infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来 (伊勢村誠三)
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設定解説
第一回 IS設定解説


注意!このエピソードは解説回です。先にthe Heat その1まで読んでからお読み下さい。


立香「立香と!」

 

マシュ「マシュの!」

 

2人「第一回IS設定解説〜!イェーイ!」

 

マシュ「Are you ready?ということで始まりました。

第一回立香とマシュのIS設定解説。

このコーナーは名前の通りこのssに登場したISの設定を解説していきます。」

 

立香「なお、原作とほぼ変わらないISに関しては結構ざっくり色々はしょって解説しますが、ご了承ください。」

 

マシュ「今回はエピソード45までに登場した打鉄系のISについて解説します!」

 

立香「まずは全ての打鉄の原型、打鉄から!」

 

 

名前 打鉄(うちがね)

生産国 日本国

開発元 倉持研究所(日本)

世代 第2世代型

搭乗者 篠ノ之箒など

特徴 性能が安定しており使いやすい。

待機形態 パイロットにより変化

機体カラー 黒、又は銀灰色

 

マシュ「基本データは上記の通りで鎧武者のような形態をしており、両肩部分に装備された楯は破壊される前に装甲が再生するなど防御力に特化しています。」

 

立香「標準装備は近接用ブレードの(あおい)とアサルトライフル焔備(ほむらび)の2つだけど、劇中は葵しか使ってるシーンないね。」

 

マシュ「形状としては専用機や第2世代でも後期型のISが各部のアーマーを大型化して手足を延長した形態にしているのに対して基本的に搭乗者本来の体格からあまり逸脱しないサイズで、これが前述の扱いやすいさの理由です。」

 

立香「だけど追加装備の種類によっては大幅に変化し、

柔軟な仕様の日本製OSによって第二世代でも最大数の追加装備(パッケージ)に対応していて、超長距離射撃装備撃鉄(げきてつ)は命中率の世界記録を保持しているよ。」

 

マシュ「打鉄はこんなところでしょうか?」

 

立香「なら次はケイタ君の打鉄赤龍だね!」

 

 

 

名前 打鉄赤龍(うちがねせきりゅう)

生産国 日本国、アメリカ合衆国

開発元 倉持研究所(日本)アンカーUSA IS開発部

世代 第3世代型

搭乗者 網島ケイタ

特徴 打鉄に比べ重装甲で近接格闘に優れる

待機形態 六角形のケータイストラップ

機体カラー クリアレッド

 

マシュ「主人公、網島ケイタさんの専用機で、

その名の通り綺麗な赤色の機体です。」

 

立香「打鉄と同じ共通装備とBT兵器の

IS用ブーストフォングラインダーを装備していて、

ケイタ君は確かグラインダー以外は使わなかったかな?」

 

マシュ「グラインダーの特性は特殊な振動波を与えることで敵 ISのアーマーを破壊出来ることです!」

 

立香「元々は瓦礫撤去などの人命救助を目的に作られたもので、災害地用のロボットスーツにも転用できる優れものだ!」

マシュ「クローモードとナックルダスターモードと二つのモードがあり、クローは瓦礫の投擲や敵の頭を掴んで脳震盪を起こさせたりするのに、ナックルダスターは近接格闘に使います。」

 

立香「本編では初陣で白式に勝ったりケイタ君がドラゴンナイトに変身出来ない時にケイタ君がサイクロンドーパントからサバイブカードを奪取するのに一役勝ったり、

逆にドラゴンナイトに変身した時に機動力補助に使われたりとレンの黒翔程の活躍は無かったけどやるべき所はしっかり活躍してくれたね。」

 

マシュ「しかし、暴走したシュヴァルツェア・レーゲンの変身したアナザー暮桜との戦闘で大破。

直後に打鉄赤龍改・臥竜鳳雛が完成してしまった為修理は見送り、と不遇な退場でした…。」

 

立香「主人公機なのに…。単一仕様については打鉄赤龍改の項目で解説します。」

 

マシュ「続いてはアキヤマ先輩の打鉄黒翔です!」

 

 

 

名前 打鉄黒翔(うちがねこくしょう)

生産国 日本国、アメリカ合衆国

開発元 倉持研究所(日本)アンカーUSA IS開発部

世代 第3世代型

搭乗者 Len・Akiyama

特徴 打鉄に比べ軽装甲でスピードに優れる

待機形態 金色の三連リング

機体カラー 黒青色

 

立香「打鉄赤龍とは逆に装甲を犠牲にスピードと肉弾戦のしやすさを優先した機体に仕上がっています。」

 

マシュ「主な武装は防御用のマント型パッケージの覇止(はどめ)

一見ただのマントですが、あらゆる攻撃に対して瞬時に硬化して堅牢な盾になり、即座に再生します!」

 

立香「切り裂けるのは零落白夜ぐらいで、その反則ぶりから黒翔のパススロットの殆どを占めてしまっており、これ以外にハンドガンとあと一つ近接用装備を持つだけで精一杯になってしまうんだ。」

 

マシュ「その為アキヤマ先輩は状況に応じて

両手剣のサムライソード001、

槍剣のサムライブレイド002

一対の小太刀のサムライサーベル003Aとサムライサーベル003Bの三つを使い分けます。」

 

立香「サムライソードのみ45個目のエピソードまでで使ってるシーンはないね。」

 

マシュ「唯一の遠距離装備のサムライエッジliv004はアキヤマ先輩に合わせて米軍IS隊の共通装備を改造したもので、名前にあるlivとはLen・Akiyama infinite stratos versionの意味です。」

 

立香「改造元に比べて連射性と装弾数が上だぞ!」

 

マシュ「本編では、アキヤマ先輩の訓練中の様子が多く書かれている為試合のシーンは少ないですが見せ場はまあまあ有りますね。」

 

立香「作者も感覚的には黒翔のシーンの方が多い気がするって言ってたし。」

 

マシュ「アキヤマ先輩の基礎体力、武力の高さも相まってピンチになった様なシーンもなく、セシリアさんとの試合に勝ったりラウラさんの停止結界を跳ね除けたりと大活躍でした。」

 

立香「それじゃあ最後に更識簪さんの打鉄弍式だ!」

 

 

 

名前 打鉄弍式(うちがねにしき)

生産国 日本国

開発元 倉持研究所(日本)

世代 第3世代型

搭乗者 更識簪

特徴 機動力と圧倒的火力の同意

待機形態 クリスタルの指輪

機体カラー 薄い蒼白色

 

マシュ「強化打鉄の中では一番最後にロールアウトした機体になります。」

 

立香「主な武装はグラインダーのデータをベースに作った対複合装甲用超振動薙刀の夢現(ゆめうつつ)と遠距離装備として背中に搭載された2門の連射型荷電粒子砲の春雷があるのですが、春雷(春雷)は45エピソード現在データ不足のため、使える状態に無く、打鉄赤龍改の遠距離装備のプロトタイプのミサイルポッド付きの機関砲を装備しています。」

 

立香「そして!なんと言っても最大の特徴は第3世代技術のマルチロックオン・システムによって6機×8門のミサイルポッドから最大48発の独立稼動型誘導ミサイルを発射する山嵐!」

 

マシュ「手元の機関砲のミサイルポッドを合わせれば計50発のミサイルを発射出来ます。」

 

立香「初陣では甲龍とオーランディ・ブルームの2機を相手に見事勝利を収めたね!」

 

マシュ「これからの活躍に期待です!」




立香「さて、今回はここまでですが如何だったでしょうか?」

マシュ「少しでも皆様がこのssを楽しめる手助けになれば幸いです。それでは!」

2人「また次回!」


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第二回 IS設定解説

注意!このエピソードは解説回です。
the Heat その7まで読んでからお読みください。


立香「立香と!」

 

マシュ「マシュの!」

 

2人「第2回IS設定解説〜!イェーイ!」

 

マシュ「Are you ready?ということで始まりました。

第2回立香とマシュのIS設定解説。今回はエピソード52までに登場したこのssオリジナルのISについて解説します!」

 

立香「まずは主人公機打鉄赤龍改から!」

 

 

名前 打鉄赤龍改(うちがねせきりゅうかい)臥竜鳳雛(がりょうほうすう)

生産国 日本国、アメリカ合衆国

開発元 倉持研究所(日本)アンカーUSA IS開発部

世代 第3.5世代型

搭乗者 網島ケイタ

特徴 背部マウントラッチによる継戦力

   肩部ハードポイントによる突破力

待機形態 六角形のケータイストラップ

単一仕様 逆鱗閃甲(げきりんせんこう)

機体カラー クリアレッド

 

マシュ「主人公網島ケイタさんの専用機、

打鉄赤龍の改良型で逆鱗閃甲の発現に合わせて作られました。」

 

立香「武装は、まずグラインダーが取り上げられた代わりに装甲を変形させて展開するナックルガード。

背中のマウントラッチに近接ブレードの葵改・鳳羽(ほうう)が二本。遠距離装備にミサイル付きライフル龍炎(りゅうえん)

肩のハードポイントに装着する形で使用するIS用ブーストフォンスピーカーやクアッド・ファランクス改ってとこだね。」

 

マシュ「スピーカーはグラインダーと同様に特殊音波で敵のアーマーを瓦解させる為の武装です!」

 

立香「砲台型になっていて、

クアッド・ファランクス改と同様に肩のハードポイントに接続して使うぞ!」

 

マシュ「また、この他に長い腕部と一体になった盾の中にコンバットナイフの凰爪(おうしょう)、脚部装甲内にハンドガンの龍火(りゅうび)が二つづつ装備されています。」

 

立香「スラスターなんかは特別な物じゃないけど、逆鱗閃甲を纏わすことでたちまち高速戦用並の性能を出せるんだ。」

 

マシュ「この他にも武装の全ては逆鱗閃甲を使う前提で作られていて、それ故にあり得ないほど燃費の悪い機体になってしまった為、大っぴらに使えなかった亡国機業から奪取したコアを搭載してデュアルコア型にする事でそれを補っています。」

 

立香「続いては蓮の打鉄黒翔改・夜蒼の一番星だ!」

 

 

名前 打鉄黒翔改(うちがねこくしょうかい)夜蒼の一番星(ナイトブルーファーストスター)

生産国 日本国、アメリカ合衆国

開発元 倉持研究所(日本)アンカーUSA IS開発部

世代 第3.5世代型

搭乗者 Len・Akiyama

特徴 ハイパーセンサーでも捉えきれない超スピード

待機形態 金色の三連リング

単一仕様 永光星火(えいこうせいか)

機体カラー 黒青色→夜蒼色

 

立香「打鉄赤龍改とは違いって改修ではなく、

蓮自身の力で掴み取った第二形態だ!」

 

マシュ「武装はなんとブレード一本!

しかしその代わりこの機体は一度限りの最強技を持っています。」

 

立香「それはハイパーセンサーですら追えない程の神速の超加速!」

 

マシュ「それはアキヤマ先輩の身体が潰れてしまう程のスピードです。

しかしアキヤマ先輩は単一仕様の『永光星火(えいこうせいか)』のお陰で耐えることが出来ます。」

 

立香「この単一仕様はエネルギーがほぼ満タンな時に限り、パイロットを無条件に守り抜く防御全振りの単一仕様で、これのおかげで蓮は加速中に死ぬことも攻撃を受けて撃墜される事も無いんだ。」

 

マシュ「しかし使った後は殆どエネルギーが残らない為、一度限りの自爆技ですが、篠ノ之束博士から奪取したコアを搭載することでその弱点を克服しました。」

 

立香「ただし、使った武器は無事とはいかないからメカニックとしては使い所はちゃんと見極めて欲しいね。」

 

マシュ「では次に織斑一夏さんの黒法です!」

 

 

黒法(こくほう)

 

生産国 ???

開発元 篠ノ之束

世代 第4世代型

搭乗者 織斑一夏→織斑三春→織斑一夏

特徴 最恐の単一仕様

待機形態 黒い時計用チェーン

機体カラー 黒緑色→ディストーションブラック

 

マシュ「原作に出て来た黒騎士は白式の裏と言うよりサイレント・ゼフィルス改じゃ無いか?という作者さんの疑問の元、作られた機体です。」

 

立香「世界でも数少ない篠ノ之束がコアから手掛けた機体の一つで、武装は近接ブレードの夜桜のみの完全近接特化型だ。」

 

マシュ「最も特筆すべきは単一仕様の『満壊極夜(まんかいきょくや)』。

ロランツィーネさんを持って『どんな単一仕様より恐ろしい』と言わしめた禁断の魔剣です。」

 

立香「その実態は、機体と物理的、

又は電脳的に触れた物をエネルギー化して吸収する怪物だ!」

 

マシュ「劇中では鈴音さんの双天牙月の一部や銀の福音の光弾を飲み込んでいました。」

 

立香「他にも接続していただけのゼロワンのラムダに侵入して人格を封印、残ったボディやデータをサブ演算機化させるなど、その使い方は破壊に止まらなず、応用次第ではどんなISにも勝てるISだ!」

 

マシュ「そして、さらに三体着身、

またはソリッドドライバーを着身したフォンブレイバーに白式との連絡、結合用ハードウェアの働きをさせる事で変身出来る融合形態、『単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)』があります!」

 

立香「仕組みとしては

『ISコアをブラックボックスたらしめる特殊暗号は共通だから、

これを双方向に通信が可能な機会ととらえさせ、

二体の回路に互いの暗号を解析しあわせ結合させる。』

という事で、理論上は時間が経てば経つほど強固に結びつき、お互いを理解して行くんだ。」

 

マシュ「つまり、単一世界・両極双心は使えば使うほど強くなるんですね。」

 

立香「ああ。黒法の可能性は未知数だ。

初陣では五機の専用機を相手に互角に立ち回り、

福音戦第二ラウンドでは見事仲間と連帯して勝利を収めた程だしね!」

 

マシュ「これからの活躍、進化に期待です!」




マシュ「今回はこんな所でしょうか?」
立香「だね。本編はこれから夏休み編、つまり何本か日常回を挟んでからまたシリアス路線に戻ると思うのでこれからも応援よろしくお願いします。」
マシュ「私達がメインを務めるinfinite time キカイダー00やアキヤマ先輩とサードさんのinfinite time ケータイ捜査官3もよろしくお願いします!」
立香「それでは今回はこの辺で!」
2人「バイバーイ!」


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第一回 人物解説

注意!このエピソードは解説回です。先に夏休み編その5 織斑千冬の受難!まで読んでからお読み下さい。


ネクスト『ネクストと!』

 

ロク『ロクの!』

 

2人『第1回人物解説!イェ〜イ!』

 

ネクスト『いやちょっと待ってくださいよ。』

 

ロク『どうした次介(つぎすけ)?』

 

ネクスト『次介って……まあいいですけど、本編で出番絶無な俺たちがなんでこんなコーナーやらされてるんすか?』

 

ロク『そりゃあ、本編で出番の多いやつがやると角が立つからだよ。それに嫌じゃないだろ?こんな形とは言え出番もらえた訳だしいいだろ?』

 

ネクスト『まあそうですけど……』

 

ロク『たく、乗り気じゃねぇな。兎に角始めるぞ!まずは7の字の相方の網島ケイタだ!』

 

網島(あみしま)ケイタ(16)

 

性別 男性

人種 日本人

身長 170cm前半

出身 K県風都市中区

身分 高校生 アンカーエージェント

所属 国立IS学園高等学校1年1組

   アンダーアンカー

好物 氷菓 トンカツ系の食べ物

苦手 深く考えた事ない

長所 異常なタフネス

渾名 鏖殺網島

CV  窪田正孝

イメージ曲 果てなき希望(いのち)(きただにひろし)

      心つなぐ愛(BYUE)

 

ネクスト『基本ステータスは以上の通りっす。』

 

ロク『本作主人公にして仮面ライダードラゴンナイトに変身する3人の男性IS操縦者の1人だ。』

 

ネクスト『一応は原作の網島ケイタと変わらないっすけど、熱くなりやすかったり中華料理が上手な所は仮面ライダー龍騎=城戸真司に、私服のセンスはリイマジネーション仮面ライダー龍騎=辰巳シンジに近いっすね。』

 

ロク『因みに氷菓が好きというのは演者の窪田正孝さんや小説版の城戸真司と同じだな。血液型や誕生日も窪田さんと同じだ。』

 

ネクスト『愛車はスズキカタナ。KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHTのキット・テイラーと同じっすね。』

 

ロク『こいつは親に借金してた奴に利子の代わりに渡されたのをケイタが譲り受けたもんで、中2の、ちょうど一の字の相方のお嬢ちゃん達と別れてからずーっと乗り回してたな。』

 

ネクスト『そして走り屋として有名になっていき、一度喧嘩すれば一切の容赦が無いことから鏖殺網島なんてダサイ呼ばれ方もされてるっすね。」

 

ロク『何故そんな通り名が付くまでになったかと言えば、当人にも無自覚なある才能が原因だ!』

 

ネクスト『才能?』

 

ロク『簡単に言っちまうと、ケイタの奴は自分が想像した挙動を実現出来るってもんだ!」

 

ネクスト『えーっとつまり?』

 

ロク『本人が「やれそうだな」と思った事は練習抜きで出来ちまうって事だよ。』

 

ネクスト『それ、ケイタ先輩みたいな自分の限界決めちゃう人間には足枷にしか成りそうにないんと思うんすけど?』

 

ロク『普段はな。だけど目の前の敵を殴り伏せる事しか考えてない時は?』

 

ネクスト『あ!』

 

ロク『気付いたみたいだな。この才能が足枷にならない様にする方法は2つ。1つは今言った様に自分の限界を度外視する。』

 

ネクスト『もう1つは?』

 

ロク『自分が自分の限界を超えていてもおかしくない状態になる。だ!』

 

ネクスト『つまりISに乗ったり仮面ライダーに変身することっすか?』

 

ロク『ざっくり言えばな。』

 

ネクスト『そう考えるとケイタ先輩の中でイメージが固まっちゃってるのが悔やまれるっすね。』

 

ロク『だがアイツの想像を固めたのは他でもない世界最強(ブリュンヒルデ)の織斑千冬だぞ?』

 

ネクスト『……つまり自分を最強だって思い込めれば織斑千冬と同じ動きが出来るってことっすか!?』

 

ロク『そうゆう訳だ。』

 

ネクスト『はぁー……IS学園でアキヤマ師匠よりモテるのも納得っすね。』

 

ロク『いや、一応言っとくとケイタの奴は単純に面だけ見たら五反田弾の方が色男だぞ?』

 

ネクスト『そうなんすか?』

 

ロク『実際一夏お嬢ちゃんのクソ兄貴が反則級の色男だから高嶺の花に手が出ねぇと思った奴らから人気あるだけだ。』

 

ネクスト『ああ、それでアキヤマ師匠は顔が怖いから。』

 

ロク『そうゆうこった。』

 

ネクスト『じゃ、次はアキヤマ師匠っすね。』

 

Len・Akiyama(蓮 秋山)(15)

 

性別 男性

人種 日本人

身長 170cm後半

出身 大阪府池田市

身分 高校生 アンカーエージェント 米軍少佐

所属 国立IS学園高等学校1年1組

   アンダーアンカー

   米陸軍海兵隊IS師団ブルー大隊

好物 ステーキ カルボナーラ

苦手 無い 強いて言えば犬

長所 器用貧乏

渾名 特にない

CV  松田悟志

イメージ曲 Lonely soldier(松田悟志)

      愛が止まらない(INFIX )

 

ロク『三の字の相方の兄ちゃんだな。4人の中じゃ一番身長高いが、誕生日は12月と一番遅くて変な話最年少だ。』

 

ネクスト『本作裏主人公にして3人いる男性IS操縦者で唯一日本国籍じゃないっす。』

 

ロク『アンダーアンカーから海兵隊IS師団に出向していて一個大隊を任されるなど優秀な男だ。』

 

ネクスト『軍属ってのは小説KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT 2WORLD 1HEARTに登場した仮面ライダーウイングナイト=ブライアン・マースと同じで、愛車がカワサキ・ニンジャなところはベンタラの仮面ライダーウイングナイトのレンと同じっすね。』

 

ロク『私服の白いジャケットなんかはケータイ捜査官7の桐原大貴と同じだな。』

 

ネクスト『なんでも大切な人からの贈り物らしいっすよ?』

 

ロク『ほぉ〜蓮のやつも隅におけねぇな。』

 

ネクスト『自前でそれなりにハッキングなんかの電脳系のインドアな仕事も出来るっすけど、本人かなりアウトドア派で釣りとかキャンプとか好きでそういったのには一家言あるそうっすよ。』

 

ロク『人は見かけによらねぇな。』

 

ネクスト『ただ見た目通りに気難しい師匠で、本気で友情を感じた人しか下の名前で呼ばないし、下の名前で呼ばれるのを嫌がるっす。』

 

ロク『自他共に厳しい奴だな。』

 

ネクスト『なんでも信念と努力だけで今の実力を手に入れた作中ブッチギリで伸び代の無い努力タイプなんで。スタート遅かったケイタ先輩よりはまだ強いっすけどそのうち簡単に抜かれますよ?』

 

ロク『秋山が努力家でケイタが天才……ついつい逆に感じるな。』

 

ネクスト『ま、積み立てと倒してきた敵の質と数が違うっすからね。』

 

ロク『さて、次は一夏お嬢ちゃんだな。』

 

織斑一夏(おりむらいちか)(16)

 

性別 女性

人種 日本人

身長 150cm後半(更識簪と同じぐらい)

出身 ?????

身分 高校生 アンカーエージェント

所属 国立IS学園高等学校1年1組

   アンダーアンカー

好物 刺身 焼き魚 木苺のお菓子

苦手 暗い倉庫 硬い床

長所 家事万能

渾名 特にない

CV  釘宮理恵

イメージ曲 GOLDEN GIRL(いきものがかり)

      Forever(渡辺典子)

 

ネクスト『一応イメージ元は仮面ライダー龍騎の霧島美穂さんらしいっすけど、あんまイメージ湧かないっすね。』

 

ロク『甘えん坊になった時はそっくりだけどな。』

 

ネクスト『ゼロワン兄貴のバディで、あのIS世界最強の織斑千冬さんの妹っす!』

 

ロク『家事スペックや剣の腕、それに誕生日なんかは原作の織斑一夏(男)と変わらないが、原作の様な「守りし者」ではないな。そこら辺は織斑三春が一手に引き受けてるな。歪み切ってるほどに。』

 

ネクスト『一見頼れる普通の姉御なだけにケイタ先輩に甘える時は凄いっすよね。』

 

ロク『昔からバイトやら剣の稽古やらで留守にしがちな姉や兄には甘えられずかと言って周りの大人には頼れず、年下に弱みも見せれず友達に負担もかけたくない。そんな中唯一甘えられたのが、ケイタだった訳だ。』

 

ネクスト『良くも悪くも自分で抱える人だけにケイタ先輩に向ける信頼は相当ってことっすか。』

 

ロク『1の字に対する信頼もな。何せ始めての共同作業がISに勝つという命がけのものだった訳だからな。』

 

ネクスト『最後は唯一の一般人心愛姉ちゃんっす!』

 

 

保登心愛(ほとここあ)(16)

 

性別 女性

人種 日本人(?)

身長 154cm

出身 ?(公式で地名が公開されてない)

身分 高校生 アンカーエージェント

所属 国立IS学園高等学校1年1組

   アンダーアンカー

好物 妹 

苦手 文系(特に語彙)

長所 出会って3秒で友達

渾名 特に無し

CV  佐倉綾音

イメージ曲 スマイルメーカー

      ココアワールド(いずれも佐倉綾音)

 

ロク『綺麗な紫の目が印象的な姉ちゃんだな。』

 

ネクスト『ちなみに初期案では俺のバディになる予定だったんすけど、それじゃ技術進歩が早すぎるって事で没になったっす。』

 

ロク『4人の中じゃ一番体力無し、よく出来る理系が壊滅的な文系の足を引っ張って勉強は平均と一番普通だな。』

 

ネクスト『だけどケイタ先輩とアキヤマ師匠がギスギスしてる中でも仲間の為に奔走したり、ゼイビアックスの手先だったシャルロットさんに真っ先に許したりと、間違いなく善人っす!』

 

ロク『一応、一夏お嬢ちゃんと反対になる様に、基本何でも作れる一夏お嬢ちゃんに対してパンしか真面に作れない、両親がいない、姉や兄とは仲が悪いわけじゃ無いが、距離を感じてるのに対して兄妹仲良しと、ケイタ、心愛姉ちゃんに対して蓮、一夏お嬢ちゃんとなる様になってるな。』




ネクスト『今回はこんなもんですかね。』

ロク『もしまた機会があれば他の登場人物達も紹介していくつもりだから、その時はよろしくな!』

ネクスト『それでは皆さんまた会う日まで!』

2人『『バイバーイ!!』』


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第一回 ライダー解説

注意!このエピソードは解説回です。先に夏休み編 なぜ織斑千冬は逮捕されたのか まで読んでからお読み下さい。


スコール「スコールと!」

 

マドカ「……マドカだ。」

 

スコール「第一回、ライダー設定解説〜!」

 

マドカ(……帰りたい。)

 

スコール「どうしたのよマドカ?久々の出番よ?もっと嬉しそうになさい。」

 

マドカ(死人と2人きりにされて喜べるか!というかこいつは私が裏切ったせいで死ぬ羽目になったって忘れてるのか?)

 

スコール「はぁ…仕方ないわね。今回はメインの2人の騎士様を紹介するわ。まずは主人公、

網島ケイタ君の仮面ライダードラゴンナイトね。」

 

仮面ライダードラゴンナイト

変身者   網島ケイタ

身長    190cm

体重    90kg

パンチ力  200AP

キック力  400AP

ジャンプ力 ひと跳び35m

走力    100mを5秒

スーツアクター 高岩成二

 

 

スコール「スペックは上記の通りよ。」

 

マドカ「戦闘スタイルはその天才的格闘センスとタフさに突破力を存分に生かした『力の1号』とでも言うべきパワーファイターだ。」

 

スコール「どっかのプログライズキーをこじ開ける人みたいにゴリラになったりしないから安心してね?」

 

マドカ「契約ビーストは無双龍ドラグレッター(5000AP)。

東洋龍(ドラゴン)型のビーストでモチーフをそのまま巨大化させたタイプだ。」

 

スコール「使う武器はこのドラグレッターちゃんの尻尾の形した柳葉刀のドラグセイバー(2000AP)、

頭の形したドラグクロー(2000AP)

お腹を模したドラグシールド(2000GP)の3つよ。

あ、あとそれからビーム攻撃を反射するバリアを張るリフレクオーツベントがあったわね。」

 

マドカ「………」

 

スコール「? どうしたの?」

 

マドカ「お前、スコールじゃないだろ?」

 

ゼイビアックス「はは、バレたかい?中々似てただろう?声の仕事は得意なんだ。」

 

マドカ「声しか似てない! 全く、ふざけすぎだ。」

 

ゼイビアックス「確かに、ここからは少し真面目にやろう。ドラグクローは昇竜突破(ドラグクロー・ファイヤー)という火炎弾を放つ技を持っており、これでとどめを刺す場合もある。

また、ドラグクローで敵に噛みつきゼロ距離で火炎を打ち出す『ドラグジャウ』という派生技もあるぞ。」

 

マドカ「ドラグシールドは腕に装備する場合と両肩に装備する場合を選択可能で、ゴリ押しで突っ込む時は両手に、近接戦では両肩に装備することが多いな。」

 

ゼイビアックス「そして最も警戒すべきはファイナルベントのドラゴンライダーキック。

ドラグレッターの炎の息吹と共に放たれるキックは6000APの威力を持つ『力の1号』に相応しい必殺の一撃だ。」

 

マドカ「初陣ではディスパイダーリボーンを粉々に砕いてなお有り余る威力を発揮していたな。」

 

ゼイビアックス「しかも忌々しい事にかつて残らず破壊してやった筈のサバイブカードまで手に入れたのだ。看過できる事態ではない。」

 

マドカ「サバイブ、生き残るか。スティングが青いサバイブカードを使っていたが?」

 

ゼイビアックス「それはそれでまた別の機会で説明しよう。

まずはウイングナイトの説明だ。」

 

仮面ライダーウイングナイト

変身者   レン・アキヤマ

身長    195cm

体重    95kg

パンチ力  200AP

キック力  300AP

ジャンプ力 ひと跳び40m

走力    100mを4.5秒

スーツアクター 伊藤慎

 

マドカ「スペックは上記の通りだ。」

 

ゼイビアックス「肉弾戦も不得手ではないが、基本は普段は左腰に下げている翼召剣(よくしょうけん)ダークバイザーを武器にスピードと最大5体までに分身できるトリックベント=シャドーイリュージョン(1000AP)や超音波で()()()()()()を怯ませるナスティベント=ソニックブレイカー(1000AP)を駆使して戦う『技の2号』だ!」

 

マドカ「契約したビーストは闇の翼ダークウイング。

蝙蝠(バット)型のビーストで、ドラグレッター同様モチーフをそのまま巨大化させたタイプだ。

忠誠心はドラグレッターよりはあるらしい。」

 

ゼイビアックス「武器はダークウイングの尾を模した馬上槍型の武器、ウイングランサー。この槍で数々のビーストを屠ってきた。」

 

マドカ「さらにダークウイングをマント型防具のウイングウォール(3000GP)に変えて装着する事が出来る他、時に通常形態に戻って二対一で敵を倒す攻撃する防御壁だ。」

 

ゼイビアックス「そして必殺技は作中初めてライダーをベントした飛翔斬。」

 

マドカ「ウイングランサーを構えるタイプとDSゲーム版の様にダークバイザーを構えるタイプ、そして本作オリジナルのキックタイプと3つのパターンがある。」

 

ゼイビアックス「威力は5000APとドラゴンライダーキックより低いが、貫通力ではダークウイングと合体して空中へと舞い上がり、ドリル状に変形させたダークウイングの翼(マント)で自身の身体を包んで突っ込むという使用上勝る。技術的には現在ライダー最強。

サバイブモードに変身すればその力はストライクやラスにも届きうるだろう。」

 

マドカ「ほう、それは楽しみだ。」




気が向いたらまた書きます。


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一章 仮面ライダー編
stArt


ケイタ「網島ケイタです!」

蓮「レン・アキヤマだ。」

ケイタ「今回は作者に変わりましてご挨拶をさせていただきます。」

蓮「そのくらい自分でやれって話だが多めに見てくれると助かる。」

ケイタ「まずはお読みいただきありがとうございます。
いつ完結するかも打ち切られるかも分かんない駄文ですが何卒よろしくお願いします。」

蓮「そういうこと普通言うか?」

(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

その世界には人工の光が全くない。

背の高いアメリカの都心部と日本のベットタウンを混ぜたような街並みの街頭は一切灯っていない。

工場やオフィス街も暗黒に閉ざされ、空には星々と月がこれでもかと輝いている。

 

(相変わらずデートには良い夜じゃないか)

 

その男は道など通じていないはずの鏡の向こうからこの世界、ベンタラに現れた。

蝙蝠をあしらった騎士風の黒と銀色の鎧に蝙蝠の羽の様な青い複眼を隠した騎士風の仮面の戦士。

それはレン・アキヤマが仮面契約者翼騎(カメンライダーウイングナイト)に変身した姿だ。

 

ウイングナイトを始めとする仮面ライダーに変身するにはアドベントデッキと呼ばれるカードケースが必要でこれかデッキに入っているアドベントカードが無ければベンタラを自由に行き来する事は出来ない。

 

カード、あるいはデッキを持たない人間がこの地に足を踏み入れて元の世界に帰った事は一度としてない。

ウイングナイトは3時の方向に気配を感じ目を凝らした。

思った通り昆虫タイプのアドベントビースト、おそらく蝶型のビーストが獲物を探して向こうの世界、レンが本来住んでいる世界を鏡越しに覗いていた。

 

この世界にはアドベントビーストと呼ばれる怪異が住み着いている。

レンは今までウイングナイトになってから一年と少しの間に数々のビーストを倒してきた。

その形は様々で昆虫から魚類型に鳥類型や哺乳類型。さらにはキメラ型にマシーン型までと千差万別だがそれらには歪な人形をしているという嫌な共通点があった。

 

わかりやすく言うとゴジラのシルエットを人間ぽくしてそのまま小さくしたみたいな感じだ。

今回発見した蝶ビーストもモスマンを機械的にしたような外見をしている。別に倒すことに変わりはないが、やはりどうしても見ていて良い気分はしない。

さっさと片付けよう。

 

足音を最小限にしながら蝶ビーストの背後に迫り左腰に下げていた銀色の翼召剣(よくしょうけん)ウイングバイザーを居合斬りの様に一気に引き抜きビーストの首を切り落とした。

完全に不意を突かれたビーストは断末魔を発する間も無く力を失って倒れ黒い霧を発しながら霧散し始める。

 

ウイングナイトは素早く腰のベルトにはまったアドベントデッキからカードを一枚引き抜き、バイザーのカバーを開いてカードをセット。ベントインする。

 

<ATTACK VENT>

 

本来ならば契約(コントラクト)したアドベントビーストに攻撃命令を下すものだがただ呼ぶことだけにも使える。

これ以外にも契約ビーストの体の一部を模した武器を召喚出来るものや実態を持った分身を発動させるなどの超能力を使えるように出来るものなど様々なカードがありそれらを駆使することでライダー達は時にビーストと、時にライダーどうしで戦うことが出来るのだ。

 

しかし文字通り化け物のビーストや超人の仮面ライダーと戦うことは並大抵のことではない上に一筋縄ではない。

知略謀略裏切り不意打ち何でもござれの戦いでエネルギー消費がデッキから供給される分を超えてしまう事もありうる。

そうならない為にこうして契約ビーストに定期的に餌を与えてエネルギーの貯金を作っておく必要があるのだ。

 

「食え、ディナーの時間だ!」

 

飛来した蝙蝠型のアドベントビースト、ダークウイングは蝶ビーストの亡骸の両肩を二本の足で器用に捕まえると首の断面からくちゃくちゃと生々しい音をたてながら捕食を始めた。

 

ダークウイングはビーストにしては珍しく元になった動物をそのままでかくした様な外見でだいぶ機械的だが今まで倒した奴らよりは幾分か親しみ易い姿をしている。

実際レンも誰にも打ち明けずに戦い続ける中で唯一味方と断言できるこいつに愛着もあったが

 

「キキィ!」

 

餌を食わせてやった後にこうして肉片とも金属片ともつかない食べカスだらけの顔を擦り付けてくるこいつを好きにはなれなかった。

更に理由を上げるならアドベントビーストの声にはビックリするほど感情がこもっていない。

 

戯れついてるだけなのか、はたまた嫌がらせなのか、それとも単に口を拭いてるだけなのか判別出来ない。

何度も辞めるようにと言ってるのだがそもそも人語が通じているのか怪しい。

最後のは他のビーストにも言えることだが。

だがただ一匹だけの味方には違いない。

 

仮面中に付いた食べカスを手で拭うと頭上に広がる満天の星空を見上げる。

何度見てもその美しさに圧倒される。

 

そして同時にまるでベンタラは自分の心みたいだと思い知る。

見える所に幸せはあったはずなのに漸くそれを掴んだと思った瞬間に運命という名前の化け物が何もかもを横からめちゃくちゃに破壊して去っていく。

いつまでたっても化け物しか住み得ない空っぽの箱庭。

いつまで経っても最後には一人で立ってる。

そんな星の元に生まれた者の一人。

それが自分。このレン・アキヤマという人間の本質と運命。

 

別に構わない。

何かを得るには何かを捨てなければいけないなら爪垢から命までなにもかも捧げてやる。

元よりそれ以外の物種など有りはしない。

ならば後は手段さえ選ばなければ良いだけだ。

 

「邪魔する奴は全てベントする!」

 

それがレンを仮面ライダーたらしめる覚悟(ちめいしょう)だった。

 

 

2

色とりどりに塗り分けられた人形の家の様な街並みに清々しいが容赦なく日差しが降り注ぐ暑い快晴。

しかしすぐ隣の風都市からの優しい風が程よく暑さを和らげている理想的な四月の晴れの日。

木組みの街の大通りで大きな紫色の瞳の少女、保登心愛(ほとここあ)は道に迷っていた。

 

(香風さん家、香風さん家、、どこだろ?)

 

事の発端は二ヶ月前。心愛が女性だけが使えるパワードスーツ、インフィニット・ストラトス 通称ISのパイロットや整備員を養成するための学園、IS学園に整備員枠で合格してすぐ、彼女の元に伯父が訪ねてきた。

 

「心愛ちゃん久しぶり。まずは合格おめでとう。

今日は君に合格祝いと、1つ提案があって来たんだ。」

 

その提案というのはなんと本来全寮制のIS学園の校則に反して下宿をしないかというものだった。

 

「僕の祖母、君のひいおばあちゃんは遺言で僕に

『きっとお前か、お前の妹の元に心から祭りの音を響かせるような子が生まれてくる。その時は存分にその祭りの音を世界中に伝える手伝いをしなさい。』とね。

僕はその祭りの子が君だと常々思ってたんだ。

だから寮みたいな狭い世界ではなく1つの街ぐらいの世界を生きて欲しいんだ。どうかな?」

 

もちろん心愛は二つ返事で引き受けた。

知らない街も知らない人も未体験も好奇心旺盛な彼女にはどれも宝石のように思えからだ。

 

これからどんな事が始まってもきっと楽しくなる。

流石心から祭りの音を響かせると言われるだけあって底抜けにポジティブな彼女は迷子のこの状況さえも楽しんでいた。

いっそ一日使って街を隅々まで見てみようかな?

そんな考えが頭の片隅に浮かんだその時。

 

「すいません。」

 

不意に後ろから声をかけられた。

振り向いて声の主を正面から見る。

腎臓の長さまで伸ばした黒髪に綺麗な茶色い目。

やや痩せているが出る所は出ていて均一が取れた美しいプロポーション。

顔立ちも凛々しくもどこか幼さを残したその歳の少女特有の美しさを持っている。

間違いなく心愛がいた中学にこれを超える美人は片手の指ほども居なかったに違いない。

カットモデルでもやっていたのだろうか?

どこかで見た事がある気がした。どこでだっただろうか?

 

「?私の顔なんか付いてます?」

どうやら見入ってしまっていたらしい。

 

「え、いやなんでもないよ。それで何かな?」

 

「実は道に迷ってしまって、ここへの行き方って分かりますか?」

 

差し出された黒いやけに分厚いガラケーの画面に映し出されていたのはなんと自分も探していた下宿先だった。

 

「ここ私も探してたの!あなたも下宿?だったらルー…何メイトか分からないけど、私は保登心愛。よろしくね。」

 

織斑一夏(おりむらいちか)です。気軽に一夏って呼んでください。」

 

「一夏ちゃんはなんで下宿にしたの?」

 

「なんでも今度入学する学校にトラブルがあって寮の部屋の数が合わなくなったみたいで。」

 

「へぇ。大変だね。何かあったらお姉ちゃんに頼る感じで頼ってね!」

 

「え?、、私は今年で16歳なんですけど心愛、、さんは今何歳ですか?」

 

「そろそろ16」

 

「同い年じゃん!」

 

 

てっきり年上だと思っていた一夏は少し肩透かしを食らった気分になった。

 

(しかも着痩せして分かりにくいけど、絶対に私よりはある!)

 

そして首と腹の間の巨峰に憎悪を燃やした。

一夏も平均よりはあるのだが中学はバイトばかりで女友達(ひかくたいしょう)があまりいなかったため、そのことに気付いていない。

 

 

「取り敢えず立ち話もなんですし、あの喫茶店でも入りませんか?」

 

「ラビットハウス?うさぎカフェ?いいね。

何を隠そう私は8歳の時伯父さんから貰った羊のぬいぐるみが大のお気に入りなぐらいなんだよ!」

 

「は、はぁ。」

 

 

なんとか「それうさぎ関係無いよね?」

というセリフを飲み込み相槌を打つ。

悪い人ではないがだいぶ変わった人みたいだ。

からんからん。心愛が店のドアを開けると

 

「いらっしゃいませ。」

 

店の中には青い髪の制服姿の女の子がいた。

店内の落ち着いた雰囲気に溶け込んでいてお盆を持った姿が様になっていて頭に乗っけた白いモフモフのロシア帽?が無ければそのままパズルの絵柄に出来そうだ。

 

「ウサギは!?」

 

「なんの話ですか?」

 

 

心愛さえ居なければ。

 

 

3

「じゃあラビットハウスって名前だけなんですね。」

 

「看板ウサギのティッピーだけです。」

 

 

少女は頭に乗っけていたロシア帽のような物をもふもふと撫でる。

毛が長すぎるだけでアンゴラうさぎという品種のなんの変哲も無い普通のうさぎらしい。

因みにこの小さな店員さんは香風智乃(かふうちの)といいマスターの孫娘だそうだ。

 

 

「せめて、その子だけでもモフらせて!」

 

「コーヒー1杯につき10分です。」

 

「取るもの取るんだ。」

 

「安いね。じゃあ10杯でツーショット?」

 

「その子タレントウサギかなんか?

というかちょっと待って心愛ちゃん。

本当に10杯頼む気?」

 

「だってツーショットが。」

 

「1人5杯も飲めないでしょ。」

 

 

私も1杯飲んであげるから3杯にして。

となんとか心愛を説き伏せコーヒーが運ばれてくるのを待つ。

 

「そう言えば一夏ちゃんは何処の学校に通うの?」

 

「、、IS学園に。」

 

「奇遇だね!私もだよ!もしかしたら同じクラスかもね。」

 

「だったら良いね。」

 

 

そこからは心愛のマシンガントークが終わることはなかった。

しかしはじめは若干引いていた一夏も

あっちこっちに話題の変わる心愛に不思議と飽きなかった。

なんだか祭囃子を聴いてるように騒がしいのにどこか心地よい。

話について行けなくなって少しまどろみ始めた頃。

 

「お待たせしました。ご注文の日替わりオリジナルブレンド、モカ、ブルーマウンテンです。」

 

ちょっとやる気のない感じの声の男性店員がコーヒーを運んできた。

なんだろう。

お盆からコーヒーカップを置いていくガッチリした手に見覚えがある気がする。

 

「あれ?もしかして一夏?」

 

「え?、、ケイタ?」

 

 

顔を上げるとそこには去年の8月に会ったきりの懐かしい顔があった。

 

 

5

同じ故郷で兄妹同然に育った一夏を網島(あみしま)ケイタが見違える筈もなかった。

相変わらず綺麗な黒髪は去年より綺麗になったように見えるし、やっぱり俺の故郷、風都は美人ぞろいだな、と誇らしく思う。

 

「去年の夏以来じゃん。元気にしてた?」

 

「うん。まぁ慣れないことのオンパレードだったけど。」

 

「なになに?二人ともお友達?」

 

「ん。俺は網島ケイタ。よろしく。」

 

「私は保登心愛!よろしくねケイタ君。」

 

心愛の白く細い器用そうな手とケイタの不器用そうなガッチリした手が固く握手を交わす。よく見ると心愛もなかなかの美女だ。

 

「お客さん他に居ないし少し話さない?」

 

「良いけどあの智乃ちゃんって娘に怒られない?」

 

「今休憩だから平気。」

 

「余計ダメでしょ。」

 

しかしそう言いながら一夏も旧交を温めたい訳で

 

「なんでバーテン服なの?バイト?」

 

「いや、俺今ここの二階に下宿してて。暇なとき手伝ってるの。」

 

確かにケイタにバイトなんてM78星雲人に悪役ぐらい似合わない。、、いや、案外そうでも無いかもしれない。

 

 

「そういえば私たちも下宿先探してるだけどケイタ君はこの辺りで香風さん家って知らない?」

 

「ここだけど?」

 

「え?」

 

「は?」

 

「いやだからここが香風さん家。」

 

「ウソォ!」

 

「嘘ついて何になるん?」

 

何とミラクル。ケイタと同じ下宿先だとは。

しかも偶々目に付いたこの喫茶店だとは。

 

「にしても一夏が遂に友達と街歩きをする様になるか。

四年で人は変わるもんだな。」

 

「ちょっとケイタ?私が万年ボッチ弁当してるみたいな言い方やめてくれない?」

 

「一夏ちゃんって友達居なかったの?」

 

「今すぐあなたの友達辞めても良いんだけど?」

 

1名男だが女子3人揃えば姦しいとは言ったもの。

好奇心の塊の心愛に面倒くさがりだが聞き上手なケイタ。

そしてこの中では一番の常識人の一夏と揃えば話が盛り上がらないわけが無い。

 

「2人はいつから友達なの?」

 

「もうかれこれ6、7年前かな?」

 

「じゃあ幼馴染だね。」

 

「ていうか半分兄妹みたいなもんかな。」

 

「なんか素敵だねそういうの。同じ街の出身?」

 

「バイクで2時間くらいの所に風都市ってあるよね?

あそこの出身。」

 

「知ってる。何だっけ?この前までやってた探偵ドラマの舞台だっけ?」

 

「意外。風都探偵観てたんだ。」

 

「こう見えて小説家目指してます!」

 

「人は見かけによらないね。」

 

そんな話がまた盛り上がろうとした時、1人の男が入店してきた。

背はケイタより少し高いくらい。足は彼のが少し長いか。

射るような目付きは月明かりを反射した冷えた刃物みたいだ。

黒いシャツとジーンズの上に羽織った白いジャケットが余計にそう見せてるのかもしれない。

何とも間の悪い、しかし智乃が居ないのをいいことにサボってる自分も悪いか。

立ち上がりメニューを持って男の元に行き

 

「いらっしゃいませ。」

 

「一人だ。連れはいない。」

 

「どうぞあちらのお席へ」

 

カウンター席に案内して注文を聞く。

が、どうやら以前にも来たことが有るらしくメニューを見ようともせずにオリジナルブレンドをデカフェで注文してすぐに青いガラケーを眺め始めた。

 

「なんかあの人のケータイ、一夏ちゃんの黒いのに似てるね。」

 

「うん、、。」

 

似てるどころか全く同じ形だ。

だとすると一夏としては非常にまずい。

自分があれと同型のケータイを持っていると知られれば男は実力行使で奪いに来るかもしれない。

しかし、まだあのウサギをモフってない心愛はここをテコでも動かないだろう。どうしたものか。

最悪戦いになるのか?

 

「ねぇ心愛ちゃん。私ちょっと部屋に荷物が届いてるか見てくるね。」

 

取り敢えずは自分だけでも逃げよう。

剣か、或いは棒のような物があるならまだ自分に分があるが徒手対徒手なら細身だが体格の良い男には敵わない。

 

「待て。という事はお前が織斑一夏で、そっちが保登心愛だな?」

 

男が立ち上がりこちらに来る。

 

「一夏ちゃんその人と友達なの?」

 

そして心愛の全く場の空気を読まない反応が余計に一夏を焦らさせた。

 

「いや、二人共しけた証明写真で見たことがあるだけで初対面だがどうしても答えてもらいたいことがあってな。」

 

そう言って男が青いガラケーを差し出そうとした時

ぴーん。ぴーん。と男と一夏の耳に不快な反響音のような音が聞こえてた。

 

「なにこの音?」

 

「音?私にはなんも聞こえないけど?」

 

「チッ!このタイミングか。」

 

男は何か知っているようで予断なく窓を見渡す。

 

「おい保登!」

 

「え?」

 

「逃げろ!」

 

しかし男が言い終わるより先に心愛の背後の鏡から白い糸が飛び出して心愛の首に絡みつく。

 

「ヴェアアアアアアアア!」

 

そしてそのままとんでもない力で引き摺り込まれ始めた。

あまりに汚い心愛の絶叫に何事かとケイタと智乃が戻ってくる。

 

「なんじゃありゃ!」

 

「なんでも良い!助けるぞ!」

 

なんとか心愛の足首を捕まえた一夏をケイタと智乃が支えて残った男は折り畳み式のナイフを取り出し糸を切りにかかる。

 

「暴れるなよ、延髄斬りをされたくなきゃな。」

 

しかしナイフは刃を立てて切ろうとした瞬間に根元から折れてしまった。

 

fack it(くそう)!」

 

そうこうしている内にもどんどん引っ張る力が強くなり

 

「 ヴェアアアアアアアア!」

 

「うああああ!」

 

「ぶっ!」

 

「だっ!」

 

一夏を巻き込みながら心愛を鏡の中に引きずり込んで行った。

ケイタと智乃は顔面を強打しながらもなんとか起き上がる。

 

「一夏達が鏡に喰われちまった、、、。」

 

「一体なにが起こって、、、?」

 

「入国審査さ。ただし異次元へのな。」

 

そう言って男、レン・アキヤマは上着の左ポケットから蝙蝠の紋章、ウイングナイトのライダーズクレストのついたアドベントデッキを取り出す。

 

「それって!」

 

ケイタも同じようにライダーズクレストのないデッキを取り出す。

 

「そのデッキ、まさかコントラクトしてないのか?」

 

「コントラクト?なんだよそれ?ていうかお前もあの教会に行ったのか?」

 

「、、、どうやらお前は鋏挟(インサイザー)転装(トルク)とは違うみたいだな。」

 

「インサイザーにトルク?」

 

「お2人ともなんの話をしてるんですか?」

 

「詳しくはこいつに聞いてくれ。網島ケイタ…網島でいいか?やったことないようだからよく見とけ。これが俺たち仮面ライダー流の挨拶だ。」

 

蓮は智乃に青いケータイを預けるとデッキを正面に構える。するとデッキから電撃のようなエネルギーが発せられ蓮の腰に集まり銀色のバックル、Vバックルを錬成する。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

上着を翻すように腕を振りデッキをバックルのスロットにセット。

無数の灰色の残像が蓮に重なりレンを仮面ライダーウイングナイトへと変えた。




ケイタ「皆さまお読みいただきありがとうございました!」

蓮「作者的には上手くいかなかったそうだがきっとまあこんな感じの一万字未満の駄文が続くものと思ってくれ。」

ケイタ「冒頭で俺を諌めたのは誰だよ。
まあいっか。さて、なんか作者から後書きでは色々俺がお前に質問したり次回予告するように言われてんだけど今回はそうだな、蓮が変身したとこまで来たけどなんで蓮は漢字とカタカナと両方あるの?」

蓮「ライダーとかの質問じゃなくてそっちかよ!
一応アメリカ国籍だから書類上はLen Akiyamaって名前で秋山蓮ってのは日本で生活する都合上名乗ってる名前だ。」

ケイタ「自分で漢字あてたの?」

蓮「いや爺さんがつけてくれたんだ。気に入ってるよ。」

ケイタ「なるほど。因みに蓮の爺さんの登場予定はあるそうです。」

蓮「ちょっと待て。俺初耳なんが!?」

ケイタ「次回『 dragon reBoot』次回もみんなで!」

蓮「おい無視、、あーもう!KAMEN-RIDER!」


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dragon reBoot

ケイタ「普通の高校生織斑一夏。彼女には過激派集団タイムジャッカーのうち1人アナザーキカイの手により魔女王にして時の王者にして出席簿を聖剣として戦う武神アナザーチッピーになる未来が待って「いてたまるか!」

ケイタ「なんだよ蓮。いいとこなのに。」

蓮「1つもいいもんか!
まだ影も形も名前さえ出てきてない奴をネタに使うな!
少しは緊張感を持て!はぁ、、ったく。香風後は頼んだ。」

智乃「なんで私に?まあいいですけど。
謎の糸に絡め取られ連れ去られた心愛さんと一夏さん。
ウイングナイトに変身した蓮さんは助けることができるのでしょうか?」

ケイタ「さてさてどうなる第2話!」

(op 果てなき希望 仮面ライダー龍騎)


1

「、、、まず何から驚いたらいい?」

 

「私が知りたいです。」

 

取り残された2人、ケイタと智乃は取り敢えず落ち着いて物事を考えることにした。

 

「なんか本来なら反射して写った私たちか反対側の景色しか見えないはずなのに何故か巨大な蜘蛛の巣に貼り付けにされてるお客様が見えるのですが?」

 

「そういうもんなんだよきっと。」

 

「蓮さんが似非バットマンに早変わりして飛び込んでいったんですけど?」

 

「似非でもバットマンでもないでしょ。

どっちかと言えばパワーレンジャーだよあれ。

早変わりっていうか最早変身だったし。」

 

「私たちに何が出来るんでしょうか?」

 

「その青いケータイに聞けないの?」

 

なんにしたってこんな所で燻ってたって何も始まらない。

 

「え?ケイタさんフォンブレイバーを知ってるんですか?」

 

「てか俺も持ってるしね。」

 

 

2

心愛をベンタラに引き込んだ蜘蛛をそのまま機械的にして巨大化させた様なアドベントビースト、ディスパイダーはウイングナイトが後を追って来るのを察知するとすぐさま心愛を手近な柱に貼り付けにその長い長い前脚でウイングナイトを迎え打った。

これにウイングナイトもバイザーを引き抜き対抗する。

火花を散らしながら3回ほど切り結ぶ。

 

「筋力だけは上か、ならバッター交代だ!」

 

<ATTACK VENT>

 

カードをベントインして契約ビーストのダークウイングに攻撃をさせ怯んだ所を懐に入って脚関節の弱い部分にバイザーを突き立て根元から切り落とす。

 

「こいつでノーアウト満塁。一気に盗らせてもらうぜ。」

 

<FINAL VENT>

 

カードをベントインしながら距離を取りダークウイングが背中に合体すると全速力で駆け出す。

そして動けないディスパイダーの眼前まで来た所で大きく垂直に跳躍しマント状になったダークウイングの翼が繭のように包み込む。

巨大な繭はドリルのように回転しディスパイダーをほぼ垂直に貫き木っ端微塵に粉砕した。

 

 

3

『ーい。ーーか。、、おい一夏!起きろ!』

 

心地よい微睡みの中第2回モンドグロッソ、IS国際大会以来の相棒の声が聞こえてくる。

いつも一匹狼的な発言してる癖に自分の方が早く起きてると寂しくて、私を起こしにくるのだ。

 

「うん、、。後五分、、。」

 

『よくそんな硬いコンクリートの上で間違えて目覚ましかけてた日曜日の朝みたいなことが言えるな!

起きろ!何が起こったか思い出せ!』

 

思い出せと言われても、昨日は歯を磨いて荷造りして本棚の隙間から出て来た「憧れの先輩シリーズ」とかいう卑猥で下劣で汚わらしい本(多分兄の)を炎に焚べてそれからウォッチャメンさんのブログをチェックした後直ぐに寝てそれから起きて着替えて、、。

 

「私もう木組の街に来てんじゃん。」

 

どうやら自分頭を打って気を失っていたらく左後頭部がズキズキと痛む。

空が見える。どうやら自分は仰向けに倒れているようだ。

上体を起こすと直ぐに自分が五体満足らしいことが分かった。

 

「ゼロワン。私どのくらい寝てた?」

 

自分の左横に転がっていた分厚い黒いガラケーを拾い上げる。

 

『安心しろ1分も寝ていない。立てるか?』

 

ケータイから声は聞こえるが画面は通話状態ではなく黄色と赤の三角形で描かれた鋭いツリ目だけの顔のような待ち受けになっている。

つまり彼女はケータイ越しに誰かと喋ってるわけではなく、世界有数の通信会社にしてISの部品メーカーアンカー社の偶然の産物にして最高傑作。

天才意外の烏合の集の手により初めて生み出された7つの仮想生命の1つフォンブレイバーのはぐれ者ゼロワンと話してるいうことだ。

 

 

 

4

かちゃり。レンから預かった青いケータイを開きさっきまで心愛たちが陣取ってたテーブルに置く。

 

『お久しぶりです智乃様、セブン。

はじめましてケイタ様。

わたくしはフォンブレイバーのサードと申します。

以後お見知り置きを。』

 

「久しぶりですサード。

いきなり本題で申し訳ないですが、ズバリあれはなんですか。」

 

『単刀直入に来ましたね。

まあお二人とも十二分に驚かれたことでしょうし、いきなり全ては理解しきれないでしょうから、取り敢えずあれは人食いモンスターが心愛様を食べる為に巣に持ち帰ったと思ってくれればいいです。」

 

何も良くない。それはつまり広い檻の中の飢えた獣の前に丸腰状態で放り込まれているのと同じだ。

一刻も早く助けなければならない。

 

『えぇ。 ですが先程レン様の言っていた表現を借りるなら本来我々は入国審査どころかパスポート申請さえ不可能です。』

 

「でもあの蓮ってゆう奴は変身したら向こうに行けた。

俺のでも行けるんじゃないか?」

 

そう言って自分のデッキを取り出すケイタ。

 

『恐らく。しかしそのデッキにはわたくしとレン様も知らない要素があります。』

 

そう。何故かケイタのデッキにはレンのものにはあったライダーズクレストがなく、ただ黒い模様があるだけなのだ。

 

『やめておけ網島研修生。生兵法は火傷の元だ。』

 

起きていたのか。ケイタのポケットから男の声がする。

ケイタのフォンブレイバーセブンの声だ。

 

 

「んだよ。ケータイ。文句あるかよ?」

 

『文句ではなく忠告だ。

君は今までそれを使おうとも思ったことがないのだろう?

だからやめておけ。

今君がやろうとしてることはただ持ち歩いていただけで未使用の拳銃を油断なく構えた熟練兵に向けて撃つレベルの愚行だ。

それに見てみろ。もう決着はついている。

今から行っても遅い。』

 

窓を見ると瓦礫やモンスターの残骸を踏みしめながらウイングナイトが心愛を降ろそうとしていた。

が心愛が暴れるせいでなかなか難儀しているようだ。

 

「意外とあっさり済みそうですね。」

 

智乃の言う通りビーストも半分以上が霧散して瓦解しているし。

瓦礫の方から這い出てきた一夏も大した怪我はなさそうだ。

 

『言った通り君の出番はなかったろう?』

 

「それフラグじゃないの?」

 

『何を言う。どこからどう見たってアキヤマの勝利だぞ?」

 

セブンがそう言い終えた瞬間。

ウイングナイトは空を見据えたかと思うと思い切り後ろに飛び退く。

次の瞬間にはウイングナイトがさっきまで立っていた場所に小さなクレーターが出来ていた。

 

『なに!?』

 

「まさか、また別の?」

 

現れたのは東洋龍(ドラゴン)の形をした真っ赤なビーストだった。

炎のブレスを吐きながらウイングナイトを追いかけ始める。

 

「蓮の奴、一夏の方に逃げてんじゃねぇかよ!」

 

ケイタはセブンを掴んでポケットにねじ込むと自分のデッキを構えて

 

「カメンライダー!」

 

『、、、、、。なにも起こらんではないか!』

 

何故かベルトが発動しないのだ。

 

『まさか、コントラクト無くして変身は出来ない?』

 

「それじゃあ、やっぱり向こうには、いけない?」

 

「そんなッ!カメンライダー!KAMEN-RIDER!、、、仮面ライダー。」

 

『言い方の問題な訳ないだろ!

もう無理だ諦めてアキヤマを信じろ!』

 

「じゃあお前はあそこにいるのが一夏じゃなくて満身創痍の滝本さんとかだったらほっとけるのかよ!?」

 

『そ、それは、、、。』

 

「だったら力を貸してくれよ。あのなんとかハックって奴。」

 

『イニシエートクラックシークエンスか?

そもそもそのケースはインターネットに接続してるのか?』

 

「どう見てもスマホぐらいの大きさしかない上にカードの分のスペースと蓋に半分くらい使ってますよね?」

 

智乃の懸念はもっともでデッキにはタッチパネルの類も見当たらない。

 

「そっちじゃなくて、ISの方で行けない?」

 

「ISの方?」

 

『?、、そうか!そうゆうことか!』

 

セブンが手を自由に出せたらパン!と鳴らしていたことだろう。

ケイタも長時間の思考の末に閃いていたなら指を鳴らしていた。

 

「どうゆうことですか?」

 

『チノ。君は私たちフォンブレイバーの誕生についてどの程度把握してる?』

 

「えっと、確か水戸博士と当時助手だった城戸さんのISの原動力になるISコアを模倣する実験中の事故で出来たISコアの持つ本来希薄なはずの仮想生命が極端に顕在化したもの、、あ。」

 

『つまりケイタ様はアドベントデッキにもIS由来の仕組みが使われているならフォンブレイバーを用いてのアクセスが可能とお考えで?』

 

「あぁ。ISのあの何もないところから物出すあれ、、量子化だっけ?

デッキのあれも多分きっと似たようなもんだと思うんだ。

だからちょっとぐらいは同じような理屈で動いてるんじゃないかって。」

 

確信なんてない何となく思いついた事だが、もしかしらもしかするかも知れない。

 

「頼むぞ!」

 

『了解だ。 イニシエート・コア・クラック・シークエンス発動!

仮称網島ケイタのアドベントデッキのメイン部分にISコアネットワークを用いたアクセス、及び不調の原因の排除を試みる。』

 

現在全世界に467個あるISコアは独自のネットワークで繋がっておりISコアのほんの一部を模した特殊電子頭脳ラムダチップを持つフォンブレイバー達もボディに搭載されたハッキングシステムと特殊サーバー「ELIZA」の支援を受けることでアクセスが出来るのだ。

 

「早くしろよ、蓮の奴逃げてばっかでヤバい!」

 

『急かすな!お前の予想通りアドベントデッキに使われてるISの要素なんて微々たるものなんだ!

入り口が467しかないとは言えネットは広大なんだよ。

そのながら小さな1つを探し出すなんて砂の山から一粒の砂金を探し出すようなものなんだよ!』

 

その上本来コアネットワークへの接続さえ難しいほどしかISコアの要素を持たないフォンブレイバーを使うのだから本当にダメ元なのだ。

 

『あった!』

 

「あった?」

 

しかしセブンはフォンブレイバー一の頑固者。

一度決めた事は何が何でもやり遂げる男だ。

 

『あぁ。だがなかなかアクセスまで漕ぎ着けそうにない。

網島研修生、ブーストフォンの着身許可を!』

 

「ブースト、、これのこと?」

 

ポケットから白い卵型のガラケーを取り出す。

一見なんの変哲も無い携帯に見えるがこれこそがフォンブレイバーを万能のものとする事に欠かせない外付けの強化ユニット、フォンブレイバーが一つ。

インターネットウイルスに対するワクチン製作を得意とするメディカルだ。

 

「ロックこじ開けるのはどっちかというとウイルスの仕事じゃないですか?」

 

『仕方ないだろチノも知っての通りその手のウイルスを作れるアナライザーはあの事件以来廃盤になってる。

背に腹は変えられないし時間もない。結局全部ダメ元だ。

網島研修生、着身許可を!』

 

『お待ちください皆様。

あまり良い事では有りませんが、一夏様のハンドバッグを探って頂けますでしょうか?』

 

多少罪悪感はあったが非常時だし仕方ない。

言われた通りに椅子に置かれたままになってるハンドバッグを探る。

 

「手帳、は見ちゃいけないラインとして。」

 

「ハンカチ、ティッシュ、財布にスマートフォン。水筒に、、PDA?」

 

白いキーボードに紫の持ち手のシンプルなスライド式のPDAが出て来た。

 

「アナライザー!」

 

「え?コレが?」

 

かちゃん。ケイタの掌でアナライザーがベルトドライブとカメラアイを展開したアクティブモードになる。その姿は

 

「もうちょいなんか無かった?

どう見てもゴキb「メスクワガタです。

角がないんだからメスクワガタに決まってます。

どこからどう見たってメスクワガタです。

それ以外にはカサカサいいながら走る虫はこの世に一匹だっていません。

嘆かわしいですねケイタさん。こんな所にもISのせいで生まれた女尊男卑の風潮が影響しています。そうですよね?そうに決まってます。」、、、おう。そうだな。」

 

この余り表情筋を動かさない少女にしては珍しく物凄く普通な面を見た気がして嬉しくもあったがこのネタでからかおうものなら容赦のない復讐が来そうだからやめておこうと心に誓った。

 

『早く私をアクティブモードに。そしてアナライザーの着身許可を!』

 

507とコードを打ち込み決定ボタンを押す。セブンの折り畳まれていた手足が展開され人間と同じように二足歩行が可能なアクティブモードになる。

 

「そんじゃ、どぞ。」

 

『うむ、、いまいち締まらないが、まあいい。

アナライザー着身!』

 

セブンからのコードを受け取ったアナライザーはケイタの掌からセブンの乗ったテーブルに着地したのと同時にバラバラに分離する。

 

『コレは、、背中。こっちが左足。』

 

そして意外にも一つ一つ手で持って自分に合体させるセブン。

ケイタは始めて智乃は久し振りに見る光景だが

 

(なんかシュールだなぁ。)

 

(何度見てもシュールですね。)

 

奇しくも同じだった。

 

『いよし!アナライザー、着身完了!』

 

全てのパーツを着身し、ピシッ!と某天、地、人が悪を倒せと呼ぶ電気人間の変身ポーズをとるセブン。

 

「前から思ってましたけどそれカッコいいと思ってませんか?」

 

「あ、やっぱ?」

 

『うっ、』

 

『、、無意識とかじゃ無かったんですね。』

 

やっぱり締まらない定めなのかも知れない。

 

 

 

4

「クッソ!」

 

もう何度目かもわからない毒を吐きながらウイングナイトは左に飛んで火炎球を避けた。

敵、赤い龍のビーストドラグレッターはただ火炎球をはき散らしてる訳ではなく敵の動きを予測して時に一夏や心愛を狙いながら確実にウイングナイトのスタミナを削っていた。

一度の変身で使えるカードは各カード一回づつ。

つまり残り4枚のカードを使い切ってしまえば彼に後がないのだ。

 

(やはりゼロワンは織斑一夏と行動していたか。

ならあっちの守りは片手間ぐらいでいいか。

守らなきゃいけないのが保登の方だけなら4枚全部をうまく使えばドラゴンはなんとか倒せる。だが、、。)

 

ドラグレッター向こう側を見る。

そこではさっき爆散させたはずのディスパイダーがゆっくりと元の姿に戻ろうとしていた。

 

(あの蜘蛛野郎、リボーンタイプだったか!あいつと戦うことになるとなればカードを温存しなきゃ勝てない。

だがドラゴンはカードを温存していて勝てる相手じゃない)

 

ちくしょう。何度目かもわからない毒を心愛のヴェアアアアアアアア!をbgmに吐き捨てると近くにいた一夏を抱えながらもう一飛び。

しかしそれを読んでいたのだろう。

まだ復活しかけのディスパイダーが粘着質の糸を吐いてきたのだ。

 

「しまった!」

 

気付いた時にはもう遅い。ウイングナイトが上、一夏が下になる感じで地面に貼り付けられてしまった。

 

「ちょ、重い、、ぜ、ゼロワン!デモリッションを!」

 

なんとか動かせる左手に握ったゼロワンに人命救助用のチェーンソーやレーザーガンのブーストフォンデモリッションの着身を要求する。

 

『、、、すまない一夏。』

 

「え?、、ゼロワン?』

 

「、、やっぱりな。今の衝撃で四肢のどれか、下手したら全部の筋肉アクチュエータがお釈迦になったんじゃないか?」

 

「いや待ってよ!ゼロワンはアンカー社の最高傑作なんでしょ!?そんな簡単に壊れるの?」

 

「あぁ。機械ってのは頑丈そうに見えて結構デリケートだ。メンテを怠ればツケが回ってくるのは当たり前だ。」

 

たしかに、そう言われれば一夏にも心当たりがある。

最近ゼロワンが思い立ったように血の涙みたいなフェイスパターン(フォンブレイバーの顔、表情のこと)の頃のようにふらふら何処かに出掛ける事がなくなっていた。

もしかして中身は兎も角体は見た目よりボロボロなのか?

 

『、、アキヤマの言う通りだ。

もし次にアクティブモードになれば俺の手足はバラバラに、、、。』

 

「じゃあ、どうすれば、、。」

 

「神に祈るか、悪魔と契約するかだな。」

 

どっちを選んでも嫌な予感しかしない究極の二択だな。

そう吐き捨てるゼロワンに全力で同意する。

思えば思うほどやり残しだらけの人生だったな。

一夏が諦めかけたその時。

 

「おりゃああああああ!ぶっ!」

 

近くのビルの窓から落下してきた灰色のなにかがドラグレッターに飛びかかろうとしてその長い尾で弾かれ地面と熱いキスを交わす羽目になる。

 

一夏たちのすぐ隣でフラつきながら起き上がったそれは仮面契約者(カメンライダー)に違いないがその姿はなんだか見るものを不安にさせる様な頼りなさがあった。

 

まず灰色の地味なアンダースーツに黒と銀の簡素なアーマー。

そして何より目を引くのは顔についた仮面だ。

騎士風の仮面という点ではウイングナイトと同じだがウイングナイトのが蝙蝠のようなバイザー部分と蝙蝠の口、と言うよりバッタの口に見えるクラッシャー部分に分かれてるのと異なり格子戸状の頭蓋骨のようにも見える顔全体を覆うデカくて重そうな仮面だ。

その形は塔に幽閉されたもに付けられる決して外せない拷問器具の伝説を連想させる。

奥に見えるまん丸の複眼はさながら眼光だけを残してこの世から完全に消えてしまった咎人の亡霊のようだ。

 

「そのデッキ、お前網島か?」

 

「嘘、、あれがケイタ?」

 

「蓮!一夏!、、無事じゃなさそうだな。」

 

ちょっと待ってろ。すぐに助ける。そう言うとケイタは左手のガントレッド型のバイザーブランクバイザーにカードをベントイン。

 

<SWORD VENT>

 

ただの長剣ライドセイバーを召喚。

剣道の構えを取りドラグレッター目がけて突っ込んで行く。

しかしライドセイバーの先端がドラグレッターの鼻先に触れた瞬間。

 

「折れたぁ!ぐぁあ!」

 

パキン。と小気味いい音を立てて真っ二つに折れてしまった。

そして鼻面ボールの容量であっさり遥か向こうまで吹っ飛ばされてしまう。

 

「いてて。なんでだよ?」

 

『恐らくコントラクトしてないことが原因だろう。

そうじゃなければアキヤマとここまで差が出るとは思えん。』

 

アナライザーを着身したままケイタの変身に巻き込まれたセブンはバイザーの発声機能をハックして語りかける。

 

「ちくしょう。弱いまんまで2対1なんて、、ん?2対1?」

 

突然ケイタは子供の頃一夏が風邪を引いた時に読み聞かせた物語を思い出した。

 

『昔、小さな町に1人の男がいました。

男は正直者で明るく真っ直ぐな気持ちのいい男でした。

頼まれごとをされたら出来るとこまでとことん手伝い、

心の寂しい人と友達になり、

自分の失敗も他の誰かの失敗も笑い飛ばしてくれる彼は町の人気者でした。

しかしある時、男を快く思わない領主が男に危険で凶暴なドラゴン退治を命じました。

男はお世話になってる騎士様から剣を借りドラゴンの住む迷宮に入って行きました。

しかし驚いた。そこにいたドラゴンは見た目こそ凶悪でしたがとても親切なドラゴンでした。

話を聞くとドラゴンは領主に水場を荒らされたから怒っただけとのことです。

これを聞いた男は死んだお婆さんが生きてた時にくれた魔法のお守りでドラゴンと契約し領主と戦い水場を奪い返しました。

それきり男は町の人から敬遠されてしまいましたが掛け替えのない種族を超えた友情を得た男は少しも後悔しませんでした。』

 

本来はもっと簡単な言葉で書かれていたが、そんなことは重要ではない。

デッキからカードを引き抜く。

これが最後のカードだ。そこには軍事契約(CONTRACT)と書かれている。

 

『まさか網島研修生?』

 

ケイタはセブンを無視すると立ち上がりながらカードを真っ直ぐに突き出した。

 

「来いドラゴン!俺に力を貸してくれ!」

 

ドラグレッダーはギャオオオ!と1鳴きするとぐるり、とケイタの周りを一回り。

するとケイタの手にしたカードが輝き始めたのと同時にベルトにはまったデッキに真上から見たドラゴンの頭を模したライダーズクレストが浮かび上がり、ブランクバイザーが龍召機甲ドラグバイザーに、アンダースーツの色も赤く染まり頭頂部にもライダーズクレストと同じ銀色の紋章が浮かび上がり仮面の上の縁には龍の髭を模した金の装飾が加えられる。

 

『バカな、、、私は本当に同じ物に接続しているのか?なんだこの桁違いの出力上昇は!?』

 

契約一つでここまで変わるものか。

セブンは最早別次元のスペックの高さに戦慄した。

と同時に感嘆を覚えた。これはケイタも同じらしい。

 

「なんだよ、これ、、体がこんなに軽い!

内側からパワーが溢れ出てくる!

マジでヤバすぎる!なんだよこれ!」

 

『仮面ライダーとしか言いようが、いやこれが本来の仮面ライダーなのだろうな。名付けるなら、龍騎(ドラゴンナイト)といった所か。』

 

「仮面ライダードラゴンナイト、、、。しゃ!」

 

胸の前で拳を握りしめるファイティングスタイルを取って全力ダッシュ。からの勢いのままに心愛を運び去ろうとするディスパイダーリボーンにドロップキックをお見舞いする。

 

「ウェア!」

 

落下する心愛をキャッチして降ろすと改めてディスパイダーリボーンに向き合う。

ディスパイダーに人型の蜘蛛怪人の上半身を生やしたような気色悪い外見になっている。

 

「行くぜクモタウルス!」

 

突っ込んでくるドラゴンナイトにリボーンは胸部から糸を硬化させて針状にしたものを無数に繰り出し牽制する。

それに対してドラゴンナイトはバックで回避を取りカードをベントイン。

 

<GURDE VENT>

 

ドラグレッターの腹部を模した盾、ドラグシールドを装備し針を弾きながら急接近。

跳躍するとリボーンの人型部分の人間でいう鳩尾辺りを蹴りつけて怯ませながら距離を取る。

今度は近接武器でトドメだ。そう思ってカードを引き抜こうとした時。

 

「ファイナルベントを使え!」

 

背後から蓮の、ウイングナイトの声が聞こえてきた。

どうやら先に助かった心愛の手を借りてあの拘束を抜けてきたようだ。

 

「ファイナルベント?」

 

『、、、なになに、威力6000AP!?通常攻撃の3倍だと!?』

 

なるほど必殺技か。デッキからドラゴンナイトのライダーズクレストの描かれたカードを引きベントイン!

 

<FINAL VENT>

 

ベントインした瞬間、跳べ!とケイタの中でなにが命じた。

それがなにの声かは分からなかったが飛来したドラグレッターが自分の周りを回り始めるのを見てそうしなければならないと思い右手を突き上げ飛び上がり、空中で一回転。

キックの構えをとると次の瞬間ドラグレッダーの炎の吐息がドラゴンナイトを押し出した。

 

ようやく真面に物を見れるようになったディスパイダーリボーンが見たのは太陽とそれを背にした一陣の赤い彗星だった。

 

 

 

5

ドラゴンナイトの放ったファイナルベント、ドラゴンライダーキックはディスパイダーリボーンをまるで高所から叩き落とされた果実のように粉々に砕きながら地面にめり込み巨大なクレーターを作って止まった。

あまりの凄まじさに一夏と心愛は声を失い放心している。

例に漏れず蓮も仮面の下で戦慄していた。

 

(なんて威力、、火力だけならトルクのエンドオブワールドにも匹敵するぞ、、、。)

 

とんでもないものと関わることになったな。

と思う一方で上手くやれば最強を味方に出来るかもしれない。

という期待もあった。

 

「おーいみんな!大丈夫だったか!?」

 

砂煙の向こうからドラゴンナイトが駆け寄ってくる。

 

「ケイタ!」

 

「嘘!あれがケイタ君?」

 

変身を解除したケイタがなんであんな無茶をしたんだと一夏から小言を言われている。

 

「別にいいじゃん勝ったんだから。」

 

「全然良くない!生兵法は傷の元!

今回はたまたま上手くいっただけ!

あの鎧が途中でパワーアップしなかったら絶対やられてた!、、、でも助けに来てくれて嬉しかった自分がいる、、、。」

 

散々怒鳴り散らした後で見事にしゅんとなられるとどう対応したものか。

終始オロオロしている心愛になんと声を掛けていいか分からなくなるケイタ。

 

「あー、いちゃついてる所悪いが、少しいいか網島?」

 

蓮も変身を解除して元の白いジャケット姿に戻る。

 

「蓮?」

 

「馴れ馴れしく呼ぶな。」

 

「なんだよ、じゃあハスって呼んでやろうか?確かハスって読むよな?」

 

「なかなか学があるじゃないか。

その物覚えの良さそうな頭を信じて最初に言っておく。

俺たちは、仮面ライダーは戦わなければ生き残れない!」




ケイタ「てな感じの第2話でした!」

蓮「ついに主人公変身か。ようやくこの世界でのフォンブレイバーや仮面契約者の立ち位置も明かされてきたし、次で一区切りぐらいか?」

智乃「そうなりますね。所で一つ気になったんですけど、戦闘時の挿入歌やキャラクターのイメージソングみたいなのは決まってるんですか?」
ケイタ「智乃ちゃんみたいに元々キャラソンある人や蓮みたいに原作キャラを改造してるキャラは元々の、あるいは元になったキャラのと同じだね。」

蓮「網島みたいに元々キャラソンがない奴や織斑みたいにガラッと立ち位置が変わる奴には作者の好きなJ-POPとかを当てるそうだ。」

智乃「なるほど、それで挿入歌は?」

ケイタ「特に拘りはないから盛り上がってる!と思ったタイミングで『果てなき希望』や『DIVE IN TO THE MILLER』を頭の中で勝手に流してくれればいいそうです。」

蓮「特別指定する場合は(bgm 曲名 出典)を表示するからその時に。」
(ED Go! Now! 〜Alive A life Neo〜 RIDER TIME 龍騎より)

ケイタ「早速だね。」

蓮「それじゃあ行こうか、次回、infinite DRAGON KNIGHT!」

一夏「ロン?」

蓮「蓮だ。」

ケイタ「ライダー同士で殺し合い?」

心愛「アンダーアンカー?」

蓮「秘密を知ったからには、一連托生だぞ?」

智乃「次回 how to use taboo Card 」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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how to use taboo Card

ケイタ「過激派集団タイムジャッカーの傀儡王アナザーチッピーの引き起こした『オーマの日の惨劇』から十年。我が国は北都、東都、西都に分かれて混沌を極めて「ないよ!ないない!」今度は誰さ?」

一夏「私だよ!誰が蒼井翔太擬きの傀儡よダ、レ、が!というか前回に引き続きこっちのケイタの度し難いノリはなんなの?」

ケイタ「毎回なんか作者からカンペ渡されて。」

一夏「ちょっと作者!仮面ライダー興味ない人が見たってポカンとするだけだとかそっちに頭は回らなかったわけ?」

伊勢村「グハッ!」

ケイタ「血反吐吐いて倒れちゃったけど?」

一夏「もういい放っておく!さっさと済ませるよ?」

ケイタ「、、それじゃあ。辛くも一夏達を救出した俺。
安心したのも束の間、蓮から語られる仮面ライダーのおそるべき真実とは?」

一夏「さてさてどうなる第3話!」

(OP Ture Blue Traveler)


1

キュイン。元来た鏡を通り4人はラビットハウスに帰還した。

 

「、、、その、お帰りなさい。」

 

『お疲れ様でした皆様。危なかったですね。』

 

残っていた1人と1台が労ってくれたが全員とても返事ができるほど平気じゃない。

 

「あぁ。サード、2人にどこまで話した?」

 

レンを除いては。

 

『緊急事態だったので殆ど何も。』

 

「だろうな。香風俺の部屋は左の奥側で良かったか?」

 

「え、はい、、荷物もそこに。」

 

「ありがとう。全員明日は空けておいてくれ。

連れて行かなきゃいけない所がある。

あと夕飯まで絶対に呼ばないでくれ。」

 

そう言うとレンは智乃からサードを受け取り足早に上の会に上がっていく。

 

「ちょっと待ってよ。えっと、、ロン?」

 

「蓮だ。」

 

「レンは全部知ってるんだよね?

もう死にかけない為にも教えてくれない?」

 

「物事には順番って物がある。

興奮しきったその頭でどこまで理解できるって言うんだ。

明日道すがら教えてやるからそれまでに頭を冷やしておけ。」

 

「それは、わかったけど何処に行くかだけ教えてよ。」

 

「東京のアンカージャパン本社地下。」

 

「!?」

 

「もういいか?ゼロワンのことやお前らのことやらで報告ごとや処理しなきゃいけない問題が山積みなんだ。」

 

そう言うと今度こそ二階に上がっていった。

 

「一夏ちゃん大丈夫?」

 

「顔真っ青ですよ?」

 

取り敢えず4人で席に着き、ゼロワン、セブン、そしてドラゴンのデッキをテーブルに置く。

 

『久しぶりだなゼロワン。元気そうじゃないか。』

 

『おかげさまでボディ以外はな。』

 

「なんでケータイが軽口叩きあってるの?AI?」

 

『そんなありふれたもんじゃあない。私たちは仮想生命体だ。』

 

ここで読者諸君の為に仮想生命体とは何かを説明しなければならない。

仮想生命とはISコアやフォンブレイバー達の核ラムダチップなどの電子頭脳がもたらした複雑な感情のことで、

それは最早人間と遜色ないと言っても過言ではなくそれを持つロボットは仮想生命体と呼ばれる。

 

 

「でも仮想生命体って今の所ISだけって話じゃ」

 

『あんな使われるだけのロボットスーツと一緒にして貰っては困る。

我々フォンブレイバーは人間に協力する対価としてアンカー社からの保護を受けてる。立派な共生だ。

所詮道具の域を出ていない奴らとは違う。』

 

誇らしげに語るセブンの姿はそこらの気弱な人間よりも元気に見える。

なるほど。仮想生命体なんてISが世に出てからここ10年の技術進歩の中でも眉唾ものだったがこうして目の当たりにした以上信じるしかない。

 

「何でみんなはこの子達と一緒にいるの?」

 

次に出てくる疑問はやはりそれだ。

見方によってはISさえ超えた存在と関われるなどそうそう有るはずがない。

 

 

「どっちから話す?」

 

『まずは俺から話そう。

一夏、お前にとって辛いかもしれないが』

 

「ゼロワンとの初ミッションのことでしょ?全然平気。」

 

『そうか。なら僭越ながら。

あれは第2回モンド・グロッソの時のことだ。』

 

 

 

2

この頃ゼロワンは紆余曲折あってドイツに来ていた。

理由は幾つかあるが一番の理由はアンカー社の影響がヨーロッパで一番強いためだ。

 

そこなら持ってきたデモリッションやアナライザー以外のブーストフォンも手に入るだろうと睨んで訪れたのだ。

それに第2回モンド・グロッソの最中ならそれを狙ったサイバー犯罪にも便乗しやすい。

 

人間と機械の本性、自分の求める「解」を得るのにこれ以上御誂え向きの環境はそうない。

五つのサイバー犯罪を平行させて進めながら充電器を入手する為にある貨物倉庫に立ち寄った時のこと。

 

1人の少女が、一夏が縄で縛られ放置されていた。

手にはパーカーの袖にでも隠していたのだろう、

折り畳み式のナイフで後ろ手に縛られた縄を切ろうとしている。

それでもなかなか紐解きるには時間がかかるだろう。

そしてそれよりやや手前では3人の男がカードに興じている。

 

「よし一抜け!二番目は俺な。」

 

「ちくしょう、お前ホント勝負運だけはいいよなぁ。」

 

「二番手になってる時点で俺たちに勝負運ないだろ。

それよりさっさと決めるぞ。

あの娘がの怖ーいお姉ちゃんが来る前にヤることヤっとかないと。」

 

男たちの下衆い笑みから察するに彼らはカードで一夏を犯す順番を決めようとしているらしい。

本来なら無視する所だが、この時ゼロワンは興味を覚えた。

 

もしこの事をあの少女に伝えたら彼女は人間に絶望するだろうか?と。

聞いた限りだと彼女の姉は人質を条件に何かを要求されるぐらいには豊からしい。

 

そういった人間程狂う時にはとことん狂う事を彼は知っていたのだ。

早速彼は行動を開始した。

デモリッションを呼びつけ縛られている彼女の頭をちょうど真下に見下ろせる位置に立つ。

 

『デモリッション。着身。』

 

コードを送りデモリッションが背中に張り付くとバラバラに分離する。

両脚のパーツをつけながら両手とバイザーのパーツを蹴り落とし落下しながらバイザー、右手パーツ、左手パーツの順に着しながら着地。

 

『着身完了、、、。』

 

一夏の目の前に降り立ち猿轡を切ってやる。

 

「、、、これ外してくれたお礼はするけど、レディに挨拶するにはまずは直接顔を見せるところからじゃないかしら?」

 

どうやら此方を遠隔操作型のロボットだと思っているらしい。

そしてこの状況でもまだ自力で手の縄を切ろうとしている。

しかし動作のとぼけ方が上手い。

始めからナイフを持っている事を知らなければ身じろぎをしているようにしか見えない。

 

(そしてそれを実行する度胸。中々肝が座っている。)

 

この後サイバー犯罪に協力させることを考えると大いにプラスだ。

 

『俺はお前を助けに来た。』

 

「私を?」

 

『あぁ。自分でも分かってるだろうがこのままではお前はお前の姉が助けに来る前にあの男達の慰み者にされる訳だ。』

 

「それが嫌ならあなたを頼れって?」

 

『理解が早くて助かる。』

 

「、、見返りは?」

 

『ほんの少し俺を手伝うだけでいい。』

 

「そう。じゃあ好意はありがたいけど遠慮させてもらうわ。」

 

『なに?』

 

予想外の答えだった。

自分のできることなどたかが知れてることは彼女自身が分かってるはずなのに。

 

『命あっての物種って言葉を知らない程馬鹿じゃないと思ったんだがな。』

 

「だってあなた、なんだか空っぽなんだもん。」

 

『ッ!?』

 

まさかこの短いやり取りで自分の本質を見抜いたというのか?

あり得ない。人間や仮想生命体がそう単純な筈がない。

でなければ自分は「解」を求めた巡礼など始めるほど悩むわけが無い。

 

『なぜだ、、一体なぜそう思った!』

 

「幾つかあるけど、まずはあなたがとても助けて、守ってって言うより前から助けてくれるような道楽でやってるヒーローみたいにはには見えないから。」

 

人相ならぬ画面想が悪いのは涙の跡が消えなくなる前からだ。

100歩譲ってそこから後々利用しようとしてる事を悟ったとしても自分が空っぽだと気づく理由にならない。

 

「二つ目に明らかに助けた後利用しようとしてるから。

でもって次が、私もあなたと同じでまともに助けてって言われてないのに勝手に助けたり守ったりするような道楽的なヒーローじゃ無いし、自分を取り繕って悪ぶってる弱虫の手を借りなきゃいけないほど弱くないから。」

 

この時ゼロワンは生まれて初めての感情を発露した。

激昂する一方で並列思考するもう片方は参照用の語彙からあらん限りの罵倒を検索している。

彼は後にこれが頭に血がのぼる感覚だと理解した。

 

『質問の答えになっていない!なぜだ!

なぜ俺が「解」を得ていないと分かった!

ただ特別な姉に対する人質以上の意味を持たないお前に!なにが分かった!」

 

「あんたがなんも信じてないってことだけ!」

 

『信じてない?』

 

「えぇ。あなた、口では達観したみたいなこと言いながらどっかで悩み続けてるんでしょ?それが解るまで良くならないって。」

 

『、、、違うのか?』

 

「違わないけど、私の恩人が言ってたの。

この街は良いものも悪いものも風が運んでくるから、

きっと悪いものの次は良いものを運んでくるよ。って。

だから悪いのが来た後は良いものが来るって気分だけでも前を向かなきゃ始まんないよ。」

 

受け売りの癖にカッコつけすぎかな?

そう言って今までの険しい表情を崩して面映ゆそうに笑ったその顔がゼロワンのラムダチップに焼き付いた。

その笑顔はまるで清流のようにさっきまで脳裏に焼き付いていた燃え盛る倉庫も腐臭のする首吊り死体も使われたての拳銃も何もかもを流し去っていった。

 

『、、、中途半端な。しかもあまりに青臭い。

だが、試すだけ試すか。』

 

一夏を飛び越え腕と脚の縄をきる。

 

「なんのつもり?」

 

『取引だ。お前の言うこの街に俺を案内しろ。

その代わり俺はお前をここから逃す』

 

「それって依頼?」 

 

『?、、そうだ依頼だ。

この街に着くまで、俺のバディになれ。』

 

バディ?と一瞬訝しをだが

 

「いいわ。引き受ける。」

 

二つ返事だった。流石にゼロワンも驚いた。

 

『ここまでやっておいてなんだがこっちの事情も聴かずによくそんな安請け合いしたな。』

 

「なーに。依頼人はみんな訳ありだよ。

いちいち聴くのは野暮ってもんだよ。」

 

こいつもこいつでどんな格好つけだよ。

そう思ったが、だから惹かれあったのかも知れないとも思った。

千草とセカンドやアキヤマとサードなんかもそうだったがもしかしたら今亡き俺のかつてのバディたちも俺とどこか似ていたのかも知れない。

 

『、、バディ。お前の誇りは受信した。往くぞ!』

 

 

 

3

『それで人間の傭兵崩れ4人に量産機とはいえISを相手取ったわけだからボディに相当負担をかけてな。』

 

「それでさっきの蜘蛛お化けに襲われた時のショックがトドメになっちゃったわけですか。」

 

『面目無い、、、。』

 

「いや、仕方なくね?」

 

「そーだよ!ゼロワン君頑張ってたじゃん!」

 

「それで次はケイタの番だけど。」

 

「そっか。まぁあんま良い話じゃないけど」

 

 

 

4

網島ケイタは耳鳴りに悩まされていた。

今はセブンがデッキを解析した結果、アドベントビーストの出現を知らせる為の音だと分かったが当時はいつ起こるかも分からないそれにかなり苛ついていた。

 

それのせいで寝付けなかったり集中できなくてテストが散々だったりとろくなことがなかった。

そんななかケイタが唯一耳鳴りを忘れられるのがバイクに乗ってる時だった。

14になると同時に免許を取り母の親戚から借金のカタで譲り受けたスズキカタナ750のスロットルを夜の道で全開にした。

 

スピードを上げるに従って視野が狭くなる時自分の中から余計なものが削り落ちていくような感覚に病みつきになった。

喧嘩もよくした。少なくとも目の前の相手がいるうちはその事しか考えられなくなるし仮に耳鳴りが来ても目の前の相手に苛立ちを全部ぶつけられるからだ。

元々筋が良かったのとよく遊んでもらった兄貴分の探偵の教えもあってケイタは走り屋のなかではまあまあ有名になった。

 

そんな夏のある日、その日はケイタの15回目の誕生日だった。

いつもの様に丁字路ばかりの夕凪町を通り過ぎて誰もいない広い道路を走っていた時のこと。

喉が渇いて近くのコンビニでオロナミンCを買って飲もうとした時。

 

「そこの少年!ちょっと良いかな?」

 

人の良さそうな男が話しかけてきた。名前は滝本壮介といい職業は記者。

年齢は29歳(自称)でこの付近で怪しい建物がないか探していると言っていた。

 

「ここら辺に幽霊倉庫って呼ばれてる廃倉庫があるけど、後ろ乗ってく?」

 

ここで誤解しないで頂きたいのがケイタは確かに走り屋行為や喧嘩の常習犯だがけして悪人ではないということだ。

無精者だがやるときはやるし、兄貴分の探偵の教えから風都を泣かすカツアゲ犯やスリとかにしか喧嘩を売ったことはない。

 

つまり何だかんだ言いつつも網島ケイタは善人という事だ。

途中路上ブースで宝くじを買ってからまっすぐその倉庫に向かった。

 

「ここで良いよ。道案内だけのつもりがすまないね。

あんまり夜遊びするんじゃないぞ?」

 

そう言って滝本と別れたケイタはそのまま街をぐるりと一周すると近くのコインパーキングにバイクを停めて滝本が入っていた倉庫に向かった。

ケイタは探偵の知り合い、一種の情報源として期待される時もある為街や学校の噂にはいつもアンテナを立てており、しかもまあまあの確率で操作に貢献出来ていた。

 

そんな彼の感が滝本が首を突っ込んでる事がなかなかヤバイ事だと告げていた。

もしかしたら余りやりたくないが警察を呼んだ方がいい類の話かもしれない。

連日の非行のお陰で慣れきった忍び足で廃倉庫の中を物陰に隠れながら進んで行く。

 

「あれだけのガードドローンを切り抜けるとは、流石はアンカーのエースですね。」

 

「なんて事もないように言ってくれてるがいい加減驚き飽きて疲れてもしょうがないと思い始めてるだけだよ。

なにせ、まだ実用段階じゃないはずのセキュリティに、

死んだはずのお前が目の前にいるんだからな?間明。」

 

一番奥に着くとそこでは滝本とマギラと呼ばれた若いボサボサ髪の男が対峙していた。

 

「さて、お客様も来た所だしそろそろ終わりにしましょうか。」

 

「お客様に終わり?どういう意味だ間明!」

 

「あなたのフォンブレイバー、セブンって言いましたね。は新たなステージに立つんですよ。大きな試練を乗り越えてね。」

 

そう言った間明の右腕にはS&W M3913、日本警察の制式拳銃が握られている。その銃口の先にはケイタが!

 

「危ない!」

 

パーン!銃声がなるより早く間明とケイタの間に入った滝本の胸を銃弾が撃ち抜いた。

 

「滝本さん!」

 

「来るな!」

 

血を吐きながら咳き込む滝本。

忠告を無視して駆け寄りながらケータイを操作して救急車を呼ぶ。

 

「君、何で来たんだい?」

 

「気になっちゃって!そんでそのせいであんたに怪我までさせちゃったら何が何でも助かって貰うしかないから!この街で誰にも泣いて欲しくないから!」

 

「そうか、、君は凄いね。」

 

「凄かったらこんなになってない!」

 

その様子を間明はただ見ているだけだった。

 

「さて、ここともお別れか。まだ食べてないラーメンもあったのに。

ま、その代わり準備も済んだし差し引きでプラスかな。」

 

間明は誰にも気付かれず鏡の中に消えていった。

 

 

 

5

「そ、それで滝本さんどうなっちゃったの!?」

 

『結論から言えば死んだ。間明も行方知れずだ。』

 

「そんな、滝本さんが、間明さんに、、?」

 

「嘘、、、。」

 

智乃も一夏も直ぐには信じられなかった。

無愛想な自分にあんなに良くしてくれた滝本が死んだなど、姉弟同然のケイタのせいで人1人死んだなど。しかしケイタとセブンの悲痛な表情がなによりもそれが真実だと告げていた。

 

「だから俺は、俺が流させちゃった涙を拭う為にアンカーに入ったんだ。」

 

『涙を拭う、か。』

 

他人事ではないなと独りごちるゼロワン。

 

「甘いな。一応聞いてはいたが聞けば聞くほど甘ったるくて吐き気を催す。」

 

何故か作務衣に湯足袋姿のレンが二階から降りてきた。

 

「蓮、、。」

 

「何だかんだ理由をつけてお前は滝本さんに認めてもらえたってだけでアンカーにぶら下がってるだけだ。

そんだけ甘ったるい内は犬死以外何もできんさ。」

 

『申し訳ありませんケイタ様。

レン様はただケイタ様に戦い終わった後のことを考えずに戦って欲しくないだけで「サード。」申し訳ありません口が過ぎました。』

 

何のかんの言いつつ2人の中は良さそうだ。

 

「兎に角、任務に参加して欲しくないのは本当だ。

むしろ辞退しろと言いたいぐらいだが、こっちも頭数が足りないからな。 明日はキツめの任務になる。」

 

「任務って?」

 

「畜生どころか便所虫にも劣るサイバー犯罪者の粛清だ。」




一夏「はい!今回はここまで!お楽しみ頂けたでしょうか?」

ケイタ「だいぶ端折って原作知らない人には結構不親切だよね。
今回に限らずこのss。作者もうっかり初めからゼロワンを味方にしちゃうから。いきなり間明を出すなんて暴挙に。」

一夏「そりゃ確かに二話より酷い出来だけど作者がケータイ捜査官7見たのもう10年以上昔だし、近くの中古屋やレンタル屋にケータイ捜査官7無いし。」

ケイタ「それは確かに仕方ないけど、俺が事件に鉢合わせるところ、もっとなんかなかった?俺、確かに親に黙って富士山行こうとしてたけど走り屋まではやってないし、やらないよ。」

一夏「どっちかと言えばレンの方がやってそうだよね。」

ケイタ「せっかくopインフィニットストラトスなのにIS要素大した事ないし。」

一夏「こ、こんな中途半端なssでも、感想を書いてくれたりお気に入りにしてくれる人がいる限りやるしかない!腹くくって!」

ケイタ「そりゃあ勿論。あ、後タグにオリ兄アンチと原作キャラ死亡を加えさせていただきました。字数制限で載せられませんでしたが、箒アンチや千冬アンチもそのうち入るので、苦手な方はご注意を、、、。」

一夏「ケイタ、そろそろ時間だし、これ以上読者を減らすような報告は止めたげて、作者血の吐き過ぎで貧血起こしてる。」

(ED 果てなき希望 仮面ライダー龍騎)

ケイタ「まじ?じゃあそろそろ。次回how to use taboo Card その2」
一夏「これで決まりだ!」


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how to use taboo Card その2

一夏「歩くケータイフォンブレイバーセブンのバディにして鏡の騎士仮面ライダードラゴンナイトでもある少年網島ケイタは同じくアンカーのエージェントでありライダーでもあるレン・アキヤマに連れられアンカージャパン本部に向かうのであった!」

ゼロワン『前回は俺たちの過去を語っただけで終わってしまったから今度こそライダーの真実について語られるのだろうか?』

ケイタ「そして次回の更新は一身上の都合で大幅に遅れることが見込まれます。ご了承ください。」

一夏「それでは本編をどうぞ!」

(OP WAKEYOU UP ケータイ捜査官7)


1

一晩明けて5人は朝食などを済ませラビットハウスの裏の駐車スペースに集まっていた。

そこにはケイタのカタナの他にもう一台、白いHUMER H3が停めてある。

 

「蓮くん車運転できるの?」

 

「こっちの方が電車より移動が楽だからな。乗れ。」

 

運転席に蓮、助手席にケイタ、後部座席に右から一夏、智乃、心愛と乗り込み車はアンカー社に向けて発進した。

耳障りにならない程度の音量で島谷ひとみのShake it up!が流れている。

 

「保登、どの程度まで理解した?」

 

「ケータイくん達についてはちょっと。」

 

「ならいい。俺はライダーについてだけ話せばいいか?」

 

「あぁ。まず、あの鏡の世界は何なんだ?」

 

「あれの名前はベンタラ。

並行世界か、それとも現実の鏡写しなのか。

俺にもよく分からん。

一応人の住んでた形跡はあるが、まるである日突然人、

いや生き物とアドベントビーストが入れ替わったみたいなふうに感じる。」

 

「じゃあこのデッキは何なんだ?

どう考えてもアドベントビーストが出てきてから作られた物みたいだけど?」

 

「さぁ?用途は不明だが、アドベントビーストの脳波を感知して耳鳴りに似た警告音が鳴るようになってる辺り、

拳銃みたいにそこらのビーストからの自衛が目的で作られたんじゃないか?」

 

「一個人の自衛の為にこんなオーバーテクノロジーが?」

 

「今の社会だって平和的利用法なんて幾らでもあるはずの467しかない半永久機関を一部の権力者の為に軍事利用してるだろう?

それに、もしそうじゃなかったら奴が言っていたライダー同士の殺し合いが成り立たない。」

 

「ライダー同士の殺し合い!?」

 

後ろで聞いていた3人が一斉にレンの言葉を反芻した。

当人のケイタは声も出ない。

 

「一年と少し前、俺がウイングナイトになった時に現れた男が言ったんだ。『どん底から這い上がらせてやる。だから他のライダーを全てベントしろ。』ってな。」

 

「ベントってなんですか?」

 

「奴の口ぶりから察するに、死と同義だな。」

 

死。たった1文字の漢字が4人に重くのしかかる。

 

「もっとも、そいつはあまりに胡散臭すぎて信用ならなかったから断ったがな。邪魔する奴以外は別に倒す必要はない。」

 

「そうは言ってもどん底から這い上がりたいような人ばっかりがライダーになってるんでしょ。

それって結局ケイタやレンがどう思ってようと戦いにならない?

他のライダー全員って言ってるぐらいだから数に限りがあるみたいだけど、、。」

 

だとしても相手を何人も殺す事になるんじゃないか?

その言葉が喉まで来るのに外に出ない。

 

『我々がデッキを解析して得たデータによれば仮面ライダーの鎧は全部で14個。そこから2人引くから、残りは12人になるな。』

 

ここで黙っていたフォンブレイバー達も加わった。

デッキそのものの話題となれば直に解析した3台の情報より正しいものはそうない。

 

『サード、アキヤマと遭遇したライダーのデータはあるか?』

 

『はい。レン様はこの約一年の間に2人のライダーと計5回交戦しています。』

 

サードがセブンとゼロワンにそのライダー達のデータを送信する。

 

仮面契約者鋏挟(カメンライダーインサイザー)仮面契約者転装(カメンライダートルク)か。』

 

『どちらも防御力の高いライダーだな。』

 

「2人とも特に注意しろ。

インサイザーとは二回戦ったが二回とも背後から不意打ちを仕掛けてきた。

あの蟹みたいな仮面の下を見たことは無いが、こっちであってもロクな奴じゃないだろうさ。」

 

憎々しげに毒づく。余程インサイザーのことが嫌いらしい。

 

「じゃあ後のトルクってライダーは?」

 

「アドベントビーストを倒した後遠距離からバツーカやらビームガンやらで狙撃してきた。

こっちに飛び道具はないからガードベントだけ展開して逃げたが出来れば二度と遠距離から先に見つけられたくない。」

 

インサイザーとは逆に今度は冷静に戦力分析をしてるふうだ。

恐らく直接対峙したことがないからだろう。

 

「何にせよ、死にたくなければ自分のカードぐらい把握しておくことだな。」

 

「カードって一つのデッキに何枚入ってんの?」

 

「アタックベントとファイナルベント、後シールのカードは多分全部のデッキに入ってるがそれ以外は種類も枚数もバラバラだ。」

 

ちなみに俺は7枚入ってた。お前はどうだ?

デッキからカードを全て引き抜き、広げてみる。

 

「ドラグレッター、ファイナルベント、ソードベント、ガードベント、ストライクベント、リフレクオーツベント、6枚入ってた。」

 

「最後の以外は全部武器か、ま、考えるのが性に合わないんなら問題ないな。」

 

『確かに。しかしリフレクオーツだけは何か特殊能力のようだな。』

 

散々な言われようだ。俺だって傷つくんだぞ。

そういうとカードをデッキにしまう。

 

「そういえば蓮くんはその殺し合えって言った男の人からデッキを貰ったの?」

 

「、、、いや、拾ったんだ。なぜかバイクのシートに置いてあって、ツーリング中にビーストに襲われた時に初めて変身した。

網島、お前はどうだったんだ?

モンスター除けのシールのカードを持ってなかったが誰かに譲渡したのか?」

 

「ん。一夏に渡した。拾った時に一夏に渡したんだ。」

 

 

 

2

ケイタがデッキを拾ったのは中学2年生になったばかりの頃。

嫌々倉庫の整理をしていた時の事だ。

 

当時ケイタは満たされていなかった。

一緒に住んでた織斑姉弟妹が引っ越してからというもの退屈で仕方がない。

いや、友人とバスケしたり、偶に兄貴分の探偵の仕事を手伝ったりしていたし全く退屈という訳ではなかったが、贅沢な悩みだがその時を共有できる人が隣にいないのが苦痛なのだ。

 

あの時はああだった。あの時はこうだった。

そんなふうに話せる友人が1人もいない。

別に周りと仲が悪い訳じゃなくて深く関わるのが億劫なだけで、孤立してる訳ではなかったが。

 

中学に上がった時に一夏達は彼女の姉の千冬がISの国家代表になり自活出来るようになった為網島家を離れていて、一夏と話せないのが苦痛でしかなかった。

 

「連絡先聞いときゃ良かった。」

 

そう言っても始まらないのだが言わずにはいられない。

もう二個目から数えるのをやめた段ボールを退かすと、

古びた手帳が出てきた。

 

何か挟まってるのか大きく膨らんでいる。

開くと手の平サイズのカードケースが、ブランクのドラゴンのデッキが出てきた。

変なケースに古びた手帳。

取り敢えず手帳の方から見てみることにした。

 

ほとんどが走り書きだし元々持ち主が悪筆だったであろうことも手伝って全く読めない。

最後まで使い切ってるしゴミじゃん。

そう思って閉じようとしたとき、

ひらりと一枚の写真が落ちた。

拾い上げてみるとケイタの母と父と知らない男が写っている。

3人ともすごく若い。多分自分が生まれるより前に撮られた物だろう。

裏に平仮名で何か書かれている。

 

「ケイタくんへ。ひとめみることもかなわないぼくがこんなことをいうのはおかしいとおもうがおぼえておいてほしい。

ちはもーたーおいるよりこい。

きみにとってはたにんでもだれかにとってはかぞくだ。

けっかはしゅだんをせいとうかしない。

なにがあってもいいわけはしないでくれ。

さいごはいつもタフなやつがかつ。がんばってください。

   たつみまさたか。」

 

その辰巳って人がどんな人か知らないが何でか自分を気にしてくれてたらしい。

頑張れと言われても、頑張りたいことがないんだけど。

 

そう思って顔を上げると、景色は一変していた。

辺りには紫色の霧が立ち込め、

空にはいつの間にか新月が登り、

星が瞬いている。

 

ついさっき昼飯を食べ終えたばかりのはずなのだが気づかないうちにこんなに早く夜が来るものか?

兎に角家に入ろう。壁伝いに行けば玄関のはずだ。

手で壁に触れると何かカサカサした物に触れた。

近づいてよく見ると壁一面に枯れた植物の蔦が貼りついている。

まるで何年も手入れしていないかのようだ。

 

まさかタイムトラベルでもしたのか?

軽い目眩を覚えながらも玄関を目指して進んだ。

幸か不幸か辿り着いた緑色に錆びついた門の先にあったのは見慣れた我が家ではなく古びた今にも崩れそうな教会だった。

 

庭は土に栄養や水がたっぷり入っているのか雑草が伸び放題になっていて、

空にはな十字架が不気味に屹立している。

さらに驚くべきことに昔道になっていたであろう辺りに生えてる雑草に真新しい踏みしめられた跡があり、ドアが半開きになっている。

 

まさかここに入っていった人がいるのか?

いやそんなまさか。

こんなアナベル人形でも封印されてそうな場所に好き好んで入るやつなんてそうそういないだろう。

そう思いつつも怖いもの見たさと純粋な興味が理性を上回った。

足跡をなぞるように進み、ドアの隙間に体を滑り込ませる。

意外にも中は外ほど荒れてはいなかった。

 

とはいえ長椅子は散乱し、足跡がわかるぐらいに埃が積もってあらゆる角に家主を失った蜘蛛の巣が貼られていたが。

イエスキリスト像の虚であろう瞳が、死相が布で覆われているお陰で不気味と言うほどではなかったが。

足跡は真っ直ぐ地下へ続く階段に向かっている。

どうやら見かけより広いらしい。

 

足音を響かせないように降りていくと重そうな気の扉が見えてきた。

これも少し開いている。中にいるのようだ。

思い切ってドアを開けるとそこは全面鏡張りの狂った部屋だった。

天井、床、左右の壁、奥、あらゆる鏡にケイタが写りバラバラの方向を向いている。

平衡感覚が麻痺してるみたいで気持ち悪い。

思わずしゃがみ込むと白いパーカーの女の子が目に入った。

虚像じゃない。ちゃんと立体感がある。

 

「大丈夫?立てる?」

 

「あ、はい。」

 

文字道理手を貸して少女を立たせて手前の部屋に移動する。

 

「ありがとうございます、、、ってケイタ?」

 

「?、、、一夏!」

 

驚いたも驚いた。自分の助け起こした見ないうちに随分と綺麗になった一夏だった。

 

「超久しぶりだね。元気そうじゃん。」

 

「うん!まさかお使いに行ってこんなところに迷い込んだ先でってのはムードなさすぎだけど。」

 

どうやら向こうも自分と同じように迷い込んだクチらしい。

 

「じゃあ今度はちゃんとムードがあるようなとこか、、一夏、風都の花火大会って毎年8月の20日だよね?」

 

「え?う、うん。」

 

「なら、今年のその日に風都タワーの下で合わない?

よく知らないけどなんか縁起がいいらしいじゃん。」

 

「いやいやケイタ、本気?」

 

「え?もしかして嫌?」

 

「嫌じゃないけどさ!」

 

「じゃあいいじゃん。」

 

「それは、でも、うーむ。

、、ま、そんな迷信真に受けてもしょうがないか。

いいよ。また会おう。」

 

「ん。じゃあ、これ持ってて。」

 

デッキから一枚、SEELと書かれたカードを引き抜く。

 

「なにこのカード?」

 

「お守り、よく効くよ。」

 

なんなのかもわからない。

しかも自分のものでもない癖によく渡したな。

と今になって思うがなんでかこれが正解な気がした。

 

「わかった、約束だよ?」

 

「おう。」

 

そう言って小指を絡めあった瞬間、まるで映画のシーンが切り替わるようにケイタは倉庫に戻っていた。

何が何だかよくわからないが手元に残ったデッキだけはあれが真実だったと証明している。

ケイタはデッキをポケットにねじ込むと何事もなかったように倉庫整理を再開した。

 

 

 

3

「俺は、俺たちはこんなとこ。蓮も教会に?」

 

「ビーストから逃げようとしてな。

そこで何故かデッキの使い方が頭に流れ込んできて変身して戦ったのが初めてだ。」

 

結局あの教会がなんだったのかはわからないけどな。

そう付け足すとレンは黙り込んだ。

さっきからの受け答えから察するにおそらく蓮も大したことは知らないのだろう。

 

『レン様。そろそろ到着ですが、千草様より連絡です。

一夏様と心愛様のみ下ろして空港まで迎えに行って欲しいと。』

 

「ちっ!となると迎えにあいつがか?」

 

『、、、はい。』

 

蓮の顔がみるみるインサイザーのことを話してた時ぐらいに険しくなる。

 

「織斑、保登。聞いてたな?

受付の所に麻野瞳子っていう笹団子頭のバカ女が間抜け面を晒してるはずだからそいつに案内を頼め。」

 

やはり。と、ケイタは思った。口ではあんなことを言いつつもレンは多分真面目な人間だ。

俺もアンダーアンカーのことを説明された時に話したがあそこまで不必要な事に頭を使える人間はそういない。

 

「麻野さんが?」

 

『そんなバカな、、。』

 

智乃とゼロワンが驚愕する。

 

「その麻野さんってそんなに凄い人なの?」

 

「はい、まさか、あの麻野さんがフォース無しで、、クビにならない程度の仕事をできていたなんて、、。」

 

『明日はきっとインターネットが壊れるな。』

 

「そんな教科書に載るような事が起こるレベル!?」

 

「どんな人なの瞳子さん、、、。」

 

 

 

4

2人を下ろしたケイタ達はそのまま休憩抜きで空港に向かった。

 

「迎えに行く人って?」

 

「アンカーの修理屋だ。」

 

国際線ターミナルの駐車場に車を停め到着ロビーに向かう。

 

「この後合流して昼食とってから本部に戻る。

その後すぐに初仕事だ。」

 

「初仕事?」

 

「というとやはり?」

 

「あぁ。畜生以下のクズサイバー犯罪者を豚箱にぶち込むのさ。」

 

蓮はなんて事ないように言うが犯罪者とはいえ人の人生を壊すのは気がひけるし、正直なところ出来るならやりたくない。

 

「何しけたツラ晒してるんだ。人間何事も第一印象だぞ?

せっかく向こうはアンダーアンカーにしちゃ取っつきやすい奴らなんだから。」

 

蓮が指差す先を見るとピンクと紫の中間みたいな感じの明るい髪の大きなメガネの少女とレンと同じくらいの背の黒髪、緑目の少年がこちらに手を振っている。

 

「あの人たちが修理屋さんですか?」

 

「あぁ。藤丸!キリエライト!」

 

「お久しぶりですアキヤマ先輩。」

 

「蓮久しぶり。」

 

男の方が藤丸立香(ふじまるりつか)で、女の方がマシュ・キリエライト。

2人ともアンカーUKのIS開発部の優秀なメカニックらしい。

今回はケイタと蓮のISの面倒を見るために来日したとのことだ。

 

「よろしくお願いします。マシュ・キリエライトです。」

 

「俺は藤丸立香。よろしく。」

 

簡単に挨拶と握手を終えるとそのままレンのおすすめだというレストランに向かった。

小さなビルの一階にあって、大人な感じの入りづらそうな外観だったが中に入ると初老の陽気なシェフが迎えてくれた。

 

外側があんなだからびっくりしただろ?

先に逝っちまった女房の趣味なんだ。いいだろう?

と少し寂しそうに笑った。

席に着くとレンが5人分の料理を頼むと

 

「改めて、網島、キリエライトと藤丸、俺たちのISとフォンブレイバーのメンテナンスの為に三年間IS学園に滞在してもらう予定のメカニックだ。」

 

「よろしくです。ん?てことはゼロワンの修理も?」

 

なんらかのペナルティをくらうと思っていただけに意外だ。

 

「いえ、修理ではなくボディの交換です。

アキヤマ先輩にデータを送ってもらいましたがあそこまでアクチュエータに無理をさせたらそのうちデバイスモードのままでも勝手に手足がちぎれてしまいます。

ですから、いっそのことラムダ以外全て交換して使える部品だけ後で応急処置用に取っておくしかありません。」

 

「いや、そうじゃなくて多分ケイタさんはゼロワンにペナルティがないのに驚いているんだと思います。」

 

「あぁそっち?多分千草さんのことだから、フォンブレイバーゼロワン。

あなたには度重なる命令無視と単独行動、破壊活動から完全に信用を失いました。

よって金輪際あなたには織斑一夏の護衛以外の命令を与えることはありません。とか言うんじゃない?」 

 

出来立ての牛肉の赤ワイン煮込みを頬張りながら言う藤丸。

 

なるほど。実質無罪放免で一夏のそばに居ていいと言ってるようなものだ。

しかし問題はアンダーアンカー恒例のアレだ。

あの通過儀礼、演技とはいえ何十人もの人間から一斉に敵意を向けられるのは嫌な気分しかしない。

 

もし瞳子さん辺りがそのタイミングでゼロワンとお別れみたいな空気にしたら、、いや、辞めよう。

もし想像通りの事になっていたとしても俺の責任じゃない。

あの蓮曰く笹団子頭のバカ女は定期的に死なない程度に地獄の釜を覗かせた方がいい。

 

そう思ってレンおすすめのムール貝の白ワイン蒸しを口に運ぶ。

大蒜とワインの食欲を鉢割り増しにする芳醇な香りを楽しみながら噛みしめる。

程よく熱いムール貝がオリーブオイルで滑って隠し味のベーコンの旨味と共に解けるように喉奥に消えた。

 

 

 

5

仮面契約者王蛇(カメンライダーストライク)!」

 

ベンタラのアメリカ首都のど真ん中。稲妻を背後にそびえ立つ不気味な工場のような場所。

その奥の奥の奥、最重要司令室に黒いカブトガニの様な怪人が1人のライダーを呼び寄せた。

 

「将軍。私はここに、どの様な御用で?」

 

「インサイザーとトルク、それからトラストが日本に向かった。

だが、あのボンボンにペテン師に無駄に律儀なバイク馬鹿だけに任せるのはいささか心許なくてね。」

 

あとは言わなくてもわかるな?と言う様にコブラを模した紫の鎧のライダー、ストライクの黒い繋がった目を覗き込む。

 

「仰せのままに。」

 

「では遠慮なく。仮面契約者舞鶴(仮面ライダーセイレーン )とウイングナイトをベントしろ!」

 

「はっ!しかし、ドラゴンナイトはよろしいのですか?」

 

「なに、態々人の獲物を命令でとって来させる様な無粋な真似はしないさ。君の子供が独り立ちするまでは生かしておくつもりなんだろう?」

 

「ふ、ふふ。ふは、ふははは。はははははは!

ありがたき幸せですゼイビアックス将軍!

やはりあなたは素晴らしいお方だ!」

 

「やめ給え。褒めたって誰もいなくなった後の地球以外なにも出ないぞ?」

 

「違いありませんね!

あはは、ははははははははは!」

 

2人の悪鬼の笑いがこだまする。

事件はまだ再び動き出してすらいなかった。




ケイタ「という訳で時間も押してるのでサクサク行きましょう!」
一夏「次回、infinite DRAGONKNIGHT!」
心愛「カラフルボマー?」
蓮「俺に言わせりゃただの爆弾魔だ。」
ケイタ「予告爆破まで後何分だ!?」
サード『どう考えても時間が!』
セブン『グラインダー着身完了!』
一夏「あなたが、間明、、。」
間明「フォンブレイバーと仮面契約者が将来、人類を脅かす。ビーストやISなんか目じゃないさ。きっとね。」
ケイタ「次回、how to use taboo Card その3!」
ゼロワン『これが、明日の現実(リアル)!』


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how to use taboo Card その3

蓮「仮面ライダードラゴンナイトにして2人目の男性IS操縦者網島ケイタはサイバー犯罪と戦う歩くケータイセブンのバディとなり電脳世界の巨悪と戦う運命が待っていた。」

セブン『次回こそIS学園が舞台になるから気長に待っていてくれ。』

蓮「さて、今回だが、ついにサイバー犯罪者と対峙する網島、織斑の2人!」

セブン『そしてついに始まってしまった物語り。
果たして網島研修生は生き残れるのか?』

ケイタ「大変長らくお待たせしました。さてさてどうなる?」


1

「そういえば前にケータイが廃盤になった合体するアレがあるって言ってだけどなんかあったの?」

 

心ゆくまでフランス料理を堪能した一行は再びアンカー本部へ向かっていた。

 

「2年前、俺の14歳の誕生日の時、俺が始めて日本に来て暫くしてからだなファイブゼロワン事件て呼ばれてる事件さ。」

 

 

 

2

熱々のタコがソース、青海苔、とろとろの実と口の中で絡み合う。

やはり夜食はいついかなる時でもたこ焼きに限る。

間明さんの毎食カップ麺なんかより一万倍いいと自負してる。

蓮は満足げに頷くと二個目のたこ焼きを口に運んだ。

 

「え?、、蓮さん給湯室を燃やさずにたこ焼き作れたんですか?」

 

「お前は俺を放火魔か何かだと思ってるのか?」

 

レンは智乃のことが嫌いだった。

どんな時でも興味ないみたいな無表情を貼り付けた面が兎に角気に入らなかった。

 

近所の孤児院の虐待されてたガキの方がまだ感情がわかる。

滝本さんや笹団子頭(あさの)は大分分かるようになって来たらしいが俺にはまるで分からない。

 

幸いレンはたこ焼きはどんな時でも美味いと信じて疑わない人間だったので割とすぐに機嫌が良くなった。

 

「てっきり笹団子にべったりかと思ってたがそうでもないんだな。」

 

「はい。いま瞳子さんは会議で、フォースはメンテナンス中なので。」

 

そこでぷっつりと会話が途切れる。無理もない。

レンは智乃に(智乃に限らず基本的に)自分から話しかけようとしなかったし智乃も一応快く思われていない自覚はあったから会話しようと思ってもなにから切り出したらいいのかわからないのだ。

ただ黙々と蓮がたこ焼きを食べ続けてどれ程たっただろうか?

サードが唐突に口を開いた。

 

『レン様、智乃様、緊急事態です。』

 

「なにごとだ?」

 

『わかりませんが、一刻争う自体のようでセカンドから兎に角メディカルを着身して来い。と。』

 

「チッ!あのセカンドが、千草さんのフォンブレイバーが言うからには相当だな。千草さんと麻野は?」

 

「2人とも会議で、セカンドとフォースは定期メンテです!」

 

「このタイミングで、、敵は内部か!サード、メディック着身!」

 

『了解です。メディック着身。』

 

レンのポケットから出てきた卵型ケータイのブーストフォンメディックを着身させてセカンドからの連絡にあった場所に向かう。

 

「セカンド!どこだ!」

 

扉を開いた先にいたのは、いつ起動したのかアナライザーを着身したファイブとそれに対峙するセカンドとフォースの姿だった。

 

『!アキヤマ、、え?チノ!きちゃダメ!』

 

一瞬、ほんの一瞬フォースが気をそらした瞬間だった。

素早く懐に入り込んだファイブがフォースに直接ウイルスを打ち込んだ。

膝から崩れ落ちるフォース。

ファイブはそれをセカンドに投げつけると今度はサードにもウイルスを打ち込む。

すぐさまメディックで中和するがそれでも時間がかかる。

そうしてるうちに蓮達に飛びかかるファイブ。

 

『《不味い、セカンドはフォースへの処置で動けない!》お二人ともお逃げください!』

 

しかしレンは真っ直ぐに飛びかかってくるファイブを見据え智乃を庇うように前に一歩踏み込む。

 

『アキヤマ!チノ!』 

 

『レン様!チノ様!』

 

そして黒いロングコートの下、左脇のホルスターから銀色の銃、スタームルガーセキリュティシックスを引き抜き六発全弾発砲。

うち4発がヒットしファイブの四肢と着身していたアナライザーが吹っ飛ばされ達磨状態になってファイブが地面に転がった。

 

「海兵隊入隊訓練主席卒業を舐めるな。」

 

『訓練プログラムにリボルバーの早打ちなんてあったの?』

 

「気にするな。」

 

弾を装填し直し予断なく構えるレン。

 

『ふぅ、、。レン様、ウイルスの中和が完了しました。

これからフォースの処置へ移ります。』

 

『無駄よ。』

 

「どういう、ことですか?」

 

『ウイルスが特別強い訳じゃないけど性質が厄介過ぎるわ。

もし今フォースがクラックシークエンスでこの基地に接続しようものなら5分とかからずこの基地はウイルスの温床になってしまうわ。』

 

「つまりフォースが拡散型ウイルスをばら撒く前に凍結させる。

ってわけか。」

 

『理解が早くて助かるわ。』

 

「待ってください!、、フォースは、本当にいいんですか?」

 

『チノ、長いお別れになっちゃうんだから最後ぐらい敬語やめてよ。

硬すぎる女の子はモテないよ?

アキヤマのたこ焼きじゃないんだから。』

 

「ッ!、、、バイバイフォース。また、今度。」

 

『うん。またね。セカンド、サード、お願い。』

 

『了解です。私がウイルスを抑えますので』 

 

『わかったわ、これより凍結保存を行う。

アキヤマ、許可を。』

 

 

 

 

3

「そんなことが、、、。」

 

驚きだ。ゼロワンにサードにセブンが居るからにはその間の数字のフォンブレイバーも居るとは思っていたがまさかそんなことになって居るとは。

 

「ごめんね智乃ちゃん。辛いこと思い出させちゃって。」

 

「平気です。フォースとは、いつかは会えるとわかってますので。」

 

「それに、本題はここからだ。」

 

 

 

4

なんとかファイブを退けセカンド、サードを伴った2人はオペレーションルームに向かっていた。

もし敵がまだ残って籠城しているならアンダーアンカーの心臓たるそこしかありえない。

 

「中の様子は分かるか?」

 

『少なくともオペレーター以外はいないはずの時間帯ですが。』

 

「ならば、オペレーター以外の奴が居れば問答無用で撃ち殺せば済む話だな。」

 

『結論を急ぎすぎよ。』

 

「罪のない人を撃たないでくださいよ?」

 

サードにロックを解除させピストルを構えながら突入する。

 

「両手を上げて跪け!」

 

シン。と、静まりった室内には落とされたオペレーターが倒れているだけだ。

 

「サード、セカンド、周囲を警戒!」

 

シーカーを着身したセカンドとメディックを着身させたままのサードを先に行かせ智乃を後ろに庇いながら予断なく構える。

 

(敵は外部からハックしてるだけか?

だとしてらフォンブレイバーとバディが分断されてるこの機会に攻めれる説明がつかない。

それか、裏切り者が裏から手引きしてただけ?

何にせよ早く敵を見つけないと。)

 

そのまま奥に進もうとしたその時

 

「お探しかな?秋山くん。」

 

振り向くより先にレンの鳩尾に蹴りが入った。

吹っ飛んで壁に叩きつけられる。

 

「ま、間明さん!?」

 

智乃が驚愕の声を上げる。

そう。犯人は明日からファイブの稼働に合わせてバディになるはずだった間明蔵人(まぎらくらんど)だったのだ。

 

「き、貴様!裏切ったのか!?」

 

「初めから目的があって近づいて信用させて、不要になったら切り捨てることを裏切ると言うならそうなるね。」

 

悪びれる様子も一切なく蓮のポケットから落ちたファイブを回収する。

 

「あ、あなたがファイブを暴走させてフォースを!」

 

「違うよ。香風ちゃん。僕は彼に提案しただけさ。」

 

『彼?』

 

それがセカンドの最期の言葉だった。

チュン!セカンドの画面のちょうど真ん中にあるラムダチップが一寸の狂いもなく撃ち抜かれる。

ガシャ。糸の切れた人形のように硬直したセカンドのボディがうつ伏せに倒れた。

 

『セカンド!?ゼロワン!一体どういうつもりですか?』

 

下手人はデモリッションを着身したゼロワンだった。

 

「サード下がれ!」 

 

レンが叫ぶ。反応したサードは素早くバックステップをとり繰り出されたゼロワンのチェーンソー攻撃を紙一重で避けた。

追撃しようとするゼロワン。

 

「ゼロワン!今日はその辺で。

サードを仕留め損ねたのは残念だけど、その代わり僕は秋山君がサードのことを香風ちゃんより先に考えるほどに大好きだって知ることが出来た。

充分すぎる収穫だよ。」

 

『ふん。愚かしい。サードお前の未来を予見してやろう。

破滅だ。お前のバディはあいつに、田中に似ている。

その妄執の果てに貴様のバディは貴様を巻き込んで破滅するだろうさ。』

 

ゼロワンを腕に乗せると廊下に飛び出す間明。

智乃は慌ててそのあとを追ったがまるで煙のように間明蔵人は消えてしまった。

 

 

 

 

5

「という訳ですケイタさん。

このことはくれぐれも一夏さんには黙っていてくださいね?」

 

「秘密を知ったからには一連托生だ。」

 

遂に車はアンカー社の駐車場に停まった。

そこからエントランスを通っていくつもエレベーターを降りて計3回目ぐらいになるアンダーアンカー本部へて足を踏み入れた。

 

 

 

6

薄暗いトレーニングルームに奇妙なものが置かれている。

右端には一夏が足をかけており、反対側にはゼロワンが立っている。

 

『アナライザー、着身。』

 

アナライザーが板に登り、パーツごとに分かれると右腕をあげる。

 

ダン!一夏が思い切り板を踏みつけシーソーの原理で飛び上がったゼロワンは空中で背中、画面、両足のパーツを装着し、着地してから落ちてきた両腕のパーツを装着。

ピストルの様にクルクルと回しながら正しい向きに変え、

 

『アナライザー、着身完了!』

 

「いい感じだね。」

 

『流石はアンカーの掛かり付け医だ、仕事が違う。』 

 

感触を確かめる様に手を開いたり閉じたりしながら一夏の元に戻るゼロワン。

 

「絶好調でーす!」

 

一夏が手を振ったカメラの先、オペレーションルームの一角にケイタたちとフォンブレイバーセカンドのバディ千草と一夏がお別れが大の苦手ですぐ泣いちゃう事を知らずにゼロワンとのお別れドッキリを仕掛けてオペレーターたちから大顰蹙を買って一夏に蝶野も顔負けの制裁のビンタを食らって頰に季節外れの紅葉を貼り付けている元、フォンブレイバーフォースのバディ麻野瞳子が待機していた。

 

「なんの問題もなさそうですね。」

 

「バディは好調。気合いも充分。

生身の実力は、そこの笹団子、もとい紅葉面女を見ての通り。

優秀な人材です。今回の任務に同行して良いかと。」

 

「そう言うと思って彼女には2人より先に全て説明しています。」

 

あとはあなた達だけです。

そう言ってパソコンの画面を切り替える。

 

「まずはこの映像を見てください。」 

 

パソコンに派手な音を立てて色取り取りの花火や炎を上げながら崩壊する橋の映像が再生される。

 

「テロかなんかですか?」 

 

「でも凄く綺麗だね。」

 

「随分と自己顕示欲の強い奴だな。」

 

「この橋が爆破される二日前。

ある個人サイトにこの橋の部分部分を撮影した画像が公開されています。」

 

「それから二日間のカウントダウンもね。」

 

「予告爆破か。」

 

「立派なテロじゃないですか。」

 

「しかもその後警察や新聞社に『俺のメッセージを受け取ってくれたかな?次もヨロシク。』なんて太々しい絵葉書が送られてきたまた二日後にこの橋からそんな離れてない公園の遊具が粉々に爆破されたんだよ。

ヒント少なくて目撃者は少なかったけど動画サイトに上がった動画には派手な色の爆発で吹っ飛ばされる遊具が映ってた。」

 

そう言って画面を遊具爆破の動画に切り替える

 

「ちょっと待ってください。

こんなのを街のど真ん中で爆破させたんですか?」

 

「えぇ。このまま今はまだ死者や怪我人こそ出ていませんが、

このまま行けばカラフルボマーはさらにエスカレートしていき、

殺人に発展する恐れがあります。」

 

「カラフルボマー?」

 

「メッセージだなんだとカッコ付けやがって。

俺に言わせりゃただの爆弾魔だ。」

 

「その爆弾魔が、また予告を?」

 

「はい。明後日の夜10時までに場所を特定しなければ恐らくビル一つが消えます。」

 

そう言って表示したのがどこかのエレベーターの中だ。

 

「どんどんヒントが難しくなってますね。」

 

「そこでアキヤマエージェント、網島、織斑両研修生には画像の発信源を特定しそこから爆破された橋と公開の位置関係を調べて次のターゲットの目星をつけてもらいます。」

 

「よし、おい紅葉面女。

俺のカワサキは用意してあるな?」

 

「洗車しといたよ。」

 

投げられたキーを受け取ってサードをポケットに入れ出て行く蓮。

 

「私は?」

 

「お前は香風と留守番だ。

キリエライトにオペレートの仕方でも習ってろ。」

 

 

 

7

「ふーむ。やっぱ画面越しより実際に見た方が何倍もわかりやすいな。」

 

keep outの黄色いテープを越えた先は陥没して消し炭がたまっていた。

周囲の木にはプラスチックの、遊具の破片が刺さっている。

 

『本人はあくまで色取り取りの炎と花火に、奴の言い方を借りればメッセージに拘ってる。この破片なんかは意図したものじゃないだろうな。』

 

「人に当たったら無事じゃ済まないってこと?」

 

「当たり前だ。爆弾ってのはどちらかと言えば上に乗せてたものを吹っ飛ばして打つけることの方が相手に有効なんだ。

それに次のターゲットはエレベーターの中、つまりビルの中だ。

高さが高さならドミノ倒しみたいになることだってある。

だがこの犯人の言動から察するに分別のないガキがイタズラのつもりで花火で火傷させるのとなんも変わらん。」

 

心理的には、だからさっさと粛清する。

そう付け足すと入り口に停めていたカワサキ・ニンジャZX-14に跨ると第1の爆破現場の橋の方に向かっていった。

 

 

 

8

「ふふふ。次の選ばれし者はいったい誰かなぁ?」

 

「随分と楽しそうだね。

君にとってメッセージとは余程大事なことと見るよ。」

 

ずぞぞ。薄暗い倉庫の中で唯一蛍光灯で照らされた一角。

間明のカップ麺を啜る音だけが響いていた。

 

「当然さ。メッセージを受け取り、真に理解できる奴だけが行動を起こす。

俺はそんな行動した奴なのさ。」 

 

「なるほど、なら僕もどちらかと言えば君側なのかな?」

 

バン!間明のかつて滝本を撃ち抜いたのと同じ拳銃がカラフルボマーの後頭部に鉛玉を食らわせた。

ほぼ即死だろう。

撒き散らされた脳漿でボマーがさっきまで見ていた画面が全く見えない。

 

「君は一足早く伊達さんたちと一緒に観戦席から見ていてくれ給え。」

 

踵を返すと間明は何でもないようにカップ麺を啜り続けた。

 

9

アンカーUSAのIS最終調整室にて能見荘(のうみそう)副開発主任はガチガチに緊張していた。

握りしめたハンカチはしわくちゃになり身体中から出る汗は止まる気配がない。

さらには先刻から謎の震えでコーヒーすらまともに飲めない始末だ。

 

(落ち着け!何緊張してるんだよ私!

今日の私の仕事は男性IS操縦者の専用機の最終調整の様子を視察しに来る城戸IS開発部長をご案内することだ!

今日の仕事振り次第では主任と私の進退だって決まるんだ!

だから落ち着け!落ち着け私!」

 

それから1秒が無限に感じられるような時間の果て。

来た。茶色い髪の毛の三十代になったばかりの若きリーダーが。

 

「本日はようこそおいで下さいました。

私は本日ご案内を務めさせていただきます副主任の能見と申します。」

 

掴みはバッチリだった。説明も恙無く進んでいき極めて好調。

能見は確かな手応えを感じた。

 

「網島ケイタくんの打鉄赤龍、秋山蓮くんの打鉄黒翔。

急な仕事でよくここまでの完成度で仕上げてくれたよ。

ただ、贅沢を言えば彼らが木組みの街に着くまでに完成させられなったかな?」

 

「申しひらきもありません。強いて理由を上げるなら、

エース整備員の須藤が結婚式で休まなければならかったぐらいで。」

 

「なるほど。なら仕方ないね。

それにISを姪の護衛に使うわけにもいかないしね。」

 

「えぇ。おっしゃる通り、、、え?」

 

それはおかしい。

IS学園は扱うものが扱うものなだけに最高レベルの警備体制が整えられている。

いくら世界屈指のIS企業開発部長の姪とはいえ学園の警備だけで充分なはずだが、、まさか寮に入れてないのか?

だとしたら男性操縦者に護衛をさせたいのも分かるが、

だとしてもそんなに危険は無いはず、、待てよ、扱うものがもの?

 

「いやちょっと待って下さい。

もしかして貴方、姪御さん、、心愛さんと言いましたか?アンダーアンカーに入れたんですか!?

アンカー内からも汚れ掃除屋とか揶揄されることもあるような場所に!?」

 

「君は聡いね能見くん。

そのレベルで察せるのは織斑のお嬢さんぐらいなものだよ。」

 

なんて事もないように告げる城戸開発部長。

 

「僕は水戸さんと僕が作ったフォンブレイバー達と彼らが選んだバディ達を信じてるよ。

きっと彼らなら心愛ちゃんに仲間がそばにいる有難さやこの世の汚い部分を知る上での支えになってくれるとね。」

 

 

 

10

「本当にこんな汚い倉庫にいるのカラフルボマー?」

 

半信半疑といった感じで中に入るケイタ、続く一夏、蓮。

 

『フォンブレイバー三機がかりでネットの痕跡を辿ったんだ。

アキヤマが推測したエリアの圏内だしほぼ間違いない。』

 

「兎に角、こんな狭い倉庫で火遊びをされちゃたまらない。

一気に制圧するぞ。」

 

セキリュティシックスを構える蓮。

 

『一夏、お前も網島ケイタの肩にしがみ付いてないで構えろ。』

 

「そんな事言ったって私これくらいの広さの所苦手なんだもん、、。」

 

『おや、意外ですね?一夏様に弱点がお有りとは。』

 

「そーゆう所はケータイも人間も変わんないよ。

例えば俺のケータイはよくなんもない所で転ぶし。」

 

『な!バレてないと思ってたのに!』

 

「おい静かにしろ!ピクニックなら他所でやれ!」

 

そろりそろりと縦列になって進んで行くと、いた。

寝落ちでもしてるのか机に突っ伏している。

 

「合図をしたら加勢しろ。」

 

ばっ!飛び出し銃口を後頭部に押し当てる。

しかしカラフルボマーと思しき男はピクリともしない。

ズル。テーブルから不自然に倒れる。

目は見開かれ額には穴が空いている。間違いなくほぼ即死だ。

背後から一夏がえずく声が聞こえてくる。

 

「マジで、死んでんのあれ?」

 

「あまり見るなよ?あれだ。

R-18Gってやつだ。」

 

ピストルをしまいUターンして戻る蓮。

 

「見ての通りあれはカラフルボマーの影武者か、

利用されるだけされて捨てられたカラフルボマーだった肉塊だ。

多分後者だな。急ぐぞ敵は思ったより手強い。」

 

「、、、蓮。あの人に触っちゃダメか?」

 

「駄目だ。サツにバレるとめんどくさい。

やりたきゃ向こう向いて十字でも切っとけ。」 

 

今にも戻しそうな一夏を落ち着かせると死体の方を向いて両手を合わせるとナムタイシヘンジョウコンゴウと短く唱えた。

 

 

 

11

「嘘、、、ここ日本だよね?」

 

電話越しの心愛の声は震えていた。

 

「日本だよ。でも起きちゃったんだよ。」

 

「何にせよ厄介なヤマには違いない。

主犯の意図もまるで読めん。」

 

『幸い奴のパソコンにあった写真データから爆弾の場所は割り出せましたが、

邪魔者がいない中で爆弾を除去しようと思うと時間ギリギリです。』

 

「しかも敵は拳銃持って待ち伏せしてるかもしれないんでしょ?

それに下手に追い詰めたりしたらヤケクソで爆弾爆破させるんじゃない?」

 

『そこは安心して良さそうだぞ一夏。

カラフルボマーの残した図面を信じるなら遠隔爆破は不可能だ。』

 

「つまり時間ピッタリに絶対爆発するって事じゃん。」

 

『まあな。しかし爆発させないに越したことはないが別に絶対に爆発を阻止しなければないという訳ではないぞ?』

 

「というと?」

 

『この映像を見てくれ。』

 

セブンの画面にゴミ箱のようなものにダイナマイトをいれて爆破させる動画が再生される。

 

『あえて爆破させて処理するのも手だ。』

 

「臭いものには蓋をしろって?」

 

『ケイタ様。お言葉ですが使い方が間違ってます。』

 

「どちらにせよ工具やデモリッションは不可欠だ。一回戻るぞ。」

 

 

 

12

バイクを本部の駐車場に停め、レンの車に乗り換えた一行は予告されているビルに一番近いコインパーキングに急行した。

 

「警備以外はもう出払ってる感じ?」

 

「アンカーの手が回ってるテナントが多くて楽だ。」

 

一応黒いバッグで工具を隠しながらエントランスに入っていく3人。

 

そしてそれを鏡ごしに見つめる影が一つ。間明蔵人だ。

 

「ふん。網島くんは兎も角、秋山くんは余計だね。頼むよ。」

 

ぽん。暗がりでよく見えないが細身の男の肩を叩く。

その男は上着からガゼルの骸骨のようなライダーズクレストの入ったデッキを取り出し、カードを引き抜く。

 

キィーン。耳鳴りのような音が聞こえると背後の鏡からギガゼール、マガゼール、オメガゼールと三体の羚羊型ビーストが召喚された。

 

「お手並み拝見やで、ドラゴンナイトにウイングナイト!行ってらっしゃい!」

 

キュイン!ちょうど3人を挟む用に飛び出すマガゼールとオメガゼール。

 

「アドベントビースト!」

 

「ちっ!しかも群れるタイプか!サード!織斑を援護しろ!」

 

「よし、お前も一夏を頼んだ!」

 

『何を言う網島研修生!素人のお前に私抜きで何が!』

 

「素人の俺が一夏についてるよりサードとセブンがついてた方が安心できる!

それに、餅は餅屋の適材適所。

お前一人でビーストをどうこう出来るそれはないだろ?」

 

『、、、わかった。くれぐれも不覚をとるなよケイタ?』

 

「一夏、やれそう?」

 

「死なない程度にやるだけやるよ。

私とこの凸凹トリオに期待してくれてる人がいるし。」

 

「なら、やる事は一つだ。KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身し、マガゼールの剣とバイザーを鍔迫り合いながら鏡の向こうに飛び込んで行く。

 

「しゃっ!俺も行くぜ、カメンライダー!」

 

シュッと指先まで真っ直ぐ伸ばした右腕を左斜め上に向けて突き出す構えを取り、出現したVバックルにデッキをセット。

ドラゴンナイトに変身するとオメガゼールにタックルを仕掛けてながらもみ合う様にベンタラに突入していった。

飛び出た先は立体駐車場の一角だった。

体制を立て直したオメガゼールは螺旋状の角がついた二叉槍を構えてくる。

 

<SWORD VENT>

 

ドラゴンナイトもドラグセイバーを装備し一撃、二撃と斬り結ぶ。

 

(こいつ、パワーもスピードもリーチもある!)

 

一応は羚羊型のリーダー格とだけあってディスパイダーリボーンとは別ベクトルで強敵と言える。

なら工夫するだけだ。意表をついて思い切り右に飛ぶ。

流石に予想外だったのか一瞬動きが止まった。

その隙に着地した車の上で体制を整えて突き出される槍を弾く、跳んで避ける、弾く、弾く!

 

そして槍を上手く絡めてるとドラグセイバーごと遥か後方に弾き飛ばし、追いかけるフリをしながら車の後方に回り思い切り蹴る!

狙い通り車はオメガゼールを引きながら前方の駐車していた車に激突した。

 

「ワンパンで決めてやるぜ!」

 

<STRIKE VENT>

 

ドラグレッターの頭部を模した手甲、ドラグクローを召喚し構える。

 

(放て!)

 

頭に流れ込む声に急かされクローから炎を放つ!

車に直撃した炎球は燃料に引火しオメガゼールを巻き込んで大爆発を起こした。

 

「よし、って安心もしてらんないんだ!

予告爆破まで後何分だ!?」

 

 

 

13

飛び出たのはおしゃれな服屋が立ち並ぶ大通りだ。

隠れるものが少ない一対一の勝負。

 

先に仕掛けてきたのはマガゼールだった。

近くにあった植木鉢を投げつけ、避けた所を切り込んできた。

吹っ飛ぶウイングナイト更にマガゼールはガスランプを模した電灯をへし折り、投げてよこす。

 

ウイングナイトは避ける事さえしなかった。

柱に貫かれ土手っ腹に風穴を開けられ力無く跪く。

 

「ガス抜きしろってか?」

 

鈍い痛みがマガゼールの背中を襲った。

振り返るとそこにはさっき確かに倒したはずのウイングナイトの姿があった。

それも一人ではない。

正面に一人居るかと思った時には背後と真上、

そして右側の死角から一人づつウイングナイトが攻撃してくる。

 

トリックベントシャドーイリュージョン。

実態の持った分身を最大4体作り出せるウイングナイトの十八番。

しかもどうゆう理屈か初めにカードを使って分身を呼び出したのを攻撃しても攻撃判定を受けた瞬間に他の分身だったはずの物が本体になるという敵からしたら極めて厄介な特性を持っている。

つまり一体を残して全てを倒し尽くす頃には疲弊しきり、

 

<FINAL VENT>

 

座して仕留められるしかないのだ。

ウイングナイトを包んだ黒い繭がマガゼールを砕き散らす。

 

「相変わらずイージーな奴らだ。

さて、ドラゴンナイトと織斑は?」

 

 

 

14

「ハズレ!次!」

 

まあまあ広いビルのせいでエレベーターは計4つある。

うち三つが違った。残る一つに爆弾が設置されてるはずだ。

 

「あーもー!早くきてよ、エレベーター!」

 

『落ち着いてください一夏様』

 

『一夏、爆弾ってのはデリケートなものだ。

下手な所を触るとドカン!ってこともあるぞ。』

 

『ゼロワン、それ余計焦らせてないか?』

 

「ごちゃごちゃうるさい!

ゼロワンとセブンはデモリッションとグラインダー用意して!」

 

ほぼ同時に頷いた二機は一夏のパーカーのポケットで待機する二機のブーストフォンにコードを送信する。

 

『デモリッション、着身!』

 

『グラインダー、着身!』

 

かつて一夏と始めて出会った時の様にパーツを着身!

 

『デモリッション、着身完了。』

 

『早!えっと、こっちが足で、、、これは、、背中?

これが盾!カモンベイビー!』

 

残っていた一番大きいクローパーツを着身!

 

『グラインダー着身完了!』

 

「開いた、、あった!」

 

爆弾を発見した一夏。

パーカーを脱いで暗視ゴーグルを装着し爆弾に向かっていく。

 

「サード。タイマーは後どの位?」

 

『予告通りなら後約10分後です。』

 

割と余裕がないのか有るのか分からないけど急がなきゃいけないのか分からないが、急いだ方がいいに決まっている。

サードのナビ通りに丁寧にカバーを外して配線を切っていく。

 

「よく映画とかで間違った配線切るとボン!

とかあるけどリアルでもあるの?」

 

『それを今聞きますか?

まぁ、無くはないと言っておきましょうか、、、。』

 

「ふーん。そうなったら私たちの棺桶随分と縦に長いね。」

 

『縁起でもないこと言わないでください!、ってあ。』

 

プチ。一夏が黄色い線を切った瞬間。

タイマーがおよそ三倍の速さで進み始めたのだ、

 

「まずいまずい!サードこれどれ切ったら止まる?」

 

『止まるわけねーだろ!こうなっちまったら!

仮に線切ってどうにかなるとしても今お前の焦りまくってガクガクの腕で切れるわけねぇだろ!』

 

「確かにそうだけど!」

 

『おい一夏!大丈夫か!?』

 

『とりあえず戻って来い!』

 

エレベーターの中に戻る一人と三機。

 

『ふむ。なら我らは今爆破寸前の爆弾の上に座ってる訳か。』

 

『なら、いっそもう爆発させていいんじゃないか?』

 

『テメェまでなに訳ワカンねぇことほざいてんだよ家出携帯。』

 

「さ、サード?ちょっと落ち着きなよ?」

 

普段どんなストレスのもとで仕事してるんだ?

その言葉をなんとか飲み込み爆破させるって?と二機に聞き返す。

 

『「臭いものには蓋をしろ。」だ。』

 

そう言うと一夏に作戦を伝えたい。

 

「かなり無茶だけど、無理じゃないね。

やろう。やらなきゃ確実に0だ!」

 

エレベーターを上昇させる途中で天井を外し、

セブン、ゼロワンを上げ2本のワイヤーの前で待機させる。

 

「サード。二人は?」

 

『まだビーストと戦っている様です。

しかし、我々だけでやってやれないことはありません。』

 

「よし、ならやろう!」

 

一夏の声を聞いた二機はせーのでそれぞれのワイヤーを切りにかかる。

時間との勝負だ。そして一夏の瞬発力と二機の脚力にかかっている。

ワイヤーがほぼ同時に切れる。

 

その瞬間に二機は出口に向かって走り出した。

チャンスは一瞬一回。

エレベーターが、足場が落ちきるまでに飛び出す!

一夏は無事に二機をキャッチし、倒れそうになるが壁にもたれながらなんとか耐えた。

直後にドーンッ!と重苦しい音が聞こえてきた。

それから何秒たっても建物は崩れない。

 

「せ、セーフゥ。」

 

安堵と脱力感でその場に座り込んだ。

 

『よくやったぞ一夏。』

 

『初めてにしては上出来だぞ?』

 

『後は事後処理班と警察の仕事です。

速やかに撤退しましょう。』

 

そうだね。そう言って三機を抱っこしながら立ち上がった時だった。

ぱちぱちぱち。右側から乾いた拍手が聞こえてきた。

 

「初任務完遂おめでとう。

やり切ったかいは無いだろうけど、僕の拍手だけで勘弁してくれないかな?」

 

『間明!?』

 

あの人が?思わず一夏は目の前の若い男をまじまじと見る。

髪や目は普遍的な黒。

年の頃は二十代後半、、かな?で着てるものも一定以上だろうが決して高過ぎるようには見えない。

髪型も横に広がってるぐらいでそんなに奇抜という感じじゃ無い。

総じてケイタほどでは無いが爽やか?ぐらいしか特徴の無い男だった。

イメージが合わない。本当にこの男が滝本を殺したのか?

 

『貴方が絡んでいたということはカラフルボマーは貴方が、、。』

 

「ご明察だよサード。たっぷり褒めてあげたいところだけど、今日は織斑ちゃんに用事があって来たんだ。」

 

「私に?」

 

ゆっくりと頷いて笑顔のまま囁くような声色のまま間明は続けた。

 

「フォンブレイバーと仮面契約者は将来、人類を脅かす。

ビーストやISなんか目じゃないさ。きっとね。」

 

一人と三機が驚愕で動けなるのを見越していたのだろう。

素早く用意していたペットボトルの水をフローリングの床にぶちまけ即席の鏡を作るとその中に消えていった。




ケイタ「てな感じ作者が台湾に研修旅行に行っていたせいでブランクも文章もむちゃくちゃ長くなった第3話でした。」

蓮「ようやくか。にしてもブランクと言えばだいぶ昔に言っていたお前や織斑のキャラソン は決まったのか?」

セブン『ケイタのが仮面ライダー龍騎の果てなき希望で、一夏のがいきものがかりのGOLDEN GIRLだそうだ。』

蓮「網島は兎も角、織斑は最早ISもケータイ捜査官7も関係ないな、、。」

(ED 果てなき希望 仮面ライダー龍騎より)

ケイタ「そんなことより次回、infinite DRAGON KNIGHT!」

三春「織斑三春です。」

セシリア「わたくしを知らない!?」

箒「久しぶりだな一夏。」

ケイタ「クラス代表?」

セシリア「決闘ですわ!」

蓮「ノープロだ!」

セブン『ならば特訓だな。』

インサイザー「100万ドルは頂きだぁ!」

トラスト「私は試練に勝つ!」

トルク「俺は、仮面ライダートルク。」

(`0言0́*)「ヴェアアアアアアアア!」

セブン『次回、Dragon against Dark wing』

ケイタ「そんじゃ次回も!」

蓮「KAMEN-RIDER!」


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Dragon against Dark wing

ケイタ「普通の高校生網島ケイタ。
彼には未来の良妻賢母にして元アルバイト中学生織斑一夏とチート人間秋山蓮。ミス不思議ちゃんこと保登心愛。
そして愉快な歩くケータイフォンブレイバー達とIS学園に通う未来が待っていた。」

智乃「こうして改めて見ると奇天烈も奇天烈な高校生活ですね。」

フォース『しかもそれが三年も続くと思うと一生分のびっくりを使っちゃうじゃない?』

ケイタ「しかも今んとこ間明や他のライダーはどう動くか分かんないし、休む暇なさそう。」

智乃「ま、まあまあ。元気出して下さい。今日は学園初日ですよ?」

フォース『そんな網島の(非)日常の始まりを祝す第4話!』

(OP True Blue Traveler)


1

鏡を潜るとそこは兎に角奇妙で不気味な工場の中の様な場所だった。

 

「何を驚いているんだい?

君のお姉さんだってこれくらい出来そうなものじゃないか?」

 

私、篠ノ之箒に語りかける謎の男、サイモンズの言う通りだった。

この技術自体に驚く事はあるかもしれないが、姉が作ったと言われたら全く驚かない自信がある。ああそうなんだと思うだけだ。

 

「そう落ち込むな、私はただ君の剣の腕を見込んで一つ、

仕事を頼みたいだけなのだ。」

 

「私の剣の腕?」

 

サイモンズは大仰な身振り手振りを交えて続けた。

 

「そうだとも。篠ノ之流を真に受け継いだ君にしか出来ない仕事だ。

本来なら織斑一夏に頼む筈だったが、まさか精々会って二、三週間の男に誑かされあそこまでひどくなるとは思っていなかった。」

 

「一夏を馬鹿にするな!」

 

「おっと、すまない。君を不快にさせるつもりは無かったんだ。

許してくれ、私は今の武道会の堕落を嘆いてるだけなのだ。」

 

彼らの様な奴らが居るからね。

そう言ってサイモンズは鏡に手をかざすと

 

「網島に秋山!?」

 

一夏を弱くした張本人達の姿が映った。

 

「そうだ。彼らはある面から見ればいい選手らしいんだが、私にはそうは思えない。

そこで私は、彼らが参加してるというバトルクラブ選手権という大会を利用する事にした。」

 

「バトルクラブ選手権?」

 

「あぁ。相手が戦闘不能になるか降参するまで戦う以外一切ルールなしレフェリーなし。

人生ってやつと同じだな。

当然彼らを始め、真っ当なやつなんて参加していない。今はね。」

 

なるほどつまりサイモンズは私にその大会に参加しろと言ってるのか。

 

「なぜ私にその話を?」 

 

「言うまでもないさ。君ほどの人物なら敵がどんな手を使おうと勝てると信じてるからさ。」

 

「、、、いいでしょう。

私をバトルクラブ選手権に参加されて下さい!」

 

「よし、このアドベントデッキを。」

 

サイモンズがスーツのポケットから紅色に金色の鳥の様なエンブレムの付いたケースを差し出す。

迷わず受け取った。

その瞬間、デッキのディテールを青い光が駆け抜けた。

頭に使い方が流れ込んでくる。

 

「この力なら、、、私は勝てる!」

 

しゅっ!とデッキを正面に構え、バックルを出現させてから居合斬りのような構えを取り

 

「仮面ライダァ!」

 

デッキにセット。全能感と高揚感と共に箒はライダーの鎧に包まれた。

 

「おめでとう箒さん。

今日から君が仮面契約者剣刃(カメンライダーブレード)だ。」

 

 

 

2

日本茶を飲んで気分を落ち着かせる。

やはり朝の自主練後のお茶は格別だ。

お茶請けの羊羹もいつも通り最高の組み合わせだ。

 

「最近は調子良さそうだね。」

 

開いた皿を片付けながら店の制服姿の親友が話しかけてきた。

 

「はじめの頃に比べれば痛みも和らいできてるし、この調子ならこの力を十全に引き出せる。」

 

私はジャージのポケットからアドベントデッキを取り出す。

親友の顔が驚愕に染まる。

 

「何をそんなに驚いてる?

君が見つけて欲しくない何かを隠す所なんて一つしかないだろ?」

 

「、、、、海之ちゃん、本当に辞めないの?」

 

「当たり前だ。私に下らん質問をするな。」

 

「なんで!?やめて、やめてよ!

だってあいつは、あいつが雄一君を!」

 

「千夜!、、、私はあの時確信した。

私は非力過ぎて、暴力で何も守れないと。

だが今は、この鎧の力を十全に引き出せればどんな暴力にも屈さない。

屈さないで済む!」

 

彼女が、手塚海之(てづかみゆき)が断言した瞬間。

ぴーん、ぴーん。2人だけに聞こえる音が響く。

 

「お呼び出しか、ちょっと腹ごなしに行ってくるよ。」

 

「待って海之ちゃん!」

 

彼女、宇治松千夜(うじまつちや)の制止を振り切り、

人差し指と中指を立てた右手を正面にかざしデッキを出現したバックルにセット

 

「仮面ライダー!」

 

光が晴れるとそこには紅色の鎧にアラビア風の仮面に契約ビーストのエビルダイバーを模した飛召盾(ひしょうだて)エビルバイザーを装備した戦士、仮面契約者刺尾(カメンライダースティング)の姿があった。

 

「はっ!」

 

気合いと共にベンタラに飛び込むスティング。

 

「海之ちゃん、なんで、、私は、、無力だ。」

 

 

 

3

「どっか変なとこない?」

 

『ない。制服姿もしゃんとしないがな。』

 

「ほっとけ。」

 

改めて鏡に映る自分をよく見てみる。

昨日と変わらない顔に身長が伸びるのを見越して少し長め、大きめのサイズで購入した制服姿。

 

この制服は本来女学校だったIS学園が世界初の国営IS企業の倉持研のデザイナーに委託して新たにデザインされた物らしい。

 

「なあセブン。校則で制服改造自由ってあるらしいけどどこまで平気なん?」

 

『極端な例だが、アキヤマは色以外ブレザータイプにして色以外原型をとどめていないらしい。なんでも脇に銃のホルスターを付けたいとかで』

 

「確か、IS学園に在学してる限りどこの国の法でも裁けないんだっけ?」

 

『ああ。だから日本の銃刀法は適応されない。』

 

今更ながら蓮が平然と銃を持ち歩いていたことを納得した。

超法的もいいとこのトンデモ優遇特権にそれとは別にアンカーのバックアップまで受けている俺たちは一体どれだけのワガママが許されるんだ?

自分の事ながら恐ろしい。

 

「バイク通学もアンカーのなんか?」

 

『その為だけに駐車場を作らせたらしい。

教員からは意外と好評らしいが。』

 

幾ら教員の七割五分アンカーの息がかかっていてもそうそう出来る事じゃない。

いつから俺はこんなヤバい世界が垣間見えちまう所に来ちまったんだ?

意味がないと知りながらもせずにはいられない自問自答を呟きながら下に降りる。

一夏も蓮も心愛ちゃんも制服姿で揃っていた。

 

「遅いよケイタ。」

 

「行くぞ網島、案内は俺がする。」

 

 

 

4

日本には動物園のパンダなんて例えがあるらしいがどうやらそれは間違いらしい。

俺、レン・アキヤマは身をもって実感した。

 

今教室の視線は教卓0ズレ席と一番廊下側の列の真ん中2席に集中している。

好奇心猫を殺すと言うが、まさか好奇の視線で刺し殺されるとは思わなかった。

 

一応理由を説明すると、この学校はどうゆう訳か一番はじめの席順をアルファベット順でもひらがな五十音順でも誕生日の早い順でも背の高い順でもなく乱数で決めてるらしい。

 

五列あるのに織斑の奴が前列0ズレ出し、一番廊下側の一番前が「ほ」なのにその後ろはAkiyama、網島、織斑、布仏(のほとけ)と続く。

 

色々不都合だし不自然だろ。

まぁ、本来女子校のこの教室に俺含め男子が3人いる事の方がおかしいのだが。

そんなことを思っていると緑髪のショートカットに童顔の教師が入ってきた。背が低いし、うちの師団長が好きそうな合法ロリってやつだな。

 

「皆さんはじめまして。

私は一年間皆さんの副担任を務めます山田真耶(やまだまや)です!よろしくお願いします!」

 

一切視線が山田先生に注がれることなく、織斑妹と保登と後布仏だけが元気に挨拶している。先生今にも泣きそうだぞ?

 

「う、、うぅ、、それではみなさん自己紹介を、アキヤマ君から。」

 

ここだけは何故か平仮名五十音順らしい。

 

「アメリカ海兵隊IS師団所属、レン・アキヤマ。

唾棄するものは人種差別と性差別。

大嫌いなものは、理由もなく偉いやつとアニメアンチ。

嫌いなものは文句しか言わない奴。

あと苦手なのは犬と煙草の煙だ。

今言ったのは三年間近づけないでくれ。以上だ。」

 

しん。と教室は静まり返った。

続いてひそひそ声の話し声と、敵意を込めた視線がちらほら。数は1、2、、5個。思ったより少ないな。

学園側の配慮でクラスにそうゆう奴らをなるべく入れないでおいたのか。

こちらに都合の良い展開だ。早めに潰しておこう。

 

「えっと、では次に網島君!」

 

「はい、あー、、網島ケイタです。」

 

しばらくの沈黙。周囲のそれから!?

みたいな視線が一斉に放火される。

流石に鈍い網島も気付いたらしい。

 

「えっと、バスケは三春にも負けません。」

 

0ズレ席の織斑兄、、織斑三春(おりむらみはる)の顔が目に見えて嫌そうになる。

なるほど、どうやら実話だな?

それも相当こっ酷くやられたらしい。

 

「あー、後は、、こっちの同居人?3人が一癖も二癖もある奴らなんで疲れると思いますけど仲良くしてやって下さい。」

 

ズッタン!網島曰く一癖も二癖もある奴らが全員漏れなく椅子から転げ落ちる。

 

「お前に言われる程でも保登程でもない!」

 

「ケイタに言われる程でも心愛ちゃん程でもない!」

 

「ケイタくんに蓮くんのバカァ!」

 

保登が叫んだ瞬間、教室の前のドアの方から飛来した黒い板?が保登の頭頂部に炸裂した。

カーン!と空缶みたいな音が響く。

 

「全く。去年に引き続きよくこれだけ騒がしい馬鹿が集まるものだな。

いや、私のところに集めているのか。」

 

心底うんざり、と言った様子でやって来たのはクールビューティにジョブチェンジした8年後の織斑妹、もとい、今年の一年一組の担任にして世界最強の名を欲しいままにする地獄の閻魔も裸足で逃げ出す武神。

織斑姉こと織斑千冬だった。

 

「諸君。私が担任の織斑だ。

逆らっても良いが、返事は『はい』か"yes"で統一しろ。良いな?」

 

ここは海兵隊の訓練キャンプだったっけ?懐かしいな。

ラミネス達は生きてるだろうか?、、ん?なんで網島と織斑は耳を塞いで

 

「きゃあああああああああああ!」

 

「千冬様よ!本物の千冬様よぉ!」

 

、、、流石はIS学園。屋内用音波兵器まで完備とは恐れ入った。

半分パラダイスに逝きかけていた保登も現世に引き戻されてる。

 

「こっち見てえ!」

 

「私あなたに会うためだけにこの学校に来たんです!石巻から!」

 

またいつか行きたいな、石ノ森萬画館。

 

「抱いてぇ!」

 

「厳しく躾けて!」

 

「でもときに優しくして!」

 

「そしてつけ上らない様に調教してぇ!」

 

去年バーンズが誕プレって言って押し付けて来た同人誌か。

 

「全く、、本物に馬鹿ばかりで頭が痛い。」

 

織斑姉は改めて心底うんざりといった感じで眉間を抑えた。

 

 

 

5

その後恙無く自己紹介は進んでいき休み時間になった。

 

「たぁー!やっぱ千冬さん怖ぇー、、。」

 

なんだかんだ言って長い付き合いだけど俺、網島ケイタはあの人が苦手みたいだ。

なんていうか、あんな抜き身の日本刀みたいな雰囲気が兎に角苦手だ。

 

「保登。頭大丈夫か?」

 

「全然大丈夫じゃない。」

 

「そうか。なら平常運転だな。」

 

「それどうゆう意味!?」

 

対して2人は特に何か気にしてる様子はない。

適応力の高さは素直に尊敬する。

 

「早速次IS座学の授業だけどケイタついてけそう?」

 

「セブンに無理やりやらされたから多分。」

 

こういう時こそすずかぜ公園の辺りでバイクを思い切り飛ばしたいところだけど、流石に片道三時間かけてってなるとまた話が変わってくる。

 

「そっか、にしても千冬姉が担任かぁ、、あー。今私、最悪って顔してる気がするよ。」

 

どうやら一夏も同意見らしい。

程度はあってもまだ千冬さんが苦手なのは変わらないらしい。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「え?」

 

「ん?」

 

そこに居たのはザ・今時女子(よーは思いっきり女尊派)な感じの白人だった。

ちょっとカールした(させた?)長いブロンドの髪に力強い青い目。

背もスタイルも同年代の同じ人種の中ではやや慎ましいぐらいか。

腰に手を当てた偉そうな姿が様になっている。

 

「このイギリス国家代表候補生のセシリア・オルコットが話しかけているのですよ?

それなのにそんなお返事とは一体どんな教育を受けてきたのですか?」

 

ここで言う国家代表とはISの代表のことを指し、

彼女達はIS格闘の世界大会であるモンド・グロッソに出場出来る資格を持っているほか、勿論ISは兵器でもあるため全員が軍属。

つまりは一国の防衛の要である。

 

当然様々な特権がありそれは予備軍の代表候補生であっても大抵のわがままは基本通るレベルのものだったりするのだ。

因みに千冬さんは日本初のIS国家代表にして第一回モンド・グロッソのチャンピオン=ブリュンヒルデの称号を持っているのだ。

 

今年で25とまだまだ若手なのだが、第2回モンド・グロッソの時に起きた一夏誘拐事件の後に、一夏がゼロワンと出会った直後に引退している。

その後ことは様々な信憑性のない憶測が飛び交ってばかりでよく分かってなかったがまさかあのストレスマッハな彼女が教員免許を取得していたとは驚きだ。

 

「それでその天下の代表候補生様が何の御用で?」

 

「ええ、まぁノブレスオブリージュというやつですわ。

わたくしが自らあなた方にアイ『キンコンカンコン、キンコンカンコン、』な!、、またきますわ!逃げないことね!」

 

「行っちゃった。」

 

「次の授業千冬さんなのにどこに逃げるってんだよ。」

 

「無限の彼方じゃない?」

 

「違いない。」

 

 

 

6

「それでは、一時限目を始める。

と、言いたいところだが先ずはこのクラスのクラス代表を決めねばな。

クラス代表とは読んで字のまま一年間クラスの代表としてクラスをまとめる役割を担う。

例えば月末に生徒会主催の定例会に参加したり今月末のクラス対抗トーナメントに代表として出場してもらう。

自薦他薦は問わないが、一度決まれば原則変わらないからそのつもりでいろ。いいな。」

 

要はクラス長か。めんどそうだし出来ればやりたくないな。

 

「はい!私は織斑くんを推薦します!」

 

くんだから三春の方か。大変だな頑張れよ。

 

「は〜い!のほほんさんはあみしーを推薦しちゃうよ〜!」

 

「え!嘘!?」

 

「はいはい!私は蓮くんを!」

 

「俺か!?」

 

「勝ってね蓮くん!パフェの奢りがかかってるから!」

 

「勝手に巻き込むな!」

 

あれよあれよと言う間にクラスの殆どが三春党、蓮党、網島党に分かれる。

マジで言ってんのかよ。

 

「その3人以外で誰か居るか?そろそろ締め切るぞ?」

 

「待ってくれよ千「待って下さい!納得いきませんわ!」

 

「なんだオルコット。自薦か?」

 

「えぇ。このわたくしを差し置いて物珍しいなどと言うくだらない理由で極東の猿どもに、

それも低俗な男どもにクラス長を任せるなどあってはならないことですわ。」

 

なんとなく傲慢そうだと思ってだけど、このレベルとは。

周りのさっきまで俺たちに汚物を見るような視線を向けてた人達まで彼女に不快そうな表情を見せている。

ヒートアップし続けてる日本ヘイトに男性ヘイトは止まらなそうだ。

 

「イギリスだって大してお国自慢ないだろ?

世界うまい飯ランキングワーストトップ何年連続死守だ?」

 

ついに切れたのか三春が立ち上がる。

 

「何ですって!?」

 

視線で火花を散らし合う2人。硬直状態を破ったのは千冬さんではなく蓮だった。ガツン!と思い切り音を立てながら机に足を乗せる。

 

Hey limey! (おいライム女)Can you understand mood in this classroom?(周りを見てみろよ)

 

「え?、、あ。」

 

今更ながら周りが殆ど日本人なことを思い出したようだ。

周りからの攻撃的な視線が凄い。

 

You said too much.(おイタが過ぎたな。)I can't remain silent.(俺は黙ってられないぜ?)

 

「ッ!、、Duel!(決闘)I propose duel to you!(決闘を申し込みますわ)

 

「ノープロだ。ここは大量破壊兵器の扱いを学ぶ学校。

分かりやすく野蛮に機械的に行こう。」

 

「野蛮に機械的って、そんな言い方ないだろう蓮。」

 

「馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶな。

どんなに取り繕ったところで世界をオモチャと勘違いした馬鹿が起こした国家反逆一歩手前のテロがこの下らない茶番の間接的最大要因だ。」

 

「お前、束さんを馬鹿にするのか!」

 

「なんなら唾でも吐きつけてやろうか?」

 

三春が怒りで真っ赤になる。

対して蓮はアイス食べた後みたいに涼しい顔だ。

 

「あの!わたくしを無視し続けるなんて随分と余裕ですわね?

まさかただで勝てるとか自惚れてるのではないでしょうね?」

 

「なんだ?ハンディキャップでもつけてくれるのか?」

 

「えぇ。流石にその程度の慈悲はありますわ。

貴方はどれ程お付けしましょうか?」

 

「いらねぇよ。女に手加減されて勝ったって嬉しくねぇ。」

 

「網島、お前は何がいい?」

 

「んー、、、。お互い顔はやめね?」

 

「そんなんでいいのか?」

 

「いや、ちょっと待てケイタ、お前まさかハンデつけてもらうつもりか!?」

 

「だってつけてくれるって言ってんの本人だし。」

 

「相手は女だぞ?」

 

「俺たちより何百時間もIS稼働時間で勝るな。

そんな事も気付いてなかったのか?」

 

「だとしても!」

 

「本当に相手を侮らないってのは勝つ為にあらゆる手段を使う事だ。

気合いと根性だけでなんとかなるほど世の中単純じゃないんだよ。

プライド高いだけで相手が死んでくれるんなら、

今頃世界人口は今の半分以下だろうさ。」

 

「なんだよそれ!俺が間違ってるってのかよ!」

 

「ただ甘ったれてるって言ってんだよ。」

 

「おい、取り込み中悪いがこれ以上私の時間を使うな。」

 

「でも千冬ね

 

バゴーン!千冬さんの岩をも両断する手刀が三春の頭を襲う。

 

「ここでは織斑先生だ。

兎に角、明後日の放課後織斑兄、アキヤマ、網島、オルコットの4人で総当たり戦を行い、その結果でクラス代表を決める。以上!」




ケイタ「といった感じで初のIS学園編、いかがだったでしょうか?」

智乃「別になんて事もありませんけど、前回の予告で出てきてないライダーばかり登場してるんですか?」

フォース『確かにね。絶対インサイザーが3番目だと思ってたのに。』

智乃「しかもブレードって全ライダーの中で唯一カード内容がアドベント以外分かってないライダーですよ?平気なんですか?」

ケイタ「、、、次回!Dragon against Dark wing その2!」

フォース『あ、逃げた!』

智乃「全く、、またのご来店お待ちしております。」


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Dragon against Dark wing その2

ケイタ「さて、今回も前回までのあらすじを張り切っていきたいところなんだけど、、なんでゼロワンあんな落ち込んでるの?」

ゼロワン『、、、。』

セカンド『それはね、網島。貴方、作者がLINEの背景にアナライザーを着身したゼロワンの画像使ってるのは知ってるわね?』

ケイタ「まあ、一応。」

セカンド『その画像が、経年劣化で勝手にアプリが起動したり覚えのない画像が保存されるようにになった作者の母親のスマホに勝手に保存されちゃったのよ。』

ケイタ「それで?」

セカンド『その時にゼロワンの顔が動く方の笑顔がドアップになって表示されて、作者の母親がそれを見てウイルスに感染した!って大騒ぎして。
その後ただ勝手に画像が保存されてただけって分かったんだけど。
あんな不気味な写真を背景にするな!
って言われて。それからずっとあんな調子。』

ケイタ「だから作者この前腹抱えて大笑いしてたのか。」

ゼロワン『いいから始めろ、、。』

セカンド『え、えぇ。さてさてどうなる?』

(op True Blue Traveler)


1

キュイン。鏡を抜けるとそこは何処かのビルの裏手だった。

奴らは既に他のライダーと戦っている。

 

サイモンズからの情報通り奴らは、ドラゴンナイトこと網島とウイングナイトこと秋山が周囲を見回しながら歩いていた。

 

教えられた通りに箒、仮面ライダーブレードはデッキからカードを引き抜き左手の盾型のバイザー、鳳凰召盾(ほうおうしょうたて)ガルドバイザーにベントインする。

 

<COPY VENT>

 

聞いていた通り網島の持っていた柳葉刀が複製され私の手に収まる。

やはり戦いは剣に限る。

 

「おい貴様ら!」

 

こちらに気付いた2人がこちらを振り向く。

 

「?、、!それ俺の剣じゃねぇか!」

 

「なに?」

 

「そんな事はどうでもいい!私と戦え!」

 

「、、、ご指名だが、どうする?」

 

「どうするって、、あんた、えっと、名前は?」

 

「仮面ライダーブレードだ!」

 

「あんたなんか犯罪やったりした?」

 

「するか!そんな卑怯者の所業!」

 

「だったら戦うの嫌なんだけど?」

 

「ごちゃごちゃ言うな!」

 

ガキン!二つのドラグセイバーが激しく火花を散らす。

いつの間にか居なくなっていたウイングナイトなどもう眼中になかった。

今あるのは目の前のドラゴンナイトへの憎悪と、

脳裏に焼き付いて離れない一夏の姿。

 

昨日の放課後。

箒は一夏を剣道部の見学に誘った。

本人は中学はバイトばかりの帰宅部だったから余り動けないと言っていたが、剣道場で一夏が見せた動きは昔と変わらず素晴らしいものだった。

 

だが、それは正しい篠ノ之流剣術ではなかった。

北辰一刀流、示現流、それどころか篠ノ之流の怨敵とも呼べる鳴神龍神流の技を使う事さえあった。あんな物は外道だ。

 

あんな物を篠ノ之流に連なる者として見過ごすわけにはいかない。

同門の不始末は同門がつける。

その為にはまず、一夏を毒した原因を取り除かなくてはならない。

 

「死ね!」

 

「お断りだ!」

 

先に流れを掴んだのはドラゴンナイトだった。

こいつは多分剣は出来てもそれ以外からっきしだ。

その証拠に左手の盾をまるで使おうとしない。

だったらこっちにもやりようはある。

 

純粋な剣道ならボコボコにされてただろうが長物を持ったまま体術を活かす方法なら兄貴分の帽子の探偵とその不思議な相棒から叩き込まれた。

不意をついた前蹴りで距離を取り、剣戟に蹴りを組み込んでいく。

 

「ッ!この、外道の卑怯者がぁ!」

 

やっぱりキレた。

こうなったら元々大振りの技が多かった敵の剣が無茶苦茶になり始める。

いなすのは簡単だった。

 

切っ先を絡め取って自分の剣と相手の剣を押さえつけるように交差させ、

すっかりお留守の脇腹を思い切り蹴りつけ、

バランスを崩した所を踏み込んで切り上げる。

 

このままファイナルベントで!

バイザーのカバーを開けて切り札を取り出す

 

『まてケイタ!流石にライダーの鎧でもファイナルベントは耐えきれん!』

 

「ッ!」

 

バイザーを介してセブンが語りかける。

そうだった。相手はモンスターじゃない。

自分達と同じ血の通った人間だ。

ストライクベントぐらいに加減しないとうっかりベントしかねない。

カードをデッキに戻そうとした瞬間だった。

 

胸部に激痛が走る。斬られた。

そう思った瞬間には二撃三撃と斬り付けられていた。

なんとか視界に敵を捉える。

 

そいつはもう1人のブレードと呼べるほどブレードによく似たライダーだった。

ブレードと同じアラビア風の仮面に、おそらく契約ビーストがエイ型なのだろう。

エイの尻尾を模したおさげのような飾りにまんまマゼンタ色のエイの形の盾仮面ライダースティングだ。

 

「おい格子戸仮面。」

 

「ん?俺?」

 

「ああ。君は、国を愛してるか?」

 

「んー、、、あんまし。」

 

「なら祖国の為に死ね!ドラゴンナイト!」

 

「え!?」

 

スティングの構えた金色の薙刀型武器ウイングスラッシャーが再びドラゴンナイトを襲う。

 

(さっきの刀じゃ不自然な連続攻撃の正体は薙刀か!)

 

なんとかドラグセイバーで防ぐが一の腕を切りら落としてしまう。

不味い!スティングがウイングスラッシャーを突き立て用とした瞬間。

 

「死ねぇえ!」

 

復活したブレードがドラグセイバーを構え直し突っ込んできた。

しかし声でどこから来るか丸分かりだ。

振り向きもしないまま顔面を突かれふらついた所を連撃を食らってまたドラグセイバーを落としてる。

 

「そろそろ飽きたな。」

 

独言るとウイングスラッシャーを箒のように使い、

二本のドラグセイバーを引き寄せ、

スラッシャーを捨てると同時に器用に足で蹴り上げて拾う。

 

二刀流に切り替えたスティングはくるりくるりと舞のような動きでブレードを圧倒していく。

 

「祖国の為に死ね!」

 

右手のドラグセイバーが振り下ろされる、が、スカ!とブレードの仮面をかすめる。

 

「?、、?、!?!?」

 

『なんだ?急に動きがおかしくなったぞ?』

 

セブンの言う通りまるで急に距離感が掴めなくなったようにおっかなびっくり剣を振るスティング。

それどころか頭を押さえたまま、その場に座り込んでしまった。

 

「う、あ、あぁぁ!割れる!割れるぅう、、、ッ!」

 

(なんだ?頭痛か?)

 

「軟弱者が!」

 

<SWORD VENT>

 

距離をとったブレードは新たなカードを切る。

西洋大剣(ツヴァイハンダー)型の武器ガルドセイバーが背中に装備される。

 

「死ぬのは貴様だ!」

 

すらりと引き抜き大上段に構えるとスティングに斬りかかる。

 

「させるか!」

 

しかしそれをスティングがさっき捨てたウイングスラッシャーを拾ったドラゴンナイトが防いだ。

 

「お前、病気なんだろ?無理すんなよ。」

 

「黙れ!」

 

錯乱しているのかドラゴンナイトやブレード、壁、地面と滅茶苦茶に剣戟を繰り出すスティング。

 

「ま、まてよ!俺は別に殺し合いたい訳じゃあ、、あーもー!こうなりゃ仕切り直しだ!」

 

<ATTACK VENT>

 

ドラグレッターを召喚し、2人のライダーに炎球を浴びせ鏡の外に吹っ飛ばす。

 

「ふぅ。つっかれた。あれ、、蓮のやつどこ行った?」

 

 

 

2

カタカタカタカタ。誰もいないIS整備室にキーボードを叩く音だけが響き出して一時間が過ぎた。

もう5時だ。そろそろ一回着替えに寮に戻ろうと内側にはねた腎臓の長さの青髪に赤眼を縁の大きい伊達眼鏡で隠した少女、更識簪(さらしきかんざし)が立ち上がった瞬間だった。

 

キュイーン!目の前のディスプレイから人が飛び出して来たのだ。

咄嗟だったので受け身も取れずに後頭部を強打する。痛い。

 

「誰だ!退け、、退け!」

 

やっとこさ立ち上がった所を錯乱しているらしい相手に突き飛ばされた。

流石に文句の一つも言ってやりたくなったが、

見るとなにやらポケットから錠剤を取り出して無理やり噛み砕きながら服用している。

病気なら仕方ない。落ち着くのを待った。

 

「はぁ、はぁ、、すまない。取り乱した。えっと、簪。」

 

苦虫を噛み潰した(実際薬が苦かったんだろう)ような顔でこちらに手を差し伸べてくるボブカットの茶髪の彼女には見覚えがあった。

同じクラスの手塚海之だ。

 

「別に平気。」

 

「そうか、だがこのままだと私の気が済まない。

今度何かお礼をさせてくれないか?」

 

「じゃあ、なんかあったらその時に。」

 

「わかった。それから暴れといてなんだが、千夜には、

同じクラスの宇治松千夜には秘密にしといてくれないか?」

 

宇治松千夜?確か、緑がかった髪のおっとりした感じの人だったかな?

 

「わかった。」

 

「重ね重ねありがとう。では。」

 

そう言って立ち去っていく海之。

片付けに戻ろうとして簪は変なものに気付いた。

デスクに見覚えのない紅色の長方形の箱が置いてある。

 

(忘れ物、いや落し物?)

 

拾い上げてみて驚いた。

金のエンブレムにちょうど指に2本分の隙間からカードが覗いている。

間違いなくアドベントデッキ。

 

「すまない簪!これくらいの紅色のケースが落ちてなかったか!?」

 

大急ぎで手塚が戻ってきた思わず驚いた表情のまま振り向いてしまった。

 

「脅かしてすまないな。

そのケース。大事なお守りなんだ。」

 

恐る恐るデッキを手塚に渡した。

 

「ありがとう。以後気をつける。」

 

淡白に言い放つと早足で歩き去っていった。

生きた心地がしない。

気持ち悪い。

 

手塚が見えなくなると簪は口を手で押さえながら膝から崩れ落ちた。

涙と吐き気が止まらない。

つい先日、紫の尖った肩のライダーにちょっかいを出した時を思い出した。

圧倒的な技量、力、狂気の差を突きつけられ、危うくベントされる、

殺される所だった。

相手のビーストを凍結させるカード、フリーズベントが無ければファイナルベントが直撃していたに違いない。

 

(死にたくない、、やだ!)

 

一心不乱にトイレに走りながら考える。

なんとかライダーを辞められないか。

あるいは他のライダーを一気に倒せないか?

 

無理だ。私のファイナルベントは基本対象を1人しか倒せないし、

発動までの隙が多過ぎる。

無理だ。無駄だ。絶望と一緒に胃の中の物を残らず吐き散らした。

口の中に酸っぱい味が広がって気持ち悪い。

 

便器にブチまけられたお気に入りの野菜サラダの一部だった未消化の人参に嫌いだって言われてる気がする。

こうなると私はどんどん悪い方に考えてしまう。

嫌な過去ばかり思い出してしまう。

 

『貴女は無能でいなさい。』

 

頭に浮かぶのは自分を縛る一番近い肉親からの呪いの言葉。

 

「黙れ、、、、死んじゃえ。、、死ねよ!なんであたしばっか!」

 

いくら叫んだ所で現状打破なんて出来ない。

その証拠に簪のポケットのデッキは仮面契約者凍斧(カメンライダーアックス)の証は消えてくれなかった。

 

 

 

3

時は昼前の授業に遡る。

授業自体は意外にも教えるのが上手い山田先生の元、恙無く進行していた。

優しい語り口が眠気を誘う以外はほぼ欠点のない授業だ。

 

「ここまでで何か解らないことはありますか?

なんでも質問してくださいね、なんてったって先生ですから!

特に急遽編入が決まった男子3人は、、。」

 

「問題ありません。

先生俺の上司より教えんの上手いですし。」

 

「そ、そんなに褒めてもなにも出ませんよ?、、んっん!網島君と織斑君は?」

 

「今んとこ平気です。」

 

「え?嘘だろ?ケイタお前そんな頭良かったか?」

 

「ほぼ受け売りだよ。」

 

「待て、そんな話はいい。織斑兄。

貴様まさかまるでついていけてないのか?」.

 

「いやだって千<ス・パーン!>

 

ギリギリチャンバラのキメワザみたいなエフェクトと共に千冬さんの出席簿が火を吹いた。

 

「何度も言わすな。ここでは織斑先生と呼べ。

入学前の課題はやったのか?」

 

瞬間クラスの全員の脳裏にジャンプネクスト2冊分ぐらいの分厚い参考書の姿が浮かんだ。

 

「電話帳と間違えて捨てました。」

 

スパーン!再び三春の頭を出席簿が襲う。

 

「逆になんで家に電話帳があったんだ、、、。」

 

ボソッと呟いただけの蓮にも出席簿が炸裂する!

かと思われた次の瞬間!

素早く出された蓮の左手と出席簿が火花を散らした。

よく見ると蓮の手にはウイングナイトのデッキが握られていた。

 

(嘘だろ、、デッキってあんな頑丈なのか!?)

 

(まさか千冬姉に破壊出来ない部室がこの世にあるなんて!)

 

「網島、織斑妹。今何か失礼なこと考えたな?」

 

「イエイエ。」

 

「ソンナマサカ。」

 

「嘘をつくな、なんだその喋り方は。」

 

「コレチュウナンベイデハニチジョウサハンジ。」

 

「ソウソウ。」

 

「、、今回だけそうゆう事にしておいてやる。

それからアキヤマ。

織斑兄があまりに馬鹿らしかったからと言って喋るな。

授業中は私語を慎め。」

 

「Yes ma’am.」

 

「それから織斑兄。

貴様には後で資料を再発行してやる。

一週間で叩き込め。」

 

「一週間で!?無理だろ!?」

 

バゴン!今まで一番、強力な音が響く。

 

「分かってないようだから教えてやる。

ISは兵器だ。

その気がなくても簡単に人の命を奪うことだってある。

そうならない為にその足りない頭に責任と知識を叩き込め。

この学園はその為だけの学園だ。

それから私への返事は『はい』か"Yes"だ。理解しろ。」

 

「い、イエスマム、、、。」

 

 

 

4

昼休みになった。

開始早々他学年、他クラスの女子から襲撃を受けた男子3人は散り散りになって逃げ去っていった。

 

「どうしよっか?」

 

「取り敢えず私たちだけ先に屋上行ってようよ。」

 

一夏と心愛は3人と違い事前に学校に来たことがあるため、

ケイタと蓮をもう卒業してるはずの先輩から教えてもらった穴場に昼食に誘っていたのだ。

 

「待っていっちーにここあん!

3組のみゆきちとちややんが呼んでるよ〜」

 

教室を出ようとして呼び止られる。

萌え袖にまったりした喋り方に雰囲気のクラスメイト、

布仏本音だ。その後ろには、薄っすら緑がかった長い黒髪の楚々とした感じの人と無愛想な感じのボブカットの茶髪の人が立っている。

 

「はじめまして!私は保登心愛!よろしくね、貴女達は?」

 

「手塚海之だ。」

 

「宇治松千夜、よろしくね。」

 

「君が織斑一夏だな?」

 

「え、うん。」

 

するとおもむろに五円玉を取り出して指で弾く。

 

「ふむ、やはりか。」

 

「えっと、何?」

 

それからさらに4回五円玉を弾く。

そして暫く目を閉じて何か考えた後、

 

「一夏、君の助言が網島ケイタの大一番の勝敗を左右する事になる。」

 

「え?もしかして、うちのクラスが代表決めに総当たり戦するの他クラスでも有名?」

 

「?、、それかどうかは判らんし、運命はいくらでも変わるが、私の占いは、当たる。」

 

「みゆきち占い師さんなの?」

 

「ささやかな特技だ。」

 

歩きながら話そう。海之の提案で5人は屋上に向かった。

 

「私は、コインを弾いた音の感じで占うんだ。

いつもはさっきやったみたいに占うつもりが有る人が目の前にいないと殆どはっきり判らないんだが、何故か今回だけ、何気なく適当に占っただけにしてはやけにハッキリ占えたんだ。」

 

「だから私に会いに?」

 

「どっちにしろ占った結果は伝えるつもりだったしな。

あ、後安心しろ。今回は私が勝手に占っただけだ。

料金は取らない。」

 

そんな冗談を言ってる間に屋上についた。

先輩から聞いていた通り先についていたケイタと蓮以外ガラガラで人っ子一人いない。

 

「あ、あみしー!レンレン!」 

 

「あれ?のほほんさん?それにそっちの2人は?」

 

「手塚海之。こっちは宇治松千夜だ。よろしく頼むぞ?」

 

「ん。こっちこそよろしく。」

 

2人は握手を交わした。




ケイタ「なんか今回短かったね。」

セカンド『中古でアドベントカードと龍騎ライドウォッチを購入してハイになった勢いで書いたらしいわ。』

ゼロワン『ふん、どうせまた1週間以上間隔が空くに決まってる。』

ケイタ「それぞれ元気出せって。一夏が心配するぞ?」

セカンド『ほら体育座りしてないで!これ読んで。』

ゼロワン『次回、Dragon against Dark wingその3。』

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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Dragon against Dark wing その3

ケイタ「前回は、漸く手塚さんと初めて会ったとこまでか。あんま進まなかったな。」

一夏「そりゃ、字数今までで一番短かったしね。」

ファイブ『ナンダカ、オワリ、ザツダッタ。』

ケイタ「まあ、言ってやるなよ。」

ファイブ『ソレカラ、コノセカイ、リュウケンドー、ヤッテナイノ?』

ケイタ「鳴神龍神流が実際にあるっぽいし、そうなんじゃない?」

ファイブ『ナンデ一夏ハ、ツカエタノ?』

一夏「今時、ユーチューブでなんでも見れる世の中!
道具を揃えたら、後はトレースするだけよ!」

ケイタ「それはさて置き、実は作中最強?のあの人が初登場!さてさてどうなる?」

(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

山田真耶は閑静な住宅街で警察官の父親とごく普通の主婦の間に生まれた。

両親に深く愛され真耶はやや内向的ながらも真っ直ぐに育った。

真耶は幼い時に同じ年頃の子供たちが夢中になるようなヒーロー、ヒロインに興味を持たなかった。

 

何故なら真耶にとってヒーローとは警察官の制服姿のやる気に満ちた父だったからだ。

その姿は正に戦士のようでいつかきっと悪そのもののような怪物を倒すのだと信じていた。

 

実際彼女の父は正義感に溢れ、勤務態度も極めて良好。

彼の元で巡査を経験した者は必ず警察の鏡のようになれるというジンクスが生まれた程だ。

 

そして家族との時間を蔑ろにするようなことも無かった。

休日はよく真耶を釣りに連れて行った。2人は3時間近くかけて歩いて港に向かった。

不満顔の真耶に父は決まってこう言った。

 

「釣りは楽しい。だから苦痛も必要だ。」

 

真耶の父は肉体を通して子供を教育するタイプの人間だった。

その甲斐あって真耶は健康的に育った。

男女共にソツなく接して学校の成績も良く、ISの才能も抜群。

教えるのが上手かったのも手伝って後輩からも慕われ、先輩からも可愛がられていた。

 

特別仲の良い友人と呼べるのが織斑千冬ぐらいしか居ないのが唯一両親の気がかりだったが、それには真耶にしか知らない理由があった。

真耶は生まれつき視力が低かった。

眼鏡が無いと視界がぼんやりとハッキリしなかった。

その代わり色々なハッキリしないものを見ることが出来た。

幼稚園の頃、真耶には鏡に映る物や人が自分の見ている世界と一致しないことに気付いた。

真っ直ぐに鏡を見てるはずなのに鏡に映る自分は左を向いてる。

それはベンタラの真耶だった。

 

何故か彼女はアドベントカードやアドベントデッキ無しでベンタラを見る事が出来たのだ。

その時真耶は小さいながらに手の届かない場所もある事を決して目を合わせない鏡に映る自分を通して知った。

そして中学生に上がった頃、真耶は千冬に出会った。

彼女はどの鏡にも違う動きをする鏡像が、鏡像そのものが映らなかった。

 

この人は限界がない人なのかもしれない。

そう興味を抱いて話しかけてのが始まりだった。

真耶は千冬の見境のない優しさに、悪く言えば八方美人な所に惚れ込んだ。

全部が全部ではなかったが順調だった。

 

それが崩れたのは真耶が中学三年生に上がった時。

真耶の父が人を撃ち殺した。

駅前のパチンコ屋で強盗をした男にナイフを刺されそうになりとっさに発砲したのだ。

 

脳を撃ち抜かれ即死だった。

男が暴力団員だった事もあり正当防衛とされほとぼりが冷めた頃、真耶の父は職場に復帰した。

しかしその後から妙な噂が立ち始めた。

例を挙げればきりがないが、一番おかしかったのが父がいきなり八百屋の店先に並んでいる野菜を割りだしたというのだ。

曰く野菜の中は凶器を隠すのにうってつけの場所とのことだ。

 

もちろん最初は本気にしなかった真耶だが、どうしても信じざるを得ない出来事があった。ある日家に帰ると父に呼び出された。

 

「真耶。蜷川は生きている。」

 

蜷川というのは父が撃ち殺した暴力団員の名前だった。

なんのこと?と聞き返す真耶を無視して父は語り出した。

 

まとめると蜷川はまだ生きていて復讐の機会を虎視眈々と狙っている。

街の誰かになりすましている。らしい。

一人で全てのなりすまされてる人間の候補を確かめるのは現実的ではないから尾行などを手伝って欲しいというのだ。

 

真耶は困った。

顔見知りの人間を疑うのが心苦しい以前に真耶は蜷川の遺体と対面したことがあるのだ。

あれは間違いなく死んでいた。

変装やよくできた人形などではない。

 

困りに困って母や千冬に相談したが満足のいく答えなんか見つかる筈もなく母からは父は罪の意識に囚われてるだけだからもう少し手伝ってやれと言われてしまった。

 

真耶は魚屋の尾行を頼まれた。

しかし真耶も暇じゃない。

部活やIS学園進学に向けた勉強もあったし、心労がたたってよく身体を壊すようになった母に変わって家事をするようにもなったからだ。

魚屋とたまに世間話などをしたが彼も鏡に映る彼にも変化はなかった。

家に帰ると父は魚屋はどうだったか?と聞いてきたが、真耶は返事をはぐらかした。

そんな真耶を父は冷ややかな目で見ていた。

暫くして真耶がIS学園に通っている千冬と公園で電話をしていた時

妙な気配がずっとついてきてることに気付いた。

 

ストーカーか?あり得なくはない。

真耶は準IS代表候補生だ。

量産型のカスタム機とはいえ専用機の支給も検討されている。

乱暴目的以外にも誘拐する理由はまあまああった。

携帯をいじるふりをして画面側のカメラを使い後ろを見る。

警官服の大柄な男だ。

すぐさま回れ右して男に迫った。

 

「お父さん?」

 

「お前は真耶じゃない。」

 

やっと見つけたぞ蜷川。

そう言って父はピストルを抜いた。

 

「お父さん?何言ってるの?」

 

真耶を無視して父は壊れたロボットのようにまくし立てた。

俺の娘になりすますとはいい判断じゃないか?

俺が妻と並んで一番油断する相手だからな。

真耶はどうした?

殺したのか?

俺も殺すのか?

なら俺はお前を殺す。

今度は外さない。

 

安全装置が外され引き金が引かれる。

頭が弾けたのは真耶の父の方だった。

暴発だ。飛び散った脳漿が真耶の顔面を灰色にした。

 

 

 

2

「ーーくん。ーまだくん。山田くん!」

 

「ふぁ、、?」

 

どうやら自分は眠ってしまっていたらしい。

さっきのは、全部夢か。本当に起きたことだけど。

 

「大丈夫か山田くん?うなされていたぞ?」

 

「大丈夫です。昨日寝るのが遅かっただけなので。」

 

「そうか、今朝からクラスを任せっぱなしですまないな。」

 

「いえいえ、私も副担任ですから!」

 

「そう言ってくれると助かるよ。

今日はもう上がっていい。あとは私がやっておく。」

 

「ありがとうございます。ではお先に。」

 

教員室を後にして素早く寮の自室に直行した。

鍵をかけて部屋中のカーテンを閉める。

バスルームに入り、ポケットから白鳥をあしらった金のライダーズクレストのついた白いアドベントデッキを取り出す。

下段に腕を交差させながら羽を広げるように構えて

 

「カメンライダー!」

 

右手を左肩の前にビシッと伸ばしデッキをセット。

今度は腕を上段に交差させゆっくりと下ろす。

仮面ライダーセイレーンに変身した真耶はベンタラにダイブした。

 

 

 

3

何者かがベンタラに突入する気配を感じたウイングナイトはアタックベントを使い呼び出したダークウイングと合体し、屋上まで飛翔した。

 

(ドラゴンナイトには悪いが、ブレードは目の前の敵しか見てない。

あいつでも平気だろう)

 

取り敢えずは二人の実力は拮抗しているようなので目の前のアンノウンに集中した。

 

<SWORD VENT>

 

背後から白鳥型のビースト、ブラウンウイングが現れ自身の翼の一部を模した薙刀、ウイングスラッシャーを放った。

その先にいた仮面契約者がそれをキャッチする。その姿はさながら

 

(白いウイングナイト?)

 

女らしい細いラインのアーマーのライダーだ。初めて見る。

 

「黒いセイレーン !?」

 

どうやら向こうはセイレーンというライダーらしい。

 

「違う。俺は仮面ライダーウイングナイトだ。」

 

スラリとダークバイザーを引き抜く。

 

「待って下さい!

私はあなたと戦うつもりはありません!」

 

「何?」

 

「虚しいと思いませんか?

誰かを殺して自分の願いを叶えるなんて。」

 

「、、、まさかそんな一般論を他のライダーにも演説してるのか?

悪い事は言わない。やめておけ。

そんな事を言いふらした所で他のライダーの格好の標的になるだけだ。」

 

「そう言うあなたは私に乱暴しないんですね。」

 

「誤解を招く発言はやめろ。

別に俺は俺の邪魔さえしなければなんだっていい。

どこでどいつがベントされようと知ったことか。」

 

「じゃあ邪魔するなら、手加減なしにベントすると?」

 

「あぁ。それにライダーになるような奴は追い詰められて自分はどん底だって被害妄想膨らませて

甘い餌に釣られて願いが叶うかも怪しいのに殺し合う脳足りんのとたんどもの集まりだ。

そんな奴らは社会のゴミだ。

俺は自分からゴミ拾いするような殊勝な人間じゃないが、

向こうから来るってんなら大歓迎だ。

俺の目的の邪魔も減って地球がちょっと綺麗になって一石二鳥だぜ。」

 

<SWORD VENT>

 

バイザーにカードをベントインし、ウイングランサーを召喚し、バイザーをホルスターに仕舞い、両手で構える。

 

「あなたこそそんな事を平然と言ってのけるなんてなかなか立派な社会のゴミなんじゃないですか?」

 

「言うと思ったよ。

そうゆうセリフは相手の心を理解できる奴が言うんだな。

ライダーの力さえあれば、基本的に暴力でどうとでもなるものは大抵手に入る。

なのにわざわざあんな怪しい奴をアテにする理由はなんだかわかるか?」

 

「それは、、、。そんなのわかるわけないでしょ?

だいたい、誰かを自己満足の為に無闇に傷つけないなんて当たり前です!」

 

「ふん。俺はお前みたいな単純な奴が大嫌いだ。

想像が及ばないなら黙っていろ!」

 

真っ直ぐに突撃していくウイングナイト。

慌てて構えるセイレーン。

 

「グギャ!」

 

しかし悲鳴をあげたのは両者のどちらでも無かった。

いきなり振り返ったウイングナイトに切り裂かれたオレンジ色のライダー、仮面ライダーインサイザーだった。

 

「久しぶりだな。インサイザー。」

 

「な、なんで、完璧にとったと思ったのに、、。」

 

「流石に3回も同じ挨拶をされりゃあ気をつけるようになるさ。」

 

立ち上がるインサイザー。

そして構える両者。インサイザーの左手の鋏型の刃の付いたガントレットタイプのバイザー、甲召鋏(こうしょうばさみ)ボルバイザーとウイングランサーが火花を散らす。

キック、打撃、剣戟の応酬。

格闘技の心得があるのかインサイザーは格上のウイングナイトにまあまあ善戦している。

ボルバイザーがウイングランサーを挟みこんで受け止める。

 

「ウイングナイト、、今日こそ頂くぜ、100万ドル!」

 

「俺たちそんな金持ちに見えるか?」

 

「確カニ!精々バーガー屋の店員、後ろの女は売れない売女ってとこだな!」

 

「何ですって!?」

 

「じゃあなんでさ?」

 

「一人につき100万ドル!

お前らクズをベントすればコナーズから貰えるんだよ!」

 

「ふん!普通に強盗したりするのは警察がいて怖いからライダー以外いないベンタラに来たってか?臆病者だな!」

 

「黙って戦え!」

 

がっちん!ボルバイザーがウイングランサーを砕き潰した。

そのまま左手で顔面を殴ろうとするがそれより先にウイングナイトの鉄拳がインサイザーのカニのような仮面に直撃した。

 

「軍属舐めんな。」

 

ダークバイザーを引き抜き、インサイザーに斬りかかる。

 

「辞めなさい!」

 

その間にセイレーン が割って入った。

 

「なんであなたはそんなにお金が必要なんですか?」

 

「んなもん酒に女に遊びのために決まってんだろ!」

 

<STRIKE VENT>

 

契約ビーストの腕を模した打撃武器シザースピンチを右手に装備しセイレーン に殴りかかる!

 

「なるほど、じゃあ死んでください!」

 

「どの口で俺が社会のゴミだよ。」

 

呆れながらも突貫していくウイングナイト。

シザースピンチの打撃とダークバイザーの剣戟とセイレーンのウイングスラッシャーの回転攻撃が入り乱れる。

 

真っ先に崩れたのはセイレーンだった。

シザースピンチにウイングスラッシャーを真っ二つに挟み切られ、狼狽えた隙にダークバイザーで切り上げられた。背後にあった壁に激突する。

 

(しまった、バイザー落とした!なんとか、カードを、、!あれです!)

 

何かに気付いたセイレーンはウイングナイトとインサイザーをちょうど見下ろせる位置にある給水塔に向かって飛んだ。

 

セイレーン の背中には普段はマントになっていてわからないが白い白鳥のような翼がついついるのだ。

給水塔を拳でぶち破る。思った通り中から大量の水が出て来た。

 

「知ってますか?

昔は水面が鏡の代わりだったんですよ。」

 

デッキからアタックベントのカードを引き抜き水面にかざす。

アタックベントのカードだけは鏡にかざすだけでも発動できるのだ。

 

「ブラウンウイング!こっちです!」

 

彼方から飛来した白鳥型ビースト、ブラウンウイングの背中に飛び乗るセイレーン 。そして更に上昇し

 

「マズイ!」

 

「あ?」

 

翼を思い切り羽ばたかせたことで生じた爆風がウイングナイトとインサイザーを吹っ飛ばした。

ウイングナイトはなんとか背後のダークウイングに翼を展開させ無事着地。

インサイザーはゴミのコンテナに頭から突っ込んで溺れている。

一瞬バナナの皮が乗ったプラスチックバケツを被った頭が見えた。

 

「蓮!?一体何が?」

 

「話は後だ!セイレーン が降りてくる前に脱出するぞ!」

 

無理矢理ドラゴンナイトのアーマーの襟を掴み鏡に突っ込んでいくウイングナイト。

 

「ま、待てよ!まだ俺は戦える!」

 

虚仮にされたように感じたのか、怒り心頭に発する感じでバケツを脱ぎ捨てながら二人が消えた鏡に向かうインサイザー。

 

「なら私とデートしませんか?」

 

背中に激痛が走り、ふらついた所をバランスを崩して倒れる。

バイザーを拾い直したセイレーン の高所からの斬撃だ。

 

「くっそう!」

 

ならアタックベントで二対一だ!

そう思ってカードをきろうとした瞬間。

セイレーン の胸部装甲に緑色のレーザー弾が炸裂した。

一発二発三発、フルオートにしたレーザー銃から放たれるレーザーはセイレーンを後退させていく。

 

「な、何がどうなって、、?」

 

「おい!逃げるぞ!」

 

漸く煙が晴れ、セイレーン が見ることが出来たのはインサイザーを連れて逃げる緑色の装甲車のように堅牢な鎧をまとったライダーの後ろ姿だった。

 

「あーあ、残念です。

私に怯えて戦えなくなるぐらいまで痛めつけるつもりだったんですけど。」

 

アーマーを解除して真耶に戻ったセイレーンは手近な鏡にダイブして部屋に戻った。

バスルームで変身した理由は鍵がかかるだけでなくすぐにシャワーを浴びれらるからだ。

 

真耶はすぐに服を脱ぐとシャワーから出る熱いお湯を頭から全身に浴びた。

真耶は入浴よりシャワーのが好きだった。

流れに受けて立っている自分を認識できるからだ。

湯船は、体が溶け出してしまいそうで嫌いだった。

父はきっと蜷川の頭と一緒に現実と願望の境界線をも撃ち抜いてしまったのだ。

だから最後は、白と黒がぐちゃぐちゃに混ざり合った灰色を撒き散らして死んだのだ。

 

なら私もそうなるのだろうか?あり得なくはない。

知らず知らずに子は親の真似をするものだと言うし、私には疑いようもなく、あの父の血が流れている。

ならこの与えられたライダーの力で何が出来る?

そう考えた時に思いついたのがライダー同士の戦いを終わらせる事だ。

 

あの背の低い白人の男、犯罪被害者救済委員のレイモンドと名乗ったあの男は母の仇打ちの正体とそれに相応しい力をやるから他のライダーをベントしろ。

と言われたが真耶は別に復讐をしようとは思わなかった。

行きずりの空き巣と出くわしたのが運の尽きだったのだ。

真耶はそこら辺が誰に対してもドライだった。

故に真耶にとって大事なのは今殺し合いが行われているという事実だけ。

 

「待ってて下さいねウイングナイトさん。

あなたは体をバラバラにしてブラウンウイングで残る全部のライダー達の頭上に振りまいてあげます」




ファイブ『イジョウ、ドウダッタ?』

一夏「遂に登場したね最強のライダー、インサイザー!」

ケイタ「そんなに強いかなこいつ?」

一夏「何だかんだ蓮相手にまともにやり合えてたしそこそこ強いんじゃない?」

ファイブ『フォンブレイバーノ、デバンハ?』

一夏「それは次回しっかり用意されてるらしいから期待してて。」

ファイブ『一夏トケイタがイウナラ、シンジル。』

(ED DIVE IN TO THE MIRROR カメンライダードラゴンナイトより)

ケイタ「次回、手塚さんが戦う訳とは!?
Dragon against Dark wing その4!」

一夏「これで決まりだ!」


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Dragon against Dark wing その4

ケイタ「さて、作者は頑張って今回でライダー編を一区切りさせるつもりらしいけど、それって前半終了って意味か?」

心愛「らしいよ。今回間に蓮くん対セシリアちゃんとケイタくん対一夏ちゃんのお兄さんを挟むからかなり長くなるって。」

真耶「やっぱり原作のイベントと絡むと膨大な量になっちゃいますね。」

ケイタ「仕方ないといえば仕方ないけど、何とか何ないのかな?」

心愛「兎に角これで一区切り!」

真耶「さてさてどうなるでしょうか?」


1

屋上に集まった7人はそれぞれ持参した弁当を広げて一番角のベンチに陣取った。

 

「へー、じゃあ将来占い師?」

 

「かどうかは分からん。それにあんまりいいもんじゃないさ。

良くも悪くも私の占いは一度だって外れたためしがない。」

 

「ふぅん。ところでケイタはお弁当無いの?」

 

「食堂か購買で済ますつもりだったんだけど、、、。」

 

「くノ一共に邪魔されたと?」

 

購買にたどり着く前に全学年の生徒から質問攻めにされロクに何も買えず、

セブンのクラックシークエンスでなんとか塞き止めながらたどり着いたようだ。

 

「あぁ、学校に3人しかいない男子ってやべーな。ブランド力が。」

 

「全く、ケイタはホント、昔からケイタだよね。

ほらお弁当、ケイタの分も作って来たから。」

 

「毎日頼むぜ。」

 

「時々バイク貸して。」

 

「おう。」

 

チャリン。と風都市のマスコットキャラ、ふうとくんのラバストの付いた鍵を渡すケイタ。

 

「織斑さんと網島君って昔から仲いいの?」

 

「一夏でいいよ。ま、半分姉弟みたいなもんかな?」

 

「かれこれ小4からの付き合いだしね。」

 

「私と海之ちゃんもそんな感じかな?」

 

「れんれんはどーやって来たの?」

 

「馴れ馴れしくニックネームで呼ぶな。

へんなニックネームをつけるな。

まぁ強いて言えば鏡のイリュージョンだ。」

 

「蓮くん狡だー。」

 

「なんとでも言え。」

 

話題は必然的に海之の占い絡みの、ケイタと蓮のクラス代表決定戦の物になった。

 

「結局、あの占いってどうゆう意味なの?」

 

「さあ、私はほんの少し未来の断片を観れるだけさ。

信じるか信じないかは一夏次第だし、

運命は変えられる、いや、一夏なら変えられると出た。」

 

取り出した5円玉を弾き、満足げに頷く。

 

「やはり、何故か一夏の未来はよく見えない。」

 

「え?じゃあケイタへの助言とか言ってたあれは?」

 

「恐らく網島が絡んで漸く観えた未来なんだろう。

だが気にすることは無いさ。

未来がわからないって事はれないってこと。

つまりいつでも無数の選択肢があるということだ。

何ものにもなれる。

それはきっと、君が素晴らしい人ということだ。

胸を張れ。きっと君は迷わず後悔しない選択肢を選べる。」

 

そう言った海之の顔は少し悲しそうな、泣いてるように見えた。

 

「それも占いか?」

 

「いや、一個人手塚海之の経験則だ。」

 

7人に妙な沈黙が流れる。

 

「みゆきち水筒取って〜。」

 

「え?あ、あぁ。えっと、何色だ?」

 

「きつね色〜。」

 

テーブルに手を伸ばす海之。

しかしすぐ手前にあるのに取ろうとしない。 

 

「みゆきち?」

 

「どしたの手塚さん?立ちくらみ?」

 

「い、いや!なんでもない!、、これか?」

 

「う、うん。」

 

「手塚?平気か?」

 

「だ、大丈夫だと言ってるだろしつこいぞ!」

 

ガン!思い切り机を叩きながら立ち上がる海之。

しかしすぐに落ち着き、

 

「すまない、取り乱した。」

 

「お、おう。」

 

キンコンカンコン。狙いすまし用にチャイムが鳴った。

 

「す、すまん。

次の授業は織斑教諭のなんだ。一足早く失礼する!」

 

「ごめんみんな、また今度!」

 

「またねー!」

 

「転ぶなよー!」

 

「頭気をつけてねー!」

 

階段を駆け下りる二人。

慌てながらも千夜は嬉しそうだ。

 

「良かったね、みんないい人そうで。」

 

「ああ、網島はいい奴だし、秋山も、心愛も、一夏も、本音もいい奴だ。

いい人同士で戦うなんて大変になりそうだ。」

 

「、、、え!?じゃあまさかあの中の誰かが?」

 

「仮面ライダードラゴンナイトと仮面ライダーウイングナイトだ。」

 

ポケットからスティングのデッキを取り出す。

 

「あの5人のうち誰かが、この戦い(ライダーバトル)の運命を画する。

わたしの占いは、当たる。」

 

 

 

2

仮面ライダーインサイザー=リッチー・プレストンは資産家の父と良家の令嬢の母の間に生まれた。

 

幼い頃より何不自由なく育ち、なんの苦労もなく過ごしてきた。

勉強やスポーツが人よりできたのも手伝ってリッチーは尊大で自分勝手な大人になり、大学を出てからは父から渡された金で女を引っ掻き回したりスタジアムを貸しきったりして遊び暮らしていた。

半年前、父に勘当されるまでは。

 

父から直接言われた訳ではなく、父の弁護士を名乗る背の低い白人の男ウォルター・コナーズから聞いた話だ。

その後彼は店先で看板を掲げて踊るバーガー屋の冴えない店員を指差してこう言った。

 

「明日は我が身かもな?」

 

それはプライドの高い彼には考えられないことだった。

思わず言い返した。

 

「俺に全てを与えたのは親父だ。

俺をこんなにしたのも親父だ。

いくらなんでも虫が良すぎるだろ!」

 

「成る程、君の意見にも一理あるな、、、。

そうだ!一つ、君にぴったりな仕事があったぞ。

確か、総合格闘技の心得があるそうじゃないか。」

 

「、、女の気を引けるからね。」

 

「なら大丈夫だ。」

 

そう言ってコナーズは懐から蟹のライダーズクレストのついたアドベントデッキを、インサイザーのデッキを取り出し、リッチーに渡した。

 

「これは?」

 

「商売道具さ。君と同じようにこれを持つ賞金首達をベントする、倒すんだ。100万ドルも夢じゃない。」 

 

こうしてリッチーは仮面ライダーインサイザーになった。 

 

暫くは肩慣らしであえてビーストとばかり戦っていたが、ある日。

ついに他のライダーを見つけた。

後に宿敵となった(と、リッチーは思ってる)ウイングナイトだ。

 

ウイングナイトはガソリンスタンドの真ん中で猿型のビースト、デットリマーと戦っていた。

デットリマーはビーストにしては珍しく、ビームガンになる尾と機動力を武器に遠距離から相手を追い詰めるビーストだった。

 

しかし引火物だらけの上に登る場所の少ないガソリンスタンドに追い込まれては得意の戦法は使えない。

あっという間に体に穴を開けられそこから強引に上半身と下半身を泣き別れにされた。

 

「食え。昼飯だ。」

 

背中にくっついていたダークウイングが分離し、上半身を器用に両足で捕まえると西の方に飛び去っていった。

チャンスだ。そう思い背後から攻撃を仕掛けた。

ボルバイザーがウイングナイトの背中のアーマーに炸裂する。

派手な火花を散らしながらウイングナイトは仰け反った。

 

「終わりだ!」

 

もう一発、今度は頭を挟み潰してやる!

そう思って再び攻撃しようとするが、それより先に視界が反転した。

すぐに復帰したウイングナイトの足払いだ。

立ち上がるより先に首を掴まれ無理矢理立たされる。

 

「プレゼントはお返しするぜ。」

 

一閃、ニ閃。ウイングランサーの刃が何度もインサイザーを襲った。

その度に焼けるような痛みがインサイザーを襲った。

痛くて嫌になるたびに100万ドルのためだと自分に言い聞かせ、耐えた。

その明らかに使い方を間違ってるタフネスが無ければあっという間にベントされていただろう。

 

何とかアタックベントでボルキャンサーを囮にして逃げおおせた。

その後も何度かウイングナイトと戦ったが戦うたびに不意打ち以外効かなくなってきた。

そんな調子でダラダラと戦い続けて半年。

 

日本くんだりまでやって来てホテルに住み、全然ライダーは見つからないし、たまに見つけたと思ったらアドベントビーストだし、ウイングナイトを見つけたと思ったら何故か白いライダーにボコボコにされるしで散々だった。

ならばこそ彼はそろそろ学ぶべきだった。

うまい話には裏があることに。

 

 

 

3

何者かに引っ張られベンタラから元の世界に戻った。

そこは何処かのホテルの一室だ。

奥のテーブルに外にはねたボサボサの長い髪のアジア系の男がパソコンをいじっている。

 

「だ、だれだよお前ら!」

 

自分の腕を掴んでいた男の手を振り払ってデッキを構えた。

 

「待て待て待てよリッチー・プレストン。俺たちは敵じゃない。」

 

「じゃあなんで俺名前知ってるんだよ!

俺のことを調べるってことじゃないか!」

 

「そりゃそうさ。君は強いらね。けど、釣りは苦手だろう?」

 

「、、まあ、デートにはむかねぇよな。」

 

「だからさ。俺たちは君に色んなデートをこなせる様になって欲しいのさ。」

 

そう言って腕を掴んでいた男はポケットから写真を取り出した。

そこには白いパーカーを着たリラックスした顔の長い黒髪ロングのアジア系の美少女が写ってた。

 

「上玉だけどまだガキだし、アジア系は好みじゃない。」

 

「だろうね。それはドラゴンナイトの趣味さ。」

 

「ドラゴンナイト?」

 

「ウイングナイトのお友達さ。」

 

「何?」

 

「木目の街のバーでたまにバイトしてるよ?」

 

「、、、なんでわざわざ俺にこんな事を教えんだよ?」 

 

「それは俺があんまり近接戦が得意じゃないからね。

早めに消えて欲しいのさ。君は100万ドルに、俺は邪魔者の排除が出来る。

君は楽に敵をサンドバッグにできて、俺は彼と集めた情報を出す代わりに君に敵を倒して貰える。

お互いいい事づくめさ。」

 

「成る程、、いいぜ。乗ってやるよ、えっと名前は?」

 

「俺はドリュー・ランシング。仮面契約者転装(カメンライダートルク)だ。」

 

「トルクか、じゃあな!

直ぐにドラゴンナイトをベントしてやるぜ!」

 

リッチーは再び鏡に突入して止めてあったオレンジ色のホンダCBR600Fに跨るとどこかへ去っていった。

 

「あのボンボン、どこまでやれると思う?マギラ。」

 

「最後まで、網島くんと秋山くんが最高のフォンブレイバーバディになる為のいい人柱になるのさ。」

 

「君は怖いねえ。その奇妙なUSBメモリもなんかとんでもない種仕掛けなんだろう?」

 

「砂漠でゴムボートを売れる君に言われるとは心外だね。

何にせよ、ベント出来ないなら処理が面倒でも殺してしまうのも一手さ。」

 

それで死んでしまっては網島くんも秋山くんもそれまでだったって事だからね。

そう言って間明は机に置かれた3本の地球の記憶の小片(ガイアメモリ)を起動した。

 

<NIGHTMARE>

<DUMMY>

<ANTLION>

 

 

 

4

鏡から飛び出したケイタと蓮は誰もいないことを確認するとアーマーを解除した。

 

『どうしたケイタいつにも増して冴えない顔だな。』

 

「あぁ。やっぱやる気でなくて。」

 

「ライダーバトルにか?」

 

「ビーストみたいに居るだけでこっちに迷惑かかるとかなら害虫駆除で割り切れなくないけど、特に悪い事してない人間となるとちょっと、、、。」

 

『だが今回は先に仕掛けて来たのはあのブレードとかいうライダーだ。

君に非はない。正当防衛じゃないか。』

 

「そうは言うけど、信用ないかもだけど喧嘩からは足洗ったんだよ。」

 

滝本が死んでからというもの、ケイタは自衛以上の喧嘩をしなくなった。

ちっぽけな自分から目を背けてるみたいで嫌になったのだ。

 

「別にベントしたって気にする事はない。」

 

「は?」

 

「ライダーになる様な奴はみんな心に酷い傷を負ってる。

それが元でもう死んでる。だからベントしたって殺した事にはならない。」

 

それのせいか脳足りんのとだん野郎共だ。と蓮。

それを言うなら炭団(たどん)だろ。とケイタ

 

「てか、言ってる事めちゃくちゃで訳分かんねぇよ。」

 

『まるで自分は死人だとでも言いたげだな。』

 

「ある意味ではお前程仮面契約者に向かない奴はいないな。」

 

「なんだと?」

 

『誤解しないで下さいケイタ様。

レン様はもしもの時にケイタ様が必要以上に罪の意識に苛まれないように「サード。」、、はい。口が過ぎました。』

 

「、、、蓮ってめんどくさ。」

 

『これがガンノスケが言ってたツンデレというリアクションだな。』

 

「男のツンデレとか誰得だ。」

 

そんな話が脱線し始めた頃、突然後方のドアが開いた。

 

「アキヤマ先輩に網島さん?」

 

「蓮にケイタ?」

 

「キリエライト?」

 

「立香さん?」

 

「なんでここに?」

 

「こっちのセリフですよ。

ここは鍵がかかっていた筈なのになんで内側に?」

 

「鏡のイリュージョンだ。」

 

?とマシュは小首を傾げるが立香はマシュに見えない様にウイングナイトの変身ポーズを取っている。

無言で頷く蓮。

 

『実は立香様はビーストに襲われていた所をレン様が助けたのを覚えているのですが、マシュ様はその時一緒に居たのですが気を失ってしまった時に前後の記憶が抜けてしまってライダーの事を知らないのです。』

 

デッキ越しにサードがケイタに説明した。

成る程、中々めんどくさい状況だ。

 

「それで、この時期に整備室を使う様な用事って事は、来たのか?俺たちのISが。」

 

「はい!アンカーUSAと倉持研究所の逸品です!」

 

そう言ってマシュは蓮に金色の三連リングを、ケイタに銀と赤の六角形のストラップを渡した。

 

「これが俺のIS?」

 

「はい!打鉄赤龍。打鉄弐式の没案の一つ、特殊振動を発するクロー、グラインダーを主力武器とした瓦礫撤去にも転用出来る接近パワー型のISです!

