崩壊3rd Destiny Eye (アーヴァレスト)
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設定集(6/12改訂版)

主人公設定なり(12/25改訂)


九条アヤカ

 

身長 165.5㎝

体重 ???

スリーサイズ ???

 

本作主人公、異世界からの転生者らしい

記憶は断絶しておらず、継続をきちんとしているため一時混乱したものの、自分の身は自分で守るという自己防衛の観念と高い自立能力により即座に切り替えた

本名は九条・アヤカ

母親が日本人、父親がアメリカ人のハーフ、両親ともにとあるPMCに勤めており、そこの代表に自己防衛術としてCQCを直接教わっていた

そのため基礎は完璧に鍛えられており、その戦闘能力は同世代の追従を許さぬ高い次元にある

 

ただし、本人は戦いを出来るだけ避ける傾向にある、戦わざるを得ない場合は圧倒的戦闘能力で相手を叩きのめす

基本は素手での戦闘であるが、武装も自由に使いこなせる器用さを持ち、その応用の幅はかなり広い

 

作中(Day3まで)では工事現場から盗んだ剣スコを武器にしたり、正式でこそないが配備されているアサルトライフル(Hk416A5)に装着できるパーツ(4倍スコープにM9銃剣とM203グレネードランチャー)を加えたオリジナルカスタム品での戦闘を実施した

 

また、料理関連もかなり高いレベルの素養を持つ

こちらに関しては母親からの影響が強いらしく、スイーツや駄菓子など幅広く作る事が出来る

本人曰く嗜む程度であるというが、その実力は一流のそれに匹敵しており、聞く側には謙遜にしか感じられない

なお、自分の食べる分には失敗しても食べるが、他者に出すものに関しては失敗を許さない点でもプロのそれである

 

性格は至って真面目、ただしとんでもないハメの外し方をする時がある

高いコミュニティ能力を生かし、様々な方面に顔見知りが出来つつある

それだけでなく交渉能力も高く、相手も自分も納得のいく妥協点を決める手練手管に長けている

自己に厳しく他者に優しい性格である

 

憧れは強く、優しく、自分以外の誰かの為に戦える英雄

理想は自分の憧れた英雄の取りこぼしてしまった理想(ユメ)の後継者となる事

この点においてのみ、彼女の異常性が明らかとなる

深淵の果てで燃え続ける不滅の篝火とも評される執念、無限の砂漠で黙々と一粒の砂金を探し当てるような怪物的精神性、覚醒できずとも不死者のように蘇り、諦めずに無限に前進を繰り返す

奇跡も不条理も、敗北必死の展開も見飽きており"ああまたか"としか思わない。その上で"じゃあこうするか"と行動する

あの日交わした約束をいつか形とするために決して諦めない。何度でも何度でも涙を拭って歩き出す。大切な誓いを胸に永劫の前進を謳い上げる。すべては尊き理想を実現するため

 

自分自身を勘定に入れるという機能が失われる事を意味するその理想は、はっきり言って破綻しており未来はない

それは結果としてよく考えた上で誰もが唖然とするような行動をとる事にも繋がっており、そう言った面での危うさは作中でも最悪クラスである

憧れた人物が先天的な破綻者であるとすれば、彼女は彼と出会った事が原因で人生が狂った後天的異常者である

本来は息をしているだけでも苦しいような人間が、どうにかして人前で笑顔を作ろうとしているというのが本作の根幹・・・なのかもしれない

 

 

趣味は故障品の修理。ガラクタ弄りとも言う。あと裁縫とか掃除とかのマメなことも好き

古い端末を新しいものに匹敵するほど綺麗にしたり、壊れたものを純正部品(または互換品)で完全修復するなど手先は非常に器用である

また、裁縫はプロ並み、掃除はとても綺麗にするほどマメ

 

 

 

