オリ主in暗殺チーム (乾燥したマシュマロ)
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蜂の目覚め

 蜂の羽音が聞こえる、恐らく俺の()()が終わったのだろう。ゆっくりとベッドから起きあがり、窓から外を見やると警察署長…えぇっと、名前は忘れたが麻薬取り締まりを強化するだとかなんだとか…そんなことをほざいていた奴がクジラの様に全身腫れ上がって死んでいた。勿論、周りの奴等は大慌て。

 署長の演説していた広場は軽いパニックになっていた。

 

 そんな中、俺はホテルの部屋で携帯を手にしていた。そんな騒ぎはどうでも良いのだ、死んだ人間に興味もなければ俺と署長との接点はもう、どうでも良いものなのだから。

 

《俺だ、もう終わったのか?》

 

 電話の相手…今回手伝って貰ったイルーゾォが少し呆気無さそうに呟いた。そりゃあ俺のスタンドで仕事をすれば、真正面から戦う事はおろか俺の存在に気付くことすら難しい。そういうスタンドなんだから一瞬だろう。というより、お前のスタンドの方が呆気なく終わるだろ…。ま、そんなことはどうでも良い。

 

「お前には世話になったよ、今度奢る」

 

《まぁ仕方ねぇさ、アジトで落ち合おう。それじゃあな》

 

 俺のポリシーとして協力や手伝いをして貰ったなら、必ず礼をするというものがある。それは俺が助けられた過去があるというのも起因しているが、本当のところは恐らく俺の前世が平和ボケした日本人だと言うところだと思う。

 

 どう言うことかと説明するならば、俺は死んだと思ったらジョジョの世界で誰かに憑依していた。ということだ。正直最初は全然分からなかった。自分は孤児だったので生きるのに必死、転生だのクソだの言っている暇はなかった。必死に生きて、気づけばギャングへの道を進んでいた。パッショーネ…その名を聞いてから引っ掛かってはいたが、気づいたのはポルポの矢に射られてからだ。あの矢を見て初めて思い出した。まぁ、思い出したからってどうにもならなかったが。あの三日間は地獄だった、もしかしたら死ぬかもしれないとの恐怖との戦いだったが…見事にスタンドを身に付けることができた。…憑依したせいか特殊なスタンドになってしまったが。

 

 まぁ、そんなことはどうでも良い。重要なのは、俺のスタンドがかなり暗殺向きだったので暗殺チームに配属されたことだ。死亡フラグ満載の状況だったが、俺はある『覚悟』をきめた。アイツらは…暗殺チームは原作では冷遇された挙げ句全滅という憂き目に合う。俺は…それを変えたい、そう思う程に皆と絆を深めたと思っている。何しろチーム創設とほぼ同時…リゾットとプロシュートしかいなかった頃から居るのだ、そりゃあ愛着の一つや二つ沸くだろう?

 

「大変だろうがな…」

 

 やるしかない、あんなパッと出の主人公補正マシマシ野郎に全滅なんぞさせられてたまるか。俺達は栄光を掴み取り、ボスをその座から引きずり下ろし、リーダーをその座に着ける。

 …何故か分からんがボスの名を覚えていないのは、修正力かナニカが働いているのだろう。

 

「俺自身の力で、か」

 

 俺は呟くと、アジトの扉を開いた。中にはいつものように仲間達が座っている。ホルマジオ、イルーゾォ、プロシュート、リゾット。後のメンバーは恐らくいつものように自室で寝てるんだろう。メローネとソルベ、ジェラートは…うん。

 

「首尾は…と聞くまでも無さそうだな」

 

 リゾットはそう呟いた後、口をつぐむ。長い付き合いのなので言わなくてもわかるのだという。確かに俺は仕事は完璧にこなしたい方だが、たとえこなせなくても多少テンションが違うだけでそんなに違いは無いと思うんだが…プロシュートやリゾットはすぐに気づく。やはり付き合いの差だろうか。

 

「それで、今回の報酬は受け取ったのかよ」

 

 ホルマジオがそう言って俺に問いかけてくる。報酬は口座に入金だと告げると「そうか」と言ってそのまま猫を撫で始めた。

 

「まぁた野良猫撫でてんのか、いい加減諦めたらどうなんだ」

 

「るせェな、好きにさせろよ」

 

 プロシュートがからかい、ホルマジオが言い返す。二人とも口ではああ言っているが、本当は信じ合っている。やはりこの空間は良い。

 

「なんだかなぁ…テメェらガキか!」

 

 そうがなるイルーゾォも、なんだかんだ楽しんでいるのが分かる、心地良いのだ、この空間は。

 

「おい、エイブからも何か言ってやれ」

 

「やめろイルーゾォ、話を振らんでくれ面倒くさい」

 

 見るのは良いが、巻き込まれるのはゴメンだな。




はえぇ…初めての小説投稿なので至らない所もあると思いますが、一生懸命やっていこうと思います。
失踪はしないつもりなので、ヨロシクです。
( `・ω・´)ノ


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蜂のお使い

主人公の服装とかの解説

タートルネックの黒インナー(5部特有のへそだし)にフード付きロングコートのフードを被り、紺のズボンに指貫グローブ、茶のブーツをはいています。

真正面から見ると目元位しか見えない変質者です。


 さて、昨日の仕事が終わって今は朝。

 今の状況を軽く説明しよう。とりあえずまだペッシはいない。つまり原作が始まるのはまだ先…のハズだ。言い切れないのは、この世界で過ごしてきた25年間で記憶も磨耗し、覚えてないからだ。覚えているのは、暗殺チームの覚悟を決めたときはペッシが居た…くらい、ジョジョの顔もボスの姿も覚えちゃいないのだ。

 

「仕方ない、か」

 

 俺は立ちあがりアジトを出る。今日は非番なのだから、楽しまなくっちゃあいけない。息抜きってのは重要さ、それはこんな明日もどうかわからない仕事なら尚更な…。

 さて、それじゃカフェで新聞でも読んで過ごそうかな。やることないし、昨日の暗殺の件がどれだけ大事になってるかも気になるしな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、今回の仕事ってのは実はあの署長だけがターゲットじゃあない。本当の目的は、麻薬の取引中に捕まったうちの…パッショーネの構成員を片付ける事だ。あの野郎、自分の刑期を短くするためにどうやら情報の一部を垂れ流したらしい。その事で組織はお冠、信用を失ったソイツは見事にターゲットになっちまったって訳だ。そして、署長が死んだ今がチャンス。俺達の仕事はソイツを殺すこと、それだけの簡単な仕事さ…。

 そりゃあ流れた情報はどんな事なのかとか、流れちまった情報をどうするのかって所も気にはなるが…暗殺チームにそんなことは伝えられる訳もない、気にし過ぎるとこの業界では長くない。こういうことは気にしないのが一番だ。

 

 ピロピロと軽快な音が鳴り、ポケットが振動する。どうやら電話のようだが…着信表示されているのはイルーゾォ、遊びにでも誘いにかけてきたのか。

 俺は電話をとる。

 

「もしもし、俺だ。何かあったのか」

 

《あぁ、決行日が前倒しになった。今から動けるか?》

 

 今から…左腕の時計を見る。昼前、11時頃か。特に予定はないし、問題は無さそうだな。

 

「問題ない、取りかかろう」

 

《頼んだぜ、この手の仕事はお前が一番早ェからな》

 

 電話を切ったあと、俺は仕事の時の正装になる。タートルネックを口元まで上げ口を隠し、フードを被れば仕事モードだ。

それにしても、全くありがたい言葉に泣きそうになるね。俺は今憧れの人たち兼仲間に認められている…こんなに嬉しいことはない。

 まぁそれはそれとして。

 

「キラー・バレット」

 

