真剣で俺の弟子になりなさい (トラクベルク)
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プロローグ

今回はオリ主の説明のみです。
そのため、短いです。

今回の話は三人称ですが、
次からは一人称で進めていきます。


林道 春風

 

その男は世界最強の武人と呼ばれるほど強かった。

数多の武闘家が春風を倒すことを目標にしていた。

 

春風自身も自分の強さに自信があった。

しかし、それでも彼は強くなるに修行し続けた。

己の強さの限界を知るためだった。

そのために強くなるため、修行に明け暮れていた。

逆に言えば強くなるために不必要なことはやってこなかったということだ

 

春風自身それを苦痛だと思わなかったし、後悔もしていない。

一つを除いて…

 

彼には弟子がいなかった。

強くなるために編み出した自分のみが使う流派、林道流を受け継ぐものがいないのだ。

もちろん弟子にしてほしいと頼んでくるものがいなかったわけではない。

だが、春風が求める要求を満たさなかったためすべて断っていたのだ。

 

春風は初め、弟子を取るつもりがなかった。

林道流はマスターすれば自身のように最強と言われるほどに強くなれる。

だが、それは同時に人々の脅威になり得るという事だ。

力あるものにとって最も大切なことはその力をどのようなことに使うかであると春風は考えている。

その考えのもと春風は己の力を使ってきたつもりだ。

春風はその考えを弟子にももってほしかった。

いや、持たなければ弟子にするわけにはいかなかった。

強すぎる力には責任が伴うのだから。

 

林道流は己の中にある気を自在に操り、戦う流派である。

そのため、弟子の条件は気を使いこなせること、もしくは気を使える素質があること。

だが、それ以上に春風が求めたのは力を悪しきことに使わないことだ。

そう確信がもてる人間に合わなかった。

 

結果として春風は生涯弟子を取ることはなかった。

 

後世に林道流を残すため、最後は見込みある者を弟子に取ろうと考えたが、突然地球に隕石が降ってくるということが分かり隕石の破壊を依頼された。

春風はその依頼を受けることにした。

破壊するためにロケットから出た春風は無事に隕石を破壊したが酸素のない宇宙で呼吸が出来ずに死亡。

地球を救うことはできたがそのまま帰らぬ人となってしまった。

 

多くの人を救った春風は弟子を取らなかったこと以外は後悔のない人生だったと思っていた。

 

故に最後に願ったことは

林道流を自分の思想を受け継ぐものに伝えたい

それ一つだった。

 

それとは別に春風とは違う世界で強者と戦いたいそう願うものがいた。

 

その願いが届いたのか春風は別の世界で二度目の人生を手に入れることができた。

 

 

 

 

 

 

「ここはどこだ?」

 

気が付くと春風は見知らぬ場所に立っていた。

 



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1話 始まりは河川敷

今回は武士娘が2人登場します。

プロローグでも書いた通り、今回から主人公の一人称で進めていきます。


気付けば俺は河川敷に立っていた。

何故、河川敷にいるのかがからない。

理由を知るために記憶を辿ってみる。

 

確か俺は地球に降ってくる巨大隕石を破壊するためにロケットで宇宙に向かったはず。

そして宇宙でロケットから出て隕石を無事に破壊した。

だが、宇宙空間で息ができずに窒息した。

 

つまり、俺は死んだはずなのだが…

なぜか今はちゃんと生きている。

それも不思議だが、おかしな事はまだあった。

俺の身体がおかしかった。

どうも少し若返ったようだ。

死んだときは30代半ばだったはずだが、今は10代後半の時の身体だと思われる。

若かった頃の身体なのだが違和感なく動かせている。

服装も上下黒のジャージと高校生の時に鍛練してた時と同じ格好である。

 

不思議なことは多いが考えても答えは出ないと判断し、今度はここがどこかを考える。

まず行ったのが周りに薄い気を張り巡らしてどんな場所か把握することである。

要するに気配探知である。

範囲は限界まで広げることにしよう。

これで疲れはするが街一つぐらいなら把握できる。

 

分かったことはここは割りと大きな街で何故だかは分からないが武道を行うような気を持つものが多いこと。

そして、目の前の川を泳いでいるものがいることだ。

泳いでいる理由はどうも溺れている犬を助けようとしているみたいだ。

 

泳いでいる奴が肉眼で確認できるところまで移動する。

そいつはちょうど犬を抱えて岸に上がるところだった。

気の感じから予想はしていたがやはり今の俺と同じぐらいの女子だった。

整った顔立ちにポニーテールの髪、最初の印象は活発そうだった。

そいつが犬を温めようとしていたので、俺は自分が着ている上のジャージを脱いで渡した。

 

「これを使って犬を拭いてやれ」

 

本当はタオルを渡すべきなのだが、生憎今の俺にそんなものはない。

 

「…ありがとう!」

 

俺が着ているジャージを渡したので少しためらったが女子はジャージを受け取り犬を拭き始めた。

拭き終えるとひとまず安心と思ったのか女子は犬を地面に降ろした。

犬はわんとお礼を言うように鳴いてその場を離れてしまった。

気も安定しはじめているから大丈夫だろう。

 

「ごめんね。あなたの服を使っちゃって」

 

「俺が使えと言ったんだ。気にすることはない。」

 

「そんなこといかないわ。何かお礼をしなきゃ」

 

お礼か…

普段なら断るがここは少し甘えるとするか

 

「それなら、この街について教えてくれないか?」

 

「もちろん。でもここだとあなた身体が冷めちゃうよね…」

 

今、俺の上半身はシャツ1枚なのだが、目の前のこいつは川で服着たまま泳いだせいで濡れてるせいで俺なんかよりよっぽど冷えそうなのだが。

 

「俺はともかくあんたは着替えた方がいい。風邪を引くぞ。」

 

「大丈夫よ。いつもの事だから。」

 

これがいつものこととはどんな日常を送っているのだろうか…

 

「あんたが大丈夫でも俺が心配する。」

 

「そう?なら、川神院に向かいましょう。」

 

川神院がどんな場所かは知らないがそれがこいつの家なんだろう。

俺と女子はその川神院に向かうことにした。

 

 

川神院、名前から想像していたがやはり寺院だった。

驚いたことはここでは武道の修行が行われているらしい。

というか聞いたら、メインは修行らしい…

中に入ると胴着を着たものがかなりいた。

試しにそいつらの気を探ってみると腕のたちそうな奴が多い。

 

「どうしたの?修行してる人達見て?」

 

「強そうな奴が多いと思ってな。」

 

「それはそうよ。川神院は武道の総本山と呼ばれてるんだから。」

 

なるほど。

だから、周辺に武道をするものの気が多いのか。

 

「ワン子、誰だそいつ?」

 

「あ、お姉さま」

 

お姉さまと呼ばれる胴着を着た女子が突然現れた。

高速で移動してきたせいで本当に突然目の前に現れたのだ。

長い髪に凛とした雰囲気、それでいて一目で強いと分かる程の気を待っている。

最初の印象は俺の直感が戦闘狂といっていた。

 

「お姉さま、この人は…えーとあなた名前なんだっけ?」

 

「そういえば、名乗っていなかったか。俺は林道 春風だ。」

 

 

「あたしは川神 一子。よろしくね。」

 

「ああ、よろしくな。で、あんたは?」

 

「こっちが聞かれるとはな。まぁ、いい。私は川神 百代、美少女だ。」

 

自分から美少女というとはな。

まぁ、確かに綺麗な顔立ちだとは思うが。

 

「林道くんはね、犬を助けるの手伝ってくれたのよ。」

 

はたして、あれを手伝ったことになるのかは疑問だがな。

 

「そうだったか。」

 

「二人は姉妹のようだが、名字が川神だが川神院と関係があるのか?」

 

「あたしたちのおじいちゃんが川神院の総代なの。」

 

「なるほどな。」

 

「林道といったな、どうだ?私とこれから勝負しないか?」

 

百代が勝負を仕掛けてきた。

どうやら、俺の直感は当たっていたようだ。

 

「お姉さま、突然何をいってるの!?」

 

「ワン子、見てみろ。こいつ、相当鍛えているぞ。」

 

俺としてもこの身体がどこまで動くかは知っておきたい。

だが、今の俺にとって大事なのはここがどこかである。

 

「分かった。だが、後にしてくれ。」

 

「まさか、乗ってくれるとはな。良いだろう。少し待ってやる。」

 

上から目線なのが気になるな。

 

「本当にいいの?大怪我するかもしれないのよ。」

 

「構わない。勝負で受けた怪我なら武闘家としては本望だ。」

 

俺としては逆に怪我させてしまうことの方が気がかりである。

 

「一子、用事ができてしまったが、準備が出来次第この街について教えてくれ。」

 

その後、俺は胴着を借り、一子が着替えた後に約束通りこの街について教えてもらうことが出来た。

 

ここ川神は神奈川県にあるみたいだが、ここに来る前の記憶では、そんな地名はなかったはずだ。

学生という一子に歴史と地理の教科書を見せてもらったがほとんど俺の知っていることだったが一部、知らないことも存在した。

ここは俺のいた地球と差異のある平行世界という結論に至った。

なぜかは分からないが戻ることは出来ないと仮定し…そもそも戻ったところで俺は死んでいるのか。

だとすると二度目の人生はこの地球で生きるとしてどうやって生きていくか。

当面の問題は金だ。

金がすべてとは言わないがないと生きていけないのも事実だ。

 

「…どうくん」

 

「うん?」

 

どうやら一子に呼ばれたらしい。

聞くだけ聞いてずっと考えていたから当然か。

 

「お姉さまと本当に戦うの?」

 

「売られた勝負だ。断る理由がない。」

 

「でも…」

 

命のやり取りをしない勝負にここまで心配されるとは一体、どういうことだ?

 

「お前の姉はそんなに強いのか?」

 

「強いなんてものではないわ。お姉さまは武神と呼ばれる程強いの。」

 

武神か

恐らく、強くなりすぎて誰と戦っても満足できないのだろう。

正直、勝つつもりだったがそれも考えなければならないようだ。

仮に勝ってしまったら俺が注目される可能性がある。

これからの生活を考えるとそれは避けたい。

 

「おい、用事はすんだか?なら、早く始めよう。」

 

武神は痺れを切らして催促しにきた。

俺はどうしようか考えが纏まらずに足取り重く移動した。

 

川神院の敷地内、修行僧がいつも鍛練で使用する広場みたいなところで戦うようだ。

百代がワクワクしながらそこに立っているので分かる。

その様子を他の修行僧と一子が見ている。

どうやら、彼らも百代が戦うのを知っているみたいだ。

観念を決めて、戦おうと思うがその前にやることはやらなければ。

 

「百代、一子、お前らのおじいさんに挨拶をさせてくれ。」

 

「なんで、ジジイに挨拶をするんだ」

 

「勝負の場所に川神院を使う許可と門下生であるあんたと勝負することへの挨拶だ。」

 

「そんなの必要はないぞ。」

 

「なら、あんたとの勝負は無しだ。」

 

さすがに川神院を使う以上、総代には話をつけなければ問題となるだろう。

百代はそんなことしなさそうだし。

 

「モモ!なに勝手にここで決闘をしようとしておる。」

 

「げ!ジジイ」

 

立派な髭をしたご老人がやって来た。

どうやらこの人が川神院総代、一子たちのおじいさんらしい。

 

「あなたが川神院総代ですか?」

 

「おお、そうじゃ」

 

「俺は林道 春風。これから川神 百代との勝負をここでやらせていただくものです。」

 

「そうだ。ジジイ、私たちはここで戦うんだ。引っ込んでろ。」

 

こいつは人を敬うことを知らないのか。

身内だからといって口が悪すぎではないか。

 

「アホか、ここでお前が戦ってみろ、川神院が壊れるではないか。やるならよそでやらんか!」

 

勝負を行うだけで壊れるとはそんなに激しくなると思われているのか。

 

「チッ、しょうがないな。おい、林道」

 

「なんだ?」

 

「しょうがないから場所を変えるぞ。」

 

「分かった。」

 

こうして、俺と武神の勝負は場所を移して行われることになった。

 

 

 

場所は移り、ここは河川敷

多くいた修行僧もいなくなり、ここには俺と百代と一子だけである。

 

「一つ確認したい。」

 

「なんだ?」

 

「これは正式な試合として扱うのか?」

 

「正式な試合と言ったらどうする?」

 

「我が流派の為、負けるわけにいかなくなる。」

 

正式な試合かそうでないか

それだけで勝負の重みは変わってしまう。

もちろん、公式な記録には残らない。

だが、これに負ければ俺が百代に敗北したことを誰にどう言われたとして反論は出来なくなる。

人によっては正式だろうがなかろうが敗北を受け入れない者もいるようだが。

 

「なら、これを正式な試合としようじゃないか。」

 

「お前はその意味を分かっているんだろうな」

 

「分かっているさ。私が楽しめるかどうかだろう。」

 

「俺に負けてその考えを改めるんだな。一子審判を頼む。」

 

「わ、分かったわ。」

 

覚悟は決めた。

武闘家としてこいつには一度痛い目にあってもらおう。

 

「林道流 創始者 林道 春風」

 

俺が名乗ると百代は笑って口を開けた。

 

「川神流 川神 百代」

 

「「いざ、参る」」

 




今回は書き溜めてたやつがあったので更新が少し早めでしたが次からは時間があきます。


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2話 川神流VS林道流

今回は戦闘のみです。
戦闘描写って難しいですね…




勢いで始まってしまった俺と川神 百代との勝負

正式な試合ということで本気で勝ちにいく。

攻撃の前に川神流とやらを少し見せてもらおう。

俺は手を前に出し、指先だけ手前に動かしてから元の位置に戻す。

これを3回繰り返した。

簡単にいえばかかってこいと挑発している訳だ。

 

 

「ほーう、私を挑発するか。面白い。」

 

百代が俺の挑発に乗って勢いよくこちらに突撃してきた。

 

「無双正拳突き」

 

近づいてきた百代から放たれたのは、無数の突き。

一瞬でかなりの数を打ち込んでくる。

俺はそれを気を纏わせた手で一つ一つ弾いていく。

確かに百代の拳は速く、一撃一撃が重いが俺にとってこのぐらいの速さは目で追えるし、反応も出来る。

重い拳も真正面からではなく拳の横をはじけばこちらに負担はかからない。

昔、基本的な攻撃も磨けば必殺の技になると言っていた奴のことを思い出した。

それほど百代の技は強いと感じたのだ。

 

「お姉さまの攻撃を全て弾いてるの?」

 

一子は俺か百代の攻撃を流していることに驚いているようだ。

百代はまだ若く、この段階この戦闘能力なら並大抵のやつには勝てるだろう。

一子は百代が勝ったところしか見たことないのだろう。

そんなやつの前で敗北を見せるのは忍びないが勝負と割りきってもらうしかない。

俺はまだ続けている百代の手をおもいっきり左右に弾いた。

それにより正面ががら空きになる。

 

「林道流 波裏掌底」

 

掌底を喰らわしつつ手に纏った気を衝撃波のように相手に与える技

ダメージはある程度与えただろう。

 

「いいぞ。やはりお前は強い。」

 

百代はすごい嬉しそうにそう言ってきた。

攻撃を喰らって笑うとかマゾなのかと考えてしまう。

もちろん、あれが強者と戦えたことへの喜びなのは分かっているが。

 

「ラッシュは流されたがこれはどうする?」

 

気を溜めているのか。

右手から強いエネルギーを感じる。

 

「かーわーかーみーは!!」

 

溜めたエネルギーを気砲のように撃ってきた。

気を溜めているのが分かっていたので、避けることが出来た。

 

「威力は申し分なさそうだな」

 

俺は避けた気砲を見て、呟いた。

 

「よそ見とは余裕だな。」

 

いつの間にか百代が近づいてきており、殴りかかってくる。

殴りに掛かってきた拳を受け止め、そのまま空いていた右足で思いっきり蹴飛ばし距離を離す。

そろそろ様子見は終わりとするか。

百代の様子を確認するとやはり笑っていた。

こいつはどれだけ強者との戦いに飢えていたんだ?

