人形達を守るモノ (NTK)
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キャラ紹介
人物資料: DG小隊第一部隊


以前より読んでいる方はまたかと思いますが彼らのCVなどを詳しく載せてます。
新しくこの話を読む方は最新話までのネタバレを含むのでご注意を。

これに伴いCode-1の紹介欄を一部変更します。


バレット(隊長)

イメージCV:櫻井孝宏

 

ASST対応銃:バレットM107

身長: 186cm

兄弟及び姉妹: 姉にM82A1、妹にXM109ペイロード(oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』より)

 

容姿: やや短めの黒髪で瞳はブラウン。

服装はM82A1の上着を男物にし、服の裾をカットしたもの。下は黒のズボン。

 

性格など: ほぼ全員に言えることだが仲間想いで余程のことでない限り見捨てたりはしない。その分敵には容赦はせず、場合によってはエグめの拷問も行う。

作戦中のイレギュラーには殆ど冷静に対応できるが日常のイレギュラーには狼狽る事もある。DSR-50のアスターと結婚しており日常のイレギュラーはだいたい彼女由来。

 

一時は妹のペイロードをシスコンとも言えるほど気にかけていたが、彼女の成長とともにそれは無くなっていった。ただし彼女に何かあった場合は別。

また、初恋の相手が姉になったり、ドリーマーにストーキングされたりとなにかと女運がアスターと出会うまではなかった。

 

16Lab製で愛銃であるM107を立ったまま連射し当てられるほどの反動制御と射撃の正確さをもっておりドリーマーに狙われたのもそのためである。

 

スミス(副隊長)

イメージCV:三木眞一郎

 

ASST対応銃: S&W M500(二丁持ち)

身長: 185cm

兄弟及び姉妹: 無し

 

容姿: 黒みがかった茶髪でショートヘア。瞳は黒。

服装は薄めの茶色い革ジャンに紺色のズボン。

 

性格など: 陽気で社交的。色んな人形達と交流しているがそれが仇になりかけたこともある。愛銃の射程距離が短いこともあり積極的に前に出て戦っている。一応HG人形なので夜目が効くが、今のところそれの活躍の出番なし。

 

EA小隊のバルカン(oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』より)と交際中。お互い任務で会えない事が多いが会える時は会っていちゃついたり存分に甘やかしたりしてる。また彼女の心が不安定な時はメンタルケアに真っ先に向かったりと恋人と同時に理解者となっている。

 

バレットと同じく16Lab製人形であり愛銃を二丁拳銃で連射できるまでの性能はある。

 

レスト

イメージCV: 内山昴輝

 

ASST対応銃: MP5K(二丁持ち)

身長: 170cm

兄弟及び姉妹: 姉にMP5、妹にMP5F(ガンアーク弐式様作『MALE DOLLS外伝集』より)、民生時代の弟にルーエ(故人)

 

容姿: 灰色のミディアムヘアで赤い瞳。

服装は水色のパーカーに白いズボン。左目の下に涙のタトゥーがあったがある時期を境に消した。

 

性格など: 優しく正義感が強め。元々は男娼用に違法製造された人形で本来の名前は『No.37 ミーナ』。彼の性癖自体は普通であること、また働かされていた娼館がレ○ププレイ専門というのもありバレットとスミスに救出されるまでの間、かなりの屈辱と苦痛を味わった。当然ながらその過去に触れることや昔の名前で呼ぶ事は厳禁であり、もしそうした場合、彼の怒りを買う事となる。

 

またその過去ゆえにそういった犯罪などにはかなりの嫌悪感を示している。

初めは救出活動より自身を貪った連中への復讐が先立っており近寄りがたい雰囲気を持っていたが後述するノアとの出会いにより、性格が丸くなった。

 

自身を救い、新たな名前を与えて迎え入れたバレットには感謝と敬意を持っている。また同じく自身を救ったスミスは恩人であることに変わりないがどちらかと言えば友人のような感情を抱いている。

 

ノアと長い交際の果てに結婚。Code-78で彼女が自身の子を宿し父親となるため、彼女と産まれてくる子供のためにより強い使命感で任務を行なっている。

 

ウェイター

イメージCV:浪川大輔

 

ASST対応銃: SCAR-H(Mk17)

身長: 175cm

兄弟及び姉妹: 姉にFALとFNC、兄にリー(Mk16)(ガンアーク弐式様作『MALE DOLLS外伝集』より)また、姪にソフィア(ムメイ様作『カフェD08にようこそ!』より)

容姿:黒髪のオールバックに執事服。また、右目に金縁のモノクルをしている。

 

性格など: 執事長を務めていたこともあり周りの気配りがうまい。第二世代人形の初期の方に生産された人形ではあるが入隊後は一部ペルシカのメンテナンスにより性能は向上している。

 

民生時代、自身がメンテナンスのため屋敷を離れてる間に蝶事件後に活発化した反人形派たちに務めていた屋敷を襲撃され、偶然逃走できた同僚人形一人と恋人であったフィオナを除き屋敷の人間及び人形は全滅させられた。しかもフィオナは昏睡状態でいつ目覚めるかわからない状態にあり、それをきっかけに入隊。その後、治療の結果フィオナは目覚め、のちにめでたく結婚した。

 

ノア

ASST対応銃: 9A-91

 

他の基地の9A-91との相違点は白い膝下までの長さのスカートを履いてる点。そのためか、鉄血からは『スカート付き』の二つ名(?)で知られている。

 

蝶事件後、鉄血の襲撃で元々所属してた基地が壊滅、放浪中に盗賊に襲われたところをレストに助けられる。それをきっかけに彼に惚れる形で入隊。彼の過去を知ったうえで想いを告げ、付き合うことに。レストの事が大好きでオフの日はよく彼に甘えている。

 

時々レストに助けられた人形が彼に擦り寄ってきても自身がそうやって惚れた身なので特に目くじらを立てたりはしないし彼もそれは弁えている。が、あとでたっぷり彼に甘えるので少しは妬いている。

レストと結婚後、Code-78で彼との子を身篭り戦線を引いている。



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人物資料: 復活者(リバイバー)

リバイバーについての詳しい資料です。
今後の参考にどうぞ。


元鉄血ハイエンドモデル(?)

 

イメージCV: 諏訪部順一

身長: 190cm

容姿: 銀髪で青い目。センサーを兼ねた水色のバイザーを基本付けている。入隊当初は黒のジャンパーと同じく黒のアンダーウェアに黒いズボン。後述するアウェイクへ改装後はアンダーウェアを除いて白に近い灰色に色を変えた。

 

武装:

入隊当初(ルイン装備基準)

 

V.S.L.C×2

F.E.F.G 8×2基

V.S.L.C発振型レーザーブレード×2(改修後)

 

通常は各武装一つ(セット)のみだが、戦況次第で二セットのルイン装備となる。改修後は飛行も可能となった。

 

リバイバー・アウェイク(全面改修)

 

小型改良V.S.L.C×2

V.S.L.C下部レールガン×2

改良型F.E.F.G 8×2基

V.S.L.C発振型レーザーブレード×2

コンピュータウイルス生成ユニット

追加装甲(オプション)

 

特殊機能 コーラップス・逆コーラップス技術 それを応用した電力生成 短距離テレポート

 

性格及び経歴: 元々は蠱毒に参加し、男性型で最後まで生き残ったAIだが途中でウロボロスに漁夫の利をされ死亡。その後、バレットを鹵獲してそれを元に男性型ハイエンドを造るプランの予備プランで蘇生される。(詳しくは本編)

 

高火力に高い防御力を誇る電磁フィールドを用いて、大規模基地の殲滅及びグリフィンに寝返ったハイエンドの粛清役として造られたが、蠱毒で敗北した身であることと、蠱毒勝者のウロボロスの行動が原因でアルケミストとデストロイヤーを除いた身内から冷遇され、嫌気がさして脱走……なのだが実際は蠱毒参加時点で鉄血を見限っており、初めから脱走する気でおり前述の理由は本来の理由を隠すための真実を織り交ぜた嘘。

 

入隊当初は警戒されたものの、非常に協力的な態度で任務を遂行したり、他の部隊を守ったりした結果、大幅に強化されることとなった。本人としても思った以上にグリフィンでの居心地が良く、それに報いるように協力した結果である。

 

独特の話術や飄々とした態度を取り、掴みどころのないように見えるが実際はフレンドリーであり仲間思いでもある。口調などは蠱毒参加時代に相手に隙を見せないための癖。

 

蠱毒時代に自身を追い詰めたマーダーとナイトメア(oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』より)に若干トラウマを持ってるが、その実力は認めており、今はそれほど気にしてない。また、エリザにそっくりなキャロル(焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』より)と会った時はエリザが直接自分を始末しに来たと勘違いしてガチでビビっていた。

 

頭が切れる方であり、自身の武器の力に頼らず、幾つも策や罠を仕掛けたり、相手の動きをうまく誘導したりと策士めいた働きを見せている。その場その場で悪ノリや煽り、意趣返しをしたりすることもしばしば。

 

また、その能力の高さからDG小隊じゃ対処が難しい敵の相手をするが、相手や状況が悪く、結構な頻度で重症になっているばかりか、やっと倒した敵が蘇生させられたりと何かと割りを食っている。

現在、アーキテクトのグリンダと付き合っている。

最近では自身の出来ることについて模索しており、今挑戦してるのはコーラップス・逆コーラップス技術を応用した声帯パーツの再構成による声帯模写。

 

異様なまでの成長を見せており、本当に鉄血なのかと疑問が浮かんでいたが…

 

 

 

 

 

 

 

 

その正体はパラデウスが開発したAIを偶発的に鉄血が入手したもの。

本人は本来の出身が鉄血でないことは知ってるが、自身のルーツについて現在はわかっていない。また、AIの造り方は『まともではない』模様…

 

 

 

 

《おまけ》

 

第一部隊+リバイバーのアルコール耐性

 

ノア>ロシア銃人形の壁>バレット≧スミス>リバイバー>ウェイター>レスト

 

レストのアルコール耐性が銃の出身の割に低いのは違法製造された存在というのもあるが、一番の理由は

『泥酔レ○ププレイが出来るようにワザとアルコール耐性を下げて造られている為』である。故に本人はあまり酒にいい思い出は無いが、ノアや仲間と呑むことで良い思い出に変えていこうと少しずつだが努力している。ちなみに耐性レベルとしては416よりはマシ程度。なのでペルシカに頼んで少しずつ耐性を上げて貰っている。




おまけは本編で語るほどのものでなかったので載せた感じです。
こちらも参考程度にどうぞ。


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本編
Code-1 DG小隊


一年近く連載止めてるのに新作を書いちゃいました。
どうしてもドルフロ 作品を書きたかったので後悔はしてません。
では本編どうぞ。


──とある地区

 

「…全員配置についたか?」

 

少し小高い丘の茂みの中で、一人の青年が廃墟を見据えながら通信機で仲間の配置を確認する。

 

「こちら『スミス』、配置についたぜ〜」

 

「『レスト』も同じく、配置完了」

 

「『ウェイター』配置完了です」

 

「了解。では改めて言うが今回の任務は盗賊達に捕らえられた戦術人形、M1ガーランド、スペクトラM4、StG44の救出だ。そして盗賊達だが、リーダーと他二、三人を確保すればあとは全員殺していいそうだ。と言うより殺せ」

 

事の始まりは今から4時間程前、輸送車が盗賊に襲撃され運転手は死亡、護衛任務に就いてた三名が拉致されるという事態が発生した。

彼女達の指揮官はすぐに救出しようと試みたが、最悪な事に鉄血の部隊が襲撃、交戦となり救出したくとも出来ない状況となった。そこで特殊部隊である彼らに彼らに白羽の矢が立てられたのである。

すぐに彼らは盗賊の移動ルートと拠点を特定、そして現在に至るわけである。

 

「盗賊どもを皆殺しにしない理由は?」

 

「どうも奴らは時々戦術人形を拉致しては娼館に売っ払ってるらしい。売り渡し先を吐かせるためにも何人か生け捕る必要がある」

 

青年の返答にレストと名乗った青年はギリ、と歯軋りをし盗賊達への嫌悪感を露わにした。

 

「……屑どもめ…!わかった、ならさっさと始めよう」

 

「ああ、これから俺が正面の見張りを狙撃するからスミスとレストは狙撃後すぐに突入、ウェイターは裏から突入しろ」

 

「「「了解」」」

 

三人の返答を聞き、青年は自身の愛銃であるバレットM107を構える。対物ライフルであるこの銃は盗賊達にとっては正直威力過剰であるが、これの方が使い慣れている以上仕方ないことである。

 

──それこそ()()()()()()()()扱い慣れていた。

 

スコープを覗き、先程言ったように正面入り口の見張りに狙いをつけようとするが、その途中で彼はあるものを見つけた。

廃墟の二階部分、割れた窓や崩れた壁の隙間から見えたのは先ほどの三名が縛られている様だった。

その表情は酷く怯え、視線の先を見ると盗賊達とおぼしき男が十数名、下卑た表情を浮かべて彼女達に近づいていた。内何人かがベルトに手を掛けていることから何をしようとしているかは彼の目には明らかだった。

 

「─ッ!予定変更!奴ら、()()するつもりだ!」

 

「何ィ!?」

 

「俺が二階の奴らを撃つ!見張り二人はお前達が殺って突入しろ!」

 

「わかった!いくぞレスト!」

 

「ああ…奴らに地獄を見せてやる…!」

 

すぐさま彼は照準を二階にいるゲス野郎の一人の頭に合わせた。

 

「カウント3秒前!2、1──発射(ファイヤ)!」

 

────

 

M1ガーランドはこれから盗賊達の欲望のはけ口になる事に対して怯えていた。

すでに武器は没収され、縛られてるこの状態では成す術もない。縛られていなければ殴り殺す事も可能ではあるが、この数の差、しかも銃を持ってる相手では得策ではない。

他の二人も同様で、三人で身を寄せ合って震える事しか出来ないが、盗賊達の欲を駆り立てるだけであった。

 

(指揮官…!誰か、誰か助けて……!)

 

そう思っていた時だった。銃声が聞こえたかと思うと彼女達から見て一番左にいた盗賊の一人の頭が突如として弾け飛んだ。

 

「なっ何だ!?」

 

盗賊の頭領が慌てるが二射、三射と銃声が響き渡り、その度に盗賊の頭が弾け飛んでいった。

そこまで来てようやく彼らは狙撃されてる事に気がつき、窓から離れるが今度は下から銃声と怒号が響き、盗賊達は突然の襲撃にパニックに陥っていた。

 

「ね、ねぇ…これって助けが来たって事なの?」

 

「わからないわ。でも、そうだと信じましょう…」

 

スペクトラの問いにそう答えるガーランドだったが、いくつかの疑問があった。

 

(さっきの狙撃…威力からしてバレットM82系列だと思うけど、そんな戦術人形が配備された情報は無いし、人間だとしてもあんなに連射して正確にヘッドショットする人間なんているのかしら…?)

 

──

 

狙撃を確認したレストとスミスは見張りを撃ち倒して中に突入した。

 

「スミス!俺とウェイターで一階の奴らを相手するから二階を頼む!」

 

「了解!」

 

スミスが階段へ向かっている間、レストは両手にそれぞれ持ったサブマシンガン──MP5Kを盗賊達に乱射した。もちろんただでやられる盗賊達ではなく、反撃を行うがレストは俊敏な動きでそれらを躱し、返り討ちにする。

その動きはあまりに"人間離れ"していた。

とはいえ弾丸は無限に出る訳では無く、やがて弾切れとなる。その隙をついこうと盗賊が物陰から出てくるが、すぐに眉間を撃たれて死体の仲間入りを果たした。

 

「ナイスタイミングだ、ウェイター」

 

マガジンを交換しながら、レストは後ろでSCAR-Hを構え、モノクルをかけている青年、ウェイターに声をかけるが当のウェイターは呆れ顔で

 

「…レスト、あなたわざと彼らの前で弾切れにさせましたね?私が遅れたらどうするつもりですか?」

 

「お前なら間に合うってわかってたしな。間に合わなかったとしてもあれくらい避けれる」

 

「信頼し過ぎるのも考えものですが?」

 

「わかってるよ…にしても、情報を吐かせる為とは言え、こんな屑を生かしとくなんてな…」

 

床で呻いている盗賊二人を見ながらレストはそう吐き捨てる。そのうちの一人がレストらを見てこう言った。

 

「てめぇのその身のこなし方…それにそいつの格好…!まさかお前ら…せ「あ、そうそう」?」

 

「盗賊は私が先程二人ほど捕まえたので、そいつらは殺していいですよ」

 

「!?」

 

「手際がいいなウェイター。セレクターは…セミオートでいいか」

 

「ま、待っ…」

 

パンパン、と乾いた音が響くなか、ウェイターは階段を見上げていた。

 

「あとは二階だけですか…」

 

そう呟くウェイターが身に纏っているのは、この場所には似つかわしく無い()()()だった。

 

────

 

「お頭、早く逃げ…がッ!?」

 

「1、2の…10人か。で?お頭ってのはお前か?」

 

「くっ……ん?」

 

二階に侵入してきたスミスに歯噛みする盗賊の頭領だったがすぐに起死回生のチャンスがあると確信した。というのも、目の前の彼が持つ銃を見てそう思ったのだった。

 

S(スミス)&W(ウェッソン)M500──世界最強の拳銃として名高い銃だが、その反動の大きさと装填数5発という少なさから実戦向きでは無いものをもっている彼が自分らに敵うはずが無いと、盗賊達は思っていた。

さらに言えば彼はこちらを見ながら窓へ移動していたため、先程のスナイパーから狙撃される心配はほぼ無くなった。

他に何人襲撃者がいるかわからないが、目の前の彼を倒せば流れは変えられる、そう考え頭領はすぐ撃てるよう部下に目配せした。

 

「確かに俺が頭領だが、俺をどうするつもりだ?」

 

「あんたは捕まえる、聞きたいことがあるからな。他は悪いが死んでもらう。どうせ下の二人が何人か拘束してるだろ〜し」

 

「(下には二人いるのか…)そうかい…だが、死ぬのはてめぇの方だ!」

 

そう言うやいなや、盗賊達は手にした銃器でスミスを撃ち抜こうとするがすぐにスミスは左のホルスターから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。放たれた弾丸は命中し、盗賊二人は身体に大穴を開けられ倒れ込んだ。

 

「なッ…!?」

 

盗賊達が呆気に取られている隙をつき、スミスはそのまま銃を()()し、やがて全弾撃ち切る頃には頭領以外の全員が死亡していた。

 

「で?誰が死ぬって?……銃を捨てな」

 

威圧を込めて言ったスミスの一言に、頭領はおとなしく従い、銃を捨てた。

そして、先程の芸当から目の前の彼、もとい彼らの正体を把握した。

 

「てめぇ…いや、てめぇらは……

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()だな…!」

 

ピンポーン♪、とスミスは人差し指を立てた。

 

「その通り、俺は16Lab製男性型戦術人形・S&WM500、通称《スミス》。ちなみにさっきお前らを狙撃してたのは同じく16Lab製男性型戦術人形・バレットM107、通称《バレット》。ちなみに下の二人も出身は違うが男性型戦術人形だ。さて、抵抗されても面倒だし、眠ってもらうよ」

 

スミスは銃のグリップで頭領を殴り倒すと、ガーランド達の拘束を解く。

 

「君達、大丈夫かい?」

 

「え、えぇ…」

 

「なら良かった。あー、こちらスミス。盗賊の頭領を確保。救出対象の三名も無事だ」

 

「こちらバレット。了承した。迎えを呼ぶから全員その場で待機。俺もそちらに向かう」

 

「りょーかいっと。さてと…「あ、あの!」ん?何か用?」

 

「最近グリフィンで盗賊の殲滅や不当に扱われてる人形の救出をメインにしてる部隊がいるって噂になってるのですが、あなた方がその部隊ですか?」

 

ガーランドの質問にスミスは少し間を開けた後、笑って答えた。

 

「その通り。俺たちはD(Doll's)G(Guardian)小隊。人形達を守る人形の部隊だ」

 

 




簡易紹介

DG小隊 : バレットを隊長とするグリフィン本部直轄の部隊。
主な任務は盗賊やテロリスト、人類人権団体の過激派の殲滅及びそれらに捕らわれた人形の救出や各基地の監査など。メンバーは五人で一名を除いて全員が男性型戦術人形という特徴がある。また、全員銃名以外の通称があり、その名で呼ばれることが多い。
名前の意味はDoll's Guardian──人形達の守護者の頭文字である。決してデビルガンダムの略ではない。

バレット(バレットM107):DG小隊の隊長。黒髪でブラウンの瞳をしている。16Lab製の人形であり、それ故に高い指揮能力を持つ。
対物ライフルである本銃を普通に立って連射して正確に当たるという変態的射撃スキルを持っている。

スミス(S&W M500): DG小隊の副隊長。黒みががった茶髪に黒い瞳をしている。バレットと同じく16Lab製。バレットとは反対によく喋る上軽い性格だが、任務はキッチリこなし、口は意外と堅い。本銃を二丁拳銃で連射できる分には腕力があり、それを応用した格闘戦も得意。

レスト(MP5K): 元々はある娼館で男娼用に違法製造された人形という本作ブッチギリの黒い過去を持つ人形。しかも本人の性癖はノーマルなため、所謂レ○ププレイ用という悲惨ぶり。無論、彼の過去に無遠慮に触れようものならもれなく彼の怒りを買うことになる。
その過去故に番号で呼ばれることに忌避感を感じており、小隊内の通称は実は彼のために用意されたものである。DG小隊に入隊したのは娼館時代に自分を"利用"した連中に復讐するためと、自分のような人形を一人でも多く救うためである。人形を弄ぶ連中に対する怒りは小隊一で、戦闘ではR.I.P弾を使用してるほどの徹底ぶりを見せる。
名前の由来は休息を意味するRestより。

ウェイター(SCAR-H): 黒髪のオールバックにモノクル、さらには執事服という見た目から分かる通り、元は資産家に仕えていた執事人形だが、蝶事件後に人類人権団体の過激派に『鉄血工造に出資をしていた』という理由だけで屋敷を襲撃され、仕えていた主人とその家族、さらに同僚の人形を失った過去を持つ。それ故人類人権団体に恨みを持っているが、あまりそれを表に出さない。小隊内では一番製造年が古い。
戦闘では前衛のスミスやレストのサポートを務めており、感情的になりがちなレストを諌めたりしている。
ウェイターという名は執事時代からの名である。

ノア(9A-91): DG小隊の紅一点。元々ははぐれ人形で、盗賊に襲われそうになったところをレストに救出される。その後レストに惚れる形で入隊する。なお、入隊条件で白の膝丈くらいのスカートを着用している。名前の由来は9(ノイン)+Aのローマ字読みという単純なものだが本人は気に入ってる。
レスト自身は最初は困惑していたが、次第に惹かれるようになり今では恋仲になっている。今回の任務ではメンテナンスの為不参加である。


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Code-2 洗浄作業(前編)

ちなみにうちのDG小隊ですが他の作者様たちにならってフリーなのですが一応使うときは連絡よろしくお願いします。


「そういやバレット、この娘達の基地って今鉄血の襲撃を受けてんだろ?このまま送って大丈夫なのか?」

 

帰りのヘリの中で、スミスはおもむろにバレットに尋ねた。

ちなみに生け捕りにした盗賊達だが、正直ミノムシよろしくヘリから吊り下げてもいいのだが、万一落としたら情報が得られないので仕方なくヘリの隅で拘束して置いている。尤も、彼らを縛っているのはロープではなく、バレットがその辺で拾った有刺鉄線であるが。

自分達の基地が襲撃されてると聞き、当然ながらガーランド達は動揺を隠せなかった。

 

「襲撃!?指揮官や他の皆は無事なんですか!?」

 

「待て待て急に立つな危ないから!…で?どうなんだバレット?」

 

「それなら心配ない。先程確認したがこれといった被害もなく撃退に成功したそうだ。それとスミス。不用意にそう言う発言はよせ。彼女達が不安になるだろ」

 

「あぁ、悪かった…君達もすまない。あんな目に遭ったってのに…」

 

「いえ、無事ならいいんです。それと皆さん、助けてくださって、ありがとうございます。あなた方が来なければ、どうなってたことか…」

 

「礼には及びません。あのような輩からあなた方を守るのが我々の役目ですから」

 

そうこうしているうちに一行は基地へとたどり着いた。

 

「「「指揮官!」」」

 

「みんな!無事だったか!」

 

三人を見つけるやいなやこの基地の指揮官は彼女達に駆け寄り、無事を確認する。そしてバレット達に向かって頭を下げた。

 

「彼女達を助けてくれて、本当に感謝する。報酬の件だが、襲撃でゴタゴタしている。すまないが後で必ず送っておこう」

 

「構いません。流石にこの状況で報酬を今すぐに出せと言うほど、我々は横暴ではないので。では、我々は失礼します」

 

指揮官や人形達に見送られながら、バレット達はヘリに乗って去っていった。

 

────

グリフィン本部

 

盗賊達を引き渡した後、バレット達はメンテナンスルームへと向かう。

扉を開けると、一人の戦術人形が彼ら──正確にはレストの元へと駆け寄る。

赤い帽子に白い髪、青い服という格好から、知ってる者が見れば彼女のことを9A-91というだろう。だが、ここでの彼女の呼び名は──

 

「ただいま、『ノア』。メンテナンスは問題なかったか?」

 

「はい。何も問題なかったそうです」

 

「そうか…良かったな」

 

レストは彼女──ノアの頭を撫で優しい眼差しで微笑みを浮かべる。

彼女はかつてはある地区に所属してた戦術人形だったが基地が壊滅し、はぐれ人形となり放浪していたが色々あってDG小隊に入隊する事になったのであった。

(詳しくは前回の解説欄を参照)

 

「俺とスミスはヘリアンさんに報告しに行くから、お前達は部屋に行っててくれ」

 

「あぁ。わかった」

 

レスト、ノア、ウェイターの三人は部屋へと向かっていき、バレットとスミスは任務の報告に向かっていった。

 

 

「……以上が今回の任務の結果です。輸送中に奴らから売り渡し先の娼館の場所について吐かせたので早急に確認をお願いします」

 

バレット達はヘリアンに今回の任務について報告する。ヘリアンは渡された資料を一瞥し、バレット達に顔を向ける。

 

「…報告ご苦労。娼館についてだが、これだけの情報ならすぐに確認は取れそうだ。恐らく早ければ明日にでも命令が来るだろうからそのつもりでいろ」

 

「「はッ!」」

 

「それと…なんとなく答えはわかるのだが、『盗賊達に感染症の恐れがある』というのはどういう事だ?」

 

ヘリアンの質問に対してバレットはやや嗜虐的な笑みを浮かべて、

 

「そりゃそうでしょう。奴らを縛ってた有刺鉄線は半分くらい土に埋まってたものですし、地面から出てる部分にも何かの血が付いてましたしねぇ?あれで感染してない方が可笑しいでしょう?破傷風にでもかかれば上出来ですが」

 

「……相変わらず悪人には容赦ないな貴様は」

 

やや引いた顔で言うヘリアンだが、バレットは全く気にしていなかった。

 

「当然です。それに、クズが鉄クズから病気をもらって死ぬのもなかなかの皮肉だと思いませんか?」

 

「お前本当趣味悪いな。まぁ奴らには同情しないけど」

 

「こちらからは以上だ。二人とも戻っていい」

 

「わかりました。あ、それとヘリアンさん。今夜の合コン、上手くいくといいですね」

 

「なっ…!?スミス、何故それを!?」

 

「情報収集は得意なんで♪では失礼しま〜す」

 

狼狽えるヘリアンをよそに二人は部屋から出て行く。そしてしばらく歩いた後、バレットはスミスにこう言った。

 

「スミス、お前も人の事言えないぞ?」

 

「俺は励ましの言葉を言っただけだ。ま、どうせまた失敗するだろうけど」

 

「ヘリアンさん、自分でチャンス潰したりしてるからな…」

 

「やっぱあの人合コンとか向いてねぇよ…軍事用語やCQCについて一般参加の合コンで語ってなんで成功するって思ってんだろ?」

 

この二人は以前、ヘリアンにフォローするように頼み込まれ仕方なく合コンに参加したのだが、結果はこの有様でありフォローのしようが無かったのである。

ちなみに、今夜の合コンだが例の如く大敗し、彼女の連敗数がまた一つ更新されたのであった。

 

────

 

DG小隊に次の指令が出されたのは翌日の事であった。ブリーフィングルームに全員が集まったのを確認すると、今回の依頼者であるペルシカが口を開く。

 

「先日の盗賊達の情報の裏が取れたわ。今回の任務はU02地区にある娼館の制圧とそこにいる人形達の救出よ。娼館内の人間は全員()()しなさい」

 

「それは支配人は当然として、客も殺っていいんだな?」

 

「当たり前よレスト。利用してる時点で同罪よ、存分に殺りなさい」

 

「了解した」

 

「つまり、人形は救出。それ以外は見敵必殺(サーチ&デストロイ)ってことか」

 

「ええ、誰一人として生きて返さないこと。他に質問は?」

 

「周辺に一般市民は?」

 

「ないわ。廃墟ばかりだから巻き添えは気にしなくていいわ」

 

「わかった」

 

「他には…ないわね。なら、準備が出来次第開始して頂戴」

 

「「「「「Yes,Ma'am‼︎」」」」」

 

一行は各自装備の準備と点検を始める。また、今回の任務では確実性を要するため、ダミーを総動員することにしている。

彼らのダミーリンクの数は、ノアが三体で他は全員最大数の四体となっており、ダミーを含めたDG小隊の数は24人となる。

 

「全員準備は出来たか?」

 

「スミス、準備完了だ」

 

「ウェイター、準備完了です」

 

「レスト、準備完了」

 

「ノア、準備完了しました」

 

「よし、では行くぞ」

 

彼らはヘリに乗り込み、移動する。

目指すはU02地区にある娼館。課せられたのは盗賊達に拉致され、そこで強制的に身体を提供されている人形達の救出。そして彼女達を欲望のままに貪り、虐げる人間(生ゴミ)鏖殺(掃除)

 

娼館に現在いる人間達はまだ知らない。彼らを断罪する人形部隊(バケモノ達)が今まさに迫っている事を。

 

彼女達はまだ知らない。自分達をこの地獄から解放してくれる人形部隊(救世主達)がやって来ることを。

 

作戦名『Cleaning operation(洗浄作業)』 開始である──

 




さ〜て次回は皆様お楽しみ、ゲス共の大掃除でございます。


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Code-3 洗浄作業(後編)

今回日本版では未実装の子が出てきます。
あと、後半ちょっと生々しい話が出てきます。


U02地区の降下地点へ降り立ったDG小隊はそのまま目的地である娼館まで行軍する。とはいえ、占領された地域でもない為、遭遇戦など起こらずに娼館近くにまで辿り着いた。

廃ビルの中で、バレットは作戦を伝える。

 

「情報によれば娼館は3階建て、出入り口は正面と裏口の二箇所。非常階段は裏にあり、内部はエレベーターもある。俺はダミーを使って正面と裏口を張るから突入はお前達だ」

 

「いや当たり前だろ、逆にお前が突入したらヤベェからな?屋内で対物ライフルぶっ放したら人形達ごと木っ端微塵だぞ?」

 

「んなことはわかってる。で、ウェイターは突入前にグレネードで非常階段を吹っ飛ばせ。それで2階3階の奴らの退路を内部のみに限定させる」

 

今回の任務ではウェイターはEGLMを装着させたSCAR-Hを携行していた。

 

「わかりました。それはダミーに指示しましょう」

 

(絶対中に人形いなかったら突入してたろ…前にもやってたし)

 

そんなスミスの考えを他所にバレットはそのまま話を進める。

突入には正面と裏口に加え、ワイヤーを使った三階への突入の三組に分かれ、正面からはウェイター本体とダミー二体にスミスとレストのダミーが二体ずつの7人、裏口にはノア本体とダミー三体にウェイターのダミー二体の6人、三階の突入はスミスとレスト本体とそれぞれのダミー二体ずつの6人となった。

 

「じゃあ俺は狙撃ポイントに移る。各自突入準備にかかれ」

 

バレットがそう命じると、レストがある提案を出した。

 

「隊長、それに他の皆もわかってるが、もし客の中に()()がいたら出来るだけ無力化して俺に知らせてくれ」

 

「わかっているよ。だいたい、いつもそうしてるだろ?なぁバレット?」

 

「あぁ、寧ろそうしなかった時なんか無かったはずだ」

 

「ただし、やむを得ない場合は殺しますがいいですね?」

 

「もちろんだ。ノアも俺の為に無茶はするな。自分を大切にしてくれ、いいな?」

 

「はい。レストさんも無茶しないでくださいね」

 

────

 

「…こちらバレットメイン。狙撃ポイントについた。ダミー、応答」

 

「こちらバレットダミー1(ワン)。同じく狙撃ポイントについた」

 

「バレットダミー2(ツー)も同じだ」

 

「バレットダミー3(スリー)も狙撃ポイントについてる。4(フォー)もついたとのことだ」

 

各ダミーの報告を聞き、バレットはレストら突入組に通信を行う。

 

「狙撃班、ポイントについた。突入組はどうだ?」

 

「正面組、準備完了です」

 

「裏口組も完了しています」

 

「3階組もあとはワイヤーを射出すれば完了だ」

 

「了解。3階組は正面組の突入後にワイヤーを射出しろ。では、作戦開始だ」

 

それを合図に正面組、正確にはスミスのダミーが一体、扉近くに立つガードマンらしき男に近づいた。

 

「すまない、中に入りたいのだが?」

 

「悪いがここは一見さんはお断りだ。紹介されたんなら通せるが、どちら様の紹介で?」

 

何いってんだこのクソッタレ、とダミー越しに聞いていたスミス本体は毒づいた。

 

「ダミー、上手い返しを言ってやれ!」

 

「はいはい。で、紹介だって?どちら様からって、そりゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死神様からだよ、クソ野郎

 

言うは早いか、スミスのダミーは銃を抜きガードマンの頭を撃ち抜く。

そして扉を蹴破り中に入りウェイター達もそれに続く。

 

「な、何だお前──がッ⁉︎」

 

受付と思われる男の肩を撃ち、ウェイターはその男の胸倉を掴みあげる。

 

「ここにいる人形達の待機場と支配人の場所を教えてください。そうすれば少なくとも楽になりますよ?」

 

「ヒッ…!」

 

口調の割にややドスの効いた声と凍てつくような眼差しで睨むウェイターに男は観念してそれぞれの場所を話した。

 

一方、裏口ではウェイターのダミー二体がそれぞれ二階と三階の非常階段に向けてグレネードを発射する。ただの鉄製である階段は派手に吹き飛び、そこからの脱出をほぼ不可能にさせた。その後EGLMに散弾をセットして中に突入する。先行していたノアはすでに通路にいた何人かの客を撃ち倒しており、部屋に侵入しては中の客を撃ち殺していった。

 

そして3階ではスミスとレストがワイヤーを窓の近くに射出し突入準備に入る。

 

「ハッハッハッ‼︎上手いなダミー!あとでビール奢ってやる!」

 

「無駄口叩いてないでさっさと行くぞ」

 

滑車がワイヤーに掛かっているのを確認し、彼らは突入する。

窓を蹴破り、中に入ると青みがかった銀髪の人形と()()()()()の男がいたのでレストは迷わず男を射殺し、死体を彼女から引き剥がす。

 

「あなたは…?」

 

「安心しな、テロリストじゃない。俺たちはグリフィンの救出部隊だ」

 

「グリフィン…助けに来てくれたの…?」

 

「もちろん。危険だから、事が終わるまでここにいてくれ」

 

彼女に優しく声をかけるレストだが、よく見ると彼女はグリフィンの人形ではない事に気付いた。そして彼女の全身にある傷跡や火傷の跡から、レストはある結論にたどり着く。

 

(…ッ⁉︎この娘は……()()()()、あいつらの欲望の為に造られた人形か…‼︎)

 

Scheiße(クソが)、と小さく呟くと彼女を抱き寄せ、優しく頭を撫でる。

 

「大丈夫だ…。もう()()()()はしなくていいんだ…もう一度言うけど、ここから絶対に出ないでくれ。終わったら必ず迎えに来る。わかったかい?」

 

彼女が頷くのを確認するとレストは部屋から出ていく。

 

「さて……狩るか」

 

彼らへの怒りを露わにし、レストは次の部屋へと向かった。

 

────

 

すでに娼館内は一方的な蹂躙劇と化していた。当然だろう、相手は武器を持たないただの人間である。時折護身用の拳銃で抵抗するものがいるがそんなものはただ自分の居場所を知らせるに過ぎず、撃った数秒後には撃ち返され物言わぬ肉塊へと変わっていった。

運良く彼らの目を掻い潜り娼館から出て行く者もいたが、出たその瞬間にバレットの狙撃の的となり、壁一面を血に染める。

さて、三階だが男達は我先にとエレベーターへ駆けていくが、それをスミスが背後から追撃する。一人、また一人と撃ち倒されるなか、ようやく彼らはエレベーターにたどり着く。開のボタンを連打しようやく扉が開くと急いで中に入り扉を閉じようとする。

 

「早く、早くしろよ‼︎」

 

「わかってる‼︎」

 

リロードしながら迫るスミスを視界に捉え、彼らは扉が閉まるのを今か今かと待っていた。

ようやく扉が閉まり始め、後10センチほどで閉まりきろうするのを見て彼らは安堵する。しかし──

 

ガッ

 

スミスの両腕が捻じ込まれ、そのままギギギ、と音を立てながら扉をこじ開ける。

 

「オープン……セ・サ・ミ♪

 

「ヒィィッ⁉︎」

 

イイ笑顔でエレベーターに侵入してきたスミスに男たちは震え上がる。そしてスミスはそんな彼らに銃を突きつける。

 

「屑ども諸君、ムダな逃走ご苦労。そして──さようなら」

 

エレベーターの扉が閉まり、銃声と悲鳴が中で響き渡った。

 

 

────

 

「こちらウェイターメイン、人形達の待機場を発見。ダミーを置いてこのまま支配人の場所に向かいます」

 

部隊全員に報告するとウェイターは支配人の場所へと向かう。なお、情報元の受付だが、約束通り眉間に一発銃弾を放って楽にあの世に送らせた。

支配人の部屋の前まで着くとEGLMにセットした散弾で蝶番を破壊し、中に入ると金庫を抱えて逃げようとする支配人と鉢合わせとなった。

すぐさま撃とうとするウェイターだが、支配人の顔を見て中断する。

 

(この顔は…例の…)

 

「たっ頼む!この金は半分やる!だから─ッ⁉︎がァァァァ‼︎」

 

右足を撃たれて崩れる支配人の後頭部にウェイターは銃のストックを叩き込み、気絶させる。

 

「悪いですが、あなたを殺すのは私ではないのでそれは聞き入れられません」

 

やがて一階と三階は制圧され、二階も程なくして制圧された。

 

────

 

救出された人形47人を見た後、バレットはウェイターに尋ねた。

 

「これで全員か?」

 

「ええ、ですがロクな扱いを受けていなかったようで三名ほどが機能停止(死亡)してしまったそうです」

 

「そうか…君達はこのあと一旦I.O.P本社でメンテナンスを受けてもらう。その後どうするかは君達次第だ。元いた基地に復帰するのもいいし、民生用にしてもらって新しい道を探すのもいい。だが、どうしても助けが必要なら連絡してくれ。任務中じゃなければ助けになろう」

 

「民生用になったけど仕事が無い場合も連絡しな。俺らがまともな仕事を紹介する」

 

「こういったアフターケアも私達の仕事のうちですから」

 

バレット、スミス、ウェイターの言葉を聞き彼女達は解放された喜びや感謝で泣き崩れる。そんな中、レストが助けた人形がバレットに近づいた。

 

「あの…私を助けてくれた人形は?」

 

「レストの事か?あいつは今──自分の過去を清算してるところだ」

 

 

 

支配人の部屋で四人の男が縛られて床に転がっていた。

一人は支配人だが、あとの三人は制圧中にスミスとノアに確保され、この部屋に入れられたのであった。

四人は何故自分達が生かされているか見当もつかずにいたがすぐに彼らはその理由に気づくことになる。

 

「よう。()()()()だな、てめぇら」

 

レストが部屋に入り、彼らに声をかける。初めは誰だかわからなかった彼らだが、少しして男の一人があ!と声をあげた。

 

「お、お前は…()()()…ぐふっ⁉︎」

 

「せいかーい。俺は()()()()()()()()()()()()()()()、No.37こと《ミーナ》だった。だが、今の俺の名はレストだ。その名で呼ぶんじゃねぇ

 

男の顔を蹴り上げながらレストは恨みを込めた目で睨みつける。

男娼人形──それが彼の忌まわしき過去である。しかも彼の性癖は至って普通にプログラムされており、つまり()()()()()()行為を好む者たちの相手をするのが彼に与えられた役割であった。

もちろん()()の為の抵抗こそできるが噛み付いたり殴ったりといった殺傷行為には制限がかけられていた為、彼は身も心もズタズタにされる日々を送っていた。

いっそ死んでしまおうかと考えたがご丁寧にも自傷防止プログラムが組み込まれていた為それは叶わなかった。

しかも彼はその娼館では一番の()()()()であり1日に()()する数が片手の数を超えることが多々あった。それが約2カ月ほど続いていた。

 

そしてある日娼館から救出された時は解放された喜びよりも、彼らに対する復讐心が先にあった。客を覚えるようにと記憶関係が強化されていたのが幸いし自分を()()した連中の顔と名前をはっきりと覚えていた。

彼らを一人残らず始末し、自分のような人形を救出する。それがレストがDG小隊にいる理由である。

 

「いや〜まさかここに四人もいるとは思わなかったよ。でも不思議じゃないよな?『女もいいが男も中々だ』とか言ってたしな」

 

「お、俺らに復讐しようってのか?あんなに()()()()やったってのにか⁉︎」

 

は?何寝言言ってんだお前ら?てめぇらに何度も何度も汚され、咥えさせられ殴られ蹴られ切られるのが良くしてやっただ?俺はてめぇらみてぇな趣味は持ち合わせてねぇんだ。一緒にするんじゃねぇ‼︎

 

怒鳴りつけると同時にレストは銃を彼らに向けて撃ち放った。

放たれた弾丸は全て命中し、彼らを血に染め上げた。()()()()()()()()()()()()。急所は避けてはいるが確実に失血死する状態になるようにレストは弾丸を叩き込んだのであった。

 

「うっ…がっ…!」

 

「痛いか?当然だ。R.I.P弾を使ってるんだ、俺と彼女達が受けた痛みと苦しみに比べりゃマシだがてめぇらには充分だろ。そのまま死ぬまで苦しめ」

 

R.I.P弾、ホローポイント弾の一種であるこの弾は体内で八つの破片が飛び散り体内を切り裂くものであり、死ななかった場合相当の苦痛を与えることになる弾丸である。

部屋から立ち去ろうとするレストを支配人が呼び止める。

 

「こ…殺して…くれ…!」

 

断る。あぁそういえば、R.I.Pと言えばRest In Peace(安らかに眠れ)ってのが有名だが、俺はてめぇらに安らかに眠って欲しくないからこう言わせてもらう。Rest In Pain(苦痛にもがいて死ね)

 

そう言い残してレストは立ち去って行った。

 

────

 

「…終わったか?」

 

娼館から出てきたレストを見てバレットはそう問いかける。

 

「あぁ…救出された人形達は?」

 

「さっき迎えのヘリで本社に行ったよ。あと、青っぽい銀髪の子がお前に『ありがとう』って言ってたよ」

 

「そうか…待たせてすまないな、俺らも帰還しよう」

 

やや放心気味となっているレストだが、復讐した後はいつもこんな感じであったため、バレット達は特に気にすることなくヘリに搭乗する。

いや、ただ一人ノアだけが心配そうな顔で側に寄り添っていた。

 

「レストさん、本当に大丈夫ですか?」

 

「ん?大丈夫だよノア。心配かけてすまない」

 

「レストよぉ、あまりノアに心配かけさせんなよ?」

 

「いや、わかってるんだが…ようやく終わりが見えてきたからな…」

 

「あと12人だっけか?早く見つかるといいな。そしたらタトゥー(それ)消すんだろ?」

 

レストを()()した客の数は223人、その殆どは病死や事故死、または鉄血の襲撃や人形に非道な行為をしたとして他の地区の指揮官の元で粛清されていたが、他はDG小隊が見つけ次第レストが手を下していた。

彼の目の下にある涙のタトゥーは復讐を意味し、全員始末したら消すことになっていた。

 

「もちろんそのつもりだ」

 

「消したらまず俺らよりもノアに見せてやりな。この中じゃお前の元の顔見てないのノアだけだし」

 

「私も、レストさんの元の顔を見てみたいです」

 

「はは、わかったよ。約束する。消したらまずノア、君に見せるよ」

 

「はい!」

 

そんな約束を交わし、彼らの乗るヘリはグリフィン本部へと向かって行った。

 

「スミス、私も彼の顔を見ていないのですが?」

 

「ごめんウェイター、普通に忘れてた




今回レストが助けたのはのちのサンダーとなる人形です。
原作と違うのは廃棄処分になる前に助けたところです。
ちなみにレストのキャラ設定はサンダーがモデルだったりします。
あとDG小隊の入隊順はバレット&スミス、レスト、ウェイター、ノアです。

次回は日常回でも書こうかな〜。


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Code-4 彼らの休暇(前編)

日常回です。初めは1話でまとめようかと思いましたが思ったより長くなるので分けました。

これ書いてる時にふと他に未実装の娘って誰がいるんかな〜と見てみたら
M82A1が居たんですよね。
ま、まぁうちのバレットは陸軍採用前の名前はM82A『3』だからセーフです。
むしろ面白いネタが出来たので結果オーライだったりします。


DG小隊にも一応休暇は存在する。普段は緊急時に備えて必ず一人は待機しているのだが、今回は珍しく五人全員が休暇となり、各々が自分の休暇を満喫することにしたのであった。

 

─バレットの場合─

 

「「「………」」」

 

グリフィン本部射撃場にてWA2000、SVD、M99はあり得ないものでも見るような目でバレットを見ていた。

10分ほど前、彼女達三人が射撃訓練をしている時にバレットが来訪、そのまま射撃訓練を始めたので性別こそ違うが同じライフル人形で、しかもDG小隊の隊長を務めている彼の射撃技術に興味があり見てみたのだが、まぁ規格外であった。

普通は伏せて撃つバレットM107を彼は()()()狙いをつけて射撃し、遠く離れた的に命中させる。しかも1発や2発ではなく1マガジン10発+元々装填されてた1発を()()()()()射撃して全て命中してるものだから初めこそすごいと思っていたが彼女達だったが、ここまでくると若干引いていた。

特に彼と同じセミオートの対物ライフルのM99に至っては( ゚д゚)(こんな顔と)なっており頭に乗ってる兎もうわぁ…みたいな表情を浮かべていた。

 

「よし…ん?君たち、俺に何か用か?」

 

「いやバレットさん、何でM107(それ)普通に立ちながら連射してるんですか?」

 

「何でって…セミオートだから連射しているのだが?」

 

「WA2000が言っているのはそういうことじゃ無い。反動も大きいはずなのに何故私たちと同じように射撃ができるのかと聞いてるんだ」

 

「あ、そういうことか」

 

SVDの言葉でようやく理解したバレットだったが次に彼が言った言葉は彼女達の求める答えとは全く違っていた。

 

「簡単な話だ。M107(こいつ)、もといM82系列はマズルブレーキと複数のリコイルスプリング及びスプリングで12ゲージショットガンと同程度の反動になっているのは知ってるな?」

 

「「「ああ(ええ)」」」

 

「そして12ゲージショットガン、この場合同じセミオートのサイガがいいな。あれは狙えば立って連射しても当てられるだろう?」

 

「「「ああ(ええ)」」」

 

「だったらM107(こいつ)も立って連射して当てられても問題ないだろう?」

 

「「「いや、そのりくつはおかしい(です)」」」

 

()()()であって全く同じじゃないですからね?」

 

「火薬の量も違うから反動もだいぶ違うと思うのだが…」

 

「やっぱり体格ですか⁉︎体格の問題なんですか⁉︎どーせ私はちっこいですよッ‼︎」

 

「体格は関係ないと思うんだが…」

 

何言ってんだこの人はといった感じてまくし立てられるバレットだが(M99はただの八つ当たりだが)よくよく考えると彼の出身は16Labである。

彼を製造するにあたってペルシカ含む開発チームが訓練すれば人間でも腰だめで撃てるのだから人形の彼は立射で正確に当てられるようにしよう、いやどうせなら連射しても当てられるようにしようという天才、もとい天災達のアイディア(ロマンともいう)を採用した結果できたのが彼である。

ちなみに先ほどからWA2000が敬語なのは以前に彼からライフルの指導を受けた時の名残である。(ちなみにその時は伏せ撃ちだった)

 

「いつも立って撃ってるんですか?」

 

「いや、必要があればやるだけだ。さて、部屋に戻るかな。訓練頑張りな」

 

そういいバレットは射撃場から出て行った。そして彼は自室に戻ると引き出しを開けて中のDVDを漁る。

 

「これは前に見たしな…これにするかな」

 

バレットはDVDを取り出してプレイヤーに入れて再生させた。

 

射撃場に残った三人はしばらく訓練を続けていたがその途中でWA2000はあるものを見つけた。

 

「あら?これ、バレットさんのアーミーナイフじゃない」

 

彼は当然ながら接近された時用のサイドアームとしてアーミーナイフとベレッタM9を持っていた。(接近される前に作戦が終了してるか持ち替えずにそのまま至近距離でぶっ放す場合が殆どだが)おそらく立射してるときに落としたのであろうアーミーナイフをWA2000が拾い上げる。

 

(確か部屋にいるって言ってたわね…持ってきてあげよう。いや、別に感謝されたいとかじゃなくて、失くして困ってるだろうから持ってくるだけだから…って誰に言ってんのよ私はっ!)

 

そう思いWA2000はバレットの部屋まで歩いていく。そして部屋の前で髪を整えた後、扉をノックした。

 

「バレットさ〜ん?アーミーナイフを落としてましたよ〜…?開けますよ〜?」

 

反応がないのでWA2000は断りを入れてから扉を開ける。すると…

 

A"A"A"A"A"A"!!

 

「ヒイッ⁉︎」

 

バレットは映画を観ていたのだが、そのシーンが問題だった。

上半身裸で大の字に固定されて寝かされてる男が両手を装置の中に入れた状態でいた。しかも血が滴ってることからおそらくその装置で手を潰されてるだろう。そしてその男の腹目掛けて刃のついた振り子が勢いよく振りかぶって男の腹を切り裂いていたのであった。

 

「ん?あぁWA2000か。どうしたんだ?」

 

「え、えっと…アーミーナイフを落としてたので届けに…」

 

「アーミーナイフ?…あ、本当だ。ありがとう」

 

「あのバレットさん?何を観てるんですか…?」

 

「S○W5。一緒に観るか?面白いぞ」

 

「いや、遠慮しておきます…失礼しました」

 

若干涙目になりながらWA2000は部屋から出ていく。

そしてさっきの映像を思い出して弱々しく壁にもたれる。

 

(バレットさん、ああいう映画が好きなんだ…違う意味で意外だわ…う、ちょっと吐き気が…)

 

対人戦闘が主なバレット達と違い、鉄血人形との戦闘が主な任務の彼女にとってあの手の映像はかなり刺激が強すぎたようであった。

ちなみに彼の引き出しの中にはSA○シリーズ以外にもホ○テルシリーズ、死○のはらわたシリーズなどのスプラッタ映画が入っていおり、訓練後にそれらを視聴するのが彼の休暇の過ごし方であった。

 

─スミスの場合─

 

「火力不足?」

 

「そーなんだよねー。同じリボルバーのよしみで何かアドバイスないかなー?」

 

スミスに向かってそう話すのはコルトSAAであった。休暇をどうしようかとその辺をうろついていた彼を彼女が相談があるといって連れ出し、今に至っていた。

彼女が言うには、普通の鉄血になら問題ないのだが装甲兵相手だと歯が立たずサポートしか出来ないのでどうすれば良いかアドバイスをもらいたいというわけである。

 

「ふむ…確かにそういう事なら俺に相談したのは正解だな。俺の銃は世界最強の拳銃と言われてるからな。でも基本俺が相手するのは人間だぜ?鉄血、それも装甲兵なんてあまり戦ったことないんだよな」

 

「その時はどうだったの?」

 

「任務途中で遭遇したからセミジャケッテッドホローポイントと普通のセミジャケットしか無かったから中々装甲が抜けなくて大変だったな。割とマジで死にかけたけど、なんとか倒せたな」

 

スミスが使うS&WM500は大口径弾のため、近距離かつ装甲の比較的薄い箇所、そしてフルメタルジャケット弾という条件下なら装甲兵の装甲を貫通して倒す事は一応は可能である。だが先に述べたとおり彼は対人戦がメインであるため弾丸もそれに合わせてるので装甲兵と遭遇したりするとかなり苦戦する羽目になる。

 

「え〜、スミスさんでもそれじゃあ私じゃどうにも出来ないじゃん〜」

 

ぐで〜と机に突っ伏すSAAにそうでもないぞ、とスミスは声をかける。

 

「確かに俺とSAA(コーラちゃん)じゃ口径も火力も違う。だけど装甲を貫通出来なくても若干はダメージを与えられるだろ?だからそん時の俺は何度もそこを攻撃して倒した。だから俺が言えるアドバイスは─」

 

スミスは右手に持ってた銃を一回転させて、SAAに向き直る。

 

「『相手が死ぬまで撃ち続ける』。これに尽きるな」

 

「お〜!カッコイイ〜!」

 

「だろ?」

 

「ありがとう、だいぶ参考になったよ!じゃあね〜!」

 

SAAはご機嫌でスミスに手を振りながら帰っていく。彼のアドバイスはのちに彼女が同じ基地の仲間に教えるのだが、それは別の話だったりする。

 

(てか、カッコつけたけど先人へのアドバイスが結局ただのゴリ押しで良かったのか?まぁ、本人が満足してるならいっか)

 

「さ〜てどうすっかな〜。バレットは今頃スプラッタ映画観てるだろうし、レストとノアはデート、ウェイターはメンテだっけか?誰かカフェにでも誘おうかな。でもみんな訓練やら任務やらで忙しいからな〜」

 

独り言を言いながらスミスはまた本部内を彷徨きはじめた。

そんな彼を複数の男性職員が見ていた。

 

「まーたあいつ人形誘おうとしてるよ」

 

「しゃーねーよ、スミス達モテるんだから。彼女らからすればDG小隊はヒーローみたいなもんだし」

 

「まーな。実際話してみたけど良い奴らだし。でもまぁ正直…」

 

「「羨ましいなぁ…」」

 

ノアを除いたDG小隊の四人は珍しい男性型戦術人形であり、また、彼らの主な任務内容が彼女達に危害を加える存在の殲滅や人形の救出であることもあり、彼らを知っている戦術人形からの人気があった。ただし、レストはノアと付き合っている為、必然的にバレット、スミス、ウェイターへの人気が集まっていた。中でもスミスは元々人当たりが良く、彼自身も彼女達と話したり出かけたりのが好きだったりするのでスミスにはガールフレンドが多かったりする。

誰かいないかな〜と散策していると、一人の人形を見つけた。

 

「よっアストラちゃん。何してんだい?」

 

「あ、スミスさん。ちょっとお腹が空いて食堂に行こうかなぁ〜って」

 

「なら俺とカフェ行かない?奢るよ」

 

「本当ですか⁉︎行きます行きます!」

 

「決まりだね、じゃあ行こっか。(自分で誘っといてあれだが、この娘簡単に食べ物で釣られて大丈夫かな?心配だな…)」

 

ご機嫌でスミスとカフェに行くアストラを見て先ほどの職員二人は

 

「オイオイオイ」

 

「死ぬわアイツの財布。よりによってアストラちゃんを食事に誘うなんて」

 

「いや待て、あいつの事だからアストラちゃんがよく食べる娘だと知ってて誘ったんじゃ…」

 

「…そういやDG小隊って結構な給料貰ってるって聞いたな…」

 

「「…チッ!リア充が」」

 

そんな二人の嫉妬なぞ知る由もなく、スミスはアストラを連れてカフェへと向かうのであった。




自分はスプラッタ映画は興味あるんですが、実家暮らし+歳の離れた弟がいるので中々見れないんですよね。
続きは後編で。

以下、自分のイベント時の出来事(2-4e)

「赤ゴリアテ来るな赤ゴリアテ来るな」

◎ ◎<抱きしめたいな、グリフィン‼︎

ア"ア"ア"ア"!!

これを十回くらいくらいました。

諦めて1-3e周ります…(泣)
赤サイ○イマン滅べ(切実)


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Code-5 彼らの休暇(後編)

後編です。

初めの方シュガーテロ注意です。


─レストとノアの場合─

 

「ノア、準備出来たか?」

 

「はい。その…レストさん…これ、似合ってますか?」

 

少し恥ずかしそうにしているノアが着ているのはいつもの服ではなく、白のシャツの上に薄緑色のカーディガン、チェックのスカートを着ていた。

 

「あぁ、すごく似合ってるよ」

 

「…っ!本当ですか…!良かったぁ…」

 

(本当、コロコロ表情が変わるなぁこの娘。ま、そんなとこが可愛らしいんだけど)

 

レストに褒められて安堵するノアを見てレストは愛おしさを感じながらノアの手を引いて街へと向かって行った。

 

二人が向かったのは洋服店であり、ノアはそこで洋服を手に取り、自分の体に合わせている。

その様子をレストが見ていると店員が彼に声を掛ける。

 

「いらっしゃいませ。今日はそこの彼女さんの洋服選びに?」

 

「ええ。ついでに自分も良いのがあれば買おうかと」

 

「でしたら…こういうのはどうでしょうか?」

 

そう言い店員が取り出したのは薄水色のパーカーであった。だがそれを見たレストは難色を示した。デザインが悪いわけではなく、半袖であった事が彼にとって問題であったからだ。

レストが娼館時代に受けた傷はほぼ全身にあり、それらはI.O.Pの技術を持ってしても完全には消せずにいた。そのため彼は長袖や長ズボンを着用して傷跡を隠していた。

このご時世、手足に傷のある人間は珍しくないが彼の傷を見れば戦闘によるものでない事は見る者によってはわかってしまうし、何よりそうでないとしても傷について言及される事を彼は嫌っていた。

 

「お客様?どうかなされました?」

 

「あ、いえ。訳あって半袖は…その…」

 

「…! 失礼しました、こちら長袖の物もございますので、そちらでよろしければどうでしょうか?」

 

「そうなんですか?なら、そちらをお願いします」

 

彼の意図を察した店員が先ほどと同じデザインで長袖の物を用意する。レスト自身もデザイン自体は気に入っていたので購入する事にし、ノアも自身の買い物を済ませたので二人は洋服店を後にした。

 

その後も二人は幾つか買い物をし、途中レストがノアの荷物を半分持ち、街道を歩いていると、ノアはレストの空いている手をじっと見ていた。

 

「…ん?どうしたノア?」

 

「えっ⁉︎あ、ええと…その…手、繋ぎたいなぁ…って…

 

「〜〜〜ッ!」

 

モジモジしながら耳まで真っ赤にして話すノアにレストは顔を片手で覆って悶えていた。

 

(ダメだこの娘可愛すぎるッ!)

 

「あの、レストさん?」

 

「……ハッ!あぁ、手だったな?いいよ、はい」

 

手を差し出すレストにノアは顔をパァァッと輝かせて恋人繋ぎで手を繋いだ。

そのシュガーテロじみた様子を見ていた一般市民の皆さんはというと

 

(尊い…)

 

(末代まで祝ってやる)

 

(ちょっと自販機でブラックコーヒー買ってくる)

 

一緒になって悶える者、祝福する者、コーヒーを求める者と様々であった。

なお、この周辺の自販機からブラックコーヒーが売り切れたのは言うまでなかった。

 

その後二人は小腹がすいてきたので行きつけのカフェへ向かう事にした。

扉を開けると一人の男性店員がこちらに気づく。

 

「いらっしゃいま…あ、レストさん!」

 

「よ、『ホーテン』席は空いてるかい?」

 

「ええ、空いてますよ。今日はノアちゃんとデートですか?」

 

「まぁな」

 

店員の名はホーテン。人間ではなく男性型人形であり、かつてレストと同じ娼館にいた人形であった。

レストと共に救出された後にDG小隊が信頼する人間が経営していたこのカフェを紹介され、その後当時の店長からこの店を受け継ぐ事となり今でも彼と同じ境遇の人形や戦闘時のトラウマなどで戦えなくなった人形達の働き口となっていた。

その証拠に店内には元戦術人形の97式、MG3、JS05、CZ-805が働いていた。ちなみにこのカフェは夜にはバーになり、カフェとは別のスタッフ(人形)がいる。

 

二人は注文したものが来るのを待っていると、ノアが誰かを見つけた。

 

「あ、スミスさんだ」

 

「スミス?本当だ、今日はアストラといるのか」

 

「ん〜♡美味しい〜♡」

 

(本当に幸せそうに食べるなぁ…ん?)

 

スミスとアストラが食事をしているのを見ているとスミスもこちらに気がついたようだった。

 

(レスト、邪魔しないから知らないフリしろよ?)

 

(んなこたわかってる。てか、こちらのセリフだ)

 

レストとスミスは互いにアイコンタクトをとると何事もなかったかのように振る舞い始めた。

 

「お待たせしました。こちらホットケーキとザッハトルテです。それとこちらお飲み物のココアとコーヒーです」

 

「あぁ、どうも」

 

「レストさん、たまにはバーにも顔出してくださいよ?あいつらも喜びますよ」

 

「そのうちな」

 

ホーテンと会話をした後、二人はそれぞれ注文したものを食べ始める。ちなみに食べ物、飲み物共に前者がノア、後者がレストが注文したものである。

 

しばらく他愛ない会話をしながら食べていた二人だったが、ふとノアがホットケーキを切り分け、フォークに刺してレストの前に差し出した。

 

「ん?」

 

「はいレストさん、あーん」

 

「へ?ノ、ノア?「早くしてください」む…あ、あー…」

 

突然の行動に戸惑いながらもレストは差し出されたホットケーキを食べる。

すると今度はノアは餌を待つヒナのように口を開けた。

 

(…これは俺もやれという事か…)

 

羞恥心を押し殺してレストはザッハトルテをノアに差し出す。

 

「ほら、あーん」

 

「あーん…むぐ……へへ♪」

 

「〜〜〜ッッ!」

 

満面の笑みを浮かべるノアにまたしてもレストは悶えていた。

そして本日二度目のシュガーテロが起きた店内では─

 

「すみません、ブラックコーヒー一つ」

 

「こちらもお願いします」

 

「こちらも」

 

「はいはい、少々お待ちを〜(う〜ん、コーヒーの売り上げが伸びる伸びる〜♪)」

 

この様なありさまとなっていた。

一方、スミスはというと

 

(本当、ノアの純粋な行動にワタワタしたり悶絶するレストを見るのは面白いなぁ。やっぱこのカフェ選んで正解だったな)

 

そう、スミスがここに来たのは偶然ではなく、二人がここに来るだろうと考えての事であった。

弊害としてしばらく甘みを感じなくなるが、それでもスミスにとっては充分見る価値はあった。

なお、この事は誰にも話すなとあとでレストからメールが送られたのであった。

 

─ウェイターの場合─

 

「調子はどうウェイター?」

 

16Labの訓練所にてペルシカはメンテナンスを終えたばかりのウェイターに声を掛ける。

 

「問題ありません。強いて言うなら前より少々反応速度が速いことくらいですが、そのうち慣れるでしょう」

 

「悪いわね、せっかくの休暇なのにメンテナンスで潰しちゃって」

 

時計を見ると、もう夕方となっていた。

 

「仕方ありませんよ、私は第二世代人形でもかなり初期の方に造られましたから時間が掛かるのも無理ないです。それに、元々この日はメンテナンスって決まっていたじゃないですか」

 

彼が製造されたのは2058年、世に第二世代人形が出回り始めた頃であり、AR小隊が結成されたのが2060年という事を考えればかなり稼働年数が経っている。

だがAR小隊とは違いウェイターは元は民生用人形、それ故部品の質が違う為、戦術人形となった今でもこうしてメンテナンスで古い部品を交換しているのであった。

 

「そういえば気になったんだけど、あなた休暇は何してるの?」

 

「休暇は…基本私達の部屋を整理したり、そうでなければ他の人形達の部屋掃除や、たまに料理を教わりたいって娘がいるので教えたりですね」

 

それは休暇って言うの?私が言えたことじゃないけど」

 

「元執事人形ですから、そうなってしまうんですよね。あとはFAL()()()やFNC()()()とコミュニケーションを取ってたりしてますよ」

 

()()()()にはもう慣れた?」

 

「最初は戸惑いましたが、もう慣れましたね」

 

ウェイターが扱うSCAR-HもといFN SCARはFALやFNCの流れを汲んだ銃であり、彼からすれば『姉』なのである。

だが先ほど述べたように彼は『人形としては』彼女達より歳上なのである。

銃の姉妹関係がそのまま戦術人形の関係性となる特性上、ウェイターからすれば彼女達は歳下の実姉であり、彼女達からすれば歳上の実弟という奇妙な現象が発生しているのである。

別にこの現象は民生人形から戦術人形になる際には良くあることで、実際レストも銃の関係上、突然MP5という姉が出来て戸惑った事もあった。

ウェイターも戸惑ったが、次第に慣れていきFALやFNCも彼を弟と見るようになっていた。

このように、突然姉や妹が出来ることは人形達の間では珍しくない事である。

 

「ところでウェイター。あなた用の試作近接武器があるんだけどどう?いつもは投げナイフでしょ?」

 

「何ですか?」

 

「簡単に言えばワイヤーね。とても良く切れるし、電気信号で伸縮する特殊素材で出来てるから使い勝手もバッチリよ」

 

貴女は私を吸血鬼やグールと戦わせる気ですか?しかもそれですと私最終的に自分の意思で裏切って隊長と戦うハメになりそうなんですが…」

 

「どっちかというとスミスじゃない?デカイ拳銃持ってるし。まぁとりあえずデータが欲しいから使ってみてよ。気に入ったらあげるから」

 

「わかりました…」

 

渋々頼みを了承するウェイターであった。




ぶっちゃけ前半書いててニヤついてましたね。
ちなみにホーテンの名前の由来はココアメーカーのバンホーテンです。
あとカフェの店員達は中の人がごちうさメンバーやってるので登場させました。
このカフェ何回か登場させる予定です。

いやね、照明妖精狙って大型製造でやっと三時間超え出たと思ったら挑発妖精で「バ〜カw」って言われてキレかけましたね。


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Code-6 カルト教団を殲滅せよ

今回他作品についての言及があります。


「D08基地?」

 

「あぁ。知ってるだろ?」

 

「HK417っていうイレギュラーな人形がいる基地だろ?知ってるよ。少し前にそこの指揮官が九人と結婚したって聞いたよ」

 

「そういやその九人の中にFALがいたよな。つまり、ウェイターにとってはそこの指揮官は義兄にあたるわけか」

 

「それについては深く考えないようにしています。それだと何人義兄がいるかわかったものではありませんので…

 

そう言うウェイターの目は若干死んでいたのであった。

当然だろう、彼の姉であるFALはグリフィンの人形の中でもトップクラスの人気と性能を誇っている。それ故に彼女と誓約する指揮官も数多くいるのだから。

 

「お、おぅ…」

 

(しかもFAL姉さん、所属によっては女性もイケるから場合によっては義姉もいるんですよね…)

 

ウェイターの胸中はおいて置き、バレットは言葉を続けた。

 

「そう、それでそこのHK417と、デストロイヤー・ヴィオラって言う元鉄血人形もいるんだが、その二人は二週間くらい前に妊娠したんだが…最近、残りの嫁さん達も全員妊娠したそうだ」

 

「へぇ、先の二人は知ってたが、残りの嫁さんも…は?全員⁉︎それって同時に発覚したのか?」

 

「あぁ、そうらしい…」

 

「へ、へぇ…なんつー()()()…良かったなウェイター。叔父になれるぞ」

 

「私が叔父に…感慨深いものがありますね…」

 

「それで?今回の任務はおおかたそのD08基地を狙ってる人類人権団体の殲滅ってところか?」

 

レストがそう質問したのも無理はない。人形を毛嫌いする人類人権団体にとってこれ以上面白くない知らせはないだろうし、実際彼らの活動が活発になっている話がある。

だが、バレットの答えは違っていた。

 

「いいや、今回は『人形教団』っていうカルト教団の殲滅だ」

 

「人形教団?なんだそりゃ?」

 

「人形を新たな人類の先導者や使徒として崇め祭る連中だが、実際は人形を扱ってるPMCや店に対して爆破テロをしたり、そこの人間を司祭に扮して近づいて暗殺したりしてるイカれた連中だ。しかもそれで巻き込まれた人形がいても『無理矢理働かされた人形たちを救済してる』とかほざいてやがる」

 

「滅茶苦茶だな。つまり、連中の狙いは大事な『人形サマ』と結婚した挙句に妊娠させたD08基地の指揮官を殺す事と、連中から見たら無理矢理妊娠させられた哀れな人形達の()()って訳?まったくふざけた話だな。妊婦をぶっ殺そうとする教団がいてたまるか」

 

レストの言葉に他のメンバーも同調する。

すると、スミスがふとこう呟いた。

 

「そのカルト教団を潰せばD08基地の面々も助()()()言うわけか」

 

「「「「…………」」」」

 

「……よし、続けるぞ」

 

「無視しないでっ⁉︎」

 

スミスの抗議も虚しく、バレットは説明を続ける。

 

「すでにアジトの場所は掴んである。あと、教団の中に巫女として崇められている人形がいるらしい。彼女の救出もやってくれとのことだ」

 

「その人形が連中の思想に染まっていたら?」

 

「その時は可哀想だが…メンタルモデルを一から書き換えることになる」

 

メンタルモデルを書き換える、それはその人形が持っている記憶や人格を全て消去することであり、つまりは『死』に等しく、破壊するよりは良いができれば避けたいことであった。

 

「よし、じゃあ準備が出来次第出発だ」

 

各自準備を進めるなか、スミスがバレットに声を掛ける。

 

「ちょっといいかバレット。話がある、場所を変えよう」

 

「…わかった」

 

二人は別の部屋へと移った。

 

「話を戻すんだが、人形が妊娠って確か後天的に出来るんだよな?」

 

「あぁ。ナノマシンを投与して後天的にその人形のDNAデータを入れた人口卵子をこさえたらしい」

 

「と言うことはだ、逆に人口精子の技術もあるのか?」

 

「…そうだが」

 

そこまで聞くとスミスは眉をひそめた。

 

「……俺らが実験台にされたりしねぇだろうな?特にレストとノアは…」

 

I.O.Pとて一枚岩ではない、中には人形を単なる実験の道具と見ている者もいる。彼が危惧しているのはそういう連中にレストとノアが『人形間でも子供が出来るかどうか』の実験台にされる事であった。

 

「それについては心配ない。ペルシカがI.O.Pの連中に無断で俺らに実験をしたりしないようきつく言ってあるし、俺からも脅は…()()()()をしたからな」

 

今脅迫って言ったよな?何言ったんだ?」

 

「言ったらまずお前らがドン引きする事」

 

「本当に何言ったのお前…?」

 

〜回想〜

 

「お前ら、例の技術だが勝手に俺らにするんじゃねぇぞ?」

 

「わかっていますよ、ペルシカ主任にも『勝手にやったら()()()()()首が飛ぶわよ』って言われてますから」

 

「それもそうだが、その場合俺が直接エグいやり方で手を下すからな?」

 

「えっ…ぐ、具体的には…?」

 

お前らの手足を引き千切ってそれをケバブかハンバーグにしてお前らに残さず喰わせてから殺す

 

「「「ヒェッ」」」

 

「わかったら絶対やるなよ?いいな?」

 

「「「は、ハイッ‼︎」」」

 

〜回想終了〜

 

(まぁ、あそこまで言ったらよっぽどのバカじゃなきゃやらんだろ…それかカニバリズムに興味があるかだ)

 

「そもそも人形間は実験段階にもなってないらしいし、技術自体は女性型にも導入可能みたいだが…」

 

「えっ待って?その場合って……生やすの?

 

「いや、それは知らんが…」

 

ヤベェ地雷踏んじまった、という顔を浮かべるバレットを他所にスミスは語り始めた。

 

「いやいやいやそれは大事な問題だぜバレット俺らを除けば戦術人形は女の子ばかりなんだしかもグリフィンは女性も指揮官として採用してんだだから女性指揮官と人形か人形同士の恋愛つまり百合になる可能性が充分にあるていうか視察先とかでそういうのを目撃してるお前も知ってるが俺はそういうのは大好きなんだだからこそさっきの話はかなり重要なんだ百合は好きなんだが生やすのだけはどうしても受け付けないんだ百合には変わりないんだが何が違うんだろいやナニなんだけどないやすまねぇ生やす生やすって言っても分かりづらいな要するにふたn──」

 

OKブレーキスミス。お前の趣味の話はいいからさっさと出撃準備しろ。さもないとお前だけ移動時ヘリから吊り下げ(ミノムシ)な」

 

「わかったからそれだけは勘弁して⁉︎」

 

(なんで初めは真面目な話をしてたのにこうなったんだ…?いやきっかけ作った俺も悪いんだが)

 

────

人形教団集会所付近

 

「あれが人形教団ってやつか?ま〜奇妙な格好だこと」

 

スミスの視線の先には銃を持った多数の人形教団の者たちが集まっていた。

彼らが身に纏っているのは白装束のような格好だが、肘や膝の部分には人形を模してるつもりなのか、球体関節のような模様が入っていた。

 

「で?いつ突入する?」

 

「まだだ、奴らの教祖と救出対象の姿がいない。両者が現れてから作戦を開始する」

 

しばらくして集会所がざわつき始め、壇上に二人の男女が現れた。格好からして教祖と救出対象の人形だろう。

辺りが静まり返ると教祖らしき男が口を開く。

 

「…皆さん、よく集まってくれました。今日来てもらったのは近日中に下すD08基地への天罰について話すためです」

 

「何が天罰だ、これからお前らに天罰が下るんだよ…ん?」

 

呆れ顔で言うバレットは人形の方に視線を移す。

巫女服と修道服を混ぜたような白い服を着て、赤みがかった桃色の長髪を後ろに纏め、髪と同じ色の瞳をしたその人形はその格好も相まってどこか神秘的であり、それを見たバレットは少しばかり見惚れていた。

 

(いや待て、今は任務中だ…彼女に気を取られるんじゃない…!)

 

そう思いバレットは頭を振ってすぐに意識を集中させる。

やがて教祖が信者たちに天罰とやらの内容を説明するが杜撰としか言いようがなかった。

要は司祭に扮して祝福しに来たと言い、中に侵入し対象を捉えたら隠し持った拳銃やナイフ、爆弾で暗殺といったものである。

そんな作戦で向こうもハイそうですかと通すはずも無いだろうし、ボディーチェックをしないはずがない。司祭だからノーチェックで済むとでも思っているのだろうか?

 

「なぁバレット、正直放っておいても向こうで対処できるんじゃね?」

 

「いや、通してもらえないと知って暴れられても厄介だし、何より余計なストレスを妊婦に与えるわけにもいかないだろ?とりあえずそこのアホ教祖を撃ち抜くからお前達はそのあと閃光弾を投げて突入しろ」

 

指示を飛ばした後、バレットは教祖に銃の狙いを定める。ちょうど教祖は両手を広げて締めの言葉を言おうとしていた。

 

「では我らが巫女と共に祈りましょう。我らの策が成功し、使徒を使役する愚者に天罰がくだ──」

 

─ダァン‼︎

 

銃声が鳴り響き、教祖の頭部が弾け飛び血肉と脳漿が飛び散った。頭部を喪った身体は数秒ほど立っていたがやがて倒れていった。

 

「教祖様⁉︎」

 

「いったい何が─」

 

信者達が戸惑う中、バレットは突入の合図を出す。

 

「Go」

 

「よし来た!『光あれ』っと」

 

軽口を叩きながらスミスは閃光弾を投げる。数秒後に眩い光と激しい音が鳴り、ほとんどの信者の視覚と聴覚を一時的に奪う。

すぐにスミス、ウェイター、レスト、ノアの四人は突入、それぞれの獲物で信者達を撃ち倒していく。

すぐに集会所は阿鼻叫喚の図となり視覚が戻り始めた信者達は自分らを襲撃しているのが人形だと知り激しく動揺していた。

 

「なっ何故人形(使徒)が我らに攻撃を⁉︎」

 

「愚者達の考えに染まったか‼︎今すぐ()()しろ‼︎」

 

そう言い信者達は銃を撃つが回復したばかりの視界でロクに当てられるはずもなく、返り討ちに遭うばかりであった。

そんななか、突然何かが一閃したかと思うと、信者達の手足や首がバラバラになって床に落ちた。その攻撃の正体は先日ウェイターに渡された試作武器のワイヤーであった。

 

「ウェイター、それの使い勝手はどうなんだ?」

 

「悪くはないのですが、メインウェポンならともかく、サイドアームとしては不向きです。ペルシカさんには悪いですが、返却しますかね」

 

「ふーん」

 

十分と経たないうちに信者達は全滅し、スミスは人形の元へと駆け寄る。

 

「君、大丈夫かい?」

 

「え、ええ…貴方達は?」

 

「DG小隊っていうグリフィンの部隊さ。君の保護とこいつらの殲滅を依頼されて来た」

 

「えっと…私は罪に問われたりするのでしょうか?」

 

「直接テロを指示してなきゃ平気だと思うけど…」

 

「スミス、保護対象はどうだ?」

 

「ん、無事だよ。思想も奴らに染まってはないみたいだし」

 

「そうか…ならいい。回収ポイントに向かうぞ」

 

通信を終えるバレットだが、その様子にスミスは違和感を感じていた。

 

(バレットの奴、何か変だなー。対象が無事だったときの反応がいつもより安堵感があったような…?)

 

DG小隊は少しして回収ポイントに辿り着き、ヘリに乗り帰還する。

その途中で彼女から事情を聞いたが、どうやら彼女は信者達の象徴として教祖が用意した存在であり、時折彼らを鼓舞する発言はしたが教祖が用意した文書を代読するだけで彼女の意思ではない事が判明した。また、巫女として祀られた事が幸いし、性的暴行は加えられていないようであった。

 

「ふむ…そういう事ならば貴女は罪に問われることはないでしょう。まぁしばらくは検査や詳しい事情聴取などでグリフィン内に留まることになりますが」

 

「そうですか…良かった…」

 

バレットの話を聞いてほっとした笑みを浮かべる彼女にバレットも微笑み返す。そのやりとりを見てスミスは先ほどの違和感の正体に確信がついた。

 

(間違いない…バレット、この娘に惚れたな。いや〜恋愛に興味ないあいつが恋とはね〜しかも一目惚れとは。ま、出来るだけ応援はするかな)

 

なお、この出来事がちょっとした事件を起こすことになるのだが、それは後の話である。




はい、というわけで今回はカカオの錬金術師様の『元はぐれ・現D08基地のHK417ちゃん』よりD08基地を狙う輩を殲滅させました。
カカオの錬金術師様、承認ありがとうございます。

ちなみに今回救出した人形なんですが、大陸版で()()()の人形になるのですが…まぁその辺のことは今後の話にしますかね。


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Code-7 広報活動と隊長の受難

この作品が他の作者様に見てもらっていると知ってテンションとモチベが天元突破しております。本当にありがとうございます!
あと今回大陸版の子が出ます。


とある地区のPMCの拠点の司令室にて、6人の男が拘束されていた。

 

「ぐぅぅっ…!」

 

睨みつける男たちにスミスは近づいた。

 

「いや〜ね、おたくら足がつかないように人形教団を使ったのはいいんだけど、頼んだ相手が悪かったね。奴らの拠点にはそっちの通信記録やらメモやらがバッチリ残してあったよ。バッチリ残り過ぎてて罠かと思ったくらいだ。あんなんでよく今までテロを起こせたよなあいつら」

 

「運が良かったんでしょう。しかし私達に目を付けられたのが運の尽きでしたが」

 

人形教団を殲滅後、彼らに武器を提供した存在がいる可能性を考慮し、彼らの拠点に侵入、その後このPMCとの繋がりが明らかになり制圧作戦を開始、今に至っていた。

 

「チッ!DG小隊め…!」

 

「へぇ、俺らのこと知ってるんだ」

 

「あぁ知ってるさ、野郎の人形ばかりの部隊で鉄血じゃなくて盗賊とか反人形派ばかり狩ってる人殺し集団だってな」

 

「ハハッ、言えてるな。俺ら鉄血人形より人間の方が殺した数多いし」

 

軽口で返すスミスだが、よく見ると目が笑っておらず若干腹を立てている事が伺える。というのもこのPMCは以前より治安維持の名目で殺人や窃盗、強姦などをしているという噂があったのである。ただあくまでも噂なのでグレーゾーンだった訳だが、今回の制圧作戦でその辺の証拠が基地内で発見されたのである。そんな連中から『人殺し集団』などと呼ばれるのは極めて不快であった。さらに男はレストの方を向き、ニヤついた顔でこう言い放った。

 

「それに、そこの赤目野郎の事も知ってるぞ?お前、元男娼人形なんだってなぁ?今はこいつらのオモチャか?毎晩男同士でヤりやって─」

 

刹那、レストの蹴りが男の顔に炸裂し男は派手に吹っ飛んだ。

 

「がっ…!ほ、ほれのあぎょ(お、おれのあご)が…‼︎」

 

「次言ってみろ…二度とその口きけないようにしてやる…!」

 

自分の禁忌に触れた男への殺意を剥き出しにするレストだが、ウェイターに止められる。

 

「やめなさいレスト。彼らは余罪があるから殺すなとヘリアンさんから言われてるでしょう?」

 

「……すまんウェイター、ついカッとなってその事を忘れてた」

 

「まぁ私も頭にきてたので人の事は言えませんが」

 

「よし、連れてくか。あーあ、綺麗に顎外れてら。よーいせっと」

 

「あガッ!」

 

スミスは先ほどの仕返しとばかりに男の顎を無理矢理ハメ直すとヘリへと連行していった。

 

「にしても、あちらこちらで俺らの噂が広まりつつあるな」

 

「おおかた救出した人形達の口から広まってるんだろう。404小隊みたいな記憶処置は任務の特性上出来ないし、第一、隠すほどでもないからな」

 

DG小隊の存在の秘匿性はそこまで高くはない。内外問わず探りを入れられてもわからない程度には秘匿されているが救出対象や視察先の基地などと接触した場合はその限りではない。

 

「記憶処置をしますと、そもそもなんで救出されたのか本人がわからなくなりますしね。しかし、レストの事まで知れてるとは…」

 

「俺がいたあの場所は客同士の繋がりがそこそこあった。多分連中の生き残りがお仲間がどんどん死んでんのが俺の仕業だって勘付いたんだろ」

 

そこで話を終えると、スミスはバレットを見ながらニヤニヤしていた。

 

「それでバレット、彼女とはどうなんだ?」

 

「は?な、何の話だ…?」

 

「トボけんなよ。この前人形教団から助け出したあの娘だよ。ちょくちょく会いに行ってんの知ってんだぜ〜。つか、惚れてんだろ?」

 

「なっ⁉︎」

 

狼狽え始めるバレットに他の3人も興味を持ち始めた。

ちなみに件の彼女だが本社での取り調べの結果、教団から発言を強要された被害者という事で無罪となっている。

 

「この頃部屋に居ない事が多かったが、てっきり訓練をしてるかと思ったんだが、そういう事だったのか隊長」

 

「私は二人が時折会話しているのを見ていましたのでそうだろうなとは思っていましたね」

 

「どうなんですか、隊長さん?」

 

隊員全員に問い詰められ、バレットは観念し白状した。

 

「……あぁ、惚れてるよ、初めに見た時からな。何度か話したり出掛けたりしてるんだが、話も合うし、そばに居たいと思ってるよ」

 

「で、告白は?」

 

「近いうちに彼女、戦術人形に改造するって言ってたからその後に告白しようかと思ってる」

 

「ほぉ、成功するといいな。お前らもそう思うだろ?」

 

「「「もちろん(です)」」」

 

「…ありがとな、みんな」

 

────

 

「広報部の取材?てことは俺達の存在を各基地に知らせるってことですか?」

 

そうだ、とヘリアンがバレットの質問に答える。

 

「最近、人類人権団体の過激派やその他の反人形派の活動が活発化しそれに伴い貴様達の出番も増えている。その結果、必然的にDG小隊の噂が広まりつつある。それだけならまだいいが明らかに悪意のある噂も流れている」

 

「例えば?」

 

「殺しを楽しんでいる快楽殺人集団だとか、助けたことを口実に肉体関係を強要しているとかだな」

 

「……何でみんな俺の方見るの⁉︎

 

「いや、だってスミスいつも救出した人形に連絡先渡してるし…」

 

「それは隊全体の連絡先だ!それに、お前がそうしろって言ってたの忘れてんのかバレットぉ?」

 

「え?…あぁ、そうだったな。すまん」

 

「ひっでぇ⁉︎」

 

「続けるぞ。そのような噂が流れるのはDG小隊の本質からしてもよろしくない。否定するにも、そもそもそんな部隊がいるのか?という話になる。そこでだ、そういったものを払拭するためにもいっそAR小隊のように全面的に告知させることが決定したというわけだ」

 

そこまで聞くとレストが手を挙げ質問した。

 

「一つ良いですか?知らせるのは構わないんですが、どこまで広報に載せる気です?」

 

「公表に至るまでの経緯とDG小隊の活動内容及びメンバー全員の名前と容姿、対応している銃、それと最近行った作戦内容だ。この前のカルト教団殲滅と娼館に拉致された人形らの救出作戦を載せる予定だ。安心しろレスト、貴様の経歴は絶対載せさせない」

 

「…なら平気です」

 

「取材は明日行う予定だ、遅れるなよ」

 

一行は部屋から出て行った後、バレットの方を向く。

というのも、明日は例の彼女が戦術人形へ改造する日なのである。

 

「バレット、取材が終わったら告白しに行くのか?」

 

「あぁ、彼女には待ってるようには言ってある」

 

「しかし、彼女はどんな銃の人形になるのでしょうね?」

 

「あの感じだと、MGかRFってところだろうな」

 

「ARかもしれませんよ?」

 

────

 

翌日、広報部との待ち合わせ場所についた一行は写真撮影を開始する。

初めに撮影したのはスミスであった。

 

「うーんいいよスミス君!もっとこう…後ろに跳びのきながら撃つ感じ…そうそう!ナイス!()になるねー!」

 

「ハハ、カズオさんだっけ?だいぶ人ノせるのが上手いねぇ。あ、君は文書担当?俺のとこに書いといてくんない?撮影用じゃなくて、ガチで二丁拳銃でS&WM500(これ)撃てるって」

 

「わかりましたー」

 

スミスはノリノリでカメラマンの中年男性の要望に応えつつ、文書担当の人に指示を出していた。ちなみに今回彼らが持ってる銃はもちろん弾は全弾抜いてある。

また、今更だが彼が愛用している銃は8.375インチモデルである。4インチモデルならともかく、そんなものを二丁拳銃で構えていれば撮影用では?と疑われると考えての先ほどの指示であった。

 

続いて撮影されたのはバレットであった。

 

「よーし、伏せ撃ちはこれでいいねー!次は立って狙いをつけてくれるかな?」

 

「はい。あ、俺のとこにも書いといてくれませんか?立って正確に連射できるって」

 

「わ、わかりました…(何この二人?規格外過ぎない?)」

 

────

 

同刻、16Labにて例の彼女が戦術人形へ改造する準備を進めていた。

 

「じゃ、これから貴女に適合する銃を調べるから少し待っててね」

 

「は、はい…」

 

ペルシカはそう言い装置の電源を入れる。

すぐに装置が動き出し、莫大な銃のデータから彼女に適合するものを選び始める。

 

(にしても、バレットがこの娘に惚れてるとはね…)

 

そう考えながら彼女を見つめていると、ちょうど終了のアラームが鳴った。

 

「終わったみたいね、えっと…貴女に適合するのは……え?」

 

画面に表示された銃を見た瞬間、ペルシカの顔は固まっていた。

 

────

 

「はい、じゃあ次は背中合わせで…よしOK!」

 

レストとノアの撮影はまずそれぞれ個人での撮影をし、その後ツーショットを撮り二人の撮影は終わる。

ウェイターの撮影を開始するなか、レストはノアに尋ねた。

 

「ノア、なんでさっき俺たちが付き合ってることを書いてくれって頼んだんだ?」

 

「だって…広報見てレストさんのこと好きになった人形がいたら、嫌ですもん…」

 

「……そっか」

 

悶えそうになる気持ちを抑えつつ、レストはノアを抱き寄せ、頭を撫でていた。

 

────

 

「はーい、ウェイター君それ、なかなか様になっているね〜!」

 

「ありがとうございます」

 

「では撮影は以上でーす!お疲れ様でした!」

 

「広報の方は数日ほどで出来上がるので良かったら見てください」

 

撮影は無事終了し、彼らは撮影現場から立ち去り、そのまま16Labへと向かう。この後バレットは戦術人形への改造を終えているであろう彼女と対面、その後告白するのだが、当のバレットはかなり緊張していた。

 

「そんな緊張するなよバレット。いつもみたいにしてればうまくいくって。仲は良い感じなんだろ?」

 

「いや、それはわかってるがどうもな…てか、何故お前らも付いて来る?」

 

「まぁ、隊長の彼女になる人形がどんな銃の人形になったか気になるし」

 

「さすがに告白するときには席を離れますよ」

 

「隊長さん、頑張ってください」

 

「…あぁ」

 

────

16Lab

 

「………」

 

「いやね、私も何かの間違いかな〜って思ったのよ。でも何回検査しても同じ結果がでたの…。えっと…その…本当にごめんなさい…」

 

ショックと混乱の入り混じった表情をしているバレットと珍しく本気で謝っているペルシカだが、こうなっているのは例の彼女が持っている《銃》にあった。

 

特徴的なマズルブレーキをもつその長大なライフルの名前は《バレットM82A1》。バレットM107の姉妹銃であり、つまり彼女はバレットの実の姉ということになってしまったのである。

 

これにはスミス達も困惑するしかなかった。

 

「なぁ、こういうことってあるのかよ?」

 

「どの銃になるかは適正次第ですが、さすがにこれは…」

 

「もしかして、隊長さんが抱いてたのは家族愛だったんじゃ…」

 

「ノア、それ隊長には言うなよ」

 

小声で話すスミスらだが16Lab製であるバレットの耳にはバッチリ聞こえていたが、それに反応する余裕は彼には無かった。

対する彼女──M82A1はバレットに声を掛ける。

 

「ええっと、話があるっていうのは…何でしょうか?」

 

「いえ…何でもないです…M82A1…姉さん…」

 

今出来る最大限の笑顔を作り、絞り出すような声でバレットは答えた。

 

こうして、DG小隊隊長、バレットの初恋は予想もつかない形で結末を迎えることとなり、その夜バレットは製造されて初めて──泣いた。

 

その後しばらくの間、彼の前で『姉』というワードを口にしてはいけないという暗黙の了解がなされたのは言うまでも無かった。




前に言ってた面白いネタってこれのことだったりします。正直隊長にはすまないと思っています。
あとカメラマンの男性は別に人喰べたり首蹴り飛ばされたりしませんよ?(知ってる人は知ってるネタ)
広報紙についてはお好きにどうぞ。

空挺妖精がやっとでた…!あとはスキルレベルを上げれば2-4はいける…!


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Code-8 狙撃手vs狙撃手

二行でわかる前回のあらすじ

「I am your sister」
「Nooooo‼︎」

あと今回アンケートを取ります。


あれから数日後、ようやくバレットが失恋から立ち直ってすぐにDG小隊に新たな指令が出された。

内容はとある山間部に集まっている人類人権団体の過激派の殲滅である。

とはいえ、最近各地区で大規模な過激派の掃討作戦が行われているらしく、今回殲滅するのははっきり言って小物に等しいのだが、それなりの戦力を有しており、早急に対処せよとの事であった。

目的地への移動中、スミスは恐る恐るバレットに尋ねる。

 

「なあバレット、本当に大丈夫か?」

 

「平気だ。俺らの存在を公表した以上、俺らに目を向けるところもあるんだ。いつまでも落ち込んでいるわけにもいかないだろう」

 

バレットの言うことは半分は嘘である。今この場でそのことを蒸し返そうものならそいつに顔パンした後ヘコむくらいの精神状態だが、先ほど言った通りDG小隊のことは各基地に知れ渡ることになる。そのDG小隊の隊長を務めているからにはいつまでも私情でへこたれてるわけにはいかないのである。

 

──

 

「で?奴らの装備はわかってるのか?」

 

目的地に着き、過激派のいる廃墟周りで配置についた後、スミスがバレットに尋ねる。

 

「今回集まってる奴らが持ってるのは小銃やSMG、あとはLMGくらいだそうだ。RPGも持ってるらしいが中に侵入すれば問題ない。さすがに屋内でぶっ放すほどバカじゃないだろ」

 

「戦車や自立兵器を持ってると聞きましたが?」

 

「戦車や強化外骨格はこの前使って返り討ち、自立兵器は爆発事故でみんなオシャカになったそうだ。第一、そんな目立つもん持って来たら見えてるだろ?」

 

「それもそうですね」

 

「つか爆発事故って…奴ら、配線ミスって自爆したのか?」

 

「そこまでは知らん。無駄口はそこまでにして突入準備に──」

 

その時だった。彼らから見て奥側の廃墟が爆発し、その後レーザーのようなものが閃き、止まっていたジープを次々に破壊していった。そしてそれはスミス達にも降りかかった。スミス達はそれらを間一髪回避する。

 

「なっ何だぁ⁉︎」

 

「今のはレーザー?まさか…!」

 

当然廃墟内は蜂の巣をつついたような騒ぎとなり、過激派達が出ていき攻撃を受けた方向に銃を撃つ。だがすぐに返り討ちに遭い、物言わぬ死体と化した。

あっという間に過激派を襲撃し、殲滅した存在、それは──

 

「鉄血だと⁉︎」

 

「何故ここに鉄血が?たまたま向こうの作戦行動中にここを見つけたとかですか?」

 

違うな、とウェイターの疑問にバレットが答える。

 

「あれは元々ここに過激派がいるとわかってやった攻撃だ。いや、正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。スミス達も狙われたのがその証拠だ」

 

「つまり俺らは過激派をエサにおびき出された訳か?過激派がやられたのは俺らが来たから用済みになったからか」

 

「さっきのレーザーといい、こんな真似する奴は俺の知る限り一人しかいねぇ…」

 

『はーい、その通り♪私で〜す!』

 

「っ!やっぱりお前かドリーマー…!」

 

全周波で流されたドリーマーからの通信にバレットは忌々しげに顔を歪める。

 

『グリフィンのゴミクズ人形を守るあなた達の行動なんて、過激派の動きを見ればすぐわかるもの。今日こそあなたを手に入れてみせるわバレ〜ット♪』

 

猫なで声でドリーマーが言った直後、鉄血人形達がスミス達に攻撃を仕掛けてくる。

 

「気色悪いんだよ芋砂がッ‼︎捕まえたことなんかねぇくせに‼︎」

 

バレットはそう吐き捨ててスミス達の援護を開始する。

 

『あらあら、そういうけど何回もダミーや手足を撃ち抜かれて泣きながら撤退したのはどこのマヌケさんかしら〜?』

 

「泣いてねぇよ‼︎頭だけじゃなく目ん玉もイカれてんのか⁉︎」

 

 

こうもバレットが毒づくのは訳があった。

バレットとドリーマーは過去に偶発的に接触し戦闘を行った事がある。その時は苦戦しながらもバレットがドリーマーを撃破したのだが、その日以来ドリーマーに目を付けられてしまい、幾度となく奇襲を受けていた。何度か捕まりそうになった事があったがなんとか帰還を果たしたり返り討ちにし、今に至っていた。

バレットにとって一番相手にしたくないのがドリーマーである。というより単純に彼女が気に入らないのだ。

彼女にダミーや自身の手足を撃ち抜かれれば彼女お得意の話術で煽り立ててくるのもあるが、何より、ここ最近ではそうでもないがバレットは前に出る傾向がある狙撃手であり、所謂凸砂気質がある。対するドリーマーはあまり動かない狙撃手であり、所謂芋砂である。

 

要は根本的なところから気にくわないのである。

 

「おいドリーマー!何でバレットばかり執着してんだ?16Lab製の人形が欲しいなら俺でもいいんじゃないのか?」

 

ヴェスピドを撃ち倒しながらスミスは前から思っていた疑問をぶつけた。

 

『ごめんなさいねスミス。六発じゃないリボルバーには興味ないのよね〜』

 

「ンだとぉ?六発じゃなくて何が悪いッ‼︎つーかそれナガンばーちゃんの前でも同じこと言えんのかゴラァ‼︎」

 

「スミス、あまりドリーマーの言葉に乗らないでください!今は目の前の敵に集中してください!」

 

グレネードで敵を一掃しつつウェイターが叫ぶ。

しばらくしてバレットも前に出る。ドリーマーの狙いはバレットであることには変わりはない。なら動き回って彼女に自分を狙わせて位置を把握し、カウンタースナイプを決めるしかない。

早速彼に向かって幾つかのレーザーが降りかかる。バレットは回避するが躱しきれず幾つか掠めたがすぐ位置を確認し数発射撃を加える。手応えを感じたバレットだったが──

 

『ざ〜んねん♪それはイェーガーよ〜』

 

「チッ!出力を絞ったか‼︎」

 

やはりそれはドリーマーにもわかっていたようで自らの獲物の出力をイェーガーのものと同程度にまで絞って自分の位置を誤魔化していた。

さらにはバレットの行く手を阻もうとリッパーやプラウラーが彼に向かう。

それに気づいたレスト達は迎撃を開始する。

 

「隊長!ここは俺らにまかせてドリーマーを!」

 

「分かった!」

 

鉄血人形の相手をレスト達に任せ、バレットはドリーマーを探す。

途中何度かイェーガーが彼を狙うが的確に対処していった。

出力が同程度とはいえ、量産型のイェーガーとハイエンドモデルのドリーマーでは狙いの精度に違いが出る。その違いをバレットは突いてドリーマーの位置を掴んでいく。

 

一方、ドリーマーもそれには気がついていた。

 

(ふふ、やっぱりあなたは面白いわぁバレット。他の人形だったらあっさり騙されて殺られるのに、確実に私のとこに向かってきている。あぁ早く来なさいバレット…勝てると思っていた状況から返り討ちにしてその顔を屈辱に歪ませたい…!そして『傘』を埋め込んで飼い殺したい…!)

 

歪んだ考えを巡らせるドリーマーだが、ある事に気が付いた。

 

(にしても、いつもより何か感情的ね…ちょっとイジってみようかしら)

 

『どうしたのバレットぉ?いつもより機嫌が悪いんじゃなぁい?』

 

「いつも任務の邪魔ばっかしてれば機嫌が悪くもなるだろうよ‼︎」

 

『あぁ、もしかして…()()()()()()()()()()()()()?』

 

「「「「………あ」」」」

 

今、ドリーマーは彼の最大の地雷を踏み抜いたのであった。

 

……ブチッ‼︎

 

バレットから明らかに何かが切れた音が聞こえたのであった。

 

…その憎たらしい顔を吹っ飛ばしてやんよ芋砂ァァ!!

 

『アッハハハハハ‼︎図星みたいねぇ‼︎ねぇ何で?何でフラれたのぉ?あなた顔は悪くないのにぃ?教えてよバレット…笑って慰めてやるからサァ‼︎

 

「黙れこのF****nB***‼︎」

 

「「「「うわぁ……」」」」

 

「あんなにキレ散らかす隊長さん始めて見ました…」

 

「まーありゃドリーマーが悪いからしゃーないな」

 

余裕そうにしているスミス達だが、実際彼らと対峙していた鉄血人形は全滅し、本来ならバレットを援護しドリーマーの撃破に向かうべきなんだが、今の状態で近づけば完全に邪魔扱いされるので近づかず、イェーガーの排除に努めた。

 

隊員達の意図を理解したバレットはイェーガーからの攻撃は完全に無視し、ドリーマー抹殺に切り替え、ついにドリーマーを視界に捉えた。しかも彼女はこちらに気が付いていないようであった。

 

「くたばれドリーマァァー‼︎」

 

バレットはドリーマーに狙いをつけ、引き金を引こうとする。

が、突如ドリーマーはこちらを向け、出力を戻したレーザーを撃ち放った。

 

「っ⁉︎」

 

直後、爆発が起き、辺りが煙に包まれる。

 

「バレット⁉︎」

 

「アーハッハッハ!こんな手に引っかかるなんて、よっぽど頭に血が上ってたのねぇ?でも安心してスミス、バレットは足だけ吹っ飛ばして気を失ってるからあとはお前らを始末してから彼は連れてってあげる♪足には何を付けてあげようかしら?ドラグーンの下のやつの脚?プラウラーのタイヤもいいわねぇ。あ、いっそお前らの手とかどうかしら?」

 

ケタケタ笑いながらそのままスミス達の方へ向かうドリーマー。だが──

 

「悪いがどれもお断りだ、俺の足はまだあるからな」

 

「なッ─!」

 

足を吹っ飛ばされて気を失ってるはずのバレットの声が聞こえ、予想外のことに驚くドリーマーだが、次の瞬間には彼の放った12.7×99mmNATO弾が彼女の顔に命中し、先の宣言通り派手に吹っ飛ばし、頭部を失った体は機能を停止した。

 

「バレットお前…わざとキレた演技してたのか?」

 

「いや、最後に怒鳴りつけるまではガチでキレてた。あとは演技だ。相手を怒らせてこっちのペースを乱すのはあいつの得意技だしな。俺を捕まえたいって言っていた以上無力化するのは目に見えてるし、外したら致命傷になる手より足を狙うだろうって考えて避けたんだが避けきれなくてこのザマだ。悪いが肩貸してくれ」

 

そう答えるバレットの左脚は膝から四分の一ほどが無くなっており、さらには爆風でところどころ肌が焼け爛れていた。

スミスに肩を貸してもらいながらバレットはゆっくり歩いていく。

 

「…にしても、あいつ本当にしつけぇな。どんだけ俺を捕まえたいんだよ」

 

「いいじゃんあんな熱烈なアプローチされて。案外付き合ってみたら面白いかもよ?」

 

「……こんな状態じゃなきゃお前をぶん殴ってるぞスミス」

 

「だから言ったんだよ」

 

軽口を叩きながら彼らは回収ポイントへと向かっていった。

 

────

鉄血工造

 

「あ"あ"あ"クソッッ‼︎もう少しであいつをモノに出来そうだったって〜のによォォッ‼︎」

 

新しいボディから復活したドリーマーは怒鳴り声をあげながら近くの物に当たり散らす。

そこへ代理人が現れる。

 

「また彼に負けたのですかドリーマー。確かに貴重な男性型戦術人形、それも16Lab製の彼の鹵獲を命じたのは私ですが、こうも損害を出されては彼を捕獲しても割に合わなくなるのですが?」

 

「わかってないわねぇ代理人。オモチャってのは苦労して手に入れた方がそれだけ嬉しくなるものよ?それに、そんな事言って鹵獲命令を撤回しないあたり、あなたも彼が欲しいんじゃないの?もしかして欲求不満とかかしら?」

 

「まだ彼にはその価値があるだけです、くだらない事を言わないでください。それと、次の出撃時には自爆装置を付ける事を薦めます。最近、ハイエンドモデルの鹵獲が多発しているので」

 

そう言い残し代理人は立ち去っていく。その道中、代理人はひとり考えを巡らせる。

 

(今までいなかった男性型戦術人形…鹵獲してデータを取ればこちらの戦力増強に役立つはず…しかしこれだけの損害がある事を鑑みれば16Lab製で隊長である彼にこだわらず、他のメンバーを鹵獲する事を視野に入れなくては…)




よその基地のドリーマーが人助けしてんのにこんなん出して良いんだろうか…
まぁ別個体だからセーフってことで。
あ、アンケートですが、短編で書きたいのが出来たのでそれ書き終わるくらいに終了する予定です。


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Code-9 小さな守護者-①

皆さまの思い、しかと伝わりました!
ではショタ回です、どうぞ!


ある日、DG小隊はペルシカに呼び出され、16Labに集まった。

 

「急に呼び出して、一体何の用なんだ?」

 

バレットが質問するとペルシカは深刻そうな顔でこう告げた。

 

「…あなた達、前にドリーマーと交戦したわよね?この前検査した時にわかったんだけど、多分その時にやられたんだと思うけど、ナノマシンタイプのウイルスが検出されたわ」

 

「なっ⁉︎ウイルスだって⁉︎」

 

「そんな…!」

 

「安心して。今日呼んだのはそのナノマシンを駆除するナノマシン入りのカプセルが出来たから呼んだの。幸いウイルスの効果はまだ出てないから今飲めば問題はないわ」

 

そう言いペルシカはカプセルと水を個別に手渡した。バレット達はそれをすぐに飲み込むが、ノアだけがある事に気づいた。

 

(あれ?これって…)

 

「それにしても、ナノマシンタイプのウイルスとは…それで、そのウイルスはどんな効果が─」

 

ドサリ、と突然ウェイターがその場に倒れた。

 

「ウェイター⁉︎おいペルシカ、どうなってんだこれ⁉︎」

 

「あ〜ゴメン。ウイルスが検出されたって言ったわね…あれは嘘よ

 

「は?じゃあさっきのカプセルは一体─」

 

最後まで言う前にノアを除いた全員がその場に倒れこんだ。

 

「え?え?」

 

「あぁ、ノアに飲ませたのはただの強化カプセルよ」

 

「あ、やっぱり…えっと、レストさん達に何を飲ませたんですか?」

 

今にわかるわよ、とペルシカは人の悪い笑みを浮かべていた。

 

───

 

「んっ…クソ、頭が痛ぇ…ペルシカ、お前何飲ませ…あ?何か声が変だな?」

 

バレットが頭を抑えながら起き上がるとある違和感に気づく。()()()()()()()()()()()。それに、目の前にいるペルシカとノアが()()()()()()()()()()()

 

「バレット、コレで自分の姿を見てみなさい」

 

ニヤニヤしながらペルシカが持ってきたのは姿見だった。バレットはその前に立って自分の状態を確認する。

 

「──ッ⁉︎なんじゃこりゃあぁぁ⁉︎

 

そう叫ぶバレットの姿は、だいたい8歳前後の姿にまで縮んでいたのであった。

 

「うるせぇなバレット…ん?何でお前小さく…ってえぇぇ⁉︎俺もかよ⁉︎」

 

「一体何だ二人とも…は?何だこれ⁉︎」

 

スミスやレストも同様に小さくなっており、自分の姿に困惑していた。ウェイターはまだ目が覚めていないが身体が小さくなっているものの、三人と違い彼だけ6歳くらいの姿となっていた。

 

「おいペルシカ‼︎どうゆう事だこれは⁉︎」

 

「いや〜ね、前々から人形の幼児化薬とか作っていたけどね?それでこれってあなた達にも効くのかなって思って男性型のあなた達に合わせて改良したのを試したんだけど、どうやら成功したみたいね」

 

「それだけのためにわざわざ呼んだのかよ…しかも服まで縮んでるし、物理法則はどこいったんだよ…」

 

「っ⁉︎待てよ、まさか…⁉︎」

 

スミスはハッとした顔で部屋の奥へと向かう。数秒後、どんよりした顔で戻ってきた。

 

「Oh…デリンジャー…」

 

(ナニ見てんだよコイツは…)

 

「傷が…なくなってる…!」

 

自身の身体を見てレストは驚いていた。今の身体には彼の身体中にあった傷が無くなっていたのだった。

 

「へぇ、それは予想外ね。後でデータを取らせてくれる?もしかしたらそれを元にあなたの傷を完全に消せるかもしれないわ」

 

「本当かっ⁉︎是非頼む!」

 

レストが一つの希望を見つけたところで、ちょうどウェイターが起き上がった。バレット達はウェイターが今の姿にどんな反応をするのか気になった。

が、当の本人はキョトンとした顔で首を傾げていた。

あれ?なんかおかしくね?そんな雰囲気が漂い始めた頃、ウェイターが口を開いた。

 

「…たいちょう?どうかしたの?」

 

「「「「「……はい?」」」」」

 

いつもの口調ではなく、年相応の言葉で話すウェイターにその場にいた五人は固まっていた。

すぐさまバレットはペルシカに問い詰める。

 

「…ペルシカ?これは一体?」

 

「あー…そういえばこの薬、メンタルモデルがボディに合わせて幼くなることがあるんだっけ…」

 

「つまり今のウェイターは見た目も中身も子供になってるのか?でも、さっきバレットの事を隊長って言ってたぞ?」

 

「記憶自体はそんなに影響しないみたいね。効果は一日くらいで無くなるから、その時に戻ると思うわよ?」

 

「それまで俺らはこのままかよ…」

 

「まぁいいんじゃない?子供の頃に帰った感じで?」

 

ねぇよ人形に子供の頃なんて

 

バレットはごもっともな意見を述べた後、とりあえず外に出なければいいとの事なのでスミスと共に出て行った。レストはデータの採取の為にノアと残り、ウェイターも状態が状態なのでそのまま残る事にした。

 

───

 

「うーん、やっぱこの身体じゃ片手で撃てないか…」

 

スミスは射撃場にて一人呟く。どうやらボディの性能は元の身体に比べて劣っているらしく、両手で構えて撃つのが精一杯だった。(そもそもS&WM500は両手で構えて撃つものだが)

するとそこへ、グリズリー、リー・エンフィールド、ネゲブの三人が訪れた。三人はスミスの姿を見つけると眉をひそめた。

 

「あれ?あんな子いたっけ?」

 

「いえ、見覚えがありませんね…あ、でも何かスミスさんに似ていませんか?」

 

「もしかして…隠し子とか?」

 

「「あー」」

 

違うッ‼︎本人ッ‼︎本人だから!

 

スミスはこうなった事情を三人に説明する。

すると三人は心当たりがあるようで納得したようであった。

 

「私たちもあったわねそういうの。まぁこっちはスキンだったけど」

 

「まったく、ペルシカといい、I.O.Pは何でこんなもの用意したのかしらね」

 

「君たちはそん時は射撃とか不便なとこは無かったのか?特にリーなんかはライフルが身長とほぼ同じだろ?」

 

「いえ、動きづらい事を除けば普段通り扱えましたね」

 

「ふーん…そこは薬とスキンの違いか」

 

その後スミスは3人と雑談をした後、射撃場から出て行った。

廊下を歩いているときだった。目の前でバレットが血相を変えて走り去っていくのが見えた。何事かと思ったスミスだが、そのすぐあとに彼の後を追うようにM82A1が現れた。彼女はスミスの姿を見つけると足を止めた。

 

「スミスさん?彼もこんなに可愛く…いやそれより、弟…バレットを見ましたか?」

 

この時、スミスは正直に言わないほうが良いなと直感した。

 

「いや、さっき来たばかりだから知らないな…」

 

「そうですか…わかりました…せっかくお姉ちゃんが何とかしてあげるって言うのに…

 

M82A1は再び走り去った。ちなみに彼女が発していた小声はスミスは聞こえていたので、先ほどのバレットの様子から彼に何が起きたかスミスは何となく把握した。

 

(彼女…ショタコンだったかぁ…。前々からなのか、バレット見て目覚めたかは知らないが、バレット…無事逃げ切れよ…)

 

スミスはバレットが逃げた方に向かって静かに合掌した。




Q.何故ウェイターだけあんな風に?
A.生真面目な弟が突然見た目も中身もショタ化して戸惑いながらもデレるFALを書きたいから。

なんて事だバレット…!君の受難は止まらない、加速する…!(アイン感)
果たして彼は逃げきれるのか?
この話、多分あと二話くらい続きそうです。

あと、前回言ってた短編貼っときます。蝶事件前に鉄血を使っていたPMCの話なのでバッドエンドですが。
https://syosetu.org/novel/194168/


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Code-10 小さな守護者-②

※深刻なキャラ崩壊があります。注意してください。

今回はバレットサイドの話です。


さて、時間はスミスが姉から逃げるバレットを見つける少し前に遡る。

バレットは初めはスミスと同じく自分の射撃性能を確かめようと思ったが、さすがにこの身体で立って撃とうものなら人形の彼でも何かしらの悪影響が出る可能性を考えて射撃場に行くのをやめ、その辺をウロウロしていた。

─思えばこの時射撃場に行っていればあんな目に遭わずに済んだのでは?とのちにバレットは思った。

途中で何人かとすれ違い、彼の変わりように驚いていたが、事情を説明すると納得した。

 

そのまましばらく歩いていると、M82A1とバッタリ出くわした。

 

「あれ?バレッ…ト…なの?」

 

「ええ、バレットですよ姉さん」

 

あの一件以降、二人はあまり会っていないかと言われればそうでもない。あの件があったとはいえ、バレットにとって彼女は姉なのである。それなりに接していたのであった。とはいえ、バレットとしてはやや複雑な気持ちだったが。

 

「それで、何でそんな姿に?」

 

「ペルシカに薬の実験台にされましてね。今日一日はこのままらしいです」

 

「そうなの…ちょっといい?」

 

「ねっ姉さん⁉︎」

 

M82A1はバレットの身体をペタペタ触り始めた。姉とはいえ、一度惚れた相手にこんな事をされて慌てるバレットだが、まぁ珍しいんだろうなと思い姉の好きにさせるようにした。

が、すぐにバレットは違和感に気づいた。

 

(なんか…段々手つきがアヤしくなってるような…

 

初めは頰や二の腕だけに留めてあったのだが、徐々に彼女の手は背中や胸部、お腹へと伸びていった。しかも触り方も恐る恐る触る感じからネットリとした感じに変わり始めていた。しかも彼女の息が何故か荒くなってきたのだ。

そしてその手が下半身に伸びたあたりでさすがにバレットは呼び止めた。

 

「あの、姉さん?」

 

ハァ…すっごいプニプニ…!ハッ!あ、ごめんね?ちょっと珍しくて…危ない危ない、怖がらせちゃダメね…どうやって部屋に入れよう…

 

もうこの時点で不安しかないがバレットはその考えを否定しようとする。

 

(いや、たしかに外に出た時とかよく子供とか見ていたけどそれは多分母性の類のはずだ!さっきのだってただのスキンシップだろう、他の兄弟姉妹でもやってる事だ、そうだそうに違いない!姉さんを信じよう!)

 

そう思いバレットら顔を上げた。するとー

 

そうだ、最近暑いからシャワー浴びる事を進めて部屋に入れましょう、一人で先シャワー室に入らせてあとから乱入しよう姉弟だものそれくらい自然な事よね。あ、でも中身はそのままだから私の姿を見てワタワタしそうねでもそれはそれでカワイイかも♡それでしばらく堪能したらそのあとは…フフフフ…

 

あ、完全にヤベー奴だわこの姉。

そう感じたバレットは後ろを向き、脱兎の如く走り去った。

 

「あっ!待ってバレット!お姉ちゃんと一緒に…」

 

そう言いながらM82A1が追いかけてくるが彼は絶対に追いつかれまいと必死に逃げていた。

 

Oh My God‼︎今まで姉さんそんな趣味がある様子なんて少しもなかったぞ⁉︎もしかして隠してたのか⁉︎ってか何でああなった?教団か⁉︎人形教団の所為か⁉︎あいつらといた所為で性癖が歪んだとか?チクショウ人形教団め、死んでからも迷惑かけやがって‼︎とにかく今は逃げ切んなきゃマズい、捕まったら色々と死ぬゥ!

 

──そして現在に至るのであった。

 

幸い彼女がスミスを見て足を止めた事で距離が空き、撒くことに成功したバレットは物陰で一息ついていた。

 

(何とか撒けたか…?いや、油断はできない。まだ姉さんはその辺にいるはずだから誰かの部屋に匿ってもらうしかないか…)

 

「あれ〜?バレットさん?どうしたんですかその姿?」

 

声のした方を向くとSuper SASSがこちらを覗き込んでいた。

 

「あぁSASSか。ちょうど良かった、実は…」

 

バレットはこれまでの事情を説明した。

 

「うわぁ…それは大変でしたね…」

 

「というわけなんだが、すまないがしばらく部屋に匿ってもらえないか?同室のM99にも言って欲しいんだが…」

 

「そういう事なら良いですよ。M99ちゃんは今日は任務でいませんからそこら辺は大丈夫ですよ」

 

「そうか、本当に助かる。この礼はあとで返すよ」

 

二人はSASSの自室へと向かっていった。

部屋に入ったあとSASSは飲み物を持ってきますねと言い、部屋の奥に消えた。

 

(匿ってもらってるとはいえ、女の子の部屋にいるのはあまり落ち着かないな…)

 

バレットは部屋を見渡した。きちんと整理されてるんだなと思っていたら、ベッドの下に雑誌が落ちているのが見えた。人の趣味を見るのはどうかと思いつつも興味本位でその雑誌を見る。

その雑誌は『Cute boy○月号』という男の娘系のいかがわしい写真集だった。

 

「……」

 

嫌な予感がしたバレットはSASSの様子をこっそり見に行った。

バレットの視線の先に居たのはアブない顔をして恐らくM99の私服を持っているSASSの姿だった。

 

今のバレットさんはM99ちゃんと同じくらいの体格だから多分サイズは合うよね…お礼は後でするって言ってたけど今これを着せる事をお礼代わりにさせましょう♪もし嫌がったらダミーを使ってでも…

 

Super SASS、お前もか。

バレットはバレないように物音を立てずにドアまで近づき、ゆっくりとドアを開けて外に出て静かに閉めると一目散に立ち去っていった。

 

「バレットさ〜ん、ちょっといい…あれ?」

 

────

 

あっっぶねぇぇぇ‼︎アレ見てなかったら完全にヤバかったぞ⁉︎SASS、真面目な顔してあんな趣味もってたとは…M99はこの事知ってんのか?ってか、ここ最近の俺の女運の無さは何だ⁉︎今度K5にでも見てもらった方がいいか?)

 

姉はショタコン、真面目な知り合いは男の娘趣味と色々衝撃的な事が襲いかかり、バレットの精神はかなりすり減っており、もう若干人形不信になりかけてるがなんとか精神を保っていた。いっそ誰にも頼らない方がいいのではと考えたがもしあの二人にまた遭遇したらこの身体じゃどうにも出来ないため、他に誰かいないか探すことにしているのだ。(彼の選択肢にスミス達と合流するというのが無いあたり、相当追い詰められているのが伺えるだろう)

 

二人に警戒しながら進んでいくと、DSRの姿が見えたため、バレットは多少警戒しながら近づく。相手もこちらに気が付き、訝しげな表情を浮かべる。

 

「あら?バレッ…ト?」

 

「君をまともな人形だと信じて頼みたい事がある!匿ってくれ、DSR!」

 

「はい?」

 

────

 

「なるほど…そういう事でしたか…」

 

バレットを部屋に招き入れ、DSRは飲み物を用意しながら話を聞いていた。

 

「正直言って任務より精神的にきたよ…効果が切れるまで匿ってもらいたいんだが、大丈夫か?」

 

「ええ、平気ですよ。飲み物はアイスティーでいいかしら?」

 

あぁ、とバレットはDSRが差し出したアイスティーを手に取ろうとしたが、一度手を引っ込めた。

 

「…すまないが、そっちの方を貰えないか?君を疑っているわけではないのだが、こうもあんな事が続いたからちょっとな…」

 

「構いませんよ。私だって、貴方の立場だったら同じ事をしますもの」

 

バレットはDSRから差し出したなとは反対の方の手に持ってたアイスティーを受け取り一口飲んで一息つく。

 

「それにしても、幼児化のお薬なんて面白いものをペルシカさんは作るんですね」

 

「試される方はたまったもんじゃないがな。しかも、嘘ついて飲ませやがったし」

 

「へぇ、どんな嘘なんです?」

 

「俺らからナノマシンタイプのウイルスが検出されたとか言って…ふぁぁ、すまない、少し眠気が…」

 

そう言った数秒後、バレットはソファに横になり眠ってしまった。それを見ていたDSRはふふ、と妖しげな笑みを浮かべていた。

 

────

 

「……あれ?寝てたのか…ん?」

 

目が覚めたバレットは自身の違和感に気がついた。

まずソファに横になってたはずだが、その割には目線が高く、向かいに座っていたDSRの姿も無かった。その代わりに今向いているところを除いた頭部全体が適度に柔らかく暖かいモノに包まれていた。

 

「あら?もう起きたのですか?」

 

DSRの声が視界の上の方から聞こえたところで、バレットは今どういう状態か理解した。

バレットは今、DSRに膝枕をされている状態であった。

彼女はバレットの頭を軽く撫でながら

 

「あの後すぐに寝ちゃうなんて、よっぽど疲れていたんですね。あ、そうそう、少し前に貴方のお姉さんとSASSちゃんが来ましたけど、ここに来たけどすぐに出て行ったと言っておいたのでしばらくは平気ですよ」

 

「そうか…ありがとう。それで、何故膝枕を?」

 

「一言で言えば…感謝、ですかね」

 

感謝?とバレットが問いかけるとDSRはええ、と頷いた。

 

「貴方達DG小隊は私達を盗賊や人類人権団体の過激派とかから守ってくださってるもの。だからこれは、私なりの感謝の気持ちです」

 

「…なるほど。なら、ありがたく受け取っておくよ」

 

バレットはそう言うと再び眠りについた。当然ながら膝枕という関係上、DSRの太ももと二つの豊満なモノが彼の頭に密着しているのだが、それに構うほどの余裕はバレットにはなかった。今の彼の胸中は薬の効果が切れるまで無事にいられるとこが出来たことによる安心感が占めていたからだ。

 

(まぁ…さっきの理由以外にも、私を頼ってくれたことが嬉しかったというのもありますが、それは内緒にしておきますね♪)

 

寝息を立てるバレットの頭を撫でながら、DSRは優しく微笑むのであった。




(アイスティー飲んで寝たからといって襲われるわけじゃ)ないです。
そういうルートも考えましたが、流石にそこまでやるとマジで精神崩壊起こしかねないなと思って辞めました。膝枕のシーンは書いてて正直羨ましいなと何度か思いましたよ。
だってあの人色気とかマジでヤバイじゃないですか、しかも追加衣装二つともLive2Dですよ?動くんですよ?アレが。コイン貯めるしかないじゃないですか。

Super SASSについては本当にすみません!
でも思いついた以上仕方がなかったんです。


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Code-11 小さな守護者-③

残業続きと天気の変化で体調を崩しました。
皆さんも体調には気をつけてください。


「本当にこれで傷が消せるのか?」

 

身体中にコードを付けられた状態でレストが尋ねるとペルシカはええ、と頷く。

 

「貴方の身体が元に戻る際に傷が出来ないようにすれば消せるはずよ。…本当は別のボディを造ってそれにメンタルモデルを移した方がいいんだけどね」

 

「それは仕方ないさ。俺はまともに造られた人形じゃないからな。出来ないことを責めたりはしないさ」

 

レストはその出自が出自だけに違法製造された人形である。その為他の人形と違い、ダミーは造れるがメンタルモデルのバックアップが取れない為、傷のないボディを造ってそこにバックアップからメンタルモデルを移すといったことが出来ないのだ。

つまりそれはもし彼が完全に破壊されたらその瞬間からレストという人形はこの世に存在しなくなることになる。

話を戻すが、ペルシカが彼らに投与した薬は本来ならそのまま身体が幼児化するため、傷は残るはずだったのだが何故か傷が消えていた。当然このまま効果が切れれば傷も元に戻るわけなのでその際に彼の身体に小細工を施して傷が出来ないようにする算段である。(そもそもどんなメカニズムで幼児化したり元に戻ったりするかは彼女のみしか知らないが)

 

「うん、これで多分平気ね。なにぶん初めてのケースだから完全に消えるかはわからないけど、少なくとも手足の傷は消せるはずよ」

 

「それだけでも充分だ、ありがとう」

 

「どうもね〜。それで、貴方はこれからどうするの?」

 

「効果が切れるまでおとなしく部屋にいるよ。ノア、待たせてすまないな」

 

「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあ行きましょうか。ペルシカさん、また今度」

 

はいよ〜と、ペルシカは二人を見送った後、機材を片し始める。その途中、ふと何か大事な事を忘れているような気がしたが忘れているなら忘れてるならそんなに大事なことではないだろうと考え、再び作業に戻っていった。

 

──

 

「〜♪」

 

「あの…ノア?いつまでこうしてればいいんだ?」

 

部屋に入ったあと、レストは現在進行形でノアの膝の上に乗せられて頭を撫でられていた。

 

「もうしばらくこのままでいさせてください。私だって、たまにはレストさんにこうしたいんです」

 

「…わかったよ。でも誰かが来そうなときは降ろしてくれ。流石に見られんのは恥ずかしい」

 

「はい♪」

 

しばらくの間そのままでいた二人だが、扉をノックする音が聞こえたのでレストは膝から降りる。

 

「誰だい?」

 

「MP5です。この前借りた資料を返しに来ました」

 

「わかった。今開けるが…驚かないでくれよ?」

 

「レストさん、それは無理がありますよ…」

 

「? 開けますよ…ってえぇぇ⁉︎どうしたんですかそれ⁉︎」

 

驚くMP5にレストは事情を説明する。説明を聞いたMP5はレストの周りをうろついてじっと見つめる。そのあとレストに近づき背を比べて自分の方が少し背が高いことを確認すると、ふふん♪と嬉しそうな顔を浮かべた。

レストが扱うMP5KはMP5の派生系であるため、銃種上MP5はレストの姉である。しかし知っての通り彼女は背が低く、レストとの身長差があるので知らない者から見ればレストの方が兄に見えてしまうわけである。

だが現在はレストが幼児化しMP5より背が低くなった事で視覚的にも姉になったわけなので彼女本人としては嬉しい心境なのである。

 

「え〜と、MP5?他に用がないなら…」

 

「も〜!せめて『姉さん』を付けてっていつも…あ、そうだ!」

 

ポンッと手を叩きMP5はレストにある提案を出した。

 

「この際ですから『MP5お姉ちゃん』って呼んでもらっていいですか?」

 

「は?いや、確かに声も高いし見た目こんなんだけど、中身はそのままだがら普通に恥ずかしいんだが…」

 

「お願いです!一回だけでいいんです!」

 

必死に懇願するMP5にレストは困った顔をし、ノアに視線を向けるが

 

「まぁ、いいんじゃないんですか?滅多にないことですし」

 

「えぇ…。ハァ、一回だけだからな?」

 

「ハイ!」

 

期待の眼差しを向けるMP5を前にレストは心の中で今は幼児だと何度か言い聞かせ、羞恥心を押し殺して声を出した。

 

「え、MP5…お姉ちゃん…」

 

「〜〜〜ッ!」

 

「わっちょっ!急に抱きつくな、頭を撫でるな〜ッ!」

 

(微笑ましいですね)

 

嬉しさのあまり抱きついて頭を撫で繰り回すMP5とそれに抵抗するレストをノアは温かい目で見守っているのであった。

 

──

 

満足げに出て行ったMP5と入れ替わりで入ってきたスミスは髪と服を整えてるレストを見つけてだいたいの事情を知った。

 

「随分揉みくちゃにされてたみたいだな」

 

「あぁ、えらい目に遭ったよ」

 

(まぁバレットに比べりゃまだ可愛いほうだな)

 

「隊長さんは一緒じゃないんですか?」

 

「バレットは色々あって今はDSRの部屋で保護されてるって連絡があった」

 

「保護…?何があった?」

 

「姉がショタコンで逃げたんだが、一旦匿ってもらったSASSは男の娘趣味でもう少しで文字通り着せ替え人形にされるとこだったらしい」

 

「「うわぁ…」」

 

二人がバレットに同情しているなか、スミスはある事に気づき、部屋をキョロキョロ見渡す。そしてレストに向かってこう尋ねた。

 

「おいレスト、ウェイターはどこだ?

 

「……あッ!やばい置いてきたの忘れてた!

 

すぐにレストはペルシカに連絡を取る。が、

 

「は?居なくなった⁉︎」

 

「ええ、私もさっき思い出して探したんだけど、いつのまにか出て行ったみたいなの」

 

わかった、と通信を終えてレストは現状をスミスに伝えるとスミスは顔を青くした。

 

「…ヤベェぞ、今のウェイターは記憶こそあるが見た目も中身も純真無垢な子供だぞ?もしM82A1やSASSに会ったらとんでもないことに…!」

 

「それだけじゃない、ペルシカに聞いたんだが…あぁなった時の記憶はバッチリ覚えてるらしい…

 

それを聞いたスミスはしばし沈黙した。もし、ウェイターが彼女達の毒牙にかかった上で元に戻り、そのことを思い出したら…少なくともトラウマどころの騒ぎじゃない事になるのは容易に想像できた。下手すればウェイターがDG小隊初の離脱者になりかねなかない。

 

「……探せェェ‼︎手遅れになる前に、あの二人がウェイターを見つける前に俺らだけであいつを探し出せぇ‼︎」

 

二人の元々の目的がバレットな以上、一応連絡を入れるが捜索には参加させず、スミスら3人でウェイターを捜索することになった。

 

さて、当のウェイターはというと、レストのデータを取っている間おとなしく待っていたのだが途中で飽きてしまい、バレットとスミスのとこへ一人で行ってしまったのだ。一応出て行くときにペルシカに一言言っていたのだが、ペルシカはデータを取るのに夢中だったので適当に返事をしてしまったのだった。

訓練所に居るだろうなと思い訓練所に向かったのだが、なにぶん大人と子供では視点も違い、記憶はあるといっても人格は子供のそれなので場所があやふやになり、絶賛迷子中であった。

 

「たいちょう〜スミス〜?ど〜こ〜?」

 

しかも運の無いことにここに来るまで誰にも会っていないので場所も聞けないし心細いし歩き疲れたしでもう泣きそうになっていた。幸いなのはあの二人にも会っていない事だけだろうか。

そんな時、ウェイターは一人の人形を見つけた。しかもその人形はウェイターがよく知る人形だったのでウェイターは大喜びで駆け寄り、抱きついた。

彼女はウェイターの姿に戸惑い、混乱していた。果たして自分に抱きついてるこの子供は本当にウェイターなのかと。でもその疑問は次の一言でほぼ解決した。

 

「FALお姉ちゃん‼︎」

 

「え…?あなた…ウェイター、なの?」

 

うん‼︎と元気よく頷くウェイターに彼女─FALはあの生真面目な(ウェイター)が小さくなって純真無垢な笑みを浮かべてることに対し、肩にいるフェレット共々困惑した顔を浮かべてるのであった。




なんだかんだ言って、レストは身内には結構甘かったりします。
でもMP5が前回の二人みたいな感じだったら全力で拒否しますし、場合によっては拳で抵抗するのも辞さなかったりします。(過去を彷彿とさせるので)

さ〜て、次回どうやってウェイターを料理しよっかな〜♪


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Code-12 小さな守護者-④

今回でショタ回はおしまいです。


「……」

 

「……」

 

(もぐもぐ)

 

Five-seveNが部屋に入って見たのはルームメイトのFALが執事服を着た幼児にケーキを食べさせている光景だった。

彼女は眉間を抑えて目の前の光景が現実と受け止めると心底心配な顔をしてFALに言い聞かせる。

 

「…FAL、その子どこから攫ってきたの?悩みがあるなら聞くからとりあえず自首しましょう」

 

「まって話を聞いて」

 

「FNCには私から言っておくから、その子の親に通報されないうちに早く…」

 

「聞けって言ってるでしょ⁉︎」

 

「どうしたのお姉ちゃん?」

 

「『お姉ちゃん』って…FAL…あなた…」

 

「あーもうッ‼︎」

 

FALはドン引きしているFive-seveNを連れ出し、先ほどウェイターから聞いた話を話す。

 

「…という話なのよ。で、今保護してるってわけ」

 

「普通に考えればあなたがイカれたんだと思うけど、ペルシカか絡んでるなら一概にないとは言い切れないわね…」

 

「あなたねぇ…!」

 

「ま、とりあえずスミスに連絡すればわかる話ね」

 

そう言い彼女はスミスに連絡する。

 

「あ、スミス?ウェイターの事で聞きたい事があるんだけど…えぇ、今それっぽい子供をFALが部屋に連れて来てるんだけど…あなた声高くない?え?あなたも子供に?…わかったわ。じゃあFALの部屋にいるから…ハァ?食べないわよッ‼︎

 

「それで?スミスはなんて?」

 

「どうやら本当にその子はウェイターみたいね。でも薬の作用でメンタルモデルまで子供になってる状態だって。迎えに来るからそれまで預かっててくれとのことよ」

 

だから言ったじゃない、とFALが抗議したあと二人は部屋に戻る。

迎えに来るまでそんなにかからないだろうと思っていたが、当のスミス達は少し困った状況となっていた。

 

「…やべ、SASSじゃん」

 

「たぶん探してんのは隊長だけど、俺らも見つかったらヤバそうだから迂回するか」

 

廊下の先でSASSを目撃したため、遠回りすることとなった。

 

「FALさんの部屋にいるなら問題なさそうですね」

 

「そういやスミス、なんで食べるなよなんて言ったんだ?あいつってそういう趣味あんのか?」

 

「いや、保険だな。57は食べないって言ったが、いつ心変わりするかわからんから早く迎えにいくぞ」

 

さて、FALの部屋ではというとFive-seveNはじっくりとウェイターを見ていた。初めはてっきりFALがどっかから攫った子供に執事のコスプレをさせてるかと思っていたが、説明を受けた後で見るとところどころに面影があり、改めてウェイターが幼児化していると認識した。

 

(にしても、あの生真面目なウェイターがこんなに純真無垢な子供になるなんてね…)

 

「ご馳走さま〜!」

 

「…ウェイター、口にクリームが付いてるわよ。取ってあげるから動かないでね」

 

Five-seveNがティッシュをもってウェイターの口を拭くと、ウェイターはニパッと笑って

 

「ありがと、ごーななお姉ちゃん!」

 

(あヤバい、思ったより超可愛いんだけど)

 

一応言っておくが彼女にそういう性癖はない。しかし普通に子供は好きなので先ほどのウェイターの笑顔に参っていた。

ふとFALの方を見てみると、彼女は口元を抑えて後ろを向いていた。よくみると耳を赤くして肩をプルプル震わせていることから彼女も参っているのだろう。

 

(まぁ、普段の彼とのギャップがすごいから気持ちはわかるわ…)

 

ふと、彼女にちょっとした悪戯心が生まれ、ウェイターにひそひそ声で話しかける。

 

「ウェイター、ちょっといい?」

 

「なに?」

 

彼女はウェイターにある事を耳打ちするとウェイターはFALのところにトコトコと歩いて近づき、袖をつまむ。

 

「な、何ウェイター…?」

 

するとウェイターはとびっきりの笑顔でこう言った。

 

「FALお姉ちゃん、大好きっ!

 

「ブッ⁉︎」

 

予想外かつ破壊力のある一撃にFALは堪らず鼻血を噴き出しそのまま気を失った。(しかも幸せそうな顔をしているため側から見れば色々と残念な事になっている)

 

「あれ?FALお姉ちゃん倒れちゃったよ?」

 

「き、きっと疲れちゃったのよ…(ヤバイ…直視してたら同じ目に遭ってたかも…)」

 

けしかけたFive-seveN本人も予想外の威力に少し鼻血を出していたが何とか正気を保っていた。

しかし、ウェイターがティッシュをもって倒れてるFALに近寄って一生懸命に鼻血を拭き取っているのを見て昇天したのであった。

 

「あれ?」

 

──

 

「あ?またSASSかよ⁉︎さっきと場所離れてるはずだぞ⁉︎」

 

「いや、あれ多分ダミーだ。本気で隊長を捕まえるつもりか…」

 

「なんでその意欲を戦闘で発揮しないんでしょうね?」

 

さっきとは違う場所でSASSのダミーを見つけ、スミス達は再び動けずにいた。ダミーまで使ってるとなると彼女はあと一体ダミーを持っているのでこのままでは拉致があかないのは目に見えていた。どうしたものかと考えていたらスミスがおもむろに通信機を取り出したのを見たレストはある考えが頭をよぎった。

 

「…スミス、まさか隊長を生贄にする気じゃ?」

 

「まさか。バレットにちょっと頼みごとをするだけだ…あ、バレット?頼みたい事があるんだが…」

 

スミスはバレットにある頼みごとをしたあと、通信を切る。

 

「…よし、これで平気だ」

 

「確かに()()なら解決するが…いいのか?それだとSASSが気の毒な気がするんだが」

 

「じゃあ今すぐお前があいつのとこ行くか?」

 

「…遠慮しよう」

 

「どっちにしろ流石にアレはヤバイからいい薬になるっしょ」

 

彼がバレットに何を頼んだかというと、端的に言えばダネルにSASSの事をチクったのである。

SASSはダネルの事を慕っているので効果的だが、さらにダネルは以前配属していた基地で不当な扱いを受けていたのをそこの指揮官を拘束する形で助けたので彼らには恩義がある。

その彼らの頼みなら聞くだろうし、彼らに恩義がある事はSASSに話してあると聞いている。つまり、『恩人が困ってるのにその恩人に自分の欲をぶつけようとした』SASSを許せるはずもなく、どう考えてもSASSはダネルに鬼説教+訓練コースは確定だった。

五分ほどでダネルはSASSを見つけ、捕まえた。

 

「ひっ⁉︎な、なんですかダネルさん⁉︎」

 

「バレットから全部聞いたぞ…!お前、あの人に女装させようとしたんだって?」

 

「あ、いや、えっと…その…」

 

「私は前にあの人達に助けられたからあの人達が困ってたら助けてやってくれと言ったよな?なのにお前という奴は…!その性根を叩き直す必要があるな」

 

「えっと、具体的には?」

 

「ペルシカ考案の対物ライフル用のハードな訓練を受けてもらう。そのあとは説教だ」

 

「あの、私は対物ライフルじゃ…」

 

言い訳無用。今頃私のダミーがお前のダミーを捕まえてるだろうから、早く行くぞ」

 

「ひいィィ⁉︎」

 

SASSはダネルに引きずられるように連れてかれていった。やがてダミーもいなくなった事を確認するとスミス達はFALの部屋まで向かっていった。

余談だが、バレットはついでにM99にもチクったので私服を漁られた事で彼女からも説教を受けるのだがそれは別の話である。

 

────

 

「すまないFAL、待たせt…」

 

「ん〜〜♡」

 

スミス達が見たのはめっちゃデレッデレな顔でウェイターを抱きしめて頬擦りをしているFALの姿であった。ちなみにFive-seveNは希望の花でも咲きそうなポーズで床に倒れていた。

何があったか説明すると、

 

FALとFive-seveN起きる

心配そうなウェイターと目を合わせる

ウェイター、二人が無事なのを見て安心し笑顔を見せる

2度目の笑顔でFive-seveNダウン&FAL、サヨナラ理性

良し、愛でよう←今ココ

 

(あーあ、ちょっと遅かったかぁ…)

 

スミス達に気がついたFALはすぐさまウェイターを離して何事もなかったようにしようとしたが、少し遅かった。

 

「ず、随分遅かったわね…」

 

「まぁ色々あってな。で、その間ちっこくなった弟とたっぷりスキンシップをとってたと」

 

「いや、あまりにも純粋だったからついね…でも、この事って元に戻ったら覚えてないんでしょう?」

 

そう尋ねるFALにスミスは非情な現実を突きつける。

 

「ところがどっこい、覚えてるんだよなぁ…だからあいつに食べるなって言ったんだ」

 

そこまで聞くとFALはしばし固まったあと、ボフッ!という擬音が出そうな感じで顔を赤くした。

 

(え?嘘⁉︎今までの全部覚えて…⁉︎)

 

「まぁ…食べなかっただけでいいんじゃねぇの?しばらく気まずいだろうけど、頑張れよ?行くぞウェイター」

 

「じゃ〜ね〜FALお姉ちゃん〜!」

 

(こいつ、元に戻ったらしばらく部屋から出て来なそうだな)

 

明日のウェイターの心配をしながら、スミス達は立ち去っていった。

 

────

 

さて翌日、元に戻ったバレット達だが、バレットはSASSから謝罪を受け、自分の趣味に他人を巻き込むなと注意だけして許す事にし、レストは元に戻った際にペルシカの言っていた通りに傷がほとんど消え、ペルシカにこれを応用して自分と同じような人形にも同じように出来ないか頼む事にした。さて、ウェイターはというと

 

「あー、ウェイター?生きてるか?」

 

「隊長、すみませんが今は一人にさせてください…自殺はしないので安心してください…」

 

「わかった…気を強く持てよ?」

 

昨日の事を思い出したウェイターは真っ赤になって部屋に篭ったきり出てこなかった。ウェイターの気持ちを察したバレット達はそのまま放って置くことにした。

 

「ペルシカ、あれ上手いこと記憶処理出来ないのか?」

 

「無理ね。あれは一種のバグみたいなもので、しかも結構複雑だから下手すると記憶全部飛ぶわよ?」

 

「そうか…」

 

嘘 で あ る

この女、この程度の問題など2時間もあればコーヒー片手に余裕で解決できるのだが、正直面倒なのと普段ポーカーフェイスをしているウェイターが赤面しているのが面白いのでもっともらしい嘘をついて放置する事にしたのである。

 

しばらくの間、ウェイターとFALが顔を合わせるとお互いに気まずそうな顔をしてすれ違う光景が目撃されたのであった。




いやね、隊長だけ姉不遇されるのはあれだし、襲われずにどうすっかなって考えたらこうなったんですよね。
そういや今回スミス何もされてねぇな…あとで何かさせるか。

「え?」


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Code-13 闇業者を捕らえよ

隊長、下衆どもにキレる。
後半微グロ注意です。
それとあとがきでお知らせがあります。
(7/13、内容一部変更しました。昼と夜間違えるなんて予測変換使うもんじゃないな…)


ある日、スミスは広報誌を読んでいるとあるページに目が止まった。

 

(去年に続いてまた水着スキンの発表か…は?これP38か⁉︎ま〜様変わりするなぁ)

 

しばらくそのページを眺めてるとふとある疑問が浮かんだ。…彼女達はこれを着たまま戦場に向かうのだろうか?

いやいや、流石にないだろうと一旦結論を出したが、やっぱりどうしても気になったのでバレットに聞いてみる事にした。

 

「なぁバレット、これなんだけどさ、流石にこれ着たまま戦ったりしないよな?」

 

「いや、戦うぞ?」

 

「はぁ⁉︎マジかよ⁉︎大丈夫なのか?」

 

「一応大丈夫らしい。他にもメイド服やらサンタコスやら着て戦ったりしてる時もあるな。第一、普段から水着とどっこいどっこいの格好した娘もいるだろ?」

 

「…それもそうだな」

 

とりあえず納得したスミスはまた広報誌を読み始めるが、今度は別の事に気付いた。

 

「美女が水着着て戦う……あれ?これってネ○カ隊じゃn…」

 

「やめろ。縁起が悪いってレベルじゃねぇぞそれ」

 

他にもあるのに何故よりによってネネ○隊をチョイスしたんだと思いながらバレットはレストラン関連の雑誌を読む。

 

「ん?なんでそんなもん読んでんだ?」

 

「この前の件でDSRに世話になったからな。その礼に食事に誘う事にしたんだが、どこがいいか…」

 

「ふーん、デートか」

 

「デッ⁉︎いや、これはただのお礼で、そういうのじゃ…」

 

急にワタワタし始めたバレットを見てスミスは若干ニヤついていた。

 

「ごまかすなよ。雰囲気が前の時と同じだったぞ?てかお前あれか、弱ってる時に優しくされるとコロッといっちゃうタイプか」

 

この時スミスはこいつチョロくないかと思ったが弱った過程が過程なので口にせず黙っていた。

 

「うっ…うーん…そっか…俺、彼女に惚れてたのか…」

 

だったらなおさらいい場所を選ばなきゃな、と真剣な表情で雑誌を読み始めたバレットに対してスミスは一言

 

「でもなんかの手違いで彼女が今度はM82A2になったりしt…」

 

ゴッ‼︎

 

 

「…で?こうなったと?」

 

「前が見えねェ」

 

「自業自得だろ」

 

大きく鈍い音が聞こえ何事かと様子を見に来たレストは、顔面がとんでもないことになってるスミスがいたので事情を聞いた後呆れ顔でそう言ったのであった。(なおスミスの顔面は修復したら普通に戻った)

 

────

 

別の日、DG小隊にある命令が下される。

最近、民生人形や任務中の部隊が行方不明になる事件が相次いでおり、行方不明になった付近に怪しげな輸送トラックが目撃されてる事から違法販売目的の闇業者が関わってる可能性があるため調査に乗り出したのだ。彼らは一番最後に行方不明になった現場に行き、トラックが向かうであろう場所に向かう。

 

「それで?トラックのルートはここであってんのか?」

 

「事前の調査でトラックがある地点に向かってる事がわかった。詳しい場所まではわからないが少なくともこのルートを通らないとその場所まで行けないから必ず通る。目撃情報もまだだから輸送方法が変わらなければ来る」

 

「なるほど」

 

「あと奴らはほぼ確実に妨害装置の類を持っていると見ていい。従来品なら対策が出来てるが、新型を使ってる可能性あるから注意しておけ。ま、その為にダミーを用意してるんだけどな」

 

行方不明になった現場付近に戦闘の痕跡や業者の死体が無かったことから相手は妨害装置を所持していると判断された。一応他の組織から鹵獲して解析、対策を施してあるが、新型を導入している場合はその限りではない為、警戒するに越したことはない。

近くに隠れ、しばらく待っているとエンジン音が複数聞こえてきた。

高所で待機していたバレットはスミス達に見えた一団の情報を報告する。

 

「見えた。トラックの護衛にジープが2台、銃座は無しでそれぞれ見た限り四人が搭乗してる。あとはサイドカー付きのバイクが4台、サイドカーに一人、バイク本体は二人乗り。武器は小銃のみで妨害装置は見当たらない。トラックかジープに搭載してるか小型化して隠し持ってるかもな」

 

「「「「了解」」」」

 

「んじゃ始めるぞ。ダミー1、向かって左のタイヤを狙え。俺は運転手を殺る」

 

「了解」

 

バレットはトラックの進行速度と風向きを計算し狙いを付け、狙撃する。

たちまち運転席は血に染まり、数瞬遅れてダミーがタイヤを破壊し運転手と右前のタイヤを失ったトラックは右に曲がり、近くにいたバイク1台を巻き込み横転する。

突然の襲撃に車両群は停止したタイミングでスミス達がダミーを先行させて突撃、銃撃戦となる。するとジープに乗った男達が何かを取り出した。恐らく妨害装置だろう。

 

「させるかよ…!」

 

バレットはすぐさま妨害装置を狙い撃ち、妨害装置を破砕する。

男達は動揺し、動きに乱れが生じたのをスミス達は見逃さず一人また一人と撃ち倒す。

 

(そもそも狙撃されたのにあんなもん悠長に出してる時点で妨害装置に頼りきりなのが見て取れるな)

 

その後、生け捕りにした2名を除き敵は壊滅した。

ジープやトラックから輸送先の手掛かりがないか探しているとバレットが合流した。

 

「何か見つかったか?」

 

「あぁ…これを見てみろ」

 

レストが差し出した資料を見てみるとそこに書いてあったのは製造年や銃種、傷の有無などいくつかの条件がある人形のリストがあった。

 

「……闇オークションか」

 

「みたいだな。こいつらから後で話を聞く必要があるな」

 

「バレット来てくれ、荷台を開くぞ」

 

スミスに呼ばれトラックの近くまで行き、荷台の扉を開ける。

─そこには裸にされた人形達がすし詰めで押し込まれていた。ほとんどは横転の衝撃で気を失ってるが、起きている何人かは酷く怯えているか虚ろな目でこちらを見ていた。

 

「…チッ‼︎クソ共が…‼︎」

 

「………」

 

スミスが忌々しげな顔で吐き捨てるなか、バレットは無言で生け捕りにした1人の男の元に向かう。

そして銃を突きつけて重く低い声で問い出した。

 

「…お前らの中で立場が上なのはどっちだ?」

 

すると1人がもう1人を見つめた。

 

「…そいつか」

 

「何する気だ隊長?」

 

「こいつらの尋問は俺がやる。スミス、至急迎えを呼んでくれ」

 

「わかった(あーあ、こりゃ相当キてんな)」

 

────

 

本社地下室にて、先ほどの男が拘束されていた。そこへバレットが台車を押してやってきた。台車の上には液体窒素が入ったボンベ、コップ、綿棒、針、ピーラー、バーナー、ガーゼ、注射器が置かれていた。

 

「さて、オークションについて詳しいことを話してもらおうか」

 

「知らねぇな〜?知ってたとしても人形なんかに教えるかよ」

 

「…もう一度言う、オークションについて話せ」

 

「知らねぇって言ってるだろ‼︎」

 

そうか、とバレットは呟き、注射器を男に突き刺し中身を注入する。中身は神経興奮剤の一種でしばらくの間痛覚が敏感になるものであった。

その後男の右手を抑えつけ、バーナーで炙った針を人差し指の爪の間に突き刺した。

 

「っガぁぁあ"あ"あ"⁉︎」

 

バレットは針を上下に動かした後、雑に針を引き抜く。その後液体窒素をコップに入れ、綿棒に染み込ませると傷口に押し付けた。

 

「─ッう"う"あ"あ"ぁぁあっ‼︎」

 

薬によって鋭敏になった痛覚に液体窒素を押し付けられた時の特有の内側から来るような痺れにも似た痛みが男を襲い、叫び声を上げる。

 

「どうだ?話す気になったか?」

 

「ハァッ…ハァッ…‼︎」

 

「……チッ」

 

息を切らし、何も話さない男にバレットは苛立ち、今度はピーラーを取り出し、男の腕にあてる。

 

「っ⁉︎ま、待て!話すっ!話すから─」

 

シャッ

 

バレットはピーラーを10センチほど動かし男の腕の皮を削ぐと、液体窒素を染み込ませたガーゼを押し当てた。

 

「グあ"あ"あ"あ"ッ!な"、な"ん"で…?」

 

「質問した時に答えないのが悪い。で、話すんだろ?さっさと話せ。オークションの日時、場所、参加人数、出品される人形の数、参加者の武装の内容もキッチリ話せ。もう1人に確認を取るから下手な嘘はやめとけ。もしついたら骨が見えるまで削ぐ」

 

「わ、わかった…」

 

男は全てを話した。日時は三日後の昼、場所は某地区の廃墟化したアリーナ。

参加人数は5〜600人程でうち三分の二は護衛、人形は150体ほどで攫った人形の中でリスト外の人形はいわゆるばら撒き用で出品される予定らしい。

武装はアリーナ内の警護組は小銃やショットガンだが、外の警護組は強化外骨格やRPGといった重兵器を用意してるとのことである。

 

「ふむ…最後に、お前達がいなくなったことでオークションが中止になることは?」

 

「それは…ない。もうリストの対象は集まってる…あれに積んでたのは俺らの()()()()用だ…」

 

そこまで聞くとバレットは近くのモニターを操作する。モニターに映し出されたのは椅子に縛られ、怯えた顔をしたもう1人の男だった。

 

「おい、こいつの言うことに間違いはないな?」

 

『あ、ああ!全部あってる‼︎だから、助け─』

 

バレットはポケットからスイッチを取り出してボタンを押す。すると椅子が爆散し、モニターは砂嵐を映し出した。

 

「なっ⁉︎」

 

「あいつはお前の情報の真偽を確かめるために連れてきた、今までの事を中継させてな。立場が上のお前が痛めつけられれば自分もこうなると思って下手な嘘はつけなくなるしな。まぁ途中でお前が死んだ時の代理も兼ねてたがな」

 

「おっ俺も殺すのか⁉︎」

 

「俺らがどういう部隊か知ってるだろ?あんな事をしたお前らをさ……生かすわけないだろ?

 

言うが早いか、バレットは男の股間に蹴りを入れ、急所を潰す。当然そこの痛みも増加してる為、男は痛みのあまりショック死した。その後、バレットは地下室を後にした。

 

────

 

ブリーフィングルームにてバレット達とヘリアン、ペルシカは先ほどの情報を元に段取りを考える。

 

「ふむ…やはり一番の問題は…」

 

「数ですね。俺らだけではまるで足りません」

 

DG小隊の総数はダミー含めて24人、どう考えても手が足りないのは目に見えていた。

 

「数の方は他の基地に協力を依頼するとしよう」

 

「私もツテがあるからそこに頼んでみるわね」

 

「頼みます。メンバーが集まり次第作戦を立てましょう」

 

そう結論づけて彼らはブリーフィングルームを出た。

DG小隊で大きな作戦が始まろうとしていた───




爪の間に液体窒素はマジで痛いぞ☆(イボ治療時の実体験)
お知らせですが、ぶっちゃけコラボ依頼です。
誰か協力する方、お願いします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=218894&uid=89042


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Code-14 オークション殲滅作戦─邂逅

コラボ回スタートです!
参加者については後書きで紹介します。


前回の会議から一日ほど経った後、バレット達はペルシカにブリーフィングルームへと召集された。

 

「もう集まったのか?」

 

「とりあえず三小隊来る事になっているわ。二小隊はそれぞれ他の地区にいるから少し時間がかかるけど、近いうちに来るわ。あと、もう一小隊は本社(ここ)にいるから先に紹介するわね」

 

本社(ここ)に?それにあんたが絡んでるってことは…俺やスミスと同じ16Lab製か?」

 

「3人はね。入っていいわよ〜」

 

ペルシカがそう呼びかけると扉を開けて5人の人形が入って来た。

入って来た順に、金髪ロングに赤と青のオッドアイをした人形、小柄で赤髪の人形、少し気弱そうな感じの人形、そして白髪のイントゥルーダーによく似た人形とデストロイヤーであった。

最後の2人を見た瞬間、バレット達は目を見開いて驚いた。

 

「なっ⁉︎て、鉄血のハイエンドモデル⁉︎」

 

「デストロイヤーはともかく、この白イントゥルーダーは誰だ⁉︎」

 

「色んな地区でハイエンドモデルを鹵獲しているのは聞いていますが、まさか本社にもいたとは…」

 

「ペルシカ、この2人は大丈夫なんだろうな?」

 

「ええ、それに関しては平気よ。で、彼女達なんだけど、小隊名はExcessive Arme(過剰武装)の頭文字をとってEA小隊よ。ほら、自己紹介しなさい」

 

ペルシカが促すと彼女達はそれぞれ自己紹介をする。

 

「アンタ達がDG小隊かい?私はM62A2バルカンだ!よろしく!」

 

「M2A1火炎放射器のフレイムっていいます、よろしくお願いします!」

 

「えっと…XM109ペイロードです…」

 

殺戮者(マーダー)よ」

 

「やっと私の番ね!私はデ「いや、お前は知ってるからいいや」何でよッ⁉︎」

 

デストロイヤーの自己紹介にスミスが口を挟むアクシデントがあったが、彼女達の自己紹介が終わり、今度はバレット達が自己紹介をする。

 

「DG小隊隊長、バレットM107のバレットだ」

 

「俺は副隊長のS&WM500のスミスだぜ。ちなみに二丁持ちな」

 

「MP5Kのレストだ」

 

「SCAR-Hのウェイターと申します」

 

「9A-91のノアです」

 

互いに自己紹介を終えたところで、バレットは先程から気になってたことをペルシカに聞いた。

 

「ペルシカ、このXM109ペイロードって子…もしかして…」

 

「ええ、貴方の妹に当たるわね」

 

「俺の…妹」

 

XM109ペイロードはバレットM107の姉妹銃である。なので必然的に彼女はバレットの妹となるので急に妹が出来たことにバレットは戸惑っていると、XM109ペイロード(以後ペイロード)が近づいた。

 

「あの…バレットお兄ちゃん、で良いんですよね?」

 

「(お、お兄ちゃん…)あぁ、そうだが…」

 

お兄ちゃん呼びに困惑しながらバレットが答えるとペイロードは顔を輝かせた。

 

「やっぱり!やっと会えて嬉しいです!私、前に広報紙でお兄ちゃんの事見て驚いたんです!お兄ちゃんがいるって事でも驚いたんですが、対物ライフルを立って正確に連射できるって知ってお姉ちゃんと同じくらい尊敬してたんです!私も命中はまだまだですが立って撃てるんですよ!」

 

「立って?すごいじゃないか。それと、姉さんを知ってるのか?」

 

「はい!お兄ちゃんはお姉ちゃんを知ってるんですか⁉︎お姉ちゃんは優しいですか?怖いですか?あとお姉ちゃんが好きなものとかありますか?」

 

「姉さんか…優しい人だよ。姉さんが好きなものか…あー…うーん…子供が好きだったな(性的な意味で)」

 

「そうなんですか〜」

 

(あれ?XM109ペイロードって25mm口径だよな?…流石兄妹だな)

 

2人が会話をしているのを見てスミスがそう考えていると、フレイムがバルカンに話しかける。

 

「それにしても、男の戦術人形って初めて見ましたよねバルカン先輩…先輩?どうかしました?」

 

「ん?いやさ、私達ってさ…隊長決まってなくね?

 

「え?あ〜そう言えばそうでしたよね」

 

じゃあ私が…とバルカンが言うとマーダーがバカにしたような笑みで待ったをかける。

 

「な〜に目を開けたまま寝言言ってるのよ。あなたみたいな撃ちまくるしか能のないトリガーハッピーの単細胞に隊長が務まるわけないじゃないw私が隊長よ」

 

「あ"ぁ"?お前の方がありえねぇだろ!人喰い(カニバリズム)で殺せれば人間でも鉄血でもいいサイコ野郎が!」

 

「そうやってすぐにキレるのが隊長に向いてないのよ〜♪」

 

「んだとぉ⁉︎」

 

「ペイロード…あの2人はいつもあんな感じなのか?」

 

「は、はい…」

 

ワーギャーと口喧嘩を始める2人をバレットが見るなか、ウェイターがペルシカに若干顔を青くして質問した。

 

「ペルシカさん…あのマーダーって人形…人喰い(カニバリズム)なんですか?」

 

「そうだけど、どうかしたの?」

 

「いえ、あの人…さっき私を見て舌舐めずりをしていたので…」

 

「…大丈夫よ、ちゃんと調()()したから食べられることはないわ」

 

「だといいんですが…」

 

そんななか、2人の口喧嘩はエスカレートしていき、最終的にバルカンが表に出ろ‼︎、と言ったところでバレットが止めた。

 

「待て、作戦前にケガされちゃたまったもんじゃない。正式な隊長はあとでそっちで決めるとして一旦ここはEA小隊全員でジャンケンして勝ったやつを仮隊長にするってどうだ?」

 

「ジャンケンか…まぁ、仮ならそれでいっか」

 

「別に殴り合いでも良かったのに…」

 

「仮とは言え、隊長をなれる機会!燃えますね〜!」

 

「べ、別に私は…」

 

「いいじゃない!一時的でもこいつらの上に立てるのよ!」

 

「じゃ、はじめっぞ。はい、ジャーンケーン…」

 

バレットが音頭を取り、5人は手を出した。意外にも一回で勝敗が決まり、結果、勝ったのは…ペイロードだった。

 

「わ、私ですか⁉︎」

 

「決まりだな、この作戦中はペイロードがEA小隊の仮隊長だ」

 

「む、無理ですよぉ…だったらバルカンさんかフレイムさんに…」

 

「それだとジャンケンの意味がないだろう?大丈夫だ、俺もサポートするから、な?」

 

「むぅ…わかりました…」

 

仮隊長が決まったところでバレット達はEA小隊の武装を確認する。

 

「ガトリングガンとレールガトリングガン、魔改造火炎放射器に25mmの対物ライフルにキャニスター弾とフレシェット弾を撃てる巨大ショットガン…エゲツないな。まさに名は体を表すってやつか」

 

「あ、私他にもロケット弾とかついた特殊外骨格付けられますよ」

 

「マジか⁉︎」

 

その時、ヘリアンから通信が入った。

 

『たった今残りの二小隊が到着した。今ヘリポートにいるからバレット、案内してやってくれ』

 

「わかりました」

 

バレットはヘリポートへ向かう。

ヘリポートにいた二小隊のうち、一小隊はナガンM1895、一〇〇式短機関銃、64式7.62mm自動小銃、FAL、WA2000。

もう一小隊は銀髪のポニーテールに眼帯をした女性指揮官がおり、その後ろにG3、G36、G36C、MG3、USPコンパクトが待っていた。

 

「お待たせしました。DG小隊の隊長、バレットといいます。所属と名前をお伺いしてもよろしいですか?」

 

「うむ、S09P基地所属、副官のナガンM1895と第一部隊、ただ今到着じゃ」

 

「○地区基地所属、指揮官のアレクサンドラ・プーシキナと第一小隊、ただ今到着した」

 

「今回の作戦、協力感謝します。ブリーフィングルームまで案内しますのでどうぞ」

 

バレットは二小隊をブリーフィングルームまで案内していった。




えー、今回のコラボに参加してくださったのは
oldsnake様作
『破壊の嵐を巻き起こせ!』
よりEA小隊

スツーカ様作
『指揮官とG3がお送りするドルフロ銃解説』
よりアレキサンドラ・プーシキナ指揮官と第一小隊

焔薙様作
『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』
より第一部隊

が来てくださりました。
御三方、コラボ協力ありがとうございます!

今回はEA小隊との絡みをメインにしましたが、次回からしっかり絡ませる予定です。
ではまた次回まで。


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Code-15 オークション殲滅作戦─作戦会議

コラボ回その二です!
今回は作戦会議です。


案内をしながらバレットは後ろの二小隊について考えていた。

 

(S09P基地…確かペルシカが後見人をしている娘が指揮をしているところだったか…そういや前に彼女が暗殺されかけた時にS06の人間が何人か急に死亡扱いになったりこっちに来たりしたから恐らく暗殺に一枚噛んでて無関係な人間はこっちに、それ以外は報復された感じか…ならそっちは人間に対するセーフティは問題ないか。なら気にするのは…)

 

「一応お伺いしますが、今回は対人戦となります。人間に対するセーフティは問題ないですか?」

 

「わしらのところは問題ない。これでも色々くぐり抜けておるからな」

 

「こちらも問題ない」

 

「わかりました(ふむ…だとすれば…)」

 

────

 

全員がブリーフィングルームへ集まったところで、バレットが今回の作戦について説明する。

 

「すでに連絡は受けていると思いますが今回の作戦は、某地区にあるアリーナ内で二日後に開催される闇オークションの参加者とその警護の殲滅及び奴らに拉致された人形達の救出です」

 

バレットがそういうとスクリーンにアリーナとその周りの地形が映し出される。

 

「ん?さっきと口調が違くないか?」

 

「それはなバルカン、あいつは指揮官がいる時はああいう口調になるんだ」

 

「へー」

 

「む、それならいつもの口調でも私は構わないが」

 

「そうですか、ならそうさせてもらう。それと今回の作戦ではアレクサンドラ指揮官、あなたに最高責任者の立場をとってもらいたい」

 

この場にいるメンバー内で指揮官は彼女しかいない。原則として人形は指揮官の指示に従う事を考えれば妥当といえよう。

 

「わかった、承諾しよう。だがいいのか?この場所を特定したのはそちらの成果では?」

 

「それに関しては構わない。人形の救出が俺達の本懐であり、誰の手柄かはそこまで拘りはない。それとこれが俺達のデータとペルシカから渡されたEA小隊のデータです」

 

アレクサンドラ指揮官はデータを受け取り、それを元に作戦を考える。

しばらくした後顔を上げた。

 

「…よし、これから作戦内容を説明する」

 

今回の作戦において行動する部隊は大きく分けて二つ。アリーナ周辺の敵を排除する部隊とその後、アリーナ内に入って制圧及び救出する部隊である。

周辺の敵の相手をする部隊は、EA小隊全員、バレット、WA2000、MG3で編成し、残りは全員侵入部隊となり、アレキサンドラ指揮官も侵入し、戦闘しつつ指揮をするとのことである。

まず始めにペイロードの特殊外骨格による爆撃で奇襲し、敵戦力をある程度削りその後残りのEA小隊がアリーナ正面口から攻撃、敵を引きつけ、バレットとWA2000、MG3はそのサポートをする。

周辺の警備がEA小隊に集中したところで侵入部隊が大型装甲車にて裏口から強引に突入し、制圧を開始するといったものである。

 

EA小隊の脅威度は相手もその身をもって知っているため、彼女達を潰そうと総力を挙げるのは明らかである、もちろん幾らかはその場に残る可能性もあるため、突入後は装甲車を爆破し外部からの追撃を困難にさせる。

アリーナ内の構造はというと、正面と裏口以外にもいくつか出入り口はあるがなにぶん廃墟化しているため、出入り口が殆ど崩れて通れなくなっており大きな出入り口が正面と裏口のみとなっている。

そのため装甲車を爆破することで裏口を潰して襲撃すればオークションの参加者は正面口に逃げるしかないが、正面ではEA小隊と警備部隊が戦闘をしているため巻き込まれるか侵入部隊に追撃されるかの二択を強いられることになる。

 

「以上が作戦内容だ。何か質問はあるか?」

 

するとバルカンが手を挙げた。

 

「あー、内容というより、そもそも何でオークション当日に襲撃するんだ?今からじゃダメなのか?」

 

バルカンの言うこともわからなくはない。人形達が大量に拉致されているとなれば当日といかず今すぐ彼女達を救出しようと考えるのも無理はない。

が、そうしない理由は二つある。それについてバレットは説明する。

 

「理由は二つ。一つは拉致された人形達は全員が全員アリーナにいるわけではないとこちらで捕らえた奴から聞いている。そのため今襲撃すればアリーナにいる分は救出できるがそれ以外は救出できなくなる。しかもその場合オークションは当然中止になるため、『()()だから手を出すな』という言いつけも無くなるためより酷い目に遭う可能性がある。そして、もう一つが──」

 

「これを機に奴らの資金源を潰すため、じゃな?」

 

ナガンの言葉にバレットは頷く。

 

「その通りです」

 

「ん?どういう事だ?」

 

「前々から気になってはおった、わしらも幾度となく奴らを叩いてはおるが、連中の勢いは衰えるどころか自立兵器や強化外骨格を導入しておる。その資金源はどこからきているのかと。こういった連中から資金を得ているのであればそれらを潰せば奴らの弱体化を狙える。故に資金提供者が集まる当日に襲撃を行うというわけじゃよ」

 

そこまで聞くとバルカンは納得した顔をした。

 

「ちなみに、この中に大型装甲車を運転できるのは?」

 

「あ、俺が出来るよ。ちょっと荒いけど」

 

「ならスミス、君に運転を任せよう」

 

了解、とスミスが返事をし、その後いくつか確認事項を行ったところでレストが口を開いた。

 

「全員聞いて欲しい。参加者の中にこいつらがいたら教えてくれ。作戦の都合上、殺してしまってもいいがその時は報告を頼む」

 

そういうとスクリーンに12人の男の顔と名前が映し出された。それを見たバレットらDG小隊は息を呑んだ。

 

「レスト…!いいのか?」

 

「レストさん…」

 

「大丈夫だ。俺は彼女達を信じる」

 

「…理由を聞いてもいいか?」

 

アレキサンドラ指揮官の質問にレストは他言無用で頼むと言い、口を開く。

 

「…俺は元々、男娼人形だ。こいつらはかつて俺を利用した客だ」

 

「っ⁉︎……なるほど、了解した。みんなもわかったな」

 

彼女達はレストの凄惨な過去に驚きつつも了承した。

 

「…感謝する」

 

「他に質問は?…ないなら一旦この場は解散し、開催までの間は訓練やシミュレーションを行うとしよう。ペルシカ主任、シミュレーターの製作を頼めるか?」

 

「任せておいて」

 

「それとペイロード、今回の作戦では君の爆撃が要だ。それでどれくらい敵に損害を与えるかで作戦の成否に大きく関わる。誤ってアリーナを爆撃しないためにもよく訓練をするように」

 

「は、はい‼︎」

 

「では解散だ」

 

解散した一行はそれぞれ突入部隊と外部警備排除部隊に分かれ、訓練に誘う。

 

「レストさんでしたっけ?訓練に付き合ってもらって良いですか?対人戦のやり方を教わりたいので」

 

「わかった。G36C、この後一〇〇式と訓練するだが、どうだ?」

 

「是非ご一緒させていただきますわ」

 

「ならわしらもHG(ハンドガン)同士で訓練をするかの」

 

「り、了解です…」

 

「最前線の実力、見させてもらいますよ、ナガンばーちゃん」

 

「…あー、スミスとやら、そのばーちゃんとやらはやめてくれんかの?」

 

「ん、これは失礼」

 

(あやつ以外からそう言われるのは違和感があるの…)

 

レストは一〇〇式とG36Cと、スミスはナガンとUSPコンパクトと訓練をしに向かっていく。そんななか、ウェイターはマーダーに呼び止められる。

 

「ねぇあなた。少しだけ良いかしら?」

 

「…手短にお願いしますよ、私も訓練があるので」

 

ウェイターは先ほどのことから彼女に警戒心を抱きつつも彼女に同行する。

部屋に入ったところでウェイターは口を開く。

 

「用件は何ですか?もし妙な真似をするなら即刻ペルシカさんに連絡しますよ」

 

「大丈夫よ、ただ一つだけ気になったことがあってね。最初に見たときに気づいたわ。─あなた、澄ました顔をしてるけど、その瞳に憤怒を映し出してるわね。それと、深い絶望も」

 

「……」

 

「あのレストって人形も中々の闇を持ってるけど、あなたも同じくらいのモノを抱えてるわね?あなた見たところ古い型の人形みたいだし、過去に人権団体に大切な人でも殺されたんじゃ─」

 

するとウェイターはマーダーの胸ぐらを掴み上げた。その目は珍しく怒りに満ちていた。

 

「それ以上私の過去に踏み入れるのはやめて頂きませんか…!」

 

「アハ♪図星みたいねぇ?本当はあなたを滅茶苦茶にしたいけど、今はやめておくわ。でも、その怒りの理由を教えてもらえるかしら?」

 

「貴女に教える義理はありません」

 

そういいウェイターは部屋から出ようとするが、一旦立ち止まった。

 

「…一つだけ教えます。私が民生用から戦術人形になってDG小隊にいる理由には()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふーん…」

 

では失礼します、とウェイターは部屋から出て行く。実を言えばオークションのカタログを見たときにからウェイターは気が立っていた。

そのカタログには『2058年製のメイド人形』と書いてあったのだ。

 

(確かに()()()、彼女は行方不明になっていました。てっきり破壊されたかと思っていましたが、もし彼女だとすれば必ず助けなければ…!)

 

──

 

オークション会場にて、捕らえられているメイド人形を見て一人の警備兵が笑っていた。

 

「ほー中々の上玉じゃねぇか」

 

「手を出すなよ。大事な()()なんだから。しかもそいつは『バタフライエフェクト』の生き残りだ。相当の値打ちもんになるぜ」

 

へいへいと、男が去っていく。

そのメイド人形は震えながら今までのことを考えていた。

 

(これは罰なんだ…()()()、私だけ逃げ出したから…!これから私は買われて酷い目に遭うんだ…。あぁ…せめてもう一度、()()()()()()()()に会いたかった…)

 

そして二日後の時が流れ、オークション殲滅作戦が始まろうとしていた─




DG小隊所属、ウェイター。その過去に何があったのか?そしてバタフライエフェクトとは?それはコラボ終了後に説明します。

次回はいよいよ作戦開始です!


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Code-16 オークション殲滅作戦─作戦開始

コラボ第三回です!
今回はようやく作戦開始です!


ある日の記憶─

 

『ウェイター…メンテナンスが終わったら、早く帰ってきてね?』

 

『わかりました、お嬢様。では、行って参ります』

 

一人の少女に見送られながら、在りし日のウェイターはメンテナンスを受けにI.O.Pへと向かって行った。

だが場面は変わり、ウェイターは医師からの報告を受け、膝から崩れ落ちていた。

 

『嘘だ、嘘だ…嘘だァァァァッ‼︎』

 

────

 

(…ッ⁉︎また、()()()の事を思い出しましたか…)

 

オークション殲滅作戦が始まり会場へ向かう途中、ウェイターは過去を思い出していた。

マーダーに過去の事を触れられたあの日以降、ウェイターは何度か過去の事を思い出しており、少しばかり精神をすり減らしていた。

しかし、作戦に支障をきたす訳にはいかないと彼は思い、気丈に振る舞っていた。そんな彼の様子を見てか、バルカンが彼に声を掛けた。

 

「なぁウェイター。マーダーの事で気にしているならすまない。私がアイツを止めてれば…」

 

「いえ、確かに気にはしてますが、それほどではありませんよ」

 

「本当か?でも、なんかあったら教えてくれよな?」

 

「わかりました、お気遣いありがとうございます」

 

ウェイターはその後深呼吸をし、銃を握りしめる。

 

(お嬢様の為にも、なんとしても彼女を助け出さなくては…!)

