緋弾のアリア ~千里眼の矢《second sight》~ (リバポから世界へ)
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Snipe 00 「Reloaded」

皆さん初めまして。リバポから世界へという者です。

緋弾のアリア単体での投稿は初めてになりますが、何卒宜しくお願い致しますm(__)m





それではどうぞ!!



「はぁ……はぁっ……! クソッ、チクショウ!!」

 

暗闇を一人の男が走っていく。センスの悪い柄のタトゥーに獣のような鋭い眼。そして右手には黒い拳銃。口から出る言葉は悪態だけだ。

チクショウ……どうしてこうなった? 今回は信頼出来る相手との取引だったはずだ。情報が洩れるなんてことは万に一つも無いはずなのに……!

いつも通りだった。”ブツ”を受け取り金を渡す。挨拶は要らない。ただ、それだけのことだったはず……。

しかし取引が無事に済み、自分も相手も完全に油断してしまった時だった。仲間の一人が突然、狙撃されたのだ。

 

―――――ビシッ!

 

「……ま、またかよ! 一体どうなってんだ!?」

 

仲間も取引相手も全員撃たれた。ただ一人逃げ延びたはずの男の頬を銃弾が掠める。これで何度目だろう? 壁越しに狙撃されるのは(・・・・・・・・・・・)

取引は窓も無く、鍵も掛かった密室で行われた。換気扇の通風孔すら無いような場所を何処から、どのように狙撃したのか? 男には皆目見当がつかなかったのだが、今頃になってようやく自分たちを狙った弾丸は"壁を通り抜けている”という、恐ろしい事実に気づいてしまった。

何か特殊な弾丸を使っているのだろうか? いや……それにしては惜しげもなく何発も撃ってくる。

今だってそうだ。弾丸は自分の顔を掠めたが、ミスショットというよりも外してやったといったような感じである。

つまり、何処かで自分を狙っているクソ野郎はスコープ越しにニヤニヤ笑いながらこう思っているわけだ。

 

()ろうと思えば何時でも殺れるんだぜ』

 

ギリッ……! 

唇を強く噛む。肉が裂けて鉄の味が口内に広まった。クソったれが……舐めやがって……!!

男のイライラは頂点に達していた。既に物事を冷静に判断することが不可能になっている。

相手が何処にいるかも分からない。今、発砲すれば自身の居場所を更に教えるだけだ。……だがどうでもいい。一発喰らわせてやらないと気が済まない! 

彼が銃を振り上げた。

 

「ふざけ―――――」

 

悪態と同時に引き金を引こうとしたその時―――――

 

「は……? え?」

 

右腕が軽くなった気がした。いや、気のせいではない。手にしていたはずの無機物はバラバラになって地面に散らばっていく。

男の手に残ったのは黒い星が描かれたチープなグリップだけになった。

 

「ひ、ひっ……!」

 

もう自分に出来る事と言ったら無様に背中を見せて逃げる事だけである。彼は銃の残骸を投げ捨てると、よろけながらもその場から一目散に駆け出した。

 

「はぁ……はぁっ……!」

 

暗闇をひたすら走り続ける。どれだけの時間が経っただろう? 体力の限界を迎えた頃、彼はようやく目的の場所に辿り着いた。

ほとんど人通りの無い路地裏にポツンと佇む喫茶店。とうの昔に閉店したはずの店の前に立つと、ドアをこじ開け中に入る。そしてカウンターに敷いてあったカーペットを捲った。

 

「へ、へへ……流石に地下なら……」

 

床に設置してある地下室の入り口を見て男はホッとしたように笑った。地下に入ると、手探りで探し当てたランタンを灯す。真っ暗な闇がたちまち暖かい光によって包まれた。

 

「た、助かった……」

 

いざという時の為に、シェルターを用意しておいて本当に良かった。食料や武器は十分なほど隠してある。後はほとぼりが冷めるまで此処でじっと耐えるしかない。

そして、此処を出た暁には……自分や仲間をこんな目に合わせた野郎を見つけ出して、生まれてきたことを後悔させて―――――

 

―――――ビシッ!

 

「あぐっ……!?」

 

突然、右足に激痛が走った。バランスを崩しその場に倒れこむ。視線を下げると太股からおびただしい量の血が流れ始めていた。

 

「な、何で……どうして!?」

 

どれだけ隠れても無駄だった。奴にはこちらが見えている……!

 

「くっ!」

 

這うように部屋の隅まで行くと、新しい銃に手を伸ばそうとした。しかし……

 

―――――バスッ!

 

「あ……あぁっ……!」

 

今度はその掌が撃ち抜かれた。自身の体力と戦意が瞬く間に消え失せていく。

その時、天井からガタゴトと物音がし始めた。次いで人の会話も聞こえてくる。

 

「き、来やがった……!」

 

男の顔が今まで以上に蒼くなった。そして―――――

 

「動くなっ、警察だ! 銃を捨てろ!」

 

ついに警察が地下室の入り口をこじ開けてきた。銃を構えた大勢の警官がぞろぞろと中に入ってくる。

男は瞬く間に捕らえられ、手錠を掛けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……状況終了」

 

港区のビルの屋上。

構えたライフルから顔を上げた少年は、インカムに向かってそう報告した。そしてオペレーターと幾つか言葉を交わした後バイポッドを畳み、ライフルをガンケースに仕舞う。

自分の役目は終わった。敵は全員動きを封じたし、連中の使っている(ねぐら)も見つけた。後は逮捕した警察の仕事である。

 

―――――ビュオッ!

 

「……っくしょん!!」

 

突然、強風が少年を襲った。その風のあまりの冷たさに、思わずくしゃみをしてしまう。

 

「ううっ……寒っ! ったく勘弁してくれよなあ……」

 

3月も下旬になったが、暖かいのは日中だけで日が沈むとまだまだ冷える。臙脂色のブレザーの上にPコートを羽織り、マフラーを巻くと彼は屋上から退散した。

オペレーターと通話し続けていた携帯を開くと、メールが一件届いている。

 

「あ、ヤベ……」

 

メールの送り主は付き合いの長い幼馴染だった。

彼女に”今から帰る”と返信を打つと彼は再び歩き出す。

 

(腹、減ったなー)

 

そんなことを考えながら歩いている少年の表情は、先程まで人を撃っていたとは思えない程年相応のものだった。

 

 




いかがでしたでしょうか?

今まで書いてきたモノと書き方を少し変えてみたので、上手く出来たか不安なのですが・・・(笑)

あらすじやタグにもある通り、この物語の主人公は那須与一の子孫です。そしてヒロインは白雪になります!!

キンちゃんLOVEの彼女をオリ主のヒロインにするのは大変難しいことだと理解していますが、どうにかこうにか頑張って投稿していきますので応援よろしくお願いしますm(__)m

感想や批評などは大歓迎です! 

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。



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東京武偵高校生徒ファイル(人物設定)

皆さん、こんにちは。リバポから世界へです。一週間ぶりの更新になります。

今回は主人公設定になります。少し早いかな? とも思ったんですけど、本編で説明があまりないので(多分上手く書けない)今回投稿します。



※この設定にはネタバレが含まれています。まだ本編を読んでいない方は先にそちらを読むことをお勧めします。

それではどうぞ!


那須 翔資(なす ショウスケ)

 

所属:東京武偵高校2年B組。専門科目は狙撃科(スナイプ)車輛科(ロジ)。武偵ランクは共にA。

生年月日:1992年 4月14日。

血液型:B型

身長:181cm 体重:70kg

登録武器:グロック17、ステアー・スカウト、脇差、他

 

 

 

●人物設定

通称は”ショウ”。武偵高での名前表記はショウスケ。キンジと白雪の幼馴染で、源義経の武将である那須与一の子孫。

明るく社交的な性格で冗談を言って周囲を和ませることが得意。悪戯好きで武藤や不知火と一緒にキンジをからかうこともしばしば。しかし心の底では彼を心配している(特に金一の件で)。HSSのことも知っているが、彼の過去を考慮し周囲には黙っている。

白雪とは幼い頃よりずっと共に育ってきたため、自分たち以上にお互いのことを理解している。彼女からは好意を寄せられており、ほとんど相思相愛(くっつくのは時間の問題との情報)。

私生活は少々だらしなく、食事などの家事は白雪にかなり依存している。

年相応に女性への興味はあり、ベッドの下やパソコンにはロマン溢れる雑誌や画像が大量に存在するが、本人の知らないうちに段々減り始めているらしい。しかし何故か黒髪ロング物だけは綺麗に残ってるとの談。