使用武装

ソルブレイブ

開発を依頼していた専用近接装備、二振り一対の剣であり、黒と白のカラーリングをしている

この剣の最大の特徴は分割して片刃の剣として運用したり、パイルバンカーのように相手を打ち貫くと言った運用ができる点にある

後述する能力の安定稼働を目的として制作されている

他の人間が使えばその力を使用出来なくなるほどの負荷だが、主人公の場合は何故か安定するため、試作装備として開発が行われた結果のモノである

 

なお、この装備の開発には対律者用兵器の中でも開発が中止された曰く付きの技術が使用されている

これは主人公がデータベースから偶然サルベージした断片を解析して得られた

その際に第二次崩壊の明かされる事なき真相の一つに触れているが、主人公曰くその内容はろくでもないらしい

 

 

固有能力

煌翼たれ蒼穹を舞う天駆翔·紅焔之型(Mk Braze Hyperion)

 

正体は火炎発生能力。

極端なほど特化した性質を持つ、英雄の後継者の固有能力。

炎熱を身に纏うことで生きた火球と化し、攻防両面に劇的な強化を実現するシンプルなもの。

精神的高揚が出力を左右する例は意外と多々あるが、この能力はその傾向が特に顕著。

使用者である主人公の心が昂れば昂ぶるほど焔の勢いは天井知らずに上昇していく。

反面、逆に心が折れた場合は冷水をかけられたかのように沈静化してしまうという振れ幅の大きい面もある。

その性質からも見られるように、身体から離れた場所へ炎を飛ばしたり遠くの熱を操作するといった遠距離攻撃は不得手としている(まぁ、割と遠距離に飛ばしていたりするのであてにならないが)

高め、荒ぶり、断ち切り、燃やす。それがこの星光の基本にして奥義のすべてと言えるだろう

 

求めるべきは赫怒の炎。

邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ。

爆発を胆力で耐える。皮膚が焦げ肉が焼けるが構わない。

生きながら焼かれる程度の苦痛でどうして止まらねばならないのかと、傷つくことに対してまるで頓着しなくなる。

普段の主人公はまるでどこかへ消え去ってしまったかのように、能力を発動したら敵に対する怒りや殺意に溢れ、人間の体を武器や盾の代わりに使用するなど非道な手段も取るようになり、声も低いものへと変わる

それはまるで、憧れた英雄を反映したかの如く

光のために、未来のために、自分以外の誰かのために··· 過去も未来もみな総て、あらゆる絆を焔と燃やした暁に···

 

 

使用装甲

HT-IBF イミテートブラックフレーム

もといた世界に存在した戦闘支援装備の陸戦改良複製版、その性能は従来型の戦乙女装甲とキルレートにしておよそ3乗倍という頭のおかしい数値である

これに関しては元々、戦乙女装甲は武装とセットで運用されるものであり、武装そのものである本機とは設計思想の時点で大きく異なるのである

力を制御する方法もまた異なり、武装に搭載するプログラムによる外部任意処理方式の戦乙女装甲と異なり、搭載システムの管制による内部自動処理方式でありそのレスポンスは圧倒的である

 

HT-GF0 ゴールドフレーム

HT-IGFイミテートブラックフレームのコアを流用して制作された主人公専用機

イミテートブラックフレームの性能を倍近く引き上げると共にエネルギー効率を見直し、最適化も果たしている

その反面、機体の製造に莫大な資金が必要になるためコストパフォーマンスはとてつもなく悪い

その予算は最低見積りの時点でフル装備の軽空母一隻分というもの

武装に関してはオーソドックスではあるが汎用性に長けたものを搭載する

強化装甲にオーヴェロンと呼ばれる追加装備がある

これは見た目を鈍重に見せる効果があるが、実際には各部に追加で高推力スラスターが存在しているため見た目に反してかなりの機動性を発揮する

イメージ元はガンダムヴァルプルギスに登場するMS、オーヴェロンのジ・Oに似せた外装をつけてるアーマー形態

 