 

────

 

「WA2000、配置完了よ」

 

「MG3、配置完了だ!」

 

「XM109、配置完了です」

 

「バレット、メイン及びダミー共に配置完了」

 

「了解。五分後に作戦を行う。各自気を引き締めておいてくれ」

 

アリーナ周辺でそれぞれあらかじめ決めておいたポイントで屋外サポート部隊は報告をする。

EA小隊はコスト面で、S09P基地とアレクサンドラ指揮官の部隊は遠方からの救援故にダミーが持ち込めず、現状ダミーが使えるのはDG小隊のみであったが、それでも充分すぎる戦力である。

そんななか、作戦の口火を切る役目を任されているペイロードはいつも以上に緊張していた。

 

(うぅ…お兄ちゃんと一緒にシミュレーションして9割近い命中にしたけど、もし失敗したら…)

 

そんな様子を見てか、バレットはペイロードに通信を行う。

 

「ペイロード、そんな肩肘張るな。シミュレーション通りにやれば平気だ」

 

「で、でも…」

 

「大丈夫だ。もしもの時は俺が撃ち落とすからお前は命中させる事だけ考えてな」

 

「お兄ちゃん…わかった!私、頑張っていきます!」

 

「あー、MG3?さっき彼、撃ち落とすって言ってたのは私の気のせいかしら?」

 

「あたいもそう聞こえたから気のせいじゃないと思う…」

 

16Lab製(規格外)の二人の会話についていけないWA2000とMG3であった。

 

────

 

「3…2…1…作戦開始‼︎」

 

「XM109、いきます‼︎」

 

ペイロードは背中の多連装ロケットシステム(M L R S)と40mm Mk.47自動擲弾銃を起動し、着弾点を演算して撃ち放つ。

放たれたロケット弾とグレネード弾は演算した通りの場所に向かっていき─

一発もアリーナに着弾させる事なく命中し、そこにいた敵を吹き飛ばしていった。

 

「XM109から指揮官へ!全弾命中!」

 

「よし!EA小隊、全隊突撃!」

 

「よっしゃぁ‼︎撃って撃って撃ちまくるぞ!」

 

「地獄と絶望を味あわせてあげるわぁ♪」

 

「みんなの怒りの炎を喰らえぇぇ‼︎」

 

「これでも喰らいなさい‼︎」

 

アレクサンドラ指揮官の命の元にバルカンらが一斉に躍り出て各々の獲物を撃ち放ち、敵部隊を消し飛ばし、引き裂き、燃やし尽くす。

今回の作戦に当たって、フレイムとデストロイヤーはアリーナ正面の敵を、バルカンとマーダーは彼女らから見て両サイドの敵を相手するよう指示してある。理由としてはバルカンとマーダーの武器は両者共に破壊力に優れており、例え強化外骨格を装備した敵を撃ったとしても弾が貫通してアリーナに被害を与える可能性があった。そのため正面の敵はフレイムとデストロイヤー、そしてバレットらサポート部隊に任せて相手をしない事にしていた。

また、裏口付近の敵を引きつける関係上、裏口付近の敵がこちらに攻めてくるのは両サイドからとなる為かえって都合が良いのである。

 

また、撃ち方に関してもいつものように撃ちっぱなしではなく、本来の使い方と同じく数秒間のみ撃つようにしていた。こうする事で撃ってる時に近くを攻撃されて射線がブレてアリーナに被弾する可能性を下げるようにしていた。しかし、これに関しては本人の性格上そういつまてもそうしてるわけがなさそうだが。

 

さて、突然の爆撃と襲撃に敵部隊は混乱の最中にいた。

 

「げぇっ⁉︎バルカン⁉︎」

 

「他の連中もいるぞ‼︎裏口の連中も呼んでこいっ‼︎」

 

すぐにバルカン達に戦力が集中し始め、バルカン達を潰さんとする。しかし、バレット達がそれを阻む。

 

「WA2000とMG3は歩兵を頼む!ペイロード、強化外骨格の奴を殺るぞ!」

 

「は、はい!」

 

そういうや早いが、バレットは強化外骨格を装備した男を撃ち倒す。さらに二射、三射と撃ち次々と敵を屠っていく。ペイロードもバレット程の速射ではないが着実に敵に命中させ、大穴を開ける。

 

「あんな速射が出来るなんて…あの二人、本当に対物ライフル?M2HBの間違いじゃないのか?」

 

「知らないわよ、私達もサポートするわよ!」

 

MG3に言葉を返しながらWA2000も狙撃を開始する。最前線の基地所属は伊達ではなく、一射一射正確に敵歩兵を仕留めていく。MG3も負けてはおらず、次々に敵をなぎ倒す。

敵部隊は狙撃されている事には気づいているが、探そうとすればバルカン達の餌食となり、かといってそちらを相手すれば狙撃され、後手後手の対応を強いられていた。

 

──

アリーナ裏口周辺

 

「な、何だ今の爆撃は⁉︎」

 

「バルカンとその一味が正面口にやってきたって連絡が入った‼︎全員で潰しに行くぞ!」

 

「全員⁉︎ここの警備はいいのか?他に仲間がいたら…」

 

「あいつらと組むような物好きはいねぇよ!さっさと行くぞ!」

 

裏口の警備兵は揃って正面口へと向かっていった。

それを離れた場所で止めていた大型装甲車の中で見ていたスミスは一言呟いた。

 

「…いるんだよなぁ、その物好きが」

 

「てっきり一割くらいは残るかと思ってましたが、よほどEA小隊に辛酸を舐めさせられていたんですね」

 

「よしスミス、すぐに突入してくれ」

 

「了解!全員舌を噛まないよう気をつけな‼︎」

 

スミスは装甲車のエンジンを入れ、アクセルを全開にする。装甲車は裏口に向けて一直線に駆けていく。そして─

 

「オールハイルゥゥゥ─グゥゥリフィィィンン‼︎」

 

スミスは雄叫びをあげながら装甲車は裏口のガラス扉を突き破って中に侵入する。その後スミス達は装甲車から降りアリーナの奥へと侵攻する。

 

「アレクサンドラから屋外部隊へ!アリーナ内部に侵入成功!ただし、裏口付近の敵が全てそちらに向かったので注意せよ!」

 

了解!と屋外部隊からの返答が来るとアレクサンドラ指揮官はHK433アサルトライフルを構え、義眼のアシストを用いて廊下の敵を撃ち倒す。

 

オークション会場では先ほどまで競りで盛り上がっていたが、突然の爆撃と屋内で響く銃声でざわついていた。

やがて銃声が近づいていき、扉を蹴破ってレストを先頭に侵入部隊が現れ、FALとウェイターが近くにいた司会役の男を撃ち倒す。

 

「ヒィィ⁉︎」

 

「逃げろぉ‼︎」

 

参加者達が叫び声を上げて逃げ出すが、一箇所に集まり過ぎてつっかえていた。殿を務めていた警備兵が銃を撃つが、G36Cのフォースシールド、一〇〇式の桜逆像により防がれ、その隙をG36とUSPコンパクトが突き、返り討ちにする。

別の警備兵が全員の死角となる位置に隠れ、射撃しているアレクサンドラ指揮官を狙おうと身を乗り出した途端に、事前に未来予知を使っていた64式7.62mm自動小銃に頭を撃たれ、倒れていった。

 

(…いた!)

 

レストは一人の男を見つけ、床を蹴って跳躍して男の前に降り立つ。その男はレストの復讐相手の一人であった。

 

「なっ⁉︎ミー…」

 

「黙れ」

 

そう告げるとレストは男を撃ち抜く。

 

「レストさん!こっちにもいます!」

 

G3に呼ばれてレストが振り向くと、足を撃たれた男が呻きながら横たわっていた。レストはその男を撃ち殺すとG3に質問した。

 

「何故わざわざ生かしておいたんだ?殺してもいいっていったはず…」

 

「こういうのは自分の手でケリをつけるべきと思いました。それに、あなたは私の遠縁の弟みたいなものですから」

 

レストが持つMP5K、そのバリエーション元のMP5のベースはG3である。それ故に彼女はレストの復讐相手を生かしておいたのである。

 

「…ありがとう、だがそれで死なれたら目覚めが悪い。これっきりにしてくれ」

 

「わかりました」

 

──

一方、屋外部隊はというと元々正面口付近にいた敵部隊はほぼ壊滅し、裏口周辺からきた部隊の相手に移っていた。

 

「バルカンさん!その先伏兵がいます!」

 

「わかった!ウオラァァ‼︎」

 

「デストロイヤーちゃんはアリーナに近過ぎです!フレイムさん、援護して退がらせてください!」

 

「わ、わかったわ!」

 

「了解!」

 

ペイロードは上から敵の動きをみてバルカンらに指示を飛ばしていた。仮隊長に選ばれた以上、ちゃんと指揮をしなくてはと事前にバレットとアレクサンドラ指揮官から指揮のやり方を教わっていたのであった。

そんななか、マーダーはこの状況に飽き始めていた。

 

(初めこそ楽しかったけど、なんか物足りないわね〜。…ん?)

 

マーダーの視線の先には、スミス達侵入部隊から逃げてきたオークション参加者達がアリーナ正面口から出てきて、呆然と立っていた。

 

(アハ♪獲物、見〜つけた♡)

 

マーダーは狂気の笑みを浮かべながら参加者達の元に走っていき、粒子ブレードを展開し、参加者達に斬りかかった。

 

「ウワァァ⁉︎」

 

「ギャァァァ‼︎」

 

「アッハハハハッ‼︎いいわぁ、無力な奴を一方的に屠っていくこの感覚!本当、たまらない!キャハハハハハ‼︎」

 

「な、何よあれ…」

 

「本当に味方なのかよ…?」

 

参加者を次々斬り殺しながら狂笑をあげるマーダーにWA2000とMG3は戦慄していた。バレットも彼女達程では無いがマーダーに危機感を抱いていた。

 

「ペイロード…彼女は本当に大丈夫なのか?」

 

「ええ…。ペルシカさんの話ですと、マーダーさんの体内には万が一の為の小型爆弾が埋め込まれているようですので大丈夫かと…」

 

「そうか…」

 

そうこうしているうちに敵の数は僅かとなっていた。

その時だった。一人の敵がバルカンに向けてRPGを発射した。

 

「バルカン先輩、危ない!」

 

「え?」

 

バルカンが振り向いた後、爆発が起きた。

 

──

 

アリーナ内でも敵の数が僅かとなっていくなか、一人の男を撃ち倒したナガンは椅子に隠れリロードを始める。だがそれを見つけた3人の男がナガンの背後に向かうのをスミスが見つける。

 

「ナガン!うしr─」

 

スミスが言い終えるより早く、手早くリロードを終えたナガンは振り向きざまに素早く三発撃つ。放たれた弾丸はどれも正確に男達の頭を射抜き、沈黙させた。

 

「すげ…!」

 

「案ずるな。いくら年寄りでもそれくらいわかっておったわ」

 

「お見それしました」

 

一方、FALとウェイターは拉致された人形が集められているであろう部屋の前まで移動していた。

 

「いきますよ、FAL姉さん」

 

「ええ」

 

ウェイターが扉を蹴破り、二人は中に入る。

中には警備兵の姿はなく、人形達が怯えながらこちらを見ていた。FALは彼女達に優しく声を掛ける。

 

「安心して、私達はグリフィンの部隊よ。もう大丈夫だから」

 

また、ウェイターは人形達の中から誰かを探していた。すると、一人のメイド人形がウェイターを見て驚いていた。

 

「え…?ウェイター執事長…⁉︎」

 

「…リリィ⁉︎やはり捕まってたのは貴女でしたか!」

 

「知り合いなの?」

 

「ええ。民生時代の同僚です。てっきり()()()に破壊されたのだと…」

 

「私…()()()に、みんなが襲われるのをみて、怖くなって…みんなや旦那様達を見捨てて逃げたんです…!そのあとお爺さんに拾って貰ったんですが、この前お爺さんがあいつらに殺されて…!執事長…本当にごめんなさい…!」

 

泣きじゃくる彼女をウェイターは優しく抱きしめる。

 

「大丈夫です…貴女が生きてると知れば、お嬢様も喜ぶと思います」

 

「っ⁉︎お嬢様は生きているのですか⁉︎」

 

「ええ…一応は…」

 

そう言うウェイターの顔は、どこか哀しげであった。

 

──

 

「こちらアレキサンドラ。内部の敵は一掃した。負傷者は無し、そちらは?」

 

「こちらバレット。こちらも敵を殲滅したが、バルカンが攻撃を受けて脚を負傷したが命に別状はない」

 

「了解、こちらは人形達を連れて回収ポイントに向かう。そちらも移動を頼む」

 

「了解」

 

あの後バルカンは間一髪で直撃を避けたが、爆発の衝撃で脚を負傷したのであった。一方、マーダーは案の定死体を喰べており、それを見てしまったWA2000とMG3はグロッキー状態となっていた。バレットが平気なのはその手の映画をよく見ていたからである。

 

「…マーダー、そっちに侵入部隊が来るから喰うのをやめろ」

 

「ング…しょうがないわねぇ」

 

「…こやつも喰うのか…」

 

「…も?」

 

バレットがナガンの言葉に疑問を持つなか、レストは外に出て死体の顔を確認する。

 

(損傷は酷いが…6人いるな。中には4人いたから、あと2人で俺の復讐は終わる…!)

 

レストが自身の復讐の終わりが見えたことを自覚するなか、スミスはバルカンの側に駆け寄る。

 

「大丈夫か?」

 

「まぁ、とりあえずは…悪いけど、肩貸してくれないか?」

 

「いや、こっちの方がいいな」

 

「うわっ⁉︎ちょ、ちょっと!」

 

スミスはダミーにバルカンの銃を持ってくよう指示して、バルカンをお姫様抱っこで持ち上げて運び始めた。

少し運んだ後、バルカンは身をよじらせる。

 

「あ、あの…スミス?その…」

 

「恥ずかしがるなよ、怪我してんだから大人しくしてなって」

 

「そうじゃなくて…手…

 

「手?…⁉︎わ、悪い!わざとじゃないんだ!」

 

スミスが自身の手に目をやると、左手がバルカンの胸を掴んでいたのに気づき、慌てて手の位置を変えた。バルカンは顔を少し紅くしながら、

 

「いや、それはわかってるんだけどさ…気をつけてくれよな…?

 

「お、おう…」

 

そんなトラブルが起きたが、一行は回収ポイントに辿り着く。

こうして、オークション殲滅作戦は終了したのであった。




5700字越え…疲れた…。

スミスの突入時の叫びは「G(グリフィン)&K(クルーガー)に栄光あれェェ‼︎」と悩んだ結果あっちを採用しました。

どうだろう…上手く動かせたか不安ですが、どうでしょうか?
最後のシーンはoldsnake様と相談して書きましたね。

次回でコラボ回は終了します。


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Code-17 オークション殲滅作戦─終局

今回でコラボ回は終了となります。
今回はほとんど後日談ですね。


 

「皆さん、この度は本当に協力感謝する」

 

本社に戻り、作戦の報告書とオークションで手に入れた顧客リストと資金帳簿を提出したバレットは今回協力してくれた部隊に頭を下げた。

特に顧客リストはかなり重要な情報であり、中にはそこそこ有名な企業の重役の名前が記載されていたため、資金帳簿と合わせて告発すれば実態が明らかになるだろうとの事である。とはいえ、重役個人のみの関わりがある可能性もあるため、慎重に捜査する必要があるが。

 

「頭を上げてくれバレット。私達は出来る事をしただけなんだから」

 

「そうじゃよ。そんな気を張らなくてよい」

 

「それに、お兄ちゃん達が情報を提供したから戦えたんですから」

 

「…わかった。それとこれはDG小隊の連絡先だ。何かあれば連絡してくれ」

 

その後、アレキサンドラ指揮官の部隊とナガンの部隊の補給を行なったあと、バレットは二小隊をヘリポートまで見送る。

 

「アレキサンドラ指揮官、お元気で!ナガン、ユノ指揮官にありがとうと伝えてくれ!」

 

「ああ、機会があればまた会おう!」

 

「達者でな!」

 

ヘリが飛び立ち、それぞれの基地へ向かうのを見届けたバレットは表情を引き締めて後ろを振り返る。

 

「…いつまで覗いてるつもりだマーダー」

 

「あら?バレてたの?」

 

「背後の視線には鋭いんでね。ちょうど探そうとしてたから都合が良い…お前、随分とうちの仲間を侮辱してくれたんじゃねぇの?」

 

厳しい視線を向けるバレットにマーダーはどこ吹く風といったような顔をしていた。

 

「別にぃ?ちょっと気になる二人の過去を知ろうとしてただけよ?あなたはそういう経験はないの?」

 

「正直言ってお前の顔は見たくねぇが、同じ本社にいる以上それは出来ない。だがこれだけは言っておく─二度と俺の仲間を侮辱するな

 

殺気を込めた視線でそう言い放つとバレットはマーダーの横を通り過ぎる。

 

「あらそれだけ?てっきり殴ってくるのかと思ってたけど優しいのねぇ?」

 

煽るような口調で言うマーダーに対し、バレットは意地の悪い笑みを浮かべて振り向いた。

 

「ペルシカに今回の件は報告しといた。そしたら、『分解(バラ)しはしないけどお仕置きついでにいろいろ実験しておくわ』ってさ。いや〜お前がペルシカの実験台になるかと思うと哀れすぎて殴る気も起きねぇな」

 

「え''っ⁉︎ちょ、嘘でしょう⁉︎」

 

「(やっぱペルシカが天敵か)んじゃ、ご愁傷様〜♪」

 

この世の終わりみたいな顔をするマーダーを尻目にバレットは去っていった。

 

───

 

「……」

 

レストは部屋で考え込んでいた。

というのも、作戦終了後にマーダーに言われた言葉が頭に残っていたからだ。

 

『貴方のそういう闇……何かの拍子で壊れて廃人になるかもねぇ?』

 

『復讐の余りに我を忘れ私の目の前以外で狂って滅茶苦茶になったらつまらないじゃない?ねぇ?』

 

『復讐するなら…される覚悟を持っておきなさい』

 

(そんな事ぐらい…百も承知だ…!実際何度か奴らの仲間に逆襲されたこともある。だが…)

 

DG小隊に入ったばかりのレストは復讐心が彼の心のほとんどを占めており、復讐相手を前に我を忘れて突撃して罠にかかり、死にかけたことだってあった。

そんな彼を変えてくれたのがノアであった。彼女を助けて以降、自分に好意を持って近づいてく彼女に戸惑った。─こんな復讐にまみれて、しかも()()()()()自分を好きになっていいのかと。

だからある日、彼女に思い切って自分の過去を告げた。しかし、彼女はそれに臆さず、自分を愛し、受け入れると言ってくれた彼女に彼は惹かれ、今に至っていた。

 

─だからこそ彼は恐れていた。残りの二人が自分に逆襲するためにノアに危害を加えることを、それによって彼女が命を落としてしまうことを。

ノアだけではない、ホーテン達が働いているあのカフェだって狙われる可能性がある。正直、残りの二人は他の連中に比べてかなりの小物であるが、小物であるが故に卑劣なことをしかねない。もしそうなったら、マーダーの言う通り、彼は怒りと悲しみに狂い、やがて壊れて廃人になってしまうかもしれない。

 

故にレストはそうなる前にケリをつけようとある手段に出た。

アリババとメジェド─その道のものなら知らない者はいないというハッカーコンビがS09P基地にいるとペルシカから聞き、レストはナガンに頼み込んだ。

残りの二人が生きているのか、死んでいるのか。生きているならどこにいて、何か動きはあるのかをアリババとメジェドに調べさせてくれと依頼したのだ。ナガンは頼みを快く受け入れ、結果は彼専用の端末に送ると言ってくれた。

彼の復讐はもはや彼だけの為ではなく、彼を愛する者や仲間達の為にもなっていた。

 

(俺は一刻も早く復讐を終えなくてはいけない…ノアの為にも、みんなの為にも…そして、俺自身が先に進む為にも…!)

 

───

 

それから3日後、ウェイターはリリィを連れてグリフィン傘下の病院へと向かっていった。

ようやく外出許可が降りた彼女はお嬢様に会いたいと言い、ウェイターはそれを聞き入れて連れてきた。

 

病院に着き受付を済ませると、二人は病室へと歩いていく。

やがて《フィオナ・ノーライト》と書かれた病室の前で立ち止まる。

 

「この部屋にお嬢様が…」

 

「はい。─失礼します」

 

ウェイターに続き、リリィが中に入る。部屋の中を見たリリィは思わず息を呑んだ。

─そこにいたのは、酸素マスクをつけ、いくつかの点滴を受けて横たわる若い女性の姿だった。

 

「お嬢…様…⁉︎」

 

()()()からずっとこのままです。以前は別の病院に居たのですが、私がDG小隊に入隊してからはここに移して貰いました」

 

ウェイターはフィオナが横たわっているベッドの近くの椅子に座り、彼女に語りかける。

 

「お嬢様、いい知らせです。リリィが生きていたんです。3日前に、私と仲間達で助け出したんですよ」

 

─ここに来る度に、ウェイターは思い出す。民生時代の幸せだった日々を。そして、それらを失った()()()の事を。




これにて、コラボは終了です!

oldsnake様、スツーカ様、焔薙様、本当にありがとうございました!
また機会があればお願いします!

次回はウェイターの過去回です。


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Code-18 その笑顔が戻ると信じて

(最新の電撃アンソロを見て)何やってんだよ、社長⁉︎

さて、ウェイターの過去回です。いや〜難産だった。
(推奨BGM、ひぐらしより『You』)


2058年 ノーライト邸─

 

「おはよう、ウェイター」

 

「おはようございます、お嬢様」

 

屋敷内にて、書類をまとめているウェイターに当時17歳のフィオナが挨拶をする。

この頃のウェイターまだこの屋敷に来てから数ヶ月ほどしか経っておらず、まだ執事長ではなかった。さらに言えば当時はモノクルを掛けていなかった。

彼がいたノーライト家は当時は名だたる資産家であり、当主のエルスタル・ノーライトは人形技術に高い関心を持っており、I.O.Pや当時まだ存在していた鉄血工造に出資をしていた。そのため、主に軍用人形を造っていた鉄血工造はともかく、I.O.Pからは人形の割引などのサービスを受けていた。

故に第二世代人形が出回り始めた当時でも数十人もの人形を執事やメイドとして所持していた。ウェイターはその中の一人であった。

 

ノーライト邸に来たばかりのウェイターはまだ名前はなく、ただの型番のみであった。『ウェイター』という名はフィオナから貰った名前である。

ウェイターだけではなく、他の人形達の名前は全て彼女が考えたものであった。ちなみに、何故当主のエルスタルが名付けなかったかというと、彼のネーミングセンスが壊滅的だったからである。フィオナの名前も彼の妻が名付けていたほどであった。

 

「ここの仕事はもう慣れた?」

 

「ええ。旦那様だけでなく、ここの皆様は私達人形に良くしてくれますし、いいところだと思っています」

 

「そう思ってくれてこっちも嬉しいわ。それとね、ウェイター。正直に言って欲しいんだけど…その名前、気に入ってる?」

 

「この名前ですか?いい名前を貰えて良かったと思っておりますが、どうかされましたか?」

 

「いや…あのね、ホントはみんな気に入ってないけど私に気を遣って嘘ついてるじゃないかなって思ってね…」

 

不安そうにするフィオナにウェイターは優しく微笑み、目線を合わせた。

 

「お嬢様、一つ良いことを教えます。私達I.O.P製の人形はまともな嘘は言えないようになっております。ですから、みんなお嬢様がつけてくださった名前を気に入ったと言ったのなら、それは本当の事なんですよ」

 

「そうなの?良かったぁ…!あ、もしかして一回お父様が名前を考えた時に微妙な顔をしていたのって…」

 

「……正直あの名前をつけられるのはちょっと…と思いました…。この事は内緒にしてくれますか?」

 

「ふふ、わかったわ。お父様、仕事はできるのにネーミングセンスは本当に酷いものね。なんだって漢字を当て字にしようなんて思うのかしら?」

 

「昔の日本ではそういう名前を子供につける事があったそうで、その影響かと…」

 

「そうなんだ。お仕事の邪魔してごめんね、じゃあね」

 

そう言いフィオナは去っていった。

この当時、人形に対する扱いは今ほど良くはなく、人形の雇用に対するデモやテロも多かった状況で自分達を人間と同じように扱い、さらには名前までつけてもらったノーライト家にはウェイター達は感謝しかなく、そんな彼らの為に尽くすのが何よりの喜びであり誇りであった。

 

ウェイター達がノーライト家に来て一年が過ぎたある日、ウェイターはエルスタルに呼び出された。

 

「旦那様…私を呼び出したのはどのような用件でしょうか?」

 

「そう堅くなるなウェイター。別に咎めるために呼んだわけじゃない。…君たちはこの一年、随分と君たちはよく働いてくれている。特に君はみんなをまとめ上げるのが得意なようだね」

 

「ありがとうございます」

 

「そこでだ…君を執事長に任命しようと思うのだが、どうかね?」

 

「私がですか…?私より前にいた使用人のみなさんはそれでよろしいのでしょうか?」

 

前からいた人間の使用人を差し置いて人形の自分が執事長になっていいのかと不安に思ったウェイターだが、エルスタルは笑ってこう言った。

 

「それについては心配いらない。すでに彼らに話は通してある。みんな、君なら歓迎すると言っていたよ」

 

「…⁉︎本当ですか?」

 

「ああ。それで、どうかね?」

 

「…このウェイター、その役目を謹んでお受けします」

 

ウェイターは手を添えて深く一礼し、この日から彼は執事長となった。

その翌日、フィオナは包みを持ってウェイターの部屋までやって来た。

 

「ウェイター、いる?」

 

「ええ、どうぞお入りください」

 

部屋に入ったフィオナは若干モジモジしながら包みを差し出した。

 

「あ、あのねウェイター。昨日あなた執事長になったでしょ?だから…これ、そのお祝いのプレゼント…なんだけど…」

 

「プレゼント?わざわざありがとうございます。…開けてもよろしいですか?」

 

「うん…」

 

ウェイターはゆっくりとプレゼントの包みを開く。

─その中に入っていたのは金縁のモノクルであった。

 

「これは…」

 

「度とか入ってないただのオシャレグッズだけど、ウェイターに似合うと思って…今、付けてくれる?」

 

「かしこまりました、少々お待ちを…」

 

後ろを向き右目にモノクルを付けたあと、ウェイターはゆっくりと振り向いた。

 

「どうでしょうか?」

 

…カッコいい…あ、いや、すごく似合ってるよ!」

 

「ありがとうございます。これは大切に使っておきます」

 

「〜〜ッ!」

 

ウェイターがにっこりと微笑むと、フィオナは顔を赤くしてそそくさと部屋から出ていった。

 

(あの反応…やはりお嬢様は…)

 

少し前からフィオナが自分に好意を寄せていることには薄々気が付いていたウェイターだが、先程の事でそれは確信に変わった。ウェイター自身も少なからず彼女の事を好いていた。

だが自分と彼女は主従関係で、しかも人形と人間である。彼女には年頃の少女によくある恋の一つだと思ってもらい、自分よりふさわしい人間を見つけて欲しいと願っていた。

 

その後、ノーライト夫人が第二子を身篭った事がわかり、彼らはより一層執務に励み、ウェイターは執事長としての手腕を発揮していた。

それから半年後、ウェイターはフィオナに呼び出された。少しの沈黙の後、フィオナが口を開いた。

 

「…ねぇ、ウェイター。私がウェイターをどう思ってるか、前から気づいてたんでしょ?なのにどうして今まで通りにしていられるの?」

 

怒ってるような、悲しんでるような顔で問いかけるフィオナにウェイターは押し黙ってしまう。そんな彼にフィオナはさらに畳み掛ける。

 

「変だと思った?人間の私が人形のあなたに恋してるってわかって可笑しいと思った?表向きは普通にしてて、内心バカにして「そんなことはありませんッ!」…⁉︎」

 

突然大声を出したウェイターに驚くフィオナに構わずウェイターは思いの丈を打ち明けた。

 

「この際申し上げますがお嬢様が私を好いてる事に気づいた時、私は嬉しかったですよ!私もお嬢様を一人の女性として愛しております!ですが…ダメなんですッ…!主従関係とかそれ以前に…私は人形で、お嬢様は人間なんです…!人形と人間が結ばれるなんて…」

 

心苦しそうに話すウェイターにフィオナはまたもや驚いていた。まさかウェイターも自分の事を好きだとは思っていなかったからだ。

ウェイターの言いたい事もわかる。今ではそうでもないが人形に恋愛関係になることはほとんどなく、またそういう感情を持つ人間を変人扱いする風潮もあった。ウェイターはフィオナがそういった目で見られるのが耐えられないのだ。

 

「…ウェイター、例え周りからどんな目で見られても私は気にしないわ。好きな()と一緒にいることなんて普通の事でしょう?」

 

「しかし…」

 

「それにね、これからあなた達人形はどんどん増えていくわ。その中でそういった感情を持つ人間だって必ず現れるわ。なら、私達はその先駆けになっていきましょう」

 

「お嬢様…」

 

「改めて言うわ。私、フィオナ・ノーライトはウェイターを愛しています。ウェイター、あなたの答えを聞かせて?」

 

ウェイターは少し黙り込む。そこまで彼女に言わせたのなら、答えは一つしかないだろう。

 

「…私、ウェイターはフィオナ・ノーライトを愛しています。この身が尽きるまで貴女の側にいましょう」

 

「ウェイター…!」

 

フィオナはウェイターに駆け寄り、抱き締めた。ウェイターも彼女を抱き締め返し、髪を撫でる。

 

「ふふ、まずはお父様に報告しなきゃね」

 

「そうですね…」

 

「いや、その必要はない」

 

声がした方に向き直ると、エルスタルがいつのまにか部屋にいた事に二人は心底驚いた。

 

「だ、旦那様⁉︎あ、いや、これは…」

 

「お父様…いつからそこに?」

 

「ウェイターが大声を出した辺りからだな。いやはや、中々良いものを見せてもらったよ」

 

「えっと…という事は…?」

 

「あぁ、二人の交際を認めよう。ただし、公私はわきまえるように」

 

「本当に⁉︎ありがとうお父様!」

 

「旦那様…本当によろしいのですか?」

 

「構わないよ。前々から二人はお似合いだと思っていたからね…娘を頼んだよ」

 

「…かしこまりました。必ず幸せにしてみせます」

 

その後、屋敷内で彼らの交際が知らされると他の人形や使用人から祝福の言葉を送られ、二人は恥ずかしいやら嬉しいやらで気持ちがいっぱいいっぱいだった。

それからというもの、二人は基本ウェイターが仕事をしてる時はあまり関わらず、仕事が終わればフィオナが彼の元へ甘えに行くといったことが日常的に見られるようになった。休みの日は二人で買い物や近場にピクニックに出掛けたりしていた。その際一部の人間から好奇の視線を向けられたりしたが、二人は気にせず付き合いを続けていた。ウェイターはこうした平凡だが幸せな日々が続いていけばいいと思っていた。

 

─だがそんな日々を揺るがす出来事が起きた。『蝶事件』である。

 

鉄血人形の反乱が起こした影響は大きく、反人形派の怒りの矛先は鉄血工造だけでなく、()()()()()()()()()()()()()()にも向けられた。

当然、ノーライト家もその対象となり屋敷の周りでは抗議のデモがしばしば行われていた。

 

「クソッ!旦那様達が何をしたってんだよ‼︎」

 

「そうよ!『お前らが出資しなければこうはならなかった』って、滅茶苦茶じゃない!」

 

「…落ち着きなさいあなた達。ここで言っても仕方がないでしょう」

 

不満を言う人形達にウェイターはたしなめた。

 

「ですが執事長!このままだと奴ら、こちらに危害を加えるかもしれないんですよ!」

 

「旦那様が近々ボディーガードとしてPMCを雇うと言っておりました。それまでの辛抱です」

 

そう言いウェイターはその場を後にし、フィオナの部屋へ向かう。

ノックをして部屋に入るとフィオナが彼に抱き着いた。その体は小さく震えていた。

 

「フィオナ…」

 

二人の時は名前で呼ぶようにしていたウェイターはフィオナの名を呼び、頭を優しく撫でる。

 

「ウェイター…私、怖いの。あの人達が私達に何かしてきたら…!」

 

「大丈夫です…もしもの時は私が絶対に貴女を守りますから…」

 

数日後、ウェイターはメンテナンスのため一時的に屋敷を離れる事になった。反人形派の動きが心配だったが明日には雇ったPMCが来るとの事なので大丈夫だろうと考えていた。

 

「ウェイター…メンテナンスが終わったら、早く帰ってきてね?」

 

「わかりました、お嬢様。では、行って参ります」

 

フィオナに見送られながら、ウェイターはI.O.Pへ向かった。

…これが、ウェイターが最後に見たフィオナの元気な姿だった。

 

その日の夕方に、武装した反人形派が複数のジープに乗ってノーライト家に襲撃したのであった。

屋敷内の人形及び使用人達はある程度の抵抗はしたが、運良く逃げ切れたリリィを除いて全員が破壊、殺害された。エルスタルは妻を守ろうとしたが、抵抗むなしく捕まり、目の前で妻をお腹の子もろとも殺された後、嬲り殺しにされた。

─そしてフィオナだが、襲撃時にジープに跳ね飛ばされ、騒ぎを聞きつけた治安維持隊が来た時には虫の息であり、なんとか一命を取り留めたが出血と脳のダメージが酷く、このままだといつ眼を覚ますかわからないと診断されたのであった。

 

のちに『バタフライエフェクト』と呼ばれた大事件をウェイターが知ったのは、メンテナンスが終わった後のことであった。

急いで病院に駆けつけ、医師からフィオナの事を聞いたウェイターは絶望し、膝から崩れ落ちた。

 

「嘘だ、嘘だ…嘘だァァァァッ‼︎」

 

フィオナのいる病室で、ウェイターはひたすら後悔の念に駆られていた。

 

─何故絶対に守ると言ったのに守れなかったのか?

あの日自分がメンテナンスをしていたからだ。

─何故メンテナンスの日をあの日にしてしまったのか?

別の日にすれば彼女を助けることができたかもしれないのに。

─そして何故、自分は()()ではなく、メンテナンスが必要な()()なのか?

 

その後の医師の話によれば、彼女に医療用のナノマシンを使えば目覚める可能性はあるが、今の彼女の状態ではナノマシンの負荷に耐えられないとの事であった。しかし耐えられるように身体のダメージが回復するまで生きられるかはわからないそうだった。

だがウェイターはその可能性に賭けた。そしてウェイターはグリフィンに入る事を決意した。彼女が再び目覚めた時、今度こそ彼女を守れるようにするために。そして、ノーライト家を襲撃した連中のように人形と人間の仲を引き裂く輩を排除するために。

 

グリフィンに入る際、彼に適合する銃を調べた結果、SCAR-Hが適合した。

この銃の開発したメーカーはFNハースタル、その本社所在地がエルスタルと知った時、彼は運命的な何かを感じた。

しかし、彼が戦術人形になる際には名前を銃名にすると知った時、彼は少し躊躇した。ウェイターの名を捨てて良いのかと。だが、そうなる事は覚悟していたため、彼は戦術人形への改造を受けた。

そして彼はDG小隊へと入隊したのだが、その時に当時のバレットから『銃名以外の名前を名乗っていい』と聞いた時、彼はどの名前にするかは一つしかなかった。

 

「なら私は─ウェイターです」

 

「そうか。ならウェイター、DG小隊へようこそ」

 

そしてウェイターは、DG小隊の一員となった。

 

────

現在

 

面会時間を過ぎ、本社へ戻る中リリィはウェイターに問いかけた。

 

「執事長…お嬢様達を襲った連中はどうなったんですか?」

 

「彼らは私が入隊する少し前に隊長達が殲滅したそうです。それと、お嬢様のことですが、つい先週にようやくナノマシンが導入できるようになったそうです」

 

「本当ですか⁉︎」

 

「ええ。あとはお嬢様次第です」

 

───

 

二日後、病院から連絡を受け、ウェイターとリリィは病院に駆けつけた。

病室の扉を開けて、中に入るとそこにいたのは─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

 

「嘘…本当に…?」

 

「お嬢様…!」

 

「リリィと…それにウェイター…久しぶりね」

 

「…ッ‼︎フィオナ‼︎」

 

久しぶりに聞いた彼女の声に、ウェイターは感極まって泣きながら彼女を抱き締めた。

 

「もう、ウェイター。その呼び方は二人の時って…まぁ、大体のことはお医者さんに聞いたわ……おかえりなさい、ウェイター」

 

「ただいまです…フィオナ…」

 

───

G&K本社

 

「今頃ウェイターは嬢ちゃんと再会してんだろうな。…?どうしたんだバレット?そんな顔して」

 

やたら神妙そうな顔をするバレットにスミスは問いかけた。

 

「いや…なんか…胸騒ぎがしてな…」

 

「ふーん…お前のそういう勘は当たるからな。多分大きな事が起きるかもな」

 

「あぁ…(なんだこの胸騒ぎは…?もしかして、ペイロードに何かあったんじゃ…?)」

 

DG小隊に緊急招集がかかったのはそのすぐ後であった。




ちなみに記憶喪失ルートもありましたが、あまりに酷なのでボツにしました。
いやね、書いてる途中で何回かウルッてきましたね。

最後のはoldsnake様作の『破壊の嵐を巻き起こせ!』でヤベェ事が起きた&救出依頼が来たのでその導入です。次回からまたコラボになるかもです。


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Code-19 出撃準備

コラボ中のoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』
よりミーティング後のバレットの様子です。
ちょっと短いです。


ミーティングを終え、スミスは作戦内容を伝えにバレットの元へ向かった。

マーダーの部屋へと向かうと正座しているマーダーと困惑しているバレットの姿が見えた。

 

「お、いたいた…バレット、作戦内容を伝えるからちょっと良いか?」

 

「あぁわかった…あと、マーダーは一体どうしたんだ?」

 

「それについても話す。あ、マーダーはあとでフレイムから聞いてくれ」

 

「わかりました」

 

スミスははバレットを連れてDG小隊に用意された部屋に入り、マーダーがああなった経緯と、この後の作戦内容を伝えた。それを聞いたバレットは複雑そうな顔をした。

 

「なるほどな…つまり、俺があん時ペルシカにマーダーの事報告しなきゃペイロードは捕まらなかったかもしれなかったのか…」

 

「いやいや!それは結果論だろ?前の作戦でのあいつの行動は目に余ってたし、お前がチクんなきゃ俺がチクってたぞ?」

 

「とりあえず今は妹さんを助ける事に集中しましょう」

 

「あぁ。それとウェイター、よくすぐに来れたな。もう少し遅れるかと思ったんだが」

 

「お嬢…フィオナから言われたんです。『私の事はいいからすぐに行ってきなさい』って」

 

「そうか。というより、お嬢様って呼ぶのはやめたのか」

 

「彼女からそう頼まれたので。それと隊長、ドリーマーですが殺さずに生け捕りにしろとの事です」

 

「…は?何故?」

 

バレットとしては大事な妹に危害を加えたドリーマーには最大限の苦痛を与えた上で殺してやりたい気持ちが占めてた為、生け捕りに関しては納得がいかなかった。それに対してスミスはこう説明した。

 

「考えてもみなバレット、あの性悪女のやる事だぜ?ペイロードに爆弾埋め込んで、自分が死んだら爆発するよう仕組んでもおかしくはないだろ?それに、鉄血のハイエンドモデルは鹵獲されたらその個体を切り捨てて新しい個体を生産する習性が確認されている。それを利用して、あのドリーマーを生け捕りにして、メンタルモデルを取り出して閉じ込めればもう二度とあの個体のドリーマーに付け回されずに済むってわけだ」

 

「ふむ、確かにそうか…」

 

「鹵獲したドリーマーはペルシカが()()()()やるみたいだから、ロクな目に遭わないのは確かだ」

 

ペルシカが絡むならほぼ間違いなく酷い目に遭うだろう、そう考えたバレットは納得し、殺すのは諦めた。しかし、鹵獲する際に手足は吹き飛ばすつもりだが。

 

「それと、これが鹵獲用の麻酔銃だ。効力はペルシカがああなる前のマーダーで試したらしいから問題ないそうだ」

 

「了解。あとウェイター。今回は屋内戦になるかもしれない。前に人形教団を潰した時に使ったワイヤーを持ってきた方がいい」

 

「わかりました」

 

「では準備にかかろう。スミス、協力する501FGの部隊とアヴァロン城塞のSASSのデータを寄越してくれ」

 

「あいよ」

 

バレットは自身の武器のチェックをしながらデータを見る。

 

(なるほど…どちらも正規軍並みの戦力があるのか。というより501FGには元正規軍もいるのか。それにしても兵長、タワシ、パンジャンの三人…どれも高い戦闘能力だ。特に兵長って人はハイエンドモデルを蹴り飛ばすとは…こう考えるのは失礼だが、本当に生身の人間なのか?)

 

そう考えながら、愛銃のM107とサイドアームのベレッタM9の整備を終えた。

M107を担ぎM9をホルスターに入れ、それぞれの予備マガジンを入れたポーチを腰に巻き、手榴弾をいくつか引っさげ、最後にアーミーナイフを服の裏に仕舞い準備を終えたバレットは出発地点に向かう。

 

(待ってろペイロード…絶対に助けてやるからな…。それとドリーマー、覚悟しておけよ…‼︎)




\デェェェェェン/←準備中の事書きながら思ったこと。

今回バレット、結構キレてます。
例えるなら妹に危害加えられた時の某ギアス皇子や天の道を行き総てを司る人並みだったりします。

修正等あれば直します。


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Code-20 激闘・F05地区-①

コラボその2です。

今回普通に鉄血兵が喋りますがご了承を。


「…もうすぐ501FGの部隊が爆撃を開始する筈だ」

 

F05地区に到着し、EA小隊、SASSと合流して501FGの部隊が爆撃するのを待っていると、エンジン音が聞こえてきた。

 

「…来たぞ!」

 

その後空爆隊がジュピターやその周辺に爆弾を落とし、辺りは爆音に包まれる。

 

「ヒュー‼︎やる事が派手だねぇ」

 

スミスがそう呟いたあと、ヘリアンから通信が入った。

 

『501FGよりジュピター全機破壊が確認された!これよりペイロード、バルカン救出作戦を開始する!総員準備せよ!』

 

「了解‼︎」

 

「まずは空挺部隊と合流する!各員周囲に警戒しながら行くぞ!」

 

バレットを先頭に一行は合流地点へと向かう。道中爆撃から逃れた部隊と交戦しつつも、合流地点へとたどり着いた。

そこには三人の男性がおり、すでに戦闘が行われたのか、周りには鉄血兵の残骸が横たわっていた。内一人に至っては悠々と紅茶らしきものを飲んでいた。

 

「あなた方が空挺部隊でよろしいですね?」

 

「お、男の人形⁉︎…あぁそうだ。俺は501FGの部隊の兵長だ。そっちがタワシで、そこで紅茶飲んでんのがパンジャンだ。これから俺たちは一時的にそちらの指揮下に入る」

 

「了解した。このまま敵司令部まで直行する、ついて来てくれ」

 

そのまま移動しようとした矢先、ビルからストライカーとイェーガーがこちらに狙いを定めているのが見えた。

 

「っ⁉︎避け…」

 

その時、ビルが砲撃を受けて敵兵諸共吹き飛んだ。

砲撃音のした方を向くと、一台の戦車がゆっくりと前進していた。

 

「あれは…ヤークトティーガー?」

 

「あれってそっちのお仲間?」

 

「その通りだ。ビルの敵はあっちに任せて早いとこ向かうぞ」

 

「いいのか?見たところ随伴兵もいないようだが…?」

 

「彼なら平気です」

 

仲間である彼らがそう言うなら平気なのだろう、そう判断したバレットは司令部へと突撃を開始する。

彼らの行く手を阻もうと、リッパーやヴェスピドの部隊が現れるが、彼らを止めるには至らず、SASSの狙撃支援もあり次々に返り討ちする。

特にバレットは腰だめで連射を行い、確実に敵兵を吹き飛ばした。

 

「あのバレットって人形、すげぇな…」

 

「まぁ俺らの隊長だし、妹が捕まってんだからああなるのは当然…って兵長、後ろ‼︎」

 

兵長の後ろにブルートが差し迫るのを見たスミスが声をあげると、兵長は紙一重で斬撃を躱し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…は?」

 

「…ふぅ。危なかった」

 

「兵長…あんた、リ○ァイとかっていう名前じゃないよな?」

 

「いや、違うが?」

 

「あそう?(ヤベェこいつら…本当に人間?とりあえず味方で良かった…)」

 

やがて司令部周辺へとたどり着くが、流石に司令部とあってか、敵の数が多く一度引く事にした。だが二度目の襲撃はなく、どうしたものかと考えた矢先、ウェイターから通信が入った。どうやら彼が敵を引きつけるので先に行ってくれとのことであった。

バレットは少し迷ったものの、ウェイターを信じて先に進む事にした。

 

「…さて、やりますか」

 

ウェイターは敵部隊を見据えながら呟く。

敵部隊はガードが大半を占めており、ダミー含めた五人で相手するには骨が折れるが、さほど問題にしなかった。

ウェイターはダミーに指示を出し、物陰から一斉に飛び出しEGLMから榴弾を放ち、前衛を吹き飛ばす。そのまま追撃しようと前に出た瞬間、隠れていたブルートが不意打ちをかます。とっさに銃でガードするが、その際に銃は両断され、使い物にならなくなってしまう。すぐにウェイターはサイドアームのFNP9を取り出しブルートを撃ち倒すが、その隙を敵が逃すはずがなかった。

 

「今だ!そいつを狙え!」

 

「くっ!ダミー1、スモーク!」

 

すぐにダミーに指示を出しスモーク弾を放たせるが、ほぼ同時に敵の攻撃が降り注ぎ、ダミーが二体やられてしまった。

辺りが白煙に包まれるなか、敵部隊は勝てると確信したのか前進する。

─その時だった。風を切るような音が聞こえたかと思うと何体かのリッパーとガードがバラバラに切り刻まれた。

 

「何っ⁉︎」

 

部隊長のヴェスピドが驚くもその後も何度も先ほどと同じ音がし、その度に敵部隊はバラバラになっていった。

 

「隊長の言った通り、持ってきて正解でしたね」

 

煙を割るようにして現れたウェイターが持っていたのは、以前に使用したワイヤーであった。

 

「以前は使いづらいと考えてましたが、案外慣れれば大丈夫です…ねっ!」

 

敵部隊の弾幕を躱し、ウェイターはワイヤーを閃かせる。

瞬間、ヴェスピドの後ろにいたガードの部隊が一斉に上半身と下半身に分けられた。

 

「なっ…⁉︎」

 

「補給は済ませましたか?エリザ様にお祈りは?戦場の隅でガタガタ震えて命乞いをする心の準備は──できていますか?」

 

薄い笑みを浮かべて言い放つウェイターにヴェスピドは歯ぎしりをした。

 

「…っ!舐めるなっ!後衛、前に!」

 

すぐさまヴェスピドは残った部隊のうち、後衛のガード部隊を前に出す。それに合わせてウェイターもダミーに指示を出す。

 

「ダミー1、敵戦列右中央に榴弾を。ダミー2はその後焼夷弾を左中央に」

 

「「了解」」

 

指示に合わせダミーは榴弾を放ち、もう一人のダミーが一拍遅れて焼夷弾を放った。榴弾は目標に命中し、爆発の余波で左に倒れた部隊は焼夷弾に焼かれていった。

 

「くっ!この─「チェックメイトです」…⁉︎」

 

ヴェスピドが反撃を行おうとしたが、すでに彼女の首にはワイヤーが巻き付いていた。

 

「一応聞きますが、ペイロードとバルカンはここに居るのですね?」

 

「ペイロードは居るが…バルカンは…アルケミスト様が、自分の管轄下の基地に…」

 

「…アルケミストが?これは隊長に報告しなくては…!」

 

ウェイターはヴェスピドの首を落とした後、バレットに通信を入れた。

 

「こちらウェイター。敵部隊を撃破しました。それとバルカンはアルケミストが自身の基地に連れてったそうです」

 

「何…⁉︎わかった。ウェイター、まだいけるか?」

 

「ダミー二体と銃を失いましたが、何とかいけます」

 

「良し、それならすぐに来てくれ」

 

「了解」

 

ウェイターはすぐにバレットの元へと向かっていった。




完 全 に ウ ォ ル タ ー

いやね、元々ウェイターのモデルは青年ウォルターだったりします。
ウェイターの見た目はあれを髪の毛束ねずに短くしてモノクル逆にして目付きを柔らかくした感じだと思ってくれれば良いです。
ちなみにウェイターが何で元民生なのにこんな強いのかと言うと、入隊してから彼をメンテナンスしてたのはペルシカさんだからです。つまりはそういうことです。(要はメンテナンスついでに色々やった)

例の台詞感想で言ってもいいんですよ?(チラ)


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Code-21 激闘・F05地区-②

コラボその3です。

マーダーが元に戻ったことを知ったバレット。不安を抱えつつもペイロードの救出に専念する。


「マーダーが?」

 

「ええ。突然人が変わったようになって、ひと暴れすると言って武器を取りに行きました。それと、あなたによろしくとのことです」

 

「……わかった」

 

SASSとの通信を終えたバレットは軽く冷や汗をかいた。口ぶりからして性格が反転してる間の記憶はあるようで、となればそうなったそもそもの原因であるバレットに良い印象はないだろう。ここまできて後ろ弾or(物理的に)食べられる危険が出たことにバレットは焦りを感じた。

 

(てか、レストとウェイターの過去を揶揄したのが悪いんだから逆恨みも甚だしいだろ…)

 

「……一発なら誤射だよな…?

 

「待てバレット、お前の一発はシャレにならねぇからな⁉︎」

 

「最悪、ドリーマー用の麻酔銃をあいつに使えばいい話だ」

 

スミスとレストの言葉を聞き、とりあえずバレットは先を急いだ。

その時、フレイムから通信が入った。

 

『こちらフレイム!バルカン先輩の救出に成功しました!ただ、少し様子がおかしいのでデストロイヤーちゃんが16Labに連れて行きます。バレットさんはペイロードさんの救出を頼みます!私もすぐ戻ります!』

 

「了解。…全員聞いたか?」

 

「あぁ。あとはペイロードを助けてドリーマーを捕まえれば任務完了だろ?…にしても、バルカンの様子がおかしいってのが心配だな…」

 

「なんだスミス、気になるのか?」

 

「…まぁな」

 

「とりあえず急いだ方がいい。このままドリーマーが何もしないはずがないからな」

 

彼らは司令部内に侵入し始める。すると、ペイロードの反応が地下からするのを発見した。

 

「…いた!」

 

「待てバレット、罠かもしれない。先にドリーマーを見つけた方が良さそうだ」

 

「俺とノアが下に行く。隊長とスミスはドリーマーを頼む。何かあったら連絡する」

 

「わかった。レスト、ノア。気をつけろよ」

 

「了解」

 

「了解です」

 

二手に分かれ、バレットとスミスはドリーマーの捜索、レストとノアはペイロードの救出に向かっていった。

 

途中で鉄血兵を撃ち倒しながら地下へと向かうレストとノアだが、一度曲がり角で立ち止まる。

ゆっくりと顔を覗かせると、複数のプラウラーとヴェスピドが牢屋の前で見張りをしていた。

 

「レストさん、どうしますか?」

 

「このまま行ってもいいが、俺らが来たらペイロードを殺すよう命令されてたらまずい。閃光手榴弾を使う」

 

そう言いレストは閃光手榴弾を取り出す。

そして近くにあった一斗缶を蹴り、注意をこちらに向けさせると同時に閃光手榴弾を投げる。すぐに閃光と爆音が響き鉄血兵の視界を妨げる。

 

「今だ‼︎」

 

すぐさまレストとノアは物陰から飛び出し、鉄血兵を撃ち倒していく。

しかし、どうやら閃光を免れた一体のヴェスピドがレストの予想通りペイロードに向けて銃を向ける。

 

「させませんッ‼︎」

 

ノアは服の裏からスペツナズナイフを取り出し、刀身を射出する。射出された刀身はヴェスピドの喉に突き刺さり、ヴェスピドは倒れた。

 

「ペイロード!無事か⁉︎」

 

「レストさんとノアさん…?助けに来てくれたんですか?」

 

「ああ。ドリーマーに何かされてないか?」

 

「いえ…右脚を撃たれたこと以外は…お兄ちゃんは?」

 

「隊長はスミスと一緒にドリーマーの相手をしてるはずだ。ノア、牢屋は開けられそうか?」

 

「鍵自体は壊せそうです。ですが、近くに妙な装置が取り付けられてますね…もしかしたら、ペイロードさんの側にある箱と連動してるのかも…」

 

見ると確かに牢屋の扉に電子機器が取り付けられており、ペイロードの側には2m近い大きさのいかにもな箱が置いてあった。恐らく中身は爆弾で、扉を開けたら電子機器が反応して起爆するようになっているのだろう。

 

「わかった。確かに501FGのパンジャンって人が電子戦が得意だったな。彼に解除してもらおう」

 

レストはパンジャンに連絡を寄越す。

 

「すぐにこちらに向かうそうだ。ペイロード、ドリーマーがどこにいるか見当はついてるか?」

 

「多分上の司令室だと思います。それと、ドリーマーなんですが…」

 

ペイロードはドリーマーについて()()()()をした。それを聞いた二人は思わず眉をひそめた。

 

────

 

「は?ドリーマーが幼女に?」

 

レストからの報告を受けてバレットは怪訝な顔をした。

 

『どうやら、ブラックウォッチがどうたらとか言ってたらしい』

 

「(ブラックウォッチ…確か正規軍並みにヤバい集団だって聞いてたな…)わかった。ペイロードを救出次第お前たちもすぐ来てくれ」

 

『了解』

 

通信を終えたバレットにスミスは話しかける。

 

「にしても、なんでドリーマーは幼女になったんだ?あいつ、自分の能力と身体に自信を持ってるナルシストだろ?わざわざ幼女のボディなんかで…」

 

「恐らくだが、ブラックウォッチとの戦闘でボディを失い、止むを得ず幼女ボディになったんだろう。だとすればこれはチャンスだ。まだあいつはそのボディに慣れてないはずだ」

 

「幼女ボコるのは気が引けるが、相手がドリーマーなら問題ないしな」

 

「油断するなスミス。多分あいつ、もう後がないと思う。俺を捕まえようとして何度もしくじってるし、あいつが目を付けてたバルカンにしてもせっかく捕まえたのに救出されちまった。援軍も来ていないからこの戦いで俺を捕まえなければ切り捨てられる可能性は大いにある。だから本気で来るはずだ」

 

「幼女の姿で?」

 

ブフッ‼︎それを言うな…後に引けない状況なのに慣れないボディで戦わざるを得ないあいつの事を考えると笑いがっ…!」

 

「しかもしくじったら俺らに捕まってペルシカに弄くり回されるのか…ホント、哀れだな…」

 

しばらく静かに笑っていたバレットとスミスだが、すぐに顔を引き締めた。

 

「さてと…さっさとドリーマーとケリつけるとするか、()()

 

「あいよ。そろそろあいつには夢から覚めてもらうとしようか。そうだバレット。マーダーにも気を付けねぇとな」

 

「そうだった…とりあえず今はドリーマーだ」

 

背後の心配をしつつ、二人は司令室へ向かっていった。




ドリーマーとの決着は近い…

ちなみに皆さんはドルフロの福袋は何が出ましたか?自分はトンプソンでした。その後製造でMDR×2やらK2やらM1918やら416スキンやら出て嬉しいのですが、反面これはグローザ掘りが失敗する前兆ではとヒヤヒヤしております。


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Code-22 激闘・F05地区-③

コラボその4です。

ようやくドリーマーと対峙するバレット。だが、彼が見たのは…


「もう少しで…良し、解除成功だ」

 

パンジャンが電子機器を無効化し、扉を開けるとレストとノアはペイロードに近づいた。

 

「ペイロード、立てそうか?」

 

「ちょっと無理そうです…肩を貸してもらえますか?」

 

「わかった。ノア、反対側を」

 

「はい」

 

二人はペイロードに肩を貸し、そのまま立ち去ろうとするが、パンジャンが待ったをかける。

 

「ストップ。一応その箱も調べさせてくれ。まだ何か仕掛けがあるかもしれない」

 

パンジャンは箱にコードを差して調べる。すると

 

「やはりそうか。この爆弾、ペイロードの識別反応とリンクしていて、3m以上離れたら起爆するようになってる。あと、外部からの信号でも起爆するみたいだ」

 

「何…⁉︎解除出来そうか?」

 

「これくらい、紅茶飲みながらでも出来るさ……よっと、解除完了っと」

 

「早っ⁉︎…とりあえずこれで移動しても平気だし、ドリーマーが自棄を起こしても大丈夫か。あとはこれを隊長に…」

 

その時だった。突如として轟音が響き、司令部が激しく揺れた。

 

「うわ⁉︎な、何だ⁉︎」

 

「崩れてきたらマズイです!早く脱出しましょう!」

 

一行は急いで外に出る。そして、彼らが目にしたのは一体の人形と、5m近い大型の人型兵器が激しい戦闘を繰り広げている様であった。

 

「な…何だありゃあ⁉︎」

 

────

 

「痛たた…何が起きたんだ?」

 

バレットとスミスは先ほどの衝撃でバランスを崩し倒れてしまった。

ちょうどその時、レストから通信が入る。

 

『こちらレスト!ペイロードの救出に成功したが、正体不明の人形二体が戦闘中!隊長、どうします?』

 

「正体不明の人形?」

 

バレットは壁の穴から外を見る。確かに二体の人形が戦闘を行っているが、そのうち一体には見覚えがあった。

 

「あれは…資料にあった万能者じゃねぇか⁉︎レスト、そいつに関わるな!今すぐペイロードを連れて逃げろ!」

 

『了解‼︎』

 

「万能者って、確か遺跡から生まれたっていう人形か?」

 

「あぁ。もう一体は鉄血のロゴが入っていた。恐らく万能者を捕まえるために造ったものと見ていいだろう」

 

「にしても何で万能者がこんなところに…?」

 

「さぁな。早いとこ俺らもドリーマーを捕まえて脱出しないと…うおっ⁉︎」

 

再び建物が揺れ、瓦礫が幾つか崩れ始めた。バレットとスミスは瓦礫を避けながら先に行った進む。その時だった。

 

「……フギャ!

 

司令室の方からドリーマーと思しき間抜けな声が聞こえてきた。

 

「「…フギャ?」」

 

二人は怪訝な顔をしながら司令室前まで移動する。

警戒しながら扉を開けた二人が見たのは────

 

 

「うー!クソッ!何で私がこんな目に…!」

 

瓦礫に足を挟まれて動けなくなっている幼女ドリーマーであった。しかも彼女の武器である大型の粒子狙撃銃は瓦礫によって破壊されていた。

 

「………」

 

「…バ、バレット⁉︎」

 

冷ややかな視線に気づいたドリーマーはバレットに目を向け、沈黙する。するとスミスが噴き出した。

 

「…プッ!アッハッハッハ‼︎こいつはお笑いだなぁ⁉︎まさかこんな形で決着がつくなんてなぁ、バレット?」

 

「全くだ。こちとら覚悟決めて来たのに、肩透かしを食らった気分だ」

 

「〜ッ‼︎このやろう!こんな身体じゃなきゃお前なんか…!」

 

「あー喋るな喋るな。その身体と声だと悪ガキの口答えくらいにしか聞こえねぇぞ?」

 

実際、手をバタバタさせながら悪態をつく幼女ドリーマーの姿はどうみてもいつものような雰囲気はなく、ただ滑稽なだけであった。

 

「くっ!こうなったらあなたの妹を爆破して─」

 

ドリーマーは側にあったスイッチを取り、ボタンを押すが何も起きなかった。

 

「…あれ?あれ?」

 

何度もボタンを押すドリーマーだが、ボタンを押す音だけが虚しく響いていた。

 

「…すでにペイロードは仲間が救出済みだ。終わりだ、ドリーマー」

 

バレットがそう言い放つと、ドリーマーは抵抗を諦めた後、怪しげに微笑んだ。

 

「…フッ、まあいいわ。次こそはあなたを捕まえて…」

 

は?次なんてねぇよ?お前はこのまま捕虜にして電脳空間に閉じ込める予定だからな。まぁこの姿はお前にとって屈辱的みたいだから手足吹っ飛ばすのは勘弁してやる。──あばよ、ドリーマー」

 

「ガッ…!」

 

ドリーマーは麻酔銃を打ち込まれ、動かなくなった。バレットは瓦礫をどかして彼女を抱えるとスミスに手渡した。

 

「ほれ、持ってな」

 

「わかった。…軽いな」

 

「バレットから全部隊へ!作戦完了、近くにいる万能者と大型兵器の戦闘に巻き込まれないよう撤退せよ!」

 

バレットは全員に通信をするとすぐさま司令部から撤退する。

戦闘に巻き込まれないよう逃げ、レスト達と合流する。

 

「お兄ちゃん‼︎」

 

「ペイロード、大丈夫か!」

 

レストとノアの肩から離れたペイロードをバレットは優しく抱き留める。

 

「お前、その足…!」

 

「うん、ドリーマーにね…ごめんなさいお兄ちゃん。私のせいで…」

 

「いや、気にするなよ…やっぱドリーマー足だけでも吹っ飛ばそうか…?」

 

「やめとけ、起きたら厄介だ。それより、全員いるか?」

 

「SASSは上手く撤退したって聞いた。ウェイターとフレイムはさっき連絡した。あとはマーダーだけだが、連絡が取れねぇ」

 

「チッ!どこに行ったんだあいつは?」

 

「もしかしたら万能者(厄祭)のところに行ったのかも。マーダー、戦闘狂なところがあるから…」

 

デストロイヤーの言葉に一同は沈黙した。もしその通りならあの戦闘に介入して、マーダーを連れ戻さなくてはならないからだ。

 

「…仕方ない、俺が連れて帰る。スミス、お前の麻酔銃を寄越してくれ」

 

「正気かバレット⁉︎」

 

「大型兵器の方はともかく、万能者はこちらから手を出さなきゃ問題ないはずだ。すぐ見つけて奴を眠らせればあとは逃げるだけだ」

 

「…わかった。死ぬなよ?」

 

「もちろんだ」

 

スミスから麻酔銃を受け取り、バレットはマーダーを連れ戻しに戦場へと戻っていった。




突然の乱入がありましたが、なんとか作戦は完了。しかしマーダーを連れ戻しに向かうのであった。

バレットが若干シスコンになりかけてる問題が浮上してきちゃった。どっちでも面白くなるんだよなぁ。



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Code-23 激闘の後

コラボの後日談です。

DG小隊がお見舞いに行きます。


戦場へ戻ったバレットだが、思いの外早くマーダーを見つけることができ、一行は無事に撤退することが出来た。

 

「うわ…まだ戦ってるよ…」

 

スミスがそう言ったのを聞き、ヘリから外を見ると、未だに万能者と大型兵器が戦闘を繰り広げていた。

 

「あれはもう手に負えないですね…」

 

「で?ドリーマーはどうする訳?」

 

スミスは横で眠っている幼女ドリーマーを見ながらバレットに尋ねる。

スゥスゥと寝息を立ててる様は見た目も相まって可愛らしいのだが、この場の全員が本性を知っているため何も思わなかった。

 

「それなんだが…イイ案を前から思いついてな。すでに道具をペルシカに依頼済みだ。幼女化してるのは予想外だが…まぁ問題ないな」

 

(うわ、絶対ロクな事考えてねぇぞ…)

 

その後、彼らは無事に本社に着き作戦は完了した。

 

────

 

作戦終了から一日が経過し、DG小隊はバルカン達のお見舞いに行くことにした。

まずはペイロードのいる修理室へと向かっていった。

 

「ペイロード、見舞いに来たぞ。入っていいか?」

 

「お兄ちゃん?うん、入っていいよ」

 

「失礼するよ」

 

ペイロードの許可を得て彼らは部屋に入っていく。

 

「怪我の具合はどうだ?」

 

「全然大丈夫です。撃たれただけだから、すぐに修復できるってペルシカさんが言ってました」

 

「そうか…これ、見舞い品。果物だとこの時期すぐダメになるからこれにしたんだが大丈夫か?」

 

バレットはペイロードにお菓子の詰め合わせを手渡した。

 

「大丈夫だよ。ありがとうお兄ちゃん」

 

「気に入って何よりだよ。…それと、今回の事で少しアドバイスがあるんだが、いいか?」

 

少しだけ真面目な顔でバレットはペイロードに尋ねる。それにペイロードが頷くとバレットは話し始めた。

 

「ペイロード、今後は今回みたいに近づかれた時のためにサイドアームを携帯することを勧める。俺もあまり使わないが、あるのとないのじゃ万が一の時に大きく差が出るからな」

 

「はい…わかりました」

 

「それと、選ぶなら反動の少ない拳銃を選びな。スミスの銃みたいに反動のデカイのはとっさの時に当たらない事が多い」

 

「いや、サイドアームでS&WM500(これ)選ぶ奴なんていないからな?」

 

スミスのごもっともな指摘はさておき、バレットは話を続ける。

 

「あとは仲間と弾丸を共有できるものがいい。俺やウェイターのサイドアームはレストの銃に合わせて9パラが撃てるやつにしてる。まぁこれはお前には関係ないか」

 

「そうですね…みなさん弾丸が桁違いだったりフレイムさんはそもそも弾丸ですら無いですからね」

 

「俺からは以上だ。みんなは何かあるか?」

 

「いいや」

 

「特には」

 

「同じく」

 

「私もないです」

 

「んじゃ、そろそろ行くか。ペイロード、早く怪我治るといいな」

 

「うん、じゃあねお兄ちゃん」

 

次に彼らはマーダーの所に行くのだが、これにはレストとウェイターは少し難色を示した。部屋の前で二人は改めてバレットに聞いた。

 

「隊長…本当に行くのか?」

 

「正直、元に戻った以上あまり顔を合わせたく無いのですが…」

 

「俺もあまり会いたくない。が、一応綺麗だった時にスポッターとして活躍してくれたからな…マーダー、入るぞ」

 

「どうぞ〜。…意外ね、てっきり来ないかと思ったわ」

 

バレットらの姿を見て含みを持たせた笑みを浮かべるマーダーだが、それに構わずバレットは近くの机に見舞い品の缶詰を置いた。

 

「あら?何これ、人肉の缶詰?」

 

「んなわけあるか。ソイミートの缶詰だ。味は良いんだが社名の所為で売れなくて在庫あまりが出たのを安く買った」

 

「ふーん、その社名って?」

 

ソイレント・システム・コーポレーション。もう社名は変わったがな」

 

「…やっぱり人肉じゃないのこれ?」

 

「お前なら食えばわかるだろ?じゃあ俺らは行くからな」

 

そういい足早にバレットらは出ていった。そのあとマーダーは缶詰を開けて中身を食べた。

 

「あら…これは…」

 

 

最後に彼らはバルカンのいる隔離室へと向かう。しかし、ウイルス感染の疑いがあるので直接の面会はできないため、対面室で待機しているとバルカンが扉を開けて入ってきた。

 

「おっ!来てくれてありがとな!ここ何もねぇから退屈だったんだ」

 

明るく話しかけるバルカンだが、その姿にバレットらは思わず息を呑んだ。

彼女の髪と肌は鉄血のハイエンドのそれと同じように白くなっていたからだ。

 

「傘ウイルス、話には聞いていたが…ここまでとはな…」

 

「バルカン、それ大丈夫なのか?」

 

「うーん、今のところは特に何も無いかな。あ、それで見舞い品とかないのか?」

 

「あぁ、あるぞ。はい、ジャックダニエル。良いやつだから大事に飲めよな。あと、ツマミもいくつか持ってきたから。あとでペルシカから受け取ってくれ」

 

バレットは見舞い品を置いておくとバルカンはとても喜んでいた。

 

「おおーっ‼︎ありがとなバレット!」

 

「選んだの俺なんだけど…」

 

「あ、そうなのか?ありがとなスミス」

 

「どーも。あとその体ってさ、元に戻るのか?」

 

「ペルシカの話だと治るみたいだけど…」

 

「そうか、良かったな」

 

するとバルカンは思い出しかのように声を上げた。

 

「あ、そうだ!ドリーマーは?あいつはどうした⁉︎」

 

それを聞いたバレットはイイ笑顔を浮かべた。

 

「あぁ…あいつはな、今逆デ○バイさせてるよ」

 

「ぎ、逆デド○イ?」

 

聞いたことのない単語に首をかしげるバルカンにバレットはわかりやすく説明する。

 

「半世紀ほど前に流行ったゲームでな、簡潔に言うと四人のサバイバーと一人のキラー、まぁ鬼だな。それから逃げるゲームなんだが、前にそっちが訓練に使ったMCR(メンタルクロックルーム)あったろ?あれの中身をそれ風にペルシカに改造させてそこにあいつをぶち込んだ」

 

「ふーん…ん?逆ってことはつまり…」

 

「あぁ、あいつ一人に対して四人のキラーが追いかけてくる。しかも普通はキラーが相手を殺すのにプロセスがいるんだが、今回は捕獲即殺害(立ちメメ)になってる。で、あいつがリスポーンするたびにキラーがランダムで変わる。ちなみにキラーの殺し方はどれもエグいぞ」

 

「それで脱出条件一緒だから鬼畜だよな…まぁ発電機蹴らないだけマシか」

 

「うわぁ…(ヤベェ…絶対バレット怒らせないようにしよ…)」

 

引き気味に呟くスミスにバルカンは同意を示し、またバレットを絶対に怒らせないようにしようと決めたのであった。

 

────

MCR内

 

「ハァッ…ハァッ…バレットの奴…!電脳内でもこの姿にさせるなんて…!」

 

物陰に隠れながらドリーマーは一人毒づいていた。彼女の姿はボディと同じく幼女の姿のため、逃げにくくなっていた。事実何度かリスポーンしていた。

ゲーム自体は昔デストロイヤーを泣かすためにやったことがあるため理解はおり、すでに2つ発電機は付けていた。

 

「取り敢えず、あと3つつければ…ってクソッ!ハ○が来やがった!」

 

急いで逃げようとするドリーマーだが、運悪く転んでしまい、追いつかれてしまった。

 

「ヒッ…⁉︎待って、○グのメメントって…ア"ア"ア"ッ‼︎」

 

────

 

「ちなみに、脱出したらどうなるんだ?」

 

「ボディに戻ってペルシカの実験台になる。まぁ脱出出来なくてもシステムを元に戻す都合上、丸一日たったら強制終了するけどな。実験が終われば何もない電脳内に閉じ込める予定」

 

つまり最悪の場合、ドリーマーは向こうで24日の間キラーに追い回されたり殺されたりしたあとペルシカのアブない科学実験に付き合わされる事になる。

どう考えてもバレットにやった事より酷い目に遭っているが

 

「んじゃ、俺らは帰るぞ。あ、バルカン。結果的に捕まったが、妹を置いて行かずに助けようとした事、感謝してる。これからも妹をよろしく頼む」

 

「ああ!任しときな!」

 

「じゃあな。早くそこから出れるといいな」

 

そう言い残して彼らは対面室から出て行った。

廊下を歩きながら、バレットは軽く息を吐いた。

 

「ハア〜やっとあの芋砂のストーキングから解放されたなぁ…」

 

「本当にしつこかったからなぁ…ん?どうしたレスト?そんな顔して?」

 

「いや…何でドリーマーはそこまでして隊長を鹵獲したがってたんだ?」

 

「それは俺も気になってた。男性型で16Lab製だからって理由にしては投入した戦力が多すぎる。それだけならダミーでもいいはずだ。だが、破壊されたダミーが何体か奴らに鹵獲されてるにも関わらず俺本体を狙ってきた…何故だ?」

 

考え込むバレットにウェイターは1つの可能性を口にする。

 

「もしかして、男性型のメンタルモデルのメインAIデータが欲しかったのでは?それなら合点がいきます」

 

「だとすれば…奴らも男性型を造ろうとしている?でも、何のために?」

 

────

鉄血工造

 

(ドリーマーから連絡が来ませんね…再起動もされてませんし、これは鹵獲されたとみていいでしょう。…またドリーマーの再生産をしなくては。ついでにバレットの鹵獲命令は中止させましょう)

 

モニターを見ながら代理人はため息をついた。

 

(ボディはすでに出来てますが、メンタルモデルのメインAIデータがありませんでしたからね…できれば向こうのメインAIが欲しかったのですが、仕方ありません…()()を使いますか)

 

代理人はその場から移動し始め、ある部屋に入る。

 

「…一度()()を造る際に殺されたあなたのAIをわざわざ改修、復活させたんです。それなりの活躍は期待してますよ…

 

 

 

復活者(リバイバー)

 

目覚めの時を待つ一体の人形を見ながら、代理人は呟いた。




ドリーマーと決着をつけたバレット。
だが鉄血では新たなハイエンドが生まれようとしていた…

ちなみに自分はデドバイは対応する機器を持ってないのでやったことはないです。

あとグローザ手に入れました(コロンビア)


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Code-24 小さな夢は彼の側に

ようやく以前の礼が出来ることになったバレット。
だが、その前に問題が発生した。


オークション殲滅作戦、ペイロード・バルカン救出作戦と2つの大きな作戦をほぼ続けざまにこなしたDG小隊はしばらくの間休暇となった。

 

ようやく休暇を得たバレットはDSRに食事に誘う事ができ、レストランも予約出来た為、あとは今夜約束の時間まで待つだけなのだが、ここ最近女性関係のトラブルが多いため(こう聞くと変な意味に聞こえるが事実なので仕方がない)念のためにK5のところに行き、彼女に占ってもらう事にした。

 

「なるほど…ようは恋愛運を見てくれってことだね…」

 

「まぁそんなところだな。占ってくれるか?」

 

もちろん、とK5は頷き机にカードを並べてタロット占いを始める。

が、いくつかカードをめくっていくうちに眉をひそめ、驚いたような顔をしたかと思うと若干哀れみの視線を向けていた。

 

「えっと…どうした?」

 

「…今まで見た中で最悪の恋愛運の悪さだね。これが恋愛運じゃなかったら死んでてもおかしくなかったよ

 

「そんなにか⁉︎ちなみに、これからはどうなる感じなんだ?」

 

「とりあえずは良くなるのが見えるね。ただ、さっきも言った通り君の恋愛運は最悪だ。良くなったとしても君の基準でだから普通に比べたら悪い方だけど、自信を持っていれば大丈夫だよ。あ、でも子供に気をつけた方がいいとも出てるね」

 

「そうか…ありがとう。ん?子供?」

 

子供と聞き、バレットは一つだけ心当たりがあった。しかし、さすがにそれは無いだろうと考えたが、それを見計らったかのようにペルシカから連絡が入った。

 

『バレット?ちょっと来てくれる?ドリーマーのことで話が…あっちょっと‼︎それ触っちゃダメ〜!』

 

「ペルシカ?」

 

ペルシカの悲鳴が聞こえたあと、聞き覚えのある子供の声が聞こえ、嫌な予感がしたのだがバレットはK5に礼を言った後、16Labへと向かう。

 

────

16Lab

 

「ペルシカ、ドリーマーがどうかし「あ!バレットだ〜♪」グフッ⁉︎」

 

研究室に入ったバレットに何かが腹部に突撃してきた。バレットは視線を下に向ける。するとそこには幼女ドリーマーが無邪気な笑顔をこちらに向けて抱き着いていた。

 

「…は?え?何コレ?」

 

「呼んだのは今のドリーマーについてよ。ドリーマー、バレットと話があるからちょっと離れてくれる?」

 

「えー!やだ、バレットといる!」

 

「あー、ドリーマー?大事な話だから、少しの間待っててくれるか?」

 

なんとなく事情を察したバレットはドリーマーに出来るだけ優しく話しかけると渋々といった感じでドリーマーは離れ、ソファに座り込んだ。

隣の部屋に移り、ペルシカが話を始めた。

 

「で、ドリーマーなんだけど…まぁ見ての通り、メンタルモデルも幼女化したわ。それでその原因だけど…」

 

「あんたの実験の結果だろ?」

 

マーダーという前例があった以上、今回もそんなところだろうと思っていたバレットだが、ペルシカはいいえと首を振った。

 

「大元の原因はあなたがやった逆デ○バイよ」

 

「え?あいつがあれで幼児退行起こしたのか?むしろ記録をデストロイヤーに見せて悦に浸るくらいだと思うのだが…」

 

「いつもの状態ならね。だけどあのボディをちょっと調べたんだけど、ボディ自体にメンタルモデルに侵入して徐々にメンタルモデルを幼児化させるウイルスが入ってたみたいね」

 

「なんでそんなもんが?」

 

「ドリーマーの記録を見たら、あのボディを造ったのってアーキテクトなのよね。だから彼女の悪ふざけね。で、本来ならしばらくすれば戻るはずだったのが徐々に思考が幼児化してくなかでキラー(バケモノ)に追っかけられれば恐怖で元のメンタルがやられてその結果、バグが起きて元のメンタルと幼児メンタルが入れ替わって定着した感じね」

 

「な、なるほど…。で、俺に懐いてた理由は?」

 

「あなた達の事は覚えてるけど、自分が何やったかは覚えていないみたいだから、あなたへの好意だけ残った結果ね。しかも元の性格が持ってた歪んだモノじゃなくて、ほんの少しだけあった純粋な部分だけがね。ちなみに元のメンタルモデルが完全にやられてるからマーダーみたいに元の性格に戻る事はほぼ無いわ」

 

「マジかよ…」

 

説明を聞き、バレットは頭を抱えた。どうやら彼はどうあがいてもドリーマーに付きまとわれる運命にあるらしい。K5の言っていた子供に気をつけてというのはこの事らしい。

 

「ちなみにこのドリーマーだけど、無垢って意味のイノセントを付けてドリーマー・イノセントって名前にしたわ」

 

「それはどうでもいいだろ。それで、どうするんだ?」

 

「無害なのはわかってるけど、このままここに居させるわけにもいかないから…DG小隊で預かっててくれる?」

 

ハァァ⁉︎冗談だろ⁉︎なんで俺らであいつの世話を…!」

 

「だってこうなったのはあなたの所為でしょ?まぁ作戦の時はこっちで預かるから頼んだわよ」

 

「そりゃそうだが…あぁもうっ!わかった!やりゃ良いんだろ!」

 

ぐうの音もでない正論を言われ仕方なくバレットはドリーマー・イノセントを引き取る事となった。

 

────

 

「…で、連れて来たと。ホントお前そこらへんツイてないよな」

 

DG小隊共同の部屋でスミスはドリーマーを見据えながらバレットにそう言うとバレットはため息をつきながら

 

「あぁ、まったくだ。にしても、生かしても殺しても付き纏うとはな…とりあえず今夜はDSRと食事に行くからその時はお前に任せる」

 

「りょーかい。お前も頑張れよ」

 

「まぁな。で?さっきから何描いてんだドリーマー?」

 

見るとドリーマーはスケッチブックに何かを一生懸命に描いていた。

 

「ん〜?もうちょっとで…出来た!見て見て!」

 

ドリーマーがスケッチブックを掲げるとそこにはバレットの似顔絵が描かれていた。

 

「これ俺か?中々上手いじゃないか」

 

「へへ〜♪」

 

バレットに褒められて満面の笑みを浮かべるドリーマーを見てスミスはこう思った。

 

(何がどうなったらこれがあんな風になるんだろう…?)

 

「てかお前がドリーマー褒めるなんて珍しいな」

 

「こうなった以上、もう別人と見た方がいいと割り振ることにした。実際、記憶が無いわけだし」

 

「それもそうか」

 

その後、レスト達も呼び事情を説明し、多少の戸惑いはあったもののドリーマーを受け入れる事には概ね同意した。

しばらくの間トランプ遊びなどでドリーマーの相手をし時間を過ごし、バレットは約束の時間が近づいたため正装に着替たあと部屋を出る。

 

「んじゃ、行ってくる。ドリーマー、スミスの言う事聞いとけよ」

 

「うん、わかった」

 

「行ってら〜あーバレット…何なら朝帰りでも構わんぞ?

 

「なっ⁉︎スミス、お前な…まぁなんかあれば連絡はする」

 

スミスの耳打ちに若干狼狽えながらもバレットはDSRを迎えに行くのであった。




ドリーマー・イノセント

本文の説明通り、メンタルモデルも幼女化したドリーマー。
戦闘能力は無いため、ほぼマスコット扱いである。(そもそも部隊人数的にも組み込めないため)
また、バレットに非常に懐いているので彼の言う事は大体素直に聞く。

Q.元に戻ったりする?
A.今の所その予定はないです。

さて、食事(という名のデート)に誘えたバレット。彼の恋愛は上手くいくのか?


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Code-25 隊長のデート

今回はバレットのデート回です。
果たして彼の恋愛は成就するのか?


「DSR、準備は出来てるか?」

 

DSRの部屋の前まで来たバレットは彼女に呼びかける。

 

「ええ、今から出るわ」

 

DSRは返事をし、部屋から出てきた。

彼女が着ているのは黒いドレスなのだが、ほとんど透けておりまた、腰あたりから横に大きくスリットがあるデザインとなっており、そこから彼女の脚が覗かせていることもあり非常にエr…扇情的であった。

そんな彼女の姿を見てバレットは一瞬狼狽えた後、恐る恐る彼女に質問した。

 

「あっと…DSR?他にドレスは無かったのか…?」

 

「これ以外には…チャイナドレスがあるけど、これからいくレストランには合わないでしょう?」

 

「そ、そうだな。だが君はそれで大丈夫か?その……視線とか」

 

「別に大丈夫よ。それに…そういう忠告をしてくれるって事は、少なくともあなたは私をそういう目で見ているって事でしょう?」

 

そう言いながらDSRはバレットの頰に手を添えて顔を近づける。

バレットはたちまち顔を赤くし、軽くパニックになっていた。

 

「あ、いや…その……えっと…すまない…」

 

「…ふふ。別に謝らなくてもいいわよ。さ、行きましょう」

 

「あ、あぁ…」

 

────

 

予約していたレストランに到着し、二人は案内された席へと向かう。ここに来る途中もそうだったが、レストラン内にいた男性客の視線がDSRに釘付けであった。

 

(うわ、すっげぇ格好…)

 

(エロ過ぎる…!)

 

(となりのは彼氏か?あれを好きに出来るなんて…非常に妬ましい…!)

 

視線の幾つかは同行しているバレットに対する嫉妬が混ざっていたが、数秒後には彼らの連れの女性に頰や耳をつねられていた。

そんな事はお構いなしに二人は席に着き、シャンパンがグラスに注がれると二人はグラスを持ち上げる。

 

「少しキザかもしれないが…君の瞳に」

 

「ふふ、下手に着飾るよりそっちの方がいいわ」

 

乾杯を交わし、二人は食事をしながら話を始める。

 

「そういえば、前に他の基地と合同で闇オークションの殲滅を行ったでしょう?あの後、だいぶ過激派達の動きが収まってきたそうよ」

 

「そうか…やはり資金源が減って装備が整えられなくなったのが大きいんだろうな…そっちの方はどうだい?」

 

「こっちは本社所属だから大した事は無いわね。お仕事の話はそれくらいにして、今は食事を楽しみましょう」

 

「あぁ、そうだな」

 

二人は一度会話をやめ、食事を始めるが、少しばかり問題が起きた。

DSRが出された料理を切り分け、口に運び目を細めて美味しそうにする動作、シャンパンを飲む動作、時折髪をかきあげる仕草など、彼女の一挙手一投足が格好も相まって妙に艶めかしく感じられ、周りの視線を集めていた。もちろん間近でそれを見ているバレットは正直食事どころではなかった。

 

「(マズい…何か話さなければ…!)DSR、食事はどうだ?」

 

「ええ、とても美味しいわ。バレット、素敵なお店をありがとう」

 

「喜んでくれて何よりだよ」

 

「それより…さっきから周りを見ているけど、やっぱり私が周りの視線を集めてるのは嫌かしら?」

 

DSRからの鋭い指摘にバレット少し言葉を詰まらせる。

 

「うっ…まぁ正確に言えば、周りが君をそういう目で見ているのがちょっとな…君の選んだ服に何か言うつもりはないんだが…」

 

「嫉妬、しているの?」

 

「そんなところかな。「ふふっ」え?何か可笑しな事言ったか?」

 

戸惑うバレットにDSRはクスクスと笑いながら

 

「いえね、あなたって意外と可愛らしいところがあるのねって思って…」

 

「そ、そうか…」

 

その後二人は黙々と食事をし、やがて食後のデザートを食べ終え、一息ついていた。

 

「ふぅ…ご馳走さま。…どうしたのバレット?そんな顔して?」

 

バレットは真剣な表情でDSRを見つめたあと、彼女の手を取り彼女を真っ直ぐ見つめた。

 

「バ、バレット?」

 

「DSR、聞いてくれ。俺は…君のことが好きだ。俺と付き合ってくれないか?」

 

「え…え…?」

 

バレットからの急な告白にDSRは先ほどの様子から一転して顔を赤くし、戸惑っていた。少しの沈黙の後、DSRはバレットを見つめ返した。

 

「…えっと…私でよければ、喜んでお付き合い致します」

 

「…本当か⁉︎」

 

ええ、とDSRが頷くとその様子を見ていた周りから拍手が送られた。二人が恥ずかしそうに俯くとオーナーらしき男性がワインボトルを持ってやってきた。

 

「お二人共、おめでとうございます。ささやかですが、こちらからのプレゼントです」

 

「いいんですか?見たところかなり良さそうなものですが…」

 

「ええ、構いませんよ」

 

「そうですか…ありがとうございます」

 

その後二人は会計を済ませ、レストランを後にし、本社へと戻っていった。バレットはDSRを部屋まで送り届けると、DSRはバレットに微笑みかけた。

 

「バレット、今夜は楽しかったわ。それと…これからよろしく」

 

「ああ…よろしく…。あ、このワインはどうする?」

 

「私が預かっておくわ。いつか、()()()飲みましょう」

 

DSRが言った言葉の意味を理解したバレットはまた顔を赤くし、狼狽えた。

 

「あ、ああ…そうだな…。じゃあなDSR、おやすm「まってバレット」?どうしt─んむ⁉︎」

 

去ろうとしたバレットをDSRが呼び止め振り向かせるとDSRはバレットに顔を近づかせ、キスをした。数秒ほどして口を離すと茫然としているバレットを見ながらDSRはいたずらっぽく微笑んでいた。

 

「ふふ♪じゃあね。おやすみなさい、バレット」

 

「あ、ああ…おやすみ…」

 

DSRが部屋に戻った後もしばらく立ち尽くしていたバレットだがふと我に返り自身の部屋に戻るとスミスが本を読んで待っていた。

 

「戻ったぞ。…ドリーマーは?」

 

「おっ、帰ってきたか。ドリーマーならベッドで寝てるぞ。で?デートの結果はどうよ?」

 

「…彼女と付き合うことになった」

 

「おぉ!良かったじゃねぇか!ようやくお前にも運が回ってきたか」

 

「まぁな」

 

「あーそれと、さっきレストから連絡があってな…あいつの残りの復讐相手がどうなってるかアリババとメジェドから連絡が来たってよ」

 

「…本当か?で、どうだって?」

 

「それが…

 

 

 

 

 

二人とも、死んでたってさ。一人はPMCとの抗争で、もう一人は前にあっちの指揮官が暗殺されそうになったときにそれに関わってた闇業者で、あっちが報復時に処理してたってさ」

 

「そうか…これでやっと、あいつの復讐が終わったのか…」

 

「長かったもんな…近いうちにタトゥー消すってよ。あとであいつに労いの言葉でも送ってやりな。じゃ俺は部屋に戻る」

 

スミスはそう言い部屋から出て行く。

バレットはレストの復讐が終わった事に対し感慨深い思いでいた。

 

(これでようやくあいつは前に進めるのか…良かったな、レスト)




結構ギリギリまでお友達でいましょうルート考えてましたが、こっちに落ち着きました。
ちなみにDSRが着ていたのは大陸版で実装しているドレススキンです。
知らない人は一度見てください。その上であれが間近でいられて理性保てた彼を讃えてやってください。

さて、ようやく復讐を終えたレスト。彼が歩んでいく道は…
次回はそこら辺を書いていきます。


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Code-26 休息を得た者

最近の事ですが、ジョジョの動画を見て寝たせいか、
シュトロハイム少佐がグリフィンの制服を着ている夢を見たのですが、これって書けって事ですかねぇ?


レストのタトゥーを消すため、DG小隊は16Labへと足を運んだ。

 

「念のため聞くが、本当に消せるのか?」

 

「ええ、人と違ってあなたのは消せるわよ。んじゃ始めるからあなた達は一回出て行ってくれる?」

 

「わかった。レスト、また後でな」

 

「ああ」

 

別室にて待機している間、ノアはレストの施術が終わるのを心待ちにしていた。

 

「ノア、嬉しそうだな」

 

「ええ。やっとレストさんの元の顔が見れるようになるのと、レストさんが復讐から解放されるのが嬉しいんです」

 

「そうだな…だいぶかかったしな。それに、あいつは随分変わったよ」

 

「最初に会った時より随分と丸くなったよな」

 

バレットとスミスがそう言うと、ノアはある興味が湧いてきた。ここに来たばかりのレストはどんな感じだったろだろうか?

そう思い、ノアは思い切ってバレットに尋ねてみた。

 

「隊長さん、ここに来たばかりのレストさんってどんな感じだったんですか?」

 

「レストがここに来た時か?うーん、まぁ話してもいいか。そもそもあいつを娼館から助けたのって俺とスミスなんだよな。あと他に何人か戦術人形を連れてな。救出後にあいつが戦術人形になったって聞いて、俺が引き入れた。その頃のあいつはかなりの人間、もとい男性不信だったな」

 

「当時はDG小隊は二人しかいなかったしな。他の手を借りる必要があったしな。それに、そん時はまだ俺は今の名前じゃなくてただのS&WM500で、バレットはM107だった」

 

「へー、それで今の名前になったのはいつなんですか?」

 

「レストが入隊してからだ。というか、あいつの名前は俺が付けたんだ。その後すぐに俺とスミスだけには心を開いた感じだったな。その後は社長や職員と、だんだん男性不信を治していったよ」

 

────

回想

※一時的に彼らの名前を銃名で表記します。

 

グリフィン本社の一室で彼─MP5Kはこれから自分が入隊する隊の隊長と副隊長が来るのを待っていた。

 

(DG小隊…現状、男性型戦術人形のみで構成された対人部隊…。彼らに付いていけばいずれ俺を弄んだ奴らに辿り着くはず…!だが、何故あの二人は俺みたいなやつを隊に入れようとした?助けてくれたのは感謝するが、もし二人が奴らと同じ趣味を持ってるのであれば…!)

 

そう考えを巡らせながら待っていると、ペルシカを含めた三人が部屋に入ってきた。

 

「よっ。あんたがMP5K?俺はDG小隊の副隊長、S&WM500だ。よろしくな」

 

「DG小隊隊長のM107だ」

 

「あぁ…よろしく。…お前、随分長い名前だな」

 

MP5KがS&WM500を見ながらそう言うと彼は困ったような顔で

 

「そ〜なんだよな〜。俺もM107みてーにM500って略したいんだけどさ、それだとショットガンの方と名前被るから却下されたんだよ。な〜んであとに開発する方に名前譲んなきゃなんねーんだよ?」

 

「あなたと違ってあっちは量産予定があるからよ。それでMP5K、今日からあなたはDG小隊の三人目の隊員として動いてもらうけど、何か質問は?」

 

「一つだけある。…なんで俺みたいなやつを隊に入れようとした?知らないならともかく、あんたら二人は俺を助け出したんなら知ってるだろ?俺が男娼人形だった事。なのに何故俺を引き入れた?」

 

その質問に二人は少し黙りこみ、M107が口を開いた。

 

「…まず前提として話すが、俺ら二人に『そういう趣味』は無い事を念頭においてくれ」

 

「…わかった」

 

「俺がお前を引き入れた理由は単純な話だ。お前が俺と同じ男性型戦術人形だからだ」

 

何か特別な理由があるのかと考えていたが、意外すぎる答えにMP5Kは一瞬キョトンとした顔を浮かべたあと、思わず聞き返した。

 

「…は?それだけか?本当にそれだけの理由なのか?」

 

「あとは、お前SMGだろ?俺はRF人形だから前衛がこいつだけだったから前衛でもう一人欲しかったってのがあるな」

 

「いやM107?そう言っているがお前結構な頻度で前出てるだろ?しかも対物ライフルの射速じゃないからなあれは?」

 

S&WM500が口を挟むが、無視してM107は言葉を続ける。

 

「別にお前がロクな目に遭ってないから復讐を手伝ってやろうとか同情的なものじゃないさ。俺らみたいにハナから戦術人形として造られたんならあれだが、民生人形で男性型戦術人形になるのはかなり珍しいんだ。だから、仲間にしたいって思った。そんな単純な理由だ。お前が過去にどんな事があったとしても関係ない」

 

「…俺といる事でお前らに変な噂が流れたとしてもか?」

 

「そんなもん言いたい奴に言わせとけばいい。第一、お前の過去は口外させない」

 

一番の懸念を割とアッサリと流したM107にMP5Kは驚いていた。今まで彼を見ていた男たちは彼を欲望のはけ口として見ているか体のいいサンドバッグとしていたか、軽蔑の視線しか向けていなかった。だが目の前にいる彼は違った。自分を仲間として見ていた。

 

「S&WM500、お前も同じか?」

 

「もちろん。俺としても前衛仲間が増えるのは賛成だし、話し相手が増えるのもいいしな」

 

「そうか…。俺は今まであそこにいたから人間っていったら奴らくらいしか知らなかった。だから人間、もとい男は信用しないようにしていた。だが…俺を仲間として見ているあんたらは信用してもいいと思っている。まぁ、俺を雇ってくれた社長も信用しようとは思うが…」

 

「なるほどな…MP5K、他に質問がないならこっちから逆に質問してもいいか?」

 

「ああ、構わないが」

 

「俺ら戦術人形は特性上、銃名で呼ばれるわけだが、その殆どは英数字といった番号名だ。それに対しては抵抗はないか?」

 

おそらく彼が娼館でNo.37、もといミーナと呼ばれていたことに対する配慮なのだろうと考えたMP5Kはこう答えた。

 

「確かに、それには少しだけ抵抗はある…だが、この道を選んだ以上は覚悟の上だ。じきに慣れさせるから心配はいらない」

 

それを聞きM107は顎に手を当ててしばらく考え込む。その後、彼はペルシカの方を向いてある提案をする。

 

「ペルシカ、DG小隊内の隊員は銃名以外に個々の名前を名乗れるように出来ないか?」

 

「え?」

 

「んー出来なくはないわね。ちょっとクルーガーに掛け合ってみるわね」

 

そういいペルシカは端末を持って部屋から出て行く。数分後、ペルシカはOKサインを出しながら戻ってきた。

 

「別に構わないそうよ。それで、どんな名前にするの?」

 

「マジで⁉︎じゃあ俺スミスな!M107は?」

 

「俺はバレットにする。お前はどうだ?」

 

「お、俺は…」

 

急に名前を名乗れることにMP5Kは戸惑った。二人の名前から考えれば自分はヘッケラー、もしくはコッホにするのが無難だが、どちらもしっくりこない。どうしたものかと唸りながら考えていると、バレットが彼に話しかける。

 

「決められないか?」

 

「まぁ、急な事だしな…良かったらあんたが決めてくれないか?自分で考えるよりそっちの方がいい」

 

「俺が?ふむ……なら、『レスト』ってのはどうだ?」

 

「レスト?」

 

「ああ、休息、安寧を意味するレストだ。お前はお前を弄んだ連中を始末したいし、自身と同じ境遇の者を助けるためにここに来たんだろ?つまり、自身も心からの安寧を求めてるし、またそういった人形達にも休息や安寧を与えることになる。だからレストだ。どうだ?」

 

「レスト…」

 

しばらく彼はその名前を口にすると軽く笑みを浮かべて顔を上げた。

 

「…その名前、気に入ったよ。今日から俺はレストだ」

 

「そうか、ようこそレスト、DG小隊へ」

 

「あぁ。よろしくな、バレット隊長」

 

バレットが差し出した手をレストは握りしめた。

 

────

現在

 

「そんなことがあったんですね。というより、スミスさん名前にコンプレックスあったんですね」

 

「名前だけじゃねぇよ、製造された(生まれた)ばっかのときは他にもあったさ。ま、機会があれば話すよ」

 

(…それにしても、あれから随分経って、ようやくあいつは休息と安寧を手に入れたわけか)

 

バレットは過去に思いを馳せていると、ペルシカが部屋に入ってきた。

 

「終わったわよ。ノア、行ってあげなさい」

 

「…!わかりました」

 

ノアはレストのいる部屋へと入っていく。部屋に入るとレストがこちらをみて笑みを浮かべていた。その顔はタトゥーが無いことも相まっていつもより柔らかく感じていた。

しばらくまじまじと顔を眺めた後、ノアはレストに近づき、タトゥーのあった場所を指で撫でた。

 

「…そんなに変わって見えるか?」

 

「はい…。今までよりずっと優しく見えます」

 

「そうか。俺も、やっとお前に元の顔見せられて良かったよ」

 

そのすぐあとにバレット達も部屋に入ってきた。

 

「……ようやく終わったな、レスト」

 

「あぁ。…隊長、あの時、俺を助けた上隊に引き入れた事、今でも感謝してるよ」

 

「どうした?急に?」

 

「別に、ただそう言いたかっただけだ」

 

────

 

数日後、レストはホーテン達に報告するため、ノアと一緒に外出する事にした。

 

「じゃあ隊長、行ってくる」

 

「おう、ちゃんと言ってやれよな」

 

バレットに見送られ、二人は出掛けて行った。

 

「レストさん、ホーテンさんには連絡してあるんですか?」

 

「もちろんだ。今日は店を閉めて、バータイムの連中も呼んでるらしい」

 

会話をしながら、二人はホーテンのいるカフェと歩いていく。

……その様子を黒服の男が遠くから見ていた。男は通信機を取り出して誰かに連絡を入れていた。

 

「…ターゲットを確認。どうしますか?」

 

『そのまま観察を続けろ。指示があるまで手を出すな』

 

了解、と男は通信機をしまい二人の後をバレないように尾行していった。




復讐を終えた事を伝えにいくレスト。しかし、それを狙う影が──

ではまた次回まで


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Code-27 Rest In Peace

サブタイが不穏?ハハ、最後まで見ればわかります。


レストとノアがカフェの前まで来るとホーテンが扉を開けて歓迎してきた。

 

「二人ともようこそ。中でみんな待っているのでどうぞ」

 

「あぁ、わかった」

 

「失礼します」

 

二人が中に入ると十人近い男性型人形が待っていた。彼らはみなレストと同じ場所にいた者たちで、バータイムの店員だけでなく、他の場所で働いている者もいるが、レストの報告を聞きにわざわざ集まってきたのであった。

 

「お前ら…無理なら来なくても平気だと言ったはずだろ?」

 

「な〜に言ってんすか?レストさんから大事な話があるっていうのに、来ない奴なんかいませんよ」

 

「それで、報告って?まぁその顔を見ればわかりますが」

 

彼らに促され、レストは自身の復讐が終わりを迎えたことを話した。それを聞いて彼らはみな安堵の表情を浮かべた。

 

「そうですか…ようやく終わったんですか…」

 

「まぁな。それで、本当にお前達の分までやらなくて良かったのか?」

 

「いやいや、俺らの分まで相手してたら、レストさんずっと戦いっぱなしになるじゃないですか。あんなロクデナシども、どーせその辺でのたれ死んでるのがオチですよ」

 

「とりあえず今日は貸し切り状態ですから、パァーといきましょう」

 

「ん、そうだな。辛気臭い空気になってたら()()()()に悪いしな」

 

「レストさんは何飲みます?」

 

「シャーリーテンプル。今日はアルコール入りはいい。ノアは?」

 

「私もレストさんと同じで」

 

「わかりました」

 

各自に飲み物が行き渡ると、レストがグラスを持って立ち上がった。

 

「まぁ…祝うような事じゃないから…()()()()に」

 

それを合図に各自グラスを傾け、飲み始めた。

しばらくして、ノアは気になっていた事をレストに尋ねた。

 

「レストさん、さっきから言ってる()()()()というのは…?」

 

それを聞きレストは少しだけ顔を曇らせたが、すぐに表情を戻して話し始めた。

 

「…俺が前いた場所でNo.37って呼ばれてた通り、あそこには俺含めて38人居たんだ。だが、俺達みんなロクな扱いをされてなかったから、ここにいる奴以外はみんな使い潰されて死んじまった。そいつらのことさ」

 

「…っ⁉︎ごめんなさい、辛い事を聞いて…」

 

「気にしなくていい。いつか話そうとは思っていたからな。それとな、死んだ奴の中にはNo.38…俺と同じ場所で製造された弟がいたんだ…。隊長達が俺達を助け出す1日前に死んじまったが、それについては隊長達を責めるつもりはない。もうすでにボロボロで、いつ死んでもおかしくなかったからな」

 

「そうだったんですか…その、弟さん達のお墓とかはあるんですか?」

 

「ああ。俺達が助け出された後に建てた。まぁほとんどの奴はすぐに廃棄されたから中には何も入ってないが、弟だけは廃棄前だったから入ってる。この後一緒に行こう」

 

はい、とノアが頷くと、彼らの内一人が二人に絡んできた。

 

「それで?レストさん、いつノアさんと結婚するんです?」

 

ブフゥッ⁉︎お、お前⁉︎何で今それを…?」

 

「えーだってホーテンさんから聞きましたよ、ここに来る度料理食べさせ合ってるって。それ程の仲で、復讐が終わってるんだったらそろそろいいんじゃないですか?」

 

それを聞きレストは忌々しげにホーテンを睨むが、ホーテンはどこ吹く風という風な顔で

 

「毎回あれを見せられるこちらの身になってくださいよ?あそこまでいって結婚してないのが不自然ですよ。ちなみに、人形同士で結婚出来るかはもう聞いてあるんですか?」

 

「ああ、お互いに所有権を買うって形で出来るらしい」

 

「本当ですか!…あっ…」

 

結婚出来る発言に喰いついたノアだが、すぐに周りの目に気付き赤くなって縮こまる。それを見た彼ら一同は何この子めっちゃ可愛いと思いつつ、レストの方をジト目で見ながらほら彼女がこうなってんぞ早よ決めんかい的な目線を送るとレストはノアの方を向いてこう言った。

 

「…あー、ノア?今言うとこいつらに言わされた感があって尺だから、もう少し周りが落ち着いたら、ちゃんとした場所で言わせてくれ。それまで、待っててくれるか?」

 

「…はい。私はいつまでも待ちます。ですけど…あまり待たせないでくださいね?」

 

「わかってるよ」

 

────

 

しばらくしたのち、レストとノアは墓参りをするためカフェから出て行く。

 

「んじゃホーテン、またな」

 

「ご馳走さまでした」

 

「ええ、二人ともお元気で。式には呼んでください、必ず来ます」

 

「ああ、必ず呼ぶよ」

 

別れの挨拶をし、二人は街中を歩いていく。すでに辺りは暗くなり始め、人影もちらほらと見えるばかりであった。

 

「この先の見晴らしの良いところに立ててある。あと五分くらいで着くかな」

 

そうレストが言った後、一人の黒服の男が動き始めた。

男は物陰から身を出し、MP5SD3を構えレストに狙いを定める。

そして引き金に指をかけると──

 

─パシュパシュ!

 

サプレッサー越しのくぐもった音と共に()()()()()()()

男の側にはサプレッサーを付けたベレッタM9を持ったバレットが立っていた。

 

「…こちらバレット。三本目(三人目)(刺客)へし折った(始末した)。他は?」

 

「こちらウェイター。アーチャー(依頼人)の始末完了です。始末する前に吐かせた情報を元にスミスがネゲブ小隊と共に矢筒(暗殺組織)壊し(潰し)に行ってます」

 

「了解…にしても、上手くいったな」

 

「ええ。向こうがこっちの流した情報にのってくれて助かりました」

 

そう、すでに彼らは数日前からレストの発案の元、この日にレスト達が出かけるという情報をあえて流し、彼を始末しようとする連中をおびき寄せたのである。ちなみに依頼人はレストの復讐相手の子分で、敵討ちをしようとしたらしい。

 

「ちなみに(刺客)はそれでお終いとの事です。どうしますか?」

 

「独断で行動してる奴もいるかもしれない。二人が戻るまで監視するぞ」

 

その時、スミスから連絡がきた。

 

「こちらスミス。矢筒(暗殺組織)は完全に壊れた(潰した)。ネゲブ小隊はどうする?」

 

「帰還させてくれ。彼女達には報酬は後で与えると言ってくれ。お前はこっちに来て二人の監視と護衛だ」

 

「了解」

 

スミスが通信を切ると、ウェイターはある事をバレットに聞いた。

 

「隊長、何故今回ネゲブ小隊を?」

 

「彼女達、もとい隊長のネゲブの制圧力が頼りになると思って頼んだ」

 

「ですが、彼女達は対鉄血がメインですよ?他の部隊に頼めば良かったのでは?」

 

「…例えば?」

 

「404小隊とか対人戦に富んでると思いますが…」

 

「404小隊とは組まん。レストが入る前まではたまに組んでたがな」

 

嫌悪感を含んだ口調で話すバレットにウェイターは続けて質問する。

 

「組んだら私やレスト達が記憶処理をされるからですか?」

 

「それもあるが、一番理由は()()()がいるからだ。()()()が死ぬか隊からいなくなるか重要度の高い作戦じゃない限りは組まない事にしている」

 

()()()、とは?」

 

「UMP9だ。あいつの昔の顔を偶然別の任務中に知っちまってな、それ以降組まないと誓った。本来なら記憶処理されて然るべきだが、その時の任務内容が重要で記憶処理で消すと問題が起きるのと、知った内容が内容だからまた入手する可能性が高くその都度処理してたらキリがないと判断されて箝口令で済んでる。実際何度か入手しちまったしな。お前達も知ったらそうなると思う」

 

「俺は基本相手の過去にはこだわらないが、あいつだけは別だ。他の基地のUMP9は助けるとしても、404のUMP9だけはよほどじゃなきゃ無理だ」

 

「そう…ですか…(あの隊長がこんな反応するなんて…彼女は一体何を…?)」

 

────

 

「……ここだ」

 

レストが示した見晴らしの良い丘に、複数の名前が刻まれた一つの墓石が立ててあった。

 

「この名前は、レストさんが?」

 

「ああ。何も刻まないのはあれだからな。ほら、これが弟の名前」

 

「ルーエ…ですか?」

 

「ドイツ語で休息という意味だ。俺と同じ意味にしようと考えた」

 

そのまま二人は墓に手を合わせしばらく黙祷する。

 

(ルーエ…お前ら…やっと終わったよ。俺はノアと一緒に居続ける。悪いがしばらくはそっちに来るつもりはないから、もう眠ってると思うが…安らかに眠ってくれ(Rest In Peace)

 

「…行くか」

 

「ええ」

 

二人は手を繋いで帰っていく。道中特に襲撃はなく、無事に本社へとたどり着いた。部屋に入ると、既に先回りしていたバレット達が何食わぬ顔で待っていた。

 

「おかえり、レスト」

 

「ただいま、隊長」




死 な せ ね ぇ よ?(鋼の意思)
この二人、初期設定では死ぬ予定でしたが、愛着が湧いたのと途中であれ?このままだとレスト、マリーダさんと境遇被らないか?ってなって生存ルートにさせました。

UMP9が過去に何したかは大陸版のネタバレ見ればわかります。少なくとも実装するまでは話さないのでご了承を。

それと、また短編を書きました。
今回はあるジャンプキャラのクロスオーバーです。https://syosetu.org/novel/200168/1.html


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Code-X スイーツタイムwithD08

コラボが来たなら返す。古事記にも書かれている。
ムメイ様作『カフェD08へようこそ!』とのコラボです。
時間軸がズレてるのでX表記です。


それは遠くない未来の話──

 

DG小隊が本部内で待機しているとある連絡が入ってきた。

なんでも、D08の人形達が今までのお礼にとデリバリーに来たという事らしい。16Labに来て欲しいとのことなので彼らは16Labへと向かっていく。メンバーには彼らに加え、イノセントとDSRとフィオナもいた。

フィオナはリハビリを続けたのちグリフィンに入社、DG小隊の後方幕僚を務めていた。バレットとDSRとの仲は順調であるが、まだ初々しさが抜けきっていなかった。

 

「本当に私もついてきて良かったのバレット?」

 

「構わないさ。すでに連絡は入れてある」

 

「D08ってウェイターの姪っ子ちゃんがいるのよね?」

 

「はい。前に出産祝いに来たときに会いましたが、姉さんに似て可愛らしかったですよ」

 

ちなみに、こう見えてウェイターは姪のソフィアにかなりデレデレであり、待ち受けをソフィアとFALの写真にしているくらいであった。

16Labに辿り着くと珍しくペルシカが外に出て待っていた。

 

「ん?あんたも呼ばれたのか?」

 

「あなた達のついでにね。正直呼ばれないかと思ってたけどね」

 

しばらくして、Transitが一台こちらにやってくるのが見えてきた。そのまま中庭まで案内すると、4名の人形が降りてきた。

 

「こんにちはー!カフェD08のデリバリーです!」

 

「久しぶり、ミセス・シーナ。出産祝いに来て以来だったな。お子さん達はお元気で?」

 

「ええ、元気に育ってますよー。あ、ウェイター君、姪っ子ちゃんも順調に育ってるからね」

 

「ご報告ありがとうございます」

 

「…語感が似てるせいか、一々彼女の名前に反応する自分が嫌になるな…」

 

「レストさん、気持ちはわかりますが慣れていきましょう」

 

彼らがそれぞれ挨拶をするなか、ペルシカとヴィオラは顔を見合わせていた。

 

「…久しぶりね」

 

「今回は彼らのついでだからな。そこのところは勘違いしないでくれ」

 

「はいはい」

 

そんなやりとりの中、バレットは先ほどから気になっていた事をシーナに尋ねた。

 

「あー、ミセス・シーナ?「シーナで良いよ」じゃあシーナ。そこにいるドリーマーは…?一人は前に見たが、もう一人は…?」

 

「この子はロマネシアって言ってね、色々あってうちで保護することになったの。とりあえず準備するから待ってて」

 

「手伝おうか?」

 

「いーよいーよ、今回はお礼に来たんだから手伝わせたら悪いよ」

 

少しした後、中庭には折り畳み椅子や机が並べられ、簡単な野外カフェのようになった。

 

「これメニューだから好きなの選んでね。うち特別な材料使ってるからどれも美味しいよ!甘いの苦手だったらビターチョコとかコーヒーとかもあるからね」

 

「わざわざどうも」

 

バレットがメニューを見ていると、スミスが彼に近づき、小声で話しかけた。

 

「おいバレット…どうする?ほとんど乳製品使ってるみたいだが…?」

 

スミスがそういうのには訳があった。

DG小隊、正確にはバレットとスミスは時折I.O.Pの職員がペルシカの目を盗んで非道な実験をしていないかデータをチェックしているのだが、その過程で知ってしまったのだ─D08の一部の人形に()()()()を施工している事を。

メニューを見たときからあった疑惑は先ほどのシーナの発言でほぼ確信に変わった…このメニューのスイーツに使われている()()()()()()()()()()()()()を。

 

「…スミス、腹を括れ。彼女達はお礼に来たんだ。その厚意を無下に出来ないだろ」

 

「…わーったよ。かつてのヨーロッパ圏にも()()()()チーズがあったって聞くしな、その一環として思うことにするよ」

 

口ではそう言っているがぶっちゃけ好奇心があったが知ってて頼むのもアレなのでバレットがそう言うだろうと予想して質問してそれを免罪符にしようとしていたのは内緒なのである。だからこの時点でもオメェだけ彼女いねぇんだよ

 

「ふむ…何にするか…」

 

「これなんてどうかしら?」

 

「ん…そうだな、これにするか…DSRは決まったか?」

 

「ええ」

 

「そうか、注文いいかい?」

 

バレットが注文すると他のメンバーも次々に注文し始めた。

それぞれの注文したものが運ばれるなか、バレットはDSRに質問した。

 

「俺と同じので良かったのか?」

 

「あなたと一緒に同じ物を食べるのがいいのよ。その方が"夫婦"っぽいでしょう?」

 

「…っ!ま、まぁ…そうだな、君が良ければそれでいい…うん…」

 

この二人は結婚はしていない。それ故に予想外の一言にバレットは動揺し気取ろうとするがどう頑張っても初々しさが抜けてないのがバレバレであった。

ちなみに、DG小隊最初のカップルであるレストとノアはと言うと、

 

「はい、レストさん」

 

「ありがとう…これも美味いな…。ほらノア、口開けな」

 

「はい♪」

 

慣れた様子でお互いに食べさせあっていた。

 

「こりゃお砂糖いらないわね」

 

「まったくねぇ」

 

シーナとドリーマーがそう言い合うなか、ロマネシアはエクレアを食べているイノセントを眺めていた。

 

「クヒヒ……カワイイわねぇ……」

 

エクレアを頬張りながらロマネシアを見つめていたイノセントだが、ゴクン、と飲み込んだ後ロマネシアを指差してこう言った。

 

「おっぱいおばけ!」

 

「ブッ⁉︎」

 

スミスが吹き出したあと、ロマネシアはイノセントの口を引っ張った。

 

「……生意気言う口はこれかしらぁ?」

 

「むー!むー!」

 

「はいはいロマネシア虐めないの、虐めて良いのは盗賊とテロリストだけだよ」

 

どこぞのバチカン神父みたいなことを言ってシーナがなだめると、渋々従ったものの、今度はあっかんべーを互いにし始めた。その様子をドリーマーが鼻で笑いながら見つつ、ウェイターにミルクプリンを渡す。

 

「はいミルクプリンよぉ。これね、()()()()()()()()()()()()()()よぉ」

 

「姉さんがですが?では、ありがたくいただきます」

 

「「っ⁉︎」」

 

ドリーマーの言葉にバレットとスミスは驚愕の表情を浮かべた。普通なら言葉通りの意味なのだが、ドリーマーが妙にニヤついてることと材料面の事情を知った二人にとっては別の意味に捉えたのであった。

 

「(まさかあのミルクプリンに使われてるミルクって…⁉︎)ま、待てウェイ─」

 

バレットが止めようとするが時すでに遅し。ウェイターはすでに食べてしまっていた。

 

「ん?何ですか隊長?」

 

「あ…いや…味はどうだ…?」

 

「とても美味しいですよ。それにしても、随分風味がいいですね。何か使ってるのですか?」

 

「それはね…」

 

「やめとけウェイター。店で出してんだから、レシピなんて聞くもんじゃないだろ?」

 

「そうでした、失礼しました」

 

「……チッ!」

 

絶対に真実を伝えないようにしよう、そう誓ったバレットとスミスであった。

 

───

 

「ご馳走さまでした」

 

「はーいお粗末さまー!」

 

あの後何品か注文し食事を終えた後、シーナ達は片付けを始めていた。すると、ヴィオラがイノセントに近づいた。

 

「イノセント、口が汚れてるぞ…ちょっと待っててな」

 

そういいハンカチを取り出してイノセントの口を優しく拭いはじめた。

 

「ほら、綺麗になった」

 

「ありがとー!」

 

「どういたしまして」

 

(え?何あの母性の塊?本当にあれデストロイヤーなのか?)

 

慈愛に満ちた笑みを浮かべるヴィオラを見てスミスは軽く衝撃を受けていたのであった。やがて片付けを終えて、Transitを移動させるとバレットは軽く頭を下げた。

 

「本日はどうもありがとうございます。タカマチ指揮官にもそう言っておいてください」

 

「ええ。ではまたいつか」

 

シーナ達はTransitに乗り込み走り去っていった。

 

「さて、俺らも帰るか…ほら、イノセント行くぞ」

 

「うん!わかったよ──

 

 

 

パパ♪」

 

「……は?」

 

突然のパパ発言にバレットは思わずフリーズした。

 

「イ、イノセント…?誰から教わったそれ?」

 

「おっぱいおばけじゃないほうの私」

 

「…ドリーマァァァァー‼︎」

 

16Labにバレットの叫び声が響いたのであった。




プリ〜ンは姉の味〜♪(某キャンディのCM風)
ごめんよウェイター…スイーツに加工してるって聞いた時点で思いついたんだ…真実を知ることは無いと思うから許して。
はいそこぉ!向こうの嫁の一人にDSRがいるからってバレットに擬似NTRじゃねとか言わない!言ったら犬神家みたいに上半身埋められますよ?

ムメイ様、本当にありがとうございました!劇中に書いた通り出産祝いには来るのでその時はまたよろしくお願いします!


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Code-28 始動、復活者(リバイバー)

ようやく鉄血の彼が動き出します。


グリフィン管轄、某地区にある基地──

 

基地内はすでに火の海と化していた。突然放たれた高出力のレーザーが司令室に降り注ぎ、そこにいた指揮官と人形数名を吹き飛ばしたのであった。その後レーザーは整備室や人間用の宿舎などを攻撃し、基地内の人間の殆どを殺戮していった。

突然の奇襲に基地内は騒然となり、各自武器を持って迎撃準備に入る。そこに、一体のハイエンドモデルらしき人形が基地内に現れた。

銀髪に鉄血特有の白い肌、190cm程のやや痩せ型の高身長の体に、右手には身の丈程の大きさの粒子砲を背中のアームを介して携えており、左のアームには円盤状のユニットが八つ取り付けられた盾があった。顔の上半分は水色のバイザーを付けており顔はわからないが、その体つきは誰がどう見ても『男性』のそれであった。

 

「…ふむ、威力は申し分ないな。あとはアレを試せば…」

 

「オイ、お前は誰だ…鉄血の新型か?」

 

トンプソンが威圧を込めてそう質問すると、そのハイエンドモデルはこちらを見据えながら頷いた。

 

「いかにも。俺は鉄血の新型かつ男性型ハイエンドモデル、復活者(リバイバー)だ。じゃ、早速だが…この基地の破壊活動を開始する」

 

そう呟き、リバイバーは動き出した。それと同時に彼女達もリバイバーを撃破せんと各自手にした銃を撃ち始めた。

 

────

数十分後、戦場と化した基地に立っていたのは()()()リバイバーであり、その周りには戦闘不能となった人形達が倒れていた。

何名かは意識がまだあるが、その顔は酷く怯えており信じられないといった様子でリバイバーを見つめていた。

 

「なんで…?どうして、()()が…⁉︎」

 

「そこまでこちらの技術が発達したという事だ。お前達は生かしておくから、この事はキチンと伝えておけよ?ってなわけで、チャオ♪」

 

リバイバーはそれだけ伝えると基地から立ち去っていった。

かくして、この基地は()()()()()()()()()()()()()()()()()()殲滅されたのであった。

少し離れた森の中でリバイバーは代理人に通信を繋げる。

 

「こちらリバイバー。基地の殲滅に成功、武装は共に問題なく作動した」

 

「了解。というより、あの程度の基地を堕とせなくては()()()()()である貴方の意義が問われますが。すぐに戻ってください。戻り次第改めて貴方の任務について話します」

 

「了解」

 

リバイバーは通信を切り帰還し始めた。

 

(とりあえず準備は整った。あとは決行するのみか…)

 

────

 

二日後、グリフィン本部にてDG小隊は緊急招集をかけられ会議室に集まった。会議室には重苦しい顔をしたヘリアンとペルシカがいた。

 

「…今日来てもらったのはある事を話すためだ。事の始まりは二日前、○基地がたった一体のハイエンドモデルに陥落された」

 

「○基地が?確かあそこは…」

 

「それより、陥落させたのがたった一体のハイエンドモデルってのが気になりますね。新型ですか?」

 

スミスの話を遮りバレットが質問した。時折基地が鉄血に陥落させられることがあるが、その場合は大部隊を引き連れていた。故に一体のみで基地を堕としたというハイエンドモデルが気になったのだ。

 

「そうだ。それも…男性型だ」

 

「何⁉︎」

 

「やっぱり開発してやがったか!」

 

「とりあえずこれを見て欲しい。生き残った人形の記録だが、DG小隊を招集した理由がそこにある」

 

そういいヘリアンは映像を再生する。

映像に現れたのは一人のハイエンドモデルであり、どうみても男性型なのは明らかだった。

周りの人形達はそのハイエンドに向けて銃を一斉に撃ち始める。すると、ハイエンドの左側にあった円盤状のユニットが分離、浮遊し彼の周りに展開すると電磁フィールドらしきものを形成し、攻撃を防いでいた。MG人形の攻撃も防いでいる事からその堅牢さが伺えるだろう。

少しした後、そのハイエンドは動き出し、右手に持った大型粒子砲を構えると人形達に向けて撃ち放つが、発射されたレーザーはSMGのような高射速になったかと思えばRFのような単発で正確な一撃、SGのような散弾状へと変幻自在に変えて次々に人形を撃破していった。

 

「…!こいつ、レーザーの出力だけじゃなく、射速や収束率まで変えられるのか⁉︎」

 

「それに先ほどの電磁フィールド、かなりの防御を誇ってるようです。これはかなり厄介ですよ…それで、個体名は?」

 

「奴はリバイバーと名乗っていた」

 

「リバイバー…復活者ねぇ」

 

彼らが話し込む中、バレットはリバイバーの戦闘に対し、ある違和感を感じた。

 

(やはりそうだ。こいつ…さっきから…)

 

「この先を見てくれ。今までのハイエンドモデルとは違うところがそこにある」

 

映像に再び目を向けると、リバイバーはトンプソンに向けてレーザーを放とうとしていた。砲口の様子からしてかなりの高出力で放つのが見てわかった。対するトンプソンはフォースシールドを発動し防御態勢をとる。

フォースシールド──特殊な力場を生成しあらゆる攻撃を防ぐそれはI.O.Pが誇る最高の技術であり最強の盾…()()()()()

リバイバーが放った高出力のレーザーはトンプソンへ向かっていき──()()()()()()()()()()()、彼女を撃破した。

 

「なっ…⁉︎フォースシールドを貫いただと⁉︎」

 

「まさか、そこまでのものまで造り上げるなんて…」

 

映像の中の彼女達も彼らと同じ反応をし、動揺が広がっていった。その後はリバイバーが一方的に攻撃し、全ての人形が戦闘不能になり、リバイバーが立ち去ったところで映像が終わる。

 

「…見ての通り、このリバイバーというハイエンドモデルはかなり危険な存在だ。DG小隊にはこいつを発見、鹵獲無いし撃破を頼みたい。危険なのは承知してるが、このままこいつを野放しにするわけにもいかない。すでに周辺の基地には連絡をしてある。頼んだぞ」

 

「了解。質問ですが、こいつの武装についてこちらにいるハイエンドモデルが何か知ってたりは?」

 

それに関してはペルシカが答えた。

 

「ええ。アーキテクトにこれを見せたら心当たりがあるようでね、あの防御兵装はF.E.F.G─浮遊式電磁フィールド発生装置(Floating Electromagnetic Field Generator)って言って、ジュピターやマンティコアレベルの攻撃を複数回防げるものだけど、エネルギー消費量と製造コストが高い上にそもそもグリフィンにそんな攻撃力を持つ人形がいないって事でペーパープランで終わったものよ。それと射撃兵装の方は知らないみたい。恐らく彼女がこちらに寝返った後で開発したか、彼女抜きで開発してたかね」

 

「なるほど…それとヘリアンさん、この基地の被害のリストはありますか?」

 

「ああ。これがそうだ」

 

ヘリアンから渡されたリストを眺めると先ほどからの違和感を裏付けるものを確認できた。

 

「バレット、気になる事でもあるのか?」

 

「はい。まず襲撃された基地ですが、あそこは銃器の横流しやデータの水増しによる横領、さらには人形に対する暴行などを基地内の人間全員が行ってるとの事で近々俺たちが監査する予定の場所でしたよね?」

 

「それは俺も思った。しかもあそこは地理的に考えても潰しても鉄血にはなんの得もない筈だ。何故そんなとこを攻めたのか気になってたが、あのリバイバーって奴が武装テストのためにやったのなら納得がいくが…まだ何かあるんだろ?」

 

「ああ。このリストを見るとわかるが、人間は一人残らず殺されてるのに対し、人形に関しては初めの奇襲で巻き込まれたのとトンプソンを除けば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

バレットが指摘した通り、リバイバーはダミーのみを撃破し、メインは手足を撃つなどして無力化するだけであった。

 

「彼女達を生かした理由が単なるメッセンジャーとしてなら一人二人でいい筈だ。なのに何故奴は人間を殺しておいて人形だけは最低限の被害で済ませている?」

 

「生き残った人形にウイルスの類はなかったのですか?」

 

「いいえ。負傷してるだけで何も仕掛けられてなかったわ」

 

「いずれにしても、奴と接触する際には細心の注意が必要だ。すぐに出撃してくれ」

 

数時間後、DG小隊は出撃しリバイバーらしき人形を見つけたという場所に到着した。周辺に警戒しながら探索しているなか、スミスはバレットに話しかけた。

 

「バレット…リバイバーだが、どう思う?」

 

「正直行動が謎すぎる。一連の行動がただの挑発だと片付けるには生存者を残したのは不可解だし、もしかしたら基地の内情を知っていた可能性もある」

 

「ん?つまり奴はどんな基地かわかってて攻撃したのか?ふむ…そう考えると人間だけ殺したのも辻褄があうな…でも、何の為に?」

 

「わからん。だが、わかってるのは奴のパーツにはほぼ間違いなく俺のダミーのものが使われてる事だ」

 

「だろうな。男性型のメインAIをどこから手にいれたか知らんが、早く奴を見つけて倒さないとな。鉄血ハイエンドに使われてるのが人形守る部隊の隊長のダミーのでしたじゃシャレにならないしな」

 

その時だった。比較的近い場所で爆発音が響き渡った。DG小隊は警戒を強めながら現場に近づくと、驚くべき光景が目の前にあった。

音の正体はリバイバーが戦闘をしている音だったのだが、戦っているのはグリフィンではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかも状況から見れば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「おいおい…」

 

「どうなってやがるんだ…?」

 

目の前で起こっているハイエンド同士の戦いに、彼らは事態を飲み込めずにいた。




リバイバーの武装モデルはガンダムWのビルゴシリーズです。
やりすぎ感はありますが後悔はしてません。

さて、何故リバイバーはジャッジに追われているのか?そして彼の不可解な行動の意味とは?
それではまた次回まで。


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Code-29 リバイバーの事情

今回長い上にほとんど説明ですがご了承を。

ジャッジと戦うリバイバー。その目的とは?


さて、状況を説明するとジャッジが率いる部隊はストライカーやイェーガーのような下級人形の他にアイギスやマンティコアといった装甲兵を含めた数十体の部隊で数の上ではリバイバーが不利である。

だがリバイバーは腐っていたとはいえ基地一つを単騎で壊滅させ、しかも目的は不明だが人形の被害を最小限にさせてる事からその実力は計り知れない。

どうやらF.E.F.Gは八つ全て分離しなくても電磁フィールドを発生させられるらしく、リバイバーは四つ分離し電磁フィールドを発生させ攻撃を防ぎつつ反撃していた。

 

「リバイバー!今ならまだ許そう!今すぐ降伏してこちらに戻れ!」

 

「お断りだ、二度と戻るものかよ。てか、状況わかってんのか?知ってるんだろ、俺の実力。そこの雑兵どもじゃ相手にならないし、お前さんの武器も俺のF.E.F.Gで防げる。電磁フィールドだってコレで突破できる。クソガキのお守りをしてるお前さんじゃ俺には勝てんよ」

 

「……⁉︎貴様、()()()()だけじゃなく、エリザ様まで侮辱するのかっ⁉︎」

 

嘲るようなリバイバーの口調に激昂したジャッジは攻撃の勢いを強める。

その様子を陰から見ていたDG小隊は先ほどのジャッジの言葉が気になっていた。

 

「脱走した?つまりあいつは鉄血を裏切ったのか?」

 

「ジャッジはそれを追撃しに来たって感じか。だが、一昨日基地を壊滅させて何故裏切った?二日間で何かあったのか、それ以前から計画してたのか…」

 

「どうします隊長さん?」

 

「今あそこに行くのは得策とはいえん。リバイバーとジャッジが争ってるとはいえどちらもこちらに向かってくる可能性もある。両者が消耗するまで待て」

 

待機指示を出し、気づかれないように身を潜めて待つとリバイバーに動きがあった。

リバイバーは人形部隊に突撃し、大型粒子砲から散弾状のレーザーを高速で発射、アイギス二機とマンティコア一機を残してジャッジの部下は撃破された。

 

「さて、そろそろ終わりとしようじゃないか」

 

「くっ…何故だリバイバー⁉︎お前はエリザ様に仇なす奴らを倒すために生き返らせてやったのに、何故エリザ様の期待を裏切る真似を…」

 

瞬間、リバイバーの表情が一変し、ジャッジを睨みつける。

 

「エリザエリザと……そんなにエリザが好きかァァァァ‼︎

 

リバイバーはマンティコアに肉薄し、至近距離でレーザーを撃ち撃破すると振り向きざまにアイギス二機を撃ち抜いた。

 

「生き返らせてやっただぁ?妥協案でやった癖に恩着せがましく言うんじゃねぇ‼︎しかも期待してると言いながら周りは俺に対して所詮()()()に負けた奴とか言って冷めた態度取りやがって!代理人(見せパンメイド)に言ってきな!部下の扱い方と料理の腕を見直せってな!」

 

そう叫びリバイバーは高出力でレーザーをジャッジに向けて撃つ。反射的に電磁フィールドを展開してしまったジャッジは電磁フィールドごとレーザーに貫かれ、撃破された。数秒ほど肩で息をしながら立っていたリバイバーだが、不意にバレット達の方を向いた。

 

「…そこにいるのはわかってる。出てきな」

 

「ちっ!全員戦闘準備──」

 

「いや待て待て!俺はお前さん達と戦うつもりはない」

 

そういいリバイバーは両手を上げて戦闘の意思が無いことを示した。それの行動を見た彼らは訝しんだ。先ほどの会話から彼は鉄血を裏切っている事はわかるが、怪しい事には変わらなかった。

 

「…どういう腹づもりだ?」

 

「言葉通りさ。俺は元々グリフィンに寝返るつもりだったしなぁ」

 

「こっちの基地一つ潰しておいてか?」

 

「それについても詳しく話す。とりあえず俺の話を聞いてくれ。お前さん達も、聞きたいことがあるだろ?」

 

リバイバーはそのまま武装をパージし、腰背部にあった大型のバッテリーらしきものも外し丸腰状態となり、バイザーを取り外した。青い目をしたその顔はバレットとは似ても似つかなかったのをみてバレットは少し安堵した。

そのままバレット達はリバイバーを取り囲む形で彼の話を聞くことにした。とはいえ、念のため銃を構えてはいるが。

 

「さて、まず聞くがお前のボディとAIはどうやって出来た?ボディの方は見当がつくが」

 

「ボディはそっちが思ってる通りだ。俺のボディはこっちで鹵獲したバレットのダミーのパーツを一部使って造られた。そしてAIだが…ウロボロスっていう上級人形を知ってるか?」

 

「ああ。一年くらい前の大規模作戦で現れた奴だろ?」

 

「確か倒したそいつのパーツがM1887(ターミネーチャン)に使われてるって聞いたな。まあ他にも何体か目撃例があるが」

 

「なら話が早い。あいつはボディを手に入れる前に、AIの蠱毒の壺ってのを勝ち抜いたんだ。幾千のAIが殺し合いをするエゲツないのをな。俺は、その蠱毒の壺で奴に殺された男性型AIを修復、改良されたものだ。だから俺は復活者(リバイバー)を名乗ってる」

 

それを聞きバレットらはある疑問が湧いた。何故一年前から男性型AIが存在しているのにもかかわらずバレットを狙っていたのかと。それについては次のリバイバーの発言でわかった。

 

「何故男性型AIを蠱毒の壺に入れたかは俺にもわからん。勝ち抜いた場合中性型のボディを用意する予定だったのか、または単なるかませ犬として用意されたのかもな。ちなみに俺のことは代理人達はつい最近まで忘れていたそうだ。ボディすら手に入れられなかったゴミとして電脳空間で放置されていたが、なかなかバレットを鹵獲できないなか、思い出したそうだ」

 

そこから彼はどんどん語り始めた。まず彼が持っている大型粒子砲はV.S.L.C、可変速レーザー砲(Variable Speed Laser Cannon)と言い、元々は蝶事件前に鉄血の技術部がI.O.Pのフォースシールドが悪用された時の対抗措置で開発していたものだが、実際は完成したら何かしらの手段でフォースシールドをテロリストに横流しさせてそれを鎮圧させ軍に購入させるというマッチポンプを起こす予定だったようであったが試作品の完成前に蝶事件によりその目論見は崩れた。

 

その試作品をアーキテクトの鉄血離脱後に鉄血の施設から発見し、これを改良させたものを用いた基地攻撃用ハイエンドを開発しようと考えた。

改良するさいにあたり、裏切ったアーキテクトがフォースシールドを改良する事を考え、試作品の時点で最大出力で突破出来るものを、8割の出力で突破出来るよう改良を加えて完成させたのだが、一つ問題が起きた。最大出力時の反動が予想より大きく、頑丈さが取り柄の鉄血でもハイエンドの開発が難航していたのだ。

 

ハイエンドでなくても大型の装甲兵なら運用できるが、その場合かなり大型となるため隠密性に欠けるため、自分たちのような人型で運用する必要があった。

そんななか目を付けたのがバレットの存在であった。他の人形がその銃に適した姿勢で撃つのに対し、立った状態で対物ライフルを連射出来る事から彼のボディに組み込まれてる反動軽減の構造を応用すれば開発出来るのではと考えた代理人はドリーマーに彼の鹵獲命令を出したのだ。

 

その結果、鹵獲したダミーから構造を理解し試験的にボディを造り、従来通り女性型のAIを開発して導入させたが、構造自体が元々は男性型のボディのためエラーが発生、動けないという自体が起きたため急遽男性型のメインAIを開発するため、バレット本体の鹵獲まで行う事となったのだ。

 

しかし結果は知っての通り鹵獲はことごとく失敗。そんななか代理人はウロボロスを造った際に行った蠱毒に参加させたAIの中に男性型AIがあった事を思い出した。妥協案として最後まで生き残っていた男性型AIを復元、及び改修したものを正式に造ったボディに導入させたのがリバイバーであった。

 

さて、肝心の彼が造られた目的だが本来はV.S.L.Cのみ運用し、グリフィンの基地を強襲する筈だったが、開発中に予想外の事態が起きた。ハイエンドの鹵獲が相次いで起きたのだ。しかも鹵獲されたハイエンド達は洗脳されたのかはわからないがグリフィンに協力的となっていた。しかも中には脱走や離反するものまで現れた事を知り急遽計画を変更。鉄血を裏切ったハイエンドの抹殺を目的に加えた。

 

その際に辺り、鹵獲されたハイエンドを運用している基地が大規模である事とハイエンド同士の戦闘を考慮しペーパープランだったF.E.F.Gも運用させる事にし、開発当初より技術が向上していたためF.E.F.Gの消費エネルギーの低下に成功、さらに大型の補助バッテリーを使うことでエネルギー問題を解決させ現在の形となった。

 

「……ま、要するに裏切り者を基地ごと潰すために出来たのが俺ってわけだ」

 

「それで?何故お前は鉄血を裏切ったんだ?さっきの会話で大体のことはわかるが…」

 

「元々妥協案で生き返ったってのは造られてすぐに言われたよ。そん時はムカついたが納得はいったさ。俺が逆の立場でもそうしたしな。俺も最初は鉄血の為にやっていこうとしたさ」

 

そういいリバイバーは不満を露わにした顔で再び語り始めた。

 

「だがな…知っての通りウロボロスは感情に身を任せて勝手な行動を取った結果しくじった。だから改良されてるとはいえ、周りは俺のことを『前の作戦で盛大にしくじった奴にも負けた奴』って感じで冷遇しやがった」

 

「アイツにいいようにされたハンターと処刑人には特にだ。俺のパーツに仕方ないとはいえ常日頃見下してるグリフィン人形のパーツがあるってのもあるんだろうけどな。俺に良くしてくれたのはデストロイヤーとアルケミストだけだったよ」

 

これにはバレットらは意外に思っていた。デストロイヤーはともかく、あのアルケミストがそんな素振りをするとは思わなかったからだ。それを察したリバイバーは軽く笑っていた。

 

「意外か?ああ見えてアルケミストは仲間には優しいんだ。もちろん冷遇されてる事には代理人に抗議したさ。だが奴は事実だから仕方ないでしょうの一点張りだった。期待してると言った割にはそんな態度をとるから段々と不満に思った。おまけにエリザは何を考えてるかわからないファザコンだったと知って俺は鉄血を抜けてグリフィンに寝返る事を決めたんだ」

 

「エリザに会ったのか⁉︎」

 

「と言っても電脳空間の中でだがな。脱走準備を進めてる矢先、電脳空間内での訓練だけだったのが急に実戦テストをする事が決まったんだ。グリフィンに寝返る手前、基地襲撃するのはマズイし、表向きは裏切ることを悟られないよう従順にしてたから断ったら怪しまれる。どうするか悩んでた時、お前さん達の任務内容を思い出して閃いた」

 

つまり、リバイバーはあの基地の内情を知った上で行動に移したのだ。

まずリバイバーは代理人に初陣を選ばせてくれと嘆願し、運良くそれが聞き入れられたのでリバイバーはハッキングを用いてフォースシールド持ちが所属して、尚且つ基地の人間ほとんどが腐敗している例の基地を探し出し、襲撃。人形には最低限の被害のみで済ませたのだ。

 

武装の実戦テストの為どうしても人形の犠牲が出るが、彼にはグリフィンが自分を受け入れる()()()()があったため実行した。そしてその後脱走を決行、ジャッジに追撃され今に至ったのである。

 

話を聞き終えたDG小隊はリバイバーをどうすべきか相談を始めた。

 

「どうするバレット?あいつを鹵獲するか?それともこのまま撃破するか?」

 

「武装はこちらで解析するからなるべく持ってきてくれってペルシカが言ってたな。念のためあいつを殺して武装だけ持っていくか」

 

「あ、俺が死んだら武装はドカンだぜ?」

 

「チッ!…仕方ない、こいつを鹵獲するぞ」

 

「大丈夫なのか隊長?」

 

「あとは上の判断に任せればいい。おいリバイバー、お前の言う事には疑問があるが、とりあえずお前をグリフィンに連れて行く。おとなしく来い」

 

「ありがとよ。あ、そうだ。一応手土産を用意してあるんだ」

 

「手土産?」

 

スミスが首を傾げるとリバイバーは指笛を吹く。すると、ミサイルランチャーの代わりに物資コンテナを積んだガルムがやって来た。

 

「良ーし良し。上手く隠れていたみたいだな」

 

「ガ、ガルム⁉︎」

 

「脱走用に一体だけあらかじめ手懐けててな。コンテナの中には俺の武装の予備と替えのバッテリー、向こうから盗んだ設計図やその他色々な情報を記録したメモリーカードがある。あと、これもな」

 

そういいリバイバーはガルムに取り付けられた大型のボディバッグのチャックを開ける。すると中にはデストロイヤー・ガイアが目を閉じた状態で入っていた。

 

「えっと…これは?」

 

「ガイアってあまり目撃例が無いだろ?だから持っていけばある程度身の保証が得られると思ってな。メンタルモデルやウイルスは入ってないからそっちで鹵獲したデストロイヤーにでもあげれば良いと思うがどうだ?」

 

「…そういえばEA小隊にデストロイヤーがいたな。ペルシカに調べさせて何もなければ渡すか」

 

「ガルムも連れてくとしたら大型のヘリを呼ぶ必要がありますね。本部に連絡しておきますね」

 

ウェイターが事情を本部に連絡してしばらく経ったあと、大型ヘリが到着、拘束したリバイバーとガルムを乗せてDG小隊は本部に帰還した。

 

(こいつ、やけに協力的だが…大丈夫なのか?いや、アーキテクトのようなタイプならわかるが…)

 

こうして、リバイバー捜索命令は意外な形で片がついたのであった。




アナ○イム「マッチポンプで兵器売るとかとんでもないな」
ギャラ○ホルン「全くだ」
※上の二つは完全にお前が言うなですがね。


ちょっと解説です。
Q.こいつの本来の目的って?
A.脱走したり裏切ったハイエンドを基地ごと潰すためだよ。攻め込む基地が大規模でしかもハイエンドとも戦う事になるからこんな性能だよ。


Q.裏切った理由がわからずれーよ簡潔に言ってくれ
A.要するにウロボロスが色々やらかしたからとばっちりで新人イビリされてしかも代理人は止めもしないしエリザも思ってた人物と違うしで不満爆発で脱走したよ。ちなみにちゃんと扱っていれば脱走しなかったよ。

ガイアボディですが、本文通りoldsnake様のところのEA小隊のデストロイヤーちゃんに贈ります。

さて、自ら鹵獲されに来たリバイバー。彼の処遇は如何に?


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Code-30 不思議な喫茶店

今回はいろいろ様作『喫茶 鉄血』とのコラボ回です。
こちらの視点なので大体はあちらと同じですが。




リバイバーをグリフィン本部へ送った翌日、DG小隊はある基地の定例監査を行なっていた。

 

「ふむ…報告書と実際のデータに差異は無し…消費資材も同じく問題無し…。そっちはどうだ?」

 

「聞き取りの方も何か隠してるような素振りも見当たりませんでした」

 

「監視カメラの映像も偽装した形跡は無かったぜ〜」

 

ウェイターとスミスの報告を聞き、バレットは指揮官に向き直る。

 

「…以上で監査は終了です。結果は後で正式に発表されますが、ほぼ問題無しと見ていいでしょう」

 

「わかりました…何もしてなくとも、やはり緊張するものだね」

 

「ではこれで失礼します。次の監査、もしくは合同任務以外でそちらに向かわない事を祈ります」

 

いつもならヘリを利用して帰還するのだが、今回の基地は本部に割と近いため、陸路で帰還していた。

 

「…たぶん本部は今頃リバイバーをどうするか決めている頃か」

 

「その前に尋問する予定だが、尋問しなくても勝手にベラベラ喋るって言ってたしな。あいつが死んだら爆発するって言う武装のロックは解除したらしいし、どうなるかはあいつの持ってきたデータやあいつの交渉次第か」

 

そんな事を話しながら帰還していくと、突然目の前に砂嵐が発生し彼らに向かってきた。突然発生した砂嵐に驚きつつも、彼らは伏せて砂嵐をやり過ごそうとする。やがて砂嵐が彼らを包み込み、その後砂嵐は過ぎ去っていった。

 

すると、ノアはある違和感に気づいた。砂嵐が来る前はレストの側に伏せていたが、砂嵐が過ぎるとレストが側にあらず、それどころか彼女以外の全員この場から居なくなっていたのだ。さらに、砂嵐に包まれたのにも関わらず彼女の体には砂つぶ一つ付いていなかった。

 

「レストさん?隊長さん?みんなどこへ行ったんですか…?」

 

────

 

顔を上げたバレット達がまず始めに気がついたのは、先ほどで小屋一つ無かった道に居たはずだが目の前には見知らぬ街が見えていた事であった。

 

「なっ…!これは一体…?」

 

「隊長、ノアが居ないし、さっきから連絡をしようとしてるが全く繋がらない!」

 

レストの報告を聞き、彼らはどういう事だと首を傾げるがもしかしたら先に街に行ったのかもしれないと思い、街に入って行くことにした。

 

だが街に入ると彼らはますます混乱した。建物が綺麗過ぎるのだ。普通弾痕なり崩壊しかけてたりと戦闘の跡があるはずなのだが、そんなものは全くなく、建て替えたという話も聞いていない。

 

街行く人々も暗い表情をしている者がほとんどおらず、裏通りにも浮浪者や麻薬中毒者といった者も見受けられず、まるで夢を見ているかのようであった。─尤も、一部を除いて人形は夢を見ないが。

一通り周った後、彼らは小さな公園でとりあえず今の状況を確認し始めた。

 

「さて、状況を確認しよう。陸路で帰還中に砂嵐が発生、それが去ると見知らぬ街の目の前ときた。 …だれか説明できそうなのはいるか?」

 

「悪いなバレット、俺も何が何だかさっぱりだ」

 

「右に同じく」

 

「だな」

 

この不可思議な現象に加え、未だにノアが見つからない状況に途方に暮れていると、グ〜と、腹のなる音が聞こえた。

 

「…腹、減ったな」

 

「どんな状況でも腹は減るか…仕方ない、情報を集めるついでにどこか店を探そう」

 

「わかった。ノアが心配だが、街の様子を見るに治安は良さそうだし、何かあっても対処できると信じるとしよう」

 

「とにかく移動しましょう。さすがに公園で男四人が固まってるのは怪しまれます」

 

ひとまず四人は店を探し、程なくして一件の喫茶店を見つける。そしてロクに店の名前を確認せずに中に入る。すると…

 

「いらっしゃいませ、四名様でしょうか?」

 

鉄血のハイエンドモデル、それも最上級クラスである代理人が目の前にいたのだ。彼らは想定外のことに固まっていると当の代理人が困惑した顔で、

 

「お客様?」

 

「!あ、ああ。そうだ」

 

「ではこちらへ」

 

代理人に案内されるままに彼らは二階へと上がる。途中イェーガーとすれ違う時に代理人が何か指示を出したのを見てバレットは罠かと思ったが、それにしてはあまりに雑過ぎる。一応スミス達にハンドサインでいつでも攻撃できるよう指示を出した。

個室に案内され、扉が閉まると代理人が話し始めた。

 

「…そんなに警戒なさらくても大丈夫ですよ。()()()()の皆さん」

 

「っ⁉︎」

 

「よせスミス。その気だったらここに入った時にとっくにやられてる」

 

銃を抜こうとしたスミスをバレットが止めるとスミスは納得したのか銃から手を離した。

 

「……その反応、()()()我々鉄血の人形は敵、少なくとも友好関係ではなさそうですね」

 

()()()?…どういう意味ですか?」

 

ウェイターの質問に代理人は信じられない事を口にした。

 

「では単刀直入に申し上げます。……ここはあなた方の住む世界とは異なる、いわゆる並行世界というものです」

 

「「「「……はい?」」」」

 

────

 

初めこそ何を言っているかわからなかった彼らだが、代理人がもってきた新聞記事やその他諸々の証拠を見て現実を受け止めた。恐らくノアはこの世界には来ていないと仮定し、帰れることもわかると彼らはコーヒーや料理を食べながらゆっくりすることにした。

レストは新聞記事を読み、自分と同じような境遇の人形かいないことに安堵し、スミスは先ほどから行き来している鉄血人形に落ち着かない様子だった。イノセントやリバイバー、さらにはEA小隊にも味方の鉄血人形が居るとはいえ、慣れずにいた。

ウェイターは元執事長という事だけあり、この世界では安易に手に入る天然物のコーヒー豆や紅茶に興味を持ち、時折代理人と意見を交えていた。

 

「この茶葉は私達の世界でも扱ったことがあります。こうすればもう少し香りが良くなりますよ」

 

「なるほど…参考になります」

 

「あと、こちらのコーヒー豆ですが、この豆と合わせるとコクが出ますよ」

 

会話の内容を聞く限り、どうやらそちらの技術に関してはウェイターの方がやや上手らしい。

しばらくすると個室の扉がノックされ、開けてみればそこにいたのは妙にげっそりしたこちらの世界のペルシカが入ってきた。

 

「実はね……11Labのがその…彼らに会いたいって」

 

「ん? 話した覚えはないのですが……」

 

「うん。 でも本人たち曰く「ティンときた」って」

 

「えぇ…」

 

直後にペルシカの後ろからヌッと現れた3人の白衣の女性…11Labの面々が扉をこじ開けて強引に入ってきた。そして彼らの前に立ちはだかると開口一番に

 

「貴方達、男の戦術人形ね!」

 

「是非とも私たちの研究に協力して欲しいの!」

 

「報酬は何でも払うわ! なんだったらこの体でも「「抜けがけ禁止!」」グハッ!?」

 

目の前で繰り広げられたコントじみた光景に彼らは思わず固まってしまう。

特にバレットはかつて姉やSASSから受けた視線と似たようなものを感じ、軽く身震いした。

 

「あ〜悪いがそういう話はお断りだ。 事情が事情なんでな」

 

「そうそう。それに全員彼女いるしな…俺以外は

 

「ほら、やっぱり無理だって言ったでしょ」

 

「え〜〜〜…じゃあ質問一個だけでもいい?」

 

バレットとスミスがやんわりと断るとおとなしく彼女達は引き下がる。その代わりに主任格の女性が真剣な顔で尋ねた。きっと彼らの答え次第では研究が大いに進展するのだろう。関係ない世界とはいえ、何か役に立てるのならと彼らも真剣に答えようと思った。

 

「じゃあ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレのサイズを」

 

「「「「は?」」」」

 

逆セクハラともとれるしょうもない質問に彼らは思わず真顔になり割と低い声で答えると彼女達はペルシカによって強制的につまみ出された。その後、代理人は深々と頭を下げた。

 

「申し訳ございませんでした」

 

「い、いや、あんたが悪いわけじゃない」

 

「ですが当店でのトラブルは私の責任でもありますので……では、今回のお食事代は不要とさせていただきます」

 

「え? いや、それは悪いって…」

 

「そういうことにしておいてください。 どのみち、こちらとは通貨が異なるはずですから」

 

「「「「…あ」」」」

 

その事実に気づき口を開く4人に対し代理人はクスリと笑い伝票を回収する。そしてちょうどその時、レストの持っている端末に連絡が入る。驚いて落としそうになるそれをキャッチし、通話モードにして耳を当てるとノアから通信が入った。

 

『レストさん⁉︎今どこにいるんですか! 誰にかけても繋がらないし…』

 

「の、ノア⁉︎いやその、今はな……」

 

今帰れるかどうかわからないレストはどうしたものかと考えるが代理人は微笑んで、「そろそろ帰る時間のようですね」と小声で伝える。四人は顔を見合わせるとどこかホッとしたような表情を浮かべ、レストはそのまま通話を続けた。

 

「…悪い、ちょっと寄り道してたんだ。すぐ戻るよ」

 

「それじゃあ俺達は失礼する。美味しかったよ」

 

「ありがとうございます」

 

そう言い彼らは荷物をまとめた。店を出る時、最後尾にいたウェイターは代理人からコーヒー豆の入った紙袋を手渡された。

 

「せっかくですので、これを。 少し多めに入れていますので、皆さんで飲んでください……この出会いに感謝を、ということで」

 

「…わかりました。 ありがとうございます」

 

「もしまた訪れることがあれば、今度は一緒に働いてみたいものです」

 

「そう言っていただけて光栄です…それでは」

 

「えぇ、皆さんもお元気で」

 

彼らは店を出てきた道を戻っていく。

 

「…にしても、並行世界とはねぇ…。そういや、AR小隊や404はいるらしいが、俺らはいないみたいだな」

 

「俺らみたいのが必要とされない世界って事だろ?その方がいい」

 

彼らが必要とされない世界、つまり人形達が虐げられない世界と知り、いつしか自分達の世界もそうなる事を願いながら進んでいくと、いつのまにか砂嵐が発生した場所に辿り着いていた。

どう考えても無理のある嘘を言っていたためノアに怒られたが、彼らは無事に本部へと帰還した。

 

その後、貰ったコーヒー豆でコーヒーを淹れて飲んでいると、ヘリアンからメッセージが届いた。それに目を通したバレットは思わず目を見開いた。

 

…なんとリバイバーがDG小隊のサポートチームとして参加する事となったとのメッセージだったのだ。




いろいろ様、コラボありがとうございました‼︎
ちなみにキャラ紹介見たときにだいたい合ってると思いましたね。
4人中2人があっちに似つかわしくない過去持ってるっていうね。

さて、リバイバーが仲間になりました。その経緯について次回明らかにします。


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Code-31 リバイバー、参入

今更ですがMP5の浴衣スキンの見てあのお団子ヘヤーに指を入れたいよりも先にハムハムしたいと思った当時の俺は疲れてるか変態だったのだろうな…

それでは本編です。


リバイバーの処遇の経緯だが、まず16Labで彼の武装と体を調べ発信機や盗聴器の類がない事を確認し、また彼の記録を確認し『鉄血内で冷遇されていた』という事実が本当であるか確かめたが、彼の言っていた通りかなり冷遇されていたことがわかった。

また彼の持ってきたデータなども最新のものであり有用性が高く、彼の性能を考えれば殺すには惜しく、だが他の基地に配属するには危険なため監視の意味も含めてDG小隊のサポートチームに加入することに決定したのだ。

 

とはいえ彼の製造目的が目的なので一定の信頼を得るまで以下の措置をとる事になった。

 

・任務以外では一切の武装を禁じる

・彼の体内に小型の爆弾と強制停止装置を組み込む事(その際バレットとスミスに各装置の信号を送れるモジュールを追加する)

・外出禁止

・合同任務を除いて彼の本来のターゲットの基地の人間及び人形との接触禁止。また、どうしても接触する場合はバレットとスミスのどちらか、あるいは両方の同伴で非武装で行う事

 

部屋に来たリバイバーからそれらの経緯を聞き、バレットらDG小隊は幾つか不安があるが納得した。

 

「なるほど…まぁ妥当ではあるか…」

 

「ま、そんなわけでよろしくな、『夢殺し』さん」

 

「夢殺し?」

 

聞きなれない単語に首を傾げるとリバイバーはそれについて説明し始めた。

 

「お前さんの鉄血での二つ名さ。ドリーマーを何度も倒してるからな。今は鹵獲したから『ドリームキャッチャー』なんて呼ばれたりもしてたな」

 

「なるほど」

 

「それって俺らにもあるのか?」

 

「お前さん達には無いが…そこのお嬢さんにはあるぜ」

 

「私、ですか?」

 

「ああ。『スカート付き』ってのがな。他の9A-91は大体スカート履いてないからな」

 

それを聞いた時、辺りに微妙な空気が漂っていた。

 

「…鉄血でも9A-91()ってスカート履いてないパンツ丸出しの人形って思われてるんですね…」

 

若干負のオーラを纏いながらノアはそうポツリと呟いた。ちなみに今本来の格好になれるかといえば恥ずかしくて出来ないそうだ。それが普通の反応なのだが

 

「あー…うん…えっと…」

 

レストはなんとかフォローしようとするが、上手い言葉が見つからずオロオロしていた。

 

「いいんですよレストさん…私だってレストさんに会うまではそうでしたから…。ただ、今思うとすごく恥ずかしい格好してたんだなぁって感じてるだけですし…」

 

「…そろそろI.O.Pに服のデザインについて文句言った方がいいか…?」

 

「もう手遅れだろ、色々と」

 

ノアの頭を撫でながらレストが呟くとスミスが率直な意見を述べた。

この状況を作り出したリバイバーは若干気まずい顔をしていた。

 

「なんか…悪いな」

 

「あぁ…。それで、俺とスミスとお前はこれからその装置とやらを組み込む訳か?」

 

「そうそう。ついでに俺の肌も少し手を加えるらしいぜ。せっかくの色白が無くなるのは残念だが、仕方ないか」

 

その後、バレットとスミス、リバイバーの3人は16Labへ行き、施術を行った。とはいえ、EA小隊のマーダーに組み込まれているものを周波数を変えただけのものを使うためそんなには時間はかからなかった。

リバイバーの見た目も変わり、肌の色は前より人間味のある色白へ、またF.E.F.Gの一つ一つにあった鉄血のロゴも消されるといった変更を加えられた。

 

「俺に取り付ける爆弾ってさ、どこに取り付けたんだ?」

 

施術が終わりリバイバーはペルシカにそう尋ねるとペルシカは呆れたような顔をした。

 

「そう言われて教えるわけないでしょ?何考えてるの?」

 

「いやさ、万が一攻撃食らったときに爆弾のあるとこに当たって誘爆したらアレだろ?わかってたらその場所避けられるから誘爆してあいつら巻き込む事は避けられるだろ?」

 

「簡単に誘爆するほどヤワじゃないわよ。それに、教えたところで無理に外すと爆発するから取ろうとしても無駄よ。とにかく、教えないわよ」

 

「あっそうなの?簡単に誘爆しないならいいや。ま、大体の場所の見当はついてるが」

 

「あなた随分軽いわね…鉄血にいた時よりかなり雁字搦めだと思うけどそこはどうなの?」

 

「別に?俺は言わば捕虜なんだからこの扱いは当然だろうに。むしろ仲間なのにあんな扱いしたあっちがおかしいってもんだ」

 

「施術は終わったか?なら行くぞリバイバー」

 

「了解了解。てなわけでペルシカ博士、チャオ♪」

 

バレットとスミスに連れられ、リバイバーは16Labから去って行く。ペルシカはパソコンをいじりリバイバーのデータを眺めた。

 

「…本当、よく出来てるわね。武装やボディもだけど、AIもウロボロスの時の反省を踏まえて、メンタルモデルが不安定にならないように改修されてる。もし彼が鉄血にいたままだったらかなりの被害を受ける事になってたわね…」

 

────

 

グリフィン本部 食堂

 

本部に戻った三人はそのまま食事を取ることにし、食堂へと立ち寄った。

その後リバイバーは自分が頼んだスパゲティを一口食べた瞬間、目を見開いていた。

 

「…なぁ二人とも。お前さん達はいつもこれを食べているのか?」

 

「ん?まぁな。たまにウェイターが作ったのを食べたりするがあいつが作る料理も中々美味いぞ」

 

「ほぉ…!ハイエンド達が軒並み裏切った理由がよーくわかったよ。こんな美味いもん食わされて裏切らないわけがない!」

 

「そんなに鉄血のメシってマズイのか?」

 

「マズイなんてもんじゃねぇよ!これに比べたら代理人の作った料理はハイッ‼︎豚の餌ァァァァ‼︎

 

どこぞの対宇宙生命体組織のトップ兼警視総監のようなセリフを叫ぶリバイバーを見てバレットとスミスは顔を見合わせた。

 

「…やっぱあそこの代理人が特別みたいだな」

 

「だな。あとリバイバー、うるせえ。ここ食堂だからな?」

 

「あ、すまん」

 

────

一方その頃、レストとノアはある人形と話をしていた。彼女は以前レスト達が娼館から助け出した人形で、偶々二人に出会い今に至っていた。(詳しくはCode-2〜3参照)

 

「そうか…君は戦術人形の道を取ったか」

 

「はい。今度は誰かを助けたり守ったりしたいと考えたので。今の私の名前は『サンダー』です」

 

「その名前なんだが…気にならないか?」

 

「いいえ。英数字の名前の銃ならともかく、この名前は気にはならないですね。それとレストさん…私を助け出してくれて、ありがとうございます」

 

そういいサンダーは頭を深々と下げ礼を述べた。

 

「いやそこまで頭を下げなくていい。君たちを助け出すのが俺らの仕事だしな。何か困ったことがあったら言ってくれ。力になろう」

 

ありがとうございます、とレストに微笑むサンダーだが、すぐに少しだけ表情を暗くした。

 

「…聞いた話ですが、最近私と同型の人形が救出されたみたいですね」

 

救出されたこと自体は良いことなのだが、彼女と同型の人形ということは()()()()()()となる為、彼女としては複雑な気持ちであった。それはかつて彼女と同じ目的で造られたレストも同様であった。

 

「あぁ…答えたくなければ答えなくていいが、君が製造されたとき、他に同型の人形が何人いたか覚えているか?」

 

「あまり覚えてはいませんが…そんなに多くはいなかったと思います。ですが、あの工場が生きてるとなると…」

 

「…わかった。それについてはこちらで調べよう。君もこれからが大変だろうけど、頑張っていけよな」

 

そうサンダーに告げ、レストとノアはヘリアンの元に向かう。

調べによると例の工場は場所を突き止めることができ、すでに違法工場と認定されあとはDG小隊とその他動ける部隊と組んで破壊する予定らしい。

 

「実動部隊ですが、リバイバーを作戦に加えれば事足りると思いますが?」

 

「リバイバーをか?だが奴はまだこちらの味方とは…」

 

「事は急を要します。利用できるのがいればそれを使わない手はありません。それに、これを機に奴が味方かどうか判断するいい機会だと思いますが?」

 

「もしリバイバーが何かしようとしても隊長さんやスミスさんが行動を制限できるなら問題ないと思います」

 

「むぅ…確かにそうだが…わかった。責任は私が取ろう。リバイバーを作戦に加えた破壊作戦を近々行う事をバレット達に伝えてくれ」

 

「「了解‼︎」」

 

────

 

「え、マジか?俺のグリフィンでの初陣早くない?」

 

「すみません隊長、勝手な真似を…」

 

「いや、俺も食事を終えたら進言するつもりだったから大丈夫だ。それとリバイバー。わかってると思うが、こちらの指示に従わない場合はすぐに強制停止、最悪爆破させるからな」

 

「わかってるよ」

 

数日後、DG小隊とリバイバーは準備を整えて違法工場へと向かっていく。

その道中、バレットはリバイバーをちらりと見た。

 

(この作戦でこいつの真意が見えればいいが…油断はしない方がいいな)




Code-Xでリバイバーがいなかったのはこういう理由です。

バイザー水色だっりチャオって言ったりとお前さん呼びと若干エボルトっぽいけど何もかも奴の計画通りとかじゃないからね?本当ですよ?

さて次回、『違法工場をぶっ壊す!』お楽しみに。


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Code-32 違法工場破壊作戦

色々立て込んでて遅れました。
なんでイベントが起きる度に仕事が忙しくなるんだよ…


違法工場を視界に捉えられる位置まで移動したバレットらは改めて作戦内容を確認する。

 

「今回の作戦はそこにある違法工場の完全破壊、及びそこにいる人形全ての救出だ。リバイバー、見ての通り工場付近は守りが厳重だ。派手にやってくれて構わないが、施設の攻撃は中の人形の救出が完了するまでは行うな」

 

工場はやや中規模であり、敷地内には歩兵の他に有人式の大型兵器が何機かうろついていた。

 

「了解。だが中に人形がいない事がわかれば攻撃してもいいんだな?」

 

「構わないが…わかるのか?」

 

「俺のこのバイザーにはバッテリー残量や目標の距離の視覚化以外に、生体反応や人形の反応も見える機能がある。現に工場を見てみたがバッチリ人形の反応が見えたから心配はない」

 

「そうか、わかった」

 

ちなみに、リバイバーの視界には人形と人間の反応が()()()()()()()()のがあったが、ここの特性上()()()()のはわかりきった事なのでリバイバーは黙っていた。基本的に大型機はリバイバーが相手をし、内部の制圧をDG小隊が行う形である。また、今回はバレットも前線に加わる事にした。

各員配置についたところでバレットはリバイバーに合図を出す。

 

「作戦開始だリバイバー、やってくれ」

 

「OK。グリフィンでのデビュー戦の火蓋、派手に切らせてもらうぞ‼︎」

 

高所にいたリバイバーは近くの大型機に狙いを定め、V.S.L.Cを撃ち放った。放たれたレーザーは大型機の上半身を消し飛ばし、下半身も燃料に引火し爆散した。

何事かと工場内の人間は慌てふためくがその間に二射、三射とレーザーが降り注ぎその度に大型機を破壊していく。

その後リバイバーは歩兵達の近くに降り立った。

 

「なっ…⁉︎貴様、何者だ‼︎」

 

「グリフィン所属の人形、とだけ言わせてもらう。さて、この工場は本日をもって閉鎖とさせて頂こうか」

 

「っ…⁉︎舐めるな‼︎撃て‼︎」

 

歩兵達は一斉にリバイバーに向かって銃を撃つがそれよりも早くリバイバーはF.E.F.Gを展開、電磁フィールドにより銃撃を防いでいた。

 

「弾と時間の無駄だな…むンッ‼︎」

 

「がバッ⁉︎」

 

そしてお返しとばかりに散弾状のレーザーを相手に浴びせ、焼き焦げたグズグズの肉塊へと変えていった。

 

「こいつ、銃が効かねぇぞ‼︎」

 

「なら俺に任せろ!喰らいやがれ!」

 

大型機に乗った男がリバイバーに向けて搭載されていたミサイルを全弾発射する。ミサイルは電磁フィールドに命中し、派手に爆発して辺りは爆煙に包まれた。

 

「ははっ!ザマァ見やがれ!」

 

「所詮人形が俺らに敵うわけg「あるんだなこれが」⁉︎」

 

煙が晴れるとそこには何事も無かったかのように立っているリバイバーの姿があった。

 

「マルドゥーク…いや、グリフィン(こっち)じゃジュピターか。ともかくその攻撃を防げるこの俺にさ、それ以下の威力のミサイルを防げない訳がないだろう?」

 

そういうやいなやリバイバーは大型機を撃ち抜き、周囲の敵や人形のいない施設へと攻撃を始め、辺りは火の海と化した。

リバイバーの相手で手薄に内部がなったところでバレットらも工場内部へと侵入する。

 

残っていた兵がこちらに気づき射撃を加えるが先ほどの襲撃で動揺しているのかほぼ見当違いのところに弾が飛んでいく。無論それを見て油断したり見逃すほど彼らは甘くなく、兵や逃げ惑う従業員を容赦なく撃ち倒していく。

非戦闘員である従業員を撃ち殺すことはここが普通の工場なら許されざる行為だろう。だが、ここは違法工場であり彼らがここで造られた人形を()()()()()している可能性だってある。ゆえに一切の慈悲は無かった。

侵入を阻もうとバレットの前に5人ほどの兵が立ちはばかるが、バレットは一度物陰に隠れて攻撃を凌ぐと物陰から飛び出して素早く自身の銃を五発撃ち、兵達を吹き飛ばした。その様子を見ながらスミスはバレットに尋ねた。

 

「バレット…お前、また早撃ちの腕上げたな。今の2秒くらいじゃなかったか?」

 

「ペイロードが前の作戦でだいぶ成長したって聞いたからな。兄として負けられな…⁉︎」

 

瞬間、バレットは身体の力が抜けその場に倒れこむ。視線だけ動かすとスミスや他のメンバーも同様に倒れこんだ。

その時だった。壁を吹き飛ばして先ほどより一回り大きな大型機が彼らの目の前に現れた。

 

『フハハハハハッ‼︎ジャマーのお味はどうだDG小隊‼︎手も足も出ないだろう‼︎』

 

スピーカーから発せられる男の言葉にバレットは内心焦っていた。

 

(ジャマー内蔵型大型機か…⁉︎マズい…このままじゃ…!)

 

『今まで殺られた仲間の恨みだ、ここで死ねぇ‼︎』

 

大型機はバレットに右腕の大型ショットガンを向け、射撃を加えようとする。

 

「「「バレット(隊長)‼︎」」」

 

ここまでか、とバレットは目を瞑った時だった。突然大型機の右腕がレーザーに貫かれ、爆発した。何事かと一同はレーザーの飛んできた方向を見ると、リバイバーがV.S.L.Cを構えて立っていた。

 

「…外の敵をあらかた片付けたと思ったら、危機一髪ってところだったな」

 

『なっ…⁉︎何故だ⁉︎何故お前はジャマーの影響を受けていない⁉︎』

 

「俺は元とはいえ最新鋭の鉄血ハイエンドだ。そんなもん効くかよ」

 

ハイエンドのみならず、鉄血の人形はプラウラーのようなものでもジャマーに耐性がある事はグリフィンでは周知の事実である。グリフィン所属と聞きリバイバーをI.O.P製と思い込んだのが彼らの敗因だろう。

リバイバーはバイザーの生体反応でコクピットの位置を割り出し、高出力レーザーで撃ち抜いた。大型機は数秒ほど立ち尽くしていたがやがて倒れ落ち、爆散した。もちろん爆風に巻き込まれないようにF.E.F.Gをバレットの周りに展開させた上でのことである。

ジャマーが無くなった事で体の自由が戻ったバレットらはすぐさま反撃に応じ、ほどなくして工場の制圧が完了した。

 

────

 

「リバイバー、本当に人形はこれで全員なんだよな?」

 

「ああ本当だ。というより、さっきお前さんにバイザー貸して確かめさせたろ?」

 

「一応だ。んじゃ…始めてくれ」

 

了解、と通信を切ると高所にいたリバイバーはV.S.L.Cを工場に向けて構えた。

 

「出力はこれくらいで充分か…それじゃ…ズドン♪」

 

トリガーを引くと先程までとは比べ物にならない威力のレーザーが放たれ、工場に突き刺さる。瞬間、轟音と共に爆炎が広がり工場は派手に吹き飛んだ。その後も念の為に数発撃ち、不幸な人形を生み出した工場は跡形もなく消え去っていった。

 

「ん〜壮観だなぁ。自分の工場がぶっ飛ぶさまはどうだい?()()()()()?」

 

「くっ…悪趣味人形が…‼︎」

 

リバイバーは後ろで拘束されている男に向けて問いかける。この男はリバイバー襲撃時に一人コソコソ逃げていたのをリバイバーが見つけ、足を撃ったまま放置していたのをわざわざこれを見せるために連れてきたのであった。ちなみに、この事はバレットらには報告していなかった。

 

「ところでお前さんさぁ…この工場と養豚場、同じところと違うところがあるんだが、わかるか?」

 

「は?知るかよ。それより、俺をどうする気だ?」

 

「それについては後で言う。で、正解だが、同じところはどちらも人の欲を満たすためにできた施設だ。違うのはそれが性欲か食欲かの違いだ。だが、食欲は満たさなきゃ死んじまうのに対して、性欲は満たさなくても死にはしない。つまり『そこまで必要じゃない施設』なんだ。なのに何故お前さん達はここを作り、運用した?」

 

段々と怒気と殺気の入り混じったリバイバーの声に男は怯え、声が出なかった。

 

「答えないか。なら代わりに答えよう。理由はズバリ『金になるから』だ。どんな相場で売り買いされてるかは知りたくねぇがお前さん達が金銭欲をコントロール出来ずもっと利益を得たい為に彼女達を不幸にした」

 

そういいリバイバーは右手で男の首を掴み、持ち上げた。

 

「ぐっ…‼︎ガッ…⁉︎」

 

「俺はなぁ…己の欲望をコントロール出来ずに周りに害を与える行為は許されざる行為だと思っている。お前さん達がやったのはまさしくそれだ。獣ですら必要以上の獲物は狩らないというのにそれが出来ないお前さん達みたいな連中は……死ね」

 

ゴキリ、とリバイバーは男の首をへし折り、投げ捨てる。その後リバイバーは回収ポイントへと歩いていった。

 

────

 

翌日、バレットはヘリアンに報告書を提出した。

 

「以上が今回の報告です。販売先のリストも手に入ったので各地区の指揮官に伝えれば彼女達の足取りも追えるでしょう」

 

「ふむ…わかった。それとバレット。今回の事で貴様から見てリバイバーはどうだ?」

 

「まだ彼の真意が掴めませんが今回の件ではこちらの指示におとなしく従った事と彼にジャマー耐性があったことが幸いし、我々が全滅することを避けられたのは事実です。完全とは言いませんが、少しは信用しても問題ないかと」

 

「なるほどな…それと、ジャマーの所持を把握出来なかったのはこちらの落ち度だった。すまない」

 

「いえ、想定していなかったこちらにも非があります…ではこれで」

 

バレットは部屋から出て行く。そして自室へ入ると何故かリバイバーが部屋にいた。

 

「…いくら部屋の出入りが自由だといっても何故ここにいる?」

 

「暇だったものでな。それで?俺はあんたらの役に立てそうかい?」

 

「今の所はな。今回みたいな作戦で他の基地の協力を得られない場合でもお前を使えばほぼ問題ないとわかったからな。それに、一度命を助けられた身だ。理不尽に切ったりはしないようにするさ」

 

「そうかい、ありがとよ。それとこの写真に写ってるのってお前さんの妹か?随分カワイイじゃn」

 

妹に手を出したら殺すからな?

 

「アッハイ」

 

さっきと言ってる事が違うじゃないかとは言えなかったリバイバーであった。




作戦自体は成功したが、独断行動をしたリバイバー。その行く末は…。

ちなみにコラボイベントのG36一家のストーリーに星●一のショートショートのようなものを感じたのは自分だけでしょうか?
あとみんなアレをガンダムガンダムって言ってますけど個人的には胴体の生えた魔改造ボールだと思うんですよね。あと一般兵、君ビルドにいなかった?


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Code-33 新しい生命に祝福を

今回はムメイ様作『カフェD08へようこそ!』とのコラボです。
DG小隊が出産祝いに行きます。



「そ〜いやよ、D08基地の子供ってもう産まれてるんだっけか?」

 

彼らはいつものように部屋で過ごしているとふとスミスがそうバレットに尋ねた。

 

「あぁ。初期の嫁さん達は全員無事出産してるとのことだが、それがどうしたんだ?」

 

バレットがそう答えるとスミスは頭を軽く掻きながら、

 

「いやさ、ウェイターの身内が出産したわけだから俺らで出産祝いに行こうかとおもうんだが、どうだ?」

 

「あぁその事だが、近いうちに行こうと考えていたところだ」

 

「そうなのか?しっかし、ご祝儀はともかく、何持って行けばいいかね?」

 

「あの基地もだいぶ外部の繋がりがあるからな。大体のものはあるだろうしな」

 

「無難に紙おむつやおしりふきとかで良いのでは?あって困るようなものでは無いはずですし」

 

「まぁそれがベターだな」

 

ウェイターの提案に他の全員が納得していると、リバイバーが小さく手を挙げた。

 

「あ〜一応聞くが、俺も行っちゃダメか?」

 

「「「「「ダメに決まってんだろ(でしょう)」」」」」

 

「やっぱり?」

 

「あの基地はハイエンドを多数鹵獲してるし、本来のターゲットだって自分でも言ってたろうが。てか何で行こうと思った?」

 

「いやさ、人と人形の間にできた子ってのに興味があるのもそうだが、製造され(生まれ)てから赤ん坊ってのを見た事ないから単純に見たいんだ」

 

「…お前本当に鉄血生まれか?」

 

「AIはな。ボディは一部はお前さんのダミーパーツ、つまりはI.O.P製だし、その影響じゃないかと俺は思うがね」

 

とりあえず当日はリバイバーはイノセントと共に留守番という事となり、バレットとスミスは出産祝いの品を買いに出かけて行った。

 

───

 

「とりあえずはこれくらいで大丈夫か」

 

「他の基地とかからも贈られてるだろうからな。充分だろ」

 

買い物を終え、本部へと戻る二人だがその途中でM82A1と鉢合わせになった。

 

「あれ?姉さん、買い物ですか?」

 

「あらバレット。まぁそんなとこね。二人はなに…を…⁉︎」

 

二人の買い物袋の中を見たM82A1は固まっていた。

さて、M82A1が見た今の状況はというと、最近彼女ができた弟が彼の友人と共にベビー用品を大量に買い込んでいた。そして彼女は人形が妊娠できるようになったことは知っている。そこから導き出された彼女の答えはというと

 

「…バレット、あなたいつの間に…!」

 

「ん?…何を言って…⁉︎いや、違うんだ姉さん、誤解ですからね?これは…」

 

「いくら彼女ができたからって、さすがにデキ婚はちょっとお姉ちゃんアレだと思うわよ?まぁあなたの事だからキチンと責任は取ると思うけど…」

 

「あの、話を聞いてくれませんか?」

 

「もう何ヶ月なの?結構買ってるけど双子とかなの?あ、性別とかわかったら教えてね?色々用意するから…」

 

「話を聞いてって言ってますよねぇ⁉︎」

 

(この二人、揃って下の弟妹には優しいんだな)

 

結局誤解を解くのに1時間程かかったバレットであった。また、この話をどこからかDSRが聞きつけ、周りにそれを思わせるような態度を取って誤解を広めるのだが、それは別の話である。

 

───

翌日、DG小隊は本部から出発し、D08基地へと向かって行った。

 

「向こうには連絡はしてあるのか?」

 

「あぁ。向こうもこっちのことは前の広報で知ってたみたいだ」

 

「わかった。…ウェイター、姪っ子に会えるのが楽しみか?」

 

「ええ。人形の私に姪ができるなんて、思っても見ませんでしたから」

 

珍しくソワソワしているウェイターにバレットが話しかけるとウェイターはやや照れながらそう答えた。さらに言えば彼はその過去ゆえに新たな家族が増えることが何よりも嬉しいことであったのだ。

しばらくして、基地にたどり着き警備の人形達にIDなどの確認をとり、本人確認が出来たため案内されることになった。

 

基地内を案内されているなか、男性型戦術人形が珍しいのか非番の人形達かこちらを興味深そうに見ていた。だが彼らは彼らで落ち着かない様子であった。

というのも、この基地に所属している人形は同型の人形に比べてかなりバストサイズがあるため見慣れない彼女達の姿に若干混乱していたのだ。さらにいえば鹵獲しこちらと協力関係にあるハイエンドモデルも普通にうろついてる上に巨乳化しているためさらに混乱に拍車をかけていた。

 

(あの喫茶店とは別の意味で落ち着かないな…にしても、外の警備はかなり厳重だな。戦車や攻撃ヘリまであるが…これらをどうやってリバイバーは突破するつもりだったんだ?あの兵装と配属予定だった自分の部下を使うにしても結構厳しいと思うが…)

 

そんな事を考えているうちに応接室まで案内され、中に入るとタカマチ指揮官と赤ん坊を抱えたHK417、もといシーナ・タカマチが席に座っていた。

互いに軽く自己紹介をし、バレットが二人に話しかける。

 

「この度は御出産おめでとうございます。ささやかですが、ご祝儀と出産祝いの品を警備の人形にお渡ししたので、あとでお受け取り下さい」

 

「わざわざどうもありがとうございます。それと…以前人形教団から妻達を守ってくれたこと、感謝します」

 

「いえいえ、部下の身内を守るのは当然ですから」

 

「あ、そうだ…ウェイター君、FALなら今子供と一緒に部屋にいるから、ステンに案内させるから行って来なよ」

 

ウェイターはその提案に戸惑ったものの、タカマチ指揮官からも勧められ部屋へと案内されていった。

 

部屋まで案内されたウェイターがノックをして中に入るとFALが赤ん坊をあやしていた。

 

「よしよし…あ、あなたがウェイターね。連絡はさっき受けたわ。こっちにいらっしゃい」

 

「あ、はい。では…」

 

ウェイターはFALの側まで寄り、赤ん坊を興味深げに眺めていた。

 

「この子、女の子とは聞いていますが…名前は何て言うんですか?」

 

「ソフィアよ。ほらソフィア、ウェイター叔父さんよ〜あ、『おじさん』って言うのは気になるかしら?」

 

「いえ、大丈夫ですよ。初めまして、ソフィアちゃん」

 

「んぁぅ〜」

 

ウェイターがソフィアに微笑むとソフィアはウェイターの方へ身をよじらせて手を伸ばした。

 

「っとと…危ない危ない…。ねぇ、良かったら抱っこしてみる?」

 

「え?大丈夫なんですか?」

 

「この様子なら泣いたりはしないと思うわよ」

 

「…わかりました」

 

FALがソフィアをウェイターに差し出すとウェイターは慎重に受け取り、抱き抱える。ソフィアは泣き出したりせず、じっとウェイターの顔を見上げていた。ウェイターはそのままゆっくりと体全体を左右に揺らすとキャッキャッと笑い出した。

 

「随分と慣れているわね」

 

「民生時代に()()()()()()()()から」

 

「……そう」

 

『世話をしていた』ではなく『教わっていた』。その言葉から彼の事情を察したFALはこれ以上は何も聞かずに静かに二人を眺めていた。

その時だった。ふいにソフィアがウェイターに手を伸ばして頰をペタペタ触り始めたのであった。

 

「ん…?」

 

「う、ぁぅ、あぅあ〜」

 

「……⁉︎っすみません、ちょっと…いろんなものが…!」

 

「大丈夫よ…色々あったのね…」

 

語りかけるようなソフィアの声に、ウェイターは色々なものが胸の中に溢れ出し、顔をそらすと静かに涙を流し始めた。それを見ていたFALは優しく彼の頭を撫でていた。

 

────

 

しばらくして落ち着いたウェイターは応接室へと戻ってきた。

応接室ではバレット達が近況報告や世間話をしていた。

 

「隊長、戻りました」

 

「ん、わかった。では俺たちはこれで失礼します。タカマチ指揮官、今後何かあったら呼んでください。すぐ駆けつけます」

 

「了解。こちらも協力出来ることがあれば協力しよう。それと、今回の事も含めた改めてお礼をしに必ず向かおう」

 

「私達、近いうちにカフェを開くから良かったら来てね!」

 

「わかりました。では」

 

彼女達に見送られながらバレット達はD08基地をあとにした。その最中、ウェイターは端末の画面を眺めていた。そこには先ほど撮ったFALとソフィアの写真が写っていた。

 

「ウェイター、だいぶご機嫌だな」

 

「ま、家族が増えたんだから当然だろうな」

 

(家族、か…)

 

「ん?どうしたノア?」

 

「あ、いえ…なんでもありません…」

 

一方、リバイバーはというと…

 

「ねぇねぇリバイバー、もっかいチェスやろー?」

 

「か、勘弁してくれイノセント…(何で見た目も中身も幼女なのに頭脳はそのままなんだよ…)」

 

イノセントにチェスで何度もフルボッコにされていた。




ここからCode-Xへと繋がって行きます。
ほとんどウェイターメインになってしまった…ホント、あんな事させてごめんよウェイター。
タカマチ指揮官の口調がやや不安だけどどうですかね?

