キン肉マン~ティーパックマン達が7人の悪魔超人達に立ち向かうようです~ (やきたまご)
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弾ける紅茶(ティーパックマン)!!の巻

絶体絶命のピンチ!!


 突如現れた7人の悪魔超人!

 バラバラにされたミート君の身体を取り戻すためにキン肉マンは立ち上がった!

 キン肉マンの初戦の相手であるステカセキングを辛くも倒した!

 しかし、怪我の状態が酷く、二・三日では治らない状態であった。

 

 

 

『会場では六人の悪魔超人がキン肉マンの到着を待っていますが、キン肉マンが一向に来る気配がない!!』

 

「ははは! 怖じ気づいて逃げたか! まあその方が利口ってもんだ!」

 

 バッファローマンは悪魔超人の勝利を確信し、高笑いした。

 

「せめてアイドル超人達の状態が良ければかわりに闘ってやれるんじゃが……」

 

 キン肉真弓はそうつぶやいた。

 この時、アイドル超人の多くが闘えない状態にあった。

 ロビンマスクはキン肉マンとの闘いにおいて、転落した時のダメージがまだ残っていた。復帰にはもうしばらく時間がかかる。

 テリーマンは義足の調子が良くなく、義足のメンテナンスが終わるまで試合に復帰できない。

 ウルフマンはキン肉マンとの闘いの際に左脚のアキレス腱を手術し、まだ退院できていない。

 ウォーズマンは7人の悪魔超人の来訪時に、バッファローマン、ステカセキングから受けた攻撃により今もなお入院中だ。

 ラーメンマンはウォーズマンとの闘いにより、いまだ植物人間のままである。

 

『あ――――――っ! バッファローマンがミート君の頭を取り出した――――――っ!』

 

「キン肉マンが来なければしょうがない、この場でミートの頭を握りつぶしてやろう!!」

 

 バッファローマンの言動に観客が騒ぎ始める。

 

「誰か闘える奴はいないのか――――――っ!!」

 

「テリー! ロビーン! ラーメンマン来てよ――――――っ!!」

 

 名前を呼ばれた本人達は、各々の場所で、闘えない自分を悔しく思っていた。

 

「キン肉マンの闘いはこの俺が引き受けるぜ――――――っ!!」

 

 どこからか大きな声が聞こえてきた。

 会場の皆が声のした方を見た。

 そこには頭部はティーカップ、筋骨隆々な身体、そして手にはティーバッグを持っている。

 

『なんと――――――っ!! ティーパックマンが悪魔退治に名乗りをあげた――――――っ!!』

 

「なんとも貧弱そうな相手だ。まあいい、俺達のスパーリングパートナーぐらいにはなるだろう」

 

 バッファローマンは明らかに舐めた態度をとっている。

 

「油断していると、煮え湯を飲まされるぜ」

 

 ティーパックマンの眼は闘志の炎で燃えている。

 

「ティーパックマン! お前だけに良い格好はさせないぜ!」

 

 ティーパックマンに続き五人の超人が現れた。

 一人目はかつてハワイでキン肉マンと闘ったジェシー・メイビア。 二人目は超人オリンピックでテリーマンをあと一歩まで追い詰めたスカイマン。

 三人目はろう固め殺法でキン肉マンを大苦戦させたキング・コブラ。 四人目は体格に恵まれ、超人強度100万パワーのカナディアンマン。 五人目はどんな超人をも便器に流す恐怖のベンキマン。

 彼らはミート君のボディパーツ救出のために立ち上がった。

 

『ご覧下さい! 正義超人達が勇気を出し、ミート君救出のために悪魔退治に名乗り出ました――――――っ!!』

 

 しかし、観客は盛り上がり切れなかった。観客達にとって、彼らのほとんどに強いイメージを持っていないからだ。観客から不安の声が多く出てきた。

 

「あいつらで大丈夫かよ、ジェシー・メイビアは良いとしてもあいつらじゃあ引き分けすら難しいじゃないか?」

 

「こりゃあキン肉マンが復活するまでの時間稼ぎですな」

 

「女房を質に入れなくても良い試合ばかりになりそうだわい」

 

 正義超人達が悪魔超人達とにらみ合う。

 

「今なら後戻り出来るぜ雑魚共」

 

 バッファローマンが正義超人に対して悪魔の情けをかける。

 

「聞こえなかったか? 俺達はお前らを倒すために立ち上がったんだ!」

 

「分かったぜ。それじゃあ遠慮なく殺れるってもんだ!」

 

ごむあごむあ

 

 突然、悪魔超人達のそばに謎の物体が6つ現れた。物体にはリングのある場所が映し出されている。バッファローマンが解説を始めた。

 

「いわゆるワープゾーンってやつだ。この先にお前達の死に場所がある。俺達は一足先にリングで待っているぜ!」

 

 6人の悪魔超人は一人ずつそれぞれのワープゾーンに入っていった。

「いくぞ皆!」

 

 正義超人達も覚悟を決めて飛び込んだ。

 

 

 ブラックホールの待つリングにスカイマンが到着した。

 

「俺の空中ショーでお前を楽しませてやろうじゃないか!」

 

「カカカカ、ならば俺のイリュージョンを冥土の土産にしてやるぜ!」

 

 両者、互いの様子を見ている。

 

 

 

 ザ・魔雲天が待つリングにカナディアンマンが到着した。

 

「ほう、俺に負けず劣らずの体格のようだな。これならすぐには死なさそうだな!」

 

「それはこっちの台詞だぜ!」

 

ガシィ

 

 両者がリング中央で力比べを始めた。

 

 

 

 アトランティスの待つリングに到着したのはベンキマンだった。

 

「ケーケケケ、不潔そうなやつが来たもんだ。お前に触れずに勝利してやるぜ!」

 

「ならば、私はお前を不浄なる糞尿の世界に引きずり込んで不潔にしてやろう!!」

 

 

 

 キング・コブラが到着したリングにはミスターカーメンの頭だけがあった。

 

「マキ――――――ッ!!」

 

 ミスターカーメンが口を大きく開けて、鋭い歯でキングコブラに襲いかかった。

 

カキィン

 

 キングコブラは咄嗟に、自分の頭上のコブラの牙でミスターカーメンの牙攻撃を防いだ。両者の牙がぶつかりあう形となった。

 

 

 

 バッファローマンの待つリングに到着したのはジェシーメイビアだった。

 

「ほう、ハワイチャンプさんが俺の相手か。少しは楽しませてもらえそうだな!」

 

 

 

 スプリングマンの待っているリングに一人の超人が現れた。

 

「ほう、一番先に啖呵を切ったやつか」

 

 その超人はティーパックマンであった。

 

カーン

 

『悪魔超人VS正義超人の団体戦の初戦はティーパックマンVSスプリングマン! この試合どうなるか全く予想がつきません!』

 

「くらえ! ティーバッグウィップ!」

 

パシィン

 

「ケガァ!」

 

 ティーパックマンの放ったティーバッグがスプリングマンの顔面に見事ヒットした。

 

「コポー! コポー! コポー!」

 

パシィン パシィン パシィン

 

『ティーパックマン優勢だ! スプリングマン立っているのが精一杯か――――――っ!!』

 

「ケケケケ」

 

 スプリングマンは余裕の笑みを見せる。

 

「ちっとも効かないぜティーパックマン、俺はバネだからお前のティーバッグの打撃は吸収できるんだぜ」

 

「それならこうだ!」

 

シュルルル

 

「ケガ!?」

 

 スプリングマンの首にティーバッグの紐が絡みつく。更にティーパックマンはジャンプしてスプリングマンの背後をとる。そのまま自身の脚でスプリングマンの脚を固定していく。

 

「死のティータイム!」

 

グキグキグキ

 

「ケガァ!」

 

『ティーパックマン! 見事な必殺技をスプリングマンに決めた――――――っ!!』

 

ぐにゃあ

 

「ぬ!?」

 

 ティーパックマンは自身の技に違和感を感じた。

 

「ケケケ、言ったろ? 俺はバネだって。お前の凝った関節技も効かないんだよ!」

 

するり

 

『あ――――――っ!! スプリングマン! ティーパックマンの技から容易に抜けてしまった――――――っ!!』

 

「そろそろお遊びはおしまいだ!」

 

びよよーん

 

 スプリングマンは空高く飛び、ティーパックマンの真上に来た。

 

「今度は俺の必殺技をごらんあれだ!」

 

がしゃあん

 

 ティーパックマンの身体にスプリングマンが絡みついた。

 

「螺旋解体縛り!!」

 

ぎしぃ ぎしぃ ぎしぃ

 

「コポポ――――――ッ!!」

 

 ティーパックマンが苦しい表情を見せる。

 

「死ね――――――っ!!」

 

「コパァ――――――ッ!!」

 

ぐわしゃあ

 

 ティーパックマンの身体が無残にもバラバラに飛び散った。

 

『なんと残酷な技でしょう! ティーパックマンがあっという間にバラバラになってしまった――――――っ!! これは誰が見ても戦闘不能でしょう!!』

 

カーン カーン カーン




仇をとれウルフマン!!