 

 

●技能

所属上、主に狙撃科(スナイプ)としての依頼が多い。しかし、幼少時より父や祖父からあらゆる格闘術を叩き込まれたため強襲科(アサルト)の応援に回ることもしばしば。車輛科(ロジ)にも所属しているため、車やバイク、ヘリの操縦も可能。以上のことから一見万能に見えるが、情報収集や通信、鑑識などバックアップなどは苦手。

 

 

●星伽との関係と那須家について

先祖である那須与一は源平合戦で義経軍に参陣。義経の命で平家の小舟に掲げられた扇を射落とすなどの功績を挙げるが、義経の立場が危うくなると兄達に家督と領地を譲り頼朝側から離反した。

その後は義経が大陸に渡る際まで同行。共に渡航することを願うが、星伽を戦に巻き込んでしまったことを後悔した義経の命で、日本に留まり星伽家を守ることになった。それから代々、星伽の巫女を守り続けている。翔資は39代目。

遠山家と同様、那須家の男も星伽神社に入ることが許されている。

 

 

●特殊能力

千里眼(セカンドサイト)

建物や地下など、壁越しに相手の居場所を把握できる。

・潜り矢

千里眼(セカンドサイト)で把握した相手を壁越しに狙撃できる。

 

 

●容姿

日本人にしては長身。黒髪のソフトモヒカン。人懐っこい目付き。

 

 

 

 

 

・質疑応答タイム

 

Q:好きな食べ物を教えてください。

A:「ユキが作ったものなら何でも。一つ挙げるなら、いなり寿司だな。マジで美味いんだよ」

 

Q:嫌いな食べ物は?

A:「特に無いかな。小さい頃から『これ嫌い!』って食べなかったら、お袋に頭ひっぱたかれてたから。出されたものは全部食べるよ」

 

Q:趣味と特技を教えてください。

A:「趣味はプラモ作りかな。特技は……狙撃」

 

Q:休日はどのように過ごしてますか?

A:「借りてきたDVD見たり、ネットしたり、今言ったようにプラモ作ってる。あまり外には出ないんだ。よく意外って言われるけどインドア派なんだよ。ユキが来たら一緒にテレビ見たり、まったり過ごしてるよ」

 

Q:星伽白雪さんとの関係を教えてください。

A:「え? 幼馴染ってやつだよ。小さい頃から一緒に育ってきた。自慢じゃないけど、武偵高の中で一番あの()に関して詳しいのは間違いなく俺だ」

 

Q:どんな方ですか?

A:「いい()だ。家事が得意でね、何て言えば良いのか……良妻賢母の卵? 俺も飯作ってもらったり、色々と世話になっちまってる。本当にいい()だよ。ありがとなユキ。…………ちょっと待った今のストップ! 流石にハズイッ!」

 

Q:以上を踏まえてお聞きします。星伽白雪さんは、あなたにとってどんな存在ですか?

A:「…………大事な()だよ」

 

 




いかがでしょうか? 最初の設定はこんな感じですかね。これから物語が進むごとに加筆していく予定ですのでお楽しみに!

ちなみに……那須家の経歴の部分は当然オリジナル設定ですので、史実と異なる部分が多々あります。ご了承くださいm(__)m

感想、批評は大歓迎です!

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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第壱章 「矢は放たれた」
Snipe 01 「ショウとユキ」


皆さんお久しぶりです。リバポから世界へです。約三ヶ月ぶりの更新になってしまいました。遅くなって申し訳ありませんm(__)m

前回のプロローグに続き、ようやく第一話を投稿することが出来ました。

それではどうぞ!


―――――トントントン

 

「……ん?」

 

頭まで被った毛布越し。そのまた更に自室のドア越しに何やら物音が聞こえる。ここには自分以外の住人など、誰一人として居ないはずなのに……。

本来なら不審者に驚いて部屋から飛び出すところだ。しかし布団の中で未だに寝惚け眼の少年は毛布から顔を出し、チラリとドアを見ただけで再び夢の中へと旅立ってしまった。

 

”世の中に寝るより楽は無かりけり”

 

親しい友人の言葉だが、成程。よく言ったものだ。

 

……コンコン

 

それより数分後、ドアが控えめにノックされる。

 

『ショウくん? 白雪です。起きてますか?』

 

ノックの主が、やや緊張した声で少年を呼んだ。控えめではあるが、ハッキリと聞こえたその声に”ショウくん”と呼ばれた少年はパチリと目を開ける。しかし……

 

「いいえ、寝ています。起こさないでください」

『え、えぇー!?』

 

大真面目な口調でそう言ったショウにドアの向こうの白雪は困惑してしまった。

 

(ど、どうしよう……? まだ寝かせてあげたいけど、今日は始業式だし……。それより何より、折角作った朝ごはんが冷めちゃうよぉ……)

 

ドアの前でオロオロとしていると、部屋の中からクスクスと小さな笑い声が聞こえてきた。

それに気づいた白雪はハッとした後にショウに抗議の声を上げた。

 

「ショウくんひどいよ! ホントは”見えてる”んでしょ!?」

『いや……悪い。ちょっと意地悪だったな。プッ……ククッ』

 

そのすぐ後に部屋の中からガサゴソと物音がする。白雪はハッとすると漆塗りの小さなコンパクトを取り出し、前髪を整え始めた。

 

(こ、これで大丈夫……!)

 

パチリとコンパクトを閉じ、セーラー服のポケットに仕舞った数秒後……ドアを開ける音と共にショウの姿が露わになった。

 

「お、おはようございます!」

「はい、おはよう」

 

ペコリ! そう聞こえるくらい、しっかりとした姿勢でお辞儀をする幼馴染の少女にショウは苦笑いをしながらも挨拶を返す。

艶やかな黒髪ロングの髪を白いリボンで結んだ、スタイル抜群の美少女・星伽白雪は顔を上げると、何かを期待するようにニコニコと微笑んだ。その表情に気づいたショウは彼女の顔を覗き込む。

 

「ユキ」

「は、はい」

「前髪切った?」

「……うん、変じゃないかな?」

「いいや、似合ってる。可愛いよ」

「あ……あう……」

 

確かに多少のリアクションは欲しかったが、面と向かってストレートに”可愛い”と言われると返答に困る。

だが、決して嫌というわけではない。むしろ嬉しいくらいだ。真っ赤になって口元が緩むのを我慢していると、テーブルを見たショウが声を上げた。

 

「おお、うまそー」

 

テーブルの上には白雪が作ってくれた朝食が綺麗に並べられていた。ふんわりとした玉子焼きと海老の甘辛煮、こんがり焼けた銀鮭に彼女が漬けた沢庵漬。どれも手間をかけて作られている。

 

「ごめんな、大変だっただろ?」

「ううん、これぐらいは大丈夫」

 

キッチンから声がしたので中を覗くと、白雪は2人分のご飯と味噌汁を御盆の上に乗せていた。ショウは彼女に近づくと御盆を取り上げる。

 

「え?」

「持ってくよ」

「あ、ありがとう……」

 

テーブルに茶碗を並べると、二人は向かい合って席に着いた。

 

「「いただきます」」

 

故郷の青森から二人で東京に出てきて以来、この部屋で一緒に朝食を食べるのが、ほとんど毎日の日課になっている。朝早くに白雪が来て二人分の食事を作り、寝起きの悪いショウを起こす。食事だけではない。洗濯や掃除も気付けば彼女がやるようになっていた。

ショウも最初は”申し訳ないから”と断っていたが、白雪の「お母様に叱られちゃうから」という台詞に押し切られてしまっている。

どうやら白雪は彼女の母親から自分の世話をするように言い付けられているらしい。

ショウも彼女が怒られるのは見たくない。だが、はっきり言ってショウの私生活は白雪にかなり依存していた。

なので”せめて食費ぐらいは”と毎月、白雪に無理矢理手渡している。最低限の礼儀として。

 

「なあ、ユキ」

「はい?」

 

ショウは味噌汁のお椀を置くと、真っ直ぐに白雪の目を見た。

 

「いつもありがとう。世話焼いてくれて」

「あ……」

 

箸を置いた白雪の頬が微かに赤くなる。ショウは彼女の手に自身のそれを重ねると恥ずかしそうに続けた。

 

「俺、生活力全然無いからさ。この前だって見たろ? スパゲッティ作ろうとして、麺がデロンデロンになっちまったし……」

「ああ……うん……」

 

いつも白雪に食事を作って貰うばかりだった。”たまには自分が彼女に”と張り切って台所に立つまでは良かったのだが……パスタは茹ですぎてしまい、ミートソースは焦がしてしまう有様。その日も結局、彼女に任せることになってしまった。