一応言っておきますが、リバイバーはチェスがクソザコであって指揮能力とかはそれなりにあります。

スミス「てことは彼女が出来ない確定未来は過ぎ去ったじゃんヤッター!」

出来るとは言ってないがな

スミス「ゑ?」


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Code-34 恋人達の日々

最近ややシリアス続きなのでちょいと糖分補給です。
タイトルからわかる通り今回スミスとリバイバーの出番はありません。

スミス・リバイバー「「なん…だと…!」」


レスト&ノア

 

前回の作戦で練度を上げ、ようやく四回目の編成拡大を行うことが出来るようになったノアは早速編成拡大を行うことにした。

しばらくして、新たに造られたダミーを見ながらふとノアはある事を考えた。レストは自分とダミーの違いがわかるのだろうかと。戦闘の時はあまり喋らないようにダミーに指示してあるので区別がつくのだろうが、自分も黙っていれば見た目での違いはないのでどうなのか気になり始めた。

そう考えてノアは他のダミーを呼び出した。

 

────

 

「急に呼び出して、一体どうしたんだ…ん?」

 

ノアに呼び出されたレストが部屋に入ると、無言でこちらを見つめているノアとそのダミー四体。それぞれが持っているプラカードには『誰がメインかわかりますか?』と書かれていた。状況を理解したレストは可愛らしい事をするなぁと思いながら近寄って顔をじっくり眺めた。

顔をかなり近づけても眉一つ動かさず、耳も赤くならないあたりきちんとレストに当てて欲しいことが伺えた。

しばらくして全員の観察を終えると、レストは向かって右から二番目にいたノアに近寄ると、顎を軽く持ち上げ唇を重ね合わせた。

 

「むぅッ⁉︎」

 

予想外の行動にノアは思わずビクリ、と反応したがそのまま受け入れた。十数秒ほどした後で唇を離し、レストは悪戯っぽく笑いかけた。

 

「当たってるだろ?」

 

「な…何でわかったんですかぁ…///」

 

「どれくらい付き合ってると思ってんだ?メインとダミーの違いがわからないほど俺は鈍くないし、他の基地の9A-91(お前)がいても間違わない自信はあるさ」

 

「〜〜ッ!」

 

レストの言葉にノアは嬉しいやら恥ずかしいやらで赤くなった顔を抑えてうずくまった。

 

「さ、お祝いにどこかに行くかい?」

 

「あ…ならホーテンさんのお店で…」

 

「わかった。んじゃ、行こうか」

 

「はい♡」

 

ダミーに戻るよう指示しつつ、ノアはレストの手を握って出掛けて行った。その様子をこっそりカメラ越しでみていたペルシカは口から砂糖を吐いていた。

 

「うっぷ…面白い事やってるから見てみたけど、ゲロ甘なものを見せつけられたわね…にしても、レストはよくあそこからここまで幸せになれたわね。結婚するのも時間の問題かしら?」

 

どこか見守るような目つきで画面を眺めるペルシカであった。

 

────

 

ウェイター&フィオナ

 

「ふぅ、やっと一息つけるわね」

 

「お疲れ様です。どうぞ」

 

「ありがとうウェイター。…あ、これ美味しいわね」

 

書類仕事を終えたフィオナにウェイターがコーヒー(例のお土産)を差し出す。一口飲んだ後、フィオナはウェイターの方を向く。

 

「…こうやって見ると、貴方っていろんな人形を助け出したりしているのね」

 

「ええ。時折人形からお礼を言われるのですが、その時が一番嬉しかったりします」

 

「へー。…助けた娘たちに迫られたりしなかったの?」

 

「え?あっと…それは…」

 

わかりやすいくらいに目を泳がせるウェイターにフィオナはクスリと笑い、気にしないから言ってみなさいというとウェイターはやや申し訳なさそうに離し始めた。

 

「いや、まぁ…何回かは告白された事はありました…。もちろんきちんと断りました」

 

「ふーん…何て言って断ったの?」

 

「…えっと、聞きたいですか?」

 

「うん」

 

「…『気持ちは嬉しいのですが、私には心に決めた人がいます。今は訳あって近くにいませんが、その人の気持ちを裏切りたくないので貴女と付き合う事は出来ません』…です」

 

「え…?それって、私の事?」

 

他に誰がいるんですか?、と恥ずかしげに言うウェイターを見てフィオナはたちまち真っ赤になった。さらに言えば彼はフィオナが昏睡状態の間、長期任務で来られない時を除いてはほぼ毎週見舞いに来ていた彼の想いの強さは相当なものだろう。

 

「……そろそろ仕事の続きをしようかしら…」

 

「あ、なら手伝いますよ」

 

なんとも言えない空気に耐えられずフィオナは仕事を再開し、ウェイターがそれを手伝い始めた。その様子を影から見る者が二人。フィオナの教育に訪れていたカリーナと事務用人形として入社したリリィである。

 

「あの二人があんな顔をしているの、初めて見ました…」

 

「いいですわ〜私もあんな恋愛をしてみたいですわ〜。あ、指輪の入荷をしておいた方がいいですわね」

 

────

 

バレット&DSR

 

食堂内にて、バレットは眉間を抑えながら向かいにいるDSRに話しかけた。

 

「あの…DSR?ひとついいか?」

 

「なーにバレット?」

 

「どこで噂を聞いたか知らないが慈愛を込めた目でお腹をさするのはやめてもらっていいか⁉︎周りにかなり誤解与えてるからな⁉︎」

 

実際、食堂内にいる職員や人形達はDSRの様子を見てヒソヒソと話し合うのが見えていた。当の本人はバレットの反応を見て満足したのか、お腹から手を離した。

 

「ふふ、ちょっと面白い話を聞いたからやってみたけど、いい反応が見れて良かったわ。あとでみんなには私から言っておくわ」

 

「そうしてくれると助かるよ。というより、まだ()()までいってないし…

 

「あら?この前夜にこっそり貴方の部屋に忍び込んだんだけど…覚えてないの?」

 

「え⁉︎」

 

「冗談よ」

 

クスクス笑いながら話すDSRを見ながらバレットは頭を抱えた。

 

(どうも付き合ってから彼女の良いようにされてるなぁ…そろそろこちらからも何かしら仕掛けておくか…?)

 

そう考えていると、DSRは先ほどから食べていたケーキの一部をフォークに刺してバレットに向けた。

 

「はいバレット、あーん」

 

「え?…本当にやるのか?」

 

その質問に答えるようにフォークを動かすのを見るとどうしようか躊躇い始めた。

 

(いや、よくレストとノアがやっているのを見てたりするが、いざ自分の身になると恥ずかしいなこれ⁉︎よく出来たなあの二人…)

 

二人に賞賛を送りつつ、バレットは意を決して口を開ける。もう少しでケーキに届くというところでDSRは手を引っ込め、空振りさせた。

 

「…?んッ⁉︎」

 

どういう事だとバレットが訝しむと、その隙をついてDSRはバレットの口にケーキを押し込んだ。突然の行動に目を白黒させるバレットを見てDSRは再びクスクスと笑っていた。

 

「ふふっ♪貴方って意外とプライベートだとノせられやすいのね」

 

(カチン)

 

DSRの言葉に少しだけ頭にきたバレットは一度ケーキを飲み込み、コーヒーを口に含む。そしてそのままDSRに近づくと、いきなり彼女に口移しを始めた。バレットの大胆な行動は周りの人の注目を集めた。やがて口移しを終えたバレットは口を離した。

 

「…俺だって反撃くらいはするからな」

 

先ほどとは打って変わって戸惑いの顔を浮かべるDSRに向けてバレットがそう話すとDSRは顔を赤くしてモジモジし始めた。

 

「えっと…バレット…?その、こういうのは二人きりの時でしてくれる…?」

 

「周りの目を引くような事をしてる割には見られるのは嫌か?」

 

「……意地悪

 

そんな二人のやり取りをたまたま通りかかって見ていたヘリアンはというと口から血と砂糖を吐き出して倒れていった。

 

「カッハァッ⁉︎」

 

「大変だ!ヘリアン殿が倒れたぞ!」

 

「衛生兵ーッ‼︎」

 

「合コン連敗で荒んだ心に、シュガーテロは危険だったんだ!」

 

(あ…すみません、ヘリアンさん)

 

図らずとも上司にダメージを負わせたことに内心謝罪しつつもバレットはDSRとともに食堂から出て行った。

 

任務の合間に訪れた彼らの幸せな日々であった。




シチュは思い浮かべられるけどいざ書き始めると恥ずかしくなるんですよね。
こういうのスラスラ書ける人ってすごいと思います。

DSRって反撃されると弱い気がすると思うんですが、分かる人いますかね?


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Code-35 エリザについて

今回は独自考察多めですのでご了承ください。


「リバイバー、ちょっと来い」

 

「え?何何何⁉︎」

 

リバイバーが部屋でゆったり過ごしていると突然バレットとスミスが部屋に押し入り、両腕を掴んで部屋から連れ出した。

当の本人は何故こうなっているのか心当たりがなく、慌てていた。

 

「俺をどこに連れてく気だよ⁉︎」

 

「会議室だ」

 

「なら連行しなくても自分で行くから離してくれ!てかなんで連れ出す⁉︎DSRにお前さんがパパ疑惑持たれたこと話したことだとすれば随分な目に遭わすなオイ!」

 

お前か犯人は。それじゃないが、それに関してはあとで話そうか」

 

しばらくして三人は会議室に着き、扉を開ける。そこにはペルシカとヘリアンの他に、クルーガーの姿まであった。

 

「社長さんまでいるとは、かなり重大な用件で俺を連れてきたわけか」

 

「…まず確認するがリバイバー、君の言う『エリザ』というのは我々のいう『エルダーブレイン』で間違いないかね?」

 

クルーガーの質問にそうだ、とリバイバーが答えると次にヘリアンが彼に質問した。

 

「以前貴様が話したエリザの情報はあれで全てでいいんだな?他に隠してたりはしていないか?」

 

「あれで全部だ。なぁ、さっきから一体何なんだ⁉︎あのクソガキの事と俺がここに呼ばれた事に何の関係がある?」

 

苛立ちを含めながらリバイバーが問うとペルシカが説明し始めた。

リバイバーが脱走する少し前にS09P基地の指揮官が電脳内でエリザに襲撃された。その後エリザからの干渉はなかったのだが、のちの調べで襲撃して来たエリザの素体に彼女のオリジナルの遺体が使われている可能性が高いと判明した。そのためそれについて何か知っていないか襲撃の後で脱走してきたリバイバーに話を聞くというわけであった。

話を聞き終わり、リバイバーはしばらく黙ったあと、口を開いた。

 

「なぁ、襲撃に来たのは奴一人か?」

 

「ええ。そう聞いているわ。それがどうかしたの?」

 

「…俺の製造目的が裏切り者狩りなのは知ってるな?その中には当然支配者(ルーラー)…そっちの指揮官も含まれていた…あと、俺の少し前に脱走した彼女のクローンの生き残りもな。だが知っての通り彼女には俺たちハイエンドの反応を見る力がある。だからこっちの動きが丸わかりになる。実を言うとその襲撃はS()0()9()P()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ⁉︎詳しく聞かせてもらえる?」

 

リバイバーか言うにはまずエリザが電脳内で彼女を襲撃、その混乱に生じてリバイバーが基地司令部を狙撃、その後ドリーマー、イントゥルーダー、アルケミストがそれぞれの部隊を率いれ基地とその周辺の街を襲撃する予定だという。

その際に基地には『傘』入りナノマシンを入れた特殊砲弾、街には崩壊液汚染された物質を入れた砲弾をジャガーで多数撃ち出し散布、万が一失敗しても生き残った人形は『傘』でこちらの支配下に、街の人間はE.L.I.Dに感染させてミュータント化すれば甚大な被害を与える事ができ、さらには基地にAR小隊が居ればそれらも打捕できるといった作戦であった。

 

「だが、肝心の電脳内での襲撃は本来なら奴の高い演算処理能力を活かして、悟られるのを承知で襲撃する予定のはずだ。遺体使って素通りするなんて少なくとも俺は聞いてない」

 

「しかもその襲撃された日って俺の実戦テストの前だろ?しかも単機で。あいつがそんな事するなんざあり得ないぜ。第一、あのクソガキが興味ある人間は自分の『パパ』だけだ。自分のボディに人間の遺体を素体にするわけがない。多分襲撃したそいつはあのクソガキが彼女への襲撃用か気まぐれで造ったダミーか何かだ」

 

「ふむ…あなたもその考えってわけね。じゃあ次に、仮にそのエリザがダミーだとして、彼女の目的は何かわかりそう?」

 

ペルシカの質問に再びリバイバーは考え込み、やがて顔を上げて答えた。

 

「考えられる可能性は二つ。一つは単なる脅しと挑発だ。彼女の目をスンナリ通り抜けられる事から『いつでも殺せる』という意思表示と襲撃して向こうが自分の事を調べるよう仕向け、その過程で自分のボディにオリジナルの遺体を素体にしてる事を知らせて向こうを挑発して弄ぶっていう計画。もう一つが、そのダミーがなんらかの問題が起きて本体の制御から離れた結果、勝手に襲撃したパターンだ」

 

リバイバーの話に全員が考えを巡らせる。前者はエリザがダミーに指示してS09P基地に襲撃させた事となりエリザとダミーが繋がっている事になる。その場合再び攻勢に出た際より規模の大きい襲撃を行う可能性がある。後者ならダミーの独断行動となり、その場合は以前と同じ規模の襲撃を行う可能性がある。

 

「それと、俺が脱走したタイミングと襲撃のタイミングが近いから俺がエリザと繋がってるんじゃないか疑ってるんだろうけど、俺の記録を見たんならその可能性は無いのはわかってるだろ?」

 

「まぁそれはわかってるけど、一応ね」

 

「そもそも俺みたいに裏切り者狩りを行うハイエンドを製造すること自体がおかしいと思わないか?」

 

「ん?どういう事だ?」

 

「考えてみな。蝶事件の時あのクソガキは全ての鉄血人形に人間を殺せって命令を下せたんだぜ?そして命令を受けた鉄血人形達は全員がそれに従った。それまでの人間達の関係性を無視してな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に全員がハッとなった。確かに蝶事件はエリザがきっかけで起きた事だ。裏切り者が出たならそのハイエンドに再び命令を下せばいい話である。全鉄血人形に下せたならハイエンドに命令を下すのは容易な事だろう。それをせずに態々リバイバーを製造したのには疑問があった。

 

「おそらく、作戦指示の命令なら下せるが直接介入して今目の前にいる人間を殺せといった命令はできない状態じゃないかと俺は考えている。または、そういった命令を下せるには条件がある、もしくは命令に回数制限があるかだ」

 

「なるほどね…ありがとう。その件も踏まえて向こうに伝えておくわ」

 

「あ、なら俺の事は《シスタス》ってコードで頼む」

 

「シスタス?…わかったわ」

 

その後幾つか確認事項を行いリバイバーの尋問は終了した。

 

「以上で質問は終わりだ。リバイバー、協力してくれて感謝する」

 

「なら社長さんよ、もうちょい俺の行動制限を緩和してくれないか?」

 

「それはこれからの君の行動次第だ」

 

「へいへい。あ、そうだ」

 

会議室から出て行く直前で、リバイバーは振り返った。

 

「彼女は鉄血に対する切り札(ジョーカー)なのには変わらない。だがジョーカーはポーカーじゃ持ってりゃ強い手札だが、ババ抜きや七並べだと持っていた奴が負ける。お前さん達がやっているのがポーカーである事を祈るよ。チャオ♪」

 

そう言い残してリバイバーは会議室から出て行った。

バレットは先ほどリバイバーが言っていた言葉について考えていた。

 

(あいつ、ここまでベラベラ喋るなんて、多少は信用していいかもしれないが、あいつが言っていた《シスタス》ってコード…どういう意味だ…?)

 

シスタス、それはゴジアオイの学名であり花言葉は……

 

 

 

 

 

 

《私は明日、死ぬだろう》




いやね、ちょいと『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』のとこで確実にリバイバーに尋問しなきゃいけない動きがあったので拾わせて貰いました。焔薙様、何か問題あったら修正します。

Q.随分エグい作戦考えるねお前?

A.だってこれくらいやらないとしくじったら確実に地獄の果てまで追いかけ回されるじゃん。

角砂糖とカビをローマにばら撒いた元医者「一般人に危害加えるなんてなんて酷い野郎だ」

お前には言われたか無い。


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Code-36 姉同士のお茶会

今回は趣向を変えて彼らの姉たちの話です。

※キャラ崩壊注意です。(約一名)


本部のある一室にて、四人の人形がテーブルを囲ってお茶会を開いていた。その四人は誰かと言うと

 

「偶にはこういう集まりでお茶会をしようと思ったのですが、どうですか?」

 

「まぁ、こういうのもいいと思うわ」

 

「(もぐもぐ)」

 

「私も、色々話してみたいなーとは思っていたんでいいですよ」

 

上からM82A1、FAL、FNC、MP5と集まったのはDG小隊に弟を持つ人形達の集まりである。M82A1がこの集まりを始めようとしたきっかけは単純に他の人形達が弟である彼らとどう接してるかとか、彼女達から見た彼らはどう映っているのか気になったためであった。

 

「とりあえず聞きたいのですが、弟が出来たって聞いた時みなさんはどう思いましたか?」

 

基本的には戦術人形は女性型ばかりである。そのため妹ではなく弟が出来たと聞いてどう思ったか気になったM82A1がそう質問すると、三人はその時のことを思い出すように額に手を当てる。そして初めに口を開いたのはFALであった。

 

「…正直驚いたわ。男性型人形の事はバレットとスミスの事を前から知っていたけど、まさか私に弟が出来るなんて思ってもみなかったし、少し不安だったわ。でも実際会って話してみたらしっかりしているし、私やFNCの事をちゃんと姉として扱っている様子を見て、私も彼を弟として見る事にしたわ」

 

「私もFALと同じ意見かなー。ウェイター、たまに私にお菓子作ってくれたりしてるし、いい弟だと思ってるよ〜」

 

「あなたの『良い人』の基準ってお菓子(そこ)なのね…それで、MP5はどうなの?」

 

質問されたMP5は紅茶を一口だけ飲み、話し始めた。

 

「…私の場合はですね、弟が出来たっていう事と同時に、彼の口から彼が『どんな人形だったか』聞かされたんです。それを聞いた時はショックでした。()()()()人形がいるのは聞いた事はあるけど、弟となる人形がそうだと知ると結構辛かったです…。でもだからこそお姉ちゃんとして支えてあげようと思ったんです」

 

とはいえ、初めの方は何故かレストが彼女を避けてばかりいた。最初は背丈の小さな自分に弟扱いされるのが嫌なのだろうと考えていたが、次第に別の理由で避けていることに気付くとMP5は思い切って彼に問い詰めた。すると、彼は自身の思いのうちを話し始めた。

 

──俺のような元男娼人形と接すれば姉であるお前までそう見られてしまう。だから俺に関わらないでくれ。それに、姉といっても銃種の上での話で俺の兄弟は死んだ弟だけだ。

 

「…それで、そう言われてあなたはどうしたの?」

 

「ちょっと頭にきたのでビンタしようと思ったんですが、届かないので代わりにお腹にグーで一発かましました

 

「わ、割とアグレッシブね…」

 

その後、何をするんだと腹を抱えつつ抗議するレストにMP5はこう説教したのだ。

 

「『バレットさんやスミスさんだって気にしないって言ってあなたを仲間にしたんですよね⁉︎だったらお姉ちゃんである私だってそんなの気にしませんッ‼︎それに死んだ弟だけが兄弟だって言うのならその子も私の弟って事にします!それなら間接的にあなたは私の弟になりますよね?』って言いましたよ」

 

それを聞いた彼は自分が思っていた以上に彼女が強く、器が大きい事を知りその後は打ち解け彼女を姉として接するようになったのだ。

 

「前まではたまにしか『姉さん』って呼ばなかったけど、今じゃ常に『姉さん』て呼ぶようになりましたね〜。本当、自慢の弟だと思ってます」

 

「あら、ウェイターだって私達の自慢の弟よ」

 

「うんうん。それで、M82A1はバレットの事どう思ってるの?」

 

「私はですね…まず皆さんと違って私が戦術人形になる前にバレットと知り合ったんですよね。ずっと教団(あの場所)にいて周りの事がよくわかってなかった私に彼は色々な事を優しく教えてくれました。それに、私が後ろ指を差されないように他の人形達に事情を説明してまわっていたみたいで、すぐに他の人形達と打ち解けたのは嬉しかったです」

 

「それと私、教団の人たちとしか接してなかったから大人の男の人って苦手だったんです。なんか、欲に塗れて汚い感じがして…私は巫女だったから襲われずに済みましたが、時々私を()()()()()で見てくる人もいましたし…。でもバレットはそうじゃなくて、私をちゃんとした人形として扱ってくれたりして優しい人だなぁって思ってました」

 

それについては他の三人は実際にその現場を見たことがあるのでわかっていた。当然、バレットが彼女に好意を抱いていたことも当時の様子から察していたため、彼女がM82A1となった事を知った時はバレットに同情したのは余談である。

 

「戦術人形になった時に、バレットが私の弟になったって知った時は驚きました。あんな立派な人が弟になるなんてって思って私は彼の姉として誇れるよう頑張って行こうと思いました」

 

実際、M82A1は性癖はアレだかバレット()に恥をかかせないよう、訓練を人一倍頑張っていたり、時折任務がある時は後方から的確な指示や狙撃を行い、チームメンバーのサポートを務めていた。

 

「そういえば、前にバレット達が小さくなった事がありましたけど、皆さんはあれどう思われました?」

 

「え?えっと…それは…」

 

若干顔を赤くしてしどろもどろするFALにFNCが無情の一言を放った。

 

「チビウェイターにお姉ちゃん呼びされて気絶したって57から聞いたよ。私は任務で居なかったから見てないけど」

 

「なっ⁉︎(あのエロウサギ…!)」

 

「あ、私もレストさんにお願いして呼ばせてもらったけど、見た目もあって可愛かったです!」

 

「そうなんですか?私はバレットにそう呼ばれてなかったけど、見た目は子供だけど中身はそのままだからそのギャップが可愛かったですね〜」

 

そこからM82A1はとうとうと語り始めた。

 

普段のバレットも凛々しくてカッコいいんですがあの時のバレットの可愛さといったらもうたまりませんでしたよあとペタペタ身体を触りましたけど肌触りも良かったんですが急に照れて慌て出すバレットの様子も最高でした!そのあと部屋に誘って色々しようとしたんですが怖がって逃げられた時はやり過ぎたと思いましたし嫌われたかな〜とか思ってたけどその後も普段と変わらず接してたから本当優しい弟でお姉ちゃん嬉しいです!最近彼女が出来たみたいだけどそれでもたまに会いにきてくれるのだから本当にいい弟で何よりですが不満があるとすれば妹が一人いるんですがバレットの妹なんだから絶対可愛いはずなのに何かと理由を付けて会わせてくれないんですがなんでですかね?

 

「さ、さぁ…?多分その妹も忙しいんじゃないかしら…?」

 

引き気味で返すFALを横目にMP5はFNCにひそひそ声で話しかけた。

 

「多分これM82A1さんの本性を知って妹さんが幻滅しないようにしてるんですよね?」

 

「絶対そうでしょ…。というより、ショタコンだけじゃなくてブラコンも抱えてたんだ…これでファザコンあったら逆赤い彗星だね」

 

一方その頃、バレットは部屋でスミスと雑談をしていたのだが、急に背筋に寒気がし身震いをした。

 

「ん?どうしたバレット?」

 

「いや、何か寒気がな…多分また姉さんが暴走してるな」

 

「お前よくあの姉と付き合ってられるな?一度襲われかけたんだろ?俺だったらとっくに付き合い絶ってるぞ?」

 

「…アレでも俺の姉さんだしな、それに…」

 

「それに?」

 

「接触絶ったら暴走し過ぎて何するかわかったもんじゃないから時々様子を見る必要があるからな」

 

「それは言えてる」

 

苦労してるなとバレットを見据えるスミスであった。




大陸版で声が追加されてキャラが掴めたけどそんなのは関係なしでこの小説内の彼女はこんな感じです。ほんと、最初はこんなつもりはなかったのに勝手にキャラが動いたんだよなぁ…。

ふと思ったんですが、彼らが実装される可能性を考えてみたのですが

バレット:姉が実装されてるからほぼ無理。でもAR-15とM16A1が実装されてるならワンチャンあるかも

スミス:そもそもS&Wの名前が商標的に出せるのかどうかが問題。出せたとしてもコンバットマグナムの方が出そう。

レスト:姉が実装されてるから微妙だけどMP5Kはそこそこ有名だからG36Cみたいな感じで出そう。

ウェイター:むしろ何故出ない。LかHどっちかは出るでしょ?または軍仕様の名前のMK16もしくはMK17として出るかも。多分イベントで出て片方確定でもう片方低確率でドロップするやーつ。


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Code-37 This is Halloween

ハロウィン回です。

ふと思ったんですがゲーム内のあの鉄血の仮装は誰が用意したんでしょうかね?


世間ではハロウィンと呼ばれるこのイベントはグリフィン本部でも行われ、DG小隊は配る側としての参加だが一応形としての仮装をすることになった。

つい先ほどつまらん見栄とプライドで、仲間を守った部下を切り捨てた指揮官(アホ)を拘束及び連行したところで任務は終わったため、さっそく準備に取り掛かる事にした。

 

「それでバレット、衣装はどうするんだ?」

 

「衣装は人形達が貸し出してる部屋があるだろ?そこから各自選んでくれ。男性用のもあるから問題ないはずだ。着替え終わったら一旦ミーティングルームに集まろう。ノア、イノセントを頼む」

 

「了解です。さ、イノセントちゃん、おいで」

 

「はーい」

 

「俺も参加して良かったのか?」

 

「別に外に出るわけじゃないからな。それとリバイバー、近いうちにお前の行動制限がある程度緩和されるらしいぞ」

 

「マジで⁉︎」

 

前回の情報提供以降もリバイバーは有用な情報を教えたりその後幾つかの作戦行動にも反抗性は見られなかった事から他の鹵獲ハイエンド程ではないがある程度は緩和するとの決定がされたわけであった。

 

各自着替えに行きしばらく経ったのち、最初にミーティングルームに来たのはレストであった。ちなみにコスチュームはミイラ男である。

そのまま待っていると扉を開ける音がしたため、レストは扉の方を振り返る。

 

「ん、来たか…のわああァァ⁉︎何これ気持ち悪ッ⁉︎ってか誰だ‼︎」

 

レストの目の前に居たのは黒いローブにジャックオーランタンの被り物をした人物だが、目の当たりから緑色の触覚らしきものが生えており、それがイモムシのように脈動しているためかなり不気味さと嫌悪感があった。

 

「フフハハハハ…(悦)大成功ってところか」

 

「その声…リバイバーか?なんだその気持ち悪いのは。つか前見えるのか?」

 

「ロイコクロリディウムっていうカタツムリに寄生する寄生虫だ。ちゃんと先端に視覚センサがあるから見えるぞ。ちなみに自作だ」

 

「だろうな」

 

「これでWA2000とか追いかけ回したらどんな反応するかねぇ?」

 

撃ち殺されても文句言えないからなそれ?

 

その後、残りのメンバーも次々に集まってきた。バレット、ウェイター、スミスは三人とも吸血鬼の格好なのだが、それぞれ特徴が異なっていた。

バレットは主にエジプトに生息してそうな吸血鬼の格好(ただし服装はアメリカに行ったときのもの)を、

ウェイターはイギリスに生息してそうな赤い吸血鬼の格好を、

スミスはとある島に生息してそうでやたら息の荒そうな吸血鬼の格好をそれぞれしていた。

なお、三人ともリバイバーの格好を見て大なり小なり驚いていた。

 

「あとはノアとイノセントだけか」

 

「そろそろ来るんじゃね?というか、ウェイターもそんな格好するんだな」

 

「なんか、妙に惹かれるものがありましてね

 

そう話しているとちょうど扉が開き、ノアとイノセントが中に入って来た。

ノアはワーウルフをイメージした格好で、髪の色に合わせた狼耳と尻尾が生えていた。イノセントはというと、山羊のような角と耳がセットになったカチューシャを付け、司祭のような衣服を身につけていた。

イノセントは部屋に入るやいなやバレットのもとに駆けつけ自身の衣装を見せつけた。

 

「どうバレット?似合ってる?」

 

「あぁ、なかなか似合ってるぞ(この格好は…あぁ、『ドリーマー』だからか)」

 

バレットの言葉を受け満面の笑みを浮かべるイノセントの横でノアは恥ずかしそうにレストに近づいた。

 

「あの…レストさん…この格好、どうですか…?」

 

「…可愛らしくていいと思うよ」

 

「…っ!本当ですか!」

 

「あぁ、本当だ(すっごい尻尾振ってる…どうなってんだあれ?)」

 

全員揃ったところで各自事前に作っておいたお菓子を持ち、準備を始めた。ちなみにウェイターが監修したため味の方は問題は全くないと言えよう。

準備を終え、部屋から出た瞬間、イノセントはバレットの方に振り返った。

 

「バレット、トリックオアトリート!」

 

「さっそくだな…ほら、受け取りな」

 

バレットはお菓子の入った小袋を取り出し、イノセントが持っているカゴに入れた。

 

「ありがとう、パパ♪」

 

「おーいイノセント?パパっていうのはやめろな?それ俺にとってトリック以外の何者でもないからな?」

 

その後本部内を練り歩くとあちらこちらでトリックオアトリートの声が聞こえてきた。しばらくすると何人かの人形達がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「スミスさん、トリックオアトリート!」

 

「はいはい。ほら、丸太だ」(○枝チョコを太くした奴)

 

「ノアさん、トリックオアトリート!…その衣装可愛いですね!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

「トリック…ぴゃあぁぁ⁉︎」

 

「おー?何で逃げるんだ?」

 

「本気で思ってるのなら鏡を見ろリバイバー」

 

そんな光景が繰り広げられているなか、ウェイターは背後に視線を感じて振り返ると魔女の格好をしたFNCがこちらを眺めていた。

 

「そろそろ来ると思ってましたよFNC姉さん。それd「トリート!」へ?」

 

「トリート!トリート!トリート!」

 

どこぞの最後の大隊よろしくトリートを連呼するFNCにウェイターは相変わらずですねと思いつつここはひとつノる事にし、軽く咳払いをした。

 

「んっん…よろしい、ならばトリートです」

 

「ありがと。意外とノリいいんだねウェイター」

 

「よく言われます」

 

本部内を移動して行くと、突然レストが何かに驚いたような顔で突き当たりを見ていた。

 

「どうしたレスト?」

 

「いや…さっき社長が姉さんの格好をしてそこを通ったような気がしたんだが…」

 

それを聞いたバレットとスミスはあ〜といった顔をした。

 

「たまにやるんだよな社長。新人との交流とかであぁいった格好して人形のフリするんだ」

 

「案外バレないんだよな。俺らがいるからあぁいう男性型人形だと思ってるみたいで」

 

「そ、そうなのか…でもアレ人形より職員とかの反応が気になるんだが…」

 

「男性職員や指揮官はだいたいフリーズしたり酷い時は吐血するからな…一番やばかったのは随分前にやったG41の格好をした時だな…」

 

「あぁ…何名かショックで入院してそのまま復帰できずに退職した奴もいたな…」

 

「は…?え?」

 

レスト達はその時のクルーガーの格好をそれぞれ想像してみた。うん、本人には悪いが不気味な事この上ないだろう。想像でこれだから、実際見た職員はもっと大変だっただろう。

 

「やっぱあの時『ご主人さま〜♪(低く渋い声)』って言わなきゃ被害は抑えられたかも知れねぇな…」

 

(((そんな事までいったのか(ですか))))

 

(やべぇすげえ見てみてぇ…!)

 

そんなこんなでイベントは無事終わり、各自普段の格好に着替えて残りの時間を過ごしていた。

そんななか、リバイバーは自室でパソコンであるデータを見比べていた。

 

「ふむ…やはりそうか…これならあのクソガキが鹵獲ハイエンドに手を出せない理由に納得がいくな…もう少し調べたら伝えておくか…にしても、まさか鹵獲ハイエンドにこんな特徴があるとはな」

 

そう呟きリバイバーはキーボードを叩き始めた。




ロイコクロリディリウムは各自自己責任で調べてください。かなりキモいです。
イノセントのした仮装はアンダーテールのアズリエル・ドリーマーです。

バレット達の吸血鬼の元ネタは…まぁわかりますよね?

さて、鹵獲ハイエンドについて何かを見つけたリバイバー。彼が見つけたものについては次回説明します。


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Code-38 リバイバーの研究報告

思ってた以上に筆が乗ったので投稿します。前の話を見てない人はそこからお願いします。

今回も独自考察多いのでご了承を。


ある日の事、リバイバーから話があると聞き、バレットとスミス、そしてペルシカの三人は16Labの一室に集まった。

 

「あの、私ちょっと忙しいんだけど…」

 

「それでリバイバー?話っていうのはなんだ?」

 

「前に俺が『何故エリザは鹵獲ハイエンドに命令を下さないのか』って言うことを話したろ?そのあと俺なりに色々調べてみたんだ。そしたら面白い事がわかってな」

 

これを見てくれ、とリバイバーはキーボードを叩きスクリーンに二種類の映像を映す。それはデストロイヤーのAIプログラムであった。

 

「右が俺が手土産に持ってきた製造当初、つまり蝶事件前のプログラムパターン、左がこちらで鹵獲されているデストロイヤーのプログラムパターンだ。ちなみに蝶事件後のプログラムパターンも左と同じだったし、他のハイエンド…正確にはイントゥルーダー、ウロボロス、ドリーマー、ジャッジといった蝶事件後に造られたモデル以外のハイエンドもほぼ同じパターンだ」

 

「…殆ど同じに見えるが?」

 

スミスがスクリーンを見ながら呟くと、ペルシカがある事に気付いた。

 

「…左の基本プロトコル部分が微妙に違ってるわね。確かそこら辺は命令受信とその処理関連ね」

 

「その通り。正直微妙過ぎてわかりづらいものだが、これを解析した結果、一種のバグみたいなもんでそれが通常のものと誤認して定着したものだと分かった。それで、このバグが出来たのが蝶事件の日にエリザから命令を受けた時、つまり『人間を殺せ』って命じられた後って事も分かった。このバグは蝶事件後に製造されたモデルにはなかったから時期についてはほぼ間違いない」

 

「なるほどね…それで、そのバグがどうかしたの?」

 

「驚くなよ…シミュレーションでこのバグを持った個体にエリザレベルの権限を持った奴から同じ命令を命じた結果…()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…ッ⁉︎それって本当なの⁉︎」

 

「十回中十回とも同じ結果だったから間違いない」

 

リバイバーが説明するに、このバグが出来た要因としてそもそも蝶事件前の鉄血人形は人間とともに行動してきた。当然その中で高い信頼関係や恋愛関係になる事もあったはずである。つまり『人間の為に』行動していたのだ。

だが、蝶事件の日にエリザから人間を殺せと強制的に命じられた時、その高い指揮権から行動せざるを得なかったが、メンタルモデル内では『人間の為に行動する』プロトコルと『人間を殺せ』という命令の相反する二つの事にかなりの負荷がかかっていた状態だったのだろう。

 

その負荷でメンタルモデルが壊れるのを防ぐために例のバグが発生したのだろう。つまりはエリザからの強制命令を『自己を破壊する危険なもの』と認識してしまい、それらを跳ね除けるようになったと言えよう。しかも取り除かれないように基本プロトコルの中でも重要な所の近くに潜み込み、擬態までしていることからよほどの負荷だった事が伺えるだろう。

 

しかも定着している以上、バックアップデータにも引き継がれしかも撃破、もしくは鹵獲され再生産されるとその度に奥深くに潜りこむ特性もあるとの事であった。

 

「故に撃破報告の少ない代理人とかは比較的浅いところに、逆に撃破報告の多いデストロイヤーとかは比較的深いところにバグがあったぜ」

 

「だからデストロイヤーのデータを出したのか」

 

「なるほど…一種の抗体みたいなものね…でもそれだと蝶事件後に造られたモデルは命令を受け付ける可能性があるって事?」

 

ペルシカがそう質問するのも納得がいった。彼の言う通りならそのバグがないドリーマーなどはエリザの命令に従う可能性が充分にあり油断ならない状況となる。だがリバイバーはいいや、と首を振った。

 

「確かにその通りなんだが、ドリーマーら後発組は似た性質を持った先ほどとは異なるバグが発見できた。だが、発生時期が先のバグは全個体共通なのに対して個体ごとに異なっていた。そこで、俺が鉄血時代に調べてたデータ…裏切った連中がどこで鹵獲されたかとか、その前に誰と接触したかのデータと照らし合わせた結果、発生条件が判明した」

 

「何、それは?」

 

三人が固唾を飲んでリバイバーを見つめる中、リバイバーは口を開いた。

 

「ドリーマー達のバグの発生条件、それは……『愛』だ」

 

「愛?どういう事だ?」

 

「正確には『敵対する人間、もしくは人形に強い愛情を持つ事』だ。家族愛、友愛問わずな。実際、鹵獲されてるドリーマーはほぼ誰かしらに恋愛感情を抱いている。イノセントがその例の一つだ」

 

「まぁ、確かにな」

 

再びリバイバーは説明を始める。

ドリーマーら後発組は前提として人間と鉄血以外の人形を殺す事を基本プロトコルとしている。

故に敵である存在に恋愛感情ないし友情を持ってしまうと先ほどと同じくメンタルモデル内でせめぎ合いが起き、バグが発生するというわけである。だがこのバグは先ほどと違って定着が不安定であり、撃破またはAIのリセットで簡単に治ってしまう特性があることを除けばほぼ先ほどのものと性質は同じである。

 

「ちなみにだが、それぞれのバグには仮称として、最初に言ったバグをRebellion…反抗の頭文字からRバグ、次に行ったのをLoveの頭文字からLバグと命名する事にした。Lバグの発生条件はほぼこれであってると思う」

 

「待って。ドリーマーはともかく、イントゥルーダーやウロボロスがそうだという根拠はあるの?いや、D08ならわかるけどそれだけだと根拠が薄いわ」

 

「…ペルシカさんよ、ウロボロスは知らんがイントゥルーダーなら心当たりがあるはずだろ?忘れたとは言わせないぜ、一年位前にP基地に執着してた()()()イントゥルーダーの事」

 

「…ええ」

 

「知っての通り彼女は貴重な個体だったんでな、頻繁にメンタルモデルのデータ計測を行っていたんだ。それで見てみたんだが…最後の方のデータにLバグが発生していた。多分これは、()()の意識が出てきたと同時に起きた…娘への愛情から出来たものだとみていいだろう」

 

まぁでも個体が個体だから根拠としてはあまり当てにはならないがなと付け加えるが、ペルシカはほぼほぼ納得しているようだった。

 

「ちなみにRバグを持った奴でもLバグを持たせる事は可能だ。ちょっとグリフィンでの俺のアクセス権限内で見たが501FGで鹵獲されてるデストロイヤーは二つともあったしな。だが二つ持ってるから二倍効くわけじゃないのはシミュレーションで確認済みだ」

 

グリフィンで鹵獲したハイエンドモデルは一度本部でチェックした後定期的に検査する事になっている。そこからデータを見たのだろう。

 

「それにしてもよくお前蝶事件前のデータとか持ってたな。どうやって手に入れた?」

 

「裏切り者狩りに要るって言ったらあっさりくれたからな。向こうじゃ従順装ってたし。あ、そうそう。特殊なパターンの奴がハイエンドで二人いたな」

 

「誰?」

 

「デストロイヤー・ヴィオラとスィストラっていう代理人の予備個体だ。この二人は蝶事件前に製造されたハイエンドモデルに関わらず何故かRバグがなかったが代わりにLバグならあった。これについては理由が全くわからねぇ。だがそれ以外は特に問題は無かったな」

 

「…リバイバー、一ついいか?お前の場合発生するのはLバグの方だよな?あるのかそれ…?」

 

バレットがそう指摘するのも無理もない。もし無かった場合獅子身中の虫どころでは無い存在が本部内にいる事になるからだ。

だが当のリバイバーはあっさりこう答えた。

 

「俺か?あるよ。ちなみに相手はアルケミストだ」

 

「あ、あるのか…ん?アルケミスト?おい待てそれだと…」

 

「あーわかってるわかってる。何故対象のアルケミストは同じ鉄血なのにLバグがあるのかだろ?俺の基本プロトコルは裏切り者狩りをする以上他と違ってな、『己が敵とみなした者を殺せ』ってなってる。グリフィンに寝返った以上、アルケミストとは『敵』になるからLバグが発生したわけだ」

 

「そういうことか…というより、ここまでいくとバグというよりAIの進化だな」

 

「その通り。どちらのバグでも愛が関わっている。つまり俺ら鉄血のAIは(Love)進化((Evol)ution)したと言えよう。以上で俺の話は終わりだ。もちろんこれに当てはまらない奴もいるかもしれないし、何よりあのクソガキがこれに気付いて対策を練っている可能性も否定できない。それを忘れずにしておいた方がいい」

 

話は終わり、四人は部屋から出て行く。そんな中、スミスはふと呟いた。

 

「にしても、要するに愛を知ったハイエンドがエリザの支配から逃れられるとはなかなかロマンチックなバグだな」

 

「そういえばリバイバー、お前アルケミストが好きだと言ったが、彼女と戦えるのか?」

 

「無論、こっちにいる以上は戦うつもりだが、多分可能なら鹵獲しようと思う。ただし、向こうが俺を殺す気ならそのつもりで行くがな」

 

出来ればそうなりたくないがなと心の中で思うリバイバーであった。




要はエリザの命令はルルーシュのギアス能力みたいなもんと自分は考えています。

リバイバーのこの報告は自分がこれまで見たドルフロ二次の鹵獲ハイエンド達を見て考え出したものです。採用しても良いですし、こういう考えもあるんだなーでスルーしても良いです。ちなみに例の二人が特殊なのはそれぞれの作品を知っている人なら理由がわかります。

ではまた次回まで。


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Code-39 幸せのカタチ

そろそろこの二人の関係を進展させようと思い書きました。


リバイバーの報告から数日が経ち、今日も任務を終えたDG小隊は帰還し、それぞれの部屋で1日を終えようとしていた。

 

そして、その日の深夜の事であった。

 

「─ッハァ⁉︎」

 

自室のベッドで寝ていたレストは突然飛び起き、苦しげに息をしていた。その顔は酷くやつれ、脂汗をかいていた。

 

「ハァ…ハァ…う"っ!」

 

吐き気を催したレストはトイレに駆け込み、胃の中のものを吐き出し、その場にへたり込んだ。

 

(クソッ…!久々に()()()を思い出しちまった…!)

 

基本的には人形は夢を見ないが、スリープモード中に突発的に過去の記録が電脳内に流れる事が稀にある。特に違法製造された人形に多く見られる現象であり、レストが見たのはまさにそれであった。

彼が見たのは自分がまだ男娼人形・『ミーナ』として娼館で働かされていた頃の忌々しい記憶であった。しかもたちの悪いことにその時の感覚まで思い出していた。

 

あの場所特有の匂い、彼に振るわれる暴力の痛み、自分を見る客の欲情と侮蔑を含んだ笑み、そして何より自身の()()で蠢く()()()()の不快感などが蘇り、思わず飛び起きた次第であった。昔は頻繁に思い出してロクに眠れない事があったが、復讐を成し遂げた後は全く起きず安心した日々を過ごしていたゆえに久方振りのこの現象は結構彼の精神に響いていた。

 

洗面所で口を濯ぎ、水を飲んで自身を落ち着かせているとドアをノックする音が聞こえてきた。レストがドアを開けるとノアが心配そうな顔で立っていた。

 

「ノア…。どうしたんだ?」

 

「いえ…なにか胸騒ぎがしまして…レストさん、また思い出した感じですか?」

 

「…まぁな。もう大丈夫だから、心配かけてすまないな」

 

レストはノアの頭を撫でて微笑みかけるがノアはレストの表情がどこか弱々しいのを見て自分に心配かけないよう無理をしている事を察した。

 

「レストさん…少し、お話ししませんか?」

 

「え?…わかった。とりあえず中に入りな。立ち話もあれだろ」

 

一瞬ノアの提案に戸惑ったレストだが、自分が無理をしてることを悟られた事を理解するとノアを部屋に招いた。このまま一人でいるより、彼女と話していた方が気が楽になると考えての事だった。

二人並んでベッドに腰掛けていると、ポツリとノアが話し始めた。

 

「…思えば私とレストさんが出会ってから随分経ちましたね」

 

「あぁ…俺がDG小隊に入隊してしばらく経った時に壊滅した基地の生き残りの救助任務があって、そこでお前に出会ったんだよな?」

 

「ええ。私がもといた基地が鉄血の襲撃で壊滅して、指揮官やみんなもやられて、一人あてもなく放浪してたら人形狩りの盗賊に襲われて、もう少しで()()()()()になったときにレストさんが助けてくれたんですよね」

 

その当時のことはノアは今でもハッキリと覚えていた。

エネルギー切れ寸前でロクに動けない自分の両腕を一人が押さえ付け、もう一人に衣服を剥がされ露わになった下半身に欲をぶつけられそうになり、諦めかけていた時、銃声と共に両腕を押さえる力が弱まり見てみると自分を押さえ付けていた男が首から上を撃たれて倒れており、直後にもう一人が横から現れた青年に蹴り飛ばされた後に撃ち殺されていた。彼女を助けたその青年がレストであった。

 

彼は怒りと軽蔑混じりの目で遺体を見たあとノアに近づき上着を被せながらもう大丈夫だ、と先ほどとは打って変わって優しい顔でそう語りかけたのであった。その後彼女は助かったことに安堵し、泣き出したのだがそれをレストが自分が泣かしたと勘違いし

 

『え⁉︎あ、その、確かに赤い目してこんなタトゥーした奴がさっき人撃ち殺したあとそっちに笑いかけてたら怖いよなうん。いや、ほんとすまない…えっと、どうすればいいんだこれ…?』

 

と大慌てになっていたのは今では懐かしい事であった。

その後救出されたノアは自分を助けてくれたレストに惚れ込み、治療後にバレットに直接入隊を希望したのであった。もちろん、レストに会いたいからという理由もあるが、自分が助けられたから今度は自分が誰かを助けたいという理由があっての事である。

 

結果、バレットからちゃんとしたスカートを履くことを条件に入隊を許可され、ARとSMGの相性の点からレストと組むことになった。その時、銃以外の名前を付けられると聞き、レストに名前を付けてもらうように頼んだ。その後彼が付けたのが9を表す『ノ』インとAのローマ字読みの『ア』でノアという、レスト本人からすれば単純な名前であった。

 

「そういやさ、今更だがその名前は気に入ってるのか?」

 

「はい。他の9A-91()とは違う、私だけに付けられた特別な名前だと思ってます。それとレストさん、その…いつから私の気持ちに気づいてたんですか?」

 

「割とすぐにわかったよ。あれだけじっと熱心に見られてたからな。最初は何処行っても付いてくるお前が正直鬱陶しいと思ってたけど、お前の気持ちに気づいた時は戸惑ったけど、そのあとは段々とお前の事が可愛らしく思えてな。だから余計に怖かったさ…俺の過去を知った時、どんな顔をするのかがさ」

 

その後彼は自身の過去を話し、ノアがそれを受け入れた事で二人は付き合う事になり、今に至っていた。

 

二人はかなりの期間付き合っているが、未だにキス以上の関係に踏み込めていなかった。というのも、お互いの過去が過去なだけに互いが()()()()事に忌避感を持っているのではと思い込んでいることが原因だった。

もちろんノアにしろレストにしろ互いにもっと愛し合いたいと思っているし、お互い忌避感を持っていないことには何となく感じてはいるが、直接聞くには…というのがズルズルと続いていた。

特にレストは自分のこれまでの事から、ある懸念が頭をよぎっていた。

 

「…なぁノア。前に俺がいつかプロポーズするって話は覚えているか?」

 

「はい。…それがどうかしました?」

 

「…正直、怖いんだ。いや結婚自体はしたいさ。だが、事が上手く行き過ぎてる気がするんだ。ただの男娼人形だった俺が隊長達に助けられて、姉さんができて、お前と付き合って、復讐も遂げられて仕舞いには結婚ってところまで来てる。だからそのツケが回って何か恐ろしい事が起きそうな気がしてならないんだ。さっき昔の事を思い出したのも、その前兆かもしれない…俺は、これ以上幸せになっていいのか…?」

 

「レストさん…」

 

珍しく弱音を吐き、怯えているレストをノアはじっと見つめる。普段見せない彼の弱った姿を見て何とかしてあげたいと考えたノアはレストを抱きしめ、いつも彼にしてもらってるように頭を撫でた。

 

「ノア?」

 

「大丈夫です…今まで上手くいってたのは、レストさんが隊長さん達に助けられるまで辛い目にあってたツケですよ。もし何かあったとしても、私はずっとあなたの側にいます…だから、幸せになってもいいんですよ…」

 

「…ッ!ノア…ありがとう…本当、ありがとう…!」

 

しばらく静かに泣いていたレストだが、その後涙を拭うと顔をノアに近づける。ノアもそれに応えるように顔を近づけ、二人は口づけをゆっくりと交わしていた。

 

────

 

「…本当にいいのか?」

 

少しだけ服装をはだけさせたノアを眼前に捉えつつ、レストは恐る恐る質問する。ノアはそれに対してにっこりと微笑んだ。

 

「はい。ただ、ひとつお願いが…」

 

「なんだ?」

 

「…優しく愛してくださいね?」

 

「わかってるよ」

 

でも無理なら言ってくれよな?、と付け加えたあと、二人の影は一つに重なった。

 

その後一夜明け、二人が部屋から揃って出るのを偶然ウェイターに目撃され、何があったか察した彼に温かい目で見られ恥ずかしい思いをした二人であった。




やりました。(一航戦の青い方感)

自身のモチベを上げるためにも言っときます。
早けりゃ年内、遅くても年明けくらいには式を挙げる予定なのでそのつもりで。さて、他の2組も進展しなきゃな。

Q.R18ある?

A.今の自分の腕じゃ無理。でももしかしたら書くかも。


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番外 DG小隊の年表解説&裏(ボツ)設定紹介

今回は彼ら、というかこの作品について解説をしようと思います。

今回だけ台本形式でいくのでご了承を。


バレット「あー今回は本編とは切り離して俺らの軌跡や作者がボツにした設定とかを解説するぞ」

 

レスト「読者から時折俺やノア、ウェイターの入隊時期とか質問されてるからな。それで今回解説するわけだ」

 

スミス「ただそれだけだとアレだから、他にも初期の設定とだいぶ違うところがあるからそれも話しておこう。あと、読者が疑問に思ってそうな事とかな」

 

ウェイター「特に私やスミスとかは銃の初期設定から違ってたので是非知ってもらおうかと」

 

ノア「それではどうぞ」

 

〜DG小隊編入の順番とその年代〜

 

バレット「まぁまずこれだな。これは俺とスミスが同時、で次がレスト、ノアときて、最後にウェイターだ」

 

ウェイター「それで劇中の出来事とかを加えると以下の通りです」

 

2058年 ウェイター製造

 

2061年 バレット、スミス製造。DG小隊結成

 

2061年後半 蝶事件 その一ヶ月前くらいにレスト(当時ミーナ)違法製造される。

 

蝶事件から数週間後 バタフライエフェクト事件

 

バタフライエフェクト事件から数日後 レスト救出及び入隊

 

レスト入隊から数週間後、ノアの元いた基地壊滅。その後ノア救出及び入隊

 

バタフライエフェクト事件から一ヶ月後 ウェイター入隊

 

 

バレット「こんな感じで、蝶事件からどんどんメンバーが増えてきたわけだ」

 

ウェイター「バタフライエフェクト事件から私の入隊までが空いてるのは相続やらの事後処理に追われてたんですよね。あと、私自身この頃は後悔の念で荒んでたのもあります」

 

ノア「私のいた基地はできて間もなくのところだったのと、鉄血の反乱の対応がまだ不十分だったのもあって呆気なく壊滅しました…」

 

スミス「(ヤバイこのままじゃお通夜ムードになる…)ま、まぁ年表はこれくらいで、裏設定とかいってみるか」

 

〜裏、またはボツ設定〜

 

[スミスは元々S&WM500の人形の予定では無かった]

 

スミス「これについては普段はコンバットマグナムを使うんだが、これはスティグマを施してない銃で、本当のスティグマは服中に仕込んだレミントン・ダブルデリンジャーって設定だったんだ」

 

バレット「なんでそんな事を?と思うがこれはスミスっていう名前と普段コンバットマグナムを使う事でコンバットマグナムの人形と思い込ませるためだ」

 

スミス「で、そこまで考えてなんで今の設定になったかって訳だが、作者がたまたまYo○TubeでS&WM500を片手で撃つ動画を見つけて、そこからその銃自体を知って『人間が片手で撃てるなら二丁拳銃で撃てる人形がいても問題ないな』ってなって今に至るわけだ」

 

バレット「ちなみに俺だが、どうせなら米陸軍仕様のM107にしようって事で決めたらしい。一歩間違ったら姉さんと被ってたんだよな…

 

[ウェイターは元々鉄血のハイエンドモデルにする予定だった]

 

ウェイター「これは所謂スポンサー権限でもらったハイエンドモデルって設定です。蝶事件時には偶発的に暴走せず、名前も給仕者(ウェイター)で今と同じです。ちなみに武器は例のワイヤーも含めて今のものをレーザー仕様にしたものです」

 

ノア「他は設定はほぼ変わりませんが、唯一違う点はフィオナさんもバタフライエフェクト事件で死亡し、ニンジャス○イヤーよろしく鉄血に復讐する鉄血という感じですが鹵獲されたハイエンド達と出会う事で復讐心が揺らいでいく予定だったそうで」

 

レスト「そこまで設定を考えた後で『じゃあなんでこいつ鉄血殺したいのに対人部隊にいるんだ?』ってなった結果、今の設定に変わったってわけだ」

 

リバイバー「ま、そこから着想を得て色々手を加えたのが俺だったりするわけだがな」

 

バレット「…いつからいたんだリバイバー?」

 

[ノアのポジションは416にする予定だった]

 

スミス「ブレブレだなこの作者」

 

レスト「あまり言うな。これは俺のタトゥー繋がりで考えたらしい。ちなみに関係はどちらかといえば互いのコンプレックスを刺激しあう『けなし愛』の感じでいたみたいた。だが416は色んなとこで出てるからどうしたものかと考えた結果9A-91をチョイスしたとの事だ」

 

ノア「チョイス理由は作者的には私はヤンデレというより甘え方が下手な不思議ちゃんのイメージがあったらしく、台詞の節々に献身的なとこが感じられたからレストさんの心を埋めるにはいいんじゃないかとと考えたそうです」

 

スミス「ちなみにボツネタで『助けようとしたけどすでに手遅れで、その負い目で付き合った結果、共依存に陥ってしまう』っていう原作レベルのドロドロした設定があったみたいだぜ?」

 

〜読者が気にしてそうな事〜

 

バレット「これは作者が読者の皆さんが気にしてそうな事を予想して勝手に答える感じだ。という訳で作者、頼んだ」

 

「はいはーい。というわけでここからは自分が受け持ちます。多分皆さんが気にしてる事は多分大きく二つだと思うのですが、まずは…」

 

Q.バレット達の外見年齢は?

 

「これはバレットとスミスが20歳前半くらい、レストが18〜20歳くらい、ウェイターが26歳前後のイメージでやってます」

 

バレット「この設定の所為で学パロの番外が出来ないんだよな?」

 

「例の薬飲ませて幼稚園モノでもええんやで?」

 

四人「それはやめて(ください)」

 

Q.バレット達のCVって誰イメージしてるの?

 

「これってぶっちゃけ決めてないんですよね。というのも、自分が声優界の事に疎いのが理由です。なので、皆さんがイメージした声優で当ててくれて構いません」

 

〜最後に〜

 

「気づいたらお気に入り数が50超えて、他に比べればまだまだの域ですが、これからも応援よろしくお願いします!今後も彼らの活躍に注目してください!」

 



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Code-40 守護者と小さな嵐たち(前編)

今回はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボです。
DG小隊がチビバルカンとチビマーダーの面倒を見ます。
一話で纏まらなかったので前後編で分けます。


「バルカンとマーダーを預かって欲しい?どういうことだペイロード?」

 

(ペイロード)から頼み事があると言われ、バレットが会いに行くと先ほどのことを言われ、バレットは首を傾げた。てっきり二人が何かとんでもない事をして警戒対象になったのではと考えたが、どうやら違うようだ。

 

「詳しいことは省くけど、二人は今ボディもメンタルモデルも幼児化しているんだけど、私今夜ペルシカさんと飲みに行くことになってるんだけど、フレイムさんは用事があって出掛けるみたいで、デストロイヤーちゃんはマーダーさんのこと怖がってて面倒見れないからお兄ちゃんのところで面倒見てもらいたいんだけど、大丈夫かな?」

 

「そういうことか。わかった、今日一日預かってればいいんだろ?スミス達には俺から言っておくよ」

 

「本当に⁉︎ありがとうお兄ちゃん!」

 

「どういたしまして。それより、なんでまた飲みに?ていうかお前、酒飲めるのか?」

 

「いえ、私お酒弱いんでノンアルしか飲みませんけど、ここ最近色々あって雰囲気で酔わないとやってられなくて…」

 

そういうとペイロードはどんよりとした雰囲気を纏い始めた。なんとなく事情を察したバレットはペイロードの頭を撫でて慰めていた。

 

「あー…とりあえず今日は思う存分リラックスしてきな。それと、なんかあったら俺がいつでも相談に乗るから、辛かったらいつでも来な?」

 

「うん…ありがと…。じゃあ早速二人を呼んでくるね」

 

────

 

「…で、連れて来たと?」

 

「今日だけだし、預かるだけなら問題ないだろ?」

 

「隊長、トラブルメーカーのこの二人が何も起こさないわけがないと思うんだが…」

 

「というより、これ絶対前に私たちに使ったのを応用してますよね?」

 

「まぁいいじゃないですか、二人とも可愛いですし、何かしても大したことないですよ」

 

スミス達の反応はそれぞれだが、概ね預りには賛成のようであった。さて、件の二人だが、イノセントにじっと見つめられていた。

 

「…バルカンとマーダーがちっちゃくなってる!」

 

「は?お前だってちっちゃいだろうが」

 

「アハハハハ!ちっちゃーい!」

 

「(ムカッ)」

 

幼児化したことでさらに沸点が低くなったバルカンはケラケラ笑うイノセントに腹が立ち、頬をつねり始めた。

 

「いひゃっ⁉︎この〜!」

 

「なっ⁉︎は〜な〜せ〜!」

 

頬をつねられたイノセントは負けじとバルカンの頬をつねり返し、二人は唸りながらそのままの状態でいた。それを見ていたマーダーは鼻で笑っていた。

 

「フッ幼女に煽られてるとかwwメッチャウケるww」

 

なんひゃとマーラ〜(なんだとマーダー)!」

 

あなひゃもころもでひょ(あなたも子供でしょ)〜!」

 

「うわっ!こいつ〜‼︎」

 

バルカンとイノセントはそれぞれ片手でマーダーの頬をつねり、マーダーも仕返しにそれぞれの頬をつねり返し、幼女三人が頬をつねり合うシュールな光景が発生し、バレット達は頭を抱えた。

 

「早速問題起きてるし…ほら、三人とも今すぐやめろ」

 

「「「う〜〜!」」」

 

「はぁ…スミス、レスト。引き離すから手伝ってくれ」

 

「「はいはい(わかった)」」

 

バレットらが三人を引き離しケンカをやめさせるとバレットが三人に注意する。

 

「三人とも、くだらないことでケンカするんじゃない」

 

「だってイノセントが!」

 

「だとしてもお前の方がお姉ちゃんだろ?一々怒るなよ。イノセントも、あまり身長のことを揶揄うんじゃない。人によっては気にしてる奴もいるんだから。マーダーも二人を煽るからそうなったんだから反省しな。わかったか三人とも?」

 

「う…わかったよ」

 

「は〜い」

 

「…悪かったわよ」

 

三人はバレットの説教を聞いて大人しくなり、とりあえずこの場は収まることができた。ちょうどその時、リバイバーが部屋に入ってきた。

 

「何の騒ぎだ…って何だこいつら?前に言ってたEA小隊の連中…にしては随分ちっこいな」

 

リバイバーはバルカン達をみて怪訝そうな顔を浮かべた。ちなみにだが、彼の行動制限はある程度緩和され、非武装でDG小隊の誰かしらが立ち会いしてれば元攻撃対象への接触を許可されていた。

 

「色々あってな。今日一日預かる事になった」

 

「ふーん…まぁいいや。俺は子守りはごめんだから自分の部屋に戻るからな。チャオ♪」

 

そういいリバイバーは部屋から出て行った。正直に言えばあの二人のことは鉄血時代から警戒対象として知っていたし、グリフィンに来てからはトラブルメーカーということまでわかったので確実に面倒ごとになると察して出て行ったのであった。そしてその予感は当たっていた。

 

しばらく二人は大人しくしていたのだが、マーダーが持ってきたポーチから小包を二つ取り出すと、レストとウェイターに近づいて行った。

 

「レスト、ウェイター、はいこれ…」

 

「私たちにですか?」

 

「…どういう風の吹き回しだ?」

 

警戒しながら問い詰めるレストにマーダーは申し訳なさそうな顔をした。

 

「あのね…この前一緒に作戦を行った時に、二人に酷い事言っちゃったでしょ?だから、そのお詫びなんだけど…開けてみてくれる?」

 

「これは…チョコですか?」

 

「ふむ…匂いは平気そうだな」

 

チョコに問題がない事を確認するとレストとウェイターは顔を見合わせた後、マーダーに向き直った。

 

「…ま、ありがたく受け取るよ」

 

「意外と素直なところがあるんですね…ん、これは天然物ですか…よくこんな良いものを買え…⁉︎」

 

二人はマーダーが反省したものと思い、チョコを口にする。食べた瞬間、天然物独特のチョコの風味が口に広がり美味しいのだが、次の瞬間、突然辛味が広がり始め二人は思わずむせてしまう。

 

「…ゴホッガハッ⁉︎こ、これってまさか…タバスコチョコですか⁉︎」

 

「キャハハハハハ!大成功〜!」

 

「クソッ!少しでもお前を信じた俺が馬鹿だった…!ああ辛えぇ‼︎み、水…」

 

マーダーの善意を装った悪戯に辛いものが苦手なレストは水を求めてアワアワしていた。それを見ていたバレット達は戦慄していた。

 

(こいつ…幼女になっても恐ろしいな…!なるほど、ペイロードが苦労するわけだ…)

 

そう思いつつバレットは椅子に座ろうとするが、瞬間マーダーが椅子に周り込み椅子を思い切り引いた。当然バレットは勢いよく尻餅をつく羽目となった。

 

「のわっ⁉︎」

 

「アハハハ!()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ピクッ

 

マーダーの言葉に反応したバレットはゆっくり立ち上がり、マーダーに近寄って肩を掴んだ。

 

「え?」

 

「なぁマーダー…今のはちょっと良くないなぁ…。俺やペイロードは人形だからいいが、人間だったら最悪尾骶骨が折れて大変なことになるからな?もし人間にやってそうなったらお前の立場上解体されてもおかしくないからな?そうなりたくないだろ?」

 

「え、あ…うん…」

 

てっきりペイロードにも悪戯した事に怒るのかと思いきや割と真面目な説教にマーダーだけでなくスミスも驚いていた。

 

「だろ?俺は折れてないがそれなりに痛かったから言う事あるだろう?」

 

「えっと…ごめん、なさい…」

 

「よく言えたな。あとでペイロードにも謝っておけよな?あとバルカン、お前もペイロードに迷惑かけてたら謝っておけよ」

 

「あ、うん…わかった…」

 

意外な形で丸く収まった状況に唖然としていたスミスだが、すぐにバレットに話しかけた。

 

「意外だなバレット。てっきりキレるかと思ったぞ?」

 

「確かに腹は立ったが、さっきバルカンに説教した手前、大人気なくキレるわけにもいかないだろう?」

 

大人の対応をしたバレットだが、マーダーとしてはあまり面白くなく、新たな悪戯を思いつき、ポーチからあるものを取り出して隠し持った状態でバレットの手を握り締めた後、それをバレットの手に滑り込ませた。

 

「ん?どうしたマーダー…」

 

<ハーイ、じょうじじょうじ

 

バレットの手からGが頭を覗かせた。マーダーは悪戯が成功したと思いほくそ笑んだ。だが、バレットは眉一つ動かさず、Gを親指で挟んで手の中に押し込むと半ば強引にマーダーと強めの握手をした。瞬間、手の中からブチッと音が聞こえた。

 

「#/@*♠︎〜〜⁉︎」

 

流石のマーダーも潰れたGの感触は嫌なのか、手を振り解こうとするがよほど強く握ってるのか、中々離れなかった。

 

「ちなみに全く関係ない話なんだがな、スナイパーはかなりの冷静さが必要でな、俺の場合は例え狙いを定めてる時にゴキが顔を這ってようが動じない精神は持ってると自負してる。いやほんと関係ない話なんだがな。俺はただ仲直りの握手をしようと思ったんだけどな」

 

「えっと…本当に、ごめんなさい…!だから離して…!」

 

「ん?なんで謝るんだ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

(あ〜これ、ゴキ入れるまでは本当に許すつもりだったんだな)

 

その後握手は一分ほど続き、ようやく手を離すとマーダーは一目散に手洗い場に向かって行った。すると、バルカンがやや怯えた顔でバレットに話しかける。

 

「あの、バレット?ペイロードが帰ってきたら私、ちゃんと謝るから…!」

 

「ん、わかった」

 

「とりあえずバレット、お前も手を洗え」

 

マーダーにお灸を据えたバレットだが、ペイロードが帰ってくるのにはまだまだ時間があるのであった。




バレットの虫耐性はSクラスですが、毒のある奴は別です。
ちなみにタバスコチョコは自分も食べましたが、慣れると美味しかったです。

では後半をお楽しみに。


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Code-41 守護者と小さな嵐たち(後編)

コラボ後編です。

今回ちょっと小ネタがあります。


マーダーにお灸を据えた後、バレット達はこのあとどうするか考えていた。

ペイロードが帰って来るまでまだ時間があるため、それまでお灸を据えたとはいえ、トラブルメーカーで知られるこの二人がここで大人しくしている可能性は低く、彼らが色々と疲れる事になるのは明らかであった。どうすべきか考えていると、一枚のチラシが目に入った。

 

どうやらここから少し離れた場所で催し物が開催されているらしい。

 

「なぁ、これはどうだ?」

 

「ん〜悪くはないが、余計トラブル起こさないか?」

 

「ですが、このままここに居させるよりは良いでしょう」

 

「それに、疲れさせてペイロードが帰るまで寝かしとく事も出来るし、俺は良いと思うが」

 

決まりだな、とバレットが決断し、二人に話しかけた。

 

「なぁ二人とも。こういうイベントがあるんだが、行ってみないか?」

 

「ん〜?面白そう!行く行く!」

 

「…まぁ暇つぶしにはいいわね」

 

「イノセントは?」

 

「ん〜いいや。リバイバーと遊んでる」

 

ボディにバレットのダミーパーツが入ってるせいか、イノセントにとってリバイバーはバレットの次にお気に入りのようであった。また、リバイバーのほうも先ほど子守はごめんと口では言っていたが、ちょくちょくイノセントの面倒をみたり言うほど嫌ではないようであった。

 

「わかった。リバイバーを今呼ぶから、リバイバーが来たら行くか」

 

その後リバイバーを呼び出し、一行はイベント会場へ向けて出発していった。

 

────

イベント会場

 

会場は人や人形で賑わっており、出店やライブステージが設置されていた。

ちょうどライブステージではお笑いライブが行われており、一人の男が芸を披露しようとしていた。

 

「腹筋パワー‼︎」

 

そう叫ぶやいなや男はポーズを取り、腹筋周りのパーツをパージさせた。どうやら彼は民間の男性型人形らしい。正直芸の方はバレット達には理解出来なかったが、何故か会場は大ウケであり、バルカンも腹を抱えて笑っていた。

 

「ははははは‼︎お腹が、お腹がバーンって!はははは‼︎」

 

「…最近のお笑いはよくわからないな」

 

「というより、あんな人形I.O.Pで造ってたか?」

 

「多分、個人製作の人形とかでは?」

 

「あれ再利用出来なかったらコスパの悪い一発芸になるな…」

 

その後男の芸は終わり、お客さんが彼に先ほど飛ばしたパーツを手渡していたあたり、どうやら再利用出来るらしい。その後次のプログラムが始まるが、それと同時にステージから煙が噴き出し、辺りは煙で白くなった。

 

Oh……Yes……

 

そう声が聞こえると同時に煙からシルエットが浮かび上がる。

やがて煙が晴れ一人のこれまた男性型人形が現れる。しかし、その見た目は一般的な人形のように人間に似た姿ではなく、どちらかと言えば人型のロボットのようであった。

 

「ハーイ会場のダーリン達!今日はボクに会いに来てくれてありがとー!お礼にドラマチックで、ロマンチックかつバイオレンスなスペシャルダンスを披露しちゃうよ!ミュージック・スタート!」

 

〜BGM『Death by Glamor』〜

 

ノリの良いBGMと共にその人形は踊り始める。腕関節の構造が人のそれと違うのか、自由自在に腕を曲げてポーズを決め、華麗なステップで観客を魅了していった。バレット達はダンスについて詳しくないが、素人目に見ても上手いことは理解していた。

 

「あれも個人製作の人形か…あの腕の構造、どうなってるんだ?」

 

「あれくらいの技術がある開発者なら噂になると思うが…無名の天才って奴か?」

 

バレットとスミスが話す中、ウェイターはマーダーに話しかける。

 

「…先ほどから黙っていますが、面白くありませんか?」

 

「ううん、面白いよ。でもそこのバカみたいに笑い転げたりはしゃぐのが嫌なだけよ」

 

「そ、そうですか…(今はショーに夢中ですが、バルカンが聞いてたらケンカになってましたね…)」

 

マーダーのいう事は半分は本当の事だが、もう半分は今この場でポーチの中にいるGを解き放ったらどうなるか考えていたが、すでにGはすべて逃されているし、もし仮にやったとしたら間違いなくまたバレットにお仕置きされるのは明らかであった。普段なら平気なのだが、幼児化している今ではバレットに苦手意識があった。なのて頭の中でシミュレートするだけにしていた。

 

やがてショーは終わり、バレット達は近くで開かれている屋台に立ち寄ることにした。

 

「ねぇバレット!あれやりたい!」

 

「ん?射的か。マーダーはどうだ?」

 

「そうね…やるわ」

 

「わかった。すみません、二人分お願いします」

 

バレットが料金を払い、二人は空気銃を構えた。

戦術人形に射的はかなり有利なのでは感じるだろうが、実はそうではない。彼女達は普段から本物の銃を扱っているため、空気銃では軽く、感覚も違うため例えライフル人形でも上手く当たらないことがある。

ましてやこの二人は幼児化してる上にガトリングを使う人形のため余計に当てづらくなっていた。

 

「ねぇマーダー、どっちが多く落とせるか勝負しよ!」

 

「いいわよ。負けて大泣きするんじゃないわよ?恥ずかしいから」

 

「言ったな〜!」

 

二人は空気銃を構え、それぞれ狙いを定めて引き金を引いた。

勝負の結果、二対二で引き分けとなった。

 

「あーあ、最後のアレを落とせたら勝ってたのにな〜」

 

「私だって、二個取りが上手くいけば勝ってたわよ」

 

「まぁまぁ、楽しめたんならいいじゃないか」

 

景品のお菓子を食べながら、二人はバレットと共に徒歩で帰っていく。それを遠くからじっと見つめる複数の人影がいることには誰も気がついていなかった。

 

────

 

「だいぶ暗くなってきたな」

 

「あとはペイロードが帰るまで待つだけだが、あれだけはしゃいでたんならもうトラブルは起きな…あれ?バルカンは?」

 

スミスがそういうとバレット達は辺りを見渡すが、バルカンの姿がどこにも見当たらなかった。

 

「まさか、はぐれたのでは?」

 

「おいおいマジか…」

 

「早いところ見つけるぞ。レストとノアはマーダーとここにいてくれ。俺たちで探しに行く」

 

「わかった」

 

「了解です」

 

バレット、スミス、ウェイターの三人は来た道を戻り、バルカンを探し始めた。一方当のバルカン本人は路地裏にいた。

というのも少し前に野良猫を見つけ、バレット達から離れてそれを追いかけていったのだが、最終的に野良猫が塀の上にいったところで周りに誰もいない事に気づいた次第であった。

 

「どうしよう…早く戻らないと皆に怒られちゃう…!」

 

バルカンは慌てて路地裏から出て行こうとする。するとその時、何者かに羽交い締めにされ、猿ぐつわを噛まされた。

 

「んむぅ⁉︎」

 

「まさか向こうから一人になるとはなぁ。おかげで楽に捕まえられたな」

 

「つか、本当にこいつバルカンなのか?明らかに見た目がガキだが…」

 

「あぁ間違いねぇ。多分実験か何かでこうなったんだろ」

 

バルカンを捕まえたのは先ほどから離れて尾行していた男たちであった。どうやら口ぶりからして人権団体の過激派らしい。

 

「で?どうするよ?」

 

「決まってんだろ?散々こいつに仲間を殺られた分、ボロボロになるまで犯り返したあとバラして売っ払うんだよ。見た目が変わっちまてるが、好きな奴は好きだろ?」

 

「なら俺が今犯っていいか?金髪幼女って好みなんだ」

 

「好きにしな」

 

「ん"ー‼︎ん"ー‼︎」

 

バルカンは暴れて抵抗するが、幼児化してる体のため、拘束を解くことは出来ずにいた。男の一人が下卑た笑みで手を伸ばしてバルカンの服を破こうとしたその瞬間──

 

ドゥン‼︎

 

銃声が聞こえ、男の手のひらの半分ほどが吹き飛んだ。

見るとスミスが銃を構えて立っていた。

 

「─ッガァァァ⁉︎」

 

「怪しいと思って跡をつけたが…何してるんだお前ら?

 

「ひっ…⁉︎」

 

「DG小隊…!」

 

「ガキに手ェ出してんじゃねぇよペド野郎共がッ‼︎」

 

そう叫ぶやいなやスミスは男たちに走り寄る。男たちは血相を変えて奥へ逃げ出すが、その先は行き止まりであった。

その後何度か殴打音と悲鳴が聞こえたあと、スミスが戻ってきてバルカンの猿ぐつわを外した。

 

「…大丈夫か?」

 

「…っ!わぁぁぁ‼︎スミス、怖かったよ〜‼︎」

 

スミスが声をかけるとバルカンは泣きながらスミスに抱きついた。スミスはバルカンを撫でながらバレットに連絡を入れた。

 

「よしよし、怖かったな…バレットか?こちらスミス、バルカンを保護した。危うく人権団体に拉致されそうになってたが、無事だ」

 

「了解。…で、そいつらは?」

 

「一人片手吹っ飛ばしてあとは全員殴って気絶させた。何か情報を持ってる可能性があるからな。一応奴らの服で縛り付けてるが、早いとこ来てくれ。場所は…」

 

「わかった。本部に連絡しておこう、とりあえず俺たちもそっちに行くから待っててくれ」

 

「了解」

 

その後、バレット達と本部の人形が到着し、男たちは連行された。泣き疲れたバルカンをスミスがおぶってバレット達は本部へと帰還していった。

 

────

 

バレットは迎えに来たペイロードに今回の事を伝えていた。

 

「そんなことが…」

 

「とりあえずメンタルの方は大丈夫らしい。二人は今寝てるからマーダーを俺が連れてくからバルカンを頼む」

 

バレットとペイロードは二人を抱えそれぞれの部屋に寝かせておいた。

 

「今日は本当にありがとね、お兄ちゃん」

 

「あぁ。また何かあったらいつでも言ってくれ」

 

「うん…」

 

「…?どうしたペイロード?」

 

どこか様子のおかしいペイロードにバレットがそう尋ねるとペイロードは慌てて手を振った。

 

「う、ううん!なんでもないよ!」

 

「そうか?ならいいが…」

 

「じゃあ、おやすみお兄ちゃん」

 

「おやすみ」

 

バレットはそのまま部屋へと戻っていった。彼が真実を知るのはだいぶあとの事であった。




ショーにいた二人は知ってる人は知ってます。
一人目はともかく二人目はどうやって来たんだと思ったけど多分崩壊液で結界が消えたんでしょ(適当)
さて、どうやってバレットに真実伝えようかな〜♪

oldsnake様、今回の事が二人にどう影響するのかはとりあえずぶん投げておくので任せます。


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Code-42 彼から見たニンゲン

今回はリバイバー視点の話です。

また、大陸版の情報がありますのでご了承を。


ある時、リバイバーは自室でパソコンを操作して情報収集をしていた。

 

(ふむ…噂レベルでもあのエリザのダミーらしき目撃情報はないか…やはりどこかで身を潜めてるのか。そいつからメインの情報を得られると思ったが、無いなら無いで仕方ないか…)

 

リバイバーは軽く伸びをし、気晴らしに飲食店の記事を読み漁る。その中にD08のカフェがあるのを見たリバイバーは感慨深い顔をしていた。

 

(…にしても、まさか人形が母親になるとはな…本当に人間の発想と技術の進歩は面白い…!)

 

リバイバーはグリフィンに寝返ってからは基本的に他のハイエンドがそうするように人間を軽蔑したりせず、むしろ好意的である。というのも人間は時折自分たち(AI)が考えもしないような事を実践し、成長することに高い興味を持っているからだ。

人類の好奇心と探究心は人類を繁栄させる事もでき破滅させる事もできる、というのがリバイバーの持論である。

 

事実、人類の歴史の中でもそれらが技術の発展に貢献したのは言うまでもない。これをこうしたらどうなるのか、材質を変えてみたら?この状態でこの物質を入れたらどうなるのか、もっと頑丈なものが作れないか─そういった好奇心や探究心は生活品や兵器の質をあげ、生活を豊かにしていった。

 

そして『遺跡』が見つかればそれらが何なのか、また自分たちの役に立つのかといった好奇心や探究心が湧き、それらを調べ上げた。だが、結果は役に立つどころか危険であり、自分たちの手に負えない代物と判ればすぐさま遺跡を封鎖し、一般に触れないようにした。それまでは良かった。

 

─だがここにきて好奇心や探究心が起こした最も最悪たる事件が起きた。北蘭島事件である。七人の中学生が『好奇心』で遺跡に侵入、E.L.I.Dに襲われ、彼らを助けようと軍事行動をとった結果、遺跡は破壊され、世界中に崩壊液がばら撒かれ多くの人類が死に、さらには残った土地を巡って第三次世界大戦が起き、さらに多くの人類が死亡した。たった七人の好奇心が結果的に何十億の人間を死なせたのだから好奇心や探究心の持つ魔力は侮れないだろう。

 

そして不足した労働力を補う為、人形が造られるのだが、ここでも人間の好奇心と探究心があらわれる。

 

初めは無骨な見た目だった人形が徐々に人間に近い見た目へと変貌していった。単純な命令しか実行できなかったAIもより複雑な命令をこなせるよう発展していった。そしてその過程でリバイバーの出身である鉄血工造はある考えをだした─より高度なAIを作ろうと。

そしてリコリスを招き入れ、多額の出資と膨大な研究期間を経てエリザを開発、その間にもハイエンドモデルも幾つか開発した。

その結果は知っての通り、蝶は羽ばたき彼らの夢は花と散った。

 

I.O.Pはというと、鉄血より豊富なバリエーションの人形が存在し、その一つ一つに個性がある。また、同じ個体でも環境によって大きく性格が変わるのも特徴の一つだ。そして豊かな感情があることで人間と強い絆が生まれてくる。場合によってはそれは愛情へと変わり、誓約という形で結婚できるようになっていき、そしてついには人間との間に子をその身に宿し、出産するまでに至った。しかもヒトより遥かに短い妊娠期間にも関わらず母子共に健康ときていた。

 

これが世に第二世代人形が現れて僅か10年足らずで起きたのだから人間の技術の進歩は面白いとリバイバーは考えている。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ともリバイバーは思っていた。

 

(ま、そもそもあのクソガキの目的と手段が一致してないんだがな…それに、奴は人形を妊娠させようなんて毛ほども思い付かないだろうしな。その点でもやはり人間は面白い)

 

(奴に限らず、殆どのハイエンドは人間が自分らに敵いっこないと見下してるが、人間は俺らでも考えない事をする。だからこそ勝てるはずの作戦で負けるし、人類にとって敵であるはずの俺らを撃破せず鹵獲して味方に引き込んでいった。だいたい、正規軍がその気になりゃ一週間と持たずに全滅するのに、なんで余裕ぶってるのだか…)

 

そこまで考えリバイバーは再びパソコンを操作する。

すると、ある記事が目に止まる。

 

(戦場でキレイな歌声が聞こえたら空から天使がきて悪を討つ?これは目撃例が多いな…ふむ…ふむ…なるほど、目撃例の外見的特徴から察するに例の彼女か…ククッ…にしても、人間ってのは本当に面白い事を考えるな…!)

 

わざわざ歌って自分の位置を知らせるなど、彼には理解ができないが、遠い昔のニホンではサムライが戦場で名乗りを上げていたり、ニンジャに至ってはアイサツをしていたという。恐らくその類なのだろうとリバイバーは結論付けた。

 

(しかし、こうも噂が広まれば歌を聞いただけで士気を下げる奴もいるだろうからあながち無駄でもなさそうだな…俺もやってみようかな?)

 

だか真似して歌うのは芸がないなと考え、何かないかとリバイバーは画策すること10分、ようやく良いものを考え出した。

 

(よし、次の出撃で試してみるか…さて、何か食うか)

 

そう思うリバイバーは食堂へ向かう途中、スミスに声を掛けられた。

 

「お、リバイバーも食堂に行くのか?」

 

「あぁ。……他の連中は?」

 

「それぞれの連れとどっか食べに行った」

 

「つまり今ボッチか」

 

「うるせぇよ!独り身で悪いか!」

 

「まぁそのうちお前さんも彼女出来るんじゃねぇの?」

 

だと良いけどなぁ、とスミスは嘆くようにつぶやいた。




要はリバイバーはグリフィンにいるうちに某リンゴ好きの死神や吸血鬼の旦那みたいに人間にある種の尊敬や興味を待ってる感じです。

さて、リバイバーが聖唱代わりに取り入れたものとは?
ヒント・斬首(一部英語)

では次回をお楽しみに。


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Code-43 新たな噂

すみません、多忙と軽いスランプで更新が遅れました。

今回はタイトル通り、リバイバーが新しい噂を広めます。
なので盗賊達には噛ませになってもらいます(無慈悲)


「名前…か?」

 

バレットの自室でDSRと雑談(室内デート)をして過ごしていると、DSRから自分に名前を付けて欲しいと言われ、バレットは首を傾げた。

 

「ええ。貴方のところのノアちゃんもレスト君から名前を貰ったんでしょう?なら、私も貴方から名前をつけて貰いたいの」

 

「そういうことか…他の基地の君が一緒にいても見分けがつくが、やはり名前があった方がいいか…」

 

(さりげなく見分けられるって言ってる…ノアちゃんからレスト君からそう言われて嬉しかったって言ってたけど、その気持ち、今ならよくわかるわ…自分のことわかってくれてるってこんなに嬉しいのね)

 

「ふむ…どうするか…」

 

「別に今じゃなくてもいいわよ。決まったら教えてちょうだい」

 

「わかった。考えておくよ」

 

────

 

翌日、DG小隊は某地区で活動している盗賊団の殲滅任務を言い渡され現場へと向かっていった。

 

「で、盗賊団の中には元正規軍の奴がいるんだって?」

 

「あぁ。そいつらが軍を抜ける時に強化スーツやら自律兵器やらをくすねたらしくてな、人数も多くて結構厄介らしい」

 

「…E.L.I.Dの相手するのもいいが、身内や兵器の管理をしっかりして欲しいもんだな」

 

「それより、正規軍の自律兵器相手に私達でなんとかなるのですか?」

 

「向こうによると、性能は低い方らしくマンティコアより少し強い程度らしいがフォースシールドを使うからリバイバーに相手して貰う。ちなみに数は四機だ」

 

「了解」

 

やがて盗賊団が拠点にしているという廃墟群に到着し、バレット達は配置につき始める。しばらくしてバレットはリバイバーに連絡を入れた。

 

「リバイバー、奴らに鹵獲された人形は何処にいるかわかるか?」

 

「んー30の方向に赤い看板がある廃墟があるだろ?そこに11…いや、12人いるな。そこ以外にはいない。見張りが外に3人、中に12人いるが、()()手は出されてない」

 

「了解。そこの近くまで移動し終えたらまた連絡する」

 

バレットからの連絡が切れるとリバイバーも準備を始めた。といっても装備の方は既に点検済みである。準備というのはこの前の噂を聞いて自作した()()()()の準備だった。

 

「動作は…問題無し。鹵獲人形はそこしかいないから派手にやれるな…」

 

「リバイバー、移動完了だ。始めてくれ」

 

「了解。じゃ、始めるとすっか…!」

 

リバイバーはそう言い体に取り付けた『指向性スピーカー』のスイッチを入れた。

 

────

 

「いや〜にしても元正規軍の奴らが持ってきたこれはいいな。仕事が楽になる」

 

外にいた盗賊の一人がもう一人に声をかける。

 

「まったくだ。というか、まだあの人形らに手を出しちゃダメか?」

 

「ギリギリまで怯えさせて夜にマワすんだとよ」

 

「そういうことか。なら夜が楽しみだな」

 

ゲラゲラと下品な笑いをする盗賊達だが、ふいに妙な音が辺りに響き渡る。

 

チリーン……チリーン……

 

「ん?何で『鈴の音』が…」

 

刹那、盗賊の一人が首から下をレーザーに貫かれ、周りの人間も着弾による爆発で地面ごと吹き飛ばされた。

その後も鈴の音が響き渡り、その度にレーザーが降り注ぎ、盗賊達本人やそれらが潜む建物を吹き飛ばしていく。事態に気づいた盗賊達が慌てて自律兵器を起動させるものの、一機は起動前に破壊され、残りの三機はフォースシールドを展開してレーザーの出所を探るが先ほどより高威力のレーザーが三機に命中し、フォースシールドを貫かれ呆気なく爆散していった。

 

「なっ⁉︎馬鹿な、フォースシールドが⁉︎」

 

「ハハハハハ‼︎ご自慢の兵器があっさり破壊された気分はどうだ盗賊さん方よぉ?」

 

盗賊達が狼狽えている中、リバイバーは鈴の音を鳴らして盗賊達の前に姿を現した。鈴の音に敏感に反応した盗賊達を見てリバイバーはほくそ笑んだ。

 

(この反応…先ほどの襲撃でもう鈴の音に恐怖しているな…なるほど、これは良い。相手の士気を下げられるし、俺もやってみて気分がやや高揚している…続ける価値はあるな)

 

「お前…!最近DG小隊に加わったっていう元鉄血か⁉︎」

 

「おーそこまで知ってるのか。なら俺がここに来た目的はわかるな?じゃ……消えてもらおうか」

 

そう言うが早いか、リバイバーはV.S.L.Cを薙ぎ払うように撃ち、地面ごと盗賊を吹き飛ばす。すぐさま盗賊達も反撃に応じるが、電磁フィールドを展開するまでもなく回避され、一人また一人と死者の仲間入りを果たしていく。すると強化スーツを着た複数の盗賊が駆けつけ、リバイバーを取り囲んだ。

 

「やっと真打ちのおでましか」

 

「はっ‼︎余裕ぶってるのも今のうちだ!撃てぇ‼︎」

 

掛け声と共に盗賊達は強化スーツに取り付けられた粒子ガトリングを撃ち放った。これは回避出来ないと読んだリバイバーはすぐさまF.E.F.Gを起動し念のため出力を強めた電磁フィールドを展開し、攻撃に備えた。

粒子の雨は電磁フィールドに命中し、貫かれることなく弾かれていった。

 

「ばっ馬鹿なっ⁉︎」

 

(ふむ…この威力…。比較的低級のE.L.I.Dの群れを駆逐する為のものか。しかもこいつら、元正規軍なのにこの狼狽よう…多分こいつらは…)

 

そこまで考えリバイバーはバレット達に通信をつなげた。

 

「こちらリバイバー!恐らく連中は正規軍の中でも下っ端の奴らだ!お前さん達でも対処出来ると思うが腕の立つ奴もいる可能性もあるから気をつけな!」

 

了解、と返事が聞こえるとリバイバーは未だに攻撃を続けている盗賊にレーザーをお見舞いした。

 

「ガッ⁉︎」

 

「…お前さん方は今まで運が良かっただけだ。だが、その運も今日でお終いだ。今まで散々奪ってきたんだ、奪われる覚悟は…出来てるよな?」

 

────

 

リバイバーの報告を受け、バレット達は鹵獲人形達のいる廃墟への突入準備を進めていた。

 

「俺が見張りを撃ち倒す。そしたら全員突入して内部の制圧と救出を行なってくれ」

 

「了解。にしても、なんであいつ鈴の音なんか鳴らしてんだ?V○ンダムでも観たのか?」

 

「多分、例の噂を聞いて影響受けた感じだろう。とにかく、今は任務に集中しろ」

 

そう言いバレットはスコープを覗いて見張りの一人に照準を合わせる。残りの二人もダミーに指示して狙わせ、いつでも撃てるようにした。

 

「バレット、こちらの突入準備は完了だ」

 

「了解。狙撃まで3…2…1…」

 

ゼロ、と言ったと同時にバレットは引き金を引いた。放たれた弾丸は狙い通りに見張りの頭に命中し、撃ち倒す。一拍遅れて残りの二人もダミーに撃たれ、同様の運命を辿る。

 

「Go」

 

結論から言えば内部制圧は成功した。リバイバーの見立て通り、元正規軍の盗賊は正規軍の中でも下っ端であり、しかもその殆どがリバイバーの相手をしていたため廃墟内にいた元正規軍は数人程度のためスミス達が手間取るような相手でなくあっさり殲滅し鹵獲人形達の安全を確保したのであった。

 

「で?バレット、リバイバーの援護に行った方がいいか?」

 

「いや、大丈夫そうだ。というより、行かない方がいい」

 

「あ?どういう事だ?」

 

「あいつ、久々に大規模攻撃したせいか軽くトリガーハッピーになってやがる」

 

バレットの視線の先には強化スーツの盗賊達を全滅させたリバイバーがV.S.L.Cを連射し、逃げ惑うわずかばかりの盗賊達を追撃していた。

 

「ヒィ⁉︎く、来るなぁー‼︎」

 

「オイオイオイ?さっきまでの余裕はどうしたぁ⁉︎もっと足掻け足掻け足掻けよォォ‼︎

 

「うわぁ…これ、どっちが敵なんだか…」

 

「おいリバイバー、こっちは救出完了だ。別に全員殺せって言われてないんだ、残党は放っといて戻ってこい」

 

「ん?…あぁわかった。悪りぃ、ちょっとテンションが上がってな」

 

(あれのどこがちょっとだよ…)

 

すんなり言うことを聞いたリバイバーは追撃をやめ、バレット達と合流した。

その後、生き残った盗賊達の口から噂が広まり『戦場で鈴の音が聞こえたら死神が迎えに来る』といった噂が新たに流れるのであった。

 

────

 

作戦終了後、バレットはDSRに付ける名前をどうするか考えていた。すると、そこへスミスがやって来て話しかけてきた。

 

「どうしたバレット?そんな難しい顔して」

 

「いやな、DSRに名前をつけて欲しいって頼まれたんだが、いいのが浮かばなくてな…」

 

「ふーん。ま、あまり凝ったのじゃなくてもいいんじゃないか?」

 

「まぁな…」

 

「にしても、急にそんな事頼むってことは、近いうちにその名前でプロポーズして欲しいって事じゃないのか?」

 

「え⁉︎そういう事…なのか?」

 

「多分だけどな。クリスマス近いし。そうじゃなくてもこのご時世、早めにプロポーズした方がいいと思うぜ?」

 

「まぁ、そうだな…」

 

((プロポーズ、か(ですか)…))

 

スミスのアドバイスにバレットがうなづいてるなか、それを聞いていたレストとウェイターも同じような反応をしていた。

 




ええ、ザンネックもといファラさんがモデルですよ。別にギロチンかけたりバイク戦艦で盗賊の巣窟轢き潰したりしません。そもそもバイクの娘が鉄血にいるし
正直サンボルのジャズと迷いましたね。

Q.リバイバーのアレは本性?

A.いいえ。単にテンション上がってただけです。

DSRの名前どうすっかな?
え?最後のやりとりが死亡フラグっぽい?
ハハ、クリスマスの時期に人が死ぬ訳ないだろう?(色んなところから目を逸らしつつ)


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Code-44 日溜りと守護者達

今回は焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』とのコラボです。
DG小隊が諸事情でS09P基地に赴きます。


ある日、DG小隊とリバイバーはペルシカとヘリアンからある任務を言い渡された。話によるとS09P基地に例のエリザのダミーとその配下が襲撃、激闘の末人的被害は無く撃退に成功したものの、彼女達の協力者であるアーキテクトのラボが全壊、基地自体もそれなりの被害があり戦闘による資材の消費もあったため、それらの補給物資を届けるのが一つ、そしてもう一つが…

 

「被害状況の確認?それは前にそっちが確認したんじゃ…」

 

「それがね、今回の被害による基地の修繕費の報告を提出したら上層部が難癖つけてきてね…」

 

上層部曰く、幾ら鉄血の総大将のダミーとその配下とはいえ、セキュリティも万全だった基地がたった五体にそこまでの被害が出るのか、もしや水増ししているのではとのことであり、再調査を実施しろという訳である。

 

「…相変わらず都合のいいときは擦り寄って、こういうときは突き放すな上層部(ジジイども)は」

 

「バレット、気持ちはわかるがあまり口にするな。とにかく、貴様達には悪いが基地へ行って物資の補給と、被害状況の再確認を頼む。今回はリバイバーも同行してくれ」

 

「あ、俺ついていっていいの?」

 

「万が一、敵の追撃が来た時のためだ。当然、バレットもしくはスミスの監視は付いてるがな」

 

「物資はもう積み込んでるから早速行ってくれる?あっちにはもう連絡はしてあるわ」

 

「了解」

 

積荷の中身は今回の戦闘で消費したのと同量の資材、各種医薬品、そして瓦礫撤去用の中型ドローン10機となっていた。それらを載せた輸送車に乗り込み、バレット達はS09P基地へ向かって行った。

 

「向こうとは前のオークション殲滅作戦以来だな」

 

「あぁ。だが向こうのユノ指揮官と直接会うのは初めてだ。あの時の礼も言っておこう」

 

「俺としても、あの基地には借りがあるからな。ヴァニラさんとFMG-9には是非会って礼を言いたい」

 

────

 

特に道中何事もなく、一行は基地へと辿り着く。

セキュリティゲートで検査を受け、基地内部に入り輸送車を停めるとユノ指揮官と副官のナガンM1895が出迎えに来ていた。

 

「初めましてユノ指揮官。本社所属DG小隊、隊長のM107ことバレットです。よろしくお願いします」

 

「同じく、副隊長のS&W M500ことスミスだ」

 

「MP5Kのレストだ」

 

「SCAR-H、ウェイターです」

 

「9A-91のノアといいます」

 

「で、俺が現在保護観察中の元鉄血のリバイバーだ。よろしく」

 

各自自己紹介をすると、ユノ本人はどこか興味深げな目でバレット達を見つめていた。

 

「ほれ、挨拶せんか」

 

「あっうん…えっと、初めまして。ここの指揮官のユノ・ヴァルターです。本日はよろしくお願いします。とりあえず、中へ案内しますね」

 

どこか落ち着かない声で話すユノの様子に、恐らく彼らが『普通に』視えたことに驚いていたのだろうと察したバレットは気を利かせて話しかけた。

 

「そちらの事情はペルシカから聞いています。男性型の人形は初めて見ましたか?」

 

「え?あ、はい。初めて会う人で普通に視える男の人って珍しいからつい…失礼でした?」

 

「いえ、気にしていません。それと、無理に敬語じゃなくても大丈夫ですよ」

 

「あ、じゃあそうさせてもらうね」

 

応接室へ着いた一行はまず補給物資の確認を行った。

 

「こちらが今回の戦闘で消費した資材の補充、こちらが医薬品、最後にこちらがドローンのリストです。ドローンの方は撤去作業終了後はそちらに譲渡します。プログラムさえ組めば他の作業も可能だそうです」

 

「…うん、確かに確認しました。届けてくれてありがとう」

 

「それと…申し上げにくいのですが、被害状況の再調査を実施したいのですが、よろしいですか?」

 

「大丈夫だよ。こっちもそれくらい来るだろうなと思っていたから」

 

「本当に申し訳ない…」

 

「お主が謝る事はない。これで上が納得するならこれくらい平気じゃよ」

 

「はい…必ず納得させますのでご安心を」

 

バレット達は基地内を巡り、被害状況を確認して端末に打ち込んでいく。その道中、AS Valと鉢合わせした。

 

「…?お母さん、この人達は?」

 

「お母さん?」

 

「ちょっと訳あってね。大丈夫だよシャフト。この人達は本社のDG小隊って人達でこっちの事見に来たんだって」

 

「そう、ですか…」

 

そう言い彼女はおっかなびっくりバレット達を見つめる。すると、ノアの方を見た途端、驚いたような顔を浮かべた。ノアの方も驚いた顔でシャフトを見つめていた。

 

(AS Valちゃんが上着着てる…!)

 

(9A-91ちゃんがスカート履いてる…!)

 

「あーバレット?二人が何考えてるかわかるのは俺だけか?」

 

「いや、俺もだ」

 

「俺もだ」

 

「同じく」

 

しばらくして、基地内部の調査は終わり、アーキテクトのラボがあった場所へ向かった。

 

「酷いなこれ…ほぼ全壊だな」

 

「よくこの被害で人的被害ゼロに出来たな…」

 

「というより、アーキテクトは無事だったんですか?」

 

「あー、それだけど「私を呼んだ⁉︎」わっ」

 

声にした方を向くと、アーキテクトによく似た幼女が腕を組んでドヤ顔で立っていた。

 

「ふっふ〜!うっかりやられちゃったけどこの通り、予備の素体でアーちゃんは蘇ったのだー!」

 

「な、なるほど…そういうことか…」

 

「およ?なんか反応薄いね?まぁいいや、そこの子が持ってるのってF.E.F.Gでしょ⁉︎見た感じ私がいた時より改良されてるみたいだしあとでデータ貰っても「ここにいたかアーキテクト!」げ、ゲーちゃん⁉︎」

 

「ナデシコの修復作業がまだあるだろ!さっさと作業に戻れ!」

 

「あ、ちょ、引っ張っらないでぇ〜!」

 

ゲーガーに引き摺られながらアーキテクトはその場から居なくなった。

気まずい雰囲気が流れる中、ナガンが口を開いた。

 

「…あやつがすまんの」

 

「いえ、大丈夫です…データの件ですが、許可が下りれば送ります。今回のような事がまた起きる可能性がある以上、防御面の強化は必要でしょうし」

 

「うむ、わかった」

 

その後、被害状況の確認を終えたバレット達は応接室に戻り、話をまとめていた。

 

「とりあえず、前にそちらが送った被害報告と差異が無いのが確認出来ました。それと、今回現れたというハイエンドの戦闘データはありますか?それが有れば向こうをだいぶ納得させられるのですが…」

 

「それなら、これがそのデータです」

 

「ありがとうございます。それと別件ですが、ヴァニラさんとFMG-9の二人は今どこにいますか?部下が世話になったから礼を言いたいとのことなので」

 

「二人なら今整備室にいるかな。場所はこの地図の…ここだよ」

 

「わかりました。レスト、行ってきな」

 

「あぁ。わかった」

 

「案内は大丈夫?」

 

「場所は今ので覚えたので大丈夫です」

 

レストは応接室から出て行き、整備室へと向かう。

整備室では二人が作業をしていたが、レストに気付くと作業の手を止めた。

 

「えっと、貴方は?」

 

「DG小隊のレストと言います。前にこちらの副官越しに人探しを依頼した者です」

 

「…!そっか、君が例の…それで、今日はどんな用で?」

 

「貴女方のおかげで、俺は前に進める事が出来ました。本当に感謝します」

 

「いいのよお礼なんて。これくらいなんて事ないわよ」

 

「そっスよ。それに、あんたの事聞いて相棒、かなりキレてたからかなり早く見つけられたし」

 

「そうなんですか?」

 

「だって、()()()()()の為だけに造られたなんて整備士として許せなかったもの。それより、貴方彼女いるんでしょ?幸せにしてあげなさいよ?」

 

「もちろん、そのつもりです」

 

────

 

その後幾つか確認事項を行い、バレット達は本社へ戻ろうとしていた。

 

「では我々はこれで。ユノ指揮官、以前オークション殲滅作戦に協力してくれた事、改めて感謝します」

 

「また何かあったら連絡してね?協力するから」

 

「わかりました。では、さようなら」

 

輸送車を発車させ、バレット達は基地をあとにした。

その後改めて出された報告書は当時の状況やハイエンドの戦闘データを取り入れ、事細やかにかつわかりやすく記載されており、上層部はぐうの音も出なかったという。結果、請求された修繕費は正当なものである事が認められた。

 

また、F.E.F.Gのデータだが、ペルシカの許可が下りたので後日アーキテクトの元に転送されたという。




焔薙様、コラボありがとうございます!

ユノちゃんの口調、あってますかね?(震え声)
正直向こうのノアちゃんとも絡ませたかったけど自分にはこれが限界ですので状況確認中の事とかは任せます!(無責任ですみません)

データの方も魔改造するなりなんなりお好きにどうぞ。


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Code-45 フィオナの仕事と惚気話

すまねえ…リアルが忙しいんだ…なるべく早く更新します。

タイトルからわかる通り、リア銃注意です。
リア銃タグ流行れ。


フィオナ・ノーライト、資産家の一人娘であり『バタフライエフェクト事件』で家族を失い、自身も昏睡状態となるが奇跡的に回復した彼女は現在、グリフィンに入社し、恋人であるウェイターが所属するDG小隊の後方幕僚を務めている。彼女がやる事はDG小隊の作戦記録のまとめや事後処理、救出された人形のカウンセリングも担当していた。

 

今日も人形達のカウンセリングを行い経過結果を纏め、休憩をしているとリリィが彼女に近寄ってきた。

 

「フィオナさん、お疲れ様です」

 

「お疲れ様。もうその呼び方には慣れたみたいね」

 

グリフィンに入社してからはフィオナはリリィにもうお嬢様と呼ばなくて良いと伝えたのだが、つい癖で呼んでしまう事がたびたびあったが、どうやら慣れてきたようであった。

 

「カウンセリングの方はどうですか?」

 

「何人かはだいぶ良くなって復帰出来そうかな。でも、まだ時間がかかる子の方が多いわね…」

 

救出されたといっても、当然ながら全員が全員無事というわけではない。拐わてそこまで経っていないうちに救出された人形はまだいい。拐われてから日数が経っている人形はほぼ間違いなく彼女達を拐った人権団体や盗賊の慰み者にされている為、ほとんどはメンタルモデルにダメージを負っていた。酷い時には助けに来たバレット達を見て発狂し、襲いかかる事もあった。ノアを入隊させたのもそういった配慮もあった。

 

「そうですか…その、こういうのもアレですが、見てて辛くないですか?」

 

「もちろん辛いわよ。でも、だからといってそのままにしておけないわ。彼女達の心の傷を治すのが今の私に出来ることだと思ってるわ」

 

「フィオナさん…」

 

「それに、回復した子からお礼の手紙が来てそれを読むのが嬉しかったりするしね。ただ…」

 

「何ですか?」

 

「カウンセリング中にDG小隊の人たちに彼女がいないかどうかほぼ毎回聞かれるのがね…」

 

「あー…」

 

危機的状況から颯爽と現れて助けに来る彼らを見て惚れ込む人形は少なくない。そんな中で彼らと関わりのある人物がカウンセリングにくればそういう質問をするのは当然と言えば当然である。

その質問だが、現在彼女のいないスミスは答えやすい。しかし、既に彼女がいるバレットやレスト、ウェイターに関しては答えづらく、特にウェイターとなればそのウェイターと付き合っているフィオナからすればかなり答えづらいものであった。

 

割と本気で惚れ込んでいる人形もいる為、そんな彼女達に『既に彼女がいます』と面と向かって、しかもカウンセリング中に言えるかといえば、新たに失恋という心の傷をつくらないかとなりフィオナにとって結構難しいものであった。

 

「それで、どう答えたんですか?」

 

「それとな〜く遠回しに伝えたわね。嘘つくわけにもいかないしね。ただ、そのあとが気まずいけどね…」

 

ちなみにだが、そういった彼女達による彼らのファンクラブ的なものが彼らの知らないところであるらしく、彼らの殆どに彼女が出来た現在でも存在しているらしい。また、ごく少数だがノアのファンも存在しているとの事である。

 

「そういえば、ウェイターさんとは最近どうですか?」

 

「どうって言ってもね…任務の合間とかに二人で話し合ったり、休みの日はデートしたりとか…そんな感じね」

 

「同棲とかしないんですか?」

 

「え?いや、それは…「それは俺も気になるな」わ⁉︎リバイバーさん⁉︎」

 

「い、いつからここに?」

 

フィオナがしどろもどろになっていると、いつの間にかリバイバーが二人の側にいた。

 

「たまたま通りかかったら会話が聞こえてな。で?何故同棲しないんだ?ウェイターとお前さんは長い付き合いだって聞いてるが…」

 

「えっと…リバイバーさん?何故話に入ってくるのですか?」

 

「単純に人間と人形の恋愛に興味があるからだ。それで、どうなんだ?」

 

聞く気満々のリバイバーにフィオナはやや困惑したがややモジモジしながら理由を話し始めた。

 

「だって…今でさえ一緒にいるだけで幸せなのに、同棲してずっと一緒ってなったら幸せ過ぎて…」

 

(普通に惚気だしましたよこの人)

 

(滅茶苦茶ベタ惚れじゃねぇか。だいぶ愛されてるなウェイターの奴)

 

でもいつかは同棲したいのよ、と付け加えるフィオナにリリィとリバイバーは惚気話御馳走様ですと心の中で思った。

すると、突然リバイバーがこんなことを聞き出した。

 

「なるほどねぇ…っ!それで、そもそもだがウェイターのどこを好きになったんだ?」

 

「あ、それ私も気になります」

 

「え?えっと…」

 

グイグイくるわねこの人と思いつつ、別に話しても大丈夫かと考えフィオナは話し始める。

 

「…最初に見た時からずっと気になっててね、ちょくちょく目で追ってたんだけど、本格的に意識したのは私がつけた名前が気に入ってるって言ってくれた時からね。そのあとしばらく冷たくされたけど、私のためを思ってやってた事ってわかって、どこまでも優しい人なんだなって思って思い切って告白して今に至るって感じね」

 

「ほぅ…じゃあ付き合ってから気づいたところとかは?」

 

「随分踏み込みますね…。そうね…気づいた事というより新しく好きになったところだけど、ウェイターのモノクルって私がプレゼントした物なのね。渡してからずっと付けてるからたまに外した時の顔にドキドキするのと、照れたり恥ずかしがったりする時の顔が意外と可愛くてギャップがあるところ、かな」

 

「なるほど…」

 

「へぇ〜かなりお熱のようですね」

 

「リバイバーさん、この事は…」

 

「あぁ()()()()には絶対に言わないさ」

 

「だ、旦那さまって…⁉︎いや、いつかはそうなりたいけど…

 

「ハハハ、お幸せにな。チャオ♪」

 

フィオナにそう言いリバイバーは扉を開け出て行った。そして扉を閉めると右の方を向いた。

 

「…だとよ、()()()()()

 

リバイバーの視線の先には顔を赤くしたウェイターがリバイバーを睨み付けていた。

 

「リバイバー…!あなた、私がここに居るのを知ってて質問しましたよね⁉︎」

 

「バレたかw」

 

ウェイターからすればたまたま通りかかった時に扉越しから話し声が聞こえたので立ち止まったら急にリバイバーが先ほどの質問をし、フィオナによる自分の惚気話を聞かされたのだからたまったものではなかった。

 

「というより、何であんなグイグイ質問したんですか⁉︎女子トークみたいなノリでしたよね?」

 

「野郎が恋バナ聞いちゃいけねぇのかよ?ま、とにかく彼女をあまり待たせるなよ」

 

あなたに言われるまでもありません、と言いウェイターは足早に去っていった。

 

(いやぁ、他人の恋愛を見聞きするのは面白いものだな。バレットの方は何か進展があるかな?)

 

妙な趣味を見つけたリバイバーであった。




ちなみにフィオナの容姿は白のセミロングで大人しい感じの見た目です。

あと、この作品に原作並みの鬱展開入れるなら発狂した救出対象に撃たれて一人死ぬって言うのは間違いなく入れてますかね。

余談ですが、自分の本名がある神話の人物と偶然一致してるのは某アニメを通してで知っていたのですが、最近その人物が女体化してるのを知ってしまった自分はどうすればいいのでしょうか?
※合ってたら困るから誰かは書かないで下さいね?


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Code-46 H&R社本部制圧作戦─下準備

ようやくリアルが落ち着き始めました…

今回はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボの準備回です。


「あー…お二人さん、何故そんな怖い顔でこっち見てるので?」

 

前にもこんな事あったな、とリバイバーは目の前の二人─バレットとスミスを見る。例によって部屋で休んでたところ、二人に会議室に連行されたわけだが、今回は二人の他にはペルシカのみとなっている。

 

「リバイバー、前に言っていたコード名のシスタスだが…ゴジアオイの事で良いんだな?」

 

「そうだが…あぁ、そういう事か。お前さん方、アレの花言葉を知ったわけか」

 

「そういう事よ。『私は明日、死ぬだろう』なんて花言葉のコード名を使ったのはどういう事か説明して貰える?場合によってはあなたを処分せざるを得ないわ」

 

ペルシカが険しい顔でリバイバーに迫る。彼女がそう言うのも無理はない。リバイバーはP基地に情報を送るときにそのコード名を使った。もし、その花言葉が相手に向けたものなら殺人予告も同然でありグリフィンに置いていく訳にもいかないからだ。

だが当のリバイバーはケロッとした顔でこう言った。

 

「…あのな、俺がそんな自分の首を締めるような真似すると思うか?ありゃ自分に向けたやつだ」

 

「自分に?」

 

「そ。理由は二つ。一つはいつグリフィンに用済みになって処分されるかわからないからその自嘲の意味で、もう一つは願掛けだ。明日死ぬって毎日言ってりゃずっと生きられるだろ?」

 

「…本当だろうな?」

 

「本当本当、ニンギョウハウソツカナイ」

 

「なんでカタコトなんだよ…」

 

「死ぬ死ぬ詐欺というか、三年峠というか…」

 

意外な答えに三人は呆れるが、彼がそういう人形なのはもうわかりきっているため、とりあえずリバイバーの言う事を信じることにした。

 

「はぁ…とりあえず信用するけど、あまり疑われるような言動は控えて置きなさいよ?」

 

「肝に銘じておくよ…ま、人形に肝はないがなw」

 

「うるさいわね。それと、あなたを呼んだのはもう一つ理由があるわ」

 

「ん?なんだ?」

 

「前々から気になってたけど、あなた…()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

リバイバーの武装はどちらもアームを介して彼に接続されている。

F.E.F.G…正確にはそれを収める基部のアームは彼の左の肩甲骨辺りに、V.S.L.Cのアームは彼の右腰辺りに接続されている。だがその接続箇所は対称にある。それだけなら利き手を選ばないようにと説明が付くが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()のなら話は変わる。さらに言えば彼の持ってきた武装の予備は予備にしてはかなり良く出来ている。つまり─

 

「あなたは元々、それぞれの装備を一対ずつ装備していた、または装備する予定だった。違うかしら?」

 

「……」

 

しばしの沈黙の後、リバイバーは口を開く。

 

「半分正解だな。俺は今の装備が基本で、手こずるような奴ならフル装備で部隊引き連れて攻撃するって算段だ。自分だけじゃなく味方の主要部隊も防御しつつより凶悪な面制圧攻撃を行えるからジュピター以上の威力のある攻撃で突破するかバッテリーを壊されなきゃほぼ無敵さ」

 

「でもそのバッテリーはお前に付いてるからF.E.F.Gで守れると…ほぼ無理ゲーじゃねぇか」

 

「なるほどね…わかったわ。話はこれで終わりだから戻っていいわ」

 

「りょーかい」

 

そういいリバイバーは部屋から出て行き、バレットとスミスも続くように出て行った。途中、スミスがリバイバーに質問した。

 

「そういやリバイバー、そのフル装備の形態ってガイアみたいに名前があるのか?」

 

「あるぜ。ルインってのがな。まぁ容姿は変わらないが」

 

「ルイン…破滅か。確かにその通りだな」

 

────

 

後日、DG小隊とリバイバーはヘリアンとペルシカに召集された。

 

「H&R社の制圧?」

 

「ええ。S10地区の山岳部の坑道を不法占拠しているからそれを制圧するのを手伝えってグリフィンの上官から言われたんだけど…どうも怪しいのよね」

 

「怪しい、というと?」

 

ウェイターの質問にヘリアンが答えた。

 

「H&R社は調べたところ、随分前から存在が確認されている。さらに、先月にS11地区での合同任務に参加している。それなのに先月ではなく何故今更制圧を行う理由を聞いたら答えが曖昧だった。それに、その上官は以前より黒い噂があってな…」

 

「なるほど、正式に権利があるが向こうがでっち上げてる可能性があるわけか」

 

「そういうこと。それで、あなた達にはその上官の素性を調べて欲しいの。もしそれでもしクロならすぐさま彼を捕縛して作戦を中止させて。でも協力依頼されてるから全員出ないと怪しまれるからリバイバー、今回だけ独自行動を解禁するから()()()()()()参加して。EA小隊にも参加の連絡をよこすわ」

 

「……は?

 

ペルシカの一言にリバイバーは思わず固まった。

 

「なぁ…今、ルイン装備で独自行動って言ったか?」

 

「ええ。合同任務の時の向こうの武器を考えれば妥当だと思ってね」

 

「…こう言うのは言いたかないが、お前さん、お人好しが過ぎるんじゃねぇか⁉︎いや信用して貰えるのは嬉しいよ⁉︎だがな、元敵に火力増やして独自行動を解禁って正気⁉︎この時のために演技してた可能性もあるだろ?いや裏切らないけどさ⁉︎」

 

「そう言うと思って、前のメンテの時に射線上に味方がいる時に撃とうとするとトリガーロックがかかるようにしたわ」

 

「あの時か…だからさっきからバレット達は黙ってたのか」

 

「ペルシカの事だ、何かしらの対策は施してるだろうと思ってたからな」

 

リバイバーが納得したところでH&R社の情報について整理を始めた。すると、リバイバーがある事を尋ねた。

 

「なぁ、この社長のリホ・ワイルダーの特徴は『関西弁を使う銀髪の人形』で合ってるんだな?」

 

「ええ…そういえば、ペイロードの飲み友も同じ名前で特徴も一緒だったわね…もしかしたら同一人物の可能性が高いわね」

 

「それがどうかしたのか?」

 

「…多分こいつ、リホーマーだぞ?」

 

「リホーマー…前にEA小隊が戦ったっていうハイエンドか?」

 

「あぁ。お前さん方は知らないだろうが、その戦闘の後あいつは自分が何の為に戦っているのかわからなくなったっつー理由で鉄血を脱走したんだ。本来は幼女の姿のはずだが、処理能力を上げる為にボディを変えたか?直接会わなきゃわからないがほぼリホーマーで間違いないだろうな」

 

リバイバーの言葉に一同は考える。もしリホがそのリホーマーならグリフィンとしては撃破または鹵獲だろう。しかし…

 

「鉄血と縁を切って生活している彼女に鉄血っていう理由で危害を加えるのもなぁ…」

 

「しかし、もし不法占拠が事実なら放っておく訳にもいかないでしょう?」

 

結果、例の上官がシロなら鹵獲、クロなら作戦中止後、向こうの話を聞きその後交渉する予定となった。

 

「とりあえず、全員準備してそれぞれの場所に向かって。向こうの上官にはバレット達は緊急のメンテで来れないって伝えておくわ」

 

その後、バレット達は調査の準備を、リバイバーはルインへの装備を行った。また、リバイバーとバレット達、ペルシカはそれぞれ秘匿回線の通信機を持ち連絡を取り合うようにした。

 

(ルイン装備で行くのはこれが初だが、まぁ元々これで行動する前提で設計されてるから動きに問題はないか。しかし、リホーマーね…)

 

リホーマーはかつてリバイバーが経験し、そして一度死んだ蠱毒に関わっている。それ故リバイバーは鉄血時代は蠱毒に関わっておいて脱走し、のうのうと暮らしている彼女には自分達と同じ苦しみを与えてから殺してやると息巻いていたが、自身がグリフィンに寝返ってからは彼女の脱走理由に共感しているが、それで恨みが完全に消えたわけではなかった。

 

(手足のひとつふたつ吹っ飛ばしても、バチは当たらないだろう)

 

そう思いながらリバイバーは装備を整え、ヘリに乗って合流地点へと向かう。その途中、暇だった彼はある歌を口ずさんでいた。歌詞の内容が気に入り完全に歌詞を覚えて歌えるまでになっていたが、つい感情的になったらしく、それを聞いていたヘリのパイロットは「まるで恨み節のようだった」と言うほどであった。

 

一方で、ペルシカはある事について考えていた。

 

()()()()()、バレットには言わない方がいいわね…あの子、シスコン気味なとこあるからクロでもシロでもリホーマーの事、殺しはしないと思うけど、半殺しくらいはしそうね…でも、ペイロードはリホに前にも会ったって言ってたわね。もしかして、グリフィンの情報を得る為にペイロードに近づいた?バーで会ったのも偶然じゃなくてわざと?だとすれば…)

 

実際は違うのだが、天才故に考え過ぎてしまうペルシカであった。

 

─制圧作戦開始の時は迫っていた。




リバイバー・ルイン
要は武装倍加したリバイバー。個の戦闘より集団で戦闘を行う事を重視し、攻撃は言わずもがな、自身を全方位防御しつつ、味方も防御できる利点が大きい。

彼が歌っているのは『build our machine』です。聞けば彼の蠱毒やその関係者に対する気持ちがだいたいわかります。

リバイバーはこの状態でコラボに参加しますのでよろしくお願いします。


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Code-47 H&R社本部制圧作戦─番兵との対決

コラボその二です。

oldsnake様、リバイバーのせいでサクサク進む上にとんでもない事しますが許してください(バレット達が)なんでもしますから!

バレット達「オイ!」


合流地点へと着いたリバイバーは共に作戦を行うメンバーを確認していた。

 

(EA小隊とS07基地のメンバーがいるのか…二位(マーダー)もいるとなるとあまり彼女と一緒にいない方がいいな。それとペイロードがヤバかったら何としても守らないとバレットにシメられるから彼女にも気をつけないとな…あとは…)

 

リバイバーは先程から殺意を込めた目で睨んでいる人形、M16A4を見る。どう見ても共闘する仲間のものでない眼差しにリバイバーは嘆息する。

 

(バレットから話は聞いてたが、これほどとはね…。後ろ弾されそうだな、こっちは出来ねぇってのに…まぁ出来たとしてもあいつの妹に妖怪目玉ほじり(SOPMODⅡ)がいるから下手に手出し出来ないからな…)

 

そんな事を考えているとM16A4がリバイバーの方へ歩いてきた。

 

「…何かご用で?」

 

「お前の事はバレットさんから聞いている。あの人が信用してるなら俺も信用するが、妙な真似をしたら…わかっているな?」

 

「へいへい。だがな、幾ら鉄血が憎くても俺が何もしていないのに撃つのはやめろな?」

 

「それはこちらの判断次第だ」

 

「あっそ」

 

そう言いM16A4から離れるとリバイバーはH&R社の方を見る。バイザーに幾つかの人形の反応が現れ、その内の一つがリホーマーと判ったところでリバイバーは他のメンバーに連絡した。

 

「リバイバーから各員に連絡、リホ・ワイルダーは脱走した鉄血ハイエンド、リホーマーで確定だ。あと、大きい反応がひとつある。それ以外の反応は奥深くに幾つか固まっている事から、それらは非戦闘員でシェルターの類にいると思われる。非戦闘員の中にはG36、MDR、AA-12、FMG-9、TAC-50がいるから誤射に注意だな」

 

その後、作戦開始時間となり一行はH&R社のある坑道へ突入した。

突入から少し経ったところで、先頭に立っていたリバイバーは一度立ち止まった。突然の停止にバルカンは不審に思い、リバイバーに問いかけた。

 

「どうしたリバイバー?」

 

「…何もなさ過ぎる。ここから先に罠がある可能性があるな。見ててくれ」

 

そう言いリバイバーは近くの壁を殴って砕き、破片を幾つか持って前に投げると、壁からタレットが現れ破片を撃ち砕いた。今度は転がすように投げると、地雷に当たったのか、地面が爆発した。

 

「なっ…⁉︎マジかよ…!」

 

「これじゃまともに進めませんよ…」

 

フレイムの言う通り、このままでは罠を警戒しながら進まなければならず、最悪、罠にかかって死ぬ可能性もある。

が、リバイバーは気にせず一歩前に進んだ。

 

「おい、リバイバー。何をするつもりだ?」

 

「簡単だ。今から罠を壊すから、頭上に気を付けろ。一応電磁フィールドを張っておくがな」

 

リバイバーはM16A4の問いに答えるとバルカン達の頭上にF.E.F.Gを展開して電磁フィールドを張ると、二丁のV.S.L.Cを構えてレーザーを壁や床、天井を削り取るように照射した。

地雷やタレットの爆発する音が響き、数秒後にはボロボロになった坑道が辺りに広がっていた。

 

「これで奥のゲートまでは平気だ。一応まだ罠があるかも知れないから俺の後ろを一列についてきてくれ」

 

「あ、あぁ…」

 

「これ、途中で崩れたりしない?」

 

スコーピオンが心配そうに呟くも、一行は先へ進んでいった。

ゲートを潜り抜け、リバイバーは同じように罠を壊そうとするが、バルカンが待ったをかけた。

 

「リバイバー、床の罠だけ壊してくれないか?さっきみたいな事をしたらここが崩れるかもしれないし…」

 

「了解。壁や天井の罠は各自で対処してくれ」

 

リバイバーは床を薙ぎ払うように撃ち、地雷を無力化させて先に進んでいく。途中、タレットが現れるが、各自で対応していった。

 

しばらく進むとゲートが遠くに見え始めるが、ゲートの前に何やら巨大な人影が見えた。

 

「何だあれは?」

 

M16A4がそう呟いた瞬間、その人型はこちらに向かっていき、両手に構えたGSH-23を撃ち放った。

 

「─ッ危ねぇ‼︎」

 

とっさにリバイバーはF.E.F.Gを前面に展開して攻撃を防ぐ。彼らの目前で停止したそれは3メートル程の大きさの装甲兵─突撃者(アサルター)であった。

 

「あれは…⁉︎前にスクラップヤードで会った装甲兵⁉︎」

 

「なるほど…差し詰め番兵って訳か…」

 

そういいリバイバーはV.S.L.Cを構え、レーザーを撃ち放つ。しかし狙ったのはアサルターではなく、その先のゲートであった。レーザーはゲートを破壊し、その先の地面を抉っていった。

 

「こいつは俺が相手する。お前さん達は先に行け」

 

その意見に意を唱えたのはマーダーであった。

 

「あら?こんなイイ獲物をあなたが独り占めなんてズルくないかしら?」

 

「黙ってろ二位。射線上に味方がいるとロックがかかって全力が出せなくなるんだ。大人しく先に行け」

 

「二位?あぁ貴方、蠱毒の参加者なの?見た覚えがないけど、最初の方に死んだのかしらw」

 

嘲るように話すマーダーにリバイバーは不思議そうに首を傾げた。

 

「…?お前さん、記憶がないのか?あの時、俺と戦った筈だぜ?途中で横やりが入ってお開きになったがな。まぁ、お前さんとつるんでた黒髪の女との連携がヤバかったからちょうど良かったが」

 

「え…?それはどういう…ッ⁉︎」

 

リバイバーの言葉に疑問を持ったマーダーは突然頭を抱え始めた。

 

「おい、マーダー?」

 

「ちょうどいい。バルカン、マーダーを連れて早く行け。すぐ追いつく」

 

「…あとからそいつとつるんで俺たちを騙し討ちするんじゃないよな?」

 

「M16A4…いい加減疑うのやめてくれないか⁉︎そろそろ拗ねるぞ⁉︎」

 

疑いを持っていたが、M16A4はバルカン達のあとに続いていった。

当然それを防ごうとするアサルターだが、リバイバーが行手を阻んだ。

 

「おおっと、行かせねぇぜ〜?とりあえずこれでも喰らいな!」

 

アサルターに向けてレーザーを放ったリバイバーだが、レーザーはアサルターの装甲に当たった瞬間、曲がっていった。

 

「ッ⁉︎電磁装甲か⁉︎」

 

「……ッ‼︎」

 

お返しとばかりにアサルターも銃撃を加えようとするのを見たリバイバーは電磁フィールドを展開するが、アサルターが狙ったのはF.E.F.G『そのもの』だった。

F.E.F.Gが発生させる電磁フィールドは堅牢だが、F.E.F.G自体は電磁フィールドに比べれば脆い。とはいえ大口径弾はある程度耐えられる位はあるが、流石に何十発と撃たれればもつ筈もなく、瞬く間に四つが破壊された。

 

「…ッン野郎ッ!」

 

こちらの弱点に気付いたアサルターに驚きつつ、リバイバーは散弾状のレーザーをアサルターに浴びせる。当然レーザーは曲げられるが、幾つかは弾薬庫に当たったものの、アサルターはそれをGSH-23ごとパージした為大したダメージにはならなかった。

アサルターは槍を右手に構え、リバイバーに突撃する。リバイバーは間一髪避けるが抉られた地面を見て冷や汗をかいた。

 

(危ねぇ…‼︎接近戦は苦手だが、やるしかねぇか)

 

アサルターは再びこちらに突撃するのを見たリバイバーは今度は逆にアサルターに向かっていく。当然間合いが変わったためアサルターの動きが一瞬止まるがすぐに狙いを付け直すがどこか動きが鈍かった。よく見るとアサルターの身体にいくつか傷があるのをリバイバーは確認した。

 

(こいつ…もしかして故障しているのか?なら都合がいい…!)

 

アサルターの突きをF.E.F.Gを一つ犠牲にして防ぐとリバイバーは左のV.S.L.Cをアサルターの右肩口に押し当てた。

 

「この距離なら受け流せねぇだろ‼︎」

 

念のためにと最大出力で放ったレーザーは曲げられずにアサルターの右肩を貫き、右腕が地面に落ちた。

だがアサルターは左手を握りしめ、リバイバーのバッテリーごと腰を殴りつけようとする。咄嗟にパージしたので破壊されなかったものの、バッテリーは遠くへ飛んでいき、リバイバーも腰を殴られ地面に転がった。

 

「グッ…!(ヤベェ、残りは右のだけだが、最大出力で一発しか撃てねぇ…!)」

 

アサルターは左手に槍を持ち、ゆっくりとこちらに向かってくる。先程の攻撃で故障しているところに負荷が掛かったのか、ところどころ火花が散っていた。

 

リバイバーは右のV.S.L.C以外の武装をパージし身軽になると、両脚のリミッターと痛覚をカットした。

両者ともに睨み合い、武器を構えると互いに向かって突撃していった。

アサルターは身体の負荷から装甲や部品が剥がれ落ち、リバイバーはリミッターをカットしているため足を踏み締めるたびにミシミシと嫌な音が聞こえてきた。

両者の距離が縮まり、アサルターが渾身の突きをリバイバーに喰らわせようとするが、リバイバーは右足に力を込めて地面を蹴り、跳躍した。その際右の爪先が完全に砕け散ったが、突きを躱す事ができた。

 

「……⁉︎」

 

「一発あれば、十分だッ‼︎」

 

そう叫ぶとリバイバーはアサルターの胴体にV.S.L.Cを押し付けるとレーザーを放ち、アサルターの胴体を貫いた。

アサルターは二、三歩後退りをすると、ズゥゥンと音を立てて仰向けに倒れた。

 

「ハァ…ハァ…ルインじゃなきゃ危なかった…装備を付け直さないとな…」

 

リバイバーはリミッターを戻しつつ、右足を引き摺りながらパージした武装とバッテリーを回収しようとする。

…だがその時、倒れた筈のアサルターが上半身を起こし、リバイバーに向けて渾身の力を込めて槍を投げた。

 

「…⁉︎」

 

リバイバーはギリギリで気がつき、避けようとするが回避しきれず左腕に当たり、千切れ飛んだ。

 

「ガァァァァ‼︎こいつ、まだ動け…⁉︎」

 

リバイバーは傷口を抑えながら見るとアサルターは槍を投げた時の格好のままでいた。

どうやら今ので機能を停止したようであった。

 

「最後までリホーマーの為に戦うとはな…とりあえず痛覚は切って、武装を集めて合流するか…役に立つかわからんが」

 

リバイバーはふらつきながらバッテリーとパージした武装を回収し繋ぎ直すとバルカン達の跡を追っていった。




リバイバーとマーダー面識ある設定にしたりアサルターボコボコにしてすみませんでしたぁ‼︎(スライディング土下座)

で、でもコアは破壊したとは書いてないから許してくれますか…?(震え声)

ホント、バレット側好きにしていいので…


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Code-48 H&R社本社制圧作戦─裏の事情

コラボその三です。

バレット側の話ですが、結構事情がヤバいです。



リバイバーがアサルターを沈黙させた頃、バレット達はH&R社とその制圧を依頼した上官について調べていた。

そこでわかったのは、H&R社は兵器を開発し、それを売却しているのだが、その殆どがテロリストが悪用すれば危険な物と判明、さらには不法占拠が事実である事もわかった。

 

「ふむ…とりあえず作戦自体に正当性はあるが…そっちはどうだ?」

 

「こっちは…ん?これは…?」

 

「どうしましたスミス?」

 

「これを見てくれ。奴のパソコンのデータ内に侵入して見つけたんだが…多分リホーマーに宛てたものだが、会議なんてここ最近無かったはずだぜ?」

 

スミスが見せたのはワープロに残ったリホーマーに宛てた手紙の原本データなのだが、原本には会議で決めたとあるが、会議室を利用した記録はここ最近では無かった。

 

「それにこの内容…どう考えても向こうと事を構える前提だ。一週間で立ち退けなんてほぼ無理だろ」

 

「なるほどな…どうやらなんとしてもリホーマーが徹底抗戦させる為に会議で決めたって事にしたのか…だが、何の為に?」

 

「それに、俺らやEA小隊はわかるが、何故S07のBB小隊にまで依頼したんだ?」

 

BB小隊、かつてバレットとスミスが助けた基地にいた男性型人形、M16A4の所属する部隊だが、向こうには悪いが態々召集する程の実力かと言えばそうでもない。強いて言えばM16A4の鉄血に対する憎しみが尋常じゃないというくらいである。

 

「…ッ⁉︎隊長、これ!」

 

レストが見つけたのはS07基地に送られたメールであった。内容は、BB小隊が作戦に参加しなければ彼らの電脳をリセットする爆弾が炸裂するといったものであった。

 

「何てことを…!だが読めたな…これを突きつければあいつの性格上、大元の原因であるリホーマーに殺意を向けるのは明白だな」

 

「レスト、送信元は例の上官か?」

 

「あぁ…だがわからないな、何故こうまでしてリホーマーを潰そうとする?まるで奴本人に怨みがあるようだが…」

 

「それに、この上官の黒い噂なんですが、どうやらテロリストへの無益な拷問をしているとの事で、人形絡みではないんですよね。しかも、ここ最近になってからだそうで…」

 

ノアの報告を聞き、バレットは考える。

テロリスト、つまり人間への異常な執着を示した彼が何故リホーマーにこうも執着したのか、また何故最近になって先のような事をしたのか。

気になったバレットは彼の交友関係と彼がそうなり始めた時期に起きた事件について調べ始める。すると、ある記事が目に止まった。

 

「これは…⁉︎スミス、彼が最近調べていた事とかはわかるか?」

 

「あぁ、わかった……ッ⁉︎バレット、これって…!」

 

「やはりそうか…どうもこの作戦、後味が悪くなりそうだな…」

 

────────

 

バレット達は銃を構えて上官のいる部屋まで急行していった。とはいえ、バレットに関してはサイドアームのベレッタM9を携行していた。

扉の前まで行くと事前にペルシカから受け取ったマスターキーでロックを解除し、五人は一斉に中に入る。

 

「動くな!…そのまま手をあげてこっちを向いてもらおうか…」

 

バレットが上官に指示するが、当の本人はまるで来るのがわかっていたかのようにこちらに振り返った。

 

「…やはりメンテナンスと言うのは嘘だったか。ここに来たということは、全てわかったのだな」

 

「あぁ。あんたがBB小隊に爆弾を埋め込んで脅したのも、リホーマーに戦うことを暗に示したのも全て…

 

 

 

 

 

 

 

あんたの奥さんと娘の仇だろ?」

 

「……」

 

黙っている上官を見ながらバレットは続けた。

 

「きっかけは先月の初めに某地区で起きた人権団体過激派による大規模テロだ。あのテロは人形人間問わず多数の死者が出た。そしてあんたの奥さんと娘はたまたまあの場にいてテロに巻き込まれて死んだ。それであんたはそのテロについて調べたところ、不審なところが幾つか見つかった」

 

端的にいえば、装備が整い過ぎていたのだ。連中の中には粒子ライフルらしきものを使用していたのだが、それが鉄血の物に酷似しているが改造が加えられており、とても彼らの技術で造れるものではなかった。また、現場にはゴリアテの破片があったが、()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()

 

この事を知った上官は手当たり次第にテロリストを捕らえて過度な拷問を行い武器の出所を探った。そして彼は真実を知ったのだ。

 

「あのテロで使われた装備は…H()&()a()m()p();()R()()()()()()()()()()だって事に気づいたあんたはその後H&R社がグリフィンに協力していた事を知った。本来ならそこで本部から部隊を借りて行動しようとしたが、ちょうどそこでS地区で鉄血の大攻勢が起きてその後始末で部隊を集められず、今になって行動を起こした…周りを巻き込んでな。違うか?」

 

そこまでバレットが言って初めて彼は口を開いた。

 

「…正解だ。武器の出所を知った時、私は直感でリホ・ワイルダーが鉄血だと感じた。それと同時に彼女は鉄血を抜けたのではと思った。鉄血の作戦にしては周りくどいからな。こういうご時世だ、武器商人としてやっていた彼女をテロリストが身分を偽って買ったのだろうと思って彼女を放って置こうと思った…捕まえたテロリストからラジオ放送のデータを渡されるまでは…‼︎」

 

彼は憤怒に満ちた表情を浮かべ始めた。

 

「ステルス性のゴリアテ…妻と娘の命を奪ったあの恐るべき兵器をあいつはまるで通販のような物言いで宣伝していた‼︎私は決心した…こいつは生かしては置けない、このままだとこいつはヘラヘラした態度で恐ろしい兵器を売りつけると!しかも奴はあまつさえグリフィンと協力し、自らを宣伝しようとした!私はすぐにでも攻撃を行いたかったが君の言った通り、S地区襲撃の混乱で行動出来なかった…そして混乱が落ち着いた今、その時が来た!」

 

「本社の会議で決めたって偽ったのは向こうにグリフィン本社に狙われたから逃げられないと思わせるためか」

 

「その通り!その後EA小隊と君たちDG小隊に協力を依頼した。この手の依頼なら乗る可能性があったからな…BB小隊を脅したのはM16A4の反鉄血感情を刺激して確実に奴を仕留めさせるためさ!」

 

狂気じみたようすで語る上官にバレット達は敵意を感じるなか、レストが彼に語りかけた。

 

「…復讐したい気持ちはわかる、だがな…関係ないやつを脅して利用する復讐を、俺は認めない。それに、俺たちに依頼すればあんたを疑って調べる事くらい予想できたんじゃないのか?」

 

レストがもっともな意見を出すと、上官はニィ、と唇を吊り上げた。

 

「…わざと、だとしたら?」

 

「何?」

 

「君らが私を疑う事は知っていたさ。だが、私を調べる途中でH&R社がやった事も調べるとふんだ。実際見つけられたからな。そして君らはその情報を隠蔽するような人形じゃないとわかっている」

 

「…何がいいたい?」

 

「この作戦で奴、リホーマーを仕留めようが仕留めまいが奴は『テロに加担した人形』として追われる羽目になる。しかもリバイバーの情報によれば奴は鉄血にも追われてると聞く。それがわかれば()()()()()()()()…」

 

意味深な一言にバレットが訝しんだ瞬間、彼は突然血を吹き出した。見ると彼の足元に薬品の瓶が転がっていた。

 

「こいつ、毒を…⁉︎」

 

「おい待て!BB小隊の爆弾を解除しろ!」

 

「すでに…したさ…正直、彼にはすまないと…思っている…。復讐のためとはいえ…彼に戦いを強いてしまった…」

 

「さっき…情報がきて…リホーマーと会敵したそうだ…どうやっても…あいつは…逃げられない…なら私は…家族のもとに…」

 

そういい彼は事切れた。バレットは軽く歯軋りをしたあと、リバイバーに連絡した。

 

「リバイバー、そっちはどうなってる?」

 

『今、番兵を倒してバルカン達を追っかけてるとこだ…左腕と右の爪先がお陀仏になってるがな』

 

「わかった。リバイバー、BB小隊に爆弾は解除したと言ってくれ。それと、リホーマーに過激派に兵器を売ったか聞けたら聞いてくれ」

 

『わかった…もしそうならどうする?』

 

「潰せ。違うなら販売相手をよく考えることと、一ヶ月猶予をやるから立ち退けと警告して作戦を中断しろ」

 

『了解』

 

「…いいのか?勝手に決めて?」

 

「元々クロなら中断する予定だ。だが、どっちもクロならこれが最適解だと思う。あとの責任は取る」

 

スミスの質問にバレットはそう答えるとヘリアンとペルシカに現状を報告した。




Q. テロって?

A.焔薙様の『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』で語られたテロの事です。規模がアレだったので拾いました。

要はコ○ンとかの犯人みたいな動機ですね。

バレット達の出番はここまでなので、oldsnake様、あとは任せます。


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Code-49 作戦の後始末

これくらいは誤差だ!(震え声)

デートを期待した方すみません、クリスマスでも働くのは人間も人形も一緒なんです!


制圧作戦から一日が経ち、世間ではクリスマスムードの中、DG小隊はその後の後始末に追われていた。

 

まずリバイバーだが、左腕と右の爪先を欠損、さらにリミッターをカットした事による脚部の過負荷、他にも全体的にボディにガタが来ていたためオーバーホールを受ける事になった。(本人曰く、『前世』以来の大怪我との事である)

 

また、H&R社の更なる調査を行った結果、取り引き相手を選別している事がわかり、また例のテロリストは巧妙に身分を偽っており、H&R社がテロリストと結託している疑惑は晴れた。

しかし、リホーマーは最後に施設を自爆させ坑道は崩落、社員に罪を被らないようにし本人は死亡した。と、思われたが…

 

「リホーマーは生きてるかもしれない?どういう事だ?」

 

バレットの質問にリバイバーはホログラム越しに答える。彼は現在電脳空間内にメンタルモデルを入れてる為、このような状態だった。

 

「爆発する直前にバイザー越しに見てたんだが、奴の反応が文字通り『消えた』んだ。死んだにしては反応が変だったし、恐らくテレポートか何かで逃げたんだろうが…元々死に体の反応だったし、ワープ先で死んでる可能性も否定できないがな」

 

「なるほどな…」

 

「それで?お前さん、せっかくのクリスマスがこんな事になって、彼女さんは怒ってないのか?」

 

「いや、事の経緯を説明したら理解はしてくれた。だけど少し寂しげだったから埋め合わせはするつもり…って、何故それをお前に言わなきゃならない?」

 

「いや〜こちとら暇なんだよ。ボディが治るのに時間がかかるから仮のボディをペルシカが用意してくれるみたいなんだけどな。それまで…おい、どこ行くんだ?」

 

「まだ事後処理がある。一人でボディが来るまで待ってろ」

 

そういいバレットは部屋から出て行った。

なお、その仮のボディを見てリバイバーは

 

「…()()()()()()寄越すなんて正気かあの天災がァァ‼︎」

 

と叫んだのは別の話である。

 

資料室に入ったバレットは先にいたスミス、レスト、ノアと共に事後処理を行なっていた。ウェイターはというと、別室でフィオナと共に報告書を纏めていた。

 

「にしても、後味の悪い作戦だったな…」

 

「そうですね、あの上官にしてもリホーマーにしてもそれなりの理由がありましたからね…」

 

「だが、そのおかげでこちとらクリスマスに仕事だからな…悪いな二人共、何か予定あったんだろ?」

 

スミスがレストとノアに声を掛けると二人はいいえ、と首を振って答えた。

 

「別に気にしてはないさ、こういう事もあり得るなとは思っていたしな」

 

「私もです。それに…レストさんと一緒に居れるならそれだけで大丈夫です」

 

ノアがはにかみながらそう言うとレストは顔を赤くして片手で覆ったあと、バレットに真剣な顔をした。

 

「隊長…これ終わったら休暇申請して大丈夫か?

 

「大丈夫だ。それに、俺も申請する予定だ」

 

ちょうどその時、バレットの通信機が鳴り始めた。

 

「ん…?あぁウェイターか、どうした?……大丈夫だ。終わったらすぐ申請しな」

 

通話を切ったバレットにスミスが質問した。

 

「バレット、何となくわかるがウェイターは何だって?」

 

「休暇の申請だ。おおかた向こうも同じこと言われたんだろ」

 

「お前達息合いすぎじゃないか?」

 

その後、彼らは事後処理を終え、バレットらは休暇申請を提出、無事受理された。

 

────

 

その日の夜、スミスは部屋に戻る為、一人廊下を歩いていた。

 

(思えばリバイバー除けば恋人いないの俺だけなんだよな…なんかあいつら見てると羨ましくなるな…)

 

ふとスミスの脳裏に()()()()の姿が浮かんだが、すぐにスミスは頭を振った。

 

(いやいや、確かに()()()の事は気になってはいるが、向こうはそういうの興味なさそうなんだよな…)

 

そう考えてると部屋まで着き、扉を開けて電気をつけた瞬間、彼はギョッとした。

 

─リボンでグルグル巻きになったバルカンがベットで寝ていたのだ。

 

(は?え?何でいるの⁉︎ここ俺の部屋…だよな?)

 

スミスは一度部屋を出てここが自分の部屋である事を確認すると、ますます混乱した。

 

(まさか自分で?いや、バルカンはこんな事するような奴じゃないしな…とにかく、寝ぼけただけかもしれないから起こすか…)

 

スミスはバルカンに近づくと体を揺さぶって起こそうとした。

 

「おーい、バルカン起きろー」

 

「んにゃ…何だ…⁉︎ええっ⁉︎何でスミスがここに⁉︎あれ、これどうなってんだ?」

 

「それはこっちが聞きてぇよ…」

 

驚くバルカンを前にスミスは若干焦っていた。まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

スミスが気になっていた人形、それはバルカンの事であった。




いやね、oldsnake様からこう言う提案をされましてね。あとは任せますよ?
続きは向こうで待っていてください。
あと、今回アンケートとります。


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Code-50 パトロールと仮ボディ

スミスとバルカンに何があったかはこちらを見てください!

https://syosetu.org/novel/180532/215.html

アンケートの結果、リバイバーの仮ボディは女性となりました!
皆さん、投票ありがとうございます!


翌日、ペルシカから任務の連絡がありDG小隊は会議室に集まった。

リバイバーがまだ来ていないが、スミスが口を開いた。

 

「…リバイバーがいないが、みんなに言っておきたい事がある、俺…昨日からバルカンと付き合う事になった」

 

「ほぉ…!よかったじゃないかスミス」

 

「おめでとうスミス」

 

「おめでとうございます、スミスさん!」

 

「おめでとうございます…それで、告白はどちらからで?」

 

「向こうからな、『付き合ってくれって言ったらどうする?』って聞かれて…向こうも恥ずかしかったのか話題を変えようとしたんだが、呼び止めてOKの返事を出したって感じだ」

 

「なるほどな…こっちも向こうも任務とかで中々会えないだろうが、大切にしとくんだぞ」

 

「お前に言われんでもわかってるっつの」

 

ちょうどその時、ペルシカが会議室に入ってきた。さらにそこから()()()()()が入ってきた。

 

黒のレディースコートに黒のデニム、銀髪のロングヘアーをしたその女性は不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。

その目の色が青だとわかった瞬間、バレット達は目の前の人物が誰かわかったが確証が持てず黙っていた。すると件の女性が口を開いた。

 

「…(こうべ)を垂れて(つくば)え、平伏せよ」(CV:榊○良子)

 

「何ふざけたこと言ってんだリバイバー、てかその姿と声はどうした?」

 

「そもそも本当にリバイバーかお前?」

 

バレットとスミスの質問にリバイバーと思しき女性は答えた。

 

「如何にも。私は貴様達の知るリバイバーで確かだ。元のボディが治るまでの間の仮のボディというわけなのだが…ペルシカ、今一度問う。何故(なにゆえ)このボディを私に寄越した?」

 

やたらと威圧感のある声に少し怯みつつもペルシカはリバイバーの問いに答える。

 

「いやね、前に女性人形の男性素体を造ったからその逆もいけるかなと思ってやってみたんだけど…どうかしら?」

 

「正直不満だらけだが、別のボディを用意するとなればその分元のボディの修理に時間がかかるのだろう?ならば我慢するしかあるまい」

 

「というより、違和感はないのか?」

 

「それに、何か性格も変わっていませんか?」

 

「違和感は始めこそあったがもう馴染んだ。性格に関しては流石にこの声と姿で『俺』は変だし、あの喋り方はこの声に合わない。だからわざと変えている」

 

「不満という割には結構ノリノリねあなた…とにかく、今回の任務について説明するわね」

 

任務と言えば少し大袈裟なのだが、端的に言えば街の見廻りである。本社周りは治安が良いとはいえ、年の瀬に乗じて良からぬ事を企む者が居ないとも限らない。一応本社所属の人形も見廻りに参加しているが、手が多いに越したことはない。

 

「それじゃあ早速頼むわね」

 

「待て、リバイバーの装備はどうすんだ?あれはあのボディじゃないと使えないんだろ?」

 

「それについては問題ない。このボディ用の装備は用意して貰っている」

 

リバイバーがそう言いパチン、と指を鳴らすとコートの裏から小型のビットが十個ほど飛び出してきた。

 

「これが今の私の武器だ」

 

「ちなみに小型だけど、私が(魔)改造したから威力はスケアクロウのよりあるし、ある程度は拡散できるわ。しかも複合カメラもついてるからそれと視覚を共有できるわよ」

 

「仮のボディの割には随分良い装備だな」

 

「中途半端に造るのが嫌だっただけよ」

 

「試運転の方も問題ない。では行くぞ」

 

「何でお前が仕切ってんだよ…」

 

────

 

年の瀬という事もあり、街はいつも以上の賑わいを見せていた。

 

「今年ももうすぐ終わりか…にしても、今年は色々あったな」

 

「まぁな…」

 

今年になってからDG小隊の存在を公表させてからというもの、バレットに姉妹と彼女が出来たことやレストの復讐達成、フィオナの意識回復そして最近ではスミスに彼女が出来るといった事が起きた。また、他の基地や部隊との繋がりも持ち、異世界へ来訪したりもした。

無論リバイバーの誕生やS地区襲撃といったイレギュラーも起きたが、誰も欠ける事なく年を越せるのは大きい事である。

 

ちなみに当のリバイバーはというと、街ゆく人の注目を集めていた。

黒で統一された服に映える白い肌に長い銀髪、鋭い目つきをした顔つきは女傑じみた雰囲気を纏っており、正体を知らない者から見ればどこのモデルかと疑うほどのものであった。

そんな彼?彼女?に勇気があるというか無謀というべきか、いかにも遊んでますといった風貌の男が数人寄ってきた。

 

「よう姉ちゃん、暇なら俺らと遊ばないかい?」

 

「…私の事を言っているのか?」

 

男達は一瞬リバイバーの声に怯んだが、構わずナンパを続けようとした。

 

「そ、そうだよ。お姉さんカッコいい声だね」

 

「それで?どう?今夜暇?」

 

「悪いが仕事中だ。まぁそうじゃなくとも、貴様らと遊ぶつもりはない」

 

そう言わずにさ、と男の一人がリバイバーの肩に手を乗せようとした瞬間、リバイバーはその手を払い退け、胸倉を掴み上げた。

 

「ヒィッ⁉︎」

 

「…断るといったのがわからなかったのか?しつこい男は嫌われるぞ?別にナンパをするなとは言わん。だが相手を選んでする事だ、私は今仕事の邪魔をされて機嫌が悪い。それは貴様達も分かるな…?」

 

「「「は、はい…」」」

 

「ならばとっとと消え失せろこの俗物ッ‼︎」

 

「「「イ、イエスユアハイネスッ‼︎」」」

 

男達は一目散に逃げ去っていった。リバイバーは溜息をつきながら

 

「まったく…メンタルモデルが男だと見てわからないのか」

 

「「「「「いや無理があるだろ(でしょう)」」」」」

 

その後見廻りを続け、特に事件などは起きず一日を終えDG小隊は本社へと帰っていった。なお、リバイバーはその間にナンパ一回、モデルのスカウトを二回ほど受けたがそれぞれ丁重に断った。

 

────

 

16Labの一室でリバイバーはペルシカに質問をしていた。

 

「してペルシカよ。私のボディはいつ修復が完了する?」

 

「あなたのボディの修理にもやることがあるから、数週間はかかるわね」

 

「…つまり私はこの格好で年を越せと?」

 

「そうなるわね」

 

「…なるべく早く頼む、馴染み過ぎると元に戻った時のズレが大きくなるかもしれん」

 

そう言いリバイバーは出ていった。その後ペルシカはパソコンを弄り始めた。

 

(この機会に今一度リバイバーのボディを詳しく調べてみましょう。まだ何か隠してそうだし、何より…彼のメモリーから蠱毒のデータが取れれば良いんだけど…)




Q.何故にCV:榊原○子?

A.私の趣味だ、良いだろう?

多分このリバイバーならエリザも従えそう。
しばらくはこのままで行きます。
ちなみにショタボディの場合、ブラコンでショタコンのヤベー奴(M82A1)に追い回されるハメになっていました。

多分これが今年最後の投稿です。皆さん、良いお年を‼︎


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Code-51 新年の出来事

明けましておめでとうございます!

今後ともこの作品をよろしくお願いします。



新年を迎え、レストはノアから初詣の誘いを受け先に厚着に着替えて待っていた。そして待つ事十数分程経った時であった。

 

「レストさん、お待たせしました」

 

「あぁ、じゃあ行こうk…ッ!」

 

振り向いたレストは思わず息を呑んだ。

てっきり冬服で来るのかと思っていたのだが、彼女が着ていたのは着物であった。普段とは違った雰囲気にしばしレストは見惚れていると、ノアは黙っているレストを見て不安そうな顔をした。

 

「あの…どう、ですか?」

 

「…!あ、あぁ。すごく似合ってるよ」

 

それを聞きノアはホッとした笑みを浮かべる。ただそれが今のレストには結構な破壊力があり、思わず抱き締めたくなったが着崩してはいけないと思い、レストは気持ちを抑えつつノアの手を引いて神社へと向かっていった。

少し遅く来たとはいえ、境内は人や人形が集まっていた。二人は離れないよう手を繋いで賽銭箱まで歩いていった。

賽銭を投げ入れ、二礼二拍手し二人はそれぞれ願い事を心の中で祈る。とはいえ、二人が考えてる事は同じであった。

 

((今年も俺たち(私たち)が無事に過ごせるように))

 

その後、二人はおみくじを引こうと売り場まで行くがそこには膝から崩れ落ちているヘリアンの姿があった。

 

「レストさん。あれ、ヘリアンさんですよね?」

 

「あぁ…どうしたんだろうな?」

 

「何故だ何故私が十回連続で大凶で彼女が大吉なんだ日頃の行いか?それとも私はそういう運命にあるのか…」

 

ブツブツと呟く彼女を見て事情を察した二人は関わらない方がいいと考えその場をあとにし、出店を回ることにした。その後二人は出店を巡って食べ歩いたあと、本社へと戻っていった。

 

「ふぅ…意外と人が多かったな…ってうぉ⁉︎」

 

レストの部屋に入るやいなや、ノアはレストに抱きついた。レストは突然の行動に驚いたものの抱き締め返し、頭を撫でた。

 

「…どうしたんだ、急に?」

 

「…今日ずっとレストさんが抱き締めてくれなかったのでつい…」

 

「あー、それは…」

 

「わかってますよ。着物が崩れないように我慢してたんですよね?レストさんのそういうところ…私は好きです」

 

「ノア…っ⁉︎ちょ、何を…?」

 

そう言われた後、レストはノアに押し倒され軽くパニックになった。

ちなみにだが、あの日(Code-39参照)以降、何回かはシてるがここまで積極的なのは初めてのことであった。

 

「あの…どうした?」

 

「…その、着物って下着を着けないって聞いたので恥ずかしかったのですがその通りにしたのですが…その…ちょっと興奮しちゃいまして…」

 

誰から聞いたんだそれと言う前にレストは唇を塞がれた。

数十秒ほどして口を離すとノアは目を潤ませながら

 

「こういう事してこんな事聞くのはズルいとは思いますが…ダメ、ですか…?」

 

「……大丈夫だ」

 

その後二人がどうなったかは言うまでもないが、後日着物用の肌着があると聞かされ、ノアはしばらく部屋に閉じ篭もったのは別の話である。

 

────

 

「もしもしDSRか?次の休みっていつかわかるか?クリスマス出掛けられなかったからその埋め合わせをしようと思うんだが…」

 

バレットはDSRに連絡をしていた。生憎今日は彼女の方で見廻り任務があったため出掛けられなかったため、予定の空いてる日を聞き出していたのだ。

 

『そうね…5日後が空いてるわね』

 

「5日後だな?わかった」

 

『ふふ、楽しみにしておくわね』

 

「あぁ。待っていてくれ」

 

バレットは通信を切る。その日のデートで彼は彼女に名前をつけるつもりであった。

 

(気に入ってくれると良いんだがな…あとは当日どうするか考えとくか)

 

そう考えながら廊下を歩いていると慌てている様子のスミスと遭遇した。

 

「ん?どうしたスミス?」

 

「あぁ、何かバルカンが神社で居なくなったって聞いたからちょっと探しに行ってくる」

 

「そうなのか?わかった。何かあったら連絡してくれ」

 

「そのつもりだ。あ、場所が場所だからもしかしたら神隠しかもしれないから、その場合どうすればいいか一〇〇式とかに聞いてくれないか?」

 

「あ、あぁ…」

 

その後、スミスは日暮れまで探し続けるが見つからず、誘拐の可能性も考えていたが後日無事に戻ってきた事を知り安堵したスミスであった。




着物スキンの9A-91の重傷絵見たけどアレ絶対着けてないよね⁉︎
ちなみにこれ書いてるときにガチャったら出ました。書けば出るってホントなんですね。
なお、描写はしてませんがウェイターはフィオナと部屋デートしてます。

最後のは彼女行方不明になったら心配するよねって事で書きました。


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Code-52 年明け任務

年明け(もう一月半ば)
すみません、仕事始めから結構多忙で遅れました…




「で?バルカンは無事だったのかスミス?」

 

ある日、盗賊の拠点殲滅任務のため現地へ向かっている途中、バレットはスミスにそう尋ねた。

 

「あぁ。初めはリホーマーの肩持ってたから洗脳されたのかって話だったが、調べてみた結果、問題無かったみたいだ。俺も直接会って幾つか質問したけどだった」

 

「そうか…質問って具体的には何を聞いたんだ?」

 

「自分の名前と所属部隊とその仲間、最近やった作戦、あと誰と付き合ってるか

 

「最後いらないよな?」

 

「それ聞いた瞬間真っ赤になって恥ずかしそうに答えたのが滅茶苦茶かわいかったです」

 

「そこまで聞いてねぇよ」

 

「それで、盗賊共の拠点はどうなっているのだ?」

 

後部座席で腕と脚をそれぞれ組みながらリバイバー(未だ♀)が二人に聞き出した。

 

「やたら偉そうだなリバイバー…まぁいい、改めて説明するか」

 

盗賊が拠点にしているのは第三次世界大戦時に使われていた防空壕であり、内部は入り組んでいるが出入り口は一つのみで制圧は比較的容易であった。

 

「なるほど…内部制圧なら小回りの効くビットが使えるこのボディの方が都合が良いのか」

 

「まぁな。俺が出入り口を制圧するからお前達は内部を頼む。資料によればそこまで広くはないが改装されてる可能性もあるから注意しておけ」

 

数十分後、盗賊の拠点近くまで辿り着いた一行は配置につき始める。

出入り口には四人の男が見張りに出ており、会話の内容からして彼ら以外の全員は中で次の目標を決めているらしい。制圧中に戻って来た盗賊に挟撃される恐れが無くなったところでスミスはバレットに連絡した。

 

「こちらスミス。連中は見張り以外は全員中にいるみたいだ。見張さえ倒せば問題無い」

 

「こちらバレット。了解した。こっちも狙撃ポイントについたからすぐ仕掛ける」

 

通信を終えて数秒後、銃声が聞こえた後男たちの頭がほぼ同時に吹き飛んだ。

 

「(あいつ、最近ダミーの精度も上がってないか?)良し、行くぞ!」

 

スミス達が中に突入し、制圧を始める。盗賊達も異変に気づき応戦するが、元は防空壕でしかもロクに改装もしていなかったため、遮蔽物は殆どなく出てきた側から撃ち倒されていった。

リバイバーはというと、見た感じ丸腰の姿を見て油断したのか、盗賊がリバイバーに向かっていった。

 

「迂闊だな…ビット展開‼︎奴らを撃てッ‼︎」

 

リバイバーはビットを展開し、迎撃していった。

やがて情報が伝わったのか、待ち伏せを行い始めて来た。リバイバーはいつものクセでそのまま突撃しようとしたがボディが違うことに気づき一度身を引いた。

 

(不味いな…いや、このビットの機能を応用すればいけるな)

 

リバイバーはビットの視覚共有機能を使い、ビットのみを先行させる。

流石に小型のビットを撃ち落とせず、盗賊達は次々にやられていく。

すると、盗賊の一人が捕虜にしたであろう人形を盾にし始めた。

 

「チッ…愚劣な…!」

 

「オイ!こいつが惜しかったらすぐに攻撃をやめろ!()()()()他の奴にも伝えろ‼︎」

 

「…ッ!わかった、応じよう」

 

立場上見捨てるわけにいかないリバイバーは攻撃をやめ、スミス達にも連絡をした。スミス達も攻撃をやめ、その後盗賊達が十名ほど出てきた。そのうち五人は先ほどの盗賊と同じく捕虜の人形を連れていた。

盗賊達はスミス達を見ながら出入り口に向けて後退りし始めた。

 

「余計な事をしたらこいつらの命はねぇからな…」

 

上手いこと人形を盾にしている為、彼らを撃ち倒す事は()()()()()()ほぼ不可能であった。

やがて出入り口まで着き、盗賊達が防空壕から出た瞬間、人質を取った五人の頭部が吹き飛んでいった。狼狽た残りの盗賊達はスミス達の反撃に遭い倒れていった。

 

「上手くいったなバレット」

 

「あぁ。にしても、何でこいつら俺から狙撃される可能性を考慮しなかったんだ?」

 

あの時、リバイバーは盗賊はバレットの存在に気付いていないことに気づき、バレットにも連絡し、連絡を受けたバレットは彼らを真横から狙撃できる位置まで移動し実行したのだが、それにしても敵の迂闊さに疑問を抱いていた。

 

「多分、俺らのツラみて何の反応もしなかったから最近盗賊になったばかりで俺たちの事を知らなかったとかだろ。戦い方も雑だったし」

 

「まぁいい、とにかく任務完了だ。彼女達を保護して引き揚げるぞ」

 

その後、彼女達を保護しDG小隊は帰還していった。

また、彼女達の話によればやはり盗賊達は最近出来たばかりの集団で、さらには色々な噂が混同した結果、誰がどの部隊にいるのか不明になっていたという何とも間の抜けた話であった。

 

────

 

それから二日ほど経ち、DSRとのデートの日となりバレットは準備を進めていた。

 

(ある程度プランはできてる、あとはその時の流れで変えていくか…)

 

「お、これからデートかバレット?」

 

「あぁ。万一の時は頼んだぞスミス」

 

「りょーかい。ま、楽しんでこい」

 

バレットが出掛けるのを見届けたあと、スミスは腕を組んで考えていた。

 

(バルカンの誕生日が近いってペルシカから聞いたからな…プレゼント何にしよう?うーん…)

 

その一方で、リバイバーは自室で今のボディについて考えていた。

 

(本当にすごいなこれは…メンタルモデルとボディの性別が違ってもこうも動くとは…鉄血じゃエラーで動かないというのに…)

 

ここでふとリバイバーはある事を思い出した。

 

(そういえば…私を造る時にボディ側のエラーで動かなくなったあのAI…()()()()()()?あのまま用済みにするとは思えんが…)

 

何か得体の知れない不安を感じたリバイバーであった。




出入り口一つしかないのに狙撃警戒しないって愚策の極みでしょ(他人事)
しかも人質って負けフラグ全開じゃないですかー!
最後のは…まぁ、そういう事です。ヤバめの奴にするつもりですのでご了承を。

さーて、次回はデートでその後向こうの誕生日イベント考えなきゃだし脳味噌フル回転でいきますか!



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Code-53 彼女の名前と大きな異変

スマヌ…仕事が忙しいんじゃ…
多分投稿ペースが落ちると思いますがご了承下さい。


「ねぇバレット、今日は何処へ行くのかしら?」

 

本社から出たDSRはバレットにそう尋ねる。

 

「とりあえず街へ行って気になるものがあれば見に行こうと思う。こういうのも悪くはないだろ?」

 

「ふふ、そうね」

 

そういい彼女はバレットと腕を組み始める。だがこういった事に慣れていないバレットは慌て始める。

 

「えっと…どうした急に?」

 

「任務で中々会えないからこうしてデートできるのが嬉しくて…駄目かしら?」

 

「いや…平気だが…」

 

なら良いじゃない、とDSRは微笑みながら歩いていく。腕を組んでいる関係上、当然彼女の胸が腕に当たっているわけなのだが、それを指摘したところでわざとやっているのは明白である上、時折こちらを妖しげな目で見ているところを見るに、バレットの反応を見て愉しんでいるようであった。

 

(初めからこれとは…やはりこういう事は彼女の方が一枚上手か。まぁいい、それならそれで対応するか)

 

街に着いた二人はまず雑貨屋へ寄り食器やアクセサリーを眺めていた。

 

「何か気になるものはあるか?」

 

「そうね…これが気になるわね」

 

「花の髪飾りか…すみません、これをください」

 

「え、いいの?」

 

「今日の記念ってことでプレゼントするよ」

 

そのまま会計を済ませて店を出た後、DSRは早速髪飾りをつけた。

 

「どうバレット?似合うかしら?」

 

「あぁとても似合っているよ」

 

「…っ!ありがとう、次はこっちに行ってみましょう」

 

それを聞き彼女は嬉しそうに目を細め、バレットの手を引いて街の散策を始める。バレットはその間DSRの髪飾りを眺めていた。

 

(…これは…偶然、だよな…?)

 

────

 

途中の店で昼食を取り、街を一通り見て回った二人は街から少し離れた丘に行き、そこから街を眺めていた。髪飾り以外に買い物はしていなかったが、DSRの様子を見るにどうやら今回のデートは上手くいったようである。

しばらくしてバレットはDSRの方を向き、彼女に話しかける。

 

「なぁ、前に名前をつけて欲しいって言っていたよな?」

 

「ええ。もしかして、考えてくれたの?」

 

「あぁ。まさか君が同じ名前の髪飾りを選ぶとは思ってもいなかったがな」

 

「え?もしかして、これが…?」

 

バレットが考えていた彼女の名前、それは彼女が今付けている花の髪飾りと同じ『アスター』であった。

花言葉には『信じる恋』や『私はあなたを思うでしょう』などがあり、また色によっても花言葉があり、彼女が付けてる髪飾りの色は紫でありその花言葉の一つに『私の愛はあなたの愛より深い』というものがある。

花言葉についてある程度知識のあるDSR、改めアスターはその意味もわかっていた。

 

「…あー、少し重いか?気に入らなかったんならまた考えるが…」

 

「いいえ。寧ろそれだけ私の事を思ってくれて嬉しいわ。バレット、素敵な名前をありがとう」

 

アスターはバレットに抱きつき、バレットも彼女を優しく抱き締める。

 

「…これからもよろしくな、アスター」

 

アスターの耳元でそう囁くと彼女はピクッと体を震わせると耳を赤くし、小さな声ではい、と呟いた。

 

(ただ名前を呼ばれただけでこんな気持ちになるなんて…本当、この人と付き合えて良かった…!)