 俺が小さく呟くと、俺の掌に大きめの蜂が二匹現れる。一方は大きさがスズメバチ位の大きさ、見た目は赤と黒。こいつが俺のスタンドの一部、キラービー。

 もう一方がちょっと小さめの蜜蜂程度の大きさ、バレットビー。この二種類の蜂が俺のスタンド、俺の精神の具現化。憑依したせいか二種類に分かれたこのスタンドは、総勢500匹の群体型スタンドだ。

 

「刑務所まで飛べ」

 

 今回飛ばすのはキラービー、こちらは強力な毒と顎をもつスタンドで集団で襲えば例え近距離パワー型のスタンドといえども対処できずに死に至る。なんつったって数が違ううえに一匹でも逃せば毒を食らう。流石に一発で即死はないが、二回以上食らえばかなりヤバイ。俺のスタンドの毒でもアナフィラキシーは起こっちまうし、そもそも毒もかなり強力だからな。

 

「そろそろか…?」

 

 俺は刑務所へ歩いて行く。流石にスタンドを通して確認できる範囲は蜂なだけあって狭い、精々3mといった所までしか見えずそれ以上はボケる。スタンド越しの偵察は確実だが、遠すぎると見えにくいのだ。一度それで失敗してからはできるだけ直接確認するようにしている。

 

 マンションの屋上まで行き、懐から双眼鏡を取り出す。刑務所の鉄格子がよォーく見えるところまでだ。そして…捉えた。ターゲットと俺のスタンド、距離は殆どない。今回飛ばしたのは総勢10匹のキラービー、殺すには充分すぎる数だ。今か今かと鉄格子の外で待つ姿は小さいながらも狩人そのもの、俺ならこんなスタンドには襲われたくないね…俺の精神の表れなんだからそんな事言うのはお門違いなんだろうがな。っとと、そんな話はどうでも良い。今はさっさとターゲットを殺らねば。

 

「殺れ」

 

 俺の合図とほぼ同時に、俺のキラー・バレットがターゲットに襲いかかる。無論只の下っ端構成員がスタンドを見えるハズも無く、全身を刺されて訳もわからぬまま全身をクジラのように腫れ上がらせて事切れた。我ながら、かなりエグい能力だと思う。流石に主人公の仲間のアイツ…名前は忘れたが、アイツほどじゃあないがね。

 とにかく、今は連絡しよう。

 

「イルーゾォ、俺だ」

 

《おぉ、お疲れさん。流石最年長、仕事が早ェ》

 

 茶化す様に言ってくるイルーゾォ。なんだか腹が立つ言い方に聞こえるが、単に皮肉っているだけで褒めてはいる。本人に悪気は…無い、多分。

 

「褒めてるのか馬鹿にしてるのか…まあいい、帰投する」

 

 それだけ言って電話を切る。何か言いたそうにしていたが無視だ無視。別に年齢の話でぶちギレたとかそんなんじゃあない。ないったらない、ほんとだぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「切りやがったぜあの野郎ォ」

 

 ニヤけながらチームの方を見る。アイツは年齢の割りにかなり若く見えるんだがそれを本人が自覚してねェんだ、それどころかイジると途端にむすっとしやがるんだからまァ面白い。

 

「テメェが年齢の話振るからだろうがタコ!」

 

「おい、ペッシの話どうすんだァ!?」

 

 ホルマジオは半笑い、ギアッチョがキレて俺に突っかかってくる。アイツの事だ、帰ってきて話すでも構わんだろう。そうしていたらリーダーが部屋に帰ってきた、どうやら騒ぎを聞き付けてシャワーから戻ってきたようだ。

 

「…どうした」

 

「リーダー…何にも問題はないさ、イルーゾォがエイブをおちょくっただけだよ」

 

 メローネが笑いながらリーダーへ説明する。アイツの年齢イジりは最早チーム中では見慣れた光景なんだが…新入りが戸惑ってるな、プロシュートが世話役らしいが…アイツにできるのかァ?

 

「おいペッシ、今から帰ってくるヤツが俺達チームの最年長だぜ。仕事に対しては真面目な堅物だがそれ以外では抜けてる野郎だ」

 

 プロシュートの説明に頷く俺達。そりゃあ誰だってそういうだろうよ、ビデで顔洗ったりビデでアングリア(スイカ)冷やしてたり、湯船一杯にお湯いれて浸かってみたり…何かとおかしな行動が多いんだよなァ…アイツ。

 

「そ、それは…なんというか、変わった人なんスね」

 

「そんなに気張る必要のある人間じゃあない。楽にすればいい」

 

 リーダーの言葉に皆また頷く。確かにおかしな行動をとるアイツだが、信頼できる仲間であることもまた確かだ。

 

 さぁて、早く帰って来やがれってんだ。反応が楽しみで待ちきれないぜ。

 




ペッシ加入編。まだまだマンモーニなペッシ君、チームの凄みにたじたじです。
いやぁ…それにしても初投稿であんな時間帯にもかかわらず感想ありがとうございました。励みになります。

主人公のスタンドパラメータおいときますね

スタンド名「キラー・バレット」
破壊力:D
スピード:A
射程距離:A
持続力:B
精密動作性:C
成長性:E

スズメバチのような「キラービー」と蜜蜂のような「バレットビー」の二つからなるスタンド。キラービーは猛毒と強靭な顎による近接攻撃、バレットビーは弾丸の様に打ち出され相手の体に潜り込みながら肉を喰らい毒を注入する。
性質上手加減の難しいスタンドで、拷問などには向かない。

追記

誤字報告頂いたのですが、この場合は毒殺なのでキラービーであってます。バレットビーは弾丸のように打ち出すスタンドなので…。
誤字報告ありがとうございました!


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金を運ぶ蜂

みなさん期待してくれて嬉しいです!
感想頂いて、読んでいると暗殺チーム好きな人ってやっぱり多いんだなぁ…と実感しますね。
読みにくい小説ですが、これからもどうぞよろしくお願いします!


 いやぁ…参ったね。だってアジトに帰ったらペッシ居るんだもの。そりゃあビビるよね、仕方ないね。ビックリしすぎてスタンド出しちゃったけど問題ないね。

 

 さてさて、所変わっててあれから一週間。今となっては馴れ親しんだペッシとプロシュートのコンビは、今日も仕事だ。俺達暗殺チームのイメージとして、仕事はあまり無さそうだと思われがちである。しかし、これがそうでもない。それもそのはず、パッショーネ自体最近のしあがってきた地方ギャングに過ぎず、世界規模でみればしょっぱいギャングなのだ。今なお規模を増やそうと活動しているボスは、今日も今日とて仕事を回してくる…お値段が少々異常ではあるが。

 

「全くよォー、もうちっと貰ったってバチは当たらねーよなァ?」

 

「そうだなァ…ソルベ。お前が言うならそうかもなー」

 

 今日も暗殺チームのラブコメ担当は絶好調である。目の前でイチャコラされる方の気になれってんだよ、男同士の絡みより女同士の方がまだ見れるわ!

