。

「っざけんな!!」

 目の前で人が死ぬなんざ目覚めが悪い。思わず俺は拳を握り締め、デッキを殴りつける。

見えざる神の救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)!!』

 ガンっと音を鳴らして破壊された甲板からから、普通であれば不可視の腕が伸びて行く。するすると腕は伸び、そのまま甲板から飛び出て、海へなげだされたカッツォを掴んだゴンの両足を掴む。

「ゴン……。速ぇな……っと!」

 引き戻すように不可視の手を戻し、ゴンとカッツォをデッキへと引き上げる。

「気絶はしてるが、鼻血以外何もないな。息もちゃんとしてる」

 カッツォの状態を確認した俺は、そこら辺に居る人にアタッシュケースを持ってくるよう伝え、携帯を取り出す。

「もしもし、突然済みません先生。はい、失神で……。顔に当たってるので、はい、え? あ、ドーレ港です。はい。分かりました」

 パチッと音を鳴らして携帯をポケットにしまうと、ちょうど届いたアタッシュケースからガーゼを取りだし鼻に詰めてやる。

「ドーレ港に着いた後、カッツォに立ち眩みとか色々変なことが起きたらこの紙を医者に渡してくれ。俺の先生の名前も入ってるから、基本何処の病院に行こうが診てくれる。よっぽどのヤブ医者じゃねえ限り大丈夫だろう」

 そう言って俺は簡単なメモ書き程度に、カッツォの症状をまとめ、俺の名前と師匠の名前を書き連ねる。ついでに俺の印鑑も押しておく。

「それでクラピカ、ゴンへの説教は終わったか?」

「あ、ああ」

「クラピカがお前の足を引っ張って助けてくれる人でよかったな、ゴン。カッツォも幸い軽傷で済んだ。決闘なんかしてた俺が言うのもなんだが」

「ちょ、ちょっと待って? 俺の足掴んでたのって、クラピカだけなの? 両足掴まれてる感覚があったんだけど……」

「それは私もだ。ゴンの足を掴んだとき、酷く軽く感じた。何かしたんじゃないか?」

 そう言われ、俺は片手で顔を覆う。まさかこの時点で〝念〟を感じられるとは思ってなかった。クラピカも、重さという点では同じ。

「あー。何て言うかな、確かに俺はあることをした。それが何か分かっていないから、クラピカには幻影旅団への仇討ちを止めた部分もある。ただ、クルタ族を軽んじる発言は全面的に撤回するぜ」

「私も非礼をわびよう。すまなかったレオリオ()()

 水くせぇから気にするな。何て頬を掻きながらぼそっと口にすると、船長が試験なんてどうでも良いだなんて言い始めた。

「いつか、レオリオのやったことを聞くからな」

「そうだな。まあ、それで良いさ」

 船長に舵取りを教えてやるとそう言われ走って行くゴンの背中を見ながら、俺は静かに答えた。

「あーっもう! 嵐は要らねぇ」

「本当にな」

 甲板に寝転び見上げる空は、思っている以上に気持ちの良い青空だった。



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クイズ×ト×コタエ

 キリが良いので一旦ここで


「さて、ドーレ港には着いたものの……凄ぇ人だかりだな。殆どがここで落ちるだろうけど」

 多くの人でごった返す港町。主要都市であるザバン地区からも近いことで貿易や交易などに使われることもあり、人が多いことになんら不思議はない場所ではあるが、あまりにも人が多い。

 顔に傷があるもの。背中に得物と思われる長いものを背負っている男などなど。多種多様な人々がいるが、俺は思わずそう呟いた。

「それはどういう意味だレオリオ」

「なーに、簡単なことさ」

 街に溢れかえる人々は、その殆どがバス停付近に佇んでいる。しかしそれに反してバスは来ない。ドーレ港とザバン地区はさほど離れていない故にバスに乗れば30分前後で着くはずが、そのバスが中々来ない。

「さて、ここまでヒントを出した上で考えられることは?」

「バスがザバン地区に着かないように、ハンター試験の運営側が細工しているということか」

「レオリオー! クラピカー!」

 そんなやりとりをクラピカとするなか、航行を手伝っていたこともあって船長と親しい仲になったゴンが、大きく手を振って走ってきた。曰く、アドバイスを貰ったらしい。

「船長がね? あっちにある一本杉に向かえって、それが試験会場への近道だって言ってたよ」

「ほらな? 答えは、正しくない正しい道がある。ってことだな。クラピカも正解」

 頭の上でクエスチョンマークを2、3個浮かべたゴンが、何の話と聞いて来たが、あんまり意味のない質問なので、軽く流す程度に受け答えをして、3人で一本杉へと歩き出した。

「ところでよぉゴン」

「どうしたの?」

「なんで釣り竿なんか持ってんだ?」

 自分たちの後ろを着いてくる男にも注意を払いながら、前々から気になっていたことを聞いてみる。ゴンがくじら島から入船した時から持っている釣り竿についてだ。

「それは私も気になっていた。得物としてそれはどうなんだゴン」

「えーっ、そうかなぁ……」

 ゴンは鞄にしまっていた竿を取り出すと、ビュンと音を立てて振る。

「殴れるし、獲物も捕れるしで結構良いと思うんだこれ。俺がハンター試験に出れるのも、コイツと沼の主を釣れたからだし」

「主ねぇ……。でけぇの?」

「大の大人が五人がかりで釣り上げられなかったんだって! 島の人が言ってたよ」

 今度は竿をしまった加減で、クラピカの武器の話へと変わっていく。どうやら、クルタ族に伝わる伝統的な武器のようで、クルタ族の武術にも関係してるらしい。

「レオリオの武器は確か、折りたたみ式のナイフだったな」

「まあ、始めは護身用とか、メスが無いときに切開出来るようにって思って買ったんだが、まあ気づけばこの通り」

 パチッパチッと音を鳴らしながら、バタフライナイフを開いたり閉じたりする。手の甲で回したり、指の隙間を通したり。

「こと戦闘では関係ないスキルだがな? こんなもの」

「ただ、自分の武器になれていることは重要だろう? 己の得物と向き合えていないものが、得物を使いこなせることは無いと私は考えるが」

 その考えはなかったな。だなんて、ガハハと大きく笑いながら俺は驚く。人が違えば思考が違う。その通りだと思ってしまった。

「それにしても、船長のアドバイスから考えるにゃあ、この先も試練がありそうだな」

「ハンター試験を受けるための試練か。考えてみれば当然のことだな、受験生は星の数ほど居る」

 今回の場合は何か、人ひとり見当たらない寂れた街から現れたババアとマスクの一団が教えてくれた。

「ドキドキ……」

 ドキドキ? なんだどういうことだ? そう思っているのか、ゴンとクラピカの二人は、ババアの言葉を繰り返す。

「ドキドキ二択クイズぅ~!!」

 おい後ろの奴、バックミュージックも無いのにパフパフ笛ならしたら虚しいじゃねぇか。やめろ。

「成る程、クイズか……。知識を試すと言うことだな」

「クイズは1問。考える時間は5秒間だけ。もし間違えたら、即失格。今年のハンター試験は諦めな」

 ルールはシンプル。①か②のどちらかで答えることとし、それ以外の曖昧な答えは全て誤答とする。

「三人の内、誰かが答えを知ってれば良いんだね?」

「おいおい、いつまで説明聞いてんだよ。面倒だ、早くしろ」

「チッ」

 説明もそろそろ。何て考えていた矢先、港からずっと俺達の後をつけていた奴がいけしゃあしゃあと現れる。

「なんなら先に答えてやろうか?」

「ああ良いぜ、順番は譲る」

 どんな問題か、どんな回答が予想できるか。傾向と対策を練れることは間違いなく利であるが、それ以上に、

「めんどくせぇ」

 どうやら、原作のレオリオとは違い、俺は相当ヤバいらしい。まあ、幻影旅団(クモ)の一部である以上、倫理観やらなんやらは吹き飛んでる気もするが。まあ、最低ラインは超えてないはずだ。

 見えざる神の救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)はともかく、()()()()()()はそう言うために作ったものだしな。

 医者であるはずの俺は、俺の知ってるレオリオとは違い、命が軽い。師匠や医者、正史の俺から見れば異常だろう。なんせ、ずっと俺たちの後ろを着けていたコイツを鬱陶しく感じ、どっか消えてくれと考えている。そう、()()()()()と。

 直接の知人で無ければどうなってしまっても良いと思っているのだ。俺は。

「一人しか助けられない。①母親、②恋人。どちらを助ける?」

 どうやら、俺の知ってた内容と同じだ。

 万人共通などあり得ない意味の無い問いかけ。どちらにしろ、良い気はしない。

「①だ」

「なぜそう思う」

 そりゃあ、母親はこの世で一人だけだぜ? そう傲慢な態度で理由を述べる男は、恋人はまた捕まえれば良いと追加の言葉を告げると、通りなと先へ進む。

 ふざけんな。そう怒鳴ることをしても良いが、どちらにしろ、今の俺は気が立ってるせいでいつもと違う。

「早く俺達に問題を出せ」

「おいレオリオ!」

「黙れクラピカ。こんな①と②なんて言葉じゃ結論なんざ出ねぇ問題、黙って落ちた方がマシだマシ」

「どういう意味だ?」

「待ちな! これ以上のお喋りは許さないよ」

 目の前のいけ好かないババアから迫られたのは、このクイズを受けるか受けないかという選択。勿論、受けない場合は今年のハンター試験を諦めることとなる。①受ける。②受けない。の二択は、

「勿論受ける。①だ」

「おい……いや……」

 そう言うことか。と呟いたクラピカの声に、ババアの瞼がピクリと動く。

「それじゃあ問題だ。息子と娘が誘拐された。一人しか取り戻せない。①娘、②息子。どちらを取り戻す?」

 やはりねじ曲がった問題だ。

 そもそもとして、なぜ一人しか無理なのかとか、相手の実力はどれくらいなのかとか、突っ込みたい所はいくらかある。だがこれは、いつか来る残酷な別れ道へ抗体をつけるための空想の一つ。