 

「お前はなぜさっきから笑っている?」

 

「そんなの楽しいからに決まっているだろう。」

 

俺の質問に当たり前のように返答してくる。

まるで子供のように純真だ。

 

「残念だな。もう楽しい時間は終わりだ。」

 

「それはすぐに私を倒すという意味か?」

 

「そうだ。」

 

「やってみろ!」

 

百代が突撃してきた。

最初のより速い。

やはり、全力を出していなかった。

正式な試合でなければ時間をかけて全力を見ていただろう。

 

「…気操冥躰」

 

これは体内の気を使って肉体を細胞レベルで活性化させる技だ。

簡単にいうと大幅に身体能力が強化されたというわけだ。

 

「無双正け…」

 

「遅い!」

 

百代が技を発動させる前に一気に間合いをつめる。

技がくる前にこちらから仕掛ける。

 

「林道流、気突衝」

 

手に纏わせた気を解放し、相手をただ吹き飛ばすだけの技。

もちろん、ダメージなどないに等しい。

大切なのは飛ばした後から相手に反撃させないこと。

 

技を喰らって吹き飛んだ百代はすぐに体制を建て直し、地面をけってこちらに向かってきた。

陸上選手のように前のめりでの突撃。

俺も百代に向かって走り、ぶつかりそうな所で百代の体の下に入り気を纏わせた手を百代のお腹に当てた。

 

「林道流、ハジキ」

 

相手の体内に気を打ち込み、身体の内側に衝撃を与える技だ。

これでダメージによってこいつも動きが鈍くなるだろう。

 

ガシッ!

 

「!?」

 

腕を捕まれた。

ハジキを喰らってすぐにそんなことをされるとは思っていなかったため、少々驚いてしまった。

 

「ようやく、捕まえたぞ。」

 

ここからこいつが何をするきか分からんが早く抜け出すことに越したことはないだろう。

 

「人間爆弾!」

 

逃げる間も無く百代の身体が爆発した。

当然、腕を捕まれている俺は爆発に巻き込まれた。

 

爆発後、すぐに百代は俺から距離を取った。

 

「なんてめちゃくちゃなものを実践で使いやがる。」

 

「大してダメージは受けていないか。」

 

腕を捕まれた瞬間から念のため、気の鎧を体に纏わせていたためそこまでのダメージはなかったといいたいところだが。爆発が早かったせいで鎧を完全に纏えなかった。

そのため、ダメージを結構もらってしまった。

だが、それは向こうも同じのはずだ。

何せ、爆発したのは百代自身。

身体を見ても、ボロボロで……

なぜか百代の身体から傷がなくなっている。

 

「瞬間回復、これで私のダメージはなくなった。」

 

「なるほどな。俺が勝つためにはお前が気絶するほどの一撃が必要ということか。」

 

「そうだ。」

 

時間が残り僅かだと言うのに面倒な条件を出されてしまった。

俺は次の一撃で決めることにした。

初めて俺から百代に向かって突撃を行う。

百代はそれを迎え撃つ構えをとる。

しかし、それは無駄に終わることになる。

俺が決めたハジキという技は相手の身体に気を打ち込む。

そして、その気は暫く技を喰らった奴の体内に留まる。

つまり、今あいつの中には俺の気が存在する。

もっといえばその気は小さな爆弾のように起爆のタイミングを待っている。

俺はその爆弾を爆発させた。

内側からの衝撃に百代は構えをといてしまった。

その隙に百代に最後の一撃を与える。

 

「林道流、冥空衝天破」

 

自分の気を相手の身体に衝撃波として打ち込む技だ。

ハジキと違い膨大な気が外側のみに衝撃をもたらす。

その衝撃は周りに風を吹き起こすほどだった。

これにより、さすがに百代も気絶した。

 

「一子」

 

「…え?」

 

どうやら、俺と百代の戦いを見て、自分の役割を忘れてしまったようだ。

 

「審判を頼んだはずだ。」

 

「あ、そうだった。えーと…勝者、林道くん。」

 

審判からの試合終了の宣言

これを聞いてやっと安心できる。

さて、そろそろ限界だ。

 

「一子、後は頼んだ…」

 

俺は一子に後のことを頼んで倒れた。

倒れるほどの疲労感の原因は分かっている。

俺が途中で使った気操冥躰だ。

気操冥躰は細胞レベルでの身体強化

今の俺の肉体では長いこと耐えることは出来なかった。

途中から限界が近いことは分かっていた。

今は体を酷使しただけなので暫く動けないだけだろう。

この戦いの目的の一つ、若返った肉体でどれ程動けるかの検証は果たすことができたのでそのぐらいのペナルティは受けるとしよう。

動けるようになったら鍛え直そうと決意して俺は意識を落とした。



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3話 川神院での話し合い

今回は試合の後の話です。
これからの春風の生活を決めていきます。



目を開けると見覚えのない天井が映った。

ここはどこだ。

周りに気を巡らせて場所を確認する。

 

どうやらここは川神院のようだ。

一子と百代がいて、修行僧らしき気も感じる。

おそらく間違いないだろう。

百代との試合の後、倒れた俺を一子がここまで運んでくれたのだろうか。

いや、俺一人だけならともかく百代もいたんだ誰かに手伝って貰ったと考えるのが普通だろう。

まずは体を起こして一子の所までいくとしよう。

気を探れば迷うことなく着けるはずだ。

 

 

 

今の現状を説明すると簡単だ。

川神院総代と互いに座りながら向かい合っている。そしてめっちゃ見られてる。

意味が分からない。

一子の元に向かう途中に総代に会って、話がしたいと言われたので後を着いていったらこうなった。

百代を倒したことがお気に召さなかったのだろうか。

 

「ふむ、モモに勝っただけのことはあるのぅ。」

 

「そのことについて総代に聞きたいことが」

 

「なにかのう」

 

「川神 百代は確かに強い。だが、勝負を軽く見ている感じがしました。」

 

本来なら正式な勝負は覚悟をもって臨まなければならない。

それをあいつは俺が勝ちにいくといったのを聞いて迷わず勝負を行った。

それは俺が勝負を軽く見ていると思うのに十分なことだった。

 

「恐らく、川神 百代は自分が負けることを考えていない。」

 

「そうじゃ。だから、お前さんがモモに勝ったことには感謝しておる。これで気持ちを入れ換えてくれるきっかけになるかもしれんからのう。」

 

百代のように有望な武闘家が心を入れ換えて精進するのはいいことだ。

…少しじじ臭くなってきたか。

 

「ワシからも聞きたいこことがある。」

 

「なんですか?」

 

「お前さんのような強い武闘家なら噂ぐらい聞くはずじゃが聞いたことなくてのう。」

 

これは俺の素性を聞いているのか。

武神と言われている奴に勝ったんだ、当然といえば当然か。

さて、ここは正直にいうべきなのだろうか。

 

「俺は武者修行を行いながら世界中を旅していました。一人で修行はしてもあまり実践はしてきませんでした。それが原因でしょう。」

 

俺は本当のことをしゃべらなかった。

当然だ。

こんな話誰に言っても信じてもらえそうにないのだから。

 

「…ふむ、そういうことにしておくわい。」

 

深く聞いて来ないということはこちらの意図を読んでくれたみたいだ。

 

「ここには川神院という武道の総本山もあり、私の修行にもなります。しばらくはここらへんにいるのでまた、こちらに伺ってもよろしいでしょうか。」

 

ここは武闘家が多い。

生活が安定したら弟子をとることを考えたい。

そのためには川神院の協力があった方が色々と楽だ。

さて、俺のこの申し出をどう受けとる。

 

「見たところ一子と同じぐらいの歳じゃし、どうじゃ川神学園に通ってみないか?」

 

「…え?」

 

返ってきた内容は俺の想像を越えたものだった。

 

 

 

 

川神院総代兼川神学園校長川神 鉄心と話を進めていると俺が通うことで百代のモチベーションが上がるのではないかと考えているそうだ。

後、学費は払わなくていいとのこと。

その代わり百代が暴走したときは止めなければいけないらしい。

暴走の意味はよく分からないが…

そもそも払う金がないと言おうとしたらなぜか総代から俺のキャッシュカードを渡された。

どうも一子に渡したジャージのポケットに入っていたそうだ。

ますます、俺の置かれている状況が分からなくなってきた。

しかし、これで俺の当面の生活は大丈夫だ。

前の世界のものならば、8桁は入っている。

世界中の武道大会、護衛をしたりして結構な額を稼いでいたはずだ。

懸念となっていたことも解決したため、俺は総代の提案に乗ることにした。

 

 

 

総代、川神 鉄心との話を終えて俺は一子の元に来ていた。

 

「というわけで、俺は川神学園に通うことになった。」

 

同じ学園に通うという一子に一応報告を行う。

ただ、その場には百代もいた。

ちょうどいい。

百代には一つ言いたいことがあったのだ。

 

「つまり、お前にリベンジする機会がまだあるということだな。」

 

「そういうことになるな。それで提案なんだが百代、あの試合についてなるべく他言無用にしないか。」

 

「え?」

 

予想外に声を上げたのは一子だった。

 

「理由を聞いてもいいか?」

 

「俺が学生生活を送る上でそちらの方が好都合なんだ。」

 

百代に勝って他の奴から変な感情を向けられるよりただの編入生として生活した方が楽なのはいうまでもない。

それにあの試合は百代が勝負の重さを理解していなかった。

それなのに勝利を触れ回るようなことは俺はやりたくない。

 

「私はそれで構わない。ただし、条件がある。」

 

「なんだ?」

 

「私が更に強くなったらもう一度、正式な勝負をしてくれ。」

 

「もちろん。一子も他言無用で頼む。」

 

これでいい。

これであの勝負についてお互いに遺恨は残らないはずだ。

 

「えーと…、実はね…私、お姉さまと林道君との勝負について話しちゃったの。」

 

「…誰にだ?」

 

川神院の人間なら、鉄心さんに箝口令を引いてもらえばいい。

 

「大和達に…」

 

ヤマト…

聞いたことのない名前だ。

 

「それは誰だ?学園の奴か?」

 

「そう。お姉さまと林道君を運ぶのを手伝って貰ったの。」

 

なるほど。

こいつが俺と百代を運ぶのは一人では無理なのは分かっていた。

てっきり川神院の人間に手伝ってもらったものだと思っていたがそうではなかったらしい。

普通に考えれば確かに知り合いに頼むのが妥当だ。

 

「仕方がない。そいつらに誰にも言わない様にしてもらえるか?」

 

「分かった。私の方から行っておこう。大和達は私の仲間だ。何も問題は無いだろう。」

 

当事者の百代がいってくれれば話は円滑に進むだろう。

それにしても仲間か。

それなら箝口令を引くのは簡単かもしれない。

だが、仲間である百代を倒した俺をどう見てくるのか。

仲間意識とは時として厄介になりえる。

俺に対してその大和達はどんな感情を向けてくるのか。

それによって面倒なことにならなければいいが。

少し不安になりつつも今の俺にはどうすることもできずに成り行きに身を任せるしかなった。

 




春風の転移特典はキャッシュカードなんだよ、きっと。


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4話 初登校

今さらですが春風がまじこい世界に転移したのはゴールデンウィーク中です。


百代との勝負から約一週間がたった。

今日は俺が川神学園に初めて登校する日だ。

時期でいえば、ゴールデンウィークが明けてから一週間がたったころだった。

家や最低限生活に必要なものを買ったりしていたため、通うまでに一週間も掛かってしまった。

俺は編入初日なので大分早く学園に着くように家を出ていた。

厳密にいえば、のんびり行こうと早朝といえる時間に家を出た。

橋を渡っていると聞いたことのある声が耳に入ったきた。

声のする方に目をやるとタイヤを引きながら走る一子がいた。

せっかくだ。

声をかけるとしよう。

 

「ユーオウマイシン!ユーオウマイシン!」

 

「一子、ずいぶん古典的なやり方で修行しているな。」

 

「あ、林道君。おはよう。これで体力を付けてるの。」

 

「確かにただ走るより負荷をかけた方が効果は出るだろうな。」

 

「林道君は今日、転入だったかしら?」

 

「そうだ。どうもお前と同じクラスらしい。」

 

「本当!うちのクラスなんだね。」

 

話では一子と同じクラスの2-Fと聞いていた。

問題児が多いクラスとも聞いている。

後者については一子に聞くのではなく、自分の目で確認することにしよう。

 

「ねぇ、林道君。」

 

「どうした?一子。」

 

「良ければ少し稽古をつけてくれない?私、お姉さまのように強くなりたいの。」

 

稽古か。

正直、少しぐらいなら構わない。

だが、ここは確認をしなければならないことがある。

 

「今からいくつか質問を行う。それの解答で稽古をつけるか決めたい。」

 

「何の為の質問なの?」

 

「お前の人となりを確認する質問だ。」

 

「よく分からないけど分かったわ?」

 

それは恐らく分かってないのではないか。

まぁいい、始めるとしよう。

 

「お前は何の為に強くなりたい?」

 

「強くなってお姉さまを支えたい。そのために川神院の師範代になりたいの。」

 

「強くなることに必要なことはなんだと思う?」

 

「もちろん、修行よ。」

 

「修行して壁にぶつかったときはどうする?」

 

「それは……乗り越えるわ。」

 

「ふむ。では少し質問の感じを変えるぞ。お前の目の前に死にそうな人がいるとする。だが、そいつを助けると他の人間が何十人も死ぬ。お前は目の前の人間を助けるか?」

 

「…分からないわ。だけどきっと助けると思う。」

 

「最後にお前は悪人…いや、お前の家族や大切な人を殺した奴を殺せるか?」

 

「殺さないと思うけど、本当にそんなことになったら分からないわ…」

 

「…なるほどな。よし、稽古を行おう。」

 

「えーと、さっきの質問は何か関係あったの?」

 

「俺にとってはあったが、お前は気にしなくていい。」

 

さっきの質問は一子を俺の弟子にしてもいいかを確認するものだ。

もちろん川神流の一子を無理に弟子にするつもりはないが、稽古をつけるのなら一応確認したかった。

見込みがありそうなら川神院に断りを入れてから弟子になるか勧誘するつもりだ。

 

「で、稽古というが具体的に何をすればいい?」

 

「あたしと手合わせして、悪いところがあれば指摘してほしいの。」

 

「分かった。」

 

俺と一子は共に構えをとった。

正直、手合わせといっても俺から攻撃をする気はない。

あくまで一子の動きを見ることに集中する。

一子が俺に突撃を行い、そのまま攻撃に移る。

当たり前だが、百代よりスピードもパワーも劣っている。

一子の攻撃をいなし続けてしばらくしたら攻撃がやんだ。

 

「どうだった?」

 

「体の基礎は出来ている。だが、動きが少し単調になりかけている。もっと応用を利かせることを考えることを進める。」

 

「でも、あたし頭を使うの苦手なのよね。」

 

「まぁ、それは実践で少しずつ身につければいい。」

 

後一つ言いたいことがあるがそれを言うのは俺の役割ではないと判断し、指摘を終えることにした。

 