 

「セーター洗濯したら縮んじまったし……」

「あはは……」

 

縮んでしまったセーターを手に洗濯機の前で呆然と佇むショウの姿を思い出し、白雪は思わず苦笑いを浮かべる。

 

「だから、お前に来てもらって正直かなり助かってるんだ」

「……ショウくん」

「これからもその……たまにで良い。暇な時で構わないから、飯作ってくれると嬉しい……かな」

「うん、何時でも」

 

白雪は嬉しそうにショウの手をそっと握り返した。そんな彼女を見たショウは真っ赤になって頭を抱える。

 

「やっべえな……俺めっちゃ恥ずかしいこと言ってる……」

「ふふっ、でもちゃんと言ってくれたから嬉しいです」

 

満足げに微笑んだ白雪は立ち上がると、トテトテとショウの背後までやってくる。そして椅子に座っている彼の頭を両手で優しく撫で始めた。

 

「あ、あの……白雪さん?」

「はい、どうしましたか?」

「どうしたのって……何してるんすか?」

「ショウくんの頭撫でているんです」

「…………」

 

白雪は時折、ショウに対してお姉さんぶる事がある。彼女の方が半年以上後に生まれているのにだ。

ショウも別に嫌ではないのだが、子ども扱いされるのは流石に……と感じている。

だが、こうして優しく撫でられると気持ちいい。段々と眠たくなってくる。

 

「ショウくんの髪、柔らかくて綺麗だね。すぐ切っちゃうなんてもったいないよ。伸ばしたりしないの?」

「……長いの嫌いなんだよ。狙撃の邪魔になるし、暑苦しいし」

 

白飯をモソモソと食べていたショウが眠そうに答えると白雪の手が止まった。

 

「ユキ?」

 

急に静かになった白雪を不審に思い、振り返る。すると彼女は少しショックを受けたような表情をしていた。

 

「どうかした?」

「あの……ショウくんは女の子の髪も短い方が良いと思う?」

 

自身の綺麗な黒髪を触りながら心配そうに言う白雪にショウは眉をひそめる。何故そんな質問をするのか? 意味が分からない。

 

「え、何で?」

「……だって今長いのキライって」

 

そう言った白雪を見てハッとしたショウは、椅子から立ち上がると慌てて彼女の質問を否定した。

 

「ち、違う違う! 俺自身が伸ばしたくないって話だよ! お前は……その……」

「私は……?」

 

上目遣いでそう聞いてくる白雪が一歩前へ詰めてくる。

 

「……ッ!」

 

桃のような優しく甘い香りがショウの鼻孔をくすぐる。もう二人はほとんど密着していた。白雪の豊満な双丘がショウの胸に押し付けられる。

 

(困った()だよ、マジで……)

 

恐らく彼女は……ショウにどのように迫れば効果的か分かっているのだろう。

このままだとマズイことになるかもしれない。……色々と。

 

「い、今のままでいい。いや……今のままがいい」

「そ、そっか。……良かった」

 

ホッとしたように寄り添ってくる白雪の頭をポンポンと撫でる。

ここまでのスキンシップをとっていても、二人は付き合うどころかキスすらした事が無い。だが、この様子だと二人の関係が進歩するのは時間の問題だろう。

 

 




いかがでしたか?

白雪のキャラが微妙に違うかな・・・とも思ったのですが、対象が変われば反応や態度も変わるだろうと思い、このまま投稿することにしました。

最初から飛ばしすぎたかな・・・? まあ、概ねこんな感じで進んでいく予定です笑

感想、批評は大歓迎です!

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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Snipe 02 「ショウ・マスト・ゴー・オン」


皆さん、こんにちは。リバポから世界へです。
約一月ぶりの更新になります。お待たせしました!



それではどうぞ!



「それキンジの?」

 

朝食を終えると、白雪は漆塗りの重箱に一人分の食事を詰め始めた。メニューは先ほどまで自分たちが食べていたのと同じもの。それを手際よく皿から移していく。

 

「うん、キンちゃんもコンビニのお弁当ばかり食べてると思うから……。洗い物終わったら届けてくるね」

「俺が持ってくよ。大変だろ?」

「え、いいの?」

「ああ。……最近、話せてなかったしな」

「そっか……じゃあ、お願いします」

「ラジャー」

 

風呂敷に包まれた重箱を手に取ると、靴を履き玄関から外に出る。そして階段を降りて外廊下を鼻歌まじりに歩いて行くと……もう一人の幼馴染の部屋の前に辿り着いた。

『遠山』と書かれた表札をチラリと確認すると、インターホンのボタンを押す。

十数秒後、スピーカー越しにくぐもった声が聞こえてきた。

 

『……はい。あれ……ショウ?』

「Room Service」

『……は?』

 

ショウのおどけた口調に家主は眠そうな声を上げる。そして近づいてくる足音から数秒後……ドアが開き、一人の少年が顔を出した。

 

「キンジ、モーニングーッド」

 

ショウは手をヒラヒラと振るとニコニコした顔のまま、持っていた風呂敷包みを少年に押し付ける。

 

「お、おう。何だコレ?」

 

この部屋のたった一人の住人である少年・遠山キンジは、押し付けられるまま包みを受け取ると怪訝そうにショウと包みを見比べた。ずっしりとした重みと温かさが彼の手に感じられる。

 

「我らが愛しき幼馴染から賜ったものだ。有難く受け取るがよいぞ」

 

芝居がかった様子でそう言ったショウにキンジは呆れながらも、包みを下駄箱の上に置いた。

 

「何だよその口調は……。白雪から?」

「そう。朝飯まだだろ? 心配してたぞ。食ったら電話の一本でも掛けてやりな」

「分かった。お前からも礼言っといてくれ」

「ハイハイ」

「じゃ、またな」

 

そう言ってキンジが閉めようとしたドアをショウが掴み、押さえつける。

 

「なあ、キンジ」

「……何だよ?」

「……今日来るよな?」

 

今までおどけていたショウの表情が変わった。寂しそうに笑うとジッとキンジの目を見つめる。キンジはため息をつくが、確かに頷いた。

 

「ああ、分かってる。行くよ」

「そうか。約束だぜ? Bang!」

 

ホッとしたショウは、パチッとウィンクをして指で銃のシルエットを作る。それを見たキンジは苦笑いを浮かべたままドアを閉めた。

 

「……無理強いは良くねえのかな」

 

自分の部屋に戻る途中、そんなことを考えてしまう。

彼は……キンジは武偵高を辞めようとしている。3年生に進学すると同時に一般校に転入しようとしているのだ。武偵を辞め、一般人として生きていく。それが今の彼の願いだった。

ショウも白雪も引き留めようとしているが、キンジの意志は固い。もう自分達では彼を止められないだろう。だが彼が居なくなれば、3人の関係はバラバラになってしまう。それだけは絶対に嫌だった。

 

(何でも構わない、ほんの少しでもいい。何か……何かきっかけがあれば……)

 

良くない頭をフル回転させて必死に考えを巡らせる。だが、どれだけ考えても良い案は思い浮かばなかった。

 

 

 

 

 

「おかえり。キンちゃんどうだった?」

「ああ、大丈夫。今日も来るってさ」

「そっか……良かった。あ、防弾(・・)制服アイロンかけといたよ」

 

白雪がハンガーに吊るしてあった臙脂色のブレザーをショウに着せる。

 

「そういや脱ぎっぱだったっけ。ありがとな」

「いいえ、あなた♪ な、なんちゃって」

「恥ずかしいから、その呼び方やめて……」

 

恥ずかしそうに顔を逸らしたショウの襟を整えていた白雪の手が止まった。彼女の目線はショウの胸元をジッと見据えている。

 

「どした?」

「ショウくん、ネクタイ曲がってるよ」

「え、どこが? ちゃんとなってるだろ」

「ほ、ほら……ちょっとだけ曲がってる。始業式なんだから、ちゃんとしないとダメだよ。ほら、こっち向いて?」

「ハイハイ」

 

どこからどう見ても、真っすぐ結ばれたネクタイを白雪の綺麗な指が緩めていく。ちょっと曲がってるだけ(彼女はそう言い張っている)なら最初から結び直さなくても良いだろうに……。

ショウは吹き出しそうになるのを堪えながら、おとなしく成り行きを見守っていた。まあ、良い。彼女の好きなようにさせてあげよう。自分もこういうのは……ハッキリ言って嫌いじゃない。

 