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華麗なる宙男(スカイマン)!!の巻

トラウマレベルの惨殺!!


 ティーパックマンが惨殺された姿に正義超人が動揺を隠せなかった。それは正義超人のファイトにも影響が出て、たちまち不利となる。

 

『悪魔超人優勢! ティーパックマンに続いて第二、第三の犠牲者が出てしまうのか――――――っ!!』

 

「どうやらこの空気を変えてやらないといけないようだな」

 

 ジェシーメイビアだけは他の正義超人とは態度が違った。

 

「うおおおお!!」

 

ドドドドドド

 

『バッファローマン! ジェシーメイビアにウォーズマンを一撃で倒したハリケーンミキサーを仕掛けにいった――――――っ!!』

 

 ジェシーメイビアが突進するバッファローマンに対し、激突寸前の時に両手でロングホーンをつかむ。

 

「俺様のハリケーンミキサーを止められるとでも思ったか!」

 

「思ってないさ。だからその力を使わせて貰う」

 

 ジェシーメイビアはバッファローマンのハリケーンミキサーに逆らわぬように、柳のごとく立ち向かう。ジェシーメイビアは両手でロングホーンをつかみながら、バッファローマンの頭上で逆立ちをし、ハリケーンミキサーの力によってバッファローマンごと回転させた。

 

ぎゅるるるる

 

「ぐおおお!!」

 

『これは上手い! ジェシーメイビア! バッファローマンのパワーを見事に利用した――――――っ!!』

 

 ジェシーメイビアは回転しながらも空中でパイルドライバーの体勢に決めていく。

 

『ハリケーンミキサークラッシュ!!』

 

 ジェシーメイビアは回転を加えたパイルドライバーでバッファローマンをリングに激突させた。

 

ずどぉぉん

 

「ぐはぁ!」

 

 この日初めて、バッファローマンの顔から余裕の笑みが消えた。

 

「効いたぜお前の返し技、どうやら久々に1000万パワーを出せる相手と出会えたぜ!!」

 

 ジェシーメイビアの善戦を見て、他の正義超人に士気が戻った。

 

「俺達もメイビアに負けてらんねえぜ!!」

 

 各正義超人が、徐々に優勢になっていった。

 

 

 

 スカイマンVSブラックホールのリングでは、スカイマンが優勢に闘っている。

 

『スカイマン! リングロープに登り、高くジャンプした――――――っ!』

 

 スカイマンがブラックホールの頭上に頭から落ちる。

 

「人間ロケット!!」

 

ガァァン

 

 ブラックホールが頭部へのダメージでふらついた。

 

「これで終わりと思うな!」

 

 スカイマンが追撃で、空中で蹴りを決める。

 

ドガァ

 

『スカイマン! マットに着地前に延髄蹴りを放った!』

 

 ブラックホールがマットに倒れるが、立ち上がろうと、膝をたてる。

「そのまま寝ていな!」

 

『スカイマン! 立ち上がろうとするブラックホールに左のミドルキック!!』

 

「ブラックホールキャッチ!!」

 

すぽぉん

 

「な!?」

 

『あ――――――っ! ブラックホールの顔面の穴にスカイマンの左脚が入ってしまった!!」

 

 ブラックホールはその状態で、ジャイアントスイングぎみに顔を振り、スカイマンを回転させる。その状態で、スカイマンの足を自身の穴から解放し、スカイマンは頭からリングの鉄柱に向かって投げ飛ばされる。

 

「そうはいかないぜ!」

 

 スカイマンは鉄柱に激突寸前、鉄柱をつかみながら回転し、投げ飛ばされた時の勢いを生かし、ブーメランのごとくブラックホールにドロップキックを放つ。

 

ドガァ

 

「カカッ!」

 

 ブラックホールがマットに倒れる。

 

『スカイマン! 終始見事な空中ファイトのオンパレード! 正義超人でスカイマン程の空中ファイトをできる超人はまずいないでしょう!!』

 

「カカカ、思ったよりもやるじゃねえか!」

 

 ブラックホールが立ち上がってきた。

 

影分身(セパレートシャドウ)!!」

 

 ブラックホールの足下の影がいくつかに分かれて分散し、影から人方が現れた。

 

『これは凄い!! ブラックホールが分身した――――――っ!! その数はなんと8人です!?』

 

 スカイマンはこの状況が飲み込めず驚く。

 

「こ、こんなのインチキだ!」

 

「そいつはどうかな?」

 

 8人のブラックホールが一斉にスカイマンに襲いかかった。

 

バキ ドガァ グボォ バゴォ

 

『スカイマン! 8人のブラックホールにサンドバッグ状態!! もはやグロッキー状態です!!』

 

「ぐはぁ! まさか全部本物だとは!?」

 

「先程の空中ファイトのお礼をたっぷりしてやろう!」

 

 8人のブラックホールがリングロープ上段に登り、スカイマンにドロップキックを放つ。

 

「8メンブラックホールキック!!」

 

ドゴォォ

 

「ぐはぁ!!」

 

 スカイマンが血反吐を吐きダウンした。

 

『ブラックホールの猛攻についにスカイマンダウンだ――――――っ!!』

 

「おっと、おねんねは困るぜ!」

 

 8人のブラックホールがスカイマンを胴上げするように、空中に高く投げ放った。

 

『ブラックホール! スカイマンを空中高く上げた! そして八人のブラックホールが後を追うように飛び上がる!!』

 

 ブラックホールは空中で八人から一人へと戻り、空中でスカイマンに技をかける。

 

「フォーディメンションキル!!」

 

ドゴォォン

 

 スカイマンはマットに勢いよく叩き付けられた。ブラックホールが技を解くと、スカイマン大の字で倒れた。スカイマンにもはや意識はなく、屍と化していた。

 

カン カン カン カン

 

『スカイマン! 善戦しましたが悪魔超人ブラックホールとの実力差を見せつけられました!! これで正義超人軍2連敗! 誰かこの負の連鎖を止めてくれ――――――っ!!』

 

「カーカカカ!!」

 

 ブラックホールは勝ち誇り、リングで高々に笑った。

 

 

 

 魔雲天VSカナディアンマンのリングでは互いに力比べを続けている。

「ぐえへへ、お前も無様に殺されない内に許しを請う方が賢いってもんだぜ!」

 

「けっ! てめえに許しを請うなんざまっぴらゴメンだ!」

 

「それじゃあ死んで貰うしかないようだな!」

 

 魔雲天がさらに力をこめ、カナディアンマンを押し倒していく。

 

「いっとくが、俺はあいつらみてえに無様に死ぬ気はないつもりだぜ!! ヒーローらしく格好良く勝つつもりだ!!」

 

 カナディアンマンが魔雲天に頭突きをかます。

 

ドガァ

 

「ぐぇふぇ!」

 

 魔雲天がひるみ、カナディアンマンがそのすきに魔雲天をマットに投げ飛ばした。

 

ズシィィン

 

『カナディアンマン! 魔雲天の巨体を投げ飛ばした――――――っ!! 正義超人随一のパワーは伊達ではありません!!』

 

「まだまだ――――――っ!!」

 

『カナディアンマン! 倒れている魔雲天にボディプレスだ!』

 

ズシィン

 

『決まった――――――っ!! カナディアンマンの巨体から繰り出されたボディプレス! これは効いたでしょう!!』

 

「なんだ? 蚊にも刺された程にしか感じんなぁ?」

 

ぐいっ

 

 魔雲天は覆い被さっているカナディアンマンを軽々と持ち上げる。

 

「なっ!?」

 

「邪魔だ! でくの坊が!!」

 

ひょい

 

 カナディアンマンはマットに放り出された。

 魔雲天はすぐにコーナーポストへと登った。

 

「いいか、本当のボディプレスっていうのはこういうのを言うんだ!」

 

 魔雲天がカナディアンマンに向かって飛んだ。

 

「魔雲天ドロップ――――――ッ!!」

 

「うわぁ――――――っ!!」

 

ぐわしゃあ

 

『あ―――――っ!! 魔雲天の1トン近い体重にカナディアンマンが潰された――――――っ!! これはカナディアンマン、見るも無惨な姿になっているでしょう!!』

 

 モニター越しに、スペシャルマンが気が気でない気持ちでカナディアンマンを心配する。

 

「カ、カナディアンマン……」

 

 魔雲天がげすな笑い声をあげる。

 

「ぐえふぇふぇ、さて、うどの大木の押し花を拝むとする、!?」

 

 魔雲天が異変に気付いた。

 

「勝手に俺を殺してんじゃねえよ……」

 

 魔雲天の身体が少しずつ持ち上がっていく。

 

『あ――――――っ!! カナディアンマン!! まだ生きていた――――――っ!!』

 

「ここで無様に死んじまったらなぁ……亡くなった奴らへの弔いができねえじゃねえか――――――っ!!」

 

ぐいーん

 

 カナディアンマンは魔雲天を持ち上げ、カナディアンバックブリーカーを決めていた。

 カナディアンマンは体中から出血し、額のメイプルリーフも折れ、鬼気迫った表情をしていた。 




勝て(カナディアンマン)!!