「現状、俺から言えるのは悪いがこのぐらいだ。大したこと言えなくて悪いな。」

 

「ううん。修行に付き合ってくれただけで満足よ。良ければこれからも付き合ってくれると嬉しいわ。」

 

「俺ができる範囲でなら構わない。」

 

一子の修行に付き合うことは俺の修行にもなるだろう。

それに質問の答えを聞いてこいつは俺の弟子にして林道流を教えても良いと思えた。

それだけでこいつの修行を見ることは俺にとって価値があることなのだ。

まぁ、こいつの日常を見てみないと本当に教えてもいいか分からないが。

 

「そろそろ学園に向かった方がいい。俺は先に行くからな。」

 

修行の為、動きやすい格好をしていた一子を置いて俺は川神学園に向かった。

 

 

 

 

 

 

学園に着いて俺は簡易的な手続きを行い、2-Fの教室の前に立っていた。

担任である小島先生から呼ばれるまで待機しているのだ。

よくある、転校生を紹介する儀式みたいなものだ。

 

「林道、入れ」

 

小島先生に呼ばれたので俺は扉を開けて教室に入る。

いたって普通に悪目立ちしないように。

俺が入って教室が少しざわめいた。

 

「林道、自己紹介だ。」

 

「はい。林道 春風だ。今日からよろしく頼む。」

 

自分では当たりざわりのない自己紹介をしたと考えている。

もっと何か話すべきだったのだろうか。

周りの反応を見るべくクラスの人間を一通り見ていたら一子と目が合い、笑いかけてきた。

他の奴に目をやると俺に興味をもっていそうな奴、無関心な奴に観察するように見てくる奴もいる。

そのなかで俺は一つ気になることがあった。

何故、青い髪の女は俺に明確な殺気を飛ばしてくるのかだ。

 

「林道お前は一番後ろの席だ。」

 

「分かりました。」

 

俺は指定された席に座りそのまま一時限目の授業を受けた。

もちろん、何故殺気を向けられているかは分からないままだった。

 

 



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5話 殺気の理由

大まかな流れしか考えてないから一度書いたやつを書き直してたら遅くなってしまった。

今回は風間ファミリーから3人が登場します。


今日の授業も終わり、部活動に行くものさっさと帰るものと教室から人が減りだしていた。

とりあえず、クラスの奴等には一人一人挨拶みたいな感じで最低一言声をかけた。

問題児が多いというか個性的なやつが多い印象だ。

その中で一番気になるのは椎名 京だ。

大体、自分の席で本を読んでおり印象としてはおとなしい少女だが、あれは自分の中にちゃんと信念や揺るがない感情を持っているタイプだ。

そして、俺はその感情のどれかに触れてしまったのだろう。

でなければ自己紹介の段階で殺気など向けられないはずだ。

 

「なぁ、転校生。お前、世界を回ってたんだって。面白いとことかなかったのか?」

 

俺が自分の席で座って考えてたらバンダナを頭に巻いた奴が話しかけてきた。

確か風間 翔一といったか。

 

「旅は見聞と適応力を高める為にいっていたからな急に言われても出てこない。」

 

俺が旅をしていたのはこの世界に来る前だ。

こっちの世界ではやってないので適当にごまかす。

 

「そうか。なら、思い出したら教えてくれ。」

 

「分かった。」

 

「キャップ、帰ろうぜ」

 

風間はキャップと一部から呼ばれている。

帰ろうと誘ったのは直江 大和だ。

自己紹介の時に俺を観察するように見てきた奴だ。

 

「…やまと」

 

「呼んだか?」

 

俺が呟いた一言に直江が反応した。

 

「もしかして、俺を川神院まで運んでくれたのはお前か?」

 

一子が百代と俺を川神院まで運ぶのに手伝ってもらったといっていた。

その時に出た名前は確かやまとだったはずだ。

 

「ああ、そうだぜ。でも、すごいよな。まさかモモせ…」

 

「キャップ!」

 

風間が何か言おうとしたところで直江が止めに入った。

恐らく、百代が俺に負けたことを言おうとしたのだろう。

なるほど、風間もあの場にいたのか。

直江のあの反応で無事に箝口令が引かれているようで安心した。

 

「あの場所には他に誰がいたんだ?」

 

俺は他に誰がいたのかを聞いた。

そうした方が隠す上でも都合がいい。

そしてなにより、礼が言える。

 

「えーと、確か俺に大和にモロに岳人、後は京もいたな。」

 

5人か

この全員このクラスだと仮定すると

 

「他3人は師岡 卓也、島津 岳人、椎名 京で合ってるか?」

 

「おう。合ってるぜ。」

 

全員このクラスで良かった。

2人には明日、礼を言おう。

 

「風間、直江。川神院まで運んでくれて礼を言う。ありがとう。」

 

俺は席から立って頭を下げた。

誠意を見せる方法を俺はこれ以外に知らないのだ。

 

「いいっていいって。ワン子の頼みでもあったしな。」

 

「そう言ってもらえるとこちらとしても気が楽になる。後は…」

 

俺はそのまま、椎名の席に向かった。

椎名はまだ帰っておらず、座って本を読んでいた。

恐らく、直江達を待っているのだろう。

 

「椎名も運んでくれて礼を言う。ありがとう。」

 

椎名の席の前まで行き、先ほどと同じように頭を下げる。

 

「…」

 

何も返事が返ってこない。

礼の返事などを期待していた訳ではないためそのまま帰ろうかと思ったがどうせなら気になることを聞くとしよう。

 

「礼を言った後でどうかと思うが一つ聞かせてくれ。」

 

「…なに?」

 

「俺はお前に恨まれるようなことをやったのか?」

 

「…何で?」

 

「自己紹介の時にお前から殺気のようなものを感じたからな。」

 

「…気のせい」

 

確かに自己紹介以降こいつから俺に対して殺気は出ていない。

だからといって俺は気のせいで済ますつもりはない。

 

「俺の推測だが、俺が百代に勝ったことが気にくわないという認識で合っているか?」

 

「…」

 

椎名は答えない。

肯定の意味としてとっていいのだろうか?

 

「もしそうだとしたら、俺はお前に何も言うつもりはないし、謝ろうとも思わない。」

 

「…」

 

この会話は風間と直江も聞いているのだが二人は何も言わずにこちらの様子を伺っていた。

こいつらにも何か思うところがあるのか?

 

「あの試合は正式な試合だ。結果はどうあれそれについて謝罪するのは勝負にも百代にも失礼だと俺はは考えている。だから、謝ることはできない。」

 

「…そう。」

 

椎名はそのまま席を立ち、教室から出ていった。

 

「いやー、ひやひやしたぜ。」

 

出ていってすぐに風間が口を開いた。

 

「お前らの仲間だろ?追わなくていいのか?」

 

「京には前もってちゃんと話はしたから大丈夫だ。それに後でフォローもしておく。」

 

直江が言うには百代が倒れているのを見て、京は怒りを露にしたらしい。

その結果、俺に対して負の感情を持ったが直江の説得に応じて大人しくなったらしい。

だが、俺を見て抑えていた感情が出てしまったのだろう。

 

「お前らも俺に対して嫌悪感とかないのか?」

 

「最初はあったけど姉さんの話を聞いてだいぶなくなったよ。」

 

「姉さん?百代のことか?」

 

「ああ、俺は姉さんの弟分だからな。」

 

普通、弟分でも姉さんとは呼ばないのではないか?

あえてつっこむつもりはないが。

 

「それにしてもモモ先輩、目標が出来たって喜んでたよな。」

 

「試合の結果がバネになったようで安心した。」

 

これなら百代は更なる強さを手にいれることが出来るだろう。

俺も負けないようにこの身体での闘いに慣れなくてはいけないな。

 

 

 

 

学校で風間と直江と別れて俺は家に帰るため歩いていた。

途中まで一緒に帰るように誘われたがまだ、用事があるといって断った。

家に近づくに連れて人の気配がなくなっていく。

なぜならここは親不孝通りと呼ばれる不良のたまり場だからだ。

家を探す前にこの街を見て回っているときに見つけたが灯りも少なく、不良が集まるにはもってこいの場所だ。

初めて来たときは二人組の男に絡まれたが、黙らせた。

自分がこれから住む街ということで不良を更正までは言わないが悪さをしないようにするのが目標だ。

 

「お、春風じゃねーか。」

 

そんな目標を掲げたときに出会ったのが今、俺に話しかけてきた板垣 竜兵だ。

 

「竜兵。今日は何も悪さを働いてないだろうな?」

 

「やってたとしても言う義理はねーな。」

 

こいつはこの親不孝通りに集まる不良をある程度纏めている。

竜兵を見つけた時にこいつと闘うことになったが特に苦戦することもなく俺が勝った。

こういった奴等は力を見せると大人しくなりやすいのでそこからは楽だった。

結果、俺はこの通りで少し有名になることが出来た。

俺の名前が不良の抑止力となればいいのだが。

 

「言わなくてもいいが俺の目の届く範囲で何かやってみろ。やったことを後悔させてやる。」

 

「怖いねー」

 

竜兵と話しながら俺は親不孝通りにある家に帰った。

ちなみに竜兵はガチホモなので家に上がろうとしたのをボコボコにして追い返した。

 

 

 



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6話 2度目の学生生活

今さらながらまじこいをプレイし直しましたが、風間ファミリーはGWに旅行行ってるんですね・・・

なるべく、原作にはそって進めていきたいと考えていますがプレイしたのが大分前なのでおかしい部分が出てくると思います。


俺が川神学園に通い初めてちょうど一週間が経った。

二度目の学園生活は新鮮で未だに飽きは来ない。

今日は登校する学生が多い時間に学園に向かう。

早めに出て一子の修行に付き合うのも出来たが俺はあいつの師でもないので毎日相手をするつもりはない。

それに川神流があいつをどうするのか興味もあった。

 

 

 

 

教室に着くとある程度の人が来ていた。

 

「おはようございます。林道君」

 

「委員長、おはよう。」

 

俺に挨拶してきたのは甘粕 真与

このクラスの学級委員長だ。

これを皮切りに俺は今いるクラスメートに挨拶をしていく。

 

「熊飼、教えて貰った店にいったがお前の言った通り美味しかった。また、教えてくれ。」

 

今、話しかけたのは熊飼 満

美味しい店のことをクラスの奴に聞いていたらみんな口を揃えてそういうことはくまちゃんに聞いた方がいいと答えたのでくまちゃんこと熊飼に質問した。

答えて貰った店は本当に美味しかった。

俺は食べ物のことなら熊飼に真っ先に聞くことを決めたのだった。

 

「うん。いいよ。」

 

「教えて貰ったお礼としてマドレーヌを作ってきた。食べるか?」

 

訳あって作ることが出来る数少ないお菓子

 

「美味しそうな匂いはそれだったんだね。もちろん食べるよ。」

 

「何々?林道君の手作り?私にもちょうだい。」

 

話に入ってきたのは小笠原 千花

和菓子屋の看板娘でよく手伝いをしている。

一度行ったが美味しかったので度々いくことになるだろう。

 

「熊飼が食べたあとならな。」

 

「ごちそうさまー。」

 

「…食べるの早いな。」

 

俺が見たときにはもうそこにマドレーヌは無かった。

 

「くまちゃんに食べ物渡して余るわけないじゃん。あーあ、食べたかったなー。」

 

「気が向いたらまた作ってきてやるよ。」

 

「僕にもまた分けてね。」

 

「分かったよ。」

 

「でも、林道君がお菓子なんて意外。案外、料理できたりするの?」

 

「いや、人に出せれるのはクッキーとマドレーヌぐらいだ。後は肉とか野菜を炒めただけだったりする。」

 

「炒めるだけってのはイメージ通りだわ」

 

一体、俺はどんなイメージなのだろうか

料理が出来ないイメージだと自己完結した。

 

「おっはよー」

 

騒がしくドアが開いた。

元気すぎる挨拶をしたのは風間だった。

後ろには直江、島津、師岡、一子、椎名、フリードリヒの計7名だ。

聞いた話だとこの7名に百代と1年の黛で風間ファミリーと呼ばれているらしい。

 

「今日もファミリー勢揃いだな。」

 

「同じ寮だからだろ。」

 

俺の発言に答えたのは源 忠勝

よく憎まれ口を叩くが言葉の端々に相手のことを思う内容が見え隠れしている。

本当は優しい人間なのだ。

ちなみに源も直江達と同じ島津寮ということで直江に源のことを聞くとべた褒めした後、

 

「ゲンさんはツンデレだから。」

 

と返ってきた。

 

ちなみに島津と師岡にも運んでくれたことへのお礼を言い今ではクラスメイトとして良好な関係が築けている。

椎名もあの日以降、俺に殺気を向けることはなくなった。

無事にクラスに馴染むことが出来て一安心という感じだ。

 

 

 

授業については問題なくついていけている。

一度目の学生生活では最低限出来るようには勉強していた。

そのお陰で編入試験もそこそこの点数を取ることが出来た。

ちなみに俺の好きな科目には日本史がある。

だが、日本史の綾小路先生はなぜか平安時代のことしか授業でやらない。

理由を聞いたところ、平安時代こそ至高とのことだ。

どの時代を好きかは人それぞれだが、授業で贔屓するのはやめてほしい。

クラスのやつに聞いたところ綾小路先生に言っても無駄とのこと。

それでいいのだろうか。

 

体育の授業は川神院の師範代であるルー先生が担当だった。

師範代としてやることはないのかと考えたがそもそも総代が学園を経営している時点でそんなことを考えること自体が野暮だろう。

 

一番興味を引かれたのは人間学という授業だ。

川神学園が取り入れいている独自の授業らしく初めて名前を聞いたときは道徳のようなものかと考えてたが実際は違った。

授業内容は卒業後にどう社会に適応するか。

そんな感じの授業だった。

担当する宇佐美先生は飾らずに教職員らしからぬことも言うがそれが共感できたりもする。

本当に必要なのはこういった先生、授業なのかもしれない。

 

 

 

その日、親不孝通りにある自分の家に帰る際に竜兵と会った。

 

「おう、春風」

 

「なんだ。竜兵か。」

 

「今日、ここいらの不良共を集めて大会をやるんだがおめぇもどうだ?」

 

竜兵のいう大会とは不良が集まり、互いの強さを競い合う催しのことだ。

大体のやつはありあまる力を発散させるために参加している。

俺が親不孝通りに初めて来たときにも無理やり開かせて、全員返り討ちにした。

 

「俺は参加しない。お前らだけでやってろ。」

 

「チッ。なんだ来ねーのかよ。お前ともう一度やりたかったのによ。」

 

不良たちを更生させるためには止めるのが正解かもしれない。

しかし、禁止してしまっては暴れる場所がなくなる。

その結果、親不孝通り以外で暴れられては更生以前の問題になりかねない。

 

「あんまり派手に暴れるなよ。」

 

「だったら、お前が来て止めろよ。」

 

「知らないのか?学生は不良と関わっちゃいけないんだ。」

 

「どの口が言ってんだ。」

 

俺の学生生活は個性的な学園と不良達との関わりのおかげで楽しく過ごせそうだ。

 



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7話 2-Sとの邂逅

モチベーションが上がらずに大分期間が空いてしまいました。
今後もこのぐらいのペースになるのではと私自身危惧しています。
ですが、ちゃんと更新はしていきますので読んでいただければと。


今回からSクラスとの絡みが入ります。
どんなキャラだったか原作やり直したほうがいいのかな・・・


学園生活にも慣れてきたのでそろそろ身体を本格的に鍛えようと考えていた。

もちろん、これまでもちゃんと鍛練は欠かさずにやって来た。

だが、それは走り込みや筋トレといった基礎鍛練のみである。

俺がやるべき鍛練は気を使った鍛練だ。

以前、百代と戦ったときに気操冥躰を使ったがあまりにも限界が来るのが早すぎる。

あれでは実践で使うことが出来ない。

気を使う特訓をしなければ。

 