「苦しくない?」

「大丈夫」

「はい、出来ました」

「あんがと」

 

彼女が結んだネクタイは襟が苦しくないように、しかし同時にだらしなくないように丁度いい具合でショウの首に巻かれていた。白雪はこういう家庭的な作業が本当に上手い。料理も上手だし、掃除も洗濯も何でもござれだ。きっと将来は良いお嫁さんになるだろう。

洗面所で髪を整えると、自分の部屋に戻って通学鞄にペンケースとモバイルバッテリーだけを放り込む。教科書とノート? そんなものは教室の机の中だ。

布団をたたみ、枕元に置いてあった拳銃―――――『グロック17』をホルスターごとベルトに差し込む。そして机の横に鎮座していたガンケースを開けた。中には黒い細身の狙撃銃が収まっている。

『ステアー・スカウト』

命中精度が高く狩猟用や競技用、更には軍用モデルも存在するこのライフルは、先日の逃亡犯の追跡・確保でもその能力を遺憾なく発揮してくれた。

ボルトをオープンすると、.308 ウィンチェスター弾が顔を覗かせる。

再び銃をしまうと、ガンケースを肩に掛け部屋を出た。リビングに居る白雪に

 

「どうよ? キマってる?」

 

ポーズを取って得意気に彼女の前に立つと、白雪はうっとりした表情でショウを眺めた。

 

「うん……ショウくんカッコイイよ。ショウくんは星伽の……私のヒーローだから」

 

もじもじと、それでもハッキリとそう言った白雪に彼女の通学鞄を渡してあげると

 

「そんな立派なもんじゃないさ」

 

ショウは苦笑いを浮かべ、彼女と一緒に部屋を出た。

 

 

 

 

 

寮を出ると最寄りのバス停まで歩いていく。まだ早い時間のせいか、自分たち以外は誰も並んでいなかった。

 

「恐山行くの明日だっけ?」

「うん……」

「……そっか」

 

白雪は星伽神社という由緒正しい神社の長女だ。巫女である彼女は、家の事情や所属学科の都合で頻繫に神社や山に合宿に行く。

先日も伊勢神宮に一週間程滞在し、戻ってきたのは昨日の夕方頃。ショウも護衛役として同行し、陰から彼女を守っていた。と言っても護衛とは名ばかりで、実際は彼女の運転手や雑務ばかりである。

星伽の巫女は長い歴史の中で狙われることが多く、ショウの家が代々彼女達を守り続けてきた。しかし、最後に星伽巫女が襲われたという記録は今から100年以上も前のこと。

自分たちの役割は今のご時世、そこまで重要なのか? ショウは口にこそ出さないが、時折そう感じることがある。

 

「ご、ごめんね? 今回の合宿は完全に男人禁制みたいで……」

 

白雪が申し訳なさそうにショウの顔色を伺う。

そう、明日からの合宿は恐山の奥地にある男人禁制の古い神社。いつもは彼女に付き従うショウも今回ばかりはお留守番である。珍しいことだが仕方がないとショウは諦めていた。

 

「仕方ないさ、決まりなんだから」

 

欧米人のように肩をすくめるが、白雪は……マズイ目に涙が浮かんでいる。

 

「でもでも……」

「お、おい泣かないでくれよ……頼むから」

 

長年の付き合いで、こういう時は頭を優しく撫でてやれば泣き止むとショウは知っていた。今回も……

 

「……うん」

 

ほら、泣き止んだ。

しょんぼりとした表情でも、先ほどに比べれば元気に見える。

 

「姉貴と連絡取れたよ。向こうに行ってる間、お前の護衛はあの人がやるから」

「お姉さんが?」

「そう。蒔江田さんと一緒に夕方には迎えに来るってさ」

「……そうなんだ。でも今日の晩ご飯どうするの?」

「どーにでもなるさ。キンジ誘って食いに行っても良いし。なもけね~(大丈夫)

 

ショウがおどけて笑うと、白雪の顔にようやく笑顔が戻った。

そんなことをやってる内に通学バスがやって来る。キンジの姿はまだ見えない。まだ時間的余裕はあるが、新学期早々遅刻しないだろうなと少しだけ不安になった。

 

(……いや、あいつは来るって言ったんだ。大丈夫だろ)

 

そう自分を納得させると、ショウは白雪に続いてバスに乗り込んだ。

 

 

 

―――――しかし、この日キンジがバスに乗ることはなく……それが彼だけでなく、ショウの運命さえも変えてしまう事になるとは全く想像すら出来ていなかった。

 

空から女の子が降ってくるなんて……誰一人として考えつかなかったのだ。

 

 

 

ショウ。本名は那須(なす)翔資(しょうすけ)

かつて源平合戦で源義経に仕え、弓の名手として名を残した那須与一資隆(すけたか)から数えて39代目の彼は今、東京に居る。

弓を銃に持ち替え……代々、受け継がれてきた能力(ちから)で武偵になっていた。

目の前の少女を……星伽の巫女を護るために……。

 

 

 





今回はこれで以上になります!

ようやくキーくんを出せました・・・(汗) ここまで長かった・・・

次回から他の主要キャラも出てくると思います。仕事が忙しくなってきたので、更新が遅れる事もあるとは思いますが、「それでも」と言ってくださる方が居れば嬉しいです。

ちなみに最後のショウのセリフに「なもけね」という言葉があるのですが、これは青森の方言で『大丈夫』という意味らしいです。使い方合ってるのかな・・・?

それでは今回も読んでくださってありがとうございました。次回もお楽しみに!
失礼します。


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Snipe 03 「2人の距離」

皆さんお久しぶりです。
半年間も更新が滞り本当に申し訳ありませんでした。
仕事とか仕事とか仕事とかで・・・ね・・・

とりあえずどうぞ!


「えーっと俺は……B組だな」

「私もB組だよ。良かったぁ……ショウくん、また同じクラスだよ!」

「お、おう……」

 

掲示板に貼られたクラス分けを見て白雪が嬉しそうな表情を浮かべる。ショウは掲示板と彼女の顔を交互に見て苦笑いを浮かべた。

ショウも素直に喜びたかったが、彼のリアクションには理由がある。

白雪の実家である星伽神社は……彼女が入学する際、少なくない額を武偵高に寄付しているのだ。

どんな学校でも運営していくには多額の資金が必要となる。特に武偵高はその性質上、一般校に比べて掛かる費用は莫大。何処かに奇特な人物でもいれば良いのだが、こんな得体の知れない学校に寄付をしようなんて物好きは中々居ない。そんな中で星伽神社がスポンサーに付いた。声には出せないが……多少の融通は利かせているのだろう。

 

「2年連続なんて運命だね!」

「うーん? んー、そうなのか……なぁ?」

 

……こういった形で。

 

「担任の先生、誰だろうね?」

「出来れば、ゆとりんか矢常呂ちゃんがいいなあ……。優しいし、まともそうだし?」

 

強襲科(アサルト)主任教師の蘭豹だけは嫌だ。1年間で何回撃たれるか分かったもんじゃない。ショウも五体満足で此処を卒業したい。

 

「だ、ダメだよ! ちゃんと先生って言わなきゃ……」

 

真面目な白雪が慌ててショウを止める。周囲に誰も居ないことを確認すると、ホッと息を吐いた。

 

「はいはい」

「もう……」

 

プクリと可愛らしく頬を膨らませる彼女を見てショウの口角も上がる。

 

「まあ、アレだ。また1年よろしくな?」

「あ……うん! よろしくね!」

 

ふにゃっ。

そんな擬音が聞こえるぐらい満面の笑みになった白雪はショウのブレザーの裾を遠慮がちに摘まむと教室まで歩きだした。

 

 

 

 

 

「ショウ君、高天原先生はA組だって」

「ちっ……蘭豹先生は?」

「C組みたい」

「じゃあ、ウチ誰よ?」

 

白雪が言うには、ショウが希望していた救護科(アンビュラス)の矢常呂イリン教諭は1年生の担任だという。今のところ残ってるのは……声は聞こえるのに姿を見たことがない諜報科(レザド)のチャン・ウーと背後に立ったという理由だけで手刀で生徒を骨折させた狙撃科(スナイプ)の南郷。あとは……

 

「おーう、席着けぇー。出席取るぞー」

 

その時ガラリと教室のドアが開き、一人の女性が入ってきた。

 

(げ……綴かよ……)

 

手に出席簿を持ったその女性は真黒いコートと編み上げブーツという、とても教師には見えない風貌をしている。

彼女が咥えたタバコ……のようなもの?を目にしたショウは天を仰いだ。

 

「えーっとぉ? 1年間、お前らの面倒を見てやる綴でーす。お前らも今日から2年生だから新入生たちの……えーっと何だっけ? 見本? 手本? 何だっけな、あれだよ。……ああ思い出した、模範だ模範。模範になるような行動を取るように。以上、解散。……ねむー」

 

”模範”なんて小学生でも分かる単語も思い出せないヤク中(ジャンキー)のようなこの女は綴梅子。

一見何の役にも立ちそうにない女だが、かつてアメリカのFBIからもスカウトが来たと噂される尋問のスペシャリストだ。

だが、見たとおり印象が凄まじく悪い。校内で平気な顔でタバコ?を吹かし、生徒に根性焼きをかます。そして何より教師としてあるまじき、夢も希望も無いような虚ろな目。あの目で一体何を見ているのか? 