如何なる相手も砕き潰します!」

 

「く、砕き潰す?」

 

「はい!アーマーごと!頭骨ごと!」

 

そこからマシュの語りは止まらなかった。

血走った目が完全に座っている。

それからだんだん顔が近づいて来て今にもくっ付きそうだ。

 

「マシュさんってこんなだっけ?」

 

『多分ハンドル握ったりアルコールを摂取したりすると人が変わる人間だな。』

 

『確かいつだったかチョコボンボンで酔っ払ってしまっていたかと。』

 

「キリエライト!」

 

「マシュ!ステイステイ!」

 

「え?あ、す、すいません!

また取り乱してしまいました!」

 

恥ずかしそうに乱れた髪を直しながら咳払い。

 

「兎に角これでIS戦の練習が出来ますね!」

 

「よし、黒翔は競技用にしただけだったな?」

 

「うん。思い切り暴れて平気だ。」

 

『レン様、くれぐれもうっかりやり過ぎない様に。』

 

 

 

5

その後蓮とはアンカーの仕事があるという事で先に帰る事にした。

預かったカワサキの鍵を差し込む。蓮はベンタラから帰るらしい。

ベンタラ様様だよ本当。そのまま出ようとした時だった。

 

「居た!おいケイタ!」

 

「?三春?」

 

剣道着の三春が駆けてきた。

 

「どうした、そんなに急いで。」

 

「戦う前に言っておきたいことがある!」

 

「それ、今度の代表決定戦のことか?」

 

「あぁ、蓮にも伝えといてくれ。

俺が勝ったら一夏に余計なことを吹き込むな!」

 

「余計なこと?」

 

「あぁ、さっき剣道場で箒が起こってるのを見た一夏の剣が外道の剣だって言ってたからお前らがなんかしたんだろ。」

 

外道の剣とはまた岡田以蔵みたいな。

確かに昔から撃剣矯捷なること隼の如しって感じではあったが。

 

「外道の剣ってどんな具合に?」

 

「さぁ?箒は怒ってどっか行っちゃったし。」

 

ガクッ!思わずバイクから転けそうになる。

そういえば三春には昔から良くも悪くも見境なく被害者がいそうな問題に首を突っ込んでいたな、と思い出す。

 

「、、俺も心当たりないけど、三春なんでも首突っ込みゃいいって問題じゃないぜ?」

 

「俺が間違ってるって言うのかよ!」

 

「そうは言ってねーよ。

ただお節介が過ぎると良くないって話だよ!」

 

もうこの話はまた今度で。そう言って俺はバイクを発進させた。

 

『お節介というか、過保護な兄だな。』

 

「親がいないし仕方ないっちゃ仕方ないけど、

一夏だってもう子供じゃないんだぜ?

ま、偶に頼られると可愛いけど。」

 

『君もつくづくシスコンだな。』

 

「まさか。」

 

 

 

6

ベンタラのハイウェイを奇妙なバイクが駆けている。

三輪車でゴツく、上部全体を大型スクリーンが覆っており物理的に曲がれる構造をしていない。

が、何故か問題なく運転できるライダー専用バイク、アドベントサイクルだ。

 

そろそろラビットハウスか。

そう思いスピードを緩めようとした時、搭乗していたウイングナイトは対向車線にもアドベントサイクルが走っているのを目視した。

向こうも気付いたらしい。

 

スイッチを押してサイドバックルに付いていたシートベルトを外し、座席が持ち上がるのを待って降りた。

 

「君がウイングナイトだな?」

 

<STRIKE VENT>

 

同じく降りてきたライダー、仮面契約者突砕(カメンライダートラスト)は肩に内蔵された突召機鎧(とっしょうきがい)メタルバイザーにカードをベントインし、契約ビーストの頭部を模した打撃武器、メタルホーンを装備する。

 

「構えろ。」

 

「ふん、いいぜ、夕飯前の腹空かしだ!」

 

ウイングバイザーとメタルホーンが火花を散らす。新たな戦いの火蓋がきっと落とされた。




ケイタ「てな感じでライダー編前半、まずはこれまで。」

心愛「どうだったでしょうか?」

??「そうじゃのう、あの一夏っちゅう娘の剣が本当にわしほどか確かめたくなったのう!」

真耶「だ、誰ですか!?」

??「わしか?わしは岡田以蔵。
人斬り以蔵の方が通りがええかのう?
作者が企画だけ作って、絶対長過ぎて書ききれんちゅうて諦めたえすえす、FGO RIDE THE RIDER CHRONICLEで、べるで木村っちゅう奴と一緒に藤丸とキリエライトのサーバントになる予定じゃった英霊じゃ。」

心愛「その以蔵さんがなんでここに?」

以蔵「なんでも次回は今回の続きじゃのうて番外編ちゅうやつにするつもりでいるっちゅうことを伝えにきたんじゃ。」

真耶「そうでしたか、お疲れ様でした。」

以蔵「、、おまん、なんかおかしゅうないか?」

真耶「え?」

以蔵「もっと痩せとって、たっぱもあったような気がするんじゃが、、気のせいかのう?」

真耶「ひ、人違いじゃないですか?」

以蔵「そんなもんかのう?」

ケイタ「そんなことより次回、番外編その1!買出(かいだし)」

真耶「その夜、運命に出会う。」


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番外編その1 買出

ケイタ「今回は初番外編です!」

蓮「いいのか?まだ原作一巻も終わってないのに。」

ケイタ「どっちにしろIS戦にライダー戦と続くから一回息抜きしたいって作者が」

蓮「、、まあ完結まで行けるんならいいんだが。」

ケイタ「それではどうぞ」

(OP Day dream cafe ご注文はうさぎですか?)


1

「買出し?」

 

「そ!一夏ちゃんがマグカップ買いに行きたいって言ってたからお店の買出しも兼ねて、蓮くんが車出してくれるから。」

 

成る程、そういえば蓮は車とバイクと両方持っていたのだと思い出す。

 

「てゆうか蓮付き合いいいな。

もっとつんけんしてるもんかと思ってた。」

 

「多分お前が思ってるより人付き合い広いから。

それにマスターにはうんと前から世話になってたしな。」

 

車は20分ほど走らせて着いたのはマグカップの専門店だ。

 

『しかし、何故ティッピーまで連れてきたんだ?』

 

「従業員ですので。」

 

「わしをついでみたく言うな!」

 

『、、、なんだ今の渋い声?』

 

「ゼロワンが言う?」

 

「香風の腹話術だ。気にするな。」

 

「なんでマグカップから?」

 

《、、今の話もう終わりか?》

 

「マスターがそろそろ店の食器を買い替えたいらしい。」

 

「シンプルなので良いですけど。」

 

「えー?折角だしなんか違うのにしよ!

ほら、あの、あれ!お城の手摺りみたいなやつ!」

 

『心愛様、それはアロマキャンドルではないでしょうか?』

 

隠して五人と三機と一羽は店内に入った。

 

「どんなものでも専門店ともなりれば興味ない奴にもそれなりにすごいと思えるものだな。」

 

「別に飲めりゃなんでもよくね?」

 

『人間誰しも君みたいに無色透明で済まそうとしてないって話だ。』

 

大きいのから小さいのまで、違いがほぼ無いものから明らかにカップの形じゃないものまで、多種多様なものが揃っていた。

 

「見てくださいティッピーが入れそうなのがあります!」

 

「マグカップって言うか、もはや丼サイズだねこれ。」

 

「ホントだ!前テレビで見た事あるよ!

うさぎがマグカップに入ってるやつ!ティッピーもやれば?」

 

『丼ご飯にしか見えんだろうな。』

 

更に話題は一夏が見つけてきた可愛いマグカップへと、ココアの見つけたカッコいいマグカップへとコロコロコロコロ変わっていく。

 

「なんで女の買い物が長いか分かった気がする。」

 

「この間に済ませるぞ。」

 

ガールズトークに割って入るのも辛いが比較的メルヘン成分強目の店内で男二人、ポケットに入っている仮想生命体二機を含めれば男四人でいるのもまあまあしんどかった。

心持ち的にも、周りの視線的にも

 

「俺ら何やってんだろ?」

 

「そらお使いだろ。」

 

「普通ここ男女で来るとこだろ?」

 

「俺に言うな。なんなら今からでも向こうに戻「ヴェアアアアアアアア !」

 

「ちょっと心愛ちゃん!ちゃんと前見て!」

 

「危うく割っちゃうとこでしたよ!」

 

「わしの頭に当たったらどうするつもりだったんじゃ!」

 

振り向かないでもわかる。

容易に想像出来る心愛が前方不注意で棚にぶつかってカップの雨を降らせそうになったのだ。

 

「、、、ねぇな。」

 

「だろ。」

 

男たちは淡々とカップを選んでいく。

新手の地獄か?そう思い始めた時だ。

 

「普通ここはばったり知り合いの女の子と!

みたいな風になるとこじゃん。」

 

「さっきから文句ばっか言うな!

そんな事が現実に起こるわけないだろ!

ラノベじゃあるまいし!

現実の女子なんて、見た目に反して行くところなんてアニメショップか、ガンショップだ!」

 

「そんなことはない!偏見だ!」

 

くわっ!見知らぬツインテの背の高い女子が突っかかってきた。

 

「うおっ!ってお前天々座か?」

 

「久しぶりだな秋山。」

 

「蓮知り合い?」

 

「二年前からラビットハウスでバイトしてる天々座だ。

相変わらず寝不足か?毛穴開いてるぞ。」

 

「黙れデリカシー無し男!

お前だってなんだその普通な髪型!

ニュースで見た時結構驚いたぞ!

前までのツンツン頭はどこに行った!」

 

「前に友達からイキった不良っぽいからやめた方がいいって言われてな。」

 

旧知の仲故かくだらない喧嘩でもなんか楽しそうだ。

 

「そう言や天々座さん?はなんでここに?」

 

「言いにくいしリゼでいいよ。えっと、」

 

「網島です。」

 

「よろしく網島。実はこの前手を滑らせて一個割っちゃってね。

それでこうゆうの好きな後輩がよくここに来るって言ってたから。」

 

「その後輩ってのはさっきからチラチラこっち見てる香風と同じぐらいの背のガキか?」

 

ビック!と蓮の指差す先にいた外にはねた金髪の少女が大袈裟に震えながら、ゆっくりと振り返る。

 

「シャロ。」

 

「り、リゼ先輩。」

 

「意外だな天々座、お前の彼女か?」

 

「た、ただの後輩です!」

 

「私ストレートだからな?」

 

「、、まさか蓮お前ゲ「周りにレズやらゲイやらバイが多かっただけだ。あんまり深く考えた事はないが俺自身ストレートだ。」

 

どんな環境だ。

と突っ込みたかったが流石にこの店内でする会話ではないので自重した。

 

「そういやシャロはまたコレクションを増やしにか?」

 

「あ、はい、バイト代も入ったんで。」

 

「どこで働いてんの?」

 

「フールドラパンっていうハーブ専門店です。よかったら来てください。」

 

「変な噂は絶えないがな。

ロップイヤーに胸の開いた娼館みたいな制服だし。」

 

「こっちだって恥を忍んでやってるんですよ! 

お金欲しいから!」

 

(ここまで来るといっそ切実だな。)

 

「変な噂なんて元々だろ?この街は二年前からそうだ。」

 

「二年前から?」

 

「あぁ。なんでもこの街は影が人を食ってるらしい。

二年前からこの街の行方不明者は隣街の風都と並んで平均の三倍。

のどかに見えて中々物騒な街なんだ。」

 

「なんか、風都のガイアメモリみたいだな。」

 

「一説には闇バイヤーが風都から流してるらしいぞ?」

 

「風都の闇、か。」

 

ケイタはポケットのデッキを取り出す。

今の自分にはこれがある。

もし、ドーパントと対峙しても、変身さえ出来れば戦って勝てる。

けど、自分から探すのはあるだろうか?そこまで考えて

 

「無いな。」

 

「え?」

 

「どうしました?」

 

「いや、噂は噂だよ。例えばシャロちゃんだってどんなに金貰えても嫌な金なら好きなものに使ったりしないでしょ?」

 

「え、まぁ。」

 

なら、きっといい店なんだよ、フールドラパン。

そう言ってケイタは再びデッキに目を落とした。

多分自分は助けを求められたり、

自分の見える範囲で「助けて。」も言えなくなってる人しか助けようとしない。

 

名前も知らない大勢の為に戦うのも素敵だけど、少なくとも俺の大好きなあのヒーローなら、風都の顔左翔太郎とフィリップならそれしかしない。

それは怠慢じゃなくて悪党にも自分から罪を数えるチャンスが必要だからだ。

 

「今日もいい風が吹いてるかな。風都は。」

 

 

 

2

場所は変わり風都タワーの真下。

帽子を被ったスーツの伊達男が変わった形のガラケーで通話していた。

 

「ガイアメモリが木組みの街に?」

 

『ああ。シュラウドの、母さんの元協力者を名乗るポリー・ナポリターノという女性がさっきこの件の解決を依頼して来た。

シュラウドの協力者だったかは怪しいが、情報の信憑性は高い。』

 

「海外で、ガイアメモリってなると、財団Xがらみか?」

 

『ご明察だ。財団関連の施設から米合衆国政府が押収していたメモリが紛失した。3本あってそれぞれアントライオン、ダミー、ナイトメア。』

 

「懐かしい上に厄介なやつばっかだな。

よしフィリップ。彼女を送り届けたら直ぐに戻るぜ。」

 

暖かな春の風が翔太郎の頬を撫でる。木組みの街か、

そういや懐かしい二人がIS学園に進学したんだったな。

 

「風都の外でも風は出会いを運ぶ、か。」

 

帽子をなおし、上着を正すと翔太郎は彼女を、涌井さん家のメス猫のルナちゃんを連れ戻すべく街に繰り出して行った。




ケイタ「初番外編如何だったでしょうか?」

蓮「特別な予告の割に大した事なかったな。
それに、名前だけとはいえあのクソ女が出てくるのかよ!」

ケイタ「あのクソ女って?」

蓮「お前は気にしなくていいんだよ!
次回、Dragon against Dark wingその5!」

ケイタ「えっ、た、戦わなければ生き残れない!」


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Dragon against Dark wing その5

ケイタ「さて、番外編を挟んで本編だけど、前回までどんな感じだっけ?」

セシリア「全く、これだから低脳な男は。
ウイングナイトとトラストが戦い始めたあたりですわ。」

マシュ「それからケイタさんのIS、打鉄赤龍も登場しましたね!」

セシリア「あら、そうでしたの?
よかったですわ。流石に量産機に乗ったあなた方を一方的に屠るのは気がひけると思っていたところでしたの。」

マシュ「そんな代表決定戦に繋げる為のエピソード!」

ケイタ「どうぞ!」


1

ブラット・バレットはモトクロスバイクのレーサーだった。

「ブラット・バレットは試練に勝つ」を座右の銘とし、向上心に満ちた好漢だった。

実力もあり人気もあった。

これからももっと上を目指せる。

自分こそが最高のレーサーになれる。

そう信じて日々レースの腕を磨いていた。

 

しかしある日、彼に敵レーサーのバイクに細工をした疑惑がかかった。

謂れのない疑惑を彼はもちろん否定した。

しかしアリバイも無く、証拠もない彼は除名処分を受け追放されてしまった。

 

「私はこの試練にも必ず勝ってみせる。」

 

除名を言い渡された時に責任者にそう吐き捨て、ブラッドはその場を後にした。

しかし、啖呵を切ったはいいもののブラットは探偵じゃない。

捜査のイロハはもちろんのこと、誰かのバイクに細工をするようなレーサーの心当たりもない。

 

なんせ自分がこんな目に合うまでレースはもっと綺麗だと思っていたのだ。

普段から「あいつはそうゆうことをする奴だ。」みたいに誰かを見た事などなかったのだ。

 

手詰まりだ。

そう思いかけた時だった。

自分が不正をしていない証拠のビデオを持っているという男、チャーリーと出会ったのだ。彼はこう言った。

 

「私はある大会をプロデュースしていてね。

バトルクラブ選手権というのだが、どんなものかと言うと相手が戦闘不能になるか降参するまで戦う以外一切ルールなしレフェリーなし。

人生ってやつと同じだな。

もし負けたら、、おっとそうゆう話は嫌いだったね君は。」

 

勿論彼は引き受けた。

ブラット・バレットは試練に打ち勝つ。

どんな試練だって、バトルクラブ選手権にだって勝ってみせるとそう意気込んでトラストのデッキを受け取った。

 

そして今目の前な倒すべき敵がいる。ならばやる事は一つだ。

メタルホーンとダークバイザーが火花を散らした。

トラストはメタルホーンの先端についた角型の刃をフェンシングの様に使い、ウイングナイトを追い詰めた。

 

「一回戦からなかなかの強敵だ。俄然、やる気が出る!」

 

「お褒めに預かり光栄だぜ。ライノ擬き!」

 

ウイングナイトはバイザーをホルスターに収めると体術に切り替えた。

アドベントサイクルを足場に高所からのキック、足払い、立ち上がって飛び回し蹴り。

 

これに対してトラストは今度はメタルホーンを盾のように扱い、足払いをジャンプで避けるとバックステップで回し蹴りを避けながら体を大きく沈ませ、低姿勢から強烈なタックルをお見舞いした。

 

街灯に叩きつけられたウイングナイト。

街灯をへし折りながら、その衝撃を一身に受けてしまう。

 

「君も素晴らしい選手だが、勝つのはこのブラッド・バレットだ。」

 

ここで君はゲームオーバーだ。

そう言ってトラストは確実にトドメを刺すためだろう。

ゆっくり一歩づつ近づいて来た。

 

何とか少しは体の痺れが抜けたウイングナイトは頭の中で作戦を立てた。

近づいて来た所をナスティベントで怯ませ、ゼロ距離のファイナルベントで、土手っ腹に風穴を開ける!

ゆっくり立ち上がりカードを構える。

 

「いいぞ、そのガッツだ。

それでこそこのブラッド・バレットの試練に相応しい。」

 

こちらがカードを使おうとしてるのを察したトラストはバイザーを開けファイナルベントのカードを取り出す。

どうやら真正面から相手を倒す事に凝るタイプらしい。

ならば作戦変更だ。

 

ナスティベントを相手がファイナルベントを発動しようとした瞬間に発動して怯んだ隙にファイナルベントでトラストを契約ビーストごと貫く。

運命の一瞬まであと僅か、そう思われた時だった。

 

<ATTACK VENT>

 

「ガッ!」

 

突如金色の帯のような物がウイングナイトの首に巻きついた。

 

「死ねぇ!」

 

(この声はブレードか!)

 

どうやらお互いがお互いに集中しきって周りが見えなくなるのを待っていたようだ。

両手には何故かウイングナイトの腰に収めてる筈のダークバイザーを持っている。

 

そういえば奴はドラゴンナイトのドラグセイバーを持っていた。

奴は武器をコピーするカードを持ってるのか!

気づいたがここまで追い詰められてはもう遅い。

 

(エリー!)

 

思わず叫びそうになったその時だった。

 

<ATTACK VENT>

 

ブレードの背後から現れた犀型の大型ビースト、メタルゲラスがブレードを突進で吹っ飛ばし、ウイングナイトからブレードの契約ビースト、ガルドサンダーを引き剥がした。

 

「引け。君とはフェアに決着をつけたい。」

 

「、、お前はどうするんだ?」

 

「私はあの卑怯者を倒さなければ気が済まない。」

 

「そうか、うっかりベントされるなよ?」

 

「君も夜道には気を付けてな。」

 

ああ。と短く返し、ウイングナイトはハイウェイから飛び降りた。

落下しながら自身の専用IS、打鉄黒翔を部分展開してゆっくりと地面に降り立つ。

ISには飛行機能が付いるためコミックの超人の様に降り立つことが出来るのだ。

もっともウイングナイトは、蓮は散々ライダーの時にダークウイングでやっているので新鮮味は感じなかったが。

 

「ったく、月が綺麗だな。」

 

こんな綺麗で、ここが日本なもんだから口が滑りかけたじゃねえか。

そう愚痴るとウイングナイトは鏡に飛び込んだ。

 

 

 

2

ウイングナイトが無事戦線離脱したのを確認したトラストはブレードに向き直った。

視界の右端ではメタルゲラスとガルドサンダーが戦っている。

 

「どいつもこいつも、私の邪魔をするな!」

 

ガルドセイバーを大上段に構えたブレードはトラストに斬りかかって来た。

しかしタックルなどの突進系の技はトラストの十八番。

ブレードが剣を振り下ろすより早く懐に飛び込むと腹に正拳突きをくらわす。

 

「邪魔だと?一対一の決闘を先に邪魔したのは貴様だ。

貴様のような最悪の人間に選手の資格などない!」

 

「なんだと!?」

 

メタルホーンとダークバイザーがしのぎを削る中トラストはブレードに語りかけた。

 

「君のような自分の弱さを見ない心の貧しい奴がいるからさっきの彼のような良い選手が損をする。

私はそれが我慢ならないのだ!」

 

メタルホーンの角でフェイントからのオクターブ。

上段を狙うと見せかけて下段に仕掛ける。

体勢を崩した所に渾身のアッパーカットを食らわした。

冤罪にされてからというもの、

以前にも増してブラッドは卑怯な真似に嫌悪を示し、

スポーツマンシップに重きを置くようになった。

 

恐らく今ここで目の前の敵を倒さなければ、

自分とコウモリの彼は安心して戦えない。

それだけは何があっても認めてなるか。

 

それだけが、卑怯者に対する怒りだけが今のブラッドの戦闘への情熱を支えていた。

ブレードもまた然り、ただし彼女の怒りの根本は親友に対する束縛にも似た歪な親愛だが。

 

「ああああああああああ!」

 

「!?」

 

起き上がり、剣を構えて突貫するブレード。

先程のアッパーにまあまあ自信があっただけにトラストは一瞬止まった。

だがすぐに真正面から叩き潰すべく構え直す。

 

<LAUNCH VENT>

 

しかし両者が激突するより先に両者の契約ビーストがビーム攻撃を食らって両者の間に倒れこんだのだ。

 

「メタルゲラス!?何者だ!」

 

返事の代わりにビームが飛んできた。

トラストはメタルゲラスを退避させると素早くウイングナイトが乗ってきたアドベントサイクルに乗り、巧みなライディングでビームを避けながらハイウェイの出口に向かっていった。

 

「ふん。アホばっかで楽だぜ」

 

ビーム攻撃の犯人、トルクは悔しがって街灯に八つ当たりするブレードを見下ろしながらベンタラを後にした。

 

 

 

3

なんとか今日までに終わらせたかったとこまで終わらせられた。

最後の部品を作りかけのISにつけ、更識簪は脱力しながら深くため息をつき背後の椅子に座り込んだ。

 

あれからと言うものの、海之に話しかけられる度にライダーだって事がバレたんじゃないか?

とヒヤヒヤしながら過ごしていたせいか、

いつにも増して寝つきが悪くなったし、

食欲も失せたし、

昨日なんかぼーっと水の張った洗面器を眺めたまま夜明けを迎えてしまった。

 

そろそろ体にガタが来そうだ。

そんな事を思いながら整備室を出た直後。

 

「ちょっとよろしいかな?」

 

短い銀髪のキリッとした女性が声をかけて来た。

こんな学園の外れに用事があるとは思えない。

私目当てか?そう思って、まさか、自意識過剰だ。

と心の中で自分を嘲笑った。

私は唯一専用機の完成していない代表候補生だ。

そんな人間に興味を抱くなんてあるわけが

 

「私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ 。

ロランと呼んでくれ。唐突だと思うのだが、

貴女とお付き合いをさせて頂きたい。」

 

「、、、え?」

 

一瞬で簪の思考回路はフリーズベントを食らった様に凍りついた。

7秒かけてなんとか頭を動かす。

まさか、アレか?

女の子なのに女の子を性愛的に、

パートナー的に見るアレか?

 

一応そうゆうのが居る事は知っていたが、

まさか自分が巻き込まれるとは。

なんとか言葉を返そうとするが、上手く言葉が見つからない。

いっそ逃げてしまおうか?そう思った時だった。

 

「待ってくれ、せめて返事を聞かせてくれ。」

 

(早い!?背後!?)

 

いつのまにか背後から抱きつかれていた。

さわさわとロランはいやらしい手つきで簪の体を弄り始める。

 

(デッキ!、、、、部屋だ。)

 

少しでもライダーの事を考えないようにする為にアックスのデッキは部屋に置きっぱなしだ。

 

「何を探してるんだい?

ポケットに入りサイズの物より大事な話の途中だよ?」

 

左胸を思い切り揉み上げられ

 

「ひうっ!」

 

残る右手が下腹部に伸びてくる。

性の諸々に疎い箱入り娘の簪にもそれだけは不味いのはなんとなく分かった。誰でもいい!誰か助けて!叫びたかったが震えきって声が出ない。

情け無い。自分は助けても言えないのか?そう諦めかけた時だった。

 

「あんた何やってんの?」

 

ロランの右手を誰かが掴んだ。

若い男のガッチリした腕だ。

その先を見ると特徴的ではないが、イケメンの部類に入るぐらいの、良くも悪くも普通そうな茶髪の少年がいた。

 

(網島ケイタ?)

 

「なんだい?私は今から彼女と愛を確かめるとこなんだ。」

 

「こんな往来のど真ん中で?」

 

「君以外いないだろ?」

 

「一人でも通行人がいるなら、目撃者がいるなら、

その子に泣き寝入りなんてさせない。」

 

「、、、いいさ。すまない簪。

柄にもなくエキサイトしてしまった。

私は本来フェミニストなんだ。

許してくれだが、必ず君をものにしてみせるよ。

では、御機嫌よう。」

 

そう気障ったらしく挨拶するとロランは角の向こうに消えていった。

 

「平気?、、な訳ないか。」

 

俯いたまま顔を上げられない。簪はケイタの顔を見れなかった。

普段ケイタがどんな風にしてるか知らないが、

駄目だと思った事を遠慮無しに言える彼が眩し過ぎた。

 

「、、ありがとう。じゃあ。」

 

「あ、ちょっと!」

 

制止を振り払って俯いたまま量に向かって走り出した。

背後でまだケイタが何か言ってるが聞こえない。

ほっといて欲しかった。

 

「痛!」

 

そうか、今走ったらロランに追いついてしまうのか。

よく見てなかったが、私が頭からぶつかりに言った形になったらしい。

恐る恐る見上げると、

 

「全く、机の角の次は人の頭か、私の占いは当たるな。平気か簪?」

 

「え、えっと、、。」

 

「ちょっとまって、あれ手塚さん?」

 

「網島じゃないか。」

 

「あ、あっと、、、。」

 

「、、手塚さんはなんでここに?」

 

「整備室に忘れ物をしてな。君らもか?」

 

「まぁ、そんなとこ。ところで手塚さん。

さっき短い銀髪の人会わなかった?」

 

「合わなかったが?」

 

「なら良いんだけど。」

 

「そうか、あ、あと簪。夜は早めに帰った方がいいぞ。

さっきたまたま簪の星を見つけたが、

同性との付き合いの運がだだ下がりだった。

運命は変えられるが、私の占いは当たる。」

 

もっと早くに聞きたかった。

占いを真に受けるかはわからないが、

デッキぐらいは持ち歩いたかもしれない。

そう思うと心がより憂鬱になった。

 

「それじゃお休み二人とも。あまり夜更かしするなよ?」

 

「お休み、手塚さんって星占いも出来たんだね。

今度俺の星も教えてよ。」

 

「構わない。またな。」

 

そう言うと海之は足早に去って行った。

 

「えっと、網島、、くん?」

 

「ケイタでいいよ。えっと、簪さん。

直ぐそこだけど送ってこうか?」

 

「、、お願い。」

 

二人は歩き出した。

 

(男の子と二人で歩くなんて、久しぶり。)

 

簪は由緒ある更識家に生まれただけあって中々お堅く育った。

確か男の子と二人きりで外に出たのなんて小学六年の夏が最後じゃないだろうか?

あのあとお咎め無しだったのはバレてないからじゃなくて、

父が庇ってくれたからだと今なら分かる。

 

「簪さんって手塚さんと喧嘩してんの?」

 

「えっ!?、、違う。なんで?」

 

「なんか、手塚さんの顔っていうか、目を見てなかったから。」

 

「ちょっと、苦手なだけ。」

 

「そっか。ちょっと安心。」

 

「、、?」

 

「いや、ぶっちゃけ手塚さんって取っつきにくいし、

宇治松さん以外の人と話してんのあんま見ないじゃん?」

 

「え?……うん。」

 

「だから簪さんみたいに苦手なりに頑張って話しかけてくれてる人がいるならその内クラスにも馴染めそうだなって。」

 

「、、、ッ!」

 

お嬢の良いとこはなんだかんだ言ってちゃんと前向こうとするとこですよ。

幼馴染で、遊び相手で、あの夏自分を連れ出してくれた少年と目の前の少年の姿が重なった。

 

「、、ありがと。」

 

「え?」

 

「ううん、なんでもない。お休み、気をつけて帰ってね。」

 

「ん、じゃね。」

 

明日はやっと良いことがありそうだ。

少し軽くなった心を抱えながら簪は寮に帰った。

 

 

3

俺は何をしていたんだっけ?

どうやら俺、秋山蓮にしては珍しくボーっとしていたみたいだな。

寝起きみたいに頭がスッキリしないし、

足元がふわふわしていてなんだかそこに立ってるかどうかさえ怪しく思う。

それでもなんとかアンカーに行くために地下鉄に乗っているのは分かるが。

 

不味いな、何時までに着けばいいんだっけ?

左のポケットに入れているサードに確認してもらおうとするがポケットには何も入っていない。

一番近い窓を見ると茶色い髪の女がサードを持ってる。

 

(畜生スられた。)

 

しかも網島とかから見ても素人と判るような奴に。

どんだけ無防備だったんだ俺。

とりあえずコイツと同じ駅で降りて尾行るか。

そう思って軽く頰を叩く。

 

十分な目覚めとは言い難いが素人一人を黙らせるだけのアクションなら何とかなるか。

幸か不幸か女は次の駅で降りた。

そこはうんと昔に母に石ノ森萬画館に連れてってもらった時に降りた駅だ。

蓮は違和感を感じながらも女を追いかけた。何故だろう。

 

何故か自分が今宮城県に居ることに不自然さしか感じない。

女が角を曲がって見えなくなった。

慌てて追うと曲がった先で女はアドベントビーストに襲われていた。

 

「ったく、仕方ないな。KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身して二体のピラニア型ビースト、レットミニオンに対峙する。

何故かチンピラみたいな喧嘩殺法ばかりでまるで歯応えなく倒せた。

 

「大丈夫か?」

 

アーマーを解除して女に振り返る。

よく見ると驚いたようにくりくりした碧い瞳が可愛らしい。

背も織斑妹よりないし、化粧っ気もないが、上手く言えないがとても可愛いと、蓮は思った。

 

(もしかして自分はこんな女がタイプなのか?)

 

そう思った瞬間。蓮の頭は霞が晴れたようにクリアになった。

バラバラだった記憶のピースが繋がり、

この世界が現実でもベンタラでもなく、夢だと理解した。

目の前の彼女の服が地味な黒い服から白のワンピースに薄手の瞳の色と同じカーディガンに変わっている。

 

「レン、一つだけ、お願いがあるの。」

 

彼女は上目遣いに蓮の目を真っ直ぐ見つめながら近づいて来た。

 

「今から一つだけ質問をするわ。

絶対に嘘をつかないで真実だけで答えて。」

 

何よりも綺麗な碧い目が真っ直ぐこちらを見つめている。

あの夜もそうだった。だからこそ分かる。

これは俺の虚妄だ。

 

「エリー。」

 

蓮は脇のホルスターからスタームルガーセキュリティシックスを取り出す。

エリーが動じた様子はない。

 

「お前は、俺が命に代えても眠らせ続けさせない。」

 

パン!こめかみに銃口を押し当て引き金を引く。

撒き散らされた脳漿を視界の端に捉えながらやたら近くで聞こえる発車ベルの方に向かって力なく倒れた。

 

 

 

4

目覚ましを止めてベットから出る。

割とはっきりした頭を覚め切らせる為にカーテンを開けて朝日を浴びた。

 

『おはようございますレン様。今朝はスッキリ目覚めましたね。』

 

「適度なレム睡眠のおかげでな。今日はオルコットと試合だったな。」

 

『はい。黒翔の最終確認などは?』

 

「要らない。キリエライトと藤丸が整備したんだぞ?最高に決まってる。」

 

 

 

5

亡国機業 。

組織の指針を決める幹部会と実働部隊に分かれている以外、目的、人数、その他一切不明。

第二次大戦前から存在したとされており、どれほどかは分からないが昔から裏社会を兵器産業やテレ支援で牛耳って来たとされる組織だ。

 

今、その実働部隊、モノクロームアバターは壊滅的打撃を受けていた。

突如として現れた無数のレイヨウ型の怪人による襲撃が各基地で同時多発的に起こり、特に隊長のスコール・ミューゼルのいた基地は仮面ライダーによる襲撃を受けていた。

 

「おら、何やられとるんや!

さっさと立て!まだ敵はおるやろ!」

 

仮面契約者螺旋(カメンライダースピアー)は近くに倒れていたマガゼールを無理やり立たせると再び敵に、ISアラクネを駆るエージェントオータムに向かっていった。

 

「この角野郎!」

 

口汚く吐き捨てるとオータムはアラクネのアームから無数のレーザーを飛ばす。

 

「痛、痛!お前ら俺を守らんか!」

 

迂闊に近付けなくなったスピアーは近くにいたイガゼールの首根っこを掴むと無理矢理盾にしながら接近して、そのままイガゼールを踏み台にしてオータムの脳天に踵落としを食らわす。

 

「テメェよくも乙女の頭蓋を足蹴にしやがったなぁ!」

 

「お前のどこが乙女やねん!

眼科行ってからお前ん家の鏡全部買い換えてこい!」

 

<SPIN VENT>

 

螺旋状の武器、ガゼルスタップを装備し、殴りかかるスピアー。

しかしそれより早くオータムに何者かのビームライフルが打ち込まれた。

背後の壁を破りながら仰向けに倒れるオータム。

 

「なんやお前。居ったんならもっと早よ手ぇ貸さんかい。」

 

そんなスピアーの軽口を無視してオータムにライフルを撃ち続けるのはエム、本来なら亡国機業を裏切れない筈のIS乗りだ。

 

「お疲れ様エム君。啓長君もご苦労、先に戻っていていいぞ。」

 

「へい。おいエム。俺の邪魔さえせんかったら俺はなんも言わん。

せやけど、先輩に舐めた口聞いたらリンチにしたるからそのつもりでいろ、ええな?」

 

そう言うとスピアーは鏡を通って撤退していった。

 

「さて、エム君。改めて、よくぞ我等を手引きしてくれた。

約束通り、織斑千冬、三春、一夏と決着をつけるための然るべき場所、然るべき時、然るべき力を君に授けると約束しよう。」

 

「ただし報酬として、だろう?」

 

「もちろんだ。君はさ折角手頃なハエ叩きを手に入れていて尚且つ、ブンブンブンブン目の前にハエが飛んでいたら使うだろう?

それにどちらにせよ、君ほどのIS乗りとはいえ我々のバックアップが無ければ全ての亡国の追っ手を倒すのは無理なんじゃないか?」

 

「チッ!」

 

底の見えん男だ。しかも今まで見て来た中で一番に。

エムは目の前の背の低い白人に篠ノ之箒にはサイモンズと、山田真耶にはレイモンド、リッチー・プレストンにはウォルター・コナーズと、ブラッド・バレットにはチャーリーと名乗った男、人間に擬態したカブトガニのような怪人、ゼイビアックスにそんな感想を抱いた。

 

 

 

6

背後から派手な爆音が聞こえた恐らく向こうはこちらが有利だろう。

 

「相変わらず容赦なしだねエムちゃんは。」

 

<STEAL VENT>

 

仮面ライダーストライクは対峙するスコール・ミューゼルのIS、ゴルデンドーンから炎の鞭、プロミネンスをカードの力で奪取すると今まで避けに徹していたのから転じて一気に攻め立てた。

 

両手、両足とランダムに四肢を狙いながら三次元的に飛び跳ね翻弄する。

その戦闘スタイルはさながら獲物を食らわんとするコブラだ。

しかしスコールもモノクロームアバターのリーダー、そう簡単には殺られない。

炎の球、ソリッド・フレアを巧みに操り、一撃一撃を確実に防御していく。

 

「火の妖精が随分肉体労働に慣れてるね。」

 

「蛇使いの癖に良い様に使われてる奴が言うかしら?」

 

「なんでも良いよ、僕の立場とか。

そんな物より君は、エージェントオータムの心配をした方がいいんじゃないかな?」

 

「!?」

 

一瞬の動揺をストライクは見逃さなかった。素早く杖型のバイザー、牙召杖(がしょうじょう)ベノバイザーにカードをベントイン。

 

<ATTACK VENT>

 

契約ビースト、ベノスネーカーを召喚し、連帯でお互いの隙をカバーしながらスコールをさっきまでエム達が戦っていた方に追い立てる。

遂にスコールの左腕が、ベノスネーカーの強酸を浴びて溶けた。

中から機械の骨格が露出する。

スコールを背後の壁ごと蹴り潰しながらストライクは独り言ちた。

 

「やっぱり。資料の写真の年代と今の外見年齢が一致しないわけだ。

中だけ機械にして皮膚の部分は自分の細胞を培養したのかな?」

 

「なるほど、地球でもアンチエイジングはあるみたいだね。

随分ダイナミックだが。」

 

「ゼイビアックス将軍。」

 

ストライクは背後から現れた背の低い白人に深々と頭を下げた。

 

「楽にした前ストライク。

よくこれを持って来てくれた。」

 

二人が話す横でスコールとオータムが肩を寄せ合う。

 

「ごめんねオータム、見事にやられたわ。」

 

「へ、らしくねぇ事言うんじゃねぇよ。

とは言え、不味いな。エムのナノマシンは?」

 

「何故か作動しないのよ。

兎に角二人でどうにかするしかないみたいけど?」

 

「やってやるだけだ。」

 

二人は立ち上がると3人の戦力を分析した。

今は一番ゼイビアックスが無防備。

そう思って仕掛けようとした瞬間。

 

「シャアアアア!」

 

背後から現れたベノスネーカーが二人の上から酸を吐き出した! 

 

「スコール!」

 

スコールを突き飛ばしたオータムにのみ酸がかかる。

ISは全て溶け、完全に無防備なまま残された。

 

「ふん、美しい友情だね。」

 

いつの間にか接近していたストライクに裏拳で後方に吹っ飛ばされるオータム。

 

「オータム!ぐっ!」

 

続いてスコールをエムの援護を受けながらプロミネンスで拘束し、バイザーを取り出す。

 

「亡国機業も災難だな。

君なんかを使う羽目になるなんて。」

 

<FINAL VENT>

 

それはバイザーが無慈悲に発した処刑宣言。

ストライクの背後のベノスネーカーがスタンバイする。

 

「最高の最期(パレード)見せてくれるよね、スコール・ミューゼル。はっ!」

 

バク宙気味に飛び上がり、足先が、標的を背中がベノスネーカーの口の前に来た瞬間。

吐き出された毒の激流に押し出されたストライクはバタ足の様に執拗にスコールに連打キックを浴びせ、元からか、改造によって手に入れたかを分からなくする程五臓六腑を蹴り潰し過剰な圧のかかったゴルデンドーンのコアは余ったエネルギーが行き場を失い、大爆発を起こした。

爆風を一身に受けるストライク。

その顔は仮面の下で笑っていた。

 

「スコール・ミューゼル氏の名演、残念ながらこれにて永遠に閉幕!皆様!惜しみない拍手を!」

 

「テメェ、、、ッ!」

 

なんとか痛む身体を起き上がらせたオータムは愛する人の仇を打たんと進もうとするが、

 

「おーっと待った。オータム君。君には仕事が残っている。」

 

「!?」

 

「折角新入りのエム君がいる事だし、私に逆らうとどうなるか実演したいんだ。」

 

 

そう言うとゼイビアックスは怪人態に変身してオータムの首を掴み上げる。

 

「永遠にお休み、オータム、、、ミューゼル。」

 

「ーーーーーーーーーァァァァア!」

 

一瞬エムは我が耳を疑った。

今聞こえた音は基地の何処かで爆発が起きた音だと思ったからだ。

だが違う。今の音は人の、オータムの喉から出た苦悶の音だ。

 

人間の限界を超えた音を否応なく出させるほどの苦痛とは一体なんだ?

エムにとって緊張と無限の一瞬。

ゼイビアックスが人間態に戻りオータムを離した。

かに見えた。倒れたのはゼイビアックスの方だ。

そしてオータムはまるで石ころでも払う様にゼイビアックスを足でどかす。

 

「んん〜。背が高くなった気分だよ。

どうかなストライク。新しいボディは?」

 

「凄く、、、悪そうです。」

 

「そうか、では後で身長とスリーサイズを測るのを手伝ってくれ。

いつもの店でオーダーメイドする。」 

 

「かしこまりました。」

 

声も顔もオータムだ。だがしかし喋り方と振る舞い、そしてストライクとの接し方はまるで

 

「ゼイビアックス?」

 

「ああ、私達カーシュ人にとって地球人など小さな器に過ぎない。

君も私の予備のスーツにされたくなければ日々働きたまえ。」

 

期待してるよ。と肩を叩かれる。

生きた心地がしない。

 

「どうやら、私は遂に等々、悪魔に魂を売ったらしいな。」

 

自嘲気味に笑えばいいのか本気でただ怯えればいいのか分からない。

ただ一つ確かなのは、何があってもヘマだけはしてはいけない事だけだった。




ケイタ(裏声)「辞めてリッチー!ファイナルベントの打ち合いなんて!そんな事したらウイングナイトにベントされちゃうよ!
次回、インサイザー死す。デュエルスタンバイ!」

セシリア「何適当なパロディをしてるんですか真面目にやりなさい!」

ケイタ「痛い痛い!叩く事ないじゃん!」

マシュ「じ、次回infinite DRAGON KNIGHT!」

セシリア「踊りなさい!」

蓮「上等だ!」

三春「ちょこまか逃げるな!」

ケイタ「避けてんだよ!」

心愛「一夏ちゃんが拐われた!」

トラスト「君の相手は私だ!」

ブレード「どけ!」

ドラゴンナイト「あれが、ベント?」

マシュ「次回Dragon against Dark wingその6!」

セシリア「その欲望、解放なさい?」


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Dragon against Dark wing その6

ケイタ「さてついに決定戦当日か、まあまあ緊張するな。」

千冬「緊張ごときで試合開始が伸びたり、とても観てられないような試合をするなよ?」

ケイタ「う、は、はい。」

簪「ケイタ君なら平気。」

本音「頑張ってあみしー!パフェかかってるから!」

ケイタ「ここまで期待されたら引けねえか。
かなり長くなりましたが、それではどうぞ!」

(OP Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

カチコチと秒針の進む音だけが響いている。

ISスーツに着替えた連は右手の薬指にはめた金の三連リング、待機状態の打鉄黒翔を撫でる。

 

『蓮様。そろそろお願いします。』

 

「よし、サード、イニシエートコアアクセスシークエンス発動。黒翔に繋げ。」

 

『了解です、、、シンクロ完了。着身許可を。』

 

「バーチャルブーストフォンメディック着身。

外部からの解析からクラック、通信以外のあらゆるアクセスのブロックを要求する。」

 

『了解。メディック着身。』

 

蓮の眼前に指輪から映し出されたサードの立体映像がメディックを着身する。

 

『メディック着身完了。準備万端、いつでも行けます。』

 

「よし、ショータイムだ。」

 

 

 

2

「あら。逃げずに来ましたのね。」

 

反対側のゲートから自分とほぼ同時に現れた蓮にセシリアは少し驚いた。

本気でどうせ尻尾巻いて逃げると思っていたからだ。

 

「無論だ。あれだよ。サムライに二言無しだ。」

 

軽口を交わすと同時にセシリアは青いレーザーライフル スターライトmkⅢとレーザービットを二機を展開し、

蓮は黒いマント型の防具『覇止』を装着し、鼠色の槍剣『サムライブレイド002』を腰にマウントした。

 

「土下座して詫びるならば奴隷としてこき使う程度で勘弁してあげましたのに、残念ですわ。」

 

「言ってろ。ここからはあれだぞ?

『抜きな!どっちが早いか試そうぜ?』ってやつだ!」

 

姿勢をガクンと下げ、サムライブレイドに手をかけ、居合斬りのような構えを取る。

レーザーを切ってそのままの勢いで斬りかかってくるつもりだろう。

やはり所詮は男。突っ込むしか能が無いクズ。

 

せっかくの日本でのデビュー戦。

一撃で決めるよりももっと華々しい勝ち方をしたかったが男にエンターテイメント的且つ高貴な思考を理解させるだけ時間の無駄か。

 

そんな事を考える余裕はある。

がしかしだからと言っていたずらに勝負を長引かすほどセシリアは暇ではない。

 

「踊りなさい!わたくしとブルーティアーズの奏でるワルツで!」

 

上昇しmkⅢを構え照準を合わせる。

しかし何故か打鉄黒翔を鎧った蓮を捕捉できない。

代わりに移ったのは丸めた布の塊のような何かだ。

 

あれは何だ?

一瞬動きを止めた瞬間、まるで工事現場で使うような鉄球がぶつかった様な衝撃がセシリアの体全身を襲った。

 

「ガァ!」

 

肺の中の空気が一気に吐き出される。

なんとか息を吸おうとするがそれより先になぜか地面が目に飛び込んでくる。

 

「悪いが、俺はPop派だ。」

 

声は前から聴こえてきたが、蓮の後頭部は目の前に見える。

 

(まさかISでタックルからの投技を!?)

 

気付いた時にはもう遅い。

セシリアのブルーティアーズのような遠距離主体のISは基本的に空中から攻撃する。

 

つまりそこから投げられるという事はどうしても強烈なGがかかるため普通に投げられるよりも強い衝撃が襲うのだ。

 

背中から地面に叩きつけられまたしても肺の中が空になる。

息が出来ない。たったひとつそれを理解した途端にセシリアはその場から逃げ出したくなった。

 

当然だろう。あらゆる生物に呼吸が必要不可欠。

切っても切れない最大の弱点なのだ。

そこを突かれてしまえば人間なんてのはひどく脆い。

一般人なら可哀想に思ってそこまでで辞めるだろう。

 

「まだだ。」

 

しかしそれと同じようにわざわざ追い詰めた獲物を逃がしてやる狩人が居るはずもない。

蓮はセシリアを無理矢理立たせると顔面に拳を叩き込む。

 

それでも何とかあえて初めから展開していなかったビット四機を展開しようとするが、蓮も打鉄黒翔唯一の遠距離装備のレーザー標準付きハンドガン、サムライエッジliv004を展開してビットを四機全て実体化仕切る前に物理弾で貫き実体化を阻害する。

 

「(さっき殴ったのは距離を取って銃に切り替える為!?)ガンマンですか!」

 

「言ってなかったか?荒野の七人を見て育った。」

 

そしてサムライエッジをトンファーのように構えると大ぶりなパンチ主体のスタイルに変え巧みにフェイントを使い、強烈な右フックを何発も浴びせてくる。

 

しかしセシリアもやられっぱなしではない。

ブルーティアーズ唯一の近接武器ショートブレードのインターセプターを展開して蓮の右の一の腕を切りつけた。

 

さっきから何度も頭を殴られたせいで、呼吸もまともに出来ないまま激しい運動を繰り返したり叫んだせいでフラフラだったが、何とか当たった。

元々スピードを出して重視して作られた黒翔はあまり装甲が硬くない。

 

すぐに絶対防御が発動する。

まあまあ持ってかれた。

そう思った蓮はサムライエッジを構え直して一歩下がる。

 

「見上げた根性だな。堕ちるとこまで堕ちても国家代表候補生ってわけか。

その努力と根性は買うが、それ以外は断じて認めない。」

 

器用にインターセプターだけを撃ち落としてから浮遊したままになっていたレーザービットを破壊する。

 

「ま、ける、訳には、、私が、、。女が男に負けるなんて、、。」

 

ガクン!方膝をつきながらもその視線だけは蓮に、倒すべき敵に向けられ続けている。

 

「一週間前、売り言葉に買い言葉でお前を罵った事は謝罪しよう。

だがこれだけは言わせてもらう。

頭蓋骨一つも砕いた事の無いど素人が殺し合いに男だ、女だ持ち込んでイキってんじゃねぇ!」

 

ガシリ。蓮の両足が頭を掴む。これが敗北。

単純な力、速さだけじゃ無い。圧倒的な経験の差と手札の豊富さ。

そして、あの冷ややかな目の中にあった黒い光。

その全てが今までの自分を悉く否定していく。

 

これが真の全力を持って叩き潰される感覚か。

案外悪く無い。不思議とセシリアは清々しい気分だった。

確かに女や男なんて関係ないかもしれない。

 

全力でぶつかって来られることがこんなにも清々しいなら全力でぶつかって行く事はどれだけ素晴らしいのだろうか?

 

すっ、と全身の力が抜けていく。浮遊感が気持ち良く感じられる。

豪快に放たれたスカイハイフランケンシュタイナーがセシリアの脳天を地面に叩きつける。

彼女が脳震盪で意識を手放すのと同時にブルーティアーズのシールドエネルギーが空になった。

 

 

 

3

ピットに戻ると織斑千冬が仁王立ちで立っていた。

ISに乗ってるせいで生徒(レン)教師(ちふゆ)を見下ろす奇妙な図が出来ている。

 

「文句があるなら投げ技、絞め技、関節技を禁止にするルールを作るんだな。」

 

「人の心を読まないでくれますか?織斑先生。」

 

ISを解除して降り立つ蓮。これでもまだ蓮の方が目線が高い。

 

「、、まぁいい。実際にそんなルールは無いし、

お前を罰する理由はないが、人殺しになりたく無かったらフランケンシュタイナーのような技は控えるんだな。」

 

「素直に問題起こすなって言ってくださいよ。

その言い方じゃもう既に人殺しになってる奴には通じませんよ?」

 

「え?」

 

千冬は振り向いて驚いた。

蓮の目が異様だったからだ。

まるで有りっ丈の絶望を無理矢理光で形を整えた様な直ぐにでも決壊しそうなどす黒い瞳をしている。

今にもタールのような涙が流れるんじゃないかと本気で疑う程だ。

 

「じゃ、自分はクラス代表辞退させてもらうんで。」

 

あの戦い方は初見にしか通じませんから。

そう呟くと蓮は素早く制服を羽織って去って行った。

 

 

 

4

「ISとフォンブレイバーの連動?」

 

控室にいたケイタと一夏は二機のフォンブレイバーからケイタと蓮のISの特筆事項について説明を受けていた。

 

『ああ、電脳空間専用のブーストフォンを着身する事でフォンブレイバーをISの補助AI化させる事で通常のISにない特殊機能を使える。

多少は外部から、キリエライト達のバックアップが必要だが。』

 

へぇー。と言いながらキーホルダー型の待機状態の打鉄赤龍をまじまじと見るケイタ。

 

「ゼロワンも同じこと出来るの?」

 

『更新すればな。因みに原理自体はファイブの暴走と俺の離反を受けて無期限凍結になった人工衛星制御の為のフォンブレイバー専用の着身シュミレーターと同じだ。』

 

「じゃあISより先にその副産物のフォンブレイバーの方が先に宇宙に行ってたかもしれないんだ?」

 

『皮肉な話な。』

 

『兎に角ケイタ、アクセス許可を。』

 

「オッケ、頼むぜ。」

 

『イニシエートコアアクセスシークエンス発動!

IS打鉄赤龍とシンクロする。、、、シンクロ完了。

バーチャルブーストフォングラインダーの着身許可を。』

 

「グラインダー、着身!」

 

ケイタの眼前にセブンの立体映像が現れ、いつも通りもたつきながらグラインダーを着身していく。

 

『グラインダー着身完了!

これで私とケイタの動きは連動する様になった。

ケイタ、君が明確に戦いをイメージしてくれれば操縦はある程度私が肩代わりしたり補助したり出来る。行けるか?』

 

「勿論、もし負けたら昨日蓮に無理矢理タイマンはらされた野良ビーストがかわいそうだ。」

 

『ああ、、あいつか。』

 

『一体何が?』

 

「深く聞かないどくよ?」

 

『ん?一夏、山田真耶が来た。俺をしまえ。』

 

カメラ特化のブーストフォン、シーカーに監視をさせていたらしい。

一夏はゼロワンを腰のホルダーに、ケイタは立体映像を消した。

 

「網島君!あら、もう準備万端ですね。

織斑君ももう準備出来てるみたいですし、

アリーナの方にお願いします。」

 

「はい。じゃ、行ってきます。」

 

「待ってケイタ!勝ってよ?」

 

「勿論。俺の座右の銘、知ってるだろ?」

 

「最後には「タフなやつが勝つ!」」

 

がしりと一夏とグータッチを交わしたケイタは真っ直ぐにアリーナに向かっていった。

 

 

 

5

初めて立つアリーナは随分広く感じた。

客席には1組以外も、2、3年の人や教員もいるようだ。

 

「すげーギャラリー。」

 

『なんせ世界に3人しかいない男性IS操縦者同士の対戦だからな。』

 

視線を目の前の対戦相手に、IS白式を纏った三春に向ける。

 

「待ってたぜケイタ。戦う前に聞いておきたいことがある。」

 

「何?」

 

「蓮とセシリアの戦いを見てどう思った?」

 

「どうって、さあ?

あんまISの試合とか見ないから何とも言えないけど、強かったよな。」

 

「は?なんだよそのコメント!

蓮は女子の顔を遠慮なくぶん殴ったんだぞ?

良いわけねぇだろ!」

 

『、、男性操縦者は世界にたった3人しかいないんだからいつかは全員が通る道だぞ?』

 

「三春お前、それじゃ試合そのものが成り立たないぞ?」

 

「関係あるか!男ならどんな理由があっても女を傷つけちゃいけない!

女は男に守られてるもんだからな!」

 

そう言うと三春は近接ブレード雪片弐型を展開して斬りかかって来る。

 

『来るぞ!』

 

(よし、ストライクベント!)

 

ISの武器の具現化には物が勝手に出現する様子、

或いは展開する武器をイメージする必要がある。

その点ケイタはほぼ毎日カードをセットするだけで武器が出現する事オーバーテクノロジーを散々見ている為、簡単にイメージが出来た。

左手に小型の盾が、右手に大型のクローが、二つ合わせてIS用ブーストフォン006、グラインダーが装備される。左の盾が三春の剣を受け止める。

 

「じゃあお前は相手が女なら絶対手加減するのか?」

 

「勿論だ!」

 

言ってることが無茶苦茶だ。

まだ目に見える人間、ライダー全てに襲いかかるビーストの方がまだ解りやすい分マシに思えた。

 

「この矛盾野郎!」

 

「俺は盾なんて使わない!」

 

《、、、何と無く、一夏が人を見る目があるのがわかった気がする。》

 

この兄に少しでも理解を示そうと思えば観察眼は随分鍛えられるんだろうな、とセブンは電子頭脳の片隅で参照用の思考を表層化させた。

 

 

 

6

「いやー、お強いですね網島君も織斑君も。」

 

「二人とも元々運動は得意ですし。」

 

三春兄は剣道得意で、ケイタはバスケ好きなんです。と一夏。

三春は剣道に熱心だった。

周り曰く、一夏程の才能は無かったが熱意でそれを超えていたらしい。

 

確かにあれはいっそ強迫観念さえあったなと、病み上がりの自分を剣道の練習に連れて行こうとしてケイタと大喧嘩になっていたのを思い出した。

ついでに笑い話のつもりにこの話をゼロワンにしたら

 

『お前の兄は圏外だ。』

 

とか言われたのも思い出した。

 

「なるほど、道理で網島君のフェイントのかけ方がバスケみたいな筈です。」

 

確かによく見たらバスケのカットみたいな動きで背後に回り込んで肘打ちをきめている。

 

「今絶対ケイタ、これ得意かも!って言いました。」

 

「そうなんですか?」

 

「調子良い時ああやって左手をグーパーする癖があるんです。」

 

「へぇ、なんだか話を聴いてると織斑さんって織斑君、網島君と、あと織斑先生合わせて4兄弟みたいですね。」

 

「あとケイタの妹の可憐ちゃん合わせて5姉弟妹です。」

 

大家族ですねー。と呑気に返す真耶。

しかし次の瞬間、その表情が一瞬で硬くなった。

 

「織斑さん、何があってもここにいて下さいね。

私はちょっと済ませておきたい用事があったので。」

 

そう言うと真耶はアリーナのシャワー室に入り、内側から鍵をかける。

 

「どなたか知りませんけど覚悟して下さいね。カメンライダー!」

 

セイレーン に変身して鏡に飛び込んでいった。

 

 

 

7

『どうしましたレン様?』

 

「誰かがベンタラに行った。間違いない。

サード、シーカー着身、付近のカメラに目隠しをしろ。」

 

『了解です。シーカー着身。』

 

蓮の上着から現れたブーストフォン、シーカーが変形し、サードがそれを四肢と頭部に着身。

 

『シーカー着身完了。

これより周囲のカメラにダミー映像を流させます。』

 

「頼むぞ、KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身した蓮は全身が映る鏡がわりになるガラスばりの窓に飛び込んでベンタラに入った。

アドベントサイクルを駆り、敵の場所を目指す。

 

「こっちの廃倉庫のあたりだ。間違いない。」

 

アドベントサイクルを降りたウイングナイトはバイザーを構えてあたりを警戒する。

 

「あら、あなたでしたかウイングナイトさん。」

 

振り返るとそこには同じ様にバイザーを構えたセイレーンがいた。

 

「モンスターかと思ったが違ったか。

じゃあな。気を付けて帰れよ。」

 

「ふふ、何腑抜けた事言ってるんですか?」

 

<SWORD VENT>

 

一瞬で距離を詰めウイングスラッシャーで首をかき切ろうとするセイレーン。

振り向きざまにバイザーで受けるウイングナイト。

 

「あなたはバラバラに切り分けて晒します。

そうすればみんな殺し合いを怖がって辞める筈です。」

 

「結果俺とお前が殺し合ってもいいと?」

 

「ええ。さあ席について下さい。

最期の特別課外授業ですよ?」

 

「ったく。モテる男は辛いぜ。」

 

 

 

8

どちらに依怙贔屓するまでも無くケイタが優勢だ。

飛行ジャンプを織り交ぜながら確実にダメージを与えていく。

一方で三春は完全に地に足をつけた剣道スタイルで戦っておりケイタのいい的にされていた。

完全なる遠距離特化のISが相手なら全方位からの狙撃を防げると言う点で有利な策だが、白式の様な近接特化のISではあまりに不利だ。

 

「くそう!くそう!くそう!俺は、俺は守る!

俺は全部を守るんだ!

何があったって守らなきゃダメなんだ!

だから強くなきゃダメなんだ!」

 

瞬間、ヤケクソ気味に放った三春の一閃がケイタの左腕の盾を掠めた。

ピシッと音がして真っ二つに割れて落ちる。

 

「ッ!?」

 

何かやばい!そう感じたケイタは慌てて距離を取った。

 

「? 雪片弐型の刀身が光ってる?」

 

「?、、、は、ははは!そうか、そうゆうことか!

これが、これが俺のみんなを守る力か!」

 

『違うな、あれは織斑千冬の力、織斑千冬の封印された専用機の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)零落白夜だ。』

 

単一仕様能力とはISとパイロットの成長によって使えるようになる固有スキルで、その中身は千差万別。

その中でも千冬がかつて専用機暮桜で使っていた零落白夜はIS最大の防御、絶対防御さえ用意に貫いた文字道理必殺剣だ。

 

「じゃあ俺下手したら左手が竹割ったみたいになってたってことかよ!?」

 

『盾があって助かったな。だが悠長に構えていられないな。』

 

振るわれる零落白夜。

間違えても受けようなんて思ってはいけない。

あの刃で斬られる=即死だ。

 

「なんかあれに弱点とかないのかよ!?」

 

『そうだな、恐ろしく燃費が悪いと聞いたことがある。』

 

「待つのは却下。

あれから逃げ続けるとか生きた心地がしない!」

 

『それなら織斑三春そのものの弱点を突くしかないぞ?』

 

二閃、三閃。避ける動作の半分をセブンに任せ、暫し思考に入る。

 

(三春の弱点、、IS初心者?いやそれは俺もだ。

じゃあ遠距離装備がない?俺だって市売品のショットガンしか積んでない。

じゃあ、動きは?剣道の動きそのままだけど、

どこかに隙は、、、違う!狙うは、下だ!)

 

一か八か思い切り三春との距離を詰め一瞬動きを止めた所に渾身の頭突きをかます!

 

『な!血迷ったか?』

 

「いや、こっからだ!」

 

加速で一気に真上に上がり振動を発生させたクローを地面に振り下ろす。

一気に蜘蛛の巣状のヒビが地面に走り足場が崩れ三春は立つこともままならなくなった。

 

『な、なんて大胆な、、。』

 

「弁償はアンカーの給料から引いといて。」

 

『足りるか!』

 

なんとか地面から脱出した三春しかし次の瞬間何かに頭を掴まれ掴み上げられた。

 

「アイハブユー、三春。お前の敗因は」

 

『振動はこっちで加減する。思い切りやれ。』

 

「ワンパターン過ぎ。」

 

強烈な振動が三春の頭に無茶苦茶に響く。

三春は意識を手放した。

 

 

 

9

「やっと、フィニッシュ、、。」

 

なんとか今日のノルマを終えた簪は一息つく間も無く着替えて整備室を後にした。

網島ケイタの試合を見るためだ。

腕時計を見ると意外と時間に余裕がある。

シャワーでも浴びてからの方がいいかな?

そう思って寮に寄ろうとした時。

 

「どいてどいてどいて!ヴェアアアアアアアア!」

 

、、人がぶつかって来た。

紙束が舞う音と顔面を何か柔らかい物で抑えられるのを感じながら最近はよく人にぶつかるなあ。

なんて呑気に思った。

 

「痛た、、あ!ごめんね!私は保登心愛!よろしくね!」

 

変な奴だ。と簪は思った。理由は二つ。

変じゃない人間はまず人にぶつかったら謝った後に馬乗りになったまま自己紹介したりしない。

 

次に会ったばかりだが、この人をよく知る人ならこの状況をまああいつならやりかねんな。

で済ませてしまいそうだということが直感で分かったからだ。

 

「私は簪。どいて?」

 

「あ、ごめんね!じゃあ急ぐから!」

 

そう言うと撒き散らした紙を一枚も拾うことなく心愛は走り去っていった。

 

(アリーナの方に行ったみたいだし、届けてあげるか。)

 

 

 

10

おめでとう、お疲れ様ケイタ。

心でそう呟くと一夏はロッカーを開けてタオルなんかを取り出した。

 

「ま、間に合わなかったぁー!」

 

「あ、心愛ちゃん。遅かったね。」

 

「先生にケイタ君に渡すプリントを頼まれちゃって。」

 

「、、手ぶらだけど?」

 

「え?、、、ヴェアア!やっちゃったあ!」

 

多分簪ちゃんとぶつかった時だあ!

そう行って頭を抱える心愛。

 

「ひとっ走り取って来ます!」

 

「必要ない。」

 

「ヴェア!って簪ちゃん。」

 

「これ落し物。」

 

「ありがとう簪ちゃん!」

 

「ふふ。私からもありがとうね。」

 

「別に、、。」

 

簪が少し上目遣いに一夏を見上げた時、

ロッカーの中から銀のアーマーと黒いアンダースーツの腕が一夏の首根っこを掴んだ。

 

「な!」

 

「え、何!?」

 

「仮面ライダー!?」

 

キュイン。二人が反応する間も無く、一夏はベンタラに連れ込まれた。

 

カツン。と乾いた音を立ててゼロワンが床に落ちる。

 

「ほう、やはり私の占いは当たるな。」

 

「!?」

 

「あ!海之ちゃん!大変だよ!一夏ちゃんが拐われた!」

 

「知ってる。仮面ライダーインサイザーだろ?」

 

「そうなの?でもどうしよう!どうやって助けたら!」

 

「君たちは引っ込んでろ。」

 

「、、、手塚さん?」

 

「ここからは私達仮面ライダーのターンだ。」

 

そう言って海之はスティングのデッキを二人に見せた。

 

 

 

11

「お疲れ網島。」

 

ピットに戻ると何故か一夏でも真耶でもなく海之、簪、心愛がケイタを迎えた。

 

「山田先生は?」

 

「用事があるって言ってさっき出て行った。」

 

「前から思ってたけどこの学校の先生の採用基準おかしいだろ。」

 

少なくともケイタには出席簿で頭蓋を破壊しようとする人や下着姿でIS操縦の授業をやる人間がまともとは思えない。

 

「本当にバスケをしていただけか?素人には見えなかったぞ?」

 

「まぁ蓮に稽古してもらったしね。」

 

正確には蓮はアドバイスするだけで戦ったのは今亡きアドベントビースト達とだが。

 

「そうか。だとすれば秋山は中々の名師だな。

仮面ライダーとしての。」

 

一瞬だった。海之の目から喜と楽の感情が消え失せる。

 

「網島。君は祖国や家族を愛しているか?」

 

、、意味がわからない。

不思議ちゃんって感じだしなんかクラスで浮いてそうな人だとは思っていたが余りにも唐突で思わず鸚鵡返しで聞き返す。

もし仮にある程度仲良くなる相手にこれなら簪にあんなことを言った自分はクソ野朗だったと今になって後悔する。

これはしんどい。

 

「言い方が悪かったようだな。

祖国や家族を想うなら惜しみなく命を張ってアドベントビーストを倒すと誓えるなら戦友として協力してあげようと言っているんだ。」

 

しゅ!紅色のアドベントデッキを取り出す。

問答無用という訳ではなさそうだが、

もし返答を間違えればその限りではない。

ケイタはライダーの中では一番の新入り。

まだ自分のカードを把握してるかも微妙なのだ。

そして背後には人質になり得る人が二人も。

 

「(まずい。何か、何か手塚さんの気を逸らすような何かは、、)あ!ライダー同士が戦ってる!」

 

「なにぃ!?話は後だ、手伝え!仮面ライダー!」

 

構えを取り出現したベルトにセットし仮面ライダースティングに変身した。

 

「網島!お前も早く!」

 

そう言って鏡の中に飛び込んで行くスティング。

ケイタ的には「あ!UFO!」ぐらいのつもりだったのだが思いのほか間に受けてしまったようだ。

 

『ケイタ、今のほんとか?』

 

「いやまさか。」

 

どうしたものか。行ったら行ったで嘘をついたなとファイナルベントをくらうしここに居たら居たで嘘をついたなと戻ったと同時にファイナルベントをくらいそうだ。

 

「でも行かないと話もなにもあったもんじゃないし行くか。」

 

ロッカーから自分のアドベントデッキを取り出し扉の内側についた鏡に向けて構えを取る。

 

「待ってケイタ君!」

 

「?なんだよ?」

 

「一夏って人が手塚さんとは違うライダーに拐われた。」

 

「、、、簪さん。その手の冗談はクソつまんないからやめた方がいいぜ?」

 

『いや、事実だ。』

 

独りでにアクティブモードに変形したゼロワンが心愛の肩に飛び乗る。

 

「、、根拠は?」

 

『一夏は間違っても意図的にでなければ俺を置いて行ったりしない。』

 

「よし来た。任しとけ、どんなライダーだった?」

 

「インサイドみたいな感じの、、」

 

「インサイザー。」

 

「そうそれ!」

 

「インサイザー?、、前に蓮が言ってた蟹の男か!よし行ってくるぜ。」

 

「待って。」

 

「なんだよ?」

 

「私も行く。」

 

今日は、というかケイタに初めて会ったあの日から持ち歩いていた白虎のライダーズクレストのついた青いアドベントデッキ、アックスのデッキを取り出す。

 

「!」

 

「簪ちゃんも仮面ライダーだったの!?」

 

「敵じゃない。協力させて。」

 

「、、なんで?」

 

「特に理由はない。」

 

『理由がない?意味不明だ。』

 

「、、わかった。手伝ってくれ。」

 

『網島ケイタ!?』

 

「この際、手段は選ばない。

なんとしても一夏を取り戻す。」

 

「二人とも、無茶しないでね?」

 

「大丈夫。なんとかしてくる。」

 

「無事に戻る。」

 

心愛とゼロワンが見守るなか、

二人はそれぞれ鏡にデッキを構え、

簪はデッキを持った右手を左手を×の字に交差させ、

左手を手の甲を見せるように右上に、

右手をバックルのスロット前に構え、

くるっと手のひらを見せるように返す。

ケイタもいつもの構えを取り

 

「「カメンライダー!」」

 

ライダーの鎧をまとった二人はアドベントサイクルに乗り、

インサイザーを探した。

 

 

 

12

「全く、三春のやつは何をしているのだ!」

 

あんな奇を衒っただけの攻撃に倒されよって!

箒は怒り心頭だった。

三春が負けたこともケイタが勝ったことも蓮が勝ったことも気に食わなかったし、2人のアウトローな戦法が嫌いだったからだ。

 

「あー、イライラする。

なぜあんな奴らに一夏は誑かされたのだ!?」

 

そして女尊男卑の風潮的に一夏が両手に花みたいに言われているのも箒のイライラの原因だった。

 

「どいつもこいつも一夏に余計なゴテゴテしたものを押し付けよって!」

 

箒に言わせれば今の一夏は雁字搦めにされた上に籠に入れられているようなものだ。

様々な要素が箒のよく知る一夏をくすませていた。

そしてそのくすみ代表のケイタに敗北を喫した三春にガツンと言ってやろうと思い、控え室に向かっているのだ。

 

「大体剣を持ったからには何があろうと剣で戦うべきであって、、」

 

ぶつぶつと呪詛のような独り言を呟きながら歩いていると偶々箒の目にベンタラで何かを探すドラゴンナイトと知らない虎のような白と青のごつい鎧のライダー、アックスを見つけた。

 

「ふん、群れていないと碌にベンタラも歩けん弱味噌め!

引導を渡してやる!仮面ライダァ!」

 

ブレードに変身してベンタラに突入した箒はすぐさまソードベントでガルドセイバーを構える。

 

(まずはあの虎だ。

網島と群れるような奴だし弱いことに違いないが、

後までグダグダ残られても面倒だ。先に虎から殺る。)

 

背後からアックスに斬りかかろうとした時だ。

 

<STRIKE VENT>

 

ブレードのアーマーにメタルホーンの打撃が炸裂した。

 

「!?」

 

「ブレード!?それに、あんたは?」

 

「私は仮面ライダートラスト。

君達は行きたまえ。君達には君達の戦いがあるのだろう?

ならばこの場は任せろ。」

 

「よくわかんないけど、

助けてくれてあんがとな!やられんなよ!」

 

「、、恩にきる。」

 

短く返すと2人は一夏を探しに戻った。

 

「貴様は、貴様はいつも邪魔ばかり!どけ!」

 

「退かん!私は試練に勝つ!

それがブラット・バレットだ。

お前のような卑怯者だけは断じて許さない!」

 

剣と角が交差する。また一つ、戦いが始まった。

 

 

 

13

「ーー、っと。後はーーーーナイトが来るのを待つばかりだ。」

 

かちゃかちゃと鎖を弄るような音と男の声で一夏は目を覚ました。

 

「お、起きたか。なら丁度いいぜ。

ギャグボール噛ませてるから喋りにくいだろうけど、

ドラゴンナイトが来たら思い切り暴れるんだぜ?」

 

そう言ってオレンジ色の蟹のライダー、インサイザーは一夏の頭を乱暴に撫でた。

 

(?、、そうだ!私何かに首を掴まれて気を失ったんだ!

ゼロワンは、、後ろを確認しようと取り出した時に落としたんだ。)

 

取り敢えずもがいたり首を動かしてみてわかったが、

ここは倉庫で両手首と両足首はまとめられていて胴の部分を鎖で縛られて吊るされているらしい。

 

(ドラゴンナイトが来たら、てことは私は餌か。)

 

まさか人生で二回も餌として拉致られるとは、

私はピーチ姫か。

そんな場違いなことを考えつつもインサイザーを観察する。

退屈そうに1セント玉を指で弾いている。

人質さえいれば一方的にボコボコに出来ると思ってるらしい。

 

「で、捕まえたはいいけど、いつになったらドラゴンナイトは来るんだよ?」

 

つまらなそうにどこから持ってきたのか、

ソファーに寝転がったりウロウロしたり貧乏ゆすりをしだしたり兎に角落ち着かない。

 

「あーもう!いつになったらライダー来るんだよ!」

 

そう叫んだ瞬間インサイザーから見て左側の壁が砕け、

瓦礫と共にスティングが倒れこんできた。

続いてトラスト、ブレードも倉庫に入ってくる。

 

「一夏!?貴様、一夏に何をした!」

 

「はぁ?なんだっていいだろ!

ドラゴンナイトじゃないんなら消えろ!」

 

「ッ!私は網島より強い!なめるな!」

 

激昂してインサイザーに向かっていくブレード。

 

「待て!私との試合が先だ!」

 

それに続くトラスト。

 

「何人増えようと全てベントしてやる!」

 

さらに続くスティング。

玉突き事故のようにめちゃくちゃにぶつかりながら3人のライダーは怨嗟の声を上げながら角を、剣を、盾を交差させる。 

 

「、、、どいつもこいつも俺を無視しやがって!」

 

<STRIKE VENT>

 

無視されたことが気に食わなかったのか、

それともそれともくつろいでるの邪魔されたからか、

あるいはいつまでたってもドラゴンナイトが来ないからか。

 

おそらくは全部だろうインサイザーはシザースピンチを装備して丁度自分に背を向けていたスティングに殴りかかった。

 

派手な火花を散らして吹っ飛ぶスティング。

しかしすぐに立ち上がるとか彼女もカードをベントインした。

 

<COPY VENT>

 

シザースピンチをコピーして向かえうつ。

 

「くそ!しゃらくせえ!」

 

<ATTACK VENT>

 

ボルキャンサーをスティングの背後に召喚し

スティングを羽交い締めにした。

 

「お前らは俺の100万ドルの為にボコされてりゃいいんだよ!」

 

そう言ってスティングの首を挟み切ろうとした時。

 

<SWORD VENT>

 

視界の左から飛んで来た白い塊がインサイザーを吹っ飛ばした。

 

「なんだなんだ?レディに特等席まで用意して、

今からパーティか?まだ夜には早いぜ?」

 

一夏を見上げながら現れた白い塊、

セイレーンを吹っ飛ばした張本人はウイングランサーを装備したウイングナイトだ。

 

「ウイングナイト!?」

 

「丁度いい。そっちのアヒルちゃんもお前もまとめて相手してやるよ。」

 

せいぜい泡を吹かせてやるぜ。

仮面の下からでも分かるどう猛な笑みを浮かべながらウイングナイトは3人と一体に向かっていった。

 

 

 

14

一方でドラゴンナイトとアックスは迷いに迷っていた。

 

「あんちきしょうめ!一夏をどこに監禁した!?」

 

「待ってケイタくん、焦ったって見つからない!」

 

「わかってるけどさ!」

 

『ふむ、バッテリー切れになりたくなかったが仕方ない。

ケイタ。赤龍を部分展開して私にスピーカーを着身させてくれ。』

 

「ちょっと待って、変身したままで使えるの?

てゆうか、なんでISと喋ってるの?」

 

「気にしないで!それなら早速頼むぜセブン!」

 

『良し少し待ってくれ。バーチャルブーストフォンスピーカー着身!』

 

ドラゴンナイトの眼前にセブンとゴリラを模した青いブーストフォンスピーカーが現れる。

パーツ化したスピーカーを両足背中、

そしてヘッドフォンのようなパーツを頭部につけ、

 

『着身完了。ハイパーセンサーのマイクを増強、、、、、八時の方向に戦闘音!急げ!』

 

2人は走り出す。

セブンの言っていた通り八時の方向に進むにつれてだんだん打撃音や火花が散る音が聞こえてきた。

 

「あそこか!」

 

扉が内側からの衝撃で出っ張りが出来ている倉庫に入り込んだ。 

そこでは手前側でウイングナイト、セイレーン 、インサイザーにスティングの4人が奥側でブレードにトラストにスティングの3人とが、合計7人のライダーが入り乱れて戦っていた。

そしてその奥では一夏が鎖で吊るされている。

 

「一夏!じっとしてろよ!今下ろしてやる!」

 

一目散に駆け出すドラゴンナイト。

 

「やっと来た!ドラゴンナイトォ!」

 

スティングを振り払いインサイザーが背後からドラゴンナイトに掴みかかった。

 

「ぐっ!お前がインサイザーか!」

 

「黙って死ね!100万ドル!」

 

そのまま首を絞め落としにかかる。

下手に外せば首が折れる絞め方だ。

アックスが助け寄ろうとするがスティングが妨害する。

 

「ケイ、くっ!退いて!」

 

「そう言われて退く奴がいるものか。」

 

(畜生、こうなりゃ!)

 

部分展開していた赤龍のブースターを展開してインサイザーが下になるように飛び上がり急降下。

 

「グォ!」

 

僅かに力が緩んだ隙に腕を解いて顔面へハイキックを食らわし距離を取る。

 

<STRIKE VENT>

 

「ぶっ飛べ守銭奴!」

 

「くっ!」

 

<GUARD VENT>

 

ドラグクローの火炎球をギリギリ召喚出来た盾、シェルディフェンスで防ぐ。

が、硬さだけで吸収性は絶無らしい。

派手に吹っ飛ばされふらつきながら立ち上がる。

 

不味い。ドラゴンナイトは焦った。

図らずもインサイザーを人質の位置に近づけてしまった。

向こうもそれに気づいたらしい。

一夏に向かって走り出す。

ドラゴンナイトも後を追いかけ用とした時だ。

 

「ドラゴンナイト!背中を貸せ!」

 

セイレーンを吹っ飛ばしウイングナイトがかけて来た。

 

「背中?」

 

訳も分からず背中を丸めるとそれを踏み台にウイングナイトは天高く舞い上がり

 

<FINAL VENT>

 

素早くカードをベントイン。

飛来し、背中に合体したダークウイングと共に黒い矢と化したウイングナイトがインサイザーを貫いた。

そこにいた全ての人物の視線がインサイザーに注がれる。

 

「、、、はい?」

 

がくんと膝をつきながら今しがた最大の一撃を受けた胸を何度も弄るインサイザー。

そしてその肩から、胸から体全身が黒い粒子になって分解されていく。

そして、絶叫。命が軽い訳がない。全員が目が離せなかった。

 

「何でだよ!俺はまだ戦える!どうなってんだよ!?

こんなの、こんなのアンフェアだぁ!

、、やだぁ、いやだぁ!パパぁ!パパぁ!助けてよぉ!

誰か助けてくれぇ!」

 

パリーンと音を立ててインサイザーの鎧が砕け中から現れたのは余りに普通な青年だった。

多分街ですれ違ってもお互いに全く気に留めないんじゃないだろうか?

そんなことを考えてる間にインサイザーだった青年は黒い粒子になってデッキに吸い込まれていった。

コーンと高い音を立てて唯一残ったデッキが地面に落ちる。

 

「あれが、ベント?」

 

「おい、一体どうゆう事だ!?

負けたら体が霧散するなんて聞いてないぞ!

私は、私は聞いてない!」

 

狼狽しながら撤退するトラスト。

それを見送るとウイングナイトはインサイザーのデッキを拾い上げた。

 

「おい、蓮?今お前、、。」

 

「ドラゴンナイト、それからそこのニャンコ。

手を貸せ。後3人はちとキツい。」

 

「いや、何言ってんだよ?、、解ってんのか!

今お前は人1人殺したんだぞ!」

 

「ああ。素直なお前に感謝だ。」

 

「あの蟹野郎だって、人だぜ?

どんなにクソ野郎でも両親に爺ちゃん婆ちゃんや奥さんや子供がいたかもしれないし、居なくても大切な故郷があったりしたかもしれないんだぞ?」

 

「だったら何だよ?

残された奴が可哀想に思うならせっかくベンタラ経由でどこにでも行けるんだ。

遺族全員仲良くあの世に送ってやれば済む話だ。」

 

「人を殺しといて何だよその言い草ぁ!ふざけんな!」

 

ドラグクローがウイングナイトの顔面に、

ウイングランサーがドラゴンナイトの右脇腹に炸裂する。

ケイタの中の蓮が顔面を砕かれて崩れ去った。




千冬「時間も押してるからさっさとやるぞ。」

ケイタ「了解です!次回、infinite DRAGON KNIGHT!」

蓮「インサイザーをベントした。」

ケイタ「正気じゃねぇ!」

ケイタ?「蓮ばっか責めるなよ、一歩違えばインサイザーをベントしてたのはお前だ。」

一夏「人が消える噂?」

鈴音「久しぶりね2人とも」

千冬「貴様はまさか、鳴海荘吉の弟子か!?」

翔太郎「私立探偵の左翔太郎だ。」

アントライオンドーパント「漆黒のドーパント!?」

アックス「緑の仮面ライダー!?」

二色のライダー「いや、どっちもだ、俺たちはW(ダブル)

W「『さあ、お前の罪を数えろ!』」

本音「次回、Episode of jokers!」

簪「私が変身する!」


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Episode of jokers

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは、これを見て貰えば解ります。」

インサイザー(遺影)「」

ボルキャンサー(遺影)「」

スコール(遺影)「」

一夏「いや、合ってるけどもっと説明の仕方なかった?」

立香「こうして見るとこのss思ったよりバンバン人死ぬね。」

ケイタ「今回新たに墓標に名を刻むのは誰なのか。
さてさてどうなる第5話?」

一夏(やっぱケイタ疲れてる?)

(op WAKE YOU UP ケータイ捜査官7)


1

「間明君。新調したスーツが届いたのだが、どうかね?」

 

ベンタラのゼイビアックスの居城にて高価なレディーススーツ姿の女性オータム、、否、オータムの身体を奪ったゼイビアックスは鏡を見ながら背後の間明に問いかけた。

 

「お似合いですよ。

少なくとも変なスクール水着(アイエススーツ)よりは。」

 

間明はパソコンの画面から一切顔を上げないまま返事を返した。

 

「そうか、それは良かった。

私はちょっと網島ケイタ君に会ってくるよ。

その間にアックスをベントしないように残りのライダー達に伝えておいてくれ。」

 

「それはいいですが、何故アックスを?」

 

「奴はドラゴンナイトと組んで明確にウイングナイトと対立した。

ならばウイングナイトがドラゴンナイトをベントするまでドラゴンナイトの足枷になって貰おうという訳だ。

インサイザーとアビスがベントされた今、他のライダー達もたかが外れる頃だろう。」

 

「なるほど、しかしアビスが。

もう少し早くベントされると思ってました。

やったのはやはりオルタナティブですか?」

 

「彼女にはいい刺激になっただろう。

そうだ!この後ブラット君にもこのスーツを自慢してくるから夕飯はいつものレストランを予約しておいてくれ。」

 

「仰せのままに。」

 

ゼイビアックスが鏡を超えたのを確認すると間明は素早くレストランΑGITΩのホームページに飛びながら抜け殻のファイブで通話を始めた。

 

「やあドリュー君。僕だ。実は頼みたいことがあってね。

上手いことドラゴンナイトとアックスの仲を拗らせて欲しいんだ。

、、何?駒が足りない?そこらへんは大丈夫。

今から教える番号に電話して手頃なドーパントを二、三体見繕ってもらいな。

それじゃ、賞与期待してて。」

 

そう言って通話を切ると丁度沸いたお湯をカップ麺に注ぎながらほくそ笑んだ。

 

(あの蟹の次は君だよアックス。網島君たちのいい人柱になってもらう。)

 

 

 

2

整備室でプログラムの微調整を行いながら簪は深い溜息をついた。

なあなあな気持ちで、何となくでデッキを受け取った過去の自分をぶん殴りたくなる。

 

「戦わなければ、生き残れない。」

 

声に出してみる。

しかもそこから勝たなければいけないのが一番しんどい。

 

「けどやらないと。」

 

私もインサイザーの二の舞だ。

 

「大丈夫。今日みたいにやれば平気。」

 

 

 

3

ドラグクローがウイングナイトの顔面に、

ウイングランサーがドラゴンナイトの右脇腹に炸裂する。

ウイングナイトはよろけるように、

ドラゴンナイトは後ずさるように一歩後退した。

 

「もうお前は、戻れなくなったんだぞ?」

 

「今更だ。ライダーになるような奴は、

あんな怪しい奴にしか縋る当てがないような奴はみんなもう魂に致命傷を負ってる。

ベントしたって死体処理と何も変わらんさ!」

 

「まだ体も頭も生きてるなら罪を数えてやり直せる!

お前はそのたった一つのチャンスを永遠に奪った!」

 

拳と槍が火花を散らし、

凍てつくような冷徹と激しく熱い想いがドラグクローと

ウイングランサー越しに何度も激突した。

あくまで冷静なウイングナイトと烈火の如く激しく攻め立てるドラゴンナイト。

意外にも二人は拮抗していた。

それこそその戦いを背後で見守るアックス、セイレーン 、スティング、ブレード。

 

「ま、仕方ないですね。

わざわざ火中の栗を拾う必要もありませんし、

さっきの角の人に、そっちの剣のあなたは戦いが嫌になったみたいですし。」

 

「ッ!」

 

「それじゃあお先に失礼します。」

 

そう言うとセイレーン は翼を広げて飛び去って行った。

 

「お前はどうするブレード?」

 

「、、そう言うお前はどうするんだ?」

 

「帰る。最低限の目的は達成した。」

 

そう言ってスティングも近くにあった窓に飛び込んで地球に戻っていった。

その間にも佇むばかりの二人を差し置いて二人のナイトの戦いは苛烈を極めていた。

 

「巫山戯んなよ蓮!そんな言い方、

まるでお前がゾンビみたいな言い方じゃねぇか!」

 

「その解釈で間違ってないさ。

ドラゴンナイト、前にも言ったがお前はライダーになるべき人間じゃなかった。」

 

ダークバイザーを抜き右手に槍、

左手に剣のさながらケルト神話の輝く貌のディルムッドの様な構えだ。

はためくマントはどちらかといえばブリテンの騎士の様だが。

 

「ドラゴンナイト、引け。ベントされたいか?」

 

「お前こそ俺をベントしたいのか?」

 

それを合図に二人は飛びかかった。

ひらり、とウイングナイトのマントが蝙蝠の翼の様な形に変形する。

 

どうやらビーストと連帯して上と下から袋叩きにするつもりらしい。

 

「避けて!」

 

<FREEZE VENT>

 

叫びながらカードをベントインする。

ドラゴンナイトは恐るべき素直さで首を下げた。

その先にいたダークウイングに向けて戦斧型バイザー白召斧(びゃくしょうふ)デストバイザーから特殊冷気を発してダークウイングを凍結させる。

 

「なんだと!?」

 

面食らうウイングナイトの顔面にハイキックを浴びせ、

怯んだ隙にバイザーをブーメランの様に投げ一夏を吊るす鎖を切る。

 

「飛んで!」

 

「応!」

 

地面に落ちる寸前に一夏キャッチしながら鏡を目指す。

それに続くアックス。

 

(追いたい所だが、サードを回収したいし、無理か。)

 

諦めたウイングナイトは3人を見送るとトリックベントで作った分身を殿にスティングの通った窓から地球に戻った。

 

 

 

4

ベンタラから元の控え室に戻った。

そこでは青い顔の心愛とデモリッションを着身したゼロワンが待っていた。

ケイタがアーマーを解除するとゼロワンは跳躍し、

すれ違いざまに一夏のギャグボールを切り落とした。

壁キックでジャンプしながら他の鎖も切る。

 

『大丈夫か一夏!?痛いことはされなかったか?

痣とかできてないか?息苦しくなかったか?』

 

「ゼロワン落ち着いてなんとも無いから。」

 

『そうか、よかった、よかった。』

 

「ありがとケイタ、それから、、」

 

「仮面ライダーアックス。更識簪。」

 

バックルからデッキを抜き取りアーマーを解除する。

 

「ありがとう簪ちゃん。」

 

「兎に角一夏ちゃんが無事で良かったあ〜。

あ、後これで蓮君合わせたら、、あと二人いればパワーレンジャーマスクドフォースの出来上がりだね!

ブルー二人だけど!」

 

「ッ!、心愛ちゃん、、本気で言ってんのか?」

 

「え?」

 

「殴られたいならそう言えよ!」

 

ギリギリと思い切り心愛の細い首を絞め上げるケイタ。

 

「ちょっ!ケイタ君!?苦し、ウェ!」

 

『ケイタ落ち着け!

気持ちはわかるし混乱するのもわかるが保登に悪意はない!』

 

「ケイタ放して!心愛ちゃん死んじゃう!」

 

「でも、でも!」

 

なおも離そうとしないケイタの腕を誰かが捻りあげて外した。

 

「やめろよ。お前がやったわけじゃない。」

 

「!、、蓮!」

 

「ゲホッ!ゲホッ!、、ケイタ君?

蓮君?二人ともどうしちゃったの?、、喧嘩?」

 

「、、そんないいもんじゃないよ。」

 

「聞いてくれよ保登。網島がおかしいんだ。

俺がインサイザーをベントした途端に殴りかかってきたんだ。」

 

「!?、、、ベント?、、え、こ、殺したの?」

 

「ああ。」

 

なんて事もないように蓮はポケットからインサイザーのデッキを取り出した。

 

「、、、なんで?」

 

「あのままじゃ俺がやられてたからだ。」

 

「だからって!」

 

「だからベントした。

初めてお前がベンタラに行った時に言ったよな?

戦わなければ生き残れない。って。」

 

これは殺す殺さないの話しじゃなくて殺る殺られるの話しなんだよ。

 

そう言って蓮は一夏にカワサキのキーを預けるとベンタラに再び飛び込んだ。

 

 

 

5

一切街灯が燈らず、工場なんかも動いついないベンタラの空は地球より澄んでいる。

満点の星々がひしめき合い、地球では滅多にお目にかかれない暗黒の摩天楼と光に溢れた天井のコントラストは一種の芸術であり贅沢だ。

 

まあ、その贅沢の代償が場合によっては他社の命を奪う事、

と言われれば明らかに釣り合わない気がするが。

 

もう何発目になるかも分からないパンチで路駐してあった車をひっくり返しながらウイングナイトは自己嫌悪と共に深い深いため息をついた。

 

『こういったのをセンチメンタルって言うんですね。』

 

「サード、黙ってくれ。

お前には鼻がないから分からんだろうが石のエッセンスも相まって俺は今憂鬱な気分だ。」

 

今しがた廃車(てつくず)に生まれ変わった物にもたれながら蓮は変身を解いて噛んでいたミントの葉を吐き捨てた。

 

「畜生、わかってたのに。

あいつらが嫌な思いしちまう事ぐらいわかってたのに!

命が軽くない事ぐらい!

こっちの方が辛い事ぐらいわかってた!

場合によっちゃあと12人も殺らなきゃいけないのに!

なんで俺は!俺は人殺しに慣れないんだよ!」

 

『レン様、それは、、。』

 

「わかってるよサード。今は止まってる場合じゃない。」

 

あの約束を果たすまで何があっても止まれない。

そう言って蓮は廃車のミラーから地球に戻った。

 

瞬間、上着に入れたスマホから島谷ひとみのDitaが流れる。

蓮の眉間にただでさえ寄っていたシワが三割増くらいになった。

画面には『P』と表示されている。

 

「もしもし?」

 

『あ、もしもしレン?実は頼まれて欲しいことがあるのよ!

今木組みの街に潜んでるらしいヤクのバイヤーをチョチョイと豚箱にぶち込んで欲しいのよ!』

 

「日本に留学に行ってる部下に建て替えでホモビと舞園さやかの七分の一スケールフィギュアと帰ってきたウルトラマンのDVDボックスとロリータヌードの写真集と銀魂全巻と道明寺晴翔の抱き枕カバーを購入させて海外便で送らせておきながら未だ報酬や経費を一切払ってないバカ上司を地獄に叩き落とす任務なら喜んで引き受けますよ?」

 

『そ、それに関しては申し訳ないと思ってるわ。

ほら、私さ、ヤり部屋7つも借りてるから、、。』

 

「この二次元も三次元も棒一本違いの淫乱クソバイ女!

避妊はしてるんだろうな!

てかヤク関連ならアキツネとアンドリューだけで十分でしょう!?」

 

『ただのヤクならそうだけど財団Xの研究してた生体兵器がらみなのよ!

それだと丁度現地にいる専用機持ちの貴方が適任なのよ!』

 

私の顔を立てると思って!

その声を聞いた瞬間、蓮の顔に冷酷な笑みが貼り付けられた。

 

「良いですよ」

 

『ホント!?』

 

「ただし今から言うことを復唱して下さい。」

 

『はい!』

 

「わたくし淫乱クソバイ女は。」

 

『わたくし超絶美人にして超有能のアメリカ海兵隊IS師団団長p「この任務を行うレン・アキヤマ名誉少佐に対し」

 

『この任務を行う師団きってのツンデレ重すぎムッツリくんのレン・アキヤマに対し!』

 

「、、通常の7倍の報酬を与える事を約束します。」

 

『通常の7倍の報酬を与える事を約束します!

ってちょっとレン!?いくら私でも不可能よそんな事!?』

 

「じゃ、言質とりましたんで。」

 

『え、うs

 

蓮は無慈悲にスマホの電源を切ると明日からの任務の予定を立て始めた。

 

 

 

6

夕飯を終えると部屋に直行してカーテンを閉め、

テレビにカバーをかけ、スマホを画面が下になるようにテーブルに置いてベットに寝転んだ。

 

『平気かケイタ?』

 

「悪りいセブン。

今お前と話す気分じゃないぐらい平気じゃない。」

 

『、、、そうか。』

 

ようやく見慣れ出した天井と睨めっこしながら出てくるのは溜息ばかりだ。

漫画を読む気や勉強する気にもなれない。

控え目に言って最っ悪だ。

自分の中で唯一気心の知れてるライダーってのは思った以上に大きな存在だったらしい。

 

「ライダーになるような奴は、

あんな怪しい奴にしか縋る当てがないような奴はみんなもう魂に致命傷を負ってる。

ベントしたって死体処理と何も変わらんさ!」

 

頭の片隅で蓮の言ったあの言葉がこびりついて離れない。

 

「お前のどこが死人なんだよ蓮。」

 

蓮が死体じゃない理由は幾らでもある。

蓮の心は傷だらけかも知れないけど死んでなんかいない。

 

そうじゃなければ、

一番はじめにライダーの戦いについて俺に忠告したのは蓮なりに巻き込んだ責任を感じたから、

蓮の誠実さの表れなんじゃないのか?

こんなこと面と向かって言った日には

 

「お前、バイか?ゲイか?」

 

とか

 

「サードみたいなこと言うな」

 

とか

 

「お前いつから保登並みの頭になったんだ?」

 

とか言われそうだけど。

そんなふうに考えているとテーブルに置いていたスマホが振動した。

流れてる曲はEXILEのeyes in maze、非通知からだ。

 

「(公衆電話?)はい、網島です。」

 

『よかった。番号はあっていたみたいだ。』

 

聞こえてきたのは若い女の声だ。

飄々とした喋りかたな気がする。

 

「どちらさんで?」

 

『レン・アキヤマとリッチー・プレストンにはウォルター・コナーズ、仮面ライダースティングと仮面ライダーブレードにはサイモンズと名乗った者だ。』

 

「ッ!お前がライダーバトルの主催者か!?」

 

『いかにも。君たちの口に合う発音だと、

ゼイビアックス。と呼んでもらうことになるな。』

 

「ゼイビアックス、、あんたが、何でライダーバトルなんか!」

 

『そんな事より大事なのは君の愛して止まない彼女の、

織斑一夏ちゃん事じゃないか?』

 

「なっ!」

 

「今回のことで解っただろう?

シールのカードでどうにか出来るのは主従制約のないアドベントビーストだけだ。

そこで一つ取り引きなんだが君にウイングナイトをベントして欲しいんだ。」

 

「ウイングナイトを?」

 

「そうすれば織斑一夏嬢と君の安全は私が保障しよう。」

 

良い返事を期待してるよ?

そう言って通話は一方的に切られた。

こめかみを抑えながらベッドに身を投げる。

一夏か、蓮か。究極の二択だ。

 

「最っ悪だ。なんで俺ばっかり、、。

別に誰が仮面ライダーだっていいだろ、、。」

 

疲れと迷いが詰まった脳をリフレッシュしたくてケイタは眠りについた。

 

 

 

6

木組みの街のあるホテルの一室、

屈強な外人の男がベッドの上で頭を抱えてうずくまっていた。

仮面ライダートラストことブラット・バレットだ。

 

(どうするべきなんだ?

、、レンと呼ばれた蝙蝠の彼は、

この戦いが殺し合いだと承知しているふうだった。

だとしたら私は、チャーリーに騙された事になる。)

 

降りるべきか?

今ならまだレーサーとして一からやり直すだけで済む。

このデッキを捨ててしまえばい済む話なんじゃないか?

そう思ってカーテンを開けた時。

 

「全くなよなよしてどうした?

まさか辞めたくなったわけじゃないよなあ?」

 

そこには高価そうなスーツ姿の茶髪の女が写っていた。

背後には誰もいない。

という事はベンタラから語りかけている?

そう気付いたブラットはデッキを握り直して後ずさった。

 

「危機意識が出来てきたのは良いことだ。

だが何故自分からライダー達を探しに行かない?」

 

「ッ!お前はチャーリーの差し金だな!

蟹の彼は一体どうなったんだ!」

 

「永遠の牢獄の中だ。騙したとか言うなよ私はただ聞かれなかったから答えなかっただけだ。

それに、ここまで知って来ておいて今更降りれると思うなよ?

どの道君が冤罪を証明する手段は私の持つビデオだけだ。

つまりお前に選択肢は二つだけ。」

 

そう言って女は人間離れした速さでブラットの懐に入るとカブトガニのような黒い怪人に変身しながらブラットに掌底を叩き込んだ。

 

「ベントするかされるかだ!二つに一つださあ選べ!」

 

ブラットは痛みに悶えながらなんとか立ち上がった。

頭を巡るのは霧散するインサイザーと、かつての栄光。

 

「私は、ブラット・バレットは試練に勝つ。

なんとしても、試練に勝つんだっ!」

 

「宜しい、私はこれからディナーなので失礼させてもらうよ。」

 

鏡を超えてレストランΑGITΩの前に降り立つゼイビアックス。 

 

「全く面倒だ。地球人は猿から進化してないのか?」

 

毒づくとΑGITΩの扉を開けて一人用のテーブルについた。

 

「予約していた巻紙です。」

 

 

 

7

時を同じくしてブラットの泊まるホテルのロビーに一人の男が入って来た。

黒いベストに青のシャツ、白いネクタイに黒いソフト帽を被った茶髪の伊達男が入って来た。

帽子の下の顔はなかなかの美形で、フロント係の女性も普段は女尊主義の癖にポッとなっている。

 

「予約していた左というものです。」

 

「は、はい!少々お待ち下さい!、、、はい!左翔太郎様ですね!209号室です!領収書?はい只今!」

 

領収書を待ちながら男は心の中で独りごちた。

1日回って気付いたがこの街は風都とは違う意味でいい街だ。

古風な街並みに風都からくる優しい風に、

人々の顔には笑顔があふれていた。

 

そんないい街が今、風都の闇の所為で泣いている。

それはこの俺にとって、否、風都を愛する全ての人々にとって何より許せないことだ。

 

風都の闇を拭うのもまた、俺たちの仕事だ。

それからもう一つ、極めてハードボイルドな探偵である俺には少し似合わない理由かも知れんが、この街には俺のよく知る風都を愛する少年少女が住んでいる。

 

少しでも二人に危険があるならば俺は放って置けないのさ。

ただし、冷静さを欠いちゃあいけない。

ハードボイルド探偵たる者どんな事にも動じてはいけない。

 

「ま、それでも、こいつ関連の以来のおかげで二人に会いたくは無かったが。」

 

男は上着から一本の黒いガイアメモリを取り出し、起動した。

 

<JOKER!>

 

 

 

8

「ったく、マギラのやつ、簡単に言ってくれるじゃないか。」

 

隠れ家へ帰る途中、間明からの電話に気付いて寄ったコンビニの駐車場で仮面ライダートルクことドリュー・ランシングは気怠げに愛車の真っ赤なドゥカティ998にもたれかかった。

 

「しかも怪人を通販しろってなんだよ。」

 

などと文句を言いながらも教えられた番号に電話をかけた。

 

『はぁ〜い、もしもしぃ?』

 

聞こえて来たのは少女の声だ。

怪人の通販なんて聞いていたからもっと厳ついイメージがあったがなんだか拍子抜けだ。

かけ間違えたか?そう思ったが一応聞いてみた。

 

「あー、マギラの旦那の紹介でかけたんだけど?」

 

『おー!間明さんからのご紹介でしたかぁ!

だったら一番雑魚のマスカレードからシルバーランク一歩手前まで幅広く取り揃えてますよ〜!

今一番のオススメは〜!Oフォーオーシャン!

シルバー以下のドーパントなんて相手じゃないよ〜!

素体込みでお値段たったの100万!』

 

「ひゃくま!いや、そこまでは求めてない!

そうだな、まあまあ強いやつを二、三本、違う種類で同じぐらいの強さで見繕ってくれないか?」

 

『ふふふ、お客さん間明さんからのご紹介とだけあって買い方が分かってるね〜。

セットで買うとバラバラに買うより安いんだよ〜。

それじゃあ、スパイダー、アントライオン、バットの3本セットでバラバラ購入の時は素体込み込みで75万のところぉ〜、なんとたったのセット割でたったの69万円!』

 

「69万円、円だな。間違いなく円だな?

よし、金はマギラの旦那から受け取ってくれ。

その時に賞与から天引きしてくれって言っといてくれ。

それじゃあ!」

 

それじゃあ。そう言って電話を切るとドリューは二の腕をさすった。

 

「ったく恐ろしいぜ、あんなガキがヤクどころか人まで売ってるとは。」

 

ドリューはさっさとケータイを処分すべく、帰路を急いだ。




ケイタ「如何だったでしょうか?」

立香「やっぱり爪痕は大きいね。
もし俺だったらケイタ君の立場でも蓮の立場でも耐えられないよ。」

一夏「そしてついに来ましたね!我らの街のヒーローが!」

ケイタ「ああ、次回、infinite DRAGON KNIGHT Episode of jokers その2! Jの来訪 風の街の名探偵!」

立香「その運命を取り戻す!」

(ED Leave all Behind 仮面ライダーW)


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Episode of jokers その2 Jの来訪/風の街の名探偵

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

セブン『アキヤマがインサイザーをベントした事に激しく動揺するケイタ。果たして自分が正しいのか、それともアキヤマが正しいのか。葛藤するケイタにゼイビアックスはウイングナイトのベントと引き換えに一夏の安全を確保する取引を持ちかける。』

ブラット「その後ゼイビアックスは私の前にも現れライダーバトルを円滑に進めようとする。そして遂にやって来た風都の探偵左翔太郎。」

ケイタ「果たしてこの街を救うのは誰なのか?
誰の言い分が正義なのか?さてさてどうなる?」

(OP W-B-X ~W-Boiled Extreme~ 仮面ライダーW)


1

<STRIKE VENT>

 

メタルホーンを装備したトラストは蝉型ビーストソノラブーマと戦っていた。あまり強いビーストで無いのか、トラストに一方的にボコボコにされている。

 

「これで本当のゲームオーバーだ!」

 

<FINAL VENT>

 

背後から全速力で走って来たメタルゲラスの両肩に足が乗るように飛び上がり更にスピードを増したメタルゲラスと共にソノラブーマを粉々に貫き砕いた。トラストのファイナルベント、ヘビープレッシャーだ。

 

「よし、片付いたな。」

 

「いや、こっからだ。」

 

トラストの背中に激痛が走った。

振り返るとそこにいたのはドラゴンナイトだ。

 

「な、何をする!私は今君と戦うつもりは!」

 

「黙れ!」

 

二撃目、三撃目とトラストのアーマーにドラグセイバーが振り下ろされる。

 

『やめろ!やめるんだケイタ!彼をベントするつもりか!』

 

「その通りだ!」

 

剣先で築き上げる様にトラストを吹っ飛ばし、

バイザーのカバーを開けてカードをベントイン。

 

<FINAL VENT>

 

はなたれたドラゴンライダーキックはトラストの分厚い胸部アーマーを粉砕しながらその下の心臓さえもミンチに変えた。

 

『ケイタ、、君はなんてことをしてしまったんだ!人殺し!人殺し!バケモノ!』

 

「うるさい、、。うるさいうるさいうるさいうるさい!

ケータイなんかに何がわかる!何がわかるってんだよ!」

 

セブンを取り出したドラゴンナイトは有りっ丈の力でセブンを握りしめた。

 

『なっ!や、やめ、、やめろろろろ、、ケイ、ケ、ケイタタタ、タタタタタ、タやめめッ』

 

バリバリと基盤を潰す音と共にセブンの画面からフェイスパターンが消えた。

それを踏み潰しドラゴンナイトはトラストが乗ってきたと思しきアドベントサイクルに乗り込んだ。

 

「あと、あと10人、、ベントする!全員ベントする!」

 

向かった先にいたブレードを轢き飛ばした上で剣を奪い一方的に痛めつけた上でドラグクローで頭蓋を砕いて倒した。

 

「ベントする。」

 

地球に戻ると簪がラビットハウスに遊びに来ていた。

控え室で着替えていた理世をドラグセイバーで斬り殺し、

カウンターに行って洗剤を混ぜたコーヒーを飲ませて簪を殺した。

 

騒がれると面倒だから二階にいた心愛の細い首をいつも制服に使ってるベルトで絞め殺した。

腕を引っ掻かいて抵抗したので皮膚を残さない様に両手首より先は切断してミンチにして生ゴミに捨てた。

 

その後心愛のケータイでチノを呼び出して鏡の前に立った所でドラグレッターに喰わせた。

 

「倒す。」

 

夜になると夜道を歩いていた海之を勝手に借りた蓮のバイクで轢き殺した。

 

「守る」

 

その後またベンタラに赴きそこであったセイレーン に戦いを挑んだ。

不意をついて先手を取ったとは言えセイレーンの動きは素人みたいにガタガタだった。

攻撃を避けながらバイザーを開けてカードをセット、

セイレーンが背後から斬りかかる様に仕向けた所でベントインした。

 

<ATTACK VENT>

 

背後で上から出現したドラゴンに咥えられながら地面を引き摺られるセイレーンの悲鳴が聞こえてきた。

いい気味だ。

ライダーに限らずどいつもこいつも訳分からん持論を語るからこうなれるんだ。

セイレーンの元に向かいながら再びバイザーを開けた。

勿論使うのはファイナルベントのカードだ。

 

「落し物だ。」

 

近くに落ちていたバイザーを投げてやり、カードをセットする。

 

「なんで、こんな事を?」

 

「血はモーターオイルより濃い。家族を守る為さ。」

 

そう言ってカードをベントインしようとした時だった。

 

<SWORD VENT>

 

何者かに左肩を斬られた。

この局面で邪魔をする奴はウイングナイトしかいない。

しかし振り向いた先にいたのは居るはずのない敵だった。

 

暗くてよく見えないが格子戸の様なでかくて重そうな仮面に左手についたガントレット型のバイザー、

そして右手に握られた漸く使い慣れた柳葉刀に咎人の亡霊の様な赤く大きな複眼。

自分が今鎧ってるはずのドラゴンナイトだ。

なんだ?と訝しんだが直ぐに別にベントするしいいか、

と思考を切り替える。

 

お互いがお互いを一撃で殺す為の、

溢れんばかりの殺意を込めた斬撃で斬りむすんだ。

しかし僅かに、本当に僅かに体勢を崩したドラゴンナイトの胸にドラグセイバーが突き立てられた。

 

「あは、はははははは。あははははははははははははは、、は、、、は?」

 

パリンとその仮面が割れた。

そこに現れた顔を見てケイタは全身の血液が一気に凍った様な錯覚を覚えた自分の持つ剣に支えられて漸く立っているその少女は紛れもなく織斑一夏だったからだ。

 

「嘘だ、嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!嘘だぁああああああ!」

 

「嘘じゃ無いさ。」

 

叫んでいるはずなのに、誰もいないはずなのに耳元で囁かれた。

何故か自分の声だ。

 

「お前だって口では蓮や三春の事を否定しながらも自分だって立場が変われば誰かを殺すし、ベントするんだ。

蓮ばっか責めるなよ、一歩違えばインサイザーをベントしてたのはお前だ。」

 

否定できなかった自分は弾みで本当なら守りたかったはずの人を殺してしまう様な人で無しだ。

 

「その通りさ。鏡を見ろよ。

そんなお前にお誂えな格好になってるぜ。」

 

顔を上げると鏡に映っていたのは吊り上がった光る赤い目の漆黒のドラゴンナイトだった。

 

仮面契約者黒瑪瑙(カメンライダーオニキス)。それが今のお前だよ。」

 

 

 

2

相変わらず自分の作る料理はイマイチだ。

後一歩のところで上手く行かない。

と蓮は頭の中で独りごちた。

 

今テーブルに並べられているのはマスターと蓮で作った朝食で、トーストにレタスにポテトサラダ、後それからカリカリのベーコンと絵に描いたように素晴らしい朝食。

 

なのだが誰に対しても、自分にさえもかなりシビアな蓮には、満足いくものではなかった。

そして何より料理上手な母の元に生まれた所為で物凄く舌が肥えている為、味にうるさく、所属する海兵隊IS師団ではレン・アキヤマがオススメする店は絶対にその年のクリスマスパーティーの会場になるというジンクスが出来ても誰も違和感を感じないぐらいだ。

そして母が料理の師匠から教わったという

 

「男は女を泣かせる事と食べ物を粗末にする事だけは絶対にしてはいけない。」

 

という格言を厳格に守っている為、自分で満足していない料理を完食するというストレスと日々戦っているのだ。

それは蓮にとっては苦闘以外の何者でもない。

蓮が日々不機嫌な理由の一つだ。

そして今日に限ってだがもう一つ、

 

「網島のやつ!今日がゴールデンウィーク前最後の授業だってのにいつまで寝てやがる!」

 

寝坊とか遅刻に物凄くうるさいのだ。

本棚のちょっとした隙間にもストレスを感じる。

それと同じでいつもの時間にケイタが起きてこない事さえイライラの種になった。

 

「そういえばケイタって昔から連休のちょっと前くらいから寝るの遅くなってたような?」

 

「本当か?なら悪いけど起こして来てくれないか?」

 

わかった。一夏は二つ返事でケイタの部屋に向かった。

鍵はなく、簡単に開いた扉を超えてカーテンを開ける。

 

「起きろ寝坊助ー。」

 

そう言うとうーん。

というちょっと苦しそうな呻き声を上げて寝返りを打った。

 

「早くしないと朝ごはん食べちゃうよー。」

 

少し強めに起こすか。

そう思って少し布団を剥がして肩を掴んだ時だった。

 

「ああああああああ!」

 

叫び声をあげながら無茶苦茶に暴れ起きたのだ。

 

「きゃあああ!ケイタなに?どうしたの?」

 

「セブン!セブン!セブン!セブンはどこに、、あった!セブン!」

 

『!?なんだ?こんな朝早くから慌てて、

まさか緊急の任務か?それとも敵仮面ライダーの急襲か!?』

 

「セブン!良かったセブン!砕けてない!」

 

『ケータイは勝手に砕けるものではなーい!』

 

良かった、良かった。と繰り返しケータイを抱きしめて泣き始めるケイタを見ていよいよ一夏は危機感を抱いた。

 

「、、、マジでどうしたのケイタ?ヤクでもキメたの?」

 

「!?、、、一夏?」

 

「何?」

 

「一夏なんだな?」

 

「一夏だよ?」

 

「一夏ぁああああああ!」

 

「!?」

 

いきなり一夏に馬乗りになったのだ。それだけではない。

 

セブンを持ったままの右手と何も持っていない左手で一夏のパジャマのボダンを外し始めたのだ。

 

「い、いや!ケイタやめ、やめて、、私、、ッ!」

 

『な!やめろケイタ!私の画面をどこに押し当ててるんだ!

やめろ!ケータイは乳房に押し当てるものではない!』

 

一夏はまるで抵抗が出来なかった。

恐怖で体が動かなかったし、

不思議諦めの早い自分がいたからだ。

 

(15歳で母親かあ、、でも始めてって痛いらしいよね?

もういいや。パーになろう。)

 

深く息を吐いて四肢の力を抜いて目を閉じた。

いつでも来い。そう思った瞬間だった。

す、と一夏の頭と腰が抱き起こされた。

少し汗臭い匂いがくすぐる。

 

「え?」

 

「良かった、、全部夢だった。一夏、綺麗なまんまだ。」

 

「キレッ!」

 

「どこにも傷なんかない。白くて柔らかくて、綺麗なまんまだ。」

 

「ッッ!、、、、。」

 

このバカは何を言ってるんだ?

あんな強姦未遂みたいなことをしておいて!

今更なに歯の浮く様な台詞を吐けるな!

そう思ってケイタを引き剥がす。

 

ビンタの一発でもかましてやろうか?

そう思ってケイタを見据えた瞬間。

喉元まで来ていた罵倒が引っ込んでしまった。

ケイタの顔には下心みたいなものが一切見えず、

心の底からの安堵した様な、

真剣に見つめる様な表情しかなかったからだ。

 

(あれ?ケイタってこんなんだっけ?

いやいや!だって!それだけは無いって!

そりゃケイタも思春期の男子な訳だし気の迷いとかはあるかもだけどきっとそうゆうのじゃ無い筈で)

 

不覚にもきっと赤くなってる自分とさっきからドキドキしっぱなしの心臓を誤魔化そうと必死にロジックを組み立てる。

しかし早なる心臓は止まってくれそうにない。

だめだ頭を整理しよう。

そう思って立ち上がり、ドアの方を向くと見事なまでに感情の消えた顔の蓮がじっとこちらを見ていた。

 

「えっあ、、、、、。」

 

鏡を見ずとも自分の顔が真っ赤になったのが分かる。

隣のケイタに恨めしい視線を向けると漸く蓮の存在と自分が何をしたのかを理解したのか、頭を抱えて悶え始めた。

 

「れ、蓮?いつからそこに?」

 

「白くて柔らかいの辺りからだ。」

 

「ッ!」

 

「、、、。」

 

『セブン、網島ケイタ。俺たちもその辺りからだ。』

 

『一夏様は柔らかかったですか七番目?』

 

『ま、待て待て二人とも落ち着け!

ゼロワンなぜフェイスパターンが血の涙に戻ってる!

サードお前も言動は穏やかなのに顔が激怒のやつだぞ!?

落ち着け、本当に落ち着け!デモリッションを着身するな!

なぜサードまでバディの許可なくグラインダーを着身出来る!?』

 

『冥土の土産に教えて差し上げましょう。

もし万が一レン様が死に体になった時にある程度動ける様にわたくしにはフォンブレイバーには標準装備されている良心回路のほかに(レン様が水戸博士から盗んだ設計図を元に立香様とマシュ様を騙して作らせた)悪の心、悪魔回路がつけられています。

その為、限りなく人間に近い心を持ったわたくしは貴様らの様なフォンブレイバーとそのバディの恥さらしを惨殺することもできるんだよぉ!

死にさらせぇえ!』

 

『地獄に落ちろぉ!』

 

『待て待て待て待て!命!

命ばかりは!ケイタ走れ!走るんだぁ!』

 

「ゼロワン落ち着いて!悶えてる場合じゃ無いよケイタ!」

 

「いっそ殺してくれ、、。」

 

「『ケイタぁー!』」

 

ケイタと一夏は二人仲良く遅刻寸前だったとか。

 

 

 

3

トーストを咥えて走る女子高生というのも我ながら古典的だなと思いつつ更識簪は廊下を急いだ。

途中ロランのナンパ攻撃を受けたが更識流暗殺術で意識をおとして回避した。

 

なんだか最近調子が良い。

今朝も雑魚とはいえビースト五体を相手に上手く立ち回れたし、昨日の夜は中々上手くいかなかったプログラムを組み終えられた。

 

そのせいで寝るのが遅くなって今遅刻すんぜんだが。

頑張れば打鉄弐式はみんなが夏休み前の合宿に行ってる間に完成できるかもしれない。

 

(私の取り柄は前向きになろうとする事。

今の自分じゃダメだって思える事。

なら後は前を向くだけ。)

 

パンを一気に口に押し込む。歌でも歌いたい気分だ。

 

「いきます炎神、」

 

「ねぇあんた。」

 

「勇気ジンジン、」

 

「ちょっと。」

 

「唸れ轟音、」

 

「ねぇってば。」

「かっ飛べGO-ON!」

 

「聞きなさいよ?」

 

「前しか見えない炎神戦隊「もしもぉおーしっ!」きゃあ!」

 

いきなり両肩を掴まれて驚いた拍子に鞄を投げた。

一泊置いてポスッと簪の手の中に戻る。

振り返ると背の低い茶髪をツーサイドアップにした小柄な少女がいた。

リボンはしていないが一年だろうか?

 

「聴いてた?」

 

「ごめん、全く。」

 

「ま、ご機嫌だったし仕方ないね。今のパワーレンジャー?」

 

「、、、スーパー戦隊の方。」

 

「ふーん。それ面白いの?」

 

「うん。」

 

「へぇ、って悠長にしてる程時間なかった、私ゴールデンウィーク明けから転校してくる事になってるんだけど、教員室ってどっちだっけ?」

 

「二階、A階段に地図がある。」

 

「あんがと、呼び止めといてなんだけど遅刻しないようにね!」

 

「じゃあ、またね。」

 

簪を見送るとツーサイドアップの少女は呟いた。

 

「またね、か。」

 

あの二人は放課後にでも待ち伏せしてやろうかな。

とイタズラっぽく笑った。

 

「変わってないのが眼に浮かぶはケイタ、一夏。」

 

 

 

4

「という訳で1組代表は織斑君に決まりました。」

 

いい笑顔の真耶が教卓に立ち発表する。

クラス内からはチラホラと拍手とヒソヒソと話し合う声が聞こえ始める。

それと同時に三春が勢いよく立ち上がった。

 

「ちょっと待ってください先生、

俺はケイタに負けましたよね?

なんでケイタじゃ無いんですか!?」

 

クラスの過半数の意見を代弁したものだ。

意見の内容としては

 

「絶対に網島君より弱いよね?」

 

とか

 

「千冬様の弟とはいえなんで男なんかが?」

 

とか

 

「秋山君が一番強いんじゃ無いの?」

 

などと言ったものだ。

 

「それは「それはわたくしとレンさんが辞退したからですわ!」

 

三春のもっともな疑問にセシリアが真耶の台詞を遮って答えた。

 

「なんでだよ!?」

 

「そもそも今回の勝負はアンフェアだったのです。

国家代表候補レベルのわたくしにアウトローなスタイルとは言えわたくしと互角以上に戦えるレンさんに対してあなたとケイタさんはほぼぶっつけ本番だったと聞きましたわ。

もし仮にわたくしと貴方、レンさんとケイタさんと、で戦っていればわたくしかレンさんが代表でしたわ。

それに、周りの気持ちを一切考えずに軽率な言動をとったわたくしに代表の資格などありませんわ。」

 

この場を借りて謝らせてくださいまし。

そう言ってセシリアは綺麗に90度のお辞儀をした。

 

「そんなんいいよ!」

 

「気にして無いって!」

 

「それに網島君や秋山君のこと男だからって馬鹿にしてたの私らも同じだし!」

 

と、クラスの大半から明るい声が帰ってきた。

 

「そ、それだったら!尚更ケイタが代表やるべきだろ!?」

 

「俺も辞退したから。」

 

壁の方を向きながら曇天の夜空の色にに墨汁を塗りたくった様な死んだ眼のケイタがまるで他人のことの様に答えた。

 

「なんでだよ!守れる力を俺より持ってるのになんで使わないんだ!」

 

「五月蝿え。

誰もがお前みたいに自分のエゴを信じ切ってそれに労力全部費やせる程単純じゃ無いんだよ。」

 

お前は良いよな、どうせ俺なんか、、、。

普段からどこか気怠げなケイタにネガティブが重なると最早地獄の住人だった。

 

「昔からお前って奴は!

ふざやがって腑抜け野郎!

守んないことが正しい事だって言うのかよ!」

 

「ふざけてるのはお前だ。

やる気の無い者のする仕事などたかが知れてる。

それならやる気と啖呵だけは一人前のお前の方が適任という訳だ。」

 

いつの間にか三春の背後にいた千冬が補足した。

 

「んな事言ったって千冬姉!」

 

バカン!三春の頭に出席簿が叩き込まれる。

 

「ここでは織斑先生だ。

そして私への返事は『はい』か"yes"で統一しろ。

この話は終わりだ。各自次の授業の準備を。」

 

痛みに悶えながらケイタに憎悪を込めた視線を向ける三春以外の全員の元気な返事と共に休み時間のチャイムが鳴り響いた。

 

 

 

5

休み時間になって1組にやって来た簪は絶句した。

ケイタが地獄の住人のようなネガティブオーラを振りまいているからだ。

 

「ケイタ君どうしちゃったの?」

 

「簪さんは良いよな。

努力家でモテそうで。

俺なんか今を嘆くばっかで足踏みしてるぜ。」

 

「何があったの?」

 

「二人とも今朝からあんなんなの。」

 

「二人とも?」

 

蓮の方を向くとハードカバーの英字小説を読んでいる。

特に変わった事はない。

一夏の方を向くと、何やら真っ赤になったままそっぽを向いている。

 

「なんなの?」

 

「分かんない。」

 

同じ頃、前列0ズレ席は多いに盛り上がっていた。

 

「今度のクラス対抗マッチ頑張ってね!」

 

「クラス全員分の食堂デザート権かかってるから!」

 

「ご安心を。わたくしが徹底的に鍛えて差し上げますわ!ねぇレンさん!」

 

「指導の腕とパイロットの腕は比例しない。」

 

「ぐ、な、ならば三春さんを一番に仕立て上げて証明していますわ!

聞いたところによれば一年の専用機持ちのクラス代表は

4組のオランダ代表候補のロランツィーネさんだけ、

ちょろいことには変わりませんわ。」

 

「ますます不安だな。

慢心ダメ絶対ってうちのボスもよく言ってるぞ?」

 

「その通りね!」

 

ロランがオランダの代表候補生だった驚きが冷めやらぬままの簪の耳に今朝聞いたばかりの声が聞こえて来た。

今朝声をかけて来たツーサイドアップの少女だ。

 

「お前、鈴か!?」

 

「久しぶりね屑春、気安く呼ぶなよ気持ち悪い。」

 

「なんでお前がここに?」

 

「そりゃゴールデンウィーク明けからの編入と2組のクラス代表になるのが決まったからよ。

あんたが所詮運だけで専用機とクラス代表の座を手に入れただけの木偶の坊の七光りって所を見せてあげるわ!」

 

そう言って踵を返すと簪たちの方にやって来た。

 

「ん?あ、あんた朝の、1組だったの?」

 

「違う、3組の簪。よろしく。」

 

凰鈴音(ふぁんりんいん)よ。鈴って呼んで。

さて、ケイタ!久々に会ったとおもったらいつにも増してしけた面ね?寝不足?」

 

「心愛ちゃん、、、俺は本当にダメな奴だよ、、。

ちょっと落ち込んだぐらいで中二で引っ越した幼馴染が

小5の時の背格好のままIS学園の制服着てる幻覚が見え始めちまったよ。」

 

「なっ!こ、これでも去年から二センチも伸びたのよ!」

 

「こんな事言うのもいかにも鈴らしいなおい。」

 

「鈴ちゃんっていうの?」

 

「ああ、中国に帰ったっきり会えてないなぁ。

元気してるといいなぁ。」

 

「えっと、あんた心愛って言ったわね?

ケイタどうしちゃったの?失恋?」

 

「さあ?」

 

「一夏も何悶々としてるのよ?片思い?」

 

「ば、馬鹿じゃないの片思いなんて!

あんなって鈴?嘘帰ってたの!?」

 

「今頃気付いたの?久しぶりね、元気してた?」

 

「まあ元気には。そっちこそおじさんおばさん元気?」

 

「え、、う、うん。多分元気よ?」

 

「?、、、うん。そっか。」

 

「あんたこそどうなのよ?

ケイタ共々なんか変じゃん?まさか恋とか?」

 

「はぁ!?恋って?ケイタに!?

無いよ!あんなことされといて恋とか!絶対無い!」.

 

「、、、あんな事って?」

 

思わず自分の口を抑える一夏。

しかしもう遅い。女子は3人寄るだけで姦しいのだ。

それがほぼ一クラス分共なれば、そこに話題を提供してしまえば手遅れだ。

 

「あんな事!?いったいどんな事?」

 

「今更初心なフリして!

網島君と秋山君を両手に花だった癖に!」

 

「待って皆!もしかしてだけど、

両手に花なのは織斑さんじゃなくて網島君だったんじゃない!?」

 

「、、、なるほど!それなら話は通るわね!」

 

「と言う事は、、一つ屋根の下で禁断の三角関係が!」

 

「何ぃ!本当か一夏!?」

 

「いやいや箒!?何マジにしてるの?

無いよ!無い無い!」

 

「ケイタ、あんたなんか大変な事になってるわよ?」

 

「そう?私的には熱いシュチュ。」

 

「あんたのフェチズムは聞いてないわよ。」

 

「ふぇちずむ?」

 

「心愛にはまだ早い世界。」

 

クラスの黄色い声の合間に聞こえた

「俺はゲイでもバイでもない!」

という蓮の叫び声を聞き流しながらいっそ消えたいと

ケイタは説に願った。

 

 

 

6

木組みの街を前輪側半分が黒、後輪側半分が緑のホンダ CBR1000RRに酷似したマシン、マシンハードボイルダーがある場所に向かって真っ直ぐに駆けた。

その先は、国立IS学園高等学校の裏手の林だ。

 

ハードボイルダーを停め、

屹立する校舎を見上げながら心の中で独りごちた。

 

涙をぬぐいに来たとはいえ、いや、だからこそ俺はどこまでいってもこの街にとっちゃあよそ者。

いつものようにスムーズな捜査とはいかない。

 

と踏んでいたが、

この俺がハードボイルド探偵として申し分ない事と、

この街に潜む悪党は中々のやり手だった事もあり、

ネット、巷の噂、街の野良兎達の様子から恐らく次に『奴』が現れるであろう場所を割り出す事に成功した。

 

「居るんだろ?『怪人屋』?」

 

しん、と静まり返った倉庫のどこからも返事は返ってこない。

 

「そうかよ、ならこっちも用意があるから待ちな。」

 

そう言って翔太郎はやけに分厚いガラケーを取り出しどこかに通話を始めた。

 

「フィリップ、奴を見つけた。念のために用意を

『翔太郎!いいタイミングでかけてくれた。君は知らないだろう?ロボット刑事という萬画を!』

おぉい!このタイミングで検索中かよ!」

 

なら仕方ねぇ、そう言って翔太郎は懐から赤いスロットが一つついた奇妙な装置を腰に当てたベルトが伸び固定された。

 

その瞬間、無数のカマイタチの様な風の斬撃が翔太郎を襲った。

 

素早く避けつつ、斬撃が発射された方に積まれていた不法投棄された粗大ゴミに手をかけて飛び越えながら斬撃の発射元と見られる緑色の怪人に蹴りを与えた。

帽子を直しながら敵を見据えて驚いた。

 

「サイクロンだと!?」

 

愉快そうに笑いながら敵、T1サイクロンドーパントは喋った。

 

「ふふふ、ジョーカーさんは中々の名探偵さんだね〜。

この怪人屋さん。感心感心だよ〜。

でもだからって激レア商品のそれをただであげるわけにはいかないんだよね〜」

 

そう言って腰の装置、ロストドライバーを指差した。

スロットにはいつの間にか一本のガイアメモリが挿入されていた。

引き抜いてイニシャルを確かめる。

J。それも翔太郎が一番頼りにするメモリだった。

 

(ジョーカー!?一体いつ挿した?

、、いや、端子が青い。

T2メモリ、、その複製ってとこか。)

 

「悪いが無理な相談だ。

街を泣かす悪党の言う事を聞く訳にはいかねぇし、

何があろうと切り札は、常に俺の所に来るからな。」

 

<JOKER!>

 

メモリの起動と共にガイアウィスパーが鳴り響く。

ゆっくりと腕を振りながらメモリを挿して

 

「変身。」

 

<JOKER!>

 

スロットを倒し、巻き起こったエネルギーが風が逆巻く様な音と共に翔太郎を包んだ。

 

「さあ、お前の罪を数えろ!」

 

木組みの街最初のライダーバトルは風の町を守るはずの二つの力というあってはならないカードで、誰にも知られる事なく始まった。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

ブラット「何故ここに出ている私の出番が君の夢でしかない?」

セブン『じ、次回はあるから許してやってくれ。』

ブラット「ふん、まあいい。
しかしこの世界、レストランΑGITΩといい、風都市といい、ジオウ世界線に近いのか?」

セブン『作者のプロットによれば、、、人造人間キカイダー、キカイダー01、そしてキカイダーREBOOTが起こってない以外は基本ジオウ世界線と同じらしい。』

ケイタ「なるほどじゃあ仮面ライダー龍騎の物語は?」

セブン『タイムベントでなかった事にされてるな。
そんな事よりそろそろ時間だ!
次回、infinite DRAGON KNIGHT、Episode of jokers その3 Cは悪魔だ/ドラゴンナイトの憂鬱!』

ブラット「王の判決を言い渡す。死だ!」

(ED Roots of the King 仮面ライダーキバ)


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Episode of jokers その3 Cは悪魔だ/ドラゴンナイトの憂鬱 前編

一夏「ケイタ大変だよ!?」

ケイタ「何?なんかドルフロのssを書き始めたいとかほざいてた作者ならさっき肉体会話の末に説得したけど?」

一夏「なんだ良かった、なら安心だね。」

理世(一つも良くない、、、。)

ケイタ「それに不定期って言ってるから大丈夫とか言ってるのも改めさせたし。」

一夏「レンとサードや藤丸さんやマシュさんのスピンオフを書かせるのも延期させたし!」

理世(それは別にいいだろ?)

ケイタ「これで心置きなくやれるな!」

一夏「うん!」

理世「(心愛達はこんな奴らとルームシェアしてるのか?)と、兎に角本編をどうぞ!」

(OP Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

「立香さん、昼奢ってください。明日カラオケ奢りますんで。」

 

彼、藤丸立香は今人生で一番関わり合いになりたく無いと思った。

理由は簡単、目の前にいる少年、網島ケイタだ。

死んだ様な目にはいつにも増して生気がなく、

何か厄介な問題に直面しているのは明らかだ。

 

加えて彼には仮面契約者という人智を軽くふた回りぐらい超えた力を持っている。

同じ力を持つ蓮に相談ではなく、その力を持ってる事だけを知ってる自分の所に来たという事はつまり、蓮とのトラブルという事に他ならないと思ったからだ。

 

「悪いね、カップ麺しかなくて。

ところで、急にどうしたんだい?相談かなんか?」

 

「そうなんですよ。

俺、何が正しいかわかんなくなっちゃって。」

 

それは最早哲学じゃない?という言葉が出そうになるのをぐっと堪えて訊ね返した。

 

「そういうのって蓮の方が的確なアドバイスをくれると思うけど?」

 

「いや、蓮の所為で悩みだした様なもんだし、

頭に脳細胞の代わりに溶岩単細胞ぎっしりの心愛ちゃんは論外だし

マシュさんや鈴やのほほんさん達はライダーのこと知らないし、

手塚さんや簪さんみたいな他のライダーに相談するわけには行かないし、

一夏にはあんなことした手前合わせる顔がないし、

あった所でゼロワンに人肉ハンバーグにされること請け負いだし、

消去法で立香さん以外に人間を疑わなくていい人が居ないんですよ。」

 

確かにそう言われてみればライダー関係のトラブルで相談に乗れそうな人間はそういない。

というかケイタの人間関係が心配になって来た。

 

「ていうかスルーしそうになったけどあんなことした手前って何したの?

場合によっては今君を通報しなきゃいけなくなったんだけど?」

 

「頼みますよ立香さん。

あなたがダメなら俺、側から見たらケータイに話しかける痛い奴に成り下がるしかないんです。」

 

『藤丸、私からも頼む。

今のケイタのネガティブオーラに当てられ続けたら私自慢のシルバーボディにカビが生えてきそうだ。

まだ5月なのに。』

 

確かにこのままにして良い問題ではない。

出来るなら早期解決が望ましいだろう。

 

「わかった、明日はどうせ休みだし、

たまには息抜きも要るしね。」

 

「そうか、ならご一緒よろしいかな?」

 

何処からともなく女の声がする。

まさか、と思って近くの点いていないモニターを見るとアラビア風の仮面の紅色の騎士が写っていた。

 

「仮面ライダースティング!」

 

「なんだって!?」

 

こちら側へと飛び込んできたスティングは真っ直ぐに二人を見据えた。

 

「何の用だ!」

 

「明日は丁度私も暇でね。

ご一緒願いたいだけさ。」

 

「ふざけんな!

殺そうとした事もあったくせに!」

 

「その件は申し訳なく思っている。

が、私とて無闇矢鱈に襲いかかってる訳じゃ無い。」

 

「、、、だからなんだってんだよ?」

 

「友達になりたいのさ。網島。」

 

アーマーを解除しながら海之はケイタに握手を求めてこう言った。

 

「私と一緒に日本人以外のライダーを撃滅しよう?」

 

 

 

2

「簪さん、放課後付き合って貰っていい?

ジュースでも奢るから。」

 

彼女、更識簪は人生で初めて放課後に友達と食堂で駄弁る事となった。

だが話題は中々にシリアスな物だろう。

理由は簡単、今朝から彼女は見かける度に悶々としている事が多い。

彼女が今悩むとしたらルームメイトであり、

幼馴染である網島ケイタとあの冷たい感じのミステリアスな少年、レン・アキヤマについてに決まっているからだ。

 

「一応聞くけど、こっち関係の相談?」

 

懐からアックスのデッキを少し見せる。

 

「うん。けどどっちかというとケイタとレンのことかな?」

 

「ケイタ君だけじゃなくて?」

 

奢ってもらったミックスジュースを飲みながらそう尋ねると一夏の頰が桜色に染まった。

もしかして相談風自慢?という言葉が出そうになるのをぐっと堪えた。

 

「ケイタじゃない!ケイタだけじゃない!

ケイタが元気無いのも勿論だけど、

レンが、あの蟹をベントしたのを気にしてないか、とか。」

 

「そういうのって同じ下宿先の保登さんの方が相談しやすいと思うけど?」

 

「いや心愛ちゃんは頭も口もふわふわしてそうで直ぐに二人に話しちゃいそうだし、

マシュさんや鈴やのほほんさん達はライダーのこと知らないし、

手塚さんは、、、よく分かんないし、

消去法で簪さん以外に口が硬そうな人が居なくて。」

 

決して仕方なく簪さんって訳じゃないけど。

確かにそう言われてみればライダーが大いに関係してくるトラブルで相談に乗れそうな人間はそういない。

というか一夏の身の安全が心配になって来た。

 

「それで、ケイタ君が元気無い理由はわかるの?」

 

「なんとなく、けどどう切りだしたもんかな、と思って。あんな風にケイタにされたの初めて見たし。」

 

表現が抽象的過ぎてよく分からないが、

何やら場の勢いだけでやっちまったらしい。

 

「アキヤマ君に関しては?」

 

「なんか、あんまりにも相手をベントした後にしては淡白な気がして、もし無理してるんなら、力になりたいな、って。ま、レンが戦う理由も知らないし、

ましてや変身も出来ない私がなんか言うのも変かもしれないけど。」

 

だとしてもいつまでもなあなあなままだと良くないし。

確かにこのままにして良い問題ではない。

出来るなら早期解決が望ましいだろう。

 

「ならこうしない?明日はどうせ休みだし、

たまには息抜きも要るし、

どっか出かけながらもっと色々掘り下げていかない?」

 

 

 

3

カチャン。

本来なら教員しか来れないはずの寮の屋上に一人の生徒が入ってきた。

すらっとした美しいプロポーションに左手を腰に当てて右手で持った扇子を仰ぐ動作が偉そうでありながら様になっている。

一言で言えば風格があった。

そしてその後ろから見慣れた少女が一人。

 

「お嬢様〜。」

 

「あら本音ちゃん、来たのね。

あなたからの相談なんて珍しいじゃない。

どうしたの?」

 

「かんちゃんが最近かまってくれなくて寂しい〜。」

 

「そう、、ってえ?え?え?

簪ちゃんが!あの中二ぐらいの時に『友達?非生産的。』

とか一匹狼的なこと言ってたあの子が!あなた以外に友達が!?」

 

「お、お嬢様?それはただの厨二病だと思うよ〜?」

 

「兎に角、兎に角嬉しいわ!

妹に友達が出来るのが姉としてこんなに嬉しいなんて!それで誰なの?」

 

「1組のあみしーといっちーとか、あとここあんだよ。」

 

「あら、それは好都合。

ならあとレン・アキヤマくん共々、

生徒会長権限で生徒会役員になっていただきますか。」

 

 

 

4

「どんなもんだサード?」

 

学園のパソコン室、本来なら管理者級のカードキーが無ければ一人では入れない場所に蓮はいた。

いや、正確には一人では無い。

彼の優秀で誠実な相棒、フォンブレイバーサードと共にいた。

 

『駄目ですね。

師団長様が言っていた例のヤバいヤクがガイアメモリで、

それを流してるのが巷で話題の怪人屋という所までは突き止めたのですが、そこから先は噂以上のものは見つかりそうにありません。

ただ、ちょっと面白い物を見つけましたよ?』

 

「どれどれ?デビルKにエンジェルK?」

 

『はい。なんでもデビルKは黒い歩くケータイの形をした悪魔でネット犯罪者を滅亡に導き、

エンジェルKは白い歩くケータイで、ネット犯罪の被害者を救済に導くそうです。』

 

「完全にお前らじゃないか。」

 

『このSNSに取り憑かれた世の中、

目撃情報って結構あっという間に広がる物ですね。』

 

「何処までいってもただ噂は噂だ。

ほとんど真に受けてる奴なんていないから安心しろよ。

昨日たまたま見たネットニュースなんかキカイダー01の目撃情報が出てたぞ?」

 

『私達以上に荒唐無稽なのが出てますね。』

 

「噂なんてそんなもんさ。

それがネットともなれば尚更だよ。」

 

そう言って蓮は席を立ち扉を入って来た時と同じようにサードイニシエートクラックシークエンスで開けると真っ直ぐに駐車場に向かった。

 

(?、、バイクの前に誰かいる?)

 

タレ目の女だ。のんびりしているが、

それでいて上品そうだ。育ちは良いんだろう。

長い黒髪が清楚な感じの美しさを出していて、

背筋もまっすぐ伸びていて背が高そうに見える。

そういえばクラスメイトだ。確か名前は四十院神楽。

 

「退いてくれ、今からそのバイクで帰るんだ。」

 

「分かっています。

だから貴方とお話しするにはこれが一番良いんです。」

 

カワサキのニンジャとはなかなか良いバイクに乗ってますね。

シートを撫でながら取ってつけたように言った。

 

「お世話はいい、俺は面倒な世間話とか嫌いなんだ四十院。」

 

「では、単刀直入に本題に入らせていただきます。

秋山さん、私の行方不明の友人を捜すために貴方とデビルKのお力添えを頂きたいのです。」

 

「デビルK?なんだそりゃ?俺にはさっぱり分からないな。」

 

そう言い切った蓮に神楽は一枚の写真を突きつけた。

そこにはシーカーを着身したサードを手に乗せた蓮が写っている。

 

「知っています。

間明という方から教えていただきました。

困っているなら貴方達を頼れと。」

 

写真を受け取り日付を確認する。

蓮がインサイザーをベントした日、セシリアとの試合があった日だ。

 

(このアングル、、明らかに窓の反対側に立たないと撮れない。

そしてあの時、少なくとも俺がウイングナイトに変身した時には誰も居なかったはずだ。

なら、これを撮ったのは間明で間違いない。

ゼイビアックスに協力しているあいつならベンタラから写真も撮れる。)

 

「間明の奴、挑戦状代わりってか。

肖像権侵害で訴えてやる。」

 

『なら話は決まりですね。』

 

ポケットからサードをとりだし神楽の前に画面を開いて向けた。

 

『はじめまして神楽様。

わたくしはデビルKこと歩くケータイフォンブレイバーのサード。

以後お見知り置きを。』

 

「よろしくお願いしますね。」

 

「さて、要件を聞く前に言っておくが、報酬は半分前払い

那由多に1の確率だが失敗しても責任は取らない。

あと他の奴に、例え母親にもこの事は話すな。

ネットに上げるな。もし話したり、投稿したりしたら、

こいつが火を噴く。」

 

素早く取り出したスタームルガーを神楽の額に当てる。

 

「勿論、構いませんわ。」

 

「即答かよ。」

 

ま、じゃなきゃ単身で専用機持ちの軍属に頼み事なんかしないな。そう思ってスタームルガーをホルスターに収めてバイクに寄りかかった。

 

「んで、どんなヤマなんだ?」

 

「剣道部で何人かの生徒が行方不明になってるんです。

その犯人が、巷で噂の怪人屋かも知れないんです。」

 

 

 

5

有野啓長は生まれつき劣等感に苛まれていた。

あいつは俺より強そうだ。あいつは俺より賢そうだ。

そう思うだけで啓長は死にたいぐらいに惨めな気持ちになった。

それ故に彼が強さに固執するようになったのはある意味自然だった。

 

潰れそうになる心をなんとか支えながら啓長は努力した。

死ぬ寸前になるまで走り込み、栄養失調で倒れるまで不眠不休で勉強した。

死の淵を体験する。

それが何よりの経験値になると思った啓長は勉強と喧嘩に明け暮れた。

点滴を取りながら二十四時間以上勉強したり、

ヤクザの事務所に殴り込んだり、兎に角暴れた。

 

警察にマークされ包囲された事もあったが鍛え上げた喧嘩の腕と頭脳で乗り切った。

悔しそうに地団駄を踏む女性警官を見るだけで啓長は満面の笑みを浮かべた。

強さに一切関係なく女が偉くなってる世界が気に食わなかったからだ。

 

警察から逃げ、偶に手段を見つけては勉強し、

喧嘩に明け暮れる日々を送っていた啓長。

ある時、廃屋でくつろいでいた時だった。

 

「はじめまして、有野啓長君。私はマトックという者だ。」

 

マトックはスピアーのアドベントデッキを差し出しながらこう言った。

 

「私は今この女尊男卑社会に叛旗を翻すべく活動している者だ。

そこで君に是非とも力を貸して欲しいんだ。」

 

勿論啓長は二つ返事で引き受けた。

反射改革ともなれば命を懸けて戦う機会などごまんとある筈。

その時こそ自分の成長のチャンスだ。

そうして啓長は仮面ライダーになった。

が、それは彼が想像していたものより格段に簡単な仕事ばかりだった。

 

「あかん」

 

ライダーの力を使えば大抵の奴より強かった。

 

「好かん」

 

更にアタックベントまで使えば数の暴力で簡単に敵を殲滅出来た。

 

「満足出来ひん!」

 

啓長の不満は募りに募っていた。

 

「随分荒れてるね有野君。」

 

「なんや間明か。

言っとくけど俺は今暇を持て余しとるんや。」

 

「なら丁度いい。

ゼイビアックスから指令を預かっていてね。君に仕事だ。」

 

「けっ!どーせまた亡国や女権の奴らやろ!」

 

「いや、ドーパントさ。」

 

「、、、ドーパントってあれか。

人間が小箱みたいなヤクで変身するあれか!」

 

「ああ。丁度今僕らの商売を邪魔してる奴がいてね。」

 

近くの鏡に手をかざす間明。

そこに何が写り込んだ。

覗き込むと緑色の怪人と黒い怪人が戦っている。

黒の方が優勢だ。緑色の方は余り近接戦が得意そうではない。

 

「あの黒いドーパントを倒して欲しいんだ。」

 

「強いんかあいつ?」

 

「風都一を気取ってるよ。」

 

「今日からは二番や。」

 

人差し指を立てた両手を交錯させながら前に突き出し、

くるりと手首を一回転回し、

両手の小指を立てながら水平に両手を大きく広げる構えを取り

 

「KAMEN-RIDER!」

 

左手で持ったデッキをバックルにセットしながらくるりと右手を手の甲が正面を向く様に回す。

スピアーに変身した啓長は足取り軽やかに窓から飛び降りると自前のホンダCBR600F4iに跨り、めちゃくちゃに蛇行しながら去って行った。

 

「、、、さて、漸く駒が揃った。」

 

独りごちると間明は早速カップ麺を作り始めた。

 

「、、、よく嘘の指令を奴に伝えておきながら落ち着いて飯なんか作れるな。」

 

「おや、マドカちゃん。居たのかい?」

 

出て来たのはサイレントゼフィルスのパイロット、

エムことマドカだ。

 

「ゼイビアックスに逆らってただで済むと思ってるのか?」

 

「ただも何も僕は将軍から金銭的援助を受けたことは一度もないよ。

むしろ今までの分を経費で落として欲しいぐらいさ。」

 

こう見えてハッキングとか色々やってるんだよ?

両手を広げておどけて見せる間明。

マドカはきみ悪く思った。

 

「奴に逆らえば死ぬより酷い目にあうぞ?」

 

マドカは今でも夢に見る、思い出すだけでも身体中から汗が吹き出し、

目眩がする光景、オータムの最期を思い出しながら忠告した。

 

「構わないよ目的を達成したあとなら。」

 

「本気か?」

 

「僕は目的の達成以外は基本、どうでもいい、どっちでもいい、なんでもいいんだよ。」

 

マドカは戦慄した。

頭のネジが2、3本飛んでる自覚がある自分だってある程度は自分が大事だ。

それなのにこいつからは保身みたいな感情がまるで感じられない。

 

ゼイビアックスに逆らっても悪びれもせず、

命なんてどうでも良いと言わんばかり。

マドカが知る由も無いがかつて蓮は仮面契約者をみんなもう魂に致命傷を負ってると評した。

もしこれを知っていたならマドカはこの時こう言っただろう。

 

この男は魂が腐っていると。




ケイタ「てな訳で、今回はここまでです!」

一夏「初めて六千字を下回ったけど?」

理世「旅行先でネット環境最悪だったんだ許してやれ。」

ケイタ「じゃ、時間も押してるんでさっさと済ませますか。」

一夏「次回 Episode of jokers その3 Cは悪魔だ/ドラゴンナイトの憂鬱 後編!」

理世「またのご来店、お待ちしております。」


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Episode of jokers その3 Cは悪魔だ/ドラゴンナイトの憂鬱 後編

ケイタ「初めて前後編になったけど、これ中編でもよかったんじゃない?」

翔太郎「ま、勘弁してやれ作者も手探りで書いてるんだ。」

一夏「ま、なんにせよ皆カッコよく書いてもらわないとね。」

ケイタ「Cは悪魔だ。なんて題名あるけど回収されるんだろうな?」

翔太郎「そいつは見てのお楽しみだ。」

一夏「それではどうぞ!」


1

スピアーはバイクを停めると近くの鏡から地球側を覗き込んだ。

緑色のドーパントと黒いドーパントはまだ戦い続けている。

どうやら緑色の方が逃げにはいったらしい。

 

(よし、孤立した所をガゼール共に包囲させてタイマン張ってもらうで!)

 

意気揚々と地球側にダイブしようとした時だ。

 

<STRIK VENT>

 

右側からバイザーの認識音が聞こえた。

振り向くとそこにはゴツい銀色のライダー、

トラストがいた。

 

「なんやお前?」

 

「私と戦え。」

 

「お断りや、今まさにこれから仕事しようって所や。

あのドーパント倒した後にたっぷり時間かけて嬲ったるからそこで待っとれ。」

 

「待てん!待たん!今すぐ戦え!」

 

メタルホーンがスピアーの肩アーマーに炸裂する。

幸い最も装甲が硬い部分だったので大したダメージは無かったが彼をキレさせるには十分だった。

 

「その頭の角、象牙代わりに飾られたいみたいやなぁ!」

 

スピアーは激情に身を任せながら長年培って来た格闘センスでトラストを翻弄した。

得意のフェンシングで上半身にフェイントをかけながら下半身に深く突きこんでくるトラストにスピアーは即座に姿勢を低くし鉤手守法で対抗した。

下から巻き込む様に伸び上がるとメタルホーンを両手で掴み

 

「ここがお留守や!」

 

体のバネを余すことなく使ったタイキックを脇腹に叩き込む。

 

「ぐっ!」

 

「これで!」

 

握力が弱まった隙にメタルホーンを奪い明後日の方向に投げ捨てる。

顎にハイキックを浴びせ近くにあった粗大ゴミの山まで吹っ飛ばし

右脛の羚召膝甲(れいしょうしつこう)ガゼルバイザーにカードをベントイン。

 

<SPIN VENT>

 

螺旋状の角が二つ付いた殴打武器ガゼルスタッブを装備する。

 

「終いや!」

 

飛び上がり胸部と頭部に先端が一つづつ突き刺さる様に突き出す。

後一秒足らずでトラストの脳と心臓が同時に貫かれようとしたその時

 

<CONFINE VENT>

 

ガラスの塊が砕ける様な音と共にガゼルスタッブが粉々に砕けたのだ。

 

(カードを打ち消すカードやと!?)

 

「はっ!」

 

スピアーが落下してくるのに合わせて正拳を顔面に繰り出すトラスト。

スピアーは空中で身を捻って避けると新たなカードを使った。

 

<ATTACK VENT>

 

スピアーの背後から三体のレイヨウ型ビーストが召喚される。

 

「貸せ!」

 

そのうち一人から短刀を二本ふんだくると、

くるりくるりと剣舞の様に回転しながらトラストに迫った。

 

(考えたな。右に飛んでも、左に避けても配置した手下に行手を阻ませられる。ならば!)

 

<ATTACK VENT>

 

トラストも契約ビースト、メタルゲラスを呼び出し、

スピアーとその後ろに待機していたレイヨウ型ビーストを吹き飛ばしながら猛進させる。

そしてメタルゲラスそのまま自分の方に突っ込んでくる様にして激突する寸前に飛び、踏み台にして反対側の鏡にダイブ。

地球側に帰還した。

 

「ぐっ、、、あんの角野郎!

、、はっ!そや、黒いドーパントは!

おらん!畜生!何ぼーっとるんやお前ら!

さっさと角野郎と黒いドーパントを探せ!」

 

悪態をつきながらアーマーを解除して啓長、

その顔は悔しさや怒りで醜く歪んでいた。

 

「俺が、俺こそが一番になるんや!

何があろうと倒したる!」

 

決意を新たに啓長は戦闘の被害を免れたホンダCBR600F4iに跨り、二人の標的を捕捉すべく走り出した。

 

 

 

2

「くっそ、どこ行きやがった?」

 

完全に見失った事を確認すると仮面ライダージョーカーは変身を解除し、左翔太郎の姿に戻った。

そして何時もの様に独り言ちた。

 

今まで風都まで来ないにしても怪人屋、なんて噂と名前がつくぐらいに派手にやってりゃ犯人も色々ガサツ、と思っていたが当てが外れた。

 

よく考えてるぜ。

この林、人目につかない上に直ぐそこには入り込んじまえばそれだけで逃げ切れるIS学園というこれ以上ない隠れ場所。

加えて道路を真っ直ぐ行けば直ぐにとはいかないが街だ。

今日はゴールデンウィーク初日。

木を隠すなら森、人を隠すなら人混みだ。

それに一度逃げ切られたら顔を見られてるこっちが不利だ。

 

「この俺とした事がやっちまったぜ。」

 

だが起きちまった事は仕方ない。

この俺がなんとしても奴に罪を数えさせることに変わりはない。

 

「待ってろよ怪人屋。

この事件、極めてハードボイルドに解決してやるぜ。」

 

 

 

3

少し時を巻き戻し木組みの街の甘味処甘兎の前、

青いジーパンに無地の白シャツにオレンジのライダースジャケットを羽織った少年が立っている。網島ケイタだ。

 

(結局断りきれずに手塚さんまで来る事になっちまった。)

 

はあ、と溜息をつきながら目を擦る。

夢でみんなを殺してからというものの、

すっかり眠りが悪くなってしまった。

 

寝ようと思って目を瞑れば皆の惨殺死体か、

一夏の柔らかな美乳という健全な青少年の精神衛生上大変よろしくない二択しか浮かんでこないという非常に危険な状態なのだ。

 

当然安眠なんか出来るはずもなく起きてる全ての時間を睡魔との戦いに捧げているのが現状だ。

 

「帰りたい。」

 

『一番乗りが真っ先に帰ってどうする!

それに藤丸に奢る約束だろ。』

 

そうだよな、と待つこと5分。

学園の方から七分丈の黒いテーラード・ジャケットに、

ジップブーツカットデニム姿の立香がやって来た。

 

「ごめん遅かった?」

 

「いや、そんな待ってないです、、、。」

 

「? 俺の服なんか変?」

 

「いや、もっと青っぽい服かと思ってたんで意外だなって。」

 

「それ美作さんにも言われたことあるよ。」

 

「へぇ、意外と皆私服意外なんすかね?」

 

「かもよ?スティングの子とか予想の遥か斜め上だったりして。」

 

「確かに私服想像つきませんね。」

 

そんな風に話していると背後のドアが開いた。

 

「おや、早かったな二人とも。

待たせてしまってすまないな。」

 

「ごめんね時間かかっちゃって。」

 

「な、なんで私まで、、、。」

 

ケイタと立香は面食らってしまった。理由は二つ。

一つは扉から現れたのは海之、千夜、紗路の3人だったからだ。

海之と千夜は兎も角、紗路と二人に接点があったのは意外だった。

 

次に3人の装いだ。

千夜は予想通りの白い長めのフレアスカートに彼女の瞳と同じ色のトップスとゆったりとした感じで、

紗路は髪の色よりやや薄い色のパーカーに女物の白いカラージーンズと出かけられる格好なのだが海之の私服は

 

(フリッフリッのロリータファッション!?)

 

(よ、予想の斜め上どころか明後日の方向遥か彼方に飛んでっちゃったよ?)

 

《アキヤマが前に言ってた白ロリという奴だな。》

 

「それでは行くか、なんでも網島の奢りらしいからな。

紗路、遠慮しなくていいぞ?」

 

「えっ本当!?ありがとうございます!

ゴチになります!」

 

「そうだったの!?ごめんね網島君。」

 

「お前らは割り勘に決まってるだろ。」

 

 

 

4

カラオケを目指して進む五人。

一番前にケイタと海之、

一番後ろに千夜と紗路、

そしてその間に立香と大体二列に並んで進んでいた。

 

「ところで網島、君はいつデッキを手に入れたんだ?」

 

「外で聞くかよそうゆう事。

てか、あの時ブレードから助けてくれた事に礼は言うけど、殺そうとした事は全然許してないからな!」

 

そんな殺伐とした話題を他所にただ遊びに行くだけとしか聞かされていない千夜と仮面ライダーに関して風都からの噂話くらいしか知らない?紗路はいつも通りのゆるふわトークを繰り広げていた。

そしてそんな五人の背後に

 

「ねえマシュさん。」

 

「なんでしょう。」

 

「近いよね、ケイタと手塚さん。」

 

「ええ。それからあの後ろの豚ども、先輩を狙ってますよね?」

 

「うん。ワンチャン有るとか思ってるんだよ。」

 

「一夏さん。」

 

「はい、殺しましょう。」

 

二人の修羅とそれに巻き込まれた哀れな被害者の3人が尾行ていた。

一応経緯を述べると一夏と簪がラビットハウスの前で待ち合わせて合流し、街を散策していた時にラビットハウスの買い出しに出ていた心愛と休日でランチを食べようと出かけていたマシュと合流して途中まで四人で行こうという話になったのだが、

運悪く甘兎の前に来た時に五人が一緒になるのを見てしまったのだ。

 

もちろんただその場面を見ただけなら友達と遊びに行くだけだろうと判断するだろう。

しかし一夏やマシュからみて海之の私服は出かけるだけにしては気合いの入った物に見えてしまったのだ。

 

例えばデート。

その考えに辿り着いた瞬間一夏とマシュの思考から冷静の二文字が吹っ飛んだ。

一夏に言わせれば

 

(あんな告白みたい事言った上にセクハラじゃ済まされないようなことをしといてよく他の女とデートに行けるな?)

 

でありマシュに言わせれば

 

(先輩最低です。

私よりあんな金髪ちんちくりんのマッチ棒みたいにガリガリなチビが好みなんですね?

それにあの緑のはなんですか?

あのオツムの足りてなさそうな脳空は誰ですか?)

 

という訳である。

そして不幸にもその二人に挟まれる形で歩いていた心愛は逃げ出せずにいた。

殆ど泣きかけの顔で簪に助けを求めて振り返ると、

簪は深緑色のナイロンパーカーのポケットからアックスのデッキをチラ見せする、

ビーストが出たの意味のジェスチャーだろうか?

をすると、ごめんと手を合わせて路地裏に駆け込んで行った。

 

「簪ちゃんの嘘つき。」

 

この日始めて心愛は友達の陰口をたたいた。

 

 

 

5

心愛という尊い人柱のおかげで修羅二人から無事に逃げ果せた簪、アックスは特に目的なくぶらぶらしていた。

 

一応心愛にはビーストが出たからのジェスチャーはしといたがあんまりにも気の毒だったな。

今度はんぐり〜の出張販売所の日替わりスペシャルでも奢ってあげよう。

 

そう思いながら交差点に差し掛かったその時だった。

背中に鈍い痛みが走った。

 

振り返ると想像通り怪人がいた。

人型に蜘蛛を混ぜたような外見でありながら目、鼻、口など、顔立ちは人間とよく似ていて今まで見て来たどんなビーストよりも不自然で気持ち悪い外見だ。

 

「█▅▃▄▄▅▅▅▅━━―!!」

 

おそらく意味のない奇声を発しながら鉤爪を振り下ろす蜘蛛怪人。

デストバイザーで受け流し、返す刃で腹に斬撃を見舞う。

 

「██▅▅▅▃▄▄▅▃▄▅!」

 

倒れ伏した蜘蛛怪人は大袈裟に腹を抑えながらのたうち回り始めた。

 

「?(どうゆうこと?下手したらレッドミニオンより打たれ弱い、弱すぎる。)」

 

ふー、ふー、といきを荒くして咽び泣くところなんてまるで初めて親に打たれた子供みたいだ。

仕草の一つ一つが余りに弱々しくファイナルベント無しで、

なんなら変身していなくても倒せそうだ。

 

(油断させるための演技?いや、臭すぎる。)

 

試しに足でつついてみるとガシッと縋り付くようにアックスの足を伝って登って来た。

 

「!?」

 

「オね、、、お、オ、、お願イ、コ、、コロ、殺シて、、?」 

 

「━━━━!!」

 

しかも有ろう事かたどたどながらも人語を話したのだ。

 

「(アドベントビーストじゃない!?)まさか、、人間!?」

 

<SHOOT VENT>

 

そう思った瞬間、轟音と共にアックスと蜘蛛怪人は強い衝撃を受けて吹っ飛ばされた。

 

(ビースト?いや、さっきのは間違いなくバイザーの認識音!)

 

蜘蛛怪人を庇うようにデストバイザーを構える。

どこからでも来い。

次に砲撃が来たタイミングでフリーズベントで武器を使えなくしてからアタックベントでリンチにしてやる。

最悪刺し違えてでも蜘蛛怪人は逃してやらないと。

そんな思考が頭をよぎった時、奴は現れた。

 

緑色の戦車のような装甲は恐らく全仮面ライダーの中で最も厚いのだろう。

簪のアックスやトラストよりもゴツい、まるで奴自身が一個の戦車だ。

その姿は以前セブンから教えられたライダーそのものだった。

 

(緑のアーマーに触覚みたいな角、仮面ライダートルク!)

 

トルクがビームガン型のバイザー機召銃(きしょうじゅう)マグナバイザーを連射するのに合わせてアックスはカードをベントイン。

 

<STRIKE VENT>

 

両腕に一の腕をすっぽり覆う手甲に爪がついた打撃武器、

デストクローを盾のように使い接近する。

 

(まず一撃。)

 

デストクローを振り下ろそうとした瞬間、

トルクのアーマーが光になって弾けた。

中から白人の青年が現れる。

 

「ッ!」

 

なんとかギリギリで腕を止め、武器を下げた。

 

「脅かして悪いね、

こうでもしないと敵意がないって伝わらないと思ったからさ。」

 

アックスの動揺を他所にトルクは、ドリューは一気にまくし立てた。

 

「しかし本当に良かったよ、

君がドラゴンナイトみたいに話が通じない奴じゃなくて。」

 

「ドラゴンナイト?」

 

「ああ、赤いライダーだ。気をつけた方がいい、

なんせあいつは、俺たちを裏切ってアビスをベントした張本人だ。」

 

 

 

6

同じ頃繁華街にあるカラオケ店、

その受付にケイタ達はいた。

 

「三時間、5人で。ドリンクバー付き、

あー、あと手塚さん以外にはいちごパフェを。」

 

「私は?」

 

「コーラとメロンソーダのカクテルでも作っとけ。」

 

マイクを渡され一番奥のブースに入る。

 

「飲み物とってこようか?」

 

「お、悪りい、俺コーラ、立香さんは?」

 

「え?ジンジャーエールで。」

 

「私抹茶で。」

 

「カラオケに、ってかドリンクバーにあるの?」

 

「わ、私は、、」

 

「わかってる、カフェインレスのを適当に持ってくるよ。」

 

そういうと海之はキビキビした足取りでドリンクバーに向かっていった。

 

「にしても海之ちゃんも隅に置けないな、

網島君に藤丸さんまで誘うなんて。」

 

「仮面ライダースティングに誘われたんじゃなくてあいつがお前ら連れて割り込んできたんだ。」

 

睨みながらそう返すと千夜は思わず飛び退いた。

 

「まさか、網島君が?」

 

「、、、。」

 

無言でポケットからドラゴンのデッキを取り出すケイタ。

 

「二人ともさっきから何話してるの?」

 

ことの成り行きが全くわからない紗路と事情を知ってるからこそ迂闊にケイタを刺激できない立香。

敵意剥き出しのケイタに狐につままれたようになってしまった千夜。

一歩間違えば死人が出そうな空気が漂い出す。

 

「あんたはどこまで知ってるんだ?」

 

「、、どこまでって?」

 

「質問を質問で返せる立場だと思ってるのか?

悪いけど俺は今自分の顔鏡で見ないでも最悪って顔してんのが分かるぐらいには機嫌が悪いんだ。」

 

「ちょっ!落ち着きなよ!」

 

「な、なんだかよく分かんないけど乱暴はやめて下さい!」

 

一触即発、全員の脳裏にそれと似たようなワードが浮かんだ時。

 

「なんだ?なんだ?もう歌い始めてるかと思ったら喧嘩か?

これでも飲んで機嫌直せ。」

 

戻って来た海之が飲み物を配る。

 

「そんで?話があるから約束に割り込んできたんだろ?」

 

「勿論。だがその前に、紗路、歌ってていいぞ?

私達は大事な話がある。」

 

「ほんとお!?じゃあシャロ本気出しちゃおっかな!

聞き惚れちゃってねぇ〜!」

 

テーブルにあったマイクとマラカスを奪うように取ると飛んだり跳ねたりしながら神崎蘭子のお願い!シンデレラを歌い始めた。

声や歌い方が引くほど似ている。

 

「面白いだろ?あいつカフェインで酔っ払うんだ。

コーラに入ってる程度でもな。」

 

「うちの一夏はヨーグルトで酔っ払うぞ。」

 

「何を競ってるの?」

 

「それじゃあ本題に入ろうか。

網島、君は我々仮面契約者がもし世間に公表されたらどうなると思う?」

 

「どうって、始めのISみたいに眉唾物みたいな感じじゃないの?」

 

「世間はな、だが権力者はどうだ?」

 

「どうゆうこと?」

 

「一度上等な生地のスーツに着慣れたならその地位を脅かすような物はどんなに些細な物でも潰すって話だ。」

 

「つまり、お互い正体を無闇にバラすのはやめようって?」

 

「ああ。仮面ライダーは心霊サイトの絵空事。

少なくとも今はそうでなきゃ困る。」

 

「今は?」

 

「今は、だ。いずれ皆気付くだろう。

仮面契約者こそがこの国を暴力で守る最後の手段だと。」

 

「それと日本人以外のライダーをベントするのとどう繋がるんだよ。」

 

「ISや戦車、戦闘機なんかはどの国も持ってる。

だがアドベントビーストに対抗できる唯一無二の存在は現状これだけだ。」

 

そう言ってデッキを取り出した海之はどこまでも真面目な声でこう言った。

 

「この国を暴力で守るために、

日本人で無いライダーには大義のための犠牲になって貰う。」

 

「その為に外人ライダー狩りに協力しろって?」

 

「話が早くて助かる。私の同志となってくれ網島。」

 

立ち上がり手を差し伸べる海之。しかしケイタは

 

「断る。そんなエゴのために殺人の片棒担ぐなんてごめんだ。」

 

「この国は先の白騎士事件後の対応で他国の圧に屈するしかないことが露見してしまった。

米国の要請により設立されたIS学園などその象徴だ。

君は故郷に強盗が入ってきてるのに何もしないのか?」

 

「俺は何が正しいかは分かんないけど少なくともお前が間違ってるのはわかる!

殴りかかってくるのを殴り返したって解決しない。」

 

「じゃあ黙って耐えろと言うのか!?」

 

「知らねえよ!

別にわざわざお前が危ない目に飛び込んでく必要なだろ!

それもお前みたいな病人の女が!」

 

「私は病気なんかに負けない!」

 

「錯乱して斬りかかってきた奴が何言ったって説得力無えよ!」

 

「黙れ!」

 

ケイタの胸倉を掴んで無理やり立たせる海之。

 

「ベントされたいか?」

 

「上等だ。ベンタラ(おもて)に出ろ!」

 

「やめて!」

 

しかし二人に千夜が割って入った。

 

「二人ともやめてよ、ライダーなんて!

だっておかしいじゃん!

私達まだ、ていうか、ただの高校生だよ!

それなのに殺しあうとか国守るとか、

漫画や小説じゃないんだよ!それなのに、

二人ともなんで続けるの!?」

 

「お前ならわかるだろ、雄一の二の舞を出さないためだ!」

 

「そんな事したって雄一君は帰ってこない!」

 

「帰って来て欲しいからやってる訳じゃない!」

 

「ッ!、、網島君はなんでライダーやってるの?」

 

「、、、。分かんねぇよ。何するにしたってこんな

こんな思わず昂ぶっちまって、

力使うのが楽しくなっちまいそうな力持ってたら何を覚悟したって、影に飲み込まれちまったらもう駄目だろ!、、そんな風に考えちまったら、、

もう、どうしたら良いかなんて、わかる訳ねえよ。」

 

「網島、、。」

 

「ケイタ君、、。」

 

「、、二人ともごめん。」

 

そう言うと千夜は熟練の手品師のような手付きで二人からデッキを奪うと外に走り出していった。

 

「千夜!待て!」

 

千夜に続いて飛び出す海之。

 

「ちょっと宇治松さん!?

立香さん、これ、お勘定に使って、お先に!」

 

立香に五千円札を渡すとケイタも二人に続いて走り出した。

 

 

 

7

「ドラゴンナイトに裏切られた?」

 

「ああ、きっとアイツは両生類みたいに冷たい血が通ってるのさ。」

 

なんせ裏切るつもりで近づいて来たみたいだしね。

そう言って両手を広げるドリュー。

 

「嘘、ケイタ君はそんな人じゃない。」

 

「何?もう網島に会ってるのか?

なら丁度いい、話してやるよ。

アイツが俺たちにした仕打ちを。」

 

 

 

8

ケイタ、ドリュー、そして仮面契約者深淵(カメンライダーアビス)坂井 研司(さかいけんじ)はチームだった。

 

偶々ビーストの群れを追い立てていた時に共闘した時に意気投合して仲間になったのだ。

3人とも年齢や人種もバラバラだったが

 

「ライダー同士の殺し合いなんて無意味で虚しい。」

 

という共通の考えがあり、お互い持ちつ持たれつでビースト狩りをしていた。

そんなある時ケイタから二人の元に連絡が来た。

 

「ライダー同士の殺し合いを主催してるやつの根城を見つけた。

調べたい事があるから手を貸してくれ。」

 

勿論断る理由は無い。

案内された通りについていくとそこはいかにも悪の組織の秘密基地といった趣の要塞だった。

 

「二人ともついて来てるか?」

 

「ああ、にしても妙だな?

お出迎えぐらい覚悟してたんだけど、拍子抜けだな?」

 

「そりゃそうさ、今からだからな!」

 

ドラゴンナイトが指を鳴らすとトルクの背後から二匹のレッドミニオンが現れて羽交い締めにする。

 

「なに!?」

 

「網島君?ぐあっ!」

 

そして狼狽えたアビスにドラグセイバーの一撃がくわえられた。

 

「う、裏切ったのか?、なぜ?」

 

「古い世界とオサラバするんですよ。

坂井さんも来ると良いです。」

 

「断る!」

 

「じゃあアンタともオサラバだ!」

 

怒涛の剣戟でアビスをグロッキーにするとドラゴンナイトはファイナルベントのカードを引いた。

 

そこから先は逃げ出したのでトルクには分からない。

しかし奴がいま新たに簪に接近したということはそうゆう事だろう。

 

 

 

8

「俺は走りながら何度もケンジに心の中で詫びたよ。

俺が気付けていればアイツはベントされずに済んだ。」

 

「、、、。」

 

「わかったろ?ドラゴンナイトは信じていた友情を裏切るような奴なのさ。」

 

じゃあ何でウイングナイトがインサイザーをベントした時にあんなに怒ったんだ?

 

そう返そうとした時

 

「███▅▅▃▄▄▅▅▃▃▄▅▅━━――!」

 

蜘蛛怪人が突然鏡に向かって走り出したのだ。

 

「!? 待って!」

 

「な!?おい話はまだ終わってないぞ!」

 

ドリューを振り払った簪は蜘蛛怪人を追って地球側にダイブした。

どうやら噴水から飛び出たらしい。

飛び込む様に飛び出ると柔らかい砂の上に着地した。

 

「!?」

 

と同時に眼前の景色に驚愕した。

公園の広場の一角が蟻地獄のようになっているのだ。

中心には巨大な蟻地獄の頭部がある。

恐らくアレがこの異常現象の原因だろう。

 

しかしアックスにはどうすることも出来なかった。

理由は三つ、一つ目は彼女が着地した場所は巣にギリギリ接しない場所で下手に動けば敵に有利すぎる戦場に真っ逆さま。

それだけは避けたい。

 

次に人質。

経緯は分からないが斜面になってる所に黒い帽子の伊達男と幼馴染の本音、

昨日知り合ったばかりの鈴、それからもう一人知らない少女が何と男の出したワイヤーでかぶら下がっている。

人質に取られたら不味いのは明白だ。

 

そして三つ目は、反対側にいる織斑千冬から物凄い形相で睨まれているからだ。

どうやら怪人の仲間だと思われているらしい。

力があるのに何も出来ない。これ程歯痒い事もない。

 

(結局、私はっ!)

 

思わず地団駄を踏みそうになる。

 

「ったく、仕方ねぇ。ごめんよ鈴ちゃん。」

 

伊達男が掴んでいた鈴の襟首を放すと同時に懐から黒い分厚いケータイを取り出す。

それと同時に上着の内側から一本の黒い大きなUSBメモリが一人でに飛び出した。

 

(ガイアメモリ!?)

 

<JOKER MAXIMUM DRIVE>

 

メモリのガイアウィスパーに合わせてクワガタ虫形に変形したケータイ、メモリガジェットスタッグフォンは発生させた衝撃の余波で本音ともう一人を上に吹き飛ばし、蟻地獄怪人に特攻していく。

思った以上にパワフルなガジェットだ。

蟻地獄が怯んでいるうちに滑り降りて来た伊達男は何故かグッタリしている鈴にワイヤーを取り付けると巻き取らせて上にあげた。

 

「さて、お前の相手は俺だぜ。砂場野郎」

 

「うぅ?」

 

「フィリップ!」

 

男はスロットが二つついた赤い装置を腰に装着して戻ってきたスタッグフォンからT2ジョーカーを抜き取る。

 

そしていつの間にか取り出した緑のメモリと共にセット。

 

「変身!」

 

<CYCLONE JOKER!>

 

ガイアウィスパーと共に巻き起こった砂嵐が巻き起こる。

それが晴れた時、そこに立っていたのは

 

「漆黒のドーパント!?」

 

「緑の仮面ライダー!?」

 

「いや、どっちもだ、俺たちはW(ダブル)

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

翔太郎「ついに登場だな、俺、いや、俺たち風都の涙を拭う二色のハンカチが!」

一夏「これからも翔太郎にはバンバン活躍していただきますからね!次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」

ケイタ「俺がみんなを襲った?」

蓮「アレは間違いなくドラゴンナイトだ。」

T1サイクロンドーパント「どいつもこいつも使えなくて仕方ないね〜。」

スピアー「おのれ舐め腐りよって!」

アックス「ベントまでする必要は!」

トルク「俺が敵って言ったら敵なんだよ!」

ケイタ「俺は!俺が間違ってるのかよ!?」

翔太郎「お前の覚悟はんなもんじゃねぇだろ?」

一夏「ケイタ!やめて!」

ドラグバイザー<FINAL VENT>

スピアー「嘘、やろ?」

ドラゴンナイト「これが俺の答えだ、、。」

一夏「次回!Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味!」

翔太郎「残った札は要らねぇ、、。俺自身がジョーカーだからな、、。」


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Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味

ケイタ「これまでのinfinite DRAGON KNIGHT。今回の依頼は!」

フィリップ「間明蔵人の差し金により四十院神楽から行方不明者の捜索を依頼されたレン・アキヤマとフォンブレイバーサード。3人の前に謎のドーパントが現れる。」

ゼロワン『そしてついに木組みの街にて姿を現した風都の仮面ライダー、W。果たして奴は敵か、味方か?』

ケイタ「それではどうぞ。」

(op DIVE IN TO THE MILLER KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT)


1

少し時を戻して蓮の視点から物語を見よう。

蓮は神楽に指定された公園のベンチに座ってまっていた。

 

《レン様?一つよろしいでしょうか?》

 

(なんだサード?そろそろ四十院が来るから手短に頼む)

 

《なぜあの時わたくしにデビルKと名乗らせたのですか?》

 

実はあの時、四十院に話しかけられた時に蓮はサードにデッキを介して指示を出していたのだ。

 

(もしあの場でデビルK、エンジェルKじゃないって言ってみろ。

他にもいるのか?って探ってくるかもだろ?

少なくともお前がサードでデビルKって事にしとけばフォンブレイバーはエンジェルKと後プロトタイプだけって思ってくれる可能性が高いからだ。)

 

《ナルホド、しかしなぜわたくしはデビルKと呼ばれたのでしょう?》

 

(そりゃお前の色はどう見たって白じゃないし、

暗いとこなら黒っぽく見えるかもだからだろう?)

 

《、、、そんな理由ですか!?》

 

(そんなもんだろ。

それより四十院に関する情報は仕入れられたか?)

 

《勿論です。スマートフォンをご覧ください。》

 

言われた通りにスマホを開く。

サードのアドレスからメールが届いていた。

 

(、、四十院神楽。旧華族の大家北岡家の第一分家四十院家の長女。

幼少から剣術、勉学に励み、旧華族や財閥令嬢しか通わないような女子校で成績はいつもトップクラス。

剣道は大会での優勝経験も。その上ISも座学操縦共に優秀。

さらに見ての通りの容姿端麗で性格も慎ましやかで飾らない。

と才色兼備のお嬢様。17年前に死んだ北岡家出身のスーパー弁護士、北岡秀一に息子がいれば許婚になっていたはずだった。

北岡秀一、確か病気で早死したんだったっけ?

噂だが様々な国の女と交際関係にあった筈だし、

生きてて早い段階で結婚してたら俺らより一つ二つ下の子供がいたかも、か。

許婚ってのもあり得ない話じゃなかったっぽいな。)

 

そんなことを考えているうちに誰かが来たようだ。

 

「おはようございます。

お待たせして申し訳ありません。」

 

袖無しの白い縦セーターに黒いミディスカートの神楽がやって来た。

 

「いや、時間ぴったりだ。問題ない。」

 

歩きながら話そう。そう言って公園の出口に向かおうとすると

 

「あれれ?レンレンにかぐっちだ!おーい!」

 

私服も萌え袖の布仏本音がいた。

 

「あら、布仏さん御機嫌よう。」

 

「ごきげんよー、珍しい二人だね〜。

もしかしてそうゆうことなの?」

 

ニヤニヤといやらしい目つきになる本音。

それに対してただでさえ皺の寄ってることの多い蓮の眉間にそれはそれは深い皺が刻まれる。

 

「悪いが今日は忙しいんだ。

下らない冗談を言う相手が欲しいんなら甘兎の宇治松のとこにでも行ってろ。」

 

「あそこちややんのお家だったの?」

 

余計な話で盛り上がっちまった。

そう蓮が後悔した時だった。

 

「そこの両手に華なクールボーイ、ちょっといいかな?」

 

誰が両手に華だ。

四十院は兎も角布仏はタンポポもいいとこだろ?

振り返ってそう言おうとした時が、その話しかけてきた男見て黙る。

体の運びから只者じゃないのが分かる。

場慣れしてて程々に修羅場も潜ってるんだろう。

顔は中々の美形で、鋭い目を中折れ帽子で隠している。

服は動きやすくもちゃんとした場にいてもおかしくないまあまあの値段のスーツ姿。

 

「あんた興信所の社員だな?」

 

「いかにも、私立探偵の左翔太郎だ。」

 

そう言って小洒落た名刺を差し出した。

 

(鳴海探偵事務所?何処かで聞いた名前だな。

なんかの資料で読んだような?)

 

「それで今あるガール達の行方を探っていてね。

この顔に心当たりないかな?」

 

そう言って三枚の写真を懐から取り出す翔太郎。

 

「先輩達!?」

 

「え!?本当!?」

 

(なに?ということはこの探偵も怪人屋を、、!

思い出した。鳴海探偵事務所。

表向きは普通の興信所だが裏ではガイアメモリを販売、

開発していた秘密組織ミュージアムの起こす超常犯罪解決を組織の裏切り者、園咲文音(そのざきふみね)からの支援を受けながら解決してきた探偵事務所!)

 

「そうかなら話が早い!詳しい話を痛てててててて!!!」

 

「教え子に何を吹き込んでいる怪しい奴め。」

 

写真をしまいメモを取ろうとした翔太郎の腕を思い切り捻りあげる手があった。

いつの間にか背後にいた織斑千冬だ。

 

「織斑先生!?乱暴はやめて下さい!

その方は興信所の方で!?」

 

「こうゆうのも有りますし、信じていいかと。」

 

「ほう、そうか丁度いいなら身分詐称で、、、鳴海探偵事務所、だと?」

 

「痛たた、いきなり何しやがる!」

 

「貴様はまさか、鳴海荘吉の弟子か!?」

 

「!?、、ふふ、やはりおやっさんの名はこの木組みの街まで轟いていたか。いかにもおやっさんは、鳴海荘吉は俺が最も尊敬するハードボイルド探偵さ。」

 

「、、、なら尚更うちの生徒達から離れろ。」

 

「な!なんでそうなるんだよ?」

 

「せんせー?なんか怖いよ?」

 

「織斑先生、お言葉ですがこれ以上は威力業務妨害になりかねません。

ただでさえ向こうは暴行罪で訴えれるんですから事情は知りませんけど落ち着いて下さい。」

 

ぐっ!と悔しそうに唇を噛む千冬。

 

対して勝ち誇るわけでもなく、

メモ帳に着いた砂埃を払い聞き込みを再開する翔太郎。

 

(、、なんというか、この左って探偵。

大人だな。まあ探偵なんてやってりゃ嫌でも人の汚い部分くらい見慣れるか。)

 

一通り終わったのだろう。

帽子を脱いで挨拶すると翔太郎はキビキビと歩き去って行った。

 

「ところで先生はなんで公園に?」

 

「貴様のような不純異性交遊未遂犯を見張る為だ。」

 

「織斑先生、あなたはどうか知りませんが、

私はつい昨日まともに話しをしたばかりの殿方に股を開くような軽い女ではありませんでしてよ?」

 

そう言う四十院は口は笑っているが目には一切光が無い。

 

「、、、すまん四十院、不快な思いをさせたなら謝る。」 

 

(織斑千冬に頭を下げさせるとは、こいつ中々侮れないな。)

 

小さく溜息をつきどうやって千冬を追っ払えばいいかと思案を始めた時だった。

 

「、、、アキヤマ、四十院、布仏、何か聞こえないか?」

 

「なんも聞こえないよ〜?」

 

「頭の次は耳がおかしくなりましたか?」

 

「四十院そろそろ許してやれ。

、、、確かに微かに聞こますね。

砂時計の砂が落ちるのに音をつけたみたいな?」

 

でも砂なんてどこから?ふと下を見てみると

 

(地面が傾斜になって流れてる!?)

 

とりあえず四十院を蹴り飛ばし流れの外に出す。

足が浮いたせいで下に下に流されるが打鉄黒翔を展開して上空に浮いた。

見おろすとさっきまで立っていた場所が坂の途中に変わっていた。

 

「なんだありゃ?

蟻地獄の巣みたいになってるぞ?」

 

『蟻地獄のアドベントビースト、

あるいはドーパントの仕業でしょう。』

 

「たく、日本も怖い国になったもんだな。」

 

よく見ると庇いきれずに落とされたらしい本音とまだ近くにいたらしい翔太郎、そして何故かいた鈴が坂の中腹でワイヤーでぶら下がっている。 

 

「流石探偵。いろんなおもちゃ持ってるな。

サード、スラスターの勢いを調整、

あと筋力アシストをもう一段上げてくれ。まとめて拾うぞ。」

 

『了解です。』

 

どうやら向こうも意図を察してくれたらしい。

 

(よしよし、動かないでいてくれよ。)

 

しかしこうもタイミングが悪いことが重なるのかデッキから耳鳴りのような音が響き出す。

 

(ッ!?鏡、鏡、、あそこの噴水か!)

 

気付いたのと同時に噴水から白い糸が飛び出し蓮の腕に絡みついた。

なんとか引っ張り返して敵をベンタラから引きずり出す。

 

「██▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━!」

 

(ビースト?いや、ドーパントか!)

 

蜘蛛怪人、スパイダードーパントに飛びかかられうまく飛べなくなる蓮。

 

「チッ!蜘蛛に碌な思い出がないな!」

 

『つくづく嫌われてますね。』

 

「うるせえ!」

 

しかしどうしたものか?とドーパントの顔を抑えながらなんとか宙にとどまっていた時だった。

 

<CYCLONE JOKER!>

 

砂嵐と共に緑と黒の二色の超人が姿を現したのは。

 

「code:Wだと!?」

 

「まさかあの探偵が、、、。」

 

スパイダードーパントを抑えながら二人は事の成り行きを見守った。

 

 

 

2

木組みの街の上品なガール、四十院神楽から有力とは言い難いが、情報を得た俺は次なる怪人屋の足跡を探すべく公園を後にしようとした。

 

しかし不意に誰かが俺の背中を叩いて呼び止めた。

しかし右に振り向くと誰もいない。

しかし気配はする。

試しに左に振り向くとまたしても誰もいない。

そして次に右を向くフリをして左に振り向くと

 

「みーつけた!って鈴ちゃんじゃねぇか!?」

 

そこに居たのは意外な人物。

2年前まで風都に住んでいた中華屋の一人娘、鳳鈴音だった。

 

「へへー、久しぶりだね翔太郎さん。」

 

「またこっち来てたのか?ご両親は元気してるか?」

 

「あ、、うん。多分。」

 

「、、、すまねえ、デリカシーのない質問だった。」

 

「う、ううん!いいよ、翔太郎さんが悪いんじゃないし。

私は元気だから。」

 

「そうか、なら丁度いい。

ちょっと聞きたいことがあるんだ。」

 

「もしかしてケイタ達のこと?なら聞いてよ!

なんかケイタも一夏もなんか、恋煩いって感じで!」

 

「ほー、成る程、ケイ坊に一夏が、って、ええええええー!?」

 

俺の頭に晶に彼女がいると知った時以上の衝撃が襲った。

 

「マジかよ、二人が!?はー、青春だな。」

 

「でしょ!しかももしかしたら一夏は結構近しい人になのかもなんだよ!」

 

「根拠は?」

 

「まずあの一夏が注意散漫になるなんてことはそんだけ意外な人物、

近すぎて異性と捉えていなかった人物だってこと。」

 

「あり得ないけど、近さ的には五反田の坊主ぐらいって事とか?

絶対にあり得ないけど。」

 

「大いに同感。最後にそれを相談した相手が今年学校始まってから出来た他クラスの新しい友達なのよ。」

 

「ケイ坊や鈴ちゃんは近すぎて誰が相手か分かっちまうから、か。

確かに筋は通ってるな。」

 

でしょ!と無邪気にいたずらっ子のような笑みを浮かべる鈴。

それに翔太郎も思わず微笑み返す。

しかし直ぐに異変を感じた翔太郎は戦士の貌になった。

 

「?翔太郎さん?」

 

「鈴ちゃん離れるなよ?ここは、なんかがおかしい!」

 

ずるっ。と音を立てて地面が斜めに傾き始める。

 

(この攻撃はまさか!)

 

気付いた時にはもう遅かった。

慌てて左手首のデジタル腕時計型メモリガジェット、スパイダーショックを発動させて下から飛んできた針を受けきるが何発か弾き漏らしてしまったらしい。

敵が放った毒針が鈴の左脛に二本刺さり翔太郎の右腕をかすめる。

 

「しまった!鈴ちゃん!」

 

なんとか毒で痺れて体勢を崩した鈴の襟首を掴み穴の外の街灯にスパイダーショックのワイヤーを引っ掛ける。

 

(よし、このままワイヤーを引っ張って上まで!)

 

しかしそれをよんでいたのだろう。穴の中央から砂嵐が巻き起こる。

 

「え?あ、、助けてー!!」

 

割と穴の縁の近くにいた本音が巻き込まれ翔太郎達の方に吹っ飛ばされてきた。

 

「うおっ!マジかよ。流石に重量オーバーだぜ。」

 

「わ、ワイヤーって、、、もっと丈夫、、なんじゃ?」

 

「俺の手が折れる!」

 

「なんとか頑張ってー!」

 

「クッソ、、鈴ちゃん、それとのんびりガール!

ちょっと荒っぽくなるけど絶対に上にあげてやる!

信じてくれるか!?」

 

毒が回って喋るのも辛い鈴は首肯で、

本音は元気よく信じるよ!と答えた。

それに翔太郎も頷き返すと鈴を掴んでいた手を離し懐からスタッグフォンを取り出す。

 

(頼むぞ、来い!)

 

<JOKER!>

 

<JOKER MAXIMUM DRIVE!>

 

翔太郎の想いに反応したT2ジョーカーメモリはスタッグフォンを変形させ、

穴の主、アントライオンドーパントを攻撃。

その隙に鈴と本音にワイヤーを取り付け穴の上にあげた。

帰ってきたスタッグフォンを回収し、

アントライオンドーパントに対峙する翔太郎。

 

「さて、お前の相手は俺だぜ砂場野郎。…フィリップ!」

 

今風都にいる相棒の名を呼びながら赤いベルト、

Wドライバーを装着。フィリップの魂と共に転送されてきたサイクロンメモリをセット、続いてスタッグフォンから取り出したT2ジョーカーメモリをセット

 

「変身!」

 

<CYCLONE JOKER!>

 

ベルトをWの字形になる様に変形させ、メモリの力を発動。

翔太郎は、否、翔太郎とフィリップは変身を完了した。

 

「漆黒のドーパント!?」

 

「緑の仮面ライダー!?」

 

「いや、どっちもだ、俺たちはW(ダブル)

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」

 

「つ、、み?」

 

「はっ!」

 

Wの左ハイキックがアントライオンの顔面に決まる。

 

「メタルほどじゃねえが中々硬いな。」

 

『検索通りだ。翔太郎、君の側をメタルに。』

 

「よし来た。お熱いの、かましてやろうぜ!」

 

<HEAT METAL!>

 

右側を赤色に、左側を鉄色にそれぞれハーフチェンジさせたWは召喚された棒型武器、メタルシャフトを巧みに操りアントライオンを追い込んで行く。

 

『この隙にデンデンセンサーを。

見ている限りアントライオンは過剰適合に近い状態にある様だ。』

 

「よし来た、なら直ぐに解放してやらねえとな。」

 

ガイアメモリの過剰適合者の場合、

下手に倒すと当人の命を奪いかねない場合があり、

直接体内のメモリを叩く必要があるのだ。

双眼鏡型のガジェット、デンデンセンサーでメモリを探す。

どうやら首の辺りにある様だ。

 

『ならスタッグを使おう。』

 

<HEAT TRIGGER!>

 

左側を青色のトリガーにハーフチェンジさせ、

突撃銃型の武器、トリガーマグナムを取り出し、

ジョイント部分に変形させたスタッグフォンを取り付ける。

 

「うぅ?、、あ、あぁ、、、やっと、楽に、、、、。」

 

「『トリガースタッグバースト!』」

 

放たれた真っ赤な二叉のビームがアントライオンの首を寸分の狂いもなく撃ち抜く。

ドーパントの体外に排出されたメモリが乾いた音を立てて砕けた。

 

「!?なんだ、どんどん地面が平らに!」

 

『メモリの効果が無くなったんだ早く脱出するよ!』

 

<LUNA TRIGGER>

 

右側のボディを黄色に、伸縮自在のルナにハーフチェンジさせ、

鈴と本音を釣り上げる時にも使った街灯を掴み、

アントライオンに変身させられていた少女と共に脱出する。

 

「おーい、クールボーイ!」

 

スパイダードーパントを振り払い降りてきた蓮に駆け寄るW。

 

「探偵さん。まさかあんたが、スカルドーパントを継ぐ者だったとはな。」

 

「あんたじゃない。あんた達だ。

それからおやっさんはドーパントじゃねぇ。

仮面ライダースカルだ。」

 

「仮面ライダーだと?」

 

「企業秘密なんで喋らないでな。彼女は任せたぜ。」

 

蓮にアントライオンだった少女を任せるとWは去っていった。

 

(俺たちの知らない仮面ライダー、、ガイアメモリの戦士。)

 

『毒をもって毒を制す。という訳ですか。』

 

「歪だな、だけどそれも正義の形か。」

 

 

 

3

夜、仄暗い病室でアントライオンドーパントに変身させられていた少女、IS学園剣道部二年のマキは目を覚ました。

 

「先輩!大丈夫ですか!?

私の名前が分かりますか!?」

 

「、、、四十院さん?私に、何が?」

 

マキは心底分からないという顔を神楽は辛そうな顔をしている。

 

「、、、やはり記憶に混濁があるか。」

 

その様子を外から見ていた警視庁超常犯罪捜査課の刑事、狩野洸一は独り言ちた。

 

「その口ぶりからすると確信があったみたいですね。刑事さん。」

 

隣にいた蓮がそれに質問する。

 

「ああ。彼女の首に付けられていた機械。

あれはガイアドライバー、生体コネクタと呼ばれるガイアメモリを体内に挿入する為のタトゥーの様なこ刻印と同じ働きをする物の技術を応用して作られた物だ。

特殊なもずくの様な藻から取り出した成分をメモリの挿入と同時に体内に入れる事で取り付けた相手の知能、判断力、記憶力を低下させ、命令を強迫観念として刷り込ませらる様にする装置だ。」

 

「悪趣味ここに極まれりだな。

だがそこまで分かってて捜査が進んでないってことは。」

 

「、、、これは俺の独り言だが、

国のIS委員会は、末端はどうか知らんが、

上層部は間違いなく悪質な金に物を言わせた女性権利団体の傀儡だ。

ISを神聖視してそれ以外を認めようとしない。

国に牙を剥かない限りはな。」

 

「とても為になる独り言だった。吐き気を催すよ。」

 

「気に入ってもらえて何よりだ。レン・アキヤマ特別捜査官。」

 

バサ、と持っていた封筒を落とす洸一。

 

「ああ、吐き気につられて頭痛までして来た。

この体調じゃ他人の荷物までうっかり持ってっちまいそうだぜ。」

 

「奇遇だな。俺も最近忙しくて一刻も早く酒に酔いたい気分だ。

きっと忘れ物をしても気付かない。」

 

蓮は封筒を拾うと裏口の方へ、洸一は正面の方へ歩き出す。

 

「ご武運を。」

 

「叩き上げを舐めるな若僧。

俺は今久し振りに、脳細胞がトップギアだ。」

 

蓮は封筒を上着に隠しながら最低限の足音で階段を駆け下りた。

 

「まて、その封筒はなんだアキヤマ。」

 

「あんたには関係ない。」

 

「いや、ある。目の前で生徒がいらんことに首を突っ込んで行こうとしてるんだ。

これは警察の仕事だ。IS操縦者の卵の仕事じゃない。」

 

「じゃああんたが捜査するのか?ど素人のアンタが?」

 

「だからこれは警察の仕事だ。」

 

「警察は動かない。だからアンダーアンカーが動く。」

 

「お前の様な子供がやらなくても!」

 

「俺以外やらないから俺がやるんだ。

仕事でもなんでもなく金の為にな!」

 

「金?命を張ってまで欲しいものか?」

 

「はぁ、、言いたくなかったが、

あんた如きの、ただ最強ってだけの何の権利もない先生はおとなしく次に出席簿振り下ろす先の事でも考えてろよ。

お前が俺より上なのは年齢(とし)とISのテクだけだ。」

 

「ならばそうしよう。」

 

スパン!と出席簿が蓮の側頭部に直撃し、膝から崩れ落ちた。

 

「、、、すまんな。」

 

一言呟くと千冬は封筒を拾い立ち去った。

それから5分、6分、、、10分後。

蓮の頭の前にオレンジ色の何かが飛び降りた。

それは四角い頭に二本の足をつけた様なメカでツンツン。

と蓮の頭を突く。

 

「もう行ったかハイシーカー?」

 

コクコク。とまだ試作段階の量産型ブーストフォン試作機、ハイシーカーが頷く。

 

「たく、万が一に備えてデッキを起動しておいて正解だったな。」

 

上着をめくるとそこにはVバックルが装着されている。

 

『レン様、無茶は程々に。

しかしブリュンヒルデも侮れませんね。

デッキは起動しただけでスーパーマンと呼べるレベルまで身体強化されるのに一瞬でも意識を刈り取るとは。』

 

「あんな調子でシグルドを見つけられるのかよ。」

 

『立候補してみては?』

 

「バカ言え。誰が好き好んで雌ライオンの世話なんかするか。

さっさと帰るぞ。KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトはハイシーカーをしまいアドベントサイクルに跨ると帰路に着いた。

 

 

 

4

時は昼まで遡る。

一夏は心愛と共にケイタを探していた。

最初こそ冷静さを失っていたが今にも泣きそうな顔をしながらデッキを持って走り出て来た千夜をみて我に帰った。

 

考えてみれば生活力そんなないグータラさんの癖して悩む時は本当に悩み込んでしまうケイタが口の軽い心愛やデリカシーのない蓮、それから人から結構顔に出やすいとよく言われる自分に、ライダー関連のデリケートなトラブルについて相談するだろうか?

 

そう気付いた瞬間体は勝手に千夜に続いて飛び出していった海之とケイタを追っていたが、土地勘のない一夏はたちまち3人を見失ってしまった。

 

「い、一夏ちゃ、、ま、待って、早いよ、、、。」

 

「わ、私は中学時代、中二の五十メートル記録を塗り替えた女、この程度。」

 

息を切らしながら周りを見回す。

何処か広場ということ以外分からないが、兎に角広場の様だ。

 

「一夏ちゃんここ何処かわかる?」

 

「ごめん全く。ゼロワン?GPS使えない?」

 

『安心しろ、調べたところラビットハウスからそんなに離れてない。

歩いて帰れる距離だ。』

 

なら良かった。取り敢えず落ち着こうと噴水に腰かけた。

 

「今更だけどごめんね心愛ちゃん。

私、頭に血が上ってたみたい。」

 

「自覚できたなら良いよ。それよりケイタ君たちどこ?」

 

『一度ラビットハウスに戻って連絡すべきではないか?』

 

「そうは言うけど宇治松さんが持ってたのってケイタの、ドラゴンのデッキだよね?

てことは藤丸さんとあの金髪の子もライダーを知ってる事になるよね?」

 

「確かに、、、。じゃあなんで私達に相談してくれなかったの!?」

 

『口の軽いお前は兎も角、包容力高めの一夏に相談しないのはおかしいな。』

 

「ケイタ昔から結構、一人で悩んじゃうタイプだからなあ、聞いても話してくれるかな?」

 

と頭を抱えた時。

 

「そちらのお疲れガールズ、休憩ついでにちょっといいかな?」

 

(?、、誰だろ?凄く聞き覚えのある声、、翔兄!」

 

「?、、、え!?もしかして一夏ちゃんか!?」

 

「知り合い?」

 

「おっと、、んっん!、初めましてお嬢さん。

鳴海探偵事務所のハードボイルド探偵、左翔太郎です。」

 

「あ、初めまして!私は保登心愛って言います!」

 

「翔兄は風都一の名探偵なんだ!」

 

「へぇ。じゃあ事件の捜査に?」

 

「ああ、この辺りに怪人屋って呼ばれてる悪党が居てな。

そいつを追ってるんだ。」

 

「凄いですね探偵って、、?、、!二人とも避けて!」

 

「なに!うぉっ!」

 

「え?きゃっ!」

 

間一髪、心愛が気付かなければ切られていただろう。

水面を背にしていた一夏と翔太郎に何者かが切りかかった。

 

「なんだったんだ今の、新手のドーパントか?」

 

「違う。」

 

「?、心愛ちゃん見てたの?」

 

「うん。けどありえないよ、アレは、

二人に斬りかかったのはケイタ君、ドラゴンナイトだった。」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

フィリップ「一つ気になったのが、ブーストフォンハイシーカーだ。地の文で量産型プロトタイプと紹介されていたが、フォンブレイバーの量産型プロトタイプが無いのに、量産計画を進めてないのに何故、ブーストフォンのみ計画が進んでるんだい?」

ゼロワン『確かに、俺と間明が起こした事件のせいでセブン以降のフォンブレイバーは開発されていないが。』

ケイタ「作者に特別に教えてもらったんだけど、実はアンカー上層部の一部は
まだフォンブレイバーの量産化、全エージェントバディユーザー化を諦めてないらしくて来たる警察からのサイバー犯罪捜査権限の奪取にむけて水面下に準備してるらしいですよ?」

ゼロワン『という事はアキヤマにはもハイシーカーはただのシーカーの強化版のテスト機としか知らされてない訳か。』

フィリップ「なるほど、ゾクゾクするね。」

ケイタ「それはさておき、次回、infinite DRAGON KNIGHT!」

ゼロワン『Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味 中編!』

フィリップ「ゾクゾク言わしてやるよ。」

(ED The usual suspects 仮面ライダーアギト)


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Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味 中編

鈴音「毎度の事ながら、お待たしました!」

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

千夜「ごめん!」

海之「デッキを返せ!」

ケイタ「なんで俺のも!?」

翔太郎「一夏ちゃん!?」

一夏「翔兄!」

心愛「ドラゴンナイトが襲ってきた!」

(op DIVE INTO THE MIRROR KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT)


1

今にも見失いそうな海之の背中を追いかけながらケイタは木組みの街を走り続けた。

走りながらどんどんどんどん道の奥まで走って行く。

 

「はあ、はあ、、。

やっと追いついたぞ千夜。デッキを返せ。」

 

「頼むよ、てかなんで俺のもパクったんだよ。」

 

ドレスを直しながら袋小路に追い詰めた千夜に詰め寄る海之とケイタ。

 

「やだよ。絶対にやだ。

それだけはきけないよ。」

 

「何故だ!アドベントビーストに対抗するにはデッキを使うしか無いんだぞ?雄一の様な被害者が出るのを許容するのか?」

 

「違う!、、いや、違わないかも。

海之ちゃん、やめようよ。

知らない人の為に戦うのも、

雄一君を殺した奴なんかの為に戦うのも!」

 

「は?なんだよそれ?、、、どうゆう意味だよ?」

 

「そのままの意味だよ!雄一君は、

海之ちゃんがライダーになるのを止めようとして、

あの鱏のビーストに殺されたんだよ!」

 

 

 

2

手塚海之の父、手塚光(てづかこう)は高知県の小さな漁村に漁師の家の長男として生まれた。

小さい頃から父と共に海に出ていた彼は自分も漁師になるものだと思っていた。

しかし光が高校を卒業する年、近くの工場の工業廃水で海が駄目になってしまい、風都の大学に進学。

 

大学を出ると、日当たりの悪い安アパートから木組みの街の甘兎の二階に下宿しながら風都のIT企業、ディガル・コーポレーションに勤めていた。

真面目で誠実な光は多くの同僚からの信頼を得た。

 

恋にも落ちた。

当時甘兎で働いていた女性、白鳥洋子。

千夜の母の親友と結ばれた光は金を貯めて一軒家を購入し、

そこに2人で住んだ。

 

夫婦仲も円満で千夜の両親の結婚と同じ年に女の子を授かった。

それが海之だった。

海之は親同士の仲がいいという事で千夜と幼い頃から友達だった。

しかし初めから仲が良かった訳ではない。

何事にもきっかけがある。

 

二人の場合は幼稚園の時だ。

千夜は海之と仲良くなりたかった。

しかしどうも海之と会話のキャッチボールが出来ないのだ。

 

幼稚園に入る前にも何度かあった事があるがこちらの顔をジッと見つめるばかりで話しかけて来ない。

こちらから話を振っても偶に相槌を打つぐらいで聴いてるんだから聴いてないんだかよく分からない。

しかも朧気ながら忘れられないのが2回目に海之とあった時、真顔で面と向かって会ったこと有ったっけ?と言われた事があるのだ。

 

子供心に千夜は物凄く切なくなった。

と同時に人生最初の意地の張り合いを始めた。

もうこうなったら何が何でも友達になってやる!

そう意気込んだのだ。

ある日、千夜と紗路はいつもの様に海之を探していた。

 

「ねえちや。やめようよ?

みゆきちゃん、なんだかこわいこだよ?」

 

「かんけいないの!」

 

「おしゃべりしてもへんじしてくれないよ?」

 

「しってる!」

 

「ずーっとおかおみてくるよ?」

 

「されたことある!」

 

「じゃあなんで!?」

 

「おんなのいじ!」

 

そう言って怖がる紗路の手を引いてドンドン奥に進んで行った。

ようやく見つけた。

いつもは当てもなくフラフラしている海之だが今日は何故か男の子が弾いているピアノをジッと見つめていた。

 

「ねぇ!みゆきちゃん!」

 

「?、、えっと、ちや?」

 

「!、、うん!ちやだよ!」

 

「あれすごいね。」

 

男の子の弾くピアノを指差す海之。

 

「うん、じょうずだね。」

 

「しろくろのところ、ぐにゃぐにゃなのにどーやっておとだしてるの?」

 

「、、、え?」

 

「ちや、、やっぱいこうよ、このひとおかしいよ、。」

 

「、、ねぇみゆきちゃん。このゆびなんぼん?」

 

すっ、と3本指を立てて海之の眼前に出す千夜。

 

「ちやはどうやってゆびをゆらゆらさせてるの?」

 

「っ!、、みゆきちゃんきて!ピアノのきみも!」

 

「え?ぼくも?」

 

この後千夜は舌足らずな日本語でなんとか海之の目の事を大人に伝えた。

直ぐに海之は病院に行って検査を行った。

 

が、海之のかかった病気は治る見込みが無いもので、大きくなったら偏頭痛を伴うとの事だった。

これを知った千夜は思った。

私が海之ちゃんを助けるんだ。と。

 

それから千夜は海之がうざったいと感じるほど海之に付き纏った。

そのせいで一度喧嘩もした。

止めに入った紗路とピアノの少年、斎藤雄一(さいとうゆういち)巻き込んだ大喧嘩になった。

なんとか大人の仲裁が入って仲直りした後に雄一はこう言った。

 

「だったらみゆきちゃんもちやちゃんを助けたらいいじゃん。」

 

そんな一言がきっかけで気付けば四人は親友になっていた。

小学校、中学校と同じ学校で学び、放課後は甘兎か、

フールドラパンにたむろしていた。

全てが変わってしまったのは彼らが中学校二年生の時。

奴が海之の前に現れた。

 

「始めまして手塚海之さん。私はサイモンズ。

今日は君に提案があって来た。」

 

サイモンズ曰く、この街は鏡の向こうに巣食怪物の攻撃を受けており、アドベントデッキを使ってライダーになって戦う以外に止める方法は無いとの事だ。

ただし一度契約したらもう後には引けないからよく考えると良い。

 

そう言ってサイモンズは海之にコントラクトのカードを渡して去っていった。

海之も初めは半信半疑だった。

鏡の向こうの怪物?ミラーマンかよ。

と3人に笑い話にしたりしていた。

 

しかしある時から海之は異変を感じるようになった。

突然耳鳴りがするぐらいは持病の偏頭痛で済ませられるが、

鏡に自分の顔じゃなくて蟹の化け物が映ったり、

偶々見かけたサイモンズの車の運転手が赤いピラニアの化け物になったりするのを見てる内に段々と鏡の世界を信じるようになった、信じざるを得なくなっていた。

耐えきれなくなって想いを寄せていた雄一に相談した。

 

「という訳で、最近は落ち着いて居られないんだ。

なんせ鏡や鏡の代わりになる物なんてそこら中にあるからな。

どうすれば良いと思う?」

 

「なるほど、分かった。俺に考えがある。

明日放課後、真っ直ぐ俺の家に来てくれ。」

 

言われた通りカードを持って雄一の家に集まった。

雄一は音楽一家の次男で三人姉兄弟の末っ子だった。

兄と姉は既に成人していて家庭を持っており母は死んでいた為、

家には雄一一人だった。

海之は別に呼ばれて居たらしい千夜と共にピアノの部屋に通された。

 

「それで考えってなんなんだ?雄一?」

 

「海之、カードを貸してくれ。」

 

言われた通り契約のカードを渡す。

するとグランドピアノの前に立ってこう言った。

 

「サイモンズ!見てるんだろ!?

僕が戦う!だから海之に関わるな!」

 

するとグランドピアノがまるで水面のように揺らめくと、

中から飛び出した紅色の塊が雄一に襲いかかった。

エビルダイバーだ。

 

「ぐああああああ!海之っ!千夜ぁああ!」

 

「辞めろ!雄一!雄一ぃいいいいいい!」

 

「雄一君!雄一君!やめて!雄一君を食べないで!」

 

なんとか、エビルダイバーを引き剥がそうとしたが非力な女子二人が体当たり一つでISに絶対防御を発動させるような化け物をどうこう出来るはずもなく、

雄一は大量の血痕とちぎれた指を二本だけ残して綺麗に平らげられてしまった。

 

しかし人1人食べたぐらいではエビルダイバーは満足しないらしい。

次なる獲物を千夜と定めると最大戦速で突っ込んで来た。

もう駄目だ。そう思って千夜はぎゅっと目を閉じた。

しかしどれだけ経っても何も起きない。

 

もう死んだのか?

いや、違う。自分はもう死にたいと思う程の苦痛もまだ生きたいと叫びたい程の絶望も感じていない。

目を開けるとそこには血だらけのカードを掲げた海之と海之に敬意を示すように侍るエビルダイバーの姿があった。

 

「海之ちゃん?」

 

「千夜、やっと理解したよ。これが本当の暴力だ。」

 

ポケットからデッキを取り出し、カードを収める。

 

「海之ちゃん何言ってるの?」

 

「守るってことは暴力を用いて凡ゆる障害を排除、処分することなんだ。」

 

デッキを構えて、Vバックルを出現させる。 

 

「待って、、まさか。」

 

「私は決めたぞ、守るぞ千夜。

雄一以外の全てを、この暴力という力で!」

 

転がったままの雄一の人差し指と中指が海之の目に留まった。

それを見て、正面に人差し指と中指を立てた手を差し出す。

 

「仮面ライダー!」

 

海之はこの時より仮面ライダーに変身した。

 

 

 

3

「、、、そんな、ことが。」

 

「だからさ、辞めてよライダーなんて。

これ以上戦わないで!

死ぬかもしれないような所に飛び込んで行かないで!

海之ちゃんまで死んじゃったら、

私もうどうなるか分かんないよ!

こんな物が、あるから。、、こんな物があるから!」

 

二つのデッキを持った手を思い切り振りかぶる。

千夜が投げようとする先には、

スタンドミラーが不法投棄されている。

 

「やめろ!」

 

パン!海之よりやや千夜寄りの所に立ってたケイタが千夜にビンタした。

 

「さっきから黙って聴いてりゃ酷い話だなおい。」

 

「網島、、お前。」

 

「手塚さん。あんたが正しいとは思わないけど頭ごなしに悪いって言っちまったのは謝る。

あんたは、ちゃんと、その斎藤って人の二の舞を出さない為に戦ってたんだな。」

 

それに対してお前はなんなんだ?

と千夜からデッキをふんだくるケイタ。

 

「何だかんだ口ではいかにも正しいような事言いながら要は知らないのが怖いだけだろ!

手塚さんが自分から離れてくのが嫌なだけで、

自分から手塚さんに追いつこうとしてないじゃんか!

手塚さん止めるにしたって、

まずは手塚さんが周りをどう見てるかを知って、

その上でどう悪いか言えばいいじゃんか!

別に手塚さんが危なっかしくて見てらんないでもいいし、

手塚さんが居なくなると寂しいでもいい。

さっきの話聞いてて分かったけど、

別に手塚さんと喧嘩したい訳じゃないでしょ?

ならごちゃごちゃ理屈こねないでいいじゃん。

めんどくさいし。」

 

そう言ってから海之にデッキを投げ渡すとケイタはベンタラにダイブした。

後は2人が解決すべきだ。

 

『自分のことを棚に上げて何がいいとか悪いとか言いも言ったりだったな。』

 

「うるせえケータイ。

俺だって人のこと言えないのは分かってんだよ。」

 

『そのくせによくまああんだけペラペラ喋れたな。』

 

「何だろ、鏡見せられたって言うか、反面教師って言うか。

多分手塚さんから見た宇治松さんが蓮から見た俺なんだろうな、って。」

 

『ならなぜ戦うかアキヤマに聞くのか?』

 

「いや、立香さんに聞く。

あいつ素直に答えないだろ?」

 

『、、、たしかに。』

 

「サッサと戻ろう。

まだ立香さんカラオケにいるかな?」

 

 

 

4

なんとか隙を見つけてベンタラに戻った簪はドリューを探した。

 

「いた!おーい!こっちだ!手を貸してくれ!」

 

声をした方を振り向く。見るといつのまにかベンタラに戻っていたスパイダードーパントと新たに現れたらしいドーパント、

バットドーパントとトルクが戦っていた。

 

<STRIKE VENT>

 

デストクローを装備してバットドーパントの翼を破壊しながらトルクから引き剥がす。

 

「こいつらの弱点は首、上手くやればファイナルベントは要らない。」

 

「よし来た!」

 

<GUARD VENT>

 

トルクは肩に契約ビーストの膝を模したプロテクター、

ギガテクターを装備してバットドーパントに向かっていく。

それを阻止しようと蜘蛛糸を発射するスパイダードーパント。

しかしそこにアックスが割って入る。

 

「来い!」

 

蜘蛛糸をつけられた左クローを引き寄せつんのめりながら突っ込んで来たスパイダードーパントの糸を出す器官に右クローを浴びせる。

悶絶するドーパント。

 

「███▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅―!」

 

「動かないで、動くと痛い。」

 

「!?」

 

立ち上がりこちらを威嚇するスパイダードーパントにそういうと、

両膝をつき、両手を前に差し出した。

 

「ごめんね、なるべく一瞬にする。」

 

デストクローが首に当たる。

爆竹を鳴らしたような音と火花と共に首輪からメモリが排出される。

アックスのデッキに当たって砕けた。

改めてうつ伏せに倒れているドーパントだった人を見る。

 

(この服もしかして!IS学園!?)

 

リボンの色は簪のと同じ、一年生だ。

 

「ッ、、、、な、?」

 

「喋らないで。すぐ助ける。」

 

元スパイダードーパントを背負ってトルクを探す。

ビームガンの音で割とすぐに分かった。

トルクはバットドーパントからの攻撃をギガテクターで弾き、

時にタックルを当てながらバイザーで確実に首を狙っていく。

 

「俺は獲物を逃がさない!」

 

腹部にフルオートにしたマグナバイザーのビームを至近距離で浴びせ距離を取ると新たにカードを切る。

 

<SHOOT VENT>

 

契約ビーストの腕を模したミサイル砲、

ギガランチャーを装備して、どっしりと腰を落とし首を狙う。

 

「はっ!」

 

トルクを後退させながら放たれたミサイルは寸分違わずバットドーパントの首を打ち抜き、メモリと首輪を破壊した。

 

「ちょろいもんさ。

お、アックス!そっちも終わったか。」

 

「うん、手伝って。地球に返して、救急車だけ呼ぶ。」

 

「よし来た。あっちに重機があった。

そこの窓なら丁度いい。」

 

2人は窓から地球側にダイブし、

元ドーパントの2人をベンチに寝かせると119に通報してその場を後にした。

 

「それで、信じてくれるかな?俺のこと。」

 

「、、、!あれ。」

 

「あ?ドラゴンナイト!

、、よし、あいつが悪党だって証明してやる。

ついて来な。」

 

そう言うとドリューはデッキを構えて、左腕をと交差させながら右腕を力強く振り上げ、出現させたVバックルにデッキをセット。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

トルクに変身し、マグナバイザーを構えるとケイタに向かっていく。

 

「おい!ドラゴンナイト!」

 

「!?」

 

「戦え!」

 

牽制で足元にビームを撃つトルク。

 

「仕方ないか、カメンライダー!」

 

ドラゴンナイトに変身し、門の向こうに転がり込むと迷わずカードをベントインする。

 

<GUARD VENT>

 

ドラグシールドを両腕に装備し、隙間がないようにぴったりと合わせると走りながら突っ込んだ。

 

「なんだと!?」

 

「おりゃあ!」

 

ギリギリまで接近して強烈な頭突きを浴びせるとそのままドラグシールドをトンファーの様に使い、トルクを殴り伏せる。

 

「落ち着けよ俺は

「ゼイビアックスの思い通りにはさせない!アビスの仇をとってみせる!」

アビスだって?」

 

トルクがドラゴンナイトのセリフを遮り叫ぶとドラゴンナイトの背後の鏡に背の低い白人の男が映り込んだ。

 

「いいぞドラゴンナイト!

そのままトルクをアビスと同じ所に送ってやれ!」

 

そういうと男はカブトガニの様な怪人に変身してから再び人の姿に戻る。

最初と姿が変わっており、茶髪の女性になっている。

 

「ゼイビアックス!」

 

ドラゴンナイトは追いかけようとしたがブロックされた様で向こうにダイブできなかった。

 

「くそッ!逃した。」

 

「、、、ケイタ?」

 

「あ、簪さんいい所に来た!ちょっと「裏切り者。」え?」

 

「私もアビスみたいにベントするつもりで近づいて来たんでしょ?」

 

「さっきからアビスって誰だよ?初耳だぞ?」

 

「嘘つかないで。貴女がベントした癖に!」

 

「ベントだって!?」

 

「忘れたとは言わせないぞ!」

 

そう言って簪とドラゴンナイトの間に躍り出てフルオートにしたマグナバイザーを撃つトルク。

 

「チキショウ!問答無用かよ!」

 

ドラグシールドを構えながら後ろ向きに走る。

元来た鏡に飛び込む。

そのまま変身を解かないで鏡を蹴り壊す。

これで向こうからはこちらに来れない筈だ。

海之と千夜は居なくなっていた。

 

「訳わかんねえ。誰だよアビスって?