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毒蛇(キングコブラ)ショー開幕!!の巻

どちらが先に折れるか!!


 カナディアンマンが満身創痍の状態ながらもカナディアンバックブリーカーで魔雲天にダメージを与えていく。

 

グキ グキ グキ

 

 魔雲天の1トンの体重が自身の背骨を痛めつける要因となっていた。しかし魔雲天は冷や汗を流しながらも、余裕の表情を出す。

 

「いいのか~? この技は俺にだけでなくお前にもダメージがあるんだぜ~」

 

ブシャ メキ ゴッキン

 

「ぐうう!!」

 

 カナディアンマンは身体から異音と血を出しながらも、カナディアンバックブリーカーを解こうとしない。

 

「カナディアンマン! このままじゃ君の身体が持たない! 今すぐ技を解くんだ!」

 

 スペシャルマンがモニター越しからカナディアンマンに声を届ける。

「るせぇ! お前の頼みでもこれだけは譲れねえ! 俺は忘れない! 俺の自慢の技がロビンに簡単に外され、あっさり負けちまった事をな! 今度こそ決めてやる! 例え俺の背骨が折れてもこいつの背骨を折ってやらぁ!」

 

 カナディアンマンはかつて超人オリンピックでロビンマスクに惨敗したことを思い出していた。

 

『カナディアンマン! 凄まじい気迫です! 魔雲天もカナディアンマンも互いに苦しんでいる!!』

 

 魔雲天の顔からもはや余裕は見られない、カナディアンマンもすぐにでも倒れてしまいそうな状態だが、技を継続し続ける。

 

「ぐおああああ!!」

 

バキィィ

 

『あ――――――っ! これは背骨が折れた音だ――――――っ!』

 

「ぐほぁっ!」

 

「げほぁっ!」

 

 カナディアンマン、魔雲天の両者が血反吐を吐き、マットへと倒れた。

 

カン カン カン カン

 

『勝負がついた――――――っ!! カナディアンマン! 悪魔超人魔雲天相手に意地の引き分けに持ち込んだ―――――っ!!』

 

「けっ……みっともねえ闘いをしちまったぜ……」

 

 カナディアンマンはそれだけ言って意識を失った。

 

 

 

 キング・コブラVSミスター・カーメンのリングでは、ミスター・カーメンが頭だけ出している状態である。

 

「さっさと姿を見せな悪魔超人目!」

 

「その必要はない!」

 

『ミスター・カーメン! 鋭い歯を光らせながら、口を開けてキング・コブラに迫る!!』

 

がぶり

 

「ぐわああ!!」

 

『これは痛々しい! ミスター・カーメンがキング・コブラの右肩に噛みついた――――――っ!!』

 

 キング・コブラは肩を噛まれて苦痛の表情を浮かべる。

 

「さあ泣いて謝ればこの牙地獄から解放してやろうぞ!」

 

「ひひひ、それはどうかな?」

 

 キング・コブラの頭上のコブラが目を光らせる。

 

「秘技! 蛇睨み!」

 

ピキーン

 

「ぐっ! 動けないだと!?」

 

 ミスター・カーメンが自身の身体に異変を感じた。

 

「ひひひ、カエルは蛇と遭遇し睨まれた時、その恐怖に動けなくなるのだ!!」

 

パカ

 

『キング・コブラ! いとも簡単にミスター・カーメンの口を外した――――――っ!!』

 

「そうれ! 蛇毒発射!!」

 

シャー シャー

 

 キング・コブラの頭上の蛇の口から紫色の液体が発射された。その液体はミスター・カーメンの目へと飛んだ。

 

ぴちゃ ぴちゃ

 

「ギャ――――――ッ!!」

 

 ミスター・カーメンは苦しみ、消していた身体が徐々に姿を現した。

「やっと姿を現したか!」

 

「ぐぅ、目が見えぬぅ!」

 

「食らえ! ろうがため殺法!」

 

ぴちゃ ぴちゃ ぴちゃ

 

 キング・コブラが自身の汗をミスター・カーメンにかけた。

 

カチ カチ カチ

 

「なんだ! こやつの体液が固まっていくだと!?」

 

『出ました! キング・コブラ得意のろうがため殺法!! かつてキン肉マンもこの技であと一歩まで追い詰められました!!』

 

「そうれそうれそうれ!!」

 

「や、やめろ――――――っ!!」

 

 やがて、ミスター・カーメンの胸から足下までろうそくによって固められて動けなくなった。

 

「ひひひ、そろそろとどめといこうか!」

 

 キング・コブラの頭上の蛇が牙を光らせる。

 

「これで貴様は毒殺だ――――――っ!!」

 

『キング・コブラ勝利目前! 正義超人初勝利となるか――――――っ!!』

 

ボキィン

 

 キング・コブラの蛇の牙がミスター・カーメンの頭に噛みついたと思われた瞬間、コブラの牙が折れた。

 

「お、おれのコブラの牙が!?」

 

『これは一体どうしたことだ――――――っ!!』

 

 ミスター・カーメンの顔を見ると、顔が石化していた。

 

「古代エジプト秘術! 顔強の術!! これで俺の頭を石化させたのだ!!」

 

「く、くそう!!」

 

「さて、このろうそくから脱出するとするか! 古代エジプト秘術! 怨念炎!!」

 

 ミスター・カーメンの周りに二つの炎が浮かんだ。

 

「マキマキ~、こいつは先に亡くなったステカセ・キングと魔雲天の魂を炎と化した物だ~!!」

 

とろ とろ

 

『あ――――――っと! ミスター・カーメンを包むろうそくが炎によってどんどん溶けていく――――――っ!!』

 

「馬鹿な! そんな脱出方法があるとは!?」

 

 キング・コブラは自身の頼りの技を破られ、戦意喪失していた。

 

「そういえば貴様の身体はろうそくだったな、この怨念の炎を近づけたらどうなるかな?」

 

 炎がキング・コブラにまとった。

 

「ぐわぁ――――――っ!!」

 

『キング・コブラ! 怨念の炎により、どんどん身体が溶けていく――――――っ!!』

 

 徐々にキング・コブラが原型をとどめなくなり、やがて、マットには溶けた大量のろうそくが残った。

 

カン カン カン カン

 

『キング・コブラ! ミスター・カーメンをあと一歩まで追い詰めましたが、逆転されてしまった――――――っ!! まだまだ悪夢は終わらないのか――――――っ!!』

 

 

 

 モニターごしに試合の結末を見たジェシー・メイビアが動揺を隠せない。

 

「キング・コブラまで……」

 

「よそ見している場合か!!」

 

ドガァ

 

 バッファローマンがジェシー・メイビアの顔面に強烈な右フックを食らわせた。

 

『ジェシー・メイビア! 仲間の死に動揺したか! 先程の勢いがなくなってしまった――――――っ!!』

 

 

 

 ベンキマンVSアトランティスのリングにも変化が見られた。

 

「くらえ、ウォーターマグナム!!」

 

ドバァ

 

『アトランティス! 口から強烈な水鉄砲をベンキマンに発射した――――――っ!!』

 

「ベンキーヤウォッシュ!!」

 

ジャアア

 

 ベンキマンのボディから大量の水が噴出された。

 

『両者共に水技で対抗だ! 共に技の勢いは互角のようです!!』

 

「これじゃあらちがあかねぇ、ならば、アトランティスミスト――――――ッ!!」

 

 アトランティスの身体から白い霧が出てきた。

 

『あ――――――っと! アトランティス! 大量の霧を出し、姿を消した――――――っ!!』

 

 ベンキマンがアトランティスの姿を見失い慌てる。

 

「落ち着くんだ、やつは水中ファイトを得意とする超人、ならば私をリング場外の池にひきずりこむつもりだ!」

 

 ベンキマンはリングロープを背にする。

 ベンキマンは足下に意識を集中させると、なにやら物体の気配を感じた。

 

「ケケ―――ッ!!」

 

 いつの間にか水中に潜っていたアトランティスは、ベンキマンの脚をつかもうとしたが、ベンキマンはそれを瞬時に察し、ジャンプしてかわす。

 

「読んでやがったか!」

 

「今度は私が引きずり込む番だ!」

 

 ベンキマンはアトランティスの腕をつかんで水中から引きずり出し、自身の便器へとひきずりこんだ。

 

「やめろ! 悪魔といえど、不潔なところに流されたくはねえぜ!」

 

「問答無用! 恐怖の便器流し――――――っ!!」

 

フンジャー

 

「ケキャ―――ッ!!」

 

 アトランティスは断末魔の悲鳴を上げて、ベンキマンによって流された。

 

ぽん ぽん ぽん

 

『決まった――――――っ!! 一洗必殺!! ベンキマン恐怖の便器流しが悪魔を葬り去った――――――っ!!』

 

「ケーケケケ!! そうはいかねえぜ!!」

 

「なに!?」

 

ゴゴゴゴゴ

 

 ベンキマンの便器の底からなにやらこみあがってくる音が聞こえた。

ざばぁ

 

 ベンキマンの便器からアトランティスの腕が飛び出た。

 

『あ――――――っと! 流されたと思ったアトランティスが便器の底から這い上がってきた――――――っ!!』

 

「ケーケケ! これくらいの水流を泳ぐなんざ朝飯前よ!」

 

ざばぁん

 

 アトランティスはベンキマンから脱出した。

 




最大奥義破れる!?


