ポケットモンスター B&W another 〜隻腕の幻影 ゾロアーク〜 (Mr.bot-8M6N)
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あの日々に得た物失った物ーLOST    ー
1ー1 あの向こうに……①ーCONTACTー



・前語り 一部変更しました。

・文章全体の誤字脱字、微細な描写の修正がはいりました。


1

 

 

 それは昔のお話。大体、5年とか6年とかそのくらい前のお話です。

 

 それは、私の前に突然現れました。

 

 私が生まれ育ったカノコタウンの近くに現れた見たこともないポケモン。

 

 黒と灰の体毛に覆われ、赤の大きなタテガミ と 隈取のような目元の模様 によって カブキを連想させる狐 といった出で立ち。

 

 そして、他の追随を許さない強さを携え 他を圧倒する()の姿に当時8歳だった私は心を奪われたのだと思います。

 

 私は()と出会い、語らい、遊び、楽しい時間を過ごしました。

 

 ()と私がお互いにどうしようもない傷跡を残すその日まで……。()が姿を消すその日まで……。

 

 

 ()の個体名称は「ゾロアーク」。私が住むイッシュ地方ではほとんど姿が見られない珍しいポケモン。

 

 姿を変え、相手を騙す ばけぎつねポケモン 。

 

 私がポケモントレーナーを目指すきっかけとなったポケモン。

 

 そんなゾロアークと私ーートウコの、

 

 ーーとても大切な、思い出したくもない、温かで、寒い、そんな出会いと別れの思い出。

 

 そんな話をしようと思います。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 私の生まれ故郷であるカノコタウンと付近の村カラカサタウンの間を通るイッシュ地方1番道路。両脇を深い森挟まれ、海に通じる17番水道が流れる一本道。

 その日、当時8歳だった私はそこに一人で足を運んでいました。一人では決して行ってはいけないと色んな人から注意されていたというのに。

 理由はもう5年以上前の話なので覚えていません。何か嫌な事があって逃げ出した先がそこだったのか、ただの怖い物見たさだったのか……。それでも、私の家族が「村の外は野生のポケモンがいるから危険だ」と言っていた事と、当時の私がその注意を軽く見ていたことだけは覚えています。

 

 「百聞は一見にしかず」とはよく言ったもの。色んな知人から口を酸っぱくして言っていた言葉を身をもって体験しました。

 三匹のミネズミに襲われた私は当然にげました。道路から外れ森の奥へ奥へと。

 走って、走って、走り続けて……疲れ果て、「もう駄目だ」と諦めかけたその時ーー。

 

 私は()と初めて出会ったのです。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「あぅッ」

 

 森の中で子供が倒れる音がした。木の根に足を取られたのだ。突然の事に受け身も取れなかったのだろう。倒れる音と一緒に土を削る音がする。

 

「……う、うぅ」

 

 手のひらや膝、肘。身体の節々の出血の痛みに堪えながら、その子供は何とか立ち上がろうとしている。その子供は栗色の髪の毛を後ろで束ねたポニーテールが特徴的な齢10歳にも満たない少女だった。

 

「ーー……ハァッ……はぁっはぁっ」

 

 バクバクと早鐘を打つ心臓の悲鳴がうるさい。

 全力で……命懸けで森の中を走ったというのに、背後からガサガサという生い茂った草同士で擦れる音がする。その音が、少女を恐怖に駆り立て心臓の音を更に跳ね上げる。

 

「に、逃げないと……速く……」

 

 近くの木の幹に手を伸ばし、それを支えに立ち上がろうとする。

 

 しかしーー、

 

「………あれ?」

 

 立ち上がりかけた膝は急に崩れ、その足がストンと地面に落ちた。立ち上がれない。

 

「な、なんで!?……どうして!?」

 

 それだけでは無い。足に遅れて腕までも力が入らなくなり小さな痙攣を起こしている。

 

 それは、森の中を息さえ忘れて全力疾走した代償。血中の酸素が極端に少なくなり、筋肉を動かすエネルギーが枯渇しているのだ。

 

 もう座っている事すら出来なくなりバタリと倒れる。声を出すことすら億劫で、荒い息を整えようとするだけで精一杯だ。

 

 ガサリという音がやけに明確に聞こえた。同時に背後に3つ分の気配を感じ取る。確認しなくとも分かる。きっとさっきまで少女を追い回していた野生のポケモンだろう。

 

 ーー……あぁ、死んじゃうのかな、私。

 

 身体は未だに痙攣から回復する兆しは無い。背後から『ヂヂッ……』というネズミのような鳴き声が聞こえる。状況は言うまでもなく絶望的だ。

 

 ーー……ごめんなさい、お父さんお母さん。

 

 三つの気配の内 一つが少女に飛びかかる。

 動けない少女は目を(つぶ)り歯をくいしばる事で、来るであろう衝撃を待つ。

 

『……ヂョオッ!?』

 

 ーー瞬間、背後で小さなポケモンの悲鳴が、何か鈍い音と共に少女の耳に届く。

 

 そして、少し遅れて 地面を削るような着地音 が前方から聞こえる。

 

「………え?」

 

 堪えるように瞑っていた目蓋を開き前方の音の主を捉える。

 

 

 そこにいたのは、今まで彼女の人生において一度も見た事がない種類のポケモンだった。

 黒と灰の体毛に覆われた 大柄でありながら細身の躯体。鋭く伸びた爪は血を吸ったかのうように赤い。頭部から背中に伸びた鮮やかな紅のタテガミはそのポケモンを覆う程に大きく、地面に擦れそうな程に長い。

 

『………チッ』

 

 少女も少女を襲ったポケモンも周りに生い茂る草木にも、そして自身にさえ……何もかもが忌々しいと言わんばかりの舌打ちを打ちながら、そのポケモンは悠然と少女の視界の中に立っていた。

 

ーto be continuedー




という訳で始めました。

懐かしいですねー。ポケモンbw……。
なんで今更ポケモンbw?トウコちゃんがポケモンシリーズ女主人公で一番可愛いからに決まっておろうがぁ!!w(異論は認めますとも)某同人作家によるポケモンbw同人のトウコちゃんが可愛くて辛い……wあと、ゾロアーク君も見た目がイケメン過ぎて辛いw

ソードアート・オンラインの方?すまぬ……。見切り発車過ぎてピタリと行き詰まった……。あと「なろう」の方で完全オリジナルの作品に手を出そうと何とか頑張ってるので更新はいつになる事やら……。

取り敢えず、今後の予定として、

・4/20 18:00に「1ー2 彼女と彼の原点②」
・4/21 18:00に「1ー3 彼女と彼の原点③」

更新予定です。よろしくお願いします。


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1ー2 あの向こうに……②ーINTRUSIONー

2

 

 

 俺は野生のポケモンである。名前はまだ無い。というか、興味が無いので一生付くことは無いだろう。

 ただ、人間の中で「ばけきつねポケモン」という分類と「ゾロアーク」という個体名称を与えられている事は知っている。

 特性「イリュージョン」を駆使して、他のポケモンや人間に化ける事ができる狐型のポケモン。それが俺であった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ゾロアークは人間の少女(ガキ)ミネズミ(ドブネズミ)が襲う所を木から別れた枝の上から見ていた。

 

 そこにいたのは本当に偶然だ。

 潜伏先を探し、彷徨っていた先に都合の良さそうな森を見つけた。その先で、人間の少女(ガキ)三匹のミネズミ(ドブネズミ)が襲っている所に出くわしたのだ。

 

『……チィッ!』

 

 その光景を見てイラつきがそのポケモンの中で生じた。

 

 ーーあのミネズミども……。よりにもよって人間を襲っていやがる。

 

 そのポケモンにとってそれはこれ以上無い程の最悪の状況だった。たとえ自身と縁も所縁も無い連中の所業であってもだ。問題は自身の眼前で繰り広げられているという事実だ。

 

 

 ゾロアークは野生のポケモンだ。しかし、他の野生ポケモンとは違い、人間社会の構造についての理解があった。

 

 人間という個体は戦闘面では弱いが、知能は高い。他の生物はしないであろう便利な道具の開発。他の生物と積極的に関わり従える。

 それだけで十分に脅威だ。しかし、ゾロアークが人間を過剰に恐れているのはそんな事ではない。いや、それらが人間の厄介さに拍車をかけているのだから全く無関係とは言えない。

 それでも、ゾロアークが人間を最も恐れる理由。それは「人間社会」という異常に広く大きい群れ(コミュニティ)だ。人間を除いた生物の群れの規模は個体ごとに変わってくるが、十匹前後が普通。どんなに多くても3桁を超える事はない。しかし、人間は違う。人間のコミュニティの規模は万とか億といった途方も無い数だ。おそらくこの世界のほぼ全ての人間がこの1つのコミュニティを形成している。

 

 例えば、ゾロアークが何かの生物と敵対するともれなくその敵対生物のコミュニティが全て敵に回る。そして、自身はコミュニティから孤立した一匹狼。よっぽど相手が間抜けか自分が上手く立ち回らないと確実に一対複数の事態に陥る。これが、人間以外なら戦うなり逃げるなりすればなんとかなる。幸い、ゾロアークは個体としての強さに恵まれている。

 しかし、人間の場合は違ってくる。特に個人ではなく社会が動くレベルになるとどうしようもない。一人を倒せば二人が。二人を倒せば四人が。四人を倒せばそれ以上の数が。まるでねずみ算のように規模を増やして延々と追い、襲ってくる。更に敵対した個体の情報は瞬く間に広がり、そこから調べ上げ、癖や弱点を研究して次が来る。

 

 ーーそんな物、相手をしていられるか!

 

 だから、そのゾロアークは今までの生涯で人間を傷付けた事は一度として無かった。自身を捕まえようとするトレーナーがいたら、手持ちのポケモンを瀕死に追いやるだけでそれ以上は何もしなかった。

 人間の恐ろしさを理解出来なかった馬鹿な過去の群れ(コミュニティ)の仲間は全て切り捨てて一匹狼になった。

 

 更に言うと、ゾロアークは今人間から追われている。

 人間社会全てではないが、数えるだけで億劫になる規模が動いている。別に何かをした訳ではないが、何処かの組織か好事家にでも目が留まってしまったのだろう。イッシュ地方では自身は非常に珍しいらしい。ついでに特性「イリュージョン」を携えたゾロアークを捕まえようとするポケモントレーナーは沢山いた。今回、その中でもかなり厄介な連中に狙われたのだ。

 

 それもほとぼりが冷めるまで何処かに隠れていたら解決するだろうと考えていた。

 奴らも馬鹿では無い。イッシュ地方東部に逃げ込んだ事は知られているだろう。ここに隠れているだけならいつか見つかる。しかし、複数の潜伏拠点を用意し、それらを飛び回っていたらいつかは警戒網が解ける。そのタイミングで別の場所に高飛びする。そういう算段を立てていた。

 

 

 だからこそ、目の前で起ころうとしている惨状に怒りしか覚える事が出来なかった。

 

 ここであの少女(ガキ)が死んだとなれば、その情報が人間社会中に広がる。そのほとんどは気にも留めないだろうが、ゾロアークを探してる連中はそうはならないだろう。

 確実に人を差し向けてくる。それは潜伏拠点を潰されるという事ただ。

 

 ーークソッタレがッ

 

 怒りで赤くなる視界をそのままに、ゾロアークは木から倒れるように落ちていった。

 

 

 

 ゾロアークの自身の長いタテガミをたなびく。

 

 どうやら、三匹のミネズミの内の一体が少女に襲いかかったようだ。わざわざ近づいてくれたのだ。遠慮する必要は無い。

 

 ゾロアークは、空中で巧みに身体を操り着地の姿勢を取る。

 

 空中で今まさに人間に襲いかかる直前だった一体のミネズミの体長50cm程の矮躯を両足で捉える。

 

 そして、ゾロアークはそのまま地面と自身を用い、鈍い音と共にミネズミを押し潰す。

 

 押し潰されたミネズミは小さな悲鳴の後、ピクピクと痙攣するのみで何の動きも見せない。ゾロアークの体重は80kg前後。そんな物が高い所から落ちてきて踏み潰す。瀕死だ。

 だが、容赦はしない。そのまま死体蹴りだと言わんばかりに腰を落とす。

 

 ーーむしタイプ・物理攻撃技 『とんぼがえり』

 

 ゾロアークが自身の化け物じみた跳躍力で後方に飛び上がる。踏み潰されたミネズミの矮躯はその衝撃に耐えかね、地面の上でバウンドしてもう一度地面に落ちる。もう、ピクリとも動かない。確実な絶命の手応えをゾロアークの足は伝える。

 

 そのまま、ゾロアークは少女の上で一回転バク宙をして、地面に降り立つ。

 

「…………ぽ、ポケモン?」

 

 倒れてから碌に動きを見せなかった少女の呟きが、ゾロアークの耳に届く。どうやら、無事のようだ。大きな外傷も無い。最悪の事態は回避できたようである。

 

『『ヂ、ヂィッ!!』』

 

 そう言えば、まだ二匹雑魚が居た、とゾロアークは思い出す。だが、今はそれよりもこの少女(ガキ)の方が優先だ。

 

 ーー……失せろ、雑魚ども。

 ーーノーマルタイプ・変化技 『にらみつける』

 

 殺意を込めた睨みに残りの二匹は動く事も喋る事も許されない。蛇に睨まれた蛙の如くその場で震える事しか出来ない。

 

 どれだけの時間が経ったのかミネズミは分からない。いや、時間を考える事さえ許されていない、というべきだろうか。

 

 突然、「フイッ」とゾロアークの視線が人間に移った。ただ金縛りのような視線から解放されたミネズミは先程自分達に追い回された人間の子供のように逃げ去る事しか出来なかった。

 

ーto be continuedー




投稿二話目なので気付かれて無いと思いますが、タイトル変更しました。何となくポケモンの映画タイトルっぽい?

登場キャラクター紹介
・トウコ……当時8歳の栗色の髪の毛の少女。作者が今までプレイしてきたゲームの中でガチで珍しく使った女主人公(これ以外だとFate/extraシリーズのザビ子だけ)。ぶっちゃけアニメポケモンを切ったのはイッシュ地方編で出番をアイリスに取られたから。

・ゾロアーク……黒の体毛と歌舞伎のような赤髪と顔の模様が特徴的な「ばけぎつねポケモン」。作者ポケモンシリーズで最推しのイケメンポケモン。戦闘描写を書いていると、技が4つとか少な過ぎて辛い……。もう使わせたい技が今の時点で6個あってどうしようか悩んでる。「1・2の……ポカン!」するにしても野生のポケモンだしなぁ……。


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1ー3 あの向こうに……③ーOVER THEREー

3

 

 

 ーーおい、ガキ。もう安全だぞ。

 

 だからいい加減立てと軽く少女を蹴る。

 

 ーー……あ?

 

 反応が無い。先程まで意識があったようだが……。

 そう考え、ゾロアークは右足で器用に少女を転がす。

 

 少女の顔色は悪かった。息も荒く、意識があるか分からない。

 

 ーーまさかマヒ……いや、毒か?しかし、あのミネズミ(ドブネズミ)に毒系の技は無かったはずだが……。

 

『………チッ』

 

 ゾロアークは舌打ちを打った後、少女を三本の爪で器用に抱え上げてその場から姿を消した。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「……………う、うぅん」

 

 いつの間にか意識を失ってしまっていたようだ。少女ーートウカは目を覚ます。

 

「フカフカぁ……」

 

 それでも、意識は完全には覚醒していないらしく今は背中の沈み込みそうな程に柔らかい何かに身を任せたまま動こうとしない。

 

(えーと、私……何してたんだっけ?たしかーー)

 

 ーーたしか、ネズミみたいなポケモンに追われて……途中で動けなくなって…………その後、見た事ないポケモンが……って私何で無事なの!?

 

 そこまで思考が回った所で意識が覚醒する。飛び上がるように起き上がり、辺りを確認する。

 

 そこは少し開けた森の中。近くに小さな川がながれている。

 

(多分、あの川は17番水道……?なら、この川の流れと反対方向に向かえば1番道路にもどれる?)

 

 何となくだが、帰れそうだという事が分かり安心感を覚え、もう一度あの柔らかい感覚に身を任せる。

 

(そう言えば、このフワフワなんだろ?)

 

 そう思い、その柔らかい感触の物体を確認しようとしたその先で少女ーートウコはコチラを見る視線と合った。

 

 それはミネズミに襲われた時に現れた謎のポケモン。狐のような細い顔つきと鋭い視線で「ジー」とコチラを見ている。

 

「……ヒッ」

 

 トウコは、反射的に距離を取る。しかし、そのポケモンはただコチラを見つめたまま動こうとしない。

 小さな静寂が一人と一匹の間に生まれる。

 

 ややあってーー、

 

『………ケッ』

 

 ーーという素っ気ない一声と共にそのポケモンは視線を逸らし眠り始めた。

 

「え、えー……」

 

 少女は困惑気味だ。何故あのポケモンは私を襲わないのだろう、という疑問が頭の中を支配している。というか、あの柔らかいのはあのポケモンの長く紅いタテガミだったのね。

 

「……ねぇ、あなたはどこかのトレーナーのポケモンさん?トレーナーさんは何処にいったの?」

 

『チッ……』

 

 その狐型のポケモンは目を閉じたままコチラを見ようとしない。ただ、今のトウコの言葉に不快さを隠さない舌打ちを打った。……どうやら、トレーナーは居ないようだ。

 

(という事は……もしかし、野生のポケモン?野生のポケモンが助けてくれたの?)

 

 トウカは今の今まで忘れていたが、自身の傷が綺麗に洗われている事に気付いた。痛みもそこまでではない。見れば、近くに潰れた木の実が一箇所にまとめられている。

 

(傷口からきのみの匂いがする)

 

 おそらく、あの潰れた木の実は傷薬の代わりになるエキスが詰まっている物だろう。聞いたことがある、傷口がない時に応急処置として、何かの木の実の果汁が使われる事を。

 

「……ねぇ、貴方が助けてくれたの?何で?」

 

 紅毛のポケモンは何も答えない。目を閉じまま、うつ伏せで寝ようとしている。

 

「ふふ……変なの」

 

 トウコは小さな笑みを浮かべ紅毛のポケモンに近付く。そして、おそるおそるそのポケモンに語りかける。

 

「……わたしはトウコって言うの。ねぇ、あなたは?」

 

『…………』

 

 やはり何も答えない。トウコも何となく答えてくれないだろうと思っていた。

 トウコは空を仰ぎ見る。随分と時間が経ったような気がしていたが、まだまだ太陽は登り切ったばかりのようだ。なかなかキツい日差しに目を細める。

 

「まだちょっとお昼を過ぎた位なんだ……。ねぇ、もう少しとなりにいても良い?」

 

 そう言って、トウコはゾロアークのタテガミに身を預けて「すーすー……」と寝息をたて始める。

 ゾロアークは困惑した目を向けるも溜息をついて少女同様に眠り始めた。

 

 イッシュ地方南東部の小さな村の近くの昼下がり、一人と一匹の寝息が森の中で小さく響いていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「………ウコ……トウコってば!!」

 

 私を呼ぶ声がする。幼馴染の女の子の声だ。

 

「………あと、五分……」

 

 しかしすまぬ、幼馴染よ……。今はこの極上のフカフカを堪能するという使命が……。

 

「こんな所で寝てたら風邪引いちゃうよ!」

 

「………幼馴染ベルよ……私は……このフカフカを……たん…の…………ぐぅ……」

 

「何、変な寝言言ってるのぉ!?ここ、おもいっきり地面の上だよぉ!もう起きてぇ、トウコぉ〜……」

 

(地面の上?……そう言えば、あのフカフカの感覚が……無い!?)

 

「トウコぉ……って起きた」

 

 トウコは跳ね起き、辺りを見回す。いつの間にか日が傾いてしまっていたようだ。西の空が茜色に染まり始めている。そこは、1番道路とカノコタウンのほぼ境の草むらだ。遠くに自宅の光が見える。

 

「ふ………」

 

「ふ?」

 

「フカフカはッ!フカフカは何処に行ったぁ!!」

 

 トウコ、吠える。トウコは幼馴染の両肩を掴みガクガクと揺さぶる。

 

「何処だっ!言えっ!さもなくば、貴様の乳を将来的にデカくするゾ!」

 

 ついでにおかしな事も口走り始めた。

 

「そうだった……寝起きのトウコはヤバかったんだ………ふぇぇ、助けてぇ、チェレン〜トウヤ〜!」

 

 それにベルが小さな悲鳴をあげ、助けを求める。

 

「お、おい、トウヤ!この馬鹿を引き剥がせ!チェレンのやつが本気で泣きそうだ!」

 

「う、うん……。トウコ、取り敢えずフカフカは自宅に帰ってからね?今日、叔母さんが布団干してたの見たから。きっとフカフカだよ?」

 

 トウヤと呼ばれた少年が荒れ狂う害獣を引き剥がす。助けられたベルは半泣きだ。

 

「フカーッ!!フカーッ!!フカーッ!!」

 

「……いい加減にしろ!この馬鹿女ッ!」

 

 ゴツッという音が奇声を上げ始めたトウコの頭に叩き込まれる。

 

「いったぁ!何するのよッチェレ……………居たの、チェレン?それにトウヤも」

 

 ーートウコ は しょうき に もどった!

 

「居たよ!……というか、さっさとベルに謝れ!半泣きじゃないかッ」

 

「チェレン、私は良いから……」

 

「僕も謝った方が良いと思うよー。……まぁ、何時もの事だけどね」

 

 チェレンと呼ばれた少年は眉間に皺を寄せている。トウヤという少年も何処か困り顔で笑っている。

 

「ベル?……ってどうしたのよ、ベル!涙目じゃないっ!まさかチェレンの奴に何かされ………いったぁぁい!!」

 

「チェレン、そんなに女の子の頭はポカポカ殴る物では無いと思うよ」

 

「そうだそうだー。ぼうりょくはんたーい」

 

「…………おい、トウヤ。その馬鹿をそのまま捕まえておけ。あと何発か叩き込む必要があるらしい」

 

「……チェレン。……トウコもチェレンを弄らない。それより、ベルにちゃんと謝ろうか」

 

「うッ……ゴメンね、ベル」

 

「う、うん……大丈夫だよ。ちょっと、驚いただけだから」

 

「今度、チェレンが何かやったら私に言いなさい!ブン殴ってあげるから!」

 

「え、え?……えっと……………う、うん?」

 

「お前、いい加減にしろよ!」

 

「へーんだ。毎度毎度、私の頭を殴ってきてからに。偶には私にも殴らせなさい!」

 

 チェレン相手になら何処まで噛み付くと言わんばかりのトウコに全員がため息をつく。

 

「この馬鹿、人が心配したというのに……」

 

「え?チェレン、貴方、私を心配していたの?どうして?」

 

 チェレンが?私に?、何か心配させたっけ? という様々な疑問を込めた言葉にチェレンは黙り込む。

 

「…………………」(←チェレン の むごんパンチ)

 

「……ッ!……とうッ」(←トウコ の ききさっち からの ぜんりょくかいひ)

 

「………わっ」(トウヤ の ガード………成功)

 

 今まで散々殴られてきた経験がトウコの中で生きたようだ。(トウコ的に)理不尽な一撃を見事に回避してのける。

 

「な……なんか分からないけど、チェレンが急にキレたわッ……逃げるわよ、ベル。それにトウヤも」

 

「え、え……?」

 

「あれはトウコが悪いと思うよ。……まぁ、いきなり殴りかかってきたチェレンもどうかと思わないでもないけど……」

 

「………………」(←無言で殴りかかるチェレン)

 

 三人が逃げ(内、二人は巻き込まれ)、一人がそれを追う。その姿が1番道路から遠ざかっていく。

 

(全部、夢だったのかな……)

 

 両隣に幼馴染を引き連れて走るトウコの心に小さな寂しさが凪ぐ。そこに息を若干切らせたベルが話しかける。

 

「……と、トウコ。朝から全然見かけないから心配したんだよ?それに服は泥だらけで……怪我も一杯あるし」

 

「え……?」

 

 本当だ。服は泥だらけで膝や手のひらにも大きめの擦り傷が残っている。それにーー

 

「…………木の実の匂いがする」

 

「木の実?……本当だ、これってオレンの実かな?他にもいくつか……」

 

 トウヤが無遠慮にトウコの匂いを嗅ぐが、気にならない。それ以上に何かが満たされていくような感覚がトウコを支配する。

 

「フフ……そっかー、そっかそっかー。夢じゃ無かったかー!」

 

「……トウコ?」

 

 急に上機嫌になったトウコにベルまトウヤも困惑気味だ。

 

 トウコは振り返る。そこにはメガネに光が反射してイマイチ表情の分からないチェレンがいるだけだ。

 ……でも、その向こう。1番道路を北に進んだ17番水道との境にはきっとあのポケモンがいる。

 

「ふっふー!何でもないよー。二人とも、今から鬼ごっこだ!自分の家に早く帰り着いたヤツが1番ね!……鬼は後ろの鬼畜眼鏡がボランティアでやってくれるって!」

 

 

 西空の茜色が東空の藍色に染め返される春のある日、私はきっと運命に出会っていたのだと思います。

 

 

ーto be continuedー

    ーnext episodeー




という訳でトウコとゾロアークの出会いエピソードでしたー。
最後に主人公と幼馴染の絡みを入れたのは個人的に英断だと思うんだ!これによって幼馴染4人の関係が自分の中でもハッキリしました。「トウコ、やらかす→ベル、被害を受ける→チェレン、キレる→トウヤ、諌める」「トウコ、チェレンを挑発→チェレン、キレる→ベル、おどおど→トウヤ、諌める」というのがこの4人の漫才ですな!……トウヤ君、マジイケメン!
良いですなぁ〜。こんな関係の幼馴染、俺も欲しかった……。

次回でアララギ博士を出したい所。でも、そのあとの戦闘シーンを考えるばっかでその辺ほとんど手つかずなんだよねぇ……ははは、マジヤベェw

まぁ、その前に「幕間」を1つ挟ませていただこうと思います。自分、書いてて「馬鹿だろ」って思いました。誰得なんだろ?次回の幕間……。

という訳で、
・4/22 18:00 「幕間 彼は結構綺麗好き」
更新予定です。





今回の登場キャラクター

・トウコ……ぶっちゃけ、ロリ時代のキャラが固まってなかったりする。このまま行ってキャラがブレブレにならないかめっさ心配である。取り敢えず、寝起き直前と直後の思考はかなりヤヴァイ事は決定済み。

・ゾロアーク……ひねくれた性格。基本的に『……ケッ』とか『……チッ』としか言わない。非常に知能が高く、人間の言語を完全に理解している。戦闘時は雑魚をいなす時は足蹴。ガチの時は爪。奥の手は「ナイトバースト」を予定している。技の数はチートで複数覚えられる事にしよう!そうしよう!良いだろ、主人公補正という事で!