 だからこそ俺は、口をつぐんだ。

「終~~了~~」

 この問題において重要なのは、①か②でしか答えられないという点。だからこそ、答えは無い。

「ふぅ~~ダメだ! どうしても答えが出ないや」

 腕を組みながらそんなことを言うゴンを見る。

 クイズだからと思考を止めてはいけない。この世界では、いくらでも理不尽なことが起きるのだから。

 



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魔獣×ト×ナビゲーター

 し、しれ~っと
 (=゜ω゜)つポイッ


 蒼白い月明かりだけが俺達の足もとを照らしていた。

 ザッザッザッ。と一定のリズムで獣道を進み、かれこれ2時間は歩み続けただろう。クイズのババァがいた街は、例え日中であっても見えないほど離れた。

「そろそろ一本杉だな」

「もう大分近いね!!」

 体力オバケのゴンやクラピカに続いて進む俺は、先ほどから嫌な汗を浮かべている。それも偏に、ポケット中にしまっている携帯のせいだ。

「てかレオリオは電話出ないで良いの?」

「んぁ? あぁ……。いい」

 さっきからずっと震えてる音がしてる! と元気よく指摘してくるゴンに、俺は頭を抱えた。

 なぜなら、俺の携帯にはもちろんバイブ機能が着いているのだが、改造を施し可能な限り音が鳴らないようにしてもらっているから。手術中や他の用事中でも集中力が切れたり邪魔にならないようにと考えた結果のことで、耳に〝凝〟でもしないと分からないレベルにしてるはず。

「それよかよく気づいたな」

「まあね。虫の鳴き声かと思ったけど、電気系統の音は耳に付くし」

「よく分かったなゴン。私には分からなかったが」

 少しばかり得意気に指を二本立てたゴンは、テテテテと小走りに先を行く。

「誰からの電話なんだ?」

「いや……、まあ兄弟だよ。電子機器に強ぇから、いくら電話番号変えても探知される」

「仲は悪いのか?」

「比較的常識人だし、家族からもパシリにされるような奴だよ。ただなぁ……」

 俺達の関係性はとても歪だ。なにより、血が繋がっていないのにもかかわらず、その繋がりは血よりも濃く深い。

「めんどくせぇんだよ……。依頼でもねぇなんでもねぇくだらねぇ話ばっかりだからな」

 どうせ電話の内容も、ウボーの飯の食い方が汚い。とか。パクノダの小言が辛い。とか。団長が本の場所を探させてくる。とか。中身のないことばかりだろう。

「まあ、その内諦めんだろ。出る気は全くねぇしな。ハハッ」

 家族の居ない私には羨ましい悩みだ。苦笑いを浮かべながらそう言うクラピカに、俺は顔を合わせることも出来ず、先を行くゴンに着いていく。

「ついたよー!」

 大きな一本杉は、夜のせいもあり黒く、恐ろしさを感じさせる。それにしても、

「静かだ」

「そうだな。他に受験者がいないのかも知れない。案外、私たちが一番乗りだったとか」

 丸太で組まれたログハウス。六人ほどであれば十二分に住めそうな程大きな家からは、全くもって音がしていなかった。

「取り敢えず入ろうよ」

「そうだな……っと。邪魔するぜ?」

 ドアノブに手をかけてゆっくりと扉を開いていく。扉は意外と重く、軋むような音を立ててゆっくりと奥へと押されていく。

「っ!」

 驚いたのは全員。

 荒らされたログハウス。椅子や机は無残に壊され、男は血まみれで床に倒れている。何より、男が手を伸ばす先には女性が魔獣によって拘束されている。

「男の方は多分見てくれの怪我だろう。暗くて見辛いが、血が渇き始めてる」

 女性も女性で、右腕一本で首を絞められて持ち上げているように見えるが、腕を掴む女性の手がちゃんと透き間を作り、頸動脈を締められていない。

「キルキルキルキル……」

 喉奥から絞りだすような鳴き声と共に睨まれ、俺達三人は得物を取り出そうと動き、

   パリンッ!

 俺達はログハウスの外へと弾き出された。

「女性は恐らく軽傷だが気をつけてくれ!!」

「レオリオは男の方を頼む!」

 任せろ!!

 そう言えば、クラピカとゴンは暗闇に消えた魔獣を追いかけ始める。

 妻を頼む。と手を伸ばす男の方に違和感は一つもない。塞ぎかけている傷口以外は。

「妻は、つ、妻は大丈夫ですか……」

「安心しろ。あの二人は柔じゃねぇ。案外決着が着くのは速いだろさ。それより傷口診せろ。違和感しかねぇ」

「そ、それは?」

 体の上に乗っている壊れた家具をあえてどかさず、そのまま男の体を診れば、予想通り血は渇き始め、傷口からの出血は止まっている。

「あの魔獣とグルだな……」

 こんなにもヒントがあって原作のレオリオ()は気がつかなかったのか……。本当に医者志望か? 目に何も映ってねぇだろ……。

「よく分かりましたね……。そうです」

 頭の形は何も変えず、そのまま目と鼻が異様な形に、狐のような顔に変化していく。そう、先ほど俺達の目の前に姿を見せたあの魔獣のように。

「仲間……いや、親だな。あいつは」

 親指を扉の方へ向けて答えを示すと、お見通しなのかと賛辞を受け取る。

 まあ、分かるだろ。そろそろクラピカたちも謎に気づく頃。壊された扉から夜空を眺める。風の音。草木が揺れる音。カサカサと葉っぱの壁を通り抜ける異音。そして、ゴトゴトと何かが暴れている音。

「……。あの、助けて?」

「しゃ~ねぇな」

 俺は床を軽く足で叩き能力を発動させる。

「ったく、今までで一番無駄な能力の使い方したわボケ」

 神の見えざる救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)。原作のレオリオを参考にした技であり、何かを叩く、蹴るなどを基本とする振動を起こすことによってオーラで作った拳や足を飛ばす能力。本当の能力を隠すためのダミーであり、何より気に入っている自分と似て荒っぽい力。

「くそっ」

 頭をガシガシと掻いていると、男のキリコは吹き飛ばされた家具のしたから這い上がった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「いやー参った参った」

 そう言う魔獣キリコの家族を見て、どうやらゴン達は上手くやったのだと知る。

 瓦礫の下敷きにされていたマヌケを救い出したと思われる俺は、最初のヤツの息子だというチビキリコに案内され、森の中の少し開けた場所に移動していた。

 そこには既に姿形の似た2体の魔獣とあの女性らしい面影のある狐顔のメス個体。そしてゴンとクラピカ。

 姿がかなり似通った夫婦のキリコ。その見分けが着いている稀な存在だと気に入られたゴン。

 僅かに出されたヒントを己の知識を使い、魔獣の子どもが夫婦ではないという答えを出したクラピカ。

「正確な医療知識に技術。何よりその洞察力はプロのハンターと比べて勝るとも劣らない」

 息子の方にそう言われれば、ゴン達は驚いた顔でこちらを見つめる。

「なんだよ……」

「いや、何て言うか……」

「ちゃんと医者なんだな」

「あぁ!? 医師免許見してやろうかこの野郎」

 船の上で治療したろと小さく呟けば、二人が声を揃えて、診断しただけだと俺に返してきた。ふざけるな。あれも治療だ。誰が何を言おうとも。

「コホン。それじゃあ早速」

 バサバサッとその腕、もとい翼を広げた魔獣は、自分たちの体につかまれと指示をする。顔をつきあわせて頷いた俺達は、戸惑うことなく彼らのお世話になった。

 ゴンは魔獣の子ども二人の足を片腕ずつで掴み、クラピカと俺は足を抱きかかえる体勢。そしてそのまま俺達は、満月をバックに少しばかりの夜空を楽しんだ。

 つもりだった。

 夜景を見始めてから一時間ほど。ついに言われてしまった。

「レオリオ、だったか? 申し訳ないが電話に出てくれ。俺達の耳にはその音はうるさすぎる」

「流石だな」

 そう、俺はやはり、携帯が震えるのを無視し続けていた。それはもう盛大に。一番最初にコールがかかってきてから3時間は過ぎているかも知れない。途中十数回途切れたが、その都度電話がかかっている。

 もうそろそろ自分自身も辟易していた。良い頃合いだとコールを取ると、聞こえてきたのは女性(予想外の)声。

《あなた、今何してるの》

「ゲッ!? パクッ!?」

《出た途端にゲッとは良い度胸ね? レオリオ》

「ねぇ、どうしたのレオリオ? 汗が凄いことになってるよ?」

 な、なな、なんでもねぇよ!? と口が回らず動揺した素振りをしてしまえば、それは答えを言っていることと同義。クラピカにはその猫のような目を細めて見つめられ、終いにはキリコ父にはベタついた手で触られると毛並みが。と言われてしまう始末。

「姉貴だよ。口喧しい」

《誰が口喧しいよ。あなたが自立するまで育てて上げたのは誰よ?》

「あーあーあー! 本題もねぇならホントに切っちまうぞ!? いいのか!?」

《良くないわよ。団長からの命令よ。今やってることが終わったら、暇なヤツと巣は集まるようにって、メールも送ってるから場所はそっちで確認しなさい》

 何て悪いタイミングだと辟易する。ここには耳の良いキリコにゴンまでいる。恐らくクラピカにも何かしら聞こえているだろう。緋の目をその体に宿している彼は、()()に殺された一族の生き残り。

