突然だが働き先の主従百合がとても良い。(作り直しました) (杜甫kuresu)
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1話

思いつきで書きました。確実に失踪します。出来るところまで走る持久走式執筆法です。
最初の10行ぐらいで全て察せるはずなので過激派の人はそっとブラウザバック。


 突然だが、働き先の主従百合がとても良い。

 ああ待て。待ち給えよ諸君。今この世の何処かで「お前もそんな事を言いながらどうせ百合の間にちょいちょい入ってくる阿呆男なんやろ騙されへんぞ」という過激派の血の叫びが聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その通りだ。何なら両者から俺は気に入られている、そこは踏まえてもらおう。

 

「いつまでそこでニヤニヤとしている、掃除はどうした?」

「あ、すんません」

 

 すんませんと言ったことで俺はいきなり一回り年下の美少女に5分ほど怒られた。礼儀がなってないのはマジなので俺は頭が上がらない。す”い”ませんね、はい。ごめんなさーい。

 名前をヘルメス。下の名前はウンタラカンタラーと長いのだが、ブロンドの美少女百合っ子が大体彼女の全て。

 つい五年前くらいに両親が死んでしまっているので、びっくりすることに俺より小さいのに家主。しっかりしてて頭も回る、中世近世辺りの身分高い系女子にありがちな謎会食とかパーティーでも評判がいいらしいと同僚の掃除ガチ勢からは聞き及んでいる。俺も鼻が高い。

 

 対して俺。屋敷の清掃員。小間使いとかというよりは清掃員、つまり掃除ガチ勢として彼女の屋敷に住み込みで働かせてもらっている。給料は高いが仕事の誇りは高いどころか一ミリもない。お金を老後に向けて貯めるだけのしょうもない男だ。

 

「仕事に不満はないが、そうニヤニヤされると気持ちが悪い。少し気をつけてくれ」

「はい…………」

 

 見ての通り、ヘルメスの俺への当たりはそこそこキツイ。いや全く礼儀もなってなければヲタ笑いを浮かべる俺に原因は有るけれど、彼女はその生い立ち柄とてもキリッとしてしまった。

 

 してしまった。五年前のあの日までは天真爛漫だったような気もするし、俺にも凄くなついていた。いや俺の好感度に関しては素行の悪さがバレただけなんだけど。

 お察しの通り受け。攻めるわけがない。

 

「そう言えばヘルメス様、お言葉ですが俗世のちょっとアレな本はもう少ししっかり隠しましょう。俺は全く気にしてないんですけど、アストラさんに見つかると凄くメンドクサイと思います」

「――――!? 見たのか!」

 

 見ました。噛み砕くと百合のエロ本でしたね、文章系のねっとりした奴だったから「あ、ふーん」って素で言ってしまったレベル。

 翡翠の瞳が驚愕でぐにゃぐにゃと光を反射する。次に取ったのは俺のなさけない首元をたぐり寄せて矢継ぎ早にまくし立てること。あら哀れ。

 

「い、言うなよ! アストラには絶対言うな!」

「言いませんよ~。あぁでも面白そうかも…………」

 

 冗談半分で言ったら更に焦った彼女の真っ赤な顔が視界いっぱいに繰り広げられる。首痛い。

 

「駄目ったら駄目だ! 何をされるか分かったものではないじゃないか!」

「冗談ですよ冗談。ヘルメス()()()はほんと昔から心配性ですね」

 

 うっ、と唸る。

 昔は木登りをして猫を助けてあげたりよくしたものだ。めそめそして俺の所に泣きつくもんだから流石にかわいそうなだけだったんだが、あの時の涙混じりのありがとうとキラキラした笑顔は加賀百万石を優に超える報酬にござった。

 

 あの頃のヘルメスは俺にも可愛かった。今は夜のお相手の前のほうが余程可愛いのではないか? まあ良いんだけど。

 

「後は、”そういう事”するのは良いんですけど声抑えてください。隣の部屋で寝かせてくれる温情有難きこと限りなしでは有りますが、やはり俺も男なので」

「は、はぁ!?」

 

 聞こえてないと思ってたのアレ。プレイの詳細まで筒抜けですよヘルメス=サン、言葉責め割と気に入ってるらしいね。

 別に俺は旧世代的な「女同士がそんな事をふじこふじこ」なんて言う男じゃない。寝れないこともないというか最近慣れてしまうという驚愕の適応をしたのでオッケーなのだが、何かの拍子でこの事実を彼女が知ったら恥ずか死するだろう。

 

 今のうちにワクチンのつもりで教えておいてやろう。という俺の親切心だ。だったのに。

 

 

 

 

 

 

 

「何故反省文を書かされてるんだ俺…………?」

 

 めっちゃ怒られて涙目の現当主殿から反省文を仰せつかって早三十分。俺は今何をしているのか自問自答が激しくなって思考に論理バグが発生しそうだった。

 