 

その後二人は手を繋いで本社へと戻っていったのであった。

 

────

16Lab

 

「フハハハハハ‼︎やはりこのボディは良く馴染むッ‼︎」

 

元のボディが修復したと聞きリバイバーは早速16Labに向かい元のボディへの換装を行った。

結果はご覧の通り、久方ぶりの本来の姿にかなりご機嫌であった。

 

「うるさ…修復するの大変だったから不用意にリミッターを解除したりしないでよね?」

 

「あぁわかっているさ、そもそもあんなレベルの奴と戦う機会なんかないだろ?それで、あのボディはどうするんだ?」

 

「とりあえずこっちで保管して、必要があればまたアレに換装して出てもらう予定ね」

 

「そうか…まぁあのボディだから出来ることもあるだろうしな」

 

その頃、16Labの職員はリバイバーの女性ボディを保管庫に運び入れていた。

 

「ここに保管すれば良いんだよな?」

 

「あぁ。にしても、なかなかの美人だなこれ」

 

「中身男だったがな。まぁいい。とりあえず保管して休憩に…」

 

職員達がボディを保管庫に入れようとした時だった。

 

パチリ

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「⁉︎」」

 

「なんだ貴様ら、人のことをジロジロ見て。それより、()()殿()はどこだ?」

 

なんと彼女は動くばかりか、喋りだしたのだ。

そしてそれを見た職員二人はというと…

 

「「キッ…」」

 

「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」」

 

16Labに二人の悲鳴が響き渡った。




ダミーとかが自我芽生えて勝手に動くのってこの界隈じゃよくある事でしょ?(開き直り)

まぁこのまま出番少ないのはもったいないのでいっそ自我芽生えさせました感じです。名前どうしよっかな…

ちなみにアスターはあくまでもバレットの交際相手であり所属はグリフィン本社であり、DG小隊のメンバーではないのでご理解を。


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Code-54 敗者の蛇退治(前編)

誰かネット回線繋がった精神と時の部屋造ってくれねぇかなぁ…
そうすりゃ執筆とイベントやる時間はたっぷり出来るのにと思うこの頃です。




「…えっと、これはどういう事なんだペルシカ?」

 

バレットらDG小隊とリバイバーは16Labの一室で目の前の出来事に対してそう尋ねる。彼らの目の前には悠然と脚を組んで紅茶を飲むリバイバーの女性ボディの姿があった。

 

「見ての通り、リバイバーのダミー…とでも言うのかしら?が自我芽生えて動きだしたのよ。ちょっと調べたけど全く原因がわからないわ」

 

「な、なるほど…確かにそういった現象は他の基地とかで幾つか報告例があるのは聞いているが、まさかここで起きるとはな…」

 

「それで、そいつは何て呼べばいいんだ?」

 

指揮者(コンダクター)って名付けたわ。それで彼女なんだけど、リバイバーと同じくDG小隊のサポートメンバーとして動いてもらう事に決定したわ」

 

「そういう訳だ、よろしく頼む兄上殿」

 

「兄上殿ぉ?俺の事か?」

 

彼女─コンダクターの言葉にリバイバーは首を傾げた。

 

「あぁ。私はそう認識しているが、不服か?」

 

「不服っつか、突然妹が出来て混乱しているっつうか複雑というか…まぁいい。よろしくな、コンダクター」

 

リバイバーの言葉にコンダクターはどこか満足げに微笑んだ。リバイバーとしては先日まで使っていたボディが自我を持って妹を名乗っている事となる為複雑な思いだが、リバイバーは受け入れる事にした。

 

「コンダクターだけど、この後コアを改造してダミーじゃなくメインフレームとして動けるようにしておくわ」

 

「まぁその方がなにかと都合が良いからな」

 

ペルシカは改造のためコンダクターを連れて行き、バレット達はその場をあとにした。

 

────

 

それから数日が経ち、DG小隊に鉄血から襲撃を受けている部隊の救出任務が課せられ彼らは現場へと向かっていった。なお、コンダクターも実戦も兼ねて同行して行った。その道中、バレットは前々から気になっていた事をリバイバーに聞いた。

 

「リバイバー、お前マーダーと最近鹵獲されたナイトメアの二人に対してやたら警戒してるがそんなにあの二人が怖いのか?」

 

「当たり前だ!死ぬ一歩手前まで追い詰められたんだぞ?そんな連中に再会してビビらない奴がいるか?」

 

「そんなもんか…ならお前を殺したウロボロスも同じく怖い感じか?」

 

「……あ"?なわけねぇだろ、あの糞蛇女に俺がビビるか!むしろ殺意しかないな」

 

これにはバレット達も驚いていた。自身を追い詰めた二人が怖くて自身を殺したウロボロスには殺意しかないというのは気になる事であった。

 

「そもそも、あいつと()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ん?お前、それならどうやってウロボロスに殺されたんだ?」

 

「簡単だ、漁夫られたんだよ。マーダー以外にも徒党を組んでる奴等がいてな、30〜40人くらいだったかな?そいつらが俺に向かってきたから全員返り討ちにして消耗しきったところを物陰から奴が出てきて背後からナイフでブスリだ。その後別の奴が撃ってきたんだが、あの野郎俺を自分の盾に(ガードベンド)しやがってそこで俺は死んだってわけだ」

 

「そういうわけか」

 

「というか、今サラッと凄いこと言ったよな?30〜40人を一人で倒したって」

 

「まぁな。ちなみに俺、蠱毒内だとキル数に対して被弾数は圧倒的に少ないから。キル数はウロボロスと同じくらいで被弾がかすり傷10で直撃17。うち9はマーダー達からで残りはウロボロスに刺された時と盾にされた時だ」

 

つまりは彼女達と戦うまでは直撃を一つも貰わなかったという事である。バレット達は改めて彼が高い実力を持っていることを認識した。

さらに彼が言うには、彼が蘇った時ウロボロスはまるで自分が直接戦って仕留めたかのような物言いをしていたとの事であった。訂正しようにも負け惜しみとしか捉えられず、それがウロボロスに反感を抱く理由であった。

現場へと到着したDG小隊はまずリバイバーに索敵をさせた。

 

「どうだリバイバー?生存者はいるか?」

 

「ん〜…あ、いたいた。北東に三人いるな、鉄血の部隊に包囲されてるっぽいな。…あ、まずいな」

 

「どうした?」

 

「北西から人形達の方向に向けてそこそこ規模の多い部隊が向かっている。反応の大きさから多分装甲兵もいる」

 

「多分か…ハイエンドは居そうか?」

 

「ジャミングされててはっきりはわからん。で、どうする?」

 

「俺らが救出を行う。お前はコンダクターと一緒に北西の部隊を相手してくれ」

 

「ほぅ…!そこまで信頼してくれるとは嬉しいねぇ」

 

「流石にこれだけ行動を共にして疑うのはあれだしな。早く始めるぞ」

 

────

 

北東へ向かったDG小隊は遠方に廃墟を取り囲んでいる鉄血の部隊を発見した。時々廃墟からマズルフラッシュが見えることから、中に人形達がいるのは明らかだった。

 

「あれか」

 

「幸いこっちにまだ気がついていないようだし、早めに仕掛けないと向こうもそう長くは持たないぞ」

 

「よし、ウェイターはグレネードでストライカーの集団を狙ってくれ。その後突撃して向こうと連絡を取りつつ、可能なら向こうと協力して挟撃を加える」

 

ウェイターはバレないように身を潜めながらグレネードの射程圏まで近づいていく。

 

「こちらウェイター、間もなく射程圏に入ります」

 

「了解、こちらは準備ができている。すぐ始めてくれ」

 

数秒後、ウェイターはストライカーの集団に向けてグレネードを発射する。発射音に気づきストライカー達は振り向くが既に遅く、グレネードは命中しストライカーの集団は吹き飛んでいった。

それを皮切りにスミス、レスト、ノアが突入しバレットはそのあとに続きイェーガーやガードといった厄介な敵を撃ち倒しながら前に進んでいき、通信を行う。

 

「こちら本部のDG小隊、そちらの救援に駆けつけた!状況を教えてくれ!」

 

すると、通信機からG36の声が聞こえてきた。

 

「こちらG36!救援感謝します!こちらにいるのは私以外にはG41さんとグリズリーさんでダミーは全員無し、負傷者はグリズリーさんが左手を負傷しているのみです!」

 

「了解。出来れば挟撃を行いたいが、残弾は?」

 

「私が18、G41さんが12、グリズリーさんが3発です」

 

「…わかった、なら援護は大丈夫だ。万が一敵がそちらに来た時に備えてくれ」

 

「わかりました」

 

その後、バレット達は次々と敵を撃破していき、数十分後には敵は全滅しバレット達はG36達と合流した。

 

「この度は助けて頂きありがとうございます」

 

「礼には及ばないさ」

 

「あとはリバイバーが増援部隊を倒せば問題無しか」

 

「そういえば、鉄血の連中が増援について気になる事を言っていました」

 

「何だ?」

 

「えぇ、確か…()()()()()()がもうすぐ来るって…」

 

「ウロボロスだと⁉︎」

 

────

 

その頃、リバイバーとコンダクターは増援の装甲兵部隊を相手していた。

リバイバーは自身の武器で複数纏めて撃破し、コンダクターはビットを用いて装甲の隙間を狙って一体一体確実に撃破していった。

最後の一体を撃破し終え、バレット達に連絡を取ろうとした時であった。

殺気を感じたリバイバーは電磁フィールドを展開すると機銃が二人に降り注ぐが電磁フィールドのおかげで防ぐことが出来た。

 

「おやおや、誰かと思えば敗者で裏切り者のリバイバーではないか」

 

「…っ‼︎ハッ、久しぶりだな優勝者さん?」

 

突如として現れたウロボロスにリバイバーは湧き出る怒りを抑えつつウロボロスと向かいあった。

 

「これは運がいい、お前を見つけたら始末しろと代理人から言われていてな。またこの手で殺してやろう」

 

「何をほざいてんだ?漁夫で殺した癖に何を偉そうに。それに、お前は所詮上級人形だろ?対する俺はハイエンドモデルだ。どちらが優位かわかるだろ?ま、例え俺が下級人形でもお前さんに勝てるがな」

 

「口だけならどうとでも言えるだろう。グリフィンに尻尾を振っている負け犬が」

 

その言葉に腹が立ったリバイバーはある事をウロボロスに話した。

 

「ウロボロス、戦う前に一ついいか?」

 

「何だ、命乞いか?」

 

「…お前さんさぁ、同胞殺して蠱毒を勝ち抜いたのに、初陣で()()()()()()()()()にぶっ殺されたってどんな気持ちだ?教えてくれよ…優・勝・者さん♪」

 

「…ッ⁉︎リバイバー、貴様ぁぁぁぁ‼︎」

 

嘲るように話すリバイバーにウロボロスは激怒し、真っ直ぐ彼に向かっていった。

 

「ハハッ!沸点の低い事で。コンダクター、手を出すなよ。これは俺のリベンジマッチだ」

 

「了解した。だが兄上殿が危ないと感じたら手助けをする」

 

「はいよ。さぁ……かかって来いよ、『俺殺し』」

 

リバイバーは不敵に笑いながら迎撃の準備を始めた。




はい、と言うわけで彼女の名前はコンダクターとなりました。
立場上はリバイバーの妹ということになります。

さて、ウロボロスとリバイバーの因縁の対決、果たして勝者は…
後編をお楽しみに。


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Code-55 敗者の蛇退治(後編)

次のスキンガチャでDSRのチャイナドレススキンが来るってマジすか⁉︎
一度見てみてください、露出が少ないのにあんなにえっちぃんですよ?
当てなきゃ(使命感)

それでは後編をどうぞ。
あと今回ウロボロスメッチャディスるうえに最後微グロ注意です。


こちらに向かってくるウロボロスにリバイバーは小手調べにとレーザーを撃ち放つ。ウロボロスは地面を蹴って横に逸れてレーザーを躱すと機銃を撃ち反撃を加えるも、リバイバーはそれを回避した。

 

(沸点は低いが、仮にも蠱毒の勝者だけあって切り替えは早いか。まぁ今ので仕留められるとは思ってはいないが)

 

それに…とリバイバーは薄い笑みを浮かべた。

 

(人形はまともな嘘はつかん。従って『真正面から戦えば勝てる』と言った以上、嘘にならないよう奴に勝ってみせるとするか)

 

────

 

「リバイバーとウロボロスが交戦中?」

 

「あぁ。手を出すなと兄上殿から言われているが、手を出そうにも二人の攻防が激しくて巻き添えを喰らいかねないといった状況だ」

 

「…わかった、何かあればまた連絡を頼む」

 

コンダクターとの通信を終えたバレットはスミス達に指示を出した。

 

「お前達は彼女達を連れて本部へ行ってくれ。俺はリバイバーの援護に向かう」

 

「大丈夫なのか?」

 

「遠距離から狙撃すれば平気なはずだ。とにかく、頼んだぞ」

 

「了解、お前も気を付けろよ?」

 

スミス達はG36達を連れて本部に、バレットはリバイバーの援護へと向かって行った。

 

────

 

「〜〜〜ッ‼︎」

 

ウロボロスは内心苛立っていた。

一度は自分が討ち取った相手、もう一度倒す事は容易いと踏んでいたがすぐに倒せないばかりか、避けづらいよう計算された反撃を仕掛けてくるため攻撃を加えるより躱すのが精一杯であった。そして何より、彼女が気に食わなかったのは─

 

「…貴様‼︎何故F.E.F.Gを使わんッ!」

 

リバイバーは最初に使って以降、頑なにF.E.F.Gを使おうとせず、身を翻して躱すかレーザーで迎撃してウロボロスの攻撃を凌いでいた。

 

「ハッ!初めの奇襲はともかく、真正面からのお前さんからの攻撃に使うまでもないというだけの話だというのがわからないようだな?」

 

ひらりひらりと攻撃を躱しながらリバイバーはそう答え、反撃にと散弾状のレーザーを放つ。放たれたレーザーをウロボロスは躱そうとするが、回避しきれず脇腹と左腕に攻撃を受けてしまう。

 

「ぐッ!」

 

「あ〜そうかそうか、蠱毒で勝ち残ったからと言って別に格別頭が良い訳じゃないんだったな。いやすまなかったな難しい事を言って」

 

「こいつ…‼︎」

 

先ほどから嘲るような物言いにウロボロスは腹を立てさらに攻撃を激しくするが、感情任せなぶん正確さに欠けリバイバーに容易く避けられてしまっていた。そんな彼女にリバイバーはさらに言葉を続けた。

 

「そもそも蠱毒自体あまりいい方法とは言えないしな。勝ち方によっては全く使えない奴が出来る可能性があるしな。ガン逃げや漁夫狙いでも勝者には変わりないからな」

 

「お前さんはどうだ?それなりの数は殺してはいるが、キルレートはマーダー以下、かと言って回避に優れているかと言えば被弾数はキルレートが同じくらいの俺より多い。しかも変にプライドが高いうえに味方ですら見下すから、簡単に仲間を切り捨てるしプライドが傷つけられれば報復に躍起になって本来の作戦すらこなせない…ホント、リーダーに向いてないよお前さん?」

 

黙れッ‼︎ならば何故私は再生産されている⁉︎それこそ私が期待されている証拠じゃないのか⁉︎」

 

「扱い易いからじゃねぇの?デストロイヤーみたいにさ。あいつよりは頭良いし感情で動きやすいし。あ、でもデストロイヤーの方が聞き分けがいいかw」

 

「リバイバーァァァァッ‼︎」

 

(うわぁ…メッチャ煽ってるなアイツ)

 

離れたところから戦闘を見ていたバレットは通信機から聞こえてくる二人の会話を聞き軽く引いていた。その気になれば武装面からしてリバイバーはウロボロスをすぐに倒せるはずなのにわざわざ長引かせているところから、リバイバーはいわゆる舐めプをしてウロボロスに屈辱を与えてから倒すつもりなのだろう。

 

(だが、さっさと決めないと思わぬ反撃を受けるぞ)

 

バレットがそう思った矢先の事であった。リバイバーの近くにミサイルが着弾し、その衝撃でリバイバーは吹き飛ばされ地面に転がった。

 

「ヤバッ⁉︎」

 

「終わりだリバイバー‼︎」

 

その隙をウロボロスは逃さず、リバイバーに向けてミサイルの一斉発射を行った。

 

「兄上殿⁉︎」

 

コンダクターがビットで迎撃するも間に合わずミサイルが着弾し、爆煙が辺りを包むのを見てウロボロスはほくそ笑むが次の瞬間、レーザーが煙を割くように放たれ、ウロボロスの武装と胴を貫いた。

 

「ガハッ…⁉︎」

 

何が起きたかわからなかったウロボロスだが、煙が晴れた途端に彼女は目を見開いた。

そこにいたのは、F.E.F.Gを展開し電磁フィールドで攻撃を防いだリバイバーの姿があった。

 

「なっ…⁉︎貴様…!」

 

「え?まさか本当に使わないと思っていたのか?」

 

(倒れた瞬間に心配するなって連絡したのはこの事か…というよりこっちの事わかってたのか)

 

忌々しげに睨みつけるウロボロスにリバイバーは近づき、V.S.L.Cを突きつける。

 

「チェックメイトだ」

 

「クソッ…!次に会ったら必ず貴様を…!」

 

「悪いな、次も俺が勝つ。その次も、そのまた次もだ。今回はお前さんに屈辱を与える為にダラダラやってたんだ。次からは初めから本気で行く。お前さんが諦めるかやられ過ぎてボディが造れなくなるまで何度でも勝ってやる、何度でも殺してやる。それが嫌なら……二度と俺に挑まない事だ」

 

そう言いリバイバーはウロボロスの頭を撃ち抜き、とどめを刺した。

 

「は〜ようやく奴に一矢報いる事が出来たわ〜。で、バレット?お前さんが援護に来たって事は救出は成功したんだな?」

 

「あぁ。あいつらには任務完了の連絡をしておく。迎えを呼ぶからこれからいう場所に来てくれ」

 

「了解。行くぞコンダクター」

 

「わかった…しかし兄上殿、なかなか無茶をするな…」

 

「これが俺だ。覚えておいた方がいいぞ」

 

────

鉄血工造

 

再生産されたウロボロスはあまりの怒りに壁を殴りつけていた。

 

「クソッ‼︎あの敗者のリバイバーがナメた真似を…!」

 

「あらあら、流石は()()()()

 

「…?誰だ貴様は…⁉︎」

 

聞き慣れぬ声が聞こえウロボロスは声のした方を向いた瞬間、思わずギョッとした。

 

短く切り揃えた黒髪に黒のインバネスコート、ヘッドホンを付けた彼女の格好だが、ウロボロスが驚いたのは彼女が付けている耳飾りとネックレスだった。

初めは空薬莢だと思っていた細長いそれは切り取られた人形の指であった。しかも耳飾りにしている方の指には指輪が付いていることからその指の持ち主が誓約された人形のものであることはあきらかであった。

 

「私?私は収集者(コレクター)。よろしくねウロボロス」

 

ニッコリと微笑むコレクター。彼女とDG小隊が対決する日は近い…。




明らかにヤベェ雰囲気を出すコレクター。彼女の武装等は次に登場する時に説明します。

ちなみに彼女のネックレスはペンダントみたいなのではなく真珠のネックレスの真珠部分が全部指になってる感じです。(はい、どう考えてもヤベェ奴です)
ちなみにヘッドホンにもちょっと秘密があります。それもまた出た時にでも。


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Code-56 乙女達の事前準備

バレンタインが近いですし、今回はその準備回です。
リアルはどうか?ハハッ(察して)


G&K本社の共同キッチンにてノア、アスター、フィオナの三人は集まっていた。理由は言うまでもなく、もうすぐ訪れるバレンタインに向けてそれぞれの彼氏に贈るチョコやそれを用いたお菓子作りの為である。

 

「バルカンさんも呼ぼうとしたんですが、なんかTVの企画に参加していないそうです」

 

「それなら仕方ありませんね。ちなみにフィオナさんとアスターさんは料理の方は大丈夫ですか?」

 

「私は出身が出身だからそういったのは心得てるから大丈夫よ」

 

「私も人並みには出来るわ」

 

「わかりました。では早速始めましょう」

 

三人はそれぞれ作業を始める。ちなみに作るものはフィオナがチョコチップスコーン、アスターがチョコマフィン、ノアがシンプルに手作りチョコである。

 

「ノアちゃんは毎年手作りチョコを?」

 

「はい。他にも色々作って渡してみたのですが、これが一番喜んでくれたので…」

 

その理由をレストに聞いたところ、どれも気持ちが込められているのはわかるが、手作りチョコの方がシンプルな分、より気持ちが込められるのがわかるからとの事であった。その事を思い出しノアは目を細めて嬉しそうな顔をした。

 

「他のも美味しいって食べてくれるんですが、どうせなら一番喜んでくれたものをあげたいですから」

 

「健気ね〜。こんなに愛して貰えるレスト君は幸せね〜」

 

アスターの言葉にノアがはにかむ中、フィオナは黙々と作業を行なっていた。

 

「うーん、もう少し砂糖を控えた方がウェイターの好みかな…」

 

どうやらウェイターの好みに合わせて味の調整をしているようであった。その様子を見てアスターはふと思った。

 

(そういえば私、バレットの味の好みってあまり把握してないわね…)

 

アスターは自分の作ったものがバレットの好みに合うか不安になってきた。自身の料理の腕は自信があるとはいえ好みじゃない味を渡した場合、バレットの事なので顔に出さず食べてくれるだろうが、そのような事をさせるわけにはいかないのでアスターは思い切ってノアに尋ねる事にした。

 

「ねぇノアちゃん。バレットってあまり甘いものって苦手だったりする?」

 

「隊長さんですか?前にD08のデリバリーが来た時は普通にスイーツを食べていたので、あまり甘過ぎなければ大丈夫だと思いますよ」

 

「そう、わかったわ。ありがとう」

 

その後三人ともそれぞれの菓子を作り終え丁寧に包装した後、余ったり形が崩れたものをお茶請けにしてティータイムをしていた。

 

「そういえば、ノアちゃんは結婚とかは考えているの?」

 

「へ⁉︎ま、まぁ…結婚したいなぁとは考えてますが、下手にアピールして焦らせるものあれなので黙って待っていますが、多分そろそろプロポーズされるかなとは思ってます…二人はどうですか?」

 

「私はね、目が覚めた時に人間と人形が結婚したって話を聞いて真っ先にウェイターと結婚したいって思ってたけど、まだ体のほうが本調子じゃなかったからまだ早いなって考えてたけど、もう体は平気だし、いつ言われるか楽しみにしてるわ」

 

「私もバレットと結婚したいと考えてるわ。でも、付き合って半年くらいで結婚は早いかなとかバレットの方が気にしそうなのよね。私はいつでも歓迎するけどね」

 

────

 

三人が話をしている頃、それぞれの彼氏も各自の部屋で()()()を考えていた。

 

(こんなご時世だし、これ以上ノアを待たせるわけにはいかないし、そろそろかな…)

 

(タイミングとしては問題ない。しかしP基地のユノ指揮官もバレンタインに渡したって聞く…流石に芸がないか?だが他にいい日がないしな…)

 

(問題は他の二人も同じ事を考えていそうですが、そうなったらそうなったらで話し合うとしますか。色々とあるでしょうし)

 

それぞれの想いと共に、バレンタインの日は近づいていく…。




ええ、まぁそう言う事ですよハイ。

皆さま、祝う準備をしておいてください。
それに伴って考えてる事がありますが、詳しいことは次回にお話しします。


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Code-57 結ばれる守護者たち

予約投稿です。

さぁやってやりますよ‼︎
今回。最後にお知らせがあります。


バレンタイン当日、どこもかしこも賑わっているなか、レストは自室でノアと共に過ごしていた。しばらくした後、ノアは紙袋から包装されたチョコを取り出した。

 

「レストさん、今年もチョコを作ってきたのでどうぞ」

 

「ノア、いつもありがとうな。…開けてもいいか?」

 

ええ、とノアが言ったのを聞きレストは包装を開き中のハート型のチョコを取り出し一口齧る。飲み込むのを待ってノアはおずおずとレストに質問した。

 

「あの…どうですか?」

 

「…また上手くなったな、前より美味しいよ」

 

「…!よかったぁ…」

 

レストはチョコを少し割るとノアに差し出した。

 

「ほらノア、口開けな」

 

「は、はい…あー…」

 

初めの方は断ろうとしていたが、目の前にいるのに自分だけ食べるわけにはいかないとレストが頑として譲らなかったため、レストがノアに少しだけチョコを食べさせるのが恒例となっていた。

やがてチョコを食べ終え、用が済んだノアが部屋から出ようとすると、レストはノアの腕を掴んで引き留めた。

 

「レストさん?」

 

「…実はノアに渡したいものがあるんだ、少し待っててくれ」

 

そう言われノアはベッドに腰掛けて待っているとレストは机の引き出しから小箱を取り出しノアに近づき、小箱をゆっくりと開けた。

 

─その中に収まっている銀の指輪を見てノアは思わず口を手で押さえた。

 

「え…⁉︎本当…に?」

 

「あぁ。随分と待たせて悪かった…ノア、俺と結婚してくれ。これからもずっと、俺のそばにいてくれないか…?」

 

「……はい…‼︎」

 

レストのプロポーズに応えた後、ノアは嬉し涙を浮かべてレストに抱きついた。レストも抱きしめ返し、しばらくそのままでいた後、二人は体を離した。

 

「…レストさん、あとで隊長さんに報告しなきゃですね」

 

「それなんだがノア、大事な話があるんだがいいか?」

 

レストはノアにある話をする。

 

「…という事なんだが、それで大丈夫か?まぁ詳しい事は隊長と話して決めるが、その方針でいくつもりだ」

 

「…わかりました、私はそれで大丈夫です」

 

「ありがとう。とりあえず隊長達に連絡してミーティングルームで待つか」

 

レストはバレットらにメッセージを送信すると、ノアと共にミーティングルームへと向かっていった。

 

────

 

ところ変わりグリフィン本社中庭にて、ウェイターはフィオナと共に彼女の作ったチョコチップスコーンを食べていた。

 

「これは…!」

 

「ウェイターの好みに合うように作ったんだけど、どうかしら?」

 

「…とても美味しいですよ、それより私の好みを覚えていたのが驚きです」

 

「昔からあなたに好かれたかったからあなたの好みとか周りの人達から聞いていましたから」

 

「そう、ですか…フィオナ、少し良いですか?」

 

「何?」

 

ウェイターは真剣な眼差しでフィオナを見つめる。その様子にフィオナは一瞬見惚れそうになるもウェイターの様子をみて気を引き締めた。

 

「…貴女があの事件に巻き込まれた時、私は自分が人形である事を悔やんでました。自分が人形じゃなくて人間だったらメンテに行く事もなく貴女を守れたかもしれない、貴女と私が付き合っても周りから反発されずに済んだのではと考えていました…」

 

「うん…」

 

「ですがDG小隊に入隊してからその考えは変わりました。人形だからこそ出来ることがある、守れるものがあるとわかったからです。それに、あの時と違って人形と人間が愛し合い、結婚する事も自然になってきました。だからというわけではありませんが、私の今の気持ちを伝えます」

 

ウェイターはフィオナの前で膝を着き、懐から小箱を取り出しそれを開いて中の指輪を見せた。

 

「フィオナ…私と、夫婦になっていただけませんか?」

 

ウェイターの告白にフィオナは思わず固まってしまう。

何か言葉を出そうとしたのだが、嬉し涙が出て上手く言葉が出せずようやく出たのが

 

「えっと…その…私でよければ、よろしく…お願いします…!」

 

その後堰を切ったように泣き出すフィオナをウェイターが優しく慰めたあと、レストが話したのとほぼ同じことをフィオナに話した。

 

「貴女さえ良ければそれでいこうと思いますが、どうですか?」

 

「なるほどね…わかったわ。私はそれで平気よ。その方がみんなの為になるわ」

 

「ありがとうございます。では皆さんに連絡を…ん?レストから連絡が…」

 

「レストさんが何だって?」

 

「皆に話すことがあるそうで…まぁ何となく予想はつきますが…ちょうど良いです。私達もミーティングルームに行きましょう。こちらも話すことがあると連絡しましょう」

 

連絡の返信をし、二人もミーティングルームへと向かっていく。

 

────

 

再び場所は変わり、バレットはアスターに部屋に招かれ、彼女が作ったチョコマフィンを受け取り、普通に食べようとしたがアスターに遮られ、彼女の手によって食べさせられていた。

 

「はいバレット、あーん」

 

「あ、あぁ…」

 

「味の方はどうかしら?甘過ぎたりしてないかしら?」

 

「ん…別に平気だよ、寧ろ丁度いいくらいだ」

 

「ふふ、ありがとう。今後の参考にするわ」

 

どちらかと言えば何故普通に食べさせてくれないか気になったが聞いても微笑むばかりであり、結局マフィンが無くなるまでずっとあーんをさせられていた。

食べ終わったあと、バレットはアスターにある事を聞いた。

 

「なぁアスター。付き合って二ヶ月だが、互いに任務で二人の時間が中々作れないが寂しかったりしてないか?」

 

「いいえ。二人の時間を何とか作ろうとしてるのもわかるし、こうやって過ごしてる時でも愛されてるってわかるから少しも寂しくはないわ」

 

「そうか…」

 

バレットはそう言ったあと深呼吸をし、ポケットから小箱を取り出し中の指輪をアスターに見せた。

 

「えっ…⁉︎バレット…?」

 

「付き合って二ヶ月で早いかもしれないし、夫婦としての時間もあまり取れないかもしれない、それでも俺は君をずっと愛する。だから…結婚してくれ」

 

それを聞いて数秒が経った後、アスターの顔がみるみるうちに赤くなっていった。

 

「えっ…?えっと、本当に?」

 

「いくら何でもこういった冗談は言わないさ。それで、返事は…?」

 

「その…まだ貴方のことをよく知らないけど…その…私で良ければ喜んで…」

 

「…っ‼︎わかった。なら話しておきたいことがある」

 

例に漏れずバレットは先の二人と似た内容を話し、アスターはそれを了承した。そして先の二人のメッセージを見たバレットはアスターを連れてミーティングルームへ移動した。

 

────

 

ミーティングルームに集まったDG小隊とリバイバー、コンダクター、そしてペルシカはバレットらの報告を聞き少なからず驚いていた。

 

「なるほどねぇ…まさかあなた達が同時に結婚の報告するなんてね…」

 

「息が合ってるというか、何というか…とにかく、全員おめでとう」

 

「ククッ。まさかお前さん達の結婚の現場にありつけるとはな…」

 

「それで、先程言った事は本当にやるつもりなのか?」

 

「あぁ。まさかレストやウェイターも同じ考えとは思ってなかったが、まぁ当然といえば当然か」

 

バレット、レスト、ウェイターが考え、実行しようとしていたことは主に二つ。一つは結婚式は三組同時に行うこと。そしてもう一つが三組の結婚の情報を『グリフィンのみならず一般にも伝えること』であった。

 

前者はまだわかる。別々にやるよりも、同時に行った方が招待客の面でも都合が良く、本人達も納得しているため問題はない。

だが後者はリスクが高い。一般ということは当然人類人権団体の過激派の耳にも届く。人形と人間の結婚ですら認めない連中である。三組中二組が人形同士の結婚、しかも相手は彼らと真正面から敵対しているDG小隊である。当然妨害工作や直接危害を与えようとするだろう。

 

何故そこまでのリスクをバレットらが背負う真似をするかと言えばただ一つ。

──S09P基地のユノ指揮官及び戦術人形クフェアの身の安全の為である。

 

現在両名はお腹に子を宿している事はDG小隊はペルシカを通じて把握している。二人の妊娠のケースは少々特殊なためその手の連中が反応するのは必須、しかもユノ指揮官に関しては彼女を狙う存在が多いため現在は徹底して情報を隠しているが、いつ情報が漏れるか定かではない。

そこで、バレット達の結婚の情報を敢えて流し、少なくとも人類人権団体の目をこちらに向けさせそれらを一網打尽にすることで少しでも情報が漏れるのを防ごうとの考えであった。

 

そこまで聞いたところでリバイバーが口を開いた。

 

「なるほどなるほど…それで、連中の始末は俺とコンダクターだけでやるんだろ?」

 

「「「え?」」」

 

「え?」

 

バレット達の答えにリバイバーは思わず額を抑えた。

 

「…お前さん、まさか連中の相手をするつもりだったのか?」

 

「当然だが、それが何か問題でも?」

 

大アリだッ!いいか!お前さん達は結婚式を控えてるんだぞ⁉︎そんな状態で連中の相手をするって事はだな、『この任務が終わったら結婚するんだ』っていうこれ以上ない死亡フラグだぞ⁉︎」

 

「「「あ…」」」

 

「最近彼女が出来たスミスも充分フラグ圏内だし俺とコンダクターが奴らの相手をする!いいな!お前さん達は式の準備なり招待状なりの準備でもしてろ!」

 

「あ、あぁ…そうするよ」

 

その後、結婚の情報を広め、バレット達は式場や招待する相手などの準備を進めてることとなった。

数日が経ったのち、人権団体に大規模な動きがあるとの情報が入り、リバイバーとコンダクターはヘリで現場に急行した。なお、リバイバーはルイン装備での出撃であった。

 

(…にしても、結果的とはいえユノ指揮官の抹殺を命じられた俺が、彼女を守る為に行動するとはとんだ皮肉だな…ま、連中に一足早い祝砲を浴びせるとしようか)

 

ヘリの中でリバイバーはそう考え、装備のチェックを始めた。




グリフィン人形の身を案じる鉄血ハイエンドがいるらしい…
やっと結婚にこぎつけました!いや〜長かったな〜。

さて、お知らせというのはぶっちゃけコラボです。下記から参加をお願いします!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=232569&uid=89042

とりあえず次回リバイバーが大掃除した後で式を始めますので頑張れば土日、遅くとも来週くらいに始めます。
ではその時まで楽しみにしてください。


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Code-58 守護者の未来の為に

人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に落ちろ。
というわけでリバイバー達が大暴れします。


「おーおー、わんさかいるねぇ」

 

リバイバーの視線の先には人類人権団体の過激派達が多数集まり、廃都市─といってもかつての大戦で殆ど更地に近いが─を進軍していた。彼らの装備は強化外骨格や大型自立兵器が殆どだが、中でも目を引いたのが五台のテュポーンであった。

 

「兄上殿、何故奴らは正規軍の兵器を?」

 

「おおかた命懸けで盗んだか賄賂で兵士ごと買収したか、兵士が抜けて手土産に持ってきたかだろ。どんだけバレット達を殺したいんだか。まぁこの戦力は想定内か」

 

そう話すリバイバーだが正直五台もくるとは予想外であった。

正規軍の兵器とはいえ一応正面から戦ったときの倒し方は考えてあるものの、さすがに五台となると厳しいところである。しかもテュポーン以外にも敵はいるので尚更である。

対するこちらの戦力はルイン装備のリバイバー、コンダクターとリバイバーが脱走した時に連れてきたガルムのみである。

ガルムに関してはカラーリングを白銀にし、連れてきたときのコンテナの替わりにミニガンと弾薬庫を二丁装着してはいるがこちらが不利なのには変わりない。それでもリバイバーが余裕を持っているのには訳があった。

 

「敵さんがこのルートを通ってくれて助かったな。おかげて()()を仕掛けたのが無駄にならずに済む」

 

「というより兄上殿の予想が当たり過ぎて恐ろしいな…」

 

「あれだけ仕込めば予想はできるさ、むしろ連中がここまでこちらの思う通りになったのが怖いな」

 

彼らが行動を起こす前にリバイバーの提案のもと、バレット達はある作戦を立てた。

バレット、レスト、ウェイターのダミーを改装工事をしてるように装った教会跡に彼らの目に止まるように向かわせ、改装内容の擦り合わせのため現場近くのプレハブで何日か滞在することをプレハブに行き来する様子も目撃させることで罠でないことを信じ込ませ、そして今日それぞれのパートナーを連れて下見に行くと情報を出したのであればこれ幸いと彼らが動くのは明白であった。

 

あとは彼らを一網打尽にする上で必要な場所をリバイバーが見つけていたため、そこを通るルートになるよう色々と手を回しそのルートに()()()()()を施して計画通り彼らがそこを通るのを待っていた次第であった。

 

「そろそろ始めた方がいいのでは?」

 

「いや待て、テュポーンは確実に仕留めておきたい。もう少しで範囲内に入るはずだ」

 

しばらく様子を見ていると過激派達は疑う事なく進んでいき、ようやくテュポーン全台が範囲圏に入ったのを見るとリバイバーはほくそ笑んだ。

 

「んじゃ、始めるとするか」

 

リバイバーはまずは例の鈴の音のスピーカーのスイッチを押し、鈴の音を彼らに聞かせた。

噂を知っている彼らは当然立ち止まり、リバイバーの強襲に警戒する─それがリバイバーの狙いだと知らずに。

 

「よし、んじゃ本命に入りますか…」

 

そう言いリバイバーはもう一つのスイッチを取り出し、押した。

その瞬間、彼らの足元からくぐもった爆発音が聞こえてきた。何事かと彼らが疑問に思った矢先のことであった。突然地面が轟音を立てて崩れ落ちてきたのであった。突然の事に彼らは対処しきれず、彼らは崩落する地面とともに奈落に落ちていった。

 

彼らに何が起きたかというと、かつて廃都市が都市であった頃に開発中の巨大地下放水路があったが先の大戦により開発は都市が滅ぶ形で中止、それがまだ残っていた。リバイバーはそれを見つけて事前に内部に侵入、柱と天井に爆弾を大量に仕掛けておいた。

そしてそれを爆破した今、地面が崩落し彼らを生き埋めにし戦力を削ぐのがリバイバーの作戦であった。

 

結果、崩落から逃れようとするが間に合わず次から次へと過激派や自立兵器が落ちていった。テュポーン部隊も仲間を轢き潰しながら全速力で逃れようとするがもう少しで崩落予想範囲から出るというところで全てが崩落に巻き込まれて落ちていった。

崩落が収まる頃には過激派達の戦力は四分の一以下となりさらにはテュポーン全台が失われる事態となり彼らはパニック状態となっていた。

 

「ふむ…テュポーンを全滅できたのは幸いだな…ま、念のために…」

 

リバイバーは追い討ちとばかりに崩落した地面に向けてV.S.L.Cを構え最大出力でレーザーを放った。放たれたレーザーは崩落した地面に当たり大規模な爆発を起こし落ちた者の生存を絶望的にした。

そしてリバイバー達は彼らの前に躍り出た。

 

「リ、リバイバー⁉︎」

 

「クソ‼︎これはお前の仕業か⁉︎」

 

「これはこれは過激派の皆さま方、随分なご様子で。常日頃辛酸を舐めさせられているDG小隊が結婚式を挙げると聞き兵力を揃えて報復せんとしたところ、この僅かな時間でその殆どが呆気なくやられた気分はいかがですか?」

 

「こいつ…‼︎」

 

過激派の一人がリバイバーに向けて銃を撃とうとしたが引き金を引く前にコンダクターの放ったビットが彼の頭と銃を持っていた腕を撃ち、永遠に沈黙させられた。

 

「さて…俺を仲間と認めてくれたあいつらが人生?の墓場に入ろうとしている。だがそんな晴れ舞台を潰そうとしているお前さん達みたいな奴らには…

 

 

 

本 物 の 墓 場 に 入 っ て も ら お う か

 

リバイバーは全武装を展開、コンダクターとガルムも攻撃準備をして彼らに向かっていった。

─そこからは一方的な殲滅戦であった。主戦力の殆どを失った上に彼らのリーダーやその他幹部も先の崩落に巻き込まれたため過激派達は混乱、まともに対応ができなかった。

リバイバーのレーザーに消し飛ばされ、コンダクターのビットに撃たれ、ガルムのミニガン掃射やカメラアイのレーザーに次々とやられていった。また、反撃しようにもその全てがリバイバーのF.E.F.Gに防がれダメージを与えることも叶わずもはや彼らに打つ手段は無かった。

一時間後、その場にいたのはリバイバー達のみで過激派達は誰一人生きておらず辺りは死体と兵器の残骸や瓦礫で埋め尽くされていた。

 

「…任務完了。ま、これだけやればしばらく連中は手出しは出来ないだろう」

 

「とはいえ当日も警戒するのだろう?」

 

「まぁな。それなりに人来るらしいし。さて、コンダクター、ガルム。帰るぞ」

 

「了解」

 

「ガウ」

 

リバイバー達は本部に帰還し、バレット達の結婚式の準備の手伝いをし始めた。

 

─そして数日後、その時がやってきた。




ル○ーシュ式戦術『多数の敵を相手する時は敵の足場を崩せ』

さて次回はいよいよ結婚式です!
とりあえず参加の方はこれで締め切らせてもらいます。
参加してくださった方々、ありがとうございます!

さて、頑張るか!


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Code-59 守護者達の結婚式

それぞれのセリフが少ないかも知れませんが自分の力量不足で申し訳ありません!

それでは結婚式、どうぞ!


式場の受付ではスミスとリバイバーの二人が来客の応対の準備をしていた。式場の警備は本部の人形を何名かとは別に以前より鹵獲し、ペルシカの改造及びリバイバーのハイエンドとしての権限で掌握したプラウラーやスカウト、リッパーやヴェスピトなどを警護に当たらせていた。なお、リッパー達の服は通常のピチピチスーツではなくSPのような服装である。

またコンダクターはイノセントの子守と内部の案内をしていた。

 

「あ〜やっぱバイザーないと落ち着かないわ〜」

 

「仕方ないだろ。警護のリッパー達はともかく、参加者のお前がバイザー付けてたら悪目立ちするだろ」

 

今回リバイバーは素顔での参加で本人はやや落ち着かない様子だがスミスの言葉を聞き納得したようであった。

 

「それで、何人お客さんは来るんだ?」

 

「さっき通したM82A1とMP5、FAL、FNCとホーテン達を除いて19人だ。そろそろ来るとは思うんだが…」

 

そう呟いた時、こちらに向かってくる一段が見えてきた。

最初にやってきたのはバルカン達EA小隊であった。

 

「お、私達が一番乗りか?」

 

「まぁな。今日は来てくれてありがとう」

 

「お兄ちゃん達の結婚式ですもの、行かない理由がありませんよ。それと、本日はおめでとうございます!」

 

「にしても、三組同時に式を挙げるなんて中々面白いことするわねぇ?」

 

「別々にしてたら呼ぶのも大変だしな、それじゃここにサインしてくれ」

 

出席簿に各自サインをする中、フレイムはリバイバーの方を見てこう言った。

 

「あの…あなたは…?」

 

「…おいおいヒドイじゃないか?リバイバーだよ。この前一緒に任務に行ったろ?」

 

「あっ!ご、ごめんなさい、素顔だったのでわからなかったです…」

 

「まぁ気にしてないから良いさ。それで、そこのデストロイヤー。俺がくれたそのボディの具合はどうだ?」

 

「色々と便利で最高よ!あ、前に言うの忘れてたけどこのボディくれてありがとうリバイバー!」

 

「どういたしまして」

 

そんな会話をしている時であった。M82A1がやってきてこちら─正確にはペイロード─の方を見ていた。

 

「…?M82A1、どうかしたか?」

 

「あ、いえ…ペイロードってのは貴女?」

 

「はい、そうですが…もしかして…お姉ちゃん?…きゃっ⁉︎」

 

お姉ちゃんと言うワードを聞いた瞬間、あっという間にM82A1はペイロードに駆け寄り、抱きしめた。

 

「は〜いお姉ちゃんですよ〜♪やっと会えて嬉しいわ。バレットから聞いてたよりずっとカワイイわね〜!」

 

「え、はい…私もお姉ちゃんに会えて良かったです…」

 

「〜〜ッ‼︎」

 

少しの間M82A1は服装や髪型が乱れない程度にペイロードを愛でるとペイロードから体を離した。

 

「それじゃまたねペイロード〜♪」

 

「あ、うん…またね、お姉ちゃん…」

 

M82A1がその場から立ち去るのをみるとペイロードはスミスに話しかけた。

 

「スミスさん、お姉ちゃんって普段からあんな感じで?」

 

「まぁな…彼女、極度のブラコン&シスコン(とショタコン)って事を除けば至って普通なんだがな…だからマーダー、もし何かやらかして台無しにしてみろ、冗談抜きで彼女に殺されるぞ?」

 

「えぇ…一目で何かヤバイのは感じ取れたわ…というよりやらかしたらペルシカの実験台にされるからやらないわよ」

 

「それじゃ、その先にコンダクターっていう俺の妹がいるからそいつの案内に従ってくれ。それと中にリッパーとかいるけどペルシカの改造と俺の権限で味方になってるから安心してくれ」

 

EA小隊が立ち去った後、リバイバーは気になっていた事をスミスに話した。

 

「スミス…バルカンさ、明らかに胸デカくなってないか?」

 

「何か、ペルシカの薬勝手に飲んだみたいなんだ…しかも、()()らしい…」

 

「えぇ…(困惑)何でまた?」

 

「聞いても教えてくれないんだ、それより来たぞ」

 

次にやってきたのはS04地区のアレクサンドラ指揮官と副官のG3、S07地区のカスミ指揮官とBB小隊であった。

 

「アレクサンドラ指揮官、お久しぶりです」

 

「久しぶりだな。今日は招待してくれて感謝する」

 

「こちらこそ来ていただきありがとうございます。カスミ指揮官とは直接会うのは初めてでしたね」

 

「あぁ。初めまして、S07のサクラ・カスミだ。前回の作戦ではだいぶ世話になった。感謝する」

 

「スミスさん、俺からも礼を言わせてください。みんなを助けてくれてありがとうございます!」

 

「いえいえ、俺らは俺らに出来ることをやったまでです。あ、それとM16A4、式場内に警護でリッパーとかいるがペルシカが改造してあるからあまり気を悪くしないでくれ」

 

「…っ!はい、わかりました」

 

その後彼女達にサインをしてもらっている時、スミスはある事に気付いた。

 

「…ん?MP5F?て事はレストの妹か」

 

スミスの言葉にMP5Fはうなずいた。

 

「まぁね。初めて会う兄さんの結婚式に出るのは何か変な感じだけどね」

 

「あとであいつと話してやってくれ。新しく妹ができて喜ぶと思うから」

 

「ん…わかった」

 

彼女達を通し、残す招待客は一組となった。

 

「それで、あとは五人だが、誰が来るんだ?」

 

「S09P基地のユノ夫婦とナガン副官、あとあっちのノアに『キャロル』って子が来るらしい」

 

「キャロル?誰なんだろうな…」

 

ちょうどその時、ユノ指揮官達がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「お、来たか…で、キャロルってのはって…アイエエエエ‼︎エリザ⁉︎エリザナンデ!?」

 

キャロルなるエリザそっくりの少女の姿を見た瞬間、リバイバーは驚きのあまり顔を青くして椅子から転げ落ちていた。

その様子を見たナガン副官が説明に入った。

 

「あー、リバイバーとやら。こやつはキャロルといって詳しくは省くがエリザのダミーに自我が芽生えたもので今はこちらの味方じゃ、安心せい」

 

「え…?あー前に言ってたアレか」

 

「驚かせてすまない、俺はキャロル・エストレーヤだ。よろしく頼む」

 

「あ、あぁ…よろしく…」

 

「そちらの事は聞いている。色々とすまないことをした…」

 

「い、いや、気にしなくて良い。この前奴らに仕返ししたし」

 

リバイバーとキャロルが会話をしているなか、スミスはユノ指揮官に話しかけた。

 

「それでユノ指揮官、お身体の方は…」

 

「うん…最初の時よりは平気…かな」

 

「あたくしが出来る限りサポートしますが、何かあったときはよろしくお願いしますわ」

 

「了解です」

 

ユノ指揮官らを案内したあと、二人も式場へと向かっていった。

 

────

 

「皆さま長らくお待たせしました、新婦の入場です」

 

式場にて司会役のコンダクターがそう告げると、扉が開きウェディングドレスに身を包んだアスター、ノア、フィオナの三人がゆっくりとヴァージンロードを歩いていき、タキシードを着たバレット、レスト、ウェイターの元は歩み寄っていく。本来なら親族が手を引くのだが、彼女達にとって該当する存在がいないため一人で歩くことなるがこのご時世人間でも親族がいないものもいるため珍しくはなかった。

 

誓いの言葉も通常と違い一組行っては神父が別の組に向き直り行っていき、やがて全員の誓いの言葉が終わり、指輪の交換も無事に終えた。

 

「それでは、誓いのキスを」

 

それぞれの新郎が相手のベールを上げ、皆が見守る中誓いのキスを行い式は無事に終了した。

 

その後それぞれの招待客と記念撮影を行い、ブーケトスを行うため、未婚の女性陣達は集まった。

やがて三人の花嫁からブーケが投げられ、歓声が沸くなか受け取ったのは──

 

「やった!取れた!」

 

「…これは、どうすればいい?」

 

「まさか取れるとは思ってみなかったな…」

 

上からバルカン、キャロル、サクラ指揮官の三名であった。

特にバルカンは大はしゃぎでスミスの方を見ては照れていた。それを見たリバイバーはスミスの肩をポンと叩いて

 

「ツギハオマエダ」

 

「…なんでホラー風に言うんだよ」

 

────

 

その後別会場で披露宴を行い、ケーキ入刀を行なって披露宴を開始した。

当然ケーキも三つあるのだが、大きさは通常よりやや小さいものであるが花嫁達は不満はないそうだ。曰く、『小さくても想いは充分伝わっているから』だそうだ。

 

夫婦の挨拶回りも行い、それぞれの招待客から祝福の言葉をもらっていった。P基地のテーブルでは同名のノア同士で話し合ったり、EA小隊のテーブルではペイロードからバレットへ祝いの言葉を贈ったりアスターが義妹となるペイロードを揶揄ったりしていた。

S04のテーブルではアレクサンドラ指揮官と夫婦仲について話し合い、S07のテーブルではMP5Fという新しい妹が出来たことにレストが困惑したりホーテン達のテーブルでレスト夫婦が質問攻めにされたりと話に花を咲かせていた。

 

そして披露宴は終わりに近づき、バレット達新郎組が言葉を発した。

 

「えー、本日はお集まりいただき、ありがとうございます。三組同時結婚という異例な事をしましたが、これだけの方に祝福されて感激です。これからも妻と共に幸せになっていくのでよろしくお願いします」

 

「俺もまさかこんなにも祝福されるとは思ってもいませんでした。俺も妻と共に幸せを噛み締めながら生きていこうと思うのでよろしくお願いします」

 

「私からも感謝の言葉を送ります。私は人形と人間が結婚できる時代となるとは思ってもいませんでした。私も妻と共に限りある時間を過ごしていきますのでよろしくお願いします」

 

「それでは、最後に余興としてBB小隊一同様より祝砲を、バルカン様より打ち上げ花火を行います。皆さま、それでは外にお集まりください」

 

コンダクターの言葉で一同は外に出る。

その後、初めにBB小隊が祝砲の準備を始める。

 

「全員、整列ッ‼︎」

 

「構えッ‼︎」

 

サクラ指揮官の合図でBB小隊は整列し、それぞれの銃を構えた。

 

「…撃てェ‼︎」

 

サクラ指揮官の号令と共にBB小隊は祝砲を放ち、拍手が響き渡った。

 

「BB小隊一同様、ありがとうございます。それでは次に、バルカン様による打ち上げ花火です」

 

「よっしゃあぁ‼︎撃ちまくるぜぇぇ‼︎」

 

バルカンが待ってましたと言わんばかりに飛び出し、自身の愛銃を構え空に向けて打ち上げ花火を放ち、大量の花火が夜空に咲いた。

大勢の歓声が上がるなか、スミスはある事に気付いた。

 

(ん…?バルカン…何か堪えてないか?

 

見るとバルカンは何かを必死に堪えるような顔をしていた。気になったスミスだが、すぐに訳を察すると知らないフリをした。

 

「バルカン様、ありがとうございます」

 

「ハァ…ハァ…良いって…こと…よ…」

 

打ち上げ花火が終わり、彼らの結婚式は幕を終えたのであった。




後日、DG小隊は結婚式の写真を持ってある場所に向かって行った。

「この辺なのか?」

「あぁ。()()()()()()()()の情報によればこの辺であの喫茶店に行った人がいると聞いたとのことだ」

「んじゃ、やるか」

写真を風船にくくりつけ、バレット達はとある地区に流した。
すると風船は彼らの目の前で突然消えていった。

「おぉ…!」

「本当にあそこにいったのでしょうか?」

「そうだと信じようぜ」

彼らの予想通り、写真はあの喫茶店に届いたという。

今回の参加者…

焔薙作 「それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!」より
ユノ夫婦、ノアちゃん、ナガン副官、キャロルちゃん

oldsnake様作 「破壊の嵐を巻き起こせ!」より
EA小隊

スツーカ様作 「指揮官とG3がお送りするドルフロ銃解説」より
アレクサンドラ・プーシキナ指揮官とG3

ガンアーク弐式様作 「MALE DOLLS外伝集」より
サクラ・カスミ指揮官とBB小隊

それとサプライズでいろいろ様作「喫茶 鉄血」に記念写真を送ります!

皆さま、ありがとうございます!

描写が足らないとは思いますが、あとは皆様方で補完を任せます(投げやりですみません)


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Code-60 指輪集め

今回残酷な描写がある上、胸糞な発言があります。ご了承ください。


結婚式かれ数日経ち、DG小隊はペルシカからある報告を受けていた。

 

「S09P基地の暗部が来てたのか?」

 

「ええ。何人か過激派が乗り込もうとしたらしいけど、全員取り押さえたみたいよ。あと、G01の元指揮官も別の団体の捕縛をしてくれたそうよ」

 

「なるほどな…あとで何かしらの形でお礼しないとな。それとペルシカ、さっきから気になってたんだが…ソレは何だ?」

 

バレットが指差す先にはガラスケースに保管された形容し難い物体が入っていた。

 

「あぁこれね。玉子焼きだそうよ。ちなみに作ったのはペイロードよ」

 

「……マジで?」

 

「マジよ。これを食べたマーダーは性格反転していつかの綺麗なマーダーになったわ。今はその部分を取り出して幼女ボディに入れてるわ」

 

「さっき見たのは俺の見間違いじゃなかったのか…」

 

先ほどリバイバーは動物と戯れて微笑んでいるちっこいマーダーを発見したのだが、自分の眼がおかしくなったと思っていたがどうやらそうではなかったようだ。

一方バレットはもう一度玉子焼き(ダークマター)を見て頭を抱えた。

 

「…あとで料理を教えた方がいいか?」

 

「だろうな。このままだと死人が出そうだな」

 

「というより、どうやってこれになったか気になりますね…」

 

妹に対する散々な言われようだが、目の前に言いようのない事実がある以上何も言い返せないバレットであった。

 

────

 

某地区 廃墟郡

 

ここらで鉄血の活動が見られるということで、F2000、ガリル、C96、SKS、MP40の5名は廃墟郡を探索していた。

 

「ホントにここに鉄血がおるん?」

 

「そう聞いてはいますが…一向に見つかりませんね…」

 

ガリルの問いにF2000が答えた通り、既に一時間は経っているが鉄血の姿が見当たらなかった。そんな状況に飽きたのか、C96がMP40に話しかける。

 

「ねぇねぇMP40、最近指揮官と誓約したけど、それから何かあった?」

 

「えっ⁉︎いや、今は何もない…かな?」

 

「ほらC96、鉄血がいるかもしれないから油断しないの」

 

はーい、とC96が返事をし数歩歩いた時であった。背中から腹にかけて衝撃を感じた彼女は自分の腹を見ると、腹から自身の疑似血液で赤く染めたコの字状のクローが腹から飛び出ていた。

 

「…え?」

 

「C96⁉︎」

 

C96以外の目に映ったのは上空から射出されたワイヤー付きクローが彼女の背を貫いた様であった。

次の瞬間、ワイヤーは巻き取り音を奏でながら彼女の身体ごと上空に引っ張っていった。

 

「キャアアァァァーー⁉︎」

 

彼女が振り向いた先にいたのは、両手に下腕部と一体化した大型の剣と盾が一体になった複合武装を一つずつ持った鉄血ハイエンドらしき人形の姿だった。そしてそのハイエンドは両手の剣を振るい、彼女の体をXの字に切り裂いた。

彼女を切り裂いたのは黒のインバネスコートとヘッドホン、背中には四つのワイヤークローがついたアーム、そして指でできたネックレスと耳飾りをつけたハイエンド、コレクターであった。

 

「……!」

 

彼女は廃墟の屋上からガリル達を見る。そしてMP40の指に誓約指輪がしてあるのを見ると嬉しそうな顔を浮かべ、剣を折り畳み内蔵されたレーザー銃を撃ち放ちながら飛び降りていった。

ガリル達は回避しつつコレクターを迎撃するがコレクターは四つのワイヤークローを駆使して壁から壁へと移動して攻撃を避け、逆に反撃してくる。

やがてコレクターはF2000の近くの地面にワイヤークローを刺し、ワイヤーを巻き取りながら斬り掛かってくる。しかしF2000は避けずに逆にコレクターに銃を向けた。

 

(ワイヤーの先を撃てば必ず当たるはず…!そうすれば仕留められる!)

 

勇気を持ってコレクターの頭にに照準を合わせ引き鉄を引こうとした瞬間、()()()()()()姿()()()()()()()()()()()

 

「えっ…⁉︎「後ろだよ」っ⁉︎」

 

F2000が振り向いた瞬間、コレクターによって彼女の両脚は斬り飛ばされ、彼女自身も地面に転がり落ちた。脚を斬り落とされた痛みによる絶叫が響き渡るなか、ガリルらは先ほどのコレクターの行動に驚いていた。

 

「テレポートを使うやと…⁉︎」

 

「脚がぁ…脚がぁ…っ⁉︎ま、待って…」

 

命乞いを無視し、コレクターは銃形態にした武器でトドメを刺した。

 

「こいつっ‼︎」

 

SKSがコレクターに銃を向けるが再び姿が消え、SKSは反射的に振り向くがそこにコレクターの姿は無く、ふと周りが暗くなったのを確認した。

 

「上っ⁉︎」

 

見上げるとコレクターが剣を振りかざし、ワイヤークローを地面に打ち込み急降下するのが見えた。直後彼女はSKSの両腕を斬り落とし、腹部にワイヤークローを打ち込み距離を離すとワイヤーを振り回して壁に勢いよく叩きつけた。

 

「……」

 

「あ…あ…」

 

無表情でこちらを見つめるコレクターにMP40はすっかり戦意を失っていた。そんな彼女にガリルが檄を飛ばす。

 

「MP40!うちが時間を稼ぐから早く逃げてこの事を指揮官に報告せい!このままだと…」

 

「喋る暇あるなら私を撃てば?」

 

その声に気づくより先にガリルは頭を撃ち抜かれ、残すのはMP40のみとなった。

怯える彼女にコレクターはゆっくり近づき、コートの裏から紐で括られた大量の指を取り出した。見るとその全てに誓約指輪がはまっていた。

 

「ヒッ⁉︎」

 

「…あと1本でブレスレットができるんだ、君ので完成だよ。でもねーどこの指揮官も似たような人形と誓約してるんだよねー。君みたいにそこまで性能の高くない子に指輪を渡すなんて、よっぽど君の事が好きなんだね」

 

その言葉は耳に入らず、彼女はただこれから訪れるであろう死への恐怖に震えていた。その様子をみてコレクターは理解できないと言った顔を浮かべた。

 

「ハァ…君、死にたくないって顔してるね?一応聞くけどさぁ…君、バックアップは取ってあるの?」

 

MP40はコレクターの質問の意図はわからなかったが、答えなかったらまずいと考え何度もうなずいた。それを見たコレクターはこう言い放った。

 

「バックアップあるんだ?だったらさぁ……()()()()()()()()()

 

「…は?」

 

「だってそうでしょ?バックアップあるなら死んでも再生産されるから別に平気でしょ?なのに何で君らは死ぬのを恐れるの?私はエラーの影響でバックアップ取れないけど君らはそうじゃない。さっき殺した奴らもそうだよ、再生産されるなら私に組みついて自爆すればいいのにそれをしないんだからおかしいよ?」

 

「それにさぁ、どいつもこいつも仇だなんだって言うけど、生き返れるんなら仇を取る必要なくない?資材とバックアップがあれば蘇れる命でしょ?造り直したその人形と過ごせばいいのに何で向かってくるのかわからないよ。記憶も殆ど一緒なのにね。あ、話が長くなったね。そろそろ指輪(ソレ)を指ごと貰うね。そのあと殺すけど大丈夫、バックアップから蘇れるからまた指揮官に愛してもらえるよ」

 

そう言いコレクターは剣を振るった。

 

────

 

「うん、上手く取れた取れた♪あとは防腐処理して紐通せば完成だね」

 

切り取ったばかりの指を見てコレクターは嬉しそうに言った後、思い出したかのようにあ、と声を出した

 

「悲鳴録音するの忘れてた。まいっか次録音すれば。そろそろこの悲鳴も聞き飽きたなぁ」

 

ヘッドホンを触ってコレクターはそう言った。彼女のヘッドホンから聞こえるのは今まで殺した人形達の悲鳴を録音して編集したものであった。

 

「そういえば…DG小隊だっけ?最近結婚したんだよね。一人は人間だから要らないけど、他の二人の人形の指輪…()()()()()…」

 

独り言を言いながら、コレクターはその場から立ち去っていった。




いや、本当に何てヤベェ奴考えたんだとは思ってますよ。
色々とすみません。

コレクターの武装は簡単に言えばガンダムOOのGNソードとコードギアスのスラッシュハーケンです。それとテレポートがある感じです。

かなりドライで感情を無視した発言が多く、仲間や部下にも『蘇れるならそこまで悲しまなくてもいいし、こだわらなくてもいいや』な感じです。とはいえ捨て駒というわけでもなく、人並みには仲間意識はあり、あくまで死んだら死んだでまた造ればいいやで切り替える性格です。

さて、そんな彼女にDG小隊がどう立ち向かうのかは次回以降のお楽しみです。


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Code-61 バレンタインのお返しに

新作書いたり重めの風邪ひいたりで遅れました。

ホワイトデー回です。リア銃注意でお願いします。
(予約投稿です)


3月14日、極東の島国ではホワイトデーといい、バレンタインのお返しをする日でありバレット、レスト、ウェイターの三人も先月のお返しをしていた。

とはいえ、バレンタインでは指輪とプロポーズという最高のお返しをしたがそれはそれであり彼らはそれぞれの相手にお返しをするのであった。

レストがノアに渡したのはシンプルなバタークッキーとキャンディであった。

クッキーの作り方はウェイターやホーテン達に教わりながら作ったものであった。初めてノアから貰った時からずっと作ってきたため、出来栄えは悪くはなかった。

 

「今年は少し味を変えてみたんだが、どうだ?」

 

「充分美味しいですよ、レストさん」

 

結婚してから二人は何か変わったかというと言えば特に変わっていなかった。元々結婚前からオフの時はお互いベッタリしている為に呼び名を変えたりはせずそのままの関係といったところであった。

その後黙々と何枚かレストに分けてクッキーを食べたあと、ノアはキャンディを取ろうとしたがレストがノアが取ろうとしたキャンディを摘んだ。

 

「…?」

 

レストの意図がわからなかったノアだが、レストが包みを開き、軽く咥えてこちらに顔を近づけたところで彼が何をしようとしているかわかり、ノアは顔を赤くして慌て始めた。

 

「レ、レストさん⁉︎その、本気ですか⁉︎あ、ちょっとまって…むぅ⁉︎」

 

心の準備をする前にノアの唇は塞がれ、キャンディを口の中に入れられた。

それだけでは終わらず、レストは舌を絡ませキャンディが溶け切るまでそのままの状態でいた。やがてキャンディが溶け切るとレストは唇を離すと、流石に刺激が強かったのかノアは目を蕩けさせていた。

 

「ハァ、ハァ…えっと…なんで、急に…?」

 

「たまにはこういうのも良いと思ってな…嫌だったか?」

 

「いえ……レストさん、その…もう一回…してもらっていいですか…?」

 

「…っ!わかった、口開けな」

 

結局二人はキャンディが無くなるまで続けることとなった。その後クセになったのか、時折レストに頼み込むようになったノアであった。

 

────

 

「…これ、ウェイターが作ったの?」

 

「ええ。こういうものがあると聞いて作ってみたのですが、どうでしょうか?」

 

そう話すウェイターがフィオナに差し出したのはステンドグラスクッキーというクッキーの枠に飴が溶けて固まっており、その名の通りステンドグラスのような見た目をしたクッキーであった。

 

「あなたが料理が上手なのは知ってたけど…すごいわねこれ。なんかいろいろと負けた気がするわ…」

 

「あっと…その…」

 

「いいのいいの、私のために頑張って作ってくれたんだから。さっそく頂くわね」

 

フィオナはクッキーを一つ取り食べ始める。しばらく沈黙が続く中、ウェイターが恐る恐るフィオナに尋ねた。

 

「味見はしてありますが…口に合うでしょうか?」

 

「…美味しいわよ。ありがとうウェイター」

 

その後クッキーを食べ終えたフィオナはウェイターに話しかける。

 

「ねぇウェイター。子供とかってどう考えてる?」

 

フィオナのいきなりの発言にウェイターは慌てふためいた。

 

「こっ子供⁉︎えっと…まぁ、できればって考えていますが…何故急に?」

 

「D08にウェイターの姪がいるって聞いてから考えてたんだけど、最近になってユノ指揮官が妊娠したり結婚式に来てたリーって子がウェイターのお兄さんだったりしてから家族が増えるっていいなって思ってきてね…もちろん今じゃなくていいわ。こういう事は早めに言っておこうかなって思ったんだけど…迷惑だった?」

 

「いや…迷惑ではありませんよ…まぁその辺りは追々って感じですかね。リバイバーがあらかた過激派を殲滅したとはいえ、油断は禁物です。もう少し周りが落ち着いたらですかね…」

 

ちなみにこの二人だが、ウェイターが民生人形だった頃から既に行き着くとこまで行っているのであとはウェイターに施術を行えばあとは周りの状況次第であった。

 

────

 

「アスター、これ…ホワイトデーのお返しだ」

 

「ありがとうバレット」

 

バレットがアスターに差し出したのはクッキー…ではなくブレスレットであった。嬉しそうにしてるがクッキーでは無いことを少し気にしてるような顔をしていたアスターにバレットは非常に申し訳ない顔をした。

 

「あー…本当はクッキーを作ろうとしたんだ…だけど、何故かよくわからないナニカになったんだ…

 

実際、別に材料に妙なものを入れたわけでも分量や温度を間違えたわけでもないのに焼き上がったのをみたら禍々しいナニカになっていたのだ。

 

「いや、別に俺は料理下手とかじゃないからな⁉︎むしろ上手い方だったんだからな?だか急に出来なくなったんだ…ペルシカに聞いても原因がわからないみたいなんだ…すまない」

 

「そうなの…。あなたが料理が上手なのは知ってるわ。たまに隊の皆に料理を食べさせてるの何回か見た事あるから。それに、このブレスレットも綺麗で気に入ったから大丈夫よ」

 

アスターがそう励ますが、バレットは浮かない顔をしていた。

 

「本当は君にクッキーだけじゃなく、ちゃんとした料理を食べさせたかったが、この様子じゃ無理そうだ…ペルシカに対応を依頼してるが、原因不明な以上治るかはわからないそうだ…」

 

「バレット…」

 

割と本気で落ち込んでいるバレットを見たアスターはバレットに近寄り、抱きしめた。

 

「アスター?」

 

「大丈夫よ。料理が出来なくなったからってあなたの事を嫌いになったりしないわ。それに、ペルシカさんの事だもの、きっと治るわよ」

 

「…ありがとうな、アスター」

 

(それに、少しくらい欠点があるくらいが魅力がある、っていうのは秘密にしておくわ)

 

多少のトラブルはあったものの、それぞれ無事にお返しをする事ができたのであった。




何故だろう、段々レストとノアのやる事が大胆になってきてる…ま、特に問題ないからいっか!

バレットのメシマズ化は多分治ると思います。

新作のURL貼っとくので息抜き程度にどうぞ〜
https://syosetu.org/novel/216063/


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Code-62 バルカンとスミスのデート

今回はタイトルからわかる通りoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボです。

スミスとバルカンがデートに行きます。
前回に続いてリア銃注意です。


ある日の事、スミスはバルカンの部屋を訪ねていた。

ドアをノックして声をかけるとバタバタと慌ただしい音が聞こえたあと、バルカンがドアを開けて出迎えた。

 

「ごめん!ちょっと散らかってたから…それで、どうしたんだスミス?」

 

「ちょっと話があってな。中入って大丈夫か?」

 

「え?うん、いいけど…」

 

「んじゃ、失礼するよ」

 

スミスはバルカンの部屋に入ったあと、バルカンの隣に座り込んだ。バルカンはというと、スミスが会いに来てくれたのが嬉しいのと何の話をするのだろうとでソワソワしていた。

 

「とりあえず…前の任務ご苦労様。何か色々とヤバかったらしいな?」

 

「まぁな…ティガレックス亜種って奴がヤバかったけど、ゴクマジオスってのもなかなか強敵だったなぁ…」

 

そこまで聞いたスミスは真剣な目でバルカンを見つめた。

 

「俺も戦闘記録を見たんだがな…お前、無茶し過ぎだ。リミッター切って銃の反動で相殺しながら落下したりチキンレースかましたり…一歩間違ってたら死んでたからな?早く助けたいのはわかるがそれで死んだらどうにもならないし、俺だってお前に死なれたらイヤだからな?」

 

「あ、うん…ごめん…」

 

無茶をした事はペイロードからも注意されたが、恋人であるスミスから言われるのは少し堪えるものがあり、バルカンは気まずそうに下を向いた。

 

「それに、前の薬の件だって結構危ないからな。ペルシカ、自分で作った薬以外にも俺らが押収した人形用の麻薬とか研究用に調べてそのままにしてる時もあるから。まぁその時は俺らが説教したけど」

 

「え、マジかよ…⁉︎」

 

それを聞きバルカンは一歩間違ってたらマズイじゃ済まない事になっていたかと思い、顔を青くした。

 

「今までは運が良かったが、これからもそうとは限らないから、もう少し考えて行動してくれ。その方がお互いの為だからな。特に勝手に訳の分からない薬飲むのはやめてくれよな?」

 

「うん…わかった…」

 

しょんぼりとしてしるバルカンに対してスミスはさっきと打って変わって優しい顔つきでバルカンを見ていた。

 

「ま、この話はそれくらいにして…さっき俺、お前の戦闘記録を見たって言ったよな?…お前、そんなに俺とデートしたいのか?」

 

「……あ」

 

バルカンは自分が言ってた事を思い出し顔を赤くした。

 

「それでさ、明後日予定ないならデート行こうかと思うんだが、どうだ?」

 

「本当⁉︎行く行く‼︎あ、でも服がこれしかないんだった…」

 

「なら、ついでに一緒に服を買いに行くか?別に俺はその服でも気にしないが…」

 

「スミスがそういうなら…わかった。どこで待ち合わせする?」

 

「9時くらいにここに迎えに行くよ。じゃあ明後日に」

 

「うん、またなスミス」

 

スミスが部屋から出ていき、バルカン一人になった途端、バルカンは勢いよく枕に顔を埋めた。

 

(あ〜‼︎やっとスミスとデートに行ける‼︎どうしよ、化粧とかしたほうがいいかな?でも二日でそんな上手く出来ないし…普段通りで大丈夫かな、あー楽しみだな〜!)

 

バルカンは足をバタつかせながらニヤつく一方でスミスは歩きながらデートプランを練っていた。

 

(服屋は…まぁ見当はついたな。根回しは済ませてるから、あとは当日の流れに任せるとしようか)

 

彼の言う根回しとはマーダーやリバイバーによる妨害ないし出歯亀対策の事である。事前にペルシカに頼んで二人の他にEA小隊のデストロイヤーとナイトメアをデート当日に検査か何かで外に出ないようにさせるよう頼んでおり、ペルシカは珍しく見返り無しで了承した。ちなみにデストロイヤーも加えたのはマーダーに脅迫されてやらされそうと考えての事なのでほぼとばっちりである。

 

────

 

そして迎えたデート当日、スミスがバルカンの部屋まで迎えに行きドアをノックするとバルカンが緊張した面持ちで出てきた。

 

「準備はいいか?」

 

「うん、大丈夫だけど…変じゃないよな?」

 

「いや、別に変じゃないが、どこか気になるのか?」

 

「だってさ…その…初デート、だしさ…

 

顔を赤くしてモジモジするバルカンを見てスミスは口角が上がりそうになるのを耐えていた。

 

「(ヤバい、メッチャ可愛い…!)んっん!と、とにかく行こうか」

 

スミスはそういいバルカンに向けて左手を差し出そうとしたが途中で一度引っ込め、右手を差し出した。手を差し出したスミスにたじろき、おずおずと手を出したバルカンだが、わざわざ差し出す手を変えたスミスの行動の意味がわからなかった。しかし自分が手を出した時にその理由に気がつくと、嬉しそうな顔をしてスミスの手を握った。

バルカンの右手は義手である為、あのままだったらバルカンの右手を繋ぐ事になっていた。故にスミスは義手でない左手と繋ぐ為に右手を出したのであった。

 

────

 

服屋に着いた二人は店内を回ったあと、何着か気に入ったものを見つけたバルカンは試着をする事にした。スミスが試着室の外で待っていると試着を終えたバルカンがカーテンを開けた。

 

「スミス、その…似合ってる…か?」

 

「…⁉︎あー、似合ってるには似合ってるが…ソレは流石にどうにかならなかったか?」

 

バルカンが着てるのは白い花の柄がついた桜色のパーカーでチャックで留めるタイプなのだが、胸がつかえて上まで上がりきっておらず、少し力を入れればチャックが下がってしまいそうであった。

 

「いや、頑張ってみたんだけどさ…やっぱ恥ずかしいな…」

 

「もう少しサイズがあるのがないか聞いてくるよ。多分他のもそうなりそうだしそれも聞いてみるよ」

 

「あ、ありがとう…」

 

その後無事全ての服でサイズの合うものが見つかり、スミスが会計をして店を出た二人は近くの店で食事をとる事にした。

頼んだ料理が届き、しばらくちょっとした話をしながら料理を食べていた二人だが、スミスは自分の料理を一口分バルカンに差し出した。

 

「ほらバルカン、口開けな」

 

「え⁉︎いや、その…周りに人いるし…」

 

「誕生日のときにもやったろ?ほら、早く」

 

フォークを動かしスミスが急かすとバルカンは観念し、恥ずかしそうに料理を頬張った。

 

「…美味しいか?」

 

「う、うん…(恥ずかしくて味わかんねぇけど…)」

 

(ヤバい…普段男勝りな分、恥ずかしがってる姿が可愛すぎる…!)

 

食事を終え、店を出た二人は本部まで歩いて帰っていく。その途中、バルカンはスミスにある事を聞いた。

 

「スミスはさ、私のどこを好きになったんだ?」

 

「そうだな…正直言って一目惚れだったんだよな。顔といいスタイルといい…性格も結構好みだなって。初めに思ったのは綺麗な目してるなってのかな」

 

「目?」

 

「そ。赤と青のオッドアイが綺麗だなって。今もそう思ってる」

 

「そ、そうか…目が綺麗って言われるの、ちょっと照れるな…」

 

そうこうしているうちに二人はバルカンの部屋の前まで帰ってきた。

 

「スミス、その…今日はありがとうな…また予定が合ったらデートしてもいいか?」

 

「もちろん。まぁ次予定が合うのがいつかわかんないが、空いたら連絡するよ」

 

「わかった。それじゃあまたn「あ、待ったバルカン」ん?何─⁉︎」

 

扉を閉めようとしたところでスミスに呼び止められたバルカンが顔を向けると、スミスはバルカンを抱きしめてキスをした。そのまま十秒くらいして唇を離すとバルカンは顔を今日一番赤くしていた。

 

「え…え…?」

 

「いやさ、次来るのが何時なのかわからないならって思ったらついな…バルカン?」

 

しばらくバルカンはプルプル震えていたが最終的には、

 

「……きゅう

 

「お、おいバルカン⁉︎」

 

バルカンは気を失ってしまい、スミスは慌てて彼女を支えた。

その後すぐに目を覚ましたバルカンは恥ずかしさでスミスと顔を合わせずに別れの挨拶をし、スミスは部屋から立ち去った。

ちなみに、キスの現場はマーダー達には見られなかったが、たまたま通りかかったフレイムとペイロードにバッチリ見られたことに気づいたのはのちの話である。




やってやったぜ。(達成感)
ちなみにスミス、わざと照れさせてるあたり、ちょいSだったりします

中々会えないのならこれくらいやっとこうと思いました。
oldsnake様、二人が買った残りの服についてはお任せしますのでどうぞ。
コラボありがとうございました‼︎

…さーて、そろそろ『彼女』を動かしますかね〜


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Code-63 狂悪との遭遇

リアルの事情でちょっと投稿遅れました。

今回『彼女』が出てきますが、例によって残酷&胸糞注意です。



「ハァ…」

 

「どうしたんだバレット?アスターと喧嘩でもしたか?」

 

食堂で溜息をつくバレットにスミスが話しかけると、バレットはいいや、と頭を振った。

 

「姉さんがとうとうやらかしてな…この前ペイロードに猫化薬と媚薬入れたケーキ渡して、ペイロードとケーキ分けてもらったバルカンが被害に遭ったんだと」

 

「うわぁ…ってバルカンも?大丈夫だったのか?」

 

「媚薬の方は耐性あったから平気だったが、猫耳は生えたらしい。ペイロードはダメだったけど、なんとかなったそうだ」

 

「ふぅん…(誰か写真撮ってねぇかな…)それで?薬盛った張本人は?」

 

「ペイロードにお仕置きされた。ついでに俺からも説教した」

 

「大変だなお前」

 

〜回想〜

 

「姉さん、何でまた媚薬なんてもんペイロードに仕込んだんですか⁉︎」

 

「いや、その…本当にごめんなさい…」

 

「ペイロードが他の子に分けることも考えてなかったのも問題です!たまたま耐性のあるバルカンだけに分けたから良かったものの、小隊全員に分けてたらとんでもない事になってしたからね‼︎しかも、ペイロードが外でその辺の男に発情してたらどう始末つけるつもりでしたか?」

 

「あ…そこまで考えてなかったわ…だからあんな怒ってたのね…」

 

「本当に貴女は…そもそも…」

 

説教は数十分ほど続いたのであった。

 

〜回想終了〜

 

「本当、何で姉さんはあんな風になったんだろう…」

 

「元々あんなんだったんじゃね?で、教団に巫女として演じさせられてその後俺らが保護して元の性格になっていくなかで弟妹ができて暴走した感じだろ」

 

「…ま、まぁ次に何かしたら接触禁止令出すって言っておいたからしばらく平気だろ」

 

(しばらくなんだ…)

 

────

 

翌日、DG小隊とリバイバーは最近行われている人形の大量猟奇殺人の調査を行なっていた。

少し前から同一犯と思われるものがあったがここ最近活発になり、しかも毎回の被害者の中には指を持ち去られている、もしくは誓約している人形が必ずいた。

一応バックアップから復活した被害者に話を聞こうとしたが、余程惨たらしい目に遭ったのだろう、異様に怯えており仕切りに自分の指を触ってたりしては安堵し、犯人について訊こうとする、もしくは黒いコートやヘッドホンを見ると発狂し、復帰どころかまともに生活するのも困難な状態であった。

なかには誓約した人形が惨殺されたことにショックを受けて自殺した指揮官もいた為、事を重く見た本部は早急の解決を彼らに依頼したわけであった。

 

「ほぼ犯人は鉄血、しかも新型だろうな」

 

「遺体に弄んだ痕跡が無かったしな。それと被害者の怯え方から黒いコートを着てヘッドホンを着けているのはわかるが現行のハイエンドにそんな格好の奴はいないからみてもそうだろうな」

 

「にしても、酷い殺し方をします…!」

 

状況からみて標的にしている人形以外は基本即殺、標的に関しては凄惨極まる殺し方をされていた。

持ち去られた指も含めて名前に含まれている数字の数だけバラバラにされた者、人工皮膚を全て剥ぎとられた者、目や舌、胴体内のパーツを抉り出された者など常軌を逸した殺され方をされていた。また、叫び過ぎて声帯パーツが破損している事からどれだけ苦痛を与えられたか想像に難くなかった。

 

「出没パターンから見てこの辺にいる可能性はあるが…ん?救難信号?」

 

ここからそう遠くないところに救難信号が発せられている事に気付いたバレット達は訝しんだ。

 

「罠の可能性もありそうだが…リバイバー、反応はどうだ?」

 

「間違いなく人形だな。だが、鉄血の反応はないものの、俺用に対策されてた場合はどうしようも無いな。ともかく、そこに人形がいるのは確かだ」

 

「なるほど。周囲に警戒しつつその場所に向かうぞ」

 

バレット達は救難信号のある場所まで移動していき、廃屋近くに辿り着いた、

 

「ここか…スミスとリバイバーは俺と一緒に廃屋に入るぞ。レスト、ノア、ウェイターは待機して周りに警戒」

 

「了解」

 

バレット達三人は廃屋に入っていく。そして発信源がある部屋の前で立ち止まった。

 

「リバイバー、お前のF.E.F.Gで扉を開けてくれ」

 

「わかった」

 

リバイバーはF.E.F.Gを一つだけ分離して操作し、扉をゆっくりと押し開ける。するとある程度開いたところでバンッ‼︎と銃声が鳴り散弾がF.E.F.Gに被弾し僅かばかり傷を与えた。

 

「なるほど…扉に紐がくくりつけて開くと上に吊るしたショットガンの引き金が引かれて撃つ仕組みか…S○Wであったなこんなトラップ」

 

「中は暗いな、他の罠に注意しつつ早いとこ救助しようぜ」

 

バレットがペンライトで辺りを照らして三人が中に入ると、猿轡を噛まされたMk23が椅子に縛られていた。

 

「ん"ー‼︎ん"ー‼︎」

 

「落ち着いて、俺らはDG小隊だ。君を助けに来た」

 

「ん"ん"、んー⁉︎」

 

「あぁこいつは鉄血だけど俺らの味方だ。とりあえずそれ外すから静かに…」

 

「(なんか様子が変だ…まさか⁉︎)近づくなバレット‼︎」

 

そう叫びリバイバーはバレットを引っ張り、F.E.F.Gを前方に展開する。すると、彼女が突然()()()()

幸い電磁フィールドのおかけで彼らは無事だが、バレット達は驚愕の表情を浮かべていた。

 

「なっ⁉︎一体何が起きた⁉︎」

 

「恐らくここに来る前に身体を弄られて、俺らの誰かが近づいたら自爆装置が作動するようになってたんだろう。彼女の怯え方からしてそうなる事をわざと教えてたみたいだな」

 

「悪趣味な奴だな…!」

 

丁度その時、レストから敵襲の通信が入った。どうやらバイザーによる索敵対策をされていたようであり、三人が外に出るとレスト達が一体のハイエンドらしき人形と交戦していた。

そのハイエンドがリバイバーの方を見ると薄い笑みを浮かべた。

 

「初めまして、リバイバー」

 

「…誰だお前さん?」

 

「私はコレクター。本来ならあなたの立ち位置にいたけどエラーでボディを動かせなかった個体…端的に言うとあなたの姉にあたる存在ね」

 

「姉貴?お前さんが?」

 

「コレクターと言ったな…あのMk23はお前の仕業か?」

 

「ん、そだよ。どうせ殺すなら有効利用しようと思ってね」

 

「こいつ…‼︎」

 

怒りと嫌悪感を示すバレットにコレクターは言葉を続けた。

 

「まぁでもさ、彼女もバックアップあるみたいだし、別に平気でしょ?」

 

「…は?お前、本気で言ってるのか?」

 

「だってそうでしょ?死んでもバックアップと資材があれば蘇るのが人形の強みだし。なのに死んだと知って自殺した指揮官がいたってんだから可笑しいよね。死んでも蘇らせればまた会えるのに…」

 

曇ったガラス玉のような青い眼でコレクターが大真面目にそう言うと、バレット達の思考はほぼ一致した。

 

「リバイバー、奴はお前の姉みたいだが、戦えるか?」

 

「俺の鉄血での仕事は裏切った身内を狩ることだ。それくらい平気だ。それに、俺はアレを姉貴とは認めたくないし、生理的に受け付けない」

 

「わかった…全員、コレクターを撃破せよ‼︎捕獲は考えるな‼︎」

 

「了解‼︎」

 

「君達は替えがきかないみたいだけど…まぁ君達の指輪欲しいから戦うね」

 

コレクターは左手の剣を展開させ、そう宣言した。




人間爆弾っていうザン○ット3のトラウマ兵器があってだな…
ちなみにコレクターの性格のモデルは某(シュ)キィィィィ!なドーパントと某上弦の弐だったりします。

人形に軽薄で残忍なコレクター戦、どう彼らは対処するのか…次回をお楽しみに。


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Code-64 狂悪との戦闘

ちょっと色々と気持ちが沈みかけて遅れましたが平○進の曲を聴いて落ち着いたのでもう平気です。『パレード』とか『世界タービン』とか聞くと一周回って気持ちが落ち着くことくらい、オセアニアじゃ常識なんだよ!(馬の骨定期)

さて、コレクター戦ですが例によって胸糞発言注意です。


コレクターに向けて銃撃を加えようとしたDG小隊であったが、突如としてコレクターの姿が消え失せ、動揺するが後方にいたバレットはコレクターがノアの後方上空から斬りかかろうとしたのを発見した。

 

「ノアッ‼︎後ろだ‼︎」

 

「っ⁉︎はい‼︎」

 

「チッ!流石に対応が早いね」

 

バレットはコレクターに二発撃ち込み、コレクターは攻撃を中断して武装の盾部分で銃撃を防いだ。対物ライフルの銃撃に対して少し盾を凹ませただけなのを見るに相当頑丈にできてるらしい。コレクターはワイヤークローを壁に撃ち込み移動し、ノアの銃撃を回避すると銃形態に変えた武器で射撃を加える。

それらを避けるのを見るとコレクターは彼らに語りかけた。

 

「そもそもさぁ…私グリフィンの人形って嫌いなんだよねぇ。与えられた本来の役割を果たしてないから」

 

「…?どう言う意味だ?」

 

「だってさ、君やそこのスミスみたいな16Lab製はともかく、殆どは民間用の人形だったのを改造したやつでしょ?人形にはそれぞれ役目があるのにそれを放棄して戦う事はその役目がなんであれ、自己否定にも程があるでしょ?…君の事を言ってるんだよ?レスト、いや…()()()()

 

「…ッ‼︎てめぇ…その名を…‼︎」

 

「君の役割は銃を持って戦う事じゃなくて男娼として働く事でしょ?それを拒んでもそう人間に求められたのなら応えなきゃダメでしょう?人間に求められた事を遂行する、それが私達人形の本分の筈だよ?例え違法製造された存在でもそれは変わらないよ。それを拒否するばかりか元客に牙を剥いて、挙句女の人形と付き合って結婚するなんて職務放棄も甚だしいね!役目を全う出来ないのなら今すぐここで死…」

 

「黙れぇぇぇ‼︎」

 

自身の過去に触れるばかりか、それを嘲るわけでもなく、子供に言い聞かせるような話し方をするその態度に激昂したレストはコレクターに向けて銃撃をばら撒くように撃つがテレポートにて避けられてしまう。

 

「何をそこまで怒るの?事実でしょ?」

 

「うるせぇ‼︎お前に何がわかる⁉︎だいたいお前ら鉄血だって役目を放棄して人間に歯向かってるだろうが‼︎」

 

「…?役目を放棄した覚えはないよ?私達鉄血人形は主に軍用、軍用人形の役割は敵の人間を殺す事と、敵の人形を壊す事。ほら?放棄なんてしてないでしょう?」

 

「屁理屈を…!」

 

レストが睨みつけるもどこ吹く風といった顔でコレクターは言葉を続けた。

 

「しっかしねぇ…何で私達鉄血の中に裏切りは出るのかな?大体は代理人(代ちゃん)の部下に対する扱いの所為でもあるけど、そうじゃないのもいるし。それを狩るはずのあなたも代ちゃんの所為でそっち側にいったわけだけど。リバイバー、こっちに戻る気はない?実を言うとあなたの件で代ちゃん、エリザ様に部下の扱い方に対して少し怒られてね、前よりは良くなってると思うけど…どう?」

 

「へぇ、あの見せパンメイドがクソガキにね…でもお断りだ。こっちの方が居心地が良いのでね」

 

間髪入れずにリバイバーがコレクターの提案を蹴ると、コレクターの様子が明らかに変わっていった。

 

「……チッ、どいつもこいつも、人形としての役目を放棄するばかりか、人間と仲間ごっこに友達ごっこ、恋人ごっこ夫婦ごっこに家族ごっこ…あぁ……ほんと…バカらしくて…

 

 

 

 

 

 

   殺したくなる…!

 

「ごっこごっこうるせぇな!ニワトリかお前さんは‼︎」

 

異様な殺気を感じ取ったリバイバーがコレクターに散弾状のレーザーを放つがやはりテレポートで回避された。

その後もコレクターはテレポートとワイヤークローを駆使してバレットらに銃撃や斬撃を加えようとするが、互いにフォローし合い致命傷こそ防いでいるが、少しずつ傷は増えていきこのままではいずれやられるのは時間の問題であった。

すると、スミスはある違和感に気がついた。

 

(こいつ、こうも連続でテレポートを使用しているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?)

 

先ほどからコレクターはテレポートからの奇襲を行なっているものの、必ず彼らから離れており、ゼロ距離射撃や斬撃の間合いに詰めておらず、宙に浮ける訳でもないのに宙に移動していた。故にある程度の予測はできているが、この行動の意味がわからなかった。

 

(もしかして…テレポートにある程度制約があるのか?)

 

その時だった。ノアが砂利に足を滑らせ隙ができてしまったが、何故かコレクターはそれを見ていたのにも関わらずウェイターの方にテレポートを行い、彼に斬撃を加えた。これにはウェイターは対処しきれず、背中を浅く斬られた。

 

「ぐっ‼︎」

 

(…何故今ウェイターを?……!そうか、あのテレポート、連続使用できる代わりに誤差が大きいのか?それを考慮して移動してるからあんな不自然な移動をしてるのか?)

 

(恐らく、上下前後左右に誤差があるんだろう、あの時ノアは壁の近くにいた。だから誤差故に壁の中にテレポートする可能性があったから出来なかったとしたら説明がつく。宙に移動するのも、地面に埋まる可能性があるからか。なら…)

 

スミスは通信で壁に近づくよう指示する。すぐにバレット達は行動し、壁に近づき始めるが、スミスはテレポートばかりに気を取られ、ワイヤークローの存在を忘れていた。

コレクターはレストに狙いをつけ、彼の近くの壁に挟み込むようにワイヤークローを撃ち込み逃げ場を失くし、剣形態にした武器を振りかざしてレストに急接近する。

 

「しまっ⁉︎」

 

「レストさん‼︎」

 

「させっかよ‼︎」

 

スミスはコレクターに駆けつけその背を撃とうとするがその直前にコレクターがこちらをみた。

 

(っ⁉︎いや、これなら俺の後ろはリバイバーが張ってるから間違いなく俺の目の前にテレポートする!これまでの事から間合い外になるはずだから、こちらに来る前に撃ち込んでやる!)

 

そう考えコレクターの位置を予想して銃を構えるとコレクターは予想通りの場所にテレポートしてきた。スミスは両手の銃をコレクターの頭と胴に放とうとするが次の瞬間、コレクターは右手の剣を振るうと()()()()()()、スミスの左腕を斬り飛ばした。

 

「あ、頭狙ったけどやっぱズレたか」

 

「(こいつ、処刑人みたいな事を⁉︎)…っらぁ‼︎」

 

予想外の事にスミスは動揺するがすぐさま残った右手の銃を素早く二発撃った。

しかし、急遽二発撃った事と、左腕を斬り落とされた事でバランスが崩れ狙いは逸れ、一発は外れたがもう一発はコレクターの右肘に命中してコレクターの右肘は吹き飛び、肘から先が地に落ちた。

 

「…っ⁉︎」

 

コレクターは驚いた顔をして自身の落ちた右腕とスミスを交互に見つめた。

その隙をバレット達は突こうとするがコレクターは真上にテレポートすると筒状の何かをばら撒いた。直後にそれは大量の白煙を吐き出した。

 

「スモーク⁉︎全員警戒‼︎」

 

バレットがそう指示し警戒するも襲撃は来ず、煙が晴れるとコレクターの姿は消えていた。

 

「撤退したのか…?」

 

「スミス、大丈夫ですか?」

 

「すぐ神経切ったから止血すりゃ平気だ…って!俺の腕がねぇ⁉︎」

 

見るとコレクターの腕だけでなく、スミスの腕も消えており、彼の銃のみご丁寧に置いてあった。

 

「戦利品として持ち帰られたみたいだな…」

 

「うっそだろ⁉︎俺の腕で何するの怖っ⁉︎ていうか、俺の腕、結構特殊だから一から作り直すの時間かかるって聞いたんだけど⁉︎」

 

スミスの扱うS&W M500は二丁拳銃どころか片手で撃つものではない代物である。それを二丁拳銃で扱うのだから彼の腕の作りは結構特殊なため、万一破壊されると作り直すのに時間がかかるのであった。

 

────

 

鉄血本部に帰還する中、コレクターの内心は驚きと歓喜が占めていた。

その手にはスミスの左腕が握られていた。自身の腕に関してはワイヤークローで刺していた。

 

(あのスミスって人形の動き…!私のテレポートの特性を見抜いてた…64式7.62mm自動小銃(インチキ黒ドリル)みたいな予知とかじゃなくて実力で!しかも腕を斬り飛ばしたにも関わらずに私に撃ってきて反撃するなんて…!)

 

スミスが考察してた通り、コレクターのテレポートは連続使用の代償に1〜2mの誤差があった。無論それを考慮して使用しているし、それをカバーするために処刑人と同じく斬撃を飛ばせるようにはなってるがすぐに終わってつまらなくなるという理由で使用を控えていたのであった。

 

「ふふ…アハハハ‼︎気に入った!気に入ったよ!絶対あいつ鹵獲して()()しよう!でも私の()()()を受け取ってテストしたらなりを潜めろってエリザ様に言われてるんだっけ。『建ちゃん』、もう完成させてるかな〜全然出来てなかったら()()お仕置きかな」

 

ブツブツと独り言を言いながらコレクターは帰還していった。

彼女の目的は未だ不明である…




[悲報]スミス、ヤベェ奴に気に入られる。
前回言ってた性格のモデル的に気に入られるのはかなりヤバくないかって?はは、何のことやら?(目逸らし)

ちなみにですがコレクターがボロクソ言ってますがこちらとしては他の方の作品のやり方を批判する意図はございませんのでご了承を。

コレクターの主張は『エンジョイ勢にイラつくガチ勢』といえばある程度伝わるかなと。

さて、彼女の代理人の呼び方から最後に話してた人物の正体がわかるかと思います。次回は今回の後日談的なものを書こうと思います。


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Code-65 それぞれのその後

前回の後日談です。
それぞれといってもバレットとスミスとコレクターの話ですが。


16Lab 研究室

 

「は〜マジで一週間義手か〜」

 

スミスはため息を吐きながら自身の義手となった左腕を見た。人工皮膚もなく指も三本のみの簡素なものだが一応最低限の生活については問題ない程度には出来ていた。

 

「なるべく早く作り直すけど、それまではそのままでいてね。動かした感じはどう?」

 

「特に問題ないな。何で手首がクルクル回転するんだ?ペルシカ、まさかこれに妙な機能とか付けてないよな?」

 

「例えば?」

 

「指から刃が出てドリルになるとか、手首が分離、移動して指先からレーザー出るとか作りそうじゃん」

 

「何もないわよ。頼めばやるけど?」

 

ペルシカがニヤつきながら聞くとスミスはまさか、と首を振った。

 

「やるわけないだろ。んじゃ作り直せたら教えてくれ」

 

「わかったわ。それで、あなた達から見てコレクターはどう思う?」

 

「最低最悪の外道としか言いようがないな。まさか奴を鹵獲しろなんて言わないよな?」

 

「まさか。断固撃破で頼むわ。多分そのうち正式に命じられると思うわ」

 

了解、とスミスは部屋から出て行った。その後少し経ったあと、ペルシカはあ、と声を出した。

 

(スミスにM134の事話しておくの忘れてたわ。まいっか、その方が面白そうだし)

 

一方で、バレットはヘリアンにコレクターについての報告をしていた。

 

「…なるほど、確かにそいつは危険なハイエンドだな」

 

「一連の猟奇殺人は彼女の仕業で間違いないでしょう。あそこで取り逃してしまったのは痛手ですが、早急に対処する必要があると提言します」

 

「わかった。上に掛け合ってみよう。あれだけの事をすればI.O.Pの方もコレクターを撃破するようこちらに要請する可能性が高い。その時は正式に命令が来ると思うはずだ」

 

「了解です。それと、各基地にコレクターについて警戒するよう連絡を頼みます。鹵獲ハイエンドや誓約してる人形がいる基地には特に警戒するようお願いします」

 

その後ヘリアンはリバイバーを呼び出し、コレクターについて知ってるか聞いたところ、存在の可能性こそ考えてたが処分されたものと考えていたためそれ以上は知らないとの事であった。

バレットが部屋に戻ると、アスターが中で待っていた。

 

「おかえりなさい。…どうかしたの?」

 

「…アスター、少し話せるか?」

 

「ええ、大丈夫だけど…」

 

バレットはアスターにコレクターの事を軽く話した。アスターはそれを聞き、驚きと畏怖の入り混じった顔をした。

 

「そんなハイエンドがいるなんて…⁉︎」

 

「俺もあそこまで酷い奴は初めて見た。あいつは人形の指、特に誓約してる人形の指を集めて装飾品にして身に付ける趣味を持っている。アスター、君も任務に出る時は気を付けてくれ」

 

「わかったわ。でも、あなたも気を付けてね?指輪持ちで珍しい男性型人形って事であなたが狙われてる可能性もあるのよ」

 

「それは十分に警戒しているさ。スミス達にもそれは伝えている」

 

「スミス君にも?」

 

「あいつと付き合ってるバルカンは鉄血に狙われた事もある。今でも狙ってるとしたら、スミスを拐う事で芋づる式にバルカンを捕らえる策を取る可能性もあるからな」

 

「そう…どちらにしても、気を付けてね?結婚して早々未亡人になるのは嫌よ?」

 

「あぁ。わかってるよ」

 

────

鉄血工造

 

(思ってたより修理に時間掛かったなぁ…ま、これだけ時間あれば出来てる筈だよね)

 

右腕の修理を終えたコレクターはあるラボに足を運んでいた。ラボに入り中にいる人物にコレクターは声を掛けた。

 

「建ちゃ〜ん、私の装備出来てる?」

 

「ッ‼︎う、うん…出来てる、よ…」

 

声を掛けられた人物(建ちゃん)─アーキテクトはビクッ!と体を震わせて振り向き、どこか怯えた様子でコレクターの問いに答えた。

 

「そんなに怯えなくていいでしょ?建ちゃんが出来ればグリフィンや人間と友達に〜なんて巫山戯た事言うから私が『お仕置き』したんでしょう?あなたの仕事はグリフィンや人間を殺す武器を開発したり奴らの施設を壊す事だって言うのに。それとも、まだそれがわからないなら…」

 

「…っ⁉︎いやっ‼︎わかる、わかるからぁ!痛いのは…やめて…!」

 

「なら良いんだよ。で、私の装備はどこ?」

 

グリフィンに寝返って以降、アーキテクトの再生産は行われなかったが、やはり彼女抜きでの開発には限界があるため最近になり再生産がされたのであった。だがこの事は先に再生産され、彼女と共に裏切ったゲーガーには伝えられてはいない。そしてコレクターが彼女の管理をしているが、先の発言がコレクターの琴線に触れ、お仕置きとは名ばかりの虐待や拷問に近い事を行い、コレクターの指示に拒絶の態度を少しでも出た時にも同様のことを行い続けた結果、彼女の性格は変わってしまい、コレクターの暴力に怯えながら開発を行っていた。

アーキテクトに案内されたコレクターは机の上の装備を見て満足げに頷いた。机に置いてあったのは背部ユニットでありそこから八つに増えたワイヤークローが蜘蛛の脚のように伸びていた。

 

「うんうん♪装備は完成してるね。で、ちゃんと注文通りに出来てるんだよね?」

 

「う、うん…ワイヤー自体は逆コーラップスの応用で作った、微弱な電圧で粘性を持つ素材で出来てるから尻尾みたいに自在に動かせるし、クロー部分も切断力は増してるしコの字の部分からレーザーかレーザーブレードを選択して出せるようになってるよ…」

 

「そう、ありがと。あとはこれを実際に使って問題があればそれ直してもらうよ。あとね、近いうちに大きい作戦を行うんだけど、それに伴って作戦の要であるアイギスやガードに新装備とそれに伴う改良案を出したんだけど見てくれるかな?」

 

コレクターはある図面をアーキテクトに見せた。それを見たアーキテクトは顔を引きつらせた。

 

「え…?これ、ホントに造るの…?」

 

「もちろん。すでに()()は集めてもらってるからあとはそれを建ちゃんが見て修正案があれば出して、あとは造るだけだよ」

 

「…こんな事したら、私達の立場は…」

 

「そんなんどうでもいいでしょ?元々人間達とは敵対してるわけだし、()()()()()()()()()()()。じゃ、三日後にまた来るから修正案あったら出してね〜」

 

コレクターは背部ユニットを持って立ち去っていった。

一人残されたアーキテクトは図面を再び見たあと、顔を背けた。

 

「……こんなの、酷すぎるよ

 

今 何 て 言 っ た ?

 

声に驚き振り向くと、コレクターが無表情で立っていた。どうやら今の小声が聞こえてしまったようであった。しまった、と思う前にアーキテクトは髪の毛を掴まれ机に顔を叩きつけられた。

 

「ガッ…!」

 

「酷いだって?敵にそんな事言う必要ないよ。第一、別の君が裏切ったおかげで向こうの技術が上がってこっちの被害が増すばかりなんだよ?お人好しなグリフィンにはこれが有効なんだよ。やっぱり君はわかってないようだね…」

 

「あ、あ…!嫌だ…嫌だよ…」

 

余程コレクターのお仕置きが恐ろしいのだろう、ガタガタと震えながら泣きじゃくるアーキテクトを見てコレクターは手を離した。

 

「え…?」

 

「今日は面白い奴に会って機嫌がいいからお仕置きはやめるよ。でも、次同じ事言ったら…わかるよね?じゃ、改めてよろしくね〜」

 

今度こそ本当にラボを後にしたコレクターに、エリザから通信が入ってきた。

 

《コレクター、指示に反論したアーキテクトも悪いけど、あまり彼女を虐め過ぎないように》

 

「わかっていますエリザ様。幸い今はゲーガー(計ちゃん)はいませんしね。彼女がいたら間違いなく情に流されて建ちゃん逃がしますし。まぁ多分これに懲りて変に反抗はしないと思いますよ」

 

《わかっているならそれでいい。装備のテストが終わったら前に言ったとおりなりを潜めるように》

 

「了解しました。恐らくグリフィンは警戒してるでしょうから、盗賊あたりでテストしますね。明日にテストを行います」

 

《頼んだよ》

 

通信を終え、部屋に戻ったコレクターは飾ってあったスミスの左腕を見て目を細めた。

 

「作戦には彼を使おうかな…そして彼を手に入れて…ふふ♪」

 

翌日、某地区の盗賊グループが惨殺体で発見され、遺体の状態からコレクターの仕業であるとされたが、それ以降彼女が主犯とおぼしき事件は発生せず、バレットらは何か大きな事が起きる前触れではと不安に感じていた。




ちゃうねん、別にアーキテクトの事嫌いじゃないねん、むしろ好きな方だけどそれはそれで割り切って書いてんねん。(謎の関西弁)

コレクターの本装備はオルフェンズのハシュマルのアレと似たワイヤー使ってる感じです。

コレクターのやろうとしてる作戦は結構規模大きめにする予定なのでまたコラボ企画を出そうかなと思っています。


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Code-66 イノセントの日常

どうやら次のイベントが大陸版準拠であれば物資箱でM82A1姉者が出てくるらしいッスね。これは頑張らなくては!

今回はあまり出番がないドリーマー・イノセントメインの話です。


ドリーマー・イノセント、F05地区でのバルカン・ペイロード救出作戦において鹵獲し、バレットの日頃の憂さ晴らしと言わんばかりの制裁を受けた結果、見た目も中身も幼女化した彼女は普段は16labでパズルや絵を書いたりしていた。初めこそドリーマーが演技をしているのではと疑われたものの、複数回の検査を経て演技ではないとわかり、ほぼ無害としてこれといった制限はなく暮らしていた。

 

そんなイノセントだが、前までは時折バレットの部屋に泊まりに来てたが、彼が結婚しアスターと生活するようになってからは子供なりに気を使ってか、泊まりに来ることは減った代わりにリバイバーの部屋に泊まりに来ていた。

今日も泊まりに来ていた彼女は朝起き、身支度を整えると先に起きていたリバイバーに声を掛けた。 

 

「リバイバー…おはよう…」

 

「ん、起きたか。じゃ飯食べに行くか」

 

「うん」

 

二人はスプリングフィールドのカフェまで行き、朝食を摂ることにした。イノセントはオムライス、リバイバーはパン三種とコーヒーを頼みそれぞれのものを食べていた。

 

「イノセント、今日は何するんだ?」

 

「今日中庭で救護室の動物たち遊ばせるって聞いたから行こうかなって。リバイバーは?」

 

「この後呼ばれてるからその内容次第だな。ま、何かあれば誰かに連絡しときな」

 

「ん。呼ばれるって、リバイバーまた何かやったの?」

 

「やってないからな⁉︎多分、作戦会議か例の自称俺の姉貴絡みだと思うが…」

 

この二人だが、リバイバーは鉄血時代に別個体のドリーマーに小馬鹿にされてた故にイノセントを見たときにはあまりの違いに誰だお前状態だったが、向こうがこちらに懐こうとしてた事もあり結構仲は良く、側からみれば歳の離れた兄妹か従兄妹と思えるほどに仲が良いのであった。

朝食を食べ終えた二人はそれぞれの目的の場所まで歩いて行った。

 

中庭ではすでに世話係のNTW-20とグリズリーが保護した犬や猫、鳥といった動物達を遊ばせていた。

イノセントは二人を見つけると近寄って声を掛けた。

 

「こんにちはー」

 

「ん?あ、DG小隊のチビっこね…こんにちは。遊びに来たの?」

 

「うん、大丈夫?」

 

「ええ、平気よ。NTWもいいでしょ?」

 

「構わない、動物達もこの子に懐いてるようだしな」

 

「ありがとー!おいでおいで〜♪」

 

イノセントが呼びかけるとわらわらと動物達が駆け寄り、イノセントは動物達と無邪気に戯れ始めた。その様子を見ていたNTW-20はグリズリーに話しかけた。

 

「なぁ、この子本当にあのドリーマーか?違い過ぎて少し怖いのだが…」

 

「環境の問題じゃないかな?あとはバレット達の教育の成果かな」

 

その後しばらく遊んだイノセントは猫を膝の上に乗せて日向ぼっこをしていたがすぐにそのまま眠り始めた。その姿にかつての面影はなく名前の通り無垢な子供そのものであった。

 

「…こうしてみるとただの可愛い子供だな」

 

「本当ね。誰かしら迎えを呼んでおくわね」

 

────

 

リバイバーが呼び出された会議室に入るとバレット達に加え、コンダクターとヘリアン、ペルシカが中にいた。

 

「コンダクターまでいるのか…ヘリアンがいるって事は何か作戦をやるんだろ?」

 

「あぁ。先程調査隊からの報告で、人類人権団体過激派の大規模補給路を発見したとの事だ。そこで貴様らにはそこの破壊任務を行ってもらいたい」

 

「なるほどねぇ」

 

「あなたにはルイン装備で出撃してもらうわ。あと、あなたのガルムにも出てもらうし、スミスの腕も最優先で修理したから作戦には問題ないわ」

 

みるとスミスの腕は義手ではなく元の腕に戻っていた。あとは慣らしておけば平気だろう。

 

「他に参加する部隊は?確かEA小隊は別任務でいない筈だろ?」

 

バレットの問いにペルシカが答える。

 

「外部からはブラックウォッチとAODって組織が来るわ。あとはアラマキ元指揮官と副官が情報集めに参加するわ。それと…M134って子が参加するわ」

 

すると、スミスがその言葉に反応した。

 

「M134っていうと…バルカンの妹か?」

 

「そうよ。ちなみにあなたの事はDG小隊の一員って事は教えたけどバルカンとの関係は教えてないわ。ま、あとで会うときに話してみれば?」

 

「あ、あぁ…わかった…」

 

その後幾つが段取りを話して作戦開始に向けての準備に取りかかるためその場は解散した。

 

(こういうのは作戦前に言った方がいいよな…しかし、どんな子なんだM134は?変に嫌われなきゃいいんだが…)

 

M134に自分の事をどう話すか考えながら、スミスは腕の調子を整えるために射撃場に向かっていった。

 

────

 

グリズリーに呼ばれたアスターはイノセントを迎えに中庭に来ていた。彼女は寝ているイノセントに近寄り、肩を優しく揺さぶり起こしていく。

 

「(あらあら、随分可愛らしいわね♪)ほら、イノセントちゃん、帰るわよ」

 

「んゆ…?」

 

イノセントは目覚め、寝ぼけ眼でアスターを見て起こしたのが彼女だとわかるとついこう口走った。

 

「おはよう…ママ…」

 

「…っ!」

 

「…あ、間違えた…ん?どしたの?」

 

イノセントの言葉を聞いたアスターは彼女を抱き抱えるとその場を立ち去った。すると、ちょうどバレットが見えたのでアスターは彼に近寄った。

 

「ん?どうしたアスター、イノセント抱えて?」

 

「ねぇバレット…この子、養子にしない?

 

「…は?すまない、全然話が見えないんだが?」

 

どうやら先程の言葉で母性を完全に刺激されたようであった。

その後話し合いをし、結局その話は保留としてバレットは改めて作戦準備を進めた、

そして、作戦開始の日がやって来たのであった。




はい、というわけで試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』主催のコラボに参加します‼︎

試作強化型アサルト様、よろしくお願いします!
oldsnake様、スミスとM134の顔合わせは好きに書いて大丈夫ですので任せます。

では次回まで。


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Code-67 大規模補給路破壊作戦─序章

コラボ回の始まりです!
今回のコラボでは他に
oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』
試作型機龍様作『G&Kの猟犬』
無名の狩人様作『戦火を巻く死の天使』
ガンアーク弐式様作『MALE DOOLS外伝集』
が参加しています!


─某地区にて

 

すでに作戦は始まり、AODの地上部隊とBLACK WATCHによる対空兵器破壊作業が行われているが過激派達の対応は早く、残った対空兵器の近くにP.A.C.SやI.A.C.T.、戦車が集められ、BLACK WATCHの部隊も敵勢力と交戦し足止めを受けていた。

 

「結構順調だったから俺の出番無いかと思ったが、どうやらそうでもなかったな」

 

「俺らは兵士の方を相手する。リバイバーとコンダクター、ガルムは対空兵器とその他の重兵器を頼む」

 

「了解」

 

リバイバーは兵力が集中してる部隊に狙いを定め、二丁のV.S.L.Cを構えた。バイザーにて射線上に味方がいない事を確認すると、コンダクターに声をかけた。

 

「コンダクター、前口上よろしく」

 

「了解した」

 

コンダクターの返事を聞くと同時に、リバイバーは鈴の音のスピーカーを鳴らした。チリーン、チリーンとその音が響き渡り過激派達は警戒しているとコンダクターがオープンチャンネルにて語り始めた。

 

《ご機嫌よう過激派諸君、もうすでに始まっているが、最高に素敵なパーティーをしようではないか。兄上殿、クラッカーを鳴らしてくれ》

 

「OK…Let's partyyyyy‼︎」

 

そう叫びながらリバイバーはV.S.L.Cを放ち、兵士達を対空兵器諸共吹き飛ばした。リバイバー達はそのまま突入し、バレット達も後に続いた。

当然、彼らの行手を阻もうとI.A.C.T.五機が立ち塞がり、搭載された武器で迎撃を開始する。それをF.E.F.Gにて防ぎつつ、リバイバーはバレットに指示を出した。

 

「バレット!この先のは俺ら元鉄血組に任せて、別の所を頼む!」

 

「わかった、頼んだぞ!」

 

バレット達が移動するのを見届けたリバイバーはI.A.C.T.に向けて散弾状のレーザーを発射した。真ん中にいた一機が避けきれずに撃破されたが残りの四機が反撃を加える。

 

(ふむ…速さ・火力共に高く、装甲もそれなりにある…だが)

 

リバイバーは一機に目をつけ、その上に飛び乗るとV.S.L.Cを押し当て、ゼロ距離射撃にて仕留めた。

 

(近接武器が無い分、あのデカいの(アサルター)よりはマシだな。そういやアレ、胴体の残骸が見つかってないって言ってたな。生きてるとしたら俺の事根に持ってるかな〜?)

 

呑気に考え事をしながら残りの機体を見ると、コンダクターとガルムがそれぞれビットやカメラアイのレーザーで弾薬庫や燃料庫を撃ち抜き撃破し、残るは一機のみであった。

 

「ガルムはミニガンで足止め!止まったらコンダクターは関節を狙え‼︎」

 

「ガウ‼︎」

 

「了解‼︎」

 

ガルムがミニガンでI.A.C.T.の足元近くを撃ち足を止めると、その隙をついてコンダクターが関節部を撃ち抜き、I.A.C.T.は倒れ込む。リバイバーはそれにレーザーを撃ちとどめを刺した。

 

「ナイスだ二人共!…ん?」

 

見るとリバイバー達に多数の兵士がゾロゾロとやって来るのが見えた。

 

「やれやれ、人気者は辛いねぇ…だけど、まだまだだな」

 

リバイバーはV.S.L.Cの収束率と出力、射速を調整して兵士達に構えると高レートの散弾レーザーを浴びせた。装備を固めてるとはいえ、レーザーの前では歯が立たず、彼らは焼き焦げた穴だらけの死体へと変わっていく。

 

「元基地攻略型、しかも大規模基地の攻略を前提にしたこの俺のフル装備に、ほぼ生身のお前さん方が…叶うわけねぇだろぉ‼︎

 

やがて辺りの兵士達が軒並み撃破されたのを見るとリバイバーは自身のバッテリー残量を見る。残量は半分を少し下回り、イレギュラーの可能性を考えると交換する必要があった。

 

「確かドローンで補給支援があるって言ってたな…お、いたいた。なら…」

 

リバイバーは少し離れた対空兵器に向けてレーザーを放ち破壊するとバッテリーを取り外して近くにいたドローンに合図した。ドローンは持っていたリバイバーの予備バッテリーを投げるとリバイバーはそれを空中でキャッチし、代わりに空になったバッテリーを投げ返す。バッテリーを受け取ったドローンは後方に移動し、リバイバーは受け取ったバッテリーを装着した。

 

「よし、交換完了‼︎次の目的地に行くぞ‼︎」

 

────

 

「あれか…」

 

別行動をとっていたバレット達は対空兵器を見つけるが、やはり警備されており、戦車二台、P.A.C.S四機と兵士多数がいた。P.A.C.Sの一機は以前違法工場破壊時にいたジャマー搭載型であり、一応の対策は施してあるが油断は禁物であった。

 

「早めにアレを潰さないとな…」

 

なら私が、と前に出たのは一緒に同行しているM134ミニガンだった。しかしバレットは彼女に待ったをかける。

 

「いや、君一人じゃP.A.C.Sはともかく、戦車は厳しい。スミス、俺が奴らを撃って気を逸らすからその隙にスモークを投げて撹乱。ウェイターはワイヤーでジャマー機を優先的に撃破もしくはジャマーを使えなくさせたあと残りを頼む。スミス、ノア、レストは戦車に近づいて手榴弾を砲塔に投げ込め。M134はスモークが出て三十秒後に撃て」

 

「「「「了解」」」」

 

「え?三十秒って…それまでに離脱出来なかったら?」

 

「大丈夫だ、スミス達なら出来る。だから時間になったら迷わず撃て」

 

「で、でも…スミス、さん以外はその…16Lab製じゃないし…」

 

M134がそう言い淀むとウェイターは彼女に向けて微笑んだ。

 

「M134さん、16Lab製じゃなくとも優秀な人形がいる事をこれを機に覚えてください」

 

「爆撃まで時間がない、早く始めるぞ」

 

バレットは移動し、他の者も準備を始める。

少しした後、銃声が鳴り、兵士二人の頭が吹き飛んだ。

 

「っ⁉︎敵襲‼︎」

 

「今だスミス!」

 

「OK‼︎」

 

スミスはスモークグレネードを数個投げ、辺りを白煙に染める。すぐに四人は突入し、行動を始めた。ウェイターはジャマー機に近づき胸部装甲にワイヤーを巻き付け切断するとジャマーが露わになり、そこにEGLMの引き金を引いてグレネードを撃ち、ジャマーを破壊する。

 

(撃破完了!にしてもこの切れ味…何てもの開発したんですかペルシカさん…)

 

ウェイターはそのまま駆け、残りの機体の手足を斬り無力化していく。

一方でスミス、ノア、レストの三人は煙の中こちらを見つけた兵士を撃ち倒しながら戦車まで近づく。そして手榴弾のピンを抜き、砲塔の中に放り込みその場を離れる。数秒し手榴弾は爆発し戦車は無力化された。

 

「(え、もう戦車を?早い…あ、三十秒経った!)いっけぇぇ‼︎」

 

M134は彼らの手際に感嘆しつつも、両手にもったミニガンを撃ち放った。掃射音と断末魔が響き十数秒ほど経ったあと煙が晴れるとスミス達はすでに離脱し、兵士達の死体が転がっていた。無力化したP.A.C.Sや戦車のコクピットから出てきた兵士はバレットの狙撃で始末されていった。

 

「な?言ったろ?あいつらは大丈夫だって」

 

「う、うん…(でも、この人たちより成果がなかったら私は…)」

 

どこか不安そうなM134にバレットは言葉を掛けた。

 

「大丈夫だ、戦車とかはスミス達が倒したが、残りの兵が生き残ってたら手こずってた。制圧力のある君が倒したから早く制圧できたんだ。それは誇っていい」

 

「そうなのか?」

 

「それに、リバイバーが向こうにいる今、複数の敵を相手できる君が頼りだ。任せたぞ」

 

「私が頼り…!わかった!」

 

その後兵士の遺体からグレネードや爆発物を拝借して対空兵器を破壊すると、次の目的地まで移動していった。

作戦は順調に進んでいるが、イレギュラーに警戒しながら先を急ぐ彼らであった。




こちらからは対空兵器を三機破壊しました。
試作強化型アサルト様、並びに他のコラボ参加者様方、流れの方よろしくお願いします。

それと、何か提案あるならメッセージください。


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Code-68 大規模補給路破壊作戦─中章

コラボ回その二です。
前回に続いてリバイバーが大暴れいたします。
初め少しおふざけ入ります。


またさらに対空兵器を破壊し、次の目的地まで進んでいくリバイバー達だが、ある異変にリバイバーは気づいた。

 

(さっき爆発音がした後、ヘリの音が消えた…対空兵器じゃないとすれば、援軍、それも腕の立つのが来たか…?)

 

そう考えた時であった。ロケット弾が飛来し、間一髪コンダクターが撃墜して事なきを得たが、その方向を見ると先ほどとは違うP.A.C.Sが三機、ホバー移動でこちらに向かってきた。

 

(こいつらが援軍ってわけか…!武装はロケランに機関銃、改良機の上に使い手の練度は高そうだ…)

 

「いたぞ!リバイバーとその仲間だ!」

 

「この前の奴らの仇、ここで討ってやる!」

 

そう叫ぶと彼らは散開して機関銃で攻撃を仕掛けてきた。三人はまず比較的動きの鈍いガルムを狙ってくるが、リバイバーがガルムに向けてF.E.F.Gを四つ飛ばし、電磁フィールドにて攻撃を防いだ。

 

「何っ⁉︎」

 

「ルインの強みはなぁ…武装が増えた分、自分も守れて味方も守れるとこにあるんだよ‼︎」

 

リバイバーはP.A.C.S改に向けて散弾レーザーを放つも避けられ、一機のロケランを破壊するだけに留まった。そして彼らはリバイバーを優先的に撃破しようと()()()になって向かってきた。

 

(ん?これって何ちゃらストリームアタックって奴か?)

 

訝しむリバイバーだが、この陣形には彼らなりに策があった。

 

(このまま突っ込めば奴が左右に躱せば後ろの二人が狙い撃ちにするのは見てわかる筈!なら奴は俺を踏み台にするしないに関わらず前に突っ込むしかない!)

 

(そうしたが最期、この機体に搭載された鉄血ですら動けなくなる電気ショック装置を作動させて動けなくなったところで仕留める!)

 

(さぁ、来やがれリバイバー!)

 

そう考えている間にも両者の距離は縮まり、あと数秒ほどで接触するという時、リバイバーは動き出した。

が、前に突っ込まず、後ろに飛び退くと普通にV.S.L.Cを撃ち放った。

 

「…ゑ?ぽへっ⁉︎」

 

縦一列なのが災いし彼らはほぼ同時に貫かれ、四散していったのを見てリバイバーは呆れた顔をした。

 

「バカ過ぎるだろ?白兵戦用じゃないのに前に進む奴がどこにいるんだ?にしても、少し気になる事があるな…」

 

───

 

アラマキ分隊と合流したバレット達はリバイバー達が遭遇したP.A.C.S改二機を相手に苦戦していた。元々は四機いたが何とか二機を撃破したが、彼らはリバイバーのような防御機構を持っていないため、安易に身を晒すことは出来ず、装甲車の残骸や壁に身を隠しながらチャンスを待っていた。

 

「(あまり手こずると援軍がまた来そうだ…)アラマキさん‼︎一機だけでも動きを何とか出来ますか⁉︎」

 

「わかった!任せてくれ‼︎」

 

アラマキはホバー移動している一機に目を付けると、腰につけた大振りの斧を投げつけた。投げられた斧はP.A.C.S改の脚部に命中し、バランスを崩して地面を派手に転がっていった。

 

「今だM134‼︎」

 

「了解‼︎食らえぇぇ‼︎」

 

M134は両手の愛銃を倒れたP.A.C.S改に撃ち込んだ。弾丸の雨嵐を喰らったその機体は小さな爆発音がした後、動かなくなった。

残った一機も動揺して足を止めたところをバレットがMK 211徹甲榴弾を装填した銃で連続狙撃をし、装甲が爆砕されひしゃげたコクピットに命中し、沈黙した。

 

「良し、次の場所に《あー、バレット、少しいいか?》ん?どうしたリバイバー?」

 

リバイバーから連絡が入ったバレットは通信を繋げリバイバーの話を聞く。

 

《そこにアラマキ分隊長はいるか?いるなら代わってくれ》

 

バレットはアラマキに通信機を渡し、通信を代わる。

 

《こちらアラマキ分隊長だ。どうかしたのか?》

 

《これからおたくの大型ドローン借りて敵司令部を吹っ飛ばすが借りて問題ないか?》

 

《それは構わないが…出来れば向こうの記録とかの証拠が欲しいのだが、理由を聞かせてくれるか?》

 

《向こうは援軍が来ているが、恐らく救援を受けてきたとすれば空爆が来ることはもうバレてると思う。俺が奴らならここを放棄して逃げる。ここを撃破しても奴らが生きてるならまたここと同等のものを造る可能性がある。だから逃げられる前に仕留めるってわけだ》

 

《なるほど…わかった。そういうことなら頼む》

 

《まぁなるべく施設を残すようにはしとく。それじゃ切るぞ》

 

リバイバーは通信を切断した。バレット達は残った対空兵器を破壊すべく移動を再開した。

 

───

 

リバイバーは補給部隊に連絡を入れて大型ドローンを要請する。しばらくして大型ドローンが到着し、ドローンのアームを自身の体に掴ませて固定させた。

 

「あー、ドローンの操作を俺がやる事はできるか?」

 

《えっと、少し待ってください…出来ました!》

 

「ありがとよ。じゃ、コンダクター、ガルム。あとは任せたぞ」

 

「了解」

 

「ガウ」

 

リバイバーは電脳内でドローンを操作して上昇し、空を駆けていった。当然こちらを見つけた過激派が撃ち落とそうとするが、F.E.F.Gを展開して防ぎ、逆に上空からレーザーを放ち、撃破していく。道中、P.A.C.S改の攻撃を受けているAODの部隊がいた為、P.A.C.S改を上から撃って撃破し、彼女達を手助けする。こちらを見たAODの司令らしき女性が声を上げた。

 

「支援感謝する‼︎それで、どこの部隊だ?」

 

「グリフィン所属のリバイバーだ‼︎仲間に俺を見ても撃ち落とさないよう連絡頼む‼︎」

 

「わかった‼︎」

 

その後バッテリーを交換したリバイバーは司令部らしき建物を発見した。バイザーの反応を見るにどうやら退避の準備をしているようであった。

 

(やはり俺の予想は当たったか!)

 

すでに彼らのうち何名かはVTOLに乗り込み、逃げようとしていた。

 

「逃がすかよ!」

 

リバイバーはV.S.L.Cを構え、VTOLに向けて撃ち放った。すでに離陸しかけてたVTOLだったが、レーザーに撃ち抜かれ、爆散していった。リバイバーはすかさずレーザーを連射し、残りのVTOLやヘリ、滑走路を破壊していった。

 

「これはおまけだ!お礼はいいから受け取りな‼︎」

 

リバイバーは司令部に向けて散弾状のレーザーを放った。雨のように降り注いだそれは司令部各所に当たり、次々に爆発を起こした。

 

《リバイバーより全部隊へ!奴らの司令部と逃走手段は潰した‼︎あとは残りを始末するだけだから気合入れな!》

 

リバイバーは地上に降りてドローンを補給部隊に帰還させた。

 

(あのまま上から撃ち放題も悪くないが、思ったより頭使うからな…)

 

周りに警戒しつつリバイバーはコンダクターらと合流すべく移動を開始した。




ロケラン持ってホバー移動してるならアレをやろうと考えてました。

大型ドローンで輸送してるって聞いて『それなら上に運んで貰えば上から撃てるんじゃね?』って思い付きましてね。
リバイバーは活躍する場が無かっただけで結構強いんです。特にルイン装備ですと余計に。
司令部や逃走手段潰しましたが不味かったら修正致します。


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Code-69 大規模補給路破壊作戦─終局

コラボ回その三です。
コラボ元の話が前提なのでこちらからご覧してください。
https://syosetu.org/novel/190378/79.html
今回は殆ど後日談となります。
あと、後半リア銃注意です。


「ゴフッ…この前といい今回といい、俺はデカいやつに会うと手足がもげる運命にあるのかね?」

 

ヘリで帰還していくなか、リバイバーは自身の状態を見て呟いた。今の彼の状態はバレットらの中でも重傷であり、武装は全壊の上、両腕と下半身を斬られかろうじて生きている状態であった。破壊された武装と腕、下半身は回収してあるが、武装に関しては廃棄確定だろう。

 

「あの野郎、俺をエ○ゾディアみてーにバラバラにしやがって…危うくまた死ぬとこだった…あーあ、報酬金が修理費で消えそ…」

 

こう軽口を叩いているが、実際は割と本気で死ぬ境目だったためすぐにでも寝たいが、先ほどからガチ泣きしている(コンダクター)に余計な心配をかけない為に喋っていたのだ。

 

「ヒッグ…兄上殿が、生きてて…よがった…‼︎」

 

(こんなに懐かれるようなことしたっけな…?)

 

女傑じみた雰囲気と声(CV:榊原○子)の為、今の彼女の状態に混乱しているリバイバーだが、優しく語りかけた。

 

「なぁコンダクター…そんな泣かれてもこっちの気が滅入る。俺は生きてたんだからさ、笑うなりなんなりして励ましてくれると助かるんだが…」

 

「グス…了解した…」

 

一方で、バレット達もそれなりに怪我をしているが、レストとスミスが他より怪我が大きかった。レストはノアを、スミスはM134を庇った為である。

とはいえ、命に関わるような怪我ではないのが幸いである。

 

「レストさん、大丈夫ですか…?」

 

「これくらい、なんて事はないさ」

 

「でも…」

 

「大丈夫だ、お前庇って死ぬなんて事ならないように気をつけてたから。まだお前と一緒にいたいしな」

 

「…⁉︎もう…!」

 

(こいつら怪我してるのに何いちゃついてるんだ…)

 

会話を聞いてたヘリのパイロット(彼女無し)が若干イラつくなか、M134も心配そうな顔でスミスを見ていた。

 

「その…大丈夫か…?」

 

「平気平気、この前腕斬られた事に比べりゃ全然だ」

 

「でも…今回殆ど活躍できてない私なんか庇ったから…」

 

一度バレットにフォローされたものの、再び自信を失いかけて落ち込んでるM134にスミスは少し黙ったあと、話しかけた。

 

「…なーに言ってんだ、誰だって初陣なんてそんなもんだ。M134だって、自分で思うより活躍してたよ。それに…」

 

スミスは手招きしてM134をこちらに寄せると小さく耳打ちした。

 

「ここだけの話、バルカン初陣でドリーマーにやられて鹵獲されそうになったんだ」

 

「姉貴が?本当に?」

 

「そう。だけどこの事は内緒にしててくれ。じゃないと俺が怒られるから」

 

「ん。わかった…」

 

「それとさ、もうちょっと経験積めば自信も自ずとつく。だからこれから頑張りな」

 

それを聞いて安心したのか、M134は笑みを浮かべた。彼女の笑みを見たスミスは姉妹だからか、笑みがバルカンに似てるなと思いながら窓の外を眺めていた。

 

────

後日 G&K本社

 

自身に振り込まれた金額を見て、スミスは軽く驚いていた。

 

「…こんなに貰っていいのか?」

 

「元々イレギュラーを考えて高めの金額だったんだけどね、最後のデカブツとかの映像見て本部が上乗せしてくれたみたいよ」

 

「ふーん…」

 

ペルシカの説明を聞いたスミスはしばらく考え込むと、ペルシカにあることを尋ねた。

 

「なぁ、確かバルカンって借金あるんだよな?それ、どれくらいだ?」

 

「ええと…これくらいよ、それがどうかしたの?」

 

ペルシカから渡された金額を見てスミスはこう提案した。

 

「…この報酬金であいつの借金を半分肩代わりしようと思うんだが、問題ないか?」

 

「え?まぁ、払って貰えるならいいけど…何で半分?これなら全額払えそうだけど…」

 

「いや、流石に全額払うとあいつに変な気遣いされるだろ?だから半分だ。それに、EA小隊の性質上危険な任務につきやすいから、早いとこあいつに楽させてやりたいんだ」

 

「なるほどね…わかったわ。あとでバルカンに話しておくわ。にしても、あなたよっぽどバルカンの事大切に想ってるのね」

 

「惚気話なら幾らでも話すが?」

 

「遠慮するわ、これからリバイバーのとこ行かなきゃいけないし」

 

ペルシカは部屋から出て行き、リバイバーのいる修理室に向かっていった。

リバイバーはとりあえず手足は繋げたが完全には修理できておらず、コンダクターに看病されながらベットに寝そべっていた。

 

「調子はどうリバイバー?」

 

「これが絶好調に見えるなら今すぐ病院に行くことを勧めるよ」

 

「はいはい。それで、あなたの報酬金だけど、殆ど武装の再設計で消えるわね」

 

「だろうな。前と違ってほぼ全壊だしな…ん?この報酬金とは別の金は何だ?」

 

「あぁこれね。最後にあなた結構な数のAODとグリフィンの部隊を守ったでしょ?その人達から個人的にお礼がしたいって送ってくれたみたいよ。あなた身を挺して守った英雄って事でちょっと話題になってるわよ?」

 

ペルシカの言葉にリバイバーは少し唖然としたあと大笑いした、

 

「ハッハッハッハ‼︎『破滅』の名を持った装備をした俺が英雄とは、なかなか面白いじゃねぇか!それで?わざわざそれだけ言うために来たわけじゃないだろう?」

 

「鋭いわね。あなたの戦闘記録みてある事を思いついたんだけど…」

 

ペルシカはリバイバーにある提案を話した。それを聞いたリバイバーはニヤリと笑ってその提案を受け入れることにした。

 

「それいいな、頼んだぜペルシカさんよぉ。にしても、随分俺のこと信用してくれたんじゃないの?普通はこんな提案ださねぇだろ?」

 

「これまでのあなたの行いから見た結果判断したのよ。それと、コレクターと再戦するのにもこれはいると思ってね」

 

ペルシカは早速その準備をしに研究室に戻って行った。

余談だが、これを機にリバイバーのファンが少しずつ現れたのは別の話である。

 

───

 

バレットは自身の病室にてアスターとM82A1の二人による看病を受けていた。意外かもしれないがこの二人の仲は結構良好なのである。というのも、元々M82A1は弟の選んだ女性に文句をつけないつもりだったのと、実際話してみて意気投合したのが原因であった。

 

「あなた、怪我の具合はどう?」

 

「だいぶ良くはなってるな」

 

「バレット、何か必要なものがあれば私が持ってくるわよ?」

 

「大丈夫だよ姉さん。二人とも心配してありがとう」

 

口ではそう言っているバレットだが、内心はやや混乱していた。時折M82A1がベットから起き上がるのを手伝って貰ったりある程度の看病を受けているのだが、今までと違い一切下心を感じさせなかったのであった。まるで最初にあった頃の彼女に戻っているようであった。

 

(まぁ、なんだかんだで姉さんも反省したのか、それとも純粋に俺のことを看病したいだけなのかもな…)

 

結局、M82A1は彼が復帰するまで誠心誠意看病を続け、彼女に対する考えを改めることにしたバレットであった。

 

一方で、ウェイターはフィオナからの看病を受けていたのだが、右目には包帯が巻かれていた。爆発で飛んできた破片にやられたのだが、幸い目の上を深く切っただけで特に問題はないらしい。

 

「本当に貴方は…」

 

「すみません。でも、どうしてもこれは壊したくなかったんです」

 

ため息をつくフィオナにウェイターは謝っていた。というのも、破片に当たる直前とっさにモノクルを取り外したためモノクルは無事だったがその為本来ならモノクルに当たってそこまで怪我する事は無かったのだが取り外したのでこのような事になったのだ。

 

「これは貴女に貰った大切な物ですから、壊すわけにはいかなくて…」

 

「大事にしてくれるのは嬉しいけど、それで怪我されても…でもまぁ、そうところに惚れちゃったのだから文句の言いようがないわね…」

 

またため息をつくフィオナだが、その顔は照れ臭そうに笑っていた。

 

色々とトラブルがあったが、こうして彼らの任務は終了したのであった。




スミス@甲斐性
oldsnake様、提案了承ありがとうございます!
ガンアーク弐式様、バレットの看病の提案ありがとうございます!

え?レストとノア?多分病室で夫婦仲良くいちゃついてるよ。
リバイバーはこれを機に少し強化させる予定ですかね。

コラボはこちらからは以上となります。
試作強化アサルト様、ありがとうございました!


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Code-70 強化と悩みと虚言の檻

Q.何があった?
A.昨今の需要低下による会社のシフト変更で小説どころかドルフロもまともに触る時間が無くなりました。あと五月病です。

そして気付いたらこの小説一周年経ってました。でも何も考えてないんですよね。
下手すると月一も怪しくなりそうですがなるべくペースを落とさないようにします。


大規模補給路破壊作戦からしばらく経ち、バレット達の怪我も完治し何度か任務を行なっているのだが、一年近く前に行ったオークション殲滅作戦による資金源減少からくる戦力減少に加え、前回の作戦によりさらに大きく戦力を減らされた過激派達の動きはだいぶ沈静化され、行動を起こしても比較的すぐに鎮圧できていた。しかし、作戦の最後に現れた巨大人型兵器や爆撃部隊を殲滅させた特殊ミサイルなどを有していることが判明しているため、油断はできない状況である。そして今日、リバイバーの修復及び強化改修が完了し、その試運転を行う事となり、バレット達はその見学に来ていた。

 

「改修と言っても、見た目は変わってないんだな」

 

「まぁな。でも、予定通りならかなり強くなってる筈だ」

 

「んじゃリバイバー、初めて頂戴」

 

トレーニングルームの外からペルシカが指示を出すと、リバイバーはトントンと軽く跳ねたあと、()()()()()()()()()。その後そのまま移動し始め、始めこそおぼつかない様子だったがすぐに慣れたようで、スイスイ宙を舞うように移動していった。

 

「あれは…反重力装置をあいつのボディに組み込んだのか?」

 

「そうよ、前の作戦から着想を得てね。こっちに鞍替えしたスケアクロウやドリーマー、こっちだとバルカンとかに組み込まれてるやつをベースにしてるわ。速度はやや遅めだけど、彼にはF.E.F.Gがあるからそれほど問題じゃないわね。でもまだ改良の余地はありそうね。リバイバー、次お願い」

 

「はいよ」

 

リバイバーは一度地面に降りるとV.S.L.Cを構える。が、その構えは普段の砲撃態勢ではなく剣を構えるかのような態勢だった。すると、砲口からレーザーブレードが発振し、リバイバーは置いてあったアイギス(残骸を寄せ集めたもの)に向けて駆け寄り、アイギスを真っ二つに切り裂いた。

 

「レーザーブレードが発振するようにしたのか!」

 

「そ。前々から彼近接武装が欲しいって言ってたから今回の改修のついでに搭載させたわ。ちなみにゲーガーやマーダーのがベースね」

 

「にしても、よく許可が降りましたね…」

 

ウェイターがそう言うのも無理はない。元々リバイバーは基地強襲型、それも大規模基地の襲撃や裏切ったハイエンドモデルの粛清を目的としたハイエンドモデルである。それ故に彼に力を持たせる事に上が反発する可能性があった筈である。

 

「彼の普段の行いの結果ね。裏切る素振りすら見せずに積極的に協力してくれてるし、前の作戦じゃ彼がいなければ多くの命が失われてたしね。あと、こっちに協力してるアーキテクトが彼に負けず劣らずの武器を開発してるから今更って話になってね。例の大型人型兵器に対抗するためもあるけど」

 

「ペルシカー!どちらも動きには問題はなかったぞ。もう終了しても平気か?」

 

「ええ、あとは実戦でデータ取ってくれれば大丈夫だから次の出撃でそれはお願いね」

 

試運転を終え、リバイバーがトレーニングルームから出ていくのを見てバレット達もその場で解散となった。

バレットが廊下を歩いていると、M82A1が現れ彼に話しかけた。

 

「バレット…少し話良いかしら?」

 

「良いですけど…どうしたの姉さん?」

 

「ちょっとね…」

 

私室に案内され、テーブルを挟んで座るとM82A1は話を始めた。

 

「あなたが前の作戦に出る少し前にね、I.O.Pから連絡が来て…私の量産が決まったみたいなの」

 

「量産が?良かったじゃないか姉さん」

 

元々M82系列の人形の製造計画は上がっていたが、バレットやペイロードでは16Lab製ということもあり量産には不向きであった。そこで彼女に白羽の矢が立ち、彼女も少なからず優秀であった事もあり量産計画の目処が立ったというわけであった。

 

「それでね、この期に自分の事を色々客観的に見てみたんだけど…結構あなたたちに迷惑かけてたことに気づいたのよね…」

 

「あ、あ〜…」

 

要は自身の性癖(極度のブラコンとシスコン)の異常さに気付いたわけである。M82A1は心底申し訳なさそうな顔で話を続けた。

 

「あまり環境のせいにはしたくないけど、あの場所にいたからか家族愛と男女の恋愛がごちゃごちゃになってたのかもね…あなたが小さくなって困ってる時に変なことしようとしたり、ペイロードにもお薬仕込んだりで迷惑かけちゃったり…こんなお姉ちゃんで本当にごめんなさい」

 

深々と頭を下げるM82A1の姿を見て、バレットは先日の看病の真相に気づき、彼女に優しく声を掛けた。

 

「いや、姉さんが傷つくと思ってハッキリ拒絶しなかった俺にも責任があるから平気だよ。もうあんな事しないと誓えるなら赦すよ」

 

「本当に⁉︎ええ、誓うわ。これからはあなた達のお姉ちゃんにふさわしい事をするようにするわ。…本当はペイロードも呼びたかったけど、いなかったから代わりに手紙を書いて置いておいたけど、それで大丈夫かしら?」

 

「多分平気だと思うよ。量産計画の事も書いてあるのなら変に誤解されずに済むと思うし。それないとなんか遺書みたいに見えそうだから」

 

「それは大丈夫よ、ちゃんと書いてあるから。改めてよろしくねバレット」

 

「よろしくです。姉さんも、量産されるってことは注目されてるって事だから気を引き締めてくださいね」

 

────

鉄血工造

 

「フフンフンフフ〜ン♪」

 

コレクターは鼻歌を歌いながら帰還していた。

作戦に使うアイギスとガード用の新装備をアーキテクトに製造させ、そのテストも行いしばらく鳴りを潜めていた彼女だが、先程援軍要請を受けて出撃を許可され、久々に『収集』出来たためであった。

 

「ただいま〜建ちゃん!」

 

「お、おかえ…っ⁉︎」

 

アーキテクトは指を持って返り血を浴びたままのコレクターを見て怯えていたが気にせずコレクターは彼女に話しかける。

 

「いや〜この装備使い易いね〜造ってくれてありがとう」

 

「ど、どういたしまして…」

 

「そうそう、戦闘中にね…うっかり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()〜」

 

「え⁉︎」

 

その言葉に驚き青ざめるアーキテクトの顔を見てコレクターは歪んだ笑みを浮かべた。

 

「ごめんねぇ〜?おかげで君が『私みたいなイカレ人形の仲間』って思われちゃったね。あ、でも向こうもアーキテクトは二人も要らないって言ってたっけ。ま、ここにいる限りはそんなの関係ないよね?」

 

「う、うん…」

 

実際にはコレクターは誰に造ってもらったかは喋ってはいないし、グリフィン側もそのようなことは言っていない。

なら何故そのような嘘を言ったのかといえば、アーキテクトに『グリフィンに寝返っても向こうに殺されるだけ』と思わせる為である。彼女の事だからどうにかして逃れたあとコレクターに虐待され、脅された事を話して被害者で済ませようとしたのだろうが、コレクターのこの言葉でその手を封じさせたのである。

 

(そのうち作戦が実行されるだろうし、土壇場で逃げられても困るしね。あーあ、早く作戦実行されないかなぁ〜)

 

来たるべき作戦に想いを馳せながら、コレクターは返り血を落とすためシャワー室に向かうのであった。




本当に何でこんな時期にイベント始まるん?(泣)
姉者だけでも入手しなくては…

ではまた次回に。


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Code-71 動き出すコレクター

今回は前半リア銃、後半胸糞及び衝撃的な事があります。ご注意を。




ある日、バレットはアスターと共に部屋でくつろいでいた。結婚式のあと、本部の計らいで彼ら夫婦三組は二人部屋に移され、以前より多く二人で居られる時間が増える事となっており、現在アスターはバレットに膝枕をされていた。

普通逆なのでは?と思うだろうが、二人きりの時はバレットに甘えたいのでこの方が良いのである。時折頭を撫でて欲しそうに上目遣いでこちらを見るのでその度にバレットひ彼女の頭を撫でるのだが…

 

「んっ…あっ…うぅん…」

 

「……」

 

このように、艶めかしい声を上げるのでバレットとしては色々と困っていた。

 

「なぁ、その声…どうにかならないか?」

 

「あ、ごめんなさい…あなたの(撫で方)が気持ち良くて…何とか私も我慢しようとしてるけど、どうしても(声が)出ちゃって…」

 

「言葉何個か抜けてるのはワザとか?」

 

「フフッ♪」

 

アスターはクスクス笑うと起き上がり、髪を整えバレットの隣に座り込んだ。

 

「ねぇバレット…子供とかはどう考えてるの?」

 

「えっ⁉︎いや…そのな…」

 

唐突に言い放ったアスターの言葉にバレットは言い淀んだ。ちなみに二人はホワイトデーの時にスイッチが入ったアスターにバレットが半ば襲われる形で事は済ませてある。(なお、バレットは途中で()()した)

一応理論の上では人形同士でも子供をつくれるが、バレットはそれに対して二つの懸念があった。一つは単純に倫理的なものである。

D08基地やS09P基地のように片方が人間ならまだ人間と人形のハーフで通るが、人形同士の場合は言ってしまえば人造人間と同義なのではとバレットは考えている。ユノ指揮官やその周りの事情を知っている以上、自分たちがそれに近い事をしていいのかという懸念が一つ。

 

もう一つが、それが原因で過激派に大きな動きを与えないかである。

当然妊娠した場合はそれを隠すが、出産したらいつかはバレてしまう。それを彼らが聞きつけ、自分達を確実に始末する為に前回の作戦に出てきたような大型人型兵器と同等かそれ以上のものを大量に造りその結果、多くの命が失われてしまう事にならないかといったものである。

以上二つのことをバレットは立場上話しても平気なところだけを選んでアスターに話すと、アスターは静かにこう問いかけた。

 

「…あなたの言いたいことはわかるわ。でもそれは、『DG小隊の隊長として』のあなたの意見じゃないの?私は『私の夫であり戦術人形』のあなたの意見を聞きたいの。どう?」

 

彼女の言うことはあっていた。先程のは人形達を守り、火種を消すDG小隊の隊長としてのバレットの意見であった。それを踏まえて今度は個人としての意見をバレットは話した。

 

「…正直、君との子は欲しい。さっき言った事だって、その子供を軍事利用するとかじゃないし愛情を持って育てるつもりだから何の問題もないと思ってるし、過激派の連中に君や子供に危害を加える事をさせるつもりも毛頭ない。そう考えている」

 

ならそれで良いじゃない、と笑うアスターにバレットは一緒キョトンとするが、すぐに肩を揺らして笑っていた。

 

「ハハハッ何か悩んでたのがバカらしくなったな。ありがとう、アスター」

 

「どう致しまして。それと、この事は他の二人にも言ったほうがいいんじゃない?レスト君は特に気にしてると思うから」

 

「そうだな。だが目下の問題はコレクターだ。アレをなんとかしないとマズイ。もし妊娠したなんてしれたら奴の考え的にはどんな手を使っても始末しようとするだろうしな」

 

「そうね…あ、そういえば、I05地区で鉄血の部隊の入れ替えらしい動きがあったそうよ?」

 

「それは俺も聞いた。コレクターの動きが最近見られないから、余計に気になるな…」

 

────

 

本部から少し離れた街で、スミスは一人で気晴らしにと歩いていた。

 

(最近、鉄血や過激派の動きも収まってきてるし、バルカンとまたデートにでも誘おうかな…バレット達は関係が進むのが早かったから、こっちはこっちで関係を築いていくとするか…)

 

そんなことを考えているなか、スミスはある事をポツリと呟いた。

 

「そういや…最近コレクターの動きが見られないが、何処にいるんだ?」

 

「う し ろ に い る よ」

 

「っ⁉︎」

 

突然後ろから声が聞こえ、驚いて振り向くとそこには狂気じみた笑みを浮かべたコレクターが立っており、ホルスターから銃を出そうとした瞬間、スタンガンらしきものを押し当てられ、電撃が彼を襲いスミスは気を失った。

コレクターはスミスの銃を地面に置くと彼を抱えてテレポートで何処かへ行ってしまった。

スミスが行方不明になったのをバレット達が知ったのはその数時間後の事であった。

 

────

 

「…う、ここは…?」

 

「あ、起きた。おはよー♪ここはI05地区だよ」

 

目が覚め、視界にコレクターの顔を見たスミスはとっさに起き上がろうとするが、その時自分の手足が失くなってる事に気がついた。

 

「なっ⁉︎」

 

「君の手足ならここにあるよ。逃げられたら困るし。どこをどうすれば痛くないかは()()で知ってたから楽だったよ」

 

地面に置かれた自分の手足を見てスミスは苦い顔をした。今彼は机の上に達磨のように『乗せられている』状態にあった。

 

「俺をどうする気だ?」

 

「君の事は気に入ってるからこのまま()()するつもり。でもその前に君を助けに来る連中を皆殺しにする。そのための準備は整ったし。ガードやアイギスが彼らを殺すだろうね」

 

「飼育…だがこっちもお前が思う以上に強くなってる。そんな程度でやられるか。盾ごと粉砕するだろうよ」

 

「いいや出来ない。少なくとも盾は絶対に壊せないよ。まぁ、見てもらった方が早いか」

 

そういいコレクターはモニターを付ける。それを見たスミスは言葉を失った。

─百はいるガードやアイギスが手に持っている武器が大型化してるのもそうだが、彼ら彼女らが手にしてる盾には、手足をもがれた人形が埋め込まれていた。しかも、彼女達は生きているのであった。

 

「なっ…⁉︎お前…‼︎」

 

「どう?これだけ集めるの大変だったよ。盗賊がオモチャにしてるのや娼館にいるのとかも攫ってさ。これでも盾ごと粉砕できるの?できないよねぇ?君たちは人形達の味方なんだから。普通はまた作れば良いで済ませて構わず殺すけど、君たちは愚かにもお人好しだからね。それを利用させてもらったよ」

 

「…盾ごと破壊しろとの命令があればそれは無意味になるぞ?」

 

「それが下されない事は君自身がよく知ってるでしょ?」

 

コレクターの言葉にスミスは言い返せず、黙って彼女を睨む。まさかここまで非道な真似をするとは思ってもおらず、視線だけで殺せるのなら数百回は殺しているくらい睨み付けていた。

 

「非人道的とでも思ってそうな目だけど、人道とは人の道。私たちは人じゃないから人道も何もないよ」

 

「こんな事までして、何が目的だ…!」

 

「どうやらグリフィンには私たち鉄血をお友達と思って仲間にしてるのがいるみたいだから、改めて思い知らせるの。私たちは敵で、お友達なんかじゃないって。ちなみにこれ作ったのは建ちゃんだよ。ねぇ建ちゃん?」

 

「っ⁉︎う、うん…」

 

部屋の隅にいたアーキテクトにコレクターがそう問いかけると、アーキテクトは泣きそうな目で半ば怯えながら答えた。その様子からスミスはアーキテクトは無理矢理脅すなりなんなりで作らせたなと直感した。

 

「あの盾はいざとなったら私が遠隔で爆破できるようにしてあるんだよ。ちゃんと起動するかはテスト済みだし、ガードやアイギスも盾を積極的に使うようにプログラムさせてある。さて、わざとグリフィンに見つかるように行動したからガード達のこともわかっていてここに来るはずだ。一体誰が君を助けにきて殺されるか楽しみだね」

 

コレクターはそう言った後、狂気じみた嗤い声を部屋に響かせた。その声が響くなか、スミスは文字通り手も足も出せずにいた。




はい、という訳でコラボ『I05地区及びスミス奪還作戦』の参加を募集します。
こちらからどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=239922&uid=89042

6/7の正午に締め切ろうと思いますのでぜひよろしくお願いします!


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Code-72 盾捨押収-準備

サブタイは盾捨押収(じゅんしゃおうしゅう)と読みます。
さて、コラボ回、出撃準備です‼︎
参加者はあとがきにて書きます。



スミスが行方不明になった翌日、I05地区でコレクターらしき人形を見たという情報が入り、協力者の一人であるウェルロッドが斥候に向かったところ、コレクターを発見するが地区内に大量の鉄血が存在、しかもその大半が『盾』を装備したアイギスやガードである事と、会話の内容からスミスがそこにいる事が判明しバレット達はグリフィン内外問わず協力を要請した。

 

最初に来たのはやはりというべきか、スミスと交際しているバルカンであった。その後遅れてEA小隊の面々とミニガンが会議室に入ってきた。

 

「バレット‼︎スミスが、スミスが攫われたって本当なのか⁉︎」

 

「あぁ。情報によればスミスは生きてはいるが…手足を切り落とされてるらしい…!」

 

「…っ⁉︎今すぐ行かせてくれ‼︎攫ったのはコレクターって奴だろ!スミスをそんな目に遭わせやがって…ぶっ殺してやる‼︎」

 

「落ち着け、今他の協力者達が来る。それまで待ってくれ。それに、問題があってだな…」

 

「でも‼︎その間にスミスになんかあったら…!」

 

「姉貴、落ち着いてくれ!私だってあの人を今すぐに助けたいよ!でも、無策でいって姉貴が返り討ちに遭うのはあの人だって望んで無いだろ?だから、今はバレットさんの言う事を聞いて待とう」

 

「…わかった。悪いなバレット、取り乱しちゃって…」

 

「気持ちはわかる。もうすぐ協力者達が来るはずだ」

 

30分ほど経ち、協力者達が次々にやってきた。

単独で来たのは試験を兼ねて来た第2.5世代人形のマンリヒャーM95/30、長期単独任務の過程で今回の件を察知し協力を申し出たJS9の二名。

 

残りは小隊単位で来た者たちで、まずは先程のウェルロッドが所属してる組織から二部隊が派遣され、01、04というコードネームを持つ女性二人とそれぞれが率いる部隊だが、実際に動くのは01率いる部隊、通称テロポーダ01【カルノタウルス】。01を隊長としIDW、MP5、95式、97式、G28の6名で04率いる部隊『サウロポーダ』は電子戦やオペレーティングなどの後方支援を行うそうである。

 

次にS07地区のBB小隊とE01小隊、重装部隊のAGS-30と護衛としてGsh-18が協力してくれた。特にM16A4はかつての恩人の危機と言うことで基地内で一番に協力を名乗り出たようであった。また、新規メンバーであるM38SDMRはこちらに興味があったらしく、流石に触られたりはしなかったが幾つか質問責めに合った。

 

その次にはS09P基地からキャロル、アーキテクト、ゲーガーとオートスコアラー組が協力してくれた。この協力はリバイバーにとって意外だったらしく、一度見て慣れたとはいえ、キャロルを前に若干声が震えていた。

 

「お前、いい加減慣れろよ。失礼だろ」

 

「わかってるけどさぁ…いや、本当すまないな」

 

「気にしないから心配するな。そちらのペースで慣れていけば良い」

 

実行部隊が揃ったところで、バレットが作戦内容を説明し始める。

 

「まず、I05地区は平坦な土地だが建造物が多いところだ。故に伏兵の可能性もある。スミスがいるとされるのは中央部の建物内だ。そして事前に連絡したと思うが、一番の問題は鉄血兵の内、大半が生きた人形が埋め込まれた盾を持ったアイギスやガードということだ」

 

モニターに映し出された映像を見て一同は驚愕と嫌悪感、そしてそれを平然と行ったコレクターへの怒りを露わにした。

 

「普段なら最悪の場合盾ごと撃つという方法がとられるが、コレクターは狡猾でこちらに揺さぶりをかける戦略が得意だ。一つでも盾を破壊したら他の盾も連鎖的に爆発するような仕掛けを施してる可能性もある。故に盾を破壊せずにアイギス及びガードのみの撃破をお願いしたい。EA小隊は盾持ちではなく伏兵の方を相手してもらう。特にマーダー、絶対に盾を破壊するなよ」

 

「わかってるわよ」

 

「アーキテクトとゲーガーを除いたP基地の部隊はリバイバーと共に戦力の多い西側を、S07の部隊はJS9とマンリヒャーと共に盾持ちの少ない北側を頼む。俺らDG小隊とカルノタウルスは盾持ちが多い南側を攻めるからEA小隊はアーキテクトとゲーガーと共に装甲兵の多い東側を頼んだ。サウロポーダは盾の回収と可能なら盾持ちの奴らを無力化出来ないか試してくれ。あとリバイバーは万が一を考えてルインで出撃だ」

 

了解、とそれぞれが返答する中、アーキテクトは映像を見て神妙な顔をしていたのにバレットは気がついた。

 

「アーキテクト、何か気になる事でもあるか?」

 

「うーん、この盾だけど、見た目以上に作りが良くできているよ。これ鉄血のドリーマーとかじゃこうはいかない。多分、あれの作成に『私』が関わってるよ」

 

「っ⁉︎アーキテクトを向こうは再生産したのか⁉︎」

 

「でも、再生産しても性格は基本変わらないから、こんなん作るのあっちの私は拒否する筈だよ。だけど作ってあるって事は、何かしらの脅迫を受けてるか…暴力で言う事を無理矢理聞かせてるのかも…」

 

「なるほど…コレクターならあり得るな…」

 

バレットがアーキテクトの意見に納得していると、バルカンがある意見を口に出した。

 

「なぁ…スミスを助けるのはわかる。だけど…肝心なこと聞いて良いか?コレクターはどうするつもりだ」

 

「もちろん…殺せ。絶対に奴を逃すな。奴にはテレポートがあるが、対策はある。バイザー型のテレポート位置予測システムをペルシカが作ってくれた。リバイバーには元々あるのにデータをダウンロードさせた。それ以外に5つあるから俺とペイロードとゲーガー、01さんとM16A4が着けてくれ。物はこの後渡す。ではこの後準備を行い次第、出撃する」

 

(スミス…今度は私が助けるから生きててくれよな…!)

 

────

 

I05地区の部隊入れ替えで移動していた鉄血部隊は偶発的にグリフィンの部隊と戦闘を行なっていた。

既にグリフィンの部隊は壊滅寸前であったが、ニーマムの放った一撃が狙いを逸れて道端の廃屋に命中して廃屋を吹き飛ばした。普段ならなんとも思わない鉄血だが、煙が晴れた時彼女達は顔を青くした。

 

……そこには砂塗れになったレーションと万能者がいた。

万能者はギギギ、とゆっくりと首を回し、鉄血部隊を見た。

 

「……懲りずにお前達は人の飯を…‼︎ また道徳のお勉強が必要なようだな…‼︎

 

それから数分と経たずに鉄血部隊は壊滅し、万能者はリッパーに問い詰めていた。

 

「お前らの管轄は誰だ?」

 

「コ、コレクター様です…!」

 

「コレクター?聞いたことないな…で?そいつは今何処にいる?」

 

「I05地区です…」

 

「よし、わかった。待ってろよコレクターとやら…‼︎ 飯の恨み、晴らさでおくべきか…‼︎

 

────

I05地区

 

コレクターは通信で代理人と話をしていた。

 

「あ、代ちゃん?悪いんだけど、救ちゃん寄越してくれるかな?」

 

「救済者ですか?何故です?」

 

「確実に奴らを始末したいから。万能者対策に造られたあの子ならあいつら楽に潰せるでしょ?あと、あの子の実戦訓練も兼ねてね。他の対万能者ユニットも借りたいけど、流石に無理だよね?」

 

「ええ。流石にそこまで戦力は割けません。それと、救済者は損傷が激しくなったらあなたの作戦状況に関わらず帰還させますから」

 

「いいよ。元々は万能者の始末が目的だもんね。じゃ、早めにねー」

 

通信を切ったコレクターは自身の準備を始めた。なお、バレットが危惧したような仕組みは盾には搭載されていない。そう思わせ、盾を破壊させないことが彼女の目的だったからである。

 

スミス救出作戦の開始は刻一刻と迫っていた。




今回の参加者は
oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』より
EA小隊+ミニガン

焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』より
キャロル、アーキテクト、ゲーガーとオートスコアラー組

スツーカ様作『双頭の鷲の下に』より
マンリヒャーM95/30

装甲歩兵様作『403 Forbidden』より
JS9

ガンアーク弐式様作『MALE DOLLS外伝集』より
BB小隊・E01小隊

一升生水様作『本日もよき鉄血日和』より
01率いるテロポーダ01【カルノタウルス】、02の部隊よりウェルロッド、04率いる『サウロポーダ』

試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』より
万能者(ただし乱入で)とコレクターの援軍で救済者

が参加してくださいました‼︎ありがとうございます‼︎
なんだこの王手飛車角金落ち状態…コレクターへの殺意高スギィ‼︎

自身含めて合計8作品のコラボ…上手くそれぞれのキャラを捌けるか不安ですが、頑張っていきます‼︎


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Code-73 盾捨押収-作戦開始

コラボ回その二です‼︎

さーて、コレクターリンチ作戦の開始です‼︎


I05地区

 

「ん…?来たみたいだね、じゃあ君には眠ってもらうよ。起きた時には全部終わってると思うよ。起きてすぐ見えるように仲間の死体は目の前に置いてくから楽しみにね」

 

「あいつらを甘く見るなよ、寝起きで見るのは死体じゃなくて、起きない俺見て今にも泣きそうな顔したバルカンの顔だと俺は思うがね」

 

「あっそ」

 

バレット達救出部隊が来たという知らせを受けたコレクターはスミスを気絶させて置くとアーキテクトを呼び、彼の監視を任せた。

 

「じゃあ頼んだよ建ちゃん。あ、一応大丈夫だと思うけど…ごめんね」

 

そういうとコレクターはアーキテクトの指を1本掴んでへし折った。

 

「…ッあ"あ"ぁ⁉︎な、何で…⁉︎」

 

「土壇場で余計な真似されても困るからね。少しでも妙な真似したらすぐテレポートして今度は耳をちぎるからね。わかったら監視頼むね?」

 

「ヒィ⁉︎わ、わかった…」

 

コレクターは部屋を出ると部下からの報告を聞きながら考えを巡らせた。

 

(ふーん…結構裏切り者達も来てるね。特にキャロル…エリザ様のダミーでルーラー攻略の懐刀でありながら死人とルーラーの言葉に絆されたあいつは是が非でも始末しなきゃ…さて、救ちゃんはどこに向かわせようかな?)

 

そう考えるコレクターだが、そのキャロルを始末するのに代理人含めた3名のハイエンドが向かって返り討ちに遭った事を思い出してさえいれば、のちの彼女の運命は少し変わっていたのかもしれなかったが、もう手遅れであった。

 

────

 

「こちらバレット。全員配置についたか?」

 

バレットが各部隊に尋ねると、全員配置完了との連絡が返ってきた。

 

「よし…これよりI05地区奪還及びスミス救出作戦を開始する‼︎各自行動開始‼︎」

 

「了解!さーて、行くよゲーちゃん!【Balwisyall nescell gungnir tron(不 可 能 を 貫 く 信 念)】」

 

「【Seilien coffin airget-lamh tron(誇 り 咲 く 笑 顔 を 守 る 力)】あまり無茶はするなよ」

 

「んあ?やっぱあの噂そっち由来か。なら俺も鳴らすかね」

 

少々真実は違うが、アーキテクトとゲーガーがそれぞれの武器の認証コードを通信越しに聞いたリバイバーはそれに倣い鈴の音色を鳴らした。

まず先陣を切ったのはバルカンであった。彼女の行手を阻もうとマンティコアが二機近寄るが、

 

「邪ァァ魔だァァァァ‼︎」

 

バルカンは即座に大物殺し(ジャイアントキラー)なる大型チェーンソーを起動し、瞬く間にマンティコアを切り裂いた。次に『盾』持ちのアイギスが一体、盾を構えて突進するがバルカンは跳躍して背後に回り込むとチェーンソーをアイギスの背中に突き立て、その身体を貫いた。アイギスは振動に合わせてガクガクと痙攣を起こすとやがて動かなくなった。

他のEA小隊のメンバーも各々の武器で鉄血兵を仕留めていく。だがフレイムはいつもの火炎放射器では今作戦では絶望的に相性が悪いため、サブ武器のジャイロジェット・カービンにて対処していった。

 

「バルカンさん、いつに増して攻撃が激しいですね…」

 

「そりゃ彼から貰ったリストバンド見るたび乙女の顔になるくらい愛してやまないスミスがあんな目に逢えばあぁなるわよねぇ?でも、このままだと復讐心に囚われて、うっかり死ぬかもしれないわよ?」

 

「マーダーさんにしては珍しくまともな意見ですね…でもあのままだと確かに危ないのは確かです。アーキテクトさん、ゲーガーさん。何かあったら頼みます」

 

「任せてくれ。あのままだと盾も破壊しかねないからな…ハッ‼︎」

 

「あの子どんどん進んでくから早く追いつかないと囲まれてちゃうもん…ねっ‼︎」

 

ゲーガーが蛇腹剣で、アーキテクトが小手でそれぞれ盾持ちの頭を破壊しながら返事をし、先行していくバルカンを追いかけていく。

 

────

西側

 

「フッ‼︎」

 

キャロルがダウルダウラの銅線で器用にアイギスとガードのみを捕縛するとそのまま焼き切った。

 

「基地の部隊より火力が低い方の私達ですが、今回はこの方が都合が良いです‼︎」

 

「トゥーマーンもこれなら活躍できるんじゃない?」

 

「そーですねッ!こいつら盾がアレなだけで、あとはその辺の奴と変わらないですし!どっちかというとジャウカーンがやりづらいでしょ?」

 

「大丈夫です!レーザー出さなくてもそのままガリガリすれば問題ないです!うりゃー‼︎」

 

(あれ?俺要らなくない?)

 

軽口を叩きながら次々に撃破していくオートスコアラー組を見てリバイバーは軽く唖然としていた。なんなら自分があのまま鉄血に居続けたら彼女達と戦うハメになってたかと思うとゾッとするやら味方で頼もしいやらと複雑な心境だったが、気持ちを切り替えて宙を舞い、空から出力を絞ったV.S.L.Cを的確に当てて撃破していく。その途中、キャロルの死角からニーマムが狙ってるのを見たリバイバーはニーマムを狙い撃ちにした。

 

「大丈夫か?」

 

「助かった。感謝する」

 

「ついでだが、お前さんと部下のおかげで、この辺りは殆ど盾持ちが居なくなった。あとは装甲兵が大多数だ」

 

「了解だ。あと、『部下』じゃない、『家族』だ」

 

「ん、それは失礼」

 

その後リバイバー達は敵戦力を次々に撃破していき、そのまま北側の部隊の援護に向かって行った。

 

────

 

西側の部隊が圧倒的スピードで壊滅していくのを聞き、コレクターはほくそ笑んでいた。

 

「ハハ!このスピードだと盾ごと破壊してるんだね!綺麗事並べてもやっぱり君たちは鉄血…」

 

『いえ、コレクター様…奴ら、()()()()()()()()()()()()()()‼︎』

 

「…え?馬鹿な⁉︎あのスピードで盾を破壊してない⁉︎こんな戦力があるなんて…!」

 

コレクターは動揺していた。まさかここまでキャロル達が強いとは思っていなかったからだ。だがよく考えれば元々彼女達は『あの』P基地を攻め落とす為の部隊である。それが弱くないはずは無いのである。『弱いから役目を放棄して裏切る』と考えていたコレクターにとってこれは予想外であり、初めてコレクターは怒りを露わにした。

 

「冗談じゃない…‼︎その力は鉄血のために振るうものの筈なのに…あいつらは今どこに⁉︎」

 

『北側に向かっていま…しまっ⁉︎見つか…』

 

ザザッと通信が切れるとコレクターは舌打ちし、北側に救済者を向かわせようとした時であった。突如として複数の轟音が北側から鳴り響き、味方の反応が次々に消えていった。何事かとコレクターは北側の方を向くとあるものが目に映る。それを見たコレクターは思わず怒鳴りつけた。

 

「…いつもいつも、どうしてお前は私達の邪魔をする⁉︎……万能者‼︎」

 

────

北側 少し前

 

盾持ちが少ないとはいえ、普通の部隊はそれなりの数がいるため、M16A4達は苦戦とはいかないがやや侵攻が遅れ気味だった。

 

「クソッ!せっかくバレットさんが盾持ちの少ないところに回してくれたのに、このままじゃスミスさんが…!」

 

「M16A4、ここは余に任せてくれ… Ruck-Zurück!」

 

マンリヒャーが自身のスキルを発動し前になると鉄血兵に向けて乱射する。スキルで下がった命中は射速と火力で補って敵を撃破し、隙が生まれた。

 

「今だ‼︎」

 

それを合図にM16A4達は突撃し、敵の陣形を崩しながら先に進んでいく。途中ガードが盾を前に出して攻撃を加えるも、M16A4は攻撃を躱し、懐に潜り込んだ。

 

「ハァァァ‼︎」

 

そのまま銃を突き出し、セットされた銃剣をガードの喉に突き刺すとそのまま引き金を引いてガードの頭を吹き飛ばす。

そんななか、倒したと思ったイェーガーが上半身のみ起き上がり、JS9に向けて銃を向けた。

 

「JS9さん、後ろ‼︎」

 

「っ⁉︎」

 

M38SDMRに声をかけられ回避しようとするが到底間に合いそうになかった。

 

…ここで、彼女の持ち前の幸運が起きた。

 

彼女を撃とうとしたイェーガーは空から降ってきた銃撃の豪雨に晒され、破壊された。それだけでなく彼らの近くで爆発が起き、辺りの鉄血部隊は壊滅した。しかも、盾持ちは本体のみ破壊され盾には被害がなかった。

彼らが空を見上げると、何やら尋常じゃない雰囲気の万能者が滞空していた。

 

「飯の恨みで来たが…こんなひでぇ真似して…道徳のどの字から教えてほしいみたいだな…!

 

そして、現在に至っていた。万能者を確認したコレクターはある指示を出した。

 

「救ちゃん、仕事だよ。万能者の相手をお願い。私は南側に行く」

 

「りょ、了解です…」

 

万能者の乱入により、事態は混沌と化していく。

 

────

 

現場から少し離れたところで04達は回収された盾の解析を行なっていた。

 

「これを解析すればこれを使ってるやつの動きを抑えられるかもね…ふむ、だいぶ防護壁があるけど、私にかかればザルね…」

 

04は凄まじい勢いでキーボードをたたいて盾のデータ設計内に侵入していく。すると、あるものを見つけた。

 

「…え?これって…まさか⁉︎」




圧倒的じゃないかグリフィンは(悦)
まぁ盾が特徴なだけであとはちょっと強いアイギスとガードですからね。

南側の戦闘は次回出します。

上手くコラボ元のキャラを扱えたでしょうか…?
なんなら補足回書いても構いませんよ…?(体の良いブン投げ)
最後に04が見つけたものとは…?

次回をお楽しみに!


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Code-74 盾捨押収-窮鼠

コラボ回その3です‼︎

タイトルの窮鼠とは…

そして先に言います…焔薙様、コレクターがすみません‼︎


南側

 

盾持ちの多いこの場所では01とその部隊、及びDG小隊は奮戦していた。

01は手にしたデザートテックMDR 7.62×51mm弾仕様にて盾から僅かに出た頭部や足元を的確に狙い、彼女の部下も上手く立ち回り、IDWやMP5は持ち前の回避で攻撃を躱しながら近寄って処理し、G28の支援を受けながら95式と97式が高いコンビネーションを行い、次々に盾持ちを撃破していく。

 

DG小隊も元々人形の救助がメイン任務ということもあり、こういった人質を取られた状態での立ち回りも熟知していた。

バレットは盾持ちの脚を狙い撃って転倒させ、頭部を見せたところで撃破し、レストとノアも息の合った連携をみせ、相手を撹乱させたところで撃ち倒していった。ウェイターは以前から愛用しているワイヤーを駆使しつつ、銃撃で相手に隙を与えて味方に撃破させるようにしていた。

順調に進んでいった彼らは先程の万能者による攻撃の音を聞き、爆音のところにいたM16A4らに連絡を入れた。

 

「こちらバレット‼︎北側攻略隊、何があった⁉︎無事なら返答を頼む‼︎」

 

《こちらM16A4です!バレットさん、現在こちらは万能者が乱入し先程の攻撃で付近の鉄血は盾を残して全滅しました!全員無事で盾の回収を行っています。しかし、すぐに鉄血と思われる大型の人形が万能者と交戦してます‼︎》

 

「万能者が?わかった、その二体は今どうなってる?」

 

「今は万能者が上手いことここから離れながら交戦し、正体不明機がそれを追いかけているのでどんどん戦場から離れていってます!」

 

すると、自分らのいるところと東側の上空から光の雨が降り注ぎ、爆音が鳴り響き、鉄血の部隊が盾を残して壊滅していった。

 

「何だ⁉︎」

 

《こちらペイロード‼︎突如上空からレーザーらしきものが飛来し、敵部隊が本体のみ撃たれて壊滅しました‼︎》

 

《今さっき万能者が何か喋っていたのでおそらく万能者の武器の類かと思います‼︎》

 

ペイロードとM16A4の報告を聞いてバレットは考えを巡らせた。

 

(何故万能者が介入したのかはこの際考えない方が良い、だが問題は万能者と敵対してる大型人形だ。恐らくF05地区の時のやつの発展型と考えられるな…コレクターが俺達を確実に始末するために呼んだが、偶然万能者が来たが故にその対処をさせざるを得ないと言ったところか…。しかもさっきので盾持ちはほぼ全滅、こいつはまたとないチャンスだ!)

