断片的な情報から妄想したブラボ (Silas)
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断片的な情報から妄想していたブラボ
◇勝手に想像していたブラボ
轟々と吹き荒ぶ嵐の最中、此方から彼方まで続く大都市は夜の底に眠っていた。
夜の闇を孕んだ冷雨が古めかしい街を打ち付け、重々しい空気がもう消えたランプの灯を伝う。
黒の塗料を塗りたくられた街灯はその役目をすっかり放棄して久しく。闇が降りしきる街中に敷き詰められた石畳の表面を澄み切った分厚い流水が滑る。
雨水は色褪せた煉瓦の建物たちの間を
ギルドで騒ぐ陽気な酔っぱらい。巡回の騎士が鳴らす甲冑の音色。野良犬の足音までも。飽きるほど聞いた騒々しい喧騒はすっかり鳴りを潜め、恐ろしく無機的に、騒々しく鳴り続ける雨の音が宵闇にとろけていく。
星の光がちらりとも窺えない夜空が中世じみたゴシックな大都市にのしかかっては、そこにあるべき光のことごとくを圧殺していたのだった。
街はどうしようもない深闇にまどろむ、『獣の夜』の最中にあった。
空間を支配する闇の深さこそ魔の領域であることの証明であり、光を失った夜の街で、人の瞳ではその一切を映すまい。
それは獣の血を身に注いだ狩人を除いて。
────ギャリギャリギャリッ!
無数に散らばる街の通りの一つ、光のない深夜の大通りで、瞬間的に火花が弾けた。
闇を透過した豪雨のカーテンに、流れる雨水で揺れる大通りの石畳が照らし出される。
突発的に生まれた仄暗い光を浴びる影は、腰の下まである黒地のコートに中折れ帽子を目深に被り、雨で濡れ切ってずしりと重くなった服を身に纏う細見の男だった。
俗に言う狩人装束に身を包んだ彼は、狩人と呼ばれるべき存在だ。
人の身でありながら屠殺するは人ならざる『獣の夜』であり、人の庇護者でありながら生物の上位に位置する獣を狩る狩人が両手に握りしめるのは石柱すら通す武器である。
例の如く、その狩人は左手に撃鉄を起こしたままの短銃を提げ、力強く
異常なまでに周囲を照らすその武器は、機構に組み込んだ蒸気機関によって鋼鉄の杭を引き戻し、内蔵された火薬によって高速で射出する武装だ。
鉄の杭を猛烈な勢いで引き戻すべく高速回転する歯車が、喧しく音をかき鳴らしている。
他の追随を許さぬ圧倒的な火力を約束するが、クールダウンに致命的な隙をもたらす。
一撃必殺。究極の近接火力兵器。
彼が撃ち込もうとしているのは、まさしくそんな『パイルバンカー』と呼ぶべき代物だった。
「吹き飛べ」
────ガァンッ!
無意識に白い息へ混じって言葉が零れた。
一拍の静寂の後に響いた轟音を最後に、つんざくような耳鳴りが聴覚を支配する。
パイルを撃ちだした衝撃に、大気が弾けとぶ。
空間を消しとばさんとするばかりの力の奔流が、街を激しく揺さぶった。
腕を振り切ったと認識することすらままならぬ時間の後、射出されたパイルの反動で狩人は身をのけ反らせていた。
踏ん張っていた足が後方へ引きずられて、バシャバシャと石畳の表面に流れる雨水を巻き上げた。
反動に身体を持っていかれた狩人は、振りぬいた右手に確かな手ごたえを覚え、雨水に滑る石畳を踏みしめながら反動を抑えきると構えを解いた。
散った火花が水に包まれて消え、光源が消えた周囲に夜が戻っていく。
嵐の暗雲に月光がチラつくその様を、右手をおろした狩人がゆっくりと見上げた。
正面に相対していた獣から空へ、正常な夜が流れはじめる様子を眺めはじめる。
シューシューと蒸気をあげるパイルバンカーはすぐに撃てそうもなく、明らかに戦闘できそうもない。
戦場にあるまじき隙を晒す狩人は、瞳に焼き付いた映像を思い返しはじめた。
これ以上戦う必要もなかったからだった。
寸分の狂いもなく
脳裏に焼き付くのは、鋼鉄の杭が『獣』の腹に射出された杭が獣の皮膚に吸い込まれる瞬間だった。
(仕留めた!)
どろり。
獣の巨躯から溢れた、どす黒い赤に濃青の混じった血が、狩人の足元に流れる。
(やったぞ!ついに『獣』を仕留めた!狩人の悲願を成し遂げた!)