 

「なァーエイブゥ!お前もそう思わねェか?」

 

 話を振ってくるソルベ。正直相手にしたくないが、振られたら話すしかない。それより今は金を稼げそうな方法を考えてるんだけどなぁ…。

 

「んあー。まァそりゃ貰えるなら貰いたいさ、だがボスにたてつくのは不味い」

 

 原作でもイカれてると評されたコンビだが、話してみると意外とマトモなやつらである。…一部を除けば。うん、やっぱできてるわ。

 

「そーだがよ、おかしいとは思わねェか?俺達無敵の暗殺チームだぜ、それがこんな扱いをよォー」

 

 ごもっとも、俺達が本気で殺しにかかれば護衛チームなんぞ一捻りにできる自信はある。というより俺のスタンドだけでも殺しきれるつもりはある。ソルベもジェラートも、スタンド能力は強力だし相性もいい。俺だって命を狙われたら恐らくは勝てないくらいにな。

 そんな強力なスタンド使いの集まりだからか、俺達の間には不満が多い。ただの暗殺ではなく政府要人だとか警察の幹部などを殺す俺達は、より多くの報酬を貰っても構わない筈なのだ。無論リゾットだって忠の厚い男だ、反逆の意思すら見せたことがない。

 

「まぁ…確かに、それは言えてるかも知れんがな」

 

「だろォ?ならやっぱり報酬を貰うべきだぜ」

 

「そうだな、ソルベの言う通りだぜ」

 

 全く…金にがめつい奴等だよ、今のところは仕事もあるから経営難レベルではないだろうに。そりゃあこのままじゃジリ貧だし、多いに越したことはないけどさ…。

 

「まぁその辺の交渉はリゾットに任せておけ、変な行動を取ればリゾットの名を落とすだけだ」

 

「…そォーだな、リゾットに迷惑はかけられんねェ」

 

「ソルベ、飯でも食いに行こうぜェー」

 

 なんだか今の会話が分岐な気がするのは俺だけか?原作じゃあどこのタイミングでソルジェラが動き出したのか分からなかったからなぁ。これで多少改善できれば良いんだが…俺が避けたいのは輪切りだ、これだけは避けたい。…最悪、ホルマジオから助けることになるかもしれないが、それは最悪の場合のみだ。俺は暗殺チームを救うのだ、それには全員揃って生き残る必要がある!

 

「そうだろ?なぁ…」

 

 このあと滅茶苦茶白い目で見てくるソルジェラに言い訳倒した事を記しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんの野郎共ォ…俺を白い目で見やがって」

 

 とあるレストランテの野外席、ピザを食いながら一人愚痴る俺は飯を食いに来ていた。ここのピザは旨いのだ、それこそ俺が足しげく通うくらいには旨い。それと値段が安い、日本で食えばいくらするかわからん。うそ、日本のピザ…高過ぎ…?

 

「ピッツァ1枚、あとスープもくれよ」

 

 いつの間にか俺の前に座るギアッチョ。店員は畏まりました、とだけ言うと店内へ入っていった。なんでお前が居んのよ。

 

「ギアッチョ?お前も飯か」

 

「そォだぜ、さっきまで買い物に付き合わされてな…」

 

「ああ、そういえば今日の当番はギアッチョか」

 

 我らが暗殺チーム。なんと晩飯は当番制なのである。料理が上手いのは意外にもペッシと俺、前世の独り暮らし初期に鍛えた料理スキルはここでも役に立つのだ。ホルマジオやイルーゾォ、リゾットは普通。プロシュートは…気分が乗れば旨い、外したときのコレジャナイ感が凄まじいが。

 ギアッチョは普通に食えるけどキッチン汚れたりぶっ壊すからあんまり好まれない。

 

「今日はキレるなよ?」

 

「わかんねェぜ、そんなことはよォ」

 

 そのままギアッチョと楽しい一時を過ごした。アイツはなんだかんだ言ってマトモなやつなのだ、話せば分かる…というヤツ。まぁ納得できなきゃ暴れるので最初は大変だったけどな。

 

「そぉいやよ、お前…金儲け考えてんだってなァ?」

 

 ギアッチョが聞いてくる。そう、金さえあれば俺達だってあんな目に合わずにすむのだ、そりゃあ金儲けは考えるだろう。でも上手いこといかんのだよ…宝くじ作戦はポルポの賭博の方に合併されたし、麻薬は別のチームの管轄だしなぁ…。

 

「なんか良い案ねぇかなぁ?」

 

「俺ァねぇな」

 

 とりつく島もないとはこの事か…もうちょっと考えてから言っても良いだろうにこの野郎。

 

「なんならテメェのスタンドで蜂蜜でも作れればなァ」

 

 蜂蜜なんぞ作れたら作ってるっつうの!だが…モノを売るってのはいい線かもしれない、蜂蜜…イタリアならオリーブとかか?その辺を輸出でもすれば収入にはなるか…?いや、輸出なんぞしているのは知っている限り麻薬チームの麻薬だけだ、それなら申請さえすれば認められるかもしれない…!

 

「それだぜギアッチョ!ありがとよォ!」

 

 俺は自分のぶんの金だけおいて、急いで立ち上がる。まずはリゾットに電話する!流石に無許可は不味い、だがリーダーが許可を出したならッ!俺は動ける!

 

《俺だ、珍しいな》

 

 リゾットの声、今は聞くだけで涙が出そうになるぜ!俺の悲願が達成できる…その可能性が!運命の赤い糸が束になってやって来たような気分だぜ全くよぉ!

 

「リゾット!儲け話を手にいれたんだ、交渉を任してくれないか!?」

 

 自分でも言葉足らずだと思う、だがリゾットならばこれだけで理解してくれる。俺の言いたいことは俺以上に理解してるようなヤツだからな。

 

《…なにか分からんが分かった、お前がいうなら任せよう。頼んだぞ》

 

 

 向かうのは勿論蜂蜜やオリーブの件、行く場所は勿論ポルポのいる刑務所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ポルポォ!居るかぁ?いるだろォがよ!返事しやがれェ!!」

 

 ヤツには多少の貸しがあるので交渉は楽なはずだ、それにやつにだって利益が出るなら断られる確率も下がるはず。金があればソルジェラの暴走だって押さえられる!俺達の勝ちは確定になるんだ…。

 

「なんだねうるさい…ああ、エイブか。なんのようかネ?」

 

 いやさぁ、いつもこいつと会うたびに思うんだがよ…こいつこんな話し方だったっけ?もうちとマトモなしゃべり方する奴だと思ってたんだが…なれないな。

 

「儲け話さ、お前にも取り分がある旨い話だぜ?」

 

 ポルポの目がピクリと動くのを見逃す俺じゃあない、恐らくは食いついた。それも俺が話を持ってきたことに…な。

 

「ほう?あの嫌われ者の暗殺チーム…その副リィーダーが儲け話とは面白い冗談だ」

 

「冗談じゃねェーよ、マジだぜ。ポルポよ、お前さんもそろそろ新しい稼ぎ先を開拓する頃だろう?」

 

 畳み掛けるように問いかける。逃がすわけにはいかないんだよ、俺達には時間がない…!既にペッシが入っている今ッ!いつ奴等が勝手に動き出すか俺にはわからない!

 ならさっさと不確定要素は埋めてしまうしかない!ボスへの反逆行為は…確実に始末できるまで起こすべきじゃあないんだよ、ボスの能力…俺の記憶にはもうほんのちっぽけなカケラすら残っちゃいないが…ヤバい能力なのは確かだ。それも俺達暗殺チームが全員でかかっても勝てるのか俺にはわからない、それぐらいヤバイ能力であることだけは覚えてる。なんてったってレクイエムとかいうチート使わなきゃ勝てないくらいだし。

 

「…確かに、お前のいう通りだとも…賭博というジャンルは古来よりあるモノだ、新規のモノは作りようがない。それで、お前は私に何をしてもるァいたいのだね?」

 

「俺達のチームにモノの輸出権利をくれ、お前には…『貸し』があるだろ?ならば、俺の頼みを断るのはよォ…あのときの俺の『信頼』に対する『侮辱』になるんじゃあねェーか?」

 

 この『貸し』…俺が暗殺チームに配属される前に賭博の場をちょいと手伝っていたのさ、それでその場の整備やらルールやらを制定したりと…まぁその、俺も若かったし日本人の性というか…真面目に仕事してたら目につくんだよね、仕事不真面目なヤツとか非効率なところとか。

 だから真面目に整備しちゃったら…いつの間にか『貸し』になってたってことだ。いやぁ…貸すつもりはなかったが、いつ何時自分に帰ってくるのかわからんもんだな。これも、『運命』ってやつなのかね?