・ベル……トウコの幼馴染1。ほわほわ、おどおどの小動物系女子。将来的に素晴らしいことになる胸部の片鱗は既に見えている。

・トウヤ……ポケモンBWの男主人公。トウコの幼馴染2。若干天然の入った爽やか系イケメン。登場させたのは良いけど、ポケモントレーナーになった時の最初の三体をどうするかでガチで作者を悩ませる原因。

・チェレン……トウコの幼馴染3。…………男のツンデレっている?(自問)超いる、スゲーいる。ゾロアーク君もツンデレ要素ありそうだし(自答)


*本エピソードの裏話
 今回のエピソードであった潰れた木の実について

・オレンの実……青色の蜜柑のような見た目。途轍もなく固い。持たせると、HPが半分以下の時に一度だけHPを10回復

・グラボの実……鮮やかな赤色のサクランボのような見た目。辛い。見た目が甘そうなのに辛い。まひの回復効果がある。

・モモンの実……桃のような見た目。物凄く柔らかい。毒、猛毒への回復効果がある。

 これらは、野生のポケモンであるゾロアークが自身の回復の為に常備している木の実。

トウコが気絶中に17番水道で傷の汚れを洗い落とし、自身の腕力で握り潰した木の実から流れ出た果汁を傷口に塗り込んだり口から飲ませたりしていた。
しかし、実際に効果を示したのはオレンの実だけである。


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閑話① 彼は結構綺麗好き

4

 

 

 あのポケモンと出会ってからしばらく経ったある日の事。私は何時ものように(・・・・・・・)1番道路を抜けて17番水道の境へと向かいます。

 

 そこは、森の中でポッカリと開いている。真ん中に生えた一際大きな木が辺りの栄養と光を独り占めしたからこそ出来た空き地だ。その近くに、下流に行けば17番水道となる小川が流れており、その水も中心の大木が奪っているのだろう。

 

 そんな空き地に最近現れたポケモンが我が物顔で陣取っている。

 

 私はそのポケモンを「キツネさん」と呼ぶようになった。

 

 別にキツネさんはあの大木のようにここを独り占めしようとしている訳ではない。実際、私がここをほぼ毎日のように訪れても何も言わない。………というか、いつも『……ケッ』とか『……チッ』としか言わない。

 

 では、何故ここを陣取るような状態になっているかというと、他の野生のポケモンがキツネさんを怖がって近づこうとしないのだ。この辺りの野生ポケモンと比べ一線を画する強さを持っているキツネさん。野生に生きる彼らには近づこうとすら思えない存在なのだろう。

 だからといって他のポケモンの事を考えて場所を譲るという思考は持ち合わせていないキツネさん。

 

 まぁ、そのおかげかどうか知らないが、キツネさんと出会って以来一度として他の野生ポケモンから襲われた事は無い。出会う事はあっても何故か遠巻きに見られるだけである。

 

 

「キツネさーん、来たよー。キツネさーん!」

 

 …………………………。

 

 返事が無い。………あ、何時もの事だコレ。

 しかし、いつもは大木の木陰で涼んでいる筈だが、そこにも居ない。

 珍しい。私が来る時はいつもこの辺りにいる。というか、ここに居なかった事そのものが初の事。

 

 この辺りを探して居なかったら、少し待ってみますか。

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 結果から言うと、見つかりました。それはもうあっさりと。因みに、見つけた場所は例の小川です。

 しかし、私はキツネさんに声をかけていません。というか、木陰に隠れています。

 

 何故ならーー

 

「キツネさんが水浴びしていらっしゃる……」

 

 ーーからです。

 

 水浴びしてたら何か悪い?いやいや、そんな事ありません。しかし、キツネさんの水浴び。結構レアです。

 そう言えば、キツネさんのタテガミを背中に預けて寝る事がある。野生のポケモンなのだから多少小汚いイメージがあったが、それで服が汚れたという事は無かった。

 

 何となく、声をかけずらかったのでこのまま観察しておきましょう。

 

 

 

 ……何故かイケナイ事をしている気がする。相手、ポケモンだよ?大丈夫か、私。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 と言っても、私が覗いたのは殆ど身体を洗い終わった後のようで、キツネさんは浅瀬に近づいてきました。

 

 いたたまれなさが半端ないので声をかけちゃいますか。

 

「キツネさ……」

 

 と言いかけた所でキツネさんは此方に背を向けて座り込んだ。浅瀬なので上半身が水面から見えている。

 

 え?出ないの?と困惑する私を他所にキツネさんは後頭部に手を伸ばした。

 鋭い爪しかない三本の指で頭皮を傷付けないように細心の注意を払いながら触れる。

 頭頂部はジグザグを描くように撫でる。

 首の後ろの辺りからは円を描くように撫でる。

 ついつい洗った気になって忘れがちになってしまう生え際や耳の周り、後頭部は入念に。

 鋭い爪のせいでやりにくいそうだが、ベッドスパまでしてらっしゃる?!

 

「………………………………………」

 

 ポケモンだよ?それも半二足歩行とはいえ獣型のポケモンだよ?なのに、何でポケモンがそこまで入念に髪洗いしてんの?!

 

 しかも仕草が一々色っぽい!!耳元の生え際をかき上げるんじゃない!毛先の一本一本まで気をくばって洗うんじゃない!!うわ、シャンプーもリンスも使ってないのに髪の毛の引っかかりが無い!!

 

「…………………………………………………………………………」

 

 悶絶ものである。何故悶絶しているか私自身分からない。取り敢えず、絵面がシュール過ぎて悶絶していたという事にしておこう。

 

 しかし、ポケモンも毛並みを綺麗にする為に努力してるんだなぁ……。

 私もこの栗毛にはお母さんから褒められていて自信があったが………あるからこそ、これからはもう少し丹念に洗おう。

 

 私は木陰で一人、そう決意していた。

 

 

 キツネさんが川から上がってくる。こだわり抜いた洗髪も終わったようだ。

 川から上がったキツネさんは………身体をブルブルと降って体毛が吸った水気を飛ばす。

 

 …………………そこは、野生ポケモンぽいのね。

 

 少し、ガクリとなる。何がどうかと言われたら分からないが、何かが萎えた。

 

 そんな事をしていると、私はキツネさんに見られていることに気づいた。

 

 ーーあ、ヤバイ。何がかは分からないが、何かがヤバイ。

 

 キツネさんが近付いてくる。

 

「え、えっとね。何時もの場所にキツネさんがいなくてね?何処行ったのかなーって探してたらね?水浴びしてるのを見つけちゃってね?」

 

 私、タジタジである。

 

 キツネさんはいつもの無表情で近付いてくるからマジで怖い。

 

「えっとね?だからね?その……ね?………………………ごめんなさい!!」

 

 土下座を敢行しそう程の勢いの全力の謝罪。キツネさんが私の前で止まったのが気配で分かる。数秒間の静寂が本当に痛ましく、辛い。

 

 ややあってから、

 

『…………ハァ』

 

 というため息と共に『ゲシッ』と軽く足を蹴られた。

 

 ーー見てんじゃねーよ。

 

 そう言われた気がする。

 

 キツネさんは、そのままいつもの大木の下まで歩いていく。

 

「……ゆ、許してもらえた?」

 

 おそらく、そうらしい。しかし、もしもの事はある。

 

 ーー取り敢えず、明日はシャンプーとかリンスとかを持って行こう。

 

 そう心に誓ってから私はキツネさんの後を追った。

 

 

 

 更に暫くの時が経つと、いつの間にか私はキツネさんのタテガミの洗髪とブラッシングを任されるようになっていたが、それはまた別のお話。

 

ーinterlude endー

    ーnext episodeー




今回の閑話は第1章の構成を見ていると、「なんかトウコとゾロアークの絡みが少なくね」と思い至ったのが原因で急遽突っ込まれたエピソードです。簡単に言うと、「オラ、お前らもっとイチャイチャしろw」ってことですかねw
急ぎだった事もあり、トウコちゃんの一人称視点となりました。書きやすいな、一人称。多少無理矢理でもどうにかこうにか読めるようになるぞコレ!?

それはそうと、

…………………………。

何をやっとるだ、俺は……。この閑話を書いている間、一体何度この疑問を自分に投げかけ続けただろうか……。

ポケモンの濡れ場とか誰得だよ!!馬鹿じゃねぇーの?!
 ↓数秒後
あ、俺ってば……馬鹿だったわ……。

この思考に至ってから指が止める事なく書ききりました。
改めて思う………うん、馬鹿だわ。
トウコちゃんが変な性癖に目覚めなければ良いのだが(あくまでも、タグの異種族恋愛は予定です。それも物凄く曖昧な。取り敢えず、今の時点では本気にしないで下さい。お願いします)


今回の登場キャラクター
・トウコ……本作の主人公(幼少期)。寝起きがヤバイ事以外は快活な女の子という設定…………です。本当ですよ?少なくとも変態キャラにするつもりは無いです。本当です……信用……………出来ねぇわ。俺が一番自分の事信用出来ねぇわw
ビジュアルの変化はあまり無いです。取り敢えず、ゲーム本編開始の14歳時の衣装に多少手を加えてヘソ出しシャツを着せたいなぁと思う程度です。はい………これだけで、いかに私が信用出来ないヤバイ人か分かったと思いますw

・ゾロアーク……今回の件で綺麗好きという事実が発覚しました。洗髪が妙に人間臭い事が発覚しました。その辺は伏線(?)という事にしよう。そうしよう。
ゾロアークが使用する「わざ」の候補を選出する過程で結構な数のタイプ技を覚える事が発覚。流石「イリュージョン」持ち。ゾロアークの「わざ」保有数はバグらせる事は確定しているが、原作でしっかり使える「わざ」しか使わない事をここに誓います。まぁ、「わざ」の効果を変えたりとかはするかもしれない。というか、もう若干やってたりする。
実は、本エピソードの後、「にほんばれ」で天候を快晴にして身体を乾かしたり、「つめをとぐ」で爪の手入れをしていたりします。もう、「わざ」の保有数が4つどころか6つでも効かなくなってまいりました………。


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閑話②ー1 病床の小娘を探して・上

ここが、途中に挟み込まれた閑話です。
読者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。

それと、本日はご迷惑をおかけしたお詫びとして閑話の2話分を放出したいとおもいます。
後編は、本日27日の18:00を予定しております。


5

 

 

 最近、娘の様子がおかしい。

 

 朝早くに何処かに出かけて行き、空が夕焼けで紅く染まる頃まで帰ってこない。

 

 娘の友人達に尋ねても、最近、会う機会が減っているそうだ。娘は何処で何をしているのだろう?危ない事をしていないかとても心配だ。…………も、もしかしたら悪い男に引っかかっていたりして!?

 

『ウニャー……』

 

「レパル……。どうしたの?貴方も心配なの?」

 

 憂鬱な顔をしていたのを心配したのか、レパルと呼ばれた大型の猫ポケモンが私の頬を舐める。彼女は私が若い頃ーーポケモントレーナーだった頃からのパートナーにして、私たちの家族……まるで豹のようなしなやかな躯体の猫型ポケモンーーレパルダスだ。

 

「……そうね。ここは母親として、一度キッチリ話を聞かないとね」

 

 フンスッーーと勢いよく鼻息を鳴らす私。

 

 そのタイミングを見計らったかのように階段から聞き慣れた足音を立てて階段から娘ーートウコが降りてくる。

 そんな愛娘に母親は声をかける。

 

「あはよう、トウコ。……早速なんだけど、少し話があるからーー」

 

 そこまで言いかけてから娘の顔を見て言い淀む。

 

「………あ、おかあさん。……おはよー……」

 

 その声に何時もの快活な雰囲気は無かった。寧ろ、覇気が無くどこか舌足らずに聞こえる。

 更に、目が半分寝ているかのようにトロンとしており、顔も赤い。

 

「……………………」

 

「……なに?おかあさん…………」

 

 そんな娘に顔に手が伸び、お互いの額同士を合わせる。

 

 ーーむむ、これは……。

 

「トウコ。貴方、熱ね」

 

「………ねつー…………?」

 

 どうやら、娘は風邪を引いたようである。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 その日、ゾロアークは「もしもの時の為に」と常備している数々の木の実の中から腐ったりカビが生え始めた物の処分をおこなっていた。

 

 そこで、

 

 ーー最近、あの小娘が顔を出さない。

 

 ふと、そんな思考が頭によぎった。

 

 …………………。

 

 いや………だからどうしたという事なのだが。

 心配とかそういうのではないのだ。寂しいとかそういうものでは断じてないのだ………が、

 

 ーー全く、小煩いだけの小娘も居ないとなると……どうにも気にくわない。

 

 それに最近、あの小娘にタテガミの手入れを任せるようになってから毛並みが良いのだ。小娘が来ない間は自力で手入れを行なっているが、どうも納得がいかない。

 

 ーーこれは、俺のタテガミのためだ。断じて俺があの小娘を心配しているわけではない。

 

 おもむろに立ち上がったゾロアーク。その周りに黒い靄が発生する。それが、大きさと密度を増し、ゾロアークの腕を包む。

 黒靄が霧散し、そこにある腕は、明らかに本来のゾロアークの物とは全く違う物だった。黒と灰色の体毛が消えて失せ、代わりに白い肌と五本の指を持った腕がある。間違いなく人間の腕だ。

 それを確認したゾロアークは更に力を込る。それに呼応するように黒い靄が大きさを増し、ゾロアークを包み込む。

 

 そして、黒靄から一歩進み出たゾロアークの姿は間違いなく人間だった。若干、紅のメッシュが入った黒の長髪。ポケモンとしての姿の時程ではないが、男としては十分に長い髪を後頭部で結んだ、まだ20歳に満たないであろう青年といった風態。

 

 ーーゾロアークの特性『イリュージョン』。自身の外見を自由に変える事のできる ばけぎつねポケモン というゾロアークの分類そのものを体現した能力である。

 ゾロアークは普段この能力を使って人の中に溶け込み、生活をすることもある。……まぁ、それも今の逃亡生活を余儀無くされるまでの間だったが。ゾロアークを追っている連中はどうも彼のイリュージョンを見破る手段を得ているようで何度かそれで見つかっている。

 

「久しぶりに人間の姿になったが、おかしな所は無さそうだな」

 

 頭部に耳は残っていない。爪も人間のものだ。ーーただ、どうしても目付きの悪さがポケモンの姿同様に人間の姿に色濃く影響を受けている。

 

「あとは……」

 

 と言って、また黒い靄から衣類といった身に付ける物も生成していく。これは、『イリュージョン』の応用だ。流石に裸で人里に降りるのは憚られる。

 生成した物はどれも黒と赤を基調としている。その服の袖に腕を通し、スボンを履き、身支度を整える。

 

「これで問題無いだろう」

 

 あぁ、その通りだ。問題無い………そのお面が無ければの話が。

 顔の上半分を隠すように被られたのは黒の狐面。ゾロアーク自身を模したのか、目尻に隈取のような模様が入っている。これは、何度試しても治らなかった鋭い目付きへの対策。こちらの方が目立つのだが、逆に周りが警戒して近付いてこず初対面でいきなり人間の子供に泣かれるという事態が減った為にゾロアークが採用している。

 

「する必要はないが、様子を見に行くか」

 

 全くもって必要はないがーーと誰もいないのというのに誰かへ……あるいは自分自身に言い聞かせるように呟くと、彼の姿は森の中に消えていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 カノコタウンの南部ーー海を臨むことができる高台に見知らぬ青年がいるのをトウコの幼馴染ーーベルは見つけた。

 

 イッシュ地方の端にあるこのカノコタウンに外からの来訪はほとんど無い。だからこそ、彼女はその男の事が気になっていた。

 こんな辺鄙な村に来ている以上、何かしらの理由があるのだろうが、あそこから動く気配がない。……というか、見るからに怪しい。

 

「どうしてここにいるんだろう……」

 

「何がだ?」

 

「?!ーーッ」

 

 突然、背後から声をかけられて、心臓が跳ね上がる。驚きすぎて、唾液が気道に入ったのかむせ上がる。

 

「お、おい!大丈夫か!?」

 

 ゴホッゴホッーーと咳き込むベルに、背後から声をかけた男は心配げに声をかける。

 

「も、もう!カルカお兄ちゃん、突然声をかけないでよ、心臓が止まるかと思ったよぅ!」

 

「お、おう……。なんかスマンな。……んで、どうしたよ?ベルちゃん」

 

 「カルカお兄ちゃん」と呼ばれた男はベルの血の繋がった兄というわけではない。カノコタウンの若年層の中で比較的年が高く、面倒見が良い為か多くの年下の子供たちから「お兄ちゃん」と呼ばれ、慕われている。

 カルカはこのカノコタウンで数少ないポケモントレーナーの一人で、野生ポケモンが出没する森に囲われたカノコタウン内の防衛を担っているこの村の青年だ。おそらく、彼は相棒のハーデリアとカノコタウン内の見回りをしていた時に物陰に隠れていたベルを訝しんで声をかけたのだろう。

 

 息を整えたベルは改めて高台の青年に視線を向ける。

 

「え、えっとね……あそこにね。知らない人がいるだよ。それでどうしたのかなぁ?って」

 

「んあ?お、本当じゃねぇか。……どれ、ちょいと声をかけてくるか」

 

 カルカはベルに言われた男を見つける。あのお面が見るからに怪しいが、カルカはあまり気にならないようだ。

 

「え?」

 

 カルカはベルの腕を掴み、グイグイと男の下へ引っ張っていく。

 

「なんだ?声かけたいんだろ?」

 

「え?……ちょ、違ッ?!……ふえぇぇぇぇ!!」

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーーふむ、これは困った。

 

 人に化けたゾロアークは一人、カノコタウンの中で偶然見つけた高台で海を眺めながら今後の行動を考えあぐねていた。

 

 ーー村に入れば、何だかんだ会えるものだとばかり思っていたが……。

 

 全くそんな事は無かった。村に入ってからしばらくの間徘徊していたが、歩けど歩けど知らぬ顔ばかり、小娘には全く会えないでいる。というより、行き当たりばったりにも程がある。

 

 ーー今後どうするか……。

 

 この村からゾロアークのいる空き地までの道程で何かしらの問題に見舞われたのかとも心配したが、村ではそのような騒ぎが起こっていない以上杞憂だろう。

 

 ーー………………!……い、いや誰もあの小娘の事など心配していないからな!

 

 自分の中で沸き起こった「安心した」という感情を全力で否定するゾロアーク。

 

 そんな事をしているとゾロアークに声がかけられた。

 

「よお、兄さん。こんな辺鄙な村に用でもあんのか?」

 

 ゾロアークは声をした方を見る。犬のようなポケモンを連れた男とそれに半ば引きづられるようにして歩いて来た少女だ。男の方は今のゾロアークと同年代、少女の方は"あの小娘"と同年代といった所か。

 

 流石に、話しかけられた相手にいつまでも仮面を被ったままなのは失礼だと分かっているゾロアークは振り返ると同時に面を取る。

 

 少女は、ゾロアークと視線が合うと、酷く狼狽する。解せぬ。

 

「おうおう、兄さん。そんなに睨みなさんなや。……ベルってんだが……この娘が怖がっちまてるじゃねぇかよ」

 

 ーー睨んどらんわ、失敬な。

 

 そこで初めて人間体ゾロアークの三白眼が不快気に細められる。

 

「……目付きの悪さは生まれつきだ」

 

「ん?あぁ、そうかい。そいつは悪かった。……ベル、そこの兄さんは怒ってないってよ」

 

「う、うん……」

 

 そんなやりとりを黙って見ていたゾロアークはおもむろに要件を聞く。

 

「……で、何の用だ?」

 

 何かしら用事があったから、話かけてきたんだろう?、とゾロアークはたずねる。

 

「用って程の事じゃあねぇんだがな……。どうも、俺たちには兄さんがお困りのように見えてね。ここは村の者として何か助けになれないかな、と思ってね」

 

 青年の言葉にゾロアークは多少の迷いを覚えた。しかし、結局それを「渡りに船」と考え直し、言葉短かに話す。

 

「………人を探している」

 

「へぇ、人を……か。なら安心だ。ここは世間が狭いからな。村の連中なら皆知り合いだ」

 

 で、探してる奴っての誰なんだ?と聞かれ、ゾロアークは口を開きかけるも、そこで止まる。

 

 ーー名前……。そういえば、あの小娘の名前は何だったか……。

 

 「小娘」としてしか覚えていなかったから名前なんぞ記憶していない。

 ………いや、言っていた気がする。初めて会った時に勝手に自分の名前を言っていた筈なのだ。

 

 ーーたしか、「小娘」の名前は……

 

「……トウ……コ、だ」

 

 ほとんど記憶の片隅に埋まっていたその名前を引っ張り出す。

 

 その名前に少女はピクリと反応するが、それだけ。

 

「トウコちゃんか。ははーん、さては兄さん。兄さんはトウコちゃんのお見舞いに来たんだな。……ん?わざわざ外から?」

 

 青年は自分の言った内容に違和感を覚えたようだが、それが疑問になるより早く、ゾロアークの質問が耳に届く。

 

「……お見舞い?」

 

「なんだ、兄さんは知らなかったか。どうもトウコちゃん、数日前から風邪で寝込んでいるそうなんだわ」

 

 ーーあの小娘が風邪。

 

 ゾロアークは小さな驚きを覚えるが、逆に納得もした。どうりで来ない訳だ、と。

 

「成る程、大体分かった。情報感謝する」

 

 「あの小娘が来ない理由が分かればそれで良い」とばかりに、青年に礼を言って、空き地に帰ろうとする。しかしーー、

 

「待とうや、兄さん」

 

 と、呼び止められた。

 

「……何だ?」

 

「いやぁ、兄さん。兄さんはトウコちゃんの家分からんだろう。良かったら案内してやんよ!」

 

 そういう提案をされた。しかし、ゾロアークとしてはそこまでするつもりは無い。

 

「……いや。だが、あの小むーートウコは風邪なのだろう?ならば邪魔をして、風邪を悪化させる訳にもいかないだろう」

 

 やんわりと「お断り」しようとするも、青年の親切心はそれを理解しなかったようだ。

 

「いやいや、わざわざ外から訪ねに来たんだろ?なら、お見舞いくらい行っても文句なんてねぇだろうさ。さ、とっとと行くぞー」

 

 親切の押売りと言うのだろうか、これは……。

 

 余計なお世話だと切って捨てる事もできるが………いつも楽しそうに何かを話している小娘が風邪で寝込んでいる。それを見てみるのも一興、と考え付いて行く事にした。

 

「あ、そう言えばさぁ……。オレ、兄さんの名前聞いてなかったわ。コイツはさっきも言ったが、『ベル』。オレは『カルカ』。兄さんは?」

 

 狐面を被り直したゾロアークはそれに喉を詰まらせる。

 

 ーーそういえば、名前を考えてなかった…….。

 

 自分の考えの至らなさに苛立ちを覚え「……チッ」と舌打ちを打つ。

 

「………………ラーク、だ」

 

 「ゾロアークだ」などとポケモンの名称を名乗る訳にもいかい。

 安直だが咄嗟に思いついた名前をゾロアーク……いや、ラークは名乗った。

 

 

ーto be continuedー




というわけで、急遽挟み込まれた閑話。
ぶっちゃけ、本作オリジナルのカノコタウンの住人、カルカ君のお披露目回ですな。そこまで重要なキャラじゃないけど、彼いないと後々面倒になってしまってな。読者の皆様にはご迷惑をおかけしました。
しかし、ただで転ばないのが私ーーMr.bot!
この際だから、「ゾロアーク君、人間に化ける」とか前々から何となく問題視してた「トウコ。お前、エピソード外でゾロアーク君への好感度爆上がり問題」にもある程度手を加えてやりましたよ。
まぁ、後者の方はトウコとゾロアークのイチャイチャエピソードを打っ込むだけの簡単なお仕事ですけどねw

因みに、本エピソードは前後編です。思った以上長くなってしもうたわ。本日中に更新予定です!


今回の登場キャラクター
・ラーク……今後、ゾロアーク君が人間に化けて登場する際は基本これでいく所存。あと、人間体だと人間社会で波風をたてないようにする為か舌打ちが極端に減り、結構喋るようになる。
見た目の年齢は18、19といった所。あと目付きの悪い「三白眼イケメン」です。
服や髪などの色はゾロアーク君のイメージカラーである黒と赤を採用。しかし、それだけだとちょっと芸が無いので、髪の色の赤と黒の比率を逆転。ポケモン体では「紅」が基本で枝毛っぽい外に跳ねた部分だけ「黒」。しかし、人間体では「黒」を基本に「赤」の部分はメッシュでアクセント程度としました。あと、あのタテガミのボリュームの髪量の人間は大変浮きそうだったので、完全に下ろしても肩甲骨の半分まで程度に抑えて、後頭部で結わえる事に。目付きの悪さもポケモン時譲りです。
そこまでは、結構以前から作者の頭の存在したが、狐面に関しては別。執筆中に「ふたつのスピカ」というアニメのライオンさんというキャラを思い出して、「あ、いいかも〜」という事で急遽採用されましたw偶然だが、「キツネさん」と「ライオンさん」……名前に通じる物を感じるしね!