獣狩りを完遂したのだ。
狩人の悲願。人の世の再来。忌々しい夜の幕を下ろしたのだ!
自らの偉業に色めき立ち、胸の内から沸々と沸き立つ歓喜の衝動へ身を委ねれば、口元に笑みが張り付き、瞳に興奮の色がありありと浮かぶ。
「くく、ははは!」
抑えきれない笑い声が街のあちこちに反響して、深淵のような夜空に吸い込まれる。
しかしそれも数秒もすれば、耳をつんざくパイルの反動や音の跡とともに完全に消えて、ザーザーと雨の降る音が帰ってきていた。
自らの声が響く心地よい雨音を耳にしながら、狩人は踵を返す。
(仲間に誇ってやろう。酒を飲んで歌を歌おう。日常へ帰るのだ)
悪夢のような夜の終わりをひしひしと全身で感じながら、狩人はにやにや笑いながら戦場から踵を返した。
それは致命的というほかなく、あまりに軽率な行動だった。
『ア"ア"ア"ア"ァ"ア"ア"ア"!!!』
狩人の身へ闇が伸び、夜空に鮮血が舞った。
よろめきながら向き直る狩人の目の前。咆哮が轟き、空が砕ける。
握りしめる
人の世を喰らう化物を相手取るにはあまりに足りないだろう…。
いや、初めからそうだった。
『人』と『獣』の間にある壁は、本来超えられぬ不可能の壁だ。
本来こうして
「…だが」
やらなければ。
さもなくば人は死ぬのだ。
蹂躙される人が生き残れる保証など何処にもなく。死ぬことが救いであるような地獄が広がることは想像に難くない。
相対した狩人の目前で、月光に獣が雄たけびをあげる。
さあ、絶望に抗い給えよ。
「上級者でも割と苦戦するゲーム」と聞いて、そんな感じのクッソ難しいゲームを想像していました。
◇なお実際のブラボ
蔓 延 る 地 底 人
上 位 者 栗 本
栗 本 チ ャ レ ン ジ
苦戦するとは一体…?
それに、パイル使いが少ない
特に最後が個人的に衝撃的だったものである。
てっきりブラボのオンラインはパイルが蔓延る魔境だと思っていたが、思っていたより遥かにブラボはマトモな環境であったのだ。
まあ実際
むしろパイルはノコギリ鉈の下位互換とさえ言え…はしないが。
溜め攻撃を打つ直前の、明らかに腕を引き切った状態での謎のタメはロマンたっぷりであり、撃つ瞬間に発せられる爆音と火花は素晴らしいと言うほかないのだ。
無論、パイルの反動で身体が後方へ弾かれるところなど完璧だ。
撃った後にシューシューと吐き出される蒸気もまたロマンを追い求めた結果であることが容易にうかがえるものだ。
敵が信じられないくらい吹き飛ぶのもまたポイントが高い。
まるでパイルの一撃にのせる重量を絵に描いたように表現するフロムの手腕は流石である。
少なくとも、ビジュアルにおいて作中屈指の最強格であろうことは間違いない。
パイルという存在そのものに惹かれる者もまたすくなくあるまい。
では何故使用する人物が(比較的)少ないのかといえば、やはりその使用するために要求されるリアル技量であろう。
そも作中でのパイルは溜め攻撃は想像していたより『溜め』にかかる時間が長く、溜めの途中に敵の攻撃が掠れば中断させられる。
そもそも溜め切ったところであまりに射程が短い。
何故こうも短いのだ。(人間)
素手とさして変わらぬ射程距離なのではないかと邪推してしまうほど、パイルの射程があまりに短いのだ。
無論、使い慣れた者なら「十二分に長いだろう。何を言っているのだこやつは」と筆者の啓蒙の低さを嘲笑うであろうが、私は生憎ながら上位とはほど遠い一般通過一般人であり、名も栗なんたらではないのである。
せめてあと10cmは欲しいようなもどかしさを感じながら、血の乾いた獣がいた場所にパイルを撃ちこみ続けるのは割とメンタルにくるものだ。
アメンドーズに関してはかすりもせぬ。
悲しきかな、パイルハンマーは人間に向いているとは言いがたいのだ。
初めから使っていた武器には愛着がわきやすいが、初めの方に使う武器は大抵パイルではあるまい。
初期武器が強すぎる。弱体化して。
パイル使い増えろ(願望器)
と、いう小ネタ。
言いたかったこととずれてるけど伝われこの想い(適当)
あ、ブラボは面白いからみんな、やろう!
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