 

「フゥム…確かに、君の言うことは尤もかもしるェんね」

 

「…ッ!なら」

 

「但しッ!それは君達を私が『信頼』するのだよエイブ、信頼には信頼で答える。だがもしッ!万が一に君達がパッショーネの『信頼』を『侮辱』する行為をしたならばァ…それが分からん君じゃあないだろう?」

 

 わかってる、これは脅しだ。手にいれた資金でもし組織を裏切ればどうなるのかという脅し。俺達の事なんぞどうでも良いと思っているのがよく伝わるぜポルポ、だがお前は少し勘違いしてるよ…。

 

「ああ…勿論だ」

 

 お前らは信頼なんぞしていない、むしろ俺達を侮辱している。それに…俺はお前の事を信頼なんぞした憶えはないんでね。いずれお前も始末するさ…ポルポ、だが今は利用されてくれよ。俺達だって反逆の意思が芽生えかけているのを『我慢』してるんだぜ…?

 嘘をつくのは忍びないと思っているが…俺達暗殺チームを舐めてかかった代償は…組織ですら払えないほど大きくなってる事を忘れるんじゃあねぇぞ。




コメントからいただいた案を少し自分なりに考えて…資金源を考えたんですが、なんか無理矢理に見えますかね?
もう少し上手いこと書ければ良いんですが…あと展開早いかな?とも思いますが…どうでしょう。


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蜂の感動

ルーキー日間ランキング覗いてみたら…12位に入ってて吐き気を催した乾燥マシュマロでごぜぇます。
ありがたい事です…評価も赤いし…胃が痛い…ww

これからもがんばります!

追記 なんだか書けていない部分があったので訂正しました、申し訳ございません。


 ポルポからモノの輸出許可をもらった俺は、早速チームの皆にこの朗報を伝えた。そりゃあ皆喜んだよ、何てったって資金源ができたんだぜ?シマじゃあないから利益はその時の情勢などで変動するかもしれない、だがそれでも無いよりはよっぽどましだな。

 

「それで?一体何を出すんだ、輸出っつってもよォーモノが無けりゃあ、輸出しようもないだろ?」

 

「勿論だホルマジオ、お前の疑問はもっともだ。契約等は俺とエイブで取ってこようと思っている」

 

 リゾットがしっかりと説明してくれる、あれ?これ俺要るのか?…考案者だし要るよね、ね?俺がちょっぴり不安になっていると、ペッシがおずおずと手を上げる。

 

「で、でもリーダー…その分上納金はどうするんです…?」

 

「その点はエイブから説明があるそうだ。エイブ、説明してくれ」

 

「あいあい、リーダー」

 

 ほれきた俺の役目!解説。某解説王みたいには無理だけどな!

 話がそれた…俺の計画は至ってシンプル、古典的な方法で俺達の稼ぎを作る。ソルベとジェラート、ホルマジオには暫く手を貸して貰わなきゃならないが。

 俺の考えた方法、それはホルマジオのスタンドである『リトル・フィート』の能力で申告していない密輸品を小さくする、これだけで検査に引っ掛からない資金源の完成だ。次にすることは、ソルベとジェラートに協力してもらってスタンドフル活用で動いてもらう。

 ソルベのスタンド『キープ・ホールド』は姿と触れたものを見えなくすることができるスタンド、十分強力だと思うんだが、影や音は残るのでそのままではあまり使い道は無いらしい。だが、これがジェラートのスタンドと組み合わされば無敵のスタンドと化す。『ホール・クワイエット』、ジェラートのスタンドで音を消すスタンドなのだ!

 コイツらがコンビを組めばもー大変、姿も音もなにもなく気がつけば人が死ぬ。もっとも暗殺に向いている能力だと思う、実際リーダーのあの砂鉄による姿隠しもソルベのスタンドからヒントを貰ったって言ってたし。

 

 んで、何が言いたいかというと過少報告して浮いた金をポケットに入れようぜって話だ。隠しもって密輸したブツを売り捌くヤツが要るので、そこをソルジェラに任せる。勿論見つかれば罰は食らうだろうが、反逆してる訳じゃあないんだから輪切りは回避できる…はず。

 

「…とまあ、ホルマジオ達3人の負担がかなり大きな仕事になる。嫌なら頑張って他の作戦を考えるが…」

 

 ホルマジオ達の方を向く、ソルベとジェラートは相変わらずくっついて笑ってるし。ホルマジオは頭を掻きながら下を向いている。そりゃあ急に言われても困るとは思う、だが俺の鳥頭ではこの程度の作戦しか思い付かなかったんだ…。

 

 ホルマジオが顔をあげる、その顔には覚悟があった。覚悟がある、なんて言い方はおかしいかもしれない…でも、俺にはそう形容するしかなかった。こんな作戦に、こいつらは命を懸けてくれようとしている。その事実が、堪らなく嬉しかった。

 

「エイブよォー、俺達がチームの為になる事を断るわけねェーだろ。なァソルベ?」

 

「勿論だぜジェラート。リーダー、その仕事…俺達が請け負ったッ!」

 

「しょうがねぇーなぁ~!俺の能力がなきゃあ始まらねェ仕事だろ?やってやるぜ」

 

 三者三様の言い分さえ見せるものの、その答えはいずれも肯定。皆もチームの為に働いてくれるのだ、俺は…この件はお願いするくらいしか出来ない。俺のスタンドは強力だがこういったことには向かない、だから最初から誰かに頼むつもりではあったが…こんなにあっさりと覚悟してくれるだなんてな。…文字通り命懸けの金稼ぎだというのに。

 …なんだが急に泣きそうなんだけど、マジでこれで泣いたら笑いもんだぞ。

 

「ありがとう皆…頼む」

 

「そういうことだ、ホルマジオ達は俺の連絡がくるまでは今まで通り仕事をしていてくれ」

 

 リゾットの一言で皆解散しだした。俺はただ、深く頭を下げながら涙を我慢するしかできなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆の前で涙目晒して大ウケされた阿呆は誰だ?

 

 …

 ……

 ………

 

 俺だよクソッタレ、バレたときにペッシが居なくて良かった…バレてたら自殺ものだぞ。誰も29歳の涙目なんて見たくねぇよ!…リゾットのなら見たいやつ居るかも…いや、居ねぇな。

 気分直しで秘蔵の日本酒を取り出す、俺がわざわざ別チームのヤツに頼んで持ってきて貰ったやつだ。

今夜はやけ酒だぁぁぁぁ!

 

 




追記 お、お気に入りも190…気づいてなかった…ありがとうございます!

さらに追記 誤字報告ありがとうございます!確認はしているのですが…見落としが多いですね


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蜂の始まり

さぁ、そろそろ原作開始ですね


  密輸を初めて約3ヶ月、成果は順調に出ている。勿論組織にもばれずにだ。今のところは問題はなさげだが、この先の事は分からない。

 オリーブの加工品や蜂蜜、金等を運ぶ俺たちは海を渡る事は仕事柄できない、流石に暗殺を止めてしまう事はできないからな。それでも金や食料品は俺達10人程度の金を賄うには有り余る富を、たったの3ヶ月で生んだ。このまま続けていけばいずればれるだろうが…今はもう少し金を貯めるのも悪くはないだろう。

 

 今回の仕事は、環境大臣に突っかかる議員を片付けることだ。この任務はウチのシマだけではなくパッショーネ全体の麻薬取引に関わる案件、それだけ俺達への重圧はかかる。そのぶん取り分は多少大きくなる、ほんの微々たる量だ…まぁこんな仕事俺達からすれば屁でもない仕事なんだ、いつもと同じ仕事で金がいつもより増えるなら安いもんだ。

 

 俺は電話を取り出し、プロシュートの方にかける。今回の仕事はペッシに『殺し』を慣れさせる意味合いも含まれている、というよりは慣れさせるためにこの仕事を利用した。つまりペッシは今日『卒業』なのだ、今までの仕事の様に…言っちゃあ悪いが『チンピラでもできること』から『暗殺チームの仕事』へ昇華する。