 屋敷は言葉通り屋敷で結構広いのだが、でっかいテーブルで一人紙とにらめっこする絵面は大層アホっぽいだろう。というのもヘルメスが「今すぐ書いて!」と紙とペンをしっかり握らせて怒鳴ってきたのだ。ちゃんと持ってきてくれる辺り、やっぱり何か嫌いにはなれない。

 まあ付き合うのも務めなので付き合うが…………。

 

「でも文字苦手やわ~! マジで!」

「また反省文?」

 

 ひょこっと、頭をかきながら天を見上げた俺の視界に女の顔。思わず紙まで体を揺り戻す。

 

「うおっ!? あ、アストラさんか。びっくりした」

「さんは要らないよ、年下だし」

 

 んなこと言ったらヘルメスに俺が敬語使う筋合い無いから。

 アストラ。アストラ・ファンタール、この屋敷で長いことをハウスキーパーと侍女を兼任してるメイドの家系。

 

 ファンタールという家系は跡継ぎの女の子が恵まれないと引き取ってくるらしいが、彼女はそちらの方。鋼のようながら淡い輝きを放つ銀のポニーテールと、いつも何を考えているのかわからない薄目がトレードマーク。

 

 俺より後から入ってきた、と言っても差し支えはないが仕事能力はアストラの方が圧倒的。というかファンタールの家系は多分どの代もすごい、先代も凄くお仕事の速いおばさまだった。俺の師匠だ、掃除しか出来ぬ無能に育ってごめんなさい。

 

「まあハウスキーパーに侍女って字面が力強いから。俺は長いものに巻かれるというか巻かれに体を回す人種なので」

「そう? 敬語は酷いけどね」

 

 先代の当主さんにも結構ネタにされてた。あの人は俺の言動より「お前やたら掃除できるな~!」と言って可愛がってくれるタイプだったが。抱かれても良い上司一位。

 

「敬語とか気にしない辺り、結構ヘルメスちゃんも先代と似てるんだよな。良い気質だと思うよアレは」

「あ~…………」

 

 やっぱり敬語とかマナーで人を測るっていうのも一定の限界が有って、いやまあ俺が該当するとは思わないがそういう事にとらわれ過ぎないっていうのは統率者に有って良い能力だと思う。

 と考えていると、気づけばアストラの笑顔が曇っていた。何か言いにくそうと言うか、苦笑いと言うかそんなものが混じった乾いた声。

 

「いや、そうじゃないですかね? こんな敬語も背筋もフザけてる男、寛容な家じゃなきゃ雇ってくれませんよ。多分」

 

 他のお家知らないけど。偶に会った時に知り合いの掃除ガチ勢とかから聞きかじる程度だけど。

 アストラがやれやれ、と言った感じでようやく喋りだす。

 

「ヘルメス様はそういうの厳しいと思うよ? あなたが特別」

「ん?????????? いや、ああ????????」

 

 違うと言おうと思ったが心当たり超あるわ参ったな。

 

「言われてみればさっきも敬語関連で怒られたわ」

「そう。だからそれでも側に置きたいだけじゃないかな――――――」

 

 ところで。

 そう言った彼女の赤い瞳が僅かに開く。ヤバイ、なにか俺は要らないことを言ってしまった予感だ。

 

 アストラが目を開いた時は大抵最後に俺が追加で怒られるバッドエンドシナリオに直行するお約束キャンペーンが存在する。

 逃げようと思ったが手を掴まれた。おかしいよ全く体が動かない。

 

「さっきは何の話してたの? 自分から絶対にヘルメス様に話しかけないよね?」

「アッイヤベツニィ!? ちょ~っと怒られただけですよ!」

 

 無事全部吐きました。凄い圧力だよ毎度ながら、くらげレベルでフヨフヨしている俺には約束を守り通す強さはない。

 その日の夜は俺との関係性について言葉責めされてた。声おっきかったね、ふたりとも。

 

 今日も今日とて無事、俺は”エロい神の見えざる手”で百合のシチュづくりに貢献させられた。ちなみに後日すっごい涙目で怒られた、ゴメンよ。




【主人公】
転生者の”掃除ガチ勢”。屋敷には結構昔から居て、ヘルメスには「お兄ちゃん」と呼ばれていた。軽くてややウザイが基本善人の百合厨。本当は掃除ガチ勢じゃなくてSPみたいな分類。
給料が友達。アスxヘル穏健派。すぐ要らないことを言うが一応事なかれ主義。

【ヘルメス】
受けの当主系お嬢様。普段から想像のつかない叩けば響くような反応でよく遊ばれる。性欲が強いのでがっつりとしたエロ小説を好む。
しっかり者でありたい性分柄、主人公には反抗期気味。

【アストラ】
攻めのゆるふわ系メイド。主人公よりは若いが仕事ができる女で、いつも時間を見つけてはヘルメスをからかっている。
主人公が居ると面白い話や出来事が多いのでお気に入り。