そんなことを考えながら朝、学校の廊下を歩いていると着物を着た女生徒が前を歩いているのに気づく。

この学園は多額の寄付金を納めていれば服装についてなにも言われなくなる。

初めて聞いた時は、学園としてそれは良いものかと思ったが問題になっているわけでも無いため気にしないことにした。

着物の女生徒に会釈をして通りすぎる。

通りすぎてすぐに後ろから声をかけられた。

 

「おはよう。林道君。」

 

声の主は同じクラスの小笠原だった。

登校のタイミングが近かったみたいだ。

 

「ああ、おはよう。」

 

通常なら俺が挨拶を返してそのまま教室に向かうはずだった。

だが、今日は違った。

 

「Fクラスは朝から騒がしいの」

 

先ほど追い抜いた着物の女生徒が突っかかってきた。

 

「はぁ?挨拶してただけでしょ」

 

小笠原もなぜかそれに負けじと突っかかっていく。

正直、こんな分かりやすい挑発無視すればいいのではと思う。

 

「小笠原、こんな挑発乗ることもないだろ。」

 

「ほっほ、もう一人は臆病者ときたか。」

 

俺に対しても喧嘩を売ってきているようだ。

無論、買うつもりはない。

 

「臆病者と言われても構わない。だが、一つ聞かせてくれ。」

 

「ほーう、なにかのう?」

 

「お前、誰だ?」

 

ここまで喧嘩を売られているのだ。

おそらく俺とこいつは何かしらの接点があるのだろう。

だが、俺はまったくこいつに心当たりがない。

着物を着ているので印象にも残っていない。

 

「お前・・・此方のことを知らないと申すか。」

 

此方?ずいぶん古風な言い方をするな。

やはり、思い出せない。

 

「悪いが知らないな。俺とどこかで会ったことがあるのか?」

 

「お前みたいな山猿と会ったことなどないわ。」

 

見ず知らずの人間にここまで強気に出れるってある意味すごいな。

というか、山猿って・・・

 

「小笠原、こいつは一体誰だ?」

 

なんかこいつと話していると疲れそうなので、俺は小笠原に聞くことにした。

 

「こいつは2-Sの不死川 心。あたしたちFクラスをいっつも馬鹿にしてくるの。」

 

Sクラスか・・・

確か、川神学園が取り入れている特進クラスだったか。

定期試験で上位50位以内ではないと在籍することが出来ないんだったか。

問題児ばかりいるといわれるFクラスと仲が悪いと直江から聞いたな。

つまり俺は今、Fクラスってだけで喧嘩を売られたのか。

 

「不死川といったか?」

 

「なにかのう。此方の素晴らしさが分かったかの。」

 

「あんまり人を見下すようなことはしない方がいいぞ。痛い目をみるとは言わんが敵を作ることになるかもしれないからな。」

 

「山猿のいうことなんぞ聞く気にはならんのう。」

 

やっぱり聞く耳を持たないか。

こういう奴は一度痛い目を見ないと反省しないだろう。

まぁ、別に俺が知ったことではないのだが。

 

「小笠原、教室に向かうぞ。」

 

「え、ええ。」

 

「ちょ、此方を無視するのか。」

 

十分、話はしたのだから無視ではないと思うのだが。

 

「お前も自分の教室に行ったらどうだ?もうそろそろHRの時間だ。」

 

「それもそうかの・・・ってまだ10分以上あるではないか!」

 

不死川がなんか叫んでるが気にせずに俺と小笠原はFクラスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

教室に入るともう結構な人がいた。

不死川に絡まれたせいでいつもより入るのが遅れたからだ。

 

「真与ー聞いてよー」

 

「どうしたんですか?千花ちゃん。」

 

小笠原はさっきの出来事をさっそく甘粕に話し始めた。

俺は直江の元に向かった。

 

「直江。」

 

「どうした?林道?」

 

「Sクラスの不死川ってやつにあったんだが、Sクラスはみんなあんな感じなのか?」

 

「大体はSクラスの奴らはFクラスを下に見てるとこはあるな」

 

「仲良くはできないのか?」

 

「しようとはしている。今日だって和平を申し込みに行く予定だ。」

 

「和平?」

 

聞いたところによると委員長の甘粕はSクラスとも仲良くできたらと考え、定期的に和平を申し込みに行っているとのことだった。

結果については聞く必要はなかった。

さっき、俺と小笠原が不死川に何もなしに絡まれた。

それだけでうまくいっていないと考えることは難しくなかった。

 

「なるほどな・・・」

 

こちらから歩み寄っているのだ。

後は誠意を見せて相手が応じるのを祈るしかない。

 

「直江、その和平の席に俺を連れて行ってくれ。」

 

「それは構わないけど、どうしたんだ?急に。」

 

「なに、俺はただ現状を正確に知りたいだけだ。

それを知るには和平の席に同席する。

それが一番だと判断しただけだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の時間、それが和平交渉の時間だ。

行う場所は2-Sの教室、いわば敵の総本山だ。

別に戦いに行くわけではないので敵というのは間違いだが、ただでは終わらない気がする。

行くのは俺、甘粕、直江の3人だ。

教室を出る際にはクラスの奴らから応援をされた。

そして、今Sクラスの前にいる。

目の前の閉められたドアを開けば、和平交渉が始まる。

なぜだろうか、嫌な予感がする、

ただの和平交渉では終わらない。

そんな俺の気持ちを知らずに甘粕がドアを開けた。

 

 




次回は和平交渉からです。
まとめようと思いましたが、まとめると更に遅くなるので今回はここまでにさせてください。


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8話 和平交渉

この上なく駄文となってしまった。

モチベーションが上がる話と上がらない話の差が激しい・・・


和平交渉のため、俺と直江と委員長である甘粕は2-Sの教室を訪れていた。

ドアを開けて教室の中を見渡すとこちらを睨んでくるもの、興味を持たず勉強しているもの、小声でこちらの陰口を話しているものと歓迎されていないことだけは分かる。

 

「よく来てくださいました。2-Fの委員長」

 

そんな中でこちらに友好的に話してくれるものがいた。

この雰囲気を考えるととても意外だ。

ただ、そいつは俺たちではなく甘粕だけを見ているのが気になる所だ。

 

「ささ委員長、こちらの席へ」

 

「井上ちゃん、ありがとうございます。」

 

「井上、九鬼はいないのか?」

 

直江が井上と呼ばれるスキンヘッドの男に確認している。

九鬼と言う奴がどんな奴かは知らないが恐らく、このクラスの中でも重要な人物なのだろう。

 

「英雄は今日はまだ学校に来ていませんよ。」

 

井上ではなく肌が黒めの見た目優男のような男が入ってきた。

 

「直江。こいつは誰だ?」

 

「こいつは葵 冬馬。テストでは常に1位でSクラスの頭脳だ。」

 

「おやおや、大和君が僕のことをそこまで褒めてくれるとは嬉しいですね。」

 

「今日はよろしく頼むな。葵。」

 

「ええ。」

 

一応、挨拶はしたがなぜだろうか。

この葵という男は少し危険な感じがする。

この男だげではない。

なんか眼帯をつけた軍服の女もいるし、このクラスの奴らもFクラスに負けず劣らず個性豊かな人間がいるみたいだ。

軍服の女がこちらを睨んでいる気がするが気にしないでいいだろう。

 

「空気がまずいと思ったら山猿がおったわ」

 

不死川がまたこちらを煽るように話に入ってきた。

 

「さぁ、和平交渉を始めようか」

 

そんな不死川を無視して直江は和平交渉を始めようとした。

 

「こら、此方を無視するな!」

 

「和平交渉とは一体どのように行うのだ?」

 

俺も不死川を無視して話を進める。

 

「ふん、和平交渉などする必要ないわ。此方達Sクラスは優れた人間。山猿たちとなれ合う気などない。」

 

「そうだ。お前らと仲良くなんかできるか!」

 

不死川が言ったセリフに同調するようにさっきまで陰口を言っていた奴らが同じように煽ってきた。

和平交渉というからてっきりSクラスも和平の意思があると思っていたのだが違ったようだ。

こいつらにあるのは和平の意思じゃない。

Fクラスへの敵意だ。

今日、こいつらと和解するのは無理だと俺は判断した。

 

「フッハッハッハ。我、参上だ。」

 

なんかいきなり教室にテンションが高い男が入ってきた。

 

「さすが英雄様。見事な登場です!」

 

派手な男の次にはメイド服を着た女が入ってきた。

軍服の女もそうだが、あのメイドも学生の歳じゃない気がする。

それにメイド服の中に仕込み刀か何かしこんでいるな。

このクラスの方がFクラスより問題ある奴が多い気がするな。

 

「これは一子どののクラスメイトではないか。」

 

「英雄、彼らは和平交渉に来たのですよ。」

 

なるほど、この派手な男が先ほど話に出ていた九鬼という奴か。

 

「そうか。なら、Sクラスの学級委員である我が直接話をしてやろう。」

 

この男、話がいちいち上からだな。

そういえば、この世界で一番大きな会社も九鬼だったな。

もしかするとこいつはその会社の関係者か。

だとすればこの態度、傍にいるメイドも合点がいく。

 

「はい。では、みんなで仲良くなれる方法を話していきましょう。」

 

委員長が九鬼と話をし始めた。

本来ならここは黙って静観、もしくはうまく交渉ができるようにサポートするべきだろう。

だが、俺は。

 

「委員長。悪いがもう帰る時間だ。」

 

「え?まだ時間は大丈夫ですよ。」

 

「いいや、帰る時間だ。そうだろ?直江。」

 

「・・・そうだな、帰る時間だ。」

 

とっさに話を振ったが直江が俺と話を合わせてくれて助かった。

 

「貴重な時間を作ってもらってありがとな。」

 

俺はそう言って委員長を連れて直江とSクラスを後にした。

 

 

 

 

 

 

Fクラスへ向かう廊下で俺は怒られていた。

誰に?

もちろん、甘粕にだ。

 

「林道君、なんで話をする前に帰ろうなんて言うんですか。」

 

「あの場で話したところで事態は好転しないと思ったからだよ。」

 

九鬼が来て雰囲気は変わったが、ほとんどの奴がFクラスと仲良くなりたいなんて思っていない。

むしろ逆だ。

そんな状態での交渉は悪い方向に行く確率が高い。

なら、しない方がマシだ。

 

「だとしても、私に少しは相談してほしいです。」

 

「悪かったよ。」

 

俺にそう言って甘粕は先に戻っていった。

 

「直江、話を合わせてくれたこと礼をいう。」

 

「いいよ、別に。」

 

「お前なら意図を読み取ってくれると思った。」

 

「俺もこのままでは悪い方向に行くと思っていた。先に話を出してくれて助かったよ。」

 

Fクラスで直江は軍師・・・つまりは参謀に位置する人物という話は聞いていた。

そのおかげで迷わずに直江にSクラスを去るための嘘を振ることが出来た。

もし、直江が意図を理解せずに俺の発言を否定した場合、俺の中で直江は軍師という器ではないと判断しただろう。

 

「さて、俺らも教室に戻ろうぜ。」

 

直江が教室に戻るように言ってきた。

確かにいつまでも廊下にいるのもおかしいか。

 

「そうだな。」

 

俺と直江はいつもの面々がいる教室に戻った。

教室に戻っても俺の頭の中はしばらくSクラスのことでいっぱいだった。

どうすれば奴らとうまくやっていけるのだろうか。

一度、盛大に戦った方が好転するかもしれない。

答えが出なかったため俺は考えるのをやめた。

 

 




誤字の指摘をしていただいた方ありがとうございます。
あまり、書いた後見直さないのでおかしいところは教えていただけると嬉しいです。


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9話 クリスティアーネ フリードリヒ

今回の話は割とモチベーションをもって書くことが出来ました。

クリス初登場回です。


学園の放課後、俺は河川敷で金髪の少女もとい同じクラスのクリスティアーネ フリードリヒと対峙していた。

今からこいつと試合を行う。

こうなったことにはちゃんと理由がある。

それは遡ること7時間前の出来事だった。

 

 

 

 

 

学校にて1限目の授業が終わり、授業の間にある休憩時間に少し気を抜いていた時

フリードリヒが俺のところに来た。

 

「林道!」

 

「なんだ?フリードリヒ。」

 

「放課後に自分と勝負してくれないか。」

 

「勝負?一体どういうことだ?」

 

「最近、犬が強くなっている理由はお前と特訓しているからと言っていた。」

 

犬?

特訓ということは一子のことを言っているのだろう。

犬とはひどい呼び方だな。

まぁ、フリードリヒも一子と同じ風間ファミリーらしいので公認の呼び方なのだろう。

 

「それで?一子が強くなっているのとフリードリヒが俺に勝負を挑むことの関係が分からないんだが。」

 

「モモ先輩と犬が認めたお前と手合わせがしたいのだ。」

 

「・・・組み手ならいいが、勝負なら断る。」

 

「なぜだ?」

 

「少し話を聞いただけだがお前は勝負を行う覚悟がないと感じた。」

 

「そんなことはない!!」

 

フリードリヒが大声で俺の発言に反発した。

そのせいでクラスの奴らが俺たちの方に目を向けてきた。

 

「この話は昼に場所を移して行おう。」

 

「・・・分かった。」

 

この休憩時間での会話はこれで終わった。

昼にまた続きを話すことにしたが面倒なことになりそうな気がした。

 

 

 

 

 

昼、俺とフリードリヒは屋上で休憩時間の続きを話し合うことにした。

場所以外に違うことがあるとすれば、この場に一子と百代と直江がいることだ。

 

「なんで、3人がいるんだ?」

 

「いいじゃないか。お前らが戦うのなら私も見てみたいしな。」

 

百代が笑顔で答えた。

 

「私も林道君と戦いたいのにクリに先越されたくないもの。」

 

一子がまっすぐ俺を見て答えた。

俺は一子の修業をたまに手伝ってはいるが一度も試合をしたことはない。

一子は勝負したいと言ってくるが俺はそれを断っているからだ。

 

「俺はクリスが暴走するのを防ぐために来た。」

 

直江は申し訳なさそうに言ってきた。

 

「自分は暴走したりなどしないぞ。」

 

フリードリヒは少し怒りながら言った。

 

「お前らがここにいる理由は分かった。だが、勝負を行うかは俺とフリードリヒの問題だ。そこに口出しはしないでもらいたい。」

 

「いいだろう。」

 

百代が俺の注意を了承し、後の2人はそれを肯定した。

 

「それで、自分に覚悟がないというのはどういうことだ!」

 

「急に大声を出すな。」

 

ちょっとびっくりするだろうが。

 

「覚悟がないというのはそのままの意味だ。」

 

「覚悟ならちゃんと自分はできている。」

 

「それはどんな覚悟だ?」

 

「もちろん、勝負を行う覚悟だ!」

 

「・・・分かった。お前との勝負を受けよう。」

 

俺は勝負を受けることにした。

フリードリヒが覚悟を持っているというなら、何も言うまい。

俺が言った覚悟とこいつのいう覚悟が同じかは分からないがそれを確認はしない。

もし違った場合は身をもって分かってもらおう。

別に俺はこいつの師ではないのだ。

勝負の前に懇切丁寧に説明をする必要はないのだから。

 

「うむ、感謝する。」

 

「試合を行う場所はお前が決めてくれ。」

 