・トウコ……今回、風邪を引き寝込んでいる主人公にしてヒロイン。まだ、ガチでゾロアーク君に拗らせてる前だが、既に好感度高めな模様。

・ベル……ちょっと今回影が薄かった主人公の幼馴染。むー、やっぱり原作キャラはキャラが安定しない。
どうやら、アニメ版とゲーム版で若干の違いがあるらしく、それを確認せずpixiv辞典などの字面からの解釈でキャラ付けしているから、これがマジで安定しない。もう、「ふえぇぇえ」しか記憶に無い。

・カルカ……本来登場させるとしても、2章だけになるかなー?と思っていたオリジナルキャラクター。
作者が「カノコタウンって森に囲われてるけど、野生ポケモンの被害とかどうしてるんだろ?」というゲーム制作会社的にあまり触れて欲しくないであろうガチ考察から生まれました。
彼の役割は、(作中でも語っているが)カノコタウンの見回りと野生ポケモンからの防衛。相棒の犬型ポケモンのハーデリアと村中を歩き回っている。まぁ、それだけだと日がな一日歩き回ってるだけの放蕩坊やなので、村人の頼み事を聞く「何でも屋」的な事も行なっている。
陽気な性格で、カノコタウン若年層からは「兄」と慕われている。
トウコの母ーートウカには頭が上がらないらしく口調が変わる。

・トウカ……トウコの母。若い頃は、相棒のレパルダスと共にポケモントレーナーをやっていた模様。
一児の母となってからある程度落ち着きを持ったらしいが、色々と早とちりして暴走する事が偶にあるとかないとか。
レパルダスのレパルは、そんなトウカのお目付け役でもある。
因みに、今回の暴走思考は「トウコが、悪い(あくタイプ)の男(尚、オスのポケモン)に引っかかる(というか、近い未来で拗らせる)」てある。………あながち間違いじゃないんだよなぁ……。
トウコを生むまではカルカの前任者としてカノコタウンの防衛を行なっていた為、レパルダス含めポケモントレーナーとしての実力は相当な物と考えられる。

・レパル……トウカの手持ちポケモン。豹のような細身の躯体と巨体の紫色の猫型ポケモンーーレパルダス。体長が1.1mと猫と言い張るにはデカ過ぎる。
トウカの事は信頼しているが、若干暴走気味な思考のブレーキ役でもある。
トウコの事は我が子のように思って可愛がっている。



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閑話②ー2 病床の小娘を探して・下

お酒って怖い………

この話は前後編の閑話となります。


6

 

 

 拝啓、お父さんとお母さん。ベルです。

 

 私は今、風邪で寝込んでいるトウコちゃんのお見舞いに来ています。

 本当は昨日行ったばかりなんだけど、カルカお兄ちゃんに連れられて二日連続でのお見舞いです。

 

 そうして、トウコちゃんの家に居るのですが……

 

「…………………」

 

「…………………」

 

 何故か険悪な雰囲気が漂っています。主にトウコちゃんのお母さんから。ラークさんは素が剣呑な顔なので違いが分かりませんが……。何故か二人は対面に座って睨み合っています。

 

 辛いです。私関係無いのに、同じ空間にいるだけで凄く憂鬱です。あ、カルカお兄ちゃんは逃げました。後でとっちめてやりたくおもいます。

 

「ふ、ふえぇぇぇ………」

 

 ーー助けて下さい。

 

 力無いベルの悲鳴は二人には届かなかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 カルカという男に着いて行った先にあったのはごく一般的な一軒家だった。

 ただ、付近にやけに大きな屋敷があったのには気になったが、それは今のところ関係無い。

 

「トウカさん居るッスか?カルカっスけど」

 

 カルカという青年はその一軒家の戸を叩く。ややあってから、その戸が開き、小娘の母親らしき女性が顔を出した。

 

「カルカ君にベルちゃんじゃない。どうしたの?またお見舞いに来たの?」

 

 カルカが「うっス」とラーク、ベルという少女が「こんにちは」と挨拶すると、トウカと呼ばれた女性はニコニコと笑っている。

 その姿はどことなく小娘と似ているように感じ、やはり親子なのだな、とラークは確信を持つ。

 

「まぁ、そうなんスけどね。……でも、今回は俺たちじゃなくて、後ろのお兄さんがーーがってのが正しいッス」

 

 と言ってカルカはトウカの視線を妨げていた自身の身体を避ける。そこで初めてトウコの母親ーートウカと人間体ゾロアークーーラークの視線が合う。

 

「……初めて見る顔ね。一体どなたかしら?」

 

 ーー小娘の母親の視線が鋭くなった?……解せぬ。

 

 目付きが悪い事を自覚しているラークは、当然初対面で何度となく「損」をしている。が、ここまであからさまな……敵意にも似た視線をいきなり叩きつけられたのは流石に 初 の事である。

 ラークはまさか『イリュージョン』がバレたのか、と警戒する。

 

 その剣呑な雰囲気を敏感に感じ取ったらしいカルカは、

 

「こ、この人はラーク。どうやら、トウコちゃんと『お友達』らしいッス。………で、ではオレはこれで!!」

 

「おい、ちょっとーー」

 

 ちょっと待て。一体誰と誰が『お友達』だって?ーーそう言ってやりたかったが、すでにカルカは足早にその場を去って行った後だった。

 

 ーーあの男、逃げやがった。

 

 別にそれ自体を責める気は無いが、せめてそこのベルとかいう少女も連れ出してやるべきだろうに。

 哀れな少女は、まだ何も分かっていないのか、「え?、え?」と小さくなって行くカルカの背中を見つめて困惑している。

 

「もう、カルカ君は本当にせっかちなんだから。ここで立たせるのも何だし、ベルちゃん………それにラーク君も中に入りなさい。私、貴方に聞きたい事があるの?」

 

 この辺りで残された哀れな少女も違和感に気付いたようだ。なんせ、トウカという女は笑顔だというのに目が一切笑っていなかったからだ。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーーえぇ、そうね。やっぱり、そうだったのね。

 

 突然、トウコを訪ねて来たという狐面の『お友達』。当然、このような目立つ風態の男、村にはいない。つまり、カノコタウンの外の人だ。

 それに最近、娘の帰りが遅く、娘の幼馴染達はトウコの行方を知らない。

 

 ーー間違いない。この男は、娘のボーイフレンドだッッ!!

 

 それなら、最近の娘の行動の謎にも納得がいく。いや、いってしまう、というべきか。

 

 ーー10歳程度の差は十分にあり得るッ!実際、私と旦那は年の差婚だしッ

 

 ーーあり得てたまるか!(by作者)

 

 冷静に考えて見てほしい。男ーーラークの外見年齢は20歳手前といった所。そして、トウコは8歳。その差10歳以上である。

 勿論、20歳と30歳の男女の関係は十分あり得るだろう。しかし、20歳手前と8歳は流石におかしいだろう。20歳と30歳の差は1.5倍に対して、仮に18歳と8歳ならその差は2倍以上。同じ10歳差でもその意味は大きく変わってくる。

 

 それに気付かない辺り、トウコの思考は暴走気味だ。

 

 だが、だがである。この場合に限って言えばーー。様々な不確定要素込みで言えばーー。

 

 ーーあながち間違いじゃないんだよなぁ……(by作者)

 

 作者は、主に第1章の2ー1〜2ー4のエピソードを見ながら溜息を吐いた。

 

 閑話休題。

 

 そんなトウカの暴走気味な思考をとどまるところを知らない。

 

 ーートウコ「お母様、わたくし このラークさんと添い遂げますわ」

 

 ーーラーク「義母様、俺は必ずトウコを幸せにしてみせます!」

 

 ーートウコ&ラーク「「だから、お母様(義母様)。さよ〜なら〜!」」

 

 ーー私「待ってぇ!トウコ!お母さんを置いて行かないでぇー!」

 

 などという謎過ぎる茶番劇的未来絵図を描き始めてたトウカは顔を青くさせる。

 

 ーーいいえ、駄目よ!そんな事、認められないわ!

 

 トウカは(自身の脳内でのみ)目を赤く燃やす。

 

 ーー娘の純潔は私が守ってみせるッ!こんな何処の馬の骨とも知れない男に娘は傷つけさせないわッ!

 

 トウコの思考は家族愛で燃えていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーー下が……何か凄い事になっているわね。

 

 病床に伏せるトウコを甲斐甲斐しく世話をしながら、トウカのポケモンーーレパルダスのレパルは感じ取っていた。

 

 別に下が煩い訳では無い。ただ、並々ならぬ圧力を下の階から感じるのだ。

 

 ーーうわー……行きたくねぇー……。

 

 大体、その発生源に予想がつくレパルは急に精神的な疲れに襲われた。

 アレの暴走を止めるのはレパルの役割だが、非常に疲れるのだ。………何故か。

 

 ーー下がどうなってるこ分からないけど………取り敢えず、私も覚悟を決める時間が欲しいわ。

 

 尚、ややあって決まったのは『覚悟』ではなく、『諦め』だった模様。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーーなんだ、この状況は……。

 

 辟易とするラークは謎の疲れに脅かされていた。

 

 1つの丸テーブルを囲うように三人の男女がいた。

 

 一人は、狐面を外した人間体ゾロアークこと、ラーク。

 一人は、その対面に背後に謎の『使命感』という炎を燃やすトウコの母ーートウカ。

 一人は、その熱気に燃えるトウカにも、初対面のラークにも近づき難い雰囲気を感じ、どちらからも離れどちらから見ても等距離の所に座る涙目のベル。

 三人は丸テーブルを間に挟み三角形をを描くように座っていた。

 

「………改めて自己紹介させてもらうわね。私はトウカ。トウコの母親です」

 

 憎っくき男を前に、殴り付けたい衝動を堪え改めての挨拶から入るトウカ。

 落ち着け、ママさん!これはボクシングではない。会話だ!

 

「ラークだ」

 

 辟易としているラークは言葉短かに名乗る。……あ、辟易としてなくてもこんな感じだったわ。

 

「………ベルですぅ」

 

 この状況に耐えかね、目を潤ませて答えるベル。もう、帰らせてやれよーーと自己中心的なラークが他人を慮る程度には痛々しい。まぁ、そのラークも思うだけで行動はしないのだが。

 

「……そう。それでラーク君は、わ・た・し の娘と一体どういう関係なのかしら。一応、『友達』と聞いているけど、貴方の口から聞きたいわ」

 

 まずは小手調べと言わんばかりの軽いジャブ。本当は蹴り飛ばしたいのだが我慢を重ねるトウコ。

 落ち着け、ママさん!これはキックボクシングでは無い。会話だ!

 

 それに、ラークは考え込むような仕草を取る。

 

 ーーあの小娘との関係。それは一体何なんだろうか。

 

 と。

 

 そのまま考え込んだまましばしの時間が経つ。そして、おもむろにトウカへと向き直り、

 

「………初めに言っておくが、俺はあの小むーートウコと『友達』では断じて無い。アレはカルカとかいう男が勘違いしただけだ」

 

 いきなりの『トウコ』呼びにとうの額に青筋が浮かぶのを見てしまったベル。もう良い!君は直ぐに帰るんだ!

 

「俺とトウコはーー身体を洗ってもらう関係だ」

 

「ツーーーーッッ?!」

 

 ーーラークの一撃。トウカには効果は抜群だ!!

 

 その答えにトウカはよろけ、ベルは顔を朱に染める。

 

「へ、へぇ……そ、そうなの」

 

「あぁ、そうだった。……ついでにその後の『手入れ』もして貰っている」※『ブラッシング』の事です。

 

「ーー□*☆$¥%×<ツッ?!!?!!??!!」

 

「?」

 

 ーーラークの追撃。トウカの急所にも当たった!!

 

 流石に「隠語」の概念が無い8歳児のベルには何を言っているか分からなかったようだ。

 

「………む、どうした?……むむ、意識が」

 

「……き、気絶してる?」

 

「……………」

 

 しかし、トウカには絶大。どうやら、この戦いラークの「1・2ラッシュ」でストレート勝ちのようである。

 

 ラークにもベルにも何故、トウカが意識を失ったか分からないようである。取り敢えず、近くのソファに寝かせる事にする。

 

 ソファに横たえたラークはベルに向き直る。

 

「今日はすまなかった」

 

 と謝った。

 

「……え?」

 

 困惑するベル。ついでに作者も困惑してる。

 

「今日のお前は、カルカとかいう男に無理矢理連れて来られ、先程の一件で涙目にもなっていた。主に謝るべきはあの男だが、ここにいない以上他ーーつまり私が謝る以外にあるまい」

 

 ーーだからすまなかった、と頭を下げる。

 

「い、いえ……そんな、謝られる程の事ではない……と」

 

「む、そうか?しかし、もう謝ってしまった以上この話はこれで終わりだ。……俺はトウコの顔を見てから帰るとするが、お前はどうする?」

 

「え?えっ……と。じゃあ、私はそのまま帰ろうかな?実は昨日、お見舞いに来たばかりだったし。あまり大人数で会いに行くのもどうかと思うし」

 

「そうか。……ふむ、ところでトウコの部屋はどこだ?流石に人の家を歩き回るのは気が咎める」

 

「トウカちゃんの部屋はそこの階段を登って直ぐです」

 

 そうか、ではなーーという言葉を最後にラークは階段の陰に消えていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 諦めの境地に達したレパルは、トウコの部屋から出、階段に足を乗せた時、下から上がってくる狐面の男に気付いた。

 

「む、ここの飼い猫か。随分と大きい」

 

 見るからに怪しいのだが、その堂々とした態度に何故か咎めるのを躊躇ってしまう。

 

「ところで聞きたいのだが、小むーートウコという少女の部屋はお前の後ろのドアの先で良いか?見舞いに来たのだが」

 

 その言葉にレパルは自然と頷いてしまう。

 

『ウニャ……(そうよ……)』

 

「ふむ、そうか。情報感謝する」

 

 そう言って、狐面の男はレパルの横を抜けて、トウコの部屋へと消えていった。

 

 ーー今、あの男……私と会話していなかったか?

 

 振り向くが、そこにはトウコの部屋へ通じる扉しかない。

 

 ーーまぁ、気のせいでしょう

 

 レパルは向き直り、下へと降りていく。

 

 ………………。

 

 ーーえ、何?これ?どういう状況?

 

 レパルが下に降りた先で困惑の声を上げるのは言うまでもなかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「おい、小娘。来てやったぞ。………む」

 

 トウコの部屋で『イリュージョン』を解くかどうか迷っていたラークは、トウコが寝ている事に気付いた。

 

「なんだ、寝ているのか」

 

 寝息も安定しているようで、風邪もほとんど治まりかけらしい。

 

 ラークは部屋の中にあった椅子をトウコの寝るベットの上にまで運び、ドカリと座る。

 そして、ハァ〜と息を吐く。

 

 ーー今日は疲れた。

 

「小娘、貴様が最近あの森に来ないせいで今日は本当に疲れたぞ」

 

 ーー本当に。これはあの連中に追い回された時以上かもしれん。

 

 一瞬の静寂。トウコのスピー、スピー……という寝息が部屋を支配している。

 

「おい、分かっているのか?貴様。俺が『連中に追い回されている時よりも』と言うのだから、相当だぞ」

 

 幸せそうな寝顔が少しラークの癇に触ったのか、その頰を指でつつく。少し、寝苦しそうだ。

 

「だいたい貴様は、毎日毎日あの森に来るくせにして……」

 

 プスプスと突きまくるラークの小言はそこで止まる。

 

「…………キツネさん……あしたは…………………あいに……………いくから…………」

 

 トウコの寝言らしい。

 

 それを聞いて、ラークのつつきはピタリと止まる。それからややあって、溜息。

 

 そして、狐面を少し下へとズラしーー

 

「………貴様というヤツは……もう、好きにしろ。…………………………………………………待っているからな」

 

 その時の表情は、長い髪と狐面で隠され、誰の目にも入る事はなかった。

 

「さて、帰るか」

 

 ーーあの森に

 

 そう言いかけて、ピタリと動きが止まる。

 

 ーー帰るには、下に降りる必要がある。

 

 ラークの頭に小娘の母親の顔が思い浮かぶ。

 

 ーー降りる?下に?

 

 …………控えめに言って、凄く、嫌だった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 風がトウコの鼻を擽る。それがこそばゆかったのか、鼻を掻きあくびをする。

 

「ん。んーーー!よく寝た!……ってもう夜じゃん!」

 

 トウコがベットの上で大きく伸びをして、辺りが暗くなっている事に気づく。

 

「あー……そう言えば、最近キツネさんに会えてなかったなー。ベルたちはお見舞いに来てくれたけど、流石にキツネさんはねー」

 

 来れないと思うし、来ないと思う。そんな事を「あははー」と笑いながら周囲を見回し、やけに明るい月光によって何かの影が視界に入る。

 

「………これって、木の実?」

 

 ベットの近くに不自然に置かれた椅子。その上に木の実が小さな山を作っていた。

 トウコはそれを1つ手に取る。

 

「……………いや、まさかね」

 

 そう呟いたタイミングで夜風がトウコの部屋に入り込んだ。

 

「ヒャッ!?……もう、なにー?寝る前は窓閉めてた……はず………」

 

 そこまで言いかけて、何かを考え込むトウコ。その後、フフ……と小さな笑みを浮かべる。

 

 トウコは大きく開かれた窓から外をーーキツネさんがいる森の空き地の方角を見つめる。

 

「…………お見舞い、ありがとうございます」

 

 手に取っていた木の実を口に運んだ。

 

「……うん、甘酸っぱい」

 

 夜というのは深く、暗い。それは人工の光が少ないカノコタウンではより一層だ。

 しかし、その夜は月の光がいつもより強かったのか、小さな実を頬張る少女の姿を淡い光が灯していた。

 

 

ーinterlude endー

    ーnext episodeー




このw落差wであるwwwwww

自分、小説とか漫画とかでああいう茶番じみたギャグシーンって苦手なんですよね。ついつい見たり読んだりしている自分がこっぱずかしくなってすぐに読み飛ばしてしまうんですよねー。

そんな俺が書いた茶番劇!感想言わせて、「お酒って凄い……」。冗談抜きでこれお酒抜きだと書けんかったわw
そして、それを投稿する勇気よ……w

そして、このイチャイチャであるw序盤〜中盤のアレは何だったのか?いや、本来はもうちょいマシな話だったんだよ?本当だよ?酒が抜けて見直すと……ヤバいわ……。


今回の登場キャラクター
・ラーク……ストーリー開始以前の時系列の頃から度々人になっていたラーク君。道中で拾った木の実やアイテムを売り払って、その金で「わざマシン」を買い求め、自己強化とかしていったのかなぁとか勝手に考えてたりする。

・トウコ……ゾロアークと直接会わなかったのに、この甘ーい展開。作者はトウコとゾロアークのイチャイチャレベルの高さに今更ながら衝撃を受けておりますwきっと彼女らのイチャイチャレベルは53万でしょうw………イチャイチャレベルって何やねんw

・トウカ……思った以上に愉快な事になったな、この人。これがお酒パワーだ!!!!
しかし、これ2章で拗れそうだなぁ。もう、ラークの発言が衝撃過ぎて記憶飛んだ事にでもしよう。そうしよう。

・ベル……なんか今思うと、この娘、以前「寝起きのトウコに襲われたり」してたよな?作者によって特に目立った出番も無いのに出され、酷い目に合う。不遇だなぁ(棒)

・レパル……お前、もっと仕事しろよぉ!トウカのお守りはお前の役目だろぉ?

カルカ……頼れるお兄ちゃんとは何だったのか?

・作者……独自思考を3つ保有しており、それぞれ「主人格、ボケ、おふざけ担当の 作者A」と「ボケ、パロディ担当の 作者B」と「ツッコミ担当の 作者C」が存在する。
今回、お酒のパワーで地の文に特殊召喚された。お酒ってスゲーw


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2ー1 貴方の名前は何ですか?①ーRAINYー

7

 

 

 私があのポケモンーーキツネさんと出会ってから、もうすぐ2ヶ月が経とうとしています。

 この時期は雨が多く、キツネさんに会える機会が減り少し憂鬱な気分です。

 

 私は雨粒が流れ落ちる窓越しに、ここからは見えない大木の空き地に想いを馳せる。

 

 キツネさんは今頃どうしているのだろう……。

 あの木の下で雨宿りしているのだろうか?水浴びしても濡れた毛が鬱陶しくてイラついているのだろうか?

 

「……私と会えなくて寂しい……って思ってくれていたらーー」

 

 思ってくれていたら、どうなのだろう。

 

 …………………。 

 

 ……何かこれ以上この事を考えると色々と引き返せなくなりそうなのでやめよう。

 

 えっと、何の話だったか?あぁ、そうそう「私はキツネさんの事をあまり知らない」って話だった。

 

 え?違う。いやいや、大体合ってると思う……よ?

 

「そう言えば、私……キツネさんの本当の名前も知らなかったんだ……」

 

 キツネさんの事で知らない事が分かれば、それが何であれ知りたいと思ってしまう。

 

 ーー知りたい。知りたい。

 

 とめどない。ただ、私の中でよく分からない感情が暴れ回る。

 

 ーー私は「キツネさん」が知りたい。「キツネさん」に私を知ってもらいたい。

 

「あ……知ってもらうのは難易度が高そうかも。私が何話しても無視するか舌打ちするかだもん」

 

 これはキツい。取り敢えず、知ってもらうのは後にしよう。そうしよう。

 

「キツネさん、ーーーーーーーーーー?」

 

 その言葉は、届かない。

 「キツネさん」にもーー。

 大木の空き地にもーー。

 

 距離という壁に邪魔される事さえなくー。

 引っ切り無しに降り注ぐ雨音にも邪魔される事さえなくーー。

 

 ーートウコの感情は窓に当たって床に落ちた。

 

 誰にも届かないこの言葉を窓に映った私だけが聞いている。

 

 

 ーー会いたい。会いたい。

 

 この小さな願い事のような想いが、「あの日」を引き起こす引き金になる事をトウコは知らなかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「いやはや、昨日まで雨続きだったからちょっと憂鬱だったけど、わたしの記念すべき第一歩であるこの日が晴れで本当に良かったわ!」

 

 女性の声がする。

 その女性は20台半ばといった所だろうか?膝上の丈の短いタイトスカートを履き、女性物の上着の上からサイズの大きい白衣という随分と目立つ出で立ちの女性だ。

 

「あらら?ここって何もない辺鄙な村だとばかり思ってたんだけど……意外とそんな事無かったわね」

 

 その女性を知る人は誰一人としていない。当然だ。この女性はカノコタウンに今日越してきたからだ。

 

「さーて、この村は一通り見た事だし。わたしの研究所に向かいましょうか?」

 

 彼女の名前は、アララギ。ポケモンの起源について研究しているポケモン博士である。

 

「…………………研究所って何処かしら?」

 

 ……………ポケモン博士である。

 

 

ーto be continuedー




と、投稿間に合ったぁ!!絶対無理だと思ってたのに……。やればできるものだ。

トウコのセリフの伏せ字は今話のタイトルと同じです。今回はプロローグという事もあって短めです。
今回のエピソードはカノコタウンでの話なので、ゾロアーク君の出番は無いです。

次回以降の投稿予定として

・4/24 18:00 2ー2 貴方の名前は何ですか?②
・4/25 18:00 2ー3 貴方の名前は何ですか?③
・4/26 18:00 2ー4 貴方の名前は何ですか?④

投稿予定です。よろしくお願いします。


登場キャラクター
・トウコ……ヤベェぞコイツ。ガチでポケモン相手に拗らせ始めよった……。その感情が何かを8歳という経験不足ゆえ分からずもどかしく感じ、8歳という少女ゆえに暴走し始める感情の止め方を知らない。……………………お前、本当に8歳か?!作者が8歳の頃とか、もっとガキガキしてたゾ!それもこれも俺が悪ノリしたせいだ!悪ノリして、過剰に盛ってしまったせいかゾロアークへの好感度がカンストw「おい、前話までの間に何があったんだ?!」状態で草生やすw

・アララギ……やってまいりました若かりし頃のアララギ博士!原作本編でのキャラデザは30代をイメージしているらしいので、現在は大体25歳!……実際の過去の時系列がどんなモノか分からないので作者の捏造全開で登場させましたとも。……しっかし、プレイしていたゲームの記憶がうろ覚え過ぎてキャラが壊れてないか怖い。ロリ幼馴染はまだロリだからある程度誤魔化しが効くが、それも原作本編開始まで。原作のキャラクター達が作者の胃袋をキリキリと攻め立てる!w


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2ー2 貴方の名前は何ですか?②ーINFERMALー

8

 

 

 その日は、雨季の時期としては珍しい晴れ模様だった。

 

 その日を待ってましたと言わんばかりに駆ける少女がいる。トウコだ。

 行き先は決まっている。「キツネさん」の居る大木の空き地である。1週間か2週間か……それだけの間溜めに溜めた思いが一気に外へと飛び出し、一直線にキツネさんの下に走る。

 

 ウッキウキである。雨季だけに。

 

 ………。

 

 ………………。

 

 ………………………失敬。

 

 

 まぁ、そんな訳で水たまりを飛び越え、柵を飛び越え、上機嫌にカノコタウンを駆け抜けていく。

 

 そして、いざ1番道路にっ、というタイミングで彼女の手を捕まえて止める女性がいた。

 

「ちょっと、貴方。何処行くの?そこから先は野生のポケモンがいる危険な所よ?」

 

「お姉さん、誰?」

 

 初めて見る女性だ。少なくともカノコタウンの人間では無い。

 

「お姉さん?お姉さんはアララギって言うの?今日、ここに越してきたの。よろしくね」

 

 アララギと名乗る女性は「ハーイ!」と手を上げてニッコリと笑っていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「あそこに見える大きな家が村長さんの家。よく分からないけど、後であいさつしに行った方が良いと思う………思います」

 

「そうだね。先に引っ越し先に送った荷物の中に菓子折りを入れてたから、後で挨拶に行きましょうか!」

 

 数十分後のカノコタウンに2人の人影が歩いていた。トウコとアララギだ。

 

「いやぁ、助かったよ。イッシュ地方の端の方の村だって聞いていたから、小さい限界集落みたいなのを想像してたんだけど……思ったより広くて、私一人だと絶対に迷っちゃってたわ」

 

 アララギと名乗る女性は快活な笑みを浮かべトウコの隣を歩いている。

 話を聞くと、どうやらこの村に引っ越して来たのは良いものの、引っ越し先が分からなくて困っていたようだ。

 何処に向かえば良いのか分からず、入り口で困り果てていた所に偶然通りかかったトウコを見つけて呼び止めたのだ。

 

「ありがとね、トウコちゃん。引っ越し先どころか、この村全体の案内まで引き受けて貰っちゃて。いやー、お姉さんは嬉しいわぁ」

 

「……………」

 

 何処かわざとらしさが残るアララギの言葉に、トウコはカチンと小さなイラつきを覚える。

 

 そのイラつきには理由がある。トウコを呼び止めたアララギは早速道案内を頼んだんできたのだ。

 それ自体に問題は無い。だが、「キツネさん」に会うつもりだったトウコはその頼みを渋ったのだ。ここしばらく会えていないという事実もあり、本当に迷ったのだ。まぁ、悩みに悩んだ末に、困っているらしい女性を見捨てる事をトウコは良しとしなかっただろうが。あろう事に、アララギは渋るトウコの耳元で「村の外に出ようとした事は黙っておいてあげるから」と囁いてきたのだ。

 そこでトウコが動揺してしまったのも悪手だった。それによって「村を子供だけで出る事がいけない事」で「それを大人に黙ってやっている事」を悟らせてしまった。

 

 「悪い事」をしていたのは事実だ。しかし、なんだかんだアララギの頼みを引き受けるつもりだったトウコにとって、このような脅しを受けて良い感情を持つ筈も無い。

 

「………アララギさんは何をしている人なんですか?」

 

 本人は隠しているつもりなのだろうが、言葉の端々から感じれる不機嫌な雰囲気に苦笑を隠さないアララギ。同時に何だかんだ丁寧に道案内してくれているトウコに好意を持ち始めている。

 

「うーん。そーだねぇ……。まぁ、簡単に言えばわたしはポケモンの研究をしているの」

 

「ポケモンの……」

 

「そう。言ってしまえば『ポケモン博士』だね」

 

 それを聞いたトウコは押し黙り、何かを考え込むような仕草を取る。それに気付いたアララギは「どうしたの?」と聞く。

 

「ポケモン博士って事はポケモンの事は何でも知っているって事ですか?」

 

「え?うーん……。そうね、何でもは知らないかな?ポケモン博士って言うのはポケモンについて分からない事を調べて『分かる』ようにする人の事だからね」

 

 それに私はポケモン博士に成り立てのペーペーだからね、と笑う。

 

「まぁ、それでも普通の人よりは知っているって自信を持って言えるわね。………トウコちゃんはポケモンについて知りたい事があるの?」

 

 ある。とてもある。たった一種類……いや、たった一匹のポケモンの事だが、全ての事を知りたいと思うポケモンが居る。

 

「居ます。………一匹だけ」

 

「もしかして、それって村の外に出ようとしてたのと関係ある?」

 

「………………」

 

「やっぱり!……と言う事は野生のポケモンね」

 