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2話

地雷原に今回もお越しいただき、感謝感激過激派の銃弾雨あられです。夜道に気をつけてます。
付随する話としては、「男を挟むな!」と叫びを凝縮してオブラートに包んだものが知り合いから届いて……えー。

痛いほど分かります、なんですかこの男は。
エロい神の見えざる手で半分ぐらいの展開では消したい…………10行で分かるようにしたことだけは褒めて。


 今日も今日とて過激派の凶刃に震える愚かな被害妄想家、掃除ガチ勢です。

 多分マジでは殺されない、メイドの過激派連中は視線だけで殺そうとしてくる。俺が悪いので弁明なし。

 アイツラは俺がいきなり変死体になってもアスxヘルに亀裂が走ると知っているのだ、その努力にジョセフ並みの反り返る敬礼を禁じ得ぬ気持ちをいつも抑えてます。ちゃらけてるけど本当に。

 

 

 

 さて。こう卑屈になってても仕方ない、俺は精々空気に務めるだけ。

 じゃあヘルメスのお屋敷、ルチアーノ家のお掃除事情の話。

 

「兄貴! 数時間怒られましたよオレ!?」

「マジか」

 

 例のデカイテーブル。ヘルメスはというか代々この家は使用人の余暇は大事にするらしく、何ならヘルメスと同じ席で食事も許される。今回もそうだ。

 

 運が良いと言うか、俺はいつもどおりヘルメスとは当然、逆位置ィッ!なので横で騒ぐ男の話は過激派に届いてない。お前、ぶっちゃけ生きてるだけ奇跡よ?

 

「レノン、何というか悪い」

 

 レノン。俺の後輩の男の使用人。ちなみにメイドの男性系はボーイ、メイドがメイデンから来てるから。

 こいつは異性への意識が薄く、あのカップルにも一定の距離感を気づこうとしてる。俺が気配を消して、喋りかけられても耳が悪いふりをして首根っこ掴まれてようやく話に応じようという中、容赦なく会話を試みてる。

 

 しっかしうちの男連中では実は俺が最年長なのだが、誰も彼も百合過激派メイドに怯えるか、大人しく見守るパパ連中か、大体そんな所でヘルメスは女と以外喋らない。

 こいつは無謀ながらヘルメスにとっては憎らかぬ男(好きとはちょっと違う、興味本位か)で、まあ俺も放置はしている。

 

 今回はヘルメス了承のもと、掃除をさせる――――――予定だった。だったけどダメだったんですねこれが。

 

「兄貴は本当に五分プンプンされるだけのご褒美お叱りで済んだんですか!?」

「バッカお前! 俺が刺される!?」

 

 ほらヘルメスが俺に気づいた―! はい詰みー! 過激派見ないで俺は何もしてないホントだ。

 思わずレノンを怒鳴りつける。

 

「お前な! ご褒美って俺が言ったみてえじゃねえか! 嫌だよ、普通に怒られたら給料も下がるしな!」

「す、すみません!」

 

 でも「すみません」が言えるだけ俺よりはえらい男だ。もう何も言うまい、強く生きろよパリピボーイ。お前は良いやつだ、良いやつだと皆にしっかり気づいてもらえ。

 

 ヘルメスがちょいちょい、と手招き。雇われは逆らえない、また過激派が俺を見てるよ違う! 俺は無実だ!

 

「な、なんですかねヘルメス様」

「隣。避けられてるようで気分が悪い、座ってくれ」

 

 かなり驚きつつ、保険にもう一つ保険をかけて静かに二つぐらい間を置いた。

 

「話は聞いていたか?」

「聞いてました、俺は自己保身の方が大事なので。レノンにしてください」

 

 アイツが死んでも俺は死なないから。

 途端にぶすっと俺を睨むヘルメスパイセン、おいこらアストラ把握してるだろ助けやがれ畜生め! あー薄目が開いてる! バッドエンドじゃ~ん☆

 

 踊るしかなーいっ。いや違うわ座るしか無い? いやダメだ命がけ過ぎる。

 

「いいから。私がそうしろと言っている」

「そうだよ? 主に逆らうのかな?」

 

 アースートーラー! 夜の美少女一人で飽き足らず俺ですら弄ぶかぁッ!

 冷や汗を流してレノンにレスキューサイン。アイツは「やっぱ兄貴仲いいんすね☆」って顔して青ざめながら逃げた。後で覚えてろクソ後輩…………っ!

 

 スイッチの入ってしまったヘルメスさん。完璧に俺の方を向いて怒り出す。

 

「いつもそうだ。部屋に入る時はノックをしろというのに、それすら守れない。どうしてだ? そんなすぐに同じ過ちを繰り返す筈がない、お父様が雇った男だというのに」

 

 お前ら俺の目の前でおっぱじめるじゃん。

 

 俺知ってるよ? 変な声出すもんね、誤魔化し方下手過ぎて笑えば良いのか冷や汗流せば良いのかも分かんないよ?