「とりあえず分かった。用事もあるから終わったら連絡する」

《ちゃんとするのよ? 団長に怒られるの私なんだから》

 ヘイヘイと受け流すように返事をすれば、携帯の向こう側からため息が聞こえてくる。

「他に連絡は? 今良い景色を見てんだよ。切るぞ?」

《良い景色? あなたが? 前に私やシズクが誘ったときは、何時でも見れるもんより  

  ったく……。話が長いったらありゃしねぇ……」

 これ以上は面倒になると判断し、無理やりに切った電話。

「すまねぇなお前達」

「レオリオ、家族とは仲良くしないとダメだよ!!」

 まぁ、俺のこと知らなきゃ、ゴンはそう言うわな。

 俺の方を見て、大きな声で注意をしたゴンを見て、俺は思わずそんなことを思ってしまった。



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試験×マラソン×道化師

 タイトル悩むわぁ~


 そこは、申し訳程度に灯りが付いている地下道だった。

 エレベーターを降りて直ぐに目に付く有象無象。異様な空気を見せるその一帯にゴンとクラピカは目を見開く。

「結構居るね」

「ああ、感じる。ここに居る者は何かしらのプロ。一般人じゃない」

「おいおい何言ってんだ。至って普通の一般人がここにいるだろうが」

 巨体、長身、得物、それに風貌。

 目で読み取れる、肌で感じ取れる情報でこの場にいる猛者達を見抜いたクラピカに対して、俺はそんなことを言ってみるが、なにを言っている。と小さく言い返されてしまった。

「寧ろ、始めて出会ったハンター志望がお前で良かったよレオリオ。お前はこの中にいても一番恐ろしく静かだ。まるで」

「警戒はしてるけど気にしてない感じ? コンのお嫁さんが俺のこと遠目で見てるとき見たいだよ?」

「そうですよ。レオリオさんが一般人なら、ここに居る人が全員一般人になってしまいます」

 はい、ナンバープレートです。と腕にかけたバケットから3桁の番号が刻まれた円形のプレートを手渡す緑色の豆が、俺達三人の会話の中へ自然に混ざった。

 暖色の灯りに照らされて光る綺麗な頭頂部と、ずんぐりむっくりとした可愛らしいフォルム。そして、蝶ネクタイを締めたスーツ。

「ビーンズさん」

「レオリオの知り合い?」

「俺の先生……と言うか師匠が、ハンター協会の役員なんだよ。それで知ってるってだけだ。親交はそんなにない」

 403と言う番号を俺は左胸に着け、クラピカは404、ゴンは405のナンバープレートを身につける。

「締め切り時間まで後もう少しですのでゆっくりしていて下さい。しばらくすれば試験官がやってきますので」

 それでは。と、今は知り合いではなく、ハンター試験の補佐官と受験生。確実に立場が下な俺達にきっちりと頭を下げたビーンズは、テトテトとその短い足を動かして入り口のエレベーターへと向かう。

 やることがなくなり、俺は静かに受験生達を眺めてみる。

 刀を持つ者、剣を持つ者、銃を携える者、整備する者。他にも槍やナイフや棍棒やら。目に見える形で自分の武器を見せつけている。

「ダメだな」

 己の武器を見せつけることで相手を威圧する。下の下だ。得物を見せつける者は二種類。圧倒的強者か、臆病者だ。ここに居る殆どは後者だろう。

「やあ君達。新入りだね」

 突然声がした情報を見れば小太りのおっさんが片手を上げて挨拶をする。知識にある。トンパだ。

 三十過ぎになってもハンター試験を受け続け、ハンターになることよりも夢を潰す側へと回った醜い男。試験官ごっこでもしているような男だ。

 お近づきの印と渡された下剤入りの缶ジュースを受け取り、話を聞き流す。もちろんゴンが吐き出していた。

 冷や汗を掻きながら謝るトンパを許した二人は、その代わりにと情報を求め、注目される受験生の話を聞いている。

 レスラーのトードーやアモリ三兄弟。他にもポドロと言った原作で取り扱われるようなキャラクターの説明最中に、悲鳴が響き渡った。

「あいつには関わるなよ。44番のヒソカ。去年合格確実でありながら気に入らない試験官を半殺しにして不合格。命が惜しけりゃ近づいちゃならねぇ」

 そこにいたのは、赤い髪を逆立てた道化師。その口調は酷く穏やかであり余裕のあるもの。だが、目の前で両腕が消えてしまった男を見れば、酷く歪んだ声なのかが分かる。

「狂人だな」

「まあ、あの見た目だからな……」

 奇術師。現実では不可能なことを人間の錯覚や誤認などを使いさも現実に起きているかのように見せる奇術を行う者のこと。

 人にぶつかって謝らないからだと告げるヒソカだが、主張は正しくても過剰防衛だろう。まあ、気が立っているこんな状況なら……仕方なくはない。確実にヒソカが異常だ。

   ドクンっ!!

 心臓が掴まれたような感覚。猫を前にした鼠の姿とでも表すか、蛇に睨まれた蛙とでも表すか。

 ヒソカと目が合ってしまった。

 ニヤリと口元を歪ませ、さらには視線は俺の目から全く離さない。感覚で見えるゴンとクラピカは至って普通の状態であることから、ヒソカは俺だけを見ている。

「どうかしたの?」

  っあ? あぁ……。なんもねぇよ」

 金縛りから解放されるように、意識が声をかけてくれたゴンへと向くと、首をかしげて心配してくれる年下がいる。

「っち……。大丈夫だ」

 こんなところで関係を見せるような真似をするな。と、これだから色情魔は苦手なんだと、内心で知り合いに愚痴を溢す。

 気まずいから早く始まってくれと、足先でパタパタと音を鳴らし、ポケットから箱を取り出すと、一本だけ煙草を咥えて火を付ける。

 お医者さんが煙草吸うの? というゴンの目線には、職業差別だという念を込めて見つめ返し、口の中にたまった煙を外へと吐き出す。

 安っぽい煙草らしく大量の紫煙が宙に浮かんでは、そのまま溶けるように消えて行く。

「煙草の匂いが残らないように香水振ってるの?」

「まあな。たいしたもんじゃねぇ煙草と、たいしたもんじゃねぇ香水。まあ、仕事柄人によく会うし、闇医者らしくオペもする。ある程度の清潔感はないとなっと」

 誰か来たぜ。

 配水管なのか排水管なのか。はたまた全く違う物なのかは分からないが、人一人が通れそうな小さな穴の前に、奇妙なベルを片手に持った紫色のスーツの男が立っていた。

   ジリリリリリリリリリリリリリリリ。

 けたたましいベルの音が狭い空間を埋め尽くし、先程のヒソカの悲鳴をかき消すような喧しさで鳴り響いた。

「ただいまを持って、受付時間を終了させて頂きます」

 舌を出した独特なタイマーを止めた紫スーツの口ひげ男は、そのままトンッと軽い音で床へと着地すると、そのままエレベーターの反対側。受験生達の集団から抜けるように先の見えない道へと歩き始める。

「私の名前はサトツ。ハンター試験の第一次試験。その試験官を務めさせて頂きます」

 念のための確認と称して、このハンター試験の難しさ。そして、不合理的な面。運も実力の内として、再起不能の怪我や時には死が目の前にある。そう注意を述べてから、サトツは自分に着いてこいと言い残す。

 もちろんこの場に残る者などいない。全員がそのことを百も承知でやってきている以上、最後にこの場に来た受験生である俺達の後ろには誰一人として来なかった。

「おい、歩いているにしては少し速くないか?」

「多分走り始めたな。先頭が」

「けど、人が多すぎて先頭が見えないから分からないよ?」

「いや、おそらくだが、これがサトツというあの試験官の狙いだろう。走り続ける……。いや」

   二次試験会場まで私についてくること。

「これが一次試験でございます」

 先頭の方で放たれた言葉は力強く、ほぼ全員の受験生が走り始め足音が場を飲み込もうとしている最中に、針の穴を通すように声が届けられた。

 場所、到着時間か不明瞭なマラソン。体力ではなく、精神的に来るであろう試験内容が通達された頃には、誰一人として歩いている者はいなかった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 ここで原作を思い出して欲しい。

 レオリオ=パラディナイトという男は、原作主人公格の四人の内の一人でありながら、その実ただの一般人としての気色が強い。

 超自然児であるメインの主人公ゴン。伝説の殺人一家の跡取りであるキルア。一族を虐殺されたクルタ族のクラピカ。

 それに比べれば、レオリオはただの医者を目指す十九の若造だ。バトルスキルも無ければ何かこれといったキャラ付けもない。親友の死をきっかけに医者を目指しているだけの男。

 だからこそ、一次試験のマラソンでは60キロの辺りでバテ、周りの受験生に脱落しそうな者がいないことに戦いた。

 頭がこれと言って良くはない。キレ症であり、短気で大雑把。単純なところもある。そう言った原作としての、オリジナル:レオリオの性質は、もちろんこの物語の主人公にも引き継がれている。