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誇り高き便器(ベンキマン)の巻!!

悪夢の連鎖が続いてしまうか!!


「そうら! 次はこっちの番だ!」

 

 アトランティスはベンキマンを軽々と持ち上げて、リング外の水中へ放り出した。

 

「うわぁ!」

 

ばしゃーん

 

『アトランティス! ベンキマンをとうとう水中にひきずりこんだ――――――っ!!』

 

 ベンキマンは水中で思ったように身動きがとれない。

 

「ケーケケケ!!」

 

ゴゴゴゴゴ

 

 アトランティスがもの凄い勢いでベンキマンに迫った。

 

バキィ ドガァ ガキン

 

「ぐはぁ!」

 

 アトランティスはベンキマンにパンチ・キックの連打を浴びせる。ベンキマンはサンドバッグ状態と化している。

 

「ケーケケケ、そろそろとどめといこうか!」

 

 アトランティスが水中でベンキマンに技を決め、水深の岩盤に叩き付けにいく。

 

「アトランティスドライバー!!」

 

 ベンキマンはここまでの闘いで亡くなった仲間の事を思った。

 

(ティーパックマン、スカイマン、カナディアンマン、キング・コブラ……お前達の仇は、必ず私がとる!!)

 

ボワァ

 

 ベンキマンの身体が金色に光り始めた。

 

「ケケッ!? こいつ光りやがった!?」

 

「見せてやろう、これがベンキマン流のクソ力だ――――――っ!!」

 

 ベンキマンの頭上のエラードが勢いよく回転を始めた。

 

ゴゴゴゴゴゴゴ

 

 ベンキマンのエラードが巨大な渦巻きを発生させる。

 

「ま、まさかそんな!?」

 

 アトランティスドライバーの下降する勢いがどんどんなくなり、逆に渦巻きによって両者上昇していった。

 

バシャーン

 

『あ――――――っと! ベンキマンとアトランティスが水中から飛び出した――――――っ!!』

 

 ベンキマンがアトランティスドライバーの体勢を上下逆さに変えていく。

 

「お前の技はなかなかのものだ。しかし、この技の弱点は上下逆さになった場合、私が技のかけ手になるところだ!」

 

 ベンキマンはアトランティスに逆にアトランティスドライバーを決めていく。

 

「ケッ! てめえの非力さで俺をしとめられると思うなよ!」

 

「それはどうかな?」

 

ギュイイイン

 

 ベンキマンのエラードが渦巻きを発生させた時と逆方向に回転し、今度は落下する勢いを増すように力が働く。

 

「なに!! すさまじいGが俺の身体に!?」

 

 ベンキマンの背後には先に散っていったティーパックマン、スカイマン、カナディアンマン、キング・コブラの亡霊の姿があった。

 

「受けてみよ! 全身全霊を込めた一撃を! ベンキドライバ――――――ッ!!」

 

ズガァァァァン

 

 マットにアトランティスが激しくたたきつけられた。技をまともにくらったアトランティスに意識はなかった。

 

カン カン カン カン

 

『遂に正義超人が悪魔超人より初めての勝利をあげました! ベンキマンの勝利に、亡くなった仲間も喜んでいる事でしょう!!』

 

 悪魔超人達もベンキマンの勝利に驚いていた。士気の下がっていたジェシー・メイビアにも活気が戻ってきた。

 

「よくやったぞベンキマン! 私も君に続こうじゃないか!!」

 

『ジェシー・メイビア! ベンキマンの勝利に勢いを取り戻した――――――っ!!』

 

がしっ

 

 ジェシー・メイビアは両腕でバッファローマンの胴をおさえる。

 

『ジェシー・メイビア! ベアハッグでバッファローマンの背骨をせめていく!!』

 

ぎし ぎし ぎし

 

「なんだ、それで全力のつもりか?」

 

がばっ

 

 バッファローマンはいとも簡単にジェシー・メイビアの技を外した。

『あ――――――っと! バッファローマン! ジェシー・メイビアのベアハッグを軽々と外した――――――っ!!』

 

「な、なんてパワーだ! これが1000万パワーか!」

 

ぐわし

 

 バッファローマンが右手でジェシーメイビアの首を持ち上げた。

 

『バッファローマン! 片腕だけでネックハンキングだ!』

 

「死に方を選ばせてやるぜ。選択肢は二つだ。窒息させてやろうか? それとも首の骨をへし折ってやろうか?」

 

 ジェシーメイビアが苦しみながらも笑って対応する。

 

「では、第三の選択肢、お前の右腕をへし折るを選ぼうか!」

 

がきぃ

 

 ジェシー・メイビアはバッファローマンの右腕に両脚をからめて関節技を決める。

 

『ジェシー・メイビア! 負けじとバッファローマンに腕ひしぎ十字を決めた――――――っ!! 流石はジェシー・メイビア! いかなる体勢からも返し技を決めていきます!!』

 

 しかし、バッファローマンは技を決められながらも余裕の笑みを見せている。

 

「ハワイチャンプってのはこの程度の実力か」

 

ぶぉん

 

 バッファローマンが右腕を勢いよく振るい、ジェシー・メイビアをふっとばした。

 

『バッファローマン! またもジェシー・メイビアの技を簡単に外した――――――っ!! 両者一進一退の攻防を繰り広げています!!』

 

 実況は互角と評するが、実際の所ジェシー・メイビアは息があがっており、バッファローマンは呼吸を一切乱していない。

 

「ジェシー・メイビアよ、ここまでの闘い、俺に致命的なダメージを与えていないとはいえ、即座に逆襲するお前の返し技のセンスはずば抜けたものだ。しかし、俺に比べて非力なお前が正面からぶつかった結果、お前のスタミナのロスは激しくなっている」

 

 ジェシー・メイビアは苦笑いをした。

 

「まいったな、図星だよ」

 

「となると、お前は返し技メインの戦法でなく、自身のオリジナルホールドを駆使した戦法でいくしかない。しかし、ここまでお前は自身のオリジナルホールドを出していない、いや出せないんじゃないのか?」

 

 ジェシー・メイビアの表情がかたくなる。

 

「もはや手詰まりだ。潔く俺様の軍門にくだる事だな!」

 

 バッファローマンがハリケーンミキサーの体勢に入った。

 

「確かに、私にはオリジナルホールドがなかった。ゆえにキン肉マンとの闘いで私は初の敗北を喫した」

 

ドドドドド

 

 バッファローマンがジェシー・メイビアの目前へと迫る。

 

「しかし、その敗北が私に成長するきっかけを与えてくれた!」

 

 ジェシー・メイビアはバッファローマンと衝突寸前のタイミングでバッファローマンを肩の上に持ち上げ、更にバッファローマンの両脚を両腕でつかんだ。

 

ぐわしっ

 

「こ、この技は!?」

 

「48の殺人技の一つ、五所蹂躙絡み! またの名を!」

 

バァァァン

 

 ジェシー・メイビアはバッファローマンごと勢いをつけて高くジャンプした。

 

『ジェシー・メイビア! これはもしや! もしやあの技か!』

 

「キン肉バスター!!」

 

『ジェシー・メイビア! なんとキン肉バスターを繰り出した――――――っ!!』

 

 バッファローマンもこれには冷や汗を流す。

 

「まさか、お前からこの技が出るとは思わなかった。しかし、この技の弱点は既にお前の仲間が示してくれているんだぜ」

 

「なにっ!」

 

「6を逆さにすると」

 

 バッファローマンが持ち前の力を使い、空中で体勢を入れ替えようとする。バッファローマンの両脚を掴むジェシー・メイビアの両腕のフックが外れてしまった。

 

「9になる!!」

 

バァァァン

 

『あ――――――っと!! なんとバッファローマンがキン肉バスターのかけ手になってしまった――――――っ!!』

 

「そんな! こんな展開になるとは!」

 

 ジェシー・メイビアがキン肉バスターを破られたショックを隠しきれない。

 

「はははは! お前の仲間のベンキマンがアトランティスを破ってくれたアイディアが役に立ったぜ!!」




勝利の代償は大きかった……


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意外なる助っ人の巻!!