 

 羞恥プレイは結構さ、好きにしてくれ。ただ目の前でするな。

 だからノックする前にうすーく開けて確認する。お忙しそうだったらすぐ走って逃げるためだ、過激派もこればかりは俺の整ったフォームの全力疾走に頷いてくれるから大正解だぞ。

 

 アストラは隠れてるからバレてないと思ってるのか、俺も含めて遊んでるのか。さっぱり分からんが碌なもんじゃない、せめてメイドの前でやれ。過激派なら扉を締めて出ていった後に鼻血を出して倒れてくれるぜ多分な。

 

 ちなみにレノンが怒られたのはこのうすーく開ける動作。なってないと俺も怒られる、だが命は惜しい。

 もう一個別の理由もあるがそこは割愛。

 

「私が嫌いなのか…………」

 

 うわ涙目になるな、俺が他のメイドから睨まれてる。普通に俺自身も申し訳ないわ。

 

「ええーいやー、そうじゃなくて……ええっと…………」

 

 さっさと食事を済ませるとヘルメスに引っ張り出された。もちろん俺は睨まれていたよ過激派に、アストラ君は笑ってないで俺の命がある内に助けろ。美味しそうに野菜を頬張るな。

 

 

 

 

 

 

 

「手短にお願いします。ただでさえヘルメス様に色目を使う不埒な男、なんて風評被害が出回ってるので」

「言わせておけ。気など無いくせに」

 

 無い。俺は不倫の趣味はない、百合とか関係なく。

 

 ただ何となく分かったかもしれないが、俺は大した身分の男でもないし、ここに代々仕えてた家系とかでもない。金持ちでもない以上、ヘルメスとの接触を拒まないのは「逆玉の輿狙いでは」という見方が出ても仕方ないと思う。

 

 似たようなやつが周りに居たら、俺だって脳裏をよぎる展開だ。ヘルメスは若いし、心配だからな。若気の至りで禁断に身を乗じたりされても困るよね~、いや別の禁断には片足突っ込んでんだけど。

 

「どうして私を避けるんだ。何かしたか?」

「いいえ? 俺はあくまで雇われ、一歩下がるのも仕事なので」

 

 そう言うとヘルメスの表情が目に見えて力を失う。

 

「…………私が嫌いなのではなく?」

「――――!? どうして?」

 

 いきなり素っ頓狂なことを言うので頭痛がした。

 弱々しい声に罪悪感がひしひしと。俺だって人間だし、小さい頃から面倒を見てた女の子相手なのでそりゃあ辛い。

 

 年の差はあれど、まあ兄貴代わりをしていた時期もあったからなあ。

 

「五年前からずっと避けられているような気がする…………」

「ああ。まあそうだ」

 

 アストラが来たのもそれくらいだ、俺は邪魔にならないように徹底的に逃げた。

 タメ語もある程度直した。肉体接触は極力控えた。お互いの部屋には簡単に入れなくした。そもそも出来るだけ喋らないようにした。

 

 何故だって? 俺は彼女持ちを寝取る趣味なんか毛頭ない。

 百合だの同性愛だの語る以前に、恋愛の水を刺したくない。

 

「私が冷たくなったからか」

「違うよ」

「じゃあアストラに場所を取られたからか」

「全然違う」

「何で」

「俺は雇われだ」

 

 同様に。

 

「お前の邪魔をするために働いてるんじゃない」

 

 泣きそうな顔をされたが、懸命にこらえた。甘やかすもんじゃない。

 今でこそアストラも笑ってくれているが、いつか俺が邪魔に思う日も来る。責める気もない、好きな相手を独り占めしたくなるのは当然だ。

 

 百合は難しい。時代観が近世のここではまだアブノーマル、相方がふらふらしないか不安なものじゃなかろうか。

 俺は小さい頃からの知り合いで、馴れ馴れしくて、近い。いやー、これは近づいたらアストラですら誤解しますぜ?

 

「俺よりもっと大事なものが有るだろ? なっ?」

 

 ついでに言うと、ノックしないのは別に理由がある。

 

「後な、ノックは理由があるのよ」

「…………どうして?」

 

 寂しそうに潤む瞳。俺は目を合わせながら心の目を逸らす。直視が辛い、弱々しい喋り方をされてももちろん弱い。

 

 穏健派百合厨はのたまい続けるがそれ以前に人間なので。

 

「お前よく勉強してるだろ? 空いた時間とかも机にかじりついて」

 

 気づいたのは机の不自然な痕。生まれた頃に仕入れた机のはずなのに、ヘルメスの部屋の机は細かい傷がたくさんある。

 多分、勉強しているのだろう。政治学? 社交界のマナー? いや分からん、でも何か一生懸命じゃないかな。手が疲れるまで筆圧は強くならない子だ、机は昔から大事にしていた。

 

 夜もよく灯りがついている。見られたくないんだろうと思う。

 