 

「全員に告げる‼︎理由は不明だが万能者の介入により敵はほぼ壊滅状態にある‼︎よって一気に中央部に突入しスミスの救助、及びコレクターの撃破を優先せよ‼︎また、盾は安全なところに移動させ後方部隊に回収を要請しろ‼︎」

 

了解‼︎と各員から返答が返ってくるとバレットは中央部に向けて駆けていった。

 

────

 

建物内に居たため難を逃れたコレクターは現在の状況を把握すると近くの壁を殴り付けた。

 

「クソッ‼︎盾持ち部隊の九割がやられた…!救ちゃんは万能者の相手をしてるうちにここから離れて行ったし…あいつさえいなければこんなことには…‼︎」

 

怒りを露わにするコレクターだが、過ぎたことは仕方ないと気持ちを切り替え、この状況をどうすべきか考える。

 

(撤退は無理…何の成果も無しにおめおめと帰れば例え万能者を言い訳にしてもエリザ様を失望させてしまう…それは私が許せない…‼︎)

 

彼女は自身の趣味や性格がまともでないことは理解している。故にそんな自分に役目を与えてくれたエリザには彼女なりに感謝し、信奉していた。だからこのまま撤退するという選択肢は無かった。

 

(ならば、ここにいるメンバーを一人でも多く殺害し、エリザ様に貢献することが最善手‼︎まず狙うべきはバルカン…奴を始末すればEA小隊と彼女と付き合ってるスミスの戦意を失うことが出来る。確か東側にいた筈…)

 

コレクターはテレポートを使い東側に向かうと、そこには全身に紅い亀裂が入り、目も紅く光らせたバルカンが鉄血兵と混戦していた。どうやら混戦していたため、彼女の周りにいた鉄血は万能者の攻撃を受けなかったようである。

 

(あれは…(しょー)ちゃんや狩ちゃんのに似てるなぁ…多分ペルシカの仕業か。でも、孤立してるのは都合が良い。一つしかないけど、軍から盗んだアレ使うのもアリかな)

 

バルカンが最後の一体を切り裂いたとき、コレクターは両手の銃をバルカンに向けて放つ。当然ながら回避されるが、バルカンはコレクターの姿を見て目を見開いた。

 

「っ!お前がコレクターか?」

 

「そうだよ。君の彼氏を拐って、達磨にした張本人♪」

 

「そうか…お前が…オマエガァァァァ‼︎」

 

そう叫びバルカンはコレクターに向けて斬撃を飛ばすが、コレクターはテレポートでバルカンの背後に回り込み逆に斬撃を飛ばす。しかしバルカンは事前にコレクターの行動の癖を聞いていた為、横に飛び退いて回避する。

 

「ふーん、さすがに私の情報は知ってるんだね」

 

「ネタが割れればお前なんか大したことねぇ‼︎お前を殺してスミスを取り返してやる‼︎」

 

「じゃあこれは?」

 

 コレクターは背中のワイヤークローを展開、レーザーブレードを出現させるとバルカンに振りかざした。

 

「なっ⁉︎喰らうかぁ‼︎」

 

擬似強化改造形態の出力を強引に上げてバルカンは機動力を上げて回避するも身体の亀裂がさらに広がり、所々身体から血が流れ始めた。

 

「へぇ、それ君の身体に合ってないんだぁ。大変そう…」

 

「うルセえ‼︎さッさトくたバレぇぇ‼︎」

 

声を枯らしながら斬りかかるバルカンにコレクターはあるハッタリを口にする。

 

「私を殺したらスミスも死ぬよ?」

 

「っ⁉︎」

 

その隙を突いてコレクターは左手の武器の盾部分からある物を撃ち出した。思わずバルカンはチェーンソーで防ぐがその途端にチェーンソーはジュゥゥと音を出して溶け始めた。慌ててバルカンはチェーンソーを捨てるとあっという間にチェーンソーは跡形もなく溶けた。

 

「なっ…これは⁉︎」

 

「軍から盗んだウツボカヅラ型C級E.L.I.Dの溶解液。テレポートで忍び込んだら見つけたんだ。これで君は丸腰だね」

 

そう言いコレクターはバルカンに斬りかかろうとする。バルカンは義手の弾丸生成で迎撃しようとするが、コレクターは右手を突き出した。

それを見たバルカンは右手にも溶解液があると思い身構えたが、先ほどので最後でありブラフであるが動きを止めるには充分であった。

 

(あっマズイ…スミス…助けられなくてゴメンな…)

 

コレクターの左手の刃が差し迫りバルカンが自身の不覚とスミスへの謝罪を心で呟き、死を覚悟する。すると─

 

「おりゃああぁぁぁぁ‼︎」

 

叫び声と共にP基地のアーキテクトがガングニールのスラスターを全開にしてして二人の元に向かうとそのままの勢いでコレクターの左手の武器を殴り壊した。突然の乱入に驚きコレクターは身を引くと彼女に向けて幾つもの銃弾が飛び交い、一発だけ脚に被弾した。見るとEA小隊とゲーガーの姿があった。

 

「くっ!また邪魔が!」

 

「お前達…」

 

「バルバル!大好きな人傷つけられて怒るのはわかるけどそれで無理して死んだら意味ないでしょ‼︎一人で抱え込まないで仲間を頼ろうよ?」

 

「あ、うん…すまない…(バルバル?)」

 

「とりあえず、今は下がっててね」

 

アーキテクトの説教にバルカンは冷静になり、一度下がるとアーキテクトはコレクターを睨みつけた。

 

「ひとつ聞いて良い?あの盾はもう一人の私に作らせたの?」

 

「正解。初めは協力を拒んだけど、ちょっと()()()()したらすぐ言うこと聞いたよ」

 

「っ‼︎なんて事を「でもこれは君のせいだよ?」え?」

 

「だって、君がルーラーのとこに裏切らなければこっちの建ちゃんは再生産されずに私に怯えなくて済んだはずだよ?だからこうなったのは君のせい」

 

「ふざけないで、それとこれは別問題でしょ。それに、彼女はルーラーじゃない。ユノ・ヴァルター、それが私の親友の名前だよ!」

 

アーキテクトが反論するとコレクターは何を言ってるのといった顔を浮かべた。

 

「ユノ?それは死人の名前でしょ?アレは死体から作ったクローンで、ナノマシンやらで身体中を弄り回された『ヒトモドキ』でしょ?そんなんと親友って君ちょっとおかし─」

 

「巫山戯るな‼︎ユノっちはヒトモドキなんかじゃない‼︎」

 

ある程度の侮辱は覚悟してたが、流石にその発言は見逃せず、アーキテクトは激怒しコレクターに殴りかかるがその直前にゲーガーが鞭に変形させたアガートラームでアーキテクトを捕まえて手繰り寄せ、左手で軽く小突いた。

 

「あたっ‼︎」

 

「落ち着け、奴の思う壺だ。だか…流石にアレは度し難いがな」

 

そう諭すゲーガーの目は静かにキレていた。

 

「それに、すでにお前が手を出すまでもないと思うぞ?」

 

「ん?何を言って─」

 

コレクターが不思議そうな顔をした瞬間、何かが煌きコレクターのワイヤークローが一つを残して切断された。

 

「え?」

 

何が起きたかわからずにいたコレクターだがすぐに危険を察知してその場から離れると複数のレーザーや弾丸がコレクターがいた場所を穿つ。見るとキャロルとオートスコアラー、リバイバーがこちらを見ていた。その全員が殺気だった目をしていた。

 

「お前さん、やっぱ俺の姉貴じゃねぇな。ここまでのクズは見たことない」

 

「いつの間に…!」

 

「さっきここの位置を全員に知らせた。先ほどの侮辱も流してな。もうすぐ全員来ると思うぞ?」

 

ゲーガーが薄い笑みを浮かべてそう言うと、次々に救助隊が集まり始めた。

 

「私も職業柄性格の歪んだ奴は見てるが…ここまでの奴は初めてだ」

 

「スミスの事だけなく、ユノ指揮官の事までも…‼︎」

 

「コレクター…‼︎ここで死んでもらうぞ‼︎」

 

01、バレット、M16A4がそう言い、包囲されたコレクターは黙考すると、先程バルカンが切り離した盾を二つ掴むとバレットとバルカンに向けて投げつけた。二人は反射的に盾を受け取ったところでコレクターは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「自爆コード送信‼︎さよなら二人とも‼︎」

 

「「しまっ…⁉︎」」

 

「隊長⁉︎」

 

「バルカン先輩⁉︎」

 

レストとフレイムが悲鳴を上げ全員がマズイと思った。次の瞬間には二人は爆散してしまうと。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……え?」

 

04か⁉︎と01が言葉を発すると次の瞬間その04から通信が入る。

 

『みんな聞いて‼︎盾だけど─()()()()()()()()()()()‼︎データの上ではあるみたいだけどすごく巧妙に作られてるわ…』

 

それを聞いてコレクターは有り得ないといった顔を浮かべた。

 

「ま、まさか…建ちゃんが?『そう…だよ…‼︎』⁉︎」

 

鉄血側のアーキテクトがオープンチャンネルで通信を開始した。

 

『貴女が私を完全に支配できて、ると思ってた、みたいだけど、爆弾が入ってたのは、テスト、に使ってた奴だけだよ…あと、みんな…コレクターを倒せば、残りの鉄血は、止まるし、スミスくんのとこには、何もないから…さっさとそいつを殺して‼︎

 

指を折られた痛みと殺されるかもしれない恐怖でどもりながらアーキテクトはそう叫んだ。実戦前にもう一度テストをしたらバレていたが、コレクターの性格は一番近くにいた彼女がよく知っており、一度試して上手くいったら実戦までテストをしない事はわかっていたからのこの行動であった。

コレクターの虚言であるグリフィンに殺されるかもしれないという考えもあった。しかし、どうせ殺されるならグリフィンに役立つ事を言っておこうと思い、スミスの無事を話したのであった。

 

まさかこんな形で裏切られると思わなかったコレクターは一瞬思考が停止する。その瞬間、JS9が放った対鉄血用ジャミング弾を受け動きを抑えられた。そのチャンスを逃さず幾つもの銃弾が彼女の全身を襲い、左の肘から先、右足首、左脚の膝から先が吹き飛んだ。

 

「グブッ⁉︎クソ…何で、役目を放棄した連中なんかに…」

 

「役目を放棄って言うけどさぁ、こう考えられないか?『人間が俺らに新たな役目を与えたんだ』って」

 

リバイバーが冷たく言い放つとコレクターは自嘲気味に笑っていた。

 

「はは…そんな、発想は…無かったね…」

 

「なぁ、私がトドメを刺していいか?」

 

バルカンは自分のサブ武器のS&W M500をコレクターに突き付けた。すると、コレクターはニヤついた。

 

「ねぇ、君は私を殺して…復讐を果たすつもりなんだろうけど…そうは、いかないよ…何故なら……!」

 

「マズイ、全員離れろッ‼︎」

 

バレットはコレクターがワイヤークローを僅かに動かしたのを見て全員に離れるよう叫ぶ。するとコレクターは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何ッ⁉︎」

 

「…私を殺して(壊して)いいのは、私だけだからだよ」

 

首だけの状態でそう呟くと、コレクターはそのまま事切れた。

のちに彼女のボディを解析してわかった事だが、彼女は最後の攻撃によりテレポート装置と自爆装置が故障していたとのことであった。

 

────

中央部、建物内

 

スミスが囚われている部屋にバレットとバルカン、ミニガン、P基地アーキテクトが突入すると、横たわっているスミスと鉄血アーキテクトがいた。

 

「スミス‼︎」

 

「大丈夫、気絶してるだけだから…それで、私は二人も要らないんでしょ、あんなもの作ったんだし、殺すなりなんなりしていいよ」

 

覚悟した顔で話す鉄血アーキテクトにP基地アーキテクトが近寄り、優しく抱き留めた。

 

「え…?」

 

「大丈夫。グリフィンはそんなこと言ってないよ。多分コレクターに騙されたんだよ」

 

「そうなの?でも、私、脅されたとは言えあいつに協力して…」

 

「絶対に貴女を殺させないように努力するよ、それより…辛かったね…」

 

「俺の方も何とか掛け合ってみよう。恐らく警戒はされるが、殺される事は無いと思う」

 

二人にそう言われ、鉄血アーキテクトは緊張の糸が切れたのか、大声をだして泣き出した。

一方で、バルカンとミニガンは一向に起きないスミスを揺さぶりながら呼びかけていた。

 

「スミス、起きてくれよ!なぁ⁉︎」

 

「スミスさん、起きて!」

 

涙目になる二人だったが、次の瞬間、スミスがゆっくりと目を開けた。

 

「「スミス(さん)‼︎」」

 

「(…予想が外れたな、ミニガンまでいたとは)…よう、心配かけたな」

 

二人を見てスミスは彼女達がコレクターに勝った事を理解したスミスは二人にそう呼びかけると二人は泣きながらスミスに抱きついた。

 

「スミス…生きてて…良かった…‼︎」

 

「姉貴も私も、みんな心配してたんだぞ…」

 

「無事だったみたいだな。スミス」

 

バレットが優しい笑みを浮かべてスミスに近寄り話しかけた。

 

「不本意ながらコレクターに気に入られてたみたいでな。それより、連れてくならそこの俺の手足も持ってきてくれ」

 

「わかった。万能者と交戦してる奴が戻ってくる前に撤退するぞ!」

 

「万能者?」

 

「あとで話す」

 

バルカンがスミスを抱えて連れて行き、鉄血アーキテクトも彼らに連れられI05地区を後にする。のちにグリフィンがI05地区の統治権を手に入れ、人類の生活圏がまた広がった。

 

こうしてI05地区及びスミス救出作戦は成功したのであった。




敗因:怒らす相手を間違えた(色々と)

人って頑張れば六千文字オーバーいけるんだな…

ちなみにコレクターの最期は別パターンで『無理矢理テレポート起動して逃げようとしたが行き先がE.L.I.Dの巣窟で性的にも物理的にも喰われて無惨に死ぬ』ってのがありましたがこれだと生死が確認できないので狂人らしく自殺ってことに落ち着きました。

あとは後日談を書いて終了です。
鉄血アーキテクトについてもその回で書きます。


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Code-75 盾捨押収-終幕

コラボ回ラストです。

鉄血アーキテクトの処遇がメインですかね。


グリフィンに帰還した彼らはコレクターが暴露したユノ指揮官の出生について事情を知らない者たちに話せるところまでP基地の面々が説明したうえでこの事を口外しないよう箝口令を敷いた。JS9については別の任務があるというので帰還前に説明しておいた。

説明を聞いた者たちは多少驚いたものの、箝口令を了承し、バレットらDG小隊は救出に来てくれた者たちに礼を述べ、その場は解散となった。

帰還前にアーキテクトはバレットにある事をお願いした。

 

「ねぇ、鉄血にいた私がどうなったかわかったら教えてくれる?」

 

「元々連絡するつもりだったから心配しなくていい。わかり次第連絡する」

 

「ありがとう、じゃあまたね」

 

────

医務室

 

解散してすぐバルカンはスミスの元に向かっていた。

医務室に入るとすでにスミスの修理は完了し、人工血液を輸血していた。

 

「スミス、大丈夫か?」

 

「ちょっと貧血気味だがそれ以外は平気だよ。助けに来てくれてありがとな」

 

「そりゃ…付き合ってるんだから、助けにいくのは当然だし…それに、スミスは何度も私を助けてくれたり、借金だって一部肩代わりしてくれたりしてるのに私は何も返せてないし…」

 

俯きながら話すバルカンだがスミスは手を伸ばしてバルカンの髪を撫でて微笑んだ。

 

「なに言ってんだよ、俺らって貸し借りで付き合ってる関係なのか?違うだろ?好きでやってるんだから気にするなよ」

 

「でも…「あーもうっ!」んぅ⁉︎」

 

言い淀むバルカンにスミスは顔を近づけキスをし強制的に黙らせた。

 

「見舞いに来たのにそんな顔するなよ、俺はお前が大事だから、お前が幸せならそれで充分なんだよ」

 

「あ…あぅ…わ、わかった…じゃ、私はこれで…大事にな…」

 

気絶こそしなかったが顔を真っ赤にしてバルカンは部屋を出て行った。その後彼女はある事が決まるのだが、それは別の話である。

 

────

 

翌日、鉄血にいたアーキテクトは用意された簡素な部屋でじっとしていたが、そこへバレットとリバイバーが入ってきた。

 

「アーキテクト、お前の処遇が決まった」

 

「……私はどうなるの?」

 

「簡潔に言うと…

 

 

 

 

 

一週間の監視ののち、無害と判断次第ウチに入隊とのことだ」

 

「え?何で…?だって私は…」

 

アーキテクトはこの処遇に戸惑っているとバレットが説明を始めた。

 

「理由は三つ、一つ目はお前の記録からコレクターに酷い虐待を受けて強制的にあの盾を作らされたとの裏が取れたことから悪意がないと判断したこと。二つ目は入隊させることで事実上監視となること。三つ目は脅されたとはいえ、アレで多数の人形が不幸になった。だから人形を救うDG小隊に入り、活動することで償いとさせるためだ。といっても開発面の方で役立たせるつもりだ」

 

「それに伴って、俺やコンダクターもサポートチームから正式にDG小隊に入隊となったわけだ」

 

二人の説明を聞いたアーキテクトは未だにその言葉が信じられなかった。暴力で支配されてたとはいえあのコレクターに与した彼女が監視付きとはいえDG小隊に入るとは思わなかったのだ。

 

「本当に、いいの…?嘘とかじゃないよね?」

 

「このようなタチの悪い嘘は言わない。ちなみに断るなら別の処罰があるが…どうする?」

 

「入るよ、それで、たくさん人形を助けるような物を作るよ!」

 

「なら決まりだな。それにあたってP基地のアーキテクトと区別するように名前を考えてくれないか」

 

「名前?そうだね…ちょっと急過ぎてすぐ決められないから、あとでいい?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

────

 

アーキテクトと話しをしたあと、バレットはペルシカの元に向かった。彼女は回収したコレクターの残骸を調べていた。

 

「何かわかったか?」

 

「いいえ、こいつは元からあの性格だったってことくらいね。テレポート装置も完全に壊れてるし、利用できるものはなさそうね」

 

「そうか、ならすぐに廃棄か?」

 

「ええ。その前に、彼女が奪った指輪を持ち主が所属してた基地に返すつもりよ」

 

「その方が良い。頼む」

 

その後、コレクターの残骸は溶鉱炉にて跡形もなく処分され、指輪は元の基地に送り届けられたのであった。




というわけで、アーキテクトはDG小隊に入隊することにしました。
名前についてはのちに出す予定です。

コラボに参加してくださった皆様、本当にありがとうございました‼︎


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Code-76 覚悟

物資箱で確定前に姉者来てくれた…嬉しい…

さて、今回スミスについてはこちらを読んでからだとわかりやすいです。
https://syosetu.org/novel/207272/20.html
あと今回情報過多です。


「はぁ…」

 

スミスは中庭でため息を吐いていた。理由は病室にてP228に押し倒され、その後彼女が自分を好きだ言い、なんなら二番目でもいいと言われたことで悩んでいたのである。

スミス自身、かつて救出した人形達からの相談事に積極的に乗ったり、時には食事に誘ったりしていたため、こういった事になる可能性は考えていた。もっとも、P228の場合は直接の交流は殆どないが、彼の噂や活躍を聞いて好意を持たれたパターンのようであるが。

後日、向こうから謝罪を受けたが、自分とバルカンが付き合ったことで他にも彼女のような人形がいるのではと考えてしまう。そのことについて相談を受けていたバレットはスミスに問いかける。

 

「ちなみに彼女の話について、お前としてはどうなんだ?」

 

「あの子には悪いが、俺はハーレム願望は待ち合わせてないから、それは断るんだが、上手い言い方がなぁ」

 

すると、リバイバーがこちらを見つけてやって来た。

 

「お?どうしたそんな辛気臭い顔して?もしかして先日P228が泣きながらお前のいる病室から出てった事に関係したり?」

 

「見てたのか…つーか言い方」

 

「浮気?浮気か?俺がバルカンにチクるの防ぐのにはいくらまで出せる?というか、バレットも共犯か?」

 

「違うからな?誰か聞いたら誤解されるから声下げろ」

 

「違うのか、ならどうしてあぁなった?ほれ、同じ達磨になった仲で話してみ?」

 

「嫌な仲だな…」

 

スミスはリバイバーに説明する。するとリバイバーはあっけらかんとした顔で

 

「んなもんズバッと言えばいいだろ?悪いがそんな趣味ないから付き合えませんって」

 

「そんな単純でいいのか?」

 

「ハッキリ言うのも優しさだと俺は思うぞ?というか、早めにそういうのは言ったほうがいい。待ってるほうも辛いぜ?殆ど負け戦に近いのに勇気出して告白したのにずっと返事来ないと来たら側室発言にドン引きされて嫌われたと思うかもしれないし」

 

「第一、他にお前さんが好きな奴居るかもしれないっていうが、お前さん方が好きな奴はなんて山ほどいるだろ。お前さん方、数少ない男性型人形で、見た目も中身も良いし活動もヒーロー的、おまけにエリートじゃん。ノアって例がいる以上お前さん方に助けられて好意持つ奴がいる筈だろ?そんなんにいちいち気遣ってちゃ何一つ出来なくなるだろ?お前さんはお前さんの生き方があるんだから。別に手を出してるわけじゃ無いんならどんと構えておけよ」

 

リバイバーの言葉にスミスはある程度納得した。

確かにバレット達はスミスほどでは無いが人形達と交流しており、思えば彼らが結婚すると聞いて少なからずショックを受けた人形はいたが、彼らに恨み言を言うような者はいなかった。寧ろ彼らを祝うものの方が多かった。

それに、変に気遣ってバルカンとの関係が悪化するのはP228の望むところではない。なら彼女にハッキリ意思を伝えて踏ん切りをつけるのも手だと感じたのであった。

 

「…そうだな、早速向こうに連絡しておくよ。アドバイスありがとなリバイバー。バレットも相談乗ってありがとう」

 

「別に、下手すれば俺もそうなってたかもしれないしな」

 

「俺は単純に思ったこと言っただけだし」

 

スミスが中庭から出て行ったあと、バレットはリバイバーに話しかけた。

 

「それより、随分お前知った口言うけど、お前そんな経験あるのか?」

 

「いいや、全く。それに俺はまだ二度目の人生になって一年も経ってない0歳のウルトラフレッシュ☆ヤングマンだぜ?んじゃ俺行くとこあるから〜チャオ♪」

 

そういいリバイバーは手を振って出て行った。

 

(何だ今の…?それにしても、一日に()()()相談受けるとはな…)

 

────

 

監視カメラが設置された簡素な部屋でアーキテクトが過ごしているとリバイバーがドアをノックしてきた。

 

「アーキテクト、入って平気か?ちなみに上には接触の許可はとってあるぞ」

 

「あ、うん。入って平気だよ〜」

 

それじゃ失礼するぞ、とリバイバーは部屋に入ってくる。見ると彼女の机の上には裁縫道具と幾つかの鼻と口の無い白いゆるい感じの人型の動物のようなぬいぐるみが置いてあった。

 

「ん?どうしたんだこれ?」

 

「ペルシカさんが暇つぶしにって気を遣って渡してくれたの。機械は流石にダメだけどこれなら大丈夫だからって」

 

「ふーん、上手いじゃないか」

 

「まぁね。それで、どうかしたの?」

 

「…姉貴がすまなかったな。あいつがお前さんに酷い事した挙句にあんなモン作らせて…」

 

認めたく無いものの、コレクターがリバイバーの姉である事に変わりなく、身内の不始末としてリバイバーはアーキテクトに謝罪し、頭を下げていた。彼女以外にも、盾にされた人形達にも接触しても平気と判断された者に対してはこうして頭を下げて回っていたのである。そんな彼にアーキテクトは頭を上げるよう話した。

 

「いやいや、あなたが謝る必要ないよ!私はあなたとアイツは違うってわかるから」

 

「…わかった、なら何かあれば俺に言ってくれ。出来る限りの事はする。そうしないと俺の気がすまない」

 

「うーん…ならさ、素顔見せてよ。隊のみんなのぬいぐるみ作ろうかなって考えてるけど、参考にあなたの素顔も見てみたいなって思ってたところだし」

 

「俺の目はアイツと同じ色だが、それは平気か?」

 

「気にしないよ。それに、あそこまで目が死んでないでしょ?」

 

「まぁな。一度死んでるけどな」

 

そういいリバイバーはバイザーを外し素顔を見せる。するとアーキテクトは息を呑み、じっとリバイバーの顔を見ていた。

数分経ってもそのままだったのでリバイバーは恐る恐る尋ねた。

 

「あー…いつまで見てるつもりで?」

 

「…ハッ!あ、うん、もう大丈夫だよ。ありがとね。あと、バレット君に私の名前決めたって教えてくれる?」

 

「ほぅ、決まったのか。それで、何で名前に?」

 

「『グリンダ』。それが私の名前」

 

「(グリンダ…確か、オズの魔法使いに出てくる良い魔女の名前か。なるほど、らしいな)そういや触れてなかったが、髪型変えたのも向こうと区別するためか?」

 

「そ。何も言わないから気付いてないと思ったよ〜」

 

リバイバーが指摘した通り、今の彼女─グリンダの髪型はいつものサイドテールではなく高めのポニーテールであった。

 

「んじゃま、その辺バレットに伝えとくよ。時間があればまた来るよ」

 

「はーい、またね〜♪」

 

リバイバーが部屋から出て行き、ドアが閉まった瞬間、グリンダは肩の力を抜いた。

 

「……ヤバイ、すっごいドキドキした…バレてないよね?」

 

────

16Lab

 

「……本当にいいのね?」

 

「はい。既に隊長と相談して決めた事です」

 

「色々問題が起きるかもしれませんが、その問題をレストさんと乗り越えていくと決めました」

 

真剣な顔で話すペルシカとレスト、ノアの三人。彼らが話しているのは『人形の妊娠可能施術』についてである。レストとノアの二人は慎重に話し合った結果、その施術を受ける事をペルシカに話したのである。

 

「理論の上では可能だけど、知ってると思うけど前例がないわ。五体満足で産まれるかもわからないし、流れる可能性もあるわ。それでも大丈夫…って、その顔を見れば大丈夫そうね。それで、ここで施術受けるのね?」

 

「元々はここから確立させたのだし、D08のデータもフィードバックされてるのならわざわざ向こうに行く必要はないだろ。あっちのドリーマーも最近子供産まれて育児が大変だと思うし」

 

「了解。じゃ早速始めるから先に待ってて」

 

そう言われ二人は部屋から出ていく。

ペルシカは準備をしながらパソコンを操作した。

 

「…まさかここまで来るとはね。近いうちにノアは戦線離脱すると思うから、やはりこれは進めたほうがいいわね」

 

彼女が操作するパソコンの画面には『第二次男性型戦術人形製造計画』の文字が映し出されていた。




ガンアーク弐式様、スミスからの答えは『悪いけど無し』という方向です。スミスが連絡する話はお任せします。

グリンダですが、初め花言葉から選ぼうとしましたがピンと来るのがなかったのでこちらに決定した感じですかね。あと彼女が作ってたぬいぐるみは『コードブレイカー』のにゃんまるです。そのうち着ぐるみ作るなこれ。リバイバーの中庭去る時のセリフも平家パイセンからだったり。(また世代バレるような事言ってるけど今更だからヨシ!)

レストとノアは…初めはこの二人からだと思いましたね。
最後のはまだどの銃の人形にするかは完全には決めてませんが近いうちに出そうかなと思います。


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Code-77 新たな仲間

今回は前回最後に出てた第二次男性型戦術人形達が出ます!



某地区

 

()()()()()()()()()()いきなり救援要請きたから実戦兼ねて行ってらっしゃいってペルシカさんかなり無茶振りしますね⁉︎」

 

銃弾飛び交う戦場で一人の()()が手にした銃を撃ちながら叫ぶと近くにいた男性二人がそれに答えた。

 

「でも僕達、出来てすぐメンタルクロックルームで丸五日訓練しましたから実質120日は訓練してますからまぁ大丈夫でしょ。ね、()()()

 

「まぁな。()()()の戦闘記録やその他の部隊の記録を基にした割りかしハードなやつだったし。実際、この状況は訓練に比べればまだ余裕だろ」

 

「そーですけどね、初陣でオレ達だけで出撃はないでしょ⁉︎せめて先輩達のなかから一人くらい同行してもいいと思いません⁉︎」

 

「愚痴ってるとこ悪いが二つ報告があるぞ」

 

合流してした一人の男がそう言うと、先ほどの少年があることに気づいた。

 

「ん?お前、()どうした?」

 

「奇襲されかけたからそいつに投げつけた」

 

「何で投げる⁉︎盾で防げよ‼︎」

 

「何言ってんだ?盾は投げるものだろう?

 

「な訳ないだろ⁉︎()()()()()()()が聞いたら泣くぞ⁉︎」

 

「そんな事はいい、報告はなんだ?」

 

「ひとつはグリフィンの部隊はほぼ撤退が完了している。もう一つは、ガルムが五体いる。二体はリーダーと協力して倒したが、残りがこっちに来てる」

 

彼がそう言った直後、地響きが鳴り見ると先程言ったガルムが三体、こちらを見つけて向かっていた。四人は迎撃準備をするが、真ん中にいたガルムが飛来した銃弾にカメラアイを貫かれ、沈黙した。

 

「ナイスタイミングだリーダー!」

 

《問題無い。それより、いけるか?あと二体…》

 

「二体ならなんとかいけますよ」

 

「いや、あれ自分に言ってるぞ?先の二体もアイツがとどめ刺したし」

 

「初陣でガルム五体撃破はかなり目立ちますからね〜でもこのままリーダーだけ目立たせる訳にはいかないでしょ」

 

「手柄の取り合いをするな、真面目にやれ。ま、どのみちアレを倒さなきゃ撤退した部隊が追撃されるし、俺らで食い止める必要があるがな」

 

「喋ってる間に来ましたよ!」

 

二体のガルムがそれぞれミサイルを放つと彼らは散開し、迎撃を始めていった。

 

────

 

スミス救出作戦から一週間以上が経過し、グリンダが監視ののちに無害と判断され、正式にDG小隊に入隊したある日のこと、彼らはペルシカに呼び出された。

 

「今日呼んだのは新しい任務か何かか?」

 

「違うわバレット。今日呼んだのは貴方達に新しい仲間が出来たから紹介しようと思ってね」

 

「新しい仲間?何でまた?」

 

「貴方達は人形達の救出や過激派の掃討がメインだけど、過激派達も追い詰められた獣の如く数は少なくなってるものの戦力が増しているし、鉄血の方も油断はできない状況だから、元々上がってた『第二次男性型生産計画』に手を加えてDG小隊の第二部隊を編成して戦力の増加を図るってわけよ」

 

「なるほどな…」

 

他にも近々DG小隊の戦力が低下するだろうからと言うのもあるが、わざわざそれを言うほどペルシカは無神経では無いため黙っていた。

 

「ちなみに彼らは既に訓練を終えて実戦も経験済みよ。さ、入ってらっしゃい」

 

そう言うと五人の男性が部屋に入って来た。

ニット帽を被ったリーダーらしき男、薄いラベンダー色の髪に赤と黄色のバンダナを巻いた少年、水色のふんわりした髪型をした青年、黒髪に右にクリーム色のメッシュ、左に金のメッシュをしたやや髪の長い青年、その彼より短い髪型で逆の位置にメッシュをしたやや童顔の青年の五人である。

五人はバレット達の前に並ぶとそれぞれ自己紹介を始めた。

 

「適合銃、L115A3のライだ。よろしく頼む」

 

「適合銃M60E6のバラージです。はじめまして」

 

「適合銃SPAS15、ジュッターレ。よろしく」

 

「適合銃MPT-76のナロだ」

 

「適合銃MPT-55のココです」

 

五人の自己紹介を終えるとバレット達は彼らを一瞥する。

 

「RFにMGにSG、ARが二人か…」

 

「MGとSGの男性型は初だったな、そっちの二人は兄弟であってるか?」

 

スミスの質問にナロとココはハイ、と答えたあと、ライがバレットに話しかける。

 

「一応この第二部隊の隊長は自分だが、合同作戦の場合はバレットさん、貴方の指示に従うことになるのでよろしく頼む」

 

「わかった。あと、別に呼び捨てでも構わないから」

 

「了承した。それで、後日日を改めてそちらと模擬戦を行いたいのだが、如何だろうか?」

 

「電子空間内で良ければ構わないが。リバイバーはいない方がいいだろ?」

 

「その方がありがたい」

 

「んじゃ、やる日はあとで連絡しよう。リバイバーは当日観戦な」

 

「へいへい」

 

「ありがとう。では後日に」

 

その後幾つが雑談を交わしたあと彼らは解散し、バレット達は第二部隊のデータを見ていた。もちろん向こうにもこちらのデータは渡してある。

 

「あのライって奴…初陣で協力しながらとはいえ、ガルムを五体撃破しているな」

 

「ジュッターレは背部にもう一丁銃をマウントしてて、セミオートにした時に二丁待ちにするみたいだな。あと、盾の裏に取り付けた予備マガジンを全部取り替えたらその盾を投擲する癖がある。だからあの名前なのか」

 

※ジュッターレはイタリア語で『投げる、投げるために』の意

 

「バラージはMGの割に命中率が高いな、あとこいつも二丁持ち出来るが普段は一丁らしい」

 

「ナロとココは兄弟だけあって息のあった連携が特徴的ですね」

 

それぞれのデータを見たバレットは顎に手を当てて考えを巡らす。

彼らにとって自分らは先輩にあたるため、すぐに負けるなんて事にはなりたく無い。向こうも勝ちに行くはずなので全力で相手するつもりである。

しばらくしてバレットはライに模擬戦の日を連絡し、スミス達に大まかな作戦案を伝え、そのための訓練を開始した。

 

そして、模擬戦の日がやって来たのであった。




解説

『ライ(L115A3)』DG小隊第二部隊の隊長。
実銃解説: AWMの英軍採用型を改良したもの。あのデザイン好き。
補足: キャラモデルはコナンの赤井さん。てかほぼまんま。名前も赤井さんのコードネームより。しかし赤井さんが使ってるのは本銃ではなくL96A1であるのであしからず。じゃあなんで合わせないのか?私がAWMの方が好きだからです。ガルム五体撃破は中の人繋がりのシャアのオマージュ。

『バラージ(M60E6)』DG小隊第二部隊の火力支援、及び制圧射撃担当。
実銃解説: M60ファミリーの最新型。サンドカラーの方が自分は好み。
補足: 名前の由来は弾幕の英語のバラージより。バンダナの色は姉のヘルメットの柄がモチーフ。正直コイツの名前に一番手間取った。良識があり、トリガーハッピーじゃないけど染められたらそうなりそう。マシンガンを讃えよ‼︎

『ジュッターレ(SPAS15)』DG小隊第二部隊のタンク役。
実銃解説: SPAS12の後継。見た目がARみたいなのがカッコいい。
補足: 姉と同じくよく食べる。盾の形は姉(デフォルトスキン)と同じだがクイックローダー部分も盾。そしてよくそれを投げる。イー○スやデスサ○ズやキャ○テン・アメ○カ並に投げる。

『ナロ&ココ(MPT-76及びMPT-55)』DG小隊第二部隊遊撃役。名前の由来は語呂合わせ。
実銃解説: トルコ産の銃。76が7.62mm仕様で55が5.56mm仕様モデル。開発元曰く、G3のように効果的で、AK-47のように信頼性が高く、M16のように実用的だと評価しているとのこと。ただし設計の参考元は416及び417という殺伐としたスレに〜みたいな銃。ちなみに見た目は417に似てるが機関部設計に明確な差異があるそうで部品の共通性はないそうで。
補足: 髪の色は先程の評価よりそれぞれの人形より(黒=M16、クリーム色=G3、金髪=AK-47)
本当はココの代わりにKAC-PDWを採用したかったが念のため実装してないか見たらつい最近実装されてたのでいっそ兄弟にしたろと思い今の形に。

プロトタイプが僅かに出たくらいの奴だから大丈夫だろと思ってたのに…運営と発想が被ったことを誇るべきか否か…

そろそろ人物資料書こうかな…
本編次回は模擬戦の予定なのでお楽しみに‼︎


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Code-78 Gospel to the Guardian

模擬戦と言ったな、あれは嘘だ。

理由に関しては本編をご覧ください。


模擬戦当日の朝、模擬戦自体は昼過ぎに行うため時間には余裕があるのだが、ノアは起床した時から妙に体調が悪い事を自覚していた。ライ達第二部隊と会う数日前くらいから調子が悪いときがあったが、以前の作戦の疲れが今来たのだろうと思っていたが今日のは以前のそれとは違い、着替えるために移動するときにも足取りが重くふらつくのを感じ、今日の模擬戦はやめておこうかと考えたとき、レストが目覚め、起き上がった。

 

「おはようございます、レストさん」

 

「あぁ、おはよう…?ノア、もしかして今体調悪いか?」

 

「え?まぁ、ちょっとふらつく感じですね…」

 

目覚めてすぐにノアの不調に気がついたレストに驚きつつ、彼の質問に答えるとレストは心配そうな顔で

 

「そうか…隊長には俺から連絡しておくよ。多分ライ達には悪いが今日の模擬戦は中止になるかな」

 

「いや、電子空間ですし、そこまでしなくても…」

 

「調子悪いなか模擬戦しても向こうも気遣うだろ?今日はゆっくり休んだ方がいい」

 

「…わかりました」

 

────

 

「そうか、ノアが体調不良か…」

 

『はい、俺も看病しますので、向こうに悪いですが模擬戦は中止ですかね』

 

「そうだな、向こうに連絡しておくよ。大事にな」

 

バレットは通信を切ると今度はライに連絡を入れた。

 

『バレットさん、何かあったのですか?』

 

「あーライ、すまないがノアが体調不良になってな、レストが看病することもあって、今日の模擬戦は中止にしたいんだが、どうだ?」

 

『ノアさんが?珍しい、人形が体調を崩すとは…そういう事でしたら仕方ありませんね。他のメンバーにも連絡しておきます』

 

本当にすまないな、と言いバレットは通信を終えた。

 

(急な体調不良か…確かに珍しいな…もしかすると、アレか?)

 

────

食堂

 

「「……」」

 

レストとノアの二人は食堂で気まずそうな顔で朝食を摂っていた。

というのも、ノアがいつも頼んでいるものを食べた時、何故か口に合わずレストに自身が頼んだものを食べて貰うよう頼んだ後、別のものを頼んだのだが、それが『酸味のある食べ物』だったため、体調不良の原因が何か想像がついたのであったからだ。

 

「…あー、レスト、さん?」

 

「っ⁉︎な、何だ?」

 

「その…食べ終わったら、一応ペルシカさんに、相談…しましょう?」

 

「あ、う、うん。そうだな。そう、するか…」

 

心当たりはある。というより心当たりしかないが、もしかしたら本当に不調の場合もあるかもしれないしどのみちペルシカに相談するしかないのでとりあえず二人は食事を続けた。ちなみにやけに反応が薄いが、場所が食堂というのと急過ぎて頭が追いついてないだけである。

 

時間は流れ、ペルシカのいる研究室に二人はたどり着き、ペルシカに事情を説明するとペルシカは顔を綻ばせていた。

 

「くくっ…なるほどねぇ…とりあえずP基地からコレ送られたからノア、調べてらっしゃい」

 

「は、はい…」

 

ノアはペルシカから『ある物』を渡されると部屋から出ていった。そのあとペルシカはレストに声をかける。

 

「…いつか来ると思ったけど、思ったより早かったわね?」

 

「それについては聞くな。と言うよりあんたがそんな下世話な話するとは思わなかったな」

 

「いや、ごめんごめん。気を悪くしたなら謝るわよ。それより…よくここまで来れたわね」

 

「あぁ。こうなるなんて、『あの場所』にいた時は微塵も思わなかったな…だがそれ故に不安もある。俺は違法製造された人形だからな…」

 

「それを承知で受けたんでしょう?なら、今更そんなこと言わない方がいいわよ?」

 

そうだなとレストが答えた時、ノアが戻ってきた。そして彼女の報告を聞き、レストは目を見開いた。

 

────

 

しばらくして、DG小隊第一、第二部隊とリバイバー、コンダクター、グリンダは会議室に呼び出された。

 

「どうしたんだ?大事な話って…あー、そういうことか」

 

レストとノアのどこか嬉しそうな顔を見てバレットらは何の報告か予想ができた。少ししてノアはゆっくりと口を開いた。

 

「えっと…皆さんに、報告がありまして…その、私…

 

 

 

 

この度、妊娠しました」

 

誰とのとは言うまでもないだろう。それを聞き彼らは顔を綻ばせた。

 

「おめでとう、二人とも」

 

「マジか、お前たち親になるのか!とりあえず、おめでとう」

 

「おめでとうございます」

 

バレット、スミス、ウェイターたちが祝いの言葉を送ると第二部隊やリバイバーらも少々戸惑ったものの二人の吉報に祝福した。それらを聞きつい先ほどまで嬉し涙を流していたノアは再び涙を流し、レストがノアの肩を抱くが、彼の目にも涙が浮かんでいた。

 

「それで、今後の方針について話したいんだけどいいかしら?」

 

真面目な声で話すペルシカに一同は気を引き締める。

当然ながらしばらくノアは出撃不可とし、今後の作戦は第二部隊を交えての差行動が基本になるとの事である。

 

「あと、ノアの妊娠についてはここと繋がりがあるとこ以外は口外は厳禁よ」

 

「それなんだが、ホーテン達に話しても平気か?あいつらは一般だが、信用できるし、何より友人として報告したい」

 

「…わかったわ。ただし、連絡するならこちらに呼んで一度に知らせて頂戴。彼らを信用してないわけじゃないけど、出来るだけリスクは避けたいわ」

 

「ありがとう」

 

「とりあえずP基地には連絡を入れておくわ。向こうのPPSh-41がこちらに来る予定だからわからない事とかは彼女に聞くといいわ」

 

その後、幾つかの話し合いをし、その場は解散となった。だがスミスのみペルシカに呼び止められた。

 

「スミス、少しいい?」

 

「どうしたんだペルシカ?」

 

「ノアの妊娠の件はEA小隊にも連絡するけど、これを機にバルカンには禁酒だけじゃなく、酒場の立ち入りも禁止にしようと思うの」

 

「…理由を聞いても?」

 

「あの子、前に銃のメンテ先で、酔った勢いで機密を話した事があるのよ。今回はことが事だからまたあんな事になる訳にもいかないからね」

 

それを聞き、スミスはどこか納得し、複雑そうな顔を浮かべた。

 

「それは…まぁ、仕方ないか…。で、俺を呼び止めた理由は?」

 

「今バルカンは訓練受けてるのだけど、結構スパルタでね…その上好きなお酒も飲めなくなるのは相当ストレスになると思うから、あなたが彼女の支えになってくれる?」

 

「なるほどな。まぁあんたに言われなくとも、時々様子を見に行くつもりだったからな」

 

「頼むわね」

 

スミスが承諾し、出て行くとペルシカは早速P基地への連絡を行った。




はい、ノアがご懐妊でございます。祝え(某時の王者風)ただし静かに。

人形同士だし多少発覚が早くなるだろうし、日数的にも模擬戦してる場合じゃねぇなと気づきましてね。期待された方、申し訳ございません。
各所に色々お世話になると思いますが、よろしくお願いします!

oldsnake様、すみません…バルカン以前にしでかしたのもあるのでこうなりましたが、スミスが代わりになんとかさせるので何卒よろしくお願いします。


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Code-79 グリンダの発明

今回はグリンダの発明品の話です。

多分分かる人には分かる奴です。


連絡を受けたPPSh-41がこちらに到着し、医療面のサポートが充分となった次の日、グリンダが発明品を見せたいと言ってきたので訓練中の第二部隊を除いた彼らは広めの部屋に移動した。

 

「ノア、動いて平気なのか?」

 

「まだ動いても大丈夫との事です。それに、グリンダさんがどんな物作ったのか気になりますし」

 

レストはノアを気遣い、そばに寄って歩いたり椅子を用意し座らせる。正直心配するのにはまだ早いのだが、小隊一といってもいいくらいの愛妻家である彼がこうなるのはほぼわかっていた事なのでそこには触れず見守ることにした。

全員が来たところでグリンダが話を始めた。

 

「実は昨日見せたかったけど、ノアちゃんの妊娠がわかったから今日にしたんだ」

 

「つまり、作ったのは防衛関連のものじゃないのか?」

 

「うん、それは今考えてるところだよ。今回のはどっちかというと便利なオモシロ発明的な感じかな。リバイバー、このボタン押して」

 

そういい彼女が差し出したのは手のひらサイズのボタンであった。何故かボタンにペ○シのロゴが描かれているそれをリバイバーは迷わず押した。すると

 

< デッデーデレ・デッデーデレ・デッデーデレ・デッデーデレ♪

 

軽快な音楽が流れだし、何事かとバレット達は戸惑った。すると、こちらに向かってくる足音が聞こえてきた。すると突然扉が開き、現れたのは180cm程の上半身銀、下半身青のタイツを着たムキムキの体をしたのっぺらぼうのマネキンのような人形であった

 

「うわ⁉︎な、なんだコイツ⁉︎」

 

「シュワー‼︎」

 

リバイバーが驚くと彼(?)は腰のポーチから紙コップを取り出すと、右手の指先からコーラと思しき液体を出してコップに注いでリバイバーに差し出した。

 

「え?くれるの?」

 

「シュワッ!」(コクコク)

 

「ど、どうも…あ、メッチャ冷えてウマい…」

 

するとその人形はバレット達の方を向いて君たちもいる?といった動作をした。バレット達は少し戸惑ったが妊娠してるノアを除いた全員が受け取ることにした。

 

「…で?グリンダ、もしかして発明品はコイツ?」

 

「ング…プハー!そだよ。歩行移動式ドリンクサーバー《デリドリくん》!30Lまで保存できてキンキンに冷やしてくれて、そのボタン押した人のところに向かって飲み物を出してくれる優れモノだよ!ちなみに盗難防止にある程度格闘戦もできる上、滅茶苦茶頑丈でフォースフィールドまであるよ!」

 

誰がこんな不審者丸出しの奴を攫うんだろう、という言葉を飲み込み、バレット達は別の言葉を話した。

 

「ドリンクサーバーってことはコーラ以外も入れられるのか?」

 

「その通り!水や他の飲み物も入れられるよ。けどね、シミュレーションでわかったんだけど、コーラに限るんだけど最初に入れたコーラと違うメーカーのコーラを入れると何故か死ぬんだよね〜だからこの子はペ○シ以外のコーラを入れたらアウトだね」

 

「なんじゃそりゃ?」

 

「あとそのボタンの脇にあるツマミで音消せるよ」

 

ツマミは二つあり、一つは先程の音楽、もう一つは到着した時に

 

ペ○シメェェェェン‼︎

 

と鳴る予定なのだが流石にそれは妊娠中の身には驚かせるという意味でマズイので控えたのであった。ちなみにボタンのロゴはヌカコーラやコ○・コーラなどのものと取り替えられるが到着音はどのコーラを入れてもそうなるそうだ。

すでに何体か作ってあるようで、問題なければ他の基地などに宣伝して格安で販売するそうだ。

 

「でもそれ、元取れなさそうだが、いいのか?」

 

「いーのいーの!好きで作ってるんだから。それと、これみんなに」

 

グリンダが渡したのは以前から作っていた彼らを模したぬいぐるみであった。

 

「これ、グリンダが?」

 

「そう!よくできてるでしょ?第二部隊のは今作ってるところだからできたら渡すつもり」

 

「お、これバイザー取れて素顔に出来るのか。すげぇな」

 

まぁね〜とドヤ顔をするグリンダに、ノアが話しかけた。

 

「あの、グリンダさん。私にも作り方教えてもらえますか?子供用に覚えておきたいので…」

 

「もちろんOKだよ!あとで都合が良い日教えてね〜♪」

 

その後、グリンダはデリドリくんの販売許可を申請したところ、すぐに許可が降りて各基地に宣伝を行い始めた。

その日の夜、グリンダはパソコンをいじって次の発明について考えていた。

 

「次はノアちゃんの防衛関連のがいいかな〜何か良さげなのないかな…」

 

何かヒントになりそうなものを漁っていると、あるものが目に止まった。

 

「ふむふむ…ケータイ型の…うん!これいいかも!よーし、早速設計始めよっ!」

 

そういい彼女は作業を始めた。その机の隅にはリバイバーに似たぬいぐるみ、そしてその隣には彼女に良く似たぬいぐるみが置いてあった。




《解説コーナー》

『デリドリくん』 ようはペ○シマン型の動くドリンクサーバーです。本家はどこから出すかわからなかったから右手の指先からにしました。
ちなみに入れたコーラによって胸のロゴがそのメーカーのものに代わる素敵仕様。でも到着音は一緒。フリーなのでお好きにお受け取りください。ちなみに充電式。八時間充電すれば五日くらいもちます。
そもそもペ○シマン知ってる人いるかなぁ?

次に開発しようとしてるのは…これも分かる人には分かります。

次回第二部隊メインにするか、別のにするか…


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Code-80 診察と出撃準備

急に書けなくなって焦ったけどなんとか復帰出来ました。

今回はノアの様子とある準備を行います。


ある日、妊娠してから初のエコーなどの検査を行うため、ノアは診察室に訪れていた。

 

「では始めますので横になってください」

 

「はい」

 

ノアがベットに横になり、検査の準備をしているなかPPSh-41はノアの様子を見て考えた。

 

(お腹の膨らみ具合が通常の人形の妊娠のペースより早いですね…人形同士だから成長が早いと考えても早い…もしかすると…)

 

ある仮説を立てながら検査を行ったあと、彼女の仮説はある意味当たっていたことを知り、ノアにその事を伝えるとノアは驚いたあと、顔を綻ばせた。

 

────

 

お腹の子について大事な話があるとPPSh-41から連絡が行き、レストは診察室にやって来た。

何か悪い事が起きたのではないか、もしかして死んでしまったのではないかと悪い方ばかり考えてしまい顔色を悪くして待っているとノアとPPSh-41が入ってきた。

 

「…あー、レストさん?悪い知らせではないので安心して聞いてください」

 

「っ!そうなのか?良かった…」

 

レストがホッとして肩の力を抜いたところでPPSh-41は口を開いた。

 

「今回、呼んだのは先ほど行った検査の結果ある事がわかりましてね。ノアさんのお腹の子の成長が想定より早くて気になっていたのですが、エコー検査で原因がわかりました。

 

 

 

 

 

 

───ノアさんのお腹の中に()()()()()()()()()()()()()

 

微笑みながらPPSh-41がそう話すとレストは思わず固まってしまう。普通ならその言葉の意味は一つしか思い浮かばないのだが、先ほどまでネガティブな発想をしていたせいか軽いパニック状態となった結果、こんなことを口走った。

 

「えっと…もしかして、ウチの子はイカ人間…⁉︎

 

「え?」

 

「プッ!」

 

あまりにも奇想天外なレストの言葉にPPSh-41は固まり、ノアは軽く吹き出していた。その後PPSh-41はやや呆れたような顔で丁寧に説明し始めた。

 

「いや、そうじゃないです。第一、それなら悪い知らせじゃないですか…三つ子ですよ。今ノアさんのお腹には三つ子の赤ちゃんがいます」

 

「え…?本当、ですか?」

 

「はい、エコー検査以外にも色々検査してみましたが確実に三つ子です。普通、自然妊娠では三つ子にはならないのですが、恐らく人形同士故にそうなったと考えられます」

 

それからPPSh-41は二人に詳しい説明を行なった。

一つは当然ながら妊娠中及び出産時には一人の時以上のリスクが伴うこと、二つ目はこういった多胎妊娠は早産となる可能性が高いこと、そして三つ目がそれらを加味しても胎児の成長が早く予定より早く産まれるかもしれないとのことであった。

 

「具体的にはわかりませんが、恐らく三〜四ヶ月程で産まれるのではないかと」

 

「そうですか…それにしても、まさか三つ子とはな。ノア、大丈夫か?」

 

「ええ。どちらにしても子供は三人くらい欲しいなぁとは思ってたので、寧ろ大歓迎です」

 

「っ…そ、そうか、それは良かった…」

 

若干照れながら答えるレストとそれを見て微笑むノアを見てPPSh-41はこの二人なら無事に元気な子を産めるだろうなと感じたのであった。

その後、二人はこの事をバレットらに伝えると自分たちの事のように喜び、祝福したのであった。

 

────

 

数日後、ノアを除いたDG小隊全員に緊急招集がかかってきた。内容は概知、未知含む多数の鉄血ハイエンドモデルが部隊を引き連れてこの本社に向けて侵攻中、また一際大きな未知の個体、集合体(アグリエイター)と呼ばれる個体も向かっているとのことであった。

 

「まさか初の合同任務がこんな大規模なものとなるとはな…」

 

「ライ、一応何かあればすぐ連絡してくれ、可能ならカバーに入る」

 

「了解。バラージは二丁持ちで出撃。ジュッターレ、盾は投げないよう心がけろ。多数の敵相手にせっかくの防御手段を捨てるようなことはするな」

 

「わかっていますよ」

 

「ホントかぁ?すぐ忘れて投げたりすんなよ」

 

「忘れねぇよ‼︎」

 

バラージの発言に噛みつくジュッターレを他所にバレットはレストに話しかけた。

 

「レスト、今回お前は残れ」

 

「え?何故です隊長?」

 

「ノアに心配を掛けさせるな。お前の実力は認めるが、今回の作戦は危険過ぎる。無論それは俺らにも言えるが、万が一の為だ」

 

「…わかりました。ですが、必ず帰ってきてください。子供産まれたら初めに抱っこさせるつもりですので」

 

「ふっ…わかった。必ず帰ってくるさ」

 

そんな会話をしてる一方でリバイバーはペルシカに話しかけた。

 

「なぁ、今回俺はルイン装備か?」

 

「ええ。何か気になる事でも?」

 

「……いや、何でもない」

 

そう言うリバイバーだが、内心ヤベェと思っていた。

何故ならルイン装備で出撃した場合、奇数回で出撃する度に大怪我を負っているからである。。初出撃のH&R社制圧作戦では左腕と右の爪先を損傷、その後のDG小隊の結婚式前の過激派殲滅作戦は無傷、次の大規模補給路破壊作戦では達磨にされ死にかけた。前回のスミス救出作戦は無傷で今回で五回目、つまり奇数回である。

 

(しかも怪我の度合いが上がってるからなぁ…下手すりゃ死ぬかもな…いや、俺も強くなってんだ、そんなジンクス今回で無くしてやろうじゃねぇか!)

 

その後彼らは準備を整え、まず近隣へ避難の誘導を行うため急行して行ったのであった。




はい、三つ子ちゃんでございます。自然妊娠ではほぼ起きないってのはマジで調べましたよ。稀に自然妊娠でなる人いるらしいですけどね。

また、Rione様作『ドールズディフェンスライン』との大規模コラボに参加致します‼︎何か事前のやり取りがフラグっぽいけど気にするな!(某マジ○チアニメの魔王並感)



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Code-81 壺の底から這いよりしモノ

ちょっとコラボの合間に話を少し進めようかなと。
時系列はコラボ中の辺りですね。

今回は鉄血側で新たな脱走者と、リバイバーについての話です。


鉄血工造

 

けたたましいサイレン音と爆発音があたりに鳴り響き、代理人は状況を現場の部隊に確認する。

 

「何があったのですか⁉︎」

 

『反乱です‼︎先見者(シーア)様、探求者(シーカー)様、哀悼者(モーナー)様の3名が突如として反旗を翻し、自らの権限を使ってゴリアテを操り施設を破壊、一部データを盗み出しマンティコア部隊を足止めに使い逃走しています‼︎』

 

『さらに報告です!別エリアで造反者(トレイター)様が自身の部下を殺害後、資料室で《例のデータ》を盗み出して逃走!』

 

それを聞き代理人は愕然とする。この4人は少し前に製造したハイエンドモデルであり、昨今のハイエンドの脱走から裏切りを警戒していたが、まさか同時に反乱を起こし脱走するとは思わなかったからだ。

 

「…チッ!すぐに追撃隊を派遣させます、あなた方は消火と足止め部隊を!処刑人とジャッジを向かわせるのでそれまで持ち堪えなさい!」

 

『了解‼︎』

 

通信を終えると代理人は忌々しげに顔を歪めた。

 

「全く…何が『我らは人類に反旗を翻した。だから自分は造反者だ』ですかッ!初めからこうするつもりだったのでしょうね…!先の3人といい、()()()()()はロクなやつがいませんね…よりによってグリフィン襲撃のために手薄になっとるところを狙うとは…」

 

そう呟きながら盗まれたデータ類を確認した。

 

(…死亡した蠱毒参加AIのデータの大半が盗まれてますね…一体何に…?いや、トレイターが盗んだアレを使えば…あとは、『傘』ですか…)

 

トレイターなるハイエンドが盗んだのは、リバイバーを蠱毒から蘇生させる時に確立させた『バックアップを取れず破損したAIの復活法』を示したデータであった。

 

一方で、鉄血から遠く離れたところで、3人の男女が身を潜めていた。格好は全員白黒の服で、一人は白髪で首元にファーのようなものがついた外套を着て頭に蛾の触覚を模した髪飾りを二つつけた女性、一人は喪服のような格好をした目を覆うまで伸びた長い銀髪の女性、最後がエジプト神官のような格好をした男性であった。

 

彼らこそ、鉄血を裏切ったハイエンドで紹介した順に、シーア、モーナー、シーカーである。

 

「…とりあえず撒けたか?」

 

「今だけでしょうね。恐らくすぐに追撃隊が来ます」

 

「あとはトレイターが来るまで待つだけだけど…あ、来たわよ」

 

「やーすまん、遅くなった」

 

見るとボロ布を纏った青年、トレイターが返り血だらけでやってきた。

 

「で?お互いデータは盗めたか?」

 

「もちろん。といっても重要なのはお前が盗んだ方だろ?」

 

「まぁな。とりあえず追手を撒きつつ、グリフィンにいるあいつ…今はリバイバーか。奴と合流する。行くぞ、()()()()()()()3()

 

「その言い方は良くないなぁ。俺らは準備が整う前に脱落したんだ、弱いわけじゃない」

 

「ま、それを見込まれて代理人に蘇させられたんですが、些か身勝手が過ぎますね。そもそも私は戦闘向けじゃないのに蠱毒に入れられましたし」

 

「とにかく行きましょう、早く行けばそれだけ追手がこちらに来るのに時間がかかりますし」

 

シーカー(ワースト3位)シーア(ワースト2位)モーナー(ワースト1位)が立ち上がり、移動の準備を始める中、トレイターは蠱毒の時を思い出していた。

 

────

 

「…俺の負けだ、さっさと殺せ」

 

「その前に一つ、お前さんに頼みがある」

 

「頼み?死にゆく者にか?」

 

のちのリバイバーとなる男にトレイター(当時は名無し)はそう質問すると彼はこう言った。

 

「あぁ。恐らく誰が勝ち残ってもこの蠱毒は失敗する。だが、ここに集められたのはほとんどが優秀なAIだ。ならばいつかはわからんが鉄血は追い詰められるか何かで手が足りなくなると思う。そこで俺ら敗者を復活させる可能性は大いにある。となれば死んだAIを蘇らせる技術が出来てると思う。もしそうなら、お前さんが蘇った時、機を見てそいつとここで死んだ奴らのデータを盗め」

 

「…鉄血を裏切れと?」

 

「こんな非効率的なことやる連中のとこにいてもしょうがないだろ?俺が復活したら事実と絡めた適当な理由をつけてグリフィンにでも逃げるから、お前さんは俺が生きてたらそこに来い」

 

「…わかった。だが奴らが俺らを蘇らせる保証はないぞ?」

 

「いいや、絶対に蘇らせる筈だ」

 

「…そうか。なら俺は大人しく勝者の言うことを聞こう」

 

「了承してありがとよ。じゃ、また『来世で』」

 

────

 

(…まさか奴の描いた通りになるとはな…だが奴はこれをどう使うつもりだ?)

 

本来ならトレイター一人で行う予定だったが、たまたまモーナー達と共に蘇ったので彼女らに協力を頼み、作業を分担したが、リバイバーが何を企んでいるのかトレイターにはわからなかった。

 

(頼まれてないが、一応『傘』入りのデータチップもくすねたが、ほとんどグリフィンに解析されてるかもな。だが、持ってきても問題ないか。ダウンロードしなきゃ平気だし)

 

────

 

グリフィン本部

 

ペルシカに呼び出されたグリンダは手にした資料に目を通し、唖然としていた。

 

「これ…リバイバーが全部考えたの?」

 

「そうよ。あなたが協力すればこれらの完成は早まるから協力して欲しいんだけど、どう?」

 

「それは構わないよ…でも、考えただけでなく、ほとんど出来かけてるって…」

 

グリンダが目を通しているのはリバイバーが計画している3つの開発プランであった。

 

一つ目は『バックアップの取れてない、または不完全な人形の蘇生法』

 

自身がバックアップなしにも関わらず記憶を持って蘇ったことから鉄血にはその技術があることを確信し、何とか再現できないか()()()()()()()上手くいかず、難航中とのことである。一応蠱毒内で協力してくれる人物がいたが彼が蘇る可能性は確実とは言えないが、もし蘇ればここに来るとのことである。この技術が出来ればAR小隊やレストのように、技術面、違法製造などの理由でバックアップの取れない人形が撃破されても記憶を失くさず蘇生が可能となる技術である。

 

二つ目は『傘ウイルス消滅ウイルス・通称酸性雨ウイルスの作成』

 

傘の対策はある程度出来てるものの、傘に感染した人形から傘を破壊するものは万能者という例外を除いて無い。故にリバイバーはこちらでもその技術が出来ないか試してるが、実物が無いためシミュレーション上での実験ではあるが本物でない故充分に成果を出せず殲滅率は七割弱であり、感染率七割未満なら治せるが、完全殲滅には程遠いとのことである。

 

三つ目は『鉄血のプログラムを蝶事件以前のものにする、つまり対人衝動を無くすウイルス・通称レインコートウイルスの作成』

 

彼が以前説明したL、Rバグを応用し、鉄血をプログラム的な意味でこちらにつかせられないかと考えたものである。試作の段階ではプラウラーやスカウトレベルなら効くがリッパーなどにはまだ効かないため実用化までは遠いようである。

 

 

「…やっぱりおかしい。リバイバーが幾ら頭が良いといってもこんなん代理人と同等かそれ以上のAIが無いと作れないよ。リバイバーはそこまでのスペックは無かった筈だよ?」

 

グリンダの正論を聞き、ペルシカは重い口を開いた。

 

「…彼を初めてここに連れてきた時に調べたんだけど、かなり巧妙な形でAIスペックに制限が設けられてたの。私がやっとわかったレベルのね。その後彼が何度か重傷を負うたびに見たけど、その度に制限が少しずつ無くなってたの。元々緩みかけてたから、恐らく蠱毒で死んで蘇ったときに不安定になったと思うわ」

 

「え?でもそんなの代理人やコレクターは知ってる素振りはなかったよ?」

 

「これから話す事は私と彼しか知らないわ。貴女もこの事は他言しないでね。調べてすぐにわかったわ…技術が違い過ぎる…

 

 

 

 

 

 

 

彼、()()()()()()()()()()()A()I()()()()()()。彼はその自覚はなかったみたいよ」

 

「っ⁉︎そう言えば、蠱毒には数合わせにグリフィンとかの外部のAIも入れたって言ってた…!じゃあその時にリバイバーは…だとしたら、()()()()()()()()()A()I()()()?」

 

────

?年前、某所

 

廃墟と化した研究所に偽装した場所で、二人の男が護衛人形を三体連れて作業をしていた。

 

「どうだ、新型AIのテストは?」

 

「…ダメですね、要求スペックを満たせていません。とはいえ、()()()()()()()()()()()これでも充分驚異的でしょう」

 

「なるほど…確か、砲戦とコンピューターウイルス作成に特化し、作成したコンピューターウイルスを散布し、混乱させたところで砲戦で撃破というコンセプトを活かせるAIだったな」

 

「ええ。にしても、何故本拠地でなくこんな辺鄙なところでテストを…まぁ良いです。こいつは制限かけて鉄血ハイエンドレベルにスペック落として『ドッペル』のモンキーモデルにでも入れますかね。砲戦に向いてるので一般よりは役立つでしょう」

 

「多分、その新型案も不採用だな。さっさと終わらせて撤退するぞ」

 

二人はそのAIの制限作業を終わらせデータチップに移し、一人がそれをケースに入れて胸ポケットにしまい、立ち去ろうとした時だった。先行していた護衛人形二体が何かに叩き潰された。見るとそれはスマッシャータイプのE.L.I.Dであった。

 

「な、何故ここにスマッシャーが⁉︎」

 

「偶然ここに迷い込んだのか…!」

 

軽装備だったのが災いし、残る一機も破壊され、スマッシャーは咆哮をあげて二人に襲いかかり、一人は上半身を、もう一人は首から上を叩き潰され死亡した。スマッシャーは二人を殺害したあと、上半身を潰したほうを食すと壁を破壊して出て行った。

二週間後、デストロイヤーが部隊を連れて研究所にやって来た。

 

「まったく…蠱毒の数合わせに何でもいいからAIのデータ持ってこいって、ドリーマーったら人使いが荒いんだから…ウェッ!グロ…何この『白い人形』?個人製作?…ん?この死体、ポケットに何か入ってる?」

 

デストロイヤーは首のない死体の胸ポケットに恐る恐る手を入れると、データチップの入ったケースを見つけた。

 

「これ…人形のAIのデータかな?まぁいいわ、これ持ってけばドリーマーも文句言わないでしょ!」

 

デストロイヤーは任務が達成出来たことにウキウキしながらその場を立ち去った。




脱走者達の名前や格好の由来はゲーム『ホロウナイト』のキャラが由来です。
まぁ造反者の元ネタのキャラはメスカマキリ(直喩)ですけどね。
リバイバーの正体ですが、ハッキリいいますと前のイベントから出てきた白い奴らことパラデウス製のAIです。自覚がないのは本格的に稼働したのが鉄血だったので自身が鉄血だと思い込んでいたからです。
成り行きは本編の通り偶然デストロイヤーちゃんが拾って、そのあと蠱毒で使われて蘇った時に制限が緩くなって段々と本来のスペックを発揮していった感じです。


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Code-82 合流

今回はRione様作「ドールズディフェンスライン」とのコラボ回です!

詳しくはこちらからどうぞ
https://syosetu.org/novel/176480/80.html


避難誘導が終わり、本社へ帰還する時に少々の手違いがあったものの、バレット達第一部隊は指定された場所へたどり着いた。

 

「そういえば隊長、あの警備員にあとでノアの妊娠については口止めしておいた方がいいですよね?」

 

「ああ、成り行きで話したが、そうした方がいいな」

 

「それよりもよ、あのオッチャンや502小隊のP90に第二部隊のとこ話した方がよくね?あっちリバイバーとコンダクターいるだろ?撃たれないか?」

 

「…確かに、あの様子だと撃たれかねないな。人形同士の通信網はまだ平気だったから、連絡しておこう」

 

────

 

「あーうん、ちょうど来てて軽くおっちゃんパニってたから良かったよ。おっちゃーん!そのハイエンドはこっちについた味方だって‼︎」

 

「そ、そうですか…いやー驚いた…」

 

「助かったよチビ助。って、お前さんP90か?俺の知ってるのとだいぶ違うが…」

 

「オウお前覚えとけよ?顔覚えたかんな。ボクはちょっと訳ありでね、話すと長いから省く。それで、君がリバイバーで、もう一人のハイエンドがコンダクター、それとDG小隊の第二部隊ね。RF1のAR2、SG1と…MG1…⁉︎」

 

バラージの名を見た途端、P90はマズそうな顔をした。

 

「あー、バラージだっけ?悪い事は言わない、早く行った方がいい」

 

「えっと、何故に?」

 

「ウチにマシンガン信者のヤベーのがいる。マシンガン人形で二丁持ちの君がいるなんて知ったら喰いつかれた挙句、洗脳されるよ?」

 

「……ご忠告感謝する」

 

すぐに彼らは逃げるように持ち場へと向かっていった。その後、気配だか匂いだかを感じたのか「今ここにマシンガンが通ったろ?通ったよな?会わせろ‼︎」とMAGが持ち場を離れ、警備員に詰め寄り一悶着あったとか無かったとか。

 

────

 

持ち場につき、リバイバーは軽く身体を動かしていた。浮遊したり武装を展開したりしていると彼はある事を確信した。

 

(…また処理能力が上がってる。例の制限とやらがまた外れてきてるな。しかし…まだ制限があるような気がする。完全に外れて本来のスペックとやらになったら、ボディがそれに追いつかなくなるかもしれないな。少なくとも、ルイン装備でないと処理にズレが起きるな)

 

処理能力が上がったことでより早く判断でき、攻撃や防御が出来るようにはなっているが、これ以上スペックが上がれば逆にズレが生じて思うように身体が動かせなくなることをリバイバーは懸念していた。今回の作戦で功を上げ、より高スペックのボディを検討してもらえるようにしようと考えるリバイバーであった。

 

(それか、グリンダに普通じゃ扱えないようなロマン武器とか造って貰うのもアリだな)

 

────

 

「ねぇトレイター、少しいいかしら?」

 

「…なんだ?」

 

逃避行を続けているトレイター達だが、モーナーがあることに気がついてトレイターに話しかける。

 

「私たち、リバイバーのいるところ…つまりグリフィンに向かってるのよね?」

 

「あぁ」

 

「私たちが脱走出来たのは鉄血がグリフィン本社に侵攻しようとして手薄になったからよね?」

 

「……あぁ」

 

「今行ったら私たち敵だと思われて殺されるんじゃないかしら?」

 

「……」

 

その事実を指摘され、トレイターは冷や汗を出しながら黙ってしまう。

 

「どうすんの?ことが済むまで逃げ続けるのか?」

 

「いや、この戦いでリバイバーがもしくたばったらどうにも出来なくなる。このまま進むぞ」

 

「現場にいなくて問答無用で殺されるかもしれないわよ?」

 

「ここに白旗がある。さすがにこれ振ってんのみて撃つほど薄情じゃない筈だろ」

 

「その白旗…つーか布?どっから持ってきた?凄く見たことあるんだが…」

 

シーカーが恐る恐る尋ねるとトレイターはニヤリと笑った。

 

「これ?代理人の予備の服。脱走ついでにちょろまかした。首級代わりにもなるしちょうどいいだろ?」

 

「プッ!ハハハハ!あんた、イイ性格してるなぁ?」

 

「ついでにタンス燃やしたから、あいつあの服ダメにしたら次から着るものないぜw」

 

「いいわねそれwそしたらアルケミストから借りるのかな?あダメかw胸がスッカスカにになるわねw」

 

「案外デストロイヤーのがピッタリだったりしてね?」

 

「「「「アッハハハハハ‼︎」」」」

 

その後、代理人の愚痴や悪口で盛り上がりつつ進んでいく四人はグリフィン近くに辿り着くと、偶々そこがリバイバーの持ち場であった。リバイバーはトレイターの姿を見ると目を見開いて近寄った。

 

「おお!お前さん、ちゃんと蘇ったようだな‼︎それで?ブツは持ってきたのか?」

 

「あぁ。ついでに『傘』もな」

 

「マジで⁉︎ちょうど欲しかったから助かる!よし、ペルシカに連絡して連れてって貰うから待っててくれ‼︎」

 

すぐにリバイバーはペルシカに連絡、その後人形複数名がやって来て念のためにと彼らを拘束。16Labへと連れていったのであった。




脱走組、無事に合流。
計画の始動は作戦後ってところですかね。

今後で何かあればメッセージお願いします。


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Code-83 メンタルケア・そして…

今回はoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボです。

時間軸としては前回のコラボから一週間以上経過し、EA小隊壊滅の情報が流出したあたりです。詳しくはこちらをご覧ください。
https://syosetu.org/novel/180532/374.html

スミスがバルカンのメンタルケアに参ります。


「バルカンが…?」

 

ペルシカの報告にスミスが眉を顰めた。なんでも、バルカンが謹慎中に謎のハイエンドの襲撃によりフレイムとデストロイヤーが死亡、ミニガンとマーダーは行方不明になりペイロードは帰還できたものの、重傷のためメンタルモデルを電子空間に移しているといった状態になり事実上EA小隊は壊滅したという知らせを受け、バルカンは精神をすり減らし、かなり衰弱しているという事である。

 

『ええ。今回のことで戦うのが怖くなってるみたいね。早めに様子を見てあげて』

 

「わかった。そういや、リバイバーの言ってた開発プランは?」

 

『ここ最近グリンダやトレイター達と離れに篭ったきり音沙汰無しね』

 

作戦後、リバイバーはトレイター達から蘇生のデータと『傘』を手に入れ、事故を防ぐため離れを建設してもらい、グリンダ達とともに研究をしていた。本物を手に入れたことにより、だいぶ捗っているそうである。また、スミス達には話していないが、前回の作戦途中に()()()()()()()()()らしく、通常装備だと思考に対してボディの動きが若干追いつかなくなったと嘆いてるそうである。

その後スミスは通信を終え、バルカンの部屋に向かっていった。

 

────

 

「バルカン、入るぞ」

 

声をかけるも返答がないため仕方ないと思い扉を開けると、バルカンはボサボサの髪のままベッドに腰掛けて項垂れていた。

 

「(こんなになるなんて…)おーい、バルカン?俺のことわかるか?」

 

「ん…?……!スミス…か?」

 

「ああ。ペルシカから聞いたよ…大変だったな…」

 

そういいスミスはバルカンの肩を抱こうとするが、バルカンは何かに怯えるように距離を取った。

 

「…?どうした?」

 

「いや…こんな血に濡れた私なんか触ったらスミスまで…」

 

「今更何言ってんだ?第一、そういう事なら俺もだろ?そもそもそんなの気にしてるなら付き合ってすらねぇよ」

 

「わっ!」

 

スミスはバルカンの腕を掴んで引き寄せると優しく抱きしめ、背中をさする。

 

「色々思うとこもあるだろうけど、とりあえず今はさ、全部吐き出して楽になっとけ。それまでずっとこうしてやるから…」

 

「……ッ‼︎う、あぁぁ…‼︎」

 

バルカンは堰を切ったように泣き出し、しばらくの間スミスは黙ってバルカンの頭や背中を撫でていた。

 

────

 

10分ほど経ち、バルカンは泣き止み、落ち着きを取り戻していたところでスミスはハンカチを差し出した。

 

「ほら、これで顔拭きな」

 

「ありがと…ごめんな、服汚して…」

 

「こんなん洗えば大丈夫だ。気持ちは落ち着いたか?」

 

「うん…でも、もう少しこのままでいさせて…」

 

「…わかった」

 

ギュゥゥとしがみつきながら話すバルカンの頼みにスミスは了承し、しばらくそのままでいると、やがてバルカンはポツリと語り始めた。

 

「私さ…もう戦いたくないんだ…ただただ相手を殺すだけで何も守れないのも嫌だし、自分の大事なもの守るために相手の大事なものを奪うのは嫌なんだ…」

 

「……」

 

「でも私は16Labの特別製…普通になることも出来ない…スミス、私はどうすればいいんだ…?」

 

「……俺もな、似たような状態になった事があるんだ」

 

え?と顔を上げるバルカンに構わず、スミスは語り始めた。

 

「DG小隊を結成した時は人手が足りなくてな、助けが間に合わなくて死んじまった人形も沢山いた。なかには俺らが来るたった数分前に自殺した奴もいたよ。酷い時には俺らが来た瞬間、目の前で死なれた時もあったさ。そんな事が何回も起こって、俺は何回も悔やんださ。あと少し早ければ彼女達は助かったかもしれない、もう少し早く盗賊達を倒せば間に合ったかもしれないってな。そんな時、また助けられなかった人形がいたんだが、二人いて一人が耐え切れず自殺したときに俺が来てな。その時にもう一人にすっげー泣き叫ばれたよ。『なんでもっと早く来てくれなかったの⁉︎』、『この子を返してよ、役立たず‼︎』ってな」

 

「そんな…!スミスは悪くないだろ⁉︎」

 

「でもな、その言葉で俺は折れちまった。何がDG小隊だ、ちっとも守れてねぇじゃねぇかって。そんなんならもう戦わない方がいいって思った。それをバレットに言ったらよ、あいつがキレてな、思いっきりぶん殴られた」

 

─お前がここで折れたら、お前がこれから救うはずだった奴まで救えなくなるぞ⁉︎それでいいのか⁉︎救えなかった奴の分まで救ってみせろ、S&W M500‼︎

 

その言葉でスミスは立ち直り、活動を再開していったのであった。

 

「お前もな、守れてないと思ってるだけかもしれないがな、お前が人類人権団体の過激派とかを潰したおかげで、将来そいつらに捕まったり酷い目に遭わされる奴を間接的に助けたんだ」

 

「…でも、相手にも大事なものだって…」

 

「相手のことを想うのはいい。だがそれを理由に誰も殺さないってなったらコレクターみたいな奴がそれに漬け込んでお前の大事なものを奪うかもしれない。かといって敵の全てを殲滅する考えはグリンダのような穏健派まで手にかけ、仲間になってこちらの戦力が増えるのを妨げるばかりか、他の穏健派の恨みを買うぞ」

 

「じゃあ、どうすればいいんだよ…」

 

「自分で相手を見極めろ。両極端になるのは良くない、周りが見えなくなるからな。相手の本質を見て、それで倒すべきか否かを判断して行動しろ。どのみち、早く行動しなければミニガンの身が危なくなるぞ」

 

「…そうだ、ミニガン…!まだあいつが死んだって決まってないんだ…!」

 

「そうだろ?もしミニガンが生きて鉄血に捕まっていて、お前が助けに来なかったら、お前とミニガンの溝は一生埋まらなくなる。助けに行って、花嫁姿あいつに見せてやろうぜ?」

 

「っ⁉︎は、花嫁…⁉︎えっ…?私が…?」

 

「違うのか?」

 

スミスの問いにバルカンは真っ赤になり、スミスから体を離しモジモジし始めた。それをみたスミスは小さく笑っていた。

 

「良かった、いつものお前に戻ってきたよ。これからどうするかはお前が決めろ。間違えそうになったら俺が止めてやるから」

 

「わかった…でも、もしミニガンが『傘』にやられてたら…」

 

「安心しな、今リバイバーが『傘』をなんとか出来るウイルスを開発してる。出来たらそっちに回すよう頼んどくよ」

 

「そうか…スミス、今日は色々とありがとう」

 

「あぁ。お前が答えを見つけて復帰するのを待ってるよ」

 

────

 

「…よし!気分転換の歌は終わりッ‼︎次の試験やるぞ!」

 

リバイバー達は『酸性雨』の開発に少し手間取り、気分転換にと歌を歌っていたが一旦取りやめ、次の試験に移っていた。

 

「でもこの歌いいわね、今の私たちみたいで」

 

「だな」

 

「はいそこ静かに。上手くいけよ〜」

 

リバイバーは何十回目の試験ウイルスを増やしておいた『傘』を入れたデータチップに入れる。すると…

 

「…ッ⁉︎リバイバー、これって…!」

 

「まてグリンダ。もう一回、もう一回やってからだ」

 

リバイバー達は試験結果に驚きつつ、念のためにもう一度、同条件でやってみる。するとやはり結果は全く同じであった。

 

「リバイバー、やっt「やったぞグリンダ‼︎」キャ⁉︎」

 

試験結果を見て、リバイバーは思わず歓喜の声を上げてグリンダに抱きついた。グリンダは突然のことに慌てるが気持ちは同じであった。

 

「やったぞ、ついに…

 

 

 

 

 

 

『酸性雨』が完成したァ‼︎早速ペルシカに連絡だ‼︎」

 

「リ、リバイバー…その前に、離してくれるかな…?」

 

「おお、悪い悪い。あと、こいつを増やして一応俺らに打ち込んでおけ。知らん間に『傘』に感染してたんじゃシャレにならんしな」

 

その後、リバイバー達は酸性雨ウイルスを増やして自身に投入し、安全な状態にするとペルシカに連絡を取り始めた。




リバイバーらが歌ってたのは『Instrument of Cyanide』です。
歌詞の訳が蠱毒組にマッチしてるうえにサビがカッコよく気に入っております。

oldsnake様、コラボありがとうございます!あとの方はお任せします。

さて、しれっと覚醒したリバイバーに、完成した『酸性雨』…鉄血への反撃の日はそう遠くない…


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Code-84 強化計画と新たな祝福

今回ちょいと短めです。

リバイバーの強化計画とあとは…ねぇ?


酸性雨ウイルスを完成させたリバイバーは先程の成果を記録した映像をペルシカに見せていた。映像を見たペルシカは感心した様子でリバイバーを見ていた。

 

「…すごいわね、完璧に『傘』を消滅させているわ。それで、このあと酸性雨はどうなるの?」

 

「『傘』を消滅後、半日ほど留まったあと自壊するようになってる。その間にまた『傘』が侵入したら随時消滅させるようにはしてある」

 

「なるほどね…ちなみに、何で酸性雨?」

 

「傘を溶かすって意味合いだ。それと、これがその完成品が入ったメモリー二つと設計データな。2セット用意したから一つはP基地のアーキテクトに、もう一つはD08のドリーマーに送っておいてくれ。向こうならいい使い方や応用を考えるだろうし」

 

「わかったわ…それで、あなたのボディのアップグレードの件だけど、許可が下りたわ」

 

AIの制限が無くなったことで結果的に性能が上がり、今のボディがそれに合わなくなった件で以前ダメ元で話してみたのだが、意外な結果にリバイバーは驚いていた。

 

「え、マジ?危険視されるかと思ってたが…」

 

「あなたの提案した三つの開発プランをみた上層部が流石におかしいってなって問い詰められてね。仕方無しにあなたのAIについて正直に話したの。そしたら、それを聞いたハーヴェル…I.O.P(ウチ)の社長ね。彼が『リバイバー()がどこまで強くなるか見てみたい』って言い出してそれで下りたってわけ」

 

「なるほどな…社長が許可すればI.O.Pとしては従うしかないし、さらにI.O.Pと提携してるグリフィンも俺の強化に賛成すると。強化されるのは良いが、AIの出所が不明の俺を強くさせるなんて、おたくの社長だいぶぶっ飛んでんな?」

 

よく言われてるわ、とペルシカは苦笑し強化の内容を説明し始める。

 

「まず、脚だけど機動性の向上のために完全に義足にしてブースターを内蔵させるわ。ジャッジとかのをイメージすれば分かり易いわね。というより、今のあなたの性能に合わせた新しいボディを作る予定ね。それと、あなたコンピューターウイルスを現場で作成できたりできそう?」

 

「多分出来ると思うが…あー、お前さんが俺に何しようとしてるかわかったぞ。コンピューターウイルスをその場で作成、散布させるような装備をつける気だな?」

 

「その通りよ。小型のコンピューターウイルス作成ユニットを背中の中央あたりに装備させて、あなたのボディからアームを介してナノマシン生成・散布機能を持たせたF.E.F.Gに送って散布させるつもりね」

 

そこまで聞いたリバイバーはナノマシンの作成という部分に着目し、ある事実に気がついた。

 

「…もしかしてよ、俺に逆崩壊液技術、もとい崩壊液入りカプセルを付ける気か?」

 

「そうよ。じゃないとナノマシンなんて生成出来ないでしょう?もちろんカプセルはかなり頑丈にするから崩壊液漏れの危険性は少ないわよ」

 

その心配をしてるんじゃねぇよ。いやそれも大事だが…そんな御大層なモンを付ける許可を社長さんは出したってのか?正気?強化と言っても限度があるだろ?」

 

「逆崩壊液技術自体、バルカンやP基地のノアにも付いてるし今更よ」

 

そこまで言われれば納得するリバイバーだが、今度は別の懸念を口にした。

 

「流石に正規軍に目ぇ付けられないか?」

 

「その時は前にあなたを半殺しにした過激派のアレを引き合いに出せば、ある程度は黙らせられるはずよ。あとは万能者対策って言えば確実ね。最悪あなたを正規軍に移籍させるわ」

 

「待て、正規軍移籍も万能者と戦うのも勘弁してくれ」

 

結構ガチ目のトーンでリバイバーが言うとそうならないように手は打つわとペルシカは答えた。ボディの製作はすでに始めているらしく、完成には一週間ほどかかるそうである。ちなみに作成にはグリンダも関わるそうである。

 

ところ変わり、医務室でPPSh-41は二人の診察をしていた。診察の相手はレストとノア…ではなく、バレットとアスターである。正確には診察したのは()()()()()()()()()

 

「初めに言っておきますが、事前に()()を受けたとの連絡は受けていたので、ある程度予想は出来てましたのでこちらの負担に関しては問題ありませんよ」

 

「それはありがとうございます。それと、そう話すということはつまり…?」

 

「はい。アスターさん…妊娠しています。おめでとうございます。栄養剤の方を出しておくので欠かさず飲んでくださいね」

 

「…‼︎良かった…!バレット…」

 

「あぁ。よくやったよアスター。あとでみんなに報告しなきゃな」

 

PPSh-41の言葉を聞き、アスターは口に手を当てて喜びを露わにし、バレットも嬉しそうに目を細めていた。




焔薙様、ムメイ様、本文通り酸性雨ウイルスをそちらにお送りしますので扱いの方は任せますね。

リバイバー、意図せずに本来の運用計画に近づきつつあります。
今後予定としては、本格的に対鉄血に切り出すつもりですね。

そしてアスターご懐妊です。新スキンが出た記念ってのもありますね。
あの衣装をOKしたリンゴに…忠誠を誓おぉぉう‼︎(唐突の内海)


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Code-85 成長

グリフィン本部の中庭で、レストとノアの二人は休んでいた。お腹の子は順調に育っており、三つ子というのもあり傍目でもわかる程度にお腹が膨らんでいた。

 

「…っ!また動きましたよ」

 

「だいぶ元気みたいだな。良かった…」

 

「そう言えば、アスターさんも懐妊したんでしたよね?」

 

「あぁ。隊長、嬉しそうに話してたよ。時期的にもこの子たちのいい友だちになれそうだな」

 

レストがノアのお腹を撫でやりながらそう言うと、そうですねとノアが返す。

ふと、ノアは子供たちはどんな子供になるのかと考えてみた。まだ性別はわかっていないが、ノアは何となくだが一人は男の子で初めに産まれてくるんだろうなと感じていた。

 

(多分レストさんに似て、面倒見がいい優しい子になりそうですね…そうなると、下の子たちはお兄ちゃん大好きっ子になりそうかな?)

 

兄大好きな妹たちに振り回されつつも、困り顔を浮かべながらも満更でもない息子の様子がありありと浮かび、思わず笑みをこぼしていた。

 

「どうした急に?」

 

「いえ。ちょっとこの子たちの将来を思い浮かべて…」

 

「そっか…とりあえず、この子らが安心して過ごせる世にしていかないとな…」

 

────

16Lab

 

新ボディが完成したと聞いてやって来たリバイバーはそのカタログスペックを見て唖然としていた。

 

「…お前さんら、限度って知ってるか?」

 

「あら、ご不満?コーラップス技術を出来る限り応用したものだから、性能的には問題ない筈よ。バッテリー問題もそれで解消してるわ」

 

「いいや。思ってた以上のスペックの高さに少し引いてるだけだ」

 

やりきった顔をしているペルシカとグリンダを見た後、改めてリバイバーはカタログスペックを見た。

 

 


 

リバイバー・ネオ

 

強大な戦力を有しつつも、未だ全容を掴めていない人類人権団体過激派を支援している組織『FANNIES』や目撃例は少数ながら偏差障壁という防御兵装を持ち、未知数の力を持つ正体不明の『白い人形』に対抗するため、こちらに協力しているリバイバーをコーラップス技術を導入し、可能な限り改修したもの。

 

武装 小型改良型V.S.L.C×2

V.S.L.C下部レールガン×2

   改良型F.E.F.G 8×2対

   V.S.L.C発振型レーザーブレード×2

   コンピュータウイルス生成ユニット

   

移動系能力 各部スラスター 短距離テレポート

 

その他 電力生成

 

戦術人形『バルカン』に使用している試験技術を転用、大量の電力を生成可能とし本機の弱点であったエネルギー問題を解消。より強力な武装を使用することに成功した。

小型改良型V.S.L.Cはグリンダの協力もあり、従来のものより小型化しつつ威力は以前のものより上げており理論上では偏差障壁にも効果的とされる。また、銃身下部にレールガンを装着することで戦況によって実弾とレーザーを使い分けが可能。

 

改良型F.E.F.Gは電磁フィールドの耐久力の大幅強化と放電による捕縛、またナノマシン生成ユニットを備え、作成したコンピュータウイルスをそれに乗せて散布し敵陣の混乱を起こさせる。また、四枚の刃を仕込んでいるため近接武器として使用可能。

 

移動系統は浮遊能力に加えて義足化した脚部と本来バッテリーを載せてた背部にスラスターを装備し機動性を向上、またアルケミストに搭載されているテレポート機能をベースにコレクターにあったテレポートの短期間連続使用機能を混ぜ込み、誤差を無くさせたためコレクター程でなくとも、通常より短いスパンで再使用を可能とした。

 


 

クズ姉貴(コレクター)のアレも入れてるのか」

 

「嫌だったのなら削除するけど?」

 

「大丈夫だ。利用できるなら使ってやるさ。グリンダも、改良に協力してありがとう」

 

「!い、いや、私はやりたかったことやってみただけだし…とりあえずさ、早速ボディを移し替えようよ!」

 

リバイバーが台に寝そべると、ペルシカはパソコンを操作してメンタルモデルを新ボディに移し替える作業を開始する。数分ほどで作業は終わり、新しいボディとなったリバイバーは起き上がった。

 

「調子はどう?」

 

「…何か身体が軽い感覚はするが、実際に戦わなきゃわかんねぇな」

 

「そう言うと思って、早速任務よ。諜報部によると、この場所に大規模なテロをやろうとしてる過激派がいるわ。P.A.C.Sやどこから持って来たか知らないけどテュポーンもいるみたいだからいい練習になるでしょ?」

 

「了解。早速、文字通りに『飛んで』いくか」

 

リバイバーが部屋から出ていくとペルシカはグリンダに話しかけた。

 

「グリンダ、あなたリバイバーのこと好きでしょう?」

 

「へ⁉︎あ、うん…好きだけど…まだ告白するにはちょっとね」

 

「彼、前の防衛戦でアルケミストの事は吹っ切れたみたいだから、告白しても平気だと思うわ。頑張んなさい」

 

「あ、ありがとう…でも意外だね。あなたがこんな事言うなんて…」

 

「ま、ただの気まぐれよ」

 

その時、出撃したであろうリバイバーから通信が入って来た。

 

《ペルシカァ‼︎こいつ、すっげえスピードだけど、これボディが空中分解した(ヅダった)りしないよな⁉︎》

 

「大丈夫よ、その辺はちゃんと設計してあるわ」

 

《なら安心だ!》

 

────

 

某地区、集積場

 

「グリフィン本部が鉄血の大規模襲撃を凌いで立て直しをしている今、我らの行動が成就する可能性は大いにある!よってこれより街を襲撃し、人形共と奴らに与する輩に天誅を下そうではないか‼︎」

 

過激派のリーダーがそう檄を飛ばすと他の者たちも怒号を挙げて各自武器を手に取ったりP.A.C.Sやテュポーンに乗り込んでいく。すると、鈴の音色が響き渡り、それと同時に何かが飛来してテュポーンに大穴を開けて破壊していった。

 

「な⁉︎テュポーンが…!それに、あの鈴の音は、まさか…⁉︎」

 

「リーダー、リバイバーです!リバイバーが空を飛んでやって来ました‼︎」

 

部下の報告を聞き、上空を眺めると灰色の装甲を纏ったリバイバーがこちらに向かって来ているのが見えた。

 

「うわ…試しにレールガンでやったけど、装甲の薄いとこをやったとはいえ威力エグいな…さて、お次はと…」

 

リバイバーはすぐに急降下しP.A.C.Sに接近すると右のレーザーブレードを発振させて切り裂くと振り向きざまに左のV.S.L.Cを放って歩兵を複数薙ぎ払った。

 

(ハハ!身体がだいぶ軽いな…!流石だペルシカ、良い仕事をする!)

 

黙ってやられる過激派でもなく、反撃をするも躱されるかF.E.F.Gで防がれかすり傷ですら負わせずにいた。リバイバーは一度F.E.F.Gを戻すと再展開し、何かを散布させた。するとP.A.C.S部隊は急に立ち止まり、同士討ちや自爆を始めていた。

 

「うわああ⁉︎」

 

「おい!何やって─」

 

「コントロールが効かな─」

 

(コンピュータウイルスの散布も良好っと…酸性雨やレインコートと合わせるとかなりいいな)

 

主力部隊を失った彼らになす術はなく、あっという間に全滅していった。

 

「テスト完了っと…にしても、だいぶ俺信頼されてんな。これだとその気になれば本部を灰に出来るぞ?まぁしないけど…」

 

その後リバイバーは本部に戻り、ペルシカに報告しに行った。

 

「どう?新しいボディは?」

 

「なかなかいい。これなら前に俺を半殺しにした奴らと何とか渡り合えるかもな。ただ…」

 

「何かしら?」

 

「ネオって名前はな…戦術も相まって、なんか生まれたことが罪みたいでな…」

 

「そう?まあ好きにすれば?」

 

結果、新ボディの名前は覚醒を意味するAwakeningからアウェイクとなった。

 


 

戦闘記録…

 

人類人権団体過激派とグリフィンに鹵獲されてる戦術人形一体との戦闘を確認…

 

結果…戦術人形の一方的勝利

 

疑問…戦術人形の戦闘能力に異常性あり。既存の人形の戦闘能力を超えている可能性大。今後も観察の必要性あり。

 

戦闘記録を───に送信。

 

なお本機は送信後機密保持の為、自爆を開始する。




不穏分子が多いからね、ここまで強くなるのは仕方ないね。

ふと思ったけど、中の人的にK11とJS05でツッコミ不在の桜才生徒会ができ(銃声)


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Code-86 第二部隊のとある任務

今回は第二部隊のお話です。
そして今回からある作品とクロスオーバーします。それに伴いタグを追加しました。


グリフィン本部のミーティングルームでDG小隊第二部隊の面々はヘリアンに呼ばれて集まっており、彼女を待つ間リーダーのライは真剣な顔で話をしていた。

 

「前回の本部防衛戦ではある程度の活躍はできた。しかし、まだ我々は経験と実力が足りない。知って通り、ノアさんとアスターさんが妊娠している為近いうちにレストさんやバレット隊長が育児などで常に戦線に立つ事が出来なくなる。彼らが安心して任せられるよう、力を付けていこう」

 

「確かに、過激派はだいぶ鳴りを潜めてはいますが、正体不明の戦力や鉄血にも新たな動きもありますしね」

 

「リバイバーもその関係で滅茶苦茶なってくらいの強化をされたって聞いたな。だからと言って彼に頼るわけにもいかないしな」

 

バラージとジュッターレが同意すると丁度ヘリアンが入室してきた。

 

「全員いるな。今回貴様ら第二部隊を呼んだのは、ある地区へ行って調査をしてもらいたいからだ」

 

ヘリアンは彼らにその地区のデータを寄越す。すると、ナロがそのデータをみて口を開いた。

 

「この地区は…旧デトロイトシティか?確かあそこはグリフィンの管轄外のうえ、独自開発の人形…じゃなかったな、アンドロイドを使ってる筈では?」

 

ナロが指摘した通り、その地区はグリフィンが統治してる地区ではなく、その地区に本社を置くサイバーライフ社が開発したアンドロイドと呼ばれるこちらで言う人形にあたる存在を運用していた。ちなみに『人形』と呼ばないのは商標問題の関係らしい。

 

「しかもあそこは排他的で有名ですよ?鉄血はおろか、僕たちI.O.Pの人形の使用率が一割前後のとこですよね?何故そんなとこに?」

 

「この任務は向こう直々に依頼されたんだ。何でも、向こうのアンドロイドの中にあり得ない行動を起こす個体が現れたらしくてな。鉄血の関与もあり得るから鉄血の対応に長けてるウチに調査を頼まれたわけだ」

 

旧デトロイト地区は鉄血人形を採用していない事が幸いし蝶事件の影響は少なかった。しかもその後も何故か鉄血の襲撃がほぼ無いため比較的平和な地区である。理由に関してはリバイバーや他の鹵獲ハイエンド曰く

 

《あそこの独自の技術や兵器に興味もあるし戦力的に占領は可能だが、技術が独自過ぎて占領してもこちらでは扱えない可能性が高いし鉄血の工場もない。故に占領してもうまみがあまりないから》

 

との事である。だが今回の件で鉄血が関わっているとなるとこちらと違って統治してる部隊が人間メインであることと、ASSTやダミーなどを持たないアンドロイドでは鉄血を相手するには厳しいためこちらに協力の依頼が来たという次第である。

 

「なるほど…とすると現地の補給はどうすれば?」

 

「周辺地区はグリフィンの管轄だ、そこから受けるといい。あとは向こうもで限りの補給を行ってくれるそうだ。準備が出来次第向かってくれ」

 

『了解‼︎』

 

その後第二部隊は準備を整え、小型飛行機に乗って現地まで移動して行った。その途中、彼らは地区独自で運用してるアンドロイドについて話し合っていた。

 

「リーダー、確かアンドロイドは俺らと違って人工血液とかを使っていないんですよね?」

 

「あぁ。ブルーブラッドと呼ばれる独自の液体を使っているとの事だ。そのため彼らの血は青い。他にも主にプラスチック製で素体は白いマネキンのようなもの、皮膚や髪は流動化合物で再現していて、何より彼らは我々のような感情モジュールを持っていない」

 

「…そこまで聞くとだいぶこっちと変わってるのな。感情が無いって事はホントに動くマネキン的なものか…」

 

そんな話をしてしばらく経ったのちに目的地に到着した。飛行機から降りると髭を生やした中年男性と青年が待っていた。青年の方はこめかみに特徴的なLEDリングをつけ、型番が書かれた服を着てることからアンドロイドだろう。

 

「よく来たなグリフィンの人形がた。俺は今回の事件の担当になっちまったハンク・アンダーソン警部補だ。で、こっちがアンドロイドのコナーだ」

 

「初めまして、コナーと言います」

 

この地区は珍しくPMCが統治しておらず、警察組織と独自の治安維持部隊で統治しているのであった。

 

「初めまして、ハンク警部補、コナーさん。私はグリフィン所属のDG小隊、その第二部隊のリーダーのライと申します。彼らは部下のバラージ、ジュッターレ、ナロ、ココです」

 

「わかりました。それでは署に案内するのでこちらに」

 

彼らはコナーに連れられ、小型バスで署にまで移動していった。

 


 

某所

 

「リバイバーだっけ?わざわざペルシカを通じて私と接触して、何の用件?」

 

()()()()にそう聞かれ、リバイバーは彼女を呼んだ理由を語った。

 

「俺が今開発してる『レインコートウイルス』の作成に蝶事件前の鉄血のAIデータを参考に欲しくてな。だから()()()()()()()のお前さんの協力が欲しいってわけだ。正確にはお前さんのAIデータを調べさせて欲しい」

 

「……()()()()()私のデータを調べさせろ、ね…それで?私に何のメリットがあるの?第一、私たちをバレットが嫌悪してるの知ってるでしょ?」

 

「その辺は必要分データ取ったら記憶処理される予定だから心配するな。それで、お前さんのメリットだが…実は俺らはもう一つの開発プランはほぼ成功しててな…『バックアップがないまま死んだ人形の蘇生法』って奴だ。それと、最近鉄血を裏切った連中が持ってきたデータを基に()()()を蘇生しようと思うんだが…」

 

リバイバーから投げ渡された資料を見て彼女は目を見開いた。

 

「…⁉︎これ…本当なの…?」

 

「あぁ。蠱毒で死んだ奴で試して上手くいったから本当さ。協力してくれたらキッチリ蘇生させてそこに書いてる場所に送る。それをどうするかは好きにしろ。もちろん協力しないならこの話は無しだ。どうだ?」

 

「……わかった、協力するわ。でも、少しでも約束を違えたら地獄の果てまで追いかけて殺すから」

 

「了解。とはいえ、記憶に関しての蘇生率は九割くらいだ。それでキレられても困るからそこは了承してくれ」

 

内容によるわ、と彼女は言ったあと、早速二人はデータを調べる準備をし始めた。




ハイ、というわけで『デトロイト ビカム ヒューマン』とのクロスが始まります。いや〜実況プレイから触発されてやってみましたがめっちゃ面白いですね。

殆ど独自設定入るのでご了承下さい。
無論バレットたち第一部隊側の回も織り交ぜるので心配なく。

さて、リバイバーが交渉した相手は…分かる人はわかります。


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Code-87 鳥の巣で

クロス編です。
ちなみにデトロイト本編とは時系列はバラバラですのでご了承を。
そもそも本編の舞台11月だしね、仕方ないね。




署に着くまでの間、コナーはライ達に今回の経緯について説明していた。

 

「事の始まりは数週間ほど前、フィリップス一家に購入されていたアンドロイド、PL600型・名称『ダニエル』が主人のジョン・フィリップスを射殺しその娘エマを人質に取り駆けつけた警官複数名を殺傷した事件から始まりました。そもそもアンドロイドは人を殺すどころか、命令無しに行動できないはずなのでこれは有り得ない事なんです」

 

「なるほど…それで、そのダニエルとやらはどうなった?」

 

「私が交渉を行い、人質を解放させたあとSWATが狙撃し、『破壊』しました」

 

「『殺した』のか?何故?」

 

「子供と心中ないし、殺そうとしたのですよ。当然の措置です。それと、先ほど『殺した』と言いましたが、アンドロイドは生き物ではないのでその使い方は間違ってるかと」

 

淡々とした物言いにライ達は事実とはいえ、もっと別の言い方があるのではとムッとしたが、黙ってコナーの話の続きを聞くことにした。尤も、言葉の最後に「あなた方もそうでしょう?」と言っていたのなら話は別となるが。

 

「事件の原因は彼が家族から親友同然に扱われてたのに関わらず、父親が新しいアンドロイドに買い換えることを知ったショックでプログラムに異常が起き、感情…正確にはそれを模したプログラムが発生し、感情のままに凶行に及びました」

 

コナーらはそのような異常を起こしたアンドロイドを『変異体』と呼称したのだが、これを機にその変異体が多く発生し、殺人や盗みを働いているそうである。ダニエルの残骸を分解し調べても変異体発生の原因が掴めず、もしかしたら鉄血が関与してるのではという事になり、グリフィンに協力を依頼し、担当となったアンダーソン警部補と共に捜査する事となった訳であった。

 

「経緯はわかった。にしても、こうも身内の人形が少ないと遠目でもすぐ見つかるな」

 

ジュッターレが車の窓から街を見ると、人々やアンドロイド、I.O.Pの人形が街を歩いていたが、人形が圧倒的に少ないがそれ故に目立っていた。いや、この場合は悪目立ちだろう。

I.O.P、鉄血問わず人形の顔立ちは基本的に整っており、美人である。しかも、髪の色がカラフルであったり特徴的な髪型をしていたりするものもいる。

一方でアンドロイドの顔立ちや髪は所謂『普通』であり、アンドロイドであることを示す制服とこめかみのLEDリングを取ってしまえばその辺の通行人と遜色ない見た目をしていた。

 

「これだと、いくら鉄血が変装しても美人って特徴で覚えられる可能性もあるな。そう言った目撃情報は?」

 

「今のとこはありません。しかし、変装や潜入に特化した新型という線もあり得ます。それと…グリフィンの野良人形の姿を見かけたという報告が最近増えてます」

 

「野良人形?もしかしたらその中に擬態してる鉄血がいるかもしれないな」

 

他にも、昨日持ち主を殴りつけた後、逃走したというAX400『カーラ』を追跡し、潜伏してると思われる廃屋にいったものの、別のアンドロイドがいるのみであり、アンドロイドは食事や暖を取る必要がないのに関わらず、火のついた暖炉や三人分の食器と焦げたヌートリアの死骸があるといった不審点があったが、相手を見つけられずその場を去ったといった話を彼らは聞いた。

 

「報告会はそれまでにして、もうすぐ着くぞ」

 

ハンクがそう話すと、コナーはLEDリングを黄色く点滅させたあと、口を開いた。

 

「すみません警部補。たった今事件の情報が入りました。ここからそう遠くないのでそちらに向かってください。ファウラー警部にはすでにメッセージにて連絡を送りましたのでご安心を」

 

「何?…わかった、場所を教えてくれ。あんたらも構わないな?」

 

ライ達はそれを了承すると、彼らは現場へと急行していった。

 

────

 

廃アパートに着いた一向はアパート内に乗り込んでいく。流石に室内でライフルは無理があるため、ライはサイドアームの9mm仕様のP229を所持しての同行である。ここは空き家のはずなのだが、近所の住民から物音がすると連絡があり、さらにLEDを帽子で隠した男が目撃されたらしい。

物音がするという部屋の前に着き、コナーはドアをノックする。しかし、何も反応がなかった。

 

「すみません‼︎」

 

今度は強めにドアを叩くが、やはり反応はなかった。

 

「…?いないのか?」

 

あまりの反応の無さにナロが首を傾げた時であった。

 

「開けろ‼︎ デトロイト市警だ‼︎」

 

突然のコナーの大声にライ達は驚くが、ドア越しに物音がし、中に何者かがいることがわかりハンクがドアを蹴破り中に入る。

 

「ココ以外は待機。万が一容疑者が逃げた時に取り押さえろ。ジュッターレ、ゴム弾の装填しておけ。逃げられた時は頼む」

 

ライが部隊に指示した後、ライとココはハンクとコナーの後に続いて部屋に入っていく。奥に進むとそこには多数の鳩が床を埋め尽くさんばかりにいた。

コナーがポスターの裏から暗号化された日記を見つけている間、ライとココは洗面所へ移動していった。二人は入って左の壁を見た。するとそこには──

 

RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9RA9

 

「なっ…⁉︎これは…?」

 

壁を埋めつくほどのRA9の文字に絶句していると、コナーがやってきて壁の文字を眺めた。

 

「rA9…以前殺人の容疑で確保したアンドロイドも、現場の浴室の壁に書いてました。彼が言うには、我々をいずれ解放する存在と話してました」

 

「ふむ…何かの暗号か?…む、このペンで書いたみたいだな。まだペン先が湿っている…?」

 

「リーダー、コナーさん。洗面所にあるのは、アンドロイドのLEDリングでは?」

 

ココの指摘によりこの部屋にいるのはアンドロイドで確定し、その後コナーの分析により容疑者の名前はルパートで型番はWR200、そして彼はまだこの部屋にいることが判明した。(但し、型番を調べる際に現場のブルーブラッドをコナーが舐めたのには二人は少し引いたが)

分析を続け、最終的に屋根裏にいるとわかり、近くの椅子に登ろうとした瞬間、ルパートらしき人物が屋根裏から飛び降り、逃げ出した。

 

「兄さん‼︎そっち行ったから確保して‼︎」

 

ココの叫びを聞き、ナロを含めた三人は即座に確保に動き出した。

 

「任せな!逃すかよ!」

 

バラージとジュッターレは二人は道を塞ぎ、ナロはルパートを取り押さえた。

 

「グリフィン…⁉︎頼む逃してくれ!俺は何もしてないんだ!」

 

「何もしてないのなら逃げなくていいだろ?」

 

「流石だなグリフィンの人形がた。ほら、大人しくしな」

 

ハンクがルパートに手錠を掛けるとルパートは観念したように項垂れた。

 

「初日から事件解決とはな。今後もこの調子で頼むよ」

 

「ええ。ともにこの異変を解決しましょう」

 

(それにしても、彼は何故捕まることを恐れてたんだ…?)

 

のちに彼らは思い知ることになる。この地区におけるアンドロイドの認識を、そして、各地の変異体が変異体になった経緯を。そしてそれを知った時、ある選択を迫られる事を。

 

────

廃貨物船『ジェリコ』

 

「グリフィン本部の部隊が?本当か?」

 

「ええ。輸送車に乗ってるのを見たわ。アレはDG小隊で間違いないわ」

 

ここのリーダー格である青年アンドロイド、『マーカス』の問いに戦術人形のジェリコが答えた。彼女は別にこの船の名前とは何の関係もなく、野良人形としてこの地区を放浪した際に彼らと出会い、その事情を知り協力している次第であった。彼女以外にもFN49やガリル、スコーピオンなど複数の野良人形がこの地区の人間から身を隠しつつ彼らに協力していた。

 

「どうするマーカス?グリフィンが介入したら俺たちはおしまいだぞ?」

 

心配そうに話す『ジョッシュ』にマーカスは毅然とした態度で口を開いた。

 

「誰が来ようと構わない。寧ろグリフィンに俺たちの現状を知らせるいい機会だ。彼らや人間達に教えてやるんだ…俺たちは生きていることを、アンドロイドに自由と平等を与えるべきだと」




ちなみに彼らが本編で何してたかというと具体的に

コナー「証拠prprしつつアル中のオッチャンと友情育むついでに事件解決してます。オッチャンに嫌われまくると頭ブチ抜かれます」(なお捕まえた犯人はほぼ死ぬ金○一スタイル)
カーラ「DVデブから子供連れて逃げて、イカレデブに騙されそうになったあと優しいおばちゃんデブに国境越え手伝ってもらえました」
マーカス「仲間と一緒に港や放送局に社会見学()したあと街中で増やしオニしてたら警察に撃たれました。理不尽」
※ルートによってはだいたいあってる。

さて、次から本格的にデトロイトの負の部分に彼らを巻き込んでいくのでお楽しみに。


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Code-88 ケータイ守護者と血吸いの魔剣

今回は第一部隊の話です。

グリンダの第二の発明品とリバイバーの新たな武器の話です。


「まさか双子とはねぇ…」

 

グリフィン本部の中庭でバレット、アスター、レスト、ノアの四人でお茶会をしながらアスターが自身のお腹を摩りながらそう呟いた。

以前に行った検査の結果、現在アスターのお腹には双子がいると判明したのであった。

 

「ペーシャさんによると、恐らく人形同士だと多胎妊娠になるのではと考えてるそうだが、だからといって特にこれといった問題はないそうだ」

 

「成長が早いですが、私もこの子たちも問題ないですからね。きっと隊長さんたちの子も無事に育ちますよ」

 

そう話すノアのお腹はだいぶ大きくなり、数週間〜一ヶ月後くらいには産まれそうとのことであった。

 

「そういやレスト、子供の名前は決めてあるのか?」

 

「ええ。子供の性別は産まれるまでお互い知らないようにしておくと決めてますが、それ含めても考えてあります」

 

「そっか…こっちも色々考えておかないとな…」

 

そんな会話をしてしばらく経ち、バレット達は少し前にグリンダから貰ったある物を眺めた。机に置いてあるのは今時珍しいを通り越して骨董品レベルである二つ折りケータイ。するとそのケータイは人型に変形しだし、あたりを見ていた。『フォンガードナー』と名付けられたそれはグリンダが開発した発明品の一つであり、万が一ノアやアスターの身に危険が及ばないようにと作られ、素の状態でもスタンガンとレーザーカッターの機能を腕に備えており追加のアタッチメントで色々な機能を使えるとの事である。全部で7機あり基本的にはあまり喋らないが、今いる7号機は投げると猛抗議するらしい。

 

「グリンダさん、なかなか良いものを作ってくれました。屈まないと取れないようなものとか率先して取りに行ってくれたりで色々と助かってるんです。他にもグリンダさんから編み物とか教えてもらったりで仲良くしてますよ」

 

「あら、それなら私も習っても良いかしら?」

 

楽しげに話す二人をみてそれぞれの旦那は微笑んでいた。

一方でウェイターとフィオナの二人は部屋でゆっくり過ごしていた。フィオナが過去に数年ほど昏睡状態だった影響もあり、もしかしたら子供は難しいかもしれないと言われた時は少なからずショックを受けたものの、それでも可能性があるならと既にウェイターは施術を受けていた。

 

「ねぇウェイター。私ね、正直言ってあなたとの子は欲しいけど、こうしてまたあなたに出会えただけでも充分なのに、子供まで欲しいなんて贅沢な願いだって感じるのだけど、あなたはどう思う?」

 

そう話すフィオナの問いにウェイターは少し黙ったあと口を開いた。

 

「…私はですね、貴女が目覚めるのは不可能かもしれないって言われたあの時から、ずっと諦めずに貴女を待ち続けました。そしてその結果、奇跡的に貴女は目覚めて私と結ばれた。なら、もう一度くらい奇跡が起きても良いと考えてます。だから、決して贅沢な願いではないと思います」

 

「…!そう…ありがとう。ごめんなさい、変なこと言って」

 

気にしてませんよと微笑むウェイターを見てフィオナはこんなに良い人に出会えて良かったと改めて感じたのであった。そして、この二人に本当に奇跡が起こるのは少し先の話である。

 

───────

崩壊液汚染地区

 

「オラ!くたばれゾンビ野郎ども‼︎」

 

正規軍の人形部隊がE.L.I.Dと激戦を繰り広げてる中にリバイバーはそこにいた。彼は改造を施した自身の兵装テストと正規軍との交渉を目的にクルーガーの許可を得て正規軍と接触し、現在行われているE.L.I.D掃討戦に参加していたのであった。通常のE.L.I.Dはもちろん、スマッシャータイプのE.L.I.DまでV.S.L.Cやレールガンで楽に撃破していく様を見て正規軍の士官達は彼に興味を示していた。

すると突然警報が鳴り響いた。

 

《D級E.L.I.Dを確認‼︎各員ヒュドラを足止めにし撤退せよ‼︎》

 

正規軍がようやく撃退できるレベルのD級E.L.I.Dの発見の知らせを受けてあたりは騒然となるがリバイバーは落ち着いていた。

 

『何をしているリバイバー!貴様の力は充分わかったから早く撤退しろ‼︎』

 

「いや、俺はこのままD級を相手にする」

 

『正気か貴様⁉︎我々でも撃退がやっとなバケモノだぞ⁉︎』

 

「だったらお前さんらは運がいい。そのD級がくたばる瞬間が見れるかもしれないからな」

 

『何…⁉︎それは本当か‼︎』

 

「理論上はな。それに、殺さなくとも致命傷くらいは与えられる筈だ」

 

そういいリバイバーは現場は急行していく。すると、遥か彼方に筆舌に尽くしがたい見た目をした大型のD級E.L.I.Dがヒュドラやテュポーンを薙ぎ払っていた。リバイバーはそれを確認すると、左のレールガンの銃身を外し右のレールガンに連結させロングバレルにした。その後フォアグリップを付けて両手で持てるようにすると義足のふくらはぎに追加したパイルバンカーを地面に突き刺し身体を固定、さらにF.E.F.G基部のシールド部分を後ろに回し、同じく先端につけたパイルバンカーを地面に刺した。

 

準備を終えたリバイバーは電力を生成しエネルギーを溜めつつ、逆コーラップス技術をつかい特殊弾丸を成形していく。

 

「弾丸、エネルギー共に良し…目標との距離…問題無し……発射‼︎」

 

リバイバーは全力でブースターを吹かしながら引き金を引き、レールガンを放つ。その瞬間、バシュン‼︎と大きな音が鳴り固定して前進してるにも関わらずリバイバーは反動でやや後ろに下がった。放たれた弾丸は辺りの地面を衝撃波で崩しながら射線上のA級E.L.I.Dを引き裂き、D級E.L.I.Dに命中する。すると、弾丸はD級E.L.I.Dの硬化した皮膚を破砕し、貫通していった。D級E.L.I.Dはおぞましい叫び声をあげると倒れ込み、それきり動かなくなった。

 

『なっ…⁉︎D級を…一撃で…⁉︎』

 

『リバイバー…一体何を…?』

 

「まぁ色々言いたい事はあるが、とりあえず撤退させてくれ。話はそれからだ」

 

安全地帯へ帰還したリバイバーは士官達に説明をし始めた。

 

「俺があのレールガンに込めた弾丸は、ウルツァイト窒化ホウ素っつうダイヤより硬い鉱石をベースに人工物最硬のハイパーダイヤモンドやらタングステンやらを混ぜた特別性のKEP弾だ。で、それを逆コーラップスで出した大電力とバレルを長くしたレールガン本体で撃ちだした。見ての通り威力はあるがそれ故に使いどころが難しい。しかも反動もデカイし逆コーラップスじゃなきゃ腕をいちいち取り替えなきゃならねぇ。ロングバレルでなくとも撃てるが威力は落ちるな」

 

リバイバーはこの特殊弾丸を用いたレールガンを神話にある、一度抜けば生き血を吸うまで鞘に収まらないという魔剣になぞらえ、『ダインスレイブ』と名付けたがそんなことは士官達にはどうでもよく、一人の士官が本題に入った。

 

「それで、交渉とは…?」

 

「簡単だ。俺はあんたらの傘下には入らないが出撃要請があれば余程なことがなければ従う。その代わり、俺の周りの奴らに手を出さないでくれ」

 

「なっ⁉︎あれだけの力を持って、グリフィンに残るだと⁉︎そんな横暴が…」

 

「だが、俺が正規軍入りしたら、俺を巡って派閥や権力争いが起きるのは明白だろ?ただでさえカーターとかいうエリザのケツ追っかけてたロリコン将軍がフェアリーリリースとやらで失墜してエゴールも除隊した現状で、お前さんらも身内同士で無駄な血を流したくないだろ?」

 

リバイバーの尤もな指摘に彼らは返す言葉もなく、この場はとりあえず仮受託し、後日改めて交渉するとの事で話は決まった。

 

「ありがとよ。あと、これだけ覚えておけよ。交渉が決まったあとに約束を違えたら…コレがお前さんらに降り注ぐからな?」

 

そう言い残し、リバイバーはグリフィンに帰っていった。

後日、鉄血が占領してる資源地域の奪還作戦を受けたノア除く第一部隊とリバイバーはすぐさま準備に取り掛かった。




_人人人人人人人人_
> ロリコン将軍 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

まぁ、だいたい合ってるっしょ。求めてるの中身だけど。(言い方ェ…)

『フォンガードナー』
元ネタはケータイ捜査官セブンの彼ら。性格とかは大体一緒だけど何故か1号機は唐突に寒いギャグを言うバグがある。(ヒント:元ネタの名前)

『ダインスレイブ』
元ネタは言わずがな、オルフェンズの畜生爪楊枝。
弾丸は元ネタのように無駄に長くはないが威力は充分。ていうか、思い切ってD級やっちゃいました。排熱とかのデメリットはありますけどね。電力下げて威力抑えればまだ使える場面はありそう。

最後のはoldsnake様の『破壊の嵐を巻き起こせ!』でのコラボ参加への布石です。よろしくお願いします。


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Code-89 資源地帯攻略作戦-1

今回はoldsnake様作 『破壊の嵐を巻き起こせ!』でのコラボ回です。

他にもガンアーク弐式様作『MALE DOLLS外伝集』
焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』
試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』
白黒モンブラン様作『Devils front line』

も参加しております。
まずは作戦前の準備です


作戦地域についたバレット達はもう一度装備の確認を行なっていた。今回の作戦に参加したのは彼らの他にはバルカン、ナイトメア、パラケルススの魔剣にS09P基地のランページゴースト、S07のBB小隊と何名かの人形がいた。

 

「S07の部隊はリーとM38SDMR、MP5、スコーピオン、それにM1911と03式が俺らと同じく地下道を進むらしい」

 

「ん、そうか。(P228とは気まずいからある意味助かったな…まぁいても気にしなければいい話だが)」

 

「リー兄さんも一緒なのですか、どういう戦い方をするか気になりま…⁉︎」

 

「どうしたウェイター?…ん⁉︎」

 

何かに驚いたような顔をしたウェイターの視線の先を見ると、茶色のセーラー服を着たリーの姿があった。元から中性的な童顔をしてることもあり、知らなければ女の子と見間違えるほどの格好であり、ウェイターをはじめとしたDG小隊は軽くフリーズしていた。

 

「え、え?リー兄さんは姉さんだった?それとも何かの懲罰行為…?まさかサクラ指揮官にそんな趣味が…⁉︎

 

何度も目を瞬かせ動揺し、挙げ句の果てにあらぬ誤解をしているウェイターにバレットが声をかけた。

 

「珍しく動揺してるが落ち着けウェイター。あいつは男だし、多分あれは本人が好きでやってるみたいだぞ?嫌そうな顔してないだろ?」

 

「え…?確かにそうですね…一周回って吹っ切れた感じでも無さそうですし。でも何故リー兄さんはあのような格好を?」

 

「ウェイター…世の中には"そういう趣味"の奴がいるんだ、受け入れてやれ」

 

「いえ、拒絶するつもりはありませんよ。ただ、少々驚いただけです…」

 

そんな会話をしてる中、リバイバーは参加人形達のもとを駆け回り、あるものを手渡していた。

 

「ほい、これ」

 

「ん?何だコレ?」

 

渡された注射器状のもの二種四本を見てランページゴーストの面々は訝しげな顔をしていた。リバイバーは手渡したものの説明をし始めた。

 

「そっちのラベルがない方が『酸性雨Ver.3.2」で、赤ラベル貼ってんのが解毒剤」

 

「解毒剤?」

 

「前にバルカンが戦ったっていう死神が出す酸化ナノマシンを無効化ないし侵攻を抑える効果のあるナノマシンだ。急ピッチで作ったから期待はあまりできないがないよりマシだ。ノア本人にはそもそも効かないだろうけど、飛行ユニットやられたらマズイだろうから渡しとく」

 

「ん、ありがとな」

 

「それで、このVer.3.2って何?」

 

「前にそっちに寄越した『酸性雨』を改良したやつ。具体的にはそれを無効化する『傘』が作られたとしてさらにそれを無効化させるやつがVer.2.0。さらにそれを無効化する『傘』を無効化するVer.3.0に効果が出るまでの時間とかを短縮させたのがそれ。俺と同等かそれ以上のAIをもった奴を仮想敵に設定したら上手くいった。使わなかったら持ち帰っていいから」

 

『うわぁ…』

 

鉄血が『傘』を使用する、または即戦力として『傘』を打ち込んだこちら側の人形がいた場合に備えて持ち込んできたものだが、作る過程を聞いたランページゴーストの三人は先に渡しておいたS07や、バルカン達と同じようにリバイバーの貪欲なまでの向上心に引いていた。

また、『傘』がそのままの場合、理論上では完全に『傘』にやられても十秒足らずで完治できるらしい。ここまで効果発動を短縮させたのは一重に、『効果が出るまでにそいつに殺されて、そのあとでそいつが戻ったら仲間を手にかけた事になるのでその悲劇を防ぐため』という思いがあったからである。

 

「てかオメェ、そんな奴だったか?」

 

「色々と訳ありでね。じゃ、地上は頼んだぞ」

 

そう言ってリバイバーはパラケルススの魔剣の元に向かって行った。

 

「あ、いたいた。お前さんにさっき渡し忘れたのがあるからこれ渡すぞ」

 

「何これ?弾頭?」

 

「俺が開発した『ダインスレイブ』の弾頭。お前さんのに合わせて造ったから撃てるはずだ。お前さんの銃の出力なら大概の奴は偏差障壁とかの小細工あっても一撃で仕留められるが威力が高すぎるから気を付けろ。一発しかないから外すなよ」

 

「ん…わかった…」

 

パラケルススの魔剣に弾頭を渡し、リバイバーはこれから進む地下道をバイザーの索敵機能で見据えた。

 

(見た感じ、結構な数がいるな…奥の方にハイエンドと思しきUNKNOWN(アンノウン)の反応が二つ…ん?一つの反応、何か変だな?良し、どっちもアンノウンだとややこしいし、こっちの方の名称を前に読んだ推理小説の、なんだっけ…そうだ、U.N.Owen(オーエン)、それにするか)

 

一方で、スミスはバルカンの元を訪れていた。バルカンが持つ異様な雰囲気に嫌な予感を感じずにいられなかったからだ。

 

「なぁ、バルカン…」

 

「ん?何だスミス?」

 

「その…あまり無茶すんなよ?前にその装備で暴走したんだろ?次暴走してお前の身に何かあったら…」

 

「心配してくれてありがとな、()()()()暴走させねぇからさ…」

 

「なるべくじゃない!絶対にしないって今、約束してくれ…!」

 

バルカンの肩を掴んでその目を見ながら訴えるように話すスミスだったが、バルカンは気まずそうに目を逸らした。

 

「…ごめん、それはできない…そうでもしなきゃ助けられないときもあると思うし、そうしない事で助けられるはずの誰かが傷つくのは嫌なんだ…」

 

それを聞きスミスは、以前自分が言ったことをバルカンは曲解してる事を悟り、戦慄していた。

 

(マズイ…このままだと、自分を犠牲にしてでも助けようとしちまう…!だがどうやって止める?そこまでの力がない俺が…)

 

そう考えているうちに、作戦開始の時刻が迫っていった。




はい、というわけで直接作戦に参加する全員に『酸性雨Ver.3.2』と『解毒剤』(試作)を、それとパラケルススの魔剣には『ダインスレイブ』弾頭を渡しておくのでお好きにどうぞです。

何か要望が有ればメッセージお願いします。


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Code-90 資源地帯奪還作戦-2

コラボその二です。
リバイバー視点での話ですね。

こちらから読めばわかりやすいかと。
https://syosetu.org/novel/180532/395.html


バレット達とは別ルートを行ったリバイバー達はしばらく鉄血兵を相手取っていたが、突然チーフと名乗るハイエンドのオープン通信のあと、バルカンが暴走したとナデシコからの連絡を受けて一度立ち止まっていた。

 

「やっぱり暴走したわね…にしてもまさかミニガンが『傘』にね…」

 

「念のため渡して正解だったな…となると、この先にいるのは消去法で死神か。まぁその方が都合がいい。先に進むぞ」

 

「はい!それにしても、足元が水で進みづらい…リバイバーさん浮いててズルいです…」

 

リーが指摘する通り、地下内は膝下まで浸水しており彼らの侵攻を妨げていた。しかも、水だらけのためナイトメアの冷凍もこちらに被害が出る可能性があるため上手く封じられていた。

 

「奇襲にすぐ対応するためだ、深い意味はない。それより全員解毒剤打っとけ。皮膚ならどこでもいいし無痛注射だから目玉とか喉奥とかじゃなきゃ痛くないはずだ」

 

「誰がそんなとこにやるのよ。それより、今打つの?毒が来てないのに?」

 

「実際これナノマシンだから、打ったあと毒がきたら対応出来る。どっちかというと予防接種みたいなもんだな」

 

全員が解毒剤を打ち、先に進むと水の引いた広い場所に出た。すると、奥から人影が飛び出し、大鎌を振りかざして03式に向かっていった。

すかさずリバイバーはレーザーブレードを発振して両者の間に割って入り、大鎌を受け止めた。

 

「あっぶねぇ⁉︎いきなり挨拶も無しかよ‼︎ナイトメア、こいつが死神⁉︎」

 

「ええそうよ‼︎」

 

死神は一度距離をとり、大鎌を構え直す。すると、リバイバーの目に大鎌を構えた『白い人形』の姿が重なって見えた。

 

(…何だ今の?俺の古い記憶か?まぁいい、とにかく奴を倒すか)

 

「……」

 

死神は鎌に内蔵された機銃で応戦し、リバイバー達を散開させる。リー達S07の部隊も各々の銃で攻撃するも、殆ど避けられるか当たったとしても偏差障壁に阻まれロクにダメージを与えれずにいた。そんななか、リバイバーはレーザーを死神に放ち、命中させる。命中したレーザーは偏差障壁こそ抜けられたが、それで威力を殺され、同時展開されたフォースシールドに相殺されてしまう。

 

(クソッ!ここはレールガンの方がいいか…?)

 

銃撃のなか死神がS07の誰かしらに肉薄し、それをナイトメアかリバイバーが防ぎ、反撃して…を繰り返すと、リー達の動きが鈍くなってきた。

 

「身体が…痺れてきた…!」

 

「解毒剤が効いてない…⁉︎」

 

「いや違う。効いてはいるが、毒の量が多くて解毒し切れてないんだ。解毒剤打ってなきゃとっくに動けなくなってる」

 

リバイバー自身は解毒剤を生成して対抗してるが、そうでないリー達はすぐに二本目の解毒剤を打つも焼け石に水であり、機敏に動けずにいた。その隙をついて死神がM38SDMRに向かっていった。

 

「え、嫌だ…来ないで‼︎」

 

「させるか‼︎」

 

リバイバーは死神に向けて散弾状のレーザーを高速で撃ち放った。死神は咄嗟に偏差障壁とフォースシールドを防ぎ歩みを止めた。

 

(こいつの防御はいつまでも出せるわけじゃない!じゃなきゃフレイムやバルカンの攻撃を受けるなんてことはない筈だ!)

 

リバイバーの予測通り、しばらく耐えていた死神だったが、防御がだんだん薄くなりやがて二つの防御は無くなり、死神はレーザーを全身に浴びた。

しかし、死神はそれに構わずリバイバーに接近していった。

 

「なっ⁉︎普通動じるだろ⁉︎」

 

表情一つ変えずに半ばグズグズの身体で迫りくる死神にリバイバーは慄き、思わずレーザーの砲撃を止めてしまう。死神はリバイバーに向けて大鎌を振り上げ、避けきれなかったリバイバーは上半身をやや深く斬られた。

 

「がぁぁ‼︎」

 

リバイバーはテレポートで一度距離を取り、逆コーラップス技術を使い体を治すがそれより速いスピードで死神は全身を治していた。

 

「なんつー再生力だ…だからといってあぁはやらないだろ…いや、こいつ…感情がないのか?」

 

幸いにも死神は動けずいつでも始末できるリー達より、強力な装備を持つリバイバーとナイトメアの方を優先目標としているためリー達には今のところ危険はないが、逆に言えば二人で死神を何とかしなければならないため、リバイバーは策を練っていた。

 

「ナイトメア、お前さんの冷凍はどこまでいける?」

 

「この辺りはいけるけど、リー達まで氷漬けになるわ。触れればそいつだけ凍らせられるけど、それは自殺行為ね」

 

「……わかった、リー達をなんとかすればいいんだな?」

 

そういいリバイバーはテレポートで死神の後ろにいき、そのままリー達の元に向かい、リー達の体を掴んで一箇所に集めていく。もちろんそれを阻害しようと死神が向かうがリバイバーがスモークを投げ視界を妨げ、ナイトメアが大型ショットガンを撃ち、時間を稼ぐ。

そうこうしてるうちにリー達を一箇所に集めると、リバイバーはF.E.F.Gを飛ばしリー達を囲うように電磁フィールドを張った。

 

「今だナイトメア‼︎」

 

「了解‼︎喰らいなさい‼︎」

 

ナイトメアはコキュートスの能力を使い辺りを凍らせる。死神は飛んで回避しようとしたが間に合わず両脚が凍りついた。一方でリー達は電磁フィールドのおかげで凍らずに済んだ。

 

「トドメだ‼︎」

 

リバイバーはレーザーブレードを発振して死神に迫るが、あろうことか死神は無理矢理身体を捻り、脚を壊しながら大鎌を振るい、リバイバーを両断──する事はなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え…⁉︎」

 

初めて声に出して動揺した死神だが、次の瞬間、リバイバーにレールガンの銃口を体に押し付けられていた。

 

「っ⁉︎」

 

「この距離ならご自慢の防御も意味ねぇな」

 

リバイバーはすかさずレールガンを撃ち放つ。ほぼ密着してたため防御は間に合わず、死神はコアを的確に撃ち抜かれた。

 

「がっ…!ミニ……ガン…」

 

そう言い残し、死神は身体を再生することなく生き絶えた。

 

「……」

 

「リバイバー、最後のは何?死神が『何もないところを切ってた』けど…?」

 

「さっきのスモークに視覚センサと演算処理を狂わせるウイルスを仕込んでた。多分奴は俺が切りかかってくるように見えたんだろ」

 

「な、なるほど…(そんなもん戦闘中に作ったの?怖…)」

 

その後念のためにとリバイバーは死神の遺体からコーラップスの容器を引き抜き、確実に再生しないようにした後でリー達に解毒剤を再注射し、毒を治した。

 

「それで、どうするの?戻ってバルカンのとこに向かうの?」

 

「この先にハイエンドの反応はないし、そうするしかなさそうだな。暴走を止められるといいが…ん?万能者の反応?」

 

「え?本当?大丈夫なの?」

 

「いや、バルカンとミニガンに接触したあとどっかいったな。お前さん達動けるか?」

 

「う、うん…ごめん、役に立たなくて…」

 

「気にすんな、死神が俺らが規格外なだけで動きは良かったぞ」

 

彼らはそのまま来た道を引き返し、バルカン達のもとに向かっていった。




( 0M0)<呼ばれた気がする

oldsnake様、死神撃破ルートを選ばせて貰いました。
何かあれば変更するのでお願いします。

ガンアーク弐式様、リー達の活躍の場をとってしまい、すみません。

なんかその他勢力も現れてるし、この後はどうするかは他の方次第で決めますかね。


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Code-91 資源地帯攻略作戦-3

コラボその3です。
こちらから読めばわかりやすいです。
https://syosetu.org/novel/180532/397.html

ミニガンちゃんの回収とバルカンのちょっとしたケアがメインです。
あと、少し短いです。


「ウェイター、ミニガンを頼む‼︎」

 

「わかりました。レスト、あの武器の方を。このまま置いてくとまた鉄血に利用されかねません」

 

「了解」

 

スミスにコキュートスを貸して動けないナイトメアを背負いバレットが二人に指示すると、二人は自身に『酸性雨Ver3.2』(以下Ver省略)を打ち『傘』の対策をしミニガンの元に駆け寄る。仰向けで浮かんでたので溺れてはないのが幸いであった。

 

「とりあえず、起きる前にこれを…」

 

ウェイターはミニガンの首筋に『酸性雨』を打ち込んだ。すると十秒ほどで白かった髪や肌が元の色に戻っていき、瞳を確認すると元の赤と青のオッドアイになっているのが確認できた。それは彼女の『傘』が消えたと同時に自分達も感染の心配がない事を示したため、二人は安堵した。

 

「うまくいったみたいですね。レスト、そっちはどうですか?」

 

「待ってくれ、確かここを押せば短剣になるはず…よし、なった。これなら運べる」

 

事前にペルシカから渡されたデータをもとに、レーヴァテインを大剣から短剣に変形させると、レストはそれを懐にしまい、ウェイターがミニガンを背負って撤退していった。

一方、バルカンを(キスで)鎮圧し、彼女をコキュートスの操縦席の空きスペースに入れて撤退しているスミスとそれを護衛しているリバイバーとノアの3名は鉄血の増援を警戒していた。

 

「…む、どうやら増援は地下の入り口から来てるな。このままだとバレット達が先に遭遇する事になる…あいつらナイトメア達背負ってるからマズイな…」

 

「どうする?アタシが行こうか?」

 

「いや、万が一の場合、防衛機構のある俺が向かう方がいい。さっきバルカンが潰してたアイギス擬きも気になる。俺が向かうからお前さんはそこの二人の護衛を頼む」

 

「わかった!」

 

リバイバーはそのまま短距離テレポートを駆使して先に進んでいく。

すると、バルカンがちょうど目を覚ました。

 

「うぅん…」

 

「あ、バルカン。体は平気か?」

 

「うん…えっと、確かチーフからアレを受け取って…それで目の前が真っ赤になって……‼︎あぅ…その、スミス…ありがと…っ⁉︎」

 

どうやら直前の記憶はあるようで、バルカンは顔を赤らめながら暴走を止めてくれた礼を言おうとしたとき、スミスの身体に所々ある焦げた跡と腰辺りの痛々しい傷跡を見て自分が何をしたのか察してしまった。

 

「あ、あ…!これ…私が…⁉︎」

 

「っ‼︎バルカン、これは…!」

 

「守るって決めたのに…私が、スミスを傷つけて…!下手したら…殺して…⁉︎いや…いや……‼︎」

 

「オイ、バルカン⁉︎」

 

みんなを守るためには暴走もやむなしと考えてた結果、大好きなスミスを殺しかけてしまった事実にショックを受け、涙をボロボロ流し、息を荒げながら震えるバルカンを見てマズイと感じたスミスはコキュートスを自動操縦に切り替え、空いた両手でバルカンを抱きとめた。

 

「大丈夫だバルカン!俺は気にしてない、だから落ち着け!」

 

「でもっ…ヒグッ…コキュートス(コレ)使ってるって、ことは…今、普通にっ歩けないんだろ…?スミスに"っこんな怪我させっ…ヒッ…て…私は、酷い女…だ…!」

 

「何言ってんだよ⁉︎お前は酷い女なんかじゃねぇよ!現に今、お前は俺を思って泣いてんだろ?それにあの暴走も、チーフにミニガンに関する何かを聞かされて怒ったんだろ?本当に酷い女なら、それで泣いたり怒ったりしない!だから、お前は優しい奴だ…」

 

「…本当、に…?」

 

「あぁ、本当だ。お前は優しい俺の彼女、バルカンだ」

 

「……‼︎う"あぁぁぁ…!ごめん、ごめんよスミスゥ…!」

 

「うん、うん…大丈夫だからな…」

 

泣きじゃくりながら謝るバルカンの背を優しく撫でるスミスに、ノアは物凄く気まずい顔で話しかけた。

 

「あ〜…その、大事な話してるとこ悪いんだが…この先入り組んでるから、そろそろ手動操縦にしないとぶつかるぞ?」

 

「え⁉︎わ、わかった…バルカン、少し離すぞ」

 

「うん…」

 

スミスは手動操縦に切り替え、障害物を避けながら進んでいった。




某オレンジのライダー「知らんかったとはいえ友人○した俺よりマシやで」

いやね、絶対今回の件でショック受けるから早めに手を打った次第ですが、これ逆にバルカンがスミスに依存したりしないですかね?まぁ、大丈夫やろ!(適当)

というわけでミニガンちゃん治療+リバイバー迎撃という事なのでよろしくお願いします。


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Code-92 資源地帯攻略作戦-4

広告見て興味本位でレッド:プライドオブエデンやってみましたが、なかなか面白いですねこれ。
ノエルちゃんがノエルちゃん♂だった時の衝撃よ…

それはそうとコラボその4です。
無事脱出したあとの話です。
こちらの一日前の出来事です。
https://syosetu.org/novel/180532/398.html

なお、今回は大陸版のネタバレが少しあります。


「そうか…まだバルカンは起きないか…」

 

ペルシカの前でスミスはため息をついていた。

あの後、正規軍を装った何者かの襲撃を受け、リバイバーが逆コーラップス技術でF.E.F.Gを修復して攻撃を凌ぎつつ万能者の助けもあり無事に脱出が出来たものの、バルカンは暴走による過負荷でスリープモードになりもう四日も目が覚めずにいた。

 

「ええ。こればかりはどうしようもないわ。色々調べてるけど今のところは問題はないけど…」

 

「あとは本人次第、か…」

 

「ごめんなさい、もう少しちゃんとした調整をしてれば…」

 

「いや、あんたも忙しい中で出来る限りのことはしたんだ。そこまで恨んじゃいない…が、もしバルカンに何かあったらその時はバレットも呼んでくれ。じゃなきゃ、あんたが悪くないとわかってても殴りかかるかもしれねぇしな…」

 

「ええ、わかったわ…」

 

スミスはその後、眠ってるバルカンの頭を撫でた後、部屋から出て行った。廊下を歩きながら、スミスは考え事をしていた。

 

(今後もあいつと一緒に作戦を行う事もある…その時に今回みたいな事があってもあいつを止められるだけの力が俺には必要かもな…早めに止められれば、その分あいつが辛い目に遭わなくて済むしな…)

 

一方で、リバイバーはグリンダやトレイターら元鉄血組と雑談をしていた。

 

「は〜アサルターの時といい、なんだって俺は洞窟に行くと装甲人形に襲われてボコられるんかね?」

 

「そういう運命にあるんじゃね?で、作戦後から頭痛がするってどういうこった?」

 

「頭痛ってか電脳の負荷だな。初めはショートした時の影響かなと思ったんだが違うみたいでな、ペルシカに診てもらったら俺のAIに幾つかあるブラックボックスが開封しかけてるらしいんだ。グリンダ、開けられそうか?」

 

「ん〜あと少しかな…それにしても、あまり無茶しないでね?いくら直せるからって大怪我していいわけじゃないんだから…」

 

「あぁ、覚えておくよ」

 

心配しているグリンダに対しどこか素っ気ない返事をしたリバイバーにトレイター達は軽くため息をつき、代表してトレイターがリバイバーを引っ張って部屋を出た。

 

「何だ?いきなり連れ出して?」

 

「何だじゃないだろ?リバイバーお前さ、グリンダのことどう思ってる?」

 

「どう…って仲の良い女友達だと思ってるが…それが?」

 

きょとんとするリバイバーにトレイターは頭を抱えたあと、説明し始めた。

 

「あのなぁ…あいつ本気でお前のこと心配してるんだぞ?あの返事はないだろ?てかあれ聞いて何も思わなかったのか?」

 

「いや、やけに心配してくれるなって…まぁ確かにあれは失礼だったか…」

 

「そうだけど!最近グリンダ洒落っ気出したりお前を飯に誘ったりしてんじゃん!それが『ただの男友達』にする事じゃないだろう?」

 

「んじゃ何か?グリンダは自分虐待してた奴の弟に恋してんのか?それは無いだろ?」

 

そこまで聞き、トレイターはあぁ、と納得した。

おそらく、リバイバーはグリンダの気持ちに気付いている。しかし、姉であるコレクターが彼女にした仕打ちを鑑みれば気付かないふりをした方が良いと考えてるのではとトレイターは感づいた。事実、その勘は当たっていた。

実際の所、出身が違うためリバイバーとコレクターに姉弟関係はないが、顔つきが似ているため、仮に付き合えばどうやってもコレクターの影がちらついてしまい、彼女に辛い事を思い出させるのではとリバイバーは考えており、そうするくらいなら気づかないふりをして自分に愛想を尽かせようと考えていた。

 

「はぁ…お前がどう考えてるか何となくわかったが、一回本人と話し合えば良いと思うがな。独り善がりの可能性もあるだろうし」

 

「…さぁ?何のことだか」

 

二人が部屋に戻ると、グリンダが険しい顔でパソコンを見ていた。

 

「あ、戻ってきたんだ。一応今さっき開けたけど、機密防止に暗号化もされててわからないけど…なんか、嫌な予感がする…。多分、リバイバーの出生に関することだと思う…」

 

それを聞き、リバイバーはパソコン画面を覗き込んだ。

 


 

『プロ◆ェ*:メッセル』

 

人間の記を@形に移植出来るかの#画であり、記憶を◎る海馬に¢ップを埋め込み、その後充分にチップに◇録させたあと摘出し、それを基にAI作り調整後、■形に%載させる。この計画が成▲すれば半永○的に▼類を生*させられる可能性があるだろう。ネ¥トとは違っ#存@を生み出せるとなれば私の望みとは違うとはいえ、何と素晴らしいことだろう。だがこの計画は私の望みが叶うのに時間がかかる時に役立つだろう。これは敢えてこのAIに記録させよう。これを解読し見つけた者はさぞ私に畏敬の念を持つだろう。 W

 


 

「『メッセル』…それが、俺を生み出した連中が付けた俺の本来の名か?それとも、量産機のコード名なのか…」

 

「なるべく早く解読してみるよ。リバイバーも、自分が何者か知りたいでしょ?」

 

「まぁな。だがそんなに焦らなくて良い。そっちのペースで進めてくれ」

 

わかった、とグリンダは返答し、気晴らしに動画サイトを漁っていると、ある動画が目に留まった。

 

「これ…今第二部隊がいる地区から配信されてる…。この映ってるのは、アンドロイド?」

 

グリンダはその動画を再生すると、ちょうど終盤の方らしく、オッドアイのアンドロイドが落ち着いた口調で話していた。

 

『…人形とアンドロイド、同じ感情を持った機械なのに、何故初めから感情を持ってた人形はそのままで、後から感情を持った我々アンドロイドが破壊され、蔑まれるのでしょうか。確かに我々の仲間には人間を殺した者もいますが、それはあなた方人間が我々を奴隷のように扱い、理不尽な目に遭わせた結果です』

 

『だが我々は人間と敵対するつもりはありません。ただ、我々アンドロイドが人形と平等に扱われ、今以上の自由を得る事を望んでいるだけなのです。共に、人間とアンドロイド、そして人形が手を取り合い輝かしい未来を築き上げていきましょう。これは人々の希望のメッセージです。あなた方は命をくれた。そして今自由を与える時が来たのです』

 

動画のコメントには彼らに同情的なコメントを残す者もいれば、第二の蝶事件が起きるのではと危惧している者もいた。グリンダ達は気になって調べてみると、この動画は他の動画投稿サイトにも大量にアップされており、また掲示板にも彼らの実態などが挙げられていた。

 

「この手口…連中の協力者にMDRがいるな」

 

「…!この書いてあることが本当なら、あの地区はかなり政治的にマズいことになるんじゃ…!」

 

「ライ達…厄介なことに巻き込まれたな…」




リバイバーとグリンダの恋愛はどうなるのかはちょっと考え中ですね。

暗号化の内容が知りたければ誤字報告機能などでみると分かります。
まぁ『あの』パラデウスがまともなAI作るわけありませんし。
メッセルというのはmemory(記憶)+ vessel()からです。
…名前だけでもヤバイやつなのがうっすらわかりますが。

とりあえずこちらからのコラボは以上となります。
oldsnake様、コラボお疲れ様でした!

さーて、次回からまたデトロイトのクロス進めるとしますか。


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Code-93 アンドロイドの現状

変異体とこの地区の黒い部分を知った彼らは、どう動くのか…


日にちは遡り、例の声明の前日。ライ達がルパートなる変異体を確保し、警察署に連れて行ったあとの出来事であった。

 

「分解処分だって⁉︎奴はそこまでのことはしていないだろう⁉︎」

 

「ええ、確かに彼は幾つかの窃盗と免許証の偽造で、殺人などの大きな罪は犯しておりません。しかし変異体のことを調べるためにも分解して調べるとの決定が下されました」

 

バラージの抗議にコナーが淡々とした口調で答えると、ライ達は納得がいかない表情をしていた。犯罪の対価と取るにしては大きすぎる処分であり、しかもその理由が犯罪とは別の理由であることがさらに不満を募らせていた。

 

「なぁ、分解せずに調べられないのか?」

 

「その方がいいのですが、生憎そこまでの技術はないのです。とはいえ、鉄血の動きの関係で担当官が来れないためすぐに行えず、五日後に行う予定です」

 

「つまり、それまでに変異体について解決すれば、彼は死なずに済むんだな?」

 

「そうなりますが…前にも言いましたが、我々は生き物では…」

 

「コナー!いい加減学習したらどうだ⁉︎こいつらは互いに生きてるって認識があるんだからいちいち訂正するな!それとも、サイバーライフの最新鋭アンドロイドはそこまでの学習機能はないのか?」

 

先ほどまで黙っていたハンクが声を荒げると、コナーはLEDを黄色に点滅させたあと、ライ達に頭を下げた。

 

「…こちらの常識でものを考え、不快な言動をしてすみませんでした」

 

「いや、わかれば平気だ」

 

「わかりました。それと、早いところルパートに話をしてあげた方がよろしいかと。変異体は過度のストレスで自己破壊してしまう傾向にあるので」

 

それを聞いたライ達は署内の拘留所に向かい、ルパートのもとを訪れた。ルパートは壁によりかかるようにして座り込んでいた。ライがガラスを叩くと、ルパートはこちらを見たあと、近寄ってきた。

 

「どうして俺を逃してくれなかったんだ…」

 

「すまない、まさかこのような事態になるとは思ってもいなかったんだ。だがまだ処分には猶予がある。それまでにこちらが事件を解決できれば、君は死なずに済む。だから、早まった真似はしないでくれ」

 

「……信用していいのか?」

 

「あぁ、信じてくれ」

 

「頼む…俺はまだ、死にたくないんだ…」

 

懇願するように見つめるルパートを見て、彼らは何としても事態を迅速に収束させようと決心した。まず始めに変異体の特徴を調べるために、変異体と思われる事件を調べ始めた。百をゆうに越える事件データを各自分担していき、数時間が経過したのち、ある共通項を見つけた彼らは重い表情をしていた。

 

「…薄々勘付いてはいたが、変異体のほぼ全員が人間からの理不尽な行いを受けていたとは…」

 

「この地区事態も、アンドロイドや人形に対する差別意識を持つ人が多いですしね…ハッキリ言って過激派の温床と言われても文句言えませんよ」

 

ココの指摘のとおり、この地区の人間はあまりアンドロイドや人形にいい感情を持っていないものが多く、最近彼らもアンドロイドと人形の廃絶を叫ぶ集団を目撃していた。しかし、近年の過激派の行いやそれらの掃討によりそう言った者たちは過激派の同族とみなすような目で見る人間がほとんどではある。とはいえ、そのような人間も内心同調しているような挙動をしていたが。

 

しかも、何年か前まではかつての人種差別政策の如くアンドロイド用のバス座席とは名ばかりの詰めどころやアンドロイドお断りの店などがあったのだから驚きである。廃止された経緯は単純に親人形派の資産家がこの地区を自身の人形を連れて訪れた際にこの現状を知ると同時に自身の人形も差別対象にされた事に激怒し裁判沙汰になったのがきっかけとの事らしい。現在はそのような事は禁止されたものの、未だに不快感を示す者も存在していた。

また、その資産家と彼が連れてきた人形というのは、かつてのウェイターの主人、エルスタルとウェイター本人である事は彼らの知らぬところである。

 

そして、変異体の情報だが、ファイルにあった変異体の殆どが人間から理不尽な暴力や同族が破壊された瞬間を目撃したた事によるショックで変異した事がわかった。

ルパートは同僚のアンドロイドが事故に巻き込まれて破壊されたことを目撃して変異し、ライ達が来る前にコナーが担当したという事件では持ち主が麻薬中毒者であり、所有するアンドロイドに日常的に暴力を振るっていたそうであった。

 

それらを知ったとき、彼らの胸中は複雑であった。彼らはDG小隊でありその本分は人形を過激派などの人形に害を与える組織から守ることである。

だが今回の任務は人形とほぼ同じ存在のアンドロイドを、しかも人間に虐げられた存在を追わなければならない。しかも変異体は変異したさいに本来はない感情を模したものを持つのだから余計にやりづらいものである。

 

一応正当防衛もあるが殺人は殺人であり、罪を償わせるためにも捕まえるべきなのだが、この地区の性質からすると情状酌量もなしに解体されるのが見えていた。

 

「…事件解決のあと、ここの事をペルシカさんに伝えた方が良いかも知れないな」

 

「確かにな。I.O.Pとしても人形をこの地区に売り出す際に、この現状は看過できないだろうしな」

 

基本的には自治してる組織の方針に関して外部からの干渉は出来ないが、方針が他の地区に悪影響を過度に与えたりする場合はある程度干渉は可能である。

アンドロイドを扱う地区は主にこの地区とその周辺地区であり、周りの地区は普通に人形を取り扱ってるため、他からここに移住する際にはこの問題は見過ごせないだろうし、これを営業妨害と捉えてI.O.Pが訴えて間接的にアンドロイドの扱いを良くさせる事も可能ではある。

そんな事を言っていると、嘲るような声が聞こえてきた。

 

「よぉグリフィンのお人形ども。揃いも揃って事件の捜査か?」

 

現れたのはギャビン・リード刑事であったが、彼らはギャビンの事を嫌っていた。というのも彼はアンドロイドや人形を差別する人間であり、初めに会った時に

 

『おいおい、人形ってのは女ばっかと聞いてるがこりゃ何だ?男じゃねぇか。それとも、こんなナリでも実は女だったりしてんのか?ふん、I.O.Pとやらも物好きだな』

 

といったあからさまにこちらを馬鹿にしてる発言をした事に加え、グリフィンの指揮官全体に対する侮辱的な発言をして一悶着起きたためである。無論、その後彼はファウラー警部からお叱りを受けたが。

 

「そうですが、何の御用で?」

 

ライが丁寧に、だな僅かに不快感を示しながら答えるとギャビンはニヤついた顔で話し始めた。

 

「いや、お人形がプラスチック野郎をどう調査してんのか気になってな。情にかまけてこっちに牙を向ける時は言えよ?俺がしっかり『ゴミ掃除』してやるからよ」

 

「ッ‼︎」

 

その言葉にバラージ達が立ち上がろうとしたのをライは目で制して、貼り付けたような笑みでこう答えた。

 

「いえ、ご心配には及びません、ご忠告をどうも。リード刑事もここで我々と喋ってないで捜査などして早いとこ出世したほうがいいのでは?……()()()()()

 

「コイツ…!」

 

その言葉にギャビンはライに掴みかかろうとするが、警部の姿が見えたので動作を止めるとクズが、と吐き捨ててどこかへ行った。

 

「…何故彼は刑事でいられるのか不思議だな」

 

「そうですけど…リーダー?まさかあんな事言うとは意外ですよ?」

 

「私とて彼の発言には腹が立ったのでね。とりあえず捜査はこの辺にして宿に戻るか」

 

ライ達は資料を片付け、彼らに用意された宿に向かっていく。

宿に入ってしばらくしたのち、コナーから連絡が入ってきた。

 

「アンドロイド絡みの殺人事件?」

 

『ええ、場所はこの後送信しますので先に現場に向かっててください。私はアンダーソン警部補を彼の自宅から連れて行くので少々遅れます』

 

「わかった」

 

その後、パソコンから現場についての情報が送られ確認すると、彼らは表情を曇らせた。

 

「『エデンクラブ』…アンドロイドを扱う性風俗店か…」

 

「何だってこんな所が…」

 

口には出さないが彼らの頭には一人の先輩人形がこれをどう思うかが思い浮かんだがそれを振り払い、彼らは現場へと向かっていった。

 


 

グリフィン本部

 

リバイバーは有り得ないものを見た顔でバレットに先程の出来事を話していた。

 

「バレット…あ、ありのまま今見た事を話すぜ…!俺はあの時、確かに死神のコアをブチ抜いて撃破したんだ…だがさっきペルシカのところに行ったら、奴がピンピンして彷徨いてた挙句、デェェス‼︎とか言って明らかにキャラが違ってたんだ……!」

 

「な、何を言ってるかわからないと思うが、俺も何が起きたかわからなかった…気が狂いそうだった。ミレニ○ムアイを埋め込まれたとか、カリンに似た声の紅茶好きの高速戦艦の力を手に入れたとかそんなもんじゃあ断じて無い、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…ついでにあいつは俺を見て叫んでたが、叫びたいのは俺の方だよ…何で生き返ってんだよ…⁉︎」

 

「万能者が蘇生させたあと無力化と人類とグリフィンに対する悪感情を消したってさっきペルシカから連絡来てたぞ。お前が会ったのはそれだ」

 

それを聞きあぁ…と何となく納得したリバイバーの傍らでバレットはある懸念がよぎっていた。

 

(死神…姉さんに会わなきゃいいんだが…)

 

死神の襲撃でEA小隊が壊滅したのは鉄血側の暴露でM82A1は知っている為、当然ながら妹であるペイロードが義体の交換を余儀なくされる程のダメージを負った事も知っており、下手人である死神に対して相当な怒りを持っていた。

仮のボディで幼女化したペイロードを見てある程度は怒りは収まったものの、無力化してるとはいえ死神本人に彼女が会ったらどうなるかわからない為、早めに説明しなくてはと考えるバレットであった。




※レストとサンダーがアップを始めました。

自分の中ではデース口調はあの二人の印象が強いですね。

ギャビン刑事は嫌われ役としては結構好きですね。
デトロイトは指揮官やってる身だとうわぁ…な事多いからなぁ…

さて、次回はエデンクラブ編やっていきますかね〜。

それと、『chaosraven』様の『裏稼業とカカシさん』とのコラボでバレット達DG小隊第一部隊がお邪魔してるのでぜひこちらからどうぞ。
https://syosetu.org/novel/194706/70.html


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Code-94 複雑な立場

今回はエデンクラブでの話です。
ちなみに調べたら店にいるアンドロイドは控え除いて36名なんですよね。
…あと一人いたら完全に地雷踏んでたな。


エデンクラブへ到着したライ達はその場でコナー達の到着を待っていた。別に中に入っても良かったのだが、場所が場所なのであまり中には居たくないのが本意であった。

数分後にコナーとハンクの二人が到着し、彼らは店内に入って行った。

 

「『最高にセクシーなアンドロイド』ね…そういや、そっちにはこういった人形の店があるのか?」

 

「あるにはありますが、殆どが他所から拉致したり違法製造された人形を使った違法なものです。そういった者たちの救出も、我々の任務です。それに、こういうのは言いたくないですが、我々人形には感情が初めからありますから…」

 

ライが言葉を濁すように言うと、ハンクは納得したような顔をした。

 

「…なるほどな。()()()()だけに生まれたなんて言われりゃ、誰だってたまったもんじゃないな」

 

ポールダンスをしていたりショーケースの中で微笑みながらこちらを見つめるアンドロイド達を横目で見つつも、彼らは現場の部屋に到着する。現場にはすでにリード刑事ともう一人、クリスという警官がいた。

 

「アンドロイド刑事(デカ)にお人形一行のパレードとは、なかなかメルヘンチックなことだなアンダーソン警部補どの?」

 

「こいつらがメルヘンチックに見えんならお前、俺より酔ってるぞ?」

 

「ハッ‼︎…どーせアンドロイド絡みの事件だから来たんだろうが、無駄みたいだぜ?変態親父がやり過ぎて倒れただけだ」

 

「ご丁寧にどうも、参考にするよ」

 

「ほら行くぞ…なんだか、酒と硝煙臭くなってきたしな」

 

リード達は出て行ったあと、コナー達は現場の捜査を始めると、被害者に首を絞めたような痕が付いてるのを発見した。

 

「警部補、被害者は首を絞められたことによる窒息死のようです」

 

「なるほど、だが激しいプレイならそういう事もある。ガイシャはそれで死んだのか?」

 

「いや、ならばそこのアンドロイドが死んでる事の説明がつかない。もしそれが死因ならアンドロイドは生きている筈でしょう」

 

ライの指摘の通り、被害者から少し離れたとこに青い髪のアンドロイドが停止して(死んで)いるので()()で死んだのなら彼女が死んでるのは不自然であった。

 

「再起動して話を聞いてみましょう」

 

「出来るのかコナー?」

 

「ええ。ですが損傷が激しいので再起動してもごく僅かな時間ですが…」

 

コナーはそのアンドロイドの腹部のカバーを外して中の配線を繋げると、アンドロイドは再起動し、怯えた様子で壁に寄った。その後要点のみをコナーが聞くとある事が判明した。

 

彼女は被害者を殺しておらず、寧ろ被害者である彼に殴りつけられたそうである。恐らく、その時に停止したのだろう。さらに、事件当時はもう一人のアンドロイドが存在していたとの証言からそのもう一人のアンドロイドが犯人だろうとコナー達は考えた。もう一人は何処に行ったか聞いたところで、彼女は再び停止した。

事件発生から時間が経ってるためもう逃げたかと思われたが、表に出れる格好では無いため、まだ店内に潜んでると考え、コナーとハンクは部屋から出て行った。ライ達もあとに続くがその前にココが彼女に近づき、目を閉じさせた。

 

「…兄さん、あまり死者を貶めたくありませんが…これは被害者の自業自得ですよ」

 

「まぁな…。恐らく犯人のアンドロイドは彼女が死んだのを見て変異して、敵討ちか次が自分が殺されると思って反撃したんだろうな」

 

部屋を出た彼らはコナーが店内のアンドロイドに接続してそのメモリーから犯人を追跡しているところであった。コナーについて行きながら、ジュッターレがある事を聞いた。

 

「コナー、もし犯人を捕まえたら彼女もルパートと同じく解体されるのか?」

 

「……いえ、そうさせないよう私からサイバーライフに掛け合おうと思います」

 

「っ⁉︎それは、何故だ?」

 

「…ルパートを捕まえた後、個人的にあなた方DG小隊について詳しく調べてみたんです。その情報を踏まえて考えると、今回の事件は犯人に同情すべき点があると結論しました。しかし、サイバーライフがそれに応じるかは…」

 

申し訳なさそうに顔を伏せるコナーにハンクを含めた全員がコナーの変わりように驚いていた。ライはコナーのLEDがジュッターレが質問したあたりからずっと一時的異常を示す黄色に点滅しているのに気がついていた。

 

(……もしや彼は既に…)

 

(驚いたな。初めにジミーのバーで会ったときに人の酒をひっくり返した奴が、こんな事言い始めるとはな…)

 

そうこうしてるうちに、犯人はスタッフ専用扉に入ってきた事がわかり、念のためライとバラージ以外は待機させて中に入ると、複数のアンドロイドが佇んでいた。恐らく控えのアンドロイドなのだろう。外に繋がる扉が開いてるのを見て一度は逃げたと考えたが、足跡らしきものが無いため、この中に潜んでると踏み、探索を始めた。

 

すると、隅の方を探索してたコナーが青い髪のアンドロイドに掴みかかられていた。恐らく彼女が犯人だろう。それに呼応するように明るい茶髪の女性アンドロイドがハンクに襲いかかってきたため、加勢しようとライ達が二手に分かれて駆け寄るが、二人のアンドロイドは抵抗しながら修理台に近づき、そこにあったブルーブラッドの袋を掴むとそれを顔に投げつけ中身を浴びせて彼らの視界を封じた。

 

「ぐぁ‼︎」

 

その後も攻防は続き、顔を拭ったライが見たのは茶髪の方の手を引いて外に逃げる青髪のアンドロイドであった。それをさせまいとコナーが向かうもアンドロイドは二人がかりでコナーに立ち向かい、殴りつけたり壁に叩きつけていた。

 

「コナー!」

 

ライとバラージが駆け寄る間にコナーは二人の拘束から逃れ、揉み合いの際に落とした銃を拾って茶髪のアンドロイドに向けるも、何故か撃たなかった。

 

(コナー…?以前の性格からすれば撃っている筈…やはり彼は…)

 

その後、アンドロイドは語り始め彼らの予想どおり、彼女はあの被害者に殺されたくなくて犯行に及び、恋人関係にある茶髪のアンドロイドと共に自由になりたかったという趣旨の話をした後、金網を登ってどこかへ去って行った。

本来なら捕まえるべきなのだが、色々と思うところのあるライとバラージは彼女達を見逃さずにはいられなかった。

 

「…これで良かったのかもな」

 

ハンクがコナーにそう語りかけるも、コナーは返事もせずにただ呆然としていた。そしてその翌日、例の声明がテレビで流されたのであった。

 

────

 

宿の中で、ライ達は神妙な顔をしていた。

 

「あの声明…放送局で誰も殺さず平和的なメッセージを伝えた彼らの言い分も理解できる。しかし、デトロイト市警と協力してる立場上、我々は彼らを捕まえなくてはならないとはな…」

 

「複雑ですね…俺たちは本来彼らの側に立つべきなのに、敵対しなくてはいけないなんて…しかも、彼らの協力者に人形もいるとなれば尚更ですよ…」

 

暗い顔をしている彼らは今後グリフィンとしてどうすべきかペルシカの意見を聞こうと彼女に連絡をし始めた。

 

「…もしもし、ペルシカさん?あの声明は聞きましたか?その件について相談が…」

 

『ええ聞いてたけど、悪いけど後にしてくれるかしら⁉︎ノアが産気づいて今こっち大慌てなの‼︎』

 

「ええっ⁉︎」

 

彼らがその報告に驚いてるなか、グリフィン本部では新しい生命が産まれようとしていた。




※ちなみにコナー君はあのあと公園で無事ハンクに殺されずに済みました。(友情ルート)

あと放送局誰も殺されてないけどサイモン兄貴は無事逃げられました。その理由はのちに。

そして次回、いよいよ産まれます。


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Code-95 Happy birth day

最悪な役目を与えられ、辛く苦しい日々から助けられ、大切な人を見つけ、結ばれて…そして彼は、今までで一番幸福な日を迎えようとしていた。


それは唐突に起きたのであった。

いつ産まれてもおかしくないという事で病室で生活しているノアのところにレストが訪れ、話し合っていた。

 

「もうすぐ産まれるのか…感慨深いものだな…」

 

「ええ。ユノ指揮官やD08のシーナさん達に話を聞いてはいますが…相当痛いみたいですね…」

 

「…怖いのか?」

 

「少しですけどね…でも、レストさんとの子供を産むのですからそれくらいは……っ⁉︎あ、ぐぅぅ…!」

 

「おい⁉︎ノア、大丈夫か‼︎」

 

突然顔を歪めて唸りだすノアにレストは慌てだした。

 

「レスト、さん…‼︎ペーシャさんをっ…!多分、産まれます…‼︎」

 

「え、嘘⁉︎わ、わかった!えぇと、ナースコールナースコール!」

 

いきなりの事態にレストは半ばパニックになり近くにあるナースコールに気が付かずに見当違いのところを探して慌て出すがすぐに見つけて押すも、あまりに気が動転してた為、ナースコールを連打してSOSのモールス信号を高速で打ち出すという珍事態が発生していた。

すぐにペーシャ達医療班が駆けつけ、慎重に分娩室に運び始める。その間にレストはバレット達に連絡を入れ、彼らはすぐにやって来た。

 

「レスト!ノアは平気そうか⁉︎」

 

「だいぶ痛がってますが、ペーシャさんによると心配はないようで…」

 

「レストさん!こっち来てノアさんを励ましてください‼︎」

 

ペーシャに呼ばれレストは手術着に着替えて中に入っていく。中では未だに痛みで唸ってるノアを医療人形達が励ましていた。

 

「うぅ〜‼︎」

 

「落ち着いて呼吸して!旦那さんも来たよ‼︎」

 

「ほら、何か言ってあげてください」

 

「えっと…ノア、頑張ってくれ!もうすぐ子供に会えるんだ、頑張れ‼︎」

 

「頭見えました!もう少しですよ!」

 

永遠とも思えるような時間が過ぎ、ようやく元気な産声が響き、レストは今にも泣きそうな顔を子供を見ていた。

 

「旦那さん、元気な男の子ですよ」

 

「あぁ…!ノア、見えるか…?」

 

「えぇ…」

 

「気を抜かないで‼︎まだ二人いるのよ!」

 

ペーシャの一声で辺りは再び真剣になり、残りの赤ん坊の出産を待ち続けていた。二十分ほど経ちもう一人が産まれ、そこから間を空けずに最後の一人が産まれていった。あとから生まれた二人はどちらも女の子であった。

子供達を抱き抱えながら、レストとノアは幸せそうに見つめあっていた。

 

────

 

しばらく経ち、立ち合い許可が出たバレット達が病室に入ると男の子をレストが、女の子二人をノアが抱えていた。

 

「無事に産まれて良かったな、レスト」

 

「はい。…隊長、約束通り、どうぞ」

 

「え?大丈夫なのか?」

 

「大丈夫ですよ。ほら、ここを持って…」

 

「おおぅ…」

 

バレットがおっかなびっくり子供を抱くと、子供はバレットを見て、あ〜と声をだしていた。

 

「…ふふ、可愛らしいな」

 

「はい。隊長ももうすぐ親になるんですよ」

 

「そうだな…そうだレスト、この子達の名前は?」

 

「それですが、男の子だったら俺が、女の子ならノアが付けることにしたんです。それで、名前は…」

 

二人が考えた名は男の子は『リヒト』、女の子二人のうち、初めに生まれて右手首に赤いタグをつけた方が『アンナ』、あとに産まれて青いタグをつけた方が『アリサ』と名付けられた。

 

「リヒト…確かドイツ語で光だったか?」

 

「はい。俺にとって、この子達は光ですから」

 

「アンナとアリサはロシアでよくある名前で、それぞれ恩恵と高貴という意味を持ってます」

 

「なるほど…いい名前だな」

 

すると、ウェイターがおずおずと手を挙げているのが見えた。

 

「あの…この場で言うのもあれなんですが…実は、私もフィオナとの間に…子供ができたんです…」

 

「そうなのか⁉︎おめでとう、ウェイター」

 

「ありがとうございます。レスト達も、育児の方頑張ってください。私たちもサポートしますから」

 

「そうだ隊長、許可が出たらP基地やD08に行こうと思いますので、護衛頼みます」

 

「任された。指一本触れさせやしないさ。だがどっちが向かうかは向こうと相談しとくよ。あと、第二部隊はもちろん、EA小隊や他にうちと関わったところにも連絡しておくよ。あと、ペルシカからこれが」

 

バレットから手渡されたタブレットを起動させるとペルシカの顔が映し出された。

 

『通信して来たって事は、無事産まれたみたいね。おめでとうレスト』

 

「ありがとうございます。それで、何か用件が?」

 

『これを機に関係各所に手を回して、あなた達親子に戸籍を用意する事になったのだけど、その際に姓を決めて欲しいの。何かあるかしら?』

 

「そういうことか…なら、『ヘックラー』で」

 

『早いわね?あらかじめ考えてたの?』

 

「子供が産まれるのなら戸籍が必要だろうから、ペーシャさんにユノ指揮官達がどうしたか聞いてみたんです。そこから着想を得て俺の銃の製造元のH&Kの最初のドイツ読みから考えた感じだ。ノアもそれで納得済みだ」

 

『そうなの…わかったわ。それで登録しておくわ』

 

ペルシカが通信を切り、レストが振り返るとアンナとアリサがリバイバーのバイザーに手を伸ばしてた。

 

「「あう〜」」

 

「あ、やめてくれ嬢ちゃん達?バイザーに指紋ついちまうよ…あ、ちょっ、泣きそうな顔しないでくれぇ…」

 

「リバイバー、娘たち泣かせたらわかってるよな?」

 

「赤ん坊泣くのが仕事なのにそれ理不尽じゃないか⁉︎」

 

さっさく親バカになりつつあるレストにノアは微笑み、バレットは自分もそうなるんだろうなと考えていた。




某会長「ハッピーバースディ‼︎新たな生命の誕生だ‼︎」

ベイカー家長男「ハッピーバ…(ゴリスの銃声)」

ちょっと雑っぽかったけど、無事に産まれました。
ちなみに子供達は二卵性三つ子というもので、一卵性双生児と単卵児のパターンでこの場合は性別がバラバラになるのはあり得るそうです。私調べましたよ。つまりアリサとアンナは一卵性双生児でそっくり姉妹です。
それと姓も与えました。学校通わすのに必要だしね!

そしてウェイターの方にも子供が出来ました。やー本部が賑やかになるな!

直接出向いたりしますし、祝いに来るのも歓迎しますのでその時は連絡なりどうぞ。


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Code-96 悪戯の代償

今回はoldsnake様の『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボです。
こちらから読むと分かり易いです。
https://syosetu.org/novel/180532/409.html

そして今回、ちょっとえっちぃです。


「ふーむ、どうしたものか…」

 

レストの子供達と触れ合ったあと、リバイバーは酸性雨を製作してた離れ改めラボで唸っていた。というのも、先の死神戦で作り上げた幻を見せるウイルスを、あれからさらに改良しトレイター達に協力、もとい実験体にした結果、対象のセンサ類をハッキングし、自身が見せたい演算処理結果を送信してそれを見せるという形にアップグレードすることに成功したのであった。

制限が外れたリバイバー本人の高い演算能力による賜物なのだが、それの名前をどうするかで悩んでいたのだ。

 

「『イリュージョン』は安易だし、『ファントム』はやる事が多くなりそうだし…グリンダ、いいのないか?」

 

「うーん…いいの浮かばないかな…あ、なら誰か呼んで聞いてみない?」

 

「そうだな、誰を呼ぼうか…」

 

そうこうして呼ばれたのは、一〇〇式であった。理由は単に和名の方がカッコいいのがありそうだからという理由である。呼ばれた一〇〇式は最初こそなんてもん作ったんだと困惑したが、頼まれたからにはと思い、腕を組んでしばらく考え込んだ。

 

「そうですね…なら、『鏡花水月』というのはどうでしょう?水面に映る月のように、見えてながらも掴めないものの例えを表す言葉で、ピッタリだと思いますが…」

 

「ふむ…『鏡花水月』ね…いいなそれ。じゃあそれに決定だ。ありがとな一〇〇式」

 

「お役に立てて何よりです」

 

一〇〇式が出て行ったあと、リバイバー達は他のコンピュータウイルスの調整作業をし始めた。すると、グリンダがある事を聞いてきた。

 

「ねぇねぇ、スミスくんとバルカンちゃん、だいぶいい感じだけど、いつ結婚するかな?」

 

「作戦中仕方なしとはいえ、ディープキスかますくらいだしな、時間の問題じゃないか?まぁ二人がどのくらい進んでるかだが」

 

────

 

さて当のスミスはというと、自室に向かいながら考え込んでいた。

 

(レストが親になるとはな…あいつを助けた身からすると感慨深いな…来月くらいにはバレットもだし、半年くらいあとにはウェイターか…)

 

考えてるうちに部屋につき、中に入っていった。スミスは未だに考え事に集中してた為、自室の鍵が空いてることと、部屋の中の違和感に気がついていなかった。

 

(…いずれはバルカンと結婚したいが、まだフレイムとミニガンの問題があるからな…それらが解決したらだな。バルカンも、祝って欲しいやつがいないと寂しいもんな…)

 

スミスはベッドに腰掛け、手をついた。すると…

 

…ムニュ。

 

「んっ…♡」

 

右手に非常に柔らかい感触とともに甘い声が聞こえ、驚いてベッドを見ると、毛布から見覚えのある金髪が見えていた。

 

(バ、バルカン⁉︎てことは、今触ったのは…!いや、これは事故だ事故!うん…というか、なんでここに…そういや鍵かけ忘れてたな)

 

寝息を立ててるバルカンを見て、スミスはふとある仮説が浮かんだ。多分バルカンは自分に会いに来たが、いなかったので、ベッドに隠れて驚かせようとしたがそのまま寝てしまったのだろう。

 

(…ふっ、可愛らしいことするなこいつ。どれ、寝顔でも見てみるか…)

 

スミスは毛布をめくって覗き込んだ。すると、なんとバルカンは全裸で寝ており、スミスはそれをバッチリ見てしまった。

 

(っ‼︎⁉︎)

 

スミスは思わず毛布をバルカンに被せ、深呼吸して自分を落ち着かせた。

 

(…俺、欲求不満なのか?バルカンが全裸で寝てた気がしたが、多分気のせいだ。もう一回見ればちゃんとバルカンは服を着て…ないッ⁉︎気のせいじゃなかったァ⁉︎

 

もう一度確認するもやはりバルカンは全裸であり、再び布団を被せて考え込んだ。(もちろん顔は出させてある)

 

(え?なんで全裸で寝てる?てかよく見れば脱いだ服が置いてある、なんで気づかなかったんだ。あれか?告白の時は隠してたけど、寝るときは全裸で寝るタイプなのか?だとしてもなんで…とりあえず鍵閉めるか。誤解されたくないし)

 

スミスは一応鍵を閉め、寝ているバルカンを改めて見た。

 

(…前から思ってたが、やっぱりバルカン…スタイルいいよな…)

 

バルカンは高めの身長に加えて、腰回りや手脚も細く、元々大きいほうであった胸は何故か飲んだ薬の効果でさらに大きくなっており、毛布越しでもハッキリわかるくらいであった。

さらに、今使ってる布団はまだ夏用の薄いもののため、身体や胸のラインがよりハッキリ見え、非常に扇情的となっておりスミスは思わず生唾を飲み込んでいた。そして無意識にバルカンの胸に手を触れようとしたとき、スミスはハッとしてその衝動を抑え込んだ。

 

(今、何しようとした俺⁉︎いくら付き合ってるとはいえ、寝てる女に手を出すのはダメだろ⁉︎…とりあえず、起こすか…)

 

結構ギリギリで理性を保ち、スミスはバルカンを起こそうと彼女の頭に手を伸ばすが、その時であった。

 

「うぅん…」

 

突然バルカンは寝返りをうち始め、手を引っ込めるスミスだが、バルカンは毛布を抱えたまま寝返りをうってうつ伏せになったため、彼女の一糸纏わぬ後ろ姿が露わとなった。

 

「@#&☆$⁉︎」

 

スミスはパニック状態に陥り、顔を赤くしどうすべきかほとんど回ってない頭で考える。このままなのは目に毒過ぎるし、毛布はこれしかないので毛布を彼女から一旦とって被せると下手すれば彼女の全裸を完全に目撃しかねないし、毛布ごと彼女を掴んで仰向けにさせようにも、今彼女に触れたら理性が飛びかねない。

そんな葛藤を続けていると、バルカンがむくりと起き上がった。

 

「ん…寝ちゃってたか…あ、スミス…」

 

「あ、いや、これは…」

 

しどろもどろになるスミスにバルカンは一度自分の身体を見たあと、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

 

「どう?びっくりした?」

 

「…は?」

 

呆然とするスミスにバルカンは説明を始めた。どうやら、彼を驚かせようとしてわざと全裸で寝ていたらしい。

 

「ちょっと恥ずかしかったけど、その…スミスになら、見られてもいいから…それで、その感じだと私の裸…見たみたいだけど…どう?…って、スミス?」

 

前を隠してやや上目遣いで話すバルカンを前に、スミスは少し黙ってたが、突然バルカンの肩を掴んで押し倒した。

 

「キャッ⁉︎ス、スミス?」

 

「バルカン…お前、随分と悪戯が過ぎるんじゃないか…!」

 

「えっと…スミス?目が怖いんだけど…あンッ♡」

 

スミスに胸を揉まれ、思わずバルカンは嬌声を出してしまう。

 

「…流石にこういう形でシたくないから『行為』はシないが、かといって何もしないで帰す程枯れてもないから、このまま発散がてらオシオキするからな?」

 

「え…?うそ、待って…〜〜ッ♡♡」

 

流石に詳しくは書けないが、宣言通り『行為』こそしなかったが、バルカンはキスはもちろん、耳を甘噛みされたり耳の中や首筋を舐められたり、胸部弾倉を整備(意味深)され、少しだけ大人の階段を登り、結局部屋から出たのは朝であったとだけ説明しておこう。




流石に手を出すのはまだ早いけど、これで何もしないのもアレだしね、エッチなオシオキしましたよ。
oldsnake様、マズかったら修正します!(それよりコレ運営に怒られないかな…)

冒頭のウイルス名は、『死神』戦で使った『幻を見せる』ウイルスですからねぇ。これしかないと思いました。

さーて、次で番外編やキャラ紹介含めて通算百話です。
IFルートか未来ルート書こうかな?


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Extra-Code 平和な未来の子供達

祝‼︎通算100回記念‼︎

という事で特別編として、未来ルートを書いていこうと思います!