 パンッと手を合わせてズバリと正解を当てていくアララギ。

 

 ………………………何も言っていないのに直ぐにバレてしまった。

 

「うーん、この辺りに群生する野生ポケモンについての資料ってあったかしら?………取り敢えず、帰ってから調べましょうか」

 

「調べてくれるの?」

 

「えぇ、勿論よ。………この村を案内してくれた後にね」

 

「言われなくても案内はしますよ」

 

 一番初めのやりとりもあって、アララギの一挙手一投足にイラつきを感じているトウコ。

 しかし、アララギはそれ以降の案内の声に若干の弾みが戻っていたのを目ざとく気付いていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 トウコとアララギの二人は、アララギ博士の研究所となる引っ越し先に行く前に、最後の案内先としてカナコタウン最南端に足を運んでいた。

 そこはイッシュ地方東南端の海を一望できる見晴台だ。

 

「地図見た時から随分と端の方にある村だと思ってたけど、まさか海に隣接してるとは思わなかったわ……」

 

 その先には何もなく、見渡す限りの全てが青。空の青と海の青が同化して水平線が何処かさえ分からない。

 

「ねぇ、トウコちゃん!下に降りてみない?ちょっと海の上を歩いてみたいわ!」

 

 喜色満面の表情のアララギ。

 

「いや、ダメですよ。昨日まで雨降ってたんですから」

 

 遠くを眺めているとそれ程でも無さそうだが、砂浜近くの波は荒い。

 

「あらら、それは残念。……じゃあ、夏に一緒に海水浴に行きましょうか!」

 

「え?私もですか?」

 

「当然じゃない。ね?いいでしょ」

 

 一体何処らへんが同然なのか……。トウコは深く考えるのをやめた。

 

「……それよりも、この村の案内は、最後にアララギ博士の引っ越し先で終わりです。約束守って下さいね」

 

「分かっているわよ。それじゃあ、早速その野生ポケモンについて調べる為にわたしの研究室に行きましょうか」

 

 そう言って二人が見晴台から引き返そうとした時、見知った声がトウコの耳に届いた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「あ、トウコ!こんな所に居たんだぁ!」

 

「……ベル」

 

 ベルの隣にはトウヤとチェレンの姿もある。

 

「最近、雨続きで会えなかったからねぇ。久しぶりに4人で集まろうかなって皆の家を回ってたんだ」

 

「……まぁ、お前に関しては雨降る前からよく居なくなってたがな」

 

「そうだったの?ごめんね。今、見ての通りこの人の道案内をしてたからね。………ん、どうしたの?チェレン」

 

「……別に」

 

 何となくだが、トウコにはチェレンが不機嫌なようなかんじがした。実際、よそよそしいというか素っ気ないような気がしないでもない。

 

「あー……。多分、チェレンはトウコに元気が無くて不貞腐れてるんだよ」

 

「トウヤッ」

 

「うーん……。張り合いがなくて調子を狂わせている、みたいな感じ……かなぁ?」

 

「そうそう、そんな感じだよ。ベル」

 

「ベル、お前もか……」

 

 そんな三人のやり取りに、トウコは疑問を覚える。

 

「……私ってそんなに元気無かった?」

 

「え……うん。もしかして気付いてなかったの?自分の事なのに」

 

「最近気付いたらずっと『ぼー』っとしてるか、ため息ばかりついてたからねぇ。………ま、初めに気付いたのチェレンなんだけどね」

 

「トウヤッ!お前はこれ以上余計な事を言うな!」

 

 トウヤの頭を軽く殴り付けているチェレンをトウコは見る。

 

「……そうなの?」

 

「………確かに、馬鹿な女が妙にしおらしいと気持ち悪いのは事実だな」

 

「チョッ!?何よそれぇ!」

 

「事実だ」

 

 そんなトウコとチェレンの会話を聞きながら、トウヤとベルが顔を近づけてコソコソと話している。

 

「ベル=サン、ベル=サン。アレがツンデレってヤツですよ」

 

「トウヤ=サン、トウヤ=サン。アレがツンデレというヤツなんですね」

 

 コソコソと話しているのに、隠す気が全く無い。実際、トウコとチェレンに聞こえている。

 

「トウヤ!ベル!」

 

 チェレンがキレた。「ワー」「キャー」と棒読みなのにどこか楽しそうな悲鳴が響く。

 

 そんな三人にトウコは何か言おうとして、黙る。

 何かを言いたい。何かを言わなければない。なのに、何を言ったら良いのか分からない。そんなもどかしい感覚が喉で詰まっている。

 

 それでも何か声をかけようとして口を開きかけた時、何かに抱きつかれた。

 

「ちょっと、トウコちゃん。わたしの存在を忘れないでぇ……」

 

 その時のアララギの表情を見て、今朝から地味に上がっていたトウコの溜飲が下がったのは本人以外分からなかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「おー、怪しい人発見!」

 

 トウコに抱きつくアララギを見たベルの第一声である。

 

「あ、あや……」

 

 人懐っこい笑顔の少女に言われたアララギは口元を引くつかせる。

 トウコとしても普段のベルからは聞けない言葉に小さな驚きを覚えている。

 

「ベル、いきなり失礼だよ。……否定はしないけど」

 

「トウヤ、お前もだ。………ぼくもそう思うが」

 

 ーーチェレン、お前もか。

 

 ベルの言葉にトウヤ、チェレンが同意する度にアララギの口元のヒクつきが大きくなる。いいぞ、もっとやれ。

 

 しかし、そんなに怪しいだろうか?と自身に抱きつくアララギを改めて見つめるトウコ。

 

 イッシュ地方の端という事もあり、どうしても閉鎖的になってしまうカノコタウンに現れた見知らぬ女性。しかも、その女性は何故かサイズが身の丈にあっていないダボダボの白衣を羽織っている。

 

 ふむ、これで「ポケモン博士」だという事を知らなければーー

 

「確かに怪しい」

 

「トウコちゃん!?」

 

 アララギ博士に味方は居なかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「えっとね、3人とも。確かに、この人は変な格好してるけど、怪しい人じゃないんだ」

 

 8歳児7歳児4人からの不審人物扱いは堪えたのか、アララギはトウコの後ろで小さくなって「の」の字を書いている。背後から「シクシク」と聞こえたのは気のせいだとトウコは自身に言って聞かせる。

 

「そうなの?じゃあ、このお姉さんは誰なの?」

 

「え、えーと……この人はね…………」

 

 そう言いながら、アララギの肩を揺さぶる。

 

「……え?あ、何?」

 

「……自己紹介。まさか、私にさせる気じゃ無いよ……ですよね」

 

 こういう時、互いを知っているトウコがしても良いが、ある程度溜飲が下がったとは言え好意を持ってない相手にそこまでするつもりは無い。

 自身の紹介を任されたアララギは其れもそうだと立ち上がり、改めて三人の前に立つ。

 

「うっうん!………えーと、わたしはアララギ。ポケモン博士をしているの。……実は今日ここに越して来たばかりで、偶然出会ったトウコちゃんに道案内を頼んでたのよ」

 

 アララギの自己紹介を聞いて、トウヤが代表するように一歩前に出る。実際、幼馴染4人の中で一番社交的なのはトウヤだから、適任だ。

 

「ポケモン博士ですか……。あ、僕の名前はトウヤです。後ろの二人は女の子がベル、男の方がチェレンです。トウコとは三人とも幼馴染です」

 

 トウヤの後に続いて、「ベルです」「チェレンです」と二人が簡単に自己紹介をする。

 

「トウヤ君にベルちゃんにチェレン君ね。さっきも言ったけど、わたしは今日からこのカノコタウンでお世話になるから、今後ともよろしくね」

 

 ベルがトウヤの背後で「怪しい人じゃなかったんだねぇ」と呟き、トウヤとチェレンも「そうだね」と小声で同意する。

 

 たとえ小声でも本人の前でする会話じゃないだろうに……。

 やはり、本人に聞こえていたらしく、アララギ博士の笑顔に一条の亀裂が入っている。

 

「ちょっと、トウヤ。流石に『怪しい』とか『怪しくない』とか言い過ぎじゃない?まるで、不審者でも探してるみたいじゃない」

 

 幼馴染として流石に失礼過ぎると思ったのだろう。珍しくトウコが諌めにかかる。………人の事言えないのだが。

 しかし、

 

「え、トウコ知らないの?最近、出ているらしいよ不審者が」

 

「え……?」

 

 トウヤから予想外の返答が返ってきた。

 

「ねぇ、トウコちゃん。どうして今わたしを見たの?」

 

 他意はありませんよ。トウコはトウヤたちに向き直る。

 

「え?本当にいるの?この人じゃなくて?」

 

「うん、そうらしいよ。何でも、変な服着た集団が隣のカラクサタウンで出たらしいよ」

 

「……ふーん、じゃあアララギさんじゃないのか」

 

 集団では無いし。

 

「ねぇ、さっきからわたしに厳しくない?トウコちゃん」

 

 これは本当に小声。アララギ博士の言葉はトウコにしか聞こえなかったらしく、トウヤが話し始めた時点で無視する。

 

「まぁ、注意しとこっかって話だよ。それよりも、まだアララギ博士さんの案内をするの?良ければ、手伝うけど」

 

 トウヤの提案は有難いが、正直もっと早くに言って欲しかった。厳密には私がアララギさんと出会ったタイミング辺りで。

 

「大丈夫だよ。あとはアララギさんを引っ越し先に案内するだけだから。もう、場所も分かっているしね」

 

 カノコタウン中の案内を頼まれる前に聞いていたのだが、トウコの自宅の近所だった。

 

「そっか。………あんまり、関係無い人が大人数で押しかけるのもどうかと思うしね。じゃあ、僕らは僕の家にいるよ。案内終わったら来てくれていいから」

 

「うん、分かった。時間があったら行くね」

 

「あはは、ごめんね。まだ荷物の整理も終わってないからねぇ……。一段落ついたら、皆を歓迎するわね」

 

 そのアララギの言葉を最後に5人は別れた。

 

「じゃあ、行きましょうか。わたしの研究所へ」

 

「分かりましたよ」

 

 トウコとアララギ博士は最後の案内先である『アララギポケモン研究所』へ向かった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「着いたぁ!ここがこれからわたしの『ただいま』になる所なのねぇ……」

 

 アララギ博士の引っ越し先というのは、ずっと以前からあった空き家だった。何でも、十年以上前にここを別荘にしていた好事家が他界した後、ずっと放置されていたそうだ。それをアララギ博士が買い取り、所有権を手に入れたのだという。

 

「十年以上放置されていた割には綺麗に残ってる。外から見たところ、庭の手入れをするだけで良さそうね」

 

 それはともかく、と案内したトウコへと振り向きーー

 

「ようこそ、我が『アララギポケモン研究所』へ!……まぁ、大きい機材とかはこれから運び込まれる予定だから研究らしい研究は出来ないんだけどね」

 

 ーーアララギ博士は歓迎の言葉を紡いだ。

 

「これ、外は大丈夫そうだけど、中はどうなの……どうなんですか?」

 

「会った時から思ってたけど、慣れないなら敬語とか気にしなくて良いからね。………中は確認してみないと分からないかな?まぁ、研究資料とか日用品は既に運び込まれてあるし、流石に住めないレベルでは無いでしょう」

 

 アララギ博士が重々しい扉に手をかけつつ、「さぁさぁ、入って入って〜」とトウコに手招きする。

 

「…………………って、あら?あらら?鍵はどこにやったかしら?」

 

 ちょっと?

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 重々しい扉が開く音がする。太陽の光が扉が開くに従って屋敷内に差し込んでいく。

 トウコから見て、屋敷内はちょっとした邸宅と呼ぶに相応しい趣きがあった。

 

「うわ、ホコリが一杯!ある程度は業者が掃除してくれているようだけど、改めて大掃除する必要があるわね」

 

 確かにホコリっぽい。しかし、ここまで広い屋敷をアララギ博士一人で掃除するのは随分と大変そうだ。

 

「…………その大掃除って、まさか私を手伝わせたりとか考えてませんよね?」

 

 トウコのジト目がアララギ博士の背中を射抜く。

 

 まさに、トウコちゃんは手伝ってくれないかなぁ〜、とか考えていたアララギ博士はギクッと一瞬身体の動きがぎこちなくなる。

 

「あ、あはは〜。まさかそんな事ないわよ〜」

 

「……………………」

 

 静寂が2人の間に生まれる。ややあってから、

 

「トウコちゃん!お願い手伝って!!」

 

 手を拝むように合わせて頭を下げるアララギ博士。それを見たトウコはため息を吐いた後に了承の意を伝える。

 

「………良いですよ」

 

「あれ、良いの?」

 

 アララギ博士にとって、すんなりと了承を取れた事が意外だったようで不思議そうな顔をする。

 

「………まぁ、ご近所付き合いは大切だと思いますし。…………どちらにせよ、私一人じゃどうしようもないからトウヤ達を……いや、お父さん達を呼ぶべきかな?」

 

 アララギ博士は尚も不思議そうだが、この話はそれだけで終わらなかった。後日になるが、その大掃除はトウコの家族だけでなく、庭の手入れも含めて、村人総出の一大イベントになった。これにはトウコも驚きの顔を隠せなかったという。

 しかし、これは何もおかしい事は無い。ここカノコタウンはイッシュ地方の端にあるという立地条件などから村民は他の村に比べて非常に少なく、村落と呼ぶよりは開拓地に近い。だからこそ、何をするにも自分たちで行う必要があり、村人同士での助け合いがより強く求められるからだ。

 

「ありがとうー!!」

 

 トウコはアララギ博士に抱きつかれた。抱きつき癖でもあるのだろうかこの人は。

 

「……は、離れて……下さいッ!!…………それよりも、約束守って下さいね」

 

 そんな明日以降の事よりも優先すべき事がトウコにはある。

 

「はいはい、分かってるわよー。多分、研究資料の方は西側の部屋に置いてある筈だから」

 

 そう言って、一つの部屋のドアノブに手をかけて回す。

 

 そこにはーー

 

「え?この中から探すんですか?」

 

 大量の段ボール箱が積み重ねられていた。

 

「そ!……まぁ、全部じゃ無いけどね!……さっそくだけどトウコちゃん。トウコちゃんの知りたいポケモンについて教えて!手がかりがないと探しようがないからね!」

 

 探す以前に、資料の整理から始めないと駄目ではなかろうか?そう考えるトウコであった。

 

 

ーto be continuedー




いや、本当にこの幼馴染4人組は書いてて楽しいな、おい。
以前に4人の漫才の構図について話したが、今回で「ベル&トウヤでチェレンを弄る」パターンが誕生しました。ぶっちゃけ、原作本編開始後の話って殆ど考えてないが、どうやったら別行動している幼馴染達を絡ませられるか考えとかないとなぁ。

しかし、思った以上に長くなってしまった。所々文章がダレてるよぉ……。途中でぶった切っても良かったかな?


今回の登場キャラクター
・トウコ……「いつもボーっとしてる」「気付けばため息」。漫画とかで典型的な恋煩いですなw ……もう、知ーしらない。軌道修正とか知った事か!どうせ、ストーリーの大筋に大差無ぇべ!

・アララギ……ぶっちゃけ、「ハーイ!」とアニメの「あらら」しか記憶が無くて辛い。辛くない?

・ベル……人が良くて、ちょっと気が弱い娘ってイメージだったんだが、トウヤと一緒にチェレンを弄るシーンで「そんな事なさそう」な気がしてきた。多分、原作とは違うキャラの幼馴染になっちゃうんだろなぁ、と思いつつ書いてて楽しいからコレで行く所存w

・トウヤ……ぶっちゃけ、トウコやゾロアークに次いで書きやすいキャラ。……だって主人公組に明確なキャラ付とかされてないもん。やりたい放題出来るもん。しかし、最初の三体をマジでどうするか……。もう、キバコ突っ込むかな?

・チェレン……しっかり者の立ち位置をトウヤ君に奪われて、トウコといっつも喧嘩してる幼馴染って所に落ち着き始めた。でも、何だかんだ幼馴染の中で一番トウコを理解している模様。
トウコとチェレンの間にフラグが立つ土台が既に出来ている……だとッ?!……あ、でもトウコちゃんはゾロアーク君にゾッコン中なんで(←適当ほざいてますw)


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2ー3 貴方の名前は何ですか?③ーNAMEー

9

 

 

 トウコにアララギ博士は言った。

 

 ーーそのポケモンについて調べてあげる

 

 と。

 

 だというのに、だというのに………、

 

「何で!私が!一人で!調べてるのよぉ!!」

 

 アララギポケモン研究所の一室で、トウコの絶叫が響いた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 段ボールの中を覗いて見たら、その中は大量の紙資料だった。それも綺麗に整頓されておらず、その場にあったのをそのまま詰め込んだかのように内容がバラバラだ。

 

「…………調べるの手伝います」

 

 これをアララギ博士一人に任せると日が暮れてしまう。……トウコが手伝いを申し出るのにそう時間を要しなかった。

 

「え?……あ、うん。よろしくね」

 

 そのおかしな言い澱みのあるアララギ博士の言葉にトウコは、

 

 ーー…………この人、手伝わせる気満々だったな。

 

 と、直ぐに思い至った。

 

 ………まぁ、そこまでは良い。そこまでは……まだ良い。問題はそこからだった。

 

 トウコは資料の整理をしながら、「キツネさん」と同種のポケモンを資料から探していた時、

 

「あー!そうだった!」

 

 急にアララギ博士が立ち上がった。何か思い至る事があったのかとトウコが期待の目を向ける。しかしーー

 

「村長さんへの挨拶っ!忘れてた、早くしとかないと!それにご近所さん達にも!」

 

 全く違う事だった。いや、確かに引っ越し先でお世話になる近隣住人や代表者への挨拶は常識である。しかしーー

 

「直ぐ行って直ぐ帰ってくるから!」

 

「はぁ……」

 

「トウコちゃん!暫く一人でよろしくね」

 

「…………………え?」

 

 そう言ってバタバタと出て行ってしまった。壁越しに「えーと、手土産のお菓子何処にいれたんだっけ?」とか「あったあった!」とか……あと、物が落ちてくる音がしたが、最後に「行ってきます」の言葉と共に何も聞こえなくなった。

 

「え、えー……」

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 そんなやり取りがあってから小一時間が経っている。

 

「……………帰って来ない」

 

 一体どこまで行ったのだろうか、アララギ博士が帰ってくる気配は無い。

 

「迷ったとか……ありそう」

 

 ーーその場合、私の案内は何だったのか……。

 

 仮定の話だが、そう考えるとフツフツと怒りが湧いてくる。

 

「何で!私が!一人で!調べてるのよぉ!!」

 

 この辺りで冒頭に戻る。

 持っていた紙資料の束を机に叩きつける。その衝撃が伝わったのか、まだ見ていない資料の山が崩れて床にぶちまけられる。

 

「あ……やっちゃったぁ………」

 

 トウコの声には反省の色はあるが、落ち着いている。

 

(ま、どうせ順番とかバラバラだったしね)

 

 崩れた紙の山は直ぐに建て直せば万事解決だ。

 

 座っていた椅子から降り、落ちた紙を手元で束ねていく。

 

「あれ?この写真……」

 

 その中の一枚には写真が印刷されていた。

 

「『キツネさん』……?」

 

 本当の意味で「キツネさん」では無いだろうが、「キツネさん」と同じ種類のポケモンの写真だ。

 それを見つけたトウコは、慌ててその紙を読む。

 

「ゾロ……アー……ク」

 

 その中で一際大きな文字がトウコの目に写る。

 

「ゾロアーク。そう……『キツネさん』は『ゾロアーク』って言うんだ」

 

 ーーやっと見つけた。やっと知れた。

 

 トウコはその一枚の紙をとても愛おしそうに抱える。

 

「……そうだ。もしかしたら、落ちた紙の中に『ゾロアーク』について書かれているヤツが残ってるかもーー」

 

 その時、玄関先の方から音がした。

 

「アララギさんが帰ってきたのかな?」

 

 足音がトウコがいる部屋に近付き……通り過ぎた。

 

「え?」

 

 部屋を間違えたのかとトウコは戸を開けて声をかける

 

「遅いですよ、アララギさん。もう見つけてしまい…………………誰ですか、貴方」

 

 玄関先から入ってきたのはアララギ博士ではなかった。

 

「ん?お、おう!?………コイツぁ驚きだ。まさか人が居るとはな……」

 

『……………………』

 

 そこには、一人の男と一匹のポケモンがいた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「………誰ですか、貴方」

 

「ん?オレか?オレは………まぁ、あれだ『ロブ』って事で」

 

 何とも気の抜けた喋り方の男は、全体的に覇気の無い30代半ばといった風体の男。

 そして、もう一人……いや、もう一匹というべきか。男の背後にーー。

 

『…………………』

 

 緑髪の少女のようなポケモンが付き従っている。

 ロブと名乗った男はトウコがそのポケモンを見ていた事に気付いたのかーー

 

『………ツッ!?』

 

「!?……な、何をッ」

 

 ーーおもむろに蹴り飛ばした。

 

「『何を』?……自分で碌に挨拶もしない役立たずを蹴り飛ばしただけだが?」

 

 驚くトウコを他所にロブはさも当然の事のように答える。その顔と言動には「間違った事はしていない」を通り越して「何をそんなに驚いているのか?」という困惑すら読み取れる。

 

「い、いや…….おかしいですよ!何も蹴る事は無い筈です。口で言えば済む話じゃないですか!?」

 

「……は?口で?オイオイ、変な事言うなよ。ポケモン……動物相手に人間の言葉が通じる訳ねぇだろ?………ん?じゃあ、ポケモンが挨拶なんて出来ねぇか。本当にグズだな、お前」

 

 途中から、ロブの言葉はトウコから蹴り飛ばしたポケモンへと移る。

 

 ーー気持ち悪い。同じ言語なのに話している意味が分からない。聞いていたくない。

 

 だというのに、ロブは勝手に話を進める。

 

「あー……で、何の話だっけ?ココに来た理由……違う?まぁ、気にすな、どうせ気になってたんだろ?………実はオレは仕事でここに来たばかりなんだわ。それでもって、ここまで歩き詰めで疲れたし、『スポンサー様』からの目付役とも逸れるしで、休めるトコ探してた。………んで、そこがココ」

 

 おわかり?とどこか気の抜けた口調で語る。男の言葉はどこか自己中心的で自己完結的な為か、側から聞くトウコとしては話半分にしか理解できない。

 

「……………ここは空き家じゃないんだけど」

 

「ぁあ、そうらしいな。庭が雑草だらけだったもんで、勘違いしちまった」

 

 何処か呆けたような喋り方。掴み所が無くてい態度。そして何よりあの目。こちらをを捉えているのに、まるでこちらを見ていない。霞んだガラス玉のような視線。それらがトウコを不快にさせる。

 

「あー……。お前さんはどうしてここにいるんだ?お前さんがここの家主って訳じゃあないんだろ?」

 

「……その家主さんに頼まれてここに居るだけです」

 

「……………あ、そう」

 

「いい加減、帰ってくれませんか?これ、立派な不法侵入ですよ」

 

「………しょーがねぇか。悪い事はあんまりしちゃいけねぇもんなぁ……おい、行くぞ」

 

『……………』

 

 自身の言った言葉の何が面白かったのか、皮肉げな笑みを浮かべた後、後ろのポケモンに呼びかけて男はトウコの背後にある玄関に向かって歩いていく。

 

 男の足音が、コツ、コツーーとやけに明瞭に屋敷内に響く。

 

 コツ、コツとーー。

 

 コツ、コツ、コツとーー。

 

 コツ、コツッーー。

 

「…………何ですか?」

 

 男はトウコの前で止まった。

 

「いンやぁ、大した事じゃない。……ただ。その紙が見えちまってな。それ、ポケモンの生態をまとめた資料だろ。なんでンなモンを持ってんだ?」

 

 トウコは反射的に紙を隠す。『ゾロアーク』について書かれた資料を。

 

「……………ここの家主さんがポケモン博士だからですが」

 

「あー……そうじゃないんだが……。なんでお前さんがソレを持っているか(・・・・・・・・・・・・・・・・・)を聞いたんだが……」

 

「?、私がここの家主に整理を頼まれたからですが」

 

「ん、んー………そうじゃねぇんだが…………コイツはハズレか?…………まぁ、良いか」

 

 そう言って男は玄関から姿を消していった。

 

「気持ち悪い……」

 

 誰も居ない屋敷に、脱力気味のその声は溶けていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「いやー!ゴメンねぇー!トウコちゃんに全部任せちゃって」

 

 あれから更に30分程経ってやっとアララギ博士は帰ってきた。

 

「どうしたの?随分、疲れてる様子だけど……」

 

「………何でもないですよ」

 

ロブという男については話していない。怪しい事この上無かったが、物盗りという風でも無かった。そして、何より思い出したくない。

 

「それよりも知りたかったポケモンの資料一枚だけですけど見つけましたよ」

 

「え、そうなの?一体どんなポケモンかお姉さんに見せてくれない?」

 

 そう言われて、トウコはアララギ博士に『ゾロアーク』についてまとめられた資料を渡す。

 

「ふんふん、成る程………。これまた随分と珍しいポケモンと出会ったようね」

 

「珍しいんですか?」

 

「えぇ、確か一番最初に確認されたのがここイッシュ地方だったから、イッシュのポケモン図鑑に載っているけど、それ以降全く見つからないから幻のポケモン扱いされた事があったのよねぇ」

 

「幻の……」

 

「まぁ、結局アローラ地方って所に相当数居たらしいから幻でも何でもなかったんだけどねぇ」

 

「へぇ……じゃあ、『キツネさん』もアローラから来たのかな?」

 

「それは何とも言えないけど、ここイッシュではまず見られないポケモンなのは事実ね」

 

 ーーゾロアーク……アローラ……

 

「良かったわね。捕まえたいポケモンの名前が分かって」

 

「え………?」

 

 ーー捕まえる?

 

 その言葉が、トウコの耳に嫌に残り続けた。

 

 

ーto be continuedー




最近、トウコの乙女思考を描写するのが楽しくなり始めた今日この頃。あぁ、この思考(嗜好)がストーリーがドンドン捻れていく原因になっていくんだなぁ……って。
俺には『乙女機関』が搭載されてたのか?!(その時 作者に 電流走る)

しっかし、これ後で読み返すと無理矢理感といいますか、やっつけ感が凄いわ。この辺のエピソードを無理矢理考えて、碌に考察せずに投稿した感が作者的に凄い。今、一章の佳境を書いてるのだが、もう既に作者許容量を超える違和感が噴出中でヤバい。もしかしたら、閑話挟むかも……。



登場キャラクター

・トウコ……コイツは甘ぇー!口の中から砂糖が止まらねぇーぜッ!今回はそれ程では無かったが、乙女乙女し過ぎだよなぁ……。前に書いた?そうだっけ?

・アララギ博士……コイツはヤベェー!現在登場キャラ最年長(ゾロアーク君は年齢不詳なので集計外)のくせして、一番御転婆じゃねぇーかッ?!