返し技の余力なし……


 モニター越しに試合を観戦するベンキマンもショックを隠しきれない。

 

「すまない! 私はただ仲間の仇がうちたかった! まさか敵に塩を送るような事になるとは思わなかったんだ!」

 

「ベンキマンよ、気にするな。この試合をきっとキン肉マンが見てくれている。私が仮に負けても、彼がこの試合を参考にし、バッファローマンから勝利するだろう」

 

 ジェシー・メイビアは死の覚悟を決めた。

 

ドゴォォォン

 

『決まった――――――ッ!! バッファローマンのキン肉バスターがジェシー・メイビアをマットに沈めた――――――っ!!』

 

 バッファローマンが技を外し、ジェシーメイビアをマットに放った。

「久々に楽しいと思える試合だったぜ。お前も悪魔超人としての道を選べばこんな死に方はせんかったろうにな」

 

ボワァ

 

 ジェシー・メイビアの身体に金色の光が見られた。

 

「こいつ!! まだ生きているだと!?」

 

 ジェシー・メイビアは立ち上がろうとする。

 

「また闘いたい……キン肉マンともう一度闘いたい……だから私はこんなところで……倒れるわけにいかない……」

 

『ジェシー・メイビア立ち上がった――――――っ!!』

 

「よくあの技をまともにくらって生き残ったもんだと褒めてやりたいが、もはや立っているのがやっとの状態のようだな――――――っ!!」

 

『バッファローマン! ジェシー・メイビアにとどめをさしにいった――――――っ!!』

 

「待った―――――っ!!」

 

ドガァ

 

 何者かがバッファローマンを吹っ飛ばした。

 

「ぐわ!」

 

 正体不明の人物がジェシー・メイビアを抱きかかえた。

 

「良くやったな、メイビア」

 

 

 

 同刻、スプリングマンがリング内でモニター越しにバッファローマンの試合を見ていたところである。

 

「乱入者だと、一体何者だ?」

 

ドガァ

 

「ケガッ!?」

 

 何者かがスプリングマンに強烈な蹴りを食らわせ、ふっとばした。

 

「くそっ! 悪魔相手に不意打ちとは! 死にたいようだな!」

 

「死にたい? それは違う、なぜなら死ぬのはお前だからな」

 

 スプリングマンを蹴り飛ばした男は、褐色の肌の上にインド文化を感じさせる黄色い衣服をまとい、頭にカレーを載せた超人であった。

 

「てめえはカレ・クック!!」

 

 

 

 ミスター・カーメンもモニター越しに、正義超人側の乱入者達に注目していた。

 

「一体何事だ!?」

 

ザシュ

 

「マキャ!」

 

 ミスター・カーメンの背中にナイフが刺さった。

 

「おのれ、妾の身体を傷つけた不届き者は何やつだ!!」

 

「職業柄、凶器を持ち歩く事は普通なんでね。それに俺もお前同様悪魔だ」

 

 白と黒でデザインされた見た目の超人がミスター・カーメンの元に現れた。その超人はかつて、スカル・ボーズとタッグを組んでいた事もある男だった。

 

「デビル・マジシャン!!」

 

 

 

 ブラックホールも、自身のいるリングに入ってくる乱入者の気配を感じていた。その気配はブラックホールにとって記憶に覚えのあるものだった。

 

「ほう、懐かしい奴が俺の元に来たようだな」

 

バサァ

 

 翼を持った男がリングに降り立った。

 

「互いに超人界のNo.1を目指す者同士。ならばいつかは君と闘わなければならない。君が誰かに倒される前に僕が君を倒したい」

 

 顔に星型の印、白いボディに白い両翼。ブラックホールにとって盟友と呼ぶ男が現れた。

 

「ペンタゴン!!」

 

 

 

 バッファローマンが、ジェシー・メイビアを救出した乱入者の姿を見て驚いた。

 

「ほ~う、これはこれは、とんでもない実力者が現れたみたいだな~」

 

「こんな老いぼれを高く評価してくれるか。嬉しいぞ」

 

 その男は、かつてハワイチャンプの座を長く守ってきた超ベテランの超人であった。

 

「プリンス・カメハメ!!」

 

『あ――――――っと! 各地で悪魔超人退治のために新たな戦士達が立ち上がった――――――っ!! その中の一人、プリンス・カメハメはキン肉マンに唯一黒星をつけた超人として有名であります!!』

 

「世界に知られる強豪ながら、ハワイを出ない固い意志を持っていた男が何故この闘いに参戦しようと思った?」

 

 バッファローマンがカメハメに質問する。

 

「見ての通り、同じハワイで育った若き才能を守るため、そしてお前さんと一度闘ってみたいと思ったからじゃ」

 

「年老いても、闘志はまだまだ若いってことか。いいぜ!」

 

 両者合意の元、バッファローマンVSプリンス・カメハメが急遽決定した。他のリングでも試合の合意がすんなりと進んだ。

 

 

 

 スプリングマンVSカレ・クックのリングである。

 

カーン

 

『こちらでは急遽参戦を決意したカレ・クックがスプリングマンと闘っております! ティーパックマンを容易に倒したスプリングマンです! カレ・クックの苦戦が考えられるでしょう!』

 

 カレ・クックはティーパックマンとの交流の思い出を頭に浮かべていた。カレーに合うチャイを作るためにティーパックマンに紅茶をお裾分けして貰い、互いに自慢の一品をごちそうしあったのだ。

 

「ティーパックマン、お前の仇を討つため、私は悪魔となろう!!」

 

むんず

 

 カレ・クックが右手で頭部のカレーライスをわしづかみした。

 

「ガラムマサラサミング!」

 

 カレ・クックは激辛カレーをスプリングマンの顔面に浴びせた。

 

「ケガァ!」

 

『これは酷い! カレ・クック! 悪魔超人相手といえど、それに勝る残虐ファイトを見せつける!』

 

「くっ! 目が!」

 

 スプリングマンは視界を塞がれて動けずにいる。

 

「ムッサァ!!」

 

バシィィン バシィィン

 

 カレ・クックがスプリングマンの脚に蹴りを連打で放った。

 

『カレ・クック! スプリングマンにスピードの乗ったローキックを連打だ!』

 

「お前はバネだから衝撃を和らげるとか言っていたな。しかしそれは頭部へのダメージ限定だろう? 体重ののっかっている両脚では、お前の身体がバネといえど衝撃を逃せない」

 

『カレ・クック! 冷静で的確な判断力でスプリングマンに着実にダメージを与えていく!!』

 

「まずいなこのままでは!」

 

 スプリングマンが宙へとジャンプする。しかし、カレ・クックの蹴りのダメージが残っており、半端な高さのジャンプにとどまった。

 

「くそっ! いつもより高く飛べねえ!」

 

「どうやら私のもう一つの狙いに今気付いたようだな!」

 

タァン

 

 カレ・クックはスプリングマンめがけて飛び立ち、柔軟性を生かして自身の身体を丸めていく。そのまま回転しながらスプリングマンへと当たっていく。

 

「マンダラファイヤーボール!!」

 

ドガァ

 

「ケガァ!」

 

 カレ・クックの攻撃がスプリングマンをとらえた。

 

『カレ・クック! 凄まじい猛攻です! スプリングマンが手も足も出ない!』

 

「調子に乗るなよ! カレー野郎!」

 

がきぃ

 

 スプリングマンが自身の身体をカレ・クックの右腕に絡ませ、身体をひねった。

 

グィン

 

「スプリングサイクロン!」

 

ズズン

 

「ぐお!」

 

『スプリングマン反撃! カレ・クックをマットに叩き付ける!!』

 

「まだまだおわらないぜ!」

 

 スプリングマンが倒れているカレ・クックにマウントポジションをとり、パンチを連打させる。

 

ドガ ドガ ドガ ドガ

 

『スプリングマンがカレ・クックにパンチの雨を浴びせる! カレ・クックの顔が段々と腫れ上がっていく』

 

むんず

 

 カレ・クックは右手で頭部のカレーをつかむ。

 

「オールスパイスシールド!!」

 

 カレ・クックはスプリングマンの顔面にカレーを浴びせた。

 

ばしゃあ

 

「ぐわっ! またしても!」

 

 スプリングマンがまた激辛カレーによって視界が塞がれた。

 

「ふん!」

 

ぼよん

 

 カレ・クックがブリッジでスプリングマンの身体をふっとばす。

 

「いまだ!」

 

 カレ・クックがスプリングマンに対し、複雑奇怪な固め技をきめる。

 

「ガンジスバックブリーカー!!」




華麗(カレー)なる殺人技を見よ!!