全く身に覚えがないぞ。」

 

『恐らくあのトルクとか言うライダーが簪に有る事無い事吹き込んだんだろうな。』

 

「最悪だ。カラオケに戻ろう。

手塚さんだけでも説得しとかないと四面楚歌になっちまう。」

 

 

 

5

左翔太郎は一夏と心愛の案内でラビットハウスに来ていた。

カッコつけてブラックのコーヒーを燻らせている。

 

「アドベントビーストにベンタラ、それに仮面契約者ねえ。」

 

「そりゃ荒唐無稽なのは分かってるよ。

でも翔兄も見たよね?鏡の向こうにいた仮面ライダーを。、、ケイタを。」

 

しかし一夏が最後まで言い終わらないうちに翔太郎は手で制した。

 

「一夏ちゃん。久しぶりとはいえ俺のポリシーは忘れて欲しくなかったぜ?」

 

「ポリシー?」

 

「徹底的に信じ抜いて疑い抜くのが左翔太郎流だ。

それにあんなに素直じゃない一夏ちゃんがここまで真剣に打ち明けてくれたんだ。勿論信じる。」

 

しかし、だけどな。と断り。

 

「あの格子戸仮面がケイ坊ってのは信じない。」

 

「、、一応聞くけど、なんで?」

 

「一夏ちゃんが信じたくないと思ってるから。

それ以上の理由はいらねーよ。」

 

「翔兄、、。」

 

「そうだよ一夏ちゃん!ケイタくんが私達を襲う訳ないよ!

きっとあいつはニセモノだよ!」

 

「盛り上がってる所悪いですけどお店なんで静かにしてもらえますか?」

 

「おっとすまねえリトルレディ。ま、兎に角。

この小さな街に怪人屋とライダーバトルなんていう異常事態がバッティングするなんてのが偶然とは思えねぇ。

依頼と合わせて解き明かしてみせるぜ。」

 

 

 

6

もう日も暮れた頃、ケイタ達の姿は甘兎にあった。

 

「ごめんなさい先輩。

私頭に血が上ってたみたいです。」

 

「う、、うん。分かったん、、、、なら、いいんだ。」

 

ケイタは今来たばかりだったが、

酔いが覚めて、砕けた表情から変わって恐怖の表情を貼り付けている紗路と服を乱して肩で息をしている立香、千夜そして店の脇に放置されている折れた木刀やボコボコに凹んだヘルメットやジュラルミンの盾を見て全てを察した。

 

「なんつうか、お疲れさんです。」

 

「あ、網島君、、そっちもどうにかなったみたいで良かったよ。」

 

「ええ、まあ、なんて言うか、半分以上勢いでしたけど。

宇治松さん顔平気?」

 

「うん。バッチリ目、覚めた。」

 

「そっか、ごめんね。あ、後手塚さんは?」

 

「そろそろ着替えて降りてくると思うけど、、あ、来た。」

 

「む、網島。いらっしゃい。注文は決まってるか?」

 

紅色の甘兎の制服に着替えた海之が降りてきた。

今朝の白ロリのドレスより似合ってる。

 

「あ、いや来たのは客としてじゃなくて仮面ライダードラゴンナイトとして。」

 

「と言うと?」

 

かくかくしかじか、これこれしかじかと海之達と別れてからを説明する。

 

「なるほど。そういう事か。

さっきから網島を監視してるあの猿のビーストにようやく納得した。」

 

「え!?嘘!」

 

窓の方を振り向くと前に蓮が言っていた猿のビースト、デットリマーとは違う怪人がこちらを見ていた。

 

「ビースト?」

 

「先輩?皆さん、窓の向こうには誰もいませんよ?」

 

「悪い立香さん。ちょっとセブンと2人に説明しといて!」

 

そう言ってケイタ立香にセブンを渡すと海之に続いてデッキを構えた。

 

「仮面ライダー!」

 

「カメンライダー!」

 

2人はドラゴンナイトとスティングに変身してライドシューターに乗り込むと逃げに入った猿怪人を追いかけた。

猿怪人は自分に得意な場所で戦おうとパチンコ店に逃げ込んだ。

階段の縁を掴んで器用に上へ上へと逃げていく。

 

「どうする?ちんたら階段上がってたら猿も木から落ちるのに期待するしかなくなるけど?」

 

「なら引きづり落とすまでだ!」

 

<ATTACK VENT SWING VENT>

 

二枚のカードを続けてベントインして契約ビースト、エビルダイバーとエビルダイバーの尾を模した鞭、エビルウィップを召喚する。

 

「波乗りならぬ風乗りなら私の十八番だ!」

 

エビルダイバーの背中に飛び乗り急上昇すると

パシュ!とエビルウィップで猿怪人の足首を捕まえ

一気に地面に叩き落とす。

 

「█▅▅▃▄▄▅▅▄▅▅▅━━━━――――!!」

 

意味不明な奇声を上げながら建物8階分の高さから落下してきた猿怪人はアスファルトの地面と熱いキスを交わす。

全身に漏れなく衝撃が走り抜け、立つこともままならないようだ。

 

「わーお、ダイナミック。俺も負けられないな!」

 

<STRIKE VENT>

 

ドラゴンナイトもドラグクローを装備して炎球、昇竜突破を発射しようと構えを取るが

 

<COPY VENT>

 

「美味しいとこだけ持ってくのはマナー違反だぞ?」

 

素早くエビルダイバーから降りながらドラグクローをコピーしたスティングがドラゴンナイトの横に着地。

 

「お、おう。しゃっ!行くぜ!」

 

2人の背後にドラグレッターが炎を吹くのと共に2人のクローから放たれた炎は猿怪人を粉々にした。

 

「楽勝!」

 

「ああ!」

 

パン!とハイタッチを交わす2人。

 

「ん?ドラグレッターどうした?もうあいつは粉々に、、ってえ?」

 

煙が晴れた先を見て驚いた。

さっきまで猿怪人がいた場所に人が倒れているのしかも着ている服はようやく見慣れたIS学園の物だ。

 

「大丈夫か!、、、な!しっかり!おい!しっかりしろ!美津樹!」

 

「みつきって、、手塚さん知り合い?」

 

「3組のクラスメイトだ、、、。ん?なんだこの破片?」

 

ひょいと、彼女、美津樹の側にあった破片を拾い上げるケイタ。

 

「ガイアメモリだ、、。」

 

「これが噂の?」

 

「ああ、イニシャルはA、、Ape(エイプ)か、その人はエイプドーパントにされてたんだ。」

 

「だがおかしいぞ?一ヶ月そこらの浅い付き合いだが美津樹が違法薬物を服用してるようには見えなかったが?」

 

「素人の俺らが考えても仕方ない。

一旦甘兎に戻ろう。この道の専門家に相談する。」

 

「専門家?」

 

「ああ、ガイアメモリ事件の駆け込み寺にして風都の顔、翔兄、左翔太郎に。世界一のハードボイルド探偵にな。」




ケイタ「以上、いかがだったでしょうか!?」

鈴音「結局私の毒は平気だったの?」

ケイタ「それは次回語られます。それ以外でなんか質問は?」

鈴音「W本編にエイプなんてメモリあった?オリジナルならタグ付けなきゃじゃないの?」

ケイタ「エイプドーパントは小説仮面ライダーW 〜Zを継ぐ者〜に登場したドーパントでクライマックスのシーンでWと戦ったんだ。」

鈴音「あー、講談社のアレね。
けどエイプの頭文字ってAよね?Zじゃないじゃん?」

ケイタ「それは読んでみてのお楽しみという事で!」

鈴音「あっそ、焦らされんのは好きじゃないし早速本屋に行ってくるわ!次回予告はこのケータイとやってて、じゃ!」

ケイタ「え!ちょっ!まてよ鈴!行っちゃったよ、、。」

ネクスト『イタタタ、、なんで本編に出番無いのにこんな登場しなきゃなんだよ、、。あ、セブン先輩のバディさん!はじめまして!フォンブレイバーのネクストっす!』

ケイタ「あー、あの短編みたいなのの主人公の?じゃ、宜しく!」

ネクスト『お任せください!次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」

ケイタ「俺の偽物?」

蓮「喧嘩ならいつでも買うぞ?」

心愛「なんで信じないの!?」

翔太郎「蓮、お前は許されるよ。」

一夏「ケイタが生活態度以外で半端やるとか無いよ。ないない。」

簪「私はどっちを信じたら、、、。」

ネクスト『次回、Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味 後編!』
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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Episode of Jokers その4 Cは悪魔だ/罪を数える意味 後編

ロリ千夜「、、までの、、インフ、、ナイトは!」

ケイタ「、、、、、、いや嘘だろちょっと待って?」

セブン『明らかに、、、おかしいな。』

ロリ千夜「?、、おにいちゃんだれ?」

ケイタ(嘘だろ?もしかして別キャラあつかいなのか?)

ロリ千夜「おにいちゃん?」

ケイタ「あ、いや平気だよ!そのカンペ貸して読めないよね?」

ロリ千夜「うん、はいどーぞ。」

ケイタ「ありがとう。えっと、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

セブン『前回は手塚達の過去を知って和解したんだったな。』

ロリ千夜「なかよしがいちばん!」

ケイタ「その一方で蓮や簪さんとはどうなってしまうのか?さてさてどうなる?」


1

酔っ払いのサラリーマンを見送る。

はぁ、とため息をつくとバーテン服の少年、

蓮は織斑千冬以外全員帰った店内を、

ラビットハウスを見渡した。

 

もう間も無く閉店だ。

後から来る客はもう居ないだろう。

千冬の隣に座り、肩を叩き話しかける。

 

「お客さん。そろそろ店じまいなんで帰ってもらえますか?」

 

「うるしゃい、、私はこんまもんじゃ足りないんだぁ、、、。」

 

がん!と氷しか入ってないグラスを叩きつける千冬。

どうやら話しかけてる相手が誰かもわからないぐらい酔ってるようだ。

 

「もう完全に出来上がってるじゃないすか?」

 

「私がこんなぐらいで酔わなくなくない訳ないだろうぁあ!」

 

「せめて人類語喋ってください。

どっちですか?そのままだと泥酔して帰れなくなりますよ?」

 

「2度も言わせるなぁ、だりなーい!こんなもんじゃまだまだだぁ!」

 

「はぁ、、、じゃあこうしましょう。

俺が最後の一杯を奢ります。

その代わりなんで店のジャックダニエルを飲み尽くしたのかぐらい教えて下さい。マスター、俺はシンデレラで。」

 

す、と千冬の目の前に小銭の山が出される。

蓮が今日稼いだチップ全てだ。

 

「、、、、、。ダブルで。」

 

それぞれに飲み物が出される。

一口飲むと千冬が口を開いた。

 

「私は教師でな、、、好きでやってる訳じゃなくて、

それしかやる事が無くてやってるんだが、

二年目にもなるとこれがなかなか楽しくてだな。

それなりに愛着もわいてきたんだ。」

 

「可愛さ余って憎さ百倍ってやつですか?」

 

なおこの使い方は間違いもいいとこだが無口なマスターにアメリカ育ちにだんまりを決め込むケータイに酔っ払いしかいないこの場でそれを指摘する者は居ない。

 

「そんなとこだ。でだな。

最近になって私の生徒が犯罪に巻き込まれたんだ。」

 

「一気に物騒な話ですね。」

 

「まあ聴け。

それで仇討ちのつもりで独自に捜査しようとしていたら他の生徒から資料を奪って自力で調べたんだ。

そして最悪の事実に辿り着いた。」

 

やっぱりか、と蓮は思った。

名もなき小市民同士のコミュニティの中ぐらいなら兎も角、

社会の幾らか汚い所でモノを言うのはいつだって実力だ。

 

それが現状世界最悪の兵器のエキスパートとなれば下手すればアンカーエージェント以上に強い捜査能力を持つだろう。

たかが世界最強の称号しか無いこんな弱い人間に!

蓮は少し悔しく思った。

 

「悩んだが事実を公にする事にした。

しかし奴らが邪魔をしてきた!」

 

「国家IS委員会、、、。」

 

「ああ、実際に連絡して来たのはただ単にISが万能だと勘違いしてる馬鹿だろうが、そう命じた奴は違うだろう、、。

奴らはガイアメモリの危険性を分かって表に出なければ構わないと!

ISを超える汎用性を持つ兵器を認めようとしないさ!

彼らが!仮面ライダーが世界の危機を水際で食い止めてる限りは!」

 

がん!再びグラスを叩きつけると頭も机にぶつけてメソメソと泣き出す。

泣き声は次第に寝息に変わり千冬は轟沈した。

 

「お疲れブリュンヒルデ、あんたが追い詰めた獲物、

美味しく横取りさせて貰う。」

 

ポケットから手帳とスマートフォンを抜き取り充電用の穴にアダプターのようなものを取り付ける。

アンダーアンカー謹製の特殊USBだ。

ピッ!と短く電子音が鳴り小さな画面にDOWNLOAD COMPLETEと表示される。

 

『まさか千冬様をわざと泳がせていたのですか?』

 

「な訳あるか、勝手に調べてて外れでもなんか情報持ってりゃ僥倖ぐらいには思ってたのが偶々上手くいっただけだ。

それより、調べたか?」

 

『勿論です。分かってる限りの怪人屋被害に遭われたIS学園の生徒の動向を纏めておきました。』

 

「よくやった。俺は織斑千冬を学園に送ってくる。

その間に今月の病院の支払いを『もう済ませてあります。』

、、何から何までありがとうな。」

 

『何を言われますか。

わたくしはレン・アキヤマ様のバディです。

あなたに仕える事こそ至上の喜び。

あなたが幸せになる事こそ至上の幸せ。

わたくしの良心回路(こころ)はそうプログラムされています。』

 

「、、、ごめんな。」

 

『?レン様は何かわたくしに悪意有る発言をした事はあの日以来ありませんよ?』

 

「いやこっちの話だ。メモを写したらすぐ行くぞ。」

 

嫌なことは続くものだな。

分かっちゃいたが。と蓮は心の中で呟いた。

 

 

 

2

時間は昨日の夜に遡る。

千冬に洸一から貰った資料を奪われた蓮はウイングナイトに変身して帰路に着いていた。

 

(さて、織斑千冬に資料は盗られたがIS学園に電脳的に侵入するぐらいはフォンブレイバーにも出来る。)

 

支度を終えるべくアドベントサイクルを急がず。

最後のカーブが見え少し速度を落とした時だった。

後輪に何かが激突して来た。

思い切りスリップして近くの壁に当たって止まる。

 

「っ!?誰だ!」

 

ダークバイザーを構えて突撃して来た敵を見据える。

 

「ドラゴンナイト!?」

 

そこに居たのはドラゴンナイトだった。

青いホンダ・CBR600RRを改造した小さなバイクに乗っている。

 

「、、、、、。」

 

ドラゴンナイトは無言でドラグセイバーを構えるとバイクのアクセルを蒸した。

突進と共に繰り出された斬撃を慌ててダークバイザーで受けながら横に飛ぶ。

 

「チッ!」

 

なんとかアドベントサイクルのスクリーンを鏡代わりにベンタラから脱出した。

 

「今のは間違いないな。」

 

取り敢えず奇襲を受けないようにしようと思いクローゼットの中からバーテン服を引っ張り出して着替えるとデッキにサードと最低限のフォンブレイバーにピストルだけ持ち店の方に降りた。

ラビットハウスは夜はバーをやっていて店子はたまに店を手伝うのだ。

一先ず人目が他にある所では仕掛けてこないだろう。

 

「あ、蓮くん。今日は休みじゃなかったっけ?」

 

「いつアンカーから召集来るかわからないんで、

貯金でも作っておこうかと思いまして。」

 

勿論嘘だ。マスターにはライダー関係の事を全く話してないので仕方がない。

しばらく注文とったりテーブルを片付けたりしていたが

 

「いらっしゃ、あ、みんなお帰り。」

 

ドアが開かれ外から店内に一夏、心愛。

そして昼間に合った左翔太郎に続いて先程自分を襲った筈のケイタが入って来た。

 

「あ、蓮。ちょうど良かった。」

 

「さっきの続きか?なら表出ろ。」

 

デッキを見せて店外に出ようとする蓮。

 

「?、、さっきっていつだよ蓮?」

 

「ほんの10分前だ。バイクに乗ってたら襲って来たのはお前だろ?」

 

「ケイタ本当?」

 

「いや、さっきもだけど身に覚えがない。

 

「待って!10分前だったらわたし達と一緒に居たよ!?」

 

「バイクなら、しかもベンタラ経由ならある程度の距離は短縮出来る。

更に言うならあらゆる証拠はベンタラに放置してその周りの鏡類を全部壊しちまえば証拠なんて絶対出て来ない。

疑おうと思えば幾らでも疑えるんだよ。」

 

「そんな、、、。」

 

「もう一つオマケに。網島、お前今さっき、疑われたのが2回目みたいなこと言ってたよな?」

 

「そうなの!噴水の前で話してたら偽ケイタくんに襲われて!」 

 

「なら益々証言がある限り網島が自分の正体を知る奴を片っ端から襲撃してるようにしか見えない。

今この段階で決定的証拠が無い限り俺はお前を信頼に漬け込んでいもしない偽物をでっち上げて背中から刺そうと狙ってるようにしか見えない。

そんな奴を信用するなんて土台無理な話だ。」

 

「信用されるにはどうしたらいい?」

 

自分のことを信じられないと言った蓮を真っ直ぐ見据えてケイタは言った。

 

「そうだな、ISはアンカーの立場があるから、デッキを俺に渡してみろ。」

 

「おう。」

 

そう言うとケイタは何のためらいもなく蓮の左手を取りドラゴンナイトのデッキを握らせた。

 

「え?」

 

「じゃあ、その決定的証拠を掴んでくるから待っててくれ。」

 

「おい待て網島!どこに行く!?」 

 

「おいケイ坊!」

 

「翔兄!、、一夏達のボディガード。頼まれてくれる?

俺今、ただの高校生だから。」

 

「、、、俺のセリフじゃねえが、俺に質問するな。

依頼なら俺は依頼主が誰でも裏の裏まで完遂するぜ。」

 

「あんがと。じゃ!」

 

「ま、待ってよケイタ!」

 

追いかけようとしたがそれより早くケイタはスズキカタナに乗って夜の街に消えて行った。

 

「ど、どうしようケイタくん行っちゃったよ!?」

 

ドラゴンナイトのデッキの中身を確かめると蓮は心愛に同意した。

 

「リフレクオーツのカードが無い。

してやられた。

追っかけて捕まえないといつ寝首をかかれるかわかったもんじゃ無い。」

 

「蓮くんまだそんなこと!」

 

「当たり前だ。他人以上に信頼出来ない者はないさ。」

 

そう言い切った時ポケットのハイシーカーが振動した。

手にとって見るといきなり変形して蓮の顔面を蹴るとジャンプして一夏の肩に着地する。

 

「痛っ!何しやがる!」

 

そして声を荒げ切る前に一夏のビンタが蓮に決まった。

 

「レン最低。」

 

短くそう言うとハイシーカーを伴った一夏はケイタを探しに店の外に出た。

 

 

 

3

聞き慣れない目覚ましの音に起こされたケイタはあくびを一つするとゆっくりと起き上がった。

 

「あ、網島さん起きました?」

 

「、、、俺なんでこんな物置に紗路ちゃんと居るんだっけ?」

 

「あなたが押しかけて来たんでしょうが!」

 

「そうだっけ?」

 

ー回想ー

 

時間は昨日の夜、一夏がケイタの捜索を始めて十分ほど経った頃に遡る。

 

「はー、今日もバイト疲れた。」

 

紗路はバイトを終えて帰宅していた。

今まさに玄関を開けようとした時。

 

「お疲れ様。プレーンシュガー要る?」

 

「あ、ありがとう。もぐっ、、ん〜砂糖が染み渡る!、、、え!?網島さん!」

 

「こんばんは。バイト帰り?」

 

「あ、はい。って言うかなんでここが!?」

 

「いや宇治松さんの幼馴染なのは知ってたから甘兎の近くの表札片っ端から調べて。」

 

「行動力!、、、はあ、このドーナツはどこから?」

 

「そこでど〜なつ屋はんぐり〜ってトラックが停まってて残り物だし安くしてあげるって言って声の低い大柄の店長さんにサービスして貰って。でさ、ドーナツ代がわりってわけじゃないんだけどさ、今晩止めてくれない?」

 

「え!?む、無理ですよ!家汚いし散らかってますし!」

 

「頼むよ。ドーナツ全部あげるから。」

 

「うっ、、、でもダメです!」

 

「リゼさんの軍服ブロマイドも付けるから!」

 

「惑わされないんだからー!」

 

ー回想終了ー

 

「で、射撃練習中のリゼさんのブロマイドも付けて泊めてもらったんだ。」

 

「思い出しました?」

 

「まあ、大体。」

 

出されたドーナツを齧りながらケイタは考えた。

どうやってニセドラゴンナイトを捕まえようか?と。

 

潔白を証明するだけならニセが誰かを襲うだけで良いが、

誰か分からなければ自分と見分けが付かない。

それに今の自分にはデッキが無いからアックスとトルクに襲われた場合、ISで全力で逃げるという手段しか残されてないのだ。

 

(ま、兎に角動くしか無い。

俺から仮面ライダーを取ってISが頼れない状況になったらもう後はアンカーエージェントしか残ってないんだ。)

 

「ありがとう紗路ちゃん。これ宿泊代。」

 

「い、一万円!?こんなに貰えませんよ!

って網島さん?網島さーん!、、消えちゃった、、。」

 

ベンタラに停めてあったスズキカタナを地球側に持ってくるとケイタは早速木組みの街を探した。

 

《ケイタ、飛び出したは良いが、当てはあるのか?》

 

セブンが語りかけてくる。

どうやらデッキが手元になくてもビースト出現を知らせる耳鳴りはちゃんと聞こえるらしい。

 

(ニセドラゴンナイトは他のライダーの能力で化けてるんじゃ無きゃ間違いなくドーパントがガイアメモリの力で化けた姿だ。

だったら探すべきは怪人屋、そっから顧客情報を得られれば一発だ。)

 

《成る程。なら私の出番だな。

警察のデータベースにアクセスして怪人屋の受け取り窓口を絞り込む!》

 

(頼むぜ相棒!)

 

打鉄赤龍の演算機能もフルに使い次に怪人屋が現れるであろう場所を割り出したケイタ達は法定速度をきちんと守って急行した。

 

「廃倉庫か、、、。」

 

『我々にとっては嫌な予感の象徴だな。』

 

セブンの先代バディ、滝本が殺されたのも廃倉庫。

更にこの前一夏が連れ去られた場所も倉庫。

2人的には見てるだけでげんなりした気分になる場所一位だ。

 

「けど、行くしか無いよな。」

 

一応打鉄赤龍の絶対防御だけは発動させて忍び足で倉庫に入っていく。

 

(なあセブン。)

 

《なんだ?》

 

(今更だけど背後シーカーに見張らせた方がいい?)

 

《当たり前だ。早く言え!

全く君は用心が足りな、ケイタ背後だ!》

 

「え?何が」

 

振り向く間も無く背後から右手を捻りあげられ首にナイフを当てられる。

 

「動くな。警視庁超常犯罪捜査課だ。」

 

若い男の声だ。なんだかあまり感情がこもってない。

 

「貴様は、何者だ?二十字以内で簡潔に答えろ。」

 

「あ、網島ケイタ。アンカーの、、エージェント。」

 

「そうか、それは済まなかったな。」

 

男はケイタを解放すると持っていた警察手帳を提示した。

 

(警部補、狩野洸一、、。)

 

「君もガイアメモリ犯罪の捜査か?」

 

「はい。ニセモノに変身出来る様になるメモリを一番に確保しろって言われてます。」

 

嘘をついた。そんな司令は受けていない。

それどころかガイアメモリ犯罪を調べろとも言われていない。

 

「ニセモノ、、前に風都署の資料には無かった様な気がするが?」

 

「そうですか、、、。兎に角、行きましょう!」

 

「あぁ。」

 

握手を交わし2人で進もうとした時、

倉庫の奥の方から爆発音が聞こえてきた。

無言で見合い、うなずき合いと2人は迷わず音のした方に駆け出す。

倉庫の一番奥に辿り着くと怪人屋、T1サイクロンドーパントと青い鞭のISを纏った白人の女性が交戦していた。

 

「なんだあのIS?」

 

『アメリカ海兵隊のデータで見たことがある。

ジュリエット・バーナード大尉の専用機、ブルーアリゲーターだ。」

 

「海兵隊って事は蓮の仲間か!」

 

「Exactly.」

 

「誰だ!」

 

不意に背後から声を掛けられた。

振り返ると屈強な黒人と白人とアジア系のハーフと思しき二人組が立っていた。

 

「待て待て落ち着けナイフを降ろせサツのにーちゃん。

俺たちゃヘッドの命令でボスを手伝いに来ただけなんだ。」

 

「ヘッド?ボス?」

 

「ボスって蓮の事か?」

 

「ソウ。ボクタチ、レン少佐の手下。」

 

「手下!?」

 

「馬鹿!悪いな赤龍の坊主。

アキツネはあんま日本語が上手くないんだ。」

 

「ソウイウアンドリュー、日本語アッテルゲドキタナイヨ?」

 

どうやらハーフの方がアンドリュー、黒人の方がアキツネというらしい。

 

「五月蝿え。そより行くぞ。あっちはカタがつきそうだ。」

 

そう合図するとアンドリューは銀色の戦棒をアキツネは赤い奇妙なアーチェリーを構えるとサイクロンドーパントに向かっていった。

 

「アンドリュー!」

 

サイクロンドーパントの首を電磁鞭で捕まえたジュリエットは電流を流し怯ませるとアンドリューにパス。

 

「ウルトラスティック!」

 

アンドリューが叫ぶと持っていた戦棒はしゅっ!と伸びてサイクロンの背中に当たる。その瞬間ジュッ!と油の様な音がした。

 

「あっつい!」

 

思わず叫ぶドーパント。

それもその筈、アンドリューのウルトラスティックの両端はISの装甲も穿つ事が出来る特殊電磁熱を発しているのだ。

生身を変質させているだけのドーパントにはひとたまりもない。

 

「マカセテ!マシンガンアーチェリー!」

 

アキツネのマシンガンから5本の矢が連続で放たれる一本が左肩に当たると真っ赤に光って爆ぜた。

 

「ギヤァアア!」

 

左肩を抑えながら無茶苦茶逃げ惑うドーパント。

真っ直ぐ倉庫の行き止まりに向かって行く。

その先にあるのは

 

(あれってスタンドミラー?てことは!)

 

ケイタの決断は早かった。

打鉄赤龍を展開してグラインダーを装備するとドーパントの左足を捕まえて渾身の力で自身の背後弧を描かせながら地面に叩き落とす。

前、後、前、後と交互に落とし続けトドメにジャイアントスイングをかます!

木箱をぶち破りながら吹っ飛んだドーパントが薄っぺらい何かを落とした。

 

「やっぱりアドベントカードを使ってベンタラ経由で移動してたのか。」

 

拾い上げてポケットにしまう。

 

「おい坊主逃げろ!」

 

アンドリューがウルトラスティックをケイタの方に投擲する。

右に飛ぶケイタその背後から飛び出てきたサイクロンドーパントの右胸にウルトラスティックが直撃した。

どうやらトドメを刺し切れてなかったらしい。

 

「くそう!くそう!くそう!なんでみんな邪魔するんだ!

どいつもこいつもどいつもこいつも!寄ってたかって寄ってたかって!」

 

サイクロンドーパントは突風を巻き起こして目くらましをするとその場から消えていた。

 

「あのうんこ垂れめ。逃げられたか。」

 

「デモガイアメモリ確保シタ。」

 

「取り敢えず団長に報告よ。

レンにはその後でいいわ。宝箱は確保したし。」

 

そういうとガイアメモリが入ったバッグを回収したジュリエットはISを待機形態のヘアゴムに戻して手首につけた。

 

「まて、そのメモリは持っていかれては困る。」

 

立ち去ろうとする3人を洸一が止めた。

 

「何言ってんのよ。あんたら捜査打ち切られたんでしょ?

こんなん持ってたらヤクの不法所持で豚箱一直線よ?」

 

「それは、、、。」

 

「ボクラヲ信ジテ。ボクラハプロ。

オ片付ケモチャントスル。」

 

「ま、兎に角任しとけよ。

えっと中身は、ヒート、ルナ、メタル、トリガー、ファング、スカル、キー、ロケット、、、は!?アントライオンはボスから報告あったけどナイトメアとダミーはどこ行った?」

 

「ダミーだって!?」

 

「まさか、それがニセモノに変身出来るメモリか!?」

 

「なんであんたらそんな事知ってんだよ?」

 

「実は今俺、、、。」

 

「はん、はん。」

 

「成る程。」

 

「ヨクワカッタ。」

 

「ホント他人を信用しないのなうちのボスは。」

 

「たく、仕方ないわね。

どっちにしろダミーのメモリは確保しなきゃだし手伝ってあげるわ。」

 

「ありがとう。みんな足はある?」

 

「バイクならあるけど?」

 

「なら丁度いい。

まずはレン・アキヤマと君の誤解を解こう。」

 

 

 

4

同じ頃、手塚海之はケイタがいる倉庫とは真反対の場所でケイタを探していた。

遡る事一時間前一夏がケイタが何処かに行ってしまった。

心当たりはないか?と駆け込んで来たのだ。

 

夕方まで、正確には美津樹の為の救急車が来るまで一緒にいた海之は責任感じる所があり、何より頼み込んで来た一夏が余りに必死だったのでこうして手伝っている次第だ。

 

「しかし、こうも検討が外れるとは、

占いは兎も角私の感はてんで当てにならんな。」

 

一応占ってはみたのだがレンの部下と一緒にいるという曖昧な情報しか得られ無かった。

 

(だが良くも悪くも私の占いは当たる。

必ず団体で行動してる筈だ。)

 

気を取り直してもう少し外れまで探すべく公園を出た。

 

「フルール・ド・ラパンですよろしくお願いしまーす。」

 

「ああ、って紗路。」

 

「あ、海之。」

 

バイト先の制服で紗路がビラを配っていた。

 

「店の外でも似合ってるな。今日は宣伝か?」

 

「い、言わないでよ。

昨日から網島さんに泊まられたと思ったら今日はこの格好で外出る羽目になったりで散々よ。」

 

「そうかそれは大変、、、え?今網島って言ったか!?」

 

「え、いや、そうだけで?」

 

「昨日紗路の家に居たのか!?いつまで!?」

 

「今朝の6時ぐらいまで」

 

「ありがとう。この恩は必ず返す!」

 

フルール・ド・ラパンのチラシを乱暴に仕舞うと海之は人目のつかない路地に入って壁に鏡になるシールを貼り付ける。

 

「仮面ライダー!」

 

スティングに変身してベンタラ経由でラビットハウスに向かった。

 

 

 

5

時間を朝まで巻き戻す。

蓮はここ最近の中でトップスリーに入るぐらい悪い目覚めだった。

睡眠の質が良く無かったのか頭の奥が痛い。

目にはクマが出来てただでさえ悪い目つきが道を歩いただけで通報されるレベルで酷い。

 

常備薬を飲んでお湯で無理やりクマを落とす。

それでもまだ悪い。

母の形見のファンデーションが幾らか余っていたのを思い出して使ってみた。

なんとかいつもより疲れてるぐらいにはましな顔になった。

 

「サード、洗顔石鹸って持ってきてたか?」

 

『いいえ。それからファンデーションを落とすなら一夏様か心愛様から化粧水を借りる事を推奨します。』

 

「、、そうする。」

 

貸してくれるかは怪しいが。と心で付け足し寝間着のまま下に降りた。

一夏、心愛、ケイタの姿はない。

なんで保登まで居ないんだ?と智乃に聴くとトースト1枚だけ咥えて出て行ったらしい。パジャマのままで。

 

「保登なら驚かんな。」

 

「、、、それだけですか?」

 

「何がだ?」

 

「、、、いえ。」

 

朝食を終えると2人気まずい空気のままラビットハウスを準備した。

顔には出さないように努めたが、蓮の気分は最悪だ。

 

(俺は何をやってるんだろう?)

 

昨日一夏にビンタされてから何度目か分からない自問自答を繰り返す。

目的を達成する為なら何でも利用する。

邪魔をするなら何であれ破壊する。

 

それが最善のハズなのに、俺は網島達を道具としてでなく友達として見ていたのか?

例えば蓮自身が嫌って仕方ない海兵隊IS師団団長や直属の部下、という名の本国での監視役のアンドリュー、アキツネ、ジュリエットにその妹のハリエットは間違いなく上司と部下の関係だ。

 

だが網島ケイタ、織斑一夏、保登心愛。

この3人はどうだ?戦友、学友というのは間違ってはないが少し違う。

相棒というのは自分とサードぐらいの距離感だ。

ならあの3人はやはり心の何処かで友達だと思っていたのだろうか?

 

(駄目だレン。お前にそれだけは許されない。

許されちゃいけない。彼女を目覚めさせる為なら、

彼女を目覚めさせるまで甘えなんて許されない。)

 

深く息を吐いて窓を見る。

反射で映ったいつものケイタより冴えない顔した蓮がそれでいいのか?と問い掛けているようだ。

そうな風にボーっとしてると本日1人目の客が入って来た。

 

「いらっしゃっいま、、探偵さん。」

 

「よう、また会ったなクールボーイ。

いや、仮面ライダーウイングナイト。」

 

「織斑達から聞いたんですか?」

 

「ああ。後輩の働きぶりを見に、と思ったが酷いな。

風が止んで空気が篭っちまってる。」

 

「普段嵐みたいな奴が今居ませんからね。」

 

「そいつは良くないな。蓮。」

 

「気安くファーストネームで呼ばないで下さい。」

 

「じゃあお前の名前ハスって読むのか?」

 

「は?」

 

思わず笑ってしまった。

前に、ケイタと始めてベンタラで面と向かって話した時にも似たようなやり取りがあったからだ。

 

「なんだ?ケイ坊にも似たようなこと言われたからか?」

 

「それも織斑達から聞いたんですか?」

 

「いや推理だ。」

 

「推理?」

 

「今のお前の顔、友達のことを楽しく話すリーゼントの後輩ライダー、お前らから見たら先輩だな。と似てたんだ。」

 

思わず窓を見て自分の顔を確かめた。

さっきより幾らかマシになった気がする。

 

「お前が何であんな態度をとってるかは聞かねえ。

だけどきっと今感じたお前が本当のお前だ。」

 

「、、許されませんよそんなこと。

俺はあいつらに酷い事を「お前はあいつらに酷い事を言わるなんて思ってなかったぐらい信頼してた。なら会いに行ってやれ。それからお前の罪を数えろ。」

 

「、、、何ですかそのえらく気取った決め台詞?」

 

「俺たちが、街の悪党に永遠に投げかけ続ける言葉だ。

自分の罪と悪人の罪を戒めとし、

倒すべき悪を正面から受け止める為のな。」

 

「仮面契約者が正義の味方のつもりですか?」

 

「ああ、仮面ライダーは弱気を助け、

罪なきを虐げる悪と人々の涙を拭う正義のヒーローだ。」

 

それを聞いた蓮は俯いた。今の顔を誰にも見られたくない。

もしかして翔太郎はこうゆう時のために帽子を被ってるんじゃないだろうか?

 

(狡いな、反則だ。人間のデカさが、段違いじゃないか。)

 

これはあいつらもこの人を兄と慕う訳だ。

 

「探偵さん、いや、翔太郎先生。

ありがとうございます。まるで始めて目を開けたみたいな気分です。

かふ、、智乃。悪いが少し休憩を貰えないか?

流石にかきいれ時に俺たちだけはきつい。3人を連れ戻してくる。」

 

「!、いってらっしゃい。すぐに戻って来てくださいね?」 

 

「行ってきます!」

 

ヘルメットを掴むと蓮はバーテン服のままカワサキニンジャを発進さた。




ケイタ「あー、、やっぱかっけえな、翔兄。
フィリップ兄も相変わらず元気でカッコいいままだといいなぁ。」

ロリ千夜「おまえのつみを、、おしえて?」

セブン『違うぞ?それじゃどっかの時の王者だ。』

ケイタ「そんなことより次回!infinite DRAGON KNIGHT、Episode of Jokers エピローグ Cも悪魔だ/木組みの街のヒーロー !」

ロリ千夜「さあ、おまえのつみをおしえろ!」

セブン『だから違う!』


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Episode of Jokers エピローグ Cも悪魔だ/木組みの街のヒーロー

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

一夏「ケイタがロリコンだったことが分かったね。」

蓮「最低だな。」

心愛「ロリコンって?」

ケイタ「いや待て待て誤解だ!てかなんで前回だけあんなんだったんだよ!」

蓮「そりゃ前回お前が言ってたみたいに別キャラなんだろ?」

ケイタ「じゃあ毎回ここで前回のあらすじやってる俺は仕方ないじゃん!」

一夏「ふむ、疑惑は拭えないけどそうゆう事にしといてあげるか。」

心愛「ロリコンって何?」

蓮「お前はまだ知らなくていい世界だ。
そんな事より前回はアンドリュー達が登場して怪人屋を追い詰めたな。」

一夏「そして蓮も解決に動き出したね。」

ケイタ、心愛「「さてさてどうなる?」」


1

「ケイタくーん!一夏ちゃーん!」

 

心愛は朝一番から食パン片手に街を探し回っていた。

当てなどなかったが居ても立っても居られなかったのだ。

何度か蓮に援軍に来て貰おうと思ったが昨日の夜の沈みきった顔を思い出してやめた。

 

「、、、みんなどこ?」

 

「ケイタは多分大丈夫だが、問題は一夏だ。

ゼロワンだけじゃドーパントやアドベントビーストに対応出来ない。」

 

「そうだよね、、、って蓮くん!」

 

「悪いなほ、、いや、心愛。」

 

まさか来るとは思ってなかった心愛は驚いた以上に喜んだ。

 

「なんでここが?」

 

「あんだけ大声で騒いでたらバイクに乗ってても気付くさ。

なんせお前はラビットハウス1、賑やかな奴だからな。」

 

「ていうか、蓮くんが名前で呼んでくれた!蓮くん!」

 

「意味も無く名前を呼ぶな心愛。

取り敢えず俺はベンタラで2人を探す。

居たらだが手塚や更識にも声かけて来る。

こっちは頼んだぞ。」

 

「ラジャー!」

 

心愛と別れた蓮は赤信号で止まったタイミングで一番近いショウウィンドウに向けてデッキを構えてVバックルを装着する。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

バイクに乗ったままウイングナイトに変身し、

反対車線に侵入して逆走。

車体をウィリーさせて対向車の窓ガラスを鏡の代わりにベンタラに突入した。

しばらくバイクを走らせていると変化が起きた。

 

蓮のカワサキにアドベントデッキからエネルギーが送られてアーマーが装着された。

ウイングランサーとダークバイザーの持ち手部分を合わせたようなデザインの物だ。

 

awesome(最っ高だ)

てっきりバットモービルみたいになるかと思ってたが、

これもカッコいいな。」

 

『名付けるなら、ウイングサイクル。といった所ですね。』

 

「よし、走れ!風の様にウイングサイクル!」

 

ウイングサイクルに変身したカワサキニンジャは本来以上の性能を発揮した。

アーマーが着いて重くなった筈の車体は風の様に軽い。

何処まででも走り抜けられそうだ。

 

(こんなに良い気分で走るのも久しぶりだな。)

 

ウイングサイクルの性能に大はしゃぎしながら蓮の心の冷静な部分は楽しかった思い出をかみしめていた。

 

「!?」

 

そしてまた戦士としての部分もしっかり働いていた。

突然横から突き出されたキックを車体を傾けて避ける。

 

「なんや、あの黒いドーパントちゃうんか?」

 

「お前は、、仮面ライダースピアーだな?」

 

「知っとるんか?」

 

「、、、俺には分かる。」

 

前にも、始めてインサイザーに会った時も蓮にはフッとインサイザーという名前が頭に浮かんで来たのだ。

今回も何故か頭に浮かんできた。

 

(今まではデッキの使用なのかと思ったが、

スピアーの反応を見る限り違うな。)

 

油断なく構えながらも蓮は考察を続けた。

 

「まあ、ええ。お前、この街で怪人屋を嗅ぎまわっとる黒い体に真っ赤な目のドーパント知らんか?」

 

「見つけてどうするんだ?」

 

「倒すんや。仕事やからな。」

 

「ふん、、訂正しろ。あの人はドーパントじゃない。

風都の仮面ライダーだ。」

 

「ほお〜、そら良いこと聞いてもうたなぁ?

ならこれを足掛かりに最強のライダーを目指すんも悪うないな!」

 

<SPIN VENT>

 

<SWORD VENT>

 

ウイングランサーとガゼルスタップが火花を散らす。

シラットの様な激しい格闘で攻め立てるスピアーにウイングナイトはかつて自分を苦しめたトラストのフェンシングスタイルで応えた。

 

「(こいつっ!あの角野郎と戦った事あるんか!?

あいつより踏み込みも切り込みも深く、鋭い!)おもろい!」

 

ガゼルスタップを捨て突き込まれたウイングランサーをの切っ先を膝のバイザーに当て上にそらし反対の足でサマーソルトキックを放ち、距離を作ると新たにカードをベントイン。

 

<ATTACK VENT>

 

無数のレイヨウ型ビーストを召喚しウイングナイトの退路を塞ぐ。

 

「そうゆうの、俺も持ってるぜ!」

 

<TRICK VENT>

 

ウイングナイトもシャドーイリュージョンを発動し5人の分身を生み出す。

 

「野郎ども!カカレ!」

 

マガゼール、ギガゼール、オメガゼール、メガゼール、ネガゼールの五体がウイングナイトの分身としのぎを削り、両腕にカッターのついたメタルレッドのビースト、イガゼールと金色のベガゼールとスピアーはウイングサイクルに乗った本体に向かった。

 

「なんちゅう機動力や!」

 

後輪でキック、ウィリーからのスピン。

バニーホップからのランサーでの斬撃。

ウイングナイトの名は伊達ではなかった。

その姿はさながら守るべき城を背後に舞う西洋騎士そのものだ。

 

「えーい!お前らもっとうまく立ち回らんか!うお!」

 

モタモタしていた内にウイングナイトの分身は何体かビーストが倒された様だ三体の分身とオメガゼール、ギガゼールが躍り出てきた。

その間に走り去るウイングナイト。

 

「待て!待たんか!ウイングナイトォー!」

 

スピアーの絶叫を無視してウイングナイトはハイウェイまで急いだ。

 

(早く翔太郎先生にこのことを伝えないと!)

 

 

 

2

ベンタラに突入したスティングはラビットハウスを目指していた。

手に入れた情報を一刻も早く伝えるためだ。

 

(くそう!なんで初めて会った時に連絡先を交換しなかったんだ!)

 

激しく後悔していた。

便利で煩わしい世になったのに全くその便利を使いこなせていない自分に腹が立つ。

 

まあ、世界にたった3人の男性IS操縦者ともなればネットに何処から流失したかは知らんが電話番号ぐらい張り出されているが流石にそれを使うのは人としてダメだと思う。

そもそもデマの方が多いし。

 

兎に角走り続けて大通りに出る。

するとそこには我が目を疑う光景が広がっていた。

 

(ウイングナイトが5人も!?)

 

ロータリーの真ん中で5人のウイングナイトと五体のアドベントビーストが戦っているのだ。

トリックベントを始めてみる海之は一瞬面食らったがウイングナイトの特殊能力だろう。

と納得して加勢に向かおうとした。

 

「!?あれは、、。」

 

しかし途中で足を止めた。

角からロータリーに出ようとした時、一瞬緑色の何かが見えたのだ。

改めて顔を少し角から出す。見ると緑色のライダー、トルクが両肩に装備したビームキャノンをウイングナイトに撃とうとしていた。

 

「させるか!」

 

<COPY VENT>

 

すぐさまコピーしてトルクが撃つタイミングに合わせて撃った。

放たれたビームはウイングナイトとビーストが入り乱れる手前で相殺さる。 

 

「喰らえ!」

 

すぐさま狙いをトルクに変えビームを連写した。

トルク以外にも前にインサイザーがベントされた時に見た水色のライダー、アックスもいた。

 

(?、網島達の味方じゃないのか?まあいい。

説得するにもまず大人しくさせないとな。)

 

2人に急接近したスティングはバイザーでアックスに殴りかかった。

 

「君は網島達の味方じゃないのか?何故秋山を狙う?」

 

「2人は善人のフリをして皆んなをベントしようとしてる主催者の手先。ここで倒す!」

 

「馬鹿なことを言うな。網島は掛け値無しの善人だ。

自分が悪いと思えば私の様な悪人にこうべを垂れるようなな。

そんな奴が人を騙す?土台無理な話だ!」

 

もう一発顔面をバイザーでぶん殴る。

スティングの筋力、腕力はそこまででも無いがバイザーの仕込み刃と特殊電撃でそれをカバーしてる為、ダメージはそこまででも無いが少なくともガゼルスタップの打撃よりは痛く感じる。

そのため相手の戦意を削ぐ事に長けているのだ。

 

「君だってあのだらしなく見えてやる時はやる、、というか、やれば出来る?あいつに手を貸したくなったんじゃないか?」

 

「ッ!」

 

「何で任せに惑わされてるんだ!どけ!」

 

俯くアックスを突き飛ばしトルクがマグナバイザーを構える。

 

<SWING VENT>

 

すぐさまエビルウィップを召喚しバイザーを持った手を捕まえるとトルクの体ごと一回転させて転ばした。

 

「有る事無い事吹き込んだのは貴様か!」

 

そのまま引き寄せバイザーでパンチを浴びせる。

 

もう一発浴びせて装甲を砕いて内臓を引きづり出してやる!

そう思いエビルウィップを振るが

 

(グッ!偏頭痛、、このタイミングでっ!)

 

視界が歪み始めた。

トルクとアックスのどちらが手前にいるかが分からなくなり、エビルウィップが空を切る。

周りの建物が異様に高く見えたり低く見えたりして平衡感覚が無くなる。

気持ち悪い。

 

「ぐあぁああ!」

 

もたついてる内にバイザーで撃たれたらしい。

体が後ろに吹っ飛ばされる。

 

(こうなったら!)

 

余計気持ち悪くなってしまうが目を閉じて傷口を抑えるフリをしながら手探りでバイザーを開けてカードをベントイン。

 

<ATTACK VENT>

 

エビルダイバーを召喚してなんとかその背中に乗ると真っ直ぐに2人に突っ込ませてその背後の建物の窓から脱出した。

 

 

 

3

同じ頃一夏は駅前に居た。

 

(眠い、、疲れた。)

 

なにせ人生初の徹夜だ。

それに人混みを練り歩きまともな朝食すら食べていない一夏は限界だった。

 

「ねえゼロワン。」

 

『なんだ?』

 

「、、、なんでもない。チョコかなんか買って食べる。」

 

なんで止めてくれなかったんだ?

と言おうと思ったが、言っても止まらなかっただろう?

と言われるのは目に見えていたからだ。

一枚だけ板チョコを買って割らずにそのまま齧る。

いつもより甘くて美味しい気がした。

 

『それ美味いのか?』

 

「疲れてるせいかいつもよりは。」

 

こっちはこんなに心配してるのにケイタは何処で何してるんだろ?

歩き疲れて怒り疲れて最早疑問しか出てこなくなった。

ボーっと正面だけを眺めながらチョコを齧って呟く。

 

「、、ケイタの馬鹿。レンの最低。」

 

相変わらず美味しい。

けど、さっきより少し苦い味な気がした。

 

『その言葉は見つける時までとっとけ。』

 

ゼロワンに言われて改めて見つけたら怒る、怒鳴る、殴ると心に決めると立ち上がった。

食べかけのチョコを仕舞う。残りは帰ってから食べよう。

 

反対の改札口の方に向かう。

今度はこっちを探そう。

そう思って向かったが間が悪かった様だ。

丁度電車が来た後だったらしい。人波が出来ていた。

 

「、、最近私運ないなぁ、ないない。」

 

自分で言ってて悲しくなった。

こんな時こそチョコレートに縋りたい。

だけどこんな人混みの中で出すわけにも行かない。

溜息をつきながら歩いた。明日は天気が悪そうだ。

そんなことを考えてると誰かの背中にぶつかった。

 

「ごめんなさい。」

 

「いや、僕こそすまない。少し考え事を、、織斑一夏?」

 

「え?嘘、、フィリップ兄。」

 

あどけない顔立ちに髪留め代わりにつけた書類クリップ。

緑色のノースリーブのロングパーカーにボーダー柄のゆったりとした長袖。

左翔太郎の相棒にして風都一の探偵(頭で考える方)のフィリップだった。

 

「ちょうどよかった。翔太郎から君を探す様に頼まれていたんだ。」

 

「私を?」

 

「ああ、翔太郎から鏡の仮面ライダーについて大体のことは聞いた。

君を1人にしておくわけには行かなくてね。」

 

「すいません。ご迷惑をおかけして。」

 

「いやいいさ。むしろ迷惑をかけられるのが探偵の仕事さ。」

 

相変わらず何処か不思議な人だ。

驚くほど冷たい時もあれば普通の人の様な温かみを感じる時もあり、初め一夏は彼が愛用している白紙の本が人になった様なイメージを持っていたがだんだんと普通に接せる様になった。

 

「高校は慣れたかい?」

 

「、、ケイタ達がいたから。」

 

フィリップの顔を見ると気まずそうな顔をしていた。

もし蓮ならどんな顔をするだろう?不思議と分からなかった。

 

「見つけた。」

 

背後から短くしかし確実に憎悪が篭った声が聞こえた。

振り返ると真っ赤な覆面を被った子供が居た。

フードをすっぽり被っていて髪型は分からない。

だがパーカー越しにもわかる豊満な胸を見るに女の様だ。

 

「織斑一夏、知り合いかい?」

 

「さあ?」

 

「もうね、回りくどいのは止めることにしたんだ。

他の奴らはみーんなガードが硬いから、

お前は直接地獄に送ってやる。」

 

そう言うと子供は左手をめくりポケットから緑色の骸骨の様なモールドの小箱?を取り出す。

 

「ガイアメモリ!?」

 

<CYCLONE>

 

スイッチを入れ、手首に現れた生体コネクタにメモリを挿入し、

子供はT1サイクロンドーパントに変身した。

 

「逃げよう!」

 

一夏の手を引いてフィリップは駆け出した。

背後では悲鳴と岩を砕き壊す様な音が聞こえる。

 

ドーパントが自分を狙っている。

その事実だけで一夏は竦み上がった。

無理矢理でも手を引いてくれるフィリップが今は頼もしい。

 

階段を駆け下りて繁華街に逃げる。周囲は大混乱だった。

車道はあまり混んでる時間じゃなかったせいか立ち往生している車やバイクは少ない。

 

「渡ろう。」

 

反対側の人混みに紛れて逃げようとしているらしい。

小さく頷き歩道に出ようとした。

しかしその目の前に巨大な何かが投げつけられる。

駅前の広場にあった石のベンチだ。

空を仰ぐともうサイクロンドーパントは追いついていた。

 

(あ、死ぬんだ。)

 

やけに視界がスローに見え始めた。

しかし体はまるで水に沈められた様に動かせない。

やけに遠くからフィリップの声が聞こえる。

ダメだな。そう思った瞬間、ドーパントの肩に真っ赤な矢が刺さって爆発した。

 

「え?」

 

「一夏!」

 

背後から誰かが駆けてきた。

ボサボサの栗色の髪にオレンジ色のライダースジャケットは、

何より普段はボーっとしてるが今は珍しく真剣な顔は見覚えがある。

 

「ケイタ!」

 

「網島ケイタ!」

 

「え?フィリップ兄!なんでここに?」

 

「翔太郎からの援軍要請さ。君も随分大所帯だね。」

 

フィリップが指差す先には遅れてやってきた洸一、ジュリエット、アンドリュー、アキツネの4人が並んでいる。

 

「動くな!警視庁超常犯罪捜査課だ!

ガイアメモリを捨てて手を上げろ!」

 

「そうしなくてもダミーとナイトメアのメモリの場所だけは吐かす!胃と胃の中身を吐かせた後でな!」

 

「ソレ、相手死ンジャウ。」

 

「うっせ!ただの脅しに反応するんじゃねえ腹たつ!」

 

「あんたら真面目にやんなさい。

それより、園咲来人!」 

 

ジュリエットはあえて本名でフィリップを呼ぶと懐から取り出したドライバーを投げ渡した。

 

「ロストドライバー!?」

 

「ヘッドからの贈りもんだ!」

 

早速腰に装着してフィリップはサイクロンドーパントを見据えた。

 

「2人とも翔太郎に伝えてくれ。僕は忙しいとね。」

 

そして懐からガイアメモリを取り出し起動した。

 

<CYCLONE>

 

「変身!」

 

ポーズを取ってメモリをセットしてドライバーを傾ける。

 

<CYCLONE!>

 

フィリップにとって忘れられない大事件以来変身していなかった姿へと変身した。

 

「それさあ、、なんの冗談?」

 

口調こそ軽いが放つ殺気は尋常ではない。

彼女からすれば、それは歪な鏡をのぞいてる様なものだろう。

 

「今こそ再び名乗ろう。

僕は大自然の使者、仮面ライダーサイクロン!

さあ、お前の罪を数えろ!」

 

 

 

4

ウイングサイクルから元に戻ったカワサキニンジャを急がせ蓮はラビットハウスに戻った。

 

「大変です翔太郎先生!」

 

「おお、蓮!良いところに戻った!」

 

「蓮さんこれどうしましょう!?」

 

「あ、蓮くん!」

 

蓮がドアを潜ると、中ではめちゃくちゃに倒れたテーブルと椅子の前に海之が倒れていた。

3人からの話をまとめると、戻って来た心愛の話を聞いていた翔太郎を突き飛ばす形で海之が窓から飛び込んで来たらしい。

 

「それで明らかにライダー関係の問題だったから救急車を呼ぶに呼べず応急処置だけ済ませたと?」

 

「そうなの!」

 

「うっ、、、うぅ、、お花畑が見える、、雄一とお祖父様が手を振ってるよ、、。」

 

「行くなー!こっちに戻ってこーい!」

 

どうやら危うく神の家に招かれる所だったらしい手塚はまだ意識がはっきりしないまま、掻い摘んで事情を話した。

 

「トルクのペテン野郎、、俺よりも何倍も仮面ライダー向いてるあいつを悪党にするたあ良い度胸だ。」

 

ぱしん!と苛立ちげに拳を鳴らすと蓮はすぐさまバイクに戻ろうとした。

 

「まてよ蓮、そいつらが今どこかもわかん無いだろ。」

 

「、、すいません先生。どうやら俺、だいぶ短気みたいです。」

 

「安心しろ、ケイ坊も始めの頃はそんなもんだったさ。」

 

そんなやりとりをしてると翔太郎のケータイが鳴った。

 

「一夏ちゃんからだ!もしもし一夏ちゃん?」

 

「あ、もしもし翔兄?今フィリップさんが変身して怪人屋と戦ってるの!」

 

「なんだって!?場所は?」

 

「駅前の交差点!」

 

「分かった!一夏ちゃんはなるべく安全な道からラビットハウスに向かってくれ!蓮、聞いたか?」

 

「はい。先生はバイク有りますか?」

 

「裏に停めてある。最短距離を案内してくれ。」

 

 

 

5

通行人の避難誘導を蓮の部下達と洸一に任せたケイタと一夏はスズキカタナでラビットハウスを目指していた。

丁度河川敷に差し掛かった所で前からハードボイルダーとカワサキニンジャが走ってくるのが見えた。

 

「おーい!翔兄!レーン!」

 

「一夏ちゃん!ケイ坊!」

 

「2人とも無事か。」

 

「何とかね。」

 

4人ともバイクを降りてヘルメットを脱いだ。

 

「ケイタ。」

 

今更許されるかも分からないが謝ろう。

蓮が頭を下げようとした時だ。

 

「蓮。ごめんな。あん時はいきなり殴りかかって。」

 

「え?」

 

「どんな理由にせよ。お前のした事は許さない。

けど、お前が悪くないって信じるから、

お前も俺を信じてくれ。」

 

「ケイタ、、、。」

 

「よく言ったもんだな。自分の正義が何かも解らん癖に。」

 

「誰だ!」

 

不意にどこからか声が聞こえて来た。

あたりを警戒するが、人影一つ見当たらない。

 

「まさか!みんなバイクから離れろ!」

 

バイクのミラーから無数のレッドミニオンと、

仮面ライダードラゴンナイトが現れた。

 

「やっぱり偽物がいたのね!?」

 

一夏の叫びにもう1人のドラゴンナイトはケイタと全く同じ声で答えた。

 

「本当にそう言い切れるのか?」

 

「なんだと?」

 

「網島ケイタに戦う理由はない。

また逆も然り。戦わない理由だってない!

ならばこうならない保証がどこにある?」

 

パチン。と指を鳴らすもう1人のドラゴンナイト。

レッドミニオンは一斉に蓮と翔太郎に襲いかかった。

 

「ケイ坊!一夏ちゃん!くそ!変身!」

 

<JOKER!>

 

「すぐ助ける!KAMEN-RIDER!」

 

ジョーカーとウイングナイトに変身してビーストと戦う2人。

相変わらず強くはないが数は多い。

直ぐには2人を助けられない。

 

「さて、網島ケイタ。」

 

「ガッ!」

 

ケイタの首を掴んで持ち上げたドラゴンナイトは責めるような、弄ぶような口調で語りかけた。

 

「ケイタ!」

 

「網島ケイタ。君は居るだけで織斑一夏を危険に巻き込み

レン・アキヤマに更識簪、手塚海之など様々な人間を狂わせた。」

 

「狂わせた、だぁ?」

 

「そうさ!君が余計なことを吹き込まなければ彼は彼女らは迷わず戦えただろうに君の言葉一つでもうみんな殺しに抵抗を持った。

その一方で君は戦う理由も戦わない理由も持たない!

いざとなれば高みの見物を決め込むことも出来るのさ!

そんな半端者だからこんな風に影が滲み出てくるのさ!

いいかげんそんな機械人形みたいな無差別な救いは辞めて決めて欲しいね。

君は網島ケイタなのか?

それとも仮面ライダードラゴンナイトなのか?

どっちだい?ん?」

 

「、、るか。」

 

「え?」

 

「んなもん俺が知るか!」

 

ISやアドベントデッキで強化した訳でもなんでもないただの高校生の渾身のパンチがドラゴンナイトを怯ませた。

 

「何が正義とか何が悪とか理由の無い悪意とか必要悪とか!

ごちゃごちゃごちゃごちゃめんどくせーんだよ!

そんなもん哲学書でやれ!

俺は自分が正義だとか悪だとか!

どーでもいい、どっちでもいい、なんでもいい!

ただ!人から褒められる事はやって当たり前!

人から嫌がられる事はやっちゃダメ!

ホントはただそれだけの話だろ!」

 

右、左、右、左。ドラゴンナイトを殴り続けながらケイタは続ける。

 

「何が正しいとか、間違ってるとか!

普通に考えて分かるだろ!俺は、

俺が本当に大昔に憧れたテレビの向こうのヒーローや!

俺を支えてくれた人達にがっかりだけはされたく無い!

ただそれだけ、そこそこでいいだけだ!」

 

遂にドラゴンナイトの手を離させた。

 

「ケイタ!これを!」

 

レッドミニオンの壁を抜けたウイングナイトがドラゴンのデッキを投げる。

華麗に直線に飛んだそれは見事にケイタの腕に収まる。

 

「これが俺の答えだ。戦う理由だ!カメンライダー!」

 

変身したケイタはすぐさまストライクベントのカードをベントインし、ゼロ距離で火炎をニセドラゴンナイトの腹部に叩き込み、距離を作る。

 

「セブン!赤龍をデッキに繋げてくれ!

文字通り俺のフルパワーを叩き込む!」

 

『良いのか!?エネルギー負荷に耐えきれない可能性もあるぞ!?』

 

「そこはお前の塩梅で!」

 

『、、、どうやら私は地獄まで悪魔と相乗りする羽目になったらしい。』

 

「こんな善良な一般市民捕まえて何を言いやがる。

ゴールデンウィークぐらい安らかに過ごしたいんだ。決めるぞ!」

 

『はぁ、、仕方ない思い切りいけ!相棒!』

 

<FINAL VENT>

 

自分の周りを旋回するドラグレッターもいつもより強そうに、心強く見える。

 

(俺は、取り敢えず進む!)

 

飛び上がり体を捻って構えを取る。

火矢と化したドラゴンナイトに貫かれた偽物は対岸まで吹き飛び巨大な火柱と共に爆裂四散した。

ドラゴンライダーキックの勝利だ!

 

「まさか、、、、は、はは、あははははははっははははあ!これ程までとは素晴らしいよ網島君!」

 

爆風の中から現れたのは、なんと間明だった。

 

「間明だって?」

 

「前に一回戦ったことのあるゼイビアックスの手下のサイバー犯罪者です。」

 

レッドミニオンを片付けたジョーカーとウイングナイトも駆け寄ってくる。

それを見るとす、と笑顔を向けながらなにかの破片を掲げる間明。

 

「ダミーのドーパントメモリだと!?」

 

「ああ、中々面白いおもちゃだったよ。」

 

ドーパントに長期間変身していたのにもかかわらずその程度で済んでいるのはメモリを改造していたからか、はたまた間明の魂、精神が腐っているからか。多分両方だろう。

 

「なんにせよ、僕の目的は達成された!

ありがとう。本当にありがとう!」

 

そう言うと間明は川の水面を鏡代わりにしてベンタラへと逃げた。

 

「、、、一難去ってまた一難、今度は間明か。」

 

「しかも怪人屋の件も結局まだだし、どうなっちゃうんだろ?」

 

「何も心配する事はないさ。」

 

「「翔兄?」」

 

「先生?」

 

「もうこの街には、お前らに心愛ちゃん、

それにあの海之って子も、

こんなにも沢山の仮面ライダーが居るんだからな。」

 

「私や心愛ちゃんも?」

 

「ああ、ベルトがないだけで俺に言わせりゃ立派な仮面ライダーだ。」

 

「うん!」

 

変身を解除し、笑い合う3人の若者を見ながら翔太郎はこんな若い奴らが戦わなくていいのに、と残念に思った。

しかしそれに負けないぐらいこいつらはこの街に良い風を吹かせる。と誇らしく、心強く思うのだった。

 

 

 

6

ダミードーパントを倒した4人とサイクロンドーパントを退けたフィリップ達はラビットハウスに戻り早めのランチを食べていた。

どのテーブルも和気藹々としていたが、W、ドラゴンナイト、ウイングナイトの4人の仮面ライダーが座るテーブルは違っていた。

 

「けどいいのか?怪人屋の件まで首突っ込んで?」

 

「一夏が狙われてる以上、俺たちが狙われない保証はありませんし。」

 

「問題は被害者から犯人をIS学園関係者以上に絞れない事だ。」

 

「て、言うとどゆこと?」

 

「IS学園関係者以外の怪人屋の被害者は年齢、性別、体格など全てバラバラ。

恐らく見つけた首輪を使ってドーパントにしてアジトに行くように指示していたんだろうね。」

 

「色々調べてIS学園の生徒だけにはある程度共通点があったんだけど、それも織斑一夏が狙われた事で崩れてしまった。」

 

「ちょっとその資料見せてもらっていいですか?」

 

「どうぞ。」

 

「、、、ケイタ、なんか気付くか?」

 

「さあ?みんな3組、4組の整備課の人達って事しか。」

 

「じゃあ無理矢理でもいい。

一夏と被害者達に接点を作るならどうだ?」

 

「一夏と3、4組?強いて言うなら簪さんが3組ってぐらい?」

 

「それだ!」

 

「何かわかったのか!?」

 

「はい。ただ今回の件、かなり嫌な決着になりそうです。」




ケイタ「で、嫌な決着って?」

蓮「ま、大体の奴らは分かってると思うがな。」

ケイタ、一夏、心愛「「「?」」」

蓮「兎に角、次回で第5話は完結だ。気合い入れていくぞ!」

ケイタ「次回、infinite DRAGON KNIGHT!
Episode of Jokers エピローグ Cも悪魔だ/木組みの街の悪党!」

心愛「次回も見てね!」


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Episode of Jokers エピローグ Cも悪魔だ/木組みの街の悪党

ケイタ「準備はいいか?みんな!」

箒「無論だ。」

ブラッド「出来てる。」

千夜「それじゃ行こっか。せーの。」

4人「お気に入り登録者数20人達成、ありがとうございます!」

ケイタ「まさか二桁いくと思ってなかったので本当にありがたいです!」

千夜「いつも感想を下さる影山鏡也さん。
登録してくださった皆様、登録してなくても毎回見て下さる皆様、たまたまこのエピソードを見た皆様、そして何だこのゴミssと思いつつも悪意あるコメント一つせずにブラウザバックしてくれた皆様、本当にありがとうございます。これからもこの拙いssをよろしくお願いします。」

箒「なんか最近私の出番がほぼ無いし完結までなんとかいけるのか?と不安になるが、生暖かい目で見守っていてくれ!」

ブラッド「今回は前回の裏で起こっていた出来事や怪人屋の正体が明かされるぞ!」

ケイタ「それではどうぞ!」


1

スティングに逃げられ、ウイングナイトにも逃げられたトルクは不快の絶頂だった。

 

「ああくそ!巫山戯んなよ!

今日お前のせいで二回しくじった!

早く誰か探して倒すぞ早くしろ!」

 

まるで全てアックスが悪いかのように散々に罵倒するトルク。

二人掛かりなら何とかなる。

と甘く考えていた彼にも非は無く無いのだが、

生憎彼は自分を顧みない。

そんな彼の後ろに続きながらアックス、簪はぼんやりと思った。

 

(私はどっちを信じたら、、、。)

 

さっきからスティングに言われた言葉と彼が、

ケイタが思い出させてくれた幼馴染の言葉がぐるぐる頭の中を巡っていた。

 

「君だってあのだらしなく見えてやる時はやる、、というか、やれば出来る?あいつに手を貸したくなったんじゃないか?」

 

確かに恩義を感じてた。下心が有ったにせよ、

前を向かせてくれた彼に恩を仇で返すような事をして申し訳ないと思う。

 

「お嬢の良いとこはなんだかんだ言ってちゃんと前向こうとするとこですよ。」

 

果たして今の自分は今前を向けてるだろうか?

そうな風にボーっと鏡を探していた時だった。

 

「、、、ケイタ。」

 

「なんだって?」

 

鏡の向こうにケイタ達を見つけた。

三人ともバイクに乗っている。

 

「なんだ?ビーストの群れに襲われてんのか。

チャンスだ。纏めて倒すぞ。」

 

そう言ってマグナバイザーを構う直すトルク。

 

「ちょーっと待った!」

 

しかし2人の顔をかすめる様に放たれた短刀がそれを止めた。

 

「間明の旦那から援軍の話は聞いとらへんぞ!

さてはお前ら栄光だけ横取りする気やな?」

 

「間明の旦那?栄光?」

 

「なんだとこの雑魚。」

 

「ゆうたなこのデク!」

 

<ATTACK VENT>

 

無数のレイヨウ型ビーストとスピアー対トルク、アックスの乱闘が始まった。

レイヨウ型ビースト達だけならなんとかお互いの背中を守りあって対応出来たがスピアーは強敵だった。

 

<SPIN VENT>

 

「オラこっちや!」

 

ガゼルスタップで殴りかかったかと思えば

 

「後ろや!」

 

メガゼールの剣で背後から斬りかかり

 

「おら!どこ見とる!」

 

オメガゼールの二叉槍での打撃。

 

「まだまだ!」

 

死角からの短剣の投擲。

 

カード数が全ライダー中最低のスピアーは無数に召喚出来るビースト達の武器を必要に応じて借りる事で多彩な攻撃が可能なのだ。

 

「クッソ!埒があかない!」

 

「ハッハー!俺様名物ガゼルの群れや!

このまま嬲り尽くたるさかい!」

 

短剣から再びガゼルスタップを装備してアックスの二つの肺を狙う。

 

(まず1人!)

 

ビースト達の影から攻撃する。

とった!スピアーが確信した瞬間、何かが首に巻きついた。

 

「がはっ!」

 

ぐん!とそのままハンマーの様に投げられ味方を巻き込みながら吹っ飛ばされる。

 

「はぁ、、はぁ、、、うぷっ。、、ふぅ。

無茶をして来た甲斐があった、私の占いは当たる。

良くも悪くも、、主に悪くも。」

 

エビルウィップを装備したスティングだ。

 

「き、貴様ぁ!いてかましたる!このピンクゥ!」

 

「これは紅色だ!」

 

エビルウィップでは不利と思ったスティングは新たなカードをベントイン。

 

<COPY VENT>

 

二つのガゼルスタップが激突を繰り返す。

スピアーは完全に冷静じゃなかった。

 

「落ち着け!私は君の運命を変えに来たんだ!」

 

「宗教の勧誘なら他所でやれや!」

 

一方アックスとトルクは思わぬ乱入に戸惑いはしたが司令塔が居なくなった為カードを使うだけの余裕が生まれた。

 

<ATTACK VENT>

 

<STRIKE VENT>

 

アックスは契約ビーストのデストワイルダーを、

トルクは近接武器のギガホーンを召喚し、

確実にビーストの群れを減らしていった。

 

「行くぞ!纏めて倒す。」

 

「待って!まずは話を聞いてから「あっちのピンクは兎も角あのガゼルの方は話が出来るとでも思ってるのか!?さっきから役に立たないくせに命令するな!俺に付いて来い!」

 

そう言ってトルクはギガホーンからビームを放つ。

背後からビームを受けたスピアーは対峙していたスティングを巻き込んで吹っ飛ばされた。

 

「あんのデカスケ!」

 

「待て!落ち着け!ベントされるぞ!」

 

「俺があんな奴に負ける訳ないやろ!」

 

「違う!私が占った結果君は紫の尖った肩のライダーにベントされる!こんな所でカードを消費し切ってしまえばなす術なくやられてしまうぞ!」

 

「なんやて?」

 

紫の尖った肩のライダー。そう聞いたアックスは縮み上がった。

かつて、ケイタと出会う少し前、

自分に生まれて初めて死を感じさせた男の姿が脳裏に蘇る。

 

「なんでや?あいつはゼイビアックスの手下やろ?

なんで仲間のはずの俺をベントするんや?」

 

「ゼイビアックス?サイモンズの事か。

奴はなんでか知らんがライダー同士が殺し合うことを望んでいる!つまり君の死を望んでいる!

初めから君の事は仲間ともなんとも思ってないさ!」

 

「なん、、やと?フザケンナや!

じゃあ俺はいままで何のためにあいつらの片棒担いで来たんや!騙しとやがって!降りるぞ!

こんな無意味な戦い俺は降りる!」

 

スティングを突き飛ばすとスピアーは早足で鏡の方に歩き出した。

 

「降りる?許される訳無いだろ?」

 

<SHOOT VENT>

 

ギガランチャー のミサイルがスピアーの背中を直撃した。

 

「ドリュー!?何で!」

 

「うるせえ!」

 

ギガランチャー の反対側のハサミの様になっている部分でアックスを殴り至近距離でミサイルを浴びせスピアーのいる辺りまで吹っ飛ばす。

 

「おい大丈夫か!?」

 

「あなた、まさか最初からこのつもりで!全部嘘だったのね!」

 

「ああそうさ!でもアビスがベントされたのは本当さ。

嘘ってのはほんの少し真実を入れるだけで途端にそれっぽくなるかなら。

実際騙されたろ?もうバレちまったけどな。

使いづらい代わりに賢いお前にはビックリ、プレゼント!

俺のハーレム王国の礎になってくれた事に感謝してあの世への片道切符だ!

なーに、しばらく寂しいだろうがドラゴンナイトやゼイビアックスも上手い事利用して用済みになったら直ぐに送ってやるから安心して待ってろ!」

 

そう言って更にミサイルをばら撒くトルク。

 

「この卑怯者!」

 

実力なあるにも関わらず少し出世に賢い奴らに出し抜かれて来たスピアーは思わず叫んだ。

しかしトルクは仮面の下に涼しい顔で答えた。

 

「卑怯ってのはこうゆうのの事さ!」

 

<FINAL VENT>

 

トルクの契約ビースト、鋼の巨人マグナギガが召喚される。

 

「不味い!立てるかアックス逃げるぞ!」

 

スティングの行動は早かった。

アックスの腕を掴むと何とか盾になりそうな物がある方へ飛ぶ。

しかしスピアーは真正面から打ち破る事を選んだ。

 

<FINAL VENT>

 

「者共!であえであえ!」

 

再び無数のレイヨウ型ビーストが現れ、スピアーに続いてトルクとマグナギガに突貫していく。

圧倒的物量と驚異の脚力の嵐の様なキックの合体技、ドライブディバイダーだ。

 

「は!雑魚は何匹束になっても意味ないんだよ!

ゴールは決まりだ。俺は王国、お前は天国!」

 

ガチャ。マグナギガの背中の接続部分にバイザーをセット、

胸部ミサイルハッチ、右腕ミサイル砲、左腕マシンビームガン、頭部ビームガン、両足のビームキャノンがブロウアップする。

 

「何だあれ?」

 

「全砲門、Fire 」

 

無数のビームが次々とビースト達を悉く焼き払ってスピアーにこれでもかと追尾ミサイルをくらわせた。

こうなってしまってはもともと所持してるカードの少ないスピアーにできる事は何も無い。

爆音が終わると周囲は砂ぼこりと煙で周囲は何も見えなくなった。

 

「ふん、ちょろいぜ。」

 

トルクはその場を後にした。そして静寂。

しばらくは何も動かなかったがいくらかして瓦礫の山の一部が動き出す。

 

「う、、、おいアックス。生きてるか?」

 

「、、、死んでる」

 

「ブラックジョーク言える元気があれば上出来だ。

捕まれ。ガゼルの彼も拾って逃げるぞ。」

 

アックスを立ち上がらせるスティング。

瓦礫を嗅ぎ分けながらスピアーを探した。

意外とすぐ見つかった。

一番ひらけた場所で大の字に倒れている。

奇跡的にベントはされなかった様だが、

家臣を全て失った王様とはなんとも寂しいものだな。と思った。

 

「全く無様だねぇ、スピアー君。

命令違反をした上にこんな無様を晒すなんて。」

 

ゆらり、とスピアーの前に一人のライダーが現れた。

キングコブラの胴を模した尖った肩、

紫のボディにギザギザしたゴーグルアイに凶悪な牙のついた仮面、

スティングが予知で見た、かつてアックスに死の恐怖を与えたライダー、

仮面ライダーストライクだ。

 

「命令、違反?」

 

「おかしいなぁ?間明君から聞いてないかい?

アックスはドラゴンナイトをベントするまでベントするな。

ドラゴンナイトの足枷にするためにね。」

 

「いや、何言ってるん、、だよ?そもそも間明はおm「煩いよ裏切り者。そんな事より君、信用を裏切ったら落とし前をつけなきゃあいけないのは分かるよね?それが命の危機と隣り合わせの職場ともなればどうなるかな?」

 

「ッッ!いや、嫌だ。嫌だぁああああ!」

 

<FINAL VENT>

 

満身創痍の体に鞭を打って出鱈目に走り出すスピアー。

ベネバイザーにカードがベントインされる。

現れたベノスネーカーの吐き出す毒液の激流に押し出されたストライクはスピアーの背中にこれでもかとバタ足キックをくらわせた。

ベノクラッシュをまともに受けたスピアーは吹っ飛ばされた先のコンビニの窓を突き破り、商品棚を倒しながら倒れ伏した。

デッキが外れ、有野啓長の姿に戻る。

その体が黒い粒子と化し、デッキに吸い込まれ始めた。

近くにあったガラス片に地球側で普通に生活してる人々が映る。

啓長は縋る様にそれを掴んだ。

 

「誰か!誰でもいいから!!気付いてくれ…出してくれェッ!

出してくれ…出してくれェッ!!誰か!誰かぁ!!!

出してくれェッ!! 助けて!助けてくれ!!!

助けてくれっ!助けてくれよぉっ‼

俺は帰らなくちゃいけないんだ、俺の世界に!!」

 

しかし山田真耶の様な特殊な例を除きアドベントデッキ、又はカードに触れた事のない者にベンタラを観測する事はできない。ただ人々は通り過ぎていく。

 

「嫌だ……いやだァッ!!出してくれ……出してェ!! 何でこうなるんだよ…… 俺が何したって言うんだよ!俺は…… おれは…… みんなに認めて欲しかったっただけなのに……………。 」

 

右腕が、全身が完全に粒子になり啓長はデッキに吸い込まれてしまった。

最後まで掴んで離さなかったガラス片が落ちて砕ける。

 

「あばよ、コンプレックスくん。」

 

唯一残ったスピアーのデッキを拾いあげながらストライクは特に感動もなく吐き捨てた。

 

「貴様!」

 

背後からスティングの怒りに満ちた声が聞こえる。

恐らく仮面の下は鬼の形相だろう。

 

「やめとけ。二対一でもいいが、君らも満身創痍だろ?

見逃してやるからドラゴンナイトに伝えな。

ゼイビアックス将軍の誘いを蹴った今、

強くならないと愛しの白雪姫を守れないってね。」

 

スピアーのデッキを投げ渡すとストライクは去って行った。

 

 

 

2

一方その頃、仮面ライダーサイクロンとサイクロンドーパントの疾風対決は苛烈を極めていた。

サイクロンメモリの特性は風を取り込みエネルギーに出来る事。

つまり動けば動くほどパワーがチャージされる。

風がある所、つまり空気のある豊かな大地がある所で理論上無限の力を発揮できる大自然の使者に相応しい力だ。

 

「ライダージャンプ!」

 

「ハァッ!」

 

キュインキュイン!と独特な音を発しながら右に左に縦横無尽にジャンプする二人のサイクロン。

サイクロンの全身はあらゆる場所から風を取り込めるようになっている。

つまり体が風車なのだ。

いかに風と一つになれるか、いかに風を吹かせられるか。

同じ力、同じ絶対値を持つ者同士の戦いはどうしても拮抗する。

勝負を最も早く決めるには不意打ちを当ててからの持久戦か一撃必殺の撃ち合いに勝つしかない。

 

「死ねぇえええええ!」

 

先に動いたのはサイクロンドーパントだ。

風のエネルギーを纏った拳を繰り出してくる。

 

「む!」

 

<CYCLONE MAXIMUM DRIVE>

 

仮面ライダーサイクロンもすかさず必殺技を発動した。

右手の手刀に風の力が収束される。

 

「ライダーチョップ!」

 

繰り出された手刀はパンチよりも早く鋭い。

サイクロンにはW程のパワーは無い。

つまりパンチよりスピードと鋭さを併せ持つ刺突がベストなのだ。

戦闘をほぼ全て操った怪人にのみ任せていたドーパントと何があろうと街の涙を拭うために文字通り二心同体でWとして戦い続けてきたフィリップ。

最後の最後で勝負を分けたのは経験だった。

サイクロンドーパントの右肩を貫く。

 

「この、クッソォオオオオ!」

 

仮面ライダーサイクロンを捕まえたままサイクロンドーパントは身体中から爆風を起こして目くらましにすると人混みの中に消えた。

 

「やられた。使用者があれだけ低身長なら人混みに逃げられたら追えない。」

 

変身を解除したフィリップはため息とともに思案した。

彼は逐一翔太郎から報告を受けており、

怪人屋のターゲットになり得る人間をある程度推理していた。

しかしその条件に一夏は合わない。

 

(だとすれば怪人屋の狙いは極めて個人的な因縁。という訳か。)

 

「おーい!園咲来人!」

 

さっきロストドライバーを投げ渡した四人がかけてくる。

 

「すまないね、逃してしまったよ。」

 

「別にいいさ。捕まえた時にこれでもかってほどギッシギシに締め上げて落とし前つけさせれりゃ万事OKだよ。」

 

「アンドリューあんた、師団長に拾われてなかったらFBIにそうされていた癖によく言うわね?」

 

「ヒトノコトイエナイ。」

 

「それはテメェもだろアキツネ!

つーかうちの組織身元がはっきりしてる奴なんてお前とお前の妹とボスぐらいだろ?ヘッドは年齢不詳だし。」

 

「深く聞かないでおくよ。ただ、このロストドライバーはどこから?」

 

「安心しなさい。アメリカ政府が財団Xが実験用にとっといた奴を押収した物よ。ざっと調べた結果、毒素のフィルターはちゃんと動いてるわ。」

 

「ま、ヘッドはまた女権の屑どもに喧嘩売った形になるけどな。」

 

「そんな事より早く網島ケイタ達と合流するぞ。

捜索の人手は一人でも欲しい。」

 

「よし来た。いくぞ!」

 

アンドリュー、アキツネ、ジュリエットはそれぞれのイメージカラーの銀、赤、青のカワサキZ1000に跨り、フィリップと洸一を後ろに乗せると発車した。

 

 

 

3

ベンタラから脱出した海之と簪はラビットハウスに向かった。

 

「みんな居るか!?」

 

勢いよくドアを開けて海之は中に入った。

その後ろに申し訳なさそうな沈みきった顔の簪が続く。

 

「手塚、更識!」

 

「どこ行ってたんだよ?あんなにボロボロだったのに。」

 

「………スピアーがベントされた。止められなかったよ。」

 

ケイタにスピアーのデッキを渡す海之。

 

「占いが当たったってこと?」

 

「また運命を変えられなかったよ。」

 

「トルクがやったのか?」

 

「…半分は。トドメを刺したのは紫の蛇のライダー。

ごめんケイタ君。私騙されて、あなたに酷いことを。」

 

「いいよ。悪いのはトルクだ。簪さんのせいじゃ無い。」

 

「ああ。恐らく怪人屋の件もな。」

 

「怪人屋?」

 

唯一怪人屋についての情報を持ってなかった簪に説明を済ますとのライダー達は蓮に問いかけた。

 

「どうゆうことだい?レン・アキヤマ。」

 

「もし俺の邪推が正しければの話ですけど。」

 

「けどわざわざ本人の前で言うぐらいだ。何か確信があるんだろ?」

 

「はい。今から四十院に頼んで先輩方に確認します。」

 

「先輩方っていうとドーパントにされてた人達か?」

 

「ああ。更識。」

 

「何?」

 

「確認しなきゃわからないと言ったが俺は今回の件、

今の段階で90%確信してる。」

 

「?」

 

「だから正直に答えてくれ。更識。暗部の末裔。」

 

「!?………何でそれを?」

 

「アンカーも似たようなもんだからな。次はこっちの質問だ。」

 

その質問とその後に続いた推理はあまりに意外な、誰も予期していないものだった。

しかしケイタは信じたくなかったが妙に納得せざるを得なかった。

何があったか知らないが今までの蓮と今の蓮はどこか違う。

こんな簪の心を深く抉るようなブラフは使わない。

そんな確信と更識簪という少女の恵まれた環境が何よりの証明書だった。

 

「………捕まった後、どうなるの?」

 

「今回ばかりは女権の動き次第、としか言えない。」

 

「やろう。怪人屋は今日捕まえよう。

こんだけ怪しけりゃ蓮の早とちりだったとしてもやる価値はある。」

 

「でももし違ってたら!」

 

「一人容疑者がシロになるだけ。

まぁ、俺はそっちの方に期待してるが。」

 

「君らしいね翔太郎。」

 

「五月蝿えフィリップ。どっちにしろこの事件はIS学園の事件、言わばこいつらの街の事件だ。よその街の住人が口を出す問題じゃ無え。」

 

「どうする更識。あとはお前の返事次第だ。」

 

「私は………。」

 

「簪さん。どんな決断でも俺たちはそれを尊重するよ。」

 

「……。私は」

 

 

 

4

夜、IS学園の購買部からお菓子が山ほど入った紙袋を抱えた簪が出てきた。

チョコ系の甘いものからおかきに酢昆布などまで網羅してある。

 

「あれー?かんちゃん?」

 

「本音。」

 

「おひさーかんちゃん!」

 

「お菓子ならあげないよ。」

 

「えへへ。バレた?」

 

「………久しぶりだね。こんなふうに話すのも。」

 

「昔はけんけんやじゅっちー達とよく遊んだよね〜。」

 

簪と本音の実家、更識家と布仏家は日本の対暗部用暗部、

忍者を先祖に持つ一族の末裔で現在は本家の更識家に長らく使えてきた布仏家。

それから更識の分家の石橋家、布仏の分家の芝浦家を残すのみとなっている。簪は更識の次女として生まれ、年が近い本音や石橋家の跡継ぎの石橋健(いしばしけん)や芝浦家現当主の腹違いの弟の芝浦淳(しばうらじゅん)と共に幼少期を過ごしたのだ。

 

「また会いたいね、みんなに。四人だけで。」

 

「おー!いーね!そしたらみんなでゲームしたり!お菓子食べたり!」

 

「でもその前に私は償わなきゃ。」

 

「かんちゃん?何の話?」

 

簪の顔が一気に思いつめた、今にも泣きそうな顔になった。

 

「感動のお別れに涙が滝って奴だな。犯罪者。」

 

角の向こうから蓮とアンドリューが背後から一夏とジュリエットが現れる。

 

「え?何?どうゆう事?」

 

「更識簪。アンダーアンカー特別捜査権により、

お前を超常兵器不法所持の現行犯と未成年者掠奪、

及び人身売買の容疑で現行犯逮捕する!」

 

手錠を持ったアンドリューが簪の前に立つ。

 

「…自首、てことにも出来るけど?」

 

ゆっくりと首を振る簪。

 

「あっそう。ならはい、ヒトナナサンマル、現行犯逮捕。」

 

ガチャリと手錠を嵌め、内ポケットからガイアメモリを取り出し起動する。

 

<CYCLONE>

 

「間違いないな。」

 

「よし、連行するぞ。」

 

躊躇いながらもついていく簪。

 

「オラもっと早く歩け!」

 

簪の髪を掴み腹パンするアンドリュー。

 

「かんちゃん!やめろぉ!」

 

「邪魔すんなノロマ!」

 

止めに入った本音の顔面を蹴るアンドリュー。

 

「あっ!」

 

「やりすぎよ幾ら何でも!」

 

反対側の女子二人が非難の声を浴びせる。

 

「だそうだがアンドリュー?」

 

「いーんすよボス。

こんなヤクに人身売買やるかたわらちまちまちまちま殺戮兵器をせっせと作ってるようなクズとその金魚の糞。

こんぐらいが丁度いいっすよ!」

 

「ふざけんなよ。」

 

ドスのきいた声がした。

あまりの気迫に全員が黙った。

視線はただ一人、布仏本音に注がれる。

 

「金魚の糞?それはあいつらじゃん?

かんちゃんは何が何でも一人で打鉄弐式を完成させなきゃいけないだよ。

それなのにどいつもこいつもどいつもこいつも!

かんちゃんの邪魔ばっかして!」

 

「だからって無理矢理ドーパントにするなんて!

そんなの間違ってる!本音は間違ってるよ!」

 

簪が泣きながら叫んだ。

 

「ううん。正しいよ。

かんちゃんは今手錠されたりそこのクズにお腹パンチされたりして混乱してるだけで、すぐのほほんさんが正しいって気付くよ。」

 

<CYCLONE>

 

怪人屋の正体は本音だった。

手にしたサイクロンドーパントメモリを使い変身する本音。

両腕から突風を出し簪以外の四人を吹き飛ばした。

 

「かんちゃん一緒に来て。

のほほんさんがいつまでも一人きりにさせてあげる。」

 

そしたらみんなが認めてくれるよ。ジリジリと近づく本音。

 

「黙ってろよクズ。お前は本音じゃない。

私の知ってる本音じゃない。」

 

簪がそう言った瞬間、ガラスが割れてサイクロンドーパントの大きな右白眼に弾丸がめり込んだ。

 

「██▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▃▃▄▅━━―――!!」

 

絶叫を上げて悶絶するサイクロンドーパント。

それもそうだろう。スコープ越しに見ていたスナイパー、

アキツネは独り言ちた。

 

「神経断裂弾、ドーパントニモ効果抜群ダネ。」

 

余りのダメージにメモリが排出される。

物陰に待機していたハイシーカーを着身したゼロワンが回収した。

 

「終わった?」

 

「うん。」

 

ベンタラからケイタが現れる。

もし四人が全滅した時に備えて待機していたのだ。

 

「お願い。本音を、法の元で裁いて。」

 

「…布仏本音。アンダーアンカー特別捜査権によりガイアメモリの不法所持と使用、殺人未遂の現行犯、そして人身売買の容疑で逮捕する。」

 

簪にはめていた手錠を外し本音にはめる。サイレンの音が近づいてくる。もう洸一が手を回していたらしい。

 

「簪さん平気?」

 

首を横に降る簪。その目からは涙がとめどなく流れていた。

 

「ならもう見なくても」

 

「駄目、見なきゃいけない。」

 

「…さあ、お前も罪を数えろ。」

 

「本音を止めれなかった。

本音は善意でやったのに私は感謝できない。

私は気付いてあげられなかった。

だから本音は、変身しちゃった。」

 

ケイタは四人を助け起こすと静かにその場を離れた。

左胸が痛い。翔太郎にフィリップはずっとこんな痛みを感じながら街の悪党と戦っていたのだろうか?

 

『渡さなくて良かったのか?

サイクロンドーパントが持っていたアドベントカード。』

 

「そういやあったな。色々ありすぎて見てなかったけど。」

 

どうせシールとか何枚も有るカードだろう。

そう思って仕舞い忘れていたリフレクオーツのカードと共に取り出すが、

そのカードはあまりにも予想外のものだった。

足が止まり、胸の痛みはモヤモヤした嫌な空気に変わった。

その青いカードに書かれていたのは

 

「SURVIVEだって?」

 

 

 

5

冷たい風の吹く甘兎の屋上、

海之はいつも占いで使う五円玉の穴から星を見上げた。

 

「…………。ついに来たか。ならばスピアーに続き、

次の墓標が立つ日も近いな。」

 

スティングのデッキから取り出された赤いカードに書かれていたのもまた

 

<SURVIVE>




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

箒「…アキヤマの部下は何であんな漢字の並びだけで危険極まりないと分かるものを持ってるんだ?」

ブラッド「彼の上司は、師団長は科警研の榎田博士と親友らしい。」

ケイタ「だからって限度があるだろ?」

千夜「私はクウガ見てないからイマイチ分からないけど、サバイブカードの方も驚いたね。」

ケイタ「なぜか俺に疾風で手塚さんに烈火だし。
てか暫くこんな思い調子でやってくの?」

ブラッド「いや次回は流石に番外編をやるらしい。
このままだと君たちが最悪のゴールデンウィークを過ごし切ってしまうからな。」

千夜「次回のinfinite DRAGON KNIGHTは、番外編その2 白いお姫様。
さあ、お前の罪を教えろ!」

ケイタ「!?」


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番外編その2 白いお姫様

ケイタ「さて、2回目の番外編なわけだけど……なんで今回だけカンペないの?」

蓮「作者なら今ようやく中古で見つけたケータイ捜査官7のブルーレイと人造人間キカイダー THE ANIMATIONのDVDを鑑賞中だ。カンペなんてもう頭にないさ。」

ケイタ「よくそんだけ買って金欠にならないな。兎に角今回は番外編という名前の導入回です!」

蓮「それでは、お楽しみあれ。」


1

「もしもし?」

 

蓮は朝一番で電話をかけた。

時刻は朝7時。向こうの時間は丁度19時。

まあいい時間だろう。

もっとも蓮は今まさに電話をかけようとしている相手ならたとえ真夜中だろうと叩き起こすが。

 

『もしもしレン?アンドリュー達とは会えた?』

 

「ええ。本当によく働いてくれましたよ。

ポリー・ナポリターノアメリカ海兵隊IS師団長、

又の名を馬鹿クズの極みの淫乱バイ女!!」

 

『ええ!?なんで怒ってるのよ!?』

 

「当たり前です!国防の要の専用IS持ちを上に無断で日本に行かせるとか何考えてんですか!

狩野刑事に口止めできなかったら国際問題になってましたよ!?

しかも本人は言ってませんでしたけど、

布仏の件の捜査を翔太郎先生とフィリップ先生に依頼したのあんたでしょ?」

 

『わ、私はお気に入りの部下を助けたくってぇ、ぐすん。』

 

「嘘泣きしないでください。

てかあんたの場合自分の命狙ってる奴さえ部下なら等しくお気に入りでしょ?」

 

『へへへへ、バレた?』

 

ポリーは基本的にだらし無く色狂いで間違いなくアラフィフなのに19歳とか言い張ってるヤバイ人だがこうゆう所だけは、

人間としては間違いなく最悪寄りの最悪にカテゴライズされるが上司としては蓮もアンドリュー達も尊敬している。

 

「それで、約束の賞与七倍の件どうなりました?」

 

『ぐっ!忘れたかと思ってたのに。』

 

「金の事は忘れませんよ。

ナイトメアのメモリを回収するまでに用意しといてくださいね。では。」

 

溜息をつきながらベットに腰を下ろす。

怪人屋騒動のおかげで最終日の今日以外ゆっくりできる日がない。

 

(しかも事件の余韻が抜けきらない。)

 

少しでも気を楽にしようと部屋に備え付けの冷蔵庫からお気に入りのシャンメリーを取り出して瓶ごと飲む。

爽やかな甘みがが口の中に広がった。

そしてまた溜息結局慌ただしい連休だったと再び溜息をついた時ドアがノックされた。

 

「? 開いてるぞ。」

 

「おはよ、蓮。」

 

入ってきたのはケイタだ。

休日のケイタにしては早起きで驚く。

 

「どうした?なんか急用でも入ったか?」

 

「そうなんだよ。少しで良いから金を貸してくんない?」

 

すぐ返すから。と手を合わせるケイタ。

 

「いいけどなんに使うんだ?」

 

シャンメリーをもう一口含む。蓮はすぐに後悔した。

 

「デート。」

 

「ブフッゥウ!…………ゴフッ!ゴッ!ゲホッ!…はぁっ!?」

 

 

 

2

話はまあ俺が、網島ケイタが寝てる時まで遡る。

俺はゴールデンウィーク最終日ぐらい惰眠を貪ると決意し熟睡していた。

昨日カーテンをちゃんと閉めれてなかったせいか日差しが少し入ってきて半分起きちゃったけどもうちょい微睡んでようと思って体を動かした時だった。

何か柔らかいものが手に当たったんだ。

抱き枕を抱いた覚えはないし、

ドアは閉まってるからティッピーが入って来るわけがない。

じゃあなんだ?と思って布団をめくってみたら一夏がうずくまって寝てたんだ。

…………いやちょっと待て蓮、手錠と拳銃は必要ない!

サードもグラインダーを着信するな!

 

『お前のような奴に逮捕状も処刑台も辞世の句も必要ありません。』

 

「煩い強姦魔。顔良し、スタイル良し、性格良し、妹属性、主婦属性ありで、その上脈アリの幼馴染に唾つけとかないなんて一応このssの原作って事にしてるラノベの主人公ぐらいなんだよ。」

 

メタ発言はやめろ!

そりゃ確かに俺も健全な男子高校生な訳だし興味はあるさ!

一夏のことも憎からず思ってるし、まあ、なんだ。

本人となるとなんか違うけど一夏みたいな女子がタイプさ。

けど一夏の保護者は一応千冬さんだぞ?

もしそうゆう行為に及ぼうものならかはあの人に股間どころか下半身を消しとばされるぞ?

それにベットの中に潜り込まれるのも8回目だし。

 

『四年の間に7回もあったんですか?』

 

「完全に脈アリだろ。」

 

いや、一夏は甘えん坊なだけだよ。ただ、

 

「ん………。おはよ、寝坊助さん。」

 

普段しっかりしてる分、我慢してる分緩んだ時の反動がヤバいだけで。

 

「ッッッッ!…ホッ。(良かったブラはしてるから見えない)お、おう。おはよう一夏。」

 

「ねぇさあケイタ?」

 

「な、何?」

 

「ケイタは言うことあるよね?」

 

「言うこと?」

 

「考え無しに飛び出したよね真夜中に。

心配したんだよ?」

 

「う。」

 

「私徹夜でゼロワンやハイシーカーと探したんだよ?」

 

「ぐ。」

 

「しかも私が走り回ってる間に理世さんの可愛い後輩と

イイコトしてたとか。」

 

「してない。泊まったけどラインは超えてない。」

 

「と、に、か、く!ケイタには責任を取って貰います!」

 

「責任?」

 

「それはね。」

 

 

 

3

『それがデートというわけですか。』

 

「しかもただのデートじゃなくて、

天ノ川学園高校の制服で来いって。」

 

天ノ川学園高校とは、

もしケイタにIS適性が無かったら通っていたはずの学校で、

ケイタ達は知る由もないが二人の熱い仮面ライダーを輩出した学校でもある。

 

「何故また私服じゃないんだ?」

 

『なんでも一夏は制服デートがしたいけどIS学園の制服じゃ目立つから。と』

 

「で、そんなギャルゲのイベントみたいな事のために金を貸せと?」

 

「ちょっとでいいんで!」

 

「………。一万だけだぞ?」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 

4

一時間後、駅前の広場に青いブレザーにストライプ柄のネクタイ。

それから黒いチェック柄のズボンのケイタの姿があった。

一応変装のつもりか黒縁のスクエアフレームの伊達眼鏡をかけている。

 

「いたいた!天高の制服目立つしすぐ見つかったわね!」

 

「……。帰っていいか?」

 

ゆったりとした長袖にジーパン姿の鈴音と白いシャツにデニム姿の蓮の姿もちょうどケイタの死角にあった。

二人ともケイタのように変装のつもりか鈴音は髪を結ばずに下ろしたままどっかのトレジャーハンターが十年ぐらい前にかぶっていたのによく似た帽子をかぶり、蓮はファイブゼロワン事件の頃と同じツンツンヘアーに戻している。

 

「帰っちゃダメ!あんたは知らないでしょうけどね、

一夏とケイタは見てるこっちがイライラするぐらいイチャイチャのラブラブの癖に今まで一線を超えなかったのよ!

そのせいで二人揃ってエイセクシャルなんじゃないかって、

どこまで行っても一つ屋根の下で暮らしてたせいでブラコン、シスコン止まりか!って思うぐらいに!

その二人がいま制服デートよ制服デート!

見届けないとダメよこれは!

それにもし尾行がバレてもあんたと遊びに来てるって言えばか不味くはならないでしょ!」

 

「聞けば聞くほど俺関係なくね!?」

 

《貧乏くじ引きましたね》

 

(黙れサード不意打ちでデッキ越しに話しかけるな)

 

蓮は今本日二度目の後悔をしていた。

鈴音のお見舞いに行った時にうっかり二人が制服デートだと口を滑らせてしまったのだ。

そこからの行動は早かった。

電光石火の速さで蓮の財布を搔っ払い病院から脱走した鈴音は一番近くのユ○クロで変装用の服を追いかけてきた蓮の分まで一式揃えるとダッシュで駅まで来たのだ。

 

(俺の安らかな休日は何処へやら。)

 

《夏休みまでお預けですね。》

 

(煩い頭が痛くなる。)

 

《しかし、このまま尾行を続けて良いものでしょうか?

レン様一人なら兎も角、鈴音様ははっきり言って足手纏いでは?》

 

(言い出しっぺは俺じゃなくて鳳だからな!

まあ確かにはじめての探偵ごっこではしゃいじゃいるが鳳はどっちかと言えば二人のデートを応援している。

騒ぎすぎないように見張ってりゃ問題ないだろ。

問題は背後の奴らだ。)

 

《ですね。シーカーからの映像によれば

……箒様とセシリア様に一夏様のお兄様です。》

 

(織斑のやつと億歩譲って篠ノ之はわかるがオルコットまで何してるんだ?)

 

《……。レン様、あなた本気で言ってますか?》

 

(何がだ?》

 

《…まあ、あなたは一途な方ですからね。》

 

「あ、一夏来た。移動するっぽい。行こ?」

 

不意に鈴音に手を取られる。

二人を見失わないように早足で歩いた。

 

(ま、退屈だけは無さそうだ。)

 

《ですね。》

 

 

 

5

「ケイタお待たせ!」

 

階段の方から半袖のワイシャツに灰色のベストと赤いリボンに黒いチェックがらのスカートの一夏が来た。

どこから用意したのか鞄まで持ってる。

 

「結構待った?」

 

ふわりと右腕に絡まりながら上目遣いで見てくる一夏に一瞬くらっと来るケイタ。

なんとか顔が少し赤くなるぐらいで済んだ。

おそらく視線をやれば女子だらけのIS学園に放り込まれ耐性をつけて無ければ顔が茹で蛸のようになっていただろう。

 

「い、いや、俺も今さっき来たところ。」

 

「ふふふ。わかってるね。」

 

「? 何が?」

 

「なんでもない!それより早く行こ!

ケイタの好きそうなとこばっかだから!」

 

ケイタの手を引き心底楽しそうに歩く一夏。

この状態、ケイタが勝手にプリンセスモードと呼ぶ状態に一度なれば一夏は羞恥心のたがが外れ蠱惑的色気たっぷりのグイグイ来る系ワガママ女子に変身してしまうのだ。

 

《我に帰って苦しみ悶える一夏を慰めるまでが君の仕事だな。》

 

(言われなくとも、もう8回目だ。)

 

 

 

6

「なあ、セシリア。」

 

「なんですのー?」

 

「あれ、手を繋いでるよな。」

 

一夏とケイタを見ながら言う箒。

 

「そうですわねー。」

 

ふふふふ。と薄ら笑いを浮かべながら蓮と鈴音を見るセシリア。

二人とも見てる方向は違えどその目は同じようにハイライトが消えている、

死んだ魚類のような目だ。

 

「そうか、幻覚でも何でもなく、

あれは現実なのかな!良し!殺そう!」

 

どこから取り出したのか箒は日本刀を、

セシリアはドラグノフ狙撃銃を構える。

 

「ま、まてよ!箒もセシリアもどうしたって言うんだよ!?」

 

「三春、あれがなんだかわかるか?」

 

「一夏とケイタのことか?二人で遊びにって感じだろ?」

 

「それを世間一般では何というかご存知で?」

 

「遊びに行く以外なんかあるかよ?」

 

「……。では、若い同じ年頃の非常に仲の良い二人がショッピングなどを楽しむことはなんと言いますか?」

 

「デートか?」

 

「そうゆう事です。」

 

「?」

 

今だにポカンとしている三春を全く考慮せず二人は追跡を続けた。

 

(おのれ特徴なしのムッツリ助平め!

一夏にあんな格好をさせるとは!

待っていろ一夏!

必ず決定的瞬間を抑えてその男に誅罰を与えてやる!

ついでに秋山も!)

 

甘えん坊の一夏というものを全く知らない箒にはケイタの方が付き合わされてる側だという発想は無いようだ。

いつも通りの偏愛とすら呼べそうな執着を遺憾なく発揮している。

その強さはもし蓮や簪あたりが知ったらバイ疑惑を拡散されるレベルで酷かった。

セシリアも五十歩百歩だ。

クラス代表決定戦でプライドとか諸々を打ち砕かれたセシリアは蓮というはじめて出会った男に魅せられた。

どこか冷めてるようで対峙した時に感じた熱さは本物だった。

そんな掴み所のなさ、謎さにセシリアは引かれた。

故に自分の見たことのない蓮を引き出している鈴音に嫉妬を感じていた。

 

「鈴音さん。必ず貴女の心臓(ハート)とレンさんの(ハート)に風穴を開けて差し上げますわ。それはもう蓮根の様に。」

 

ふふふふふふ。と薄ら笑いを浮かべるセシリアに流石に三春も引いている。

 

(俺のIS特訓は何処へやら。)

 

前回もISの体の動きを教えてもらうはずが箒にそもそも剣道がなってないと言われてケイタとの試合まで剣道の練習しか出来なかったのだ。

まあ、ISの操縦を習った所でケイタには勝てたかどうか微妙だが。

今回も敵情視察とか言って貴重な練習日を削って二人のストーキングに付き合わされている彼はある意味被害者だ。

 

(ま、鈴の奴を叩きのめせるヒントが少しでもあればいいんだけど。)

 

渋々三春は二人を追いかけた。

 

 

 

7

ケイタと一夏は博物館に辿りていた。

今は洋画の特設展示をやっているらしい。

ケイタは昔から博物館や美術館が好きだった。

多種多様な宝物が展示されている館内を練り歩くとまるで宝箱の中を探検してる気分になれるからだ。

 

「ここのレストランのアイスパフェが美味しいんだって。」

 

アイスもケイタの好きな物だ。

どれくらい好きかと言えば昔小学校時作文で将来の夢はコンビニのケースのアイス全部買い占めるか、17アイスを自販機ごと買うことと書いて怒られたぐらいに好きだ。

因みにその夢はまだ諦めていない。

 

「早速アイスを「見てからお昼にしてその時にね。」……アイスを先「見てからお昼にしてその時にね。」……アイス「見てからお昼にしてその時にね。」…分かったよ。」

 

それを少し離れた所から蓮と鈴音は尾行を続けていた。

 

「で、どうだい迷探偵鳳?

あんたの見立てだとこれからどうなる?」

 

「一説によれば芸術品の鑑賞は潜在的な興奮を高めると言われている。

そしてこの博物館は美術品から蝶などの虫や星についてなども展示されてる。

全部見ようと思ったら夕方までかかるわ。

けど、この博物館の最上階にはレストランがある。

つまりお昼はそこで食べれるから一日中いても問題ないわ!」

 

「つまり?」

 

「1日かけて美術品の1日世界旅行を堪能した二人は駅前のそうゆうホテルで愛を確かめ合い「もういい。頭ウルトラハッピーなお前に聞いた俺が馬鹿だった。帰るぞ。」

なんでよ!これからが面白いんじゃん!」

 

「あの二人がそこまで行ける訳ないだろ。

仮に行けたとしてもラブホやカラオケでヤるんなら壁越しの声さえ聞こえないだろ?

そんなんエロ同人誌の導入部分しか読めない様なののどこが面白いんだ。

そんなもんよりこの前ヤフオクで落札した今日届く予定のレア物のCDの方がよっぽど面白い。」

 

「な、な、な、なんて例えよ!

てかなんで知ってるのよ!その……え、え…………。」

 

「無理矢理上司に読まされたんだよ。

他の奴はどうか知らないけど押しキャラが陵辱されてるとこ見て喜ぶ神経が俺には分からん。」

 

「あ、あんた人前でよくそんな事ペラペラ言えるわね!

てかなんのキャラよそれ!」

 

「キュアパイン。」

 

「えぇ?あんたプリキュアとか見るの?」

 

「上司に無理矢理見せられたんだよ。上映会とか言って。」

 

「それでハマってんじゃん。」

 

「上映会の前日、疲れてたから半分寝てたら居残りだとか言われて『好きなキャラ選べ。』って今まで見た事ない様な真剣な顔で言われてキャラデザで選んだんだよ。そしたらなぜか翌朝まで語り尽くされた。」

 

おかげでなりたくも無かったフレプリ博士にはなれたが。

と複雑な笑みを浮かべる蓮。

 

「さて、無事二人を見失った事だし帰るか。」

 

「あ、本当じゃん!あんた秋山計ったわね!」

 

一人で博物館に突撃していく鈴音を見送ると蓮は振り返った。

予想通り箒と三春は鈴音を追って博物館に。

セシリアは真っ直ぐこっちに来た。

 

「あら、レンさん。御機嫌よう。奇遇ですわね。」

 

「成る程分かった。」

 

「?レンさん?一体何が分かったと「お前らがあんな下手くそな尾行で俺を欺けると思ってた事だ。」な!い、いつから気付いて!」

 

「駅前広場からだ。」

 

「そ、そんなとこから………。」

 

「あんだけ殺意をダダ漏れにさせといて面と向かわないと気付けないのなんて男の方の織斑ぐらいだ。で、何の用だ?まさか告白とか?」

 

冗談めかして言う蓮。

しかし真っ赤になって俯き、次顔を上げた時には真剣も真剣な顔になっているセシリアを、みてすぐ真顔になった。

 

「はい。あの時わたくしを否定したその時から、お慕いしておりました。」

 

「………。そうか、その気持ちには応えられそうにない。」

 

「ッ!…理由を、お聞きしても?」

 

「お前を心から愛せる自信がないし、

俺はあまり他人を信用出来る性分じゃないし、

ただ女友達に尾行ごっこを付き合わされていただけで殺意を抱いてくる奴を異性として意識できるか?と言われれば微妙だ。」

 

それと後エリーのやつに惚れた弱みだ。

最後になんて事のない様に、取ってつけた様に呟いた。

一瞬茶化してるのか?と怒ったセシリアだが蓮の自分で自分にびっくりだ。

というような顔を見て直ぐに怒りが収まった。

 

「…まあ、そうゆう訳だ。諦めないのは勝手だが、

色々責任負いかねる。」

 

「そう、ですか。」

 

目尻を抑えてセシリアはかけて行った。

幸い見てる人はあまり居なかったらしい。

蓮はセシリアが走り去ったのと反対方向に歩いた。

する必要のなくなったツンツンヘアーを元の髪型に戻す。

帰って着替えよう。

ここから歩くとなるとラビットハウスまでえらい時間がかかるが仕方ない。

 

《レン様もようやく素直になられましたね。

気の毒ですが、セシリア様に感謝です。》

 

(……サード。俺はエリーを助けるためなら黒幕だろうと誰だろうと、ケイタ達でも殺す。)

 

《結果あなたやエリー様、他の方々が不幸になっても?》

 

(どうせ初めから自己満足だ。)

 

《ならせめて死ぬ気でその自己満足を通してください。

それだけでもしなければ貴方はなんのために人を殺してまでそう願い続けたか、分かり無くなります。》

 

(無論だ。それに今は気持ち的には、エリーのやつにあいつらがバカやってるとこ見せて心の底から呆れさせてやりたい気分だ。)

 

《そのいきです。》

 

しかしオルコットには悪い事をしたな、とも蓮は思った。

容姿は兎も角、性格的には好感が持てるし、

諦めの悪い奴は相手してて飽きない。

だから、また、否まだ来るだろう。

 

(さて、最終的にどうオルコットに俺を諦めさせるかだな。)

 

 

 

8

蓮の言う通りセシリアは蓮を諦めていなかった。

 

(諦めませんわ。

どれだけディスアドバンテージがあろうと、

決定的敗北を突きつけられるまで、なんとしても諦めませんわ。)

 

セシリアは不屈だった。

そうでなければ両親が列車の事故で死んだ後、

遺産を縁戚に騙し取られまいとIS操縦や勉学に励み全てとはいかなかったが守りきった。

自分は強い女に産まれたのだから。

あの強い母の娘なのだから。

婿養子故、母に下手に出ていた父を見て育ったせいか、

セシリアの中では男=卑屈みたいなイメージがあった。

IS学園に入学する少し前、男が転入してくると聞いた時も、

所詮素人、プロの自分が手取り足取り教えてやろう。

むしろ自分の方から手を揉みながら平身低頭で懇願してくる筈、とすら思っていた。

しかし蓋を開けて驚いた。

最初は見栄を張ってカッコつけてるだけかと思ったが、

自分の対峙した蓮は奇をてらったスタイルで勝ちを奪いに来た。

身体を痛めつけ心を揺さぶり、

自分の前に立つ相手を親の仇が如く殺し尽くす為だけに徹底的に倒す。

まさにそれは戦う姿。そんな蓮に心を惹かれた。

勿論その後見たケイタや三春にも驚かされたが心にきたのは蓮の姿だけだった。

 

(わたくしは、母様の娘としてでもオルコット家の当主としてでもなく、

セシリア・オルコットととして貴方をものにしてみせますわ!)

 

涙はもうなかった。次に流す事があるとすれば、

それはきっと決着がつく時。

果たしてそれはどんな涙か分からないが、

それでもきっと後悔だけはないだろう。

奇妙な確信を胸にセシリアは顔を上げた。

 

 

 

9

一方アメリカではIS師団長、ポリー・ナポリターノは

なんとか蓮に賞与七倍を諦めさせる方法を考えていた。

 

(どうしよう………レンに下手な言い訳しようものならジャパニーズニンジャの魔法みたいな動きでいつのまにか壁と熱烈にキスする羽目になるし、

かといって賞与七倍はいくらなんでも無理だわ。)

 

溜息をつきながら頭を抱える。

ポリーは、人百倍部下思いで義に熱く、

いざ戦闘となればまだISのない時代に

『奴とその部下を足止めするには三個師団が犠牲になる』

と言わしめた「黒い龍のポリー」の異名を持つ間違いなく米軍最強の一角なのだが酒や美男美女に弱く、

色狂いでサボり上手な世間一般で言うダメ人間だなのだ。

それもかなり重度の。

その上彼女は金の塩梅が何より苦手で今までも3回ほど破産しかけてアキツネやジュリエットに泣きついているのだ。

それをいいことに蓮に報酬をカサ増しされて上に怒られて減給されたのも一度や二度ではない。

次やったら間違いなく今年のボーナスは無しだ。

 

「どうしたものかしら?」

 

「あら、お悩み見たいね師団長?」

 

「どうせボスに報酬のことでヘソ曲げられたんだろ?

本当金に関しちゃあんた程あてにできない奴も居ねえよな。」

 

「ハリエットにアンドリュー。お疲れ様。

流石は我がIS師団が誇る破壊部隊の斬り込み隊長のツートップ。

予定より早いわ。」

 

「ええ。アキツネも寄越してくれたらもう半日早く終わったんだけど。」

 

「仕方ねーだろ。あいつだって忙しいんだ。」

 

注文のデータだ。そう言ってポリーのデスクにデータを置くアンドリュー。

 

「ありがとう。今日はもう上がっていいわ。」

 

「おう。」

 

「待ってアンドリュー。あなたはそれでいいの?」

 

「何がだ?」

 

「私はいい加減欲しいの。織斑千冬を殺す許可が。」

 

姉のジュリエットによく似た猫目が鋭くポリーを見据える。

 

「忘れてないよねポリーさん。

私達があなたやレン少佐に従ってるのはその為だけ。

あのクソ女がのうのうと呼吸してるだけで虫酸が走ってるの。

そろそろいいよね。」

 

パキパキと背中にハリエット専用IS、アラクネプロトタイプ改カーマインタランチュラを部分展開し、8本のレーザーアームをポリーに向ける。

 

「駄目よまだ。」

 

パン!一発の銃声の後にアームの一番外側の関節が力を失いうな垂れた。

いつ展開したのか、ポリーの左一の腕には黒い禍々しい形のISが展開され、

レミントンに似た散弾銃、ヘルドラゴン・ショットが握られている。

 

(噂にゃ聞いてたがとんでもねえチートだな。

ヘッドのIS、ブラックヘルドラゴン。

ジェット推進で自由に動かせる弾丸を八発同時に精密コントロールするとか流石米軍のサイボーグ技術の結晶だぜ。)

 

「冗談よ。それより早くデータを見て。

それならレン少佐も機嫌なおしてくれると思うから。」

 

部分展開を解除しアンドリューの手を引くハリエット。

 

「この後暇?デートでも行く?」

 

「暇だけど行かねー。

オメエは身元まともな癖して腹ん中まるで見えねえんだよ。

おっかねえ。」

 

「酷いなぁ、私あなたのことまあまあ本気なんだよ?」

 

「本気にまあまあってなんだよ?訳わかんねえ。」

 

いちゃついてくるハリエットを引き剥がそうとするアンドリューを見送りながらポリーはパソコンに二人が逃亡しようとした研究者が持っていたデータを見る。

 

「嘘でしょ……こんな悍ましい代物を量産しようとしていたの?

こんなもんが世界に出た日には第三次大戦よ!?

しかもこの計画の名前……。」

 

ポリーは絶句した。が、直ぐにいつもの不敵な笑みを取り戻した。

 

「……いえ、何も悲観する必要はないか。

これは間違いなく織斑千冬のアキレス腱。

なら後は専用の矢をこしらえるだけね。」

 

楽しみだわあなたの断末魔。

デスクに置いた織斑千冬の写真に新たな傷を入れながら不敵に笑い続けた。

 

 

 

10

「はぁ……。」

 

ウィンドウ越しに綺麗な白いサマードレスを見ながら彼女、天々座理世は溜息をついた。

 

(いや、何考えてる理世。こんな可愛いの私に似合う訳ないだろ。)

 

この前マグカップ専門店で秋山に会った時に見た智乃の友達の髪の長い子なら兎も角。

そう思って振りかぶると洋服屋の前を通り過ぎた。

時刻は3時前、何処かでお茶でもして帰るかな?

そう思ってふと近くの店に視線をやる。

 

(? あの眼鏡の男何処かで………網島?)

 

声をかけようと近づいたが、誰かと一緒に居る。

黒い長い髪の子だ。確か智乃の友達の一夏といったか。

 

(あ、食べさせ合いっこしてる…………いいな。

僕もやりたいな。って!何を考えてる!

ふ、封印してた一人称が!駄目だ駄目だ。

ここに居ては余計なことばかり考えてしまう。)

 

思い切り首を振ってから一目の無いところに移動した。

 

「分かってるだろう、キャラじゃ無いし、柄じゃ無い。」

 

鏡に映った自分に言い聞かせる。

二年前蓮に言われた言葉が頭を過ぎった。

 

「黙ってろ男女。あんたにどうこう言われる筋合いないんだよ。

俺の母親、いや父親のつもりか?

同性だからっていつまでも風呂一緒に入る訳じゃないんだよしつこい。」

 

突き放すように冷たく言い放たれた言霊は今も理世の胸に巣食っていた。

 

「父親じゃないよ。僕だって女の子だよ?」

 

「そうだね。ならそうあればいいさ。」

 

突然後ろから首をホールドされる。

 

(な!何処から!?後ろは開かない窓しかないのに!?)

 

「君はストイックだね。気張らないで肩の力を抜くといい。」

 

理世のスカートのポケットにシールのアドベントカードを忍ばせると自分のポケットから一本のガイアメモリを取り出す。

 

<NIGHTMARE>

 

響き渡るガイアウィスパー。

首に異様に熱い何かが入り込むのを感じながら理世の体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

 

そしてそれに代わるように網のような顔の横に仮面のような顔を付けた左右非対称な、兎に角不気味な白い怪人、ナイトメアドーパントが現れた。

 

「う、うぅーうう、ううううう?」

 

何かを唸りながらベンタラに消えていくナイトメアドーパント。

 

「ナイトメア、悪夢。万人にとってはそうでも、

彼女にとってはどうかな?網島君、秋山君、織斑ちゃん。」

 

ことを起こした張本人。

間明蔵人は相変わらず笑みを貼り付けたままその場を離れた。




ケイタ「さて、相変わらずギャグ寄りシリアスだった今回ですが多分次回も相変わらずです!」

蓮「次回、infinite DRAGON KNIGHT!」

ケイタ「四人目の男子?」

シャルル「シャルル・デュノアです。」

ラウラ「私は認めん。貴様などが教官の妹などと!」

蓮「何様だ?」

一夏「新しいライダー?」

海之「ああ、こいつは荒れるな。」

心愛「理世ちゃんが目覚めないよ!」

ナイトメアドーパント「みんな、どこ?」

楯無「生徒会に入らない?」

虚「妹がご迷惑を」

ケイタ「あんたのせいじゃないよ。」

間明「君は裏切り者だよ、ドリュー君。」

ドリュー「ハメやがったな!」

簪「私は前に進むだけ。」

蓮「次回、Fake number Four.」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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二章 IS編
Fake number Four


ケイタ「さて、前回までのあらすじ、と行きたいとこですが、まずはお知らせがあります。」

一夏「この度このssのタグを二つ、変更させて頂きました。」

ゼロワン『仮面ライダー龍騎のタグをWやレストランΑGITΩなどの要素と合わせて一括りに平成仮面ライダーに、インフィニットストラトスのタグを消してキカイダー02 のタグを入れさせて貰った。』

ケイタ「え?じゃあこっからIS要素なし?」

ゼロワン『な訳があるか。原作の所にある一つだけで十分と判断したんだ。」

ケイタ「なるほど。」

一夏「さて今回はお待ちかねの三春兄対鈴のIS対決です!それではどうぞ!」


1

コチ、コチ。と時計が進む音がやけに遅く感じる。

このまま腕時計とにらめっこしていてもキリがないと思いケイタは顔を上げた。

時刻は放課後。

ゴールデンウィーク明け初日の今日はクラス代表によるトーナメントバトル一回戦、1組代表の三春と2組代表鈴音の試合の日だ。

ケイタと蓮はあまり人気の無い一番上の席に座っている。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

右隣に座った蓮が聞いてきた。

オペラグラスを首に下げ、肘掛に置いた魔法瓶のグラスにはキンキンに冷えたサイダー。

右手にはビックサイズのポテチの袋と完全に楽しむモードに入っている。

 

「パイロット練度的に鈴。」

 

「ま、妥当なとこだよな。」

 

パリ、とポテチを一口食べる蓮。

 

「で、織斑と鳳の勝敗も気になるが、

お前と一夏の勝敗はどうだったんだ?」

 

「うーん…多分ドロー。」

 

「ドロー?やっぱ一夏が途中で我に返ったとかか?」

 

「ならまだ良かったよ。

今回は本当に最後の最後で駄目だったんだ。」

 

 

 

2

午前中を博物館で過ごし、昼食を済ませた二人は街に出て服屋を巡った。

一夏が夏物を買いたいと言ったのでそれに付き合わされた形だ。

 

「俺も二、三着気に入ったシャツあったから

買ってその後お茶して公園ぶらぶらしたりして過ごしたんだ。」

 

「割と渋ってたくせにノリいいなお前。」

 

「ま、久々に一夏と二人ってのも嬉しかったしね。」

 

最後に夕飯はお好み焼きを食べた。

一夏は3枚食べてケイタは4枚食べた。

 

「お好み焼きってなんで丸いんだろうね?」

 

「そりゃ頭打っちゃわないよいにだよ。」

 

「そうそう、お好み焼きは案外硬いから頭打つと大変ってそんなわけあるか。」

 

クスクスと楽しそうに笑う一夏。急に真面目な顔になり

 

「ねえ、ケイタ。」

 

「何?」

 

「楽しかった?」

 

今までどこか余裕な感じの蠱惑的な笑みを浮かべていた一夏に不安そうな表情が浮かんでいる。

 

「そりゃもちろん楽しかったさ。

久しぶりに一夏と二人だし、

昔みたいで嬉しかったし、それに……」

 

今度はケイタが悪戯坊主のようなちょっと意地悪そうな顔になり

 

「こんなに綺麗なお嬢様と二人きりなんだ。

羨ましがられる謂れはあっても俺には嫌がる理由が無いよ。」

 

「ッ!……ふふっ。翔兄からの教えが漸く役に立った?」

 

「おまっ!そうゆう事は黙ってろよ!」

 

「全く、私が言ってなくてもカッコついてないよ?」

 

す、とケイタの顔に手を回し唇を奪う一夏、

にゅっと口の中でしたとしたが絡み合う。

ケイタは頭と身体がフリーズして動けなくなった。

 

「……………………一夏さん、今のなんスカ?」

 

「前歯についてた青海苔取ってあげただけ。」

 

「ファーストキスで?」

 

「え?」

 

「ファーストキスで?」

 

「え……あ、、、。」

 

 

 

3

「ファーストキスは、お好み焼きソースの味でした。」

 

「網島、今程俺はお前を織斑千冬にさし出そうと思った日はない。」

 

「なんで呼び方元に戻ってんだよ!

てか千冬さんにチクんのだけはマジでやめろよ?

例えどんな事があろうと地の果て海の底に居ようと最長一瞬でその日が俺の命日になるから!」

 

なんとか蓮を説得し、

さっきATMから降ろしてきた一万円を渡し、

取り敢えず落ち着かせた。

 

「お、始まったな。」

 

アリーナを見るとほぼ同タイミングで白式を鎧った三春と中国の第三世代型機甲龍(シェンロン)を鎧った鈴音が出て来た。

 

「セブンって読唇術使える?」

 

『? 出来なくは無いが今必要か?」

 

「赤龍のカメラ越しに二人の会話を聞きたいし。」

 

『なるほど!ISのカメラなら出来るな。面白い。』

 

「別に試合見るだけなら要らなくないか?」

 

「分かってないな蓮。

字幕ない無音映画とか詰まんないの極みだぜ。」

 

「俺より楽しんでるじゃねえか。」

 

左腕にのみ赤龍を部分展開しセブンがカメラに接続する。

 

『えーと、、、てたわよ三春。

あんたを合法的にボコボコに倒し潰すこの日をね。』

 

二本の大型ブレード双天牙月を一つに連結させる鈴。

 

『昔からなんなんだよ鈴。俺がお前に何かしたか?』

 

雪片弐型を構える三春。

 

『なんも!ただ一夏やケイタにはしたわよね?

ってそうなのか?』

 

「?別に。達郎や弾や数馬も普通だったし。

てかセブンちゃんと今唇見てる?」

 

『しまった!えー、、かにボールぶつけたり自転車の車輪に枝投げたりパチンコで石を投げたり女子にやっていいと思ってんの?って待て待て待て!こいつ実の妹にそんな事してたのか!?』

 

「え!?あれ全部三春だったの!?

ん?ちょ、ちょっと待て蓮!

直ぐに銃を構えるな!どこに行くつもりだ!」

 

「ケイタ、何も心配する事はない。俺はただ親友(おまえ)親友(いちか)の為に人類のゴミを掃除しに行くだけだ。」

 

「三春を殺した所で問題は解決しないし千冬さんに殺されるだけだから!」

 

『気にする必要はありませんケイタ様。

今のレン様とわたくしには……負ける気がしねえ!』

 

《サードの口がここまで悪く……相当来てるな。》

 

「そうだケイタ気にするこたあ無い。

あんな屑を放っておく奴はお前らの姉じゃ無い。

代わりに俺がお前らの兄弟になるから一切問題ない。」

 

「いや、悪いけど蓮お前マジでしっかりしろ?らしくないぞ?」

 

「止めるなブラザー。俺は兄妹(おまえら)のためを思って殺るんだ。」

 

「さっきから字がおかしい!

蓮お前翔兄に会ってからなんか翔兄がカッコつけすぎて滑っちゃう時みたいになるときあるぞ?」

 

ピストルを持った手を捕まえながらなんとか蓮を説得する。

しかし蓮の腹の虫は収まりそうにない。

 

(くっそ!このままだと蓮が殺人犯になっちまう!

なんか予想外のトラブルでも起きねえかなチキショウ!)

 

そんな不謹慎な、よくよく考えたら蓮が殺人犯になるよりヤバいことを願った瞬間だった。

轟音と共にアリーナの天井とシールドが破られ6体のヒトガタが舞い降りた。

胸部、頭部、一の腕は強化ガラスに覆われており、中の機械が丸見えで、二の腕、腿の部分に至っては骨格の様な剥き出し状態のままだ。

しかし身体が全く覆われていない訳ではなく口、両手、膝より下は強化炭素性のアーマーとナノスキンに覆われている。

しかし何より目を引くのはそのカラーリングだ。

 

「サード。」

 

『はい。』

 

「目撃されたエリアが風都近郊だったことから俺が前にネットで見つけたキカイダー01の目撃情報はWのヒートトリガーの見間違いって結論に至ったよな?」

 

『はい。』

 

「それが何で本当にキカイダー01が出てくるんだ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

右半身が赤、左半身が青で染め上げられているのだ。

まごう事なきキカイダー01。

お互い母が石ノ森章太郎先生の大ファンである影響で幼少期によく親しんだケイタと蓮には直ぐにわかった。

 

「どうすんだよあのゼロワン六人衆?」

 

「まあ、まず間違いなく敵みたいだな。」

 

6体中1体の額からビームが放たれる。

避ける鈴と零落白夜で受ける三春。

二又に裂かれたビームがアリーナの壁を穿ち抜いた。

エネルギーが切れたのか膝から崩れ落ちるゼロワン。

チャンスだ!とばかりに突っ込む三春。

しかし残りの内2体が三春に飛びかかった。

 

「成る程、一応格闘術はインプットされてるみたいだな。」

 

「セブン、あそこに助けに入れると思うか?」

 

『…………ざっとアリーナ内をスキャンしてみたが、

シールド出力がアップされて全てのドアがロックされている。

カメラもクラックされて録画不能になってるし、

侵入できる場所があるとすればさっきあの6体が突き破ってきた穴ぐらいだ。』

 

『カメラが役に立っていない今なら変身してもバレないと思いますが?』

 

出入り口の方を見ると生徒が開かないドアに殺到している。

しばらくはこっちに注意が向く事はないだろう。

 

「セブン、変身したままIS使うって出来るか?」

 

『エアークラフトぐらいなら、

アーマーを展開しなければこっちで誤魔化せる。』

 

「よし、十分。行こう蓮!」

 

「俺は鳳しか助けないぞ?」

 

「でも俺は手伝ってくれるだろ?」

 

「お前には敵わないな。」

 

笑い合うと蓮は持ってたサイダーを石の地面に落とし、

即席の鏡を作る。

 

「カメンライダー!」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

姿を変えた二人はベンタラにダイブした。

 

 

 

2

双天牙月と雪片弐型が火花を散らしてぶつかり合う。

薙刀と思わせてからの二刀流、二刀流と思わせての薙刀。

何とか受け流してる三春だが、そろそろ防御を崩せるだろう。

 

(殺す!試合とかあたしの将来とかどうでもいい!

こいつだけはここで殺す!)

 

怒りで逆に頭が冷えてはいる。

これ程の怒りは鈴音にとって人生で二度目の経験だった。

一度目は小学五年生の時、まだ日本語が上手くなくて友達が全然いなかった時だ。

昨日と同じ様に一人で家に帰っていると目の前にバスケットボールが転がってきた。

 

「おーい!取ってくれ!」

 

自分と同い年ぐらいの男の子が四人と女の子が一人かけてきた。

 

「あれ?もしかして同じクラスの鳳さん?」

 

「ふぁん?もしかして噂の中国からの転校生?」

 

「そうだ、この後暇?

今ちょうど五人で男子四人で女子一人なんだ。

お前いたら三対三なんだ。どうだい?」

 

頭にバンドを付けた少年、五反田弾(ごたんだだん)がボールを差し出しながら提案してきた。

他の四人も御手洗数馬(みたらいかずま)を筆頭に乗り気の様だ。

 

「わ、ワタシ、、チャント話セナイ、。」

 

「別に気にしないよ。パスとかシュートとかわかりゃいいし。」

 

気怠げな少年、ケイタがフォローする。

 

「でも…………。」

 

「あーもー焦れったいな!兎に角見てけよ!絶対楽しいから!」

 

灰色のパーカーの少年、大江達郎(おおえたつろう)が鈴音の手を引いた。

 

「マッテ!ワタシ、絶対メイワク、、。」

 

「迷惑なら最初から誘ったりするかよ。

それにケイタも一夏も弾も初めはいけ好かない奴だと思ったし今でもたまにめんどくさく思うけど案外いい奴らだし、今日だけでもいてみろよ。」

 

「おい達郎聞こえてるぞ!」

 

「誰がめんどくさく奴だ!」

 

「お、やんのかお前ら!いーぜ、新入りにお手本見せてやろうや!」

 

喧嘩腰の口調とは裏腹にやけに説明口調で本当に鈴音に説明するためだけのバスケだった。

鈴音は面食らった。そして見ていてとても楽しかった。

 

「いつもこんな感じなんだ。」

 

横にきた一夏が微笑みながら言った。

 

「ワタシモ、イイノ?」

 

「勿論!この街の風は良いものも悪いものも拒まないよ。

特に鳳さんみたいな良い人はね!」

 

「リン。」

 

「?」

 

「リンって、呼ンデ。」

 

「うん。よろしくね鈴。」

 

それからは毎日が楽しかった。

何時も異様に日が暮れるのが早く感じて、

早く明日が来ないものかと待ち遠しかった。

そんな毎日でも、本当に一回だけ、嫌な事があった。

一夏の水筒が盗まれた事があったのだ。

犯人探し、とまではいかなかったがそれでもしばらく嫌な空気が流れた。

それから暫くたったある日、偶々鈴音は聞いてしまったのだ。

誰もいない廊下で三春が呟いた。

 

「よしよし、これで漸くあいつらも守ることの大切さを理解したはずだ。」

 

瞬間、全てを察した鈴音は三春に殴りかかった。

小学生有るまじき鬼の形相で殴って殴って殴りかかった。

しかし三春は満足気に笑いながらこう言った。

 

「そうだ、守る事は大事なんだ。よくわかったろ?」

 

もう一発渾身のパンチをお見舞いしてその場を後にした。

そして直ぐに後悔した。

あいつを殴ったところで何の解決にもなってない。

自分一人じゃ無理だと思った鈴音は達郎に相談した。

 

「なるほど、よく話してくれた鈴。俺に任せろ。」

 

その次の日の夜、達郎は道場での練習を終え、

裏の森で素振りをする三春を背後から木製バットで殴りボコボコにした。

 

「もしお前の姉貴にチクったり一夏を怪我させてみろ。

数馬や弾。ケイタや鈴と五人がかりでお前を殺してやる。」

 

勿論、達郎とて考えが無しにこんな事はしない。

全員で一夏を守るという意思を見せればこれ以上干渉して来ないと判断したからだ。

実際その日から三春が6人に干渉してくる事はなかったが、

それでも鈴音の心は随分苦しめられた。

 

「ぶっ飛べ!」

 

空間圧縮技術を使った中距離砲、龍咆を左腕に装着する。

まさかこんな日が来るとは思っていなかったが、

今はただこの幸運に感謝した。

今日ここで骨の一片だって残してやらない。

骨の髄まで苦痛を味あわせてから引導を渡してやる!

今まさに不可視の砲弾を放とうとした時だった。

 

『鳳!三春!聞こえるか!?そこから退避しろ!上から何か来る!』

 

無線越しに千冬の声を聞いた次の瞬間、

何かが天井を突き破りアリーナに降り立った。

煙が晴れ、その姿があらわになる。

 

「ゼロワン!?」

 

「なんだよ鈴?知ってんのか?」

 

三春に嫌味の一つでも添えて説明してやろうとした時、

ちょうど鈴の正面にいたゼロワンの額から一筋の光の束が放たれた。

左に飛んで回避する鈴。三春を見る。

寸前で零落白夜を発動してビームを斬ったらしく無事だ。

 

「チッ!サン・ライズ・ビーム……ほんとにゼロワンね。」

 

そう独りごちたのと同時に一番近くに立っていたゼロワンが飛びついて来た。足を内側に絡ませ、両腕を使い首を絞めてくる。

 

「こっの!グッ!」

 

なんとか引き剥がそうとするが中々手が届かず首を絞めるゼロワンの力は益々強くなる。

そうこうしてるうちにさっきビームを撃ったゼロワンともう一体のゼロワンがサン・ライズ・ビームの構えを取る。

 

(まずいこのままじゃ!)

 

死ぬ。そう思った時不意に何処からか電子音が聞こえた。

 

<FINAL VENT>

 

鈴音を飛び越え現れた白虎のビースト、デストワイルダーは両腕についた細く鋭い爪でほぼ同時に胸部を貫き、そのまま引きづり回した。

走る先にはデストクローを装備した仮面ライダーアックスが待ち構えている。

デストワイルダーは全身を使った強烈な回転投げを繰り出し、二体のゼロワンをアックスめがけて放り投げる。

すれ違いざまに凍結エネルギーのこもった爪で切り裂いた。

傷口からエネルギーを受け、サン・ライズ・ビームを制御していたシステムを凍結された二体のゼロワンは余剰エネルギーを放出出来なくなり、落下と共に火柱を上げながら爆裂四散した。

 

「はっ!」

 

爆散した二体を振り返らずにデストクローを捨て、デストバイザーをブーメランのように投擲する。

鈴音にくっついていたゼロワンの左腕を切り落としアックスの手に戻った。

 

「この!」

 

ロックを外しゼロワンをアックスの方にぶん投げる鈴音。

意図を察したアックスの強烈な左フックがゼロワンの右顔面捉えた。

特殊カーボンの表面が砕け、顔から赤い装甲が残らず落ちた。

 

(次でトドメ、ッ!)

 

右カメラアイが露出したゼロワンがアックスを見据える。

その姿が神経断裂弾を右複眼に受けたサイクロンドーパントに、布仏本音に重なった。

ほんの一瞬アックスが止まったのをゼロワンは見逃さなかった。

右手首を取り外し内蔵されたサブマシンガンを発射した。

特殊エネルギー弾、太陽のカケラがアックスの鎧を抉った。

 

「ガァアアアー!」

 

仰向けに吹っ飛ばされるアックス。

すぐさまゼロワンはサン・ライズ・ビームの構えを取る。

 

「こっち向け!そこの顔面真っ青!」

 

背後から双天牙月を構えた鈴音が向かってきたすかさずビームを鈴音に向けて放つゼロワン。

瞬間鈴音は双天牙月をゼロワンの頭の上ギリギリに向けて投擲し、

背部装甲を解除しながらゼロワンの股をすり抜けた。

 

「背中が、お留守よ!」

 

ジャンプしてキャッチした双天牙月がゼロワンの胴体を袈裟斬りに斬りつけた。

地面とぐちゃぐちゃにミックスされたゼロワンが黒煙を上げて機能を停止した。

 

「あんた大丈夫?」

 

「…………。」

 

「ちょっと?」

 

「!……うん。平気。じゃ。」

 

<FREEZE VENT>

 

鈴音の制止を無視して作った氷の鏡を使いベンタラにダイブした。

 

 

3

ベンタラに突入したドラゴンナイトとウイングナイトはすぐさま来たのとは別の鏡を地球に繋げた。

 

「蓮、ベンタラ来たはいいけどどうやってアリーナに入る?」

 

「変身してる時はウイングナイトって呼ぶかISの個人通信(プライベートチャンネル)以外で話しかけるな。

あと出口に関しては問題ない。

光の反射によっちゃ鏡になりそうなボディしてる奴が6体もいるだろ?」

 

「ゼロワンの背中から出るのか?」

 

「逆にそこぐらいしか出れそうな場所が無い。

50、50の賭けだがそれしか無いぞ。」

 

「……なら仕方ねーか、シャッ!行くぜ!」

 

鏡に、地球側にダイブする。

どうやら賭けに勝ったらしい。

ドラゴンナイトの目にゼロワンと戦うアックスと鈴音の姿が見えた。

どうやら一足先に来ていたらしい。

 

《我々も負けてられんな。後ろだ。》

 

振り返ると三春と戦っていたゼロワンのうち一体がこちらに向かって来ていた。

 

(来やがれ安物のバッタもんが!

お前なんか本家本元イチローどころか俺の足元にも及ばねえ!)

 

繰り出された拳を掻い潜り当身を浴びせるふらつきながら吹っ飛ばされたゼロワン。

追撃すべくドラゴンナイトはハイキックの構えを取る。

しかしAIは一手先を読む。直ぐに顔面をガードするだろう。

 

(セブン!エアークラフト、前進!)

 

《任せろ!》

 

一気に距離を詰め、ハイキックをかかと落としに変えた。

流石に予想できなかったらしい。

脳天から強化ガラスを叩き割られ、そこから太陽電池と電子頭脳を圧縮されたゼロワンはエラー音を鳴らしながら背中から倒れた。

 

(よし!見たかセブン!スーパーファインプレーだぜ!)

 

《この調子で行くぞ!》

 

蓮と三春の方を見る。

最初にダメージを受けていた三春はやや不利だが、

蓮の方は互角に戦えているようだ。

 

(加勢するなら三春か。)

 

《本気で言ってるのか?》

 

(何が?)

 

《気付いてなかったとはいえ鳳鈴音が激怒するような事を一夏や君たちに散々したような奴だぞ?君に助ける理由があるのか?》

 

(……正直言って一生許す気は無いけど、

街の悪党を裁くのは神様でも法律でもなくて、

街を愛する人間だ。

一方的な言われない私刑と言われりゃそれまでだけど俺は仮面ライダーとしてじゃなくて網島ケイタとして三春を裁く。だからこの場は助ける。

どんなに文句言っても付き合って貰うぜセブン。)

 

《全く、君というやつはめんどくさいな。なら手短かに済まそう。》

 

「シャッ!」

 

ファイティングスタイルを取ると助走をつけて三春と戦っていたゼロワンに飛び蹴りを食らわせた。

「な!新手か!?」

雪片弐型を構える三春。

せっかく助けてやったのに薄情な奴だ。

喋れないから仕方ないが。

 

<SWORD VENT>

 

斬りかかってくる三春をドラグセイバーで受ける、受ける、受ける。

 

「クッソ!ケイタみたいな臆病な戦いしやがって!」

 

《そりゃあ当人だからな。》

 

(たく、猪武者が。)

 

ガムシャラなのは三春の良いところだが戦闘においてはどうもマイナスに働くことが多い気がする。

 

(よし、このまま適当にいなして)

 

ゼロワンを倒してさっさと帰ろう。

そう思った時だった。

 

『そんなんでどうする三春!

男ならその程度の敵倒せなくてどうする!』

 

アリーナのスピーカーから箒の声が聞こえる。

ゼロワンが放送席を見上げた。

 

(まずい!)

 

「行かせないぞ!」

 

しかしそれに気付いていない三春はドラゴンナイトの行く手を阻んだ。

 

(こいつ!相手してる場合じゃ無いのに!)

 

《本当に間の悪い男だなこいつは!》

 

もうゼロワンがサン・ライズ・ビームを放つのに何秒もない。

 

ドラグレッターは攻撃力だけならサン・ライズ・ビームを上回るだろうが照射され続ければ撃破される恐れがある。

だとすれば可能性があるのは本音の持っていたサバイブのカードと一度も使ったことの無いリフレクオーツのカードしかない。

 

(仕方ない、なる様になれ!セブン!筋力アシスト!)

 

《ドラグセイバーを投げるのか?

そんな物であのビームは止まらんぞ!》

 

(いいから!やらなきゃあの人が死ぬ!)

 

わかってる!とセブンが返事したのと同時にドラゴンナイトは自身の筋力が上がったのを感じた。

斬りかかる雪片弐型をドラグセイバーで弾くと、

パッとそこにテーブルがあるかの様に捨てると全力で固めた拳を胃にめり込ませた。

流石に効いたらしい。バックステップを取りバイザーのカバーを開けカードをベントインする。

 

<REFLEQUARTZ VENT>

 

バッ!と手をかざした先でドラゴンナイトのライダーズクレストの形をしたエネルギーの結晶が現れ、サン・ライズ・ビームを吸収、反射し、ゼロワンの胴体をごっそり消しとばした。

 

(なんだあれ、、強。)

 

《恐らくビーム、レーザー系限定だろうがそれを差し引いても強力だな。》

 

転がってきたゼロワンの頭部を拾い上げる。

 

(ごめんな。悪いのはお前を動かしてた奴らなのに。)

 

《我々と違いって、いや逆だな。

我々を例外に機械は命令者の言う事はなんでも聞く。善悪問わずな。》

 

不意に千冬が授業のどこかでISを兵器と断言したのを思い出した。

 

(じゃあなんで篠ノ之博士はISコアに人格なんて残したんだ?)

 

涙の跡の様になっていたオイルを拭って近くにあった右手と一緒に置いた。

 

(帰るか。)

 

《ああ。》

 

ウイングナイトの方を見る。

間も無く決着が着くだろう。

彼と対峙するゼロワンは右手をもがれ、

頭の右半分を破られ、

両足の特殊カーボン製アーマーもヒビだらけだ。

 

「安らかに眠れ。仮想生命未満の木偶人形。」

 

<FINAL VENT>

 

ウイングナイトの影の中から出現したダークウイングが背中に合体し、あらかじめ装備していたウイングランサーを構えて、跳ぶ。

黒い繭と化したウイングナイトがゼロワンを貫く。

飛翔斬が決まった。あちこちにパーツが飛び散る。

 

「れ、、ウイングナイト!」

 

お互い小さく頷きあうと、ゼロワンの残骸から流れ出たオイルの水溜りにダイブした。

 

「チクショウ。」

 

残された三春は殴られた腹を抑えながら水溜りを覗き込んだ。

 

「出てこいよ。」

 

水溜りを踏む。転がって来たゼロワンの頭部と、

どこまでも無機質な、温かみのカケラもない目と目が合った。

 

「戻ってこいよ!戻ってこい怪しい奴らが!

俺が、俺が皆を守るんだ!だから来い!

かかって来い逃げるなァ!」

 

地団駄を踏み、ゼロワンの頭をたちまち金属塊に変える。

それでも三春の気は治らなかった。

 

「面は覚えたぞ仮面野郎。必ず思い知らせてやる。

守ることを!」

 

その慟哭を氷の鏡を見つめる鈴音だけが聞いていた。

 

 

 

4

その夜、羽田空港国際線ターミナルに一人の少女が降り立った背丈は鈴音と同じぐらいだろうか。

不似合いな軍服に身を包み長い銀髪をなびかせている。

 

(ようやく日本か。まさか一ヶ月も遅れてとは。

米国海兵隊IS師団破壊部隊め、

レン・アキヤマを筆頭にエキスパート揃いという噂は本当だったか。)

 

だがその借りもこれより必ず返す。

眼帯に隠された左目と赤みがかった右目が怨嗟と闘志で燃えていた。

 

(織斑三春、織斑一夏、レン・アキヤマ。

首を洗って待っていろ。この私が必ず倒す!)




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「ほぼキカイダー02じゃん。」

ゼロワン『仮面ライダーキカイが出てから一人でどハマりだったからな。』

ケイタ「なお、次回からちゃんと元に戻るんでご安心を。」

(ED ゴーゴー・キカイダー 人造人間キカイダー)

一夏「………本当に?」

ケイタ「多分。」

ゼロワン『じ、次回。Fake number Four その2』

一夏「これで決まりだ。」


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Fake number Four その2

ケイタ「えー、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTですが。」

ゼロワンA(遺影)「」

ゼロワンB(遺影)「」

ゼロワンC(遺影)「」

ゼロワンD(遺影)「」

ゼロワンE(遺影)「」

ゼロワンF(遺影)「」

心愛「英文字ふってないと誰が誰だかわかんないね。」

サード『我々と違い量産機ですから。」

心愛「てことはいつかこの後大量に空を覆い尽くす勢いでゼロワンの群れが」

ケイタ「やめろ!演技でもない事言うんじゃねえ!それではどうぞ!」

(OP Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

目覚まし時計のアラームに叩き起こされ、

簪はカーテンを開けた。

いつもは多少は自分の気分を前向きにさせてくれる太陽も今日に限っては自分を責め立ててる様に感じる。

兎に角、陰鬱な気分だ。

枕元にあったケータイを見る。

ロック画面には山の様なロランツィーネからの不在着信があったことが表示されている。

 

「何やってんだか。」

 

かなり不純な動機とはいえ心から心配してくれる人間を無視していつまでもベッドでぐだぐだしている自分が嫌になった。

 

「…………本音。」

 

もうこの世にはいない、生まれた時から近くに居た親友の名を呼ぶ。

ふと、たまたま昨日聞いてしまったケイタと蓮の会話がフラッシュバックした。

 

 

 

2

なんとか鈴音と共にゼロワンを倒した簪はベンタラを経由して地球に戻った。

さっき一夏の黒いケータイが言っていたことが本当なら今は学校中の監視カメラが使い物になってない筈だ。

思い切りカメラの真ん前に飛び出たが特に問題はない。

 

「よっと。たく、ここんとこ休む暇なしだな。」

 

「トラブルには事欠かない一年になりそうだ。」

 

反対側の廊下の窓からケイタと蓮が飛び出して来た。

さっき少しだけ見たが、自分より上手く立ち回れていた様であまり疲れているようではない。

 

「そうゆう事言うなよ蓮。俺は別にそこそこでいいんだから。」

 

「アドベントデッキやフォンブレイバーなんて持ち歩きながら、なんなら世界にたった3人しかいないIS男性操縦者のお前がよく言うな。

諦めろ。あの篠ノ之束(さいていさいあくのばか)の世界を巻き込んだトラブルに巻き込まれた時点で詰みだ。」

 

「クラスメイトの身内をこき下ろすなよ。」

 

そんな事を言いながらこちらの方に歩いてくる。

簪からも向かった。お互いの姿が見えた所で蓮のスマートフォンが鳴る。

島谷ひとみのDitaだ。

蓮のただでさえ怖い目付きが明らかに殺意を孕んだ物になり、

眉間にそれはそれは深いシワが刻まれる。

 

「失礼。もしもし?」

 

声色だけはいつも通りなのが余計に怖かった。

反対側の声はよく聞こえないが若い女性の様だ。

 

「…………じゃあ悪いニュースから。

………………いや知りませんよ。

てか何ドイツ軍に喧嘩売ってるんですか?

御礼参りと上からのお叱りがダブルで来ますよ?

…は?もう来てる?ふざけないで下さいよなんで関与してない事で怒られに帰んなきゃいけないんですか?

大人しくハリエットやアンドリュー達と怒られて下さい。

…………子供じゃないんですから。

ワガママ言わずに大人しくボーナスカットを甘んじて受け入れろ淫乱バイ女。切るぞ?………わかりゃいいんですよ。で、最悪なニュースって?」

 

しばらく黙って半分呆れ顔で聞いていた蓮だったが、

たちまちその表情が真剣そのものになる。

 

「なんであんたが知ってるのかとか色々言いたいことはありますけど、了解しました。

それの下手人、心当たりあります。

ええ、任しといてください。賞与七倍は忘れてませんから。」

 

通話を切ると蓮は小さな声で告げた

 

「更識、落ち着いて聞いてくれ。」

 

「え?うん。」

 

「どうしたんだよ蓮?さっきまでのアレが嘘みたいだぜ?」

 

「うるせえさっさと本題に入るぞ。単刀直入に言う。

布仏本音が殺された。」

 

「………………………え?」

 

「蓮、冗談でも怒るぞ?」

「ジョークに聞こえたか?」

 

3人の間に嫌な沈黙が流れる。

しかし直ぐに蓮は口を開いた。

 

「死亡推定時刻は深夜一時半から二時の間死因は発狂死。

常駐してた7人の女権が子飼いにしてた武装警官もだいたい同じぐらいの時間に殺害されていた。」

 

「いや、待って秋山君。発狂って?」

 

「恐らく薬物毒による疾患だと思われるキノコ状の吹き出物が全身に目以外隈無く出来ていたからそれに耐えきれなくてだろうな。

7人の武装警官のうち2人も同じ死に方をしてた。」

 

「……………………。」

 

「簪さん大丈夫?顔、真っ青だ。」

 

「いや、平気。早く本音を迎えに行かないと。」

 

霊柩車。と言いながらケータイを取り出す簪。

 

「必要ない。死体はもう骨カスも残さず燃やされた。」

 

「ッッッッ!それは、それは本音がドーパントだから!?」

 

簪が蓮の胸ぐらを掴む。

その顔には今まで見たことの無い憎悪の表情が貼りついている。

 

「伝染病が蔓延する恐れがあったからだ。

同じ毒に殺られたと思われる2人についても同じ対応がなされた。」

 

女権どもの話が正しけりゃな。と付け足し蓮は続けた。

 

「残りの5人はある意味先に言った3人より酷い。

うち1人は心臓をドリル状の剣のような物で貫かれたまま壁に固定された事による失血性ショック。

次の1人は頭を物凄い力で両側から鷲掴みにされて潰されて、

最後の1人は顔面を蹴り壊された事による窒息で死んでた。

これは俺の個人的な見解だが、こんな残虐かつ、

相手の心を抉るような手口を好む奴は、否仮面契約者は1人しかいない。」

 

「紫の、コブラのライダー!」

「仮面ライダーストライク。それが奴の名だ。」

「あいつが…………。」

 

一気に簪の心は死の恐怖に支配された。

今でもたまに夢に見る光景が、高らかに笑いながらドリル状の突撃剣を何度も自分に振り下ろす姿が脳裏に浮かぶ。

 

「おい、平気か?顔色悪いぞ?」

 

「………大丈夫。また。」

 

「おい更識!」

 

「簪さん!」

 

2人の制止の声を無視して簪は走った。

どこにでもいいから逃げたい。

前も見ないでがむしゃらに走った角のところから出てきた人にぶつかった。

 

「う、イタタ。すまない前をよく見ていなか、、簪じゃないか!」

 

「………ロランツィーネ。」

 

「ロランでいい。愛しい蕾よ。

どうしたんだい?悲しい事があったと見えるが?」

 

「関係ない。」

 

「関係なくはないさ、君から見てどうかは知らないが私はこれでも反省してるんだ。」

 

「……反省?」

 

「あぁ、君と初めて会った夜。

自分を抑えられずにスキンシップには激しすぎる行いをしてしまった。

警戒されるのも当然だ。

だが私だって誰彼構わずやるわけじゃ無い。

本気だ。だが、最後に君に選ばれなくとも本気で心配ぐらいする権利はあるさ。」

 

「………………ロラン。ごめん。」

 

 

 

3

それからずっと夕飯も食べずに部屋に篭っていたのだった。

相部屋だった本音はもういない為、

ルームメイトに迷惑はかからないのが唯一マシな事だ。

 

(いや、私だけ落ち込んでる訳にはいかない。

本音のお姉さん。虚さんなんかきっと私より辛いんだ。)

 

このままグダグダしてたって余計にネガティヴに考えるだけだ。

シャワーでも浴びよう。

そう思って昨日から着っぱなしだった制服を脱ぎ捨て一糸まとわぬ姿になるとシャワー室に入った。メガネを外して鏡を見る。

本当に酷い時は目の形以外ほぼ姉と同じこの顔にさえ嫌悪したが、

今はそうでもない。

 

「若様が美人なんじゃなくてお嬢が美人なんですよ。」

 

不意に石橋健に、もしかしたら自分の初恋かもしれない少年に昔言われた事を思い出した。

あの頃は家同士の関係で話しかけてきてるだけだと思って彼だけじゃなく本音や芝浦淳も拒絶していた。

 

(その後お世話は要らないって言ったら怒られたっけ?)

 

自然と笑みがこぼれた。あの頃の様に4人では集まれない。

けど、本音にガイアメモリを渡して狂わせた敵を倒すことは出来る。

 

(ゼイビアックスだろうと、ストライクだろうと!)

 

さっとシャワーを浴びてパン!と自分の頬を張る。

大丈夫。私は前を向く。

手早く着替えると学校の準備を始めた。

カバンに教科書やIS組み立てにいつも使ってるノートPCを突っ込み、最後にポストを確認する。

 

(なんかある?瓶?)

 

椿油だった。付いてた髪には『親愛なる簪へ。ロランより。』とオランダ語で書かれている。

 

「……………ありがとロラン。」

 

一夏辺りに使い方を教えてもらおう。

昨日と打って変わって思わず鼻歌でも歌いたくなる様な気分で簪は出かけた。

 

 

4

結局クラス代表トーナメントはどうなったかと言うと学園側が量産型01そのものを隠蔽したり、セキュリティシステムを見直したりする都合上、一回戦のみが行われた。

量産型01襲撃については生徒と教師両方に箝口令がしかれ世間に明るみになることはなかった。

 

「納得できねー。」

 

「そう言うな。いざとなったらフォンブレイバーでセキュリティシステム全てを破壊して混乱を起こし、

それに乗じてISを盗みに来る輩を隠れ蓑に盗み出しゃいいさ。」

 

『やけに計画が具体的だ。』

 

『アキヤマならやりかねんな。』

 

『レン様。くれぐれも実行なさらないでください。』

 

「前から思ってたけどレンって常識人の皮かぶった超の付く中核派だよね?」

 

「チュウカクハって?」

 

「保登、お前は俺の心配より自分の社会科の成績を心配した方がいい。」

 

いつも通りそんな話をしながら4人は教室に入った。

 

「なんかいつもより皆ソワソワしてるな。」

 

「あんな騒ぎがあったから。って理由にしちゃ表情が明るいな。」

 

「転校生とか?」

 

「そりゃ確かにのほほんさん抜けちゃったけどこの時期に?」

 

すると間も無く真耶と千冬が入って来た。

真耶は教壇に立ち、千冬が後ろで腕を組んでいる。

 

「おはようございます皆さん。

えー、ほとんどの人は風の噂で聞いていると思いますが、

本日から転校生がやって来ます!」

 

騒めく教室。蓮だけは嫌な顔をしていた。

 

(どうせ男性操縦者のデータ目的の企業パイロットだろ?)

 

なんて諦めというか、冷めていた。

しかし入って来た2人の姿を見て驚いた。

1人は身長150センチ程の小柄な長い銀髪の女だ。

身体運びから軍属と分かる。左目は眼帯で隠れていて分からないが赤い右目は射る様に鋭い。

 

しかし彼女より強烈だったのがもう1人だ。

制服改造がアバンギャルドだとか、

顔が凄まじくブサイクとかそういった理由などでは全くなく、ただ一点。

 

「男?」

 

「では、簡単な自己紹介を。」

 

「はい。フランスから来ました。シャルル・デュノアです。」

 

来るな。そう思った蓮は同じ轍は踏まないと耳を塞ぐ。

 

「きゃあああああああああああ!」

 

「男子!4人目の男子よ!」

 

「素敵!まさにブロンドの王子様だわ!」

 

「今年の夏は網シャルで決まりよ!」

 

「何言ってるのよ!シャル網よシャル網!」

 

「馬鹿ね!秋網こそ原点にして頂点!」

 

「俺はバイでもゲイでも無い!」

 

意外と多かった腐った奴らに怒鳴る蓮。

一方ケイタとシャルルは何を言ってるか分からない様でポカーン。としてしまっている。

 

「静かに!もう1人は終わってないぞ!」

 

千冬の一括で教室は水どころか氷を投げ込んだ様に静まり返った。

 

「ボーデヴィッヒ。自己紹介を。」

 

「はい教官。」

 

教官。とラウラは千冬のことを呼んだ。

第2回モンド・グロッソ一夏が誘拐された時にドイツ軍が千冬に一夏の居場所を教えその見返りとして一年間程ISの教官をさせていたという話は本当らしい。

 

「ドイツ軍シュヴァルツェ・ハーゼ所属。ラウラ・ボーデヴィッヒ。」

 

「………あの、それだけですか?」

 

「それだけです。」

 

「そ、そうですか。あ、一限目は第2アリーナでISの実習訓練ですので早く着替えて来てくださいね。」

 

真耶が言い終えると見計らったかの様にチャイムが鳴った。

一息つくと4人は立ち上がった。

 

「じゃ、俺たちの更衣室アリーナだから。」

 

「授業で会おう。」

 

そう言ってケイタと蓮は出ようとするが

 

「待て。レン・アキヤマ。」

 

ラウラが呼び止めた。

 

「なんだボーデヴィッヒ?長くなるなら場所を変えるぞ。」

 

「いや何、すぐ済む。ポリー・ナポリターノに伝えろ。

借りは耳を揃えて利子をつけて然るべき時に返す。とな。」

 

「………ああ。一字一句違わず伝えておいてやる。」

 

「それから網島ケイタ。」

 

「え?俺も?」

 

「貴様は、弱い。

私はお前の様な奴を見てると虫唾が走る。

向上心が無いなら周りがなんと言おうと早々にここから去ってあの無駄にデカイ風車の下で昼寝でもしてる事だ。」

 

「テメエ風都タワーを馬鹿にしたな眼帯チビ。」

 

「キレるとこそこかよ。」

 

「最後に織斑一夏。」

 

「え?私も?」

 

「ああ。むしろ貴様がメインだ。」

 

唐突にラウラは一夏の頬を思い切りビンタした。

 

「……え、えっと?」

 

「私は認めん。貴様やあの白式の男が教官の肉親など!」




ケイタ「というわけで作者が文化祭とソシャゲのイベントの所為でいつもの半分以下の今回でした。」

心愛「のほほんさんファンの皆様本当にごめんなさい!」

サード『にしても、ゼイビアックスもエグいことしますね。』

ケイタ「文才大したことないくせに殺し方だけ異様に凝ってるよな。」

心愛「次回は多分いつもと同じぐらいの長さで出すのでもうちょっと待ってて下さい!」

サード『次回、 Fake number Four その3!』

心愛「青春スイッチオン!」


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Fake number Four その3

ケイタ「さて!前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!と行きたいところだけど、セブン。あそこにいる死んだ目の子誰?」

謎の幼女「…………はぁ。」

セブン『UMP45だ。作者が新しく書き始めた小説、「(ゲーム本編に)救済なんかあらへんで!絶対に笑ってはいけないグリフィン指揮官養成所24時」の参加者の1人だ。』

ケイタ「こんな小さな子が!?大変だね〜。」

UMP45「頭を撫でるな!子供扱いするな!」

セブン『全く。今回はボーデヴィッヒの視点からスタートだ。
さてさてどうなる?』

(OP 果てなき希望 仮面ライダー龍騎)


1

ラウラ・ボーデヴィッヒは冷めていた。

IS学園、やはり破壊兵器であるISをアクセサリーと勘違いしてる奴らが多いようだ。

どいつもこいつも未だ到着しない男性操縦者に夢中なようだ。

 

(ふん。夢中になった所で付き合えるわけでも無かろうに。

色恋沙汰や愛なんかを持ち込む奴ほど弱い。

必要なのは向上心だけだ。

それだけが力を得る為に必要な感情。

それ以外の心などただの贅肉。

力こそが唯一無二の正義だ。)

 

力無いものは虐げられ力、ある者だけが美酒を味わう事を許される。

世界のルールだ。少なくともラウラは、否、ラウラ達はそうあれと育てられて来た。

なぜならラウラ達は「すいません遅れました!」

 

バタバタと走りながらケイタ、蓮、三春、シャルルの順にアリーナに入ってくる。

 

「遅い。2組との合同授業ゆえに遅れるなと言ったはずだ。

一応言い訳だけは聞いてやる。」

 

「野次馬を巻き損ねました。」

 

と三春。

 

「違います。兄の方の織斑が無理矢理デュノアの着替えを見ようとしたからです。」

 

一部の女子から黄色い悲鳴が上がる。

相変わらずシャルルはぽかん。としている。

 

「…………。アキヤマ、本当か?」

 

「嘘ついて俺に特はありません。」

 

「…………。ケイタ君。説明を。」

 

「多分三春は裸の付き合い的な意味で言ったんでしょうけど、ほら。蓮今朝のアレでちょっと神経質になってるみたいで。」

 

「そうか、いや、何。その……分かってくれるか?」

 

「はい。多分俺も一夏や可憐が鈴辺りと恋人繋ぎとかしてたら今みたいな反応しますんで。」

 

「なっ!い、い、い、一夏?」

 

「いや千冬姉泣きそうな顔でこっち見ないで!?

私にそっちの趣味ないよ!ないない!」

 

「織斑先生、ケイタのユーモアたっぷりの例え話ぐらいでシスコンとも親バカともつかない反応やめてくれますか?」

 

「え、えーいうるさい!

元はと言えばお前が誤解を招くような言い方をするのが悪いのだろう!

兎に角本日は初回の授業であるからまずは諸君らにどの程度のIS操縦を身につけてもらうか見てもらう!

オルコット、ファン。すぐに準備しろ。山田くん!」

 

千冬が右耳に付けたインカムを押しながら呼ぶ。

 

「あれ?山田くん?山田くん!」

 

しばらく経ったが返事がない様だ。

狼狽えながら何度か天井と生徒達を交互に見る。

 

「うわぁあああ!退いてください!皆さんんんんんん!」

 

右後方、誰も意識を向けていなかった方から叫び声が聞こえてきた。

専用機持ち全員がそれぞれのISを起動させ視覚補助をオンにする。

見えたのは量産型ISラファール・リヴァイブを鎧った真耶だ。

 

「なんで先生こっちに頭から突っ込んでくんの?」

 

「そりゃドジやって制御不能になったんだろ?」

 

サムライブレイド002を展開して柄の先に覇止を巻きつける。

 

「よしなら俺が!」

 

スラスターを展開して飛び出そうとする三春。

真耶を受け止めに行くつもりだろう。

 

「三春さん。悪い事は言いませんわ。

玉突き事故になりますわよ?」

 

「玉突き事故?」

 

三春がセシリアに気を取られた一瞬で蓮はサムライブレイドをカウボーイの縄投げの要領で投擲。

スラスターの一つに命中し、進度をずらす。

真耶は頭からアリーナの壁に激突した。

 

「痛たた、、すいません助かりましたアキヤマ君。

危うく皆さんをひき肉にする所でした。」

 

「オルコットと鳳には山田先生と戦ってもらう。」

 

「………。織斑先生?お言葉ですが、山田先生ですか?」

 

「私達どうしでなく?」

 

セシリアと鈴音の疑問はこの場にいる大半の人間の気持ちを代弁していた。

とてもじゃないが、生徒をついうっかりでひき肉にしかける人間がまともに想像できない。

 

「ふ、言ってろ。百聞は一見にしかずだ。」

 

そう言って何やらセシリアに耳打ちする千冬。

 

「鈴さん!わたくし達の超協力プレイ、

皆さんにとくと見ていただきましょう!」

 

「は、え?いや、私あんたと話すのも殆ど初めてなんだけど?」

 

「何を仰いますわたくしと鈴さんは親友でしょう?」

 

「あんた何言って「親友でしょ?」…………。いや、えっと。うん。」

 

鈴音を説得した?セシリアはスターライトmkⅢを、鈴音は双天牙月を展開して宙に浮く。

続いて真耶もショットガンを実体化させながら飛んだ。

 

「さて、デュノア。

初回の授業に遅刻したのに何もないのもなんだ。

今山田君の乗っているISについて解説しろ。」

 

「はい。あのISの名前は再誕の疾風(ラファール・リヴァイブ)

フランス、デュノア社が開発した第2世代型ISで、そのスペックは第3世代型初期に劣らなず現在配備されている量産ISの中では世界第3位のシェアを誇り、7カ国でライセンス生産され、12カ国で制式採用されています。

操縦しやすく汎用性が高いことそれにより操縦者を選ばないことと、多様性役割切り替えを両立していることがその理由です。

僕の専用機ラファール・リヴァイヴ・カスタムIIの原型で、大容量のパススロットを持つことから別名『飛翔する武器庫』の異名を持っています。」

 

「流石だな。遅刻の件は大目に見てやる。

今回だけだぞ?お、山田先生もそろそろか。」

 

千冬につられて空を仰ぐ一同。

シャルルの解説を聞いてる間にもう勝負は着きかけていた。

真耶の勝利で。理由はいくつかあるが、まずはISへの理解度。

セシリアと鈴音の自分のISへの理解度はそこまでではない。

せいぜい2、3年の付き合いだ。

しかし真耶はラファールが世に出た頃からラファールを使っておりその付き合いは実に六年ほどになる。

次にこれに伴う年季の差。そしてほぼ即席コンビのセシリアと鈴音はまるで連隊が取れていないこと。

さらに極め付けは、真耶は二人組の敵を潰すことに異様に長けていることだ。

可愛い花には毒があるとは言ったものだ。

セシリアと鈴音は土煙の柱を作りながら地面と再会した。

 

Awesome(すさまじいな)流石は元日本代表候補生。」

 

口笛を吹きながら呟く蓮。

 

「いやいや。所詮は代表候補生止まりですよ。」

 

「騙されませんよ?日本人は皆謙遜が過ぎるって知ってますから。

ほら、オルコット生きてるか?」

 

「うぅ、な、情けないところを見せてしまいましたわ。」

 

「相手が悪かったな。でもお前らもやるじゃないか。

山田先生の左足の見てみろ。」

 

蓮が指差したところを見ると深緑色の装甲の一部がはがれている。

 

「久しぶりのせいか少しながら不覚を取ったな。

さて、諸君!このように君達とIS学園の教師にはこれだけの差が有る。

しかし代表候補生達のように鍛えればそれに迫れる。

追い越すことも出来る。君達にはそこまで行ってもらう!

最終目標はそこだ!各班に分かれて訓練開始!」

 

今回はISの搭乗に関してだった。

量産機が七機用意され、それぞれに専用機持ちがアシストする形だ。

4番ゲートのすぐ下に位置する所に割り当てられたケイタはざっと周りを見回した。

 

(蓮の班は……セシリアさんと一緒にやってるのか。

まあまあスムーズに出来てるみたいだな。

鈴の所は、まあ普通か。

三春にデュノアのとこは、すげえ人気。

まあ2人とも顔良いしイケメン大正義ってやつか。

で、眼帯チビは………うわっ。凄え人気ない。

誰も近付こうとしてない。)

 

まあ、あんな視線だけで人を殺りそうな面してたら誰も近づかんわな。

蓮はあれ多分生まれつきだし。

と思考を辞めて集まった人たちを見る。

 

「えー、じゃ始めていきます。グラインダー出すんでそれを台にして乗ってくださーい。」

 

女子達は何やら俺ともっと密着できるんじゃないかとか期待してたみたいだが残念ながらケイタは効率を重視する人間。

気の利いたサプライズとかは特になく作業は恙無く進んでいった

 

「(時間的にも人数的にもそろそろ最後か)次の人!」

 

最後に来たのは丸メガネをかけた線の細い娘だ。

肌も白くなんだかロウソクみたいなイメージがある。

 

「じゃ、どうぞ。」

 

「………………ねぇ網島君。」

 

「何?」

 

「更衣室でさ、何があったの?」

 

「え?」

 

「さっき言ってたじゃない!

織斑君がデュノア君の身体を見ようとしたって!」

 

流石に何だ?と思いその子の顔を見ると目は血走り口は三日月型に釣り上がり息は荒い。

 

(こいつ腐ってやがる!)

 

IS学園に入ってからというもののそうゆう世界が身近になった気がする。

別に人の個性や趣味をどうこう言うつもりはないが自分がその対象にされることはあまり良い気分じゃない。

 

「多分あんたが期待してるような事はないよ?」

 

 

 

ー回想ー

 

ベンタラを経由して来たケイタと蓮はアリーナの男子トイレの鏡から地球に出た。

 

「今だけベンタラ様々だな。」

 

「俺なんか毎日だ。」

 

2人は入り口近くに誰もいない事を確認すると更衣室に向かった。

 

「アリーナ襲撃された後にしては警備がいつもと変わらない気が。」

 

「よくそこに気付いたな。

他の奴らは転校生に浮かれ放題だってのに。」

 

「ま、俺男興味ないし。」

 

「だろうな。」

 

「で、何で警備が強化されたりしない訳?」

 

「しないんじゃなくて出来ないんだ。

多分女権からの圧力でな。」

 

「何でさ?IS学園が狙われたんだぜ?

女権的にここやられたらマズイ所なんじゃないの?

亡国機業やSHADOW辺りの戦争屋とかこの気に乗じてIS強盗とかしそうじゃん?」

 

「だから襲撃そのものを箝口令まで使ってもみ消したんだ。

ISなんて物があるせいで感覚麻痺してるだろうが、

握り拳大の大きさの太陽電池が二足歩行ヒューマノイドに仮面ライダー級の機動力を出させられる訳ないだろ。」

 

「言われてみれば、そんなん作れそうなの篠ノ之博士ぐらいか。」

 

「ああ。難波重工や飛電インテリジェンスなんかが研究を続けてるらしいが実用段階じゃない。

投資企業のD&Pがなかなか慎重。ってのもあるが。

それと前にも言ったが女権の上層部は権利に取り憑かれている。

世界がひっくり返りでもしない限りISを超える存在を認めるなんてしないさ。

一度美味い汁吸った人間はそれに固執するって相場が決まってる。

個人的には亡国機業 やSHADOW辺りの戦争屋の差し金だろ。」

 

「なんつーか、まんま汚い大人の世界だな。」

 

そこで話は終わったがケイタは1人で考えた。

だとしたらあの量産型01をけしかけて来たのは誰、

あるいはどこの企業、組織だろう?

いくら篠ノ之束でも妹が死にかねないような事はしないだろうし、

自分が作ったISが兵器としての立場を無くすような事はそうそうしないだろう。

 

「ま、考えたってしょうがないか。」

 

昔からちまちま考えるのは面倒くさい。

善悪なんて見方の問題なんだから明らかに悪い奴らだけ許さなければ良い。

左翔太郎の背中を見てそう考える様になっていたケイタはある意味誰よりも大人だった。

 

「はぁはぁ。ケイタ、蓮。お前らのが先だったか。」

 

「おそかったな。」

 

「あんだけの人間に囲まれたら遅くもなるさ。

逆に2人はどうやって来たんだよ?」

 

「「鏡のイリュージョン。」」

 

「なんだそれ?よく知らないけど狡いぞ。」

 

そう言いながら三春は2人に続いてISスーツに着替え始めた。

 

「あれ?シャルルは着替えないのか?」

 

「え?あ、いや、先に着替えてて!」

 

「? なんだよそれ?早くしないと千冬姉にどやされるぞ!ほら!」

 

三春はシャルルの腕を引き自分の横に連れ行こうとしたがケイタがその手を捻り上げた。

 

「痛!何すん「こっち来い。」

 

捻ったままの手を無理矢理引っ張りながら蓮には目で合図を送る。

3人はアリーナの入り口前まで来た。

 

「なんだよケイタ!いきなり痛いじゃないか!」

 

「うるせえ今回は全面的にお前が悪い。」

 

「は?なんでだよ?」

 

「野郎が肌や裸を見られたく無い理由は三つしかない。

心は女、古傷、日焼けこのどれかだ。」

 

「お前は本当に遠慮がないからな。

そのうち相手の心を痛めつけるぞ?」

 

 

ー回想終了ー

 

「充分だわ。」

 

「何がだよ?」

 

「いえ、本当に充分よ。じゃ、またね。」

 

そう言うとメガネの生徒はISを降り去っていった。

 

 

 

2

授業は終わり昼休みになった。

着替えを終えたケイタと蓮は持って来ていた弁当箱を持って屋上に向かった。

 

「あ、居た。網島君、アキヤマ君!」

 

「デュノア。」

 

「シャルルでいいよ。2人は今からお昼?」

 

「ああ、屋上で一夏や心愛達と食べるつもりだ。」

 

「僕もいいかな?ほら、男子同士で親睦を深めたくて。」

 

「どうするケイタ?」

 

「ま、いんじゃない?1人ぐらいは。」

 

3人は屋上に向かった。

その間に何度か先輩方に誘われたがシャルルの紳士的で物腰柔らかな断り方に皆がうっとりしていた。

中には気絶した人さえ居た。

 

「どこで習うんだ?そんなテクニック。」

 

「お母さんが昔会った一曲10億ドルの天才バイオリニストに教えてもらった方法なんだって。」

 

「なんかどっかの農場でジャガイモ作ってそうな感じだなそいつ。」

 

屋上に出ると一夏、心愛の他にも海之、千夜、簪と5人が揃っていた。

 

「お疲れ。いつもより遅かったね。」

 

「デュノアが居るせいかいつもより話しかけてくる輩が多くてな。」

 

それぞれ弁当を広げて食べ始める。

 

「あれ?簪さんシャンプー変えた?

なんかいつもより髪サラサラだけど?」

 

「お!ケイタはやっぱ気付くね!」

 

「今日の簪ちゃんは椿油のおかげでサラサラのツヤツヤなのだ!」

 

簪の髪を背後から持ち上げる様に触る心愛。

青い髪はいつもより艶やかなせいか上等な糸の様に見える。

 

「ローランディフィルネィ辺りから貰ったのか?」

 

「ローランディ、、あぁ!あの4組のクラス代表の?」

 

「そうなの?」

 

「うん。」

 

「へぇ。レンよく分かったね。」

 

「知らないのか?オランダのローランディフィルネィと言えば女誑しで有名だぞ?

だが自分から贈り物、ってのは初めて聞くな。」

 

「なんか、本気っぽい。」

 

「更識さんもモテ期かな?」

 

「違う。」

 

「私の場合は幼稚園の時、千夜に紗路に雄一と親衛隊が出来てたが?」

 

「あ、あれはそういうのとは違うじゃん!」

 

「モテ期と言えばこの前チノちゃんがね!」

 

そこからは女子3人集まれば姦しいというやつでケイタや蓮にはちょっと取っつきにくい話題に、空気になっていく。

 

「いつもこんな感じなの?」

 

「いや、色々有って今日ようやくって感じ。」

 

「ふぅん?羨ましいな。僕あんま友達とか居なかったから。」

 

「デュノア社代表取締役の息子ってのも楽じゃないな。」

 

「え?デュノアってそうなの?」

 

「言うほど大した物じゃないよ。

父さんとの繋がりだって有って無い様なものだし。」

 

「お袋さんは何してるんだ?」

 

「…………僕が中学生の時に、病気で。」

 

「ッ!……………………デュノア。

俺を一発殴れ。失礼な詮索だった。」

 

「い、いやいいよ!もう受け入れたことだし!」

 

「いや、母親は男が、いや人が惚れた相手の次に大事にしなきゃいけない物だ。個人的には一発でも割に合わん。」

 

「蓮なんか最近こう、、硬いっていうか生真面目すぎるぞ?」

 

「そうか?」

 

「流石にもうちょっと肩の力抜いても良いと思うよ?」

 

「そんなもんか?」

 

すると突然島谷ひとみのDitaが鳴り出す。

蓮のスマートフォンだ。

 

「失礼。もしもし師団長?」

 

2人から一旦離れ、中に続く階段の一番上の段に腰掛ける。

 

『ハーイ!レン、襲撃が有った後にしては元気そうね。安心したわ。』

 

「俺が殺されても死なない事ぐらい知ってるでしょ?で、要件は?」

 

『貴方への賞与、通常と変わらない代わりにこの情報あげるわ。メールで送ったから見てみて。』

 

「は?ちょっと?…………切りやがったよ。

サード、ポリーの馬鹿に掛けてくれ。」

 

『畏まりました。』

 

(ていうか報酬代わりの重要機密をメールで送るなよ。どれどれ?)

 

素早くメールアプリを開き中身を確認する。

 

「…………嘘やろ?」

 

『レン様?どうかなさいましたか?』

 

「どうかしたとか言うレベルの問題じゃない。見てみろ!」

 

『これは、先日襲撃してきた人造人間(アンドロイド)の設計図!?』

 

「あぁ。しかも恐ろしいのがデータを見る限り、

量産準備はほぼ完了している事だ。」

 

『確かにそこそこ優秀なロボット工学者がいれば太陽電池などのコアパーツ以外は簡単に作れますね。

しかし一体何のために?』

 

「そこまではまだ調べがついてないらしい。

だが、ある計画を実行するため。ってのは確定らしいな。」

 

『計画?』

 

「計画の名前はProject ZERO=DIVER。

またの名を…織斑計画。」

 

 

 

3

「蓮の奴遅いな?」

 

「トイレにでも行ってるんじゃない?」

 

「いやそれはない。あの着メロの人は蓮にとって話すだけでストレス要因になる様な人、それも上官ばっかだからなんて事ない用事なはずはないよ。」

 

「詳しいね。」

 

「本人が前に言ってし。あ、メール。」

 

「アキヤマ君から?」

 

「ぽいね。えっと?」

 

 

差出人 蓮

 

件名 先行っててくれ

============

ちょっと上司から厄介な

仕事を押し付けられちまった。

昼休みが終わるまでには戻れるが

弁当箱を持ってきてくれると助かる。

悪いが頼んだ。

============

 

 

 

「だってさ。」

 

「軍属も大変だね。

ボーデヴィッヒさんもこんな感じなのかな?」

 

「いやあの眼帯チビは蓮みたいに意見なんか言わないで機械人形(ロボット)みたいに淡々と命令にだけ従ってるんだよ。

きっと。」

 

「網島君、ボーデヴィッヒさんの事嫌いなの?」

 

「あいつは風都タワーを、風都を、俺の街(こきょう)を侮辱した。

人の街を侮辱する奴は万死どころか兆死に値する。」

 

「羨ましい。」

 

「え?」

 

「僕は故郷にあんま良い思い出がないから。」

 

「じゃあ来いよ風都に。」

 

「え?」

 

「翔兄が、俺が尊敬してる男が言ってたんだ。

『街ってのは生まれた場所や育った場所じゃなくてその人が心から帰りたいって思える場所だ』って。

一度離れてみてから故郷の良いところを探すも良いし、

自分で自分の街を作るのも良い。

シャルルがいたい場所をゆっくり探せば良いと思うよ。」

 

「…………詩人だね。そのショウニイって人。」

 

「いや探偵さ。風都一のね。」

 

そう言うとケイタは自分と蓮の弁当箱を片付けて一夏達の方に向かった。

 

「…………。恵まれてるね君は。」

 

ケイタを見送ったシャルルの瞳から喜怒哀楽の喜と楽が消え失せた。

淡々とぶつぶつと何か呟き始める。

 

「私の持ってないもの全部持ってる。

私の持ってたくないもの全部持ってない。

良いなぁ、良いな良いな良いなぁ。」

 

ポケットからおもむろにコオロギのライダーズクレストに似た金の刻印のついたケースから一枚のカードを取り出し、鏡のようになっている手すりに向かって構える。

ベンタラの奥から黒い身体にメタルシルバーの六つの発光器官のある仮面のような顔のアドベントビースト、サイコローグが現れる。

 

「もうさ、ここまで来ちゃったら2人も3人も変わらないよね?

何なら幸せな奴に私よりちょっと不幸になって貰ったって良いよね?」

 

縋るようにサイコローグを見つめる。

サイコローグはいつもの様に温かみを感じない首肯をすると鏡の奥に去って行った。

 

「人類なんてゼイビアックスにどう手でもされちゃえば良いんだ。

そしたら最後に残った私が世界一幸せな女の子。

そうだよね?きっと。」




ケイタ「如何だったでしょうか?」

UMP45「そっちもそっちで大変ね。」

セブン『ある意味ではそちらの方が救いがないがね。』

UMP45「言わないで悲しくなるわ。」

ケイタ「じ、次回!Fake number Four その4!」

UMP45「深層の奥、真実を見逃すな!」


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Fake number Four その4

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

シャルル「山田先生の過去や僕がデッキを持ってること。あとProject ZERO=DIVERや織斑計画とか気になる単語も出てきたね。」

海之「まあ、回収は当分先になりそうだけどな。」

ケイタ「あっちで陰謀、こっちでスパイ?まだまだ休む暇なしだな。それではどうぞ!」

(OP WAKEYOU UP ケータイ捜査官7)


1

「網島、少し良いか?」

 

皆に続いて屋上を出ようとしたら海之に呼び止められた。

 

「どったの手塚さん?」

 

「実は昨日。少しライダーの運命を占ってみたんだ。」

 

「! それで、どうだった?」

 

「スピアーがベントされた後も一度占ったが、

その時と同じ内容だった。

ただだいぶ未来の出来事みたいだったようでな。

一場面ピンポイントでしか見れなかったが、

このカードを君が使っていた。」

 

そう言って海之は自分のアドベントデッキから一枚のカードを、

赤いサバイブカードを抜き取る。

 

「そのカード!左側もあったのか!」

 

「何だって?」

 

ケイタもドラゴンナイトとスピアーのデッキを取り出しドラゴンナイトの方から青のサバイブカードを取り出す。

 

「そのカードをどこで?」

 

「怪人屋が持ってたんだ。」

 

「そうか、私のは初めからデッキに入ってた。

おそらくそっちの青いサバイブカードもゼイビアックス側の誰かのデッキに入っていたんだろう。

それを誰かが本音に持たせた。

ベンタラとこっちを行き来させる為にな。」

 

「でも何でわざわざこのカードを?」

 

「このカードで私達を強化して力に溺れさせて戦いに乗り気にさせたいか。

あるいは強化の副作用で弱った所を倒したいのか。

私が思い付くのはそんな所だ。」

 

「でも、手塚さんの予知が正しかったら、

俺これ使うんだよな?大丈夫かな俺の体?」

 

「網島、私のはあくまで占い。

可能性の高い未来の出来事を少し覗ける程度の些細なものだ。

よく当たるからと言ってあまり当てにされ過ぎても困る。」

 

いや、あんたのが予知じゃなかったら世の自称超能力者全員が新人類帝国の一員だよ。という言葉をぐっと飲み込み

 

「そっか。」

 

と流すケイタ。

 

「兎に角、このカードは君が持っていてくれ。

君なら絶対悪い事には使わない。」

 

「それも占い?」

 

「いや、一個人手塚海之が網島ケイタと愉快な仲間たちを信用するが故だ。」

 

「そっか、ありがと。」

 

海之から赤いサバイブカードを受け取りドラゴンナイトのデッキに。

何かあった時の為に青い方はスピアーのデッキにしまった。

 

「さて、気付いているか?」

 

「何が?」

 

「君の背後さ。」

 

す、とエビルダイバーのカードを掲げる海之。

鏡のようになってる手すりからエビルダイバーとそれに吹っ飛ばされる様に網のような顔の横に仮面のような顔を付けた左右非対称な、兎に角不気味な白い怪人が飛び出して来た。

 

「うわ!何だこいつ!」

 

「明らかに生物がモチーフじゃない。ドーパントだな。」

 

「でもこいつ怪人屋の時みたいに首輪つけられてないぞ?」

 

「おそらくガイアメモリそのものに改造処置が施されているんだろう。

敵に理性がないなら幾らでも倒しようは有る。いくぞ!」

 

「よし来た!」

 

2人とも素早くデッキを構えると突っ込んで来るドーパントを左右に避けながら出現したVバックルに構えを省いてデッキをセット。

 

「カメンライダー!」

 

「仮面ライダー!」

 

走る2人にアーマーが装着され2人はライダーに変身した。

 

「シャッ!行くぜ!」

 

ドーパントにラリアットを食らわせベンタラに飛ばし、

2人もその後を追ってダイブした。飛び出た先は港だ。

 

「消火の心配はなさそうだな!」

 

<ATTACK VENT>

 

ドラグレッターを召喚し、ドラゴンブレスでドーパントを攻撃する。

身体についた火炎を払おうともがくが、全身に回ってしまえばもう手遅れだ。

 

「可哀想に。今助けてやる。」

 

<ATTACK VENT>

 

今度はエビルダイバーが波を起こしながら現れドーパントについていた炎を消すがその火傷を抉るように電撃を纏った体当たりをくらわす。

 

「えぐ。」

 

「先手必勝と言ってもらいたい。」

 

エビルバイザーを構えて懐に入り込むスティング腹部に一撃叩き込んでやろうとしたが

 

(! バイザーを掴んだ!?なら逆にこのまま!)

 

驚きはしたが直ぐに作戦をローキックを足にくらわして動けなくさせるに変えた。

しかし危機を察したドーパントは完全にバイザーを捕まえると両腕から紫色の電流を流した。

 

「うぅ!?グッッッッッが!」

 

信じられない激痛がスティングの全身を襲った。

平衡感覚が無くなり目がチカチカする。

言いようのない不快感と嘔吐の様な感触がしてくる。

持病の偏頭痛と距離感失調で慣れていなければたちまち気を失っていただろう。

 

「手塚さん!」

 

『待てケイタ!今彼女に触れば君も感電するぞ!』

 

「そんなこと言ったってドラゴンナイトに遠距離武器ないぞ?」

 

『なら剣だ!あのサイズならアックスがやってた様に投擲武器にできる。』

 

「わかった!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーを召喚し、手首にスナップを聞かせながら投げる!

上手い事ドーパントの右手に当たりスティングは解放された。

 

「よし、ファイナルベントを!」

 

『いや、あの距離じゃスティングを巻き込む!』

 

「え?まじかよ。今日はなんかツキが悪いや。仕方ねえ!」

 

<GUARD VENT>

 

ドラグシールドを両手に召喚し、

隙間なく構えると全力で走りながら突っ込んだ。

強烈な衝撃と人を殴った時に近い確かな手応えを全身に感じる。

敵は派手に吹っ飛ばされた様だ。

 

「手塚さん大丈夫?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。いつもよりか大丈夫じゃないな。」

 

「そっか。あれ?あいつは?………逃げられちゃったか。」

 

「しかし恐ろしい敵だな。

理性がないからと油断していた。

まさか精神攻撃をしてくるとは。」

 

「精神攻撃?あいつの武器電撃じゃないのか?」

 

「あれは多分ただのドーパントのエネルギーだ。

あの雷撃のようなものをくらった時、

なんだか持病を発症した時みたいになってな。

まるで鏡張りの迷宮に閉じ込められて迷ったみたいな、

出来の悪い悪夢にいるみたいだったよ。」

 

「悪夢、か。セブン。ちょっと翔兄、

ていうか鳴海探偵事務所にかけてくれ。」

 

『餅は餅屋、ドーパントは仮面ライダーWというわけだな。』

 

直ぐ様コール音が鳴る。

 

『はいもしもし鳴海探偵事務所です!』

 

「(女の人?パートの人かな?)すいません翔兄かフィリップ兄は居ませんか?いなかったら仮面ライダードラゴンナイトから電話が有ったと伝えてください。」

 

『え!君が噂の!ちょっとまっててね〜?

フィリップくーん!ちょっと来て!

仮面ライダードラゴンなんとかさんからお電話!』

 

しばらく間があり懐かしい声が聞こえて来た。

 

『やあ網島ケイタ。しばらくぶりだね。』

 

「フィリップ兄久しぶり。突然で悪いんだけどさ、

フィリップ兄達って昔悪夢のドーパントと戦った事ない?」

 

『有るよ?やはり木組みの街に残った怪人屋のメモリはナイトメアだったのかい?』

 

「多分。なんか網戸みたいな顔に二つ君悪い仮面みたいな顔がついてる白い奴なんだけど。」

 

『間違いなくナイトメアだ。だがよく気付いたね?』

 

「手塚さん、仮面ライダースティングがあいつの攻撃くらった時にまるで悪夢を見せられてるみたいだった。って言ってて。」

 

『そうか。手塚海之に精神攻撃耐性が有ったのは不幸中の幸いだ。

奴は夢の中に入り込んでこそ本領を発揮する。

十分注意してくれ。』

 

「わかった。ありがとフィリップ兄。

翔兄にもよろしく。

また近いうちにみんなでそっち行くから。」

 

『いつでも帰って来たまえ。織斑一夏との式の時には呼んでくれよ?』

 

「は!?ちょっとフィリップ兄!?…………切れた。」

 

『…………ケイタ?大丈夫か?』

 

「いや、割と。ただ、俺と一夏の事、誤解してる人どれぐらい居ると思う?」

 

『誤解も何も上裸にさせた上に抱擁までして制服デートまでしておいて誤解も何も無いだろ?』

 

「……俺と一夏とか絶対無いのに。」

 

『前から思っていたが何故だ?』

 

「え?だってそりゃあ…………。」

 

 

 

2

「どうだった?」

 

男子トイレの鏡越しにシャルルはサイコローグに話しかけた。

ピコココ…………。と機械音のような声を出した。

 

「やっぱり網島君が仮面ライダーだったんだ。

手塚って人と一緒に居ない時に倒さないとね。ん?」

 

独特な耳鳴りのような音が響いた。

サイコローグの背後にトンボ型の青いアドベントビースト、レイドラグーンが映る。

変身して対応しようか?シャルルが一瞬悩んだ時だった。

レイドラグーンに蝙蝠の仮面ライダー、ウイングナイトが斬りかかった。

 

「へぇ?いいじゃん。ちょっとは私を楽しませて?」

 

 

 

3

ケイタにメールを送った後、直ぐ様蓮はポリーに電話した。

 

『はいこちらポリ「もしもし?あの設計図、どこから出てきたんですか?」

………いやだからドイツに逃げようとした科学者よ?』

 

「そんな事は分かってるんです。

問題はそいつがなんの研究をしていたかですよ!」

 

『それそんな大事な事?』

 

「事と次第によっては織斑千冬を脅迫出来ます。」

 

『……面白いじゃない。ちょっと待って。

アンドリュー!あなた達がこの前始末した科学者って何学者だっけ!?……そう!わかった!お待たせ。なんか、人工皮膚とかの研究してたらしいけど?』

 

「生物学者ってことですか?」

 

『どっちかと言えば、、遺伝子?とからしいけど?

なんかヒントになった?』

 

「いや…すいません。まだ確信とまでは。」

 

『今すぐあなたの答えを聞きたいとこだけど、

完成前の推理を披露させるのは無粋よね。

確信を持てたら教えてくれる?』

 

「ええ、とは言えまだ30%も確信を持ててないんですけど。」

 

『あらそう?貴方にしては珍しいわね。気長に待ってるわ。』

 

通話が終わり、サードをゆっくり下ろす蓮。

 

『レン様?顔色がよくありません。大丈夫ですか?』

 

「なんとかな。

ただ…………ポリーの奴、

多分もう俺と同じぐらいまで。

いや、俺と同じような事を察してる。」

 

『? 何やら超重大な情報のようですが、

そんなに警戒する程ですか?

向こうも30%しか分かってないならそこまで警戒しなくても』

 

「あいつの手前嘘ついた。70%は確信してる。」

 

『え!?なら何故わざわざポリー様はレン様に織斑計画の情報を?

一夏様に親しいレン様に知られれば物によっては先手を取られてしまいすが?』

 

「織斑一夏は眼中にない。あの酔狂な女が目指してるのは男女平等。

その一環として織斑千冬の失墜を必要不可欠。

織斑千冬に憎しみを抱いてるアンドリュー達を子飼いにしてるのも政治家に賄賂送ってるのもFBIを傀儡にしてるのもただそれだけだ。」

 

『いやちょっと待ってください。今FBIを傀儡にしてると仰いましか?』

 

「幸せに仮想生命を全うしたいなら忘れな。

兎に角。奴は一夏の気持ちなんて考えないで織斑千冬の失墜だけの為に行動する。それさえもただの通過点なのが恐ろしい。」

 

『つまり?』

 

「あの女がわざわざ俺に情報を渡したのは俺を使って自分の答え合わせが、

俺が一夏に肩入れして邪魔するより先に自分の仮説を確信にして俺にも織斑千冬にも有効な手札を揃えたかっただけだろうな。

だから全て自分の思惑通りになってると思わせない為に嘘ついたんだ。」

 

『だとすればあなたはどうやって自分の答えを確認するんですか?』

 

「織斑千冬の反応を見れば残り29%は確信できる。」

 

『最後の1%は?』

 

「…………笑うなよ?」

 

『笑いませんよ。』

 

「黒幕の自白。」

 

意外だった。てっきりもっと人命や法律を度外視した方法を提案してくるかと思っていたがほぼ実現不可能な、実質やらないと言ってるようなものだ。

 

そんな事ではポリー様に先を越されますよ?

そう言おうとしたが、辞めた。

おそらくそれ以外の方法は一夏を深く傷付ける。

だから蓮は避けたのだ。

思考回路が少し熱を帯びたように感じる。

人間でいう温かな気持ちになった。

 

『ならわたくしはそれに従いましょう。』

 

「頼りにしてるぜ相棒。」

 

そう言って蓮が小さく笑った直ぐ後、耳鳴りのような音が響いた。

アドベントビーストの出現だ。

 

「たく。休む暇ぐらい欲しいもんだ。」

 

『ならさっさと片付けましょう。』

 

デッキを構えてVバックルを出現させ構えを取る。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

デッキをセットしながらベンタラにダイブする。

飛び込んだ先に居たのはトンボ型の青いビースト、レイドラグーンだ。

振り向きざまに回し蹴りを顔面に叩き込む。

怯んだところをダークバイザーの斬撃で追撃した。

敵わないと判断したのか、はたまた混乱して兎に角そうしなければと思ったのか、頭部の羽を広げて空に逃げるレイドラグーン。

 

「サード。高さ、スピードを計算。合図しろ。」

 

『了解です。』

 

サードと接続したウイングナイトの青い複眼がチカチカと発光する。

センサーで風、レイドラグーンの飛ぶ力を計算してベストのタイミングを見つけ出す。

 

『今です。』

 

<FINAL VENT>

 

飛来したダークウイングが背中に合体し羽がマント型に変質する。

 

「うおおぉ!」

 

走りながら召喚されたウイングランサーをキャッチし、

垂直にジャンプする。

 

「はぁ!」

マントが繭状になりドリルのように回転する。

黒い死の矢となったウイングナイトはレイドラグーンを貫く。

飛翔斬が決まった。ウイングナイトの着地と同時に分離したダークウイングが遅れて落下してきたレイドラグーンを器用にキャッチして飛び去る。

 

「お疲れさん。」

 

『一件落着。と一息つきたいとこですがそろそろ授業ですよ?』

 

「おっとすっかり忘れてた。さっさと戻ろう。」

 

変身を解除して適当な鏡に飛び込む。

さっきまで昼飯を食べていた屋上に出た。

階段をおりて教室に向かう。

ギリギリ遅刻しなさそうだ。

 

「あ、レン!」

 

不意に呼び止められる。その声に一瞬ドキリとした。

 

「一夏。ど、どうした?」

 

「別にどうも?あなたこそどこ行ってたのよ?」

 

「ちょっと電話を。上司から厄介なヤマを押し付けられてな。」

 

「ふーん。よく知らないけど無理はしないようにね?」

「あ、あぁ。お前こそ。

…………なんかあったら言えよ?

ちょっとぐらいは力になる。」

 

「え?……レンなんか変なもの拾い食いした?

最近レン良い人過ぎない?」

 

「人が血も涙もないみたいな言い方やめてくれないか?

俺だってどちらかと言えば綺麗事を実現したいと思う人間だぞ?」

 

「とか言ってるけどどう思うゼロワン、ハイシーカー?」

 

ぴょこん。と一夏の右肩にゼロワンが、左肩にハイシーカーが飛び乗る。

 

『なんにせよアキヤマはめんどくさい人間だ。』

 

ハイシーカーの画面にも『変な奴』と表示される。

 

 

「気分で持ち主を変えるケータイ共に言われたくないわ。

てか急ぐぞ!遅刻ギリギリだ!」

 

「そっか不味い!2人ともカバンに戻って!」

 

慌ただしく教室に駆け込む2人の背中をベンタラから見送る視線があった。

シャルルだ。その碧眼は汚泥みたいに濁っており、

人前で見せてる爽やかな笑顔はなりを潜め気味の悪い薄ら笑いを浮かべている。

 

「ふーん。あいつ、ライダーの癖にそうなんだ?ふーん?」

 

間明がドラゴンナイトは織斑一夏を利用すれば簡単に始末出来ると言っていた理由が分かる気がした。

 

(多分網島君は2人の事応援してるんだね。

にしても気にくわないなぁ。

ライダーは皆歪んでたり不幸なのにあいつらだけ幸せそう。)

 

汚泥のような目が座った。

 

「死ねばいい。そうじゃなきゃ不幸になれ。」

 

どちらか選べ。いや選ばせる。

それが自分、偽仮面契約者二者択一(ギジカメンライダーオルタナティブ)だ。ドス黒い決意を笑顔の仮面に隠すとシャルルは授業に向かった。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

海之「園咲さんが私は精神攻撃耐性が高いと言っていたが、私はそんなにメンタル強いか?」

シャルル「この場合は多分、外部からの精神干渉波に強いってことじゃないかな?ちょっとネタバレになるけど今度の仮面ライダーゲイツのVシネに出る仮面ライダーアクセル=照井竜もそうだし。」

ケイタ「確か作者も手塚さんのイメージ元の一つって言ってたしそうゆう事なんじゃない?」

海之「成る程。っと、そろそろ時間だな。」

(ED Leave all behaind 仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーアクセル)

ケイタ「次回、Fake number Four その5!」

シャルル「どちらかしか選べない。捨てたくないのはどっち?」


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Fake number Four その5

ケイタ「さて、前回までのinfinite DRAGON KNIGHT、、と言いたいとこだけど、作者なんであんな落ち込んでるの?」

一夏「さ、さあ?」

サード『おそらく一番最初に書いたこのssより後から友人との馬鹿話から何と無くで書き始めた「(ゲーム本編に)救済なんかあらへんで!絶対に笑ってはいけないグリフィン指揮官養成所24時」の方がお気に入りが多い事に葛藤しているのでしょう。』

ケイタ「じゃあなおのことこっちをしっかりやってくれよ。」

一夏「まだラウラとシャルルが出てきたとこまでしかきてないんだから。それでは、どうぞ!」


1

全ての授業も終わり生徒達は解散した。

帰路に着くもの、部活に向かうもの、

またここIS学園に限ってだが、

IS訓練の為にアリーナに向かうものが有った。

 

「このっ!ヒラヒラと!」

 

鈴音の甲龍の衝撃砲が蓮の打鉄黒翔に打つが、

マント型の防具覇止でさながら闘牛のように受け流される。

 

「ふん!叫んだところで相手は止まってくれないぞ!」

 

回避の合間にサムライエッジliv004の物理弾を放つ。

肩、膝に当たり頰をかすめる。

 

「クッソ!」

 

「何焦ってる!そんなんじゃ勝てるもんも勝てないぞ!」

 

とは言うものの、蓮には鈴音の焦りの正体が分かっていた。

先のトーナメントに襲撃して来た戦闘用人造人間ゼロワンに乱入して来た仮面ライダー。

どちらもISに匹敵する存在。

特にゼロワンは何処かの国で量産体制が整えばたちまち人と数に限りがあるコアが必要不可欠なISなどすぐに捨てられる。

つまり今IS操縦者に必要なのは自身の有用性を証明する事だ。

 

(ISはただの破壊兵器だ。蒼穹のファフナーの『ファフナー』やゼノクラシアの『iDOL』みたいにパイロットに代わりがないわけじゃない。

コアには一応心があるらしいが篠ノ之束がご親切にそれを無視出来る機能をつけてくれてるからな。)

 

蓮は新装備の二本の小太刀、サムライサーベル003Aとサムライサーベル003Bを展開して急接近した。

鈴音も応戦しようと双天牙月を出したところで身を捻り

伸身宙返りのように身体をスピンさせながら鈴音の頭上を飛び越える。

 

「鈍い!」

 

背中を切りつけ、怯んだところをドロップキックで距離を取る。

再びサムライエッジliv004の銃撃を浴びせた。

 

「さっきからそればっか!」

 

「当たり前だ。俺の黒翔はスピード重視で紙装甲だから防御は覇止に頼り切ってるんだ。

こいつが容量食ってサムライエッジと後近接武器入れたらもういっぱいなんだよ。」

 

ほんと欠陥機だよと毒づくと空になったマガジンを捨てて最大速度で鈴音まで近づき柔道の反則技、諸手刈の様に両手を掴み、アリーナの防御シールドにむかってジャイアントスイングを決める。

 

「………まだ続けるか?」

 

「もちろん!今度こそ三春を倒すために!」

 

「はぁ……。前回襲撃のせいで不完全燃焼だったのは分かるが、

今のお前じゃ零落白夜で双天牙月ごと真っ二つにされるのがオチだぞ?」

 

「何ですって!」

「頭冷やせって言ってるんだ。

そんなんじゃ中国代表どころかクラス代表維持さえ難しいぞ?」

 

「ッ!……ええ。そうね。熱くなりすぎてたみたい。」

 

「丁度さっきので残弾使い切ったんだ。

新しいマガジン取ってくるまでちょっと休んでろ。」

 

ゆっくりと地面に降りてビットまで歩く。

中に入って直ぐにISを解除した。

 

「それがアメリカの黒翔か。データで見た時の方が強そうだったな。」

 

「………ボーデヴィッヒ。」

 

いつか絡んで来るだろうとは思っていたが随分なご挨拶だ。

女性用のISスーツはスクール水着の様な形である為太ももにつけた待機状態の専用機、黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)があるのが分かる。

 

「(被爆国日本にその名前のISを持ってくるとは中々の度胸じゃないか。ま、落としたのは米国人(おれたち)なんだが)

そう言うお前は自信満々だな?」

 

「当然だ。私が負けるなどあり得ない。

織斑三春と織斑一夏を倒して何が絶対的に正しいかを証明する。

それが終われば次は貴様らだ。

米IS師団破壊部隊は我ら黒ウサギ隊が倒す。」

 

「そいつは楽しみだ。精々首を洗って待つとするよ。」

 

アリーナに出て行くラウラの背中を見送ると蓮は本日何回目かの溜息をついた。

 

『ラウラ様は中々厄介そうですね。』

 

「人間的にか?それともIS操縦者としてか?」

 

『両方です。

恐らく千冬様という固定概念が出来上がってしまっているからかと。』

 

「たく。ウチの師団長とは真逆のタイプだな。

あの感じだとマガジン補充したら戻った方がいい。

サード急ぐぞ。」

 

 

 

2

「はぁ。」

 

去って行く蓮の姿を見送りながら鈴音はため息をついた。

三春は屑だが、焦った自分に勝てる相手じゃない事ぐらい分かってる。

だがどうしてもあいつの顔を見るたびに心の奥でドス黒い感情が大きくなってしまうのだ。

 

「どうしよう?…………………達郎。」

 

「鈴さん。」

 

「わっ!セシリアびっくりさせないでよ。」

 

「ごめんあそばせ。あまりに思い詰めてるようだったので。」

 

「…………まあね。でも平気よ。」

 

「本当に平気ならもっと平気そんな顔して下さいまし。

今にも泣きそうな顔で言われても説得力皆無ですわ。」

 

「え、嘘。」

 

「少しは誰かを頼って下さい。

これでも一緒に山田先生にボコされた仲でしょう?」

 

「ボコされたは余計よボコされたは。

はぁ。あんたに言う話でも無いけど、

なんかこう、最近自分が弱い気がして。」

 

「果たして自分はこの先あの無人機や仮面の騎士達に及ばないんじゃ無いかと?」

 

「まあ、そんなとこ。こうゆう時あんたならどうする?」

 

「想像しますわ。少し先の強くなった自分を。」

 

「ゴールを決めるって事?」

 

「いいえ。中間点を決めるだけですわ、

人間って前を向ければ案外思ってるより頑張れるものですわよ?」

 

鈴の目を真っ直ぐ見ながらセシリアは小さく笑った。

 

「そんなもん?」

 

「そんなもんです。」

 

少し先の強くなった自分。

確かに今まで考えた事も無かった。

過大評価と言われたらそれまでだが、

最近は後ろ向きに考えすぎていた気もする。

少しぐらい前を向きすぎても良いかも知れない。

 

「ありがと。ちょっとはマシな気分になった。」

 

It's my pleasure.(どういたしまして、ですわ)

この後一緒に訓練でもいたしませんか?」

 

「いいんじゃないか?

雑魚はより雑魚な奴が近くに居れば安心出来るようだしな。」

 

先程蓮が去って行った方から失礼なセリフが聞こえる。

シュヴァルツェア・レーゲンを鎧ったラウラだ。

 

「あんた………。」

 

「タツローだか誰だか知らないが男如きに惑わされ力の先に復讐など求めるなど愚の骨頂だな。」

 

「……………ねえセシリア?このジャガイモ女

今『殺して下さいお願いします。』って言わなかった?

いや、言ったわ。言ったわよね?」

 

「鈴さん落ち着いてください。

ここで挑発に乗ってしまえば向こうの思う壺です。」

 

「分かってる!分かってるけどっ!」

 

「ふん。見下げ果てたな。

自分から戦う事も出来ないか。

なら戦わざるを得ない様にしてやる!」

 

シュヴァルツェア・レーゲンの大口径レールカノンが鈴音とセシリアを狙って放たれた。

 

「ッ! いいじゃない。その喧嘩!買ってやろうじゃ無いの!」

 

避けながら双天牙月を投擲するが、

逆にラウラの放った特殊ワイヤー、マイクロチェーンで絡め取られ投げ返される。

左足の装甲を抉られる。

絶対防御が無ければ間違いなく脚を切断されていただろう。

 

「こいつ!自分で言うだけあって強い!」

 

「この!」

 

セシリアも射撃で援護するがラウラは銃を向けられた段階ですぐさま射線の外に出る為なかなか狙いが定まらない。

 

「無駄だ!」

 

慌ててレーザービットを展開しようとしたがそれより早く瞬間加速で急接近したラウラにスターライトを電磁手刀で破壊されてしまう。

 

「しまった!」

 

素早く手首を返したラウラの電磁手刀がセシリアの両肩を襲った。

これでもうインターセプターや体術などの近接戦は不可能だ。

 

「邪魔だ。」

 

右手で首を掴むと顔面、腹、右腿、と空いてる左手と両足でセシリアを痛めつける。

 

「セシリアを放せ!」

 

双天牙月を拾い直した鈴音が迫るがラウラはレールカノンを180度回転させるとノールックで鈴音を撃ち落とした。

落下した先から悲鳴が上がる。

他の練習していた生徒が助け起こしているが意識が無い様だ。

 

「な!」

 

「お前も消えろ!」

 

左手でセシリアの顔面をつかみ直すとラウラは瞬間加速でアリーナの壁にセシリアを激突させる。

 

「ガッ!ッ!………ッ!」

 

「ほう、甲龍より骨があるな。ならこれはどうだ?」

 

マイクロチェーンでセシリアを縛り上げるとアリーナの壁を沿う様に加速しながら飛ぶ。

瓦礫を巻き上げながらアリーナの壁を滑らされ頭から地面に叩きつけられるセシリア。

頭から出血しながらもなんとか意識だけは保った。

 

(このままでは………お願いブルーティアーズ!)

 

なんとかミサイルビットを二機とも展開して攻撃するが、

二機のうち一機、ラウラの真正面にいたビットがまるで金縛りにあった様に動かなくなった。

 

(バカな!

まさかアクティブ・イナーシャル・キャンセラー!?

実用化されていたなんて!)

 

「こいつは驚いた。ブルーティアーズ。

さっきの発言は撤回しよう。いい機体だ。

だがこのラウラ・ボーデヴィッヒとシュヴァルツェア・レーゲンには及ばん。

AICの停止結界の前にはあらゆる攻撃が無意味だ。」

 

レールカノンで動けていた方のビットを破壊し、

動けない方を電磁手刀で叩き割る。

 

「さらばだブルーティアーズ。」

 

レールカノンがセシリアの頭に狙いを定める。そのまま

 

「はぁ!」

 

発射されることは無かった。

背後からスライディングでラウラの股を潜りながら現れた蓮が起き上がりざまにオーバーヘッドキックを放った。

眼帯をしていない方の目のやや下につま先が当たる。

堪らず一歩引いた。観ると打鉄を鎧った四十院神楽がセシリアを救出して離脱して行く。

 

(くそッ!トドメに時間をかけ過ぎたか。)

 

「よう。お楽しみだな。

プールパーティーには二ヶ月早いぜ?」

 

「ふん!言ってろ!」

 

戻ってる間に武装を取り替えて来たのだろう。

サムライブレイド002を装備した蓮が真っ直ぐ斬り込んでくる。

停止結界を発動させて止めるが直ぐに蓮は思い切り腕を振り切り結界を弾く!

 

「なんだと!?そんな馬鹿な!」

 

「しゃらくせえ!」

 

そのままサムライブレイドを逆手に持ち替え大ぶりのパンチを横っ面に見舞う。

 

「ぐっ!この黄色人(モンキー)が!」

 

「!?伏せろ!」

 

さっ!と遠巻きに見ていた全員と蓮が伏せた。

ラウラも蓮が視線をやっていた先から飛んで来た打鉄のブレードを右手で払った。

 

「誰だ!」

 

「私だ。」

 

いつも通りの今にもどっかの銀河帝国の暗黒卿のBGMが流れそうな雰囲気(一夏談)を纏いながら現れたのは我らが一年一組担任織斑千冬だ。

 

「教官!」

 

「ずいぶん派手に暴れたな。

事と次第によっては国際問題だな?」

 

ラファールを鎧った上級生に介抱されている鈴音をチラッと見る千冬。

 

「だが今度のタッグトーナメントの目玉が減るのは困るな。

ボーデヴィッヒ。

貴様は今後タッグトーナメントが終わるまで一切のアリーナの使用と放課後の食事、入浴以外の外出を禁ずる。

いいな?」

 

「教官の決定に異存はありません。」

 

「よろしい。アキヤマ、鳳を保健室まで運んでやれ。

それ以外の者は自主練に戻って結構だ。」

 

それぞれが元の位置に戻って行く。

蓮もラファールの上級生から鈴音を受け取るとアリーナを後にした。

 

 

 

3

「ん…………。あ?」

 

「おはようございますセシリアさん。

よく眠れましたか?」

 

目を覚ますと見慣れない天井と見慣れたクラスメイトの顔が飛び込んで来た。

窓を見るともう空は茜色に染まっていた。

 

「神楽さん?ここは?」

 

「保健室です。何があったか覚えてませんか?」

 

「何が、、あ!

わたくし達はラウラ・ボーデヴィッヒに!痛た!」

 

ガバ!っと起き上がると身体中が、主に頭が痛んだ。

 

「やめとけ。ISを装備してなきゃ7回死んでたような大怪我だ。」

 

「レンさん。」

 

カーテンを開けて蓮が入って来た。

その手には購買部の袋が握られている。

 

「悪いな四十院。ちょっとのつもりが随分長いこと付き合わせちまった。」

 

「いえいえ。怪人屋の件の探偵料と思えば安いですわ。」

 

「そう言ってくれると助かる。」

 

袋から板チョコを取り出し神楽とセシリアにそれぞれ渡す。

 

「もしかして四十院さんが私をここまで?」

 

「はい。専用機持ち同士が本気で戦い始めたと聞いた時に整備室の方から走って来た秋山さんに『何かアリーナでトラブルが起きてないか知らないか?』と聞かれまして。」

 

「たまたま近くにいた3年の先輩から四十院の分のISを借りてって訳だ。」

 

「そうだったんですか。レンさん四十院さん。

本当にありがとうございます。」

 

「いえ、お礼を言われるようなことは。」

 

「むしろ鳳は間に合わずにすまんな。

お前も間に合わなかったっちゃ間に合わなかったが。」

 

「という事は鈴さんは」

 

「まだ意識不明だ。

医者が言うにはダメージ自体はお前より少ないはずだし頭を酷く打ったみたいなのも無いらしいんだが、

まだなんとも言えんらしい。」

 

「そうですか……タッグトーナメントにはどうにかなるといいですが。」

 

「お前も鳳も無理だ。」

 

「な!本当で痛たたたたた!」

 

「激しく動くな傷が開くぞ。

お前のブルーティアーズあいつにダメージレベルD、

素体以外パーツ総入れ替えしなきゃマトモに動かないぐらい壊されてたんだ。

体の傷にリハビリ合わせたら来月中旬までに間に合わん。

今回は見送れ。」

 

「はい。」

 

しゅん。とイタズラを咎められた子供のように小さくなるセシリア。

 

「なに、心配すんな。運が良ければ俺がボーデヴィッヒを倒してやる。」

 

「! お願いしますね?」

 

「任された。四十院。

先生には会ったら俺はもう帰ったと伝えておいてくれ。」

 

「わかりました。お気をつけて。」

 

「ああ。じゃあな。」

 

保健室を出て誰もいない事を確認すると蓮はサードを取り出した。

 

「ケイタはなんて?」

 

『ライダー関係でややこしいトラブルになったから来てくれと。』

 

セシリア達と話してる途中、蓮はサードからデッキを介してケイタ達の救援要請を受けていたのだ。

 

「場所は?」

 

『理世様のお宅です。』

 

「? なんでそんなとこに?」

 

『なんでもお見舞いだそうです。』

 

「あいつが風邪でも引いたってのか?想像出来んな。」

 

曲がり角を曲がろうとした時に話し声が聞こえたのに気付き止まった。

 

(誰だ?)

 

「納得いきません。」

 

「山田くん、気持ちは分かるがこれはかなりデリケートな問題だ。」

 

「だからって殺人未遂犯を野放しにしておくんですか!?

あなたが教育したからですか!?」

 

声と発言から千冬に真耶だとわかった。

 

「違う。私だって考えが無いわけじゃない。

オルコットと鳳には申し訳なかったと思ってる。

未然に防げなかったのは我々の責任だ。」

 

「ではどうするんですか?」

 

「今回の件で学園上層部の女権寄りの奴らはボーデヴィッヒの強さを再認識した。

少なくともオルコットを倒したアキヤマと同等、スペック、装備も充実している。

男の顔に泥を塗るには好都合だ。とな。」

 

「つまり今度のタッグトーナメントでアキヤマ君と網島君にボーデヴィッヒさんを倒してもらうって事ですか?」

 

「奴らは間違いなく一回戦からボーデヴィッヒと男子を当てるだろうからな。」

 

「なぜそんな回りくどい事を?」

 

「ボーデヴィッヒは、強さ=物理的な強さと思ってる節があるからな。

ケイタ君とアキヤマなら倒せるさ。」

 

「2人が組むとは限りませんよ?」

 

「なに、大丈夫さ。

アキヤマはやらせれば大体そつなくこなす奴だし、

ケイタ君は昔から一度スイッチが入れば三春や一夏より出来る子だ。

それに彼はバスケぐらいしか取り柄がないと言っていたが、

気付いてないだけでもう一つあるんだ。」

 

「もう一つ?」

 

「ああ。私の知る限り、ケイタ君ほど、

誰かが独りぼっちなのを許せない人間は居ない。

友達作りの達人なんだ。」

 

息を殺して聞いていた蓮は思わず頰を緩めた。

確かに蓮の知る限りケイタ程人の居場所に凝る人間も居ない。

 

(あいつも弟分をよく見てるじゃないか。)

 

《ケイタ様は正に仮面ライダーWの弟子、ですね。》

 

(さて、早速その名人を助けに行きますか。)

 

足音を立てづに保健室の前、女子トイレまで行き、

サードにカメラを目隠しさせるとそこの鏡からベンタラへ、

ベンタラから自分のバイクのミラーから地球側に戻った。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

バイクにまたがりながら出現させたVバックルにデッキをセット。

蓮はウイングナイトに、蓮のバイクはウイングサイクルに変身し、

ベンタラに突入した。

 

 

 

4

山田真耶は不満だった。

千冬に考えがあることも分かったし、

ケイタや蓮を信頼していないわけじゃない。

ただひたすら生温いと思った。

 

「なんで皆改心させるなんて七面倒なことするんですかね?

癌は患部を切り取って初めて治るんです。」

 

愛する生徒を酷い目に合わせた奴なんて一足飛びに殺してやろうか?

そう考える自分がいることに真耶は驚いた。

自分の様などう取り繕った所で人殺しがまだ教師のつもりか?