共通武装は腰背面の崩壊エネルギー変換型ビーム速射狙撃砲と腰側面のビームサーベル兼ビームマグナム




あ、これはあかんわと思った方・・・それは実に正しい


戦闘BGMの変遷
初期
スーパーロボット大戦シリーズより
Dark Prison (orchestra Ver)

現在
相州戦神館學園万仙陣より
Havamal


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キャラクター設定(主人公以外)

主人公以外のキャラ設定はこのページに纏めます


レベッカ・チェンバース

 

生年月日 1999年12月24日(18歳)

スリーサイズ ???

 

主人公の最初の仲間とも言える人物

本作のオリジナルキャラの一人、某ゲームのキャラと名前は同じだけども

 

本作中の世界におけるウイルス研究の第一人者であった一族、チェンバース家の生き残り

他に家族はいない、他の家族は第二次崩壊の際に発生したウイルス漏洩事故で全員死亡している

その際に本人もウイルスに冒されるが、当時の時点で超低確率で存在しているとされていた、ウイルスに完全適合した人物であったことが幸いし生還した

ちなみにその際に崩壊に対する強い適性も得ている

 

得意とする武器はスナイパーライフル(TAC-50)と散弾銃(686 E SPORTING)、根っからの科学者なので非常に合理的に自己流のカスタムも施し原型銃の数倍の威力を持たせている

特にショットガンに関しては距離13メートル、厚さ3cmの船舶用鋼材を貫通するほどの威力となっている(原型にこれほどの威力はない)

 

科学者としてはウイルス関連を中心に莫大かつ膨大な知識を持つ、主人公はコレのおかげで原作開始前の事件(第三次崩壊の裏で起きていた事件)を解決できたと言っても過言ではない

なお、主人公に触発されてウイルス関連以外の科学技術の知識も習得中である

 

崩壊に触れて得た力は遠隔瞬間移動(アポーツ)

厳密には心象風景から切り出した欠片であるらしいが詳細不明

応用として様々な物体(数量・種類無制限)を手元に召喚、あるいは敵対象に投擲して攻撃、敵との中間地点に展開・防御といった幅の広さを有する。対象に自分や味方と認識している人物をあてて瞬間移動も可能(ただし正確な座標の特定が必要)

戦闘以外にも使えるらしく、あまり使用しないものの様々な道具を格納している

 

 

 

レオン

某ゲームのキャラと名前が似ているキャラ、こちらも本作オリジナル

主人公と同じ世界からの転生者、生前は主人公の憧れた人物の仲間だった

この世界ではとある組織に属する捜査官である

主人公と会った時は休暇中で、その前に起きたとある出来事で傷心しており酒に逃避中であった

この癖は元の世界から変わらないらしく主人公は呆れていた

苦労人でもある

 

 

森谷・闘真

オリジナルキャラの一人、主人公と同じ世界の出身

主人公にとっては憧れた人物の師匠でもあるし超えるべき壁、でも簡単には倒せないほど強い

その戦闘能力は人類最高にして最強であると主人公は評する

実際に主人公と戦った際には、主人公が息も絶え絶えだったのに対して余裕そうにしていた

本人曰く気合と根性との事、引き合いに出す言葉が違いませんかね?

 

この世界では工学専門の研究者をしている、一応研究所の所長もしている

研究成果の一つに余剰次元波動爆縮投射砲なる超兵器がある

運用目的は艦隊戦における決戦砲としての運用のためであるが、主人公曰く艦隊決戦用と言うより拠点破壊砲としての運用の方が正しいとの事

 

性格は茶目っ気溢れる好青年であるが、戦闘になると正反対になり、冷徹且つ残忍に相手が無くなるまで殲滅していく恐ろしい人物である




これからさらに追加予定です


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主人公(真・ステータス)

悲報:やらかしに気づいて一度消してしまった


九条アヤカ

 