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助太刀の茶葉とカレー!!の巻

ブートジョロキア級の強さ!!


『カレ・クック! 自身の驚異的な柔軟性を活かした複雑なバックブリーカーでスプリングマンをせめていく!!』

 

 技をかけられている最中のスプリングマンからは全く焦りの気配がない。

 

「ケケケ、さっきの試合を見てなかったのか? 俺に関節技は効かないぜ」

 

ボヨーン

 

 スプリングマンは自身の身体をくの字に曲げて難なく上方へ脱出した。

 

「お前の弱点はここだ――――――っ!!」

 

がしゃーん

 

 スプリングマンが空中からのキックでカレ・クックの頭上のカレー皿を割った。

 

「あぁ! 私のカレーが!!」

 

「ケケケ、カレーのないお前など怖くない」

 

バキィ ドガァ

 

 スプリングマンがカレ・クックの顔面にパンチを連打する。カレー皿をなくしたカレ・クックから先程の勢いが消えてしまった。もはや好き放題パンチを打たれている。

 

「うぐぅ……」

 

 カレ・クックはダウン寸前である。

 

「さあお次はこの技だ!!」

 

 スプリングマンがカレ・クックの上方へと飛び、着地した。

 

がしゃん

 

 カレ・クックの身体にスプリングマンが巻き付く。

 

『あ――――――っ!! これはティーパックマンを惨殺した螺旋解体縛りだ――――――っ!! カレ・クック! もはやこれまでか!!』

 

 カレ・クックは自身の死を覚悟した。

 

(情けない……私もティーパックマンのところへいくのか……)

 

「シーン!!」

 

 どこからか女性がカレ・クックの本名を呼ぶ声が聞こえた。その声はカレ・クックの記憶に強く残っているものである。

 

「ま、まさか!?」

 

 カレ・クックの目の前にいたのは、かつて自身が救った娘ミーナであった。

 

「シン! 大丈夫!!」

 

「ミーナ! な、なぜ君がここに!?」

 

「私はあなたに謝りたかった! 邪道の道に走ってでも私を命懸けで救ったあなたにお礼がしたかった!!」

 

「私は友情も愛も捨てた残虐超人だ! もう私の事は忘れるんだ!」

 

「ならば、これが私の愛よ!!」

 

 ミーナは美味しそうなカレーが乗っかった皿を取り出した。

 

「そ、それは!?」

 

「私があなたのために愛を込めて作ったカレーよ! 受け取って!!」

 

 ミーナは超人顔負けの強肩とコントロールでカレ・クックの頭に投げた。

 

かしゃん

 

 見事にカレ・クックの頭にカレー皿が載った。生気を無くしていたカレ・クックの顔に元気が戻ってきた。

 

「おお、力がみなぎってくる!! まるで、胸の底から暖かくなるような感覚だ!!」

 

「ケッ! カレーが戻った程度でこの俺の技を脱出できると思うなよ!!」

 

ぎしぃ ぎしぃ ぎしぃ

 

「うぐぅ!!」

 

 スプリングマンはなおもカレ・クックを締めつける。

 

バササ

 

 リング外にあるティーパックマンの所有していたティーバッグから茶葉が出てきた。その茶葉は生き物のように動き出し、スプリングマンの顔についた。

 

ぶわさぁ

 

「ケガ! なんだこいつは!?」

 

 カレ・クックの身体を締め付ける力が弱くなった。

 

「今だ!」

 

ギュルルルル

 

 カレ・クックはスプリングマンのバネの螺旋の向きと逆方向に回転し、上方へと脱出した。

 

『カレ・クック! 螺旋解体縛りから脱出した――――――っ!!』

 

「そうか! カレ・クックはねじ回しの原理を応用したんだ!!」

 

 ミート君が解説を始める。

 

「スプリングマンの身体はねじのように螺旋の渦となっています。だからカレ・クックがねじを抜くように螺旋と逆向きに回転すれば抜け出せるんですよ!」

 

 スプリングマンは自身の最大の必殺技を破られた現実を信じられないでいる。

 

「まさか!? 俺様の最大の必殺技が!?」

 

「私の力だけでは抜け出せなかった。ミーナ、ティーパックマン彼らの力があったからこそ、抜け出せたのだ。今こそ、彼らの気持ちに応える時が来た!!」

 

ボワァ

 

 カレ・クックの身体が金色に光った。

 

『これは! 先程のベンキマンVSアトランティス戦でも見られた発光現象だ――――――っ!!』

 

 空中へ飛びだったカレ・クックはスプリングマンの顔面めがけて鋭い蹴りを放った。

 

「チャルカスティング――――――!!」

 

ドガァァ

 

 スプリングマンの身体が勢いよく吹っ飛んだ。すさまじい蹴りの威力にスプリングマンは失神した。

 

カン カン カン カン

 

『カレ・クック! 乾坤一擲の一撃でスプリングマンを撃破!! 見事にティーパックマンの仇を討ちました!』

 

 試合が終わり、カレ・クックの顔が穏やかになる。

 

「ティーパックマン、私の試合を見ていてくれたか?」

 

 カレ・クックが見る空にはティーパックマンの笑顔があった。

 

「シン!」

 

 ミーナがカレ・クックの元に駆け寄る。カレ・クックは先程のミーナの強肩ぶりを思い出した。

 

「ミーナ、もしかして君は……」

 

「私はあなたから距離を置いてしまった。だから、あなたに近づきたいと思って超人になったの」

 

「ミーナ、本当に良かったのか? 君には家族もいるはずだ。超人になると言う事は人間を捨てると言う事なんだよ!」

 

「分かっているわ。それでもあなたと一緒の道を歩みたかった……」

 

「ミーナ……」

 

 二人は愛を確かめるように静かに抱き合った。実況も空気を読み、二人の様子を温かい目で見守った。

 

 

 

 ところかわり、デビル・マジシャンとミスター・カーメンが対するリングである。

 

「妾から言わせて貰えば、デビルと名乗らない方が良いと思うぞ。お前は悪魔としては半端だからだ! アメリカではタッグ戦で相手を血祭りにあげたようだが、我ら悪魔からすれば子供の遊びのようなものだ!」

 

 ミスター・カーメンはデビル・マジシャンの印象を語った。

 

「確かに俺は半端な悪魔だった。と言うのも、俺が正直に悪魔として振る舞えば、反則負けとなってしまう事が多かったからだ。それに、勝っても相手が再起不能になるパターンが多く、対戦相手として敬遠されてしまったのだ」

 

「ほう、なかなか大物ぶるじゃないか」

 

「俺は反則負けとなる事を恐れ、ダーティファイトに徹しきれなかった。だからこそ俺はスカル・ボーズと共にザ・マシンガンズに敗北したのだ」

 

「ふん、負け犬の遠吠えだな」

 

「そうだ。今俺がここで何を言っても負け犬の遠吠えだ。だからこそお前と闘える事に感謝しよう。俺の本気を見せて闘って良い悪魔超人だからな!」

 

 デビル・マジシャンが手にトランプの束を持ち、それをミスター・カーメンに投げ放った。

 

「カード・マシンガン!!」

 

シュパパパパ

 

 ミスター・カーメンの身体に複数のトランプのカードが突き刺さった。

 

「ぐわぁ!!」

 

『デビル・マジシャン! なんとトランプをナイフのようにミスター・カーメンに突き刺した――――――っ!!』

 

「これで終わりじゃないぜ!」 

 

 デビル・マジシャンが指をぱっちんとならす

 

ボガン ドガン ドドン

 

 ミスター・カーメンに突き刺さったカードが次々と爆発し始めた。

 

「マギャ――――――ッ!!」

 

 爆発のダメージに耐えきれず、ミスター・カーメンが倒れた。

 

『なんと惨い! デビル・マジシャン! 悪魔超人顔負けのダーティファイトを見せつけた!!』

 

「くくく、どうした? もうおねんねか?」

 

「悪魔を……舐めるなよ!!」

 

ピカーン

 

 ミスター・カーメンの目が光った。

 

「うっ! 身体が動かない!」

 

「妾の目を見た者を金縛りにかける事ができるのだ! そうれい!」

 

バサリ

 

 ミスター・カーメンは持参して大きな布でデビル・マジシャンの身体を包み込み、ミイラのごとく、ぐるぐる巻の状態にした。

 

「さぁて、仕上げはこいつだ!」

 

 ミスター・カーメンが巨大なストローを取り出した。




早くも大ピンチ!?


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☆と◎の衝突!!の巻

カーメンの二連勝は決まった!!