・ロブ……こいつはくせぇー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ!!ちょっと、あからさま過ぎたなぁ……とか思ったりしとります(お恥ずかしい)。人前でポケモンを蹴り飛ばしたりなど精神的にイカれた部分あり。控えめに言ってクズ。ただ、何だかんだ最初にモデルにしたキャラが作者的に大好きな悪役であり、過去話とかも考えてたりする、(作者の脳内でのみ)謎の優遇っぷりである。

・緑髪のポケモン……キルリア。ぶっちゃけ、野生だとbwで出現しないポケモン。見た目は素のビジュアルが少女風だが、実際の性別は男。男の娘である!!何かしらロブとの浅からぬ因縁がある?


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2ー4 貴方の名前は何ですか?④ーRELATIONSー

10

 

 

 ーー捕まえる?

 

 その言葉が嫌に耳に残る。

 

「あら、違うの?私、てっきりポケモントレーナーになってそのポケモンと一緒に旅をするのかなー、って思ってたんだけど」

 

 一緒に旅をする。それはとても魅力的にトウコの耳の中で響き続けている。なのに、

 

 ーー捕まえる、ゾロアーク……『キツネさん』を……?

 

 それは駄目だと私の何かが訴える。

 何故だろう?『ポケモンを捕まえる』その行為を私は今まで何とも思わなかった。実際、今もその行為自体には忌避感は無い。なのに、どうしかそれを『キツネさん』に行うのは嫌だった。

 

「……どうしたの?」

 

 トウコの様子がおかしい事にアララギ博士は気付く。堂々巡りを始めたトウコの思考は助けを求めるようにアララギへと向いた。

 

「アララギさん……。ポケモンを……『キツネさん』を捕まえずに旅をする方法ってあるのかな?」

 

「捕まえずにポケモンを?うーん……。物理的には問題無いだろうけど、それはとても不便よ?」

 

「どうしてですか?」

 

「まず、第一にポケモンをモンスターボールで捕まえるというのは、そのポケモンの所有権を得るって事なの。簡単に言うと、別の人がその『キツネさん』を捕まえたら、それは『キツネさん』が別の人の物になっちゃって……。なっても文句を言えないってことよ」

 

「…………………」

 

「ポケモンセンター、ポケモンジム、ポケモンコンテストみたいなポケモン関連の施設の利用は軒並みアウト。……そもそも、個体によって火を吹いたり、電気を放出したりする存在を首輪無しで人が住む所に連れて行く事自体が無理かも………」

 

「そう………ですか……」

 

 アララギ博士の言葉に顔を暗くするトウコ。それを見かねてか、アララギ博士はトウコに聞く。

 

「トウコちゃんは、どうしてそのポケモンを捕まえたくないの?」

 

「……さっきアララギさんは『首輪』と言いました。……私はそれを『キツネさん』にしたくない……」

 

 してしまったら、それは『キツネさん』との関係が飼い主とペットに収まってしまうのではないか。そうなってしまうのが怖かった。

 

 アララギ博士は

 

「あー……成る程ね。これはわたしの言い方が悪かったかしら。………えっとね、トウコちゃん。『ポケモンがモンスターボールに入っているかどうか』なんていうのはただの状態や形でしかないの。そこにどんは『意味』を作るかは貴方とそのポケモン次第なのよ」

 

「………よく分かりません」

 

「そう……。ちょっと難しかったかしら?じゃあ、実演しちゃいましょう。………チラーミィ、おいで」

 

『ミィ!』

 

 そう言って、おもむろに白衣のポケットからモンスターボールを取り出し、投げる。出てきたのは灰色のチンチラのようなポケモンだ。

 

「アララギさんってポケモントレーナーだったんですか?」

 

「うーん、まぁ、職業柄ね。というか、10歳以上なら誰でも試験を受けられるから、ある意味ポケモントレーナーでない人の方が少ないんじゃないかしら?」

 

 チラーミィというポケモンは床から椅子、椅子から机、机からアララギ博士の腕へ移り、アララギ博士の頭に登る。そしてーー、

 

『ミィ!ミィ!』

 

 ペシペシとおもむろにアララギ博士の頭を叩き始めた。

 

「あらら、ずっとモンスターボールの中に入れてて怒らせちゃったかしら?ゴメンねぇ、チラーミィ。……ボールから出すの忘れちゃってた」

 

『……ミィッ!!』

 

 ペシペシという音がベシベシに変わる。

 

「本当にゴメンねぇ。……それよりもご挨拶。こちらトウコちゃん。トウコちゃん、こちらわたしのポケモン(パートナー)のチラーミィ」

 

 トウコの耳に『パートナー』という響きが残る。

 

『ミ?……ミィ!』

 

 アララギ博士の言葉でトウコの存在に気付いたのか、チラーミィはこちらに握手を求めるように短い手を伸ばす。

 

「……あ……えっと…………どうも」

 

 伸ばされた手を摘むように握り返すトウコ。

 

「チラーミィ、お詫びという訳ではないんだけど この後、海を見に行かない?ヒウンシティの海も良かったけど、コッチのは人工物が無いおかげか 砂浜があったわよぉ!」

 

『ミーィ!!』

 

 チラーミィは嬉しそうにアララギ博士の頭の上で鳴く。それに満足そうな顔をしてアララギ博士はトウコに聞く。

 

「どう、わたしとチラーミィの関係って何に見える?」

 

 どう?と聞かれても……とても仲が良さそうに見えるが……

 

「わたしとチラーミィは『飼い主とペット』?『持ち主と道具』?『友人同士』?『家族』?トウコちゃんには何に見える?」

 

 『飼い主とペット』………違う気がする。

 『持ち主と道具』………これは絶対に違う。しかし、チラリと先程の男と少女のようなポケモンを思い出す。

 『友人同士』『家族』…………あぁ、何となくコレだ、と思う。

 

「トウコちゃんの答えは分からないけど……その顔を見たら悪い答えじゃなかったようね。………そう、わたしたち人間とポケモンの関係は千差万別。飼い主とペットも居るし、わたしみたいに十年来の友人にしている人だっている。……あんまり好きじゃ無いけど、当然ポケモンを道具扱いする人もいる」

 

 アララギ博士は笑いながらトウコに語りかける。

 

「結局、その人とそのポケモン次第なのよ。それは人間同士でも変わらないでしょう?」

 

「そう……かもしれません、ね」

 

「えぇ、そうなのよ!トウコちゃんはモンスターボールに入れる事を良しとしていないようだけど、所詮モンスターボールは、ポケモンとの関係を円滑にする便利な道具でしかない。入れたくないなら、必要な時以外ずっと外に出していれば良い話だしね」

 

 アララギ博士の言葉はトウコの頭で綺麗に消化される。今までの悶々とした何かを含めて。

 

「……そうだ!いっその事、お願いしてみたら良いんじゃない?そのポケモンに」

 

 名案だとばかりに手を叩くアララギ博士。

 

「お願い……ですか?」

 

「そうよ、そのキツネさんに『私のモノになって下さい』ってね!」

 

 その言葉はトウコの頭を殴りつけるような衝撃があった。自身の顔が熱くなるのが分かる。

 

「わ、私の………ッ!?」

 

「あらぁ〜、何を想像したのかしらぁ?顔を真っ赤にさせちゃって。おませさんねぇ〜トウコちゃんは。……でも、間違いじゃないわ。人間同士でだってよくある事でしょ?『俺の誰々』とか『私の誰々』って……みんな知らず知らずに他人を自分のモノにしている。なら、トウコちゃんがキツネさんにしちゃいけないなんて事はないわ!」

 

 確かに、『弱らせる事で抵抗力を奪ってから"捕まえる"』のをしたくない以上、『お願いをして同意』を得るしかない。しかしーー

 

 ーーも、もうやめて!アララギさん!これ以上は聞いていられない!

 

「あ、アララギさんッ!!も、もういいです!いいですから!!」

 

「あ、あらら?ちょっとトウコちゃんにはディープ過ぎたかしら?……まぁ、時間は一杯あるから考えてみなさい。どうせ ポケモントレーナーになるには、トウコちゃんの場合 どんなに短くても一年二年必要なんだからね」

 

 ーー………そっか、まだ時間はあるのか。

 

「その間にしっかり考えておきなさいね」

 

「考える……」

 

「そうよ、その『キツネさんとの関係』………は一緒に居たら自ずと答えが見えてくるかしら?取り敢えず、トウコちゃんは『キツネさん』と何がしたい?」

 

 何がしたい?それは決まっている。アララギ博士の話を聞いてずっと耳で反響していた物がある。

 

「私は……『キツネさん』と"旅"をしたい」

 

「あら?答えはもう持ってるみたいね。じゃあそうね………今度は『キツネさんへの口説き文句』にしちゃいましょうか」

 

「く、くど……ッ!?」

 

「一応、『キツネさん』と同じ種類のポケモンの情報を探すにあたって色々聞いたけど、相当な堅物さんよね?それを考えたら一年二年じゃ足りないかもしれないわ」

 

 そこから始まった『アララギ流 男を落とす百の方法』なる謎の講義をトウコは顔を赤くしながら聞かされていた。

 

 「相手、ポケモンなんですけど!?」というツッコミはその時ののぼせ上がったトウコの思考では思い至る事はなかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「今日は色々と助けて貰っちゃってありがとうね」

 

「いえ、私も知りたいことが知れたので」

 

 今は正午はとっくに過ぎて午後2時過ぎだ。二人と一匹は、『アララギポケモン研究所』の門前に立っていた。

 

「私とチラーミィはこれから海を見に行くけど、トウコちゃんはどうするの?確か、お友達が待っているんだっけ?」

 

 そういえばそうだったな、とトウコは思い出す。しかし、今はーー

 

「いえ、出来れば今から『キツネさん』の所に行こうかと」

 

 それを聞き、粘っこい笑みを浮かべるアララギ博士。

 

「あらぁ〜、さっそく口説きに行くのかしら?」

 

「ち、違いますよ!そんな事しませんッ!」

 

 今日何度目かの赤面を見たアララギ博士は「あははー」と笑う。

 

「冗談よ……あ、でも『むしよけスプレー』は渡しておくから使っておきなさいね。カノコタウンの外は野生ポケモンがいるんだから」

 

 何処にあったかなー?、とアララギ博士は自身の懐を探り始めた。

 

「え……でも………」

 

「でもも何もないわ。何故かポケモンが襲って来ないと言っても『もしも』はあるんだから。………あったあった!じゃあ、はいこれね」

 

「……ありがとうございます、アララギさん」

 

「どういたしまして。……あぁ、それとわたしの事を『さん』で呼ぶのをやめてくれないかしら?これからは『アララギ博士』で」

 

「はい、分かりました。アララギ博士」

 

 それを聞いて満足したのか「うん、よろしい」と笑う。

 

「それじゃあね、トウコちゃん。……あ、研究所の掃除の件、お父さんによろしく伝えておいてね」

 

「分かりました。……あ、それとアララギ博士、戸締りはしっかりした方が良いですよ」

 

「?……えぇ、分かったわ。それじゃあね」

 

「はいっ」

 

 そう言って二人は反対の方向に向かって別れた。アララギ博士は暫く歩いて気付く。

 

「あらら?向こうの空、曇ってるわね。これは一雨来るかも」

 

 トウコを呼び止めようかと振り向くも、もうその姿は見えなかった。

 アララギ博士に抱えられたチラーミィが『ミィ……ミィ!』と急かす。

 

「あー……はいはい、分かってるわよー。でも、雨が降りそうだから、今回は早めに帰りましょうか」

 

 「トウコちゃん大丈夫かしら」と心配するも、「まぁ、大丈夫でしょう」と根拠も無く思い直し、海に向かった。

 

 

 ーー嵐が来ようとしていた。

 

 

ーto be continuedー

     ーnext episodeー




Mr.bot、乙女機関、全開!!
まぁ、経験0の貧弱機関なんで 今回のエピソードで乙女機関がショートを起こしましたw 暫く、「甘ーーーい」展開は無いと思う。

にしても、今読み返すとちょっとあからさま過ぎるというか、デコボコし過ぎな気がしますなー……。大体、閑話から2ー1まで一ヶ月半の時系列的期間が空いてるのだが、その間にトウコのゾロアークへの好感度がカンストし過ぎてて違和感が凄い……。こういう所で貧弱……というより恋愛経験の無さが浮き彫りになってるんだよなぁ。もうちょっと平す必要があるかな?まぁ、自分が悪ノリし過ぎて好感度をバグらせてしまったというのも多分にあるんだろうけど……。

ほとんど知らないかと思いますが、本作初投稿からほんの数時間の間だけ存在した仮タイトルである『人とポケモンとの正しい関係』を回収しました!回収早過ぎやわ……。
つーか、完全なる自己満足ポルノである本作で何故か良い感じの事書いてる時点で何か違和感を感じるゾ、おいw

それはそうと、第1章の執筆中に起きた結構ヤバめの違和感は何だかんだ閑話を挟めば何とかなりそうです。
ということで、今後の予定としては閑話が完成し次第閑話①と2ー1の間に挟み込み、それ以降は一章終了に向けて順次執筆となりそうです。更新時間は今まで通りですが、もしかしたら数日の時間をいただく事となるかもしれません。


今回の登場キャラクター
・トウコ……絶賛(ポケモン相手に)初恋中の8歳児。……ええ、トウコちゃんは誰が何と言おうと8歳児です。あ、でも本人はゾロアーク君への初恋に気付いてません。…………ウッソだろお前?!そこまで悩んどいて気付いてないのかよ!?w……まぁ、8歳児ですし。経験不足ですし。
アララギ博士とのわだかまり?も今話で解消されたようです。

・アララギ博士……ヤッベェ!アララギ博士が「お姉さん」してるぅぅ!?w 年長者としての威厳は発揮!w

・チラーミィ……アララギ博士の手持ちポケモン。原作でもお馴染みの冒頭で登場。耳と尻尾(と目)が大きいチンチラのようなポケモン。
因みに、アララギ博士の謎講義の間、トウコの隣で一緒に顔を赤くしていた模様………かわいい


今回登場した原作アイテム
・むしよけスプレー……100歩進む間、先頭のポケモンより弱い野生ポケモンが出現しなくなる。今回、トウコはポケモン持っていないけど、効果発揮中は野生ポケモンに出くわさない保険としてアララギ博士から渡された


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3ー1 降る雨は暗示する①ーREGRETー

・エピソードのタイトルが変更されました。

・前語り部分を変更。※前前語りは 4ー1 に移転




11

 

 

 その日は来る。

 

 ーーその日は来た。

 

 ずっとこんな日々が続けば良いと思っていた私に。

 

 ーー存外に悪くなかった時間を叩き潰すように。

 

 当時8歳の私にはこれ以上ない程の害意が。

 

 ーー「俺」という存在が不幸を撒き散らす存在だと言わんばかりに。

 

 西の空の暗雲と一緒に。

 

 ーーあの連中がやって来る。

 

 「別離」という結果を伴って。

 

 ーー「沈黙の確執」という形となって。

 

 

 ごめんなさい。

 

 ーーすまない。

 

 私のせいで貴方は傷を負った。

 

 ーー俺が原因でお前の心を傷つけた。

 

 ただそれだけの言葉を、私は貴方に言えなかった。

 

 ーーただその程度の言葉を、俺はお前に伝えられなかった。

 

 

 雨が降る。

 

 雨が降る。

 

 雨が降る。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 トウコはアララギ博士と別れて直ぐに 彼女が『キツネさん』と呼ぶゾロアークの下に向かった。

 

 梅雨のせいでもうかれこれ2週間会えていなかった。その事実が昨日まで……いや、今日 アララギ博士と話をするまでずっと鬱々としたシコリのように溜まっていた。が、今は違う。

 

 トウコはトウコなりにゾロアークとの関係に向き合い、答えを出した。

 

 まだまだ問題は残っているし、よく分かっていない感情はある。それでも、鬱屈とした心に光が差し風通しが良くなっていた。

 

 だからだろうか、トウコの足取りは軽い。

 

 ゆっくりと話していこう。ゆっくり知ってもらおう。ゆっくり知っていこう。時間はある。一年でも二年でも………なんなら五年かかっても構わない。

 

 ーーそして一緒にこの世界を回っていきたい。

 

 彼女の耳が小川のせせらぎの音を捉える。ゾロアークがいる大木の空き地まであとほんの少しだ。

 

 ーーもうすぐ会える。ここを抜けたら、そこにきっと『キツネさん』がいる。

 

 トウコが走る。木をよけ、地を踏みしめ、茂みを抜けーー

 

「はい、そこまで。デンチュラ、 でんじは だ」

 

 ーー………え。

 

 瞬間、トウコの身体に今まで感じたことのない衝撃が走った。

 

 トウコの意識と身体が乖離する。

 

 身体が落ちる。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 複数の足音がトウコに近づいてくる。遠退く意識の中で、「コツ、コツーー」という音がやけにはっきり聞こえる。

 

「あー……ちょっとやり過ぎたか?まぁ、いいや……『でんじは』なら死ぬ事ぁ無ぇだろう」

 

 ーーこの足音、この声……聞いた事がある。

 

「ーーにしても、オレの勘も捨てたもんじゃあ無かったか。お前さんが『目標』と同じポケモンの紙持ってたのがヤケに目に付いてなぁ。まさかまさかで……本当にまさかとはねぇ………」

 

 男ーーロブの視界には、遠くにだが、確かに紅のタテガミを生やした黒の狐が写っている。

 

「いや、全く……道案内御苦労と言ったところだな、お嬢ちゃん。………おい、お目付役。スポンサー様に伝えな。『目標を見つけた。今度こそ仕留める』……ってな」

 

 カハハーーという乾いた笑いが漏れるロブの後ろから別の三人が現れる。

 男二人に女一人。その三人は中世の騎士をイメージしたようなチェインメイル風の衣装に身を包んでいた。

 

 チェインメイルの一人がロブの言い様に不満気な顔をする。

 

「……勘違いをしないでいただきたいが、我々が行なっているのはポケモンの『保護』だ。今回の目標のような珍しいポケモンはトレーナーどもから『護る』為に行なっているのだ」

 

 ロブは残りの二人のお目付役の顔を見る。どうやら、一人目と同じ意見のようだ。

 

 それを見てロブは嗤う。滑稽だ。哀れでもある。

 『ポケモンの保護』あるいは『モンスターボールからのポケモンの解放』。今回のスポンサーは確かにそういう名目で動いている。しかし、それはあくまでも『名目』。スポンサーの上の連中はそんな事露ほども考えていない。あれは多くの賛同者を得るプロバガンダか、本来の目的のための隠れ蓑に過ぎない。

 例えば、今回の『目標』が捕らえられーー『保護』された先で何が待っているのやら……。まぁ、ロクなことではあるまい。

 そう考えなが、今回スポンサーから依頼完了のためにと渡されたモンスターボールを見る。もう、中身は何も入っていない。『目標』の周辺で潜伏中だ。

 

 ーーあぁ、怖い怖い……。

 

 その嗤いに気付いたチェインメイルの男は怒鳴る。

 

「何がおかしいッ!!」

 

「いやいや、いンや……何でも無いさ。……『保護』ね。ま、どっちにしろやる事は変わらねぇんだ。オレとしちゃあ、『保護』だろうが、『捕獲』だろうが………関係無いね」

 

 ーーたとえ、それが……………『処分』であったとしてもだ。

 

 受けた依頼を完了させて報酬を貰う。実にシンプルだ。

 

 チェインメイルの三人は不満気だが、それをこの男に語っても意味の無いことは嫌になるくらい知っている。

 

「……それで、その子供はどうするのだ?ここで放置するのか?」

 

 チェインメイルの一人が聞く。

 

「それもいつも通りだな。……必要(・・)なら使う(・・)使えない(・・・・)なら捨てる(・・・)。取り敢えず、持って行こう(・・・・・・)

 

 と、ロブは少女の事をまるで道具かのように語る。

 

 取り敢えず持っとけ、とお目付役の一人に押し付ける。

 

 ーーキツネさ………

 

 意識が遠退く。意識が落ちる。

 

 

 

 西の暗雲がもう目と鼻の先にまで近付いていた。

 

ーto be continuedー




作者A「乙女回路がショートしたと言ったな。アレは嘘だ」
作者B「ウワァァァァァ………ッ!?」
作者C「作者AとB!バカ言ってないで、とっとと修復作業に戻れ!!ショートを起こした乙女回路を無理に稼働させたせいで、完全にオーバーヒート起こしやがったッ!!」
作者A&B「「ウワァァァァァァ……ッ!?」」

思っていた以上に糖分多めになった本作もシリアスに突入します!!

それと、毎日投稿途切れさせたくなかったから無理矢理投稿してますが、まだこのエピソード現時点で出来上がってないんですよね……。
明日明後日明々後日と更新出来ると思いますが、それ以降がちょい怪しいです。
うーん……。次章は完全に出来上がってから更新始めるかねぇ?

登場キャラクター
・トウコ……哀れ、主人公にしてヒロインの我らがトウコちゃんは囚われ?のヒロインに。
…………そういや、原作で敵側の重要キャラ「N君」って奴が、ゾロアーク持ってたよね?「おい、バカ!なんで今その話しやがった!!by作者C」え、だってコレを利用したら立派なNTあー……「このバカを黙らせろby作者C」「ウワァァァァァァ……ッ!!by作者B」なんでBが悲鳴上げてんの?
あ、NTRは冗談です(多分)。そこまでストーリー考えてないねん。ただ、それやってみると面白そうとかチョロっと思っちゃっただけです。

・ゾロアーク……やってまいりました。ゾロアークのチートぶりが炸裂する戦闘シーンがな!

・ロブ……あからさまに怪しかった人。ポケモンバトルの実力的には七賢人くらいあるんじゃない?(尚、原作ストーリー中で七賢人との戦闘は無いです。全員ジムリーダーがボコりました)
舞台裏で、チェインメイルの連中と合流出来たようです。スポンサーのお目付役と合流できてよかったね!因みに、逸れたのはコイツが悪いです。重要な場面では大概コイツが悪い。どうでも良い場面では確実にコイツが悪い。ロブとはそういうダメ男。
関係無いけど、新作のボダラン3で影武者さんDLCで使えないかな

・チェインメイルの男女……ポケモンbwではお馴染みのプラー!でズマー!な人たち。エキストラなんで名前は登場しません。役割としては………まあ、今回の一件、ポケモンbwのあの組織が関わっているんやな程度で。
あと、何処かのエピソードで「隣村で不審者云々」ってのがあったが、それコイツらとコイツらの同僚です。すまんな、分かりにくくて……。また閑話挟むか……その時は真面目にな(多分)


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3ー2 降る雨は暗示する②ーMEANNESSー

12

 

 

 ゾロアークはその違和感を敏感に感じ取った。

 

 ーー風の流れがおかしい?

 

 しかし、それを感じ取った瞬間には全てが手遅れだった。突然、ゾロアークの周囲を砂の暴風が吹き荒れる。

 

「 すなじごく だ。………ついでに、この辺り一帯に くものす も張り巡らせた。悪いが今回は逃がさねぇからな……」

 

 ゾロアークは声のする方を見る。そこに居たのは男。どこか淡々と語るその声をゾロアークは過去に聞いた事があった。

 

「散々逃げ回りやがって……。おかげでスポンサー様はカンカン。俺たちも大損だ……が、まぁ、それを置いといて……久しぶりだなぁ『赤髪』。三ヶ月前に迷いの森でやり合って以来か?」

 

 確か、いつも背後にキルリアという人間の少女に似たポケモンを連れているのに、それを一切使わないおかしな男。実際、今日も連れている。更に三人ーー時代錯誤なチェインメイル風の衣装に身を包む連中も背後に控えている。

 

『……………ッ!?』

 

 いや、それだけではなかった。

 

「…………………うっ」

 

 もう一人……ゾロアークがよく知っている少女が意識の無い状態でぐったりとチェインメイルの男の一人に抱えられている。

 

「ん?……あぁ、コイツか?名前は知らねぇがお前の居場所を教えて貰ったんだ」

 

『……………………』

 

 ゾロアークは男ーーロブを睨み付ける。それに肩を竦めてロブは訂正する。

 

「……ははは、嘘だよウソ。そんなに睨みなさんな。本当は近くの村から出て行くのを偶然見かけてな。外は何かと物騒だから止めようと後を追ったんだよ」

 

 本当かどうかは分からないし、今この状況では栓の無い話だ。

 

「……んで、追って行ったらお前さんに出くわしたって訳だ。………ハハハ、おいおいお前さん、まさかこのガキに絆されてるって言わねぇよな?あ、いや……俺たちの追跡をかわし続けたお前さんがこんなにアッサリと捕捉できちまったんだ……もしかしてマジか?」

 

 ゾロアークは何も言わない。唸り声一つ上げる事なく敵を視界に捉え続けている。

 

「おいおいマジかよ!……コイツはとんだ傑作だ!!一匹狼も人肌が恋しいってか?」

 

 ロブは一頻り笑った後、「あーああ……」とため息を吐く。

 

「相手が無反応だと、笑っても面白味に欠けるな……。始めよう、ここでお前を仕留める」

 

 灰色ポンチョが赤いボールを投げる。モンスターボールだ。

 そして、モンスターボールの『ポンッ』という子気味の良い音と光の中から一体のポケモンが現れる。

 

『ーーAAAaaaaaSuuuuuu!!』

 

 ゾロアークの身の丈を超える紺色の四足歩行の岩石ーーギガイアス。

 その巨体が出現した瞬間、辺りで吹き荒れる すなじごく が すなあらし との相乗効果で勢いを増す。

 

 ギガイアスの咆哮が周囲をビリビリと震わせた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「初撃はもらう。ギガイアスーー ロックブラスト だ」

 

 ーーいわタイプ・物理攻撃技『ロックブラスト』

 

 ロブの命令にギガイアスは答え、複数の岩石が砲弾のようにゾロアークに殺到する。

 

 ロックブラストが直撃するーーその瞬間、ゾロアークは後方へと軽く跳ぶ。そして、ゾロアークの前方で岩の砲弾が地面に炸裂し、昨日までの雨を物ともせず、爆風で土煙が舞う。

 その土煙がギガイアスとロブの視界からゾロアークを見失わせる。

 

「チッ……ギガイアス、 じしーーッッ!?」

 

 姿が見えないのなら、狙う必要の無い全体攻撃。それは正解の行動だ。しかし、それをゾロアークは許さない。

 

『……………』

 

 ーーエスパータイプ・変化技『こうそくいどう』

 

 自身の技で急激に引き上げられた速度でゾロアークは前へと踏み込む。辺りを舞う土煙を掻き分け、ゾロアークは現れたーーギガイアスの目の前に。

 

「ギガイアスッ!! てっぺーー」

 

 ロブは、咄嗟に範囲攻撃の『じしん』から防御技である『てっぺき』へと命令を変えようとするがーーそれよりも先に

 

『……………シィッ!』

 

 ーーかくとうタイプ・物理攻撃技『ローキック』

 

 ゾロアークの鋭い回し蹴りがギガイアスを薙ぐ。ギガイアスの胴が砕かれ、大きな裂け目が走る。もはや、それを足蹴と呼ぶにはふさわしくない……まさに斬撃の如き一撃だった。

 

「………オイオイ、マジかよ……あれ、ただのローキックだよな?相性の良い悪いのレベルじゃ無ぇゾあれ。というかどこら辺が『ロー』なんだよ。普通に『ミドル』じゃねぇか……」

 

 だがーーとロブは嗤う。

 

 ギガイアスから一歩二歩と距離を置き、「次」を警戒し始めたゾロアークは気付く。

 

『………Ga……gi…Ga』

 

「…………!」

 

 瀕死の一撃を受けてなお、ギガイアスが生存している事に。

 

 ーーギガイアスが保有する特性『がんじょう』。それはHP最大値から瀕死に陥る攻撃を受けた時に発動する特性。瀕死の一撃を食らっても必ず首の皮一枚で生き残る、絶対生存の特性。

 

 そして、ロブは無慈悲にその命令を下す。

 

「ギガイアス!ーー だいばくはつ だッ!!」

 

『……Gi…gi……GigiGaaaaaaAAAAAAAAーーッ!!』

 

 ーーノーマルタイプ・物理攻撃技『だいばくはつ』

 

『ツッーー!?』

 

 自身の命を引き換えにしたダイナマイトじみた爆音と衝撃がゾロアークを巻き込んで炸裂した。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 爆風が止み、更に膨れ上がった土煙が止んだ中にはーー

 

『………………』

 

 ーーゾロアークがいた。

 

「………『赤髪』、お前……本当にポケモンかよ?至近距離で食らってピンピンしているとか……バケモノか何じゃねぇよな?」

 

 否だ。ゾロアークは食らったのでは無い。咄嗟に『とんぼがえり』で爆発寸前のギガイアスの顔面を蹴って後方に逃げたのだ。

 

「まぁ、それでも無傷って事は無さそうだが」

 

 ポケモンの捨て身の一撃ーーアレは相当に危険だ。少なくとも直撃したらゾロアークとてタダでは済まない。ポケモン一匹を使い潰すような手段をそう何度も取るとは思えないが、警戒は必要だと自身の頭に覚え留める。

 

「ポケモン一匹を使い潰したにしては大した見返りは無かったが………問題無い。そもそもオレはこの『役立たず』以外の五体 全部を使って仕留めるつもりだったんでな」

 

 

 ロブはモンスターボールを3つ一気に投げる。

 

 そこから現れたのはーー、

 

 ーー体長80cmもある巨大な黄色の蜘蛛『デンチュラ』

 

 ーー道着を着た赤い肌で大柄の格闘家『ナゲキ』

 

 ーー道着を着た青い肌で細身の格闘家『ダゲキ』

 

「さぁ、総力戦といこうか。覚悟は良いよな、赤髪ィ」

 

 ゾロアークは自身が負ったダメージを確認する。

 

 ーー問題無い。先程の爆発で多少ダメージを負ったが、骨折のような……今後の戦闘に支障の出るような大きな傷は無い。

 

『…………チッ』

 

 このような状況に陥ってしまった。そして、このような状況に巻き込んでしまった。その自身の不甲斐なさに苛立ちを乗せ、ゾロアークは立ち上がった。

 

 

ーto be continuedー




思ったより短くなってしまったかな?まぁ、しゃーない。このまま行くべさ!
つかさ、ゾロアークをチート化させるとかバクらせるとか散々言ってきたけど、ポケモン6体連れたトレーナーを相手にするのにそのくらいのハンデが無いと辛い所の話じゃなくね?と書いてて思いました。

さて、ここからはvsダゲキ&ナゲキ!数の不利と相性(タイプ)の不利を相手にどう立ち向かうのか!
実際のゲームじゃあ圧倒的レベル差がないと勝てない状況ですが、これはネット小説(・・)ですからね!わざ や 特性 の拡大解釈。に主人公補正も織り交ぜて何とかやってみせるべ!