「それは…………」

「そしてお前が一番気になってるのは、うちの雇われの態度」

 

 皆、妹とか娘みたいな扱いをしてるフシが有る。

 ()()()()。人を招いた時に舐められる、まだガキだな――――なんて皮肉もきっと何度言われてる。

 

 だから努力は見せてはならない。突然大人になって、当主と認めさせる必要がある。懸命さは人の心を打つだろうけど、当主としての品格とは見てくれないかもしれない。

 そういう経緯だと思うが、絶対に見せないように気を払っている。それが要因で部屋の掃除は俺だけが担当するんだろう、どうせ俺は知ってるから。

 

 メイド達の前でも、彼女は「ヘルメス」ではなく「ヘルメス・ルチアーノ」であるべきだ。徹底している、凄い努力だ。

 正直俺を今日呼んだ時は焦った。相当なことだと分かったというか。だから即座に止めなかったアストラを内心とがめてたと言いますか。

 

「でもお前、俺にも努力とか見せるのだいっきらいだろ? だから様子伺ってんのよ、間が悪くならないように」

 

 とはいえ、20も通り過ぎてないただの子供だ。俺がいくら知っているとしても、見られるとバツが悪い。

 ちょっとぐらい強がりに付き合っても過激派も俺を責めまい。そういう理由もあった。

 

「別に構わないが」

「あれぇ????????」

「どうせ何を見ても私の扱いも、見方も、何一つ変えない。それが貴方という人間だ」

 

 一本取られたわ。当たり。したり顔が憎たらしい。

 

 子供って成長すんだなあ、こんな自慢げな顔してるのに。子供の頃に虫を取ってきて俺に振りかざしたあの時の顔とそっくりなんだが、随分凛々しくなったように錯覚してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、失礼しますよ」

 

 ノック。ああ言われては仕方ない、俺も出来る男ではなくとも分かる男だ。妙に不審感を覚えさせたのは素直に悪く思ったので、反省してノックはすることにした。

 

――が、がたんと何か人の塊が暴れる音。

 いやまさかな。言ったそばからな? 俺信じてるぜヘルメス・ルチアーノ殿?

 

「あっ、ちょ、待って――――」

 

 息、荒くない? ねえ、何か呼吸二つ聞こえるような? 扉越しだから断言はしませんけどね?

 いや落ち着け掃除ガチ勢。疑いすぎだ。アイツ自身が心配するなと言ってのけたんだろう、当主の信頼と自信も受け止めずして何がガチ勢だ。

 

 そう俺はいつだって掃除だけはガチな男、ちゃちゃっと仕事を済ませよう。

 

「入りますよ…………」

 

 がちゃん。

 服のはだけ気味なヘルメスを見て俺はぶわりと涙を流す。

 

「ああ、待ってくれ。これは少しだな、暑いというk――――――」

「あ、悪い。用事思い出した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけるな! ふざけるな! バカヤローッ!」

 

 即座にダッシュした後に自室の枕に向かって五分ほど男泣きをして叫んだ。

 信用するんじゃなかった…………。過激派の凶刃に怯える日々はエスカレートの一途をたどるんだろうか、もう俺退職しようかな。




素面になりましたが恋愛じゃないからちょっと仲良くても気にならないですね(手のひら返し)。
頼むぞ掃除ガチ勢、君に描写の9.5割が懸かっている。男の夢とか叶えなくていいからね。流石にころす。でも喋りかけないように務めているのでギリギリ許せる。

ただ百合を書くにも二人だけの閉じた世界で、そういった退廃的ないし秘め事感の強い百合は私は書けない。というのが有ります。
言い直すと、書きたくない。破滅的に過ぎる。だから”意図的に”男を混ぜました。男女比率の偏りが苦手なので。



ちなみに名前の由来は
ヘルメス…よく聞く名前。男の子だったり錬金術師らしいです。
アストラ…DARK SOULSのアストラ。アストラの上級騎士を思い出してました。
ファンタール…ファントム+ファンタ+カマタマーレ讃岐。


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3話

これ凄く煽りになるの承知で誤解されてでも言うんですけど、低評価とか来るたびに多分「過激派さんのお叱りだ!」って感じると思います。
というか感じました。平和主義的過激派の方(一行で矛盾)、本当に申し訳ない。笑いながら書いてます。

もう少し身辺を描写したら真面目に百合します。今の所オチ要因でしかない。
出来るだけ3000文字後半~6000文字までで仕上げていきたいです。ただの願望。


 おはよう、今朝は絡まれた過激派と長い話し合いをして「偶にはヘルxアスだよなあ」と二人で唸っていたら別の過激派に凄い目で見られました、CP無固定穏健派の百合厨です。

 しかし俺の前にいるのはCPでも何でも無く人間で、ふたりとも人となりを一定知ってる身としてはイキるヘルメス君とよわよわアストラ君はただの興味本位で見たいと言いますか(ry。

 