そんな人間が教師を続けている事に対して教育委員会のお偉いさん方に問いたくなる。「お前ら正気かよ」と。

綴が教室から出て行くとクラスメート達の喧騒が再開し始めた。あの銃は使い物にならないだの、例のヤクの売人が殺されたらしいだの……。ここでの世間話はそんな物騒な話も多々ある。

授業の準備をしていると白雪が側にやってきた。綴が担任と分かり、彼女は苦笑いこそ浮かべているが不安そうな素振りは見せていない。

 

「ショウ君。今日のお昼どこで食べよっか?」

 

それどころか今日の昼食をどうするか聞いている。そんな彼女のメンタルの強さをショウは頼もしく思った。

 

「食堂は混みそうだなあ。何かパンでも買って静かな場所に行こうか? 人が多いのは嫌だ」

「し、静かな場所……」

 

その単語に白雪がモジモジし始める。ショウの顔を見つめるその目付きは恥ずかしそうではあるが……まんざらでもないような……。そう思うのは幾ら何でも自意識過剰だろうか?

 

「あー……っと、アレだ。ただ人が多いのが苦手なだけで、その……変な意味じゃないと思う……かな?」

「そ、そうだね……何もおかしくないよね? 大丈夫、何も変じゃない」

 

そう自分に言い聞かせるように白雪が呟いた時―――――

 

ダダン!

 

隣の教室……方向からしてA組から突如として発砲音が聞こえてきた。

普通の人間なら身構えたり地面に伏せるところだが、此処は武偵高。悲しいかな、こんな事は日常茶飯事だ。

周囲の様子を見ても、驚く者は居るが多くの生徒は呆れたように苦笑を浮かべるだけだ。

”またか”と。

音から察するに……45ACP弾だろう。発射されたのは2発らしいがインターバルが短い。2丁拳銃だろうか?

はて……同級生で45口径を2丁持ちしてる人間なんて見たことがないのだが……。

 

「始業式で発砲する奴居んのかよ、普通……」

「あはは……」

 

ショウは自身の先祖がかつて残したとされる名言を捩ってボヤいた。

 

「南無八幡大菩薩。願わくば我の1年間を平穏無事に過ごさせ給え……いやマジで」

 

 




今回はこれで以上になります!

白雪の心理描写って難しいね・・・
頑張って書き続けます。
良かったら感想とか書いてやってくだせえm(_ _)m

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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Snipe 04 「7本の薔薇」

皆さん、お久しぶりです。リバポから世界へです。

約3ヶ月ぶりの更新です。本当にお待たせしました!
仕事が立て込んでて……ようやく落ち着いたので投稿します。

今回はリハビリと言いますか……文法とか表現がメチャクチャかもしれません。大目に見てクレメンス・・・。



それではどうぞ!


「こ、ここで食べるの?」

「うん。私の部屋なら静かだから」

 

昼休み。

案の定ごった返していた食堂で、何とか昼食を買ったショウは白雪と共に彼女の専門学科へと向かった。

超能力捜査研究科―――――通称SSR。

ショウは此処があまり好きではない。

周りを見回せば朱色の鳥居が建物の入口まで連なり、その入り口には狛犬とスフィンクスが左右に並んでいる。他にもモアイ像や灯篭……エトセトラ、エトセトラ。様々な宗教のオブジェクトが所狭しと並んでおり、カオス極まりない。

 

「ショウ君、行こ?」

 

この異様な空間に何も感じないらしい白雪がショウのブレザーの裾をちょこんと摘まんだ。

 

「……ん」

 

ショウは裾を摘ままれたまま、重い足取りで建物へと入っていく。

中に入ると建物内にほとんど人影が見られなかった。不気味ではあったが、2人で一緒に居るのを見られ変な噂を立てられるよりかはマシだろう。

 

「そういえば、ショウ君が此処に来るのは初めてだったね」

「ん? あ、ああ。なんつーか、その……部外者は気軽に来づらいというか……」

「……? そんなことないと思うけど……」

 

白雪はキョトンとした表情をするが『お前の学科は気味が悪いから来たくねえ』なんて口が裂けても言えなかった。泣かれる自信がある。

5階にある彼女の部屋は十畳敷の和室だった。SSRの生徒は人数が少ないため、それぞれの個室がある。狙撃科(スナイプ)のショウは少し羨ましい。

 

「ショウ君どうぞ。今、お茶淹れるね」

「お邪魔しまーす」

 

ショウも部屋に入り襖を閉めると、白雪が用意してくれた座布団に座った。

 

(ん?)

 

ショウの視線の先に漆塗りの棚があり……そこに置かれてあった物の一つに目を奪われる。

 

「はい、どうぞ。……ショウ君?」

「……驚いたな」

「え?」

 

急須でほうじ茶を淹れてくれた白雪もショウの視線の先に目をやった。棚には古いプリザーブドフラワーが置かれてる。7本ある薔薇の花は色褪せて花びらは所々ひび割れているが、それでも未だにこうして置かれているということは余程大事にしているようだ。

 

「まだ持ってたのか。とっくに捨てたかと……」

「もちろん。ショウ君がせっかく作ってくれたから」

 

白雪の言う通り、それは5年程前に不器用なショウが彼女のために作ったもの。はっきり言って今思えば、あまりにもお粗末な出来だ。母親に手伝ってもらわなかったら、とても渡せない状態だったろう。

 

「……そんな古いもん捨てちまえよ。新しい綺麗なやつ買ってやるから」

 

妙な恥ずかしさが込み上げてきて、心にもないことを言ってしまう。本当は嬉しくてたまらないのに……。

 

「ううん。これ貰った時、すっごく嬉しかったんだよ? だからずっと飾っとくね。ショウ君に『捨てろ』って言われても絶対に嫌だから」

「…………」

 

時々、彼女はショウも驚くほど頑固になる。そんな彼女がたまらなく―――――魅力的に感じた。

 

「……好きにしな」

「うん、そうするね。ふふっ」

 

プイッとそっぽを向いて買ってきたサンドウィッチを取り出すと、白雪が何やらニコニコしている。

 

「……何さ?」

 

ジト目で白雪の方に向き直ると、彼女は心の底から楽しそうに答えた。

 

「ううん。ショウ君可愛いなあって。あ、そういえば私も後から知ったんだけどね? 7本の薔薇の花言葉って―――――」

「は、恥ずかしいからやめてくださいます? それ以上言われたら恥ずか死ぬよ俺。恥ずか死ぬって何だよ……何言ってんだ俺は……」

「はいはい。じゃあ、ご飯食べよ? あっ、ショウ君のサンドウィッチ美味しそう♪」

「聞いちゃいねえや、この()……。ちょっとあげるから、おにぎり分けて?」

 

2人で「いただきます」と手を合わせ、おにぎりとサンドウィッチを少し交換する。

暫くはとりとめのない世間話が続いたが、やがてショウが思い出したように口を開いた。

 

「そういえば聞いたか? A組に転入生が来たんだって」

「転入生?」

「うん。正確には去年の3学期に来たらしいんだけどさ。顔までは知らんけど」

「…………」

 

その話を聞いた途端、白雪の表情が曇った。深刻そうな顔付きで何かを考えている。

 

「ユキ? どうかしたか?」

「……え? あっ……ううん! 何でもないよっ」

「そうか? なら良いんだけど」

 

その時、ショウのポケットの中でiPhoneの電子音が鳴った。教務科(マスターズ)からの周知メールだ。

 

「あぁん? なんだコレ?」

 

メールの内容を見てショウは眉を寄せた。内容は2年生の男子の自転車に爆弾が仕掛けられたとの事。

添付ファイルにはメチャクチャになった自転車の画像が載っている。だが、この自転車何処かで見たような気が……まさか……。

 

「……なあ、ユキよ」

「はい?」

「このチャリ……誰のだと思う?」

 




いかがでしょうか? 実は長くなったんで途中で切ってユキちゃんとのイチャイチャシーンだけに全振りしたのは内緒。

ここでの白雪はからかい上手な感じになってる気がする。

ショウもキンジや白雪をからかう感じだけど、白雪の方が一枚上手な感じかな?
タグにキャラ変って載せようかしら。

薔薇の本数は結構悩みました(汗)花言葉は・・・言わぬが花かな。花だけに(゚∀゚)
色は皆様のご想像にお任せしますね。

良かったら感想とか書いてやってくだせえm(_ _)m

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します


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Snipe 05 「LOVE REVOLUTION」


皆さん、こんにちは。リバポから世界へです。

なんとか今月中に投稿することが出来ました! 