 ただ違う点があるとすれば……。それは偏に、レオリオの皮を被った別人である。と言うことだろう。

 だからこそ、流星街出身という原作とはかけ離れた場所で生を受け、幻影旅団の中で生きるというレオリオらしくないことに順応し、念を操り、蜘蛛の巣としての存在でいる。

「ゴン、クラピカ……」

「なんだ?」

 隣で走る二人に声をかけた俺は、少しだけスピードを上げて行く。

「ちょっとばかし前の方に出てみるわ。先頭がどうなってるか気になるし」

「……。分かった」

「気をつけてね。レオリオのことだから大丈夫だとは思うけど」

 何かを考えたのか、クラピカは少し間を開けてから了承の意を示し、ゴンは楽しそうに声を上げる。

「そのまま二次試験までは別の場所に居ると思う。とりあえず、また後で」

 二人の言葉を背中に浴びながら、俺は一歩を踏み出した。

 踏み出した幅は大きく、足を出す速さはそのままに。少しだけペースを上げ、家族とは呼びたくはない男を、巣の中へと誘い込むように。

「やあ♡ 久しぶりだね♧」

「ああ、ヒソカ」

 俺は、周囲の視線を気にせず道化師(ヒソカ)に話しかけた。




 タイトル悩んだわぁ~


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奇術師×階段×湿原

「お前も受けていたんだな」

「それを言うなら君も。だよ♢ レオリオ」

 珍しく集合に応じたのに酷いじゃないか。とあの日のことを思い出すように静かに話し始める変態は、舌舐めずりを行う。

「クロロがあそこまで怒ったのは初めてだよ。羨ましいね♡」

「言ってろ変態。二度とごめんだね。殺されかけたわ」

 思い出すのは数ヶ月前の出来事。幻影旅団のメンバーとして、強盗行為に加担し仕事が成功した打ち上げの席でだ。

 あいもかわらずボロボロな廃墟の中で、盗品が入った木箱を机に缶ビールやら酒類を並べ宴をしていた中で宣ったのだ。

   巣……。やめるわ。

「何時思い出しても笑えるよ。あのクロロの顔を見ただけで行った甲斐があったよ」

 クロロにはぶち切れられ、ノブナガには刀を向けられ、フェイタンには傘を後頭部に突きつけられた。誰よりも怒っていたのは恐らくシズクだろう……。目に光がなかった。

「マチとパクノダがいなかったのが残念だよ♡ そうしたらもっと面白かっただろうに。なんせ君の母親代わりと姉代わりだしね」

 シズクだけであれだったのだ……。あれ以上は考えたくない……。そう、問答無用で攻撃してきたんだ。シズクが。

「そんな話は今良い。そんなことよりも、だ」

 俺がわざわざヒソカに話しかけたのには理由がある。

「今回のハンター試験にゃクルタ族がいる。お前が入る前……、だいたい2年くらいか。確か俺が14の時だ」

「ふーん。あの猫目かい? 青い服の」

 俺は小さく頷くことで、ヒソカの問いに肯定の意を示す。

「俺とお前は無関係。良いな?」

「う~ん。それだと僕にとってメリットがないんじゃないかな?」

 知るかよ。俺はただ平穏に、穏便に試験を受けて、そのままハンターになることが目的なんだ。お前の享楽に巻き込むな。

「それじゃあ君が相手してくれるのかい?」

「ふっざけんな!! 誰がテメェみたいな戦闘狂(バトルジャンキー)と殺り合うか」

 そりゃ残念。と不満を垂れるヒソカに対して、俺は絶対だからなと念をおす。

「それじゃあここに居る人たちはどうなんだい? 僕たちの話を聞いていると思うんだけど?」

「それなら……、適当に殺しとけよ。どうせこんなレベルの奴なら直ぐ死ぬだけだ」

 医者が言って良い言葉じゃないね。というヒソカのもっともなお言葉は右から左へ受け流す。そんなもん知るか。命の重さなんてお前らのせいで吹っ飛んだわ。

「それじゃあ……。殺っちゃおうか」

 医者から許可もらったし。と〝念〟を込めた殺気を突然ヒソカが放ち始めたことで、俺達二人の近くで走っていた受験生は、一斉になって距離をとる。人によっては恐怖からか足をもつれさせ、地面とお友達になる奴もいる。

「抑えろ。その内殺りたいだけ殺れる」

「へぇ……。やけに先を見抜いてるような言い方だね♧」

「どうせ前回もあったんだろ? 殺し合い的な試験」

 正解♡ と、身の毛もよだつようなねっとりした言い方をするヒソカにため息をもらした俺は、言いたいことはそれだけだとペースを上げて前方へと向かう。

 走り始めてどれぐらいたっただろうか。アモリたち三兄弟の罵詈雑言でニコルがリタイアしたのは確か80キロメートル前後だったはず。

 近くにはいないこともあってそれが起きる前なのか起きた後なのかも分からない。

 流石に地獄のような階段が何キロ地点だったのかまでは覚えていないので、今現在どの辺りにいるのだろうか。

「こんなことなら先に調べときゃ良かったな……」

 サバン市からヌレーメだかメヌーレだかよく分からない湿地までの距離。多分二次試験までは今走った3倍ちょっと走らないと行けないんだろうな。と辟易する。

「とりあえず変態から逃げよう……」

 俺はそっと首元のレジメンタルストライプのネクタイに指をかけ、息苦しさを少しだけ解消する。もちろん、第一ボタンも開けて。

 少しだけ晒した肌に風当たるのを感じながら、俺は更に前へ、終わりの見えない先へ向かっていった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「あ、レオリオ!!」

 全く先が見えない階段が目の前に現れてからしばらく。トントンと軽い足取りで階段を上っていた俺の後ろからゴンの声が聞こえてきた。

「やっと追いついたよ~。速いんだね!」

「まあ、鍛えてるからな……。んで、そこの銀髪のガキはなんで俺を睨んでんだ?」

 ゴンの隣、予想通り目つきの悪いクソ餓鬼が後ろの方からやってくると、直ぐさま俺を睨む。

「いや、ゴンの知り合いが前の方にいるって聞いてたけど、結構おっさんなんだな」

「これでもまだ十九だ」

 嘘だー! とチビ二人に指をさされて否定されれば、少しばかり悲しくなる。船のクラピカと違って、悪意が全くないことも問題だ。

「よう坊主。俺はレオリオという者だ。年はさっきも言ったように十九。お前は?」

「俺? 俺はキルア。ゴンと同い年の十二」

 社交辞令的なテンプレートな挨拶を済ませた俺達は、スピードが緩くなってきた先頭に追いついてしまう。歩きながら二段飛ばしをしていたサトツ……。お前は良い奴だったよ……。

「緩急付けられる方が面倒くさい」

「それには俺も同意だね。あーあ、ハンター試験って言ってもこんな程度かぁ」

 脇にスケボーを抱えながら階段を上るキルアは、右手をポケットに突っ込んで、つまんねー。と愚痴をこぼす。

「キルアは何でハンター試験受けに来たの?」

「なんでって……。世界で1番難しい試験だって聞いたからどんなもんかなって。特に理由は無いな。ゴンは?」

「俺は親父がハンターだから!!」

 船長に志望理由を尋ねられた時と同じように、明るくハキハキと喋るゴン。それを静かに受け止めるように話を聞いているキルア。

 本当に相性が良いんだな。気づいたら俺よりも前に出ていた二人を後ろから眺めていると、志望理由の話題が俺へと向いていた。レオリオはお金がいるんだよね? と。

「まあそれもある。が、ハンターライセンスがありゃ大抵なんでも出来るからな。治療に使えそうな非合法な薬も集められるし研究も出来る。俺にとって取ったときのメリットが多いからな」

「俺の兄貴並みに強いのに。要らないでしょ」

「お前の兄貴が誰なのかは知らねぇが、俺はただの一般人だ」

 またもや二人に指をさされながら、嘘だー! と叫ばれてしまえばもう逃げ場はない。そもそも闇医者をしてる時点で一般人な訳がない。

「この中にいる奴らの中で勝てないって思うの、あのピエロと、試験官と、アンタだけだよ」

「えらく自信があるな。キルア」

「事実だから」

 ニヤリと嘲笑うかのような笑みを浮かべたキルアに続く俺達の視線の先。サトツよりも更に向こうに異変が現れた。

「光だ! 出口だ!!」

 先頭集団の一人が気づいて声を上げる。明確な目標が決まれば希望が見え、それにすがりつくように意識は伝播する。

「とりあえず外に出るぞ」

 私に着いてくること。それが試験だと宣言したサトツの表情はまだ変わらない。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「ここは……どこだ?」

 久しぶりの地面の感触。それは少しばかり地中の水分が多い感触がある。それは大気も同じであり、湿気が多くて蒸し暑い。そこら中で霧が発生しているのもあり視界が大分悪い状態だ。

「あっ……」

 階段の終わり。出口の目の前で力尽きたのかその場に倒れた男が、閉まっていくシャッターに気がついてその手を伸ばす。

 だが、無情にも願いは叶わず、シャッターはそのまま降り、その受験生は目の前で不合格となった。

「ここはヌメーレ湿原。通称〝詐欺師の(ねぐら)〟。生態系の頂点などと言う者は存在せず、人間すらもだまし、殺し、糧とする。決して騙されぬように、私に着いてきて下さい」

 やはりここでも試験内容は変わらない。ただ一つ分かっていることは、一次試験を折り返したと言うことだけだ。

「そう言えばクラピカは?」

「安心しろ。私はここだ」

 階段を難なくクリアしたらしいクラピカは、俺達が集まっているのを見たのだろうこちらへとやってきていた。

「それにしても、詐欺師の塒か……。やはり気を抜けるような場所は  

   嘘だ! そいつは嘘をついている!

 シャッターが下ろされた階段の裏側。のろのろと足を引きずりながら血まみれの男が現れる。

「俺が本当の試験官だ。その証拠にこれを見ろ。そいつはコイツと同じ人面猿だ」

 腕と足が細く長いため非力。そのため人に似た顔を使いあらゆる者を騙し死へと誘う。力の代わりに頭へと能力を持って行った存在。

「そいつに着いていけばお前た  

 だがそれ以上男が喋ることはなかった。

「う~ん。こっちが本物だね♡」

 サトツの両手には三枚のトランプがあり、それに対して血まみれの男はと言うと、顔面に三枚のトランプが刺さっている。

 ハンターはハンター協会から依頼があった上でその仕事を行う。故に、〝ただの〟という言葉を付けていいかは分からないが、受験生であるヒソカの攻撃を避けるなり受け止めるなりといった行動が取れていなければおかしいのだ。

「一度目は許しますが、二度目は即失格といたします」

 三枚のトランプをヒソカに投げ返したサトツは、目の前で起きた出来事が、ここから先いくらでも出てくると注意を促す。

 それでも試験内容は変わらない。俺達受験生がしなければならないことは、試験官であるサトツに着いていくこと。



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霧中×ト×夢中

 リハビリレベルのつたない文です。目をつぶってぇ……。


 霧が立ちこめた。

 視界の中にいる二三人よりも先は白みがかり、姿が朧気にしか認識出来ない。また、背後は振り返った時点で前を走る他の受験生を見失い前とはぐれる。

 一言で言うなら死の行軍(デスパレード)だろう。

 集中力が途切れた時点でその者達に待っているのは〝死〟ただ一つ。自分が列の中でどの位置に立ち、走り、誰を追いかけているのか。

 右後方で響く数名の悲鳴。突如現れたイチゴのような果実に目を奪われる者の叫び声。

「皆前の方に来てて良かったね」

「ああ、どうやら後方に居る受験生は数が減らされている」

 人の声で誘導がかかったと思えば、直ぐさま爆発音が鳴り響く。ふらふらと脇道に逸れていくような奴もいる。

「まあ、試験官を目で追えてる内は問題ねぇだろ」

 人面猿による試験官成り代わり事件の後再スタートした俺達は、見るからにヤバそうな霧の対策で、サトツのすぐ後方に居る。もちろんゴンとキルアそしてクラピカと俺の四人でだ。

「殺気がうざったい」

「ヒソカの野郎、(これ)に乗じて動くな」

 俺とキルアの思ったことは同じだった。

「ヒソカが動く? それはどういうことだ」

「簡単なことだぜクラピカ。あいつはこのマラソン中に人殺しを始める」

「ずっと殺気飛ばしてんだよアイツ。試験始まってからずーっと。それに霧だろ?」

 なんで分かるの? というゴンの問いかけに、俺は殺人鬼を相手に執刀したことがあるからと答え、キルアは同じ匂いをするからと答える。

「同じ匂い?」

「ああ。結構当たるんだぜ? これが」

 そういうキルアの顔は悪巧みをしている猫のように嫌らしく、不思議がっているゴンは、とぼけた犬のように匂いを嗅いでいた。

「まあ、このペースなら俺達四人には何も起きねーだろ」

 ヒソカの試験官ごっこに巻き込まれることはな  っ!?