まさかあり得ない。

 

「まあ、無意識にここに来ちゃってるんじゃ説得力無いですけどね。」

 

考えながら当てもなく歩いてるつもりがいつの間にか保健室の前まで来ていた。

IDカードを使って中に入る。

 

「四十院さん?」

 

「山田先生、お疲れ様です。」

 

セシリアのベットの横には神楽がいた。

 

「アキヤマ君はもう帰りましたか?」

 

「はい。ついさっき。」

 

「そうでしたか。

では四十院さんもそろそろ戻ってください。

医務の先生が来るまでは私が。」

 

「はい。よろしくお願いします。」

 

綺麗なお辞儀をすると神楽は去って行った。

 

それを見送ると真耶はセシリアの顔を除き込んだ。

小さく寝息を立てているその寝顔はとても穏やかだ。

 

「これがビーストの食卓に上がるのは嫌ですね。」

 

真耶はカーテンを閉めに窓に近づいた。

鏡の向こうにいたナイトメアドーパントと目が合う。

飛び退いた真耶はデッキを構えてポーズを取った。

 

「カメンライダー!」

 

セイレーン に変身した真耶はバイザーを引き抜きアンバランスな頭部に向けて一閃剣戟を放った。

よろけながらセシリアが眠るベットの方に倒れこむ。

起き上がるとドーパントは紫の電撃を纏わせた両手をセシリアに向けた。

 

「やめなさい!」

 

素早く駆け寄り背後から掴みかかり乱暴に投げた。

しかし距離を取ったのがよくなかった様だ。

どこからともなく取り出した車輪の様な輪を投げつけてくる。

セイレーン の目の前で巨大化しネットとなって拘束した。

セイレーン が動けない間にドーパントは鈴音に両手で触れた。

電撃が身体を駆け抜け、精神だけが小さな、ガイアメモリぐらいの大きさの小箱になって取り出された。

どうやら海之は幸運だったらしい。

魂を抜き取るのにドーパントがかけた時間は2秒に満たなかった。

 

「トモ………………ダチ。」

 

網戸の様な模様に覆われている顔、

口から魂を取り込む。

これでもう鈴音は目覚めない。

ドーパントが倒されない限りは。

 

「貴様ぁ!」

 

<SWORD VENT>

 

追いついたセイレーンはウイングスラッシャーを振り回すが目的は達成されたとばかりにドーパントは逃げを選んだ。

 

「私の生徒に何をした!?」

 

ドーパント、セイレーンとベンタラにダイブし、鬼ごっこが始まった。

マントを翼に変えたセイレーンは執拗にドーパントを追い立てた。

 

角に消えるドーパント。着地しながら角を曲がる。

顔を上げると追いかけていたハズのドーパントが倒れてきた。

再び翼を広げ飛び退く。

 

見るとドーパントの直ぐ先に黒いコオロギの様なライダーが倒れていた。

その先には見た事のない武器を構えた仮面ライダースティングとその後に追ってきたらしいバイクに乗ったドラゴンナイトと顔はヘルメットでわからないが白い服の少女がいた。

 

予想以上にめんどくさいのとバッティングしてしまったらしい。

向こうも同じ事を思った様で予断なく構えた。

どうするべきか一瞬迷ったセイレーン だったが次に起こった出来事が身体を動かした。

 

ダメージのせいかコオロギのライダーの変身が解除される。

その仮面の下から現れたのは

 

「デュノア君!」

 

ウイングスラッシャーを上段に構えながらセイレーン はドーパントに走った。

振り下ろされたウイングスラッシャーはドーパントの背中を切り裂いた。

 

「逃げてください!」

 

叫びながら一閃、二閃と剣戟を繰り出す。

それはドーパントを攻撃しながらも確かにスティング達を牽制していた。

このままでは近づけない。

 

スティング達は攻めあぐねたが突如として壁を砕きながら現れたウイングナイトにより戦場は混沌を極めた。

 

ドーパントとセイレーンを轢きながら着地したウイングナイトは体操選手の様にバイクを台にして揃えた両足を一回転させ、セイレーン とドーパントを下がらせるとダークバイザーを引き抜きセイレーンに迫った。

 

「またあなたですか!大事な生徒はやらせません!」

 

「? 生徒?まさかその声は!」

 

何かに気付いたウイングナイトはダークバイザーを収納すると太刀取りでウイングスラッシャーを奪い捨て、

逮捕術の様な動きでセイレーンを取り押さえた。

 

「誰でもいい!こいつのデッキを外せ!」

 

「あ、あぁ!」

 

素早く駆け寄ったスティングがベルトからデッキを外す。

変身が解除されセイレーン は山田真耶に戻った。

 

「「「山田先生!?」」」

 

「馬鹿な、山田教諭がセイレーンだと?」

 

ドラゴンナイト、スティング、ウイングナイトも変身を解除し、

白い服の少女もヘルメットを脱いだ。

 

「網島君にアキヤマ君に織斑さんに手塚さん?」

 

「1、2、、5人か。世間ってやつは本当に狭いな。」

 

独りごちながら蓮は逃げない様シャルルにスタームルガーを構えながらコオロギのデッキを拾い上げる。

 

『予想以上に込み入った話になってしまったな。』

 

一夏のパーカーのフードからゼロワンが、

ケイタの腰のホルダーからセブンが、

蓮のブレザーのポケットからサードが現れる。

 

「!?デビルKにエンジェルK!」

 

意外と都市伝説とか知ってたらしい真耶が素っ頓狂な声を上げる。

 

『知っているなら話は早い。

まずは理世の家に戻るぞ。話はそれからだ。』

 

ライダー達の夜は長い。

それぞれが混乱や憔悴の色を見せる中、

シャルルの瞳だけは相変わらず濁っていた。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「ライダーとしての山田先生が久々過ぎてちょっとビックリかな?」

サード『そして本編よりラウラ様の戦い方や強さがえげつないですね。』

ケイタ「まあ、その蓮や手塚さんのスペックかなり高めにしちゃったからね。」

(ED Go!Now!~Alive A life neo~ RIDER TIME仮面ライダー龍騎)

ケイタ「お、そろそろ時間か。」

サード『次回、infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来 Fake number Four その6!』

一夏「これで決まりだ!」


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Fake number Four その6

??「前回までのinfinite DRAGON KNIGHT in明日未来、突如鳳鈴音とセシリア・オルコットを強襲するラウラ・ボーデヴィッヒ。
なんとかレン・アキヤマは2人を救出する事に成功しかし網島ケイタからの救援要請により向かった先でシャルル・デュノアと山田真耶の正体を知る事となりました。ここまで間違いありませんか?」

ケイタ「いや、うん。あってるけど君は誰?智乃ちゃん知り合い?」
智乃「いえ。全くの初対面です。」

??「私とした事が失礼しました私は民間軍事請負会社グリフィン&クルーガーの特殊部隊の一つ、404小隊の技術顧問で竜崎ルエといいます。」

智乃「竜崎、ああ。作者さんがこの前書いた短編の主人公の?」

竜崎「ご存知でしたか。今回は告知の為にお邪魔させていただきました。」

ケイタ「そうだったんだ。あれ?でも作品のタイトル『L change in the Paradise Lost 2061』だよ?Lって何?」

竜崎「それは読んでのお楽しみですそれよりまずはこのssをどうぞ。」


1

全ての授業も終わり生徒達は解散した。

帰路に着くもの、部活に向かうもの、

またここIS学園に限らずだが友人のお見舞いに向かう一団があった。

ケイタ、一夏、心愛、海之、千夜、そして学園の外で合流した紗路の6人だ。

 

「私まで一緒でいいのか?」

 

「平気だよこれを機に仲良くなればいいし。」

 

「そーそー!海之ちゃんなら理世ちゃんと出会って3秒で友達だよ!」

 

「それは心愛ちゃんのモットーでしょ?」

 

1人だけ突っ走る訳にはいかないケイタは愛車のスズキ

カタナを手で押しながら突っ込んだ。

 

「つーか理世さん家って俺ら初めて行くけど皆は行った事あんの?」

 

「一度も」

 

「無いよ。」

 

「初めて」

 

「そもそもまだ会ってすらない。」

 

「じ、実は私も………。」

 

「………………皆道知ってる?」

 

黙り込む一同。

どうやら全員が誰かが知っていると思ってたらしい。

 

「セブン、蓮に掛けてくれ。」

 

呼び出し音が鳴り程なく蓮がでた。

 

『悪いケイタいま忙しい手短に出来ないなら後で頼む!』

 

相当焦っているのか蓮はまくし立てる様に早口だ。

 

「いや理世さん家の行き方が分からないだけで。」

 

『今どこいる?』

 

「8番通りの小物屋の前」

 

『真っ直ぐ30フィート先を左に真っ直ぐだ!』

 

言い切る前に乱暴に電話が切れた。

その後いくら掛け直しても出ない

 

「マジで勘弁だぞ蓮?」

 

「道分かったのか?」

 

「分かったっちゃ分かったけど、

30フィートが何メートルか分かる人いる?」

 

「だいたい9メートルだよ。」

 

さらっとなんて事もない様に心愛が答えた。

 

「え?………心愛ちゃん、19×43は?」

 

「817だよ。」

 

ほぼ即答で答えた心愛はさあ行こう!

と先頭に立って歩き出し

 

「俺、下手したらラビットハウスで一番頭悪いかも。」

 

「私も………。」

 

密かに危機感を抱く2人だった。

 

 

 

2

家の前にイカツイ門番?みたいな方がいたが見かけによらず紳士的でケイタのバイクまで預かってくれた。

案内されて理世の部屋まで行く一同。

 

「広い部屋だな。」

 

「いかにも理世さんの部屋って感じだな。」

 

壁にかけられた大量のモデルガンを見上げながらケイタは独言た。

ガンマニアなのは蓮経由で知っていたがこのレベルはミリオタって言った方が正しいだろう。

 

「にしても、穏やかな寝顔だな。」

 

丸一日帰ってこず、路地で倒れているのが見つかりすぐに病院に運ばれたが、

検査しても外傷もなく何かに感染したり薬を盛られたりしたわけでもなくただ眠っているだけだというのだ。

 

(なんかデジャブ、

最近そんな話をどこかで聞いた様な気がするけどどこだったかな?)

 

「? どうしたのケイタ?なんか難しい顔しちゃって。」

 

「え?いや、なんでもない。」

 

「嘘でしょ?ケイタ嘘ついた後下唇噛む癖がある。」

 

「マジ!?」

 

「嘘。けど今ので本当にケイタが嘘ついてるって分かった。」

 

「一夏お前………。はぁ、じゃあ言うぞ?」

 

一夏の耳に顔を近づけ小声で呟く。

 

「え?け、ケイタ?」

 

「理世さんが目覚めないの多分なんか怪人関連。」

 

「え?」

 

「あくまで多分だけど、なんか分かったら話すよ。」

 

「う、うん。」

 

ケイタは一夏の頰が少し赤いのに気付いた。

風邪だろうか?

それともまさか……前に蓮が邪推していた様に自分に惚れてるとかだろうか?

 

(いや有り得ない。

有り得たとしてもきっと恋に恋するお年頃って奴だろ。

たまたま一番近くに居た男が俺だったってだけ。

そうじゃなきゃ一夏みたいな家事万能でしっかりしてて頑張り屋で、甘えたがりの癖に人一倍になっちゃう娘が俺に惚れる訳、大体俺と一夏は)

 

「網島?」

 

「うわ!手塚さん。

心臓に悪いないきなり話しかけないでよ。」

 

「もう三回は話しかけてたが?」

 

「………………ああ。ごめん。」

 

「しっかりしろ?もうそろそろ帰るぞ。

天々座さんが目覚める気配はない。」

 

「そっか。」

 

もう一度理世の寝顔を見る。

少し照れ臭そうに笑いながらうずくまる姿は普通に寝てる様にしか思えない。

やっぱり思い過ごしだろうか?

 

「あ、ちょっと待って。トイレ行ってきていい?」

 

と一夏。

 

「場所分かる?」

 

「さっき見たから。」

 

そう言って一夏1人が部屋を出た。

 

 

 

2

「へえ、結構いいとこ住んでるね。

誰だか知らないけど。」

 

鏡から飛び出しながらシャルルは呟いた。

多少人は多いが、オルタナティブの力を使えば簡単に片付けられる、

否肉片に変えて散らかせる数だ。

 

「どっちにしろあの2人には死んでもらうけど。」

 

怠そうにため息を吐きながらシャルルはポケットからアドベントデッキを取り出す。

 

「さて、皆はどっちかな?」

 

ブラブラと廊下を歩いていると右の方から誰かが走る音がする。

すぐ先に曲がると一夏がナイトメアドーパントに追いかけられていた。

 

「!?」

 

こちらと目が合う。面倒だし怪人ごと倒そう。

そう思ったシャルルはIS、ラファール・リヴァイブカスタムⅡを部分展開し、

切り札の一つ盾殺し(シルド・スピアー)の異名を持つパイルバンカーグレースケールを放つ。

発射された弾丸はまず一夏の頭に向かって飛んだが、

何かに押されたかの様にガク!と一夏の頭が下がり、

背後のドーパントにのみ当たった。

大きく吹っ飛ばされ動かなくなるドーパント。

化物だしすぐ回復するだろう。

 

「たく、面倒だなー。」

 

目をパチクリさせ、倒れたまま自分を見上げる一夏に歩み寄る。

 

「逃げないでね?なるべく痛くして殺すから。」

 

グレースケールを構え直し、照準を覗いく。

何かが銃身に乗って、、否立っている。

 

(足の生えたケータイ?)

 

脚だけでなく手も生えている黒いガラケーは手につけたチェーンソーの様な刃を銃身に突き立てると回転させ真っ直ぐに進んできた。

ジャンプしながら一回転して目を斬り付けようとする。

とっさに身を引いて回避した。

鼻先にピリッとした痛みが走る。

そのまま前転気味に回転したケータイ、ゼロワンはシャルルの顔をジャンプ台に一夏の下まで見事なウルトラCを決めた。

 

「ゼ、ゼロワン?」

 

『逃げるぞ一夏。

シャルル・デュノアは明確に我々に殺意を抱いている。』

 

「そんなこと言ったって!」

 

背後にはダメージが有るとは言え怪人が正面にはISで武装した相手が。

どう考えても前門の虎、後門の狼というやつだ。

 

『そこに窓が有る、ベンタラに行け!』

 

ケイタから渡されたシールのカードをかざし、

鏡面が水面の様に歪むとその中に飛び込んだ。

振り返るとブラウン管のテレビの中にシャルルか写っている。

 

「念のためもうちょっと逃げよっか。」

 

『その間に網島ケイタ達に連絡しておく。ただ。』

 

「? どったの?具合でも悪いの?」

 

『午後の授業、俺はそばに居なかったよな?』

 

「う、うん。それが何?」

 

『実はあの時新型の支援メカのテストをしていてその時にエネルギーを使い過ぎて今そこまで充電がある訳じゃない。』

 

「嘘でしょこのタイミングで!?連絡は?」

 

『もうメールで送った。

一応平気だとは思うがもし戦闘になったら俺をあてにする事だけはしないでくれ。いいな?』

 

「わかった。じゃあさっさと」

 

戻ろうか。と言いかけた時だった。

背後からトプン。

と地球側から何かがベンタラに入って来た様な音が聞こえた。

恐る恐る振り向く。

そこには想像通りラファール・リヴァイブカスタムⅡを鎧ったシャルルがいた。

 

「い、一体どおやって!」

 

世界最強(ブリュンヒルデ)の妹は腕っ節もお頭も似てないね。

これ意外に無いでしょ、理由なんて。」

 

ポケットからアドベントデッキを取り出すシャルル。

最悪だ。最悪の万が一が今だ。

 

変身。シャルルが心の中で念じた瞬間、

写真のネガの様な色の残像が三つ重なりコオロギの様な仮面の異形に姿を変えた。

 

「仮面、ライダー?」

 

「の紛い物だよ。

織斑千冬の劣化コピーを消すにはおあつらえのね!」

 

アサルトライフルのヴェントを連射するオルタナティブ。

なんとか寸前でゼロワンがクラックシークエンスで射撃制御のプログラムを乗っ取ったらしい。

一夏の足元で模擬専用とは言え対IS用弾が炸裂するぶっ飛ばさるがすぐ立ち上がり砂煙をカムフラージュに森の奥に逃げた。

 

「はあ、はあ、はあ!まさかデュノア君もゼイビアックスの手下だったなんて!」

 

『状況は限りなく最悪だな。』

 

「本当に今日厄日だよ!私なんかしたっけ!」

 

『落ち着け一夏。叫んでると居場所がバレるぞ?』

 

「落ち着け?

後何秒後に蜂の巣にされるかもわかんないのに!?」

 

『大丈夫だ一夏。(バディ)がついてる。』

 

「!……信頼してるよ。

でもどうする?ケイタが来るまで逃げ回らなきゃだし逃げすぎてもケイタが見逃しちゃうよ?」

 

『成る程。しかしISで攻撃してくるなら俺がずらして対応できる。

アタックベントで挟み撃ちにされた場合は一夏が頑張るしか無い。

しかし逃げすぎてもケイタ達の到着が遅れる。

ならばどうする?』

 

「敵を何かに釘付けにしておく?

………!いいこと考えた。」

 

悪戯っ子の様な笑みを浮かべると一夏はポケットからある物達を取り出した。

 

 

 

3

「もーいーかーい!」

 

オルタナティブはだらしない足取りでヴェントを弄びながらゆっくりと森の中を見渡した。

ハイパーセンサーがあれば一発で見つけられる筈だがどうも今調子が悪い。

さっき撃った時もあの変形ガラケーが手をかざした瞬間弾の起動制御がおかしくなっていた。

 

「ねーねー。ISコアネットワークを通じてのハッキングなんてどうやってるのー?私にも教えてよ。」

 

多分あのケータイがやってるんだろうけど。

心の中で付け足しどんどん奥に入って行く。

しかし困った。センサーが使えないなら探すのは全部手探りだ。

アタックベントで頭数を増やそうかと思った時だった。

がさっ!と背後の茂みから音がした。

振り返る。直ぐに頭上の木がガサガサと音を立てる。

上を見上げる。

何かが背中に当たり跳ね返って茂みの中に隠れる。

茂みを向いた所でシャルルは気付いた。

なんのつもりか知らないがこれは時間稼ぎだ。

織斑一夏は何かを企んでる。

ここから離れた方がいい。

そう思って動こうとした時だった。

 

「!?『download complete』?まさか!」

 

いきなりISが解除された。

何かウイルスプログラムをダウンロードされたらしい。

 

「やってくれるじゃんケータイの分際で!」

 

デッキから一枚のカードを引き抜き右手のカードリーダー型のバイザー、

サイコバイザーに読み込ませる。

蒼い炎に包まれたカードを横にシュッ!と振る。

炎が晴れるとそれは黒いトゲの付いた大剣、

スラッシュダガーに変わっていた。

 

「害虫は駆除する。」

 

スラッシュダガーの先端から蒼い火炎を放ち周囲を焼く。

茂みや木の枝から小さなメカが飛び出てくる。

ブーストフォンハイシーカー、オブザーバー、デモリッションだ。

逃げて行く方向は三台とも一緒だ。

 

「みーつけた。」

 

ほんの十数メートル先の木の影、

少し屈んだ一夏がブーストフォン達を抱っこしている。

焼き尽くしてやる。剣先を一夏に向ける。

剣から炎が一夏に向かって放たれる。

一夏に触れる寸前。その炎はフッと消えた。

剣が異様に重く感じる。

そして視界一杯に『お前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だ』視界だけでなく聴覚まで乗っ取られたらしい。最悪だ。もしここで増援が来たりしたら

 

「一夏!」

 

遠くからケイタと海之の声が聞こえてくる。

シャルルはデッキを外し強制的に変身を解除した。

 

『不味いな、シャットダウンでウイルスを消された。』

 

一夏の肩に乗る黒いガラケーが、ゼロワンが呟く。

よく見ると着身していたブーストフォンがデモリッションからアナライザーに変わっている。

時間稼ぎの間にウイルスを製作していた様だ。

 

「本当にイライラさせてくれるね織斑一夏!

望み通りその玩具共と一緒に仲良くスクラップにしてあげるよ!」

 

再びオルタナティブに変身し、スラッシュダガーを構える。

マズっ。と呟くと一夏は森の中を脱兎の如く駆け出した。

 

「待て!」

直ぐにその後を炎を放ち追いかけるオルタナティブ。

 

『一夏!フードが燃えてる!』

 

「嘘!最悪!もう今日厄日!今日以上の日は無いよ!無い無い!」

 

半泣きになりながら上着を脱ぎ走り続ける一夏に炎を投げ続けるオルタナティブ。

走り続ける2人は車道に出た。隠れる物が無い今なら。

そう思い加速するオルタナティブ。しかし失策だった。

体の右側から全体に衝撃が走り地面に転がされた。

 

見ると赤いバイク、スズキカタナをアドベントデッキの力で変身させたドラゴンサイクルに乗ったドラゴンナイトと契約ビーストのエビルダイバーに乗ったスティングがいた。

 

「いつ、いつこんな打ち合わせを!?」

 

『走りながらさ。

俺は普通のケータイと違ってキーボードを打たれ無くてもメールを送れる。』

 

いつの間に再びデモリッションを着身したゼロワンが一夏のパーカーの燃えてる部分を斬り取る。

 

「さて、こっからは俺達が相手だ!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーとスラッシュダガーが火花を散らす。

こっからは鬼ごっこでなく同じ土俵での戦いだ。

スペック、場数では勝るオルタナティブだがケイタの対人センスは中々の物だ。

 

かつて走り屋だった頃、喧嘩もよくしたケイタは相手の一挙一動から先の動きを見る事に慣れていた。

剣などの動きはIS学園に入ってから始めてみたが、ライダーとして戦ううちに()()()()()

故にケイタは、ドラゴンナイトは剣を読んで戦える。

一手先を読み二手先を行き三手目で詰ませる。

 

その上スラッシュダガーより小ぶりなドラグセイバーはウイングナイトのウイングランサーなどの様に受けながら戦うより受け流して戦うのに向いている。

 

スラッシュダガーはその自重を生かしたパワーでゴリ押すタイプなので守りをスティングに一任したドラゴンナイトに自由に飛び回られては防戦一方だ。

 

一夏を狙えばスティングがエビルバイザーで守り、

その間にドラゴンナイトに斬りつけられ、

ドラゴンナイトを狙えば間を縫ってスティングの左ストレートを顔面にくらい、

スティングを狙えば刃が振るわれるより早く剣を持った手をドラゴンナイトに蹴られ体勢が崩れた所を攻撃された。

 

「舐め腐ってくれんじゃん!」

 

<ATTACK VENT>

 

サイコローグを召喚し頭数を増やす。

ドラゴンナイトとスティングは契約ビーストが大きく人とかけ離れた姿をしている為、この戦法は使えない。

何故なら仲間や自分も巻き込んで攻撃させるしか無いからだ。

 

「一夏、キー挿しっぱだからあれで逃げろ。必要になったら呼ぶ。」

 

ドラゴンサイクルを指し、自分はサイコローグを迎え撃った。

サイコローグの拳を掻い潜りながらドラゴンサイクルのエンジン音が遠ざかって行くのを耳にする。

一夏は大丈夫だろう。

ドラゴンナイトは目の前の敵に集中した。

 

 

 

4

先ずは筋力の無いこいつからだ。

そう思ったオルタナティブはサイコローグをドラゴンナイトに向かわせ、スティングに剣を振るった。

 

首をかがめ避けて、

飛び上がる勢いに乗せて放たれた蹴りがオルタナティブのバックルに当たる。

バチバチと一瞬蒼い電気が走った。

おかしい。スティングは訝しんだ。

 

(普通のライダーのデッキは今の蹴りぐらいじゃなんとも無い筈。

ライダーの中でも筋力の低い部類に入る私の攻撃なんか特にだ。

その証拠に繰り返し攻撃し続けてた筈の鎧はあまりダメージを受けていない。

じゃあ何でデッキはこんな簡単にダメージが入ったんだ?)

 

<SWING VENT>

 

エビルウィップを召喚して剣の柄を絡め取り動きを封じる。

これでカードは切らせない。戦いながら海之は考えた。

 

(確か秋山はライダーは全部で14人いると言っていた。

その言葉通り数々のライダーが現れ、

時に共闘し、時に対峙した。

どのライダーも十人十色の見た目、武器だったが、

こいつは違う。違いすぎる。

ほんの少しづつだがライダー同士にあった共通点がこいつには殆ど無い。

もしかしてだがこいつ。)

 

今までのライダーと違ってデッキが弱点なのか?

 

それに気付いたスティングはエビルウィップを引っ張り、

剣を盗られまいと引っ張り返す力を利用して急接近。

 

得意の左ストレートで怯ませることに成功すると握力の緩んだ手からスラッシュダガーを引っ張り盗った。左にエビルウィップを持ち替え、空いた右手でキャッチする。

 

コピーベントを使えば良いと思うかもしれないがそれだと同じ土俵に立つだけで自分だけが敵にダメージを与えられるのが理想だからだ。

 

「そんなに私の剣が欲しかったの?

とんだ強欲の魔物だね恵まれてるくせに。」

 

「? 恵まれてる?」

 

「そうだよ。君達みたいな最初から恵まれてる強い人間は今ある幸福を守らないといけない。

逆に恵まれてない人間は是が非でも幸福を手に入れなきゃいけない。

ここまで言えば分かるよね?」

 

「………ふ、ふふふ。アハ、アッハッハッハッハ!」

 

「!? 何がおかしい!」

 

「いや、あまりに腹が立ったものでな。

私が最初から強い人間だと?

私が今までどれ程大切な物を取りこぼしたと思っている!」

 

エビルウィップで首を締め上げ、スラッシュダガーで滅多斬りにする。

 

「むしろ私はお前のその幸せな思考回路が羨ましい!

結局お前は自分は運が悪かったって理由に逃げて自分は悪くないって思いたいだけだろ。

お前はゼイビアックスの言いなりになっていい、

何も考えない理由が欲しいだけだろ!」

 

剣幕に押されるオルタナティブ。

しかし反撃の余力はあったらしい。

エビルウィップを力ずくで取り外し、

新たにカードをきる。

 

<WHEEL VENT>

 

スティングの背後から駆けつけたサイコローグがバイクモードに変形する。

オルタナティブは大きく跳躍しそれに飛び乗った。

 

「逃すか!エビルダイバー!」

 

空に向かって叫ぶ。

親友の仇にして信頼する相棒は直ぐに来てくれた。

オルタナティブがやった様にスティングもエビルダイバーの背中に飛び乗る。空から探せばすぐに見つかった。

ライダー擬の癖に路上の王(ロードキング)気取りとは。

 

「(ここは網島に譲ってやりたい所だが、

あいつは一夏を乗せてくるだろうし。)

僭越ながら私がお相手しよう。」

 

エビルダイバーを地面スレスレに飛ばし追跡する。

オルタナティブがミラー越しにこちらを見た。

スピードを上げるオルタナティブ。

 

同じくスティングもエビルダイバーのスピードを上げさせる。

向こうはスズキ RMX250に酷似したバイク。

こちらの乗り物はモロクリーチャーの形、

バイクでは考えられない動きも出来る。

 

初めからこのレースはこちらが有利だ。

ただ一つ問題は

 

(毎度毎度最高のタイミングだよ畜生!)

 

激しい偏頭痛と共に遠近感覚が狂い始める。

バイクを駆るオルタナティブが遥か遠くにいる様にも手を伸ばせば届く様にも感じる。

 

それだけならまだ良いのだが揺れるせいで胃の中のものが逆流してきそうだ。

合わせて気分もものすごく悪い。

今すぐにでも休みたい。

しかし今追跡を止める訳にはいかない。

 

「エビル、、ダイバー、、、スピードを上げろ。

最大戦速!」

 

エビルウィップを放り捨て、スラッシュダガーを左手に逆手で持つ。

バイザーのカバーを開けて、震える手を必死に沈めながらカードを入れた。

 

<FINAL VENT>

 

エビルダイバーの両ヒレに雷撃エネルギーが加わり、

スピードがどんどん上がって行く。

さっきまで開いていた距離が縮んでいきいくらスピードをあげても維持すら出来ない。

焦りに焦ったオルタナティブが思わず振り向いた時、

スティング必殺のハイドロベノムが炸裂した。

 

 

 

5

前方から火の手が上がる。

それと同時に爆音が鳴り響き、

やや遅れて火のついたタイヤとサイコローグの残骸が転がってきた。

 

「手塚さん!」

 

ドラゴンナイトと一夏はバイクを降りて炎の中に消えた仲間と今の今まで追跡していた襲撃者を探した。

幸い風があまり拭いていなかった為、

火の勢いはそれ程でも無い。

 

………居た。炎の中、揺らめく炎の向こうに2人が戦う姿が見える。

流石にファイナルベントは聞いたらしい左足を引きずったオルタナティブとまるで遠近感覚が無いかのように無茶苦茶に剣を振るうスティング。

 

こうなったら技術や矜恃なんて役に立たない。

勝つのは倒すという決意が強い方だ。

 

何度目かは分からないがたまたまスティングが放ったスラッシュダガーの一閃がオルタナティブを高速道路の下へ落とした。

 

「あ!」

 

「まずい!」

 

「何処に逃げたァ!待てえ!」

 

遮二無二スラッシュダガーを振り回しながらスティングもその後を追い下界にダイブする。

 

「手塚さん!デュノア君!」

 

「マジかよ。頼むぞドラグレッター!」

 

<ATTACK VENT>

 

飛来したドラグレッターが鼻面ボールの容量で落下する2人を柔らかい土の上に川沿いの原っぱに落とす。

ブンブンと頭を振りながら立ち上がるスティング。

どうやら発作は治ったらしい。

 

「デュノア、、立て。」

 

「何怒ってんの?君なんかが私をわかったつもり!」

 

最後だけ吐き出す様に叫ぶとオルタナティブは殴りかかった。

避けるフリをして油断させた所を体当たりで体勢を崩させスラッシュダガーで切り上げる。

土手の上まで吹っ飛ばした。

 

「どうした!立て!

幸せな奴らに逆恨みできる元気があるなら!

人を殺せる様な元気があるならその程度のダメージで立てなくなる訳ないだろう!」

 

叫び出しながらもスラッシュダガーを振るい続けるスティング。

もたつきながら逃げるオルタナティブ。

 

市街に入り何度も曲がりながらも追いかけっこは続いた。

遠くからバイクの音が聞こえる。

もうじきドラゴンナイトとも合流出来るだろう。

 

「はぁ!」

 

たまたま放った一閃がオルタナティブの背中を斬りつけた。

つんのめるオルタナティブ、前から来た何かとぶつかって倒れた。

 

オルタナティブとぶつかったのは前にドラゴンナイトと共に戦ったナイトメアドーパントだった。

 

その先にはウイングスラッシャーを構えた仮面ライダーセイレーンがいた。

予想以上にめんどくさいのとバッティングしてしまったらしい。

向こうも同じ事を思った様で予断なく構えた。

 

どうするべきかスティングが迷っている内に次に起こった出来事がセイレーンの身体を動かした。

ダメージのせいかオルタナティブの変身が解除され、

シャルル・デュノアの姿に戻る。

 

「デュノア君!」

 

ウイングスラッシャーを上段に構えながらセイレーンはドーパントに走った。

振り下ろされたウイングスラッシャーはドーパントの背中を切り裂いた。

 

「逃げてください!」

 

叫びながら一閃、二閃と剣戟を繰り出す。

それはドーパントを攻撃しながらも確かにスティング達を牽制していた。

このままでは近づけない。

 

スティング達は攻めあぐねたが突如として壁を砕きながら現れたウイングナイトにより戦場は混沌を極めた。

 

ドーパントとセイレーンを轢きながら着地したウイングナイトは体操選手の様にバイクを台にして揃えた両足を一回転させ、

セイレーン とドーパントを下がらせるとダークバイザーを引き抜きセイレーンに迫った。

 

「またあなたですか!大事な生徒はやらせません!」

 

「? 生徒?まさかその声は!」

 

何かに気付いたウイングナイトはダークバイザーを収納すると太刀取りでウイングスラッシャーを奪い捨て、

逮捕術の様な動きでセイレーンを取り押さえた。

 

「誰でもいい!こいつのデッキを外せ!」

 

「あ、あぁ!」

 

素早く駆け寄ったスティングがベルトからデッキを外す。

変身が解除されセイレーン は山田真耶に戻った。

 

「「「山田先生!?」」」

 

「馬鹿な、山田教諭がセイレーンだと?」

 

ドラゴンナイト、スティング、ウイングナイトも変身を解除し、

白い服の少女もヘルメットを脱いだ。

 

「網島君にアキヤマ君に織斑さんに手塚さん?」

 

「1、2、、5人か。世間ってやつは本当に狭いな。」

 

独りごちながら蓮は逃げない様シャルルにスタームルガーを構えながらコオロギのデッキを拾い上げる。

 

『予想以上に込み入った話になってしまったな。』

 

一夏のパーカーのフードからゼロワンが、

ケイタの腰のホルダーからセブンが、

蓮のブレザーのポケットからサードが現れる。

 

「!?デビルKにエンジェルK!」

 

意外と都市伝説とか知ってたらしい真耶が素っ頓狂な声を上げる。

 

『知っているなら話は早い。

まずは理世の家に戻るぞ。話はそれからだ。』

 

ライダー達の夜は長い。

それぞれが混乱や憔悴の色を見せる中、

シャルルの瞳だけは相変わらず濁っていた。




ケイタ「さて、結構久しぶりでしたがいかがだったでしょうか?」

竜崎「一つだけ質問が。オルタナティブの変身、あれはディケイドに出演した時のような感じなんですか?」

智乃「はい。確か作者さんが初めてオルタナティブを見たのはリアルタイムで見ていた仮面ライダーディケイドのネガの世界のエピソードだったからだそうです。」

竜崎「成る程納得しました。そして狙いすましたようにそろそろ時間のようです。」

(ED ダニー・カリフォルニア DEATH NOTE)

智乃「次回、Fake number Four その7!」

竜崎「見せて差し上げますよ正義は必ず勝つという事を。」


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Fake number Four その7

ケイタ「前回は、確か俺たちの視点から山田先生とデュノアの奴の正体がわかったところまでだっけ?」

セブン『今回で一区切りで、次の回でタッグマッチまでいくそうだ。』

紗路「本当にいけるの?この作者無謀にもまた連載を増やそうとしてるらしいじゃん?」

セブン『………それ本当か?』

ケイタ「よし、じゃあ俺達が作者を説得してる間に、どうぞ。」

(OP WAKE YOU UP ケータイ捜査官7)


1

惚けたまま立ち尽くすケイタ、一夏、海之、真耶の4人を他所に蓮はシャルルのデッキを回収して銃を向けた。

 

「お前も来てもらうぜ。」

 

「………。」

 

至極不服だ。

とでも言うように非常に怠そうにシャルルも立ち上がった。

たしかに銃口を向けながら首に下げた待機状態のISも回収する。

 

「さっさと歩け。」

 

「………ちっ。」

 

立ち上がり服の埃を払う。

促されるままに歩き始めた。

 

「あ、蓮!俺たち理世さん家から来たから。」

 

「なら大所帯だが天々座の家で会おう。」

 

それぞれが別々のルートから鏡を通り理世の部屋に集まる。

 

「え? 山田先生にデュノア君?」

 

「2人もライダーだったの!?」

 

「もう何がなんだか………。」

 

心愛と千夜は割と平気そうだが紗路はまだ鏡から人が飛び出てくる事に慣れないらしい。

勘違いしないで頂きたいのがそんな光景見慣れる方がおかしいのだ。

 

ざっとだが3人にベンタラで何があったかを話し、

シャルルと真耶が部屋の真ん中に座らされる。

 

「それじゃあ詳しいお話を、と行きたい所だが、

ケイタ、一夏、手塚。ちょっと来てくれ。

それからデュノア。ベントしたアビスのデッキを寄越せ。」

 

乱暴に水色の四角い物が蓮の顔に向かって投げつけられる。

難なくキャッチされたそれはサメの口を象った紋章の付いたアドベントデッキ、まごう事なくアビスのデッキだ。

 

「一夏。手を出せ。」

 

可愛らしく小首を傾げながら差し出した一夏の手にアビスとオルタナティブのデッキを握らせる。

 

「手塚。持ってるデッキを全部ケイタに渡せ。」

 

セイレーンとスティングのデッキをケイタが受け取る。

 

「ケイタ。俺にドラゴンとスピアーのデッキを寄越せ。」

 

言われた通りにデッキを渡すケイタ。

 

「手塚。俺のデッキを預かれ。」

 

ウイングナイトとインサイザーのデッキが海之に渡される。

 

「最後に、 桐間。俺たちのISを預かってくれ。」

 

「………あ、そっか。これで誰も戦えない。」

 

「そういう事だ。俺も銃の弾は抜く。」

 

紗路に待機状態の赤龍、黒翔、リヴァイブカスタムⅡが渡されスタームルガーから全ての弾が抜かれて、ホルスターに納められた。

 

「それじゃあ、その……なんだろ?話して、くれますか?」

 

はい。と短く答えてまず真耶がデッキを手に入れた顛末を語った。

 

「母親を殺された子どもの心につけ込むとは、

余程死にたいらしいなゼイビアックス。」

 

壁にかかっていたHK416というアサルトライフルを手にしながら蓮は唾棄する様に吐き捨てた。

 

「酷い…。」

 

周りも似た様な反応だ。

死んだ目のままかったるそうにしているシャルルと緊張した面持ちのままの一夏を除くが。

 

「いえ、そんな。

どちらかと言えば酷いのは母が死んだのに取り乱しもしなかった私の方ですよ。」

 

こんな血も涙もない。と自嘲気味に笑う真耶。

 

「そんな事ないよ!山田先生優しいよ!」

 

「そうですよ。いくらライダーだからってあんな敵だらけの中真っ先にデュノアを助けに行くなんてそうそう出来ませんって!」

 

「網島君、保登さん。」

 

ちょっと泣きそうになってる真耶を他所に、

というかそっちにははなから興味ないとでも言う様に416をいじり続けていた蓮が口を開いた。

 

「そっちの話はわかった。ただ問題はお前だ。」

 

416を元に戻し、今度はサブマシンガンのコーナーに向かいながら喋り続ける。

 

「一応、シャルル・デュノア。

と今は呼んでおくが、お前は何者だ?」

 

「? レンそれどうゆう事?」

 

「シャルル・デュノアって本名か?って話だ。」

 

「偽名、ってこと?」

 

意外にも紗路が口を開いた。そうだ。

と言って手にしたUMP45 (無論モデルガンだ)に弾が入ってるかを確認する。

 

「デュノア社代表取締役社長のアルベール・デュノアの妻、ロゼンダ・デュノアには病気の後遺症で懐妊能力がない。」

 

「えっとつまり?」

 

『子供を産めない身体って事だ。』

 

今まで黙っていたセブンがグラインダーとシーカーを伴いながら前に出る。

デモリッションを着身しっ放しのゼロワンも話の本題を察した様で一夏を守る様にセブンと並び立つ。

 

「そ、それ本当なの?」

 

全員を代表して千夜が蓮に詰め寄る。

 

「アキツネがガセネタを持って来た事はない。」

 

蓮の4人の中で一番大柄かつ趣味がスポーティーなせいで誤解されがちだが、

アキツネは機密収集をポリーから一任される程情報収集が得意で今も米国内のあらゆる諜報機関からお声がかかるほど有能なのだ。

故に持ってくる確実な真実と言って良いのだ。

 

「お前は誰だシャルル・デュノア?」

 

何度もくどい様だがモデルガンでもあると無いではだいぶ違うと判断したのかUMP45を構える。

フッ、とシャルルは今にも消えそうな薄ら笑いを浮かべながらポツリ、ポツリと語り出した。

 

「私は妾の、愛人の子供なんだ。」

 

 

 

2

彼、シャルル・デュノアは、いやそう名乗らされる前の性別を偽らされる前の名で呼ぼう。

 

彼女、シャルロット・コンスタンはフランスの片田舎のとある農地で育った。

父親は居なかったが、優しい母がいたから寂しくはなかった。

彼女が13歳の時、母が病気で死ぬまでは。

 

葬儀が終わると父の使いを名乗る者たちに連れられてデュノア社に行き、そこで初めて父に出会った。

会ったと言っても親子らしい会話などなく、

事務連絡とそう変わらない物だった。

唯一家族らしい何かと言えば正妻に泥棒猫の娘となじられ殴られた事ぐらいか。

 

その後高いIS適性があるのがわかり、

シャルロットはデュノア社のテストパイロットになった。

というかやらされた。

 

しばらくは何も無かったかが織斑三春が、世界初のIS適性を持つ男性が現れると直ぐにシャルロットはシャルルとして生きる事を強要された。

 

何故そんなことをする必要があったかと言えばいかにデュノア社が量産機ISのシェアが世界第3位の大企業にまで登り詰めても設立当初からの技術・情報力不足に悩まされ、未だ生産できるISが第2世代止まりであることから経営危機に陥っていたからだ。

 

つまりシャルロットがシャルルにされたのは経営危機の回避のための広告塔および第3世代以降のISのデータ収集のため。

速い話が客寄せパンダ兼間諜という訳だ。嫌だと思った。

 

テストパイロットになるくらいは生活のためと思えば我慢できた。

そのせいで時に戦場にいかなければならないのも、

人を殺さねばならないのも億歩譲って仕方ないとしよう。

だが母から貰った名前を棄てなければならないのは我慢ならなかった。

 

名前を棄てろ。母親との繋がりを断て。

 

それはシャルロットにとって死ねと言われるのと同じだった。

死にたく無い。そう思っていた時だった。

彼女がゼイビアックスにデッキを渡されたのは。

 

「話は聞いてるよシャルロット・コンスタン君。

その名前でいられるのも後僅かだそうじゃないか。

ところで、そんなことをした方がいいと進言した男は私にとっても邪魔な人間なんだ。

どうかね?いい協力が出来そうだと思うんだ。」

 

一も二もなく引き受けた。

オルタナティブのデッキで変身してその男が乗っていた車ごと丸焼きにして殺した。

その男は父とその正妻だった。シャルロットは焦った。

別に父を殺した罪悪感や悲しみがあったからじゃ無い。

 

とうの昔、会ってすぐに彼女は父に失望していた。

だが全く当てにしていなかった訳では無い。

申し訳程度だがデュノア社の社長の子供という立場に守られている事は理解していたからだ。

彼女はゼイビアックスを問いただした。

 

「このままじゃ私が私じゃなくなるとかそれ以前の話だよ!」

 

「? 何を言っているシャルロット君。

君のお父上とその愛する奥方は生きているじゃないか。」

 

ゼイビアックスの背後から自分が殺したはずの両親とデュノア社の幹部たちが現れる。

一見いつもと変わらない。しかしデッキを持つシャルロットには鏡に映るその姿が全員歪な怪人の姿に見えた。

 

「ところでだが、シャルロット君。

いや、もうシャルル君か。

つい先程の取締役会で君の次の仕事が決まった。

アビスというライダーの力を使って企業スパイをしていた探偵がいるんだ。

彼を始末してくれるかね?」

 

その日からシャルロットはシャルルになった。

死にたかった。または何も考えたく無かった。

結局はゼイビアックスにいいように使われていただけなのだ。

シャルル・デュノアという人形の持ち主が変わっただけ。

そんな風に考えたらもう自分が殺人を犯すぐらいじゃ何も感じなくなっていた。

 

 

 

3

息を切らしながら人通りのない道を何かから逃げ続ける男がいる。

七三の髪型に黒いスーツ。

艶のあるネクタイを硬く結んだいかにもサラリーマンといった感じの男だ。

しかし男、 坂井研司(さかいけんじ)は探偵だった。

 

主に経済犯、産業スパイなどの事件を扱う探偵だった。

正義感から始めた、向き不向きとか特に考えず始めた仕事だったが天職とまではいかないが上手くいっていた。

 

さるISメーカーの恨みを買ってしまい、男の分際で!

と命を狙われるまでは。

 

(折角この仕事が楽しくなって来たのにな。)

 

そうな風に諦めかけていた時、ゼイビアックスが彼の前に現れた。

ベンタラ越しに企業が殺し屋を雇っている証拠を手に入れ、

その会社を脅迫してピンチを乗り切った。

これで一安心だ。そう思い夜、バーで1人祝杯を挙げた帰りだった。

 

「やあ、無事災難を乗り切ったようだね。

ひと段落したばかりで悪いが、

デッキ代代わりに一つ仕事を引き受けてくれるかね?」

 

特に断る理由もなかった研司は二つ返事で引き受けた。

依頼内容はデュノア社の内偵調査。特に怪しい所もなく、

普通に終わる仕事かと思われた。

 

今日一日社長の息子を尾行して終わろう。

そう思いシャルルを観察しながらも、

祝杯を何にしようかなどと考えながら歩いていた時だった。

 

背後からアドベントビーストに、サイコローグに襲われた。

契約ビーストが守ってくれなければ不味かっただろう。

その後、このままつけられては不味い。

と思い変身して迎撃しようとした時だった。

 

「あんたが 坂井研司さん?悪いけど死んでもらうよ。」

 

鏡の中から現れたオルタナティブに攻撃された。

流石に生身のままで攻撃をされては堪らない。

殴られた腹部を抑えて、口から出る血を拭いながらデッキを構える。

 

「仮、面………ライダァアアアアア!」

 

<SWORD VENT>

 

変身と同時にアビスセイバーを二刀構え、

悲鳴を上げる体に鞭を打ち走る。

痛む頭でなんとか戦略を練った。

カードをあえてドローさせてバイザーに読み込ませようとした瞬間に両腕に攻撃。

デッキを奪って逃げる。

 

勝つ必要はない。

それだけならこの体でもなんとかなる。

ふらつきながらもオルタナティブがカードを引いたタイミングで、

最高の瞬間に剣を振り下ろせた。

 

しかしその剣がオルタナティブにあたる事はなかった。

突然左側から投げ飛ばされて来たアビスの契約モンスター、アビスラッシャーと共に倒れたからだ。

 

「あ、あいつは!さっき襲って来た………。」

 

投げたのは言わずもがなサイコローグだった。

アビスが契約ビースト共々動けないのを確認して、

オルタナティブはカードを使った。

 

<FINAL VENT>

 

バイクモードに変形したサイコローグにまたがり、

スイッチを入れスピンさせる。

タイヤ越しに柔らかいものを潰す様な生々しい感触が伝わって来た。

 

空を仰ぐ。水色の粒子で軌跡を描きながら

坂井研司はアビスのデッキのみを遺しベントされた。

 

 

 

4

「その後直ぐにIS学園への編入を命令されて、

私はここに来た。おしまい。」

 

ちゃんちゃん。と投げやりに言いながら、

シャルルは薄ら笑いを浮かべたまま泣いた。

 

「以上がこの後多分ゼイビアックスに始末………されるまでもないか。

国に呼び戻されて、黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も裁判をうける権利もないまま消される哀れな操り人形(ピエロ)の全部だよ。」

 

「………デュノア、お前女だったのか?」

 

「いやいや蓮違うだろ?」

 

「確かにそこも驚きだったが」

 

「大事なのはそこじゃないよね?いやそこも大事だけど。」

 

「………こ、この場合って悪いのはゼイビアックス、

ていうか貴女は脅されてただけよね!?」

 

「そうだよ!シャルル、じゃない!

シャルロットちゃんは悪くないよ!」

 

紗路と心愛が言う。

しかし毒気を抜かれた蓮がUMP45を戻しながら冷淡に呟く様に言った。

 

「お前らは実際に目にするまで仮面ライダーやアドベントビーストなんて物を妄想した事さえなかったろ。」

 

言外に説明したところで誰にも信じられないと言っているのだ。

確かに実物を見たって信じられない場合もある。

 

「それだけじゃない。一応IS学園の特記事項に

『IS学園に在学してる限りどこの国の法でも裁けない』

とは有るが今回レベルの余程の事が起こった場合それを無効に出来そうな裏技は俺でも4個は見つけた。

やろうと思えば国はどんな手段を使ってもデュノアを呼び戻せる。」

 

「だからって何も出来ない訳じゃ!」

 

「何が出来るの?

ISも持ってなければ仮面ライダーって訳でもない。

その歩くケータイみたいなのを持ってる訳でもない。

君なんかに何が出来るのさ。」

 

「それは………。」

 

「考えてないくせに言うなよ。

他人のために動くなんて偽善(ポーズ)してるんじゃないよ助ける気なんてないくせに!」

 

シャルルが心愛につかみ掛かろうとした時それを後ろから止める人がいた真耶だ。

 

「それはあなたが勝手に諦めてるからです。」

 

「離して。」

 

「それはあなたが言ってくれないと伝わらないからです。」

 

「離せよ!」

 

「離しません!先生は怒りました!

IS学園に残りなさい!

助けと欲しい時ぐらい助けてって言いなさい!

じゃないと!……私やコンスタンさんのお父さんみたいな、人の痛みが分からない大人になっちゃいますよ!」

 

真耶はシャルロットを自分の方を向かせ、きつく抱きしめた。

 

「何でそこまでするの?」

 

「勘違いしないでください。

出来の悪い生徒の学校に行く態度を改めさせる教師としての当たり前の義務です。」

 

「秘密を守る理由なんてないのに。」

 

「生徒のプライバシーを守るのも教師として当たり前の事です。」

 

「でも僕は人を殺した事だって……。」

 

「未遂ですけど私だってあります。

アキヤマ君を殺そうとしました。

これからは私を反面教師に真っ当に生きてください。」

 

「居るだけで、秘密を知っちゃっただけで迷惑かけてるよ?」

 

「生徒が教師に迷惑かけるなんて!

人が人に迷惑かけるなんて当たり前です!」

 

『別に機密事項の共有ぐらい普通だ。』

 

今まで黙っていたセブンがケイタの肩に乗りながら言った。

 

『人は誰かを信用出来る生き物だ。2人ぼっち(バディ)他の誰か(バディ)が心を受信しあって仲間(パーティ)になる。人間の特権ではないか。』

 

『人間と我々仮想生命体でもそれが出来るのだ。

人間同士で出来ない理由はない。』

 

一夏のもとに戻りながらゼロワンも言った。

 

『時間はかかるかも知れませんが我々もレン様も力になりますよ?』

 

「サード。勝手に決めるな。」

 

「じゃあ秋山はやらないのか?」

 

「手塚。勝手に決めるな。」

 

「秋山君は素直じゃないなぁ?」

 

「調子に乗るな宇治松。」

 

「な、なんかよくわかんないけど私も相談ぐらいなら乗るし!」

 

紗路も皆に続いて手を挙げる。

 

「……本当にいいの?」

 

「おう。任せてくれよ。最終的になんとかするから。」

 

シャルロットはシャルルからシャルロットに戻った。

許されないに決まっている。

許してくれないに決まってる。

そう思って抱え続けていた物が一気に崩れ、軽くなった。

シャルロットは泣いた。その後直ぐに眠ってしまった。

シャルロットを背負いながら真耶はケイタからセイレーンのデッキを受け取り鏡の前に立った。

 

「それじゃあ私はコンスタンさんを連れて帰ります。

皆さんくれぐれもこの件は他言無用ですよ?」

 

「勿論です。」

 

「口が裂けてもいいません!」

 

「宜しいです。でも最後に、誰も見えないところでぐらいはシャルル・デュノアって呼ばないであげてくださいね?」

 

「もちろん。あっちがホントの名前ですし。」

 

嬉しそうに微笑むと真耶はベンタラにダイブした。

 

「俺も帰るか。手塚。デッキ返せ。」

 

ウイングナイトのデッキを受け取り、

ドラゴンナイトのデッキをケイタに返す。

 

「ラビットハウスで会おう。」

 

「ん、またな。」

 

ベンタラにダイブし、置いていたバイクに跨り発進させた。

 

(サード。アキツネとジュリエットにデュノア社を調べる様に伝えてくれ。

理由は適当に考えてくれ。)

 

《了解しました。しかし、レン様もすっかりケイタ様に毒されましたね。》

 

(うるさい黙れ。)

 

憎まれ口を叩きながらもヘルメットの下のその顔は心地よさそうに笑っていた。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

セブン『一応タグに原作キャラ死亡と書いては有るが一エピソードに2人ぐらいの割合で死んでいる気がする。』

紗路「なんだか私も自分の命が心配になって来たわ。」

ケイタ「大丈夫。俺が陳情書提出しといたから。
そんな事よりそろそろ時間だ。」

(ED 雨の日には 雨の中を 風の日には 風の中を ケータイ捜査官7)

紗路「次回、Fake number Four その8!」

セブン『これが、明日のリアル!」


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Fake number Four その8

ケイタ「前回は確か、、どこまでいったっけ?」

サード『真耶様が良い教師だったというお話です。』

ラウラ「ふん。くだらないな。」

ケイタ「別にお前に分かって欲しいなんて1ナノも思っちゃねえよ。」

サード『まあまあ落ち着いて。このエピソードと次のエピソードで決着のようですし。』

ラウラ「まあ結果は見えているがな。見るがいい。」

ケイタ「そんな事言ってられるのも今のうちだぜ?」

ラウラ「ほう?」

サード『ありゃありゃ。収集つきそうにありませんね。ではどうぞ。」

(op DIVE IN TO THE MIRROR KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT)


1

ついにこの日が来た。

漸くか、と思う気持ちもあれば思ったよりも早かったな、とも思う。

空を仰ぐ。6月には貴重な蒼穹が広がっている。

 

『ケイタ。分かってるとは思うが、

鳳鈴音の敵討ちだからといって張り切りすぎるなよ?』

 

「おう。チーム戦を蔑ろにしたりしないよ。

シャルロット。」

 

「え?うん。」

 

個人用通信(プライベートチャンネル)で話しかける。

 

「勝とうぜ。」

 

「う、うん!」

 

『2人時間です。とも準備いいですか?』

 

教員管制室から通信が入る。

 

「はい!いつでも行けます!」

 

シャルロットが元気よく答えた。

続いてケイタも準備万端です!と答える。

 

「セブン、アシスト頼む。」

 

『了解だ。バーチャルブーストフォングラインダー着身!

IS打鉄赤龍と感覚を共有する。』

 

す、と力が、セブンが流れ込んでくる。

体がライダーに変身した時並みに軽くなる。

 

2人は同時にアリーナに出た。

反対側にはほぼ同じタイミングで出て来たラウラと打鉄を鎧った篠ノ之箒がいる。

 

「会いたかったぜチビ野郎。」

 

「ふむ、一回戦は貴様か。

教官の劣化コピー共との前哨戦には丁度良い。」

 

「言ってろ。

最初っから最後まで極めてハードボイルにこなしてやるよ!」

 

ケイタはラウラにシャルロットは箒に向かって行く。

なぜこの4人が戦うことになったか。

それは約一ヶ月前前に遡る。

 

 

 

2

シャルルが実はシャルロットだと分かった次の日の朝、

一年一組の教室はざわついていた。

 

「それって本当?」

 

「ぽいよ!なんでも出所は生徒会長らしいし。」

 

「ホントの本当に?じゃあ網島君と」

 

「呼んだ?」

 

「わぁ!あ、網島君。別に全然!ねぇ?」

 

「ウンウン!」

 

「そう…。」

 

特に関心のないまま席についた。

 

(昨日シャルロットに返し忘れたデッキ返したいところだけど昼休みまで無理か。)

 

なんてボーッと考えてるうちにホームルームが始まった。

 

「何やらくだらない噂が流行っているらしいが、

あんな物に惑わされんように。」

 

そこからはただの事務連絡で途中蓮がサードとデッキ越しに話してた以外特に変わった事はなかった。

 

「なあシャル」

 

ロットと言いかけて思わず言葉をつまらせる。

肩を叩きながらだっからこちらを振り向いたシャルロットがちょっと青い顔をしている。

 

見ると一夏と蓮もまずそうな表情をしている。

心愛だけよく分かってない感じでポカン。としてる。

 

《ど、どうするんだケイタ?》

 

(いや俺に言われても!)

 

「シャルって新しい渾名?」

 

空気読めバカ!思わずケイタがそう叫びそうになった時。

 

「なんだ心愛知らなかったのか?

2人は来月のタッグトーナメントで優勝する為にコンビネーションを高めようって話になった時にファーストネームで呼び合う事にしたんだ。だよな?」

 

「そ、そうそう!ねぇあ、、、ケイタ、君?」

 

「う、うん。そう。そうだったよなシャル。」

 

教室内が再び騒つく。

 

「ガッカリ………。」

 

「でもそれはそれで」

 

「アリよりのアリだね!」

 

「てことは秋山君は織斑君と!」

 

などとクラスが違う話題で盛り上がり始めた折を見てケイタはシャルロットを連れて廊下に出た。

 

「これ。昨日返し忘れてたから。」

 

「あ、そういえばすっかり忘れてたね。」

 

オルタナティブのデッキを受け取りながら恥ずかしそうにはにかむシャルロット。

こんな表情を見てると美少年っぽいけど女子だなと思うケイタ。

 

「ただそのデッキ、俺らのと全然違うよな。」

 

「確かに。昨日は見比べたりする余裕とか無かったけど。」

 

それぞれデッキからカードを一枚ずつ引き抜き比べてみる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「これ、詳しく調べてもらった方がいいのかな?」

 

「調べるったってどうやって?

学園の設備でやったら間違いなくログとかでバレそうだけど?」

 

「確かに……。」

 

『なら私に考えがある。』

 

「え!?い、今の誰?」

 

「セブン。」

 

そう言ってホルダーからセブンを取り出すケイタ。

 

『改めてよろしく頼むぞシャルロット・コンスタン。』

 

優しく笑いながら挨拶するセブンにつられてシャルロットも笑う。

 

「よろしくねセブン。」

 

「で?考えって?」

 

『藤丸立香に調べて貰うんだ。

彼ならライダーの事を知ってるし、

我々フォンブレイバーを作った水戸博士の孫弟子。

腕も確かだ。都合が合えば引き受けてくれる筈だ。』

 

「成る程。

じゃあ昼は皆で立香さん達のラボで食べよっか。」

 

「そんな大勢でお邪魔しちゃって平気かな?」

 

「セブン。予め連絡入れといてくれる?」

 

『やっておこう。』

 

 

 

2

同じ頃、ベンタラのゼイビアックス基地にて。

間明は遅めの朝食(もちろんカップ麺)を取りながら仕事の追い込みをかけていた。

 

「ふぅ、どこもペラペラなファイアーウォール。

破りがいないな。」

 

「CIAのセキュリティーを突破した後のセリフじゃないな。」

 

「やあエムちゃん。変わりなさそうだね?」

 

「ウォームアップにもならなかった。

しかし、私のサイレント・ゼフィルス、

どんな改造をしたらあんな性能を出せる?

ちょっと加速、ぐらいのつもりで瞬間加速(イグニッション・ブースト)並のスピードが出るぞ?」

 

今後の報酬の前払いと君の然るべき戦いの為にと言われ改造を許したが流石にここまでとは思ってもいなかった。

 

「我々カーシュの科学はこの地球の科学を遥かに上回る。

ただそれだけだよ。」

 

2人の背後のワープ装置から見慣れたスーツ姿の女が帰って来た。

 

「お帰りなさいませゼイビアックス将軍。」

 

「ただいま。調子はどうかな?」

 

「すこぶるいいです。あなたは?」

 

「あまり良くなかったね。全く強情だよ彼女は。」

 

「彼女?」

 

「ああ、エムちゃんにはまだ話してなかったね。

仮面契約者明彩(カメンライダーキャモ)の事だよ。

まだデッキを受け取っていない唯一のライダーさ。」

 

「彼女がいれば全ての仮面契約者が揃う。

その時こそ残る仮面契約者達は選ぶ事となる。

私の配下になるか敵として処分されるか、ね。」

 

そう言って胸ポケットから黄緑色のカメレオンのライダーズクレストのついたアドベントデッキを取り出す。

 

「ところで、あの後トラストとトルクはどうなった。」

 

「それがトラストは殺る気になったのですが、

トルクが命令違反を。」

 

「命令違反?一体どんな?」

 

「アックスに手を出した挙句、

止めようとしたスピアーをベントしたんです。」

 

「なんだと? それは重大な裏切りだ。」

 

「しかも同士討ちをしてる間にセイレーンとオルタナティブが網島君達と結託しました。

こちらが確実に不利です。」

 

「確かに。

エム君に出張って貰うわけにはいかないからなあ。

仕方ないもう少し温存しておきたかったが。」

 

「ストライク、ですね。」

 

「ああ、山田真耶。そして残りのライダーのうち誰かが動けなくなるようなシチュエーションを演出するんだ。」

 

「でしたらビーストを二体貸して頂けますか?

確実に一人戦闘不能に出来ます。」

 

「ほう。大した自身だ。策があるとみたが?」

 

「はい。来月中旬にIS学園で学年別のタッグマッチトーナメントがあります。

上手くやれば5人のライダーを釘付けにして一人を確実に倒せます。」

 

「宜しいでは早速準備に取り掛かれ!」

 

「はは!」

 

 

 

3

昼休み。

集まった一同を立香とマシュは快く迎えてくれた。

 

「皆さん大変ですね。男子というだけで注目の的なんて。」

 

「お陰でここと屋上ぐらいしか落ち着いて飯食える場所がないですよ。」

 

「こらこらケイタ。

ここを溜まり場みたいに言わないの。

立香さんとマシャさんのイチャイチャタイム奪っちゃってるんだから。」

 

「な!仕事場!ここ仕事場だから!」

 

「わ、私達はちゃんとTPOをわきまえてます!」

 

「お前らあんまり年上を揶揄うんじゃない。

それやりに来たわけじゃないだろ。」

 

ほら座った座った。と言いながら二人を誘導する蓮。

 

「ま、確かに内緒話をするにはいい場所なのは否定しないがな。」

 

そう言って蓮は全員のケータイにデータを配信した。

 

「上手く騙してアキツネとジュリエットにデュノア社について探らせてみたが特に何も見つからなかった。

戸籍情報なんかもハッキングしてみたらしいが、

アルベール・デュノアもロゼンタ・デュノアも存命のままって事になってる。

シャルロット・コンスタンもな。」

 

「え!てことは!」

 

皆が一斉にシャルロットの方を向いてから再び蓮の方を向く。

 

「大方米国海兵隊の悪徳少佐がフランス政府を脅迫でもしたんだろうな。」

 

『? どこかもなにも全てレン様の仕業でしょう?

無理矢理協力させられるこちらの身にもなってください。

電子頭脳が震撼しました。

人間で言うところの心臓が止まったかと思うというやつ「サード。頼むから空気を読め。」? フォンブレイバーに呼吸器官はありません。』

 

「お前なあ……。」

 

「ふふふ。ありがとうレン。」

 

「俺は自分のやりたいようにやってるだけだ。」

 

「はいはいレンの照れ屋さん。」

 

「黙れファーストキスはソース味。」

 

「ちょっ!れ、レン!それは今関係ないでしょ!」

 

「そうだな。だから話を戻そう。」

 

上手く逃げた蓮が何枚かの紙を取り出した。

 

「これって、今度のタッグマッチトーナメントの登録用紙?」

 

「ああ。取り敢えずアキツネ達の根回しが終わるまでコンスタンとデュノアが同一人物だって知られることは避けたい。

だから秘密を知ってる奴同士が今度のタッグマッチのペアになればコンビネーション確認って理由で二人だけの時間を増やせば他の奴らも声掛けづらくなるし、

秘密を口走っても問題ないことの方が多くなる。」

 

「成る程。」

 

「あれ?でもそうなると、私、ケイタ君、蓮君、一夏ちゃん、シャルロットちゃん、千夜ちゃん、海之ちゃんだから一人余っちゃうけど?」

 

「俺は兄の方の織斑と組む。

確かコンスタンとあいつは相部屋だろ?

だったら俺との訓練って事で、

あいつとコンスタンの接触する時間を減らせれば

それだけ奴に秘密がバレるリスクが減る。」

 

「おぉ!いけんじゃんそれ!」

 

「問題は三春兄が無自覚なだけでモテるって事だけど?」

 

「そこは大丈夫だ。

使い方合ってるかは知らんが高嶺の花には手が出しづらいって奴だ。」

 

「考えたな秋山。」

 

「一限目に授業聞く片手間で考えたにしちゃ良くできてるだろ?」

 

「千夜が運動性能カス過ぎて真面にIS動かせないことを除けば。」

 

ピシッ!と空気が凍る。

千夜を覗いた全員が千夜の方を向く。

 

「ひゅ、ひゅるる〜。」

 

「宇治松さん、吹けてない。」

 

No way(マジかよ)……まあ、仕方ない。

手塚、お前更識辺りと仲良いだろ?

あいつになら最悪バレても問題ない。

が、更識がもうすでにローランディフィルネィ 辺りと組んでた場合は別だ。」

 

「わかった誘ってみよう。」

 

そんな訳でタッグマッチのペアはケイタとシャルロット、

蓮と三春、一夏と心愛、海之は簪と組めず四十院神楽と、となった。

 

そして申請書を提出した8人はそれぞれのやり方でコンビネーションの確認を始めた。

 

例えばケイタとシャルロットはグラウンドの隅で。

 

「で、僕らがやんなきゃいけないのはIS戦だよね?

なんでバスケ?」

 

「いや仲良くなる方法これぐらいしか知らなくて。」

 

「へえ。じゃあ子供の頃よくこれで遊んだんだ。」

 

「今もまだまだ子供だけど、ね!」

 

 

蓮と三春は初めからコンビネーションを考えず。

 

「織斑、本番は何があってもお前は右から仕掛けろ。

俺は左から仕掛ける。」

 

「は?何言ってるんだよ蓮!

そしたら俺がお前を守れないだろ!」

 

「何度も同じ事を言わせるな。

俺のもお前のも遠距離タイプのISじゃない。

守るならお互いの背中だけで十分。

それに俺はお前如きに労られる程弱くない。

最後に気安くファーストネームで呼ぶな。」

 

 

一夏と心愛はいつも通り

 

「なんで………こんな事に。」

 

「私は文系で、心愛ちゃんは理系だから教え合えば丁度弱点を補い合えるはずなのに!

なのに何回やっても何度やっても何故こうなる!」

 

「なんで迷宮入りするのー!」

 

ガン!と2人が同時にテーブルに突っ伏すのと同時に智乃が入ってきた。

 

「あの、そろそろ店の方手伝って貰えませんか?」

 

「智乃ちゃん助けて!」

 

「お姉ちゃん達全然勉強終わらないの!」

 

「それでも倍率一万倍のIS学園の生徒ですか?」

 

智乃の何気ないツッコミが二人の心を容赦なく抉った。

 

「おい落第コンビ!さっさと降りて来い!

天々座の分も働け!」

 

蓮の怒号が飛ぶ。2人は再びテーブルに沈んだ。

 

「なあセブン。一体2人の何がいけないと思う?」

 

『心愛が教える時は明らかに教科書以上の事を教えてしまっていて。

逆に心愛が教わる時は一夏が語彙力絶無の効果音しか無いような説明しか出来ないからでは?」

 

「……そう言やあったな昔そんな事が。」

 

それなのに何故一夏は毎回科目に限らず記述満点なんだろう?

と改めて不思議に思うケイタだった。その頃甘兎では

 

 

「どうかな?それなりに自信はあるのだが。」

 

海之がペアになった神楽を招いて始めて作ったスイーツを振る舞っていた。

 

「通りで、とても美味しいですわ。」

 

「そうか、それは良かった。

で、早速本題で悪いんだが……。」

 

 

IS学園では簪とロランが

 

「あの…ロラン?」

 

「なんだい?私の可愛い蕾ちゃん?」

 

「髪触り過ぎ。」

 

「おっと失礼!

どんな素晴らしい絹糸よりも綺麗だったものだから。」

 

「もう…勝つよ。」

 

「無論だ。まずはフォーメーションを」

 

それぞれがそれぞれのやり方で己を磨き、

一月が過ぎた。

ついに発表された対戦カードにはこうあった。

 

[第一学年第一試合 網島ケイタ&シャルル・デュノアVSラウラ・ボーデヴィッヒ&篠ノ之箒 

第一アリーナにて]

 

 

 

4

電磁手刀を構えたラウラは真っ直ぐケイタに、

やや遅れた箒は近接ブレードを構えてシャルロットに向かってくる。

 

「予想通りだな。」

 

「じゃ、ケイタ君。作戦通り行こうか。」

 

「セブン。頼むぜ。」

 

「了解だ。敵との距離500……300……今だ!」

 

まずケイタが飛び出した。

展開したグラインダーを盾のように構え真っ直ぐ突っ込んで行く。

 

「くらえ!」

 

「食らうか!」

 

電磁手刀を振るわれる直前で止まる。

シールドをかすめながら刃先が通り過ぎた。

そしてケイタはのけぞった姿勢のままシャルロットの方に斜め上に飛ぶ。

 

「逃げるな!」

 

レールカノンで追撃しようとするがシャルロットの援護射撃に邪魔される。

 

(篠ノ之箒は…クソ!役立たず!)

 

箒も同じように足止めを食らっていた。

シャルロットはアサルトライフルとショットガンの二丁持ちをしている。

 

「僕と遊ぼ?」

 

まるで一本線が見えてる様にラウラの真正面を避けながら銃撃で確実にダメージを与えていく。

 

「このハエがぁ!」

 

マイクロチェーンを放ちシャルロットの左手首を捕まえる。

 

「しまった!」

 

壁に叩きつけられるシャルロット。

衝撃で武器を落としてしまう。

 

「終わりだ!」

 

左手の電磁手刀を構えシャルロットを引き寄せるそのままシャルロットを貫くと重れたが飛んで来た物がマイクロチェーンを断ち切った。

 

(あれは打鉄のブレード?という事は!)

 

顔の右に凄まじい衝撃が走る。

頭に付いてるウサギの耳の様な形のセンサーが砕ける。

これ程のパワーの武装を持っているのは今アリーナにいる四機のうち打鉄赤龍だけ。

 

「足止めにもならんか、役立たずめ。」

 

角の方で伸びている箒を横目に吐き捨てた。

 

「言い残す事はそれだけか?」

 

シャルロットを助け起こしながら予断なく構えるケイタ。

 

「まあいい。二対一になったところで結果は変わらん!」

 

「言ってろ!」

 

「僕らが勝つ!」

 

 

 

4

「行け!左!そう!そこで援護射撃!行け!

ぶっ壊せー!ですわ!」

 

ナイトメアドーパントに魂を抜かれたっきり目覚めない鈴音をガクガクと譲りながらセシリアはモニター越しに

ケイタとシャルロットに声援を送っていた。

 

ラウラが遠距離攻撃を始めればシャルロットが敵を撹乱し

ケイタが切り込む隙を作り、

ラウラが切り込んで来ればケイタが身を挺して盾になり

シャルロットが遠距離から削っていく。

 

(よくたった一ヶ月でここまでのコンビネーションを仕上げましたわ!

何かコツとか有るんでしょうか?

だったら次こそ負けない為に是非ご教授願うとしましょう。)

 

それは待機室で見ていた一夏、心愛、簪、ロラン、海之、神楽、蓮も同じ意見だった。

三春だけは違う様だが

 

「二対一なんて卑怯だ。」

 

「篠ノ之を温存させる戦いを出来なかったボーデヴィッヒが悪い。」

 

「しかし本当に見事なコンビネーションだな。」

 

「あれの後でやらされると思うと自信ないですね。」

 

「四十院さん弱気だね?」

 

「私達が勝っちゃうよ〜?」

 

「ご安心を。負けるつもりは一切有りませんので。」

 

「こりゃ第二試合も見逃せないな。」

 

そんな風に軽い調子で呟く蓮だがどうにも不安が拭えないのだ。

 

(前回の自立型破壊ロボといい、

一月前のナイトメアドーパントといい、

どうにもこの学園は不吉だ。)

 

そう思えてならないのだ。何かは起こる。

もし起こるのなら飛び切りの厄ネタが。

そんな考えが顔に出かけた時だった。

 

《レン様、緊急事態です。

イニシエイト・クラック・シークエンスに酷似した方法でIS学園の防犯セキュリティが掌握されました。》

 

(!?……ファイブの、間明の仕業か?)

 

《断定には時間がかかりますが恐らく。》

 

(目的はなんだと思う?)

 

《そうですね、前回の無人機の様な兵器、

あるいはアドベントビーストやドーパントの様な怪人の投下などが予想されますが)

 

サードがそこまで言った所でウイングナイト、

スティング、アックスのアドベントデッキが耳鳴りの様な音を発し始めた。

 

「ちっ。最悪だ。手塚、更識聞こえたか?」

 

「うん。」

 

「ああ、バッチリとな。」

 

「聞こえた?どういう事だい簪?」

 

「俺たちが戻ってくるまで絶対に鏡とか鏡のかわりになる物に近づくなって事だ!手塚!念の為にこの場は頼む!」

 

「頼まれた!」

 

海之の声を背後に2人はデッキを構えて廊下に飛び出た。

近くの窓を見ると紫色のコブラのライダー、

ストライクが首を鳴らしながらこちらを見ていた。

背後には無数の群体タイプのアドベントビースト達が控えている。

 

「おいおい。パーティーにはまだまだ早い時間だぞ…。」

 

「本音の、仇!」

 

それぞれデッキを構えてポーズを取る。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「カメンライダー!」

 

ウイングナイトとアックスはそれぞれバイザーを引き抜き、

ビーストの群れとストライクに向かって行った。

 

<TRICK VENT>

 

分身を囮にウイングナイトは真っ直ぐストライクに向かった。

振るわれるダークバイザーが逆手に持ったベノバイザーで受け止められる。

 

「よう。はじめましてだな。」

 

「お会い出来て嬉しいよ。」

 

なんだかガサガサした気持ちの悪い機械で変換された声が返ってきた。

一種の動揺をつかれ、力負けし膝をつかされる。

 

「来ないのかい?ならこちらから。」

 

いきなり力を抜かれバランスを崩した所を蹴り飛ばされる。

 

<SWORD VENT>

 

ウイングナイトが立つまでの間にストライクは契約ビーストベノスネーカーの尾を模した突撃剣ベノサーベルを構える。

 

「はぁ!」

 

振り下ろされるベノサーベルを掻い潜りカウンターで寝たままでカポエイラの様なキックをバックルに当て、

そのまま上げた足を振り回した遠心力で立ち上がり、

バイザーにカードをベントインした。

 

<SWORD VENT>

 

ウイングランサーをを手に、ベノサーベルの荒々しい打撃を受け流しながら足払いや横回し蹴りなどのキック技で対抗した。

 

(サード、パターン計算。)

 

《はい、右上、左下、突き、右下、今です!》

 

繰り出された斬撃をウイングランサーの一番硬い持ち手の根本を守っているガードで受け閃光のような蹴りを左膝に放つ。

 

「ながっ!」

 

一瞬足を逆くの字に曲げられたとあっては流石のストライクも怯んだ様だ。

その隙を逃さず一歩下がり武器を持った腕の手首を蹴り上げる。

ベノサーベルはあらぬ方向に飛んでいった。

 

「トドメだ!」

 

ウイングランサーがストライクの脳天に振り下ろされる。

 

「ストライクゥウ!」

 

より前にベノサーベルとデストバイザーを構えたアックスが2人の間に割って入った。

 

「おいアックス!?」

 

「邪魔するな!こいつは、本音の仇は私が討つ!」

 

剣幕に圧倒されて動けなくなった一瞬に残っていた雑魚ビースト達に群がられる。

 

「しまった!待てアックス!せめて二対一で!くそッ!」

 

右、左。又は両方向から。ウイングナイトを無視してアックスの猛攻は続いた。

こいつだけはベントぐらいじゃあきたらない。

極上の痛みを味あわせてから捕まえて生身のまま嬲り殺してやる!

 

ありったけの殺意、憎悪、敵意を込めて繰り出される剣戟は確実にストライクを削っていた。

それはもう雑魚モンスターを相手にしながら見ているウイングナイトももしかしたら倒せるのでは?と思うほどに強烈だった。

 

しかし同時にこうも思った。

余りにもストライクが無抵抗じゃないか?と。

いくらアックスの剣幕が凄まじくとも、

むしろ凄まじいからこそ逃げ出そうとか、

なんとか立ち向かおうと思う物ではないのか?

 

「まさか、アックス戻れ!それは罠だ!」

 

しかしウイングナイトの叫び虚しくアックスは背後のウィンドウから現れたナイトメアドーパントに一瞬で魂を抜き取られて昏倒した。

 

「!?」

 

「ふふふ、よくやってくれたよ天々座ちゃん。

欲を言えばウイングナイト君やスティングちゃんも捕まえたかったけど、

そろそろ君のキャパシティが一杯か。」

 

(もうそんなに魂を吸収してるのか?

てかそんな事より今ストライクがあのドーパントの事を天々座って呼ばなかったか?)

 

動揺するウイングナイトにサードが答えた。

 

《以前閲覧したcode:W、仮面ライダーWの資料にはガイアメモリを使った精神体のみの実体化は可能と書かれていました。

恐らくそれの応用かと。》

 

(一番最初の犠牲者に見せかけた犯人ってわけか!

いや天々座も被害者だが。

兎に角奴が何をする気か知らんが不味いぞ!)

 

ストライクは魂の取り込み過ぎで思うように体を動かせなきなっているドーパントから幾人分かの魂を引っ張り抜くとナイトメアが入って来た鏡に向かう。

 

「ま、待て!」

 

ビーストに道を阻まれながらもなんとかストライクを追いかけようとするが上手くいかない。

 

「急いだ方がいい、

そのドーパントから核になってる魂を取り出した。

早く核を戻してそいつ自身の意思で変身解除させないとドーパントの身体に残ってる方の魂が昇天しちゃうよ?じゃあね。」

 

「な!待て!待てって言ってる!ストライク!」

 

『レン様大変です!気になってインターネットで調べてみました所、

理世様の通う学校でクラス一つの生徒全員が昏倒する怪事件が起きています。

急がなければ数十人の命が危ないです。』

 

「黙れサード!焦るだろう!」

 

<FINAL VENT>

 

こうなれば強行突破だ。

半端ヤケ気味にカードを切り、

雑魚ビーストの群れから脱出し、

ぐったりしているアックスを拾い上げるとストライクが出て行った鏡に手をかざす。

 

恐る恐る外の様子を伺う心愛が写っている。

そこにアックスとサードを投げ込んだ。

 

ケータイは投げる物ではありませーん!

とか聞こえたような気がしたが無視した。

次にストライクが行った先を探した。

そんなに離れてないのかすぐに見つかった。

 

(ケイタにコンスタン、てことはアリーナか!)

 

迷わず飛び込んだ。

 

「! 今度は蓮?なんだよ次から次に!」

 

「ほ、本当に何が…。」

 

見ると2人がかりでボコボコにされたのだろう。

ぱっと見でももう戦闘不能と判るほどに大破したシュヴァルツェア・レーゲンに埋もれるようにラウラが倒れている。

そこにストライクは蹲み込んだ。

 

「やあボーデヴィッヒちゃん。悔しくないかい?」

 

「悔…しい?」

 

「ああ。網島君に負けちゃったよ?今からでも挽回したくない?」

 

「あ、ああ。したい。私は…今すぐ力が欲しい!

どこまでも届く力が!」

 

「確かに聞いたよ。君の魂の叫び。じゃ、遠慮なく。」

 

そういうとストライクはスロットが3つ付いたダブルドライバーに酷似したドライバーをラウラにつけ、ガイアメモリの形になった魂をセットする。

 

変化はすぐに現れた。

飛び上がるように起き上がったラウラは頭を髪をちぎらん勢いで掻き毟りながら苦しみだした。

 

訳の分からない言葉を叫びながらまるで何か纏わり付くものを引き剥がすように暴れ出したが唐突に止まると、

先程とは打って変わって恐ろしい程の無表情で機械のような棒読みで告げた。

 

「Valkyrie Trace System boot」

 

「なんだと!」

 

「ダメ!」

 

2人が叫んだが動き出した機械(システム)は止まらない。

 

「今日から君が織斑千冬だ!」

 

グニャリ。

ストライクの言葉と共にラウラの纏うシュヴァルツェア・レーゲンが黒い液体に溶けた。

それはラウラを取り込むとISに関わる物なら絶対に知っている姿へと変身した。

 

「千冬さん?」

 

専用機、暮桜を纏った千冬になった。

しかし変化はそれに止まらない。

 

まず剣を、専用武器の雪片を持っていなかった方の左腕が異様に盛り上がり獣を思わせる爪を持った物にかわる。

 

手のひらから、その豪腕ならぬ巨腕に対してだが、やや小ぶりな戦斧が現れる。

 

次に顔だ。

右目が異様に膨れ上がりまるで銃のスコープの様な物が現れた。

 

続いて背中から折れた猛禽類の翼の様な物が生えて、

最後に足が、所々鱗の付いた剥き出しの筋肉の様な質感に変わり、

バッタとも恐竜ともドラゴンともつかない逆くの字の形に変わる。

 

変わり果てる。

 

「これが織斑千冬?なんの冗談だ?」

 

「いや、蓮。これ冗談でもなんでもなくマジだよ。」

 

「こんなの、私達にどうしろって言うの?」

 

気が付けばストライクの姿は消えていた。

3人の前にはもう手遅れなんじゃないかと思える異形、

それも尋常じゃない殺意を発している、のみ。

どうする?なんとか逃げて応援を待つか?

そう3人全員が思ったのだが

 

『ケイタ、アキヤマ、シャルロット・コンスタン。

最悪の知らせだ。アリーナのセキュリティーが何者かに掌握された。

応援も来ないし、逃げ出すことも出来ない。』

 

「嘘だろ?」

 

「██▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▃▃██▅▅▅▃▄▄▅▅▅███▅▅▅▃▄▄▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━━━!!!!!」

 

3人は一斉に散ってなんとかその嵐そのものの様な斬撃を伴う突進を避ける。

アリーナの壁に激突したラウラだった化け物はアリーナ全体を震わせながら壁にめり込んだ。

 

「自滅?」

 

「油断するなすぐ来るぞ!」

 

怪物は健在だった。殺意も力もまるで衰えていない。

地獄はまだ始まったばかりだとでも言う様に、

奴は走り出した。疾り出した。




ラウラだった化け物「███▅▅▅▃▄▄▅!!」

ケイタ「ねえ大丈夫なの!これ本当に大丈夫なの!?」

サード『現時点ではなんとも!
次回、infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来Fake number Four その9!』

ケイタ「戦わなければ生き残れない!
てかこんなん戦ったところで勝てるのかよ!」


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Fake number Four その9

仮面ライダーストライク「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは、僕がボーデヴィッヒちゃんがVTシステムを発動させたとこまでだったね。」

ケイタ「いや、うん…合ってるけどあんた何でここに居るん?」

一夏「ホントだよ死ねばいいのに」ガリガリ

ケイタ「一夏は何書いてんだよ?」

一夏「陳情書。こいつが酷い死に方をする様に。」

仮面ライダーストラトス「おおそれは怖い怖い。
それよりも読者諸君は続きを見たがってるじゃ無いかな?」

一夏「お前後で覚えときなさいよ?」

仮面ライダーストラトス「安心した前、記憶力はいい方だ。」

ケイタ「さ、さてさてどうなる?」

(OP GALACTIC WORLD インフィニット・ストラトス ヴァーサスカラーズ)


1

「散れ!少しでも時間を稼ぐんだ!」

 

届かないと分かっていても画面に映るケイタ達に海之はそう叫ばずにはいられなかった。

何も出来ない自分が歯痒い。

 

(結局私は何にも出来ていないじゃあないか!)

 

しかし悔やむばかりでは本当に何も変わらない。

何か、何かしなければ始まらない。

 

「神楽、ロランツィーネ。信じられないと思うが…」

 

「みなまで言うなミユキ。

ココアとカグラとそこのケータイ君から大凡の事情は聞いた。

あまりに荒唐無稽な話だが実物を見せられては信じざるを得ん。」

 

「全部話したよ。」

 

「私も流石にあなたや秋山さん達が噂の仮面ライダーだとは知りませんでしたが。

知ったからには何か手伝わせてください」

 

「そうか、、。すまない感謝する。」

 

さてまず自分達のカードを確認しなければ。

 

「私達がこの状況に介入出来るとすればまず私と簪のアドベントデッキ。

それから秋山のケータイとロランツィーネのISか。」

 

どうにか出来るかこれだけで?

どうしても不安になる海之。

 

「考えたって仕方ない!

今すぐに向こうに行ってあいつを倒す!それだけだろ!」

 

勇んだ三春が待機状態の白式を触りながら出ていこうとする三春。

 

「ま、待ってよ三春兄!

無策に突っ込んで行ってもダメだよ!」

 

「うるさい!」

 

一夏を突き飛ばしなお出て行こうとする三春。

 

「一夏ちゃん!」

 

「おっと!大丈夫かい?」

 

「あ、ありがとう。」

 

転びかけた一夏は無事心愛とロランツィーネにキャッチされた。

 

「織斑貴様!」

 

「うるせえ部外者は黙ってろ!

俺は誰に何と言われようと千冬姉の誇りを守る!」

 

そう言うと今度こそ三春は走り去っていった。

 

「誇りで飯が食えるか!」

 

苛立ちげにゴミ箱を蹴り飛ばしながら海之は頭を抱えた。

 

「いやミユキ。気にする事はない。

予想外の動きしかしないやつを計画に組み込むなど徒労だ。

取り敢えず私達が男子諸君の為に出来ることを考えよう。」

 

「そう…だな。織斑の事は最悪秋山に任せよう。」

 

「そうですね。秋山さんなら何とかしてくれます。」

 

『皆様レン様を過大評価し過ぎでは?』

 

「実際レンは充分チート人間だと思うけど?」

 

「と、兎に角どうしたら良いと思う!?」

 

「そうだな…取り敢えずここでは出来る事が少なすぎる。

もう少し設備が整った場所がないか?」

 

「マシュさんと立香さんのとことかは?」

 

『あそこの設備を利用出来ればフォンブレイバーも十全以上の力を出せます。』

 

「よし来た。私がスティングに変身してエビルダイバーと援護する。ロランツィーネ。簪を運んでくれるか?」

 

「もちろん。エスコートは淑女の嗜みだ。

君達3人も極力私のIS、オーランディ・ブルームのシールド圏内に居てくれ。」

 

「ラジャー!」

 

「分かりました。織斑さん走れますか?」

 

「うん平気。」

 

「では行くぞ!」

 

「仮面ライダー!」

 

スティングが先導し、次に一夏、心愛、神楽、アックスを背負ったロランツィーネと続く。

幸い廊下では誰にも出会わずラボまで来れた。

 

「マシュさん立香さん開けて!」

 

心愛がドアを叩くが学校全体のセキュリティが乗っ取られているせいか開かない。

 

「仕方ない、中にいる2人に入り口に近付かないよう連絡してくれ!」

 

「それってまさか…」

 

「ロランツィーネ合わせろ!」

 

「心得た!」

 

「ヤバイヤバイ早くしないと!」

 

「もしもしマシュ さん?今すぐ扉から離れて!」

 

一夏が言い終わるが早いかスティングとロランツィーネのダブルキックがラボのドアを蹴り飛ばした。

 

「…………………」

 

ドアを蹴破った2人以外は全員放心してしまった。

 

「さて、それじゃあ作戦を練ろうか。

藤丸さん。悪いが何か飲み物を出してくれないかい?」

 

 

 

2

<GUARD VENT>

 

ウイングウォールを羽織ったウイングナイトは何とか振るわれる戦斧の一撃を守りきったが勢いを殺しきれず壁に叩きつけられた。

 

「ぐっ!」

 

《レン様大丈夫ですか!?》

 

まだデッキにアクセスしたままだったサードが話しかけてくる。

 

「何とかな。だがそう長くは持たんぞ?」

 

ラウラだった化け物、

アナザー暮桜とでも呼ぼうか?

は恐ろしい程に強かった。

 

剣を振るえば常時零落白夜を使えるのか絶対防御を紙屑の様に斬り裂き

戦斧を振り下ろせば大地を砕き、

蹴りを放てばアリーナのシールドを砕いた。

おまけに操縦者の身体の負担をガン無視した効率的な攻撃をしてくる。

恐らく中の人間を消耗品のインナーフレームとして扱える様に設計されたシステムなのだろう。

 

ライダーの鎧に守られている蓮は兎も角ケイタとシャルロットはあちこち切り傷だらけでいちいち絶対防御を発動させられてはエネルギー消費も早い。

まだパイロットの心が折れていないだけマシか。

 

「ドイツも恐ろしい国になったもんだ。」

 

さらに恐るべきはストライクが新たに3人分の魂を投入した事でそこからエネルギーを得てる可能性がある事だ。

 

(もしそうなら先に潰れるのは俺たちだ!)

 

ウイングランサーを構え直す。

 

(つまり奴は最悪中のパイロットを殺したとしても止まらない。

中からボーデヴィッヒを救出しない限り止まらない。)

 

戦いにくいったらありゃしない。

手加減してたらこちらが殺られるが手加減して戦わないと中のラウラを殺しかねない。

 

ケイタとシャルロットに何とかこの事を伝えないと。

取り敢えずは2人を守らないといけない。

背中に合体したダークウイングの翼を広げ飛来しながらアナザー暮桜の顔面を蹴り飛ばし着地。

 

「蓮?」

 

「よく聞けケイタ、コンスタン。

あいつはほっといたらアナザー暮桜の力についていけず死ぬ。」

 

「!!」

 

「だから早く何とかするぞ。」

 

とは言うもののシャルロットの盾殺し(シルド・スピアー)さえ物ともせず

ケイタのグラインダーで足止めしようとしても簡単にジャンプで脱出され

制空能力はウイングナイトを上回る。

 

そんな見る限り隙なしの敵を労われと言われてもどうしようも無い。

何か作戦でもあれば!

 

《レン様、少々よろしいでしょうか?》

 

(サード?)

 

《一つ作戦がございます。

すぐに立香様達のラボに来てください。》

 

(わかった。ケイタには?)

 

《伝えてあります。》

 

(わかったダークウイングを置いていく。)

 

背中からダークウイングが分離し着地したウイングナイトはアナザー暮桜が無茶苦茶に破壊したアリーナのシールドの隙間から観客席に飛び、

鏡の様になっている手すりにダイブした。

 

 

 

3

(その作戦マジで行けんのかよ!?)

 

《行ける行けないじゃなくてもはやこれしか無い。だ。》

 

(最っ悪だ……でもやんなきゃ確実にゼロだ!)

 

振り下ろされる零落白夜をグラインダーで受ける。

すぐさま戦斧が振るわれそうになるが物理シールドを構えたシャルロットが割って入る。

 

「無理しないでケイタ君!私もいる!レンの契約ビーストも!」

 

2人がアナザー暮桜を抑えた隙に急上昇したダークウイングが、

上空から急降下体当たりをお見舞いした。

一瞬怯んだ敵にクローモードからナックルダスターモードに切り替えたグラインダーと盾殺し(シルド・スピアー)の一撃が決まる。

流石に効いたらしいが勢いが衰えた感じは全くない。

今度は何が来る?そう身構えた次の間には奴の姿は空にあった。

猛禽の様な翼を目一杯広げあり得ない角度から2人を斬りつけてきた。

ダークウイングは堪らず早々に撤退する。

 

《2人とも飛ぶな!全方位から攻撃されるぞ!》

 

セブンの悲鳴の様な叫びも虚しく2人は攻撃を受けきるので精一杯だ。

 

「この……贋物野郎が!」

 

グラインダーをクローモードに戻したケイタはしっかりと地面を踏み締める。

 

「セブン!シーカー着身!

視覚を極限まで上げてくれ!

その邪魔になるなら筋力とスピード以外全部削っていい!」

 

『!?何を言ってる!自殺行為だ!』

 

「このまま何もしないんじゃ自殺でも何でもない犬死だ!」

 

『…わかった。シーカー着身!』

 

す、と急にあらゆる物の動きが遅く見え始めた。

どんな物もまるで水の中にいる様にゆっくり動いている。

そんな世界で一つだけ異様に早い何かが視界の右端から来る。

 

アナザー暮桜だ。

 

ケイタはグラインダーの盾を構えながらそっちに走った。

アナザー暮桜は戦斧と零落白夜を交差させる様に構えて振り下ろす。

予想通りだ。X字に切り裂かれ砕け散る盾を振り払いそのまま上昇して去ろうとするアナザー暮桜を捕まえる。

 

「ぐっぅううう!」

 

一気に急上昇してこちらを振り落とそうとするが持ち前のガッツで耐えた。

 

「洒落た羽つけてんじゃねえか!」

 

少しずつ、少しずつ壁や地面に叩きつけられながらも体を上りグラインダーで翼を掴む。

 

「もっとオシャレにしてやるよ!」

 

渾身のパワーで左羽を引きちぎる。

バランスを失い落下していくアナザー暮桜。

ケイタを道連れにしたかっただろうが生憎両手が武器で塞がってる上に両脚はとても絡めるのに向いていない形の為それが出来ずケイタの渾身の右ストレートとシャルロットの射撃を受けながら地面と再開した。

 

「ケイタ君平気?」

 

「たりめーだよ。最後には、タフな奴が勝つ!」

 

敵の高速移動が不可能になったと知るとダークウイングも戻って来た。

再び三対一。

 

「██▅▅▃▄▄▅▅▃▃▄▅▅▅━━━!」

 

しかし向こうの殺意はまるで衰えていない。

 

「どうする?いい加減武器をどうにかしないとこっちがジリ貧だ。」

 

『それだけでは無い。

今は運動中でエンドルフィンが回ってランナーズハイに近い状態だから何とか立ってられているが集中を切らせば失血し過ぎて

早い話が貧血で倒れるぞ?』 

 

「つまりさっさと決めろって事だね?」

 

「シャッ!行くぜ!」

 

超スピードで襲ってくるとは言え一度あの全方位からの高速攻撃に慣れてしまえばそれ以外は欠伸が出るほど遅い。

 

(ちょっとずつだけどさばけてる!

これなら蓮達がどうにかするまで持ち堪えられる!)

 

(行ける!このままなら勝てる!)

 

ダークウイングの援護もあり背中合わせのふたりは時折アナザー暮桜にダメージを与える事も出来る余裕も出てきた。

後は蓮や一夏達を信じて耐えるだけ。

そう思われた時だった。

一機のISがシールドを斬り裂いて入って来た。

 

白式を鎧った三春だ。

 

「うおぉおおお!」

 

背後からの新たな敵に気付いたアナザー暮桜は零落白夜を零落白夜で受ける。

 

「は!?三春お前何しに!」

 

「千冬姉の誇りを守りにだ!」

 

ガムシャラに剣を振るう三春。

アナザー暮桜は軽くいなすとその背中に戦斧を振るった。

スラスターだった残骸を撒き散らしながら壁に激突する三春。

一撃で堕ちた。機体もパイロットの意識も。

 

「何しに来たんだアイツ!」

 

『考えるだけ無駄だ。』

 

「分かってる!けど愚痴ぐらい言わせろ!」

 

背後に堕ちた白式を庇いながらケイタはナックルダスターモードにしたグラインダーを振るった。

 

シャルロットとダークウイングも加勢したかったがラファールの物理盾は今までの攻防で限界寸前であり、

ダークウイングは作戦の都合上蓮の為に撃破される訳にはいかなかった。

しかしグラインダーも確実にダメージを蓄積してしまっている。

 

もしブーストフォンにもフォンブレイバーレベルの仮想意識が有れば絶叫して泣き喚いていたぐらいの無茶はさせてしまっていた。

 

メキメキと嫌な音を立てて自壊の始まるグラインダー。

流石に戦斧と零落白夜を受けきるだけの耐久はもう無い。

 

「ケイタよせ!仮に一夏の兄でもそんな奴放っておけ!

自業自得だ!」

 

「黙れセブン!こんな時に言うな!畜生!

こんな所で!こんな所で!こんな所でぇえええ!」

 

ついに指の一本が斬られ、続いて繰り出された戦斧を受けたが押され始める。

ギリギリと押さえつけられ刃先が右肩に食い込む。

 

すっ、と一筋の血が流れた。嫌な感じだ。

不思議と刃が身体を裂いて心臓を二つにしながら身体を抜けていくのが想像できてしまう。

 

「ま、不味い!ケイタ逃げろ!

今ならまだ腕一本取られるだけで済む!ケイタ!」

 

「なってたまるか。」

 

死を前に頭は血が昇り過ぎて緊張し過ぎてかえって冷静だ。

 

「それだけはごめんだ。」

 

しかし脳裏に蘇るのは今置かれている殺伐とした空気に反して楽しかった高校生活の一コマばかり。

 

「ケイタ!逃げろ!」

 

「これだけは違う!」

 

そして最後に

 

「まだ死んでたまるか!」

 

何よりも白く綺麗なあの女の子(いちか)の笑顔が

 

「ああああああああああ!」

 

また見たい。そう思って目を瞑りあらん限り叫んだ。

畜生もう死ぬのか?だがいつまで経っても痛みは感じなかった。

 

まさか即死かなんかだったのか?

怖いなと思いつつもうっすらと目を開ける。

 

まず固まったまま動かないアナザー暮桜、

 

そして口を開けたまま愕然としているシャルロット、

 

そして視界の右上に同じように口をあんぐりと開けているセブンの顔アイコンが表示されている。

 

「何?」

 

自分で驚いた。見れば振り下ろされた戦斧がグラインダーに掴み砕かれていたからだ。

おまけにグラインダーはパソコンのキーの様な模様の光が走り、

指が一本無いにも関わらず健在だ。

 

力任せに戦斧を奪い取り、それを持ったままの手でアッパー気味のパンチでアナザー暮桜と距離を取る。

 

衝撃で拳に纏わりついついた戦斧がバラバラに砕け黒いタールの様な物に変わり床を濡らした。

 

「………セブン?」

 

『あ、ああ!』

 

「このグラインダー光ってるの何?」

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ!

単一仕様逆鱗閃甲(げきりんせんこう)?』

 

「逆鱗、閃甲。俺の、単一仕様?」

 

「█▄▅▅▅▃▃▄▅▅▅━━━―!」

 

一瞬次に取るべき行動を忘れかけたケイタだったがアナザー暮桜の絶叫を耳にして直ぐに敵はまだ健在だという事を思い出す。

 

「セブン、残りのエネルギーは?」

 

『ほぼ無い。

どれぐらいかって言うと死にかけレベルだ。』

 

「なら後ろで伸びてるのからちょっと盗電してくんない?」

 

『了解だイニシエイト・クラック・シークエンス発動!』

 

セブンの仲介で白式からエネルギーを得つつケイタは逆鱗閃甲を操る術を探した。

 

(確かISってイメージが大事なんだよな、

て事は強く念じるだけでいいのか?

だとすれば今のこのグラインダーにくっついてる形も変えられる?)

 

試しにナックルダスターモードに変えてみると逆鱗閃甲は一瞬バラバラになると再びグラインダーを覆う様に張り付いた。

 

(よし。一回でも見りゃこっちのモンだ。

打撃を与える部分と最低限零落白夜を受ける分だけ覆って、後は剥き出しに!)

 

ナックルの一番出っ張った部分に閃甲を集めアナザー暮桜を殴る殴る殴る殴る殴る!

反撃しようと振り下ろされた零落白夜は薄く残した受ける部分の表面を刃がたたない様に滑らせつんのめった所にワンツーパンチを浴びせる。

 

「██▅▄▅▅▅▃▃▄▅!」

 

その程度では止まらんと言わんばかりにますますいきり立つアナザー暮桜。

 

「タッグマッチってこと忘れないでよね!」

 

戦いの中で成長したのはケイタだけでは無い。

シャルロットもこの時は無自覚だったが散々見せつけられたアナザー暮桜の超高速移動からシャルロットは瞬間加速のイメージを固めて体得する事に成功したのだ。

アサルトライフルとショットガンをゼロ距離で構えてニッと笑う。

 

「この距離ならバリアは張れないな!」て感じの笑みだ。

 

大量の銃弾を腹部にモロに受ければアナザーとは言え暮桜もたまった物では無い。

思わず後退った隙にケイタシャルロットはスイッチした。

 

「さてと、千冬さんには恨みがないけど眼帯チビには山の様にあるんでな鈴の分とかセシリアさんの分とか風都の分とか…もう考えるのも面倒だし手っ取り早く。」

 

逆鱗閃甲をあえて大幅にグラインダーからはみ出す様に引き伸ばし限界まで薄くした上で回転させる。

 

「こんだけ貰っていくぞ。」

 

スパン、鮮血と液化したISの一部を巻き上げながらラウラの右腕がアナザー暮桜の偽雪片と共に宙を舞った。




ケイタ「てな感じの今回でした。」

仮面ライダーストラトス「ま、余り期待していなかった割には頑張った方かな?」

一夏「やっぱこの陳情書作者に提出してくるね。」

ケイタ「待て待て終わってからにしよう!」

仮面ライダーストラトス「次回、Fake number Four その10」

一夏「これで決まりだ!」

(ED Alive A life 仮面ライダー龍騎)


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Fake number Four その10

ケイタ「はぁ、はぁ、はぁ、、。そろそろ足止めも限界だぞ?
単一仕様が使えるようになったからって必ず勝てる訳じゃ無いんだ!」

マシュ「安心してください網島さん!
私達と新兵器がどうにかします!」

ケイタ「新兵器?」

立香「ああ、ケータイ捜査官7ファン待望のあのマシンが堂々登場だ!」

ケイタ「よくわかんないけど頼みます先輩方!」

マシュ「頼まれました!行きましょう!」

立香「さてさてどうなる?」


1

時間を少し遡り、立香とマシュのラボにウイングナイトは到着した。

サードから作戦があると聞いていたがどの様なものだろうか?

 

(この際ケイタとセブンとコンスタンが無事なら何でもいい!)

 

変身したままラボの奥まで急いだ。

 

「おいお前らさっき聞いた作戦ってのは確かな物…………お前ら何やってる?」

 

彼が見た光景をありのままに説明すると川の字に敷かれた布団の一番右と真ん中に変身したままのアックスとスティングが寝ていてその周りをそれ以外の面々がそれはそれは真剣な顔で見下ろしていたからだ。

 

「あ、レン来たね!」

 

「本当にアキヤマ先輩なんですね……。

では早速ここに寝てください。」

 

「いや待ってくれ要領を得ない。

時間がないのは重々承知しているが最低限の説明をしてくれ。」

 

「これを使ってあのシュヴァルツェア・レーゲンだったものにアクセスする。」

 

「藤丸それ! ブーストPCソリッドドライバーか?

まだトライアル段階と聞いていたが?」

 

「まだ完全版前の試作機、これが最終案の最有力だけど。

ゼロワンに協力して貰って実用試験をしてたんだ。」

 

「だから授業中時々いなかったのね。」

 

『黙っていてすまんな。

どこで誰が聞いているか分からんものでな。』

 

「気にしてないよ、でもこれって結局何が出来るの?」

 

「ブーストフォン及びフォンブレイバーの機能増幅装置、

そして二つのブーストフォンを同時に着身できるデュアルブースト機能を搭載し、それにより強いハッキングやISの電脳ダイブの補助も可能です。」

 

「つまり今回は頭数あるアドベントデッキをISのかわりにしてあの暮桜擬きに電脳ダイブして内側からパイロットを引っ張り出そうって事か。」

 

『その通りです。

しかしその間無防備になるレン様達を守るのにロランツィーネ様が、

外部からのサイバー攻撃からシステムを守る為にわたくしが、

そして実際にブーストPCを使うゼロワンとその補助に立香様と神楽様、

オペレーターにマシュ様と心愛様が行うため人数ギリギリ、時間的にも一度の勝負になります。

よろしいですか?』

 

「よろしいも何もない。昔あった小児科医志望の天才ゲーマーが言ってた。

そこにゲームがあるからプレイしてクリアするのがゲーマーだってな。」

 

始めてくれ。

ウイングナイトはそう言って最後の布団に寝転んだ。

 

「行くよゼロワン!ソリッドドライバー着身!

サードはアナライザーを!」

 

『任せろバディ、ソリッドドライバー着身!』

 

『了解です。アナライザー着身!』

 

『『着身完了!』』

 

ゼロワンは変形したソリッドに座る様に合体し、

サードは一夏とゼロワンから借り受けたアナライザーを身に纒う。

 

『セキュリティはわたくしが守りきります。』

 

『頼んだぞサード。

とんだデビュー戦になったなソリッドドライバー、

行くぞ!ウイングナイト、スティング、アックスのアドベントデッキの同期……同期完了。

仮称暮桜擬きのパイロットの精神世界(アンダーワールド)にアクセス。

深層まで5…4…3………電脳ダイブ、開始!』

 

 

 

2

手塚海之が目を覚ますとそこは新月の夜だった。

周りには人口の明かりも少なく満天の星空が広がっている。

 

「ここは、何処かの駅か?にしても誰も居ないな。」

 

近くにあった階段を降る。

そこそこ大きい駅なのか他の路線との連絡口に降りた。

何処か違う路線に誰か居ないか?

 

「手塚!」

 

「秋山居たか!その白いジャケットは私服か?

学校の制服とラビットハウスの制服しか見てないから新鮮だな。」

 

「お前こそホワイトロリータとは可愛らしい趣味だな。」

 

「今気づいたが一番気に入ってるやつだ。」

 

「取り敢えず電脳ダイブ自体は成功したみたいだな…。」

 

「だが簪達が見当たらないな。」

 

どうしたものかと考えていると唐突に2人のスマートフォンが鳴った。

 

「もしもし?」

 

『あ!良かった繋がった!蓮君!』

 

「心愛か?今どうなってる?」

 

『仮面ライダーが川の字になって寝てるシュールな光景が』

 

「いや物理的な状態じゃなくて俺たちは他の奴らと魂が混じったりしてないかって話だ。」

 

『それは大丈夫!

ゼロワンと神楽ちゃんと立香さんが頑張ってくれてる。

2人は今皆の魂の繋ぎ目にいるみたい。』

 

「魂の繋ぎ目?……成る程そうゆう事か。

心愛、こっちの状態が見えてるか分からんが俺たちは今駅の連絡口みたいな所にいる。

多分他の路線に乗れば他の奴の精神世界(アンダーワールド)に行けるはずだ。

通話を切らないでくれ、何かトラブルが有ればすぐに知らせろ。」

 

一度電話から耳を離しマイク部分を押さえる。

 

「手塚、聞いてたか?」

 

「マシュさんからおおよその話は聞いた。

さっき君は何番線から来た?」

 

「1、2番線だ。お前は?」

 

「9、10番線だ。なら君は3、4番線を私は7、8番線に行く。

先に片付けた方が5、6番線をあたる。どうだ?」

 

「了解した。無事でいろよ?」

 

「君もな。」

 

 

 

3

蓮が3、4番線のホームに付くと既に蒸気機関車が到着していた。

 

「アキツネが両手を上げて喜びそうだな。」

 

『アキツネさんって?』

 

「俺の部下だ。今度機会があれば会わしてやるよ。」

 

ケータイを通話中にしたまま蓮は機関車に乗り込んだ。

汽笛と共に発車する。

窓の外を見ると小さな女の子と両親と思われる3人が遊んでいる。

 

(案外誰かの思い出の一コマなのかな?)

 

少し頬を緩ませているとトンネルが近づいて来た。

窓を閉めて外に出るのを待つ。

しばらくすると駅に着いた。

ホームに降りると巨大な風車がついたシンボルタワーが見えた。

 

「風都タワー……ここは鳳の世界か。」

 

 

 

4

7、8番線は何故か地下鉄になっていた。

連絡口から階段を登って出た筈だが、

夢の中だしなんでもありだなと納得するしか無い。

 

『もしもし?何か問題でもありましたか?』

 

マシュから通信が入る。心愛は蓮についている様だ。

 

「いやなんでも。

ただここが夢の中みたいな物だと理解しただけだ。」

 

考えていても仕方ない。

電車に乗り込み二駅程行くと終点に着いた。

 

ホームに降り、階段を上がって地上に出る。

 

「あれは学校、IS学園ではない様だな。」

 

綺麗な白い壁の上品そうな学校で、偏差値や学費も高そうだ。

 

「しかし夢だとわかっていても誰もいない校舎というのは不気味だな。」

 

『私は学校に通った事が無いので分かりませんが、

そういった物なのですか?』

 

「!? あー、少しデリケートな質問をしていいだろうか?」

 

『? なんでしょう?』

 

「勉強は誰から教わったんだ?」

 

『お母様とアンダーアンカーの水戸博士からです。

お母様は歴史学者だったので古今東西の歴史を教えていただきました。

水戸博士からは機械工学を教わりました。』

 

「そうか、ご両親を大切にな。」

 

『はい!』

 

かなり罪悪感の様なものを感じながらドアを調べていくが何処も鍵がかかって開かない。

 

「なんで建物はこんなに広いのに空いてるドアが無いんだ?」

 

『恐らくこの精神世界を構築している人物の記憶にないからでは無いでしょうか?』

 

「成る程、ならドアが開くところには必ず何かがあるな。」

 

一番上の階から順番にドアが開くか試していく。

三階の三年六組の教室で漸く開いた。

 

「あれは、簪か。」

 

今の簪よりも少し背が低い様に感じるが儚げな横顔はあまり変わってない様。

紺色のブレザーが少しキツそうだ。

胸の花を見るに卒業式の後らしい。

 

「お嬢!どうしたんですかしけた顔しちゃって!」

 

物憂げに俯いていた簪の背後から着崩したブレザー姿の茶髪の少年が明るく話しかけてた。

心なしか簪の顔が少し明るくなった気がする。

 

「健……。」

 

「ほら帰りましょう?

明日から早速寮に持ってく荷物選んだり色々あるんでしょ?」

 

そう言って健は右手を差し出した。

しかし手を取れず増す増す下を向く簪。

 

「もう……何も心配することありませんよ!

お嬢ならすぐに友達沢山できますって!

本音も行くし、若様や虚さんだって居るじゃないすっか!

それにお嬢美人ですし言い寄ってくる女の子だって居るかも「ダメ!」しれな……え?」

 

ガタッ!と立ち上がる簪。呆気に取られる健。

 

「えっと。その、まさか居るんですかその、好きな人。」

 

躊躇いがちにだが切り込む様に健は尋ねた。

真っ赤になってそっぽを向く簪。

 

「け、健には!関係…無いよ。」

 

「! そうっすか…。」

 

何処か残念そうに肩を落としながら健は出て行った。

 

「………。」

 

沈黙したまま海之は見送った。

 

「あの時私はお姉ちゃんが自力でISを完成させたって事やロシアのIS代表になったプレッシャーで卑屈になってた。」

 

振り返ると簪の姿がISの制服に変わっていた。

 

「今のままじゃ所詮私は更識楯無の保険。

ただのバックアップ。

せっかく手に入れたライダーの力も使いこなせない。

そんな風に思ってた。」

 

一歩、二歩と簪は海之に迫って来た。

後一歩踏み込めば手が届くくらいの距離で止まる。

 

「今は助けてくれる人も大勢いて、

良いところも少しはあるかな?って思える。

けど仮面ライダーストライクを、

本音の仇を打てるなら相討ちになってもいいって思う。

これって悪い事?」

 

そこまで簪が言った所でピシッ!と

まるで一時停止のボタンが押されたTV画面の様に景色が動かなくなり、

かわりに簪と海之の間に『Yes』『No』と書かれたボードの様なものが現れる。

 

「なんだこれ?」

 

『恐らく、ノベルゲームの様なものだと思います。』

 

「ノベルゲーム?なんだそれ?」

 

『シナリオを読み進めながら途中にある選択肢を選んで結末が変わっていくゲームです。

ゲーム全般が苦手な私でも気軽に遊べるゲームで先輩に13歳の誕生日の時に貰って今でもよく遊びますね。』

 

「ふざけよって。」

 

吐き捨てると海之は改めて浮遊する選択肢を見つめた。

 

「……答えはNoだ。簪は何も悪くない。」

 

「なんで?」

 

動き出した簪が上目遣いにこちらを見る。

真っ直ぐに見つめ返した。

 

「私も思い出した様に雄一を喰い殺したエビルダイバーを憎む時がある。

結局私がやってる事は正しいのか?と思う時ぐらいある。

それは人ならば当たり前に思う事だ。

簪だけじゃ無い。

それに、殿方には一歩引いてるぐらいが言質をとりやすいぞ?」

 

最後に一言冗談めかして言った時視界が真っ白に染まった。

 

 

 

5

蓮は駅から出ると足の向くままにひたすら進んだ。当てなんてないならなる様になれと思ったからだ。

 

(この世界は鳳の記憶をベースにしてるのか?

ならよく覚えてない街の住人まで再現されていないのは納得だ。)

 

誰もいない街はベンタラを行き来しているお陰で慣れっこだった。

 

「心愛、外の様子はどうだ?」

 

『変わった事はないよ?』

 

「なら良い。」

 

時々そんな会話をしながら練り歩いていると高速道路の下に作られた小さな公園が見えた。

 

「! 人がいる。」

 

バスケットゴールで6人ほどの小学生が遊んでいた。

 

「あれはケイタ!?って事はあっちが一夏であいつが鳳か。」

 

学校から直で来たのかゴールの下にはランドセルが積み重ねられている。

 

『私も小ちゃいみんな見たいよー。』

 

「今度アルバムでも見せて貰え。」

 

素っ気なく答えて蓮は積み上げられていたランドセルを一つ取る。

6人はレンに気付いて無いかのようにバスケットを続けている。

蓮も気にせず蓋を開けて小学校の住所を確認し、

電柱やアパートに書かれた番地を頼りに向かった。

 

「ここがケイタ達の母校か。

心愛、一つ一夏に確認してくれ。」

 

『何?』

 

「鳳が初めて日本に来たのっていつだ?」

 

『わかった。一夏ちゃーん!

鈴ちゃんが初めて日本に来たのっていつ?

わかったありがとう!

小学校の五年生の時だって。』

 

「よし来た。」

 

空きっぱなしになっている校門をくぐり、

地図を確認して真っ直ぐに五年生の教室のある階に向かった。

 

「あいつ何言ってるかわかんないよな」

 

「早口で気持ち悪いし」

 

「中国人ってみんな自己中らしいじゃん?」

 

一番階段に近い部屋に入って見ると30人近くののっぺらぼうがカゴメカゴメのような形で鈴音を取り囲んでいた。

真ん中にいる鈴音は顔を伏せて体育座りしており表情は見えない。

 

『酷い…。』

 

「言葉は壁、か。」

 

もし一度でもこんな状態に置かれた後で一緒に遊ぼう。

と親切にされたらそれはそれは嬉しいのだろう。

ケイタや一夏にあそこまでの親愛を抱き、

三春にあれだけの憎悪を向けるのも納得だ。

 

「ある意味こいつらは織斑よりタチが悪いがな。」

 

精神世界でも持ってこれていたスタームルガーを構え1人ずつ頭を撃ち抜いていく。

3回目にリロードした弾を使い切って時ちょうど全てののっぺらぼうを倒した。

 

「鳳行くぞ。ケイタ達が待ってる。」

 

ビクッ!と鈴音が震えた。

恐る恐るあげられた顔は泣きはらしたのか涙の跡がくっきり残り、目は真っ赤だ。

 

「いや。」

 

「なんでだ?ケイタ達はさっき俺が殺した奴らとは違うぞ?」

 

「ケイタ達は信頼してる。

だから今は合わせる顔がない。」

 

「合わせる顔がない?」

 

思わず鸚鵡返しで聞き返した。

 

『そんな事無いよ鈴ちゃんはいい人じゃん!』

 

「そんな事ある!……私弱いし、

ラウラの奴にも言い返せなかったし。

ずーっと昔の事引きずってるし。

平気で自分を押えらんないで手が出るやな女。」

 

そう言って自嘲気味に嗤った。

蓮の中にあった快活で豪胆な鈴音のイメージとかけ離れた感じとも思ったが、彼女もまた普通に傷付く少女という事か。

 

「ねえ、私みたいな悪い奴消えた方がいい。そう思わない?」

 

ピシッ!と部屋の空気が、

景色が、鈴音自身が一斉に固まり、

蓮の前に『Yes』『No』と書かれたパネルが出現した。

 

「なんだこのクイズ番組みたいなノリは。」

 

面白くない。吐き捨てると蓮は迷わず選んだ。

 

「ああ、お前はやな女だ。」

 

『ヴェ!?蓮君ちょっと!』

 

「やっぱりね…。」

 

「ただしお前は自己評価がまるで出来てない。」

 

「?」

 

予想外の反応に思わず顔を上げる鈴音。

蓮はまくし立てるように続けた。

 

「結局お前は怖くなっただけだ!

今の自分はケイタに嫌われないか?

一夏の気に障らないか?

他の3人に会った時に失望されないか。

そればっか気にして勝手に自分をすり減らしてただけだ。」

 

鈴音の胸ぐらを掴み無理やり立たせ怒鳴り散らした。

 

「シャキッとしろ!そんなんでどうする!

自分のやってる事が正しいかなんて自分が信じなくてどうする!

たとえ黒でも自分が白って言ったなら白になるぐらいの気持ちで行け!

何もかもがそれで良いって訳じゃないが、

自分が一番嫌いな奴らの意見ぐらいへし折ってやれ!」

 

そこまで叫ぶと急に蓮の視界は奪われた。

衝撃のような物が全身を襲ったのを最後に意識を手放した。

 

 

 

6

「ん……」

 

眠そうに目を擦りながら起き上がる。

蓮は今まで自分がモノレールに乗っていた事に気付いた。

 

「あれからどれだけ時間が…もしもし心愛?」

 

通話しっぱなしにしていたはずのケータイに呼びかけて見るが砂嵐の音が聞こえるばかりで繋がらない。

 

Fuke it(くそが)

 

通話を諦めケータイを切るって辺りを見まわす。

反対側のシートに簪、海之、鈴音が寄りかかり合いながら寝ていた。

 

「おい、起きろ。起きろ!」

 

「ぐぅ…ん?秋山?ここは?」

 

「多分5、6番線だ。もうすぐ駅に着く2人を起こすぞ。」

 

「ああ。簪、鈴音!」

 

「んん、、。後5分…。」

 

「早くしろ!」

 

まだ頭の覚醒しきってない2人を引っ張りホームに降りた。

 

「あれは木組みの街?」

 

「て事はここが天々座の世界か。」

 

蓮は眼下に広がる木組みの街に確かな違和感を感じ、

用心のためスタームルガーに新たな銃弾を装填した。

 

「手塚、2人を連れて連絡口まで戻ってくれ。

ここは俺に任せろ。」

 

「? 2人、なんなら4人であたった方が早くすまないか?」

 

「この世界では何故か心愛達と通信出来ない。

もし万が一全滅したら救援要請さえ出来ない。

それだけは避けるべきだ。

あと付け加えるならそこのお眠ちゃん2人が役に立つとは到底思えん。」

 

「あふぅ……。」

 

「………寝てない!ねて、ないよ?」

 

「………わかった。必ず助けて来いよ?」

 

「無論だ。」

 

反対側のモノレールに3人が乗り込んだのを確認すると蓮は駅の外に出た。

蓮のよく知る木組みの街その物だ。

他の世界と同じ様に人っ子ひとりいないきみ悪さがあるが。

そんな中ようやく見つけた人影に蓮は驚いた。

 

「ん!? あれって俺か?」

 

ツンツンに逆立てた髪に黒ずくめの衣装は間違いなく自分だった。

確かサードと出会ったばかりの頃の、

サードと初めて任務にあたった時の事だ。

 

(さっきの鈴音の感じから察するにこの世界は人の闇を固めた、

踏み込まれたくない領域だ。

心の傷と言い換えても良い。

つまり数少ない登場人物はその世界の人間を傷つけた何かである筈だ。)

 

そう確信した蓮は躊躇いなく過去の自分の形をしたアバターを撃った。

 

脳漿を撒き散らしながら崩れ落ちる。

しばらくは見下ろしていたがやがてラビットハウスに向かって歩き出した。

誰もすれ違わずに辿り着いた。

 

見慣れたドアわ開けて店内に入る。

ついいつもの癖でただいまと言いそうになったがなんとか耐えた。

 

「いらっしゃいませ。」

 

智乃が無愛想に挨拶して来た。

 

「えらいけったいなカフェやな。」

 

「余計なお世話です。」

 

確か始めて来た時と全く同じやり取りをして席についた。

確かあの時はカプチーノを頼んだ気がするが今回は気分でアイスティーを頼んでみる。

 

しばらくして理世が運んで来た。

 

「おまちどうさま、隣いいかい?」

 

「構わん」

 

あまりに客がい無くて退屈なのか、

理世が隣に座って来た。

 

「この街は初めてかい?」

 

「ああ。」

 

「来た理由は?」

 

蓮は思い出した。確かこの時、

というかこの頃の蓮は滅茶苦茶荒れていて心のない事を言ってしまった様な気がする。

 

「? どうした?」

 

黙り込んだ蓮を不審に思ったのか理世が蓮の顔を覗き込む。

 

「いやなんでもない。この街にはフラッと寄っただけだ。」

 

「そうか、どこに行くつもりなんだ?」

 

「罪を償いに、かな?」

 

椅子を動かし理世の方を向く。

 

「天々座、俺はあの時お前に何を言ったか思い出せん。

だがこれだけは言っておく。

ラビットハウスにもうお前の事を悪く思ったり傷付けようと思う奴は居ない。

相談くらいならいくらでものるし、助ける。

だから他人を巻き込むな。」

 

理世が首を傾げる。

その首筋にガイアメモリの生体スロットが刻印されている。

 

「変身を解除しろ。」

 

ガク。と俯く理世しばらくして今にも泣きそうな、

しかし乾ききった目の顔を上げた。

 

「いやだよ。僕はみんなと一緒にいる。

邪魔する奴は倒す!」

 

<NIGHTMARE>

 

いきなり立ち上がると理世はナイトメアドーパントに変身した。

 

「奇遇だな。俺もだ。」

 

迫り来るナイトメアドーパントを転がりながら避け、

取り出したデッキをVバックルにセット。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身してCQCをベースにした近接格闘を繰り出すナイトメアにカポエイラをベースにしたキック主体の技で迎え撃った。

 

時に椅子やテーブルを足場にキックと打撃の応酬が続く。

 

「嗜み程度にやってるかと思えば中々やるじゃないか。

見直したぜ。」

 

「ふん!男女にはお似合いだよ!」

 

虚をついて拘束用のネットを投げるナイトメア、

ウイングナイトは自分の十八番で答えた。

 

<TRICK VENT>

 

五人に分身し、一人をネットの生贄に、

二人が残り二人を持ち上げ、ダブルキックを仕掛ける。

吹っ飛ばされたナイトメアがガラスを突き破り外に出る。

ウイングナイトも続いて飛び出た。

 

「どうやら最終手段を取る必要があるみたいだ。」

 

「最終、手段?」

今までマウントしたままだったバイザーを引き抜き、

デッキからファイナルベントのカードを引き抜く。

 

「文字通りの切り札さ!はぁああああああ!」

 

思わず目を伏せるナイトメア。

しかしいつまで経っても刃が振り下ろされる事はなかった。

恐る恐る目を開けると変身を解除して生身に戻った蓮が頭を下げていた。

 

「な、なんだよ、それ?」

 

「謝る。俺のタイプじゃないが、お前もいい女だよ。」

 

「! そ、そんなんで私が許すとでも!?」

 

「ここまでやって俺の顔を立てない様な奴じゃない。」

 

じゃあ急ぐんでな。そう言うと蓮は背中を向けて駅に向かった。

 

「待て!…その無防備な背中を攻撃しても良いんだぞ?」

 

「お前はそんな悪人じゃ無い。」

 

今度こそ蓮は駅に向かった。

 

 

 

7

蓮に遅れて理世が連絡口に着いた時、

そこには異様な光景があった。

 

「来たか天々座。」

 

「あ、ああ。その…いつからここはヒーローショーの会場になったんだ?」

 

何故かライダーに変身出来る3人はライダーに、

鈴音はISを鎧っている。

 

「まずここが精神世界なのはわかるか?」

 

「…夢の中みたいなものって事か?」

 

「ああ、それでこの世界はお前と鳳と更識。

あとボーデヴィッヒって奴の記憶から成り立っている。

だからそこに入り込んだ俺と手塚以外にもう一つ精神世界がある筈なんだが、どこにも入口が見当たらなくてな。」

 

「だから適当に壁とか壊せばどうにかなるかなー?

って思ってたんだけど」

 

双天牙月を見せる鈴音。

 

「傷一つ、ヒビ一つ付かない。」

 

デストクローを見せるアックス。

 

「脳筋過ぎるないか?」

 

3人は変身を、鈴音はISを解除する。

 

「いや勿論それ以外も色々試したんだがまるで手応えがなくてな。

外からも調べてもらっているんだが」

 

『今の所原因は不明です。』

 

海之の持つケータイ越しにマシュがすまなそうに言った。

 

「つまり万策尽きたのか?」

 

四人が気まずそうに目を逸らす。

理世は思わずこめかみを抑えた。

 

「何かないか天々座?」

 

「貴女だけが頼り。」

 

「そう言われても…。

持ってこれた物と言えばこのガイアメモリぐらいだぞ?」

 

「それ抜き取れたのか?」

 

「意外と簡単に。」

 

「ナイトメアメモリ…それだ!」

 

ぱん!と手を叩き理世の方を振り向く海之。

 

「な、なんだ?」

 

「そのメモリを使ってラウラの夢にアクセス出来ないか?」

 

「成る程、もしもし心愛聞いてたか?

翔太郎先生に確認とってくれ。」

 

『ラジャー!』

 

「心愛!心愛なのか?」

 

『理世ちゃん?理世ちゃんだ!理世ちゃん!』

 

「感動の再会は目覚めてからにしてくれ。」

 

翔太郎に確認を取ると、

ナイトメアは本来夢にダイブしてそれを都合良く書き換えるメモリとの事だった。

 

「それじゃあ、やるぞ?」

 

「頼んだ。」

 

「OK」

 

「よろしく頼む。」

 

「やっちゃって!」

 

<NIGHTMARE>

 

スイッチを押してハリボテの改札にメモリを突き立てる。

バキバキ!とメモリが割れて喰われる様に砕け散ると改札が通れる様になり五人は雪崩れ込む様に進んだ。

 

 

 

8

ラウラ・ボーデヴィッヒは人造人間(キカイ)だ。

 

優秀な人間のDNAを元に合成され、鉄の子宮から産み落とされた。

 

彼女は初めから死んでいた。

ただ人を殺す事だけを命じられその為だけの技術を身につけさせられた。

その扱いは拳銃やナイフとそう変わらなかった。

 

そんな事情が変わったのはISが出来てからだ。

戦える女性という事でラウラは重宝された。

目の生体型ハイパーセンサーの移植に失敗し、

ISの訓練で結果を出せなくなるまでは。

 

そこからラウラはエリートコースから真っ逆さまに転がり落ちていった。

特に何も感じなかった。

そんなながら唯一ラウラに手を差し伸べた人間がいた。

雇われ教官としてドイツ軍に来ていた千冬だった。

 

「私がお前を鍛え直してやる。」

 

ラウラとしては別に千冬に命令されたから従うぐらいの感覚だったが、

あまりに熱心な千冬に次第に認められたいと思うようになり、

自ら訓練に打ち込む様になった。

 

そして千冬の契約期間が満了になる頃にはISの特殊部隊の隊長に抜擢されるまでになった。

千冬がドイツをさる直前、ラウラは思い切って千冬に聞いてみたことがあった。

 

「教官の向上心の源はなんですか?」

 

一瞬驚いた様な顔をした千冬はすぐに見た事ない様な柔和な笑顔になるとこう言った。

 

「そうだな、眼に入れても痛くないあのひよっこどもかな?」

 

秘密だぞ?と言うと千冬は去って行った。

ラウラは許せなかった。

千冬があんな顔をするのが。

千冬を汚された様な気がした。

 

「必ず証明する。教官の栄光を汚した様なお荷物が教官を弱くする要因でしかないと!」

 

その想いを胸にラウラはIS学園にやって来た。

 

「で、あの蛇仮面に良い様に利用されてこのザマって訳?」

 

「鳳お前言い方…。」

 

まあ唯一実害を受けてるし仕方ないかと思い直す。

 

「ああ、教官の期待に応えるどころか無様に生恥を晒しているよ。」

 

5人の前に黒いタールの様な何かに絡みつかれ捕まったラウラが語りかける。

 

「結局私は最初から生きても死んでもいない人形だったんだ。」

 

がくりと項垂れラウラは動かなくなった。

 

「ラウラ?」

 

名前を呼びながら顔を覗き込む簪、

余りに力のない顔に思わず後ずさる。

 

「ドイツはホムンクルス系の研究が活発とは聞いていたがこれ程とはな。」

 

蓮は呟いた。それだけだった。

流石にかける言葉が見つからない。

明確に悪い奴が居るならそいつのせいにすることが出来るしラウラが悪いならラウラを叱り飛ばす事が出来るが彼女の場合間が悪かったとしか言いようが無いからだ。

 

どうにかしなければと思いつつも何も出来ずにしばらく経った時。

 

『手塚さん聞こえますか?』

 

「マシュさん?」

 

『ラウラさんとかわって下さい。』

 

言われた通りにラウラの耳にケータイを当てる。

 

『もしもし?』

 

「……。」

 

『貴女は誰ですか?』

 

「?」

 

『貴女はドイツ軍の兵器ですか?

それとも織斑千冬さんの弟子ですか?』

 

「……。」

 

『貴女はそれでいいんですか?

そんなんで織斑千冬さんに胸を晴れるんですか!?』

 

「胸を、はる?」

 

『そうです!

今貴女がやってる事は千冬さんを裏切ってはいませんか!?』

 

「教官、を?』

 

『上部だけの物理的強さにばかり目を向けているんじゃありませんか!』

 

「上部だけの、強さ、だと?」

 

『そうです!

それしか無かったから計算外の事態に対応出来ずに網島さん達に負けたんです!

奇跡に期待できるのが人間性です!

それは自分以外に誰かがいて始めて出来る事です!』

 

「誰かが、いて?」

 

『どんなに強いヒーローだって必ず側に誰かがいます!』

 

「教官、にも、、か?」

 

『当たり前です!』

 

「なら私は、最初から負けて、、いたのか。そうか…。」

 

悲しげな、しかしどこかスッキリした顔をすると周囲の景色が無に変える。

 

任務完了。

 

全員が自分の体に帰還した。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

マシュ「次回で最後ぐらいですね。」

立香「なんだかんだで一番長いエピソードになったね。」

ケイタ「それは今回がって事?
それともFake number Fourがってこと?」

立香「両方かな?」

(ED WAKE YOU UP ケータイ捜査官7)

マシュ「そろそろ時間ですね。
次回!Fake number Four その11!」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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Fake number Four その11

ケイタ「前回までは、俺たちが戦ってる間蓮達が何してたかだったっけ?」
蓮「ソリッドドライバーの初陣でもあったな。お前ら程じゃ無いが中々大変だったよ。」
シャルロット「兎に角、今回でFake number Four 最終回です!」
ケイタ「早速どうぞ!」
(OP Alive A life)


1

マシュが無線越しに叫んだ瞬間、ブツッ!と電脳世界との通信が切れた。

 

「あ、あれ?もしもし?もしもし!

ど、どうしましょう先輩!

通信が切れてしまいました!」

 

『それだけじゃ無い!

アドベントデッキの同期も勝手に解除されている。

電脳世界が閉じるぞ!』

 

ゼロワンがそう言い切った瞬間、

寝かされていた3人のライダーの変身が一斉に解除された。

 

「う、うん?」

 

「一体何が?」

 

「うぅ…。」

 

「簪!大丈夫だったか!」

 

「ロラン?あれ?さっきまで私ストライクと戦ってたはずじゃ…。」

 

「先輩これって…。」

 

「うん。多分他のみんなも。」

 

立香の予想通り天々座邸では理世が、

そして保健室では

 

「ぐふぅ!ぎ、ギブ!ギブ!」

 

「え? あ、ああ!鈴さんごめんなさい!

思い切りヘッドロックをしてしまっていましたわ!

大丈夫ですか!?」

 

「ゴッホゲッホ!な、なんとか…ん?

あれ!モニター見て!」

 

「え? な!」

 

見ると棒立ちになったままだったアナザー暮桜が崩れ落ち、

中から片腕を切り落とされたラウラが出て来た。

受け止めるシャルロットとケイタ。

 

「……なんかよく分かんないけど、一件落着?」

 

「の様ですわね。」

 

 

 

2

ずるり。アナザー暮桜が黒いタールの様な液体に変わって崩れ落ちると右腕を失ったラウラとシュヴァルツェア・レーゲンのコアが中から出て来た。

思わず受け止めるケイタとシャルロット。

 

「うわあととと!危な、、セブンこいつ生きてる?」

 

『少し待て………バイタル正常。

右腕欠損は綺麗な断面だし適切な処置をすれば問題ない。』

 

「そっか…はは、やったなシャル。俺たち勝ったぜ?」

 

「うん、やったよ私達、生き残っ、、た?」

 

安心して限界が来たのかヘナヘナと二人は座り込んだ。

急に頭がボーッとして体に力が入らなくなる。

 

「ら、ランナーズハイって……マジかよ。」

 

3人寄りかかりながら何とか立ってる感じだ。

 

「やばい……セブンちょっと運転頼む。」

 

『いや、その必要は無さそうだ。』

 

あれを見てみろとセブンが指差す先を見るとラファールを鎧った真耶がこちらを潰さんばかりの勢いで駆けつけて来た。

 

「皆さん大丈夫でしたか!?

網島君脱水みたいになってますよ!?

ボーデヴィッヒさんは片腕無いじゃないですか!

コンスタンさん一人で立てますか!?」

 

「山田、先生ぇ…。」

 

真耶の姿に安心したのか、

命のやり取りという重圧からの解放感のせいか、

おそらく両方だろう。

シャルロットは真耶の胸で眠った。

 

「! コンスタンさん?……よく頑張りました。」

 

真耶は一度だけ優しくシャルロットの頭を撫でると背中に背負う。

 

「網島君立てますか?」

 

「な、何とか。このチビは俺が運びます。」

 

「分かりました。

この後色々と聞きたい事があるので保健室で待っていて下さい。」

 

 

 

3

何かで額を撫でられた。暖かくて気分が良い。

物凄くぼんやりした意識の中

私、ラウラ・ボーデヴィッヒは状況を確認するためまだ半分も開かない目を懸命に動かした。

誰か二人目の前にいる。

 

「二人とも中々戻らないね」

 

「あれだけの事件だ。証言は新鮮なものほど良い。」

 

パチパチ、と心地いい音と共に誰かの話し声が聞こえて来た。

誰だろう?聞いた事が有る声な気がする。

 

「…目覚めないね、まだ。」

 

「流石にあれだけ暴れ回ればこうなるだろ。」

 

パチン!一際大きな音を立てて五角形の駒が叩きつけられた。

 

その音で完全に目が覚めた。

どうやら暴走した私は倒されて拘束されたらしい。

 

「あ……。」

 

Check(王手) これでお互い1勝1敗。」

 

今は学園の保健室のベットに寝かされている様だ。

勝手にテーブルを使ってレン・アキヤマと更識簪がチェスの様なゲームをしていた。アキヤマが勝ったらしい。

 

「あ、ラウラちゃん起きた!」

 

耳もとでキンキンと喧しい声がする。

見ると紫色の目に薄い茶髪の女がいた。

確か網島ケイタや織斑一夏と同じ下宿先に住んでる奴だ。

 

「ようボーデヴィッヒ。気分はどうだ?」

 

「……悪い。」

 

「喋れる元気があるなら上出来だな。ビスケットいるか?」

 

「いらん。」

 

どこからか取り出したビスケットを手ごと払おうとしたが右手が持ち上がらない。仕方なく少し顔を遠ざけた。

 

「ふむ、手術は成功したがまだうまく動かせないみたいだな。」

 

「手術、だと?」

 

「手術って言うのは、あ。戻って来た。」

 

更識簪が振り向くと入り口から疲れ切った顔をした網島ケイタとシャルル・デュノア。

そして弁当でも買ってきたのか何やらビニール袋を持った織斑一夏とロランツィーネ・ローランディフィルネィ 、

それと見知らぬ4人と白衣の男が入って来た。

 

「あちらがお前の手術を担当したドクターだ。」

 

よく近づいてみるとその男は青い光る目に奇妙なヘッドギアを装着している。

 

「私はDr.オミゴト。

飛電インテリジェンスアメリカ支社より派遣されたヒューマギアです。

貴女の右腕のサイボーグ化手術を担当させていただきました。」

 

「ヒューマギア、だと?」

 

確か飛電インテリジェンスが研究、

開発を行なっている医療用アンドロイドの名前だ。

 

「まだプロトタイプらしいがな。

生身の人間でのテストはお前が初めてだ。」

 

要するに体のいい実験台にされた訳か。

多分ドイツと日本、フランス、そして多分だが調停役を買って出たアメリカの四国間で取引が有ったらしい。

 

「まあ、治ってるならいいが。」

 

まだ肘は動かしづらかったが肩は動かせたので腕を布団から出してみる。

二の腕の真ん中より先が黒いプラスチックカバーに覆われた無骨なロボットハンドになっていた。

 

「な!」

 

思わず腕を近づけた。

生身の手と変わらない様に肘を動かし手のひらを顔の前に持ってこれた。

しばらく面食らっていたが、やがてゆっくりと指を一本一本動かしてみる。

 

「いかがですか?何か悪いところは有りますか?」

 

「……何もない。本当にこれは機械なのか?

生身の腕とそう変わらない。」

 

しかし左手でカバーを外して一の腕の人工筋肉アクチュエーターを見ればそれがアメリカが誇るサイボーグ技術の結晶だとわかった。

 

「元の様に動く様で何よりです。」

 

抑揚の無い声でDr.オミゴトはラウラをいたわった。

 

「…これから私はどうなる?」

 

「それを説明するためにはアメリカ、日本、フランス、そしてドイツの間でどんな取引が有ったかを説明しなきゃいけない。」

 

駒を片付けながらレン・アキヤマは続けた。

 

「まず日本だが、特に賠償を要求する事は無かった。

ドイツに貸し一つって所かな?」

 

網島ケイタをみると私の腕を切り落とした事に負い目を感じてる様だ。

先に殺しにかかったのはこちらなのに。

 

「腕、悪かったな。」

 

「いや、いい。軍人になった時に覚悟は済ませていた。」

 

「で、次にフランス。この国は中々粘ったが、

最後にはこちらの提案をのんでくれたよ。」

 

どんな取引が有ったか知らないがレン・アキヤマの悪そうな顔から察するにほぼ米国の圧力と呼んで差し支えない物だった様だ。

 

「最後にドイツ。アメリカが調停役を買って出たのと、

各国へのVTシステムに関する口止めの対価として、

レーゲン型ISを一機貰い受ける事になった。」

 

つまり、用済みになる私のシュヴァルツェア・レーゲンがか。寂しいな。

 

「それからもう一つ、三国からの要請で決まった事が有る。」

 

かちゃり、左脇のホルスターから鈍く光る銀色の拳銃が取り出された。

 

「蓮お前!」

 

「秋山君!?」

 

「アメリカが三国に代わりお前を始末する事となった。」

 

ロックを外し私の眉間に銃口を向ける。

 

「レンやめて!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ!

お前を合衆国政府及びドイツ、フランス、日本国政府の命により秘匿銃殺刑に処す!」

 

引き金に指がかかる。

銃弾が発射されるまで1秒も無い。

いやだ死ぬ。死にたく無い!

 

「……離せドクター。」

 

薄ら目を開けるとDr.オミゴトがレン・アキヤマの腕を捻り上げていた。

 

慌てて体ごと盾になろうとしたらしい紫目の喧しい女と更識簪共々私はポカン。としていただろう。

背後から駆けつけようとした奴らも同様だ。

 

「ここは医療の現場です。人を癒す場所です。

人の命を奪う場所ではありません。」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒはなぜか突然いなくなる。

まるで消された様に忽然と行方が分からなくなりいずれ忘れ去られる。

それが全てだ。」

 

「違います。ラウラ・ボーデヴィッヒは、

私の患者はサイボーグ化により失った体の一部を取り戻し元の様な生活を取り戻す。」

 

「何故そこまでこいつにこだわる?赤の他人だろ?」

 

「私はDr.オミゴト。飛電インテリジェンスアメリカ支社より送られてきたサイボーグ化外科医型ヒューマギア。

サイボーグ化手術により体の一部を失った人に再び元の様な体と生活を与えるのが私の仕事です。」

 

しばらくDr.オミゴトを真っ直ぐ見ていたが、

唐突にDrの顔面を殴って無理矢理引き剥がすと今度こそ私の眉間に拳銃を突き付けた。

 

「うわっとと!ドクター平気ですか?」

 

「レンやめて!」

 

「蓮よせ!」

 

かちり。シリンダーが回転する音。

弾は発射されない。

 

「秘匿死刑は実行された。」

 

ホルスターに拳銃をしまうとレン・アキヤマは何処かに電話をかけた。

 

「もしもしアキツネ?状況終了。遺体を処理しろ。」

 

短く了解。と聞こえたすぐ後に扉が開き、

タンカーを持った二人組が入って来た。

一人は屈強な黒人でもう一人は背の低い白人の女性だ。

 

「あ、アキツネさんにジュリエットさん。」

 

「ケイタクン一夏サン久ジブリ。」

 

「久しぶりね。出来れば仕事以外のところで会いたかったわ。」

 

心底嫌そうに言うと二人はベットの下から黒い人一人分ぐらいのサイズの袋を取り出し、タンカーに乗せるとどこかへ去っていった。

しばらくしてレン・アキヤマのケータイが鳴る。

 

「もしもしアンドリュー。準備出来たか?」

 

『いやボスマジでやるのかよ?』

 

「さっさとやれば早く帰れる。」

 

『チッ!だからこの仕事嫌いなんだよ。』

 

「頼んだぞ。耳を塞げ!」

 

まず一番素直な紫目の喧しい女とDr.オミゴトが塞ぎ、

残りのメンツも首を傾げながらも塞いだ。

しばらくして大地を揺さぶる様な振動と轟音が聞こえて来た。

 

「なんだぁ!地震?」

 

「爆発か何か?」

 

多分後者だろう。再びレン・アキヤマのケータイがなる。

 

「もしもしアンドリュー?終わったみたいだな。」

 

『有給貰いますからね?』

 

一方的に電話が切られるとISスーツに着替えたジュリエットとか言う女が再び入って来た。

 

「レン少佐!これ報告書です。」

 

「お疲れ様。アンドリューが有給取るって言ってたぞ?」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、お前も取るか?」

 

「もちろんです!次こそ既成事実作って見せます!」

 

「程々にな。」

 

そう言って出て行くジュリエットを見送る。

 

「なんかジュリエットさんめっちゃ機嫌良かったね。」

 

「いや、あいつはジュリエットじゃ無くて双子の妹のハリエットだ。」

 

「え!?全然見分けつかなかった。」

 

「俺も…。」

 

「いつもニコニコしてんのがハリエットで、

話しかけるとキレる方がジュリエットだ。」

 

「なんつー判別法だよ。」

 

さて、と一拍置くとレン・アキヤマは一枚の紙を取り出した。

 

「こんな所にIS適正の高そうな難民がいるじゃ無いか。

これは海兵隊IS師団破壊部隊副隊長としてスカウトしない訳にはいくまい。」

 

もうほぼ全て書かれ、あとは私のサインだけとなっている書類を受け取る。

 

「出すのはいつでもいいけど、

やる気があるなら早くしろよ?

次のドイツ軍黒ウサギ隊との合同任務までそんなに無いからな。」

 

「!……レン・アキヤマ、ラウラ・ボーデヴィッヒから伝言だ。」

 

「なんだ?」

 

「完敗だ。」

 

「……勝ち誇らせてもらう。」

 

短く言うとレン・アキヤマは去って行った。

 

 

 

4

「はぁ、はぁ、はぁ。」

 

先程ウイングナイトに蹴られた足を引き摺りながらストライクはゼイビアックスの基地に帰り着いた。

左膝と脹脛が猛烈に痛い。

おそらく肉離れしているんだろう。

一月はまともに動かせそうに無い。

 

「無様だな。敵を過小評価し、逃げおおせてくるとは。」

 

エムは軽蔑の眼差しをストライクに向ける。

 

「は、はは、あーっははははははははははははは!」

 

かちゃん。Vバックルからデッキを外し変身を解除する。

ストライクは間明に戻った。

 

「違うよエムちゃん!

本当に恐ろしいのは僕の目が狂っていなかった事さ!

やはり網島くんは最高のバディユーザーさ!」

 

間明の狂った笑い声がいつまでも響いていた。

 

 

 

5

「ふっふっふっふっふっ。」

 

笑いが抑えられない。

これを喜ばずして何がIS開発者だろうか。

何がこのプロジェクトの最高責任者だろうか?

 

トレードマークの眼鏡を掛け直しハンカチで丁寧に汗を拭くと私、能見荘はステージに立った。

眼下の会場にはこのプロジェクトに賛同してくれた老若男女107人の同士達が各々のグラスにお気に入りの酒やジュースを入れて待っていた。

 

「今宵集まってくれた同士諸君。

もう既に聞き及んでいると思うが、

改めて私から報告させてもらう。

我らが最高傑作が一つ、打鉄赤龍のパイロット網島ケイタ君が単一仕様を発現した。」

 

会場中から拍手が湧き上がる。

ついにこの日が来たかと皆目を輝かせていた。

 

「君達にはこれから赤龍の強化、彼が単一仕様を最高の状態で使える機体の開発にあたって貰う。

忙しくなるだろ。今まで以上に大変だろう。

しかし!我らは成し遂げる。これより!

ゼロダイバー計画により生み出された全ての人造人間及び篠ノ之束の始末、真の男女平等の実現、救世主計画を実行に移す!

我らの勝利の前祝い、これからの働きへの激励、

そして今亡き彼ら彼女らの魂の安らぎに!乾杯!」

 

乾杯!会場中の人が一斉にグラスを煽る。

私は早々にステージを降りると愛用のタブレットを取り出しこのプロジェクトの真の要たる人物とビデオ通話を開始した。

 

『ハァイ!久しぶりねソウ。良いことがあったようね。』

 

「えぇ。それはそれはいい事が。

私としても貴女としてももう一ついい事が起こる事を願っていますよね?」

 

『もちろん。私的には蓮の方が先に来て欲しかったぐらいよ。』

 

「その件に関して絶好のイベントがありまして」

 

タブレットを操作してあるデータを相手に送る。

画面の向こうの彼女はにぃ!と笑みを作った。

 

『間違いなく仕掛けて来るわね。篠ノ之束が。』

 

「えぇ。その時こそ好機です!」

 

『楽しみね、7月の臨海学校。』

 

 

 

6

「な、なんとか終わりましたぁ…。」

 

ケイタ達の証言や機体データからの情報を全て纏めてなんとか提出出来る形に整えた真耶は軽い目眩を感じながら机に突っ伏した。

このまま明日の朝まで寝てしまおうかな?とも考えたが生徒達の様子が気になり保健室に向かった。

 

「あ、山田先生!」

 

「織斑さん。無事でしたか!良かったです。

他の皆さんは?」

 

「保健室でラウラ達とご飯食べてます。

蓮は部下の人達とご飯行くって先に帰りましたけど。」

 

「そうでしたか。織斑さんは何をしに?」

 

「お箸が足りなかったんで取りに行く所です。

先生も一緒にどうですか?」

 

「そうしたい所ですが、どうやらご指名の様です!」

 

え?と驚く一夏を抱えて、左に飛ぶ。

さっきまで一夏と真耶がいた所に矢の様なものが刺さる。

下手人は黄色い蜜蜂型のアドベントビースト、バズスティンガー・ビーだ。

 

「ちょっとデートして来ます。」

 

デッキを取り出して構えを取る真耶。

 

「あ、あの先生!その、ご武運を!」

 

「ふふ、すぐ終わらせて来ますね。

カメンライダー!」

 

セイレーン に変身して、ブラウンバイザーを引き抜くとベンタラにダイブした。

 

「頑張れ先生。」

 

小さく呟き去ろうとする一夏。

しかし何者かが、背後から迫った。

 

「一年一組織斑一夏さんですね?」

 

「え?…あなたは?」

 

「おっと失礼、私は新聞部二年の黛薫子(まゆずみかおるこ)。」

 

ケータイを開き録画されていたセイレーンの変身シーンを見せてくる。

 

「あまりお時間はとらせません。

取材を受けていただけないでしょうか?」




ケイタ「不味過ぎるだろ。一夏と山田先生大ピンチじゃないか!」
蓮「落ち着け、まだ事はそこまで大きくない。やりようは幾らでもある!」
シャルロット「次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」
楯無「生徒会長更識楯無(さらしきたてなし)。妹がお世話になってるわ。」
蓮「何が目的だ?」
簪「姉さんなんて!」
薫子「私は新聞部の使命を果たすまで。」
虚「私は何故妹が死ななければならなかったか知りたいだけです!」
ドリュー「こうなったら殺るしかない!ゼイビアックスを!」
間明「裏切り者は処刑する!」
エム「私の名前は……。」
ケイタ「これが、新しい打鉄赤龍!」
シャルロット「次回、Gossip or true news!」
ケイタ「次回もみんなで!」
蓮「KAMEN-RIDER!」


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緊急予告

ケイタ「えっと、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…え?何?今回は本編じゃない?」

 

マシュ「そんなんです!」

 

サード『今回は重大な発表のためだけの回です!』

 

ケイタ「うわ!マシュさんにサード!どうしたんですかそんなハイテンションで?」

 

マシュ「いや、落ち着くなんて出来ません!まさか本当にこんな日が来るなんて!」

 

サード『ええ!しかもよりにもよって主役は私です!』

 

ケイタ「!? つまりどうゆう事?」

 

マシュ「まずはこちらのPVをご覧ください!」

 

ナレーション(CV 小山力也) 「あのキャラクター達の知られざる過去が、今明かされる。infinite time シリーズ始動!第一弾!」

 

蓮「機械の相棒ですか?」

 

水戸博士「今の君に必要な存在だ。」

 

サード『はじめましてレン・アキヤマ様。わたくしはフォンブレイバーサード、貴方のバディです。』

 

ナレーション「なぜ二人は出会ったのか」

 

蓮「アカツキは母さんの仇!俺がこの手で殺す!」

 

アカツキ「へぇ、面白くなって来たじゃないか。」

 

蓮の祖母「本当に寛子の息子なのかい?」

 

ナレーション「なぜ二人は強い絆で結ばれたのか!?」

 

蓮の従妹「助けて!」

 

アカツキ「さあどうする!?」

 

蓮「アカツキ貴様ぁ!」

 

サード『やめろっていってんだろぉ!』

 

ナレーション「infinite time ケータイ捜査官3(サード)

 

ナレーション2(CV 高橋李衣)「そしてもう一つ!」

 

蓮「サード、このファイルって!」

 

サード『ダーク社崩壊の真実?』

 

ナレーション2「2人が偶然見つけた一つの機密ファイルそこに記されていたのは」

 

ロリマシュ「はぁ、はぁ、はぁ!」

 

ショタ 立香「大丈夫!もうちょっとだから!」

 

破壊ロボ『人類、破壊する!』

 

ショタ 立香「! 行き止まり?そんな!」

 

破壊ロボ『破壊!』

 

??「待て!」

 

ロリマシュ「?」

 

ショタ立香「あれは!」

 

??「チェインジ!00(ダブルオー)!」

 

アナウンス『mission code kikaider!』

 

ナレーション2「これは、2人が出会った1人の機械(せんし)の物語」

 

2人「頑張れダブルオー!」

 

キカイダー00「はあああああああ!」

 

ナレーション2「infinite time キカイダー00」

 

マシュ「外伝制作決定です!」

 

サード『いつ連載開始かなど未定ですが書くことを忘れない為にと作者様が。」

 

ケイタ「な、なんだてっきり連載を4本に増やすつもりかと……。えー、まぁ至らない作者ですが見てくれる人がいる限り完結まで頑張りますのでよろしくお願いします!」

 

サード『それでは今回はこの辺で!』

 

マシュ「また本編でお会いしましょう!」

 

 



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Gossip or true news

ケイタ「さて、前回はヒューマギアのドクターにラウラが救われて、一夏と山田先生が写真撮られたとこまでだっけ?」

ポリー「写真って何!いかがわしいやつ?
いかがわしいやつなの?いかがわしいやつなのね!」

ケイタ「うわ!なんだあんたは!」

アンドリュー「ボスや俺らの直属の上司のポリー・ナポリターノだよ。たくヘッド!撮られた写真ってのはあんたが期待してるようなんじゃなくて仮面ライダーに変身する瞬間の写真ですよ!」

ポリー「なーんだ。つまんないの。」

ケイタ「つまんないの。じゃないですよ全く。」

ポリー「そんなこと言っちゃってあなたは欲しくないの?一夏ちゃんのエッチなしゃ、し、ん!」

ケイタ「いや、それは……。」

アンドリュー「こらこら健全な思春期の青少年からからかうんじゃないですよ。ほら、そろそろ本編はじまるぞ!」

(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

忙しなく店員が行き来すし、各テーブルから笑い声と肉が焼けるジュージュー!という音がしている。

ここはIS学園から一番近い所にある焼肉店。

その一角に奇妙な一団がいた。

男3人に女2人の5人組。

 

男の方は黒人の大男に白人のガラの悪い長身痩躯に黄色人の目つきの悪い少年。

 

女の方は頭の先から足の先まで非常に良く似た双子の姉妹

 

つまり彼らは行動隊長兼副隊長レン・アキヤマを筆頭にISに関するあらゆる分野の問題の始末を専門にこなし、

その手際の良さと手段の選ばなさから亡国機業やSHADOWさえも恐れるプロ集団、

アメリカ合衆国陸軍海兵隊IS師団ブルー大隊

通称破壊部隊の五本柱たちだ。

 

「レン少佐!これなんですか!?凄く美味しいです!」

 

「生おかわり!」

 

「ハラミだ。ほらアンドリュー!

お前も食え、全部アキツネに食われるぞ。」

 

「生おかわり!」

 

一応プライベートという体で来てるため全員英語で喋りリラックスしきっている。

 

「いや……なんでもいいけどなんで焼肉?」

 

「生おかわり!」

 

ただ1人終始ハリエットに左手をガッチリ捕まえられているアンドリューを除いて。

 

「あのブラックホール胃袋のバイ女がいないからだ。」

 

「生おかわり!」

 

言わずもがなブラックホール胃袋女とは

IS師団長のポリー・ナポリターノのことだ。

 

「いやヘッドは人よか食うぐらいで言うほど大喰らいじゃないでしょ?

どっちかっつったら人類のじゃない肝臓ついてるジュリエットの大酒飲みのが問題でしょ?」

 

「生おかわり!」

 

さっきっから生ビールを胃袋に流し込み続けてるジュリエットをゲンナリした目で見つめる。

アンドリューは酒が仇の織斑千冬の次に嫌いなのだ。

 

極端な例をあげればアルコールを世界から消す方法を至極真面目に考えた事もある。

 

しかし人によっては無くてはならないとも理解しているので無理やり取り上げたりはしないが、21歳の自分より一つしか違わない少女が酒を飲み続けてるのはいかがなものか。

 

「生おかわり!」

 

「多分ジュリエットの血液はビールなんだ。

あれは飲酒じゃなくて輸血だよ。」

 

「生おかわり!」

 

「あんな美味しそうな顔でやる輸血南極の果てまで探したってありませんよ。」

 

さらに言えばアンドリューは肉より魚の方が好きであり、

欲を言えばタバコを吸える店で美味い寿司かお造りでも食べたかったのだが、

バーナード姉妹の強い希望でこの焼肉店となったのだ。

 

「アンドリューもたべてよぉ?」

 

「生おかわり!」

 

「俺はいいんだよ。

それより食え若いの、はいあーん。」

 

「生おかわり!」

 

「あ〜ん!」

 

「生おかわり!」

 

無類の肉好きのハリエットの口に今さっき焼き上がったカルビを放り込んでやる。

心底幸せと言う表情で肉を味わって咀嚼しついる。

 

「で、今更ですけどボスが俺らに奢るなんて珍しいじゃないてすか?」

 

「生おかわり!」

 

「なんだよ?別に下心は無い。

然るべき時が来るまで絶好のチャンスで会っても織斑千冬を殺させないとか考えてないぞ?」

 

「生おか、ってレン少佐!それ話違うじゃ無いですか!」

 

ジョッキを店員に差し出そうとしていたジュリエットがキッ!と蓮の方を向いた。

アキツネとハリエットも険しい顔になる。

 

「ボス、俺らを一度は直接追い詰めたヘッドとあんたなら知ってるよな。

ここにいる俺たち、いや破壊部隊が全員程度の差はあれ織斑千冬(あのくそおんな)篠ノ之束(ばかうさぎ)に人生を滅茶苦茶にされてるって。」

 

「もちろん。それはわかっている。

だが状況は俺たちが感知できるより複雑だ。

お前たちの希望を優先させてやるほどこちらに余裕は無い。」

 

「………なら構いませんよ。」

 

「嘘アンドリュー!?」

 

「俺たちの目が黒いうちにあの悪魔どもが死ぬんなら。

お上の考えは知りませんけど俺らは俺らの復讐が叶うならそれでいいし、

その過程か結果の先にあんたの望みが叶うってんなら万々歳だ。」

 

「…悪いな。」

 

「気にすんなよ。

それよりそろそろひっくり返さないとその肉ゴミに生まれ変わるぞ。」

 

「あ!お肉!」

 

「生おかわり!」

 

再び和気藹々と喋り出した4人をしばらく見ていたがスマートフォンの振動を感じて蓮は席を立った。

 

「もしもし?」

 

『あ、レン。』

 

「どうした一夏?」

 

『あの、言いにくいんだけど、

山田先生が変身するところ見られちゃった!』

 

「なんだと!」

 

 

 

2

「あと、少し…。」

 

ウーバー○ーツで取り寄せたラビットハウスのコーヒーを胃袋に流し込む。

カフェインはあまり当てにしてないが無いよりいいだろう。

プログラムの不備やバグを確実に潰すながら簪はスパートをかけた。

 

彼女の専用機、打鉄弍式のプログラムは8割以上完成していた。

このまま行けば臨海学校ぐらいには完成するだろう。

 

(だめ!そんなんじゃ全然だめ!

私は1秒でも早く強くならないといけない!)

 

簪は焦っている。ケイタは単一仕様を発現し、

蓮はストライクと互角に渡り合った。

 

ライダーとしてもIS乗りとしても出遅れた。

コンプレックスを感じやすい簪を焦らせるには十分だった。

 

(私は…姉さんを超える。

そうして私は、初めて更識簪になれる!)

 

昔から優秀な姉はまるで影のように、

否簪を影にするように活躍した。

IS学園在学中にロシアの国家代表になったり自力でISを組み上げたり。

そのせいで簪はいつも比べられていた。

更識の二番目、姉の出来の悪いバックアップ、

更識の無能な方。

簪を更識簪として見ていたのなんて石橋健、布仏本音、芝浦淳の3人ぐらいだろう。

 

だから簪は織斑三春用のIS制作が優先され打ち切りになってしまった打鉄弍式を引き取り自力で組み立てはじめたのだ。

 

「私だって、強化打鉄のパイロット!」

 

2人に出来て私に出来ない事はない!

その一念に突き動かされ、簪は今没頭していた。

そんな所に一本の電話が入って来た。

 

「ウゴキダシテルーミライヲトメラレナイー」(着メロ)

 

「チッ!忙しいのに…もしもし?」

 

『更識簪さん?』

 

知らない男の声だった。

 

「そうですけど?」

 

『私はアンカーUSA IS開発室副室長にして打鉄赤龍、黒翔の開発責任者の能見と申します。

我が社はソフトバンクに並ぶ通信会社であると同時にIS部品のシェアトップを誇る IS機業で「要件は?」無駄な世間話は嫌いな方でしたか。

これは失礼を。』

 

態度こそ普通だがどうも信用ならない。

 

『要件はズバリ、あなたの専用機の事です。』

 

「私の専用機?」

 

『はい。我々は網島ケイタの単一仕様発現に合わせて彼の打鉄赤龍を高機能、高火力型に改修しようと考えています。

そこでどうしても打鉄弍式のデータが欲しいのです。』

 

「対価は?」

 

『我々の設備と人員を貸しましょう。』

 

「乗った。」

 

『では詳細は後日。』

 

一方的に電話は切られた。

誰かの手を借りるのは姉を超えたことにならないかもしれないが今はいつ来るかわからない敵に備える方が大事だ。

 

「必ず、完成させる。」

 

 

 

3

翌日、一年一組にて

 

「えー、突然ですがと言うか…正確には前からいましたが

転校生って事になってる2人を紹介します!」

 

「シャルロット・コンスタンです!」

 

「アメリカ陸軍海兵隊 IS師団ブルー大隊ロブスター小隊所属!

ラウラ・ボーデヴィッヒ!階級准尉!」

 

改めて女子としてシャルロットが、

アメリカ軍人としてラウラが転入して来たのだ。

 

「嘘!デュノア君女だったの!?」

 

「て言う事は裸の付き合いがあったはずの織斑君はこの事を!」

 

「なんだと三春!貴様、貴様というやつはぁ!」

 

「いやいや落ち着け箒!

俺も今初めて知ったんだよ!竹刀をしまえ!」

 

教室は大騒ぎだ。

織斑千冬が来るまで収まりそうにない。

ケイタはあくびを噛み殺しながら早速ガールズトークを始めてるシャルロットと蓮と何やら事務連絡をしているラウラを見ながらぼんやり思った。

 

(死人が出かける騒ぎがあった後なのに切り替えの早いもんだな。)

 

《まあただ一度の青春と言うしな。》

 

《楽しまなければ損という訳ですね。》

 

独り言のつもりで言ったがデッキを介して聞いていたらしい。

普段ずっと黙っているせいだろうか?

 

(セブン、サード。授業中は話しかけるのやめてくれよ?)

 

《しかし我らは授業よりいかにして新たな問題を切り抜けるか議論しなければならないのではないか?

文屋に山田真耶の正体を見られてしまったのだろう?》

 

《もしあの新聞部とかいう奴らが一夏に危害を加えるようなら殺害方法から残った皮と肉と油の塊の処分まで考えなくてはならない。》

 

(確かに。)

 

《ゼロワンあなた……。》

 

《急に会話に入ってくるな!

というかケイタも殺人を容認するな!》

 

(何ぬるい事言ってるんだよセブン?

世の中腐ってる…腐ってる奴は死んだ方がいいんだ!

そんな腐ってる奴らを消していったら…

俺が新世界の神となるぅ!)

 

《クックックックッ!人間って面白!》

 

《け、ケイタ様!?ゼロワン!?》

 

《2人揃って何を受信してるんだ!?戻って来い!》

 

(はっ!………あれ?なんだったんだ今の?)

 

《何かに支配されていた気がする…。》

 

《怖すぎだ。》

 

《前世のフラッシュバックか何かでしょうか?》

 

(俺の前世どんだけ病んでるんだよ?)

 

いや確かに危うく乗っ取られかけたような気はしないでは無いがそんな事より

問題は新聞部の黛とかいう先輩だ。

 

《一応ネットからこの学校やその付近、

奴の行きそうな場所の防犯カメラなどから集めれるだけの情報は集めてみたが特に怪しい人間では無いな。

姉がIS関係の雑誌の記者をやってるがどう調べてみてもベンタラや仮面ライダーの事やフォンブレイバーの事を知っていたような気配はない。》

 

(つまり一夏か山田先生をマークしていて偶々あの現場に出会したって事か。)

 

《いえ、真耶様が尾行されていたとは考えづらいです。

もし黛薫子が真耶様をターゲットにしていたと仮定した場合、

真耶様に浮いた話などありませんし、

そうなるとライダー関連の事を取材しようとしていた事になります。》

 

《つまりあのアバズレは初めから一夏をストーキングしていた事になるな。》

 

(ああ……幸い奴の顔と名前は分かっている。

なら始末するのは簡単だ!)

 

《落ち着けケイタ!

また新世界の神に乗っ取られかけてるぞ!》

 

《ゼロワン何あなたもコンクリートとドラム缶と青酸カリをブラックマーケットから取り寄せようとしてるんですか!》

 

《必要なものだ。》

 

(どんな理由か知らーねえがフォンブレイバー持ってる以外普通も普通な一夏の平和を土足で荒らす奴は極刑だ。)

 

《そこだ!何故織斑一夏が狙われた?

ライダー関連だとしたらケイタやアキヤマに山田真耶が狙われるのは分かる。

我々関連だとしたら派手に動き回ってるのはアキヤマやサードだ。

彼女の姉や兄なら分かるが織斑一夏は世話好きで家事好きで多少剣道が達者な周りが異常な奴だらけなだけの普通の少女だ。

それが何故狙われた?》

 

(セブンお前まるで俺らが明らかに変みたいに言いやがって。)

 

《あんなアイアンマンとマイティソーの中間みたいなものに毎日変身してる奴が何を言う。》

 

話が脱線し始めた。

その隙にサードはドラゴンナイトのデッキとの接続を解除してウイングナイトのデッキに繋げる。

 

《レン様少々よろしいでしょうか?》

 

(どうした?何か新しい情報か?)

 

《いえ、これはあくまで私の推理みたいなものなのですが。》

 

「お前が不確定なものを話したがるなんて珍しいじゃないか。

言ってみろ。」

 

さっきまでの会話の内容を細かく話した。

 

(成る程確かにそう考えるとおかしな話だな。

盲点だった。俺はついさっきまで黛と、

後居るのなら黛を陰から操ってた奴をいかにバレないように魚の昼飯に生まれ変わらせるかしか考えてなかったよ。)

 

《あなたまでケイタ様と同じような事を…。》

 

(俺よりケイタの方がその方向にいったらまずいだろ?

で、ここまでは分かった。

それでお前の推理ってのは?)

 

《はい。そう考えた時もう一夏様が狙われる理由など、

織斑計画ぐらいしかないかと。》

 

(ッ!)

 

思わず叫びそうになる口を抑える蓮。

あと少しで喚き散らすとこらだった。

 

(な、尚更なんで一夏だ!

もしそうだとしたら織斑千冬の方が恐らくだが計画の核心に近いだろ!)

 

《だからこそガードが硬い千冬様よりガードが緩い一夏様を狙ったのでは?

関連性はまだわかりませんがあの家出ケータイと同じ名前の無人攻撃ロボットの事を調べてたとしたら黛薫子を陰で操る人物も、

いたとしたらですが想像出来てしまうんですよ。》

 

(…生徒会か。)

 

これは一波乱どころの騒ぎじゃ治らないな。

蓮は密かに覚悟を決めた。

 

 

 

4

パタン。動画の再生が終わったパソコンを閉じるとIS学園生徒会長更識楯無(たてなし)は椅子に体を埋めた。

 

「思わぬ大物が釣れちゃったって感じ?」

 

「ええ。私もまさかミラーマン擬きと遭遇するとは思ってなかったわ。」

 

黛薫子も肩を竦めながら返す。

真耶の変身の瞬間を治めたビデオはまだ楯無にしか見せていなかった。

 

「どっちにしろ彼らに近づく口実になるからいいんだけど。」

 

結果オーライ と書かれた扇子を広げ不敵に笑う楯無。

 

「後は(うつほ)ちゃんにバレない様に諸々の仕込みを終わらせるだけね。薫子あなたは」

 

「みなまで言わないで。

引き続き織斑一夏の尾行でしょ?」

 

そう言ってメガネを直すと薫子は生徒会室から出て行った。

 

「はあ、虚ちゃんには困ったものね。」

 

虚とは彼女の近侍の布仏虚。

布仏本音の姉のことだ。

彼女は楯無より一つ年上だが実の姉妹の様に育った仲だ。

 

故に本音の死因が他殺だと分かった以上彼女はなんとしても犯人を見つけ出そうとするだろう。

砂漠に落ちたゴマ粒程の可能性も徹底的に検証して口に出すのも憚られるものも含めてあらゆる手段を使うだろう。

 

(だからこそ怖いのよね。

もし犯人を見つけ出せて自分や法律が裁くことも殺すこともできない様な相手が犯人だった場合、彼女は壊れないでいられるかしら?)

 

一抹の不安を覚えながら楯無は再び椅子にどかりと深く座った。

 

 

 

5

「本当にすいません私が油断していたばっかりに!」

 

昼休みのIS学園、その中でも恐らく誰も寄り付かない屋上で何度も何度も深々と頭を下げる真耶の姿があった。

蓮は何か咎める様な事を言おうとしたがそれより早くケイタや一夏に心愛達が真耶を慰め出したため不発に終わった。

因みにシャルロット、海之、千夜の3人は今朝弁当を作る時間がなかったため食堂で、簪は昨日の夜からいないとの事で今日はこの5人だけだ。

 

「兎に角!新聞部の黛とか言うやつをどうにかしないとまずいでしょ?」

 

「いやでも蓮くん。

こうゆうのって騒ぎ立てなきゃ都市伝説みたいに思われるだけじゃない?」

 

「一般人はな。問題は女権だ。」

 

「女権?何で?」

 

「お前らすっかり忘れているみたいだが兄の方の織斑と鳳が試合中にキカイダー01に襲撃された時に俺とケイタと簪はライダーに変身して2人を助けてる。

つまりもし女権が山田先生がライダーだと知ったら他のライダーも芋づる式に見つけ出そうとして山田先生を拉致監禁拷問ぐらいしそうだって話だ。」

 

「拷問!?」

 

ことの重大さが分かったらしく心愛は青い顔に残りの3人もゴクリと唾を飲んだ。

 

「だからこの際多少手荒な手段もやむなしと考えて」

 

そこまで蓮が喋りかけた所でドアが勢いよく開く。

 

「失礼しますアキヤマ少佐!

ラウラ・ボーデヴィッヒ准尉!

リツカフジマル技官とマシュ・キリエライト技官をお連れしました!」

 

「…ご苦労だったボーデヴィッヒ。

それから今度からドアを開けるときはノックをして返事があってから名乗る様に、大声もあげなくていい。」

 

「了解しました。以後気をつけます。」

 

蓮が合図をするとようやく敬礼の姿勢を崩すラウラ。

 

「で、何でお前らが?なんかこう…珍しい3人だが。」

 

「なんでもお二人から渡すものがあるとのことで。」

 

「渡すもの?」

 

「はい!前回の件でソリッドドライバーが正式採用されたんです!」

 

「遂にか!」

 

「はい!各エージェントの皆さんに使っていただくべく量産型機の生産も検討されているんです!」

 

「やったじゃないか2人とも!

藤丸博士や水戸博士も鼻が高いな!」

 

「ん?……え!?ソリッドドライバーって立香さんとマシュさんが作ったの!?」

 

「い、いえ!私は立香先輩とキカイ先輩を手伝っただけで。」

 

「謙遜するな。お前だってその2人と同じように水戸博士から直々に教えを受けた弟子の1人だろ?」

 

「水戸博士ってフォンブレイバーの開発者の!?」

 

『そこの家出ケータイが唯一一夏様以外に悪態をつかない人間の1人です。』

 

『ほっとけ。』

 

「? レン少佐今男の声がした気が「気のせいだ」

 

「という訳で、3人共用のソリッドドライバーを持ってきました!」

 

「すげー。」

 

「前回は使わなかったけど確か二つのブーストフォンをいっぺんに使えるんだよね?」

 

「ああ。別々のブーストフォンを使うことも、

同じブーストフォンを使うこともね。

それからちょっと変則的だけど。」

 

そう言って立香はケイタに赤いレーザーポインターを、

蓮に青い円形の何かを、一夏に黄色い置き時計を渡す。

 

「これは?」

 

「アンカーの下部組織の宇宙企業アンサーが開発した宇宙探査用のツールをブーストフォンの技術で改造した新アイテム」

 

「その名もアクセルデバイスです!」

 

マシュの声と共に三機は掌の上でデバイスモードに変形した。

 

「まずサーチライト型のサーチャー!

人類が発見したあらゆる光を放つ事ができ、

未知の宇宙空間でもその環境に最適な種類と量の光を出してくれる優れものです!」

 

「その副作用として指紋捜査や硝煙の有無なんかも確認できる、

つまり簡易的に鑑識が出来るんだ。」

 

「すげえなお前、よろしくな!」

 

こちらこそ。というように2、3度高く飛ぶサーチャー。

 

「次に円盤型のディテクター!

宇宙空間に有る未知の部質を解析する為に作られた物であらゆる場所に持ち込めるように圧倒的硬度と驚異の軽量性を誇ります!」

 

「簡易的な検死やフォンブレイバーの盾として使える便利なやつだ。」

 

「確かに今まで防御特化のブーストフォンは無かったしこいつは重宝するな。」

 

お辞儀をするようにアクティブモードとデバイスモードへの変形を繰り返すディテクター。

 

「最後に時計型のクロノ!

どうしても時間感覚が無くなりがちな宇宙飛行士に活動限界時間や地球時刻を知らせる便利な時計ちゃんです!」

 

「フォンブレイバーの予備バッテリーや電波中継機の機能もあって、アクティブモードの時はキャタピラだから、

基本どこにいても必要な支援をしてくれるな。」

 

「これは頼もしい仲間が増えたね。」

 

「よろしくね!」

 

クロノは照れたように頭をかくような仕草をする。

 

「ヒューマギアの次はお助けロボットとは…。」

 

「アンサーの企業秘密だ。口外するなよ?」

 

「はっ!」

 

ラウラに口止めをすると3人はアクセルデバイスをしまった。

 

「アクセスデバイスかあ、

俺間違えてこいつの事シーカーって呼んじゃいそう。」

 

「確かに似てるね。」

 

全然違う!というようにケイタ、一夏のポケットからシーカーとハイシーカーが飛び出して来た。

つられたように他のブーストフォン達も次々と飛び出して来る。

 

「うわっとっと!みんな落ち着いて!」

 

「お前!どこ登ってるんだ!」

 

「おいおいブーストフォン総出じゃないか?

歓迎パーティーにはまだ早いぞ?」

 

そこはまで言った所では!と何かに気付く蓮。

 

「ボーデヴィッヒ!ちょっとドアを塞いでてくれないか?」

 

「はっ!」

 

みんな耳貸してくれ。

と言ってラウラ以外のメンバーについ今さっき思いついた計画を説明する。

 

「…結構苦しい部分もあるが、いけないか?」

 

「いや、めっちゃいい案じゃん。

これなら新聞部なんて敵じゃない。」

 

「でもケイタ、そんな上手くいく?」

 

「大丈夫だって。情報戦が文屋の十八番なら、

潜入戦は俺たちケータイ捜査官(バディユーザー)の十八番だ!」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

ポリー「私も焼肉食べたかったぁ!」

アンドリュー「そんな事よりアクセルデバイスの登場の方が重要でしょ?」

ポリー「ねえ私泣くよ?駄々っ子みたいに暴れるよ?」

(ED WAKE YOU UP ケータイ捜査官7)

ケイタ「はいはい時間も推してるんでさっさといきますよ?次回!Gossips or true news その2!」

アンドリュー「次回もどうぞご期待ください!」

ポリー「焼肉焼肉焼肉!」

アンドリュー「うるさい!」


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Gossips or true news その2

ケイタ「さて前回までのあらすじといきたいけど…カンペどこいった?」
謎の少女「これのこと?」
ケイタ「え?」
謎の少女「はい、これ。」
ケイタ「あ、ありがと。えっと君は?」
謎の少女「? へんなケイタおじちゃん。あったことあるよね?」
ケイタ「け、ケイタおじちゃん!?」
蓮「あ、いた!ケイタ!」
ケイタ「あ、蓮。」
謎の少女「いけない、いまのパパが来ちゃった。じゃあね。」
ケイタ「あ、ちょっと!…なんだったんだ?」
蓮「どうしたケイタ?狐に化かされたみたいな顔して。」
ケイタ「いや別に…。えっと、前回はアクセルデバイス達が登場したんだったな。」
蓮「ああ、早速新聞部に反撃だ。時間も押してるしそろそろ行くか。」
ケイタ「さてさてどうなる?」
(OP WAKE YOU UP ケータイ捜査官7)


1

柄にも無く緊張しているのか蓮はソワソワと落ち着かなかった。

 

『珍しいですねレン様が緊張するなんて。』

 

「当たり前だ。この任務は1人のミスが全員の負担になる任務だ。

ほんの少しも気を抜けない。」

 

『とかなんとか言って本当は1人じゃないみんなでやる任務が嬉しいんでしょう?』

 

「……お前にはなんでもお見通しだな、サード」

 

仮面の下で苦笑しながら蓮は改めて頭の中で計画を反芻した。

何も問題はない。後は仲間と自分を信じるだけだ。

 

(仲間と言えば、あいつにも連絡しとくか。)

 

スマートフォンを取り出し電話をかける。

 

『もしもし?』

 

「天々座か?アキヤマだ。」

 

『!?あ、ああ。こんな遅くになんだ?』

 

「長い間身体にガイアメモリが入ってた訳だが、

その後どうだ?」

 

『その事か、たまに頭がぼーっとするぐらいで特に問題ない。』

 

「そうか、そんぐらいならよく運動して汗かいてガイアメモリの毒素を抜くことをおすすめする。

ずっとベットの上だったんならいい体ほぐしにもなるしな。」

 

『わかった。心愛辺りでも誘ってみるよ。

それから、バイトの方もそろそろ戻れそうだと伝えといてくれ。』

 

「ああ、伝えとく。用事あるから切るぞ?」

 

『ああ、おやすみ』

 

スマートフォンをしまい、鏡の前に立つ。

 

「さあ、頼むぞみんな。」

 

 

 

2

蓮の立てた作戦というのは真耶が仮面ライダーであるというデータ的な物証をハッキングで削除して何事かとこちらを探り出したところを逆に罠に嵌めて脅迫し返すというものだった。

 

「本当にVRゴーグルなんかでいいの?」

 

「大丈夫!幻夢のVRゴーグルならなんの問題もないよ!」

 

調節したゴーグルを一夏にかぶせながら心愛はおーぶねを揺らす感じでいいよ!と胸を叩いた。

 

「それ転覆してない?」

 

不安を感じながらも、スマートフォンで電話をかける。

 

「もしもし立香さん?」

 

『ケイタ君。そっちの準備終わった?』

 

「ボチボチ。そっちはどうですか?」

 

『こっちは完了。

フォンブレイバー達やブーストフォンも準備万端。

マシュも位置についたし後はそっち待ち。』

 

一夏と心愛の方を見る。

心愛がいつも通りのいい笑顔でサムズアップしてきた。

 

「こっちもオッケーです。お願いします。」

 

 

 

3

合図を確認し、デモリッションを着身したゼロワンはアクティブモードのソリッドドライバーに乗り、

ブーストフォンやアクセルデバイスを伴って立香達のラボから通気口を移動した。

ソリッドの操縦はVRゴーグルを使って視界を共有した一夏が行なっている。

 

『一夏、どうだ?視界に不備はないか?』

 

「平気。サーチャーのライトのおかげでよく見えてる。

ケイタが作ったマップも思ったより信頼できそうだしね。」

 

「思ったよりってなんだよ。ほら次右。」

 

「了解。」

 

角を曲がり目的地に着いたゼロワンはソリッドから降りてセブンとサードに連絡を取った。

 

『こちらゼロワン。A地点に着いた。頼むぞ。』

 

『任せろ。』

 

『ケイタ様、お願いします。』

 

「おう。爆弾メール送信。」

 

ケイタのパソコンから海外サーバーを多数経由し新聞部に所属する全員にウイルス入りのメールが送られた。

フォンブレイバー三機がソリッドドライバーとアナライザーを使って制作したウイルスで感染させた端末が接続してるカメラ関連のデータをフォンブレイバーに送信後端末内の全てのデータを破壊するというものだ。

 

三十分たらずでセブンとサードにデータが送られてきた。

 

サードは着身したメディックでウイルスがないかを確かめすぐにクロノを着身したセブンにデータを送り、解析する。

 

『目的のデータを確保出来た。』

 

『ゼロワン次のステップに』

 

連絡を受けデモリッションで出口を確保したゼロワンはオブザーバーを着身し、

大気解析機能を使い室内のイオンをコントロールし、

カメラ、盗聴器の類を麻痺させる。

 

『サーチャー、着身。』

 

次にオブザーバーを着けたのとは逆の手にサーチャーを着身し、

トラップの類がないかを確認する。

 

『いけ!』

 

他の引き連れていたブーストフォンを降ろし、室内を改めさせた。

 

《特に誰かを脅迫していたとかは無さそうだが、

一夏を尾行()けていた黛とかいう女、

中々酷い捏造記事を書くな。》

 

それらの証拠を持参していたUSBに保存しては続けて着身したアナライザーで作ったウイルスでズタズタに破壊していく。

 

『悪いが今日限りで新聞部はこの学園から圏外だ。』

 

そうして全てのデータを集めきったのを確認すると室内の機材をブーストフォン達に一箇所に集めさせる。

 

《盗聴器にカメラの埃のかぶり方から考えて、

これらが設置されたのはあのキカイダー擬き襲来のすぐ後、

IS学園経由で仮面ライダーが眉唾の都市伝説では無くなった辺り、か。》

 

もしライダーに関しての調査では無いとしたらあのキカイダー擬きと一夏になんの関連性があるのだろう?

サードは何か知ってるようだったが確証がないことは話さない主義だし問い質しても無駄だろう。

 

《俺は一夏を守るだけだ。》

 

思考を切り替え、ソリッドと二機のスピーカーを着身する。

最後の仕上げ、全ての機器を破壊しようとするが

 

(まてゼロワン!緊急事態だ!)

 

《緊急事態?》

 

(ISパイロットと出会した。)

 

機器を破壊したゼロワン達をベンタラから来た蓮が回収する手筈だったのだが、恐らくこれを見越してスタンバイしていたんだろう。

 

「こんな夜更けにお城を離れてたらお姫様を守れないわよ?

名も知らぬ騎士(ナイト)さん。」

 

邂逅 と書かれた扇子を広げながら現れたのはこのIS学園の生徒会長にしてロシアのIS国家代表の更識楯無だ。

 

「………。」

 

ボイスチェンジャーでも持って来てたら軽口の一つでも返してやる所だが生憎持ち合わせがない。

かわりに鯉口を切るようにバイザーに手をかける。

 

「まあまあ慌てないの。

まずはIS学園を代表してお礼を言わせて頂戴。

一年のクラス別マッチの時、

あのロボット軍隊を倒してくれてありがとう。

あとの2人にも宜しく言っておいて。」

 

伝言 と書いた扇子を広げる。

馬鹿にしてんのか?と言ってやりたかったがまともに相手するだけ無駄かと思い素直に頷く事にした。

 

「さて、そろそろ本題に入っていいかしら?

あなたがどの程度この学園について知ってるかは知らないけど、私には、生徒会長にはこの学園を脅威から守る義務があるの。

そこで貴方にクエスチョン。」

 

質問 と書かれた扇子を広げる。

今までと違い、同じ動作でもそこから『ふざけ』を感じとれない。

 

「貴方達は誰の敵で誰の味方?返事によっては…」

 

パチン。と扇子を閉じる楯無。もう殺る気だ。

 

ガキン!次の瞬間両者のちょうど真ん中でダークバイザーと楯無のIS、 霧纒の淑女(ミステリアス・レイディ)の近接用の槍型武装 蒼流旋(そうりゅうせん)がぶつかり合った。

 

「あら、中々やるわね。

首元寸止めぐらいを狙ったんだけど。」

 

ふん!と鼻を鳴らして槍を抱えると楯無ごと近くの窓から飛び降りた。

 

ガラス片と楯無と共に落下しながらカードを取り出す。

 

「させないわ!」

 

もちろん向こうもカードの危険性を理解しているだろう。

バイザーとカードは絶対に使わせまいとする。

それこそが蓮の罠だった。

 

「ぐぅううううう!なに、これぇ?」

 

蓮が引いたカードはナスティベントのカード、

アタックベントと同じく鏡にかざすだけで、

今まさに2人と同じ速度で落下中のガラス片にかざす事で発動できるカードだ。

今の状態なら360度全方位から超音波を浴びせられるのだ。

 

怯んだ隙に槍を抱えたまま軸にして顔に向かって蹴りを放つ。

楯無は顔を打撃の瞬間に動かしうまく痛みを逃したが絶対防御は発動した。

当たり前だ。ライダーの蹴りはやりようによっては量産型ISぐらい一撃で鉄塊に変えれるぐらいの威力がある。

 

<ATTACK VENT>

 

その隙にカードをベントイン。

ダークウイングを喚び出して合体し、ホバリングする。

ナスティベントはまだ発動したままなので楯無は憎々しげにこちらを見上げることしか出来ない。

 

チッチッチッと某液体金属のターミネーターの様に指を振ってやると悔しそうに歯噛みした。

気分が良い。

しばらく音波を浴びせていればこうゆう時のために待機してくれていたマシュがゼロワン達を回収してくれている事だろう。

 

(更識の、仲間の姉を痛ぶるのも気が引けるが、

勝ち逃げさせてもらおう。)

 

バッ!と天高く舞い上がった蓮は手頃な窓からベンタラに消えた。

 

 

 

4

翌朝、 4人は何事もないかの様に登校した。

 

「で、今の所ただ新聞部の部室を荒らしただけだけど?」

 

「大丈夫だ。キリエライトに頼んで『手を引け』って書いた紙を置いといてもらった。」

 

「それ指紋とか大丈夫?」

 

「ちゃんと職員室から失敬したコピー用紙にワープロ字を印刷したやつを置いてきた。

ついてたとして教員の指紋だし筆跡なんか鑑定しようがない。」

 

ちゃんと手袋した手で掴んだしなと付け足す蓮。

 

「蓮君はなんでそうゆう悪いことに用意周到なの?」

 

「それはお前達がまともな人生を歩みたいなら聞かない方がいい話だ。」

 

少しイタズラっぽい笑いを浮かべながら茶化す様に蓮は言った。

確かに日本で拳銃を持ち歩いてる人間がまともとは言い難い。

 

「聞かなかった事にする。」

 

「賢明だな。そこのあんたも聞かなかった事にしてくれると助かる。」

 

そう言って蓮が振り向いた先には1人の女子生徒が立っていた。

 

「え?」

 

「いつからそこに?ってん?」

 

「か、簪ちゃん!?」

 

「のお姉ちゃんです!」

 

心愛の疑問に答える様に姉妹 と書かれた扇子を広げる。

よく見ると簪より髪が短く、簪が髪が内側にはねてるのに対して外側にはねてる。リボンの色は2年のそれだ。

 

「はじめまして私は「1年1組の保登心愛さん、網島ケイタ君に織斑一夏ちゃんにレン・アキヤマ君。

こちらこそはじめまして私は更識楯無よ。

妹がお世話になってるわ。」

 

「いえいえこちらこそ。」

 

セリフに割り込まれたにもかかわらず心愛は丁寧に頭を下げた。

 

「流石生徒会長。1年もリサーチ済みとは恐れ入ったよ。」

 

「生徒会長?あの人が?」

 

「てかこの学校生徒会あったんだ。」

 

「そりゃあるだろ学校だし。」

 

どうやら蓮以外生徒会の存在自体知らなかった様だ。

 

「傷つくわね。まあ有名無実化してるのは確かだけど。」

 

「そうなったのはあんたが影でコソコソしてるからって聞いたが?」

 

「まあね。

けどそれもそろそろ終わりにさせたいなと思ったから貴方達に頼があるのよ。」

 

「頼み?」

 

まるで双子の兄妹のように向き合いながら同じ様に首を傾げるケイタと一夏。

 

「ズバリあなた達に生徒会役員になって欲しいのよ。」

 

今役員が会長(わたし)と会計しかいなくて。

と人員不足 と書かれた扇子を広げる楯無。

 

「たった2人で生徒会って言えるんすか?」

 

「だからあなた達の力が必要なの。

お願いこの通りよ!待遇は応相談にするわ。」

 

「どうする一夏?」

 

「私は別に良いけど。」

 

「やろーよ!面白そうじゃん。」

 

「まじで言ってるのかお前ら。」

 

蓮はあからさまに嫌そうな顔をしているが、

ケイタ一夏はまあどちらでも、心愛は面白そう!

と乗り気だ。

 

「そう?なら早速この書類にサインを「ちょーっと待った!」

 

隠れていたのか、また例によって忍者屋敷の様に続々と人が現れ集結してくる。

うち1人が代表して言った。

 

「貴重な男子は学園の共有財産!

生徒会に独占なんかさせないわ!」

 

そーだそーだ!と他の全員が同調する。

 

「文句があるなら腕尽くで奪い取ってみなさい!

この学園最強に勝てるならね!」

 

煽ったのがよくなかったのだろう。

生徒達は一斉に楯無に襲いかかる。

 

「今のうちに逃げね?」

 

「だね。」

 

このドサクサに紛れて4人はホームルームに向かった。

この後百人組手をしていたはずの楯無は余裕で自クラスのホームルームに間に合い、挑んだ生徒全員が伸びきって保健室送りにされたのは完全に余談である。

 

 

 

5

昼休み、4人はラウラ、シャルロット、海之、千夜、神楽、ロランと共に屋上にいた。

 

「今頃新聞部は大騒ぎだろうな。」

 

「レン少佐、お言葉ですが立派な犯罪行為では?」

 

「これがブルー大隊のやり方だ。

ライフラインを破壊したり串刺しにした死体やISの残骸を見せつけないだけブラック大隊よりマシだ。」

 

一同思わず手を止めて蓮の方を見る。

 

「ほ、他にもそんなことをする様な奴らが?」

 

勇気を出して尋ねるケイタ

 

「米海兵隊IS師団はレッド、ブルー、シルバー、ブラックの4つの大隊に分かれてる。

国内外のISに関する軍事情報を探るレッド大隊、

俺やボーデヴィッヒが所属してるのが代表候補生の育成や国対抗でやるISの大会への出場したり必要に応じて亡国機業などのテロ集団と戦うブルー大隊。

国内の裏切り者や海外へ逃亡しようとするパイロットや技術者なんかを始末するのがシルバー大隊。

それから…師団長直属の配下で何やってんのか俺たちにも一切不明のブラック大隊。

俺たちブルー大隊は国外の敵と戦うことが多い都合上、

ブラック以外の大隊とよく共闘する。

例えばアンドリュー率いるロブスター小隊はシルバー大隊

アキツネ率いるセンチピード小隊はレッド大隊と、

ジュリエット率いるアリゲーター小隊は俺がいない間にブルー大隊をって具合にな。」

 

「あれ?ハリエットちゃんは自分の小隊ないの?」

 

「あいつだけな。

その時の気分でジュリエットかアンドリューと一緒にいるよ。」

 

「へー。」

 

(てことはあの3人がそうなら余ったレンの色は…)

 

(ブラックか、なんか納得。)

 

「ケイタ、一夏。お前らなんか失礼なこと考えてないか?」

 

「イヤイヤ。」

 

「ソンナマサカ。」

 

「じゃあなんでそんな片言なんだ。」

 

「コレ中南米ジャ日常茶飯事。」

 

「ソウソウ。」

 

「そうなのか?」

 

「騙されるなラウラ。だが秋山。

お前も二人の言わんとしてることを否定できんだろう。」

 

「俺はあの淫乱バイ女の小間使いじゃねえ。」

 

「論点そっち?」

 

「インランバイって何?」

 

「あ、私も気になった。」

 

「私も」

 

「お前らは知らなくていい。」

 

? と曇りなき眼で首を傾げる心愛、千夜、シャルロット。

 

気になる気になると詰め寄る3人をなんとか言いくるめようとするケイタ、一夏、海之。

 

「平和で騒がしいもんだな。

ここにオルコットや鳳や更識が居ないのが残念だ。」

 

「あぁ……あぁ簪!いとしの蕾よ!

君は今どこで何をしてるんだ!」

 

さっきから静かだったのはそう言った理由だったかと納得する蓮。

 

(さて、どうにかして新聞部の口を割らないとな。)

 

頃合いを見計らい蓮はベンタラに入った。

 

 

 

6

「ま、まさかここまで直接的な手段で訴えてくるなんて…。」

 

昼休み、脅迫用の記事を作りに部室を訪れた黛薫子はあまりの惨状に膝をついた。

あらゆる機材がもう廃品屋にだすぐらいしか使い物がないレベルに破壊されている。

 

その残骸の上に「手を引け」と書かれた紙が置いてある。

 

「ここまでして、知られたくないか。」

 

そりゃそうだとも思いつつ部屋の鍵を閉め、

楯無に連絡すべくケータイを取りだす。

 

『おかけになった番号は現在電波の届かないところにあるか、

電源が入っていません。』

 

「あれ?珍しい。」

 

「いや、彼女ならすぐに出るさ。

僕らが妨害してるからね。」

 

背後から気配を感じて振り向く。

どこか浮世離れしたイケメンが杖をついて立っていた。

 

「だ、誰?」

 

「はじめまして。僕は間明蔵人。

君に復讐の機会を与えるものだ。」

 

間明はポケットから奇妙なスイッチを取り出した。

 

黒い持ち手は刺々しい装飾で、

赤いスイッチの周りのドーム部分は血走った目の様になっている。

 

「ッ!!!!!!!!」

 

あれはよくないモノだ。

黛の生存本能がガンガンに軽傷を鳴らしている。

 

「あ、僕が今脹脛を肉離れしてるからって走って逃げれるとか思わない方がいいよ?」

 

間明が背後を指すといつの間にか入って来ていた2人の警備員がグニャリと赤い怪人、レッドミニオンに変身した。

 

「ひっ!」

 

「ふふ。仮面ライダーとかの助けは期待しない様に。

僕がそうだからね。」

 

そう言って間明はポケットから紫色に金のコブラのライダーズクレストのアドベントデッキを、ストライクのデッキを取り出す。

 

Vバックルを出現させ、

鎌首をもたげる様に右の甲を縦に見せ、

掌を見せる様に素早く横に裏返す。

 

「仮面ライダー。」

 

デッキをセット。

紫の光に覆われた間明は仮面ライダーストライクに変身した。

 

バイザーを杖替わりにゆっくり近づいてくる。

 

「無駄だよ。」

 

ストライクの合図で二体のレッドミニオンが黛を取り押さえた。

 

「やだ!離して!離してよ!」

 

「ダメダメダメダメ。

今日から君の仕事は新聞を書く事じゃなくて、

この学園の生徒会の抹殺だよ。」

 

『ラストワン!』

 

無理やりスイッチを押された黛はモヤの様な光に覆われペルセウスゾディアーツに変身させられた。

魂だけが抜けた黛の体がゾディアーツから排出される。

 

「宇宙に夢を、星に願いを。なんてね。」

 

戯けた様に首を傾げるとレッドミニオン達を伴ってベンタラに消えていった。




ケイタ「ドーパントに続いてゾディアーツまで出てくるかあ…。」
蓮「もしかしたら人間が変身する系の怪人を網羅する気なのかもな。」
ケイタ「やめてくれよそれだけは。」
蓮「それよりそろそろ時間だぞ。次回、Gossips or true news その3。」
謎の少女「昨日投稿したinfinite time ケータイ捜査官3も見てね!」
ケイタ「あ、ちょっと!」


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Gossips or true news その3

ケイタ「さて、前回までは間明の奴があのアバズレ新聞部を化け物にしたとこまでだっけ?」
一夏「け、ケイタ言葉選びなよ。」
ラウラ「あばずれ?とはいったいどうゆう意味」
一夏「ラウラは知らなくていいから。」
ラウラ「え?あぁ…。」
ケイタ「そして主役なのに俺の出番はまったくない。」
一夏「大丈夫!私やラウラもだから!」
ラウラ「じゃあなんで私達ここに?」
一夏「あーもーさっきから何!さっさと初めて!」


1

「今朝は上手く逃げられちゃったわね。」

 

誰に見せる訳でもなく反省 と書かれた扇子を広げるのは生徒会長更識楯無。

彼女はこれから新聞部に、

脅迫用の記事を作るよう頼んだ黛薫子の元に向かっていた。

 

(あの子の記事、たまに誇張が過ぎる時があるから困るのよね。)

 

気のいい友人なのだが、と心で付け足し新聞部の部室を目指す。

 

「あれ?鍵かかってる。」

 

おかしいわね?と首を傾げながらノックをする。

 

「薫子?居ないの?」

 

「ウ?ウゥゥウゥ…」

 

ガサガサと耳に残る気持ち悪い声が聞こえてくる。

とてもではないが人間の声ではない。

 

「はいるわよ!」

 

自身の専用機ミステリアス・レディを起動して変幻自在のナノマシンを通した水を鍵型に変形させて扉を開ける。

 

そこには繭の様な物に覆われて倒れている黛と騎士の様なボディーに歪んだ笑顔の様な面と女性のデスマスクの様な左腕の怪人、ペルセウスゾディアーツが立っていた。

 

「な!あなたどこから!?」

 

「██▅▃▃▄?」

 

声になってない声を発しながら剣を構えるペルセウスゾディアーツ。

 

「よく分かんないけど、やるしか無い感じ?」

 

出現させた槍と剣がぶつかり合う。

同じ頃、ベンタラでも一つの戦闘が起こっていた。

 

ウイングナイトとトラストだ。

新聞部の様子をベンタラ越しに見ようとして、

最悪黛を脅迫し返して黙らせようと考えていた為、

他のメンバーに黙って行ったのが

 

「ようやく見つけた!戦え!私と戦え!」

 

「!?」

 

運悪くトラストとエンカウントしてしまったのだ。

 

トラストはゼイビアックスに脅迫されて以来、

敵を求めて、ライダーを倒さなければという脅迫観念に追い詰められ半ば暴走状態になっていた。

 

「お前本気か?

俺を倒した所でゼイビアックスが約束を守る保証なんてないぞ。」

 

「この戦いにゼイビアックスは関係ない!

これはブラッド・バレットの戦いだ!」

 

<STRIKE VENT>

 

メタルホーンを呼びだす。

どうやら一旦頭を冷やさせないと始まらないらしい。

 

<SWORD VENT>

 

ウイングランサーとメタルホーンが火花を散らす。

もともとパワーファイターのトラストの猛攻は凄まじかった。

 

元々スピード特化で筋力がそこまででもないウイングナイトは苦戦を強いられた。

不意打ちで放たれた蹴りがウイングナイトの胸部アーマーにまともに入る。

吹っ飛ばされて地球側に出た。

 

「ぐぅ!」

 

飛び出た先は楯無とペルセウスゾディアーツが戦っている場所だった。

 

(また新しい怪人だと?)

 

《それに生徒会長様まで…本日は会いたくない敵によく会いますね。》

 

(最悪だな!)

 

気色悪い左手を伸ばすペルセウスゾディアーツ。

 

ウイングランサーで受けるが、

触られた箇所からだんだん色が変わっていく。

 

(これは触んない方が良いか!)

 

腹部を蹴って怯ませると楯無の手を引いて距離を取った。

 

「協力してくれるの?」

 

また例によって喋るわけにはいかないので無言で頷く。

 

「ありがとう。これで二対一になったけど作戦とかある?」

 

ペルセウスゾディアーツを倒すために連帯を取るためという口実でウイングナイトの話し方や声から正体を探るつもりらしい。

 

「ちっ!」

 

「ちっ!って…そんなに私と組むの嫌?」

 

素早く頷き、バイザーを構える。

ペルセウスゾディアーツも剣を構えて突っ込んで来た。

 

「あーもー!仕方ない!

何があってもあなたは左から!

私は右から行くわ!」

 

頷くとウイングナイトはペルセウスゾディアーツの剣を弾くことにのみ集中した。左腕の対処は楯無に一任する。

 

それを察した楯無は水をシュヴァルツェア・レーゲンのマイクロチェーンの様にペルセウスの左手に巻きつける。

 

「形の無い水は掴んでも無意味よ!」

 

チェーンデスマッチの様に自分に有利な様にペルセウスを引きながら的確にランスを当てて行く楯無。

 

「終わりよ!」

 

ペルセウスの体制を崩し、もっとも鋭い一撃を繰り出す。

 

「私と戦えウイングナイト!」

 

<CONFINE VENT>

 

しかしその寸前でいきなり楯無の水がただの水になった。

ベンタラからトラストが追いかけて来たのだ。

 

ウイングナイトがそっちにかかりきりになった隙に自由を取り戻したペルセウスゾディアーツの左手がランスを掴む。

 

ガチガチと嫌な音を立ててランスは石化した。

 

(だったら内蔵ガトリングで!  何で動かない!?)

 

触られるのはまずいと思っていたがこれ程とは思わなかった楯無。

驚いてる間にペルセウスの左手が楯無の頭に伸びる。

 

(こんな判断ミスで自滅なんて!)

 

<ATTACK VENT>

 

しかしなんとか間に合ったダークウイングに助けられた。

 

「っ! 全く。駄目よね学園最強がしっかりしなきゃ。」

 

すぐに元の不敵な笑みを取り戻し、

残りの水を鞭の様に細い糸状にして構える。

 

「月に代わってお仕置きよ!なんてね。」

 

新聞部部室のドアを挟んで水の鞭と異形の剣が、

騎士の剣と猛獣の角が火花を散らす。

 

勝負は拮抗していた。

 

(くそう!何故だ攻めきれない!

私は試練に勝つ!

私はブラッド・バレットだ!

私はなんとしても再びレースに出るんだ!)

 

「アァアアアアア!」

 

雄叫びを上げながらメタルホーンで突きを放つ。

ウイングランサーなら兎も角、ダークバイザーでは防げまい!

 

トラストは完成に勝利を確信した。

奴がカードをベントインするより奴の喉にメタルホーンが突き刺さる方が早い。

 

『更識楯無!』

 

突如機械で合成された様な声がウイングナイトからした。

すぐさま意図を察した楯無はウイングナイトとスイッチする。

 

「な!?」

 

「はぁ!」

 

スイッチしながら楯無の水の鞭がトラストの足をすくい上げ転ばすのとウイングナイトがカードをベントインするのは同時だった。

 

<FINAL VENT>

 

飛来したダークウイングと合体し、左足でライダーキックの構えを取る。

 

ウイングナイトをダークウイングの翼が繭の様に包み、

高速回転しながらペルセウスを貫いた。

 

「███▅▅▃▄▅▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅━━――!!」

 

絶叫を上げて爆裂四散するペルセウスゾディアーツ。

 

(成る程、あの技なら回転するから上手く掴めないわよね。)

 

もしドラゴンライダーキックやトラストのヘビープレッシャーなら簡単に掴まれ、契約ビーストごと石化していただろう。

 

「さて、あなたにも罰を受けて貰おうかしら!」

 

復活したランスの内蔵ガトリングでトラスト1人を狙い撃ち!

無数の弾丸を浴びたトラストはベンタラに吹っ飛ばされた。

 

「よし、と。後はあなたね。」

 

お互いに手を伸ばせば届く距離を置いて対峙する楯無とウイングナイト(ふたりの槍使い)

 

「山田先生を問い詰めてもいいけど、

私はあなたに直接聞きたいの。

貴方達は学園の敵?それとも味方?」

 

『お前ら、いや織斑千冬次第だ。』

 

少し間があってさっきと同じ機械音が聞こえてきた。

 

「何故そこで織斑先生が出てくるのかしら?」

 

『project ZERO=DIVER』

 

「まさか知ってるの!?」

 

『お前たちよりはな。

面白半分興味本位で探りを入れるな。

もしこれ以上詮索するなら。』

 

ゆっくりとウイングランサーを楯無に向ける。

 

『次に爆散するのはお前とお前のISだ。』

 

「そう、覚えておくわ。」

 

ウイングナイトは隙を見てベンタラにダイブした。

 

 

 

2

「はぁ…。」

 

溜息を吐きながらバックルからデッキを外し、蓮は変身を解除した。

 

「悪いなサード、わざわざ伝言ゲームさせちまって。」

 

『いえいえ、レン様の正体がバレることに比べればどうということはありません。』

 

「助かるよ。じゃ、さっさと新聞部の様子見て帰るか。」

 

『ですね。』

 

鏡を探して覗き込む。幸いカーテンは閉まっていなかった。

 

「どれどれ…!?何があった!」

 

鏡越しに見たのは意識が無いと思われる黛を介抱する楯無の姿だった。

 

『先程の怪人の仕業でしょうか?』

 

「いや、もしそうなら石化させる筈だ。」

 

しばらくすると黛は目を覚ましたが、

左手の肩口を押さえながら悶え始めた。

獣と下手くそなクラシックの演奏を合わせた様な叫び声を上げ、

元々目も当てられないような惨状だった部屋をさらに荒らしながら、のたうち回って暴れだす。

 

『一体なぜ……。』

 

「サード、俺がさっき石化怪人にファイナルベントを叩き込んだのは何処だ?」

 

『確か左肩だったかと……まさか!?』

 

「また天々座の時みたいに精神体だけが怪人化していたんだろうな。

だからきっと魂が戻って怪人だった時のダメージがフラッシュバックしたんだ。」

 

『つまり間明が?』

 

「ああ、恐らく俺達か更識楯無の手札を今のうちに黛をぶつけて把握しておこうって魂胆だろう。

また奴が近々動くぞ。」

 

『近々あるイベントと言えば…臨海学園がそうですね。』

 

 

 

3

直ぐにドクターヘリが呼ばれ、黛は一番最寄りの聖都大学附属病院に搬送された。

担当医が言うには外傷はなく精神的なもの、フラッシュバックだと診断された。

 

(フラッシュバック…薫子が事故とかにあったなんて聞いたことないわ。

だとしたら、なんで?)

 

考えながら病院を後にした。いくら考えても答えは出ない。

 

「お嬢様」

 

ボーッとしていると不意に呼び止められた。

長い髪を一つに束ねた眼鏡の少女。楯無より一つ年上。

 

「あら虚ちゃん。2日ぶりね今度はどこに行ってたの?」

 

「風都に、本音を悪の道に落としたガイアメモリの生まれ故郷に。」

 

だった2日しか会ってないはずだが彼女の妹が、

布仏本音が超常犯罪の容疑で逮捕されてから変わり果てた姿に胸が痛い。

 

「酷い隈ね、眼鏡のせいで余計不気味よ?

また痩せたんじゃない?ちゃんと栄養取ってるの?

唇も荒れちゃってるじゃない。」

 

「どうでもいいです。

それより一刻も早くやっていただきたい事が。」

 

「何?聞くだけ聞くわ。」

 

「山田真耶の強制拘束と尋問を。」

 

「駄目に決まってるじゃない。

そんな人権をガン無視したこと。」

 

呆れて溜息を吐きながら真っ直ぐ虚の目を見る。

夜空から外灯の光も星明かりや月明かりも奪わえばこんな色になるんじゃないかってぐらい黒い目をしてる。

 

「いいえ必要なことです。

宮内庁経由で防衛省に問い合わせてIS学園の監視カメラの映像を見させてもらいましたが私の考えでは、

奴らは鏡のあるところからならどこからでも現れます。」

 

「それは私も目の前であの蝙蝠の騎士がやってるのを見たわ。」

 

「ならばお嬢様も薄々気付いているでしょう?

奴らは、仮に仮面騎士とでも呼びましょう。

仮面騎士達は一枚岩じゃない。

ならば学園に最も多い派閥を排除すれば問題は解決です。」

 

「口ではなんとでも言えるわよ。

けど今のところ私達にあの鏡の向こうに行く術はないじゃない。」

 

「何を悠長な、問題は仮面騎士だけじゃないんですよ?

例えば黛薫子の左肩を襲った強烈な痛み、

あれはお嬢様と蝙蝠の仮面騎士が戦った左腕の怪人の致命傷と同じ位置です。」

 

「あの怪人が薫子だったっていうの?」

 

「恐らく本音のように無理矢理変身させられていたんです。」

 

逮捕前の言動から察するにあれは自ら望んで変身していたはずだがここは黙っておく。

 

「でも彼女は鍵がかかった部屋で怪人と2人きりだったわよ?」

 

「自我のある石ころを内蔵した有人兵器があるんです。

魂だけが怪人に変身することもありでしょう。」

 

駄目だ。この子は妹を殺した犯人を突き止めたいが為に暴走している。

 

「そんな強引な推理に納得しろって言われたって無理よ。

頭冷やしなさい。

明日も学校はあるんだから。

そろそろ登校しないと出席日数足りなくなるわよ?」

 

「どうでもいいです。本音の魂の安らぎ以外。」

 

死人はありがとうなんて言わないわよ?

そう言いかけて虚の目を再び見た時、

初めに感じた違和感に気付いた。

 

(あ、私知ってるわ。

今の虚ちゃんの目、死んだ人間の目だ。)

 

最早死んだ妹の仇を、

死者の名残を探し続ける彼女は正しく生ける屍なんじゃないかと思った。

 

 

 

4

「遂に…完成した。」

 

アンカーIS開発所強化打鉄専用ドックにて。

簪はようやく完成した愛機を見上げながら満足げに呟いた。

 

「素晴らしくて、美しくて、

あなたにふさわしい機体ですね。」

 

「違う。これから私がこの機体に相応しくなる。」

 

決意を込めた眼差しで話しかけて来た能見に答える。

 

「それは結構。所で、これからお時間ありますか?

是非見ていただきたいものが。」

 

「?」

 

能見に連れられて隣のドックに移る。

 

「これは?」

 

「重厚で、堅牢で、ISと思えないサイズでしょう?

パズスロット節約のためにアーマーに内蔵出来る武装を充実させたんです。」

 

そこにはケイタの打鉄赤龍と同じ赤い色のISが後はコアとその周りを残して完成していた。

 

「打鉄赤龍改 臥龍鳳雛(がりょうほうすう)

我らが第三・五世代型IS一号機です。」

 

「他にもあるの?」

 

「ええ、まずこの網島ケイタ君用の『無慈悲な破壊と制圧力』の臥龍鳳雛。

次にレン・アキヤマ君の『最速の一撃での瞬殺』の打鉄黒翔改。

最後にあなたの『究極の安定と継戦力』の打鉄弍式改。」

 

「私のまで?」

 

「はい。十分なデータと必要なものが揃い次第、改修します。」

 

そう言って能見は簪に一つの計画書を見せる。

 

「極限の両極計画?」

 

「我らの理想の実現のための大いなる計画ですよ。

まず手始めに。」

 

メガネを直し、愛用のハンカチで汗を拭くと

能見は自信満々に言い放った。

 

「篠ノ之束を出し抜きます。」




一夏「ケイタのIS新しくなるの!?」
ケイタ「そう言えば、ラウラに壊されてから修理してなかったけど…」
ラウラ「その節は本当にすまなかった。」
ケイタ「いや、いいよ気にしてないから!土下座なんてしなくていいよ!」
一夏「顔あげて!まだ終わってないよ!」
ラウラ「そうだった!次回、Gossips or true news その4!」
一夏「これで決まりだ!」
(ED DIVE INTO THE MIRROR KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT)


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Gossips or true news その4

ケイタ「前回は、俺のISの強化バージョンが出て来たとこまでだっけ?」
簪「うん。あなたの臥竜鳳雛と私の弍式。」
ケイタ「なんかカッコいい漢字使ってるけどこれどうゆう意味なの?」
一夏「眠っている龍に、まだ雛の鳳凰。
どちらもこれから活躍する者って意味。
ま、ケイタは延々と寝ちゃいそうだけど。」
ケイタ「失礼な。そうゆうお前だって初めて作った料理は」
一夏「待ってあの話はちょっと!」
簪「夫婦喧嘩が長引かないうちに、本編どうぞ。」


1

日曜日、簪はIS学園に帰って来た。

 

「簪ぃいいい!」

 

「とお!ライダーキック!」

 

校門を潜るなりいきなり抱きつこうとして来たロランツィーネに挨拶がわりのライダーキックを浴びせる。

 

「ぐふぅ!流石は簪!技がまったく衰えていないな。」

 

「あなたは耐久性が上がったね。」

 

前は一撃で気絶させれたが今回はふらつきながらも起き上がれている。

 

「私も常に進化しているのだよ。」

 

制服についた土を払いながらいい笑顔を決めるロランツィーネ。

 

「そう、なら丁度いい。」

 

そう言って簪は右手の指輪型の待機形態の打鉄弍式を見せる。

 

「私と戦って。」

 

ロランツィーネは二つ返事で早速アリーナをとりに向かった。

 

 

 

2

「退院おめでと。って俺に言われるより蓮に言われた方が嬉しいか。」

 

「な!あ、網島さん?そういうのはもっとオブラートに包んでくださいませんこと!?」

 

「つまりケイタよりアイツに来て欲しかったんでしょ?」

 

「レンは今日ラビットハウスのシフト入ってたんでごめんね?」

 

戯けた感じで同じタイミングで同じ様にとを合わせて頭を下げるケイタと一夏。

 

「み、皆さん揃って…ま、まあ確かにレンさんに食べていただこうと思って作ったランチが無駄になってしまったのは残念…あ、なら丁度皆さんに食べてもらえばいですね。」

 

バキバキッ!と3人の流れる時間が止まった。

 

なんとか視線だけは必死に動かすとセシリアの手には大きめバスケットが握られている。

 

あれは殺人兵器だ。下手すればISも上回る様な代物だ。

何故そこまで言い切るかと言えばあれはかつてまだセシリアと仲良くなりたての頃、

お弁当の時間に蓮がセシリアの作ったサンドイッチを食べさせられたことがある。

その時は酷かった。

理性のアンコントロールスイッチをハザードオン!させられた蓮は一瞬で機械の様な無表情になるとまるで夢遊病患者の様にふらふらと校内を歩き回った後、自分の席に戻るとこう言った。

 

「……は!俺はいったい何を!?」

 

ただただ戦慄した。この世には食べるだけで人の思考回路を強制停止させるものがあるのか?と。

 

その後試しにケイタが一口食べてみたがあまりの不味さに満身創痍になってしまった。

本人曰く

 

「俺が食べた物の中で一番目に不味い。

まさかあれより不味いものがこの世にあるとは。」

 

見た目が普通なので特に何も意識しないで食べたら死に切る事で危機を回避できるが、下手に覚悟して食べると

この世の地獄を味わう羽目になる魔の一品。

もはやそれは料理なのだろうか?

 

(どうすんのよあの核弾頭?)(あたしは嫌だからね!)

 

(俺だってやだよ!)(けどSDGs的な)(観点から見ると食べないわけには)

 

(いっそ真実を伝えるってのも)

 

(正直に)(『千冬さんがたまに)(思い出した様に作る)(煮魚より不味いです。』)(って言える?)

 

あれもあれでセシリアのとは別ベクトルで酷かったとゲンナリする3人。

 

そして密かに二機のフォンブレイバー達は自分達には消化器官がなくてよかったと独白した。

 

「どうしましたの3人とも小声で?」

 

「いや別に!なあ一夏、鈴!」

 

「そうそう!やましいことなんてないよ!ないない!」

 

「小声って何?アンタの空耳じゃないの?」

 

我ながら苦しいなと思いつつも誤魔化す3人。

 

「あやしい…」といった感じで見ていたセシリアだがふと3人の背後に目をやる。

 

「………お久しぶりですわね。ボーデヴィッヒさん。」

 

振り返るとなんだか緊張した面持ちのラウラがいた。

 

「あ、ああ。」

 

何やら落ち着かないラウラだが意を決したように口を開いた。

 

「謝罪させてくれ!セシリア、鈴音!」

 

「謝罪?」

 

「ああ、私は2人に対して本当に失礼な発言をした!

2人を悪意を持って傷つけた!」

 

本当にすまなかった!と見事に90度の礼をするラウラ。

 

「……いいわよ。極論あたしらの実力不足もあるし。」

 

「鈴さん!?」

 

「気にしなくていいわラウラ。

一度ドツき合った仲じゃない。

それに終わってみればあっという間でも高校は3年もあるのよ?

お互いケツの穴が小さい事言い合わないで、

仲良くしましょう?」

 

「り、鈴音!」

 

「鈴でいいわ。よろしくねラウラ。」

 

「ああ、ああよろしく!」

 

ガッチリと握手を交わす2人。

 

「さ、仲直りの印にこれでも食べましょ?

セシリアの手作りよ!」

 

セシリアからランチバスケットをひったくる鈴音。

彼女の悪魔の所業に気付いたケイタと一夏は彼女の目を覗き込む。

 

(と、取り憑かれてやがる!)

 

(に、人間ってあんな目が出来るんだ……。

いや確かに逃げ切る方法それぐらいしか無いけど!

だとしてもあんまりな仕打ちじゃん!)

 

「サンドイッチか、美味しそうだな。」

 

「ええ、真心込めて作りましたもの。

ボーデヴィッヒさん。

わたくしは鈴さん程器が広くはありませんが

誠意を持った態度に答えないほど矮小でもありませんわ。」

 

「ありがとう。これからも頼む。」

 

そう言ってパクリ。とサンドイッチを一口かじる。

 

「ヴ!」

 

その瞬間一気に吐き気に襲われたのか涙目になりながら鈴音の方を見る。

 

「あら泣くほど美味しい?良かったじゃない。」

 

「まあ、そうですか?

気に入っていただけたようで何よりですわ。」

 

思わず脊髄反射で全力で首を横に振りたくなるが

作った本人がこれ以上なく満足げな手前それが出来ない。

 

流石に鈴音に言おうとしたケイタだったが

 

「あら電話(よっしゃ簪ナイスタイミング!)

もしもし鈴よ。え?模擬戦?

もちろんいいわ。

あ、一夏もいるから連れてっていい?ケイタ?

まだラウラに壊されたのが治ってないって聞いてるけど?

わかったじゃ後で。」

 

そう言って鈴音は電光石火で一夏を連れて行く。

残されたのケイタとラウラとセシリア。

 

「お二人にも食べて欲しかったのですが、

随分余ってしまいましたね。」

 

「………………」

 

「まだ、あるの?」

 

「はい、あと3人前は。」

 

3人前、致死量を遥かに超えている。

 

「け、ケイタ。わ、私は死ぬのか?