『ミスター・カーメン! なにやら巨大なストローを取り出しましたがどうするつもりか――――――っ!!』

 

「マキマキ~、こうするのさ!!」

 

グサッ

 

 ミスター・カーメンはぐるぐる巻き状態にされたデビル・マジシャンに巨大ストローを刺し、ストローを吸い始めた。

 

チュー チュー

 

 その光景を見てキン肉真弓が解説を始める。

 

「超人から水分を吸い取り、ミイラにしてしまう超人がいると効いた事がある! それがあのミスター・カーメンだとは!」

 

「危ない危ない、危うく足をすくわれるところだったぜ~」

 

『ミスター・カーメン! デビル・マジシャンから水分を吸い続ける! これは中のデビル・マジシャンが酷い状態になっていることでしょう!』

 

「マキャ!?」

 

 ミスター・カーメンが唐突に苦しみ始める。

 

「グハァ!?」

 

 ミスター・カーメンは突然血反吐を吐き、けいれんを起こした。

 

「ハッハッハ!!」

 

 どこからか笑い声が聞こえた。なんと、布巻きにされているはずのデビル・マジシャンがいた。

 

「マジシャンたるもの、脱出芸は必須科目。お前もまだまだ甘いな」

 

「がほぁ! じゃあこの布巻きにされているのは?」

 

 ミスター・カーメンが布巻き状態の物の中身を確認した。

 

「ゲェ―――ッ!! こいつは!?」

 

 中にはキングコブラがまとっていた。毒蛇が入っていたのだ。

 

「そう、お前が吸い出したのは毒蛇の毒なのだ!!」

 

「ゴバハァ!!」

 

 ミスター・カーメンが大量の血反吐を吐いた。誰が見ても、息絶えていると分かる状態であった。

 

カン カン カン カン

 

『なんという結末でしょう!! デビル・マジシャン! 悪魔超人ミスター・カーメンを悪魔顔負けのダーティファイトで倒した――――――っ!! 危ない場面もありましたが、終始圧倒した試合でした!!』

 

「死人にも利用価値がある。それを分かっていなかったのがお前の敗因だ」

 

 デビル・マジシャンは一枚のカードをミスター・カーメンの亡骸に投げた。

 

ザク

 

 ミスター・カーメンの額に死に神が描かれたジョーカーのカードが刺さった。

 

 

 

 ところかわり、ペンタゴンVSブラックホールが対するリングである。ペンタゴンが空中へと飛び、ブラックホールに向かって蹴りを放つ。

 

『ペンタゴン! 高い打点からのドロップキックだ!』

 

すぽっ

 

 ブラックホールの腹部に巨大な穴が開き、ペンタゴンのドロップキックがすり抜けた。

 

「くっ! そうきたか!」

 

「お前の攻撃パターンは読めているのさ」

 

「ならばこれはどうだ!」

 

がしっ

 

 ペンタゴンはブラックホールの背後に回り、胴を両腕でつかんだ。

 

びゅーん

 

 そのまま自身の翼を活かして空高く飛び上がり、宙返りしてブラックホールの頭を叩き付けにいく。

 

「スカイドロップ――――――ッ!!」

 

『ペンタゴン! 翼を活かした高いバックドロップを繰り出した――――――っ!! これはまともにくらってはただではすまないぞ――――――っ!!』

 

「甘いぜ盟友よ」

 

しゅるるる

 

 ブラックホールの身体が細くなっていく、蛇へと変身した。

 

『あ――――――っと! ブラックホール! 今度は蛇に変身した――――――っ!! まさに変幻自在のファイトです!!』

 

「くっ! 抜けられたか!」

 

「抜けるだけと思うか?」

 

 蛇となったブラックホールはペンタゴンの身体に絡みついた。

 

ギュウ ギュウ ギュウ

 

「ぐう~っ!」

 

 蛇となったブラックホールは元の姿へと戻り、ペンタゴンにコブラツイストをかける体勢となった。そのまま両者頭部より、マットに落下する。

 

「スネーク・ドロップ――――――ッ!!」

 

ドガァン

 

『ブラックホール! なんとコブラツイストをかけながらのバックドロップだ――――――っ! ペンタゴンたまらずダウン!!』

 

「うぐぐ……」

 

 ペンタゴンは何とか立ちあがってきた。

 

「お前が倒れようと最期まで全力で潰しに行くぜ!!」

 

 ブラックホールの足下の影が8つの影に分かれた。

 

「セパレートシャドウ!」

 

『あ――――――っと! ブラックホール! スカイマンを死に追いやったセパレートシャドウだ!』

 

 この状況で、ペンタゴンは特に様子を乱さなかった。

 

「相変わらず凄い技だね、流石はブラックホールだ」

 

「いつまでも余裕ぶっているんじゃない! 8メンブラックホールキック!!」

 

『あ――――――っと! 8人のブラックホールが同時にペンタゴンに襲いかかった――――――っ!!』

 

「君との闘いのために、これまでとっておいたとってきの技を出すよ」

 

 ペンタゴンが顔面の星印を回転させた。

 

「クロノスチェンジ!」

 

『な、なんだこれは――――――!っ?』

 

 実況、そして観客が驚いた。ドロップキックを受けるペンタゴンがブラックホールとなり、ドロップキックを浴びせる8人のブラックホールが8人のペンタゴンとなっていたのだ。

 

ドガガガガ

 

「カカァ!!」

 

 8人ペンタゴンのドロップキックによりブラックホールがダウンした。8人のペンタゴンはすぐに一人のペンタゴンに戻った。

 

『これはとんでもない技だ――――――っ!! ペンタゴンがこれほどの技をウォーズマンとの闘いで使わなかった理由が謎に思えます!!』

 

「超人オリンピックではこの技を封印して闘ってきた。君との闘いで最初に使おうと思っていたんだ」

 

 ブラックホールはたちあがってきた。

 

「カカカカ……盟友よ、やってくれるじゃねえか!」

 

『ブラックホール! 負けじと立ち上がってきた――――――っ!!』

 

「ペンタゴン、いつかはお前と衝突する時が来ると思っていた。俺は悪魔超人のNo.1を目指し、お前は正義超人のNo.1を目指している。この闘いは必然たるもの! お前とは盟友の関係だが、この闘いは殺す気でいかせてもらう!!」

 

「僕だって、君のためにもてる限りの全力を出すよ!」

 

「嬉しいぜ! 俺もお前のためにここまでとっておいた技を見せてやるぜ!」

 

シャキィン

 

『ブラックホール! なにやら鋭利な刃物に似たマントを身につける!!』

 

「セパレートシャドウ!!」

 

 空中でブラックホールが8人に増えた。

 

『ブラックホール! 先程ペンタゴンに破られた技を繰り出した――――――っ!!」』

 

「赤き死ののマント!!」

 

 ペンタゴンはブラックホールの動きを不信に思った。

 

「彼がこんな単調な技を出すはずがない、何かあるはずだ」

 

「行くぜ、ポイント・トランジッション!!」

 

ぱっ

 

「なに!?」

 

スパパパパ

 

 ペンタゴンを8人のブラックホールが鋭利な刃物と化したマントで切りつけた。

 

「ぐわぁ――――――っ!!」

 

『これはどういう現象だ――――――っ!! ブラックホール達がワープしたかのように、突然ペンタゴンの前に現れ、8人分の攻撃をまともにくらわせた――――――っ!!』

 

 ペンタゴンが血まみれになり倒れる。

 

「ブラックホール……君は一体何をしたんだ?」

 

「簡単な事さ、俺のいる座標を瞬時に転移させただけだ。つまり、俺がお前の元にたどりつくまでの軌跡をすっとばし、始点と終点のみにしたというわけだ!」

 

「な、なるほど……」

 

『ブラックホール! 常人には理解できない超常現象を使ったようだ――――――っ!!』

 

「ハッハッハ!」

 

 ペンタゴンが突然笑い出した。

 

「盟友よ、気が狂ったか!」

 

「そうじゃない……凄いよブラックホール! 君との闘いは本当に楽しいよ!」

 

「カカカ、それは俺もだぜ、ペンタゴン! しかしそんな事言っている状態なのかぁ?」

 

「大丈夫さ」

 

 ペンタゴンは傷だらけの身体で何とか立ち上がった。




互いに勝利は譲れない!!


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闘牛士と化したハワイの師匠!!の巻

納得いくまで闘いあえ!!