登場キャラクター
・ゾロアーク……現在Lv.55/特性『イリュージョン』/現在確認済みの技……①とんぼがえり②にらみつける③にほんばれ④つめをとぐ⑤ローキック、etc......

・ロブ……2ー3で登場した30代半ばの怪しげな男。ポケモン関連を主体に仕事を受ける請負人。「プラー!でズマー!」な人ではねーです。戦闘面では躊躇なく手持ちのポケモンを使い潰し、結果を得ようとする。あらゆるポケモンを道具のように扱うが、キルリアにだけは違った対応をする(決してそれが良い意味を持つとは限らない)
このキャラには明確なモデルが存在しているが、ほとんど再現出来ていない。ハンサムジャック……お前は、愛すべきラスボスであった……。
現在判明している手持ちポケモン
①キルリア……Lv.23
・??? ・??? ・??? ・???
②ギガイアス……Lv.30
・てっぺき ・だいばくはつ ・じしん ・ロックブラスト
③デンチュラ……Lv.36
・くものす ・でんじは ・???・???
④ナゲキ……Lv.35
・??? ・??? ・??? ・???
⑤ダゲキ……Lv.35
・??? ・??? ・??? ・???
⑥???……Lv.??
・すなじごく? ・??? ・??? ・???
6体持ってるのに「5体で仕留める」。ロブ的にキルリアは役立たず扱いなので戦力外である。

・トウコ……状態・マヒ/気絶

・プラー!ズマー!な三人……影薄し。以前は、この中に若かりしN君を紛れ込ませる予定だったが、思った以上にヤバい状況になるので、ポケモン好き好きN君はお休みにさせましたw


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3ー3 降る雨は暗示する③ーGAZEー

13

 

 

 ポツーーポツーーっという雨音が後頭部を打つ。その冷たい感覚がトウコの沈んでいた意識を呼び起こす。

 

「……う……うぅん」

 

 『でんじは』によって失神していたトウコの意識が戻ったのだ。意識が戻り 最初に見たのは地面に生えた雑草。どうやら、トウコはチェインメイル風の制服を着た男に抱えられているようである。

 

「………こ、ここは」

 

 吹き荒れる砂嵐で分かりにくいが、ここは間違いなくあの大木の空き地だ。

 

「私は……確か………キツネさんに会いに行って………」

 

 誰かに襲われたのだ。確かポケモン……いや、近くで人の声がしたからトレーナーの扱うポケモンに、だ。意識を失う直前、そのトレーナーの男が何かを話していた。

 

 ーー確か……キツネさんを捕まえるとか………ッ!?

 

 その時、私のすぐ近くで轟音と共に衝撃が走る。派手な土煙を伴って何かが着弾したのだ。

 

「キャッ!?」

 

「グワッ!?」

 

 私と私を抱えていた男がその衝撃によって吹き飛ばされる。

 

「グッ……痛い……」

 

 地面に派手に打ち付けた痛みが身体を突き抜ける。それでも難なく立ち上がり、着弾した何かを確認する。

 

 それはーー

 

「!?……き、キツネさんッ!?」

 

 慌てて駆け寄るトウコ。

 

「キツネさんッ!キツネさんッ!しっかりし………て……」

 

 そこまで言いかけて、キツネさん……いや、トウコが先程までキツネさんだと思っていた物に異変が起こる。

 

「な、何これ……」

 

 トウコの目の前で倒れ、意識を失っているゾロアークは、『ズズ……」という不快な音と共に全身の色が黒一色へと染まり、空気に溶けて消えていく。そして、残ったのは……緑色の怪獣の人形?それさえ、空気に溶けて消える。

 

「あぁッ!クソッ!!そういう事かッ!クソッタレッ!!」

 

 トウコは怒鳴り声のした方を向く。そこには、あの気持ちの悪い男がいる。アララギポケモン研究所に無断で入ってきた男。そして……トウコが意識を失う直前にその場に居た男。確か名前は『ロブ』。

 そのロブがこちらを……いや、先程までトウコの目の前で転がっていたキツネさんらしき物があった場所を睨んで悪態を吐く。

 

「意味の分からん わざ 使ってくると思ってたが……。あの野郎!よりにもよって、こんな隠し玉を用意してやがったッ!?」

 

 男ーーロブが何を言っているのか分からない。ただ、トウコの視線の先、ロブの更に向こう側で行われている「何か」のことだというのは分かる。

 

 そのトウコの視線の先でさ、そこでは轟音を立ててポケモン同士が争っている。ポケモンバトルだ。

 

「…………………え?」

 

 ポケモンバトルを初めて間近で見るトウコにさえ異様(・・)に写った。

 その光景に、トウコは困惑の声を漏らす事しか出来なかった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 青の格闘家(ダゲキ)は岩をも砕くであろう正拳突きをゾロアークに振りかぶる。

 

 赤の格闘家(ナゲキ)はあらゆる敵を薙ぎ倒すであろう巨腕でゾロアークに掴みかかる。

 

 ナゲキとダゲキは かくとうタイプ 。対するゾロアークは あくタイプ 。相性はゾロアークにとって『悪い』と言わざるをえない。ただの一撃でも喰らえば、ゾロアークは致命傷となり得る。

 しかし、ゾロアークはそれをーー

 

『………フン』

 

 ーー歯牙にもかけないと言わんばかりに鼻で嗤う。

 

 

 ダゲキの一撃も、ナゲキの掴みも全てが必中の距離にあったと二体のポケモンは確信していた。

 ゾロアークの身体に当たったーー、身体に触れたーー。そういうふうに、視覚(・・)では確信していた。

 だから、その全てが空を切る。まるで、(かすみ)を捉えようとしていたかのように。捉えたと確信した姿は空気へと溶け消え、霧散する。

 それは、まさしく「狐につままれた」かのようだ。

 

 そして、一撃。それぞれの鳩尾(みぞおち)に蹴りが叩き込まれる。二体同時(・・・・)にだ。

 

 二体のポケモンは戦闘が始まってからずっとこのようにして、ゾロアークに弄ばれている。

 

 ゾロアークは分類上『ばけぎつねポケモン』と呼ばれている。己の姿を偽り、相手を騙す。それがゾロアークの常套手段。

 「他者の視界を騙す」ーーその事にかけては右に出る者はいないポケモン。それがゾロアークだ。

 

 鳩尾に叩き込まれた衝撃に一歩二歩と後退するダゲキとナゲキ。

 

 その目の前には、八体分(・・・)のゾロアークの姿があった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 時はロブが三体のポケモンを同時に繰り出した所にまで戻る。

 

 

 ロブは過去数ヶ月に渡ってイッシュ地方中を駆け巡って逃げ続ける『赤髪』ーーゾロアークの後を追っていた。その間に幾度も……という程ではないが、それなりの回数争った。

 

 『赤髪』はなかなか自身の情報をこちらに渡さない。そういう風に立ち回っているのは明白だ。

 

 ロブ……いや、人間というのは弱い生き物だ。ポケモンのように火も雷も氷も発生させる事が出来なければ、超能力もない。単純な力比べでもほとんどのポケモンに負ける。そういうモノだと自身で理解している。

 人間は弱い……だからこそ考える。自分よりも強い生物を相手に勝つ手段を。

 人間がモンスターボールを開発し、ポケモンの力を間接的に扱えるようにしたようにーー。ロブは自分と自分の従えるポケモン(道具)より強い相手(ゾロアーク)に勝つ手段を模索する。たとえ今回はダメだったとしても次回で……それが駄目でも、更に次の機会で『勝てる』ように考える。

 

 それを知っている『赤髪』は執拗なまでに自身の情報をひた隠す。戦闘を行えば使う わざ を把握される。扱う わざ から自身の性質(タイプ)を見抜かれる。戦術がバレる。考え方(パターン)がバレる。戦闘の有利不利に関わる癖がバレる。だから『逃げる』という選択肢をヤツは取る。

 

 ーーだが、それもこれまでだ。

 

 『逃げる』ゾロアークと戦闘を行うために、まず逃げられない状況に追い込んだ。今回、この辺り一帯を『くものす』や『すなじごく』で囲ったのは良い例だ。

 

 『逃げる』手段を奪えば、必然戦わざるをえなくなる。そこからヤツの情報を奪っていく。

 

 ヤツは野生のポケモンのくせに大量の木の実やら何処ぞで拾った人間の道具を使う。ーーだから、特性『きんちょうかん』を保有するデンチュラによって睨みをきかせ、そんな物の使うタイミング自体を奪った。

 

 ヤツの わざ から性質(タイプ)を見抜き、相性の良いポケモンも用意した。……まぁ、これはヤツの扱う わざ の豊富さから幾らかのアタリを付けて地道に検証していったのだが。結果的に、今『あく』に有効な『かくとう』タイプのポケモンを二体用意している。

 

 今あげたのは分かりやすい例だが、これ以外にも少しづつ少しづつヤツから情報を奪っていった。

 

 そして、今回で『勝てる』と確信し、ケリをつけると決めてロブはここにいる。

 

 だが、ロブは失念していた。いや、甘く見積もっていたと言うべきか……。

 今回の獲物が、人間よりも『強い』ポケモンのくせに人間以上に『考える』生き物だということをだ。

 ロブがゾロアークから情報を奪ったように、ゾロアークも人間から情報を、知識を、道具を、奪っている。

 自己の研鑽を怠らず、常に『人間』相手に『勝ち続ける』手段を模索している。

 その事実を忘れていた。

 

 

 そして、それが今、ロブの前で形となってーー異様な光景として、立ちはだかっている。

 

「クソがッ!ヤツの姿が増えたから かげぶんしん だとばかり思っていたが……テメェ、それだけじゃない(・・・・・・・・)なッ」

 

 ノーマルタイプ・変化技『かげぶんしん』

 手段はポケモンによって変わってくるが、自身と同じ姿の分身を用意し、相手の目を眩ませる わざ 。この分身は、生成する手段こそポケモンによって変わるが、質量をほとんど持たない事は共通している。故に有効的な攻撃手段となりえず、専ら敵に的を絞らせない回避手段として扱われる。

 

 ロブはこれを攻撃時に本体と突撃させれば、相手を翻弄することが出来ると考えだ。だから、今回連れて来たポケモンの一体にして今回の攻撃の要であるダゲキに覚えさせ、一番最初に使った。

 

 六体の分身(・・)……本体を合わせて七体のダゲキが姿を現わす。

 

『………………ケッ』

 

 と『赤髪』が対抗するように、自身も かげぶんしん を使用し、ダゲキと同じ六体の幻影(・・)を出現させたのには小さな驚きを覚えたが、戦闘初めから人数的不利である『赤髪』が被弾を出来るだけ抑えたいのは 理解 できるからそれ程大きな驚きにはならない。

 

 その後、これ見よがしに更に二体増やしたのには、「挑発のつもりかッ」と怒りを覚えた物だがーー

 

 ーーそこまでで思考が止まってしまったのは悪手だった。

 

 これまでに得た『情報』で、『赤髪』が より有効な手段 や より良好は結果 を優先し、挑発や煽りのような無駄を必要以上に行わない事は分かっていたというのに……。

 

 

 ……………………。

 

 結果から言おう。後に出された幻影は 『かげぶんしん』では無かった。

 

 翻弄されるダゲキとナゲキ。その中で奇跡的に入ったダゲキの『カウンター』で吹き飛ばされた幻影がその正体(・・)を現した瞬間に確信した。

 

「………あぁ、クソッ。そういう事か」

 

 かげぶんしん だとばかり思っていた幻影は、緑色の怪獣を模したぬいぐるみ のような物。

 

「……『赤髪』。テメェ、『かげぶんしん』の中に『みがわり』を紛れ込ませやがったなッ!!」

 

 ーーそして、特性『イリュージョン』で見た目もヤツ自身の姿に偽装していた、という訳かッ!

 

 更に言えば、ゾロアークは『かげぶんしん』の扱いも上手い。質量の無い幻影が、入れ替わり立ち替わり、ダゲキとナゲキを翻弄している。そして、本体と『みがわり』の幻影は一撃を与えれば、他の幻影に紛れ 死角へと入りなかなか特定させない。

対して、ダゲキの『かげぶんしん』は本体が特定され、囲い込まれているせいで残っているのにまるで機能していない。 わざ 一つの扱いからして ロブよりも考え、練られている。

 

 『赤髪』ーーゾロアークが、幻影に紛れ 鋭い爪から繰り出すV字の斬撃ーー『つばめがえし』によて、ダゲキが血飛沫を上げて倒れる姿を睨みながら、ロブは確信を持って叫んでいた。

 

 これでダゲキは倒れた。残りは役立たず(キルリア)を除いて三体。内、一体は牽制と捕獲用、もう一体は一回きりの奇襲用。純粋な戦闘用はナゲキしかいない。それだけで、本体とみがわり幻影を含めた8体を相手取る必要がある。

 

 ーーここまでか?今回はここで退くべきか?

 

 勝てる見込みは皆無ではないが、小さいのではないか?

 数の上では有利だが、状況は劣勢へと傾いているのではないか?

 

 ーー相手の情報は得た。これを手土産として対策を練り、次の機会を待つ。いつも通りだ。

 

 そこまで考えて、ピタリと思考が止まる。いや、切り替わる。

 

 ーーいつも通り(・・・・・)

 

 いや、違う。今回だけは、いつもと違う事が一つだけある。

 

 ーーこれを利用しない手は無い、か。

 

 仄暗く染まり始める思考は、ロブの背後ーーゾロアークを不安そうに見つめる少女へと向いていた。

 

 

ーto be continuedー




おうおう、黒い黒い。
まぁ、何となく何が起こるか予想がつくでしょうが。
次回!ロブのゲスにしてクズな一面……やったりましょう!(ゲス顔)

そして、今思うと今回の話、時系列が前後し過ぎかな?ちょっと分かりにくいと思います。その内修正しときます。

今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……『みがわり』はゲーム中だとマジでぬいぐるみがポンと置かれるだけ、それを文章でやるのもなぁ……。できて「なんちゃって変り身の術」かなぁ……って思ってたが、ふと『みがわり』の姿が本体と同じで自由に動き回れば、それカッコよくね?という思考から、他の わざ やらを拡大解釈とか改変を行おうと思考錯誤した結果生まれた戦術。今回の能力拡大解釈の犠牲になったのは特性『イリュージョン』君である。
でも、分身が本体と同じ事出来たら本体の活躍の場面を奪っちゃいそうなので、『かわりみ幻影体は わざ を使えない。出来るのは殴る蹴るの物理攻撃のみ』としました。
あと、効果自体はそう変わってないけど、『かげぶんしん』はやり方を変えましたね。原作ゲームだと、なんか左右に反復横跳びしてるだけだったんだもん!せっかくの ばけぎつねポケモン による相手を化かせそうな技を反復横跳びにするのはちょっとアレだったんで、『イリュージョン』と同様に『ゾロアークから発生する黒靄が形となった幻影』的な描写にしました。こっちの幻影は攻撃どころかちょっとした接触で解ける仕様。ダゲキの『かげぶんしん』?アイツ、物理攻撃型だから反復横跳びで良くね?
あと、さらりと『つばめがえし』も使ってイクゥ!これで わざ 何個目だっけ?

・トウコ……イチャイチャシーンが無いからヒロインが活躍してねぇ!?まぁ、当時はポケモントレーナーでも何でもないしね。しょうがないね。

・ロブ……馬鹿で、クズで、ゲスで、馬鹿で、ボケで、卑劣で、愚劣、餓鬼で、馬鹿で、悪辣で、間抜けで、外道で、餓鬼で、馬鹿でアホで、阿保で、餓鬼なロブ君。頭の回転は割と速かった模様。(辛辣w)
※判明している手持ちのポケモンまとめ
①キルリア……Lv.23(役立たず)
・??? ・??? ・??? ・???
②ギガイアス……Lv.30(戦闘要員・初手有利取り)
・てっぺき ・だいばくはつ ・じしん ・ロックブラスト
③デンチュラ……Lv.36(牽制、捕獲or奇襲?)
・くものす ・でんじは ・???・???
④ナゲキ……Lv.35(戦闘要員・防御)
・??? ・??? ・??? ・???
⑤ダゲキ……Lv.35(戦闘要員・攻撃)
・かげぶんしん ・カウンター ・不明 ・不明
⑥???……Lv.??(牽制、捕獲or奇襲?)
・すなじごく? ・??? ・??? ・???


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3ー4 降る雨は暗示する④ーHOSTAGEー

14

 

 

 事態はゾロアークの有利に進んでいるように見える。しかし、それは「否」と言わざるを得ない。

 

『…………………』

 

 それを理解しているゾロアークは誰にも悟られないようにしながらも苦い顔をする。

 

 ノーマルタイプ・変化技『みがわり』。

 それは、自身の総体力から1/4を消費し、ダメージや状態異常を肩替りしてくれる人形を生成する わざ である。

 

 そう。『みがわり』は体力を消費するのである。

 避けたとはいえ ギガイアスの『だいばくはつ』で多少なりとも減った体力で一度に二回の『みがわり』を使い、ゾロアークの体力は既に四割を切っている。

 

 勿論体力の回復手段はある。しかし、男が ダゲキ、ナゲキの二体を同時に駆り出された黄色の蜘蛛(デンチュラ)がいる。デンチャラは、この空き地の中心ーー大木の中からゾロアークの隙を伺うように睨みを効かせている。この状態では体力の回復もままならない。

 

 更に状況を悪くさせているのはこの辺り一帯で発生している砂嵐だ。それが残りのゾロアークの体力を確実にすり減らし続けている。この砂嵐は、十中八九ポケモンの仕業だろうが、その姿が一切見えない為、今すぐ止める事も出来ない。

 

 つまり、時間は完全に敵方の味方についてしまった、という事だ。

 

 この状況でどうするか。……そんなものは決まっている。

 

 ーー余計な時間を弄さずにナゲキを倒せなければ、この状況から生還する事が出来ない。

 

 そこまで考え、足に力を入れる。その時ーー、

 

「おい!『赤髪』ィイッ!!」

 

 男の声がした。その声には下卑た音が乗っている。

 

 ゾロアークはそちらを向く。同時に8体の幻影の内4体を赤色の格闘家のポケモン(ナゲキ)に睨みを効かせたまま、残りの4体も男の方を見る。

 

 そこにいたのは、(ロブ)とキルリアとーー

 

『ツーーーッ!?』

 

 ーー男に髪の毛を掴まれた小娘(トウコ)だった。

 

「い、痛いッ、離してッ!」

 

 トウコの悲鳴をゾロアークの耳が捉える。

 

「うるせぇ……。ちょっと黙ってろ。………さて、『赤髪』ィ、この状況だ。お前なら 言うまでもないだろうが……分かっているよな?」

 

 ーー……下種がッ!

 

 ゾロアークの歯が湧き上がる怒りに軋む。あぁ、そうだ。あの男が小娘を人質に取る事くらい予想できた事態だ。だが、今まで一匹狼として孤独に生きていたゾロアークには、その問題について 思い付きもしなかった。

 

 ーーいいや、まだだ。まだどうにかなる。

 

 小娘の側にいるのは、あの男とキルリアのみ。ならば、幻影を全てナゲキの足留めに使い、助けに行けばどうにかなる。

 

 それは、ゾロアークの脚力を持ってすれば十分どうとでもなる。ロブの側にキルリアという不確定要素が存在するが……そんな事を言っている場合ではない。

 

 危険(リスク)とは回避すべき物。しかし、必要な時に危険(リスク)を被る覚悟が無ければ、ゾロアークは一歩も進めなくなる。

 

 ゾロアーク自身の半生が小娘(トウコ)へと向かう脚に力を込める。

 

 その時、その瞬間……ゾロアークの意識は完全に小娘(トウコ)へと向いていた。

 それはつまり、他への意識が完全に絶たれたという事。

 

『…………………』

 

 ーーエスパータイプ・変化技『こうそくいーー

 

「やれ、デンチャラ。エレキネット」

 

 ゾロアークが動くよりほんの少し速く。ロブの命令がデンチャラへととんだ。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 その瞬間、大木で命令をーー絶好の機会を伺っていたデンチャラは動く。

 指示された命令は、デンチャラ自身が考えていたモノ(・・・・・・・)とは違っていたが……命令は命令だ。デンチャラは自身の体内のタンパク質で生成した繊維組織に電気を織り込んだ『エレキネット』を一気に吐き出した。

 

 

 吐き出された網は、ゾロアークを、ゾロアークの幻影を、味方であるナゲキさえもーー。全てを巻き込むように展開され、雷撃を伴いながら空を覆った。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

『ツッ!?』

 

 ゾロアークの全身に痛みが走る。身体が マヒ を起こす程では無いが、身体が痺れて動かし辛い。

 更に不味い事に、この『エレキネット』によって 衝撃に弱い『かげぶんしん』の幻影が全て解除された。残るのは、本体であるゾロアーク自身と『みがわり』で作った幻影一体の………ッ!?

 

 ーー轟音

 

 音のした方向を見れば、ナゲキがその巨腕を地面に叩きつけた音だった。ただ、それはただ地面に腕を振り下ろしただけめはないようた。ナゲキの叩き付けた指同士の間から黒い靄が漏れ出ている。

 

 それだけでゾロアークは察する。

 

 ーー最後の幻影が壊されたのだと。

 

 ゾロアークと同じく『エレキネット』に捕まっているナゲキが電撃を物ともせず残った最後の幻影を掴み上げ、そのまま地面に叩きつけたのだろう。

 

 これで残ったのは、ゾロアーク本体のみ。

 

 ーー舐めるなッ!

 

  わざ を使うまでもなく、自身の爪と腕力で『エレキネット』を引き千切る。

 

「まぁ、破られるだろうさ……だが、そんなに簡単には逃がさんよ。デンチュラ、『でんじは』」

 

『ーーカッ!?』

 

 瞬間、身体に言いようのない衝撃が走る。その衝撃に心臓が驚嘆の悲鳴を上げ呼吸が一瞬止まる。足に上手く力が入らない。ブルブルと震える膝は今にも崩れ落ちそうだ。

 

 ーー マヒ か!?