 俺達がその辺のチームと違うのはそこなのだ、生半可な覚悟じゃあ潰れちまう、潰れた先は…壊れて病むかクスリで廃人だ。

 人の『殺し』を生業とするならば、派手な『覚悟』はいらない。要るのは必要最小限の、それでいて強固な『覚悟』だ。力んでいつも以上の力を出す必要なんぞない、要るのは安定した殺しなんだから。

 だからペッシには…人の殺しに慣れてもらう必要があるのだ。いちいち死体や血や痛みにビビってるようじゃあまだまだだ、とはプロシュートの談である。

 

 いや…俺も痛いのにはビビるぜ、プロシュート…。

 

 《もしもし…エイブか、どうした》

 

 プロシュートが出た、背後からはペッシの声もある。声色からかなり緊張しているのが窺えるが…しょうがないなぁ。

 

「プロシュート、ペッシはどうだ?」

 

 《…まだ早い気はする、だが暗殺チームに入るには必要な事だぜ》

 

 それはそうなんだが…プロシュートが良いと言うならなにも言うまい。アイツに任せておけばペッシは大丈夫だろう。…大丈夫だよな?ペッシの奴、俺と似たようなコートまで着てるし…最初はただの服だったのに、いつの間にか俺とお揃いのコート着てたんだよなぁ…。曰く『憧れの先輩と同じ服を着れば勇気が湧くと思ったんっス』だそうだ。憧れて…て、照れるわ。

 

 《そろそろ決行だが…対象は入ったのか?》

 

 プロシュートに言われて今回のターゲットに目を向ける、向けると言っても双眼鏡越しだがな。丁度車から降りて向かっている、そこが文字通り『最後の晩餐』となるわけだ…『最期』のな。

 それにしてはいいリストランテなんじゃあねぇのかな、高級志向のいい店だ。

 

「もう着くぜ、準備しときなよ」

 

 プロシュートに連絡だけして俺は配置につく、今回は俺は連絡役なのだ、仕事はほぼ終わりに近い。始末するのはホルマジオ、アイツならば俺がフォローする必要もないだろう。イルーゾォとかだとこっちの世界に落とした武器やらを回収しないといけないからなぁ…。

 

 そんなことはどうでもいいか、さっさとこの仕事を終わらせて寝るとしよう。なんだか今日は胸がムズムズするんでね。

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言えば、仕事はほぼパーフェクトだった。連れの女も死んだが、それくらいならば誤差の範囲だろうよ、誉められたものではないけどな。

 

「帰ったぜェ!」

 

 ホルマジオがアジトの扉を勢いよく開く、中にはリゾット達いつものメンバーがいる。だが…ソルベとジェラートの姿が見えない、いつもならこれだけ大がかりな仕事が入れば、必ず姿を見せるのに…。

 

「…首尾は」

 

「パーフェクトだ!任務は果たしたぜ」

 

「連れの女も死んじまったがな…」

 

 得意気なホルマジオに釘を刺すプロシュート、多分ペッシが見てたから張り切りすぎたんだろうね。俺も分かるわ…ペッシに偵察任務のお手本見せるときはかなり緊張したもの。なんとかいつものように上手いこと仕事をこなしたものの、もうちょっとで失態を晒すところだったぜ!

 

 ふと顔をあげてみればギアッチョがキレてリゾットにたしなめられていた、どうも報酬の話でキレたらしいな。全く、いつもの光景過ぎてホッとするぜ。

 

 

 だが、このときの俺は―――

 

 

 

 ゆっくり迫る『原作』の魔の手に気付くこと無く―――

 

 

 

 

「リーダー!すまねェ、ソルベが…ソルベが!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()から血を流して倒れ込むジェラートを…

 

 

 

 俺は、眺めることしかできていなかった――――――

 

 



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眠れる奴隷

遅くなっちまいました!
これからのストーリーについてアンケートとってみますので是非是非ご参加くだしあ。


 騒然とするアジト内、悲鳴をあげるペッシとそれを止めるプロシュート。冷や汗を流して立ち上がるリゾットや騒然とするメンバー達。そんな中、俺は一人目を見開いて呆然としていた。

 

 この状況は予定内のはずだ、限りなく可能性を低くはしていたが…俺の中にはこの光景があったはずッ!

 

 それなのにッ!覚悟を決めたはずなのに…俺は思考を一瞬止めてしまったのだ!これではいけないんだよ、こんなお粗末な状態じゃあ護衛チームには勝てない。俺は、この『物語』の主人公を殺す存在じゃなきゃあいけないんだ。

 

 こんな立場になって、DIOの言っていた『安心』や『恐怖を持たない』といったことがどれだけ難しく、そして理想であるかがわかったのだ。

 

「落ち着けェッ!」

 

 自分でも驚く程大きい声が出た、チームの皆も俺の声で我に返りジェラートの応急処置を施しだした。リゾットの指示の下、患部を凍らせる事によって止血する。このままじゃあ話を聞く前にジェラートが死んでしまうから仕方のない事だろう、腕はもう戻ってこない。

 

「…ジェラート、止血はした。立てるか?」

 

「あ、ああ…」

 

リゾットの声かけに答えてはいるが、どこか反応は弱々しい。やはり血を失いすぎたのだろう。

 だが、止血すればいいってもんじゃない。皆知っているつもりで知らない。俺だけが知っている、ボスの異常とも言える用心深さ。それに過去を探ることを最も嫌うのは周知の事実、いつ追っ手が来るか分からない!

 その事を最も恐れているのは俺だろう、なんせ最悪の未来を、最もあり得る可能性を知っているのだから。

 

「リゾット、取り敢えず逃げないか?このままじゃあ不味いぜ!」

 

 俺の声に反応してイルーゾォが鏡を取り出す、それだけで俺達は何がしたいのか理解できた。確かに『鏡』ならば見つからず、それでいて無敵だ。

 

「やってくれ、イルーゾォ」

 

 リゾットのいつもより低い、殺意のこもった声に聞きながら俺達はイルーゾォの世界へと入っていく。おそらく、ここが分岐点だろう。

 

()()()()()()()()、宣言してやる。報酬は…高いぜ、ボス」

 

 俺の呟きは誰に聞かれる事無く、暗いアジトの闇へと吸われていった。

 

 

 

 

 

 

「それで何があったんだジェラートッ!てめぇらのコンビが怪我を負うなんざあり得ねェだろ!?」

 

 その通り、ソルジェラのスタンドはコンビで組めば無敵に近い。探知系のスタンドや無差別広域攻撃できるスタンドじゃないと攻撃をヒットさせる事すら難しいだろう。

 だが、現にジェラートは腕をやられソルベは…無事なのかすらわからない。

 

「お、俺達は見ちまったのさ…別の組織の野郎がボスの情報を調べてたみたいで…その書類をよォ…」

 

 悔しそうに歯を食い縛りながら涙を流すジェラート、こんなことになろうとはな…最悪の事態を避けようと働いていたのに、結局こうなってしまった。『運命』の修正か…『物語』の筋書きか…変えることができないのかと疑いそうになる。だが、少なくともジェラートは生きている、これは原作にはなかった。俺の働きで原作からは大きく逸脱し始めているはずだ。

 

「それで…急いでアジトに帰ろうとしたんだよ、見ちまったからな…たいした情報じゃあなかったんだけどよ」

 

「それで?帰っている最中に襲われたのか」

 

「そうだ、ソルベが時間を稼ぐって俺を…クソッ!なあリーダー、わかってるだろ?やらなくちゃいけない事をよォ…頼むよ、俺のせいで…嫌なんだ」

 

 リゾットが額に汗を浮かべて聞き返す、そしてそれに対し答えるジェラート、肝心の情報は言わない。俺達の顔は真っ青で怒り顔。そりゃそうだ、俺達チーム存続の危機だぜ?情報だって聞きたいんだ、仲間を傷つけられ、鬱憤も貯まってるんだからな。でももしここでその情報を聞いてしまえば、俺たちまで粛清対象だ、だからジェラートは言わない。しかし、無視して放置するには傷つけられた奴が悪い。