「レオリオ!?」

 俺が気を緩め体の力を抜いたと同時に、俺の体は中へと引っ張られ、そして、霧の中へと消えた。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「こりゃなんのつもりだ? ピエロさんよぉ」

「ククッ……。君はボクが思ってるよりも感情型なんだね。もしかして、放出系?」

 テメェの尺度で物測ってんじゃねぇ。

 右手に持つバタフライナイフを開き、腰を落とす。

「そんな殺気立たないでおくれよ」

「なら、俺がこんなことになってる理由を話せ。お前の周りで殺されてる奴は予想通りだが」

 俺の身に起きたこと。それは至極簡単だ。

「つくづくムカつくなぁ……。伸縮自在の愛(バンジーガム)

 世界的に指名手配を受けている幻影旅団は、存在こそ確認はされている物の、構成員の明確な情報などは出回っていない。それを知るのは団に所属している団員と一部の者達のみ。

 年齢、性別、出身地、家族関係。その他諸々情報を持った者は悉く殺されている。

 その中にはもちろん()も含まれている。

 13名と一人。仕事を共にする以上それを目にする機会が多々ある。ただそれでも()()()()()しかしら無いことが殆どだ。現に俺自身も二つ持つ能力の内一つしか見せていない。団長に対しても同様に。

 そんな中、能力を惜しげ無く周りに見せつけているのが目の前に佇むピエロの能力。

「ボクの伸縮自在の愛(バンジーガム)は、ガムとゴム。その両方の性質を持っている」

 逆に言うとそれ以外の何物でも無い。よく張り付き、よく伸び、そしてよく縮む()()()の塊。

「俺がお前に話しかけたときにはもう発動してたって訳か」

「その通りだよ♡ なんせ君とアジトで会うときはとても警戒しているから、チャンスだと思ってね」

 ボクは君と殺り合いたいんだよ。

 地面に広がる赤色の花たちを踏み潰し、ジリジリと迫るヒソカに、俺は形容し難い危機感を感じる。

 人差し指を立ててピンと俺に向けたヒソカの奇妙な行動に訝しみ、直ぐさま見破る。それは、()()から伸びてきたオーラの塊。

「ははは。ふざけんなクソ野郎」

 直線的に伸びる伸縮自在の愛(バンジーガム)を避けた俺は、体中にオーラを集めた。

「やっと殺る気になったね。うれしいよ……」

 クツクツと笑い、人や道化と言うよりも、幽鬼のような歪な表情をする目の前の相手に、俺は思わず乾いた笑い声を立ててしまった。

 心底不思議そうに、それでいて殺気は収めないヒソカに、俺は一石を投じる。

「お前は俺のことをどこまで知ってる?」

「どこまで? そう言われると、ボクは君のことをよく知らないな。幻影旅団に所属しながら医者としてサポート役に徹し、戦闘を殆ど行わない」

 君の行動から考えるに、放出系だろう?

「ああ。確かに放出系だし戦闘はしない。まあ、正しいことを言うなら殺し合いをしないって言う方が正しいかもな」

 クーファンに入れて捨てられてた俺をパクノダが拾い、パクの知り合いたちが俺の世話をし、そして、そのまま旅団の一員になった。

 そんな難しくもない手術を受けれなかった友がこの世を去り、それを機に医者になることを決め、二人の先生の元で教えを受け、学び、医大に通う前の状態が今の俺だ。

「お前と同類の俺が言うのもなんだが、俺はそんなに優しくねぇよ」

 そう言うと同時に俺は()()()()()()()

「また後でな。クソピエロ」

 また俺は霧の中に身を隠す。今度は、自らの意思で。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「レオリオ? レオリオだー!」

 異常な音がこだまする小屋の前。屋根の下に掲げられた時計と、指定時間を通知する看板のみ。

「戻って来れたんだね!!」

「まあなんとかなったかぜ」

 体に胴が長い魔獣がひっついてたみてぇでな? と、息をするように平然と嘘をついて自分の無事を見せつける。

「試験官は何か言ってたか?」

「特になにもだな。あの試験官はここで待つようにと言っていた。後は健闘を祈ると」

 本日正午、2次試験スタート。の扉の向こう側はなにから出ている音なのか分からない奇妙なうなり声。1次試験に合格した者達が建物前で屯し、始まる時間をまだかまだかと待ちぼうけをしている状態。

「さて、どうなることやら」

 まあ、当分マラソンはしねぇ。



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料理×ト×飛び降り

 今年最後の投稿です。今回もそんな長くない。

 この作品にお付き合い頂きありがとうございます。行方不明にならない程度に頑張って投稿しますので、今後とも応援の程よろしくお願いいたします。

 義藤菊輝


 始めに言おう。俺は料理が苦手だ。

 そもそも旅団として行動するときはパクノダやマチが料理をするし、男衆で行動することになっても目に入った飯屋に入る。なんならフィンクスやウボォーなんかと一緒に居れば、気がつけば無銭飲食状態になっている。

 自分でも何度か挑戦してみたが、特に美味しくもなく不味くもない。そんな料理ができあがるだけなので諦めた。

 まあ、サプリメント飯。なんてほどクソみたいな飯は逆に作れないが。

「ラッキーだったね!」

「ああ。知らない料理なんかより断然良い」

 2次試験は前半と後半で別れていた。理由は試験官が男女二人が担当していたから。

 試験前に響いていた異様な唸り声のような音は、明らかに体型が肥大した男の腹の音だったらしく、彼  ブハラと言うらしい  から出されたお題は豚の丸焼き。

 2次試験会場付近に生息している豚は一種類しかないらしく、弱点を守るために成長した鼻を使い攻撃する凶暴な豚。たいした強さでもなく、ゴンが釣り竿を使って殴った額が弱点だったために、それに続いて続々と受験生達も豚を殺していった。

 料理のことは分からないので木の棒に足をくくりつけ、そのまま起こした火の上でくるくると回しながら焼いていく。

 この前半の試験はとても採点基準が甘く、「美味しい」と言わせれば合格なのだが、料理を作れたほぼ全員の者が合格をもらっていた。

「さて、飛び降りるか」

 こんな発言をすることになったのにも理由がある。問題は後半のメンチという女性の試験だった。

 お題はスシ。米酢を米混ぜたシャリに海鮮を四角く切ったネタを乗せた日本の、この世界ではジャポンの郷土料理というか民族料理というか。

 流石に作り方は知っている。そしてこの後の展開も知っている。努力して作ったところで、本気の審査をされる以上それが美味しいという判定が下されないことも知っている。

 だからこそ、クラピカの溢した言葉をゴンが拾い、めざとく盗み聞きをしていた他の受験生までが淡水魚を探して行く中、俺も流れに合わせた。

 やるけれど失敗する。と、やらなくても失敗する。

 似ていることだが、少しだけ違う。やった側はやっただけ事実が残る。言い方を変えれば、言い訳ができる。

 淡水魚で、マグロやサーモンと言った王道のネタを再現できるとは思っていないし、そもそも魚のおろし方すら知らない。

 テキトーに捕まえた魚をテキトーに捌き、身を取り出してテキトーにそれらしく切る。調理台にはお酢も用意されているが、酢飯の割合なんて分からないので、ベチャベチャしない程度に少なく投入。

 もちろんテキトーづくしで作った寿司が認められるわけもなく、禿げよりましという講評を貰うに終わった。

 合格者0。それが2次試験の本来の形だった。

「それにしても、飛び降りしてでも手にするほどのタマゴってどんなんだよ……」

「グルメハンターのお墨付きだから、凄く美味しいんじゃないの?」

「まあ、餅は餅屋か」

 合格者0の判定を受けぶち切れたデブのレスラーは、調理台をぶん殴り破壊、抗議の声を上げると共にブハラの張り手一発で文字通り吹っ飛んだ。

 だか、ハンター試験を運営するハンター協会の会長ネテロの一声で再試験が決められる。

「いい? やり方は分かった?」

 やり方は二つ。まずは山を二分する溝に飛び降り、クモワシと言う取りが作るタマゴを守るための綱に捕まる。そしてタマゴを一つ手に入れたところで別れる。

「一つは壁をよじ登る。二つは、そこから更に飛び降り、強烈な上昇気流を使ってここまで上がる」

「おいおい……。嘘だろ!?」

「怖じ気づくならそこまでよ。私はやり方を示した。これでもまだ文句を言うなら、運が無かったわね。来年また受けなさい」

 レスラーに言い放った言葉を聞き届けた俺達は、四人一斉に飛び降りた。位置を合わせて体を整えると、眼前に来た綱を掴む。

 溝の壁面に縫うようにかけられた粘性の糸は、結構な強度があるようで、俺達が四人一斉に飛びついたところで外れることは無かった。

「ほいっと。はいレオリオ」

 タマゴに近かったゴンが俺にタマゴを渡してくれると、タマゴを挟んで向こうにいたクラピカがキルアにも渡していた。

「ここからどう戻る?」

「俺はよじ登るぜ、荷物があるが、まあ行けるだろ」

「とかいって、また飛び降りんのにビビってんだろ」

 キルアの軽口を受けながすと、そのまま壁へと近づいていく。

「私もレオリオと行こう。一人より二人の方が、いざというときに良いだろう」

「それじゃあ俺達二人は、もうちょっとここで待つね」

「また上で」

 チビ二人の返事を聞いたクラピカも、綱を渡り俺のところへと来る。

「なんでついてきた」

「特に理由はないさ。強いて言うなら、こっちの方が確実だと考えたからかな」

 いつ来るか分からない上昇気流よりかは、自力で上る方が確実。そう考える者達は、俺達同様壁を上っている。腕力が足りずに落ちている者もチラホラと見えるが、メンチが言うには、少し先の場所まで続いている川がこの下を流れていると言うことなので、ハンター協会の奴らがそこにいるだろう。