それではどうぞ!


「さっきキンジに電話した。やっぱりチャリジャックの被害者はあいつだったよ」

 

午後の授業も終わり寮に戻る途中。ショウが隣を歩く白雪に呟くと、それを聞いた彼女は顔面蒼白になった。

 

「キ、キンちゃん大丈夫なの?」

「話を聞く限りじゃ問題無さそうだ。タフな奴だよホントに」

「そっか、良かった……」

 

電話で話した会話を思い出す。キンジは怪我は無いと言っていた。だが声には疲労が混じっていた気がする。相当ストレスが溜まっているのだろう。何かガス抜きしてやらないと……。兄を無くした時のように自分で抱え込んでしまうかもしれない。

 

「ユキ。合宿から戻ってきたらキンジと3人で飯食わないか? 作るの手伝うからさ」

「もちろん!」

「ありがとう。ところでさ……」

 

元気よく返事をした白雪に、ショウは次第に膨れ上がっていった疑問を投げかけた。

 

「こっち男子寮なんすけど……?」

「うん、そうだね?」

 

”ちょっと何言ってるか分からない”と言わんばかりに可愛らしく小首を傾げる彼女に、ショウは別の方角を指差す。

 

「女子寮があっちなのは知ってるよね?」

「もちろん♪」

 

当たり前のように言う白雪をジッと見た。

毎日のように食事を作ってくれるのは嬉しいが、特に理由も無いのに女の子を男子寮に連れ込むのは色々とマズい気がする。だが料理だけ作らせて後は来るなって言うのは、いくら何でも最低だ。どうするのが正解なんだろう?

”何か問題でもありますか? ありませんよね”?と言わんばかりに、ニコニコと自分を見上げる彼女を見て―――――

 

(まあ、可愛いからいいかぁ……)

 

ショウは色々考えるのが馬鹿らしくなった。

 

「そうか」

「そうです♪」

 

そんな調子で男子寮まで戻ってくると、門の前に1台の高級車が止まっている。あの車は……

 

「「あっ」」

 

中にいる女性の顔を確認すると、ショウと白雪の顔に笑みが浮かぶ。2人の見知った顔だった。

運転席に乗っている人物もこちらに気づき、後ろの座席に乗っていた人物と共に表へ出た。2人ともスラッとした美人で周囲の通行人がチラチラと彼女達を見ている。『あまり目立つ人間は寄こすなよ』とショウは心の中でため息を吐いた。

 

「薪江田さん、静香さん! お久しぶりです!」

 

白雪が嬉しそうに2人に駆け寄る。名前を呼ばれた女性たちは恥ずかしいような嬉しいような表情で挨拶を返した。

 

「白雪様、翔資様。お久しぶりで御座います」

 

そう言って星伽家お抱えの美人運転手・薪江田深雪(まきえだみゆき)は頭を下げ、そんな彼女にショウはフランクに手を振った。

 

「薪江田さん久しぶり。調子どう?」

「はい。皆様もお元気ですよ。翔資様もお変わりないようで」

 

年下のショウに慇懃に答える深雪にショウは苦笑いを浮かべる。

 

「うーん……前から言ってるけど、その”様”付けは止めてくんないかなあ。俺の方が年下だし」

「ですが……叱られてしまいます」

「誰にさ。ウチの親父? それともユキのお袋さん(おばさん)?」

「そ、それは……」

 

深雪が言い淀むと、今まで黙っていた隣の女性が口を開いた。

 

「こらこら、ショウ? あまり深雪さんを困らせないの」

「でも俺らが小さい頃から遊んでくれてたんだぜ? 姉ちゃんみたいなモンだし……って、おお!? こっちにホントの姉貴がいた!」

 

おどけたようにオーバーリアクションをするショウに彼の姉・那須静香(なすしずか)の額に青筋が浮かぶ。

 

「あ、あんたねえ……久しぶりに会ったのに第一声がそれ?」

「ハハ、冗談だよ。姉貴マジで久しぶり。元気そうで良かった」

「アンタもね」

 

お互いにからかう時もあるが、姉弟仲は良いほうだ。

電話では何度も話したが、こうして顔を合わせるのは1年ぶりぐらい。ショウと白雪が年末に帰った際は静香はスコットランドの教会で別の星伽巫女の護衛を務めていた。

 

「それにしても、ここ男子寮だよ? ユキの女子寮はあっち。よくここに居るって分かったね?」

 

白雪を迎えに来た2人には女子寮の場所は伝えてあったが、まさか先回りされているとは思わなかった。

しかし、静香も深雪もお互い顔を見合わせると肩をすくめる。

 

「え? 分からないと思ってたんですか?」

「『どうせ、お嬢様が通い妻状態になってるんだろうなー』って深雪さんと話してたのよ。案の定だったわ」

「…………」

 

”お前、何バカ言ってんの?”。彼女たちは口にこそ出さなかったが、そんな風に言われた気がしたショウは閉口した。

 

「お嬢様、このバカ弟がご迷惑をお掛けしてませんか? 何か色々と不安なんですけど……」

「い、いいえ! むしろ一緒に居れて嬉しいというか、弟さんをお婿にくださいというか……え、ええっと、その……末永くよろしくお願いします!」

 

ビッシリ90度の体制で頭を下げた白雪に静香はドン引きし、ショウは眉間を指でほぐす。

そして、姉弟にしか聞こえないボリュームでヒソヒソ話を始めた。

 

「……俺、疲れてるのかな? 何か今プロポーズされた気がするんだけど……」

「知らないわよ、アンタ彼氏でしょ? 何とかしなさいよ」

「待て待て、俺ら付き合ってねえよ……」

「は……? 冗談よね?」

 

愕然とした静香にショウはコクコクと頷く。傍から見れば恋人に見えるかもしれないが、お互いに明確に”好き”と言ったことは無い。ただの一度も。

 

「ショウくぅん……」

「ハ、ハイ!?」

 

背後から甘ったるい声(キンジ曰く粉砂糖をまぶしたイチゴ大福みたいな声)が聞こえ、ショウの肩がビクッと震えた。恐る恐る振り返ると、白雪が涙目になって自分の目をジッと見つめている。マズい……今の会話が聞かれただろうか?

 

「何かあったら、すぐに電話してね? 何も無くても電話して良いからね? ねっ?」

「そんな今生の別れみたいに言わんでも……」

 

よ、良かった。静香との会話が聞こえていた訳ではないらしい。

 

「あー……盛り上がってるトコ申し訳ないんだけど、もうそろそろお時間ですよお嬢様?」

「え? あ、ホントだ……」

 

腕時計を見た白雪は何度もショウに「きちんとご飯食べてね?」「怪我しないでね?」などと言い、ようやく車に乗り込んだ。

深雪も運転席に戻り、表にいるのが那須姉弟だけになると静香がショウに尋ねた。

 

「で、アンタはどうなの?」

「何が?」

 

平静を保っているように見せたが、静香は彼の目が泳いでいるのを見逃さない。相変わらず演技が下手くそすぎる。

 

「すっとぼけないの。白雪ちゃんのこと、ちゃんと考えてるんでしょうね?」

 

先程とは打って変わって大真面目な口調で問いただす静香にショウは何と答えたらいいか分からなかった。

 

「……今更こんなこと聞くのもアレだけどさ、いいの? 家柄的にマズいんじゃ……?」

 

躊躇いながらも、ようやく言葉を選び口を開く。それを聞いた静香は一瞬キョトンとした後、小さく吹き出した。

 

「プッ……クスクス」

「…………?」

 

自分では変なことを言ったつもりはないが、笑われると気になる。怪訝な表情で首を傾げると静香は穏やかな表情を浮かべた。

 