 

 俺達はかつてない選択を迫られている。生きているかわからないソルベや『見て』しまったジェラートを助け、ボスに反旗を翻すか。

 

 それとも、二人を切り捨て俺達の保身を図るか。

 

 前者ならば確実に原作からはストーリーが変わる。ボスの居場所を教えてくれる護衛チームの存在も無く、俺達は自力でボスまでたどり着かなくちゃいけない。ハッキリ言って無謀だ。対策もなく勝てる相手じゃあないからな。

 

 だがしかし、後者はもっとダメだ。仲間を見捨てる?そりゃ仕事を確実に遂行するためならば、俺達は…少なくとも俺は見捨てられても良いと思っている。それくらいの『覚悟』をもって行動しているからだ。おそらく、ジェラートが言いたいのも後者だろう。見捨てて生きろと言いたいのだろう。

 

 だが、言ったはずだぜ。俺は一人でも多く生き残らせるとな。

 

「ジェラート、みなまで言わずともお前の言いたいことは分かる。…ジェラート、恨むのは俺でいい。お前達を守れなかったのは、リーダーである俺の責任だ」

 

「…リーダー」

 

 皆の間に不思議な空気が流れる、いつかは別れも来るとは覚悟していたが…皆現実感がないのだろう。俺だって現実とは思いたくないさ、だが結果はこれだ。

 

 俺が提案した密輸のせいで、ソルベとジェラートが死ぬ。それが重く、俺の両肩にのしかかる。俺の不甲斐なさのせいで…!

 

 

 

「エイブ」

 

 

 

 聞きなれた声に思わず振り返る、するとそこには片足と片腕を切断されたソルベがいた。どうにも俺は回りが見えなくなるほど狼狽していたらしい、イルーゾォが鏡の世界にソルベを入れた事も、声をかけられるまでわからなかった。

 

「俺達は大丈夫だ、ちとボスの監視下に置かれちまうが…死ぬことはない、と親衛隊の野郎から言われたぜ」

 

「そうだ、お前のお陰で俺達チームは金を得た。それで俺達が死ぬことになったとしても、それはチームのためだ。お前に気に病まれる筋合いはねぇよ」

 

 二人の言葉に、俺は言葉を失ってしまった。俺のせいとばかり思っていたのは、彼らの『覚悟』を汚すこと。そんなことも分からなかった自分に今度は激しい憤りを感じる。

 

「「だからまぁ…」」

 

 二人の声が重なる、この二人だからできる自然な芸当を、俺達が再び見れるのはいつの日なんだろうか。これから死ぬかも知れないというのに、笑っていられるのはその『覚悟』故に…。

 

「「任せたぜ」」

 

 

 

 

 

 

 

 



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蜂の啓蟄

さぁさぁ遂に始まるかなァ?


 俺達が反逆を決意してはや2年。ソルベは意識不明の重体、ジェラートも片腕を失ったあの出来事から、気づけばもう2年が過ぎていた。どうでも良いことにはついぞ興味の湧かない俺だが、今回ばかりは色々と調べたりとなにかと入り用なものが多かった。

 

 まず、ソルベとジェラートはあの後親衛隊の奴等に一年ほど監視されていた。俺達もその間は下手な行動は起こせないので機を待った。どうにももどかしい時間を黙々と過ごして行き、漸く一年が経とうとしていた頃、ソルベとジェラートが俺達の下に戻ってきた。

 そこからはもう火の車だった。今更かき回すのもどうかと思うし、どうでもいいから細かいことは省くが、ソルベとジェラートの二人を匿いながらの極秘調査。無論のこと俺やイルーゾォ、ホルマジオ等の潜入しやすいメンバーでの調査になった。

 その間に他のメンバーで匿う場所を探してもらった。その結果各地のアジトの床下に小さな空間を作り上げ、そこにホルマジオの能力で過ごしてもらう事にした。この作戦は見つかりにくい上に食材の量や使用した水量から人数を割り出されないなど、バレにくさという点ではとてもいい作戦だ。

 ただ、ホルマジオが死ねば能力が解除されてしまうため、ホルマジオはボスへの反逆を起こしたときに戦闘への参加は事実上不可能となってしまった。ホルマジオの代わりの地区での調査は俺が担当する、これで主人公達と戦う相手…つまり、先鋒の役割は俺になったわけだ。

 

 そして、そうこうしている間にもう一年が過ぎた。それが今の俺達である。つい先程ボスの手がかりとして、娘の情報が手に入ったのだ。情報分析チームの奴を脅して入手しただけの価値はある情報だった、情報チームの一員を脅したということは組織を裏切ったと同義、これで糞みたいな情報しかなけりゃ皆喰いちぎっていたところだ。

 

 もっとも、そのチームの奴は今頃全身に毒が回り、生きたまま肉団子にされ死んでいるだろうがな。

 

 

「この『ボスの娘』の情報…どう思う?この資料によれば、スタンドまで関係しているらしいが」

 

 メローネが手に持っていた紙の束を机の上に投げ出す、それにともない皆も目を通していくが、正直全部嘘臭い。どうにも騙されている感じが抜けないのだ。

 

「どうするリーダー?俺達を嵌める罠かも知れねェし、そうじゃねーかもしれねェ…アンタが決めてくれ」

 

「ま、こんな上手い話はねぇと思うがな。どー考えたって罠だぜリゾット、あのボスが『娘』なんてバカみたいにデケェ情報を残すわけがないだろ」

 

「んな事ァどーでもいーんだよ、問題はよォー!ソルベとジェラートの仇を討つためにゃどんなことでもなりふり構っちゃ居られねーってことだぜッ!!」

 

「フム…だが、やはり血縁関係があるからといって『スタンド』も関係している…とは思えないな。スタンドは精神の具現化、血でどーのこーのなるもんじゃあない」

 

「今更そんな事言ったってしょうがね~だろ。問題は襲撃するタイミングさ、俺達ゃ今から個人で行動するんだろ?そりゃあ俺はソルベとジェラート、リゾットと一緒だがよォー。襲撃のタイミングってのは重要だぜ」

 

「襲撃は近くにいる奴からだろう、情報収集と共にやりゃあ一石二鳥だ。俺達のチームに〈仲間がいなけりゃ何もできません〉なんて事言う奴ァ一人もいねぇはずだからな」

 

「兄貴…。俺頑張りますぜ!」

 

 皆が皆自分の意見を言っていくなか、俺はこの先を考えていた。俺が戦うとしてどのくらいの傷を受ける?俺が勝てなければ俺達の道は同じになるかもしれない。これは罠か?確かボスの娘にもスタンドはあったはずだ。そしてなにより…ボスの娘の生まれ故郷に、ボスの正体に迫るなにかがあるはずだ、娘が引っ越したりしていなければ…だが。

 

「やはりお前達もそう思うか…エイブはどうだ?」

 

 リゾットの漆黒の目が俺を捉える。あの目は俺に問いかけているのだ、『お前は自信があるのか』、『お前は覚悟できたのか』と。

 

「罠だろうとなんだろうと…俺達はただ始末する。それだけだろう?それに…もしスタンド使いじゃなくとも、スタンド使いじゃないという情報は手に入る。損は無いと思うぜ」

 

 その目に俺はこう返す。『当たり前だ』とな。

 

 

 

 

 

 

 

 からっと晴れた晴天…とは言いがたい天気の中、俺はとある車を追っていた。追っている、というと相手が逃げているように聞こえるかもしれないが、別にそういうわけではない。ただ単に目標がその車に乗っている…というだけの下らない理由だ。

 

 始まりは、ホルマジオが言った一言。

 

「ポルポの葬式…1つだけ来ていないチームがあったぜ」

 

 俺達は、ボスの娘を匿っているチームを探すため、俺達の情報網を駆使してこのパッショーネのチーム全てを洗っていたのだ。情報を探すには、情報チームを襲ったことはまだバレていない今しかなかったのさ…めぼしい収穫はないままだったがな。

 だが、ホルマジオのこの一言で一気に情報が集まったのだ。来ていなかったチーム…それは、死んだポルポのお気に入りで新しく幹部に上がったブチャラティ!ブチャラティチームの奴等だ!