『ペンタゴン! 負けじと意地で立ち上がった――――――っ!!』

 

「君の強さに敬意を表し、悪魔以上の禁断の技を使わせて貰う! ストップ・ザ・タイム!」

 

「なに、その技は!?」

 

 ペンタゴンが顔面の☆のマークを回転させると、周りの動きが停止した。

 

「スペースシャトル!!」

 

 ブラックホールに向かってペンタゴンはドロップキックを連打した。

 

どがぁ どがぁ どがぁ どがぁ

 

「もうそろそろ時間切れか」

 

 ペンタゴンがマットに着地すると、周りの空間の時間が動き出した。

 

「ガハァ!?」

 

ばたぁん

 

 ブラックホールは突如全身に襲いかかった衝撃にたまらずダウンした。

 

『一体何が起きたというんだ――――――っ!! 一瞬のうちにブラックホールが深いダメージを負っているぞ!! ペンタゴン!! クロノスチェンジを超える秘術を使ったのか――――――っ!!』

 

「まさかまだここまでの技を隠していたとはな……」

 

 ブラックホールがロープに手をかけながら何とか立ち上がってきた。

 

『ブラックホール立ち上がった――――――っ!! もうここまできたら正義も悪魔も関係ない!! 互いに持てうる力を出し切る名勝負となっております!!』

 

「死ぬ気かブラックホール?」

 

「俺は死んでもお前に勝つつもりだ! 最後まであがかせてもらう! 吸引! ブラックホール!」

 

シュゴゴゴゴゴ

 

『あ――――――っ!! ブラックホール!! その名前の通り、顔に開いた穴からブラックホールの如く強力な吸引力を発生させた――――――っ!!』

 

「うわぁ――――――っ!!」

 

 ペンタゴンはブラックホールの中へ吸い込まれた。

 

「カカカカ」

 

しゅん

 

『あ――――――っ! ペンタゴンだけでなく、ブラックホールまで消えてしまった――――――っ!! この試合はどうなってしまうんだ――――――っ!!』

 

 ブラックホールが作り出した人工空間内でペンタゴンが苦しんでいる。

 

「早く脱出しないと身が持たない……」

 

「赤き死のマント!」

 

ざくぅ

 

 ペンタゴンの羽が片方、ブラックホールの赤き死のマントによって斬られた。

 

「ぐわぁ――――――っ!!」

 

「もはや羽をもがれたお前に勝機は無い!!」

 

 ブラックホールがペンタゴンを持ち上げて、技をきめていき、人工空間に叩き付けた。

 

ぱりぃーん

 

『あ――――――っ!! 消えてしまったかと思われた両者が空間を破って現れた――――――ッ!! しかしこれはペンタゴン! 羽をもがれ、技を決められ絶体絶命のピンチです!!』

 

「カーカカカ、盟友よ、命乞いの言葉はあるか?」

 

「よかった……」

 

 思わぬ言葉にブラックホールが驚く。

 

「これで終わる……こんな辛い闘いもうゴメンさ……」

 

 ブラックホールは何かを思った様子を見せながら技を決めた。

 

「フォー・ディメンション・キル!!」

 

ずがぁぁぁんん

 

 ペンタゴンは力なくマットに倒れた。誰の目から見ても闘える状況ではなかった。

 

カン カン カン カン カン

 

『決まった――――――っ!! ペンタゴン! ブラックホール相手に互角の展開を見せましたが、あと一歩のところで逆転されてしまった――――――っ!! スカイマンの無念を晴らすことは出来ませんでした――――――っ!!』

 

ぴく

 

 ペンタゴンの指先がわずかに動いた。レフリーが確かめると、まだペンタゴンに息があることを確認できた。

 

「すぐに病院へ!」

 

 救急隊員がすぐさまペンタゴンを運搬し、病院へと運んだ。

 

「盟友よ、出来れば次は仲間として会いたいもんだ……」

 

 そう言ってブラックホールは試合会場を後にした。

 

 

 

『始まりました! バッファローマン退治に名乗りを上げたのはプリンス・カメハメ! 超人オリンピック二連覇のキン肉マンに公式戦で唯一黒星をつけた超人であります! この闘い次第で正義超人界の運命は決まると言っても過言ではないでしょう!!』

 

「カメハメ師匠……」

 

 入院中のキン肉マンもこの試合を見守っていた。

 

「一つ聞きたいことがあるカメハメ」

 

 バッファローマンが指を指してカメハメに質問した。

 

「ジェシー・メイビアがキン肉バスターを使っていたが、教えられる人物はお前しか考えられない。そうだな?」

 

「いかにもそうだ。ジェシー・メイビアがキン肉マンに破れて以来、精神を入れ替えてわしの元に修行に来たのだ。だからこそ、わしは48の殺人技を奴に授けたのじゃ」

 

「そうか。なら話は早い。技の使い手は技の破り方も熟知しているはず。キン肉バスターの弱点を教えな! なぁに、お前が俺に協力してくれるなら悪いようにはしねえぜ」

 

「ほほほほ、わしを納得させる強さを見せたら考えんこともない」

 

 互いに闘志をみなぎらせた目で相手を見つめた。

 

「うおおおおお!!」

 

 初めにバッファローマンがカメハメに向かって突進してきた。

 

『まずはバッファローマンが先制をしかけた! これはハリケーンミキサーの体勢か!! 対し、カメハメ! バッファローマンに背中を向けたままだ! 早くも勝負を諦めてしまったのか――――――っ!!』

 

 カメハメが後方に宙返りし、バッファローマンの攻撃をかわしつつ、バッファローマンの後頭部に蹴りをいれた。

 

ガァン

 

『カメハメ! バッファローマンのハリケーンミキサーを回避し、マーシャルアーツキックをくらわした――――――っ!!』

 

 バッファローマンが片膝をついた。

 

「なるほど、キン肉マンに勝ったっていうのもうなづけるな」

 

 バッファローマンがにやりと笑い、すぐに立ち上がった。

 

「ではこういうのはどうかな!」

 

ぶおんっ

 

『バッファローマン! ものすごいラリアートを連発で振り回していく! しかしカメハメもすごい! 最小限のスウェーで攻撃を見事にかわしている!』

 

「はぁはぁ」

 

 バッファローマンが息切れを起こしている。

 

「空振りはいたずらに体力を消耗するだけだ。特にお前のようなパワーファイターであればな」

 

「うるせぇ!」

 

がしぃ

 

『バッファローマン! カメハメを右手だけでネックハンキングにとらえた!』

 

「やっと捕まえたぜ! そうらよ!」

 

バキィ バキィ

 

『バッファローマン! 余っている左手でカメハメの顔面にパンチを連打!』

 

 カメハメの顔が徐々に腫れ上がるが、余裕の表情を浮かべている。

 

 

「パンチに体重を上手くのせていないな。お前さんのフィジカルだけでも十分な威力だが、テクニックがなければわしを倒すことはできんぞ! 特訓木人ガード!」

 

がきぃ

 

『カメハメ! 両腕でバッファローマンの腕を挟み込み、パンチを防御した!』

 

「けっ、老いぼれのパワーで俺の攻撃を止められると思うなよ!」

 

 カメハメはバッファローマンが腕を引っこ抜くタイミングに合わせて、腕の力を緩めた。

 

「うっ!」

 

 バッファローマンが自分の力でバランスを崩した。それに合わせてカメハメはバッファローマンの右手を両手で掴みつつ、両足でバッファローマンの顔面を蹴り上げた。

 

がこぉ

 

『カメハメ! バッファローマンのネックハンキング地獄から脱出! 上手い! ジェシーメイビア以上のテクニカルなレスリングを見せてくれます!』

 

「そろそろこちらもいかせてもらうぞ!」

 

 カメハメがバッファローマンの右腕をとり、両腕を絡ませて関節技に決めた。

 

「52の関節技の一つ、脇固め!!」

 

がきぃ

 

『カメハメ! 高度な関節技でバッファローマンの巨体を難なくマットに寝かせた――――――っ!!』

 

「こんなもの――――――っ!!」

 

 バッファローマンは関節を決められた腕だけでカメハメを持ち上げて、強引に投げ飛ばした。

 

ぶぉん

 

『バッファローマン! 得意の1000マンパワーでカメハメを強引に投げ飛ばした――――――っ!!』

 

「まだまだ終わりじゃないぜ――――――っ!!」

 

 体勢を整えようとしたカメハメに向かってバッファローマンが突進した。

 

「ハリケーンミキサ――――――ッ!!」

 

ぎゅるるるる

 

『ついに決まってしまった――――――っ!! バッファローマンの得意技ハリケーンミキサーだ――――――っ!! ここまで試合を優勢に進めてきたカメハメもこれまでか――――――っ!!』

 

 バッファローマンは勝利を確信し、リングロープのそばに歩いた。

一方カメハメは絶体絶命の状態にもかかわらず、表情を変えていない。

 

「48の殺人技の一つ!」

 

 カメハメが回転し落下しながらもバッファローマンに、ロープを辛めながらの技を決めていった。

 

「しまった!?」

 

「油断大敵、次の闘いに活かすと良い、超人絞殺刑!!」

 

がきぃ

 

「ごはぁっ!!」

 

『あ――――――っ!! カメハメ! ハリケーンミキサーで身体に勢いをつけながら、バッファローマンにリングロープを使った締め技を決めた――――――っ!!』




主人公の出番なしか!?


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