「ゴンとキルアはやはりこどもだな。少し遊んでいるように見える」

「17~8のお前が言うな。俺からしちゃお前も子供だ」

 壁上りは順調に進む。左手に持つアタッシュケースが煩わしいが、取っ手に無理矢理手を突っ込み自由を作る。

「その鞄はやはり仕事道具が入ってるのか?」

「まあな。メスやら注射器やら薬やらがたんまりとな。入ってる物が物だからなぁ。誰にも触らせる気もねえが、っと……来たな」

 したから吹き上げる猛烈な風上昇気流。

 体をそこから押し上げるような唸る風にやられてバランスを崩し落ちていく受験生たちがいる中、俺は頭だけを動かして上がっていく受験生達の中に、緑と白を見つける。

「お~い!!」

「先に行ってるぜ」

 とても楽しそうに笑顔で飛んでいく二人が、その姿を小さくさせながら叫んでいる。

「ゴン達に負けてられないな。レオリオ」

「おいおい、これは勝ち負けじゃねぇだろ?」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 事後報告だが伝えておこう。

 クモワシのタマゴを使ったゆで卵は、非常にうまかった。濃厚なコクだった。今まで食べたゆで卵の中で断トツに上手かった。餅は餅屋。グルメハンターの知識には感服した。

「取り敢えず、どうにか2次試験はパスしたわけだが……」

 乗り込んだ飛行船は既に離陸し、窓の外は真っ暗でなにも見えない寂しい夜景が映っている。

「離陸してしばらく……。そろそろ休憩しよう。ここからは自由行動で良いか?」

「うん! キルア、探検しようよ」

「おおいいぜ」

 先を見据える二人に対し、あいもかわらず気楽に居る二人。もう大半の受験生が寝たのか、どこかの部屋で待機しているのか、人気の無い通路に集まった俺達は今後の方針を軽く固めた。

 自由に取れる食事も済んでいる。腕時計を見れば、時刻はもう20時を過ぎていた。

「俺はもう寝るわ。多分ここに居る間は試験もねぇだろうしな」

「目的地に向けて飛行しているとアナウンスもあったからな。休息を取るなら今のうちだぞ二人とも」

「は~い!」

「わかってるさ」

 先先進むゴンに付き添うように背を向けたキルア。そんな二人に深いため息を溢す。

「全くあの二人は……」

「緊張感があるのかねぇのか。まあ良いか、落ちるなら落ちるで自己責任だな」

 俺はコツコツと革靴を鳴らしながら、受験生に与えられている自由スペースへと向かう。翌朝に来るであろう三つ目の試験に向けて休息を取るために。




 また来年!

 (=゜ω゜)ノシ ヨイオトシオ~


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塔×五人×選択肢

 ひ、久しぶりに書いた。書き方変わってるかも……。


 俺たち受験生を乗せた飛行船が第三試験の会場へ着いたのは、十二時になる手前だった。

 

 ハンター協会の職員である豆男、マーメン・ビーンズによると、俺たちが今いる場所の名前は『トリックタワー』と呼ばれる塔の頂上。

 生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。

 ルールは単純であり、飛び立った飛行船から頑張れというなんとも投げやりな応援のコメントをビーンズ氏からいただいた。

 

「ってもなぁ……」

 

 地上は遙か下。約600メートル以上はあるように見える。良くもまあ石造りでここまでの建造物を作り上げたものだ……。まあ、天空闘技場とかいう意味不明なバトルジャンキー専用タワーがこの世には存在しているが。

 

「ここから飛び降りるのは自殺行為だな」

「ああ、こうも高いとただじゃ済まねぇな」

 

 このくらい突起があれば。と宣ったプロのロッククライマーは、壁伝いに地上へと向かって降りていくが、150メートル程したところで、怪鳥の群れに男は食い殺された。

 

「さて、どうしたものか……」

 

 正直な話、この高さから飛び降りたとしても無傷だろう。『見えざる神の救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)』を使えばなんてことはない。

 

「おーい! レオリオ、クラピカ!」

「隠し扉……。見つけたぜ?」

 

 ただし、そんなことを考えなくても大丈夫なようだ。

 

 どういう経緯で扉を見つけたか話を聞いていなかったために知らないが、ゴンとキルアが見つけてきた隠し扉は合計で五つ。

 じゃんけんで扉を選び、どれが罠かは恨みっこなしということになった。

 すでにこの塔の頂上にいるのは23人。半数はこの隠し扉のような方法を使い下部へと進んでいるだろう。

 

「それじゃあ」

「地上で」

 

 そうは言っても、この結幕はわかってる。

 1、2の3で隠し扉を通過し、落下。落ちた先は小さな部屋だった。それも、四人とも同じ部屋。

 

「短いお別れだったな」

 

 どこから入っても結果は同じ。うまく五つあわせて作られている。

 さて、どうしたものか。確かここからトンパがやってきて、5人で多数決を行いながら地上を目指す。と言うのが筋書きだが。

 

「なあ、これ人落ちてくると思うか?」

 

「正直、分からないな……」

 

 先程、試験管からの通達された内容に、5人揃わないと扉が開かない。と言われているが、正直壁をぶち破れば良くないか? トンパがやってくる確証はないし、最後の二択で壁をぶち破るなら、今やらないか? と言うか、許可を取って壁を壊し始めたら怒られる気がするので、今からやろう。

 

「この前言ってた続きだ。ゴン、クラピカ」

 

 壁と扉をトントンと軽く叩き、オーラが浸透する様を感じとる。

 うん。そんなに硬くはないように思える。

 

 凝。ましてや硬を行う必要もない。ただ適当にオーラを纏えばそれだけで壊れそうだ。

 右腕を引き、扉と壁の間。一番脆そうなところに向かって拳を繰り出そうとした時、ボトリと天井から何かが落ちてくる。

 

「な、なんだよおまえら」

 

「ッチ……。タイミング悪過ぎんだろ」

 

 念というものは、あまり見せびらかす物ではない。そういう意味では良かったかもしれないが、立ち上がった団子っ鼻の男は、自身に注がれる4対の目に身じろぎしていた。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 指示の通り時計を腕に嵌めた俺たちは、そのままルールに従って進む。

 4対1で扉を開き、左右の分かれ道もとりあえずは進む。そしてしばらくすれば少し開けた場所へと進む。

 ここは、はるか昔の記憶にある通り、5対5で戦い合うというもの。

 

 相手は罪人。試練官とか言うらしい。

 

 大大大小小……。背丈はバラバラだが、リーダーというか好戦的とういうか。スキンヘッドのおっちゃんが出てきて、この場でルールを説明している。

 正直めんどくさい。が、戦わなければならないらしい。

 

 初戦の相手はやはりスキンヘッド。

 

「なら」

 

 トンパが立候補しようとしたのを俺は止め、自分が先に出る。

 

「おいおい、俺が後回しになっても良いのかい?」

 

「悪いがあんたの出番はない。俺達4人で3勝は余裕なんだ」

 

 記憶にある原作と同様であれば、偽蜘蛛、蝋燭、殺人鬼。本来の俺が詐欺女にバカみたく負けなければ、キルアの番は来なかった。

 俺が先にすれば、キルアの出番もなくて済む。

 

「お前が二勝二敗の状況で出てくることはない」

 

「それは同感だな。身動きから考えて、この5人の中で一番強いのはレオリオ()だろうし、この中で一番弱いだろう人物はトンパ(お前)だろう」

 

 いやクラピカさん? 思ったより毒吐くね。まあ良いけど。

 

 吊り橋を渡りながら俺がルールの確認をとれば、それはデスマッチ。闇医者とはいえ医者である以上自分から人殺しはしたくないんだがな。

 

「それじゃあ始めようか」

 

「アタッシュケースは持ったままでいいのか?」

 

「ああ。別に問題ない。むしろ、あまり他人に預からせたくないんでな。それより、死ぬか負けを認めるまで続けるんだな?」

 

「ああ。それでは、勝負!」

 

 目の前に飛び出した男。体勢は低く、どう見ても下から上へ拳なり何んなりを突き上げる状態。

 おそらく拳だけで戦おうとしているだろうが、どうする?

 

 喉をめがけて右手を出そうとしたのを、俺は抵抗せず、そのまま片手で首を絞められる。

 念による防御を一切せずに受け止めたため、首の骨はスキンヘッドの手によってメキメキと音を立てる。

 

「私はこのまま喉を潰す。心配はするな。気道をふさぐことはしないから、お前は戦い続けられる。だが、声が出ない以上降参はできんがな」

 

 まあ、その通りだわな。

 あらかた予想通り。どうやら、後ろ側だとキルアが気づいていたようだが、さすがにいろんなところがあやふやだ。こんなのだったら誘いに乗らなきゃよかったな。

 てか、フェイタンの癇癪に比べれば幼稚園児レベルだ。

 

 俺は両手を動かし、男の手を首から外そうと試みているよう演技する。

 そう。演技だ。

 

 だが男はそれが楽しいのかにやにやと笑っている。

 だが、正直なところ見えざる神の救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)は体内においても発動できるようにしている。ていうか、体内で治療ができるように念能力を作っている。

 のどの骨は軟骨であり、ろっ骨などの他の骨に比べれば柔らかく折れにくい。だが、絶対に折れないわけじゃない。

 喉仏含め、喉の骨が折れれば手術は必至である。気管切開を行い咽頭の形成手術が必要なことが多い。

 

「ははは。真っ先に出てきたもののあっけないな」

 

「い゙じゃな゙め゙ん゙な゙」

 

「れ、レオリオ!!」

 

 手を離された俺の体が地面に転がったことでゴンが叫ぶが関係ない。そろそろ茶番はいいかな?