基本的なところは変化なしだが、重大な真実が隠れていた

それは後述の人物から女性的な人格を一個の知性体として分離された存在であること

元々は複数の感覚質(クオリア)を持つ一つの知性体、共生知性体である

詳しく説明すると一つの短編となるのでざっくり要約すると・・・

()()()()()()()()()()()()()()。人類が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()てから、その()()()()()()()()()()()()()()、むしろ()()()()()退()()()()()()()を打破すべく作り出した存在こそ主人公とその関係者の一部である

ただし、()()()()()()()()()()()()()であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようである

また、その世界ではストライカーシステムという、内在する不安定な共生知性体の人格を安定させると同時に、戦闘において一人で一国軍と互角以上の戦果を発揮するために開発した兵装、その発展機であるフレームシステムを開発していた

これは一般向けに開発していたものを軍部が接収して半ば強制的に開発させたもので、その途中でクーデターが起こり。試験運用の結果、部隊運用には向かない代物との認識になり倉庫の肥やしになったのもあるようである

 

固有する特殊能力は衝撃の付着と多重層化*1

攻撃着弾地点に不可視の多重衝撃を貼り付け固定する

一度斬れば十の斬撃が、二度殴れば二十の打撃・・・というように、与えた衝撃を多重層化させた上で相手や自身の体、得物、あるいは周辺構造物に貼り付けペーストさせるという異能。

多重層化された衝撃は備蓄(ストック)となって接触した物体に設置されていく。

一合でも打ち合った瞬間、意思に応じて起爆する質量のない見えない爆弾を幾つも設置させられるようなものであり、術中に嵌ってしまえば当然不可避。

応用性にも富んでいる。例えば、武器に衝撃を纏わせることによる武装の攻撃力強化、無数の瓦礫に衝撃を貼り付けて備蓄(ストック)し、任意で起爆させることで瓦礫を跳弾させて弾丸のように飛ばす遠距離攻撃、衝撃の起爆によって相手の体勢を崩すといった攻撃や防御の妨害、自分の体に衝撃を貼り付けて、相手の攻撃が命中すると同時に起爆することで攻撃を相殺する防御手段、あるいは、足元で起爆することで、高速機動や緊急回避をする、といった応用が存在する。

本質を見破るのは至難の業。人間としての全性能が押しなべて高水準かつ、不得手な素養を持たないことも、能力の不透明さと異質さに拍車をかけているのだろう。

おまけに攻撃や一手一手の全てが衝撃付与という要素を帯びるため、どの攻撃や行動も単体で終わらなくなり、仮に見破っても、次に次にと相手は戦闘中に戦略的な思考や先読みを行うことを強いられていく。

未来予知じみた先見と相俟った死の詰将棋からは、何人たりとも逃れられない。

爆殺魔と呼ばれるのはこの能力の発動が爆発物の起爆と同様の性質を帯びており、非常に激しい為。実際に敵を爆殺する事にも使える事から非常に幅広い応用が出来るのは言わずもがな、敵に手加減は一切しない主人公ならではの能力である

 

性格はほとんど変わっていない

本編中で記憶を取り戻した結果、根底の部分は手を加えられておらず、記憶の一部を削除、圧縮して封印していただけであると判明している

それだけでも、相当な技術*2が必須であり、半身ともいえる後述の人物の技術力が異常な高レベルであると理解できる

その本来の性格とは・・・本来の性格は一般人そのもの、後述人物の藍澤カズマ曰く”感覚的にも、性格的にも一般人そのもの”と言われるほどであり、本来は戦闘に不向きな人格である。ただその人物が自分の心さえ偽って騙し切り、身の丈に合わない力を誰かのために行使し続けた結果がDay78の最後へと繋がってしまっただけである。

 

 

ゴールドフレーム

初期形式番号・名称 PSF-07G ゴールドフレーム(オリジン)

現形式番号 P-GCTX-01 ゴールドフレーム 暁・未来

 