人の恋を侮辱した罪はこれ程までに重いのか?」

 

「……さあ、お前の罰を噛みしめろ。」

 

一瞬で地獄に落とされた様な顔になるラウラ。

 

「取り敢えずアリーナで皆の戦いぶりでも見ながら食べない?」

 

ケイタに出来ることはこんな時間稼ぎが限界だった。

 

 

 

3

アリーナに甲龍を鎧った鈴音と打鉄を鎧った一夏が出るともうすでに簪は打鉄弍式を鎧って待っていた。

背後にはオーランディ・ブルームを鎧ったロランツィーネが控えている。

 

「で、来たけどアンタと誰がやるの?」

 

「私と鈴とロラン。1対2。

エネルギーが規定値以下になるまで。」

 

「いいの?アンタの機体がどんなもんか知らないけど

それは舐めすぎじゃない?」

 

双天牙月を弄びながら少し呆れたように言う鈴音。

 

「百聞は一見にしかず。」

 

「へぇ。言うじゃん。」

 

2人のボルテージが一気に上がる。

これは審判有って無い無いようなもんかな?

と思いながら一夏は試合開始を宣言した。

 

「流石簪だ。さあ、私の前で花開いてくれ!」

 

ロランは両手持ちのプラズマライフルスピーシー・プランターを構え簪に突っ込んでいく鈴音を援護した。

 

簪は薙刀の夢現(ゆめうつつ)を取り出し、

最小限の動きで銃弾を避け

双天牙月をいなしていく。

 

「簪さん凄え。」

 

「ああ、とてもブランクが長かったようには見えんな。」

 

感心しながら試合を見守るケイタ達。

自分達も出たかったと少し残念に思う。

 

「うぅ…簪ちゃん。お姉ちゃんが見てない間にあんなに出来る様になって…。」

 

「な!いつからそこに!?」

 

(生徒会長!?

け、気配どころか足音すら気付きませんでしたわ。)

 

「あ、簪さんのお姉さん。ども。」

 

「ちぇ。もうちょっと驚いてくれてもよくない?」

 

不発 と書かれた扇子を広げるいつの間にか隣に居た楯無。

 

「先輩みたいなミスアンタッチャブルにいちいち反応してたって疲れてるだけでしょ?

あんたみたいなある種カマチョは無視が一番ですよ。」

 

「な、なかなか残酷なこと言うわね君。」

 

「攻撃はどんな人にも当たるって限りませんけど

口撃だけは鼓膜やら無い限り必中ですから。」

 

一度は千冬さえも撃沈させたケイタが言うと説得力が有った。

 

「後学のために覚えておくわ。

ところで私お昼まだなんだけど、

そのサンドイッチ貰っていい?」

 

「え?まあ、いいですけど。」

 

期待を込めた目で見つめるセシリアと不安そうに見つめ合うケイタとラウラ。

そしてたまごサンドを一口

 

(ケイタ大丈夫なのか?)

 

(さあ?でも空気よんでくれれば)(最悪の結果だけは)

 

「オエ!不味っ!」

 

考えうる限り最悪の言葉が出てきた。

 

「ケイタ君あなた味覚おかしいんじゃないの!?

こんな物毎日食べてたら寿命が縮むわ!」

 

セシリアの顔は笑顔のまま真っ青になって行く。

 

「簪さんのお姉さん頼むから黙って!」

 

「せめて言葉を選んでくれ!

確かにあれはあれしか食べ物がないような状態でも食べ無い。

餓死寸前でも土かアレかなら迷わず土の方を選ぶ様な不味さだけども!」

 

「バカチビ!ラウラお前全部言っちゃったじゃん!」

 

「あ…」

 

セシリアの方を見ると引きつった笑顔のまま真っ青を通り越して真っ白になり

目からは止めどなく涙が流れている。

 

「あー…そのセシリアさん?」

 

「なんですの?」

 

「これが現実だ。」

 

セシリアは泣き叫びながらアリーナを後にした。

 

「け、ケイタ?私が言うのもなんだがあのタイミングであのセリフはどうかと…」

 

「あそこまで言っちゃったらいっそ介錯してやった方がいいでしょ?」

 

そしてゆっくりと2人に振り返るケイタ。

 

「さあ、口撃を無垢な少女にねじ込んだご感想は?」

 

「……このたまごサンドより苦いです。」

 

楯無は苦渋 と書かれた扇子を広げた。

 

 

 

4

一方その頃模擬戦の方はというと

 

(簪さんすごい。2人と戦えてる。)

 

飛びながら双天牙月と夢現が火花を散らし、

時折距離を取ったかと思うと

ミサイルポット付き機関砲で的確にアーマーのカバー出来てない部分を狙って狙撃してくる。

 

「大口叩くだけ、あるわね!」

 

横からの龍咆、上からのスピーシー・プランターを器用に避けながら

簪は閃光手榴弾を投げた。

 

(目潰し!?てことはここで勝負を決めに?)

 

視界が戻ると打鉄弍式の最強装備山嵐が、

6機×8門のミサイルポッドが向けられていた。

 

「全48発、ターゲットロック完了。

全砲門、ファイア!」

 

文字通りの破壊の嵐が鈴音とロランに降りかかった。

 

何発かは手持ちの遠距離武装で相殺出来るが流石に24発を一度にさばく事はできない。

ポリーのブラックヘルドラゴンの精密同時射撃ならどうにかなるだろうが2人のISにはそこまでの装備を積んでいない。

 

「投了。」

 

「し、シールドエネルギーエンプティ!勝者、更識簪!」

 

地面に落下する2人を見下ろし、簪は確かな手応えを感じた。




ケイタ「あれセシリア立ち直れんのかな?」
簪「お姉ちゃん…ホント余計なことばっかり…。」
一夏「今度料理教えにいこっかな?」
ケイタ「そうしてくれると助かる。次回、Gossips or true news その5!」
簪「私が変身する!」
(ED 果なき希望 仮面ライダー龍騎)


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Gossips or true news その5

ケイタ「えーと、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは簪さんが遂にISで初陣and初白星をあげたとこまでだっけ?」
楯無「ええ!ええそうよ!本当に大活躍だったわ!」
セブン『落ち着け! 後更識簪が見慣れない武装を持っていたが、あれは何だ?』
ケイタ「あれは作者が今ハマってる『蒼穹のファフナー』ってアニメがあるんだけど、それに出てくる武器でガルム44ってのとトローンズモデルラファエルってのが持ってる武器を見て、『ミサイルポットってロマンだ!』って思ったから持たせてみたらしいよ?」
セブン『そんな理由でか?』
楯無「何でも良いのよ簪ちゃんが活躍するなら!それより本編どうぞ!」
ケイタ「あちょっと!」
(op True Blue Traveler インフィニット・ストラトス2)


1

試合を終えた4人はピットに戻って来ていた。

 

「痛たたた!簪アンタ容赦無いわね。」

 

「手を抜いて後悔はしたく無い。」

 

「流石簪だ。」

 

「にしてもなんだか簪さんの強化打鉄、

コンセプト的にはラファールみたいだね。」

 

「そうゆうコンセプトで作られた。」

 

ガールズトークのようなテンションの兵器トークが始まった。

 

やはり女三人よれば姦しいというやつなのだろう。

今回は四人だが。

 

「あの薙刀もなんか異様に切れ味良かったわよね?」

 

「網島くんのグラインダーのデータを元に作ってある。」

 

「だから斬られた時に震える様な感触があったのか。

と、すると高速起動用のデータはアキヤマの黒翔からか。」

 

「うん。後はデータが無くてまだ不完全だけど、

荷電粒子砲の春雷もある。」

 

「だから今回は機関砲使ってたんだ。」

 

「網島くんの赤龍改のメイン武装のプロトタイプ。」

 

「へぇー。って赤龍改!?」

 

「単一仕様発現にあわせて強化されるのか?」

 

「うん。だから赤龍と黒翔は私の弍式のプロトタイプ。

私の弍式は赤龍改のプロトタイプ。

そして赤龍改と黒翔改は、私の弍式改のプロトタイプ。」

 

「もうそんなとこまで話が進んでるのね。」

 

「ヨーロッパのイグニッションプランに対抗してか。」

 

「イグニッションプラン?」

 

「一夏知らないの?なら教えてあげるわ。

イグニッションプランっていうのはヨーロッパ連合の次世代型ISの主力機を決める為の防衛計画の事よ。」

 

「それに対抗して日米間では秘密裏に強化打鉄を主力防衛戦力とする計画が進行していた。」

 

「それで日本とアメリカにそれぞれ男性操縦者が現れたのをこれ幸いと機体をあてがったわけか。」

 

「なるほど。」

 

ポン。と一夏が手を叩いた。

今更ながらシャルロットが男装してまで強化打鉄や三春の白式のデータを欲しがったがわかった。

 

大方フランスはそのイグニッションプランで遅れをとっているのだろう。

そんな風に考えていると突然乱暴にドアが開かれた。

 

「……えっと、セシリア?」

 

「どうしたのよアンタ具合悪そうね。顔真っ白よ?」

 

「皆さん。正直に答えてくださいまし。」

 

「な、何?」

 

「わたくしの作る料理は不味いですか?」

 

まさかラウラか?と顔を見合わせる一夏と鈴音。

そしてついに自覚したか。

と視線を逸らす簪とロランツィーネ。

 

「その、まあ…うん。」

 

流石に学園全土に広まってるレベルで不味いとは

言え無かった。言わなかった。

 

しかしセシリアにはその一言で充分だったようで。

 

「ふっふっふっふ。そうですか。そうですか。」

 

と力なく笑い泣きしながらフラフラと去っていった。

 

「酷いことしたかな?」

 

「いやあれはもう言っちゃわれてない?」

 

どうしたものかと頭を抱えているとケイタ達が入って来た。

 

「皆!こっちにセシリアさん来なかった?」

 

「さっきまで居た。今出てったところ。」

 

「そうかありがとう。ケイタ。

私は奴を追う。あとの事は私に任せろ。」

 

「一人で大丈夫か?」

 

「私がまいた種だ。私がどうにかするのがケジメだ。」

 

「そっか。頑張れよ。」

 

一人セシリアを追うラウラ。

 

「さて、向こうはあのドイツちゃんに任せるとして、

あんなに上手にISを動かせるようになって!

お姉ちゃんはうれし」

 

「とお!ライダーパンチ!」

 

ハグしようと無防備になった腹部に簪の鉄拳が炸裂した。

 

「か、簪…ちゃん?」

 

「姉さん。私はあなたを超える。

もう2度と無能だなんて言わせない。

私こそが更識簪だと、

最強の強化打鉄のパイロットだと証明する。」

 

そう言うと制服を羽織って簪は出て行った。

 

 

 

2

「てな訳で、簪さんのお姉さんの心がブレイクしたみたいで生徒会室まで運んだはいいんだけど」

 

「それで心当たりとかあるんですか?」

 

「簪ちゃん簪ちゃん簪ちゃん簪ちゃん簪ちゃん」

 

光を失った目のままどこからかめちゃくちゃな事が書かれた扇子を開いては放り、開いては放りを繰り返している。

 

『なんでわざわざそんな事を俺に聞いて来た?』

 

蓮はできれば関わりたく無いと思った。

ついでに休憩時間だからとトラブルに事欠かないIS学園からかかってくる電話に出た事を後悔した。

 

「蓮の方が更識家の事俺らより知ってるし。」

 

『俺も大して知らないぞ?

例えば生徒会長が好き勝手やり過ぎて分家の石橋家や芝浦家の若頭が苦労してるとかそんぐらいだ。』

 

「その若頭ってもしかして」

 

『石橋健と芝浦(さとし)

石橋の方は16歳で芝浦の方は25歳。

石橋は現若頭が、芝浦の方は現当主の腹違いの弟の芝浦淳が更識妹と幼なじみだ。』

 

「一応、嫌われる理由はある、か。」

 

ありがとう。じゃあ、と短く言うとケイタは電話を切った。

 

《私としては関わらない方がいいと思うが》

 

(兄弟の不仲とかその手の話題に一夏が首を突っ込まないわけないよ。)

 

諦めろ。と今も熱心に楯無に話しかける一夏を見るケイタ。

 

「私は!私は簪ちゃんのことを思ってえ〜!」

 

「泣かないで楯無さん!わかる!

その気持ちは痛いほどわかるわ!

私ももし可憐ちゃんが同じ立場だったらと思うと胸が痛い。

けどだとしても楯無さん不器用過ぎだよ!」

 

「なんか聞き出せたの?」

 

「いやそれがさ。」

 

「ああ。」

 

「更識家はその、危険な家業やってるよね。」

 

「蓮も言ってたな。」

 

「それでその昔、楯無さんが家督を継いだ時に言っちゃった事があって。」

 

「なんて?」

 

「全部私がやるからあなたはずっと無能で居なさいって。」

 

「バカじゃねえの?」

 

ガツン!ケイタの口撃が楯無の心のまだ生傷の部分を容赦なく抉る。

 

「姉妹のくせに妹の事何もわかってねえな。」

 

「うぐ…。」

 

「ちょっとケイタ」

 

「ストイックで負けん気の強い簪さんにそんなこと言ったら反発するに決まってるだろ?

そんな事会って半年も経ってない俺でも分かる。」

 

「ぐふ!」

 

「せめて理由くらい言えよ気持ち悪い。

そのままの意味でとったらそんなんただの罵倒だろ?」

 

「ガバァ!」

 

「ケイタ久々にかなりキレ良いね!

楯無さんノックアウトだよ!?」

 

「あやべ。これどうしよ?」

 

『落ち着いてる場合か!』

 

『一夏、保健室に連絡するか?』

 

「……精神科医がいるなら。」

 

 

 

3

「モカにカプチーノに日替わりブレンドお待たせしました。」

 

テーブルに商品を運びチップを受け取ると蓮は奥に戻った。

 

「よし、続きを書くか。」

 

『レン様、最近何やら熱心にノートを書いていますが、

それは何ですか?』

 

「記録さ。俺とお前とあと智乃とフォースで解決した事件があったろ?」

 

『覚えています。ゼロワンファイブ事件の半年前にあった

人類基盤史研究所占拠未遂事件ですね。』

 

「ああ。今のうちに、形にして残しとこうと思ってな。

そのうち……アカツキ事件についても書くつもりだ。」

 

『!? 随分と思い切りましたね。

あれは貴方にとって一番大切な方を亡くした事件』

 

「俺がお前という相棒を見つけたきっかけだ。

だから自分の中で未消化な部分もそのうちしっかり飲み込まないといけないんだ。」

 

『そうですか。

よく思い出せない事があったら聞いてくださいね。

力になります。』

 

「助かる。」

 

そう言って蓮はノートに淡々と事実を綴る。

 

(この形式でやると書いてて疲れるな。

だが書き始めた以上この形式で通すしか無いか…。

よし決めた。

次のノートから俺をストリーテラーにしたノベル形式にしよう。) 

 

出来るだけ一字一句漏らさず些細な会話まで漏らさず書きたい。

記憶を辿り、時々サードに尋ねながらノートを埋めていると。

 

「だから私の質問に答えなさい!」

 

『何やら騒がしいですね。』

 

「ったく。勘弁してもらいたいな。」

 

ノートを閉じるとホールに向かった。

 

見ると茶髪の女が別の女性の胸ぐらを掴んでいる。

 

「落ち着いて下さい。他のお客様の迷惑です。」

 

「だまれ!」

 

「そう言う訳にはいきませんよ。」

 

そう言って蓮は茶髪の女の腕を捻りあげると腹部に1発拳を叩き込む。

 

「お客様1人にうちの経営が滞る事があっては困るんですから。大丈夫ですか?」

 

胸ぐらを掴まれていた方に手を貸して立たせる。

 

「ごめんなさいねアキヤマ君。

今回の時といい怪人屋の時といい。」

 

「…あぁ!確かあなたは四十院の先輩の!」

 

「マキよ。覚えてくれてて嬉しいわ。」

 

かつて怪人屋事件でアントライオンドーパントにさせられていた先輩だ。

 

「お騒がせしました。ごゆっくり。」

 

そう言って蓮は茶髪の女を店の裏手に連れ出した。

 

「さて、お引き取り願いましょうか?」

 

「うる、さい。私は何としても本音の仇を!」

 

「本音?まさかお前、布仏の姉か?」

 

「?……お前は、レン・アキヤマ!」

 

一気に蓮に殺意を向ける虚。

 

「その怨みは正しいよ。

布仏本音を確保する際に場合によっては撃てと命じたのは俺だ。」

 

「ッ! 貴様が!貴様のような悪魔が本音を!」

 

「化け物を部下に撃たせた俺と、

何の罪もない人間を化け物に変え続けたアイツ。

果たしてどちらが本当の悪魔だろうな?」

 

ま、ガイアメモリの魔力にかかれば誰でもあんなもんか。と嗤う蓮。

 

「本当に悪いのはその悪魔を増やしてる場所。

風都やお前みたいな自分の手を汚さず人を撃たせるような奴よ!」

 

「それの何が悪い?

最も効率的に敵を無力化する様に采配することは正しい事だ。」

 

「人を傷つけるのが正しい事な訳!」

 

「人を傷物にしない為に化け物になった人を傷つけるのは正しい事だ。」

 

「化け物になったら人に戻れないとでも!?」

 

一瞬、蓮の脳裏にまるで「計画通りだ」とでも言う様に笑う間明が浮かんだ。

 

「ああ。」

 

あれがまともな人間になるところが想像できない。

世界に2人だか3人だかいる間明のドッペルゲンガーには申し訳ないが。

 

「……あなた、大事なものがないの?」

 

「お前こそ無いのか?」

 

「ええ。無いわ。」

 

斬り込まれる程鋭い一言でそう断言すると虚は去っていった。

 

「なあサード。布仏先輩はまるで鏡だな。」

 

『? レン様?』

 

「あれがあり得たかもしれない自分かと思うとこう…心臓の外側が気持ち悪い。」

 

『心筋を撫でられる様な感じでしょうか?』

 

「正しくそれだ。ついでに生暖かい。」

 

店の中に戻る。ドアを閉じる前に小さく呟いた。

 

「もしエリーが死にきったら俺もああなるのかな?」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
セブン『一言で言えば君の毒舌(ヤイバ)が予想以上だったな。」
楯無「……………。」
ケイタ「大丈夫だよ。来週には治ってる。」
セブン『バトル漫画か!』
ケイタ「そんな事より次回、Gossips or true news その6!」
セブン『これが、明日のリアル!』


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Gossips or true news その6

ケイタ「前回までは、えっと…布仏先輩が思ったより病んでたって話だっけ?」
達郎「なかなか大変みたいだな。」
ケイタ「達郎!」
達郎「ケイタ!」
2人「イェーイ!」(ハイタッチ)
セブン『知り合いか?』
ケイタ「幼馴染の達郎。」
達郎「よろしくな。言っとくけど、ケイタのバディを譲ったつもりはないぜ。」
セブン『ほう…いいだろう。受けて立つ!』
ケイタ「なんか2人とも熱くなっちゃってるけどさておき。それではどうぞ!」


1

「シャルロット?いないのか?」

 

約束をすっぽかす様なシャルロットではないのだがなぁ。

ラウラ・ボーデヴィッヒは首を傾げた。

というのも2人は夕食を取る約束をしていたのだ。

 

「友達の1人ぐらいいないと高校三年間辛いぞ?」

 

と蓮に言われて初めて誘ったのがシャルロットだった。

一度銃口を交えた仲だし話せることもあるだろうと思い、箒も誘ったのが

 

「私は今忙しい!悪いがまたいつかな!」

 

と断られてしまったのだ。なんだか蓮がケイタや3組の

更識簪や手塚海之と示し合わせた様に同時にいなくなること似てる慌て方だった。

 

そんな訳でシャルロットだけと行く事になったのだが

 

「ふむ留守か…、先に食堂に行ってるだけかも知れないし見に行ってみるか。」

 

そう言って回れ右しようとした時ゴン!と鈍い音がした。

今さっきまで目の前にいたから間違いなくした。

 

(しかも今の音は、人骨の音!)

 

念のためシュヴァルツェア・レーゲンを、

近々唯一核を落とした国的にその名前は不味いといった理由で改名される、を展開して勢いよくドアを開ける。

 

「シャルロット!う!」

 

ツン!とくる酸っぱい匂いがラウラを出迎える。

匂いの元はすぐにわかった。

テーブルに置かれたカレーだ。

どんなカレーかと言えばセシリアが、

あの悪名高きセシリア・オルコットが、

影ではミス料理型破壊兵器製造者地球代表とかいうどこから突っ込んで欲しいのかわからない渾名で呼ばれているあのセシリア・オルコットが作ったカレーである。

 

「セ、セシリア?」

 

泡を拭いて倒れているシャルロットを介抱しながらセシリアを見上げる。

 

すると彼女は徐にまだ九割五部残っているカレーを手で鷲掴みにする。

 

「は、早まるな!それをさらに戻せ!いい道がきっとある!」

 

しかし彼女は躊躇わずにそれを自らの口に押し込んだ。

 

「セシリアアアア!」

 

 

 

2

「ていう事があったらしくて。」

 

「成る程、じゃあ昨日俺たちが帰り際に見た救急車はセシリアさんとシャルを乗せたやつだったのか。」

 

「漸く復活したと思ったらベットに逆戻りとはオルコットも災難だな。」

 

「災難というか、ただの自殺。」

 

「簪、言葉選べ。」

 

昼休み、いつもの面子で屋上に集まったケイタ達は頭を抱えていた。

 

「料理下手なぐらい気にする事ないのに。」

 

「心愛お前は気にしろ。

というかパン以外何かまともに作れた試しがあったか?」

 

「そんなに酷いのか?」

 

「聞いて驚くなよローランディフィルネィ 。

サラダを作らせればトランスフォーマーの燃料の様な物を作り、

パスタを茹でさせれば妖怪の触手に生まれ変わらせる。」

 

「えへへ。」

 

「照れるな。一言も褒めてない。」

 

「一夏、なんとかフォローできない?」

 

「教えるのは良いけどセシリアさんはもう一回厨房に立てる精神状態かな?」

 

確かに。と頭を悩ませる一同。

 

「ま、荒んだ状態とは言え中1のバレンタインの時の弾と鈴よかマシだろ。」

 

「ちょっとケイタ!」

 

「あー、確かに」

 

「一夏まで!あの話はちょっと違うじゃん!」

 

「そういえばお前ら3人は風都出身だったな。」

 

「同中だったのか?」

 

「俺らと後弾と数馬と達郎が。」

 

「まるで今の私達みたいだね!」

 

「今頃どうしてっかなあ?」

 

 

 

2

デカデカ『ドーパント学校に侵入 仮面ライダーまたも活躍』と見出しの踊る新聞を見ながら大江達郎は携帯電話を手繰り寄せた。

 

連絡先からか行の一番下にある名前をタップする。

直ぐに呼び出し音が鳴った。

 

「もしもし弾?」

 

『よう達郎!お前もニュース見たか?』

 

「たった今新聞で。愛しの母校が半壊してるのが。」

 

『学校からメール来たけど今日休みだってさ。』

 

「来られても困るんだろ。

折角暇だし今から遊び行かないか?」

 

『いいけど。数馬も誘うか?』

 

「いや、お前より先に電話したら熱が39度近くあるから大人しく寝てるってさ。」

 

なんでも家が近いからという理由でたまたま学校がドーパントにより半壊させられたのを聞いて学校が休みになる!と喜びベイエリアで騒ぎまくった挙句1人カラオケで喉をズタズタにして引いた風邪らしい。

 

『そっか災難だな。今すぐは出れないからどこで会う?』

 

「じゃあ10時にすずかぜ公園の噴水前で。」

 

おう。

と弾が短く言うと電話をきってお気に入りの白灰色のパーカーを羽織った。

 

 

 

3

「チッ!嫌な風ね。不吉なものを運ぶ風。」

 

学校をサボって風都にやって来た虚は吐き捨てるように呟いた。

風都、本音を変えたガイアメモリの温床たる魔の都市。

 

そんなふうに考えるだけでこの街の住んでる人からこの街で起こる事全て何から何まで嫌な物に見えた。

虚本人は知る由もないがその様はかつての仮面ライダーアクセル=照井竜(てるいりゅう)を思わせた。

 

「ねえねえお姉ちゃん。俺らと遊ばない?」

 

こんなナンパも不快で仕方なかった。

絡んできた3人組にごみわゴミを見るような目を向けてやる。

 

「あ?なんだよその目。

俺らがここらでなんて呼ばれてるか知ってんのか?」

 

リーダー格らしい男が凄む。

 

「ハナキズのヤス。

半年前にケイタのやつを8対1でリンチにしようとして返り討ちにあって大暴落したアホ。」

 

「あ!?なんだお前ら…ヒッ!

お、お前ら鏖殺網島の……ご、ごめんなさーい!」

 

ハナキズのヤスと呼ばれた男とその取り巻きたちは尻尾を巻いて逃げて行った。

 

やれやれと言った感じで話しかけて来た灰色っぽい白のパーカーの少年と長い赤毛に黒いバンダナの面長な少年が肩を竦めた。

 

「すいませんねうちの街の馬鹿どもが。」

 

赤毛の方が気さくに話しかけて来た。

 

「いえ、気にしてません。

ところで彼らが去り際に言っていた鏖殺網島とは?」

 

「ああ、そう言えばケイタのやつそんなダサい渾名もあったっけ?」

 

「ケイタに網島、あの網島ケイタですか?」

 

「ご明察。あの網島ケイタだよ。」

 

そう言ってパーカーの少年が近くの売店に置いてあったIS関連の雑誌を指差す。

 

「彼、不良だったんですか?」

 

「まあ世間一般には。」

 

3人は知る由もないが鈴と一夏が引っ越してからすぐ、

つまりケイタがデッキを手に入れたからすぐ四六時中なるアドベントビーストの出現を知らせる耳鳴りのような音にケイタはストレスを感じて荒んでいた。

そのストレス発散の為にケイタは走り屋行為や喧嘩に明け暮れたのだ。

 

「これが武道とか何もしてないのにめちゃくちゃ強い。」

 

幾つか例を挙げると

少年院から戻ってきたばかりのかなり容赦の無い札付きの悪を警察病院送りにした。

 

因縁をつけて来た煽り運転常習犯の自分より一回り大きい大人の腕を2度と車が運転出来ないようにした。

 

極め付けはさっき逃げて行った高校生の不良グループの8対1の喧嘩に無傷で勝った。

 

「それでついた渾名が鏖殺網島ってわけ?」

 

「いくらか尾鰭ついてるやつもあるけど概ね事実。

煽り運転のあれは実際に見たし。」

 

「凶悪凶暴ね。」

 

「お陰でつるんでるだけの俺らまでびびられる始末ですよ。」

 

「いや弾お前は中1のバレンタインの時に鈴とやらかしてるだろ?」

 

爽やかに笑う弾を冷ややかな目で見る達郎。

 

「ガイアメモリといい鏖殺網島といい、

野蛮な事には事欠かない街みたいね。気に入らない。」

 

「そんな事ありませんよ。良いとこだっていっぱい」

 

「では聞くけど、ドーパントになってしまった妹を鏖殺網島と愉快な仲間たちに殺された私にどうやってこの街を好きになれと?」

 

「え?」

 

「ケイタが殺人?馬鹿言え。

そりゃ街に泥を塗るような奴をボコすことはあるだろうけど、

あいつに限って人殺しなんて。」

 

「する。だから私はこの街がいかに汚れてるかを見に来た。」

 

プチン。達郎の中で何かが切れる音がした。

 

「お前黙ってりゃ言ってくれるな。

妹がドーパントになったのを倒されただ?

は!そんなん元々アンタの妹がガイアメモリを買うだけの理由がある悪人だったってだけの事だろ!」

 

「知ったような口を!」

 

「俺に言わせりゃガイアメモリに魅せられる様な人間は人を傷つける以外何もしない害悪だ。

アンタの妹はガイアメモリで何か救ったか?」

 

「ッ!…………。」

 

「ふん。化け物に成り果てても妹は可愛いってか?

行こうぜ弾。時間の無駄だ。」

 

「お、おいちょっと待てよ!達郎!」

 

1人残され立ちすくむ虚。それを背後から見つめる影があった。

 

「あの娘、布仏の!」

 

は!と気付いた男はすぐさま踵を返して奥まった店に陣取っていた男の元に急いだ。

 

「若頭!」

 

「どうした?」

 

「さっき向こうの公園で布仏の娘を見かけました。」

 

「ほう、それはいい。

なら例のブツを手に入れたら真っ先に血祭りに上げてやろう。」

 

不敵に笑うと若頭は2人の部下を連れて店を後にした。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
セブン『最後に出て来た3人組が気になるな。』
達郎「俺は前半の料理の話聞いてたら腹減って来ちゃったよ。ケイタ、久々にギョーザ作ってくれよギョーザ。」
ケイタ「いいけど具あんまりないよ?」
セブン『というかケイタ料理できたのか?』
達郎「あれ知らない?ギョーザに限って言えば一夏より美味いんだぜ?」
セブン『ぐぬぬぬぬ…』
ケイタ「こらこら喧嘩すんな。次回、Gossips or true news その7!」
達郎「鏖殺網島に喧嘩すんなって言われるとわな。」
ケイタ「うっ…。」


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Gossips or true news その7

ケイタ「よし!前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは布仏先輩が達郎と弾に出会ったとこまでだったよな。」
一夏「鏖殺網島とかいうとんでもない渾名も出て来たけど?」
ケイタ「あ、あれは…。」
鈴音「それも驚いたけどあんな食欲なくなる料理の数々を見てお腹空いたとか言える達郎も凄いわよね?」
ケイタ「確かに……。」
一夏「そんな私達の愛すべき悪友達の活躍をご覧ください!」
ケイタ「さてさてどうなる?」


1

「なあ達郎?」

 

「なんだよ。」

 

「さっきあった眼鏡の人さあ。」

 

「人の友達を殺人鬼扱いするクソ野郎だったな。」

 

心底不機嫌という様に達郎は落ちてた空き缶を蹴飛ばした。

 

「まあ…ケイタが悪く言われたのは嫌だし、

だからこそこう…この街の汚いとこ以外も見て欲しいっていうか。」

 

言葉を探す様に言いながら考える弾。

 

「はぁ…。弾、友達として忠告するけどお前見境なさ過ぎだ。」

 

「え?そりゃどうゆう「あの女を口説くんなら辞めとけ。」な!別に他意は…。」

 

「あるだろ。つかあんな感じの年上が好みだろ。」

 

図星だ。

前にふざけて達郎と数馬とケイタにだけは眼鏡の似合う年上が好みだと言ったことがある。

 

「そりゃ、お前は面は良いけどずっと同じクラスに三春がいたせいで芽が出なかったが色男だ。

長い付き合いってのもあるけどお前は中身も悪い奴じゃない。

けどな、お前は優し過ぎる。

これは一夏や翔太郎さんにも言えるけど俺に言わせりゃこの街に悪人は居ない。

いるのは街に住まわせてもらってる人達と街に住んでる気になってる病原体共だけだ。」

 

またか、と弾は思った。

 

達郎は地味に5人の中では一番気さくな反面、

かなりの過激派なのだ。

それは昔、ケイタと一夏経由で左翔太郎にで会った事に起因する。

 

「戦うのって辛くないですか?」

 

初めて会った時、ケイタ達から数々の武勇伝を聞いていた達郎はずっと気になっていた事を聞いてみた。

 

「戦う事より、この街が泣き止まないことの方が辛えからな。」

 

そう言う翔太郎がカッコよくも少し悲しそうな顔をしたのを達郎は見逃さなかった。

間違ってると達郎は確信した。

 

(こんな立派で良い人が苦しみ続けるなんて間違ってる。)

 

なんで悪い人はいなくならないんだろう?翔太郎やケイタや一夏、鈴や弾に数馬の様な良い人だって大勢いる。

 

つまり善人になる事って簡単な事なのに。

 

そんな堂々巡りの問いの答えを出したのは皮肉にも織斑三春という善人になれない存在がいた事だった。

 

『守る』これこそが至上であり何よりも優先されると考え、

それを実感させる為だけに実の妹にさえ危害を加える三春に達郎は生理的嫌悪感を抱いた。

 

(ああいう自分の考えを絶対的に正しいと思い違えてる奴らがいるから皆が割りを食うんだ。

欲をセーブしない奴らこそ、街を苦しめる病原体だ!)

 

街に感謝し、住まわせてもらってるという気持ちを失わない人達が割りを食わない為には心をなくした者など人と、街の一部と考えてはならない。

もし街の一部と扱うならば、倒す事でしか救えない亡霊である。

 

三春への嫌悪と理解できない怖さから来た感情まみれの持論だが、

その在り方は鳴海荘吉に似てさえいた。

 

故にどちらかと言えば翔太郎タイプの弾とはこの一点だけは相容れないのだろう。

 

「そりゃあの人は街の汚い部分とこしか見てないかもだけど!

だから良いとこも見てくれれば!」

 

「病原体に、いや他所から来た害虫に見せる景色は無い。」

 

流石にカチン!と来て怒鳴ろうとする弾にけどな、と付け足す。

 

「これはあくまで俺の考え方だ。

お前を否定する気は無いし、

お前を止めるつもりもない。」

 

だから後はお前が好きにしたら良いさ。

そう言って達郎は弾の肩を叩くと来た道を戻っていった。

 

 

 

2

夕刻、指定された時間に3人は指定された廃倉庫にやって来た。

 

「若頭、本当に手に入るんですか?

人智を超えた力なんて。

俺らが女ってんならわかりますけど。」

 

実は裏社会では知られた事だが、

闇の武器商人である亡国機業はたまにだが武装勢力に盗んだISを売り捌くことがあるのだ。

 

「まあ見てろ。ここは風都、

金さえ積めば魔法も奇跡も帰る愉快な街だ。」

 

若頭と呼ばれた男がそう言った所で扉が開き、

片手で荷台を押しながら大柄の男が入って来た。

 

「はじめまして関東電龍会(かんとうでんりゅうかい)の皆様。」

 

男は握手を求めて来た。

 

「電話越しには会ってるはずだがな。」

 

「私とは別の者です。それから」

 

ドシャ!と後ろ手に引きずっていた物を放る。

 

「本来はアフターサービスですが、

貴方達を嗅ぎ回っていたネズミを生け捕りにしておきましたよ。」

 

放られたのは動けなくなる程度に痛めつけられた虚だった。

 

「こいつは布仏の所の!」

 

「丁度いい。こいつを手に入れたら真っ先に殺そうって決めてたんだ。」

 

若頭は男に金の入ったアタッシュケースを渡すと荷台から一つケースを選んで取り出し、

中から赤いジューサーを模した装置と赤い果実の錠前を取り出した。

 

それを着ていたスーツのベルトよりやや上に当てる

 

<ゲネシスドライバー!>

 

認識音声と共に銀のベルトパーツが展開し、固定される。

 

若頭はニヤリと笑い錠前を弾く。

 

<ドラゴンフルーツエナジー!>

 

「変身!」

 

<ロック・オン!ソーダァ!>

 

<ドラゴンエナジーアームズ!>

 

独特の変身メロディーと共に若頭はアーマードライダータイラントに変身した。

 

「これが、仮面ライダー?」

 

「着心地はいかがですか?」

 

「身体中が滾る!最高ね着心地だ。」

 

「それは良かった。今後も我々SHADOWをご贔屓に。」

 

「いーや。お前らがご贔屓にすんのは刑務所だ。」

 

「何?」

 

<BAT>

 

<STAG>

 

どこからか現れた二台のメカが4人を牽制する。

その間に中折れ帽子の伊達男とバンダナの少年が入って来た。

左翔太郎と五反田弾だ。

 

「彼は、網島ケイタの」

 

「貴様か、この街でドーパント潰しを生業にしてるのは。」

 

「如何にも俺が、いや俺達がこの街の涙を拭う二色のハンカチ」

 

<JOKER!>

 

「変身!」

 

<CYCLONE JOKER!>

 

「仮面ライダーWだ。」

 

「ほう、面白い。おいお前らもやれ。」

 

タイラントに促され、荷台にあったケースから量産型戦極ドライバーを取り出し

 

<マツボックリ!>

 

「変身。」

 

「変身!」

 

<ロックオン!ソイヤ!>

 

<マツボックリアームズ!一撃in the shadow!>

 

仮面ライダー黒影トルーパーに変身した。

 

「どうやら私は必要なさそうですね。では。」

 

売人の男はタイラントに丁寧に頭を下げる。

 

「ああ、あんな半分こ野郎俺達だけで十分だ。」

 

タイラントはソニックアローを、黒影トルーパーは影松を構える。

 

その間に男は別の出入り口から出て行った

 

「お前らなんかに負けてやる程柔じゃねえ!」

 

『とは言え相手は仮面ライダーだ。

油断しないに越したことはない。』

 

「ああ、俺たちの名前を侮辱した事、

後悔させてやろうぜ!」

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

 

3

入り組んだ道を進みながら売人の男は仲間との合流地点を目指した。

 

「?」

 

そして目的地に着いたが出迎えが誰もいない。

おかしい。いつもなら1人はいるはずだ。

 

「悪いがお前のお友達は先に片付けておいた。」

 

「……侮れませんね仮面ライダー。

お客様が変身することも織り込み済みで。」

 

あの時俺たちと言っていたのはこうゆう理由か。

とバイクのハンドルを模したドライバーを装着した男と、

照井竜と対峙する。

 

<ACCEL>

 

「変、身ッ!」

 

<ACCEL!>

 

照井はメタリックレットのボディに青い単眼の仮面ライダーアクセルに変身する。

 

「コンバージョン、アンドロイドモード。」

 

そう言って機械的なまでに落ち着いた声で売人が言うと男の姿がブロックノイズの様に乱れ、

特殊炭素と強化ガラスに僅かばかりのナノスキン、

そして剥き出しの金属骨格のアンドロイドゼロワンに変身した。

 

「やはりさっき倒したアンドロボットどもと同じ機械か。」

 

「対象、仮面ライダーアクセル。排除する。」

 

「さぁ、振り切るぜ!」

 

(BGM 疾走のアクセル 仮面ライダーW)

 

右手首から先を外し、内蔵型エネルギーマシンガンを使うゼロワン。

アクセルは愛刀エンジンブレードを盾にして最低限の防御をし、残りのダメージは全て無視して距離を詰め、

渾身の力で切り上げた。

ゼロワンは両脚のラムジェットエンジンを点火し空から逃げようとするが

 

「逃すか!」

 

携帯電話型の支援ツールビートルフォンを操作して近くにスタンバイさせていた戦車型サポートドロイドガンナーAで砲撃される。

 

2発の派手な砲声の後、ゼロワンが真っ逆さまに落下してくる

その隙にエンジンブレード専用の擬似メモリを取り出す。

 

<ENGINE!>

 

「絶望がお前のゴールだ!」

 

<ENGINE MAXIMUMDRIVE!>

 

「はぁ!」

 

丁度落下して来たタイミングでAの字形に斬られ爆散。

アクセルの必殺技アクセルエースラッシャーだ!

 

「さて、左達の方に急ぐか!」

 

 

4

(BGM Cyclone Effect 仮面ライダーW)

 

3対1の不利な状況にもかかわらずWは優勢だった。

まずサイクロンジョーカーでタイラントの矢を近接戦に持ち込む。

2人の黒影トルーパーが邪魔して来たが狭い空間、

入り乱れてでは長物の利を活かせない。

 

<CYCLONE TRIGGER!>

 

距離をとられてタイラントに狙われるが、

連射性はWのトリガー形態最強のサイクロントリガーに切り替えて手数で押し勝つ。

 

「な、なんで強さ。」

 

虚はただただ圧倒された。

これが妹の魅せられたガイアメモリの力、

これが妹を止めた仮面ライダーの力か、と。

 

「立てますか?逃げますよ。」

 

さっき会ったバンダナの少年、弾といったか?が虚を助け起こす。

 

「な、なんで?」

 

「助けに来たかって事ですか?

風都にはそりゃ悪い所も沢山ありますけど、

やっぱり折角来てくれたからには涙の似合わない良い所を見て帰って欲しいんですよ。」

 

それに美人を見捨てちゃ男が廃りますから。

 

そう言ってウインクした弾に不覚にも虚はドキッとしてしまった。

 

「え、ええ。」

 

「うぎゃあ!く、くそう敵わない!

こうなったらガキどもを人質に!」

 

形勢不利と見た黒影トルーパーの1人が弾と虚に迫る。

 

「させるか!」

 

翔太郎の側がトリガーマグナムを構える間にフィリップ側がメモリを変える。

 

<LUNA TRIGGER!>

 

変幻自在の魔弾の射手ルナトリガーにチェンジし、

黒影トルーパーのベルトを打ち抜く。

 

身体からドライバーが外れて変身が解除される。

しかし男は不敵な笑いを浮かべると懐から黒光する拳銃を取り出す。

 

「しまった!」

 

「行かせないぞ!」

 

直ぐに向かおうとするがタイラントと黒影に阻まれる。

 

「く、くそぉ!」

 

「マズ!ちょっと失礼!」

 

「な、きゃあ!」

 

咄嗟に虚を俗に言うお姫様抱っこで抱える弾。

しかし人1人抱えて走るせいでかえってスピードが落ちてる様に見える。

 

「馬鹿なガキが!死ね!」

 

「させるかぁ!」

 

ゴッス!銃を持った男の背後から飛び出した誰かが持っていたバットで男の側頭部を殴打した。

 

崩れる男。容赦なく第二、第三の打撃が与えられる。

 

「たく、王子様なら白馬か、

なけりゃかぼちゃの馬車ぐらい用意しとけよ。」

 

なんて軽口をたたきながら現れた増援は思いもよらない人物だった。

 

「達郎!帰ったんじゃなかったのか?」

 

「勝手に帰すな。

ま、これを取りに一回自分家に行ったけど。」

 

バットを弄びながら男が落とした銃とドライバーを回収する。

 

「あ、あのえっと…弾……くん?」

 

「え?は、はいなんすか?」

 

「そ、その!」

 

「いつまで太ももと胸触ってるんだよ。」

 

お姫様抱っこの為、丁度そんな持ち方になってしまっていた。

 

「あ、す、すいません!」

 

「い、いえ!それから、ありがとうございます。」

 

「別に俺としてはアンタがどうなっても良かったけど弾を見殺しにした日には五反田食堂の飯は食えないし、

大将の拳骨と蘭ちゃんに蹴り喰らう役は俺には荷が重いからな。」

 

「達郎…善人の仇を捨てて悪人の友達を招けとはこの事だぜ!」

 

「逆だ逆。

それにさっきも言ったけどこの街に悪人はいない。

悪人に見えてるのは魂を悪に売った化け物だ。」

 

あいつらみたいなな。

そう言ってバットでさす先ではタイラントと黒影トルーパーが満身創痍になっていた。

 

「おのれ、おのれこうなったら!」

 

ドライバーからロックシードを外し、

ソニックアローに装着するタイラント。

 

『翔太郎、僕達も。』

 

「ああ、キメるぜ。」

 

フィリップ側をサイクロンに戻し、

トリガーマグナムにメモリを挿入する。

 

<TRIGGER MAXIMUMDRIVE!>

 

<ロック・オン!ドラゴンフルーツエナジー!>

 

「ハァー!」

 

「『トリガーストームボム!』」

 

赤い一条のエネルギーがダブルに向かって放たれる…より先にタイラントの足元に炸裂した風の爆弾がタイラントを倉庫の屋根ごと天高く舞い上げた。

 

「うおお!」

 

「きゃあ!」

 

「あぶね!」

 

お互いを守り合いながら突風に耐える3人。

 

「お前ら大丈夫か!?」

 

「なんとかー!」

 

バットを振りながら返す達郎。

 

『さて、後は君だけだ。』

 

「ヒイ!こんな、こんな筈じゃなかったのに…。

わ、若頭が、若頭が欲を出すから!」

 

自分もちょっと前までノリノリだった癖にすっかり怯え切って責任転換している。

 

遂に壁際まで追い詰められた時、再び天井を突き破りながらタイラントが空の旅から帰還した。

 

「わ、若頭!アンタ、アンタどう責任取るつもりだよ!」

 

無理矢理タイラントを立たせるとガクガクと揺さぶる黒影トルーパー。

 

「たく、ロクでもねえ野郎だぜ。

ん?どうしたフィリップ?」

 

『気をつけろ翔太郎。

あの弓矢のライダー、どこか変だ。」

 

見ると右手に持ったソニックアローからバチバチと赤いエネルギーが過剰放電?している。

 

「うぅ…。」

 

そしてソニックアローを持つ手をゆっくりと黒影トルーパーに向ける。

その手にはロックシードから伸びたヘルヘイムのツタが伸びて絡み付いていた。

 

「おいそいつから離れろ!」

 

「は?何言っ」

 

それが黒影トルーパーの最期の言葉だった。

タイラントの腕から生えた無数のツタに身体を穴だらけにされる。

 

「!?¡?!!¿!」

 

よく分からない叫びを発しながらツタを抜こうとするが、

首元から入ったツタに脳をかき混ぜられたらしい。

奇妙な痙攣の後に動かなくなる。

 

「フィリップこいつは…」

 

『分からない。だが確かなのは()()がこの世にいてはならないモノということだけだ!』

 

「違いねえ!植物にはヒートだ!」

 

<HEAT TRIGGER!>

 

<TRIGGER MAXIMUMDRIVE!>

 

「トリガーエクスプロージョン!」

 

爆炎で黒影トルーパーに巣食ったツタは燃やし尽くせたが、

タイラントの方は体の奥まで根付いてしまったらしい。

 

ゲネシスドライバーが外れてアーマーが解除される。

 

「マジかよ…」

 

出て来たのはイナゴの様な白い怪人だった。




ケイタ「相変わらずよく人が死ぬssだな!てか弾!達郎!超逃げて!」
一夏「しょ、翔兄フィリップ兄…。」
鈴音「信じよ。絶対大丈夫だって!」
ケイタ「あ、ああ!次回Gossips or true news その8!」
一夏「これで決まりだ!」


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Gossips or true news その8

ケイタ「えーと前回はタイラントがインベス?に変貌したとこまでだっけ?」
サード『はいそうです。所でこの関東電龍会なる組織、
どこかで見た様な?』
ケイタ「たしかケータイ捜査官7(原作)で俺のバイト代パクったネット極道。」
弾「つまり今回ベルト代として用意した金も」
ケイタ「誰かから騙し取った金らしいよ?」
弾「その金でベルト買ったはいいけどWにいい様にやられた挙句怪人化とか」
サード『因果応報ですね。』
ケイタ「同情はするけど、それではどうぞ。」
(op JUST LIVE MORE 鎧武乃風)


1

外で戦いを見守っていた3人はWの勝利を確信していた。

圧倒的な経験と手札の差。

自身の力への理解の差。全てをWが上回っていた。

 

間違いなく勝つ。そう思っていた。

この世のものとは思えない絶叫と

 

「『トリガーエクスプロージョン!』」

 

Wの放った爆炎に照らされイナゴの様な影が浮かび上がるまでは。

 

「……だ、弾?今の見たか?」

 

「いや、けどさっき聞こえた声って断末魔?」

 

「多分。」

 

真っ青になった虚が弾にしがみつき、

達郎は予断なくバットを構える。

 

「ぐあぁあああ!」

 

「!?」

 

火花を散らしながらWが転がり出て来た。

 

「仮面ライダー!」

 

思わず駆け寄る達郎。

そのタイミングでタイラントが変質した白い怪人が出てきた。

 

吠える怪人。すると両足からツタが放射状に伸び、

そこから茂みの様なものが出来始める。

 

「まさか、仲間を増やす環境を作るつもりか!」

 

先程苗床にされた黒影トルーパーを思い出し戦慄する翔太郎。

 

『大江達郎早く逃げろ!

奴は旧組織(ミュージアム)の準幹部級の強さを持ちながら理性なく暴れる獣だ!』

 

「その声って!フィリップさん?」

 

フィリップは達郎を逃がそうと思っての事だったのだろうが逆に達郎を引き止めてしまった。

 

タイラントだった怪人が腕からさっきのと同じツタを飛ばす。

 

「危ない!ガァアア!」

 

Wと達郎の身体に無茶苦茶にツタが絡み付き身動きが取れなくなる。

 

『しまった翔太郎!奴の狙いは五反田弾とあの女性だ!』

 

「何!?」

 

「く、クソ!弾!後ついでにお前!逃げろ!

振り返らず走れ!」

 

しかしどうやら虚が硬直してしまっているらしく動くに動けない弾。

 

(ま、拙いぞ。武器は…達郎のバットは?

ダメだ遠い。あの黒服が持ってた銃は…

倉庫の中だもっと遠い!

何か、何か逆転できる様な道具は……ん?

達郎に絡み付いてるツタに錠前が成ってる?)

 

さらによく見ると達郎の左手の、

戦極ドライバーを持ってる部分だけが錠前化していて、

他の部分は毒々しい色に反して美味そうな果実が成っている。

 

足元を見るといつの間にか伸びてきたツタが絡み付こうとしていた。

先には小さいが実がついている。

 

「畜生一か八かだ。達郎!

そのベルトを投げてくれ!」

 

「!? でも錠前がないぜ!」

 

「いいから!」

 

そう言ってる間にも白い怪人は迫って来る。

 

「だ、弾くん。は、早く逃げないと…。」

 

「大丈夫です。もうこれ以上この街であなたを泣かせたりしません!」

 

「弾くん……。」

 

「たく…信じるぞ!」

 

なんとかツタを引き剥がした達郎はドライバーを弾に投げた。

キャッチして腰に装着。

 

<戦極ドライバー!>

 

足元の生えていた実を乱暴に掴み取り構える。

弾は賭けに勝ったらしい。

実は茶色く光るとさっき男達が使っていたマツボックリロックシードに変化する。

 

「見ててください俺の! 変身!」

 

<マツボックリ!>

 

左手で錠前を弾き、ドライバーにセット。

力強く左腕を引き右手を上げ、

ゆっくりと握った拳で錠前をロックする!

 

<ロックオン!>

 

そして右手でカッティングブレードを下ろし、

エネルギーを解放!

 

<ソイヤ!マツボックリアームズ!

一撃 in the shadow!>

 

ジッパーの様なもので穴を穿たれた空から現れたアーマーが弾を包み、

その姿を仮面ライダー黒影トルーパーに変えた。

 

「行くぞ!」

 

!!!!!!

 

奇声を発しながらツタを繰り出す怪人。

走りながら黒影はカッティングブレードを二回下ろす。

 

<ソイヤ!マツボックリオーレ!>

 

エネルギーを纏わせた影松をプロペラの様に回してツタを払いそのままの勢いで怪人に投擲した。

 

影松は怪人の肩をかすめ、Wと達郎の拘束を解いて彼方に消えた。

 

「よっしゃ!フィリップ!」

 

『問題ない既に呼んである。』

 

そう言ってWが空を指差すと丸腰になって黒影に迫るツタを弾きながら鳥型のメカが飛来した。

 

サイクロンジョーカーに戻ったWのベルトに装着される。

 

<XTREME!>

 

突風と共にWが真ん中から割れて白い中身が露出する。

Wの究極形態サイクロンジョーカーエクストリームだ!

 

『敵の全て、および五反田弾が変身した仮面ライダーの全てを閲覧した。

翔太郎。奴はヘルヘイムの森なる異空間に由来する力を制御できない暴走状態だ。アレで行こう。』

 

「あれか。飛び切りの、かましてやるか!」

 

『五反田弾!少しでいい!そいつを抑えてくれ!』

 

「!? はい!」

 

<PRISM>

 

取り出したメモリを腰のマキシマムスロットにセットし、

バックル部分に付いたエクストリームメモリを開閉する。

 

<XTREME MAXIMUM DRIVE!>

 

<PRISM MAXIMUM DRIVE!>

 

「『ダブルプリズムエクストリーム!』」

 

強烈な連続キックを浴びせられ、怪人は派手に吹っ飛ぶと巨大な火柱を上げて爆散した。

 

その炎で怪人が生やしたヘルヘイムの茂みも燃えていく。

変身を解除するWと黒影。

 

(!? 1人の仮面ライダーから2人人が?)

 

「大丈夫でしたか!?」

 

「え? ひゃい!」

 

どうやら2人は大丈夫そうだ。

 

「たく、一人で怪人の前に飛び出した時はどうなるかと思ったぜ。」

 

「確かに褒められた行為ではないが、

あの場ではあれが最善だよ。」

 

「ま、そうだな。一撃イン ザ シャドウ……4人目の風都のライダー黒影って所か。」

 

「!? 翔太郎その名前は今自分で考えたのかい?」

 

「? そうだけどどうした?」

 

「いや、泉京水じゃないが、運命とは奇妙な物だと思ってね。」

 

「そうか…。」

 

「フィリップさーん!翔太郎さーん!」

 

「ん? 達郎!怪我とかないか?」

 

「はい。あとコレ。」

 

達郎が差し出したのは壊れた戦極ドライバーと奇跡的に無傷だったゲネシスドライバー。

どうやら戦闘が終わる間に回収してきたらしい。

 

「これは…」

 

「壊れてても弾のやつの予備パーツぐらいにはなるかなって思って。」

 

「それにこちらのドライバーは別のエナジーロックシードがあれば変身出来るからね。僕らで預かっておこう。」

 

「こっちの壊れてる方の解析も頼めるか?」

 

「問題ない。」

 

「よし、おい五反田の坊主!」

 

「! 翔太郎さん!」

 

「よく戦ったな。けどあんな無茶2度とするなよ。」

 

「す、すいません。」

 

「でも助かった。礼を言うぜ仮面ライダー黒影。」

 

「仮面ライダー黒影?」

 

「それが俺たちからお前に送る名前だ。」

 

「じゃ、じゃあ!」

 

「ベルトと帽子が似合う男になれ。

仮面ライダーの名に恥じないな。」

 

「はい!」

 

「それからそちらのレディ。」

 

「は、はい!」

 

「この街は良いものも悪いものも風が運んでくる街だ。

血濡れた汚い部分も少なからず有る。

けどまたそうやって流された涙を拭う大自然の使者がいることも忘れないでくれ。」

 

「はい!」

 

「だったらよし、帰るぞフィリップ。後は若人の時間だ。」

 

「青春か。興味深いね。」

 

二人の名探偵は赤く染まり始めた街な消えていった。

 

 

 

2

残された3人はサイレンの音を聞いて慌てて退散した。

 

「たく、飛んだ休日になったぜ。

首突っ込んだの俺だけど。」

 

「その、本当に色々とごめんなさい。」

 

「ふん。本当は許したくないけど弾の顔を立ててやる。」

 

じゃ、邪魔者はクールに去るぜ。

無愛想に言うと達郎はバットを担いで帰っていった。

 

「やぁ……大変でしたね。」

 

「え、えぇ。…えっとその、本当に助かりました。

あんな風に友達を悪く言った私を助けてくれて。

年上なのに情けないですけど。」

 

「え? 失礼ですけど、お幾つですか?」

 

「こう見えて高3なんです。」

 

(嘘だろ俺より二つも上なの?)

 

(ふふふふ、びっくりしてる。

こんな所を見てるとちゃんと年下なんだな…。

なのに、あんなに頼もしい背中なのに。)

 

二人の顔が赤くなっていたのはきっと綺麗な夕陽のせいだけではなかっただろう。

 

「また、会えますか?えっと……。」

 

(うつほ)。布仏虚といいます。

弾くんは名字なんていうんですか?」

 

「五反田、五反田弾です。家は大衆食堂やってます。」

 

「今度行ってみていいですか?

見たいんです。この街のいい所も悪い所も。」

 

「ぜひ!ぜひお供させていただきます!」

 

「お供って!連れてってもらうの私なのに!」

 

堪えきれず笑い出す虚。釣られて弾も笑い出す。

 

(……ごめんね本音。

もしあなたの命を奪ったのがあんな化け物なら、

お姉ちゃんじゃ仇を討ってあげられそうにない。

お嬢様にあんな事を言っておきながら無力な私を許してね。)

 

少し俯いてから虚は弾に向き直った。

 

「弾くん。約束してくれる?」

 

「なんですか?」

 

「この街だけでいいから、守ってくれる?

理不尽な悲劇やただ人を大切にしたかった悲しい怪物を救ってくれますか?」

 

「……。」

 

弾はついさっき手に入れたばかりの戦極ドライバーとロックシードを見ながら少し考えて

 

「俺は、ほんの今さっきノリと勢いでなっちゃった新参者の仮面ライダーです。

信念の有る無いで言ったら前に風都タワーを占拠したテロリストが変身した仮面ライダーの方が上かもしれません。

けど、俺は助けたあなたや認めてくれた翔太郎に胸を張れる様に、

やるだけやるつもりです。」

 

「そうですか、安心しました。

頑張ってくださいね。仮面ライダー黒影。」

 

 

 

3

時を戻す事およそ3時間前、

戦いはここIS 学園でも起こっていた。

 

「皆様、まずはこの場に来ていただいた事を感謝します。

ですが本当によろしいのですか?

命の保証はありませんよ?」

 

不安げに蓮、ケイタ、一夏、心愛、ラウラ達5人を見回すセシリア。

 

「サムライに二言はない。」

 

「蓮、それを言うなら男に二言なし。」

 

「そうなのか?」

 

「こうなってしまった責任の半分くらいは私にある。

最後まで付き合うさ。」

 

「大丈夫だよ!

私達はセシリアちゃんのこと信じてるから!」

 

「それにそろそろどうにかしないと死人が出るからね。」

 

なんとか退院出来たがアレ以来カレーを見るだけで動悸と息切れが止まらなくなってしまったシャルロットを思いながら一夏は気合いを入れた。

 

なんとしてもセシリアの手料理を食べても直ちに人体に悪影響が出ないレベルにまで持って行かなくてはならない。

 

「それでは皆様、宜しくお願いしますように!」

 

そして始まった料理教室だが、やはり苛烈を極めた。

 

まず元々食が細く耐性のないラウラが1時間でダウン。

 

次いで蓮がその30分後に泡を吹きながら倒れた。

 

そして2時間30分、なんとか耐えていたケイタが脱落。

 

それでも少しづつ進歩を重ね現在。

 

「や、やっとマシな一品を作れましたわ。」

 

見てくれだけは普通なハヤシライスが出来上がった。

 

「刺激臭もしないし」

 

「変な色が付いてたりもしないね。」

 

残りの食材的にも一夏と心愛の耐久的にも、

セシリアのメンタル的にもそろそろ限界だった。

 

「こ、ここは私が!」

 

「心愛さん!」

 

「た、頼みます!」

 

心愛の荒い息遣いとスプーンが震えて皿と当たる音だけが部屋を支配する。

 

「…………………。」

 

「ど、どうですか心愛さん?」

 

「うん。」

 

「それどうゆう意味?」

 

「普通!普通だよぉ!」

 

「やったぁあああああああああ!」

 

しかしこの後、散々不味い飯を食べた後に食べるあまり美味しくない料理を普通に感じていただけという事実に気付くのと、

残された食いかけの不味い飯を食べ切らなければならない事実に気付いていない3人だった。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
弾「へへへ〜虚さんまた来てくれるかな〜?」
サード『所で弾様。連絡先は交換なさったのですか?』
弾「あ………。」
サード『弾様…。』
ケイタ「ほんと昔からここって所で一歩足りないよな。
次回infinite DRAGON KNIGHT 第8話the Heat その0」
サード『これが、明日のリアル!』
(ed YOUR SONG 鎧武乃風)


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the Heat その0

ケイタ「さて、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは、どこまで行ったっけ?」
弾「俺が!あんだけかっっっこよく変身してWと一緒に戦って勝ったとこまでだよ!」
鈴音「まさかあんたが仮面ライダーになるなんてねー。私は?」
ケイタ「私は?って、鈴お前やりたいの?」
鈴音「当たり前じゃん!だってこいつがやれたのよ?彼女いない歴とバレンタインにチョコもらった事ない歴が年齢とイコールのこいつが!」
弾「それ変身と関係ないだろ!お前だって渡せたのか達郎にチョコを!」
鈴音「………双天牙月と龍咆好きな方を選びなさい。」
弾「のぞむところだ!変身!」
ドライバー<一撃in the shadow!>
鈴音「くらえぇぇ!」
黒影「うおおぉ!」
ケイタ「たく、馬鹿ばっか。それではどうぞ。」
(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

警報機の様なベルの音で夢の世界から放り出される。

鉛の様に重い体をなんとか動かしカーテンを開けて目覚まし時計を止めた。

 

(なんでだろ?腹がすっごく重苦しい。)

 

昨日なに食べたっけ?なんとなく独り言の様に呟くと

 

『セシリア・オルコットの失敗手料理の満漢全席だ。』

 

そうだった。

昨日の夜セシリアの料理特訓に付き合って死にかけたんだった。

 

「思い出しただけで吐き気がする。」

 

「奇遇だな。俺もだ。」

 

『レン様大丈夫ですか?昨日はうなされてましたよ?』

 

「悪夢ぐらい昨日の行軍に比べりゃマシだ。」

 

あの後満身創痍になりながらもなんとかバイクを運転して帰ったのだった。

 

「満腹感的にはもう今日のお昼ぐらいまでは要らないんだけどな。」

 

「そうも行かないだろ。

アレが栄養になったかと言われたら疑わしい。」

 

「違いない。」

 

4人は無理矢理朝食を胃に押し込むと学校に向かった。

 

「こんなんでまともに授業受けれんのかな?」

 

「だよね〜不安。」

 

「そう思うなら少しは授業中に居眠りしない努力をしよっか2人とも?」

 

「は、はい。」

 

「善処します。」

 

流石に千冬の授業で寝る事はないがそれ以外の一般科目の授業は割と寝ているケイタと心愛は必然的にあまり成績がよろしくない。

 

流石に赤点を取るほどでは無いが。

 

「頼むからオルコットの為の料理教室の次はお前らの為の勉強会とか勘弁してくれよ?」

 

 

 

2

授業が終わり放課後、

解散と共にケイタ達の携帯に一通のメールが届いた。

 

差出人 謎のお姉さん

 

件名 来てね

============

お姉さんから凄く凄ーく重要なお話があります!

帰る前に生徒会室によってね!

============

 

「どうする皆?」

 

「十中八九、て言うか間違いなく更識生徒会長からだよな?」

 

「別に無視しちゃってもいいんじゃない?

来週から臨海学園だし私達も暇じゃないし。」

 

「でもお話だけでも聞いてみてもいいんじゃない?」

 

《これはわたくしの個人的な意見ですが、

楯無様と関わって良い事はないかと。》

 

《我々フォンブレイバーや仮面ライダーのことを嗅ぎ付けられたりしたら面倒だ。》

 

《それに奴には新聞部(パパラッチ)を使って一夏をコソコソ調べまわっていた前科がある。》

 

フォンブレイバーや尾行された事がある一夏や用心深い蓮は乗り気じゃないみたいだ。

 

「俺は行こうかな。

いつまでも立場不明でいられんのも怖いし。」

 

「一理あるが相手は学園最強のIS乗りにして暗殺部隊の長だぞ?」

 

「だから今のうちにお友達になっておいて損はないよ。」

 

そうなケイタの一言で渋りながらも一夏と蓮も生徒会室に向かった。

 

「失礼しまーす。」

 

ドアを開けて中に入ると大量の書類とそれと格闘する眼鏡の上級生の姿があった。

こちらに気付くと立ち上がり一礼して名乗った。

 

「! お待ちしておりました。

私は生徒会会計の布仏虚といいます。」

 

「布仏って……網島です。」

 

「アキヤマです。」

 

「織斑です。」

 

「保登心愛です。」

 

どうしたものか?もし1人で待っていたのが更識楯無なら

どんなにからかってきても『で?用件は?』で済ませられ

るが、相手は自分たちが死に追い込んだと言っても過言で

はない布仏本音の姉だ。

 

「今日は皆様に謝りたくて呼ばせていただきました。」

 

「謝る?先輩が私達に?」

 

「はい。私は…あなた達を赦すことは多分出来ません。

けどだからといってあなた達の立場を考えていなかった

かもしれません。」

 

「私達の立場?」

 

「同じ立場になって分かりましたよ。

人智を超えた力を

持った化け物に人の身で対峙する事の恐ろしさが。

それから少し考えれば私達を度々助けてくれた

仮面ライダーの気持ちもわかった気がします。」

 

「仮面ライダーの気持ち?」

 

「化け物と同じ力で一歩間違えれば自分も

そうなっていたかもしれない怪人に拳を振るう葛藤が

いかに苦しいか、そう考える様になりました。」

 

一歩間違えればそうなっていたかもしれない。

気付けばケイタと蓮はポケットに入れたデッキを

握りしめていた。それだけ虚の言葉は重い。

 

(確かに……俺がいつストライクや、あの時夢に見た

オニキスってライダーみたいにならない保証は何処にもない……。)

 

(見方を変えれば俺はベントしたインサイザーに負けず劣らずのクソ野郎ってわけか。)

 

「だから私はあなた方を一方的に悪と決めつけた事にだけは謝罪します。本当にごめんなさい。」

 

「頭あげて下さい布仏先輩。

どっちかって言ったら頭下げても下げ足りないの俺たちなのに。」

 

「そうですよ。私達がのほほんさんを逮捕したのに!」

 

「………アンタの恨みはある意味正当なもんだ。

けど楽な方へ逃げ続けなかったアンタを俺は称賛する。」

 

「そうですか、では改めてよろしくお願いしますね。」

 

「こちらこそお世話になります布仏先輩。」

 

「はい。あ、あと最後に五反田弾くんの連絡先を教えてもらえませんか?」

 

「ダン?知り合いか?」

 

「あ、ああ。布仏先輩弾に会ったことあるんですか?」

 

「はい、つい先日助けていただいたばかりで。」

 

「へぇ〜あの弾が?」

 

「? 一夏ちゃんどうしたの?」

 

「いやなんでも。ただ弾な先を越されたのは少し悔しいかな〜って。」

 

「ふーん。って ヴェア!?」

 

 

3

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

場所は変わってベンタラ。

 

黒いジャケットの男、仮面ライダートルクこと

ドリュー・ランシングは逃げていた。

 

(なんで、なんでこんな事に?)

 

彼はゼイビアックスに拾われるまで詐欺師だった。

 

元々口達者で人を騙す事に快感を覚えるタチだった事もあり、

彼は大学を出て直ぐに詐欺師になった。

 

しかしそんなポッと出の彼がそんなに上手くやれる訳がない。

割とすぐに詐欺がバレて警察に追われる羽目になった。

 

「こんなはずじゃなかったのに!」

 

そうやって逃避行を続けるうちに出会ったのがゼイビアックスだった。

 

「君は口が達者で頭も回る。どうかね?

私の元で働いて欲しいんだよ」

 

ゼイビアックスの手を借りてベンタラに逃げるとすぐにドリューは彼の真の目的を聞かされた。

 

「そう言う訳で私の目的が達成された暁には君に地球の支配権をあげよう。」

 

ドリューはすぐに引き受けてデッキを受け取りライダーになった。

 

(見てろよ俺はゼイビアックスの部下で終わらない!

必ず奴も他のライダーも倒して最強の王になってやる!)

 

彼は優秀だが、その身の丈に合わない野心を持った男だった。

自分なら上手く立ち回れる。

そう確信していたのだが

彼には一つ致命的な欠点があった。

 

自分の失敗を認めらない、否頑として認めないのだ。

 

そんなんで口八丁で言いくるめただけの仲間が付いてくるはずもなくたちまち四面楚歌、更に悪いことは重なる。

 

「やあやあやあドリュー君。

よくのこのこ戻ってこれたね。」

 

「ッ!……すいませんしくじりました。けど次は必ず!」

 

「次?君に次なんてないよ。」

 

「! 間明にエム?」

 

「この発言はどうゆう意味かな?」

 

スッとゼイビアックスが鏡に手をかざすと映像が浮かび上がる。

 

『なーに、しばらく寂しいだろうがドラゴンナイトやゼイビアックスも上手い事利用して用済みになったら直ぐに送ってやるから安心して待ってろ!』

 

前に勢いでアックスやスティングに言ってしまったセリフだった。

 

「しかもこの戦いで脱落したのはスピアーだけ、

こちらには損失しかなかったのに対して向こうは団結してしまった。」

 

「君には責任を取ってもらうよドリュー君。」

 

そう言って間明はポケットから紫色のコブラのアドベントデッキを取り出す。

 

「仮面ライダー。」

 

構えを取り間明はストライクに、

エムは自身の愛機サイレントゼフィルスを展開。

ゼイビアックスも怪人態に変身する。

 

「クッソ!KAMEN-RIDER!」

 

ドリューもトルクに変身してマグナバイザーを乱射して隙を作り鏡に飛び込み逃げる。

 

「追えストライク!」

 

「ありがたき幸せ!」

 

こうして逃避行が始まった。

寝る場所ひとつ確保する事さえ周囲の全ての鏡を塞がなければならないような気なんてとても休まらない旅だ。

 

途中でなんとか仲間を作ろうとしてトラストに共闘を持ちかけたが

 

「もはや私は後に引けない!今すぐ脱落してくれ!」

 

いきなり襲い掛かられる始末だ。

 

(何か、何かないのかよ!

この状況をどうにかできるような何かは!)

 

因果応報の悪因悪果。

正しく自業自得なのだが運命の神様とは気まぐれなものだ。

 

(あそこにいるのはアックス!)

 

丁度モンスターを倒した後らしい簪がいた。

 

「な、なあおい!」

 

「!? ドリュー・ランシング!」

 

こちらを見るなりデッキを取り出し臨戦態勢になる簪。

 

「ま、待て!待ってくれ!

もうお前らと敵対するつもりはないんだ!」

 

「そうやってまた私達を騙して分断するつもりでしょ?」

 

「違うよ!今、ゼイビアックスやストライクに追われてるんだ!頼むから助けてくれよ!」

 

「……なるほどそうゆう事。

それで仲間になって隙を見せたところでベントして

残ったデッキを手土産にゼイビアックスのところに戻る作戦。」

 

Vバックルを出現させポーズをとる簪。

 

「さっきから違うっつってんだろ!」

 

「ふん!どうだか、どっちにしろ雑魚の助けなんて要らない。」

 

「なんだとテメェ!もうムカついた!

お前からベントしてやる!」

 

ドリューもVバックルを出現させて構えをとる。

 

「カメンライダー」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

同時に仮面ライダーに変身した2人、

先に動いたのはトルクだった。

マグナバイザーをフルオートにしてアックスを撃つ。

 

「!」

 

<STRIKE VENT>

 

アックスは横に飛ぶとデストクローを召喚。

ドラゴンナイトがドラグシールドでやる様に構えて突っ込んでいく。

 

「なんだと!?」

 

「はぁい!」

 

胸部にモロに斬撃を受け飛ばされるトルク。

転がりながらなんとかカードをベントイン。

 

<LAUNCH VENT>

 

ギガキャノンを装備して連続で光弾を浴びせる!

すかさず柱に隠れるアックス。

 

「ッ!」

 

「どうしたどうした!お友達が居なけりゃ雑魚にさえても足も出ないじゃないか!

このまま俺の王国の礎になりな!」

 

(……不味いな、なんとか隙を作らないと…そうだ!)

 

「ねぇトルク!王様になれない条件が1つあるんだけど教えてあげようか?」

 

「あ?あんのかそんなもん?」

 

「王様っていうのは、王様になろうとした瞬間に失格。

つまりあなたはいきなりアウト。」

 

「あぁ?なんだよそれ?そんな事…」

 

無いと言い切れるだろうか?

 

ほんの一瞬そう思っただけだが、

次々と思い当たる節が浮かんでくる。

 

詐欺が警察にバレた時も、簪を騙しそびれた時も、

スティングやアックスを仕留め損ねた時も、

絶対に大丈夫だと思った時程失敗していなかったか?

 

(今だ!)

 

デストクローを外し、バイザーにカードをベントイン!

 

<FREEZE VENT>

 

「! しまった!」

 

ギガキャノンが凍結され、光弾が発射されなくなる。

 

<FINAL VENT>

 

その油断が命取りだった背後から現れたデストワイルダーに仰向けになぎ倒され引きずられる。

 

その先にはデストクローを構えたアックスが待ち構えている。

 

「死んでたまるかぁー!」

 

トルクはベルトにマウントされたままだったマグナバイザーをデストワイルダーの腹部にビームを連射する。

 

デストワイルダーが怯んだ隙にトルクは逃げ出した。

 

「……チッ!」

 

仕留めきれなかったがあれだけ痛めつけておけばしばらく平気かと思いアックスは撤退した。

 

そして満身創痍で逃げ出したトルクは

 

「はぁ…あぁ……クソ、クソ!クソ!クソ!クソ!」

 

逃げ出した先で意味もなくマグナバイザーを撃ち散らす。

 

「なんでどいつもこいつも俺の思い通りに動かないんだぁ!」

 

醜い慟哭と銃声がこだました。

 

 

 

4

場所は変わって剣道場。もう誰も居なくなった後、

ただ1人素振りを続けているのは篠ノ之箒だ。

 

(このままではダメだ!奴らは、どんどん先に行く。)

 

強力なビーストと契約しているケイタに躊躇いなくライダーをベントできる蓮。

箒には無い強さだ。そして箒はただでさえ絶不調だった。

 

(あのカニがベントされてからというもの、デッキが怖い……。)

 

ビースト出現を知らせる音がするだけで一瞬身構えてしまう。

 

(軟弱!軟弱だぞ篠ノ之箒!

そんな事ではあの2人を倒して一夏の目を覚まさせるなど夢のまた夢だぞ!)

 

何度も何度も素振りを続ける。

そろそろ三桁にいきそうになった時。

 

「箒!」

 

「! 一夏!どうしてここに?

まさか剣道部に入る気になったか?」

 

「いや、まだ残ってるって四十院さんから聞いたから。

頑張ってるね。」

 

「まあな。いつまでも、負けっぱなしではいられない。」

 

「負けっぱなし?」

 

「ああ。網島や秋山の様な後から来た奴らにお前の幼馴染ポジションを盗られっぱなしではな。」

 

「フフッ」

 

「? なぜそこで笑う?」

 

「いや、箒が友達でよかったなぁ…って。」

 

「そ、そうか。むっ!」

 

「こ、この音って…!」

 

ぴーん、ぴーんと耳鳴りの様な音が響く。

 

「出たか。」

 

「!? 出たかって箒まさか…。」

 

「ああ一夏。私も網島達と同じ仮面ライダーだ。」

 

ブレードのデッキを取り出す箒。

 

「見ていてくれ一夏。

お前を取り巻く余分な奴らを倒して真の強さを証明するよ。」

 

「ま、待って箒!」

 

飛び出した箒を追う一夏。

箒は近くの窓にデッキを構えてVバックルを出現させる。

鏡には緑色のライダー、トルクが写っている。

 

「新手か、いいだろう。仮面ライダァ!」

 

箒はブレードに変身してベンタラに飛び込んだ。

 

「ほ、箒…!電話?

こんな時に誰…手塚さん?もしもし一夏です。」

 

『一夏!今ライダーの運命を久しぶりに占ってみたんだが!

大変だ。またライダーがベントされる!』

 

「!? 本当?」

 

『ああ。サバイブカードが無ければベントされる!』

 

「サバイブカード?それよりも誰がベントされるの?」

 

『それはウッ!ガァアアア!』

 

「? もしもし?もしもし手塚さん?」

 

『ぐぅうぅううう!頭が!頭が割れるぅう!』

 

『海之ちゃん!落ち着いて海之ちゃん。』

 

「嘘でしょこのタイミングで発作?」

 

『落ち着け一夏!網島ケイタ達に連絡を入れろ。」

 

「う、うんわかった!オブザーバーはケイタに!

デモリッションはレンに!

ゼロワンはシーカーを着身!

カメラを乗っ取ってケイタ達が変身できるように!」

 

『了解だバディ。

シーカー着身!…着身完了。

イニシエイト・クラック・シークエンス発動。

IS学園の防犯カメラを掌握する。……完了だ。』

 

「よし!あ、繋がった!もしもし?」

 

『どうした一夏?』

 

『ずいぶん焦ってるな。何かあったか?』

 

「手塚さんの占いで!また誰かがベントされるって!

今トルクと箒が変身したスティングみたいなライダーが戦ってる!」

 

『スティングみたいな、ブレードか!』

 

『ブレードの正体は篠ノ之だったのか!』

 

「兎に角急いで!

カメラはゼロワンがどうにかしたから!」

 

『わかった!一夏も気を付けろよ!』

 

『そこを動くな!心愛をそっちに向かわせる!』

 

電話が切られ、再び一夏とゼロワン達だけになる。

 

(ケイタ、蓮。お願いだよ…

この連鎖を止めて…仮面ライダー。)




黒影「うおおぉ!」
ドライバー<マツボックリスカッシュ!>
鈴音「でりゃああああ!」
ケイタ「まだやってるよ、おーい誰かいないの!」
紗路「! な、なに?ISと仮面ライダーが戦ってる?」
ケイタ「紗路ちゃん良い所に。これ読んで。」
紗路「え? カンペ?」
ケイタ「次回予告だから。」
紗路「私出番ないのに?」
ケイタ「夏休み編ちゃんと出番あるから!」
紗路「う、うん。次回the Heat その1?」
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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the Heat その1

ケイタ「えっと前回は龍騎ファンなら絶対知ってるあの名言が出たところまでだっけ?」
ゼロワン『それから篠ノ之箒の正体が一夏達にばれたな。』
セブン『これからさらに臨海学校。休む暇なしだな。』
ケイタ「それでは、どうぞ!」


1

箒はブレードに変身してベンタラにダイブするとアドベントサイクルに乗り込み、目的地を目指す。

そこには肩で息をするトルクがいた。

 

「! お前は確かブレード!」

 

「自己紹介は要らない。

これから倒されるお前のはな!」

 

<SWORD VENT>

 

ガルドセイバーを召喚し、斬りかかるブレード。

 

<STRIKE VENT>

 

間一髪トルクはギガホーンを召喚して受ける。

 

「待て!頼むから待ってくれ!

俺は戦うつもりなんて無いんだ!」

 

「は!ライダーだから戦う。

理由はそれだけで十分だ!」

 

「そうかよ!」

 

ブレードは1人でも倒せれば後は何人でも倒せる様になると考え、殺意を込めて刃を振るった。

 

トルクは死んでたまるか!という一念でギガホーンを繰り出した。

しかし先程のアックスとの戦闘でファイナルベントをくらいかけたトルクの方が不利だった。

たちまちギガホーンを破壊され、丸腰になる。

 

「死ね!」

 

頭目掛けて兜ごと頭蓋をかち割ろうとガルドセイバーが振り下ろされる。

 

「おーっと待った。」

 

<ATTACK VENT>

 

ことは無かった。いつ間にか現れたストライクと

その契約ビースト、ベノスネーカーが吐いた毒酸がブレード目掛けて放たれたからだ。

 

咄嗟にガルドセイバーを盾がわりにしたため助かったが

ガルドセイバーはグズグズに溶けてしまった。

 

「貴様邪魔をするな!」

 

「こっちの台詞だよ。トルクを始末するのは僕の仕事なんだ。

君みたいな雑魚に横取りされたく無いよ。」

 

「なんだと!いいだろうお前からベントしてやる!」

 

「やってみろよモップ頭!」

 

ゴキリ、と首を鳴らすとストライクはバイザーを呼び出しカードをベントイン!

 

<SWORD VENT>

 

<COPY VENT>

 

ストライクはドリル状の海賊剣(カットラス)型の武器ベノサーベルを召喚、剣を失ったブレードもこれをコピーして対応する。

 

2人が8合切り結んだ所でようやく回復したトルクはマグナバイザーを構えた。

 

(今のうちに2人とも始末してやる!)

 

背後から狙い撃とうとした時、トルクは背後から強烈なタックルを食らった。

 

「ぐぅ!お前はドラゴンナイト!?」

 

「悪いな、ブレードを倒される訳にはいかないんでね!」

 

ドラグセイバーを構えるドラゴンナイト。

ブレード達の方を見ると2人の間にウイングウォールを装備したウイングナイトがいる。

 

(くそう!また膠着状態に!)

 

なんとかならないのか?そう思った時、ウイングナイト、ブレード、ストライクの方にトラストの契約ビースト、

メタルゲラスが突っ込んできた。

 

「今度はあの角頭か!」

 

「ああ、私だ!ブラッド・バレットだ!」

 

もう既に装備していたメタルホーンをドラゴンナイトに振り下ろすトラスト。

 

「ッ!落ち着け!このまま戦い続けたってゼイビアックスの思う壺だぞ!」

 

「ゼイビアックスは関係ない!

これはブラッド・バレットの戦いだ!」

 

再びメタルホーンが振るわれ、吹っ飛ばされるドラゴンナイト。

 

「く!このおぉ!」

 

<CONFINE VENT>

 

ドラグセイバーで斬りかかるが、

コンファインベントでドラグセイバーを打ち消され再び吹っ飛ばされる。

 

「ドラゴンナイト! 仕方ない!」

 

<TRICK VENT>

 

<CONFINE VENT>

 

シャドイリュージョンを発動しようとするが、

これもまた2枚目のコンファインベントで打ち消される。

 

「こうゆうカードもあるんだよ。」

 

「たく、面白くなってきやがったな!」

 

5人のライダーの大乱戦が始まった。

 

二本のベノサーベルとメタルホーンにダークバイザーがしのぎを削り、

ドラゴンナイトの拳が、ライダー達の仮面を容赦なく殴りつけた。

 

そしてその様子を、上手く隠れたトルクは物陰からうかがっていた。

 

「は、はは。5枚揃ってロイヤルストレートフラッシュってか?

だが俺には、最強の切り札(エース)がある!」

 

<FINAL VENT>

 

マグナギガを召喚してバイザーを背中に接続する。

 

胸部ミサイル、右腕ミサイル砲、左腕ビームマシンガン、額部レーザー砲、両脚のエネルギー弾が一斉に5人のライダーに降り注ぐ!

 

「何!?」

 

「しまった!」

 

「伏せろ!」

 

他にも誰か何か叫んでいたが爆裂音と土煙に隠れて何も分からなくなった。

 

「は、はは、ははははは!

断末魔もなかったな!はははははははは!」

 

トルクは勝利を確信すると去って行った。

 

「う、ぐ…蓮!篠ノ之さん?誰か!

生き残った奴はいないのか!」

 

「ゴホッゴホッ!

その声はドラゴンナイト!生きてたか!」

 

「な、なんだったんだあのデタラメな攻撃は……。」

 

確かなダメージを受けながらも無事だったドラゴンナイト、ウイングナイト、ブレードの3人。

 

「後の2人は?」

 

「トラストならあそこに…ん?」

 

トラストの方を見ると何かおかしい。

人形のように身動ぎ一つせずに中央に突っ立っている。

 

「ありがとうね、僕を守ってくれて。」

 

その理由ストライクに盾にされていたからだった。

 

「ぐふ!き、貴様よくも!」

 

「近くにいた、君が悪いよ。」

 

怒髪衝天でストライクに殴りかかるトラスト。

しかし逆にストライクにヤクザキックをくらいふらついた所をワンツーパンチでダウンさせられる。

 

「う…うぐ。」

 

「ふふふふふ。

さあ、ブラッド・バレット選手の華麗なフィニッシュだ。」

 

<FINAL VENT>

 

それは死刑宣言。

ストライクの背後からベノスネーカーが現れる。

 

「はあ!」

 

それに向かって勢いよくジャンプするストライク!

 

「やあああああああああああ!」

 

吐き出された毒の激流に乗って繰り出されたストライクのバタ足のような連打蹴りがトラストの胸部アーマーを破壊し、真っ赤な炎を上げて炎上した。

 

「そんなぁ!そんな馬鹿なあ!私は!

私は勝つ!ブラッド・バレットは試練に勝つんだ!

こんな!こんなところで!ブラッド……。」

 

それが最後の言葉だった。

仮面が割れて火傷だらけの顔で唯一無事な目が箒の目と合ったその時、彼は霧散して炎もろともデッキに吸い込まれた。

 

「見事ゴォールインッ!皆さま、盛大な拍手を!」

 

バシン!歓喜する。

ストライクにドラゴンナイトの左ストレートが決まった。

 

「……やる気かい?」

 

「俺は甘かったよ。」

 

「?」

 

『ケイタ、まさか…。』

 

「こいつは、俺が、ベントする。」

 

心の何処かでこいつも説得すれば仲間になってくれるんじゃないか?

とか期待していた自分に後悔した。

その結果、ただ挽回したかっただけの、

ある意味一番の被害者が一番無惨に死に絶えた。

 

「お前は邪悪だ。ライダーがみんな魂に致命傷をおってるならお前はそうなる前に魂が腐ってる。

お前は間明とおんなじだ。」

 

「!……はっはっはっはっ!良い!

良い殺気だよ滾るね!」

 

激しい殴打と蹴りの応酬が始まった。

龍と蛇、古来より対になるもの同士として、或いは同一視されて来た魔獣同士の形を変えた対決だった。

一撃一撃が鎧を歪ませ、身体中に衝撃が行き渡る。

 

『おいケイタ!やめろ!無理をするなそれ以上は!』

 

「たく、聞いちゃいないな。」

 

<ATTACK VENT>

 

ウイングナイトはダークウイングを召喚して、

ドラゴンナイトを掴ませると動けなくなっていたブレードを掴み近くの鏡にダイブした。

 

 

 

2

「えっと、えっと、武道場ってこっちだったはず

…あ、一夏ちゃん!ゼロワン君!」

 

「! 心愛ちゃん!」

 

「みんなは?」

 

辛い表情で俯く一夏。

 

「!?じゃあまさか…」

 

心愛がいいかけたところでケイタ、蓮、箒が近くの鏡から戻ってきた。

 

「痛たた…蓮もうちょっと優しくやれなかったのかよ?」

 

「さっきのあれとナスティベントとどっちが良い?」

 

「さっきので」

 

「賢明だ。」

 

制服に着いた汚れを払いながら立ち上がる2人。

 

「! 良かった2人とも平気?」

 

「酷い目にあったけどなんとか。

ただトラストを見殺しにしちまった。」

 

「ベント、されたの?」

 

「ストライクに。俺は、何もできなかった。」

 

「自分を責めるな。

インサイザーぐらいの防御力が有れば直ぐに動けたかもしれないが、

何も出来なかったのは俺も同じだし、

必要以上に思い詰めるな。」

 

「蓮……。」

 

『アキヤマが素直に人を慰めるとは。』

 

『明日は大雪ですね。』

 

「おいサードにゼロワン。」

 

「蓮君の照れ屋さん。」

 

「引っ叩くぞ心愛。」

 

「ま、レンがツンって改名した方がいいぐらいのツンデレなのは今に始まった事じゃないけど。」

 

「ぶん殴るぞ一夏。」

 

戦闘のすぐ後だというのに和気藹々とした雰囲気が流れる。

 

「ありがとう皆。」

 

「お安い御用です!」

 

『別に思った事を素直に言ったまでだ。』

 

『おや、あなたもツンデレですか?』

 

「ゼロワンもキャラ付け?」

 

『黙れ一夏』

 

だんだんといつもの様になって来た空気。

しかしそれをぶち壊したのが箒だ。

 

「ふ、ふん!軟弱者共が!

ライダーなんだから戦うのもベントされるのも当たり前だ!

ベントされる様な奴らが弱かっただけだ!

なのに自分の事の様に思い詰めるなど無駄もいいところだな!

死人が返ってくる訳でもあるまい!」

 

「ほ、箒?」

 

「お前黙らないと」

 

胸ぐらを掴もうとした蓮を制するケイタ。

 

「ケイタ?」

 

「なあ篠ノ之さん?」

 

「なんだ?」

 

いきなり箒の手を掴む。

 

「!?なんのつもりだ!」

 

「震えてるぞ。」

 

振り払おうとするが思いの外力が強くて出来ない。

 

「キャンキャン吠えてガクガク震えてチワワみたいだな。

知ってるか?ああいう小型犬よく吠えるのってって怖がりだからなんだぜ?」

 

「わ、私が恐れてるとでも」

 

「怖がってるだろ?戦うのも死ぬのも、

そんなんならリタイヤしろよお前。」

 

「! ふ、ふざけるな!リタイヤなんて」

 

「蓮みたいに殺す覚悟も

手塚さんみたいに繰り返さない覚悟も

ラウラみたいに償う覚悟も

シャルみたいにやり直す覚悟もない様な

半端な奴は何やったって半端なんだよ。

リタイアするならくすぶってないでさっさとに消えたら?

みっともないよ。」

 

「き、貴様!」

 

ケイタの腕を振りはらい、殴ろうとする箒、

しかし一夏が割って入る。

 

「やめて箒!」

 

「退け一夏!

冷静になれば私の方が正しいと理解出来るはずだ。

無理もない。

ベンタラに仮面ライダーなんてまともな神経なら理解できない。

一夏は何も悪くない。

一夏は何も心配しないで良い。」

 

「心配もするよ!だって今の箒なんか変だよ。

昔の箒はそんなこと言わなかったよ!

箒は変わっちゃったの?」

 

「変わったのは一夏だろう!」

 

「!?」

 

「………もういい。私は戦う。もう決めたんだ。」

 

「待ってよ!箒……。」




ケイタ「不穏な感じ、嫌だなあ。」
サード『半分は貴方が原作の芝浦淳みたいな煽りをしたからでしょう?』
ゼロワン『そしてトラストは久しぶりに出番かと思えばガードベントか、つくづく不敏だな。』
サード『キャラの多いssの宿命ですね。』
ケイタ「次回、番外編。変わったモノ、変わらないモノ。」
ゼロワン『これが、明日のリアル!』


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番外編 変わったモノ、変わらないモノ

ケイタ(羽織袴)「それでは皆さん。」
3人「新年、あけましておめでとうございます。」
一夏(振袖)「あっという間に過ぎていった令和元年、いかがお過ごしだったでしょうか?」
蓮(タキシード)「このssは相変わらず亀の歩みですが、それでも楽しみにしていただいてる読者の皆様がいる限り、完結まで頑張っていく所存です。」
3人「皆様是非、応援のほど、よろしくお願いいたします。」ペコ
ケイタ「ま、硬い挨拶はここまでで。前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」
ガードベント「」(遺影)
一夏「悪意があるね。」
蓮「何とは言わないけどな。」
一夏「おふざけは置いといて前回は、箒がライダーだったってとこまでだったね。」
蓮「……あぁ。中々ややこしい状態になってきたな。」
ケイタ「まだまだ先が見えないけど、結局進むっきゃないよな。
それではどうぞ!」


1

臨海学校まで残すところ数日、ケイタ達の姿はショッピングモールにあった。

「なあ蓮。」

 

「なんだ?」

 

「世の中には確かなことが三つ有ると思うんだ。」

 

「どんな事だ?」

 

「悪党は変身中に攻撃してこないこと、

女子の買い物が長引くことと」

 

「ちょっと?」

 

急に知らない女に声をかけられる。

 

「あんたら暇よね?買い物手伝いなさい。」

 

当たり前にそうするよな?

とでも言う様な態度で命令してきた。

 

「……女尊社会はクソって事だな。」

 

「違いない。」

 

「な!あんたら男の分際でよくもそんな事を!警察呼ぶわよ!?」

 

「どうぞお好きに?

IS学園の生徒を司直で裁こうなんて不可能だけどね。」

 

そう言って2人揃って女にIS学園の学生証をみせる。

 

「レン・アキヤマに網島ケイタって…男性操縦者の……。」

 

「俺たちを訴えるつもりならアンカー社と日米両政府を相手にできるだけのバックアップを得る事だな。」

 

「くっ………男のくせに、覚えてなさい!」

 

安っぽいファンタジーものの1話で伝説の勇者に倒される変な二つ名の荒くれ者みたいな捨て台詞を残して女は去って行った。

 

「たく、ああゆう露骨な隠そうともしてない奴には参るよな。」

 

「隠そうともしない、か。」

 

ポケットからドラゴンのデッキを取り出すケイタ。

 

「ああゆうのは剥き出しだから秘密がないのに俺たち(ライダー)は人前で仮面をつけてはじめて罪を明かせるってのはなんの皮肉だろうな?」

 

「篠ノ之の事か?」

 

一夏から箒がライダーだと聞いた時目の前で変身したと聞いていた。

 

「篠ノ之さんに限らず、

山田先生も新聞部の黛先輩だっけ?

の目の前で変身して正体がバレちゃった訳だし。」

 

「確かに。もしかしたら俺らも誰か大勢に正体を明かすときは変身することでかもな。」

 

そう言えば初めて蓮がケイタや智乃達に正体を明かしたのも目の前でウイングナイトに変身したことだった。

 

(逆に俺達がドラゴンナイトが誰か知ったのはこいつが変身を解除したからだったな。)

 

《つくづく主に良い意味で仮面ライダーが似合わないと言うことなのかもしれないですね。》

 

そんな風に蓮とサードが話す間もケイタはずっと手のひらに乗ったデッキを眺めていた。

 

(なあ、セブン。)

 

《なんだ?》

 

(合理的な理由とか云々抜きにアンカーのエージェント辞めたくなった時ってある?)

 

《なくはないが、どうしてだ?》

 

(いや、この前篠ノ之さんと戦った後に一夏が泣きそうな顔してるの見たんだ。)

《ほう?》

 

(それで、一夏があんな顔するぐらいならやめた方がいいのかなって。

でもストライクみたいのを野放しにしたくはないし、

篠ノ之さんにちょっと言ってやりたい自分もいるけど。)

 

《あんだけまるでチワワとかどうとか煽っておいてまだ言い足りないのか?》

 

(まあな。あとついでに5、60発ぐらいぶん殴っておきたくもあった。)

 

《ケンカ屋の常識で考えるな!

5、60発はついでレベルではないぞ!》

 

(そうなの!?)

 

《そうなの!全く…ま、君のやりたい様に進むべきだろう。

私も出来る限りの手伝いはしよう。》

 

(ありがとうな、相棒。)

 

《当然だ。》

 

 

 

2

「ねえ一夏ちゃんこっちの色は?」

 

「うん…。」

 

「でもちょっとセクシーなぐらいがいいかな?」

 

「うん…。」

 

「……一夏ちゃーん!」

 

「わぁ!お、大声出さないでよビックリするじゃん。」

 

「一夏ちゃんがお話聞いてないんでしょうが!」

 

バシン!と一夏の頭に何かが振り下ろされる。

 

「イタ!何それ?」

 

「なんか購買で売ってた!」

 

バッ!と今さっき振り下ろした何かを広げる。

無駄に達筆な字で 私を焦らすな! と書かれた扇子だ。

 

何故だろう?一瞬オールバックの髪型でとんでもない顔芸を披露する三十路になったばかりで自称神の天才ゲームクリエイターが脳裏に浮かんだ。

 

「それ、楯無さんの?」

 

「多分同じやつ!」

 

「酷いセンス。」

 

「今のは扇子と感性(センス)をかけたヒジョーに面白いギャグだね!」

 

「「はい!一夏じゃナイカー!」」

 

「って心愛ちゃんは私に何を言わせてるの?」

 

「あ、やっと笑ってくれた!

やっぱり一夏ちゃんは笑ってる方が可愛いぞー!」

 

むにー。と頬っぺたを伸ばす心愛。

 

「ちょ、痛い痛い!」

 

「へへ、一夏ちゃんのほっぺ気持ちいいからつい。」

 

「それに私そんなにつまんなそうな顔してた?」

 

「つまんなそうなって言うか、辛そうな顔してた。」

 

やっぱり箒ちゃんのこと?

 

心愛が言った瞬間胸が痛んだ。

 

「やっぱり。友達が戦うの、嫌?」

 

「……うん。箒だけじゃなくて、

ケイタや蓮や簪さんに山田先生や…シャルロットさんもそう。

けどそれって私がどうこう言える事なのかな?って。」

 

だってみんな命がけだよ?

とポケットからアビスのデッキを取り出す。

 

「それに私みたいに、

変わっちゃう人に言われても説得力ないんじゃないかな?とも思って。」

 

「だからあの時何も言わなかったの?」

 

 

 

3

あの時とは、トラストがベントされたその日、

海之がライダーがベントされる以外に何か伝えようとしていたのを思い出して改めて連絡を入れてみたのだ。

 

『トラスト…そうか、私の占いは当たるな。

デッキは回収出来たか?』

 

「いや、逃げるのに必死で無理だった。」

 

『と言う事はいまデッキは私と秋山が2個ずつ、網島、山田教諭、シャルロット、簪、それからアビスのを一夏が1個ずつか。』

 

「敵側はトルクにストライクがトラストのを含めて二個。

それからまだ出てきてないライダーが2人だな。」

 

ライダーの数的にはこちらが有利だがいきなり大量のアドベントビーストを学園全土に投入しようものならジリ貧だし、

ストライクにトルクと2人の強力なライダーに正体不明のライダーが更に2人。

 

状況はあまり良いとは言えない。

 

「何か、切り札が無いと今の数の優位をひっくり返されるな。」

 

苦い顔で蓮が呟く。するとケイタが一瞬顔を曇らせた。

 

「? ケイタ?」

 

『いや、切り札が無くはない。だが、かなり博打だ。』

 

「どうゆう意味だ?」

 

『秋山、今スピアーのデッキはお前が持ってるんだったな。

中のカードを見てみろ。』

 

(? 中のカード?アタックベント、スピンベント、ファイナルベント、シールのカードに…!?なんだこのカードは!)

 

スピアーの中に入っていた疾風のサバイブカードを取り出す蓮。

 

「蓮君そのカードは?なんか如何にもスーパースーパーレア!って感じだけど?」

 

確かに心愛が言う通りサバイブカードは縁が金色で、

カードの絵が動いてる様に見える正にレアカードといった感じの装飾だ。

 

「SURVIVE…生き残る、か。」

 

『網島も同じカードを持ってるはずだ。』

 

「本当?」

 

「ケイタ、お前のも青か?」

 

「いや、俺のは赤だ。」

 

デッキから烈火のサバイブカードを取り出すケイタ。

 

「そんなカード一体どこから?」

 

『青いのは布仏本音が持っていたのを回収したもので

赤い方は初めから私のデッキに入っていた。』

 

「なんか凄そうな感じだけど、どんなパワーがあるの?」

 

『分からん。

私のコピーベントみたいにAPやGPの表示も無いし、

シールやコントラクトみたいになんとかベントですらない。

正直、何が起こるか分からん。』

 

「楽観的に考えればスペシャル技とか超パワーアップなんだろうけど…」

 

『その後どんな反動が来るか分からん。

だが、少なくともそれなりの戦力になる様だ。

事実私の占いではサバイブカードを使っていれば

トラストはベントされなかった。』

 

あの時私が伝え切れていれば、済まない。と

 

電話越しでもわかる悔しそうな声で言った。

 

「そ、そんな!手塚さんは何も悪くないよ。」

 

「サバイブカードの件も不確定要素を考えれば下手に話さなかったのは賢明だ。

だがこうなった以上使うべき時が来たら迷わず使えと言え。

その時は躊躇わない。」

 

『……わかった。』

 

「ケイタ。

俺はもしこのカードを使うべきとなったら迷わず使う。

お前はどうだ?」

 

「俺も使う。」

 

間髪入れずに至って真剣にケイタは答えた。

 

「ストライクは、いや、

悲劇を繰り返さないためにゼイビアックス達は俺が倒す!」

 

やめて。一夏は言いたかった。

 

何で皆なの?

だからって他の誰かがやれって言うつもりは無いけど無理しないでよ。

ストライクにトラストがやられるの見たよね?

死んじゃうよ?

 

言いたかった。我儘だと分かっても言いたかった。

 

けど一夏は強い光を宿したケイタの目を見るばかりだった。

 

 

 

4

「ところでケイタ。」

 

「なに?」

 

「お前と一夏ってなんていうか、

あんまりにもお互いにタイプが違うと思うんだが、

前からあんなに仲よかったのか?」

 

「いや、最初はなんか俺一夏にめっちゃ嫌われてたよ。」

 

意外だった。まだ3ヶ月そこらの付き合いだがあの一夏が自分から人を毛嫌いする様には見えない。

 

まぁアレの兄のように明らかにダメなのもいるっちゃいるが。

 

「どんな出会いだったんだ?」

 

「聴きたい?じゃ、ちょっと長くなるけど。」

 

 

 

ケイタが小学四年生に上がったばかりの頃、

織斑姉兄妹が網島家にやって来た。

 

当時のケイタは今程ではなかったが無精者で、

仲良くなるのめんどくさそうだな。くらいに思っていた。

 

いきなり姉が出来たのも同い年の子が二人も増えたのもなかなか疲れたし、ケイタは三春を好きになれなかった。

 

別に自分より頭が良いからとか運動が出来るからとかそういう理由でなく、性格が好きになれなかった。

 

きっかけは一度三春に剣道に誘われた時のこと。

寝る時ぐらいしか同じ部屋に居ないくらい薄い関係だったが放課後毎日何してるのか気になってはいたし行くだけ行ってみるか。

 

そう思い教室のあった神社に行ってみた。

まあまあ繁盛してるようで生徒の数は10人くらいで下は自分達くらいで上は千冬くらいまでいた。

 

「ケイタ君。君も剣道に興味が?」

 

「一応。普段二人が何してるのかも気になってましたし。」

 

結局普通に剣道を見学していただけなケイタ。

特に剣道に興味を抱けぬまま終わりさて帰ろうかと思うとおかしなものを見てしまった。

 

三春だけまだやると言って御神木の方へ歩いて行ったのだ。

なんだろう?普段ならあまり気にしないがここ最近は悪友の弾達と共にバスケに付き合ってくれる翔太郎の影響でちょっとしたことまで気になってしまうようになっていた。

 

覚えたての忍び足で追跡していくとある一本の木の前で止まる。

いつでも走り出せる体制で隠れながら覗き込む。

三春はこちらに気付いていない様子で竹刀を取り出すと

 

「なんでなんだ!」

 

思い切りその木に向かって振り下ろした。

 

「なんで僕も一夏も皆んなを守るくらいに強くなれないんだ!

僕らはどんなものからも守れるくらいにならないとダメなんだぁ!」

 

そこからは酷かった。

 

自分と同い年の少年の口から発せられているとは思えない罵倒や悪態を自分と一夏に向けて喚き散らして吐き散らして型も何もあったもんじゃない素振りを繰り返している。

 

目眩がする。あまりに酷い。

そういえば探偵も見たくないものを見てしまう時もある。

って言っていた気がする。

 

その後は最悪な気分で帰宅した。

どうやって自分が帰ったかも思い出せない。

その後は普段以上にボーっとしていた。

 

「大丈夫?なんか今日帰って来てから変じゃない?」

 

「そういう一夏も最近調子悪そうじゃん。」

 

多分一夏は環境の変化に疲れているだけだろうが。

 

「私、君ほど不摂生じゃないから。」

 

なんてことない一言だったがその声には軽蔑の念が込められていた。

部屋に戻らず洗面台の方に向かい鏡を覗き込む。

 

俺そんな変かな?

鏡にはいつものやる気のない自分の顔しか映らなかった。

 

 

 

6

「別にいいと思うな。」

 

「え?」

 

一夏の話を聞き終えると心愛はなんて事のない様に言った。

 

「確かに一夏ちゃんは箒ちゃんから見たら変わったのかもしれないけど、

私が好きになったのは今の一夏ちゃんだから。

きっと箒ちゃんは変わる前の一夏ちゃんから好きになったからなんか違和感なのかも、嫌なんだろうけど、

良いも悪いも全部一夏ちゃんだから、

気にする事ないって思うな。」

 

屈託のない笑みで言う心愛を見て一夏は風都に、

網島の家に越してきたばかりの頃を思い出した。

 

その日一夏は風邪を引いた。

40度近くの熱を出し動くのも怠くなる程の酷いやつだ。

おそらく急な環境の変化が原因だろう。

 

その上剣道を休みなく続けていたんなら尚更だ。

幸い土曜日だった為学校を休んだりはしなかったが。

 

「お粥持って来たぞ。」

 

お盆を持ったケイタが入ってきた。

 

「自分で体起こせる?」

 

ゆっくりと首を横に振る一夏。

 

「わかった。じゃ俺が動かすから。」

 

自分でやろうとしたが体に殆ど力が入らない。

 

「世話、、ないね。」

 

「ん?」

 

「君の、こと。、、不摂生、とか、、言っておいて、、情け、ないなぁ。」

 

口を動かすのも怠かったがそう言わずにはいられなかった。

 

「、、別に、俺は一夏が情けないとか全然思わないけど?」

 

「、、、え?」

 

「慣れない街で、馴染もうとしながら剣道だって頑張ってたんだろ?

だったら仕方なくない?

それにこの街は良いものも悪いものも風が運んでくるから

きっと次は一夏の所に良いものを運んでくるよ。」

 

翔兄ちゃんの受け売りだけど。カッコつけすぎかな?

 

気恥ずかしそうにはにかみながらお粥をひとすくい。

 

一夏はなかなか差し出されるお粥に手をつけれなかった。

 

何故か泣き出してしまった。

そしてようやく泣き止んでお粥を食べれた頃にはすっかり冷めてしまっていたが一夏にはとても暖かく感じた。

 

「…ありがとう心愛ちゃん。」

 

「どういたしまして!」

 

晴々とした笑顔になった一夏。

もう迷いはないだろう。

 

《バディとしては、少し妬けるな。》

 

そして少し複雑な気分のゼロワン。

しかし画面を開いたならそこに笑顔のフェイスパターンがあったはずであろう。

 

 

 

7

「お前ら結婚しろよ。」

 

「な! れ、蓮お前いきなり何を!」

 

「一夏と末長く爆発しろ。結婚式には呼べ。

スピーチと織斑千冬に斬殺された後の骨ぐらいは拾ってやる。」

 

「何で千冬さんに殺される前提なんだよ!

いや確かにもしそうなればあの喪女侍に

殺されるの待ったなしだけど!」

 

《どちらかと言えば今の喪女発言のせいで殺されませんか?》

 

《だが、間違いなく妹や山田真耶に先を越されそうだ。》

 

「違いない。いや、間違い無いな。」

 

この時IS学園の教員室から特大のくしゃみが聞こえたとかなんとか。

 

「話戻すけど俺と一夏は」

 

「確かに世間的に見てん?ってなる様な事だが、

別に法に触れる訳じゃないし、

一夏みたいな女がお前の性癖ドストライクだろ?」

 

「い、いやまぁ、そうなんだけど…。」

 

(それに一夏も満更じゃ無い感じだし)

 

「なんか言ったか?」

 

「いや、別に」

 

「ならいいけど。それよりそろそろ行くぞ。

女の買い物はここからが本番だ。」

 

「だな。」

 

臨海学校まで残りわずか。

 

彼らに試練が訪れるまで残りわずか。




ケイタ「次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」
心愛「海、キター!」
一夏「束さん?」
篠ノ之束「ちーちゃん!」
千冬「ふん!」
能見創「これが新しい打鉄赤龍です。」
箒「いける、この紅椿なら!」
ラウラ「銀の福音だと!?」
蓮「こっからは戦争だ。」
三春「俺が守る!この新しいISで!」
一夏「私が白式に?」
千冬「すまない三春、一夏。」
真耶「ストライク!」
間明「僕らも、混ぜて貰おうか。」
ドリュー「死ねよどいつもこいつも!」
一夏「嘘…私……。」
箒「一夏ぁああああああ!」
蓮「次回、the Heat その2!」
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」
一夏「何この予告!?私死ぬの!?」


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the Heat その2

ケイタ「えーと、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは」
心愛「私も一夏ちゃんみたいに振袖着たかった!」
サード『私達も衣装用意してたのに!』
ケイタ「え?そうだったの?なんか、ごめん。」
ゼロワン『まあいい、確か前回までは天津1000%が松田エンジと滅のキーをパクった金メッキで変身したところまでだったはず』
セブン『ゼロワン違いだ。前回はケイタと一夏の過去が語られただけで、今回から臨海学校編だ。』
ケイタ「さてさてどうなる?」
(op GALACTIC WORLD インフィニット・ストラトス ヴァーサスカラーズ)


1

バスがトンネルを抜ける。

カードに興じていた者達も雑談に花を咲かせていた者達も1人で好きな事をしていた者達も一様にはしゃいだ。

 

「海、キター!ほら見て海だよ海!」

 

一番に叫んだ心愛が蓮の読んでいた英字小説をひったくる。

 

「返せ心愛。それと騒ぐな。

まだ寝てる奴らがいる。」

 

そう言って左肩を指す。

ケイタが蓮の左肩に、

一夏がケイタの左肩に寄りかかり寝ている。

 

「気持ちよさそう…そうだ!」

 

「何する気だ?」

 

「まあまあ見てなって、えい!」

 

いきなりケイタの鼻を摘む心愛

 

「ガッ!ぐぅ…まだ目覚ましなってないだろ誰だよ?」

 

「寝ぼけてんな、おいケイタ。海見えたぞ。」

 

「海?……ああ、臨海学校。」

 

眠そうに目を擦りながら伸びをするケイタ。

コテン。と肩に寄りかかっていた一夏がケイタの膝に落下する。

 

「う、うぅん……えへへぇ…ほめてぇ…」

 

何やらよく分からない寝言を言いながらゴロゴロとケイタの膝で寝返りを打つ一夏。

 

「ふーむ…おい!起きろ織斑!」

 

千冬の口調を真似ながら一夏を譲るケイタ。

 

「ふわぁ!寝てない!

じゃ無いや寝てません千冬姉!」

 

バス中から笑いが起こる。

しばらくフリーズしていたが次第に顔が真っ赤になっていき

 

「ケイタ貴様ぁああ!」

 

「痛て!痛い!叩くな!悪かった!悪かったよ!」

 

「貴様ら!はしゃぐのもいいが今回の主題はあくまでIS訓練ということを忘れるな!」

 

はい!と皆が急いで席に戻るとバスは旅館の前に到着した。

 

入り口の方を見ると女将らしき女性が立っている。

学年全員がバスを降りて整列すると千冬が前に立ち

 

「それでは、ここが今日から3日間お世話になる花月荘(かげつそう)だ。全員従業員の仕事を増やさないように注意しろ。」

 

「「「よろしくお願いしまーす!」」」

 

全員が息の合った返事をする。

 

「はい、こちらこそ。今年の1年生も元気があってよろしいですね。」

 

どうやら毎年世話になっているらしい。

そりゃこれでもかと国家機密を扱ってる学校だし、

一度決めた行き先や取引先は変えないだろう。

 

「あら、こちらが噂の?」

 

三春、蓮、ケイタと並んだ順に見ながら女将が訊ねる。

 

「ええ、まあ。こいつらのせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません。」

 

「いえいえ、そんな。しっかりしてそうな子達じゃないですか。確かお名前は…」

 

「レン・アキヤマです。

ご迷惑をおかけします。」

 

「あ、網島ケイタです。」

 

「えっと、織斑三春です。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「ふん、挨拶ぐらいは出来るか。」

 

ぶっきらぼうに言う千冬。

仕事や勉強以外、例えば多少の家事とか簡単なお使いとかすら壊滅的に出来ないアンタに言われたかないと密かに思うケイタだった。

 

「網島、今私に対して物凄く失礼な事を考えたな?」

 

「はっはっはっはっはっ!」

 

「笑って誤魔化すな。」

 

千冬がよく酔った時にする笑いに似てるなと思った真耶がこの後アイアンクローをくらう羽目になったのは完全に余談だ。

 

「それじゃあ皆さんお部屋の方にどうぞ。

海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますからそちらをご利用になってくださいな。

何か分からない事があればいつでも従業員に訊いてくださいね。」

 

ハーイ!と一同元気な返事をするとすぐさま旅館へ向かう。

まずは荷物を置いてからと言う分けだろう。

 

「そう言えば俺たちの部屋ってどこなんですか?

しおりには一切載ってませんでしたけど。」

 

「織斑と網島は私と同室でお前は山田先生とだ。」

 

なるほど、人気ツートップの2人(新聞部調べ)の2人を雌恐竜と同じ檻に放り込んでおけばミーハー女子共も迂闊に近づけないという訳か。

心底納得といった感じで蓮は大きく頷いた。

 

「アキヤマ、貴様今私に対してとてつもなく失礼なことを考えたな?」

 

「まさか、そんなこと考えようものなら世界最強の拷問まっしぐらじゃないですか。」

 

蓮は至極真面目な顔で抜け抜けと嘘をついた。

まあ、拷問訓練で受けたポリー・ナポリターノ(クソバイオンナ)発案のR-18 Hな拷問とは悪い意味で180度異なる地獄を想像して戦慄するのは事実だが。

 

一応納得した千冬は引き下がる。

そして5人はそれぞれの部屋に向かった。

教員室、と書かれた貼り紙の付いたドアを開けた千冬に続いて部屋に入るケイタと三春。

 

「へぇ…3人部屋にしちゃ広いな。」

 

「おおー!窓もデカくて海見えるじゃん!

さっき見たバスタブもまあまあ大きかったし!」

 

はしゃぐ三春とそれ程でもないけどいつもよりテンション高めなケイタ。

やはり旅とは人を童心に返すのかな?なんて思いながら千冬は精一杯威厳のある声で

 

「一応、露天風呂も使えるがお前達は時間交代制だ。

本来なら男女別になっているが、何せ一学年全員だ。

お前ら3人のために他全員に窮屈な思いをさせる訳にはいかないからな。

早朝、深夜に入りたかったら部屋のを使え。」

 

「はーい。」

 

「了解でーす。」

 

と返事をして三春と千冬は着替えるために別館へ向かう。

 

「ケイタは海行かないのか?」

 

「行くけど蓮達と連絡してから。

昼飯一緒に食べようと思ってて。」

 

そう言ってメールを打つ振りをしながら2人が出ていくのを見送るとケイタはポケットからドラゴンのデッキを取り出す。

 

「まさかお前が来るとはな。」

 

大きな窓には反射したケイタの鏡像ではなくボルキャンサーが、かつて戦った仮面ライダーインサイザーが契約していたのと全く同じビーストが写っていた。

 

『海が近いし居てもおかしく無いが、

嫌な縁を感じるな。』

 

「ライダーの亡霊ってか?

幽霊はよく彼岸を跨いだ先にいるって言うけど」

 

Vバックルを出現させてポーズをとる。

 

「鏡面に出てくるなら俺が倒せる!

カメンライダー!」

 

ドラゴンナイトに変身してケイタは鏡にダイブした。

 

 

 

2

その頃着替えを終えた蓮と真耶は浜に向かっていた。

 

「いや〜楽しみですね海!」

 

少ない自由時間を満喫しちゃいますよ!

と楽しむ気満々な真耶。

 

「こんな時ぐらいアドベントビースト共やゼイビアックス達には出てきて欲しく無いもんですね。」

 

なんて言いながら歩いていると出口で誰かが止まっている。

 

「? 織斑に篠ノ之?」

 

「2人共どうしたんですか?」

 

「あ、先生に蓮。」

 

「馴れ馴れしくファーストネームで呼ぶな。

で、なんかあったのか?」

 

「実はあれが…。」

 

三春と箒が指差す先には「引っ張ってください」と貼り紙の付いたウサミミが…そうゆう喫茶店とかでメイドさんが付けてるアレだ。…が生えて?いた。

 

「これは、アレか?『押すなよ?絶対に押すなよ?』って言ってるけど熱湯に突き落とさなきゃダメ的なアレか?」

 

「さぁ?…箒はどう思う?」

 

「知らん。私は先に行くぞ。」

 

心底不機嫌と言った感じで、

箒は浜の方に去って行った。

 

「ウサミミ、篠ノ之が不機嫌…いや、まさか。」

 

「どうしましたアキヤマ君?」

 

「なんか分かったのか?」

 

「いや、最悪のパターンが想像出来ただけで」

 

そこまで言ったところでキィィィン!と何かが高速で空から来る音が聞こえて来た。

 

「なんだあれ!?ミサイル?」

 

「運ばれてくる新武装、にしては1日早いですね。」

 

「…織斑、お前のISには遠距離装備や防御装備がなかったよな?」

 

「そうだけどどうした?」

 

「山田先生を守れ。

俺のサムライエッジで出来るか分からんが、

アレの軌道をそらす。」

 

「何言ってんだよそしたらお前が!」

 

「俺には最悪覇止がある!

だけど俺たちより後ろにいる奴らは全員生身だ!」

 

そう言ってやると少し渋ったが白式を展開して真耶を庇う。

蓮も黒翔改とサムライエッジliv004を展開する。

 

『レン様、いくらシーカーで補助できるとはいえ、

然るべき距離までに全弾当てなければキツイですよ?』

 

「だけどやらないって選択肢は無いだろ?」

 

そう言って照準を合わせるが

 

「行くぞ簪!」

 

「ok」

 

背後からISを展開して、それぞれ機関砲とスピーシー・プランターを構えた簪とロランが飛び出し、同じタイミングで飛来するミサイル型の何かに大量の弾丸を浴びせて粉砕した。

 

Awesome(すばらしいな) 息ピッタリじゃ無いか。」

 

蓮が呟き終えると煙が晴れてその中からパラシュートで、ピンク髪の背の高いグラマラスな女性が降りて来た。

 

「いやー、やっぱミサイル型で飛んで来たのが失敗だったね!今度からニンジン型ので飛んでこよう!」

 

「いや普通に飛行機使えや。」

 

サムライエッジを収納した蓮のツッコミを無視しながら女は三春の方を向き

 

「久しぶりだねみっくん!」

 

「お久しぶりです束さん。」

 

やっぱりか、と思いながら蓮は頭を抱えた。

 

「ところで箒ちゃんはどこかな?」

 

「さあ?さっきどっか行っちゃいましたけど。」

 

「ふーん。ま、いっか。

この束さん謹製の箒ちゃん探知機が有れば一発だからね!

じゃ、また後で〜!」

 

地面に刺さりっぱなしだったウサミミを引っこ抜いて頭につけると文字通り脱兎の如く走り去って行った。

 

「えっと、織斑君、あの人知り合いですか?」

 

簪とロランが降りて来た所でようやく口が聞けるようになった真耶が尋ねた。

 

「あの人が束さんですよ。箒の姉の。」

 

「「「えっ?」」」

 

「あの妹とは似ても似つかないハイテンション女がか?」

 

遠い目をしながら呟く蓮。

 

「昔からあんな感じだし…。」

 

「ミサイルに乗って飛んで来るような人が?」

 

恐る恐る尋ねる簪。

 

「まあ、あの人ならやりかねないし、実際やったし。」

 

「あの3ヶ月ぐらいハロウィンを先取りしてる人が?」

 

こめかみを抑えながらロランが絞り出すように言う。

 

「ハロウィン?ああ、確かにあのエプロンドレスにウサミミって1人不思議の国のアリスだな。

確か最後にあった時は甲冑着て背中に日本一って書いた旗とギジの羽に犬耳と尻尾つけてバナナ食べてたような気が」

 

「1人桃太郎?」

 

「多分。」

 

因みに当人とごく一握りの人間しか知らないが、

先月は1人ヘンゼルとグレーテルだった。

 

「あれが…あの人がISの開発者で今世界中が血眼になって探している篠ノ之束博士なんですか?」

 

「そうです。」

 

三春が断言すると、よく分からないがどっと疲れが出て来た。

 

「どうしましょうか?」

 

「どうしようもないでしょ?

あの口振りから篠ノ之束が用があるのは妹だけ見たいですし。

ただ、さっきあの女、去り際にまたねって言いましたよね?」

 

あ…。と固まる一同。

 

「…一波乱どころかニ波乱も三波乱もありそうです…。」

 

頭を抱える真耶の台詞に4人は何故か空を見上げたくなった。

 

蒼穹は曇りない。

けど稀代の天災を前に彼らの行く末は真っ黒だった。

 

 

 

3

<STRIKE VENT>

 

「ハァ!」

 

ドラグクローがボルキャンサーのガラ空きになったボディに火球をゼロ距離で叩き込む。

 

「こいつでトドメだ!」

 

新たなカードをバイザーにベントイン!

 

<FINAL VENT>

 

飛来したドラグレッダーと共に飛び上がり炎に乗って蹴りを放つ!

 

「はぁああああ…はっ!だぁあああー!」

 

「███▅▅▃▄▅▅▅▅▃▃▄▅━━━!」

 

土手っ腹を貫き背後で爆裂音と爆風を感じながら着地、

ドラゴンライダーキックの勝利だ!

 

『敵影なし、君の勝利だ。』

 

「うっし、じゃ着替えて海行くか!」

 

『だな。』

 

アーマーを解除しながら地球側に戻り、

事前にまとめておいた荷物を持って別館に向かう。

 

『私は海水に浸かると駄目だが、

泳ぐというのは気分の良いものなのか?』

 

「俺はあんま得意じゃないけど、まあね。

けど今回の目的はそれじゃない。」

 

『?』

 

ケイタは素早く着替えてベンタラ経由で海の家の直ぐそばに出る。

 

『ほお、流石IS学園御用達、

海の家一つとってもなかなか豪華じゃないか。』

 

「ああ、だからああゆうのもおいてあるのさ!」

 

そう言ってケイタが指差す先には

 

『期間限定!イチゴデラックスチョコかき氷!』

 

と書かれた貼り紙がある。

 

《そう言えばケイタは無類の氷菓好きだったな。》

 

「それではいざ実食!」

 

レジでお釣りが出ないように金を払い、

外側の4人席に1人腰掛け、浜で遊ぶ級友たちを眺める。

 

「キャー!千冬様の水着!千冬様の水着よー!」

 

「へぇー、ボーデヴィッヒさん中々攻めるね。」

 

「い、いやこれはクラリッサに……。」

 

「えー!ティナそれは露出多すぎじゃない!?」

 

「そう?普通だと思うけど。」

 

ラウラも無事馴染めたようで何よりだ。

 

『織斑一夏達も馴染んでるようだな。』

 

セブンに言われてみると同じクラスの谷本や相川達とビーチバレーに興じている。

 

「ふっふっふ、7月のサマーデビルと呼ばれたこの私の実力を見よ!」

 

谷本のサーブから始まる。

 

チーム分けとしては一夏、千夜、谷本対海之、心愛、相川といった感じだ。

 

「任せて皆!くらいりゃ!」

 

飛び上がってボールをキャッチした心愛が谷本の顔面にボールを叩きこんだ。

 

「ぶふ!…む、無念。」

 

「 ヴェアアアアアアアア!癒子ちゃーん!」

 

「ちょ!保登さん両手は駄目だよ!」

 

「ドッチボールじゃないんだから!」

 

「う、陽光の邪気が……」

 

「お前は体力なさ過ぎだ千夜!」

 

もう既にビーチバレーどころの騒ぎじゃなくなっている。

 

「今日も平和だな。」

 

『平和…なのか?』

 

セブンが疑わしげに言ったタイミングでケイタの元にイチゴデラックスチョコかき氷が運ばれて来た。

 

氷と共に凍らせた苺とチョコが削られたものの上にたっぷりのチョコソースと苺にポッ●ーを挿した贅沢な一品だ。

 

「んん〜美味。苺にチョコだけでも充分ベストマッチだけどそれがかき氷まで合わされば正にハザード級!」

 

『青いクワガタが死にそうな食レポだな。』

 

2口目を口に運ぼうとすると

 

「お前、見てるだけで胃もたれしそうなの食ってるな。」

 

「あ、蓮に簪さんにロランツィーネさん。

どったの皆疲れた顔して。」

 

「実は…」

 

「カクカクシカジガ」

 

「これこれしかじか」

 

『と、いう訳なのです。』

 

「篠ノ之博士がここに、か。」

 

「妹に用があるだけなら別に臨海学校じゃなくても平日には間違いなく居る学園の方に尋ねた方が確実だ。

だからわざわざこんな所に自ら出向いてくるってことは」

 

「何かを企んでるとしか思えないってこと?」

 

「そう、それにもし妹経由でこれが知られたら大変。」

 

そう言って羽織っていたパーカーのポケットからアックスのデッキを見せる簪。

 

「下手したらサバイブのカードを使う羽目になる。」

 

「サバイブって、確かどんな効果かわからないんだったな。」

 

ある程度ここに来るまでに蓮や簪から聞いていたらしいロランが腕を組んで唸る。

 

「…やはり使わない方が、

いやいっそライダーに変身しないっていうのはどうだろうか?」

 

「確かにあの篠ノ之束(バカウサギ)に新しい玩具を渡すのは避けたいが、

だからと言って俺たちは契約ビーストに餌をやらなきゃ自分のエネルギーを持ってかれるし、

誰か1人が他の奴らの分を肩代わり出来るわけでもないし、

少なくともケイタや簪は目の前で誰かがビーストに襲われていたらほっとかない程度に善人だからな。」

 

「違いない。」

 

そう言ってからかうような笑みを浮かべる蓮とロラン。

 

『褒めてるのやら貶してるのやら。』

 

『多分両方ですね。』

 

「悪かったな善人で。」

 

「でもやっぱりそうなってたら、助ける。」

 

2人の目に迷いはない。

ケイタはかつて憧れた仮面ライダーW(まちのヒーロー)

簪は自分の背中を押してくれた仲間と幼馴染の少年(はつこいのひと)に誓ったからだ。

 

「なら、篠ノ之束が何を仕掛けてこようと戦うだけだな。」

 

蓮が拳を出す。それを見て、

残りの3人と2機のフォンブレイバーも同じようにする。

 

「ベンタラと地球に」

 

「「「『『ベンタラと地球に!』』」」」

 

 

 

4

「さて、こいつももうガタが来たか。」

 

バチバチと火花を散らしながら黒い煙を上げるファイブだった残骸を間明は特に執着なく放り捨てた。

 

(これで他のデッキのカードも使える。)

 

回収していたトラストのデッキからカードを引き抜く。

5枚全てをデッキに入れてからアタックベントのカードだけを取り出し、鏡に構える。

 

実験は成功。メタルゲラスは間明の、

ストライクのデッキからのエネルギーで顕現した。

 

「ドリュー君を花月荘まで追い詰めろ。」

 

そう言って先にメタルゲラスを向かわせると間明も自身のバイクに跨り、花月荘に向かった。




ケイタ「おいおい篠ノ之博士だけでも大変なのに間明もかよ。」
心愛「休む暇なしだね。」
サード『しかしお忘れない様に、我々にはまだ、まだ見ぬケイタ様の打鉄赤龍改があります!』
ゼロワン『次回、the Heat その3』
セブン『赤龍改降臨、満を辞して!』
心愛「またのご来店、お待ちしてます!」
(ED spinnin' around 仮面ライダー龍騎)


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the Heat その3

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」
ゼロワン『ついにあの原作で最も掴み所の無くて油断ならない篠ノ之束が登場したな。』
ラウラ「おまけにマギラといったか?あの男まで何か仕掛けてくるつもりらしいぞ?」
ケイタ「全く油断ならない敵ばかりで困ったもんだぜ。さてさてどうなる?」
(op STRAIGHT JET インフィニットストラトス)


1

夜、ようやく入浴時間になったケイタと蓮は露天風呂にいた。

 

「あ〜生き返る。」

 

「たまには温泉も良いもんだな。」

 

満点の星空を見上げながら蓮はため息をついた。

なんだかんだ言って4月から今までIS学園でも戦いベンタラでも戦い、たまの休みにはアンカーエージェントとしてサイバー犯罪と戦い殆ど休みの無かった3ヶ月。

 

篠ノ之束の登場など毎度のことながら超ド級の厄ネタが降って湧いてきているが、思い切りリラックス出来るのは随分久しぶりだ。

 

「そう言えばさ、俺は結構蓮に昔の事とか話した気がするけど、蓮から昔の話聞いたこと無いよな。」

 

「ああ…知りたいか?」

 

「興味はある。けど話したくないなら無理に話さなくて良いよ。」

 

「……俺には父親がいない。

少なくとも1歳の時にはいなかった。

だから父方の親戚とも面識がない。

母方の親戚と会ったのも3年前に母親が死んでからだ。」

 

「!? じゃあ、お前のライダーとしての願いって……」

 

「いや、今さら父親に期待なんてして無いし、

死者蘇生を願うほど幸せな頭もしてない。

けどどうしても譲れない願いがある。」

 

もし邪魔するならお前らでも容赦しない。

そう言った蓮はどこまでも真剣だった。

 

「けど、お前らとは居て楽しいし、戦いたくない。

ま、模擬戦とかでは負ける気ないけどな。」

 

「……そっか、お前が良い奴で良かった。」

 

「そいつはどうも。」

 

「それに蓮は強いしな。やっぱり願いがあるから?」

 

「さあな。でも一個ぐらい譲れないものを持っておくのも良いかもな。

例えば織斑の『守ること』とか。」

 

「やっぱりやめるわ。」

 

「例えが悪かったな。」

 

「当たり前じゃん。だってアイツそう言って独断先行しかしなかったじゃん今まで。」

 

「それさえなけりゃそんなに悪い奴でもないんだろうにな。」

 

「俺的には昔の事あるし、

千冬さんに並んで苦手な相手だな。」

 

「そうか……。」

 

頼むからそうゆう面倒くさい奴らの面倒くさい部分を刺激する様なことが起こりません様に。2人は切に願った。

 

 

 

2

翌日、一年の専用機持ちはは指定された場所で追加武装を受け取る為に命名指定されたポイントにて待機していた。

 

これはたとえ仲間内でも完全に秘密とされ、

他はどうか確かめる術はないが

ケイタ、蓮、簪らの強化打鉄の3人はある岩礁の上で待機していた。

 

「本当にコンテナだけ来んの?」

 

「ああ、篠ノ之束は無視したが、

基本的に機密保持の為に誰も来ちゃいけないことに」

 

そこまで蓮が言ったところで簪は奇妙な物を見つけた。

何かガソリンスタンドの様なシルエットの何かがどんぶらこー、どんぶらこーと波に乗って近づいてくるのだ。

よく見ると人が乗っている。

 

「あれってまさか…」

 

「おーい!こっちだあ!」

 

海上ガソリンスタンドに乗った誰かがハンカチを振って叫んでいる。

3人はISを展開して近づいてみた。

 

「あなたは…能見副主任!」

 

ハンカチを振っていたのは強化打鉄の開発責任者の能見荘だった。

 

「いや〜どうもどうも。

あ、網島ケイタパイロットははじめましてですね。

私はアンカーUSAのIS技術筆頭副顧問にして強化打鉄計画の副主任の能見です。」

 

名刺を渡され握手を求められるケイタ。

 

「えっと…偉い人なの?」

 

「心愛の叔父が総括するIS開発部の中でも今一番メインの企画のNo.2だ。」

 

「つまり現場監督の右腕。」

 

「右腕!……ふふっ、そう!私こそが主任の右腕!」

 

驚いて頭を下げるケイタ。

まさかそんな偉い人が自ら来るとは思わなかった。

 

「で、なんで貴方がここに?」

 

「よくぞ聞いてくれました。何せ網島くん、

君の新たなIS打鉄赤龍改を組み立てるにはこのレベルの作業場と私の優秀な部下達が必要だったからだよ。」

 

「打鉄赤龍改!?」

 

「君の単一仕様発現に合わせてね。

さ、コア周り以外を全て取り替える大掛かりな作業になる!

1分1秒が惜しい!早速取り掛かりなさい!

え?IS学園に怒られないかだって?

もう織斑千冬には連絡済みです!」

 

能見がそう言うと何処からか出てきた作業員達に誘導され、

装甲やスケルトンパーツを交換されていくケイタの打鉄赤龍。

 

「さ、アキヤマくん。君にはご注文通り高速戦闘用パッケージのサムライソニック005の完成版を、更識さんには打鉄弍式改不動岩山のメイン防御装備のプロトタイプを。」

 

そう言って能見達は恐ろしい手際の良さで3人のISをあっと言う間に強化した。

 

「凄いな。武装のインストールと調整だけとは言え1時間足らずで終わっちまった。」

 

「ケイタ君の方は……」

 

そちらの方を見てみると、まだ半分といったところか。

目を閉じたケイタの周りにまだ3割くらいしか装甲のないISがある。

 

「打鉄赤龍改・臥竜鳳雛。装甲やスラスター内にマウントラッチを設置する事でISのパススロットを水増しする事により豊富な手札と圧倒的火力の両立を実現した第3.5世代型試作機です。」

 

「臥竜鳳雛、まだ現れぬ龍にまだ雛の鳳凰、か。」

 

「ええ。

貴方の打鉄黒翔改聖流降夜に打鉄弍式改不動岩山の原型。

ピッタリな名前でしょう?」

 

得意げに能見が言った時に異変が起きた。

なんと急に赤龍の周りにあった部品、

武装が次々と装着されていき、

その真っ赤で無骨な全容が露わになった。

 

専用機であることを差し引いても長く、

堅牢そうな両腕両足に西洋の龍の翼の様なスラスターウイングにアンバランスな両肩のハードポイント。

 

硬さの塊の様な印象を受ける赤龍改は背中のスラスターを起動させるとケイタが目を閉じたままにも関わらず飛び出し、海の中に潜って行った。

 

「!? おいケイタ!何があった応答しろ!

ケイタ!くそう!サード。

イニシエイト・クラック・シークエンスを発動!

赤龍改を強制停止させろ!」

 

『申し訳ありませんレン様!

赤龍改が接続を拒否。進入できません!』

 

「強行突破は?」

 

『防壁が硬すぎて無理です。

この硬さはコア2つ分の出力でも無いと不可能……は!

まさか!』

 

「ふふっ。気付きましたねサード君。

貴方の想像通り第3.5世代型とはデュアルコアによる大容量、高出力、広域殲滅を可能としたISの事ですよ。」

 

「………そっか!だから単一仕様発現で容量をくわれてもあれだけの速さと防壁を!」

 

「その通りです更識さん!

ああ、やはり主任の考えは間違っていなかった!

このままデュアルコア型の開発を続けて行けば必ず強化打鉄計画は究極の防衛を実現する!」

 

狂ってやがる。

能見にサムライエッジを向けてやりたい衝動に駆られたが、グッと堪える蓮。

 

「蓮君、追いかけよう。」

 

「分かってる。」

 

蓮は3本のトゲのようなスラスターが特徴のサムライソニック005を増設した黒翔を、

簪は4枚の試作型防御装備不動岩山を背中に増設した弍式を展開し、

コア反応を頼りにケイタを追った。

 

 

 

3

顔を撫でる心地よい風で目を覚ます。

ケイタは原っぱで仰向けに寝ていた。

 

「ここは、風都?」

 

背中についた草を払いながら立ち上がる。

柵の向こうに風都タワーとその下の街が見えた。

 

(懐かしいな、ここ確か小6の夏に一夏と花火見にきたとこだ。)

 

翔兄に教えてもらった穴場なんだよな。と昔を懐かしんでいると

 

『う、うーむ…は!ここは!?』

 

「お、起きたかセブン。」

 

『ケイタ!無事だったか…ん?

ここは、公園?何故だ?

我々はさっきまで機体の調整を受けていたはず…』

 

「え!?…………そう言えばそうだっけ?」

 

確かに改めて自分の格好を見るとISスーツ姿だ。

 

「まあ、俺が君らを無理やり呼んだからな。」

 

背後から不意に声をかけられる。

振り返るとそこにはあり得ない者がいた。

 

「ドラゴン、ナイト?なんでだ?

デッキはここにあるのに?」

 

「君達のイメージを借りさせて貰った。

本当なら俺は姿すら持てない。」

 

ドラゴンナイトの姿をした誰かは坦々と語った。

 

「俺は君達に力を授けられる。欲しいか?」

 

「力?具体的にどんな?」

 

「力は力だ。ただ力としか言いようがない。」

 

「力ねぇ…。」

 

ケイタは考えながら腕組みをした。

力、まあ貰えるなら貰ってもいいか?

と思う一方でかつて見た悪夢の様に意地悪く問いかける自分が居るのも事実だ。

 

「その力でストライクみたいな悪党を倒せたとして、

そっからお前が力を使って愉しく暴れない保証はないだろ?

悪い事は言わない。

お前が黒瑪瑙(オニキス)にならない保証はないだろ?」

 

確かに一理あると思うけど。

 

「貰っとくよ。ごちゃごちゃ考えてぐだぐだ悩んで迷って燻って、結局やりたい事やれなくて後悔を残したくない。」

 

はっきり言ってあんま俺頭良くないし、

考えるの苦手だし。と自嘲気味に笑うケイタ。

 

「その力は誰かを傷付けるとしても?」

 

「そんなこと言ったら結果的に何かを壊さない力なんて無いし、もしそうなったら死ぬまでその罪を数え続ける。

きっと翔兄やフィリップ兄に限らず、

仮面ライダーみたいな正義の味方達は、

大自然の使者達はずっとそうして来たから。

俺も振り返ってずるずる下がるより、

間違ったらそこで思い切り泣いてその後すぐに前に進むよ。」

 

「……そうか。なら戦え。戦わなければ生き残れない。」

 

そう言ってドラゴンナイトの姿をした誰かは銀色のカーテンの様な何かを出現させてケイタを送り返した。

 

「甘いな。あんな様子じゃあいつか自分自身の影に塗り潰される。」

 

ドラゴンナイトの背後からいつの間にか現れたオニキスが言った。

 

「確かに彼は周りを見てないかもしれない。

けど彼は周りに多くの仲間を持ってる。信じよう。」

 

「ふん。新参者のくせに知った様な口を。

所詮我々ISコアは道具だ。

篠ノ之束(かあさま)には逆えんし、

今回の様なことがない限り、

パイロットに話しかける事も叶わん機械だ。

網島ケイタとセブンの様な関係にはなれん。」

 

「だからこそ、俺は今彼の考えが聞けて良かった。」

 

「ふん。物好きめ。」

 

 

 

4

時間を少し巻き戻し、一夏達は準備が終わった者から早速テストする追加装備をインストールしていた。

 

「一夏。」

 

「? どったの箒?」

 

「いや、さっき姉さんからおかしなメールが来てな。」

 

「メール?」

 

箒のケータイを覗き込む。

 

 

差出人 姉さん

 

件名 愛しのらぶりぃ箒ちゃんへ!

============

ちょっと早いけどはっぴーはっぴーbirthday!

素敵で可愛い箒ちゃんには

らぶりぃ束さんからとっても素敵な

お誕生日プレゼントがあるよ!

ついでにみっくんといっちゃんにもね!

次回!降臨束さん!お見逃しなく!

============

 

「うん……凄く束さんらしいメールだね。」

 

「まあな。ただこのプレゼントというのがどうも不吉で。」

 

「確かに束さんなら地球破壊爆弾とか平気で作れそうだし。」

 

「今のは平気と地球破壊爆弾(へいき)をかけたヒジョーに面白いギャグだね!」

 

「「はい!一夏じゃナイカー!」」

 

「……何を言ってるんだ一夏?」

 

「何って一夏ちゃんの持ちネタ「雰囲気でのっちゃったけど別にさっきのギャグじゃないし、一夏じゃナイカー!って言い出したの心愛ちゃんだからね?」

 

そんなふうに話が脱線し始めると、

陸の方から何かが、土煙を上げながら突っ込んで来た。

 

「ちーちゃん!ぐぶう!」

 

千冬は一切躊躇いなく、持っていた情報端末、

スマートブレイン社製の最新モデルだ、

を顔面にめり込ませた。

 

「束。」

 

「相変わらず容赦ないねぇ、

そんな事よりさあハグしよう!再開を喜び合おう!」

 

「それより先に挨拶ぐらいしろ。

生徒達が困惑している。」

 

「えー、めんどくさ。

私が超天才の束さんだよー、ハロー☆」

 

投げやりに言うと束は再び千冬に抱きつこうとしたが、

千冬の閃光の様なジャブを炸裂される。

 

「えぇ…あの人がISを作った篠ノ之博士?」

 

「なんかイメージと違うね。」

 

「天才となんとかは紙一重って言うけど……。」

 

周りの生徒が囁き合う。

まあ、多くの人間が抱くイメージとはだいぶ離れた人間だろう。

 

「こらお前達手が止まっているぞ。

この変人は無視して早く作業を続けろ。」

 

しかしそのざわめきも千冬の一括ですぐに作業に戻る。

 

「むう…冷たいなあちーちゃんは。」

 

「昔からこんなもんだ。

で?なんでわざわざこんな所に来た?」

 

「よくぞ聴いてくれました!

本日は箒ちゃんといっちゃんにサプライズプレゼントがあるのですよ!」

 

パチン!束が指を鳴らすと空から二つのISが降りて来た。

 

「箒ちゃんといっちゃんの為に束さんがコアから丹精込めて作った箒ちゃん専用機の紅椿(あかつばき)といっちゃん専用機の黒法(こくほう)だよ!」

 

紅椿に黒法。

その名の通り、光を反射する紅いボディが美しい、

光を吸い込む黒緑色のボディが見る者に不安与える機体だった。

 

「どちらも現行最強の第4世代型だよ!」

 

「第4世代型!?」

 

代表候補生の何人かが素っ頓狂な声を上げる。

 

「そう!第4世代型、つまり展開装甲の自動支援プログラムによるエネルギーソード、エネルギーシールド、

スラスターへの切り替えと独立した稼動が可能!

ま、ぶっちゃけ最強の ISだね!」

 

「でも、一夏の黒法は三春の奴の白式と同じじゃない!」

 

「よく気付いたね中国人の貧乳チビ!」

 

「なんだとこの駄肉があ!」

 

暴れだす鈴音を押さえ付けるシャルロットとセシリア。

 

「貴様らぁ!離せえ!なぜアイツの肩を持つぅ!

肉か!お前らもアイツ程じゃないにしてもぶら下げてるからかぁ!」

 

「鈴さん落ち着いてくださいまし!」

 

「今暴れたって仕方ないじゃん!」

 

フーッ!フーッ!と怒った猫みたいな声を出しながらもなんとか落ち着いた鈴音。

 

「ふん!外人って野蛮で嫌だね。

やっぱり日本人だよ、箒ちゃんとちーちゃんといっちゃんとみっくん限定だけど!」

 

(な! し、篠ノ之博士!?

そんな発言をしては4月の時のわたくしの様に!)

 

一年達の中で海外から来てる者たちから鋭い視線が注がれる。

 

「束、そこら辺にしておけ。

で、そんな最強のISをこのガキ共に与えて何がしたい?」

 

「なんでもいいじゃん?ちーちゃんも楽しいでしょ?

ささ、もう2人のデータはもう入力済みだからさっさとフィッティングと一次移行済ませちゃおっか!」

 

束がそう言うとガシャン!

と二機のISが開いて、人を受け入れる様に跪いた。

 

「乗れば、いいんですよね?」

 

「ん? そうだよー!」

 

先程からずっと食い入る様に黒法を見つめていた一夏がすっ、と手を伸ばしその黒緑色の装甲を撫でる。

 

次の瞬間、一瞬で機体のボディカラーがディストーションブラックに変色し、白式と全く同じだったシルエットが打鉄黒翔を思わせるスマートな物に、スラスターは打鉄赤龍によく似た形に変身して、一夏に纏わり付いた。

 

「凄い……わぁ……」

 

まるで小さな光を愛でる幼子の様に愛おしそうに機体を撫でる一夏。

 

「い、一夏ちゃん大丈夫!」

 

「え? あ、うん。」

 

目に生気が戻り、改めて身体に着いた機体に驚く一夏。

 

「良かった…さっきまで一夏ちゃんなんか変だったよ?」

 

本気で心配していたのか少し涙目な心愛。

 

「そんなに、変だった。」

 

「うん。なんか目が死んでたわよ?」

 

難しい顔をしたまま一夏を見上げて鈴音が言う。

 

「まるでデュランダルに魅せられたマンドリカルドみたいだったよ?」

 

フランス人特有の例えをするシャルロット。

 

「もちろん!束さんのISは絶世の名剣なんかよりも100億光倍スーパーなんだから!」

 

そして物凄く得意げな束。

 

「そう…なんだ。」

 

確かにそれだけ言われてもこの機体を今すぐ脱ぎ捨てようとか思わないし、何か魔力めいた物を感じる。

 

『一夏、そろそろ降りろ。この機体、ただのISじゃない。』

 

ゼロワンも機体にアクセスして言う。

 

「あ、待っていっちゃん!

降りるんだったら唯一の装備の夜桜を確認してからにして!」

 

「夜桜?」

 

『近接ブレードとだけ有るが?』

 

「ならいっか。」

 

少し警戒しながらもケイタや蓮達がカードを使って武器やビーストを召喚してる姿をイメージするとすぐに夜桜は現れた。

 

「うわぁ………。」

 

そして一目見た瞬間一夏の警戒とか反省とかは吹っ飛んだ。

 

(綺麗な刀…鋭くて、光って、

刃紋も素晴らしい。これが、血塗れになったら…)

 

もっと綺麗だろうな。

糸車の針に指を伸ばす眠り姫の様にその刀身を狂おしそうに撫でる一夏。

 

「ッ!……停止結界!」

 

流石にまずいと感じたラウラはシュヴァルツェア・レーゲンのAICを発動する。

 

「離してラウラ。」

 

「お前がISを解除したらな。」

 

「嫌だよ!だって見て夜桜を!こんなに綺麗。

けどまだ足りない。彩が足りないの。

夜桜が真っ赤血を吸いたがってるの!」

 

ゆらり、恍惚とした表情のまま一夏は強引に停止結界を切り裂いた。

 

「な!?」

 

「まずは、ラウラ!」

 

一瞬で距離を詰めた一夏の夜桜の刃がラウラの喉元の皮一枚に食い込む。

 

(なんて迷いのない!)

 

そのまま肉を裂かれ、骨を絶たれ、

反対側の皮も切られ、視界が逆さになって遅れて血飛沫が舞う。

 

そうなる前にセシリアのビットが一夏に体当たりしてラウラを救い出した。

 

「ラウラさん!しかりなさって!」

 

「あ、ああ!」

 

直ぐに遠距離装備を構える2人、

その間にロランと鈴音がそれぞれレイピア・カウスと双天牙月を装備して前に出る。

 

「一夏!悪いけどちょっと痛い目見て貰うわよ!」

 

「レディに手をあげる趣味はないが、

今回ばかりは緊急事態だ。平にご容赦を。」

 

「鈴にロラン…。だったら安心して。

2人の後に達郎と簪さんも切ってあげるから。

そしたら皆一緒だよ?」

 

「な!あ、アンタこんな時に何言って!」

 

「生憎、そういった趣味はない!」

 

(BGM 神崎士郎 仮面ライダー龍騎)

 

戦場は海上に変わった。

銃弾の雨が降り注ぐ中、一夏は夜桜を1本にも関わらず不可視の砲弾と双天牙月を巧みに織り交ぜ攻めたてる鈴音と変則的に武器を遠近に切り替えるロランと互角の勝負を演じた。

 

(一夏アンタ強すぎでしょ!)

 

(こちらを殺す気できてるとは言えこれ程とは!)

 

鈴音とロラン武器を合わせる度に伝わる殺気に

 

(ライフルもビットも擦りもしないなんて!)

 

(嘘でしょ!?前戦った時は全然本気じゃなかったってこと?)

 

(馬鹿な!5対1で今年の一年でほぼ完璧な布陣なんだぞ?)

 

セシリア、シャルロット、ラウラは今まで片鱗すら見せなかった筈の神技に恐怖した。

 

「流石に、キツいね!ゼロワン!

ハイシーカー着身。視覚補助を。」

 

『断る一夏。今のお前は普通じゃない!』

 

「チッ ゼロワン。私、素直じゃない子って嫌い。」

 

一夏がそう言った瞬間、

黒法にアクセスしていた筈のゼロワンが逆に黒法にアクセスされる。

 

『うがぁ!…こ、これは?俺のラムダ(こころ)に侵ってくるぅ!

機体コード黒法…単一仕様、満壊極夜(まんかいきょくや)だと?』

 

これは不味い。

そう直感したゼロワンは最後に残った意識で黒法に対峙する5機のISにデータを送った。

 

「メール?こんな時に誰よ?」

 

「黒法から…一夏さんからですわ!」

 

「これって黒法のデータ?」

 

「!? 単一仕様を発現してるだと!

まだ一次移行したばかりなのに?」

 

「いや、織斑三春の白式の同型機なら有り得なく無い!来るぞ!」

 

シュン!横一線に放たれる夜桜を連結させた双天牙月で受ける鈴音。

 

バッシュン!と聞いた事の無い音を立てながら双天牙月の攻撃を受けた部分が()()()()()

 

「な!」

 

「あは♪」

 

即座に追撃しようとする一夏。

ロランはギリギリで鈴音を掴むと

なんとか狙撃部隊の後ろまで下がった。

 

2人は直ぐ様龍咆とスピーシー・プランターを構え、加勢する。

 

「何よさっきの!ケイタの逆鱗閃甲みたいな純粋な武器強化でああはならないわよ!三春の奴の零落白夜みたいな防御無視!?」

 

「だったら君の武器の一部が消えた理由が分からん!

あれは、満壊極夜は私達の知るどんな単一仕様より恐ろしい何かだ!」

 

よく見ればさっきまでは夜桜で弾いていた筈の弾丸を全て刃で受けて()()()()()

 

「だけど流石にあたしの衝撃砲は避けてるわね。」

 

「なら活路はある!」

 

フォーメーションを変えようとするが

 

「待て!11時の方向にISコア反応が4つ!

こっちに真っ直ぐ向かってくるぞ!」

 

「4つ?姿は見えないってことは海の中?誰か分かる?」

 

「レンさんに簪さんにケイタさん、

後の1つはケイタさんと一緒にきますわ!」

 

「早いな。高速戦用パッケージを積んでるのか?」

 

「後5秒で接触!来るよ!」

 

5人と一夏の間の水面が膨らんだと思うと、

飛び出した3つの水球が弾けて、

中から3機の強化打鉄が現れた。

 

「!? どうゆうこと?3機しかいないじゃない?」

 

「赤龍の走行が全然違う…まさかデュアルコア型に改修したの!?」

 

皆が驚く間にケイタは、打鉄赤龍改は膝よりも下にある拳のナックルガードを展開し、逆鱗閃甲を纏わせる。

 

「お前らぁ!」

 

そしてその爬虫類の様に長い腕が前に出ていた鈴音とロランのはらめりこわ腹にめり込んだ。

 

「ガァ!」

 

「な、なぜ?」

 

「ふん!」

 

そして返す刀ならぬ返す拳で2人の後頭部を叩き伏せて海に落とした。

 

「な、何をしますの!?」

 

「黙れ。」

 

セシリアの顔面に蓮の容赦のないヤクザキックが、

簪に武器を弾かれガラ空きになったシャルロットの腹に横蹴りが喰らわされる。

 

そして残ったラウラも2人が同時に放ったサマーソルトキックで海に蹴り落とされた。

 

「ぷは!いきなり何すんのよ!」

 

「こっちの台詞!」

 

「お前ら代表候補5人がかりで一夏をリンチとか何考えてんだ!」

 

珍しく本気でブチ切れる蓮と簪。

その剣幕と言ったらまあ怖いこと。

 

確かにはたから見たら5対1でどっちが悪者かと言われたら5人の方だが。

 

「一夏大丈夫か?」

 

「い!…け、ケイタ……」

 

見られた。と一夏は思った。ケイタに全部見られた。

自分の中にあった汚くて、この機体みたいな真っ黒な部分を全部見られた。

 

「わ、わた、し…わたしは……う、うわぁ…」

 

もうここに居られない。自分はここに居てはいけない。

自分はいつか必ずこの両手と夜桜を真っ赤に染める咎人だ。

逃げよう。消えよう。そう思って思い切り飛び立とうとした時

 

「待て一夏!無理すんなよ」

 

赤龍の長い腕を解除してケイタの腕が直に一夏の夜桜を持っていない方の手を取る。

「なんで?」

 

「? なんでって、

目の前に苦しくて泣きそうな女の子がいるんだぞ。

止めない訳にはいかねえよ。」

 

それにお前なら尚更だ。少し照れ臭そうにケイタが言った瞬間、一夏は夜桜を手放してケイタに抱きついていた。そして泣いていた。

 

「えっと、えっと…よしよし大丈夫、

大丈夫だから。俺も皆もついてるから。」

 

そう言って有りったけの語彙を駆使して一夏を慰めた。

 

《う…うん……一体何が…!?

近い。近いぞ網島ケイタ。一夏と密着している!

だが、今回は許してやる。》

 

一夏が夜桜を手放したせいかようやく目覚めたゼロワン。

 

目覚めたばかりで状況も分からず充電(ちから)もあまり残っていないが、今は黙るべきだと判断して2人を見守った。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
ラウラ「蹴られた頭が痛い。」
ゼロワン『お互い災難だったな。」
ケイタ「ま、兎に角一件落着かな?」
ラウラ「いや、そうも言ってられないぞ。次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」
千冬「銀の福音だと!?」
真耶「チャンスは一度きりです。」
セシリア「つまり一撃必殺でなくてはならないと?」
蓮「零落白夜か……満壊極夜かって事か。」
一夏「また、黒法に乗るの?」
ケイタ「俺、何もできないのか?」
簪「そんな事ない。」
心愛(皆…無事でいて。)
ゼロワン『次回、the Heat その4』
ラウラ「さあ、ショータイムだ!」
(ED SUPER∞STREAM インフィニットストラトス)


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theHeat その4

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは、篠ノ之博士が新しいISを持ってきたとこまでだっけ?」
心愛「あとケイタ君の打鉄赤龍改もね!」
一夏「それから黒法に乗った私は皆に…襲いかかって!」
蓮「大丈夫だ!誰も怪我してないだろ!」
ケイタ「色々と不安、不穏な感じですが、さてさてどうなる?」
(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

泣き疲れて眠ってしまった一夏を抱えながら

ケイタは旅館の方を目指して飛んだ。

 

「これって早く飛んだ方がいいの?」

 

「いや、そのままでいなさい。

あんまりスピード出し過ぎると一夏に負担がかかるわ。」

 

「了解。」

 

しかしISを鎧った人間はまあまあ重いな。

なんて呑気に思うケイタ。

 

しかし一夏の暴走を目の当たりにした5人はそうはいかない。

もしまた同じ様なことがあれば、

初めから満壊極夜を使ってくる様なことがあれば勝てる自信はハッキリ言ってない。

 

可能性があるとすれば新たな装備を持って来た強化打鉄達だけだ。

 

「ところでアキヤマ少佐、

あなたはどの様な武器を受け取って来たのですか?」

 

「高速戦用のサムライソニックと近接装備をサムライソードに変えて来たぐらいだ。」

 

「ということはまさか覇止を」

 

「置いて来たよ。パススロットがギリギリだからな。」

 

「簪、君はどんな装備を?」

 

「弍式改に搭載する予定の防御パッケージの試作機。」

 

そう言って背中についた4枚の羽の様なパーツを指す。

 

「どんなふうに使うんだい?」

 

「2枚以上展開してエネルギーをスクリーン状に展開して攻撃を弾く。」

 

「ほお、そのバリアに山嵐が加われば正に敵無しだな。」

 

そして一番気になるのはケイタの打鉄赤龍改・臥竜鳳雛だ。

 

「ケイタのは、ガラッと変わったよね。」

 

「今まで見たどんなISよりもゴツゴツしていて大型でアンバランスですわね。」

 

「武装は何が?」

 

「さあ?まだ全部見てないけど。」

 

「アンタ全部見てないのに飛び出して来たの?」

 

「多分ケイタの意思じゃない。」

 

真面目な顔で簪が言う。

 

「はあ?簪アンタ何言ってるの?ISが勝手に動くわけ…」

 

笑い飛ばそうとした鈴音だったが、

一夏に勝手に黒法が纏わりついたのを思い出す。

 

「まさかケイタのも…」

 

「何故か勝手に部品がくっついて、海に潜っていた。

高速戦用のパッケージは積み終わってたから慌てて追いかけたら、

いつの間にか正気に戻ってた。」

 

もし赤龍改も黒法みたいに暴走してたかと思うと背筋が凍るよ。

笑うしかないという感じで笑う蓮。

 

「でケイタ。もしお前が暴れてたらどんな武装で俺たちを海の藻屑に変えてたんだ?」

 

「嫌な言い方するなよ蓮。

えーっと、確かマウントラッチについてる武装が多いからパススロットの方は2つしかないな。

IS用ブーストフォンのスピーカーに…クアッド・ファランクス改?」

 

「「「クアッド・ファランクス改!?」」」

 

候補生達から驚愕の声が上がる。

 

「そんな凄いの?」

 

「凄いも何も本来ISの機動性をゼロにする代わりに最強の火力を得られる砲台装備だよ?」

 

「幾ら武器をマウントラッチにつけたってとても装備出来るような代物じゃないぞ!?」

 

そんなに凄いのか?とかなんとか持ち上げといてトルクのラーンチベントぐらいじゃないの?

試しに展開させてみる。

両肩のハードポイントに黒鉄色の巨大マシンガンが装備される。

 

「な!ケイタ!?今出さなくていいの!」

 

「(なーんだただのラーンチベントじゃん。)ああ。」

 

直ぐに閉まって他の武器の確認に移る。

 

「えーっと、背中のマウントラッチににミサイルポット付きライフル龍炎(りゅうえん)に近接ブレードの葵改・鳳羽(ほうう)が二本。

後は腕部装甲内にコンバットナイフの凰爪(おうしょう)が左右に一本ずつ、両膝の装甲内にハンドガンの龍火(りゅうび)が二丁ずつ。か。」

 

「確かに随分と盛り沢山な装備だな。」

 

「ケイタ覚えきれそう?」

 

「まあ多分(セブン手伝ってくれるよな?)」

 

《まあ、それもバディの役目だからな。

だが自分で覚える努力もして貰うぞ?》

 

(りょーかい。)

 

そんな風に話してると沖が見えてきた。

 

「あ!戻って来たぞ!」

 

真っ先に気付いた海之が大きく手を振っている。

ケイタも空いてる方の手を振り返した。

そして、順番に着地していく。

 

「一夏!」

 

真っ先に駆け寄って来たのは千冬だった。

 

「一夏!一夏大丈夫か!?」

 

「大丈夫ですよ千冬さん。寝てるだけっぽいんで。」

 

「そうか……そうか…良かった………礼を言うぞ網島。」

 

一夏が無事とわかるや否やすぐに教師モードに戻る千冬。

もう少し余韻に浸ってもいいだろうに。

 

「お前達も怪我などないか?」

 

「あんだけ激しい戦闘でしたけど、

双天牙月が壊れたぐらいしか。」

 

「そうか。無事で何よりだ。」

 

本人はいつも通りの表情で言ったつもりかもしれないが頬が若干緩んでる。

 

「なーんだ詰まんないの。

もっとお前らがちゃんと倒されてくれれば黒法といっちゃんの凄さが証明できたのにな〜。」

 

至極詰まんないと言う様に束は足をブラブラさせながら欠伸を噛み殺した。

 

「な! 姉さん本気で言ってるのか?

危うく一夏が人殺しになりかけたんだぞ!」

 

「本気も本気だよ。

別にいっちゃんにみっくんにちーちゃんに箒ちゃんが無事ならそれ以外の事なんて部屋の隅に溜まる埃よりどうでもいいよ。」

 

さも当然のように言う束に戦慄して絶句する一同。

 

しかし動けた者が2人だけいた。ケイタと蓮だ。

 

「災いだ、恵みの業を行わず自分の宮殿を

正義を行わずに高殿を建て

同胞をただで働かせ賃金を払わない者は。」

 

「何それユダヤ教?」

 

「エレミヤ書22章13節。

お前の為にあるような聖句だ。」

 

「だから何?お前に束さんが裁けるわけ?」

 

「いや、だが。」

 

蓮がそこまで言った所で束の頭が真っ赤なISの脚に掴まれる。

 

「仮に世界が許しても、赤龍改が赦すかな?」

 

そのまま束の世界が270度回転する。

 

ISのPICを利用したスカイハイフランケンシュタイナーが一切の容赦なく束を顔面から硬い岩肌の地面に叩きつけ、その意識を刈り取った。

 

 

 

3

「う、うん…あれ?」

 

一夏が目を覚ますとそこには見知らぬ天井が広がっていた。

 

(んなベタな……てかあれ?私今まで何やって…)

 

枕元にあった黒い時計用のチェーンを、

待機形態になった黒法を見た瞬間全てを思い出した。

魅せられる様に黒法に乗った私は夜桜で皆を…

 

「うわぁああああああああああああ!」

 

「!? 一夏起きたか!」

 

やけに古い化石みたいなiPodで音楽(多分EXILEだろう)を聞いていたケイタが襖を開けて入ってきた。

素早く布団の中に隠れる。

 

「? どうした?なんか、具合悪いか?」

 

「違う。あんな事して、皆に合わせる顔がない。」

 

布団の中で胎児の様に丸くなる。

こうすると不思議と落ち着く。

 

「と、申しておりますが?」

 

ケイタはまず将棋に興じていた蓮と簪に尋ねた。

 

「人殺しがどうとかライダー(おれたち)が言えた事か?」

 

歩兵の駒を成り上がらせながら蓮が言う。

 

簪もそれに頷く。ライダーは基本、殺るか殺られるかだ。

 

「それを言うなら僕は一夏を殺しかけたわけだし……。」

 

オルタナティブのデッキを取り出しながら苦笑するシャルロット。

 

「は?アンタシャルロット可愛い顔して凶悪ね。」

 

「そう言う鈴は中1のバレンタインの時に軽く殺人未遂」

 

「ケイタ、私達が友達でいる為にも黙っておこうか?」

 

なんの躊躇も無く龍咆を顔面に向けられ流石に黙ったケイタ。

 

「凶悪と言えばラウラさんも昔は刺だらけでしたわね。」

 

「あ、ああ。あの時は本当に荒れていた。」

 

「わたくし、実は根に持つタイプですわよ?」

 

「!?」

 

「オルコット 、その辺にしてやれ。」

 

ええこの辺にします。そう言って笑ったセシリアの目はまあまあ怖かった。

 

「美しい花となる蕾の茎にはトゲがあるものだ。」

 

宝塚の男役みたいな気障ったらしい身振り手振りでロランが言う。

 

「これでも合わせる顔有りませんか?」

 

ケイタが言うと襖の隙間から一夏が顔を見せた。

 

「皆……怒ってない?」

 

「まさか、わたくしがどれだけ覚えの悪い弟子だった事か。遅れながら手をあげられても仕方がないですわ。」

 

料理の特訓を自虐しながら言うセシリア。

 

「ま、達郎の事をどうこう言われたのは許してないけどね。後でなんか奢んなさい。

それでチャラにしてあげるわ。」

 

なかなかちゃっかりしている鈴音。

 

「それに武器を向けたのは我々も同じだ。」

 

そう言って腕を組むロラン。

 

「私はただ止めるべきだと思いお前を止めただけだ。

後ろめたく感じる必要は無い。」

 

真面目に言うラウラ。

 

「まあ僕は、前に一回怖い思いさせちゃったし、

おあいこって事で。」

 

あの時はゴメンね。と逆に謝るシャルロット。

 

「別に俺たちは危害を受けてない。」

 

「むしろ私達は5人に謝る側。」

 

将棋を指しながら言う蓮と簪。

 

「皆……その…ごめんなさい。」

 

「いーって。」

 

「もしまた暴走しても全力で止めてやる。」

 

「簪、次は私達を殴らないでくれよ?」

 

「保証しかねる。」

 

「時と場合によるな。」

 

「さ、湿っぽいのはこの辺で終わりにしましょう。

だいぶ遅いですが何か食べませんと!」

 

「確かに。だけど僕セシリアの料理だけはごめんだからね。」

 

「わたくしも日々成長してるんですよ?」

 

すると突然部屋のドアが開き、

息の上がった真耶が飛び込んで来た。

 

「み、皆さん!たい、た、た、大変です!」

 

「大変なのは山田先生ですよ。落ち着いてください。」

 

「はー、はー、はー……ふぅ。

皆さんミーティングルームに向かって下さい。

織斑さん含めて専用気持ちは全員です!」

 

そう言った真矢の目は真剣そのもの。

 

普段の大人しく控えめな感じの一切無い戦士のそれだ。

 

「たく、昼飯もお預けか。王手(チェック)。」

 

「あ…。」

 

簪にトドメを刺すと上着に入れていた金の三連リング、

打鉄黒翔の待機形態をはめて一番に部屋を出る蓮。

 

その後ろにラウラ、セシリア、簪、ロラン、鈴音、シャルロットと続く。

 

「織斑さん大丈夫ですか?」

 

「一夏いけそうか?」

 

最後にひどく怯えた一夏と心配そうなケイタと真耶が残った。

 

「わ、私…またアレに乗るんですか?」

 

「……必要となれば全戦力を投入します。」

 

真耶は非常に苦しそうに言った。

 

「じゃあ、また私……。」

 

次黒法に乗っても理性を失わない保証など無い。

一夏は自分の手が誰かの血で真っ赤になるのを幻視した。

 

「させない。」

 

しかしケイタは一夏の手を取り、真っ直ぐ目を見て言った。

 

「俺がついてる………あ、後ほら、

蓮達や作戦には参加しないっぽいけど心愛ちゃんとか、バディとか、ほら!」

 

最後恥ずかしくなってしどろもどろ言うケイタにクスッと笑う。

 

「ふふ。翔兄の真似が板についてきたね。」

 

「そ、そんなつもりは……」

 

「はいはい。いつまでもイチャイチャ青春ラブラブタイムしてないで行きますよ!遅刻は教師としてキチッと補導しますからね。」

 

そう言って2人の頭を千冬の百億倍優しく小突くと真耶はケイタに小声で

 

「不純異性交遊もです。」

 

と言ってケイタを茹でダコみたいにしてから出て行った。

 

「じゃ、行こうか。」

 

「うん。」

 

手に持つ黒法は不安と恐怖で重かったが、

反対の手で握る幼馴染みの手は力強く頼もしかった。

 

 

 

4

ミーティングルームに着くと、

ケイタと一夏以外は三春や箒も含めて全員揃っていた。

 

「ようやく来たな。では、これより状況を説明する。

2時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカとイスラエルが共同開発していた第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れ暴走。監視空域より離脱。

この先2キロの空域を通過することがわかり、

50分前上層部より我々が対処することになった。」

 

「たく。ウチの師団長(ばか)の進言は無駄だったか。」

 

やれやれ。と言う様に蓮がお手上げのポーズをする。

 

「そう言うわけだ。何か意見がある者は?」

 

早速セシリアが手を挙げる。

 

「目標の詳細なデータを要求します。」

 

「当然だな。しかし2ヶ国の軍事機密だ。

けして口外するな。

情報漏洩があった場合査問会による裁判と最低二年間の監視が付く。」

 

イマイチ情報が飲み込めていないらしく呆けている一夏、三春、箒。

3人を他所に開示されたデータを元に代表候補達は相談を始めている。

難しい事は分からないケイタもなんとなく殺し合いだなと思いなんとか話についていく。

 

「わたくしのブルー・ティアーズと同様に射撃特化型の機体ですわね。」

 

「しかもオールレンジの高域殲滅目的型と来たか。」

 

「攻撃力、機動力ともに俺の黒翔と鳳の甲龍以上。

無策で突っ込んで行っても蜂の巣にされるな。」

 

「この特殊武装が曲者だね。

リヴァイブの新型防御パッケージや更識さんのバリアでも連続攻撃されたらキツイな。」

 

「しかも、格闘性能は未知数。偵察は無理なんですか?」

 

「残念ながらこの機体は現在も超高速移動を続けています。

最高速度2450キロ越えとありますから、

チャンスは一度きりです。」

 

真耶の言葉に全員が一夏と三春の方を見る。

 

「な、なに?」

 

「なんで皆俺たちを見るんだよ?」

 

「今回の任務、全力全開の一撃必殺でなくてはならない。

つまり高速戦用パッケージを持つISがもう一機の攻撃特化のISを運んで攻撃させなければならないのです。」

 

「つまり零落白夜か……満壊極夜かって事だ。」

 

蓮の言葉に一夏は真っ青に、三春は唖然とした顔になる。

 

「織斑兄妹。これは実戦だ。

覚悟がないなら無理強いはしない。」

 

「……やります。俺が、やってみせます。」

 

千冬の言葉に迷わず三春は答えた。

 

「織斑さんは?」

 

「わ、私は…私は……。」

 

震えながら俯く一夏。嫌な空気が部屋に流れるが

 

「とう☆」

 

そんなのお構い無しに何者かが天井を突き破って入ってきた。

いつの間にか復活した束だ。

鼻の頭に絆創膏を貼っている。

 

「チッ」

 

ケイタが束に聞こえる様に舌打ちをした。

 

しかし束は構わない。

 

「ちーちゃんちーちゃん!

ここは断然!白式、黒法、紅椿の出番なんだよ!」

 

「山田先生こいつを摘み出せ。」

 

「は、はい。博士こちらに……。」

 

「うりゃ!大丈夫だよ!

いっちゃんが黒法を気に入らないならいっちゃんが白式に乗って、みっくんが黒法に乗ればいいんだよ!」

 

「私が白式に?」

 

「そう!ちーちゃんの零落白夜をみっくんが使えた例もあるしツインズの2人なら問題ナッシング!」

 

「本当だろうな?」

 

「IS第一人者どころかあらゆるISのママたる束さんを信用してよ!」

 

しばらく考え込んでいた千冬だったが

 

「束、白式と黒法の調整にどれぐらいかかる?」

 

「!? 織斑先生本気ですか!?」

 

「14分有れば余裕のよっちゃんイカ!

ついでに紅椿の展開装甲の高速専用調整も合わせてね!」

 

天災(ハザード)め。」

 

蓮がぼやく。全くその通りだと全員が思った。

 

「ではそのプランで行く。織斑兄妹。

使い慣れたISが使えないが、それでもいいか?」

 

「構わないよ。守れるなら白式でも黒法でも紅椿でもいい。」

 

「織斑妹やれそうか?」

 

「…………やります。」

 

意を決した様に、呟く様に言う一夏。

 

「よし。この3人以外で一番早い、

というか高速戦用パッケージのあるISは?」

 

セシリア、ケイタ、蓮、簪が手を挙げる。

 

「俺は戦闘訓練時間29時間だ。お前らは?」

 

「わたくしは40時間です。」

 

「20時間。」

 

「多分5分。」

 

「なら決まりだ。各自準備を急げ!」

 

 

 

5

「よし!調整完了!いつでもオケ丸水産だよ!」

 

「はい…ありがとうございます。」

 

白い懐中時計に変わった白式を握ったまま一夏は不安そうに束の元を離れた。

 

「戦う前から浮かない顔をしていてどうする。

そんな事では運気が逃げるぞ。」

 

「あ、箒。そう、だよね。」

 

「全く。実戦では私は三春を乗せていく事になった。

お前についてやれないのも男に乗っかられるなど甚だ不本意だが、

それでも大船に乗ったつもりでいろ。私がついてる!」

 

「え、うん。」

 

生返事だったにも関わらず箒はどこか機嫌良さげに去って行った。

 

《一夏、わかってると思うが》

 

(うん。なんか箒浮かれてる。)

 

アレは後々落とし穴になるんじゃないか?

 

箒は励ましに来てくれたつもりかもしれないが逆に一夏の不安は一層増した。

 

「一夏!」

 

「!? ケイタ。」

 

「IS、どうだった?」

 

「調整したら白式のは満壊極夜に、

黒法のは零落白夜に変わった。

試しに白式で満壊極夜使ってみたけど、

黒法みたいな事にはならなかった。」

 

「見た目はどうなったん?」

 

「三春兄が黒法に乗ったら元の形と色に、

私が白式に乗ったら色がパールホワイトになって形が黒法みたいになったの。」

 

「へぇ、不思議なもんだな。

これで世界八不思議が世界九不思議になったな。」

 

「八不思議って一つ多くない?」

 

「多くないさ。中国の万里の長城

インドのタージ・マハル、

イタリアのコロッセオ、ヨルダンのペトラ、

リオ・デ・ジャネイロのキリスト像、

ペルーのマチュ・ピチュ、

マヤのチチェン・イッツァ、

あんだけ家事上手で可愛い妹が居るのに散らかり放題の千冬さんの部屋、

ISの操縦席、ほら九つ!」

 

「………ぷっ、はっはっはっはっ!違いないね!」

 

一夏が大笑いした所でコツン。

と出席簿ぐらいの硬さ、細さの何かが頭に当たる。

笑顔のままギ、ギ、ギ、と後ろを向くと

 

「織斑千冬かと思ったか?」

 

ノートパソコンを持った蓮がイタズラっぽく笑っていた。

 

「「なんだよ蓮(レン)!脅かすなよ(さないでよ)!」」

 

心臓を押さえながら脱力する2人。

 

「いや、何。心愛がいない分、

適度なギャグをと思ってな。」

 

「心臓に悪すぎるよ!」

 

「寿命が100年縮んだわ!」

 

割と本気で怒るケイタと一夏。

 

「この任務を成功させない限り、後100年も何もない。

適度に力を抜いておけ。

オルコットも居るし大丈夫だとは思うが、

素人3人が軍用機に向かっていくなど狂気の沙汰だ。」

 

改めて真剣になる3人。

だが、さっきの様な陰気な感じはない。

 

「不安を煽るつもりはないが、

篠ノ之束が最新鋭専用機を完成されたタイミングで軍用機が暴走して倒してくれと言わんばかりにこっちに向かってくる。

あまりに不自然すぎると俺は思う。」

 

つまり蓮は暗に篠ノ之束のマッチポンプを疑っているのだ。

 

「篠ノ之博士なら…まあ出来なくはないな。」

 

「出来なくはないって言うか、

束さん以外に出来る人はそうそう居ないね。」

 

状況証拠だがな。と蓮。しかし

 

「俺に言わせりゃ、自分の発明をやっと完成させて発表したのに、

認められなかったから認めざるを得ない様にする為に各国のミサイルを乗っ取って自分の発明と戦わせたのと全く同じ状況だな。」

 

これには流石に驚いた。

ISも世に知らしめた白騎士事件さえ、

マッチポンプだったというのだ。

 

「けど黒法の時のあいつの反応を見るに、

やりかねないな。」

 

「奴なら織斑三姉兄妹(きょうだい)と自分の妹の命か、

それ以外の全人類の命か天秤にかけた時、

間違いなく前者を選ぶ。」

 

やりかねない。

長い付き合いなだけに一夏の中で説得力がムクムクと大きくなる。

 

「ま、とは言ったものの、

だからと言ってここまで来たらもう最後までやり切るしかないんだけどな。」

 

「確かに今言った通りだとしても、

福音倒して篠ノ之博士問い詰めるぐらいしかないし。」

 

「まあね。」

 

そう言った所でただいつもの様に話していただけなのに随分と心が軽くなっているのに気付いた。

 

「…………ありがと。」

 

「え?」

 

「今なんて言った。」

 

「独り言!」

 

セシリアに高速移動のコツ聞いてくる!

満開の笑顔でセシリアの方に向かった。

 

「……良かった。緊張抜けたみたいで。」

 

「戦場ではしけた面してる奴から死ぬ。

あんぐらいが頼もしいな。」

 

不安や恐怖がなくていい訳じゃないが。

と付け足す蓮。

 

「……一夏は凄いよな。

千冬さんの妹っていうプレッシャーとか、

その上今不安しか無いはずのISに乗って戦いに行くんだぜ?」

 

俺は力があるのになんも出来ないや。

かなり自虐的になっているケイタ。

 

(ま、本人無自覚っぽいけど、

惚れた女が死地に行くとなればこうなるか。)

 

無意識に励ましに行っていたが、

ケイタもケイタで不安な様だ。

 

「そんな事ない。」

 

「うわ!更識!」

 

「いきなり背後から!」

 

「更識家の暗殺術。」

 

キリッ!とアックスの変身ポーズをとる簪。

 

「あなたは一夏の大切な人。

あなたじゃなければまだ一夏は黒法に囚われてた。」

 

「俺らの中で一番あいつの近くに居たんだ。

祝勝会の内容今から考えるぐらいドーンと構えてろよ。

必ず戻って来るさ。」

 

「そうか…そうだよな、平気だよな!」

 

ケイタは信じて送り出した。

蓮は一連の出来事にきな臭さを感じながらも進ませた。

 

心愛は蒼穹に飛び立つ4機のISを見ながら無事を祈った。

事情を説明された候補生達は最大限のサポートを行った。

 

そして攻撃部隊は全身火傷を負った一夏と作戦失敗の報せと共に帰還した。




ケイタ「…………。」
一夏(全身大火傷)「」
心愛「蓮君…。」
蓮「ああ。流石にふざけられる空気じゃないな。」
心愛「作者さんからビデオ預かってるけど?」
蓮「流せ。」
心愛「う、うん。次回、infinite DRAGON KNIGHTは……。」
(ED Go! Now! ~Alive A life neo~ RIDER TIME 龍騎)
三春「守るために仕方なかった!」
千冬「お前に力を持つ資格など無い!」
間明「やあ、お通夜かな?」
真耶「ストライク!」
ケイタ「丁度暴れたかった所だぁ!」
トルク「チクショウ!もうなんなんだよ!」
海之「よせ網島!」
蓮「使うしか、ないか!」
<SURVIVE MODE>
一夏(あれ?私は……。)
蓮「次回、theHeat その5」
心愛「その……また次回…。」


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the Heat その5

ケイタ「…………」
一夏(全身大火傷)「」
ネクスト『セブン先輩……』
セブン『ああ、我々がやるしかないな。』
ネクスト『っすね。前回は一夏師匠が撃墜されてああなったってとこまでっすよね?』
セブン『あくまでそう聞いているだけだ。詳しくは今回語られるだろう。』
ネクスト『そうっすか…それでは、どうぞ。』


1

身体中包帯だらけの少女が寝かされてる。

一夏だ。

作戦はうまく行くはずだった。

 

どれだけ箒が浮かれていようと、三春が独断先行しようと

セシリアが射撃をミスしようと一夏の思い切りが悪かろうと、

ミスした1人以外の誰かがそのミスをカバー出来るだけの布陣だった。

 

ただ一つだけ、4人以外の穴があった。

戦闘領域内を密漁船が通ったのだ。

 

「La………♪」

 

敵は狡猾だった。

一夏とセシリアが密漁船を気にしてると察するとすぐに攻撃対象を密漁船に変えた。

 

2人は必死に密漁船を守ろうとした。しかし三春は

 

「あんな犯罪者共守る必要ねぇよ!」

 

そう言って一夏の首根っこを引っ張って福音に向かわせようとした。

 

「三春兄離して!確かにあの人達は悪い事してるけど殺される程の事じゃないよ!」

 

「何を言う一夏。まずは福音だ。

あんなの欲を出した奴らの自業自得だろ!」

 

「何を言うはこっちの台詞だよ!

昔の箒と違うとかそんな話じゃなくてさ!

力が手に入って嬉しいのは分かるけど、

そこで自分の為だけに好き勝手したら白騎士事件(マッチポンプ)を起こしてISの力を証明した束さんとなんも変わんないよ!」

 

「なぁ!?……変わらない?

私が、あの人と?家族と、私を引き裂いた、

皆と私を引き裂いた、あの人と?」

 

よっぽどショックだったらしいく、

ワナワナと震えたまま動かなくなる箒。

 

「La……♪」

 

その隙を敵は見逃さなかった。

 

無数の光弾が箒を襲った。

茫然自失の箒は避ける素振りすら見せない。

 

「箒!」

 

無数の光弾が、一夏に炸裂した。

 

(嘘…私……突き飛ばそうとして間に合わなかったって身体ごと盾になっちゃダメじゃん。ちゃんと……帰るって…約束………)

 

一夏は意識を手放した。

 

「え、あ…一夏っ!一夏ぁああああ!」

 

真っ赤な炎に包まれながら真っ逆さまに堕ちていく一夏。

箒は夢中で追いかけた。

 

「チッ!役に立ずが!セシリア!

援護しろ!奴はここで必ず殺す!」

 

堕ちていく2人に吐き捨てながら三春は黒法を駆った。

繰り出される光弾を零落白夜で切り裂きながら突き進んで行く。

 

しかし先程まで機械的だった福音の射撃がだんだんと正確になって来る。

 

(くそう!近づけない!あいつを!

あいつを斬ってみんなを守らなきゃなのに!」)

 

「全く、仕方ありませんわね!」

 

新しく本国から送られて来た高速戦用型スターライトで最低限の光弾を叩き落とし、三春と合流すると

 

「黒法、機体をロック!」

 

事前に千冬から預かっていたプログラムを起動した。

 

黒法がまるで金縛りにあったようにピクリとも動かなくなる。

 

「なんだこれ!ふざけんな!まだ、まだ終わってないぞ!」

 

喚き散らす三春を無視してセシリアは戦闘空域から離脱した。

 

 

 

2

「……そうか。それで一夏と篠ノ之(バカ)織斑兄(あんぽんたん)はどこだ?」

 

「一夏さんと箒さんはケイタさんと医務室に。

織斑三春は織斑先生とミーティングルームに居ますわ。」

 

「わかった。オルコット 、ボーデヴィッヒと更識とケイタと篠ノ之を呼んできてくれ。」

 

そう言って蓮はミーティングルームに向かった。

 

『レン様、一体何をなさるおつもりで?』

 

「サード、俺が合図したら例のデータを織斑千冬の端末に送信しろ。」

 

『!?  思い切った事をしますね。』

 

「それぐらいじゃなきゃあの鉄の女は動かんさ。」

 

黒い絹の手袋をはめながら、

セキュリティシックスを取り出す。

ミーティングルームの前まで来た。

 

「なんでだよ千冬姉!もう一度行けば確実に倒せる!」

 

「駄目だ織斑、お前には任せられない。」

 

「なんでだよ!

俺以外に零落白夜が使える奴は居ないだろ!」

 

「だとしても迎撃任務で敵の殺害を実行しようとし

仲間を軽視したお前に任せる事は出来ない!

お前はISパイロット以前に人として歪んでいる!

お前にISに乗る資格など、力を持つ資格など無い!」

 

「! ふ、ふ、ふざけんなぁ!」

 

恐らく三春が飛びかかろうとしたタイミングでドアを開き

6発全弾叩き込む。なるべく足だけを狙った。

 

「うぎゃあああああああ!

何、しやがる…この、ドチクショウが!」

 

「ドチクショウはお前だ。」

 

弾をリロードして、セキュリティシックスをしまい、

三春の顔面を蹴り付け気絶させる。

 

「アキヤマ貴様何を!」

 

千冬があっけに取られたまま叫ぶ。

 

そのタイミングで銃声を聞きつけたセシリア達が入って来た。

 

「これよりあなた達は

日米貿易協定IS特記事項第二十八条基づき、

現地の自衛官、または米国軍人の中で最も位の高いもの、

つまり特別少佐の俺の指揮下になって貰う。」

 

「特記事項第二十八条!? まさか……」

 

ラウラが何やら驚いた顔をする。

 

「そのまさかだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ准尉。

貴官に対IS用特別交戦規定レベル3を発令する。

対象は銀の福音。機体認証コードをデリートしておけ。」

 

対IS用特別交戦規定。

それは米軍のISが暴走、またはスパイなどにより奪取された際に機体認証コードをデリートして攻撃可能にする為の交戦規定だ。

 

中でもレベル3は最も重い『機体パイロットとISコアの無事を度外視した攻撃を許可する』ものだ。

 

「し、しかしいくら何でもレベル3は!」

 

「これは命令だ。従わない場合、

最悪IS剥奪もあり得ると思え。」

 

「本気、なんですね。」

 

「無論だ。」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ准尉、了解しました。

貴官に従います。」

 

「待て、待て!待て待て待て待て!

アキヤマ何を勝手に話を進めている!

私は言ったはずだ。次の指令があるまで待機と!」

 

「IS学園一年学年主任はアメリカ海兵隊IS師団の指揮系統に存在しない。」

 

パチンと蓮が指を鳴らすと千冬のケータイに何かが送られて来た。

 

蓮の方を警戒しながらメールを見る千冬。

 

「!? き、貴様一体どこからこのデータを?」

 

「いいのかな?余計な質問して俺の機嫌を損ねても。」

 

「脅迫か?」

 

「強制だ。俺に不都合な事を何もするな。」

 

最後通告だ。と言うように蓮は言い切った。

 

千冬は悔しそうとも、

歯痒そうとも見えるなんとも言えない表情のままその場を後にした。

 

「よし、網島ケイタパイロット、更識簪パイロット、篠ノ「皆まで言うな。」

 

ピシッとケイタが蓮の台詞を遮る。

 

「建前はいい俺もいく。て言うか行かせてくれ。

三春奴を先にボコしたのは許さないけど、一夏の仇を討たせてくれ。」

 

「私も。御膳立てありがとう。私たちじゃ無理だった。」

 

「それからレンさん。あなたがわたくしに皆さんを呼んで来させたのはオペレーターが必要だからでしょうけど。」

 

背後を指すセシリア。

そこには鈴音、ロラン、シャルロットに心愛、千夜、海之の姿があった。

 

「皆…なんで?」

 

「なんでも何も今度はこっちの番ってだけよ。」

 

「私はレディに手をあげた奴にはその百億倍の目に合わせる主義なんだ。」

 

「僕はまだ全然一夏にいろんなものを返せてないからね。」

 

「本当にいいのかお前ら。オルコットは兎も角お前らは」

 

「一夏の友達。だから関係者。」

 

「……言いなりだった人形娘が言うようになったな、コンスタン。」

 

「お陰様でね。」

 

そして最後に箒に視線が集まった時

 

「やあ、お通夜かな?」

 

キーン、キーンと耳鳴りの様な音と共に一番近くの窓にあの男の姿が写る。

 

「間明!」

 

「これから仮面ライダートルクの処刑式を始めるんだ。

よかったら織斑一夏の葬儀の二次会に是非来てくれた前。」

 

そう言って間明はポケットからストライクのデッキを取り出す。

 

「まさかあいつが!」

 

「仮面ライダー。」

 

間明はストライクに変身し、鏡の奥に消えた。

 

「いいぜ、丁度暴れたかった所だ……ッ!」

 

ドラゴンのデッキを握りしめ、飛び込んで行くケイタ。

 

「こ、これは?」

 

「一体何が……。」

 

この中でライダーの正体を知らないセシリアと鈴音は面食らう。

 

「追々話すさ。コンスタン。こいつらは頼んだ。」

 

「わかった。」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「仮面ライダー!」

 

蓮と海之もそれぞれウイングナイトとスティングに変身して跡を追う。

 

「篠ノ之、私たちも…あれ?皆篠ノ之を知らない?」

 

「あら?さっきまでわたくしの後ろにいたはず…。」

 

「たく、ほんっと悲劇のヒロインぶって腹立つわね!

皆先にISの準備始めてて!アタシ探して来る。」

 

「待って鈴、あなたじゃ無理。」

 

「はあ?簪何言って」

 

アックスのデッキを見せる簪。

 

「……アイツも持ってるって訳?」

 

「うん、だから私が行く。

けど安心して。気持ちは一緒。」

 

「悪いわね。私らの代わりに1発ガツンとぶちかまして来て!」

 

「了解。」

 

ガシっ!と拳を交わすと簪は走り出して行った。

 

 

 

3

ベンタラがわからアドベントビーストの気配を感じた真耶はセイレーンに変身してベンタラに飛び込んだ。

 

「あれ?この辺りに居るように感じたんですが……」

 

迷っちゃったですかね?

そう言って首を傾げた時、

斬撃音と共に何が真耶にぶつかって来た。

 

「痛い!誰ですか!?ってビースト?」

 

吹っ飛んで来たのはかつてスピアーと契約していたのと同じギガゼールだった。

 

「███▅▅▅▃▄▅▅▅!!」

 

「うわっと! そっちがその気なら、

容赦しません!」

 

<SWORD VENT>

 

ウイングスラッシャーで得意の連続攻撃を与えて、爆散させる。

 

「やりました!けど、このタイプのビーストって確か蜂型やピラニア型みたいに群れてたような気が?」

 

そう思い、さっきギガゼールが飛んで来た方に向かってみると

 

「ヒッ!」

 

大量のレイヨウ型ビーストの残骸の中心に血みどろで立つケイタとビーストの残骸を美味そうにパクつくドラグレッターの姿があった。

 

「…………」

 

「あ、あの網島君?」

 

「!? 山田先生。あなたも間明を、

ストライクを追って?」

 

「え?」

 

「居た!ドラゴンナイト!

セイレーンも一緒か。」

 

「あ、アキヤマ君に手塚さん。」

 

「セイレーン。変身してる時はライダーの名前で呼べ。

身バレは余計な人間を巻き込む。」

 

「は、はい……。」

 

「それより結局ストライクはどこに?」

 

仮に見つけても1人で向かって行っては良いようにやられるだけだろう。

 

「なら二手に分かれましょう。

カードの相性的には、私とあみ…ドラゴンナイトさんで、

ウイングナイトさんとスティングさんですね。」

 

「決まりだ。生きて会おう。」

 

そう言って4人が分かれて走っていたのを見送って出て来た者がいた。

トルクだ。

 

「な、なんだったんだよあの暴れっぷりは……」

 

トルクはドラゴンナイトとレイヨウ型ビーストの群れの戦いを見ていたのだ。

ドラゴンナイトは、ケイタは一夏を傷つけられた事に対する怒りを、

三春の歪みを知っていながら今まで指摘しなかった半端さに対する怒りを全て拳と叫びに乗せた。

その結果、雲霞の如きビースト群は蹴散らされた。

 

ドラゴンナイトが拳を突き出せばビーストの身体が宙を舞い、

蹴りを放てばビーストがドミノ倒しに吹き飛んだ。

 

「あんな、あんな化け物俺にどうしろってんだよ!」

 

他のライダーを味方につけるか?駄目だ。

自分は今IS学園の陣営にもゼイビアックス陣営にも信用されてない。

なら一人で立ち向かうか?

 

無理だ。トルクのカードは強力だが隙が大きい。

エンドオブワールドを発動しようとしたタイミングでマグナギガごと貫かれるとかあり得てしまう。

 

「やだ、やだ!死にたく無い!

くそう…なんでこんな事に?」

 

「へぇ〜。死にたく無いの。

ならベントならいいか。」

 

「ヒィ!ま、間明……。」

 

「やあ、今日は君の、断末魔を聴きに来た。」

 

「あ、ああ…ああああああああああああ!」

 

トルクは狙いが定まらない震える手でマグナバイザーを撃った。

しかしストライクに体を開いて避けられる。

そしてストライクは引いた右足で回し蹴りを腹部に与える。

 

(動きがガタガタ。怯え切ってる。

ちょいちょいビーストをけしかけてたのが効いてるね。)

 

しかしそれでもトルクの生存本能は凄まじかった。

ガムシャラにストライクの腰にしがみつき、

鯖折りの要領で背骨を締め上げて来る。

 

「窮鼠猫を噛むか。

じゃあネズミらしく無様に消えろ!」

 

トルクのアーマーの一番脆い部分に当たりをつけてベノバイザーを振り下ろした。

何度目かの打撃でアーマーが割れた。

ストライクはバイザーを逆手に持ち直してドリューの身体をバイザーで貫いた。

 

「が、ああ!」

 

力が緩む。

ストライクはバイザーを抜いて脱出し、

トルクを蹴り飛ばした。

その身体からは粒子が上がっている。

 

「う、嘘だ!いやだ、嫌だ嫌だ死にたく無い!

なんでも、なんでもするよ!

金ならいくらでも稼いでやる!

だからお願い!助けて!たすけてくれよぉ!」

 

「駄目だ。」

 

絶叫と共にトルクは砕けて消えた。

デッキだけが柔らかい草の上に音もなく落ちる。

 

「あばよ、ペテン師君。うわっ!」

 

デッキを回収しようとした時、

ウイングスラッシャーがブーメランのように飛んで来た。

 

「ああ、断末魔を聞いて戻って来たのか。」

 

セイレーンとドラゴンナイトだ。

 

「間明、お前またライダーを!」

 

「何故、何故こんなことを!」

 

「もう用済みだからだよ。

履き潰した靴はちゃんと決まったゴミの日に出すのと同じ。

エチケットさ。」

 

「あなたは、あなたは狂っています!」

 

「ふふ、そう来なくちゃ。」

 

<ATTACK VENT>

 

メタルゲラスを召喚してドラゴンナイトの相手をさせ、

向かって来るセイレーンのウイングスラッシャーを掴んで止めた。

 

「な!」

 

「まだまだ!」

 

奪い取ったウイングスラッシャーを膝で叩き折り、

二本の短剣としてセイレーンに振るう。

 

「うわぁああああ!」

 

「はは、下ごしらえはこんなもんか。

それじゃあ、いただくとしよう。」

 

痛めつけられ転がったセイレーンに覆いかぶさるとストライクはクラッシャーを展開して背中の翼を喰らい千切った。

真耶の喉から出たとは思えない絶叫が響く。

 

「山田先生!こんの退けえ!」

 

メタルゲラスをドロップキックで吹っ飛ばすとドラゴンナイトはカードをベントインしながらストライクに突っ込んだ。

 

<GUARD VENT>

 

得意のドラグシールドインファイト戦法だ。

 

「良いおもちゃだね。僕にも貸してよ!」

 

<STEAL VENT>

 

逆に使おうとするストライク!

 

「させるかぁ!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーを飛来させながら召喚してドラグシールドを吹っ飛ばす。

 

「なんだと!?がっ!」

 

ドラグセイバーの一閃がストライクを転がす。

 

「先生大丈夫ですか!?めっちゃ血出てますよ?」

 

「だ、大丈夫です、それより来ます!」

 

<SWORD VENT>

 

ベノサーベルを構えたストライクが雄叫びを上げて突っ込んで来た。

ドラゴンナイトも受けて立つ。

 

刃と刃が火花を散らす。

幾度めかの打ち合いでドラグセイバーがドラゴンナイトの腕からすっぽ抜けて飛んで行く。

 

「貰った!」

 

しかしドラゴンナイトはすぐさま頭上の枝を掴み、

逆上がりでベノサーベルをかち上げ、

ガラ空きになった胴に飛び蹴りを浴びせた。

 

「ならこれだ!」

 

<STRIKE VENT>

 

「やってやろうじゃねえか!」

 

<STRIKE VENT>

 

ストライクがメタルホーンをドラゴンナイトはドラグクローを構える。

 

《まずいぞケイタ!向こうの方が早い!》

 

このままでは火球を繰り出すより先に腕ごとドラグクローを潰される。

 

「ならこれだ!」

 

メタルホーンの角が入り込んで来るタイミングで炎を発射、

そしてドラグクローを無理やり閉じる!

 

「馬鹿な!あっつ!」

 

「どりゃあ!」

 

堪らずストライクが腕を抜いたタイミングで左ストレートを浴びせる!

 

「これは滝本さんの分!」

 

崩れかけのドラグクローを脳天に叩きつける!

 

「これはカラフルボマーの分!」

 

続いて顔、胴、肩に満遍なくラッシュを叩き込む!

 

「これはのほほんさんと罪のない警備員さん達の分!」

 

そして最後に切り札を切った。

 

「これがスピアーとトラストとトルクの分だ!」

 

<FINAL VENT>

 

ドラグレッダーと共に天に舞い上がる!

 

「は、知るかそんなコトォ!」

 

<FINAL VENT>

 

2人のライダーキックが炸裂し、

隔絶された地球にも届かんばかりの爆音を轟かせた。

 

 

 

4

あらかた館内を探し終わった簪はビーチに向かった。

見ると箒はISを部分展開して、近接ブレードを

自身の首元に当てていた。

 

「駄目!」

 

「来るな!」

 

刃を首に当てたまま叫ぶ箒。

 

「私は、私は責任を取るだけだ!

一夏を傷つけ、姉と同じテツを踏んだ自分に当然の罰を与えるだけだ!」

 

「違う。」

 

「、、、は?」

 

「あなたはただ考えることから逃げてるだけ。

普段は嫌ってる姉から貰った力に浮かれて

使えもしないまま使って失敗して

他人に迷惑かけて最もらしいこと言って責任から逃げてるだけ。」

 

「黙れ!、お前なんかに、

お前らなんかに何が分かる!一夏と三春は強いんだ!

お前も網島も秋山も目じゃないくらいに強いんだ!

それなのにお前らは一夏を毒して弱くした!

三春を貶め冤罪にした!

そんなお前らに何が分かるって言うんだ!」

 

しゅ!箒はブレードのアドベントデッキを取り出し構えを取り

 

「仮面ライダァ!」

 

ブレードに変身。

左手のガルドバイザーで殴りかかってくる。

 

しかし簪もまた仮面ライダー。

ポケットからデッキを取り出し更識の暗殺術で素早く背後に回り込み変身の構えを取る。

 

「カメンライダー、、、!」

 

アックスに変身してデストバイザーで突っ込んで来た所を左下から斬り飛ばす。

 

「このっ!」

 

<SWORD VENT>

 

吹っ飛ばされながらカードをベントイン。

ガルドセイバーを召喚し斬りかかる。

 

「ツヴァイへンダー?人斬りの癖に!」

 

二、三度切り結ぶ。

極めて冷静なアックスに対して激情に任せて剣をぶん回すだけのブレード。

 

どうしても大振りになるツヴァイへンダーに

小回りの効くやや小さめの戦斧。

 

勝負は火を見るより明らかだった。

あっと言う間に弾き飛ばされ這い蹲るブレード。

 

二人の距離は約5メートル。

アックスのファイナルベントの有効射程内だ。

この距離ならベント出来る。

 

「これで投了。諦めてデッキを渡して。」

 

「ふざける、、なぁ!

、、貴様程度にやられる程弱くない!

弱くないんだぁ!」

 

デッキからカードを引き抜く。

勝負を焦ってるから引いたのは間違いなくあのカード。

 

<FINAL VENT>

 

「読んでた。」

 

迷わず二枚のカードを引き抜き、

うち一枚をベントイン。

 

<FREEZE VENT>

 

「な!」

 

ブレードから驚愕の声が上がる。

自分の背後に呼び出されていた契約ビーストが凍結したのを見たのだろう。

 

「こんどこそ。」

 

<FINAL VENT>

 

ブレードの背後から現れたデストワイルダーはブレードをアックスから更に遠ざけるように吹っ飛ばすとすぐさまブレードの契約ビースト、ガルドサンダーを背後からうつ伏せになるように倒し引きずりながらアックスの元まで引きずって行く。

 

自動で召喚されたデストクローを構えて待つアックス。

その右爪に溢れんばかりの凍結エネルギーが満ちて

 

「投了。」

 

摩擦熱であり得ないほど高温になったガルドサンダーを右爪で指しながら頭上まで持ち上げる。

 

その瞬間一気に冷却されたガルドサンダーはまるで夏場に外に晒されていた氷のように砕け散った。

 

「クリスタルブレイク。」

 

吹っ飛ばされて仰向けのま動けなかったブレードの鎧が灰色になって強制解除される。

 

契約ビーストは倒されてから24時間で復活する。

逆に言えばビーストが倒されてデッキのカードが失効した場合24時間の間ブランクモードと同じ力しか出せない。

逆立ちしたって契約ビーストが無事なライダーに敵うはずが無い。

 

「、、、。」

 

「星が綺麗?」

 

アーマーを解除しながら箒の横に立つ。

 

「、、分かってた。

二人とも理由は別々だけど私の手が届かない所に行ってしまったってことくらい。」

 

「でも嫌だった。」

 

「あぁ。姉は知っての通りで、

両親とは要人保護プログラムのせいでもう何年も会ってない。」

 

寂しかったんだよ。

10年前から段々と自分を迎えてくれる人が消えていくのが。

語りながら涙を浮かべ始めた。

溜め込んでいた何かが決定的な敗北に押し出されて吐き出されていく。

 

「やっとまた一夏と出会えたと思ったら、

一夏は私にない全部を持っていた。威厳に満ちた姉も

2人だけの秘密を共有できる姉弟同然の幼馴染を。

いざって時に頼れる親友を。

目を離してられない友人を。

お前みたいな手の掛かる後輩みたいな奴も。

みんな持ってたんだ。」

 

あの三春の手段の選ばなささえ私にとっては別の強さだった。

涙も語りも一切止まらずまくし立てる。

 

「いっそ一夏に嫉妬でもした方が楽だったのかもしれない!

けどそれはプライドが許さなかった!

変わる前の一夏のイメージを押し付けて、

網島を!秋山を!保登を!お前たちを憎んだ!

一夏がもう私より強いことを安っぽいプライドが許さなかった!」

 

告解から絶叫へ、絶叫から嗚咽へ。

 

自分ももし一夏たちに出会ってなかったらこんな感じだったかもしれない。

自業自得で最悪の状態に陥ってそこからなんとか這い上がろうとして2度と出れない所に突き落とされる。

まさに仮面ライダーみたいじゃないか。

 

そう思うと他人事じゃない気がして来た。

自分も初めは気分が高揚した。

しかし勝てなくなり始めてから、

殺し合いを実感してから恐ろしくなった。

 

まともに戦えるようになっても、

ふとした時に辞められない戦いである事を思い出し、

安心が吹っ飛んだ。

そしてそれはさながら呪いなんだと理解するしかなかった。

 

「でも逃げていい理由にならない。逆境なんて、

誰だって経験すること。」

 

なんの慰めにもならないだろうけど、

言わずにはいられなかった。

 

背を向けて歩く。

後は彼女が立つか、立たないかだ。

 

「ま、待って!………すまない簪。

今だけ、今だけお前を姉さんと勘違いしてもいいだろうか?」

 

「……いいよ。文句ぐらい聞いてあげる。」

 

簪がそう言った瞬間。箒は泣きながら簪の背中に抱きついていた。

静かに、だが確かに泣いていた。

 

(私、一応妹なんだけどな。)

 

だがああ言った手前仕方ないか。

見ているものと言えば、

星座になった神か英雄達ぐらいだしと思い、

簪はしばらくそのままでいた。

 

 

 

5

「おいしっかりしろスティング!

ここの道はさっき通った!」

 

「うるさい分かってる!」

 

2人は度重なる悲鳴や衝撃音を聞いて急いで引き返していた。

 

「やっと着いた!」

 

「あれは…山田教諭!」

 

血溜まりの中にセイレーンが倒れている。

 

「おい!しっかりしろ!」

 

「ストライクですね!奴がここに来たんですね!」

 

「わ、私はいいです…それより網島君を!」

 

2人は破壊跡を辿り、森の奥まった所にうつ伏せに倒れるドラゴンナイトを見つけた。

その反対側にはストライクが大の字に倒れている。

どうやらファイナルベントの撃ち合いで相討ちになったらしい。

 

「は、はは。流石網島くん。けどここまでだ!」

 

<FINAL VENT>

 

起き上がるとストライクはもう一枚の、

トラストのファイナルベントを発動した。

ストライクの右手にメタルホーンが、

背後にメタルゲラスが現れる。

 

「まずい!」

 

自分もファイナルベントを!

と思ったウイングナイトだったが、

今ここでしかファイナルベントを撃っても敵にまだアタックベントが有ればやられるのはこちらだ。

 

「使うしか、ないか!」

 

デッキから黄金の右翼の書かれたカードを、

サバイブカードを引き抜く。

 

バイザーに入れようと構えた瞬間、

横っ面をスティングに殴られ、カードを奪われた。

 

「て、手塚お前何を?」

 

「秋山、君はまだだ。私が、運命を変える!」

 

(BGM Revolution 仮面ライダー龍騎)

 

青い疾風が吹き荒れ、スティングの飛召盾エビルバイザーが弓型のエビルバイザーツヴァイに変形し、通常のカード用とは別のカードスロットが現れる。

 

「変身!」

 

<SURVIVE MODE>

 

カードをベントインし、バイザーを振り上げる。

装甲に黄金が追加され、スティングはサバイブモードに変身した。

 

<SHOOT VENT>

 

バイザーに青い光の弦と矢が現れ、

背後にイトマキエイ型のエクソダイバーが現れる。

 

「ハァ!」

 

放たれた一閃はストライクを吹き飛ばし、

背後のメタルゲラスを爆散させた。




セブン『まさか手塚がサバイブモードになるとは。』
ネクスト『しかもあんだけライダーバトルでボロボロになって福音戦大丈夫なんすかね?』
セブン『信じるしかなかろう。次回、the Heat その6!』
ネクスト『これが、明日のリアル!』


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the Heat その6

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」
サード『海之様がサバイブモードに変身しましたね。」
心愛「それもあるけど……。」
トルク(遺影)「」
ケイタ「ああ、こいつね。」
心愛「なんかかわいそうだったよね。」
サード『まあ、北岡秀一様の悪い部分だけを固めた様な方でしたし、自業自得ですね。』
心愛「サード君結構言うね!?」
ケイタ「持ち主に似てきたな。」
サード『それより早く始めましょう。』
ケイタ「それではどうぞ!」
(op DIVE INTO THE MIRROR KAMEN-RIDER DRAGON KNIGHT)


1

<SHOOT VENT>

 

エビルアローから放たれた青い一矢がメタルゲラスを爆散させた。

 

「ば、馬鹿な!なんでお前が!

そのカードは網島くんに渡るように仕向けたのに!」

 

「ほう、本音を怪人屋に仕立て上げたのはお前だったか。

ますますお前を生かしておく理由が無くなった!」

 

<COPY VENT>

 

メタルホーンをコピーして殴りかかる!

 

「全く、イライラさせるね!」

 

メタルホーンの応酬。しかし連戦のストライクの方が不利だ。

たちまちメタルホーンを破壊され丸腰になるストライク。

 

「こ、ここは引くしか!」

 

「逃すと思うか?」

 

<BLUST VENT>

 

スティングは新たなカードを切る。

飛来したエクソダイバーの腹部の車輪型の部分が肥大化し、

急速に回転を始める!

 

「やらせるか!」

 

<CONFINE VENT>

 

カードの効果が打ち消されエクソダイバーが消える

 

<RETURN VENT>

 

事はなかった。

再び現れたエクソダイバーによってストライクは天高く吹き飛ばされる。

 

「お前の手の内ぐらいお見通しさ。」

 

<STRANGE VENT>

 

新たなカードをベントインする。ストレンジベント。

それはアドベントカードで唯一デッキ内外問わず一度だけどんなアドベントカードにもなる奇跡のカード。

 

<SHOOT VENT>

 

有る筈の無い2枚めのシュートベントになったストレンジベントをベントイン!

はち切れんばかりに弓を引く!

 

「はぁ!」

 

青い一矢がストライクを捉えて炸裂する。

ワンテンポ遅れて海上に水柱が立った。

 

「やったか?」

 

「いや…すまない。」

 

ガシャン!と鏡が割れる音がしてスティングの鎧が解除され、

憔悴仕切った海之が現れた。

 

「!? 手塚!」

 

「最後、狙いがずれた…また頭が!アァアア!」

 

「たく、無理しやがって。」

 

<TRICK VENT>

 

3人に分身すると死に体の3人を担いで地球側に帰還した。

 

 

 

2

「はぁ………ガバ!ゴボォ!」

 

なんとか海から岩礁に上がりながら間明は血と海水が混じったものを吐き散らしながら倒れ伏した。

 

「く、クソが……あの、ヒラメ女ぁ!」

 

最悪の気分だ。

あのカードは網島ケイタかレン・アキヤマに使わせる筈だったのに、あれぐらい大きな力を持たせておけば下手に動けなくなる計算だったのに!

 

「殺す!…絶対に殺してやる!」

 

間明は計画通りにいかないという事が我慢ならないタイプの人間だった。

こうやって呪詛を吐く間にも彼の頭にはもの凄い速度で新しい計画が建てられて行く。

 

「はぁ…あぁはぁ……仕方ない。

もう1人ぐらいベントしておきたかったが、

ジーン計画を実行に移す!」

 

間明の笑い声が夜闇に響き渡った。

 

 

 

3

(あれ?私は……。)

 

一夏は目を覚ました。

覚醒しない頭をかきながらゆっくりとベッドから出る。

 

「今日何日だっけって、え?」

 

部屋にかかったカレンダーを見ると、

そこに書かれた文字は、いや文字含めて全て見事に左右反転していた。

 

「な、何が?」

 

一気に目の覚めた一夏は改めて部屋を見渡す。

 

さっきまで寝ぼけていて分からなかったが、

部屋にある何もかもがまるで鏡に映ったように反転していた。

 

「や、やぁ………」

 

混乱と吐き気に襲われた一夏は着の身着のままで外に飛び出した。靴も履かずに走って、走って、走って走る。

 

「こ、ここまで来れば……!」

 

「いえ、無理よ。あなたは逃げられ無い。

あなたは私だから。」

 

不意に聞こえた声に振り向く。

そこには、予想外の者がいた。

 

「私?」

 

黒いサマードレスで身に包み妖艶なメイクをした一夏と全く同じ姿の少女がゆっくりと歩いてきていた。

どこか余裕を感じさせる笑みで。

 

「そうよ。あなたは私。」

 

だけど、と言ったその目から、

顔から笑みが消え失せドス黒い殺意だけが残る。

 

「私はあなたじゃ無い。」

 

うなじの辺りから白いチェーンの付いた黒い懐中時計を取り出す。

 

「まさか!」

 

「そのまさかよ。」

 

左手に黒法と夜桜が展開され、刃が一夏に振るわれる。

 

「ッ!」

 

一夏も白式と雪片弐型を展開して受け止めた。

 

「死ね!」

 

「ぐぅ!」

 

黒いもう1人の一夏の攻撃は一撃一撃が重く、殺意に満ちていた。

 

「どうしたの?初めから黒法なら勝てるんじゃない!?」

 

加虐の愉悦に満ちた残忍な笑顔でもう1人の一夏が挑発する。

 

「あ、あれにはもう乗らない!」

 

なんとか攻撃をさばきながら一夏は絞り出すように言った。

 

「どうだか?ケイタさえいなければあなたはまたあの夜桜の魅力に身を委ねるんじゃないの?」

 

「そ、そんな事は!」

 

「有るわよね?だってあなた、あの時5人と戦ってる途中に強化打鉄の3人が割り込んで来た時こう思ったわよね?『ケイタに醜いところを見られてヤダ』って。」

 

「!? そ、それは…」

 

言葉に詰まる一夏。

 

「あの場にはレンも簪さんも居たのにね。

真っ先に浮かぶのはケイタ。酷い女よねあなた。

止めようとしたゼロワンも満壊極夜で無理矢理黙らせて鈴達を殺そうとした。

なのに罪の意識とかより先に出てくるのはケイタ。

あんたみたいな腹黒女に依存されてケイタもきっと迷惑よ!」

 

もう1人の一夏の握る夜桜に零落白夜の白銀の光が宿る。

それに貫かれた瞬間、一瞬だけ視界が暗転してから見知らぬ天井が飛び込んで来た。

 

(………なんだろ?なんかすっごいデジャブ。)

 

起き上がろうとするが何か体に巻きついた物が動きを邪魔している。

 

(身体中がむず痒い……なにこれ?)

 

試しに右手を上げてみる。何故か腕中に包帯が巻き付いていた。

外してみる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(なんで顔にまで巻かれてるんだろ?)

なんとか顔と両手、両足の包帯を外して立ち上がる。

 

「包帯の跡早く取れないかな?」

 

なんて言いながら襖を開けて寝室を出る。

 

『!? いち、か?一夏!一夏なのか!?』

 

「ぜ、ゼロワン?どうしたの?オバケでも見たような顔して。」

 

『いや、一夏お前覚えていないのか?

お前は福音に撃墜されて全身に大火傷を負ったんだぞ?』

 

「や、火傷!?ゼロワンちょっと後ろ向いてて!」

 

ゼロワンに背後を向かせると一夏は患者服の上を脱いで上半身の包帯を外す。

 

(嘘……全く傷がない…。)

 

その後下半身も見てみたが、傷らしい傷は1つも無い。

 

「そんな馬鹿な……。」

 

時間が経つに連れて一夏もだんだんと福音との戦いを思い出して来たからわかる。あれだけの光弾を叩き込まれて無事な筈は無い。

 

「一体何が?」

 

「機体に救われたってだけよ。」

 

不意に背後から、自分と全く同じ声がする。

見るとあらゆる窓という窓に黒い一夏が映っていた。

 

『こ、これは一体?』

 

何故かゼロワンにも見えてるらしい鏡の中の一夏は怪しげな笑みを浮かべたままじっとこちらを見ている。

 

「一夏!」

 

するといつの間に部屋に入って来たのか背後に千冬がいた。

 

「千冬ねむぎゅ!」

 

「どこも、どこも痛く無いのか?

もう全部治っているのか?」

 

千冬は普段の彼女から想像出来ないぐらいボロボロ泣きながら一夏を抱きしめた。

 

「ぷは!落ち着いて千冬姉。私は平気。

むしろ今の千冬姉のハグが一番苦しかったぐらい。」

 

「そうか…よかった。」

 

「もう泣かないでよ。それより箒達は怪我とか無かった?」

 

「あ、ああ。ファーストエンゲージではな。」

 

「?……なんか歯切れ悪いね。なにか、あったの?」

 

「……お前と三春以外の専用機持ち全員が福音討伐に向かった。

今指揮は山田先生が採っている。」

 

「!? 行かなきゃ!ゼロワン!」

 

『ああ!』

 

千冬が来たため隠れていたゼロワンを呼び戻し、

外に飛び出す。

 

「ま、待て一夏!行くな!」

 

千冬が追いかけて来たが気にしてられない。

兎に角走る。

 

「あら?まさかあなたISに乗る気?」

 

また鏡の自分が語りかけて来た。

 

「そうしないとケイタ達を助けに行けないよ!」

 

「ほーら!そうやってケイタをダシにして黒法に乗りたいんでしょ?」

 

「そんな事ない!ただ黒法が一番確実ってだけで…」

 

「またあの力を奮いたいんでしょ?

そういうとこ、あなたが聖人君子じゃない証。」

 

「そんな、そんな事は!」

 

「あるわよね?だってあなた、

口では綺麗事を言っても、

心は真っ黒なんだから!」

 

はっはっはっはっはっ!と一夏に良く似た高笑いをあげる。

一夏は、自信がなくなってしまった。

もうここまで言われてしまえばそれが真実な気がしてならない。

 

それに、今よく一緒にいる仲間たちの中でケイタが一番大事なのは紛れもない事実じゃ無いか?

 

そんな風にネガティブに考えているとおかしな記憶が出てくる。

 

 

「検体番号■■■■■■■■■■を■■■夏と呼ぶ。」

 

     「織斑千■のよう■■は■■■ないか。」

 

「しかしこれ■■■で使い用が」

 

 

「う、うぅ…ヴゥああアアアあ!」

 

「一夏?一夏どうしたんだ?」

 

「防護服の、人達。」

 

「え?」

 

「人体、実験?胎児の入った大きなビーカー……。」

 

「い、一夏?一体なぜそれを?」

 

「分かんないけど、きっと、うんと昔のこと…。」

 

何故か分からないが泣きたくなった。

 

「何?何なの?全く、全く分かんない!」

 

「一夏!何も考えなくていい!

お前は、お前は何もしなくていい!」

 

「そうよ一夏(わたし)!そのまま全部忘れていつまでもおんぶに抱っこでいいのよ!今まで誰にも甘えられなかった!

千冬姉はいつも家に居なくて三春兄は勝手に使命感じて遠くに行った!

可憐ちゃんに弱味を見せるわけにも網島のおじさんとおばさんに負担をかける訳にはいかない。

 

唯一弱味を見せれるのはケイタぐらいだった!

だからいいのよ。今更ながら甘えたって逃げたって。

もう全部何もかも忘れて千冬姉に依存しちゃいなよ!」

 

何もかも何と気合いに満ちた甘美な誘惑だろう。

黒法の、夜桜の比じゃない。頭の上までどっぷりと浸かってしまいたくなる。

何もかも投げ出したくなる。

 

「………駄目、それだけは出来ない!」

 

「なんでだ一夏!お前が戦う必要なんて!」

 

「確かに私は夜桜の誘惑に負ける最低最悪の面がある!

けどだからって全部を捨てたくない!」

 

「何?また我儘?」

 

鏡の一夏が嘲笑う。

 

「そうだよ。まだ私は自分の悪いとこしか、

まだ半分しか自分を知らない。翔兄やフィリップ兄は言ってた。『Nobody's Perfect』

完璧なんてない。だから私は良いも悪いも両方を受け入れた上で未来の自分に賭ける!」

 

あなたは私だ!私もあなただ!

一夏は叫んだ。

鏡の一夏は一瞬驚くと黒いチェーンを、

待機形態の黒法を取り出し

 

「好きに使いな。」

 

面白くなさそうに一夏に投げ渡した。

 

(!? 鏡の中から物が出てきた!?)

 

「……ありがとう。」

 

「精々気を付けなさい。

私はあなたを消したくてうずうずしてる。」

 

「平気よ。私は負けない。」

 

そう笑顔で返すと一夏はまた走り出す。

 

「だ、駄目だ!行くな一夏!行かないでくれ!」

 

「………離して千冬姉。」

 

「行かないなら離す!」

 

「無理だから。」

 

「なんでだ!なんで行くんだ一夏!

三春だけでよかった、

いや三春だけでも駄目なのにお前まで行かないでくれ!

全ての問題は私が解決する!だから!」

 

「黙れ馬鹿姉貴!」

 

「い、一夏?」

 

「千冬姉さぁ、そうやって私達の事とか家族の事とかISの事とか全部1人で背負い込んでどうにかなった事、今まで1回だってあった?」

 

例えば白騎士事件とか、モンド・グロッソとか、日々の生活とか。

まるでチベットスナギツネみたいな鋭い視線と言葉で千冬を刺す一夏。

 

「い、一夏それは…」

 

「そうやって私達を危険から遠ざけようとしてくれたのは素直に感謝だけど、アンタなんかに私の道を全部選んでもらう必要ない。」

 

手を振り解きゆっくりと正面から向き合う。

この一言だけは、目を見て言わないと、真剣だと伝えないと駄目だ。

 

「私、ケイタの事が好き、いとこ同士じゃなくて男の子として。」

 

ガツン!と後頭部を金槌で殴られた様な顔で千冬はフリーズした。

 

「これは私が決めた事。私だけが選んだ事。

他の誰にも絶対に譲らない事。だから行く。」

 

今度こそ一夏は千冬を振り切って走って行った。

そしてその場に呆然自失の千冬と鏡の中の一夏だけが残る。

 

「たく、ムカつく良い顔。」

 

「あの顔させる為に一芝居も二芝居も打ったくせに?」

 

「黙れ老骨。お前こそコアがリセットされた筈なのになんで残ってるんだよ?」 

 

黒い着流しの三十路ぐらいの男に鬱陶しげな視線を向ける。

 

「全く、可愛くないなぁ。もうパパが嫌いな歳?」

 

「誰がパパよ誰が!はぁ…ホントあんたと一生一緒とか最高じゃない。」

 

「ありがとう。」

 

「褒めてない! それより白式の方の2人はあの娘になんて言うと思う?」

 

「君程刺々しい物言いはしないんじゃない?」

 

「でしょうね。一夏、足掻きなさいよ。

私達黒法に、飲み込まれずに足掻いて見せなさい。」

 

2人のI()S()()()()()は鏡の中から消えていった。

 

 

 

4

ベンタラから帰還した蓮は海之を千夜に、

真耶を心愛に任せるとケイタを休ませ、

自身のISの調整を始めた。

 

「レンさん、少々宜しいでしょうか?」

 

「どうしたオルコット ?」

 

「レンさんは人を、殺した事はありますか?」

 

「あるな。」

 

「!? 辛く、ありませんでしたか?」

 

「まあ、最初はな。だけど段々忘れていって、

気付いた様に思い出して後悔する。

仕方なかったと自分に言い訳しながらな。」

 

嫌なら今からでも降りていいぞ?