 

 右手を動かし体をポンと一つ叩けば体にオーラが浸透する。

 喉仏が複雑骨折。予想通りの状態。まずは絶えず体を叩き常に体の中で見えざる神の救いの手(ファーシュテクト・ヒルフェ)が発動しているよう調整する。正直、衝撃がないと発動しないというのはなぜなんだ。なぜ俺はこんな使い勝手の悪い能力を作った。

 

 念能力は自身が持つ生命エネルギー。それはつまり自分の細胞と同じだ。適合率的な意味でだが。

 つまり何が言いたいかというと単純なもので、俺のオーラで形成された手は体の中をどう動こうと拒絶反応が起きないということ。これが初めて会う他人だったら体に慣らす時間がいる。人によっては普通に手術を施術した方が早く治療が終わることもある。

 誰だこんな使い勝手の悪い念能力を作った。

 

 まあいい。まずは気道の確保。

 念による手によって喉仏のある位置を少しずつ広げ、破片となっている軟骨が体細胞を傷つけないようにしていく。

 

「あ゙っ……あ゙あーあー」

 

 気道が確保できれば圧迫されたことで出血していた血を吐き出す。気道から肺に入れば面倒だから。

 止血の基本は圧迫である。俺の師匠である女性に口酸っぱく言われていることを行う。

 

「ほう。立てるか。だが喉仏を潰した。声は出んだろう」

 

 男が何かを言っているが関係ない。次は破片となった喉仏を基の形に戻す。

 ところどころ内側へと入っているが、正面から力が加わったのではなく、横側。指の力によって陥没している。おかげで喉が圧迫されたことで声が出なかっただけだ。声帯に問題はない。

 

「っかは! はぁ……はあ。医者なめんな。喉仏と声帯に傷つけようってんなら掴んで壊すな。前から圧し潰すんだよ。こんな風にな」

 

 ()()()()()踏み込めば俺は男の目の前に立っている。

 そのまま男の延髄に手を添えると、右手の人差し指、中指の基節骨と呼ばれる部位で喉仏を挟むように殴る。もちろん少しだけ力を籠めて。

 

「体内で体の治癒を行える。そんな普通じゃないことができないのであればこのまま死ぬ。甲状軟骨を潰して声帯にまで食い込ませてる。もちろん気管が圧迫されている以上通常よりも息苦しいはずだ。だが、死なない程度に酸素は取り込めるよう潰しきっていない」

 

 強化系的念の使用は得意ではないが、喉にオーラを集中し治癒力を高め、オーラの手によって骨の形を整える。皮膚の下で骨がうごめいてるのはとても気持ち悪い感覚を覚えるが、そう仕向けたのは自分だ。

 こんな拷問じみた痛みが発生するのに全く問題がないのが悲しい。いつから俺は人間じゃなくなった……。いや、パクノダに拾われた時からか。

 

「あぁー糞痛ぇわ。本気で」

 

 喉元を支え少しせき込むと、ほんの少量の血液が吐血され喉の違和感が少なくなっていく。

 

「やめとけやめとけ。俺は付き合いが悪いんだ。『さあ戦おうか』って誘っても楽しいんだか楽しくないんだか……」

 

 後ろで立ち上がるような音が聞こえたので何かしゃべろうとしたが、なんかこれ以上は言っちゃいけない気がする。特に33歳の独身男性の名前を言っちゃいけない気がする。33歳? ノブナガか? いやあいつは確か32か。うん。この話は終わりにしよう。

 

「確かデスマッチだな? 降参か死か。だな?」

 

 確かこの次は偽蜘蛛。ろうそく。詐欺女の順番のはず。本来なら詐欺女と俺が賭け事をするんだったか? それで偽蜘蛛が生きてるかどうか賭けていたようないないような……。正直あいまいか。

 

「てか、喉潰したから降参させれねえじゃん。やば……。俺しくったな」

 

 仕方がない。仮死状態にする毒薬なんかは持ってきていなかったはず。アタッシュケースの中身を思い出しても、そういった毒薬はない。というか毒薬を治療に用いるケースが少なすぎるのもあるが。

 

「殺すか」

 

 バタフライナイフを手に取った俺は、彼の首元に刃を当てる。

 

「レオリオ!! お医者さんが人を殺しちゃあだめだよ!!」

 

「いやつってもよぉゴン。喉潰しちまったから降参させれねえぞ?」

 

「いや、特定の行動をすれば降参したと見做して、そうさせるように戦えばいいのでは?」

 

 なるほど。流石頭脳派のクラピカだ。なら、単純で分かりやすいことが合図の方がいいだろう。

 

「ここにいる奴ら全員が証人だ。おっさん。タップすれば降参。いいな?」

 

 コクリと頷いた男が立ち上がると、再びこちらへとかかってくるが、右の拳をしゃがんで躱しそのまま左膝で腹に蹴りをくらわす。

 蹴った後そのまま左足を下すのではなく、男の左足を内側から掛けると、押し倒す。

 

「人間の骨っていうのはだいたい200個あるわけだが……。お前元軍人だろ? 対拷問訓練とか受けてるかもしれねえが、何本無くなれば負けを認める? 安心しろ。右腕だけは残しておくさ」

 

 そういった俺は、左腕の上腕骨を踏み潰した。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「すんなりと三勝したな」

 

「レオリオが一番時間かかっちゃったね」

 

 スキンヘッドの男こと、ベンドットは拷問じみた方法に一時間弱も耐えた。正直三十分もあればどうにかなると考えていたが、正直軍人を舐めていた。というか、ゴンが止めてなきゃさっさと殺して終わっていたのに。

 

 ろうそくを取り出したセドカンのろうそくをゴンが息を吹きかけて消したためにそれほど時間はかかっていない。

 

 偽蜘蛛。マジタニの背中にある蜘蛛のタトゥーを見たクラピカが右ストレートを頬にぶち込んで終わらした。

 クラピカの言う通り、蜘蛛のタトゥーには1から12まで数字が入っている。

 それに、団員が殺害した人数を覚えていないという話は本当だ。実際にウボォーに聞いたが、シャルとパクに聞く相手間違えてるって言われたな。

 

 というか、俺も何人か殺してるが、覚えてないな。

 

 そんなわけでキルアもトンパも出番なくしっかりと三勝を取った俺は、試験官の指示に従って闘技場の奥へと進む。ついでにその時、治癒能力を高める効果を持つ液薬と、痛み止めの液薬をベンドットに渡しておいた。生きたいのであれば飲むだろう。まあどっちでもいいが、医者として助けれるものは助けてやろう。痛めつけたのは俺だしな。

 

「なあレオリオ」

 

「どうしたキルア」

 

 隣を歩いていたキルアが突然右手を出すと、いきなり爪が伸びる。

 

「これはレオリオが壁壊そうとしてたやつとは違うのか?」

 

「似て非なるものだな」

 

 爪が鋭利に伸びたキルアの右手ではあるが、新陳代謝を操作しているのはわかっている。

 

「人間に限らず、生命が持っているエネルギーを形にしているのが俺の使ってるもの。ヒソカなんかもこれを使ってる。キルアが使ってるのは多少なりとも影響はあるだろうが、俺たちが使っているものと似ているようで違うもんだ」

 

「なら教えてくれよ」

 

 俺も俺も! とゴンまで話しかけてくるが、試験に受かってからな。と伝えてごまかす。

 

「んなこと言ってねーで教えろよ」

 

「キルア。その前に多数決だ。階段を上るか、下るか」

 

 4対1で下ることを選択した俺たちは、迫ってくる大玉を避け、電流クイズ。〇×迷路やら地雷付きの双六。途中にあるセーフゾーンと思わしき場所で息を着きながらたどり着いたのは、最後の分かれ道と書された武器庫のような部屋。

 

「下に着いたら絶対教えてもらうからな」

 

「いや、他にも合格者がいるだろうから言わねえよ」

 

 キルアのやつしつこいな。絶対変化系だ。レオリオ的性格別オーラ系統診断によると、変化系は執着心が強く我儘。ヒソカは戦闘狂でクロロに執着している。マチはさばさばしているものの彼女も彼女でクロロに執着している。

 ちなみに大雑把であるが情に厚い奴はだいたい放出系。フランクリンなんかまさにそうだ。なんとなくで指を着脱できるようにしてほしいって頼まれたときは何というか、声が出なかった。

 

「んで? どうする?」

 

 出された選択は、長く困難だが5人全員で進む道。短く簡単だが3人しか進めない道。

 

「時間的には長く困難な道でも間に合うが……。正直次の試験のことを考えると力は貯めておきたいな」

 

「でもそうしたら二人捕まらないといけないよクラピカ」

 

「じゃあさ、最初レオリオがやろうとしてたことをここでやればいいんじゃない? 扉壊そうとしてただろ? あの時」

 

「え? 何の話だ?」

 

「そっか、トンパが来る直前の話だったから知らないか」

 

 きょとんとしているトンパのことを見たゴンが、そっかーなんてことを言っていたが、それは有りか。

 

 扉に触れて指で叩く。形の把握だけで言えば『円』を使えばわかるのだが、材質的な物や硬度的なものはこちらの方が確認がし易い。

 正直、扉の上から殴ったところで問題なく破壊できる。このまま破壊するか。

 

「ゴン。お前はこの鉄の扉を一撃で壊すことができるか? 素手だけで、木っ端微塵に」

 

「え? うーん。多分歪ませるかなできるかもしれないけど、壊すのは無理だと思う」

 

「さっきも言ったが。俺たちが使っているのは生物なら持っている生命のエネルギーだ。それを無意識のまま放置するのではなく、自らの意志で制御し、常人とはかけ離れた力を引き出している」

 

 こんな風に。

 

 右腕を引き、扉に向って拳を突き出す。

 

「おいおい……」

 

「すごーい!!」

 

「ヒュー」

 

「まじかよ」

 

 扉はしっかりと砕けており、通路が見えた。

 

「これが、これがあれば皆の仇を……」

 

「これはあくまでも使用の一例だからな。他にもいろんな使用方法がある。ゾルディック家がなぜ有名な暗殺一家なのか。なぜ幻影旅団がA級懸賞首集団なのか。それは世界中にいるこの能力を使える奴らの上位に位置するからだ」

 

「親父も……」

 

「まてレオリオ。なぜおまえが幻影旅団のそういったことまで知っている」

 

 肩をつかんできたクラピカの手を払いのけた俺は口にする。

 