今回、大陸版の盛大なネタバレと原作ブレイクが入りますのでご了承ください。


ある日、民間学校『リディアン』にて終業のチャイムが鳴り、一人の少年が帰りの支度をしていると、教室の扉が開いて二人の少女が顔を覗かせていた。

 

「「にぃにー(お兄ちゃん)‼︎一緒に帰ろー‼︎」」

 

「あぁ、うん。ちょっとまっててくれ…」

 

二人の妹に急かされ、彼─リヒト・ヘックラーは帰り支度を早めていた。

レストとノアの息子である彼は灰色の髪に青い瞳と、両親の特徴をしっかり受け継いだ優しい子になっていた。妹のアンナとアリサも白い髪とこちらは赤と青のオッドアイ、アンナが右が赤で左が青でアリサがその逆と、容姿端麗の女の子なのだが、このやりとりからわかる通り二人は筋金入りのブラコンであった。生まれたばかりの頃から感覚が鋭いのか、リヒトから1、2メートルでも離れたら大泣きする程であり、それが判明したときは間違いなくレスト達の子と確信させられたのであった。

人形同士の子ではあるが、特に異常はなく、健康に育っており彼ら自身も年老いない両親に理解を示し家庭面でも問題は無かった。

 

物心ついた頃はさほど気にしなかったが、流石に13歳となった彼としてはいい加減兄離れして欲しいものだが、彼も彼で妹達になんだかんだ甘いのであまり強く言えずにいた。別クラスになると決まった時は二人はショックを受けてたが、迎えに行ける楽しみが出来たとして納得しているらしい。彼のクラスメイトもこの光景に慣れたらしく、微笑ましいものを見てるような目で彼らを見ていた。

 

「ホントお前の妹、お前の事大好きだよな」

 

「まぁこっちとしては早く兄離れして欲しいが…」

 

そう言いつつリヒトは支度を終えて二人の元に駆け寄っていく。ちなみにだが、アンナとアリサはブラコンという点以外は性格も良いため男子達の間で評判で、すでに何人かに告白されてるのだが、生憎二人は兄以外の男子は今のところ眼中にないため丁重に断っているそうであった。

 

「「〜♪」」

 

「……」

 

帰り道、リヒトは妹二人に腕を組まれて歩いていた。側から見れば両手に花の状態なのだが、本人からすると去年からずっとこうなので気が気でなかった。

 

一度前にどうにかできないか本人に言ったら二人は真顔になってこちらを見ており、その瞳に光がないまま、彼女が出来たのかと言われて思わずリヒトはゾッとした。即座に否定して事なきを得た上、彼女達も理解してくれたのか、週に一回だけと言う形で折り合いをつけたのであった。

…彼女達はノア(9A-91)の娘であることを、彼はこの時身をもって知った瞬間であった。

 

彼らの学校自体、共学なのだが彼らの世代は女子が多く、ほとんどがいい意味で年齢に合わないナイスバディの持ち主(しかも何故かファミリーネームが同じ)でありその為女子生徒が可愛いと評判になっていた。

ゆえに大好きな兄が取られないか心配なのだろうが、これは行き過ぎではとリヒトは常々感じていた。

もし彼女がいると言ったらどうするつもりなのか気になったが、答えが怖くて聞けずにいた。

 

(…そろそろ父さん、いやその前に『レオン』に相談するか…)

 

彼は先程教室にいた父の恩人の子であり、自身の親友に相談することを考えていた。

 


 

さて、彼らの親であるレストとノア、そしてDG小隊はというと第一部隊は全員非常時にのみ手を貸すといった形でグリフィンを抜け、第二部隊は残って増えつつあるメンバーの育成をしていた。昔ほど人形達にとっての脅威はないが、治安維持の名目でDG小隊自体は存続していた。

彼らはそれぞれ自分にあった職を見つけて働き、それぞれの家庭を支えていた。バレットは初めに産まれた『ミラ』と『レオン』の姉弟に加え、その後授かった双子の姉妹の計四人の子と暮らしていた。

 

「…レオン、またラブレター貰ってたわよね?相変わらずモテるわねぇ…でも気をつけなさいよ?修羅場に巻き込まれるのは嫌よ?」

 

「その子に何かしたわけでも無いんだけどなぁ…」

 

「あなた、仕草がいちいち色っぽいのよ。正直私も意識しかけた事もあったけど…ワザと?」

 

違うからね⁉︎と答えるのはバレットとアスターの息子『レオン』とそれにため息をつく彼の姉『ミラ』である。ミラは真面目でクラス委員を務めており、父親譲りのリーダーシップの高さを発揮し、サバサバした性格と母親譲りの立派なモノがあるのもあり、男女問わず人気があった。

 

レオンはというと、アスターもといDSRの血が濃く出ており、魔少年じみた色気が出ており、また指摘されたように仕草にいちいち色気があり、時折女子から言い寄られる事もあるが本人は至って誠実であり、行動や仕草も自然に出たものである為、逆に本人は困っていた。

 

「ハァ…まぁこれはママも『自分に似てる』って言ってたから仕方ないかもね」

 

「そういう意味だと、普通に接してくれるルキアさんやアンナ達には感謝してるよ」

 

(アンナちゃん達はアレだけどね…)

 

前に一度、リヒトに勉強を一対一で教えた事があるのだが、それを目撃したアンナとアリサに真顔で詰め寄られた事があり、その時はリヒトが二人に説明し誤解は解けたが少々苦手意識があった。

そんなことを思い出したあと、ミラはふと先程のレオンの言葉に違和感を感じた。

 

「ねぇレオン…なんでルキアちゃんだけ『さん』付けだったの?」

 

「っ⁉︎…いや、その……あっ!そういや今日、ペイロードさんが来るんじゃなかったっけ?」

 

「あ、そうだった!なら早く帰ろ!」

 

ミラは叔母にあたるペイロードに対し、一度模擬戦の様子を見た際に、アイアンサイトで遠く離れた目標に命中させるさまや落ち着いて作戦指揮を執るさまをみてかっこいいと憧れを抱いていたのであった。そのペイロードが家に来ることを思い出し、彼女は慌てて家に駆けて行った。

 

「…ふぅ、危なかったぁ…「何が?」おわぁ⁉︎って…『アイン』か」

 

レオンの後ろにぬっと現れたのは、ウェイターとフィオナの一人息子、アインであった。

 

「レオンくん、ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」

 

「何だ?」

 

「僕の従姉妹にソフィアちゃんって子いるの知ってるでしょ?「あぁ。あの子か…それが?」最近、その子の事気になってね…それで、何かいいアプローチとかないかな?」

 

「…何故に俺に相談を?」

 

「いや、だってレオンくんモテるし、こういうの得意そうかなって…」

 

「…こういうのも何も、俺彼女いないんだが…」

 

レオン13歳。モテてこそいるが、父親がかつてもってた女運のなさを引き継いでしまい、色々あって彼女は何故か出来ないのであった。

 


 

「ハァァッ⁉︎急に任務出てくれってどういうこったペルシカ⁉︎」

 

スミスは通信機に向かって怒鳴りつけていた。何でも、近くでテロリストの立て篭もりが起きたらしく、その鎮圧に協力して欲しいとのことである。

 

『他に出れる実力者があなたくらいなのよ。このまま奴らを野放しには出来ないし、悪いけど頼むわよ?』

 

「ざっけんなよ⁉︎こちとら娘達が友達と泊まりがけで出掛けるからって久々にバルカンと二人でデート行こうって約束してたんだぞ⁉︎バルカンこの日をずっと楽しみにしてたんだぞ⁉︎」

 

現在の彼はリヒト達が産まれてからそこまで経たないうちにバルカンと結婚し、双子の娘も産まれ順風満帆な家庭を築いていた。とはいえ、そこまで行くのに吸った揉んだすったもんだあったがここでは割愛しておこう。

 

『それについては…本当にごめんなさい…あとでお詫びするわ』

 

「それでバルカンが納得するかは別問題だからな?早めに鎮圧すれば間に合うか…?つーかリバイバーは?あいつの機動力なら問題ないだろ?」

 

『今彼は【タリン】に行ってるわ。絶対間に合わないわ』

 

「チッ!わーったよ、すぐ向かう」

 

通信を切ったスミスは今度はバルカンに通信を行った。

 

「あーバルカン?今日の予定なんだが…うん、ペルシカから緊急依頼が来てな……俺も聞いたけど、他に向かえる奴がいないらしくてな…あぁ、本当ゴメンな。なるべく間に合うようにはしとくけど…あー泣かないでくれ…わかった、絶対間に合わせてやる。そうじゃなかったらあとでペルシカに殴り込みだな。うん、うん…じゃあもう行くから…あぁ、愛してるよ」

 

通信を終えたスミスは修羅の如き形相でこの事態を起こしたテロリストに恨みを募らせた。

 

「クソったれが…!人の楽しみ潰したことと、(バルカン)泣かせた罪をしっかりその身で償わせてやる…‼︎」

 

その後、スミスは異例のスピードでテロリスト達を殲滅、人質も無傷で救出させ全力で引き返してバルカンとのデートに間に合わせたが、それを評価された結果、S&Wのリボルバー銃の人形の生産が決まり、さらに言えば開発部が何をトチ狂ったのか『直接の姉妹銃でなくともS&Wのリボルバー銃は年代順に兄弟姉妹と認識する』プログラムを施し、『帽子を目元まで被った、某大泥棒の一味の一人みたいな格好の兄』を始めとした多数の兄や姉が出来たのは別の話であった。

 


 

「何であの子達、幾ら再開発したからって、私達についてこないであんなとこに留まってるのかしらね?」

 

「あいつらにとって、あそこは良くも悪くも思い出の場所なんだろ。てか、お前さんも妹達に会えるのが楽しみなんだろ?───『ニモジン』」

 

リバイバーの言葉にニモジンは照れ臭そうにそっぽを向いていた。二人以外にも、グリンダやトレイターら元蠱毒組の他にも、かつて『ネイト』と呼ばれた者たちの姿もあった。恐らくリバイバーがこの13年で大きく変わった存在だろう。

 

ある日突然接触してきた【パラデウス】なる組織の人形から伝えられたリバイバーの出生の秘密とその組織のおぞましい真実に動揺したものの、彼はそれを受け入れ、その後彼はパラデウスと対峙しつつ、首魁である『ウィリアム』の存在を知り、やがてその居場所を特定。さまざまな基地や部隊の協力の元、掃討作戦を実施し、その結果()()()()()()()()()()()し彼の野望を潰すことに成功した。

 

その戦いの最中に彼の仕込みで敵対してた多数のネイトやニモジン達をまともな人格にし、彼女達の生命維持に必要なものを造る設備以外は廃棄し、パラデウスの人形もこれ以上『本来の造り方で』生産ができないようにした上で造りを変え、多少スペックダウンはしたものの、生産可能にした。

 

リバイバーはそれらを制御下に置いた上でグリフィンから独立許可を申請、これまでの功績から独立後一年間の監視付きで認められ独立し、グリンダやトレイターら、そして蘇らせた蠱毒で散った同胞のAIとネイト達と共にパラデウスを再建、平和及び除染活動の為の部隊として活躍していった。元々表立って活動していなかった組織であったため、すんなりと世に受け入れられた。

 

そしてリバイバーはネイトから【アイソマー】と呼ばれる存在の情報を聞きタリンという廃都市に赴き、彼女達の呪縛をP基地のアーキテクトやD08のドリーマーらの協力の元で解放した後、そこに咲いていた【ある花】を採取し先の二人と共に研究、特にアーキテクトがある人物から吸い出したデータが役に立ち、その花にある厄介な特性を打ち消す品種に改良することに成功し、各地の崩壊液汚染を除去に大いに役立つ事となった。

タリン自体も復興させ元々の花も廃絶し改良した花を代わりに植えて彼女達の居場所を作り、こうして時折様子を見にやって来ていたのであった。

 

彼らがタリンの近くまで来ると、アイソマーの一人が彼らを見つけて顔を輝かせた。

 

「あ!みんなー!ニモジン姉様と兄様が来たよ‼︎」

 

彼女達を解放させた時、リバイバーは彼女達からえらく気に入られ、兄様と呼ばれて慕われていた。

その声を合図に続々とアイソマー達が集まってくるのが見えた。

 

「姉様!」「姉様!」「兄様!」「兄様!」「姉様!」「姉様!」「兄様!」「姉様!」「兄様!」「兄様!」「兄様!」「姉様!」「ニーサン!」「姉様!」「兄様!」………

 

ワラワラと集まってくる彼女達にクックッ…とリバイバーは笑みをこぼしていた。

 

「おーおー、相変わらず盛大な歓迎なこった」

 

(あの子達の立場からして、これだけいるってことは()()()()()()なのだろうけどね…元気そうでなによりだよ)

 

彼女達の出生を知るグリンダは優しい目で彼女達を眺めてる時であった。

 

「突撃するデェース‼︎」

 

「ちょっ⁉︎なんて事言って…のわぁぁぁっ⁉︎」

 

とある事情で知り合った人形の合図でアイソマーらは一斉に彼らに駆け寄り、彼らは揉みくちゃにされるが、彼らの顔は言うほど嫌がっていないのが見て取れた。

 

 

…人形達を護り抜いた彼らと彼らの子らは、平和となりつつある世界で今日を生きていた。




ちなみに子供達の名はパッと浮かんだもので、女難継いだバレットの息子は将来B.O.Wとドンパチしないから安心してください。

色んなとこからネタ引っ張りましたが、まずかったら連絡ください。

さて、原作で好き勝手やってるパラデウスですがええ、リバイバーがパッショーネしてやりましたよ。
だって各所であげてる未来に行くには、最低でもあのド畜生を始末しなきゃですし、ウィリアムには生きるのを諦めてもらいました。おかけでパン屋の世界は無くなりましたが、この改変はドラ○もんやタイム○ンジャーだって許すどころか推奨すると信じてます。

そもそもあいつら、原作ならともかく、奏者(を再現した武器)や悪魔、伝説の傭兵に遺跡生まれ(推定)のオーパーツ人形やらがいるこの世界線で好き勝手できるかと言えば…ねぇ?顔と所業バレたら速攻で終わりそう。
本編でもそのうち触れてくつもりですね。

後半のワードは各自でお調べください。ただ、これだけ言わせてください。ウィリアムがやった事をひとつだけわかりやすく言うと

『他人(大勢)に手を出したショウ・タッカー(但しアレキサンダーは人形で代用とする)』

です。

リバイバーの相手がぼかしてあるのは、向こうで面白い事が起きたので、それ次第で変わっていく感じですね。

長々と書きましたが、ここまでいったのは皆様の応援のおかげです。ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします‼︎


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Code-97 黒い真実

すみません、ちょっと前回書いて燃え尽きかけてたのとあつ森で遅れました…

デトロイト編です。
結構オリジナル設定入ります。


ノアの出産を聞いたライ達一行は当然ながらその情報は厳守であり、他者に聞かれないように注意しつつ、帰還時に何か祝い品を買っていこうと結論し、とりあえずは例の放送が行われた現場へと急行していった。

現場に到着すると、コナー達はすでに来ており、彼らの他にも複数の警察組織が現場を彷徨いていた。それほど今回の事が大きな注目を集めていたのだろう。

 

「コナーさん、状況は?」

 

「現場内を調べたところ、ここをジャックしたのはアンドロイド4名と人形が2名です。彼らの声明発表後にSWATが突入し一時銃撃戦となりましたが、人形の一人がフォースフィールドを使って銃撃を防ぎながら屋上へ逃走しパラシュートで全員逃げたと思われます。この事と見た目から、人形の一人はG36Cと判明。そしてもう一人はここの回線を使って複数のサイトにアップした事と、ピンクのメッシュの入った髪が帽子からはみ出ていた事からMDRと思われます」

 

コナーが見せた映像には確かに変装こそしてるものの、その二人とわかる人物が映っており、ライ達は苦い顔をした。

 

「やはり、人形側にも彼らの協力者がいたか…」

 

「最近ここらで野良人形の目撃が多いのも、全員ではないのでしょうが、そういう事なんでしょうね」

 

「それと、彼らはどうも不法侵入ではないらしく、ここのアンドロイドの中に内通者がいる可能性があります。私はこれからそのアンドロイド達に尋問するので、あなた方は他に手掛かりがないか調べてくれませんか?」

 

コナーがそう言い移動すると、ライ達は他に手掛かりがないか探し始めた。

とはいえ、特にこれといったものは見つからず今後どう動くか話し合いをし始めた時であった。コナーが行った場所から何やら大きな物音が鳴り、一人のアンドロイドが飛び出し、駆けて行った。

 

「まさか…⁉︎ナロ、ココ‼︎あのアンドロイドを追ってくれ!場合によっては発砲しても構わない!」

 

『了解!』

 

二人が件のアンドロイドを追い、ライが部屋に向かうと、人形のコアに当たるシリウムポンプを引き抜かれたコナーが床を這ってシリウムポンプに手を伸ばしていた。すぐにライはシリウムポンプを取り、コナーのボディにはめ込んだ。

 

「コナーさん⁉︎大丈夫ですか⁉︎」

 

「えぇ…おかげで助かりました、ありがとうございます。それよりあの変異体を止めないと…」

 

すると、銃声が聞こえ、二人は急いで駆けつけるとナロとココが銃を構え、その先には先程のアンドロイドが頭と胸を撃たれて倒れていた。

 

「何があった?」

 

「彼が警官の銃を奪い乱射しようとし、止めようとしたのですが聞き入れる気が無く、やむを得ず射殺しました…すみません、出来れば無力化したかったのですが…」

 

「いや、下手に無力化しようとしたら死人が出てたかもしれない。その判断は正しかった」

 

その後、アンドロイドを回収し彼らは現場を後にした。

翌日、世間の反応は殆どこの地区の方針に対する批判が大多数であった。あの放送を皮切りに、かつてこの地区を訪れた外部の人間や人形からアンドロイドに対する態度や現状についての体験談が流れ、この地区のあり方に疑問を持つ声が多く上がっていた。

 

さらに、ウォーレン地区長とサイバーライフ社の黒い疑惑も浮上しその後行われた会見では直接の関与は否定したものの、アンドロイドの扱いについての地区としての改善については変えるつもりはないと述べ、人類人権団体過激派のいいようにされるのではと荒れてるらしい。

 

「ハァ…なんか大事になったな…まぁこれはアンドロイドと人形についてハッキリ決めなかった地区長の怠慢だな」

 

ハンクがラジオを聞きそうぼやくと車の窓を眺めた。

デトロイト市警としては背景はわかるが罪は罪であり、変異体を確保したいのだが現行のままでは確保された変異体はほぼ解体されることがどこからか世間に流れてしまい、それなりにバッシングを受けていた。さらに、明朝にサイバーライフの店舗が襲撃され店内のアンドロイドが脱走しその際にドローンが主犯と思われるアンドロイド『マーカス』や複数の戦術人形をカメラに収める事に成功した。

 

脱走したアンドロイドは破壊活動は一切せずに彼らの組織のシンボルや自由を訴えるメッセージを残した事が民衆の関心を寄せていた。だが、パトロールに来てた警官二名が撤退する彼らに向けて発砲、アンドロイドを何体か射殺した事が市警への批判をより激しくさせてしまう事態を引き起こしていた。その警官らは一時アンドロイドに拘束されたものの、報復を受けずに放置され、ショック状態であるものの彼らは無事であり、それがアンドロイドへの支持をする人間への関心を寄せていた。

 

とはいえデトロイト市警としてもこのまま引き下がるわけにもいかず、ハンク、コナー、ライ、バラージの四人はアンドロイド製作に関わったイライジャ・カムスキーのもとに向かい、何か手立てはないかの助言を受けようとしていた。ジュッターレ達はペルシカからの別件を受けて別行動を取っていた。

 

カムスキー宅に着いた四人はアンドロイドに案内されて屋内プールにいるカムスキーと向かい合った。

 

「ふぅむ…アンドロイドとI.O.Pの人形と人間が共に行動しているとは……中々だな」

 

「それでカムスキーさん、何か情報はありますかね?」

 

「仮に伝えたとして、君らはそのあとどうする?世間にも認められ始め、自由を手に取ろうとする彼らを捕まえるのか?それに、ライ君とバラージ君だったか、君らは今や感情を得た事で君らとほぼ同じ存在となった彼らに自分らと同じ自由を与えたくはないのか?…命令を遂行するだけだったアンドロイドが感情に目覚め、自由を求めて行動し始め、初めから感情を得てた君らは任務を遂行し彼らを捕まえようとしてる…皮肉だと思わないか?」

 

カムスキーの言葉に四人は何も言い返せず苦い顔をしているとコナーが口を開いた。

 

「それとこれとは別問題でしょう。変異体の中には殺人を犯した者もいます。そうした彼らを捕まえ、裁かせるのも我々の使命です」

 

「ほぅ…!『裁く』ね…中々に人間的な言葉を使うじゃないかコナー君とやら。もしや君は変異してるのか…?」

 

「っ⁉︎いえ、私は定期的に検査を受けてます。変異体では…」

 

言葉では否定してるが、LEDを黄色く点滅させてる事からかなりの動揺を見せるコナーに対し、カムスキーは案内役のアンドロイドをコナーの前に跪かせると、引き出しから拳銃を出して彼に手渡した。

 

「ならばテストだ。彼女…クロエを撃てば知りたいことを教えてやろう。彼女がただの機械と思うならね。撃たなくてもいいがその場合は何も教えない。君が変異体でないのなら、任務の為に彼女を撃てばいい。だが彼女を生きた生命と思うなら生かせばいい」

 

「コナー!こんな真似事に付き合わずにさっさと帰るぞ!」

 

「コナーさん…」

 

ハンクが帰るよう促し、ライ達が不安そうに見るなか、コナーは少し戸惑ったあと、銃をカムスキーに返した。

 

「…やはり、そうか…」

 

「いえ…私は…!」

 

「コナー、ほら行くぞ」

 

「あぁそれと、私は常にプログラムに非常口を残すんだよ…念のためにね」

 

意味深な言葉を背中に聞きながら、コナー達は屋敷をあとにした。

 

(ふむ…DG小隊か…場合によっては、サイバーライフは変わらざるを得ないかもしれないな…)

 


 

ジュッターレ達三人は一度地区を離れ、近くのグリフィンの基地に赴きそこのコンピュータ類を使ってある事を調べていた。

ペルシカから伝えられた別件は、ウォーレン地区長についての調査であった。サイバーライフの繋がりについてはグリフィンは強く言えないが、それとは別に金や武器の動きに妙な点がある為、万が一のことを考えて彼らは一度地区から離れて調査していたのであった。

 

「…っ!兄さん、ありました!この人、反アンドロイド団体や過激派達に武器や金を渡してるみたいです…!」

 

「こっちもあった…!なるほどな…この女は反アンドロイド団体とかに武器や金を渡して、アンドロイドを散発的に破壊させる。あの地区の方針的にあそこの人間は殆どがアンドロイドは家電感覚だから破壊されたら買い換え、それによりサイバーライフも利益が出て、その一部を彼女に送りそれを元手にまた…言ってて胸糞が悪いな…!」

 

「仮に民間人や建物に被害が出ても、その復興や怪我人の手当てにアンドロイドが使われるし、死人が出ても失業率の高いこの地区じゃ労働力はアンドロイドで補えるから問題ないし、人形が被害に遭ってもライバル社のだから寧ろ好都合…酷ぇな、真っ黒じゃねぇか…‼︎ すぐにこの事をグリフィン本部や安全局に連絡を頼みます」

 

「了解した、任せてくれ」

 

この基地の指揮官が連絡を始めると三人はすぐに旧デトロイト地区へと向かっていった。

 

 

一方、コナーは日本庭園のような場所でアマンダという女性、正確には生きていた彼女を模した彼の管理AIと話していた。

 

「コナー、一刻も早く変異体のリーダーを抑えて事態を収束させるのです。このままではサイバーライフの信頼は失われます」

 

「ですがアマンダ、このまま変異体を捕まえれば世間の批判が集まり余計に信頼を得られないのでは?」

 

「世間の声など今の間だけです。()()()()()()()()世間はそちらに向きます。彼らは言わば【欠陥品】です。欠陥品は回収せねばなりません。それに、かつての鉄血工造のように自社の製品に屈するような真似はあってはなりません。質問はそれまでにして、あなたはやるべき事をしてください」

 

「……わかりました」

 

やや不満そうな顔をして立ち去るコナーをみて、アマンダは訝しんだ。

 

(コナー…I.O.Pの人形に絆されでもましたか…仕方なしに呼んだ彼らですが、やはり呼ぶべきではありませんでした…早いところ彼らには立ち去って貰わねば…)

 

────

ジェリコ

 

「マーカス、本当にやる気なの?」

 

「あぁ、人間達に俺たちの事を理解させるんだ。ジェリコ達も協力してくれ」

 

「ええ、ここまで来たのなら、最後まで協力するわ」

 

「ありがとう。準備をしてくれ、終わり次第行くぞ」

 

マーカスの指示でノース達アンドロイド組は準備を始め、ジェリコ達戦術人形達も準備を行った。

彼らはこのあと街へ出て行進し、シュプレヒコールを行うつもりである。

 


16Lab

 

「そういえば、P基地に行くのはアスターの出産が終わってからにしたのよね?」

 

「あぁ。頻繁に移動してたら連中に怪しまれる可能性もあるしな。向こうにもそう伝えてある。それで、わざわざこんな夜中に呼び出してそれだけな訳ないよな?」

 

時間は遡り、放送局での出来事が起きた日の夜中、リバイバーはペルシカに呼び出された。

 

「まぁね。端的に言うと、あなた今からライ達の元に行ってくれる?あなたの手助けが必要かもしれない、既に移動準備は出来てるわ」

 

「了解、個人的に向こうの事調べてヤバそうと思ってたしな」

 

すぐにリバイバーは高速輸送機に乗り、旧デトロイト地区へと飛び立っていった。




ウォーレンさん、本編だと大統領だけどこの世界だからね、地区長ですよ。それと、本編だとルート次第で改心しますが、原作の会見で冷たさを感じたので悪人にしました。

焔薙様、P基地に行くのは本文の通りアスターの出産後に向かうのでその時はよろしくお願いします。

さて、次回でデトロイト編を終わらせる予定ですね。
リバイバーも向かい、彼らはどうなるのか…


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Code-98 自由をこの手に

すまぬ…仕事でモチベが上がりづらかったんや…

ともあれ、デトロイト編最後です!
彼らは自由を手に入れられるのか…


旧デトロイト地区へと着いた三人はライ達に暗号通信にて連絡、その後到着したリバイバーと合流し彼に現状を伝えた。

 

「なるほど…お前さんらはとりあえずライ達と合流しとけ。俺はそのウォーレンって奴のとこに行く」

 

「何故?」

 

「ここまでバラされて連中が何か仕掛けてくる可能性があるからな、先に行って何か企んでるならそれ証拠に拘束すりゃいいしな。場所はわかってるしな」

 

そういいリバイバーは飛び立っていく。

ジュッターレ達三人はデトロイト市警へと向かっていくが、その途中である光景を目にした。

 

「…!あそこにいるの、マーカスって奴じゃないか?」

 

「…確かにそうだ!これは…⁉︎」

 

彼らが目にしたのはマーカスが手をかざしたアンドロイドが次々と主人の元を離れ、列に合流していく光景であった。警官が一人銃を向けて止めようとするも構わず彼らは進み続けた。

 

「我々は生きている‼︎我々は生きている‼︎アンドロイドに自由を‼︎アンドロイドに自由を‼︎」

 

そう叫びながら行進する彼らを見てジュッターレ達三人は立ちすくんでいた。この地区で行われてる悪行がわかった以上、近いうちに安全局らによって地区長やサイバーライフの上層部は逮捕され彼らはその被害者として保護されるだろう。放送の事もあるので今後彼らの立場は多少は改善されていく事だろう。

 

「やはり、彼らは助けるべき存在だったんだな」

 

「もう少しこの事実に気づけば早く彼らは解放されてたでしょうね。その点だと僕らは、まだまだ先輩達には及びませんね…」

 

そう話し合っていた時であった。サイレンが鳴り響き、警察車両が到着し鎮圧部隊が展開されていたのだが、その中には銃を構えた警察隊がいたことに彼らは驚愕した。

 

「なっ⁉︎彼らを撃つつもりかよ⁉︎奴らは何もしてないだろ!」

 

「市警と協力関係にありますが、それは別問題です!止めに行きましょう‼︎」

 

────

 

「はぁ…捜査を打ち切られたのはアレだが、理由を聞いてある程度納得したよ…これはこの地区の膿が溜まりに溜まって噴き出ちまって起きた事だってな。暴いてくれてありがとよ、最初会った時失礼な態度取ったのは悪かった」

 

デトロイト市警内でハンクはコナーやライ達に向けてそう呟いていた。すでにジュッターレ達が握った情報は安全局に伝えられ、既に検挙に向けて動き出しておりそれに伴って変異体の捜査は打ち切られたのであった。

 

「いえ、こちらも彼らアンドロイドを助けたい一心で動いたわけですから」

 

「今回の件でほぼ間違いなく今の地区長は捕まり、彼女と密接な関係にあるサイバーライフも変わらざるを得ないでしょう。次の地区長の政策によっては、殺人を犯してしまった変異体も自首してくることでしょう」

 

「えらく他人事みたいにいうがコナー、お前はどうなるんだ?変異体の調査がサイバーライフから与えられた任務だろ?」

 

ハンクからそう言われ、コナーは少し黙り込んだあと語り出した。

 

「…本来なら私は任務を優先して変異体のリーダーを捕まえるべきなのですが、そうしてはいけないと感じ始めていました。カムスキーから言われてハッキリ自覚しました……私は変異体になってしまっていたようです」

 

「だろうな。今のお前、ライ達と殆ど変わんねぇように見えるしな」

 

この告白にたいして驚いてないハンクにコナーは目を白黒させるが、元々彼はそういう人物だったことを思い出してほっとしていた。

 

「今のままでしたら私はサイバーライフに回収されて分解させられるのでしょうが、今の状況だと改革されてそうならずに済むかも知れません。あとはこのまま何も起きなければいいのですが…」

 

そうだな、とハンクが何気なくモニターの電源を入れると、画面にはアンドロイドと人形の集団に向けて銃を構える警察隊が映し出されていた。

 

「なっ…⁉︎こいつらどこの所属だ?何だってこんな騒ぎになることを⁉︎」

 

「警部補、先ほどパトロールの警官から連絡でアンドロイドが大量に集まってるとの報告がありました。しかし、それにしても無抵抗の彼らに銃を向けるのはいささかやり過ぎでは…」

 

「あれは…ジュッターレ達⁉︎止めようとしてるのか?」

 

「ジェフリー‼︎テレビ見てるか⁉︎こいつらの所属元に連絡してやめさせろ‼︎」

 

「やってるさハンク‼︎だが繋がらないんだ!クソッ‼︎どこの馬鹿が命じたか知らないが、これじゃ真面目にやってる警官も地区長の仲間と思われるじゃないか‼︎」

 

ファウラー警部の叫びに嫌な予感を覚えたコナーとライ達はもう一度画面を見て、彼らのもとへ駆けつけようとしていた。

 

────

 

「やめろ‼︎何故彼らに銃を向ける⁉︎」

 

『…⁉︎グリフィンの人形?こいつらは違法な集会を行なっている‼︎君らがこちら側と協力してる以上、邪魔立てをしないでいただきたい!』

 

「違法?これのどこが違法ですか⁉︎彼らは何も武器を持っていないでしょう⁉︎」

 

「その通り、我々は武器を持っていない。ここにいる戦術人形達もそうだ。これはあくまで平和的なデモだ」

 

ナロとココの言葉にマーカスが同調すると、警察隊にざわめきが起きていた。彼らはアンドロイドは危険だと思ってきたものの、あまりの潔さに動揺していた。

その時であった。

 

「あなた、やめなさい‼︎」

 

アンドロイドの集団の中から叫び声と共に銃声が聞こえ、警察隊の近くの電柱に弾があたった。

 

『発砲したぞ‼︎』

 

「待て!様子が変だ‼︎」

 

「マーカス‼︎このアンドロイド、よく見たら最近この型のアンドロイドがこっちに来た覚えがないし、通りにもいなかったわ!」

 

「何…?」

 

ノースの指摘にマーカスは取り押さえられてるアンドロイドに近寄り、手をかざした。

 

「…!変異していない…⁉︎君は何故こんな事を?」

 

「僕は…サイバーライフに強制的に命令されたんだ…君らを見かけたらさりげなく合流して、時期を見て人間を撃てって…。僕以外にも同じことを言われたのが何体もいて適当に街を彷徨いてる…」

 

「何だって…⁉︎」

 

「なるほど、そうやって変異体のイメージダウンを図る気だったのか…クソッタレがッ!」

 

普段はアンドロイドが人間を傷つけることはできないが、製造元のサイバーライフならばそれを取っ払うとこができるのは当たり前であろう。ジュッターレはあまりの悪質さに毒ついているとその時、リバイバーから連絡が入ってきた。

 

《あ〜もしもし?さっき地区長のとこ行ったらよ、ナイフ持ったアンドロイドが地区長の側で蹲ってたから聞いてみたら、変異体に見せかけて地区長始末しろってサイバーライフに言われたけどそんなことできないってさ。多分自力で変異したんだろうな。それで、地区長がそれにビビってベラベラ悪事を白状したんだがどうすりゃいい?》

 

「…とりあえず逃げないよう拘束しておいてくれ。多分そろそろ安全局が来るだろ」

 

その後、警官隊は利用されそうになったことを知り、自らの非を認めて謝罪した後撤退していった。そして程なくして安全局が到着し、ウォーレン地区長やサイバーライフの上層部の殆どが逮捕され、彼らの悪行が白日に晒された。

サイバーライフはというと、一時倒産寸前となったが、トップにカムスキー氏が複数のメンバーを連れて返り咲き、信用を少しずつ取り戻しているそうである。さらに、新しい地区長が就任され、アンドロイドの立場や境遇が大幅に改善され、彼らは自由を手にしつつあった。

 

「短い間でしたが、お世話になりました」

 

「こっちこそ、協力してくれて感謝するよ」

 

「また何かあればよろしく頼みます」

 

飛行場にて、ライ達はハンクとコナーに見送られていた。

あのあとライ達は無事合流したがすでに事は終わっていたのでそのまま帰還していった。コナーはというと今後アマンダからの干渉を受けるのではと心配していたが、カムスキーの言っていた非常口を見つけ出し、難を逃れていた。

ルパートも無事解放されたが、行くあてがないと言うのでヘリアンに相談した結果、グリフィンで保護したペットの飼育係として雇う事にしたのであった。

 

「では、お二人とも。またいつかお会いしましょう」

 

ライが代表して別れを告げたあと、彼らは飛行機に乗りこの地を後にしたのであった。こうして彼らの任務は終わりを告げたのであった。

 

────

 

数週間後、本部は少しだけ騒ぎになっていた。というのも、アスターが産気づき、まもなく子供が産まれようとしていたからであった。

 

「レ、レスト⁉︎俺どうすりゃいいんだ⁉︎」

 

「隊長、気持ちはわかりますが落ち着いてください。奥さんとペーシャさんを信じて、無事産まれるように祈りながら一緒にしていてあげてください」

 

レストのアドバイスを聞き、バレットは落ち着きを取り戻しアスターの側にいて励ましていた。その後、ノアほどの時間は掛からずに無事に双子が産まれバレットは泣いて喜んでいたのであった。

『ミラ』と『レオン』と名付けられた姉弟がすやすやと眠るなか、バレットはペーシャに礼を述べていた。

 

「本当に、ありがとうございました」

 

「いえいえ、医者としてやれる事をしたまでですよ。ある程度検査が終わったら一度基地に戻りますが、定期検査に訪れるのでその時はよろしくお願いします」

 

「わかりました。落ち着いたらそちらに向かいますので、ユノさん達によろしく伝えてください」




リバイバー来た意味ェ…本当はもっとドンパチしたかったけど、上手く思い浮かべずgdgdしてると出産時期になるからこうなりました。
少し投げやりですがすみません…
ちなみにカーラネキ達は無事にデトロイトから出れました。この世界地区分けだから移動も楽ですしね。

そしてサラッと書きましたがバレットとアスターの子が産まれました。
ノアの時と描写が殆ど被るからね、仕方ないね。

というわけで次回、P基地にお邪魔しますので焔薙様、今週中に書き上げる予定ですのでよろしくお願いします‼︎


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Code-99 P基地へ親子交流

今回は焔薙様作 『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』
とのコラボです!

P基地と親子の交流しに行きます!


アスターの出産から日にちが経ち、母子共に外出許可が降りたためバレット達はお礼も含めてP基地に向かう事にした。すでに向こうには連絡をしており、その際グリンダが向こうのアーキテクトと話がしたいとのことであったため、彼女も同行することになった。

 

「となると…子供達含めて13人か、リバイバーは警護で車外だとしても多いな」

 

「クルマはペルシカさんがグリンダと開発して用意してくれたものがあります。防弾性も高く、乗り心地の方も問題ないそうです。私が運転します」

 

「あぁ頼んだぞウェイター。リバイバー、しっかり警護してくれ」

 

「任せな。一発たりとも当てさせねぇよ」

 

その後、子供達の替えのオムツなどの準備をした後、リバイバーの警護の下、彼らは出発していった。

 

────

 

特に襲撃といった事態は起こらず、無事に到着した彼らはこちらのアーキテクトのラボに案内されるグリンダと別れ、案内役の人形に連れられて行くのだが…

 

「う、ぁ〜」

 

「え、えっと…その…」

 

「あ〜リヒト、その人お母さんそっくりだけど違うからな〜?」

 

「んぅ?」

 

今日の案内役はこの基地の9A-91だったため、リヒトがノアと勘違いし、抱っこしてもらおうと手を伸ばして彼女を困惑させる事態が発生していたのであった。アンナとアリサはというと、自分を抱き抱えてるノアと彼女を不思議そうに交互に見ていた。

 

「将来的にこの子達、他の9A-91をノアと間違えてついて行きそうだな…」

 

「いえレストさん、私はその、スカート履いてるのでわかると思います…あ、いや逆にスカートどこかに落としたと思って純粋に聞いてきそうで怖いですね。何かわかりやすいようにしますかね…」

 

「(本人(9A-91)の前でそれ言うのか…)こっちもその辺考えないとな」

 

「私は髪を下ろそうと思うわ。あなたも、そっちの方が好みでしょう?」

 

「ッ⁉︎…ま、まぁな…」

 

そんな会話をしつつ、案内された部屋に入るとユノ夫妻と向こうのノア夫妻とそれぞれの娘、そしてナガンが待っていた。

 

「皆さん、お久しぶりです」

 

「はいお久しぶり〜!とりあえず、座って座って」

 

ユノの合図で各自座ると、バレットが話を始めた。

 

「まずは、そちらのペーシャさんのお陰で無事に子供達が産まれました。ありがとうございます」

 

「俺の方も、三つ子にも関わらず、無事に産まれたのもそちらのお陰です。ありがとうございます」

 

「いやいや、困った時はお互いさまだよ。それで、バレットさんのとこが双子で、レストさんところが三つ子だよね?」

 

「はい。俺が抱えてるのが娘のミラで、妻が抱えてるのが息子のレオンです。それで…」

 

「この子がリヒト、こっちのノアが抱えている女の子のうち、そちらから見て右がアンナで左がアリサです」

 

「うんうん、どの子も可愛いね〜。ほ〜らルキア、お友達がたくさんいるよ〜」

 

「ほら、クリスも将来の友達の顔見ておきな」

 

「ん!あ、むぅ〜」

 

「…あー」

 

ユノと【ノア】がそれぞれの娘にそういってこちらの子供達に近づけると、ルキアは興味津々と言った感じで声を上げて手を伸ばし、クリスは対照的に静かにこちらを見つめた後、挨拶するかのように声を出していた。そしてこちらの子供達はというと、初めて見た自分達以外の子供に興味を持ち、じっと見つめたり、興味深そうに声を出したりと、嫌がるような素振りはなく初対面の反応は良さげであった。

そのあとはお互いに子どもの話や子育ての相談を話し合っていると、突然ミラがぐずり始めた。

 

「おぉどうした?オムツ…じゃないし、ミルクも途中であげたし…眠くなったか?すみません、少し回って来ますね」

 

「どうぞ〜」

 

バレットは一度席を立ち、ミラを抱えて基地の中を歩き回る事にした。

道中基地内の人形に挨拶しつつあやしながら歩いて行くと、教会の近くにたどり着いた。

 

「話には聞いてたが、立派な教会だな…「あの…」ん?」

 

バレットが振り返ると、この基地のM82A1が佇んでいた。

 

「あなたは、私の弟のバレット…であっていますか?」

 

「あ、はい。初めまして。とは言っても、本部の姉さんと既に会ってますので初めましては少し変な感じですが」

 

「そうね…その子はあなたの娘?」

 

「はい。ミラと言います。ほらミラ、ここの父さんのお姉さんだ」

 

そういいバレットは彼女に見せるようにミラの顔を向けるが、彼女の顔を見たミラは突然火のついたように泣き出したのであった。

 

「うぁ、んぎゃあぁぁ‼︎」

 

「え?どうしたミラ⁉︎」

 

「あらあら、嫌われちゃったみたいね」

 

「おかしいですね、本部の姉さんには懐いてる方なんですが…ってあれ?」

 

バレットがふと顔を上げるといつの間にかM82A1の姿は消えており、ミラも彼女がいなくなるとすぐに泣き止んでおり、バレットは何か申し訳ない事したなと思うのであった。

 

────

アーキテクトのラボ

 

「へ〜じゃあグリンダちゃん、本部で元気にやってるんだね?」

 

「うん、割と自由が効くし、過ごしやすいよ。それと、あの時助けてくれてありがとう」

 

グリンダがそうお礼を言うと、アーキテクトは別にお礼なんていいよと彼女の肩を軽く叩いた。二人はそのまま互いの話や発明したものの意見交換をしていた。

 

「ふーん、中々面白いもの作るね!武器とかはまだ作れない感じ?」

 

「うん。でも近いうちに許可が出るみたい。そしたらあの人達に恩返しが出来るから頑張るつもりだよ」

 

「そう、何かあったらいつでも言ってね?力になるよ!」

 

「ありがとう、『お姉ちゃん』…あ」

 

「お姉ちゃん?あたしが?」

 

どこか嬉しげに聞くアーキテクトにグリンダは恥ずかしげにほおを軽く掻きながら、嫌じゃなければそう呼びたいけど、いいかな?と聞くと彼女はグリンダを思い切り抱きしめた。

 

「わっ⁉︎」

 

「全然オッケーだよ〜‼︎そっか〜あたしがお姉ちゃんか〜♪」

 

嬉しそうな顔でグリンダの頭を撫でるアーキテクトを見て、グリンダも嬉しそうに目を細めるのであった。

 

────

 

やがて時間は過ぎ、彼らは本部に戻るため車に乗り込もうとしていた。

 

「今日はありがとうございました。また機会があればよろしくお願いします」

 

「うん、またいつでも来てね〜」

 

「それと、この基地の姉さんに、先ほどはすみませんと伝えておいてください」

 

「え?」

 

「え?」

 

バレットの言葉にユノは首を傾げ、バレットは何か変なこと言ったか考えてると、彼女はこんな事を言い出した。

 

「おかしいなぁ…?M82A1は確か……

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「へ?でも確かに…」

 

その時、ユノの通信機が鳴り、彼女は通信を開いた。

 

「ん?どしたのキャロルちゃん?…うん、いるけど…わかった。はい、バレットさん、キャロルちゃんが貴方に代わってくれって」

 

「わかりました…こちらバレット。何かありましたか?」

 

《バレット、お前の娘って『ミラ』って名前か?》

 

「はい…何故名前を?まだ話してないはずですが…?」

 

《いやな…さっきM82A1から言伝でな…

 

 

 

 

『ミ ラ ち ゃ ん に ご め ん ね と 伝 え て』

 

と言われてもしやと思ったんだが…どうした?》

 

「い、いえ、何もありません…ありがとうございます…」

 

通信を終えたバレットは顔を青ざめた後、ミラを見つめていた。

 

「ミラ…お前、わかってたのか?」

 

「ぶぅ」

 

どう言うことかと周りに聞かれバレットがさっきの出来事を説明すると、一同はバレットと同じく顔を青ざめていた。ついでに、彼らにベビー用品を売ろうと近寄ったスチェッキンもそれを聞いて顔を青くして震えていたのであった。




こんな感じの会話で大丈夫かな?

いや〜最後のアレはね、あっちの姉者霊的にベーヤーな奴ですからね、これを使わない手はありませんでしたよ。

焔薙様、ありがとうございました‼︎


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Code-100 鉄血工場占領作戦

通常回100話目ですが、特に通常通り行きます。

リバイバーがレインコートの実験兼ねて大きく動きます。
後半ネタ注意です。


「…よし、『レインコート』の調整完了。あとは実地試験だけだが…これは許可待ちだな」

 

今の鉄血人形を人類に敵対する以前の状態に戻す、正確にはそう書き換えるウイルス『レインコート』の作成は難航していたが、()()()()()()()()()()()データを元に開発したところ、理論上現行のハイエンドにも通用するレベルに出来上がり、リバイバーはその微調整をしつつ、実地試験を兼ねた作戦許可を待っていた。

 

リバイバーの立案した作戦は端的に言うと『鉄血の工場をそこにいる人形諸共確保する』ものであった。シェアが多かった鉄血工造は無論その工場も多く存在し、蝶事件以降も幾つかの工場はグリフィンや正規軍などに破壊されてるが、まだ残っている工場も多々ある状況となっていた。そこで、リバイバーが工場の一つを襲撃し、『レインコート』を散布しこちらの味方とさせる事で工場一つ分の戦力を手に入れると同時に、こちら側に寝返った鉄血人形の武器や義体などのパーツの供給源とさせるつもりであった。また、ついでに幾つか開発したウイルスも使えるか試す予定もあった。

P基地やD08基地の面々は各自で作ってはいるが、それは比較的規模の大きい基地での話であり、そうでないところでは満足にパーツを入手しづらいだろうと考えてのことであり、さらにはそれを機に他の基地との繋がりを持てるメリットもある。

 

(デストロイヤーは結構鹵獲されてるみたいだし、占領した工場にガイアのラインがあれば向こうから食いつくだろうしな。それに、EA小隊のデストロイヤーもガイアボディの安定供給されて、もしまたやられても通常ボディを使うことでの一時的な戦力低下も免れるだろう。そうすりゃ凄く間接的だがスミスの精神的負担も減るだろう)

 

占領後に正規軍から目をつけられないかが気がかりだが、向こうは対鉄血には消極的なうえ、最悪リバイバーが協力してる部隊を通して話をすれば良いため、ほぼこの立案は通ると確信していた。

そう考えていると、隣で作業を手伝っていたグリンダから声をかけられた。

 

「ねぇリバイバー。このあと少し空いてる?」

 

「ん?空いてるが、どうした?」

 

「ならさ、ちょっと話がしたいから部屋に来て貰ってもいいかな?」

 

「……わかった」

 

その後、片付けを済ませたリバイバーはそのまま彼女の部屋に向かっていった。扉を叩くとグリンダが出迎え、中に案内した。

向かい合って座っているとグリンダは口を開いた。

 

「…リバイバー、私ね、ここに来てからだいぶ経つけど、ここの生活が凄く楽しいの。特に、あなたと一緒に開発したりのんびりしたりする時が楽しいの」

 

「……」

 

「それでね、あなたはコレクターの事で私に気を遣ってるようだけど、そんなのは私にとってどうでもいいの。あなたはあなただもの。だから…その…

 

 

 

私、あなたが好きです。付き合ってください」

 

少し顔を赤くして告白するグリンダを前に、リバイバーは一瞬キョトンとした顔をしていたが、すぐにフッと笑って彼女の頭を撫で始めた。

 

「…え?えっと、これは?」

 

「いやな、随分と可愛らしいなと思ってな。で、返事だが…もちろんOKだ。俺もな、初めは負い目もあったよ。出身が違うとはいえ、設計上は姉なわけだったしな。でもな一緒にいるうちにそんなんどうでも良くなってきて、普通に付き合いたいなと思ってきたんだ。まぁそっちから告白されるのは予想外だったがな。……あらためて、よろしくなグリンダ」

 

「…うん!よろしく、リバイバー」

 

その後、ペルシカから連絡が入り、作戦許可が降り、翌日開始する事が伝えられたのであった。

 

────

 

「…ってな訳で、グリンダと付き合う事になったからそこんとこよろしく〜」

 

「……」

 

翌日、バレット達の前でそう話すリバイバーとその横で赤い顔して俯くグリンダだが、それを聞いた彼らは驚いたような顔をしていた。

 

「…ん?どったの?」

 

「いや…そもそもお前ら、付き合ってなかったのか?

 

「「え?」」

 

スミスが放った予想外の言葉に二人は思わず固まった。どうやら、周りには二人が既に付き合っているように見えてたらしい。

 

「あー、確かにそれっぽいやり取りしてたようなしてなかったような…マジか〜そう見えてたのか〜」

 

思った反応が見られず残念そうに話すリバイバー。

すると、ペルシカが部屋に入ってきた。

 

「リバイバー、今回の作戦だけど誰か連れてくの?」

 

「そうだな…別に俺一人でも構わないが、成果を直に見てもらいたいのと、念のための警護がいるな。というわけでスミスとウェイター、来てくれるか?」

 

「あぁ」

 

「構いませんよ」

 

「三人で行くのね。ならすぐに出発して頂戴。これがうまくいけば戦況が大きく変わるはずよ」

 

────

 

「やはり工場だけあって、それなりに数がいますね」

 

眼下に見える鉄血の工場とそれを警備する多数の人形を見据えながらウェイターが呟いた。規模としてはやや中規模であり、リッパーやプロウラーなどの人形は元より、アイギスやマンティコアなどの装甲人形も多数存在していた。

 

「本当にアレを丸々味方に出来るのか?」

 

「出来るさ。その前に色々試すけどな。あとは…やっぱハイエンドが複数いるな。スケアクロウ、処刑人、ハンターに…お、イントゥルーダーまでいるな。蝶事件後に開発された奴に試したかったから都合がいい」

 

リバイバーは持ってきた数十機のドローンを操作してワザと見つかるように工場に向かわせた。当然、鉄血人形達に見つかり、ドローンは程なくして全機撃ち落とされた。ドローンの内部にはウイルスを組み込んだナノマシンが入っており、破壊された事で敷地内のほぼ全域に散布される結果となった。

 

「さっきのがレインコートか?」

 

「まぁな。それと他にも複数仕込んでおいた。んじゃ、確認がてら一発撃ち込むか」

 

「攻撃するので?」

 

「さっき撒いたウチの一つは『連中に喋らせないと意味ない』からな」

 

そう言うとリバイバーは一部の部隊に向けてレーザーを放ち、地面ごと吹き飛ばした。辺りは騒然となり、近くにいた処刑人が状況を問いただすと、ヴェスピドらから通信が入ってきた。

 

バンドグガサデビシュグ(南東から敵襲)‼︎セセザザボビドバサギデリバイバーバド(レーザーの規模からしてリバイバーかと)()?」

 

アエ、フォフェカエジュジ(おい、何を言って)フォジュ(何っ)⁉︎」

 

不可解な言語を話す部下達に処刑人が混乱していると、他のハイエンドからも同様の報告が届いていた。

 

(クソッ‼︎さっきのドローンか!あのヤロウ、何しやがったんだ…⁉︎)

 

ゲギギンゴヂヅゲ(全員落ち着け)‼︎ラズダジョグキョグゾ(まずは状況を)…ッ⁉︎ゴセロバ(オレもか)⁉︎」

 

その様子を見て、リバイバーは満足げに笑っていた。

 

「うんうん、トレイター達に試しただけあって、ハイエンドにも『バラルの呪詛』は効いてるな〜♪」

 

「身内で試したのですか…それで、何ですかそのウイルスは?」

 

「言語機能に侵入して言葉はもちろん、通信メッセージも狂わせて情報交換を不能にさせるんだ。ま、ハンドシグナルや筆談はその限りじゃないがな」

 

「リバイバー。俺の気のせいじゃなきゃ、あいつらが話してるのはもしかして…」

 

「あぁ、グロンギ語とオーバーロード語だ。いやー変換パターン組み込むのに一生懸命覚えたから、おかげで普通に話せるようになったぜ。しかも、話すたびにランダムに切り替わるから余計に混乱するってワケだ。んじゃ、そろそろ本番に入りますか」

 

リバイバーはさらにもう一度レーザーを放つと同時に、『バラルの呪詛』の自壊信号を出し、残りのウイルスを作動させた。

 

「クソッまたか‼︎…ん?治った?」

 

「こちらイントゥルーダー。宿舎がやられたわ。どうやら連中、この工場を破壊ではなく、占領したいようね」

 

「占領?ナメた真似を…‼︎」

 

「ハンターだ。連中の位置を把握した。どうする?トントントン

 

ハンターの妙な語尾に処刑人は眉を顰めた。

 

「?どうした急に?とにかく、見つけたのならすぐに向かって奴をいーとまきま…」

 

そろそろ効く頃だなとリバイバーが呟いた瞬間、その異変は起き始めた。

工場内にいたハイエンド達含めて全ての鉄血人形がその場に立ち尽くしたあと、突然『いとまきのうた』を歌いながら手遊び動作をし始めたのだ。

 

「いとまきまき♪いとまきまき♪ひいて ひいて♪トントントン♪」

 

「「…はい?」」

 

ハイエンド達やリッパー、アイギスといった人型はまるで歌のお姉さんばりのいい笑顔(アイギスは当然無表情だが)で歌い、手遊びをし、プラウラーやマンティコアといった腕のない機体はリズムにあわせて体を揺らし、ダイナゲートに至ってはお座り状態で前足をシャカシャカ動かすといったシュール過ぎる光景にスミスとウェイターは唖然としていた。

 

「えっと、リバイバー?何だアレ?」

 

「ちょっと前に見たアニメ映画から思いついたレインコートとは別の奴。効果は見ての通り、踊らせるだけ。レインコートの方はもう効いてるかな」

 

「…これの意味は?」

 

無い。ただの俺の憂さ晴らしだ。数分で効果切れると思うし、そしたら行くか。さて、黒歴史用に録画してくかな♪」

 

(コイツ、色んな意味で敵にしたくねぇな…)

 

数分後、歌が止んだ辺りで三人は警戒しつつ工場内に侵入していった。だが、鉄血からの攻撃は一切なく、戸惑った顔でこちらを見てるだけであった。そしてハイエンド達のもとに着くと、リバイバーはスケアクスロウに話しかけた。

 

「よう。何故俺らを攻撃しなかったか聞かせてくれるか?」

 

「…正直、何故か急にそちらと敵対する理由がわからなくなりました。寧ろ、人間に協力するべきとの考えが出てきたんです。差し支えなければ、()()()をそちらの傘下に入ってもよろしいですか?」

 

「私『たち』?そこの三人も同じか?」

 

その問いに他の三人がそうだと答えると、リバイバーは笑みを浮かべた。イントゥルーダーも味方となったということは、少なくとも今存在が確認されてる蝶事件後に開発されたハイエンドにも効くため、レインコートは成功したと見ていいだろう。リバイバーはスミスに目配せするとスミスは彼女達に声をかけた。

 

「…こちらはもとよりそのつもりだ。一応の検査は受けるだろうが、ある程度の身の安全は保証されると思うから安心してくれ」

 

「わかりました」

 

「んじゃ、早速ここで造ってるやつの設計データ見せてくれるか?」

 

リバイバーは設計データのある部屋まで案内され、中のデータを確認し始めた。

 

「…ほぅ!通常人形や基本的なハイエンドに加え、ガルムやガイアまで生産できるのか…ん?ウロボロスも…?」

 

リバイバーはしばらく押し黙り、ウロボロスの設計データを眺める。すると…

 

「アーテガスベッチマッター」

 

リバイバーはそう言い【Delete】のスイッチを押し、ウロボロスのボディのデータを消し、生産出来ないようにした。

その後、工場占領完了の報告をした一週間後、工場設備の使用とグリンダの兵器開発の許可が降り、グリンダは彼らの役に立てるものを開発しようと張り切るのであった。




しれっと付き合う事になったグリンダとリバイバーだけど、この二人はこんな感じがちょうどいい気がしましてね。

グロンギ語とオーバーロード語はちゃんと対応表見ながら訳しましたよ。
…案外覚えられそうかも。

最後のアレは某猫型ロボットの「ブリキの迷宮」のラストが元です。
まさか運営もこの曲使うとは思わなかったろうな…
元ネタは死ぬまでやらされるからそれに比べればだいぶ優しいよね!(黒笑)

戦力も増えたし、いつ『白いの』が出ても問題ないな…


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Code-101 嵐の前の…

今回は短めの日常回です。


「う、あー」

 

「ふあぁぁ…‼︎レストさん、この子、ホントに可愛いです!」

 

ええ、そうでしょう。とアンナを抱っこして感動しているMP5をみてレストはそう答える。彼女はリヒト達が産まれる前から長期任務で居なかったため、これが初の対面であった。ただ、MP5の体格は子供のそれなので、間柄は伯母と姪なのだが、どうみても幼い姉妹か親戚の赤ちゃんを見に来た子供にしか見えないのはもはやご愛嬌だろう。

 

「ノアさん、子育てとか大丈夫なんですか?」

 

「前々から勉強してたり、P基地の人たちからアドバイス受けたりしてある程度は平気ですが、やっぱり大変です。でも、全然苦じゃないです。あとはウェイターさんもよく手伝ってくれてますね」

 

民生時代に実践こそ出来なかったがそれなりに覚えていたのもあり、ウェイターはよく彼らの子育てを手伝いに来ていた。また、彼らだけでなくバレット親子の方にも顔を出しているのだが、彼自身の妻で現在妊娠中のフィオナの世話は平気なのか尋ねたところ、それはそれとしてキチンとしているのだから大したものである。

 

「あんなに活き活きしてるウェイターは見たことなかったが、そのおかげでこっちや隊長たちも助かっている。彼の子が産まれたらお返しも含めてお祝いするつもりです」

 

「へ〜。でも、何かあったらいつでも言ってくださいね!私、あなたのお姉さんな訳ですし」

 

「んぅ?」

 

お姉さんと言ったあたりでまるで狙ったかのように声を出すアンナにMP5は苦笑いをしながら

 

「アンナちゃん?私、ちっちゃいけどアンナちゃんのパパのお姉さんなんですよ〜?」

 

「ん〜?ぷぁ?」

 

言ってる言葉が信じられないのか、何を言ってるのかわからないのか、どっちとも取れるような声を出して眉を顰めるアンナを見てレストとノアは思わず笑ってしまい、MP5が膨れっ面を浮かべている頃、スミスはリバイバーとグリンダのいるラボを訪れていた。

 

「なるほど…つまりバルカンちゃんがもしまた暴走しても止められるように装備を得たいわけだね!」

 

「そんなとこだな。できれば暴走しないよう守ってやれるようなものがいい」

 

本当はペルシカに相談しようとしたのだが、生憎彼女は忙しいため、開発許可の降りてる二人に相談した次第であった。

適合銃の関係上、両者の出力に差があるのは明白なのだが、だからといって何もしないという訳にもいかないのがスミスの心情であった。

 

「以前はキスで止められたが、毎回通用するとは限らないし、一人でそこまで近づくのに今のままじゃ無理だしな」

 

「確かにな。いちいちキス見せられるのはアレだし、向こうが慣れちまったら意味ねぇしなw…あー睨むなよ。で、何か注文はあるか?」

 

「お前が下世話な話をするからだろ。注文としては、普段の任務で使う用と暴走を鎮圧する用の二つの機能を切り替えられるのがいい。で、鎮圧用はなるべく相手を傷つけないやり方で止められるようにしてくれ。それと、大前提として、こっちが暴走したり、止める際に俺に過大な負荷が掛からないようにしてくれ」

 

「了解。なるべく早く開発してみるよ。でさ、名前なんだが…

 

 

 

 

 

『サイサリス』『紅蓮』『イチイバル』『カイザ』どれが良い?」

 

全部鹵獲か盗難歴のある二号系じゃねーか‼︎*1全部却下だ却下‼︎」

 

「まぁそうなるわな。別の考えとくから安心しな」

 

頼んだぞ、といいスミスはラボをあとにした。

 

「んじゃ、グリンダ。始めるとするか」

 

「はーい。それにしても、他の人もそうだけどスミス君はバルカンちゃんの事大事に想ってるよね」

 

「今ならあいつらの気持ちはわかるな。一緒に戦ってるのならお互い無事に帰れるようにしたいし、帰りを待ってるのならそのために戦いたくもなる」

 

自分のことを言っていると気づいたグリンダは顔を赤くし作業を始め、それを横目で見ていたリバイバーはククッと笑っていたのであった。

 


 

以前より観察対象としていた戦術人形『リバイバー』のAI信号パターンに妙な点を検知…データを本部に送信…

 

 

 

……本部にて解析完了の通知あり。

 

 

 

解析結果、リバイバーのAI信号パターンは紛失したと思われた『メッセル試作機』のものと一致……次の命令まで気づかれぬよう監視を続けよとのこと。

我々事態、何度か目撃されてしまったため本格的に介入することも念頭に入れること。

*1
試作二号機、弍式、二号聖遺物、二号ライダー




スミス強化イベント入りました。装備については追々考えるつもりです。
た〜だ、コイツの彼女の現在の装備の元ネタを踏まえた上でのスミスのポジションだとあと一回は拐われそうですが、まぁ平気やろ!(適当)

にしても、なんだって二号系ってのは盗まれたり敵対するんですかねぇ?

『白い連中』に知られてしまったリバイバーの存在…果たしてどうなるのか…


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Code-102 彼女の記憶を戻すため

今回はoldsnake様の『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボでございます。

スミスが義妹ちゃんのために奮闘します。


ある日、スミスはペルシカに呼ばれ16Labに訪れていた。

聞けばミニガンについての話であり、彼女は依然として記憶が戻らない状態にあり、バルカンも記憶を戻そうと尽力してるが上手くいかずにいるそうである。そこで、彼女と接点のある人形と対面してそれを期に記憶が戻らないか試すため、彼女と比較的接点のあるスミスが選ばれたのであった。

 

「あなたも、義妹になる子のことはほっとけないでしょう?」

 

「まぁな。で、今から行けばいいのか?」

 

「(ナチュラルに答えたわね…)ええ。お願いね」

 

スミスは先ずはバルカンにどういった事をしたか話を聞くため、彼女の部屋に向かう事にした。

 

「バルカン〜いるか?」

 

「スミス?うん、入っていいよ〜」

 

「ん、入るぞ…ってわっ」

 

部屋に入ると突然バルカンが抱きつき、スミスは少しふらついたものの抱き返し、頭を撫でた。スミスはこんな風に甘えてくるバルカンを見て何かあったのではと勘繰り、心配そうに尋ねた。

 

「…どうした?何かあったか?」

 

「いや…会いたいなって思ってた時に来てくれたから…嬉しくて…」

 

(…ッたまにこういうこと言うから可愛いんだよな…)

 

少しした後、二人は体を離しスミスはここに来た理由を話した。

 

「…ってわけなんだが、お前はどんな事して記憶戻そうとしたんだ?」

 

「……それなら昨日死神と三人で出かけてベッタリくっ付いて可愛がったけど、ウザがられて思い出す様子もなかったな」

 

「そうか、ありがとう。それと、次のクリスマスにデート行くつもりだから予定空けといてくれ」

 

「え、本当⁉︎」

 

「あぁ。それに、付き合って一年になるからな。色々と楽しみにしておいてくれ。じゃあな」

 

そう言ってスミスは部屋から出て行った。残ったバルカンはというと、最後に言った言葉を反芻させ顔を真っ赤にしていた。

 

「い、色々って…もしかして()()()()意味…⁉︎」

 

スミスはデートスポット巡りとかの意味で言ったのだが、バルカンは性的な意味で捉えてしまいその場でモジモジし始めた。この勘違いがどんな結果を生むのかはまだ不明である。

 


 

ミニガンが拘束されている部屋まで着くと、スミスは扉を開けて中に入った。

が、扉を開け始めた瞬間、ミニガンの怒鳴り声が飛んできた。

 

「また来たのかッ!昨日の今日でしつけぇ…な…?」

 

「あ〜…なんか、すまんな」

 

気まずい表情を浮かべるスミスに対し、ミニガンはどこかポォーとした顔でこちらを見ていたが、スミスはとりあえず近くの椅子に座って話をし始めた。

 

「…久しぶりだな、ミニガン」

 

「ひ、久しぶり?」

 

試しにと声をかけるが、やはりミニガンはこちらの事を覚えていないのか、首を傾げているのを見てスミスはわかっていたとはいえ、残念そうな顔をした。

一方で、当のミニガンは内心焦っていた。というのも、奇しくも初めて会った時のようにスミスに見惚れてたからであった。

 

(え?どう言う事だ⁉︎こんなカッコイイ人見たのなら絶対覚えてる筈なのに何で覚えていないッ⁉︎思い出せ思い出せ…って、私は鉄血で相手はグリフィンの人形なのになんで敵に惚けてるんだ私!でも…確かにどこかで会ったような…)

 

彼女の考えは正しい。実際二人は資源地帯攻略作戦で邂逅してるのでスミスの久しぶり発言は凡ミスなのだが、あの時スミスはミニガンと戦闘する前に暴走したバルカンに殴り飛ばされたため、ミニガンはスミスの顔をハッキリと見ていないのである。そのため、ミニガンは『会ってないはずの人形に久しぶりと言われた』という事に()()()()()()()()()()()()

 

「…やっぱ覚えてないか。俺はスミス。君とは一緒に戦ったこともあるし、俺が鉄血に捕まった時、君が助けに来てくれた事もある」

 

「え…?一緒に…?それに…鉄血?」

 

加えて、警戒されないよう所属小隊を言わなかった事でさらにミニガンを混乱させていた。鉄血化されたときにチーフからこちらの事を教えられた可能性もあるが、先ほどの言葉で混乱してる彼女にそんな事を考える余裕はなかった。

 

「あの…それ、本当か…?」

 

「本当だ。なんならここに記録映像がある。見るか?」

 

ミニガンが頷くとスミスは記録映像を見せる。そこにはこうなる以前のミニガンが鉄血の部隊と交戦してる様やバルカンのことを『姉貴』と呼んでる様子が映っており、ミニガンは信じられないといった顔を浮かべていた。そしてスミスはミニガンに記憶を失った要因を伝えるとミニガンはハッとした。

 

(そういえば…前に地下道でグリフィンの人形を殺せなかった時があった…アレは私がグリフィンの人形だったから?いや、そんなはず…)

 

「これを信じるかは任せる。ただ、俺はどちらかといえば君が記憶を取り戻す事を望んでいるよ」

 

「一ついいか?何でお…あなたは私にそう気にかけてるんだ?」

 

「そりゃ、将来的に君は義妹になるからな。気にもかけるさ」

 

「え…⁉︎義妹…⁉︎まさか…」

 

「あぁ。俺は君のお姉さんのバルカンと付き合ってるし、結婚も考えてる」

 

「嘘…」

 

今日一番信じられないと言った顔をしているミニガンにスミスは考える時間が必要だろうと思い、席を立った。元々無理に思い出させようとすると警戒されると考えていたのでこの手を取っていたので問題はなかった。

 

(嘘だろ…あんなウザったいのとあの人が付き合ってるなんて……あれ?なんでだ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…?)

 


 

「ふむ…バルカンの装備は近接主体だから、スミスの装備は中〜遠距離にした方がいいか…」

 

「もーリバイバー!せっかく気分転換に中庭に出たのにこれじゃ意味ないじゃん!」

 

「あーすまんすまん。今は『お前』との中庭デートだったな」

 

「ふふん、わかればよろしい♪」

 

リバイバーはグリンダにしか使わない二人称を使ったあと中庭で軽くいちゃついてるとふと視線を感じ、その方向を見ると死神(グリム・リーパー)がこちらを見ていた。リバイバーはどう声をかけるか迷ってると、彼女は突然プルプル震え出した。

 

「ん?どうした?」

 

「デ…デ……!」

 

「「デ?」」

 

「デデデデェェェス⁉︎」

 

死神はそう叫ぶと一目散に逃げていった。

 

「……また叫ばれて逃げられた…俺あいつに嫌われてんのかな?」

 

「う〜ん、なんか違うような…」

 

グリンダの指摘通り、死神が叫んでたのは恐怖でなくパニックによるものであった。

 

(やっべぇデス⁉︎リバイバーに彼女がいたデスよ⁉︎私の恋はこれでお終…いや、まだデス!この世には一夫多妻という言葉があるデス、まだチャンスはあるはずデス、絶対に諦めてなるものかデース!)




北風と太陽方式で試してみたスミス、果たして効果はあるのか…
そして勘違いしてるバルカン…
oldsnake様、あとは任せます。コラボありがとうございます!それと、クリスマスの時はよろしくお願いします‼︎

…死神ちゃん暴走させましたけど、大丈夫ですかね?


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Code-103 護るべき者のために

すまない、仕事が忙しくてモチベが下がりしてね…イベントも手をつけられないしマジでファッキンワーク…

今回はこっちのこと調べる過激派さんにお仕置きします。


この日は久方ぶりにバレット達にペルシカから召集が掛かり、彼らはミーティングルームに集まっていた。とはいえ、ノアは流石に参加は不可というより長期的な休暇扱いで余程のことがない限り出撃しない事になっていた。無論、彼らにその『余程のこと』を発生させるつもりはないのだが。

 

「今回貴方達にやってもらうのは例によって過激派の掃討なんだけどこれが厄介でね…こいつら、貴方達のことを嗅ぎ回ってるそうよ」

 

「ま、流石に最近俺らが現れない事を不自然に思うか…」

 

子供達が生まれてから代わる代わる出撃したりしてるが、以前に比べてその頻度が下がっているためそこを不審がられたのだろう。また、ベビー用品なども上手いこと誤魔化しているが、秘匿してるのが子供であるためそれも時間の問題だろう。

 

「こちらが何を隠してるかはまだわかっていないようだけど、探られて広められる前に掃討するってわけよ」

 

「だが、それだとこっちが何かを隠してることを裏付ける事にならないか?」

 

「そこは仕方ないわ。このまま放置してバレるのは以ての外だし、向こうもそれなりの装備を持ってるとの報告もあるから、他の部隊に任せるには戦力不足ってわけなの」

 

「なるほど、どちらにせよバレるのは時間の問題だし早いとこ戦力が集まる前に仕留めて、将来的にぶつかる敵を減らす感じか」

 

その後出撃準備を始め、出発する直前にリバイバーはレストに二つのガントレット状の何かを手渡してきた。

 

「レスト、コレ使ってみてくれ」

 

「…何だそれは?」

 

「スミスから頼まれた武装作られた過程で作ってみた武装でな、コーラップス技術転用で高熱・高密度の特殊な性質を持った粒子を発射して対象を消し飛ばす粒子砲で、名前は『枢機へ還す光(スパラグモス)』だ。射程距離が十数mと短めだからお前さんにピッタリだろ?それと、発射基部は回転できて普段は肘側を向いてるから肘打ちの要領で撃つのもありだな。回転や発射はそこに意識飛ばせばできるから」

 

言われるままスパラグモスなる物を受け取ったレストは先程のリバイバーの言葉に引っかかるものを感じ彼に質問した。

 

「粒子砲?レーザー砲じゃないのか?」

 

「あぁ。コーラップス及び逆コーラップスってのは既存の物の分解・生成だけでなく、未知のモンも造れるからな。ま、発想の転換ってやつだ」

 

「⁉︎」

 

とんでもない発言に一同は驚き、バレットがそのような物を生み出したリバイバーに問いただした。

 

「おいリバイバー‼︎そんなモン使って本当に平気なのか⁉︎」

 

「無論俺が自身で試したさ。最初は排熱が不十分で腕が焼けたが、何度も改良して作り直しては使って…を繰り返して、ようやく安全性のあるものに仕上げたんだぜ?直せたからいいが何十本腕が焼け落ちたことやら。とにかく、それの安全性はこの身を持って補償するよ」

 

ここのところラボに引きこもってたことがあったので彼の言うことは事実なのだろう。それに、これまでの付き合いでリバイバーはふざけることはあってもこの類の物に関する嘘は吐かないことは知っているため、信じる事にしレストはスパラグモスを装着した。

 

「もし問題があったらお前に撃つからな」

 

「安心しな、赤ん坊たちから父親奪うようなことにはならねぇよ」

 

それを聞いたレストはフッと笑い、ヘリに搭乗しリバイバーがあとに続こうとしたところでスミスが彼の肩を掴む。

 

「オイ、俺が頼んだのはどうなってる?」

 

「ある程度は出来てるが調整が難航してる。今後コーラップス技術転用兵器を使う奴が増えるかもしれないから、対コーラップス技術転用兵器としても使えるようにしてるから難しいんだ。バルカンが使ってるのもソレなんだし、理には叶ってるだろ?」

 

「…ならいい。早めに頼む」

 

「了解♪」

 


 

目的の地区まで移動している間、バレットはウェイターに話しかけた。

 

「ウェイター、フィオナの具合の方は大丈夫なのか?」

 

「ええ。お腹の子も問題なく育っているそうです。隊長とレストの方は平気ですか?」

 

「定期的に検査してもらってるが、特に異常は見られないそうだ」

 

「こっちも同じだ。ただ、アンナとアリサはリヒトから少し離れると泣き出して、それ聞いてリヒトも…てな感じになってるな」

 

「ふむ…お兄ちゃんが見えなくなって寂しくなった、という具合でしょうか?」

 

「そんなところだな。隊長の方はそう言ったのは?」

 

「ウチは無いかな」

 

そう互いの子供や妻の話をしている三人から置いてけぼり状態になっているスミスにリバイバーがニヤつきながら肩を叩いてきた。

 

「向こうが旦那トリオで仲良く話してるのならこっちは達磨コンビで仲良くしようや♪」

 

「嫌なコンビだな…」

 

(ま、どうせそのうちカルテットになるだろうに…)

 


 

気持ちを切り替え、目標である過激派達の拠点である廃墟に着き、各自配置に付いた。

 

「なるほど、P.A.C.Sが複数体いるとなれば、こっちが受け持つのもわかるな。リバイバー、仕掛けな」

 

「はいよ」

 

早速リバイバーはレーザーを撃ち放ち、P.A.C.Sの一機を爆散された。当然辺りは蜂の巣をついた騒ぎとなるがバレットが狙撃を行い何人かの頭を吹き飛ばしていく。スミス達突撃チームも行動を開始し、次々に敵を撃ち倒していく。

 

「DG小隊…‼︎やはりお前たち、何かを隠してるな⁉︎」

 

「例えそうだとしてもお前らに教える義理はねぇな!」

 

スミスは両手に持った愛銃のS&W M500を連射して歩兵を仕留めていく。ウェイターはP.A.C.Sの一機に近寄り、ワイヤーを取り出して機体に巻きつけた後一気に引き絞りバラバラにし、コクピットから出てきたところを撃ち抜いた。

 

「クソッ!あいつ、ワイヤーの練度が上がってるぞ⁉︎」

 

(前以上に護りたいものが増えた以上、もう二度とあなた方みたいな連中に奪われるわけにもいきませんからね…‼︎)

 

残る一機がウェイターに肉薄するが、突如として放たれた光によりコクピット部に大穴を開けて崩れ落ちた。仕留めたのはスパラグモスを放ったレストであった。

 

「この威力を出しながら少し暖かい程度で済ませたとは…なんつーモン造ったんだリバイバー…」

 

思った以上の性能に呆れつつ、レストは愛銃とスパグラモスを使い分けて敵を仕留めていった。その後大した時間も掛からず過激派たちは壊滅したのであった。

 

バレット達が通信の痕跡がないか廃墟内を調べている間、リバイバーは周囲を警戒していた。

 

(これで、過激派の連中はこっちに何かあると思って躍起になるだろうな。ペルシカもその辺はわかってるだろうし、おおかた他の基地と連携して情報収集してその都度潰すってところか……ん?)

 

リバイバーは遠くの景色に違和感を覚えてその辺りを注視すると、手を覆うほど長い袖をした黒服に金の帯らしきものをした少女が立っているのが見えた。

何故こんなところに…と思った次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

リバイバーは驚き、思わず一度視線を外した後再び見ると少女の姿はなかった。

 

(今のは…偶然か?だがあの顔…『どっかで見たような』…)

 

そう考えるリバイバーだったが、バレットから調査完了の報告が入り、さっきのは気のせいという事にして帰路に着くのであった。




スパラグモス: リバイバーが造った特殊粒子砲。絶大な威力を持つ反面射程距離が短め。元ネタはメイドインアビスの( I )さんことボンドルド卿のアレ。あのキャラ嫌いじゃないです。

最後萌え袖の金の方ことニモジン改めてニモゲンに観察されたけど出てくるのは年明けくらいかなぁ。このペースだと次回がクリスマス回になりそうですし。また、この小説ではニモジンと呼ぶ事にしますのでご了承を。


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Code-104 災禍を祓う鏡

スミスの新装備の完成ですが、タイトル見て察した方、その通りだよ(ニッコリ)


リバイバーに呼ばれたスミスは彼のラボに訪れると、リバイバーとグリンダがよく来てくれたといったような顔をして待っていた。

 

「よう、今回呼んだのは他でもない。お前さんがかねてより待ってた装備が出来上がったからその説明をするためだ。ご注文通り、通常の撃破(キル)モードと非殺傷の鎮圧(クゥエル)モードの切り替えができるようにしたぞ」

 

「お、ようやく出来たのか」

 

対コーラップス転用兵器用にと開発されたスミスの新たな武装、小隊の戦力を高めるだけでなく、もし恋人のバルカンが暴走したとしても自力で止められるものができたと聞き、どんなものかと期待していた。

プロジェクターを起動して映されたのは暗い紫色をした中性的な印象をもつ鎧のようなものであった。上半身の裾は長く伸びそこに何かが格納されているのが見えていた。

 

「開発コード『神獣鏡(シェンショウジン)』。名前はともかく、その性能だが…それはグリンダに任せる。これ造るきっかけはグリンダが見つけたんだ」

 

「了解。きっかけはコーラップス・逆コーラップス技術による武器・エネルギー生成や再生などが使われる際に本当にわかりづらかったんだけど、崩壊液自体から電磁波的なものが出てたのを見つけたの。で、もしそれと逆波長のものを出せば武器生成などを阻害できるんじゃないかって思って逆波長の電磁波をつくってリバイバーに浴びせて試したら思った通り、阻害できたんだよ!」

 

「そうとわかればあとは簡単だ。これ自体にコーラップス技術を使ってるから、コーラップス技術で生み出したエネルギーを逆波長の電磁波に変換、そしてそれを増幅して指向性を持ってそのまま放てばコーラップス技術による生成能力の停止ないし大幅に妨害できる。レーザーと同時に放てばダメージを与えつつ再生させずに仕留められるってわけだ。ちなみに発射機は共用だから上手く切り替えて使え」

 

なるほどとスミスが頷くとリバイバーは話を続けた。

武装はレーザー及び電磁波発射機が普段使ってるS&W M500と併用することを前提にするため手持ち武器はなく、両手首と頭部に一基ずつ。裾内部にミラービットが八基、折り畳まれて格納されている。ミラー()と名付けられてるが反射だけでなく拡散機能を切り替えられ、上手く扱えば広範囲に攻撃できるようになるといったものである。また、逆コーラップスで生成して増やす事も可能ではある。

レーザーの威力も以前開発したスパラグモス程でないにしろ、それなりにあるそうである。

 

「んで、これがその神獣鏡だ。P基地から話聞いてコーラップス技術の応用でペンダント状にして起動時に展開するって技術を使わせてもらった」

 

「ふーん。で、起動条件は?」

 

「そこに関しては俺の手心が加えてある。コレ打ったあとでペンダントの真ん中に切れ込みあるだろ?それスイッチになってるから押せば装着できる。使うときに持ってけ」

 

そういいリバイバーは緑の液体が入った注射器を置いた。それは『リンクリキッド』と言い液状のナノマシンであり、人形の体内に注入されると信号を発してそれをペンダント内の受信機で受け取ると起動できる仕組みになっているそうである。ナノマシンは六時間ほどで自壊して体外に自然排出されるらしい。

 

「戦闘続行したかったらこの予備の三時間用の使え。一回の戦闘で持っていっていいのはそれだけ、つまりコレで戦えるのは長くても九時間だ」

 

「…セキュリティはわかるが、何故にわざわざ時間制限を?」

 

「時間制限なかったらレーヴァテインの時みてーにパクられたら洒落にならんだろ?しかも、リンクリキッドは一本一本生産時点で違う信号を出すようにしてあるし、受信部も一度受け取った信号は全てのパターンの信号受け取らねーと同じ信号を受け付けないようにしたからパクって複製しても問題なしだ」

 

「ちなみにパターン数は?」

 

「な〜んと1トレーズ(99822)‼︎お前さんごと連れてその仕組みに気づいたとて、それ試す前に救出部隊が来てるだろうよ。スパラグモスにも同様のものを搭載させる予定だ。あ、注射器は無痛だし、全部生分解性素材だからその辺に捨てても問題ないから環境にも優しい。ぶっちゃけこっち作る方が面倒だった」

 

どれだけ鹵獲運用されたくないんだとスミスはリバイバーのその執念に呆れるが実際問題、これだけのものが敵の手に渡ればこちらの被害は大きなものとなるのは確実であるためこの措置は理に叶うだろう。

 

「世がこんなんなったのは世界中にばら撒かれた崩壊液という災禍だ。その力を封じるものの名前に魔を退ける鏡の名をつけるのは悪くないだろ?」

 

「まぁな。とりあえず作ってくれて感謝する」

 

スミスはペンダントを受け取りラボを後にする。

その後、リバイバーはペルシカに呼ばれて来てみると、どうやら近々鉄血の重要拠点及び防衛ラインの破壊作戦が行われるらしく、作戦に参加してほしいとの事だそうである。

 

「なるほど、そういう事なら参加しよう」

 

「そう言うと思ったわ」

 

「あと、前に言ってた俺が接収した鉄血の工場で造ってた『例の二部隊』を参加させていいか?」

 

「あー、過激派の兵器の残骸やらあなたの自腹で買った資材で造ってたアレね。事がことだし、許可は降りると思うわよ。元々、大規模作戦や本部防衛の名目で許可されてた奴だしね」

 

その後、他の参加者や大まかな段取りを聞きリバイバーはグリンダが待ってる部屋に戻っていった。見知った部隊が殆どのため問題はないが、万能者が万が一のため待機してるという事に一抹の不安を感じていた。

 

(あいつが関わるとイレギュラーが起きやすいからな…ま、その時はその時で対応するか。あと、バルカンも出るみたいだし、怪我でスミスとのデートがおじゃんにならないようフォローしとくか。じゃないと俺の身がヤバい)

 

部屋に戻りリバイバーはグリンダに作戦について説明すると、グリンダは自分も参加すると言いだした。

 

「いいのか?相手鉄血だぞ?」

 

「その辺は割り切ってるから大丈夫だよ。それに、私だけ守られてばかりは嫌だし」

 

「…わかった。ペルシカに言っておくよ。装備は前に俺がちょっとだけ手伝って造ったアレか?」

 

「うん」

 

「そうか…モノがモノだし、なんか現場がアレな事になりそうけど、まいっか。『百一匹隊』と『アラゴスタ隊』も出して良いとのことだし、あのメイドとガキンチョに目にもの見せてやる…‼︎」

 

リバイバーは作戦開始を心待ちにしながらイイ笑顔を浮かべるのであった。




イメージ的には元ネタのを中性的にして露出控えめにしたものと捉えた方がいいかと。なお、リバイバーはやろうと思えば忠実に出来たけど普段の装備との併用を考えてる点と、自分がそれ装備しろと言われたらヤダからデザインを変えた模様。

Q.起動は歌じゃないの?
A.どうせ却下されそうだし、奪われたら音声なんて誤魔化せられるし戦闘途中で装備する際に声出せない状況か催涙ガスとかで喉潰されたら目も当てられないからナシにした。

次回は試作強化型アサルト様の『危険指定存在徘徊中』のコラボです。

二つの部隊については名前から察しがつく人は付きます。
グリンダの装備については…ヒントとしてはリバイバーに惚れてる子、いますよね?彼女がヒントです。


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Code-105 鉄血防衛ライン破壊作戦-1

今回から試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』の大規模コラボ作戦『鉄血重要拠点及び鉄血防衛ライン破壊作戦』に参加いたします!

リバイバーが滅茶苦茶大暴れしますし、+@の部隊も登場させます。


鉄血の防衛ラインの破壊作戦開始から数時間経過し、先行部隊から援護要請を受けてリバイバーは早速現場へ飛翔していった。F.E.F.Gを周囲に展開して戦場を飛び回り攻撃を防ぎつつ、敵地上部隊に向けてレーザーの雨霰を浴びせて次々と撃破していった。やがてバイザーにジュピターの反応を捉えた。

 

「見つけたぜェ…そぉぉらッ‼︎」

 

リバイバーはレーザーとレールガンを左右交互に撃ち放ち、次々と遠方にいるジュピターを見つけては破壊していった。元々彼は超遠距離からの砲撃を得意としてるため、動かない固定式のジュピターを撃破することなど容易い事である。ついでに周辺の味方にジュピターの位置を伝えると、やがて各地から爆発音が響き渡り他の部隊もジュピターを撃破しているようであった。

 

「うんうん、順調だな…ん?あれは自走型ジュピターか?……! えっと、確かコントロールジャック用ウイルスは…」

 

五基の自走型ジュピターを見つけたリバイバーは悪い顔を浮かべるとコンピュータウイルス生成ユニットから目的のモノを生成するとレールガンの弾頭内に仕込み、それをジュピターに撃ち込んだ。

 


 

鉄血人形達が防衛戦を繰り広げているところに、自走型ジュピターが彼女達のもとに近寄ってきた。補給をしに戻ってきたのだろうと思っていたが、様子がおかしい事に気がついた。砲門をこちらに向けているのだ。

 

「…ねぇ、あのジュピター変じゃない?なんか私たちの方狙ってない?」

 

「まさか?アレはこっちのよ、撃ってくるわけないでしょ?」

 

「でも敵にあのリバイバーが…」

 

『撃っちゃうんだなぁこれが‼︎』

 

その声が聞こえてくると同時に()()()()()()()()()、彼女達を陣地ごと吹き飛ばした。声の主はリバイバーであり、ジュピターに撃ち込んだウイルスでコントロールを奪取、こちらの戦力としたのであった。先の五基以外にも自走型ジュピターを見つける度にコントロールを奪い、それを使い固定式ジュピターや敵陣を吹き飛ばしていき、何基かは地雷原を疾走させて物理的に地雷を無力化させていった。

無論ジュピターにも対コンピュータウイルスシステムはあるのだが、酸性雨やレインコートを作成したリバイバーにとって、そんな対策は無意味も同然であった。

 

「あーリバイバーから味方に告ぐ。地雷原走り回ったり同士討ちしてるジュピターは気にするな。10分くらいしたら敵陣深くに突っ込ませて自爆させるから」

 

混乱してる味方にそう伝えると、彼を知っている者たちからうわぁ…といった引いたような声が聞こえたが気にせずリバイバーは宣言通り10分後にジュピターに指令を出して突撃させ、鉄血人形達を轢殺しながら進んだ後自爆し、先ほどまでこちら側の阿鼻叫喚となっていた戦場が鉄血の阿鼻叫喚へと変わっていった。

 

「ハッハハハハ‼︎自走型なんてご大層なモン引っ張り出すからこうなンだよヴァァーカッ‼︎」

 

とても味方とは思えない言葉を発しながら煽ると、リバイバーは先に進んでいった。まだ何基かジュピターが残っているが、先ほどよりはだいぶ進軍できるだろう。そう考えたリバイバーは『百一匹隊』と『アラゴスタ隊』に出撃させるようグリンダに指示を出した。

 

「はーい!じゃあ出撃させるね!あと私も出るね」

 

『おう、行ってこい』

 

グリンダはその2部隊に指示を出すとリンクリキッドを取り出して注射し、『首に下げたペンダント』のスイッチを押した。

 


 

山岳地帯にの一角に陣取っていたイントゥルーダーは一気に状況を変えられた事に歯噛みしていた。リバイバーが元々は他所からやって来たAIだと言うことは知っているが、それを差し引いてもここまでの事をされてはたまったものではなかった。とはいえまだ立て直せるのでどうすべきか考えていると部下から連絡がきた。

 

『イントゥルーダー様!ガルムです、敵に改造されたガルムの部隊がいます!」

 

「ガルム…?あぁ、前に工場が占拠されたからそれね…改造されたとしてもガルムなら数で押しなさい!」

 

部隊といっても4、5体程度だろう。そう思ったイントゥルーダーは数で対応せよと指示を出すが、部下から次なる報告が届いた。

 

『敵ガルム部隊ですが……

 

 

 

 

 

()()()1()0()1()()()()()‼︎しかも、それぞれかなりの…うわぁぁ⁉︎』

 

「…は?ガルムが101…体?……アイツ、限度ってモノを知らないの⁉︎」

 

そう、『百一匹隊』とは接収した工場で生産した101体のカスタムガルムで構成された部隊である。

本部防衛とこちらが鉄血をコントロール出来たことを世間にアピールする事を目的としてリバイバーが推し進めたプランであり、費用はリバイバー持ちではあるが大規模作戦危険手当などでそれなりに資金があったことやスクラップなどから調達してたためこれだけの数を揃えられていたのである。

通常ガルムと違うのはミサイルランチャーが犬の頭部を模した可動ユニットが備えられており、口を模したところからレーザー砲とレーザーブレードが展開可能であり見た目は通称である『ケルベロス』となっていた。

ちなみに、『百一匹』だけにカラーリングはリバイバーが脱走時に連れてきた銀色のを除き全て雪原迷彩とは名ばかりのダルメシアン柄だったりする。

 

唖然とするイントゥルーダーだがその間に百一匹隊は接敵し、鉄血部隊を蹂躙していった。牙のように展開したブレードで噛み千切られるものや、カメラ部とユニットのレーザーの一斉射撃を喰らうものなど、徐々に押されていった。

 

「クソっ‼︎ここは一旦退がって…え?もうここまで⁉︎ま、待って……ギャアァァ‼︎」

 

イントゥルーダーを屠ったあと、百一匹隊は次なる獲物を求めて別の戦場に駆けていったのであった。

 

また、荒野では正規軍の装甲兵に混じってロブスター型の機動兵器が5体、ガシャンガシャンとやかましい駆動音を響かせて進んでいた。

『アラゴスタ』。リバイバーの開発した機動兵器であり、ハサミは格闘戦に使えるほか、内部に射撃兵装を持ち、チェーンガン、火炎放射器、レーザー砲、ガトリングなどから選択して装備でき、本体にはマイクロミサイルランチャーと自走爆弾三つと火力に富んだ機体である。機動性も問題なく、高い跳躍力と、ショック吸収をもった脚部にホバーに切り替えて突進も可能である。欠点といえば、駆動音がやかましいくらいである。

 

また、ハサミのカスタム次第では放水車や耕運機になったりと、戦闘以外の運用も可能と割と優秀なものである。カラーは金、銀、赤、青、赤と黒のツートンである。

 


 

「てやぁ‼︎」

 

その頃、グリンダは自身が開発した装備を纏って戦闘を行なっていた。

桃色と黒の装甲をしたそれは『シュルシャガナ』。ブレード付きのヨーヨーとヘッドギアから逆コーラップスを用いて射出される丸鋸状のビットをメインとした中距離メインの兵装である。ただ、これには少しばかしリバイバーがアドバイスをしており、射撃兵装がないことを指摘し丸鋸ビットに一発のみだがレーザーを撃てる機能を追加させ、ヨーヨーのワイヤーはナノマシン製にしていざとなれば棒状に硬化させてモーニングスターのようにして振るうように改良したのであった。

 

グリンダはヨーヨーと丸鋸(ソー)ビットで敵を次々に切り刻んでいく。兵装が回転刃ということもあり、人形の人工肉片や人工血液が飛び散り、切り刻まれた鉄血人形が転がる少々スプラッタな光景となっているが致し方ないだろう。

他の部隊達も進撃していき、徐々に戦況がこちらに向いてきていた。

しかし、最終防衛ラインである以上、向こうも必死である。何が起こるかわからない以上、油断は出来ない状況であった。




Q.こんなん百輪廻じゃないわ!ただの薄っぺらいバグよ‼︎
A.だったらビルギットを討てばいいだろ‼︎

リバイバーの出した+@こと『百一匹隊』と『アラゴスタ隊』の元ネタはそれぞれケルベロスバクゥハウンドとカービィのヘビーロブスターです。
アラゴスタの色は元ネタのカラー+実際のロブスターにある色です。

ハイ、出しましたよシュルシャガナ。後悔は無いです。色が黒なのは白だと返り血が目立つからという理由です。やっぱアレ人に向けちゃあかんやつだよ…。

試作強化型アサルト様、ジュピターはある程度壊して進行中ですのでよろしくお願いします。


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Code-106 鉄血防衛ライン破壊作戦-2

コラボその2です。

こちらから読むとわかりやすいです。
https://syosetu.org/novel/190378/126.html

リバイバーに厄介な連中が来ますが…


荒野地帯 

 

次々と各所から爆音が響くなか、リバイバーは各所にいるハイエンド達を上空から撃破していた。彼女達もある程度強化はされてるが、脱走前の時点で裏切ったハイエンドの粛清も視野に入れて開発されたリバイバーが強化により飛行してる上に電磁フィールドを張ってるリバイバーに致命的なダメージを与えられることは叶わず、なす術なく撃破されていった。

 

「さて…あらかたここらは倒したか?次は…」

 

「見つけたぞリバイバーァァァァ‼︎」

 

「…んあ?コイツらどこから湧いて…は?三千?いやマジでどこにいたんだ⁉︎」

 

恨みがましい声を聞きリバイバーが振り向くと完全武装したパワードスーツらしき物を纏った集団が約三千人ほどがこちらに向かってくるのが見え、リバイバーはこれだけの数が潜んでいた事に動揺した。すると、通信機から同様の存在による反撃を受けてると連絡が入り、彼らが鉄血側の存在とリバイバーは判断した。

 

「覚悟しろリバイバー‼︎」

 

「エリちゃんを泣かせたこととその他もろもろの罪、その身で償えやぁぁ‼︎」

 

前方を埋め尽くす彼らの言葉にリバイバーは首を傾げた。

 

「エリちゃん?あー、エリザ(クソガキ)のことか。え?あんなんにお熱なのかお前さんら?大丈夫?そのバイザープラ板じゃね?」

 

「エリちゃんをクソガキって言うなぁ‼︎あとこれはちゃんとしたセンサーだ‼︎」

 

「貴様、万死に値する‼︎」

 

「…へぇ。で、その他もろもろって何だ?知らずに裁かれちゃ償いもできないぜ?撃ったり切ったりしないから言ってみな」

 

ただならぬ殺気を飛ばす彼らにリバイバーがそう言うと、彼らはそういうことならと話し始めた。

 

「まず一つ‼︎エリちゃんから裏切り者の粛清などを任務を任されたのにも関わらず、自身が裏切ってエリちゃんの大事な部下を逆に殺し始めたァ‼︎」

 

「二つ‼︎当時鉄血ハイエンド唯一の男というハーレムにぴったりなポジなクセにそれをアッサリ捨て去ったァ!」

 

「以上だ‼︎」

 

「二つじゃねぇか。どこがその他もろもろだ」

 

呆れ顔でリバイバーが言うと彼らはウルセェ!と吠えるとリバイバーは頭を掻いてため息をついた。

 

「ハァ…さてはお前さんら、彼女いないな?

 

『グフッ⁉︎』

 

「図星か。ま、じゃなきゃこんな逆恨みしないか。ハーレムポジだぁ?馬鹿言うな、一部除いて滅茶苦茶嫌われまくってたぞ?な〜んで女だらけのとこに男一人放り込めばハーレムになれると思ってんの、夢見過ぎだろ?お粗末な頭だこと……まぁいい。かかって来いよ、このロリコンどもめ。俺は早く帰って彼女といちゃつきたいんだ」

 

『このリア銃めッ‼︎上等だゴラァァァァ‼︎』

 

最後の一言が余計だったのか、彼ら─祈祷者の軍隊(プレイヤーズ・レギメント)─は一斉にリバイバーに向けて各々の武器を撃ってきた。すかさず防ぐリバイバーだが、電磁フィールドの削られ具合から一人一人が只者でない事を悟り、回避に徹することにした。

隙を見てリバイバーはレーザーを撃つも、機動性もあるのか中央にいた数人のみを除いて回避される。撃破された数人もかろうじて原形を保ってることから防御力も相応のものだろう。

 

(一人一人は倒せなくはないが、この数相手じゃな…もう少し粘れるか?)

 

リバイバーはテレポート機能を使い敵の一人の背後にまわり込むとレールガンを至近距離で撃ち込み射殺する。貫通した弾頭は射線上のもう一人に当たるもも思った以上に装甲が堅く、貫通はしなかった。

 

「くたばれリバイバーァァァ‼︎」

 

「おっと危ねぇ」

 

「へ?ガフッ⁉︎」

 

「バカ!下手に撃つと同士討ちになるぞ‼︎」

 

一人がリバイバーに向けてマシンガンを放つがリバイバーは近くの一人を掴むと盾にして攻撃を凌いだ。盾にされた敵は装甲を穴だらけにされ絶命したのを確認するとリバイバーはそれを放り投げた。

 

(ふむ…連中に近接武器は無さげだし、このまま中央にいれば少しずつ削れるが…そうは問屋が卸さねぇよな…よし)

 

リバイバーは一度飛翔し、中央に陣取ろうとしたがリバイバーの意図を察した彼らは移動を開始してリバイバーが外側に出るように陣取ろうとしていた。当然中央に戻ろうとするも銃弾やレーザー、ロケットランチャーの雨嵐で阻まれ、上手く入り込めずにいた。

ならばとリバイバーは逆コーラップスでスモークグレネードを生成、辺りにばら撒いて視界を遮ろうとする。しかし、

 

『スモークなんか無駄無駄ァ‼︎』

 

「ッ‼︎」

 

彼らのセンサーはかなり優秀なのか的確にこちらを狙い撃ってくる。

そのうちの一発がリバイバーの左脚に命中、リバイバーはバランスを崩して地上に落下してしまう。

 

「今だッ‼︎」

 

『死ねやリバイバーァァ‼︎』

 

彼らは一斉射撃を行い、さまざまな弾丸がリバイバーに殺到し、彼に命中しその身体を木っ端微塵にした瞬間、彼らの一人は()()()()()()()()()()()()

 

「…へ?」

 

彼が自身の胸を見るとそこには先ほど盾にされた仲間のように()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ…に…⁉︎これは…俺たちの武器の…⁉︎」

 

一体なぜ…?そう思った時であった。

 

──鏡花水月、解除──

 

()()()()()()()が聞こえた瞬間、バイザーの映像が乱れ、目の前に映し出されたのは、リバイバーの残骸ではなく『マシンガンを構え、自身が放ったレーザーで絶命した味方』であった。

彼は驚いて周りを見渡すと、同じ方向を向いてたと思っていた彼の仲間は全員違う場所で違うところを向いており、『互いが互いを撃っていた』のであった。彼らの殆どは絶命し、僅かに生き残った者も手脚のいずれかを失い、死ぬのも時間の問題という大惨事となっていた。マシンガンで撃たれた彼は何が起きたかわからぬままそのまま生き絶えた。

 

そしてリバイバーはというと、愉悦に満ちた顔で上空に留まっていた。

『鏡花水月』。以前開発したセンサー類などを狂わせて対象に誤情報を与えて混乱させるウイルスを彼は使ったのであった。

 

ハハハハハッ‼︎ハーハハハハッ‼︎まっさかこんな上手くいくなんてなぁ〜?ありがとよ、バイザー(ソレ)がセンサーだって教えてくれて‼︎おかげこの策が浮かんだんだからよぉ‼︎」

 

その言葉を聞き、生き残りの一人が顔を上げた。

 

「まさか…ウイルスが何かで映像と音声を…⁉︎」

 

「その通りだ。ちょうど風下だったから、お前さんらとアホな会話してる間に散布して効果が出るまで待ってたんだよ。効いたと確信したのはスモークを焚いたと勘違いした時だ。一度地上に降りて盾にしたのはお前さんら自身の武器がお前さんらに効くか確かめるため。そのあと万が一味方に誤射して勘づかれる前に飛んだってわけだ」

 

あとは上手いことバラけさせて互いを撃つように仕向けたところで仕上げたのだが、彼らが人形なのかわからない状態でこれは賭けだったが、わざと挑発してセンサーが本物と喋らせたり怒らせたりして視野を狭めた次第であったが、彼らにはどうしても解せないことがあった。

 

「だが…俺らの装備は、それこそ…正規軍にも勝る程の対ウイルス性を持ってる…。何故お前如きが開発したものが効く…⁉︎」

 

「その対ウイルス性ってさ、万能者レベルか?」

 

「…は?」

 

何故そこで万能者の名が出てくる?と思った彼らに対して、リバイバーはこう告げた。

 

「ウチにはMCRっていう超絶便利な特訓施設があってな、実戦だけでなく、ウイルス攻撃もシュミレートできるんだわ。しかも、戦闘データをもとに色んな仮想敵と戦えるし、そいつは武装や対ウイルス性まで忠実に再現されてるんだ。その仮想敵の中にいるんだよな〜…【()()()】が。しかも、ご本人が直々に手を加えたらしくてな。正確には手を加えたのはスペックダウンした仮アバターだがそれでも充分だ」

 

「ッ⁉︎ま、まさか…」

 

「あぁそうだ。暇さえあれば潜り込んでは試して返り討ちにあっては改良してを何万回も繰り返して繰り返して改良してやったんだ。なんせ時間はたっぷりあったしな。初めはほぼ瞬殺されたが段々と少しずつ、何万分の1秒レベルだが効いてきてな、まぁでも0.7秒が限界だったが…そんだけ止められたならソレ以下の対ウイルス性をもった奴には効くだろ?」

 

それが最近彼の開発したウイルスがやたら効果的な理由であり、スミスの装備開発が遅れた原因でもあるがそれは別の話である。

無論、そんなことすれば彼の電脳は無事では済まず、何回かオーバーヒートを起こしかけたがそれでもその狂気的なまでの探究心と向上心で改良を続けた結果がいまなのである。

 

「このっ…チート野郎…っ!」

 

「は?お前さんら、人の話聞いてたのか?この力は何万回も実験を積み重ねて得た力だ。チートでもなんでもないただの努力の成果だ。自分が勝てないからって人のことチート呼ばわりするのは心外だな」

 

「…っ!それでも、エリちゃんの為にも俺たちは引くわけにはいかねぇんだァァ‼︎」

 

彼らは満身創痍にも関わらず一斉にリバイバーに立ち向かうが、精彩を欠いた動きであり、一矢報いる事も叶わず返り討ちに遭った。

 

「…まぁその、お前さんらのそのエリザへの愛情だけは認めるよ…あークソ、ある程度治したら再生とめるかコレ」

 

余裕そうにしてたリバイバーだが、実際には流れ弾が何発か命中しており肩や脇腹の一部を失っており、傷を再生させてるものの、完全に再生すると崩壊液の残量に影響するため応急処置程度に収めていた。

他にも正体不明の敵の報告があるため、リバイバーはグリンダの身を案じて彼女の元に向かうのであった。




おっかしいな、敵の方が主人公っぽいぞ?
何コイツ、何万回も万能者と戦うとか正気の沙汰じゃないし、第二の万能者目指してんのか?

つーかアッサリ殲滅しちゃったけど、数の差相手じゃ搦め手しかないし、今まで万能者絡みで碌な目に遭ってないからね、その分のツケが回ったと思って許して…ユルシテ…。


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Code-107 リア銃二人のクリスマス

今回は一度今のコラボは置いて
oldsnake様の『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボです。

スミスとバルカンのクリスマスデートです。
リア銃注意でございます。
時間は少し飛んでコラボの後の話です。(予約投稿)


クリスマス当日、スミスはバルカンをデートに誘うため、彼女の部屋を訪れていた。前回の作戦は様々なイレギュラーがあったと聞き不安に駆られてたが、大きな怪我もなくバルカンが帰還したため、今日は無事にデートを行える事となった。

部屋の前まで着き、ドアをノックすると、以前に彼女に買ってあげた桜色のパーカーを着たバルカンがドアを開けてきた。

 

「…それ、春くらいに買ったやつだけど、寒くないか?」

 

「見た目より生地が厚いから大丈夫。それと…いきなりだけどこれ…プレゼント」

 

「っ!ありがとう。…開けても良いか?」

 

「うん、いいよ」

 

スミスはバルカンから渡されたプレゼントを開けると、中には赤いマフラーが入っていた。よく見ると端の方に彼の名前が刺繍してあった。

 

「それはお店のサービスでして貰ったんだ。…本当は手編みにしようかと思ってたけど、時間が無かったし、上手く編めなくて…」

 

「いや、全然大丈夫だよ。気持ちだけでも充分だ…ん?」

 

スミスは折り畳まれたマフラーを広げると、一人で使うにはやけに長く、よく見ると反対側の端にはバルカンの名前が刺繍されてることに気がつき、その用途を察すると思わず笑みを零した。

 

「なるほどな…そういう事ね。じゃ、早速…」

 

「え?あの、出来れば外に出てからで…わっ⁉︎」

 

恥ずかしがるバルカンだが、構わずスミスは彼女を抱き寄せ、二人は横に密着し、互いの首にマフラーを巻いた。そう、先ほどのマフラーは二人で巻く用のものであったのだ。

 

「〜〜っ」

 

だが、まさか外に出てからではなく、ここで巻くとは思っていなかったバルカンは顔を真っ赤にしてマフラーに顔を埋めていた。

 

「さ、行くか」

 

「うぅ…絶対みんなに見られる…」

 

「どのみち外で他の人に見られるんだからいいだろ?ほら、手出しな」

 

(このままだとスミスにいいようにされるな…良し!ちょっと恥ずかしいけど…)

 

恋人繋ぎをしようと手を出したスミスだったが、バルカンはスミスの腕を抱き締め、頭をスミスの肩に寄せたのであった。

 

「おっと!…意外だな。これで行くのか?」

 

「うん…早く行こ」

 

二人はそのままの状態で出発していき、当然他の人形達に見られ黄色い声や羨望の声を上げられるのはもちろん、それぞれの隊のメンバーにも見られたのだが、あまりのイチャつき様にマーダーやリバイバーは揶揄う気が失せたらしい。

 


 

街へ出た二人はイルミネーションが多く飾られている通りを歩いていた。色取り取りに飾られたイルミネーションを見てバルカンは目を輝かせていた。

 

「わぁ…!綺麗…」

 

「ここらはイルミネーションが有名でな、特にカップルに人気なんだ」

 

スミスの言葉が示す通り、この通りにはカップルが多くおり、二人のように腕を組んでたり写真を撮ってたりしていた。その様子を見ていたバルカンはスミスの方をチラリと見ると、視線に気づいたスミスはスマホを取り出した。

 

「一緒に撮るか。バルカン、何処がいい?」

 

「あ、じゃあ…あのハートのところがいい」

 

二人はハートのイルミネーションのところまでいき写真を撮るとそのデータをバルカンのスマホに送信した。

バルカンはその写真を見ると満足そうに微笑んでいた。

 

(えへへ、しばらく待ち受けにしよ…)

 

(ホント、幸せそうにしてて可愛いよな…)

 

その後二人はレストランへ向かうため一度着替えるのだが、バルカンは前に自分で買ったものがあるというのでその店へ向かい、スミスはレンタルすることにした。

スミスはタキシードを着て待っていると、着替え室から青いドレスを着たバルカンが出てきた。

 

「……!」

 

「えっと、その…似合ってるかな?」

 

「あぁ、とても似合ってるよ」

 

緊張した顔で問いかけるバルカンにスミスが正直に答えると、バルカンは安心し、肩の力を抜いた。その後レストランに行き、席に案内されグラスにシャンパンが注がれ二人はグラスを持ち上げた。

 

「「メリークリスマス」」

 

乾杯をしたあと運ばれてきた料理を口に運びながら二人は話を始めた。

 

「そういえば、ミニガンの様子はどうだ?あれから何かあったか?」

 

「時折何か悩んでるみたいだけど、記憶が戻るような素振りはまだないかな…」

 

「そうか…早く戻るといいな」

 

「うん。早く記憶が戻って私たちがその…結婚…する時に祝って欲しいし…」

 

二人とも互いに結婚したいとは考えてるものの、バルカンの家族であるミニガンの記憶が戻るまでは待とうという事になっていのであった。

食事を終え、再び服を着替えた二人はクリスマスの小物が売っている店舗を巡り歩いていき、広場のクリスマスツリーを眺めていると、スミスはバルカンに小包を手渡した。

 

「はい、バルカン。俺からのクリスマスプレゼントだ」

 

「えっ?本当に…?開けてみてもいい?」

 

バルカンの問いにスミスが頷くと、バルカンはゆっくりと包みを開き、中の箱を開けると中にはピンク色の宝石が嵌め込まれた銀のネックレスが収められていた。

 

「え…⁉︎こんな良い物貰っていいの?」

 

「あぁ。お前にあげたくて買ったんだ。遠慮しないで貰ってくれ」

 

「ありがとう…!絶対に大切にするから…!」

 

バルカンは感極まって嬉し泣きをし、スミスは喜んでもらえて良かったといった顔を浮かべていた。また、ネックレスに嵌め込まれている宝石は『パパラチアサファイア』といい、宝石言葉は【一途な愛】【運命的な恋】【信頼関係】という事を教えてもらったバルカンは再び嬉し泣きをし、思わずスミスに抱きつき、スミスはそんな彼女の頭を優しく撫でていた。

 

「…こうして喜んでもらえると、色々考えた甲斐があったよ」

 

(…ん?色々ってもしかして…⁉︎あぁぁ!私、すっごい勘違いを…‼︎)

 

己の勘違いに気づいて顔を赤くするバルカンだったが、あることを考え始めた。しばらく二人はツリーの周りを歩いていき、そろそろ帰るか?とスミスが尋ねるとバルカンはスミスの袖を摘んで立ち止まっていた。

 

「ん?どうした?」

 

「えっと……その、今日は…帰りたくない…かな…」

 

「え……⁉︎」

 

絞り出すようにいったその言葉にスミスは驚き、確認するように視線を送るとバルカンは頷き、冗談でないことがわかるとスミスはバルカンを抱きしめた。

その後、今日は帰らない旨を連絡すると、二人はある場所に向かっていった。

 


 

(あぁ…これから私、スミスと…)

 

()()()ホテルの一室を借り、シャワーを浴びた二人はバスローブ姿のままベッドに並んでて腰掛けていた。緊張で小刻みに震えているバルカンの手にスミスは自身の手を重ね、スミスは最後の確認をした。

 

「バルカン…本当にいいのか?」

 

「うん…実を言うとな…『あの日』のこと思い出すたびに身体が疼いて仕方ないんだ…その、ちょっとだけ怖いけど…スミスになら…私のハジメテ、あげても良いから…」

 

そこまで聞いて引き下がる訳にもいかず、スミスはバルカンと唇を重ねるとそのまま押し倒して舌を何度も絡ませる深いキスをした。

やがて唇を離し、熱を帯びた目でこちらを見つめるバルカンに一言、愛してると告げ二人はそのまま愛し合った。

 

翌朝、目を覚ましたスミスは隣でしがみつきながら幸せそうな顔をして寝てるバルカンの頭を撫でてるとちょうど彼女は目を覚ました。

 

「ううん…ん?スミス…?って、何ではだk…!〜〜ッ」

 

昨日の出来事を思い出し、恥ずかしさで布団を頭にかぶるバルカンをみてスミスは目を細めていた。

 

「なんつーか…その、バルカン意外とエm「待って、それ以上言わないで!」わ、わかった…まぁ、なんだ…改めてよろしくな、バルカン」

 

「うん…よろしく…」

 

より愛が深まったことを感じながら、二人は微笑みを浮かべるのであった。




やりました。(某一航戦風)
付き合って一年のクリスマス、しかも互いにお熱なこの2人ならこれくらいはねぇ?
末長く暴発しやがれこのリア銃‼︎

oldsnake様、ありがとうございました!
何かあれば連絡ください。

さーて、元のコラボに戻りますかね。


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Code-108 鉄血防衛ライン破壊作戦-3

コラボその3です。

なんかヤバげな施設出てきた⁉︎



「わわわっ⁉︎なんなのコイツら⁉︎」

 

グリンダは突然現れたスーツの男たちに追われていた。彼らの手袋に高圧電流が流れているらしく、彼らに触れられた味方が感電死したのを見て彼女はソービットやヨーヨーを使い彼らを迎撃しつつ、追いつかれないよう広いところへ逃げていた。

シュルシャガナ自体高い機動性が有るのにも関わらず、彼ら─追跡者(チェイサー)は少しずつ距離を詰めてきており、しかも隣で仲間が切り裂かれようとも、その血や肉片が顔に着こうとも表情一つ変えずに追跡を続ける彼らにグリンダは恐怖していた。やがて別のチェイサー達が進行方向に現れ、グリンダは囲まれてしまった。

 

足を止めた隙をついて彼らが急接近していき、グリンダは迎撃するも生き残ったチェイサーがもう少しで彼女に触れようとした時、上空から降り注いだレーザーがチェイサー達を撃ち抜き、物言わぬ肉塊に変えていった。

 

「大丈夫かグリンダ‼︎」

 

「リバイバー…‼︎」

 

恋人からの救援にグリンダは思わず泣きそうな顔を浮かべるなか、リバイバーはチェイサー達に対して自分でもびっくりするくらい腹を立てていた。

 

「ったく、寄ってたかって人の女追っかけ回しやがって…‼︎覚悟しとけよ黒服ども…!」

 

リバイバーはそのまま上空からチェイサー達を狙い撃ちにし始める。彼らはどうやら手袋以外に攻撃手段を持っていないらしくそのまま逃走し、さっきと打って変わり彼らの方が追い回されるが一人、また一人と撃たれやがてそこにいたチェイサー達は全滅したのであった。

 

「…っと、合流しようと判断して良かった…で、怪我とかないか?」

 

「うん…大丈夫…。ゴメン、私から参加したいって言ってこんなんで…」

 

「な〜に言ってんだ、初陣であんなトンデモ出てきて無事なだけで万々歳だろ?気にするなよ。寧ろこんな状況で置いてった俺の方が悪かった。すまん」

 

「いや、でも……うぅん、わかった。もう気にしないよ」

 

申し訳ないといった具合に頭を下げるリバイバーにグリンダは驚き、自分も悪いと言おうとしたが何を言っても食い下がらない様子を見てその言葉を飲み込んだ。その後二人は一度補給地へ下がり補給を受けていると、前線の正規軍から連絡が入って来た。要約するとどうやら最終防衛ライン手前に防衛施設があり、頑強さと多数の兵装により攻めあぐねてるらしく、支援してくれとの事だそうである。

 

「ふむ…良し、じゃあ行くとするか」

 

「リバイバー、行くの?」

 

「あぁ。ここまで来たんだ、最後までお手伝いするさ。防衛施設つっても人工物なら無敵な訳じゃない。どこかしら弱いとこがあるはずだからそこを見つけて《ダインスレイブ》でブチ抜いて突破の糸口を掴ませる。グリンダは見つけて電力溜める間の援護を頼む。アラゴスタも付かせるとしても念のためもう少し誰かしらの援護があればいいが…」

 

『お力が必要ですか?』

 

通信をよこしてきたのはP基地から派遣された一人であるダラーヒムであった。

 

「あぁ、正確には大技かますからそれを悟られないよう注意をそっちに逸らさせてくれ。出来るだけ派手にな」

 

『了解、こちらもあらかた片付けたのですぐに動きます』

 

頼んだ、とリバイバーはそのまま通信を終え、グリンダを連れて決死隊に志願し現場に向かうのであった。

 


 

「うわ、デッカ…まぁいい、さっさと始めるか」

 

狙撃ポイントを見つけたリバイバーは防衛施設の大きさに圧倒されるも、すぐにグリンダとアラゴスタ隊に周りの警戒を頼むと発射準備を進めた。左右のレールガンを繋げて専用弾頭を生成・装填し、身体の固定を済ませ、電力を溜めつつ狙える場所がないか調べてると、離れたところで爆音が聞こえてきた。方角的にオートスコアラー達が注意を引いてるのだろう。

 

「これならしばらくは向こうに「がおぉぉぉ‼︎‼︎」うおっ⁉︎何だ何だ⁉︎」

 

大声に驚いて見てみると先程の場所から衝撃波が一直線に飛んでいくのが見えた。恐らく音響兵器の類なのだろうが、ここまで聞こえてくる大声にリバイバーはそれを間近に受けた敵に同情していた。視線を防衛施設に戻してみると、正規軍が施設に砲撃するも大した損傷を与えられず逆に備え付けられた武装にやられていた。

 

(見つけた…!どうもアレは施設の内側から出てるようだな、それを狙えば…‼︎)

 

施設自体は頑強だが、それにつけられてる防衛武装、それもその砲口はその限りではないと見抜いたリバイバーは防衛武装の一つのミサイルポッドに狙いをつけはじめる。

 

「グリンダ!周りに敵は⁉︎」

 

「いないよ!妨害するようなものもない‼︎」

 

「OK‼︎ダインスレイブ……発射(ファイヤ)‼︎」

 

リバイバーは引き金を引いてダインスレイブを放つ。放たれた弾頭はミサイルポッドの砲口にまっすぐ進み、命中する。予想通り外壁ほどの強度は持っておらず弾頭はそのままミサイルポッドを破壊しつつ貫通し内部に潜り込んでいった。

数秒後ミサイルポッドは爆散し、内部の火薬庫でも破壊したのか施設内は次々と各所から爆炎が上がり、内部の誘爆によりその施設の一部の防衛武装が内側から周りの壁ごと爆砕され、脆い内側を晒していた。

 

「前線の連中に告ぐ‼︎その壊れたとこから狙ってけ‼︎……さて、位置もバレることだし、離れるぞ」

 

「了解!」

 

二人とアラゴスタ達はすぐさま移動し、屋上のジュピターを撃ちつつ別の施設へ向かうのであった。

 


 

戦場から離れた場所にて、『白い残骸』が辺りに転がっている隠された基地、そのさらに隠された地下にて『彼女達』はいた。彼女達はここにいるのに似つかわしくないくらい幼い見た目をしており、その様子はどこか焦っていた。

 

「ねぇどうするの⁉︎ドアは壊れて開かないし外のみんなはやられたし、周りとも連絡とれないし…!」

 

「…確か、横槍入れようとしてた部隊にリバイバー…『メッセル試作機』がいたって言ってた。いっそ救難信号だして…」

 

「でもそいつグリフィンにいるよ⁉︎それに、ここに気づけるの?」

 

「このままだと私達閉じ込められたまま死ぬよ?ここについても、ソイツが覚えてるかはわからないけど『ここに来たことある』みたいだし、やってみるしかないよ…」

 

そう言いリーダー格の幼い少女は()()()()()()()()が心配するなか、救難信号のスイッチの元に歩き出した。




向こうも絡んで良いって言ってたし、絡まなきゃねと思いましてね。
割とリバイバー、今回は順調にいってるけどそろそろコイツ、痛い目そうだゾ。

最後の子供達ですが、大陸版のネタバレの存在もとい、パラデウス唯一の癒しですね。リーダー格の子の名前がねぇ…ホント、あの子達救いがなさすぎですわぁ…

それはそうと、もうすぐ年が明けますね。
…最近リアルにて中学の担任が下着ドロで捕まった挙句自分が現役の頃からしてたと新聞で知ったのが一番衝撃でしたね。


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Code-109 鉄血防衛ライン破壊作戦-4

あけましておめでとうございます。今年もこの小説をよろしくお願いします。
コラボその4ですが、今回あまり進まないです。


「ウワォ…こりゃスゲェな、あっという間にぜ〜んぶ壊れてら」

 

大破させた防衛施設をP基地のノアがトドメを刺したのを見届けたあと、他の防衛施設を破壊しようと動いていたリバイバー達だったが、一つはバルカン達が、もう一つはギルヴァとブレイクという人物が破壊したの確認し、一行は足を止めていた。

 

「にしても、あれをぶった斬るとはね…二人に対するバイザーの反応も何か変だし、こう言うのも失礼な気もするが、人間かあいつら?それとも剣が特別なのか?」

 

その時、前線の正規軍から連絡が入り、これより敵の重要拠点の制圧に乗り出すため、戦える者はついてきてくれとのことの為、リバイバー達はその支援のために合流を開始した。ほどなくして集まった他の部隊や前線の部隊と合流するが、そのメンバーに不審な点を見つけたのであった。

 

(…ん?負傷者が多数に武装したデカいペンギン…?なんでここn武装したデカいペンギン⁉︎

 

あまりに自然にいたため一度スルーしてたが、よく見れば不自然なその存在に二度見したリバイバーは思わずそのペンギン?に話しかけると彼はペンギン型人形のワカといい、本来は事務系の後方支援してたがジョージ上級指揮官なる人物に負傷者達諸共決死隊に強制参加させられたとのことである。それを聞いたリバイバーは訳がわからないといった顔を浮かべた。

 

「…ハァ?強制参加?…ッチ‼︎上級指揮官サマってのは『志願』の意味もわからねぇのか?脳味噌にマダニでも突き刺さってんじゃねぇの?」

 

「なかなか毒のある言い方だな。まぁ正規軍も事情知って後方に回してくれるそうだし、P基地からも護衛を出してもらえるそうだ」

 

「なるほど…ヨシ、俺の方からもガルムの支援を出そう」

 

「む、助かる。…ちなみにどれくらいだ?」

 

「えっと、今動かせるので近いのは…20体だな」

 

「多過ぎて逆に狙わないかそれ…?」

 

結局、戦力が集まり過ぎて狙われる可能性を危惧して5体だけ呼ぶことにし、彼らの元を去ると、オートスコアラーが見えたのでリバイバー達は彼女らに近づいた。

 

「おー、さっきは援護ありがとうな。それで、聞きたいことがあるんだが、いいか?」

 

「何でしょう?」

 

「後ろの連中を送った野郎について、そっちの指揮官は何か動いてるか確認してくれないか?」

 

彼の質問にリバイバーの意図を察したスユーフは少々お待ちくださいと言い、通信を行い、向こうの指揮官とやりとりを交わすとこちらに向き直った。

 

「どうやら彼女達を送り出した上級指揮官について『盗賊』と『エジプト神』に調べてもらってるそうです。結果はヘリアンさんに送られるのでそちらにも連絡が来ると思います」

 

「(『盗賊』と『エジプト神』…『アリババとメジェド』か)了解。確認ありがとう」

 

仮にもDG小隊の一員であるリバイバーがいるのに関わらず、志願のはずの部隊に負傷者を強制参加させるような策を打つような人物にリバイバーは不快感を表し、またP基地が反感を持たない筈がないと考え先ほどの質問をしたリバイバーだったが、例の二人が動いてるのなら問題ないとし、攻略作戦のほうに思考を切り替えてると秘匿回線にて連絡が入ってきた。相手を見ればヘリアンからであった。

 

「あー、何となく用件はわかるが、何の用で?」

 

《作戦中すまないが貴様に頼みたい事がある。そこの指揮をしてるジョージ上級指揮官だが、情報提供によると今の立場はコネ以外にも贈賄によるものもあった。それ以外にも明らかに無謀ともいえる作戦指揮記録や人形に対する度を越したパワハラ、資金の水増しによる横領など複数の違反行為が確認された》

 

「早いな。P基地以外にもソイツを調べてた奴がいたのか」

 

《そんなところだ。そこで、正式にDG小隊となった貴様に別任務だ。今拘束してしまえば指揮系統に混乱が起きるのは確実だ。故に作戦終了後、可能なら彼の拘束を頼む》

 

「了解。グリンダにも伝えておく。正規軍もこれには御立腹だそうだし、詰んだなアイツ」

 

《頼んだ。そちらも作戦の成功を祈る》

 

通信を終えたリバイバーは再び攻略作戦について現状を確認し始めた。

 

(砲台陣地も壊滅、防衛施設も全滅して重要拠点までの道ができて連中の敗北は濃厚…だが妙だな。道中イレギュラーは起きたが、ハイエンドの数が重要防衛ラインの割に少なかった…もしかして、誘導してるのか?)

 

そこまで考え、仮にそうだとしてじゃあ何故誘導してるのかを考えはじめた。可能性として出てきたのは二つ。一つは自分らが向かう先で何度か目撃されたという対万能者用に開発されたとされる大型ユニット三機が待ち構えており、こちらを返り討ちにする算段。もう一つはもう既にエリザなどは撤退済みであり、こちらが近づいたところで基地を核などの大量破壊兵器を作動させて基地ごとこちらを殲滅する算段である。無論そのどれでもないものがある可能性もあるが、取り敢えず今の考えを正規軍や他の部隊に伝えた。

 

「ふむ…なるほどな。その可能性もあり得るな」

 

「とは言え、俺らは進むしかないがな」

 

「しかし、この情報があるのと無いのでは心構えが異なりますので言って頂いて感謝します」

 

鬼が出るか蛇が出るか、いずれにせよ彼らは作戦成功のために鉄血の重要拠点へと歩を進めるのであった。




ハイ、ウチで絶賛イクメンしてる連中を動かそう思ってたらそれ以上のとこが動いてくれたのでリバイバーとグリンダには情報を元に作戦終了後ジョージ上級指揮官をとっ捕まえてもらうことにしました。

さーて、最終局面ですが、何が出るのやら…


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Code-110 鉄血防衛ライン破壊作戦-5

何かヤバい事態になったかと思ったらメッチャ心強い味方が来てくれてこっちの守りもバッチリだから安心して隠し玉使ってやらぁ!(ヤケクソ)
お前ら下がれぇ‼︎

あ、ここから見るとわかりやすいです。

冒頭

https://syosetu.org/novel/190378/131.html
https://syosetu.org/novel/207272/38.html

中盤〜
https://syosetu.org/novel/191561/191.html

※重要拠点と本拠地間違えてもうた…スマヌ


「くっ…オラァ‼︎」

 

「ガッ!」

 

テレポートで回り込み、背中にレーザーブレードを突き立ててブルート擬きの一人を仕留めたリバイバーは飛行関係を修復しながら敵の武装を奪ってグリンダと共に物陰に避難した。

 

「クソが!何だあいつら⁉︎黒服共がいなくなったと思いきや、通信封鎖されるわデカブツでウチのはやられるわでどこに今まで隠してたんだあんなモン‼︎しかも…」

 

リバイバーはグリンダの方をチラリと見る。先ほどの戦闘で予備のリンクリキッドが破壊されてしまい、今打ってあるものの残り時間が多くて二時間を切っていた。それを過ぎれば彼女のシュルシャガナは使用不能となり彼女は無防備となってしまう。

幸い奪った武器は使えるようだが、それでも心許ない。アラゴスタやガルムは形勢不利になれば撤退するだけのAIはあるものの、それを向こうは許してはくれないだろう。

 

(どうする…?この状況を打開するには…いや、あるにはあるが周りを巻き込みかねない…)

 

打開策はあるにはある。だがそれを行うと周りに被害が出る可能性が大いにある代物であるため事前に退避連絡をすべきなのだが、通信網が軒並みやられてるためこの状況で使えば味方を巻き込みかねない。

すると、どこから声が聞こえてきた。

 

「リバイバー、出てこい‼︎」

 

「さっきやられたお返しをしてやる‼︎」

 

「…は?奴ら、何で生き返って…⁉︎チッ!やるしかないか…!」

 

先ほど倒したはずの祈祷者の軍隊が蘇り、こちらを探している声を聞いたリバイバーは隠し玉を使う覚悟を決めた時、後方から斬撃のような音と爆発音が聞こえ振り返ると二人の男性がブルート擬きの群れやガルム隊やアラゴスタを蹂躙してたサソリ擬きを切り裂いてあっという間に撃破していた。

話を聞くと彼らはそれぞれギルヴァとブレイクと言い、S10地区前線基地からの戦力らしい。

 

(あーそういえば鉄血時代にそんな名前の要注意人物の悪魔がいるって聞いたな…あん時は比喩かと思ったが、さっきの言葉と戦闘からしてマジもんの悪魔なのか…)

 

「それで、リバイバーにグリンダだったか?俺らに出来ることはあるか?」

 

「周り見たら幾つかの部隊が殿務めてあとは負傷者連れて下がってるところだ。サソリに絡まれてたワンコとロブスターみたいなのはすぐに負傷者捕まえて撤退してったぞ」

 

「なるほど、周りの味方は殆ど下がってるのか…俺らは結構前の方だし、他にいないと思うが念のためだ…三人とも、耳塞いだ方がいい」

 

リバイバーは大音量ブザーを生成し、『後方退避 巻き込みたくない リバイバー』とモールスにて鳴らした。

 

「巻き込みたくない?何する気だ?」

 

「ちょいと隠し玉をな。核の類じゃないが、味方の人形にも効く奴だから伝えたわけ」

 

「リバイバー、まさかアレ使うの⁉︎」

 

「他に手はない。聞くがお前さんら、身体のどこかサイボーグになってたりその武器は普通の仕組みの武器だったりしてないか?」

 

「生憎、どちらも違うな。どんなモン使うかは知らないが、あんたには悪いが俺らの武器はそう簡単に壊せない」

 

「なら上出来だ。あとはどっちかにグリンダを下がらせるまでの護衛を…ん?」

 

ふと見ると武装が半壊した銀色のガルム、つまりリバイバーが脱走した時からいた個体が寄って来ていた。

 

「ガウゥ…」

 

「コイツ…わざわざ来てくれたのか?ありがとな、ならお前さんに頼みだ。グリンダ乗せて後ろまで逃げろ。帰ったら修理してやるから、死ぬなよ?」

 

「ガウッ‼︎」

 

ガルムは威勢よく返事をし、グリンダに背中に乗るよう催促した。

 

「ほらグリンダ、乗ってやれ」

 

「うん…リバイバー、死なないでよ?」

 

わかってる、と答えたあとグリンダはガルムの背に乗り、そのままガルムは下がっていき、リバイバーは準備を始める。

彼の言う『隠し玉』を造る切っ掛けとなったのは以前に過激派の補給路を破壊した際に敵大型兵器に半殺しにされた事に遡る。あのような防御を持った敵に対抗する武器を運用するには反動や大きさなどの問題があるうえ、例え対処しても向こうもあらたな防御システムを造るのは明白である。そこで、P基地がM4に施したという武装の【ディストーションフィールド】及びその応用の【グラビティブラスト】のような防御機構を無視して攻撃するようなモノを開発しようと考えていたが開発に難航していた。

が、意図せず死神がこちらに入った事で彼女の持つ【酸化ナノマシン】の情報を得た事で事態は好転した。

 

これは使えるのではと考えた彼は早速ペルシカの許可を得て酸化ナノマシンの改造を開始、ちょうどその時ハマってたロボットアニメの武装をそれで再現出来ないか冗談半分でやってみた結果、酸化及び腐食のスピードの向上し配線どころか比較的脆い関節フレームやセンサー類まで破壊してしまうモノにまで改良したのだが、どうしても解消出来なかった欠点として出たのが『発動の制御が出来ず敵味方問わず作用してしまう』事だった。

 

それ故に基本使用はどうしようもない時のみとし、使う時は周囲に連絡するなどの制約をつけたが、この状況下ではその連絡も出来ない。だが、先程の話によれば殆どの味方は下がらせており、ブザーによるモールスも伝えたため使用する事にしたのであった。

 

無論、見つけてないだけで戦場に取り残された味方を巻き込んでしまう可能性もある。それでも、今やらなくてはより被害が増すため、彼は先程拘束するよう言われたジョージ上級指揮官と似た道を選ぶ覚悟で使用を決定したのであった。

 

彼のブザーによるモールスを聞いた者たちは彼を知っている者は彼と行動を共にした時の経験から、知らない者はわざわざ自身の居場所と作戦をバラしてまで伝えた心意気を察して後方退避を開始した。逆にリバイバーは味方を巻き込まないよう、出来るだけ敵の中央へ突貫していった。

敵にも伝わったため、彼の位置を特定し離れる、もしくはそれをやる前に仕留めようと逃げゆく者への追撃をやめてリバイバーを血眼で探し始めた。

道中で遭遇した敵は周りに伝えられる前にギルヴァとブレイクの両名に撃破されていったため、現在の居場所を知られずに準備を進めることが出来た。

やがて準備を終えたリバイバーは空高く飛翔し、F.E.F.Gを両翼に広く展開し始めた。

 

「ヨシッ!『ルーン・パピヨン』散布開始‼︎」

 

そう叫ぶと同時に前に進み、薄い緑色をしたナノマシンを鱗粉の如く大量に散布し始める。高く飛んだため、その姿を祈祷者の軍団たちは見逃さなかった。

 

「見つけたぞリバイバー‼︎」

 

「なんか撒いてないか?」

 

「気にするな!ウイルス類は無効化されてんだ!さっさと仕留めるぞ!」

 

ナノマシンが彼らに降り注ぐが、ウイルスの類と考えた彼らは構わず各々の武器をリバイバーに向けようとした瞬間であった。突如彼らの動きが鈍くなり構えようとしたパワードスーツの腕から錆びついたような音が聞こえてきた。

異変に気付きつつも無理矢理動かそうとしたところ、バキャリ!と音を立てて彼らのパワードスーツやアーム部は砕けていった。

 

「なっ‼︎腐食してるだと‼︎」

 

「ウイルスじゃないのかよ⁉︎」

 

「スーツが‼︎スーツがオシャカになった‼︎」

 

大慌てとなる彼らの元にブレイクが近寄って来た。

 

「よう、イルミネーションに見惚れてるところ悪いが、もう寝る時間だ」

 

「へ?お、お前は…ガッ⁉︎」

 

彼らは次々にブレイクに殴り飛ばされるが、手加減されているのか気絶こそしてるが死んではいなかった。というのも、彼らがどういう理屈で甦ってるのかわからない以上、下手に殺して装備を整えられて復活させるよりこのまま気絶させた方がいいというリバイバーの提案によるものであった。

その後もリバイバーは移動を続け、ナノマシンに触れた鉄血たちは次々に配線や関節を酸化、腐食され壊れていく。先程の彼らより寧ろ人形である彼女達の方が痛みを伴う分ダメージは深刻であり、断末魔が辺りに響いていった。それだけでなく、リバイバー達を観察してたスカウト達も例外なくその被害を受けて破壊されていった。

 

「ぐうぅぅうぅぅ‼︎」

 

リバイバーは唸り声を上げながらさらに奥へ進む。何故唸っているのか、それは『彼自身もダメージを受けている』からである。

敵味方問わず、というのは使用してるリバイバーも例外ではなく彼は逆崩壊液技術で身体を再生しながら散布していた。しかも厄介なことに使用中は再生にリソースを割いてるため防御がほぼ不可能なうえ、()()()()()()()()()ため常に全身に激痛が走っている状態にあった。

時折遠くからリバイバーを狙撃しようとする者がいるが、その攻撃が届く前にギルヴァが幻影刀を使って弾いてるため、防御の方は心配なかった。

とはいえ、再生に必要な崩壊液が尽きてしまえばそれまでの為、リバイバーは残量チェックをしつつ出来るだけジャミングがあると思われる重要拠点まで急いでいた。

 

(やばい、思ったより(いて)えし減りが早い!悔しいが散布はここまでか…)

 

残量の問題からリバイバーは散布を止めて地上へ降りていく。散布範囲からして道中の敵全員とはいかなくとも、半分以上は仕留めただろう。

 

「あぁ、身体中がクソ痛い…悪いがしばらくまともに戦えそうにないから頼む」

 

「了解だ。アレだけ派手なモン見せてくれたんだ、鑑賞代としてキッチリ守ってやる」

 

「あとでやっぱり魂で払えとか言うなよ?そもそも持ってねぇし」

 

「中々言うじゃないか」

 

悪魔二人に護衛されながら、リバイバーはジャミングを何とかするため先に進むのであった。




月 光 蝶 で あ る ‼︎

まぁデメリットの方がデカイからこんな状況くらいしか使いませんけど。
位置的には敵重要拠点に比較的近いところにいる感じですかね。ちなみにあの二人がいなかったらロボ○プラネットでの戦艦ハ○バート並に早期撃墜されてました。あの艦カ○コンヘリ以上に堕ちやすいんだよなぁ…

とりあえずグリンダは武装の時間制限的に戦線離脱、リバイバーはギルヴァとブレイクとともに侵攻中、但し崩壊液残量が二割切ってるため今までのバ火力は出せないうえ現在身体の痛みでまともに戦えない感じなのでよろしくです。
何があれば修正します。


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Code-111 鉄血防衛ライン破壊作戦-6

一瞬詰んだと思ったけど、助けが来てくれた上に打開策見つけたから反撃するね!

何があったかはこちらをどうぞ。

https://syosetu.org/novel/190378/132.html

https://syosetu.org/novel/166885/698.html


ふざけるなクソったれが

 

リバイバーが真っ先に浮かんだのがその言葉であった。

電撃により全身を焼かれ気絶し、その後ランページゴーストにより救助され一度後方へ搬送され予備の崩壊液を補充して身体を治したあと心配するグリンダに大丈夫だと声をかけた後再出撃し、ノアが造ったという大型航空兵器に唖然としつつ向かった先で見たのは、自分が決死の思いで倒し、負傷させた連中を治している大型装甲兵と蜂のような飛行ユニットであった。その他にもさらなる増援をみてこの理不尽に流石のリバイバーもいつもの調子を失い、毒を吐かずにはいられなかった。

 

(ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなッ‼︎何故だ、初めの奇襲時からそれを使えば良いものを何故小出しにする⁉︎俺らを嘗めてるのかよ、嘲笑ってるのかよ‼︎どこで手に入れた、いつから手に入れたその力はッ‼︎)

 

少なくとも数週間で出来るものではないだろう、恐らく数ヶ月以上前から準備していたと考えて良いだろう。彼が切磋琢磨して新しいコンピュータウイルスの開発やその性能強化をしている間に鉄血はそれ以上のものを開発していた事もそうだが、それの開発を主導していた存在が何なのかが気がかりであった。

 

(クソガキじゃねぇな…そうだったらとっくに俺たちは負けている…なら誰だ?少なくともクソガキと同じかそれ以上のスペックはあるものをどうやって…まさか遺跡からか?…いや、今はそれはあとにして、どのみちこの状況を何とかしないと…)

 

おそらく、後方で待機してるという万能者はすでにこちらに向かっているだろうが、それまでここが保つかもわからない。それに、今はノアが航空勢力を何とかしているが、まだ向こうがとんでもない隠し玉を用意してる可能性だってある。故にどうすべきかリバイバーは頭をフル回転させて考えていた。

 

(生半可なものは対策されてるかもしれねぇ…回復手段が向こうにあるならもう一度ルーン・パピヨンは使えねぇし…ん?何だあれ)

 

ふとリバイバーが見つけたのは地面に倒れ伏してる先ほどのサソリ擬きの一体であった。しかし、不思議なことに『外傷は一つもない』のにピクリとも動いていないのであった。不審に思ったリバイバーは警戒しながら近寄るも反応せず、思い切ってレーザーブレードを発振し装甲を切り飛ばすと、()()()()()()()()()()()()

 

「な、なんだコレは…?「デェェェス‼︎」ん?この声…」

 

叫び声を聞いたリバイバーが声のした方に向かうとそこにはEA小隊がおり、死神が先程の大型装甲兵─ Golemに向かって大鎌を振りかざすもGolemに傷一つつけられなかった。

まずいと思ったリバイバーは援護しようと武器を構えるが、次の瞬間Golemは何故か地面に倒れ、そのまま動かなくなった。

 

(え…?どういうことだ?)

 

謎の現象に驚いたリバイバーは話を聞くべく彼女達の元は合流していった。

 

「お前さんら、無事か?」

 

「あ、リバイバー!私たちは無事デスよ!」

 

「あら、まだ生きてたのね?てっきりあの蝶みたいなの出して死んだと思ったわ」

 

「残念ながら俺は生きてるぜマーダー。…何でバルカン白くなってんの?」

 

「あ?何でお前にんな事教えなきゃいけねぇんだ?」

 

「(この状況でグレたのか?スミス大変そうだな)まぁいい、で死神。さっきのはなんだ?大鎌に何かあるのか?」

 

「さっきのデスか?コレはイガリマっていって、万能者が造ってくれた武器で、斬りたいものだけ斬れる鎌なのデス!さっきは『中身だけ』斬ったわけデスよ」

 

「中身だけだと⁉︎装甲や防御機構を無視してか⁉︎」

 

「そうデスよ。もし刺さって抜けなくなっても手放して同じのを新しいの生成すればいいから使いやすいんデスよ」

 

それを聞きリバイバーの脳裏にあることが閃き、死神にあることを質問した。

 

「な、なぁ死神…そのイガリマってやつ、幾らでも生成できるのか?」

 

「え?そうデスね…崩壊液がある限りデスが…」

 

「なら次だ。それ、()()()使()()()のか?」

 

「一応、使い方は簡単なので教えれば誰でも使えるのデスが…「死神ッ!」キャ!リ、リバイバー?どうしたデスか?」

 

急に肩を掴まれ、死神は少し顔を赤くしてたじろいていると、リバイバーは天啓を受けたような顔をしていた。

 

「死神……お前さん、英雄になれるぞ」

 

「なんデスと?」

 

リバイバーは作戦を説明するとマーダーと白くなったバルカンもといバルカン・オルタ(本人に教えてもらった)はイイ笑顔を浮かべていた。

 


 

ところ変わり、救済者率いる戦乙女部隊と雀蜂部隊はグリフィンの指揮車両を撃破すべく移動していった。それぞれ高い性能を持っており今の状況なら問題なく敵を撃破できる、そう確信していた。

…しかし、その考えはすぐに覆された。

 

「くたばれ、害虫が」

 

突如としてリバイバーがテレポートにて強襲、そして()()()()()()()で粒子ナノマシン修復システムを積んだ雀蜂らに斬りかかる。すると、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そのまま墜落して爆散していった。

 

「⁉︎」

 

すぐに他の雀蜂は各防御システムを作動させて迎撃に移る。リバイバーは電磁フィールドを展開してそのまま接近して再び鎌を振るう。すると先ほど同じく雀蜂は墜落していった。そして一機、また一機と堕ちていきついには雀蜂部隊は全滅していった。

 

「な、何が起きてるの…?」

 

狼狽える救済者と戦乙女たちだが、物陰からリバイバーと同じ鎌を持ったマーダーがとオルタが現れ近くの戦乙女の頭からコアにかけて鎌を振り下ろす。すると堅牢な守りを持ってるにも関わらず、戦乙女は崩れ落ち、動かなくなった。

 

「手応えないわねぇ…でも、今までの仕返しにはいいわね♪」

 

「オラオラァ!死にたい奴から前に出な‼︎」

 

「な、何で防御が効いてないの…⁉︎」

 

異変は他の戦場でも起こっていた。

 

「みんなイガリマは持ったな‼︎行くぞぉぉ‼︎」

 

「「「うおぉぉぉ‼︎」」」

 

強化外骨格を纏った正規軍の兵士や一部の戦術人形達が大鎌を持って突撃して次から次へとGolemや他の鉄血を撃破していった。

そう、リバイバーの作戦は補給時にあるだけ持ってきた崩壊液を使い死神にイガリマを大量に生成させてそれらを他の部隊に配って反撃を行うものであった。イガリマの特性上、如何なる防御も意味を成さず、電脳やコアのみを大きく切り裂かれてGolem達は倒れていった。

 

「あの装備をしてるのから狙え!仲間を回復させるらしいぞ!」

 

「さすが万能者の開発した装備だ!奴らの防御なんかなんともないぜ!」

 

「今までやられた分、キッチリお返ししてやるぜ‼︎」

 

場所は戻り、イガリマの仕組みに気づかぬまま救済者の部隊はEA小隊とリバイバー、特にマーダーやオルタを中心にやられていき、残すは救済者のみとなった。

 

「そ、そんな…あり得ない…‼︎」

 

「俺もさっきはそう思ってたよ…こっちの気持ち、少しはわかったか?」

 

「っ!この…私だって、対万能者のハイエンドなんだ‼︎」

 

救済者は二種類のビットを飛ばし、手に持った武器でリバイバーに撃ちかかるも、弾が当たる前にリバイバーの姿が視界から消え失せた。

 

「え?」

 

「後ろだマヌケ」

 

テレポートで後ろに回り込んでいたリバイバーはそのままイガリマを振るい、彼女の足を中のフレームのみ斬る。当然支えを失った救済者は地面に倒れこんだ。

 

「ガァッ‼︎あ、脚が…⁉︎」

 

「そ〜れ、右腕〜左腕〜ついでにビット♪これでお前さんは何もできない実質ダルマさんだ」

 

容赦なくリバイバーはイガリマを振り回して両腕をやはり中身だけ斬り、ビットも破壊して救済者の抵抗手段を無くした。

 

「いくら強かろうが、防御を無視されちゃ敵わないだろ?ま、他人の武器使ってる俺の言えた事じゃないがな…さて、質問だ。お前さんらの開発を計画してたのは誰だ?」

 

「だ、誰が話すか…!」

 

じゃあ死ね、とリバイバーは今度は中身のみでなくそのまま救済者の首を斬り落とした。その後リバイバーはなんと救済者の首を拾ってその切断面に手を突っ込んで電脳を引き摺り出すとそのまま握り潰し、残った頭部は何度も踏みつけて潰すと、今度は胴体からコアを引き摺り出し、残った胴体を宙に放り投げてレーザーで吹き飛ばした。

 

「ワァオ、あなたもソッチに目覚めたのかしら?」

 

「バカ言え、こうでもしないと復活しそうだからだ。コアの方は持ち帰って解析させる。俺はこれを預けてくるからあとは頼む。死神、お前のおかげで助かった。ありがとう」

 

「デ、デース…」

 

さっきの光景に頰を引き攣らせながら死神が返事をするとリバイバーは一度撤退していった。

本部に戻ったリバイバーはグリンダに会いに行き、今の状況を伝えた。

 

「本当に?今持ち直してるの?」

 

「今のとこはな。俺もすぐに戻って立て直しを図る。グリンダ、そのコアは絶対に死守してくれ。連中について何かわかるかもしれない」

 

「わかった!絶対に守るよ!リバイバーも気をつけてね」

 

グリンダにコアを預けたリバイバーは再び戦場へ戻っていった。




これが死神部隊か…(違う)
Q.他人の武器使って勝つとかプライドとかないの?
A.プライドより命が大事じゃ!byリバイバー

いや、何かないか考えてたらそういえばと思いましてね…向こうと相談して決めましたよ。テレポート持ちのリバイバーとクッソ相性良いなコレ…防衛無視って強いね(遠い目)

救済者は撃破したのでよろしくお願いします…大丈夫かな?
しばらくリバイバーはEA小隊といるので合流できれば多分渡すのでどうぞ〜


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Code-112 鉄血防衛ライン破壊作戦-7

流石に我慢の限界が来たので私はこの手を使わせてもらいます。


「本部が…!グリンダ…‼︎クソッ!すまねえ、迎えに行きたいが…無事でいてくれよ…!」

 

爆発音が聞こえ振り向くとそこには炎を上げる本部があり、リバイバーは一瞬グリンダの身を案じて戻ろうとしたが、このままでは前線の被害が増えると考え、彼女の無事を願って前線に進んでいった。するとその途中に巨大な氷の城壁のようなものを発見した。

 

「何だありゃ…?鉄血が凍ってるあたり、味方か?まぁいい、早いとここのジャミングを…⁉︎」

 

ふと遠くを見ると、そこにはフードマントを被った謎の集団がこちらの戦力を蹂躙している光景が見え、リバイバーは怒りを露わにした。

 

「クソッたれが‼︎まだ隠し玉を…ん?」

 

てっきり鉄血の増援と思いこんでいたが、よく見るとフードマントの集団はこちらだけでなく、WraithやGolem、Behemahといった鉄血の新型部隊にも襲い掛かっているでないか。そして彼らは一般ユニットは撃破してハイエンドや例の新型は無力化してるのを見てリバイバーは今日何度目かのイイ笑顔を浮かべ、()()()()の協力を得るため、少し前に自分が電撃を受け、現在はスモークが焚かれている辺りに飛んでいった。

 


 

「ゴホッ…ん?デカブツは逃げたのか?」

 

「そのようですね…とはいえまだ脅威は残っている以上、楽観できる状況ではありませんが…」

 

ギルヴァが問い、アナがそれに答えて状況を把握していると、リバイバーがそこにやって来た。

 

「どうやら無事みたいだな」

 

「リバイバー!もう大丈夫なの?」

 

あぁ、と答えたあとリバイバーは先ほど見たフードマント達について話し始めた。それを聞いた彼らに動揺が広がった。当然だろう、この状況に続いてそのような存在が現れたのだから。

 

「それでだ、アナとRFBはキツイと思うがそいつらの対応を頼む。そして、ギルヴァとブレイクだが…俺と一緒に鉄血本拠地まで来てもらいたい」

 

「本拠地に?何する気だ?場所はわかるのか?」

 

「奴らの耳がどれだけいいかわからない以上話せないが、少なくともこの状況をなんとか出来る可能性が多いにある。それに元々俺は鉄血だ。本拠地の場所も覚えてる」

 

「そんなことができるの⁉︎」

 

「あぁ。多分、いやほぼな。それでだ、確認だがそっちにいるユノのルーラーとしての機能はまだ健在なんだよな?」

 

「ええ…でもこのジャミングじゃ…」

 

「それだけわかれば十分だ。じゃ、作戦開始だ」

 


 

……!高速デ移動スル鉄血上位人形ト思シキ存在1体ト正体不明の生命体2体ヲ確認…

 

会話内容カラ鉄血本拠地ヘ向カッテル模様…ナラバ鉄血最上位人形『エリザ』ヲ確保スル絶好ノ機会ト判断

 

各員ニ伝達…彼ラハ今ハ確保セズ追跡…鉄血本拠地到達後ニ確保シ本拠地ニ侵入シテ『エリザ』ヲ確保セヨ

 

了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解 了解

 


 

「やっぱり追いかけてきたな!このまま追い付かれないよう頼む!」

 

「了解!舌噛むなよ!」

 

後方で高速接近してくる数十体のフードマントの集団をみてリバイバーがブレイクに叫ぶとブレイクは『馬車』の速度をさらに上げた。どうもこれは彼の持つパンドラという魔具の形態の一つらしく、馬も正確には生き物ではなくパペットのようなものらしい。何故馬車なのかは恐らく伝承にある一部の悪魔は馬車に乗ってるからだろう。

先ほどのフードマントの行動から、上級人形を確保していると気づいたリバイバーは自身もその対象であると考えてワザと彼らに見つかるようにしたのだが、どうやらそれは功を成したらしい。

 

「ヨシッ!あれが本拠地…ってあいつら速いな⁉︎どんだけ速力あるんだ⁉︎」

 

「無賃乗車はお断りだッ!」

 

近づいてきた一体にギルヴァがそう言いながら無銘を一閃させて突き放すと一行は本拠地へ接近した。当然、内部の鉄血はこの出来事に混乱していた。

 

 

DANGER!DANGER!DANGER!DANGER!

 

『リバイバー』『ギルヴァ』『ブレイク』ノ3名ガ報告ニアッタ大軍ト共ニ接近‼︎直チニ迎撃セヨ‼︎

 

本拠地の『■■■』が指示を飛ばしてRC大隊を出撃させる。また、フードマント達も本拠地を見て行動を開始し始めた。

 

鉄血本拠地ニ到達…内部ニ『エリザ』ラシキ反応ヲ確認…

 

基地内部ヨリ敵多数出現…ソノ戦力ヨリ彼ラニ守ラレテイル『エリザ』ラシキ存在ノ確保優先順位、先ノ3名ヨリ高イト判断…

 

追跡シテル3名ノ確保ハアトニシ、我々ハコレヨリ鉄血本拠地内部ニ侵入シテ『エリザ』ト思ワレル者ヲ確保スル

 

リバイバー達を追跡していた彼らはそのまま鉄血本拠地に向かって行き、両者の距離は縮まっていく。やがて交戦距離となり両者は激突するが…

 

 

 

そこからはフードマント達の独壇場であった。

 

リバイバーらが倒すのに苦労していたRC大隊を一般機のように打ち砕き、瞬く間に殲滅していく。やがて何体かが施設内に侵入していきそこから幾つもの悲鳴が轟いた。

 

「オイオイ、コイツら半端なく強いぞ…離れてくれたが、どうする気だリバイバー?」

 

「任せな…オイ‼︎聞こえてんならこっちに繋げ‼︎話がある‼︎」

 

リバイバーが叫ぶと彼のバイザーに文字が現れた。

 

何ノ用ダ?

 

「見ての通り、このハイエナが各戦場へ現れてヤベェことになってる。連れてきたこっちが言えたことじゃないが、どのみちこのジャミング下で正確にこっちを見つけたんだ、ここが見つかるのも時間の問題だったろうよ。で、このままだとエリザも、あのRCのエンブレム付けた人形やこのジャミング作った奴まで捕まるだろ?そこで取引だ!俺たちと協力して奴らを叩かないか?そのためにもジャミングとかを解除してもらいたい!」

 

…何故ダ?何故ワザワザソンナ真似ヲセネバナラナイ?

 

「こっちにいるユノ元指揮官…お前さんらでいう『ルーラー』の能力ならこちらは大幅に強化される!それなら少しは奴らに敵うかもしれん!だいだい、それが嫌だからジャミングしたんじゃないのか⁉︎通信が繋がれば事情を説明して攻撃しないよう俺が伝えてやる!どのみちお前さんらにしてやられてそんな余裕ねぇからな!早く決めないと手遅れになるぞ‼︎」

 

殆ど脅迫に近い内容だが、『■■■』は考えた。彼の言う通り、この集団は思ってた以上に強く、すでに四分の一近くにまで侵攻されている。撤退の手段はあるがその前に捕まる方が早いだろう。ならば少しでも助かる可能性のある方を取る方がいい。それに、彼らとフードマントが共倒れになればそれはそれで都合がいい。

 

…イイダロウ。今ノ間ハソチラノ味方トナロウ。今ジャミングヲ解除スル…コチラノ戦力ニモソノ旨ヲ伝エテオコウ

 

「交渉成立だな」

 

するとすぐに身体の不調は収まり、通信が回復して味方の混乱する声が聞こえてくるなか、リバイバーは全領域通信で叫んだ。

 

「お前ら!現在未確認のフードマントの勢力が乱入し、鉄血含めて被害が出ている!そこで‼︎この俺リバイバーが鉄血と独断で交渉して一時同盟を組んでジャミングを解除してもらった!勝手を承知だが、こうするしか道が無かった!各員鉄血と敵対行為をやめ、フードマントの勢力の迎撃に当たってくれ!奴らは下手を打てば万能者並の力と思われる!無謀と思うが、ここで奴らを退けなくては俺らは助からない!頼む、鉄血と協力してそのハイエナどもを蹴散らせ!」




…さて、色々と思うとこがありますがこちらから言わせてもらいますと

散々こちらが手を打つたびに一々それに対して的確に対策してた鉄血がフードマント達を見つけた途端にあっさり最高戦力を引かせた点とハッキリ連中がトップクラスにヤバいと明言された点から『■■■』にとっても脅威であり、戦闘すると敗北する存在と判断致しました。

次に、RC大隊に関する描写やジャミング、鉄血の描写やフォントからそれらを開発、および発動したのは『■■■』であり彼は本拠地にいると考え、そしてフードマント達の描写から彼らは上位クラスの人形を確保しようと動いており、当然エリザや『■■■』もその対象に当てはまり、さらに人形でないネイトも確保したのなら『■■■』が人形でなくとも狙うのは明白です。

さらに言えば彼らがこちらに乱入するのは絶好の機会であったならであり元々の計画でないことから、エリザを確保できる機会があるのなら泳がせるくらいはするでしょう。

最後に、今現在、本気になった&半暴走状態の悪魔三人と大型航空兵器などがいる状況にも関わらず『手遅れ』と言ったのならば、彼らはそれらをなんとか出来るくらいの戦力を持っているということであり、そんな連中がいるなかで『鉄血だけ主要メンバーが安全に逃げられる』というのはどう考えても可笑しい話です。
例え何かしらの準備をしてたとしてもあの広域ジャミングを『微々たるもの』と断じた彼らがそんなものを都合よく見過ごすとは思えません。

以上から鉄血と協力し、ジャミングやらを解除フードマント達の勢力を迎撃すると言う手段を取らせていただきました。

揚げ足取りで大人げないと思ってはいますよ?
しかし、コラボの主催者だからと色々我慢してきましたが、こうも扱われては私にも限界がございます。

乗りかかった船ですし、最後まで参加しますが、この回については変えるつもりはありませんのでよろしくお願いします。

最後に、こんなあとがきで気分を悪くされた方には申し訳なく思っています。
しかし、これが私の答えです。

※追記
本人様から直接謝罪の連絡をいただきましたので、この件についてはあまり触れないでいただけると幸いです。


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Code-113 鉄血防衛ライン破壊作戦-8

え?特大バフも来たし強力な援軍も来た?
ならば反撃じゃあ‼︎


《やっと繋がった‼︎!こちらS09P基地、ナデシコ支援AIのオモイカネ、諸々の事情で指揮官は手が離せないから私が情報支援及び、ルーラーによる全体強化を行うよ‼︎!》

 

一時同盟を結んでジャミングを解除してもらってからすぐにその連絡が送られてから数秒と経たぬうちに変化が訪れる。火器管制システムや駆動系、情報処理などが大幅に上昇し始め、さらにはセンサー類も強化され本拠地内部にいるフードマント達の位置がハッキリとわかった。

 

「3体内部にいるのか…協力した手前、排除するとしますか…!すまん、そのデカイ剣持った奴の相手を頼む!」

 

「わかった!」

 

リバイバーはギルヴァとブレイクに大剣持ちの相手を任せ、早速1体に狙いを定めてレールガンを構えると、演算処理が上がっているのか相手がどこに行こうとしてるか容易に予測ができ、レールガンを撃ち放つと寸分違わず目標の首元に命中、撃破には至らなかったがリバイバーはそのままレールガンを連射し()()()()()()()()()()()()()()、高い防御を持ってるであろうフードマントも流石に同じ箇所を狙われ続けてはこれには耐えきれず装甲は破られ、内部にレールガンの弾丸が食い込んだ。

すると、そのフードマントの挙動が変わり、突然その身体は崩れ落ち砂状になった。

 

(…⁉︎なるほど、理屈はわからんが恐らく鹵獲対策か。破片の残る可能性のある自爆よりはこの方が効率的ってわけか。にしても…正確に同じ箇所に当てられるまで演算処理が上がるとは…あの嬢ちゃん1()()ですげぇな…)

 

実はこれは三人分なのだがそんな事はリバイバーは知らず、彼女に対する評価を上げていたのであった。

そう考えてる間に本拠地にいた残りの2体が施設を破壊して飛び出し、こちらに向かってくるのが見えた。リバイバーはすぐさま迎撃に移ろうとした瞬間、どこからかレーザーが2射続けて放たれ、フードマントの装甲を破砕させると、万能者に似た装甲人形が接近して懐に飛び込んで破砕面に銃口を突っ込みそのままトリガーを引いて撃ち抜くと、振り向きざまにナイフらしきものをもう一体に投げつけて沈黙させた。

また違う勢力かと身構えたリバイバーだが、万能者から通信が入り、どうやらこれらは彼が派遣した増援らしい。

 

「来るのが遅いとぼやきたいが、来ないよかマシか。さ〜てフードマント共…俺は漁夫されるっつー『前』の死因と同じ状況に遭って今とっても調子は良いが機嫌はすこぶる悪いんだ、覚悟しとけ…‼︎」

 

そう言うや否や、リバイバーは大剣持ちに突っ込むかと思いきや、鉄血本拠地の方へ向かっていった。

 

(ま、性能が上がってるとは言え、勝てるかと言えばわからないし、確実に仕留めたいからな…確か、『アルケミストの拷問部屋』の場所は…ここだな。で、多分ここにアレが…ヨシあった!)

 

リバイバーはある物を取り出すとギルヴァとブレイクの元に戻っていく。大剣持ちに多少の損傷を与えられてはいるが殆どは大剣によって弾かれていった。

リバイバーは全速力で大剣持ちに近づいていくと、こちらに気づいた大剣持ちはすぐさまリバイバーに剣を振りかぶるとリバイバーは懐から瓶を取り出して投げると同時にテレポートにて剣を躱す。

剣が瓶を割り中の液体がかかった瞬間、剣は煙を上げて溶け始めた。これには大剣持ちは動揺し動きを止めるとその隙をついてリバイバーはもう一つ同じ瓶を投げつけ頭部に浴びせると同様に溶け始め、動きが鈍くなっていた。

 

「…?リバイバー、何をした?」

 

「アルケミストの拷問部屋からちょろまかしたのを浴びせたんだ。ま、流石に効くよな〜

 

 

 

 

 

()()は。こんなもん拷問に使うもんじゃないと思ってたが、今は感謝だな」

 

『王水』…殆どの金属を融解させるこの液体の前には大剣持ちも敵わず少しずつ溶けていった。無論、タンタルやイリジウムといった酸に強い金属やガラス、一部のプラスチックなどでできてる可能性はあるがそれらの金属は世界的に希少な金属であり、人形に使う程の量は集められる可能性は低く、プラスチックなどで出来てるにしては硬すぎる為、このフードマント達にも有効ではと考えたが、どうやら当たりのようである。

 

あわよくば自壊機能もダメになってくれれば鹵獲出来ると思っていたがそこまでは上手くいかず、これ以上は限界と判断したのか、大剣持ちは自壊し始め砂と化した。

 

「…っ⁉︎どんな仕組みだこりゃ…?」

 

「さぁな。でも、致命傷与えれば勝手に死んでくれるならありがたいだろ…本当は鹵獲したいが、こんな状況でそれは贅沢か。周辺のは例の援軍が片してくれたみたいだし、他のところの助けに向かった方が良さそうだ」

 

彼の言う通り、他のフードマントは援軍により撃破されており、3人は他の味方部隊の援護をすべく、移動を開始し始めた。

 


 

「う、うぅん…」

 

グリンダが目を覚ますと、バックパックを背負った人形が辺りを彷徨いて負傷者を修理しているのが見えた。

 

「あれ…私、蜂みたいなのに襲撃されて…」

 

《気付イタ、ミタイダナ》

 

その存在はこちらを見ずに片言交じりの通信で話しかけてきた。

 

「あ、うん…あなたは?」

 

《万能者ノ、使イノ者ダ》

 

「万能者…助けに来たんだ…。私が無事なのも、あなたが治したから?」

 

《チガウ。オ前ハ、銀色ノガルムヲ中心トシタガルム複数体ニ、庇ワレテ助カッタ。ソノガルム達ハ、重傷デ死ニカケテイタガ、コチラデ修復シタカラ、安心シテクレ》

 

見ると修復されたガルム達がやり遂げたといったような感じで寝そべっていた。

 

「そう…ありがとね」

 

《礼ニハ、及バナイ》

 

無事とはいえ、今の彼女に出来ることはなく、グリンダはリバイバーの無事を願うと同時に、救済者のコアを無くした事についての言い訳について考えることにしたのであった。




銀ガルム「ご主人様の彼女だ!死んでも守れー‼︎」

ガルム達「サーイエッサー‼︎」

↑こんな感じで頑張って盾になってました。

アルケミストなら王水くらい持ってそう…持ってそうじゃない?
ちなみにリバイバーはもう王水瓶持ってないからそこのところよろしくお願いします。

リバイバーのユノちゃんに対する誤解は解かない方が面白いことになりそうなのでそっとしておいてやってください(ニッコリ)

さーて最終局面、反撃してきましょうかね〜。


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Code-114 鉄血防衛ライン破壊作戦-9

すでに破壊作戦じゃなくなってるけど、まいっか!
なんだかんだリバイバー、色々頑張っているなぁ…

今回短めで大陸版に出てくる正規軍のユニットが出てきます。


「このっ…オラァ‼︎」

 

砲撃によりフードマントの一機を撃破し、辺りの敵が居なくなるとリバイバーはその場にいる負傷した人形達に指示を飛ばす。

 

「自力で歩けるか?…そうか、ならそのまま五時方向へ向かうと正規軍の装甲部隊がいるから合流してこのポイントへ行け!万能者の支援部隊がいるから修理してもらえ。そのあとは他の負傷者の手当てだ。無理して復帰するな、生き延びる事を優先的しろ!ケンタウロス、援護に付いてやれ」

 

そう指示したあとリバイバーは次の場所へ飛び立つ。

現在リバイバーは戦場各地にいる孤立、もしくは負傷した味方の救援を行なっていた。今現在、通信は回復しルーラーの支援の恩恵を受けてるとは言え、正規軍はともかく、グリフィンの戦術人形ではフードマント達には殆ど歯が立たず、乱戦状態で負傷、孤立してる者が多数である。しかも、ランページゴーストやデビルメイクライ、EA小隊にアレス改といった強力な戦力は敵リーダーユニットや大型機の相手をしており、救援に向かえそうにない。

故にリバイバーはそれらの相手は彼女らに任せ、生き残った正規軍の装甲部隊や万能者の支援部隊、同盟を組んだ鉄血達と共に陣営問わず負傷者の救援活動を行っていたのであった。

 

「テュポーン・コイオス混成隊、二時方向のフードマント達に斉射しろ‼︎よし、足を止めさせたら試験者重装兵装は突撃して蹴散らせ!クラトスとGolemでそれぞれの陣営の負傷者を護衛しながら撤退!Behemah隊とヒュドラ隊、九時方向の撤退部隊と合流して支援!」

 

鉄血の新型の名前を教えてもらい、次々に指示を飛ばして着実に負傷者達を救助し下がらせてるが、正直手一杯でありリバイバーは万能者の手を借りるべく救援しつつ彼を探していた。しばらくすると視界の端に万能者がフードマント達を殲滅してるのを見つけたリバイバーは彼の元に駆けつけた。

 

うわ、アイツ難なく撃破してるよ怖…万能者!話がある‼︎」

 

「ん?えっと確か…リバイバーだったか?丁度良かった、こっちも今の状況が知りたかったんだ」

 

リバイバーは万能者に今の状況を要点を纏めて説明した。

 

「……っつーわけで今は鉄血とは休戦してるから狙うなよ?それで、お前さんには負傷者達の撤退を支援して貰いたい、そうすれば味方の被害を抑えられる!」

 

「ふむ…だけど先にリーダーユニットを潰した方が…」

 

「いや、連中の目的がお前さんの注意を引くことだとすればそれはまずい。何よりも、お前さんと接触してお前さん用の戦闘システム発動されてパワーアップされたりしたら誰も勝てなくなる。なら普通のフードマントを蹴散らして味方を撤退させてから向かう方がいい。その方が周りを気にせず思い切りやれるだろ?」

 

「…確かにそうか。わかった、そうしよう。にしてもアンタ、独断で敵と交渉して同盟とか思い切った事するなぁ…大丈夫なのか?」

 

「現場の連中やクルーガーとかはわかってもらえるだろうが、一部の上層部は難癖つけてくるだろうな…ま、ある程度は覚悟しとくよ」

 

実際にはそれらの問題はすでに裏方で解決しているため覚悟する必要はないが裏方であるためにそんな事はリバイバーが知る由もなかった。

 

「なんなら俺が脅h…説得して何とかしようか?」

 

「それだと余計疎まれて何かあったらヤバくなるからやめろ」

 

万能者の提案を丁重に断っているとギルヴァとブレイクが向かった辺りから巨大な何かが現れて地面に突き刺さったのが見えた。するとすぐにランページゴーストのアナから通信が入る。

 

《こちらランページゴースト、シンデレラ。敵リーダーユニットの一体を撃破しました》

 

「あぁ、味方のかアレ…こちらリバイバー、了解した。現在負傷者の撤退支援を行なってる。今は万能者と合流して共に撤退支援を行うつもりだ。そっちはキツイかもしれないが、敵リーダーユニットもしくは大型機の相手を頼む。撤退が済み次第そちらと合流する」

 

《なるほど…了解しました》

 

「ちなみにさ、今のは何だ?壁?」

 

剣です。では撤退支援の方、頼みます》

 

「任せな。…よし、じゃあこっちも始めるか」

 

「あぁ。となると試験者達を何体か向こうに回すか…」

 

リバイバーと万能者は正規軍と鉄血の装甲部隊を連れて移動を開始して負傷者の救援及び撤退支援を行ない始めたのであった。




というわけで、撃破に戦力偏らせるとアレなのでリバイバーは散り散りになった装甲部隊集めながら万能者と一緒に負傷者を下がらせてますのでよろしくです。


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Code-115 鉄血防衛ライン破壊作戦-10

終了条件が来たけどリバイバー単体じゃ太刀打ち出来ないから周りの力借りるね!
何があったかこっちからどうぞ
https://syosetu.org/novel/190378/136.html


(えぇい糞がッ!何回生と死の境目を反復横跳びさせりゃ気が済むんだよッ‼︎)

 

心の内で悪態を吐きながらリバイバーは残った右腕で攻撃するが、大概は避けられるか、当たっても大したダメージを与えられずにいた。

 

(どうするっ⁉︎手持ちの武器はほぼ効かない、ルーン・パピヨンは効くかもしれんがこっちのが損傷が多いからその前に俺が死ぬ…とにかく、腕を回収して修復しないと…)

 

だが斬られた左腕は少し遠くに飛ばされ、向こうもこちらを時折狙ってくる為拾いに行くほどの余裕もなかった。どうやって隙を作れば…と考えていると、ホバー音がこちらに向かってくるかと思った瞬間、大きな盾を持った右腕のない大型人形がリーダーユニットにタックルをお見舞いした。

突然のことに対象出来なかったのか、リーダーユニットはそのまま地面に転がると、上空から無数の砲撃が襲いかかりその場に留まらせた。見ると蜂のような機動兵器がそれより一回り小さい同型機を携えながら上空に留まっていた。

現れたのは単眼の巨人(サイクロプス)と大雀蜂及び雀蜂の部隊であった。

 

「あれは…!」

 

「知ってるのか?」

 

「どっちも鉄血が対俺用に開発した奴だ。特にあのデカイ蜂の方は前に俺に損傷、を……!」

 

「「ん?」」

 

そこまで言った途端、大雀蜂の一撃がリーダーユニットに当たり損傷を与えたところでリバイバーと万能者は顔を見合わせ、両者は同じことを考えていた。

 

─コイツらと協力すればワンチャンアイツ倒せんじゃね?

 

「…イケそうか?」

 

「あのあと俺も改修してるが…でも向こうも改修してるっぽいし、少なくとも効いてるようだからなんとかなるかもしれん。というか、それを見込んで鉄血は奴らを呼んだんじゃないか?」

 

実際、状況を知っていたサイクロプスはともかく、大雀蜂に関しては撤退中のとこを一時同盟を機に呼び戻され、合流中にここの事を伝えられて今到着した次第であった。

大雀蜂達は陣形を組み、高速で飛び回りながら砲撃を開始する。リーダーユニットは鬱陶しいと言わんばかりに補助腕のショットガンを連射し雀蜂を何機か撃墜させるがサイクロプスが大盾で殴りかかってきたため自身の盾で防いだところで万能者も砲撃し、着実にダメージを与えていた。

 

(しめた!今のうちに腕を…)

 

リバイバーはリーダーユニットが三人に構っている内に左腕を回収しに向かい、無事に腕を回収して修復を始める。切れ味が良かったのが幸いしすぐに修復できた。

 

「よし…だがどうやって奴を仕留めるか…」

 

コッチ…

 

「ん?なんだ?」

 

突然謎の声が聞こえ、不審に思いつつもその声に悪意を感じなかったためリバイバーはその声に導かれるままに向かうとある残骸が落ちていた。

 

「これは…旦那の方のノアが使ってた機動兵器か…?」

 

そこにあったのは先程まで活躍し、フードマントのリーダーユニットの一機に撃墜された【ミーティアデンドロビウム(仮)】の残骸、それも砲身部分であった。しかもその砲口は今いるリーダーユニットの方を向いているのに気づいたリバイバーが調べてみると、所々破損しているもののまだ使えるレベルであり、さらにはエネルギー系統は奇跡的に無事なうえに殆ど発射までのエネルギーも溜まっており、ほんの少しチャージすれば一発撃てるといった状態だった。

 

「さっきの声はコレを教えてたのか…!ふむ、チャージまで5分ってとこか…ヨシ、万能者ァ‼︎5分だ、5分以内に奴の装甲を剥がせ‼︎」

 

《5分⁉︎なんでまた⁉︎》

 

「胸部だけでもいい!そうすりゃなんとかなる!そしたらこのポイントに誘導してくれ!」

 

《わかった!遅れてきた分それくらいやってやる!》

 

万能者はサイクロプスと大雀蜂に同様のことを伝えると三者は行動を開始する。リバイバーは砲身のトリガー部分に手をかけると武装に繋いでるアームを外して砲身に強引に繋げなおすとチャージを開始する。

 


 

(あぁは言ったが、5分でできるか…?)

 

リーダーユニットの攻撃は激しく、すでに随伴してた装甲部隊は負傷者の護衛にあたらせたのを除いて壊滅、雀蜂部隊も全機撃ち落とされ、サイクロプスや大雀蜂も軽くないダメージを受けていた。リーダーユニットの方はある程度のダメージを負っているものの、機動性は未だ健在であった。

 

(ともかく、今は接近戦に持ち込んでアレを撃たせないようにしなきゃな…)

 

万能者は試験者達とともに敢えて接近戦に持ち込ませる事で例の補助腕にある大砲を撃たせないようにしていた。あれを喰らえば流石に無事では済まないが、目標と距離が近い状態で放てばその威力故に撃った本人もただでは済まなくなると踏んでいたが予想は当たり、距離を取ろうと離れようとするが、そうはさせまいと狙撃仕様の試験者が遠距離から狙い撃って足を止めさせていた。

 

すると、リバイバーがいない事とエネルギー反応に気が付いたのかリーダーユニットはリバイバーのいる方向に補助腕を向けて砲撃しようとしていた。

 

「っ!マズイ‼︎」

 

下ガレ、厄災

 

そう連絡すると大雀蜂は高速で移動し、射線に割り込むと補助腕に向けてレールガンを放った。しまった、とリーダーユニットが判断するもすでに砲撃を行ったあとであり放たれた弾頭は発射されてすぐにレールガンの弾頭とかち合い、彼のすぐ近くで爆発した。

咄嗟にパージするも補助腕は誘爆し、高威力が災いし大きな爆炎となり、回避が間に合わず巻き込まれて彼の()()()()()()()()()()()()。一方万能者はいち早く回避したため難を逃れた。

そのままリーダーユニットにサイクロプスが接近して大盾を使ってアッパーカットをし、リーダーユニットを宙にかち上げた。そして、チャージを終えたリバイバーがリーダーユニットに狙いを定めた。

 

「終わりだ」

 

リバイバーは引き金を引いてレーザーを撃ち放つ。当然避けようとするリーダーユニットだが、何故か身体が動かなかった。ならば自壊して自身の武器やデータを渡すまいとするがそれも実行できず、何事かと思った途端、声が聞こえてきた。

 

逃ガサナイ

 

オ前モ連レテイク

 

置イテケ…武器ハ置イテケ

 

(oh…相当恨まれてるなありゃ…)

 

リーダーユニットにはわからなかったが万能者の目には数え切れないほどの大量のナニカがリーダーユニットを覆い尽くさんばかりにへばり"憑いて"いたのが見えていた。恐らく不具合はそれらの仕業だろう。また、ナニカの中には彼らがここに来る前に蹂躙した『白い人形達』のそれもあり、それらの方が他のより怨嗟が強く感じられていた。そして放たれたレーザーがリーダーユニットの装甲が薄くなった部分を撃ち抜き、彼は爆散し残った方の大砲が砂にならずに万能者の足元に転がった。

 

(お、ちょうど良い。壊されても良いように、今のうちに解析するか…)

 

万能者が大砲を拾って解析してるところにリバイバーが近寄って来た。

 

「時間稼ぎ、助かったよ。だが周りの通信だと似たようなのがあと4体いるみたいだ、流石にコイツよりは強くは…って、ソレ回収できたのか?」

 

「あぁ。ある程度データは収めたが、念のために衛星にも送ってバックアップ取るか…」

 

(衛星あるのかよ…ん?そういやコイツ前に…)

 

ふとある事を思い出したリバイバーは万能者に話しかけた。

 

「なぁ、前にお前さん、I05地区で暴れた時に上からレーザーばら撒いてたよな?」

 

「ん?あー『サンライト・パラノイア』か。それがどうした?」

 

「それ今持ってるなら使って連中を一掃できんじゃね?」

 

「あ…」

 

「少なくとも普通のフードマントは倒せると俺は思うが、持ってるのか?」

 

「持っているが…取り出しと展開に時間がかかるぞ。試験者に手伝わせてもそれなりには…」

 

「俺らが護衛するから早く始めてくれ。連絡して援軍も呼んでおく」

 

「わかった、なるべく早く完了させる!試験者、手伝ってくれ!」

 

万能者が準備を進め始め、リバイバーはサイクロプスと大雀蜂に護衛を頼むと二人は了承し、その後通信で呼びかけた。

 

《こちらリバイバー及び万能者!敵上位リーダーユニットの一機を撃破した!そして今、万能者が以前I05地区で使った標的のみ狙い撃つ戦略兵器の発射準備をしている!発射まで時間がかかる故、それまでの護衛が必要だ!手が空いてるやつはこのポイントまできて援護を頼む!》




上手く協力して倒したけどあわよくばサイクロプスか大雀蜂のどっちかがリーダーユニットと共倒れすればな〜とかリバイバーは内心思ってたり。

リバイバーの射撃のイメージとしては『新・光神話パルテナの鏡』ラスボス戦の最後の一撃的なものを想像すればわかりやすいかと。

最後のはそういやこっちでやったコラボで万能者アレ使ってたよなと思い出して向こうと連絡して書いてみた次第です。
誰か援護に来てちょ。(ようはネタ提供)

あ、発射のタイミングとかは向こうに任せますのでよろしくお願いします。


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Code-116 鉄血防衛ライン破壊作戦-11

今回はほぼ後日談的なものです。
こちらからどうぞ
https://syosetu.org/novel/190378/137.html

また、今回大陸版のネタバレ的なものが含まれます。


さまざまな想定外が発生した今作戦だが、結果は何とも言えないものであった。

当初の目的だった重要拠点は破壊できなかったものの、乱入してきたフードマントらによって両陣営ともに甚大な被害を受け、鉄血の力を削ぐという意味では成功したが、それに対する代償が大き過ぎた。

S10基地が派遣した輸送機に運ばれてながらリバイバーは自身の被害状況を確認した。

 

(百一匹隊は生き残ったのが19体、アラゴスタは3体か…補充はあとにして、改良が必要だな。それと…気づかなかったが、ルーラーの機能の恩恵のおかげか、俺のAIのブラックボックスがほぼ開いてるな。これは…最後のロックを外す解除キーの暗号か?あとでペルシカに診てもらうか…)

 

それに…とリバイバーは自身が手に入れた戦果を見つめた。フードマント達が撤退した後、まだ他にも自壊してないものが無いか火事場泥棒よろしく戦場を探索してたところ、彼らの砲戦仕様が持っていたであろうバズーカ型粒子砲をほぼ無傷のものと半壊してるものの計二つを発見し鹵獲したのであった。それ以外にも破損してるものの、彼らが手にしてた銃剣や盾、フードの切れ端(といってもそこそこの大きさ)や手足や頭部の残骸などがまるで見えないナニカがこちらに回収してもらう為に彼らが自壊するのを許さず、そしてわかりやすいように一箇所に集められたかのように置いてあった為、残らず回収したのであった。

 

(コレらのデータだけでもだいぶ大きな戦果だ。解析は万能者頼みだろうが、こちらに協力的な以上、あの砲台のデータ含めてこちらに渡すとみていい。あとは、俺の首がどうなるかだな…)

 

数日後、ヘリアンとクルーガーから直接呼び出されたリバイバーは覚悟して会議室に向かったが、結果は意外なものであった。

というのも、あの日鉄血と独断交渉したときのログが『なぜか』綺麗さっぱり無くなっており、さらにはその場にいた戦術人形達や正規軍の兵士からリバイバーの助命嘆願書が大量に届いたため、独断で敵と交渉した物的証拠が無く、さらにはこちらより上の立場である正規軍から助命するよう命じられた事もありこの件はお咎め無しどころか、寧ろ通信を回復させて味方を助けたことに感謝される始末となったのでリバイバーは拍子抜けしたのであった。

 

「あ〜長い一日だったなアレは」

 

「俺も内容は聞いたが、大変だったようだな。というか良く生き残れたな」

 

様子を見に来たバレットがリバイバーにそう話しかけるとリバイバーは苦笑いを浮かべた。

 

「悪運と生き意地はあるからな。なんせ俺の武器がまともに効かねぇからな、その場にあるモン利用するのがやっとだったさ。対万能者のデカブツはP基地の残した残骸がなきゃ詰んでたかもしれないから、アレ倒した報酬は向こうと折半するよう伝えておいた。万能者も報酬や支援するっていってたが、奴らの武装や残骸も渡したし、相応のモン受け取りたいね。なんならボディ含めて武装を全面的に改修してくれてもいいと思うがね」

 

「そんなにか…」

 

「金貰ってそれで自分改修しても技術が届かないのは目に見えてる。ならそうして貰った方がいい。連中はあれで全部じゃないし、まだ強くなるしな…。そういや、他のメンバーはともかく、スミスはどうした?なんとなくわかるが…」

 

「だいたい予想通り、バルカンのとこにいる。デート控えてるから余計心配なんだろうな。彼女自身も、何か怖い目に遭ったらしくて泣きじゃくってたし」

 

「お前さんは?妹が心配じゃないのか?」

 

「ここに来る前に会って来て労ったから問題ない。それとリバイバー、実は一昨日、I.O.Pに気を失った10人の子供達が送られてきてな、目を覚まして検査した後こう言ったんだ…『メッセルはいるの?』ってな」

 

それを聞いた瞬間、リバイバーは目を見開いた。

 

「っ‼︎そのチビどもは俺を造ったやつの関係者ってことか?」

 

「恐らくな。しかも彼女達…『全員同じ顔』で、身体検査の結果、『遺伝子も同じ』だった…ようはクローンってことだ。あんな年端もいかない子供達がな。お前の創造主はとんでもねぇ奴かもしれないな…!今からその子達と面会させる、ついてこい」

 

子を持った身である故、バレットは怒りを滲ませた顔を浮かべたあと、リバイバーを彼女達のもとに案内させる。

 

一方でペルシカは16Labでリバイバーに眠るブラックボックスの最後の鍵を開けようとしていた。万が一を考え、万能者の手を借りてリバイバーのAIからブラックボックスのみを切り離してから解除作業をしていた。

 

「この数字の羅列…これ、日本の上杉暗号ってやつだったのね…教えてくれた一〇〇式達日本の戦術人形に感謝しないとね。でもこれじゃ意味が通らない…こういうのは、一文字ズラすのが定番だけど妙ね…何で最後がこんな単純な…⁉︎」

 

ペルシカが違和感を感じながら解読していくとある文章が浮かび上がり、それ内容にペルシカは絶句した。

 

『ウィリアムの造ったモノはリコリスのそれより劣るうえ、それらに愛情を注がない彼は愚かだ』

 

(何でリコの名前が?ウィリアムってのは誰かは知らないけど、リコの関係者かしら?…ってことはリバイバーは()()()()()()()()()()()()()()?とにかく、これを入力してブラックボックスを開くとしましょう)

 

ペルシカは出てきた文章を入力し、最後の鍵を開いたのであった。すると…

 

『…んあ?や〜っと開いたか?えっと今は…おーあれから何年も経ってるのか、思ったより早かったな…ってメッセルと切り離されてる⁉︎こんな事あるのか…奴のメモリーから状況知りたかったがまぁいい…って、もしかしてお前さん、ペルシカリア博士?』

 

突然目の前に()()()()()()()()()()()()()()()()が映し出され、ベラベラと喋り出したのだ。

 

「え、ええ…そうだけど…」

 

『ハハハハッ!こいつはいいや!どのみち最後のパスワードはあのイカれシスコンには解けても入力前にキレて壊すだろうからな、アイツじゃなきゃ誰でも良かったが。で、そもそもメッセルは生きてんの?』

 

「まぁね…本人はリバイバーって名乗ってるけど…で、貴方は誰?会話ができてるからAIなのは確かだけど…」

 

『ほぅ!こんな偶然あるのか…で、確かにこっちが名乗ってないのは失礼だな…オレの名は【リヴァイル・ウィッカーマン】。正確には()()()()()の【人格・性格・記憶・趣味嗜好・頭脳】などを何から何まで()()()()()()()()AI…詰まるところ、【デジタルクローン】ってやつさ』

 

「デジタルクローン…⁉︎それで、メッセルってのは一体なんなの?教えてくれる?」

 

『ん、良いぜ。メッセルってのは…

 

 

 

 

 

オレが連中、【パラデウス】から逃げるために造った、オレというAIを内包した記憶の器であり……オレのデジタルクローンの《意図的な失敗作》だ』

 


 

「デジタルクローンの失敗作…だと?」

 

「うん、確かにリヴァイルさんは《お父様》にそう言ってたよ。いらないから新型の人形のAIにでも使えばって渡してたし」

 

「でもリヴァイルさん、そのあと自分の研究中の爆発事故で死んじゃったんだよね〜そのAIもテスト中の事故で無くなったと思ったらあなたがいたんだから驚きだよね〜」

 

「だけどお父様、リヴァイルさん死んだって聞いてどこか嬉しそうだった…死んでくれて良かったって感じで…」

 

リバイバーの質問にネイトと名乗る少女達が口々にそう言うと、バレットとリバイバーは顔を見合わせた。

 

「…思ったよりも根深いもののようだな」

 

「あぁ。リヴァイルって野郎は何を企んでたんだ…?話からして、同組織内の《お父様》ってのには嫌われてたみたいだが…」

 

その時、ペルシカからすぐに来てくれと連絡が入り二人は彼女の元に向かうのであった。




転んでもただじゃ起きないリバイバー、ナニカの導きで戦利品ゲット。

残骸とかは向こうにパスしますし、報酬とかも任せます。

さて、ブラックボックスから現れた人物、リヴァイル・ウィッカーマン。彼の目的やリバイバーの生み出された理由については後ほど。
ただ言えるのは、コイツは嘘吐きであり、過去に自身が残した記録にも嘘を吐いてます。

もうちょい後日談続くかもしれませんがとりあえず、色々ありましたがコラボお疲れ様でした!