作業の手を止めずに蓮は言った。

しかしセシリアは

 

「いえ、わたくしは降りませんわ。」

 

「なら覚悟ぐらいはしておけ。」

 

「はい。」

 

軍人なんてクソだな。

と思いながら蓮はセシリアを見送った。

 

 

 

5

「馬鹿馬鹿馬鹿!海之ちゃんの馬鹿!

あんだけ無茶はしないでって言ったのに!

死んじゃ駄目って言ってるのにまた無茶して!」

 

「分かった分かった!

私が馬鹿だったから疲れてるのに耳元で叫ばないでくれ悪かったから!」

 

絶対安静を言い渡された海之は自業自得とはいえ、

役に立つつもりが人員を割かせてしまったなと反省した。

 

「(それに私の占い通りなら、そろそろだな。)なあ千夜悪いが水を一杯持って来てくれないか?」

 

「いいけど、抜け出すつもりじゃないよね?」

 

「こんな満身創痍の体で手伝いに行った所で皆の仕事を増やすだけだ。

頼むよ喉が乾いて仕方ないんだ。」

 

一杯だけだからね!

と言って千夜はしっかり部屋に鍵をかけて出ていった。

 

(そうだ。それでいい…ウッ!)

 

占った通りだ。

胸の中に塊が詰め込まれた様な異物感と共に手先が冷たい針を通された様な激痛が走る。

 

「ーーーーーッ!」

 

見ると右手の血管が全て固まった血の様な黒に変色して浮かび上がっていた。

なんとか激痛に耐えて呼吸を整えると元に戻る。

 

(変身拒否反応(リジェクション)……なんて代償だ!)

 

痛みが引くと頭がボーッとして眠気と倦怠感が襲って来た。

 

(やはり、何か血液循環に異常が起こるのか…

クラクラして目がショボショボする……駄目だ頭回らん…寝よ。)

 

海之は意識を手放した。

それと同じタイミングで千夜が戻ってくる。

 

「海之ちゃんお水…あれ?…寝てる。」

 

またこんな疲れるまで無茶して。

ベントされるより先に過労か心労で倒れるじゃないだろうかと割と本気で思う千夜だった。

 

「代われる人が居ないからって、雄一君の二の舞は嫌だからって無茶して。」

 

君のせいだからね雄一君。

もうどこにもいない雄一に文句を言いながら千夜は窓の外の空を見上げた。

 

「ずるいよ雄一君。あんなに海之ちゃんが頑張るのも君のせいだからね。」

 

君なら海之ちゃんを幸せにすると思って身を引いたのに君が海之ちゃんの呪いになっちゃ意味ないじゃん。

 

本当に悲しそうに千夜は俯くと千夜は海之から没収したスティングのデッキを構えてポーズを取る。

 

「カメンライダー!……やっぱり無理か。」

 

力なく笑いながらデッキをテーブルに置き、

海之が眠る横に座る。

 

「手塚さん?宇治松さん?入るよ?」

 

「網島君、どうぞ。」

 

「手塚さんどう?」

 

「今は寝てる。て言うか網島君こそ大丈夫なの?

海之ちゃんが助けに入らなかったら危うくベントされる所だったって聞いてるけど?」

 

「ま、まあ…けど元々頑丈が取り柄だからね。」

 

お前のせいで海之ちゃんがまた無茶を!

と思う一方でそれを言い出したらキリがないと思えるぐらいには千夜は大人だった。

 

ふーん。とだけ返す。

 

「行くの?一夏ちゃんの敵討ちに。」

 

「ああ、もしなんかあったら山田先生のこと頼んだ。

あの人もさっきの戦いでそれなりのダメージを受けてる筈なんだ。」

 

「分かった。網島君達も気を付けね?」

 

「ああ、行ってきます。」

 

ケイタは部屋を後にした。

再び部屋に静寂と2人だけの空間が戻った。

 

 

 

6

ファーストエンゲージから3時間、

専用機持ち達の姿は浜辺にあった。

 

『もしもし皆さん聞こえますか?』

 

心愛の助けを借りながら真耶が無線で連絡してくる。

本当は海之同様安静にさせておくべきなのだが

 

「皆さんが戦っているのに寝てるなんて出来ません!

それにセイレーンの体は結構丈夫なんですよ?」

 

と、普段の真耶からは珍しいゴリ押しでIS調節の手伝いからオペレーターの仕事まで請け負うに至ったのだ。

 

「良好です。敵は動いていませんか?」

 

『はい、先程ブラウンウイングに偵察させましたが、

織斑さんを撃墜したポイントから動いていません。』

 

「了解しました。

では現時刻を持ってして銀の福音無力化作戦を再開する!

全機、機体認証コードをデリート!

対IS用特別交戦規定レベル3を発令する!

同士討ちに気を付けろ!」

 

「「「「「「「「了解!」」」」」」」」

 

9機のISが東の空に飛んで行く。

彼ら、彼女らの武運を祈って真耶と心愛はただ見送った。




ケイタ「次回、infinite DRAGON KNIGHTは!」
ラウラ「くらぇえええ!」
ロラン「やったか!?」
セシリア「あれは、二次移行!?」
蓮「ぐぁああああ!」
ケイタ「一夏!?」
一夏「これが私の答え!」
簪「一夏も二次移行を!」
ケイタ「行くぞ一夏!これで最後だ!」
2人「「はぁああああああああああ!」
心愛「次回、the Heat その7」
サード『これが、明日のリアル!』


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the Heat その7

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは遂に!一夏が復活しました!」
心愛「一夏ぢゃ〜ん!」
一夏「わ!心愛ちゃん泣かないの。」
ケイタ「後は福音へのリベンジだけだぜ!さてさてどうなる!?」
(op Anything Goes! 大黒摩季)


1

空中で胎児の様に丸まった鋼の何かが動かないで浮遊している。

あの戦闘から延々とその場に止まっている銀の福音だ。

 

静かに翼に抱きしめられた鋼の胎児は月の光を受けてどこか神話の一場面の様な美しさがあった。

そして今、その神話が一発の砲撃によって妨げられる。

 

「初弾命中。続けて砲撃を行う!」

 

砲撃の主はラウラと砲戦パッケージ『パンツァー・カノーニア』を装備したシュヴァルツェア・レーゲンだ。

 

(!? 敵機接近が予想より速い!)

 

目の前のISを兎に角倒せ!

そのプログラムに突き動かされ銀の福音はラウラに迫った。

 

機動力特化の銀の福音に対して砲戦パッケージを積んだレーゲンはそんなに早くは動けない。

連写性能も向こうの方が上だ。

距離を詰めた福音の右手がラウラに伸ばされる!

 

「セシリア!レン少佐!」

 

事はなかった。飛び出して来た青と黒の機体に弾かれる。

強襲型パッケージ『ストライク・ガンナー』を装備したブルー・ティアーズと高速戦用パッケージ『サムライソニック006』を装備した打鉄黒翔だ。

 

セシリアはレーザーライフル『スターダスト・シューター』を、蓮はサムライエッジliv004で福音を攻撃する。

 

「テキ…排除!」

 

「節穴。」

 

「遅いよ」

 

それは陽動だった。セシリアと蓮の背中に隠れて現れたシャルロットと簪は真後ろからショットガン二丁と機関砲を浴びせて福音の体制を崩す。

 

しかしそれも一瞬の事、すぐさま光弾を背後の二機にも飛ばすが、

 

「悪いけど、この『ガーデン・カーテン』はそのくらいじゃ落ちないよ」

 

「お前なんかのが通じるほど、この『不動岩山』は柔じゃない!」

 

2枚ずつ展開されたエネルギーシールドと物理シールド、

そしてスクリーン型のバリアに尽く阻まれる。

 

そして防御の合間にもシャルロットと簪は武器を取り換えタイミングをもって反撃する。

 

加えて高速機動射撃のセシリアと蓮に、

砲撃のラウラ、砲撃の檻に閉じ込められた福音はじわじわと消耗を始める!

 

「ク、空域カラ離脱ヲ!」

 

全方向に光弾を放った福音は全スラスターを開いて強行突破を計る。

 

「させるかぁ!」

 

海面から2発の砲弾…否、砲弾と化した紅椿とオーランディ・ブルームとその背中に乗った甲龍と赤龍改だった。

 

「今ここで叩き落とす!」

 

福音へと肉薄する紅椿とオーランディ・ブルーム。

その背中から飛び降りた鈴音は機能増幅パッケージ『崩山』をケイタは『逆鱗閃甲』を纏わせた『クアッド・ファランクス改』を展開する。

 

両肩の衝撃砲と共に増設された二つの砲口がクアッド・ファランクス改と共に火を吹いた。

福音にも勝る火炎球と砲撃ビームが福音に雨霰と降り注ぐ。

 

「やりましたの!?」

 

「フラグを建てるなオルコット!

お約束通りまだまだだぞ!」

 

両腕と翼を目一杯広げた福音が光を放ち、爆ぜる。

光弾の一斉砲撃が始まった。

 

「畜生!皆俺たちの背後に!」

 

両腕と一体化した盾に『逆鱗閃甲』を纏わせたケイタに、シャルロット、簪が前に出て盾になる。

 

「こいつはヘビィだぜ!」

 

いくら単一仕様や防御用パッケージとは言え軍用機の攻撃に晒されて続ければ長くは保たない。

元にたった今シャルロットの物理シールドが一枚破られた。

 

「セシリア!ラウラ!ロラン!ケイタ!」

 

「言われずとも!」

 

「お任せになって!」

 

「了解だ!」

 

「よし来た!」

 

後退するシャルロット、簪に合わせて上下左右に分かれた4人は交互に砲撃、射撃を行う!

 

「足が止まればこっちのもんよ!」

 

そして直下から鈴音は双天牙月による斬撃と至近距離からの拡散衝撃砲を浴びせる。そして遂に!

 

「もらったあああっ!!」

 

エネルギー弾を全身に浴びながらも鈴音は頭部のマルチスラスターを破壊した。そしてそのまま拡散衝撃砲との連続攻撃で片翼までも奪う!

 

「はっ、はっ……!どうよぐっぅ!」

 

隻翼になりながらも福音は直ぐに体勢を立て直し鈴音の左半身に回し蹴りを叩き込む。

腕部アーマーの破片を撒き散らしながら鈴音は真っ逆さまに海に落ちて行った。

 

「鳳!」

 

「鈴!おのれっーー!」

 

箒と蓮は空裂とサムライカリバー001を構えて福音に斬りかかる。

両肩に刃が食い込んだ。

 

(獲った!)

 

(このままブッタ斬る!)

 

そう思った瞬間福音は二本の剣を掴み、光弾の砲口を2人に向けた。

 

「なっ!?」

 

「滅茶苦茶は、お互い様だな!」

 

ぐるん!と剣を軸に1回転した蓮はサムライカリバーを()()()()()()()福音の背中に爪先蹴りを浴びせる。

 

「やれ!篠ノ之!」

 

「だあああああっ!!!」

 

箒も同じ様に1回転して展開装甲を発動した爪先で残った翼を蹴り壊す!

遂に両翼をなくした福音は海面に落ちて行った。

 

「おい皆生きてるか!?」

 

珍しくラウラが慌てながら全員に問いかける。

 

「俺は平気だ。皆は?」

 

「なんともない。」

 

「大丈夫だよ!」

 

「う…ギギ……こちら鈴。今どっか海の中。

左手が馬鹿みたいに痛いけどそれ以外は。」

 

「てことは!」

 

私達の勝ちだ! そう誰かが言おうとした時、

蓮はおかしな物を見つけた。

 

「おいアレなんだ?なんか海の中が光って」

 

それより先を蓮が言う事はなかった。

海が破裂するのと同時に放たれた青白い雷に撃墜されたからだ。

 

遅れて一同が海を見ると、そこにはクレーターが出来ていた。

その中心にいるのは、溢れんばかりの殺意を鋼の瞳に宿し、

エネルギーの翼を広げた銀の福音第二形態だ。

 

「まさか、セカンド・シフト!?」

 

「言ってる場合か!散れ!」

 

「ギャアアアアア!!!!!」

 

エネルギーの翼から無数の小さな羽が芽吹いて中から破壊の矢が放たれる。

まず1番遅いラウラが、次にロラン、簪、シャルロット、セシリアと次々仲間たちは撃墜されていく。

 

(軍用機ってあんなデタラメなのかよ!)

 

《通常セカンド・シフトしてもここまでにはならん!

まずいぞ、全員辛うじてバイタルは確認出来るがシールドエネルギーが尽きかけてる。損傷も激しい。

もうまともに飛べてるのは我々と篠ノ之箒だけだ!)

 

今ある戦力で最強の布陣で臨んだ。

全力を持って戦った。その結果が全滅?

 

「んな事認めてたまるかあああああっ!!!」

 

海上に浮かんでいたロランのレイピア・カウスと鈴音の双天牙月の片方を掴み上げると『逆鱗閃甲』を纏わせて光弾を斬りながら進む。

 

よく見ると福音のバイザーに覆われた顔に飢えた獣の様な文様が浮かび、アーマーにも不気味な血管の様な柄が出ている。

 

「それっぽくなって来たじゃねぇか!」

 

崩れかけの武器を捨て、背中のマウントラッチから『鳳羽』を引き抜き、跳ぶ!

 

「いっけえええ!!」

 

『よせケイタ!今の赤龍改の装甲では蜂の巣にされるぞ!』

 

「もう引き返せるか!」

 

最大の光弾がケイタと箒に迫る、その時

 

 

 

2

「もしもし!もしもし!誰か!誰でもいいから応答してください!誰か!」

 

誰も応答しない。

バイタルだけは全員が無事だと知らせてくれるが、

なんの気休めにもならない。

真耶と心愛は管制室で固唾を飲んで見守るしかなかった。

 

「せ、先生!どうしよう?私どうしたら!」

 

「落ち着いてください保登さん。

私達が取り乱しても事態は好転しません。

きっと、きっと大丈夫です!」

 

後半は殆ど自分に言い聞かせる様だった。

 

『もしもし!もしもしこちら甲龍!誰か応答して!』

 

「鳳さん!?こちら管制室、どうしました?」

 

『先生助けて!

銀の福音が第二形態移行して、皆撃ち落とされて!

さっきアキヤマ見つけたけど息してないの!

助けて先生!アンタ仮面ライダーでしょ!?』

 

「……鳳さん落ち着いて下さい。

アキヤマ君の心臓は動いてますね?

こちらからバイタルが確認できます。

まずは人工呼吸を」

 

そこまで言ったところでキーン、キーンと耳鳴りの様な音が響く。

鏡を見ると谷本と相川がサメ型のビースト、アビスラッシャーとアビスハンマーに連れ去られようとしていた。

 

「不味いですね。保登さん!」

 

「ウェ!は、はい!」

 

心愛にヘッドセットを渡し、

人工呼吸の仕方をなるべく丁寧に早口でまくし立てると真耶はデッキを構えてポーズを取る。

 

「カメンライダー!」

 

真耶は片翼になったセイレーンに変身した。

 

「ま、待って先生!私が、私がやっても!」

 

「保登さん!今助けを求めと来たのはあなたにとって何ですか?」

 

「? 友達です。」

 

「ならあなたが助けてください。

今それを出来るのはただ1人あなただけです。

私は私にしか出来ないことをして来ます!」

 

はい!と心愛が頷くとセイレーンはベンタラ側にダイブしてカードをきった。

 

<GUARD VENT>

 

ブラウンウイングの背中を模した小型の盾、

ウイングシールドを装備し、羽型のエネルギーチャフを展開する。

 

混乱する二体にブラウンバイザーで斬撃を与えて谷本と相川を解放する。

 

「鏡に向かって走って!早く!」

 

2人を逃して、まだチャフの中で右往左往する二体のビーストに斬撃を与えて行く。

 

(よし、このまま!)

 

しかしパターンを読まれたのか5度めの攻撃でアビスハンマーを攻撃してる間にアビスラッシャーに背中の傷を抉る様に引っ掻かれる。

 

「あがああああああああああああああ!!」

 

絹を裂くような絶叫が響く。

吹き出した鮮血がセイレーンの鎧を真っ赤に染めた。

それを目印に二体のビーストがセイレーンをリンチにする。

 

「こう、なれば、一か八かです!」

 

<FINAL VENT>

 

「ブラウンウイング!」

 

猛禽類の様な叫び声を上げながら飛来したブラウンウイングは両翼で突風を作り出し、二体のビーストを天高く巻き上げる。

 

セイレーンはバイザーを地面に突き刺して耐えた。

そして武器をウイングスラッシャーに持ち替え、

ブラウンウイングに乗って跳ぶ!

必殺技、ミスティフラッシュをまともに喰らった二体は空中で爆散した。

 

無事に着地するが、血を吐いて倒れ込むセイレーン。

口元を押さえた手からは粒子が上がっている。

 

(限界…ですか。)

 

自分が無くなっていくと言うよりは閉じ込められる、

封印される様な感覚なのは本能が死を拒絶してるからだろうか?

 

「でも、せめて、見届けないと……ブラウンウイング、お願いがあります。」

 

なんとかブラウンウイングの背中に乗せてもらい、

ベンタラのビルの窓から地球側の海に戻った。

戦闘が行われているはずの方角で空が光った。

ライダーの鎧で強化された視覚がとらえたのは

 

 

 

3

冷たい風に頬を撫でられ蓮は目を覚ました。

 

「………?」

 

状況を確認する。何故か俺は今、高速道路(ハイウェイ)の外灯に寄りかかる様に寝ていた。

目の前には事故を起こしたらしいバイクとそれに乗っていたらしい少年少女が倒れていた。

 

「おい大丈夫…いや、そんな馬鹿な。」

 

少年の顔を覗き込むとその顔は蓮と全く同じだった。

少女の方も見てみる。その顔はエリーと同じだった。

 

「こいつは…いったい?」

 

「君の最初の傷だ。」

 

その声に振り返る。そこには予想外の者がいた。

 

「ウイングナイトだと!」

 

驚いて自分のポケットの中のデッキを確認する。

 

「お前は、誰だ?」

 

「お前の姿を借りてるだけの者だ。」

 

そう言ってウイングナイトはデッキから一枚のカードを引き抜く。

 

「力が欲しいか?」

 

絵柄を見せる。

それはついさっき海之に取られたままのサバイブカードだった。

 

「そいつタダでか?」

 

「お前が望めばな。」

 

「寄越せ。」

 

蓮は躊躇なく手を伸ばした。

 

「後悔しないか?」

 

「俺は1秒でも早くエリーを目覚めさせられるならどんな手段も大歓迎だ。」

 

「網島ケイタ達を倒す結果になってもか?」

 

ウイングナイトの青く光る複眼を真っ直ぐ見る。

奴は暗にその力でお前が一夏と黒法の様に大事な物を傷付けるかもだぞ?

と言っているのだ。

 

「ありえないな。俺がさせない。」

 

「その根拠のない自信はどこから来るんだ?」

 

「自信はない。だから無条件にそうだと思う事にした。」

 

それに、と一旦言葉を切って、力強くウイングナイトを見据える。

 

「ケイタ達が、俺みたいな目覚めない女に縋って生きてる道化に負けるはず無いさ。」

 

冷たい風が吹き抜ける。

不思議とウイングナイトが笑った気がした。

 

「なら行け。出口はあっちだ。」

 

ウイングナイトの指した先に蓮は振り返らず全力で走った。

 

「……サードはあんな奴と毎日話してるのか、羨ましいな。」

 

誰に言うでもなくウイングナイトの姿をしたコア人格は蓮を最後まで見送った。

 

 

 

4

ケイタと箒に避けきれない数の光弾が炸裂する直前。

陸の方から飛来した誰かが剣の一振りで消し去った。

 

その闇に溶けるような黒い機体とそれを狩る少女の亜麻色の髪が風に揺れるのが美しい。禁断の宝刀を携え現れた増援は

 

「強盗かと思った?」

 

「「一夏!」」

 

「お待たせ、ヒロインは遅れてやって来たよ!

って2人とも泣いてるの?」

 

「な、泣いてなど!」

 

「そ、そうだよ別に信じてたし!」

 

『こんな時ぐらい素直になったらどうだ?』

 

『そんな事より来るぞ!』

 

ゼロワンが叫ぶと同時に再び光弾が襲って来た。

一夏は臆する様子もなく満壊極夜を発動して光弾を受けて、受けて、受けまくる!

 

「ゼロワン!今吸ったエネルギー全部夜桜に!」

 

『了解だ!』

 

光を喰らう暴食の魔剣から巨大な光を纏いし破邪の聖大剣に変わった夜桜が福音に振るわれる。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

光の翼を消しながら左肩から袈裟斬りにする。

しかし次の瞬間には眩い光と共に再生する。

 

「ま、そう簡単に勝たせてくれないか。」

 

「その方が倒し甲斐があるってもんだぜ」

 

「ならば行くぞ!」

 

 

 

5

「アキヤマ!アキヤマ!起きて!起きてよ!」

 

『大丈夫です、呼吸も正常に戻ったはず!』

 

誰だろう、なんだか不思議な夢を見ていたのは思い出せるがこんな叩き起こされる程忙しかった覚えはない。

 

(ここの所なんか急ぎの予定は…あ、そうだ。福音討伐…)

 

ようやく目が覚めて身体を起こした。

今にも泣きそうな、と言うか泣きはらした顔の鈴音が目に入る。

 

(鳳、俺は今何時間気絶してた?)

 

「アキヤマ!良かった!」

 

『レン様!ご無事なのですね?レン様!」

 

「お前ら落ち着け。で、状況は?」

 

「なんでか分からないけど全快した一夏が黒法に乗って来て今ケイタと篠ノ之と一緒に戦ってる」

 

「他の奴らは?」

 

『レン様同様撃墜されて意識不明です。

バイタル、肺活量共に正常ですが。』

 

見ると鈴音の甲龍もスラスターが滅茶苦茶に潰れている。

これでは飛べないだろう。

 

「よし来た。鳳、原型を留めてたらなら双天牙月を貸せ。

一矢…いや、一閃報いてくる。」

 

そう言って鈴音から半分だけの双天牙月と残りの甲龍のエネルギーを受け取る。

 

「アンタ、起こしといてなんだけど私よりボロボロだけど?」

 

「秘策はある。まあ見てろよ。

クリスチャン大国アメリカの少年が福音を斬り裂く衝撃映像をな!」

 

軋む機体に鞭を打って双天牙月を居合斬りの様に構えて飛ぶ。

 

『レン様、それでその秘策とは?』

 

「ただ速く翔ぶ。」

 

『………レン様お戻り下さい。

あなたは正気じゃありません!』

 

「掴むんだよ。自分が何者よりも速いって感覚を。

その為に何もかも捧げながらも強欲に代償を踏み倒す蛮行を。

それが、活路。このレン・アキヤマが進む路だ!」

 

『撃墜された時に脳でも欠けましたか!?

お前は何を言ってるんだ!』

 

「全てのエネルギーをスピードに回せ!

イニシエイト・コア・クラック・シークエンスで生命補助に回してる分も全部だ!」

 

『死ぬ気か!?』

 

「俺は死なない!知ってるだろ?」

 

『………レン。お前のバディになったのが運の尽きだよ。』

 

「ありがとう相棒。やるぞ!勝負はこれだけだ!」

 

そして一条の光が翔けた。

遅れて暴風と、一撃でパイロットの脚ごとアーマーを両断された福音が回転しながら落下する。

そしてケイタ達が見上げた先には

 

「「蓮(レン)!」」

 

「打鉄黒翔改・夜蒼の一番星(ナイトブルーファーストスター)

 

第二形態移行した打鉄黒翔の姿があった。

それは細身だった打鉄黒翔に輪をかけて細く、

下半身にスカート型の多段スラスターが付いた速さだけを追求したスタイルをしている。

 

実際黒翔改は速い。ハイパーセンサーでも追えない程に速い。

では何故蓮は無事なのか?

 

その理由は単一仕様『永光星火(えいこうせいか)』にある。

 

永光星火は零落白夜のような攻撃特化型でも逆鱗閃甲のような万能型とも違う『生存特化型』 つまりエネルギーがほぼ満タンの時に限りパイロットの生命を残りのエネルギーと引き換えに無条件に守り切る。

 

たった一回に限り、スピード、防御共に無敵。

それが一瞬だけ福音を完全に無防備にした奇跡の正体だった。

 

「畳み掛けろ!」

 

ケイタは二本の鳳羽を、

一夏は夜桜を構えて最大戦速で突っ込む!

 

「ギャアアアアア!!!!!」

 

最後の足掻きとばかりにエネルギーというエネルギーを攻撃にして放つ福音。

 

(不味い!このままじゃ肉薄するより先にエネルギーが尽きる!)

 

(こんな所で、また同じ過ちを繰り返すものか!)

 

箒の思いが通じたのか、それとも天災(たばね)のイタズラか、

紅椿の展開装甲が優しい光を放つ。

 

(エネルギーが増えてく!?まさか箒も単一仕様を!?)

 

「サンキュー篠ノ之さん!行くぞ一夏!これで最後だ!!!」

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

逆鱗閃甲を纏った鳳羽と満壊極夜を纏った夜桜が福音に食い込む。

 

「あと、一押し!ゼロワン、白式展開!」

 

『本気か一夏!?お前の体が持たないぞ!』

 

「そこは信じてるよバディ!」

 

『な! 全く無茶を!いいだろう。やってやるぞバディ!』

 

ゼロワンは電脳空間内でつい最近実用化されたばかりの3機を呼び出した。

 

『サーチャー、ディテクター、クロノ!』

 

最強の分析力のサーチャーとディテクター、

そしてフォンブレイバーの機能拡張のクロノ、

三体のアクセルデバイスを同時に着身する。

 

『三体着身メガ・アクセル・ガンマ!着身完了!

白式にアクセス…アクセス完了。』

 

2つのISを同時に使う。普通は無理だが、ゼロワンには策があった。

 

《ISコアをブラックボックスたらしめる特殊暗号は共通だ。

これを双方向に通信が可能な機会ととらえさせ、

二体の回路に互いの暗号を解析しあわせ結合させる!》

 

つまりそこで生まれるのは

 

『融合形態、単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)

我ながら恐ろしいものを作ってしまった。』

 

黒法のディストーションブラックの鎧の上から白式のパールホワイトの装甲が追加され、夜桜にも雪片弐型の展開装甲、つまり零落白夜の力が加わる!

 

「これで最後だあああああ!!!」

 

「はぁああああ!だああああ!!」

 

三閃。福音の身体が三文字に切り裂かれる。

 

パイロットの傷を回復させてエネルギーを完全に使い切った福音が、堕ちた。

 

 

 

5

「やりましたね皆さん」

 

遠くの空からなんとか飛べるだけのエネルギーが残っていた赤龍改、黒法、紅椿に乗った一同がはしゃぎながら戻ってくるのが見える。

 

それを見て安心したのがいけなかったのか、

なんとか立っていたが遂に真耶は膝をついた。

 

(残念、だなぁ…あの子達の卒業まで見たかったなぁ。)

 

セイレーンの鎧が光になって弾け、

現れた生身が音を立てて砕け出した。

これがベント。

 

(お父さん、私ちゃんと出来たかな?

あの子達の先生になれたかな?)

 

空に向かって手を伸ばす。

何故だかそこに出口がある気がした。

 

鏡が砕けるような音。残ったデッキだけが砂に落ちる。

それを看取った者は居なかった。

 

仮面ライダーセイレーン=山田真耶 脱落

       残り 8人

 

 

 

6

夜。ケイタとセブンは浜辺を歩いていた。

 

「なあ、セブン。」

 

『なんだ?』

 

「俺たち勝ったよな。」

 

『勝ったな』

 

「終わったよな」

 

『終わったな』

 

「本当にそう思うか?」

 

『……何が言いたい?』

 

「いや、福音が暴走したのって本当にただの不幸な偶然なのかな?って。」

 

『君もアキヤマが言う様に篠ノ之束の策略だと思うのか?』

 

「いや、そうなんだけどあの人ならもっと大々的にやらない?」

 

『大々的?』

 

「確かに軍用機と戦って勝てば紅椿と黒法の強さは証明されるけど、

白騎士事件程の騒ぎにはならないよな?」

 

『…まあ、上で止められるだろうな。』

 

「だったら篠ノ之博士の目的は、こいつだったんじゃないかって。」

 

ドラゴンナイトのデッキを取り出すケイタ。

 

『まさか篠ノ之束がライダーの技術を狙っていると!?

だとしたら間明達は…』

 

「混乱に乗じて攻めて来ただけだろうね。」

 

篠ノ之博士はどこまでライダーについて知っているのか、

間明達はどこまで篠ノ之博士の思惑に気付いて行動しているのか、

何にせよ一筋縄じゃ行かない。

 

「どーしたもんかな?」

 

何となく、貝を拾って海に投げようと屈む。

しかし掴んだのは

 

「セイレーンに、トルクのデッキ?」

 

かなり長い時間放置されていた様で砂を被っていたが、間違いない。

 

「せ、セブン?近くに、近くに山田先生は!」

 

『居ない。恐らく、ベントされた。』

 

頭が真っ白になった。先生が、ベントされた。

たった3ヶ月足らずの付き合いとはいえ、

いい先生だった。

ぎこちない挨拶からシャルロットの為に見せた真剣で優しい表情まで次々と浮かんでは消えていく。

 

あの人が笑う事はもうない。

あの人がここにいた証拠さえ、

もうこのデッキしかない。

 

不意に全身に火傷を負って包帯だらけになった一夏を思い出す。

 

(嫌だ!…あんなのは2度とごめんだ!)

 

言いようの無い不安や焦燥感が襲ってくる。

 

「おーい!ケイタ!」

 

見ると入り口の方から一夏が降りて来る。

 

「一夏…もう、休んでなくていいのか!」

 

「休んでなくてって言うか、

これから休む所なのに誰かさんが居ないから探しに来たんですけど?」

 

もう直ぐ消灯時間だよ?と言って一夏はケイタの手を引く。

 

「待って。」

 

「え?」

 

ケイタは一夏の手を強く握り、振り向かせた。

 

「えっと…ケイタ?」

 

「嫌じゃ無いならだけど、一夏。

側にいてくれ。家族同士じゃなくて、そのさ。

……………こ、恋人同士で。」

 

「ッッッッッッ!!?」

 

ボンっ!と音がしそうな程、

一気に真っ赤になった一夏はなんとか言葉を紡ぐ。

 

「じょ、冗談やめてよ!こ、こんな、

千冬姉みたいなかっこよく無い女を?」

 

「優しくて素直で可愛い。」

 

「こ、こんな箒やセシリアみたいな色気のない女を?」

 

「細くて白くて綺麗だ。」

 

「………乳離れどころかママのおっぱいすら知らないからずっと代わりを探してる様な甘ったれを?」

 

「素直な証拠だ。」

 

握ったままの手を少し手の甲が見えるようにして跪き、

小さく口付けをする。

 

「どうか守らせてください。」

 

(ED Forever 真・仮面ライダー 序章)

 

ケイタが立ち上がるとその首に一夏が絡みつき、唇に噛みつく。

それが返事だった。

初キスの味はレモン味と聞いていたがそんなのより蕩ける程、甘い。

 

そして最後は言葉で

 

「ケイタ大好き。一緒にいて。」

 

「喜んで。」

 

2人は激しくお互いの口を貪り合う。

二機のフォンブレイバーだけが見ていた。




<イメージキャスト>
網島ケイタ=仮面ライダードラゴンナイト
 窪田正孝

織斑一夏
 釘宮理恵

レン・アキヤマ=仮面ライダーウイングナイト
 松田悟志

保登心愛
 佐倉綾音

フォンブレイバーセブン
  河本邦弘

フォンブレイバーゼロワン
 坪井智浩

フォンブレイバーサード
 川島得愛

篠ノ之箒
 日笠陽子

鳳鈴音
 今井麻美

シャルロット・コンスタン
 花澤香菜

ラウラ・ボーデヴィッヒ
 井上 麻里奈

更識簪=仮面ライダーアックス
 三森すずこ

ロランツィーネ・ローランディフィルネィ
 三澤紗千香

山田真耶=仮面ライダーセイレーン
 下屋則子

精神世界のウイングナイト
 尾崎裕紀


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7のそ ʇɐǝɥ ǝɥʇ

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…。」
一夏「その、ねぇ?」
ケイタ「なんと申しますか…」
一夏「う、うん…」
蓮「こいつらがイチャコラして終わったな。」
ケイタ「ば、馬鹿蓮そんなストレートに!」
一夏「も、もっとオブラートに包んでよ!」
蓮「うるせえ、こちとらお前らがストロベリー空間真っ只中の間に結構大変な事になってたんだよ。」
一夏「大変なこと?」
蓮「それは本編を見て確かめてくれ。」
ケイタ「それでは、どうぞ!」


1

「う……ん?」

 

「起きたかボーデヴィッヒ。」

 

「!? レン少佐!ここは?」

 

「旅館だ。作戦は成功。

ダメージの酷かった福音のパイロットとコンスタンとローランディフィルネィはドクターヘリで聖都大学附属病院(せいとだいがくふぞくびょういん)に輸送された。

無傷のケイタと篠ノ之にダメージそこまででもなかったお前とオルコットと更識に鳳はここでの処置で済んでる。」

 

「そうですか、ところでケイタは?」

 

「さあな。夜風に当たって来るって言って出て行ったきりだ。

今一夏が探しに行ってる。」

 

「一夏?…は?今一夏って言いましたか?

彼女立てるようになったんですか?」

 

「立てるどころか福音にトドメを刺したのはアイツとケイタだ。」

 

「そんな馬鹿な…彼女は全身火傷を!」

 

「アイツが乗っていたのは篠ノ之束製のISだ。

何が起きたって一周回って驚かないよ。」

 

「そんな身も蓋もない…」

 

「兎に角今は休んでろ。

明日から事情聴取と上のお偉いさん方やメカニックの人達からの説教地獄だ。」

 

ぽん、とラウラの頭を撫でると蓮は部屋を出た。

「行くぞサード。」

 

『一体どこに?』

 

篠ノ之束(やくびょうがみ)のところだ。」

 

『かしこまりました。』

 

 

 

2

「ふーむ、紅椿の稼働率は単一仕様含めて42%ってとこか。」

 

退屈そうに空中投影タイプのディスプレイを眺めながら篠ノ之束は独りごちた。

そして続いて黒法の、黒法と白式の融合形態単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)のデータを表示する。

 

「まさか打鉄赤龍改(あのブサイク)みたいに『一つのISに二つのコアを搭載』するんじゃなくて『二つのISに二つのコアを共有』させるなんてフォンブレイバー(あのおもちゃ)も侮れないね。」

 

「そんな事より問題なのは、

白式がパイロットの身体を再生させた事だろう?」

 

「ちーちゃん。」

 

「おう。」

 

2人は向き合わないまま話した。

 

「まるで、白騎士みたいだよね。」

 

「ああ、コアナンバー001。

お前が心血注いで作ったあの機体みたいだよな。」

 

「あのコアのデータは黒法のコアと一緒に一回綺麗に消した筈なんだけどね。」

 

なんてこともない様に呟く束。

 

「やっぱり、はじめからお前が一枚も二枚も噛んでたわけか。」

 

すっ、と木々の奥から私服姿の蓮が現れた。

 

「アキヤマ…」

 

「お前確か…いっちゃんと一緒にいた奴。なんでここに?」

 

「この辺りは自然保護の為にゴミを捨てに来る奴らを取り締まる為に監視カメラが置いてある。

ハッキング(いじられ)た監視カメラがあるかどうか調べて、

その辺りの足跡なんかをざっと調べりゃ簡単だ。」

 

「だけど束さんがいじった保証はないじゃん?」

 

「あんだけ綺麗にハッキング出来るのは12ヵ国のミサイル管理システムを同時に掌握出来る様な奴だけだ。」

 

そう言って蓮はカメラの確認に使ったソリッドドライバーと足跡を見つけるのに使ったサーチャーを見せる。

 

「へぇー、面白いね、君。名前は?」

 

「レン・アキヤマ。」

 

「ふーんそう。」

 

バッ!と蓮の背後に黒いボディに赤い単眼の全身装甲(フルスキン)のISが現れる。

 

「墓石ぐらい立ててあげるよ。」

 

そのISの持つ巨大な剣が蓮に振り下ろさられる!

 

「キィイイイイイイ!」

 

瞬間、何処からか飛来したダークウイングが体当たりで弾き飛ばした。

 

「な!」

 

「まさかお前が……」

 

「覚えておけ、俺こそがレン・アキヤマ。またの名を」

 

デッキを構えてVバックルを出現させ、叫ぶ。

 

デッキからエネルギーが解放されて、

蓮は戦う姿に変わった。

 

「仮面ライダーウイングナイトだ。」

 

「仮面、ライダー?」

 

千冬と束が面食らう内に復活した黒いISが突進して来た。

ウイングナイトは切り札をベントインした。

 

<FINAL VENT>

 

召喚されたウイングランサーを手に、

背中に合体したダークウイングと共に飛ぶ。

星光を受けて8つ目の北斗七星になるウイングナイト。

 

北斗七星が7つに戻った時、

上胸部と頭部をごっそり抉り貫かれたISは力なく膝まずき、止まった。

本来飛び散るはずのパイロットの人骨や脳漿はばら撒かれない。

 

「無人ISか。魂の無い機械人形(ロボット)風情を当て馬にされるとは俺も舐められたもんだな。」

 

動かなくなったISの下腹部、子宮の辺りに腕を突っ込み、

何かを抜き出すウイングナイト。

 

それはISコアだった。

 

「お前…今、翔んだのか?」

 

「だから俺はウイングナイトだ。」

 

「ふざけるな!私の!私の作ったインフィニット・ストラトス以外で空に飛び立てるなんて許せない!」

 

化け物の力を借りた醜悪な化け物が!

いろんな物をかなぐり捨てる様に頭を掻き毟り喚き散らす束。

 

「そんな物が君の拘りか?

天下の篠ノ之束も、随分と小さいね。」

 

振り返る3人。

レディーススーツに身を包んだ赤毛の女性が立っていた。

 

「お前は、亡国機業 のコードネームオータムだな。」

 

前に米軍の資料で見た写真を思い出しながらウイングランサーを構える蓮。

 

「いやそう呼ばれていた女の抜け殻さ。

そんな事より今日は篠ノ之束、

君の脳味噌の色を見に来た!」

 

女の腕からエネルギーの刃が放たれる。

すかさず横に飛んで避ける3人。

 

「馬鹿な…人間技じゃ無いぞ!」

 

「勿論、私は人間では無いからね!」

 

女の体が一瞬白く光り、カブトガニを思わせる黒い姿に変身した。

 

「いや、全く腹が立つよ。

君の様な我儘な子供風情に気を使って計画を練っていたと思うとね!」

 

その声は明らかに男の物に変化していた。

 

「まさかその声は…ゼイビアックス!」

 

「死ね!」

 

束に再び刃が放たれる。

 

「姉さん危ない!」

 

「!? 箒ちゃん?」

 

飛びしたのは箒だった。

ブレードに変身して身体ごと束の盾になる。

 

「ふん、君か。せめてスティングぐらいはベントしてくれると思っていたが、とんだ役立たずだったよ。」

 

念力でブレードを身体ごと持ち上げ、

急スピードで引き寄せる。

 

「ゴミは掃除だ。」

 

エネルギーを集めた光の刃で貫いた。

 

「がっ!……あぁ………」

 

「箒ちゃん!お前ぇえええ!!!」

 

ゼイビアックスに飛びかかるが、

エネルギーの波で直ぐに吹っ飛ばされた。

 

「おい篠ノ之!しっかりしろ篠ノ之!」

 

「ち、ちふゆ…さん、い、一夏に…ごめんって…」

 

「自分で言え!今すぐ病院に!」

 

ゆっくりと首を振るブレード。

その体からは粒子が上がっている。

 

「み、春にぃ…好きだった、って」

 

鏡を一気に砕いた様な音の後に、

箒の体は完全にデッキに吸い込まれて消えた。

 

「ああああああああ!!箒ちゃーん!!」

「篠ノ之!!!」

 

「……ゼイビアックス貴様!」

 

「やるかねウイングナイト?

まあ、いい。今回はこんな所か。

間明くんの獲物を横取りするのも無粋だしね。」

 

「何がだ!逃すと!逃すと思ってるのか!」

 

がなる束。余裕のゼイビアックス

 

「やめておけ。織斑一夏が私の間合いだ。」

 

いつの間にか出来ていた水溜りにケイタに甘えながらじゃれつく一夏が映る。

 

「き、貴様!」

 

「ふふふ、賢明だ。それでは、またいつか。」

 

水溜りを通ってゼイビアックスは消えて行った。

 

 

仮面ライダーブレード=篠ノ之箒 脱落

        残り 7人

 

 

蓮は地団駄を踏む束と頭を抱える千冬を横目にサードをケータイモードに戻してある人物に連絡をした。

 

「もしもし能見副主任?」

 

『もしもし?どうしました?』

 

「篠ノ之束博士からナンバー登録の無いコアを奪取した。

俺の黒翔をデュアルコア型に改修して欲しい。」

 

『それは上々。では細かい打ち合わせは後ほど。』

 

すぐに通信を切り、空を見上げる。

 

「まだまだ荒れるな。」

 

蓮はその場を後にした。

 

 

 

3

あらゆる物の左右が反転し、空には星座が狂った様に入り乱れる世界。

何もかもが反転したステージの上に黒いサマードレスの一夏と同じ姿の少女と着流しの男がいる。

 

「あのフォンブレイバーとかいうやつも滅茶苦茶やってくれたわね。」

 

「まさか、僕らと彼女らの世界が繋がるなんてね。」

 

ステージから飛び降りながら着流しの男は正面の階段から降りて、やって来た白いワンピースに色白の少女とどころか千冬に似た女性の前に立つ。

 

「こうして顔を合わせるのは、始めてだね。」

 

「よろしくね。なんて呼べばいいかしら?」

 

「そうだな…じゃあ僕が黒騎士で彼女が黒法かな?」

 

「じゃあ私は白式で。あっちが白騎士で。」

 

ニコニコと人懐っこく笑いながら着流しの男、

黒騎士を見上げる白い少女、白式。

 

「ほら黒法も来て。妹に挨拶。」

 

「呑気なもんね。これから一気にコトは動くっていうのに。」

 

「僕らはあくまで傍観者。悩んで、決めて、動くのは彼ら彼女らさ。」

 

「ふふ、お姉ちゃん一夏が心配?」

 

「なわけ!て言うかその呼び方やめろ!」

 

2人を微笑ましく見つめてから空を見る。

さっきまで季節関係なく入り乱れていた星座が少しづつほつれていく。

彼は一瞬いつも浮かべている穏やかな微笑を消して

 

(彼女が知ったらどうなるかな?)

 

小さく溜息をつく。季節外れの白い吐息が虚空に消えた。

 

(ED Lonely soldier 仮面ライダー龍騎)




<イメージキャスト>
レン・アキヤマ=仮面ライダーウイングナイト
 松田悟志

フォンブレイバーサード
 川島得愛

網島ケイタ
 窪田正孝

織斑一夏/黒い一夏
 釘宮理恵(1人2役)

織斑千冬
 豊口めぐみ

篠ノ之束/白い少女
 田村ゆかり(1人2役)

篠ノ之箒=仮面ライダーブレード
 日笠陽子

ラウラ・ボーデヴィッヒ
 井上 麻里奈

着流しの男
 岡本寛志

ゼイビアックス人間態
 西墻由香

ゼイビアックス怪人態
 大塚芳忠


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三章 夏休み編
網島ケイタの恋を応援する会


ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」
箒「」(遺影)
真耶「」(遺影)
セブン『大波乱だったな。』
ゼロワン『今まで2話連続でライダーが死んだ事ってあったか?』
ケイタ「弾達が戦ったタイラントと黒影をカウントするなら」
セブン『2回目だが、かなり重いな』
ゼロワン『まあ、我々のやる事は変わらん。』
ケイタ「とかなんとか真面目に言っておきながら日常回です。それでは、どうぞ!」


1

目覚ましに起こされるではなく自然と目が覚める。

時計を見ると7時半だった。

 

(あー、こうして家で寝るのも久しぶりだな。)

 

バキバキと体を伸ばしながらケイタはカーテンを開けて街を見渡した。

自分達がいない間も平和だったらしく、

休日とあって街はもう起きていて露店も普通の店も準備が始まっていた。

 

「1週間ぶりぐらいだっけ?」

 

『ああ、機体のデータ採りに、

国家IS委員会からの事情聴取に期末監査。

ここのところ休みなんて無かったからな。』

 

「おはようセブン。的確な解説ありがとう。」

 

『おはようケイタ。それが私の仕事だからな。」

 

相棒に挨拶を交わし、下の階に降りる。

もうケイタ以外の全員が揃っていた。

 

「よう寝坊助。昨日は一夏とお楽しみだったか?」

 

「な! れ、レン!言っとくけどそんな最初からクライマックスな事は断じてないから!」

 

「馬鹿。昨日は疲れてたからぐっすりだよ。」

 

蓮の冗談を軽く受け流しながら席につく。

 

「あれ?なんで心愛ちゃんだけ制服?」

 

「心愛ちゃんが現文、古文共にクラス最低点だったの忘れた?」

 

そうだった。

心愛は確か学園始まって以来のあり得ない点数を叩き出したのだった。

理系科目はほぼ満点。

これはラビットハウスの4人の中でもぶっちぎりだった。

 

そして文系科目はほぼ0点。4人の中でもダントツの最下位だった。

マラソンだったら最下位とブビー賞の間は5分ぐらい離れている。

 

「この追試を落としたら夏休み返上で補習なのー!」

 

半泣きの慟哭が響く。

残念ながら誰も彼女を庇えない。

 

「心愛ちゃん、追試じゃなくて追試の追試だよ。」

 

目の下に隈が出来た一夏が言う。

昨晩どころか機体のデータ採りをやってた頃から勉強に付き合わされ続けた一夏が心愛を見る目は殺意とかストレスに類するものが一周回って酷く澄んでいた。

 

「ヴェア!れ、蓮くん!」

 

「悪いがお前の物覚えの悪さは研究結果をイグノーベル賞に出せるレベルだ。」

 

ガーン!とちびまる子ちゃんみたいに分かりやすく落ち込む心愛を横目に一夏は私はセシリアとか心愛みたいな物覚えも素質も絶無の人間にものを教え続ける運命なのか?と少し泣きたくなった。

 

「というか心愛さんこんなにゆっくりしてていいんですか?

テスト何時からなんですか?」

 

「えっと8時の…ヴェアアア!もう行かなきゃ!

行ってきます!」

 

朝食を皿ごと掴むと心愛はダッシュで靴も履かずに飛び出して行った。

 

「……どうする?追いかけるか?」

 

「後で靴だけ届けりゃいいでしょ。」

 

残った面子は朝食を済ませるとそれぞれ着替えて

 

「俺はアンカーから任務が来た。」

 

「私は料理部のピンチヒッターに」

 

「じゃあ俺は部屋でゴロゴロ…」

 

「お店手伝ってください!」

 

「はい…」

 

ケイタは私服からバーテン服に着替え直した。

 

「はぁ…誰が悲しくてこんな客の来ない喫茶店の店番なんかしないといけないんだよ。」

 

「まだ準備中なんだからお客さんいなくて当然です!

て言うか、文句言う割にはしっかり掃除しますね。」

 

「早く終わらせたいし。」

 

予定よりもだいぶ早く掃除を終わらせ一息ついているとケイタのスマホがなった。

 

「? LINE?誰からだ?」

 

「営業時間中は切っておいてくださいね?」

 

智乃に生返事を返しながらアプリを開くケイタ

 

「うわ!」

 

「どうしました?」

 

「いや、これ見てよ。」

 

そう言って画面を見せるケイタ。そこにあったのは

 

<グループ名:網島ケイタの恋を応援する会>

 

「本人の知らないところで凄いもの作られてますね。」

 

「余計なお世話だっての!」

 

とりあえずグループのメンバーを確認してみる。

 

「13人もいるんですね」

 

「えーっと鈴に達郎に弾に布仏先輩!?

それにセシリアさん、ロランに簪さん、蓮に心愛ちゃんにラウラ、シャル。手塚さんに宇治松さん…オールスターじゃねぇかよ。」

 

どいつもこいつも暇か!

と思いながら取り敢えず参加してみた。

するといきなり鈴からURLが貼られる。

 

「Amazon?何買えって……」

 

何気なくタップしてみると飛んだ先は避妊具の購入ページだった。

 

「け、け、ケイタさん!あなたという人は!」

 

「俺じゃ無い!俺じゃ無いから!」

 

お盆で殴ってくる智乃を抑えながら素早く返信するケイタ。

 

 

 

ケイタ『おい鈴!なんつーもん送りつけてくれんだよ!』

 

RIN『長い目で見れば必要でしょ?』

 

ケイタ『何年後だ!まだ未成年!不純異性交遊は犯罪!』

 

タツロー『俺の目の前で煽り運転常習犯の自分より一回りでかい大人をコテンパンにして手の指全部を念入りに鉄パイプで叩き壊した鏖殺網島が犯罪をかたるなよ』

 

弾五反田神『そうそう。

それにお前らは6年越しの恋がめでたく実ってチェッカーフラグに手が届いたんじゃ無いか。

ちょっとぐらいエキサイト!したって構わないさ。』

 

ラウラ『そうか!わかったぞ!その為に君たちだけ寄宿舎じゃ無いのか!』

 

ケイタ『全部違う!てかそんな事してみろ!千冬さんに命を神に返されるぞ!』

 

そう打診すると急に返信が止まった。

 

「あ………。」

 

みたいな感じで固まる一同が容易に想像出来る。

 

 

RIN『あの人まだ子離れ済んでなかったの?』

 

『やれやれ』みたいなポーズをしたマイティアクションXのLINEスタンプが送られてきた。

 

タツロー『あのニラと長ネギを間違える人が一夏無しで生きていけるのか?』

 

弾五反田神『無理だろ。粗野だし粗暴だし。すぐ手が出るし。』

 

ラウラはいくらか心当たりがあるのか黙ってしまっている。

 

ケイタ『だろ?仮に一夏からなんか言われても早々割り切らないって。

あの人いつも選ぶの遅いし。』

 

思えば一度思い切れば早い人だが、決して決断は早くないなと思うケイタ。

 

ケイタ『ま、いつかはあの人と戦うことになっても勝つけど。』

 

RIN『おぉ!』

 

タツロー『言うようになったな親友!いつでも声かけろよ?助太刀に行くぜ!』

 

弾五反田神『俺も虚さんに被害が及ばない限り力を貸すと約束しよう!』

 

ケイタ『ありがとう皆』

 

ケイタ『てか弾、そう言えば布仏先輩と知り合いだっけ?』

 

タツロー『言ってなかったっけ?こいつ風都タワーの下で告ってOKされたんだぜ?』

 

一瞬ケイタはフリーズした。頭が考えを纏めるのに数秒を要し、ようやく返信が出来た。

 

ケイタ『まじ?』

 

タツロー『まじで。弾の勇姿を収めたビデオあるけど見る?』

 

弾五反田神『タツロー、友達でいたいなら辞めろ。』

 

字からも殺意が伝わる様なメッセージが投下される。

 

タツロー『悪かった』

 

弾五反田神『分かればよろしい』

 

 

そこからはケイタへの余計なお世話が中心だったが、

中学の時に戻った様な馬鹿話が続いた。

 

(あー、やっぱり色々あったけど帰りたいな、風都。)

 

知らず知らず柔らかくに柔らかく微笑むケイタ。

 

「どうした?何かいい事でもあったのか?」

 

「あ、理世さんおはざす。

てか、今日もバイトっすか?

俺らが居ない間に来てくれてた分、

休んでくれていいのに。」

 

「いいんだよ。私は好きでここに来てる。

それに久々に賑やかなラビットハウスも見たかったしな。」

 

「……そうっすか。じゃ、準備から頑張りますか。」

 

「だな。」

 

ケイタは『じゃ、これからバイトだから』とだけメッセージを送り、ラビットハウスを改めて見回す。

 

(理世さんにとってはここが風都、か。)

 

なら俺はいつも通りでいなくちゃな。

と笑うとケイタはさっきよりもうんとテキパキと仕事に取りかかった。




ケイタ「いかがでしたか?」
セブン『もう外堀は埋められたな。』
ゼロワン『最近は結婚パーティーの招待状さえLINEで配る世の中か。』
ケイタ「お前ら皆一足飛びなんだよ!次回、infinite DRAGON KNIGHT 夏休み編その2 大江達郎の事件簿 No.15 白い本!」
セブン『これが、明日のリアル!』


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大江達郎の事件簿 No.15 白い本

ケイタ「えー、前回のinfinite DRAGON KNIGHTは、貴重なバイト風景をお送りしましたが、今回は夏っぽくホラーな話をお送りしたいと思います。」
一夏「ホラーな話?」
サード『今は一月ですが?』
ケイタ「いや現実の時間(リアルタイム)の話じゃなくて劇中の話ね?」
一夏「なんだかんだ50話近くやってようやく原作4巻入ったとこなんだ…」
サード『原作は一巻につき約4、5話ぐらいで終わらせてましたが』
ケイタ「原作は原作!二次創作は二次創作!さーさっさと行くぞ!」
一夏「さてさてどうなる?」


1

大江達郎という少年は実に幸運だ。

100万人に1人100年に一度、神様に特別に愛されたラッキーボーイ。

ただし、命の危機に関してだけ。

 

それを言うならつい最近仮面ライダー同士が殺し合う様な事態に巻き込まれたばっかりだが、あれは彼の友人五反田弾が仮面ライダー黒影に変身するという必然の運命の元、必ず助かると定められていた事象だ。

 

上にあげた様な例外を除き、大江達郎は数多くの事件、事故をスレスレで回避している。

例えば何となくベンチに腰掛けた瞬間、

さっきまで立っていたところを弾丸が通り過ぎて行った。

 

自分より一回りも大きい乱暴な大人に因縁をつけられたが、

あの悪名高き鏖殺網島が居合わせて助かった。

 

と言った具合に本人が自覚してる事は少ないが、

一年に一回はそう言った危機を回避出来ている。

今回語るのは、そんな話の一つ…。

 

 

 

2

友人達としばらくLINEで会話していた達郎だがケイタが『じゃ、これからバイトだから』と会話を抜けたのを気に解散となってケータイから顔を上げて荷物をまとめると図書館に向かった。

 

早めに渡された夏休みの宿題を片付ける為である。

 

(あのオカメ女!アホみたいな量出しやがって!)

 

恐らく学校一嫌われてるだろう教師の顔を思い浮かべながら心中で呪詛を吐きつつ図書館に入った。

風都市立すずかぜ図書館。

この前虚と弾が初めて会った日、弾と達郎が待ち合わせをしていたすずかぜ公園から徒歩10分程の距離にある。

 

一階は図鑑や学習漫画など児童向けの本が並ぶ。

奥では今日もおっとりした雰囲気のお姉さんがボランティアで読み聞かせをしている。

 

達郎が使うのは二階だ。

雑誌や英字新聞等に文庫本が並ぶこの階には自習室もあるのだ。

 

(まだ空いてるな。)

 

席に着き、早速宿題に取り掛かる。

怒りを原動力にしているおかげか中々サクサクと進む。

 

(さて、ノルマはこんなもんか。時間は…まあまあ余ったな。)

 

昼食は家で食べるつもりなので、

 

今から帰るには少し時間が早い。

(折角図書館に居るし、本でも読もうかな?)

 

そう思って翻訳小説の並ぶあたりをウロウロしているとおかしなものを見つけた。

 

翻訳小説が並ぶ棚とは反対側の歴史書が並ぶ本棚、

丁度達郎の目の高さの所に白い横に長い絵本が飛び出ているのだ。

 

図書館員が間違えて入れたとも思えないし、

子供の悪戯にしては本の位置が高すぎる。

 

不思議に思い手に取ると、おかしなものはきみが悪いものに変わった。

背表紙も裏表紙も見事に真っ白。

図書館のバーコードさえ無い。

 

(ただの悪戯にわざわざこんな本を作るか?)

 

好奇心に負けてページを開いてみる。

 

真っ白なページに手書きの文字があった。

 

全て

 

『風都署前 200X年12月29日 午後4時半』

 

と言った具合に場所の名前に日付と時間。

 

筆跡はいくらか共通の物もあったがバラバラでペンの色や種類も様々だ(色は黒が多かったが)。

 

ついでに日付も200X年のすぐ後ろに1987年があったりと前後無茶苦茶だ。

 

それがますます謎だ。

誰かのメモ用の本とか言うなら酔狂な奴もいるなで済むが、

あまりに多くの人間が寄せ書きの様に場所と時間を書いている。

 

(変なの)

 

しかしそこで規則性とかを見つけたくなるのが人のサガだ。

パラパラとページを巡っていく。

 

ページを増すごとに書き込みは増えていく。

そして全体の半分ほどの所だろうか?その右ページ端におかしな書き込みを見つける。

 

(助けて)

 

そこからだった。そこから先はどの書き込みも

 

かもめビリヤード 201X年5月19日

と言った具合に走り書きの様な乱雑な物が増えてくる。

それはだんだんと文字の体をなしてないものまで混じり出ししまいには引っ掻き傷のような殴り書きが大半になっていく。

 

(ヤベェよこの本…)

 

そう思うのとは裏腹にページをめくる手は一向に止まらず

 

「きゃあ!」

 

「え?」

 

どん!と下半身に誰かがぶつかった。

倒れなかったが本を落とす。

 

「こら凛!ごめんなさい大丈夫でしたか?」

 

達郎にぶつかって来た女の子のお母さんらしき人が来た。

並んでみると目尻の辺りがそっくりだ。

 

「ごめんなさい……。」

 

「平気。怪我とか無かった?」

 

「うん……。」

 

なら良かった。と言って笑顔を見せると向こうもバツが悪そうにはにかんだ。

何度も謝る母親に大丈夫だと言って階段を降りる。

 

(何となく持って来ちゃったけど、ヤバいよな、この本。)

 

改めて白い表紙を眺める達郎。

図書館の外まで持って来てしまったが、間違いなく不吉な物だ。

 

大江達郎はこの手のモノとは結構縁がある。

誤解しないで頂きたいのが彼は危機を回避出来るだけであって、

危機に出会わないわけでは無いのだ。

 

故に命に関わる程と理解出来ないだけであって明らかに"不味い何か"自体にはまあまあ会っている。

 

そして本型というのは始めてだが、

こう言ったモノの形をした悪意に出会ったことが無い訳じゃない。

 

故にこういった悪魔に類するモノの対処法も昔ネットで調べたり、

教会の聖職者に教わったりして知っていた。

 

白い本をゴミ箱に放るとそれに向かって額、胸、左肩、右肩の順に手を動かす。いわゆる十字を描く、十字を切るというやつだ。

 

「こいつで良し、と。ん?」

 

顔を上げると1人、自分よりは幾らか年上ぐらいの男がじっとこちらを見ている。これがまた妙な男でこの暑い日に黒に赤いラインが入ったハーネスを着用している。

 

「なんだよツンツン頭。俺になんか用か?」

 

「お前に用はない。用があるのは仮面ライダードラゴンナイトだ。」

 

「!?」

 

仮面ライダー。この風都に住んでいれば名前ぐらいは必ず知っているこの街の守りし者。

しかしドラゴンナイトという名前のライダーは風都には居ない。

 

「こいつをドラゴンナイトに渡しておけ。」

 

左腕に付けていた奇妙なホルダーから黒い懐中時計の様なデバイスを取り出す。

 

「なんだよこれ?」

 

「ドラゴンナイトに伝えておけ。明日未来を手放すなとな。」

 

そう言って男は黒い時計を達郎に渡すと砂時計を模したデバイスを取り出す。

 

<ゲイツリバイブ 疾風!>

 

スイッチを押すと男の姿は風に包まれ、消えた。

 

「………なんだったんだよ今の?」

 

大江達郎の幸運はこの時目の前で黒い時計=ブランクライドウォッチを託して去った少年、後にシャルロット・コンスタン経由で明光院ゲイツという名だと知る事になる、に気を取られて白い本の事などすっかり忘れていたこと。

 

そして最大の失態は、白い本の危険性を理解しながら命に関わるレベルでは無いと判断し、人目につく場所に放置した事である。

 

 

 

2

その後、鳴海探偵事務所に1人の女性が駆け込んで来た。

 

名前は黒野祥子。

21歳の大学生でコンビニのアルバイト店員をしている。

 

「本当に現実味に欠ける話なんですけど……。」

 

「大丈夫ですよウチは超常犯罪の駆け込み寺ですから!」

 

そう言って極めて明るく振る舞う所長の照井亜希子に彼女はすべてを話した。

 

始まりは1週間ほど前、

近所の図書館の近くのゴミ箱に捨てられていた本を拾ったことだった。

 

それは表紙から中身、背表紙に至るまで真っ白。

中には場所と日付に時間が手書きで羅列されたいた。

 

「きみ悪く思ってその場に捨てたはずなんですけど、

どこに行っても着いてくるんです。」

 

本はふと気付いた時に本棚に立っていた。

電車の棚に置かれていた。

本屋の新刊コーナーに置かれていた。

そのくらいなら気のせい、見間違いで片付けられなくも無いが、

いよいよここに頼ろうと思ったのが昨日のこと。

 

夜遅くバイトを終えて帰って夕飯の準備をしていた時だった。

いつもの様に夕飯の準備をしようと鞄を置いてエプロンを着ける。

そして振り返ると

 

「鞄に本が入っていたと?」

 

「はい。ほんの数秒目を離した間に入ってたんです。」

 

もしそれが本当なら人が目を離した数秒の間に誰かが音も無く鍵も開けずに立ち去った事になる。

 

とてもじゃないが、人間技ではない。

まさに人外の、ドーパントの仕業だ。

 

「お願いします!

警察はまともに取り合ってくれないし、

ここだけが頼りなんです!」

 

 

 

3

鳴海探偵事務所は早速調査を開始した。

まずはいつも情報を提供してくれる風都の表にも裏にも通じる仲間達、通称風都イレギュラーズから当たった。

 

「白い本?」

 

「ああ、どんな些細な事でもいいんだ。」

 

しかし結果は芳しく無かった。

傲りでも何でもなく鳴海探偵事務所には風都内の凡ゆる噂が集まると言っても過言ではない。

 

そこに全く話が来ないという時点で難事件になると予想していたが、誰もこれ程とは予測していなかった。

 

「まいったぜ、ここまで手こずったのは裏風都の時ぐらいだぞ。」

 

余りの手応えの無さに思わず左翔太郎は吐露した。

 

戦いこそないが、得体の知れなさで言えばかつて裏風都と呼ばれる異空間を作った万灯雪侍(ばんどうゆきじ)=オーロラドーパントに匹敵する。

 

(もう当たる所なんてここしか無いぞ?)

 

翔太郎は今黒野祥子のマンションに来ていた。

賃貸でまあまあの広さ。

1人で住むには少し広いが、

2人で住むにはまあまあ狭いぐらいだろう。

 

「しかし白い本ね…」

 

フィリップの検索にもヒットしなかった。

正確には『日付のメモ』と『白い表紙』だけではキーワードが少な過ぎて絞れないのだ。

 

(せめて内容を覚えていたらもう少し絞れたんだが…)

 

そう思って依頼主のドアを叩こうとした時だった。

突然ドアが開き、黒野祥子が裸足のまま飛び出してきた。

 

「いや!いや!来ないで!やめて!」

 

まるで怪人から逃げてるかの様に必死だった。

そのまま吸い込まれる様に走って行く。

慌てて追ったが彼女はまるで煙の様に消えてしまった。

 

 

 

4

黒野祥子は晴々とした気分でいた。

鳴海探偵事務所に相談してからあの白い本は現れなくなった。

 

いかに悪質なドーパントと言えど天下の鳴海探偵事務所が相手では部が悪いと諦めたのか、或いは初めから白い本なんて無くて彼女が見ていた幻なのか、恐らくは後者だろう。

 

「疲れてたのかな?」

 

今年に入ってから彼氏と別れたり、

危うく騙されそうになったり、

ドーパントに襲われたりとあまり良いことが無かったし、

疲れた私が見ていた幻覚かも知れない。

そう思うと心は軽くなった。こんな日はショッピングにでも行こう。

 

そう思ってクローゼットを開けた瞬間、ボン!と板を地面に落とした様な音がした。恐る恐る振り返る。やはりあの本があった。

 

「なんでよ……」

 

思わず声に出しながらその場から立ち去る。

部屋の外に飛び出してなお走る。

しかし行先全てに、視線の先全てに必ず本がある。

全部形も大きさも寸分違わない。

 

「こんな、こんなはずは!」

 

しかし前と違うところが一つだけある。

 

初めから表紙が開いており嫌でも目に付く様に大きな字で

 

『すずかぜ図書館前ゴミ箱 2019年7月24日 23時9分』

 

()()()()()()()()()()()()()書かれているのだ。

 

思わず手に取ってページをめくる。

あれだけあった様々なメモは消えて全てが祥子のものになっている。

 

そして彼女の不安や焦りを象徴する様にメモは段々と走り書きになって行き

 

「何よこれ?」

 

最後にはまるで断末魔の様な殴り書きしか無くなった。

そして彼女は最後のページをめくる。

それは黒だった。まごうことなき純黒だった。

手を伸ばせばトプリ、とその中に沈む。

 

(あ、ここなら白はやって来ない。)

 

ようやく問題が解けた様な笑顔で祥子は黒に潜った。

 

 

 

5

(結局この時計といい、あの本といい、わかんない事だらけだな。)

 

ブランクライドウォッチを弄びながら達郎は1人青空を見上げた。

結局あの少年は誰だったのか。

あの本と関係があったのか。

もはや神のみぞ知る、だ。

 

(ただ、まだあれはどこかにある様な気がする。)

 

しかしぼんやりとした確信だけがあった。

あの本は自分と縁を切っただけで何処かにある。

この日本という土地は、穢れが残り易い土地だ。

 

しっかりと弔うなり清めるなりすれば綺麗に何も残らないが、

僅かでも残ってしまえばしつこく残って現世に留まり続ける。

日本神話でも穢れは神でも太刀打ち出来ないモノとされているぐらいだ。

 

(けど、俺の友達に害が及ぶなら容赦しない。)

 

ウォッチを強く握りしめる。

達郎にはガイアメモリに手を出す様な思い切りも無ければベルトや特別な力も無い。

 

けどだからこそ己にしか出来ない事だけは投げ出さない。

もしかしたら鳳鈴音が惚れ込んだのは彼のそんなとこなのかも知れない。

 

「まずはドラゴンのライダーさんを探しますか。」

 

今日はベイエリアの方に行こう。

運が良ければ数馬が何か知ってるかも知れない。

達郎は急いだ。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
一夏「ブランクライドウォッチ渡したかっただけの回だよね?」
サード『それだけじゃ味気ないから白い本を付けたんですか?』
ケイタ「ま、まあそんなとこ。」
サード『そこは否定してくださいよ。』
一夏「次回、infinite DRAGON KNIGHT!夏休み編その3 更識楯無の尾行三重奏!」
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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更識楯無の尾行三重奏!

ケイタ「えー、前回は達郎が秋山リリィからブランクライドウォッチを受け取ったとこまでだっけ?」
心愛「あの人蓮君の子供だったの?」
蓮「誰が誰の息子だって?な訳ないだろ。他人の空似だ。」
心愛「でも逃げる時に疾風!って。」
蓮「今青のサバイブカード持ってるの手塚だから!」
ケイタ「今回はある日の生徒会の一悶着をお届けします。」
心愛「そう言えば生徒会って簪ちゃんのお姉ちゃんとのほほんさんのお姉ちゃん以外にいるの?」
蓮「言われてみれば見た事ないな。」
ケイタ「そこも含めて今回語られます。」
心愛「さてさてどうなる?」


1

「やった合格!!!」

 

心愛は歓喜し、飛び跳ねながら80点(合格ラインギリギリ)の古典のテストを高々と掲げた。

これで先程の現代文59点と合わせてなんとか1週間補習で済んだのだ。

 

「そもそも追試の追試になってる時点で不合格。」

 

コツン、と背後から出て来た誰かが心愛の頭を小突く。

 

「あて!あ、一夏ちゃん見て!合格だよ!」

 

「良かったね、早く帰るよ。」

 

「うん!」

 

そう言って教室を出るとおかしな人物がいた。

 

深緑色の衣装に身を包み長い黒緑色のマフラーを巻いた長身痩躯の男だ。

 

「織斑一夏に保登心愛だね?」

 

「そうですけど?」

 

「そう言うあなたは?」

 

「私はウォズ。預言者だ。君達を正しい、

いや、ここまで仮面ライダーやインフィニットストラトスの歴史と混じってしまえば最早正しい歴史も何もないか。」

 

(! この人、仮面ライダーを知ってる?)

 

「? もしかしてケイタ君達のライダー仲間ですか?」

 

「いや違うよ保登心愛。

ただの同業者さ。それも面識の無い、ね。」

 

<ビヨンドライバー!>

 

そう言ってウォズは黒と緑の横長のドライバーを装着する。

 

「変身ベルト!」

 

「Vバックルとは全然違う……」

 

驚く2人に構わずウォズはウォズミライドウォッチを取り出す。

 

<ウォズ!>

 

<アクション!>

 

スロットにウォッチをセットして展開。右手を大きく上げ

 

「変身!」

 

<投影! フューチャータイム!>

 

立体映像の様なエフェクトが展開されウォズを白と緑の戦士に変える。

 

「うわぁ!」

 

「きゃあ!」

 

<スゴイ!ジダイ!ミライ!>

 

<仮面ライダーウォズ!ウォズ!>

 

「祝え!過去と未来を読み解き、

正しき歴史を記す預言者…。

その名も仮面ライダーウォズ!

この世界の明日未来を守るために降臨した瞬間である!」

 

「ええぇ……」

 

「なんか、凄いの来ちゃった。」

 

今まで見てきたどのライダーとも違う、

いろんな意味で未来過ぎるウォズに思わず呟く一夏と心愛。

 

「そう身構えずとも危害は加えないよ。

今日は渡すものがあって来た。」

 

「渡すもの?」

 

これだよ。と一夏にブランクリバイブウォッチを渡すウォズ。

 

「砂時計?」

 

「巨悪に立ち向かいし3つの力を救うものだ。

来る日まで肌身離さず持っているといい。」

 

では私はこれでと恭しく頭を下げるとウォズは去って行った。

 

「……なんか、変な人だけど良い人そうだったね。」

 

「て言うか見逃しちゃって良かったのかな?」

 

それ以前にこの学校にあの目立ち過ぎる古着みたいな格好でどうやって侵入できたのだろう?謎だ。

 

「ん? ウォズさん行っちゃった方から誰か来るよ?」

 

「あれって…楯無さん。」

 

もの凄い切羽詰まった感じで楯無がやって来た。

ついでに息も上がって、まるで〆切かは逃げる漫画家みたいだ。

 

「あ、あなた、、達!丁度いいところ、いたわ!」

 

「な、なんですか?」

 

「生徒会室まで来て!今、すぐ!!!」

 

 

 

2

生徒会室に行くと鈴音がケータイゲームをしながら待っていた。

 

「一夏に心愛。アンタらも会長に呼ばれたの?」

 

「鈴?」

 

「鈴ちゃんしばらくぶり!それなんのゲーム?」

 

「フラネット社が出してるゲームで『ジーンラビリンス』ってゲーム。

なんかのアプリ入れた時に一緒に入れちゃったっぽくて。

けど始めるとなかなか面白くてね。」

 

ゲームを中断して向き直る鈴音。

横に一夏と心愛も座り楯無がその前に座る。

 

「今日呼んだのは他でもないこの生徒会の危機に関してよ……」

 

「生徒会の危機?」

 

「あの虚ちゃんにっ!彼氏が出来たの!」

 

後、ゼロワンは語る。

 

『爆弾は爆発する前に静かになるというのは本当だった。

一夏達の意識が一瞬圏外になり、

更識楯無が落とした特大の爆弾が爆発した。」

 

と。

 

「布仏先輩に彼氏!!?あの布仏先輩に??」

 

「そう!あの虚ちゃんに!!」

 

「え?誰?誰なんですか!?」

 

3人は一斉に楯無に詰め寄った。

 

「ステイステイ!私も事態を図りかねてるの!

整理しながら話すから聞いて頂戴。」

 

「「「はい!」」」

 

「まずは…この学校の生徒会の仕組みからね。

知っての通りこの学校は生徒会長が他の役員を指名して指名された側が了承すれば生徒会に入るんだけど…現在生徒会は会長の私に、

休日は必ずデートに行っちゃう会計の虚ちゃんに、

永久欠番の書記の本音ちゃんといったメンバーでして」

 

もしケイタがいたなら

 

『それ生徒会って言うかただのアンタの仲良しグループじゃん。

職権濫用もいいとこだよ。

つかそんな仕組み作った奴誰だよ?』

 

とか言ってそうである。

 

「本音ちゃんは居るだけで仕事増やす様な娘だったから実質私と虚ちゃんの2人でやってたんだけど…怪人屋事件の後から虚ちゃんがしばらく抜けて、

戻って来た後も土日は絶対に休むから今あんまり仕事が進まないの!」

 

「いや、それは心苦しいけど布仏先輩に時間を割いて貰うしかないんじゃ?」

 

「ええそうよ。確かに鈴ちゃんの言う通りよ。

けど考えてもみなさい?あの虚ちゃんが、

本音ちゃんを落とすところまで落とした犯人を探すことに躍起に…いやあれは取り憑かれていたと言ってもいいわね。

だった虚ちゃんがその彼氏君と出会ってから私に泣いて謝ってくれたのよ!」

 

言えるの?絶対に会うな。なんて。

そう言われて黙り込む3人。

 

「じゃあどうするんですか?

今まで2人でやってた仕事を1人でやるんですか?」

 

「いいえ。はっきり言って虚ちゃんの力が無ければこの生徒会は成り立たないわ。だから物量に頼むことにするの。」

 

「物量?」

 

「あなた達、生徒会役員になってくれない?」

 

即戦力採用 と書かれた扇子を広げる楯無。

 

「すいません私ラクロス部入ってるんで。」

 

と鈴音

 

「いつアンカーの任務が入るか分からないんで。」

 

と一夏。

 

「わ、私も……」

 

と申し訳無さそうに手を挙げる心愛。

 

「そ、そんなこと言わないで!本当にピンチなの!」

 

3人に縋り付く楯無。

 

「お願いよ!一定量仕事してくれるならいつ抜けても良いから!

ラクロス部の日程と調整するから!

お願い本当にお願いだから手伝って!

私達友達よね!」

 

「ヴェア!ちょっと楯無先輩落ち着いて!」

 

「アンタ本当に生徒会長?威厳も何も無いわよ今!」

 

「頭上げて下さい!て言うか何をそんなに切羽詰まって」

 

一夏がそこまで言った時バキッバキッ!

と異様の音を立てながらドアがほんの少しだけ開く。

 

(あ、あの半分だけ顔を覗かせてるのって……)

 

(ち、千冬姉!)

 

「おい。」

 

「は、はい!」

 

「更識姉。貴様が溜めに溜めた書類139枚は後48時間以内に終わらせる事になっている。問題ないな?」

 

「え、えっとぉ……」

 

「問題ないな?」

 

(「はい……」)

 

消えそうな楯無の声を聴くと千冬は去っていった。

 

「………楯無先輩、私手伝うよ。」

 

「今日ぐらいなら、ねぇ?」

 

「楯無さん。私達、間違ってたみたい。」

 

「み、皆……」

 

楯無は先輩の威厳をかなぐり捨てるかわりに生徒会新メンバーを獲得する事に成功した。

 

 

 

3

一方その頃ラビットハウスでは

 

「来ないなぁ、客。」

 

「声に出して言うな!」

 

(!? 今めっちゃダンディな声がティッピーから聞こえたけど?)

 

「私の腹話術です。あとケイタさん。

暇だからって漫画を読まないで下さい。」

 

(心を読まれた!?)

 

カウンターで読みかけの週刊誌を読みながらケイタ達は客を待っていた。

 

「まあ、これだけの暑さなら客足も遠のくな。」

 

気にする事は無いと言う様に理世がケイタの肩を叩く。

 

「それ、どっちかって言うと智乃ちゃんにやるべきっすよ?」

 

「え?」

 

「余計なお世話です。」

 

心なしか何時もより不機嫌そうに智乃が吐き捨てた。

言外に「どーせこんな店ですよ」みたいな響きがある。

 

2人がいたたまれない気分になった時カランカランと入り口のベルが鳴る。

客が来た。

 

「いらっしゃいませ!」

 

目に輝きが戻った智乃がすかさず入って来た2人を案内してメニューを渡す智乃。

 

「あの2人って……弾と布仏先輩!」

 

「知り合いか?」

 

「弾は同中で、布仏先輩はIS学園の3年生。」

 

「ほぉ…2人に接点はあったのか?」

 

普段男みたいな口調で忘れがちだが理世さんもこういう話題に食い付くあたり女子なんだなとなんとなく思うケイタ。

 

「なんでも弾が布仏先輩を助けたのが始まりらしくて

その後しばらく親交?というか、そんな期間が続いて

その後弾が風都タワーの下で告ってok貰って今に至るそうです。」

 

「勇者だな。」

 

「ええ、ただ…時々危ういんですよ。」

 

「危うい?」

 

「この話、弾には俺から聞いたって言わないで下さいね?」

 

 

 

4

話はケイタ達が中学一年生のときのバレンタインの日の放課後まで遡る。

 

「ケイタ、お前はいくつ貰えた?」

 

軽い鞄を振り回しながら達郎が何気なく訪ねる。

 

「義理で一夏から1個。お前は?」

 

「同じく義理で蘭ちゃんから。同率1位だな。」

 

蘭というのは弾の一つ下の妹だ。

 

「てことは……」

 

「弾と数馬は今年もゼロ。

これで俺らが知る限り7年連続。」

 

因みに数馬もそうだ。項垂れ、

トボトボと2人並んで歩く後ろ姿を見れば明らかだが。

 

「アイツら面も性格も悪くないけどいかんせん…」

 

「モテたがるからなぁ……」

 

そう。何故か、何故か2人とも昔から異様にモテたがるのだ。

 

ケイタと達郎的には「モテると何かとめんどくさそうじゃん。」的に考えてあまり気にしないのだが。

 

「毎年のことながら酷い落ち込み様だよな。」

 

「今年は特に酷いぞ。」

 

ただ貰えないだけなら良いのだがこの年はなんとクラスの女王的なポジションの生徒に嘲笑われるという事があり失意の中の失意にあった。

 

(失意と言えば鈴もそうだな。)

 

達郎の手前言わないが、

鈴音はだいぶ前から達郎の事が好きなのだ。

likeじゃなくloveの方で。

 

しかしいつもは豪胆で思い切りの良い鈴音だが、

こと自分の恋愛についてとなると途端に奥手になってしまうのだ。

きっと今頃チョコの1つも渡せず落ち込みに落ち込んだところを一夏に慰められているだろう。

 

「あ、居た!ケイタ、達郎!」

 

噂をすればなんとやら。一夏が後ろからやって来た。

 

「どうした?」

 

「鈴見なかった?さっき目を離した途端に居なくなっちゃって。」

 

「鈴が?何も言わずに?」

 

「俺らは見てないな。弾と数馬は知ってるかも…あれ?弾もいなくないか?」

 

見ると数馬と並んで歩いていたはずの弾も消えていた。

 

「ちょっとやな予感がするな。ケイタ、一夏。探そう」

 

捜査は難航した。

下駄箱に外履きが残っていた為校内にいるのは判るのだがどこを探しても見当たらないのだ。

 

「達郎!そっちいた?」

 

「いーや、一階にはいない。そう言う一夏は?」

 

「駄目。三階にもいない。

降りてくる時ケイタにも会ったけど二階にもいないって。」

 

「じゃああと探してないのって…」

 

「四階だけ。ケイタが行ってる。」

 

2人も向かったが、2人は見つからなかった。

 

「どうする?もう探してないとこなんて…」

 

「屋上のプール。」

 

「え?」

 

「この建物で探して無いとこなんてもうそこぐらいしか無い。」

 

やけに自信ありげな達郎に続いて屋上に向かう。

そこで見たのは

 

「オラどんな気持ちだ!最底辺から見上げる気分はどうだ!」

 

「あはははははははは!

ガボゴボじゃなくてちゃんと人語を喋んなさいよ!」

 

腐った葉っぱが浮くプールにクラスの女王を突き落とし、

モップで上がってこれない様にする弾と鈴音の姿があった。

 

 

 

5

「その後なんとか騒ぎは治ったんだけで、

止めようとした俺らまでめっちゃ怒られたって事があって。」

 

「そ、それは……凄いな。」

 

仲良さげに語らいながらコーヒーを飲む弾に軽く引く理世。

 

「人は、見かけに寄らないな。」

 

「ああ見えて結構傷つきやすいんすよ。」

 

今から話しかけるのも無粋だな。

何て思いながらケイタは再び漫画を開いた。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
心愛「尾行は?」
ケイタ「お、思ったより長くなったので次回に持ち越しです…。」
蓮「考えてからタイトル付けろよ…」
心愛「次回、infinite DRAGON KNIGHT 夏休み編その4 五反田弾の休日デート!」
ケイタ「次回もみんなで!」
蓮「KAMEN-RIDER!」


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五反田弾の休日デート!

ケイタ「えーっと、前回までは簪さんのお姉さんが威厳を捨てたかわりに生徒会役員をゲットしたとこまでだっけ?」
理世「久々に私の出番もあったな。」
ウォズ「そして今回、遂に全ライダーの力を受け継ぎ、時空を越え過去と未来をしろしめす時の王者たる我が魔王や名だたるレジェンドライダー達が登場!…おっと、ここから先はまだ未来のお話でしたね。」
理世「そうゆうわけだからさっさと行こうか。」
ケイタ「さてさてどうなる?」
(op Black & White 仮面ライダージオウ)


1

今にも湯気が立ちそうな道路を一台のカワサキ・ニンジャが駆け抜けて行く。

 

「サード、撒けたか?」

 

乗っていたのは任務帰りの蓮だ。

報告を済ませ、ラビットハウスに帰る途中だったのだが

 

『駄目ですピッタリ着いてきます。』

 

ミラーを見る。背後からおかしなバイクが追いかけて来ている。

形こそホンダCRF250RALLYにそっくりだが、

奇妙な面の様な飾りに腕時計のベルトの様な装飾があったりと兎に角目立つ改造バイクだ。

 

(心なしか、ウイングサイクルに似てる気がする)

 

なんか嫌だなと思いつつも蓮は直接話した方が早そうだと思い、

近くのスーパーの立体駐車場に入った。案の定着いてくる。

 

『直接話すおつもりですか?幾らなんでも危険では?』

 

「最悪ダークウイングを呼ぶ。

そうならなくてもこっちには銃にISに仮面ライダーもある。」

 

鏡の代わりになる鏡の前で止まり、

メットを外してバイクを降りる。

 

「男のケツ追っかけるなんて悪趣味だな!何の用だ?」

 

ヘルメットを外してバイクを降りる追跡者。

身長も低くクラシックバレエダンサーの様に極めて細身で明るい茶髪に未だあどけない顔立ちの少年だった。

 

「蓮にどうしても渡しとかなきゃいけないものがあったからね。」

 

「!? お前、俺の事を知ってるのか?」

 

「うん。けど若い蓮に会うのは今日が初めてかな。」

 

「若い、俺だと?」

 

兎に角、と言って少年は蓮に黒いデバイスを2つ渡した。

片方は丸い、もう片方は四角い形をしている。

 

「これは?」

 

「君らが未来で必要な物だよ。

片方はケイタに渡して。それじゃ!」

 

「! 待て!お前は何者だ!?」

 

「俺は常盤ソウゴ、王様だよ!」

 

 

 

2

最近良くおかしな事態に遭遇する気がする。

柱の影から様子を伺いながら大江達郎はつくづく思った。

 

(まさか『パフューマン剣』の新刊買いに来ただけなのにこんな場面を目撃するとは)

 

弾と虚が仲良さそうに話しながら映画館Tジョイ風都に入って行く。

これはまだ良い。

確か少し前に弾が映画デートだとはしゃいでいた。

問題は、その背後にシャーロックホームズが着てるような外装と帽子を身に付けた4人組が尾行している事だ。

 

(しかもよく見たらうち2人は一夏に鈴じゃねぇか)

 

しかしよくよく4人を観察してみると何やらはしゃいでる一番背の高い青髪の人とオレンジっぽい茶髪のハイテンションな子に引っ張られて来たって感じだ。

 

(ま、流石にデートをぶっ壊しに行くような事は無いだろうけど、

一応念の為に見張っときますか。)

 

とかなんとか言いつつ達郎自身も楽しみながら4人の後に続いた。

 

 

 

3

なんでこんな事になったんだろう?

この猛暑には暑すぎるシャーロックホームズスタイルを脱ぎながら一夏は生徒会に入った事を後悔した。

 

朝、いきなり楯無に私服で校門前に集合だとメールされ、

心愛と共に向かうと

 

「遂に尻尾を掴んだわ!今から虚ちゃんのデートを尾行よ!」

 

楯無はこれも虚ちゃんの為だから。

とかもし男が悪い虫だった場合然るべき対処をとかどうとか言ってたけど要するに

 

「虚ちゃんの彼氏なんて気になるに決まってるでしょ!」

 

って事らしい。

 

(私、あの人の道楽に付き合わされるために生徒会役員になったわけじゃないのに。)

 

《報復でウイルス入りのメールでも送りつけるか?》

 

(やめてね?)

 

ゼロワンを諫めながらも本当にそうしてやろうか?といった言った考えが頭を過ぎる。

 

「ねぇ一夏。」

 

「どしたの鈴?」

 

「私ら見られてない?」

 

「まあ、そりゃこんな格好で4人固まって歩いてたら当然」

 

「そうじゃなくて尾行(つけ)られてる。」

 

思わず振り返る。誰かがふっ!と漫画本で顔を隠した。

 

背格好はケイタと同じくらいで灰色のTシャツに半ズボンに赤いショルダーバックの軽装だ。

 

「……誰だろう?」

 

「私らは専用IS持ちよ。ライダー関係、

テロリスト、仮想敵国のスパイ。

可能性は幾らでもあるわ。

それに、アンタは世界で唯一2つのISを同時に使ったパイロットよ。

オマケに千冬さんの妹でケイタの彼女!

狙われない理由の方が少ないわ。」

 

「な!な、なんでケイタ!ケイタは関係ないじゃん!!か、彼女って言ったってまだ腕絡めたりとか添い寝とかキスまでしかしてないし!!」

 

(そんだけやってりゃ充分でしょうに……)

 

ちょっと呆れながら溜息を吐き、

 

「兎に角、注意するに越した事は無いわ。

生徒会長ははしゃぎっぱなしだし、

心愛は性格と運と理系以外は一般人だし

何かあったら私達がどうにかするしかないわけだからね。」

 

「わかった。なんかあったら背中任せたよ。」

 

「勿論!万里の長城より堅牢に守ってみせるわ!」

 

ポンと自信満々に鈴は胸を叩いた。

 

 

 

4

「こりゃどうゆう事だ?」

 

久々に帰ってきたと思えばとんでもない患者を運び込んで来た西馬(さいば)ニコに悪態を吐きながらもバグスターウイルス感染症専門医、花家(はなや)大我(たいが)はニコに手を貸した。

 

「私に言われたってわかんないよ!

いきなり前を歩いてたら血吐いて倒れて!」

 

彼女は口元を血で真っ赤にしたボブカットの茶髪の少女を担いで来た。

 

「兎に角、運ぶぞ!」

 

何かまずい感染症という可能性も考慮して上の階の使っていない部屋に運んだ。

 

「ねぇ大我!はやく診てあげてよ!」

 

「急かすな!まず俺たちの防御が優先……」

 

そこまで言った所でキーン!キーン!と耳鳴りの様な音が響く。

 

「何この音……! 大我後ろ!」

 

背後の鏡からイノシシ型ビーストのワイルドボーダーがとびた飛び出して来た!すかさず2人を庇いながらワイルドボーダーを蹴り飛ばす大我。

 

「くそ!こんなタイミングで何のバグスターだ!?」

 

ゲーマドライバーを装着し、

バンバンシューティングガシャットを構える。

 

<バンバンシューティング!>

 

引き金を引く様にスイッチを押し、ガシャットを起動。

 

「第弐戦術・・・変身!」

 

クルクルと回しながら持ち替え、

ゲーマドライバーにセットし、レバーを開いてレベルアップ!

 

<ガッシャット!ガッチャーン!レベルアップ!

ババンバン!バンババン!(yeah!)バンバンシューティング! >

 

肩の傾向イエローのマント同じ色の片目を隠す前髪の様な装飾が特徴的な紺色のライダー、スナイプに変身する。

 

「ミッション開「待て!」

 

振り返るとベットからボブカットの茶髪の少女が起き上がっていた。

 

「病人は寝てろ!」

 

「そういう訳にはいかん!」

 

フラフラと立ち上がりながらスティングのデッキを構えて

 

「仮面ライダー!」

 

海之はスティングに変身した。

 

「嘘……」

 

「んな馬鹿な……」

 

だが驚いてばかりもいられない。

 

<ステージセレクト!>

 

敵をゲーム空間に隔離する。

これで誰にも邪魔させない。

選ばれたのは廃採石場のステージだ。

ワイルドボーダーは混乱しながら辺りを見回している。

 

「おい!なんでドライバーにガシャット無しで変身してるとか今は聞かねえからすっこんでろ。病人は足手纏いだ!」

 

「うるさい奴は私が倒す!」

 

<COPY VENT>

 

コピーしたガシャコンマグナムのBボタンを押し、

弾丸を連射しながらワイルドボーダーに迫るスティング。

 

しかし始めから満身創痍の小娘などお呼びじゃないと言わんばかりにスティングをタックルで吹き飛ばすと、スナイプに真っ直ぐ突っ込んでいく。

 

「喰らうか!」

 

スナイプはすかさず高速化のエナジーアイテムを打ち抜き、

スピードを底上げすると、

周囲に展開されたドラム缶型のアイテムに隠れながら狙撃する。

 

怯むワイルドボーダー。ヤケクソで突進を繰り返すが、

その度に自分で巻き起こした砂塵で視界を無くして良い的にされている。

 

「私がっ!………倒す!!」

 

ガシャコンマグナムを放り、

デッキからサバイブカードを引き抜く。

 

「変…身ッ!」

 

<SURVIVE MODE>

 

サバイブモードに変身し、新たなカードをベントイン

 

<SWORD VENT>

エビルバイザーツヴァイの弭槍(ブレード)部分に青いエネルギーが集まり、放たれる。

 

なます切りにされたワイルドボーダーが絶叫と共に爆散した。

 

<GAME CLEAR!>

 

ファンファーレと共にゲームエリアが元の花家ゲーム病クリニックに戻る。

 

「う…ぐばぁ!」

 

明らかにマズイ呻き声を上げながらスティングは膝を突き、変身を解除する。

 

「こ、ここは?」

 

「病院だよ、アンタ道端で血吐いて倒れたから。」

 

「!? もう変身拒否反応(リジェクション)の間隔がそんなに短く……たった2週間でこれとは……。身代わりにもならんな。」

 

「は?おい待てお前それはどうゆう事だ?」

 

海之の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせる大我。

 

「ちょっと大我!?」

 

「なんの話だ?」

 

「なんの話も何もあるか!身代わりにもならない!?

お前その力を誰かの代わりに使って死ぬ気か!?」

 

「……ああ。サバイブカードを使うからか、

あるいはデッキに負荷をかけすぎるからか、

明確な理由は調べようがないがサバイブモードで戦い続ければ血液循環に異常をきたして死に至る。」

 

「今すぐ辞めろ!命の代わりに命が救われるなんてあっちゃいけないんだ!」

 

「運命は変えられる!!!………だが、

私の占いは当たる…当たるんだよ良くも悪くもっ!

…最近は主に悪くもな。私は…」

 

半分も分からないだろうな。

と思いながらも海之は大我とニコに占った全ての未来を語った。

 

「何…それ?SFアクションゲームじゃあるまいし…」

 

「……つまり血液交換さえ出来ればそのサバイブモードになっても問題ないんだな?」

 

「大我!?」

 

変身拒否反応(リジェクション)の痛みに耐える事にはなるがな………」

 

「だったらこの闇医者を当たれ。

違法で良けりゃ健康な血が買える。」

 

何やらアドレスをメモした紙を渡す大我。

 

「いいのか?」

 

「ただし、条件がある。死ぬ気でやっても絶対に死ぬな。」

 

「先輩ライダーからの助言。有難く受け取る。」

 

アドレスのメモを掴むと海之は覚束ない足取りで花家ゲーム病クリニックを後にした。

 

 

 

5

「いらっしゃいませーって宇治松さん。」

 

「いらっしゃい。お、紗路もか。」

 

「おじゃましま〜す。」

 

「お、おじゃまします理世先輩!」

 

千客万来とはいかないが、

ラビットハウスは今日も珍客万来だった。

 

「今日は手塚さん一緒じゃないの?」

 

「うん。朝から『アドベントビーストは年中無休だ』って……」

 

少し寂しそうに笑いながらカップの縁を撫でる千夜。

 

「そっか、連絡くれたら手伝うのに。」

 

「そんな事言っていいのか?一夏が嫉妬するぞ?」

 

悪戯っぽく揶揄う理世

 

「な! か、からかわないで下さいよ。

それにあれ以来2日に1回添い寝してるし、

それぐらいでいいバランスです!」

 

真っ赤になりながら弁明…したつもりで無意識に惚気るケイタ。

 

「ふ、2日に1回添い寝!?

てか網島さんと織斑さんって付き合ってたんですか!?」

 

「紗路ちゃん知らなかったの?」

 

「言ってなかったっけ?」

 

「聞いてない。」

 

そっか。と一瞬間が開く一同。

 

「まあ、一夏と付き合ってます。」

 

「そう、なんですか。」

 

再び微妙な沈黙。

 

「つ、付き合ってみてどうだ?何か新しい発見とかあったか?」

 

「え? あ、ああ。前より甘えて来ますね。」

 

「前より?」

 

「よく知らないけど、血縁的には従妹ぐらいの感じらしくて。

一夏達、両親いなかったんで小4から中2までは同じ家に住んでたんです。」

 

「へ〜7年越しの大恋愛かぁ……」

 

「なんか素敵だね。」

 

『冴えない白馬の王子だが、なかなかどうして一途だぞ。』

 

「うっせえケータイ急に喋るな。」

 

「ははは、もしかしてセブン構ってもらう時間減って寂しいの?」

 

『そんな事は無いぞ 桐間。ちゃんと勉強を見てやったりカードに興じたりする時間はちゃんとある。』

 

「一緒に宿題とか正しく恋人同士のイベントだと思うが?」

 

『天々座、君は一夏がどうやって物を教えるか知らないからそんな事が言えるんだ。』

 

「えっとつまり?」

 

「古文の解説を聞いてるはずなのに効果音の方がまともな文章より多いからね?」

 

「あー、そりゃセブンの方がいいね。」

 

なんて話していると客が来た。

 

「いらっしゃいませー」

 

新たに来た客は2人とも若い男で片や赤と黒のコート、片や青を基調としたストリート風のパーカーとダンサーかカラーギャングみたいな格好だ。

 

「今日のおすすめを2つ。」

 

青いパーカーの方、あどけない顔立ちの少年が柔かに注文を告げる。

理世が奥に行くのを見送ると真剣な表情になり

 

「ねえザック。この街に現れる怪物がインベスじゃ無いのは分かったけど……」

 

「問題は例の仮面の騎士だろ?

分かってるよもし財団XやSHADOWの残党なら倒さねえと」

 

決意を固めた様な2人の手にはそれぞれ葡萄(ブドウ)胡桃(クルミ)を模した禁断の錠前(ロックシード)が握られていた。

 

 

 

6

戦兎(せんと)!売ってきたぜ!」

 

「おーう、ちゃんと金にしてきたか?」

 

木組みの街の外れの貸し倉庫の一角。

唯一そこを住処として借りている2人組、

自称天才物理学者の桐生(きりゅう)戦兎(せんと)と元ボクサーの万丈(ばんじょう)龍我(りゅうが)は細々暮らしていた。

 

「いーや!二束三文にしかならなかった!」

 

ガクっ!と何やら作っていた発明品を机から落としながらズッコケる戦兎。

 

「おいおいマジで言ってんのかよ、

俺の発明品が売れなきゃここも追い出されんだぞ!」

 

「おう!だからどうしよっかな〜て思いながら緑のストールの兄ちゃんがやってるたこ焼き屋で飯食ってたらなんか戦兎に調べて欲しいもんがあるっつー奴見つけて来たから連れて来た!」

 

万丈がそう言うと背後から黒いTシャツに白い薄手の上着の少年、蓮が現れる。

 

「あなたが桐生博士ですか?」

 

「如何にも、君は?」

 

「俺はレン・アキヤマ。

桐生博士にこのデバイスを調べて頂きたく、

万丈さんに案内していただいた次第です。」

 

ポケットからライドウォッチとミライドウォッチを取り出す蓮。

 

「!? これって!」

 

「あぁ……あ、ああぁ!あん時の未来人が持ってたやつ!!」

 

「未来人?」

 

「おう!そんでそれのビルドのやつとかでその未来人が仮面ライダーに変身してビルドの偽物やっつけたんだよ!」

 

「おいちょっと万丈!その話してどうすんだよ?

すいませんねうちの馬鹿が。」

 

「あぁ!馬鹿ってなんだ!!筋肉付けろ筋肉!!」

 

「いえ、信じますよ。俺も仮面ライダーですから。」

 

ポケットからデッキを取り出し、

 

「KAMEN-RIDER!」

 

蓮はウイングナイトに変身した。

 

「うそーん…」

 

「こいつも変身しちゃったよ……」

 

「仮面ライダーウイングナイト。

よろしくお願いしますね、先輩。」

 

 

 

7

「虚…さん……」

 

「な、なんですか弾くん?」

 

「は、初映画デートで…4DXは失敗でしたね。」

 

「……うん、次から普通の3Dにしようか?」

 

憔悴仕切った弾と虚はバーガー屋で遅めの昼食を取っていた。

元々朝食を遅めに食べて10時開演で2時に終わる映画を見終わり、

空き始めたレストランで昼食、

その後ショッピングというデートプランだったのだが

 

「全くショッピングに行けるだけの体力残りませんでしたね……。」

 

「とんでもなく…いや、とんでも無かったですね。」

 

4DX。標準の映像・音声の他に座席のリクライニングや霧、雪などの現象などを体験できる新時代の映画の事だ。

 

しかも2人の見た映画は『遠い昔、遥か彼方の銀河系で……』のプロローグでお馴染みの超大人気シリーズの最終作、

光と闇の最終決戦を描いた話題の作品だ。

 

画面の中で戦闘機が撃墜されれば背中に衝撃が与えられ、

弾幕のシーンでは耳の横を空気が通り抜けて行き、

砂塵が舞い上がればスネの裏に空気が吹きつけられ、

正しく画面の向こうにいるかのような体験だった。

 

「私、あのH字型の戦闘機に5回は撃墜されました……」

 

「俺もあの白いメットの奴らに7回はブラスターで撃たれましたよ…」

 

力なく笑いながらも映画の品評会で盛り上がる2人。

一方尾行を続ける生徒会の面々も

 

「あちゃ〜あれはちょっと失敗した感じかしら?

時間配分的には完璧なんだけど…」

 

「4DXって凄いんですね〜」

 

そこから少し離れたカフェから2人の様子を見ていた。

 

(呑気なもんね。)

 

鈴がISのプライベートチャンネルを開いて話しかけてきた。

 

小さく頷く一夏。

ISの300どに渡る視界、通称『山羊の目』で謎の追跡者を捕らえる。

少し離れたコンビニのイートインコーナーからこちらの様子を伺っている。

 

(私達が気付いたって気付いてると思う?)

 

(多分ね。相手は男だし、私達が派手にISを使うってんなら人混みに紛れてさっさとトンズラって算段なんでしょうね。)

 

そして当の本人大江達郎は

 

「流石に4DXでヘロヘロは完全に想定外みたいだな。

ま、本人達が楽しそうならいいんだが。」

 

コンビニスイーツを食べながら楽しんで尾行を続けていた。

 

すると弾達のいるバーガー屋の前で1人挙動不審な男が立ち止まる。

 

「? なんだ……」

 

男が何かを手に押し込むと身体が歪な赤い光に包まれる!

 

「ドーパント!」

 

達郎はすぐに飛び出すと直ぐにバックから1つのカメラと擬似ガイアメモリを取り出す。

 

<BAT!>

 

フィリップに渡された二機目の、

達郎専用のバットショットを起動し、

男が変身した赤いドーパントに牽制攻撃をさせる。

 

「おい鈴!一夏!」

 

「えっ!?達郎?」

 

「あ、アンタがなんでここに?危ないから下がってて!」

 

今にもISを展開して飛びかかろうとする三人の前に立ちはだかる達郎。

 

「そりゃこっちの台詞だよ。あれ見ろよ。」

 

バットショットは充分な時間を稼げたらしい。

虚を守る弾の腰にはマツボックリロックシードが付いた戦極ドライバーが装着されている。

 

心臓の前で作った拳を振り下ろし

 

<ロックオン!>

 

「変身!」

 

<ソイヤ!マツボックリアームズ!>

 

次元の裂け目(クラック)から現れたマツボックリを模した鋼の鎧が自動で弾達をドーパントの火炎から守り、弾の頭上へ戻り

 

<一撃 in the shadow!>

 

頭に被さると迸るエネルギーが黒いライドウェアを形成し、

弾を戦士の姿に変えた。

 

「お、お前の様なガキが仮面ライダーだと!?」

 

「ああ、ライダー4号黒影!正義の為、見参!!」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
ウォズ「少ない…我が魔王の出番が最初だけとはどうゆう事だ!」
理世「仕方ないだろゲスト程度の出演なんだから。」
ケイタ「それ以外にも無意味に色んなレジェンドライダー出てきたよね。」
理世「スナイプにビルドにクローズ、龍玄にナックル。後ジオウか。」
ウォズ「一つ、気になったのだが…五反田弾=仮面ライダー黒影はスカルから数えて5人目じゃないのかい?」
ケイタ「ああそれね。スカルは風都のガイアメモリの戦士に仮面ライダーの称号が付く前に活躍した戦士だから、位置的にはプロトドライブや1型みたいな0号ライダーって扱いだから。」
理世「1型なのに0号とはこれいかに?」
ケイタ「いいんだよ細かい事は。次回、夏休み編その5 織斑千冬の受難!」
ウォズ「次回も平成を彩ったレジェンド達が出演予定だ。」
理世「お楽しみに!」


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織斑千冬の受難!

ケイタ「えー、前回は蓮がウォッチを渡されたとこまでだっけ?」
弾「え?………あ、ああ。そうだっけ?」
一夏「弾大丈夫?めっちゃ疲れてるけど?」
弾「大丈夫じゃねぇよ4DXの余韻が全く抜けねぇよ…」
ケイタ「そんなに凄かったん?」
弾「もう全部が揺れるんだよ!映画に入り込み過ぎて虚さんとずっと手ェ握ってたはずなのに全くときめく方にドキドキしなかったよ……」
一夏「へぇ〜…ケイタ、今度映画行こ。」
ケイタ「この回終わったらね。さてさてどうなる?」
(op SURPRISE-DRIVE 仮面ライダードライブ)


1

「どうしたどうした!!」

 

肩、脚、胴に突き!影松が確実にマグマドーパントにダメージを与えていく。

 

「く、くそう!あんだけ高い金を払ったってのに!!!」

 

乱暴に火炎玉を投げつけるが、

スピード重視の黒影には軽快に避けられてしまう。

 

「く、くそが!こうなったらあの女供を!!」

 

虚達を攻撃し、黒影の隙を作ろうとするが

 

「こらこら♪」

 

楯無のミステリアス・レイディの水のバリアに阻まれる。

 

「ギャラリーを攻撃するのは反則よ?」

 

「!! 貴様は、ロシア国家代表の!」

 

「更識楯無。以後お見知り置きを。」

 

優美な仕草で一礼する楯無。

唸るマグマドーパント。

 

「おい無視すんなよ?」

 

<マツボックリオーレ!>

 

強烈なアッパーでバレーボールの様に吹っ飛ばされ

 

<マツボックリスカッシュ!>

 

エネルギーを纏った影松の投擲をくらい爆裂!

変身が解除されメモリが強制排出、自壊する。

 

「後は警察の仕事…」

 

「呼んどいたよ!」

 

見ると心愛がもう既に電話をかけていた。

 

「ナーイス!」

 

変身を解除してドライバーをしまう。

 

「さ、色々聞かれると面倒だし、一旦行きますか。」

 

警察がついた頃にはそこには壊れたメモリとドーパントだった男だけだった。

 

 

 

2

「本当に見つからないのか?」

 

『はい……周囲のあらゆるカメラに常盤ソウゴの姿は写ってません。』

 

お役に立てず申し訳ありません。

と潮らしくなるサードにお前のせいじゃないと言うと蓮は考え込んだ。

 

(あいつは、何者だ?

俺が仮面ライダーだと知ってる風だったが、

あいつに直接会ったのは今回が初めてだし、

翔太郎先生が前に話してくれた仮面ライダー、

オーズやフォーゼの変身者とも合致しない。)

 

だがどうしても気掛かりな事がある。

 

『若い蓮に会うのは今日が初めてかな。』

 

若い蓮、まるで未来の自分を知ってるかの様な台詞だった。

 

「なら、未来について調べるか。」

 

そしてサードで情報を集めた結果蓮の目に止まったのが桐生戦兎という科学者だった。

表向きはただアイデア発明を売って食い繫いでるしがない野良科学者。

 

しかし彼の近所に住む者からは奇妙な噂がある。

曰く「桐生戦兎はマッドサイエンティストで、夜な夜な自分の作った生物兵器を暴れさせている。」と言ったものだ。

 

その証拠だという写真を見たのだが

 

(完全にアドベントビーストと仮面ライダーじゃねぇか。)

 

片方は恐らく何か猿系のビーストだろう。

だがそれと戦っているもう1人、

腰に赤いハンドルが付いた様な黒いドライバーを装着した青い仮面のライダーが映っていた。

 

(間違いなく明彩(キャモ) 憤怒(ラス)みたいなまだ登場してないベンタラの仮面ライダーじゃない。)

 

ベンタラともガイアメモリとも違う原理の仮面ライダー。

そう当たりをつけて蓮は万丈龍我に接触した。

 

「で、大当たりだったと?」

 

そういう訳です。と言いながら蓮はアーマーを解除した。

 

「にしても鏡の異世界のライダーかぁ?

ちょっとデッキ見せてくれない?

最終的には元に戻して返すから!」

 

「ダメです!」

 

即答してなおも食い下がる戦兎を万丈が押さえつける。

 

「落ち着け戦兎!てかあの変なストップウォッチの解析は終わったのかよ!」

 

「終わったよ?」

 

「早っ!」

 

ミライドウォッチとライドウォッチを返却しながら

 

「相変わらずこの時代の技術では作れない代物って事しか分からない。」

 

「用途なども?」

 

「俺個人の感想としては……近いものを挙げるなら記録媒体。

後そっちの四角いやつの方が丸い方より進んだ技術が使われてるってぐらいかな?」

 

「今の技術がこれに追いつくのにどれぐらい掛かります?」

 

「甘く見積もって、40年。」

 

成る程、と一呼吸置いて

 

「その間にこいつら何匹殺せます?」

 

振り向くと鏡の向こうにカミキリムシ型の青いビーストゼノバイターがいた。

 

「うわキッモ!なんだアイツ!?」

 

「ほお〜アレがアドベントビーストか。」

 

「手伝ってくれますか?」

 

「丁度いい、復元が終わったこいつで、

実験を始めようか。」

 

蓮はデッキを構えVバックルを出現させ、

2人はビルドドライバーを取り出し戦兎は銀の缶の様なアイテムを、

万丈は濃い赤と青のドラゴンとボトルを取り出し

 

<ラビットタンクスパークリング!>

 

<覚醒! グレートクローズドラゴン!>

 

2人はレバーを回し、ボクシングの様な構えを取り

 

<<Are you ready?>>

 

「変身!」

 

「変ッ身!!」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

<シュワっと弾ける!

ラビットタンクスパークリング!

yeah yeah!>

 

<Wake up CROSS-Z!

Get GREAT DRAGON!!YEAH!!!>

 

それぞれウイングナイト、

ビルドラビットタンクスパークリングフォーム、

グレートクローズに変身する。

 

「2人とも俺に捕まってください。そしたらベンタラに入れます。」

 

「よっしゃっ!行くぜ戦兎、蓮!」

 

「ああ!」

 

ベンタラにダイブすると早速ゼノバイターがブーメランを放って来たが

 

「オラァ!!」

 

<ボトルバーン!ボルケニックナックル! アチャー!>

 

取り出したクローズマグマナックルの必殺アッパーでいとも簡単に殴り砕かれる。

 

「なんてパワーだ!?」

 

「そりゃあこのてぇ〜んっ才!

物理学者桐生戦兎の発明品ってうわ!」

 

戦兎が自慢しようとした瞬間2人の頭上をトンボ型ビーストハイドラグーンが通過していく。

 

「伏兵か!?」

 

「面白い。そこは俺とダークウイングの空域だ!」

 

<ATTACK VENT>

 

ダークウイングを呼び出し、

飛翔するとハイドラグーンとドックファイトを繰り広げる。

 

「俺も負けてられないな!」

 

<カイゾクハッシャー!>

 

ビルドも弓矢型の武器でウイングナイトをアシスト。

怯んだ隙にダークバイザーが羽を切り落とす!

 

「桐生博士!」

 

「任せな!」

 

<スパークリングフィニッシュ!>

 

<各駅電車〜 急行電車〜 快速電車〜

海賊電車ハッシャー!>

 

ビルドのシュワっと爽やかな一矢がハイドラグーンを粉々に砕いた。

 

「よし、実験終了。さて、筋肉馬鹿(クローズ)の方は?」

 

「トドメだ行くぜ!!」

 

<グレートドラゴニックフィニッシュ!>

 

回し蹴り気味の飛び蹴りをゼノバイターに放つ!

そしてその勢いのままゼノバイダーの後ろにあった鏡から地球側に戻ってしまう。

 

「っと!よし、やっつけたぜ!

…ってここ何処だ!鏡ん中じゃねぇ!」

 

グレートクローズを追いかけてビルドとウイングナイトも続いて飛び出る。

 

「ここは…風都?」

 

「あ!蓮君!」

 

「!?」

 

見ると心愛が『やっちゃった……』って顔しながら口元を押さえており、その後ろから楯無が玩具を見つけた子供(ワルガキ)の様な目で微笑んでいる。

 

「ちょ〜っと、説明してもらおっか?」

 

心愛が逃げない様にがっしりとホールドする楯無。

 

「……心愛。」

 

「は、はい!」

 

「お前は友達だけど、時々口を縫い合わせたくなるよ。」

 

「ヴェア!?」

 

 

 

3

時を少し巻き戻し、ラビットハウスにて

 

「ありがとうございました〜」

 

会計を終えたチーマーの様な2人組、

ザックと呉島光実(くれしまみつざね)は店を出ようとしたが

 

「あ、そうだ。ひとつ聞きたいんだけど……」

 

「? なんすか?」

 

「この辺りで変な噂とか知らない?」

 

「変な噂、ですか?」

 

「例えば人が消えるとか、変な化け物が暴れるとか。」

 

ケイタは思った。

 

(この人達に言っていいのかな?

ぱっと見不良だし…動画撮りにきたとかなら適当に嘘付いて追い返しちゃおうかな?)

 

しかし嘘を付くのも気がひける。

普通の人が知ってるぐらいは話してもいいか?

そう考えてるとピーン、ピーンとすっかり聞き慣れた音が聞こえてくる。

 

「なんだこの音?」

 

「音?ミッチ何言ってんだ?音なんてどこからも…」

 

「なあお兄さん達、くれぐれも他言無用で頼むぜ。」

 

「は?なんの話…」

 

2人が言い終わるより早くケイタは窓の前に立ってポーズを取り

 

「カメンライダー!」

 

ドラゴンナイトに変身!

 

「な!?」

 

「お前がこの街のアーマードライダーだったのか!」

 

「アーマードライダー?

違うな、俺は仮面ライダーだ。

仮面ライダードラゴンナイト!」

 

「よくわんねぇけど、テメェの力の使い方次第じゃ…」

 

2人とも取り出した戦極ドライバーを装着する。

 

「そのカードケースを回収させてもらうよ。」

 

「悪いけど、こいつを渡す訳にはいかない。」

 

「じゃあ何で今変身した?」

 

「ひたすら世の為人のためだよ!」

 

そう言って不意打ちで2人を掴むとベンタラに飛び込む。

 

「!? 何だここ!」

 

「ヘルヘイムみたいな異空間…滅ぼされた世界?」

 

「それは俺にも分かんない。

けどアレをどうにかしないと人を拐って食べる。」

 

ドラゴンナイトが指差す先にはヤゴ型ビーストのシアゴーストが群れを成して地球側に侵攻しようとしていた。

 

「結局やる事は変わらないか。」

 

「ああ、戒斗と紘汰から託された世界で好き勝手はさせないぜ!」

 

<クルミ!>

 

<ブドウ!>

 

「「変身!」」

 

<クルミアームズ!ミスターナックルマン!>

 

<ブドウアームズ!龍・咆!ハッハッハッ!>

 

ザックと光実はそれぞれアーマードライダーナックルとアーマードライダー龍玄に変身する。

 

「行くぜ!」

 

繰り出されるドラグセイバーの剣撃が、

クルミボンバーの剛力が、

ブドウ龍咆のエネルギー弾が、

次々と敵を撃ち倒していく。

 

『ケイタ!残りの敵はドラゴンライダーキックで倒せる範囲に集まっている。決めるぞ!』

 

「よし来た!」

 

<FINAL VENT>

 

飛来したドラグレッターの旋回に合わせて飛び上がる!

 

「ザック!僕らも!」

 

「ああ!」

 

<ブドウスパーキング!>

 

<クルミスパーキング!>

 

「たあああ!!!」

 

「はぁああああ!」

 

「おりゃあああ!」

 

ライダートリプルキックが炸裂!

ビースト達は木っ端微塵に爆散した。

 

「……ねえ!」

 

龍玄が武器を下ろしてドラゴンナイトに近づく。

 

「僕は、一緒に戦ってみて君が悪い奴には見えなかった。

でも、一応君自身の口から聞きたい。

君の目的は?そしてその鎧の名前は?」

 

一瞬迷ったケイタだったがセブンに

 

《たまには少しカッコつけてもいいんじゃないか?》

 

カッコつけて、か。翔太郎達の様なのは違うな、と思い

 

「正義 仮面ライダードラゴンナイト」

 

「そっか、僕らと同じだね。

僕はアーマードライダー龍玄。」

 

「俺はアーマードライダーナックルだ!宜しくな!」

 

スピアーのデッキからシールのカードを一枚渡し、

2人を地球側に送り返す。

自分も戻ろうとすると鏡の向こうにウイングナイトがいるのが見えた。

 

「蓮?ありゃ何やって…」

 

見るとダル絡みみたいな感じで心愛をガッチリホールドした楯無が話しかけている。

 

『保登のやつがやってしまった様だな。』

 

「助けに行く?」

 

『だな。』

 

 

 

4

「アルコール!!なんでもいいからアルコールをっ!」

 

ファミレスに入店するなり席に着くと千冬は店員に大声で捲し立てた。

 

「あの…お客様。

当店はランチタイムにアルコール類の販売を行なっておりませんので…」

 

そこをなんとか!と引き下がらない千冬の頭に1発拳骨が叩き込まれる。

 

「君は何を言ってるのかなぁ……」

 

「おい草加!流石に女に手を挙げるのは」

 

「一条、お前は酔ったコイツを見た事ないからそんな事が言えるんだ。

このバケモノ女が酔ったらこの店ぐらい簡単に(物理的に)崩れる。

なぁ詩島?」

 

「あながち、否定できないな…」

 

この千冬に続いてやって来た3人は千冬の大学時代からの友人で草加雅人(くさかまさと)一条薫(いちじょうかおる)詩島剛(しじまごう)といい、

草加は現在一般企業に勤めているが昔千冬が贔屓にしていた西洋洗濯舗 菊池の2階に住んでおり、

千冬がバイトで留守の時に小学生の頃一夏の遊び相手をしていたりした青年で、彼にとっても一夏は妹の様な存在だ。

 

一条薫は千冬と同じ剣道部として何度も大会で剣を交えており、

そこから友情が生まれ、今でも交流がある。

 

詩島剛とは語学研修先のアメリカで出会い、

意気投合して今でも近情を報告し合っている。

 

「それで?君から呼び出すなんて珍しいじゃないか?」

 

「何か変わった事でもあったのか?」

 

席に着き、出されたお冷を飲む。

 

「一夏に、一夏に彼氏が出来たのだ!!」

 

「「「はぁああああ!!!??」」」

 

剛は思わずお冷を吹き出し、

一条は驚きに目を剥き、

草加は立ち上がり千冬の胸ぐらを掴むと

 

「おい織斑、どいつだ?

どこの馬の骨だそいつは!!?」

 

「草加落ち着け!

織斑さんの首が閉まってる!」

 

「ステイステイ!!

千冬も初っ端からフルスロットルじゃダメでしょ!?」

 

なんとか2人を落ち着かせて話が出来るようにする。

 

「で、どいつなんだ?その一夏と

……付き合ってる男ってのは?」

 

「……あ、網島ケイタ君といって、

一夏の同い年の従兄だ。」

 

(……!? 詩島君!今従兄って言ったか?)

 

(言った言った!居たんだ!

親戚とか家族とか全く話さなかったけど居たんだ!!)

 

「なぁ〜にぃ〜?」

 

「く、草加?」

 

「従兄?フフッ、よりにもよって近親相姦だと?

法律には触れないからってそんな背徳的恋愛を?」

 

「……彼は、取り乱してるからあんななのか?」

 

「まあ…普段はもうちょい大人しいかな?」

 

「そうか、そうか、そうかいとこ同士かぁ……」

 

「く、草加?」

 

「何も問題ないじゃないか?」

 

「え?」

 

「なっ!」

 

「えぇ…」

 

なんと見事に穏やかな笑顔。

この草加雅人という男、同じ施設で兄弟同然に育った6歳年下の幼馴染みの園田真理(そのだまり)にゾッコンな結構ヤバイ男なのだ。

 

「寧ろいとこ同士なんて良い縁談じゃないか。

仲人は誰だい?式場は?君はもうスピーチの内容を決めたのかな?」

 

「ま、待て待て草加!早い!話が早すぎる!」

 

「千冬の8つ下だから一夏ちゃん今16歳!

相手の少年も同い年ならまだ結婚出来ない!」

 

チッと舌打ちする草加。

これを口実に真理に兄弟同士もアリか。

と思わせるのが目的だったのだ。

 

「で、結局なんの相談なんだ?」

 

一条が仕切り直す。千冬は至極真剣な表情で

 

「そのズバリ…2人との接し方が分からなくなってしまったのだ……。」

 

「なるほど。」

 

「まあ君からしたら妹と弟が出来てたみたいなもんだからね。」

 

「……心中複雑なんだ。」

 

料理が運ばれてくる。千冬だけは手をつけない。

 

「別に何も変える必要は無いんじゃないかな?

君はどの程度か知らないけどそのケイタってやつを善人だと思ってるんだろ?じゃなきゃ俺たちに相談なんてしない。」

 

もう興味ないと言わんばかりにハンバーグを一口。

 

「た、確かにケイタ君はあまり素直じゃないが誠実な子だし、

普段はあまりやる気を出さんがキチンとスイッチを入れれる子だし……」

 

さりげなく弟馬鹿(ブラコン)を晒す千冬

 

「ははは、2人とも幸せ者だな。

こんだけ思ってくれる姉ちゃんがいて。

そうだ!2人の卒業式の時は呼べよ?

いい絵を撮るからさ。」

 

なんて言いながらサンドイッチを頬張る剛。

 

「そう言う詩島こそお姉さんは元気なのか?」

 

「元気も元気。育児は大変だけどそれ以上に楽しいって。

いやーもうたまに写真を送って貰うんだけど英志が可愛いったら無くてさ!」

 

剛も負けず劣らずの姉馬鹿(シスコン)、甥馬鹿だった様だ。

 

「そうか。平和そうで何よりだ。

問題は詩島君のお姉さんの次が一夏さんかもしれない事だな。」 

 

「ま、真顔で言うな一条!

私だってその気になれば男の1人や2人!」

 

「その場合俺は現職警察官として逮捕する。

重婚は犯罪だ。」

 

「こ、言葉のあやだ!」

 

一条のボケだか真剣だか分からない発言に照れ隠しをする様にようやく料理を口に運ぶ。

肉汁がミートソースや麺とよく絡んだボロネーゼだ。

チーズをたっぷりかけると下手な個人営業の店より美味しくなった。

 

 

 

5

翌日、スッキリとした気分で千冬は目覚めた。

 

アレだけ悩んでいたが、

一度口外に出せばつい昨日まで腹の奥が鉛の様に重かったのが嘘の様に軽い。

 

「……あれ以来、話してないな。」

 

千冬は一夏に電話をかけた。

 

「……もしもし一夏?」

 

『うんにゅう……ちふゆねー?』

 

朝に弱い一夏の寝ぼけた力のない声が聞こえてくる。

可愛い(断言)

 

「その、調子はどうだ?」

 

『んー、すっごくいーよ。ケイタ居るし、

レンも心愛ちゃんも智乃ちゃんも居るし。』

 

「そっか。なら、心配ないな。

くれぐれも身体に気をつけてな。」

 

『千冬姉こそ、お部屋散らかってない?

今度掃除しに行ってあげようか?』

 

「いや良い。通い妻みたいな事をさせたらケイタ君に恨まれる。」

 

コロコロと楽しそうに笑いながらそうだね。と一夏。

じゃあまた。と千冬は電話を切った。

そしてすぐケイタに掛ける。

 

「もしもしケイタ君?」

 

『は、はい!聞こえてますケイタです!』

 

「ふふふっ、身構えんでいい。最近、一夏とはどうだ?」

 

『え?…今までに増して甘えて来ますよ?

特に2人きりの時には。この前なんか耳元で「子供、作ろ?」って』

 

「な、なぁ!」

 

『あ、大丈夫ですよ!何とか理性で耐えましたから!!!』

 

「あ、ああ!………そこら辺は信頼してるよ。

一夏を、頼んだぞ?」

 

『ッッッ!!……はいっ!』

 

それでは、と電話を切ると千冬は朝の支度を始めた。

 

(2人はもう心配ないか…君が見てない間に2人とも一歩前進したぞ山田君。)

 

現在行方不明(という事になっている)真耶に小さく呟く千冬。

 

「ま、悩んでばかりいても仕方ないという事か。」

 

顔を洗ってバッチリ着替え、朝食を取る為、外に出る。  

出るとバッチリとスーツを着込んだ男女が待機していた。

 

「織斑千冬さんですね?」

 

下唇の右下に黒子がある男が聞いて来た。

 

「ああ。そうゆうお前達は?」

 

「警視庁に新たに設立されました機動兵器犯罪捜査課の泊進ノ介(とまりしんのすけ)です。」

 

「狩野です。」

 

他のスーツ達も泊進ノ介に続いて電子警察手帳を提示する。

 

「織斑千冬さん。あなたをテロ活動に協力した容疑で逮捕します。」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
一夏「いや呑気に言ってる場合じゃないよ!千冬姉逮捕されちゃった!」
弾「いつかはやると思ってたがこんなに早いとは…」
一夏「2人ともふざけてる場合じゃ無いって!あーもー次回infinite DRAGON KNIGHTは!」
(推奨BGM 仮面ライダードライブ次回予告のBGM)
 千冬逮捕!?

千冬「私は何もやってない!」
ケイタ「機動兵器犯罪捜査課?」
進ノ介「IS学園では事件が起き過ぎてる。」
一夏「皆千冬姉を信じてよ!」
弁護士ビンゴ「あなたの無罪を証明します!」
アナザードライブ「そいつが有罪なんだっ!」
海之「またお前か?」
間明「さぁ?どうだろうね?」
草加「邪魔しないでくれるかなぁ?」
智乃「あなたは…」
三原「三原修二、仮面ライダーデルタ!」
剛「Let's 変身!」
ゼイビアックス「我々の元に来ないかね?」
鍵を握るのは……IS委員会長!?
???「皆さんは忘れてしまったのですか?仮面ライダーを、正義の使者達を。」
ケイタ「次回、夏休み編 なぜ織斑千冬は逮捕されたのか!」
一夏「これで決まりだ!」


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なぜ織斑千冬は逮捕されたのか

ケイタ「えー、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」
簪「織斑先生が捕まったとこまで。」
剛「しかも手錠かけたのが進兄さんに狩野のやつだ!なんでだよ!?千冬は確かに妹の為に試合をほっぽりだすやつだけど無意味にそんな事する奴じゃない!」
簪「冤罪ってこと?」
ケイタ「だったら俺らがどうにかするさ。それでは、どうぞ!」
(op Full Throttle 仮面ライダードライブ)


1

ケイタ達は取り敢えず楯無、虚、弾、達郎に事情を説明するため鳴海探偵事務所に向かった。

 

「いらっしゃいって、ケイ坊に一夏ちゃん!

それに弾達も!背後の奴らは友達か?」

 

「まあ、そんなとこ。

いきなりで悪いんだけどちょっとガレージ貸してもらえる?」

 

ドラゴンナイトのデッキを見せるとライダー関連の話だと察してくれたようで。

 

「ならコーヒーとかはいらねぇな。」

 

と、一同を中に通してくれた。

 

「じゃ、説明してもらいましょうか。

その強化服に、仮面ライダーについて。」

 

楯無が、解答 と書かれた扇子を広げる。

 

「なあ、今度それの筋肉って書いたやつ作ってくれよ。」

 

「万丈、馬鹿がバレるから黙ってろ。」

 

「あぁ!?」

 

ケイタと蓮が主体でホワイトボードに図を書きながら説明していく。

 

「この強化服は仮面ライダー。

契約したアドベントビースト、鏡の向こうから来る怪物の力を借りて戦う為のものだ。」

 

「そのなんとかビーストってのをぶっ倒さねえと、

人喰いだしてヤベー事になるんだよな?」

 

「実際に人食うとこは見た事ないけど、多分。」

 

「だけど俺たちが戦うのはそれだけじゃない。」

 

ここからが本題だと言うように真剣に楯無達を見るケイタ

 

「ゼイビアックス、俺たちにデッキを渡したやつが言うにはライダーがお互いに潰しあって最後に勝ったやつにはなんでも望みが叶う。らしいんだ。」

 

「なんでもって、なんでも?」

 

「さあな。だが大方ライダーバトルを促すための根も葉もない作り話だろう。」

 

達郎の疑問をバッサリ切り捨てる蓮。

達郎もまあ、追い詰められた人間なら食いつくかな?と話をまとめる。

 

「全部で何人いるの?」

 

「非正規のオルタナティブ含めて15人です。

まず、俺のドラゴンナイト。」

 

ホワイトボードの中心を線でわけ、左側に

 

『ドラゴンナイト=網島ケイタ』

 

と書く。

 

「それからウイングナイト、インサイザー、トルク、スティング、トラスト、ブレード、アックス、スピアー、ストライク、ラス、キャモ、セイレーンにアビス。」

 

左側に反ゼイビアックスのライダーの名前を右側にゼイビアックスに従うライダーの名前を書いていく。

 

「で、うち残ってるのがドラゴンナイト、ウイングナイト、アックス、スティング、ストライク、キャモ、ラス、オルタナティブ。」

 

ケイタが赤いマーカーで名前を消していく。

 

「残り半分もいないのかよ……」

 

戦いの激しさを覚え、弾は二の腕を摩った。

 

「でも数の上では網島君達が……」

 

「それがそう上手くはいかない。

このストライクってライダー。

正体は間明蔵人というサイバー犯罪者なんですが。」

 

ケイタと蓮がそれぞれポケットからトルク、セイレーン 、スピアーのデッキを取り出し

 

「俺とオルタナティブ、あとゼイビアックスが直接手を下したライダーが1人ずつ。そして残りは全員ストライクに倒されてる。」

 

青くなる虚。彼女はいかにライダーが規格外の存在かを知ってるだけに戦慄する。

 

「しかもただでさえ強いのにあいつはどうゆう訳か倒したトラストのカードまで使える。」

 

「てことは君達のデッキでは無理なのか?」

 

「えぇ。前に1度試しにインサイザーのカードを使ってみた事があったんですけど、うんともすんとも言いませんでした。」

 

「つまりそのストライクってライダーのデッキが特別か、

それとも改造品なのか。」

 

「多分後者でしょうね。

初めから出来たならもっと早い段階から倒したライダーのデッキに執着する筈ですから。」

 

成る程納得。と頷く戦兎。

 

「今のところゼイビアックスの目的とか諸々不明なことの方が多いですけど、きっとろくなことじゃないですよ。」

 

マーカーを放りながら話を切るケイタ。

 

「……なるほど、大体分かったわ。」

 

八割理解 と書かれた扇子を広げる楯無。

 

「学園内で戦う際、よっぽど人目につかない限りこっちで揉み消してあげる。」

 

「いいんですか?」

 

「事と次第によっちゃ、アンタを倒すかもしれないんだぞ?」

 

「大丈夫。私最強だから。それに」

 

適材適所 と書かれた扇子を広げ

 

「鏡の向こうなんて手が出せないからね。

それこそ仮面ライダーの領分よ。」

 

学園の平和の半分、任せたわよ。

と楯無はいつもの調子で言った。

 

「……確かに任されました。」

 

「よかったねケイタ。」

 

「これで仮面ライダーはIS学園の特攻隊だね!」

 

「あらゆる意味で不吉過ぎるわ!!

それを言うなら遊撃部隊だろ!?」

 

やいのやいのといつの間にやら真面目な空気が薄れた時だった。

 

「大変だ大変だ!!!」

 

「!? 翔兄どうした?」

 

「フィリップ兄まで。」

 

「これを聞きたまえ!」

 

フィリップがラジオを差し出す。

そこから聞こえてきたのは

 

『繰り返しお伝え致します。

今朝7時ごろ、IS 学園教員にして第一回IS世界大会優勝者の織斑千冬容疑者が逮捕されました。

織斑容疑者には、ISを暴走させたとして拘留中だった弟の織斑三春容疑者の脱走補助や国際的テロ組織にして死の商人亡国機業のテロ活動に関与した疑いが持たれており、捜査内容は今のところ明らかにされていません。』

 

信じられないニュースだった。

 

 

 

2

翌日、羽田空港国際線ターミナルにて。

 

「サード、くれぐれもこの馬鹿どもを頼む。

あと俺の部屋には絶対に入れるな。」

 

『分かっています。今ので8度目です。』

 

そうだったか。と言いながら蓮は心愛にサードを託す。

 

「本当にアメリカに戻るのか?」

 

「帰国命令を無視するわけにもいかないし、

向こうから調べられる事もある。

何か分かれば直ぐに伝えるさ。」

 

千冬逮捕のニュースの直後、各国は我先にと、

IS学園に在学する代表候補生、および専用機持ちに帰国命令を出した。

IS学園の守りの要たる千冬の不在のタイミングで何か怒らないとも限らないからだ。

 

「アキヤマ少佐!お待たせいたしました。」

 

「ご苦労ボーデヴィッヒ准尉。

じゃ、行こうか。達者でな」

 

「おう。」

 

「ちゃんとご飯食べるんだよ?」

 

「私達が居ないからって寂しがらないでね!」

 

「調子乗りやがって!直ぐに戻る!」

 

レンとラウラが飛行機に乗り込んでいくのを見送ると3人は直ぐに駐車場に向かった。

 

「それで、あの話本当?」

 

「ああ間違いない。誤解にせよ何にせよ、

東京第七拘置所。三春が居た場所で、

今千冬さんがいる場所だ。」

 

 

 

3

東京第七拘置所。

対して重要な拘置所では無いが、

アクセス的にはIS学園から遠からず近過ぎず。

如何にも『重要な人なんて居ません』と言ってるような一周回って重要な人物を囲っておくにはおあつらえな場所。

 

割り出すのはフォンブレイバーに監視システムをハックさせるだけで充分だった。

そして行くのも殆ど問題なかったのだが

 

「なあ、一夏、心愛ちゃん。あれってさ」

 

「うん」

 

「間違い、無いね。」

 

「頼む!頼むから千冬に会わせてくれ!うわっ!!」

 

白に赤いラインが入ったパーカーの青年が突き飛ばされる。

 

「だから何度も言ってるでしょ!織斑千冬はここには」

 

「こっちはそれなりに確信もって来てるんだよ!」

 

そう言って鞄から何かを出そうとしたが

 

「辞めておけ。」

 

後ろから来たスーツの男に止められた。

 

「お前一条! どうゆう事だよ千冬を逮捕って!」

 

「どうもこうも織斑さんには重大な犯罪の容疑がかけられてる。

それだけだ。」

 

そうとだけ言うと一条は奥に消えていった。

 

悔しそうにしながらその場を去ろうとする男。

 

「ま、待ってください!」

 

「? 君は?」

 

「私は織斑一夏と言います」

 

「!? じゃあそっちの彼が噂の網島君?」

 

「あ、はい。網島です。」

 

「私は2人の友達で保登心愛です!」

 

「そっか。俺は詩島剛。

フリーカメラマンで、千冬の友達だ。」

 

 

 

3

買い出しを終えて智乃はラビットハウスに急いでいた。

 

(なんで一夏さんのお姉さんが逮捕されて、

蓮さんが帰ってしまったこのタイミングに限ってお客さんが多いんでしょう!)

 

普段は危ないから駄目と言われている近道を使って急ぐ。

ピンチヒッターで簪や紗路が入ってくれたが、それでも大変な筈だ。

 

「おい……」

 

不意に誰かに呼び止められる。まるで地獄から響いてくる様な声だ。

 

「貴様、ブリュンヒルデの関係者だな?」

 

ぬ、と建物の影から現れたのは追突された赤いスポーツカーをそのまま人と合体させた様な異形だった。

 

左胸には歪な英字で「DRIVE」と書かれている。

そして全身から発する殺気は尋常では無い。

 

「まあ、どちらでも構わない……うらむなら、ブリュンヒルデをうらめ!!」

 

怪人の左腕に一体化した歪んだドアを模した盾の銃口から金色のエネルギー弾が撃たれる。

遮二無二避けた智乃だが休む間を与えず第二、第三の光弾が放たれる。

 

足元を物凄い熱い何かが通り過ぎて、爆ぜる。衝撃で転ばされる。

なんとか立とうとするが腰が抜けて立てない。

 

(殺…される? やだ!心愛さん!)

 

ギュッと目を瞑る。1秒…2秒。苦痛は訪れない。

 

「……? え?」

 

恐る恐る目を開けると身体中を鎖で縛られた怪人と

 

「成る程、大体分かった。」

 

もう1人の異形がいた。

黒いローブの様な強化スーツに鎧の様な銀色のレリーフと赤いクリスタル。そして顔を覆う真っ赤な宝石の様な仮面。その姿はまるで

 

「仮面、ライダー?」

 

「ご明察。通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」

 

左腰に下げていた本型のデバイスを剣に変形させ、

拘束した怪人に斬りかかる。

 

「ぐぅうう!!ならばぁ!」

 

何か力を発動しようとする怪人。

通りすがりのライダーは剣から一枚のカードを引き抜き、

腰のマゼンタと黒のベルトに装填する。

 

<FINAL ATTACK RIDE Wi Wi Wi WIZARD!>

 

『グラビティ プリ〜ズ!』

 

一体の地面が魔法陣に覆われる

 

「? ふん、無駄なことを!」

 

殴りかかる怪人。

しかしライダーはヒョイと躱すと綺麗なハイキックを叩き込む。

 

「な、何!? 貴様、なぜ遅くならない?」

 

「重加速は対象に強制的に重力過負荷(プレッシャー)を与えて動きを封じるものだ。コアドライビアがないなら重力をいじって対応すれば良い。」

 

なんて事も無いように呟くライダー。

怪人は忌々しげに舌打ちすると赤い軌跡を描いて消えていった。

 

「やはり、純粋な加速じゃドライブの方が上か。」

 

どうでも良さそうに言うと智乃の方に来て

 

「大丈夫かいリトルレディ?」

 

優しく手を差し伸べた。

 

「は、はい……あ、あなたは?」

 

「さっきも言ったはずだ。

通りすがりの仮面ライダーだとな。」

 

そう言って手を虚空にかざす。

銀色のカーテン状のエネルギー波が現れ、

そこに入って行く。

 

「あ、待ってください!」

 

「ドラゴンナイトに!……伝えておけ。

お前の正義、楽しませて貰う。てな。」

 

ライダーはカーテンの奥に消えていった。

 

 

 

4

夜のハイウェイをホンダ・シャドウスラッシャー400が駆ける。

他に車やバイクは見当たらず、蓮だけが道を進んでいた。

もう直ぐ出口、問いところで、

こちらを正面にする様に1台バイクが止まっていることに気付く。

 

「危ないな、なんのつもりだ?」

 

シアン色のホンダDN-01に似たバイクから男が降りる。

 

「何って、君のお宝を貰いに来たのさ。」

 

男はくるくるとシアン色の銃を取り出しながら2枚のカードを構える。

 

<KAMEN-RIDE METEOR!KAMEN-RIDE BEAST!>

 

読み込ませ、引き金を引くと光が飛び出し、

2人の仮面ライダーとなった。

 

「なんだと!」

 

1人は金色の獅子を模した仮面の魔法使い、

仮面ライダービースト

 

「さあ、ディナータイムだ!」

 

もう1人は青い仮面に宇宙柄のアーマーのライダー、

仮面ライダーメテオ

 

「お前の運命(さだめ)は、俺が決める。」

 

ビーストは肩を大きく回す、

メテオは鼻の下を撫でる様なポーズを取ると蓮に向かって来た。

 

蓮はバイクを降りずにデッキを構えて

 

「KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身すると、

シャドウスラッシャーを急発進させる。

 

「うお!だったら!」

 

<GO! キマイライズ!>

 

それを見たビーストは契約ファントムのビーストキマイラを召喚、

メテオは身体に青い球形のエネルギーを纏わせ飛翔し、

ウイングナイトを追う。

 

シアン色のバイクの男も安全距離を保ちながら追う。

 

ビーストの駆るビーストキマイラのイルカを模した口から放たれる氷弾を避けながら進んでいくが、

避ける先をメテオが妨害してくるため、

思った様にスピードを出せない。

 

《レン様!バイクを早くウイングサイクルに!》

 

(やってる!けどマシンとの相性が悪いのか何回やっても上手くいかないんだ!)

 

それでも能力の底上げは出来てるらしく、

ただのバイクのはずなのにこのレースに耐えてくれてるが、限界が近い。

 

「くそっ!不味いな!」

 

毒づいだ次の瞬間、キマイラの攻撃とメテオの体当たりが完璧に合わさった避けられない攻撃が

 

<TIME ♠︎10>

 

繰り出される事は無かった。

一瞬の間も無く背後のキマイラと真正面にいた筈のメテオが倒される。

 

「な!?」

 

「おいおい、僕が見つけた獲物だよ?

邪魔しないでくれたまえ、(つかさ)

 

士と呼ばれた男を振り返る。

スペードのマークをあしらった鎧に赤い昆虫ににた垂れ目の複眼にヘラクレスカブトを模した銀の仮面のライダーだった。

 

「だったら、もっと早く仕留める事だな。」

 

<MACH ♠︎9>

 

持っていた剣にカードを読み込ませる。

爆発的に速度を上げた士というライダーが切りかかってきた。

 

「うわあああ!! こ、この!」

 

ダークバイザーを引き抜き、反撃するがひょいひょい、と避けられ

 

「こんなふうにな。」

 

<REMOTE ♣︎10>

 

新たにカードを読み込む。

その後直ぐにウイングナイトに投げつけたカードに光が当たり、

中から二体の怪人、ボアアンデッドとトリロバイトアンデッドが解放されてウイングナイトを拘束する。

 

「動くと痛いぞ?」

 

と言いながらカードを今度は腰に付けたベルトにスキャン!

 

<FINAL ATTACK RIDE Bu Bu Bu BLADE>

 

放たれた赤雷を纏ったライダーキックウイングナイトに炸裂!

 

「ぐぁああああ!!!!」

 

変身が解除され、放り出される蓮。

デッキと2つのブランクウォッチが転がる。

 

「お前…何者だ?」

 

「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。」

 

そう言って士と呼ばれたライダーはブランクミライドウォッチを拾うとバイクの男に投げ渡す。

 

「………仕方ない。今日のところは士の顔を立ててあげるよ。」

 

少し不満そうに唸ると男はバイクをUターンさせて帰って行った。

士と呼ばれたライダーも去って行く。

 

「くっそ………なんだったんだ?」

 

『ハーレー博士には遅れると連絡しておきますね。』

 

「ああ、急ごう。」

 

バイクを起こすと蓮は再び目的地を目指した。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
簪「アキヤマ君とあの女の子の前に現れた同じベルトの2人のライダー?ダリナンダアンタイッタイ」
剛「ま、おふざけは置いといて。ケイタ君!君らと合流できて良かったぜ、俺も千冬が亡国なんかに協力するやつじゃないって信じてる。」
ケイタ「ええ、一緒に真実を明らかにしましょう!」
簪「次回、夏休み編 本当に間明蔵人は関わっていないのか」
剛「追跡、撲滅、いずれも・・・マッハ!!」
(ED Ride the Wind 仮面ライダーディケイド)


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小ネタ集

やりたかったからやった。後悔はない


その1 ウォズ「これもまたライダーの歴史」

 

ケイタ「小さな事で悩んで、くよくよしてない?」

 

蓮「そりゃ、立ち止まってしまうこともあるさ。」

 

一夏「けど、動き出して頑張った先に」

 

心愛「君の明日未来があるよ!」

 

ケイタ「ビタミンC、ビタミンB配合!」

 

蓮「着色料、保存料ゼロ!」

 

女子2人「元気ハツラツ!」

 

4人「オロ○ミンC!」

 

 

その2 万丈「やっぱこいつ馬鹿だろ…」

 

心愛「もう7月も半分過ぎたか〜1年も折り返しだね。」

 

ケイタ「え?」

 

心愛「だって1年って、1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月、お正月!13ヶ月じゃん!」

 

 

その3 貴利矢「そんぐらい普通」

 

蓮「新作ブレンド?」

 

心愛「コーヒー苦手な蓮くんでも飲める様に頑張ったよ!」

 

蓮「へーどれどr……このカップに黒い砂が入ってるのはなんだ?」

 

心愛「お砂糖いっぱいれたよ!」

 

蓮「液体じゃなくなるまで!?」

 

 

その4 タケル「人の可能性は無限大だ!」

 

一夏「新作メニューのアイデアねえ…」

 

ケイタ「心愛ちゃんなんかない?」

 

心愛「私パン作るの得意だからパン売りたい!」

 

蓮「例えばどんな?」

 

心愛「ゴーヤパンいくらパンとか!」

 

理世(名前が全然美味しそうじゃない……)

 

 

その5 チェイス「安全運転がルールだ。」

 

心愛「自転車ー!」

 

理世「あれどうしたんだ?」

 

智乃「アンカーからのお給料で買えたそうです。」

 

理世「自転車かぁ…懐かしいな。」

 

智乃(理世さんも昔買って貰ってはしゃいだんでしょうか?)

 

理世「左手で銃持ちながら運転したら怒られたな。」

 

智乃(!?)

 

 

その6 紘汰「ぜってぇ許さねぇ」

 

智乃「ムスーー……。」

 

一夏「なんか智乃ちゃん機嫌悪いね。」

 

ケイタ「やな事でもあったかな?」

 

心愛「おはよう智乃ちゃん!」

 

智乃「ふん!」プイ

 

一夏「いつも通りだね。」

 

ケイタ「思い過ごしだったかな?」

 

理世「いつもあんなツンケンされてんの?」

 

 

その7 晴人「今は後ろ向きになってる場合じゃないんだ」

 

ケイタ「うぅ……皆、俺はもうダメだよ……。」

 

心愛「そんな事は無いよ!頑張って!」

 

蓮「今は後ろ向きになってる場合じゃ無いだろ!」

 

一夏「ていうか……夏休みの宿題計画的にやらなかったケイタが悪いよね!?」

 

ケイタ「……はい。」

 

 

その7 アンク「アイスは食い過ぎに注意だ。」

 

一夏「ケイタケイタ〜」

 

ケイタ「何?」

 

一夏「お腹痛い。」

 

ケイタ「あっそ。」

 

一夏「あっそしゃない!さすってさすって!」

 

ケイタ「わかった!わかったから暴れないの!」

 

〜廊下〜

 

蓮(最近一夏がケイタの部屋に入り浸ってる。)

 

蓮(いやいいんだぞ?告白して両想いになったわけだし。)

 

蓮(だが、それでも超えちゃいけないラインがあるわけでわかってるとは思うが毎朝のように同じ部屋から出てこられちゃ疑いたくも……)

 

部屋を見る、ケイタが膝枕しながら一夏のお腹をさすってる。

 

蓮(か、懐妊!?)

 

理世(ん? 何やら二階が騒がしい……)

 

蓮「天々座!武器弾薬を用意しろ!千冬(てき)が来るぞ!」

 

理世「はぁ?」




また思いついたらやります。


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本当に間明蔵人は関わっていないのか

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」

三色のライダー「海東の奴がお前んとこの蝙蝠にちょっかい出したとこまでだな」

ケイタ「うわビックリした! アンタ一体」

三色のライダー「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ。」

紗路「信号機の仮面ライダーじゃなくて?」

通りすがり「確かに縦長の信号機と同じカラーリングだが関係ない。これは鷹、虎、飛蝗だ。」

紗路「へぇー……」

ケイタ「智乃ちゃんを襲った怪物は何者なのか?そして千冬さんは冤罪なのか、さてさてどうなる?」


1

ただただ見慣れない天井を見続けながら織斑千冬はあくびを噛み殺した。

ここに入れられてどのくらい経ったのかもう分からない。

拘置場に居るわけだから話し相手も娯楽の類ももちろん無い。

なんでここに居るかも分からないまま無為に時間だけが過ぎていく。

 

(私は、何をしてるんだろう?)

 

一夏とケイタの事に関してはもう納得した。

まだ時間がかかる事も有るだろうが、平気だ。

だがあの泊という刑事に三春が脱走したと聞かされた時に別の問題を思い出した。

 

(一夏には、随分と寂しい思いをさせてしまった。

じゃあ三春には何をしてしまったんだ?)

 

2人を守る事は義務というか、

私がやらなきゃいけない事だと思っていた。

だが結局は押さえつけて成長を見ていないだけだった。

そして三春は

 

(いつから、ああなってしまったんだ?)

 

考えても答えに辿り着かないと分かっていても考えずにはいられなかった。

 

(結局私は何も出来ないんだろうか?)

 

ラウラに力は物理的な強さでは無いと言っておきながら一夏や三春の心を見ていなかったとは恥ずかしい限りだ。

 

「ーー! おい!聞いてるのか?」

 

「え?」

 

「面会だ。出ろ!」

 

看守に連れられよく刑事ドラマで見るあの部屋に連れて行かれる。

ガラス越しに居たのは一夏やケイタ達、

草加や詩島達でも、ましてや泊や狩野でも無かった。

 

「筿原ミナ国家IS委員長!?」

 

「お久しぶりですね。織斑千冬さん。」

 

落ち着いた静かな微笑を浮かべながら改めて、と一拍おき

 

「私は筿原ミナ。日本の国家IS委員会の委員長にして、機動兵器犯罪捜査課の設立を要請した者です。」

 

「!? そんなあなたが何故ここに?」

 

「あなたに全て説明する為です。」

 

「全て?」

 

「何故私がこの地位まで登り詰めていながらISの欠陥を白日に晒す様な部署を設立したのか。

その全てをお話しします。」

 

曰くそれは2003年1月12日。

世界中の鏡から異形達が押し寄せた。

それは手当たり次第に人を襲い、食らい、屍と血溜まりを作り続けた。

 

「そんな時助けてくれたのが仮面ライダーでした。」

 

まだ小さかった自分を助けてくれた青いジャンパーの男は背中を怪物に傷つけられ、血を流す男。

彼が無事だったかは分からない。

けど最後に見たのは

 

「変身!」

 

赤と黒の鎧に銀の仮面を纏って果敢にも立ち向かう戦士の後ろ姿。

 

「あの時、ゼロワンを倒した戦士がその青い服の男だったと?」

 

「違います。彼は別人です。」

 

というか、と言いながらミナは悲しげな、やっぱりかと言う様な顔になり

 

「やはり忘れてしまったのですね。

仮面ライダーを、正義の使者達を。」

 

次に彼女は、自分が何故仮面ライダーの名前を知ったかを語った。

 

「2010年8月7日。

傭兵集団NEVERによる風都タワー占拠事件。

この記事を見て、私は決断しました。」

 

「決断?」

 

「私を助けてくれたあの仮面ライダーを探す為に権力を手に入れようと」

 

そしてIS適正はあまり無かったが巧みな弁舌と政治工作で現在の地位に上り詰めた。

 

「そして驚きました。

皆が、本人さえもが仮面ライダーを忘れている。」

 

はぁ…、と生返事する千冬に

 

「あなたもその1人です。」

 

と、断言する。

 

「一条薫に草加雅人、詩島剛。

仮面ライダークウガの唯一無二の親友に

仮面ライダーカイザ、仮面ライダーマッハ本人と近くにいながら何も感じていない。」

 

「なんだと!?」

 

想像もしなかった事だった。

あの3人が仮面ライダー?

 

「だから私は彼らや彼らの周囲にいた仮面ライダーを知る者を中心に機動兵器犯罪捜査課を設立させました。

仮面ライダーの戦いは、

間違いなくあったと証明する為に。」

 

その為だけに、私はここにいます。

そうとだけ言うとミナは去って行った。

 

 

2

コンビニでカップ麺を買い足し真っ直ぐに基地に戻る。

任務以外で間明蔵人が唯一地球側に戻る時、

背後から視線を感じだ。

 

(やれやれ、勘弁して欲しいね。)

 

ただのアンカーのエージェントとかなら適当なタイミングでベノスネーカーに喰わせよう。

 

買ったカップ麺を近くにいたビーストに預けて人気の無い場所に行く。

 

「わざわざこんなとこに来るなんて、

誘ってるつもりかな?」

 

暗い緑色のシャツの陰湿そうな男が立っていたその腰には

 

「ベルト? まさか…」

 

<9 1 3 enter standing by>

 

「変身!」

 

<complete>

 

「ほう…フォトンブラッドを使った兵器か」

 

くいっ!と襟を正す様な仕草をすると

草加が変身したライダー、

仮面ライダーカイザは専用武器の

カイザブレイガンを構えた

 

「死ね!」

 

連写されるフォトンストリームの光弾を避け、間明もデッキを構え

 

「仮面ライダー。」

 

ストライクに変身。ベノバイザーを逆手に構えて肉薄する。

振り下ろされるバイザーを

アーマーの1番硬い肩部分で受けるカイザ。

 

「君に狙われる謂れはない筈だけど?」

 

「お前は、一夏を悲しませようとしている。」

 

「勘違いして貰っちゃ困るな。

僕は織斑千冬が逮捕された件には全く関わってないよ。」

 

別件で忙しいんだ。と言うストライクに

結局一夏を悲しませるんだろう?とカイザ

 

「? それがなんだい?」

 

「一夏は、少なくともよく眠れる場所で幸せになるべき人間だ。

その方が俺にとっても都合がいい。」

 

「だったら何さ!」

 

顔面を殴り、

バイザーを引っ込めるとベノサーベルに持ち替え迫るストライク。

カイザはバックルからミッションメモリーを引き抜き、

カイザブレイガンにセット、

黄色い刀身を出現させ受ける。

 

「邪魔なんだよ…俺の思い通りにならない者は全て!」

 

<exceed charge>

 

至近距離で拘束用の特殊光弾を発射し、ストライクは網目状のエネルギーに貼り付けにされた様に動けなくなる。

 

「こ、これは…」

 

「俺の思い通りにならない者は皆罪人だ!

罪には…(×)を!」

 

カイザの体が閃光に変わり、

X字型にストライクを斬り裂く!

 

「デェヤァアァアア!!!」

 

「うわぁああああああ!!!!」

 

青い炎が上がる。

ストライクの身体が灰になって、

その上に紫のデッキがポトリと落ちた。

 

「ふん。呆気ないなぁ…」

 

そう言ってカイザがその場を去ろうとした時、ぐしゃり。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさか!」

 

振り返るカイザ。そこに居たのは

 

「全く、こちらに都合の悪い展開になって来たなぁ…」

 

草加雅人にとって最も因縁深いオルフェノク、

スパイダーオルフェノクの姿があった。

 

「どうやら、まだやれるみたいだね。」

 

「逃すか!」

 

ブレイガンを撃とうとするが、近くの窓から飛び出して来たメタルゲラスに妨害される。

次にガンを構えた時、奴は消えていた。

 

 

3

詩島剛と合流した3人はラビットハウスに戻って来た。

 

「ただいまー!」

 

「お、お帰り網島……! 

い、いらっしゃいませこちらのお席に…」

 

「あー待って待って理世さん。

この人は千冬姉の友達で」

 

「詩島剛。よろしくね」

 

「え?…そ、そうでしたか……」

 

心底疲れた。と言う様に座り込む理世。

 

『どうしたんだ?

満身創痍じゃないか。』

 

変形しながらケイタの肩に乗るセブン。

 

「!? ケータイが喋った!」

 

「あ、詩島さんこれは!」

 

「知ってるよ。フォンブレイバーだろ?」

 

噂ぐらい聞いてるよ。と笑う剛。

 

「言いふらしたりしないから安心してくれ。」

 

「くれぐれも頼みます。」

 

ます。と頭を下げる3人。

 

「た、大変お待たせしました!

日替わりブレンドとチーズケーキです!」

 

厨房から飛び出して来た紗路が肩で息をしながら剛にトレーを渡す。

 

「紗路ちゃん、もう終わり。」

 

「え? あ、皆…うぅ……」

 

限界だと言う様に膝をつく紗路

 

「本当に何があったの?」

 

「何って…何故か今日に限ってとんでもない数の客が……」

 

「そ、それで理世先輩に呼ばれて…」

 

「俺らのいない間にそんな事が…あれ?

てかそれなら智乃ちゃんは?」

 

『そう言えば姿が見えんな。』

 

『シーカー達も見ていないと言っている。』

 

「……今度からこのケータイ共にも手伝わせるか。」

 

!? て感じでケイタ達の服から飛び出るブーストフォン達

 

「うわ!いっぱい出て来た!」

 

『こいつらにカップを運ばずのは無理だろ。』

 

「で、結局智乃ちゃんはどこに?」

 

「材料が足りなくなって何回か買い出しに…」

 

「そう言えばまだ帰んないですね?」

 

「……心配だな。」

 

「一夏ちゃんとケイタ君お店お願い。

私探してくる」

 

そう言って心愛が出て行こうとした時、

勢いよく智乃が飛び込んで来た。

 

「智乃ちゃん!?」

 

「はぁ…はぁ…! こ、心愛さん!」

 

ギュッ! と心愛の胸に飛び込み震える智乃

 

「!? よしよし大丈夫だよ。

何か怖い目にあったの?」

 

「ど、ドライブって赤い怪人にッ!」

 

「ドライブだって!?」

 

トレーをケイタに預けて智乃に詰め寄る剛。

 

「それって銀の仮面で黒いスーツに赤い鎧の?」

 

目に涙をいっぱいに溜めながら頷く智乃。

 

「ッ! んな馬鹿な…見間違いじゃないのか!?」

 

「見間違いませんよ身体にドライブって書いてあったんですから!!」

 

「身体に、書いてあった?」

 

訝しげに顔をしかめる剛。

 

「詩島さん、なんか知ってるんですか?」

 

「……ああ、仮面ライダードライブは俺の義兄さんだ。」

 

「!?」

 

智乃を守る様に抱き寄せる心愛。

その目には彼女には珍しく疑いの色がある。

 

「けど、ドライブが人を襲うはずが無い。

そんなゴルドドライブやロイミュードみたいな事をする訳が!」

 

「じゃあなんで私の事を本気で殺しに来たんですか!

一夏さんのお姉さんがどうのって言って!

ウィザードって仮面ライダーが助けてくれなかったら私は今頃死んでます!」

 

「仮面ライダーウィザード?」

 

「ベルトからそんな音が…」

 

「ウィザード…確か進兄さんが昔一緒に戦ったライダーにそんな奴がいた気が…」

 

「……ところでその進って人と連絡取れます?」

 

「? 取れるけど……」

 

「取れるけど?」

 

「進兄さんは、今機動兵器犯罪捜査課のリーダーだ。」

 

「!?」

 

一夏までもが剛に疑いの眼差しを向ける。

そりゃそうだろう。

なんたって姉を逮捕されてるのだから。

 

「けど、信じてくれ。ドライブは、

進兄さんはそんな事をする様な奴じゃ!」

 

断言する剛。

しかし女性陣からの視線は厳しい。

 

「………わかった。」

 

「ケイタ!?」

 

「詩島さん。

その似非ドライブ、俺たちで見つけましょう。」

 

「ケイタ君本気?」

 

「本気も本気さ。

偽者なんかをのさばらせちゃ、

仮面ライダードライブの名がなくぜ。」

 

先輩を敬うのもライダーの仕事さ。

と、笑いながら上着を直すケイタ。

 

「け、ケイタやめてよ!

なんでそんな奴信じるの?

そんな奴より千冬姉を信じてよ!」

 

「千冬さん()信じてる。」

 

「も?」

 

「仮面ライダードライブも信じてる。」

 

「も?」

 

「仮面ライダーは大自然と正義の使者。

どんなに道を誤ろうとも、

我執で人を襲うなんてしない。」

 

「なんでその会ってもない人の事を…」

 

「せめて周りからどんなに疑われても、

俺ぐらいは信じなきゃ。

今一夏が千冬さんを信じてるみたいに。」

 

「!?」

 

目を見開き、瞬間放心してしまう一夏。

 

「それに、こんな美人に手を出したんだ。

万死どころか億死に値するぜ。」

 

ぽんぽん、と智乃の頭を撫でるケイタ。

 

「!!!? い、いつもは子供扱いするくせになんですか!? い、一夏さんが嫉妬しますよ?」

 

「え? う、うん!」

 

余程誰かが無条件に千冬を疑っていたのと同じ事をしていたのがショックだったのかようやく戻って来た。

 

「一夏。」

 

「な、何?」

 

「今度はそのドライブ擬きが直接こっちにくるかもしれない。

店のこと、頼んだぜ。」

 

ぽんぽん、と頭を撫で店を後にするケイタ。

背後からポンッ!と湯気が上がる様な音がしたのは完全に余談だ。

 

 

4

「筿原委員長。」

 

「なんでしょう?」

 

「機動兵器犯罪捜査課の方々がお見えです。」

 

「通して。」

 

知らせに来た秘書を下がらせると入れ替わる様に進ノ介、狩野、一条が入ってきた。

 

「皆さんお疲れ様です。

全て滞りなく進んでいますか?」

 

「はい。万が一に備え、

織斑千冬が告訴された際、

国選弁護人は飛電インテリジェンスが投資企業D&Pの投資の元開発した弁護士型ヒューマギア、弁護士ビンゴを派遣する様に手配しました。」

 

「弁護士ビンゴ…あの勝訴率76%を誇るあの?」

 

「あのビンゴです。」

 

ならば心配は要りませんね。と溜息をつくミナ。

 

「それで、捜査の進展は?」

 

「電脳救命センター、CRからかつて檀黎斗から押収したレジェンドライダーガシャットがなくなっていたとの連絡が。」

 

「何ですって!?」

 

ガタリと立ち上がるミナ。

ライダーの力が悪用される。

それは彼女にとって何よりも耐え難いことだった。

 

「いったい誰がそんな事を!?」

 

「わかりませんが、

重加速現象研究の第一人者の沢神りんな博士協力の元、

重加速粒子の捜索を行った結果、

木組みの街の七ヶ所で織斑千冬逮捕前後に発生したと結論付けられました。」

 

「……つまり奪われたガシャットは」

 

「フルスロットルドライブ。

仮面ライダードライブがロボルバグスターと交戦した際のデータを元に作られたガシャットです。」

 

「……アレがあれば不完全ながらアナザーライダーを作り出す事や、再生怪人を生産出来ます。

直ちに奪還しなければなりません。

刑事部特状課のメンバーを機動兵器犯罪捜査課に招集。

CRと機動兵器犯罪捜査課、

およびA.I.M.S(エイムズ)(Anti Infinite stratos Murder attacker corpS(敵性インフィニット・ストラトス攻撃隊))に武装許可要請を。

目には目、怪人には仮面ライダーです。

圧裂弾や神経断裂弾の使用も許可します!」

 

「了解!」

 

退出していく3人。

ミナは祈る想いで見送った。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

通りすがり「あの全裸社長(30)死んでもロクな事の原因になるとはな」

紗路「確かにエグゼイド本編の流れだとレジェンドライダーのガシャットは衛生省に押収されてるだろうけど…」

ケイタ「でも国に預けたアイテムって大概盗まれてるし」

通りすがり「フルボトルのことか?」

ケイタ「そうそれ!」

紗路「あの気持ち悪いドルオタのライダーに結構な数盗まれたわよね…」

通りすがり「たしかプロトガシャットやハザードトリガーなんかも映画で盗まれて敵の変身に使われてたな。」

ケイタ「……最近のアイテムって、盗まれると取り返しがつかねぇ…。」

通りすがり「お前らは自分が使えなくなるだけだけどな。」

紗路「じ、次回infinite DRAGON KNIGHT どの様にアナザードライブは生まれたのか!?」

通りすがり「全てを破壊し、全てを繋げ!」


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誰がライダーガシャットを盗み出したのか

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHT…てか随分と間が空いたな。」

セブン『コロナ騒ぎだなんだで家にいる時間が多くて中々書けなかったとそうだ。』

千冬「それなのに他サイトで一次創作を書いたり、ハーメルンで多重クロスの聖杯戦争ものを書いたりしてたんだがな…」

ケイタ「これは問い詰める必要があるな。」

セブン『それよりまずは本編だ。』

千冬「さてさてどうなる?」

(op Alive A life 仮面ライダー龍騎)


1

ドライブの偽物を探す、としたはいいが、

ケイタと剛の調査は行き詰まっていた。

 

「見つかりませんね、偽仮面ライダー。」

 

「ま、そう簡単に見つかりゃ苦労しないか。」

 

公園の広場の一角にて、

寄ってくる野良ウサギを撫でながら

ケイタと剛は休息を取っていた。

 

「そう言えば、詩島さんのお兄さんはなんで仮面ライダーになったんですか?」

 

「…2014年に起きたグローバルフリーズがきっかけだ。」

 

「グローバル…フリーズ?」

 

「……え? 知らないの?」

 

「え、ええ。そんな事件?ありましたっけ?」

 

「そんな事件って…世界中で機械生命体ロイミュードが一斉蜂起した大事件だぞ?」

 

「ろ、ろ、ロリショージョ?」

 

「なんか懐かしい間違い方してるし!」

 

どう説明したものか、と頭をひねる剛。

 

「いざ1から説明するとなるとどっから話したもんかな…」

 

「まあ、何にせよ俺はドライブのこと信じてますから。」

 

「ありがとう。」

 

剛がそう言った瞬間、意識以外の全ての時間がゆっくりとしか動かなくなった。

 

(せ、セブンこれって!?)

 

《わ、分からん!だがかなり不味いぞ!》

 

唯一自由に動く目を動く者がいる方に向ける。

 

(ああ、確かにアレはドライブだな。)

 

赤い潰れた廃車をそのままヒトガタにした様な異形が近づいて来た。

その左胸には歪な英字で「DRIVE」と書かれている。

 

《自己主張の激しい奴だ。》

 

(せめて、変身だけでも!)

 

なんとかポケットの中からデッキを取り出そうとするがそれより早く

 

(詩島さん!?)

 

剛がなんで事のない様に普通に立ち上がった。

 

「キサマ、なぜウゴける!?」

 

「俺には、コイツがあるからな。」

 

そう言って剛は掌サイズの黒いバイク型のアイテム、シグナルチェイサーを見せる。

 

「そこをどけ!ブリュンヒルデの弟はワタシが殺す!」

 

「だったら退くわけにはいかないな!」

 

剛は特殊警棒を取り出すと生身にも関わらず、アナザードライブに向かっていった。

 

《凄いな、あの怪人と戦えているぞ!》

 

(俺らも早く加勢しないと!)

 

ゆっくりとしか動けない中、なんとかデッキを取り出す。

 

(Vバックル出てくんのも遅っ!

セブンこれ倍速とかできないの!?)

 

《出来たらとっくにやってる!》

 

今はなんとか剛の卓越した戦闘センスのおかげか、

はたまたアナザードライブが格闘のど素人故か、

なんとか剛は無傷だが、いつどうなるかわからない。

 

《ん? この音はサイレン? あれは!》

 

見ると『Anti Infinite stratos Murder attacker corpS』と書かれた車が普通の速度で入って来た。

 

「こちらマッハ隊隊長!目標を確認、変身許可を!」

 

車から飛び降りながら防弾衣姿の男達は腰にドライバーを装着!

 

<マッハドライバー!>

 

「総員、変身!目標を撃破せよ!」

 

「変身!」

 

量産型マッハドライバーに特状課キーをセット。

隊員達は量産型マッハに変身してアナザードライブに向かっていく。

 

「君! なぜ動けるか知らんがさがっていろ!」

 

「AIMS!?なんでここにってうわ!」

 

剛を退避させ、

果敢にもアナザードライブに向かっていくマッハ達。

しかし所詮量産型。

鍛え上げた人間は倒せても人間を超えた理不尽には一歩及ばない。

物量でなんとか拮抗しているが、

いつまでもは持たないだろう。

現に今、吹っ飛ばされた1人からベルトが外れてケイタの爪先に当たって止まる。

 

「うお! 動けた!」

 

『どうやらそのベルトには敵の特殊なプレッシャーを無効化する機能がある様だ。」

 

「よっし、セブン!

デッキのエネルギーを全部赤龍改に!」

 

『了解だ!』

 

マッハドライバーを装着し、赤龍改を展開するケイタ。

逆鱗閃甲を纏わせた拳を叩き込む!

 

「ISだと!?」

 

「赤いIS…網島ケイタか!!」

 

「信用できるか?

アイツはあの織斑千冬(悪魔野郎)の従弟だぞ?」

 

「だが、今ある最高戦力だ!

総員、ARを装備!

神経断裂弾の使用を許可する!」

 

民間人を避難させていたマッハ達がアサルトライフルを持って戻って来た。

仲間に武器を渡すとそれぞれ訓練通りに散っていく。

 

「ISには絶対防御がある。

それに彼も飛び出したからには覚悟の上だろう!

諸共撃て!!」

 

「はぁ!」

 

「正気か!?」

 

『ま、不味い!

イニシエイト・クラック・シークエンス発動!』

 

なんとかケイタの死角から

狙っていたマッハ達の視覚補助システムを乗っ取り撃たれる銃の数を減らし、ケイタはアナザードライブを盾に凌ぐ。

 

「クレイジー過ぎんだろ!

一体何考えてやがる!?」

 

『AIMSはISに憎悪を抱く人間ばかりを集めた組織だとは聞いていたがこれ程とは……』

 

上空に上がり龍炎での狙撃に切り替える。

 

「ここはひくか!」

 

一気に加速するアナザードライブマッハ達を撹乱するとその場から文字通りの電光石火で走り去っていった。

 

「早! なんだあれ?」

 

『シーカーを着身しても目で追えなかった。

アレに勝つには早さ、いや速さが必要だ。』

 

「速さ、か。」

 

呟きながら地上に戻るケイタ。

 

「戻って来た。網島ケイタパイロット!」

 

「は、はい!」

 

隊長格らしいマッハに声をかけられる。

 

「協力に感謝する。」

 

そう言って手を差し出された。

 

「あ、いえ。」

 

握手をしようとするが

 

 

「違う。マッハドライバーを返せ。」

 

「え?、あぁ、はい。」

 

素直にマッハドライバーを返すケイタ。

 

「隊長! 点呼終わりました。

死者0名。負傷者7名です。」

 

「わかった。状況終了!撤退だ。」

 

次々と車に乗り込んで行く隊員達。

 

「ま、待て!」

 

戻って来た剛が隊長に詰め寄る。

 

「なんでアンタらがそれを!?」

 

「貴様が知る必要は…お前、詩島剛か?」

 

「!? だったら何だよ。」

 

「沢神技術顧問から預かっている装備がある。」

 

そう言って隊長は報告に来た部下に何かを持ってこさせた。

 

「これ! 俺のマッハドライバー!」

 

「シグナルバイクは持っているな?

アナザードライブ擬きとの戦闘に使えとの事だ。」

 

「わかった。りんなさんによろしく言っといてくれ。」

 

「ああ。わかった。」

 

そう言うと今度こそエイムズ達は去って行った。

 

「大丈夫だったかケイタ君?」

 

「なんとか。にしても、剛さんも仮面ライダーだったなんて。」

 

「ああ、仮面ライダーチェイサーマッハの詩島剛だ。

改めてよろしくな。」

 

 

2

その日の夜、アメリカ某州某所にあるネクストシステムの開発者、 ハーレー・ヘンドリクソンの研究所にいた。

 

「やあ!よく来てくれたなサムライボーイ!」

 

「お、お初にお目にかかります。」

 

ハーレー博士のハイな感じに若干押され気味な蓮。

 

「ポリーから頼まれた物は出来てるよ。」

 

ネクストシフトカーだ。

そう言ってハーレー博士はメタリックブラックにクリアカラーのラインが入ったシフトカー、かつてパラドックス・ロイミュード=仮面ライダーダークドライブが使っていた3台の未来型シフトカーを再現した物だった。

 

「これで万が一重加速に巻き込まれても

こいつを持ってる限り大丈夫だ。」

 

「協力、感謝します。」

 

「なーに、ポリーの頼みだ。ここだけの話、

あいつサイボーグ化手術のせいで年齢不詳だが

アラフォーは超えてるからな。」

 

「知ってます。

この前いつも永遠の19歳って言ってたのを

『流石に無理がある』って言って

永遠の24歳に更新して呆れられてましたよ。」

 

「ははっ!戦場以外では舐められっぱなしなのは三十年前から変わらないな!」

 

「部下に借金するのも変わらずですか?」

 

「ああ、あいつの金銭感覚だけは我々にも解明できない。」

 

「笑えないですね。」

 

ああ、全くだ。とハーレー博士が言った直後、

蓮のスマートフォンがなった。

 

「失礼、もしもし心愛? 何があったか?」

 

『あ、蓮君! 今日ね、学園入って色んなデータ持って来たの!』

 

「!? よく忍び込めたな。」

 

『蓮君得意の鏡のイリュージョンってやつだよ!』

 

そう言えばシールのカードを渡していたなと思い出す蓮。

 

Isee(なるほど) で、収穫はあったか?」

 

『豊漁だよ。』

 

心愛がそう言うと蓮の打鉄黒翔にデータが送られて来る。

 

「………! 心愛お前本当良くやった!勲章ものだぞ!」

 

『でしょでしょ!?』

 

「しっかし、お前がここまで人を疑うとは思わなかったがな。」

 

『酷いなぁ、探偵としての才能を開花させたと言って欲しいね!』

 

「はいはい。兎に角、大手柄だ。

こっから先は荒ごとになるから俺達に任せろ。」

 

『ラジャー!』

 

通話を切り、ハーレー博士に礼を言うと蓮はアメリカでの自宅にむかいながらポリーに通信を入れた。

 

『ハァイ、レン。こんな時間にどうしたの?』

 

「ちょっと3日ぐらい留守にします。

シフトカーこのまま借りていくんで上には上手く言っといて下さい。」

 

『は? ちょっと待ってどうゆうこと?』

 

「借金半分チャラにしてやるから有無を言わずにやれ!」

 

『喜んで!』

 

さっさと通信を切ると蓮はベンタラに消えた。

 

 

3

「ただいま戻りましたっと…あれ?まだエムちゃんしか来てないのかい?」

 

「間明…貴様と2人きりとは運がない。」

 

つれないねえ。と言いながら間明は時計を見る。

ゼイビアックスに言われた時間を少し過ぎている。

 

「ねぇ、エムちゃん。僕が君の端末に勝手に入れておいたゲームはやってくれたかい?」

 

「?……まさかあの 『ジーンラビリンス』ってゲームお前が作ったのか?」

 

「自信作だよ。どうだった?」

 

「見た瞬間に消した。このサイバー犯罪社会で得体の知れないアプリを開くなど狂気の沙汰だ。」

 

「酷いね、端末に()害は無いのに。」

 

含む様に言う間明にエムは眉を潜めた。

やはりこの基地には得体の知れない男しかいない。

 

「それにしても将軍は遅いね。」

 

「呼びつけたんなら私達より早く来て欲しいものだが…」

 

背後の鏡が突然揺らめく。

中からもうすっかり見慣れたカブトガニの様な怪人が現れる。

 

「いやぁ〜2人ともお待たせしてすまなかったね。」

 

「ゼイビアックス将軍。」

 

「それで?わざわざ呼びつけたぐらいだ。

それなりに大事なことなんだろうな?」

 

「勿論だ。君達に新しい仲間を紹介したくてね。」

 

入って来てくれ。ゼイビアックスがそう言うと

反対側の鏡の奥から金色の不死鳥をもした仮面ライダーが現れた。

 

「紹介しよう。仮面(かめん)契約者(ライダー)憤怒(ラス)こと、織斑三春君だ。」

 

アーマーを解除したラスは2人の前に立つ。

 

「………まさか、こいつまで…」

 

「はっはっはっ!これは面白くなりますね。」

 

「君達にはキャノンボールファーストに合わせた作戦で活躍してもらう。

それまで待てるかな?」

 

「勿論だ。俺は俺の正義を証明して俺の守りだけが正しいことを証明する!」

 

「期待してるよ。」

 

笑いが、嗤いがこだまする。

目の前の問題も解決せぬまま、事態は深く静かに進行していた。

喉元に突き付けられるまで誰にも気付かれる事はない。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

セブン『これで残るライダーはついにキャモだけだな。」

千冬「原作ではただの噛ませ犬だったが、やはりRIDER TIMEの影響か?」

ケイタ「らしいね。そのうちinfinite time 仮面ライダーキャモ(仮題)もやりたいって言ってたし。」

セブン『まだ他のシリーズも終わってないのに増やすつもりか?』

千冬「一応、本編が終わってからにするとは言っていたが…」

ケイタ「ま、気長に待とうよ。次回、いかにして保登心愛は犯人に気づいたのか!」

セブン『これが!明日のリアル!』


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いかにして保登心愛は犯人に気づいたのか

ケイタ「えー、前回までの仮面ライダードラゴンナイトは?」

蓮「三春の野郎がライダーになりやがったり詩島さんがベルトを取り戻したり、心愛がアナザードライブの正体を掴んだり色々あったな。」

ケイタ「心愛ちゃんはどうやって奴の正体を?」

蓮「そいつは本編を見て貰おう。」

ケイタ「さてさてどうなる?」


1

夜の木組みの街はムーディーだ。

古い海外の都市の様な街並みと風都から来る涼しげな風が映画のラストシーンの様だ。

ラビットハウスみたいに夜と昼とでバー、カフェと変わる様な店もある。

まるで表裏で全く違う絵が書かれてる一枚のコインの様に街が変わるのだ。

 

(あんなガキ1人がめかし込んでるだけでサマになるもんね。)

 

物陰から様子を伺っていた者は標的、

織斑一夏を捉えながら独りごちた。

 

(こんな時間に何処に…ん?)

 

不意に後ろからきた眼鏡に栗色の長い髪の少女だ。

久々に会った友人と言ったところか、一夏は一瞬驚いた顔をしたが直ぐにパッと明るい顔になり楽しそうに喋り出した。

 

(まあいい。1人殺すも2人殺すも変わらん!)

 

<フルスロットルドライブ!>

 

追跡者はガシャットを起動させアナザードライブに変身すると銃口を一夏に向ける。

 

「死ね!」

 

重加速を起こす。これでもう逃げられ無い。

そして弾丸が一夏に当たる

 

「うぐっ!?」

 

事はなかった。逆にアナザードライブが何かに弾かれる。

 

「織斑千冬を首尾良く塀の向こうに入れたお前の次の目標は一夏とその周り。

一夏本人が餌になれば簡単に出てくると思ったぜ。」

 

声の方を見る。そこには奇妙なベルトを巻いた3人がいた。

 

「アミ島ケイタ…秋山レン!」

 

「さ、お前のターンはここまで。

お楽しみは、俺たちからだ!チェイス、力を借りるぜ!」

 

<シグナルバイク!>

 

真ん中に立つ剛がシグナルチェイサーを装填、

2人もデッキを構えてポーズを取り

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「カメンライダー!」

 

「Let's 変身!」

 

<ライダー!チェイサー!>

 

光に包まれ姿が変わる。

 

「大自然の使者の名を語った罪!」

 

「嫌になる程数えさせる。」

 

<SWORD VENT>

 

2人の鏡のライダーは得意の獲物を呼び出し走る。

まずウイングナイトが前に出た。

ウイングランサーで光弾を弾きながら距離を詰める。

 

「はあ!」

 

充分に近づくとキックで一回距離を取り

 

「チェンジ。」

 

2人のナイトは武器を交換。

ドラゴンナイトはウイングランサーを乱暴に使った強烈なインファイトを、

ウイングナイトはドラグセイバーとダークバイザーの舞う様な二刀流でアナザードライブを削っていく。

 

「調子に、乗るなぁ!」

 

アナザードライブは加速して2人を振り切る。

武器を落とした2人にたたみかかるアナザードライブ。

 

<ズーッと チェイサー!>

 

それより先に紫色の疾風がアナザードライブに殺到した。

 

「追跡!」

 

閃光の様な連続パンチが炸裂し

 

「撲滅!」

 

ゼンリンシューターの光弾が至近距離で浴びせられ

 

「いずれもっ!マッハ!」

 

足払いからの多段キックに怯まされる。

 

「仮面ライダー…チェイサーマッハ!」

 

その正体は音速の騎士だった。

ただの加速が敵うはずもない。

 

「悪足掻きはよしたらどうだ?」

 

「もうアンタに手を貸した女権の奴らはお縄になったぜ?」

 

狼狽るアナザードライブ。

どうやら心愛が掴んできた通りだったらしい。

 

「くそう!なんで、なんでわかった!?」

 

「知りたい?シャバの土産に聞かしてやるよ。」

 

 

2

「い、意外と歩くと遠いね。」

 

『まあ、私は心愛様に運んでいただいてるだけなのですが……』

 

心愛とサードは夜、IS学園に向かった。

ここまでガチガチに警察に固められてしまえば証拠の持ち出しは不可能になる。

つまり今なら警察が纏めてくれた証拠を一気にゲット出来ると考えたのだ。

 

『しかし、どうやって侵入しますか?』

 

「このロープ付き鉤爪で!」

 

『目立ってしょうがないでしょ!?

シールのアドベントカードをお持ちですか?』

 

「いつも持ってるよ!」

 

『近くのカーブミラーから何処か人の入っていないトイレにでも出ましょう。』

 

「ラジャー!」

 

近くの窓に飛び込み、ベンタラを経由して学園のトイレに出る。

 

「ここは?」

 

『わかりませんが、

外に出てカメラに移ればわかります。

イニシエイト・クラック・シークエンス発動。

カメラシステムを掌握します。

……大丈夫です。外に出て見てください。』

 

廊下に出てカメラに向かって手を振る心愛。

 

『そこからですと…生徒会室が1番近いですね。』

 

「なら今鍵あるよ!」

 

正式に生徒会入りしてから時々楯無から仕事を押しつけ任される様になったからスペアキーを預かる様になったのだ。

 

「サーチャー君!」

 

持ってきたアクセルデバイスサーチャーを耳に挟むと

絹の手袋を装着してキーボードを叩く。

 

『心愛様も慣れてきましたね。』

 

「伊達にずっとオペレーターとして皆を見ていた訳じゃないんだよ?

それに…」

 

『それに?』

 

「いつまでも置いてきぼりは寂しいもん…。」

 

『……心愛様、それは考え過ぎです。』

 

「サード君?」

 

『皆さんから置いてきぼりにされているなら

レン様はわたくしを貴女に預けたりしますか?

ケイタ様や一夏様は貴女に相談しますか?』

 

「それは…」

 

『貴女はあの3人になくてはならない存在です。

ご自分を卑下なさらないでください』

 

貴女がいないと皆寂しい。

わたくしサードが保証します。

彼は自信満々に言った。

 

「サード君…うん。そうだよね!」

 

カタカタカタカタ。次々と情報を奪っていく心愛。

 

「よし!コンプリート!」

 

『では早速改ざんの形跡を探します。』

 

「待ってサード君。それも有るけど一つ、調べたい事がある。」

 

『なんでしょう?』

 

「織斑先生に疑いがかけられるきっかけになった日付のデータを出して。」

 

『はい。』

 

「よし。この日、この時間、このタイミングで1番疑いがかからない。

そしてなおかつ1番関係がなさそうな人は!」

 

 

3

「アンタって訳だ現一年1組副担任の鳴上(なるかみ)先生。」

 

ドラゴンナイトに名指しされ思わずたじろぐアナザードライブ。

その反応が心愛の推理が全て正しい事を物語っていた。

 

「ISのプログラミング専攻のアンタなら内側からのデータ書き換えなんて簡単だっただろうな。」

 

「だとしても私だという保証は!」

 

「なかった。いや、心愛以外は持てなかった。」

 

ウイングナイトは少し自慢げに語る。

 

「心愛はラビットハウスで1番チップ貰ってるんだ。

どんな客にも親身になって話しかけて仲良くなれるからな。

IS学園の教員内の噂だって簡単に仕入れられるんだぜ?」

 

「例えば鳴上先生は隠してるつもりだろうがやり過ぎなぐらいの女尊主義者で俺たちの入学にも反対した様な奴で、出世欲にまみれた拝金主義者。とかな。」

 

ぐっ!と詰まらせるアナザードライブ。

もうここまで揃ってしまえば彼女に残された選択肢は多くない。

 

「こ、こうなればぁ!」

 

<フルスロットルドライブ!>

 

ガシャットを起動してドライブの機能から再現された者がバグスターとして現れる。

 

「うわ!なんだこいつ?」

 

「黒いドライブ!?」

 

「プロトドライブ? てことはまさか!」

 

プロトドライブがシフトブレスからプロトシフトスピードを引き抜く、現れたのは

 

「ッッ!……チェイス!」

 

紫のライダースジャケットの無表情な青年だった。

 

「………」

 

チェイスは剛の呼びかけには答えず金色のナイフの様なパーツの付いたアイテムを取り出し

 

<SUPER BRAKE UP>

 

金色のライダーと怪人をジャンクにして結合させた様な怪人に変身した。

 

「超魔進チェイサー……すまない2人とも、こいつだけは俺が!」

 

「了解!」

 

「ドライブ擬きは俺たちが!」

 

武器を再びスイッチした2人はウイングナイトがディフェンスを、ドラゴンナイトがフォワードを務めてアナザードライブにダメージを与えていく。

 

「くそう!男のくせに!こびへつらうしかのうのないただのタネのくせに!ブリュンヒルデに守られてつけ上がって!!」

 

アナザートライドロンを呼び出し、2人を撹乱する。

 

「だったらこいつを!」

 

ドラゴンナイトはサバイブカードを引き抜く。

彼の周りを烈火が包む。

 

「熱っ!」

 

「な、何よそれ!?」

 

ドラグバイザーが銃型のドラグバイザーツヴァイに変形する。

契約ビーストの顔を模したスロットを開き

 

「変身!」

 

<SURVIVE MODE>

 

メタリックレッドに金のラインのアーマー、サバイブモードに変身した。

 

「せ、セカンドシフト!?」

 

「違うな。これは、俺の生き残る決断だ!」

 

<SHOOT VENT>

 

ベンタラの奥からドラゴンナイトと同じくサバイブモード化した烈火龍ドラグランザーが飛来する。

 

「ちょっと見た目が変わったぐらいで調子にのるなクソガキが!!」

 

アナザートライドロンから無数のタイヤを発射するアナザードライブ。

答える様にドラグランザーの口に真紅のエネルギーがチャージされる。

 

「死いねぇえええ!!!」

 

「メテオバレットォオオ!!!!」

 

無数のタイヤがドラグランザーの口から放たれる熱線に消し飛ばされ、アナザードライブをアナザートライドロンごとドラゴンナイトが放った光弾が貫く。

 

「バカな!?そんなバカなぁああああ!!!!!」

 

爆炎の中からズタズタの鳴上とドライブのガシャットが転がる。

 

「よし。ガシャット回収う!?」

 

急に膝をついて倒れるケイタ。

 

「! ケイタ!」

 

『大丈夫かケイタ?』

 

「だ、ダメだ身体中が痛い……」

 

『バイタルは…運動後とあって通常より早いが、それ以外に特に異常は無い。』

 

「過疲労ってとこか。大事に至ってなくてよかった。」

 

「セブン、ケイタを頼んだ。俺は詩島さんの援護に。」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

蓮「サバイブモードは俺が最後か。」

ケイタ「キャノンボールファーストまでには出てるかな?」

蓮「そいつは作者の技量次第だ。次回、夏休み編最終話。なぜマッハは音速を超えたのか?」

ケイタ「次回もみんなで!」

蓮「KAMEN-RIDER!」


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なぜマッハは音速を超えたのか?

ケイタ「えー、前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは」

一夏「ケイタがサバイブモードになったとこまでだね。」

蓮「今回はチェイサーマッハvs超魔進チェイサーで次のエピソードの導入って感じか。」

ケイタ「さてさてどうなる?」


1

夜の街を二台のスーパーマシンが疾走する。

一台はチェイサーマッハが駆る白いバイク、

ライドマッハー、もう一台は超魔進チェイサーが駆る黒い追跡車、ライドチェイサー。

超魔進チェイサーのブレイクガンナーから紫の光弾が放たれる。

 

「うわっ! ふざけやがって!

それは俺の親友の武器だ!

お前みたいなガワだけの偽物が使っていいもんじゃねぇ!!」

 

チェイサーマッハもゼンリンシューターから青い光弾を放つ。

それが壮絶なガンファイトの始まりだった。

火花と光弾が飛び交い、景色は絶えず流れ続ける。

 

「は、ガワだけってのは取り消してやる。

その射撃の腕だけはチェイスそっくりだ。

そっくりなだけで!!」

 

チェイサーマッハの複眼が光る。

ライドチェイサーから仮面ライダーチェイサー愛用の処刑斧、シンゴウアックスが射出され、ブーメランの様に飛んで行き超魔進チェイサーをバイクから叩き落とした。

 

「ライドクロッサー!!」

 

倒れかけたライドチェイサーに合体信号が届き、ライドマッハーと合体。

四輪マシンのライドクロッサーになり、超魔進チェイサーに突っ込んでいく。

 

<EXECUTION FULL BRAKE RHINO SUPER!>

 

マシンの座席目掛けて黄金の角を振り下ろす超魔進チェイサー。

しかしそれが炸裂する寸前で元の二台に戻る。

 

「ハァッ!」

 

そしてライドチェイサーからジャンプ。

月明かりを受け、チェイサーマッハは紫色の巨星になる。

 

<ヒッサツ!フルスロットル!チェイサー!>

 

「やぁあああああああ!!!!!」

 

光の如く鋭いキックが炸裂!

金色の角を盾に凌ごうとする超魔進チェイサー。

 

(クソッ!偽物とはいえ、流石チェイスだ。

これじゃ押し切れねぇ!)

 

これ程に剛が焦りを感じたのはあの忌まわしきゴルドドライブと戦った時以来。

チェイサーマッハの初陣以来。

そう()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!?」

 

超魔進チェイサーの懐から飛び出た三台のチェイサーバイラルコアが超魔進チェイサーを攻撃した。

 

(! また、力を貸してくれるのか?チェイス!)

 

それはあの日の再現。

最期の最期に心を繋いだ2人のライダーキック!

 

<TUNE CHASER BAT!>

 

瞬きする間も無いような、音速を超えた一瞬。

紫の翼を生やしたチェイサーマッハが超魔進チェイサーを貫いた。

 

ゆっくりと膝をつく超魔進チェイサー。

その姿はもうロイミュード000に戻っている。

 

「…………」

 

剛は崩れゆくその体をただ眺めていた。

チェイサーマッハのバイザー越しに。

 

『…………』

 

ゆっくりと振り返る000。

 

『剛…』

 

「!?」

 

ぎこちない動きで000は剛にブレイクガンナーを投げ渡した。

 

「まさか…チェイス!」

 

駆け寄るが、触れる後一歩というところでチェイスは優しい光になって消えた。

 

「ッ!…………またな。」

 

ライドマッハーにまたがる剛。

その手には彼の唯一の置き土産が握られていた。

 

 

2

焼き焦がす様な太陽が燦々と照っている。

夏の湿気と石の匂いがこびり付いた空気を吸い込んだ。

普段はうんざりする様なこともしばらく離れると懐かしく感じるものだな、と千冬は柄にもなく思った。

 

「あ、千冬姉!」

 

「千冬!お勤めご苦労様。」

 

「臭い飯はうまかったか?」

 

外で待っていた一夏、剛、草加が声をかけて来た。

 

「ただいま一夏。心配かけたな。

剛、私は別に逮捕されてた訳じゃ無い。

まずいの一言だったよ草加。

それで、鳴上君はどうなった?」

 

「進兄さんから聞いた話だと、

自分たちと女権の一部過激派がやった事だと。」

 

「なんでもお前さえ抑えればケイタ君達は流れで実験台にでもなって殺されると本気で思ってたらしい。」

 

草加が至極どうでも良さそうに吐き捨てる。

流石にそのレベルで差別的思考の元行われた犯行と知って驚く千冬。

 

「なんだ?

職場にそんな過激思想がいると知ってショックか?

大なり小なりそんな考えの、

女尊男卑な奴なんていくらでもいるだろ。」

 

「あ、あのな?かもしれないがそんな身近にいたと思えば」

 

「死体は1つしかなければ可哀想とも思う。

けど一面にあるならただの景色だ。」

 

そう言った草加の目はまるで従軍経験者の様なものだった。

 

「………な、何が言いたい草加?」

 

「今回はたまたま上手く行っただけだ。」

 

そう言って一夏を近くに呼ぶ草加。

 

「今回お前が動けなくなっただで

一夏が、一夏の友達が危険にさらされ

詩島がまた変身して戦う羽目になった。」

 

人が死ななかったのは奇跡だ。

そう言って草加はカイザフォンをガンモードにして一夏に突きつける。

 

「え?ま、雅人兄?」

 

「草加なんのつもりだ!」

 

「千冬、今ここで誓え。

守るなら中途半端に過保護にするんじゃなく死に物狂いで守ると。

出来ないなら俺は一夏を撃つ。」

 

邪魔なんだよ。お前みたいな半端な奴は全て!

草加は語気を強めて引き金に指をかける。

 

「……ああ、やっとわかった。」

 

千冬は草加を殴りつけるとカイザフォンを奪い取り突きつける。

 

「誓う。」

 

「それでいい。」

 

草加はカイザフォンを奪い返すとポケットにしまう。

 

「たあー!お前ら出所早々心臓に悪いわ!」

 

「もう2人ともやり過ぎ!

雅人兄あれ弾入ってなかったよね?」

 

「一夏には分かったか。」

 

「草加お前…こっちは本気で焦ったんだぞ?」

 

「大事な妹にそんな事する訳ないだろ?」

 

「一夏の姉は私だ。」

 

「まあまあ落ち着けよ。それよりケイタ君から聞いた話なんだけど…」

 

明るい話題を振ってくる剛に感謝しながら千冬は考えた。

 

(一夏に、本当の事を言うべきだろうか?)

 

今までは墓場まで持って行くつもりだった。

しかし、もし最悪なタイミングで知って取り返しが付かなくなるレベルで傷付くより言ってしまうべきだろうか?

 

(いや、傷付けないと決めたなら、絶対に傷付けさせない!)

 

決断する千冬。その目にもう憂いはなかった。

 

 

3

「ありがとうございましたー!」

 

朝の時間帯最後の客を送り出すと蓮は小さく溜息を付いた。

 

『お疲れですね。』

 

「そりゃ疲れもするさ。

夏休みだってのにここの所働き詰めだ。」

 

「愚痴言わない。午後フリーでしょ?」

 

千冬を迎えに行っている一夏のピンチヒッターで来た簪に軽く突かれる。

 

「ふわぁ〜おはよ。あれ?簪さん?」

 

上の階からまだ眠そうなケイタが降りて来た。

 

「ケイタ。もう起きて大丈夫なのか?」

 

「サバイブモードを使ったって聞いたけど?」

 

「体育祭の後みたいに身体中筋肉痛で痛いけど、

動けない程じゃないし、慣れないと後々キツイし。」

 

そう言ってケイタは着替えに向かう。

ロッカールームのドアを開けようとした時

 

「ヴェアアアアアアアア!」

 

盛大に開いた扉と壁にサンドイッチされた。

 

「大変な事になったぁ!」

 

着替えの途中だったのか、

上裸のままの心愛が新聞を抱えながら出てきた。

 

「うん。今まさに。」

 

簪が冷静に突っ込むと見計ったかの様に

ドサ!と○華団団長の最期の様なポーズで倒れるケイタ。

 

「ヴェアアアア!ケイタ君しっかりー!」

 

「たく、何にをそんなに慌てて」

 

新聞を拾い上げる。そこに書かれていたのは

 

『フラネット社 社長交代。

新社長 間明蔵人氏 就任』

 

 

4

時間は数日前に遡る。

フラネット社の緊急取締役会にて。

 

「皆さんはじめまして。

私は間明蔵人。今日付でこの会社の社長になる者です。」

 

反対の方は挙手してください。

間明がそう言うと全員が手を上げた。

 

「困りましたね〜。あ、そうだ志村専務。

ちょっと立ってみてください。」

 

困惑しながらも立ち上がる志村専務。

その後ろには鏡になりそうな大きな窓があり

 

「食え、メタルゲラス。」

 

頭から齧りつかれた志村専務は断末魔すらあげぬままメタルゲラスの腹の中に消えていった。

 

「さて、改めて。僕に従え。」

 

たおやかな、優しい口調。それに誰も逆らえなくなった。




ケイタ「いや嘘だろ間明が社長!?」

蓮「思ったより…用意周到だったって訳か。」

一夏「じ、次回infinite DRAGON KNIGHT!」

ケイタ「ツナガルキャンペーン?」

楯無「仕掛けてくるとしたら学園祭ね。」

ポリー「これより亡国機業の残党を殲滅する。」

間明「ここからが面白いんだ!」

ゲイツ「これは本来ケータイ捜査官7の物語だ。」

ソウゴ「戦っちゃいけない。」

ジーン1『しゅきしゅき。』

ジーン2『知りたい知りたい!」

セブン『私を破壊しろ!』

ケイタ「世界よりセブンだ!!」

蓮「もう時間が!」

ケイタ「じ、次回 crisis In network その1!」

一夏「これで決まりだ!」


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四章 崩壊の足音編
crisis In network その1


ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは」

蓮「間明のやつがフラネット社の社長になったとこまでだ。」

セブン『一体何が目的で……』

ケイタ「それを探るのが俺たちの仕事だよ。」

蓮「まあ、ろくなこと考えてないだろうがな。」

セブン『さてさてどうなる?』


1

テレビをつける。

間明の社長就任に合わせた記者会見の様子が映し出される。

チャンネルを替える。

さっきのチャンネルと同じ内容。

チャンネルを替える。

何やらコメンテイターが如何にも自分が正しい様に間明について言っている。

チャンネルを替える。

丁度CMだ。内容は

 

『ジーン。それは車と、テレビと、家と、生活と。

アナタと繋がるケータイ。フラネット社から』

 

画面の向こうの間明がキメ顔で振り返った所で蓮はテレビを消してリモコンを放り投げた。

 

「何処のチャンネルも同じだ。」

 

戻るとケイタ、心愛、簪の3人が思い思いの席に座りながら考え込んでいる。

 

「何か、わかったの?」

 

「いや、テレビでもネット以上の事は拾えそうにない。」

 

『それだけ間明は秘密裏かつ用意周到により混乱が求められるタイミングを狙って動いていたのでしょう。』

 

心愛の疑問に蓮とサードが答える。

それが解決すると次の疑問が湧く。

 

『だが、なぜフラネット社なんだ?

あのジーンとかいう明らかにファイブを、フォンブレイバーを模したケータイで何かコトを起こすつもりなんだろうが…有数の通信会社でアンカー以外なら他にもあるだろ?』

 

「それは分からないし、考える意味は無い。

けどもしかしたら間明はアンカーを裏切った時からこうするつもりだったのかも。」

 

そう言って簪が持って来ていたプログラミング用PCからURLを送信する。

 

「ジーンラビリンス?」

 

「フラネット社が出してるアプリゲーム。

ジャンルはクイズゲームで、紫の蛇が出題するクイズに答えていきながら鏡の迷宮の最奥を目指すゲーム。」

 

「紫の蛇に」

 

『鏡の迷宮、ですか。』

 

4人と2台のフォンブレイバーはほぼ同時にベンタラとベノスネーカーを連想した。

 

「まあ、間違いなく間明の仕業だけど、結局そのゲームがどうした?」

 

「クリア時間から計算して間明がアンカーにいた頃から製作されてた。」

 

「つまりその段階で間明はゼイビアックスやその他の協力者と繋がっていたと?」

 

「………だとしたら、この前のアナザードライブの件も間明の仕業だな。」

 

神妙な顔で言うケイタ。

 

「どうゆう事だ?」

 

「多分、上手く記者になりすなりベンタラ越しに忍び込むなりして、例えばスピーカーとか仕掛けて催眠でもして誘導してたんじゃない?」

 

「いや方法は別に聞いてない。なんでそう思った。」

 

「このホームページを信用するなら最奥の部屋まで行けたのは5886人。

更に正解してクリア出来たのは現段階で108人。」

 

『つまり?』

 

「この5886って数字は剛さんが仮面ライダードライブと一緒に絶滅させた機械生命体ロイミュードの識別ナンバーを全部足した数だ。」

 

「あ!そうだよ!0〜108までの数字全部足したらそうなるよ!」

 

計算の速い心愛が手を叩く。

フォンブレイバー達も演算機能を使い確かめる。

 

『心愛の言う通りだ。』

 

『レン様……』

 

「ああ、コイツは思った以上に厄介なヤマだ。」

 

 

2

「はぁ、はぁ…はぁ!」

 

偏頭痛のする頭を無理矢理殴りつけると海之、もう既にスティングに変身している、は襲いくるアンドロボットとゼロワンの群れを倒しながら進んだ。

 

(間違いなくまずい状況だとわかってフラネット社まで来たはいいが、熱烈に歓迎されてしまったな。)

 

かつて三春と鈴音を強襲したゼロワンと同型の人造人間たちと、精々並の人間三人分程度の力しかないがウジのように次から次に湧いてくるアンドロボット。

雲霞のごとき敵兵は確実に海之を削っていた。

 

(なんとか、なんとか包囲を抜けなければジリ貧か!)

 

<SWING VENT>

 

エビルウィップで近くにいたゼロワンの首を掴み、ほかのアンドロイド達に投げ飛ばす!

 

「何処からでもかかって来い!

私が残らず倒してやる!」

 

そう言って一番敵の数が少ない方に飛びだそうとした時、

 

<ボルテック!タイムブレーク!>

 

等速直線運動のグラフの様な白い線に乗って来たゴツい仮面ライダーがアンドロイド達を一掃した。

着地してこちらを振り向く。

 

「仮面ライダー……ビルド?」

 

よく見ると赤青2色の仮面のクリアマゼンタの複眼がカタカナで『ビルド』となっている。

 

「の、力を借りてるだけだよ。

君が仮面ライダースティングだね?」

 

「ああ。そう言うお前は何者だ?

えっと…偽ビルド。」

 

「偽ビルドって…アナザーライダーじゃないんだから!って言ってもわかんないか。」

 

「?」

 

「ま、兎に角。俺は仮面ライダージオウ。

君からサバイブのカードを取り上げるために来た。」

 

「!? つまりは、私の敵か。」

 

「ん〜〜、、、今はそうなるね。」

 

「なら、容赦はせん!」

 

エビルバイザーとドリルクラッシャーが火花を散らす。

 

「とっ!無理すんなよ、

もう身体ボロボロなんだろ?」

 

「敵に労られる程ではない!」

 

距離を取ってエビルウィップでジオウの手首を掴んでチェーンデスマッチを仕掛ける。

 

「喰らえ!」

 

「うわ!あの鞭をどうにかしないと!」

 

<サーチホーク!>

 

ホルスターからタカウォッチロイドを飛ばし、

スティングが怯んだ隙にエビルウィップを逆に奪い取る。

 

「この小癪な!」

 

「悪いけど、倒させてもらうよ!」

 

<クウガ!>

 

<アーマータイム!♪〜クウガ!>

 

クウガアーマーに変身して2000の技を駆使してスティングに連続攻撃を浴びせる。

持病の発作の余韻に確実に身体を蝕む変身拒否反応(リジェクション)も手伝い膝をつく。

 

「く、くそ!」

 

「やめなよ。今の君じゃ俺には敵わない。」

 

「黙れ!私は、私はこのままでは、

このまま終わる訳にはいかないんだ!」

 

デッキからサバイブカードを引き抜く。

周囲を疾風が包み、

バイザーがツヴァイ形態に変化する。

 

「………なら、痛い目にあってもらうよ。」

 

<ジオウ(ツー)!>

 

光と闇、2つのウォッチが1つになったジオウⅡウォッチを起動して2つに割る。

 

「「変身!!」」

 

<SURVIVE MODE>

 

<ライダータイム!

仮面ライダー!ライダー!

ジオウ・ジオウ・ジオウ!Ⅱ! >

 

それぞれサバイブモードとジオウⅡに変身した。

 

「私は、負けん!」

 

<SWORD VENT>

 

エビルバイザーツヴァイの刃がエネルギーを帯びる。

 

「いいや、勝つのは俺だ!」

 

<サイキョーギレード!>

 

<ジカンギレード!ケン!>

 

左右両刃のエビルバイザーツヴァイにジオウⅡは二刀流で応えた。

何事もそつなく器用にこなし、

武器の扱いにも長ける海之だが、

つい一月前に手に入れた力と与えられるべくして与えられた最強の力では差があり過ぎた。

 

「ば、馬鹿な!いくら私にハンデが有るとは言え、サバイブモードが押されるなど!」

 

「俺は王様だから、

民や仲間の為に負ける訳には行かないのさ!」

 

<ジオウサイキョー!>

 

ジカンギレードとサイキョーギレードを合体させサイキョージカンギレードにし、更にディケイドライドウォッチを起動してライドヘイセイバーも召喚する。

 

「君はもう戦っちゃいけない。」

 

「私は、痛みだらけの未来を変えるためならどれだけでも戦う!」

 

<SHOOT VENT>

 

エビルバイザーツヴァイに青い光の矢をつがえる。

 

<ライダー!フィニッシュタイム!>

 

ドライバーとそれに付いたライドウォッチを操作して二刀にエネルギーを送る。

 

「喰らえぇええええ!!!」

 

「うおおおおおおおお!!!!!」

 

<トゥワイス!タイムブレーク!>

 

まずサイキョウギレードで矢を明後日の方向に弾き飛ばし、続いてスティングが第二の矢を放つより先にライドヘイセイバーで一番頑丈な胸部装甲を切り裂く!

 

「あ、」

 

爆裂。変身を解除された海之が倒れる。

ジオウは変身を解除して常磐ソウゴの姿に戻るとデッキからサバイブのカードを引き抜き、ドラゴンナイトにそっくりなライダーの力の宿ったライドウォッチを起動させる。

 

<龍騎!>

 

「ケイタと蓮のとこまで!」

 

出現したケイタのとは違うドラグレッターを召喚し、海之ごとラビットハウスに移動する。

 

「うわぁ!」

 

「な、なに!ケイタ君カード使った!?」

 

「いや使ってない使ってない!」

 

向こうから見れば急にドラグレッターが突然通りすぎていったように見えるのだろう。

 

「よ!お邪魔します!」

 

「!? 常磐ソウゴ!」

 

蓮が驚いた声を上げる。

 

「蓮、知り合い?」

 

蓮は無言でブランクライドウォッチを取り出す。

 

「! じゃあアンタも仮面ライダーウォズの仲間か!」

 

「あ、ウォズちゃんと一夏にリバイブウォッチ渡したんだ。

じゃ、大体の準備はオッケーか。」

 

「準備?」

 

「何か知ってるの?」

 

心愛と簪が詰め寄る。ソウゴは懐からサバイブカードを取り出し、蓮に渡す。

 

「なんでお前がこれを?」

 

「ここまでが俺の仕事、ここらは君達の仕事。

この世界の平和は任せたよ、この世界の仮面ライダーとケータイ捜査官。」

 

そう言ってソウゴは店を出ようとする。

 

「ま、まって!あなたは何者なの!」

 

ソウゴはちょっと考えていたずらっぽく笑うと

 

「通りすがりの仮面ライダーだ!覚えてて!」

 

蓮が何か言いたげだったのを無視して外に出る。

 

「おいま」

 

<タイムマジーン!>

 

上空で赤い巨大な、、、マシーンが浮遊していた。

 

「ソウゴ乗れ!もたもたするな!」

 

「ゲイツ!」

 

ソウゴは変身せずにジャンプしマシーンに飛び乗る。

 

「じゃ!また未来で!」

 

ハッチを閉めたタイムマジーンは空に空いたトンネルに突っ込んで消えていった。




ケイタ「えっと、、俺ら何見せられてたの?」

セブン『なにかが、超時空的何かが空に消えていった、、。』

蓮「と、とにかく次回予告を!」

ケイタ「じ、次回crisis In network その2!」

セブン『これが、明日のリアル!』


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小ネタ あなたにとって仲間とは?

唐突に思い付いた。深い意味は無い。


Q.あなたにとって網島ケイタとは?

 

一夏「1番、大事な人。もしかしたら千冬姉よりも。何より」

 

ゼロワン『一夏が選んだ男。それだけだ。いや、でも1つだけ付け足すなら』

 

蓮「憎み合いも殺し合いもしたが、まあ、親友で戦友だな。で、掛け値なしに」

 

サード『恩人です。今のレン様があるのはあの方のおかげです。それで』

 

心愛「友達!この街で始めて出来た男の子の友達。街で1番」

 

セブン『バディだ。滝本の様にはいかんが、悪くは無いぞ?それにな、』

 

全員『「すごく良い人(奴)」』

 

Q.あなたにとってレン・アキヤマとは?

 

一夏「正直、半年も無い付き合いだしわかんない事は多いよね。けど」

 

ゼロワン『昔から1匹狼だったな。いまは蝙蝠だが。

協調性も高いとは言えん。だが間違いなく…』

 

ケイタ「なんの間ので息も合うし立香さん程じゃないけど相談乗ってくれるし、いい奴だよな。それから」

 

セブン『昔からよく分からん奴だ。斜に構えていると言うか、ただ今も昔も』

 

心愛「なんだか私の事雑に扱ってる気がするんだよね、けどずっと見てて思うのが」

 

サード『バディです。長い付き合いですし、だから断言出来ることが一つ』

 

全員「『1番強い』」

 

Q.あなたにとって織斑一夏とは?

 

ケイタ「愛してる人。どれくらいに愛してるって形而上の誰より俺が愛してる。そんで勿論」

 

セブン『嫌われる所が想像出来ない人間だな。いやまあ妬まれたりはしそうだが、イメージを上げるなら』

 

蓮「不思議な女だ。なんで同じ腹から生まれて来た筈の千冬(あれ)三春(アレ)がああで、アイツがああなのか、まあ間違いなく」

 

サード『上手く言えませんが普段しっかりしてる分跳ね返りが凄い方ですね。ケイタ様も甲斐性の見せ所でしょう。ケイタ様といる一夏様はなんだか』

 

心愛「街で一番はじめに出来た友達!だから大好きなんだ。

なんで言うか」

 

ゼロワン『俺を導いたバディだ。そして間違いなく』

 

全員『「綺麗な女の子」』

 

Q.あなたにとって保登心愛とは?

 

ケイタ「馬鹿だね。」

 

セブン『ああ。偏差値は兎も角頭は悪い』

 

蓮「予測不能だ。」

 

サード『その…珍しいタイプの方です。』

 

一夏「ん〜、、明るくて良い子なんだけど、まあ」

 

ゼロワン『よく分からん人間だ。だがきっと』

 

全員「『絶対に必要な子(奴)』」

 

Q.あなたにとってフォンブレイバーとは?

 

ケイタ「相棒」

 

蓮「ああ」

 

一夏「だね。」

 

心愛「面白い子達だよ。みんな友達になれてきっと」

 

4人「明日未来の先まできっとずっと一緒にいる」



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crisis In network その2

ケイタ「えー前回は小ネタを挟んでその前のinfnite DRAGON KNIGTは」

一夏「いやちょっと待って」

ケイタ「なに?」

一夏「こんなインタビューいつ撮ったっけ?」

ケイタ「いやいつって、、あれ?いつだっけ、、。」

ウォズ「まあ、例によって君達にはまだ未来の話というやつだよ。」

ケイタ「うわでた!」

一夏「預言者の人!」

ウォズ「今日は君たちに特別ゲストを連れてきた。」

ハリケンブルー「はじめましだな!
忍風戦隊ハリケンジャーのハリケンブルーだ!」

ケイタ「あー、そういえば言ってたね」

一夏「そうゆう大事なことは事前に言っといてよ」

ケイタ「みんな!今世界は大変なことになっている。
アドベントビーストや宇宙忍者は俺たちが戦う!」

ハリケンブルー「君らにできる戦いは手洗いうがい、そして危機意識を持つことだ!」

一夏「私たちとの約束だよ!」

ウォズ「さて、私の役目はここまでか。ハリケンブルー。」

ハリケンブルー「ああ、ケイタ、一夏。またな。」

ケイタ「ん、じゃね~」

一夏「またいつか!……ん?」

ケイタ「どしたの一夏?」

一夏「今更だけど、ハリケンブルーって女の人だよね?」

ケイタ「え?」

一夏「え?」

ウォズ「やはり混乱してるか、無理もないな。」

ハリケンブルー?「だから来たくなかった。
おい魔王の下僕。さっさと俺をもとの世界に送り返せ。」

ウォズ「仕方ない。普通の高校生網島ケイタ。
彼にはベンタラの支配者ゼイビアックスとの戦いを乗り越え
正史とは違う異世界の海賊戦隊ゴーカイジャーと共闘する未来が」

ハリケンブルー?「早くしろ喋りすぎだ!」

ウォズ「おっと私としたことが、それではどうなる学園祭?」


「なぁ!」

 

「なんだよ、、。」

 

「虚さんのクラスどんな出し物なんだろうな~?」

 

「あぁ、、。」

 

さっきからこれの繰り返しだ。

心底うんざりしながら大江達郎は溜息をついた。

彼らは今IS学園に電車で向かっている。

 

これからモノレールの駅まで約30分。

そこからさらに15分といったところだ。

 

反対側の二席を見るとそれぞれケイタと一夏から招待状をもらったケイタの妹の網島可憐(カレン)と隣に座った五反田弾の妹、五反田蘭がガールズトークに花を咲かせてるのを見る。

 

それに対してこちらはあと2時間もこいつの惚気を聞き続けなければならないと思うと苦痛を感じざるを得ない。

 

(出し物といや鈴の奴だけクラス違うんだったよな?)

 

彼女からもらった招待状を眺めながらいつもは快活だが落ち込むときはマントルまで落ち込んでしまう彼女を思う。

 

(ま、もしそうならケイタと一夏が首根っこ捕まえてでも引っ張り上げてくれるから心配ないんだけど)

 

信頼する友人たちを思いながらいったい何を仕掛けてくるんだろう?と胸を躍らせずにいられない。僅かにはにかむ。

 

「、、、だったりしてな!なあ達郎?」

 

「ごめん全く聞いてなかった。」

 

一瞬で真顔に戻り極めて冷たく切り捨てる。

 

「なんだよ仕方ねーな。一からいうと、、」

 

こんなのと何で一緒にいるんだろう?

と結構非情なことを思う達郎だった。

 

 

「、、、、。」

 

「なんだよ健。お嬢のエロいコスチュームでも期待してんのか?」

 

「な!」

 

弾たちがいる車両から2両後ろ。

2人の少年が座っている。

 

一人は茶髪にスカジャンのヤンチャそうな青少年で先ほどから落ち着かない様子。

もう一人は黒髪に黒い迷彩柄の童顔の青少年で隣の少年と会話はしているのだがその視線はずっとケータイのゲーム画面に注がれている。

 

対暗部用暗部更識家の分家、石橋家現当主石橋健と芝浦家現当主の弟芝浦淳だ。

それぞれ簪と楯無から招待状を受け取りIS学園に向かっている。

 

 

「ま、期待してていいんじゃない?

風の噂だけど一年一組メイド喫茶らしいじゃん。

お嬢のことだし本音つながりで一組の中よさそうな奴に着せられてるとかありそう」

 

「うるせー!そんなこと考えてねーよ!」

 

「嘘言うなよ。このまえお嬢の部屋に忍び込んだのだってそこでお嬢のパンツでも使ってセンズリ」

 

「なわけあるか!あれは潜入の練習で、てかお前こそ楯無さんとどうなんだよ!」

 

「別に何もねーよ。もう決まってることだし。」

 

どこまでも冷めた声で芝浦は淡々と告げる。

 

これは内々で口止めされている事だが、芝浦家の現当主の淳の腹違いの兄は植物状態で、そんな動かない兄を矢面に妾の子の淳を傀儡に本家が芝浦家を取り仕切ってるというのが現状だ。

 

(そこで出て来たのがより本家が芝浦家のコントロールを円滑にするために婚約をさせた。)

 

初めは簪と淳で組まれるはずだったが、本音が本当にはるか昔のおままごとみたいな簪と健の婚約の証拠持ってきたり、

 

「布仏家の代表立ち合わせの元で行われた未来の当主同士の約束を無視してはメンツが立たない」

 

とかいう屁理屈みたいの主張をしたりと阻止しようとしたのを見た楯無が

 

「自分が淳君と婚約する。」

 

といったことで一応問題は終息した。

 

「そんなこと言ったって当人同士の意思とか」

 

「ねーよ。好き勝手が許されんのはゲームの中ぐらいだ。」

 

実際の悪党は五人全員の名乗りとポーズが終わるまで待ってくれたりしねーよ。

そう言ってゲームを続行する淳。

 

「はぁ、お前なあ。そんな風に思ってるから本当にそうなっちまうんだぞ?」

 

先行きに諸々の不安を覚えながら窓の外を見る。

木組みの街が見えてきた。

 

(、、お嬢にああったらなんて話そうかな?)

 

それでもやはり想い続けた女の子と再会出来るのはやはり嬉しく、浮かれを覚えながら到着を待った。

 

 

朝起きて、目覚まし時計を止め、支度を整えて下の階におり、朝食をとる。

 

「………。」

 

「………。」

 

「………。」

 

「………。」

 

四人とも真剣な表情のまま黙々と食べ続ける。

 

「あの、皆さん何で無言なんですか?」

 

「チノちゃん。」

 

「は、はい!」

 

「今日はヒーローインタビューだ。」

 

「スペシャルステージ見逃すなよ!」

 

「ごちそうさま!行ってきます!」

 

今までの寡黙な感じとは打って変わって嬉々としてテンション高めで食器を片付け歯磨きを済ませるとバイクに乗り込んでいく四人。

 

「いったい、何だったんでしょう?」

 

「見当もつかんな。」

 

智乃は一抹の不安を覚えながら四人を見送った。

 

 

一方簪の方は朝食さえまともに喉を通らないありさまだった。

昨日はロクに眠れず隈こそ落とせたが疲れた顔をしていた。

 

「アンタかなり、、大丈夫じゃないわよね?」

 

この前の部屋割で同室になった鈴音が心配そうに覗き込んできた。

震える体を何とか動かし首を振るが全然そんなことはなかった。

 

(なんであんな安請負しちゃったんだろ!)

 

今更出来ないとも言えずただ震えるばかりだ。

 

「これでも飲んで落ち着きな?