「アンタ意外と前時代的ね……。父さんやお爺ちゃんの年代ならともかく、今21世紀よ? 昔みたいな政略結婚なんて簡単には出来ないんだから。もし、そうなら私もとっくに良家の御曹司にでも嫁いでるし、アンタたちだって引き離されてるわよ?」

「そりゃあ、まあ……そうかもしれないけど」

「どんな決断をするかはアンタの自由だけれど、後悔だけはしないようにね? こんなに良い()……中々居ないんだから。アタシが男だったら、お嫁に欲しいくらいよ」

 

静香は弟が心配だった。普段はおどけて何も気にしないで生きてるような男だが、実は繊細で傷付きやすい子だということも知っている。だから言いたいことは全部言ってしまおうと次々にまくし立てた。

 

「”好き好きアピール”を受けてる間は良いわよ。でも『自分が一番この()に近い男なんだ』って驕りは今すぐに捨てなさい。白雪ちゃんモテるんでしょ? 油断してると、そこらのチャラ男にサクッと持ってかれるわよ? こう! サクッと!」

 

感情が昂って身振り手振りの姉を普段は鬱陶しいと感じるはずが、ショウは珍しいほど深刻な表情で彼女の言葉を噛みしめている。

そして、何処か吹っ切れたようにコクリと頷いた。

 

「……分かった」

「よろしい……ってアンタ何してんの?」

 

ショウは車のサイドウィンドウをコンコンとノックすると静香の目を見て、こう言い放った。

 

「姉貴の言った通りだ。俺も後悔したくない」

「…………? ショウくん、どうしたの?」

 

スライドドアを開けた白雪の顔を覗き込む。そして普段は愛称で呼んでいる彼女をファーストネームで呼んだ。

 

「白雪」

「は、はい?」

「帰る前日に連絡くれ」

「……え?」

「俺がHILUX(サーフ)で迎えに行く」

 

珍しいこともあるものだ。ショウはこういう風に、半ば強引に何かを決めるということはしない。特に白雪のことでは皆無と言ってよかった。白雪だけでなく、彼を焚きつけていたはずの静香や運転席の深雪も驚いた表情で顔を見合わせる。

 

「だから、その……あれだ。ドライブデートしながら帰ろう」

「え……ええっ!?」

 

白雪は車の座席の上で飛び上がるほど驚いた。実際に少し頭をぶつけて涙目になっている。

いたた……と頭を擦る彼女にショウはクスリと笑みを浮かべた。

 

「ほ、本当!?」

「ああ。行きたい場所があったら言ってくれ。連れてってやる」

 

チラリと姉の表情を伺う。しかし、静香は手をヒラヒラさせるだけで何も言わなかった。”好きにしなさいな”という意味らしい。

 

(ショウくんが初めてデートに誘ってくれた!)

 

白雪は舞い上がるほど喜び……合宿に行かなければならない憂鬱な気分も吹き飛んでしまった。

 

「嬉しい……じゃあ私、お弁当作るね! ショウくんの好きな物いっぱい作るから!」

「うん。楽しみにしてるよ」

 

2人で指切りを交わすと、ショウは運転席の深雪と後ろの静香に視線を移した。

 

「蒔江田さん、くれぐれも気を付けて。姉貴、2人を頼むよ。皆によろしく」

「承知致しました」

「当然」

 

2人が”面白いものが見れた”と言わんばかりに満足気に頷いた時、白雪が車内から外に出てきた。

 

「ユキ、どうした? 忘れ物か?」

 

ショウがキョトンとしていると、彼女は意を決したように――――――

 

「えいっ!」

 

ショウの胸に飛び込んだ。

 

「うおっ!?」

 

白雪に抱き着かれたショウは心臓が口から飛び出そうになり、池の鯉のように口をパクパクと動かす。声を出そうとしても出ない。感じるのは彼女の桃のような甘い香りと柔らかい2つの感触だけ……。

 

「じゃあ行ってきます! 電話してね!」

「え……あ……」

 

白雪はショウから離れると彼が何か言う間も無く、車内へと戻ってしまった。

その数秒後、彼女たちを乗せた車は静かな駆動音と共に動き出す。

 

「ショウくぅ~ん~! 待ってるからね~!」

「お嬢様! 危ないですからっ! 首引っ込めて!」

 

交差点を右折するまでずっと窓から顔を出し、こちらに向かって手を振る白雪にショウはポカンとしながらも手を振り返した。

そして車が見えなくなると、真っ赤になって寮の外壁にもたれ掛かる。

 

「……い、今のはズルいだろっ……!」

 

幸いなのは、今の光景と自分の情けない顔が誰にも見られていない事だった。

 

 





いかがでしたか?

なんか、白雪とのイチャイチャシーンだけで物語が全然進まない・・・
流石に「くどい」って言われるかな?

星伽家のお抱え運転手、薪江田さんは原作でファーストネームが不明だったので深雪という名を勝手に考えました。もしも分かりづらいという方がいらっしゃったら、名字に変えます。

最後のシーンで白雪に何をさせるか少し悩みました。

キス→いくら何でもまだ早い(頬でも)

手を握る→第一話でやったからインパクトが弱い

ハグにするか・・・って感じですね。

次回はすぐに投稿出来る予定です。
ついに”あの子”が出ます!

それでは今回も読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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Snipe 06 「Who are you(どちらさま)?」

皆さん、こんにちは。リバポから世界へです。

奇跡の2日連続投稿!

まあ、昨日投稿したのが長すぎたんで途中で切っただけなんですけどね・・・

それではどうぞ!



それから、あっという間に2時間、3時間と時間が経ち……気が付けば窓から見える空は真っ暗になった。

先程の件と白雪が居なくなった寂しさから自室のソファーでボーっとしていると――――――

 

「あ、キンジに土産渡してねえや」

 

思い出したように呟き台所に置いてあった紙袋を手に取ると、サンダルを履いて玄関の扉を開ける。

廊下に出ると、やや生温い風がショウの顔を撫でた。

 

「夜でも暖かくなってきたなあ」

 

そんなことを呟きながら、ブラブラ歩いてキンジの部屋まで辿り着く。インターホンを鳴らすと数秒待った後、上ずった幼馴染の声が聞こえてきた。

 

『は、はい!? な、何だショウか……』

「何だとは何だよ。人がせっかく伊勢土産持って来たのにさ」

『ちょ、ちょっと待ってろ』

 

何だろう? 何故キンジはこんなに焦っているのか? 

 

(……やりたかねえけど)

 

意識を集中させる。遠い場所に手を伸ばすような……そんな感覚。

那須家に代々伝わる能力の1つ―――――千里眼。

ショウはセカンドサイトと読んでいるこの能力(ちから)は、壁や物の向こう側にいる人間や物体の位置を熱画像(サーモグラフィー)のように特定出来る。

友達の部屋を覗き見するのは多少の罪悪感があるが……非常事態の可能性もある。仕方がないと自分に言い聞かせた。

意識を集中させ……感覚を研ぎ澄ませる。中の様子を鮮明に確認―――――出来なかった。

部分的に、断続的にしか様子を確認出来ない。所々にノイズがかかっている不愉快な感覚。

 

(そうか……今日は璃璃粒子が濃いのか)

 

超能力殺し(ステルスジャマー)である璃璃粒子が強いと能力を上手く使えない。

それでも、玄関まで小走りでやって来るキンジの様子は辛うじて確認出来た。

 

(あ、ずっこけた。何やってんだコイツ……)

 

「よ、ようショウ。今朝ぶりだな」

 

やがて開いたドアから少し顔色の悪いキンジが顔を出した。彼はショウの顔を見ると、似合わない愛想笑いを浮かべる。

 

「あ、ああ……そうだな。さっき電話でも話したけど……大丈夫?」

「俺か? ああ、大丈夫」

 

先ほどから思っていることだが……明らかにキンジの様子がおかしい。

何かこう……焦ってるというか隠してるような気がする。

 

「……そうか? なら、はいどうぞ。お土産」

「あ、ありがとな。何だこれ?」

「あんころ餅」

「おー、老舗のやつか」

 

―――――かぽーん。

 

「ん? 誰かいんのか?」

 

部屋の奥から音がする。あの音は……風呂の音……?