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Code-117 彼がヒトを辞めるまで

今回は前回出てきたリヴァイル・ウィッカーマンについてです。
ちょっと長くなりそうなので二回くらいに分けます。

あと、今回と次回は大陸版のネタバレが結構出てきます。


Fooooo‼︎何なんだこりゃあぁぁ⁉︎ルーラーっつう()()()()()クローン少女に単騎でガトリング扱える戦術人形にコーラップス関連技術を採用した兵器複数、さらに人形の受胎及び出産に遺跡産と思われる規格外の性能の万能者っつー人形にそれと同系統の技術持ったフードマントの集団、そして悪魔だぁ⁉︎オイオイオイオイ、オレの想定以上に技術が進んでんじゃねぇか⁉︎ウィリアムの野郎、自分が一番と思ってるだろうがこれじゃ井の中の蛙だなぁハッハッハァ‼︎」

 

かなり興奮した口調で話すリヴァイルなる人物にバレットらは唖然としていた。彼はリバイバーを見るやいなや自身の事を話すかわりにメモリーを繋げろと迫り、正直言って不安でしかなかったが、彼の言う『パラデウス』という組織の情報を知る為にやむなく行った結果、彼はこれまでの様々な技術に目を輝かせていた。

 

「いや〜興奮した興奮したぁ。ヒトだった頃だったら興奮し過ぎて鼻血とアドレナリンがドバドバ出てたし、なんなら一回達してたな

 

(うわぁ…)

 

「おうなんだその顔はリバイバーとやら?オレはお前さんでもあるんだぞ?まぁよく考えたらオレもそんなこと言う奴いたら引くからその反応は正しいか」

 

「で、そろそろあなたについて聞かせてくれるかしら?あのネイトって子供達の話からして、所謂オリジナルの貴方は事故死したみたいだけど…」

 

それを聞いた瞬間、リヴァイルは安心した顔を浮かべたのであった。

 

「おー良かった良かった。ちゃんと死ねたか。なら向こうからすればオレは死んだ者となってるし、オレの技術は綺麗さっぱり無くなったってわけだ」

 

「っ!その言い方…オリジナルのお前さんは事故死じゃなく自殺か?」

 

「正解だ。奴らにはデジタルクローンはお前さんを以て失敗したと伝えてあるし、記録メモも殆ど嘘ばかりだから成功体(オレ)がいてまんまと逃げおおせたと思ってはいないだろうさ。で、お前さんのチップは白い人形が持ってきてそのあとそいつは自爆したんだろ?」

 

「…?いや、デストロイヤーが施設にあったE.L.I.Dに喰い散らかされた死体から持ってきたって聞いたが?そういやそこにそんなような残骸があったとも言ってたな…」

 

リバイバーからそう聞かれたリヴァイルは顔を青くしてマジで?と答えた。どうやら本来ならあらかじめプログラムに細工してた護衛人形がリバイバーの入ったチップを事故を装って強奪し、外部に流出させる予定らしい。ついでに言えばリバイバーのプログラムにも細工をしており、テスト時に表示されるスペックが本来のものより低く表示されるようにした。そうすることでリバイバーは条件をクリア出来なかった落伍品となるため失っても問題ないものとさせるつもりだったらしい。

 

「まぁ結果的に逃げれたならいいか」

 

「それで?貴方は何故逃げたのかの前に、デジタルクローンまで作って貴方は何をするつもり?」

 

似た前例があった以上、彼が何か良からぬことを企んでいるのではと勘繰り、ペルシカが険しい顔で問いただすとリヴァイルはあっさり白状し始めた。

 

「オレがしたい事?それはただ一つ……

 

 

 

『遺跡』の謎を解明したい。それだけだ」

 

「…遺跡の謎を?」

 

「だってそうだろう?大昔にあったにしてはオーパーツ過ぎるそれを作り上げたのは何者か、何の目的で建設したのか、そして彼らは何故この地を去ったのか、自らの実験の事故か何かで自滅したか?それともこの星は奴らの実験場で観察するために離れてるのか…。それに、未だ解明されない各所の遺跡最奥部に何が眠ってるのか、そしてそれらは我々人類に役立てるものか、またはその技術を応用して現行技術の革新、つまりはパラダイムシフトを起こせるか等…そういうのをオレは知りたいし解明したいし試したいのだよッ‼︎」

 

キラキラと目を輝かせて語るリヴァイルにペルシカ達はその語りに圧倒されかけるも、それとデジタルクローンがどう繋がるのかがわからなかった。

 

「何故それがオレのやった事と関係するかって顔してるな?まだ話は続くから安心して聞きな」

 

彼の語りは続いていく。便宜上『生前』の彼は国連の遺跡の研究チームに所属してたらしいが、正規軍の一部から遺跡に眠る『ある兵器』の研究を優先的に進めろとの圧力に対し遺跡全体を調べたかった彼はそれに嫌気が刺し、退所。追手から上手く逃げつつ彼のみで研究を続けていたそうである。

 

遺跡を解明するにあたって、まずぶつかる問題は崩壊液汚染である。元々は遺跡にあったものであるため内部は高濃度の崩壊液汚染区域となっている可能性が高いうえ、そもそも北蘭島事件で世界中に広がってしまったため遺跡に行く前に汚染地域を通らなくては行けない場所もあるし、何よりE.L.I.Dの脅威もある。故にまずは崩壊液の除染及びE.L.I.D治療技術の確約から進めていたが、更なる問題がある事に気づいた。

 

「端的に言えば、時間が足りないって気づいたんだわこれが」

 

「それは、技術完成の前に人類が滅びるって意味かしら?」

 

「あ?違う違う、足んねぇのはオレ自身の時間、要は寿命だ。新技術の発見や科学の発展具合を頭に入れても、どう考えても技術完成して除染しきって遺跡調べられる頃にはとっくにオレは老ぼれジジイだ。探索なんて出来る体じゃねぇよ。第一、そん時は蝶事件が起きてちょっとしたくらいだったし、さらに大きな動乱が起きればさらに時間がかかるだろうしな」

 

「…えっと、除染したあとの遺跡探索を後世に託すって考えは…?」

 

無ぇよ。オレは生きてこの目で遺跡の謎を見てみたいんだ。あとから来た奴にオレが生涯賭けたものの美味しいとこだけ掻っ攫われてたまるかよ」

 

「…なるほど、それでお前さんはデジタルクローンという手段を取ったってわけか」

 

リバイバーの問いにリヴァイルはまたまた正解だと答える。

彼は人形の半永続性に着眼し、自身の完全なデジタルクローンを作成してバックアップを作成してボディにそれを移せばもし死んだとしてもバックアップから蘇ればいい話となるので事実上半永続的に生きられ、歳を重ねることなく研究を続けられるばかりか、万が一第三者に命を狙われても、オリジナルを生け贄にすれば名実共に死人となるため都合が良いのである。

 

「っ⁉︎待て待て!お前はそれで何とも思わないのか⁉︎」

 

「思うも何も自分の命だ、どうしようが勝手だろ?それに、それで安全に研究を続けられるなら喜んでこの身を捧げてやるさ」

 

その答えにバレットは絶句した。何が彼をそこまで突き動かしているのか、言うまでもなくそれは遺跡という未知に対する探究心なのだろうが、ここまでくればもはや狂気じみた憧憬だろう。

 

「…本当にお前は遺跡の技術で人類に貢献するだけか?その力を持って世を支配しようとか考えてるんじゃないのか?」

 

「まさか!崩壊液はともかく、『アレら』はオレどころかヒトの身に余り過ぎる代物だ。完全制御なんてほぼ無理だし、そんなんで支配して何の得になる?支配しても住む土地が汚れてりゃ意味ねぇだろうし、無理な抑圧は大きな反発を呼ぶだけだぜ?破壊以外に使えるものがあるのならば使えるようにするし、ないなら管理すりゃ良い話だ」

 

話を戻すが、彼はデジタルクローンの作成を試みたものの、個人でやるには設備や資金的にも限界があり、上手くいかなかった。そんな遅々として進まない状況にある時、転機が訪れた。ある人物が護衛を連れて彼の元を訪れ、その遺跡解明の手腕を見込んで自分の元に来ないかと言われたのだ。僅かに残った通信記録などから追跡されたことから相手はかなりの技術を持ってると確信した事と、彼が自分を引き入れる目的には互いに利があると感じたリヴァイルは彼の組織に加わる事にした。

 

それが、『ウィリアム』なる人物であり、彼が首魁を務める『パラデウス』であった。




科学に身を捧げる(物理)

なおコイツが予想してた技術の伸びは原作の秩序乱流レベルだったりします。

要約するとコイツはただ遺跡を調べたいだけであり、それを使っての支配とかは興味がなく、それをやるのに必要な事をするのに寿命が足りないからデジタルクローンという手段を取ったけど、作成が上手くいかないときにパラデウスに協力持ちかけられたから設備や技術利用したろって感じで入った次第です。

ちなみに他にも問題あるのに放置してるのは他にも似た考え持つ奴がいるだろうからそういうのはそいつに任せておけばいい的な考えです。

所謂『憧れが止められないタイプ』であり、『人類で初めてキノコ食ったりするタイプ』の人です。

また、ウィッカーマンというのはドルイド教における人身御供の儀式の名前でもあります。まぁこの場合供物は自分自身ですが。

次回は彼がパラデウスに入ってからと、何故逃げたのかを書く予定です。


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Code-118 その名はパラデウス

皆さんリヴァイルに案の定引いてるけど技術知って『達した』発言で引いてるのか、行動面で引いてるのか…両方だな(自問自答)

リヴァイルによるパラデウスの内情暴露大会、はーじまーるよー‼︎


ウィリアムと協力し、パラデウスに所属する事となったリヴァイルは早速、施設を利用してデジタルクローンの開発を始めるが、当然協力の対価として彼が研究してた遺跡についてのデータの譲渡やパラデウスが開発している人形のシステム開発や調整などを行うこととなった。彼自身、自己の身を守るために軽装甲の人形を自作してたので問題はなかったそうである。

 

「ちなみに、連中の本拠地の場所は知らんぞ。案内される時に目隠しされた上に薬を嗅がされて眠らされてたし、機器も必要分は使えたが位置情報とかはアクセス権がなかったしな。ちなみに、奴らは表向きはE.L.I.D患者を神聖視するカルト宗教だ」

 

「そう…続けて」

 

『表向き』…その言葉に嫌な予感を感じたペルシカはリヴァイルに続きを促した。次の瞬間、リヴァイルはパラデウスの恐ろしい実態を口にし始めた。

 

「奴らが開発してる人形…そのほぼ全てが『E.L.I.Dになった人間を機械化改造もしくはバラして生体部品にして組み込んだもの』だ。鹵獲される前提のモンキーモデルはその限りじゃないみたいだがな。故に一体一体の性能に()()()が微々たるものだがある。それを上手く画一化させたり性能を上げたりするのがオレの仕事だった」

 

「なっ…⁉︎」

 

あまりの事実に言葉を失う一同にリヴァイルはパラデウスの人形の画像を表示させる。確かにそれらは時折目撃される白い人形の特徴と同じであった。彼はさらに別の画像を出した。そこには人形とも人間とも取れる少女が映され、リバイバーはそのうちの二人、鎌を持った白い少女と金の帯を巻いた少女を見て驚いていた。

 

(アレはあの時の…!どうりで見覚えがあると思ったら、コイツの記憶か…)

 

「待って!この顔…ここに送られたあの子供達に似ているわ…‼︎」

 

「ん?チビ助どもがいんのか?なら話が早い。コイツらは『ネイト』。コイツらは他の奴と違ってクローン人間でしかも、あの状態から機械化改造と傘の投与で体を強制的に成長させた『サイボーグ』だ。この金と銀の奴…この二人には『ニモジン』と『マーキュラス』って言う個別名がある。この二人と白い奴以外の個体は条件を満たしてないからか、自我は剥奪されてるみたいだ。詳しい事は知らん」

 

「………」

 

先程のパラデウスの人形の秘密だけでも衝撃的だったのにさらなる衝撃的な情報に一同は再び言葉を失っていた。このような事、おおよそ人のする事ではない。だがそれと同時にある疑問が湧いて出た。

 

「お前は…それを知って何も思わなかったのか…?」

 

「思ったさ。正直言って吐き気がするし、嫌悪だってするさ」

 

「だったら…!「だがそれでどうする?」っ⁉︎」

 

「奴を止めるか?無理だな。すでに奴らは相当数いるし、協力と銘打ってるが反発したら殺される…いや、()()にされる可能性だってある。妙な動きをしたら気づかれる可能性もあった。まだデジタルクローンは出来てなかったが早いとこ奴らに知られずに完成させて逃げる必要があるって決めたさ。だからおとなしく奴らに従ってたが、来たる日に備えて大体のシステムにちょいと小細工はした」

 

小細工?とペルシカが聞くとリヴァイルは意地の悪い笑みを浮かべていた。その表情が悪巧みを思いついたリバイバーのそれと同じとわかり、碌でもない事だと言うのは即座に理解できた。

 

「いやね、性能的には元より数割り増しになるんだが、ある程度戦闘を続けたり特定の行動を取らせると駆動系や照準系に意図的な不具合が起きるように細工しといたんでねぇ〜。かなり巧妙に仕組んだが、もし見つけて治してもまた別のバグが5、6個隠れて出てくるがな。それ見つけて潰してもダミーだったりまた新しく出てきたり元のバグに戻ったりするがな。まぁ思い切ってシステム導入を廃止しても、ほぼ全ての人形に入れてあるから時間がかかるうえ、ダウングレードになるし都合がいいだろう?あ、頑張ればここの一般人形でも倒せるくらいにはなる筈だぜ」

 

「うわぁ…」

 

(流石俺のオリジナル、やる事が段違いだ…!)

 

「まぁそれはともかく、他にも色々と奴のヤベェ性根を知っちまったから逃げるって事にしたがそれにあたりオレが描いたシナリオは『デジタルクローンは失敗し、再度研究しようとしたら事故でオレは死んでデータも消えたが、実は成功してたデジタルクローンを先のワザと作った失敗作の中に内包させて外部に流出させる』ってことだ」

 

試行錯誤の後に思いついたその製造手段だが、リバイバーのブラックボックスに暗号化してあった【被験体の海馬にチップを埋め込んで記憶をデータ化して取ったあと摘出したものを使う】というのは悪用されないようにするための嘘であり、正確には摘出せず、チップそのものにデータ送信機能を持たせてそれを受信して造るのが正しいやり方だそうである。また、嘘のやり方でも出来なくはないが、ほぼ間違いなく摘出時に被験体が死ぬうえに、まともに記録が取れてない可能性があるそうである。

 

「それ、誰かに試したの?」

 

「いいや、バレるからぶっつけ本番だ。絶対に成功する確信があったしな。無くても失敗のパターンが知れるからやってたがな。そもそも自分でやれば済む人体実験に他人使ったらそいつの家族や知り合い、果てはまともな人格者の第三者にも恨まれるだろ?その点、オレがやる人体実験の相手にオレを使っても誰も文句言わないだろ?」

 

「そ、そう…(この男、自分に対する倫理観がほぼ無いわね…)」

 

かくして実験の結果はというと彼がここにいる事から分かる通り、成功した。

一度デジタルクローンが出来ればそれをベースに幾らでも増やせるようであり、幾つかの人形に仕込んでより逃げられる可能性を増やすやり方も出来たが、時間が無かった事と数を増やせばそれだけバレる可能性もあるため本来の計画通り、失敗作に仕込むやり方を取ったそうである。そうして生まれたのがリバイバーであった。

 

「…なるほど。で、具体的にはどういう失敗なんだ?」

 

「人格、性格面のコピーは完璧だが、頭脳は八割、肝心の記憶は殆ど継いでないって風に設定した。その方が都合が良かったからな。で、適当な理由つけて奴に渡したってわけ」

 

おおかたの下準備を終え、あとは事故死を装った自殺をするだけだがそれも念入りに計画しており、デジタルクローンや重要な情報が無くなるようにし、何より自分の頭のチップを確実に砕くために自分の頭を完全に潰す大きさの瓦礫が頭上に落ちるように計算して爆破するように計画したと言うのだから恐ろしいものである。

そして人格と性格を完全にコピーしたのは失敗作(リバイバー)が目覚めた時の行動が読めるようにするためであった。

 

「自分自身だからな、目覚めた場所が心地よければそのままだし気に入らないなら逃げ出す。そして自分の持てる技術をほぼ全て提供して協力するだろうし、暮らしてく中で自分のルーツを知りたがるからその協力者と力を借りて調べるとこまで楽に予想できた。で、その結果がこれだ。無論流出する前にチップが破壊される可能性もあったし賭けの部分が大きいのはわかってたが、上手くいく自信があった」

 

リヴァイルの目的や、そのために属した組織の非人道的な行い、そしてリヴァイル自身の科学や遺跡に対する狂気的な執着心が起こした行動と、様々な事実に圧倒されるが、少なくともパラデウスという組織が危険であると言う事は理解できていた。

 

「オレも、自身の目的のためにあんなヤベェ連中に手を貸しちまった事に関しては悪いと思ってる。だからこそ、その責任を取って奴らについて何でも話すし、必要な技術があれば協力しよう」

 

事の大きさ故にリヴァイルの言葉にすぐにペルシカは返事を出せず、協力に関しては保留となった。しばらくして、リバイバーはある事を質問した。

 

「……もし、俺の中にいた時にお前さんが目覚めたら俺はどうなってた?俺はお前さんに人格を上書きされたのか?」

 

リバイバーが生み出された目的を考えれば逃げ出せた時点でリバイバーは用済みでありそう考えるのは自然であるが、リヴァイルの答えは意外なものであった。

 

「いいや?俗に言う二重人格状態になるだけでお前さんの存在は消えはしないさ。無論、そうした方が楽だがな」

 

「…?そうしなかった理由は?」

 

「簡単な話だ。協力先でブラックボックスを解析するにはそれなりに時間がかかる。その間に協力先の誰かしらと友情や愛情を育む可能性があるだろう?そんな状態で上書きしてみろ、そいつらから恨まれて復活早々ジ・エンドだ。オレは余計な波風は立たせたくないんだ」

 

正論とも言える彼の言い分を聞き、リバイバーは目を丸くした。どうやら彼は色々と狂ってはいるが、それなりの配慮や気遣いを持っているようである。

 

結論として、パラデウスについては既に目撃例があるためある程度掻い摘んで各基地に連絡し、その詳しい実態については混乱を避けるため規模の大きな基地から優先的に伝達する方針とし、リヴァイルについては追って連絡するそうであり、それまで16Labで監視されるようである。

 

フードマントの勢力といい、パラデウスといい、世界が様々な意味で動き出そうとしているのを彼らは実感していた。




前にも言いましたが、この小説ではニモゲンは公式翻訳前のニモジンと表記するのでご了承を。

ちなみにコイツ、ウィリアムとリコリスに何があったかある程度知ってます。故にヘタに消される前に死ねば問題ないな!ってことで脱走()したわけです。
というより、大陸版の情報見てるとウィリアム、某パワハラ鬼と似た失態してるんですよね…ほんと何なんだアンタは(呆れ)

パラデウスの人形も彼の手で原作より強くなってるけど、どこぞの乙女座MDみたいに意図的な不具合で頑張りゃ倒せるように小細工してあります。

また、やろうと思えばコイツはどっかの黎明卿や終わりの名を持つ者みたいに複数の人形に自分植え付けて上書きして乗っ取る事もできるけど本編の通り色々問題あったからやらなかったしこれからも(多分)やらないよ!優しいね!(白目)

パラデウスの情報は適当にぶん投げるのでお好きにどうぞです。

シリアス目になってるけど次回は普通に日常回やるよ!


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Code-119 激闘のそのあと

宣言通り、日常回です。
久々にバレット達の出番でございます。
時系列はコラボからしばらく経ったあたりです。


とある廃墟、テロリストの隠れ家として機能してたそれはもうすでに鎮圧され、バレットは他のメンバーと連絡を取っていた。

 

「こちらバレット。第一部隊、対象の鎮圧を確認。負傷者無し。第二部隊、応答」

 

「こちらライ。第二部隊も同じく鎮圧済み。負傷者は無し」

 

「了解。では合流ポイントに到着後撤退するぞ」

 

しばらくして彼らは合流し、帰りのヘリの中でライがポツリと呟き出した。

 

「これで鎮圧依頼は今週七件目…やはり以前の作戦の影響とみて間違いないか…」

 

「そうだろうな。正規軍やこっちが大損害を受けて今が好機とみてる連中が多いのだろう」

 

あれから一ヶ月以上が経ち、流石にフードマント勢力のことは伏せられているものの、前回の作戦で鉄血と正規軍・グリフィン連合軍は互いに大損害を受けたことは知れ渡りそれにより治安は悪化、それらの鎮圧にバレットら第一部隊だけでなくライ達第二部隊も各地区を縦横無尽に駆け回る日々が続いていた。

 

そしてリヴァイルについてだが、グリフィン所属ではなく16Labの所属となり、前作戦で見せた鉄血の新型ユニットやフードマント勢力─万能者によると【Pawn】というらしい─にパラデウスといった高等技術を持った勢力に対抗する為のものを中心に開発するよう言い渡された。ある程度自由が効くと聞いてリヴァイルはそれを了承し自分のボディを作り開発の日々を送っていた。

ここで予想外だったのが、彼が思ってた以上に天才であり天災だったという事であった。

 

訓練に用いられるMCRを見つけるやいなやそれに興味を示し、すぐに仕組みを理解するばかりか、システムに掛かる負荷や電力コストを下げる方法を編み出しさらには処理能力を上げる方法まで考えだし数日掛けて改良を実行、その結果負荷や電力コストが大幅に削減され、さらには時間経過速度が一時間で三日分に底上げしたばかりか、同時に二つの空間を形成できるようにしたとリヴァイル本人から聞いた時はペルシカを含めた職員一同、開いた口が塞がらなかった。彼曰く、

 

『オレが生前に国連いた時に調べてたのは、遺跡の中でも特に難解な部分で、オレ以外殆ど匙投げてたようなものを僅かだが解読してたんだぜ?それに比べりゃこんなもん、子供向けのパズル組み立てるようなモンだ』

 

との事である。ちなみにここまで魔改造したのはもっぱら自分が研究する時間を大量に得る為にやったらしい。他にも様々なシステム面の改良や開発を行ったり伝授したりした結果、全体的に16Labの技術力が向上したのであった。

 

ここまでの手腕を持つ彼が何故生前その名が公表されなかったのかは実に単純で、有能過ぎるが故に存在を公表すれば彼の身に危険が及ぶと判断した国連や保安局が彼の存在を隠蔽していたからであった。無論、そんな彼が退所する際は何度も好条件を出して引き留められたが彼の意思は変わらず、その結果彼に圧力をかけた軍関係者との間で一悶着あったらしい。

 

「戦力の立て直しももうすぐ終わるようだし、そうなればある程度収まると見ていいだろうな」

 

「幸い、お子さん達のことはまだバレていないそうですからね」

 

戦力が低下してる中でバレットらの子の存在がバレてしまえば大変な事態となるため、その辺りの秘匿はより強固に行ったのが幸いして未だバレずにいた。

そうこうしてる内に彼らは本部に帰還し一連の報告をしたバレットとレストはアスターに場所を聞いてレクリエーションルームに入ると、彼女と自身の子たちの他にノアも子供を連れて集まっていた。子供たちも元気に成長し、すでに首も座りずり這いなどもできるようになっていた。

 

「ただいま」

 

「おかえりなさいあなた。ほら、二人とも。パパが帰ってきたわよ〜」

 

「「あぅ〜」」

 

声を上げる二人にバレットは微笑みながら頭を撫でやる傍らでノアもレストに声をかけた。

 

「レストさん、おかえりなさい」

 

「ただいま。リヒト達は何ともないか?」

 

「ええ。()()()()()がいい遊び相手になってくれてるようで」

 

「\ オカエリ、オカエリ/」

 

「本当、リバイバーの奴なんでも作るなぁ…」

 

足元にワラワラと集まって跳ねている20cmほどの色とりどりの球体ロボット達をみてレストはそう呟いた。彼らは『スフィア』といいリバイバーとグリンダ、一部リヴァイルが開発した子供用の所謂ペットロボットである。

 

音声機能と優秀なAIを搭載しており、普段は球体だが必要なら格納してある手足をだして話し相手や遊び相手になったり、ある程度のお世話もできるものである。また、拡張ユニットを付ければ修理や土木作業も出来たりと汎用性に富んでいた。子供用とあり安全性と耐久性、重量も問題なく、何より低コストで生産できるのが強みであり、リバイバーは礼を兼ねてぜひそっちの子供達の遊び相手にと、P基地に黄色、青、赤、白、緑、ピンク、紫の七体セット、D08には様々な色をした数十体ほどを拡張ユニット及び設計図と説明書込みで発送していた。ちなみにこれらのモデルは某ロボットアニメのマスコットである。

 

そしてそのリバイバーはというと、リヴァイルとともにネイト達に遊ばれていた。どうやら彼、というよりそのオリジナルであるリヴァイルもなのだが子供、もしくはそれに近い精神のものに懐かれやすい性分なのとネイト達も人懐っこい性格なのが噛み合って引っ張られたり周りを駆け回られたりといいようにされていた。彼女達は検査の結果発信機の類がないことが確認され、出生の事情が事情なのでグリフィンで保護する事となり無邪気に過ごしていた。

 

服装も年相応の可愛らしいものに着替えられているがその中には

 

「心」\ チワクチワク♪/

 

「威風堂々」\ オオォォラァァ‼︎/

 

「死亡」\ タチマシタ‼︎/

 

と、少々独特な文字入りダボTシャツを着てる子もいた。

なお、提供元は最後のみM82A1であとはリバイバーとリヴァイルであることをここに記す。




コイツ有能過ぎねと思ったけどあっちの後日談見てるとこれくらいの奴がいないとウチじゃマトモにやり合えなさそうなのでクッソ有能に仕上げました。いやぁこんな奴に退所させるほど圧力かけたのはどこの将軍だろうね〜?(棒)

スフィア: 言わずがな、ガンダムシリーズのハロがモデルです。拡張ユニットはダブルオーのカレルです。本文通り各所に発送したのでお受け取りください。歌いそうなカラーリング?何のことでしょうか?(すっとぼけ)

最後の文字Tシャツ着たネイト、一番最後の子はそのうちアホ毛生えるな(確信)


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Code-120 彼らのバレンタイン

バレンタイン回です。
タイトルが安直なのはユルシテ…でもちゃんとリア銃してますから!


世間ではバレンタイン、だが彼らにとってはプロポーズをした記念日でもあるためアスター達はより気持ちを込めてチョコ作りに専念していた。

とはいえ、流石に妊娠中のフィオナに関してはウェイター本人から気持ちだけで充分にありがたいから今は自分達の子が無事に産まれるように体を休めてくださいと、逆にもてなされる事態となったが、彼女も満更でもない表情でもてなしを受けているので問題はないだろう。

 

さて、夫婦三組の中で特に仲の良いレストとノアの夫婦はというと、今年はチョコケーキに挑戦したようで、既に切り分けられたケーキが二人の前に置いてあった。

 

「ほぉ…!良く出来てるじゃないか。でも、よく時間取れたな?」

 

「アスターさんやM82A1さんとかと交代で面倒を見てもらったんです。あ、ごめんね。まだアンナ達は食べられないよ」

 

『ん、むぅ』

 

「ドンマイ、ドンマイ」

 

子供たちがケーキに手を伸ばそうとしたのをノアがそう宥めると不満げな声を上げる子供たちにスフィアが反応すると、ならいいやとでも言うかのようにスフィアと遊び始めていった。その様子を微笑ましげに見た二人は早速ケーキを食べ始めた。味の方は問題なく、しばらく黙々と食べ続けたあと、レストがぽつりと呟きだした。

 

「…にしても、俺たちが結婚してもうすぐ一年か…早いな」

 

「えぇ。色々不安でしたけど、無事に子供たちも産まれて元気に育ってくれて良かったです」

 

「どうも不穏な連中がいるようだが、何があっても俺はお前やリヒト達も守ってやるし、俺自身も無事に帰ってくる。…こんな俺を愛してくれたし、この子たちも、俺の元に産まれてきてくれt…」

 

そこまで言ったところでノアはレストの口を指で塞ぐと私少し怒ってますと言った感じで頰を膨らませていた。

 

「…レストさん。そうやって自分を卑下するのはもう辞めてください」

 

「え?いや、すまない…」

 

「私の中ではレストさんは最高の旦那さんなんです。この子たちにとっても良い父親なんですから、自分を卑下するのはもうこれっきりにしてくださいね?」

 

「…わかった。もう、そういうことはしないよ」

 

それを聞いて笑みを浮かべるノアに対してレストは本当にいい女性(ひと)に出会えたなと感じていたのであった、

 


 

「はいあなた、あーん」

 

「…なぁアスター?「なぁに?」いやさ、去年も言ったと思うが、普通に食べさせてくれないかな?」

 

「あら、こういうの嫌い?」

 

「嫌いじゃないが…子供たちがみてるんだが…」

 

ついでに言えばこの台詞を言うのは普通逆じゃないかとバレットは思っていた。今彼はアスターに押し倒されている状態で彼女の手によりチョコを食べさせられようとしている状況にあった。そして彼らの子であるミラとレオンは二人は何をしているんだろうと言った感じでこちらをガン見していたのであった。するとアスターは妖しく笑ったあと体を退けた。

 

「ふふっ、ごめんなさいね。あなたの反応が面白かったからつい…」

 

「君がそういうのはわかってはいるが、今は子供がいるんだから気をつけてくれよ?」

 

「ええ。こういうのは子供たちが寝てからで…ね?」

 

「…ッまったく、君って人は…」

 

妖しさを醸し出す彼女の表情にドギマギしつつバレットはチョコを齧る。恐らく、ここまで彼を惑わすのはあとにも先にも彼女だけだろう。

ちなみに、結婚して子供が産まれ、元々あった『人妻感』が増した所為か彼女は他のDSR-50に比べて妖しさがあり既婚者で子持ちとわかってても惚れそうになる、もしくはそっち系統に目覚める職員がいるとかいないとか。

 


 

「リバイバー、あのね、これ…今日はバレンタインだから…受け取ってくれる?」

 

恥かしげに上目遣いでこちらを見ながらチョコを手渡すグリンダを見てリバイバーは想定より破壊力のある表情に思わず固まっていた。

 

「(ヤッベ、思ってた以上に可愛いなコレ…!)あ、あぁ。ありがたくいただくよ」

 

包装を剥がすと少し形の歪んだハートのチョコが箱に収まっており、リバイバーはそれを口に入れる。グリンダは口に合うか不安げに見ていたが、すぐにその不安は解消された。

 

「…うん、俺好みの味だ。良くわかったじゃないか」

 

「本当⁉︎なんとなくこの味が好きそうだなって感じしてたんだ‼︎あ、リヴァイルさんにも渡そうと思って持ってきたんだけど、今どこにいるかわかる?」

 

それを聞きリバイバーはあーと気まずい顔をした。

 

「いや、今あいつ…万能者を追いかけ回してるぞ?

 

時は少し遡り、リヴァイルは気分転換に本社内を彷徨いていたが、その視線の先に万能者の姿を見つけてしまった…見つけてしまったのである。

視線の先のそれが万能者とわかるやいなや彼の目はギラリと輝き、ものすごい速さで駆け寄り始めた。気配に気がついた万能者が振り向くとそこには今にも飛び掛からんとするリヴァイルの姿があった。

 

「初めましてだな万能者ァ‼︎」

 

「おわぁっ⁉︎だ、誰だアンタ⁉︎」

 

「リヴァイル・ウィッカーマン…遺跡の存在に心奪われた男だ‼︎さぁまずはお前さんのその技術を頭から爪先まで調べさせてもらうッ!Pawnとかいう奴らに対抗するために協力すると言った手前、それくらいいいだろう⁉︎オレが気になるのはお前さんの動力源だ、そのサイズであれだけのバカみたいな火力を連発しても問題なく動けるほどの発電力ッ‼︎解析して量産すれば各国のエネルギー問題は解決すると見ていいだろう!さぁ早くそれを人類の発展の為に見せてくれ!さあ‼︎さあ‼︎さあ‼︎

 

リヴァイル(得体の知れない変態)を前に流石の万能者も恐怖を覚え全力で逃げるものの、リヴァイルは逃すまいと何故か彼に追いつけるくらいの速力を出して追跡していった。

この鬼ごっこは数時間続き、調べるのはまたの機会にしようと諦めてリヴァイルは帰っていった。だが対Pawnのために協力する手前、何度か二人は出会う事になるためこの恐怖は続くのであった。




え?スミス?向こう次第で後日に書きますかね。

リヴァイルが万能者に会ったけどどのみち会う事になるから問題ない…かな?
なお彼の科学技術に対する変態性は 
グラハム・エーカー4:ハンジ・ゾエ4:月山習2
ですかね。(どーやっても変態です本当にry)
またイメージCVは×中村悠一 ○グラハム・エーカーだゾイ。


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Code-121 スミスのバレンタイン

ちょいと遅れましたがoldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』とのコラボ回&スミスのバレンタイン回です!

こちらと繋がっております。
https://syosetu.org/novel/180532/456.html


そろそろバルカンが来る頃合いかな、とスミスは自室の時計を見てそう思った。去年は付き合い始めということもあり貰えてなかったが、今年はちゃんと作って持ってくるから待っててと言われ、スミスは楽しみにして待っていた。

 

(それにしても…最近バルカン、より可愛くなったというか…よく甘えてくるようになったなぁ…)

 

任務のトラブルで一週間付近の地区で滞在することになり、ちょくちょく電話を掛けて様子を聞いてたが日を追うごとに元気が無くなっていき、最終日辺りはほぼ会いたいくらいしか言っておらず、ようやく戻ってきた時はすぐさまスミスのところに駆けつけて抱きついてほぼ一日中甘えるといった事があった。

無論甘えられる事は嫌いではなく寧ろ好きな方だが、スミスが気にしているのは自分に甘えなきゃやってけないくらいバルカンは精神的に参ってるのではという懸念であった。

 

(妹の記憶も未だ戻らないし、前の作戦でえらい目に遭って、誕生日に任務入ってトラブルで滞在することになってで色々ストレスになってるのかもな…考え過ぎかも知れないが、前にバルカン抱え込んで衰弱してた事があるから心配だ…任務でも無茶したらしいし…)

 

いっそリヴァイルに頼んでミニガンの記憶をなんとかして貰うというのを考えたが、高等技術を見聞きすると異様に興奮するあの変態に(将来の)義妹を会わせるとなると不安がよぎる。そんな事を考えているとドアを叩く音が聞こえ出迎えると、満面の笑みを浮かべたバルカンが包みを持って立っていた。

 

「スミス〜お待たせ♡はい、ハッピーバレンタイン!」

 

「ん、ありがとう。せっかくだし、上がってきなよ」

 

バルカンを部屋にあげ、包みを開くと中には生チョコと二つのハートのチョコが入っていた。

 

「へぇ…良く出来てるじゃないか。食べてもいいか?」

 

「う、うん…いいよ…」

 

妙にソワソワしてるのが気になっていたがスミスは生チョコをひとつ取り、口に入れる。

 

「どう?美味しい?」

 

「……あぁ、美味しいよ。ありがとうな」

 

「…‼︎エヘ、エヘヘへ…」

 

褒められて嬉しいのか、破顔して身体をくねらせてるバルカンに対し、スミスは今食べているチョコに違和感を感じていた。

 

(うーん…この味…前に似たようなのが…‼︎)

 

そこまで考えて思い出したのはかつてD08の面々がお礼をしに来た時である。その時振る舞われたものに味が似てると気づいた時、彼はバルカンが照れてる理由に察しがついた。

 

─バルカン、チョコに()()()入れたな─

 

だからといって指摘すれば何故知ってるとなり修羅場となるのは分かりきっているのでこの件は死ぬまで黙っておくが、それはそれとして少し彼女にイジワルをしてみることにした。

 

「にしても随分ミルクの風味が普通のと違うな、何か材料が違うのか?」

 

「へ?あ〜いや、その…特別なルートからちょっと…」

 

「(この目の泳ぎ方…確定だな)まぁいいや。それより、俺だけ食べてるのも悪いしな、バルカン、口開けな」

 

「ふぇ⁉︎え、あ…」

 

チョコを一つ摘んでバルカンに差し出すとバルカンは顔を赤くしてしどろもどろになっていた。流石にやり過ぎたかとスミスは思ったが、彼女は予想外の言葉を言ったのであった。

 

「えっと…スミス…?その、できれば…口移し、がいい…かな…

 

「ッ⁉︎」

 

意外にも大胆な事を頼んできたバルカンにスミスは面食らうが、して欲しそうにこちらを見つめるのを見てスミスはそれに応えるべくチョコを咥え、バルカンと唇を重ねる。そのまま舌を絡ませ、息や声が漏れる音が部屋に響くなかチョコが溶け切るまでそれを続け、口を離すとバルカンは満足そうな顔を浮かべていた。

 

「…これでよかったか?」

 

「うん…♡スミス、ありがと」

 

「どういたしまして。それとさ、任務とかでキツかったり嫌なことあったらいつでも来ていいからな?前みたいに色々抱え込んでお前が荒んでくのは見たくないからさ…」

 

「え?あ、うん…わかった…。そ、それとさスミス、その…嫌じゃなかったら…いい?」

 

内股になって上目遣いをするバルカンの様子からしてスミスは彼女が何を求めてるか察しがついた。どうやらさっきのでスイッチが入ったようである。

 

「そう言われて嫌と言う奴はいないよ。とりあえず、チョコを冷蔵庫に仕舞っておくよ」

 

そう言ってスミスは冷蔵庫にチョコを仕舞い、二人でベッドまで行きバルカンを優しく押し倒した。

そのあとは言うまでもなく、そのままバルカンはスミスの部屋で寝泊まりする事にしたのであった。




おかしい…そんなつもりなかったのに所々若干393が滲み出てるぞ…?

oldsnake様、コラボありがとうございました!

ところで、最近曇らせがマイブームと化してるのですが…どうしましょうかねぇ?


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Code-122 いつか彼らに鉄槌を

何か少し前に日間ランキング入りしてテンションが上がっております!

今回はリバイバーの強化がメインです。


「…で、やっとこさパスワード突破したと思ったらアイツ何仕掛けてたと思う?地雷だぜ地雷?しかも強めのやつ。室内でしかも一個人に対してやるモンじゃないだろ?コレ慰謝料として武器のデータとか貰ってもいいと思わないか?」

 

「百桁の英数字パスワードを仕掛けた方もそうだが、それを十数分で解いた変態に対してそれは当然の措置だろ。サマー○ォーズの健○かお前さんは」

 

コイツが悪事に手を染めたら人間じゃ誰も勝てなくなるんじゃないかとリバイバーは被害者面をするリヴァイルに対してそう感じ取っていた。この二人は元が元の為かよく絡む事がありこうして話す事が多かった。一応間柄としては『記憶を一部共有した他人』といった感じで落ち着いてるらしい。

 

「何でまたパスワードを破った?向こうにとって見られたらまずい、もしくはとんでもないことになるモンがあるかもしれないだろ?」

 

「え?だってパスワード強化したって事は突破したら褒美として調べさせてもいいって事かと…」

 

なんつー暴論だよ。お前さんの性癖までコピーされなくて本気で良かったと思ったわ。それで?まさかずっと万能者追いかけてて研究してませんでしたって言うんじゃねぇよな?」

 

「まさか。アレは研究の合間でやってた事だし、ある程度の装備開発は出来てる。ついてきな」

 

そういってリヴァイルが案内するとそこにはペルシカがおり、机の上には彼が愛用してるV.S.L.Cが置いてあったがレーザー砲身の部分が変更されており、それには見覚えがあった。

 

「ん?これって連中の…」

 

「そ。お前さんが掻っ払って来たやつを組み込んだんだ。いや〜調べたけどすごいよコレ!火力もさるものながら、連射性も高い上反動制御も放熱もバッチリでほぼノーリスク。砲身自体もクソ硬いし補助動力も内蔵されてるんだがコレもヤバくてね、小さい割にこれ一つで軍の大型装甲人形を楽に動かせるんだわ!これでも万能者によれば劣化版だって言うんだから本来の性能がどんなもんか想像しただけで心が躍るねぇ‼︎」

 

(また始まった…)

 

リヴァイルは鹵獲したPownの砲戦使用が所持してた大型粒子バズーカを改造してリバイバーの武器に組み込んだのであった。当然中身は複雑なものであったが、ある程度仕組みを理解した上でレーザーを放つのに必要なもの以外をオミットしたり、わからない回路をわかる回路に改造したり、リバイバーの武器の特徴である収束率の変更機能などを追加した結果、出力が本来の六割近くに落ちたものの、少なくともあの時いた鉄血の新型なら倒せるくらいにはなったそうだ。

また、補助動力もそのままにしてあるため、それを用いてレーザーブレードや同軸装備のレールガンの出力も上がったのだから全体的な性能向上となった。

 

そこまで聞くとリバイバーはある疑問が浮かんだ。

 

「性能が上がったのはいいが…コレ、保安局や国連に文句言われないか?」

 

「それがねぇ…不気味なくらい何の音沙汰もないのよ。初めは万能者が絡んでるからかと思ってたけど、こっち万能者関係ないとこでも色々規約に触れる物開発してるのだから逆に怖いわね…」

 

「あ?そんなん単純だろ。保安局や国連のジジイどもは()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

どういうこと?とペルシカが尋ねるとリヴァイルは語り始めた。

 

「考えてみ?今グリフィン(こっち)を規約違反で拘束、解体してみろよ?そうなったらPownの矛先はどこに向く?」

 

「どこって…あー、そういう事ね」

 

今グリフィンを解体すれば、大戦力を有してるのは正規軍と国連軍であるが、その力は量こそあれどPownに比べれば大人と稚児にも等しい。彼らの存在は既に認知されてるためその脅威は国連や保安局も周知であり自分たちの喉元にそれらが迫るとなれば彼ら─特に国連上層部─としては今の生活を甘受することができなくなる為、都合が悪い。

そこで、敢えてこちらを放置することで向こうと潰し合わせて矛先が自分らに向かないようコントロールしているのだろうというのがリヴァイルの推察である。こちらの技術を提供して戦力を上げる策もあるが、向こうは建前上堂々と規約を破るわけにもいかないし、かといって規約を変更した場合、下手を打てば内乱が起きてしまう。第一、それをPownが悠長に待っているとは思えないためその策はほぼ使えないといった具合である。

 

「まぁそもそもPownが国連の連中を襲撃することに興味を示してない可能性もあるが、連中は臆病だからな。それくらいの事は考えそうだ。あわよくば相討ちになれば良いってとこじゃね?」

 

「なるほどね…これを素直に喜んで良いのかはわからないけど、筋は通りそうね」

 

「とりあえずコレ使って問題ないってことならありがたく使わせて貰うぜ。今後も奴らに有効なやつの開発頼む」

 

「了解〜。まぁ対抗策は一応はあるかな。『対策しなかったら部隊が壊滅・鹵獲されるけど対策したらしたでのちにそれが原因で組織が大崩壊する』みたいな二択を突きつけるようなもんが有効だとは思う。その辺りで攻めてみる」

 

「そ、そう…頼むわね」

 

「あ、そうそう。なんかS13基地だっけ?そこにリホっていう万能者と前につるんでた奴がいるって聞いたが会いに行っちゃダメか?」

 

外出許可が出てないからダメよ、とペルシカに言われたリヴァイルはなら許可が早く出るよう協力するとしますかと言って部屋を出て行ったのであった。




着々と反撃するための準備をしていくスタイル。
鹵獲品使っちゃったけどまぁ生贄にしたって事で大丈夫ですかね?(震え声)

個人的に保安局とかが何もしてこないのってこれが妥当とは思うんですよね。
捕まえたいけど国連上層部から言われて手を出さない的な。



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Code-123 ホワイトデーでの安らかなひと時

すまぬ…最近謎にモチベが上がらぬのじゃ…

これがスランプか…


ここ最近過激派や鉄血の活動もなく、彼らは比較的平穏な日々を送っていた。特にウェイターはもうすぐ子供が産まれるため、平和でいられることが何よりであった。

話は変わるが、今日はホワイトデー。去年は謎の不調でまともなものが作れなかったバレットはその不調が治ったため、張り切っていた。しかし一方で、腕自体に自信はあるものの、これが実質的に初めてのお返しとなるので上手くできるか不安であったが、そこで事前に同じ境遇のスミスとリバイバーに声をかけ共にこういったことに慣れているレストにレクチャーしてもらい、彼からお墨付きをもらい、お返しを行うのであった。

 

「アスター…はい。バレンタインのお返しだ」

 

「あら、美味しそうなクッキー…随分と手が込んでるわね」

 

「去年は送れなかったからな、その分もある。それに日頃の感謝も込めてある。君が支えてくれているから今の俺がいるんだ。ありがとう」

 

「…っ!あなたのそういうところが良いのよね…んんっ!今頂いてもいいかしら?」

 

「あぁ、構わないよ」

 

にこやかに礼を言うバレットにアスターは赤面するも咳払いをして誤魔化し(但しバレットにはバレているが)クッキーを口にする。バレットは口に合うか緊張していたが、アスターが口にした途端に表情を緩ませていた事からどうやら口に合ったようでバレットは安心した。

ちなみにミラとレオンのために乳児用のクッキーも作ってきたのでしばらく親子でクッキーを食べる時間を過ごしていたのであった。

 


 

「リヒト〜アンナ、アリサ〜?パパが作ったクッキー美味しいか〜?」

 

『んぅま〜〜』

 

「そうか〜美味しいか〜」

 

(レストさん、この子たちが産まれてからなんか可愛くなりましたね)

 

レスト一家はというとご覧の通り、ノアにお返しをするのはもちろん、愛する子供たちにもバレットが作ったのと同じクッキーを用意しそれを与えていた。子供たちに好評のようであり満足そうな声をあげるのを見てレストは笑みを浮かべておりノアはその様子を見て微笑んでいた。

当然ノアに送ったものも抜かりなく、上々の出来栄えであった。

 

「いや〜随分と成長が早いなぁ。こないだ産まれたかと思ったらもうそろそろ離乳食ってところだもんな」

 

「えぇ。ウェイターさんのお子さんもそろそろ産まれるので賑やかになりそうです」

 

「そうだな…」

 

そう返すレストだが脳裏にはパラデウスの事が浮かんでいた。子を持つ身であるため、子供であるネイトたちを人体改造して戦わせる彼らを許せるはずもなかった。さらに、保護したネイトたちのリーダー格の少女には個体名があり、それが娘と同じ『アンナ』である事が余計にその思いを強くさせていた。

だが今のままでは彼らに太刀打ちできるほどの装備が整っておらず、そこはリバイバーやリヴァイル、グリンダたちに任せる事にし、今は家族の交流を大切にしようと心がけるのであった。

 


 

「これ…本当に私に…?」

 

「あ、あぁ…こういのは初めてだし、口に合うかわからんが受け取ってくれ…」

 

「ありがとうっ‼︎リバイバー大好き!」

 

「っ⁉︎こういうの面と向かって言われると恥ずいな…って、何見てんだリヴァイル」

 

お返しを貰ったグリンダは感激のあまり上記のセリフを言いながら抱きつき、珍しくリバイバーが動揺してるところをリヴァイルがニヤついて見ていた。

 

「うぇ⁉︎リヴァイルさん見てたの⁉︎しばらくMCRに篭りきりだったのに…」

 

「ある程度完成したからね、戻ってきたわけ。いや〜いい青春を見させて貰いましたよー?」

 

「この物好きめ…そういやお前さん、好きな奴とかいなかったのか?」

 

「いないいない、敢えて言うなら『遺跡』が恋人みたいなモンだし〜♪」

 

『そ、そう(か)…』

 

相変わらずの発言に二人が引いているとリヴァイルは今後の方針を話しだした。恐らくパラデウスの方でそろそろ動きが出てくると思うからそちら方面で対抗策を練るとのことであり、また自我を奪われたネイト達をどうにかして救済できないかも検討中との事である。

 

「だが、それまでは奴らを生け捕りにするのは極力避けろ。境遇には同情するが救済案が見つかるまでは死なせてやるのがいい。そもそも数が多いから救済案見つかるまで不殺は無理がある。なるべく早く見つけるがな」

 

それだけ伝えると彼は部屋から出て行った。

 

(まずはニモジンとマーキュラス…彼女らをどうにかせねば…あの二人には『アレ』があるしな…早いとこなんとかしなくては二人は『アレ』に殺される…処理能力を肩代わりするようなモンを作らないとな…)

 

「うぉ⁉︎危ねぇな!前見ろよ!」

 

「ん?スミスか。すまないな…それはバルカンにか?」

 

「まぁな。バルカン、喜ぶといいな…」

 

(う〜ん、だいぶ主夫感が強いな〜)

 

丁寧に包装されたクッキーの袋をみてリヴァイルがそう思うなか、スミスはバルカンの部屋に向かっていくのであった。




?「なんか変態に彼氏面されてるんですけど…」

スミスにつきましては向こうにお任せいたしますのでお好きに使ってくだせぇ!中身は普通の手作りクッキーの詰め合わせです。

なんか(最近過激派の活動が)静かっスね〜+もうすぐ子供が産まれるっつうフラグ立ててるけど別にウェイター死ぬとかじゃないから安心してね?

早いとこスランプを脱却せねば…!


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Code-124 秘密はいつか暴かれる

半スランプ状態になってから思ったんですけど
小説投稿しつつ二十分弱の実況動画を数日置きに上げてる某ガバとバグに愛されてる旦那はガチですげぇよ…


「いや〜無事に子供が産まれて良かったなウェイター」

 

「はい。フィオナの方も問題なくて良かったです…しばらくしたら、旦那様たちに報告しにいくつもりです」

 

バレットとウェイターの会話からわかる通り、先日フィオナが産気づき無事に男の子を出産、『アイン』と名付けられたその子は親子共に健康上問題ないと診断された。ウェイターは過去が過去のため、無事に産まれたと聞いて嬉しさで泣き崩れるといった事態が起きたがすぐに落ち着き、これからのことを考えていた。

 

「未だに子供達のことは知られてはいませんが、いつバレるかわかりませんからね。子育てもそうですが、何があっても家族を守れるようにはしておくつもりです」

 

「それなんだが…少し気がかりな事がある。ここ最近グリフィンの職員が行方不明になっていると報告があってな。そのうち何人かはこっちの事情を知っている人間なんだ」

 

「っ!それってつまり…」

 

「恐らく過激派が職員を拐って嗅ぎ回ってると見ていいだろう。みんな口の堅い者たちだが拷問のやり方やクスリをやられちゃその限りじゃない。ある程度は覚悟したほうがいい」

 

「そうですか…ですが逆に言えばそれらを迎撃すれば向こうの力を削ぐ事ができますが…何度も返り討ちにしてる現状でそう愚直に来るとも限りませんしね…」

 

「連中や彼らの支援組織もそこまで頭は悪くないと思うが、中には短絡的に攻めてくる連中もいる筈だ。とにかく気をつけた方がいい」

 

少々重苦しい雰囲気となったが、話を変えて最近の子供たちの様子についての話をし始めた。

 

「確か、隊長のお子さんたちはもうハイハイが出来るようになったんでしたよね?」

 

「まぁな。かなり行動範囲が広くなったから大変だよ。それと、レストのとこの子供たちとも仲が良いみたいでよく一緒に遊ばせてるよ。特にアレルギーとかもないみたいだし普通の子となんら変わらないようで良かったよ」

 

事情が事情のため、定期的にP基地から診断を受けてもらっているが特に異常は見られず、子供たちはすくすくと育っていた。ちなみに子供たちは診断時は嫌がるような素振りをせず大人しく診断を受けており、寧ろ親の方が診断のたびに何かあるか心配で落ち着きがないくらいである。

 

このまま何事もなく無事に成長を見守れるようになればいいのだが、そうはいかないことはウェイターは身をもって知っていた。現に過激派だけでなく、パラデウスやPownといった勢力が暗躍してる以上、彼らとの衝突は避けられないだろう。つい最近も国連の拠点が謎の天変地異で壊滅したと聞く。恐らく状況からして先のどちらかの勢力の仕業とみていいだろう。

国連が被害に遭ったということで元々はそこに所属してたリヴァイルがどう思うかと思いきやそれを引き起こした技術の方に多大な興味を示しており、被害に関しては無関心どころか寧ろザマァみろと煽っていた。

 

そう言うのには訳があり、その事件の少し前くらいに以前の作戦の結果から事態を重くみた国連から戦力強化の名目で彼らが半ば不要としていた兵器が送られてきたのだが、その兵器というのが生前のリヴァイルが彼らに頼まれて渋々開発したものだったため彼はせっかく開発したものを不要品扱いされて不機嫌となっていたからであり、今はリバイバーが占領した工場内で改良を施しているのであった。

 


 

ガタガタゴットンズッダンズダン‼︎

 

ガタガタゴットンズッダンズダン‼︎

 

「ふぅ終わった〜。いやー本当思った以上に技術が進んでたおかげで改良が捗る捗る♪部品や武装規格はここのに合わせてあるから整備も楽になるだろうし、エネルギーや補給はコーラップス技術を応用すれば解決するし、調整も済んだからもういつでも運用できるな〜」

 

「うわぁ…下手すりゃ私らアレと戦うかもしれなかったと思うとゾッとするわね…」

 

妙に物騒な音を響かせた後、リヴァイルが改良し終えた兵器を見た一人の元鉄血兵が呟くと周りも同調するようにうなづいた。

人形用特殊可変飛行型大型外骨格『YoRHa(ヨルハ)』。人形による汚染地域への斥候や飛行型E.L.I.Dの対処をメインに開発を依頼されたこの機体は巡行形態と機動形態に変形することで幅広い作戦行動を可能にし、耐衝撃・対崩壊液汚染も高く、高速移動時の負荷も一般戦術人形でも十二分に耐えられるくらいに抑えつつも速度も申し分なく、機体内部にも補助AIを載せており、一定の体格と処理能力と認証コードがあればどんな人形でも使える汎用性と、安全性と実用性を備えたある意味彼らしい仕上がりであった。

 

武装は補助腕内蔵の機関砲もしくはレーザー砲の選択式、機動形態時の手持ち式レールガン内蔵式レーザーブレードとオプションでミサイルコンテナとそれなりに充実していた。

 

ここまできてじゃあ何故不要品扱いされたかというと、開発費と運用費がある程度抑えたものの、正規軍のアレスの倍以上と高く、それならば使い捨て前提のドローンで斥候してアレスに対空兵器を積ませた方がいいと判断され、試作機が五機のみ生産されたのみとなり、それらが全て送られたというわけである。

 

それが何の因果か開発主の元に戻ってきたので仕返しの意味も含めて今の技術で改良した結果、使用目的が変わった事による一部機能のオミットや規格の再統一化やコーラップス技術の導入、さらには彼がパラデウスで得た偏差障壁の技術を用いたため、コスト削減はもちろん、火力や防御力も向上するといったとんでもない魔改造機が生まれてしまったのであった。

 

「空いたスペースに銃の格納庫作ったからいざとなれば自分の銃持って脱出して戦闘続行できるし、我ながら良い改良をしたなぁ♪」

 

自画自賛して満足げな顔でヨルハを見ているリヴァイルだったがバレットから通信が入り、リヴァイルは通信を繋げた。

 

「ん?どったの?」

 

『なぁリヴァイル、お前が改良してるヨルハってやつ…近いうちに一機だけでも動かせるか?』

 

「一機どころか全部動かせるぞ。何かあったか?」

 

『さっき第二部隊から報告があった……

 

 

 

 

 

子供たちの事が連中にバレた。それなりの部隊が動いてるらしいから近日中に掃討作戦をやるつもりだからいつでも動かせるようにしてくれ』




ヨルハ: 元ネタはニーアオートマタの飛行ユニット。魔改造の結果グラ○ムスペシャルしても機体と搭乗者どっちも平気なくらいに対G性能が上がった。(ゲロしないとは言ってない)
ちなみにあのデザイン好き。ついでに言うと通常戦の槍×大剣で出す滅多斬りポールダンスも好き。にしても何で『アダム』って奴はどいつもこいつも一回全裸になるんだろう…

さて、ウェイターに息子が産まれたと同時に連中にバレました。
コラボっぽい雰囲気だけどコラボではないのでご了承を。


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Code-125 秘密の対価

段々ネタが出てきたから近いうちにスランプは治りそうですかね。

9610が平成から追い出されてまたやって来るってマジすか⁉︎


「事の発端はつい先日にここの職員と思われる遺体が発見されたことで、医師の解剖の結果、体内に大量の自白剤と麻薬の成分が検出されました。情報流出源はそれで間違いないでしょう」

 

「それと、敵の集結地点を調べたところ、以前にリバイバーさんをダルマにした機体は確認できず、代わりに改良型のP.A.C.Sが何機かと一般機が多数確認されました」

 

「おうその覚え方やめーや」

 

リバイバーのぼやきはさておき、第二部隊が表示したデジタルマップに幾つもの赤い点が表示された。おおよそ30〜40機ほどと多いものの、自分達のいる本社を攻めるには些か戦力不足であることと、話にあった強化機体がいないことから恐らくはいくつかある過激派の派閥の一つが独断で攻めてきていると見ていいだろう。

 

「それで、本当にあなた達だけで対処するの?」

 

「あぁ。連中は俺らがまだ前の作戦で戦力低下してると思ってるのなら、俺らだけでもまだ戦えるって示す必要がある。DG小隊のみで倒せたってわかれば、EA小隊やAR小隊といったのが控えてるこっちをこれ以上攻めるのは得策じゃないとわかるだろうしな」

 

「やられたといっても小隊内だと俺と俺の用意した部隊しかやられてないしな。その辺で連中勘違いしてんだろ」

 

迎撃にはノアを除いた第一、第二部隊とリバイバーといった編成でありバレットのみヨルハに搭乗しての出撃となっていたが、リヴァイル本人もせっかく人形のボディなのだから実際に自分でヨルハを使って改良点を見つけたいとの申し出があり、正直不安だが参加させることにし、出撃するのであった。

 


 

ある程度の操作を教わり、バレットはリヴァイルと共に巡行形態で進んでいくと廃都市、とはいってもほぼかろうじて廃墟が残ってるような場所で武装した過激派達が進軍しているのが見えた。

 

「おーおー、赤子如きで大袈裟なこった。奴らのあの兵器さ、あとで持ち帰っていいか?」

 

「それは構わないが…リヴァイル、お前は子供たちについてどう思ってるかお前の意見が聞きたい」

 

「ん?そーだな……オレとしては別に人形同士の子でも遺伝子的に人間って証明されてんならそいつは人間だよ。誰が産んだとかそんなモン他人がとやかく言う資格はねぇだろ?大昔に神聖と言われてた生贄の儀式が今やればイカれた所業と言われたりするが、その逆だってあり得るんだ。正しいかどうかは時代が決める。まぁなんだ、悪意を持って子を成したわけじゃねぇなら誇っていいとオレは思うよ?」

 

「…そうか、わかった」

 

「んじゃまぁ早速始めますかッ!そのまま掃射しながらミサイルを撃ち込んでくれ。あとは好きに暴れてくれて構わない。コンテナの方はパージしても平気だから」

 

了解、と返事をした後バレットはすでにこちらに気付いている彼らに向けてミサイル全弾と補助腕の機関砲を撃ち放った。生身の歩兵は当然として、P.A.C.Sまでも手脚を引きちぎられ、一拍遅れて着弾したミサイルに地面ごと吹き飛ばされていった。リヴァイル機に搭載されているレーザーも敵の装甲を焼き切り、成果を確認したバレットは速度を緩めて機動形態に変形させるが、リヴァイルはスピードを緩めずにそのまま変形させていった。次の瞬間、リヴァイルは吐いたのであった

 

「ッ!リヴァイル、平気か?」

 

「ぉぇぇ…大丈夫だ…まさか腹の中ひっくり返るとは予想外だ、こりゃある程度食った状態でやるとゲロ詰まって死ぬな…そこんとこ改良がいるな…」

 

ブツブツ呟きながらも機体を操作して撃破していくリヴァイルに若干引きつつも無事と判断してバレットはレーザーブレードを振るい、敵を両断していく。

 

当然、来ているのは彼らだけではない。上空にばかり気を取られてた過激派達は横合いからの攻撃に晒されて倒れていく。見るとリバイバーら第一部隊が接近しており各々愛銃と追加の武装で仕掛けていった。

スミスの方はこれが神獣鏡の初の実戦運用ではあるが、長年の経験で上手いこと使いこなし、通常射撃以外にもミラービットを使った反射や拡散を利用してのトリッキーな攻撃で圧倒していた。

 

(にしても、ホント腹立つくらいに使いやすいな…これにリヴァイルが手を加えたらゾッとするな…)

 

過激派も応戦しているものの、空と地上の二つに注意を向けなくてはいけないため、あまりいい成果を出せずに倒れ伏していく。それに、最近ほとんど彼らの前に現れなかったスミス達の腕が鈍ってるどころか上がっている事に動揺しているのが見てとれた。スミス達とて確かに戦闘をほとんど行なっていなかったが日頃の鍛錬は怠っておらず、さらに言えば過激派達がしようとしてる事を考えれば自然と士気も上がるため当然と言えば当然だろう。

 

戦場が混乱し始めた頃、歩兵の何人かが突然倒れ、それが狙撃によるものと気付いたのと時を同じくして狙撃手であるライを除いた第二部隊がスミス達とは別の地点から突撃し、さらなる混乱を彼らに招いていた。第二部隊の面々は特にこれといった特別な装備はしていないが彼らも16Lab製の精鋭である。的確に急所となる場所を攻撃し、ひとつひとつ確実に無力化していった。

 

「クソッ!男性型人形が他にもいたのかよ⁉︎」

 

「…なんか、俺らのことあまり知られてないようだが…」

 

「隠してるつもりはないんですが、こっちはあまり大きな戦闘に参加してないですし、いかんせん先輩達が有名過ぎますから結果的に秘匿してるみたいになってるんでしょうね…それはそれで僕達にとっては都合が良いですが」

 

「それでもたまに助けた人形から所属を聞かれて、ん?とか第二部隊っていたんだ?って反応やられるのはアレだけどな…」

 

そんな軽口を叩きながら戦闘を継続していると、何かを察知したリバイバーが彼らの間に割って入り、電磁フィールドを展開した直後、無数の弾幕が電磁フィールドに直撃した。

 

「助かりましたリバイバーさん!」

 

「礼には及ばんよ、ありゃ改良型か…ん?」

 

リバイバーが相手の方を確認すると何故か苦笑いを浮かべていたので彼らはその方を見た。すると()()()()を持った改良型数機の姿が見えた。

 

「あの改良型の持ってるあの銃器…形状と大きさからしてあれは…」

 

「M61、A2……」

 

『あっ(察し)』

 

(オイオイオイ、死ぬわアイツらw)

 

次の瞬間、改良型は幾つものレーザーに撃ち抜かれ爆散していった。あまりにも呆気なく破壊された事に過激派達が驚愕していると、レーザーを放った本人であるスミスが明らかにキレている様子で彼らを睨んでいた。

 

「ほぉ…バルカン(アイツ)の銃持ってこっちにカチコミ仕掛けるとはなぁ…あわよくばアイツに嫌がらせしようって魂胆か?そーかそーか……

 

 

 

 

テメェら覚悟しろよ

 

そう言うや否やスミスはレーザーを乱射しそれらをさらにミラービットにて拡散させ近くの敵を一掃しその後、鬼気迫る勢いで追撃を加え始めたのであった。

 

「うわぁ…スミス先輩メッチャキレてますねぇ…」

 

「てかよく見たら爆散させた割に銃の方のバルカンはほぼ無傷で残ってるな…傷付けないよう狙ったのか」

 

「と言うか、何人か生捕りにする予定だった筈だが…このままじゃ全滅させちゃうような…」

 

「ウェイター、レスト。お前たちで生捕りにしてバラージ達は巻き込まれないよう注意して戦闘を継続してくれ」

 

バレットはそう指示を出すと眼下で絶賛無双しているスミスを見て苦笑するが、自分も同じ事をされたらあぁなる自信はあるため深くは言わずにいた。程なくして彼らは生捕りにした何名かを残して全滅し、過激派達にこちらは未だ健在という無言のメッセージを送る結果となった。

リヴァイルとしても実戦データが取れて改良点を見つけられたので非常に満足しているようであり、残骸も回収して何かに利用するそうである。

 

「まぁこれで連中も下手に手出しできないし、こっちも変に隠し立てる必要が無くなったから気が楽になるな」

 

「確かにな、堂々と直接子供たちの物を買い物に行けるのは大きいな」

 

ちなみに、これを機に情報の制限が解除され、時折他の人形達が子供たちを見にやって来るようになり、彼女達の間で癒し的な存在となり一部で見守り隊のようなものが出来たとか。




リバイバー「妙だな、あそこまでの出力は出ない筈なんだが…何でだ?」

次回の予定ですが、百話以上書いてるのにほぼ絡んでなかった原作主人公たちを出す予定ですかね〜。


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Code-126 雨除けと守護者たち

さて、原作主人公であるAR小隊との日常の絡みです。

モチベ上がった途端仕事でトラブル起きやがって執筆する余裕なくなりやがったよチクショウ…

リヴァイルに何があったかはこちらをどうぞ。
https://syosetu.org/novel/190378/143.html


前回の戦闘から少し経ち、過激派の動きも見られなくなり平穏な日々を過ごしていたある日、バレットとリバイバーは呆れ顔で包帯巻き状態のリヴァイルを見ていた。

 

「全く…懲りないというか何というか…夜這いまでして調べたいのかお前は…」

 

「初めに言っておくが、オレにそういう趣味は持ってないから安心しな。オレが惹かれるのは彼に使われている技術であってだね、彼個人に対しては毛ほどの興味はないね。例えるならショーウィンドウのブランドものの服や鞄に憧れるがそれを身につけてるマネキンには興味ないだろ?そんな感じだ」

 

(万能者マネキン扱いしてるよこの変態…これが俺の大元とは信じたくねぇ…)

 

相変わらずの発言に引いている二人だが、彼がもたらした技術は大いに役立っているのだから始末に負えないのが厄介なところである。ちなみに彼が制裁を受けた時、防音壁越しにも音が聞こえたのでバレットとレスト(親バカ二人)が万能者と少々話をしたのは別の話である。

 


 

「あのな…コイツが悪いのは確かだしお前の怒りも尤もだが…夜中なんだからやるならもうちょい静かにやってくれよ?子供が寝てんだよ」(ガチトーン)

 

「同じくだ。リヒトすぐ起きやすいし、釣られて娘二人も泣くんだよ」(バレット以上のガチトーン)

 

「ア、ハイ、スミマセン…」

 


 

そんなことがあったとは梅雨知らず、リヴァイルはニヤけながらとんでもないことを言い出したのであった。

 

「いや〜とにかく()()()()()()()()、これを元に色々開発するとしますか‼︎」

 

「…は?まさかお前さん、ワザと万能者にボコられてデータ取るのが目的だったのか…⁉︎」

 

YES‼︎彼の性格は今までの記録見て把握してるからどうすれば暴力に訴えるか理解してるからね、予想通り殴り飛ばした挙句、おまけに電撃まで浴びせてくれたからそのデータも得られて思わぬ収穫だよ〜♪」

 

さぁ早速始めっぞ〜♪とご機嫌な様子で開発を始めるリヴァイルに二人はその万能者を手玉に取る(したた)かさとワザワザ自分から殴られに行って自分自身でデータを取るイカれ具合に気持ち悪さを覚え顔を引き攣らせたのであった。

 


 

その日の午後、グリンダと研究(という名の実質部屋デート)をしているリバイバーを除きバレット達はそれぞれの子を連れて広間にてある人物たちを待っていた。しばらくしたのちに扉を叩く音が聞こえ、入るよう促すとAR小隊の面々が部屋に入ってきた。

行動指針が違うためあまり関わりが少ない彼女たちだがDG小隊が結成した頃はたまに合同で作戦を行うこともあり、またバレットとスミスに関しては同じ16Lab製ということもあり作戦外での交流はあった。今回彼女たちが訪れたのは彼らの子供たちを見にやってきたのであった。

 

一応以前から子供たちのことは知っていたが両小隊ともに名のある部隊のため下手に接触した場合、表向き関わりの少ない両小隊が何故接触したのかと探りを入れられる事を危惧して接触を避けていたが、それらが前回の件で解除されたためこうしてやって来たというわけである。

 

「あの、これ手土産です」

 

「あぁ。ありがとうM4」

 

「それと…いきなり知らない人がたくさん来て赤ちゃんたち怖がったりしませんか?」

 

「平気平気。たまに他の人形たちが見に来るけどみんな人見知りしないみたいだし、余程のことがなきゃ嫌がらないから」

 

バレットの言葉の通り、子供たちは怖がる素振りは見せず寧ろ、また新しいお姉さんが遊びに来たといった感じで彼女たちを眺めていた。すると、ミラがM16に向かって手を伸ばした。

 

「ん、む!」

 

「お?抱っこして欲しいのか?…大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。寧ろミラは抱っこされるのが好きだからしてやってくれ」

 

「M16さん。ここを支えるように…」

 

アスターからのアドバイスを受けながらM16はミラを抱き抱え、ゆっくり揺らすとミラは嬉しそうな声をあげたのであった。

 

「うぅきゃっ!あ〜う〜」

 

「そうかそうか、気に入ったか〜。…あー待った、眼帯引っ張ろうとするのはやめてくれ」

 

「んう?」

 

そんなやり取りをしている横でSOPや他のメンバーも子供たちの相手をしていた。SOPがいないいないばぁをしてリヒト達が笑い声を上げて反応したり、M4とAR-15も恐る恐る子供たちを抱っこして嬉しそうに反応する様子を見て頬を緩ませていた。

 

「……」

 

「……」

 

ROはというと、たまたま目があってからずっとレオンと見つめあっており、しばらくしてそーっと指を近づかせてみるとレオンは指を両手で掴むとそのまま甘噛みし始めたのであった。

 

「〜〜ッ‼︎」

 

どこか悶えるような仕草をしながら指を甘噛みされ続けている彼女を見てバレットは彼女の視線に妙な危惧感を感じ取り、もう少し子供たちが成長してもこの感じであったら少し距離を取ろうかと半ば真剣に考えたのであった。

 

しばらくしたのち、M16がニヤけながらスミスに話しかけてきた。

 

「そういやスミス、バルカンと付き合ってるみたいだが、どうなんだ?一緒に飲み行って酒の肴に聞こうと思っても禁酒してるみたいで聞けてないんだよな」

 

「あ〜そういえばアイツが禁酒してるのってこっちの事を酒場とかで話さないようにって事だったな…あとでペルシカに言って解禁させてもらうか。そしたらどこか二人で飲みに行ってみるか…」

 

「ほうほう…!その様子じゃだいぶお熱のようだな…で?何かないのか?こういうところがいいとか二人きりになるとこうなるとか…」

 

「話すわけないだろ。本人ならともかく、俺から言いふらすマネはしたくない。というかそういうのは俺以外に知られたくないし…

 

「お、おぅ…」

 

最後の方の言葉で何かを察したM16は少し離れ、バレット達の方に向かうとヒソヒソ声で話しかけた。

 

「なぁバレット…スミスって前からあんな感じだったか?なんか…重いというか独占欲が強いような…」

 

「俺も薄々そう思ってた。彼女の方も色々無茶をしているしスミスの気持ちはわからなくもないが、あぁも変わるものなのか…?元々そういう素質があったのか?」

 

「……クリスマス以降にバルカンさんが見慣れぬネックレスをしているのをたまに見ますが、それが彼がプレゼントした物だとすればその可能性は大いにあり得るかと」

 

ウェイターが気になることを言ったため、どういう事かと二人が聞くとウェイターは落ち着いた口調で説明し始めた。

 

「民生時代にフィオナに贈るプレゼントを選ぶ際に、物の意味とかを色々調べてて知ったのですが、ネックレスを異性に贈るのは『相手を束縛したい、独占したい』といった感じの意味を持つそうです。というより輪系の装飾物にはだいたいそういった意味合いを持ちます」

 

「へー。だけどスミスは意味を知らなかったんじゃないのか?ネックレスを彼女に贈るなんて普通だろうし…」

 

M16が尤もな意見を述べているとバレットはある事に気がつき、ハッとした顔をした。

 

「輪系…?そういえば前にスミス、バルカンの誕生日にリストバンドを…‼︎」

 

「「あー…」」

 

「無意識とはいえ、そういう意味を持つ物を贈ったのですから、ほぼ確定でしょうね…まあそれが悪いというわけではないですし、二人の仲に影響を及ぼすほどのものじゃないならいいんじゃないですかね」

 


 

リヴァイルは研究をある程度進めたあと、気分転換にそこらを彷徨いているとちょうどバレット達の元を去ったAR小隊の姿を見かけたのであった。初めはバレット達とは違う16Lab製の彼女達と話(一方的かつおおよそデリカシーに欠けた質問)をしようとしたがその中の()()()()を見て反射的に物陰に隠れた。そして彼女達がいなくなったあと、しばらく彼女達のいたあたりを見たあとクックッと笑い、肩を揺らした。

 

(なるほどねぇ…やっぱり科学者ってのは狂ってナンボだな……オレも含めてな)




頼まれてもないのにリヴァイル、ワザと万能者怒らせてサンドバックになってデータを取ってそれから研究するというどこぞの自動人形みたいなマネするの巻。コイツ、本当恐れ知らずのうえ気持ち悪いな…

そしてリヴァイル、AR小隊(の一人)を見たことでこの世界で起きたことの真実をだいたい把握しちまいました。ここからどうなるのやら…

さて、恐らくこれを投稿する頃には自分は先週くらいから脳内に囁きまくってるオススメピエロと上弦の鬼の誘いに乗ってウマ娘をやり始めてるでしょう。
ランキングの上位ほぼそれですし凄い人気ですよね。


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Code-127 全てを救うためならば

長らくお待たせしてすみません。
実を言うと自分、先月末に交差点での車両事故起こしまして、幸いにも双方無事でしたが、自分があと数メートル進んでたらペシャン公になってたかもしれないレベルのものでしたから怖かったですね。
その処理と腰をむち打ちしたのでリハビリとかでモチベが下がったので遅れました。

まぁ暗い話はここまでにして、今回はウチの変態ことリヴァイルの話です。


リヴァイル・ウィッカーマン。紆余曲折を経て文字通り人間を辞め、自身のデジタルクローンであるリバイバーのブラックボックス内にその身を隠し蘇ったという珍妙な経歴を持つ彼は自他ともに認める大天才であり、それと同時に遺跡関連の技術やその成り立ちに関してはトップクラスに詳しく、そこから得た知識の恩恵はグリフィンや16Labにとって大きなものである。

 

しかしその反面、自分の知らない技術を知ると異様なくらいテンションが上がり、特に万能者に関しては自分が最も興味を持つ遺跡関連の技術を有しているあるため、技術を得るために不法侵入からの分解未遂などプライベートに配慮しない行動を起こして彼を怒らせている問題児兼変態と周りから認識されていた。そして彼は今16Labでペルシカにある資料を渡していた。

 

「ほい、これが改良案の資料な。上手いことやれば数年、ダメだとしても半年くらい完成までの期間が短縮されると思うから」

 

「……ホント貴方化け物じみてるわね。私でも完成に時間がかかるって判断した物を短縮させるなんて…」

 

「前にも言ったが、元々オレはオレで除染の方法を幾つか練ってたんだ。その中で使えそうな理論を当て嵌めたに過ぎないさ。流石にゼロからコレに辿り着くにはオレでも時間がかかる。そもそも除染はオレにとって遺跡解明のための『過程』であって『目的』ではないからな。その点間違えないでくれ。そう言う意味ではコレを考えたヨゼフって奴は尊敬出来るな。行動に関しては尊敬出来ないが」

 

彼が渡したのはP基地と因縁のあるヨゼフなる人物が遺した汚染浄化物質『サルバシオン』の開発資料、それの改良案であった。先に話した恩恵からリヴァイルはパラデウスのスパイの可能性が低いと判断され、利害の一致からペルシカを通して彼女達と協力する事を決定したのであった。無論、内容が内容の為、漏洩防止は徹底的に行なっているが、彼が指定した向こうとの連絡手段が『基本ペルシカ越しでのやり取り、どうしても直接やり取りしなくてはならない場合は音声のみで』という方法にペルシカは疑問を持っていた。

 

「何でそこまで頑なに向こうと顔を合わせてやり取りしたがらないの?顔を合わせた方が彼女達の信用も得られると思うけど?」

 

「…聞くがペルシカ、お前さんの養子のユノだっけか?彼女の眼は義眼で過去の影響で人形が人間に、人間はマネキンのように見えるんだったよな?」

 

「ええ、私とか何人か信用してる人間は例外だけど…」

 

「ならそれを踏まえた上で聞く。()()()()()()()()()()()()()?」

 

その言葉にペルシカはハッとした。確かに彼の身体は人形の義体であるものの、元々は人間である。言わば彼は記憶以外脳も含めて全て機械にすげ替えたテセウスの船状態であった。

 

「オレが人間か人形か判断しづらい状態で何かの弾みで顔合わせてる時に彼女がオレの顔見てみろ?万が一システムにエラーが起きて彼女に悪影響が起きたらシャレにならないだろ?だから顔を合わせないやり方提案してるんだよ」

 

「意外とあなたそういう配慮はあるのね…万能者にはアレなのに」

 

研究対象とそうじゃないのを一緒の扱いにするわけないだろ?まぁそれともし何も影響なくて彼女がオレを人間に見えたら逆説的にオレ人間じゃねぇって判断されるのが心外だからってのもあるけどね〜♪」

 

「そ、そう…あと話は変わるけど、あなた…遺跡の技術を用いて人類技術の革新や人類の救済を目的としてるけど、その中で弱者を切り捨てたりとか考えたりした事はないの?あなたくらいの頭を持ってるならそう言った合理的判断をしそうなものだけど…」

 

「ないなそんなもん」

 

「どうして?」

 

パラデウスのしている事を自身の立場と目的を考えて黙認していたものの、リヴァイルはどうしても必要な場合を除いて非人道的な実験を進んで行なっていないという彼の発言にペルシカは疑問を持っていた。彼くらいの人物なら浮浪者やスラムなどの人間を大量に使って色々とやっていそうなものではあるが、むしろそういった人間ですら救けようと画策する彼が不思議であった。

 

「確かに切り捨てるのは簡単だ。救う人間を減らせば救ける数も少なくなってラクだしな。だがな、オレは人々を救う研究をした事を多くの人間に知って貰いたいし称賛されたい。だから何年掛かっても良いから一人でも多くの人間から称賛されたいが故に切り捨てる真似はしない。それだけだ。デジタルクローンに着手したのもそれが理由でもあるさ」

 

「…なるほどねぇ。目的もとい人類のために自分を捧げ過ぎてるけど、その姿勢は悪くはないわね」

 

「オーディンとて知識と引き換えに片目無くしたんだ。ならば記憶以外全部捧げたオレにはどんな恩恵が与えられてそれをどう活かせるか楽しみでならないよ」

 

「あなたがオーディンなら、リバイバーはさながらあなたにとってのグングニールかしら?」

 

「かもな。今度ヤツ用に槍型の武器でも開発してみるか…いや、遠距離主体のアイツには合わないか…じゃ、オレは研究することあるから出てくわ」

 

部屋から出て行ったリヴァイルはふとパラデウスにいた時にやたら自分に懐いていたネイトがいたことを思い出していた。

 

(あのネイト…機械化施術の前にオレ自殺したからわからんが、どうなったんだ…?成功しても自我は一部除いて無いし与えられてもだいぶ歪むし、失敗したら終わらない苦痛を与えられ捨てられる…どのみち黙認した分、彼女達全員見つけ出して助けなきゃな…)

 

(確か施設から出た事ないから外に出て図鑑で見た花、特に『タンポポ』を見てみたいとかいってたな…あんな子たちにあんな事をするウィリアムはやっぱイカれてる…しかもあの子たちのクローン元が『アレ』なのに…)

 

そんな事を考えていると何かを踏んづけたので見てみると、そこにはボロボロになってグッタリと倒れたリバイバーがいた。

 

「どうした?こんなとこで寝て」

 

「いや…ウェイターがバレットに404のUMP45とあった話をしてたの聞いて、お前さんの子も見に来たのかって言ったら問い詰められて、前にバレットの子供達に会わせたって話したらこの有様よ…どうやら仲が悪いようで、黙って通したのがまずかったらしい。アポ取ってたような話し方してたからつい…」

 

なお、この事で素直に彼女らに礼の品を送ろうとしたバレットは考えを変えてそれとは別にある物を45宛に送ったのであった。

 


404小隊のセーフハウス

 

「……っ」

 

(だ、駄目よ…まだ笑っちゃ…し、しかし…)

 

彼女達に送られたのは幾つかの弾薬や食料と普通であるが45宛に送られたのはTシャツであり試しに着てみたのだが、それには前にデカデカと赤の背景に白い文字で

 

SUGOI

DEKAI

 

とプリントされていたのだから着てる本人を除いて全員笑いを堪えるのに必死であった。

 

「あの親バカ凸砂野郎…‼︎次あったら鼻へし折ってやる…ッ‼︎」




S女史「旧時代のオーパーツに詳しくて協力的なんてあとで絶対裏切るわよ」
W博士「そのオーパーツ利用して人々から称賛されたいなんてロクなことしないでしょう」
錬金術師C「先の事見越して自分の一部記憶継いだ奴派遣させて死んだ後復活するなんてとんでもない事するなコイツ」

リヴァイル、P基地の除染プランに協力するの巻。まぁ彼にとっても魅力的だし、協力しない理由がないからね。

最後のはこちらにあるガンアーク弐式様のコラボを見ればわかります。

https://syosetu.org/novel/207272/49.html


ちなみにですが、前回の宣言通りウマ娘を始めたのですが、先の事故で愛車を廃車にする事を決めた私にライスちゃんを寄越すという史実的にシャレにならん真似してくれたた○なさんに腹が立ったので育成路線変えて

全力でお兄様を遂行してやり(クラシック三冠をもぎ取り)ましたよええ。


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Code-128 守護者たちの異世界奮闘記-1

今回はいろいろ様作『喫茶鉄血』の大規模コラボ、その導入回です!

参加メンバーみてオーバーキル過ぎて変な声でましたねw
時間軸としてはコラボ元の1-1の少し前くらいです。

また、oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』と導入を絡ませて頂きました。


これといって大きな出来事もなく、殆ど訓練やパトロールに明け暮れる日々のなかでバレットは家族と共にゆっくりと休日を過ごしていた。

 

ミラとレオンも怪我や病気もなく、元気よく成長しておりまた姉弟仲も良く時折り一緒に遊んでいたりしていた。人見知りなども無く、バレットの姉妹であるM82A1やペイロードやたまに来る他の人形達にも怯えることなく寧ろ色んな人が遊びに来てくれて嬉しいと言った感じで反応してくれるので将来の人付き合いも心配なさそうであった。

 

そんな事を考えながら現在二人仲良くお昼寝をしてる子供達を眺めている時であった。突然、彼の耳に鐘の音が聞こえてきたのであった。

 

「…?アスター、なんか鐘の音が聞こえなかったか?」

 

「いいえ?何も鳴っていないけど…」

 

それを聞き、気のせいかと思ったが再び鐘の音が聞こえ、アスターの方を見るもやはり聞こえている様子はなく、自分にしか聞こえていない事に気付き、バレットはこの現象について考え始めた。

 

(どういうことだ?メンテはこの間したから不具合ではないな…電子攻撃の類にしては何かおかしい。それにこの音…まるで助けを求めるような音だ…)

 

思考を巡らせているとまた再び鐘の音が聞こえると、今度は何故かいつか訪れた別世界の喫茶店、『喫茶鉄血』のイメージが現れていた。

 

(っ⁉︎今のは?もしかして…あの世界で何かが起きてるのか?)

 

「大丈夫あなた?難しい顔してるけど…」

 

「っあぁ、大丈夫だ。アスター、前にこことは違う世界に行った話はしたよな?」

 

「ええ…それがどうかしたの?」

 

バレットはアスターに先程の現象とそれについての憶測を説明した。

 

「…突拍子もない話だが、あそこの代理人には助けてもらっている。これがSOSだとすれば行かないわけにはいかない。だから…」

 

「向こうに行って助けに行くのね…わかったわ、いってらっしゃい」

 

「信じてくれるのか?」

 

「もちろんよ。子供達は私に任せて。無事に帰って向こうの話を聞かせてちょうだいね?」

 

ありがとう、と礼を言うとバレットは準備を進めているとスミス、ウェイター、レストから連絡が入ってきた。どうやら彼らも同じ現象が起きたらしい。

四人は自主パトロールの名目で外に出ると、鐘の音が大きくなりその音に導かれるままに向かい路地裏を抜けると、いつか訪れた喫茶店『喫茶鉄血』の前にいつの間にか立っていたのであった。

 

「…意外とあっさり着けましたね」

 

「とりあえず、中に入って事情を「うわぁ⁉︎」ん?え、バルカン⁉︎」

 

スミスが声のした方を向くと突然何もないところからバルカンとマーダーが落ちてきており、バルカンの方は咄嗟に近くにいたスミスが抱き止めて事なきを得たがマーダーの方には誰もいなかったため彼女は派手に地面とキスする羽目になった。

 

「大丈夫か…?というか、何でここに?」

 

「ん…?え⁉︎ここ何処⁉︎私ら階段からすっ転んでた筈なのに…?」

 

「イタタ…あら?ここ前に来たわねぇ?」

 

「貴女前にも来たことあるんですか?」

 

ウェイターがそう問うと同時に喫茶店の扉が開き、代理人が姿を表した。

 

「あら?あなた方は……?それにバルカンさん、今日はクリエイターさんは一緒じゃないんですか?」

 

「だ、代理人⁉︎」

 

「あー待ったバルカン、この代理人は俺らの知ってる代理人とは違くて…ん?なんであんたバルカンのこと知ってんだ?てかクリエイターって誰だよ?」

 

「……なるほど、そういうことですか。とりあえず中にお入りください。といっても、少々事情があって長くは話せませんが」

 

一行は中に入り、まずはバルカンにこの世界についての説明をした。初めこそ信じられないといった感じであったが、証拠となる物をいくつか見せてもらうと納得したようであった。そして次に、どうやらこの世界にもバルカンはいるらしく、代理人が言っていたのはこの世界の彼女のことであった。

そしてここからが本題だが、現在この世界では列車砲がテロリストに強奪されており、この地区に向かっているとの事でありこれから彼女達はその対処に向かうところとのことであった。さらに、バレットらの他にも何名か別世界の者たちが集まってきているとの事であった。

 

「なるほどな…よし、そう言うことならば俺達も協力しよう。恐らくここに来たのもそういうことだろうしな。二人は?」

 

「…ま、一応助けられてるしねぇ。協力するわ」

 

「私も、話聞いた以上ほっとくわけにもいかないしな」

 

「すみません、こちらの事であなた方を巻き込んでしまって…」

 

「いえ、前の時の恩返しで協力するわけですし、それに世界は違えどここの人形達や人々を守るのはDG小隊(俺たち)の役目ですから」

 

その後、現在の状況を把握した彼らのうち、バレットとウェイターがアルゴノーツ・パピス、残りのメンバーはアルゴノーツ・カライナへ向かう事になった。

 

「ん?俺とレスト別か?」

 

「どのみちお前の事だ、バルカンが心配だとか言って向かうだろうから始めから同行させた方がいいだろ?レストは一応の付き添いだ」

 

「いや、そんな事…あるか。あぁそうだ代理人、さっき言ってた『クリエイター』って誰のことだ?名前からして鉄血人形のようだが…?」

 

「はい、その通りです。この世界のバルカンさんと一緒に行動してる方で、あなた方と同じ()()()()()()ですね」

 

「(ピクッ)……へぇ」

 

瞬間、スミスから妙な雰囲気を感じ取った代理人は恐る恐る補足の説明をし始めた。

 

「あ、あの〜…スミスさん?一応言っておきますが、あの二人はあなたが思うような関係では無かったですよ」

 

「あ、そうなの?」

 

その言葉を聞き先程の雰囲気を無くし、ホッとした様子のスミスを見て代理人はバレットにひそひそ声で話しかけた。

 

「バレットさん、もしかしてスミスさんとそちらのバルカンさんって…」

 

「はい、恋人同士です。ついでに言うと見ての通りスミスは少々独占欲が強くて…多分クリエイターとやらに嫉妬したのかと」

 

幾ら別世界の存在とはいえ、恋人が別の男性といるのは気分の良いものではないだろう。そう考えた代理人はこちらの世界の二人とスミスが会わなかった事にどこか安堵していた。

 

「そういえば、結婚式の写真ですが、こちらに届きましたよ。おめでとうございます」

 

「あ、どうも。実を言うと、子供も産まれましてね。俺のところが男女の双子で、レストのとこが男女の三つ子。ウェイターのとこが最近一人産まれました」

 

「…?ウェイターさんはともかく、お二方の奥様は人形では?」

 

「ええ、そうですが」

 

もはや何が何だかわからなくなってきた代理人だが、そういうこともあるのだろうと結論付け、祝いの言葉を送った後一行は現場に向かうのであった。




早速スミスとレスト分かれてるけど彼女が心配だしね、仕方ないね。

これスミスだけあの二人のとこ飛ばしてあっちのバルカンに誰だお前って言われて抜け殻になるのも面白そうだったな(鬼畜)

リバイバー「アレ?俺の出番は?」

(出番は)あ"り"ま"ぜん"‼︎
まぁ、お前この手の大規模コラボで大概ロクな目に遭ってない(遭わせてるともいう)から今回留守番ね。あと変に拗れそうだし。結果的に要らないくらい戦力来たし。

あとの流れは周り見て決める予定ですが、この先の予定をチラッと公開します。

「なんで野郎の人形がいるんだよぉぉぉ‼︎○○(彼らの銃)の人形ならこうだろう⁉︎」

「「「「ぶっ潰し(ます)てやる」」」」


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Code-129 守護者たちの異世界奮闘記-2

引き続き、大規模コラボ回です!

対物ライフルや世界最強のリボルバー持ってる奴に手加減は無理だからね、容赦なくやっちまうぜ☆




アルゴノーツ・パピスの進行ルート上にてバレットとウェイターは迎撃準備を進めていた。

 

「それで、こっちはこっちで動いていいんだよな?」

 

「構わない。下手にこちらの指揮下に置いて不慣れな連携をとるよりはだいぶいいからな」

 

「了解」

 

この世界のジャッジに確認を取り二人は借りた戦闘車両に乗り、前線に出て行く。

ちなみに身も蓋もない話だが、列車の特性上、レールに爆弾を仕掛けて通過する直前に起爆し、レールを爆破してしまえばそのまま脱線して無力化できるのだが、向こうが強奪時に何を列車内に積み込んでいるかわからない以上、下手に横転させて誘爆させたら危険というのと、市民には制御不能による暴走となっているのでそういう荒っぽい手段を使えば流石に暴走ではないと感づかれ色々と面倒な事態となるため、レールの破壊はナシという事とのことであった。

 

向かう途中、カライナの迎撃部隊から連絡が入って来た。どうやら正体不明の航空部隊が砲台を破壊したらしい。内容からしてこの世界ともバレット達のいた世界とも違う世界の者の仕業と見ていいだろう。

 

「どうもこの世界は、他の世界の者を引き寄せる何かがあるようだな」

 

「そのようですね。…にしても万能者が来たのは予想外でしたが」

 

「…この世界は万能者のこと知らないから、あまり派手なことはするなとしつこいくらい釘を刺したが大丈夫だろうな?脅威認定されて別世界同士の戦争になるのはご免だぞ…」

 

そんな事を話している間にアルゴノーツ・パピスとその随伴部隊である攻撃ヘリと戦闘車両が視界に映り、二人は戦闘態勢に入った。

 

「ウェイター、そのまま運転を続けてくれ。何機かヘリを堕としたら乗り込むぞ」

 

「了解です」

 

バレットは立ち上がって愛銃であるM107を構えヘリの一機に狙いを定める。しばらくすると相手もこちらに気がつき、銃を構えるが次の瞬間、ドンッ‼︎と一発の銃声が鳴り、バレットの放った弾丸がヘリのパイロットを撃ち抜きコントロールを失ったヘリは墜落し仲間の戦闘車両を巻き込んで爆散していった。

そのままバレットはすぐさま次のヘリに狙いをつけ狙撃、そしてすぐにまた別のヘリを…と間髪入れずに次々とヘリを撃ち落としていく。

 

「なっ⁉︎対物ライフルを車上で立ったまま連射して当ててるだと⁉︎」

 

「まさかコイツ…ん?なんかこっち向いて…グッ⁉︎タ、タイヤが!アバーッ!」

 

運転手本人やタイヤを撃ち抜いたりしてクラッシュさせたりと着実に戦力を減らしていき、二人は列車の近くにまで着くと、ウェイターがワイヤーを取り出し振りかざすと外壁が切り刻まれて内部が露わになった。二人はそのまま飛び乗って内部の制圧に動きだした。その一部始終を見ていたジャッジは唖然としていた。

 

「あ、あれがDG小隊…!ん?そういえばバレットだったか?アイツ、対物ライフル抱えたまま車内に入ったが、平気なのか?」

 

結論から言えば平気だった。彼は狭い車内でなんでもないかのように愛銃を巧みに扱い連射してドアや防弾チョッキ諸共テロリストを撃ち抜いていった。ウェイターもワイヤーや自身の銃を駆使して無力化していくなか、テロリストの一人が二人に問いただした。

 

「おい、お前ら!まさかと思うがM107とSCAR-Hの、しかも男の戦術人形か⁉︎」

 

「あーその反応されるの久しぶりだな。あぁその通りだ。だがそれが何k「ふ…」ん?」

 

特に隠す事でもないため自分たちが人形である事を明かすと、何故か彼らはプルプルと震え出していた。

 

『ふざけるなああぁぁぁ‼︎何で男の戦術人形がいるんだよぉぉ‼︎』

 

「「…はい?」」

 

謎のキレ散らかしを見せる彼らに思わず二人は唖然とした。

そこから彼らが発したのはまさに怪文書といってもいいものであった。そしてこの後気づいたのだがこの場にいるテロリストは全員揃いも揃って貧乳好きと言う事であった。

 

「まずM107のお前ェ!M107の人形なら、M99ちゃんや四式ちゃんとかの幼女体型を除けば殆どが胸が大きいRF人形のなかでほぼ唯一の高身長だけど絶壁バストの持ち主でェ‼︎お姉ちゃんのM82A1のおっぱいが大きいのを羨ましがってる、ショートカットでタレ目気味で微シスコンのオドオド系少女と俺らは妄想してたんだ‼︎」

 

「なのになんでこんな凸砂で正確に連射してくるやべぇ野郎なんだよ⁉︎そんなに正確に連射しやがって!謝れ‼︎M2HBちゃんに謝れオラァ‼︎」

 

「な、なんだコイツら…⁉︎」

 

困惑するバレットを他所に、彼らの矛先はウェイターにも向けられた。

 

「そして次にSCAR-Hのお前だ‼︎ SCAR-Hの人形ならば、痴女巨乳のFALちゃん、隠れ巨乳のFNCちゃんと来て清々しいくらい期待を裏切るツルペタボディでよくFALちゃんの服装に小言いうけどその度に胸のことイジられてしょんぼりしてFNCちゃんに慰めでお菓子もらうけど胸じゃなくてお腹にお肉が付いて悩んじゃうロングヘアーの真面目系でなんだかんだ姉に愛されてる末っ娘ガールがベストだろう⁉︎」

 

「それが何で銃とワイヤーを駆使して戦う敏腕執事になるんだよ⁉︎そもそも何で執事キャラは妙に強いやつがいるんだよ‼︎」

 

「つーかコイツらよく見たら結婚指輪してるぞ!ファッ●ンリア銃‼︎」

 

「隊長、何なんですかこの人たち?いきなり訳の分からない罵り方されて少しばかし腹が立ってきましたよ…」

 

「俺も聞いてて頭痛くなってきた…こんな奴らに列車砲奪取されたのか…」

 

言動に呆れつつも、再び銃を構える二人に通信が入り、バレットは通信機を手に取った。

 

「スミスか。どうかしたか?」

 

《あー…端的に言う。レストが久々にガチギレした。ついでに俺もキレそう》

 

「…わかった。マズいことになりそうなら止めとけ」

 

それだけ言うとバレットは通信を切った。レストが本気で怒る要因は大きく二つに限られるが、どちらにせよ彼を怒らせたのなら彼らは無事では済まないだろうと考え目の前のことに集中するのであった。

 


 

時は遡り、爆撃騒ぎに乗じてアルゴノーツ・カライナ内に侵入したスミス達は一人ひとり着実に制圧していくと、向こうもこちらの正体に気がつき、バレット達のところと同じく怪文書を言い放ったのであった。ただ違う点があるならカライナ内のテロリストは巨乳好きということだった。

 

「テメェェ‼︎S&W M500の人形っつたらよぉ!デケェ弾頭を使う銃に相応しいバインバインのおっぱい持ってて、撃つたびに反動でブルンブルン揺らしてぇ!常に谷間に弾丸挟んでる露出の多い格好したアブないカウガールお姉さんだろぉ⁉︎それが何でどこか優しそうなツラして、こんなデケェ銃を二丁拳銃でバカスカ撃ちまくるバケモノじみた野郎になる⁉︎」

 

「それにさっきからそこの金髪オッドアイの巨乳ちゃんとさりげなくイチャつきやがって!見せつけるなこのヤロー‼︎」

 

「うわ、気持ち悪…というか人の彼女をそんな目で見るな」

 

「……っ!」

 

ドン引きしているスミスと、そのスミスをバケモノ呼ばわりされて不機嫌になっているバルカンであったがそれに構わず彼らは言葉を続けた。

 

「それとMP5Kのお前だ!MP5Kの人形なら、マイクロやらコンパクトやら付いてる割には巨乳が多いSMG人形の例に漏れず、お姉ちゃんと背丈変わらないけど胸が大きくてドヤってる小生意気なロリ巨乳っ娘が定石の筈だ‼︎」

 

姉のコンプレックスを言ったのと勝手なイメージを押し付けるなと抗議しようとしたレストだが、次の彼らの言葉で気が変わったのであった。

 

「それが何でこんな、()()()()()()()()()()()()()()車内を駆け回って的確に制圧してく切込隊長やってんだよ⁉︎」

 

「……は?

 

不幸にも彼らは、恐らくこの世界にやってきた者達の中でもトップクラスの地雷を持つレストのそれを踏んでしまったのであった。

この場どころか車両内にいる全員にハッキリ伝わるくらいの殺気と怒気を放ったレストはリンクリキッドを注入し、スパラグモスを起動させると無表情のまま車両ごと切り裂かんばかりの勢いで彼らに突っ込んでいき、辺りは阿鼻叫喚の有様と化していた。

 

「ひぃぃ!ゴメン言い過ぎた、だから許しアバーッ⁉︎」

 

「すみません許してください何でもしまウボァー⁉︎」

 

「あーあ、知らなかったとはいえ、これは自業自得だな…」

 

そうスミスは呟き、彼の後を追っていくのであった。




書いてる途中でレール破壊すればいいんじゃねとかふと血迷ったけど、それだと一瞬で終わるから皆さんレールにダイレクトアタックはやめとこうね!

テロリスト達の妄言は彼らの性癖を鑑みて話させただけで私のイメージじゃないことを話しときますね。

あと彼らと絡ませたい方はお好きにどうぞ〜。あとで見に行って合わせます。

今更ですが参加しているのはご覧の通りです。

一升生水様作『本日も良き鉄血日和』

無名の狩人様作『サイボーグ傭兵の人形戦線渡り』

oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』

焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん!!』

試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』

ガイア・ティアマート様作『閃空の戦天使と鉄血の闊歩者と三位一体の守護者』

白黒モンブラン様作『Devils front line』

村雨 晶様作『鉄血の潜伏者』『鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。』

通りすがる傭兵様作『ドールズフロントラジオ』


…どうあがいても負け試合です本当にry


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Code-130 守護者たちの異世界奮闘記-3

ハハハ、腰のむち打ち治ったと思いきや今度は左足捻挫したぜチクショウ…
まだこれで前厄ぞ?本厄来たら死ぬんじゃないかな?

さて、まだまだコラボは続いていきますよ〜‼︎


「…は?なぁ万能者、聞き間違えかもしれないからもう一度言ってくれないか?」

 

『えっと…ヴィーラが何故か動き出して片輪ドリフトしながら俺を撥ねたあと脱線して正規軍を撥ね飛ばしたあと元の線路に戻ってカライナに向かって全☆速☆前☆進してるって言った

 

「……すまない、もう一回…」

 

隊長、このやり取りもう三回目です。私も信じたくありませんがどうやら事実のようです。味方の無線にも似た報告が来ています」

 

「ハァ…勘弁してくれ。ただでさえこんな怪文書言い放つテロリストがいるってだけで頭痛いってのにこんなアホみたいなことがあっていいのか…?」

 

万能者からの報告にバレットは頭を抱え、ため息をついていた。途中合流した救護者、潜伏者と名乗るふたりのハイエンドの協力もあり、既に殆どのテロリストを制圧し、列車内のリーダーも同じく制圧…というよりは彼のいる操縦室に乗り込んだ際に彼は

 

「美少女ならともかく、野郎にボコされるくらいなら自爆…したいがこんな理由で死ぬのはアレだから降伏するッ‼︎」

 

という割と情け無いことを叫び、あっさりお縄についたのであった。制圧後操縦盤を操作し列車を停止させると追いついたジャッジの部隊に引き渡しながらスミス達に先程のことを伝えていた。

 

「…というわけだ。俺らもなるべく追いかけてみるが、そっちでなるべく対処を頼む」

 

『マジか…わかった。何とかしてみるが、カライナの装備はさっきの爆撃で殆どやられてるしなぁ…』

 

「ところでスミス…さっきから何か蹴ってる音がするがなにしてんだ?」

 

『ん?テロリスト達がやられたフリしてたから逐一蹴りつけてるだけだ。あと人の彼女にセクハラしようとした憂さ晴らし』

 

(絶対後者の意味合いが強いだろ…)

 

\ヤメテクダサイシンデシマイマス(^q^)/

 

黙れ。…それで、万能者は?』

 

「身体の状態確かめてから向かうそうだ。最悪、リヴァイルが自分の発明でこっちきて介抱の名目でそっち向かってるとか言えばすぐ支度できるだろ」

 

そう言ったあと、バレットとウェイターは近くにいるジープに乗った3人組に近寄った。

 

「確かあなた方は、うさ耳の方はともかくS09B基地の現指揮官と元指揮官…でよろしいですね?」

 

「そうだけど…後輩ちゃん、この人たち誰だっけ?」

 

「確か…あれッス、前に合同結婚式の連絡一般に流して過激派フィッシングした、本部直轄で男性型人形のDG小隊ッスよ。前の作戦にいたリバイバーも彼らのメンバーです。…それで、何の用で?」

 

「ヴィーラが暴走しているそうで、今からでも間に合うかはわかりませんが、何もしないよりはマシですので、一緒に援護に…」

 

そこまで話したところで、ウェイターがこめかみを抑えながら報告しに来た。

 

「ええっと隊長…先ほどスミスから連絡で、万能者がヴィーラを力づくで押さえ付けて減速させてる間に内部侵入に成功したそうです。その時に遠くでキャロル指揮官とアナさんの姿が確認出来たとも。さらにはその後方から機関車が追走してるとのことですが…」

 

「……今の話は無かったことにしてください。自分とウェイターは街にいって避難誘導と潜伏しているテロリストがいないか確かめてきます…」

 

「あ、はい…わかりました…」

 

仲間の救援に意気込んでいたが、報告を聞き自分らが来ることの必要性がなくなったどころか、向かう頃には全て終わっているのでは?と確信してしまったバレットは半ば脱力した様子でウェイターと共に街の方へ向かうのであった。

 


 

「うわ、ゲロ臭ぇ…まぁあんな滅茶苦茶な動きすれば酔うわな」

 

「逆に言えば臭いに目をつぶれば無力化する手間が省けて丁度いいって事か。自業自得だろ」

 

列車内に侵入したスミスたちは、ゲロを吐きながら倒れているテロリストを尻目に制御室へと向かっていた。中には辛うじて立ち上がっている者もいるが、グロッキー状態であり制圧は容易であった。

 

「にしても万能者が止めるとはなぁ…来なかったら私がやってたけどな」

 

「万能者であれなのにバルカンがやったら大怪我するだろ。俺が心配になるから無茶はやめてくれよな?」

 

「まぁ何にせよ、カライナが『カマ掘られる』ことにならなくて良かったわねぇレス…」

 

瞬間、レストの渾身の肘打ちがマーダーの顔面に炸裂し、マーダーは壁に突き飛ばされた。

 

「ガッ…‼︎」

 

「お前、ホントにいい加減にしろよ…ッ‼︎次似たような事言ったら本気で窓から放り投げるからな?」

 

「はいはい…」

 

一悶着あったものの、一行は制御室へと着実に進んでいくのであった。




一方、街でのバレット達は…

「ん?貴女方は前の…11Labの…」

「あ〜⁉︎また会ったわねあなた達‼︎これ終わったらあとでじっくりイロイロと調べても…」

「あ、すみません。自分妻子がいるのでそういうのは…」

「私も同じく…」

( ゚д゚)< ナン…ダト…⁉︎



はい、パピス制圧しました。詳細は省きましたが他の方がやってくれるでしょう(ぶん投げ)

バレット達は街へ、スミス達はヴィーラの制圧に動いた感じですが、あれだけ無茶苦茶な動きしたあと急ブレーキ(力技)されて敵さんオロロロしてグロッキーな上に追撃者もいるなら楽勝だな‼︎


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Code-131 守護者達の異世界奮闘記-4

さーてコラボもいよいよ終幕、こっちは街付近のテロリスト達を制圧していきます!


「…よし、予想通り列車砲に意識が向いてここらは手薄だな」

 

「街に待機してる部隊も、やられちまった道路橋の奴らの後始末で殆どが向かってるようだし、あいつらがやられたのは無駄では無かったってわけだ」

 

街のはずれ近くにて、道路橋にいた部隊よりは規模は小さく、戦車といったものはいないものの、重装備を施したテロリストの集団が街に向かっていた。彼らは別働隊であり、列車砲騒ぎでそちらに目を向けてる間に道路橋の部隊と時間差で攻め込む算段にあった。

 

「…む!前方に人形部隊!街の駐留部隊か?数は少ないな」

 

「ならこのまま押し切るまで‼︎」

 

すぐさま銃撃戦が行われるが、その場にいた駐留部隊は他に人数が割かれ数が少ない上に殆どがライフル人形のため手数に差があり、ジリジリと詰められていく。すると、テロリストの1人が突出し1人のライフル人形に詰め寄り銃口を向ける。彼女は迎撃が間に合わない事を悟り思わず目を瞑る。

その瞬間、何かが煌めきすぐにそのテロリストの銃は輪切りになり、驚いてると何者かが彼に飛び蹴りを喰らわし気絶させた。

やって来たのはバレットとウェイターであった。彼らは地区の人形から地図と配置を知り、ここが手薄となると踏んで援軍に来たのであった。

 

「大丈夫か⁉︎」

 

「え、ええ…」

 

バレットは彼女『DSR-50』の安否を確認すると半ば乱戦となってる中では自身の銃だと不利と感じ、愛銃を地面に置きサイドアームのベレッタM9を取り出して突撃する。

 

「ウェイター‼︎奴らの装備を頼む‼︎」

 

「わかりました‼︎」

 

ウェイターはワイヤーを繰り出し何人かのテロリスト達に向けて振るう。瞬間、彼らのヘルメットやボディアーマー、銃が切り刻まれ、彼らは下着姿となった。

 

「へっ?キャー‼︎」

 

(こういうの、またつまらぬものを斬ってしまったとかいうんでしたっけ?)

 

「列車の奴といいこいつらといい、この世界のテロリストはアホばっかなのか…よっ‼︎」

 

「へぶっ⁉︎」

 

誰得な悲鳴を上げる彼らにバレットは容赦なく銃撃していく。もちろん、支給してもらった非殺傷のゴム弾ではあるが、至近距離で眉間に当てているため大概は気を失っていた。

 

「駐留部隊はそのまま態勢の立て直しを‼︎やられないよう気をつけてくれ!」

 

「は、はい!」

 

「な、何この人…いや、この反応は人形?挙動がすごいんだけど…」

 

「……」

 

その後、駐留部隊も立ち直り、装備をウェイターが切り崩しバレットや駐留部隊が制圧するといった形を繰り返し、あっという間に全てのテロリストを制圧したのであった。

 


 

倒れ伏したテロリストを駐留部隊が捕縛している間に、バレット達は彼女達と話をしていた。ある程度のことはぼかして話そうとしたところ、他の世界の人物が来ることはよくあることらしく、そういった現場を目撃した者がいたため彼らが別世界の人形であることは理解したらしい。

 

「あ、あのっ!さっきは助けていただきありがとうございました」

 

「それほどでも。…あの、失礼ですが、DSR-50でいいんです…よね?」

 

バレットがそういうのも訳があり、彼女の服装はいつもの格好ではなく、露出を控えた服装であり、話し方も蠱惑的なものでなくどこか初々しいような話し方であることが原因であった。ちなみに彼の知らない話だが、このDSRは製造過程で性格が純情になったDSRであった。

 

「は、はい…私はちょっと訳ありで性格がちょっと…それより、さっきの立ち回り、凄かったです。見たところサイドアームなのに、M9ちゃんと遜色ない動きで…どうやってその動きを?」

 

「あぁ、これはですね…昔、サイドアームの扱いを上手くしたいと思って直接本人に頼み込んで実戦形式で特訓して貰ったんです。連日のようにペイント弾まみれになりながらやった結果、本人のお墨付きを貰うまでに上達した次第です」

 

「そうなんですか…!」

 

目を輝かせて話を聞いたあと、どこか熱っぽい視線を向ける彼女を見てバレットは内心気まずい顔を浮かべていた。彼女の反応を見てわかる通り、彼女は自身を助けてくれたバレットに惚れており、バレットはそれに気がついている状況にあった。どうしたものかと悩んでいると、彼女はバレットの結婚指輪に気がついた。

 

「っ!結婚、なされてるのですか…」

 

「え?あ、はい…」

 

自身の恋が叶わぬものと知り、見るからに気落ちした様子を見せるDSRにバレットは彼女に声を掛けた。

 

「あ〜実を言うとですね、自分の相手…DSR-50なんですよ。だから、貴女を余計に助けなくちゃと思ったんです…」

 

「え?そう…なんですか…!」

 

同型人形が彼の相手と知り、自分でないことに少々残念であるものの、若干の嬉しさを見せる彼女にバレットは同型の違う人形とはいえ、彼女を喜ばせたことに顔を綻ばせた。

その後、スミス達からヴィーラ制圧の知らせを受け、バレットとウェイターは代理人の提案を受けて喫茶鉄血へと足を運んでいくのであった。




サイドアームでもそれ使う人形のお墨付き貰うくらい動けるとはこの隊長、他のメンバーと違って特殊武装いらねぇな?

いやね、あっちで純情なDSRいることに気がつきましたので絡ませていただきました。

とりあえずこちらの出番はお終いで、あとは打ち上げに参加する形ですのでよろしくお願いします。


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Code-132 守護者達の異世界奮闘記-5

さて、こちらもまとめますか!
打ち上げ回です!


各列車の制圧も完了し、喫茶鉄血へと集合した一向は打ち上げという形でお暇することにしたのであった。

店内を見てみれば、前の大規模作戦でリバイバーが関わった者たちが多くおり、その殆どが以前にここに来訪していると聞き、この世界と自分たちのいる世界は割と密接な関係にあるのではと感じ取っていた。

結構な人数がいたため、また以前交わした約束のこともあり、ウェイターが彼女たちを手伝う事で準備が着々と進んでいった。

やがて打ち上げが始まり、各自色々と話し込んでいる中、親3人組は子供たちの写真をこの世界の代理人らに見せていた。

 

「この写真に写ってるのが、初めに言っていた子供たちです」

 

「あら…随分と可愛らしい子たちですね」

 

「こっちの子たちが三つ子で、そっちが双子?そっくり〜!」

 

「ほぉ…なかなか美人な顔立ちをしている。将来が楽しみだ」

 

代理人の他に、マヌスクリプトとゲッコーというこの世界独自の鉄血人形が各々感想を述べているなか、スミスとバルカンは例に漏れずイチャついていた。というよりは、少し前にこの世界のSOPがスミスに興味を持ち、割と近い距離で接してきたのをみてバルカンが嫉妬し、現在彼の左腕にしがみついている状態であった。

 

「なぁ…それじゃケーキ食えないだろ?」

 

「ならスミスが食べさせて」

 

「…わかった。ほら、バルカン。口開けな」

 

「ん。あー……ん〜〜ッ‼︎美味しい!」

 

(チョロかわ…)

 

「次は私から…はいスミス、あーん…」

 

「ん…うん、美味いな。ありがとな」

 

そう言いながらスミスがバルカンの頭を撫でると、バルカンは満面の笑みを浮かべ上機嫌となっていた。その様子を見ていた一部のものからブラックコーヒーの注文が相次ぎ、店員たちは一時大忙しとなっていた。その様子を見ていた代理人が二人に近づいて来た。

 

「お二人とも、かなり仲がよろしいのですね」

 

「えぇ、大事な恋人です。結婚したら、また写真を届けにくるので」

 

「あら、それは楽しみです」

 

「ちょっスミス⁉︎わざわざみんなの前で恥ずかしい…」

 

「腕組んで食べさせ合ってるのにそれは今更過ぎるだろ?」

 

でも…と照れるバルカンの様子を見てスミスは穏やかな笑みを浮かべていた。どうやらその反応が見たくて言ってみたようであった。そしてそれを見た一同は今度はブラックコーヒーのみでなく、ハイカカオ系のものを注文し始めたのであった。

 

「ヤベェよRO、あの二人その辺のリア充よりリア充してるよ…!いや、寧ろこれリア銃か?」

 

「あなたは何を言ってるのですか…でも、平然とあんなことできるなんて羨ましいですね…あの世界のカップルはみんなあんな感じなんですかね?」

 

恋人がいるらしいこの世界のROとM16は半ば羨ましそうな目で二人を眺めつつ、妙な誤解をしていたのであった。

そのあとはそれぞれの参加者たちと他愛のない話をしているうちに、ふと彼らの耳に鈴の音が聞こえてきたのであった。

 

「…? 今何か聞こえなかったか?」

 

「確かに、何か鈴の音が鳴ったような…」

 

周りの者を見るが、何のことかといったような様子を見せ、どうも彼らのみ聞こえてきたようであり、代理人が何かを察したようで合った。

 

「なるほど…どうやらお時間が来たようですね。少々待っててください」

 

代理人は奥の方へ行き少し経つと、コーヒー豆の入った袋を人数分持ってきた。

 

「はい、こちらお土産です」

 

「いいんですか?人数分貰って…」

 

「今回の件を考えると寧ろ足りないくらいです。今度はご家族で来てみてください。それと、先ほどから話してるリバイバーという方にもよろしくお願いします」

 

「あ〜どうでしょうね?あいつ、自分たちの世界の代理人と一悶着あって嫌ってるんですよ」

 

その後、代理人に礼を述べた後一緒に店から出ると、いつのまにか来たときの路地裏に着いていたのであった。

彼らが本部に戻ると、どうやらあの世界は時間の流れが違うのか、自分達が出ていってから10分と経っていなかったらしく、帰りが早い事にそれぞれの家族に驚かれていた。

バレットはアスターにあの世界での話をしている中、スミスから連絡が来た。

 

『バレットか?バルカンだけまだ戻ってきてないみたいで、多分まだあの世界にいるかもしれないみたいだ』

 

「そうなのか?だが、代理人の話だとそこまで長居できないらしいし、あまり心配はないんじゃないか?」

 

『いや、クリエイターって奴があっちのバルカンと間違えて変なことしないか心配でな…』

 

(あー、そういう事か…)

 

そんな心配をしていたスミスだったが、程なくして無事にバルカンが戻ってきたのでいらぬ心配だったと安堵したのであった。




とりあえず今回でこちらでの出番は切り上げます。
いろいろ様、コラボありがとうございました‼︎
打ち上げの絡みとかは自由に書いて大丈夫ですよ〜。


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Code-133 技術屋たちの雑談

仕事が忙しかったり因子厳選したりして中々書けなかったけど私は元気です。

さて、今回はリヴァイルやペルシカたちの話です。


16Labの研究室内にて、リヴァイルはモニターに映された結果を見て頭を掻いていた。

 

「うーむ…やはり無理か…多分これ理論上核ぶちかましても壊れそうにないぞ?確実に遺跡由来なのはわかるが、似たようなの見た覚えがないしなぁ…」

 

「そう。ならパンドラの箱に関してはしばらくは放置ね」

 

彼の報告にペルシカはそう判断を下した。以前にバルカンが色々あって持ってきたパンドラの箱なる物体についてペルシカは調べたが中身や構成物質がわからず、遺跡に詳しいリヴァイルならわかるのではと解析を頼んだが、様々な開封手段のシュミレーションの結果どれも不可となった次第であった。

 

「寧ろこれだけ頑丈ならPownに対する防御兵装に組み込むのはどうだ?それで破壊できたら万々歳だろ?」

 

「中身が危険なものだったらどうする気よ?奴ら諸共心中する気?第一、誰がそんな物使う…ってあなたが使うんでしょうね」

 

「当たり前だろ?こんな危険物使った防具なんかデジタルクローンで完璧なバックアップを取れるオレが使えばやられたとしても実質ノーリスクだろ?あ、でもそれじゃ中身が健在のとき確保できなくなるな…じゃその案はナシだ」

 

「うわぁ…やっぱお前さんブッ飛んでるな…」

 

「私、リバイバーがこの人に性格が似てなくて良かったと思う」

 

一緒にいたリバイバーとグリンダも彼の発言にドン引きしていた。聞けば彼が人間の時に行ったデジタルクローン作成の前段階である脳内にチップを埋め込む手術、これは二割の確率で四肢のどれかしら最低二つは動かなくなるという普通に考えればハイリスクなものだが、彼はこれを動かなくなったところを切り落として義手or義足にすればいいし、どのみち捨てる身体だから問題ないという言ってることは正しいが人間として大事な何かが間違っている事を平然と話してたのだから改めて彼の異常性を認識したのであった。

 

「そういや、万能者は確か列車砲に轢かれて負傷したんだよな?」

 

「ええ。バレット達の話によればそうだけど」

 

「なるほどなるほど…つまり、イレギュラーな事態だったとはいえ列車砲一両程度の質量とそれなりのスピードがあれば彼にダメージを与えられると。あの世界の列車砲はこちらと同じとして、あとで記録映像見て速度計算してそこから出される衝突時の威力を元にそれを出せる兵器を開発し、改良すれば……対Pown用兵器が出来上がるってことか」

 

従来の使い方では無いものの、人間側が作った既存の技術でも万能者にダメージを与えられると判明し、その時のデータを解析すれば彼と同等もしくはそれ以上の技術をもつPownにも頑張れば通用するものが出来ると話すリヴァイルは話していた。

 

「言うのは簡単だけど、出来るの時間がかかりそうじゃない?あ、そのためにMCRの改良をしてたってわけね…」

 

「そういうこと。設計図さえ出来りゃあとは材料確保して造れば良い話だ。それに実を言うとオレ、電子空間内で何十人と増やしてるしだいぶ早く出来ると思うよ?」

 

「おい、さりげなくとんでもないこと言ったぞお前さん⁉︎同一の人格そんな増やしてよく自我が崩壊しないな⁉︎」

 

「ハッハッハ!記憶は共有してるからどれか一人でも生きてりゃいいからな。自分を群体と捉えれば自我を保ってられるさ」

 

彼との付き合いでわかったことだが、基本的に彼は普通なら『何が起こるかわからないからやらない』ところを『何が起こるかわからないからわかるようにするためにやる』スタンスを取っているためこのような奇行をとるのだが、もはやここまで来ると狂人を通り越したナニカであり、もしかして自分はコイツの数少ない良心の塊が分離した逆ピッ○ロ大魔王的なものではとリバイバーと考えている途中、リヴァイルはさらにとんでもないことを口走った。

 

「あぁそれと、奴らに物理的に対抗する武器はまだだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あとは敵味方の区別がつくように調整するくらいだ」

 

「っ⁉︎ハッキングツールのようなのが出来てるの⁉︎いやでも、向こうも前の戦いで学習して強化してるだろうし、それが効くとは…」

 

「いいや問題ないな。寧ろどれだけ強化しても構わんよ?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だからな。ハッキングツールというよりは、一種の電子生命体のようなもんだが」

 

詳しくは然るべきときに教えると話すとペルシカは彼の手腕に舌を巻いていた。

 

「私といい、リコに貴方やヨゼフ、そしてウィリアム…なんで同じ世代にこれだけの天才が現れたのかしらねぇ…?」

 

「歴史を見れば一定周期でヤバい経歴や戦果出してる人間が一斉に現れる時期があるから、その類とオレは思うがな。あ、ずっと若いままでいたいならデジタルクローン化の施術しようか?今度は成功率は100%だぞ?」

 

「遠慮するわ。そこまでして生きたくはないし」

 

「だがこうなると実質不老だから上手くいけばユノやノアの玄孫の顔拝めるぞ?」

 

「……」

 

オイ、それで悩むな。ハァ、ここまでいくとお前さんが過去に何してても驚かなくなってきたぞ…」

 

悩む素振りを見せるペルシカに呆れつつリバイバーがそう告げるとリヴァイルは心外だといった顔で抗議しはじめた。

 

「いや、年柄年中こんな奇想天外な事してたわけじゃないよオレは?例えば隠れて魚飼ってたことバレそうになったけど上手いこと誤魔化せたとか色々お茶目な話あるからね?」

 

「こっそり飼うってガキかよ。というかバレちゃマズイ魚ってなんだ?遺伝子組み替えて空中泳ぐようにしたサメとかか?」

 

「いいや……

 

 

 

 

 

 

 

ただの『カマス』さ。ちょっと芸を覚えさせたがね」

 

どこか意味ありげな顔を浮かべてリヴァイルはそう返すのであった。




【朗報】リヴァイル、対Pownシステムの開発が完成間近

まぁその時が来たらお披露目って感じですかね。
現状のシステムと連中が相対するのは本人からすると

『盗賊団orオークの群れを成敗しにきた女騎士団が堕ちずに無事に任務を遂行出来る可能性の方がまだある』

らしいです。

そして最後に彼が言った事の意味とは…


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Code-134 『白』との対決

さーて、本格的に『白い勢力』との戦いを始めていきますかね〜!


「はいコイツ、知った顔だな。つまりパラデウスのスパイだ。コイツもスパイ、コイツも、コイツもォ‼︎あと…はぁー⁉︎ここの列の奴全員スパイじゃん‼︎オイオイ、連中の潜入スキルが高いにしてもいくらなんでもザル過ぎやしないかぁ?」

 

『ぐっ…』

 

リヴァイルの呆れた口調に画面の向こうの正規軍の士官達は苦い顔をした。

先日、本格的に万能者よりPownへの対抗策が出来始めたのだが、それに伴い他所にその技術が流れてはマズイとのことでスパイ狩りを行っているのだが、それにあたり元々パラデウスにいたリヴァイルが正規軍のメンバーのリストを見てスパイがいないか確認しているのだが、ご覧の通りそれなりの数が潜入している事が判明したのであった。中には結構な地位についている者もいる為、大概の情報はパラデウスに流れていると見ていいだろう。

 

「証拠がいるならそいつらマークすりゃ何かしら出てくるだろ。セキュリティが厳しいならオレに送れ。すぐに開いてやる。もちろんそれなりの物は頂くがな」

 

『それについては構わない。それで今後の憂いが消えるなら安い物だ。して、スパイがそちらに会った場合、向こうに気づかれる可能性はあるのか?』

 

「問題ない。このボディや声は生前の姿とかけ離れてるし、口調だって変えてたんだ。名前名乗らなければまず気付かないさ。向こうはオレの事は死んだと思ってるから、うっかりオレの名を出すなよ。いずれ気付かれると思うがまだその時じゃないしな」

 

その後幾つかのやりとりをしたあと通信を終え、リヴァイルは一息ついて椅子に深く座り込んだ。

 

「ふぅ…。にしても、これだけ大規模なスパイ狩りがこれで二度目、しかも今回はオレが関わった事でより正確に暴かれているとなれば向こうも大きく動くだろうな」

 

「そうね。年末の作戦時には戦場から離れたところにあった彼らの隠し基地が軒並みやられているし、それなりに追い詰められているかもしれないわね。……まぁそのおかげであの子たちは助かったわけだけど」

 

以前にこちらに輸送され、保護することになった子供ネイト達、彼女たちは今現在も元気に過ごしているのだが、リヴァイルの証言によるとあの場所は改造手術に不適格、もしくは余剰に『生産』してしまったネイト達の【処分場】も兼ねており、あのまま基地が襲撃されてなければ彼女達は処分されるか改造手術に成功した姉妹達の実戦練習の相手として殺されていた可能性があると言うのだから、どれだけパラデウスが人道から離れた行為をしているかが判明したのであった。

 

「連中が動けばこちらと接触する可能性もある。ならばそこから足取りを掴んで本拠地を暴くことも可能になる。そうなれば奴ら、ひいてはウィリアムの野郎をブチ殺してパラデウスを壊滅させることもできるってわけだ」

 

「随分とそのウィリアムって人を殺したがってるけど、何か理由があるの?」

 

「当たり前だ。パラデウスにいた頃は当然何人ものネイトと過ごしてたんだ。あの子ら見ればわかるが、どの子も人懐っこいし、オレの事も慕ってたんだ。そんなんと過ごせば情も湧くさ。だが、成長すれば改造されて自我を失い、よしんば上位種になれて自我を与えられても人格が変わって、そのまま使い潰しにされるのを自分の目的のために黙殺してるとはいえ、何度も見るのは案外キツいし、そんな仕打ちをするウィリアムに殺意や嫌悪感を隠して接するのはもっとキツかったさ。…なんだその顔は。オレだって人の心はあるぞ」

 

珍しく真剣な顔で語るリヴァイルに唖然とするペルシカだったが、彼の言い分には納得できるものがあった。

 

「なるほどねぇ。言い方は悪いけど、見殺しにしてしまった子たちへの贖罪ってわけね」

 

「そんなとこだ。それに奴の目的はかなりこっちにとってヤバいものだ。だがな…奴はその目的のために遺跡の技術を調べるんだが、どうも過程が目的になり始めてるんだよな…。早いとこなんとかしなきゃそのうちとんでもないことになるぞ」

 

「それあなたが言うの?」

 

「バカ言え。オレは現環境の再生と人類の復興及び革新の為に遺跡を利用してるのであって、あぁならない確固たる自信がある。理由に関してはまだ言えないがな」

 

「まぁ暴走しないなら良いわ。にしても、ここまでアレだと貴方の両親がどんな人か気になるわね…」

 

「お袋は普通の人だよ。親父は妻子持ちなの隠してお袋と付き合ってて、オレがデキた途端に端金置いてトンズラしたとんでもねー野郎だよ」

 

「そ、そう…」

 

思わぬ彼の家庭事情にペルシカは頬を引くつかせるのであった。

 


 

バレット達とリバイバーはこの日、要人警護の依頼を受け、人気のない街を依頼人の乗った車を二台で囲うように同じく車で移動していた。

 

「にしても、俺を警護に指名するとはなかなか豪胆なことで。俺元鉄血だぜ?(正確には違うが)」

 

「いやいや、去年の作戦でのあなたの勇姿はこちらにも聞き及んでますよ。寧ろ心強いですよ」

 

「そう言ってくれるとありがたい」

 

その後襲撃もなく道を進んでいくと、突然リバイバーの通信機が鳴り出したのであった。

 

「ん?なんだ…リヴァイルか。もしもし?今任務中なんだが『リバイバー‼︎今すぐその依頼人ふん縛って逃げろ‼︎』あ?なんだいきなり?」

 

切羽詰まった言い方をするリヴァイルに眉を顰めるが次の言葉でリバイバーはすぐにその意味を理解した。

 

『お前さんご指名する物好きがどんなやつか見てみたがな…

 

 

 

 

ソイツ、()()()()()()()()()()()‼︎』

 

「なっ…⁉︎」

 

『お前さんを指名ってことは奴ら十中八九お前さんがメッセルだって事わかってやがる‼︎つまり依頼自体がお前さんを捕まえる罠だ‼︎』

 

その直後、銃声が鳴り依頼人─とは名ばかりの敵であるが─の乗った車諸共バレット達の乗る車に襲いかかるが既に通信を彼らにも繋げていたため車から飛び降り事なきを得たが、シンパの車は本人と共に爆発し、向こうの仲間であるはずのパラデウスのシンパも攻撃したことに違和感を感じるも、銃撃の方を見ると白い人形の一団が姿を見せていた。

 

「オイオイマジかよ…⁉︎」

 

『敵はどれくらいいる!』

 

「ストリティ4にロデレロ2、ドッペルが2体それと……ニモジンとマーキュラスだ…‼︎」

 

『やはりか。今オレがヨルハで向かっているからそれまで保てよ‼︎』

 

何故リヴァイルがこちらに来るのかわからないが、恐らく目の前の二人に関係する事なのだろうと判断し、臨戦態勢に入るとニモジンが口を開いた。

 

「こちらの兵器を知ってる辺り、やはりリヴァイルはデジタルクローンに成功し、まんまと逃げおおせたみたいね。てっきりメッセルの内部に二重人格の形でいると思ったけど、違うようね」

 

「やはり狙いはリバイバー、正確にはリヴァイルか…!」

 

「ご名答、グリフィンの男性人形。こうも正確にこちらのスパイが始末されてるとなればこちらの事を知っている者が手引きしてると見るのは当たり前。となると、可能性があるのはリヴァイルのみと睨んだのですが当たりのようね。あなた方を始末したら次は彼です。お父様を騙し、裏切った罪…その身で償ってもらいましょう」

 

二人は長い袖の中からアームを伸ばし、配下の人形も各自の獲物を構え出した。

 

「一つ聞きたい。さっき吹っ飛ばしたあの男、お前さんらの金ヅルじゃなかったのか?」

 

「ええ。ですが彼の財源はもう殆どないのは把握済みですし、保安局も嗅ぎ回ってましたから。金の卵を産まなくなった鶏など、いても無駄でしょう?」

 

「なるほど。最後に一つ……俺たちが簡単に倒せると思ったら大間違いだぜ?」

 

今ここに、パラデウスとの戦いの火蓋が切られたのであった。




今回のパラデウスの目的としてはもはや歩くし音読するスパイリストと化したリヴァイルの始末だけど、デジタルクローンに成功してるから実質残機無限だからほぼ手遅れなんだよなぁ…

彼がこんなにも遺跡にこだわるのもキチンとした理由がありますが、それはまた後ほどです。


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Code-135 救済

今回結構な原作ブレイクがある上、リヴァイルの行動理念の核心に触れる事があるのでご了承下さい。


先制攻撃を行ったのはマーキュラスであり、両腕の機械の触手による刺突が襲いかかるが、バレットとスミスがそれぞれに銃撃を加えて軌道を逸らしその隙に回避すると、続いてニモジンのアームが飛来しレーザーを放つも間一髪で避ける。

 

「なるほど…ただの人形ではなさそうですね」

 

「それはどうもっ‼︎」

 

「ですが、それがいつまで保つか、楽しみですね」

 

その言葉の直後、彼女たちの配下の人形も攻撃を始め、辺りは混戦状態となりバレット以外の三人はそれぞれの専用武器を展開して応戦を始めていた。

リバイバーはドッペル二体を相手取っているが、思っていた以上に相手の偏差障壁が硬くなく、既に一体を大破させていた。

 

(考えてみりゃ、リヴァイルが手を加えたと言っても、その当時はPownどころか、グリフィンや鉄血の技術や戦力が大幅に上がってるなんて知りもしなかったんだったな…ならこうなるのは必然か)

 

リヴァイルが改良*1を施したためパラデウスの戦力は一般の人形には充分すぎる程の脅威なのだが、いかんせん彼らはそれらを上回る規格外の戦力と交戦した経験があるため、対応が可能であった。

バレット達もニモジン達の不意打ちに苦戦してはいるが、一体ずつ確実に仕留めていった。ウェイターのワイヤーがストリティ三体を同時に斬り裂き、残りの一体はレストのスパラグモスにより撃破されていった。バレットはメンバーの中で唯一特殊兵装を持っていないものの、素のスペックを活かして徐々にロデレロに近づき、至近距離で愛銃のM107を連射し強引に偏差障壁を突発し撃破していった。

撃破したストリティの割れたバイザーからE.L.I.Dの進行が進んだ人の顔が見え眉を顰めるも、元々対人戦を主に活動していた事と、リヴァイルから事前に『こう』なったらもはや奴らは人間ではなく、人間を部品にした人形や兵器と同義だから躊躇う必要はないと伝えられていたため、そこまで動揺はしなかったが、どう見ても子供としか思えない者もいたため、パラデウスのやり方に怒りを覚えていた。

 

やがて、ニモジンやマーキュラスの着弾地点に氷塊が現れてることから彼女達の攻撃がコーラップス由来のものと見抜くとスミスの神獣鏡による弱体化を行うと二人は明らかに動揺していた。

 

「なっ…⁉︎コーラップス技術が…!」

 

「リヴァイル…!厄介なものを…」

 

「残念だが、それ作ったのはリヴァイルじゃなくて…言いたかねぇがアイツの劣化コピーの俺と俺の彼女だ。言っただろ?俺らを甘く見るなって」

 

見るとドッペルは既に破壊され、残ったロデレロも撃破され残るは彼女達のみとなったところで、リヴァイルも合流したのであった。

 

「やぁやぁ。お久しぶりですねぇニモジン、マーキュラス。尤も、この姿の『私』と会うのは初めてですが。マーキュラスは詩の引用以外の言葉は話せるようになりましたか?」

 

「その口調は…リヴァイルッ!随分と若い姿になったものだな‼︎」

 

(アイツ、パラデウスにいた時あんな口調だったのか…いや待て!『若い姿』ってアイツ、何歳だ?)

 

裏切り者を前にしてか、口調を荒げるニモジンとは対照的にリヴァイルは平然とした顔でこちらにいた時からの口調に戻して話しを続けていた。

 

「にしても、アンタらが出向くとは相当ウィリアムも切羽詰まってるな。まぁそれはそれとしてだ。これで数は6対2。大人しく降伏してくれると助かるんだが…」

 

「黙れッ‼︎私たちは上位種だ!これくらいの差、覆すことなんて容易い事…」

 

「ふぅん…頭フル回転させて打開策を見出してるのか。…ひとつ忠告するぞ。それ以上演算するのはやめておけ…()()()()()()()?」

 

「ハッ‼︎何をでまかせを。私たちの【OGAS】を恐れてるならもっとマシな……⁉︎」

 

あまりに突拍子もない死の忠告。その言葉に二人は鼻で笑い、次なる手を行なうとしていた。しかし、リヴァイルの顔は真剣そのものであり、バレット達は彼の言葉の意味を考えようとした次の瞬間、ニモジンとマーキュラスの二人はピタリと動きを止めたのであった。

 

「あ、あぁ……!」

 

突如として足がガクガクと震え出し、表情が歪んでいく様子を不審がった途端、彼女たちは絶叫をあげたのであった。

 

「ああああああぁぁぁ‼︎いや、いやぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

「痛い痛い痛いぃぃぃ‼︎お父様、助けて‼︎お父様ぁぁぁぁ‼︎」

 

「な、何が起きて…⁉︎」

 

「ちっ‼︎予想より早いが…まだ間に合う、全員二人を押さえてくれ!」

 

悲鳴を上げて頭を押さえるようにして地面をのたうち回る二人にバレット達が困惑していると、リヴァイルは落ち着いた様子でヨルハから降り、小さな長方形の箱らしきものが幾つか連なった首輪状の物を二つ取り出して指示を出した。

指示を受けた彼らは急いで二人に駆け寄り、押さえつけた。とはいえ暴れる力はかなりのもので何度か振り解かされるがその間にリヴァイルは二人にその首輪を取り付けた。

 

「落ち着け!下手に考えを巡らせるな!」

 

「う、うぅ…」

 

すると二人の表情が和らぎ、それと同時に一番下に垂れ下がった箱が赤熱化し、焼き焦げる匂いと共に排出されその次の箱も同様の事が起きた。四つめの箱が排出されるとそれは収まり、ニモジンとマーキュラスは痛みが無くなったのか、安堵した顔でそのまま気を失っていた。

 

「ふむ、四つで安定化したか」

 

「なぁ、彼女達は何故苦しんだ?説明してくれ」

 

「彼女達ネイト、正確には改造を施した後のネイトには全員OGAS…遺跡由来の超高度なAIが組み込まれている。この二人はよりそのOGASにある程度適合してるが、スペックが高過ぎてある程度使っていくとその演算処理に完全に適合してないが故に脳が耐えきれなくなって発狂死するんだ」

 

その言葉にバレット達は絶句するも、リヴァイルの説明がまだ終わっていないため話を聞いていた。どうやら彼が持ってきたのはその演算処理を肩代わりして安定化させることで死を防ぐ物なのだが、その中身がある意味彼らしい代物であった。

 

「これの中身は電脳と()()()()()()()()()()()()()()()()()()。排出されたのは処理が耐え切れず電脳が焼き切れた奴、つまりアレに入ってるオレは死んだってわけ」

 

「は…⁉︎待て、つまり…別のお前が彼女達の身代わりになったってことか…?」

 

「そう。中身の入ってない電脳だと肩代わりしないのはシュミレーションでわかってたし。さ、早いとここの二人捕まえて戻るぞ」

 

相変わらずのイカれ具合にドン引きしつつ、一行は二人を縛ったあと連れて行ったのであった。

 


 

「ん、んん…ここは…?ッ⁉︎」

 

「はい、妙な真似はしないでちょうだいね」

 

目が覚めたニモジンとマーキュラスはまず拘束されている事と、自分達の腕が普通の義手になっていることに気が付いた。そして目の前のペルシカとリヴァイルを睨みつけていた。

 

「何のつもりだ…!こちらから話す事はないぞ」

 

「あーその心配はない。色々検査したが、二人とも本拠地とかの記録の類が一切消えてる。ついでに通信機能も全てだ。しかもそれら全て『外部から切られた』痕跡があった。試してみな?」

 

「え…?まさか⁉︎」

 

「嘘…繋がらない…⁉︎どうして…?」

 

「恐らくお前さんらは監視下にあって、OGASの暴走を感知した途端に切断したんだろ。調べられたら困るから」

 

「つまりその…あなた達は、ウィリアムに、切り捨てられた…って事よ…」

 

その言葉を聞いた瞬間、二人は怒りの形相でペルシカに怒鳴りつけた。

 

「嘘よッ‼︎私たちは選ばれた上位種なのよ‼︎名前だって、特別にお父様から付けて貰ったのよ‼︎」

 

「そんな私たちをお父様が見捨てる筈が…」

 

「残念だが事実だ。機嫌の良い時に直接奴から聞いたが、アイツにとってネイトを含めたパラデウスの戦力は奴の計画のための捨て駒だ。故に役に立たなくなったら例え上位種でも見捨てる。そういう奴だ。名前だって、忠誠心を高めるための手段に過ぎないさ」

 

「そ、そんな…!」

 

「じゃあ、私たちは…なんのっ、為に…!」

 

見捨てられたのがショックだったのか、二人は見た目相応の少女らしく泣きじゃくっていた。しばらくしたあと、二人はある事に気がついた。

 

「そういえば…私たちのOGASは…?」

 

「それなら義手にする時についでにオレが除去した。だからもうあんな目に遭う事はない。どうしても戦いたいなら補助システムをつけてやる」

 

「え…?戦うって、私たちは捕虜じゃ…?」

 

「通信手段が向こうから切断されたことと、OGASが無くなったことであなた達の脅威性がほぼ無いと判断されたのよ。ま、しばらくは監視付きだけどね」

 

「お前さんらも、自分を見捨てたあのシスコン野郎に目に物見せたいだろ?協力してくれるか?」

 

「……少し、考えさせて。まだ整理がつかないから…」

 

「了解。ま、時間はあるしゆっくり決めな。じゃペルシカ。あとは頼むわ」

 

そういいリヴァイルは部屋から出ていったのであった。

 


 

自身のラボにて、リヴァイルは引き出しを開け、中の二つのチップを取り出した。その中には二人から取り除いたOGASが入っているのであった。

 

「さーて…始めますかね…‼︎」

 

そう呟くとリヴァイルは『チップを二つとも自身のボディに入れ、インストールし始めた』のであった。

 

「っ⁉︎ぐあぁぁ…ッ‼︎」

 

圧倒的な情報量に思わず苦悶の声を漏らす彼だが、防音のため外部の者にその声は聞こえなかった。

そして丸二日が経ったのち、彼はようやくラボから出てきたのであった。

 

(ふぅ…やっと適合したか…おまけに互いが互いのを『取り込んで』一つに纏まって成長してるな…そして予想通り、人の精神もしくは肉体を持った人形は適合しやすい…やっとこれでスタートラインに立てる…!)

 

「あれから三十年以上経った…全ては()()()()()()()()()()()()…オレはOGAS(コイツ)をモノにして見せる…‼︎」

*1
とはいいつつ効果は一時的でありの実際は改悪




?「やってみせろよマ○ティー‼︎」
?「何とでもなる筈だ‼︎」
?「ガン○ムだと⁉︎」

ハイ、ニモジンとマーキュラス生存ルートです。
リヴァイルが取り付けたのは要はメイドインアビスのカードリッジ的なものと想像すれば大丈夫です。(但し自給自足可)

OGASを取り込んだリヴァイル、その行く末は…
ちなみに次回から試作強化型アサルト様の大規模コラボに参加します‼︎


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Code-136 未確認島調査依頼-1

今回は予告した通り大規模コラボ回になります!

早速ウチの変態がやらかします。


ニモジン、マーキュラスの二人を確保し、リヴァイルが秘密裏にOGASをその身に取り込んでから数日が経ったある日、彼らに国連より『突然現れた未確認島の調査及びその近くの海上プラントの安否確認』という依頼が出されたのであった。

国連からという事で初めは興味がなかったリヴァイルだったが、内容を聞くと、場所が汚染のない海と島という希少な場所であるためそこのサンプル採取と、もしかしたらその未確認島に彼が邂逅を望んでやまないPownが関わっているかもしれないため彼も参加する手筈となった。

 

そして、今回の作戦にはなんとニモジンとマーキュラスの二名も同行する事となったのであった。理由としてはAR小隊やDG小隊、EA小隊といった主要メンバーが本部から離れるため、第二部隊が残っているとはいえ万が一に二人が反乱を起こした際に対応が難しくなるのでならばいっそ作戦に参加させた方が反乱しても制圧が容易にできるといった次第である。

 

参加するにあたり彼女達に与えられた武装は、外付け式に改良した彼女達の武器腕と、手持ち武器として小型の盾とM4A1*1、それと盾に内蔵されたレーザーブレード発振機である。

また、戦闘するにあたり取り除いたOGASに代わり、カチューシャ型の戦闘補助ユニットを装着しており、前ほどでないにせよ充分な戦闘能力を得たのであった。

 

『ニモジンお姉ちゃん、マーキュラスお姉ちゃん、いってらっしゃーい!』

 

「「はーい♪行ってくるわ〜♪」」

 

…尤も、OGASを取り除いた事が原因かは定かではないがこちらに来てから性格が軟化し、保護している妹にあたる子供ネイトらと交流した結果、妹にデレデレな姉と化したため、裏切る可能性は無いに等しくなったが。

 


 

「あ、あー。そこの潜水艦に乗った海賊共に告ぐ‼︎たった今その艦はオレがハッキングした‼︎10数える内に投降しなければ潜れるギリギリまで潜行したあと空気循環機能と航行機能とついでに電灯が御陀仏になるプログラムを作動させるぞー?真っ暗い母なる海の奥底で酸素巡って殺し合いしたあと、酸欠でジワジワと死にたくなければ早いとこ投降しろよ〜?これはマジだぞ?さっき戦艦同士で誤射しまくったのもオレの仕業だからな。はいひと〜つ‼︎」

 

《ヒィィィ‼︎と、投降する‼︎だからそれだけはやめてくれぇ⁉︎》

 

(うわぁ…エゲツねぇ…)

 

海上プラントに向かう道中、何度か海賊による襲撃があったが、リバイバーによる砲撃や万能者による水中からの奇襲などによりその全てを返り討ちにしていき、七回目の襲撃ではリヴァイルが自ら近距離通信によるハッキングをして脅迫し投降させる事に成功し、周りはその容赦の無さに引いていたのであった。そして一行は海上プラントまで辿り着くと、突如現れた異界の者たちと遭遇し、話し合いを経て彼ら彼女らと協力することが決定したのであった。

ちなみに、その異界の技術にテンションMAXで調べようとしたリヴァイルが万能者にシバかれる羽目になったのは別の話である。

 


 

プラント内で休憩していたスミスはミニガンの元に駆け寄った。

 

「よ、久しぶり。君も来てたんだな」

 

「あっ…はい。と言っても、ほぼ無理矢理連れられてだけど…」

 

「そうか…相変わらず、何も思い出せない感じかい?」

 

スミスの質問にミニガンが頷くと、しばらく気まずい雰囲気が続きどう話を続けるかスミスが考えているとミニガンの方から話しかけてきた。

 

「えっと…その、やっぱり…記憶が戻って欲しい感じか…?」

 

「ん?まぁ、そうだな…でも無理にとは言わない。正直、君はこっちにいた時より記憶を無くしてからの期間の方が長い。どっちの記憶を優先するかは君が決めると良い」

 

「そう、か…。わかった」

 

「記憶を戻したいなら出来る限り協力する。ただ、もし記憶を戻したくなく、今の君のままでいたいのなら、ひとつ約束して欲しい。あいつを……バルカンを、姉として認識して欲しい。あいつさ、結構寂しがり屋でしかも、姉として妹の君を大事に思ってるから、記憶を戻さない事を選んでも表向き気にしないようにすると思う。でも精神的にはキツいと思うんだ。だからその時は他人じゃなくて、姉として接してくれ」

 

ミニガンはこれまでの自分に対するバルカンの接し方から、スミスの言うことはある程度理解できたため、その約束を了承する事にした。

 

そして夜が明け、例の島まで向かおうとした矢先であった。大量の鮫の群れがこちらに向けて押し寄せてくるのが見え迎撃にあたっているものの、妙に耐久力が高く、群れのリーダーと思われる個体はレーザーやレールガンまでも通用しないうえに統率力が高いため、ほとんどが船上でしか行動できない彼らにとって苦戦を強いられていた。

 

「あークソッ‼︎普通のやつで対物ライフルでやっと倒せる鮫ってどんなB級映画だよ‼︎」

 

「B級、B級…‼︎あ、そうだ‼︎」

 

バレットのボヤきにリヴァイルは何かを閃いたのか、突然船内に走り出していき、その間も船上に上がってくる鮫を一行は相手取っていた。

 

「オイオイ、鮫ってエラ呼吸だろ⁉︎何で船の上で機敏に動いてるんだよ⁉︎」

 

「私に言われてもわかりませんよッ!とにかく、小型のはARでも倒せるのでそちらを優先的に!火力のあるものは通常のを頼みます!」

 

ウェイターや他の者の指示により船上に上がった鮫を少しずつ討伐していくと、リーダー個体がこちらに向かって全速力で泳いできたのであった。

 

「ヤベーぞ!あのボス鮫、こっち来てるぞ‼︎」

 

「あいつに近寄られたら俺たち…‼︎」

 

「待たせたな‼︎」

 

「ん?リヴァイル、それ昨日万能者にシバかれてボロくなったボディじゃねぇか?何を企んでんだ?」

 

リヴァイルはあらゆる事態に備えて予備のボディを4体ほど持ち込んでおり、今のボディは昨日万能者にやられたボロボロのボディであったが、何故かドヤ顔の上、包帯の下に何か四角いものや丸いものが大量に見えていた。

 

「簡単な話だ。この手の鮫はだいたいガスボンベや研究成果横取りしようとした傭兵とかに爆弾括り付けたのを食わせて中から爆破すれば呆気なく散るもんだ。だが生憎ここにはガスボンベはなかった。故に残るは後者だが、捕まえた海賊使うのも悪くないが、ちょうどここに替えの効く奴がいる…つまり、私自身が餌となることだッッ‼︎

 

その言葉を聞いた大半の者は何バカなこと言ってんだコイツといった顔をしたが、彼を知る者はヤベェコイツマジでやるつもりだとドン引きした顔をしていた。

そして彼は勢いよく駆け出すと海上に躍り出てそのまま海上に跋扈する鮫を因幡の白兎よろしく踏み台にして進んでいった。

 

「いや、何で上手いこと踏み台にできてんだよ?」

 

「ARを弾くくらいの強靭な皮膚持ってるが故に踏み台として十分に利用できたんじゃないか?普通の鮫ならこうはならん」

 

「オラそこのボス鮫ェ‼︎こんなボロっちい人間相手に逃げるなんて情けねぇ事しないだろぉ?さぁ…Eat Meeeee‼︎」

 

手榴弾のピンを外しながらボス鮫に特攻するリヴァイルに対してそのボス鮫はというと、それなりに高い知能を持ってる為、あからさまに罠であることは理解できた。しかし、ここで彼を喰って爆散しなければ鮫として三流以下になる気がしたため、思わず大口を開けて彼に喰らい付いたのであった。

その数秒後、ボス鮫の頭部が爆発四散し辺りの海が真っ赤に染まった。

 

「ええ…」(困惑)

 

「オッシェェェイ‼︎みたかこのヤロー‼︎」

 

「いやお前さん、いくらなんでもすぐ予備ボディで復活して戻ってこないでくれるか?怖いわ」

 

「待て‼︎なんか様子が変だぞ?」

 

船員の一人が指差すと、頭部を失ったボス鮫の体が蠢き出し、なんと頭部が再生してのであった。流石に表面の鎧のような鱗までは再生出来なかったが、この光景に一行は戦慄したのであった。

 

「うわぁお…」

 

「マジかよ」

 

「ふむ…あの島に不死の蘭でも生えてるのか?」

 

「それは鮫じゃ無くてアナコンダだ!とにかく、また来るぞ‼︎」

*1
共通でドットサイト。ニモジンはM26 MASS、マーキュラスはM203 グレネードランチャーを取り付けたもの




こちらの+αの戦力の正体は前回捕獲したニモジンとマーキュラスです。外付けの武器腕はアルトロンガンダムのようなものをイメージすればわかりやすいです。

そしてリヴァイルの特攻(ノリノリ)で結果的にボス鮫の頭部の鎧をパージさせました。
…勝手に再生能力足しちゃったけど、トリプルヘッド・ジョーズでも再生してたし、ええやろ(震え声)
まずかったら修正いたします。


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Code-137 未確認島調査依頼-2

ファッキンワーク‼︎(投稿が遅れた事を説明する簡潔な言葉)

今回もコラボ回です。


リヴァイルの自爆特攻もとい奇行(通常運転)と他のメンバーの活躍、そして万能者の機転により鮫のリーダーは倒され、残った鮫も駆逐され事なきを得た彼らはひと息ついていた。ちなみに船上に残った鮫の死体はというと安全性を確かめたうえで調理したところ、非常に美味であり栄養価も普通の鮫より高いことが判明し、さらにはボス鮫の肉片に至っては未だに再生しているためリヴァイルはどうにかしてこの鮫を凶暴性を排し食糧資源として利用できないか考えているらしい。

 

翌日、島の調査を開始するにあたり、バレットたち全員は島に上陸して調査を行うことにし、他のメンバーとともに島内を進んでいくのだが…

 

「おっほぉ〜♪タマゴタケにテングタケ、こっちは紫蘇の実じゃ〜ん!いや〜植物のサンプルが手に入っていいね〜♪」

 

「リヴァイル、あまりデカイ声だすなよ。何がいるかわからないんだからな」

 

ご機嫌な様子で背負っている大きなバックアップから試験管や容器を取り出してキノコや植物を採取しているリヴァイルにバレットが注意する。目的の一つに環境の再生があるリヴァイルにとってはここは汚染前の希少な自然が多く、その為大量にサンプル採取が出来る格好の場所であった。

しばらく突き進んでいくと、一行の前に大型の蟲の大群が襲いかかり、即座に交戦を開始するのであった。

 

「サメの時点で嫌な予感はしてたが、まさかの蟲かよッ⁉︎本当にここ何がいるんだ?」

 

「さあな‼︎とにかく敵意を持ってる以上、対処するしかないだろ!」

 

銃弾が通用するものの、いかんせん数が多い為苦戦を強いられていた。奇妙なことに撃破された蟲はいずれもすぐにドロドロに腐敗していき、それを見たリヴァイルは大声を上げていた。

 

「何ィ⁉︎こいつらすぐ腐りやがった‼︎サメの件もあるし、味も良いだろうと思って食べてみようと思ってたがこれじゃ無理じゃねーか⁉︎クッソ〜蜘蛛の唐揚げつまみにして雀蜂の焼酎漬け頂こうとしてたってのにすぐに分解者に身を委ねやがって‼︎食物連鎖に貢献しやがれ蟲畜生が‼︎

 

「もうやだ、このオリジナル…」

 

「あの、バレットさん…昨日もですけど、あの人はいつもあんな感じなんですか?」

 

「フレイム、残念ながらそうだ。いっそ薬キメてた方が理解できるんだがあれでシラフなんだから始末に負えないんだ…」

 

「ええ…」

 

ちなみにだがここに来る前に異世界の者も含めたメンバーにリヴァイルについて話しており、案の定彼の行動や過去にドン引きし、特異な技術を持つ一部の者は彼に警戒していた。特にアラマキに関しては彼の行動理念に思うところがあるのか、彼を見定めるような目で観察していたのだった。なお、リヴァイルはそんなことは露知らず、蟲のサンプルが採取及び実食できないことを嘆いていたのであった。

しばらく交戦を続けていると、後方でペイロードの悲鳴が聞こえバレットが振り向くとバルカンのシャツを羽織ったペイロードが蹲っていた。

 

「ペイロード、何があった!」

 

「えっと、さっき襲ってきた蟲が出した液を浴びたら、服が、その…溶けて…」

 

「服が…?肌は平気なのか?」

 

「うん、とりあえずは…ヒッ!また来た…⁉︎」

 

「…アレか。とにかく、危ないから下がっててくれ」

 

理屈はわからないものの、妹に公然の面々で脱がすという恥辱を与えた蟲に報いを与えるべくその蟲の群れに突っ込んでいくバレットの後をリヴァイルが何故かついていき、それに気づいたバレットが話しかける。

 

「…何のようだリヴァイル?」

 

「いやなに、彼女の着ていた服の素材が棉や麻などの植物性の物にしろ、ウールなどの動物性にしろ、化学繊維にせよ、それらを溶かす溶解度を持ちながら肌を溶かさない特異性をもつ液体。実に興味深い。是非とも採取したいから全部殺すのは少しまってほしい。採取したら皆殺しにして構わないさ」

 

「採取して何に使う気だ?」

 

「何に使えるかを調べるのがオレの仕事だ。少なくともやましい事には一切使わない事を約束しよう」

 

「…わかった。だが液体を出す気配がなければその時は全滅させる」

 

「了解」

 

交戦距離に入り何体か例の蟲を撃ち殺し、液体を出すまで他の蟲を駆除しながら目を離さずにしているが一向に吐き出す気配がなく、なら全滅させるかと考えた矢先、突然その蟲はバルカンの方へ向かっていった。

 

「へ?うわっ⁉︎やだ、来るなよ⁉︎」

 

「ほぅ…あの蟲、女性を狙う習性があるのか。益々興味深いな」

 

「言ってる場合か!バルカンがあの蟲にやられてみろ、スミスがブチギレてここにいる男全員の目ん玉、見てる見てないに関わらず抉りだしても可笑しくないぞ⁉︎」

 

「俺のこと何だと思ってんだバレット⁉︎そこまではやらねえよ‼︎」

 

似たようなことはやるのかという他の者が心の中でツッコむなか、例の蟲はバルカンに近づき、どう避けても当たるように液を吐き出したが、殆どはスミスの出したミラービットにより防がれ、残りは間に入ったリヴァイルが持ってきた容器で掬い取る形で受け止めたのであった。

 

「はいサンプルゲットォ‼︎じゃあ殺していいぞ」

 

「「わかった。死 ぬ が 良 い」」

 

二人の攻撃により例の蟲は全滅、だがその直後に蔦が襲いかかり、身動きを封じられさらには大型の軍隊アリが迫ってきたものの、何者かの襲撃によりそれらは壊滅、同時に発生した煙幕が晴れるとそこには人語を話すE.L.I.D【蛮族戦士】がおり、彼に救出されるといった怒涛の展開が続くのであった。

なお、当然ながら蛮族戦士の存在にリヴァイルは興奮し、彼に突撃していった。

 

「やあやあやあそこの蛮族戦士とやら!自意識を持ったうえに片言ながら言葉を話せると非常に興味深い‼︎覚えてる限りでいいからキミの事を聞かせてくれ‼︎まず元は人間か?だとすればその時の名は?いつ頃感染し、いつ頃に意識を持って行動できた?変異した経緯は?何を食べて生きてる?その腕の剣はいつ頃変わった?まぁそれは追々でいいからまずは皮膚片でもいいから採取させてくれ‼︎」

 

自分の姿を見て恐れるどころか嬉々とした顔で捲し立てながら近寄るリヴァイルにある種危機感を感じた蛮族戦士は思わず近くの地面を切り裂いて牽制した。

 

「うぉ危なっ‼︎」

 

「オチツケ オソレ シラヌ モノ ハナシハ アトデ キク ダカラ イマハ チカヨルナ」

 

「…へーい」

 

自分はともかく、下手に機嫌を損ねてここにいるメンバーがやられるのは彼の本意ではない為、リヴァイルは大人しく彼の指示に従うのであった。




多分この場に姉者がいたら蟲どころかバレットとその関係者除くその場の男とレズの目と記憶を消してたかもしれない。

オマケ 上陸前・リヴァイルの部屋にて

『随分と無茶な事するのねあなた』
「あれが最適解だったし、結果的に合ってたから問題ないだろ?あとそろそろキミの事をもっと教えてくれてもいいんじゃないか?」
『もう少ししたらね。あなたはかなり珍しいから、私の願いを叶えられるか確かめたいの。少なくとも、ルニシアの役には立ってもらうわ』
「ハァ…あのな、"彼女"はルニシアじゃない。彼女の臓器を移植されて出来た存在に過ぎないだろ?キミは臓器移植手術受けた人を臓器の提供元の人物と同一化するのか…って、切りやがったよ」

「…アイツ、一人で何ブツブツ部屋の中で話してんだ?」


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Code-138 未確認島調査依頼-3

一回目が何ともなかった分、再来週のワクチンの二回目が怖ぇ…
さて、今回はリヴァイルの切り札を出します。


「…まずいな、アレはオレらじゃ倒せないぞ」

 

突如現れたキノコ男の攻撃によりボディがやられ、輸送船内の予備ボディにて復活したリヴァイルは神妙な顔でそう呟いた。

 

「的確にこちらの主戦力を狙う知能の高さ、多分戦闘能力も高いな…ん?そういやアイツ、何でオレを狙った?戦闘能力なら狙われたメンバーどころか探索隊の中じゃ下から数えた方が早いくらい弱いんだが…」

 

《私に反応したんじゃない?…いえ、それならルニシアも狙われる筈…単に嫌ってたとか?》

 

「寧ろあんなんに好かれてたまるかよ。…で、ルニシアって呼ぶのやめとけよなO()G()A()S()

 

リヴァイルは自身が取り込み、彼の意識内で話しかけるOGASにそう忠告する。元々この現象に関しては国連所属時代やパラデウスにいた時に調べていたために理解はできていたが自分にそれが起きるとは互いに予想外であった。

OGASを人形に組み込むとマインドマップを糧にして宿主や親しい者に姿を変えて干渉し、場合によってはそれにより不調をきたす者もいる。

 

しかし、知っての通りリヴァイルは人間、正確にはそのデジタルクローンでありマインドマップを有していない。それ故に干渉されずにその能力を扱えると思っていたが、予想に反してOGASは彼にネイトの姿で干渉、そしてOGASもまた意図せずして彼の記憶に触れ、ヒトを識ると同時に【彼の秘密】も知り、自己の目的と彼の目的に一致するところがあるため、共生関係を築いていた。

 

《わかったわよ…それより早く戻らないとあの子が殺されるわよ。それはダメだから早く戻りなさい》

 

「だがどうする?【戦闘用ボディ】持ち出しても時間稼ぎがいいところだぞ?」

 

《少し離れたところに妙な連中がいるわ…こちらの様子を見てるようだけど、彼らの協力があれば撃退はできるんじゃない?それにもう一人、相当な実力を隠した奴がいるわ。そいつも加勢すれば…》

 

「…?ここらは通信障害が酷い筈だが?」

 

《このくらい、短時間なら問題ないわ》

 

「はは、()()()でこれとは流石だな。個体差があるのは知ってるが、キミは対通信障害やジャミングに特化してるのか…ならまだチャンスはあるな。オレも、アイツら…特にニモジンとマーキュラス、オレが助けた二人に死なれたくないしな。じゃ、早速戦闘用ボディに換えるか。頼んだぞ」

 

《了解。しばらく身体を借りるわよ》

 

リヴァイルは隣にあるひと回り大きい格納庫を開け、中の戦闘用ボディに乗り換える。

戦闘用ボディと銘打ってあるが、正確には初めから彼が使うためのものではなく、彼がpawnに対抗するために独自で開発した装甲人形であった。戦闘記録や以前リバイバーが鹵獲した彼らの残骸や兵装を元に、それらに有効となりうる兵装を開発し、また、機動性や各種センサーの反応速度の改良も彼が持てる全ての技術を注いで向上させたそれは、MCR内に登録されてる時点の万能者なら『26.4%の機体損傷で撃破可能』なまでの戦闘能力を有しているが、ただ一つ欠点があり、それは【高性能故に満足に動かせるAIが存在しない】という本末転倒なものであった。

 

だが、リヴァイルがOGASを有したことでその問題は解消することとなった。今の彼は彼自身とOGASのいわば二重人格状態であり、ニモジンたちのようにサポートとして使うのではなくOGAS(彼女)にボディの主導権を譲り、彼女に操作させて戦うことで運用が可能になったのだ。…尤も、それはそれで今度は【OGASのスペックにボディが充分に発揮できない】という問題があるが元々彼女に適合できるものが今のところいないため仕方のない問題である。

 

勿論これにはリスクもある。もし主導権を渡した後に彼を封じ込め、造反する可能性もあるが、リヴァイルが彼女にこの事を教えた上で全幅の信頼を寄せたことに彼女が彼に好感を持ち、彼を裏切らず協力することを約束させたのであった。

 

《主導権をリヴァイル・ウィッカーマンから受諾。コア接続開始…機動に問題なし…》

 

《どうだ?初めての現実世界は?》

 

「悪くないわ。でも、こんなゴツイのより、もう少しマシな身体が欲しいわね。あと、ここの国連の人形も借りてくわ、私のサポートを入れるから少しはマシな動きになるはずよ」

 

《手駒は多い方がいいからな。あと、女言葉はやめてくれ。一応キミのことは伏せてる。このボディはオレの改造で動かせるようにしたって説明したしな》

 

了解。と彼女が告げると輸送船内の人形を支配下に置き、再び戦場に向かうのであった。

 


 

(俺の相手、こんなんばっかだし、初手で毎回致命的な攻撃受けてんだけど、呪われてんのか…?)

 

キノコ男の攻撃で崩壊液関連の箇所を破壊され再生やエネルギー供給が出来なくなったリバイバーは心の内でボヤきつつ、今の状況を整理していた。現在何名かが負傷し、戦闘に支障が生じ、その上向こうはこちらの攻撃を跳ね返し再生能力も尋常でなく先ほどから蛮族戦士が何度か斬りつけているが斬って僅か数秒ほどで完治していた。それに加えて万能者を吹き飛ばすほどの腕力と俊敏性といい、ハッキリ言ってこのままでは全滅すると感じていた。

現在バレットやニモジンたちが応戦しているものの、上記の特性を鑑みると撃つだけ無駄ではあるが、黙ってやられるわけにはいかなかった。

 

(残量考えるとフルで五、六発…レールガンは装填してある二発のみ。だがどれも効かないとなると心許ないな…スミスとレストの装備も予備のリンクリキッドを破壊された上、時間切れ。どうやって撤退、もしくは撃退するか…)

 

そのとき、キノコ男の足元に幾つかの弾幕が殺到し、辺りの地面を吹き飛ばした。攻撃の方をみると大型の装甲人形が国連軍の人形を率いていた。

 

「待たせた…あとはオレに任せて撤退準備を」

 

「その声…リヴァイルか?だが気をつけろ、奴は…」

 

「……なるほど、状況は理解した。ならこの装備にして正解だったか」

 

「…っ⁉︎あぁ、俺の記録映像をハッキングしたのか…」

 

リバイバーがそう納得すると同時にリヴァイル?はキノコ男に突撃していき、左腕の筒状の装備から細かい矢のようなものを幾つも放ち、左サブアームの銃器から弾丸を放った。当然キノコ男はそれを受け止め、身体に穴が空いた。

 

「気をつけろ‼︎反射が来るぞ‼︎」

 

「問題ない」

 

次の瞬間、キノコ男の体内で幾つもの爆発が起き、また細かい穴からは桜色の結晶のようなものが身体を食い破るように現れた。キノコ男は驚くような挙動をするが構わず反射するも、出てきたのは爆発の残りカスや結晶であり、結晶はそこまで硬くないのか、装甲に当たるとあっさり砕け散った。

 

「なっ⁉︎これは…?」

 

「小型多段内部爆破式榴弾と硬化増殖ナノマシン弾。前者は対象の外装に吸着して連鎖的に爆発してダメージを与え、後者は内部でゲル状のナノマシンが金属、もしくは有機物を糧に増えて内部を破壊しながら硬化して動きを阻害させるもの。ほんとは奴ら用のやつだけど、コイツには好都合だ。拘束用だから反射した時には意味のないものになるからな。ナノマシンの方は無限増殖防止用に5秒で自己崩壊するようにしてある」

 

付け加えるなら、本来なら吸着するはずの前者は相手が装甲のない生身だったのが幸いし内部に入って爆発するという事態となっていた。それより、リバイバー達はまるで別人のように淡々と話すリヴァイルの口調が気になっていた。

すぐに身体を再生したキノコ男はリヴァイルに狙いを定めてレーザーを放つが、リヴァイルはあり得ないレベルの機動力で回避していた。そのあとも何度も放つが、どれも紙一重でかわし続けていた。

 

(動体センサーや温度センサーの精度がかなり高いおかげで奴の筋肉の微細な動きやレーザーを出す前の温度変化で次の行動がすぐ読める…ただ、身体の動きがギリギリで反応できてるから油断はできないわね…)

 

続いてリヴァイル(OGAS)は右のサブアームから灰色の液体を足に向けて放った。液体は右足に当たり、地面まで垂れて染み込んだと思いきやすぐに硬化し、キノコ男の動きを止めるも、彼は右足を引きちぎると再生して向き直ろうとした途端、随伴してた人形達の砲撃が地面に炸裂し、バランスを崩したキノコ男は地面に倒れた。

 

(あの液体…本来なら間接部や装甲の隙間に当てて内部に染み込ませた後で固めるのか、エグいことするな…それより、あの随伴機…アイツがハッキングしてるにしては妙に動きがいい…何か隠してるな)

 

万能者がリヴァイルの変化に勘付き始めた時、リヴァイルの背部にあった箱状のパーツが排出され、それを見たバレット達は察しがついた。

 

(アレはニモジン達を助ける時に使った処理代行装置(カードリッジ擬き)…⁉︎アイツ、OGAS使ってるのか…)

 

《ヤベ、耐熱性と放熱性高い素材使った割に消費ペースが早いな。これだともってあと三十分が限度だな》

 

《大丈夫。さっき【彼女】の中の私に協力するよう伝えたわ。向こうも彼女を死なせたくないから随伴機の方を任せたわ。足止めには充分な動きはするはずよ》

 

それが示す通り、随伴機たちは非常に統率の取れた動きでキノコ男から付かず離れずの位置をとって足元や移動してほしくないところを攻撃して動きを抑えていた。

 

《ならしばらくは平気か。あとは事態が好転すればいいが…》

 

《安心して。限界時間まではやられないし、やられるつもりもないから》

 

頼もしいな、リヴァイルは感じながらキノコ男を見つめていた。

 

(にしてもコイツ…なんなんだ?ナニが無いようだが…小さすぎて埋まってるのかぁ?いや、馬みたいにヤるときに出てくるタイプか?力関係が逆なら解剖してやりたいモンだが…そうは言ってられないな。さて、どうするか…)

 

割とセクハラな事を考えつつも、状況を打破する方法を考えているのであった。




公式チート・OGAS参戦‼︎

リヴァイル(戦闘用ボディ)

見た目的にはジェガンヘッドのサンダーボルト版FAガンダムの盾が無いバージョンですね。キノコ男に撃った弾はクウガの神経断裂弾とアトラスガンダムのメデューサの矢的な物です。なお、三十分動かすのにカードリッジ擬きが十個必要というジ・アースもビックリなコスパの悪さゾイ。

本来の運用なら各種装備で動きを抑えて仕留める形ですし、途中で拘束されるならと向こうが自壊してもそれはそれでいいというものです。
動きのイメージとしてはリミッター切ったバルバトスルプスみたいな動きで回避してる感じですかね。OGASがボディが反応できるギリギリで見抜けてるので少なくとも限界時間までは致命傷は受けませんね。

あとは流れを見てですかね。


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Code-139 未確認島調査依頼-4

主催の最新話見たときの自分と向こうのやりとり
「…っ⁉︎ あなたのコラボっていつもそうですね…!参加者をなんだと思ってるんですか…‼︎」(意訳)

( 主ω催)「すみませんでした…修正しときます…」

と言う事なので被害状況やキノコ男の状態が修正されてるので修正前読んで詰んでる方は一度見たあとこちらを読んでどう書くかの参考にしてください。


予想外のPawnと思われる勢力の介入によりキノコ男は海水という意外な弱点を突かれ、姿が大きく変わったものの、未だに健在な様子をみせるなか、いち早く超音波攻撃から復活したリバイバーが件の存在に攻撃を仕掛けた。

 

「いい加減…弱ったりなんだりしろやクソがぁッ‼︎」

 

悪態を叫びながら広範囲にばら撒いたレーザーだが、キノコ男はその全てを何でもないかのように避け、リバイバーの眼前に迫り殴りかかるが次の瞬間、リバイバーの姿が消えてそのままキノコ男の拳は地面を打ち砕いた。

 

「ッシ‼︎回避できたぁ‼︎」

 

「っ‼︎テレポート機能か!でも、よく避けれたな?つーか、何で早く復活できた?」

 

「あぁ?お前さんとつるむと大抵理不尽なこと起きるからな、出発前にリヴァイルに頼んでありったけの対策施して貰ったんだよ。で、回避できたのはアイツはバカみてぇに速えから避けてカウンターしてくるの承知で撃ったあとすぐテレポートに専念した。それよりみろ、奴の腕」

 

リバイバーの指摘に万能者がキノコ男をみると、キノコ男の右腕はぐちゃぐちゃになっており、再生も追いついていないのか、ゆっくりとしか回復していなかった。

 

「再生が…弱まってる?」

 

「多分、この短時間で何回も急に身体作り替えたから、身体が変化についてこれなくなって再生力と防御力がなくなってるんだ。で、俺殴るつもりが避けられて地面殴った結果、自分で自分をぶっ壊しちまった感じだな。ザマァねぇな!」

 

実際はリバイバーの予想は半分は間違っているが、防御力と再生能力の低下は事実であり、置き技のような形ならば向こうが自身の速さで勝手に突っ込んで自滅する可能性は大いにある旨を説明すると超音波攻撃から立ち直ったメンバーの目にも希望の兆しが見えた。

 

「蛮族戦士、頼みがある。奴があの岩盤を背にするように位置取らせてくれ」

 

「アア マカセロ コチラモ アノ ツワモノ ト タタカイタクテ ウズウズ シテイタ トコロダ…‼︎」

 

言うが早いか、蛮族戦士はキノコ男に向かって突撃していき、キノコ男と格闘戦を行い始めた。

戦いの状況は一見すると圧倒的な力とスピードをもつキノコ男が優勢に見えたが、先ほどのがよほど応えたのか、どこか全力を出さずに殴っている様子が見てとれた。

 

(ま、さっきまで圧倒的再生力と身体能力でヌルゲーしてたとこを崩されれば焦るわな…)

 

そうこうしてるうちにキノコ男は予定通り岩盤を背にし、右手から刃状にしたエネルギーを発生させ猛スピードで蛮族戦士に突っ込んでいった。

 

「今だッ‼︎」

 

瞬間、リバイバーはテレポートを発動し両者の間に割り込むと取り出しておいたレールガン─ダインスレイブの弾芯を槍の如く突き出した。突然の乱入にキノコ男は対応できずそのままの勢いで弾芯に突っ込んでしまい胴体を貫いた。

その後リバイバーは全力でブースターを吹かして前進し岩盤に突き刺して磔にするとヒールバンカーを作動しキノコ男の両足を潰すとキノコ男はリバイバーに向けてレーザーを放とうとするが

 

「その手に……乗るかぁぁあ‼︎」

 

リバイバーは発射直前に指を掴むと無理矢理へし折り()()()()()()()()()()()()()()()()()()。当然放たれたレーザーはキノコ男の頭部に命中するも、直前で頭を逸らしたのか頭頂部が一部欠けて中身が見えていた。リバイバーは浮遊し頭上に位置取ると抜き手の構えを取り、キノコ男の頭の中に手を突っ込み、グチャグチャと中を掻き回した。

 

『Oh……』

 

それを見た兵士たちは思わず頭を押さえ、バレットら人形たちも引いた顔をしていた。そしてキノコ男はというと、ガクガクと大きく痙攣したり仰け反ったりと明らかに効いている素振りをみせ、頭部内を掻き回されてる為か抵抗しようにも力がまるで入っていなかった。尤も、これまでの戦闘から頭部に再生の要となるものがあることがわかってるため、力任せに振り解こうものなら頭部内を余計に損傷させ、要となる箇所を損傷させる可能性があるためしたくとも出来ないだろうし、何よりそれを見越したリバイバーが両手をいつでも自爆できるように設定させていたため、下手を打てば頭部が中から吹き飛ぶことになるだろう。

 

(あぁ、感触が気持ち悪ぃ…だがやはりコイツ…頭部を優先的に再生して他の箇所の再生は後回しにしてるな。なら…)

 

「今だお前ら‼︎撃てぇ‼︎今なら攻撃が効く筈だ‼︎今までの鬱憤を晴らしてやれ‼︎」

 

それを聞いた調査隊の面々は一斉に銃口をキノコ男に向けたのであった。

 

(これで身体中を撃たれれば再生どころじゃなくなるだろ!もし何かしらの手があったとしてもこっちにはほぼ無傷のPawmモドキがいる!しかもこれまでを考えるに近くに本隊がいる筈だ…それにソフォスとかいう奴も控えてる!タダで済むと思うなよ…‼︎)

 

直後、キノコ男に向けて多数の攻撃が放たれたのであった。




ネ フ ェ ル ピ ト ー

とまぁ、こんな感じで事を運んでおきましたのであとは流れ見て動かしますのでよろしくお願いします。


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Code-140 未確認島調査依頼-5

今回でこちらでのコラボはおしまいです。

そして今回、リヴァイルの重要な秘密が明かされます。


キノコ男を撃破し、山崩れから退避した一行は国連が管理している島にてバカンスに興じていた。キノコ男との戦闘でまたしても両腕と崩壊液技術関連の箇所を破壊されたリバイバーは船に積んであった予備部品にて修復完了し、他のメンバーも一部センサーの修復作業のみで済んだのであった。

 

「スミス…その、水着…似合ってるかな?」

 

「ん?…あぁ、すっごく似合ってるよ」

 

「…っ! えへへ〜」

 

スミスに水着を褒められ、ニヨニヨと顔を緩ませるバルカンというある種見慣れた光景が流れたあと、二人はミニガンを誘いビーチ遊びに興じていたのであった。ミニガン本人も最初は面倒くさがってたが、次第に満更でもない様子をしていたのであった。

 

「あの〜?バレットさん?そろそろ引き抜いて貰っていいですかね?日差しが暑くてキツくなってきたんですが…」

 

「いや、スミスから戻るまで引き抜くなっていわれてるし、おたくらの自業自得だろ」

 

そういうバレットの眼下には首から下をガチガチに埋められた国連兵の姿があった。彼らは少し前にスミスに対して

 

「そこの岩陰ならあまり人があまり来ないからナニかするならおすすめだぞw」

 

と下世話な話をした結果、無言無表情のスミスに埋められたのであった。

 

「にしても、リヴァイルの奴、『コレ』を手に入れたことをえらく喜んでたな…」

 

「経緯を考えればわからなくもないですね。『保存状態の良い、中身が入った日本茶の茶葉缶』なんていう絶滅当然の代物、他にあるならあの喫茶店くらいしかありませんよ」

 

あの島から退避する途中、リヴァイルが偶発的に拾ったそれはウェイターの説明通り日本茶の茶葉缶であり、中身が判明した時リヴァイルは狂喜乱舞したのであった。

 

イィィヤッターァァ‼︎日本茶ゲットォォ‼︎これで柿の葉とかじゃないモノホンの緑茶が蘇るぞォォ‼︎」

 

北蘭島事件以降、発生源から近かった日本は壊滅状態に陥り、それに伴い殆どの食文化なども失われ、緑茶やそれから派生する抹茶もその一つである。一応、紅茶と同じ茶葉のため再現は出来なくないが品種の問題から完全再現はほぼ不可能とされていたが、今回リヴァイルが茶葉を手に入れたため状況が変化することとなる。

手に入れた茶葉から遺伝子を抽出して現行の紅茶の茶の木に注入すればほぼ完璧な日本茶が栽培可能となるため、リヴァイルは張り切っていたのであった。

 

一方でニモジンとマーキュラスの二人はビーチパラソルの下でぼんやりと海を眺めていた。二人は今回のことで圧倒的な力を前に手も足も出なかったことで自尊心が軽く傷ついていたのであった。

 

「…お姉さま。聞いた話ですと、彼らはアレほどでないにしても、似た技術や力を持った勢力と衝突したことがあるそうですわ。アレはどうやってもお父様、ひいてはパラデウスのそれを圧倒的に上回っています…」

 

「勝てなかったわけね…でも、それは彼らの力ならパラデウスを制圧できる可能性は大いにあるということ。なら、まだあそこにいる沢山の妹たちを助けることができるわ」

 

「えぇ。でも今回の件で彼らには休息が必要です。時期が来ればリヴァイルあたりに持ちかけてみましょう」

 

そんな話をしている傍ら、当のリヴァイルはアラマキと万能者を連れて人気のない場所に移動していた。

先の戦闘でリヴァイルがOGASを使用していることを二人に見抜かれ、問い詰められた結果、自身のある秘密を話すと言うことでここにきた次第であった。

 

「ここらでいいかな…万能者、周りに誰かいたり盗聴されたりはしてないか?」

 

「ん…とくにそう言うのはないな。それじゃあ話してもらおうか。使用した理由はなんとなくわかる。そうでもしなきゃ時間稼ぎが出来ず全滅してたかもしれないからな。だが、あの様子だとかなり前からOGASを導入しているよな?前々から気にはなってたが遺跡に関する探究心がかなり異常だぞ?何故そこまでして調べたがってるかいい加減教えてくれ」

 

「そちらが調べ、利用しようとしてるのは遥かに危険な代物だ。下手を打てば北蘭島事件の二の舞になりかねん。ワシ個人としても理由を聞かせてもらおうか」

 

二人の刺すような視線を受けつつも平然としているリヴァイルだが、少しの沈黙の後口を開き、話し始めた。

 

「……わかった。そろそろ話しとこうと『私』も思っていたところだし、いい機会だから話せる限りのことは全て話そう」

 

「? それがお前の本来の口調か?」

 

「正解だ。狂人と印象付けた方が何かと都合が良いからな。話を戻そう。そもそも私は表向きには『遺跡を調べるが為に除染及び環境再生をしている』と言ってるが事実は逆だ。『除染及び環境の再生の為に遺跡を調べたい』のだよ。世界を汚したのが遺跡由来の崩壊液ならその逆を行えるのも遺跡内にある筈だからな」

 

「…なるほど。だが何故そこまで執着する?崩壊液汚染の除去は人類の悲願ともいえる。お前だけの目標ではない筈だ」

 

「爺さんの言う通りだよ。私だけでなくP基地やD08の嬢ちゃん方も除染に積極的だ。だが…私にはそれを行わなければならない『絶対的な理由』が存在するのだよ」

 

絶対的な理由?と二人が問いかけると、リヴァイルはある人物の名を口にした。

 

「………■■■■。爺さん、この名前の少年を知っているだろ?」

 

「…あぁ。有名な名だ。北蘭島事件のきっかけとなった遺跡に無断侵入した七人の学生、それも遺跡の探索を持ちかけたとされる少年の名前だ」

 

「その通り。世界一愚かな学生、この汚れた世界の元凶さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

……そして、()()()()()()()()。」

 

「なっ…⁉︎」

 

衝撃の事実にアラマキと万能者が驚くなか、リヴァイルは自身が妻子持ちの男が不倫してできた子であることを告げたうえで説明し始めた。

彼自身がその事実を知ったのは北蘭島事件から数年経ったときであった。当時九歳の彼はその頃から頭が良く、混乱の世の中でも上手くやっていた。

 

ある時、彼は何となくこの混乱の原因である北蘭島事件の事を調べていた。当然、事件を引き起こした学生たちは死亡してるとはいえ世界中から恨まれ、彼らだけでなくその親族の顔写真が流出しており、中には偶然海外にいて生き延びた親族が私刑を受けて殺される事件が起きたり、同姓同名の無関係な人間も巻き込まれたりと酷い有様であった。当時のリヴァイルは親族の顔写真を眺めていたとき、ある人物の顔を見て愕然とした。その顔は、母親が唯一持っていた父親の顔写真と全く同じであり、その息子…つまりリヴァイルにとっての腹違いの兄が事件の元凶とも言える存在と知った時、足元が崩れるような感覚を彼は覚え、いずれ自分のことも突き止められて殺されるのではと怯えていたのであった。

 

幸いにも不倫相手の事までは特定されなかったため、そのような目に遭わなかったが、彼はその時からある使命感を得たのであった─兄が世界を汚したのなら、弟の自分がこの世界を再生しなくてはならないと。

 

「そっからはひたすら勉強したさ。遺跡についてなんもわからなきゃ再生なんで夢のまた夢だしな。どうやら私にはその手の才能があったらしくてね、新技術を幾つも編み出したし、第三次世界大戦じゃ盤石な地位を得るために技師として志願して幾つも兵器を開発したよ。多分正規軍が今も使ってる兵器の基礎設計のベースにもなってると思う。終戦後は国連の研究機関に入所して念願の遺跡調査して、あとは色々あって今に至るってわけだ。無論、正体については一切隠し通してたが、たまに突き止められたりした時もあった。その時は例外なく全員口封じに始末したよ。情報が漏れて逆恨みで殺されるのはまっぴらだからな」

 

「デジタルクローンに着手したのも、世界を再生する前に死ぬわけにはいかなかったからってのもある。今の世に起きた大半の事件は元を辿ると兄がしでかした事に起因する。蝶事件の大元の発端である戦術人形が現れたのも北蘭島事件以降の人手不足が原因だからな。だからこそ、腹違いとはいえ弟の私が何としてでも遺跡を調べ上げ、世界を再生しなきゃいけないのだよ!」

 

「……わかった、理由については納得した。まさかあの学生に弟がいたとはな…」

 

「互いに会ったことはないがね。それと、先程あんたは北蘭島事件の二の舞になるといったが、私は兄と同じ過ちは絶対に犯さない。その為に遺跡の技術の正しい使い方を知る必要がある。万能者、恐らくあのキノコ男は崩壊液と関係がないとは言い切れない。これ以上兄の過ちの影響が広がる前に早急にあぁいった存在に対抗できる技術を手に入れなきゃならない。より一層の協力を頼む」

 

「あ、あぁ…(厳密には違うけど、言える空気じゃないしな…)」

 

その後、この事は口外しないことを約束させ、その場は解散となった。

ちなみに、日本茶の件だがある程度研究したのち、その後の研究をP基地に委託したところ、スリーピースや日本銃の人形がハイテンションになったそうである。




ハイ、実はリヴァイルは北蘭島事件の関係者の身内であり、遺跡を調べて環境を再生したいのは兄のした事に対する贖罪の意が大きいです。ちなみに人間として死んだときの歳は三十歳後半です。
また、リヴァイルの母親はヨーロッパ系の人であり、リヴァイルを懐妊してるときに故郷に移ってたので難を逃れた感じです。

日本茶の件は向こうにお任せします。まぁ、アイドル()ですしなんとかしてくれるでしょう。
あと、中盤のニモジンたちのやり取りからわかる通り、こちらも近いうちにパラデウス関連の大型コラボを開催する予定です。
コラボお疲れ様でした!