「場所は河川敷でいいだろう。あそこなら人もそこまで来ないだろう。」

 

百代が河川敷を提案してきた。

人があまりいないところというのは色々と都合がいい。

 

「林道、一つ頼みがあるのだがいいか?」

 

「頼み?俺で聞けることなら構わない。」

 

「ファミリーの奴らにお前らの試合を見せたいのだ。」

 

「風間ファミリーにか?なぜだ?」

 

「私がお前に負けたとまだ完全には信じていないみたいでな。」

 

「確かにモロとかは半信半疑だな。」

 

「そのぐらいなら構わない。」

 

こいつらのファミリーならむやみやたらに試合の結果を言いふらしたりしないだろう。

こうして俺は、放課後に河川敷でフリードリヒと勝負することになった。

ちなみに俺が勝負を受けるといったときに一子が少しむくれていたが気にしないようにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして、今に至る。

河川敷にレイピアを持ったフリードリヒと向かい合い、周りには風間ファミリーの面々がいる。

一人、見覚えのない帯刀している女子がいるがあの子も百代たちの仲間なのだろう。

一目見ただけだがあの子、百代の次に強い気を感じる。

 

「林道は武器は使わないのか?」

 

フリードリヒが武器を持っていない俺に質問してきた。

ちなみにフリードリヒのレイピアはレプリカで殺傷能力はない。

 

「俺は基本武器は使わないからな。」

 

「分かった。では、始めるか。」

 

「始める前に改めて確認だ。お前は勝負の覚悟があるといったがそれは今も変わらないか?」

 

「もちろんだ。」

 

「あいつなんで今さらあんな確認したんだ?」

 

「さぁ、自分がまだ出来ていないんじゃないの?」

 

外野の島津と師岡が話しているな。

師岡の発言に少し棘を感じるが今は気にしなくてもいいか。

 

「百代、審判は任せていいか?」

 

「ああ」

 

「じゃあ、始めようか」

 

「分かった。」

 

俺は一度深呼吸をして、

 

「林道流 創始者 林道 春風」

 

俺の名乗りにフリードリヒはすぐには反応できずにいた。

しかし、少しの間の後に

 

「クリスティアーネ フリードリヒ」

 

「では、始め!!」

 

俺とフリードリヒの名乗りの後に百代の開始の合図

俺がこの世界に来てからの2度目の勝負が始まった。

 




次回はクリスとの戦いです。


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10話 林道流VSフリードリヒ

クリスのことフリードリヒって書くの思ったよりしんどい。。。


フリードリヒとの勝負が始まり、俺が構えているところにフリードリヒが突っ込んできた。

 

「はぁ!」

 

フリードリヒは持っていたレイピアを横に振り攻撃してきた。

それを俺は後ろに飛んで避ける。

フリードリヒは避けた俺に追撃をかけてくる。

レイピアといってもレプリカなので当たれば痛い程度で済むのだが俺は追撃をかわしていく。

 

「クリス、さすがだね。」

 

傍から見たら一方的にクリスが攻撃しているため追いつめているように見えているのだろう。

師岡が勝負を見てそう言ったのが聞こえる。

 

「いや、林道はわざと攻撃していないんだ。」

 

それを聞いて、百代が訂正をした。

確かに俺は攻撃するつもりはまだない。

今はフリードリヒの実力を見ているのだ。

だが、あまりに単調的な攻撃の数々に外野の方に意識を向けている。

いい加減、反撃でもするか。

俺はフリードリヒが攻撃に使っているレイピアを気を纏わせた手で掴んだ。

 

「気突衝」

 

気突衝を使って俺はフリードリヒを吹き飛ばした。

レイピアはその形状から素早い連撃が可能だ。

しかし、フリードリヒレベルの動きなら集中させてなくても避けることが出来た。

決してフリードリヒが遅いわけではない。

百代に勝った俺とでは差がありすぎただけだ。

だから、あえて俺はこいつにある提案をした。

 

「負けを認めるか?フリードリヒ。」

 

「自分はまだ戦える!」

 

「そうかよ。」

 

勝負をしている最中に、これ以上棄権を進めるのは相手に失礼だな。

しかし、相手との力量差を理解して引くこともまた戦いだと俺は思うぞ。

 

「悪かったな。これからは全力で戦ってやるよ。」

 

「やはり、全力ではなかったか。」

 

俺は再度構えなおした。

フリードリヒも構えなおし、俺に向かって突撃してきた。

やはり動きは単調だ。

先ほどと同じように一度避けて反撃を行うか。

そう思ってフリードリヒの動きを見ているとフリードリヒは最初と同じようにレイピアを横に振る体制をとってきた。

俺はそれを見てまた後ろに避けようとしたが、違和感に気づいた。

先ほどに比べ、横斬りの速度が遅いのだ。

なるほど、罠か。

俺の思った通りフリードリヒは横斬りを途中で止め、突きに変えてきた。

俺が最初と同じように後ろに飛んでいたら避けるのが少し大変になっていただろう。

だが、突きに変える前に違和感に気づいた俺は難なくその攻撃を対処した。

具体的に言えば、突き出されたレイピアを気を纏った左手で掴んだ。

 

「なに!?」

 

それにはフリードリヒも驚いたようだ。

そして、その瞬間は絶好の攻撃タイミングである。

俺は右手をフリードリヒのお腹の前に出し、気を溜めた。

 

「林道流 爆気剛」

 

気を溜めた右手を爆発させた。

爆発といっても溜めていた気を一気に解き放っただけなのだが。

百代の人間爆弾みたいに自分へのダメージはない。

その分、威力はそちらより少し弱めだが。

 

「うわっ!」

 

急に爆発が起きたのだ。

フリードリヒは後ろに吹き飛んだ。

俺はそれを追いかけ追撃をかけにいく。

フリードリヒは飛んだ先で倒れずに片膝をついて耐えていた。

俺はその状態のフリードリヒの顔の前に手のひらを出し

 

「林道流 波裏掌底」

 

容赦なく一撃を与えていく。

これで倒れてくれると楽なのだが。

そんな俺の期待をよそにフリードリヒは立ち上がった。

一度、審判の百代に目をやると真剣な目をしていた。

まだ勝負は終わっていないということか。

俺から見たらフリードリヒは結構、ボロボロなのだが。

 

「ここまで・・・強い・・・とは。」

 

少し息を切らしながらフリードリヒは言った。

本来ならここで負けを認めるように勧めたいが一度勧めてわかった。

こいつは引き下がるような奴じゃないと。

 

「フリードリヒ、今度はこちらから行くぞ。」

 

俺はそういうとフリードリヒに向かって走った。

次の攻撃でこいつとの試合を終わらせる。

負けを認めないなら審判の百代に勝敗を明確にさせればいい。

俺が出した結論はとても簡単だ。

なにせ、俺が百代に勝った状況を真似するだけなのだから。

つまり、フリードリヒを気絶させればいい。

フリードリヒに向かっている最中、俺は両手に纏っている気の調整を行っていた。

理由はあまり傷つけずに気絶させるためだ。

力を込めすぎて大けがさせるわけにいかないのだ。

フリードリヒの近くまで行くとレイピアで迎撃を試みるが俺はすべて手で受け流し、フリードリヒの前に右手を出した。

 

「林道流 銃撃破」

 

この技は読んで字の如く、相手に銃弾を受けたような衝撃を与える技だ。

ダメージが蓄積したフリードリヒならこれで倒れるだろう。

 

俺の読みはあたり、フリードリヒは倒れた。

それを見て百代は

 

「勝者 林道」

 

正直、フリードリヒとの勝負は攻撃の対処より大けがを負わせないように力加減の調整をする方が大変だった。

もちろんそんなこと口が裂けても風間ファミリー、特にフリードリヒには言えないが。

 

そんな苦労を乗り越えて俺のこの世界2度目の戦いはまたしても白星となった。

 

 




この主人公が負けるイベントを作ることが出来るのだろうか…


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11話 試合の覚悟と風間ファミリー

この話、書くにあたってゲームの冒頭部分をやったらまゆっちがかわいくてつらい

※気の説明を少し修正しました。


フリードリヒとの試合は敗者の気絶という幕引きで終わった。

 

「クリス!!」

 

師岡がそう言ったのを皮切りに直江たちは気絶しているクリスの元に走っていく。

その時、俺の横を走る師岡に負の感情を向けられた気がした。

ここはあいつらがいるし、俺はその場を去ろうと思い、フリードリヒたちとは逆の向きに足を向けた。

 

「おい、林道。どこに行くつもりだ?」

 

それに気づいた百代が声をかけてきた。

 

「お前らがいるんだ。俺がいたら空気が悪くなるだろ。」

 

仲間意識の高そうな椎名と師岡は特に。

さすがにこれは口には出さないが。

 

「そんなことない。お前は正々堂々闘い勝ったのだ。逃げなくてもいいだろ。」

 

百代の言葉を聞き、俺は風間ファミリーの面々を見た。

それに気づいた風間と一子は笑って返してくれた。

他のメンバーも明確な敵意を向けてきてはいない。

 

「…そうだな。せっかくだしもう少しここにいさせてもらおう。」

 

俺はフリードリヒと反対の方向に向けていた足を風間ファミリーの方に向けた。

そのまま倒れているフリードリヒに近づき、手の届くところまで行き、そのままフリードリヒに触ろうとした。

しかし、その前に腕を掴まれた。

掴んできたのは椎名だった。

 

「何する気?」

 

椎名の疑問も当然だ。

ここを離れようとしていた奴が戻ってフリードリヒに触れようとした。

どういうことだとここにいる奴は思うだろう。

 

「俺の技でフリードリヒを回復させて目を覚まさせようとしただけだ。こいつに危害を加えるつもりはない。」

 

「本当に?」

 

ちょっとした怒りが混じってるな。

 

「本当だ。試合の後に対戦相手をさらに傷つけるなんて俺は絶対にしない。信じてくれ。」

 

「…」

 

「…」

 

俺を含めて周りのメンバーは椎名の判断を待った。

その結果、俺の腕から手を放した。

そして、俺はフリードリヒのおでこに触った。

フリードリヒに自分の生命エネルギーを流し始める。

 

ここで気の説明を少ししよう。

気を簡単に説明すると生命エネルギーだ。

自分の生命エネルギーを人に分け与えればその人を回復させることが出来る。

だが、生命エネルギーはとても強いエネルギーだ。

当然、攻撃にも使用することが出来る。

百代が使っている気もおそらく俺と同じものであると思っている。

 

「うっ」

 

俺の生命エネルギーをもらってフリードリヒも目を覚ましたようだ。

 

「目が覚めたようだな。」

 

「林道?…そうか、自分は負けたのか。」

 

「そうだ。お前は負けて林道が勝った。」

 

百代から試合の結果を言われ、少し落ち込んだようだったがそれもすぐに終わった。

 

「林道。お前は強いな。ぜひ、また自分と手合わせしてくれ。」

 

「ああ、手合わせなら構わない。」

 

「ねーねー、林道君。」

 

「うん?どうした、一子?」

 

「結局、林道君が言っていた覚悟っていったい何だったの?」

 

「確かに自分も気になるぞ。」

 

「それはな、相手を負かす、どちらが強いかの優劣を明確にする覚悟だ。」

 

「「?」」

 

俺が答えたらフリードリヒも一子もよく分からなかったようだ。

それだけではなく、他の面々も分かっていないようだ。

まぁ、これは別に無理に分かってもらおうとは思っていないものなのだがな。

 

「まぁ、いずれ俺の言った意味が分かる時がくるだろう。ところで…」

 

俺は帯刀している女子の方をむいた。

 

「お前とは初対面だな。林道 春風だ。」

 

「わ、私は、黛 由紀恵と申します。]

 

「黛だな。よろし…」

 

「そして、俺は松風だぜ。」

 

「…うん?」

 

なんかこの子、突然馬のストラップ出して話し始めたんだけど。

 

「この子は松風です。」

 

「そ、そうか。」

 

俺はたまらず視線を外した。

外した視線の先には直江がいて、何とも言えない表情をしていた。

どうやら黛のこれは風間ファミリーで認知されているらしい。

 

「…さて、そろそろ俺は帰るぜ。」

 

「もう帰るのか?」

 

百代が訪ねてきた。

 

「なんというか、頭の処理が追いつかない出来事が一つあったんでな。」

 

俺はすこしだけ黛の方に視線を向ける。

黛はなぜ自分の方に視線が来るのか分からないようだ。

 

「フリードリヒ、お前が俺を超えるぐらい強くなるのを待ってるぞ。」

 

「むぅ…」

 

少し上から目線過ぎたか?

フリードリヒが不満そうな顔をしている。

だが、こう言っておけばむやみに俺に戦いを挑まんだろう、

 

「林道、行く前に聞かせてくれ。」

 

「なんだ?フリードリヒ」

 

「なぜ、お前は私のことをフリードリヒと呼ぶのだ。」

 

「…うん?」

 

投げかけられた質問は俺の予想だにしないものだった。

 

「実はいまだにフリードリヒと呼ばれるのは慣れないんだ。みんなはクリスと呼んできてくれるからな。」

 

「そういえば、林道は姉さんとワンコ以外は全員苗字だよな。」

 

追撃として直江が苗字読みなのを指摘してくる。

 

「百代と一子は同じ苗字だからな。後は特に苗字で呼んでも問題ないだろ?」

 

「だが、自分はクリスと呼んでほしいぞ。」

 

 

 

この後、別にフリードリヒでもいいだろと思う俺とクリスと呼ばれたいフリードリヒでひと悶着あり、結果は直江と風間の仲裁で俺がクリスと呼ぶということで決着した。

他のメンバーはクラスでも苗字で呼ばれているため変わらずそのままでもいいということになった。

 

別にいいがクリスが俺のことを林道と呼ぶのに自分はクリスと呼んでほしいとはいかがなものか。

そんなことはもちろん口にしないが。

 

 

こうして、クリスのせいで騒がしくなった一日が無事に終わったのだった。




次回からやっとクリスと書ける…


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番外1 初めての親不孝通り

今回は番外編的な話を上げさせていただきます。
内容としては主人公が初めて親不孝通りに来た時の話です。

決して本編が行き詰ったとかそんな理由ではないんだ・・・


川神を散策していると親不孝通りと呼ばれる不良がたまっている一角があるらしい。

そのせいで普通の人は近寄ろうとはしないみたいだ。

俺は興味本位で親不孝通りを歩いていると2人組の不良に絡まれた。

ただ歩いているだけでこれとは本当に治安が悪い。

 

「見たところ高校生だな。学校サボってこんなところに来たのが運の尽きだな。」

 

お前らも俺にあったことが運の尽きだ。

 

「痛い思いしたくなかったらさっさと金出しな。」

 

痛い思いしたくなかったら俺から逃げることを進める。

 

「なんだ?ビビッて声も出ねーか。」

 

「可哀想に、な!」

 

一人が話している最中に俺の腹めがけて拳を打ち込んできた。

それを普通に片手で受け止める。

 

「おい。何の真似だ?」

 

一応、こいつらの言い分を聞いておこう。

こういった奴らにはそういうのは無駄だと思うけど。

 

「てめー!一発受け止めたぐらいで調子に乗るんじゃねーぞ!」

 

さっき拳を打ち込んできたやつがもう片方の手で今度は顔に殴りかかってきた。

どうでもいいが調子に乗るなとよく聞くが大体はそう言った奴が一番調子に乗っていると思う。

自分の方が相手より優位に立っていると勘違いしているからそんな言葉を使うのだろう。

そんな風に関係ないことを考えながらパンチを避ける。

そして、殴ってきたやつの腹に蹴りを入れる。

 