初期段階から徹底的にユーザーフレンドリーかつ超絶レベルの高性能を発揮すべく限界突破レベルの最適化を実現している

その結果として主人公以外には到底扱えず、万が一起動できたとしても即座に脳が焼き切れる程の負荷が発生する

また、自己進化機能もあるため、主人公の成長=機体の進化になっている

現在のモノは、想定される戦局に即応させるために搭載できるだけの武装を搭載し、それによって増加した重量分の機動性低下を補うために大出力と高効率の推進・姿勢制御装置を増設している

結果として300kgオーバーの重量でありながら、圧倒的火力と超絶的機動性という二律背反を達成している

その反面、防御性能はあまり発展しておらず、申し訳程度にエネルギーシールドを展開できる程度になっている*3

 

共通武装

大出力ビームサーベル

汎用ビームライフル

エネルギーシールド

 

暁・未来専用装備

遠隔攻撃端末(6基)

腰部電磁加速砲

肩部大出力ビームカノン

背部翼状姿勢制御装置兼マイクロミサイルコンテナ

腕部小口径単装機関砲

 

 

 

藍澤カズマ

主人公のベースとなった存在

主人公にとって同一人物であると同時に兄であり、男性であり、ライバルであり、越えるべき壁

生まれた世界では時代を間違えるといえるほどの技術を有していた天才科学者、得意分野は機械工学と人体工学

機械と人の負荷のない融合をコンセプトに様々な新技術を開発し実用化した稀代の天才にして自他ともに認めるマッドサイエンティスト

崩壊3rd世界の技術水準との比較で、公開されているもので50年から1世紀、非公開のモノでは2~4世紀先の未来でやっと釣り合いの取れる技術を有する

だが、意外な事に技術それ自体は人類へ幸福をもたらすものばかりであり、不利益になる事の方が稀と言われるほどのモノである

マッドと言っている理由は、自身の開発した技術の接収のために様々な国や機関、組織が動き世界的な混乱を招いたうえ、最終的には世界そのものが壊れてしまったため

素のスペック自体が人間の最高性能値、最強でこそないものの最優

但し戦闘に関しては消極的、だが一度戦闘を始めさえすれば敵は後悔する間もなく壊滅に追い込まれる

戦う理由は大切なモノを守るため、同じ理由で戦う者、背中を預けられると判断した者には優しく時に厳しい*4

 

ブラックフレーム

形式番号 GPIA*5・FS-01A

 

藍澤カズマが開発した機体、シリーズの初号機にして最高到達点

性能は他機の追従を許さない高みにある

主人公機と同様、自己進化機能を搭載している

 

共通武装(主人公機と名称は同一、しかし出力と威力で勝る)

大出力ビームサーベル

汎用ビームライフル

エネルギーシールド

 

専用装備

多用途遠隔攻撃武装(8基)

肩部大出力ビーム砲

腰部高初速レールガン

ヘッドバイザー部内蔵レーザーバルカン

腕部ビームバルカン(サーベル機能付き)

*1
後述の人物曰く、コレですら本来の能力から転び出た欠片との事

*2
崩壊3rdの世界でも技術的につり合いが取れるのは推定で2世紀後

*3
これに関しては機動性を上げた事により一撃離脱戦法を主眼に置いて極力被弾しないように出来るためである

*4
特にアヤカに関しては顕著である。これに関しては自身から分岐した存在であり、自らの目的のためにある意味で犠牲とせざるを得なかった彼女への贖罪の気持ちからである。”彼女が本来保有する力を使ってもらうために俺が出来る事は全てやる”との言葉(Day79)からもその本気度がうかがえる