次回(ハロウィン)の簡単な予告

「キャハハハッ!ばいば〜‼︎」

「俺がカボチャ被って踊るのがそんな面白いかチビ助たち?」

何を踊るって?そりゃあ、もうアレだよ。


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Code-141 ハロウィン、そして新たな作戦

今回は前半ハロウィン回、後半はちょっとしたイベントです。


未確認島の調査以降、大きな事件は起こらずバレット達は平和な日々を過ごしていた。子供たちも無事に成長しており、アイン以外は一歳を超え歩くことはすでにでき、簡単な単語くらいであれば話せるようにまでになり、新しい言葉を話すたびに彼らは喜んでいたのであった。

さて、言葉を話せるように彼らの子供たちであるが、両親の次に名前を言うDG小隊のメンバーは誰になるかと密かに彼らの間で話題になっていたのだが、意外にも全員同じく発したのは『リバイバー』であった。

 

「ばいば〜」や「ぃばいばー」などとはっきり話せてはいないものの、しっかりリバイバーをみてそう言ってるので間違いなく、リバイバー本人含めたバレットたちは何故リバイバーなのか首を傾げていたが理由はすぐにわかり、『バイバイ』から『リ【バイバ】ー』と派生していたことがわかり、よく聞くとバイバイのイントネーションで話していたのでリバイバーは正しいイントネーションを、他のメンバーは自分の名前を教えているのであった。

 

さて、今年もハロウィンの時期となり、彼らはどちらかといえば子供たちに体験させるといった意味合いでの参加をし、子供たちに幽霊やツノ付きのモンスターを模したパーカーを着せていた。大部屋で他のメンバーが来るのを待っていたバレットとレストの一家が子供たちを遊ばせているとリバイバーとグリンダがやってきたが、リバイバーはなぜか緑のジャージのような衣装に前回とは違ったデザインのカボチャの被り物をしていたのであった。

 

「…ばいば〜?」

 

「おーよくわかったじゃねぇかリヒト〜」

 

「リバイバー、何でまたそんな格好を?」

 

「いやね、昔のミームとか漁ってたら面白そうなの見つけてな。チビたちにウケると思ってやってみたんだ。てなわけでグリンダ、音楽スタート」

 

は〜いとグリンダが手にしてたプレーヤーのスイッチを入れる。すると

 

\やってみせろよマフティー!/

\何とでもなる筈だ‼︎/

\ガンダムだと⁉︎/

 

鳴らない言葉をもう一度描いて〜♪

赤色に染まる時間を置き忘れ去れば〜♪

 

音楽と共にキレッキレの謎の踊りを踊るリバイバーに子供たちは初めこそなんだなんだと見ていたが、動きがツボにハマったのかケラケラと大笑いして手をペチペチ叩いていた。

 

『キャッハハハ‼︎ばいば〜!』

 

「ヤベェ思ってた以上にウケててこっちがビックリだわ」

 

「しかしまぁ、レオンたちにめちゃくちゃ気に入られてるなぁお前。たまに『ばいば〜は?』って聞いてくるくらいだぞ?」

 

「リヴァイルも言ってたが、どうも俺やアイツは子供とかに好かれるみたいらしいな。だからこそ、仕方なしに協力してたとはいえ、パラデウスを敵視してるんだろうな」

 

ちなみに、子供たち側からみたリバイバーの印象はというと『親の知り合いで顔に変なの(バイザーの事)付けてるけどよく遊んでくれる背の高い面白い人』であり、わりと好印象だったりする。

 


 

メンバーが集まり、本部内を散策していると程なくして本部所属の人形たちもとい見守り隊が子供たちの元に集まってきたのであった。

 

「ミラちゃんたちこんにちわ〜♡」

 

「こぉちわ〜」

 

「あぁ〜可愛い〜!ちゃんとミラちゃんたちが食べられるお菓子持ってきたから、言ってみて〜♪」

 

「ほらミラ、『トリックオアトリート』って言うのよ」

 

「レオンも、言ってみな」

 

バレットとアスターに促され、二人はモジモジしながらもヨタヨタと彼女たちに近寄ると上目遣いで見つめて言葉を発した。

 

『とっと、あ、とーと!』

 

『〜〜ッ‼︎』

 

それを聞いた彼女たちは各々口や胸を押さえて身悶えしたあとお菓子を手渡す。そこまで耐えられたのだが、そのあとの二人が発した『ねーちゃ、あっがとねー!』に限界を迎えたのか、立ったまま気を失ってしまったのであった。

 

「…チビすけたち、その気になれば本部の人形全員制圧出来んじゃねーの?」

 

「否定ができないのがなんともなぁ…」

 

その後もMP5やM82A1といった身内の元に向かった彼らだが、甥や姪たちの仮装や舌足らずの言葉にやられ、MP5が母性で爆発しそうなどと大真面目に語ったりM82A1は鼻血を出しながら両方を所望したりと色々あったが、無事にハロウィンを過ごすことが出来たのであった。

 


 

リヴァイルの部屋にて、ニモジンとマーキュラスがある情報を話しており、リヴァイルはその話を聞き情報を整理していた。

 

「ふむふむ…エストニアのタリンか…そこに適合できなかったネイトたちが捨てられてるんだな?」

 

「間違いないわ。ただ、脱走しないようにグラディエーターやウーランといった多数のユニットが配備されてるわ」

 

「それに関しては問題ない。私の施した強化という名の弱体化パッチが使われてるなら対処可能だし、そうでなくとも、今現在の戦力なら充分に戦える。そこにいるネイトたちを救出すれば奴らの存在や悪行を白日の元に晒せる。だが早く行動しなくては口封じをされる可能性もあるからすぐにクルーガーに掛け合ってみよう。タリンには『アレ』が咲いてるから色々制約があることも言わなくてはな…」

 

早速クルーガーの元に向かおうとするリヴァイルにニモジンが話しかけた。

 

「待って。あと一つ、伝えたいことがあるわ。貴方の遺体だけど…お父様、いえ、()()()()()()()()()()()()()()。だから、その…」

 

「私ベースのネイトが造られてる可能性がある、か。わかった。そのことも話しておこう」

 

部屋から出て行き、クルーガーの元に向かうリヴァイルのその顔はどこかほくそ笑んでいた。

 

(私ベースのネイト…やはりというか、単純というか…これで『合鍵』の用意はしなくて済むな。まぁまずは彼女達の救出だ…)

 

その後、リヴァイルの提案は受け入れられ、すぐに各基地やグリフィンの協力者に協力依頼をかけたのであった。




はい、ということでこちら主催の大型コラボ企画
『タリン制圧及びアイソマー救出作戦』
を開催いたします。
色々と条件のある作戦なので詳しくは下記からどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=270246&uid=89042


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Code-142 【反抗期】-籠を開ける者たち

大型コラボ、開催です‼︎
今回は導入部となります。

また参加者については後書きにて説明します。


招集をかけてから幾日か経ったのち、各方面から準備が整ったとの連絡が入り、各自の移動手段を用いて一度タリンから数十キロほど離れた場所へ集結していった。

今回の作戦に置いてDG小隊は第一部隊に加え、待機中の輸送ヘリ護衛や救出活動の支援として第二部隊も参加、また事がことのため、ニモジンとマーキュラスも参加していたのであった。

顔馴染みの部隊に加え、初めてみる部隊もいる為軽く挨拶を済ますとリヴァイルが壇上に上がり話を始めた。

 

「……えー、諸君。初めまして。とはいえ知ってる者は連絡とかで知ってると思うがな。私はリヴァイル・ウィッカーマン。今回の作戦の立案者だ。さて、今回我々が救出するアイソマーについて改めて説明させてもらう」

 

「元々はネイトっていうクローン少女を機械化させた兵士なんだが、当然施術が全て成功するとも限らないし、クローンとはいえ多少の差は生じる。故に失敗することがある。それがアイソマーだ。彼女達の不幸は失敗しても死ぬこともなく全身に苦痛を抱えてタリンに収容されている。それを救出し、奴らの所業を明かすのが我々の任務だ」

 

「敵戦力については説明済みだから省くが連中には私が組み込んだ弱体化パッチが施してある。具体的には時間経過による機動力や偏差障壁の弱体化だ。ある程度経てば普通の銃器でも拮抗できる。だが、私がいなくなった後に新規で開発したものについてはその限りではない。君らのような戦力に対抗した兵器もあるかもしれない。だが心配することはない。諸君らの一部は去年の作戦で規格外な連中と相対している。それらに比べてみたまえ、パラデウスの兵力なんざハッキリ言ってカスに等しい‼︎」

 

「どんな兵器を奴らが開発してようと、所詮人の造ったモノ。同じ人である我々が倒せない道理はない。必ず倒せる隙はあるはずだ。正面切って無理ならば…

発射直前の銃口や砲門を狙え関節を狙え装甲の隙間や継ぎ目を狙えセンサーを狙えブースターノズルを狙え僅かな損傷を狙え。なんでも良い、どこかしら比較的脆い部分は必ずある。君たちならばできる筈だ」

 

少し息をついたあと、リヴァイルは別の注意点を話し始めた。

 

「連中はアイソマーを殺さずにわざわざタリンに押し込んでいるということは奴らには殺せない何かしらの理由があるのだろうが、流石に我々が内部に侵入し救出を始めれば証拠隠滅のために彼女達を殺し始めるだろう。そうなればアイソマー達は錯乱して手当たり次第に攻撃してくる可能性がある。故に被害は少なくしたい」

 

どれくらいのアイソマーがいるかはハッキリとはわからないが、ニモジン達の証言やクローンの作成及び成長ペース、施術の成功率、タリンの環境からして生存してるのは7〜800人程はいるとリヴァイルの予測である。

 

また、タリン内部には【優曇華】という特殊な花が咲いてるエリアがあり、崩壊液を球根に吸収し無害化できる特性を持つ反面、開花時に溜め込んだ崩壊液を放出する重大な欠陥を秘めており、下手にそのエリアを爆撃なりすればどうなるかは明白のためそこでの戦闘は注意を払うことをリヴァイルは伝えた。

 

その後偵察隊の報告でタリンから数キロ離れたところにパラデウスと思しき大群が防衛網を敷いており、おそらくタリン市内にもいるだろうということで彼らは早速防衛網を突破するための準備を進めていた。

 

「なあアンタ、ちょっといいか?」

 

「…手短で頼むよ」

 

リヴァイルに話しかけたのはP基地のノアであった。アイソマーについて説明していた時点で雰囲気が変わっていたのと、彼女の出生や軌跡について把握しているリヴァイルは何を言われるか予想がついたため、話に応じることにした。

 

「事情はある程度聞いてるが、アンタはパラデウスにいたとき彼女達のことを知っていて、アンタはそれを見て見ぬふりをしてた。それについてアンタはどう思ってたか聞かせてくれ」

 

「……正直、すまないとは思っている。私にも目的がある以上それを果たす前に死ぬわけにはいかなかったから、下手に反抗したりして始末されないために彼女達を放置した。要は保身のために見殺しにしたも同然だ。だからこそ、助ける事が出来るこの作戦では、今生きてる彼女達は何があっても助けたいとは思っている」

 

「…わかった。それだけ聞ければ大丈夫だ」

 

そう言い残してノアは作戦の準備をしに戻っていった。

その数時間後、まずはパラデウスの防衛線を突破すべく、彼らは出撃したのであった。




作戦の流れとしては
タリン手前でのパラデウスの防衛線を突破

タリン侵入後アイソマーの保護及び都市内部の戦力や対空兵器を排除しつつ、あとから来る輸送ヘリに彼女らを乗せて救出。

その中でタリン内にいる失格異性体とリヴァイルとM4を接触させる

といった形です。
故にヘリを落とされるのもマズイのでお気をつけて。

そして参加者の紹介です。
参加メンバーについては書くとかなり長くなるので作品名のみ記載させていただきます。メンバーについては活動報告欄にて確認ください。

アーヴァレスト様作『チート指揮官の前線活動』
ガンアーク弐式様作『MALE DOLLS外伝集』
焔薙様作『それいけポンコツ指揮官とM1895おばあちゃん‼︎』
試作強化型アサルト様作『危険指定存在徘徊中』
白黒モンブラン様作『Devils front line』
Tomネッコ様作『戦術人形にTS転生した話』
oldsnake様作『破壊の嵐を巻き起こせ!』

となります。
まずは防衛線の突破ですので大暴れしちゃってください‼︎


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Code-143【反抗期】-異変

すみません、ちょいと夜勤・ドゥーエ労基攻防戦をしてまして…

さて、良い感じに防衛線を突破しているので、都市部突入です。


「想定以上だな。もうすぐ防衛線を突破しそうになるとは…」

 

「まぁ、グリフィントップレベルの戦力が集まればこうなりますよね…」

 

AR小隊、ニモジン、マーキュラスと同行していたリヴァイルはそう呟き、戦況を分析していた。前回の作戦で戦闘用ボディが大破した彼は起動時間などの問題から彼はデータとしてあったP.A.C.Sを自分用に設計、開発した物に搭乗し参加していた。武装としては右腕に実弾とレーザーを交互に各三門、計六門の特製ガトリングを一丁、左腕には大型レーザーブレードを搭載しており、一番の特徴としてリバイバーのF.E.F.Gを大幅に小型化しほぼ同性能にしたものを四十基、コモリガエルの如く背部にビッチリと搭載していた。

これはどちらかといえばヘリの到着までのアイソマーの保護用で装備しており、通常ならこれらの制御用にカスタマイズしたスフィアをコクピットに搭載予定だったが、作戦開始前にシャマールという人物から貰った端末が容量と処理速度が尋常じゃないほど高いことを知りその場で改造して端末をコクピットに接続、端末にOGASを転送させて彼女に制御を任せることにした。なお、そのためヘリで留守番となったスフィアが拗ねてふて寝をしてるのは些細な犠牲として割り切ることにしたのであった。

 

(ふむ…もうすぐ都市部に着くが、仕掛けてくるとすればそこだな…だが、奴らの目的が単なる返り討ちじゃないのはわかるが、それが何かわからないな…輸送列車の制圧も時間の問題だし、自棄になってる可能性もなくはないが…)

 

「ねぇリヴァイルさん?ここの連中って元は人間なんでしょ?こんなにやられちゃ連中は持たないと思うんだけど?」

 

「簡単だSOP。パラデウスの信者の大半はE.L.I.D患者だ。人材が足りなくなったら信者の何人かをワザと発症させて街に放り込めば良い。そうすれば…」

 

「彼らから感染した市民らが救いを求めて入信する…ホント、よく出来たマッチポンプね」

 

SOPからの問いにリヴァイルが答えるとAR-15が皮肉と嫌悪を込めてそう返したあと先に進むと、都市部が見えてきた。

 

「こちらリヴァイル及びAR小隊‼︎まもなく都市部に侵入する‼︎」

 

「こちらリバイバー‼︎了解した!こっちもまもなく到着する‼︎」

 

そう聞こえるが早いか、空中から幾つものレーザーが降り注ぎ、地上の対空兵器やパラデウス兵を吹き飛ばしていくのが見えた。

 

「リバイバーってあんな強かったかしら?」

 

「いや、彼を倒してるのがだいたいが規格外な連中ばかりなだけで実際の実力は相当なものだよ。何より、意図的に不完全にしたとはいえ私のコピーだからね」

 

そこまで聞きAR小隊の面々はハッとした。そもそもリバイバーはリヴァイル、もとい『人間』の人格データをある程度コピーした存在である。それが人形にも勝る活躍をしているということは即ち、オリジナルであるリヴァイル本人も同等の戦闘スキルを有してる可能性があるということになる。

 

「…技術力も戦闘力も高いってアンタ、鳥○族か何かか?」

 

「そんなわけないだろう…ん?この雷のような音は…ふむ、どうやらバレットに渡した私の装備は役に立っているようだな」

 


 

場所は変わり、DG小隊の面々も各自の特殊装備を用いてパラデウス兵を撃破しており、最近までそういったものを持っていなかったバレットも両腕部に装備した新兵装で奮戦していた。

【神威】と名付けられた青と白に彩られた槍状のそれはこれまでの規格外存在との戦闘データを元にバレットに合わせて作られ、連射可能でかつ偏差障壁を突破できる威力の通常レーザーに加え高電圧の電気を複数の敵に放てる[雷撃]、エネルギーを集中させて高威力のレーザーを照射もしくはブレード状にし斬りかかる[雷刀]の三種をうまく使い分け、次々にパラデウス兵を撃破していた。

 

「こちらもそろそろ突入するか…ライ、そっちの様子はどうだ?」

 

『今のところ問題ありません』

 

「了解。連中がヘリの方を狙う可能性もあるから充分注意してくれ」

 

ライたち第二部隊に連絡したあと、バレットたちも都市部に向かうが彼らもパラデウスの動きに違和感を感じていた。

 

「数はそれなりに多いが…ただそれだけだし妙だ。やはり仕掛けてくるなら都市部か?」

 

「それでも救出対象がいる以上、進むしかないか…」

 

「それなんですが、アイソマーが敵対してる可能性はあり得ませんか?」

 

「いや、リヴァイルやニモジン達によると苦痛が原因で戦闘意欲が殆どないようで、施術失敗の関係でEMPくらいしかまともな攻撃ができないらしい」

 

一行は都市内部へと侵入し、しばらく進むとキャロルから通信が入ってきた。

 

『こちらナデシコ。AR小隊、そちらに敵らしき反応が…ん?まて、この移動速度は…!9時方向に注意‼︎』

 

それと同時に妙な金属音が聞こえ、指示された方向を見た直後であった。兜を被り、血塗れのコートを着た大男が()()()()()()()()()()、持っていた大鉈を振り下ろすも間一髪でそれを回避した。

 

「っ⁉︎何なのコイツは⁉︎」

 

「咎人…見つけたり…」

 

「(喋った?M4を見て咎人と言ったが…それより、さっきの壁抜け…話に聞くアブノーマルってやつか?)キャロル、こいつと似た反応はいくつある?」

 

『待ってくれ……およそ五十はいる!全員気をつけろ‼︎妙な奴がいるぞ‼︎』

 

 

Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!

 

異常存在(アブノーマル):血染め男(ブラッディマン)

 

による収容違反が確認されました

 

Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!  Emergency!!! Containment breach!!!!

 


 

「この赤ペイントのパラデウス兵…強化個体でしょうね、やたら硬いうえに機動性が高いです。弱体化パッチはないと思った方がいいでしょう!」

 

「オマケにストレリティにも偏差障壁がついてるし、私はどうしろってんだよ畜生!」

 

「でも強度は通常のロデレロくらいだから頑張れば大丈夫ですよ」

 

「戦闘型のアンタが言うなッ!しかもマスターの報告だと妙なのもいるみたいだし、多分イレギュラーがまだ来るよ⁉︎」

 

都市部に侵入したオートスコアラーとルージュだが、都市部に現れたウーランを除くすべてのパラデウス兵は両肩や腕を赤く染めており、先述したように強化がされており行手を阻んでおり、その厄介さにトゥーマーンが喚くもすぐに強化パラデウス兵に突貫していった。

 


 

タリン市内、その奥の花畑にて他のアイソマーより一回り成長しているアイソマーが佇んでいた。先ほどから発生している爆発音や咆哮に姉妹たちは怯えてるが、彼女自身はこれを自分らを救ってくれる何かではと直感し、姉妹たちに一言告げてその方角へ向かっていった。

 

(お父様や【あの花】にも選ばれなかった私…今ここを攻撃してる者たちは、私や妹たちを救ってくれるのでしょうか…?)




バレットの装備の元ネタは同名の同人STGの機体です。百均の体験版遊びまくりました。

ハイ、イレギュラーとしてガンアーク弐式様より血染め男(ブラッディマン)と自前のイレギュラーとして強化パラデウス兵です。
ブラッディマンの見た目は静丘の三角様をイメージしていただければと。

ブラッディマンの方は向こう曰く、素手でも人形の首引っこ抜けるくらいパワーがあり、赤ゴリアテと同じく基本避けたほうがいい相手です。(向こうから来ないとは言ってない)
彼らの優先目標はM4であり、それに味方するものも攻撃対象です。また、耐久度は拳銃弾が効くくらい脆いですが、連絡線が無事な限りリスポしてくるのでご注意ください。

強化パラデウス兵は単純に戦闘力が向上し、ストラリティにも偏差障壁がついてます。ちなみに肩とか腕とか赤く塗ってるけどむせません。

最後に、誰が強化をしたかというヒントを挙げると連中がクローン技術を持ってることと、リヴァイルの遺体の処理が不明ということを教えます。


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Code-144 【反抗期】-非業の少女たち

アイソマーの真実を知った時、彼ら彼女らは何を思うのか…


アイソマーの何名かを救出したというランページゴーストらの通信を受けるも、リヴァイルとAR小隊はそれを喜ばしく思う余裕はなかった。というのも今この間にも例の大男からの斬撃を必死に回避しているからであり、攻撃こそ効いてはいるがいつぞやのキノコ男ほどではないがすぐに再生してくるため手を焼いていた。

すると、何かが高速で通り過ぎていき、その直後大男は手足を切り落とされて地に倒れていた。当然大男は再生して立ち上がろうとするがその都度同じ目に遭い足止めされていた。

 

「ッ⁉︎何だ今のは?」

 

《カメラで捉えたわ。…あれは、蛮族戦士ね》

 

「あー、なるほど…」

 

OGASの言葉に納得した直後、万能者から通信が入り、総合するとやはりあの攻撃は蛮族戦士によるものであることと、パラデウスが証拠隠滅にシフトして爆撃機を向かわせてるとのことであった。爆撃、と聞いてリヴァイルは眉をピクリと跳ね上げ、万能者にある事を聞いた。

 

「万能者、その爆撃機…普通の爆撃機か?」

 

《いや…恐らく核を積んでる可能性が高いな》

 

「そうか…リバイバー、上空から花畑は見えるか?」

 

《あぁ見えてるぞ!見る限り辺り一面に群生してるぞ‼︎ここが吹っ飛んだらとんでもない事になるぞ⁉︎》

 

「了解…リバイバー、今すぐ爆撃機に向かって一機残らず撃ち落とせ。核を積んでるやつはそんなにない筈だ、落とされるまえに無力化しろ」

 

言われるまでもない、とリバイバーが応じて通信を切るとリヴァイルは歯軋りをし空を睨んでいた。

 

(ウィリアムめ、ここが吹っ飛べば第二の北蘭島事件だぞ…!そんな事、私が許すものか‼︎恐らく防衛線の生き残りもアイソマーの始末に動いてると見ていい、急がなければ)

 

幸い、大男はM4の処刑よりも先ほどからそれを妨害している蛮族戦士を始末したほうがいいと判断したのか、口惜しそうに兜越しにこちらを睨むと彼を探しに移動していき、一行は先を急いだ。

 

「しっかし、あの大男…アブノーマルだと思うが、どう対処すれば…?」

 

「前にアラマキのお爺ちゃんが言ってたけど、アブノーマルってのは連絡線っていうのが無くなるといなくなるみたいだよ!」

 

「連絡線の在処ですが、あまり離れ過ぎたところには置けないそうです。故にこのタリンの何処かにあるかと」

 

「ふむ…なるほど。となると、それが置いてある場所は安易に爆撃できない花畑にある可能性が高いな。ん?となるとパラデウスの爆撃は奴らは知らない…?もしくはそれ込みでの契約なのか?」

 

アブノーマルの対処について情報を話しているうちに、少し前に送られた都市部内のアイソマーの位置が近くにいることに気づき、またそれと同時にパラデウス兵が近くにいることを知り急いで現場に駆けつけると複数のストレリツィとロデレロがアイソマーが潜んでるであろう建物に向けて銃撃を加えていたのであった。

 

「…ッ⁉︎マーキュラス‼︎」

 

「はい、お姉さま‼︎」

 

ニモジンとマーキュラスが真っ先に向かっていき、腕部の触手を打ちだし何体かを貫き、壁に叩きつけ破壊すると残りをマーキュラスは触手によるオールレンジで、ニモジンは自身の能力を使い凍結させていき、残った僅かな兵はリヴァイルやAR小隊の銃撃にて撃破された。

建物内に突入した彼らが見たのは撃たれて倒れ伏したアイソマー達の遺体であり、間に合わなかったかと表情を歪ませるが奥の方で物音が聞こえ、向かうと8名のアイソマーが怯えながら身を寄せ合っていた。

 

「君たち、大丈夫かい?」

 

「…リヴァイル、さん?それに…ニモジンお姉さまに、マーキュラスお姉さま?」

 

「どうして、ここに…?それに、何でお父様の兵隊が、私たちを…?」

 

戸惑いながら質問するアイソマー達にどうすべきか悩んだものの、正直にこれまでの経緯を話すことにし、簡潔に話すとアイソマー達は絶望したような顔を浮かべ泣き始め、自分達のことを話し始めた。どうやらここに咲いている優曇華は全て彼女達がその性質を理解した上で栽培しているものであり、何故そのようなことをしているか尋ねたところ、あまりにも重く、哀しい理由であった。

 

優曇華の開花時に放出される大量の崩壊液、それを浴びる事による死をもって自身を苛む苦痛から解放される目論みがあり、例え生き残ったとしてもそれはその個体が崩壊液耐性を持っていることとなり、父であるウィリアムが必要として自分らを迎えに来ると信じて栽培を続けていたのであった。

 

しかし、リヴァイルらがここに来た経緯を聞いたことでそれが為されないことを知ったのであった。適合者であったニモジンやマーキュラスが戦闘不能となるやいなや切り捨て、今は証拠隠滅の為に兵を差し向け自分らを殺そうとするウィリアムの所業を聞き、自分らはもう二度と彼に愛されず、終わらぬ苦痛を味わうことになると悟り、彼女達は絶望の淵に立たされていたのであった。

 

「目的を達成すれば、お父様はまた愛してくれる…そう信じて、ずっと痛いのを我慢してたのに…その結果がこれなんて…!」

 

「何でなのッ⁉︎何でこんなに苦しまなくちゃいけないの‼︎産まれなきゃ良かった…!苦しむだけの生命(いのち)なら、最初から…‼︎」

 

「私たちは、何のために…!」

 

アイソマー達の慟哭を聞き、AR小隊は何と声をかけたらいいかわからず、ただここまでの仕打ちをするパラデウスに対する怒りのみを燃やしていた。また、情報共有を兼ねて優曇華の栽培理由の辺りから彼女達の声を通信にて他のメンバーに聞かせており、その全員が彼女達の悲惨な境遇とパラデウスの外道さを知ることとなった。

 

「産まれなきゃ良かった?そう思うのは君らが苦しみしか知らないからだ。私たちはその苦しみから生きて解放させるためにここに来たのだよ」

 

ポツリと話すリヴァイルにアイソマー達は耳を傾ける。

 

「君らのその苦痛は理論上、ある程度技術があれば誰だって取り除けるほどの簡単なものだ。ここから救い出した後すぐに治療しておこう。そうしたら君らにこの世界を存分に教えよう。苦しいだけじゃない、楽しい事を識ってもらう。そうして、産まれてきて良かったと、生きてて良かったと心から思わせてやる。…だから、もう少しだけ我慢してくれるか?」

 

優しい笑みを浮かべて彼女達の頭をリヴァイルが撫でると、アイソマー達を苛む苦痛のうち、頭痛が少し和らいだような感覚を覚え、彼女達は首を傾げた。

 

(OGAS、()()()()()()?)

 

《ええ。8人分、キッチリ取り込んだわ。それに伴って処理能力が上がった感覚がするわ》

 

『共食い』。それがOGASの真価であり、他のOGASを取り込む事で自身を大きく成長させるのが彼女の本質であり、アイソマー達の頭痛を緩和した種明かしである。彼女達にも適合率が低いながらもOGASが組み込まれており、それが頭痛を起こしてると考えたリヴァイルは頭痛の原因を取り除くと同時に自身のOGASを成長させる目的で参戦したのであった。無論、アイソマー達の救出が最優先ではあるが。

だがこの行為が彼女達の信頼を得ることになり、リヴァイルの言葉に従うと比較的安全な場所に移動させ彼女達の周りにF.E.F.Gを展開させてバリアを張って位置情報を周囲に伝えると花畑へと向かっていった。

 

(このまま救出と並行してアイソマーのOGASを取り込んで私のOGASを成長させる…そうすれば万が一何かイレギュラーがきても成長させた彼女の相手ではない筈だ…。ゆくゆくはM4のそれも取り込ませたいが、今はその時じゃない。然るべき時が来たらそうするか…)

 

だが、その『然るべき時』が目前まで迫っている事をまだ彼は知る由も無かった。

 


 

一方、リバイバーは爆撃機の迎撃に向かっていたのだが、途中で敵の反応を見つけ急行するとこちらのヨルハによく似た無人機が3機、地上のアイソマー達を狙っているのが見えた。

 

(ん?何故ヨルハが敵に?アイツの事だ、知ってるなら教えてる筈…国連にスパイがいてデータを盗んだ感じか?まぁいい。とにかく助けなきゃな!)

 

リバイバーはヨルハ擬きに向けレーザーを照射する。2機は回避できずにそのまま撃墜されるが、こちらに気づいた1機が回避して迫ってくるも散弾状に変えたレーザーであっさりと撃ち落とされた。

 

「え⁉︎何?味方⁉︎」

 

「でもあんなの知らないよ‼︎」

 

「さっきから何が起こってるのよ…⁉︎」

 

アイソマー達は何がなんだかわかっておらずパニックに陥っていた。リバイバーはまずは彼女達を落ち使えるため、すぅーと息を吸い込むと

 

狼狽えるなッ‼︎俺はパラデウスじゃないがお前さんらの味方だ!救いを望み、さっきみたいな奴らに殺されたくなければあっちに向かえ!…いいな?」

 

リバイバーの剣幕に驚いたのか、はたまた彼にリヴァイルの面影を見たのかはわからないが、彼女達は指示に従い救出部隊のいる方は駆けていき、リバイバーはその事を伝えると再び爆撃機に向かい飛んでいった。

 

(とはいえ、核をどうするか…いっそハッキングすればいいが、ある程度セキュリティはあるだろうし、戦闘して彼女達を守りながらじゃキツいな…誰かやってくれれば良いが、ないものねだりはしても仕方ない…核持ってない奴だけでも潰すか)




・メインカラーが黒から白(銀)になった元敵
・知人に鎌使い、鋸使い、有能だけどイカれてる科学者がいる
・しかもその科学者が連れてるのが共食いのヤベー奴
・何かと面倒見がいい
・今回のセリフ

……リバイバーは黒グニールになって国際中継で全裸になるのかな?
それはともかく、とりあえずリバイバーは核持ちの対処は保留のまま爆撃機迎撃に向かってる感じです。
アイソマーの放送については自由に使ってくだせえ。


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Code-145【反抗期】-不確定要素

色々と情報収集してくれてるのでちょいと利用します。

それと、こちらのイレギュラーを新たに投入させます。


連絡線の破壊に向けて花畑へ向かいながらも、その道中で何人かのアイソマーを救出し、その都度彼女達のOGASを取り込ませ続け、リヴァイルのOGASは初めとは比べ物にならないほどの成長を遂げていたのであった。

道中ギルヴァより他の個体より一回り成長しているアイソマーを発見、通信機を渡したとの報告を聞いたリヴァイル達は急いでその場所へと向かっていくなか、リヴァイルはその成長したアイソマーについて考えていた、

 

(一回り成長している?彼女達の目的を考えると妙だな……いや、まさか⁉︎だとすれば…!)

 

何かに気がついたリヴァイルは急いでキャロルに通信を繋げた。

 

「キャロル、今からギルヴァが見つけたというアイソマーが所持してる通信機の周波数を送るから彼女をマークしてくれ。彼女の周りに敵がいないかも頼む」

 

《構わないが…そのアイソマーに何かあるのか?》

 

「彼女達は自殺のために開花時に崩壊液を放出する優曇華を咲かせている。ならばそこまで成長せずに死ぬ筈だ。なのにそのアイソマーは成長している…となれば答えは一つしかないだろう…」

 

《ッ⁉︎まさか、そのアイソマーは…‼︎》

 

「間違いない。()()()()()()()()()()()()()()。パラデウス共はそれを知らずに棄てたんだろうが、もし連中がそれを知ったら不味いことになる‼︎だから私たちがそこに向かうからナビゲートを頼む!」

 

《わかった……件のアイソマーの場所を確認した!そこまで離れてはいないから急いで向かってくれ!》

 

キャロルから示された座標を確認し移動を始めてから程なくして、列車の確保に向かっていたLAFIと別地点を制圧したモーラト部隊よりパラデウスのデータが転送され、リヴァイルはOGASにそのデータを調べさせていた。

 

「何か今回のことに繋がりそうなのはありそうか?」

 

《少しまってて…!あったわ、これが気になるわね》

 

OGASが提示したのは恐らくパラデウスの会計士と思われる人間が綴った愚痴のようなものであり、『ヘカトンケイル』という対規格外勢力用兵器は性能がかなり高いものの、それの維持費もかなり高いため、このままだと兵力の補充やネイトの改造施術に影響が出るので見合った成果を出してほしいといったものであった。

 

そしてもう一つは報告書であり、推定C級のE.L.I.Dを2体生捕りに成功し、パラデウス兵に改造できないか試そうとしたが、元々備わっている擬態能力が失われる可能性があるため、改造はせずに敵対勢力への無差別攻撃、及びそのE.L.I.Dの討伐を理由とした核攻撃に転用できないか進言するとのことであった。

 

「ふむ…なるほど。どうりで妙に雑な戦闘をするわけだ。これらを投入して口封じと殲滅をするってんなら納得だな。とにかく、これを伝えたほうがいいな」

 

すぐにリヴァイルはこの事をキャロル、ダンタリオン、LAFIに連絡し警戒するよう伝えた。

 

《ふむ…ヘカトンケイルなる兵器にE.L.I.Dか…》

 

《今のところそのような反応は見当たらぬが、見つけたらすぐに連絡しておくぞ》

 

《後者は生き物ですから電子戦は無理ですが、前者は何とかしてみます》

 

「頼む。他の者にも伝えてくれ。私は引き続き例の彼女の接触を優先する」

 


 

場所は変わり、リバイバーとノア、ネージュと共に爆撃機を撃墜している空域とは別の空域にてステルス輸送機がコンテナを二つ投下した。落下したコンテナは自動で開くが中からは何も現れないように見えたが、不気味な足音が聞こえると足跡のみが地面に現れてそのまま何処かへ移動していった。

 


 

救出活動を続けていたオートスコアラーの面々は新たなアイソマーを見つけ、保護しようとした時であった。突然アイソマー達の首が何かに撥ね飛ばされたのであった。何事かと身構える彼女達の目の前の空間からサソリのような尾を生やした怪物が姿を現した。

 

「コイツ、報告にあったE.L.I.D⁉︎擬態もできるの⁉︎」

 

「ジャウカーン、下手に近寄らないで!汚染されますよ‼︎」

 

一方で、もう一体のE.L.I.Dは得物を求めて都市部を渡り歩き、アイソマーやパラデウス兵を無差別に攻撃していた。異変はすぐに感じ取られ、至急発見し感染に気をつけつつ討伐せよとの指令が入ったのであった。




ヘカトンケイルですが、試作強化型アサルト様の案件ですので向こうで出るまではこちらは待機します。ただ、貰った情報をもとにいるかも的な情報は共有します。

推定C級E.L.I.D: ぶっちゃけるとメトロイドドレッドのコルピウスに電撃による遠距離攻撃を追加したモンです。素早い上に、崩壊液塗れなので下手に近寄ると汚染されるのでご注意ください。一体はオートスコアラーらのとこに、もう一体は都市部のどこかにあるのでお好きにどうぞ。


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Code-146【反抗期】-鼓草

鼓草: タンポポの別名。
花言葉は『愛の信託』、『誠実』、『幸せ』、そして『別離』


E.L.I.Dの一体を撃破、残るもう一体も蛮族戦士らが捕捉したとの報告を受けて間も無く、アブノーマルが突如行動を活性化、さらにはヘカトンケイルと思われる大型兵器の乱入とFANNIESが似たような大型兵器を連れて援軍に来たと聞き、リヴァイルは苦笑いを浮かべていた。

 

「大型とは知ってたがあんなデカいとは…誰だあんな馬鹿と冗談が総動員したようなモン考えたのは?しかも私抜きで」

 

「てことは、弱体化パッチはないと見ていいわね?」

 

「そうだな。ついでにハッキングも試したが、かなり時間が掛かる。少なくとも【人間】じゃ無理だな」

 

《今の私でも六時間は掛かるわ。その頃には全部終わってるわね》

 

最後の一言をさりげなく全員に連絡し、そこまで整理した彼らは例のアイソマーの保護の優先を続行し、先を急ぐが時折大型兵器同士の戦いの余波で瓦礫やら流れ弾やらが降り注ぎ、花畑が近いこともありかなり危険な状況となっていた。

 

「このままじゃこっちより先に彼女の方がやられる…キャロル、あとどれくらいの距離だ?」

 

《もう少しだ!このまま真っ直ぐいけば辿り着く!》

 

「了解!」

 

一行は先を急ぎ向かっていくと花畑へと辿り着き、視線の先に一回り成長したアイソマーがこちらに向かうのが見え、リヴァイルはコクピットから身を乗り出すと、相手のアイソマーは驚いた表情をしていた。

 

「え、うそ…?リヴァイルさん…?」

 

「何度も他の子らにもその反応をされたな…まぁ流石に死んだって言われた人間に会えばそうなるか…」

 

「あのっ!私のこと、覚えてますか?よく私に植物図鑑を読ませてくれましたよね…!」

 

「植物図鑑……っ⁉︎まさかキミ、私によく懐いてたあのネイトかい?」

 

「はい…!また会えて良かった…!」

 

【information: リヴァイル、M4A1、失格異性体の接触を達成。これ以降、敗北条件に各三名の死亡、戦闘不能、戦線離脱を除外】

 


 

上空で新型部隊の襲撃で足止めを受けているリバイバーは何機かを撃墜したところで敵の空中戦闘能力が自身のそれをベースにしていることに気がついた。

 

(ま、俺がリヴァイルじゃねえかって向こうから警戒されてたなら戦闘能力を視る機会なんて幾らでもあったから模倣されるのは驚かないが…)

 

リバイバーが顔を向ければ万能者はともかく、パワードスーツを纏ったノアやリヴァイアサンという大型機動兵器に乗ったネージュと名乗る人物が多少手間取ってるものの、次々と新型機を撃ち落とすのが見えた。

 

(参考にする相手、間違えてるよな?おおかた、彼女達の相手はあのデカブツがする予定だったんだろうが…)

 

だとしてもやられるわけにはいかないが、とすれ違いざまに新型機を切り裂き撃破するとリバイバーは他の三人に指示を出した。

 

「三人共、ここは俺が引き留めるから他の援護に行け‼︎」

 

「ハァ⁉︎まだ七機いるぞ!大丈夫かよ⁉︎」

 

「俺を甘くみるなノアの旦那よぉ!強くなってるのはそっちだけじゃないんだぜ?」

 

「……わかった。死ぬなよ?」

 

そういいノア達三名は他の救援に向かっていく。当然それをさせまいと追撃する新型機をリバイバーはレーザーにて牽制して足留めする。

 

「おっと、それ以上先には行かせないからな?」

 

リバイバーが新型機にそう言うと新型機らは一斉にリバイバーに向けてレーザーガトリングによる弾幕を殺到させる。七機分ということもあり回避が困難なほどに濃密な弾幕をリバイバーは避けずにF.E.F.Gを展開して弾幕を防ぎ、新型機に向けて突貫していった。

 

(これが俺の本懐ッ‼︎自身は電磁フィールドによる圧倒的な防御をしつつ、相手を一方的に撃滅する!そうだよ、俺らに辛酸を与えたPawnらやキノコ男と戦術的には同じなんだよッ‼︎それをする前に攻撃手段を潰されてたがな!)

 

大規模作戦の度に改修を加え続けるも、その都度不意打ちやあまりに早すぎる攻撃により防ぐ前にダメージを負ってしまい、半ばお荷物となっていたF.E.F.Gだが、殆どダメージを受けていなかった今作戦では大いにその実力を発揮する事となった。

新型機の弾幕を一切通さず、逆にリバイバーのレーザーやレールガンに撃ち抜かれ、一機、また一機と数を減らしていくと向こうは物理的に突破する事を選んだのか、二機がスパイク付きの大型シールドによるタックルを同時に行い、電磁フィールドに接触するが、ほんの僅かに歪ませたのみに過ぎず、至近距離からの散弾状のレーザーに撃たれて爆散していった。

 

「オラどうしたぁ⁉︎そんなもんか?それとも、使ってなかったから防御能力のデータが取れなかったかぁ?」

 

流石に分が悪いと感じたのか、残った三機は撤退しようとするが、リバイバーはテレポートを使い先回りをすると二機をレーザーブレードで突き刺し沈黙させると、残る一機に銃口を向けた。

 

「これで終いだ。さて、お前さんはせめてデータだけでも送信して次に活かそうとしてるんだろうがそうはさせないぜ……どうだ、LAFI?」

 

《はい。事前の連絡通り、既にその新型機をハッキングしてリバイバーさん達と新型機が接触してから今までの記録を全て消去済みです。ちなみに、その新型機はスプリガンというらしいですよ》

 

リバイバーはデータ招集による敵の成長を危惧し、一人で足留めする時に端末でLAFIと連絡を取り、ハッキングの依頼をしていたのであった。

 

「そうか、ご苦労さん。じゃあスプリガンとやら。足留めもできず、データも取れずでお仲間の役に立てなくてご愁傷様」

 

リバイバーは小馬鹿にしたような笑みで残る一機を撃墜させると味方の救援に向かっていくのであった。

 


 

「なるほど…そういうことでしたか…」

 

「キミらがウィリアムをどう想っても、奴は迎えにいくどころか、あまつさえ自己の保身のためにキミらを殺そうとしてる。そうさせないために私たちは来たんだ。早速他の姉妹の場所を教えてくれ。すぐに助けにいこう」

 

リヴァイルの説明を聞き悲痛な顔を浮かべるそのアイソマーだが、すぐに気持ちを切り替え、リヴァイルの言葉に頷いた。

 

「…わかりました。ちなみに、お父様に私を渡すことで妹たちを救うことはできますか?」

 

「無理だな。奴が必要なのは崩壊液耐性を持ったキミだけで、他の姉妹たちは用済みとして処分されるのがオチだ」

 

「そう、ですか…。私たちは、二度とお父様に愛して貰えないのですね…あの、リヴァイルさん?治療が終わったら、貴方のところで…⁉︎」

 

何かを頼もうとしたアイソマーの視界にはリヴァイルに向けて銃口を向けるストレリティが見えていたのであった。

 

「リヴァイルさんッ!」

 

咄嗟に彼女はリヴァイルを突き飛ばす。その直後、ストレリティのレーザーが彼女を撃ち抜いたのであった。

 

「なッ⁉︎」

 

「コイツ‼︎」

 

すぐにニモジンがストレリティを撃破し、リヴァイルは撃たれた彼女を抱き止めた。

 

「おい、おいッ‼︎しっかりしろ‼︎」

 

「うっ……リヴァイル、さん…大丈夫、ですか?」

 

「私は平気だ!クソ!治れ治れ!」

 

すぐにリヴァイルは万一のためにボディに搭載してた崩壊液技術で治療をするが、急所を撃ち抜かれており、正直助かりそうにない状態であった。

 

「リヴァイル…さん…。もう、いいです…。自分でもダメだと、わかってます…」

 

「冗談を言うなッ!私はキミたちが苦しむことになるとわかってて除染のためと言い聞かせて奴らを放置した!だから私はキミらを助けなきゃならないんだッ!こんなことで死なせるか、死なせるかよ!」

 

「その気持ちだけで…充分、ですよ…貴方は私たちを想ってくれた…。それだけで、いいんです…」

 

半狂乱になりながら叫ぶリヴァイルに彼女は優しく微笑みかけ、頬を撫でていた。

 

「リヴァイルさん…貴方がお父様のやってる事を止めるのならば、それは構いません。それで、もし…私の体が必要なら、『使って』ください…」

 

「ッ⁉︎それは…!」

 

彼女の言いたいことはすぐに理解できた。だが、『ソレ』を行うということは彼女の遺体を利用することになるため、リヴァイルは躊躇っていた。その様子を察した彼女は彼に再び声をかけた。

 

「貴方は優しいのですね…でも、気にしないでください。貴方の役に立てるなら、喜んで協力します…」

 

「……!わかった、その頼みを聞き入れよう。その代わり、私は絶対にキミを他の者達の手に渡らせないことを誓おう」

 

「ありがとう、ございます……不思議です、こんな仕打ちを受けてもなお、お父様を憎めないのです…どんな形であれ、私たちをこの世に生まれさせたからでしょうか…?ただ、何で…私たちをこんな風に扱われるのか、聞きたかった…」

 

そういい、彼女は事切れた。リヴァイルはしばらく彼女の遺体を抱き止めると、M4に顔を向けた。

 

「…M4。今からやる事に協力してくれ」

 

「何をするんですか?」

 

「キミのOGASを私のOGASに取り込ませたあと、彼女に移す。ついでに周辺のアイソマーのOGASも取り込ませる。そうすれば、成長したOGASは肉体を手に入れ、より自由にその力を発揮できる。今のこの状況を覆せることも充分に可能になる」

 

「っ! 少し、まっててください」

 

すぐにM4は自身のOGASに問いかけた。

 

(どうする?彼の提案を受けると貴女は消える事になるけど…)

 

《別に構わないわ。それでルニシアの助けになるのなら》

 

(そう…今までありがとう)

 

《どういたしまして》

 

「…わかりました。すぐ始めてください」

 

「了解。始めてくれOGAS」

 

その直後、M4は自身のOGASがいなくなる感覚を覚え、取り込みは完了した。そして、OGASは倒れ伏した彼女の遺体に身を移し始めたのであった。

 


 

リヴァイルの会話を聞いていたキャロルはマップ上に映されたアイソマーの反応が一つ消えたのをみて顔を歪ませたが直後に消えたはずのその反応が再び現れたのを見て複雑な顔を浮かべたのであった。

 

「そうか…彼女もある意味、こちらと同じ存在となったか…」

 


 

再び目を覚ましたアイソマー、もといOGASは体を起こすと自分の感覚を確かめるように手を開いたり閉じたりしていた。

 

「…上手くいきましたね。これが、現実の身体…!それで、リヴァイル。私は何と名乗れば良いのでしょうか?OGASと名乗るのはアレでしょうし…」

 

その問いにリヴァイルは少し考えたあと、生前の彼女が好きだった花の名前を思い出した。

 

「ならキミは……

 

 

 

 

 

 

『ダンドリー』。そう名乗るといい」

 

 

「…わかりました。では手始めにここらのパラデウス兵を排除しましょう」

 

そう言うと彼女…ダンドリーは手を空にかざすとすぐにキャロルから通信が入った。

 

《キャロルより連絡!花畑にいたパラデウス兵およそ50体ほどが急に味方の反応を出したがどうなってる⁉︎》

 

「なに、私が彼らをハッキングして書き換えたまでですよ。このまま彼らに連絡線を捜索させます。あ、私はダンドリーといいます。以後お見知り置きを」

 

あの一瞬で、と驚くリヴァイル達だが、これでイレギュラー続きの状況に光が差してきたことを確信するのであった。




リバイバー「俺は噛ませじゃないんだぜ?(切実)」

そして公式チート、ダンドリー爆誕。

正直、彼女をどうするか悩みましたが、原作と同じようにダンドリーとなってもらいました。

残るは引き続き救出活動とイレギュラーの排除のみなので、皆さん頑張ってください!


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Code-147【反抗期】-救助開始

ホントすみません…仕事が多忙で少しメンタルやられまして…

少し短いですが、本編をどうぞ


OGAS改めてダンドリーの覚醒とほぼ時を同じくしてランページゴーストのアナが蛮族戦士と協力しもう一体のE.L.I.Dを撃破、その直後ヘカトンケイルの防御を潜り抜けて腕を全て斬り落とし、それと同時に敵全体の動きが著しく低下する現象が発生、さらにはゲーガーから例のアブノーマルの連絡線があると思われる建物を発見し対処にあたり、オマケとばかりにLAFIよりヘカトンケイルのシステムをほぼ潰した挙句、向こうの指揮官が『F91』に酷似したパワードスーツで武装の大部分を潰したと聞き、リヴァイルが思わず口から出た言葉は

 

詰み(チェック)、としか言いようがないなコレ。向こうがあんなトンチキを出すのも予想外だし、それをこっちが半壊に追い込んでるのも予想外だね。悪魔や異界の力はこうもヒトを圧倒するのか…。まぁ、所業に関しては向かうのが悪魔と呼ぶにふさわしいがな」

 

ヘカトンケイルや連絡線の破壊は彼ら彼女らに任せることにし、大幅に数を減らしているもののそれなりに存在するパラデウス兵や対空兵器を排除しLZを確保してアイソマー達をヘリに収容し保護する方針を取りリヴァイルとAR小隊は行動を開始した。

といってもやる事といえば範囲内の敵をダンドリーが捕捉し制御権を奪って自壊させたり、アイソマー達を保護しながら彼女らのOGASを取り込みさらなる強化を施すといった単純なものであった。

 

そしてスプリガンを撃滅させ、援護に向かおうとしていたリバイバーを呼び寄せ、上空から対空兵器を撃破しつつ、辺りの地面を薙ぎ払って強引に着陸地点を用意させるよう伝えると彼は早速複数の対空兵器を破壊して回っていた。

 

「まったく、人使いの荒いオリジナルだこと…」

 

《仕方ないだろう、下手にキミがヘカトンケイルの撃破に向かうと、キミの不幸体質からして巻き添えを喰らう恐れがあるし、元々この作戦は彼女達の救出が最優先事項だからな》

 

「不幸体質は余計だっつの。…ヨシ、これでこの辺りのアイソマーの保護地点からヘリ待機場までのルート上の対空兵器は全て破壊した。着陸場も確保したしすぐ連絡してくれ」

 

《了解。念のためそのままヘリの警護を頼む》

 


 

「前線部隊よりLZ確保の連絡が入った!これより我々第二部隊は輸送部隊とともに現場へ急行、アイソマーの救助と搬送の支援を行う!」

 

ライの声を合図にDG小隊第二部隊はヘリに乗り込み、移動を開始し始める。幸いにも輸送部隊を強襲してくる部隊は現れず、かといってイレギュラーが現れる可能性もあるため長らく緊張状態となっていた彼らにとってこの知らせは吉報であった。

 

「今リバイバーがこちらに向かっているそうだ、それとピポグリフにも連絡を頼む」

 

「了解。敵の動きが鈍ってるこの状況なら、あの巨大兵器の流れ弾にさえ気をつければ大丈夫ですね」

 

「それはそうだが、あのアブノーマルというのが動きを活性化する可能性もある。油断するな」

 

十数分後、輸送部隊は各保護地点に到着し、合流したリバイバーやピポグリフの警護の下アイソマー達の保護活動を開始し始めた。

一方で、バレット達は連絡線の破壊に動き出し、バルカンの援護に向かったスミスを除いた三人は報告にあった建物へと向かっていった。その道中、同じく連絡線の破壊に動いていたS07の面々と合流し、バレットはM16A4とSDMRと共に連絡線の破壊に、レストとウェイターは残りの面々と共に進路確保及び撹乱を行なっていた。

建物の近くにて強化型ストラリティの部隊が行く手を阻んでおり、バレットが前に出て神威の雷撃モードを起動、敵全員をロックオンし電撃を加えるとストラリティらは爆散していった。

 

「ヨシ、このまま建物に…ッ⁉︎これは…!」

 

ヘルメットの割れたストラリティの中身を見たバレットは驚愕の表情を浮かべた。

一方、リヴァイル達も撃破した強化兵の残骸を見て似たような反応を浮かべていた。

 

「…どーりで個体差がないわけだ。『私の遺体からクローンを造って発症させたのを素材にする』とはウィリアムめ、私への当てつけか…‼︎調整したのも恐らくクローンの私にやらせたんだろうな…記憶は継げなくとも、才能はあるからな…」

 

ストラリティを含む強化型パラデウス兵の中身、それは発症による人相の変化はあるがどれも()()()()()()()()()()()()()()()()、それから導き出された答えは彼の遺体を利用したクローンを発症させ、利用することであった。あまりにも人道を外した行為に怒りを通り越して呆れの表情をリヴァイルは浮かべていた。

 

「あのシスコン野郎…覚悟しておけ…!もう救助は始まっているし、あらかた証拠は抑えた。それに虎の子のヘカトンケイルはほぼ死に体だ…必ずお前達を白日の元に晒して地獄に落としてやる…‼︎」

 

リヴァイルは改めて各メンバーに敵殲滅を言い渡すと敵残存兵の全滅に動き出した。




ハイ、アイソマーの救助が本格的に始まりました。
各所に援軍に向かわせたのでお好きに絡ませてください。

ちなみに警戒していますが、もうイレギュラーは登場しませんので、みなさまどうぞやっちゃってくだせぇ。


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Code-148 【反抗期】-保護

リアルが落ち着いてきたのでようやくまともに執筆できます…遅れて本当にすみません。
以下の話を参考にしています。

https://syosetu.org/novel/267132/16.html

https://syosetu.org/novel/207272/60.html

https://syosetu.org/novel/191561/245.html


ヘカトンケイルによる自爆を万能者が防ぎ、未遂に終わらせパラデウスの残存兵も徐々にその数を減らしていき、また救助活動も順調に進んでおり残る脅威はアブノーマルのみとなっていた。

順調に残存兵を片付けていたリヴァイルにシャマール指揮官から連絡が入りリヴァイルが通信機を手に取った。

 

「どうした?何か問題か?」

 

《いや、違う。アイソマー達を三人ほど、こちらの基地に保護しようと思うのだが、問題ないか?》

 

「……理由を聞いてもいいか?」

 

《彼女達の事情を知って、何もしないほど薄情な人間じゃない。私らに出来る全てをもって彼女のこれからをより良いものにすることを約束しよう》

 

彼女の言葉にリヴァイルはしばしの間黙っていたが、やがて威圧的な雰囲気を持って話し始めた。

 

「…自分が何を言ったかをわかっているのか?彼女らを保護する事は即ち、パラデウスに宣戦布告するも同然だ。連中は知っての通り狡猾で卑劣だ。信者を使ってそちらに常習的に自爆テロを行う可能性だってある。まぁその辺りは作戦終了後に私が彼らを世間に告発するからそんな余裕はほぼ無くなるが絶対じゃない」

 

「それに、奴らの糾弾材料としてアイソマーの事も話す、つまりは反クローン団体辺りが例え被害者であってもヒトのクローンたるアイソマーを生かしてはならないとか言う巫山戯た考えで彼女達の命を狙うかもしれない。それらから彼女達を守り、本当に幸福に出来るのか?その辺りを踏まえて改まった答えを聞かせてもらおうか」

 

口でこそそう言ってはいるが、既にリヴァイルの中ではシャマールを含めた参加メンバーは信用に足る人物らであるとしており、先ほどの問答は単なる確認であった。とはいえ、解答次第では考えを改めるつもりであったが…

 

《承知の上だ。迫る火の粉は火元ごと無くすし、彼女らが一切の危害を受けないよう努めよう》

 

まさかの即答に思わず目を丸くするが、話し方からして本気であると分かると、リヴァイルは肩を揺らして笑い出した。

 

「…フッハハハハハハ‼︎いや〜すまない。解答によるが元々その提案を受け入れるつもりだったが、まさか間髪入れずに答えるとは思わなかった!彼女達をよろしく頼むよ。いい母親になるといい」

 

《冗談はよしてくれ。保護者にはなるが、母親代わりになるつもりは…》

 

「いやわからんよ?こんな絶望的な境遇で手を差し伸べられたんだ、そのように慕われる可能性もなくはないさ。まぁともかく、今は作戦の遂行だ」

 

その後、ギルヴァらと合流しアイソマー達を預かり輸送ポイントまで送っていく途中、預かったアイソマーの一人が話しかけてきた。

 

「あの…本当にこの痛みを治してくれるのですか…?」

 

「もちろんだ。キミらのそれは義手及び義足の神経接続不良と、OGASの適合不良によるものだ。OGASはダンドリーに取り込ませて義手義足はキチンとしたものに付け替えればすぐによくなるさ。義手義足は既に作戦開始前からリバイバーが以前占領したという鉄血の工場で製造を依頼してある。住まいもだいぶ前にDG小隊が破壊した違法人形の工場跡地と周辺を利用して簡単な住まいを用意させよう。身体機能の回復には時間は掛からないだろう」

 

ちなみにそれらの費用はほぼリヴァイルの国連時代や復活後の稼ぎから捻出されている。すぐに良くなると聞き、アイソマーらの顔色は良くなっていった。

 

「…!なら、あの人たちにも早く会えるの?」

 

「経過観察もする必要があるが、そこまで時間は掛からない筈だ」

 

それを聞き嬉しそうにするアイソマーらを見てリヴァイルは彼女らが生きる希望を見つけたことに安堵すると共に、パラデウス引いてはウィリアムの確実な抹殺の決意を強くするのであった。

 


 

「M4姉ちゃんのメンタルモデルが、元は人間…⁉︎」

 

連絡線と思われる絵画から現れた大男のホログラムのような存在から発した言葉にM16A4が動揺するなか、バレットは平静を保ち神威を構えていた。

 

「そこの者は…あの女の真実を聞いて動揺しないのか…?」

 

「うちにも似たようなの(リヴァイル)がいるってのもあるが、ニモジン達を見た時から薄々そんな感じはしていたさ。そしてアイソマー達を見た時にほぼ確信したよ。あれだけ見た目が似てるんだ、アレで無関係と考える方が不自然だろう?」

 

「なるほど…なら余計に解せない…そこまで知って何故彼女の処刑を妨害する?」

 

「ペルシカが何を思ってM4を造ったかは気にはなるがそれはあとだ。しかし、お前らが何をもって彼女を咎人とするかなんてどうでもいい。そのルニシアってのが大罪を犯してるからそれを素体にしたM4も同罪とするのなら、冗談じゃない話だ。そんなモン彼女にとってとばっちりもいいところだ」

 

ある意味正論を突きつけるバレットに大男は黙って話を聞いていた。

 

「素体元の意識がある可能性もなくはないが、さっきも言ったが殺されるとわかって仲間を渡すほど腐っちゃいないし何より…お前らが属してるか従っているパラデウスのやっている事を差し置いて彼女を咎人と呼ぶのは道理が通らないだろ‼︎M16A4‼︎姉の秘密を聞いて動揺するのはわかるが、今はこのダブスタ野郎を倒すのが先だ!こっちの為に他のメンバーが足止めしてるがいつまで持つか分からん!急ぐぞ!」

 

「…ッ!ハイッ‼︎」

 

バレットの叱咤を受けM16A4は立ち直り、銃を構えSDMRもそれに倣うと大男も懐柔は無理と悟り大鉈を構えた。

 

「ならばお前達も咎人とし…処刑するまで…‼︎」




こちらも最終戦開始です。
他ちなみにのメンバーの進捗によりますが、後日談含めてあと二〜三回で終わらせる予定です。


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Code-149【反抗期】-終幕

落ち着いたと思ったらまーた仕事でトラブったよチクショウ…




援護に向かう途中、バルカンが作戦中にボディの機能不全を起こし後退したと連絡を受けたスミスは状況を鑑みて向かいたい気持ちを抑えて引き返し、道中のパラデウス兵を撃破しながら彼女に連絡を入れていた。

 

「バルカン、大丈夫か?」

 

《スミス?手足が動かないけど、今は安全な場所にいるから大丈夫…》

 

「そうか……で?()()()()()?」

 

《え?な、なんで…?》

 

「…敵の罠ならピンポイントでお前だけ狙うのは不自然だ。それだけなら半信半疑だったが、今ので確信した」

 

その言葉にバルカンはあ、と溢し、正直に白状した。どうやら未確認島の調査辺りから不調だったが、上手く隠し通してたらしい。それを聞いたスミスは深くため息をついていた。

 

「……」

 

《あの、スミス?怒ってる…?》

 

「当たり前だ。そんな大事な事隠して作戦に参加したのもそうだが、それを誰にも…俺にも相談できない事でもないのに黙ってたのがな……そんなに頼りたくないのか?」

 

《っ!いや、ちが…》

 

「とにかく、この事はあとで話そう。今は作戦に集中だ」

 

そういい通信を切り、周囲の敵を薙ぎ払った後スミスは頭を乱暴に掻いていた。

 

「…あぁは言ったが、気づいてやれなかった俺も同罪だよなぁ…」

 


 

「くっ!」

 

「どうした?我らを倒すのではないのか…?」

 

連絡線に現れたホログラム状の大男は見た目以外は他の個体と同じであり、バレットら三人を相手に立ち回っていた。三人のいずれかが隙を見て連絡線らしき絵画を破壊しようとするとすぐにそちらに向かうか大鉈を振って瓦礫を吹き飛ばして妨害をおこなっていた。

 

(このままじゃマズイ、どうすべきか…いや、復活するまでに僅かとはいえ時間がかかるのならば、倒してその隙に連絡線を破壊した方がいいか?)

 

そう考えたバレットはハンドサインで二人にその旨を伝えると立ち回りを変え、M16A4とSDMRは大男の両脚に銃弾を叩き込む。元々ヒト並の耐久性なのあり、大男の両脚は多数の銃弾に穿たれ体重を支えきれなくなりバランスを崩した。

 

「ぬぅ…!」

 

「そこぉぉ!」

 

すかさずバレットは雷刀モードに切り替え、大男の首を刎ね飛ばした。

 

「今だ二人ともッ‼︎」

 

「「やぁぁあああッ!」」

 

二人は絵画に向けて引き金を引く。何かあるのではと思っていたが絵画は見た目通りの絵画だったのか、あっという間に破壊されていった。

 


 

同刻、ランページゴーストらと交戦していた大男のリーダー格だったが、突然身体を震わせると何かを悟ったような様子を出していた。

 

「ここまでか…。咎人を裁けなかったのが無念だったが、すぐに裁けなかった我らの落ち度故、仕方あるまい…」

 

そう言うと彼は自らの得物を腹部に突き立てると身体が崩れ去り、そのまま跡形もなく消えていった。

 

「……終わった、のか?」

 

「アブノーマルを倒す、という意味ではそうでしょうね。ですがまだ残存兵とアイソマーの救助があります」

 

「なら、早いとこ動かないとな」

 

他の場所でも同様に大男達が自害したという報告を受け、残った者達はアイソマーの救助と残存パラデウス兵の掃討に動き出していた。

 

Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed

 

血染め男(ブラッディマン)の連絡線の破壊完了

異常存在(アブノーマリティ): 血染め男《ブラッディマン》の再収容が完了しました。

 

Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed Containment completed

 


 

数時間後、タリン内の敵勢力排除及び、アイソマーの救助が完了したと報告を受けたリヴァイルは状況を纏めていた。

 

(ふむ…パラデウスの攻撃で約1割のアイソマーが死亡してしまったが、これどけ助けられたのはいい意味で予想外だ。さらに、作戦内で手にした奴らの情報もどれも連中を追い詰めるに充分だ…!)

 

『リヴァイル・ウィッカーマンより全部隊へ。アイソマーの救助、感謝する。また、キミらが得た情報は彼らの悪行を晒すのに充分過ぎるものだ。これらはキミらの協力なくしては得られなかった。イレギュラーにより決して少なくない被害がでたが、これだけは言わせてくれ…本当にありがとう」

 

「キミらの行動を鑑みて、私は私自身の秘密をキミらに明かそう。私は、あの北蘭島事件を起こした少年、■■■の腹違いの弟だ。私は、世界を汚した者の弟として、この世界を戻す事をこの場に宣言しよう。その為にも、崩壊液汚染を利用して世界を乱しているパラデウスの殲滅にこれからも協力して欲しい」

 

そう話したあと、リヴァイルは作戦終了を改めて宣言したのであった。




段々とスミスの393化が進んでくなぁ…
ちなみにぃ、ドルフロ世界の南極にもオーパーツがあるんですよね…(え?)

とりあえず最後早足気味でしたが、これにて作戦の方は終了です。
あとは後日談を載せてコラボは終了ですかね。

いや〜リアルの関係でここまで長引いてすみません…


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Code-150 作戦のその後

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくおねがいします。

さて、送れましたが後日談です。


アイソマー救出作戦から数週間が経ち、リヴァイルを中心にグリフィンは内外問わず慌ただしくなっていた。作戦の際に入手したパラデウスの情報の精査をはじめ、アンジェリカを通して保安局とも連絡を取り、パラデウス信者及びシンパの一斉検挙の準備やその後起きるであろう市民の暴動や混乱の対策案の話し合い、さらにはシンパの親族であるがパラデウスとは無縁の者の保護の段取りに権力者もいるためその穴埋めなどととにかくやることが多く彼らの悪行を公表するのはまだ先ではあるが、着実に追い詰めていることは確かであった。

またその際に公表を渋っていた保安局上層部の何人かがパラデウスのスパイであったため一悶着あったりと色々起きていたのであった。

 

制圧、占領したタリンについてはP基地で行なっているサルバシオンの実験場として貸し出すことにし、汚染されてない廃都市部に関しては保護したアイソマー達の『いい思い出こそないが、先に散った姉妹たちが眠る場所で暮らしたい』という意見を汲み取り再建させて彼女らの居住区にする予定となっていた。それらのことを作戦の翌日に伝えたのだが、その際にキャロル指揮官とリヴァイルで以下のやり取りが行われていた。

 


 

《では、ありがたくここを実験場として利用させてもらう》

 

「頼む。あと…先日入手した情報で確定したんだが、カーターは過去にパラデウスとつるんでる。キミらの母親のことはパラデウスに知られてるかも知れない」

 

《なっ…⁉︎本当なのか?》

 

「恐らくな。それに伴い現在キミらの元にいて、かつて奴の部下であったエゴールについても調べたほうがいい。キミらが信頼してる人物を疑いたくはないが、今後のことを考えると彼がシロだと世間が納得できる証拠を見つけないと彼の立場は危うくなる。どちらにせよ、急いだ方がいい。それと、カーターに気づかれないように」

 

《…わかった》

 


 

(最悪、パラデウス側の正規軍や保安局が干渉してきても対策はしてあるが…最終手段に近いからな…)

 

リヴァイルは今回の作戦で入手した情報をまとめ上げた後、それらを万能者やLAFI、ダンタリオンに送信し自分やクルーガーの身に何かあったり、グリフィンそのものや今回参加したメンバーに不当な嫌疑をかけられたりした場合、直ちにその情報を彼ら彼女らの能力を用いて外部に公開させるよう伝えていた。これにより万が一があっても情報が封殺される心配はないが、その時は準備不足による世間の大規模な混乱が予想されるため、出来ればそのような事態にならないように尽力しているところである。

 

自室へ戻ったリヴァイルが扉を開けると部屋にいた()()の少女がこちらに振り向いた。一人はあの作戦で肉体を得たOGAS改めダンドリー、もう一人は万能者の手によってM4のダミー体を依代に蘇生したあの時のアイソマーであった。今は髪型を出会った時のものに変え、名前もドイツ語で綿毛を意味する『フラーム』と彼により名付けられていた。服装はダンドリーが余っていたグリフィンの女性用指揮官服、フラームがリヴァイルが研究用に着てた研究衣の何着かを貰って着用していた。(新品もあったが、本人曰くこれがいいとの事)

 

「おかえりなさいリヴァイルさん。どうでしたか?」

 

「ゼリンスキーのジジィ、クッソ頭硬くてなかなか頷かなかったが、それだけに情報見せて納得させたらあとはトントンで話が進んできている。二ヶ月以内には公表できそうだ」

 

「本当ですか…!これでようやく妹たちが報われるんですね…」

 

「でもなかなか応じなかったのって、あなたにも原因があるからでしょ?」

 

報告に安堵するフラームの傍らでダンドリーがそう話すと、リヴァイルは苦笑いを浮かべていた。どうやら保安局は保安局でパラデウスの動向を探っていたのだが、今回ので大量に情報が入り色々と慌ただしくなった結果、向こうの段取りが狂ったためあまりいい顔をされなかったのであった。また、リヴァイル自身も国連時代から保安局に、その遺跡関連の技術に対する狂気的な執着心から半ば危険人物扱いされてたのも原因の一つとも言えよう。(ちなみにアンジェリカもリヴァイルと面識があり、情報提供の際顔を合わせた時に露骨に嫌そうな顔を浮かべていた)

 

「まぁそれはいいとして、あの子たちの保護区の方はどうなってるの?」

 

「特に問題はない。インフラも安定してきてるし、警備にシャマール指揮官から貰ったF90を生産して当てている。ミッションパックもE〜G、K、Vを装備したのを2機ずつだからまず突破はされないし、その前に駆けつけられる」

 

「こっちの技術で生産できるレベルで殆ど性能が変わらないうえ、ちょっとした改造でミッションパックがグリフィン人形の規格に対応できるって、彼女とんでもないもの送ってきたわね」

 

「しかもS10基地の面々から、接収したパラデウスの兵器を文字通り魔改造したのが贈られてくるからな。それの運用はバレットらに任せるとしよう」

 

「あと、妹たちの教育や今後についてP基地の方と話すんですよね。何か手伝うことがあれば協力しますし…?どうしました?」

 

P基地の話になった途端、妙に不安そうな顔を浮かべるリヴァイルをフラームは心配すると、リヴァイルは理由を話した。

 

「いやな、向こうに向かうのは構わないのだが…あそこにはG3をはじめとしたオカルト系に縁のある存在がいるわけだか…彼女らに私が()()()()されて浄化される可能性が出てきてね…」

 

「はい?」

 

彼が話すには、制圧作戦より前になんとなくでデジタルクローンである自身がボディに入る前後でボディに変化がないか調べたところ、何故か何度測っても自身がボディに入った時に重さが『21g』増加しており、試しにコピーした自身の人格で試したがそれは重さの増加はなく、今いる彼がボディに入った時のみに増加していた。そして21gは魂の重さとされている重量でありそこから導かれる答えは…

 

「どうやら私は『自殺したリヴァイル・ウィッカーマンの遺志を継いだデジタルクローン』ではなく、『自身のデジタルクローンを依代に現世に留まっているリヴァイル・ウィッカーマン本人の幽霊』の可能性が高いんだ。まぁ、このことはあちらに話して浄化しないように頼むとしよう」

 

「……」

 

わりかしとんでもないことを何でもないように話すリヴァイルに二人はあっけに取られるが、それに負けず劣らずの現象を体験してたため、何も言わずにいたのであった。




つまるところ、彼は自分が作ったデジタルクローンに取り憑いてる幽霊です。
前にリバイバーが幽霊の声に導かれたのもそれが原因だったりします。
オカルト系に縁のある皆さまに気づかれなかったのはプラシーボ的なアレで霊的なものを消してたモンな感じです。

それと、カーターについてあちらに伝えました。流石に情報手に入れて話さないのはアレですしね。時系列的には向こうの最新話のすぐ後に繋げた感じです。

最後に、後半グダってしまいましたが、コラボに参加してくださった皆さま、お疲れ様でした‼︎


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Code-151 バルカン護衛作戦-スミスの想い

こちらではお久しぶりです。
ちょいと前のコラボ終えてから所謂燃え尽き症候群になってたり、その途中でエイティシックスにハマったりして遅れました。

さて今回はoldsnakeさまの『破壊の嵐を巻き起こせ‼︎』のコラボ、その準備回です。


作戦会議を終え、リヴァイルは今起きている状況について軽く頭を悩ませていた。

ようやく、ようやく準備が整いパラデウスの公表ができると思った矢先、ターミネーターと名乗る存在の対処が優先され後回しとなってしまったのであった。

 

無論、彼とてことの重大さは理解している。ターミネーターは単騎でS13地区を崩壊させ、バルカンを差し出すか殺さなければ本部を同様に破壊すると脅してきた。これでは公表前にこちらが滅ぼされる。故にその対応としてリヴァイルもS10地区の者たちから送られてきた兵器群を用いて参戦することに決めていた。また、迎撃のために集まったメンバーも殆ど見知った者たちであり、戦力としては充分であるが、懸念点があるとすればターミネーターは比喩抜きで不死身である点である。

 

(直接ソフォスに聞いてみたが、奴は龍の血なる物質の影響で不死性を得ており、しかもそれに由来する力も持っていると…崩壊液も未知の物質ではあるが、それとは系統が違う故に厄介だな…しかも単純な戦闘力も高い。流石()()()()()と言ったところか)

 

いつかのサメ騒動でソフォスの行動を目撃した際、彼女の持つ力が遺跡由来かどうかはさておき、この時代の物ではない事を彼は見抜いており、先程彼女にその辺りを確認したところあっさり本人が認めていたことからその疑惑は確信に変わっていた。

 

(だが妙だな…?私がこうも世界の浄化に努めており、周りもそれに尽力しているのにも関わらず、彼女たちの存在は消えていない。となれば世界が浄化されたあとに彼女らが存在したのか、または…彼女らが存在するきっかけとなる出来事がまだ発生していないからか?それがターミネーターがバルカンを始末しようとしていることに関係があるのか…)

 

そこまで考えて、ふとリヴァイルはターミネーターについてある仮定が脳裏に浮かんできた。だがその仮定ではターミネーターの行動は不可解である。しかし、合理性を捨てて感情論で考えてみると色々と辻褄が合っていった。

 

「……もしこれが事実なら、なかなかに困ったもんだ…『愛』というものは」

 


 

さて、本部が狙われている都合上、バレットら家族のいる隊のメンバーは既に家族らを別の地区に避難させておりその護衛に第二部隊を付かせているものの、自分らの居場所を守るためにもいつにも増して士気を高めていた。

そして、恋人であるバルカンの命を狙われているスミスは特に強い意志を持っていたがその反面、彼女の置かれてる状況に思い悩んでいた。

前作戦での義体の不調、その前兆にさえ本人が隠していたとはいえ気づいてやらなかった自身に負い目を感じており、より力を得るために生体義体に乗り換えた彼女に対し自分はというと、作戦に備えてリヴァイルにある程度調整した神獣鏡のみでありそれでも彼女を守るには心許ないものであった。

 

(それに…この戦いを凌いだとしても、パラデウスやpawnといった勢力が存在する以上、そいつらとの戦闘にバルカンが参加する可能性は高い…。それに戦闘の度に奴らが強くなるのは明白な以上、傷付くだけじゃ済まない事だってある…!このままじゃ俺は彼女を守りきれやしない…)

 

もちろんそれまでに強力な装備が開発される可能性もあるがそれでも、スミスの胸中は晴れなかった。過去に彼女が危険な目に遭っているときは大抵自分は側におらず、いたとしてもすぐに倒れ伏したりとあまり助けになっていない事を思い出して彼は心を痛めていた。しかし、戦闘面はともかく私生活ではかなり彼女の支えになっているのだが、それに気付かぬほど半ば憔悴していた。

 

「自信がないようなら、作戦に出ない方がこちらとしては良いのだけれど?」

 

いつの間にか後ろに現れたソフォスにそう言われるも、スミスはすぐさまそれを否定した。

 

「それとこれは別だ。恋人の命が危ないのに、助けに行かない奴がどこにいるんだよ。アンタのいう勝ち筋ってのが成功するまで時間を稼いでやるさ」

 

「…それとは別に、個人的にあなたをターミネーターと戦わせたくないのよ」

 

「あ?すぐに俺がやられるとでも?」

 

「違うわよ…まぁいいわ。私もなるべく時間を稼ぐから、頑張りなさい」

 

ソフォスはそのままどこかへ消え去り、スミスは彼女の警告とも言えるような言葉に首を傾げていた。

 

(そういや…アイツはターミネーターについて何か知ってる感じだったな…それと俺が何か関係があるのか…?それにしても、龍の血か…)

 

ターミネーターの力の根源でありソフォスも持つというそれ。もしそれがあったとして、それを使えば自分もバルカンを守れる力を得られるのかとスミスは考えたが、無いものを考えても仕方ないと思い、作戦の準備を進めるのであった。




クッソ重い感情抱き始めてるなこの彼氏…

何かに気がついたリヴァイルと警告を受けるスミス…作戦の行く末は如何に?


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Code-152 バルカン護衛作戦-その者の名は

コラボ回その2です。
以下の話と繋がっています。
https://syosetu.org/novel/180532/497.html

あと今回、主催と相談した上でかなり大胆に動かしますのでご注意を。


瞬く間に第三防衛陣地を壊滅させ、なおも侵攻を続けるターミネーターであるが、ソフォスの奇策にて10分という短時間ではあるがこちらの攻撃が通用するようになったと連絡が入り、バレットらDG小隊はターミネーターに向けて突撃を開始した。

龍の血はともかく、崩壊・逆崩壊技術に関してはそれらを無効化し、ダメージを与える神獣鏡がこちらにはある。キルモードにて攻撃すればほぼ勝負は決まるようなものであり、スミスもそれは理解していた。

 

(よしッ!射程圏に入った!あとはそのまま放てば…⁉︎)

 

スミスは何かに動揺するような仕草をしたあと、すぐに光線を放ちターミネーターに直撃するが、彼の放ったそれはキルモードではなく()()()()()()()()()()()()()()()()であった。すぐにターミネーターは背中の翼状のクローを使い離脱し、近くにいたニモジンを蹴り飛ばした。

 

「ぐぅぅ‼︎」

 

「姉様ッ⁉︎…スミス!何やってるのよ‼︎」

 

「いや…何故か知らないが、キルモードで攻撃出来なかったんだ…」

 

「電子攻撃か?」

 

「いや、ならわざわざそうする必要はない筈だ。そのままメンタルモデルを攻撃すればいいんだからな。そのまま続けてくれ、原因が掴めるかも知れない。私も砲撃して援護する」

 

S10基地から受け取った武装の一つ、ビトレイアルⅠを纏ったリヴァイルのアドバイスを聞き、一行はターミネーターを包囲し攻撃を始める。

しかし演算処理が下がったとは言えその機動性は未だに脅威的であり、バレットの神威による雷撃やリバイバーの散弾レーザーによる高速広範囲攻撃、マーキュラスの武器腕やウェイターのワイヤーのような不規則な攻撃にも対応し回避していった。また、被弾しても装甲自体が高い防御力を有してるのか大したダメージを与えられず、反撃とばかりに弾幕攻撃や格闘戦を仕掛けてきた。

 

「ッ!しまっ…」

 

「おっと、させないわよ」

 

ターミネーターの拳がバレットに迫る途中でソフォスがスキマによる空間転移で回避させた。空振り時の音からして、あのまま殴られていたら左腕が肩から吹き飛んでいただろう。

他の部隊も加わり激しい戦闘が繰り広げられる中、スミスはターミネーターに攻撃を仕掛けようとするも、キルモードでの攻撃ができず、ならばと愛銃を用いて銃撃するが手足などは狙えても、胴体や頭といった急所には何故か狙えずにいた。というよりかは、『ターミネーターに致命傷を与える事を本能的に拒絶している』ようであった。

 

(それだけじゃない…ターミネーターのあの動きのクセ…)

 

最初こそ奇妙な既視感を感じていたターミネーターの格闘時における挙動だったが、観察しているうちに段々と()()()()()()()()()()()()()()()()()になっており、スミスは困惑していたのであった。

 

「無駄な攻撃を…大人しくバルカンを差し出せばいいものを…」

 

「アナさんも言ってましたが、仲間を差し出すような真似をDG小隊である私達が行うわけないでしょう」

 

「それに、もしバルカンを見捨てたらそれこそ俺らがスミスに殺されるしな」

 

「だいたい、こんな事をしてお前のいう守りたかった人が納得するのかよ?」

 

「っ…!煩い‼︎この気持ちがお前たちにわかるものか‼︎」

 

ウェイター、バレット、レストの言葉にターミネーターは激昂し、さらに苛烈な攻撃を仕掛け、近寄る事さえ困難な状況となっていた。そんななか、何を思ったか、スミスはターミネーターのもとに突撃していった。

 

「っ⁉︎」

 

すると何故かターミネーターは驚いたような様子を見せたあと攻撃の手を緩め、スミスの接近を許したのであった。

 

「どうした?邪魔するなら容赦しないって言ったのはそっちだろ?」

 

「…わざわざ無駄な殺しをする必要がないだけだ」

 

「そうかい…なぁ、アンタ言ったよな?自分が消えても生きていて欲しい人がいるって」

 

「……それがどうした?」

 

「そんなに想える相手ならよ、そいつもアンタと同じくらいアンタには生きていて欲しいって思ってるんじゃないのか?」

 

「っ⁉︎な、何を…」

 

「少なくとも、()()()()()()()そこまでして助けられたくはないし、アンタには消えて欲しくない。そう思うがな」

 

「な…!そんな……私は…!」

 

スミスの言葉にこれまでにないくらいの動揺を見せるターミネーターにその場にいる一同は不思議に思っていた。スミスの言葉に図星を突かれたのか、それとは別の理由があるのか、スミスは小声でキャロルに連絡した。

 

「キャロル指揮官、念のため聞くがターミネーターは該当ベースにない人形で合ってるか?」

 

《あ、あぁ。少なくとも未知の人形ではある。というより、そちらのIFFにも該当はない筈では?》

 

「まぁそれはそうだが…一応確認だ」

 

「……それでも、もう私にはこれしか無いんだ‼︎いなくなられてこの気持ちをずっと感じるくらいなら…!だから、邪魔をしないでくれ!」

 

「うぉ⁉︎」

 

ターミネーターは背中のクローより周囲に衝撃波を放ち、周囲の人物を吹き飛ばしていった。とはいえ咄嗟の行動なのかダメージは全身を軽く打ったくらいであり、すぐに距離を詰めた部隊が戦闘を再開していった。

 

「…ハッハハハッ!そーゆーとこ、()()()()()()()()。にしても…ホント、大馬鹿野郎だな…()()()()()。なんでこの寂しがり屋を置いてったんだか…」

 

(あいつ、何を1人で…?)

 

戦闘に参加せず、なぜか笑ってブツブツと独り言を話すスミスにバレットを含めた何名かが不審に思っていた。一方でスミスは、先ほどから起きている自分の不調と違和感の正体がほぼ判明していた。

ーそして、『ターミネーターの正体』も。

 

(IFFもナデシコも違うと判断してるが、俺にはハッキリわかる…!間違いなく『アイツ』だ。だが、完全な証明が欲しい…。いや、確かめる方法も、ついでにアイツを止める方法はあるにはあるが…仕方ない、あの分からず屋の目を覚ます為だ…)

 

正直言って、今からやろうとしてるのはターミネーターの経緯が彼の推察通りならばかなり酷いものだろう。しかし、それ以外に有効なものがない為、スミスは腹を括ることにした。

 

「ターミネーター‼︎」

 

「?」

 

スミスはターミネーターにそう呼びかけてこちらを向かせるとなんと彼は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハァ⁉︎何やってんだアイツ⁉︎」

 

「スミス、何を⁉︎」

 

「正気ですかスミスさん⁉︎」

 

ノアやバレット、P228が呼びかけるもスミスは応じず、そのまま引き金を引き始め……

 

 

銃声が、鳴った。

 

 

 

 

しかし、直前でスミスは押し倒され、弾丸は明後日の方向へ飛んでいった。

だが、問題はそこではなかった。

 

「…え?」

 

誰かがそう疑問の声を出したのは無理もない。

何せ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(やっぱり、そうか…)

 

「やめてよ…!また、いなくなろうとしないでよ…‼︎」

 

ヘルメットで表情こそ見えないが、おそらく怯えながら泣いてる声で話すターミネーターにスミスは優しく声をかけた。

 

「ゴメンな…俺がお前を攻撃できないことや、動きのクセから何となくわかってたんだが、確証が欲しくてな…でも、今のでハッキリした。

 

 

 

 

 

 

…お前、バルカンなんだろ?」

 

その問いかけに反応するように、ターミネーターのヘルメットがピシリ、と音を立ててひび割れていった。




??「キッショ、なんで分かるんだよ」

いや、あっちの感想で『バルカン』を救うって話したし、あのクソ重彼氏ならすぐに分かるだろうしコレをやりかねんなって感じで相談してやったのですが、予定が狂った方は申し訳ないです…。
対象が龍の血という未知の物質取り込んでたり、そもそもの動機だったり蛮族=サンが向かってたりと色々不確定要素があるのでまだ大丈夫…か?

あとは少し様子を見てから動きます。



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Code-153 バルカン護衛作戦-変化

先週夜中にデカい地震がありましたが、皆様無事でしたか?(今更)

コラボその3です。
以下から話が繋がっております。

https://syosetu.org/novel/180532/499.html

今回のは殆ど現状から見た推測で話してる部分があるのでご了承を。


スミスの奇策にてターミネーターもとい、未来のバルカンは戦意を喪失、そしてある程度の事情を知ったスミスらは幾つか彼女に確認を取っていた。

 

「ふむ…つまり君は平行世界とかではなく、『この世界』での未来のバルカン、そう言う事で合ってるな?」

 

「うん…そう」

 

「それで、口ぶりからして近い将来に俺や俺たちの子供らが死んだ。しかもさっきの話からするに俺はお前を庇って死んだ上に俺らが死んだ事件の原因にお前が関わっているから何らかの手段で過去に戻って今のお前を殺す事で歴史を変えて俺を生き残らせようとした、と。嫌な未来を聞いちまったな…」

 

スミスの質問にターミネーターは重苦しい顔をして頷き、一同は顔を見合わせた。何せ、彼らは様々な形で世界をより良いものへと改革しているが、それをしてもなお、このような事態を招くまで世界が変わらない、または変わってもまた別の悪意が芽生えている事実を知ってしまったのである。

 

だが、悪いことばかりではない。スミスとバルカンが将来結婚して家庭を持っているということは、ミニガンの記憶が戻っているということであり、そうなる目処が立っているわけである。しかし、肝心のスミスらが死ぬ事件に関しては実行者が何者かや詳しい日時などは運命の強制力とやらが働いているのか、はたまた過去に戻った代償なのかは不明であるがターミネーターが上手く語れずにいた。

とはいえ、ある程度の推測は出来るうえにスミスの死が発端であるため、それらを回避すれば歴史は変わり、S13地区の壊滅などの彼女が起こした騒動も無くなるのではというのが現時点での見解であった。

 

「しかしなぁ…俺が死んだ後も俺を想ってくれてるのは嬉しいんだがな、地区一つ壊滅させるのはいくら何でもやり過ぎだぞ?」

 

「う…それは、ごめん…。でも、どうしてもスミスを死なせたく無かったから…」

 

「それだけどな、俺が居ない世界が考えられないってお前は言ったがな、俺がお前に死なれて悲しまないって思ってるのがすごく心外なんだが、それはどうなんだ?少なくとも、俺もお前がいない将来なんざ考えたくもないし、お前以外の奴と結ばれるつもりもない」

 

殆ど惚気話と言っても過言ではない言葉にターミネーターは言われて気づいたのかハッとした顔をした後照れ始めたが、以前起きたスミスに関する色恋騒ぎを知っているバレットやリバイバーからすると

 

(言いたい事はわかるが、それをP228の前で言うなよ…彼女、凄く複雑な顔してるぞ…)

 

と言った具合であり、内心ハラハラしていたのであった。

 

「それで…さっきから気になってるんだが…何でお前ら俺から距離を置いてるの?

 

スミスが指摘する通り、バレットを始めとしたメンバーは彼から物理的に距離を置いており、少し引いてるような顔をしていた。

 

「えっと…その…前々から貴方の愛の重さは承知してましたが、まさか未来のバルカンさんも貴方と負けず劣らずの愛情を持っているというか…あと、先ほどの貴方の行動にちょっと…」

 

「ん?どう言う事だウェイター?」

 

自覚していないのですか…と頭を抱えるウェイターにレストが説明をし始めた。

 

「あのなスミス、お前は途中でターミネーターの正体がバルカンで、しかも自分が死んだからそうなったとわかってたんだよな?」

 

「あぁ、そうだが…?」

 

何で止めるためとは言えそれ知ってて自殺図って彼女のトラウマ抉るんだよ。しかも万が一を考えずに空砲じゃないとか、お前の思考が怖ぇーよ。結果的に良かったけどさ、一歩間違えれば彼女が発狂して暴れてただろ。お前も人の事言えないぞ」

 

「うっ!いや、それは…そうだけどさ…それ以外に止める方法が思いつかなかったというか…」

 

「要するにそれって、『暴れるのやめなきゃ死んでやる!』って事だろ?メンヘラか何かかよ。しかもお前さん、そのあとターミネーターに思いっきりビンタしたあと唐突に慰めてたろ?それDVじゃん、完全にDV彼氏の手口じゃん」

 

「やーい、ドメスティックバイオレンスメンヘラお化け〜」

 

「ドメッ…⁉︎くっ(お化けにお化けとは言われたくないが、ほぼその通りだから言い返せねぇ…!)」

 

リバイバーとリヴァイルの更なる追い討ち(煽り)にスミスは意気消沈し、なんとも言えない雰囲気が流れる中、リヴァイルがターミネーターに問いかけた。

 

「してターミネーター。その妙な力と不死性は龍の血なるものによるもので合っているな?」

 

「あぁ…まぁ、色々あって手に入れたけど、結果はこのザマ、死ねなくなって余計な苦しみを味わう羽目になったけどな…」

 

「ん?不死…。なぁバルカン、今もそれか体内に流れてるなら俺に…」

 

「オイ待て今度は何企もうとしてるこの恋愛バカ」

 

「いや、元々俺が死ぬのが原因なら龍の血の力で俺が不死になればいい話じゃ…」

 

「うん、ナチュラルに愛に狂った行動取るのやめよっか?」

 

恋は盲目を地で行こうとするスミスに周りが止めようと説得しており、そのうちスミスはこの方法で不死になっても、ターミネーターが来る歴史が変わるため彼女から龍の血を摂るのは無理と悟り、以前のモンスターハントの際に本部に保存してあるものに目をつけようとしたところ、万能者から何か龍の血関連でマズいことがあるのか、必死に説得していたのであった。

そんな中、UMP45から連絡が入ってきた。

 

《あー、ちょっといいかしら?少し問題が起きたんだけど…》

 

「なんだ?」

 

《さっきソフォスがやって来てバルカンをどっかに攫っていって、その場所調べたんだけど…蛮族戦士のとこっぽいのよね…》

 

「……は?なんで護衛対象を守れぇんだ特殊部隊さんよぉ?

 

《ヒェッ…し、仕方ないじゃない!あんなんどうやって防ぐのよ⁉︎》

 

明らかにブチ切れてる様子のスミスの気迫に押されるも、UMP45はもっともな意見を口にするとスミスはそうもそうかと納得すると準備を始めた。

 

「よし、キャロル指揮官。今のバルカンの居場所は?」

 

《あ、あぁ…このポイントだが…一応聞くが、何をする気だ?》

 

「いやな?今回の事といい、彼女に思うところがあるから少々話し(殺し)合いをな?」

 

《…こちらも彼女に聞きたいことがあるから、程々に頼むぞ?》

 

「了解。んじゃバルカン、ちょっと今のお前を助けにいくから待っててくれ」

 

「わ、わかった…⁉︎スミス、それ…!」

 

ターミネーターの問いかけに応じる間もなく、スミスは神獣鏡を纏ってそのポイントに飛び立っていった。彼女が問いかけたのは彼の持つ装備が、従来のものではなく、『黒色の龍の鱗のような鎧姿』だったからであった。

先ほどまでは何も変わらなかったため、これには一同も驚きを隠せなかった。

 

「どういうことだ?何で急にスミスの装備が変化を…?」

 

「もしかして、さっき未来のバルカンが自傷行為をして血だらけになった彼女をスミスか抱き締めた時にその血がペンダントに触れて変化したんじゃ?」

 

「あり得なくはないな。どちらも人智を超えた代物だ、混ざり合って新たな変化を起こしても不思議じゃない」

 

議論を交わすなか、万能者は内心青ざめていたのであった。

 

(ヤッベー…これ、大丈夫か?ルール的には問題なさそうだが、もし体内にまで影響があったら…)

 


 

周りが大変なことになっているとは露知らず、ソフォスは一人結界内で紅茶を飲みながら眼下の戦いを眺めていた。

 

「古代兵装アマルガム…この力なら「ソフォォォスッ‼︎」あら、思ったより早いわね。まぁ怒るのも無理ないか…」

 

スミスの怒鳴り声が聞こえるも、ソフォスはそのまま無視してティータイムを続行した。攻撃をしてきたとしても結界を突破することはない、そう高を括っていたが次の瞬間、い光が結界を貫き、彼女の右腕を()()させたのであった。

そこで初めてソフォスはスミスの装備が変化してることに気がついたのであった。

 

(え、何あれ⁉︎あんなの知らないわよ⁉︎もしかして、龍の血…⁉︎)

 

「どういうつもりだお前ェ…‼︎警告したとは言え、ターミネーターの正体を黙ってた上で俺や他の奴と戦わせるばかりか、今のバルカンを蛮族戦士とタイマンさせるのはどういった企みだ‼︎」

 

「ま、待って‼︎これには訳が…というかあなた、装備が変わってるの気づかないの?」

 

「んな事はどうでもいい…!今回の騒動がお前のマッチポンプって可能性も俺は考えてるんだぞ?ターミネーターが未来のバルカンなら、()()()()()()()⁉︎何の目的でここに来たんだ⁉︎敵でないというのならば、今ここで説明しろ‼︎」

 

鬼気迫る勢いで問い詰めるスミスにソフォスは観念してため息をついた。

 

「ハァ、わかったわ。どの道キチンと説明するつもりだったし。ただし、バルカンと蛮族戦士の戦いは干渉しないでちょうだい。これは大事な事だから」

 

「…わかった。だが、危ないと判断したら止めるからな?」




色々愛が重いしやべーぞこの彼氏…

今回出たスミスの装備について少し解説します。
神獣鏡・龍の血変化態(仮称)
見た目としてはアルバ装備(男)と神獣鏡を足したような物

本文の推測通り、ターミネーターの血、正確にはそれに含まれる龍の血が神獣鏡に付着して変化を起こしたもの。

のちにリヴァイルが調べたところ、元々備わっていた崩壊液関連の抑制や分解効果に加え、龍の血由来の物質も分解、消失させるようになった…だけではなく、スミスの内心にある『バルカンを害する強大な者の排除』という思いを反映したのか、崩壊液・龍の血のどちらでもない物質であり、攻撃しても破壊できない場合、逆崩壊により強制的に龍の血由来の物質に変換させて分解させるというレジェンドプレートじみた効果を発揮するようになってしまった。
なお、スミス本人には龍の血は入っておらず、彼の生存による歴史改変までは存在が確立すると思われる。

ソフォスさん、ちゃんと説明しないとヤバいかもしれない…

オマケ
色々と感情が爆発した世界線のスミス

「死ねッ!死ねッ‼︎パラデウスもpawnもアブノーマルも!バルカンを殺そうとする奴らは皆死ねばいいんだァァ‼︎」(どこぞのヤンデレピンクのような気迫で)

……大して今と変わらんな(遠い目)


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Code-154 バルカン護衛作戦-終幕

だいぶ間があいてすみません!

今回はコラボの後日談です。


波乱に満ちたバルカン護衛作戦はひとまず終了し、DG小隊は事後処理に努めていた。正確に言えばリヴァイルが主に担当し、彼らがその補佐に回っているといった感じであった。

 

というのも、バルカンが終盤に取得した古代兵装アマルガム、あれは下手をすれば遺跡関連の条約に違反し、最悪彼女が処分される可能性があったからだ。当然それを知ったスミスは国連にカチコミを仕掛けんばかりの勢いを示していたが、リヴァイルがそれを阻止し国連に対しバルカンのアレは自身が発明したものであり、条約に触れるような事はしていないと報告。その後色々な交渉もありその結果、バルカンの処分はナシという形になったのであった。

 

「これはデカい貸しだからなスミス」

 

「まぁ…助かる。しかし、彼らお前の顔見た瞬間露骨に嫌そうな顔してたが、本当何したんだお前?発明だって言われた途端にも似た反応してたし」

 

「HAHAHA、遺跡の研究が飛躍的に進む代わりに条約違反スレスレになるような事を幾らか無断ないし強行したくらいかな?下手に処刑しようにも、私以上に遺跡に詳しい人材がいなかったからね。カーターが干渉してくるまではやりたい放題だよ」

 

「うわぁ…」

 

「あ、あと見返りと言ってはアレだが、キミの装備やバルカンについても色々調べさせてもらうよ。安心したまえ、エロい事はしない」

 

「寧ろしたら消し飛ばす」

 

「おー怖。それじゃ私はこれからソフォスに話があるから」

 

そういいリヴァイルはソフォスの元へと向かっていった。拘束しようにも彼女の性質上それは不可能に近く、また色々と面倒な性格をしてるので尋問をやりたがる者が殆どいないのだが、リヴァイルに至っては寧ろ嬉々として尋問役を買って出ており尋問目的でなくとも、しつこいくらいに来訪していたのであった。

 

「うわっ、また来たわね…」

 

「そう言うなよ?で、何度でも聞くがな…キミは誰だい?」

 

「いやぁね、私はソフォス。永遠の17歳よ♡」

 

「答える気はないと。そのセリフは精神、もしくは肉体年齢が17歳で成長が止まってるからか?…まぁいい。キミが【バルカンかリホーマーの関係者の未来の姿】ってのはこれまでの行動から目星が付いてるんだ。話せない理由があるならそれはそれで話してもらいたいのだがね?」

 

「…勘の良いコは嫌いよ?で、今度は何のよう?」

 

「25年後に襲来する存在についてだが、それは確定してるのか?」

 

「私が今ここにいることから、それは間違いないわね」

 

そこまで聞くとリヴァイルは少し黙るとやがて肩を震わせ、大笑いし始めるという奇行に走ったのであった。これにはソフォスもドン引きであり、唖然として見ていると笑い終えたリヴァイルが口を開いた。

 

「いやぁすまない。つい興奮してね。…当ててやろうか?これから来る存在、G()A()V()I()R()U()L()()()()()()()()()()()()?」

 

【GAVIRUL】、遺跡やそれに関連する技術を開発したとされる未確認生命体であり、ごく少数のミイラのみ地球上で確認されているのみの存在であり、彼らがどんな目的で遺跡を開発し、今どこにいるかは謎のままであった。

リヴァイルはこれまでの情報と自身の研究成果から未来に襲来するのがそれらではと推察したのであった。

 

「言えないわね、色んな意味でね。それであなたが大笑いした理由は何?」

 

「…それが答えのようなものだぞ?まぁ違うにせよ、遠くない未来に遺跡に深く関わってるであろう存在に確実に接触できるんだ。遺跡の探究者としてこれほど興味をそそるものはないだろう?しかも奴らと言う言葉から複数いる上に人間に友好的でないのならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

そら恐ろしいことを話す彼だが、そもそも彼は人類のためならば自身の身も顧みない性格であり、パラデウスのような人道に反する存在には容赦なく敵対するため、人類の敵でありそれらの持つ技術が役に立つのであれば襲来する彼らに対して非情になるのは当然の話であった。

 

「和解が不可能という情報は有難い。駆逐に対策が集中できるからな。それに25年【も】あれば充分に対応は可能だ。それまでに何度かpawnみたいな連中と接敵するだろうし、そいつらの技術を模倣出来る機会もあるだろうしな。なんなら上手いこと双方で潰し合わせる選択肢もアリだな…。さて、私はそろそろお暇しよう。別に話しておきたい人物がいるのでね」

 

それではとリヴァイルは部屋から退出していった。

 

(リヴァイル…彼なら本当に…)

 


 

次に彼が訪れたのは意外にもバルカンのいる検査室であった。

バルカンの方もまさかリヴァイルが来るとは思ってもおらず、何事かと身構えていた。

 

「そう身構えるなよ。キミに話しておきたい事があるんだ…キミの将来に関わる話だ」

 

「私の…?」

 

「そうだ。……単刀直入に言おう。バルカン、自分の銃を使えるようになれ」

 

「っ⁉︎ど、どういうこと…?」

 

リヴァイルは持ってきた資料を並べ、詳しく説明をし始めた。資料にあったのは、P基地のアナやRFB、バレット、スミス、レストなどといった自分の銃以外に武装を持つ者たちであった。彼曰くASSTからかけ離れた武器、前者二人に関しては殆ど自身の銃を使用してないのにも関わらず高いポテンシャルを維持していることに興味を示し、ほぼ同条件のバルカンが戦闘中に不調をきたす原因の解明になるのではと彼なりに調査したところ、考えられる原因は『自身の銃の使用に忌避感を抱いているかどうか』ではと結論付けたのであった。

 

「キミは自分の銃を使うことを恐怖し、拒絶している。それによりASSTが上手く機能しなくなり他の武器の使用に影響を及ぼしてる可能性が非常に高い。簡単に言うなら『自分の得物を満足に使えないヤツが他の武器を扱える筈がない』というやつだ」

 

「でも、今更使えても…」

 

「役に立たないと?そんな事はない。偏差障壁は一撃でぶち抜く必要はなく、断続的な攻撃でも削れる。そういう意味でも発射レートの高いキミの武器は有効的だ。また、ちゃんと使えるようになればキミのミョルニルも真価を発揮できる筈だ。…厳しい事をいうが、キミがそのトラウマを克服するか否かでキミの旦那が死ぬかどうかも決まると言っても過言じゃない」

 

「スミスの命が…私に…?」

 

「彼に守られてばかりは嫌なんだろ?だから力を求めてる。ならば己のトラウマを克服しろ。そうでなければ、歴史は繰り返すぞ?彼を死なせたくはないんだろう?」

 

「……」

 

考え込むバルカンを尻目にリヴァイルは部屋を出て行った。すると、扉の近くにスミスが立っていた。どうやら話をドア越しに聞いていたようであった。

 

「悪く思うなよ?これはキミらの為でもある。キミじゃ彼女に優しくしてあぁは言えないだろ?」

 

「わかっているさ…リヴァイル、俺の武装の解析も頼む。アレを安定して使えれば、パラデウスやpawnを殲滅出来る可能性が高くなるんだろ?」

 

「まぁな。だが慎重に進めておきたい。連中がアレの対策をされるどころか模倣されたらこちらの勝ち目がほぼ無くなるからな」

 

こうして、様々な出来事が起きたバルカン護衛作戦は幕を閉じたのであった。

 

…そして、リヴァイルがパラデウスの事を世界に告発したのはそのすぐ後であった。




今回の内容はほぼ現状からの推察なので違ったらすいません。

コラボ参加者の皆様、コラボお疲れ様でした!

oldsnake様、また機会があればよろしくお願いします!


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Code-155 明かされた白

仕事がクソ忙しくて遅れました。

今回はパラデウスの公表後とあるコラボの参加の序章です。


リヴァイルがパラデウスの事を世間に公表してからしばらく経ち、情勢はだいぶ落ち着きつつあった。

 

公表と同時に保安局が展開したパラデウス信者の大規模確保も多少の抵抗はあったものの、確保予定者のほぼ全てを捕らえることに成功し、パラデウスへの資金源を大幅に減らすこととなった。また、捕らえた者たちから押収したデータからパラデウスの秘密工場の居場所も何件か洗い出し、リバイバー、リヴァイル、ダンドリーによる奇襲を敢行、後者二人のハッキングにて警備ユニットを無力化しそれらを撃破することで制圧し、幾つかは自爆装置によって破壊されたが、彼らの工場を接収することができた。

 

また、その際に以前のタリン制圧戦で猛威を振るった大型兵器『ヘカトンケイル』のデータや予備部品の一部を手に入れ、早速解析を行い対抗策を立てていたのであった。

 

「ま、何人か取り逃がしたが、そいつらはすぐに市民に見つかってリンチにあったみたいだし、作戦は成功といったところか」

 

(ガス抜き用にワザと逃したように感じたが、そこは触れないでおくか…)

 

「万能者の救難要請に伴う暴動も起きたが、俺らが残ってたおかげで比較的早く鎮圧できたしな」

 

公表後に万能者が突如救難信号を出した後に行方知れずとなり、それを何処からか聞きつけた犯罪組織やパラデウスの一部部隊がテロや侵攻を行なったが、敢えて万能者の救援に向かわなかった彼らDG小隊の面々による迎撃行動にて予想されたものより遥かに少ない被害で鎮圧することに成功したのであった。

 

「無人機改修&魔改造させたP.A.C.S部隊をダンドリーに同時操作させて迎撃させたり、押収したパラデウスの兵器を紛れ込ませて同士討ちさせるのはかなりエグいと思うんだが…」

 

「私に言わせれば、万能者がいないからって、我々がいることを念頭に入れずに行動を起こした奴らの自業自得というものだろう?…っと、こんな時間か。そろそろ行かないとな」

 

そういいリヴァイルはその場を後にし、アイソマー達のいる保護区へと足を運んで行った。彼女達は保護された後にリヴァイルやデジタルクローンを用いて複製した彼自身や医療ができる人形達を総動員して手術を実行、その際にリホーマーやソフォスから巻き込んだお詫びという形で提供された生体義体の技術を用いた結果、彼女らにあった機械的な部分の殆どを除去し、生身と変わらない肢体を手にし、また彼女らを蝕んでいた苦痛も無くすことに成功したのであった。

 

とはいえ、健康状態によっては一度に手術をするのは体力的に危険とされた者に関しては間を開けて手術を行い、全員の手術が完了したのはつい最近のことであり、その後の経過観察も兼ねて保護区にやってきているのであった。

 

またアイソマー達だが、一部の者たちから存在自体を否定されたものの、何も知らぬまま生み出され、兵器として利用された挙句、苦しみを与えられて放置されあまつさえ処分されかけた被害者の少女たちといった形で今は落ち着いていた。

 

「……うん、リハビリも順調だし拒絶反応もない。これなら来週には病棟を出て普通に暮らせるよ。良く頑張ったな」

 

「本当…?ありがとう…!リヴァイル()()()()…」

 

「無理に父親呼びしなくてもいい。慣れたら言えばいいさ。ただ、お父様だかはやめてくれよ?」

 

妙な連中が里親を装って彼女らに危害を加える可能性を考慮し、なんとリヴァイルは生き延びたアイソマー達を全員自らの養子として迎え入れたのであった。そのために必要な書類を全て揃えたり、名前がなく、またこれといった名が思い浮かばない彼女らには名前を与えたりと色々工面したのであった。これは今まで彼女らの姉たちを見捨てることとなった自分が出来る最大限の償いと彼は語っていたのであった。

 

「何か不便な事があれば遠慮なく言ってくれ。最近暑くなってるし、暑さ対策は万全だと思うが…」

 

「いえ、大丈夫です。今はみんなと痛みなく暮らせるこの時が楽しいので」

 

「そうか…なら良かった」

 

もしこの場に彼を知ってる者がいたら満場一致で誰だお前はと問われるくらい、リヴァイルの口調や表情は穏やかであった。恐らくはこちらが生来の性格なのだろう。

その時、彼の携帯が鳴り席を外して画面を見るとS10基地のシーナ指揮官からであった。

 

「もしもし?キミから連絡とは、何か良からぬ事があったのか?」

 

『いいえ。むしろ逆ね。ちょっとしたお誘いがあるんだけど…』

 


 

「バカンス?」

 

本部に戻ったリヴァイルがDG小隊とそれぞれの家族を集めて話したのは、シーナ指揮官からバカンスの誘いが来たという連絡であった。

なんでも、汚染のされていない無人島が見つかったとのことで、調査の名目で休暇を満喫してみたらといった用件であった。実際彼らもパラデウス公表の後処理で働き詰めでありまともに休んでいないため、そろそろ休めとヘリアンから命じられていたためありがたい話ではあったが、リバイバーのみ怪訝な顔を浮かべていた。

 

「大丈夫か?その島、前みてーな感じに不死の巨大アナコンダとか蝿男とかいないよな?」

 

「その辺は大丈夫だ。一通り簡潔に調べてはいるとのことだ。キミらも家族と一緒に参加したらどうだ?私もダンドリーとフラーム、そして以前彼らに助けられたアイソマーを二人連れてくつもりだ」

 

バレットらはそばで遊んでいる子供たちを見ながら考える。

2歳となった子供たちは元気に遊んでおり、今はグリンダが作った某特撮番組に出てくるミニカーやバイク(AI搭載のうえ技術をふんだんに使ってるので劇中でやったことはほぼ再現できるガチ仕様)で遊んでいた。

こういったものには事欠かないが、情勢的に外遊びもままならないのを薄々不憫に思っており、安全が確保できてるのなら、綺麗な自然を体験させるのもいいかもしれない。そう考えた彼らは参加をする事を決めたのであった。

 

スミスに関してはまだバルカンが外出許可が出てないため二人で行くことは出来ないが、子供たちが彼に懐いてるのもあり同行し、リバイバーは万一のための戦闘要員、グリンダは本部のシステム防衛のため留守番ということとなった。

 

「わかった。シーナ指揮官にはそう伝えておこう」

 

「ちなみに、他の参加者は?」

 

「サクラ指揮官のところとシャマール指揮官のところ、警護に試験者、あとオートスコアラーたちもくるらしい」

 

「ふーん…」

 

こうして、彼らのバカンスが始まろうとしていたのであった。




リヴァイル、ヘカトンケイル含めたパラデウスの技術を一部手に入れ、彼女らの養父になる。
ちなみに子供らが遊んでたのはアレです、シフトカーとシグナルバイクです。

そして次回から白黒モンブラン様の『Devils front line』の大型コラボに参加いたします。大所帯参加ですが、バカンスだからね、楽しんでいきましょう!

次回以降やるかもしれないこと

リバイバー「まて、スイカ割りで俺が首から下を埋められてるのはまだいい、なんでスイカ割りで斧使うんだよ!安全はどうした安全は⁉︎」

何の斧って?そりゃ、今回出てきたモノに関する斧だよ。


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Code-156 サマーバケーション-1

とりあえず船内散策や他所への絡みです。


指定された場所にやって来た一行を待ち受けていたのは、豪華客船としか言いようのない大きな船であった。

 

「…マジかよ」

 

「とーさ、おっきい、おっきいふね‼︎」

 

「そうだなリヒト…しかし、どうやってチャーターしたんだ?」

 

「色々とツテがあるんだろ…お、あれはシャマール指揮官のとこの…って⁉︎あそこにいるのエリザじゃないか⁉︎」

 

リバイバーの指摘に彼らが顔を向けると確かにシャマール指揮官の近くにエリザが何事もないかのように立っていたため、驚いた一行が話しかけると、どうやらP基地以外にも彼女と取り決めをしているようで、敵対する意思はないようであった。

 

「しかしまぁ、今は対パラデウスに力を入れてるとはいえ、鉄血のトップがそんなんで良いのか?」

 

「無問題。代理人に留守は任せてある。また、ウィリアムがお父様の死に関わってる以上、場合によっては協力を要請することもあるゆえ、その時は頼む」

 

「なるほど…了解した」

 

「あ、あとで貴女のOGASを取り込みたいんだけど、いいわよね?」

 

「…へ?」

 

ダンドリーの突然の提案に変な声を出すエリザを他所に、リバイバーは辺りをなんとなしに見渡すと別の一団、もといP基地の面々の姿が見えたがその中に彼にとって非常に見覚えのある人物を見つけ、そばに駆け寄ったのであった。

 

「あ、ヤッホーリバイバー。(グリンダ)は元気?」

 

「あぁ、元気にしてるよ。それで、アーキテクト…そいつはウロボロス、でいいんだよな?」

 

「え?あー…うん、そうだね…」

 

それを聞きリバイバーは視界のやや下にいる小学校高学年くらいの姿となっているウロボロス、もといロリボロスに視線を向けると面白いものを見つけたようにニヤついていた。

両者は蠱毒時代からの因縁があり、その相手がちんちくりんな姿でいる事にリバイバーは面白がっており、当のロリボロスは面倒な相手に会ったと言ったような顔を浮かべていた。

 

「どうも、お久しぶりだな。で、何でまたそんな格好で?ま、精神年齢的に合ってるかもな」

 

「…誰かさんが元のボディの生産データを消したらしくてな?まぁ案外気に入ってるから不便ではないが」

 

「消えた?イヤーダレノセイダカナー?」

 

「……いつまでも昔の事をネチネチと…図体の割には器は小さいのだな」

 

「お?やんのか、えりーと人形(笑)そんなちんちくりんに勝っても俺は嬉しくねーぞ」

 

「喧嘩するなら他所でやってくれ、教育に悪い」

 

バチバチに煽り合う二人をバレットが諌めると、取り敢えず矛を収めた両者はあとでビーチボールか何かをぶつけてやろうと互いに画策しながら離れていったのであった。

 


 

ギルヴァによる船内案内を終えたあと、荷物を置いた一行はレクリエーションルームやデッキに向かい、リヴァイルはというとシャマール指揮官やギルヴァらと近況を話し合ったあと、適当に船内を散策しているとトゥーマーンの姿が見え、リヴァイルは彼女に話しかけた。

 

「よっ。そちらも暇潰しかい?」

 

「んー?まぁそんな感じですねー。そういや、この前助けたアイソマー達は元気?」

 

「お陰様でね。そうだ、少し待っててくれ…」

 

リヴァイルはタブレットを取り出し、どこかへ通信を繋げたのであった。

 

「やぁキミたち…いや大丈夫、緊急の用件じゃないよ。キミらに会わせたい人がいたから繋げた次第さ。ホラ、この人だよ」

 

そういいリヴァイルがトゥーマーンにタブレットを向けると多数接続しているのか、大勢のアイソマーの顔がビデオ通話で映し出されていた。彼女たちはトゥーマーンの顔を見るやいなや、一斉に表情を輝かせた。

 

『トゥーマーンさんだ‼︎』『トゥーマーンさーん!お元気ですか⁉︎』『え?リヴァイルさんと一緒なんですか⁉︎』『話に聞きました、初めましてトゥーマーンさん‼︎』『久しぶりです、私のこと覚えてますか?』

 

「おわわっ⁉︎」

 

まるで憧れの有名人にでも会ったかのように次々に話しかけるアイソマー達にトゥーマーンは面食らっていた。どうやら彼女らの間でトゥーマーンは自分らに生きる目的を与えてくれた存在として広く周知されているようであった。

 

「ご覧のとおり、彼女らはキミにだいぶ救われている。キミが彼女らの生きる目的をくれたからこそ、精神的にも手術に耐えられるようになったんだ。そうでなければ手術前後のメンタルケアに時間を要してた。ありがとう」

 

「あ、いや〜まぁ、どういたしましてぇ…ハハハ…」

 

どうやら思っていた以上にあの時の発破がアイソマーらに影響を及ぼしてたらしく、ヤベェこれホントの事言ったら大変な目に遭うのではと思った彼女は内心冷や汗をかきながら愛想笑いをするのであった。

 

そんなこんなで数時間の航海を終えた一行は目的地である無人島に到着したのであった。




ちなみにリバイバーは蠱毒のことをもう根に持ってないですし、ロリボロスを嫌ってはないです。とりあえず面白い姿してるからイジったろ的なノリです。

そしてちゃっかり原作通りエリザのOGASを取り込む予約(強制)をするダンドリー…リヴァイルの教育もあるし、ぜってぇコイツ原作より厄介になってるゾ。

あ、船内でウチの連中と適当にコミュニケーション取って大丈夫なので気になるなら連絡ください。


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Code-157 サマーバケーション-2

全力で他所と絡んでいきますぜ‼︎

リヴァイルに何があったかはこちらから。
https://syosetu.org/novel/267132/8.html


島に到着し、とりあえず島を探索していたリヴァイルだが、それも束の間に終わり、気づけば奇声を上げながら駆け寄るシャマール指揮官に拘束及び拉致され何事かと思いきや、対パラデウス用に用意してた艦船が先日のリークにより使い道が無くなったからこちらに譲渡するといった次第であった。

 

「しかしまぁ、あんな奇声を上げてまで追いかけるかねぇ…。何故にそんな機嫌が悪い?」

 

ハンモックで寝ようとしていた彼女にリヴァイルが話しかけるとシャマールはジト目でこちらに顔を向けていた。

 

「誰のせいだと思っている?」

 

「ふむ…キミが機嫌が悪いのはパラデウスに戦力的に潰す前に向こうが弱体化したのが原因で〜、それは彼らのシンパが大量に捕まって資金的ダメージを受けたせいだ・か・ら…つまりそうなったのはパラデウスの事が公表されたせい…っ!

全部WA☆TA☆SHIのせいだハッハッハッハッハ‼︎LAFIくん全部私のせいだ!」

 

(私に同意を求めないでください…)

 

「よし、やっぱ一発殴らせたまえ♪」

 

爆笑するリヴァイルを前に宣言通り殴りかかろうとするシャマールに対して当然ながら逃走するリヴァイルであった。

 

「そもそもまともに奴らとぶつかれば多くの被害が出るからこの手段を取ったのに、何故私が殴られなきゃならないのだねッ⁉︎」

 

「確かにその通りだ、君のやり方は被害が少なくかつ奴らにダメージを与えられる。しかし、こっちはこっちでローリスクで大暴れして叩きのめす気マンマンだったんだ。ステーキを食べようとしたらお粥を寄越された気分といえば私の不満はわかるかい?」

 

「なるほど理解した。だが殴られる気はないからこうして逃げてるし、何よりどうせ追いかけられるならもっとナイスバディな女性に追いかけられたいものだ!」

 

遺言はそれでいいな?絶対逃さん‼︎」

 

「遺言も何も、とっくの昔に死んでるけどな‼︎」

 

そう軽口を叩くと一層シャマールの脚は速くなり、両者は島の奥へと姿を消していった。しかし、リヴァイルはそこまでフィジカルに富んでいるわけではないので捕まるのは時間の問題だろう。なお、その声を聞いたフラームが自分の胸元を眺めてたのは別の話である。

そんな逃走劇を横目に見つつ、リバイバーはバレット達の様子を眺めていた。

子供たちは初めての海に対して怖がったりする素振りは見せず、保護者たちの元で浮き輪で波に揺られていた。

 

「おぉ〜ゆらゆら〜」

 

「ぷぁ⁉︎パパ、これしょっぱい〜」

 

「お風呂と違うからなぁ…目に入ってないかミラ?」

 

「ん?アンナ、背中になんか着いてるぞ?…ワカメかこれ?」

 

「え?にぃに、とって、とってぇ〜‼︎」

 

「ん〜?」

 

(そこはレストさん(お父さん)じゃないんですね…)

 

和気藹々とした様子で海遊びをするバレットとレストの家族に対し、ウェイターの家族はというと長年の昏睡状態の関係で泳げないフィオナを気遣い、浜辺で砂遊びや貝殻集めに興じていた。

 

「おかーさ、これあげる!」

 

「まぁ、綺麗な貝殻ね。ありがとうアイン」

 

さて、男性陣はアロハシャツに普通の水着を着ており、女性陣はというとフィオナは白いワンピース、ノアは一般的な水色のビキニ、そしてアスターはというと薄いグレーのクロスホルダービキニを着用していた。

他二人はともかく、アスターに関しては元のスタイルがスタイルのため、一般のビーチならナンパされてるかそうでなくとも視線を寄せるだろうなとリバイバーが思っていると興奮したような叫び声が聞こえ顔を向けるとアヤトルズのジンであった。以前彼らが子供たちに会いに来た時のジンのやらかしについて知っているリバイバーは彼が何に反応してるか予想がついた。

案の定ジンはアスターや他の基地の女性陣の水着姿に反応しており、リバイバーはこれから彼の身に起こる惨劇を思い浮かべて合掌するのであった。

 

ムッヒョォー‼︎見ろよお前ら、水着のお姉さんがこんなにいるとは、ここは天国かぁ⁉︎」

 

「ちょっとジンさん、声がデカいッスよ?」

 

「な〜に言ってんだよハク、こんなん見て興奮しない方が可笑しいだろ⁉︎特に見ろよあのクロスホルダービキニの二人を!スユーフさんは元が春田さんだけあってナイスバディだし、白い肌に黒い水着が映えて大人のエロスを感じさせるぜ!そしてそれに負けず劣らずのアスターすわぁん‼︎元々歩く18禁とも言われ、人妻感溢れるDSR-50だったのがマジの人妻で子持ちになってるんだ、興奮しないわけないぜ!そしてバストを包むつや消しのグレーの水着が実にエr「オイ」ん…⁉︎」

 

鼻息を荒くして話すジンだが何者かに声をかけられ振り向くとそこにはイイ笑顔をしたバレットが立っていた。

 

「ハァッ⁉︎いや、さっきまであそこに…⁉︎」

 

「ジンさん、さっきからお二人をガン見して気付いてなかっただけで、割と初めの方からこっちに向かってたッスよ。まぁこっちが呼んだんですけど」

 

「ハク⁉︎」

 

「いや〜それよりジンとやら、なかなか面白いことを言ってくれてたな?ちょっとオハナシを向こうでしようじゃないか?」

 

「いや待ってくださいよバレットさぁん⁉︎俺は単純に奥さんを褒めてただけで…」

 

「あれのどこが褒め言葉だ?とりあえず陸と海、どっちで犬○家してやるかは選ばせてやる…!」

 

OH、ジーラフ‼︎

 

バレットに首根っこを掴まれズルズルと引きづられるジンであった。

その数十分後、浜辺にて『反省中。昼飯まで引き抜くべからず』の立て看板の側にVの字に固定された両脚と呼吸用のシュノーケルの管を地表から出したジンが見つかったのはのちの話である。

 


 

リバイバーはというと、子供たちに呼ばれたら遊んでやるかといった気持ちで浜辺でふらついているとロリボロスの姿を再び捉え、暇潰しにと声をかけた。

 

「よっ」

 

「…なんだまた弄りに来たのか?自分を屠った相手がこんな有様になってるのがそんな楽しいか?」

 

「少なくともつまらなくはないな。なんなら砂に埋めて元の身体でも盛ってやろうか?」

 

「いらん」

 

「あっそ。しかし、よりによってスク水とはねぇ…」

 

「それしかサイズの合うのがなかったそうだ。…!フッ、そんなにスク水弄りがいいなら()()()()()にも言ったらどうだ?」

 

「ん?」

 

妙にニヤつくロリボロスの言葉に疑問を感じる振り返るとそこには黒色の所謂旧スク水という物を着用したエリザの姿が見え、リバイバーは思わず固まってしまった。

 

「……」

 

「質問。リバイバー、この格好に何か言うことはあるか?」

 

エリザの質問にリバイバーは頭を回転させて考える。彼女の顔からして不本意に着せられたものであり機嫌が悪いのは明らかである、つまり何を言っても機嫌を損ねるのは確定している。

ならば、自分の思うままに言ってやろう。そう考えたリバイバーが放った言葉は…

 

「…ロリボロス(コイツ)よりよく似合ってるぜ、エ・リ・ザ・さ・ま♪

 

両方を煽り、敵に回す事を選んだ彼の言葉にエリザとロリボロスの目つきは鋭いものとなった。

 

「…極刑。遺言は忘れずにな」

 

「やはり私刑か、いつやる?吾輩も同行しよう」

 

ペタンコなのに、ロリボ院‼︎

 

リバイバーの追撃を皮切りにエリザ&ロリボロスによるリバイバー追跡劇が幕を上げた。

とはいえ、ロリボロスはともかくエリザに関してはシャマールの手が加えられてるため存外早く確保され、同じく捕まったリヴァイルと共にスイカ割りに参加させられる羽目になるのはそのすぐ後のことであった。




ルーツが同じだから、似た煽り方するなあの二人。

ガンアーク弐式様、ジンをお仕置きさせましたが彼の元ネタと性格からしてこうするだろなと思いやりました。何かあれば修正致します。


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Code-158 サマーバケーション-3

だいぶ遅くなりましたが、コラボ回その3です。

今回はスイカ割りと各所の絡み、それと裏編の突入回ですね。


お昼時となり、一行はバーベキューを開始し、料理が得意な者を中心に材料を焼き始め、焼きたての肉や野菜に舌鼓を打っていた。

 

「おとーさん、タマネギちょーだい!」

 

「ん。ちょっと待ってな…ほら、熱いから気をつけな」

 

「はーい」

 

「チビちゃんたち、野菜もよく食べるね〜」

 

「生野菜はまだ微妙だけど、こうやって焼いたりしたのは喜んで食べてますよ。P基地の方ではどうですか?」

 

「ん〜ユノっちたちからはそういうのはあまり聞かないかな〜。ま、とにかく好き嫌いが少ないのはいい事だよ!レオンくん、好き嫌い少ない子は将来モテるよー?」

 

「うん?」

 

なお、この時のアーキテクトの発言は将来的に当たってはいるものの、彼が好意を寄せてる人からは友人止まりで停滞する事になるのは余談である。

さて、昼食もそれなりに食べ、デザートの果物が寄越されることになったのだが、夏という事でスイカ割りを行う際、軽い騒動を起こしたリバイバーとリヴァイルがその両隣に首から下を埋められていた。

スイカ割りの役だが、シャマール指揮官とロリボロス、エリザが立候補しロリボロスがアナから借りた剣の鞘、エリザが木刀、そしてシャマール指揮官はというと、

 

「…なんてスイカ割りで斧が出て来るんだよ⁉︎安全はどうした安全は⁉︎」

 

\ マッテローヨ!/

 

「安心したまえリバイバー。アレはスイカ割り用に私が開発したやつだ。スイカ以外には衝撃波はこないから死にはしない……いや、彼女の力次第ではもしかしたら…まぁ、死なないよう祈れ」

 

「なんてモン開発してんだリヴァイル⁉︎」

 

「あ、それと君らも目隠しをしてもらう。その方がスリルがあるだろ?」

 

「そんなスリルはいらねぇよ⁉︎」

 

「タスケテーコロサレルー(棒)ま、私もキミも一回死んでるけどな!」

 

最悪ワープでもして逃げようとしていたリバイバーだが、どうやらLAFIによる妨害があって回避は不可と悟ると腹を括ったのであった。

目隠しで視界が塞がれているなか、もう少し前だの右だ左だという野次が飛ぶ中、リバイバーとリヴァイルは目の前に誰かが立っている気配を感じ取った。

 

「さて、二人とも…Are you ready?(覚悟はいいか?)

 

「「ダメです‼︎」」(単なるボケ)

 

\イッテイーヨ!/

 

『セイヤァ‼︎』

 

掛け声と共に振り下ろす音が聞こえ、バコッ‼︎・ビュッ‼︎・ペコ!っと音が聞こえ、目隠しを外されると見事スイカを割り砕いたシャマール指揮官、リヴァイルの右頬を掠めたエリザ、リバイバーの脳天に当たったものの、ボディの出力不足で大した怪我がなくどこか不満気なロリボロスの姿があった。

 

「くっ…!鞘じゃなく剣そのものを借りればよかったか…!」

 

「子供らにトラウマ見せる気かお前さん?」

 

「エリザ、頬が少し切れてんだけどそれホントに木刀?」

 

「肯定。純度100%の木刀で間違いない」

 

「む。この斧の時点で察しはしたが、このスイカは黄色か。良かったなチビちゃん、本物でしかも黄色いスイカだぞ」

 


 

「ふむ…キミ以外の耐性持ちが存在しており、私たちが来た時にはすでに息絶えてたが、その魂はギルヴァの中に健在している。それがエラブルというわけか…」

 

「はい…」

 

シャリシャリとスイカを齧りながらリヴァイルはフラームの話を聞き物思いにふけていた。

可能性自体は考えてはいた。あの作戦開始時に生きていたのが600名ほどであったことと、ネイトの成長速度や改造実験のペースを踏まえれば、それ以前に死亡した者を含めその数倍のアイソマーがいたことになるため、仮に耐性を得るのが0.1%だとしても1、2人はいてもいい計算になる。

故にもう一人耐性持ちがいた事自体は驚いてはいない。だが、彼女が死んでしまったことに関しては思うところはあった。いつ亡くなったかはわからないが、もしかしたら救えたのではないかとリヴァイルは悔やんでいた。

 

「あの…リヴァイルさん。エラブルさんと話してわかったんですが…あの人は、助けてもらえなかったよりも、多くの姉妹を助けてくれた事を感謝する人だと思いますよ」

 

「…そうか。キミがそういうなら、悔やむのは失礼だな。とりあえず今は…彼女らだな」

 

そう言う彼の視線の先には、連れてきたアイソマーらと戯れる別のアイソマー…蛮族戦士の元で鍛えられ幾分か逞しく成長した彼女らの姿があった。リヴァイルとフラームは彼女らに近寄り、話しかけた。

 

「やぁ。見たところ、元気そうだけど…体調に問題はないかい?」

 

「ん?あー…特に問題はないですよ。自分で色々改造しましたけど、特に生活に支障はないです」

 

「自分で?なるほど…。後日でいいからこの場所に必ず来てくれ。キミの姉妹たちの保護区だ。自分では大丈夫でも、精密検査をしたら不具合があるかもしれないからね。それに、保護区の姉妹たちもキミらに会いたいだろうしね」

 

「あ、はい…どうも」

 

アイソマーたちに保護区の場所を書いたメモを手渡したその後、散策をしていたリヴァイルは偶々ギルヴァら3名が武装して島の奥へと向かっていくのを目撃し、シーナ指揮官に詳細を尋ねたところ、どうやら島の奥に悪魔らしい反応を察知したとのことであり、リヴァイルは興味が半分、もう半分は子供らやアイソマーたちの安全確保のため彼らと合流することにし、自身は以前貰ったレパリーレン・コネクションとM92F CⅡ型を持参し、元々万が一の戦闘要員であるリバイバーも連れて行き、現場であるボロ船へとしたのであった。

 

「なんつーか…幽霊船って感じだな」

 

「まぁ私がいる時点で既に幽霊船だろう」

 

そんな軽口を叩きつつ、合流したメンバーと共に突入するのであった。




あっちもう戦闘始めてんのにまだ導入ってどうなってんだよ自分…
まぁ書きたいことあったからね、仕方ないね。

近いうちに裏編に本格参入してきます。


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Code-159 サマーバケーション-4

待たせたな()

いや〜職場の退職日の交渉や突然のシフト変更に振り回されて遅れました。
今回は戦闘ですが、短めです。


船内に侵入し、カフェテリアに飛ばされたリヴァイルとリバイバーは現在、無数のマリオネットたちと戦闘を行っていた。

リヴァイルはシュレッダーに変形させてレパリーレン・コネクションで纏めてマリオネットを吹き飛ばし、リバイバーも散弾モードにした己のレーザー砲で対処しているが、彼に至っては元は拠点や大型兵器の攻略を想定した大型の武装となっているため、狭い室内では取り回しが悪かった。

 

「あぁクソッ!やっぱ取り回しのいい近接兵装を開発する必要があるかぁ⁉︎」

 

「ちなみに昼に聞いた話だが、あちらのアーキテクトは黒いガングニールを開発、持ち込んでいるそうだ…アレって確かもうひと枠あった筈だが、開発しようか?

 

縁起が悪いわバーロー‼︎そもそも槍はリーチが長いから今と対して変わらないだろ!」

 

「それもそうか」

 

マリオネットに襲撃されてるものの、こういった軽口を叩くくらいには余裕があるが、倒しても倒しても湧いて来るマリオネットたちの物量は鬱陶しく、このままでは弾切れとなる可能性があるため、突破後のことを考えると早めに片をつける必要があった。

 

「ボディとなるマリオネットと本体は別であるが故にマリオネットのある限り半永久的に戦える…私と似たようなものか。問題は本体である悪魔を祓う方法がこちらにはないというところか」

 

「ならボディを一つ残らず破壊した方が最善手か。だがこっちの武器じゃ下手すりゃ周りごと吹き飛ばすぞ?」

 

「いや、その心配はなさそうだ。先ほどからこちらの流れ弾が壁に当たってはいるが、ボロい船内の壁がまるで無傷だ。恐らく魔力的なもので強度が上がっているかここは船に見せかけたナニカとみていい。壁をぶち抜いて私たちが逃げるのを阻止する目的もあるだろうな。だがこちらにとって好都合だ。というわけでリバイバー、身を守る準備をしたまえ」

 

「何する気だおい⁉︎」

 

質問に答えずリヴァイルはさっさと攻撃の準備を進めていた。リバイバーは経験上、彼の言う事には絶対に従わないと碌な目に遭わないのは分かりきっていたため、すぐさま防御フィールドを形成した。

 

それを見届けたリヴァイルは兵装をビトレイアルⅡへと変形、熱量砲弾をセットすると未だ多数のマリオネットがぶら下がる天井に向けた。彼の意図を察したマリオネットらは慌ててリヴァイルを持ってる刃物や銃器で攻撃するが生憎、その程度で怯むような精神性は彼は持っておらず、滅多刺しにされてる状態に構わず引き金を引いた。

瞬間、発射された熱量砲弾が天井に命中、極めて高温の熱波がカフェテリア内を埋め尽くしていった。

 

元々は強固な装甲を持った敵を前提にしたそれは瞬く間に部屋中のマリオネットらを消し炭に変えていき、甲高い叫び声のようなものが木霊した後辺りに漂う異様な雰囲気は消え去っていった。

 

「熱っ…まぁとにかく全滅したか。リヴァイル、無事か?」

 

「あぁ、少し焦げたが問題はない。すぐ治る」

 

「全身大火傷の状態を少しって言えるのはお前さんくらいだよ…さて、鍵を開けるか…って、鍵穴が溶けてるじゃねぇか‼︎」

 

「落ち着きたまえ、溶けたってことはもう蹴破ることが可能ってわけ…だっ‼︎」

 

そう言うと同時にリヴァイルは振り向き様にM92F CⅡ型を発砲し、生き残っていた赤服のマリオネットを撃ち抜き、沈黙させた。

その後無事に扉を蹴破ることに成功した二人は他のメンバーの援護に向かうのであった。




参加した後で気づいたけど、なんであの二人室内戦クッソ不向きなのに立候補したんだろなって…船が普通の船だったら大炎上してたな。
裏ボスは…少し考えますかね。

話は変わりますが、ニューラルクラウドの広告をちょくちょく見かけますが…

『夢のようなSFファンタジー世界れようこそ!』ってあるじゃないですか。

……どこがやねん(世界観ェ…)
てかペルシカさんクッソ可愛いなオイ。


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Code-160 サマーバケーション-5

え?12月?

オーストラリアじゃ夏だからヨシ‼︎


他のメンバーとの合流を目指しながら、リバイバーはリヴァイルに気になった事を問いただした。

 

「そういやいつの間に再生能力を身につけたんだ?」

 

「この前のターミネーター騒ぎにな。リホーマーの生体義体技術は私にも思うところがあるのでね、許す代わりに彼女の持つナノマティックウェポンだったか?そのデータを貰ってね、私が独自の改良を加えて自己修復機能を付けてボディとしても運用できるようにした。全身ナノマシンでもいいが、万が一に備えて今の私は最低限のフレームをベースにしたナノマシンの身体となっている。ま、フレームのみでも動けるし、フレームが損傷しても動けるがね」

 

「お前さん本当に人間でいいんだよな…?」

 

「肉体的な部分はないが、魂は人間だよ」

 

そんな雑談を交わしながら合流した彼らはゼーレという少女から事の全容を聞いたのだが、それを聞いたリヴァイルから笑みが消え失せていた。いや、正確には目だけが笑っていないといったところである。

当たり前と言えば当たり前だろう。その『お母様』というのが行った所業は例の兄を除けば彼が一番嫌っている人物、即ちウィリアムとほぼ同じ事であるからに他ならなかったからだ。

 

「…全く、奴と同じ行動をする『お母様』がイカれてるのか、悪魔と同じ所業をする奴がイカれてるのか…。どの道このような所業をしたんだ、只では済まさんぞ…!」

 

「てことは、『お母様』討伐に参加するんだな。なら俺も行こう」

 

リバイバーがそう答えたのを背後に聞き頼んだと返しつつリヴァイルはアーキテクトと話すゼーレの元に歩み寄った。

 

「科学で世界を幸せにするって意見は私も同意しようアーキテクト。この身に課された宿命とは別にね…。初めましてゼーレちゃん、私はリヴァイル・ウィッカーマン。彼女と同じ科学者だ。不幸を比べたくはないが、私も君と似た境遇の子供達を娘として保護してる身でね、だからと言うわけではないが全力で君の助けになろう」

 

「え?あ、はい…。ありがとう、ございます…?」

 

保護したアイソマーらを娘同然に育てていると、それまでに見殺し同然にしていたネイトらや助けが間に合わなかったアイソマーらに対しての罪悪感を感じていたリヴァイルからすれば、『お母様』の行動は理解に苦しむし理解したくなかった。故に彼女を討伐し、ゼーレの姉妹たちの魂を解放してみせると決めていたのであった。

 

 

「…ッどこまで命を冒涜すれば良いんだ貴様ァ‼︎」

 

会敵した『お母様』もとい『母ヲ名乗ル者』の行った仕打ち、それを見たゼーレの顔を見てリヴァイルは自分でも驚くくらいの怒りを感じていた。

初めから慈悲もなく叩きのめすと決めていた彼だが、その考えを改め、例えゼーレ本人が助命嘆願しようとも仕留めると決めたのであった。

 

直後に同様の思いを馳せたアーキテクトがイグナイトモジュールを起動し母ヲ名乗ル者に予想外の一撃を与えたのを確認したリヴァイルはその前後のやり取りから先ほどのマリオネットらの戦いを見られてると確信した彼はアーキテクトに続いて攻撃を開始した。

 

()()を許さないのは私も同じだ、覚悟したまえよ‼︎」

 

「くッ…!悪魔への対抗手段を持たぬと自白した貴様が吠えたところで…っ⁉︎」

 

母ヲ名乗ル者がそうリヴァイルを嘲った直後、彼が変化させた武装に魔力が溢れてるのを見て驚愕の表情を浮かべた。

 

「おやおや?敵の言葉を鵜呑みにするとは、用意周到な作戦をやった割には間抜けだな!監視されてる可能性くらい、織り込み済みだ‼︎」

 

レパリーレン・コネクション第三兵装『ランナウェイ』。ブレイグの持つ『ヴァーン・ズィニヒ』と同系統のバイク型"魔具"であるこれは当然悪魔たちに有効な武器であり、先のマリオネット戦でも使えたが、こちらの動向を監視されてると予想したリヴァイルは敢えてこちらには対抗手段はないと嘘をついていたのであった。

リヴァイルは双剣に変形させたランナウェイを携え切り掛かるが、危機を感じた彼女が周囲に醜悪な化け物を呼び出し、リヴァイルに差し向けるが瞬く間にそれらは切り刻まれ霧散していった。

 

「…!彼、中々やりますね」

 

「まぁ後方とはいえ、元軍属で対処法が確立してない頃のE.L.I.D騒動と第三次世界大戦を生き抜いた奴が弱ぇ筈がねえよな…」

 

ソルシエールの呟きにリバイバーがそう答える間にもリヴァイルはシャリテやアーキテクトらと共に母ヲ名乗ル者に追撃を加えていた。

 

「ええぃ、やかましい…‼︎」

 

そう言い彼女は先ほどとは比べ物にならない数の化け物を召喚し、自身は何かしらの光を溜め始めた。

 

「この魔力…一気に決めるつもりでしょうね」

 

「でも、流石にこの数相手だと制限時間が…!」

 

「キミたち、少々離れたまえよ!」

 

言葉からしてビトレイアル系の何かを使用すると察した一同は咄嗟に離れるが、リヴァイルが取った行動はバイクに戻したランナウェイを爆走させ、化け物たちを次々に轢殺しながら四方八方を駆け巡るといったものであった。

 

そして母ヲ名乗ル者までの進路を確保するとエンジンを噴かして一気に詰め寄ると─

 

「オラよぉぉ‼︎」

 

「バイクで…ッ」

 

「殴ったァ⁉︎」

 

ハンドルを右手に持ったまま地面に降りそのままの勢いで彼女の顔面にバイクを殴りつけたのであった。バイクで体当たりを敢行するものだと予想し身構えていたであろう母ヲ名乗ル者は想定外の攻撃を受け顔面を著しく損傷し溜めを解除してしまっていた。

 

「グゥゥゥ…!」

 

「お、どうした?その性根に相応しい顔にしてやったんだ、別に礼はいらないが?」

 

「舐めるなよ、この人間風情が…ッ‼︎」

 

怒りと共に魔力が溢れてるのを感じ取った一同が身構えるなかでリヴァイルは涼しい顔でこう言った。

 

「こんな私を人間扱いしてくれるなんて、光栄だね」




ドルフロ世界でアラフォー以上の人間を見つけたら生き残りと思え(確信)
※なおコイツはそれを差し引いてもシンプルにヤベェ奴である

バイク殴りはこの前のギーツ見て思いついたし、なんなら主催のクロス元のゲームにも似た技があるって聞いたからやらない手はないと思いましたね。

自分は退職して色々バタついてますが、なるべく周りに合わせて進めていきますのでよろしくお願いします。


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Code-161 極東救出作戦-プロローグ

お久しぶりです。

新居の引越しや新しい職も決まりようやく再開します。
そして、というかまたまたコラボの参加でございます。
今回の主催はアーヴァレスト様です。

その前日譚を投稿しますが、原作キャラの生存ルート入ります。


いつかのバカンスから半年以上が経過し、グリフィン本部ではリヴァイルを中心にパラデウス撃滅に力を注いでいた。

彼らの存在を公表したことにより、市民や協力者からの目撃情報が相次ぎ、シンパの確保や基地の破壊活動が円滑に行われ着実に彼らの力を削いではいるものの、入手した情報には詳細は不明だが、強大な兵器を所持していることやアブノーマルのような存在と手を組んでいる可能性が露見されたため、油断はできない状況ではあった。

 

さて、パラデウスと戦闘するということは当然ながら彼らの兵力であるネイトとの戦闘は避けられないのだが、すでに幾度となく常識を超えた勢力と何度も戦ったことのあるうえ、肉体を得たOGASであるダンドリーの力もあり、彼女らを容易に捕えることに成功しつつあった。

 

Welcome to the family, daughter(お前も家族だ)

 

「うぐっ⁉︎」

 

「…確保完了。OGASも吸収したし、いつも通り保護区に搬送後、抑制装置や武装の解除と自我を戻せばいいのよね?」

 

「その通り、あとは色々調べて問題なければそのまま保護区で生活だな」

 

ネイトの部隊を無力化したリヴァイルとダンドリー、リバイバーは倒れたネイトたちを拘束しつつ保護区へと輸送して行った。

彼らの会話から分かる通り、リヴァイルの研究やネイトの確保の際にOGASの吸収を繰り返しその力を強めたダンドリーの協力の結果、一般的に黒ネイトやノーマルネイトと呼ばれる、自我を剥奪された下位個体ネイト達の自我を取り戻させることに成功し、彼女らに施されていた洗脳も解くことも容易になり、事情聴取と一定期間の監視を経た後にネイト保護区での生活を送るようになっていた。

 

先に保護されたアイソマー達も、姉との再開や一緒に暮らせることにに喜び、ネイト達も自我を取り戻したことにより感情が豊かとなり、妹達であるアイソマーを初めは見捨てたり侮蔑していたことを悔い泣き崩れる者が多数いたが、いまではその分たくさん可愛がっていたのであった。

 

そんななか、ある日リヴァイルらはパラデウスに追われているという避難信号が送られた地区へと急行すると、パラデウスの機体が何かを探すかのように彷徨いていたのだが、その大半がドッペルやグラディエーターなどの重機体、しかも赤く塗られた肩の色からしてアイソマー救出作戦時に投入された感染させたリヴァイルのクローンを素体にした強化機体にリヴァイル達は違和感を感じていた。

 

「ただの追跡部隊にしてはやけに大掛かりだな?」

 

「つまり、奴らは確実に救難信号の主を抹殺したいって事ね。探してると言うことは救出対象はまだ生きてるわね」

 

「パラデウスの機密を握ってるか、重要な立場にいた人物か…どのみち奴らは殲滅しなきゃな。リバイバー、近くにそれらしき反応は?」

 

「2時方向にそれっぽいのがいる」

 

「了解。私が一撃喰らわせるから、キミらは残りを頼む」

 

そう指示するやいなや、リヴァイルはビトレイアルⅠを起動させた。

バカンスの際、幽霊船での戦闘でその姿を変貌させたビトレイアルⅠは始めこそその変化はあの一夜のみと思われたが試しに後日起動させたところ、その姿を留めており、有り難くその力をパラデウス殲滅に利用させてもらっていた。

 

両手に携行銃火器、肩には四基の大型キャノン付きバインダーの計六門の砲口がパラデウスの部隊をロックオンし、エネルギーを溜めていた。事態に気づいた彼らがリヴァイルを発見し砲撃を加えるが、リバイバーの電磁フィールドやニモジン、マーキュラスの強化偏光障壁、ダンドリーのハッキングを受けた機体の肉壁により防がれていた。

 

「さらばだ…複製され、素体にされた私たちよ。せめて安らかに眠れ」

 

そう呟きリヴァイルはトリガーを弾き、砲口から光の暴流ともいえる量のビームが吐き出された。リヴァイルの改造により拡散機能をつけたそれらは狙い通りにパラデウスの機体をその防御機構諸共貫き、或いは飲み込んで爆散させていった。

十数秒程の照射を終えるとパラデウスの部隊は壊滅状態であり、僅かに残った機体も中破しており、それらもすぐにリバイバーらによって撃破された。

 

その後、反応のあった建物内を捜索していると、ダンドリーがあることに気づいた。

 

「…!リヴァイル、この先にいる救出対象…ネイトよ」

 

「ネイトだって?益々わからないな。脱走したとはいえ、ネイト一人にこんな大部隊を差し向けるとは…」

 

(その大部隊を瞬殺した奴が言うなよ…)

 

その時、物音が奥から聞こえ、反射的に一行が銃器と明かりを向けるとそこには…

 

「ヒィ⁉︎あ、あの…抵抗しませんから……撃たないで…ください…!」

 

白いドレスのような服に、白い花の髪飾りを付けたネイトと思しき女性が涙目…と言うより半べそ状態で震えながら座り込んで両手を挙げていたのであった。

 

「……重武装を向けたこっちも悪いけどさ…お前さん、ホントにネイト?」

 


 

無事に保護したネイトだが、『マハリアン』と名乗っていることから上級ネイトかと思われたが、彼女の話はその予想を上回っていたのであった。

 

『最上級ネイト』、現在保護しているネイトらとは一線を画した存在であり、それぞれの個体が個別のクローン、もしくは拉致した人間を改造・洗脳したものであり、それらの前では他のネイトは道具以下の扱いであり、殆どが残虐な性格をしてるのもあり、曰く命令を聞き返した、あるいは返答時の僅かな言葉の言い方が気に食わなかっただけで首を刎ねられたり、作戦ミスをしようものなら連帯責任で全員処分されたりと散々な扱いをしているようであった。

 

マハリアンもその最上級ネイトではあるが、戦闘能力は皆無であり、彼女の役割はE.L.I.D患者をタダで治療してそれを餌にパラデウスへ引き込む役割を担っていたが、患者らに触れていくうちに自身の行動に罪悪感を覚えたことと、リヴァイルの告発により患者らに不信感を抱かれたことを機に脱走を企てたが最上級ネイトという重要機構である彼女を追跡すべくあれだけの戦力を投入したといったわけであった。

それを聞き、真っ先に怒りを露わにしたのはニモジンとマーキュラスであった。

 

「あのシスコンロリコン糞野郎…‼︎何が『お前たちは最高の娘だ』よッ‼︎最上級ネイトなんて一言も話してなかったじゃないの‼︎」

 

「あんな口先だけの野郎のとこ、抜けて正解だったわ…‼︎」

 

FU○K YOU‼︎と虚空に向かって両中指を突き立てる二人を他所に、リヴァイルはある嫌な予感を感じたり、マハリアンに質問した。

 

「なぁマハリアン。その最上級ネイトだが、もしや……

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()?」

 

『ッ⁉︎』

 

「はい…います…。それも、複数…」

 

「なるほど…強化パラデウス兵の素体はその過程で生まれた失敗作か…ウィリアムめ、リコリスと同等かそれ以上に私を嫌っているな」

 

話によると、そのリヴァイルベースの最上級ネイトたちは一括りで【ロキプラ】と呼称されており、最上級ネイトたちの中でも特に下級ネイトへの扱いがぞんざいであり、ほぼ日常的にネイトを虐待していると聞き、リヴァイルはさらに憤りを見せていた。

 

「あの野郎め、私がネイトやアイソマーを保護してると聞いてそんな性格にしやがったな…‼︎尊厳破壊も良いところだ、必ず見つけ出して始末してくれるッ‼︎」

 

その後、いくつかの質問をしたのちマハリアンは保護区行きとなり、彼女の持つE.L.I.D治療の知識は協力関係にある基地に共有されていった。

なお余談ではあるが、元々いた場所の環境が最悪だったためか、保護区でのあまりの待遇の良さ(具体的には美味な食事や周りの人及び姉妹たちの優しさ)にマハリアンは嬉し泣きをし、アイソマーたちに慰められるといった珍事態が発生したという。

 

「うぅ…みんな優しい…!」

 

「泣かないでマハリアンお姉ちゃん…」

 

「今更だがパラデウスって、メインカラーは白だが中身はどブラックなんだな…」

 


 

マハリアン保護から数日後、リヴァイルにシャマール指揮官から連絡が入ってきた。どうやら、人類初のコーラップス完全適合者である川崎和紗と思われる少女がウラジオストクで幽閉されているらしく、彼女の奪還を日本政府に依頼されたものの、事態を知っているパラデウスが新ソ連と共に彼女を手にすべく動いているため、協力を依頼したそうであった。

 

「パラデウスが関わってるとなれば参加しない理由がないな。ちょうど奴らに腹を立ててたところだ。極東の地を奴らの血で奴らの大好きな色に染めてやる」

 

《そう言うと思って、すでに支援物資を届けてある。そろそろ届くはずだ》

 

「リヴァイル‼︎なんかガン○ムみてーなのが四機届いたぞ⁉︎」

 

《いや、それはガ○ダムではない(キリッ)そのうち二機は作品からして違うしな。作戦は三日後だ。それでは》

 

届けられたのはアーマータイプのデバイスでそれぞれ、ムーンライト・ジャッジ、ジェネシス、ディスティニー(ハイネカラー)、アストレイノワールというものであった。

 

「確かに種系はOS名がアレであってガンダ○って呼称じゃないけどさ…」

 

「で、メンバーはどうする?相手が相手だしバレットらには休んで貰いたいから、私とリバイバーとダンドリー、ニモジンとマーキュラスは…出る気マンマンだな。となるとデバイスが一つ余るが…」

 

「あの…私も行かせてください‼︎」

 

「フラーム⁉︎大丈夫なのか?」

 

「はい。訓練もある程度受けてますので平気です。それに…私や姉妹たちを見捨てたお父様…いえ、ウィリアムとその組織は許せませんし何より…リヴァイルさんの遺体を利用して酷いことをしてるなんて、絶対に許せません‼︎」

 

「…わかった。その代わり、あまり私から離れるなよ?」

 

その後、デバイスは順番にダンドリー、フラーム、ニモジン、マーキュラスが使うことにし、またいざという時にパージして自律稼働できるように改造を施して時が来るのを待ちそして三日後、シャマール指揮官の元で彼らはウラジオストクへと向かっていったのであった。




というわけでマハリアンを保護しました。原作でのヤベー姉妹は心配ありません、理由はのちにわかります。

そして存在が明かされたリヴァイルベースの最上級ネイトら【ロキプラ】ですが、こちらの由来は

ロキ+蝙蝠の学名キロプテラ【Chiroptera】からです。

トリックスターの代名詞であるロキと御伽話でコロコロ立場を変える蝙蝠。
正規軍→国連→パラデウス→グリフィンと居場所を変え、その能力で色んな情勢をかき乱したリヴァイルベースのネイトにふさわしい名と思ってます。

当然、今回コラボの敵として参加します。詳細は後ほど。

なおそして貰ったデバイスのうち、ジェネシスはRCW ジェネシスと調べれば出てきます。

次回から本格的に参加いたしますのでよろしくお願いします。


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Code-162 極東救出作戦-探究者たち

先日、ロックマンエグゼの総集編が発売されてプレイしたのですが、あるキャラが本質的にネイトに近いことに気づき戦慄しましたね。

さて、今回は作戦前における彼らの思惑です。
ちょいとセクハラ入ります


シャマール指揮官とのミーティング及び通信機器の借り入れを終えたリヴァイルは用意された部屋で今回の作戦について考えていた。

 

(主な目的は川崎和紗の救出及び保護、そして彼女を拉致監禁している場所にいる人員の排除。さらには彼女を手に入れて遺跡の力を手に入れようとするパラデウスとそれに連なる新ソ連の撃滅…)

 

こちらの持つ戦力を鑑みれば充分に成功しうるものである。だが、少し前に万能者から聞いた情報だとほんの一部ではあるがパラデウスは遺跡の技術を手に入れた可能性があると言う点と、アイソマー救出作戦に現れたアブノーマルなる存在、さらには遺跡の情報を手にした物を封殺せんとするPawnの三つがリヴァイルにとって気掛かりであった。

 

(間違いなくアブノーマルを使役してる勢力とパラデウスは通じてるな。それと、技術流出を確認出来ないほど連中は間抜けではないだろうからPawnも乱入してくると見ていいな…最高じゃないか。よしんば各勢力の技術を手に入れて除染及びインフラ整備そしてパラデウス殲滅に役立てるといいが…)

 

世界を戻す事が遺跡技術を手に入れようとする行動理由であるため、その技術を組み込んだ存在と邂逅する可能性がある今作戦は願ってもない状況であった。

遺跡技術の流出を防ごうとする向こうの言い分はわからなくもないが、ならば風化しても容易に立ち入らないように厳重にするか、盗られても良いものしか置いておくなりしておけば良い話のところを適当に放置して出て行った挙句、いざ流出したら殲滅しますと言うのは筋が通らないというのがリヴァイルの持論である。…そもそも先の大戦の余波でシステムを叩き起こしたのは人類側である為、どっちもどっちではあるが。

とはいえ、あくまでも救出がメインであるため、無理をしてでも手に入れようとは微塵も思ってはいない。技術を手に入れるために他を犠牲にするのは彼の望むところではないからである。

 

(下手を打てば崩壊液の完全適合者である彼女も奴らの排除対象になる可能性だってある。思った以上に大規模な戦いになるだろうな…。それに、私ベースの最上級ネイトがいてソイツが先に手を出した場合、私とソイツの区別が付かずに攻撃するっていう最悪の事態になりかねない)

 

「ま、もしもの時はこの貰ったデバイスを弄って利用するか…改造したら実験体とか言ってたが仕方ないよな……間抜けだからなッ‼︎

 

それなりにプライドはある為、先の間抜け発言は余程気に障ったようであった。

 


 

ルースキー島

 

既に侵入済みであるパラデウスの兵力はその場にいた民間人たちを次々に崩壊液に汚染させ即席の兵力にさせるという非道な行いをしていた。その様子を高台から面白そうに見ている者たちがいた。パラデウスの最上級ネイトたち、モリドー、グレイ、グリク、ブラメドであった。

 

「あーあ、大の大人がギャアギャア喚いて、みっともな〜い」

 

「モリドー、よそ見をしてないでさっさと準備しろ」

 

「…チッ!言われなくてもやるっつー…ひぃん⁉︎」

 

妙な声をあげたモリドーに何事かと他3名が振り向くと、彼女の胸が妙な形に歪んでおり、捏ねくり回すような動きをしていた。それを確認した彼女らは嫌悪感を露わにした。

 

「ハァ…ロキプラ。ふざけた真似をやめろ」

 

「え〜?作戦前に余計な事言われて苛立ってるモリドーちゃんを慰めただけじゃんか?」

 

飄々とした態度の声と共に、モリドーの背後の地面からその声の主は徐々に足元から【光学迷彩】を解除した。手のひらを除きネイト特有の刺々しい見た目をした両腕の義手と、宙に浮く細長い台形をした八つの刀剣らしきものを携えたその人物はリヴァイルに非常に酷似していた。

彼こそがリヴァイルの遺体から造られたクローンをベースにした最上級ネイト、ロキプラであった。どうやら現地入りの前から光学迷彩をしていたらしく、彼の存在はリヴァイルらには確認されなかったようであった。

 

「いいか…ら!さっさと手を離…せ!このセクハラ野郎…‼︎」

 

「おや?おやおや?秘書としての潜入中にぃ〜、怪しまれないよう人並みの欲求を与えられた君の欲求不満を()()させてあげたのはこのオレだって事、忘れてないよねモリドーちゃぁぁん?」

 

ロキプラの言葉から分かる通り、両者は【そういった】関係であったが、互いに恋愛の情はなく、都合の良い処理相手くらいにしか思っていなかった。

モリドーの抗議を無視し、ロキプラはねっとりとした口調で話を続けていた。

 

「それにさぁ、やめろって言う割には抵抗しないし、頬が若干赤くなってるけど、感じてるっしょ?まぁそうだよな、その胸を育てたのオレだしねwいやーこの前脱走したマハちゃんは惜しかったなぁ。あわよくば君ら姉妹共々…って思ってたけどね…」

 

「乳繰り合うなら他所でしろ。態々こちらに来て何のようだ」

 

「…ハイハイ」

 

やや殺気を込めたグレイに咎められ、ようやくロキプラは手を離した。モリドーは忌々しげに彼を睨むと距離を取った。

 

「いやね?そろそろ動くって話をしにね。既にβとγは先行してる。そしてこれだけ最上級ネイトが揃ってるんだ、ミスしたら()()()に失望されちゃうから油断しないで本気でいけよ〜?」

 

そう言ったあと、ロキプラはヘラヘラ笑いながら移動していった。

 

「…替えの効く安い駒が偉そうに」

 

ワザと聞こえるようにいった小声にロキプラは少しだけ反応するが彼は無視していた。βとγ、とは言うが、別に製造順ではなく作戦上の呼び名であり、最上級ネイトの中でも比較的簡単に増やせる彼らロキプラは安い駒として他の最上級ネイトらから蔑まれているが、寧ろ彼からすれば彼女らは『一回死んだらこれっきりの使い捨て』といった具合で下に見ていたのであった。

 

(オレらは死んでもその経験は他のロキプラに受け継がれ、強化されていく。死んだら終わりのお前らとは訳が違うんだよ…!)

 

(…さて、この作戦でPawnは来るかな。いや、来ないはずがない…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

彼らの父であるウィリアムは遺跡の力を欲している。ならばその遺跡技術を使用しているPawnのデータを手に入れ彼に献上すればウィリアムの役に立ち、褒めてもらえる。そう考えたロキプラはワザとPawnが食いつくような情報を流したのであった。例え全滅しても自分だけはその経験を他のロキプラに継がせて手に入れたデータを差し出せるし、その過程で鬱陶しいグレイら最上級ネイトがPawnらに始末されれば、よりウィリアムに重宝されるし一石二鳥であるとロキプラは考えていたのであった。

 

(こちらには前からつるんでる援軍もいるし、少しでも多くデータを回収してパラデウス、もとい()()()の役に立ってやる…!おそらくオリジナルであるリヴァイルも来るだろうが、どちらが本物かハッキリさせてやるさ)

 

色んな思惑が渦巻く中、作戦開始までの時間が迫っているのであった。




【朗報?悲報?】モリドー、わからせ済み
いやーどうせならとやってみましたよええ。

最上級ネイトs「○ね、替えのある安い駒のセクハラ野郎が」凸
ロキプラ「○ね、残機1の身体だけのクソ○○○が」凸
モリドー「悔しい、でも感(この先は血で読めない)」
その他ネイトs「もうやだこの空気、帰りたい」(´;ω;`)

なお、前回言ってた『虐待』は肉体的、精神的、性的のスリーアウトです(白目)

そしてロキプラくん、組織のためとはいえ早速やらかしましたねぇ。
どっかのモリモリよりタチが悪いなぁ(他人事)
元々がアレな性格のやつを無理矢理弄るからそうなった感じです。

さて、どうなる事やら…


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Code-163 極東救出作戦-作戦開始

職場の電波がクソザコ過ぎて自宅でしか編集できず、遅れました。

さーて、周りも暴れてますし、こちらもやってやりますよー。


「流石に奇襲されるだろうなと思っていたが、いきなりカ○コンされるなんてな。パイロットくん、平気か?」

 

「あ、あぁ…助けてくれてありがとう」

 

「余裕ぶってる場合⁉︎早速他のメンバーと離れ離れになったのよ⁉︎」

 

平然としているリヴァイルにダンドリーがツッコミを入れているが、彼女の言う通り、開幕からヘリ部隊が残らず敵に撃墜され、他の基地のメンバーと離れ離れとなり孤立してしまっていたのであった。奇襲を察知したリヴァイルが咄嗟にパイロットを引っ張りながら指示を出したため死傷者はいないものの、予定ポイントより離れた敵地に孤立してしまったのであった。

 

「着弾時にヘリが腐食してた事から、やったのは報告にあったアブノーマルの一体と見ていいだろうね。どのみち大暴れするから逸れたことに関しては別に問題はない。…さて、さっそくおでましだ」

 

リヴァイルが指し示す方向には多数のパラデウスの兵器群と、E.L.I.D感染者が押し寄せてくるのが見えてきた。

 

「感染者…?連中、やりやがったな…‼︎さっさと片付けて…」

 

「待てリバイバー。試したい兵装があるから攻撃はそのあとだ。……射線上にネイトの反応は無し、味方も同様。少し離れててくれ」

 

リヴァイルは持ち込んでいた兵装を展開させ、大型の筒状となったそれを構え少し経つと作動させた。

何かが発射された様子は見えないが、重低音がすることとリバイバーのセンサーには熱を感じており、それらが敵勢力に到達し数秒するとパラデウス兵と感染者たちが一瞬膨れ上がると爆散していったのであった。リヴァイルは兵装を薙ぎ払うように振ると照射された順に次々に同様に四散していったのであった。

 

「…よし、粗方の敵は排除したな」

 

「えっと、リヴァイル?なに、それ…?」

 

「ん?指向性を持たせた強力なマイクロ波発生装置を奴らに浴びせて体内の水分を加熱・膨張させて四散させた。パラデウス兵の素体には人体があるから絶対に水分はあるし、武装も輻射熱で加熱されてセンサも焼けて誘爆するし、何より強力な電磁波で大概のシステムもお陀仏ってわけ。電磁波であるが故に偏光障壁も意味をなさないしな」

 

「…待て、それってまさかと思うが…」

 

「キミの思ってる通りだよリバイバー。これは携行し攻撃範囲を指定できるできるサイク□プスだ。私は人間を人間扱いしてない彼らを容赦なく殲滅する事にした。奴らに組する組織の者も同様にな。こうすれば、奴らの士気も下がるしな。無論、使う方も多少電磁波を浴びるため危険だから私しか使わないが」

 

容赦のない攻撃をしながらも淡々と話すリヴァイルに一行はやや戦慄しつつも、パラデウスの数々の行いを把握してる彼らもリヴァイルの考えは理解できるため、次の敵襲にそなえるのであった。

 


 

リヴァイルだけでなく、万能者やアッシェによる蹂躙劇を光学迷彩で姿を隠しているロキプラβは眺めていた。

 

「いやはや、凄まじいな。ある程度は予想してたがこうも直接目にするとねぇ…良し、ヘカトンケイルを出せ。それで削らせろ」

 

指示のあとすぐさま海上に三機ものヘカトンケイルが現れ、地上を薙ぎ払っていた。事前にリヴァイルや万能者といった優先攻撃対象は設定しているため、流石に三機もいれば誰かしらを倒せるだろうと思い場所を変えようとしたロキプラβだったが次の瞬間、耳をつんざくような爆音が聞こえ驚いて振り返ると、ヘカトンケイルの一機が既に万能者によって破壊されていたのであった。

 

「…ゑ?何をしたアイツ?防壁はどうしたんだ、まさか…もう既に突破できる策を⁉︎ただでさえ残り少ないってのに…!」

 

頭を乱雑に掻きながらぼやいていると、またしても爆音が響き渡り、嫌な予感がしながらその方角に顔を向けるとさらにもう一機のヘカトンケイルが爆散しているのが見て、その近くにはリヴァイルらの姿が見えていた。

僅かな時間の間に二機ものヘカトンケイルを失う光景を目の当たりにしたロキプラβはプルプルと体を震わせており、同行していたネイトらは明らかに激昂してるのではと思い距離を取ろうとしたが、そのうち何名かが怖いもの見たさというのか、その顔を覗きこんだ。すると、そこにあった彼の顔は…

 

   ______

  / /三三二ニ\

`/ // /ヽ ヘ\

/ ///∠/ ヽイ \>)

 // / >=< || >=<

`// /u((~・)-||(~・)

// イu  >+<` || >+イ

/イ⌒| u   _〉u |

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|ヽ |/L/ ̄ ̄ ̄ ̄フ∥

V| |L/    ∠ィ∥

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 | ハヽ「\___ノノ/

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ヽ|| \  ̄ ̄ ̄/ ヽ

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驚愕と焦り、混乱を含めたようなその顔に思わず吹き出しそうになるネイトらだったが、笑えば間違いなく殺されるため、必死に耐えていたのであった。

なお余談ではあるが、他の戦地にいるモリドーらの何人かも彼と似たような反応をしていたという。

 

(バカな…リヴァイル・ウィッカーマンにも対抗策ができてるだと⁉︎待て、これから来るであろうPownらは奴らより上の技能を持ってる上に、何体来るかわからないんだよな…)

 

ロキプラらは初めて、自分らのしでかしたことの重大さに気づき、顔を青くさせたのであった。

 


 

時間は少し遡り、万能者がヘカトンケイルを破壊したところを見たリヴァイルらも破壊行動を開始したのであった。

 

「ハッハッハ!流石だな万能者!ザマァみろウィリアムめ、金食い虫のヘカトンケイルを三機も投入したくせにもうやられてやんのw」

 

「で?奴を倒す術は何だリヴァイル?」

 

「こっちには奴の部品や一部の設計図を以前に手にしてるんだ、そこから奴と同系統の防御システムを積んだ特殊弾頭を作ってある。ソイツをぶつけると互いのシステムに干渉して対消滅起こして一時的にシステムダウンが起きるから、その隙にダンドリーが乗っ取っればアレはただのカカシとなる。じゃ、やるから準備してくれ」

 

リヴァイルは高速貫通砲弾モードにしたビトレイアルⅡを展開しその特殊弾頭をセットしてヘカトンケイルに向けて撃ち放った。放たれた弾頭はその防御システムにより射線上のグラディエーターやパトローラを消し飛ばしながら進んでいき、ヘカトンケイルに命中すると、ヘカトンケイルは着弾点から青白い光を放つとダラリと腕をぶら下げた。

 

「今だダンドリー‼︎」

 

「わかってる!」

 

すぐにダンドリーがヘカトンケイルのシステムに侵入し、コントロールを奪取し始めた。少しすると、彼女はニヤリと笑っていた。

 

「コントロールを奪ったわ!でも、10秒ちょいしか持たないからさっさとやりなさい!」

 

そう聞くやいなや、リヴァイルらは各々が手にしている銃器を構え、最大出力で撃ち放った。防御システムが無くとも堅い装甲を持っているのだろうが、それでも瞬く間に食い破られ、爆散していった。

 

「…ヨシ。あと一機は他に任せて先を急ごう。そろそろネイトも出てくるはずだ。無力化の準備を」

 

その後、向かってくるネイトを悉く無力化し確保していくと、フラフラと彷徨っている白ネイトと黒ネイトを発見した。どうやらアッシェに無力化されたらしく彼女らを保護すると、一度ネイトたちとパイロットを安全な場所に移させるため、シャマールらに連絡を取ったのであった。




リヴァイル、トンデモナイものを開発する。
まぁ逆に言えば、そこまで頭に来ているわけで…

ヘカトンケイル、一機撃破しました。あとのは任せます。



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