 ブチャラティがスタンド使いという情報も手に入った、それ以外のメンバーはわからなかったが。

 

 

 そろそろ仕事に入ろうか。目標は…あの少年、資料で散々読んだ、俺には嫌というほど見覚えがあるその姿…ッ!

 オレンジのバンダナのようなもので黒い癖のある黒い髪の毛を纏め、肩出しの服、それから…あれは、スカート?なんと言うのか…まぁ、どうでも良いことだろう。

 俺はあの少年を知っているぜ…情報通りだ!アイツは…アイツの名は『ナランチャ・ギルガ』!ブチャラティ率いるブチャラティチームの一員だッ!!

 

 

 

「よォーやく見つけたぜ…ナランチャ」

 

 

 

 さァーて、仕事の時間だ!




【啓蟄】・・・冬眠していた虫が動き出す時期のこと。

私は使ったことが無いです


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蜂使いと送り蜂

遅れましたァ!スミマセンでしたぁ!
描写難しくていつも以上に☆意味不明☆な文ですが、読んでいただけると幸いです!


 さてと、これからあの少年をすこしばかり追跡して『ボスの娘』の正体を明かしていかなければならない訳だが……俺のスタンドは手加減が苦手だ、ホルマジオのように上手い具合に拷問なんぞできやしない。だからこそなんだが。

 

「隠れて追跡……バレればコイツで始末する」

 

 懐から拳銃を取り出す、装弾数15発の自動拳銃……勿論サプレッサー着き。俺がスタンド使いと戦うときにはいつも持っている必需品だ、今までこいつがなければ死んでいた可能性だってあった。

 こいつで頭をブチ抜く、そうして後はキラービーの強靭な顎で少しずつ肉団子にしてやろう。

 そうと決まれば早速動く、今いる場所は街中だ。街中故にこんなビルの屋上で張り込めているが、もし俺達がボスの娘を護衛するとしたら、こんな街中に拠点を据えるか? 

 

 

 ―――答えは否。俺なら伏兵の心配なく、なおかつ怪しまれない程度の郊外に拠点を置くね。ならばアジトの場所は……。

 

 

「町の中間地点辺りが、一番のポイントかもな……まぁ、見つかるまではわからんが」

 

 さて、始めようか。俺達の戦いを! 

 

 

 

 

 ナランチャはどうやら買い物に来ていたようだ、女物の品物を買い込んでいた。だが、妙だ。何故アイツが女物を買う? アイツの趣味か……? NOだ。答えは1つしかねーよなぁ? 

 

「やはりテメェ等が『当たり』だぜ……」

 

 俺はキラー・バレットを展開する、ただし3匹だけだ。あまり多すぎると見つかってしまう、だから俺は1匹だけを奴の車の裏へと潜伏させた。これで俺は感覚で奴の居場所が大体分かるようになった。その上、残りの2匹を遠くから追尾させる。例えどんなに視力が良かろうと……遠くから1匹ずつバラバラに飛んでくる蜂をスタンドだと気づくのは不可能だ、もし気づかれても、それはアイツのスタンドが探知もしくは『視る』という事に特化したスタンドだと知ることができる。どちらにしろ俺の有利に動いていく。

 

「送り狼みたいにお前のアジトへ俺を送ってくれよ……ナランチャ」

 

 俺の呟きと共に発進するナランチャの車、それと同時に俺も車を使って走りだす。道は違うが、俺のスタンドからの情報が、カーナビの様に親切に道を教えてくれる……迷うことはなく、俺達は決戦の舞台へと走り始めた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ナランチャは焦っていた。今までの経験から、『何か』が迫っていることは理解できた。だが、その迫っている『何か』が組織の裏切り者なのか、単なる危険なのか……そこまでは分からない。

 故に、ナランチャは焦っていたのだ。

 

「クソ……視線みてぇなのは感じるがよぉ、何も居ない……どうなってんだ」

 

 万が一敵だとすれば、焦っては相手の思うつぼである。そうわかってはいても、人は簡単には冷静にはなれない。それも、常に殺気のようなものを孕んだ視線がするともなれば無視することも難しい。

 だが、ナランチャのスタンドならばその根元を探知できる。今までも……ずっとそうやって邪魔物や敵を排除してきたのだから、その方法に信を置くのも頷けるものだろう。

 

 急ブレーキを踏み、ゆっくりと車から降りるナランチャ。その目には視線の主へのイラつきと、それを排除しようという覚悟がチラリと映る。

 

 ―――チンピラ風情なら、足元撃ってビビらせりゃいい。

 

 そんなことを思いながら、ナランチャはレーダーを覗き込み、自身の片割れである『エアロスミス』を発現させた……それが敵の狙いであることも知らずに。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「かかった……!」

 

 俺は双眼鏡に映し出されるその光景を、網膜に焼けつけんと眼を凝らす。漸く分かった、あいつのスタンド! 

 

「小型のラジコン飛行機のような……ありゃあ物質型だな。距離も分からんのにスタンドをだすってことは、つまり……」

 

 その行動から導き出される答え、そんなもの決まっている。視線が近いか遠いかは何となく分かるだろう。それも、スタンド使いのような『感性』が鋭い、というより一部イカれてるような奴等なら……ギャングならば尚更だ。

 

 にもかかわらず、スタンドを発現した。それは……

 

「テメェのスタンドが……中距離から遠距離型だってことだぜ」

 

 これで、恐らくだが相手のレンジが分かった。得意が分かればやりようは増える。だが、まだ攻撃方法が分からない。戦闘機ということは、あの機体下部についてるアレは機銃か何かなのだろう。つまり撃たれるのは不味い。戦闘になった際の始末する優先度合いは高めに設定する。

 

 何かを探っている様な仕草をするってことは……上から探っているのか? 

 ……後ろから追跡しているせいで、ナランチャの顔が見えない。顔が見えないってのはめんどくさいな……何を考えているのかが分かりにくい。まぁコイツは大分仕草や行動に出るタイプみたいだが……。

 

 何かを諦めたように車に乗り込むナランチャを見て、コイツはバカそうだと確信する俺であった。俺も急いで車を出す、流石に射程2kmはなかったようで安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、どうやら着いたらしい。俺との距離500m程。南東にあるブドウ畑、出てきたのは情報通りブチャラティチームのメンバーだ。

 

 フフ……居るじゃあないか、情報に入ってなかった人間が。アイツらが匿まうように立ってはいるが……俺達の追い求めた女がッ! 

 あのピンクの髪の女は! 事前情報に入っちゃ居なかったッ! 金髪のガキもだ! コイツらが怪しい……だが、どう考えても金髪のガキはボスと関係はなさそうだ。

 もし、もしもだ。アレが護衛対象なら……あんな目立つように配置はしないだろう。

 ボスに居るのは娘ッ! つまりはあのピンクが目標だ! 