 

 ゾロアークの神経が機能不全を起こし、脳の命令が筋肉にまで上手く行き渡っていない。

 それでも、と。あるいは、それがどうした、と強引に力を込め一歩を踏み出す。

 

 その瞬間、赤の巨腕がゾロアークの胴体を捉えた。

 

『!?ーーッ』

 

「いよぅし、良くやった。ナゲキ、そのまま『しめつける』だ。ついでに『ばかぢから』も併用させろ」

 

 ロブの命令にナゲキは無言で答える。ゾロアークを『ばかぢから』で強化された両腕と胴体で完全に固定し、締め上げる。

 

 ゾロアークの骨から悲鳴のような軋みが生じる。

 

 両腕と両足が満足に動かさないゾロアークは、それでもナゲキの喉元に喰らいつく。

 

『………グッ……ヌウッ』

 

 だが、ナゲキの万力のような締め付けは一切緩まない。

 

「さぁてさて……『赤髪』。お前はギガイアスの『だいばくはつ』を難なく回避したようだが……今度は流石に逃げられないよなぁ?」

 

 ロブの声を聞き、ゾロアークに焦りが生じる。

 

 この状況であの男が何もしない訳がないのだから。

 

 そして、それはその通り。ロブはゾロアークのトドメ用にデンチャラに あるわざマシン を与えていた。

 それはーー、

 

「デンチュラ、『はかいこうせん』ーーッ」

 

 ノーマルタイプ・特殊技『はかいこうせん』

 ポケモンの扱う わざ の中でも最高クラスの攻撃性能を持つ特殊攻撃。

 反動でその後の行動が一時的に制限されるがその威力は折り紙つき。

 

 瞬間、大木に居座るデンチュラの口から極光が(ほとばし)る。

 

 極光はゾロアークとナゲキの近くの地面を抉りーー大爆発を起こした。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「ウゲェ……。目と口に土が入りやがったッ!前が見えねえ」

 

 『はかいこうせん』の爆風が止み、ロブはその二次被害に苦しんでいた。

 

「『はかいこうせん』。流石の威力だ。ちょっとしたクレーターが出来ちまうとはな……」

 

 至近距離で撃つモンじゃねぇな、とひとりごちる。

 

 未だに上がる黒煙のせいでクレーターの中心がどうなっているか確認が取れない。

 

「き、キツネさんッ!!キツネさんッ!!」

 

 手元が煩い。

 

「キツネさーーあうッ!?」

 

 見れば、髪を掴み上げられたガキが悲鳴のような声を上げている。

 

「……うるさいって、ちょっと黙ろうか」

 

 ロブはトウコの掴んだ髪を持ち上げコチラを向かせ、黙らせようと試みる。

 トウコは逆にロブを睨みつける。

 

「このーーッ」

 

「『ーー卑怯者』か?カハハ、結構な事じゃねぇか!そうだ、オレは卑怯者さ。言い訳はしねぇ」

 

 だからーー、

 

「人質役どうもありがとう。ここまで上手くいったのは間違いなくお前さんのおかげだ」

 

 ーーと、ロブはクツクツと嗤う。

 

「………ゆーー」

 

 トウコが何かを言おうとするが、ロブはその口を左手で掴み持ち上げる。

 

「んー?『許さない』か?……まぁ、どうでも良いんがな。オレはお前さんをゲラゲラと嗤いたいだけで、お前さんの話なんて聞く気はねぇんだ。後は一人でやってくれや」

 

 それだけ言って、ロブはトウコを投げ捨てるように転がす。

 小さな悲鳴が聞こえた気がするが、もう耳を傾ける気もしない。

 

「……随分と派手にやらかしてくれたようだな」

 

 男の声がする。見れば、後方で待機していたチェインメイルの男女の二人の姿がある。…………二人?

 

「おう、お目付役様か。見ろよ……あの『赤髪』が。散々、オレたちの手を焼かせた あの『赤髪』がッ!こんな間抜けな手に引っかかりやがったよ!!あぁーあ、滑稽滑稽!」

 

 ロブは嗤う。ゲラゲラと嗤う。嗤って、嗤ってーー

 

「…………滑稽……か……」

 

 そう小さく呟いた。

 

 それは一体誰に言ったモノなのか。

 

『……………………』

 

 その後ろ姿を、『役立たず』と罵られ続けているポケモンーーキルリアがとても痛ましそうに見つめていた。

 

 

「雨、強くなり始めたか……。とっとと終わらせるか」

 

 

ーto be continuedー

     ーnext episodeー




ロブが悪役しつつも……何かしら含みのある発言をする今話。

なんだかんだ、ゾロアーク優位に進んでいた戦況も一点し、次回から不利な展開を余儀なくされます。

というか、ついに話のストックが切れた。こっから自転車操業か……ヒエッ

今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……今まで使ったわざって、①とんぼがえり②にらみつける③にほんばれ④つめをとぐ⑤ローキック⑥かげぶんしん⑦みがわり⑧つばめがえし……まだ増えていくんだけど、流石にヤバくね?一章済んだら削るかな。取り敢えず、戦闘に使ってないやつとかを。

・トウコ…… そ、そろそろ出番ですよ?(汗

・ロブ……何がしか含みのある言い方をするロブ君。この伏線を回収できるまでこの作品は続くのか?

・チェインメイルのーー……うわぁ、この人達トウコ以上に影が薄い……。作者が本気で何でいるんだろうと思い始めたら、もう色々と終わりな気がしてきた。
「そういや、三人なのに今話二人しか出てないけど、どうしたの?」
みがわり幻影で吹っ飛んで気絶退場。
「えぇ……」


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4ー1 紅色に染まる①ーSMOKEー

エピソード 3ー1 の前語りを本エピソードに移転しました。


15

 

 

 ーーこれは分かっていた。分かりきっていた事だった。

 

 「自分」という存在は追われている。イッシュ地方南東部をまるまる一つ囲い込んで追い立てるように……。そう、まるで虱潰しのように捜索できる連中に、だ。

 

 ーーだからこれは予定調和だ。どうしようもなく。

 

 だからこそ、「自分」は潜伏地を複数用意して隠れ潜もうとしたのだ。いくら探しても見つからないとなれば必ず警戒網に綻びが生まれると考えていたからだ。

 

 ーー言い訳はできない。しようもない。

 

 だというのに、「自分」はこの一箇所に留まってしまった。留まり過ぎてしまった。

 「自分」がここに「居心地の良さ」を感じてしまったから。もう少し、もう少しとズルズルと先延ばしにしてしまったから。

 

 ーー「過失」………。「怠慢」…………。「驕り」……………。

 

 人肌にでも飢えていたのか。………嗤える、本当に嗤っちまう。

 

 ーー間違いの余地は無く、これは俺の「業」だ。

 

 

 ある年の春にイッシュ地方東南端に突然現れたポケモン、ゾロアーク。

 

 大雨に濡れるその傷だらけの姿は、鉄の匂いを放つ『紅』に染まっていた。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ポツポツーーという次第に早くなる雨音が、アララギ博士とチラーミィの足を急かす。

 

「ちょっ!?雨降るの早すぎィ!!……ほとんど海 見られなかったぁ!」

 

『ミィ!……ミィ!』

 

 チラーミィはアララギ博士の白衣の下に捕まり、急げ急げとアララギ博士を急かす。

 

「チラーミィ、あなた……楽そうね」

 

 自分が必死に走っているのに、楽をしている友人にちょっとイラつきを感じるアララギ博士。

 

 そのアララギ博士の帰途の先で二人の人影があった。

 

「カルカ君、ウチの娘見なかった?」

 

「いや、見てないッスね。トウコちゃん、いないんッスか?」

 

 一人は栗毛の女性。もう一人は年若い青年だ。

 

 どちらもアララギ博士にって面識の無い相手だが、片方の女性には既視感がある。

 

 ーーあの栗毛は……。

 

「……トウコちゃん……………のお姉さん。いや、お母さんかしら?」

 

 その呟きが聞こえたのか、栗毛の女性はアララギ博士に顔を向ける。

 

「あの、何方かは存じませんが、私の娘のトウコがどこに行ったか知りませんか?……雨が降ろうとしているのに、あの娘 何処にいったのかしら……」

 

 トウカという女性の顔は心配気だ。

 

「あ、それならーー」

 

 と、言いかけてはたと言い淀む。

 

 ーーこれは言うべきかしら?トウコちゃん、あんまり『キツネさん』との関係知られたくないみたいだし。………あれ?そもそもこれ教えちゃったら、私女の子が森に行くのを止めなかった人になるのかしら?

 

 やべぇ、これバレたらわたしにも被害が及ぶ、などと考えていたらーー

 

 

 遠くで爆発が起こった。

 

 

 大音量がカノコタウン中に響き、地面が揺れる。

 

「な、何?突然……」

 

「チョッ!?あ、アレ!トウカさん、アレ!!」

 

 困惑するトウカに、原因にいち早く気付いたカルカはトウコたちに指し示す。

 

「あれは………」

 

 カルカの指が指し示す先ーーカノコタウン北部の森で大きな黒煙が上がっていた。

 

「な、何かしら……あれ……」

 

「……分かんないッスけど、オレ この村の警備なんで、確認しに行かない訳にはいかないッスよ」

 

「………そうね。私もレパルを呼んでから合流するわ」

 

「え?いや、でもトウコちゃんはどうするんスか?」

 

「……確かに心配だけど、カルカ君の先輩としてアレを無視する訳にもいかないでしょ。……トウコなら、お友達の家でお世話になっているかもしれないし」

 

 トウカとカルカが話し込んでいる間にアララギ博士が割り込む。

 

「それ、私もお手伝いしても良いかしら?」

 

 その言葉にカルカがイヤイヤと反対の声をあげる。

 

「いや、流石に部外者を関わらせる訳には……」

 

「いいえ、今日来たばかりだけど、私もこの村の住人よ。……それに、一応トレーナーの資格はあるから足手纏いにはならないはずよ」

 

 アララギは白衣の下のチラーミィを二人に見せる。

 

「分かりました」

 

 アララギの提案にトウコは同意する。

 

「チョッ!?良いんスか?!トウコさん!」

 

 しかし、カルカは賛同出来なかったようで即決で同意したトウコに非難の声を上げる。

 

「賛否両論だけど、少人数で危険な所に向かうのなら三人一組(スリーマンセル)は必要最低限よ」

 

 一人が何らかの問題で負傷した時、二人一組なら一人を引き摺って帰るのが精一杯。しかし、三人一組なら一人が負傷者を運び、もう一人が撤退の援護に回る事が可能になり、問題発生時の生還率がぐっと上がることをトウコは知っていた。

 

 それにーー、とトウコの言葉は続く。

 

「もしもの事を考えて村の防備も固めたい。この状況で人手は多いに越した事は無い。希望者が居て、その希望者は最低限の自衛能力がある。現状を考えたら願ってもない事よ」

 

「……なら、防衛側の人員と入れ替えたらーー」

 

「駄目、時間がかかり過ぎる。今は早さが最も求められる。その状況で、防衛の準備の上に偵察の選抜までさせるのは時間の無駄。村長さん、頭の回転が遅いからね。なら、『偵察の人員は決定した』って事後報告だけした方が色々と効率が良いの」

 

「むう……、分かりました。納得はしきれてないッスけど、ここでそんな話をしている方が無駄ッスもんね」

 

 渋々とだが同意するカルカ。その答えに満足そうに笑うトウカ。

 

「よく分かってるじゃない。……それじゃあ、偵察の協力お願いします」

 

「え、ええ……。こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 話を急に振られたアララギは若干の困惑を残した声で協力の要請に同意する。

 

「さて、カルカ君。悪いけど、この人と村の入り口で待っててくれる?私はレパルを呼んで、必要な事を旦那に伝えてくるから」

 

「了解ッス。……あ、そう言えば……自分はカルカ。さっきの女の人がトウカって言います」

 

 カルカは足早に去っていくトウカを見送った後、アララギに向き直り、遅ればせな自己紹介を行う。

 

「わたしはアララギ。アララギ博士って呼んでね」

 

 「はぁ……。博士さんですか」と何処か気の抜けた口調で一人ごちらカルカ。

 

 そんな姿を黙って見ていたアララギの服を内側から引っ張る感覚がする。

 

「……?どうしたの、チラー……ミィ」

 

『ミィ……』

 

 チラーミィのアララギを白い目で見ていた。チラーミィは知っている。……いや、忘れてなかったというべきか。

 

「うっ、もしかしてトウコちゃんの事?」

 

 勿論その事だとチラーミィは頷く。

 

「……い、いや。わたしも初めは言うつもりだったのよ?でも、事態があれよあれよという間に進んじゃってーー」

 

『ミィ』

 

 取り敢えず、それで納得しておく事にしたチラーミィ。だが、チラーミィは見抜いている。旧知の仲であるアララギが『このまま言うタイミング失わないかなー?』とか淡い期待を密かによせていたことを。

 それでも、

 

 ーートウコちゃん、大丈夫かしら……。

 

 と、トウコの身の安全を心配し、こうやってトウコを探しに行こうとする友人の姿がチラーミィの視界に写っていたから、取り敢えず(・・・・・)見逃す事にした。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 小雨だった雨足はいつの間にか強くなり、トウコの服や髪が身体に張り付いている。

 

 身体が酷く重い。それは服が雨水をたらふく飲み込んだせいもあるだろうが、きっとそれだけではない。

 

 ロブから「もう不要だ」とばかりに転がされ、放置されたトウコは無力感に襲われていた。

 

 ーーなんで……どうして、私は何も出来ないのッ!?

 

 キツネさんが戦っている間、トウコはただ見守る事しか出来なかった。そして、ロブという男にキツネさんを倒すための人質にされた。

 

 それも終われば、いよいよもって価値がなくなったと言わんばかりに捨てられた。拘束さえされていない。トウコの行動も言葉も感情も存在も何もかもがロブという男の行いを揺るがす事は無いと判断されたのだ。そして、それはその通り。ただの8歳の子供には、この状況を覆すような何かなど存在しない。

 

 トウコが好意を持つ相手を傷つける為に無理矢理に利用され、利用しきればそのままゴミのように捨てられた。

 

  もうトウコの顔は雨と泥と悔し涙でグチャグチャだ。

 

「しかし、流石にこれは死んだのではないか?我々の目的は『保護』であると何度も言ったはずだが?」

 

 ーー死!?キツネさんが……

 

 チェインメイル制服の男の言葉によってトウコの心臓を跳ね上がる。だが、考えてみれば当然だ。あの攻撃を至近距離で浴びて生きているなど考えられない。

 

 ーーい、嫌……そんなの絶対に嫌……ッ!!

 

 心も体も未だに鉛のように重たい。思考が碌に回らない。ただただ恐怖が全身を駆け巡り、トウコの何もかもが黒煙へと駆り立てる。

 

「……まぁ、普通ならな。だが、相手はあの『赤髪』なんだ。生きていても何らおかしくな………ん?おい、ガキ何処に行くつもりだ」

 

 ロブの声なんて聞く気はない。いや、初めから聞こえていない。

 

 トウコは自分の内から沸き起こる『キツネさんの死』という恐怖に突き動かされるように黒煙の中へと消えていった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「…………あちゃー、人質放置してたら勝手に行っちまったよ……」

 

 こりゃ失敗、とケラケラと笑うロブ。

 ……しかし、その人を食った笑みを浮かべる直前までの無言は何だったのか。それをお目付役の二人は知る事が出来なかった。

 

「おいッ」

 

 その態度にチェインメイル制服の女が声を荒らげらるが、ロブの顔から薄い、人を小馬鹿にした笑みは消える事はない。

 

「まぁまぁ、お目付役殿。そうカッカッするモンじゃねぇよ。……どうせあのガキに何かが出来ると言う訳でもあるまいし」

 

 今更、あの娘が何が出来る。……いや、初めから何も出来ない。ならば、そんなことよりもーー、

 

「さて、これからどうしますかね?お目付役殿。正直、あの黒煙の中に入るのは賛同しかねるのだが……」

 

「……貴様はまだあのポケモンが何かしてくると?そもそも生死……いや、原型が残っているかさえ疑問だ」

 

 その通りだ、とロブも思う。だが、ともロブは思う。

 

「オレは『生きている』に票を入れるな。オレたちと『赤髪』は散々追い回し、追い回された仲だ。その間に何度煮え湯を飲まされた事か……。もう、油断はしねぇ」

 

 ロブはここに必勝を確信して来た。だというのに、それはアッサリと覆され、人質なぞという少々(・・)人道に反する行為に頼ったばかりだ。

 ……多少、警戒し過ぎだとは思うが。おっかなびっくりで二の足踏みしながらの方が絶対に良い。

 

「オレとしては、この雨で黒煙が消えるのを待ちたいんだが……。何かが燻ってんのか、一向に消えやしねぇ……」

 

 まぁ、それでもこの雨だ。数分も放っておけば勝手に消えるだろう。しかしーー、

 

「どうすっかなー?『赤髪』が生きていたら時間を与えるのも怖いんだよなぁ……」

 

 『はかいこうせん』の反動でデンチュラが動けないのだ。デンチュラの『きんちょうかん』による睨みは未だ効果を発揮していると思うが、最悪、この黒煙の中で体力の回復に勤しんでいたらと考えると背筋が寒くなる。数分どころか一秒たりとも時間を与えたくない。

 

 なら、無理にでも黒煙の中に入るか? そう考ると、逆にこの黒煙が『赤髪』の顎で馬鹿が口の中に入ってくるのを待っているように見えて笑えない。

 

「…………だぁッ!もうしょうがねぇ!わざわざ、あのガキが先行してくれたんだ。オレたちはその後に続けば多少は安全だ」

 

 ややあってから、ロブはあのクレーターの黒煙の中へと入る決断をする。

 そう決めて、一歩踏み出そうとして立ち止まる。そして振り向き、

 

「なぁ」

 

 ロブは後ろのチェインメイル制服の男に呼びかける。

 

「なんだ?」

 

「使うぞ?」

 

 ロブのかかげた手にはモンスターボールがあった。それはロブの最後の一体であり、『スポンサー』から預けられたポケモンのモンスターボールだ。まぁ、中は既に空だが。

 はっきり言って言う事を碌に聞かない「ジャジャ馬」。渡された時は「行け」と「止まれ」しか言う事を聞かなかった。今でも、しばらく運用していると急に命令を無視しだす。その分、その強さは本物でロブに『暴君』と言わしめるほどだ。

 『すなじごく』で『赤髪』の逃走を防止する程度にしか使う気がなかったが、デンチュラが反動で動けない以上、アレに頼る他は無い。

 

「……了解した」

 

 チェインメイル制服の男が神妙に頷く。女の方も顔付きが一段階引き締まったゆうに思える。

 実の所、この男たちの主目的はロブの監視ではなく、その『暴君』の観察や最悪の事態に陥った時の処分である。何故なら、『暴君』はただのポケモンでは無い。チェインメイル制服が所属するある組織のフロント企業にして今回のロブへの依頼者(スポンサー)による実験生物であるのだから。

 

「じゃ、行きますか。……待ってろよ『赤髪』ィ」

 

 そして、この場の全員がもうもうと立ち上がる黒煙の中へと消えていった。

 

ーto be continuedー




お、終わらねぇ……
執筆前は「5話で終わるかなー?」とか思ってたのにぃ……。

しかし、実験動物ねぇ……。ブラックホワイトの某悪の組織がポケモンを独占、兵器的運用による世界支配を目的にしていた(気がする)から、品種改良とか配合実験とかしてるでしょ!と腹括って出す事にしたが、それ関連でその後のストーリーを考えているとどんどんポケモンらしさが薄れていってるんだよなぁ……
ポケモンとは……ウゴゴゴゴ……、と本気で頭を抱える今日この頃。

「つうかさ、『はかいこうせん』の威力ヤバくね?クレーターとかどんだけだよ……」←by作者C
クレーターはやべぇよな、地面抉れてるよ……でも、威力150のやべぇロマン砲だし?多少はね?
「クレーターのサイズってどれくらいだよ?」
うーん……あんまり詳しく考えてなかったなぁ……半径10〜15mとか?
「……それ、空き地のサイズもどんだけなんだよ」
そ、その辺はフィーリングにしよう!な?な?
「ガバガバだな、おい………」


今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……カッコイイぞ!(説明不要)「といよりかは、『小並感』だな。それ」チートだぞ!ヤベェぞ!主人公補正だぞ!優遇しまくりだぞ!「……やべぇ、作者Aの語彙力が死んでやがる」

・トウコ……可愛いぞ!(説明不要)「というよりかは、『小並感』だな。それ………つか、主人公たちへのコメントがそれで良いのか?」『(説明不要)』だからな!「………そっすか」

・ロブ……うーむ、コイツに関しては作者オリジナルなのにキャラクターが安定してない気がする「……まともなコメント、主人公たちとの対応の差よ」ゾロアークとかトウコを相手にする時とお目付役相手にする時の性格が違いすぎる『誰だ、お前は!?』「いたのか、作者B……」地獄からの使者、スパイダーマッ!「おい!メンド臭くなってんじゃねぇよ!最後までしっかりしろ!」……もう、相手によって豹変するヤツって事でいっかな、ロブは。「……適当だな」何を今更、俺はいつも適当に人生を生きているゾ!

・チェインメイル制服の三人(二人)……「なぁ、気絶してる一人出してやらねぇのか?ちょっと不憫すぎるんだが」正直、コイツらで文章圧迫したくない「……残りの二人も不憫に思えてきた」

・『暴君』?……「一体何ポケモンなのか?」正直、現在の作者脳内で凄い事になってるからベースが何だったかはどうでも良い希ガスーー「コイツ、今『ベース』って言いやがったぞ。さてはおまえ、ポケモンで二次創作する気ねぇな!」取り敢えず、今は赤いキャドス程度だよ?「……将来的(というより、作者Aの脳内的)には?」ゾロアークを……ひいては生物を超えたバグポケモン!「やっぱ、ポケモンする気無いだろ!ポケモンの世界観とか雰囲気をぶっ壊すつもりか!?ていうか、出落ちじゃねぇのかよ!?」

・アララギ……「割と狡いな、アララギ女史」……まぁ、人間こんなもんだよ「お前の中のアララギ博士がどんなモノかは理解できた」え、実際こんな感じじゃないの?「おい、原作プレイヤーに叩かれるゾ…………この作品は、かなり前にやった原作ゲームのうろ覚え知識で執筆されており、実際こんな感じではないと思われます。最悪、ある程度設定が酷似している別人という認識の方が良いと思われます」
正直、会話の中で本来の目的を伝えるのを忘れるお転婆な人って以上の知識がありません。「……お前はいい加減、原作ゲームをプレイし直せ」……へい。

・トウカ……「うわ、違和感……」前回の登場がアレだったもんなぁ……「ホントどうして、ああなった?」いや言ったじゃん。「……酒か」酒です。『酒!飲まずにはいられないッ!』いや、自分アルコールより炭酸派なんで「……じゃあなんで飲んだ?」飲んで頭馬鹿にしないと脳内ピンク色作品なんぞ作れる訳ねぇべ。「ここ一〜二週間のアルコール摂取量が過去最高になりそうだな」

・カルカ……「あの閑話、このタイミングでコイツを出す為に投稿したんだっけ?」まぁ?……実際はもうちょい後のシーンで出すためだが。「……あんま良い予感しねぇなぁ」そもそも現状が胸糞マシマシの不毛なシーンだからな!最近、執筆ペースが乗らないのは話の雰囲気にやられて気分が若干ダウナーになってるからだね『ーーなどとサボリ魔は供述しており……』B!余計な事を言うなよ!「事実じゃん」……….味方が欲しい


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4ー2 紅色に染まる②ーIRREGULARー 【リメイク!】

※この前書きには、今話のネタバレを含みます。



・巨大ワルビアルの名前変更しました
検体86号→EGー86『Large Jaw(大顎)

・描写変更
ゾロアークの奇襲成果が変更されました
某組織のしたっぱの無力化→某組織のしたっぱ無力化+トウコの救出


16

 

 

 見通しが一切聞かない黒煙の中を走る姿がある。トウコだ。

 

「ーーーーッ!!ーーーーッ!!」

 

 視界はほとんど効かない。息も苦しい。それでも走り回り、叫び回る。

 「キツネさん!」と呼びかける。生きている事を願うように。

 

 いつの間にか土砂降りになった雨音でその声は碌に響かない。しかし、トウコはそれさえ気付く事が出来ず叫び続ける。

 

 体が言う事を聞かない。心が言う事を聞かない。正常な判断など既に無いに等しい。何もかもが冷静に働かず半狂乱を起こしたように……けれども『キツネさんを探す』という思考性を持って暴れ回る。

 

「ゴホッゴホッ……キ……ツネ……………さんーーッ!」

 

 煙でむせ返りまともに息も出来ないというのに。

 

「あうッ!?」

 

 その時、トウコは 何かに足を取られ、地面に倒れる。

 

「何よ…….ヒッ」

 

 トウコが足を引っ掛けたのは赤い巨腕。ゾロアークと一緒に『はかいこうせん』に巻き込まれたナゲキだ。生きているのかどうかは分からないが、前のめりに倒れたまま動く気配はない。

 

 取り敢えず危険では無いとトウコは判断する。それよりもーー

 

「そ、そうだ。このポケモンが近くにいるのなら……」

 

 トウコは倒れたまま辺りを見回す。視界はほとんど通らないが、トウコのやや前方に『紅』が煙の中からチラチラと見えている。

 

「キツネさ……ん?」

 

 トウコは這いずって向かう。冷静に考えれば立ち上がって向かった方が良いのだろうが、そんな思考は働いていない。

 

 トウコが這いずって近付くごとに、少しづつ視界を邪魔する黒煙が退いていく。

 あの『紅』はやはりタテガミだった。その内、黒の背中も見えた。毎日のように手入れを行なっていた鮮やかな毛並みは煤や泥で汚れ見る影もないが……間違いない。

 

「キ、ツネさんッ!!」

 

 動かない。トウコの声に反応を見せない。横たわるその姿が次第に使い古されたボロ雑巾のように見えてくる。暴走していた心と体が一気に冷えたような錯覚を起こす。

 

 ーーそ、んな……駄目………絶対に駄目ッ!!

 

 身体が動く。良くも悪くも冷えた思考がゾロアークまで向かう最適解を選び、トウコは立ち上がろうとする。

 だが、その背中がグンと重くなる。何事か、と考える間もなくトウコの耳が聞きたくなかった声を捉える。

 

「ウェッホ、ウェッホ……クソ、煙がむせる。……たく、世話かけさすんじゃねぇよ、ガキ」

 

 ロブだ。

 

「離してッ!その足を退けてッ!!」

 

 ロブはトウコの背中を踏みつけて動けないようにしている。

 

「離す訳ないだろ?人質か肉盾か……何にせよ、また(・・)役立ってもらうんだからな」

 

 ーー『また』!?また私を利用するの!?