 殺される前に黙ります。

 

 

 

 

 

「げほっ! げほっ!」

「おいおい、水飲みなさい水」

 

 ほうけた顔でコップをひったくるなり、ぐいと一気飲みしてしまった。目も胡乱で熱は上がってきてるらしい。

 すごく簡潔に言うとヘルメスが熱で唸りっぱなしだ。あんまり簡単に泣き言を言う性格でもないから、多分結構な高熱。

 

 という訳で俺とレノンの二人がかりの看病体勢。過激派に心臓を握られたデスマーチに我々の冷や汗は地に流れ落ちる一方であった。

 軽く額に手を当てるとえげつない温度。

 

「うおーやばいな、レノン。タオル頼むよ」

「了解です、走りましょうかオレ!?」

「病人の前で騒ぐな、静かに行ってきなさい」

「はーい」

 

 兄貴って呼ぶのを放置してたらマジモンの舎弟オーラを発揮しだしたぞアイツ、俺はどうしてこう妙なものに囲まれがちなんだ…………?

 

 ヘルメスがうーうー言いながらベッドから身体を起こす。

 

「おいおい寝とけって」

「手、つないで」

「はいはい。繋げばいいのね」

 

 行動範囲が瞬間的にヘルメスの片腕分しか無くなった。今気軽に了承したのかなりミスだわどーしよ。

 

 あたり前のことにしても、ヘルメスの手は小さくて細い。そんな昔と変わったんだろうか。

 背負うものばっかり大きくなって何だかかわいそうには思う。俺にはどうにも出来ないけどね。

 

 ありがちな手に抱きついてくるなんて展開もなく、呆れるような甘ったるい声ももう聞こえず。漠然と、人一人分挟んだような距離で手を繋ぐだけ。

 もう甘え方分かんないんだろうな。

 

「アストラも居てやればいいのに…………」

「確かにそうですよね、らしくないというか」

 

 いきなり顔のすぐ横からレノンが出てきて飛び退く。

 

「うわキモチワル!?」

「酷くないですか兄貴!? オレ言われたとおり静かに帰ってきたのに!?」

「あ、うん。そうだな、ごめん」

 

 確かにそれも一理あるわ。

 

 アストラは「当主不在の分回すことはいっぱいあるよ」と言うなり今日はずーっと働き詰めだ。何だか俺から見てると逃げてるようで複雑なものがある。

 俺の手元に気づいたレノンがほーと唸って俺に肩を組んでくる。

 

「ずいぶん信頼されてますよね~。あのヘルメス嬢が肉体接触をしたがるなんて、過激派に刺され――――ヒイッ!?」

 

 言った側からアイツの首の皮一枚をブレッドナイフが通り過ぎました。過激派こわ~。

 完璧にビビってしまったのか俺に縋り付いてくる。うっとうし!?

 

「邪魔だよ気持ち悪い」

「オレはちょっと「ヘルメスさんが甘えたがるなんて信頼されてますね」って内容を言っただけなのに!?」

「まあ、そうだな」

 

 俺が見捨てる気マンマンなのをようやく理解したらしく、隣に丸椅子を置いて物憂いげに座り込む。

 

「そこまであのヘルメスさんに信頼される兄貴も凄いし、ヘルメスさんも強いというか――――――」

「違う。俺達がそうなるように強要したんだろ、勘違いすんじゃねえ」

 

 おっと。つい強く言い過ぎてしまった。

 

 だがこんなガキが強いなんて幻想は早めに捨てて欲しいところはある、ヘルメスはそうあれかしと叫ばれればそうあろうとする人種だ。

 よーやくレノンにはちょっとだけフランクになってきたのに、ちょろっとそんな事言ってまた一から振り出しじゃ困るというか。

 

「…………すみません。そりゃそうか、まあ、そういう事なんですよね」

 

 あからさまにシュンとしてしまうので俺も参った。

 柄にもなく頭なんか撫でてしまう。

 

「俺も悪かった。何か、そこら辺は短気なんだよ…………ただ、まあ出来ればこいつは「唯の女の子」と思ってやってくれ。頼むな」

「はい、分かりました」

 

 こう素直なやつってのは凄えなあ、俺は今のではい分かりましたなんて言えねえわ。正しいとかそういう問題ではなく。そういうのない? 意地って張りゃいいもんじゃないとは分かるんだけどな。

 

 暫くぼうっとした顔のヘルメスを眺めていたら、俺の中でとてつもなく変態チックな趣味嗜好が顔をのぞかせていた。

 心臓をバカみたいに鳴らしながら指を口元に近づける。

 

「兄貴!? それは危険です、というか犯罪臭いですよ!?」

「ちょ、ちょっとだけだよ…………ほら? 俺だって時々ご褒美の一つぐらい」

「血迷わないでください兄貴!」

 

 ちゅ。

 唇の柔らかい感触、吸い付きも程よく有って、途端に我に返る。やばい罪悪感だ、やっぱ俺にこの手のことは無理です殺される前に俺が死んでしまいます。

 

 すぐさまを手を放り投げてレノンの両肩を持った。一瞬指に凄い吸い付かれる感触の記憶が残っていたが急いでデリート、俺の神経が爆発する。

 

「良いか、よく聞けレノン。今のこいつを正常に看病できるのはお前だけだ、俺が明日変死体になるとしてもこいつの看病をしろ。良いな?」

「あ、兄貴…………」

 

 さーてクラウチングスタイル!