*5
General Purpose Infantry Armament、汎用歩兵武装の略




貴様らのようなチートがいてたまるか


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こんにちは作者さん

タイトル通り、まさかの作者が作品世界にやってくるという前代未聞の出来事が発生
※今話のみ台本形式


作者「やって来ました作品世界、いやー自キャラに会えるなんて楽しみだねぇ!!」

主人公「いや、どうやったら2次元の壁を3次元側からぶち抜けるんだ?」

作者「そこに愛があるからだよ」

主人公「変態だ!!変態がいる!!」

 

いきなり作者が目の前にきた

訳が分からないと思うが私にも分からない

2次元から3次元の壁をぶち抜く方法走っているが、逆パターンは知らなかった

 

作者「しっかし···意外と胸ないな」

 

胸を見ながらそう言ってきたので殴り飛ばそうとした

しかし見えない壁に挟まれて防がれる

しかし攻撃はして来ないのでこちらも一旦攻撃をやめる

 

主人公「そういえば私の設定が2、3回ほど変わっているが?」

 

この質問に作者は真剣な顔になった

 

作者「いやー、元々は皆勤キャラで行こうとしてたんだけど、彼にも流石にお休みを与えないといけないかなって。作中にもう出したし、これからは作者(おれ)に馬車馬の如く働かされるからね」

 

その発言の最中に彼の背中側にはカズマが立っていた

 

カズマ「おう、そうだと思って強装弾仕様の.44マグナム持ってきたぞ?安心しろ、灰も残してやりはしねぇ」

 

ドスの効いた声に作者が凍る、というか···

 

主人公「あっるぇ?なんで作者の後ろにいるんですかねぇ?」

カズマ「知りたいか?皆勤キャラ特権だ」

 

カズマはそう私の質問に返し笑う、いや待てそうだとしたら

 

主人公「なら私もそっち側だろなんでカズマだけなんだよ!!」

カズマ「んー、作者、説明」

 

銃口を作者の後頭部に押し付けながらカズマが説明を促す

 

作者「あくまで本作では一人の独立した人間であり、しかも新規なので扱いとしては残念ながら皆勤キャラではありません」

主人公「くそがァ!!」

 

作者が笑いながら爆弾発言をかます

 

作者「ここだけの話、主人公ちゃんと皆勤キャラであるカズマ君は性癖が似ていたりします。巨乳スキーだしね。あと(放送禁止用語)だったり(放送禁止用語)だったりで割とそこら辺(放送禁止用語)だね!!」

 

サラッと口撃(ノット誤字)してくる作者が直後カズマ射殺され···たはずなのにピンピンしていた

 

カズマ「クソ作者テメェチート使ったな!?」

作者「私が神だ(ガチ)」

主人公 「メタァ!!メタいわ!!」

 

メタ発言までかまし、作者は笑う

 

作者「因みにですがここから大変な事があります」

カズマ「ネタが尽きたか?プロットが無くなったか?予定は未定パターンか?好きなの選べ射殺してやる」

作者「全てだァ!!」

カズマ「素直でよろしい、では死ね」

 

カズマが満面の笑みで3発発砲するが作者はアホみたいなド変態挙動で全てを躱した

 

カズマ「ちっ、俺というキャラクターの下位劣化版と言うだけはあるかこの変態め!!」

作者「人間やめてるカズマ君には言われたくねぇなぁ!!」

 

そこから始まる痴話喧嘩に苛立ち、私はテーザー銃を2丁取りだし発砲、鎮圧した

 

主人公「カズマ、何か言うことは?」

カズマ「俺は悪くない」

主人公「そうか、今度はもっと高い電流がお望みか」

カズマ「すみませんでした」

主人公「よろしい」

 

カズマに反省させ、今度は作者の方を見て···紙だけ残して消えただと!?