 

「キラーバレット……奴等に適当に襲いかかれ!」

 

 俺の声に合わせて発現するキラーバレット。キラービー200匹、バレットビー100匹、総勢300匹の死の軍隊。

 それを100ずつに分け、三方から襲撃させる。そのうちに……あの娘を奪取する、もしくは肉片を切り取り持ち帰る。それだけで俺の勝ちだ。俺の位置は把握されちゃいない。近くの建物……こりゃ資材置き場か? そんなところに隠れた俺を、発見することは不可能だ。

 

「つまり……どう転ぼうが俺の有利だってことさ」

 

 俺はゆっくりと双眼鏡を覗き、口元に笑みを浮かべる。待ちに待った時が来た……ここからが俺の勝負だぜ。

 

「ショータイムだ……精々いい声で鳴きやがれ」

 

 

 




戦闘は次回からスタート、恐らく護衛視点になると思います。


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先鋒、対峙

遅れて申し訳ございませんでしたァァァッ!!!!!
いつにも増してかなり内容が薄いかも知れませぬが、楽しんで頂けると幸いです。
感想貰えたから頑張りましたァ…これからもくれていいのよ?(感想乞い)


 今回の任務では、仲間からの支援は当てに出来ない。仲間達……暗殺チームの面々は皆、一人一人が個別で情報を収集し、それをリーダーの元に送るという方法をとっている。無論、俺もだ。

 

 この作戦の利点は二つある。一つは手分けして探すので情報が見つかりやすい、一ヶ所に人を集めれば精度は上がるが数は探せないからだ。二つ目は単純にバラけていた方がボスや組織の監視の目を掻い潜りやすいということ。

 

 俺達は皆、ライバルであり仲間である。各々が各々を信用しているからこそ、一人一人別行動という一見危険な行動に出られたのだ。

 

 だが、良いことばかりではない。現状の俺のように、コイツら護衛チームと当たるのも当然一人となるわけだ。厳しい戦いになることは皆予想しているし、恐らくだが万が一俺が奴等に敗北したときの事もアイツらは考えているのだろう。

 

「だからこそ、アイツらに負担を強いない為にも……ここで俺が片をつける!」

 

 キラー・バレットが足下や頭上から一斉に飛びかかる。俺のスタンドを初めて見た者は、大抵生理的嫌悪感から足がすくんだりするもんさ。

 

「ッ!? スティッキー・フィンガーズ!」

 

 だが、予想に反して奴等の行動は早かった。果敢に襲いかかるキラー・バレットだが、いち早く気付き、動いたリーダーであるブチャラティに叩き落とされる。アバッキオ以外の各々もスタンドを発現させ、襲いかかるキラービーをスタンドで落としていく。だが、その行動が既に俺の作戦の内だということは……気づいてんのかァ? 

 

「ブチャラティ! トリッシュはどうしますか!?」

 

「ミスタとアバッキオ、フーゴはアジトの中へ! 後は俺と共に、このスタンドの主を倒すぞ!」

 

 穴だらけのスーツの男……パンナコッタ・フーゴが慌てたように叫んだ、どうやらボスの娘の名はトリッシュと言うらしい。あの男はスタンドを出している割に、なかなか攻撃しようとしないな……攻撃系の能力じゃあないのか? ……いや、攻撃系の能力じゃあないならば、咄嗟にスタンドを発現させるような癖はつかないはずだ。現に、あの頭に卵の殻をのせたようなアバッキオはスタンドを出していない。つまりアバッキオのスタンドは攻撃タイプではないということだ、攻撃できるスタンド持ちでなおかつギャングみたいな危ない仕事をしていれば、緊急時に即座にスタンドを出すなんて呼吸と同じようなもんだからなぁ……。

 

 まぁ、今は先にトリッシュの血液や肉片の採取が先だな。それさえあれば基本は問題なく、メローネのベイビィ・フェイスで追跡が可能になるだろう。流石にすぐには無理だろうが、奴なら必ず解析してくれるはずだ。

 

 ならば俺は俺にできることをしよう。俺の能力がボスの居場所を突き止めるのに役に立つか? 

 

 答えは否、俺の蜂は殺し以外は難しい。だが、殺しに関しては……誰にも負けない自信があるッ! 

 

「お前らが殴り飛ばしたキラービーにも……毒液は含まれている。そして、蜂の毒の中には仲間を呼ぶフェロモンが含まれているんだぜ」

 

 今までは! 目視でしか確認できなかった居場所がよォー! 今なら寝てても分かってしまうなァッ!! お前らの拳からぷんぷんと匂いがするんだよ、匂いがしない人間はアバッキオ、トリッシュ、ミスタの三人だけ! フーゴもナランチャも拳で攻撃はしちゃあいないが……撃ち落としてくれたおかげでそこに蜂の死骸が落ちている! 

 

 それを踏んでしまえば、例え直接攻撃しないナランチャのスタンドでも本人には毒が付く! 踏んでいないのはアジトにこもったアイツらだけだ! 

 

「出番だぜバレットビー! 毒の匂い目掛けて突っ込めッ!」

 

 俺の合図を待っていたバレットビーが、一斉にターゲットへと勇み行く。反応できたのは新入りとブチャラティのみ、後の奴等は反応が遅れる。

 

「うぉおおお! なんなんだよコイツらッ!!」

「くッ!!? っ泣き言は後です! スタンドの本体を……本体を探さなくては!」

「ナランチャ、レーダーの感知範囲を最大まで引き上げろッ!! 敵の居場所を発見するんだ!」

「おいおい弾丸だとォ? 俺に対してそりゃ悪手だぜ襲撃野郎ッ!!」

 

 最初に攻撃されたのはナランチャだ、服装が黒いぶん狙われやすいのかも知れない。当たったのは足、これで行動範囲ととれる行動はかなり狭まったはずだ。続いて新入り、被弾は肩と拳だ。あの傷では攻撃は愚かモノを掴む事すらできまい。ブチャラティは脇腹、一番の重傷だろうよ。

 

 だが……問題はミスタだ。アイツのスタンドが何かをした瞬間、俺の方向へバレットビーが弾き返された。一瞬位置がバレたのかと焦ったが、どうやら違うらしい。

 ヤツのスタンド能力は反射なのか? ミスタは要警戒だな……といっても、仕事は、もうとっくに終わっているんだがね。

 

 悲鳴が響き、聞こえてくる発砲音。蜂は小さい、それこそ生物を探知するような能力じゃあなけりゃ、隠れた俺のスタンドを見つけるのは難しい。

 

 その上、下水道からアジトに上がってくるだなんて……普通は考えつかんだろうぜ。もっとも、それが俺の能力が強い由縁なんだがな。

 

「ミスタ! ナランチャ! 俺とジョルノは中を見てくる、お前達は周囲を警戒しろッ!」

 

「アンタの怪我じゃあ無茶だぜブチャラティ! それにジョルノの野郎だって拳がやられてる! まともに戦えねぇよ!」

 

「だが室内の戦闘は、俺たちの方が向いているッ!!」

 

 警戒しながら、かつ急いで中に入って行くブチャラティと新入りの二人。納得できなさそうに見送ったのはミスタとナランチャか……反射スタンドと中距離スタンド……不味いな、相性が悪い。

 

 もっとも、既に『肉片』とそれに付着した『血液』はたっぷりと頂いた。全員に毒を注入しているから喋ることすら困難だろう。

 

 

 あぁ、今回も完璧な仕事だった……ッ!!!! 

 

 

 ンー、やはり完璧な仕事の後は気持ちがハレバレとして清清しい。やはり暗殺者たるものこうでなくては、バレず、悟られず、任務をこなす。それが真の暗殺者だろう! 

 

「……そんなことはどうでもいいな」

 

 そう呟いて自分を戒める。そして軽やかな足取りで隠れていたその場を離れた。勿論、周囲の警戒と奴等の視界を頭に入れて、なおかつその視線に入らないように、だ。

 

 

 

 にもかかわらず。

 

 

 

 バタバタと何か音が聞こえてきたのだ。頭上から、まるでヘリのローター音のような……ッ!? 

 

 それは一瞬だった、振り返ると同時に太陽の光が目を刺す。闇に生きる俺を刺し殺さんと振りかかる光を背に、そいつは居た。

 

 橙色のボディを鈍く光らせ、機銃だと推察した例のあれを俺へと一心に向けている。本能的に不味いと分かった。

 

「キラー・バレット! 俺の背中を咥え一面に展開しろォッ!!!!」

 

 俺が吠え、キラー・バレットが背中に現れると同時に、背中に数多の弾丸が撃ち込まれていた。

 




次回はオリ主の群体型の所以が見えるかも…


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