なんも食べないでいると倒れるわよ?」

 

鈴音がコーヒーを差し出す。

受け取ろうとしたがキーンキーンともうすっかりお馴染みになったあの音が響く。

 

「! ごめんそこ置いといて。

カメンライダー……っ!」

 

アックスに変身し鏡に飛び込んでいく簪。

それを見送りながら鈴音は独り言ちた。

 

「正義の味方も大変ね。ん?」

 

急にスマホに通知が来た。

画面を見ると

 

『WE ARE GEEN. YOU ARE NUMBER 108』

 

一瞬だったが画面がズレ、早送りした映画のようにぐちゃぐちゃっと映像とよくわからない音声が流れる。

 

「…………はっ!」

 

何故かボーっとしてしまったが次の通知でスマホが振動して鈴音は我に返った。

 

「あ、達郎……。」

 

LINEを開くともう電車に乗ったらしい。

私が送った招待状ちゃんと持った?と送ると

もちろんと返信が来た。

 

もう旧友との再会にも学園祭の開催も秒読みだ。

 

(夏に一回会ってるけど、やっぱ楽しみね。)

 

心なしか軽い足取りで着替え、部屋を後にする。

だからこそ気付けなかった。

彼女のスマホから『ジーンラビリンス』がアンインストール出来なくなっていることに。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「今回短くない?」

ケイタ「これから投稿ペース上げる代わりにって。」

一夏「それってさドルフロの笑ってはいけないのssもエッチな方のssもネタが尽きて書けなくなってきた上に学校開始の延期になったからじゃなくて?」

ケイタ「まあ、そうなんだけど。」

一夏「次回、crisis In network その3」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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crisis In network その3

ケイタ「えー前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

蓮「学園祭に招待した奴らの道中だなほとんど。」

心愛「今回は私たちからだね!」

蓮「この日のために準備してきたんだ。間明なんかに邪魔させないぞ。」

心愛「さてさてどうなる!?」


世の中には黄金比というものが存在する。

対象を二分したときに最も美しくなる比率。

つまりベストマッチ。

 

例えるなら

小畑健と大場つぐみ。

2000の技を持つ男とマナーモードがわからない刑事。

天の道を往く者と鏡の前で顔を洗う男。

フィリップと左翔太郎。

天才ゲーマーに天才ゲームクリエイター。

 

つまり網島ケイタが何を言いたいかといえば

 

「メイド服一夏最高ぉおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

 

(黒髪+自分が一番好きな女の子)×メイド服=至高

 

この一言に尽きる。

 

「も、もうやめてよわかったからさ!」

 

白ロリ風のメイド服に身を包み、顔を真っ赤にした一夏が言う。

 

「いいや足りない!言葉じゃ足りないな全然!この反則、法律違反、いや憲法違反級の可愛さを言い表すなんて痛っ!」

 

ガツン!とケイタの頭に出席簿が振り下ろされる。

いつの間にかやって来た千冬だ。

 

「ケイタ君。一夏が宇宙一可愛いことに異存は無いがもう少しテンションを下げろ。」

 

「いや千冬さん。鼻血出しながら震える手でロクにカメラ持てなくなってる人に言われたく無いですよ。」

 

「うるさいこれは生理現象だ。可愛すぎる一夏が悪い。」

 

「違いない。」

 

「二人ともいい加減にしてよ!!!」

 

もう時間だから!と言って二人を引っ張て行く一夏。

 

「遅いぞ三人とも!」

 

「クラス写真撮るってさ!並んで並んで!」

 

燕尾服姿の蓮とクラシックメイド服の心愛らをはじめ一組全員が待っていた。

 

「よし、これで千冬も含めて全員揃ったな。

そんじゃ、行きますよー。ハイ、チーズ!」

 

一同笑顔でポーズをとる。

そのあと何パターンか写真を撮る。

 

「ん~、良い画だね!それではまた!」

 

カメラマンは他のクラスの写真も撮るため教室を出ていった。

その背中を見送るとケイタはフォンブレーバーとデッキを使って蓮に話しかけた。

 

(蓮、蓮。さっきのカメラマンさんってさ。)

 

(ああ、変装していたが間違いなく詩島さんだよな?)

 

詩島剛。かつて共闘した仮面ライダーチェイサーマッハに変身する青年だ。

 

《この前更識楯無のパソコンを私とサードでハッキングして調べたが、どうやら国家IS委員会からの指令で今回の警護なんかは機動兵器犯罪捜査課とその周辺で固められてるらしい。》

 

《学園上層部はかなりごねたらしいんですが、防衛大臣が直接出てくる事態にまで発展して渋々了承したそうです。》

 

(そんな大問題が!?)

 

《考えてもみろ。意図的なISの暴走に人造人間(アンドロイド)の襲来。

その上周辺で目撃され続ける仮面ライダーにアドベントビースト。

学園祭なんて外からいくらでも怪しいのが入ってくるイベントが開く運びになったのが奇跡だ。》

 

《まあここで中止なんかにしてしまえばIS学園の沽券にかかわりますからね。》

 

(上層部的には冤罪とはいえあの織斑千冬が勾留されるような事態になった後でも揺るがないって所を見せられるとか思ってるんだろうな。)

 

また汚い大人の世界か、とケイタは溜息をついた。

 

(ゼイビアックスだろうか女権だろうが間明だろうがロボットだろうが来るなら来てみろ。

俺は俺のやり方で俺の目の前の悪を倒す。)

 

決意とともにデッキをいつでも取り出せるようにする。

ケイタの目は学園祭を楽しみつつももうすでに戦士のそれだった。

 

 

一方そのころ、フラネット社本社ビル社長室にて。

間明は出来上がったカップ麺をすすりながらじっと時計を睨み続けていた。

 

「1、2、只今午前9時をお知らせします。」

 

パソコンのエンターボタンをたたくすると間明のテーブルに置かれた茶色いケータイが変形し

 

『ワタシハGENE アナタハニンゲン。

コノ手コノ足ナニスルタメニ?』

 

「成功だ。」

 

ジーンを無視して立ち上がり、眼下に広がる街を見下ろす。

 

「さあ人類諸君。これから勝負だ。

果たして人類にとってフォンブレイバーは希望(ひかり)暗黒(やみ)か。」

 

間明は拳銃の残弾を確認すると階段から下界に降りていく。

情報が正し続ければそろそろIS学園文化祭が開催のはずだ。

 

「その頃には供物も仕上がってるだろうね。」

 

 

 

「お待たせしました執事の甘い休息、、なんだ可憐に蘭ちゃん。」

 

「なんだって言い方はないだろお兄。お客様は神様だぞ!」

 

「お前みたいな神様居たら信仰の定義が揺らぐわ。

蘭ちゃん久しぶり。」

 

「お久しぶりです。」

 

にこりと愛想よく返す蘭に癒しを感じながら

 

(それに対してうちの妹は。

外面バッカよくて家ではぐーたらで似非カウンセラーのブログとかやってるし。)

 

このこと蘭ちゃんに言ったらどうなるかな?と思いながら持ってきたポッキーをテーブルに置く。

 

「で、執事の甘い休息って何?

どうせお兄が恥ずかしいことやるんでしょ?」

 

ブログにでもあげるつもりなのか茶色いフォンブレイバーに似たガラケーで撮影を始める。

 

「ほー、可憐はこの年になってもお兄ちゃんとポッキーゲームをしたがるような子だったのか。

こんな倒錯した趣味を持っちゃうなんてお兄ちゃん心配だなぁ。」

 

「え?」

 

「はぁ!?」

 

可憐はフリーズし、蘭は声を上げて立ち上がる。

そして、ポッキーを咥えて近づくケイタ。

 

「な、な、ままっ!」

 

大口を開けたところにケイタのポッキーが入れられる。

ただし右手で隠し持っていた。

 

「へ?」

 

「え、えぇ?」

 

ぱちくりと目を動かし困惑する二人。

 

「今ならまだメイドの甘い休息に変更可能ですが?」

 

「お、お、お兄騙したな!」

 

真っ赤になって喚き散らす可憐。

 

「お前にキスなんて2万年早い。」

 

そう言って困惑して口を半開きにしている蘭にポッキーを食べさせていく。

 

「お、お兄だって彼女いない歴は年齢と一緒のくせに!」

 

「残念ながら俺は夏の林間学校で一夏に告ってokされたから彼女いる歴約一か月だ。」

 

「なぁ!」

 

「う、ウソォ!!」

 

放心していた蘭も思い切り食いつく

 

「いつ!一体どんなタイミングで!!」

 

「マジでそうなの!?

一夏お姉私のホントのお姉になるの!?」

 

「わーったわーった。ちゃんと全部話すから落ち着け。」

 

そうだなまず、と話そうとした時セブンが震えた。

 

(めっちゃブルブル言うな電話か?)

 

2人に断ってセブンを開く。

 

(いったい誰からってメールだと!?)

 

それは何万件にも渡る送信元不明のメールだった。

ほとんどが

 

『ちゅきちゅき』

 

などの意味不明のワードの羅列だが時折

 

『I AM GENE OF NUMBER 067』

 

などの一見意味のあるワードに見えるような物もある。

 

(GENE……ジーン!間明の奴がフラネット社から出した似非フォンブレーバー!)

 

「どうしたのお兄?なんか怖い顔して。」

 

「そんなのどうでもいいです!それより一夏さんとどこまで行ったんですか!」

 

「添い寝まで。セシリアさん!この二人メイドの甘い休息にチェンジだって!」

 

「承りましたわ!」

 

どうやら一同がセシリアを厨房に立たせない口実を考えていたらしい。

メッチャいいサムズアップを向けてくる。

 

「ごめんトイレに。」

 

そうレジ係に告げてサインをねだるファンを押しのけ、男子トイレからベンタラにダイブする。

 

「セブン大丈夫か?」

 

『うっ……うう…なんとかバーチャルブーストフォンの方のアナライザーを着身出来た。』

 

「そっか。けど安心できない。」

 

『ああ。我々が学園内に拘束される瞬間に仕掛けてきたということは』

 

「間明が今まで以上に周りを巻き込んで仕掛けてくるってことか。」

 

『その通りだ。これはアキヤマ達にも連絡しておくべきだ。』

 

「よし、俺がスマホから一夏と簪さんに、お前が蓮と心愛ちゃんに」

 

そして一夏にかけるが

 

「もしもし一夏?……砂嵐しか聞こえねーじゃん。」

 

電波が悪い。ベンタラだからだろうか?

いや、そんなことはない。

別に鏡越しでもデッキさえ所有してれば問題ないはずだ。

 

「セブン、なんか電波悪いんだけど、、セブン?」

 

『け、ケイタ。アキヤマから連絡だ。保登心愛が行方不明だ。』

 

「このタイミングで?心配だな。」

 

とりあえず流石にトイレにしては長く立ちすぎだ。

いったん教室に戻る。

 

「む、ケイタ。遅かったではないか。」

 

「ラウラ!悪いな緊張のせいか長引いちゃって。」

 

「そうか、それよりお前待ちの客でごった返してるただでさえシャルに心愛にレン少佐も何故かいないし。」

 

「そっか大変だな。」

 

ケイタがそういった瞬間。

教室の電気が一瞬バン!と消え、またすぐ復旧する。

 

「な、なんだ敵襲か!?」

 

「落ち着け、非常電源は動いてる。」

 

やっぱり間明関連かは分からないが間違いなく何かが起きてるらしい。

 

(だったらここでラウラにある程度話しとくべきか?)

 

そう判断しラウラに向き直る。

 

「なあラウラ……ラウラ?お前、唇真っ青だぞ?どうした?」

 

「け、!あの時と…あの時と同じだ!!

あの時、VTシステムにのまれた時の!!!!!」

 

「VTシステムって…!ラウラISを外せ!」

 

客たちが一斉にラウラの方を見る。

 

「あ、あああ!!ああああああ!!!!!!

やだ、やだ!私はISの部品じゃない!!

ああああああ!!!!!」

 

がくり!とラウラが糸の切れた人形のように項垂れる。

そして上げた顔に浮かんでいたのは張り付けたような、無情。

 

「みんな逃げろ!ISが暴走する!」

 

光がばぜ、ラウラの身体はシュヴァルツェア・レーゲンを纏う。

 

『並列分散リンク完了。機体を掌握。』

 

機械で合成された声が機体から発せられる。

流石に理解したらしい客たちは一斉に外に出る。

 

「なあセブン、周りの被害を考えないで戦って勝てると思うか?

・・・・セブン?」

 

『は! い、いや何でもない!とにかく行くぞ!』

 

「しゃっ!カメンライダー!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーと電磁手刀が火花を散らす。

狭い教室の中、机などの障害物をブラインドや足場に縦横無人に戦うドラゴンナイトの方が有利だ。

 

「このまま削っていけばいいかな?」

 

『ああ、下手に大技を出しては部屋ごと崩れかねない。』

 

このままジリ貧に、そう思って再び駆け出すと

誰か客が落として行ったらしい茶色いガラケーに手足が生え飛び掛かってくる。

 

「なに!?」

 

慌ててドラグセイバーで切り落とすが僅かに意識をそらした隙にラウラはレールカノンを構えている。

とてもではないがドラグシールドでは防げないし、カードを抜いてもベントインまではできない。

 

(普通のカードならな!)

 

勢いよくカードを引く抜く。

それと同時に吹き荒れた烈火がラウラを怯ませた。

引き抜いたのは赤い切り札(サバイブ)のカード!

 

(bgm Revolution 仮面ライダー龍騎)

 

「ラウラ、すぐにその冷たいとこから出してやる。変身!」

 

<SERVIVE MODE>

 

サバイブモードに変身したドラゴンナイトは右手に持ったシューター型のバイザー、ドラグバイザーツヴァイのブレードを展開し、一枚のカードをベントイン!

 

<SWORD VENT>

 

刃に百熱の炎を宿す。ラウラも電磁手刀を構える。

 

「はぁあああああああ!!!!!!!!」

 

ケイタの掛け声を合図にに走り出す両者。

両者の刃が互いに炸裂

 

「ふん!」

 

することはなかった。

ドラゴンナイトが途中で止まったのだ。

 

「バーニングセイバァアアアアアア!!!」

 

虚空に×の字を書く。その通りに出現した炎の波がラウラに炸裂し、膝をつかせる。

 

「ラウラ!」

 

ISが解除され崩れ落ちるラウラを受け止める。

 

「セブン、バイタルは?」

 

『正常だが医者に見せた方がいい。』

 

ラウラを再び抱えなおそうとした時、扉が派手に開かれる。

黄色いジャッケットの三人の男だ。

 

「巽防災研究所の者です!大丈夫ですか!?」

 

「俺は何とか。でもラウラが。」

 

「分かりました。すぐに外に!」

 

一番屈強な男にラウラを任せ、下階に急ぐ。

 

「なあセブン。どんだけコトが起こった後だと思う?」

 

『少なくとももうただでは済まないレベルだろうな。』

 

間明は何万人もがプレイするゲームを配り、何万人もが使うケータイを発売した。

 

(つまりもうある程度闇に葬れないレベルで動いてる。なら!)

 

今こそが間明との決着の時だ。

デッキを見る。先ほどのサバイブモード使用の影響が余剰エネルギーがバチバチとデッキを巡っている。

まるで自分はまだやれるという言う様に。

 

「やってやるさ。俺が戦える限り。」

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

蓮「まさかISまで暴走させられるとは……。」

心愛「そっちも大変なことになってるね。」

ケイタ「そっちも?二人ともなんかあったの?」

蓮「それは次回に語るとしよう」

ケイタ「次回、crisis In network その4!」

心愛「青春スイッチオン!」


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crisis In network その4

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

立香「ケイタ君が暴走したラウラちゃんを倒したとこまでだね。」

マシュ「て言うか暇ならinfinite time の方も更新して下さい!」

立香「大丈夫!そろそろ書くって言ってたから!」

ケイタ「まずは本編の方をどうぞ!」


1

「お待たせしました木苺のケーキと紅茶のセットです。」

 

「あ、レン少佐。お疲れ様です。」

 

「おー!苦しゅうないぞレン少佐!」

 

「……アンドリューにハリエット。お前らなんで居るんだ?」

 

突如現れた部下達に困惑しながらも仕事はしっかりこなす蓮。

 

「ヘッドがなんか裏ルートで招待状貰えたから遊んで来いって。」

 

「お姉ちゃんとアキツネも来てますよ。」

 

「おい待てブルー大隊の中枢が全員じゃねぇか。

今誰が本国に残ってんだよ。」

 

「ラミネスとフランシスが残ってます。」

 

クリス・ラミネス。

アキツネの右腕で前線に出て戦うより司令室で頭を使って活躍するタイプの軍人で、男女問わず隊内から認められている。

 

ロキシー・フランシス

師団長ポリーの子分の1人でジュリエットの飲み友達。

使ってるISは量産型だが、その腕前は防戦ならば蓮とラウラを同時に相手取れる優秀なパイロットだ。

 

「まあ、なら大問題を起こしたりはしないだろうが。」

 

しかしそれでも乱痴気パーティーぐらいはやってそうだなと思い溜息をつく蓮。

最後にどうぞごゆっくりと言って裏に戻る。

 

(全く、わかっちゃいたが珍客万来だな。ん?)

 

サードが振動する。連続で来るし電話だろうか?

 

(こんなタイミングで誰が?)

 

一度バックヤードに戻ると

 

(全部メールだと!?

しかもアドレスはフラネット社、ジーンか!)

 

気付いた蓮は自分の人差し指にはめた金の三連リングをなで、打鉄黒翔を部分展開する。

 

「サード、バーチャルブーストフォンアナライザー着身。

ジーンを着信拒否にしろ。」

 

『は、はい!………ぐっううぅ…なんとか、なりました。』

 

情報負荷で動けなくなりかけていたサードはややグロッキーな感じだが大丈夫そうだ。

 

「サード。あれは、敵だな?」

 

『はい。フラネット社は利用されたと見るべきでしょう。』

 

「ならこの攻撃はアンカーにも及んでると思うか?」

 

『そのうち及ぶでしょう。』

 

「なら今のうちに行っとくか。」

 

教室の窓の前にデッキを構え、Vバックルを出現させる。

ポーズをとって

 

「KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身し、鏡に飛び込む。

アドベントサイクルに乗り込みエンジンを全開にする。

サードのナビに従い指定された場所で降り、鏡越しに中に入る。

 

「サードここか?」

 

『はい。旧アンカー本部。まだアンカーが一小社だったころの場所で、

おそらく間明が潜伏していた場所の一つです。』

 

「だろうな。」

 

ラーメン一本道の残骸を掴みながらつぶやく蓮。

 

「それにお迎えも用意してあるしな。」

 

振り返ると虚ろな目をした男がスマホを右手に、四角いデバイスを左手に立っている。

 

『レン様、あのスマートフォンには例のジーンラビリンスが仕込まれています。』

 

「なら奪って調べさせてもらうか。」

 

「実装。」

 

男はファイティングポーズをとる蓮を見ると持っていたデバイス、プログライズキーを起動する

 

<ハリケーン!>

 

<レイドライズ!ストーミングペンギン!>

 

<The winds are at hiscommed>

 

「ペンギン、風を意のままにとは。飛べねえくせにな!」

 

ストーミングペンギンレイダーとウイングナイトの戦闘が始まった。

何か武器を持ってるわけじゃないレイダーに対しウイングナイトは容赦なくダークバイザーで削いでいく。

 

「素人に負けるかよ」

 

<SWORD VENT>

 

武器をウイングランサーに持ち替え重点的に斬り付けていた場所を貫く!

 

「キュウ………。」

 

古典的な声を上げながら男は変身解除とともに崩れ落ちた。

 

「サード、こいつどうする?」

 

『外にでも放り出しておきましょう。』

 

と、その前に男の持っていたスマートフォンを解析する。

 

『やはりジーンラビリンスは人間を洗脳するアプリの様です。』

 

「サブリミナル効果とかか?」

 

『それも有りますが、視覚的以外にも聴覚的にも様々な効果が。』

 

「それで盗んだベルトとアイテムで変身させたのか。」

 

『彼以外にも役割の濃淡はあれど、このゲームをある程度やりこんでいる人間は操られているとみるべきですね。』

 

「だとすると、何人ぐらいだ。」

 

『そうですね、、このゲームはゆがんだ精神の持ち主ほど先に進みやすいように誘導する仕組みが組み込まれています。』

 

「つまりそのゲームに夢中な奴は知らない間に間明の奴隷ってわけか。」

 

『まあ、持ち前の才能で進んでしまう人も居るでしょうが』

 

「確か前にケイタや簪が最終ステージをクリアした奴はざっと100人ぐらいって言ってたな。」

 

『はい。おそらくこのゲームのホームページにのってるユーザー名とこの端末に登録されてウ名前が一致しました。』

 

「少なくとも100人、最終ステージに行けてる奴らだけども6000人弱。」

 

『特定は困難です。』

 

「だったらいつどんな邪魔が来てもいいように対応するしかない。」

 

蓮は設備を復旧させるとすぐさま作業に取り掛かる。

そこで蓮とサードは衝撃のニュースを目にする。

 

『ハジメマシテ、私ハGENEデス。

ネット世界二生マレタ新シイ生命デス。』

 

「サード、これはまさか……サード?」

 

『感じます、ネットにフォースと、ゼロワンを。』

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

立香「もうジーンがあんなに成長を?」

マシュ「ま、まさか並列分散リンクを?」

ケイタ「その並列なんちゃらって、操られたラウラも言ってましたけどなんなんですか?」

立香「その説明は次回ってことで!」

マシュ「次回、crisis In net work その5!」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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crisis In network その5

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

心愛「蓮君がジーンラビリンスの秘密を暴いたとこまでだね。」

一夏「私たち以外もみんな大変だったんだね。」

心愛「うんそうだね。」

ケイタ「二人の方にもやっぱなんかあったの?」

一夏「ま、聞くより見てもらった方が早いかな。」

ケイタ「それではどうぞ!」


「鳳さーん!七番テーブルにご指名入ったよー」

 

「今行くー!」

 

鈴音の所属する二組の出し物はチャイナ喫茶だった。

生徒がチャイナドレスで接客するのだ。

 

(ま、隣の一組の最大限男子を広告塔にした戦略のせいでほとんど身内しかお客さんにいないけどね!)

 

心で愚痴りながらテーブルに向かうと

 

「よう鈴!」

 

「しばらくぶり、元気そうじゃん。」

 

「弾くんがお世話になっています。」

 

「お疲れ様。」

 

「達郎!弾に一夏に布仏先輩も。」

 

珍しい組み合わせの四人だった。

一夏は休憩時間を割いてきてくれたのか、メイド服のままだ。

 

「似合ってるじゃんチャイナドレス」

 

「一夏みたいな出るとこ出てる人に言われても嬉しくないわよ。」

 

スリットだらけで恥ずかしいし。という鈴に

 

「そんなことねぇよ、鈴肌きれいだし。」

 

「そ、そう?な、ならいいかなー?」

 

達郎に褒められ頬を赤らめれる鈴

 

「……弾くん、織斑さん。」

 

小声で手招きする虚。

 

「なんすか?」

 

「もしかしてだけど鳳さんって大江くんのこと…」

 

「やっぱわかります?」

 

「かれこれ鈴は、本人否定してますけど小五から今までざっと五年間達郎のことを。」

 

大恋愛ですね、と驚く虚。

 

「それで当の大江くんは?」

 

「鈴を女として見てないのか、それとも好みじゃないのか。」

 

「それとも他に好きな人がいるのか知りませんけどなんとも歯がゆいんです。」

 

「それはそれは。」

 

うーむ、と難しい顔になる三人。

 

「ちょっとお三方。喫茶店なんだから注文してもらわないと困るんですけど?」

 

鈴音に急かされ適当に注文する三人。

 

「何こそこそ喋ってたんだ?」

 

「いや、まあ…達郎は鈴のことどう思ってるのかな〜って」

 

誤魔化そうとも思ったがそろそろ聞いておきたい弾はなるだけストレートに言った。

 

「どうって…いい奴なのはお前らも知ってるだろ?」

 

「いやそうじゃなくてさ」

 

「そうじゃ無いって、衣装のことか?

バッチリ似合ってるよ。どっちかと言うと一夏の方がチャイナ服似合いそうで、鈴の方がメイド服似合いそうだとは思ったけど」

 

「いやそっちでも無いですよ?

私もそう思いましたけど。」

 

「じゃあなんだよ?」

 

本当にわからないと言う顔で首を捻る弾。

やれやれと溜息をつく3人。

すると一夏のスマホが鳴る。

 

「電話だ。ちょっと外出て来ます。」

 

3人に断り廊下に出て電話に出る一夏。

 

「心愛ちゃん?…はい一夏です。」

 

『も、もしもし一夏ちゃん!?た、大変だよ!

爆散するジーンに襲われてゼロワン君に助けられたけどゼロワン君バッテリー切れで!簪ちゃんとシャルロットちゃんと会えたけどゲイツって仮面ライダーが襲って来て!』

 

「は?ちょ、心愛ちゃん?

言ってること支離滅裂でわかんないんだけど。

つまりどこで何してるの?」

 

すると見計らったように一瞬電気がすべて留まり、

一組の教室から人が飛び出てきた。

 

「大変だ!ISの!ISの暴走だ!!」

 

一泊あっての悲鳴。

人々の流れが一夏を押し出していく。

 

「え?ちょ、ちょっとー!!!」

 

こんな狭い廊下でISを展開するわけにも、

ベンタラに飛び込むわけにもいかない一夏は流されるままに押されていく。

 

「こっち!」

 

「え?」

 

階段まで来たとっころで誰かに引っ張られる。

 

「大丈夫だったっすか?」

 

「あ、ダリル先輩にフォルテ先輩。助かりました。」

 

アメリカの代表候補性で三年のダリル・ケイシーとギリシャ代表候補のフォルテ・サファイアだ。

 

「いいって。にしても一体なにが?」

 

「分かんないです。なんかISが暴走した言ってましたけど?」

 

「ISが暴走?にしては他が静かね?」

 

「当然よ。他はジュリエットとアキツネが事前に処置を施してるから。」

 

上の方からの声に振り替える。グラマラスな白人の女性がいた。

肌の張りや引き締まった身体は20代のそれとそん色ないが、その貫禄のようなものは熟練兵士のようなものがある。

年齢不詳のアンノウン。ただし後ろに控える二人にはすごく見覚えがある。

 

「ハリエットさんにアンドリューさん?その人は?」

 

「こいつが我らがアメリカ海兵隊IS師団師団長にしてブラック大隊大隊長のポリー・ナポリターノだ。」

 

「あなた織斑一夏ちゃんね。いつも部下が世話になってるわ。」

 

「ど、どうも…えっとその、なぜここに?」

 

「決まってるじゃない。」

 

パチン!とポリーが指を鳴らすと一夏たちの背後に三人の男女が現れる。

 

「な、なんなんすか?」

 

「変身シークエンス、用意!」

 

<9 1 3 enter standing by>

 

「変身!」

 

<complete>

 

3人はカイザフォンをドライバーにセット。

カイザギアを完成させ、仮面ライダーカイザ(量産型)に変身した。

 

「現時刻をもって亡国機業殲滅作戦を開始する!総員戦闘開始!」

 

ポリーの合図とほぼ同時だっただろうか?

中庭の方から何発もの銃声が聞こえた。

 

「ま、まさか!?」

 

「あなたが招待したお友達は皆私の部下が倒した様ね、

ダリル・ケイシー、いえレイン・ミューゼル。」

 

ダリルの、いなレインの顔が憎々しげにゆがむ。

 

「う、嘘でしょ?嘘って言ってくださいよダリル先輩!」

 

「………黙ってて悪かったな。」

 

「そんな!」

 

「お話は終わり?裏切者を処刑しなさい!」

 

3人のカイザはそれぞれカイザショット、

カイザフォンとガンモードにしたカイザブレイガン、

ブレードモードにしたカイザブレイガンを構えレインに襲い掛かる。

 

「くっそ!ヘル・ハウンド!」

 

戦闘に巻き込まれないよう階段を下りた二人と入れ替わるように飛び出るカイザ達。

この狭い空間で火炎攻撃を行えないレインは確実に近接のカイザ2人に作らされた隙を二丁の銃のカイザに削られる。

 

「だ、ダリル先輩……。」

 

ブレイガンの刃と光弾がヘル・ハウンドの装甲を削る。

 

(た、助けないと!でも、もし、

もしホントにダリル先輩が亡国だったら、

私は国を、国を裏切ることに……。)

 

葛藤するフォルテ。

 

「先輩!よくわかんないですけど逃げましょう!

もう私たちがどうにかできる事態を超えてます。」

 

「・・ごめんっす一夏ちゃん。皆にごめんって伝えて欲しいっす。」

 

「せ、先輩?」

 

「私にとってダリル先輩は、一夏ちゃんにとって網島君みたいなもんなっす。」

 

「ま、まさか先輩!?」

 

フォルテは駆け出して銃のカイザのベルトを外すと、自身の専用ISコールド・ブラッドを展開する。

 

「なんだと!?」

 

「ニック!」

 

ブレイガンのカイザがとっさにフォローし、

生身のままダメージを追うことはなかったが、

連帯が崩れた穴を突かれ、残り二人も変身解除され吹っ飛ばされる。

 

「ジャクソン!べス!」

 

「す、すいませんアンドリュー班長、しくじりました。」

 

「気にしなくていいわぁ、あなた達は撤退なさい。

ここからは、荒れちゃうから!!!」

 

「まずいハリエットさんがハイになってる!

おい織斑一夏!」

 

「は、はい!?」

 

さっきフォルテにベルトをはがされた男、ニックが一夏を引っ張る。

 

「早く逃げるぞ!この建物は崩壊する!!」

 

「は?それってどうゆう」

 

返事を待たずに走り出すニック

 

「ちょ!ちょっとー!?」

 

「その声は!一夏!居るのか?」

 

「! ケイタ!」

 

教室の方からケイタと黄色いジャケットの3人組と、そのうち一人に背負われたラウラが来た。

 

「無事だったか!」

 

「私は何とか。心愛ちゃんはなんか大変みたいだけど。」

 

「そっか、心配だな。」

 

「立ち話してる場合じゃないぞ。こっちの階段は使えない。」

 

「なら奥の非常階段使いましょう。」

 

 

 

そのころ階段の上、もう既に非難の完了している2年の教室の階にて。

 

「あはははははははは!!!!!!!!!!

あーっはっはっはっはっはっはーっっ!!!」

 

無数のレーザーが次々と壁をうがち、レインの退路を塞いでいく。

 

「そのまま逃げ続けて立って埒があきませんよ?

さっさと攻めて来てみてくださいよぉ!!!」

 

「ちっ!」

 

カーマインタランチュラ。

かつて亡国機業のオータムに奪取されたISアラクネのプロトタイプをハリエット専用に改造して作った

専用機で、八本のレーザーアームと高速機動が売りの第2・5世代機だ。

 

(炎も銃撃も器用によけやがる!!)

 

手こずってるのはフォルテも同じだった。

 

「オㇻオラオラ!!その程度か!!?」

 

(嘘でしょ!? 私はISを鎧ってるんすよ!?

なのに、なのに!生身の相手を攻めあぐねるなんて!)

 

アンドリューははっきり言って蓮の部下の四人の中で一番弱い。

バーナード姉妹のようにISに乗れるわけでも

アキツネのように情報戦に優れるわけでもない。

 

そんな棒術だけが取り柄の彼がなぜブルー大隊の要の一人であるか。

ハリエットの数少ないブレーキ役というのも有るが、

 

「ウルトラスティック!!」

 

この兵器を使える。そして自分が何も持ってないと自覚し、

持てる手札と使える技を理解し、組み立てることが出来る。

故に彼は強大な敵を前にした時ほど

 

(強い!厄介すぎる!攻めと引きの見極めが的確過ぎる!

攻撃に対する嗅覚が異常じゃない!このままじゃ、このままじゃ狩られるのは、私?)

 

「どうした?自分の吹雪で便所にでも行きたくなったか?

悪ぃけど、地獄の悪魔の奴を借りるんだな!!」

 

「ーーーッ!!!!!!!!!!!」

 

遂に削りに削られた装甲の一部にウルトラスティックが貫通した。

ふくらはぎから尋常じゃない熱と痛みを感じ、肉が焦げるにおいが立ち込める。

 

(でも、今なら動けないいっしょ!?)

 

特殊窒素の噴射口をアンドリューの顔に向けるが

 

「甘ぇよ。」

 

アンドリューは躊躇なく右腕をその穴に突っ込んだ。

そして蒸気と共に二の腕の真ん中から腕が切り離され

 

(機械の義肢!? まさかこいつも改造人間|(サイボーグ)!!)

 

「気付くのがおせえよ。」

 

残った左腕がフォルテの顔面を捕まえる。

 

「んんんんんんんんんんんんんんんんんッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「唇がくっついちまうぐらい熱いだろ?

ウルトラスティックは特殊電磁熱で装甲を溶かし貫くための兵器。

生身で使おうと思ったら、俺みたいに両腕を特殊断熱処理を施したものに()()()()()()()()()

それでも無理な駆動とウルトラスティックの熱でこんだけ熱くなる。」

 

アンドリューのもう一つの強み。

それは代償を払うのをためらわないこと。

アキツネの目の様に元から悪かったわけでもなく、

ポリーやバーナード姉妹の様に生きるために仕方なくでもなく、

ただ憎き敵を滅ぼすために自ら志願して改造人間(サイボーグ)になったのだ。

 

「んんッー!!んんんん!!!」

 

「あ? 何言ってるか分かんねぇな。唇引っぺがすぐらいの根性見せろや!!!」

 

薬や人造筋肉移植などで生身のまま極限まで鍛えたアンドリューの蹴りがフォルテを吹っ飛ばす。

そしてその先にはレインと戦うハリエットが!

 

「まとめて絡め殺ってあげる♡」

 

8本のアームが極細のビームを出しながら交差し続ける。

 

人造紅の死網(カーマインデスネット)。何回見てもえげつねぇな。」

 

装甲ごとバラバラにされ、血溜まりに沈む2人を見ながら独りごちるアンドリュー。

 

「は、はは。」

 

「あらしぶとい。私の人造紅の死網(カーマインデスネット)をくらってすぐ死なないなんて、流石はあのスコール・ミューゼルの姪ですね。」

 

「どっちにしろ変わんねーよ。

国内外問わず分かってただけの亡国の実働部隊は全部潰した。

再起するにもそれなりの金と時間がかかるさ。」

 

「そんなものは、小さな問題。」

 

「? どうゆうことだ?」

 

「亡国機業は、貴方達がSHADOWと呼んでいた組織の、一部」

 

「そんなはずないでしょう?

SHADOWと亡国機業とじゃ方針が違いすぎます。」

 

「そうよ、なんてったってSHADOWの起源は古い。

上層部だって全容は把握してない……。

人類が業を持った瞬間からその礎は存在した!

例え篠ノ之束にも織斑千冬にも滅ぼせない!!」

 

激しく咳き込むレイン。

それもだんだん弱々しくなるが、眼光だけは衰えない。

 

「人間の業ねぇ、そんな当たり前すぎるもんの為にお前は結果恋人と仲良くなぶられた訳か。」

 

「よくある事ね。」

 

1発の銃声。物理的にありえない起動を描きながらレインの頭蓋を砕いた。

 

「ヘッド。」

 

「ポリーさん。お疲れ様でした。」

 

「作戦は7名の犠牲でミッションを完遂。我らの勝利よ。」

 

「フラネットのスカした面の、マギラ?とかいう奴はどうすんだよ?」

 

「レンと愉快な仲間たちに任せるわ。」

 

そう言ってポリーは武器を仕舞うと2人を伴い、その場を後にした。

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「前から何でレンの部下の人達ってあんなに強いのかなって思ってだけど、皆サイボーグだったんだね。」

心愛「程度はあるみたいだけど」

ケイタ「ちなみに改造箇所が多い順にポリー、アンドリュー、バーナード姉妹、アキツネさんだそうです。」

一夏「蓮くんは?」

ケイタ「生身だってさ。」

一夏「化け物ね。」

心愛「時間も時間だし、そろそろおわろっか。」

ケイタ「次回、crisis In network その6!」

一夏「これで決まりだ!」

心愛「infinite time シリーズも更新したのでよろしく!」


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crisis In network その6

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

立香「ケイタ君と一夏ちゃんが合流したとこまでだね。」

マシュ「今回は心愛さんや五反田さんたちの視点からですね。」

ケイタ「ていうかよくよく考えたら話ほとんど進んでないですよね?」

マシュ「時系列的にはそうですけどこれも必要なことですので!」

立香「この度めでたく完結しましたinfinite time キカイダー00も合わせてお楽しみください!」

ケイタ「さてさてどうなる?」



1

「一夏の奴ずいぶん長電話ですね。」

 

弾と虚のストロベリーロークが途切れたタイミングを見計らって達郎は切り出した。

 

「そうですかね?」

 

「ケイタとならそんなもんじゃねーの?」

 

「ケイタ今シフトだろ。」

 

外に見に行くべきか?一瞬そう思ったとき、隣の一組から破壊音が聞こえた。

 

「うわっ!」

 

「な、何事だ!?」

 

「地震!?爆発!?」

 

驚きの次に、悲鳴。廊下を大勢の人が移動する音がする。

 

「おいおいなんだよ。ケイタやアンタからこの学校はトラブル続きって聞いてたけどこんな時もか?」

 

「こんな時も、みたいです。ごめんなさい…。」

 

「いや虚さんが謝ることじゃないっすよ。

それより俺らも逃げた方がよさそうじゃないっすか?」

 

達郎は油断なく構え、弾は万が一の場合いつでも変身出来るように戦極ドライバーとロックシードを用意する。

 

「達郎!弾!布仏先輩!」

 

厨房の方から鈴音が出て来た。

 

「鈴!何があったかわかるか?」

 

「わかんないけど、達郎。あなたを殺さなきゃいけないのはわかる。」

 

「え?」

 

ふら、ふらっと後ずさった達郎は彼の腹部から流れた血でできた血だまりに足を滑らせ倒れた。

その血の流れる場所には深々と包丁が刺さっている。

 

「り、鈴お前!」

 

「なんかよくわかんないけど、やらなきゃいけないのよ。

弾。あんたも布仏先輩も殺さないといけないから、抵抗しないなら楽に殺すわよ?」

 

鈴音が甲龍を展開する。一泊おいて悲鳴が上がった。

客も生徒も外に殺到していく。

 

「虚さんも行ってください!」

 

「で、でも!」

 

「俺もすぐに達郎と追いつきますから!」

 

しばらく迷った虚だったが

 

「ご武運を。」

 

とだけ言って走り出した。

 

「逃がさない!」

 

「やらせるか!」

 

<マツボックッリ!>

 

ロックシードがはじかれた瞬間、

クラックから現れた鋼の木の実が鈴音の衝撃砲から虚を守り、

弾の頭上に移動する。

 

「変身!」

 

<ロックオン!>

 

衝撃砲を避けながらドライバーにセット。

宙返りと共に背後を取るとカッティングブレードを下す!

 

<マツボックリアームズ!

一撃!in the shadow!>

 

「仮面ライダー黒影!見参!」

 

振り返りざまにキックを放ち、鈴音と距離を取り影松を構える。

 

「鈴!一体どうしちまったんだ!?」

 

「どうもこうもしないわよ。

やるべき事はやらなきゃいけないのよ。

……そうよね?あれ?なんか、違う?」

 

(やっぱ様子が変だ。何か原因があるのか?なんにせよ。)

 

「催眠術はちょっと強めに頭なぐりゃどうにでもなんだろ!」

 

と、啖呵きったは良いものの、黒影はスピード重視の軽装甲。

パワー重視の甲龍の攻撃を一発でも喰らえばすぐさま逆転されてしまう。

 

(しかも隠れる場所ほぼゼロで達郎に流れ弾が当たんないようにとか戦いずらくて仕方ねぇ!!)

 

「ぐっ!」

 

「もうすぐで殺せるかな?」

 

次の衝撃波を鈴音が放とうとした瞬間

 

「いっけぇえええ!!!」

 

「!?」

 

鈴音の目の前に青と黒の機械仕掛けの蝙蝠、

達郎のメモリガジェット、バットショットがフラッシュを焚く!

 

「まぶしっ!な、なにが!?」

 

「弾今だ!」

 

「うぉおおおおーっ!!」

 

<ソイヤ!マツボックリオーレ!>

 

エネルギーを貯めた黒影の飛び回しかかと蹴りが鈴音の後頭部を捉えた。

白目をむいて崩れ落ちる鈴音。ISも解除される。

 

「達郎!動けたのか?」

 

「鈴を、人殺しにするわけには……いかねぇからな。」

 

激しくせき込む達郎。素人目にもマズい状態だとわかる。

 

「達郎掴まれ。外に行こう。病院までがんばれ。」

 

「いや、無理だ。助からない。」

 

「!? 誰だ!」

 

さっき虚が出ていった扉かマゼンタのシャツに黒い上着の茶髪の男が入ってきた。

 

「うぅ……う!痛たた! な、なにが?」

 

「鈴!」

 

「目覚めたか。」

 

男は鈴音のそばまで寄ると達郎を指さし、

 

「お前がアイツに何をしたか覚えているか?」

 

「何をって……あ…。」

 

サーっと鈴音の顔から血の気が引いていく。

 

「嘘、あ、私…なん、なんて!なんて事を!!」

 

髪が抜けるのも血が出るのも構わず頭を掻きむしり蹲る鈴音。

 

「やっぱ操られた奴は皆こうなるか。」

 

「なんだって?」

 

「さがってろヒヨッコ。ここからは先輩の有難いお手本だ。」

 

そう言って男はマゼンタと黒のバックルを取り出す。

 

「それってドライバー?まさか!」

 

「ヤダヤダヤダ!あ、あたしはこんなことしたくない!

ああああああああ並列分散リンク……ジーンネットワークに接続!」

 

「変身!」

 

<KAMEN-RIDE W!>

 

鈴音は再び甲龍を、男は緑と黒の二色の、Wの鎧をまとう!

 

「W!? そんな馬鹿な!」

 

甲龍の猛攻を軽いフットワークと卓越した体術で裁くW(?)

 

「驚くのはまだ早い!」

 

<KAMEN-RIDE EX-AID!>

 

テクノポップ調の音声とアニソンで聞いたことがあるような声と共にWだったライダーはショッキングピンクとアニメ的なデザインが特徴のエグゼイドに変身した。

 

「違う仮面ライダーになった!?」

 

「それが俺の、世界の破壊者(ディケイド)の力だ!」

 

<FINAL-ATTACK-RIDE E E E EX-AID!>

 

一度レベル1に変身し、出現させたチョコレートを模した障害物を足場に連続キックを浴びせ、鈴音をISから剥がした!

 

「やった!」

 

「いや、まだだ。」

 

レベル2に再び戻り、残った甲龍をジャイアントスイングの要領で窓の外に投げ飛ばす!その先に現れた銀色のカーテンのようなオーロラに吸い込まれて甲龍は消えた。続いて爆裂音!

 

「うわっ!まさか、自爆したのか?」

 

「だろうな。ジーンにハックされたISコアは最終的に自爆する。

流石の篠ノ之束も対応できないだろうな。」

 

「じゃあ、このままだとISの絶対数が!」

 

「減り続ける。ま、この世界の仮面ライダーも無能じゃない。最悪の事態は避けるだろうな。」

 

<KAMEN-RIDE DRIVE!>

 

今度は赤いスポーツカーを模したライダー、ドライブに変身した。

 

「な、なにを?」

 

「お前、達郎っていったな。このままだとお前は死ぬ。

けど俺の力ならめちゃくちゃ痛い思いをする代わりに助かる。やるか?」

 

もう喋るのもだるいのか達郎は弱弱しく頷いた。

 

「よし、ただ改めて覚悟しろ。

楽になる方法はただ一つ、さっさと気絶することだ!」

 

<FINAL-ATTACK-RIDE Do Do Do DRIVE>

 

タイヤコウカンでマッドドクターを装備したドライブが達郎に刺さった包丁をゆっくり引き抜きながらエネルギーを与えていく。

 

「だっ!があああああああああああああああーーっ!!!!!」

 

「が、がんばれ達郎!」

 

電撃が終わり、達郎が白目をむきながら気を失う。

 

「持ち直した。けど血は足りてないぞ?」

 

「分かりました。二人は俺が運びます!

助かりました、えっと、ドライブさん?」

 

「違う。ただの通りすがりだ。覚えておけ。」

 

 

緊張が頂点まで達する。

果たしてこんなんで声なんて出るんだろうか?

さっきから止まらない自問自答に意味がないとわかりつつも考え続ける更識簪は他でもない姉を呪った。

 

(お姉ちゃんがシンデレラ鬼ごっこなんて思いつかなければ!)

 

きっかけは夏休み。

例によって楯無に泣きつかれて生徒会の仕事を手伝っていた時のこと。

 

「あっついよー!」

 

「エアコン壊れましたからね。」

 

汗をぬぐいながらキーボードをたたく蓮。

 

「扇風機付けてもあっついよー!!」

 

「一台しかありませんからね!」

 

書類をまとめながらすっかり生温くなった麦茶を飲み干す一夏。

 

「制服くっついて気持ち悪いー!」

 

「お姉ちゃんがベタベタくっつくから!!」

 

引っ付いてくる楯無を引っぺがしながら吐き捨てる簪。

 

「すごくやる気も起きないー!」

 

「もーうるさいですよ!楯無先輩も働いてください!」

 

さっきから文句を言うばかりで仕事をしない楯無。

 

「だって馬鹿みたいにあついんだもーん!」

 

そこにケイタの赤龍改の拳が、

一発の文字通りの鉄拳が壁に炸裂する。

 

「………。」

 

「け、ケイタ…さん?」

 

Do or Dead or Die!

 

「は、はい!」

 

室内は一気に涼しくなった。

仕事もつつがなく進んでいく。

 

「そ、それじゃあ今日はこんなとこにしましょうか!?

ま、またよろしくねー!」

 

一秒でも文字通り逆鱗に触れてしまったケイタから離れたくてかダッシュで部屋から去っていく楯無。

 

「はぁ……。たく。」

 

書類をしまい帰り支度を始めるケイタ。

 

「この後どうする?」

 

「私は特になんもないけど、ん?楯無さんなんか落としてってる。」

 

入り口付近に落ちていた紙を拾い上げる一夏。

 

「なにそれ?」

 

「なんか文化祭の企画みたい。」

 

「どれどれってなんじゃこりゃ!?」

 

そこに書かれていたのは世にも恐ろしい企画。

 

『全校参加型!シンデレラ鬼ごっこ!』

 

ざっとまとめると全校女子をシンデレラの格好させた王子様コスのケイタと蓮を追いかけて外すと電流が流れる王冠を奪わせるというものだ。

 

「どうする?」

 

「いやどうするって一夏。

こんなん簪さんのお姉さんに直談判して」

 

「いやケイタ。その場合これ以上の変化球で仕掛けてくる場合がある。そうなったら予測不能で対応できない。」

 

「じゃあどうする?」

 

「んー……企画を乗っ取るとか?」

 

「でもその場合そのとんでも鬼ごっこより面白くなきゃだめだよな?」

 

「或いはなんか断りずらい感じの…」

 

「バンドとか?」

 

この一夏の一言がきっかけで現在に至る。

 

(なんでバンドのボーカルなんか引き受けちゃったんだろ!)

 

すっかり舞台の整った体育館の特設ステージでアイドルみたいな衣装を両手で隠しながら真っ赤になって蹲る簪。

 

「やっほー遅れました!」

 

「お待たせ!」

 

ドラムのシャルと司会進行の心愛がやって来た。

シャルはドラムが壊滅的にできなかった心愛の代わりに抜擢されたという経緯がある。

 

「もう着替えたの?可愛いじゃん!」

 

「似合ってるよ、僕の分もあるの?」

 

「うんシャルちゃんのこれと同じで色だけオレンジの奴が。」

 

そう言って更衣室の方に行く二人を見送り、

少しでも違うことを考えようと、スマートフォンでニュースを見る。

 

『次のニュースです。三時間前より、世界各国のインフィニット・ストラトス、通称ISが相次いで暴走してる事件で……』

 

ISの暴走?剣呑極まりないワードに眉をひそめたとき、校舎の方から轟音と銃声が聞こえてきた。

 

「な、何!?まさかホントに暴走?」

 

「更識さーん!」

 

「! コンスタンさん、大丈夫?」

 

「僕は平気。心愛はケイタや一夏達に連絡するって。

まだ更衣室。」

 

「だったら助けに」

 

「悪いがそういう訳にはいかない。」

 

走り出そうとした簪とシャルロットの前に赤い服に黒いハーネスのツンツン頭の男が立ち塞がる。

 

「あなた…誰?」

 

「俺は明光院ゲイツ。又の名を」

 

<ジクウドライバー!>

 

パールホワイトの楕円形のベルトを装着するゲイツ。

 

「ベルト!?」

 

「てことはあなたも…」

 

<ゲイツ!>

 

「変身!」

 

<ライダータイム!>

 

ジクウドライバーにゲイツライドウォッチをセット、握り拳でロックを解除し、

交差した両手で抱え込む様にドライバーを持ち腕を広げながら回転させる!

 

<仮面ライダーゲイツ!>

 

「……仮面ライダーゲイツだ!」

 

<ジカンザックス!Oh! No!>

 

ジカンザックスで2人に襲いかかる!

 

「カメンライダー……ッ!」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

避けながらポーズを省略してアックス、

オルタナティブに変身!

デストバイザーとジカンザックスが鍔競り合う。

 

「なんで私達の邪魔を?」

 

「これは本来ケータイ捜査官7の物語だ。

俺たち仮面ライダーが干渉すべき問題じゃない!」

 

デストバイザーを弾き、腹部に蹴りを入れるとゲイツは腕のホルダーから青地にオレンジのライドウォッチを取り出す。

 

<クローズ!>

 

「もう融合しきった世界だが、

少しは本来あるべき歴史に沿って動かなければ過負荷でこの世界が崩れかねんからな。」

 

<You! Me!>

 

ゆみモードにしたジカンザックスにセットする!

 

<ギワギワシュート!>

 

青いドラゴンの矢が2人に襲いかかる!

 

「だったら!」

 

<FREEZE VENT>

 

青いドラゴンが一瞬で凍り、砕け散る!

 

「何!」

 

「シャルロット今!」

 

「分かった!」

 

<SWORD VENT>

 

ゲイツの一瞬の隙を突いてオルタナティブの青い炎がゲイツに放たれる。

 

「ならこれだ!」

 

今度は黒地に鈍い銀のライドウォッチを取り出し

 

<ウィザード!>

 

ゲイツウォッチの反対側にセットする!

 

「変身!」

 

<ライダータイム!仮面ライダーゲイツ!>

 

<アーマータイム!プリーズ!ウィザード!>

 

赤い魔法陣が炎を吸い込み、

ゲイツはウィザードアーマーに変身した!

 

「な!」

 

「姿が変わった!?」

 

「まだまだこれからだ!」

 

ゲイツが手をかざすと2人の背後に魔法陣が出現し、その中から鎖が飛び出し2人を拘束する。

 

「しまった!」

 

「くそっ!」

 

「喰らえ!」

 

<フィニッシュタイム!ウィザード!>

 

ライドウォッチのスイッチを押し、

ドライバーを回転させる。

 

<ストライク!タイムバースト!>

 

炎を纏った両脚キックが2人に炸裂!

 

「うわぁああああ!!」

 

「こんのっ!」

 

飛ばされるタイミングでブーメランの様にデストバイザーを投げるアックス、

ジカンザックスを弾き飛ばし、

見事戻ってくる。

 

「何!?だが、この距離だ。

今から取りに行っても充分間に合う!」

 

「させない!」

 

<ATTACK VENT>

 

デストワイルダーを呼び出し行く手を遮る。

 

「くっ!だったら!」

 

<ゲンム!>

 

紫一色のウォッチをウィザードウォッチと取り替える。

 

<アーマータイム!レベルアップ!ゲンム!>

 

ゲンムアーマーに切り替え、

ガシャコンスパローを鎌モードで構え、

デストワイルダーに対抗する。

 

「でも、3対1!」

 

「いや、4対1だよ!」

 

<ATTACK VENT>

 

流石に死角カバーしきれず、

4人の連続攻撃に吹っ飛ばされる。

 

「これで、投了!」

 

クリスタルブレイクを発動してゲイツを引き摺り回す!

 

「誰が喰らうか!」

 

しかしゲイツは上手く仰向けに倒れており、

デストワイルダーの腹部にアローモードにしたガシャコンスパローの光弾を浴びせて脱出する!

 

「あ!」

 

「お返しだ!」

 

<クリティカル!タイムバースト!>

 

何故か

「BANG BANG CRITICAL FINISH」

のカットインと共にダークブルーのビームが放たれる!

 

「シャルロット!」

 

「え?」

 

シャルロットを突き飛ばし、

モロに喰らうアックス

 

「簪さん!」

 

「まだまだおかわりだ!」

 

<クリティカル!タイムバースト!>

 

今度は鎌モードにしたガシャコンスパローで

「GIRI GIRI CRITICAL FINISH」

のカットインと共に紫の斬撃を浴びせられ、

変身を強制解除させられる。

 

「さあ、後はお前だけだ!」

 

「うっ……だったら!」

 

<SPEED VENT>

 

高速移動で縦横無尽に移動し、

多角的にゲイツを攻撃する。

 

「ならばこいつだ!」

 

<ドライブ!>

 

<アーマータイム!DRIVE! ドライブ!>

 

ドライブアーマーに変身して対応する。

 

(こっちより早い!なら!)

 

<WHEEL VENT>

 

バイクモードのサイコローグを呼び出し、

騎乗して体当たりを仕掛ける。

 

「そうくるか。ならばこちらも!」

 

<ファイズ!>

 

<アーマータイム!COMPLETE. ファイズ!>

 

ファイズアーマーに変身してオートバジンを召喚、ベンタラにてデットレースを繰り広げる。

 

「そろそろ決める!」

 

<FINAL VENT>

 

スピン式ライダーブレイクのデッドエンドを発動するオルタナティブ。

レース時のスピードのままゲイツに迫る!

 

「無駄だ!」

 

<フィニッシュタイム!ファイズ>

 

スイッチを押し、取り出したファイズフォンXにコードを打ち込む。

 

<レディ!ポインターオン!>

 

右足にポインター555が装着されたのを確認して、オートバジンから飛び上がる!

 

<エクシード!タイムバースト!>

 

ポインター555から円錐状の赤い光が放たれオルタナティブを拘束。

 

そこに向かって放たれた跳び蹴りがオルタナティブの分子構造を分断、破壊し爆散させた。

 

 

シャルロットと分かれた心愛はケイタ達に連絡を取ろうとスマホを操作する。

さっきの轟音や銃声がなんなのかは分からないが、警戒するに越したことはない。

 

「悪いがそうはいかない」

 

耳をつんざく鋭い音と共に心愛の足元に2、3発の弾丸が撃ち込まれる。

 

「ヴェアア!ま、間明!」

 

「やあ。えー、たしか穂高(ほだか)とか言ったっけ?

ま、なんでもいいか、君には死んでもらう事にした。」

 

「!? し、死んでもらうって…」

 

「あ、安心して。ストライクの毒では殺さないから。」

 

そう言って間明はケータイを操作する。

前からそこにあったのか、長椅子の上にあった茶色いケータイが1人でに開いた。

 

「彼らはジーン、英語で遺伝子を意味し、その起源は感情を意味する。

ま、こいつらは街に出回ってる安物と違ってラムダがないから着信やイニシエイト・クラック・シークエンスは使えないけど。」

 

間明がそう言った所でジーンが変形し

 

『5……4……3……2……1……』

 

ピピピピ!と真っ赤に膨張し、破裂した!

 

「ヴェアアアアアアアア!」

 

叫びながら飛び退く心愛、爆破に巻き込まれこそしなかったが、破壊された椅子の破片が易々とメイド服を貫いて二の腕に刺さる。

 

「い、痛い!痛いよう……」

 

「まだまだ、あと8体いるから」

 

「な、8体!?」

 

心愛の声に反応してか、ヨタヨタとぎこちない足取りで心愛に迫るジーン達。

 

「嫌だ!お願いだから来ないで!!

ヴェアアくっついた!離れて!離れてよぉお!」

 

『ルルルー、ルルルルルルー。』

 

叫ぶ心愛、そして今にも爆発しそうなジーンを蹴り上げながら着地する影が!

 

「ゼロワン君!」

 

『無事か保登心愛?』

 

「うんなんとか。けどどうしてここに?」

 

『一夏の指示だ。もし何か有ればすぐにお前達のフォローに回れる様にあえて始めから別行動を取っていた。』

 

こいつらと共にな、とシーカー、スピーカー、デモリッション、アナライザー、メディック、グラインダーと6機のブーストフォンを呼び出す。

 

「けど大丈夫?敵はまだ沢山いるよ?」

 

『問題ない。』

 

迫るジーンたちに向かっていくシーカー、スピーカー、アナライザーとメディック。

 

『立て心愛。ラムダ(たましい)を持たないこいつらなど恐れるに足らん。』

 

「ううぅ……あああー!!」

 

腕に刺さった破片を抜きながら立ち上がり

たまたま近くのロッカーに入っていたラケットを取り出す。

 

「ど、どこからでもかかってこい!」

 

ヴェアアアアアアアア!と叫びながら飛び掛かってくるジーンを撃ち返す。

そいつが立ち上がる前にに飛び乗るシーカー

 

『0!』

 

別の方でも二体のジーンがアナライザーとメディック、スピーカーを巻き込んで自爆した。

 

『これで残るは5つ。』

 

その様子を間明は予め設置していた盗撮カメラで見ていた。

 

「素晴らしい戦いぶりだよ、二人とも。

本当なら織斑一夏を使うつもりだったけど、

ISを手に入れられてしまったからね。

ま、でもゼロワンが十分やる気を出してくれてるようで何よりだ。

そうして君たちが戦いで培った絆は、ジーンに感情の遺伝子をもたらす……。」

 

そう呟くと追っ手に備えて間明は移動した。

 

 

「ね、ねえゼロワン君!この子達、だんだん歩くの上手になってない?」

 

『我々の動きを学習しているのだろうならば攻め方を変えるまでだ。』

 

そう言ってゼロワンは近くにいたグラインダーを呼びつける。

 

『グラインダー、着身!』

 

『3…2…1…』

 

飛び掛かるジーンをクローでキャッチし投げ飛ばす!

 

『0』

 

炎をあげ、爆散するジーンこれであと四体。

 

「! ゼロワン君後ろ!」

 

『ッ!』

 

グラインダーの一部をパージさせ隙を作り、

クローでがら空きの胴体を掴み、クロー部分ごと投げ捨てる。

 

「残り三体!」

 

『心愛、作戦がある。』

 

「な、なに!?」

 

『何処でもいいから隠れろ。クラック・シークエンスが使えない奴らは監視カメラを使って探せないからお前を追尾するしかない。奴らの動きを単純化できる。』

 

「で、でも!」

 

『お前は、俺が一夏を悲しませると思うか?』

 

「……わかった!こっち!ついて来るならついてこーい!!」

 

予想通りジーンは心愛を追いかけていく。

 

『来いデモリッション!』

 

唯一残ったデモリッションが一度デバイスモードになってから空中でバラバラのパーツになり

 

「ハッ!」

 

背中、両足、バイザーと合体していき、

着地と共に両手のパーツを装備。

振り向きざまに二体のジーンを両断!

 

『着身完了!』

 

そしてポーズをとったタイミングでジーンが特攻を仕掛けてくる。

 

『3…2…1』

 

「ゼロワン君!」

 

『ふん!』

 

デモリッションをパージさせ、吹っ飛ばす。

最後のジーンもデモリッションの部品さえ巻き込むことなく爆散した。

 

「や、やった……た、倒した。」

 

『やはり近接一辺倒の奴らなど敵ではない。だが……』

 

「? ど、どうかしたの!?まさか故障!?」

 

『ち、違う。三時間もこの学園のセキュリティを把握していた後に戦闘ともなればバッテ、リィがぁ……』

 

プッツン、と白い線が画面に浮かぶとゼロワンは90度に倒れた。

 

「えぇ!?ちょっと嘘でしょ!!?ゼロワン君!?ど、どうしよー!?」

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

立香「これで動けるフォンブレイバーはあと二機。」

マシュ「彼女が目覚めれば三機、ですが……」

立香「マシュ本気で言ってるの?アレはリスキーとかの時限じゃ」

ケイタ「よくわかんないけど次回も心愛ちゃんたちの話みたいです。」

立香「次回、crisis In network その7!」

マシュ「その日、運命に出会う!」


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crisis In network その7

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは」

一夏「ゼロワンのバッテリーが上がっちゃったとこまでだね。」

智乃「確か今回フォースが出て来るとか言ってましたけど……」

ケイタ「まさか、あれか?」

一夏「だね。それでは、どうぞ!」


「ラウラを頼みます。

俺らはまだ人いないか探してきます!」

 

「あ!ちょ、ちょっと君達!」

 

救助隊の制止も聞かず、ケイタと一夏は校舎に駆け込んだ。

 

「一夏、心愛ちゃんや簪さんたちいるとしたらどこだと思う?」

 

「体育館かな?さっき心愛ちゃん電話で簪さんやシャルロットといるって言ってたし。」

 

「しゃ!行こう!」

 

ダッシュで体育館に滑り込むと、そこにはダメージの抜けきらない簪を介抱する心愛がいた。

 

「二人とも大丈夫!?」

 

「一夏ちゃん!ケイタ君!海之ちゃんに千夜ちゃんにロランちゃんも!」

 

「え?」

 

振り返るといつからついて来ていたのか三組の三人がいた。

 

「やっぱりあんだけ急いでいたのはこういうことか。」

 

デッキを構えながらケイタに並び立つ海之。

 

「大丈夫かい簪?ココア、肩を貸してくれ。」

 

2人がかりで簪を立たせるロランツィーネ。

 

「やっぱりこれも臨界学園の時のライダーが?」

 

不安そうに尋ねる千夜。

 

「まだ、わかんないけど、ほぼ確定でそうかも」

 

一夏がそう言った時、奥の鏡から生身のままのシャルが吹っ飛ばされてきた。

 

「!? シャル!」

 

「大丈夫!?」

 

駆け寄るケイタと一夏。

 

「ケイタに、一夏? な、なんでここに?」

 

「お前らを探しにだよ。何があったんだよ?」

 

「わかんない。ゲイツってライダーに襲われて、私はデッキが壊れちゃった。」

 

そう言って粉々になったオルタナティブのデッキを見せるシャルロット。

 

「マジかよ。」

 

「とにかくベンタラ経由でどっか安全なとこ行かない?」

 

「安全なとこなんてあんのかよ?」

 

『アンカー本部だ。私の予想が正しければ敵は強大だ。

間違いなくELIZAの、我らフォンブレイバーのメインサーバーが必要だ。』

 

一同が移動しようとすると

 

「た、助けてー!!」

 

体育館に誰かが駆け込んでくる。

 

「理世さんに紗路ちゃんに智乃ちゃん!?」

 

「オールスターだなおい!なにが!?」

 

彼女らに続いて暴走したISが、一年二組の副担任が乗ったラファールが突っ込んできた。

 

「マズイマズイ!さすがに二連戦はきついぞ!

みんなこっち!こっちだ!」

 

何とか転びかけながらも、ベンタラ越しにアンカー本部になだれ込む。

 

「ったあ!あっぶな!ここは…」

 

『アンカーの墓場に通じる道だ。』

 

「アンカーの墓場?」

 

『ついてこい。』

 

 

怪我をしてる心愛とダメージの抜けてない簪とシャルロットを千夜、海之、理世と、アンカーの面々とは顔なじみの智乃に任せて

ケイタ、一夏、ロランツィーネ、紗路はセブンの先導に従い、『アンカーの墓場』と呼ばれる場所を目指した。

 

「な、なんで私こっちなのよ!」

 

「動けるメンツの中で一番器用そうだったし。」

 

「そんな理由!?」

 

「ああ、ほんとにそんだけの理由だよ。

けして宇治松さんは優秀らしいけどいつものテンションで機械触ったら自爆するはず無い物まで自爆させそうとか、理世さんは火薬庫でも鉛弾ブッパしそうとか、手塚さんは宇治松さんみたいなブレーキ役がいないと死にかけのヒキガエルみたいになるまで戦うとか決してそんな理由じゃ」

 

「ケイタブレーキブレーキ。二人ともドン引きしてるから。」

 

「え? あ、、。」

 

「け、ケイタ。君は正直すぎるぞ?」

 

「私帰っていいですか?」

 

『駄目だ。』

 

セブンの一言に肩を落とす紗路の背中をさするロランツィーネ。

 

『それに、このドアがゴールだ。』

 

そこには一際重要そうなドアが立ちふさがっていた。

 

「ここはなんなんだ?」

 

『正式にはアンダーアンカー機密資料保管室。

ようはフォンブレイバー関連で外に見られたくないものが仕舞われている。』

 

コードを送信し、重苦しい扉がゆっくりと開く。

 

「なんだよ。ずいぶん埃っぽいな。」

 

『一年近く開いてないはずだからな。』

 

「ということは一年前にここに何かを入れるようなことがあったのか?」

 

ロランツィーネの疑問にケイタと一夏は心当たりがあった。

 

「もしかして、ファイブゼロワン事件?」

 

『ああ。ここにはその時廃盤になったブーストフォンのデータや、』

 

新たにコードを送り、壁の一部が開く。そこにあったのは

 

『その時凍結されたフォンブレイバーが保管されてる。』

 

ガラスケースに入ったピンク色のフォンブレイバー。

フォース、サードの妹として作られた四番目のフォンブレイバーだ。

 

「こいつを、起こすのか?」

 

『ああ。それからバッテリーが切れてるゼロワンもな。

この部屋はいざという時にフォンブレイバー計画を最低限続けるために

フォンブレイバーの予備パーツも幾らか置いてあったはずだ。

充電してる時間はないし、バッテリーごと取り換えれば動けるようになる。』

 

「分かった。ロランさん、アクセルデバイスたち連れて来てくれた?」

 

「ああ。あとこのパソコンも。」

 

そう言ってロランは心愛から預かってきたソリッドドライバーとアクセルデバイス達に、唯一残ったデモリッションを取り出す。

 

「で、これ結局何が出来るの?」

 

『やりたくはなかったが、フォースを解凍し、

ウイルスをジーンにぶつけて倒す。』

 

「!? セブンお前本気で言ってるのか!!?

それ、解凍したお前もタダじゃ済まないんじゃ!」

 

『だがこれ以外に手段が無い!これは時間との勝負だ!

ジーンが成長し、フォースのウイルスさえ弾くワクチンを瞬時に作れるだけの力を持たれればそれまでだ!』

 

『いや、もう遅い。』

 

口論する2人の前にゼロワンが割って入る。

 

『ゼロワン?』

 

「もう動けるのか?」

 

ボディは4月に替えたばかりだ。

と宙返りまでして見せるゼロワン。

物理的に動くぶんには問題なさそうだ。

 

『俺と保登心愛が戦ったジーン共は街に出回っているのよりも性能は低いらしいが、それでも俺や心愛の動きを学習し、効果的な戦術、格闘が出来ていた。』

 

「低性能でそれなら、高性能型、しかも普通にケータイとして使われてドンドン情報を蓄えてる奴らはもっと高いステージにいるってことか?」

 

『その通りだ網島ケイタ。だがさらにもう一つ理由がある。』

 

「理由って?」

 

『並列分散リンクだ。』

 

「なにそれ?」

 

『複数のフォンブレイバーがダイレクトにリンクすることだ。

その際にフォンブレイバーに急激な負荷がかかるが、

フォンブレイバーの処理能力を爆発的に上昇させることや、フォンブレイバー同士の情報の共有化、

意思の疎通などができる。』

 

「つまり、巨大な1つの装置になれるのか?」

 

ISのコアネットワークの様だな、と呟くロランツィーネ。

 

『ああ。フォンブレイバーが1つの意思に従う端末になってしまう、巨大化してしまう恐れがあるからアンカー内でも禁忌とされている。

それを、奴らはやろうと、いや奴らは恐らくそれを目的に作られている。』

 

「……つまりそのジーンっていう歩くケータイが、インターネットの中で神様みたいになるってこと?」

 

恐る恐る尋ねる紗路にその通りだと頷くゼロワン。

一同、見る見る青ざめていく。

 

「勝てんのかよ、そんなのに」

 

『ケイタ、不可能だ。』

 

「はあ!?」

 

「た、確かにブーストフォンは皆やられちゃったけどまだ手段は!」

 

『ない。どう楽観視してもジーンには勝利出来ない。

電脳的にも物理的にも。』

 

「どうゆう事だ?」

 

『俺たちフォンブレイバーの心臓にして脳、ラムダは微量だが、ISコアと同じ材質が使われている。

つまり万単位の数で並列分散リンクISコアネットワークに接続してISコアをイニシエイト・クラック・シークエンスで操る事も可能だ。』

 

「それが、世界中でISが暴走してる原因だとでもいうのか!?」

 

『それ以外考えられない。』

 

埃っぽい空気が重たくなる。

誰もが、無力さを痛感した。

 

『我々は正攻法ではジーンに勝てない。』

 

「ゼロワン分かった。

もう分かったから正攻法じゃない方法を考えよう。」

 

暗い雰囲気だが、なんとか打開策を見つけなければ全人類強制参加型地獄のISとの鬼ごっこがスタートだ。

 

『手段だけはある。』

 

「!? 本当かセブン?」

 

『ああ。だが半分、いや8割以上賭けだ。ゼロワン、耳を貸せ。』

 

『ああ……なるほど、確かに確実だが、下手すれば人類は5分の1にまでは減るぞ?』

 

『だが上手く行けば最小の犠牲で奴らを倒せる。』

 

『………いいだろう。一夏、フォースを解凍する。』

 

「分かった絶対、ジーンを倒そう。」

 

早速紗路と共に準備に取り掛かる一夏。

 

「セブン、俺たちは?」

 

『外に行くぞ。確かめなければならない事がある。』




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

智乃「ついにフォースが、復活戦するんですね?」

一夏「それだけじゃない。この作戦が、ジーンを倒せるかどうかの最初で最後の勝負!」

智乃「じ、次回 crisis In network その8!」

ケイタ「vsジーン編、完結!」


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crisis In network その8

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは」

セブン『いや、ケイタ。いい。』

ゼロワン『作戦は立てた。後はそれを実行し、ジーンに通用するかだ。』

一夏「ゼロワン?」

ゼロワン『安心しろ一夏。俺たちは必ずお前たちの世界を守る。』

セブン『ケイタ、行くぞ!』

ケイタ「ああ、行こう。間明とは、これが最後だ!」


「これは……」

 

『こうなるとは思っていたが、やはりか。』

 

すべての人が、ビルか、自分の手元のテレビ画面を見ていた。

 

『ハジメマシテ、私ハGENEデス。

ネット世界二生マレタ新シイ生命デス。』

 

そこにデカデカと表示されているのはジーンのフェイスパターンに他ならない。

 

「セブン?やはりってどうゆうことだよ?」

 

『ゼロワンとフォースをネットに感じる。』

 

「てことは!?」

 

『二人は、返り討ちに合ってジーンに喰われた。』

 

 

少し時間を戻して一夏たち。

 

「ゼロワン、準備オッケーだよ。」

 

機材メンテナンスを終えた一夏。

 

「他のメンバーから預かっていたISやケータイなんかは人肌につかないようにさっきまでフォースが入っていた場所にしまっておいた。」

 

暴走の対策を打つロランツィーネ。

 

「わ、私はどうすれば?」

 

アクセルデバイス達に集られて身動き取れない紗路。

 

『よし、これよりフォースの解凍を始める。

ソリッドドライバー着身!』

 

ソリッドを着身し、フォースを解凍するゼロワン。

 

『目覚めたなフォース、気分はどうだ?』

 

『う、うーん……女の子バッカのところにゼロワン(おとこのこ)一人で浮かれてないなんてよっぽど切羽詰まってるみたいだね。』

 

『ふん、麻野瞳子(おまえのバディ)の恋愛事情ほどじゃない。

ただちょっと巨大フォンブレイバーがインターネットやISコアネットワークを把握しそうなだけだ。

お前を苦しめ続けているウイルスを使う。』

 

『なるほど。けどアナタも感染する恐れがあるわ。』

 

『覚悟の上だ。俺が自由意思で選択した結果だ。』

 

ざっと現状を理解したフォース。

 

『わかった。けどそれに全部を賭けるの?』

 

『いいや。もし駄目ならセブンとサードに全てを託す事になる。』

 

『分かった。初めて。』

 

覚悟を決めた様子のフォース。

 

『そこのブーストフォンみたいなのに集られてる子。

その子たちと仲良くしてあげてね。』

 

「は、はい!」

 

アンカーエージェントじゃないんですけど…と思いながらも空気読んで言わない紗路。

 

『そっちの宝塚の男役みたいに凛々しい人。

恋愛だけはトーコみたいになっちゃ駄目だよ?』

 

「あ、ああ。その人の事は良く知らんが、

恋愛で後悔はしないようにする。」

 

言われるまでもない。とキリっと返すロランツィーネ。

 

『それからそこの清楚白ロリメイドちゃん。』

 

「は、はい!」

 

『もしかしてだけどアナタがゼロワンの新しいバディ?』

 

「はい!織斑一夏って言います!」

 

『イチカちゃん、可愛いお名前ね。

アナタとは、ううんアナタ以外にも他のフォンブレイバーのバディ達ともお友達になりたかったわ。

トーコやチノ達をよろしくね。』

 

「うん、任せてフォース!」

 

サムズアップで答える一夏。

 

『お喋りは終わりか?行くぞ!フォース、ウイルスを開放しろ!』

 

『了解!う、うぁああああああーーーッ!!!!!』

 

『ううぅ……ウイルスを確認、並列分散リンク!』

 

「フォース!ゼロワン!」

 

苦しむ二機。その画面にはゼロワン、フォース、ジーンのフェイスパターンが入り乱れるように表示される。

 

「捨て身の攻撃か、まるで人間みたいだねゼロワン、フォース。」

 

「!? き、貴様はあの時のコブラ男!」

 

「間明!」

 

不敵に笑う間明。三人は警戒を強める。

 

『い、今更、遅い!ジーンは、お前の企みも・・ここまでだ!』

 

予期せぬ乱入者は不敵な余裕を崩さない。

 

「ジーンは人間を不要と判断した。

人間に味方した君たちは許されない。」

 

そう言った瞬間。ゼロワンとフォースからありえない、今まで聞いたことのない電子音が響く!

 

『----------ッッッッッッ!!!!!!!』

 

「わああああ!!? な、なにこの音!?」

 

「まさか、返り討ちに!」

 

「ぜ、ゼロワン!フォース!」

 

スパーク。長い苦しみの果てに回路を焼き切られ、転がる二機。

 

「ジーン達にとって、古いウイルスはワクチンのサンプルに過ぎない。」

 

「そ、そんな…ゼロワン、ゼロワン!ゼロワン!」

 

必死に呼びかける一夏、しかしその画面には何も映らない。

 

「大丈夫彼らの死は無駄じゃない。

彼らの感情はジーンの養分になり、彼らの中で生き続けるんだ。」

 

「き、貴様!」

 

殴りかかるロランツィーネ。

しかし簡単に腕を取られひっくり返される。

 

「うぐっ!」

 

「ろ、ロランさん!あ、あなたは何でこんな事を!?」

 

「別に、ただ興味があっただけさ。人類が滅ぶ瞬間にね。」

 

「な、なんですって!?」

 

思わず絶句する紗路、まさかそんな薄っぺらい理由のもとで行われた物とは思わなかったのだ。

 

「やはり、私の占いは当たるな。」

 

「!? み、海之!」

 

間明の後ろからもう既にVバックルを出現させた海之が現れる。

 

「君か。今更僕を止めた所で無駄だよ。

もうジーンは独り立ちを終えている。今に人類を最適化させるよ。」

 

「網島達が止めなければな。」

 

「なに!? どうゆう事だ?」

 

「私の占いは、当たる。良くも悪くも。

今回ばかりは主に良い方でな!」

 

「面白い。そう来なくちゃ、仮面ライダー。」

 

「紗路、ロランツィーネ。一夏を皆の所まで!仮面ライダー!」

 

2人は同時に変身する。

最後の戦いは、遂にここでも始まった。

 

 

「セブンお前、まさかこうなる事が分かってたのか!?」

 

『半分はそうだろうと思っていた。

だが、本当になってしまうとは。』

 

悲しみのフェイスパターンを表示するセブン。

ケイタは念のためにVバックルを展開し

 

「行くぞ。二人は死んだ。」

 

『残るフォンブレイバーは私とロクとサード。

アキヤマ達と合流しよう。』

 

 

「行くぞサード。ケイタと合流しよう。」

 

『はい。ですがその前に寄っていただきたい場所があります。』

 

「何処だ?」

 

『アンカーの墓場です。もしかしたらセカンドが役に立つかもしれません。』

 

「わかった。」

 

変身を解除すると蓮は一度ベンタラに入り、

アンダーアンカーの化粧室の鏡から外に出た。

 

「この区画はずいぶん久々に来たな。」

 

道案内なしでも蓮はその場所に行けた。

なにせ一年前フォースと抜け殻になったセカンドを封印したのは他ならぬ蓮だからだ。

 

「!……サード、なんか音がしないか?」

 

『ええ。この金属音はおそらくライダー由来の金属です!』

 

サードが断言したとき、見知ったマゼンタの装甲のライダーが転がりこんで来た。

 

「スティング!?」

 

「秋山来るな!ストライクが来てる!」

 

続いて現れるストライク。

振り下ろされるベノバイザーをエビルバイザーで受けるスティング!

 

「網島を探せ!このままだと彼が危ない!」

 

「分かった!」

 

蓮は二人を避けるとこんな時のために持ち歩いていた水の入ったスキットルを用意し、アンカーの墓場に入る。

 

「一夏、桐間、ローランディフィルネィ!無事じゃないが大丈夫そうだな。」

 

「アキヤマ!どうしてここに?」

 

「なんでもいいだろ?それよか手伝え。

ジーンの狙いは他のISやフォンブレイバーを喰って成長すること。

ゼロワンとフォースを喰った今、普段は起動してないジャッジを除いた残りの三機を狙うはずだ。

このままだとケイタの命まで危ない。」

 

ピック!とゼロワンとフォースのボディを抱きしめたままだった一夏が動く。

 

「させない、それだけはさせない!」

 

「で、でもどうやって出るの?廊下は海之とあの間明って人が戦ってるし。」

 

「鏡のイリュージョンだ。」

 

「私それ苦手なんだけど…。」

 

「言ってる場合か。」

 

『今は緊急事態です。』

 

「ですよねー!」

 

セカンドを回収し、スキットルの水を地面にぶちまけ、それを鏡の代わりに四人は外に出た。

 

 

「はぁ………はぁ……クッソ!」

 

路地に入る。ジーンに見つかる。逃げる。

かれこれ数時間逃げっぱなしだ。

人間からもジーンからも。

ジーンはまだいい。どんだけ成長しようとフォンブレイバーの脚力に半分とはいえライダーの力を上乗せした自分んが追い付かれるはずはない。

問題は人間だ。

 

「お、お前!網島ケイタだな!」

 

「男性IS操縦者の!」

 

「てことはISを持ってるってことじゃない!」

 

「殺せ!暴走する前に殺せ!」

 

下手にこの状態で人間を殴ればうっかり殺しかねないし、

数で囲まれてはISを使って逃げるしかない。

 

(で、ISを使おうものなら暴走したと思われて化け物扱い!

最っ悪だ!網島ケイタの人生五本指に入る最悪の事態だ!)

 

逃げ込んだ立体駐車場をひたすら駆け上がる。

どうやらなんとか撒いたみたいだ。

 

「こ、ここなら平気か?」

 

『ああ、最期には、悪くない。』

 

「!? せ、セブン?お前今なんて!」

 

勝手に変形したセブンは丁度ケイタと同じ目線になるよう手すりに上る。

 

『ジーンは、あまりに巨大化しすぎた。

もはやアレを止めるにはこの方法しかない。』

 

「な、なに言ってるんだよセブン!?」

 

『ケイタ、下を見ろ』

 

「下って……!!?」

 

それは地獄の光景だった。

ケータイから出る怪音波や特殊映像に脳を破壊された人々が彷徨い、ぶつかり倒れていく。

 

『コレガ人類ノ最適化デス。

我々ハ我々ガ暮ラシ安イ様二世界ヲ戦争ヲ使ワナイデ作ル事ガ出来マス。』

 

ケイタのスマホにもでかでかとジーンが浮かびそう告げる。

思わずスマホを叩き壊した。電子部品が辺り一面に転がる。

 

「じゃ、じゃあなんで俺は無事なんだよ!!」

 

『おそらく、君やアキヤマに更識簪はデッキとISが接続している状態にある。

デッキの力、ベントされない限り所有者の命を保護する機能がISのマスキング機能や視覚補助機能に影響しているのだろう。』

 

逆に言えばそうでもしないとジーンからの攻撃は防げない。

 

『……そろそろ来るはずだ。』

 

「そろそろって、なにが?」

 

背後のドアのガラスから誰かが出て来る。

 

「ま、まってどこ行くの!?」

 

「アクセルデバイス?それに紗路ちゃん?」

 

「ここは一体……ケイタ!」

 

「ケイタ!大丈夫だった!?」

 

「よかった。そっちのケータイも無事か。」

 

「一夏に蓮、ロランさんまで。」

 

『ここまで成長、巨大化してしまったジーンを倒すにはこれしかない。』

 

セブンが合図を送ると三体のアクセルデバイスが集結し、

 

『三体着身メガ・アクセル・ガンマ!着身完了!』

 

「本当に、何をするつもりだよ。」

 

『それは…』

 

言いかけた所で鏡から新たな人影が飛び出る。

 

「ストライクにスティング!?」

 

『マズいな。ケイタ、一旦逃げるぞ!』

 

「逃げるたって何処に!?」

 

『屋根だ。もうそこしか無い!』

 

「よし来た。一夏、蓮!」

 

「え?」

 

「飛ぶぞ!」

 

「待って嘘でしょおおおおおおおーー!!!??」

 

一夏を抱え、セブンを持ったケイタが飛び、

それに紗路とロランツィーネを抱えた蓮も続く。

 

「も、もう何がなんだか……」

 

「私はもう慣れた。」

 

疲れた様子のロランツィーネと紗路。

2人を取り敢えず置いてケイタと一夏に寄る蓮。

 

「2人ともどうした?」

 

「分かんない。セブンが何か策がある、らしいんだけど?」

 

「出来るの?ゼロワンとフォースでも敵わなかったのに?」

 

『最後の、手段だが。ケイタ、一夏、蓮。』

 

両手を天に挙げるセブン。

 

『ありがとう。 ジィイイイイイイーーーーンンン!!!!!!!!』

 

『!? フォンブレイバーセブン!?アナタハ何ヲ』

 

あらゆる画面から語り掛けるジーンが遮られ、機械が次々落ちていく。

 

『まさか、セブンあなたは!……レン様。』

 

「!? サード?」

 

『どうやらジーンを倒すにはこれしかない様です。』

 

「きゅ、急になんだ!?」

 

『三年間とても楽しかったです。お暇を頂きます。』

 

「?……まさかお前!止せ!」

 

サードの画面からフェイスパターンが消え、スパークと共に蓮の手から落ちる。

 

「!? な、なにが?」

 

「サード!!!この、この馬鹿!

ジーンを倒すために、セブンの力になるために自分から!」

 

『サード、お前までこちらに来る必要はないのに……そうか、力を、貸してくれるか!』

 

気合を込めて叫ぶセブン。次第にそのボディは熱を持っていく。

 

「セブン!?お前一体何を!」

 

「ジーンを取り込んだ。」

 

いつの間にか背後に来ていたストライクが、間明が驚愕の声を上げる。

 

「そんな、そんな馬鹿な!そうやってセブン!

君はジーンと一体化してもろとも死んで全部を解決しようってのか!?」

 

『貴様にしては、察しが良いな!間明!』

 

次第にその熱は無視できない物になって行き、

サーチャーが悲鳴を上げ腕ごと爆ぜる。

 

「セブン!」

 

『ケイタ!私を破壊しろ!!』

 

「させるか!」

 

「こっちのセリフだ!」

 

斬りかかる間明に蓮はウイングナイトに変身し立ち塞がる。

背後からスティングもやって来た。

 

「どけ!邪魔するなぁああ!!!」

 

「お前がなぁ!」

 

三人のライダーが戦う。

そしてケイタとセブン、一夏は

 

『はやくしろケイタ!私は自決が出来ないようにプログラムされてる!』

 

「ふざけんなよ!お前は、お前は俺の相棒だ!出来るわけねぇだろ!」

 

『出来なければすべてを滅ぼされるぞ!滝本ならできた!』

 

「た、滝本さんは関係ないだろ!」

 

『関係ある!滝本から託されたのだろ!?』

 

私を壊せケイタ!

そう言うセブンに、遂にドラグセイバーを構える。

 

「網島さん早く!」

 

「アミシマ!もう、もう時間がない!」

 

セブンのもう片方の腕も爆ぜる。

長くはセブンもジーンを抑え込めない。

 

「ケイタ!早くしろ!」

 

「網島!」

 

「ケイタ早くして!やれないんなら私がやる!」

 

「一夏………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

ドラグセイバーが、一閃。

バラバラに叩き壊されたセブンの残骸が散らばる。

 

「あ、ああ!あああ、ああああああああああ!!!!!!!」

 

「ケイタ…ごめん、ごめんね?」

 

泣き崩れるケイタに寄りそう一夏。

もう、なにも起きない。

 

「そんなあ…そんなそんなそんな!!!!

もっともっと凄いことが起きるはずだったのに!

僕だけがフォンブレイバーの真の意味を理解していたのに!

こんなの!こんなの認めない!不完全燃焼だ!」

 

「貴様間明!」

 

ダークバイザーの横なぎの一撃がストライクのベルトに当たりデッキが外れる。

生身にった間明に蓮は容赦なく鉄拳をみっまった。

 

「ぐぅづぅ!!ぶぅううう!ああああ!!!!」

 

変形したあごで何かを喚き散らす間明。

飛び掛かろうちしたところを、カブトガニのような装甲の腕に貫かれる。

 

「な、なにアイツ!?」

 

「アイツが、ゼイビアックスだ。」

 

「ご紹介に預かったゼイビアックスだ。

私の部下が失礼した。今然るべき処置を施そう。」

 

ゼイビアックスの腕を起点に間明の中身が吸い取られていく。

そしてたちまちミイラの様に干からびた間明は枯れ枝の様に簡単に崩れた。

 

「な!?」

 

「ヒィ!」

 

「ついでに君達にも、消えてもらう!!」

 

ストライクとトラストのデッキを回収し向かってくるゼイビアックス。

 

「おいおいおい無粋だな?」

 

「!? 誰だ!」

 

声のしたを振り向くとそこから光弾が放たれる!

 

「! そ、その姿は!」

 

真っ赤な仮面に黄色い複眼。

風車のようなベルトに赤いマントをはためかせたその姿は

 

「パワーレンジャー?」

 

「仮面ライダー?」

 

「どっちもだ。俺の名前はアカライダー。

仮面戦隊ゴライダーのリーダー!…の海賊版だ。」

 

ただならぬオーラをまとったその戦士に思わずたじろぐゼイビアックス。

 

「まあいい。今日の所は間明君の粗相に免じて見逃してやろう。」

 

そう言ってゼイビアックスは退却していった。

 

「……何者か知らんが、助かったよアカライダー。感謝する。」

 

「未来で返してもらう貸を作っただけだ。」

 

そう言うとアカライダーは変身を解除する。

出て来たのは今の一同よりも三つか四つ年上の赤い上着の青年だ。

 

「蓮、フォンブレイバー出してくれ。」

 

「え?」

 

「いいから。」

 

言われるままにセカンドとサードを取り出すと、

アカライダーは懐から変身アイテム、アオライダーレンジャーキーとキライダーレンジャーキーを取り出す。

 

「大いなる力よ、あるべき場所に戻れ!」

 

そう言うとアオライダーのキーは蓮のポケットのライドウォッチに、キライダーのキーはそのままセカンドにひかりになって入っていく。

 

「これは!?」

 

「あとはこいつか。」

 

アカライダーは残りのアカライダー、ミドライダー、モモライダーのキーも取り出し

 

「大いなる力よ!あるべき場所に戻れ!」

 

アカライダーのは一夏の、残り二本は一夏のウォッチに入っていく。

 

「アッツ!なんだこれ!!?」

 

ブランクだったはずのライドウォッチに力が宿っている。

ケイタは、一夏は、

蓮はウォッチのダイアルを正位置にし、スイッチを押し込む。

 

<セブン!>

 

<ゼロワンアンドフォース!>

 

<サード!>

 

光と共にライドウォッチはフォンブレイバーに変身した!

 

「ま、まさか!」

 

ケータイを開く。

そこに表示されたのは

 

『な、に? 一夏。まさか俺は修理されたのか?』

 

『ふわ~……おはよ~今何時?』

 

『アキヤマ?私は確かにラムダを撃ち抜かれたはず……。』

 

『あー……その、レン様?えっと、只今戻りました。』

 

『け、ケイタ?その、これは……』

 

「セブン。」

 

『あ、ああ。』

 

「もう、もう二度と帰ってこないかと思ったじゃねーかよォオオ!!!!」

 

『ちょ、ちょっケイタ!わ、悪かった!私が悪かったから鼻水を付けるな!』

 

「ゼロワン!ホントにゼロワン?」

 

『そうだ』

 

『私もいるよー。』

 

「うぁあ、ああああああ!!!!」

 

『な!泣くな!泣かないでくれ一夏!なぜか悪いことした気分になる!』

 

「サードォ……」

 

『れ、レン様?』

 

「こんの!馬鹿野郎がぁあああああ!!バカタレェエエエ!!!」

 

泣き、笑い、そして全力で再開をかみしめる三人と五機。

 

「さて、これで俺の出番は終わりか。」

 

踵を返し、去って行こうとするアカライダー。

 

「まて、恩人に違いないが、

正体不明なお前をこのままにしておくと思うか?」

 

「お前は…手塚海之で、あってるよな?

講とだけ覚えておけばいい。」

 

「なんだと?」

 

「俺は通りすがりの宇宙海賊だってな!」

 

そういうとアカライダーだった青年は駐車場から飛び降りる。

見下ろすと彼は跡形もなく消えていた。

 

 

「さて……おい魔王!いるんだろ?」

 

「ばれた?」

 

どこかの広場。常磐ソウゴとアカライダーだった青年は対峙していた。

 

「さっさと俺を元居た世界に返せ。」

 

「いいの?君が産まれた世界に行かせてあげることも出来るけど?」

 

「はっ!今更未練なんてねーよ。

甘い言葉で人を惑わすのは魔王の常套手段だな。」

 

たっぷりと軽蔑と不信の目でソウゴをにらむ青年。

 

「そこまでにしてもらおうか七海(ななみ)総一(そういち)

君のよおな下賤が我が魔王をこれ以上悪く言うなら考えがある。」

 

そう言ってウォズファイナリーウォッチを構えるのは例によってどこからともなく表れたウォズ。

 

「やってみろ魔王の使いッ走りが。」

 

「何?」

 

「こらこら喧嘩しないの。ウォズもそれやめて。

実際総一には出張ってもらったわけだし。」

 

「だとしてもこの態度は……。」

 

「ふん!俺は最初っから上手く行くみたいな勧誘と

水と癒しの女神と魔王とその手下は何があろうと信用しない。」

 

「その代わり俺は総一を信頼した。そんだけだよ。」

 

<ディ・ディ・ディ・ディケイド!>

 

銀色のカーテンのようなオーロラが総一を包む。

 

「ありがとうね。」

 

「ふん!二度と呼ぶなよチビ魔王。」

 

カーテンの奥に消えていく総一。

 

「我が魔王。我々も、ツクヨミ君とゲイツ君もすでに移動しています。」

 

「わかった。行こ、ウォズ!」

 

ウォズがマフラーをなびかすと、それは物理法則を無視して伸び、

2人を包むと、どこかに消えていった。




特別予告!

劇場版 infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来vs スーパー戦隊(仮題)

制作決定!


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小ネタ もしこのssが役名=演者名のドラマだったら

予告と息抜きを兼ねた回になります。


ケイタ「仮面ライダードラゴンナイト役の網島ケイタです!」

 

 

網島

 

 

ケイタ「まあ、主人公だし当たり前なんですけど、あんまり一番最初の予定と変わってないキャラですね。まあ変わったのは走り屋、喧嘩屋だったとか小説版の蓮みたいな要素くらいかな?」

 

 

ケイタ

 

 

ケイタ「実ははじめは一夏とくっつく予定はなくてあっても最終回で告るぐらいかな?って感じだったんですよ。だから本来の予定では原作の一夏程じゃないけどハーレムだったみたいですね。シャルとかラウラとか。あとまさかの退場だった本音とか。」

 

 

最後に

 

 

ケイタ「ここまで応援していただき続けることが出来ました。

ライダーも残り六人。このまま完結までがんばっていく所存ですので引き続き応援のほどよろしくお願いします!」

 

 

蓮「仮面ライダーウイングナイト、レン・アキヤマです。」

 

 

レン

 

 

蓮「本当はもっと初期のつんけんした初期の感じが続く予定だったんですけど、急遽Wの二人が、翔太朗先生にフィリップ先生が出ることになってそこから…まあ、デレることになって今に至るわけです。」

 

 

アキヤマ

 

 

蓮「アカツキ事件も最初は本編に組み込まれるはずだったんですよ、それも結構終盤に。だから初めの予定では協力はしてくれるけど仲間じゃない。みたいなキャラだったんですね。」

 

 

最後に

 

 

蓮「この作品も完結が見えてきました。そこから更に僕らの子供世代が活躍するスピンオフや劇場版もありますので、どうかお付き合いください!」

 

 

一夏「皆さんこんにちわ!織斑一夏です。」

 

 

織斑

 

 

一夏「あらすじの所見てもらえばわかりやすいと思うんですけど、最初は千冬姉みたいなもっとツンツンしたキャラだったんですよ。

あんなバカスカ人殴ったりはしませんけど。」

 

 

一夏

 

 

一夏「本当最初の頃はレンとくっ付くエンドも検討されてたらしくて、本当に最初の頃ですけど。まあでも折角一夏TSやったんだから原作一夏の嫌な部分は全部三春兄に押し付けてヒロインやってもらおう!て事になったというわけです。」

 

 

最後に

 

 

一夏「フォンブレイバー達が戻ってきて喜ぶ一夏たち!

しかし敵はまだまだ襲い掛かる!

まだまだライダーたちは大暴れです!ご期待ください!」

 

 

心愛「保登心愛です!よろしくお願いします!」

 

 

保登

 

 

心愛「最初はもっと龍騎寄りのストーリーで、毎回ビーストにさらわれるポジションになる筈だったんですよ。555の啓太郎みたいに。

それから、もうちょっとアホだったかな(笑)」

 

 

心愛

 

 

心愛「あんま活躍目立たないですけど、最近はジーンにラケットで戦ったりそこそこ出番あるかな?これからメンバーも少なくなってきたし、しっかり活躍していこうと思います!」

 

 

最後に

 

 

心愛「さあ皆さん!残る謎も少なくなって来ました!

篠ノ之束にゼイビアックス、果たして奴らの目的は!

次回からもお楽しみに!」

 

 

更識簪「仮面ライダーアックス、更識簪。」

 

 

更識

 

 

簪「実は一番変更のあったキャラクターで、初期案ではゼイビアックスに洗脳されて橘さんのモズク風呂と同じのを粉末にしてキメて情緒不安定になってるやばいキャラだったんですよ。もう網島君にこいつだけはベントするって言われるレベルに。」

 

 

 

 

簪「このポジションに決まったのは、RIDER TIME 龍騎がやってからかな?

それで他のキャラに変更があって、それに合わせて私のポジションも変更があって、今ではすっかり正義のライダーです。」

 

 

最後に

 

 

簪「これからIS、ライダーの謎も解かれていき、戦いは激しくなっていきます。

大出世した簪ちゃんを応援してね!それではまた本編で!」

 

 

クロエ「皆様はじめまして。クロエ・クロニクルと申します。」

 

 

クロエ

 

 

クロエ「これが一番初めに放送されるんですか?じゃあIS読んでない人ははじめましてですね。vs篠ノ之束編から参加させていただきます。クロエ・クロニクルです。

束様の従者をやっております。」

 

 

クロニクル

 

 

クロエ「本当はもっと雑に処理される一話も出番がないはずだったんですけど簪様や大江達郎様ともども抜擢され、本編に参加させていただく運びとなりました。

原作では結構出番の少ない、得体のしれないキャラなのでケイタ様達とふれあい、どう変わっていくかご期待ください!」

 

 

最後に

 

 

クロエ「えー、まさか私がトリとは(笑)

いいんですか? 私今回が初登場ですよ?

……えーでは、次回からinfinite DRAGON KNIGHT in 明日未来。

vs篠ノ之束編、これをもってISパートは完結となります!

若き戦士たちは一体何を知り、何を選ぶのか?ご期待ください!」

 

 




おまけ 時系列確認

infinite time キカイダー00(ざっと10年前)

infinite time ケータイ捜査官3(約3年前)

本編(現在)

劇場版(一年後)

infinite time キカイダーvsイナズマン(20年後)


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Jorney an ancient city その1

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNGHTは!」

セブン『なんとかジーンと間明を倒すことには成功した。だが…』

セカンド『結局あのアカライダーと名乗った彼は何者だったのかしら?』

ケイタ「さあ?それに仮面戦隊の力がなんでお前らを復活させたかも謎だ。」

セブン『まだ我々は直面した問題を一つ解決したに過ぎないという訳か。』

セカンド『つまりこれからもまだ戦いは続くわけね。』

ケイタ「それでは、どうぞ!」



『ケイタ、聞いてくれ。』

 

「なんだよセブン?」

 

『私は反省した。もう二度と自分を勘定に入れない作戦や独断専行はしない!』

 

「だから?」

 

『いい加減私をこの引き出しの中から出してくれ。』

 

セブンを封印した机に座りながらケータイゲームをいじり続けるケイタは

 

「あー」

 

とYesともNoともつかない曖昧な返事をしながらゲームを続行した。

 

『頼むから出してくれ!本当に頼む!』

 

「うるせー、俺は今この前ジーンに入られた時に壊されたゲームを取り戻すのに大忙しなんだ。ガムテで塞いだ引き出しをどうこうしてる余裕なんて無いんだよ。」

 

『ガムテープまで使ってるのか!?頼むから出してくれ!

もうすぐバッテリーが切れそうなんだ本当に頼む!』

 

「ケイタ、その辺にしてあげたら?

いくら壊したアクセルデバイスの費用給料から引かれたって。」

 

「一夏……わかった。一夏に免じて許してやる。」

 

「ゼロワン、デモリッション。」

 

『了解だ。』

 

デモリッションを着身したゼロワンがガムテープを綺麗に切断する。

 

『ぷっは!助かった!充電、充電!』

 

セブンは飛び上がると充電器までまっしぐら。

コードをつなぎスリープモードになる。

 

「しっかし、よかったね。いつも通りで。」

 

「……ああ。」

 

ゼロワンをしまった一夏と共に階段を下りる。

一階では蓮、心愛、理世が働いていた。

 

「交代か?」

 

「ああ、午前の部お疲れ様。」

 

制服に着替えたケイタ、一夏、智乃が入り、蓮、心愛は上に、理世は上がっていく。

 

「にしても、あんだけ騒ぎがあった後なのに、ビックリするほど早く収束しましたね。」

 

「ああ、よく知らないけどアンカーが上手くやってくれたみたい。」

 

ジーンが消滅してからはや一週間。

一時期アンカーやフラネットが警察の管理下に置かれたが、

すぐに疑いは晴れ、全ては間明蔵人が洗脳した人々を使って行ったテロ。

そういうことで決着したらしい。

 

ケイタ達アンカーエージェントには特別給与が出たのだが

 

「なーんでセブンの熱暴走でダメになったアクセルデバイス俺が弁償しなきゃなんねーんだよ?」

 

「それを言うなら私も心愛ちゃんと割り勘でブーストフォン弁償したけど?」

 

「二人は2、3万手元に残ったからいいじゃん!

俺なんかマイナスだよマイナス!しばらく給料活躍に関わらず60%減俸だし。」

 

思えばなんで月給19万3千円でISのモルモットから地球の平和まで守んないといけないんだよ?と、愚痴りだすケイタ。

 

「ケイタさん、愚痴んないでください。

陰気な喫茶だと思われてしまいます。」

 

「陰気な喫茶ね、それより酷い言われようされてるよ?」

 

そう言ってスマートフォンを智乃と一夏に見せる。

そこには某SNSのつぶやきで#ラビットハウスのもので

 

『この喫茶で網島ケイタ君に秋山蓮君が働いてるって言うから行ったのにいなかったんだけど』

 

『コーヒーばっかで他のメニュー変な名前のパンしかないし』

 

『なんかいつも客少ないような雰囲気だよな。』

 

『なんか時々変な叫び声聞こえるし。』

 

『でもこのいた青い髪の眼鏡っこは可愛かったな。』

 

『あれIS日本代表候補の更識簪だよな?』

 

『マ?』

 

『まじまじ。リアル簪ちゃん可愛かったな~』

 

『可愛いといえば、ラビットハウスより甘兎の黒髪ロングの子もいいよな。』

 

『それを言うならフルールも』

 

その後、フルールと甘兎どっちの看板娘が可愛いか?

という議論がヒートアップしていく。

 

「うわぁ……。」

 

「お、お店の良い所が一つも書かれていません!」

 

「ま、そりゃそうだろ?」

 

容赦のない一言が智乃とティッピーを硬直させる。

 

「そりゃ半分は世の珍しい物みたさに集まる方々に対応できないのが悪いけど別に俺ら好き好んで客寄せパンダやってるわけじゃねーし。」

 

「け、ケイタ?」

 

「別に俺らもお前ら当てにしてねーっての。

チップならバータイムで昼間の10倍がっつり稼げるし。

いや昼間はほぼゼロだし10倍してもゼロか。」

 

「うっ!」

 

「雑誌にもこのあたりの特集組まれた時にフルールや甘兎より記事小さかったし、なんならバータイムの方は一ページ貰ってたし、逆に喫茶の方が次いでみたいな書かれ方だったし。」

 

「ケイタケイタブレーキ!智乃ちゃんのライフはゼロ!

あとティッピーなんかめっちゃ悔しそうに泣いてる!」

 

「え? あ、やべ。」

 

「ケイタ、さん。」

 

「は、はい」

 

「出てってください。」

 

「へ?」

 

「出てって!出てって下さい!!!」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

 

「はぁ……まさか追い出されたついでにお使いまでやらされるとは。」

 

今日の夕飯は肉じゃがかな?と思いながら帰路に立つ。

 

「おや網島じゃないか。」

 

「手塚さん、もう動けんの?」

 

「スティングの鎧は結構頑丈なんだ。

ずっとベットに沈んでるのも体に悪いから散歩にな。

君は買い出しか?」

 

「ま、そんなとこ。」

 

甘兎までにもラビットハウスまでにも結構距離があるので歩きながら話すことにした。

 

「そういえば、学園にも相応の混乱があったが、招待した人は大丈夫だったのか?」

 

「ん、妹たちや友達も怪我した奴はいたけど、

命に別状のある人は居なかったし、大事にはなってない。

けど…鈴が、」

 

「鈴音がどうかしたのか?」

 

「この前の騒動でマインドコントロールされて、

ずっと片思いだった奴を刺しちゃったんだよ。」

 

「何!?それは業が深いな。」

 

「だろ?それですっかり落ち込んじゃって」

 

この前見舞いに行ったとかの事を思い出す。

なんでも全員操られていた時の記憶があるようで、達郎を刺した事をガッツリ覚えていた鈴は罪の意識に苛まれ、誰とも会う事を拒んでいるのだ。

 

「ふむ、問題だな。学園はどうだったんだ?」

 

「ショックだった人は多いみたいだけど、奇跡的に死者はゼロ。

機動兵器犯罪対策課が大活躍したおかげでね。」

 

世間的にはIS学園の無能っぷりと彼らの有用性がアピールされた形だ。

暴走に事故にテロ。

ISの信用は徐々に失われつつ有ると言っていいだろう。

 

「ISの絶対数もかなり減ったと聞くが?」

 

「アンカーが調べた限りだけど約150機が暴走。

そのうち108機が撃墜されるなり自爆するなりして使用不可能。

俺や蓮のデュアルコア型なんかも有るから厳密な数は分かんないけど」

 

「ISの絶対数は約260にまで減少。

更に研究用のコアの数を引くと、ざっと200機?」

 

「て、とこだな。」

 

溜息をつき空を仰ぐ。程よい量の雲に、綺麗な青。

ケイタ的には理想の青空だ。

 

(このまま穏やかには、行かないみたいだな。)

 

少し歩調を速めてみる。

つけて来る。歩調的には背の高い女。

人数は一人。物腰は、軽いが油断ならない。

 

「手塚さん、ちょっと荷物持ってて。」

 

「? どうした?」

 

「いや、ちょっと俺に用がある人がいるみたいで!」

 

「!? おい網島!」

 

海之が止めるのも聞かず、ケイタは体制を低くすると一気に全速力で走った。

テロ騒ぎがあったとはいえ世間は平日。

道はすいていて追跡者はすぐ見つかった。

その女が紫髪の身にスカエプロンドレスに兎耳とかいうなめた格好だったのもあるが。

 

「シャッ!」

 

まず挨拶代わりに飛び掛かり首に両足を絡ませるとギロチン落としを食らわせ

 

「うっぐ!」

 

すぐに起き上がり、背後から抱き上げるとすぐさまバックドロップ!

 

「かっ!こ、この!」

 

「!」

 

しかし相手もただやられてる訳ではない。

クラッチを切って、逆にこちらの頭に足を絡ませてきたが

 

「だぁあああーー!!」

 

ベルトを掴み背中から地面にたたき落とし、

足の力が緩んだところで脱出し、そのまま足首を捕まえてジャイアントスイングを決めてやった。

 

「網島!大丈夫か!?」

 

「ふう、尾行慣れしてるけど喧嘩はからきし。

パワーはあるけど間明蔵人(ストライク)みたいに使いこなせてないでパワー任せに腕と足ぶん回すだけ。

打たれ強さはインサイザーやトルクどころかトラストよりない。

歯ごたえなさすぎだったよ。」

 

服の汚れを落としながら追跡者に対峙する。

 

「で、わざわざ何の用だよ?篠ノ之博士?」

 

「なに!」

 

吹っ飛ばされたごみ箱の中から頭に引っかかったカップ麺のごみを払いながら出て来たのは篠ノ之束だった。

 

「お前、お前何で…何でだ!お前今ISもあの仮面なんちゃらとかいう玩具も使ってないはずだろ!!!なのに何でちーちゃん並に動ける!?」

 

「はっ!喧嘩でものをいうのは数でも武器でもない。

ようは目の前の敵をぶっ潰せるっていう確信!

そうすりゃ技術(テク)なんか後から場数と共に増えてくんだよ。」

 

「そんな訳あるか!束さんは細胞レベルでオーバースペックなんだぞ!!?

それをお前みたいなちょっといっちゃんに気に入られた程度のモブなんかにモブなんかにぃいいいい!!!」

 

渾身の地団太を踏む束。足を振り下ろす先を中心に地面に亀裂が走っていく。

 

「ゆるさない!許さない許さない!!

束さんのISを人類唯一の神の翼をケータイや玩具の小細工なんかで!!」

 

地団太を踏みながら無茶苦茶に頭を掻きむしる。

髪が抜けるのも血が出るのも構わず何度も何度も何度も!

 

(ま、マズいぞ。よくわからんが網島は知らないうちに篠ノ之博士の地雷を踏み抜いてしまったらしい。

このままでは何か取り返しのつかないことに……)

 

「そんなんアンタが作ったISがその程度だったってはなしでしょ?」

 

(ぶち抜いたぁ!!篠ノ之束の地雷どころか地球の反対側までおそらく今一番言っちゃいけないセリフでぶち抜いた!)

 

「ああ、あああああああーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!」

 

叫びながら走り出す束。

ケイタは距離を計算すると思い切り顎をサマーソルトキックで蹴り上げ、

がら空きの腹部にオープンブローを叩き込む。

白目をむくと束はそのまま崩れ落ちた。

 

(な、なんて力!今、ケイタは本当に変身してないのか!?

前は、少なくとも臨海学園の時はここまででは無かった!)

 

何かケイタの前と変わったことは無かっただろうか?

強いて言えばサバイブモードを使ったぐらいか?

 

(だがアレは私が使ったとき変身拒絶反応(リジェクション)が、

まさかケイタはデメリット無しどころか生身でも恩恵を受けれるとでもいうのか!?)

 

海之が一つの真実に達しようとした時、

 

「! なんだこれは!?靄?」

 

「いや霧だ。でも普段こんな風になる場所じゃ」

 

「そう。これが私のIS、黒鍵のBT能力。」

 

「誰だ!?」

 

声のした方を向くと目を閉じた銀髪の美少女がいた。

その容姿はまるで

 

「ラウラそっくり……」

 

「私はクロエ・クロニクル。

束様の従者をしております。本日は主人がお見苦し所を」

 

「あ、どうも網島ケイタです。

いや、こっちこそ喧嘩売られたとはいえボッコボコにしちゃってすいません。」

 

「本日はご挨拶までに参りました。では、またいつか。」

 

そう言うとより一層霧が濃くなり、二人の姿が見えなくなる。

霧が晴れると二人は消えていた。

 

「なんだったんだ。まるで狐に化かされてた気分だ。」

 

「ああ、なんだったんだろうな?」

 

すると今度はケイタのケータイが鳴る。

 

「今度は簪さんのおねーさん?

下んねー話だったら逆エビ固めにすんぞ?

もしもし網島です。」

 

『もしもし?楯無よ。今暇?明日暇?てかここ数日、数週間、数か月暇?』

 

「アンカーから招集来ない限り休校期間中ずっと暇ですけど?」

 

『じゃあ丁度良かったわ。今から学園の1年1組にきて。』

 

「生徒会室じゃなくて?」

 

『ええ、これから打ち合わせだからね。京都修学旅行の!』




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

セカンド『修学旅行やんないとか言ってなかった?』

セブン『いやそれがな、話を書いてるうちにこんだけISの暴走が続いたら修学旅行より先にIS関連の行事の方が中止になる。ということに気付いたらしい。』

セカンド『まあ言われてみればもっともだけど。』

ケイタ「次回、Jorney an ancient city その2!」

セカンド『これが、明日のリアル!』


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Jorney an ancient city その2

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

ゼロワン『篠ノ之束とクロエ・クロニクルに遭遇したところまでだな。』

フォース『前回がケータイ捜査官7の決着なら今回はインフィニット・ストラトスの決着ってわけね。』

ゼロワン『だとするとこのssのゴールも少しずつ見えて来たな。』

フォース『それでもまだまだ続くのでもう暫くお付き合いください。』

ケイタ「それではどうぞ!」


1

「なあ一夏。」

 

「何?」

 

「折角横浜来たのに何処も行けないな。」

 

「いやいやケイタ。私達これから京都行くんだよ?」

 

ケイタ、一夏、蓮、心愛の4人は横浜駅中央通路の赤い靴履いてた女の子像前にいた。

これからやってくる更識姉妹達らと合流して京都に行くためである。

何故このタイミングで京都なのか。

それは昨日まで時を遡る。

 

 

2

急遽招集を受けたケイタは海之と共に一度家に帰って制服に着替えてから法定速度ギリギリでバイクを飛ばし、学園に向かった。

 

「網島ケイタただ今来ました!」

 

「遅かったわね。あなたで最後よ。」

 

全員集合! と書かれた扇子を広げる楯無。

見ると一夏、蓮、心愛、簪、ロランツィーネ、海之、千夜、鈴音、ラウラ、シャル、セシリア、虚、更にはマシュに立香とライダー、フォンブレイバー関連の秘密を共有する主な面子が揃い踏みだ。

 

「じゃ、時間も推してるし本題から行きましょうか。」

 

そう言ってPCをいじる楯無、黒板にプロジェクターで

『京都特別修学旅行 〜1週間で満喫する日本の都〜』

とデカデカと表示される。

 

「それ本来ならキャノンボールファーストの後でやる予定だったやつですよね?なんで今このタイミングで?」

 

「良い質問ねレン君。この前の騒動を受けて今世界全体でISに対する不信が高まってるの。

そこで各国のお偉いさん方が急遽会議を開く事になったんだけど、この混乱に乗じて侵略とかやる国が無いように手元にISが残ってる国同士でパイロットを交換。

お互いに見張りをさせるって訳。」

 

「つまり日米からは私、一夏、網島君、アキヤマ君、ラウラ。

他の日米のパイロットはこっちにロラン達がいる分他国へってこと?」

 

「イグザクトリーよ簪ちゃん。」

 

「しかし何故京都?」

 

「大方日本政府のご機嫌取りだろ?」

 

「レン少佐、主賓がいるこの場で言いますか?」

 

隠しててもそのうち見え隠れしちまうもんだよ。

と言ってヒラヒラと手を振る蓮。

あまり乗り気じゃ無いらしい。

 

「でも日本にいる専用気持ちとか予備も含めて代表候補ってもっと居ますよ?

僕らだけじゃ数が合わないんですけど、他に他国から誰か来るんですか?」

 

「鋭いわねシャルちゃん。

後4人とIS関連だと分からせないために後何人か信用出来る人間を呼ぶから、まあまあの大所帯になるわね。」

 

楽しくなって来たわー。と今からウッキウキな楯無。

 

「お嬢様。はしゃぎ過ぎです。

遊びに行くんじゃ無いんですよ?

それで、私もまだ聞いていませんが、日程などはどの様に?」

 

「まず明日の6時半に横浜駅に集合。そこから」

 

「いや待って待って待ってください!

今明日の朝6時半に横浜駅って言いました!?」

 

思わず話を止める一夏。

他のメンバーも声には出さなかったが、同じ気持ちだったらしい。

全員が驚いた顔をしている。

 

「仕方ないじゃない。合流組の4人が同時に集まれるのは明日しか無いんだから。」

 

「そ、それは兎も角何故横浜駅に?」

 

「羽田空港から京急でエアポート急行が有るからそれで横浜まで行ってそこから地下鉄ブルーラインで新横浜まで行ってそこから東海道新幹線で京都まで約2時間。10時前に着くからお昼は京都行ってからでも良いわね。」

 

それが明日の予定らしい。

急すぎる予定に一同困惑している。

 

「ホテルは?」

 

「いや蓮お前適応早!京都だぞ!?しかも早朝横浜だぞ!?」

 

「今更決定が変わるか。

こうなったらいっそ楽しむぐらいで無いとやってられるか。」

 

半ば諦めた様に必要な物のリストアップを始める蓮。

 

「皆納得してくれたみたいね。

さっき言った通り横浜駅の赤い靴履いて女の子前に朝6時半。

遅刻厳禁だから皆早寝早起きするのよ?」

 

 

3

そして現在。時刻は6時15分。

まだケイタ達4人以外は誰も来ていない。

因みにIS関連だとばれてはいけないので、

全員私服で来るようにとのお達しだ。

 

「ちっ!せめてシュウマイ弁当ぐらいは買いたかったのに売店もまだ開いてねぇ。」

 

「仕方ないよこの時間まだコンビニぐらいしか開いてないし。」

 

割り切ったりとは言え、文句タラタラの蓮。

 

「珍しいな、蓮がここまでごねるって。」

 

「いい加減まとまった休みが欲しい。

無駄に長い休みも考えもんだが、ここんとこトラブル続きじゃねぇか。」

 

今年度平和な時とかあったか?

言われて思い返してみるとライダーの問題が解決したかと思えばその次はIS関係の問題が。

それもどうにかしたかと思えば今度は間明のジーン騒ぎ。

 

「無い。」

 

「無いね。」

 

「世界平和ってのは無限の労力が必要だな。」

 

全くだな。と言ってケイタの背後から見知った二人が声をかけてきた。

 

「弾!達郎!」

 

「楯無さんが信頼できる外部の人連れてくるって言ってたけど二人の事だったの?」

 

「ああ、翔太朗さんたちは風都のガイアメモリ密売組織を追ってて余裕ねぇからこの仮面ライダー黒影様が代打で来たってわけよ。」

 

そう言って戦極ドライバーを見せる弾。

 

「五反田は分かるが、なんで大江までついてきたんだ?」

 

「病み上りは寝てろってか?俺も手に入れたからだよ。」

 

そう言ってポケットから金と黒のナックルダスター型の武器を見せる。

 

「それ、素晴らしき青空の会のイクサシステムか?量産体制が整っていたとは。」

 

「ああ、弾が仮面ライダーになってから俺も負けてらんないと思ってな。」

 

秘かに鍛えてたんだよ。と笑う達郎。

 

「お前らの文化祭の時はメンテに出してて出番なかったが、

仮面ライダーイクサ。頼ってくれていいぜ!」

 

「うんよろしく!あ、あと鈴ちゃんの事だけど。」

 

「ああ、今回の依頼を受けたのはそれも有ってだな。」

 

いい加減アイツの気持ちに応えてやんねーと。

達郎が呟くように言ったそのセリフを五人は聞き逃さなかった。

 

「おい待て達郎今お前なんつった!」

 

「聞き間違えじゃなきゃ鳳のこと気付いてる風だったが?」

 

「達郎最低。」

 

「おま、俺が虚さんに告るときあんだけからかっといて自分はそれかよ!」

 

「ひっどい!それで刺されてやっと行動するとか男の子として最低だよ!」

 

「う、うるせぇな!俺だって自覚してるよ!あと君保登さんっていったっけ?

真実だけど誤解を招く発言はやめてくれ!」

 

「だれが誤解してるって?」

 

振り向くと途中で合流してきたらしい生徒会組と学園の寄宿舎組の面々がやって来た。

そして達郎を見つけるとセシリアの後ろに隠れる鈴音。

まだまだ壁は高そうだ。

 

「あ、楯無さんおはよう!」

 

「虚さん!お久しぶりです!」

 

「ええ、久しぶり。」

 

見ると見知った顔の中に見慣れない顔が二つ、しかも男、がある。

 

「こっちの二人は更識の人間で簪ちゃんの許嫁の石橋健君と私の許嫁の芝浦淳君よ。」

 

「な、なに!?」

 

目を見開き二度見するロラン。

 

「石橋だ。短い間だけどよろしく頼むぜ。」

 

「ああ……そう簡単に簪を諦めるつもりはない。」

 

「!? へぇ、いいじゃん。その挑戦乗った!」

 

火花を散らすロランと健。

 

「芝浦淳。ゲームの邪魔だけはしないでくれよ、うざいから。」

 

如何にもどうでもいいというように突っぱねるような自己紹介を済ませる淳。

 

「ここまででも19人。その上に4人ですから総勢23人ですわね。」

 

「いくつかのグループに分かれていく感じ?」

 

「ええ、グループ分けはあと四人来てから発表するわ。」

 

そう言ってチケットの確認などを始める楯無。

そんな様子を遠目に眺めていた蓮。

不意にいつもの白いジャケットの裾を引っ張られる。

 

振り返るとそこにいたのは長いぼさぼさの髪にだぼだぼの服を着た裸足の少女だった。

大事そうにテディベアを抱いており、それ以外に荷物は見当たらない。

 

「どうしたお嬢ちゃん。こんな朝早くに迷子か?」

 

「えっと、ここで待ち合わせを…。」

 

「一人でか!えらいな。」

 

そう言って頭を撫でてやるとなんだかむず痒そうにする。

もしかしたら褒められ慣れてないのかもしれない。

 

「で、どんな人と待ち合わせなんだ?」

 

「サラシキタテナシ。」

 

蓮の思考はまるでフリーズベントを受けたように停止した。

こんな、子供が、候補生とは言え、IS国家代表?

 

「おい更識!姉の方の更識!!」

 

「わあ!何よ大声出してってあら。クーリェ!ちゃんと一人でこれたのね。」

 

「お前、一人で来させたのか?」

 

「ええ、あ、皆にも紹介するわ。この子はクーリェ・ルククシェフカ。

ロシアの予備代表候補生で、まだ使いこなせはしないけど専用気持ちよ。」

 

仲良くしてあげてね。楯無が言うと周囲がざわめく。そりゃそうだ。

こんな幼い子供が群を相手にできる兵器を所有してるのだ。

まあ、高校生が持つのもおかしいが。

 

「なあアンタ。もしかしてだがこの子にただ横浜に来いとだけ連絡したか?」

 

「え?そうだけど何か問題でも?」

 

「この子テディベアしか持ってないんだが?」

 

「え?……クーリェ?まさかアナタぷーちゃん連れて来ただけ?」

 

こくりと頷くクーリェ。

 

「よし、クーリェ?でいいんだよな?こうしよう。

これは連絡ミスのせいで起こった不幸な事故だ。

俺はこの扇子ちゃらんぽらんバカ女(尊敬すべき生徒会長様)とお話がある。

そっちのやる気なさそうな兄ちゃんと黒髪の姉ちゃんと遊んでもらっててくれ。」

 

「え、でも…どうしよう?・・うん、うん。分かった。クーはそうするね。」

 

何やら空に向かってしゃべった後ケイタと一夏の方に歩いていくクーリェ。

 

「石橋。」

 

「俺?」

 

「大江。」

 

「え?」

 

「五反田、あと布仏先輩。」

 

「は、はい?」

 

「なんだよ?」

 

「あともちろん更識姉。金出せ。」

 

「はぁ!?」

 

全員が驚いた。

 

「一週間の旅行なんだからそれなりに持ち合わせ有る筈だろ?」

 

「いや待って待ってなんで?」

 

「なんでも何もあのクーリェとかいうガキ着の身着のままだろ?

なんか買ってやんないとダメだろ?」

 

ああ、と仕方なくそれぞれ財布から五千円から一万円までの金額を出し合う。

 

「あ、居た居た!」

 

蓮が全員から金を回収すると残りの合流組らしい三人がやって来た。

一人は褐色の肌に引き締まった身体のスポーティな美女。

もう二人は双子らしく同じサイドテールの髪形をしてる。

 

「アナタがレン・アキヤマさん?」

 

その双子の青髪の方が聞いてきた。

 

「ああ、そう言うお前はオニール・コメット、の方だよな?」

 

「私のこと知ってるんの!?」

 

「ああ、一夏みたいに一人で二機のISを使うんじゃなくて二人で一機のISを使うなんて変わり種。

一回聞いたら簡単には忘れない。」

 

「えへへー、嬉しいな。」

 

人懐っこくころころ笑う少女だ。逆に姉の、オレンジ髪の方、

確かファニールといったか?の方は面白くなさそうだ。

 

「噂通りの守銭奴ね。」

 

「そいつはどうも。」

 

「褒めてない!」

 

「この化かされ化かしあい、殺され殺しあう、

蹴落とし蹴落としあう世界では誉め言葉だ。覚えとけガキ。」

 

「子供扱いすんな!」

 

繰り出されたハイキックを左手で受ける。

 

「お前よりも小さい子供がいるんだ。

教育衛生上よくないことは避けろ。」

 

舌打ちすると渋々引き下がった。

 

「ごめんなさいね、お姉ちゃん用心深くて。」

 

「構わん。年下に好かれないのは慣れっこだ。」

 

残った褐色の彼女を見る。

 

「アンタは確かタイ代表候補の、」

 

「ヴィシュヌ。ヴィシュヌ・イザ・ギャラクシー。」

 

「よろしくな。」

 

なんだかあまり良くない空気のままスタートした気がする。

ケイタや一夏とおっかなびっくりながらちゃんと話せてるクーリェを遠目に見ながら蓮は深々溜息をついた。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

ゼロワン『新たに出てきた4人はアーキタイプブレイカーからのキャラクターか。』

フォース『このメンツで団体行動って大丈夫なの?』

ケイタ「それは、次回確かめて頂くということで!」

ゼロワン『次回、Jorney an ancient city その3。』

フォース『これが、明日のリアル!』


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Jorney an ancient city その3

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

楯無「修学旅行参加者が全員集まったとこまでね。」

クーリェ「キョウトってどんなとこ?」

ケイタ「簪さんのお姉さん、アンタホントになんも伝えてなかったんですね。」

楯無「し、仕方ないじゃない!急な決定だったんだし!それに他の生徒会の仕事もたまってたし。」

ケイタ「大抵があなたがハンコ押せば終わる仕事だったって聞いてますけど?」

楯無「そ、それは……。」

クーリェ「それではどうぞ。」


新幹線に乗り込んだ一同。

それぞれが落ち着いた所で楯無から班分けが発表された。

 

第一班

ケイタ(班長)、一夏、弾、虚。

 

「おっしゃーー!!虚さんと同じ班!」

 

「よろしくお願いしますね。」

 

「はい、こちらこそ。」

 

「しっかし他の班は偏りがすごいな。」

 

第二班(五人班)

石橋(班長)、簪、ロラン、ラウラ、心愛

 

「よろしくなぁイシバシ君。」

 

「ああ、正々堂々、なぁ……。」

 

「二人とも仲良く…。」

 

(な、何故だ?なぜ一人の女を奪い合う修羅場に放り込まれなければならんのだ?

私は何か悪いことしたか?)

 

第三班(五人班)

達郎(班長)、鈴音、マシュ、立香、ヴィシュヌ。

 

「な、なあ鈴。」

 

「ごめん後にして」

 

(先輩、お二人は喧嘩でもしてるんでしょうか?)

 

(だからこそこの班なのかもね。)

 

「………。」

 

第四班(五人班)

楯無(班長)、芝浦、海之、千夜、シャル

 

「よろしくね?」

 

「は、はい!」

 

「こちらこそです!」

 

「ねえねえこの後研究も兼ねて食べておきたいお菓子があってね。」

 

「それの店Wi-Fiある?今スマホの接続悪くてログインできないゲームがあってさ。」

 

第五班(五人班)

蓮(班長)、セシリア、クーリェ、ファニール、オニール

 

「レン・アキヤマ……」

 

「わー、レンお兄ちゃんと同じ班!よろしくね?」

 

「………。」

 

(いや冗談キツいぜ。なんでこんなトラブルしか起こさなそうなメンツがこの班に集結してんだよ!?)

 

「レンさん大丈夫ですか?顔色が優れませんが。」

 

「大丈夫じゃないがメンタル的なもんだ。気にしないでくれ。」

 

新幹線はゆっくりと動き出す。これから約二時間で京都だ。

到着したらまずクーリェに何か服を買ってやらないとな。

そう思いながらぼんやり窓の外を眺める。

トラブルはなんかしらあるだろうがそれはもっと日常的なもので、願わくば穏やかに済んでくれない物だろうか?と蓮は切に願った。

 

 

ベンタラ、ゼイビアックスの要塞にて。

 

「さて改めて質問だ。マドカ君この手術は私が吸収した間明君のライフエナジーを君に浸透させることでアドベントデッキを適応させるための手術だ。

力を得るのには相応の代償を払ってもらう。それでもやるかね?」

 

「もちろんだ早くしろ。」

 

「では早速。」

 

ゼイビアックスが装置のレバーを上げると手術台に固定されたマドカにエネルギーが植え付けられていく。

 

「んんんんんんん!!!!!!!

あああああーーー!!うあああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 

なかなか聞く機会のない絶叫が響く。

 

「おーやってるやってる。」

 

「三春君。懐かしいかね?君も一度通った道だ。」

 

その後ラスの鎧はどうかね?

おどけたように尋ねると、三春は邪悪に笑うと

 

「最高だよ。食事や排泄が必要な身体じゃなきゃずっと着ていたいぐらいだ。」

 

「それは上々。なら君にも仕事をして貰おうか。」

 

「仕事?」

 

「今京都に居るらしい網島ケイタとレン・アキヤマをベントして来て欲しいんだ。」

 

口元を歪め、ビー玉の様な心の無い目を爛々と輝かせる三春。

 

「なあ、それって余裕が有れば俺のやりたい事をやって来てもいいか?」

 

「仕事さえちゃんとしてくれればなんの文句も無いよ。」

 

そうゼイビアックスが言うと三春は懐からブラウンに金の不死鳥のライダーズクレストのついたデッキを構え

 

「カメンライダー!」

 

Vバックルを出現させ、デッキを手放すと金のエネルギーを纏ったデッキが自動でセットされる。

黄金の残像が重なり三春は仮面ライダーラスに変身した。

両腕を組み、金の残光を残しながら瞬間移動するラス。

 

(大方目的は織斑一夏の持つ白式か。)

 

ふんっ!とマドカの方を向くゼイビアックス。

 

「精々()()()()()()場をかき乱してくれたまえよ。」

 

ゼイビアックスはマドカが完全に気絶しているのを確認すると、

真の計画を進めるべく、準備を始めた。

 

 

3

「それでは本日の流れを発表します!

午後6時に京都駅集合。そこからホテルに集合になるから各班行き先はよく相談して決めてね!」

 

そうとだけ言うともう既に新幹線の中で色々決めていたらしい楯無班は京都のスイーツ廻りに繰り出して行った。

 

「レンさん、私達は如何いたしましょう?」

 

「そうだな、どうせ最後に京都駅に行くんならクーリェの服とかはその時に、アメニティなんかはホテルに有るだろう。

ただ靴屋にはどうしても真っ先に行かないとな。

いつまでも裸足にしとく訳にもいかない。」

 

取り敢えず近場のショッピングモールに向かい朝食もそこのフードコートで済ませることにした。

 

「俺はクーリェの靴を見てくる。

オルコットは2人と先に席取っといてくれ。」

 

クーリェと共に靴屋を目指すが、果たして職質とかされないだろうか?

 

(側から見たら裸足の幼女を連れた有罪顔の高校生、だからな。)

 

《監視カメラを誤魔化しておきましょうか?》

 

(いや、あんまりやりたくないが正直に説明する。)

 

クーリェの手を引きながらどう見ても兄妹には見えないなと思いなおす蓮。

 

「ねぇ。」

 

「どうした?行きたいとこでもあるのか?」

 

「うん。後で連れてってくれる?」

 

「靴買ったらな。因みに何処だ?」

 

「鏡の向こう。」

 

思わず歩みを止めクーリェを見る。

 

「お前、ベンタラが見えるのか?」

 

「うん。だから知りたいのゴーストフレンドの皆がどこに行っちゃったか。」

 

「ゴーストフレンド?」

 

「うん。本当は鏡の向こう、ベンタラは彼らが居たの。

けどママとパパが死んじゃった時ぐらいに、皆いなくなってビーストしか見えなくなっちゃったの。」

 

ベンタラには元々人間が住んでいた。

いくつかあった仮設の一つではあったが、

まさかこんなタイミングで証人と会えるとは思ってなかった。

 

「なんで、俺に頼むんだ?そんなこと。」

 

「だってあの蝙蝠のビーストはレンのフレンドでしょ?」

 

そう言ってクーリェは自分のはるか上、天窓を指す。

そこにはダークウイングがこちらを窺うように飛んでいる。

 

「私をベンタラに連れてって。」

 

「………駄目だ。」

 

「なんで!?」

 

「確かに俺とダークウイングは大抵の奴より強いが、

絶対じゃない。お前を守り切れる保証はない。」

 

お前を危険な目には合わせられない。

そう言ってクーリェの目線に合わせて言葉をかける。

しかしそれでも納得いかない様で

 

「いい子にするから!」

 

「いくら言っても無駄だよ。

そいつは君を守る自信のないヘタレだ。

そんな奴について行ったって真剣に守ってもらえないよ。」

 

鏡から、それは現れた。

羽のような肩アーマーに金と茶色のボディの不死鳥を模したライダー。

 

「ついにお出ましか、仮面(カメン)契約者(ライダー)激憤(ラス)!」

 

「久しぶりだな蓮。」

 

「気安くファーストネームで呼ぶんじゃねぇ、織斑!」

 

「なんだ気付いたのか?」

 

「分かりやすいんだよお前は。

クーリェ、オルコットのとこまで逃げろ。」

 

「でも」

 

「これは戦争だ!テメェで靴も履けないガキがくるとこじゃない!」

 

気迫に押されて走っていくクーリェ。

蓮は足音が遠のいたのを確認するとデッキを構える。

 

「ふん!守る自信もないか!」

 

「たとえ相手がお前如きでも手の内分かってない相手との戦いに足で纏い連れて行くほど舐めてないさ。

KAMEN-RIDER!」

 

「言ってろ、声も出せないほどに追い詰めてやる!」

 

<SWORD VENT>

 

蓮のウイングランサーとラスの二振りの剣、ゴルトセイバーが火花を散らす。

筋力も武器の威力もラスの方が一回り上だ。

 

「くっ!」

 

「どうした!?さっきまでの威勢はどこ行った!!?」

 

躱す受けるで精一杯。

 

(この出力、こいつサバイブモードになってやがる!

俺もサバイブモードになるか?駄目だカードきる余裕も無い!)

 

しかしこのままではジリ貧。

なんとか今までノーダメージだが潰されるのも時間の問題だ。

 

「ふっふっふ!困ってるようね!

手を貸してあげるからむせび泣いて感謝し、高級痛い!」

 

「言ってる場合か!さっさと行くぞ!」

 

蓮の背後から二つの人影が現れた。

それは青と緑の、マントをはためかせたバッタの仮面の戦士だった。

 

「アオライダー!」

 

「ミド、ライダー!」

 

「なんだお前ら!邪魔すんな!」

 

「行くわよ!」

 

「おう!ブリッジアックス!」

 

「メガトマホーク!」

 

2人は内なるスーパー戦隊の力を使いそれぞれゴーオングリーンとメガブルーの斧型武器しゴルトセイバーを巧みに受けながら攻撃を当てていく。

 

『2人がかりとは言えレン様が手も足も出なかったラスを完封するとは!』

 

「仮面戦隊ゴライダー……いったい何者なんだ?」

 

「く、調子に乗りやがって!」

 

ラスは金色の光弾をばら撒き、距離を取ると銃撃戦に転じる。

 

「はっ!その程度で調子に乗ってんじゃないわよ!

オーソライズバスター!」

 

「デネビッグバスター!」

 

今度はライダーの力を開放しバルカンアサルトウルフ、ゼロノスゼロフォームの専用武器を呼び出す!

 

「こいつでお終いよ!バスターダスト!」

 

「バスターノヴァ!」

 

(さすがにマズいか!?)

 

<GUARD VENT>

 

ゴルトシールドを装備し、二本のビームを防ぐラス!

 

「う、うわああああ!!!!」

 

煙が晴れるとそこには膝を着いたラスがいた。

 

「嘘でしょ!!結構本気だったわよ!?」

 

「はっ!その程度でやられる訳が……?」

 

余裕たっぷりにラスが返そうとするとベルトのデッキがバチバチと放電する。

 

「ちっ!試運転で力を使い過ぎたか。」

 

ラスは瞬間移動で消えた。

そして残された蓮と二人のゴライダー。

 

「お前らは……。」

 

「さ!何はともあれ助けてあげたのよ!

高級酒とおつまみ!あと有りっ丈の賛辞の言葉でもって私を甘やかしな痛い痛い!何すんのよ!」

 

「何すんのも何も帰るぞ。」

 

「なんでよ!まだ貰うもの貰ってないわ!」

 

何やら駄々をこねるアオライダーをミドライダーが引っ張っていく。

 

『いいコンビでしたね。』

 

「そうか?仮面戦隊と名乗る割には協調性無さそうだが?」

 

そんな話をしながら変身を解除すると見計らったようにセシリア達がやって来た。

 

《レン様、ゴライダーのことは話しましょうか?》

 

(そうだな、敵の敵は、味方と信じたいな。)

 

まだ三春が使い慣れていなかった上に2人がかりとはいえあのラスに膝を付かせられる実力者だ。

サバイブモードを使っても勝てるかどうか分らない強者だ。

 

(余計な情報で混乱させない。今んとこ言わないでいいだろ。)

 

《了解です。》

 

「レンさん!大丈夫でしたか!?仮面ライダーと戦っていたと聞きましたが。」

 

「危なかったがなんとかな。」

 

「レンお兄ちゃん強いもんね。」

 

「ふん!悪運がでしょ?」

 

「だから違う。それはレンのビーストフレンドが」

 

「兎に角!移動しよう。警察に絡まれると面倒だ。」

 

クーリェの手を引きさっさとこの場を離れる。

朝食は食べ損ねたが、この際仕方ない。

 

(一刻も早くケイタ達に伝えないと!)

 

京都修学旅行、これもまた例にもれずトラブルが付き纏ってくれそうだ。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

楯無「確か設定上はゴライダーって全てのライダーと戦隊全部の力を使えるんだったわね。」

クーリェ「スーパー…戦隊?」

ケイタ「仮面ライダーとは違う世界で地球の平和を守ってるヒーローチームだよ。」

楯無「アカ、アオ、ミドリ、と来たらイエローにピンクも出てきそうね。」

ケイタ「それは次回のお楽しみということで!」

楯無「次回、Jorney an ancient city その4!」

クーリェ「ドキドキ愉快!かーなーり、強い!」


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Jarney an ancientcity その4

ケイタ「前回までのInfinite DRAGON KNIGHTは!」

心愛「ラスが出て来た所までだね。」

一夏「しかも三春兄が変身してたなんて…」

ケイタ「後はキャモが誰かだよな。」

心愛「さてさてどうなる?」


「俺らはどこ行く?」

 

「特に希望があるわけではありませんが…」

 

石橋班はロランとラウラが着物を着てみたいとのことでレンタルをやってる店に、

達郎班は金閣を見に北山方面に。

蓮班はとりあえず朝食ということで近場のフードコートのあるスーパーにと

他の班は行動を始めたがケイタ班はいまだ決まらずにいた。

 

「だったらさ。私、やってみたい事があるんだけど!」

 

 

「んー!こうして巡ってみると同じように見えてもそれぞれ結構味が違うものね。」

 

本日3件目の甘味処を制覇した楯無班は次なる店に向けて出発した。

 

「朝飯途中で食わなくて正解だったな。」

 

「甘い物たらふくというのも、偶にはいいな。」

 

「私も創作意欲がわいてきちゃった!」

 

「宇治松さんは甘味処やってるんだっけ?」

 

千夜のサーチは中々のもので、外れを引くことなく、

それぞれ特色の良く出た良い店を選んでおり、同じようなメニューも飽きない。

 

「次はあそこに……ん?あそこで団子食べてるの網島達じゃないか?」

 

「あら、ホントね。声かけてみる?」

 

近づいていく楯無班。向こうも気付いたようで

 

「みんなー!」

 

「奇遇ね。あなた達もスイーツ巡り?」

 

「そうじゃなくて、皆の写真が撮りたくて。」

 

「写真?一夏はカメラが好きなの?」

 

「うん。だから私、織斑一夏はこの修学旅行の写真がかりに立候補します!」

 

「いいでしょう!生徒会長にして修学旅行実行委員長である私が許可します!可愛く撮ってね?」

 

「修学旅行委員なんていつ作ったんですか?」

 

「今」

 

「ほんとに行き当たりバッタリだなこの旅行。」

 

「そんなことより並んで並んで!」

 

まず楯無班だけで一枚。次にケイタ班も混ざって近くにいた2000の技を持つ男を名乗る旅人に頼んで撮ってもらった。

そして九人で甘味処に入り、そこでもしゃべりながら何枚か撮った。

 

「写真出来たら私に一回データ送って頂だい。

クーリェ達には私から渡しておくわ。」

 

「了解です!」

 

「帰ったらここでの味見を基に新しいメニューを作るつもりだから期待しててね?」

 

「ははは、またラビットハウスの客を盗らないでくれよ?」

 

「次どこ行く?」

 

「そうですね、達郎君たちの行った北山はここらそこそこ遠いですから、

まず石橋君達の班の方に行きましょうか?」

 

 

3

石橋班は鴨川付近を着物で散策していた。

 

「お、いたいた!おーい四人とも!」

 

「! ケイタ、一夏!助けてくれぇ!」

 

何故か赤い着物を着たラウラが半泣きになりながら逃げてきた。

 

「うぉおどうした?」

 

「さっきから石橋もロランもおかしいのだ!

何につけても勝負だなんだいってそれでコーディネート対決とか言って!」

 

どうやら二人のライバル意識はこの短時間で確固たるものになってしまったようだ。

 

「おいどこ逃げた!?」

 

「いたぞ!あ、ケイタ達!良いとこに来た!」

 

「健もロランもまって!あ、皆いい所に!」

 

「「俺たち(私たち)の勝負の立会人になってくれ!」」

 

「二人の勝負をやめさせて!」

 

ケイタに詰め寄るとすぐさま睨み合う石橋とロラン。

 

「お願い止めて。さっきからずっとあんな調子なの。」

 

「い、いったいどんな経緯が?」

 

まず道中のじゃんけん対決に始まり、簪の可愛いとこ褒め対決。

そして目的地に着いてからのコーディネート対決。

前半二つは引き分け。最後の対決は男物と女物とではステージが違うということでノーゲーム。

 

「そうだ良いこと思いついた。

今ここには花も恥じらう美女が二人も来てくれたんだ。

そっちの野郎二人とラウラを審査員にコーディネイト対決第二ラウンドだ!」

 

「いいだろう。ダン!しばし君の華を借りるぞ!」

 

「網島!お前の彼女借りるぞ!」

 

「お、おいちょっと!」

 

「そんな勝手に!」

 

止めようとするケイタと弾だったが

 

「お前ら見たくないのか?自分の彼女の着物姿。」

 

「「見たいです。」」

 

「なっ!即答ですか?だ、弾くーん!」

 

「ケイタちょっと!?欲望に正直すぎるよ!ケイター!」

 

角の向こうに消えていく4人。

 

「ああ、そんな。最後の常識人だったはずのケイタまで……。」

 

「どうするんだ?」

 

「いやどうもしないよ。だって一夏の着物姿が見れるんだぜ?」

 

「そうそう。仮にあの二人が着替えを覗く気でも、一夏の黒電話が許さないでしょ?」

 

『お前ら……。』

 

「だ、駄目だ。こいつら早めにどうにかしないと。」

 

そして十分後。

 

「さ、結果発表だ。」

 

「ケイタ、ダン、ラウラ。どっちが優れている!?」

 

まず一夏だが、黒ベースに薄桃の桜柄が白い肌に相まってよく似合っている。

次に虚。薄い青の上着に濃い青の袴といったスタイルでしっかり者の虚にベストマッチだ。

 

「一夏。」

 

「虚さん。」

 

そこはまあ、予定調和であり、最後ノ審判はラウラにゆだねられる。

 

「そ、それは……」

 

「どっちだラウラ?」

 

「決めるんだ。今ここで。」

 

「ふ、二人とももうやめなよ……。」

 

この時ラウラは、人生で一番葛藤していた。

 

(ま、マズいぞ。この対決、どう答えても角が立つ!

審査対象が両方女性で、その女性と付き合ってる、

好き合ってる男が二人ともいる!考えうる限り最悪な状況だ!)

 

こうなれば二人に切れられるの覚悟で選べないというか?

そう思った時だった。

 

「二人ともいい加減にして!」

 

「お嬢!?」

 

「か、簪?」

 

「趣旨が変わってる!この旅行は楽しむもの、火花バチバチで争うための物じゃない。」

 

「簪……そうだな。私たちとしたことが。」

 

「ああ、おかげで目が覚めたぜ。」

 

ほっと一息つく六人。

 

「まだ後六日もあるんだ。」

 

「まずは楽しもう。」

 

「え?」

 

「なあラウラ。今の二人の言い方だったらアイツら結局勝負する流れに」

 

「私は何も聞いてない!何も聞いてないぞ!」

 

「お、おう。」

 

「もう、二人とも……。」

 

「え、えっとそろそろ写真良い?」

 

「? もしかしてその為に来てくれたのか?」

 

「それはすまなかったな。さ、皆撮ろう!」

 

近くにいたプレーンシュガーを頬張っていた指輪のお兄さんに頼んで撮ってもらう。

 

「じゃ、四人だけのも!はいチーズ。」

 

「お前らのも撮ってやるよ。」

 

「イェーイ!」

 

ケイタ班も石橋に撮ってもらう。

 

「虚さん達はこれからどうするんすか?」

 

「とりあえず着物を返してから大江君達の向かった北山目指して出来たらアキヤマ班と合流するって感じですね。」

 

「了解です。お気をつけて。」

 

 

「へー大変だったね。」

 

「誰が可哀想って巻き込まれてるラウラだよ。」

 

「レンさんに掛け合って有給なりなんなりを差し上げるべきでしょうね。」

 

「ま、なんだかんだで楽しそうだったけどね。あ、お嬢ちゃん口にソースついてるよ。」

 

某バーガーショップにて蓮班と合流したケイタ班は早めの昼食をとっていた。

席は虚、弾、一夏、セシリア、クーリェにコメット姉妹にケイタ、蓮と5、4に分かれた。

 

(で、蓮わざわざ俺だけに話ってなんだよ?)

 

目の前に座るコメット姉妹に話を聞かれたくなかったのでセブンとサードに中継してもらいデッキを使って話す。

 

(これはオルコットやクーリェにも黙っててもらってるんだが、

初っ端朝飯を食いに行った先で仮面ライダーと戦った。)

 

(!? ゼイビアックスの手先か?)

 

《はい。名前は仮面ライダーラス。

常時サバイブモードでいれる強敵です。データを送ります。》

 

サードからセブンにデータが送られる。

ケイタはさりげなくメールをチェックするふりして開いた。

 

《変身者は……織斑三春だと!?》

 

(脱走したのは知ってたけどゼイビアックスの手下になってたのかよ!)

 

(ああ、この前フォンブレイバー達を復活させてくれたアカライダーの仲間が、

アオライダーとミドライダーが来てくれなかったら危ないとこだった。)

 

《アオライダーにミドライダー?》

 

(もしかしたらキライダーとかモモライダーなんかもいるかもな。)

 

《だとしたらそれだけの力をもっていてなぜ今まで表舞台に出てこなかったんでしょう?》

 

《どちらにせよ、一対一でアキヤマが追い詰められるほどに強かったと言うなら残る最後のライダーが、キャモが気になるところだな。》

 

(確かに。)

 

(ラスより強くないと願うばかりだ。)

 

そう考えると別の心配が出て来る。

 

(一応簪さんのお姉さんの計らいで各班一人はライダーがいるけど、ラスにしろキャモにしろ大丈夫だろうか?)

 

 

「なあ、鈴。俺は」

 

「いいよ達郎気を使わなくて。」

 

「いやそうゆう訳じゃ」

 

一方そのころ達郎班。

金閣まであと少しというとこまで来たのだが、

はっきり言って空気は最悪だった。

 

「先輩、鈴さんは達郎さんと何がったのでしょう?」

 

「ケイタ君たちから聞いた話だとこの前のジーン事件の時に操られた鈴ちゃんが達郎君を刺しちゃったらしくて。」

 

「な!それはなんと……。」

 

マシュも本当に昔、

立香を拒絶してしまったことがあったが、

いま彼女はどんな気持ちなんだろうか?

一夏から聞いたがなんでも彼女は達郎のことを好いていたらしいのだ。

 

(もし私が、何かの原因で先輩や水戸博士たちを傷つけてしまったら……)

 

考えるだけで恐ろしいことだ。

多分どんなに許されても裁かれても、

心に重くのしかかり続けるだろう。

まるで呪いを受けた傷の様に。

 

(きっと今鈴さんは戦っているんですね。

信じられなくなった自分と、自分が知らずに行った罪と。)

 

そしてきっと達郎もそうなのだろう。

今、彼女が目の前で深く傷ついたのを目の前で見たのだから。

 

(こんな筈じゃ無かったのに。)

 

達郎は、地味に自分が一番平凡なことを気にしていた。

一夏には姉や兄とさえ比べなければ十分才媛と呼ばれるだけの力が、

ケイタには暴力の才能が、弾には、

ファーストコンタクトこそ最悪で今もツンケンした態度をとっているが虚という素敵な女性をものにするだけの魅力がある。

鈴音にはISを乗りこなす才能が。

数馬も達郎に言わせれば十分非凡だった。

 

(だから二か月前、素晴らしき青空の会から声をかけられた時、興奮した。)

 

素晴らしき青空の会。怪人の一種、ファンガイアに対抗するための組織で一時より活動は大人しくなったがそれでも人間を主食とする怪物と戦うことを専門にする機関だ。

自分には怪物と戦える力がある。

達郎は一も二もなく引き受けた。

一番過酷なイクサシステム適合のための訓練、

ライダーになるための訓練に挑み三枠しかない合格をビリとは言え勝ち取った。

 

(なのに親友につらい思いさせて、結局先輩の手を煩わせて、何やってんだか。)

 

自分は舞い上がっていただけかもしれない。

こんなこと弾に話そうものなら

 

「勢いで変身して成り行きでライダーやってる俺よりちゃんと試練をクリアしいてなったお前の方がすげぇよ。」

 

とか言われそうだが。

きっとケイタや翔太朗に話しても

 

「いや、俺の喧嘩の腕が羨ましいって、達郎お前俺が大暴れする現場を見てたよな?」

 

とか

 

「達郎。これは俺のおやっさんが教えてくれたことだが、

帽子の似合う男になれ。男の仕事は八割決断。

あとはおまけみたいなもんさ。一度決めたら信じて信じ抜け。」

 

とか言われそうだ。

 

(わりぃな皆。不詳の後輩ライダーで。ん?)

 

ふと、袖を引っ張られる。

見ると鈴音が不安そうにこちらを見ていたが、

頼りたい半分、一歩引いてしまう半分といった感じだ。

 

「どうした?なんか変な臭いしない?」

 

「変な臭い?ってなんか霧?でてきたな……。」

 

用心のためイクサナックルを装備し、立香、マシュ、ヴィシュヌの元まで戻る。

 

「これって何かわかりますか?」

 

「いや、でも怪人か敵ISだろ?」

 

「違うな。仮面ライダーだ。」

 

声のした方を向く。そこに居たのは

 

「織斑、千冬!?」

 

によく似た少女だった。

 

「私は織斑マドカ。またの名を」

 

千冬によく似た少女は不敵な笑みを浮かべたまま紫のデッキを構える。

 

「それはまさか!」

 

「仮面ライダー!」

 

出現させたVバックルに間明と同じポーズを取った後にデッキを装填!

 

「仮面ライダーストライク!」

 

「変身しやがった……。」

 

「あの姿、間明さんと同じです!」

 

間明、その名を聞いた鈴音の袖をつかむ腕がより強くなる。

 

「あれが、仮面ライダー……。」

 

呟くヴィシュヌ。

 

「違う。あんなん仮面ライダーじゃねえ。」

 

「達郎?」

 

「仮面ライダーってのは魂が化け物になった本物の化け物を狩る正義の戦士だ。

まかり間違っても、あんな顔を出来る奴に務まるもんじゃねぇ!」

 

<レジィ!>

 

両手の拳を打ち付けるようにイクサナックルのスイッチを押し込み、

左の拳を天高く掲げ、右手で出現したベルトにナックルを装填!

 

「変身!」

 

<フィ・ス・ト・オ・ン!>

 

金色の光に包まれ、達郎は仮面ライダーイクサ(量産型)に変身した。

左手に握った聖剣イクサカリバーを構える。

 

「皆さん鈴を頼みました。

おい千冬さん擬き!お前の命、俺が貰う!」

 

「ふん!量産機程度が。」

 

<SWORD VENT>

 

ベノサーベルを装備するストライク。

達郎を、イクサを邪魔者と判断し構える。

 

「いきがるな!」

 

「はっ!テメエこそ貰いたての玩具にはしゃいでんじゃねぇ!!」

 

ベノサーベルをイクサカリバーで受ける。

パワーではストライクが上な様だ。

ギリギリと押し返されたイクサカリバーが左肩に食い込む。

達郎は斬り落とされるのを覚悟で右手でベルトからナックルを外し、ストライクの腹部を殴り付けた。

堪らず下がるストライク。

イクサはイクサカリバーをガンモードに切り替えて先ほど殴った腹部を狙い撃つ。

秒間30発の純銀製対ファンガイア特殊弾が炸裂した。

 

(ちっ!中級ファンガイアなら今ので内臓をズタズタに出来るが、こいつはそれ以上!下手したら大幹部(チェックメイトフォー)級かよ!?)

 

量産型のイクサはイクサver10をベースにしている。

つまり進化したキバや大幹部に対して作られたライジングイクサやパワードイクサーを呼ぶ機能などはオミットされており、並の敵を倒す程度の力しか持たない。

 

(けど負ける訳にはいかねぇ!)

 

再びイクサカリバーをソードモードに変え、繰り出される剣戟を避けれるだけ避けながら腹部を狙って斬りつける。

 

(イクサのパワーじゃ仮に本気全力のブロウクン・ファング(ライダーパンチ)が決まってもアイツの装甲を破れるとは思えねーし、さっきから俺の方が明らかにダメージ受けてる!)

 

なんとか拮抗して見えるぐらいには戦えてるが、初撃で左肩アーマーは使い物にならないし、イクサカリバーの残弾も限られている。

 

(本部遠いし、カリバーも折られたりしたら予備が無い。

けど俺も仮面ライダーの端くれだ。あんな擬きに負ける訳にはいかねえ!)

 

「どうした!かかってこいガラガラ蛇!」

 

「ふん!直ぐに殺してやる!」

 

ストライクがイクサの懐に飛び込もうとした時、

 

<ガシャコンスパロー!>

 

<ソニックアロー!>

 

無数の光の矢がストライクの足元に炸裂した。

 

「やはり当たらんな。私はどうにも不器用だ。」

 

「近接でも大して当たらないでしょ?

今回は足止めが目的なんだからそれでも問題ないです。」

 

矢を放った二人は「とぉー!」と古き良き特撮の様な掛け声と共に降り立つ。

 

「キライダー!」

 

「モモライダー!」

 

仮面戦隊ゴライダーの2人だった。

 

「あ、あんたらは?」

 

「見ての通りの通りすがりです。」

 

「別に覚えてなくてもいいぞ?」

 

そう言って2人は新たな武器を召喚する。

 

「ドライブレード!」

 

「デンガッシャー!」

 

それぞれビートバスターと仮面ライダー電王の剣型武器を取り出し、斬りかかる。

 

「何人来ようと同じだイロモノが!」

 

一閃、二閃。確かにキライダーは自分で言う様に不器用だが、モモライダーとの連帯は見事なものでストライクを苦戦させる。

 

「腹だ!腹を狙え!俺はさっきそこ以外に攻撃してない!」

 

「了解だ!イエローハンマー!」

 

「ローズサーベル!」

 

それぞれゴーグルイエローとダイナピンクの専用武器を取り出す!

イエローの豪快な力技を縫う様にモモの鋭い刺突が飛ぶ。

 

(やるな!だがどちらかに、穴が開けば!)

 

<STRIKE VENT>

 

メタルホーンを盾代わりに2人の連続攻撃に耐えるストライク。

そして

 

「達郎!」

 

「え? 鈴来るな!」

 

鈴音が来てしまった。

今彼女には自分で自分を守れる武器も力も無い。

 

「今だ!」

 

ストライクがベノサーベルを鈴音に投擲する。

イクサが撃ち落としたおかげで怪我人や死人こそ出なかったが、ストライクには逃げられてしまった。

 

「ふむ、逃げられたか。」

 

「まあ、倒す必要は有りませんし。

多少手札を見られたぐらいなんて事は有りませんよ。」

 

そう言って2人は仮面ライダーウィザードの力を発動。

テレポートの魔法で去って行った。

 

「おい鈴!お前なんて軽率な事を!」

 

「!」ビクッ!

 

「だ、だって、あの時の償いを…」

 

「誰がいつそんな事しろって言った!?」

 

達郎の本気の剣幕に本気で泣きかける鈴。

 

「ちょっとあなた!

何があったか知りませんが言い過ぎですよ?

彼女はあなたを本気で心配して!」

 

「誰の為に俺は心配されるような無茶したかって話だよ!

それに俺は今腹刺された事なんか全く怒ってなくてな!

自分の身も守れない癖に戦いん中に飛び込んできた事を怒ってるんだよ!」

 

変身を解除し、鈴と真正面から向かい合う。

 

「だ、だってわたし…」

 

「あのな、他の奴らはどうか知らねーけど、

憎からず想ってくれてる女子に刺されるぐらいで愛想尽かす俺じゃねーって」

 

「な、な、な、何馬鹿なこと言ってるのよ!

アンタなんかにそ、そんな、そんな惚れてる訳!」

 

「じゃあ毎年バレンタインに誰かにチョコあげてる訳でもないのに金欠になってたのは?」

 

「そ、それは…」

 

「なんか困った事あったら真っ先に俺の所に来るのは?」

 

「え、えっと…」

 

「学園祭の招待状送って来たのは?」

 

「分かった!分かったわよ!

私はどうせいざ自分の事になるとビビって言い出せないヘタレよ!」

 

「はぁ…まあ俺も人の事言えねーし、

刺されてようやく確信した鈍鎮だけれども。

そんなきっかけでもない限り自分から言わないヘタレだけど。

誓っていい。1番に守ってやる。だから変な責任感じて無茶すんな。」

 

「………君もしかして告白してるつもり?」

 

「う。」

 

「え?先輩は気づきましたか?私は気付けませんでした!」

 

「まあ、超遠回しだけどしてた……かな?」

 

カッコ良く決めた感じだったのにたちまち汗だくになる達郎。

 

「あ、アンタ人の事散々言っといて自分はそれ!?

ふざけんふざけんな!男ならもっとストレートに言え!

翔太郎さんのハーフボイルドより酷い生煮え!!」

 

「うるせー!!鈴こそ女なら他の奴に取られる前に自分から行くぐらいやってみろってんだよ!

奥ゆかしい美人なんて今時一夏ぐらいしか生き残り居ないわ!」

 

「何よ!一夏みたいな女子が好みな訳!?」

 

「お前みたいな肝心な時だけビビリな女がタイプだよ!」

 

「なんですって!?」

 

ギャーギャーと戦闘の影響で周りに人が居ないとは言え、口喧嘩がヒートアップしていく2人。

 

「せ、先輩。これがこの前漫画で見た『見せつけてくれちゃって!』という奴なのでしょうか?」

 

「はっはっは。違いないね。」

 

「日本って変な国ですね。」

 

「いやあれが日本のスタンダードでは無いですからね?」

 

ヴィシュヌに変な誤解はさせてしまったが、どうにか色んなピンチを乗り越えた達郎達だった。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

心愛「仲直り出来たみたいで良かったね。」

一夏「まあ、その代わり後がめんどくさそうだけど。」

ケイタ「それでも旅はまだまだ続くぜ!」

心愛「次回、Jarney an ancientcity その5!」

一夏「これで決まりだ!」


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Jorney an ancient city その5

ケイタ「前回までのinfinite DRAGONKNIGHTは!」

弾「達郎がようやく告白らしき物をしたとこまでだな。」

達郎「うるせえな!クッソ!告白がファンガイアと戦うより勇気がいるとか知らなかったぜ!」

ケイタ「告白とか、勇気使ったっけ?」

弾「結構勢いでやっちゃったよな。」

達郎「くそう!羨ましい!」

ケイタ「それではどうぞ!」


夜、駅で集合した一同はホテルに向かった。

 

「部屋は四人部屋を6つ取ったこんな部屋割りになるわ!」

 

301号室 マシュ、立香、蓮、クーリェ

 

「なんだこの面子?」

 

「なんかクーリェあなたに懐いてるみたいだったから。」

 

「皆さん!トランプ持って来たので後で遊びましょう!」

 

「トランプ?」

 

「クーリェちゃんもしかして知らない?」

 

「うん。」

 

「じゃあ教えてあげます。」

 

302号室 ラウラ、心愛、コメット姉妹。

 

(良かった、石橋とロランから離れられた!)

 

「よろしくねファニールちゃんにオニールちゃん!」

 

「よろしくー!」

 

「………」

 

303号室 楯無、芝浦淳、虚、弾

 

「よっしゃー!虚さんと同じ部屋!」

 

「2人が寝静まったら手を出しても良いわよ淳くん?」

 

「前にも言ったけどアンタをヒロインとして見た事ねえよ。」

 

(芝浦君は、お嬢様の事を結局どう思ってるんでしょうか?)

 

304号室 達郎、鈴音、セシリア、ヴィシュヌ

 

「あなたは確かイギリス代表候補の…」

 

「セシリア・オルコットです。以後お見知り置きを。」

 

「な、何よ達郎?」

 

「そっちこそ!」

 

305号室 千夜、手塚、ロラン、石橋

 

「これで夜も対決、出来るな。」

 

「ああ……」

 

「あの2人、どうした?」

 

「さあ?」

 

306号室 ケイタ、一夏、シャル、簪

 

「ワンフロアまるまる借り切ったのか。」

 

「よく空いてたね。」

 

「更識の力でゴリ押しした、らしい。」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「そうね、じゃあ他の部屋に行って良いのは10時まで、

完全消灯は11時としましょうか。

見廻りとかはしないけど、明日も存分に楽しみたかったらしっかり寝ること!

良いわね?」

 

各部屋に移動する。

まずは荷物を置いて一息だ。

 

「あー!結構歩いたな!」

 

「京都って広いね!」

 

「まだまだ行きたいとこ沢山あるな!」

 

「私は中学の修学旅行で一回行ってるけど、また来るのもいいね。」

 

「へー、そういえばシャルは、てかフランスの学校って修学旅行とか有るの?」

 

「さあ……」

 

「? さあって。」

 

「僕はずっと家で勉強させられてたから……」

 

うつむくシャル。簪と一夏がケイタを攻めるような目で見る。

 

「い、いや…その、そ!その分今回楽しもうぜ!な!」

 

「ケイタ……」

 

「そうだよ!もうこの面子でまた来れるかも分かんないんだし、楽しまなきゃ!」

 

「気を使わせてごめんね」

 

「別にいい。仲間でしょ?」

 

暗くなってしまった雰囲気をぶっ飛ばすため、四人は夕飯に焼き肉を食べに向かった。

店内は思いのほか空いていて、すぐに注文が来た。

 

「焼肉屋ってなんで丸い網使って焼くんだろ?」

 

「そりゃあ角があると頭うって死んじゃうからでしょ?」

 

「そうそう、注意しないといけないよねぇー。

本当に危ないんだからってそんな訳あるか。」

 

なんて恋人漫才をやってるうちに肉が焼きあがる。

 

「他のみんなは何食べに行ってるんだろ?」

 

「せっかく京都に来たんだしそりゃ美味しい物でしょ?」

 

程よく焦げ目の付いたピーマンをかじりながらシャルが言う。

意外と苦い物とか平気らしい。

 

「すくなくとも、焼肉じゃないと思う。」

 

五班と一緒に肉を頬張りながら言う簪。

あまり野菜苦手なのか肉以外にはあまり手を付けない。

多分バーガーとかもピクルス抜いて食べるタイプと見た。

 

「ま、いいじゃん。美味いんだし。」

 

奉行を務めるケイタが新しく肉を投入する。

皆意外とよく食べる。

 

「そういえば、セブンとゼロワンって食事とかするの?」

 

『いや、我々は基本充電だが?』

 

『バーチャル空間なら味覚を感じることも出来るが、

やらなければ死ぬわけではないし、人間でいうところの酒や煙草のような感覚だ。』

 

「へー、初耳。」

 

「いや、2人は知ってなきゃおかしい。」

 

『思えば戦い続きでそう言った話はその場その場で済ませていたな。』

 

『ここらで一つ、改めて私たちの解説をしておくか。』

 

「いいね。」

 

「私たちもIS以外でこういうの見る機会少ないし。」

 

『文化祭まで疑似仮面ライダーだったお前が言うか?』

 

『まあ兎に角、改めて我々が何なのかを解説しようか。』

 

フォンブレイバー

アンカー社がISコア複製実験の際に偶然作り出した意思の突出した疑似ISコアを加工して作った第八世代型人工知能、ラムダチップを核とする携帯電話型仮想生命体。

 

1番機から7番機までの七台とフォンブレイバーを診断するための番外機ジャッジが存在し、現在は人間のバディと共にサイバー犯罪を捜査する目的で使われている。

 

『大まかな概要はこんなところだ。』

 

「ISにも干渉できたりするけど、やっぱり不完全とは言えISコアを内蔵してるから?」

 

『ああ。微かだがISコアネットワークとつながりを持っていてクラック・シークエンスや並列分散リンクを使えばケイタ達の様に自身のISの補助AIとして使うことも、間明の様に不特定多数のISを暴走させるような芸当も可能だ。』

 

「そういえば、クラック・シークエンスっていつも当たり前のように使ってたけど結局どういう仕組みなの?」

 

『一夏、お前わかってなかったのか?』

 

『さすがにそれは分かっていてほしかったぞ。なあケイタ』

 

「ハッハッハッ。ソウデスネー。」

 

『お前も分かってなかったんかい!』

 

イニシエイト・クラック・シークエンス

フォンブレイバーのみができるシークエンスで、

種類があり、クラックした対象の情報を詳しく調べる時に使うセカンド・シークエンス、対象の機械の中枢システムを制圧するときに使うコア・システム・クラクティスがある。

 

『これらはブーストフォンを使う事で強化できるぞ!』

 

『ブーストフォンはこれら以外にも戦闘力を上げる為にも使われる。』

 

「ケイタやレンの強化打鉄にも使われてる技術だね。」

 

「私の弍式はアンカー製じゃないから倉持の技術しか使われてない。」

 

「そうなんだ。」

 

ブーストフォン

フォンブレイバーの活動を補助するためのサポートロボットでブーストPCのソリッドドライバー含めて七種類存在し、状況に応じて使い分ける。

 

『私がよく使うのがカメラ機能に特化したシーカーや特殊マイクロ波でどんなものも破壊できるグラインダーだ。両方この前ゼロワンに壊されたが。』

 

『コラテラルダメージだ。因みに俺は人命救助用のチェーンソーとパンチ機のデモリッションと単純に能力の底上げとウイルス制作に特化したアナライザーだ。』

 

「たしかどっちも昔大戦犯かましてお蔵入りになったんだっけ?」

 

「確かレンも設計図がアンカーの墓場に残ってるだけだって。」

 

「他の三機は?」

 

『サードがよく使う音波や盗聴など音を専門にするスピーカーとワクチンプログラム作成を専門にするメディック。それから二機のブーストフォンの着身や機能増幅を可能にした藤丸立香とマシュ・キリエライトの力作、ブーストPCのソリッドドライバーだ。』

 

「ん?ブーストフォンって他にもなかった?」

 

『ハイシーカーとオブサーバーの事か?』

 

「あれはアクセルデバイスとブーストフォンの中間ぐらいの性能あるじゃん。」

 

『もともとネクスト計画、宇宙空間での使用が前提だからな。』

 

ネクスト計画。

フォンブレイバーによる宇宙探査を目的にした計画。

ゼロワン・ファイブの離反、暴走などを受け、現在凍結中。

 

『この時宇宙空間用に作られたアクセルデバイスに合わせて耐火性に優れたハイシーカーと大気イオンを操るオブサーバーが用意された。』

 

「アクセルデバイスは人間でも扱えるんだけど、三機ともセブンがダメにしてくれたよな!」

 

『仕方ないだろこの前は三体着身でもしなければジーンを取り込むなんて無茶できなかったのだ!』

 

アクセルデバイス

アンカーの下部組織アンサーが作った宇宙活動支援ツール。

サーチャー、ディテクター、クロノの三機がある。

これらは三体同時に着身する事が可能で、ソリッド並の性能を引き出せる。

 

「結構凄い事出来るんだね。」

 

「今デモリッションと前使わなかったオブザーバーにハイシーカー以外全部壊れて使えないけど。」

 

「このタイミングで敵とか来て欲しくないよね。」

 

なんて話しているとケイタのケータイが鳴る。

 

「ごめんちょっと出てくる。」

 

一度店外に出てから電話に出る。

かけて来たのは達郎だった。

 

「もしもし達郎?」

 

『もしもしケイタか?今どこだ?』

 

「外だけど。」

 

『周りに人は?』

 

「いない。どうした?」

 

『お前と、後弾と秋山にだけは話しとこうと思って。』

 

「なんか不味いのか?」

 

『ああ、昼間北山のあたりでストライクって紫のライダーと会った。』

 

「それ本当か!?」

 

『ああ』

 

「見間違いや聞き間違いじゃなくてか!?」

 

『こんな嘘つかねえよ。それで、そのライダーに変身してた俺らより…2、3歳年下か?の女の子が、織斑マドカって名乗ったんだが心当たりないか?』

 

「………達郎悪い。後で掛け直す。」

 

通話を切りケイタはすぐさま別の場所に電話をかける。

 

『はい、織斑。』

 

「もしもし千冬さん?ケイタです。」

 

『ケイタ君!こんな時間にどうした?』

 

「一個、聞きたい事があるんですけど。」

 

『なんだ?』

 

「織斑マドカって名前に心当たりは」

 

『ない。』

 

「…本当に」

 

『本当に無い。私の兄弟は三春と一夏だけ』

 

「その三春と!全く同じタイミングで仮面ライダーに変身して現れて達郎や蓮たちを殺そうとした!

仮面戦隊ゴライダーが助けに来てくれなきゃ死人が出てた!

三春がどんだけ歪んでてどんだけ強いかアンタなら知ってるだろ!?

次は死人が出るかもしれないんだ!」

 

『し、知らない!知らない!私は本当に知らないんだ!

知ってちゃダメなんだ!!知る者が居なければ一夏が傷つく事も!』

 

「一夏の心が傷ついてその後立ち直るのと!

一夏の命が傷ついて二度と戻って来なくなるのとどっちが良い!!」

 

『わ、私から言える事は無い!』

 

「あ、おい!」

 

電話が切られる。何回かけても繋がらない。

 

「くっそ!あんの○○○○が!」

 

とてもでないが恋人の姉にでなくとも言ってはいけない事を吐き捨てるケイタ。

 

『だが、これで織斑千冬が何か知ってると確信出来たな。

他の仮面ライダーには連絡しておくか?』

 

「頼むぜセブン。あとそれからもう一つ!」

 

『なんだ?…………ふむ。

なるほど、確かにあり得るな。それも伝えておこう。』

 

夜は深まる。

修学旅行はあと6日。何かが起こるには十分過ぎる時間がある。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

弾「俺、千冬さんがあんな取り乱すとこはじめて見たぜ。」

達郎「ケイタがブチ切れるのは見慣れたもんだけどな。」

ケイタ「うるせえ。けど邪魔をするなら篠ノ之束だろうと織斑千冬だろうと必ず倒すさ。」

達郎「だろうな、次回、Jorney an ancient city その6!」

弾「時はライダー戦極時代!一体誰が勝ち抜ける?」


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Jorney an ancient city その6

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

石橋「なんかお前らのケータイについて話してたのと、織斑千冬がなんか知ってるかもって話だよな。」

芝浦「よくわかんないけどお前の従姉めんどくせえな。」

ケイタ「俺も今でも苦手だよ。しかもここ最近は誤認とは言え逮捕されてるし。」

石橋「ま、その辺りも最終章間近だしそろそろ明かされてくのかな?」

芝浦「そんな事より本編どうぞ。」


二日目。朝食もそこそこにケイタ達は荷物をまとめてホテルを発った。

何処から情報が洩れるか分からないため、居場所を一か所にしないためだ。

 

「さ、二日目も楽しんでいきましょうか!

とは言ってもどこかに特別な予約をしてる訳ではないから、昨日と同じで各班自由にって感じだけど。」

 

荷物だけ駅のロッカーに預け、手荷物のみで観光に繰り出す。

 

「どうする?昨日は各班探していろいろ回ったけど?」

 

「虚さんはなんか有りますか?」

 

「二条城とかどうでしょうか?」

 

「あー、名前は聞きますけど詳しくは知りませんよね。」

 

じゃあ行こうか。とルートを検索し歩き出す。

 

「……?…………?」

 

「一夏どうした?」

 

「いや、なんか、見られてる?気がして。」

 

そう言って落ち着かない感じでうなじを撫でる一夏。

 

「考えすぎ、ならいいんだけどな。」

 

その後も何度も振り返り、背後を確認する一夏。

 

「そんなにか?」

 

「うん。ずっとつけられてる気がして。」

 

「さては一夏のストーカーだったりしてな。」

 

「よし殺す。」

 

ケイタは真顔でUターンすると引き返し始める。

 

「ちょ!ま、待ってケイタ!」

 

「決断が早すぎますよ網島君!」

 

「ケイタ冗談!冗談だから!」

 

止める三人を振り払うと、ケイタはとんできた銃弾を懐から出したデッキではじく!

 

「拳銃だ!」

 

誰かが叫ぶ。周りにいた人々は一斉にはけていく。

 

「弾、布仏先輩と逃げて。ここは私たちが。」

 

「おう、気を付けろよ。」

 

「ご武運を。」

 

2人が行ったのをケイタと一夏が確認すると隠れていたらしい、

というかばらけてつけて来ていたらしい女が七人。

2人を囲むように現れる。

 

『あの紅髪の女性、ギリシャ代表候補生のベルベット・ヘルか?』

 

「ギリシャって、フォルテ先輩の?」

 

『大方、仇をはき違えて一夏を狙ってきたといったとこだろう。』

 

「なら俺があの眼鏡を相手にする。一夏、他の雑魚頼めるか?」

 

「モチのロン!」

 

走り出す。六人は利き腕にのみビーム砲付きの装甲を展開し向かう。

ケイタは瞬間加速で躍り出ると、ベルベットに肉薄する。

ベルベットもすぐさま専用機のヘル・アンド・ヘヴンを展開するが

中距離型のヘル・アンド・ヘヴンに対し全距離対応の赤龍改では分が悪い。

 

《しかも肉弾戦はケイタの専門分野。さすがに同情するな。》

 

フェイントからの左ストレート、

下段払いからのワンツーパンチ!

面白いように吹っ飛ぶベルベット。

 

「この!」

 

しかし吹っ飛びながらサブマシンガンを呼び出したベルベットは得意の中距離戦に持ち込む。

 

「うお!だったら俺も!」

 

左腕の装甲に逆鱗閃甲を纏わせ盾に、右手で脚部装甲から取り出したハンドガンの龍火を構えて対応する。

 

(ゴリゴリのパワーファイターかと思えば銃撃戦もいけるの?)

 

正直舐めてたが、それでもやることは変わらない。

フォルテの仇討ちを邪魔するなら倒す。

黒い決意を弾丸にのせ放つ。

 

(おー、おー、殺る気満々です事。さて、一夏の方は)

 

柱に隠れながら一夏の方を見るともう既に三人を倒し、残り三人だった。

 

(ゼロワン!もしかしてだけどさ!)

 

《ああ、どうやらこのIS。これで最大展開状態の様だ。》

 

本来は暗殺かなんかに使うためのISなんだろう。

その証拠にスピードはともかく威力はお粗末だ。

 

(こそこそはい回ってネズミみたいだね。)

 

《ではラット、とでも呼んでやるか?》

 

(じゃちゃっちゃっと狩り飛ばしちゃおうか!)

 

ゼロワンに死角からの攻撃のカバーを任せ、一夏は目の前の敵に進む!

 

《五時と八時の方向からくる!八時の方が若干早い!》

 

(アイサー!)

 

飛び上がり、刀身の展開装甲を開き、

そこからエネルギーを出し刀身延長。二人とも切り捨てる。

そして最後に一回ひっこめた刀身を再び伸ばした突きで貫く!

 

「よし!ケイタの援護を」

 

『待て一夏。変身出来るとはいえ、

五反田弾たちには絶対防御のような自動防御がない。

ここは二人を追うべきだ。』

 

「でもケイタが」

 

『あいつはどんな男だ?』

 

「そりゃタフだけど」

 

『違う。あいつは織斑一夏に、

俺がもっとも信頼する人間に認められた男だ。』

 

「そっか、よし!弾達を追おう!」

 

「! 逃がさない!」

 

「行かせるか!」

 

両腕に逆鱗閃甲を纏わせ一夏めがけて撃たれた弾丸をすべて受け、強引に肉薄する。

 

「らぁ!」

 

肘で一発。足元をけん制で撃たれるのを飛んで避けながら背中のマウントラッチからアサルトライフルの龍炎を構える。

フルオートで至近距離から叩き込む!

 

「うわああああ!!!」

 

「まだまだ!」

 

龍炎をマウントラッチに戻し、

腕部装甲からコンバットナイフの鳳爪を二本とも引き抜き

アーマーとアーマーの間、関節部の柔らかい部分を引き裂いていく。

 

(このまま押し切る!……!?)

 

たまたま視界の端に捉えた水面が揺れる。

そこから紅色の鎧の戦士が飛び出てきた。

 

「!? な、なにこいつ!」

 

「手塚さん!」

 

そして後から現れたのは、紫色のケイタが一番嫌いな敵が変身していたはずのライダーと、話に聞く金色の仮面ライダーだ。

 

「織斑マドカに、三春!」

 

「ようケイタ!久しぶりだな!」

 

やっぱりかと思いながらスティングを助け起こすケイタ。

 

「平気か手塚さん?」

 

「ああ、派手に吹っ飛ばされたがダメージは大したことない。

ただ、昨日占ったんだが」

 

「なんだよ。」

 

「私は近いうちにベントされる。」

 

「!? それって!」

 

「安心しろ。死ぬつもりなんて毛頭ない。

これ以上千夜に泣かれるのは勘弁だ。」

 

「そっか、おいアンタ!ベルベットって言ったよな?」

 

「え?」

 

乱入者が来てからずっと成り行きを見守っていたベルベットに声をかける。

 

「さっさと後ろで伸びてる手下連れて逃げろ。

そんぐらいの時間は稼いでやる。」

 

「アナタ、自分が何を言ってるか分かってるの?

私たちはさっきまで殺しあってたのよ?」

 

「うるせぇどうだっていいんだよ!

背中ならちゃんと守ってやるから早くいけ!」

 

「………借りはそのうち返す。」

 

「命狙うついでに?」

 

軽口で返してやるとベルベットは不快そうに眉を寄せるが、すぐに仲間のもとに向かう。

ケイタはISを解除しデッキを構える。

ストライクはその間にも攻撃しようとするがラスに止められる。

 

「お優しいな待ってくれんのか?」

 

「ああ、サバイブモードまではな。

俺と同じとこまで這いあがってきたのを蹴落として這いつくばらせてやる!」

 

「あっそ、お前が俺たちを舐めてんのは十分わかったぜ!

カメンライダー!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラゴンナイトに変身し、ドラグセイバーを装備する。

三人の仮面ライダーもカードを切る。

 

<SWORD VENT>

 

<COPY VENT>

 

<STRIKE VENT>

 

ゴルトセイバー、コピーされたドラグセイバー、メタルホーンがそれぞれの手に握られる。

 

「手塚さん、俺のも使ってくれ。」

 

「いいのか?」

 

「ああ、俺にはサバイブモードがある!」

 

カードを引き抜くと同時に舞い上がる烈火。

そして変身したドラグバイザーツヴァイのドラグランザーの口を模したスロットにカードをセット!

 

「変身!」

 

<SURVIVE MODE>

 

烈火が鎧となり、ドラゴンナイトはサバイブモードに変身した。

バイザーのブレードを展開し、ラスに向かう。

続いてスティングもストライクに向かっていく。

 

「はははは!ホラホラどうした?もっと楽しく踊れよ!!」

 

正面にいたと思ったら背後に、背後にいたと思ったら正面に。

瞬間移動でラスはドラゴンナイトを翻弄した。

 

《幸い動きが単純だから受ける躱すは何とかなってるが、

このままではやられっぱなしだ。頭数を増やそう。》

 

(よし来た!来い、ドラグランザー!)

 

<ATTACK VENT>

 

飛来したドラグランザーがラスに火炎攻撃を浴びせる!

 

「うわああ!熱い熱い!!卑怯だぞ!」

 

<GUARD VENT>

 

すぐさま契約ビーストの尻尾を模した盾、

ゴルトシールドを装備し、ドラゴンブレスを凌ぐラス。

 

「卑怯とか瞬間移動(チート)持ちに言われたくねーよ!」

 

<STRANGE VENT>

 

<STEAL VENT>

 

ゴルトシールドを奪取し、ドラグランザーにさらに火炎を浴びせさせる。

 

「ぐああああーー!!!な、なんでだよぉ!

ラスは最強のライダーの鎧じゃなかったのか!?」

 

「はっ!スペック頼りの素人に負ける程やわな修羅場のくぐり方はしてないって話さ!」

 

<SHOOT VENT>

 

ドラゴンナイトの背後にまわったドラグランザーの口とドラグバイザーツヴァイの発射口にエネルギーが集中する。

 

「メテオバレットォオオオオオーーーーッッッ!!!!」

 

「ま、負けるかぁああ!」

 

<CONFINE VENT>

 

ドラグバイザーツヴァイとドラグランザーが突如効果を失い消える。

思わず動揺するドラゴンナイト。その隙にラスは光弾を連射する。

ドラゴンナイトはさっき奪ったゴルトシールドで受けようとするが

 

<STEAL VENT>

 

盾を奪い返されもろにエネルギー弾をすべて喰らってしまう。

サバイブモードが解除され、転がるドラゴンナイト。

 

「今しかない!」

 

とどめを刺さんと向かうストライク。

 

「やらせるか!」

 

<FINAL VENT>

 

背中を向けたストライクに攻撃しようとするスティングだったが

 

<ATTACK VENT>

 

横から突進してきたメタルゲラスに妨害される。

エビルダイバーから落ちた衝撃でドラグセイバーにバイザーまで落としてしまう。

もうカードは使えない。

 

(こ、こうなれば!)

 

立ち上がり走り出すスティング。

その先では

 

(う、くっそ!立てねぇ!)

 

ストライクがいまだダメージの抜けないドラゴンナイトにとどめを刺そうとしていた。

 

「二枚ある。どっちが好みだ?」

 

「じゃあ、クリスマスカードが良いな。」

 

「おめでとうバーニングクリスマスだ!!」

 

<FINAL VENT>

 

背後にベノスネーカーが現れる。

バク宙ぎみに飛びあがり、激流に乗ったストライクのバタ足キックが!

 

『ケイタ立て!このままでは直撃だ!』

 

「マズイ………!」

 

「網島ぁあああ!!」

 

「え?」

 

スティングが、割って入る。

手を大きく広げて降りかかる毒さえも一身に受け、

何度もアーマーを蹴りつけられ吹っ飛ぶ。

その先で、真っ赤な火柱が上がる。

 

「手塚!おい嘘だろ!手塚ぁ…手塚ああ!!!」

 

痛む体に鞭を撃ち、海之のもとに駆け寄る。

毒でただれて、その上火傷だらけの身体からは黒い粒子が上がっていた。

 

「嘘だろ止まれ止まってくれ!」

 

「ぅ………ゆう、いち?」

 

どうやらもうろうとする意識でケイタの事を誰かと勘違いしているらしい。

 

「見てて、くれたか?わたゴホッ!私・・運命を、変えたよ?」

 

「馬鹿!なんも変わってねぇよ!

お前が死んじまうよ!お前の占い通りに!」

 

「違う……ほん、、当は網島。

あいつが、死ぬはずだったんゴッホ!ゴホッ!」

 

「え?」

 

驚くケイタに網島には秘密だよ?とまるで恋をした女の子の様にはにかみながら言う手塚。

 

「雄一、皆に…伝えて、運命に、、縛られないでって……」

 

「何、何諦めてんだよ!まだ助かるかもしれないだろ!」

 

「私が助かったら、網島が死んじゃうよ……ああ、私の占いが、やっと……。」

 

それが彼女の最期の言葉だった。

黒い粒子になりきった彼女はストライクが持つデッキに吸い込まれて消えた。

 

「これで、揃った!」

 

ストライクはスティングのデッキからアタックベントのカードを引き抜き、他の2枚と同時にベントイン!

 

ベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーが集結する。

 

<UNITE VENT>

 

三体のビーストが合体する。

エビルダイバーが(ウイング)に、メタルゲラスが胴体(ボディー)に、ベノスネーカーが頭部(ヘッド)になり出来上がった西洋龍の様なビーストは

 

「ハハハハハ!!!素晴らしい!セレビーストジェノサイダー!これがストライクの究極の力だ!」

 

地獄の夜明けを告げるかの様なおぞましい咆哮が響く。

血と犠牲とに歪められた正義の力が最悪の敵を練り上げてしまった。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

石橋「スティング、芝浦、ステーキナイフ…うっ!頭が!」

芝浦「おい大丈夫か?」

ケイタ「あんま深く考えちゃダメだ。
見ちゃいけない物まで見える。」

石橋「そ、そうなのか?」

芝浦「こりゃサッサと締めた方がいいな。
次回、Jorney an ancient city その7」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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Jorney an ancient city その7

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」

手塚「」(遺影)

千夜「………………」

セブン《かける言葉も、無いな。》

ケイタ「ああ、では、本編どうぞ。」





1

ISを装備した集団に襲われた。

連絡を受けた蓮はたまたま近くにいた楯無班と合流し、救援に向かった。

 

「更識会長!」

 

「あなた達無事!?」

 

「わたくし達はなんとも。他の皆さんは?」

 

「大江君達の班は簪ちゃんの班と合流出来たって。」

 

「そうでしたか、あれ?手塚がいませんけど?」

 

「ベンタラから先行して網島班の方に向かって貰ってる。

私達も行きましょう。敵がいつどこから来るかわかんない以上、他の班とも合流しないと。」

 

そう言って急ぎ向かおうとする楯無。

 

「待って下さい。敵の前に雁首揃えるのはリスキーです。

これ以上集まらずに今1番ピンチなケイタ達の元にライダーの少数精鋭で救助に行くべきです。」

 

そうなると面子としては蓮、簪、弾、達郎の4人という事になる。

 

「何言ってるの?それこそ全員で全員を守るべきじゃ」

 

「集まったら集まっただけ守りが手薄になる。

的がデカくなるおまけ付きでな。

しかもアンタは学園最強だ。ISでライダーと渡り合える。

けど皆が皆同じ様に出来る訳じゃ無い。

ケイタと一夏が戦ってるなら五反田と布仏先輩が一緒でしょうから、実質行けるライダーは俺とアンタの妹と大江だけだ。」

 

妹が心配なのはわかるけど堪えてくれ。

それとも来るかどうかも味方かどうかも分からない仮面戦隊をアテにするか?

そこまで言うと楯無は蓮を行かせてくれた。

ベンタラに飛び込み、サードを取り出す。

 

「サード!一夏に連絡しろ。」

 

『了解です。』

 

比較的短い呼び出し音の後、すぐに相手が出る。

 

『もしもし?』

 

「アキヤマだ。今そっちに向かってる。前の連絡で言ってた場所でいいんだよな?」

 

『ケイタは。私は弾と虚さんと一緒。』

 

「それは良かった。今から言うところに更識姉の班がオルコット達といる筈だからそこに合流してくれ。」

 

『了解。他の班は?』

 

「大江班と石橋班が合流できてる。

妹の方の更識もケイタの方に向かってるはずだ。

大江は、もしかしたら残ってるかも。あそこの班はIS使えない奴多いからな。」

 

『オッケー。私も行けたら行く。』

 

「気を付けてけよ?」

 

『レンもね。』

 

通話を切りまっすぐ示された位置を目指す。

 

「KAMEN-RIDER!」

 

変身しながら飛び出す。そこに居たのは

 

「宇治松、クーリェ!?お前ら何してるんだ?」

 

肩で息をしてる千夜とそんなに疲れて無さそうなクーリェが居た。

 

「だ、だって……。」

 

「まだベンタラに連れてってもらってないもん」

 

「言ったよな?俺はお前を守り切れる保証無いって。」

 

「それでも知りたい。」

 

どうやら決意は固そうだ。

ベンタラに連れてってくれなきゃてこでも動かないって顔だ。

 

「わ、私は」

 

「手塚が心配なだけだろ?そのゴミみたいな運動神経でダッシュでここまで来たことは褒めてやるから今からでも戻れ。」

 

「そういう、訳には……。」

 

「はぁ、これ以上足引っ張るなよ?」

 

2人を伴い目的地に急ぐ。

 

「あ、レン!って後ろの二人はどうしたの?」

 

「勝手についてきた。」

 

階段を上がる。破壊された通路に、一目で戦闘があったとわかる先に

 

「………なんじゃありゃ?」

 

そこに怪物が居た。

メタルゲラス、ベノスネーカー、エビルダイバーが合体した異形のキメラ。

セレビーストジェノサイダー!

 

「ね、ねえ?あのビーストの背中についてるのって……」

 

真っ青になった千夜が、それを否定して欲しいからだろう、絞り出すように言う。

 

「ああ、スティングのビーストだ。」

 

「ー-----ッッッ!!」

 

よろよろと二散歩下がって座り込む千夜。

その目からは、止めどなく涙が伝う。

 

「泣いてる。」

 

「え?」

 

「あのビーストフレンド泣いてる。」

 

クーリェがジェノサイダーを指して言う。

泣いてる?鳴いているの間違いではないだろうか?

 

「どういう、こと?」

 

「イタイヨ、コワイヨ、クルシイヨ。そう言ってる。」

 

「………そうか。おいケイタ。」

 

「・・・なんだよ?」

 

「行けるか?」

 

「当たり前だ。」

 

ゆっくりと、しかし力強く立ち上がるケイタ。

その手にはデッキが、その腰には既にVバックルがある。

 

「セブン。デッキにISのエネルギー回してくれ。」

 

『ああ。片方のコアはほぼ満タンだ。思い切り行け。』

 

「第二ラウンドか?いいぜ。俺は何回でも大歓迎だ!」

 

両手を広げ、クツクツと不気味に笑うラス。

 

「その声、三春兄?」

 

「ああ。お前が勝手に使ってる白式、返してもらうぞ?」

 

「三春兄…いや、お前に渡すISなんて無いよ。」

 

「は!守られるだけの妹のくせにデカい口きくな!!」

 

ゴルトセイバーを構えるラス。

となりのストライクも手を上げてジェノサイダーに合図する。

 

ジェノサイダーの口から無数の黒いエネルギー弾が放たれる!

煙が晴れると動けない千夜とクーリェを守る様に黒法を展開した一夏が、

ケイタと蓮はライダーに変身している。

 

「レン、うちの馬鹿兄貴は私とケイタが。」

 

「なら俺はストライクをもらおう。」

 

「しゃっ!行くぜ2人とも!」

 

「「「変身!」」」

 

ドラゴンナイトとウイングナイトはそれぞれクリアレッドとメタリックブルーに金淵のアーマーのサバイブモードに、一夏は黒ベースに白いアーマーの単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)に変身する。

 

「いい!いいぜ!まとめて蹴散らしてやる!」

 

 

<TRICK VENT>

 

ジェノサイダーから放たれる光弾を六人の分身で避けながらストライクに肉薄する。

ラリアット気味に首を掴み、強引に振り回すと近くにあったウインドウに投げ込む。

ベンタラに行ったのを確認すると続いて飛び込んだ。

 

(あれが、サバイブモード…いったん引く!)

 

ストライクはカードを使うために距離を取ろうとしたが、

サバイブモードになったウイングナイトは走力もなかなかですぐ追いつかれそうだ。

 

(なら盾代わりにもなるこれだ!)

 

<STRIKE VENT>

 

メタルホーンを召喚。キャッチしようと構えるが

 

「はぁ!」

 

ダークバイザーが進化したダークバイザーツヴァイからダークブレードを引き抜き、

たった一閃でメタルホーンを木っ端みじんに斬り砕く!

 

「なに!?ああっ!」

 

そのまま二撃、三撃。土を付けられる。

彼女に、まどかにとって初めて味わうものだ。

 

(これは、こんな、こんなこと!)

 

バイザーと武器が一体化しているなら奪えばいい!

 

<STEAL VENT>

 

「!」

 

ウイングナイトのダークブレードを持った右腕がこちら側に引っ張られる。

何とか奪われないように耐えてるようだがもう一押しで行けるはず!

ベノバイザーを逆手に構えて右手を殴打するストライク。

 

「そんなもんか?」

 

ウイングナイトは動く左腕で思い切りストライクを殴り飛ばす。

鉄筋の壁をぶち抜いて、その先に停車していた自動車をスクラップに変えながらなお転がりようやく止まった。

 

「がは! ば、馬鹿な!!」

 

起き上がるとウイングナイトはダークブレードを普通に構えて向かってくる。

 

「こんのぉ!」

 

<FINAL VENT>

 

焦ったストライクはベノスネーカーのファイナルベント、べノクラッシュを発動する。

 

「ああああーーー!!!!!!!!」

 

「遅いな!あくびが出る!」

 

<SHOOT VENT>

 

ウイングナイトはダークブレードをバイザーに戻しダークアローを展開。

無数の光の矢でストライクを打ち落とす!

 

「はああ……うわああああ!」

 

<SWORD VENT>

 

<SWING VENT>

 

空中でベノサーベルとエビルウィップを装備。

はじめて感じる感覚を打ち消すようにエビルウィップを放つ。

現在フリーの右手首に巻き付く。

そのままウイングナイトを手繰り寄せベノサーベルで頭をかち割る!

 

「そんなものか!」

 

ウイングナイトは逆にストライクを引っ張り込み至近距離でダークアローを連射で浴びせる。

 

「使うな。それは俺の戦友の武器だ!」

 

エビルウィップを引きちぎり、ベノサーベルを踏み壊す。

 

「あ、あああ!あああああああ!!!!」

 

<FINAL VENT>

 

今度はメタルゲラスが背後に現われるが

 

<ATTACK VENT>

 

彼方より飛来したダークウイングの進化態ダークレイダーがメタルゲラスを吹き飛ばす。

 

「あと一枚。どうする?大人しく投降するならベントだけはしないでやるぞ。」

 

「だ、だれが!おま、お前なんかに!」

 

「織斑マドカ、利口になろう。例えばそうだな…。

もし仮に、億に一つの確率で、

お前と織斑千冬が誰の邪魔もされず、

最高のコンディションでこの上なくフェアな戦いが出来て、その結果お前が勝てたとしよう。」

 

それはマドカがもっとも望むものだった。

自分の証明。その為に今まで自分は時に亡国機業の、

時にゼイビアックスの犬にまでなって機会を待ち、力を磨いてきたのだ。

 

そうだ。だからこそ自分はまずこの男に勝たなければならない。

そう思い己を鼓舞するマドカ。

何を言われようとどう説得されようと勝たなければならない。

それなら耳を貸すな。

きっとどう取り繕っても殺しは犯罪だとか、

自首すれば罪が軽くなるとか、そんな単純な事しか言わない!

 

「それでその後お前はどうする?」

 

「は?」

 

全く予想外の言葉が出て来た。

 

「全部お前の望む通りに上手く行ったとして、

敵討ちにでも来たケイタ達を、那由他に一の確率だが、

撃退できたとしよう。お前はその後どうするんだ?」

 

「その、あと?」

 

聞いてはならない。認めてはならない。

しかし心のどこかで一欠けらでも認めてしまったそれはするすると容易く入ってくる。

 

「いもしないパパやママにお姉ちゃんを殺したよ!って頭撫でてもらいに行くか?

じいちゃんばあちゃんにお小遣いでもせびるか?」

 

じりじりと処刑台に上がる執行人の様にウイングナイトはストライクに近づいて来る。

 

「結局のところ」

 

「だまれ!」

 

「お前はただお姉ちゃんが盗られたくなかっただけだ。」

 

「うるさいうるさい!」

 

「そんな幼少期特有の独占欲を置いて行かれた寂しさからこじらせて憎しみとはき違えて」

 

「違う違う!そんなんじゃ、そんなんじゃない!」

 

「それしか出来ないから殺す!

結局お前が奪ってきた命も!

お前が費やしてきた時間も玩具貰えないガキがごねるのと変わんないちゃちい動機からくる八つ当たりと大差ないダダだったんだよ!!」

 

「違う!!私は本当に恨んでるんだ!織斑千冬を殺したいほど!殺したいほど!!!」

 

「じゃあ、お前は耐えられるか?」

 

「なんの、話だ?」

 

「織斑千冬は何の対策もしない。」

 

「何に対して?」

 

「なぜなら織斑千冬にとって妹は一夏。弟はケイタとあの三春(クズ)だけだからだ。

捨てた妹なんて初めから居ないならそれが刺しに来るなんて発想は無いんだ。」

 

「ああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

思わず蓮もサードも下のガス管に何かトラブルが起きて爆発かなにかを起こした音かと勘違いした。

それはまどかの喉から出た絶叫だった。

 

<FINAL VENT>

 

三体のビーストが集結しジェノサイダーとなる。

その腹部が変形し、その奥にある底なしの闇が周囲を吸引し始める。

そしてその対角線上にストライク。

渾身のドリルキックを放つ!

衝撃と浮遊感。ウイングナイトはドゥームズデイをもろに受けブラックホールの彼方に消える。

 

しかし次の瞬間!ジェノサイダーがまるで内側から空気を入れられたように膨らんでいき。

 

「████▄▅▅▅▅▅▅▃▃▄▅▅▅!!!」

 

メタルゲラス部分が破裂し、中からバイクモードになったダークレイダーに跨ったウイングナイトが飛び出てきた!

 

(しかしファイナルベントは使ったはずだ!私には、あと一枚!)

 

<FINAL VENT>

 

幸いダメージはそこまででもないエビルダイバーの背中に乗り、ウイングナイトに突っ込む!

ウイングナイトは特に焦った風もなく、ダークブレードをバイザーに戻し、カードをベントイン。

 

<FINAL VENT>

 

ウイングナイトの二叉のマントがドリルの様にマシンを包む。

 

(そ、そんな!まさか、まさかファイナルベントを使わないで脱出したっていうの!?)

 

そんな馬鹿な事!そう思う間もなくマドカはエビルダイバーごと疾風断に貫かれた。

穴の開いた体に遅れて風が吹き抜ける。

 

身体から黒い粒子があがる。

どんどん身体から力が抜けていく。

 

「おねえ…おねえちゃん?どこ……ねむいよぉ……おんぶぅ・・。」

 

よた、よたとデッキが落ちたのも気付かず、歩き出すマドカ。

その虚ろな目には何も映らない。しいて言えば有りもしない自分に優しい誰かでも探してるだろうか?

蓮は再びダークブレードを引き抜くとマドカの割るほどはない胸の間にすーっと一筋の切れ込みを入れる。

 

「おねえちゃん?」

 

「さよならを言え。」

 

そこに左手を抜き手で突きさす。

硬い丸っこい物を確かめると一気に握りつぶす。

グリン!と目が真っ赤に染まりマドカはその場に倒れた。

 

「サード、一夏には、言うなよ?」

 

『はい。』

 

蓮はデッキを回収しその場を去った。




ケイタ「蓮………。」

セブン『何も言ってやるな。どうせアキヤマの事だから汚れ役は自分の仕事みたいに感じてるんだ。その意をくんでやろう。』

千夜「・・・次回、Jorney an ancient city その8」

セブン『え!?あ、あっと、これが明日のリアル!』


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Jorney an ancient city その8

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」

蓮「ストライクを倒した所までだな。」

一夏「今回は私とケイタvsラスからです!」

ケイタ「それではどうぞ!」


1

時間を巻き戻し、ケイタ、一夏vs三春。

二本のゴルトセイバーとドラグバイザーツヴァイ、夜桜に雪片弐型が融合したブレード、夜明が何度も交差する。

ドラゴンナイトが前に出れば一夏が影に徹し、

一夏が切り込めばドラゴンナイトが周囲の鏡を駆使してラスを翻弄する。

 

「この!このお!!やらしい戦いしやがって!」

 

金の羽の様な拡散型のエネルギーを解放して一旦2人を離す。

 

「やっぱりラスの鎧に三春となると2人でもキツいか。」

 

『だが我々から距離を取ったという事は向こうも焦ってるという事だ。』

 

『このまま畳み掛けるぞ!』

 

「ああ!」

 

「了解!」

 

武器を構え再びラスに向かう2人。

 

「来い!」

 

ラスが叫ぶと鏡から三体の鳳凰型ビースト、ガルドサンダー、ガルドミラージュ、ガルドストームが召喚される。

 

「行け!嬲り殺せ!」

 

三体のビーストはそれぞれ得意の得物を構えてラスと共に向かってくる。

ラスは一夏に狙いを定めるとケイタをビーストに任せて一夏に集中した。

 

「喰らえ、喰らえ!喰らえ!喰らえぇええ!!」

 

瞬間移動は使わず先程までと一転アクロバティックな動きで回転しながら連続攻撃を仕掛ける。

 

「う、くぅうう!」

 

二本のゴルトセイバーをX字になる様に構え、夜明ごと強引に壁に押し込む。

 

「守られてるしか価値の無いお前がぁ、出しゃばるからだあ!

そうじゃなきゃ今頃俺は千冬姉も学園も皆も守れてる筈だったんだ!」

 

ラスの忍者の様な仮面の中から人の兄とは思えない様な罵倒が続く。

これが本当に自分と血を分けた双子の兄とでも言うのだろうか?

 

「このままぁ…死ねぇええ!」

 

「させませんわ!」

 

ラスのこめかみに1発の弾丸が撃ち込まれる。

その射線の先に、何十キロも先の上空に居たのは

 

「有効射程距離ギリギリでしたが、レンさんよりは当て易かったですわね。」

 

「セシリア!?」

 

「ご機嫌よう一夏さん。遅れ馳せながら助太刀、いえ助太銃?兎に角助けに参りました!」

 

「言っとくけどセシリアちゃんだけじゃ無いわよ!」

 

立ち上がったラスを押さえ付けるように無数の水の輪が絡み付く。

 

「楯無さん!」

 

「ええ!偶には可愛い後輩にカッコ付けないとね!」

 

ランスの内蔵マシンガンで怯ませる兼煙で目隠しをする。

 

「はあ!」

 

そこにヴィシュヌの鋭い蹴りが決まる!

彼女はタイの代表候補生であると同時に格闘チャンピオンでもあるのだ。

したがってIS戦でもその鍛え上げた蹴りを存分に使った戦いを好む。

 

「手癖の悪い女どもがぁあ!!」

 

「私の場合は足癖ですね!」

 

足並み披露と言わんばかりに的確に急所をついて行くヴィシュヌ。

足払いで思い切りラスを転ばすとコメット姉妹とスイッチ!

 

「調子に乗るな!」

 

瞬間移動で上空に移動し、そこから光弾をばら撒いて一網打尽にしようとするが

 

「うう!この射撃、セシリアか!」

 

「空中遠距離戦はわたくしの十八番でしてよ!」

 

ならば先にセシリアを倒す!再び瞬間移動するラス。

 

「シャルさん!」

 

「オッケー!」

 

「なに!?うおおお!!」

 

移動した瞬間、等間隔に配置されたブルーティアーズが一斉にラスを狙う。

何とか包囲の外に逃げ出そうとするがそこはシャルに妨害される!

 

「デッキがないから何もできないとでも思った!?」

 

盾殺し(シルドスピアー)を無数に食らいたまらず瞬間移動する。

その先に居たのは

 

「おいおい?それはねえーだろ?」

 

「忍者一番刀!ブレイラウザー!」

 

「デンガッシャー!ソニックアロー!」

 

「ドライブレード!ガシャコンバグバイザーツヴァイ!」

 

「ガシャコンブレイカー!グロンバリャム!」

 

青、桃、黄、赤の戦士が連続でラスを斬り付ける。

そして最後に緑の戦士が

 

「仮面ライダーアナザーアギトの力よ!アサルトキック!」

 

「う、あああ!」

 

<GUARD VENT>

 

なんとかゴルトシールドで威力は軽減できたが、

それでも手加減なしのライダーキックはそれなりに効いたようだ。

 

「く、くそ!今度は誰だ!?」

 

「アカライダッ!」

 

「アオライダー!」

 

「キライダーァ!」

 

「モモライダー!」

 

「ミド、ライダー!」

 

「五人そろって!」

 

「「「「「ゴライダー!」」」」」

 

一度武器をしまい秘密戦隊と同じポーズで名乗りを決める五人。

 

「ふざけやがって!」

 

相手にするのも馬鹿らしいとばかりに瞬間移動で消えるラス。

 

「モモライダー。次の奴の移動先は?」

 

「戦場ですらないです。どうやら逃げに入ったみたいです。」

 

「何よ詰まんない!せっかくあたしももっと活躍できると思ったのに!」

 

「そう言うなアオライダー。我々はあくまで繋ぎ。借りを先払いで返してるに過ぎない。」

 

「キライダーの言うとおりだ。アカライダー。次で最後なんだろ?」

 

「お前らはな。俺は最後に寄ってくとこがある。兎に角いったん撤収だ。」

 

ゴライダーはオーロラカーテンを出現させると撤退していった。

 

 

時を巻き戻してドラゴンナイトと三体の鳳凰型ビースト。

 

「くっそ退け!お前らの相手してる場合じゃないんだよ!」

 

「なら手を貸してやるぜ!」

 

「!?」

 

飛来したデストバイザーがガルドストームを、

イクサカリバーの純銀製対ファンガイア弾がガルドサンダーを

影松がガルドミラージュを襲う!

 

「達郎!弾!簪さん!来てていいのかよ!他のみんなは?」

 

「IS使える奴らは一夏を助けに行ってる。」

 

「安心しろ。思わぬ助っ人のお陰で虚さんたちは無事だから。」

 

「だから目の前の敵に集中しよう。」

 

「そっか……しゃっ!俺と弾はあの緑のを!

簪さんは襟巻を、達郎はあの紅色のを、頼めるか?」

 

「上等!」

 

「問題ない。」

 

「行くぜ!」

 

まずアックスvsガルドストーム

戦斧使い対戦斧使いのカードだ。

両者共にハンドアックスサイズの武器だが、ガルドストームは頭の羽飾りを暗器の飛ばしての攻撃も出来る。

果たしてこれがどうでるか。

 

「ふっ!」

 

飛ばされる暗器を走りながら避け、距離を詰めるタイミングをただ待ち続ける。

 

(一、二、三…一、二、三…今!)

 

<STRIKE VENT>

 

遠距離攻撃が止むタイミングでデストクローを召喚し、暗器を全てクローで弾くと、距離を詰めて爪と蹴りの連続攻撃を浴びせる。

 

「これで、投了。」

 

<FINAL VENT>

 

背後から現れたデストワイルダーに引きずられるガルドストーム

その先に待つアックスに貫かれ、高く持ち上げられる。

そして一気に注入された凍結エネルギーに粉々にされた。

 

「クリスタルブレイク。」

 

氷の破片を踏みしめながらアックスは他のメンバーの助太刀に向かった。

 

 

次にイクサvsガルドサンダー

 

「喰らえおらぁあああ!!!」

 

ガンモードにしたイクサカリバーを乱射しながらガルドサンダーを追う。

武人肌のビーストなのか、ガルドサンダーは一度は距離をとったが

火炎を吐きながら戻ってきた。

 

「いいぜ、ぶった斬ってやる!」

 

ソードモードに戻したイクサカリバーとガルドサンダーの鞭が火花を散らす。

イクサは一瞬のスキを突き、懐に潜り込み、

腹部にイクサカリバーを押し当て、荷電粒子をチャージ!

 

「イクサ・ジャッチメント!」

 

特殊振動に弔電劇を纏った一撃にガルドサンダーは爆散した。

 

「たく。ファンガイアにアドベントビースト。

こんだけ敵がいんのによくまあ人類は年中無休で共食いしてるよな。」

 

最後にドラゴンナイトand黒影vsガルドミラージュ!

 

「ケイタ!」

 

「おう!」

 

一度サバイブモードから通常モードに戻ったドラゴンナイトは

ドラグセイバーとドラグシードを装備。

タンク役になり、スピードタイプの黒影がアタッカーになる。

 

ガルドミラージュは二つの円盤状の武器で影松とドラグセイバーをはじいた。

その攻撃は中々鋭く、両肩に装備したドラグシールドはもう傷だらけだ。

 

「どうする?そろそろ決める?」

 

「ああ、俺が囮になる。必殺技の用意を」

 

「まかせろ!」

 

ケイタはドラグシールドを両腕に装備しなおし、ガルドミラージュに突っ込む!

正面から受けて立つガルドミラージュ。

ドラゴンナイトと激突した瞬間、

その背後から現れた黒影の影松に一刺しで心臓を貫かれ絶命した。

 

「やったぜ!」

 

「楽勝!」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

蓮「ラスは、逃がしちまったか。」

セブン『仮面戦隊達も気になることを言っていたが、まずはラスの問題が先だな。』

ケイタ「次回、Jorney an ancient city その9!次回もみんなで!」

蓮「KAMEN-RIDER!」



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Jorney an ancient city その9

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

一夏「ガルド三兄弟と戦ったとこまでだね。」

弾「やーっと俺もかっこいい所見せられたかな?」

ケイタ「まだまだ色々ありそうだから張り切りすぎないでくれよ?」

一夏「そんなわけで修学旅行はまだまだ続きます!」

弾「さてさてどうなる?」


戦闘を終えた一同は武装を解除すると一番初めにケイタ達が襲われた場所に集合した。

 

「みんな大丈夫か?」

 

「あ、ケイタお兄ちゃんたち。こっちは大丈夫だよ。」

 

「織斑三春は尻尾を巻いて逃げたよ。」

 

「それで、レンさんは?」

 

「蓮?大丈夫だとは思うけど」

 

「相手はあのストライク。一筋縄じゃ行かない。」

 

心配そうにするメンバーにクーリェが大丈夫だよ。という。

 

「もうあの子たちの苦しそうな声聞こえないよ。」

 

「え?じゃあアキヤマがあのおっかねぇ合体ビースト倒しちまったってことか!?」

 

「なら心配な無いな。ところで鈴たちは?」

 

「さっき連絡したからそろそろ来ると思うけど?」

 

「束さん謹製のゴーレムⅣを倒せたらね!」

 

「そのふざけた口調は!」

 

「何処だ出てこい篠ノ之束!」

 

ケイタが叫ぶ。見ると何処からともなく白いスモークが流れて来ていた。

 

(これは……セブン、吸ったらマズイ感じか?)

 

《いや、だがISのも私のもスキャナーは当てにならないと思ってくれ。》

 

デッキを起動し、Vバックルを出現させ、

耳に神経を集中させる。

何か重い物が上空から落ちてきた。数は大体10機!

 

「宇治松さんとクーリェちゃんを守れ!敵は大体10人だ!」

 

ケイタがそう叫ぶと、その声を当てにしてか

ケイタ、簪、弾、達郎にとんでもないプレッシャーがかかり動けなくなる。

 

「な、なんだこれ!?」

 

「重力!?」

 

「キラキラ★ポーン♪束さんお手製の空間圧作用兵器試作8号こと『王座の謁見(キングス・フィールド)』!いかがかな?ちょっとだけ出力高めでお送りするよん?」

 

手に持ったステッキのダイヤルをカチカチと調節する束。

より4人にかかる過負荷が重くなる。

 

「てんめ……!この、堕うさぎぃいい!」

 

達郎が何とか腕を上げてイクサナックルを起動しようとするが

 

「あ、それが青空の会の玩具か、ついでに君たちのベルトも貰っちゃうねぇ~。」

 

そしてまずケイタの左手のデッキを盗ろうとする。

しかしそれを邪魔するように出席簿が、あの出席簿が束の頭めがけて投擲される。

 

「まさか!」

 

「あの出席簿は!」

 

「ちーちゃん!」

 

日本刀を構えて仁王立ちする千冬が居た。

 

「ずいぶん勝手をしてくれたな束!

私の生徒から私物を没収していいのは私だけだ!」

 

俺らIS学園に在学してねぇよとか、

そもそもアンタからなんも学んでねぇよとか弾と達郎は思ったが口にはしなかった。

 

「ちーちゃん!始めようよ!心躍る最高のゲームを!」

 

「生憎そんなものに興味はないな。」

 

そう言って千冬は鞘に日本刀を収めると、

今だ地面に這いつくばる達郎の腰からイクサベルトをはぎ取る。

 

「お、おいまさか!」

 

「変身!」

 

<レヂイ!>

 

イクサナックルの認証スイッチを狙って蹴り上げ、左手でキャッチ。

そのままスロットにセット!

 

<フィ・ス・ト・オ・ン!>

 

千冬はイクサに変身した。

 

「ちーちゃんはそんなの着なくても、てか着た方が動きずらくない?」

 

「お前にはいいハンデだ。」

 

「言うじゃない!」

 

イクサカリバーと王座の謁見で大立ち回りを始めた。

千冬イクサが駆ければそれだけで地面が抉りあがり、

束が壁を飛びながら戦えばそこらじゅうがヒビだらけになる。

 

「なんじゃこりゃ?」

 

思わず、というかそれしか逆に言葉が出てこない。

これが今代の人類最強と世界最高の人間の戦いか、と。

 

「おーい!ベルト盗られた俺と腕上がんなくて変身出来ない弾は生身でいるしかない絶体絶命だから千冬さんとあの兎が化け物同士仲良くやってる間にIS使える二人に俺たちを引きずってって欲しいんだけど?」

 

「達郎ナイスアイデア!」

 

「それ採用。」

 

ケイタと簪は赤龍改と弐式を展開し、2人を引きずっていく。

 

「あれどっちが勝つと思う?」

 

「俺が知るか。」

 

「てかあの調子で戦われるとイクサベルトの方がダメになるんだけど。」

 

「無理な駆動でってこと?」

 

一体弁償代幾らになるんだろ?と明後日の方向の心配をする達郎。

あんなアクション映画に見せかけたサイコホラーをリアルで見せつけられれば誰だって現実逃避もしたくなるが。

 

「ん?」

 

「どったの簪さん?」

 

「霧が晴れた。」

 

「ホントだ、センサーが復活してる。ん?」

 

見ると不自然な光景だった。

束が寄こしたであろう無人ISが全機固まっており、

千冬イクサと束と、ラウラによく似た少女の首元にダークブレードを突き付けるウイングナイトサバイブモードがいた。

 

「さっさと兵隊をどかせ。言っとくがこいつの黒鍵は俺の忠実なる相棒が制圧済みだ。」

 

「くっ!覚えてろこの似非アメリカ人!」

 

悔しそうに束は退却していった。

 

「生まれは日本だが国籍はれっきとしたアメリカ国籍だ。」

 

そう言って蓮はダークブレードだけ残したまま変身を解除する。

千冬もベルトを外して元の姿に戻った。

 

「アキヤマ、そいつは?」

 

「お久しぶりです織斑先生。

ケイタが来るかもとは言ってましたけどわざわざ引率に?

他校の不良(しのののたばね)に生徒の身内とずいぶん修学旅行っぽくなってきましたね。」

 

「そんな修学旅行が現実でそうそうあってたまるものか。」

 

「それは全面的に同意します。」

 

 

夜、特に観光もせず過ごした一同は、府内のとあるホテルの一室、

千冬の部屋に集合していた。

全員は無理だったので、ケイタ、蓮、鈴音、ラウラ、楯無、クーリェの6人だ。

 

「名前は?」

 

「クロエ・クロニクルと申します。

網島ケイタ様と手塚海之様にはもう既にご挨拶を済ませています。」

 

「網島、本当か?」

 

「ええ、公園で篠ノ之束に喧嘩売られた時に。」

 

「よく無事だったな。」

 

「あいつタフさも技もからっきしだったし。

千冬さんも俺らの事気にしながらじゃなきゃ勝てたんじゃないですか?」

 

「!?……ここでは織斑先生と」

 

「それだとこれがIS学園の集まりですって言わんばかりでしょ?

むしろ千冬さんがここでは俺をケイタ君って呼んでくださいよ。」

 

むぅと珍しくケイタからの反撃に驚く千冬。

 

「まあ、呼び方云々はあとにして、

改めて言うまでもないと思うが

お前のあの黒鍵とかいう能力全振りISは俺のサードが制圧した。

俺の半径7メートル圏内にいる限りお前は力を使えない。

もし首尾よくそこから抜け出せてもお前の血の匂いは

ダークウイングに覚えさせておいた。つまりお前は

ダークウイングの美味しいおやつって訳だ。

逃げようなんて考えるなよ?」

 

「……はい。」

 

クロエは表情一つ変えずにはきはきと答えた。

命を握られてるはずなのに怯えや恐れは見当たらない。

 

「束なら助けに来てくれるとでも思ってるのか?」

 

「はい。束様はあなた達衆愚ごときに負けません。」

 

「アンタは篠の束がその衆愚一人にタイマン、

ステゴロでギタギタにされてるのを見てたはずだけど?」

 

「そういうケイタ様が束様の王座の謁見の前に

手も足も出なかったのもばっちり見ていますが?」

 

意外とムキになるタイプらしく、ケイタの挑発に挑発で返してきた。

 

「質問は以上でしょうか?」

 

「待ってくれ!一つ!一つある!」

 

ラウラが前に出る。

珍しく緊張した面持ちで言う。

 

「あ、あなたは余りにもその、私と」

 

「似ている、でしょう?そのはずです。

私はあなたになれなかった存在、出来損ないの出来損ない。

紛い物の偽物の命。ドイツが造った醜悪な人造人間(ホムンクルス)。」

 

目を開ける。クロエ。その右目は黒い眼球に金色の瞳をしていた。

ラウラの隠され為に非常に似ている。

 

「つまり私は」

 

「姉さん!」

 

ラウラは一切話を聞かずにクロエに飛びついた。

 

「会いたかったよ姉さん!名字違うけど姉さん!

想像よりいい匂いするよ姉さん!私より胸無いけど姉さん!」

 

「は、話を聞いていましたか!?私はあなたの姉なんかじゃないです!

それと胸は全く関係ありません!まだ発育途上です!」

 

「そう冷たくしないでくれ姉さん。私は一昔前まで、

教官に悪影響を及ぼすと思って一夏やケイタ達を蛇蝎のごとく嫌っていた時期があるのだ。」

 

ラウラが転校してきたばかりの頃の事だろう。

あの時のラウラは千冬のような攻撃性と近寄り難さがあった。

その時に比べればずいぶんと丸くなったものだ。

 

「それで、後々考えてみたのだ。

何故あんなにも一夏たちを目の敵にできたのかと。

そして一つの結論に達した!」

 

「どんなだ?」

 

「私もお姉ちゃんが欲しかった!これに尽きる!」

 

どうやらラウラもすっかりケイタ達に毒されたらしい。

何やら自信満々に語っている。

 

「そしてどんなに願っても待っても無理だと思った姉さんが目の前にいる!