「うぐっ!?」

 

腹を抑えながら後ろに下がったのを見て、追撃として少しジャンプして体を回転させて相手の顔面に蹴りを入れてやった。

技名でいうなら胴回し回転蹴りだ。

 

「あが・・・」

 

そのまま不良は倒れた。

歯も何本か折れて、気絶したみたいだ。

カツアゲ、暴力を平気と行うんだ。

反撃にあうことぐらい覚悟していたはずだ。

だから、やりすぎたなんて微塵も思わない。

 

「て、てめー。な、なにもんだ!」

 

もう一人の不良が俺について聞いてくる。

 

「それに答える義理はない。」

 

そう答えて俺は不良の顔に拳を突き出す。

それにビビったのか不良は後ろにしりもちをついてしまった。

 

「ここいらを仕切ってる奴がいるならそいつのことを教えろ。」

 

「し、仕切ってる奴?し、知らねーよ。」

 

完全に俺にビビってるようだな。

まぁ、そのために一人気絶させたのだが。

 

「本当か。」

 

「あ、ああ。」

 

俺は右足に気を纏わせ、少し上げた。

そしてそのまま思い切り地面に振り下ろした。

結果、足が置かれた部分のコンクリートが割れた。

それを見て、不良がさらにビビッていた。

 

「もう一度聞く。ここいらを仕切っている奴に心当たりはないんだな。」

 

「い、板垣 竜兵とかいう奴が・・・」

 

「そいつが仕切ってるのか?」

 

「お、俺はそう聞いた。」

 

「そうか分かった。」

 

俺はそう言って、その場を後にした。

これがトラウマになって2人はもうカツアゲなんてしない。

そう願うことにしよう。

 

 

 

 

板垣 竜兵の情報を集めるために絡んでくる不良どもを返り討ちにして情報を集めたら、いつの間にか廃工場にいき着いた。

そこにはかなりの数の不良がいた。

この中の誰かが板垣 竜兵だろうか。

俺は息を吸い込んで

 

「ここに板垣 竜兵という男はいるか!!」

 

思いっきり叫んだ。

それを聞いて不良達がざわつき始めた。

 

「威勢がいいな!おい!」

 

俺の叫びに一人の男が返してきた。

タンクトップ姿で左腕に入れ墨を入れている男だ。

 

「お前が板垣 竜兵か?」

 

「ああ、その通りだ。で、俺に何の用だ。」

 

「近々この町に住むんでな。挨拶でもと思ってな。」

 

少しだけ殺気を混ぜながら話してみる。

だが、こいつらは怯えるどころか笑い始めた。

 

「挨拶だと?こいつはおかしな話だ。俺たちの様な奴に挨拶とは変わった奴だ。」

 

「そうか?お前らの様な不良共と後々関わった方が面倒になるだろ?」

 

「それは違いないな!ハッハッハッ」

 

「笑っているところ悪いが本題だ。今日からここは俺が仕切らせてもらう。」

 

「やれるもんならやってみろ!やっちまえお前ら!」

 

板垣 竜兵の合図で全員が俺に襲い掛かってくる。

数では圧倒的に俺が不利だが、こんな不良共に後れを取るつもりは毛頭ない。

周りに気を展開し、不良共一人一人の動きを捉えながら反撃を行う。

こんなことしなくても勝てるが一応、念のためだ。

15人ぐらいを倒したあたりで一度不良共の攻撃がやんだ。

 

「こ、こいつめちゃくちゃ強いぞ。」

 

「これだけの連中相手に1発も食らってないだと…」

 

俺との力量差に気づいたようだ。

ここでおとなしくなってくれるといいのだが。

 

「いいねー久々に楽しめそうだ。」

 

指示をしてからじっとこちらを見ていた板垣 竜兵が俺の方に歩いてくる。

今のセリフからこいつも百代と同じ戦闘を楽しむタイプと判定できる。

俺の強さを伺っていたようだ。

 

「板垣 竜兵、お前如きじゃ俺には勝てないぞ。」

 

「俺にそんな啖呵きる奴は久々だ。」

 

「こんな不良共たち相手にお山の大将気取ってるような奴の底は浅いって言ってるんだ。」

 

「ぬかせ!!」

 

態と挑発したおかげ勢いよく俺に向かってきてくれた。

俺の目的は元々こいつを倒して不良共のリーダーもどきになることだ。

ここでこいつを圧倒的に倒してやる。

板垣 竜兵が走りながら殴りかかってくるので俺も前に進み、勢いよくパンチをする。

俺と板垣 竜兵の拳がぶつかり合った。

 

「うおぉぉぉぉ」

 

板垣 竜兵が叫んで力を込めるが拳のぶつかり合いに勝利したのは俺だ。

 

「そんな力任せの攻撃じゃ俺には届かんぞ。」

 

「ふざけやがって!」

 

こういった具合に向かってくる板垣 竜兵を正面から打ち負かすのを繰り返した。

俺の手には気を纏わせているので負けることはなかった。

やがて、板垣 竜兵の体力がつきこの戦いに幕が降りたのだった。

 

「はぁはぁ、お前、気に入ったぜ。」

 

「不良に気に入られても嬉しくないな。」

 

「そういうな。いいぜ。お前にここいらを仕切らせてやる。」

 

板垣 竜兵本人が俺にここを仕切ることを許可した。

それはとても意味があることだった。

周りの不良共がまたざわめき始める。

俺は息を吸い込んで

 

「聞いた通りだ!今から俺がてめーらを仕切る。俺の目の届く範囲で何かやってみろ!痛い目に合わせてやる。文句がある奴は出てこい。相手になってやる!」

 

俺は大声でそう宣言した。

ちなみに3名ほど文句があり、戦いを挑んできたが一発で黙らせた。

やはりこういった奴らは力でねじ伏せるに限る。

 

 

こうして俺の初めての親不孝通り巡りは終わりを迎えた。

今回のことをきっかけに竜兵とは喧嘩仲間のような関係になることになった。

竜兵の姉妹に合うことにもなるがそれはしばらく後の話である。

 




次回からはちゃんと本編やります。


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12話 百代と一子の勝負①

一応、この回からしばらく原作のルートの一部ネタバレを含みます。


日曜明けの月曜日にいつも通り少し早めに登校し始めているといつもと同じように一子が修行していた。

その様子を遠目から見るといつも通りの風景なのだがいつもと違う感じがした。

なんというか、気迫ややる気が違う。

気になったので近づいて声をかけてみることにする。

 

 

「一子」

 

「あ、林道君」

 

声をかけるといつもと同じように笑顔で駆け寄ってきた。

 

「気のせいかもしれないがいつもより気合いが入っているように見えるが何かあったか?」

 

「分かる?実はね、週末にお姉様と戦えるの。」

 

「百代と?」

 

「そう。お姉様がね、私と正式な勝負してくれるって。」

 

「・・・それは百代から持ち掛けてきたのか?」

 

「そうよ。お爺様立ち合いでやっていただけるの。」

 

本当に嬉しそうに話している。

実際、一子にとっては憧れの姉と戦えるのが嬉しくて興奮しているのだろう。

 

「そうだ。林道君。また私の修業に付き合ってくれない?」

 

「・・・悪いが今日は駄目だ。」

 

「そう・・・ならまた今度しましょう。」

 

「ああ、いずれな・・・。」

 

今日の修業を断った手前、俺はすぐにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

学校に着いた俺は教室に向かわずに屋上に来ていた。

屋上から校庭側のフェンスに向かい、そこから登校してくる生徒たちを見ていた。

目的の人物が登校してくるのを待った。

15分立ったぐらいに目的の人物が校門を通るのを確認することが出来た。

それまで登校してくる生徒を見ていたのがこの学園の生徒は個性的な奴が多いな。

何名か気になる奴がいたがそれはまた別の機会に調べるとしよう。

俺は目的の人物にである百代に気をぶつけた。

ぶつけたといっても威力もない、ただ俺の存在を気づかせるためだけのものだ。

それにあたった百代はこちらを一度確認した。

 

 

それから5分ぐらいしたら百代が屋上に向かっていることを確認できた。

なんか少し気を放出しているし、戦闘モードみたいなのが気になるが。

屋上の扉があき、百代が現れた。

俺の望み通り一人だった。

 

「林道。回りくどく私を呼び出して何の用だ?」

 

「話す前にその微妙に漏れてる気をしまえ。」

 

「ああ、すまない。気をぶつけてきたから私への挑発かと思ってな。」

 

百代は気をコントロールして気をほぼ完璧に抑えて見せた。

 

「お前には聞きたいことがあったからここに呼んだんだ。」

 

「聞きたいこと?」

 

「今週末、一子と試合を行うらしいな。」

 

「なんだ?一子から聞いたのか?」

 

「そうだ。」

 

「あいつも頑張っているようだし、見てやろうと思ってな。」

 

「・・・」

 

俺はまっすぐと百代の目を見た。

それに百代も真剣な顔で応えた。

 

「俺は川神流のことは何も知らない。故に口を出すつもりもない。だが、一つ頼みがある。」

 

「頼み?お前が?」

 

「川神百代と川神一子の勝負を見る許可をくれ。」

 

「悪いがそれは古いシキタリで・・・」

 

やはりそれは出来ないか。

 

「いや、無理をいってすまない。」

 

「いや、待て。お前、私のサポーターにならないか?」

 

「サポーター?」

 

「そうだ。試合を行うものはサポーターを一人連れていくことが出来る。元々私はサポーターを付ける予定はなかったが私を負かしたお前ならサポーターとしても武闘家としても問題ないだろう。」

 

「そのサポーターは流派部外者でもいいものなのか?」

 

「問題ないはずだ。そんなシキタリは聞いたことないからな。」

 

「分かった。お前のサポーターになろう。」

 

「決まりだな。」

 

こうして俺は百代のサポーターとして二人の勝負を見ることが出来るようになった。

一子がサポーターとして誰を連れてくるかが気になったが少し考えたら直江という答えにたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、いつも通り少し早めに登校していた。

そして、いつも通り元気に修行をする一子の姿があった。

昨日と同じように声を掛ける。

 

「一子」

 

「あ、林道君」

 

「百代から聞いた話だと今週末の勝負にはサポーターを一人連れていけるらしいな。」

 

「ええ。そうよ。」

 

「一体、誰を連れていくつもりだ?」

 

「やっぱり、大和かしら?」

 

一応、確認しておこうと思ったがやはり直江だったか。

迷わず出したということはサポーターを連れてこないという選択肢はないみたいだな。

 

「そうだ。林道君。今日は修行に付き合ってくれる?」

 

「それなんだがな、俺はその試合まで修行に付き合うつもりはないんだ。」

 

「え?ど、どうして・・・?」

 

「大した理由じゃないさ。試合まで時間がないんだ。俺との修業は付け焼刃になりかねないと思ったからだ。」

 

「よ、よかったー。私、てっきり林道君に嫌われたのかと思ったわ。」

 

「嫌いならわざわざ声を掛けたりしないさ。」

 

俺の一言で本当に安心した様子だ。

2-Fで一子はマスコット扱いされているのだがその理由が少し分かった気がした。

 

「そうだ。お前にアドバイスをしてやろう。」

 

「本当!」

 

ここから冗談は抜きだ。

なるべく真面目な雰囲気を出す。

 

「1つ、百代との戦いではお前が持てるすべてをもって挑むこと。

 1つ、とにかく全力を出して、悔いを残さないこと。

 1つ、お前が目指すものそれを理解し、どうすればよいか思案を巡らすこと。」

 

真面目な雰囲気を出すのはここまでだな。

少し気を緩める。

 

「とりあえず、この3つだな。」

 

「すべてをもって、悔いの残らないように思案を巡らす・・・。うん。ありがとうね、林道君。」

 

「健闘を祈ってるぞ。」

 

伝えたい事も伝えた俺は一子と別れ、学校へと再び登校し始めた。

そして、

 

「一子の人生の分かれ道か。どちらに転ぶのか見させてもらうぞ。」

 

俺は誰にも聞こえないようにつぶやいた。

 




次回は百代対一子です。


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13話 百代と一子の勝負②

誤字修正してくださった方たちありがとうございます。


百代と一子の試合当日

5月末で梅雨に入る前だということもあって天気は快晴、絶好の試合日和だ。

今、俺は百代のサポーターとして試合前の百代と共に川神院の建物の中にいた。

サポーターといっても川神姉妹の試合を見るだけだし、俺のサポートなど必要ないだろう。

気を使って一子が試合を行う川神院の屋外に到着したようだ。

一緒に来たのは直江だな。

時計を見て、あと少しで試合時間なのを確認する。

 

「百代、そろそろ時間だ。」

 

「・・・分かった。」

 

もうそろそろ時間なのを百代に教える。

いつもの鷹揚とした百代はそこにはいなかった。

その眼は真剣そのままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

試合会場に到着すると気合十分の一子とそのサポーターである直江がいた。

他には川神学園の学長でもある川神院総代と川神学園の教師であり、川神院師範代のルー師範代。

その二人が試合に立ち会っている段階でこの試合が正式なものであることは明確だった。

 

「林道君!?どうしているの?」

 

一子が驚いて俺に訪ねてきた。

直江も驚いている様子だった。

 

「俺は百代のサポーターとしてここにいる。」

 

「姉さんが林道をサポーターにするなんて・・・」

 

「サポーターといっても俺はこの試合を見に来ただけだ。気にするな。」

 

「二人とも準備万端みたいだネ?」

 

時間となり、ルー師範代が確認を取ってきた。

 

「はい。」

 

「・・・ああ。はじめてくれ。」

 

二人ともその確認に答えた。

 

「眼光が半端ない。正直俺は怖い・・・大丈夫かワン子。」

 

「こ、怖くないわ・・・」

 

直江、一子ともに百代の雰囲気に恐怖しているようだ。

今の百代は俺と初めて戦ったときより真剣だ。

恐怖して当然である。

 

「ううん・・・やっぱ怖い、嘘は駄目ね。

 でも、ビビッてたまるもんか!

 気持ちで負けてどうするのっ!!」

 

一子は百代をにらみつけた。

自分の中の恐怖に打ち勝ったようだ。

 

「姉妹の真剣勝負というのも部門の定めよのぅ。

 ではこれより勝負を始める!」

 

二人とも武器を持たずに向かあう中、

川神総代が試合の開始を宣言した。

 

「西方 川神 百代!」

 

「応」

 

「東方 川神 一子!」

 

「はい!」

 

「いざ、尋常に勝負!!!」

 

「いきます!!!」

 

「来い!!!」

 

勝負の合図が終わり、まずは一子から仕掛ける。

まっすぐに突撃し、拳を打ち込んでいく。

その拳の弾幕を

 

「・・・×」

 

百代は一歩も動かずに避けていた。

次に一子は蹴りを百代に繰り出す。

 

「・・・これも×」

 

百代はこれを軽く避け、逆に蹴りを一子にぶつけた。

大きなダメージを受けた一子は体制を立て直し、次はフェイントを混ぜながら攻撃を試みる。

しかし、それも百代に止められる。

 

「・・・動き×」

 

その後、一子は奥義を連続して出すがそれをすべて百代は回避していく。

 

「素手では話にならんな。薙刀を使え、ワン子。」

 

百代は一子に薙刀を使うように指示した。

この試合の意味を理解している俺はその言葉で顔を少しゆがめた。

そんなことに気がつくはずもなく一子は薙刀を構える。

薙刀による乱舞も百代は軽々と避ける。

 

「川神流大車輪!!!」

 

一子が大車輪という技を使い始めた。

おそらく、大技で一矢報いるつもりなのだろう。

だが、その大技も百代に避けられ一子は強烈な反撃を受けた。

 

「それまで!!!