 俺は持ち味の瞬発力で開いたドアから見えた刃物を避けながら廊下に躍り出る。

 

「兄貴ィィィィィィィッ!!!」

 

 後ろからソードブレイカーとか飛んできてガチ焦りした、しかもアイツラ足速い!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う”っ、お”え”ぇ…………! は、走り、すぎた…………」

 

 いや今回は完璧俺が悪いんだけど、にしてもアイツラ執念深すぎる…………逆になぜ普段は生かしておいてもらってるのかについて5000文字くらいの論文にして俺に提出して欲しいレベル。

 

 喉もカラカラ心も疲弊気味、かなり死にかけの状態でフラフラと廊下を歩く。

 

「凄い顔色ね。大丈夫?」

「ア、アストラさん、かね…………?」

 

 思わず倒れ込みかけた所でさっきの出来事を思い出して五歩ほど距離を取る。

 浮気相手が本妻頼っちゃダメでしょ!!!!! いや何かヘルメスが浮気してるみたいで今の凄い失礼だな、まあ良いか。

 

「……? 別に倒れ込んでくればいいのに、潰れたりしないけど?」

「ちゃうねん…………ちゃうねんな…………ごめんな…………」

 

 事情は言えずじまいでした。僕はあまりに軟弱者だ、きっと未来永劫この日を悔やんで居もしない神様相手に教会で頭を垂れようとするのだろう。

 

 くだらないモノローグ口調はさておき。

 

「そうだそうだ、アストラさんに話があったんだよ」

「ん? 何かな」

「ヘルメスの看病してやってくれないか」

 

 単純におっかしーな―と思っていた。

 侍女ってのはつまりお付き、お世話役、小間使い。考えればすぐ分かる、この類のワードの連想に違わず基本仕える側とはべったりだ。

 

 じゃあ意図的に距離を取って俺に任せたってことになる。

 ヘンだろ? 常に正位置なアルカナぐらいおかしい。今だってあからさまに固まった、わっかりやすいな~も~。

 

「ああ、でも私忙しいし。あなたはまあ、ヒマじゃない?」

「ひっど!? 過激派に神経をすり減らし怒鳴るヘルメスに鼓膜を破られ嘲るお前に網膜が灼ききれそうな俺にそこまで言っちゃうの!?」

「何というかずいぶんな積年の恨みを感じる…………」

 

 そうさ積年の恨みだよ。自覚してください。

 

 というかちゃっかり逃げやがった。

 

「それはそうと何で嫌がんのよ」

「えぇ~? だって私管理職だから忙しいし、そこまで全力で付きっきりにはなれないし。中途半端に置いていっちゃうのも酷いしね」

「嘘つけアンタが仕事を処理できない訳あるか」

 

 やる気になりゃどうとでもするタイプのくせに。

 

 

 

 そろそろ逃げ道がなくなったと見たのか、アストラの表情が電源でも落としたみたいにぱったり消える。

 元々こいつの薄ら笑いはただの芝居だからな。ここに来てすぐは仏頂面でなーんも言わないから苦労した、困ったら笑っとけば良いんじゃね――――なんて無責任なことを言ったのは俺だったっけ。

 

「…………うーん。じゃあ、昔から大事に持ってるものってある?」

「大事に持ってるもの? 何だおもむろに」

「良いから良いから」

 

 喋り方だけいつもどおりなもんだからちょっとだけ歪。

 

 しかし俺が昔から大事にしてるもの…………大事にしてるものぉ? えー、あー、あっ。

 あえて言うならむっかし買ってもらったデュエルディスク。ここに来るまでずーっと押し入れに入ってたのは覚えてる。

 

「あるにはある」

「今も壊れてない?」

「そりゃそうだ。大事にしたんだから」

 

 じゃあ分からないか、と少しだけうつむく。

 

「私ね、昔にもらったおもちゃがあって。すっごくお気に入りだったんだけど」

「ふん」

「触りすぎて壊しちゃったんだよね。もうぼろぼろ、母様もどうしようもないってさじを投げたくらい」

 

 あの人がさじを投げるって言うと相当だ。もうグッチャグチャだったんだろうな、俺もよく服とか縫い直してもらったもんだ、もうガキじゃねえって言ってるのにアップリケとか付けちゃってさ。

 

――ここまで来て、話に何となく察しはついた。

 とはいえ喋りたいのだろうから水は刺さない。ゆっくり、アストラは喉に支えたものでも吐き出すように、結構な時間を置いてから続けた。

 