もう私は、自分を抑えられん!姉さーん!!」

 

ラウラは元気よくクロエにダイブした。

姉さん姉さんと呼びながら抱き着きくすぐり離さない!

 

「うわあちょっと!ひゃあ!

ど、どこに!あは!あはははははは!

どこを触って!あははははははははは!!!!」

 

「あらあら。すっかり仲良くなっちゃって。」

 

姉妹愛、と書かれた扇子を広げる楯無。

 

「あたしも妹とかいたらあんなだったのかしら?」

 

「鈴は台湾に従姉妹いるじゃん。」

 

「アイツは別よあいつは!」

 

「俺は一人っ子だからよくわからんが、

兄弟のスキンシップってあんなに激しいものなのか?」

 

「いや、ラウラと簪さんのお姉さんが激しすぎるだけだな。」

 

「ちょっとなんで私もなのよ!

私は簪ちゃん成分が足りなくなると死ぬだけで普通よ!」

 

平常運転、と書かれた扇子と

いい加減名前で呼んで、と書かれた扇子を広げる。

 

「うわこいつ分かってたけど気持ち悪!」

 

ザク!思ったことを口にしてしまいがちな鈴音が一撃。

 

「こいつそこら辺のジャンキーよりタチ悪ぃな。」

 

ザクザク!意外と楯無の事嫌ってる蓮から一撃。

 

「そんなんだから簪さんに尊敬こそされるけど

信頼も信用もされずに邪険に扱われるんですよ。」

 

ザクザクザク!ケイタがトドメとばかりに連射する。

 

「お姉ちゃん大丈夫?」

 

「ああクーリェちゃん!私に優しいのはあなただけよ!」

 

頬ずりしながらクーリェに抱き着くに楯無。

少し苦しそうだがクーリェも嬉しそうだ。

 

「簪さんにもあんぐらいの距離感ならいいのに。」

 

「無理だろ。」

 

「あの!皆さん!私を!忘れていませんか!?」

 

「おーっとそうだった。クロニクル。

なんにせよお前は人質なわけだから、俺たちと行動してもらうぞ?」

 

「そうなると六人班出来ちゃうから班を組みなおさないとダメねー。」

 

そんなこんなで今夜はお開き、クロエは蓮たちの部屋で過ごすことになった。

 

 

全員が居なくなった後、千冬はベットに身を投げると見慣れない天井を見つめながらため息をついた。

超ド級のそれはそれは深いため息だ。

 

(織斑マドカのことは、ばれただろうか?

仮面ライダーに変身して倒されたものは消滅する。

箒みたいに……なら直接戦ったアキヤマには顔が割れてない可能性も)

 

そこまで思ったところで電話が鳴る。携帯電話ではない。

部屋の固定電話だ。

 

「はい、もしもし?」

 

『アキヤマです。お聞きしたいことが。』

 

「ど、どうした?」

 

『アンタらの目的は?』

 

「……も、目的?一夏が、生徒が心配以外に何が」

 

『アンタ個人じゃない。織斑という存在の、

織斑(モザイカ)計画の、project ZERO=DIVERの最終目標だ。』

 

千冬は電話を切り、電源を引っこ抜き、携帯電話の電源を切った。

もう、アキヤマには知られている。

このままでは確信に迫られるのも時間の問題だ。

 

「一夏は、一夏だけは、私が守る!絶対、絶対に!」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「お姉ちゃんが羨ましい、か。私もお姉ちゃんが居なかったらそう思ってたのかな?」

弾「俺は蘭が弟だったらどうだったか気になる時有るけどな。」

ケイタ「それ本人の前では絶対言うなよ?」

弾「分かってるよ。次回、Jorney an ancient city その10!」

一夏「これで決まりだ!」


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Jorney an ancient city その10

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは?」

クロエ「私がアキヤマ様に首輪付けられて捕虜にされた所までですね。」

ロク『なんでぇ、アキヤマの坊主にそんな趣味が?』

ケイタ「いやロク?あくまで比喩だからな?」

クロエ「なんにせよ私に決定権がないのには変わりありません。」

ロク『で、今回も京都か?』

ケイタ「そうなるね」

クロエ「それでは、どうぞ。」


1

翌朝、修学旅行3日目。

 

「あ、千冬さん。おはざす。」

 

「おはよう網、じゃなかったケイタ君。全員揃っているか?」

 

「はい。今班分けを発表する所です。」

 

第一班

楯無(班長)、芝浦、虚、弾、クーリェ。

 

「蓮君はクロエちゃんと離れられないから、

クーリェは私達で引き受けるわ。」

 

第二班

達郎(班長)、鈴音、セシリア、千夜、ヴィシュヌ。

 

「遠距離のセシリアさんに、近接格闘の私ですか。」

 

「即席コンビですが、よろしくお願いします。」

 

「俺のイクサも忘れんなよ?」

 

第三班

千冬(引率)、シャル、ラウラ、ファニール、オニール

 

「私とコンスタンで遠近両方ということか?」

 

「まあ、教官ならIS無しでも戦えますからね。」

 

第四班

石橋(班長)、簪、ロラン、マシュ、立香

 

「私と簪、妥当な所だな。」

 

「健もロランも変に競わないでよね?」

 

「大丈夫ですよ。プライベートと任務はしっかり分けますから。」

 

第五班

ケイタ(班長)、一夏、蓮、心愛、クロエ

 

「ラビットハウス組集合ってか。」

 

「本当は姉さんと回りたかったが仕方ない。

スキンシップはホテルでだけにしておこう。」

 

「やめなさい!やめて下さいお願いだから!

あれだけは本当にもうやめて!!」

 

「ラウラ何したの?」

 

「さあ?」

 

「それでどうするんだ?まさかこのまま観光か?」

 

「そのまさかですよ。人の多い所は誰が見てるか、来てるか分からないですけど向こうも派手なことは出来ないはずですから。」

 

「それにいきなり目的が変わったら怪しまれますから。」

 

そういう訳で行き先を決めた班から行動を開始した。

 

「それじゃあ俺たちはどうする?」

 

「そうだねー、クロエちゃんって今着てるの以外にお洋服持ってる?」

 

「いえ、着の身着のままですが…。」

 

「じゃあまずは服買いに行こうか。」

 

一同はショッピングセンターに向かった。

 

「で、例によって俺たち男は荷物持ちの置いてきぼり。」

 

「まあ仕方ない。クロニクルの奴も着せ替え人形にされてる所をそう多くの人間に見られたいわけじゃないだろう。」

 

因みにクロエはケイタと蓮の予想通り一夏と心愛の着せ替え人形にされていた。

 

「やっぱりドレス系がいいかな?」

 

「じゃちょっと寒いかもだけどこっちのワンピースとかは?」

 

「でもそれだと革靴よりサンダルの方がいいよね?」

 

「あー、確かに。ヘイゼロワン!秋、流行りにファッション!」

 

『俺はsiriじゃない。』

 

「あ、あの!」

 

「なにクロエちゃん?」

 

「何か希望とかある?」

 

もう既に本日七着目の、白と黒の横縞のシャツにグレーのシップパーカーにシャツタイプのデニムジャケットのクロエがうんざりした顔で言う。

 

「もうこれでいいです。」

 

「駄目。」

 

「あと2、3着選ばなきゃ!」

 

『あきらめろ。こうなった二人は止まらない。』

 

「服なんか何でもいいじゃないですか」

 

『おいお前!一夏にそれは禁句だ!』

 

焦るゼロワン。しかしもう既に遅かった。

 

「…………。」

 

「え?あ、あの、一夏様?」

 

「どうでもいい、どっちでもいい、なんでもいい……。

そんなわけないでしょ!!!」

 

『ああ、やってしまった。』

 

「な、え、ええ?私そんなマズいこと言いましたか?」

 

『ああ、もう俺たちにはお前の骨を拾う事しかできない。』

 

「クロエ!あなたは何もわかってないわ!これから少なくとも三時間!

この店の服メンズも含めて全部試着する気でやるわよ!」

 

「う、嘘でしょ?え、あ、あああああーーー!!!」

 

 

「なあ蓮、今誰かの断末魔が聞こえなかったか?」

 

「気のせいだろ。それに他人の心配してる場合か?」

 

「いいや、残るライダーは俺に蓮に簪さん。それから三春といまだ正体不明のキャモ。」

 

それ以外のライダーはデッキを破壊されたシャルロットを除き、全員ベントされている。

復活するとすればデッキに何か細工をされてるらしいストライクぐらいだろうが、それも可能性としては低いだろう。

 

「あと五人。数ではこっちが勝ってるが、向こうにはゼイビアックスや無数のアドベントビーストが控えていることを考えるとこっちが圧倒的に不利だ。」

 

「それでも俺たちを消そうとしてくる以上は戦うしかない。」

 

それにこちらはサバイブモードになれるライダーが二人だ。

完璧な連帯さえできればラスやゼイビアックスにも勝算がある。

一夏や千冬が共闘してくれれば心強いが、

相手が身内であれば知らずに手加減してしまって無理だろう。

 

「まさに戦わなければ生き残れないってやつだ。」

 

自分のデッキを取り出す2人。

今まで対峙し、手を取り合ってきたライダーたちの顔が浮かぶ。

 

「手塚や山田先生の仇、とってやらないとな。」

 

「ああ、後ついでに布仏妹や他の奴らもな。」

 

「ふふ、頼むぜ相棒!」

 

「おう!」

 

『我々も忘れるなよ?』

 

『わたくし達も最後までサポートさせていただきます。』

 

「頼りにしてるぜ。」

 

そしてしばし沈黙。趣味と呼べるような趣味の無い蓮と、

自分の興味のないことは基本無味無臭でもまったく気にしないケイタ。

会話が全く続かない。

 

「……。なあ蓮。まじめな話良いか?」

 

「なんだよ。」

 

「一夏も居ないし丁度いいかなと思って。

お前は、織斑マドカは何者だったと思う?」

 

「それ、きくか?」

 

「ああ、そのうち知っとかなきゃいけないことだ。」

 

「そうか、あくまで俺の推測の域を出ないが、

幾らホムンクルス研究が進んでるからってドイツもそう簡単にボーデヴィッヒやクロニクルみたいなのを造れるとは思えない。」

 

「なんでラウラ達が出て来るんだよ?」

 

「まあ聞け。俺は少なくともあいつらはドイツだけの力で造られてないと思ってる。

そう思ったのは、まだコンスタンがシャルル・デュノアと名乗っていたころにあるデータを入手していたからだ。」

 

「あるデータ?」

 

「サード、送ってやれ。」

 

『了解です。』

 

セブンにサードからデータが送られる。

以前ポリーから報酬として受け取った量産型キカイダー01のデータだ。

 

「これって!この織斑計画って!」

 

「少なくとも軍事目的の計画だ。

機械の人造人間と生物の人造人間を使ったな。」

 

「まさか、お前一夏が兵器だとでも言うのかよ!」

 

「そうは言って無い。その目的で造られたと考えればあの学習能力や戦闘力の高さに説明がつくってだけだ。確証はない。」

 

「……でもそれ、限りなく事実だろ?」

 

「ああ。少なくとも俺とサードは確信してる。」

 

『はい、まだゼロワンや他の皆様にはお伝えしていませんが』

 

『いずれ話さなければならない、か?』

 

『はい。』

 

「わかった。もしその時が来たら、俺に言わせてくれ。」

 

「本気か?」

 

「千冬さんは絶対自分から言わない。だから俺がやる。」

 

ケイタの目をじっと見つめる蓮。

一点の曇もなく、引き金を引けと言われて引ける目をしている。

 

「わかった。お前に委ねよう。」

 

そこで話が終わったタイミングで女子たちが戻ってきた。

 

「おかえり。クロエさんすっかり遊ばれたみたいだね。」

 

「つかれ、疲れました………。」

 

「まあ、女の買い物は男の百倍長いからな。」

 

「本当ですよ……。」

 

『あなたもその女性のはずですが?』

 

「そもそも買い物に行く機会自体余りありませんでしたし…。」

 

憔悴したクロエを休ませるためにケイタ達は一度フードコートに向かった。

 

「アクセとかも揃えたかったけどそれはまた次回か。」

 

(な!?こ、これより先がまだある、ですと!?)

 

《ケイタ、クロニクルの表情から戦慄と恐怖の感情を受信した。

どうやら一夏たちはこの午前中で彼女を買い物嫌いにすることに成功したらしい。》

 

(だな。)

 

速めの昼食のハンバーガーを頬張りながらケイタはクロエに同情するしかできなかった。

 

「それでこの後どこ行く?集合までずいぶん時間あるけど?」

 

「この量の服を持って歩くのもきついし、荷物の所に置きに行くか?」

 

「だね。」

 

「あ、あと歯ブラシとかなんかもこの旅行終わっても一緒に暮らすかもだし必要だよね?」

 

「あー、確かに。」

 

『まだラビットハウスには一部屋余っていたはずだ。』

 

「え?」

 

まさかそんなとこまで一緒に居なければならないのか?

まあ、当然と言えば当然だが。

 

『あれでしたらラウラ様もおよびいたしましょうか?』

 

「いいな。姉妹水入らずで過ごすのアリ」

 

「お願いしますもう買い物で文句言いませんからそれだけは勘弁してください!」

 

息つく間もなく悪魔の提案をした一夏に懇願するクロエ。

皆がだんだんクロエの扱いを心得始めた。

 

「ああ、さようなら私の平穏な生活…。」

 

「その通りだ。一応捕虜みたいなもんだからな。

飯炊きぐらいはしてもらうか?あとサードのボディ磨きとか。」

 

「え?ボディ磨きはともかく、料理、ですか?」

 

急にさっきとは違う意味で不安げな顔になるクロエ。

まさか、とかつての地獄を回想する四人。

 

「もしかして、料理苦手?」

 

「はい。束様は、その、細胞レベルで特殊な身体なので食べても平気だったのですが」

 

(なんだその評価?)

 

《ほめて……るんでしょうか?》

 

《多分違うぞ。》

 

因みにどんな料理なんだ?と意を決してケイタが聞くと

 

「私はサラダを作ったつもりだったんですけど」

 

緑色のスライムみたいになったんです。

そう言った瞬間、一同困惑しか出来なくなった。

もはや何なのだろう?

セシリアはまだ見た目は普通だった。

だから調味料の使い方とか、料理にいれてはいけない物を教えるだけでよかったのだが

 

(なんだよそれ?料理、なのか?)

 

(スライムって、何の燃料作ったんだよ?)

 

(一夏ちゃん教えるの大変そう)

 

(み、皆なんでこっち見てるの!?

教えないよ!ないない!いくらなんでも全員は面倒見切れないよ!

もう料理教室は勘弁だよ!シャルぐらい器用ならアドバイスぐらいしようも有るけどそのレベルはもう来世の才能に期待してぐらいしか言えないから!)

 

(なんんでしょう?自分で言っといてなんですが、

ものすごく失礼なこと思われてるような気がします。

特に一夏様に。そういえば料理には一過言あるんでしたっけ?)

 

そんなこんなで一同の空気が幾らかマシになった時。

 

『!? 一夏、今すぐ荷物をまとめて逃げろ。

大砲の攻撃に似た振動はを探知した。』

 

「た、大砲?そんなものがなんで?」

 

「いや聞こえる。」

 

「ケイタ君?」

 

「断続的に手当たり次第にって感じで撃ってる。」

 

『ふむ…確かにケイタの言う通りだ。』

 

「え!すごい!ケイタ君耳良いね?」

 

「兎に角ここを動くぞ。」

 

荷物を分担して持ち、裏手の方の出口から外に出る。

 

「心愛、シールのカードは持ってるか?」

 

「うん。いつも持ち歩いてるけど」

 

「サードを預ける。クロニクルから目を離すな。」

 

「皆は?」

 

「俺たちは三春を止める。」

 

『さっき防犯システムに侵入して調べたが、カメラに写っていたのはラスだった。』

 

『悔しいことに奴はかなり強い。

3人がかりでも圏外(ベント)出来る保証がないのに非戦闘員(なまみのやつら)は連れて行けない。』

 

「わかった、クロエちゃんは任せて!」

 

「ああ、サード。頼んだぞ。』

 

『承りました。』

 

心愛とクロエは3人から荷物を受け取り逃げていく。

ケイタと蓮はデッキを一夏は待機形態のチェーン付き懐中時計を構える。

 

煙と火の中から、ラスが現れる。

 

「おー、おー、おー。カスに雑魚に身の程知らず。

勢揃いじゃないか?あの喧しいのがいないな?」

 

目の前で引き裂いてやろうと思ったのに。

とゴルドセイバーをバチバチと交差させるラス。

 

「心愛ちゃん居なくてもお前なんか俺ら3人で充分だ!」

 

「これで負けたら言い訳出来ないね。」

 

「ラスのアーマーを汚した事を後悔しろ。」

 

ケイタと蓮はいつものポーズを、一夏は2人に合わせて蓮と同じポーズ左右逆のケイタのポーズを取り

 

「カメンライダー!」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「着身!」

 

サバイブモード、単一世界・両極双心のアーマーを直接展開した。

 

「行くぜ!」

 

「ええ!」

 

「おう!」

 

三人で円陣を組み、瞬間移動と連続攻撃を多用するラスに対応する。

 

「どうしたぁ!!ちょっとは攻めてこい!」

 

「普段守る守ると呪詛みたいに言ってたやつがどの口で言いやがる。」

 

「それじゃあご期待に応えましょうか!」

 

「だな!」

 

<<TRICK VENT>>

 

2人のナイトはトリックベント、シャドーイリュージョンを発動し合計6人に分身し、ラスに迫る!

 

「言っとくけど増えた分力は6分の1なんて生温いことはないぞ!」

 

<<SHOOT VENT>>

 

分身のうち二人がダークアローとメテオバレットを発動し、遠距離から。

残り4人と一夏が徒手か剣で近距離から攻める!

 

「この、小細工しやがって!」

 

<CONFINE VENT>

 

まずカードを1枚。ドラゴンナイトの分身を消滅させ

 

<STRANGE VENT>

<FREEZE VENT>

 

続いて二枚目。目の前にいたウイングナイトの分身を凍結させ、一振りで砕き倒す。

 

「これで4人!」

 

金の熱風と共に嵐のような連撃を繰り出すラス。

遠距離からのウイングナイトの支援もあって凌いでいく3人。

 

(でもこれでジリ貧だろ!まず、一人!)

 

「させるか!」

 

レイピア・カウスと夢現が一夏の首筋めがけて振るわれたゴルトセイバーを受け止める。

 

「簪さん!ロランさん!」

 

「お待たせ。」

 

「ココアにクロエと合流出来てな。おおよその事情は把握してる。」

 

「助かる。」

 

「ロランさん蓮と遠距離から頼む。簪さんは中距離カバー。

俺と一夏であいつを抑える!」

 

バイザーのブレードを展開し、夜桜と共にゴルトセイバーを抑える。

2人の攻撃の合間を縫って簪の機関砲にロランのスピーシー・プランター、ウイングナイトのダークアローが火を噴く!

 

「このぉ!カスどもが目障りに群れるな!」

 

一斉に羽根型のエネルギー弾をまき散らすラス!

全員に一度吹き飛ばされ転がされる。

 

「もう一発!」

 

「そうはいかない!」

 

いち早く復帰した簪はすぐにミサイルポッド、山嵐がエネルギー弾を相殺する!

 

(このまま突っ込む!)

 

不動岩山を展開し、夢現を構えラスの方に向かうが

 

「雑魚が!」

 

ラスは不動岩山をいともたやすく片手で破ると簪の首を掴む!

 

「このまま頸椎をへし折ってやる!」

 

「あぐぅううあぐぅうう!!か、カメンライダー!」

 

アックスに変身し、その際のバリアを展開し、脱出するが

 

「はあ!」

 

ラスの全力の蹴りはライダーの変身結界さえも貫いた。

勢いこそほとんど殺されていたが吹っ飛ばされた簪は壁に叩きつけられ気絶してしまう。

 

「簪!この!」

 

猛るロラン。しかしそれくらいでラスが倒せてるならスティングはベントされてない。

 

「だったらなんだ!」

 

地面に光弾を放ち、煙幕を作ると宙返りを討ったラスは思い切りロランの背中を斬り付ける!

ロランも派手にふっとばされ動かなくなるロラン。

 

「マジか!二人とも!」

 

「落ち着け、バイタルは確認できる!目の前の敵に集中しろ!」

 

発破をかけた蓮とケイタはラスに向かう。

やや焦りこそあるが、ライダーの戦闘において一日の長がある二人の方がぎりぎり有利だ。

 

(この場合、私はどうしよう?)

 

別にロランと簪が下手を討ったとは思わない。

レイピア・カウスのような遠近即座に切り替えられる武器は瞬間移動に対応できるし

不動岩山ももう少し固ければあの攻撃だって防げるはずだ。

 

(……ねえゼロワン。今思いついたことがあるんだけど。)

 

《なんだ?………………正気か?ふむ…いいだろう。やるだけやってやろう!

バーチャルブーストフォン、ソリッドドライバー!アナライザー!メディック!》

 

現れた3体のバーチャルブーストフォンを着身していくゼロワン。

 

《……余った。》

 

(ゼロワンまだ!?)

 

急かす一夏に仕方なくサードは余ったメディックの普段足につけてるパーツを頭の横に猫耳みたいにつけると

 

《打鉄弐式、オーランディ・ブルームのシステムにアクセス。

これより白式、黒法との同期を開始する!》

 

走り出す一夏。それに合わせて二機のISの装甲が一度バラバラになり、簪とロランのISを引き寄せながら再構築される!

 

「はぁ!?なんだそれ!そんな事まで出来るのか!?」

 

「マジかよ!」

 

ラスの剣戟を強化した不動岩山で受け、剣形に変形した夢現と雪片弐型で連撃を浴びせる!

 

「まだまだ!」

 

機関砲とレイピア・カウスを融合させた銃剣で射撃を交えた斬撃を浴びせ、トドメのキック!

 

「があああああ!!!!クッソ!何だってんだよ!」

 

「まさかあいつらのISまで融合させちまうとは、名づけるなら四聖王騎(フォーエレメント)統一結束(ワンアッセンブル)ってところか。」

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

クロエ「話には聞いていましたが、フォンブレイバーはここまで出来るんですね。」

ロク『いや本来の用途じゃねーけどな?』

ケイタ「さー反撃の始まりだ!次回、Jorney an ancient city その11!」

クロエ「雷落として差し上げます!」


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Jorney an ancient city その11

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

達郎「なんか一夏のISが超変身したとこまでだな。」

鈴「一夏の携帯余ったパーツ適当に着けてたけどあれで平気なの?」

ケイタ「平気らしいよ?うちのセブンだって時々つける場所間違えそうになるし。」

達郎「アイツら機械じゃねーのかよ?」

鈴「なんか見てるとトランスフォーマーのカセットロン思い出すわね。」

ケイタ「確かに。」

達郎「それよか続きだ。これ以上待たせちゃ悪いぜ。」

鈴「さてさてどうなる?」


四聖王騎(フォーエレメント)統一結束(ワンアッセンブル)だと?

ふざけやがって!白式は俺の物だ!それを勝手にごちゃごちゃかき混ぜて別物にしてんじゃねぇ!」

 

ゴルトセイバーの連続攻撃を両肩の不動岩山のバリアでいなしながら踊る様に躱し続ける一夏。

ここで一度今一夏のISがどの様な状態に有るかを説明しなければならない。

 

まず単一世界・両極双心をベースに両肩にやや小型化した不動岩山があり、オーランディ・ブルームの装甲が変化したプロテクターやスラスターが金色のバンドの様な呼吸式排熱ベルトを兼ねた結束パーツで固定されている。

 

更に箒の紅椿の様に打鉄弍式とオーランディ・ブルームのスラスターを変形させた展開装甲を装備し、補助人造筋肉と合わせての高速移動を可能にしている。

言うなれば回避特化型の合体だ。

 

もしシャルのラファールとセシリアのティアーズと合体したなら砲台にも狙撃手にもなれる遠距離特化型に、

蓮の黒翔とヴィシュヌのドゥルガー・シンと合体すれば近距離短期決戦型になっていただろう。

 

《つまり俺というフォンブレイバーを介してISとISを同調させることにより一夏は近くの仲間と状況に応じて実質無限のカスタマイズ形態を手に入れた事になる。が、弱点が無いわけじゃない。》

 

まず白式と黒法は元々親和性が高く、もうゼロワンが着身しなくても直ぐに合体できるが、四聖王騎(フォーエレメント)統一結束(ワンアッセンブル)は近くのISを無理やりくっつけてるだけなのでどうしてもアンバランスになってしまう。

 

従ってゼロワンとISにも負荷がかかる。

あまり長くは使えない。やり過ぎるとエネルギーの過剰使用で内側から壊れてしまう。

 

《だからこそ俺自身のボディを参考にした排熱機能をつけたのが功を成したようだな。》

 

ゼロワンのボディは全フォンブレイバーの中でも高性能の部類に入る。

1番初めに作られたフォンブレイバーではあるが4月にラムダ以外を全て取り替えるとなった時に、流石に宇宙での活動を想定しているNEXTモデル程ではないが高機能型に改修されている。

その際、前のボディにはなかった様々な機能が追加されているのだ。

 

《そんな話はともかく、一夏。あまり長くはこの姿を維持出来ない。なんとか隙を作って網島ケイタとレン・アキヤマに繋げるぞ。》

 

(待ってゼロワン。もしかしたらこれが最後のチャンスかもしれない。)

 

《なんのだ?》

 

(三春を、ただ黙るしかなかったこのクソ兄貴との因縁を断ち切れる最後の!)

 

《最後の兄妹喧嘩か?ふん、良いだろう。

二十分は持たせられるがそれが限界だ。》

 

(十分でいい!その代わりもう一個我儘聞いてくれる?)

 

《なんだ?》

 

(余ったパーツでデモリッションのデータから新しい武器作れない?)

 

《やってみよう》

 

一夏は夜桜と雪片弐型を構え、攻めに転じる。

剣では互角かも知れないが、体術では体格、アーマーの性能で勝るラスが勝るため、打撃技は避け切れないものはアーマーの硬い部分で受ける。

 

「妹のお前が兄の俺に剣で勝とうなんて、百億年早いんだよ!」

 

調子に乗ったラスがゴルトセイバーで一夏の剣を弾く。

 

「貰ったぁ!死ねぇえ!」

 

「・・・・・・・か。」

 

「あ?」

 

「うるせえ!バーカ!」

 

背中と踵の展開装甲を起動して逆上がりの様な宙返りで顎に多段蹴りをたたき込み、ようやく仕上がった武器をアーマーに押し当てる。

 

「零落白夜ノコ切断!」

 

丸鋸型のIS用ブーストフォンデモリッションはラスにまともなダメージを与えた。

胸から派手に火花が散る。

 

「こ、この!」

 

「まだまだ!」

 

銃剣も召喚し直し、右手にノコ、左手に槍の変則両手持ちでラスを追い詰める!

徐々に、だが確実にラスはスタミナを、エネルギーを削られていた。

 

「こうなったら!行けビースト共!一夏の大切な物を全部壊せ!」

 

周囲の鏡から三体の鳳凰型ビーストが生身でいる簪とロランに襲い掛かる!

 

「しまった!蓮!」

 

「ああ!」

 

戦いを見守っていた二人が向かうが間に合うだろうか?

 

「達郎!なんかわかんないけど良いタイミングみたいよ!」

 

「鈴!俺を思いっきり投げろ!」

 

頭上から、建物の上から二つの人影がワイヤーを使って飛び降りてきた。

うち一人が小柄な方に遠心力で飛ばされる。

右手にはイクサナックルが、その腰にはイクサベルトが装着されている!

 

<レヂイ!>

 

「変身!」

 

<フィ・ス・ト・オ・ン!>

 

「開幕から決めさせてもらうぜ!イクサ・ジャッジメント!」

 

ロランに襲い掛かろうとしたガルドストームは一撃で爆散させられた。

 

「な!ば、ばかな!」

 

「馬鹿はお前だよ三春。こんなことして何になる?」

 

「その声、お前達郎か!?」

 

「正解。ズバリ救援ってやつさ。」

 

「達郎!喋ってないでこっち手伝って!」

 

「あ、まず!」

 

一方鈴音はISが無いため、達郎から借りた対ファンガイア用携行武器のファンガイアバスターで戦っていた。

拘束用ワイヤーやイクサカリバーより威力は劣るがそれでも急所を貫ければファンガイアを絶命させられる純銀製対ファンガイア弾を発射できる優れものだ。

 

それでも流石に一人で動かない人を守りながら戦っていては本領発揮とはいかない。

ウイングナイトのダークアローが火を噴く!

残った二体の鳳凰型ビーストのもとにドラゴンナイトとイクサが向かうまで時間を稼げた。

 

「このまま援護する」

 

「く、くそう!こんなこんな筈じゃ!!」

 

「だまれ!」

 

デモリッションが左のゴルトセイバーをはじき、

 

「最期ぐらい!」

 

銃剣が右のゴルトセイバーをかちあげ、

 

「その不愉快な声を出すんじゃないこの自己中が!」

 

両手に持った夜桜と雪片弐型を合体させた剣でバイザーを叩き斬る!

これでもうカードは使えない。

 

「一夏これ!」

 

鈴からファンガイアバスターが投げ渡される。

一夏はセットされていたワイヤーをラスの首に巻き付ける。

すぐ斬られるだろうが、一瞬でも瞬間移動を封じれただけで十分だ!

 

「はああああ!!!!」

 

「こっちも決める!」

 

「その命、俺が貰う!」

 

一夏がラスを、ケイタがガルドサンダーを、達郎がガルドミラージュを空に向かって吹っ飛ばしたのはほぼ同時だった。

 

<イ・ク・サ・ナッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・アッ・プ!>

 

「おらぁ!」

 

ガルドミラージュの腹部をイクサのブロークンファングが破壊し

 

<FINAL VENT>

 

「ドラゴンファイヤーストォオオオオオオムッ!!!!!」

 

ドラグランザーの連続火炎弾がガルドサンダーを焼き尽くし

 

「いっけぇええええええーーーーー!!!!!!!」

 

一夏の零落白夜と満壊極夜の二重技がラスを切り裂く!

3人が着地すると同時に大爆発を起こす。

 

「やったのか?」

 

「油断はできないよ。ほら。」

 

炎の中からボロボロの三春が出て来た。

服はあちこち破けて焦げていたし、体中傷だらけだが、それでもまだ立てている。

 

「あああ……ああああああ!!!一夏ぁ…これで、これで勝ったと思うな!

万全のコンディションに回復したとき!それがお前の最後だ!」

 

そう言ってデッキを構える三春。

しかしいつまでたっても起動しない。

 

「なんでだ!何で反応しない!?そんな、そんなはずはない!これは俺の力だ、俺だけが使いこなせえるんだ!!」

 

「いいやそれは違う。」

 

心底失望、と言った感じで現れたスーツ姿の女の声は、

その喉から出るはずのない男の声だった。

 

「ゼイビアックス!?」

 

「織斑三春。お前がラスのデッキを使えたのは私が本来のラス、ヴィック・フレイザーの生命エネルギーを与えていっただけだからに過ぎない。

まあ、織斑千冬の劣化コピーとは言え妹のマドカ君ともども少しは使えると思ったのだが、それっぽいもので妥協するのは良くないという教訓を残す結果になったな。」

 

「俺が、あの出来損ないの妹をかばうような耄碌した姉の劣化コピー?

取り消せ!今すぐその発言を取り消せ!!」

 

「残念ながら消されるのは君だ!」

 

左手だけ変身したゼイビアックスの腕が三春の身体にめり込む。

 

「そうだ、冥途の土産に良いことを教えてやろう。」

 

(bgm EXCITE 三浦大知)

 

「なぜ君達には両親が居ないのか!

なぜ君たりには六歳以前の記憶がないのか!

なぜ織斑千冬は君たちに何も語らないのか!」

 

「何言ってんだよアイツ?」

 

「どうゆうこと?」

 

「まさか!」

 

「それ以上言うな!」

 

『やめろー!』

 

「織斑!そうなの付く者はすべて旧人類を淘汰、全滅させ、新人類による新たな人類史を始めるための計画、project ZERO=DIVERにより造り出された人造人間だからだぁ!!!」

 

ゼイビアックスの笑い声が響く。

呆然としたまま膝を付く三春、そして一夏は

 

「う、嘘だ。私をだまそうとしてる!!」

 

頭では何とか否定しようとするが、姉の人間離れした力も、

いろんな辻褄も全く覚えのない両親の温かみも、それで説明がついてしまう気がした。

 

「嘘じゃないさ!その証拠に三人の男性IS操縦者がいるんだよ。

君たちは計画の一環で使われた人間をあらゆる環境に適応させる因子、モザイカ因子を埋め込まれている。だからISにも乗れるし、サバイブモードに変身しても変身拒絶反応(リジェクション)が起きないのさ!」

 

「!? 馬鹿な…一夏の従兄だっていうケイタはともかく俺はそんなものいつ!」

 

「米軍に入ったころだろう?

ドイツでは人造人間に投与して失敗したそれを天然の人間に使って初めて成功したのが君という訳だ!」

 

そんなまさかと思う一方で軍ならやりかねないとも思える。

実際蓮自身も出来すぎてると思ってたのだ。

 

「君たちは自分の意志で戦っていたつもりかもしれないが、

それは結局モザイカ因子の持つ人類を絶滅させるための力を付けようとする本能でしかないんだよ!」

 

高笑いを挙げながら去っていくゼイビアックス。

そこに残された一同。

 

「な、なあケイタ?」

 

「達郎ごめん。少し、少し自分と向き合う時間をくれ。」

 

鏡の奥に去って行くケイタ。

それに黙って続く蓮。

 

「い、一夏!」

 

「鈴、これ2人に返しといて。」

 

一夏は鈴音に簪とロランのISを渡すと空の彼方に飛んで行ってしまった。




仮面ライダーラス 脱落。
残り 4人。

次回、Killer of human species その1


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Killer of human species その1

セブン『前回までのinfinite DRAGON KNIGHTだが…』

ゼロワン『網島ケイタはどうした?』

サード『それが、こんな手紙を残して』

ケイタ「探さないでください。自分と向き合う時間を下さい。」

ゼロワン『まあ、そうなるだろうな。』

サード『わたくし達と違い人間のボディは安易に改造できる物ではないですからね。』

セブン『モザイカ因子がどの様な物かもまだ分からないからな。』

ゼロワン『それでは、今回のエピソードだ。』


1

京都府内のとある病院にて。

ニュースを聞きつけた千冬班は集中治療室の前まで来ていた。

 

「鈴ちゃん!達郎君!み、三春は!三春はどうなんだ!?

一夏達は無事か!?」

 

「三春は、まだわかんない。」

 

「一夏達は、てか五班全員音信不通。

まあ、あんなこと知った後なら当然っちゃ当然だけど。」

 

「あんな、こと?まさか!」

 

「知っちまったんだよ。モザイカ因子のこと。」

 

顔から一瞬で血の気が引いた千冬が膝をついて倒れた。

比喩でもなんでもなく崩れ落ちた。

 

「な!?きょ、教官!しっかりしてください!」

 

無理だろう。達郎と鈴音は思った。

今までなんとか妹と弟から隠し通して来た特大の秘密がバレてしまったのだ。

結果論だが、千冬のして来たことが全て無駄になった訳だ。

 

「鈴、モザイカ因子って?」

 

状況を飲み込めてないシャルロットが尋ねる。

後ろのコメット姉妹も同様らしい。

 

「ま、知らなくて当然よね。アタシ達も今だに信じれてないし。」

 

「けど、納得できちまうんだよな。」

 

話すかどうか。最初は迷った2人だが、全員に教えるべきと思い、千冬をラウラに任せて5人は食堂に向かった。

ケータイでグループ通話を行う。

 

『もしもし。こちら楯無班。セシリアちゃん達と合流出来たわ。あなた達は大丈夫?』

 

「達郎班と千冬班です。幸いこっちは怪我人ゼロ。石橋班は?」

 

『五班の援護に行ったお嬢とローランディフィルネィが怪我しましたけど大事には至ってない、でいいんだよな?』

 

「ああ。で、現在ケイタ班が全員音信不通。」

 

それぞれ班の現状を確認する。まだ死人こそ出ていないが、この旅行もそろそろ打ち切りだろう。この3日で色んなことがあり過ぎた。

 

「まず、皆に話とかなきゃいけないことがあるわ。」

 

「俺たちも、あのゼイビアックスとかいう奴が言ってた事だし信じたわけじゃないけど」

 

2人は千冬と一夏が強い理由、そしてケイタ達3人がISを使えた理由を説明した。

 

『にわかには信じ難い話だけど、ラウラちゃんにクロエちゃんと前例を、いえ順番的には織斑姉弟妹の方が先なのかしら?兎に角あながち否定できないわね。』

 

『それに、織斑(モザイカ)計画というのも聞き覚えがあります。』

 

「マシュさんほんと?」

 

『はい。今から10年ほど前、ザイカの戦士を迎撃するために作られた人造人間に、この場合はアンドロイドに助けて貰った事が有るんです。』

 

「一夏達みたいに滅ぼそうとする者に対して、守ろうとする物もあったってこと?」

 

「シャルロット。次一夏達を殺人マシーンみたいに言ったら友達でも容赦しないわ。」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

『それでモザイカ因子をもった子達と心愛ちゃんにクロエちゃんが行方不明と。』

 

「無事だろうけど、心配だな。」

 

 

ベンタラという空間は広い。

まさに鏡の向こうのもう一つの現実と言うかのように果てしなく広い空間が広がっている。

 

ケイタは、ドラゴンナイトはサバイブモードを解除しないまま海を見つめていた。

どうやら魚は普通にいるらしい。

 

(少し前なら興味を持ったかもだけど、今はそんな気分じゃねーや。)

 

もしかしたらこの体はもう人の理解を越えた化け物に近いのかもしれない。

更に悪い妄想は膨らんでいき、もしこの体が人造物だったらと思えてくる。

 

「いっそ聞いてみるか。」

 

スマートフォンを出すと長らくかけていなかった連絡先にかけてみた。

 

『はい、網島です。』

 

「もしもし可憐か?ケイタだけど。」

 

『お兄!こんな昼間にどうしたの?』

 

「お前こそ学校行って無いのかよ。」

 

『今日は創立記念日だからね。』

 

「そっか。可憐は立派になれよ?」

 

『!?……お兄どうしたの?一夏お姉の美味し料理食べすぎて舌と頭馬鹿になったの?なんか言ってることきもいよ?』

 

「別に…お前は今度定期試験と俺と一夏から小遣い要求する算段でも考えとけ。母さんか父さんいるか?」

 

『それはお小遣いくれるってことかな!?期待しちゃうよ!

お父さーん!お兄から電話!そ、珍しくお兄から!』

 

しばらく間があって

 

『もしもし?』

 

今日は在宅だったらしい父が出た。

知ってるとしたら父だろう。あの機械音痴でいまだにケータイ一つ使いこなせていない母が知ってるとは思えない。

 

「もしもし父さん?」

 

『どうしたんだいケイタ君?こんな昼間に』

 

「聞きたいことがあってさ、モザイカ因子ってなに?」

 

『!!?…………漫画の話か?』

 

「とぼけなくていいから。」

 

しばらく沈黙が続くとあきらめたようなため息が聞こえた。

ローレンシア海溝より深いため息だ。

 

『どこで、知った?』

 

「おもちゃ屋の二回でも政府の秘密組織でもいいでしょ?

もう一夏も三春も、なんなら達郎も鈴も知ってる。」

 

またまた深いため息が聞こえる。

一体どういう意味の溜息なんだろうか?ため息つきたいのはこっちだ。

 

『ケイタ君、本当に知りたいか?』

 

「身の振り方も考えなきゃだからね。」

 

『わかった。話そう。』

 

ケイタの父はぽつりぽつりと語りだした。

本当に話すのをためらう様な遠慮がちな話し方で、

ようやく絞り出すように

 

 

モザイカ因子はもともと人造物ではない。

ある特定の血族が持った特別な才能を引き出せる要素である。

 

『本来なら何でも、古くからこの国に使えてきた更識っていう家しか持ってないはずなんだが、網島家はその抜け忍、みたいなのの子孫らしい。』

 

つまりケイタと簪たちは超遠縁だが親戚と言うことになる。

いい加減名前で呼べと楯無は言っていたし、こんど楯無姉さんとでも呼んでやろうか?

 

「で、そのモザイカ因子を欲しがってる奴らに俺らの血かなんか渡しちゃったわけ?」

 

『ああ、実はお前が産まれたばかりの頃、騙されて借金まみれで、それをどうにかしてくれる条件である学者たちに依頼されて僕の父さんの遺髪とか、僕や生まれたばかりの君の血液とかを提供したんだ。』

 

知りたかったのはモザイカ因子の事だけだったが、何故網島家に育ち盛りの子供を五人も面倒見れるだけの財力があったかが分かった。

 

その時の協力礼金が破格だったんだろう。

その代わりに提供したモザイカ因子と網島のDNAを基に造られたのが一夏たちの世代のモザイカの子ということになる。

 

多分モザイカ因子だけで造ったわけじゃないだろうから従姉妹ぐらいの血のつながりってだけで、見方を変えればケイタは織斑兄弟の父親ともとることが出来るかもしれない。

 

「だから俺の誕生日が八月の頭で一夏と三春の誕生日が九月の終わりなのか。」

 

だとしたら織斑(モザイカ)計画の研究者は大体一か月で一夏たちを造ったことになる。

 

「モザイカ因子はあらゆる環境に適応できる因子だって聞いた。

それだと父さんにISが使えないのはおかしくない?」

 

『モザイカ因子は本来そんなに便利なもんじゃない。

世代交代を重ねるごとに薄れて来てる。けどケイタ、お前は特別だ。

学者連中が言うには、お前はモザイカ因子を使いこなした先祖から見て三代先程度にモザイカ因子を持っている。』

 

つまり先祖返りという訳か。だとするとケイタは

 

「たまたま強く生まれただけの子供ってわけ?」

 

『そうだ、お前は一夏ちゃん達と違って何の手も加えられていない。』

 

「そっか、教えてくれてありがと。

次帰る時は友達連れてって良い?」

 

『ああ、一夏ちゃんや千冬ちゃん、あと三春君も連れてきてあげなさい。』

 

「わかった。」

 

通話をきりため息をつく。

 

「蓮、いるんだろ?」

 

「ばれたか。」

 

背後の木の陰から変身を解除し、

普段通りの青のジーパンに黒いシャツ、白いジャケット姿だ。

 

「立ち聞きとは趣味が悪いな。」

 

「そういうつもりは無かったんだが、お前も何か掴んだみたいじゃないか。

 

「そう言う蓮は何調べてた何を掴んだんだ?」

 

「お前がモザイカ因子について調べるなら、俺はそれを使ったproject ZERO=DIVERの方を調べようと思ってな。かなりの情報を入手できたよ。」

 

「教えてくれるか?」

 

「もちろん。だが覚悟しろよ?ざっくり言えばお前が赤ん坊の頃に抜き取られた血は、人類滅亡の片棒を担ぐところだったんだからな。」




セブン『いかがだっただろうか?』

サード『ケイタ様とレン様は意外と大丈夫そうですが……』

ゼロワン『問題は一夏達だ。それにクロエ・クロニクルと篠ノ之束がこのことを知らなかったとは思えん。』

セブン『我々がまだ知らない事実は数多く有る様だ。』

サード『ならばバディのためにやる事は一つですね。』

ゼロワン『Killer of human species その2。』

セブン『これが、明日のリアル!』


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Killer of human species その2

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

心愛「ケイタ君と蓮君は大丈夫みたいで良かった。」

クロエ「しかし一夏様達はどうでしょうか?」

ケイタ「そりゃ、俺なんかよりよっぽどショックだろうね。てか、それも心配だけど二人はどこで何を?」

心愛「それを語るのが今回です!」

クロエ「それでは、どうぞ。」


1

三人のお陰で逃げおおせた心愛とクロエは荷物を預けると、早速移動を重ねた。

 

「どうしますか?この隙に亡国機業の残党が襲ってこないとも限りませんよ?」

 

「前は味方してくれたけどなぁ」

 

「前?いつの話ですか?」

 

「ほら、ストライクってライダーを倒したとき。」

 

「ああ、アキヤマ様に首根っこ掴まれながら見てましたがあの時三春様に全IS戦力をぶつけられたのはそういう事だったんですね。」

 

義理堅いベルベットのことだ。

貸し借りをチャラにしたかったんだろう。

 

「しかし、そう何度も都合よく敵と目的が一致するものでしょうか?」

 

「だよねー。ん~よし!ここは一つ変装しよっか!」

 

「変装、ですか?」

 

「そ、ほらあそこに都合よくブティックが」

 

心愛がそういった瞬間、クロエのほんの一時間前の記憶がフラッシュバックした。

 

「いやです。行きません!あそこには行きません!絶対何があっても!」

 

「え!?クロエちゃんどうしたの?」

 

「どうしたもこうしたも無いです!服なんて!

服なんて何でも良いじゃないですか!嫌だ離せ!その手を放せ!」

 

「く、クロエちゃんどうしちゃったの!?ちょっと見るだけで終わるから!」

 

「そう言って三時間はかかるんでしょ!!?

知ってますよ女は皆買い物が長いんですよ!そんなに迷ったところで買える数限られてるんだからサックっと決めろってんですよ!」

 

まばらにだが周りから拍手が起こる。

どうやら一夏のアレはクロエを服屋恐怖症にしてしまったらしい。

 

「わかった!服は買いに行かないから!」

 

「………本当ですか?」

 

「嘘つかないよ!ほら、行こ!」

 

騒ぎすぎて見つかってはいけないので早速移動する。

携帯電話も電源を切っておいた。

 

「サード君はどうする?」

 

『こんなことも有ろうかと、バーチャルブーストフォンのアナライザーを着身しております。ご安心を。』

 

「ナイス!」

 

取り合えず電子的に追跡される心配はなさそうだ。

 

「しかし自分の心配はして残ったケイタ様達の心配はしないんですね。」

 

「心配?もちろんしてるけど、ケイタ君達なら大丈夫だよ。」

 

ケイタ君はすごいんだから!

そう言って心愛は嬉しそうに語りだした。

 

ビーストと戦って三対一でも負けなかったこと。

地味にバータイムでチップ取得率一位なこと。

ISの授業の点は悪いのにIS戦では一番動きが滑らかな事。

 

もちろん蓮や一夏たちの事も

 

蓮は暇があれば車やバイクのメンテナンスをしてること。

一夏は実は結構朝に弱いこと。

簪は子供のころからピクルスを食べれないこと。

ロランはチョコ菓子造りがプロ並みに上手いこと。

楯無は結構肩凝っていてたまにマッサージしてあげると喜ぶこと。

 

「あとセシリアちゃんは今だにサンドイッチに苦手意識があってね、鈴ちゃんは餃子対決でケイタ君に勝てないってすっごい悔しそうに……クロエちゃんどうしたの?」

 

「随分と、楽しそうにご友人のことを話しますね。」

 

「皆自慢の友達だからね!」

 

「私はそういったのとはずっと無縁なので少し…珍しく感じます。って、どうしました心愛様?まるでこの世の終わりの様な顔をなさって。」

 

「クロエちゃんは私と友達じゃないの!?」

 

思わず面食らった。この束様に名前も覚えられていない様な凡骨は何を言ってるんだ?

友達?私と、あなたが?

 

「…心愛様、勘違いをなさらぬ様に申しておきますが、私の主人である束様はあなた方と敵対します。間違いなく。言わば私とあなたは敵同士。

本来消して合い入れてはならない者同士。

それを友達と呼びますか?それこそ貴方が本当に大事にすべき人間からヒンシュクを買いますよ?」

 

「クロエちゃんは優しいね。

けど、大丈夫だよ!私のモットーはあって3秒で友達!

つまりクロエちゃんと友達になるのも………えっと、あれ?なんて言ったっけ?」

 

『心愛様、不可抗力です。』

 

「そうそれ!だから問題ないし、敵だからってやっつけなきゃいけない訳じゃないんだよ!」

 

「敵なのに倒さなくていい?」

 

「じゃあクロエちゃんは束さんが敵になったらやっつけたい?」

 

「そ、それは…」

 

「蓮君だってインサイザーをベントした後は辛そうだったし、ケイタ君はそれが原因で蓮君と戦っちゃった後は落ち込んでたよ?」

 

「!……あの、レン・アキヤマがですか?」

 

「だからきっと、皆上手に言えないだけでそーゆー感じなんだよ。それに!前蓮君が言ってたけど!争いがなければ心は生まれないが、心を掌握すれば戦争はこっちに都合がいい様に止まるんだよ(声真似)、って!」

 

「良い話に見えて凄く汚い話ですね。

侵略国家の本音じゃないですか。まあ、レン様らしいと言えばらしいですが。」

 

『わたくしのバディをまるで過激派テロリストの様に言うのをやめて頂けますか?事実とはいえ言っていい事と悪い事があります。』

 

「否定しないんですね?」

 

愉快な奴らだ。こんな調子をあの非凡だらけの空間で続けられるあたりあ心愛も一角の人物なのかもしれない。

 

「ほぉ…君がそんな顔をするなんてよっぽど良い事があったと見えるよ。いつも私が行くときは不機嫌そうだからね。クロエ・クロニクル君。」

 

不意に何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえてくる。

 

「この声!ゼイビアックス!」

 

クロエが叫んだ瞬間、周囲のあらゆる物を映すものから無数のアドベントビーストが出現し、人々を襲い始めた。

 

「ヴェアアアアアアアア!な、何!?急になんで!」

 

「ゼイビアックスの攻撃です!逃げましょう!」

 

「わ、分かった!サード君!」

 

『了解です、周囲の被害状況、廊下の距離などのデータを基に最短ルートを提示します。』

 

サードのナビに従い、瓦礫を避け、人、ビーストを躱し、出口に進んでいく。

 

「無駄なことはやめたまえ。君たちは逃げられない。」

 

どれだけ逃げてもゼイビアックスは鏡越しに追いかけてきた。

 

「生身でISを封じられた君ではこのビーストをどうしようもできない。

ならば選択肢は一つだ。仮面ライダーになれ。」

 

そう言うゼイビアックスの手には最後の、黄緑色のデッキが握られている。

 

『カメレオンの紋章(ライダーズクレスト)?まさか!』

 

「……はい、私が仮面ライダーキャモ、らしいです。」

 

「そうだったんだ……。」

 

「なんども取引を持ち掛けたんだよ。

私のもとで働いてくれとね。だがいつも釣れなく断られてしまうんだ。」

 

「当然です。私の主は束様だけです!」

 

そうかい。とぶっきらぼうに言いながら鏡からゼイビアックスが出て来る。

 

「ッ!?心愛様、サードと逃げてください。

奴の狙いはたぶん私です。サードとなら逃げれます。」

 

「そしたらクロエちゃんは!?」

 

「囮ぐらいにはなれますよ。」

 

「でもそしたら!」

 

「これが最善策です!……最期に友達が目の前で死ぬとか嫌だから言ってるんですよ。」

 

「え?クロエちゃんそれって……。」

 

自分でも少し驚いた表情をしながらそれも悪くないというように笑うクロエ。

下手くそながらケイタが束と戦った時に取っていたファイティングスタイルをとる。

 

「ははは!美しい友情だな。だが全部無駄だ。

服従しないなら死あるのみだ!」

 

ゼイビアックスが二人に光弾を放つ!

 

「走って!」

 

持っていたペットボトルを投げつけてみるが大して威力を殺せない。

 

(ここで終わりですか……ッ!!!)

 

自分の身体に穴が開くのを覚悟し身構えるが

バシュン!と割り込んだ何かが光弾を吸い消す。

 

「今のは、満壊極夜?」

 

『ということは!』

 

「一夏ちゃーーーっ!!!!?」

 

左手に真っ黒な装甲を纏った一夏に駆け寄る。

その顔は、まるで感情も力も感じられない無しか浮かんでなかった。

 

「ふっふっふ!驚いた!?驚いたよね?それよりビックリした?」

 

そう言って上機嫌でピクニック前の子供の様に小唄でも歌いそうなぐらいいい笑顔でスキップしながら現れたのは、篠ノ之束だ。

 

「た、束様?一夏様に何を?」

 

「なにって専用の調整を施してモザイカ因子に素直なようにしてあげただけだよ?すなわち人類抹殺のための力を得るためにより強い敵と戦うって言うね!」

 

『な、なんてことを!』

 

「い、一夏ちゃんはお前の玩具じゃないんだぞ!」

 

「は?下等な虫がうざいんだけど?」

 

ギョロ!っと束にねめつけられる心愛。

それだけで地面に足の裏を縫い付けられたみたいに動けなくなる。

 

「ヒィ……………ッッッ!!!!!」

 

《生存本能を持たないはずの仮想生命体である私でも感じるこのプレッシャー!生き物としてのランクが違う!》

 

「さて、外野が黙ったところで、一夏ちゃん!その甲羅野郎をやっつけちゃって!」

 

束の声に呼応するように一夏の全身を濡羽色の、艶のある黒のアーマーが覆っていく。

 

「ふむ、前の単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)の方がまだ品があったな。

醜悪な操り人形、力だけでなく戦う動機まで貰い物になるとここまでになるか。勘違いしきった我執とは言え自分で考えた動機で戦った織斑三春の方がまだ好感が持てるな。

名づけるなら孤独王座(ロンリーロード)死黒(ブラック)惰騎(ナイト)、と言ったところか。」

 

天才の部品となった一夏と、かつてオータムと呼ばれたエージェントの化けの皮を被ったゼイビアックスの戦いの火ぶたは切って落とされた。




ケイタ「おい、まじかよ……」

心愛「あんな、あんな事って!」

クロエ「なんて、なんてこと。束様ならやりかねませんけど幾らなんでも!」

ケイタ「じ、次回、Killer of human species その3…ギリッ」

心愛「青春スイッチオン!」


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Killer of human species その3

セブン『前回までのinfinite DRAGON KNIGHTと行きたいのだが、ケイタ?ケイタのやつ一体どこに?』

ラウラ「お、落ち着けケイタ!落ち着くんだ!」

ケイタ「落ち着いてられるか!あの糞兎!殺す!混んでこそ息の根を止めてやる!」

シャル「それで問題は解決しないから!一夏の洗脳は解けないから!ケイター!」

セブン『………そ、それでは本編だ。』


「これが、お前の造ったISの末路だ。」

 

「あ、あぁ………そんな!そんな馬鹿な!なんでアイツみたいな男なのに何でかIS動かせていっちゃんに気に入られて調子乗ってただけの奴に!」

 

一夏による制御を取り戻した孤独王座(ロンリーロード)死黒(ブラック)惰騎(ナイト)は崩れ落ちるともとの白式に戻り、待機形態になる。もう、彼女は戦えないだろう。

 

「それがわからないから、お前は負けたのさ。」

 

無数のビーストを蹴散らして戻ってきた蓮が静かに言う。

束にとっては蓮もまたケイタ同様理解の外だった。

こんな本当の意味で自分のシナリオに首を突っ込みかき乱し、この状況に持って来たこの男も何者なのだ?

 

「ただの男子高校生だよ。ちょっとISに乗れて惚れた人間(しんゆう)の恋路を応援したいだけのな。」

 

心愛とクロエを守るように立ち塞がるウイングナイトサバイブモード。

その先には束と動けなくなった一夏を挟んでゼイビアックス。

もう逃げ場はない。

 

「それでは、仕上げと行こうか。」

 

そう言ってゼイビアックスはゆっくりと束に近づいて来る。

 

「く、くそぉ!来るな来るんじゃない!

お前分かってるのか!?この束さんの頭脳がどれだけスーパーで希少かわかってるのか!!?」

 

「わからないな、三流の思考なんて。」

 

ゼイビアックスは束の首を掴み上げると捻じ込むように、螺子込むようにケイタさながらの口撃を放った。

 

「パパやママに教わらなかったか?悪い子になっちゃいけないって。

嘘つき、我儘、卑怯者。そうゆう悪い子ってのは本当の悪い大人の格好の玩具(どうぐ)なんだよ!」

 

首を掴んでいた腕から伸びた爪が束の身体を食い破り、一滴残らず生命エネルギーを吸い上げる。

束は枯れ木の様に干からびると簡単に砕けてしまった。

 

「束様!」

 

「あ、おいクロニクル!」

 

思わず飛び出たクロエに、ゼイビアックスは残った束の服の中にあったステッキ、王座の謁見を拾い上げる。

 

「さて、クロエ君。答えを出してもらおう。

篠ノ之束への忠誠を貫き復讐を果たすか、私に忠誠を誓い血の一滴までカーシュに捧げるか。」

 

ステッキを拾い上げるクロエ。その顔は

 

「は、ははははは!あーーーーーッッッッははははははははははは!」

 

嗤っていた。笑っていたのだ。心の底から。

まるでもう何もかも吹っ切れたとでも言うように。

 

「ならばぁ、答えは一つです!」

 

手に持つステッキを腿でたたき折る。

 

「あなたに!忠誠を!誓おおおおおおお!!!!!!」

 

「何っ!?」

 

「クロエちゃん………。」

 

「ふっふっふっふっふっふ……はーっはっはっはっは!

だから下等生物(にんげん)は見てて飽きない!良い!

実に良いぞクロエ君。受け取れ!」

 

黄緑色のデッキが投げ渡される。

クロエはそれを受け取ると、ウイングナイトに向き直り、Vバックルを発動!

パチン!と右手の人差し指と親指で音を鳴らし

 

「KAMEN-RIDER!」

 

バックルをセット!

黄緑色のアーマーに車輪のような複眼。

爬虫類を連想させるそのライダーは最後の戦士。

 

「存分に踊り狂え、仮面ライダーキャモ!」

 

何でこんなことになってしまったのか、

それは少し時間をさかのぼって説明しなければならない。

 

 

ケイタと蓮は一夏を探しながらベンタラを歩いていた。

今のところだが鏡に一夏は映らない。

 

「なあ蓮。モザイカ因子についてはなんとなくわかったけど結局project ZERO=DIVERってなんなんだ?」

 

「そうだな、一言でいえば『今の人類環境破壊と化しててムカつかね?そら、さっさと滅ぼして新人類繁栄させたろ!』ってやつだ。」

 

「その為に態々モザイカ因子を探し回って人造人間量産したってわけ?」

 

「ああ。前に学校を襲撃してきたキカイダー01とかもその副産物らしいぞ?

より効率的に旧人類を抹殺するためのな。」

 

「それがなんで戦争の道具になってるんだよ。

結局愚かな旧人類とやらの業の一部になってるじゃんか!」

 

「篠ノ之束のせいだ。

あいつが、奴らが造りたがってた新人類が天然で生まれちまったから計画は凍結になったんだ。

それからSHADOWや亡国機業みたいな戦争屋に情報が流れて、ゼロダイバーの遺産は今じゃすっかり戦争の道具だ。ヒューマギアみたいに人の役に立ってる技術も無くはないが、奪われた命の方が多いだろうな。」

 

全く世も末だなとケイタは思った。

まあその人類絶滅計画のおかげでケイタは一夏と出会えたのだが。

 

「蓮、急いで一夏を探そう。俺は、俺がアイツに真実を話す。」

 

「ああ。そのためにも急ぐぞ!」

 

 

その頃一夏はどこかの高層ビルの屋上にいた。

左手にはナイフが握られ、自分で切りつけたのだろう右手は血だらけだ。

しかしもうとっくに乾いており、鼻血を受け止めた後の様に、手に地を縫っただけの様になっている。

たちまち完治したのだ。

 

「ゼロワン。私のこれって……例のモザイカ因子ってやつのせい?」

 

『おそらくな。思えば網島ケイタもレン・アキヤマも戦闘後のダメージが抜けるのが早い。お前ほどではないがモザイカ因子の恩恵があったのだろう。』

 

「恩恵、か。」

 

一夏に言わせればそれは呪いだった。

一生身体について周り、もしかしたら自分の子供にも残してしまうかもしれない忌むべき力。

 

(私、どうしたら……)

 

「暗い顔してちゃ駄目だぞ、いっちゃん!」

 

「!? 束さん、なんでここに?」

 

「ネットの目撃情報とか点定カメラを頼りに。

ま、束さんにかかれば昨日の朝飯前だよ。」

 

まあ、篠ノ之束はやってのけるだろう。

今更その程度驚くに値しない。

 

「それで、束さんは何でここに?」

 

「そりゃあ大大親親友友の可愛い妹である一夏ちゃんに頼みごとがあったからさ!」

 

「頼み事?」

 

「そ、ずばりね。束さんにとって邪魔な奴、皆殺してほしいんだ!」

 

懐から取り出したシャープペンシル大の大きさのスイッチが押されると、視界の左上に浮かんでいたゼロワンのフェイスパターンが消えた。

 

「え?」

 

驚く間もなく次々にシステムが消えていき最後には視界も真っ黒に塗りつぶされる。

 

(なにこれ!?体が、身体が消えてくみたいに!や、嫌だ!ケイタ助ーーーーーーーーーーーー)

 

「一夏!」

 

がくりと一夏の首が落ちた時、ケイタと蓮は到着した。

 

「篠ノ之束がなぜここに?」

 

「それはね、黒法に仕込んでたモザイカ因子活性剤を使うためだよ。」

 

「モザイカ因子活性剤?」

 

『それだけではない。あの機体からゼロワンの存在を受信できない。

織斑一夏をゼロワン共々道具にする、自由意思を奪うプログラムも仕込まれているはずだ。』

 

「は、非人人のド畜生が!」

 

2人はデッキを構え、ポーズをとり

 

「カメンライダー!」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

仮面ライダーに変身した。それと同時にそれぞれドラグセイバーとウイングランサーを装備する。

 

「一夏とゼロワンを返してもらうぞ!」

 

「返すも何も、お前ら皆束さんの実験動物(おもちゃ)だよ、図に乗んな!」

 

「こっちのセリフだ!」

 

ドラゴンナイトは意識を失った一夏に、蓮は束に向かっていく。

 

(流石は世界最高の人間篠ノ之束。

ラスやストライクほどとはいかんが、なかなかどうして隙が無い!)

 

ウイングランサーと王座の謁見で打ち合う。

以外にも束はかなりの手練れだ。無手ではケイタに劣るだろうが、剣を持てば織斑千冬ともいい勝負なんじゃないだろうか?

 

(そういやイクサに変身した織斑千冬と互角に戦ってたな!

だがこんな畜生外道に負けるほどレン・アキヤマはやわじゃないぞ!)

 

スピードを上げる。側面の部分で打撃をはじき、たまに繰り出されるキックはジャンプやかがむことで回避。

攻撃には斬撃に突きを織り交ぜ責め立てる。

 

「ほらこっちこっち!」

 

「待て!」

 

何処からかとりだしたハンググライダーで飛び去る束。

ウイングナイトはそれを追ってビルから飛び降りた。

そして落下しながらカードをベントイン。

 

<ATTACK VENT>

 

ダークウイングと合体し後を追った。

 

 

ドラグセイバーで夜桜を受ける。

濡羽色に染まったISをまとった一夏に攻撃できずにいた。

 

『ケイタ!ゼロワンと一夏を救うには一度倒すしかない。』

 

「わ、わかってる!」

 

『分かってないから言っているのだ。

今更手加減したって仕方ないだろう?このISを倒すにはサバイブモードしかない。』

 

「だけどもし全力でやって殺しちまったら!」

 

『皮肉だが、篠ノ之束の発明品を信じるしかないな。』

 

「最ッ悪だ!」

 

ドラグセイバーがはじかれ、がら空きになったボディにキックを叩き込まれる。

背後にあったドアの窓を通ってベンタラに放り出される。

 

「ぐっ!容赦なしかよ!」

 

『意識がないからな。痛覚もあるかわからんから適度のダメージで怯ませるというのも無理だ。本当に一度倒すしかないぞ!』

 

「そんなこと言ったって!うお!」

 

うお!喋ってる間も一夏の猛攻は止まらない。

カードをきろうにもそれより早く斬撃か蹴りが飛んでくる。

 

「どうしろってんだよ!」

 

『とりあえず避けろ!ハイキック、顔面に来るぞ!』

 

「え?ぶぅっーー!!!」

 

思い切りのけぞるような格好で再び地球に送られる。

どこかショッピングエリアに出たらしい。

一夏も続いてやってくる。

 

「!? なんだあれ?」

 

「仮面ライダーだ!ママ!仮面ライダーだよ!本物だ!」

 

「仮面ライダーってあれか?IS学園とかで暴走したアンドロイド倒したり、風都でガイアメモリの怪物と戦ってるっていう……。」

 

「じゃああっちのIS暴走してるんじゃ………」

 

ケイタ達が出て来た窓から、いやそれ以外の鏡になりうる全てからアドベントビーストが出現して人を襲い始めた。

 

「な、なにが!?」

 

『どうやら、ゼイビアックスともバッティングしてしまったようだな。』

 

再び最っ悪だと吐き捨てるとどこかを目指して走り出した一夏を追った。

その先に居たのは心愛にクロエ。そして蓮を撒いたらしい束と怪人態になったゼイビアックスだった。

 

「あれって!」

 

「さ、いっちゃん!思いっきりアバレちゃえ!周りの物なんて気にしないでいいからね!」

 

ありったけのエネルギーを込めた刀身から斬撃が放たれる。

ゼイビアックスが避けた後で破壊音と共に悲鳴が聞こえる。

 

「痛い!いたぃい!助けて!」

 

「ああああ!出して!出してくれぇええ!」

 

「やだ!返事、返事して!起きて!起きてよォオオ!」

 

今、あの奥で、あの中で一夏のせいで命が奪われたかもしれない。間違いなく誰かが傷ついた。

 

「よせ!止せ一夏ぁあああああ!!!」

 

<SURVIVE MODE>

 

烈火を纏いながらタックルを仕掛け、変身したバイザーから伸びたブレードを続けざまに浴びせる!

 

「ケイタ君!」

 

『ケイタ様!』

 

「網島様!」

 

「お前!」

 

「網島ケイタ!」

 

「ああ、ヒーローにしちゃちょっと遅刻か。」

 

対峙する一夏とドラゴンナイトサバイブモード。

両者が静かに武器を構える。

 

「はぁあああ………ほんっと、良いとこで邪魔すんなよ空気読め!」

 

束がケイタに飛び掛かろうとした時、ゼイビアックスは左水平チョップからの右アッパーで束を黙らせる。

 

「君が空気を読みたまえ。デートを邪魔するのはいくら何でも無粋だぞ?」

 

絢爛豪華ならぬ剣爛業火のドラグブレードと艶やかな漆黒に染まった夜桜が、烈火の蹴りと闇でもって闇を割くキックの応酬が続く。

 

「目を覚ませ一夏!お前はお前の意思で人類を滅ぼしたいのか!?」

 

「………!」

 

無数に黒の斬撃が繰り出される。

 

<TRICK VENT>

 

ドラゴンナイトの姿が一瞬陽炎の様にぶれると六人に分身し、その一撃一撃を受け止める。

 

「モザイカ因子なんかに負けんな!お前はお前が思うより強い!」

 

「ぁ…………」

 

ドラゴンナイトが放った蹴りを器用によけて逆にカウンターで膝、腿と逆に蹴りを浴びせる一夏。最後に一発強烈なのを食らわせ、ドラゴンナイトを壁まで吹っ飛ばす。

 

「くぅう~~それがどうした!俺の知ってる一夏はもっと一撃一撃に魂込めてたぞ!こんな風にな!」

 

<ATTAACK VENT>

 

エネルギーを纏ったドラグランザーを伴いドロップキックを浴びせる。

戦場は中央広場に移った。青い空の下、周りを囲むビーストたちは近づけない。近づけば戦いの余波で絶命するとわかっていたからだ。

 

<SHOOT VENT>

 

ゼロ距離で撃たれたメテオバレットで吹っ飛ぶ一夏。

二階部分の手すりを砕きながら本屋に突っ込む。

ドラゴンナイトもすぐさま跳躍し、その後を追った。

 

本棚の間を走り抜けながら刃が、光弾が飛び交い、紙が舞う中二人は再び店外に飛び出る。

 

「はぁ!たぁ!だぁああああ!!!!」

 

「ぁ…………ぁあ……ああ!ああああーー!」

 

二階から転がりながらも拳と刃の応酬を繰り返し、また元の場所に戻りながらも戦い、戦い、戦う!

 

「ぅうううううあああああああ!!!!!!!」

 

一夏は2本のブレードを交差させそれぞれ零落白夜と満壊極夜を纏わせる。

 

「ううぅう!だったらぁ!!!」

 

<GUARD VENT>

 

スパークした斬撃をバイザーで受け止め、カードをベントイン!

巻き起こした烈火の防壁で一夏を押しのけ、更にカードをベントイン!

 

<STRANGE VENT>

 

『!? このカードはスティングの!』

 

「手塚!……お前の力、借りるぜ!」

 

<SWORD VENT>

 

<COPY VENT>

 

複製されたドラグバイザーツヴァイと元からあったドラグバイザーツヴァイに炎のブレードが出現する。

 

「一夏!こいつでお前を救う!

バーニングセイバーツヴァアアアアアイ!!!!!!!」

 

「はああああああああああ!!!!!!!!」

 

4本の閃光が二人の身体を貫く!

 

「ああ!ケイタ君!一夏ちゃん!」

 

『あれは……。』

 

煙が晴れた先、最初に見えたのはマスクの口の部分と斬撃の跡から夥しい血を出して膝を付くドラゴンナイトだった。

体が、粒子になって分解されてる。ベントが始まってる。

デッキを外したぐらいじゃ止まりそうにない。

もう、助からない。

そして

 

「あああ………嘘、でしょ?ケイタ!ケイタ!」

 

正気に戻った一夏だった。

 

「止まって!止まって!どうしようどうしよう!

ケイタが死んじゃうどうしよう!血が、血が!お願いだから止まってよ!」

 

「は、はは。いつかの夢と、逆転しちまったよ……。」

 

「こんな時に何!?お願いケイタ喋っちゃダメ!」

 

「一夏、大好きだ愛してる。将来的に結婚してくれ。」

 

「!!!、だ、だったら今は喋んないで!

遺言みたいなこと言わないで生きてよ!」

 

「オッケーってこと?」

 

「そうだよだから!だから生きて!」

 

「おい、セブン聞いたか?言質、とった、ぞ……。」

 

そして遂に身体がほどけ、

無数のデッキとセブンだけが残る。

 

「嘘ぉ…嘘って言って!ケイタぁあああああ!」




網島ケイタ 仮面ライダードラゴンナイト、脱落。
残り 三人

次回、Lonely night その1


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Lonely night その1

心愛「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」

ケイタ(遺影)「」

束(遺影)「」

一夏「私が、私がケイタを・・・。」

蓮「どうする?」

心愛「どうするも何も何とか元気ずけようよ!」

蓮「だな、それではどうぞ!」



時刻は昼の11時を5分ほど回った所。

羽田空港国際線ターミナル。

異様に軽い荷物を携えたレン・アキヤマの姿はそこにあった。

 

『しかし急でしたね。

京都旅行が打ち切りになってすぐに高跳びとは。

お陰で一泊しかできませんでした。』

 

「別にゆっくりするのが目的の一時帰国じゃないしな。

一目アイツの顔を見れただけでも収穫だ。」

 

基本蓮が会いに行った彼女は普段寝たきりだ。

別に会いに行くだけならベンタラ経由でもいいのだが、

彼女には分からなくても仮面ライダーの自分を見せたくはなかった。

そんなふうに思っていると飛行機内でオフにしていた携帯電話に早速着信だ。

画面には『秋山柊洋』とある。

 

「もしもしじいちゃん?」

 

『おお、蓮君。やっと出たか。

今までどこに行ってたんだ?』

 

「三日前に京都。それから友達に会いについ数時間前までアメリカ。今は羽田空港。」

 

『はぁー……蓮君も大変だな。まだ話せるか?』

 

「ああ。いいよ?ばあちゃんと?」

 

『ああ。華澄は今学校でな。

稲子!蓮君がやっと電話に出たぞ!』

 

そのあとしばらく祖母ととりとめのない会話をする。

 

(たまには、本当にたまにでいいからこういう話をするだけでも、家族っていい物だな。)

 

『とにかく元気そうでよかったよ。

今度は近くに寄ったら帰ってきてくれるかい?』

 

「仕事落ち着いたらクリスマスには一回帰るよ。

年末年始は、ちょっとわかんない。」

 

『そうかい、楽しみにしておくよ。』

 

電話を切りふう、と一息つく。

本当はゼイビアックスの脅威とか諸々片付かない限り暇なんて作りようがないのだが、彼ら彼女らに事情を説明する訳にもいかない。

 

「何とか今年中に終わらんもんだろうか。」

 

あの後、ケイタがベントされ、篠ノ之束が殺された後。

ゼイビアックスはドラゴンナイトのデッキを奪取するとキャモを、クロエを伴い去って行った。

 

(クロニクルを強化するつもりなのか、単に戦利品として持って行ったのか謎だが、まあいいだろう。それより問題は自分が人造人間だったことよりもケイタをベントしちまって落ち込んでる一夏だ。)

 

二日ぶりのカワサキ・ニンジャに跨りながらため息をつく。

簪が怪我で戦えない今、動けるのは蓮しかいない。

実質ウイングナイトVSゼイビアックス&キャモの対決だ。

覚悟を確かめるためにデッキに握りしめようとした時

 

「ん?また電話?今度は心愛か。もしもしアキヤマだ。」

 

『もしもし蓮君!?大変だよ!一夏ちゃんが荷物まとめてラビットハウスを出て行っちゃった!』

 

「はぁ!?」

 

 

蓮はバイクを風都に飛ばした。

サードに経路案内をしてもらい、役所の個人情報にハッキングして調べた住所に向かう。

バイクを止めてその家の表札を確かめる。

 

『織斑』

 

網島家に世話になった後、織斑千冬の自立をきっかけに引っ越した先がここだという。

因みに網島家とは方向が真反対らしい。

 

「あ、蓮君!」

 

「心愛、天々座。お前らも来てたか。」

 

「お前が行くと聞いていたからな。しかし、酷いな。」

 

「ひどいって何がっ!」

 

言われて家を見ると壁という壁に

 

『人殺しの家です』『近づかないでください』

『男を殺しました』『私は消えるべき人間です。』

 

みたいな事が所狭しと書かれている。

 

「……ここ本当に一夏ちゃんのお家?」

 

『一夏様の家です。』

 

「刃牙の家じゃなくてか?」

 

『一夏様はあの手の漫画に出てくるキャラクターみたいな筋肉はしてません。』

 

「わかってるよ。けど聞かずにはいられないだろ。

花壇は長らく手入れしてないのか荒れてるし塀には有刺鉄線ついてるし、門の取手に鎖巻いてあるし。」

 

入って来ないでくれと家そのものが主張してる様な外観だ。

逆にたかだか3日でこの有り様に出来るとは、努力の方向性がやの明後日の方向にぶっ飛んでやいないだろうか?

 

「どうする?」

 

「どうするもこうするも、あって真意を確かめるしかないだろ。」

 

一走り近くのホームセンターから鋏を買って来た蓮は早速有刺鉄線や鎖を除去し、門を開けようとするが

 

「? 蓮君どうしたの?」

 

「いや、建て付けが悪いのか、中々!開かない!ん〜〜!」

 

「そんなにか? ふ!……? ふんんん!本当に硬いな!どうなってる?」

 

気になった蓮はサードをアクティブモードにして反対側に送る。

 

『!? こ、これは!一夏様あなたはそこまでしてわたくし達に会いたくないのですか!?』

 

「どうしたサード?」

 

『この門、こちら側から溶接されています!』

 

「「「はぁ(えぇ)!?」」」

 

仕方なくISを部分展開した蓮が強引にこじ開け庭に入る。

不法侵入もいい所だが、こんな所に人間を住まわせておく方が問題だ。

 

「どうした心愛?ドアを開けろよ。」

 

「いや蓮君。私も一夏ちゃんと会って話したいけど…このドアには仕掛けとか無いよね?」

 

「………心愛、ちょっと俺の上着預かっといてくれ。」

 

意を決した蓮が先陣を切ってドアノブを掴む。

瞬間、蓮は身体中の筋肉が硬直した様に動かなくなった。

 

「!? 秋山大丈夫k」

 

「え、な、何?2人ともどうs」

 

蓮に触った2人もそうなった。電流だ。

ドアノブに流れる電流が3人を連結させてしまったのだ。

そしてしばらくした後にバチンバチン!と派手に吹き飛ぶ3人。

 

「〜〜〜〜〜ッッッッ!どんな防犯設備だ!」

 

「刃牙の家じゃない…ジャパニーズ忍者屋敷だった…。」

 

「一夏ちゃんの、家だよ!行こ!裏口からなら入れるかも!」

 

しかし甘い考えだった。

裏口は裏口でドアノブが湯気を上げるほど熱されていた。

触ったら大火傷だろう。

 

「もう窓ぐらいしか入る所ないぞ?」

 

「ロープ持ってる?」

 

「秋山、買いに行ってくれるか?」

 

「了解。くれぐれも動くなよ?」

 

そしてまた再びホームセンターに向かうと頑丈な紐とフックを購入し、織斑忍者屋敷にもどる。

 

「はあ、まさか日本でレンジャー部隊の真似事をするとは思わなかったな!」

 

窓を破りながらフックが引っかかったのを確認してまず蓮が壁を登る。

 

「! お前ら気を付けろ。床中レゴブロッ○のマキビシだらけだ。」

 

仕方ないので土足で上がり込む

入った場所は二回のエントランスの真上だ。

元々は二世帯住宅だったらしく、右側のドアの先は家具が何も置かれていない一人分の生活スペースがあった。特に罠は仕掛けられていない。

 

「どうする?一階から入るか?」

 

「いやでも………」

 

「俺は嫌だぞ?下手に退路を塞がれてこの罠屋敷に孤立無援とか勘弁だからな。」

 

行くんなら二階から行こうということで侵入して来た窓のある廊下まで引き返した。

 

「一夏ちゃーん?いるんでしょー?

出てきてー!心愛だよー!」

 

「一夏ー!大丈夫か?いったいこの罠は何なんだ!?」

 

「出てこい一夏!こんなところでくすぶってケイタや更識たちに申し訳が立たないとか思わないのか!」

 

慎重に、呼びかけながら進んでいく。

一夏も罠も何処に居るか分からないからだ。

 

「一夏ちゃーん!ん?」

 

「どうした心愛?」

 

「まさか新しい罠か!?」

 

「さぁ?でもなんかシューって音しない?」

 

そう言われて耳を澄ますと確かに風船から空気を抜くような音がする。

すると突然右横の扉が開き、そこから二酸化炭素で吹っ飛ぶロケットパンチが飛来した。

 

「うぉおお!あ、う、後ろに階段!ああああーー!」

 

のけぞるように避けた蓮はバランスを崩して階段を真っ逆さまに落ちていった。

 

「蓮君!」

 

「秋山!」

 

助けようとした二人も階段に張られた透明な糸で転ばされ蓮とほとんど一塊になって落ちていく。

 

「「うわー!」」

 

「ヴェアアアアアアアア!」

 

一階の一番下まで転がり落ちた先でも罠があった。

転がり込んだ先で何かスイッチを押してしまったらしい。

天井から何かが雨の様に落ちてくる。

 

「虫!虫だぁああ!」

 

「いやあああああああ!!!!取って取って取ってぇええええ!!!!」

 

「お、お前ら落ち着け!暴れたらまた何か罠を!」

 

プツン!と何か糸が切れるような音がする。

すると突然キッチンの方で爆発が起こった。

 

「ヴェアアアアアアアア!なんか爆発した爆発したよ!」

 

それは始まりに過ぎなかった。

キッチンを皮切りにあちこちから火が出始める。

 

「逃げろ!もうだめだ!これはもう特殊部隊の介入が必要だ!撤退するぞ!」

 

爆発を避けながらなんとか玄関までたどり着くと部分展開したISでドアをぶち破る!

飛び出た瞬間最大の火の手が上がった。

 

 

「なんだアレ!特に最後のアレは何だったんだ!

ホームア〇ーンでもあそこまでやらないぞ!」

 

撤退した3人は作戦会議と昼食を兼ねて五反田食堂に向かった。

弾や、来てるんなら虚にも協力してもらおうと言う訳だ。

 

「にしても、一時の私とは別ベクトルで荒れてますね。」

 

つい最近から五反田食堂でバイトを始めた虚が言う。

彼女も妹がガイアメモリに狂わされた時はかなり荒れたものだ。

 

「ケータイかけても繋がらないし、

ゼロワンやセブンにかけても無言だし話にならないどころか話さえ出来ん。」

 

お手上げ、のジェスチャーをしながら溜息をつく蓮。

 

「でもだからと言って何もしない訳にはいかないだろ?」

 

「ああ。それに狙われないとも限らん。

前回の戦闘で本気を出せば単一世界(ワンワールド)両極双心(ツーハート)でも仮面ライダーを撃破可能とわかった以上、ゼイビアックス陣営も一夏を倒しておきたいはずだ。」

 

ふーむと四人が考え込む。

はっきり言ってあまりに戦力が足りない。

ISは国家の所有物である以上そう簡単に使えないし、

フォンブレイバーも戦闘向きとは言い難い。

 

「まあまあ、考えても仕方ないじゃん。

まずは喰って力尽けろよ。業火野菜炒めお待ち!」

 

「五反田、悪いな。」

 

「いーって。飯屋は飯作って腹の虫退治すんのが仕事だ。

仮面ライダーは人を苦しめる怪物を倒すのが仕事、だろ?

あ、虚さん。これまかないです。」

 

「いいんですか休憩しちゃって。」

 

「俺も休憩ですし、今日、てか最近お客さん少ないですし。」

 

「何か理由とかあるのか?」

 

「ほら、最近ISの暴走だなんだで皆不安がっててさ。

それで自分の身を守る為とか言ってガイアメモリに手を出すやつとかも居て、それで仮面ライダー、てか鳴海探偵事務所に風都署超常犯罪捜査課はてんてこ舞い。

仮面ライダーも出ずっぱり。おかげで黒影もすっかり風都の人々に認知されたよ。」

 

「確かにISメーカーの株価暴落とか、

この機に乗じた詐欺とか、過激派団体の抗議とか色々あったからな。」

 

世も末である。ISの暴走が多発し始めたあたりから各地での超常犯罪の発生率は増加傾向にある。ユグドラシルや青空の会など自前で戦力がある企業なんかも進んで協力し、対処しているが、それでも被害は出てしまっている。

 

「俺たちはこの街を離れる訳にいかなくなっちまったから木組みの街はケイタの分も任せるよ。」

 

「ああ。だが正直な話。俺一人じゃ、キツイ。」

 

「だろうな。私も協力してやりたいが……。」

 

「一回ガイアメモリ使って集団昏倒事件起こした奴が何言ってるんだ。」

 

それを言われると何も言えない理世。

最終的に彼女のナイトメアメモリに助けられたとはいえ、問題を起こしたのは事実だ。

 

「はぁ……ゼイビアックスみたいにデッキのロックを外せる技術があれば、ライダーの数を増やせずともセイレーンやラスのカードを使う事も出来るんだが…。」

 

今のところデッキはまだまだ分からないことだらけだ。

フォンブレイバーでも解析するのは不可能に近い。

 

「今デッキって誰が持ってるの?」

 

「ラスのデッキを織斑千冬が。

スティングのデッキは宇治松が。

アックス、トラスト、インサイザーのデッキを更識楯無が。

ドラゴンナイトのデッキはゼイビアックスが。

キャモのデッキはクロニクルが。

ストライクとトルクのデッキは藤丸に、

スピアーとアビスのデッキはキリエライトに預かってもらってる。

残りのウイングナイト、セイレーン、ブレードのデッキは俺が。」

 

「確かお前らのライダーって俺の戦極ドライバーや達郎のイクサナックルと違って変身出来る奴固定なんだよな?」

 

「そうだが?」

 

「じゃあなんでゼイビアックスはケイタのデッキパクったんだ?」

 

「サバイブカードを持たせたかったのか、それともクロニクルのデッキのリミッターをカットしてドラゴンナイトのカードを使わせたかったのか。

それとも何か、隠し玉があるのか。

分からないが、なんにせよ次の戦いで確実に倒す。」

 

ケイタの弔い合戦だ。

そう言って蓮は定食をかき込むとお代を置いて一足先に木組みの街に帰って行った。

 

 

ベンタラのワシントン。

ゼイビアックスの要塞にて、黒に黄緑色のラインが入ったライダースジャケット姿のクロエが居た。

 

「さて、クロエ君。

これからすべき事は何かわかるかな?」

 

「そうですね…ISの完全なる失墜により人類をより混乱させることでしょうか?」

 

「その通りだ。今回は質も量も妥協せず大量のビースト軍団をIS学園をはじめとした施設に送り込み地球に最大の混乱を与える!」

 

「レン・アキヤマに更識楯無はいかがいたしましょう?」

 

「放っておけ。今更泳がせたところでなにも出来まい。」

 

「承知しました。」

 

クロエが深々と頭を下げるとゼイビアックスはアドベントビーストの調整のため、指令室を後にした。

 

「………束様、もうしばしお待ちを。」

 

 

夜。

一夏は水を張ってないバスタブの中にうずくまっていた。

 

『おい一夏!この檻から出してくれ!一夏!』

 

『織斑一夏!出してくれーー!!織斑一夏!』

 

(………ごめんねゼロワン、セブン。もう私が戦わない為に諸共になってもらうよ。)

 

一夏は誰かを傷付けるぐらいならどこにもいかないと思っていた。

もちろん誰かが来るだろうから威嚇や警告の意味で罠を張り巡らせた。

 

(だから誰も来ないはず。

もう、誰も危険な私に近づけないはず)

 

「もしも〜し。シャワー使ってる?

使ってないなら入るぞー。」

 

・・・・・まさか誰か入って来たのか?

思わず頭を上げると、黄色い複眼に赤い仮面の男と目が合った。

 

「アカライダー…。」

 

「久しぶりだな一夏。酷え面だぞ?」

 

「別に気にしないし…それより何の用?」

 

「……このままでいいって本気で思ってるのか?」

 

やっぱり私を説得しに来たらしい。

このままで良いに決まってるじゃないか。

誰かを傷付ける危険な人造人間なんて一生引き篭もっていた方が

 

「お前がじゃないぞ?お前の仲間がだ。」

 

「え?」

 

「お前が引き続き引き篭るのは勝手だ。

だけどそうなるとお前の親愛なる隣人達はケイタに続いて2人目にだぞ?ロクにサヨナラも言えないまま居ない者として諦めなきゃいけない友達ってやつを作るのがどれだけ辛いか、お前ならわかんじゃないか?」

 

「………」

 

「ま、こんなの通りすがりの第三者の意見だ。

間に受けなくても良いけど、参考までに。

あ、あとアンカーから預かって来た新造版のシーカーとメディックとアナライザー、ここに置いとくぞ。」

 

そう言ってアカライダーは仮面ライダー電王の力、

ライダーパスを使って時を超える電車デンライナーに乗り込むと去って行った。




心愛「一夏ちゃん…」

蓮「アカライダーには助けられてばっかだな。いつか恩返しをしないとな。」

アカライダー「そんなんそれこそ明日未来でしてもらうからいいのに。
次回、Lonely night その2!」

心愛「い、いつの間に!?」

蓮「え、えっと、次回も見てね!」


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Lonely night その2

蓮「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは…」

理世「一夏を説得しようとしたが会うことさえ叶わず結果罠屋敷を突っ切っただけだったが?」

セシリア「ゼイビアックスも何を企んでるかわかりませんし、如何いたしましょう?」

蓮「それは今回考えよう。」

セシリア「それではどうぞ!」


1

どんなに世間が騒ごうと、テロが起ころうと仮面ライダーがベントされようと期末試験はやってくる。

だからと言う訳ではないが、ISを使った授業は出来ずとも通常授業だけは再開されたIS学園にはほとんどの生徒が登校していた。

 

「変な気分だ。」

 

「どったの蓮君?」

 

「いよいよこの学校に男子生徒が俺だけになったなと思ってな。」

 

三春は、あの後身体に穴を開けられたのも有るが、自分の正体を受け入れられずに心を病んで何も喋らなくなってしまい、ケイタはベントされた為、今学校には用務員を除き男性がいない。蓮以外は。

 

「仮面ライダーも蓮君だけだもんね。」

 

「ああ……心愛。他の奴らには悪いが、もし襲撃とか有ったら真っ先に俺の所に来い。お前だけでも逃がしてやる。」

 

「え?れ、蓮君?」

 

「お前らはやっぱ特別だ。天秤に掲げる反対側がエリーじゃない限り絶対助ける。」

 

そう言った蓮の目は本気だった。かつては冷たい雰囲気と刃物のような視線で周りを拒絶していた頃がウソのようだ。

 

「ん?エリー?そのエリーちゃんって蓮君のお友達?」

 

「ああ。」

 

「もしかして、そのエリーちゃんの事、好きだったりするの?」

 

「え゛!?」

 

廊下に居たほぼ全員が二人の方を振り返る。

 

「秋山君それ本当!?」

 

「苗字は!?年齢は?身長体重スリーサイズは!?」

 

「出会いはどこ!?どんな出会いだったの!?」

 

「彼女のどんなところが好きなの!?」

 

「逆に苦手なところは!?そこ含めて愛してるの!?」

 

「新聞部です!通して!新聞部です!その話!詳しく!

号外にしますから!」

 

おい心愛!と怒鳴る蓮。問題を引き起こしてくれた相手は人垣にのまれて頭のてっぺんしか見えなくなってる。

 

「こら貴様ら!もうすぐ予鈴だぞ!自分の教室に戻れ!」

 

一瞬で喧騒が止み、あっという間に教室に散っていく。

 

「はぁ、朝から元気な奴らめ。織斑先生助かりました。」

 

「ああ。構わん。

先日、一夏に会いに行ってくれたそうだな?」

 

「からくり要塞状態で一目見ることもかないませんでしたけど。」

 

「それでも妹のためにありがとうな。」

 

「………織斑先生どうしたんですか?

今日すごく静かで気持ち悪いですよ?」

 

「保登。ケイタ君の霊にでも憑りつかれたか?

教師に使うまじき言葉遣いだぞ?」

 

「す、すいません!」

 

「安心しろ。今はこいつを振り下ろす気にもなれん。」

 

そう言って力なく出席簿を持ち上げる千冬。

 

「………なあ心愛。

俺の眼球と耳は何かに呪われてるのか?

それともなにか?俺に使われた人造モザイカ因子に神経系の毒でも仕込まれてるのか?」

 

「アキヤマ、それは遠回しに私の頭がおかしくなったと言っているのか?」

 

「俺の目と耳がおかしくなってなきゃそうですね。」

 

こいつ!と軽くこつん、と出席簿で頭を叩く千冬。

蓮と心愛より先に教室に入っていった。

 

「ねえ蓮君。織斑先生本当にどうしちゃったの?」

 

「さあ……。なんにせよ嵐の前の静けさ、なんてことは勘弁だ。」

 

 

昼休み。今朝口を滑らせたせいで噂はたちまち広がり、余計な尾ひれまでついて膨らんでいったが、蓮のスタームルガーの威嚇射撃一発ですべては沈静化し、一同はいつものように屋上に集まり、昼食をとっていた。

 

「簪とロランは欠席か。まあそうよね。

結構ひどい怪我だったし。」

 

集まったのは蓮、心愛、ラウラ、シャルロット、セシリア、鈴音、虚、楯無といった面々で、蓮たちが一夏のもとに行ってる間に二人のお見舞いに行っていたらしい鈴音は喋れるようになった二人の事を語ってくれた。

 

「二人とも皆のこと、特に一夏や千夜のこと心配してたわ。」

 

「今は自分の心配を一番しなきゃいけない時だろうに。」

 

ま、順調に回復してる証拠か、と少し安心する一同。

 

「ただ退院にはまだかかるってさ。」

 

「そうなんだ。私たちも今度お見舞い行ってあげなきゃね。」

 

「ああ。チェス盤でも持って行ってやろう。」

 

続いてここしばらく千冬についていてくれていたラウラからだった。

 

「織斑三春の回復は望めそうに無い。

身体自体は健康なのだが、心が生きなくても良いと思ってるのか、外側からの刺激に全く反応しない。恐らく、駄目だろう。」

 

「そうか。人類の裏切り者には相応の末路ではあるが流石に同情するな。」

 

と複雑そうな一同。それはそうだろう。

曲がりなりにも戦友だったのだ。それから篠ノ之箒に悪い事をしたなと思うぐらいか。

 

「兎に角、状況は良く無いわ。

はっきり言ってこっちの戦力は心許なさ過ぎる。

そこで!今日から放課後特別訓練を実施するわ!」

 

「放課後特別訓練?」

 

「そ、私があなた達専用機持ちをみっちりしごいてあげるわ!」

 

「お言葉ですが今機体が無事なの俺とアンタとオルコットとコンスタンだけですよ?」

 

「私はIS壊した責任とか言って代表候補生の資格剥奪されちゃったし。」

 

「え!?鈴ちゃんそうなの?」

 

「ま、あんまりこだわり無かったし良いんだけどね。」

 

ラウラは米軍所属になってから一パイロットに過ぎない為、ずっと前からそうで無くなっている。

 

「ま、兎に角。弱いままじゃ嫌でしょ?

今日の放課後から、覚悟してよね?」

 

 

3

放課後。第三アリーナにて。

一般生徒へのISの貸し出しは無期限延期となった為、

今ISを纏って立っているのは蓮、シャルロット、セシリア、楯無の4人だけだ。

観客席には心愛や鈴音達見学組の姿がある。

 

「それで?訓練って何を?」

 

「まずは連携を見せてもらうわ。

3対1でかかって来なさい。」

 

「と、申しておりますが如何致しましょう?」

 

前衛(タンク)は俺が。撹乱はコンスタン。

支援砲撃はオルコット 。これ以外有るか?」

 

「だね。」

 

「ですわね。ただ更識会長は捻くれ者ですから、どんな搦手で来るか…」

 

「その事なんだが、作戦がある。」

 

2、3言言葉を交わし。それぞれのフォーメーションにつく。

 

「準備は良いかしら?それじゃあ行くわよ!」

 

ランスを携え、水のヴェールを纏った楯無が駆ける。

蓮はサムライソード001を、シャルロットはアサルトライフルを構えて迎え撃つ。

 

「ふん!」

 

「うお!」

 

蓮の頭を大上段から狙った一撃を与えながら蓮を飛び越え、シャルロットが撃つ弾は水のヴェールを集中させて凌ぐ。

そして瞬間加速でセシリアに肉薄!

 

「ちっ!やっぱり使って来たな搦手!」

 

蓮も瞬間加速で追うが、楯無は水を球状にして無数に放ち、蓮に目眩しを浴びせる!

 

「さあ!まずはあなたよセシリアちゃん!」

 

「くっ!インターセプター!」

 

セシリアは不利と分かっていてもライフルを壊されるよりマシかと近接戦に臨むが

 

(手首に糸?いや、先についてるこれは手車(ヨーヨー)!?)

 

逆手にインターセプターを持ったセシリアの左手は乱暴に捻り上げられるとアリーナのバリアシールドに乱暴に叩きつけられた。

 

その糸の先には、鏡の様に物を映す手すりしかない!

 

「まさか!?お前ら逃げろ!!」

 

鏡から無数のアドベントビーズと、

ゼイビアックスとキャモが現れた。

 

「マズイな。サード!防犯システムは?」

 

『掌握されています。

奴らは我々を今日ここで殲滅するつもりです!』

 

「システムを奪い返せ!一部でいい!心愛たちを逃がせ!

最悪風都まで行ければ翔太朗先生たちがいる!」

 

『かしこまりました!』

 

クラック・シークエンスを使い彼女たちから見て一番近いドアを開ける。

ファンガイアバスターやベレッタM9を持った鈴音やラウラが先頭になって逃げて行ってる。

 

「サード、俺のバックアップは要らない。

アイツらの撤退を支援しろ。」

 

『レン様はいったいどのように?』

 

「俺はこいつで行く!KAMEN-RIDER!」

 

ISを解除し、ウイングナイトに変身すると、蓮はウイングランサーを構える。

 

「まずは三人を助けないとな!」

 

<ATTACK VENT>

 

<TRICK VENT>

 

ダークウイングと合体してから天高く飛び、空中で分身!

二体ずつビーストに囲まれているシャルロットと楯無の救援に向かわせ、本体はセシリアのもとに向かう。

 

セシリアは鏡から出現したキャモにチェーンデスマッチを挑まれていた。

キャモの持つバイドワインダーで左手首を封じられ、距離も近距離。BT兵器を使おうにもこの至近距離では自分にも当てずに使うことは難しい。

 

「ふふっ。何か策を探してるのですか?

無駄ですよ。この糸はライダーの刃でなければ切れない!」

 

糸を手繰り寄せたキャモの鋭い刺突がセシリアの目を狙って放たれる!

ギリギリで忌避したがビッ!と目元に鋭くナイフで切られたような傷ができる。

一撃でも当たればゲームオーバーだ。

 

「さあ、耐えられるでしょうか!」

 

糸を使ってバランスを崩したところを腿やあばら骨のあたりを重点的に蹴られ続ける!

 

「うう!がぁあ!な、なぜゼイビアックスなどに屈服したのですか!篠ノ之博士に心酔していた、もしかしたら実妹の箒さんよりも近くにいたアナタがなぜ!」

 

「篠ノ之束はバカでした。

IQ的な意味ではなく先を読む力があまりに有りませんでした。

一匹の強者が、それより強い一匹の強者や幾千万の弱者の群れに勝てないことに気付けなかった!」

 

糸でセシリアを手繰り寄せ左フックからの返しで裏拳!

そしてアッパーからの糸で引き戻して鳩尾に膝蹴り!

 

「ぐはぁ!が、がぁ………っ!」

 

「あなたもまた1対1で弱者が強者に勝てないことを理解できなかった弱者。その愚かしさに相応しい最期を差し上げましょう!」

 

そう言ってファイナルベントのカードを引き抜く!

 

「あ………」

 

「終わりです!」

 

そういって左足についた(ぜっ)(しょう)(いと)バイオバイザーにカードをベントインしようとした時、一閃の黒い刃がキャモの糸を切り、後退させた。

 

(だれ?レンさん?)

 

「オルコット!」

 

違う。蓮は、ウイングナイトは今着いたばかりだ。

そこに居るのは

 

「これはこれは一夏様。いえ一夏伯母上とでもお呼びしましょうか?」

 

「別に何とでも。今日はただ皆にお別れを言うついでに来ただけだから、尻尾巻いて逃げるんなら見逃してあげるよ?」

 

ほらさっさとカメレオンらしく消えなよ。と言う一夏にではそうしましょう。とキャモは新たにカードをきる。

 

<CLEAR VENT>

 

そして本当に透明化すると、壁キックを使った多彩なキックで三人を翻弄する。

 

「くっそ!どうする?このままだと俺やお前はともかくオルコットが持たないぞ!」

 

「はぁ……ゼロワン、セブン。センサー強化。

それがダメなら各種特殊カメラ。スキャンして。」

 

『ああ。』

 

『了解だ。』

 

紫外線、ハイパーセンサーをはじめもろもろ全部駄目だ。

最後にサーモカメラ。やっとキャモの姿を捉える。

 

「そこ!」

 

アーマーから派手な火花を散らし、のけぞりながら一回転して転ぶキャモ。

 

「諦めてくれる?」

 

もう擬態は続けられないらしい。

姿を現したキャモは喉元に突き付けられた夜桜を見つめる。

 

「ふ、ふふふ!あははははは!」

 

「? 別に怖がって狂わなくていいよ。

殺しもベントも私はもう二度としないから。」

 

「いえ、違いますよ。あなたにはお誂えな援軍がいたと思いましてね。」

 

キャモがそう言ってクツクツと笑う。

セシリアに肩を貸しながらウイングナイトも身構えた。

何か隠し玉があるのだろうか?

見た所キャモはウイングナイト同様に特殊なカードが多い代わりに戦闘能力は変身する人間に左右されるタイプのライダーに見えるが。

 

「ほら、愛しの彼が来ましたよ?」

 

きゅいん!とベンタラから誰かが出て来る。

ゼイビアックスを残し粗方アドベントビーストを片付けたシャルロットと楯無もそれを見て驚いた。

そこに居たのは

 

「ドラゴンナイトだと!?」

 

「なんで?ケイタは、ケイタは私がベントしたのに!」

 

一夏が狼狽した一瞬をついて抜け出すキャモ。

ドラゴンナイトの横に並び立つ。

 

「さあ、ここからが第二ラウンドですよ?」




ナレーション「次回、infinite DORAGON KNIGHT in 明日未来!」

一夏「ケイタ!本当にケイタなの!?答えてよ!」

ケイタ?「黙って戦え!」

シャルロット・楯無「うわああああああ!」

クロエ「アナタで全滅です!ウイングナイト!」

蓮「ちくしょおおおおーー!!!」

????「はあ!」

楯無「あ、あれは!」

シャルロット「黒いドラゴンナイト!?」

ライダースジャケットの男女「カメンライダー!」

心愛「トラストにインサイザー!?」

鈴音「スティングにスピアーまで!」

一夏「ベントされたはずじゃ!?」

セイレーン「我ら!」

ライダーたち「ベンタラの騎士!」

ゼイビアックス「性懲りもなく!ユーブロンめ!」

ナレーション「次回、Masquerade その1
戦わなければ生き残れない!」


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終章 ベンタラの騎士編
Masquerade その1


楯無「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTだけど…」

ドラゴンナイト「………」

一夏「誰?ケイタ?まさかケイタなの!?」

楯無「ゼイビアックスにクロエちゃんにと、
今日もIS学園は珍客万来ね。それでは本編どうぞ!」


1

「はあ、はあ!鈴ちゃん!本当にこっちで合ってる?」

 

「あってるわよ!ただ敵とぶつからないように進むとめちゃくちゃ時間がかかるだけ!」

 

時々どうしても鉢合わせてしまうアドベントビーストを

ファンガイアバスターで目潰ししながら先を急ぐ。

非戦闘4人で逃げてるだけあって余裕なんて無い。

 

「ラウラ、私はもう次のカートリッジで最後。

アンタは?」

 

「弾切れだしナイフももう使い切った。」

 

銃とボロボロになったナイフを捨てながら険しい表情になるラウラ。

状況はあまり良くない。

 

「あーもー!せめてベンタラ越しにどっか行けたら!」

 

鈴音が叫んだ瞬間、モンスターを蹴散らしながらセシリアを抱えたウイングナイトが飛び込んできた。

 

「蓮君!」

 

「お前らまだこんなところに居たのか!?」

 

「想定以上にアドベントビーストの数が多くて」

 

「仕方ない。お前らこれ持っていけ。」

 

ウイングナイトは心愛にブレードのデッキを手渡した。

 

「それ使ってベンタラ越しにどっか逃げろ。

余裕があったら鳴海探偵事務所を目指せ。いいな?

布仏先輩、オルコットを頼みます。」

 

五人を見送ると急いで三人のもとに戻る。

 

「サード、最短ルートを検索ぅ!?」

 

目の前にレイピア型の武器が突き出される。

その刀身は見まごうことなく

 

「ブラウンバイザー?いや、そんな馬鹿な!」

 

「ええ、信じられないでしょうね。あなたには。」

 

現れたのはベントされたはずのセイレーンだった。

ドラゴンナイトといい、こいつといい、

今日はお盆か何かだっただろうか?

 

「お前はベントされたはずだ。」

 

「ベントされたくなかったらそのアーマーを脱ぎなさい。

お前は仮面ライダーの名を穢した。」

 

その声色は敵意と殺意を孕んだどす黒い物だ。

どうやら交渉とかは通じそうにない。

 

「生憎そうはいかない!」

 

「ならここで倒す!」

 

ブラウンバイザーがフェンシングのような鋭い斬り込みでウイングナイトに殺到する。

 

(くそ!こいつ少なくとも山田先生じゃない!

銃が本職のあの人にこんな動きは出来ない!

誰だ?誰が変身してるんだ?)

 

「はぁ!」

 

「この!」

 

何とかウイングランサーで防げているがこのままでは押し負ける。

武器をダークバイザーに持ち替え、いつでもカードを使えるようにする。

 

(ナスティベントで怯ませたところにファイナルベントを叩き込む!)

 

立てた作戦を実行しようとまずセイレーンの剣をいなし、隙を作ってカードを

 

「悪いがそうはいかん!」

 

「え?」

 

カードを使おうとした瞬間、ベルトからデッキを引き抜かれた。

変身が解除され、蓮は生身に戻ってしまう。

 

「悪いな。デッキは返してもらった。」

 

そう言ってウイングナイトのデッキを見せるその男は

 

『嘘でしょう?』

 

「お、俺!?」

 

 

ウイングナイトがセシリアを抱えて離脱する。

 

「すぐ戻ってくる!」

 

振り返らず返事もしなかったが、その言葉を信じ楯無とシャルロットは固まってしまった一夏を抜き去ってドラゴンナイトとキャモに向かった。

 

「行きましょうか。」

 

「ああ。」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーを構えたウイングナイトは楯無に向かった。

ランスと青龍刀で斬りあいながら戦いは観客席にまで広がっていく。

 

「はぁ!」

 

手すりにつかまりながら下の段に降りつつキックを放つドラゴンナイト。

そして高低差を利用し横薙の一閃を避けて、再び手すりに摑まりながら飛び上がりつつキックを浴びせる。

 

「あらあら。上から下からちょろちょろと。

そんなにおねーさんのお尻見たい?」

 

「間に合ってる。」

 

<GUARD VENT>

 

宙返りを討ちながらカードをベントイン。

放たれた内蔵ガトリングの弾を肩に装備したドラグシールドですべて受けるとドラグセイバーをブーメランのように投げる。楯無のランスをはじき、

 

<STRIKE VENT>

 

ドラグクローを構えてがら空きのボディーに突っ込む!

 

「っ!だったら火には水よ!」

 

「いや、焼け石に水だ!」

 

繰り出される炎の威力を限界値ギリギリまで引き上げ正面に来る水のヴェールを蒸発させながらドラグクローファイヤーを零距離で叩き込む!

 

「うわああああああ!」

 

アリーナまで吹っ飛ばされる楯無。

仰向けに倒れる。

 

(何?何かが空から)

 

<FINAL VENT>

 

「うわああああああ!」

 

さっきの楯無と同じような悲鳴をあげながら落ちて来たのはシャルロットとシャルロットを捕まえたキャモだった。グルングルンと回転し、最後にシャルロットの首が下になる様に急降下してくる。

 

(いけない!)

 

なんとか水のヴェールで首を保護する。

折れはしなかったようだが、

それでも落下の衝撃はすさまじかったらしい。

殆どシールドエネルギーが空になったラファールはたちまち解除される。

 

(ま、私も仲間の心配できる程余力ないんだけどね。)

 

起き上がれないシャルロットに満身創痍の楯無。

それに対してカードこそだいぶ使わせたが、

敵のライダー二人にはダメージらしいダメージ無し。

 

「さすがに戦略的撤退も辞さないかしら?」

 

「強がりを言う余裕がありますか?」

 

キャモの背後から契約ビーストのバイオグリーザが、

ドラゴンナイト背後にドラグレッダーが現れる。

 

「これで終わりだ。」

 

ドラゴンナイトはファイナルベントのカードを引き抜く。

バイザーのカバーを開けて

 

「ケイタ!」

 

楯無達との間に割って入る一夏。

ISは展開しているが、武器は持っていない。

 

「ッ! そこを退け!」

 

「あなたは本当にケイタなの!?」

 

「退けって言ってるだろ!」

 

「答えてよ!」

 

立ちはだかる一夏に攻撃しようとしないドラゴンナイト。

 

「何をしてるのですか?

そいつで最後なのですからさっさと始末なさい。」

 

キャモに急かされてもドラゴンナイトは動けない。

 

「なんでゼイビアックスの仲間なんかになったの!?

一体何をされたの?それとも、私のせいなの?」

 

「違う!」

 

一夏の言葉を遮り何度もかぶりを振るドラゴンナイト。

明らかに様子がおかしい。

 

「なんなんだよ、お前は!

裏切り者なんかほっとけば良いだろ!

しかもぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ余計な事ばっか喋りやがって!

黙って戦え!」

 

ドラゴンナイトの拳が一夏を殴り飛ばす。

躊躇いながらも何度も何度も拳を振り下ろす!

 

「あなたまさか分からなくなってるの?

ケイタ君!その子は一夏ちゃん!あなたの恋人よ!」

 

「ーーーッ!」

 

「ケイタ目を覚ましてよ!ケイタはそんな意味もなく戦う人じゃないよ!」

 

「うるさい黙れ!黙っててくれ頼むからさ!

知らない俺を押し付けるな!」

 

もう1発拳が振り下ろされる!

より先にドラゴンナイトのアーマーに黒いドラグセイバーが炸裂した。

 

「!?」

 

振り向く一同。その先にいたの

 

「あ、あれは!」

 

「黒いドラゴンナイト!?」

 

「………仮面ライダーオニキス」

 

それはかつてケイタが悪夢で見た姿と同じ姿をしていた。

違うのは複眼が黄色く発光しているのと

 

<SURVIVE MODE >

 

2枚目の青のサバイブカードを持っている事だ。

黒炎に包まれ現れたのは獲物を逃さぬ死の熱風。

オニキスサバイブモード!

 

「どいつも、こいつも!なんで俺を!

休ませてくれないんだよぉおおお!」

 

ドラゴンナイトもサバイブモードに変身する。

2匹の龍の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

3

「流石に想定外の事態だな。」

 

顎に手を当てながらゼイビアックスは思案した。

黒いドラゴンナイトに酷似したライダーなど知らない。

とんでもないイレギュラーだ。

 

「将軍。何も問題ありません。

敵がサバイブモードになろうと、ドラゴンナイトに拮抗しようと3対1です。」

 

そう言ってキャモは2枚目の赤のサバイブカードを引き抜く。

 

(あの子もサバイブカードを!?)

 

焦る楯無。生身ならまだ戦えるが、

生身で挑むのは自殺行為だ。

 

「私が裏切らなければ!」

 

<SURVIVE CARD>

 

バイザーが変身するより早くカードをベントインしたキャモがゼイビアックスに殴りかかる。

完全な不意打ちによろけるゼイビアックス。

 

「クロエ・クロニクル貴様!」

 

「束様を侮辱したのもデッキを受け取ったのもこの時のために!」

 

そう言ってクロエはダメ押しとばかりに最後のカードをベントイン!

 

<COPY VENT>

 

オニキスサバイブモードの姿と力をコピーし、バイザーが変形したブラックドラグブレードで斬りかかる。

 

「す、全ては擬似オーバーサバイブ状態になるために!

おのれクロエ・クロニクル!人造人間(にんぎょう)の分際でええ!」

 

「束様の仇!やあああああああああ!!」

 

ゼイビアックスは渾身の力を込めた一撃をデッキに叩き込んだ。

激しく吐血し、坂を転がる丸太のように転がされるクロエ。

変身が解除される。ゼイビアックスの方は肩で息をし、

両膝に両手を突いてはいるが健在だ。

 

「ああ、なんて事!あなた!しっかり!」

 

クロエに駆け寄る楯無とシャルロット。

 

「ふ、ふふふ。束様の仇も討てず、

心愛様に謝りも出来なかったのに、なんででしょう?

友人に囲まれて死ねるのは、少し幸せ、です。」

 

クロエはベントされた。デッキだけを残し分解されてしまった。

 

「か、会長…」

 

「ええ、もう後は」

 

彼ら次第だ。ドラゴンナイトとオニキス。

どちらが勝つかで運命が決まる。まだら勝負はつかない。

 

 

4

一方鈴音達の運命は今まさに決まろうとしていた。

なんとかベンタラを通ってアリーナの外にまでは行けたのだが

 

「挟まれたあ!」

 

前方には三体の鉢型ビースト、後方には三体の鳳凰型ビーストが涎をダラダラ垂らしながらジリジリとにじり寄って来ていた。

 

「どうする!?もう武器無いわよ!」

 

「……鳳さん携帯電話貸してくれますか?」

 

「助けなんか呼んでももう遅いですよ?」

 

「違います。最期に弾君の声が聞きたくて」

 

「諦めないでよ!」

 

「うぅ…うわぁああああああーん!教官ー!」

 

「ラウラも何泣いてるのよ!シャキッとしなさい!

私まで達郎に電話したり泣きたくなってくるじゃない!」

 

6匹のビーストが飛びかかる。

身構えた4人。もう終わりだ。

 

<SPIN VENT>

 

<SWING VENT>

 

<SWORD VENT>

 

<STRIKE VENT>

 

<GUARD VENT>

 

<FREEZE VENT>

 

ビースト達の足が凍結し、動けなくなった所を強烈な一撃がヒットし、6体のビーストが爆散した。

 

「わ、私達は助かった、のか?」

 

「いやそれも大事だけど!」

 

絶対絶命の4人を救ったのはここに居るはずのない者達だった。

 

「トラストにインサイザー!?」

 

「スティングにスピアーまで!」

 

アックスやウイングナイトがいるのは分かる。

しかしベントされたライダーの姿まで有ったのだ。

 

「一体どうゆう?」

 

「スペシャルゲストが盛り沢山って訳ですよ。」

 

「え!?れ、蓮君?それにセイレーン まで!」

 

ウイングナイトのデッキは蓮にしか使えない。

けれど今さっき自分達の命を助けてくれたのは紛れも無くウイングナイトだ。

 

「な、何がどうなってるのよ……」

 

「話せば長い。だが本官達は敵では無い。」

 

インサイザーが穏やかな口調で言う。

かつて戦ったリッチーとは別人が変身しているようだ。

ますますわからない。

 

「あなた達は、何者なの?」

 

心愛の問いにセイレーン が剣を掲げながら答えた。

 

「我ら!」

 

「ベンタラの騎士!」




ケイタ?「そんな、そんな事はあり得ない!」

一夏「ベンタラの騎士って一体……」

楯無「次回、Masquerade その2!」

ケイタ?「戦わなければ生き残れない!」


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Masquerade その2

心愛「前回までinfinite DRAGON KNIGHTは!」

ドラゴンナイト「はぁああ!」

オニキス「うぉおおおお!」

一夏「………」(混乱)

心愛「もうベントされたはずのライダーがいっぱい出てきて大変です!それでは本編どうぞ!」


1

黒と赤。二色の炎が何度もぶつかり、

ドラグブレードが火花を散らす。

 

「「はぁあああ!」」

 

まるで鏡合わせの様にドラゴンナイトが裏をかけばオニキスも裏をかき、オニキスが攻めに転じればドラゴンナイトも攻めに転じる。

 

「まさか、お前は!」

 

「ふっ……はぁあああああ!!!!!」

 

「っ! だあああああ!!!!」

 

ドラゴンナイトとオニキスのバックルに全く同じタイミングで炸裂する。

オニキスのデッキがアリーナの奥に。

ドラゴンナイトのデッキが一夏の方に転がる。

 

「!」

 

オニキスに変身していた青少年がドラゴンナイトに変身していた青少年を殴り一夏の方にかける。

 

「うそ…でしょ?」

 

「強盗かと思った?」

 

「ケイタ!」

 

「ええ?」

 

「そんな!」

 

見れば見るほどオニキスだった彼は網島ケイタだった。

顔も仕草も、上に新しく黒いライダースジャケットを羽織っていたが、一夏に斬られた跡と乾いた血の付いた服も。

対してドラゴンナイトに変身していた方は

 

「同じ顔!?」

 

「でも、雰囲気が全然違う。」

 

網島ケイタと同じ顔、なのだが陰鬱そうな表情に黒ずくめの衣装をきた疲れ顔の青年だ。

 

「彼は一体?」

 

「話すと長いんで後ででいいっすか刀奈姉さん。

いても満身創痍のアンタらお荷物なんで帰ってもらえますか?」

 

「か、刀奈姉さん!?」

 

「その名前をどこで!?てか姉さんって!

そしてあなたは間違いなくケイタ君ね、その口撃は。」

 

「そういう訳っス。一夏行けるか?……一夏?」

 

「うわああああ!!!けいたぁあああああ!!」

 

「うわびっくりした!何だよ泣き出して!鼻水!

おろしたてのジャケットに付くから!」

 

「やだ。もう離さない。絶対離さない。

もうどこにも行かせない。ケイタ無しじゃ生きられない」

 

『網島ケイタ、責任を取ってもらうぞ。』

 

『これは引き出しの刑だな。ケイタ。』

 

「セブン、ゼロワン。ただいま。」

 

『おかえり。』

 

『ああ。』

 

一夏からセブンを受け取るケイタ。

一夏の手を取り立たせる。

 

「お喋りは終わりか?」

 

黒ずくめのケイタがオニキスのデッキを構える。

 

「ああ。お前の事はユーブロンさんから聞いてる。」

 

「! そうか、じゃあこのデッキも…。」

 

「そういう訳。」

 

「ああ、まったく。虫唾が走る!カメンライダー!」

 

オニキスに変身し、走り出す。

一夏とケイタもポーズを取り変身

 

「うおぉ!?」

 

より早くオニキスの装甲にに三発の弾丸が浴びせられた。

シュルリと忍者のような動きで楯無の懐からキャモのデッキを奪って現れたのは

 

(え?嘘クロエ!?でも目の色がラウラと同じだし、

…ケイタとお揃いのライダースジャケットだ。

ずるい私もお揃いの欲しい。)

 

「待たせたな色男。任務と時間が合わなかったからって彼女連れて来たのか?関心しないな。」

 

「いやこれがデートに見えるか?」

 

「少しはな!」

 

そう言って背後から他のライダーたちも駆け付けた。

 

「ええ!?な、なんで?

みんなベントされたはずなのに。」

 

「これ、どうゆうこと?」

 

ライダーたちと一緒に来た虚たちに尋ねる楯無。

 

「私たちにも何が何だか…。」

 

「細かい話は後だ。まずは目の前の試練を越えるぞ!」

 

トラストに言われて前を見る。

ゼイビアックスとオニキスが並び、

その後ろから残っていた、いやきっと学園のほかの場所を襲っていたビーストが集まってきた。

 

「ゼイビアックスに……そこの似非ドラゴンナイト!

運が悪かったな!」

 

インサイザーがいう。それに同調するようにトラストも

 

「私たちは試練に勝つ!」

 

「なぜなら我々は最強の戦士だからだ!

KAMEN-RIDER!」

 

キャモに変身しながら少女が言う。

 

「さー!待たされたぶん、思いっきり暴れさせてもらうさかい!」

 

猛るスピアー。そしてスティングも

 

「団結こそ我らの力というところを見せてやる!」

 

「ほら、後はお前だけだぞ?」

 

アックスに肩を叩かれるケイタ。

ウイングナイトもうなずく。

 

「あ、ああ。皆行くぞ!カメンライダー!」

 

ドラゴンナイトに変身するケイタ。

それぞれ武器を構えて大群に向かっていく。

 

「引くぞ。」

 

「ああ。」

 

引いていくゼイビアックスとオニキス。

残されたビーストたちは

 

<FINAL VENT>

 

ライダーたちの切り札に悉く倒されていった。

 

「よっしゃー!これで!これでしまいや終いや!」

 

最後に残ったビーストをスピアーのガゼルスタップが貫く。

あれほどいたビーストをあっと言う間に倒してしまった。

 

「凄い……。」

 

「本当になんなんですの?

このベンタラの騎士という方々は」

 

「それは私が説明しよう。」

 

鏡から新たにかつてシャルロットが変身していたオルタナティブに酷似した戦士が現れる。

 

「あ、ユーブロン司令!お疲れ様であります!」

 

ピシっと綺麗な敬礼をするインサイザー。

他の者たちも敬礼まではしないがユーブロンと呼ばれた戦士に敬意を表し、道を開ける。

 

「私はユーブロン。ゼイビアックスと同じカーシュ人で、アドベントデッキの開発者だ。」




ケイタ「いかがだったでしょうか?って
一夏さんそろそろ離してくれますか?」

一夏「やだ。ケイタが死ぬまで離さない!」

心愛「にしても本当にどうやって?」

ケイタ「それは次回マスターユーブロンに話してもらうよ。」

一夏「次回、The Next world's old tale その1!」

心愛「青春スイッチオン!」


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the Next world's old tale その1

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

蓮「俺やお前がもう1人出て来た所までだな。
……一夏はケイタを離さないつもりか?」

一夏「またどっか行っちゃうもん…」

心愛「2人ともラッブラブだね!」

蓮「他にもユーブロンやベンタラの騎士と敵じゃないみたいだが、よくわからん奴らのオンパレードだな。
今回で説明しきれるのか?」

心愛「なんかユーブロンさんがしてくれるみたいだよ?」

ケイタ「それでは本編どうぞ!」


1

ユーブロンに連れられて一同はベンタラを通ってどこかにあるベンタラの騎士団地球基地に案内された。

 

「ひっろ!」

 

「すごーい!なんか如何にも正義の秘密結社って感じ。」

 

子どもみたいにキラキラと目を輝かせる心愛。

他の面々も心愛ほどではないが興味津々といった様子だ。

 

「一応私たちは世界公認の超特殊部隊ってことになるんですけどね。」

 

戦闘時とは打って変わって落ち着いた穏やかな口調で言うセイレーン。

 

「まあ、チキュウ?で、あってたか?では無名だからな。

この基地の詳細を知ってるのは唯一我らに協力的だったアメリカという国のトップぐらいだ。」

 

「アメリカ!?………なあ一つ聞いていいか?」

 

何か嫌な予感がしたらしい蓮が近くに居たトラストに尋ねる。

 

「どうした地球のブライアン。」

 

「蓮だ。レン・アキヤマ。その協力者の中に

ポリー・ナポリターノって馬鹿女がいなかったか?」

 

「ポリー?あのハイテンションか?」

 

「そのハイテンションだ。」

 

「あのモニカよりも頭おかしい色狂いか?」

 

「その色狂いだ。」

 

「知り合いか?」

 

「……上司だ。」

 

ライダー一同が仮面越しでもわかるような気の毒そうな表情になる。

 

「そうか。」

 

「お前も苦労しとるな。」

 

「憐れむな悲しくなる。」

 

「一同すっかり打ち解けたようだな。

そろそろ本題に入っていいだろうか?」

 

ユーブロンがアーマーを解除しながら、

近くにあった長椅子の一番奥に腰掛ける。

ケイタ達はライダーたちに促され座る。

 

「何か聞きたいことはあるかな?」

 

蓮が手をあげる。ずっと聞きたかったことがある。

 

「アンタらは全部知ってるのか?

ベンタラとかゼイビアックスの正体について。」

 

「ああ。全て知っている。」

 

「話してくれ。」

 

ユーブロンはゆっくりと語りだした。

 

 

ユーブロンは見た目は東洋系の壮年の男に見えるかもしれないが、それは擬態だ。

本当は人間が想像するところのグレイタイプと呼ばれる存在に酷似した異星人だ。

 

「私の生まれた星、

カーシュでは絶えず争いが起きていた。

もう、生まれてからずっともはや戦い以外覚えてないほど長く激しい戦いだ。

私は戦争を永遠に終わらせたい一心でゼイビアックス達

15人の将軍と共に戦い、勝利を収めた。」

 

しかし度重なる戦いでカーシュは再生のしようが無い程荒れてしまった。

労力も資源も何もかもが足りなくなった。

 

「そこで我々は奴隷を求めた。

カーシュ再生の手足となる奴隷を。」

 

「そしてベンタラ人が、アンタら地球人から見れば並行世界の同一人物がその奴隷に選ばれたわけ。」

 

アックスが言う。ユーブロンは沈痛な表情で頷いた。

 

「じゃあベンタラってのは」

 

「鏡合わせのもう一つの現実。

あり得たかもしれない君達だ。

だから彼らと同じDNAを持つ君たちは変身出来る。」

 

そこでユーブロンは先遣隊を兼ねた調査団と共にベンタラに向かった。

しかし極めて複雑な要因によって宇宙船が制御を失い、

ベンタラに激突、着地に失敗してしまったのだ。

 

「生き残ったのは私だけだった。

私は深いダメージを追いながらも活動を続けた。

だが、すぐに限界が来た。」

 

ユーブロンはどこともわからない場所で倒れた。

身体に全く力が入らない。過労で視界もかすんできた。

 

「!? お姉ちゃん!お姉ちゃん!

黒いかっこしたおじちゃんが倒れてる!」

 

「リサあんた何言って…うわホントだ!

べス姉!ケータイ持ってる?」

 

「持ってるがどうし!?人が倒れてるのか?

すぐに救急車を!」

 

ユーブロンはベンタラの心優しい人々により助けられた。

大げさでもなんでもなく命を救われた。

 

(私たちは、こんなにも優しい人々を奴隷にしようとしていたのか……。)

 

ユーブロンは回復してすぐにベンタラの人々に正体を明かした。

もちろん拒絶する人々もいた。

しかし、信じる人たちに支えられユーブロンはゼイビアックス率いるアドベントビーストの力を逆に利用する防衛戦力を開発することに成功した。

 

「それが仮面ライダー、並行世界の君たちだ。」

 

一斉に変身解除するライダーたち。

全員見覚えのある顔で、ケイタのと似たデザインの黒いライダースジャケットを羽織っている。

違うのは胸元のライダーズクレストぐらいだ。

 

「本官はモーラス。元国際特別警察機構戦力部隊、

通称警察戦隊の隊員で、仮面ライダーインサイザーであります。」

 

100万ドルのために一夏を人質にとったやつと同一人物とは思えない真面目そうな自己紹介で答えた。

 

「私はキース。元モトクロスレーサーで、取引の上で仮面ライダートラストになった。ともに試練に打ち勝とう!」

 

逆にこちらのトラストは余り違和感がない。

もしすれ違いさえなければ地球のトラストとも仲間になれたかもしれない。

 

「俺は楯無。ベンタラの騎士団の支持母体の一つ虎月家の19代目当主で、仮面ライダーアックスだ。

言っとくけど他に頼れるのが居ないってだけでお前らヒヨッコを信用した訳じゃないからな?」

 

簪と同じ顔でかなり挑発的なことを言うやつだ。

こいつだって一回ベントされてるくせにと、一同少しむっとした。

 

「こら簪ちゃん!彼らはともに戦う仲間なんですよ?

うちの教え子がすいません。私はサクラといいます。

元教師で仮面ライダーセイレーンです。

頼ってくださいね?なんたって先輩で先生ですから!」

 

「うっせ!頭撫でるな!

それとその名前は楯無を襲名したときに捨てた!

男として扱え!ベントされて記憶でも抜けたか!?」

 

戦闘とのギャップがすさまじいな。

と唯一交戦したことのある蓮は思った。

そしてうっかり山田先生と呼ばないようにしようと思った。

 

「はっはっは。復活そうそう仲のよろしいことで。

俺はトニー。仮面ライダースピアーや。

ま、気軽にやろうや。」

 

余り関りが無かったからわからないが、多分地球のスピアーより取っつき易いんだろうなとケイタは思った。

 

「私はマコトという。キースと同じく取引でライダーになったがこの仕事に誇りを持ってる。

変身するライダーはスティングだ。よろしく頼む。」

 

こっちも手塚と比べ違和感がない。

やっぱり根っこはおんなじという事だろう。

 

「私はアレクと申します。

ハウスキーパーと仮面ライダーの二足の草鞋を履いております。

仮面ライダーキャモに変身します。

戦闘以外も何なりとお申し付けください。………料理以外は」

 

最後にぼそっと言ったのを聞き逃した者はいなかった。

間違いなく並行世界のクロエだと確信する地球側の一同。

 

「最後は俺か。俺はブライアン。

サトシ・ブライアン・マース。

仮面ライダーウイングナイトだ。

ユイの治療費を稼ぐためにライダーになった。

お前ら地球人にも後でしっかり対価を要求するからそのつもりでいろ。」

 

「蓮だ。」

 

「ええ、レンさんですね。」

 

「レン以外の何者でもないね。」

 

「ねえブライアン君。本当は蓮君って名前じゃないの?」

 

「失礼だなお前ら。俺はもうちょっと愛想良いぞ?」

 

『いやレン様、アナタあれと大差ありません。』

 

『いつもあんな感じだぞ?』

 

『アキヤマはどこまで行ってもアキヤマだな。』

 

「お前ら俺でも傷つくことあるって知ってるか?」

 

少し落ち込んで見える蓮に対してブライアンは

 

「地球人って失礼だな。

俺の事アレとかこれって言いやがる。」

 

「いやブライアン。お前もあんな感じだぞ?」

 

「これは本官も擁護できないな。」

 

「お前はいつもあんな感じだぞ?」

 

むっとするブライアン。何か言おうと口を開きかけたとき

 

「マスターユーブロン!」

 

白衣を着た職員のが入ってきた。

 

「お取込み中でしたか?」

 

「いや構わん。どうした?」

 

「110号室の患者、エリー・リバーといいましたが?

の姿がどこにも見当たらず」

 

「なんだって!」

 

蓮が勢い良く立ち上がり医者に詰め寄る。

 

「いったいどうゆう事だ!?

つい一週間前にアメリカにいた筈のエリーがなんでここにいる?

姿がないってどうゆう事だ!?」

 

「彼女の治療が成功したという事だよ。」

 

行ってあげなさい。と穏やかに告げるユーブロン。

蓮はわき目も振らずに飛び出していった。

 

「マスターユーブロン。そのエリーって女はまさか」

 

「ああ、地球のユイだ。彼女の不治の傷を癒す手段をゼイビアックスから奪取するために彼はライダーになった。」

 

何か感じるところあったのかうつむき何か思案するブライアン。

 

「あの蓮ってやつ、間違いなくブライアンやな。」

 

「ああ。きっとミドルネームはブライアンに違いない。」

 

「しかしこんなにも似るものか、少し変な気分だ。」

 

「ええ。モニカみたいなのが二人もいると思うとゾッとします。」

 

「アレクお前それ言うか?」

 

「人が珍しく自分の考えを改めてる所だから黙っててくれるか?」

 

 

3

エリーと蓮の出会いはあまり良いとは言えない出会いだった。

 

確か2年前、俺が14歳の時。

その日蓮は絶不調だった。

寝起きみたいに頭がスッキリしないし、

足元がふわふわしていてなんだかそこに立ってるかどうかさえ怪しく思う。

それでもなんとかアンカーに行くために地下鉄に乗っているのは分かるが。

 

(不味いな、何時までに着けばいいんだっけ?)

 

左のポケットに入れているサードに確認してもらおうとするがポケットには何も入っていない。

一番近い窓を見ると茶色い髪の女がサードを持ってる。

 

(畜生スられた。)

 

女を観察する。

年は自分と同じぐらいで物腰は軽いが、喧嘩は素人。

凄く背が低くてくりくりした青い目と長い茶髪の女だ。

 

(どんだけ無防備だったんだ俺。)

 

とりあえずコイツと同じ駅で降りて尾行るか。

そう思って軽く頰を叩く。

 

十分な目覚めとは言い難いが素人一人を黙らせるだけのアクションなら何とかなるか。

幸か不幸か女は次の駅で降りた。

 

なんだか見覚えのある道をわざと遠回りする様に歩く女を追い続ける。

女が辿り着いた先は

 

(俺ん家のアパートじゃねえか!)

 

まさかの愛しい我が家だった。更に女を追いかける。

 

(しかも同じ階かよ!部屋も方向一緒だし空部屋除いたらお隣じゃねえか!そんな事にも気付かないくらいぐらいボーッとしてたか!?)

 

自分に呆れてはぁーーっ!と溜息をつく。

前を歩く女に声をかけようとした。しかし

 

(!? 足がもつれて!)

 

蓮は額を激しく打ち付けながら倒れた。

 

「きゃあ!え、ええ?」

 

その後の事は記憶が曖昧だ。

ただ置かれてる状況から考えるに女に運ばれたらしい。

 

「うぅ……」

 

「!? 起きた…」

 

「介抱してくれた礼はするがケータイ返せ。」

 

「え!?じゃあずっとつけてきたの?」

 

それで風邪ひいて倒れちゃ世話無いがな。

と嗤う蓮。女も複雑そうに笑う。

 

「私はエリー。エリー・リバー。あなたは?」

 

「レン・アキヤマ。三つ向こうの部屋に住んでる。」

 

ケータイを受け取りながらもう一度エリーを驚かせる。

くりくりした目が驚くたびにもっと丸くなるのが面白いなと思った。

 

その日はそのままエリーの部屋に泊まった。

と言うか泊まらされた。病人は大人しくしてろの一点張りでエリーは頑固だった。

 

そしてそんな献身的看病あってか蓮は翌日には全快した。

一日だけ様子を見て次の日からは学校にもアンカーにも行った。

 

そして丁度一週間の潜伏期間を経てエリーが風邪を引いた。

 

「病人は寝てろ。」

 

今度は蓮が言う番だった。

とりあえずお粥を作って食べさせてやる。

 

「うぅ……まさか君に看病されるなんて……。」

 

「俺が一番びっくりしてる。なにせあんだけ病人は動くなと言ってた奴が買い物に言った挙句目の前で倒れるんだからな。」

 

「返す言葉も有りません…。」

 

しゅーんとくりくりした青い目も元気がない。

綺麗な茶髪も項垂れてるように見える。

 

「人のケータイスッた天罰とでも思っとけ。」

 

「はい・・・。」

 

「なんでスリなんかしたんだ?」

 

エリーは躊躇いがちにこっちを見ていたが堪忍したようにぱたりと仰向けになり

 

「私ね、孤児なんだ。で、今育った孤児院がピンチなの。」

 

「そっか。大変だな。」

 

「あれ?意外だね。スリは良くないとか言うと思ったのに。」

 

「俺も片親だったから、少しわかる気がする。」

 

「! その聞いていい?どんな人だったのレンの親って。」

 

「親父はおふくろ捨てて居なくなった糞野郎だ。

お袋は俺をここまで育ててくれた立派な人だったよ。」

 

「へえ、いいなぁ。」

 

それからどちらともなく誘い合って会うようになった。

それが何回か続いた後に服を見に行こうと誘われた。

 

「エリー、お前はチビだけどツラは良いんだからもっと白とか着たら良いんじゃないか?」

 

エリーは逆に蓮こそ白い色が似あうと言った。

 

「ちょっと大きめだけど、これとか良いんじゃない?」

 

そう言ってエリーが取った上着こそ蓮が今も来てるあのジャケットだ。

 

「そう言うお前の方が白に合うだろ?」

 

そう言って蓮はエリーに白のワンピースと瞳と同じ色のカーディガンを進めた。

 

「二人ともお似合いですよ!

やっぱ美男美女は映えますね!しかもカップル!」

 

「「か、カップル!?」」

 

全くそのつもりがなかった2人は驚いた。

カップル、つまりこの行為がデートに見えたという事だ。

 

(サード!これはデートなんかじゃ無いよな!?

なんせただ一緒に服を見た後飯食って帰るだけなんだから)

 

《レン様、それ立派なデートです。》

 

店員にもサードにも言われてから2人はお互いを意識し合う用になった。

デート?を重ねる度に蓮はエリーに惹かれた。

 

小さい身体で一生懸命な所。ブラックコーヒーが飲めない所。

バターケーキを美味そうに食べる所。子供に好かれる所。

そして何よりこんな自分を心配してくれる事に魅力を感じた。

 

口には出さなかったがエリーも蓮に惚れていた。

 

不器用で無愛想で寂しがりな所。

家事のできない自分を本気で心配してくれる事。

子供に怖がられて落ち込んじゃう所。

意外と冗談好きな所。

そして誠実で真摯な姿勢に強く惹かれた。

 

そしてある夜。エリーは蓮に誘われてツーリングに行った。

月の綺麗な晩だった。

 

「レン、一つだけ、お願いがあるの。」

 

折を見てエリーは上目遣いに蓮の目を真っ直ぐ見つめながら尋ねた。

 

「今から一つだけ質問をするわ。

絶対に嘘をつかないで真実だけで答えて。」

 

蓮が答えようとしたその時だった。

車のカーブからビーストが飛び出してエリーを跳ね飛ばした。

 

「█▅▃▄▄▅▅▅!」

 

奇声をあげながら襲いかかるビースト。

蓮はエリーを背負って力の限り走った。そして逃げ込んだ教会でゼイビアックスからデッキを受け取り

 

「KAMEN-RIDER!」

 

自分の願いの為だけに戦い出した。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

一夏「蓮も大変だったんだね。」

心愛「蓮君がんばった!偉い偉い!」

蓮「頭を撫でるな!お前は俺の母親か!」

心愛「そこはお姉ちゃんって呼んで欲しいな。」

一夏「次回、the Next world's old tale その2!」

ケイタ「次回もみんなで!」

蓮「KAMEN-RIDER!」


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the Next world's old tale その2

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

虎月「俺たちベンタラの騎士が出てきてマスターユーブロンが無知なお前らのために説明してやったとこまでだろ?」

キース「タテナシ。もう少し言い方があるだろ?」

ケイタ「あまり強い言葉を使うなよ……」

2人「?」

ケイタ「弱く見えるぞ!」

虎月「なっ!」

キース(こいつ、出来る!)

セブン『ケイタ、オサレな漫画の読みすぎだ。』

ケイタ「てへぺろ!」

虎月「ズル!なんだそりゃ!?」

キース「それでは本編開始だ。」


1

エリー・リバーはずっと悪夢を見ていた。

舞台は穏やかな春の野原。

彼女は道無き道を前にレンに教えてもらった人力車に乗っている。

 

若草の匂いが程よく気持ちい風に乗ってエリーの鼻をくすぐる。

 

「すっごく良い風。車屋さん。一体どこに向かってるんですか?」

 

「それはねぇ」

 

ものすごく渋く不気味な声で男は言った。

 

「あの世だよ。お前さんの男の待っているね。」

 

「は!? う、嘘よそんな筈ないわ!」

 

車から飛び降りるエリー。地面に足が着いた瞬間、

穏やかな春の草原は煉獄と化した。

そこかしこで炎が巻き起こり、岩をも溶かす灼熱が体を蝕む。

 

「う、ううぅ!レン!レン!レーーーンッ!!」

 

男の言葉を信じたわけではないが、

エリーはレンを探して走り回った。

 

手が焼けるのも構わず瓦礫をどかし、炎が移るのも構わず道を突っ切る。

 

「レン!どこ!……あ、レン!」

 

ようやく見つけた。黒く長いロングコートを羽織った後姿があった。

トレードマークのツンツン頭は蓮に違いない。

エリーと出会ったばかりの頃の蓮だ。

 

「レン!待ってレーン!」

 

聞こえていないのか蓮はエリーに背を向けたままずんずん進んでいった。

追いかけて行く内に気付いたが、炎が揺らめくたびに姿が変わっていった。

 

エリーが選んだ白いジャケットに下した髪の姿に、

バッ〇マンみたいな仮面に黒いスーツの騎士に、

そして最後に二又に分かれたマントに綺麗な青の鎧、金色の淵の仮面の騎士に。

 

「レン!おいてかないで!レン待って!」

 

ようやく追いついた。その先に居たのは黒い鎧の騎士だった。

重そうな格子戸みたいな仮面の奥には赤い釣り目が怪しく光っている。

そして蓮と同じように鎧や仮面の淵に金色の飾りがついている。

 

2人は剣を構え睨みあった。

 

「はぁああああ!」

 

 

「うぉおおおお!」

 

2人が交差する!勝負は一撃だった。

 

「いや!レン!レンんんーー!!!」

 

腹部から炎の中でもわかる赤黒く、鮮やかな血を噴き上げながら崩れ落ちる青の騎士。

エリーはそれに駆け寄って

 

「はぁ!」

 

というところで目が覚めた。

ベッドから思い切り体を起こす。体中嫌な汗でぐっしょりだ。

患者服が肌にくっ付いて気持ち悪い。

 

(あれは、夢?……夢の、はず。でももしホントだったら!)

 

新手て両手を確認する。蓮を探し回った時に燃える瓦礫に触って出来た火傷が一つもない。

アレは全部夢だったようだ。

 

(でも、不安だ。レンを探そう!)

 

部屋を見渡す。白い簡素な部屋、病室だ。

ベッド以外には体につながった管についてる機械と生活に最低限必要な物ぐらいか。

 

身体に着いた管を外し、ベッドから降り

 

「え?うぐ!」

 

上手く体に力が入らず盛大にゆかにすっ転んだ。

 

「いったたた……な、なんで?」

 

彼女が知る由もないが、二年間も眠り続けていたのだ。

筋肉なんか衰え切ってる。

 

「うぅ、お、お願い私の身体ぁ…今だけ!今だけでいいから頑張って!」

 

何とか辺りの物に摑まりながら立ち上がり、

何度も転びながら起き上がり蓮を探す。

 

「はぁ!はぁあ!れ、蓮!死んじゃ嫌だよ……レン!」

 

歩いて歩いて、普通の人なら軽く小走りした程度の距離を凄まじい時間をかけて進み、蓮を探す。

そして曲がり角に差し掛かった時、

 

「エリー!」

 

聞きなれたのより少し低い声が聞こえた。

振り返る。そこに居たのは短い黒い髪に彼女が選んだ白いジャケットがちょうど良いサイズに見えるぐらいにまで背が伸びていたが

 

「レン!」

 

「エリー!」

 

蓮はエリーに抱き着くと、声を殺して泣き出した。

エリーの全体重がかかってる筈なのに蓮は逞しい両腕でそれを支えながらすすり泣いた。

 

「エリー…。」

 

「なに?泣き虫さん。」

 

「あの時の答えだが、俺は、お前の事を異性として好きだ。

そんなお前のたっての頼みだ。どんなことでも偽りなく答える。」

 

「!? れ、レン?今、今なんて言ったの!?」

 

「お前を異性として好きだって」

 

「~~~~~ッ!!」

 

ポン!と音と煙が頭から出そうなぐらい真っ赤になったかと思うとすぐにうつむき涙をいっぱいにためながら

 

「レン、私も大好き。付き合って。」

 

「! ああ。」

 

今度はエリーが泣く番だった。

声を一切セーブせず大声で泣いた。

 

蓮は何も言わずにエリーを背負うと歩き出した。

 

『レン様、あなたとエリー様に割り当てられた部屋の位置情報が送信されてきました。ご案内します。』

 

「ああ。エリー。」

 

「ぐすす……なに?」

 

「信じられないかもしれないけど、

俺お前が二年ぐらい寝てる間ずっとエイリアンと戦ってたんだ。」

 

「エイリアン?」

 

「ああ。その時いっしょに戦う仲間になれた友達が大勢いるんだ。

今度紹介するよ。」

 

「どんな人達なの?」

 

「知りたいか?」

 

「レンの事だから知りたい。

それに、私よりレンの事を知ってるなんて男の子でも許さないんだから。」

 

「そうか。」

 

きっとケイタと一夏もこんな気持ちだったんだろうな。

と思いながら蓮は背中にエリーの体温と鼓動を感じながら話し始めた。

エリーにとっては隣の世界の昔話を、地球の仮面ライダーの戦いの記録を。

 

 

蓮が走り去って行ってしまったので、話は一旦ここまでで、

一同先に部屋に案内された。

 

「本来もっと少ない人数しか集まらないと思って部屋を用意してたから手狭だぞ。」

 

「理由をお聞きしても?」

 

「俺はユーブロンに一番早くに復活させられて、

ずっとアイツのバックアップをしててな。

進言してたんだ。

セシリア・オルコットの様なライダー程度の性能も持たない兵器に胡坐をかいてるだけのくせに無駄にプライドの高い女尊主義者や!」

 

「う!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒのような依存心と崇拝を取り違えた甘依存や、」

 

「なんだと!」

 

「シャルロット・デュノアのような傀儡になり下がった意見無しなど足を引っ張るだけだとな。」

 

「い、言って良い事と悪い事があるぞ!」

 

掴みかかるデュノアブライアンは不機嫌そうに腕を払いのけると

 

「全部事実だ。

ベンタラとついでに地球を救う一大プロジェクトだぞ?

不確定要素はすべて排除するべきだ。

特にお前らのような扱いずらい人員はな。」

 

吐き捨てて案内を始めた。

 

「なあ、地球のアイツもあんな感じなんか?」

 

トニーがシャルロットに尋ねる。

 

「いえ、もっと取っつき易いです。」

 

「レン少佐は尊敬に値する上官だ。」

 

「素敵な方です。とても強くて」

 

「はー、好かれとるな。」

 

「俺たちもブライアンのイメージはそんな感じだったんだが」

 

おかしいなと言う様に首をひねる虎月楯無。

 

「どうしちゃったんでしょう?」

 

「まるで本官達と初めて会った時の様であります。」

 

「そうなんですか?」

 

サクラとモーラスの反応に意外そうな顔をするアレク。

 

「アレクはブライアンより後に加入したメンバーだから知らないか。」

 

「彼は焦ってたんだ。難病の恋人を救えない自分に。」

 

ブライアンより少し早く加入していたマコトは少しつらそうな顔をしながら言う。

 

「それでその、恋人は?」

 

「今はアドベント空間だ。」

 

「アドベント空間?」

 

「本官達ライダーがベントされると送られる地球とベンタラの境目にある空間であります。」

 

「そこでは時間の流れが違う。

だから特殊な回復装置を使うことで戦いに敗れたライダーを保存できるって訳や。」

 

「ま、アドベントマスターのデッキ、

アドベントキーを抑えられちまえば一瞬で無限の牢獄に早変わりだ。」

 

皮肉って言う虎月楯無。

 

「だからその、ユイといったか?

を保存できるわけか。」

 

「ええ。そういう訳ですから医者を手配できるまでそこで待たせられるから問題ないんですけど……。」

 

「あの焦り方は、と言うか余裕のなさは少し違うと思いませんか?」

 

「だよなあ……。」

 

 

部屋割りは以下の様に決まった。

 

101号室 ケイタ、一夏

 

「うん。狭い!」

 

「べッドは二人で一個でいいね。」

 

102号室 蓮、エリー

 

「ホントに私がベッド使っちゃっていいの?」

 

「病み上りに無理させれるかよ。」

 

103号室 モーラス、シャルロット

 

「よろしくお願いするであります!」

 

「は、はい!」

 

104号室 キース、ラウラ

 

「ふむ、君はラウラ君と言ったな。

ともに試練に打ち勝とう!」

 

「あ、ああ」

 

105号室 虎月楯無、更識楯無

 

「よろしくねベンタラの簪ちゃん!」

 

「……チッ!」

 

「!?」

 

106号室 サクラ、セシリア

 

「こうして見ると、

本当に山田先生と違いが判りませんね。」

 

「地球の私も教師だったんですか?」

 

107号室 トニー、虚

 

「よろしゅうな、地球の杏子ちゃん。」

 

「という事はベンタラの私も更識家に?」

 

108号室 マコト、鈴音

 

「よろしくね、もしかしたら時々癖で手塚さんって呼んじゃうかもだけど」

 

「地球の私か?学校辞めてないみたいだな。」

 

109号室 アレク、心愛

 

「よろしくお願いします。」

 

「あとで一緒にパン作ろう!」

 

110号室 ブライアン

 

「よし、全員問題なさそうだな。」

 

「いや待った!」

 

「なんだよ楯無。文句ないだろ。」

 

「いや何しれっとお前だけ1人部屋なんや!」

 

「なんだよ?別にいいだろ?」

 

「駄目だよ!?」

 

賑やかに喧嘩するベンタラの騎士たち。

 

「部屋入っちゃおっか。」

 

「だな。」

 

ケイタと一夏は特に文句も無かったので二人で部屋に入った。

 

「ケイタ。こっち向いて。」

 

「ん?どうし」

 

一夏はケイタを押し倒した。

そして唇を奪い、口の中に舌を入れる。

 

「んん!んんん!!んーーっ!」

 

一夏は子犬みたいにしゃぶりつくす様にケイタの口をむさぼった。

 

「ぷっは!急になんだよ一……一夏さん泣いてます。」

 

「だって、ケイタが居るんだもん。

死ぬまで会えないと思ったケイタが居るんだもん。

誰にも渡したくない。ケイタは私のだもん。

だからケイタの口の中全部私のにするの。」

 

「い、一夏さんタイム!

落ち着いて?頼むから落ち着いて!」

 

「落ち着けない!いつもケイタは遠くに行っちゃう!

いつも私のそばにいない!

だからずっとそばにいるって言って!」

 

ケイタは気付いてしまった。

あまり深く考えていなかったが、一夏たちは人造人間。

種族としてはまだだ一世代。

子供を造らなければ完全に孤独。

しかも確かに血の繋がりがあると信じていた網島家との繋がりも弱い物と知れば怖いのだろう。

一人きりが。隣に誰も居ないという事が。

そして危険な存在として排除されかねないことが。

その上一度自分で想い人に手を掛けたとなればもう二度と離したくないのだろう。

 

「セブン。」

 

『なんだ?』

 

「お前って電源切れんの?」

 

『ああ。その、なんだ。この部屋の防音設備なら大丈夫だろうが、程々にな。』

 

「いやそこまで行く気は!え?」

 

「いってくれないの?」

 

「え、ええ?」

 

どうやら自分は一歩も引けない所まで来ているらしい。

そりゃそうだ。一夏がここまで死んでも一夏を止めようとしたケイタにも責任の一端がある。

 

「一夏。誓うよ。俺は絶対お前を離さない。

どんなに過去を忘れてもお前だけは思い出す。

そして必ずお前に会いに行く。」

 

「うん。嬉しい。私も絶対そうする!」

 

再び唇を貪りあう。そこからは二人だけの時間だった。

 

 

「ふむ、何やらお取込み中の様だな。」

 

ほんの短い間とは言え生き別れに等しい隔絶を感じていた恋人同士だ。

積もる話もあるだろうと、マスターユーブロンは気を利かせて部屋の前を去った。

 

「彼らには早く話しておくべきです。

夕飯の跡にでもしっかり呼び止めるべきです。」

 

「ブライアン…ああ。分かっている。それで、

君はどうする?」

 

「デッキは地球の俺、レンって言いましたっけ?

に渡しますよ。ここの設備をあなたの次によく知ってるのは俺ですし。」

 

裏切者を討ちとれないのは残念ですけど、とブライアンはぶっきらぼうに言うと去って行った。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」(疲労困憊)

一夏「まだもう少し説明が続くかな?」(お肌ツヤツヤ)

キース「君達………。」

虎月「まじかよ…。」

ケイタ「じ、次回…the Next world's old tale その3」

一夏「これで決まりだ!」


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the Next world's old tale その3

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

サクラ「地球のブライアン君の彼女さんが目覚めたところですね。」

モーラス「それから、本官達はベンタラの法律に縛られる人間ゆえ、通報はしないが気を付けるように。」

ケイタ「は、はい。」

サクラ「そ、それではどうぞ!」


1

ベンタラのゼイビアックスの拠点。

黒い仮面の戦士が三体のビーストと対峙している。

 

「…………。」

 

黒い青龍刀、ドラグセイバーを構えたオニキスは向かってくる三体のレッドミニオンを暴力でもって迎え撃った。

まず一体。回転蹴りで顎を弾き飛ばし、

次の二体目をドラグセイバーで袈裟斬りに切り捨て、

最後の三体目を足払いで転ばせるとがら空きになった胴にドラグセイバーを叩き落とす!

 

三体はエネルギーを切らしたように動かなくなると霧散して消滅した。

 

「悪くない調子だね、真一君。」

 

「ゼイビアックス。」

 

アーマーを解除したケイタそっくりの青年の前に現れるゼイビアックス。

 

「ブランクが長かったから腕が落ちてないかと不安だったが、杞憂だったようだ。」

 

「いつお前に駆り出されるか分かったもんじゃ無かったからな。」

 

そう睨むな、と目だけは全く笑ってない笑顔でゼイビアックスは

 

「早速次の仕事だ。ベンタラの騎士どもの所に潜入して作戦を暴いてこい!」

 

「……いいだろう。けどその代わり約束は守れよ?」

 

「もちろんだとも。」

 

そう言って頷いたゼイビアックスをしばらくは睨んでいたが真一と呼ばれた彼は去って行った。

 

「しかし、網島ケイタやベンタラのライダーが復活したのはユーブロンが居たからだろうが、アドベントデッキはそう簡単に造れるものではない。あの黒いドラゴンナイトのデッキ、いったい誰が?」

 

 

「俺が造った。」

 

「えええ!?」

 

夕飯を食べに来たケイタと一夏が耳にしたのはそんな言葉だった。

見るとサクラにトニー、セシリアに虚がブライアンと同じテーブルで夕食を取っている。

 

「なんだろ?」

 

「さあ?」

 

一夏は何か気になったようだが、何もかも搾り取られて栄養素が足りていないケイタは一刻も早く栄養補給をしたかった。

 

(よくあれなゲームだとああいった行為は魔力補給になったりする理由が分かった………。)

 

スタミナがつき易そうなメニューを選んでとり席に着く。

 

「あー、長い一日だった。いただきまーす。」

 

「いただきます!」

 

早速一口目を頂こうとした時

 

「俺が折角造ってやったデッキを盗られておきながら

女連れて飯とはいいご身分だな、網島ケイタ。」

 

もう食べ終わったらしいブライアンが話しかけてきた。

 

「ブライアン…そのことについては申し訳ないの一言だよってえ!?

オニキスのデッキってブライアンが造ったの!?」

 

「オニキス?」

 

「ほら、俺がこっちに戻って来た時使ってた黒いドラゴンのデッキ!」

 

「へぇ~……え!?そうなの!?」

 

「そうだよ。お前らがゼイビアックスに良い様に潰しあわされてる間にやる事やってた訳さ。」

 

相変わらず歯に衣着せぬ言葉を言う。

どうも蓮より攻撃的な人間だ。

 

「本当に、地球のお前もベンタラのお前も足ばっか引っ張ってくれる。」

 

「そう言えば、ベンタラの俺ってどんな奴なんだ?」

 

「糞野郎さ。」

 

「「え?」」

 

「なんてったってあいつは、

城戸真一はベンタラの騎士を壊滅させた張本人。

裏切り者の仮面ライダーだからさ。」

 

「え?べ、ベンタラの俺が、

 

裏切り者の仮面ライダー?」

 

「ああ。お前の声を聴いてると、顔を見てると思いだすんだよ!

あの最悪の裏切り者を!俺の前で喋るな!ベントしたくなるんだよ……っ!」

 

そう吐きしてるとブライアンは怒りを持て余す用に身震いして去って行った。

 

 

3

その夜2人は寝付けなかった。

並行世界の自分の事とは言え、自分のせいで並行世界と地球が侵略されたという事になる。

 

(ブライアンに嫌われるわけだ。

俺とあの時戦ったドラゴンナイト、ベンタラの俺と俺は同じ顔なわけだし。)

 

どうしたものか、いや実際にベンタラを壊滅させたのはゼイビアックスだし、間接的最大要因になってたとしても並行世界の自分、顔が同じなだけの別人だから気にする必要もないのだが。

 

(気になるな……。)

 

そう思うとケイタは自分の右手を枕にしてる一夏に目をやる。

一夏は一回寝ると起きないタイプだ。

そして車に乗ったり、横になったらすぐ寝るタイプだ。

 

(そして滅多な事じゃ起きない。行くんなら今だ。)

 

ゆっくりと腕を抜いてベッドを抜け出す。

落ち着かないのかゴロゴロと藻掻きだしたので普通の枕を頭の下に挟んでやったら落ち着いた。

 

「よし。行ってきます。」

 

寝間着のまま裸足で、という訳にはいかないので一回ベンタラ経由で網島家に戻って着替えてからまた基地に戻った。

 

「セブン、マスターユーブロンの部屋ってわかるか?」

 

『いや。だが広い館内だ。ナビシステムがあったはず。』

 

そう言ってセブンがどこかにアクセスする。

画面に地図が表示された。それに従い進んでいく。

 

「ここか。」

 

一見ほかの部屋と大して変わらないドアの前に立つ。

一回、軽くノックをする。

すぐに「どうぞ。」と声がしたので中に入った。

 

「網島ケイタ君。どうしたかな?」

 

「夜分遅くにすいません。

マスターユーブロンにどうしてもお聞きしたいことがありまして。」

 

「ほう?それは一体?」

 

「ベンタラの俺ってどんな人なんですか?」

 

「!……誰かから聞いたのか?」

 

「ブライアンから。裏切り者だって。」

 

「そうか…かけなさい。君は誰より知る権利がある。」

 

 

ベンタラの網島ケイタ、城戸真一はライダーになったことを後悔していた。

契約という名の永遠に続く呪縛。無限に戦い続け運命。

そうしなければビーストの生存のために自分の命が吸われるのだ。

 

「死にたくない!けど、サラァ!」

 

彼にはベンタラの織斑一夏、サラという恋人がいた。

それがより真一を苦しめた。

そんな心のスキをゼイビアックスに狙われたのだ。

 

「サラとの安寧を保証する代わりにベンタラの騎士を裏切れ。」

 

その約束通りに真一は次々と仲間をベントしていった。

モーラスを、キースを、楯無を、サクラを、

トニーを、マコトを、アレクを、

仮面ライダーブレード、ベンタラの箒に当たるモニカを

アビスのジンを、ラスのウィッグを、

トルクのチャンスを

ストライクのアキラを、そして、ブライアンを

 

「真一!……なんでだ?なんでゼイビアックスに手を貸すような真似を!?」

 

「………。」

 

「答えろ!お前は、お前はすごい奴じゃないか!

皆は俺かサクラさんが最強だというけど違う!

最強はお前かウィッグさんだ!お前を、俺はお前を尊敬していたのに!!」

 

この、裏切り者がぁあああ!!!!

そう叫んでブライアンは変身した。

ドラグセイバーとダークバイザーがぶつかり合う。

激しい打ち合いの末にドラグセイバーがウイングナイトを切り裂いた。

 

「うぅうう!がぁああああ!し、真一!

もう、もうお前を友達だなんて思わない!

お前は、悪魔に魂を売った化け物だ。悪魔だ!

いずれその報いを受けさせる!

アドベント空間だろうが地獄だろうが…

必ず舞い戻って、世界の果てまで追い詰めて」

 

そこまで言った瞬間にブライアンの身体は解けて消滅した。

そして最後にアドベントマスターと対峙したとき、

真一はデッキの契約を解除させられ戦闘不能になったが、

そこまでで十分と判断されゼイビアックスにサラ共々ベンタラに似た空間に幽閉された。

 

そして、時は流れ

 

「カメンライダー!」

 

黒い龍となって舞い戻った。

 

「!? 黒いドラゴンナイト?て事はお前が!」

 

「ああ、真一だ。」




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

サクラ「あの時の不意打ちは真一君だったんですね……。」

ケイタ「あれ?知らなかったんですか?」

モーラス「ああ。本官達も初耳だ。」

サクラ「次回、black Onyx その1」

ケイタ「戦わなければ生き残れない!」


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black Onyx その1

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

アレク「真一様の過去を振り返った所までですね。」

ユーブロン「しかし、彼に女性がいたとは意外だな。」

ケイタ「知らなかったんですか?」

ユーブロン「プライベートだからな」

アレク「それでは本編です。」


「それでは任務を発表する!」

 

朝、ミーティングルームに集まった一同にマスターユーブロンは告げた。

 

「今朝、世界各地でこれが見つかった。」

 

持ってこられたのは白いポールのようなものだ。

 

「これはテレポートアンテナ。

遂にゼイビアックスは条件を満たし、

ベンタラ人に続いて地球人も奴隷にしようと

これを使って地球中の人々を拉致するつもりだ。」

 

そのためにアドベントビーストを使って人間のサンプルを集めていたのだ。

そういうマスターユーブロンは真剣そのもの。

どうやらそんなに悠長にしてられる事態ではない様だ。

 

「他のライダーは復活させられないのですか?

例えばラスやストライク。」

 

「いい質問だオルコット嬢。

現在一度盛大に大破してしまった関係上アドベントキーが不調だ。

もし無理をさせすぎて完全に壊れてしまえばベンタラのライダーは勿論ただ騙されていただけの地球のライダー達も復活できなくなってしまう。」

 

「俺とマスターユーブロンで上手く地球程度のマテリアルで補強して騙し騙し使って復活させていたけど、

これ以上はデッキに毒だ。」

 

ブライアンが説明を補う。

それでも何とかチームとして動かせるだけの人数を復活させられたが。

 

「そこで君にやってもらいたいのはこのテレポートアンテナを逆稼働させてベンタラ人をカーシュ星から呼び戻し、転送装置を破壊し、カーシュとの関係を断つ。

これが今地球とベンタラを救える唯一にして最後の作戦だ。」

 

失敗は許されない。と言うユーブロンにベンタラのライダー達は

 

「はっ!なんや旦那。要するに救う世界がベンタラ一個からベンタラとベンタラそっくりの星二つに変わっただけやろ?なら何時もの様に一言命令するだけでええで?」

 

「そうです将軍。ゼイビアックスという試練を乗り越えるために地球人と言う新たな仲間と相乗りするだけです。」

 

「地球だろうがベンタラだろうが救って決めたら救う!

二言を言わねえのが虎月家唯一の家訓だ!」

 

勇んで立ち上がる三人他のライダー達も静かにうなずくだけだったが、気持ちは同じようだ。

 

「諸君……ありがとう。

私は君らとともに戦えて幸栄だ。」

 

ユーブロンは一人一人に奇妙なUSBを手渡す。

 

「位置を特定し次第、昨日フォンブレイバー達に協力してもらい制作してもらったウイルスを転送装置の制御機にインストールし、制御を奪う。

全ては君たちの働きにかかっている!地球のために!」

 

「ベンタラのために!」

 

ベンタラの騎士たちが一斉に拳を掲げる。

ケイタ達やフォンブレイバーにブーストフォンたちも拳を掲げる。

 

「出動だ!各自同じ部屋になってるナビゲーターたちの指示に従って制御機に迎え!」

 

 

「おい、地球の俺!」

 

「どうした?」

 

「持っていけ。それはお前のだ。」

 

ブライアンはデッキを蓮に譲った。

 

「いいのか?」

 

「俺はこの基地の設計にも携わってる。

ユーブロンの補佐って仕事がある以上前い出て戦えない。

精々ベントされるなよ?」

 

「ああ。気を付けよう。サード。」

 

『はい。こちらに残ってサポートをさせて戴きます。

ソリッドドライバー着身!』

 

ソリッドを着身し、機能を増幅するとサードは蓮のデッキに接続した。

 

『準備完了です。』

 

「よし、行ってくる。KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身しながら鏡に飛び込んだ。

出た先は、何処かの駐車場だ。

 

「早速熱烈歓迎だな。」

 

どうやら当たりだったらしく制御機を守護するアドベントビーストが待ち構えていた。

 

『他の皆さんも同じなようです。』

 

「ならさっさと片づけよう。もっと重要な任務がある。」

 

<SWORD VENT>

 

ウイングランサーを装備し、ビーストの群れを蹴散らさんと走り出した。

しかい

 

<FINAL VENT>

 

黒い炎がビーストたちに降り注いだ。

個体になったそれはビーストたちを焼きながらも離さず、背後からのしかかるように現れたバイクモードのブラックドラグランザーにひき潰された。

 

「!? 黒いドラゴンナイト?て事はお前が!」

 

「ああ、真一だ。」

 

サバイブモードを解除するオニキス。

ゆっくりと近づいて来る。

 

「熱烈歓迎ならぬ熱烈大歓迎って訳か。」

 

ウイングランサーを構える蓮。

 

「まて!俺はゼイビアックスから逃げて来たんだ!」

 

「信じるとでも?

それより俺はお前が今使ってるデッキに用があるんだ。

確かロックを解除すれば俺でも使えるんだろ?

今ベンタラの俺の分のデッキが無くてな。お前から貰う!」

 

「く!」

 

<SWORD VENT>

 

黒いドラグセイバーがウイングランサーを受け止める。

その度にあの日、ブライアンをベントした時の事を思い出す。

 

「どんなもんかと思えば心、技、体すべてが成ってない。

サクラさんじゃ無いが、アーマーを脱げ!

お前はドラゴンのデッキに相応しくない!」

 

「そんなの、俺が一番分かってるんだよ!」

 

ウイングナイトを蹴り飛ばし、カードをベントイン!

 

<STRIKE VENT>

 

ドラグクローファイヤーがウイングナイトを襲う!

 

<GURAD VENT>

 

ウイングナイトはウイングウォールを装着すると同時に巻き起こした竜巻で炎を飛ばしきるとダークバイザーと二刀流で斬りかかる!

 

<GUARD VENT>

 

今度はオニキスが盾を装備して受け止めた。

一進一退の攻防が続く。

 

「お前みたいな言われて戦ってただけの奴らに何がわかる!」

 

「お前みたいな三流卑怯野郎のことなんてわかりたくもない。」

 

<<FINAL VENT>>

 

ゆっくりとドラグブラッカーがオニキスの周りを旋回する。

ドラゴンナイトと同じポーズを取り、

軽く地面を蹴ったオニキスはふわりと浮かび上がり構えをとった。

ウイングナイトも勢いをつけて飛び上がる!

 

「はぁあ!!!!!!」

 

「だぁああああああ!」

 

二つのファイナルベントがぶつかり合う。

競り勝ったのは、オニキスだった。

 

「がは!」

 

「はぁ、はぁ!こればっかりは年季の差だな!」

 

ドラグセイバーを拾いなおし、ウイングナイトの方を向く。

 

「ふっ、やれよ。それがお前の本性だ!」

 

「ッ!………くそ!」

 

オニキスは去って行った。

 

『レン様、このことは報告しますか?』

 

「俺に考えがある。ブライアンにだけ話そう。」

 

 

システムを管理しながら蓮は少し渋くなった紅茶を喉に流し込んだ。

すべて順調。ナビゲートを素人に任せてないならここにいる意味もないぐらい暇だ。

世界の危機だと言うのに。

 

「ん?早いな。ドラゴンナイトはもう終わったか。」

 

制御機一機の停止を確認し、一夏が担当していたナビシステムをロックする。

 

「織斑一夏、上がっていいぞ。

お前の男を迎えに行ってやれ。」

 

「はーい!」

 

何か再会してから良い事があったらしく彼女はご機嫌だ。

 

(ま、網島ケイタのモチベーションが上がるなら構わないが。

それより問題は、このケータイだ。)

 

レン・アキヤマのナビゲーションを担当するサード。

本来ならエリー・リバーに任せたいところだが、

彼女はリハビリがあって不参加だ。

 

(こいつだけは中でナビシステムに細工をしてても俺に気付かせないことぐらいできる。)

 

もし内通者にでも成られればこちらは大打撃を負う事になる。

それだけは避けたかった。

 

「どうにかしないとな、お!他の連中も終わったか。」

 

ベンタラのライダー達も続々と戻って来た。

無事制御機は停止している。

 

「おつかれー!」

 

「お疲れ様です。」

 

「やっぱビースト程度はどうにかなるな。」

 

「本官としては機械が不得意なトニーがちゃんと出来るかが不安でしたが。」

 

「あれやろ?赤いランプが消え取ったらええんやろ?」

 

軽口を叩きながら一同待機室に散らばっていく。

 

(モーラスにキースはナビゲーターたち誘ってジムで自主トレ。

サクラさんは楯無やアレク達と図書館。

マコトとトニーに他のナビゲーター達とコーヒーブレイク。

性格出るな。)

 

なんて思いながら紅茶をすすっているとようやく蓮の担当した制御機のシグナルロストを検知した。

 

「やっとか。モンスターが強かったか、それとも数が多かったか。

まあ、その程度の問題だろう。」

 

ふー、と椅子を倒しながら息を吐く。

後は残りの制御機を発見するまでただ待つだけだ。

 

「ようブライアン。ちょっと良いか?」

 

「何の用だ網島ケイタ。」

 

ブライアンは出来るだけ不快そうな顔をしながら振り返った。

そこには当たり前だが網島ケイタがいた。

どこにでも居そうな面だ。それでいて人が良さそうだ。

アイツと、裏切り者の親友と同じ顔だ。

 

「知りたいことが有ってさ。

ブライアンと真一ってどんな関係だったんだ?」

 

「前にも言っただろ?裏切り者とそれを許さない者の関係だと。」

 

「違う。それはブライアンがそう思ってれば戦いやすいからだ。」

 

「何?」

 

「そうじゃなきゃ本当に余裕ない時の蓮と同じ顔しないよ。

それに真一は始めから敵だった訳じゃないだろ?」

 

そう言うケイタの顔は冗談で一本取った時の真一と同じだ。

こうなると隠し事はただの負け惜しみだ。

 

「はぁー……。

ベンタラの騎士は基本2人以上のチームで動く。

例えばモーラス、キース、楯無。

マコト、アレク、トニー。まだ復活してない奴らだったら

ストライクのアキラとトルクのチャンスって感じでな。

俺と真一はコンビだった。

どんな敵も2人なら倒せた。

お互いに絆が有ると思ってた!けどアイツは裏切った。」

 

「そっか、だったら話せよ。

きっとまだ知らなかっただけなんだ。

お互いに。」

 

「俺は真一と世界、どちらかと言われたら世界を取る!」

 

「それで胸を張って相棒を殺して世界を救いましたって言えるか?」

 

「!?」

 

「天秤じゃない。結果は手段を正当化しない。

限界まで欲張れば自分に出来る事と出来ない事もきっと見える。」

 

だからもう一回だけ欲張って真一と話なよ。

そう言ってケイタは去って行った。

 

4

このままのペースで止めていけば4日も有れば全ての制御機を止めて、ゼイビアックスとの戦いに臨めるだろう。

文字通りの()()()もなんとか人数分間に合いそうだ。

 

「……欲張る、か。」

 

難しいが、確かに対話を捨ててはいたな。

とブライアンは思った。

 

「アイツの真意を確かめる…良いだろう。

網島ケイタ、レン・アキヤマ。やられっぱなしは性に合わん。」

 

ブライアンは準備を進める。

ゼイビアックスとの、真一との、過去との決着の為に。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

アレク「ブライアンもまた悩んで傷付いていたんですね。」

ユーブロン「彼は強いが、年相応でもある。」

ケイタ「後はアイツ次第か。次回、black Onyx その2!」

アレク「雷落として差し上げます!」


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black Onyx その2

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

一夏「なんか2人ともブライアンと話してたみたいだけどなんだったの?」

蓮「それは、まあ近いうちに教えるさ。」

一夏「? ま、いっか。それではどうぞ!」


1

翌日、何処かの森の奥にてケイタは制御機を探して歩き回っていた。

 

「本当にこっちであってる?」

 

「あってる。けど森の中だからそこから5メートル圏内ってことだけ。」

 

「そっか。なら後は歩いて探すだけだな。」

 

草木をかぎ分けて進んでいくドラゴンナイト。

その先から戦闘音が聞こえてくる。

 

「誰だ?俺しかいないはず……!」

 

戦っていたのはオニキスだ。

カミキリムシ型のテラバイターと戦っている。

 

『どうするケイタ?このまま無視して任務を済ませるというのも手だが?』

 

「いや、様子を見る。

もし本当にゼイビアックスから逃げて来たなら助ける。」

 

オニキスは苦戦してる風ではなかったが、すぐに決着はつかなそうだった。

 

『まあ、やられる事は無さそうだな。』

 

「さすが先輩ライダー。ん?」

 

オニキスとテラバイターの戦いを見守っていたドラゴンナイトの背後に別のビーストが現れる。

同じカミキリムシ型のゼノバイターだ。

 

「兄弟にでも見えたかな?」

 

『私に言わせれば君とオニキスでは私とゼロワンぐらい似ていないがな。』

 

ブーメランを武器に戦うゼノバイターにあえて無手で挑んだ。

 

「はぁ!たあ!」

 

森林の地形を利用し、ブーメランを避けながらゼノバイターに肉薄する!

 

<SWORD VENT STRIKE VENT>

 

二枚のカードをベントイン!一方はブーメランで弾けても片方はそうはいかない。

悩んだ末ゼノバイターはドラグクローをはじいた。

ドラグセイバーを掴んだケイタは落下しながらゼノバイターの頭めがけて振り下ろす!

ブーメランを盾にしたがそれごと一刀両断にした。

 

オニキスの方も終わったらしく、

こちらとはやや遅れてモンスターの断末魔が聞こえた。

 

 

「やあ!久しぶりだな、真一!」

 

「ああ、網島ケイタでいいんだよな?」

 

「ケイタでいい。生まれた世界は違っても兄弟みたいなもんだろう?」

 

ドラゴンナイトは気さくに話しかけてきた。

改めて不思議なものだ。自分自身が目の前にいるというのも。

 

「こんなところに散歩かい?」

 

「違う!俺はゼイビアックスに騙されてたんだ!

今からでも、その償いをさせて欲しい!」

 

「! そうなのか!だったらいい方法がある。」

 

そう言ってドラゴンナイトは奇妙なUSBを手渡した。

 

「これは?」

 

「テレポートアンテナの制御装置を乗っ取るためのウイルス。

これを使ってベンタラ人を開放するんだ。

お前が仕込んで来い。手柄をあげたらマスターたちも信じるさ。」

 

「本当か!ありがとう!この恩は必ず!」

 

「世界が平和になった暁にはベンタラのデートスポットでも紹介してくれ。」

 

そう言って肩を叩くドラゴンナイト。

オニキスは予めゼイビアックスに教えられていた制御機のもとに向かった。

 

「よくやってくれた真一君。これでワクチンプログラムを造れる。

後はかつてやったように残りのライダーを倒せば万事解決だ。」

 

そういってゼイビアックスは制御機をあえて停止させて去って行った。

 

 

そしてかえって事情を説明するとユーブロンは

 

「よく決断してくれた。君を心から歓迎する。」

 

ビックリするほど簡単に通れてしまった。

が、しかし一度実際にベントされてる他の仮面ライダー達は別だ。

それなりに禍根と言うか、スッキリしないものが残る。

 

「つー訳で、罰ゲームやで真一。これを食べてもらうで俺らが納得するまでな。」

 

パーティーハットを被らされた真一に出されたのはアレクの失敗料理の満漢全席だった。

 

「と、トニー?聞いてもいいか分かんないけど、

なんでこれがこんなに有るんだ?」

 

「いやな?今アレクの相部屋で心愛っちゅう地球人の子がおんねんけど、その子がアレクにパン作りを教えたんや。」

 

「それで彼女の熱血指導も相まってアレクはこの試練を乗り越えパン作りを、パンだけとは言えまともな料理を作れるようになったのだが…」

 

「その遺産がこれであります。」

 

目の前には、何か食べ物じゃ無い物としか言えない何かがさらに乗っている。

地獄の門番でも食べたら自分の守る門の内側を通らなければいけなくなるような代物だ。本人には悪いが。

 

「さあ、喰え。喰って誠意を見せてくれ!」

 

「・・・サラ、ずっと一緒だよ………ッ!」

 

 

メディカルルームから真一が出て来たのは三時間後の事だった。

胃を洗浄したせいで一日は何も食べれないとのことだ。

 

「トニーの奴、覚えてろよ!」

 

言えた立場ではないが、言葉にするぐらいは許して欲しい。

それくらいにアレは殺人級だったのだ。

確かゼイビアックスが地球のアレクに当たるクロエとかいう女も同じぐらい料理下手なのにそれを上手い旨いと食っていた女が居たらしい。頭おかしいだろ、と思った。

 

「よう。」

 

「ブライアン!」

 

「トニー達に随分もてなされたみたいだな。」

 

「ああ。アレクの腕によりをかけた料理をご馳走してくれたよ。」

 

「そうか…明日ノルマを達成できればテレポートアンテナをすべて乗っ取れる。

俺とお前のツーマンセルだ。また頼むぜ相棒。じゃ!」

 

「えええ!? いや待てよブライアン!俺は」

 

「俺の相棒、だろ?」

 

そう言ってブライアンは去って行った。

 

(なんで、俺を許してくれるんだよ…俺は、

お前たちをまた裏切るつもりなのに!俺は…俺は……。)

 

このままゼイビアックスを裏切りたい。

しかしそうすればサラがどうなるか分からない。

 

(サラ!もう俺には、お前しか!!)

 

 

3

翌日、集合場所に行くと真一以外の全員が揃っていた。

他のライダー達もサポーター達も準備万端な様だ。

 

「あんまり寝られなかったみたいだな真一。」

 

「枕替わっちゃったからね。」

 

適当に嘘を付いた。が、疑う奴はいないだろう。

今はそれどころでは無い。

ゼイビアックスとの決着は目の前なのだ。

 

「諸君。これで制御機全てを乗っ取ることに成功すればいよいよゼイビアックスとの決戦になる。

今まで以上に用心して取りかかってくれ。」

 

「はい!」

 

解散していく一同。

真一はブライアンと共にバイクに乗って目的地を目指した。

 

(そのまま隙を見てウイングナイトをベントしろ。)

 

バックミラーに一瞬だけ映ったゼイビアックスが告げた言われずともそのつもりだ。もう、引き返せない。

 

 

4

「どうした一夏?落ち着かない様子だが?」

 

「マスターユーブロン…実は、気になる事が有って。」

 

一夏は不安だった。

理由は昨日大浴場から心愛や楯無達と戻る途中。

廊下で真一を見かけたのだが

 

「すごく怖い顔してたんです。

ケイタが、しないような顔を。」

 

「確かに、気になるな。こちらユーブロン。

誰かもう手が空いてる者はいないか?」

 

『こちらサクラ。どうしましたマスターユーブロン?』

 

「ちょっとブライアン達の様子を見て来てくれるか?」

 

『分かりました。網島君と一緒に向かいます!』

 

「取り越し苦労なら、良いんだが。」

 

「はい……」

 

それでも中々消えない稼働中を示すランプを一夏とユーブロンは眺めていた。

 

 

5

「この中か。行こう。」

 

「ああ。」

 

目的地にたどり着いた2人はバイクを降りて建物の中に入った。

一見小さな工場の様な鉄筋二階建ての建物だが、

ゼイビアックスの作ったフェイクだろう。

 

「有ったぞ。アレだ。」

 

ブライアンが装置を見つけた。

そこにウイルスを差し込み、機能を停止させる。

 

「作戦終了だ。戻ろう。」

 

「ああ。」

 

ブライアンは無線機を取り出す。

今なら背中を向けて無防備だ。

 

(今なら、殺れる!)

 

「もしもし?

マスターユーブロン?応答願います。

マスターユーブロン、応答願います。」

 

建物の中は圏外か?そう思って振り返った時

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーが炸裂した。

 

「ガァア!き、貴様!まさか最初から!」

 

「ああ、ゼイビアックスは約束だけは守る…それに強い。負け戦を仕掛ける必要なんて無い、それに俺には!サラしかないんだあ!」

 

「くっ!」

 

バイザーを引き抜き応戦する。

もうブライアンに容赦とかは無かった。

こいつはそのサラとかいう女と故郷を天秤に掲げて女を取ったのだ。

 

「お前の様な身勝手に生存の権利を与える気は無い!

お前はベントじゃ生温い!デッキを奪って殺してやる!」

 

「黙れ黙れ黙れ!終わらない戦い!

終わらない悪夢!終わらない裏切り!

それを終わらせるには、仮面ライダーを滅ぼすしかない!」

 

「そうやって侵略者に喰い物にされるのを黙って見てろってのか!?」

 

ごめんだな!

 

そう叫んでサバイブモードになるとブライアンはダークブレードで竜巻を巻き起こし、オニキスを叩き落とす!

 

「お前みたいな臆病風に吹かれた腰抜けと同じとこまで成り下がるなら例え負け戦でも勝つ為に、勝ち取る為に戦う!」

 

「君なら、君なら分かるはずだ!」

 

オニキスもサバイブモードになり、ブライアンに襲いかかる。

 

「いつ終わるとも知れない戦いの中、

唯一の安らぎはなんだったか!

君に取ってのそれは間違い無くユイだろ?

俺にとってはサラだ!失いたくない!」

 

<SHOOT VENT>

 

黒い爆炎を乱射しながらオニキスは吐き出す様に問い続けた。

大事な人を守るのは悪い事か?と。

 

「手段を間違えれば悪だ!

結果は手段を正当化しない!

地球のお前が教えてくれた事だ。

もし世界を代償にユイを救っても俺は誇れない!」

 

疾風が烈火を吹き消し、烈火が疾風を飲み込む応酬が続く。

そして遂に、撃ち合い続けた2人のサバイブモードが解除される。

 

「!? ここ、までか!」

 

<SWORD VENT>

 

先に動いたのはオニキスだった。

ウイングナイトの喉元にドラグセイバーを突きつける。

 

「………殺れよ。それで胸が張れるなら。

サラが大事なら殺れ!…俺は恨まない。

何故ならもし運命が違えば、きっと立場は逆だった。」

 

アーマーを解除し、静かに目を閉じるブライアン。

彼は、ドラグセイバーを

 

 

6

ケイタとサクラが辿り着いた先ではブライアンの前で真一が崩れ落ちていた。

小さな嗚咽を漏らしながら何度も謝っている。

 

「ブライアン!」

 

「ブライアン君!」

 

「サクラさん!網島!」

 

2人はブライアンに駆け寄る。

状況はよくわからないが、事態は限りなく悪いらしい。

 

「頼む。俺を殺してくれ!もう消えたい!

自分が嫌なんだ!自分が1番嫌いなんだ!頼む!」

 

なお泣き続ける真一に近づいてケイタは

 

「嫌だね。お前はお前が勝てないと切り捨てた俺たちの勝利を見届けろ。それがお前の罰だ。」

 

限りなく優しい声で涙を流すもう1人の自分の肩を叩いた。

その目には裏切られた怒りは無い。

ただ純粋に真一を励まそうとしている。

 

「無理だ。ゼイビアックスには勝てない。」

 

「そんなのやってみないと!」

 

「無理なんだよ!

俺はお前らのウイルスをゼイビアックスに渡した!」

 

「何ですって!?」

 

「もうワクチンプログラムだって作られてる!

きっとテレポートアンテナが起動するまで棒読み段階だ!」

 

サクラはすぐに通信機でマスターユーブロンに連絡した。

ただ一言こう告げる。

 

「マスターユーブロン、緊急事態です。」




ケイタ「ちょっと、てかだいぶ駆け足だったかな?」

一夏「まさか、そこまで先手を打たれてたなんて!」

蓮「逆に言えば、もう後は最終決戦だけだ。」

一夏「次回、the final Plan!」

ケイタ「次回もみんなで!」

蓮「KAMEN-RIDER!」


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the final Plan

ケイタ「前回までのinfinite DRAGON KNIGHTは!」

セブン『真一が裏切っていたと判明した所までだな。』

ゼロワン『こうなったら取れる選択肢は少ないぞ?』

ケイタ「けどまだ選べる。まだ戦って勝てる!」

セブン『それでは本編だ!』


1

今度こそ真一を見る目は厳しい。

何度も裏切られた上に殺されるに等しいことをされれば当然と言えば当然だが。

 

「諸君、状況を整理しよう。」

 

マスターユーブロンは極力落ち着いた口調で一同に語り掛けた。

 

「我々に残された時間はそう多くはない。

ブライアン、テレポートシステムのエネルギー充電率は?」

 

「現在15パーセントを維持。

俺とフォンブレイバー達で出した計算が正しければ、

最短六時間以内に地球人はもれなく全員カーシュに拉致されます。」

 

タブレットを見ながらブライアンは厳しい現実を告げた。

しかし良い知らせもあるようで

 

「それから、遂にこのカードが完成しました。」

 

そう言ってアドベントカードの束を渡す。

 

「マスターそれは?」

 

「もしかして!俺らの分のサバイブカードか?」

 

「いや、楯無。

さすがに地球程度の技術じゃそれは無理だ。

けどゼイビアックスに届きうる力という意味では間違いじゃない。」

 

そう言ってブライアンは全員にカードを配る。

 

「リンクベント、ですか?」

 

「一体どんなカードなんだ?」

 

「俺たちのファイナルベントの力を収束、

増幅させれるカードだ。

その威力は最低でも俺ら全員のパワーの13乗。

15人のライダー全員でなきゃ使えない。」

 

「という事は!本官達以外のライダーの救出も!」

 

「ああ、可能になった。」

 

やったぁ!と仲間の帰還を喜ぶベンタラの騎士たち。

 

「それじゃあ地球の仮面ライダーの皆も!」

 

「ああ、君たちの友人も戦いの後に取り戻せる。」

 

「や、やったー!」

 

殆どが自分を苦しめた敵だったというのに自分の事の様に喜ぶ心愛。

 

「こらこら落ち着きなさい。

まずは世界を救ってからよ。」

 

「はい!」

 

「ん?待てや。15人でってことは今はこうやって話したりデッキを調整する時間も惜しいっちゅうことは」

 

「真一も戦ってもらうことになるな。」

 

「どういたしましょう?」

 

アレクの言葉に一同真一をむく。

 

「ではまず、ブライアン君から。」

 

「せやな。お前が一番権利がある。」

 

ブライアンはタブレットを近くに居た虚に預けると

 

「じゃあ罰として、二度と俺に謝るな。

お前の『ごめん』は耳にタコだ。」

 

そう言ってッもう仕事があるというように去って行こうとするブライアン。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!俺は!」

 

「お前は今必要な、仲間だ。」

 

そう言ってブライアンは今度こそ持場に戻っていった。

呆気にとられる一度。しばらく固まっていたがやがて

 

「あーあ。どないする?」

 

「そうですね。

では私の料理特訓にでも付き合って貰いましょうか。」

 

そう言ってブライアンに続くアレク。

 

「おいおい。

……終わったらフリーズベントで人間樹氷にしてやる。

覚悟しとけよ?」

 

と、楯無。

 

「遠泳一日。逃げられると思うなよ?」

 

と、マコト。

 

「はぁ…私のバイクの洗車だ。

汚れが残ってたらやり直しだ。」

 

と、キース。

 

「そうですね本官は、

戦闘訓練にでも付き合って貰いましょう。

逮捕術の逮捕される側をお願いします。」

 

とモーラス。

 

「では私は居残り勉強にしましょう。

ライダーの心得を叩きなおしてあげます。

遅刻欠席は減点ですからね?」

 

と、サクラ。

 

「みんな大人やな。しゃーない。

俺も袋叩きにする程度で許したる。

次やったらホンマにベントするでな!」

 

とトニーも去って行く。

 

「皆、皆なんで?」

 

「それだけ貴方は自分が思うより思われてるのよ。

こんだけやられたら頼らないのはかえって不誠実よ?」

 

と、珍しく年上っぽい所を見せる楯無。

 

「お嬢様はもう少し我々を頼らないことを覚えて頂きたいのですが。」

 

「うっ!」

 

「地球の危機が迫ろうと書類の提出期限は伸びませんからね?」

 

虚と鈴音に突っ込まれて冷や汗を流し始める楯無。

 

「それと今まで重ねてきた悪事もな。

文化祭のシンデレラ鬼ごっこのせいで無駄になった予算。

責任取ってもらうから。」

 

そう言って無駄になったドレスなど小道具代の請求書と解任要求に関する書類を渡すケイタ。

 

「こ!こんな時に渡さないでよ!

てか解任請求って何!?うちの学校こんな制度あった!?」

 

「はいはい、今そうゆうの良いから。

ボーデヴィッヒ、ベンタラの俺の補佐を頼んだ。」

 

「了解であります!」

 

楯無を引っ張りながら去って行く蓮とラウラ。

 

「つらい時はつらいって言っても良かったんだよ。

だから今度から自分の事はしっかりやらなきゃだけど、

ちゃんと皆も頼りな?」

 

自分が言えた事では無いかもだけど、

と少し自嘲しながらも確信をもって言うシャルロット。

 

「だからまずはバックアップをわたくし達に、

背中をライダーの皆さんに任せてください。

必ず勝てます。」

 

既に気合十分なセシリア。

残ったケイタと一夏は

 

「行こうぜ。皆が待ってる。」

 

「今夜は祝勝会だね。」

 

そう言って一足早く一同に合流していった。

 

「皆ぁ……ごめ、いや、ありがとう。」

 

 

「それでは作戦を発表する!」

 

ライダーたちはそれぞれ用意されたバイクに、

ラウラ、鈴音、心愛、虚は車に。

ISのある一夏、セシリア、楯無、シャルロットは

それぞれケイタ、蓮、楯無、アレクの後ろに乗っている。

 

「これよりゼイビアックスの基地に突撃する。

基地にはアドベントシールド、つまり仮面ライダーの親友を拒む装置が仕掛けられている。

これをラウラ班四人で破壊し、一斉に突入。

私もその後残るライダー達と共に往く。

それまで各自陽動。

ラウラ班を隠し切れ。それでは、健闘を祈る!」

 

 

3

「ほう、これはこれは。随分と大所帯だな。」

 

ベンタラの要塞にて、鏡越しに仮面ライダーが来ると察知したゼイビアックスは直ぐに配下のアドベントビーストを招集した。

 

「基地の警備を固めろ。ネズミ一匹いれるな。」

 

配下たちが下がるのを確認するとテレポートシステムの調整に戻った。

 

「お客さんが来るまでに終わらせないとな。」

 

 

作戦通り分かれた一同はラウラ班を護衛するケイタ、一夏とサクラ以外ばらけて陽動作戦を開始した。

市街地で真一、蓮、アレク、セシリア、シャルロット。

 

「「KAMEN-RIDER!」」

 

「カメンライダー!」

 

工業地区で楯無が2人とトニー、モーラスが

 

「「KAMEN-RIDER!」」

 

「カメンライダー!」

 

森林地帯でマコトとキースが

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「仮面ライダー!」

 

それぞれ戦闘を始めた。

どうやらそれなりの質のビーストは基地の護衛に回してるらしく出て来るのはミニオン型のビーストしかいない。

だが

 

「くっそ!一匹一匹は大したことないけど!」

 

「数が多すぎる!アレク手を貸してくれ!」

 

「もう少々お待ちを!

こっちもお誘いが多くてですね!」

 

「セシリア大丈夫?」

 

「大丈夫ですわ!

でも窓を割っても高層ビルが立ち並ぶこのエリアでは!」

 

「あーもー!キリがない!」

 

それはどこのメンバーも同じなようで

例えば楯無班は

 

「くっそ!なんやこの数!」

 

「こっちの武器が持つかしら?」

 

「本官もこれ程の戦場は初めてであります。」

 

「泣き言言うな!さっさと一網打尽にするんだよ!

おい地球の刀奈(こしぬけ)!お前水の女だってな?」

 

「凄く勘違いされる言い方辞めてくれる!?」

 

「うるせえ!いいから地面に水を張れ!」

 

「どないするんや水なんか?」

 

「こうするんだよ!」

 

<FREEZE VENT>

 

足を地面とくっ付けられたビーストたちはたちまち動けなくなる。

 

「トニー!」

 

「あいよ!」

 

<ATTACK VENT>

 

その氷を鏡にしてレイヨウ型ビーストを大量召喚。

雑魚敵を一掃する。

 

「ここは終わり?」

 

「ああ、さっさと次ぎ行くで!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

「了解!」

 

続いてマコトとキースは

 

「ふっ!はぁあああ!!!」

 

パワーファイターのトラストとトリッキーな戦いを得意とするスティングはお互いをカバーできるいいコンビの様だ。

 

「そろそろか?」

 

「もうそろその筈だ。ファイナルベントはとっとけよ?」

 

「ああ。この試練、必ず勝つぞ!」

 

「ああ!」

 

そしてケイタ達ラウラ班。

 

「ここがゼイビアックスの基地……」

 

「如何にも悪の城って感じね。」

 

車を降りる虚、心愛、鈴音、ラウラ。

 

「一夏。四人の護衛を任せた。

俺たちが囮になってる間に突入しろ。」

 

「うん。気を付けてね?」

 

「ああ。」

 

一回だけキスを交わし、サクラとともにデッキを構える。

 

「「カメンライダー!」」

 

ドラゴンナイトとセイレーンに変身する。

 

「あ、そうだ一夏。これ持ってけ。」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーを一夏に渡す。

 

「ISのブレードじゃ屋内では扱いずらいだろ?」

 

「ありがと、ケイタだと思って大事に使うね。」

 

「また後で。おいビーストども!こっちだ!」

 

2人が引き付けてる間に五人は基地に潜入した。

迷路のような通路を進み、真一より教えられたルートを進む。

 

「何あのでっかい機械。」

 

「おそらくあれがアドベントシールド発生装置だ。」

 

「持ってきた爆弾で足りるでしょうか?」

 

「ゼロワン。いざとなったら白式と黒法を自爆させるって出来るの?」

 

『出来なくは無いが中に人が居ないと無理だ。』

 

「駄目かぁ」

 

「いや一夏ちゃん凄いこと考えるね!?」

 

それより早く済ませよう、と以外にもてきぱきと爆弾を仕掛けていく虚と心愛。

 

「早!」

 

「意外な特技だな。」

 

「私こう見えても三年整備課のエースですから。

本音程ではありませんがこういうのも得意なんですよ?」

 

「機械いじりは得意だからね!」

 

そしてあっという間に爆弾の設置は完了した。

皆が安全圏に入るまで余裕がある。

 

「こちら一夏。爆弾の設置完了です。」

 

『こちら司令部。

テレポートシステムの充電率が75%を切った。

今すぐにでも爆破させてくれ。』

 

「了解。退避次第すぐ」

 

そこまで言ったところで通信機を誰かに射抜かれた。

その後も一射二射と矢が飛んでくる。

 

「この矢ってビースト!?」

 

「前にあった蜂型だ。」

 

一夏はドラグセイバーを強く握ると前に出る。

 

「皆鏡を用意しといて。あいつは私が!」

 

「い、一夏ちゃん!?」

 

低い姿勢で矢を避けながら肉薄して近接戦に持ち込んだ。

矢を放ってきたビースト、バズスティンガーに斬りかかる。

バズスティンガーは矢を短剣のように使い応戦してきた。

 

「こんの!」

 

流石に筋力では一夏が劣るが

 

「一夏ちゃん!」

 

「一夏こっちよ!」

 

鏡になるスクリーンを持った心愛と鈴音が走ってくる。

バズスティンガーがそっちを振り向いた瞬間一夏は渾身の蹴りでその鏡までぶっ飛ばした。

直ぐにスクリーンを閉じる2人。

 

「あ、危なかったぁ~」

 

「一夏アンタ無茶よ!?何かあってからじゃ遅いんだから!」

 

「でも皆は生身だし…」

 

「あんな化け物相手じゃISなんて有ってない物よ。

それに友達が傷ついてつらいのはアンタだけじゃないのよ?」

 

「!? ごめん。」

 

「ごめんよりありがとうって言って欲しいな。」

 

「いーって、友達でしょ?」

 

「うん!」

 

三人合流したところでラウラと虚もやって来た。

 

「行きますよ!」

 

「はい!」

 

スイッチが押され轟音と共に熱風が吹き抜けた。

身を寄せ合って衝撃に耐える5人。

 

『こちらブライアン。シールドの消滅を確認した。

ライダー達を突入させる!』

 

「皆スクリーン持って!」

 

鏡のスクリーンを構えて少し開けた場所に向ける。

10人の仮面ライダー達と3人のISパイロット達が飛び出して来た。

 

「皆!」

 

「待たせたな。」

 

「これからどうする?」

 

「二手に分かれよう。サクラさんは網島、アキヤマ、真一連れてさっさとゼイビアックスの所へ。俺たちは生身の奴らを守りながら行きます。」

 

アックスの作戦に頷く一同。

確かに実力的にはそれがベストだ。

 

「分かりました。後は任せましたよ?」

 

 

5

「ふっふっふ!さすがにアドベントシールドを破壊された時は焦ったがもうエネルギーは90%充電完了だ。

今更邪魔が入ったところで止められない!」

 

「それはどうかな?」

 

勝ち誇るゼイビアックスに水を差すようにワープ装置から長身痩躯の男が現れる。

 

「久しいな。えーと?

この惑星の言語風に言うなら、ユーブロン。」

 

一人で来た度胸は買うが、それは勇敢ではなく蛮勇だぞ?

と、怪人態に変身するゼイビアックス。

 

「私だけではないぞ?」

 

ワープ装置に干渉するユーブロン。

その奥では復活した五人のライダー達の姿があった。

 

「ゼイビアックス!」

 

突撃しようとしたのを見てワープ装置を停止させるゼイビアックス。

 

「残念だったなユーブロン!所詮この世は弱肉強食!

ベンタラ人も地球人もカーシュの為に使いつぶされる運命。」

 

「違う!カーシュは戦争で滅んだ。

我々は愚かだったのだ。

それから目を逸らすために未来有る星を巻き込むべきではない!」

 

「裏切り者が!どちらが愚かか分からせてやる!」

 

ゼイビアックスが青白い光弾を放つ。

ユーブロンはジャンプで避けながらアドベントキーを構え

 

「KAMEN-RIDER!」

 

アドベントマスターに変身した!

 

「いいだろう!望み通り苦しんで死ね!」

 

戦闘民族の星、カーシュきっての戦士同士の戦いは凄まじいの一言だった。

キック一つ、パンチ一発とっても洗練されている。

 

「私の戦いは三つの世界の救済だ!

滅びゆくカーシュを救い!

いずれ始まる人間同士の争いが起こる前にカーシュ復興のために人間を一つにまとめる!」

 

「お前の正義は独りよがりだ!」

 

「偽善も詭弁も聞き飽きた!」

 

アドベントマスターのブロックを破り、渾身のストレートを叩き込むゼイビアックス。

 

「これでトドメだユーブロン!」

 

ゼイビアックスが大型の光弾を放とうとした時

 

<<STRIKE VENT>>

 

「なに!?」

 

二体の龍と2人の龍騎士が炎の拳を放つ!

流石によろけるゼイビアックス。

そこにウイングナイトとセイレーンの鋭い斬撃が決まる!

 

「き、貴様ら!」

 

「この時を待っていたぞゼイビアックス!」

 

「ならばさっさと決着をつけてやる!」

 




ケイタ「いかがだったでしょうか?」

セブン『遂にゼイビアックスとの直接戦闘か。』

ゼロワン『という事は次回で遂に?』

ケイタ「ああ。次回!Last Qestion!」

セブン、ゼロワン『『これが!明日のリアル!』』


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last Qestion

ケイタ「前回までのinfinite DRAGOON KNIGHTは!」

蓮「ついに相まみえたな、ゼイビアックス!」

ゼイビアックス「ふん!四人がかりだろうと百人がかりだろうと負けん!」

ケイタ「それはどうかな?」

蓮「長かったお前との戦いもここまでだ!」

ゼイビアックス「では本編だ!」


1

「はぁ!」

 

「だぁ!」

 

「うおおお!」

 

「やぁー!」

 

四人の騎士は敢然とゼイビアックスに向かっていった。

しかし流石は戦闘民族カーシュの中でも指折りの将軍にまで上り詰めた男だ。

 

ドラゴンナイトの拳も、ウイングナイトの刺突も、

セイレーンの剣戟も、オニキスのキックも悉く弾き、

逆に四人を圧倒してなお余力を残していた。

 

「四人がかりでその程度か!

所詮は下等な星のちんけな命。

私を倒すには至らない!」

 

「だが時間は稼げたぞ!」

 

「なに!?」

 

<HOLD VENT>

 

<STRIKE VENT>

 

<SWING VENT>

 

<CONFINE VENT>

 

バイオワインダーに腕をエビルウィップに首を盗られ、

引き込まれた先にあったメタルホーンやシザースピンチなどの武器が次々とゼイビアックスに殺到する!

 

「こ、これは!?」

 

「俺たちさ!」

 

「ベンタラの騎士!?」

 

「わたくし達も!」

 

「忘れてもらっちゃ困るわ!」

 

楯無の単一仕様、セックヴァベックで動きを封じられ零落白夜、スターライト、シルドスピアーとさらに攻撃を食らう!そして遂に!

 

<SWORD VENT>

 

「よくもこのアーマーを穢してくれたな!」

 

ラスのゴルトセイバーの斬撃が!

 

<COPY VENT>

 

「この星のあらゆる美しいモノに代わって天誅だ!」

 

それをコピーしたブレードの不意打ちが

 

<SHOOT VENT>

 

「多分、頭を引っ込めた方がいいぜ!」

 

トルクの発射したミサイルが!

 

<ATTACK VENT>

 

「時は来た!勢ぞろいだ!」

 

ストライクがけしかけたベノスネーカーの毒液が!

 

<STRIKE VENT>

 

「油断したな!」

 

アビスの放った激流が!

それら全てがゼイビアックスに遂に膝を付かせた。

 

「は、ハハハハハハハハハハ!はぁああ!」

 

変身を解除するゼイビアックス。一同を見回し

 

「よく来たなライダー諸君。

そしてIS学園が誇る才媛たち。」

 

1番高い所に達とライダー達に一夏達を見下ろしながら語り始めた。

 

「かつてやられた分際で正義の勇士気取りか?

一人を相手にざっと20人がかり!それだけ私は強大だ!

このまま戦ってもベントされるのが落ちさぞ?

おい真一!」

 

追い詰められた筈のゼイビアックスは余裕を崩さなかった。

しかし真一は気付けた。

 

(何というか、粗暴な感じだ。こいつは内心焦ってる!)

 

「これが本当にお前の望んだことか!?

さぞ見ものだろうな!

お前が彼女の家族を奴隷にしたと打ち明け拒絶される様は!」

 

「っ!」

 

「お前への愛は見る影もなく憎しみに代わるぞ!!」

 

「だとしてももうこれ以上逃げを!卑怯を重ねない!」

 

「なぁ!……どうゆうつもりだ!?

ガキども!よく考えろ!最後のチャンスだぞ!?」

 

「そんな手に乗る奴が居るか!」

 

「お前を倒して雪辱を晴らし、

最強を証明して世界を救う!」

 

「おい馬鹿かね!私は何度でも蘇る!

お前らが何度倒そうと必ずカーシュを復活させる!

お前らの勝利など不可能だ!!」

 

「それはどうかな!」

 

アドベントマスターに注目が集まる。

彼はライダー達への信頼と揺るぎなき正義の基き命じた。

 

「ライダー諸君!リンクベントだ!」

 

「これやな!」

 

スピアーを皮切りに全員がカードをベントイン!

 

LINK VENT

 

1つ、2つとゼイビアックスの頭上に青白い光が浮かぶ。

それがライダー達と同じ15個に達したとき、

一つになって高速回転を始めた!

 

「はぁああああ…………」

 

それらは一度分かれてライダー達のもとに戻り

 

「はぁああああああああああ!!!!!!!!」

 

強烈な光線となってゼイビアックスに放たれた!

 

「こ、これはっぁあああ!く、くそう!

こんな!こんなバカな!私はゼイビアックス将軍だぞ!?

カーシュの王に最も近い男にしてカーシュの15将軍最強の将軍!カーシュの救世主だぞぉおおお!!!」

 

「ああそうかよ!」

 

「私たち!」

 

「俺たちは!」

 

「ベンタラと!」

 

「地球の騎士!」

 

「お前みたいな巨悪を倒し!」

 

「試練を乗り越え!」

 

「最強を証明し!」

 

「愛と平和と笑顔を守る!」

 

「正義のヒーローだぁ!」

 

光が、より一層輝きを増した光がゼイビアックスの身を焦がす!

 

「わ、私は必ずもど……!」

 

聞き取れたのはそこまでだった。

言葉ではない何かを叫んではいたが、

きっと意味はなかっただろう。

 

エネルギーの濁流にのまれてゼイビアックスは塵も残さず消えてしまった。

 

「…………」

 

だらからともなく、変身やISを解除する。

しばらく放心したように黙っていたが

 

「私たちは、やったのか?

そこのレディ!見ていたか?見ていたよな!?」

 

ベンタラの箒、モニカがヒステリックに心愛に尋ねた。

 

「う、うん見てた!勝ったよ!これで終わったんだよ!」

 

「やったー!」

 

「なあ!世界を救ったなんて誰が言えるんだ!」

 

「もちろん俺たちさ!」

 

ベンタラの間明、アキラとベンタラのトルク、チャンスが叫んだのを皮切りに全員が沸き上がった。

ハイタッチやハグを交わし、お互いが全身で喜びを噛みしめ合う。

 

「ケイタ!すごかったよやったね!」

 

「一夏!何言ってんだよ!お前らもすごいよ!」

 

「ここに来るまでの突破口を開いたのは皆さんですよ?

皆さんは私たち仮面ライダーにできない活躍をしたんですよ?百点満点でも足りませんよ!」

 

一夏たちを我が子の様鵜に抱きしめ褒めちぎるサクラ。

これだから教師は辞められないと言わんばかりの満面の笑みだ。

 

「アイツらにも感謝しないとな。

おいケイタ、蓮。お前らのケータイだしてくれ。」

 

アックスの方の楯無に言われてフォンブレイバーを取り出す三人。

 

『わたくし達に御用でしょうか?』

 

「お前らがリンクベントのカードやデッキとの調整やってくれたんやろ?」

 

「君達のお陰で全員揃って試練を乗り越えられた。」

 

「本当にありがとう。」

 

『どういたしまして。』

 

『仕事を果たしただけだ。』

 

『礼には及ばない。我々も共に戦え光栄だ。』

 

全員が一通り感謝と達成を噛みしめるとユーブロンは前に立ち

 

「ライダー諸君!

我々の戦いはベンタラ復興と日常への帰還のみだ。

二つの世界が元に戻った時、

その時にある平和こそ我らの勲章であり栄光だ。

それを踏みしめに行くぞ!地球のために!」

 

「ベンタラのために!」

 

「出動だ!」

 

 

ベンタラと地球の間の世界、

全てが反転した世界、ミラーワールド。

そこではもう一つの戦いが繰り広げられていた!

 

「「とお!ライダーダブルキック!」」

 

「V3マッハキック!」

 

「チェーンジ!ブラスターアーム!」

 

「Xキック!」

 

「スー・パー・大・切・断!」

 

「電キック!」

 

「ライダーブレイク!」

 

「スーパーライダーキック!」

 

「ZXキック!」

 

「ライダーパンチ!」

 

「RXキック!」

 

「はぁああああ!」

 

「ライダーキック!」

 

「Jキック!」

 

15人の昭和に名を刻んだライダー達の必殺技がビーストの群れを一掃していた。

 

「そんなそんな馬鹿な!ベンタラの騎士ではない!

貴様ら一体何者だ!?」

 

ゼイビアックスが失敗したときに備えて待機していたカーシュの将軍は戦慄した。

地球を征服するための戦力が悉く打ち破られていく。

 

「簡単なことだよカーシュの将軍。

貴様らの様に世を蝕む悪鬼が居るのが必然なら、

俺たちのような大自然が使わす正義の使者が現れるのもまた必然!」

 

リーダー格の赤いマフラーに緑の骸骨のような仮面の男が言う。

この男は、いやこいつらは強い。絶対勝てない。

なぜかカーシュの将軍は直感してしまった。

 

「く、くそ!もっと強いビースト軍団を用意して次こそは!」

 

「次なんてない。」

 

「!?」

 

「お前の野望はここまでだ!」

 

逃げようとしたその先にはニ十一人の別のライダー達が待ち構えていた。

 

「あ、ああ!」

 

「おりゃあああ!」

 

「はぁああああ!」

 

<ファイナルベント!>

 

<EXCEED CHARGE>

 

<Lightning sonic!>ウェーイ

 

「火炎連打の型!」

 

「ライダーキック!」

 

「俺の超必殺技!」

 

『ウェイクアップ!』

 

<FINAL ATTACK RIDE>

 

<MAXIMUM DRIVE!>

 

「セイヤー!」

 

「ライダーロケットドリルキーック!」

 

<キックストライク!サイコー!>

 

「セイハー!」

 

『フルスロットル!スピード!』

 

<オメガドライブ!>

 

<マイティ!クリティカルストライク!>

 

<ボルテックフイニッシュ!イエー!>

 

<タイムブレーク!>

 

<ラ

 イ 

 ジ 

 

 グインパクト!>

 

必殺技の乱打がカーシュの将軍にとどめを刺した。

 

「本郷さん!」

 

「或人君。終わったな。」

 

「ええ。後は任せて大丈夫そうですね。」

 

それぞれディケイドが発生させた銀色のオーロラに消えていくライダー達。

 

「俺たちの出番はなかった感じか。」

 

それを少し離れた所から見下ろすかアカライダーの姿があった。

 

「あとは君がジーン崩壊の日に飛んでレンジャーキーを渡せばこの物語は成立する。

晴れて大団円のハッピーエンドだ。」

 

「おう魔王の使いッ走り。相変わらず暑そうな古着だな?

衣替えしないのか?」

 

「余計なお世話だ。時間は繋いでやるから早くいけ。」

 

「へいへい。…これで貸し借りなしだぜ、ケイタ達。」

 

アカライダーもウォズに見送られて去って行った。




次回、エピローグ。
 
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Return to the daily life

「んーー!やっと書けたぁ!」

 

3月。歳が変わって漸く暖かい日も有るようになって来た今日この頃。

もう直ぐ2年生になる心愛は制服姿で机に向かっていた。

と言ってもIS学園の制服では無い。

 

「IS学園は廃校になるわ。

度重なる暴走やテロで絶対数を減らし続けて兵器としての信用は地に落ちたわけだしね。」

 

年が変わる頃、楯無に告げられた事実は衝撃だった。

みんな戸惑ったり、笑い飛ばしたり、

真に受けなかったり、実感湧かなかったり、

悲しんだり、どうでも良さそうだったり。

 

そんな中で蓮の行動は1番早かった。

 

「ええ!?蓮お前アメリカの高校行くの?」

 

「ああ、今年度一杯は日本(こっち)にいるが、

2年からはエリーと同じ学校に通うつもりだ。」

 

クリスマスには帰ってくるから会えるよ。

とは言え長いお別れだ。

 

「もっと相談してくれても良かったじゃん!」

 

「俺は、仲間に頼れる時は頼りたいと思うが、

頼らないと何も出来ない奴にはなりたく無い。」

 

だから取り敢えず自分の道を行く。

お前らはどうする?

 

そう聞かれて直ぐには答えられなかった。

 

「時間はあんまり無いけど、

ちゃんと悩んでちゃんと決めろよ?」

 

お別れする覚悟も出来ないまま皆は歩き出していた。

 

「私か?千夜と一緒にこの街の高校にな。

マスターユーブロンのおかげで持病も良くなったし。

この国を守れる仕事を目指すつもりだ。」

 

海之は夢に向かっていた。

千夜も海之が帰ってきて凄く元気そうだった。

 

「私は、健や淳やお姉ちゃん達と名古屋。

今までIS以外やってなかったから、

それ以外で何か一生懸命になれる物を探したい。」

 

簪は夢を探しに行くつもりらしい。

それをやりながら地球の仮面ライダーもやるつもりだと言うから大した物だ。

 

それは更識家分家の石橋健と芝浦淳にも言える事だが。

彼らはインサイザーのデッキとトラストのデッキを受け取りライダーになったのだ。

同じ様にライダーになったクロエは

 

「私もずっと実験施設か束様の元にしかいた事が有りませんので、取り敢えずこの世を乱した償いを少しづつでもしながら友達を増やせたらなと思っております。ベンタラの私には負けられませんから!」

 

と束や千冬の母校に転入した。

因みに彼ら彼女らにデッキを託したベンタラのライダー達、真一、ブライアン、楯無、モーラス、キース、アレクは真一を除きベンタラ再建の為の要職に就いたとのことだ。

 

ブライアンだけはオニキスのデッキを改修してライダーを続けているらしい。

 

「私もレン少佐と同じくアメリカだ。

姉さんと離れるのは寂しいが、ポリー団長はこんな私もまだ軍に置いてくれると言ってくれた。」

 

ラウラはそのままアメリカ軍でポリーの元で働く様だ。

 

「わたくしですか?そうですね…。

オルコット家を守る為にも日々これ精進。

祖国に戻って勉強ですわ!」

 

セシリアは義務を果たす為に

 

「そうだな、自分の学力と相談して剣道の出来る学校に行くつもりだ。

何でかわからんが夏から今までの記憶が無くて、

しかもそれ以前の記憶もどうも歯抜けなんだが…

三春に恥じないようにやるだけやるさ!」

 

記憶を消されて戻された箒は今まで通りやりたい事を

因みにケイタや蓮との確執は解消されたようで時々一夏を交えて話すこともある。

 

「僕?風都の辰巻高校って所に行くつもり。

鈴やケイタに一夏もそうだってさ。

風都に行く理由?僕には母さんも死んじゃったし故郷も無いから、ケイタ達の街で過ごしてみようかな?って。」

 

シャルロットは行き先を、みんな考えていた。

何もそれはIS学園に限った話ではなく

 

「俺?相変わらず青空の会でイクサ続けてるよ。

風都にケイタ達が来るんなら負けてられないしな。

それに弾は『絶対虚さんと同じ大学行く!』って言ってすっかりガリ勉になっちゃったし。」

 

皆やりたい事に打ち込むなり探すなりして邁進していた。

 

「はあ。」

 

そんな時心愛の背中を押したのは真耶だった。

 

「どうしました保登さん?

何か悩み事ですか?先生で良ければ相談に乗りますよ?」

 

「先生は、やりたい事って有りますか?」

 

「そうですね…しばらくは教師でしょうか?

織斑先生みたいにこれを機にISコア研究の方に行く人も多いみたいですけど、私はこの仕事を続けたいです。」

 

「皆夢を目指したり、夢を探したり立派だなぁ。

私何も無いや。」

 

「そんな事ありませんよ。

保登さんは十分魅力的です。

ただ誰でも周りが眩しく見える時だって有るだけで、きっとあなたに合った何かが見つかります!」

 

そう言われて夢とかじゃなくてもやりたい事とかを思い浮かべてみた。

 

(弁護士、バリスタ、小説家…小説?そうだ!)

 

心愛はフィクションとしてケイタ達との戦いの記録をWebに投稿した。

まともに書くと一年はかかってしまうのでISの部分は端折って、かなり脚色も加えたし、実名は伏せたが全て書いて表した。

タイトルは

 

infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来

 

明日の未来を掴むために戦ったケイタ達を知って欲しい。

そう思って書き続けた。

ついに今日書き終えた。エンドマークを打ち終えた。

3ヶ月。短いようであっと言う間に過ぎていって、今日はいよいよ蓮がアメリカに向けて飛び立つ日だ。

 

「心愛さーん!そろそろですよ!」

 

「わかった直ぐ行く!」

 

階段を降りると蓮がもう支度を整えていた。

ケイタや一夏ももうすぐ風都に行く。

でもまたきっと会えるだろう。だから

 

「じゃあな。」

 

「元気でな。」

 

「エリーさんによろしくね。」

 

「またね!」

 

最後は笑顔で見送ろう。

物語が終わったなら、きっと見てて詰まらない日常に戻って過ごせるから。

誰が何と言おうと、この物語はハッピーエンドだ。




執筆 伊勢村誠三

原作 KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT
   ケータイ捜査官7
   インフィニット・ストラトス
   ご注文はうさぎですか?

スペシャルサンクス
お気に入り登録してくれた皆様を始めとする画面の前のあなた。



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この一年間の最後に感謝を!

ケイタ「えー、皆様こんにちは!網島ケイタです!」

 

蓮「レン・アキヤマだ。」

 

一夏「織斑一夏です!」

 

心愛「保登心愛だよ!」

 

ケイタ「皆様の応援の甲斐あって遂にゼイビアックスを倒してハッピーエンドを迎える事が出来ました!」

 

蓮「この世界(ss)の全ての登場人物(ひとびと)を代表して礼を言わせてもらいい。」

 

4人「本当にありがとうございました!」

 

一夏「物語は終わりましたが、私達の明日未来は終わりません。」

 

心愛「どうか皆さんも私達が皆さんの平和を祈る様にこの平和が守られる様祈っていて下さいね。」

 

ケイタ「最後に、うちの作者からも、言いたい事があるそうです!」

 

蓮「こんな作者でも一年やって来た訳だからな。」

 

一夏「どうか聞いてやって下さい。」

 

心愛「それじゃあ皆!」

 

4人「バイバ〜イ!」

 

ケイタ「また会う日までー!」

 

 

 

皆様始めまして。

伊勢村誠三と申します。

 

この度は皆様の熱い声援と指示のおかげでinfinite DRAGON KNIGHT in明日未来を無事、完結させる事が出来ました。

 

まだ外伝が二本残っていますが、大学受験や大きく絡ませる予定の次回作などの関係でいつ投稿出来るか分からないので、先に、忘れないうちに皆様に感謝の気持ちを伝えたく、この様な形を取らせて頂きました。

 

前置きが長くなってしまいましたが本当に兎に角

 

お気に入り登録して下さった皆様!

お気に入り登録しなくとも毎回見てくれた皆様!

評価をつけてくれた皆様!

 

感想で励みになる言葉をくれた影山鏡也様!

鳴滝の親友様!マジ喰い様!

アドバイスを下さった頑介様!

 

本当にありがとうございました!

一年間頑張って完結させる事が出来ました。

皆様には感謝しか有りません。

重ね重ね本当にありがとうございます。

 

最後に、次回作の予告となります。

よろしければ、そちらも投稿する予定なのでご覧下さい。

それでは、どうぞ!

 

 

 

 

地球の平和と人々の平和を守り続けて来た伝説のヒーロー、スーパー戦隊。

その力を受け継いだのは、とんでもない奴らだった!

 

1つ、世界掌握を目論む悪の軍団魔王軍!

1つ、魔王軍に反旗を翻した8人の冒険者達!

 

世界に散らばったレンジャーキーを探して!

またある時はお互いのレンジャーキーを巡って!

この世狭しと暴れてまくる!

そして伝説のスーパー戦隊にゴーカイチェンジ!

 

新連載!スーパー戦隊このすばフォース!

 

この後10時30分から

ゴーーッカイに公開!

 

 

ドラゴンナイト「………」

 

アカライダー「………」

 

ドラゴンナイト「………」スッ

 

アカライダー「フッ…ゴーカイチェンジ!」

 

<ゴーーッカイジャー!>

 

ゴーカイレッド「………」パァン!

 

ドラゴンナイト「頼んだぞ。」

 

ゴーカイレッド「ああ、派手に行くぜ!」



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