 勝者、百代!!!」

 

ここで川神院総代が試合終了を告げた。

試合は百代の勝利で幕を閉じた。

いや、まだ終わっていないか。

むしろ、ここからが本番だな。

 

「これは・・・勝負だったのか?」

 

直江がそうつぶやいた。

疑問に思うのも無理もない。

百代も総代も師範代も表情を暗くしていたからだ。

それもそのはずこれはただの勝負ではなかったのだ。

 

息を整えた一子は百代にもう一度勝負することを望んだ。

百代はそれを一子の状態を見て無理と判断し、却下した。

そして百代から一子に伝えられたことは2つ

1つは賛辞

一子が強くなったことへの純粋なる賛辞だった。

そして2つ目は・・・

 

一子に武道の才能がないということだった。

 

このまま武道を極めようとしても川神院の師範代にはなれないということだった。

百代だけではない。

川神院総代も同意見だった。

結果、言い渡されたのは別の道を探してはという提案だった。

 

「ちょっと待ってくれ!!

 部外者で悪いが感じた事を発言させてもらう!

 余りに・・・余りに一方的すぎる物言いじゃないか!?」

 

それに意を唱えたのが直江だった。

百代としても一子にこれから敵わない夢を追ってほしくないと思っている。

だが、一子もいきなり才能がないと言われて納得できるわけがなかった。

 

「大和・・・私だって辛いんだぞ・・・

 でも、ない夢を追わせたくないんだ。」

 

「姉さん・・・」

 

「・・・本当!一方的な物言い過ぎる!!」

 

「ワン子・・・」

 

「アタシいきなり才能ないなんて言われても納得できないわ!!」

 

正直、百代の意見も理解できる。

もちろん諦めたくないという一子の気持ちもだ。

このままでは平行線だ。

 

「百代!一子の気持ちも汲んであげよウ。」

 

両者譲らない状況で声を上げたのはルー師範代だった。

ルー師範代は一子にもう一度機会を与えようと提案したのだ。

これに百代は"納得"が必要だと言って了承した。

 

その結果、一子に出された条件は2つ

1つ目は6月末に開かれる川神院主催のアマチュアの武道大会で優勝

2つ目は優勝者の権利として与えられる百代との勝負で1撃当てる

 

そして、それが出来なかったら川神院の師範代の道を諦めること。

一子は大会までの約1ヶ月、川神院を出て甘えを捨てるといって出ていった。

なんでも最初に武器を使わなかったのを甘えと判断したらしい。

 

「俺は、ワン子を応援したいと思います。」

 

直江が百代たちにそう宣言した。

 

「・・・お前ならそういうと思ったよ。」

 

「林道・・・なんでさっきまで黙ってたんだ!」

 

俺がいきなり声を掛けたら直江は怒りを露わにした。

 

「直江、俺は林道流を使うものとして別の流派である川神流に口を出すようなことはしない。」

 

「それでも・・・」

 

「それに俺はこうなるのをある程度予想していたしな。」

 

「!?」

 

「さて、本題だ。百代とルー師範代そして、川神院総代に話がある。」

 

「ほう、このタイミングで話とな?」

 

「もし、一子が川神流師範代を諦める結果になった場合、一子を俺の弟子にならないかと誘うつもりだ。」

 

俺が言った言葉はこの場にいたもの全員をこおらせた。



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14話 因縁からの決闘

今回からしばらくは日常?回になる予定です。


一子と百代の勝負は結果だけで言えば一子の惨敗であった。

その後、一子は百代から出された課題、武道大会の優勝とその後の百代への勝負で一撃与えることを目標に直江がいる島津寮へしばらくの間住み込むにした。

ちなみに風間ファミリーにも師範代を諦めろと言われたこと、

次の大会で百代に出された課題については内緒にしているみたいだ。

修行の様子を少し除いたがルー師範代が一子の修業に付き合うようだ。

俺は一子の修業に関わるつもりもないし、百代の課題をクリアできるかは一子次第ということで武道大会まで様子を見ることにした。

 

 

一子の件は、今できることがないのでさしあたって俺自身の問題を片づけることにしよう。

現在、俺は決闘の真っ最中である。

なんでこんなことに…

原因は今から1時間前の出来事だった。

 

 

 

 

 

 

 

俺はいつもより遅く登校していた。

朝、日課の走り込みをやっている最中に竜兵と出会ってしまったからだ。

勝負しようだのまた廃工場に顔を出せだのうるさかった。

今週の土曜日に相手をしてすると言って何とか別れることが出来た。

その結果、俺はいつもより遅い登校をするはめになったのだ。

だが、それは悪いことばかりではなかった。

途中で風間ファミリーと会って一緒に登校することが出来た。

一子はその場にいなかったがそれ以外は百代も含めいつも通りの雰囲気だった。

風間が自転車でどこかに行って今日は学校に来ないことも含め本当にいつも通りのようだ。

 

「一子はどうした?」

 

「ワン子なら今月末に開かれる武道大会に向けてルー師範代に稽古をつけて貰うために先に学校行ってるよ。」

 

「ワン子のやる気はすごかったぞ。学校以外はすべて修行に当てるみたいだ。」

 

「なるほどな。武道大会、いい結果に終わるといいな。」

 

直江とクリスから一子の状況を聞いて

俺は何気なく百代に顔を向けると一瞬、悲しそうな顔をしたがすぐにいつも通りの表情になった。

 

「お、あそこに美少女発見!」

 

そう言って百代は近くの女子生徒にちょっかいを出しに行った。

 

「言動だけ見ると完全におっさんだな。」

 

「そうだが、モモ先輩のすごいところはあれでちゃんとナンパを成功させてるところだ。」

 

「話しかけられる女子もまんざらではない感じだしね。」

 

島津、師岡の言う通り、ちょっかいを出していた女子をお姫様抱っこしてどこかに連れて行った。

これから学校なんだが、それは大丈夫なのか?

 

「なんで、女のモモ先輩はナンパに成功して、男の俺様は成功しないんだ!」

 

「百代は目鼻立ちしっかりしてて、男勝りの性格でまるで王子様のような感じだが、島津、お前は…言動に問題があるんじゃないか?」

 

「言動だと?俺様は漢らしい言動しかとってねぇ。」

 

「うん。ガクトはそのままでいいと思う。」

 

「あー俺様の魅力が分かるいい女いなねぇかなー」

 

「ガクトさんはステキだと思いますよ。ねぇ、松風」

 

「…ん、ごめん聞いてなかったよ。」

 

「そのストラップの…松風はどういう立ち位置なんだよ。」

 

「オラはごく普通のどこにでもいる付喪神だぜ。」

 

「…」

 

松風で話をしている黛の顔を見たが真顔で松風を演じていた。

こいつ、こんなことして風間ファミリー以外からどう見られているのだろうか。

なんだか、少し心配になってきた。

 

 

 

 

 

学校に着くと黛以外は2-Fの教室に向かった。

ちなみに学校に着いたタイミングで百代が合流した。

先ほど連れ去った女子とは放課後にお茶をする約束をしたらしい。

 

「おい!林道!」

 

あと少しで教室に着くというところで後ろから声を掛けられた。

声のした方に顔を向けると男子生徒が立っていた。

 

「誰だ?」

 

「僕は2-Sの滝川だ。昨日のこと忘れたわけじゃないだろうな!」

 

「林道、昨日何かしたのか?」

 

明らかに滝川は俺に何か言いたげでしかも、怒っているように見えた。

それを見た直江が俺に問いかけてくる。

 

「昨日…?確かにそいつと会ったが怒られるようなことはしてない。」

 

「本当か?よく思い出してみろって。」

 

今度は島津が確認してくる。

 

「本当だ。そいつが不良に金を渡して何かよからぬことを企んでいたから不良を倒して計画を破断させただけだ。」

 

「いや、絶対それじゃん!」

 

俺が事実を言うと師岡がツッコミをかましてきた。

やっていたのが親不孝通りという俺の生活圏だったのが運の尽きだった。

 

「だが、林道は確かに正しいことをやったと思うぞ。」

 

「滝川君って、Sクラスの中でも順位下位だったよね。もしかしてそれでそんなことしようとしたんじゃない?」

 

直江が滝川の順位について指摘をした。

SクラスS落ちというものがあり、順位が下がったりしてSクラスに別の誰かが入った場合、強制的にSクラスを出なければいないのだ。

この制度のせいでSクラスの大半がクラスメートを敵、競争相手と考えている。

そのため、成績下位のものの中には他の奴を蹴落とそうと策を練るものもいるらしい。

 

「うるさい!林道が邪魔をしなければうまくいったんだ。」

 

この反応を見るに直江の言っている通り滝川は他の奴を陥れるつもりだったらしい。

 

「他の奴を陥れる暇があるなら努力をなぜしない?」

 

「努力なんて嫌というほどやった!それでも…変わらなかったんだ!」

 

皆、努力をして必死に高みを目指そうとする。

故にSクラスか…

 

「だが、それでも自分は誰かを陥れるのは間違っていると思うぞ。」

 

「それでもこうするしか方法はないんだ!」

 

クリスの発言により怒りを露わにする。

時に正論は相手の怒りを買うのだ。

 

「僕の計画を無駄にした林道!お前に勝負を挑む。受けないとは言わないよな?」

 

ついにはこの滝川という生徒、俺に勝負を挑んできた。

以前、この学園では決闘という先生立ち合いの試合が認められていると聞いた。

恐らく、それだろうが正直、受けないという選択もありだと考えている。

こんな逆恨みに無理に付き合うことはないんだ。

 

「勿論、受けるに決まってんだろーが。」

 

「…島津?」

 

なぜか、勝負について島津が返事をした。

そういえば、SクラスとFクラスは仲が悪かったっけ。

それでこの挑戦的な勝負の申し出に勝手に答えたのか。

何ともはた迷惑な…。

 

「はー、まぁいいだろう。その勝負受けよう。」

 

溜息を一度はいて俺からも勝負の申し出を受ける旨を伝える。

 

「で?その勝負はいつ行うんだ?」

 

「勿論、今からだ。」

 

「今から…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、俺はSクラスの滝川と決闘を行うことになった。

立ち合いは小島先生がやってくれている。

というか、今は1限目の時間なのだが2-Fを含め、皆窓からこちらを見ている。

授業時間なのにこの学園大丈夫か?

 

「ふん、怖気づいたか?」

 

模造品の槍を構えた滝川が尋ねてくる。

ちなみに俺は何も武器を持たず素手である。

 

「不良を倒した俺がお前程度で怖気づくと思うか?」

 

「それもそうだな。」

 

「それでは両者、準備できたな。」

 

「「はい。」」

 

「では、尋常に始め!」

 

小島先生の試合開始の合図で滝川は俺に向かって攻撃を仕掛けてくる。

一般的に槍と素手では剣術三倍段という言葉がある通り、圧倒的に槍の方が有利である。

だが、滝川の最初の攻撃を避けて俺は問題なく勝てると確信した。

昨日倒した不良よりは強いことは認めるが動きに無駄があり、簡単に避けることが出来る。

滝川はさらに攻撃を続けてくる。

それを避け、槍の刃の部分近くを掴んだ。

 

「くそ、離せ!」

 

俺から槍を放させようと滝川は槍を動かそうと力を加える。

 

「分かった。」

 

それを見て俺は槍から手を放し、一気に滝川と距離を詰める。

滝川はいきなり放されたことにより、態勢を崩す。

距離を詰めた俺は滝川の腹を蹴り、衝撃で後ろにふっ飛ばした。

ふっ飛ばされた滝川は倒れたので、俺は再度距離を詰め、起き上がる前に槍を持っている腕を踏んだ。

 

「こんな状態だ。俺の勝ちでいいな?」

 

「くそっ!」

 

「そこまで。勝者、林道」

 

小島先生の声でこの決闘は俺の勝ちで終わった。

その瞬間、2-Fの奴らが声を上げて騒ぎだした。

逆に2-Sは不快そうな雰囲気を醸し出していた。

そんな中、軍服の女が俺を睨みつけているように感じた。



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15話 軍服の女

ゲームにうつつを抜かしていました・・・


2-Sの滝川との決闘から3日が経った頃、あの日からやけに視線を感じる。

視線の正体は分かっている。

2-Sにいた軍服の女だ。

直江に話を聞いたらクリスの保護者的な存在らしい。

なんで俺がクリスの保護者から監視レベルの視線を向けられなければいけないのか…

クリスにそれとなく聞いても答えは得られなかった。

別にやましいことなどないがずっと監視されるのは嫌なのでそろそろ本人から理由を聞くとしよう。

 

 

 

そう決めた俺は学園の帰り道に近くの山に入った。

この山にはたまに修行に来るため、地形やほとんど人が来ないことは知っている。

ここなら軍服の女・マルギッテ エーベルバッハと問題なく話すことができるはずだ。

 

「おい、いつまでそこに隠れている。いい加減出てきたらどうだ。」

 

俺はエーベルバッハがいる方向を向いてそう言った。

 

「ほう、私がいることに気付いていましたか。」

 

「長時間見られていると嫌でも気付く。それで?俺を監視していた理由を聞かせてもらおうか。」

 

「お前がお嬢様に手を出そうとしているかを見ていたのだ。」

 

お嬢様ってクリスのことだよな

 

「手を出す?俺がクリスを?それはないな。」

 

「お嬢様には魅力がないとでも言いたいのですか?」

 

いきなりエーベルバッハがどこにしまっていたのかトンファーを出して構えた。

脅しのつもりなのだろうか。

 

「魅力がないとは言っていない。今の俺には色恋より修行の方が大事なだけだ。」

 

脅しもどきは全く怖くないがここは無難な返事でごまかすことにした。

 

「まぁいいでしょう。確かにあなたはお嬢様に手を出す素振りなど一切ありませんでしたから。」

 

そういって、エーベルバッハはトンファーをしまった。

 

「なら、もう俺の監視はやめてくれるか?」

 

「監視はやめましょう。ただし、警戒はしておきます。」

 

「警戒?俺のような1学生をなんで?」

 

「お嬢様だけでなく、百代にも勝ったと聞きました。それに数日前の試合の動き、警戒する理由には十分です。」

 

・・・なんでこいつは俺が百代に勝ったことを知っているんだ?