「人も一緒で。なんて言えば良いんだろう…………モノ扱い? で大事には出来るんだけど、何というかそれ以外のやり方ってよく分からなくて」

「だから腫れ物みたいに扱っちゃうか、執拗に触れ合って結局お互い傷つけ合うか。一か十しか無い」

 

 たまにいるな、そういう奴。

 人っていうのはもうただただメンドクサイもんだ。まあ仔細は省くけどとりあえず、結構難しい。そういう事もある。

 

 珍しく、心の底から寂しそうに笑う。

 

「だからさ、こういう時は。うん、距離を置かないとダメだと思う」

「触りすぎてまた壊しちゃうもん」

 

 割り切ったような言い方のくせに、妙に言葉は躊躇いがある。

 

 そんな事もなくないか、と言おうとしたがその前に言葉がまた飛んでくる。意図的だ、こいつは頭がいい。こういう時は間違いなく意図的に俺の言葉を潰してる。

 

「それと看病って適切な処置もだけど、やっぱり気持ち? とかそういうの、大事なんでしょ?」

 

 なんでしょ。この言い方が引っかかった。

 要するにこの女、感情の機微が分からないのだ。

 

 ヘルメスには割とたしなめるような事も言うし、仕事もできるし頭も回る。だから大半のやつが誤解しているが、この屋敷でぶっちぎりで精神年齢が低いのは誰かと言えば。

 こいつだ。今だって困ったように手を後ろに組んで、何だか泣きそうな子供みたいな面しやがる。

 

「私そういうの下手だし…………でもあなた! あなたはそういうの得意でしょ! だからヘルメスも懐いてると思うし。だから適任だと思う」

 

 ふーん。

 

「いや、お前が診てやれよ」

「今のじゃ納得できない?」

「違うね、理屈は正論だ」

 

 あんまり多く語って知った風を装うつもりはないが。

 今回に関しては違うと思う。

 

「不器用でもちゃんと触ってやれば良いんじゃないの。傷つけあえ、喧嘩しろ、酷いことでも言っちまえ、不器用でも好きにしちまえ」

「最後に謝れば良いんだよ。あいつはそれで納得できるやつだし、お前はそうしないと一生苦しいんじゃね」

 

 これ以上しゃべることが思いつかん。

 変に喋って大人の面したくはない。皆どっかガキだ、俺もそうだし、まあ今回は俺が単純明快な解決法らしきものを知ってただけだし。

 

 呆然とするアストラの横を通って飯を食うことにした。バカじゃないし、俺がストライキ起こすのも予定内だろ。

 

「最適解で恋はできねえぞ、ねーちゃんよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああ! 何カッコつけてんだ俺!? ほんと死ね!? いやむしろ殺して!? おい過激派何やってんの!? 今こそ出番だろうが愚図の役立たず共め!」

「おー、兄貴が一段と荒れてますね」

 

 これが荒れずにいられるか!? ノリに乗って恥ずかしいSEKKYO垂れてんじゃねえよバカなのか!?

 あーヤバイ、過干渉ダメ絶対の誓いを思いっきり破ってしまった。しかもなんか上からだしぃ!? やべえ、あっちが気にして無くても俺は今日からもう気になって仕方ない人生しか送りようがない!

 

 やけっぱちでビールを胃に流し込む。爽快感もない、ただただ吐き気がしてきた。

 

「でも兄貴兄貴、なんかアストラさんが看病やるって言ってオレ追い出しましたよ? 兄貴の苦悩はもう! さっぱり! わかんないですけど! 結果は上々なんじゃないですか?」

「知るか!? 死にたい!!!!!!!!!!」

 

 今日ばかりは挨拶代わりに飛んできたブレッドナイフのノーコンさを呪った。




百合に男挟まれるとだめな人は「百合の皮を被ったハーレムモノ」でトラウマを植え付けられた人だと思うのです。
アレは酷い、詐欺だ。やるのは勝手だが序盤で分かるようにして、こっちは百合読みに来てんだぞ舐めてんのか。

なのでもう出来る限り「主人公自体に奪おうという気配が無い」を徹底しました。これが無理なら私の作品が嫌いか、拒否反応か、ただの男嫌いだと冗談抜きで思います。


難しい話をすると実は男を主人公にしたのは「男に女が書けるわけがない」という圧倒的な事実と折り合いをつけつつ部外者の視点で百合を書ける点が大事だったり他にも百合の閉鎖的な感覚を潰すにはある程度異物を入れないと換気ができなくて私には空気の悪過ぎる粗筋が出来るとか私が実は三人称だと読むのが疲れるとまで言われてショックから克服を兼ねて一人称を何とか作ったとか。

色々ありますが、「これも百合の為、卑怯とは言うまいな…………」という感じです。

いや私情ダダ漏れでしたけど(突然の素面)、何言ってんだこの人。


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