 

「い、いや誰もいないぞ!?」

「いや……でも風呂場から音が……」

「ああ! あれだ。風呂沸かしてんだよっ! 洗面器でも落っこちたかなっ!?」

「うぅんー?」

 

何かを隠してるのは確実だ。だが、その何かが分からない。

もう一度千里眼(セカンドサイト)を使って部屋中を徹底的に調べたいが……今日みたいに璃璃粒子が強い日に何度も能力を使うと、後でドッと疲れるのだ。

 

「大丈夫だ! 何も心配いらないっ!」

「……ホントに?」

「ああっ!」

「ホントに大丈夫?」

「もちろん!」

「そうか? なら良いんだけど……」

 

心配は残ったが、彼にもプライバシーがある。本人が大丈夫と言うなら仕方がない。ここは引き下がろう。

 

「あ、ありがとな? 心配してくれて」

「おう。あー、そうだ。メシでも行かないか? ユキも合宿行っちまったし、久しぶりにさ」

「あ……悪い……もう食っちまったんだ」

「そっか……。じゃあ明日行こうぜ? 奢るからさ」

「おう! 楽しみにしてる」

 

キンジは分かりやすく、ホッとしたような表情を浮かべるとショウを追い出すようにドアを閉めようとする。

 

「じゃあ、またあし―――――」

「キンジー。シャワー借りたわよー」

 

その時……部屋の奥から幼い女の子の声が聞こえてきた。声の主が廊下に姿を現すと、ショウの目が大きく見開かれる。

眩しいくらいに美しい、ピンクブロンドのロングヘアー。小学生のように小柄な身体に可愛らしいルームウェアを纏っている。

人形かと錯覚してもおかしくない程の美少女がそこにいた。

 

「やべ……」

 

少女の存在を友人に知られてしまったキンジは天を仰ぎ―――――

 

「え?」

 

突然の来訪者に少女は赤紫色(カメリア)の瞳をキョトンと開き―――――

 

「えって……え……?」

 

何が起きたのか分からないといった表情でショウはキンジの顔と少女の姿を交互に見た。

 

「ど……」

 

鏡を見なくても、自分が間抜け面を晒しているのが分かる。だが、仕方がない。

 

「どちら……さま……?」

 

女嫌いの幼馴染が部屋に美少女を連れ込んでしまったのだから……!

しかも女の子の体格を見れば明らかに事案だと分かる。

 

(キンジお前……何してんの?)

 

なるほど、キンジが自分をさっさと追い返そうとした理由が判明した。

ショウは大切な友人の性癖を知ったこと。そして、その友人を警察に突き出さなけらばならないショックで気が遠くなってきた。

生まれたての小鹿のように膝をガクガク震わせながら、ポケットのスマホ(iPhone)に手を伸ばす。

それを目にしたキンジは鬼の形相でショウに飛び掛かり―――――アメフト選手のように彼の腰に組み付いた。

 

 




いかがでしたか?

ついにアリア登場! そしてオリ主の能力の詳細を物語内で書くことが出来ました。

ヤバい。色々とツッコミどころが多い気がする・・・。大丈夫かな?

それから終盤をギャグっぽくし過ぎたかな? アレだったら直します・・・。

前回の後書きで書き損ねたのですが、ショウが白雪をデートに誘った場面で「星伽巫女は外出しちゃいけないんじゃね?」って思った方もいらっしゃると思います。
まあ、そこは・・・ちょっとした改変ってことで汗

そうしないと2人のデートシーンが書けないんじゃあ!

ショウがきちんと護衛すれば多少の外出はOKって感じで、これからも書いていくつもりです。



オマケ



前回、登場しましたショウの姉・那須静香の人物設定を軽く考えました。物語を大きく左右するわけではないので、ここに書きますね。



那須 静香(なす しずか)

那須家の長女でショウの姉。21歳。身長:167cm。
札幌武偵高校狙撃科(スナイプ)出身で武偵ランクはA。
大雑把な性格で細かいことはあまり気にしない人。ショウとはお互いにからかったり、口喧嘩することもあるが、実際は彼のことをとても大切に思っている。電話で彼にアドバイス(殆ど白雪関係)することもしばしば。
那須家での主な任務は、海外の寺院や教会に派遣される星伽風雪の護衛。
趣味はリカちゃ〇人形、シル〇ニアフ〇ミリーなど人形、ぬいぐるみ収集(大量)。那須家のショウの自室は彼が留守の間、静香の物置になっている。

使用武器はレミントンM700とSIGSAUER P229R



こんな感じですね。

それでは今回も読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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Snipe 07 「English girl in 男子寮」

皆さんお久しぶりにございます。
丸々1年。更新が滞ってしまいました。本当に申し訳ございません。

今回というか毎回かもしれませんが・・・リハビリ投稿なんで、メッチャ短いです。ご容赦ください(汗)

それではどうぞ!


「さ、させるかッ!」

 

ショウの腰にキンジが組み付いた。ギョッとして必死に引き剥がそうとするが、とんでもない馬鹿力である。

鬼のような形相だが縋るような目付き。なんちゅう目をしてるんだコイツは。

 

「ショウ、待ってくれ! 話せば分かるッ!」

「離せこの変態野郎! 俺に何かあったらユキが黙ってねえぞ!」

「うるせえ! この前、武藤と一緒に女子のスカート覗こうとしてたの白雪にバラされたいのか!?」

「わ、分かった! それはやめてッ、殺される!」

 

部屋の廊下で取っ組み合いを始めた男2人を件の少女はドン引きした表情で見下ろしていた。

 

「ア、アンタたち……何してんの……?」

 

その視線に気付き、二人はようやく離れる。お互いに息が上がっていたが、先に口を開いたのはキンジだった。

 

「きちんとッ……ゼエゼエ……状況を! 説明するから!」

「はあはあ……聞こう」

 

ショウがポケットにスマホを仕舞ったのを確認すると、キンジは後ろ頭を掻きながら少女の横に立つ。

 

「コイツは転入生の神崎・H・アリア。お前が何を想像したかは知らないし、知りたくもないが……俺は何もしてない。それから変な誤解があったみたいだから言っとく。コイツは俺達の同級生、高2(・・)だ」

 

「……え、冗談だろ?」

 

どう見ても中学生……いや小学生でもおかしくない。

 

「風穴!」

 

ショウにジロジロ見られたアリアは犬歯を剥いて仔ライオンのように喚く。

 

「ああ、小学生みたいだろ? だが事実だ」

「風穴ッ!!」

 

キンジからの追い打ちにアリアは遂に銃を振り上げた。

 

 

 

 

 

「あら、おいし……」

「……左様ですか」

 

拳銃を振り上げ、発砲寸前まで行ったアリア嬢は……ショウが献上した餅菓子を口にすると、ようやく機嫌を直した。ホッとしたショウは彼女の顔をチラリと見る。

 

「それで……神崎さん?」

「アリアでいいわ。”さん”も要らないわよ」

「……分かったアリア。俺は狙撃科(スナイプ)2年の那須翔資。皆からはショウって呼ばれてる。良かったらそう呼んで」

「そう。よろしくねショウ」

 

話してみると意外にもフレンドリーなアリアに驚く。先程、怒らせたのは……考えてみれば自分達が悪い。

 

「よろしく。あー、それでさ……」

「何かしら?」

 

彼女の姿を見てからずっと抱いていた疑問がある。日も暮れて暫く経ったというのに、この()が当たり前のように男子寮(・・・)に居る理由だ。

 

「君はその……何で此処に?」

「コイツをドレイにするためよ!」

「ドッ……!?」

 

自慢げな表情のアリアにビシッ!と指差されたキンジは……ゲッソリした様子で助けを求めるようにショウの顔をチラリと見る。あまりの衝撃にショウは、震える手でゆっくりとコーヒーカップをテーブルの上に置いた。

 

「えっ……ジョークだよね?」

強襲科(アサルト)でパーティー作るから、一緒に活動する武偵を探してるんだと……」

「それでキンジに? お前、きちんと説明したの?」

「当たり前だろッ!『俺は来年には一般校に転校する。それに強襲科(アサルト)だけは絶対にムリだ』って!」

「そしたら?」

「”ムリ、疲れた、面倒くさい”この3つは人の可能性を殺すダメな言葉よ!」

「……深い言葉だ」

「ふふん、そうでしょう?」

 

どこか感動した様子でゆっくりと拍手をしたショウと偉そうに平坦な胸を張るアリア。

 

「何でだよ! おかしいだろッ!」

 

そんな2人にキンジは遂にブチ切れ……真横に座ってるショウの脇腹に右フックを叩き込んだ。

 

 




いかがでしたか?

キンジの口調が難しくて緋アリの小説を1から読み漁ったりしてました・・・

頑張って書き続けますm(__)m

気が向いたら感想とか書いてやってくだせえ!

それでは読んでくださってありがとうございました。失礼します。


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