「俺は医者じゃねえ。闇医者だ。金さえ払えばだれだって治療する。それがたとえお前の仇だったとしてもな」



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島×獲物×交渉

 人生で初めてFPSでぶち切れ、PS4のリモコンを投げ飛ばしました。

 あとがきへ続く。


「さて、どうしたものか……」

 

 手に持ったカードに記されている246という三桁数字を見て、俺は空いた手で頭を掻く。

 せめてもう少し知ってるやつの番号がよかった。というのが正直なところ。

 

 三次試験は5人で合格した。

 俺が壊した扉の先は滑り台になっていて、しばらくの間滑り台に身を任せたことでそのまま地上の合格エリアへとたどり着いた。

 

 正直向かいにいたヒソカの目線が気持ち悪すぎてずっと目をつむり、背中を向けて眠っていた。

 

「ゴンたちにならなかったのがよかったと言えばいいんだが、わかんねえなぁ。誰だよ246番って……」

 

 四次試験の内容はハント。自分とくじ引きによって選ばれた数字のナンバープレートが3点ずつ。他のナンバープレートが1点ずつと点数が振り分けられ、6点以上を獲得する。というのが内容。

 

「期限も一週間あるわけだし、片っ端から倒して点数集めるか」

 

 まずは軽くオーラを練ると、そのまま薄く広げる感覚で『円』を使う。

 近くにいるのは4人。全員がバラバラの位置を向いてるから、多分どいつも接敵はしてないと思う。

 ただ、一人こっちに向かってきている。

 

「まあ、狩るか……」

 

 たとえ標的じゃなかったとしても、一点になる。246番(ターゲット)に会えなかった時の保険になるなら、戦ってもいい。

 バタフライナイフを構えた俺は、木の裏に隠れ、向かってくるやつの姿を伺う。

 

「あれは……。トンパか?」

 

 トンパの番号は確か16のはず。

 

「ハズレか」

 

 とりあえず『円』のオーラを隠しながらもう一度索敵をすれば、今度はトンパの少し後方にもう少し後方で尾行しているような動きをしている存在。

 確かトンパは俺やクラピカみたくカバンなんかは携行していない。と言うことはポッケにプレートを入れているはず。

 

 周囲をキョロキョロと索敵するトンパ。

 

「おい、トンパ」

 

「誰だ!」

 

 ナイフをクルクルと回しながら近づく俺な対して、トンパは拳を構える。

 

「別に戦おうって話じゃない。それに、やろうと思えばお前くらいすぐ倒せる。それよりだ……。情報を売れ」

 

「情報? お前のターゲットか?」

 

「他に何がある」

 

 パチンと武器をしまった俺は、ストンと胸のポケットにしまうと、入れ替えるようにターゲットの番号札を見せる。

 

「246番……。ポンズか」

 

「情報を教えてくれさえすれば、俺のプレートをやる」

 

 それは破格すぎるだろう。そういう彼に、3点くらいすぐに集められることを伝えると、彼は少し考えた素振りを見せ、ポツリという。

 

「わかった。教えよう」

 

 彼の後ろに、16番がターゲットである札を見せて隙を伺う、クラピカの存在に気づかずに。

 

「お前のターゲット、246番のポンズは女の受験生だ。確か薬を使っていたはず。こんな感じの帽子をかぶってるから、一度見たら分かるだろう」

 

 地面に絵を描くトンパは、そのまま情報を教える。

 薬を使い、戦い方は待ち伏せが中心。罠に掛からなければ取っ組み合いで余裕に勝てる。との事。

 

「ほら、教えたぞ。お前のプレートをくれ」

 

「分かった分かった」

 

「そのプレートは、私がもらうがな」

 

 振り下ろされた二振りの木刀が、トンパの後頭部を叩いた。

 これでクラピカは6点だな。そういうと、クラピカは感謝の意を宣べる。

 

「ってもなぁ。こいつどうするか……」

 

 クラピカの木刀によって意識を狩られたトンパは、とりあえず木の幹に持たれかけさせる。

 

「木陰に置いていれば大丈夫なのだろう? それにこんな試験だ。ハンター協会側も何かしら受験者の確認をしてるだろう」

 

「まあ、それはそうか。一応情報は手に入れたからな。あとは適当にやりながら集めるさ」

 

「なら協力関係になってくれないか? 一人より二人だろう。それにレオリオのそばにいれば敵が来てもプレートを守りやすい」

 

 それはそう。固まっていた方が人数有利になりやすいのは事実だ。だが、正直なところ好き勝手できないんだよな。

 目的の相手が待ち伏せをする。というトンパの情報を信じるなら、もうすぐ試験2日目が終わることを考えれば狩場を探し終えているだろう。

 

「とりあえず移動しないか? もう少ししたら川に出る。そろそろ日も落ちるから、飯といきたい」

 

「それは同感だな。そこで作戦を考えよう」

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 俺たちが考えた作戦は、川沿いに上流へと向かうという物。

 水はサバイバルの中で最も必要な物である以上。川沿いに上流へ向かう。支流があれば、そこから別のところへ向かえば誰かいるだろう。

 そういう話になり就寝についた。

 

 月が輝く夜。人によっては動き始めるものもいるだろう。

 だからこそ、昼間のように『円』を行う。

 

「近くに二人。とりあえずこの間にやるか」

 

「ん? いるのか?」

 

「ああ、クラピカはここにいてくれ」

 

 俺の声で起きたのか、クラピカはキョロキョロと周りを見る。

 

「しかし、そうすれば協力を組んだ意味がないのだが」

 

「だが、ここに戻ってくるにも目印がいるからな。火を焚いといて欲しい。煙を見て某野生児か、……キルアが来るかも知れねぇ」

 

 キルアに対する良い例えが思いつかなかった為に苦笑いをされたが、俺はそのまま確認した所へと向かう。

 フィンクスとフェイタンに遊ばれ続けた結果逃げる為に上手くなってしまった『絶』を使えば、念も使えない奴には気づかれないだろう。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

「おや? これはこれは♦」

 

 少し開けた場所に来たと思ったら、そこに居たのは金髪の受験生。

 

「君は確か、レオリオと一緒にいた受験生だろ? 彼はどうしたんだい?」

 

「お前に教える義理はないな」

 

「つれないなぁ。せっかく友人に会ったんだから少しは話したいじゃないか まあその本人はいないみたいだけど♥」

 

 武器を構えた彼に僕は警戒心を解くよう伝えるが、まあ土台無理な話だ。

 

「彼とは一緒に行動してるのかい?」

 

 まあ、教えてくれなくても、自分で探すが。気分が乗れば。

 

「そういえば、君のターゲットは僕かい?」

 

「違うな。私のターゲットは16番。すでにもうプレートは取っている。ヒソカのターゲットは誰だ?」

 

「僕は384番♣︎」

 

「それなら私ではない。私の番号は404番だ」

 

「それは残念♠︎」

 

「私の持っているプレートはお前にとって2点分にしかならないが、それでも私から奪おうというのであれば、相手になろう」

 

 木刀を構える彼、クラピカを見て、自分でもわかるくらいにやけてしまった。

 正直僕は今とても機嫌がいい。別に戦うとか同行以前にやろうと思えはすぐに殺せる。それに友人のおかげで1点分のプレートを持ってはいるが、あと2点をここで賄得られると考えれば悪いことじゃない。が、彼に会えるなら少しここにいてもいい。そう思う。

 

「安心してよ♦︎ 今は戦うつもりはない。僕はただレオリオと少しだけ話したいだけだからさ♥」

 

 クツクツと笑う僕を見る彼の眼は少し訝しそうで、それはそれでそそる。

 今回参加している青い実の中で一番の存在は405番。続いて99番。その次に気になる存在が彼だ。

 だが、あの二人に比べるとこの子は未熟。青い実のその前段階だ。

 

「いや、お前何でここにいるんだよ」

 

 ガサガサと草木を掻き分ける音が聞こえたと思えば、そこからやってきたのはスーツを着込みアタッシュケースを左手に持つ男。

 僕とクラピカが対面している様を見て、至極全う的なことを言った彼に、僕は思わず笑ってしまう。

 

「ククッ。来たんだね? レオリオ♣︎」

 

「だからなんでオメエがいるんだよ。ターゲットは?」

 

「386。君じゃない」

 

「悪いがさっきとってきたプレートとも違うわ。いるか?」

 

 君が6点分持っているのなら。そういえば彼はプレートをジャケットの中にしまう。

 それじゃあどうしようか。話をしたい。とは口にしてはいたものの話の内容があるわけじゃない。

 

「それで? なんか用があったんだろ?」

 

「ああ、それか♠ 多分君のところにも連絡は来てるんだろうが、『早く戻ってこい』って言っていたよ? 巣がないと帰るところが無くなる。なんてことを言っていたけど、帰る場所帰る場所って、子供みたいだよね♦」

 

「子供のまま大人になった。それがすべてだろうな。奪うことでしか満たされないから、人の命も欲しいものも手に入れる。俺の存在も何もかもな」

 

「おいレオリオ……。一体何の話だ?」

 

「安心しろクラピカ。ヒソカは闇医者としての客でな。俺の家族のことについても知ってる ってだけだ。それ以上でも以下でもない」

 

 用がないなら帰れ。なんてレオリオから言われてしまったが、そんなことを言ったってこれは試験だ。

 というか、試験という名目があるなら彼も戦ってくれるのではないだろうか。

 

「うん。いいね♥ そうしようか♣︎」

 

「何がそうしようかだ。どうせ最終試験とかで殴り合いとかありそうだからそれまで待て。っていうか、試験が終わったらいつでも殺り合えんだろ。一回すれば俺は十分だがな」

 

 やっぱりつれないじゃないか。そう言っても彼はここで僕を相手するつもりが無い様で、仕方なしにこの場は離れる。

 あーあ。こんな生殺しになるんだったら来なきゃよかった。

 

「まあいいや。他のやつを殺してくるよ♠」

 

「そうしとけそうしとけ。あ、246番の女を見つけたらプレート俺にくれ。試験終わりに200万くらい送金してやる」

 

 まあ、気が向いたらそうしようかな?




 ぶん投げたリモコンが畳を跳ね、そのまま部屋の壁へ当たり、ベッドの上で静止しました。
 見事に買い替えです。4000円の出費です。

 以上小さな話でした。


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