百代たちには箝口令を引いてもらって風間ファミリー以外は知らないはずだ。

・・・・・・クリスか

以前、クリスがエーベルバッハと話している姿を見たが、

エーベルバッハをマルさんと呼んでててかなり心を許していた。

うっかり漏らしてしまってもおかしくない気がする。

 

「一応聞くが俺が百代に勝ったことは誰かに言ったか?」

 

「お嬢様から内緒と言われたので誰にも言っていない。安心しなさい。」

 

「一安心だな。」

 

「なぜ、百代に勝ったことを周知しないのですか?周知すればあなたという存在を知らしめることが出来るのではないですか?」

 

「別に自分の強さを広めるのにもう興味はない。今はやりたいことは別にあるしな。」

 

それに世界最強の名はここに来る前にもう手に入れた。

 

「そうですか。」

 

「!?」

 

エーベルバッハが殺気を急に出してきた。

俺は殺気・・・いや闘気を感じ取り身構えてしまった。

 

「おい、なんのつもりだ?そんなに闘気を出してここで俺とやりあうつもりか?」

 

「川神 百代の代わりに私と戦いなさい。」

 

「学園の奴らは血の気が多いな・・・」

 

「さぁ、私と戦いなさい。」

 

エーベルバッハは久々に暴れたい、そういった感じに見える。

少しぐらいは相手になってやるか。

 

「逃げてつけられるのも面倒だ。受けてやろう。」

 

 

 

俺とエーベルバッハの戦いが始まった。

川神に来てからの戦いは相手が最初に仕掛けてきていた。

今回は俺から攻撃を仕掛けに行くとしよう。

 

俺はエーベルバッハに向かって走り、攻撃を仕掛ける。

拳と蹴りの連撃を出していくが、防がれている。

俺は徐々に連撃のスピードを上げていく。

相手が防ぎきれそうになくなってきたとき、反撃をしようと俺の腹部めがけ蹴りを入れようとしてきた。

俺は蹴りが入る前に後ろに飛んで避けた。

 

「やるな。」

 

「あなたこそさすが川神 百代に勝っただけのことはあります。」

 

軍服を着ているということはエーベルバッハは軍人なのだろう

さすが軍人という強さであった。

だが、トンファーを出していないあたりまだエーベルバッハは本気でないのだろう

なんで百代といい本気を出したがらないのだろうか。

・・・まぁ、俺も人のことは言えないのだが。

 

 

再度、エーベルバッハに向かって走り、攻撃を仕掛けようとする。

 

「先ほどと同じ戦法が私に通用すると思っているのですか!」

 

手を伸ばせばエーベルバッハに届くであろう距離まで行ったときに思い切り横に飛んだ。

横に飛んで着地のタイミングで足に気を巡らせ、そのままエーベルバッハに向かって飛び、蹴りを食らわせた。

足に気を巡らせたおかげで飛んだあとのスピードは普通より早くすることが出来た。

蹴りをくらったエーベルバッハはガードは間に合ったが俺とは反対の方に飛んでいく。

 

「川神 百代に勝っただけはありますね。」

 

吹っ飛んだ先でエーベルバッハは体制を立て直し、こちらを向いてそういった。

 

「一応、言っておくが百代に勝ったのはあいつが本気を出していなかったからだ。今のままでは全力を出した百代に俺はきっと勝てないだろう。」

 

百代のポテンシャルは計り知れないというのが俺の考えだ。

あいつが勝負というものに真剣に向かいあえば川神に来る前の俺以上になれるかもしれない。

 

「本気を出していないとはいえ、彼女に勝つことが出来る。それが問題だと知りなさい。」

 

言い終えてエーベルバッハは俺に近づき、攻撃を仕掛けてくる。

その攻撃を俺は防いでいく。

攻撃の連撃にあまり隙がない。

さすが軍人というところか。

隙が無いので無理やり攻撃と攻撃の間で反撃を行う。

その反撃をくらい、エーベルバッハは少し後ろに退いた

 

「くっ!」

 

「・・・一応聞くがまだ続けるか?これは正式な勝負ではない。これ以上続けても結果は見えていると思うが。」

 

「・・・あまり怪我をするとお嬢様が心配してしまいますね。」

 

これは続けないということでいいんだろうな。

俺の最初の目的は鬱憤がたまってそうなこいつの相手になること。

目的は達成したといえるだろう。

 

「では、続きはまたやりましょう。」

 

そういってエーベルバッハは俺から離れていった。

続きか・・・

近いうちにその続きを行うことになりそうだ

そう思って俺もこの場を後にした。

 




マルさんとの戦いは別のところでちゃんとやりたいのでこんな終わり方になってしまった。


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16話 板垣三姉妹と釈迦堂

週末、俺は竜兵の相手をするということで竜兵の家に向かっていた。

相手をするだけならいつも通り親不孝通りでいいのだが、なんでも俺に家族を紹介したいらしい。

俺はいつから家族を紹介される程こいつと仲良くなったのだろうか。

 

「なぁ、竜兵。わざわざお前の家に行く必要なんてあるのか?別に俺はお前の家族なんかに興味はないんだが。」

 

「ちょっと試したいことがあるんだ。いいから来てくれ。」

 

試したい事とは一体何だろうか?

時期に分かるだろうと思い俺は考えることをやめた。

 

 

 

 

 

しばらくすると1軒の家が見えてきた。

あれが竜兵の家だろう。

気を張り巡らせてみると家の中には3人いるみたいだな。

もっとも3人はちょうど外に出るところだったらしく俺と竜兵と顔を合わせることになったのだが。

 

「竜、誰だいそいつ?」

 

「前に話しただろ?強いやつがいるって。」

 

「ああ、そんなこと言ってたね。」

 

目つきの鋭い女が竜兵と話し始めた。

他二人に目をやると身長が高いのんびりした女と好戦的そうな小さな女の子だった。

この3人の第一印象は色々ありすぎて最終的に竜兵とあんまり似ていないという結論に落ち着いた。

 

「今日は稽古だったか?」

 

「そうだよ~~」

 

「そいつはちょうどいい。春風、俺たちもついていくぞ。」

 

「それはいいが、全く状況が読み込めていない。そこの3人についてから教えてくれ。」

 

「まぁ、竜が気に入った奴だ。自己紹介ぐらいしてやるよ。」

 

目つきの鋭い女がそういった。

なんか少し上から言ってくるような気がしたが、俺より年上なのだろう気にしないでおこう。

 

「長女の板垣 亜巳」

 

「次女の板垣 辰子だよー。竜兵とは双子だよ。」

 

「ウチは板垣 天使(えんじぇる)

 

目つきの鋭い人が長女でのんびりしてる人が次女、小さいのが三女か。

最後だけ名前の付け方がおかしいとは思うが人の名前をとやかくいうのは好きではない。

触れずにいよう。

ていうか竜兵は双子だったのか。

色々と知らなかった事実が多すぎる。

 

「俺は林道 春風だ。」

 

「春風君か~なんか心地よさそうな名前だね~」

 

「たつ姉、そいつは春風というより嵐だぜ。」

 

「・・・」

 

ドスッ

 

「痛ッ!」

 

辰子が名前についてほめてくれたがそれを竜兵が訂正した

なんとなく気に障ったので小突いてやった。

 

「で、先ほど竜兵が言っていた稽古とは?」

 

「あ!いけね!早くいかねーと、師匠が待ってんだ!」

 

エンジェルがそう言って走り出していった。

師匠か。

こいつら誰かに稽古をつけて貰ってるみたいだな。

最初、竜兵は忘れていたようだし竜兵は教わってないとみて間違いないだろう。

 

「そういうことだ。竜と春風、ついてくるなら勝手に来な。」

 

俺は小突かれダメージを負った竜兵を引きづって、エンジェルを追いかけ始めた。

 

 

 

 

 

エンジェルを追いかけた結果、空き地に着いた。

そこには中年の男性がいたが気でわかる。

こいつは強いと。

こんなやつが教えているんだ。

板垣三姉妹は強いのが伺える。

 

「痛ぇよ!春風!いい加減放しやがれ!」

 

ずっと引きづっていた竜兵がいよいよ怒ってきた。

 

「ハハッ。竜兵。なんだそりゃぁ。新しい遊びか?」

 

「そんなわけあるか!」

 

「ヒヒ。で?竜兵をおもちゃにしているお前はなにもんだ?」

 

「俺は林道 春風。あんたは?」

 

「ヒヒ。俺は釈迦堂 刑部だ。そんな殺気立つなよ。」

 

殺気が漏れていたか。

この釈迦堂って男からは嫌な感じがして殺気を出してしまった。

 

「林道ねぇ…お前さんもしかして一子の言ってた林道か?」

 

「一子を知っているのか?あんた。」

 

「そりゃぁ、俺は元・川神院師範代だからな。」

 

「元?」

 

「色々あって破門されてな。」

 

破門…

これがこの男から感じた嫌な感じなのだろうか。

 

「ルーから聞いて会いに行ったが、一子も才能がないと言われたのによくやるよな。」

 

「…ああ、本当にそう思うよ。」

 

「なー師匠!早く稽古つけてくれよ!」

 

俺と釈迦堂が話しているのに痺れを切らしたエンジェルが割って入ってきた。

 

「あーそうだなぁ。」

 

エンジェルへの返事をした後、釈迦堂が俺を見てきた。

 

「なぁ。林道。一子から聞いたがお前さん、かなり強いらしいな。どうだ?手伝ってくれねーか?」

 

「手伝う?」

 

「実践稽古ってやつだ。こいつらは俺が素質を見込んで稽古をつけてるんだがそこまで実践をつんでなくてな。」

 

元とはいえ、川神院の師範代が素質を見込み、稽古をつけてもらっている奴らか…

興味があるな。

 

「竜兵、お前が試したい事っていうのはお前の姉妹と俺を戦わせることか?」

 

「ああ、そうだぜ。」

 

やはりそうだったか。

 

「釈迦堂、その提案受けよう。」

 

「ヒヒ。そうこないとねぇ。という訳だ。お前ら今日の稽古は一対一の実践稽古だ。」

 

「マジか!やりー」

 

「了解した。」

 

「ZZz…」

 

なんか一人寝てるんだが。

 

「で?最初は誰の相手をすればいいんだ?」

 

「そうだな。まずは亜巳からだ。」

 

最初は長女か。

稽古とはいえ、俺は気を引き締めた。

 

 

 




次は三姉妹一人一人の絡みが書ければいいなと思っています。


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17話 三姉妹との実戦稽古

書こう書こうと思っていたらいつの間にかこんなに時間が空いてしまった。
本当に申し訳ない


板垣三姉妹との実戦形式の稽古を行うことになり、

まずは板垣 亜巳から相手をすることになった。

今思うとこの姉妹の実力はどの程度かは分からないが3人まとめて相手でも良かった気がした。

 

「手加減はしないよ。」

 

亜巳は棒を持ち構えた。

 

「棒術か。」

 

「ヒヒ。亜巳には棒術の素養があるからな。」

 

「素養か。ならその実力見せてもらおうか。」

 

俺は亜巳の方を見て構えた。

 

「言われなくても見せてやるさ!」

 

亜巳は俺に向かって前に出て、棒術の間合いに入ると棒を俺に向かい連続で突く。

それを俺は避けて反撃のタイミングを見る。

 

「姉ちゃん。そんな奴やっちまえー」

 

それを見ていた外野の三女、エンジェルが俺が押されているように見えたのだろう

野次を飛ばしている。

 

それにしても、この攻撃まだ隙はあるが大分洗礼された動きだな。

以前戦った、滝川も同じ長物の槍を使用していたがその練度は雲泥の差だ。

それに連撃も衰えなく続いている。

まだ数十秒の時間だが相当の鍛錬を行ってきたことが分かる。

 

「どうした?あたしの攻撃を避けるだけで精一杯かい?」

 

「…すまん。せっかくだからどんな攻撃をするか見たくてな。」

 

「なめるんじゃないよ!」

 

今の俺の発言が亜巳の気に触れたらしい。

攻撃がより激しくなる。

そろそろ反撃するか。

 

亜巳の突きは確かに早いが

突いた後、もう一度突くために棒を引く速さが少し遅い。

だから俺は棒を引くタイミングに一気に詰める。

亜巳は詰めた俺に突きを決めようとするがそれも避け、俺は攻撃を仕掛ける。

 

「林道流 波裏掌底」

 

掌底をくらわし、仰け反ったのを見て俺は気をまとわせた手で棒を持っている手にチョップする。

チョップを食らった亜巳は棒を落とした。

 

「そこまでだ!」

 

その瞬間、釈迦堂の稽古終了の声を上げた。

 

「あたいはまだやれる。」

 

「お前じゃそいつに勝てないのは分かったろ?それにこれは実践稽古だからな。これで終わりだ。」

 

それに亜巳は反抗したが釈迦堂はそれを聞いても終了の意思は変わらなかった。

 

「で?次はどっちだ?」

 

俺はそのやり取りを無視して次の相手を聞いた。

 

「辰子、次はお前行け。」

 

「はーい」

 

いつの間にか起きていた辰子が次の相手らしい。

俺は構えた。

 

「それじゃあ、行くよー」

 

辰子は両手を挙げてこちらに突っ込んできた。

…隙だらけというか直進的で早くもない避けるのは簡単だ。

 

「…」

 

罠かと思ったが近づいてきたところで体を横に避け、足を出して辰子を転ばせようとした。

 

「わっ!?」

 

まさか成功するとは思っていなかったが辰子は転んでしまった。

 

「痛いよー」

 

なんだろうか。

実戦形式として行っているのに俺に申し訳なさが出てきた。

 

「まぁ、お前はそうなっちまうよな。」

 

釈迦堂はこの結果を予想していたようでそのまま俺と辰子の実践形式の稽古は終わった。

 

「大丈夫か?」

 

俺はそのまま倒れている辰子に手を差し出した。

その手を辰子は掴み起き上がる。

 

「ありがとー。春風君優しいねー。」

 

「…普通の対応だと思うが。」

 

「どうだ?林道、辰子と戦ってみて。」

 

「あれは戦いにすらなっていなかったと思うが、そうだな…

 本気の辰子と戦ってみたいとは思った。」

 

「ほう。」

 

初めて三姉妹を見た時、気の流れでは辰子の力が高いのは確かなのにさっきの結果だ。

恐らく、辰子が本気で戦うのは何かきっかけのようなものが必要なのだろう。

 

「なー師匠、次はあたしだろ?早く始めさせてくれよ。」

 

姉二人の戦いを見ていたエンジェルが戦いたいと駄々をこね始めた。

 

「そうだな。林道、準備はいいか?」

 

「ああ、いつでも行ける。」

 

「なら、天。初めていいぞ。」

 

「あいよっ!」

 

釈迦堂からの許可が出てエンジェルがゴルフクラブを持った。

 

「ゴルフクラブか。確かに武器として使っても威力的に問題ないな。」

 

「へっ。じゃあ、行くぜ。」

 

ゴルフクラブを俺めがけて振り回す。

早さもあるが、動きが雑だ。

精錬された動きとは少し遠い。

 

「くっそーなんで当たらないんだよ。」

 

エンジェルが当たらないことに苛立ちを見せ、さらに大振りになる。

振り回すゴルフクラブの間をくぐる。

 

「林道流 波裏掌底」

 

亜巳の時と同様に掌底をくらわす。

 

「そこまでだ!」

 

また、釈迦堂から終了を告げられる。

 

「師匠、あたしはまだやれる!」

 

「そうだろうけど、今のお前が何度やっても林道には勝てねーよ。この実践稽古はお前達に何が足りないかを分からせるもんだからな。」

 

「足りないものを分からせるってなんだよ!」

 

「亜巳は棒の使い方がまだ甘い。天は攻撃が雑ってことだよ。」

 

…ここからは師匠からのダメ出しってところか。

俺は辰子を除く、三姉妹の実力を見ることが出来て満足できたし帰っても問題なさそうだな。

 

「釈迦堂、実践稽古も終わったし俺は帰るが問題ないか?」

 

「ああ。問題ないぜ。あんがとな。」

 

「いいさ。あんたに1つ貸しができたと思えば。」

 

「ヒヒッ、俺みてーなやつに貸し作ってもいいことなんてないぜ。」

 

正直、釈迦堂と知り合えたこと自体が今日一番の収穫だろう。

 

「おい、林道!今度はあたしが勝ってやる!」

 

エンジェルが俺に言ってきた。

 

「楽しみにしている。」

 

そういって、俺はその場を立ち去ろうとした。

 

「竜兵」

 

「あん。なんだよ。」

 

ドスッ

 

「痛っ!なにすんだよ!」

 

「お前ももう少し強くなる努力ぐらいしろ!」

 

妹のエンジェルが俺に勝つとか言っているのに竜兵の現状を見て、少しイラっときたので殴ってからこの場を去った。

 




次は一子の武道大会の予定です。


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