 

 やめて、やめて……ッ!これ以上、私をキツネさんの足手まといにしないで……。

 

 そんな想いは当然のようにロブには届かない。

 

「……まぁ、あの様子だと必要ねぇかもしれねぇがな」

 

 ロブは倒れたまま動かないゾロアークを見やって言う。

 

「…………チッ、デンチュラのヤツまだ反動で動けないのか。捕獲が出来ん。もうモンスターボールで良くねぇか?」

 

 ロブは後ろを付いてくる男女に聞く。

 

「良い訳ないだろうッ我々の目的はーー」

 

「あー、嘘です。冗談です。ごめんなさい」

 

 心底面倒だ、と言わんばかりに溜息を吐く。スポンサー様のご意向である。無視は出来ない。

 本来は、モンスターボールを使わずに捕獲するにあたってデンチュラの『でんじは』で常時マヒ状態にして移送し捕獲する予定だった。しかし、そのデンチュラが動けないのだ。

 

 ーー多少の融通はきかせてくれよ

 

 と、言いたいのだが そうはならないのが連中である。

 

「しょうがない……。デンチュラが動けるようになるまで、ここで………待………つ…………………………」

 

 ロブは途中で言い澱み、無言でゾロアークを睨み付ける。そして、トウコから足を離し、かみを鷲掴んで無理矢理立たせる。まるで自身の肉盾にでまするように。

 トウコの悲鳴が聞こえるが、誰一人として興味を示さない。ロブはゾロアークを睨み、お目付役の二人はそのロブを見る。

 

「……どうした」

 

「いや……今、『赤髪』が動いたような気がーー」

 

 ーーした、と言い切ろうというタイミングで地面に転がるゾロアークの更に向こうから三つの獣の影が黒煙を破って飛び出す。

 

 その影は、三体のゾロアークだ。いや、ゾロアークの姿をしている、と言うべきか。

 

 背後の男女は驚きの声を上げるが、ロブは冷静に前を見据える。

 

 ーーどれが本物だ、と。

 

 三つの影はあからさまだ。まるで、此方の視線を誘導しているかのように。

 

 ーーなら、あの三体は偽物。

 

 その予感は的中した。ロブへと向いた鋭い爪が当たった瞬間、霞となって霧散する。

 

 ーーなら本命は。

 

 下だ。飛び込んできた幻影を(くぐ)るような低姿勢で突っ込んで来るゾロアークの姿があった。

 今の今まで地面に横たわり、背中を晒していたゾロアーク……先程まで『囮』をしていたヤツだ。

 

 ゾロアークの凶刃が迫る。

 

 それをロブは嗤う。そして、自身とゾロアークの間にトウコという肉盾を挟む。

 

 ーーこれで『赤髪』は止まる。いや、止めざるをえない。

 

 そういう確信を持った笑みは一瞬にして歪む。ゾロアークはまるで止まらない。その一歩は小揺るぎもしない。

 

 ゾロアークの爪が刺さるーーと思われた瞬間、そのゾロアークが霧散した。

 

「なッ!?」

 

 ーー四体とも幻影だと!?なら、本体は……ッ

 

 背後で悲鳴が起こった。振り返った先で見たのはーー

 

「なッ?!」

 

 ーーお目付役の二人が先程まで倒れていたナゲキによって殴られ吹き飛ぶ姿だった。

 これには さしものロブでも何が起こっているのか理解が及ばず、狼狽の顔を作る。

 

 そして、そのナゲキがロブの方を向き、襲いかからんと右足で跳躍する。

 

「ちッ」

 

 いったい人間何人分の跳躍だろうか。空中で50kg以上の質量がコチラを叩き潰さんとばかりに右の拳を振り上げる。

 

 これを8歳の子供とはいえ、どう見積もっても20kg以上あるトウコを抱えて避ける事は出来ない。

 ロブは右手をーートウコを掴んでいた手を離し、後ろへと跳ぶ。

 

 そして、残されたトウコの目の前に赤の格闘家が轟音を伴って着地する。

 

 ややあってから、『ペタン』と腰を抜かして、トウコは地面へと尻餅をつく。そして、トウコとナゲキの眼が至近距離で合う。

 

『………………………ケッ』

 

 ナゲキは目の前の少女の無事を確認するように瞳を上から下へと動かした後、一つ舌打ちを打つ。トウコがよく知る誰かのような舌打ちだ。

 

「………あ………え?」

 

 トウコは未だに事態への理解が及んでおらず、口をパクパクと開いたり閉じたりするのみである。

 

「おい、どういうつも…………ああ、成る程……そういう事か」

 

 ロブはナゲキの裏切りに怒りと困惑の声を上げる。

 しかし、それはトウコとナゲキが見つめ合う姿を見て、理解の声へと変わる。

 

「本体はそっちだったか……。ウチのナゲキに化ける、か。まんまと騙されたわ」

 

 そのロブの言葉を聞いてかは分からないが、ナゲキの視線はトウコからロブへとーー明らかな敵意を乗せてーー移る。

 

 ーーそして、ナゲキの姿が赤から黒へと染まり、霞のように大気へと溶け始める。

 

 同時に、やっとの事で土砂降りの雨が効果を発揮しだしたのか黒煙が薄くなり、本物(・・)のナゲキの倒れた姿がロブの視界に写る。

 

「あ………あ…………あぁ……」

 

 トウコの口から嗚咽混じりの歓喜が滲み出る。

 

 まるで雨水に洗い流されるように消えた黒の霞。その中に立っていたのは、『はかいこうせん』で爆発でボロボロになっているがーー確かにゾロアークだった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「……まさか、本当に生きているとはな。いや、まぁ『生きている』だろうとは思っていたが。………こうやって実物を見せられると何故生きているのか分からん」

 

 油断はしない、と言って常にゾロアークの生存の可能性を考慮していたロブでも、あの爆発の中無事でいた事は驚きのようだ。ロブの顔に冷や汗が流れる。

 

『……………』

 

 ゾロアークの足は既に限界だったのか、ガクリと膝をつく。

 

「キツネさん!!」

 

 それを見たトウコは先程の歓喜を忘れ、悲痛な声と共に駆け寄る。そして、ゾロアークに手が触れた瞬間 その手に違和感を覚え見ると、

 

「………………ツッ!?」

 

 トウコの手が赤く染まっていた。

 

 ゾロアークの身体はもう既にボロボロだ。死に体と言ってもいい。

 左足は下腿でへし折れ、いつものように走り回る事は不可能。肋骨に至っては折れた物の内のいくつかが内臓に突き刺さっている。視界が霞み、耳も遠い。

 

 その姿にロブは冷や汗を流しつつも嗤う。

 

「………が、流石に死に体か。当然と言えば当然だがな」

 

 正直な所、ゾロアークとしても今こうやって生きているのが不思議な程だ。少なくとも、あの『はかいこうせん』が直撃でもしていたら……いや、ナゲキの背後に落ちなければ生きてはいなかっただろう。奇跡的にナゲキの巨体が『はかいこうせん』による爆発の傘になってくれたからこその九死に一生だった。……それでも、このザマだが。

 

「………成る程な。てっきりオレを奇襲して、最優先にガキを助けるとばかり思っていたが……。それだとその後が続かねぇもんな」

 

 たとえあの『はかいこうせん』でロブの手持ちのポケモンが全滅していたとしても、残り二人か三人の仲間がいる。ここまで付いて来ているのだ。彼らもポケモントレーナーであろことは間違いない。

 

「だから、手持ちを出される前に無力化しておこうって算段か。……やられた。一本取られたと言っても良い。……いや、コレはただ単にオレが気付けなかったマヌケだったってだけか?」

 

 で、どうするんだ?とロブはゾロアークへと聞く。

 

「不確定要素は排除された。人質も取り戻した。その後はどうするだ?人質の代わりに足手まといを抱えてよぉ?」

 

『………………』

 

「ーーッ!?」

 

 その言葉にゾロアークは何も答えないが、トウコは悲痛な思いで息を飲んだ。

 

 ロブは嗤う。

 

「オレは言ったよな?『五体で相手をする』ってよぉ。三体は戦闘不能で、残ったデンチュラは反動で動けない。あと『役立たず』は役立たずなので戦力外。これで四体。あと一体残してあるんだ」

 

 そのロブの言葉を見計らったかのように、突然として地面が揺れた。

 

「……な、なに」

 

 揺れが大きくなる。何かが近付いて来ている。

 

『………チッ』

 

「きゃッ!?」

 

 それにいち早く気付いたゾロアークはトウコを抱えて真上へと跳ぶ。酷使されきった肉体は限界だが、それでもと無理矢理に跳躍してみせる。本来ならこれでどうにかなる筈だった。避けられる筈だったのだ。

 しかし、そこには二つの問題点があった。一つは『左足を負傷し、跳躍は右足一本で行われた事』。

 そして、もう一つはーー、

 

『…………ーーーーツッ!?』

 

「なーーッ!?」

 

 今しがたまでゾロアークが立っていた地面が砕かれる。砕いたのはーー大顎。

 突如として地面から巨大な大顎が出現したのだ。

 

 そしてーー

 

 ーーじめんタイプ・物理攻撃技『あなをほる』

 ーーあくタイプ・物理攻撃技『かみつく』

 

 その顎が閉じられ、ゾロアークの右足を捉えた。

 

『ーーーーギィッッ!?』

 

 瞬間、ゾロアークの右足から様々な嫌な音が生まれる。

 

「き、キツネさーー」

 

 それは、肉が潰れる音。大量の血が吹き出す音。そして、骨が砕ける音。

 

『……ガァァァアアアアッ!!』

 

 ゾロアークは堪えるようなうめき声と共に吠える。

 

 ーーむしタイプ・物理攻撃技『とんぼがえり』

 ーーかくとうタイプ・物理攻撃技『ローキック』

 

 二つの技を折れた左足に込め、大顎の鼻面を蹴り飛ばす。左足の骨折部が感覚神経を通してゾロアークの脳に直接悲鳴を響かせる。

 人体構造の支えである骨格が折れた状態での足蹴。その負担は全て自身の筋肉へとかかる。それは当然の結果として、骨折部の筋肉繊維が幾つも千切れる不快な音を立てた。

 

 その一撃に幸か不幸か怯んだ『大顎』はゾロアークの右足を離し地面へと再度潜っていく。

 

 ゾロアークは背中から地面に落ちる。

 それはクッションの代わりのようにトウコを傷付けない配慮でもあった。しかしそれ以上に、砕かれたゾロアークの両足では もう着地が出来ないからだ。

 落ちた衝撃で損傷した臓器が激痛を放つが……もう今更だ。もうゾロアークの身体に『痛くない』所は無い。

 

 なんとか態勢を整えるが、その姿は膝立ち。もはや、ゾロアークに立ち上がる事は出来ない。

 

「……あぁクソッ、いきなり言う事聞かねぇ……。奇襲かけるタイミングくらいこっちに主導権寄越せやッ」

 

 ロブの背後で大地が割れる。そこから上半身だけを突き出して現れたのは先程の『大顎』。

 

 赤と黒の外皮の二足歩行のワニ型のポケモンーーワルビアル。

 

 しかしーー。しかし、あまりにもこれはーー

 

「…………うそ」

 

 ゾロアークに抱えられたトウコは絶句する。

 

「……まぁ良いや。コイツはEGー86『Large Jaw』。まぁ、オレは長ったらしいから『大顎』とか『暴君』って呼んでるがな。ある組織のフロント企業……オレの今のスポンサー様だな。そこで品種改良されたポケモンだ」

 

 通常のワルビアルの体長は1.5m程度。成人男性の平均身長よりも低い。しかしこれはーー。

 

「改良点は見ての通り『規格外のサイズ』って所か」

 

 ゾロアークと対峙するワルビアルは上半身だけでロブの身長を超えている。全長は3mを超え4mに届かんとする巨体だった。

 

「さてと、ここからは正真正銘の最終局面ってヤツだ。死んでくれるなよ、『赤髪』。なんせコイツは碌に言う事を聞かないジャジャ馬だからな」

 

『ーーBEeeeeeeeeeahhhhHHHHHHHHHHHッッ!!!!』

 

 巨大ワルビアルは吠える。

 

 

ーto be continuedー




「や、やりやがったぁぁぁああああッッ!!」
作者Cが発狂したゾ!なんだ!?どうした!?
「何が『赤色ギャラドスレベル』だよッ!?普通にアカンやつだろッ!?」
『戦いは大きさだよ、兄貴』
Bよ……。いや、ドズル・ザビよ、なんかセリフが違うぞ
「つか、マジでコレで行くのか!?」
大丈夫でしょ。幼少期にコロコロコミックで読んだ ポケモン ダイヤモンド・パール の漫画にも巨大イワークとかいたし?
「だが、将来的にはモットヤバくなるんだろ?」
うん。……まぁ、未だプロットも作ってないお粗末な状態だからいくらでも展開は変わる変わる。
「………つまり、今のお前の脳内以上に酷くなると?」
あ、酷くなる事前提なのね……。大丈夫大丈夫!無限増殖メタモンよりはマシだよ
「嫌な単語が飛び出したな、おい」

次回! vs性能ブッ壊れ害悪ワルビアル
因みに、ゾロアーク君の体力はレッドゾーン、両足骨折で回避も出来ない。「それアカンやつやん。そういや、カノコタウンの連中が助けてくれんの?」……え?なんで?「………oh」

明日投稿出来たら良いな!多分無理だと思うけど!
自転車操業更新は辛すぎる……orz何だかんだ保ってきた毎日更新もそろそろ限界です。本格的に話を練り直す時間をいただきたいと思います。

それと本格的に今までのエピソードの誤字脱字などの修正を入れたいと思います。変更点は各エピソードの前書きにて書かせていただきたく思います。

今話の話、どうも違和感があった為、一部変更しました。それに伴い、3ー2のエピソード中の一部セリフを修正しました。




今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……現在の状態・瀕死一歩手前、内臓損傷、骨折(肋骨、両足)、骨のヒビ(全身)、疲弊、マヒ(若干残ってる)、視覚鈍化、聴覚鈍化、出血(内外問わず)
「これ、よく死んでないな」だよね〜、主人公補正って凄い「……戦闘に勝てたとしてもその後死ぬんじゃね?」え、そんな事は……「お前、ここ暫くの主人公たちへの鬼畜な対応で『しない』とは思い切れんのだが」『大丈夫だ、問題無い』「……………不安しか無い」

・トウコ……現在の状態・疲弊(心身問わず)、一酸化炭素中毒?
「お前、BWの女主人公好きなんだよな」?当然じゃん「これ、好きなキャラクターへの所業じゃねぇだろ。プロット段階の今話を読んだが、傷心中のトウコの描写に2000文字も使ってんじゃねぇよ。筆乗りすぎだ」溢れるパトスがスプラッシュしたからね、しょうがないね。「前回のあとがきと言ってる事が違いすぎる。お前ドSか何かか?」……ヒロインにして女主人公 は虐めるモノだとクロスアンジュ1話で教わった!「……教わる所間違えてんだよなぁ」

・ロブ……現在の状態・愉悦
「狂気度薄れた?」知らん。ただこのキャラは今後も活躍していただきたいので純粋なゲスキャラに しようという俺 と しきれない俺 が葛藤してる。「あぁ、だから微妙に安定してないのか」正直すまんと思ってる

・プラー(以下略)……現在の状態・気絶、打撲
「略すなよ」いや、コイツらの組織名伏せちゃったから名詞が面倒くさい。「何個くらいあったっけ?」チェインメイル関連とお目付役関連、プラー!ズマー!関連。「3つか……」お目付役以外長いんだよなぁ。「最近、名詞をお目付役にするのはその為か」もう、ホント面倒くさい。特にチェインメイル関連。口説い、長ったらしい。正直最初の一回の描写の時だけにしとけばーーって後悔してる「で、今は『チェインメイル制服の男女』か……」それ、書いてて意味分からなくなったわー

・キルリア……現在の状態・役立たず、影薄弱
「……ちゃんと出番用意してんの?」一応ね「なら良し」

・EGー86『Large Jaw(大顎)』……現在の状態・おこ!、おなかすいた!、おはな いたい(泣)
「おい、コイツだけ状態の表記明らかにバグってんぞ」ホントだぁ「本気で出落ちにしないつもり?今回だけにしとこうぜ?」今のより面白そうなのが思い付いたらね!「…………じゃあ無理だ」ヒデェ!!
「それはそうと、真面目な話。コイツの鼻面を蹴り飛ばした程度で怯む物なの?」まぁ、熊は鼻を殴ると良いっていうし?「………ワニだぞ」あと、『とんぼがえり』も『ローキック』もワルビアルに(原作のタイプ相性的に)効果抜群!「納得」


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4ー3 紅色に染まる③ーCHOISEー

前話の展開を変更しました。今回のエピソードに違和感があるようなら、前話を読み返す事を推奨します。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。


17

 

 

「『行け』ッ」

 

 ただ一言、ロブは命令を下す。その命令にワルビアルは最後の手綱を離されたかのように嬉々として手負いの獲物へと襲いかかる。

 

 ーーじめんタイプ・物理攻撃技『あなをほる』

 

 瞬間、ワルビアルはまた轟音を立てて地面へと潜る。まるで水中を泳ぐように地中を遊泳し、ゾロアークとトウコを食い千切らんと虎視眈々狙いを定める。

 

 ーーまた来る。ゾロアークの右足を砕いた あの攻撃が。

 

 それに気付いたゾロアークは左手でトウコを抱える。

 

「きゃっ」

 

 そして空いた右手で地面を掴み、自身の身体を引っ張る。それだけでゾロアークとトウコの身体は大きく右へと跳んだ。

 

 瞬間、先程までいた場所に大顎が現れた。地面を突き破って咲く花のように。

 

 ワルビアルの『かみつき』は回避できたが、その眼は未だに二匹の獲物を捉えている。

 

「………ヒッ」

 

 そして、トウコはワルビアルの顔がドス黒い笑みを浮かべているのを見た。まるで、生きの良い獲物を嬲って遊んでいるかのような喜悦がありありと浮かんでいる。

 

 

 未だ宙を舞うゾロアークたちの真下ーー。その地面に亀裂が入る。

 

『ーーツッ!?』

 

 地面が割れる。そこから飛び出したのは赤と黒の縞模様。ワルビアルの巨大な尻尾だ。

 ゾロアークは未だ空中。回避は不可能。

 

 ーーノーマルタイプ・変化技『まもる』

 

 ゾロアークはトウコを抱きしめるようにして身体を丸くする。

 

 そして、衝撃ーーッ!!

 

 ゾロアークの身体がーー丸まっている事も相まってーーまるでボールのように更に高い空へと打ち上げられる。

 

『ガーーッ』

 

 ゾロアークは口から大量の血を吐き出す。

 本来なら あの尻尾での打ち上げの衝撃程度、『まもる』で守られた身体は小揺るぎもしない。それでもある程度伝わってしまう衝撃はある。当然、本来ならーー万全の状態なら無視できる小さな衝撃だ。だが、損傷した臓器にはその小さな衝撃でさえ激痛を伴う。

 

 激痛による悲鳴を全力で嚙み殺しながらも、ゾロアークはトウコの安否を確認する。

 

「ーーーーーー。」

 

 トウコは無事のようだ。歯を食いしばってゾロアークに抱き着いている。

 

 尻尾で打ち上げられた力が重力に負けたのか、一瞬の浮遊感に遅れてゾロアークは下へと落ちる。

 

 その真下ではワルビアルが大口を開けて待っている。今度こそ回避は出来ない。

 

『………………チッ』

 

 回避が出来ない。……ならば迎撃するしかない。幸い、ワルビアルは油断しきり動かない。当然だ。動く必要が無いのだから。大きく開けた口の中に獲物が落ちてくるのを待てば良いだけの話なのだから。

 

 ならばーーこの状況でならば、足の負傷も関係無い。

 

 ゾロアークの右腕の爪を折り拳を作る。これがワルビアルを倒せる最初で最期のチャンスになるであろう。ならば後先なんて考えずに最大の一撃を叩き込む。

 

 それは数多のポケモンが保有する『わざ』の中で『はかいこうせん』に並ぶ最大火力を保有する一撃。

 

 トウコを抱えたゾロアークがワルビアルの大口の射程圏内に入る。

 

 それをワルビアルは感知し、口が閉じられる。

 

 そして、閉じ切る直前にゾロアークの右拳がワルビアルの上口の内部ーー硬口蓋に叩き込まれた。

 

 ーーノーマルタイプ・物理攻撃技『ギガインパクト』

 

 破砕音ッ!

 

 その一撃はワルビアルの硬口蓋を構成する上顎骨と口蓋骨を粉砕して吹き飛んだ。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ゾロアークの一撃が巨大ワルビアルを吹き飛ばすのをロブは見ていた。

 

「なん、なんだよ………」

 

 ワルビアルはその衝撃に悲鳴すら上げる事が出来ずに自身で掘った穴へと押し戻され、落ちていく。

 

「なんなんだよッお前はッ!?」

 

 ロブは怒鳴る。そこに先程まで浮かべていた愉悦の笑みは無い。

 

「もう死にかけてんだろ?!虫の息なんだろッ?!足も折れてるじゃないかッ!!!……もう諦めろよッ。オレたちに捕まれよッ!いいや、とっとと くたばれ よッ!!」

 

 ーー認められない(・・・・・・)認めてなるものかよ(・・・・・・・・・)

 

 ーーそうで無いと……あの日のオレが惨め過ぎるだろうがッ

 

 ふと、思い出したかのようにロブはキルリアの横顔を覗く。その顔はコチラに気付いていない。ただただ、驚きの表情でゾロアークとトウコを見つめている。

 

「……クソッ!『役立たず(・・・・)』が!」

 

 ロブはキルリアを蹴り飛ばす。八つ当たりだ。

 

「……クソックソッ」

 

 ロブはキルリアを踏み付ける。

 それから暫く。そこには息の上がったロブの姿がある。キルリアは散々踏み付けられ地面に倒れている。

 

「……………もう良い、殺す。スポンサーも何もかも知った事か。あの『赤髪』はここで始末する。どうせ、あのジャジャ馬を制御なんて出来ねーんだ。お目付役共がもういない以上、誰もアイツを止められないッ」

 

 雨でベタリと張り付く髪を搔きあげてロブは否定する。

 

 ーーゾロアークという存在を。

 

 ーー惨めな過去の己を。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ワルビアルは怒り狂っていた。

 

 ーーコロス、コロス、コロス、コロス……。

 

 ただの餌の分際でこのオレ様を傷つけやがった、と。

 

 今も口の中が激痛で狂いそうだ。

 

 先程のゾロアークの一撃は急所に入ったようだ。ワルビアルが保有する隠れ特性『いかりのつぼ』が効果を発揮し、ワルビアルの攻撃性、凶暴性が暴走しだしたように跳ね上がる。

 

 それはワルビアルにとって初めての屈辱だった。

 

 ーーカミコロス、クイコロス、『カミクダク』……ッ

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

 ーー仕留めそこなった、か……。

 

 ゾロアークは地下で断続的に発生する振動を感じ取っていた。きっと、ワルビアルが地下を掘り進んでいるのだろう。

 

 確かにワルビアルの骨を粉砕した感覚はあったが、それだけ。『ギガインパクト』が脳への致命傷を与え切れなかったようだ。それでも多少は入った衝撃で脳が揺れ 平衡感覚を失っているのか、滅茶苦茶に地下を掘り進んでいる。……………が、それも時間の問題。

 

 そして、ゾロアーク自身は両足に続いて右腕の骨も砕けた。もともと骨にヒビが入っていたのだ。反動付きの強力な一撃を無理に放てばどうなるかなど一目瞭然の話だ。上腕骨は無事だった為か辛うじて肩は上がるが、肘から先は完全に動かない。

 これでゾロアークはトウコを抱えて回避する事も出来なくなった。

 

 ゾロアーク一人ならそれでも抗い続けたのだろうが……。

 

 ゾロアークはコチラを見つめるトウコを視界に捉える。トウコの顔はゾロアークの安否を心配する表情で、いつもの快活な笑みは無い。

 

 ーーすまない。

 

 この状況ーーこの問題はゾロアーク自身が呼び込んだ物だ。追われている身でありながら この森から早々に立ち去らなかったゾロアークの怠慢だ。この小娘に落ち度なんて無い。全ての原因は彼女ではなくゾロアーク自身にある。小娘はその問題にただ巻き込まれただけ。

 

 ーー次で覚悟を決める必要がある。

 

 自分の身を守るか、小娘の身を守るか。

 

 最悪、小娘を咥えて回避する選択肢もあったが、その後はどうしようもない。『ギガインパクト』は一度きりの起死回生の一撃だった。流石に敵のワルビアルは二度目の機会をくれるような馬鹿ではあるまい。

 

 ーーならば、

 

 地下の振動が落ち着いた。出鱈目ではなく指向性を持ってコチラに近づいてくる。

 

 ーーゾロアークの左手がトウコの襟首を掴む。

 

 振動が少しづつ少しづつ大きくなる。

 

 ーーゾロアークの左手がトウコを横薙ぎのように投げる。

 

 ゾロアークがいる地面が砕け、鋭い歯が並んだ大顎が現れる。

 

 ーーあの小娘が何かを叫んだようだったが、もう……聞こえない。

 

 

 ーーあくタイプ・物理攻撃『かみくだく』

 

 

 ゾロアーク は 目の前が真っ暗になった。

 

 

ーー((( ○ )))ーー

 

 

「キツネさんッ!!」

 

 トウコは浮遊感と反転した視界の中で叫び、ゾロアークへと手を伸ばす。

 ゾロアークもトウコを投げた手をそのままにしており、お互いに手を伸ばしあっているように見える。

 

 ーー届かないッ

 

 当然だ。現に今もトウコの伸ばした手とゾロアークの伸ばした手が遠退いていく。

 

 そして、ゾロアークの姿がトウコの視界から消える。ワルビアルの鋭い牙によって。

 

 ーーガチン、と。

 

 

 トウコは地面へと落ちる。それでも衝撃は抑え切れず、ゴロゴロと地面を転がる。

 

「……う…….くっ………き、キツネさん、は……」

 

 衝撃から立ち直り、辺りを見回しながら立ち上がろうとするトウコの耳に、

 

 『ボトリ』

 

 という音がした。何かがトウコの間の前に落ちてきたのだ。

 

「え?」

 

 ーー何?、とは続かなかった。その『落ちてきた物』が目に入ってしまったから。

 

「……あ」

 

 それは黒灰色の体毛を生やしたーー。それは赤の三本の爪を生やしたーー。

 

「……い……いや……イヤ嫌………」

 

 ーーゾロアークの左腕だった。

 

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああッ」

 

 トウコの狂乱する悲鳴が雨音と共に響く。

 

 

ーto be continuedー




「………………………お前、やっぱ鬼だろ」
第一声がいきなり酷ぇ!!
「…………トラウマだわ、これは8歳の少女にはトラウマ物だわ」
い、いやでもね……?もうこれ、本来の予定狂いまくってるの!しょうがないの!!
「狂った先がコレな時点で……。いや、待て!お前、この作品のタイトルッ」
…………チッ、バレたか
「やっぱり鬼畜じゃねぇかッッ!!」

さて、次回の更新なんですが……ちょっといつになるか分からないです。
「おいッ!?話を逸らなッ!!」
………………(←指パチン)
『…………………』(←どこからともなく現れた 作者B)
「qあwせdrftgyふじこlpーー」
ちょっと自転車操業は誤字脱字の連発に違和感のある展開の出現などの問題で、幾ら何でもマズイと判断されました。
ですので、ある程度作り溜める期間を設けてから更新再開したいと思います。…………というかね。いい加減、魔女兵器のリセマラがしたいんじゃぁぁぁああああいッ!!w

あと、前回のエピソードを変更して、トウコちゃんはロブの魔の手から救われております。前書きにも書いておりますが、展開に違和感を持ったら読み返す事を推奨します。

それでは、その内!いつの日か!


今回の登場キャラクター
・ゾロアーク……Lv.55・♂・あくタイプ・保有技①とんぼがえり②にらみつける③にほんばれ④つめをとぐ⑤ローキック⑥かげぶんしん⑦みがわり⑧つばめがえし⑨まもる⑩ギガインパクト…………

・トウコ……Lv.ーー・♀・快活タイプ

・EGー86『Large Jaw』(巨大ワルビアル)……Lv.50・♂・あく&じめんタイプ・保有技①あなをほる②すなじごく③かみつく④かみくだく

・ロブ……Lv.ーー・♂・ダメ男&クズ男タイプ

・キルリア……Lv.23・♂・エスパータイプ


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