 

カズマ「なになに?本作を見ておられる方々に感謝していますと伝えてくれ?んなもん自分でやれっつの」

主人公「しゃーない、やってやるか、私達もやりたい事だし」

 

さて、この訳分からんカオスもこれで終わりだ

 

主人公「本作を見ておられる方々、ご閲覧ありがとうございます、作者共々とても嬉しく思います」

カズマ「相変わらず文才が欠片もない作者ですが、今後ともよろしくお願い致します。それでは次回の更新をお待ちください」

 




この茶番のできた理由↓

ミホヨ「Steam版崩壊3rd(連携機能無し)とPC版(日本語対応、連携機能有り)出すよ」
作者「・・・!?」


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新年

この物語は全てが終わったあとの話の一つでもあります



「ふぅ、これで一段落かな?」

 

私はそう言って重箱の蓋を閉めた

これであとは明日を待つだけ、御節料理の手作りは久しぶりだから味がなんかしっくり来ないけどまぁいいよね?

 

「夜遅くまでご苦労な事ね」

「あれ?なんでシーリンが表に出てきているのかな?」

「キアナは早々に寝たから、たまの息抜きがわりよ」

「ふーん、そう」

 

キアナの中にいる律者、シーリンはそう言ってソファに座る

この子の説得には骨が折れた、精神的にも物理的にも

説得は上手く行き、協力してくれているのは一重に奇跡的と言うしかない

 

「貴女、これは明日のものよね?」

「ええそうよ?」

「そこにあるのは?」

「ナンノコトカナー?」

「とぼけても無駄よ」

 

目敏いのはキアナと同じか、私用に取っておいた夜食分に目をつけられた

 

「キアナとは上手くいってる?」

「えぇ、そこそこには」

「なら良かった、お守りはお願いするね」

「お願いされたくないのだけど?」

「諌めるだけでしょ?難しいとは言わせないよ?」

 

不服そうだが、彼女は溜息をつきながら私のお願いを聞いてくれるようだ

 

「はぁ、仕方ないわね」

「私より強くなったからねー、仕方ないよねー」

「嘘言ってるんじゃないわよ、本気であればまだ私達なんて足元に及ばないぐらいのクセに」

「ナンノコトカナー」

 

私の力は壊す為のものであり、この子達のような守るためのものでは無い

戦乱の時に、私の力は必要となる事があるだろう、だが平和になれば不要なものだ、むしろ危険ですらある

多くを救うための小さい犠牲、それが許せないから全てを救うための力を欲した

自分がいつか辿るかもしれない末路を知っていても、大切なものの為に戦い続ける···そんな人に憧れを抱いたから

救済の光を掲げる者···英雄の後継として描いた未来は奇跡を軌跡として偶然という名の必然が生み出した奇跡的なバランスの上で叶えられた

それが薄氷程の薄さの幻想としても、それを守り抜く事が極限の難易度であろうとも···

 

「覚悟無き者からは力を奪おう、だが、その覚悟があるのなら···」

「私たちの行動の指針ね、そこに関しては同意見よ···」

 

私は今を生きようとする、強い意志を持つ人達の為の剣だ。力があっても、声を出すことも出来ずに耐え続けている人たちの為の力としてあり続けよう

それがあの人···藍澤カズマとの誓いである

運命の果てに得たものは一つの答え、それは小さく儚い命が紡いだ優しく強い、暖かな炎の煌めきである

 

「討たれていいのは、その覚悟のある人だけ、だよね?」

「あら、起きちゃった?」

「なんか話してるなー、と思って」

 

キアナが起きてしまったようだ、夜食は隠しておこう

 

「あ、美味しそー」

「つっ!?」

 

な、なぜ隠していた夜食の位置がバレている!?

 

「性格から予測できるよ?」

「何···だと···?」

 

性格から読まれていたなんて屈辱だよぉ!!

 

「キアナ、食いすぎはダメだからね?」

「はーい!!」

 

さぁ、元旦まであと数時間、この幸せに感謝しながら、新しい一年が平穏無事に生活出来る事を祈ろう




元旦すぎてしまいました申し訳ございません


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新年(2)

これは本編の物語の一部
新年を祝う戦士達の一日の一部


「カズマ、今年もやってきたわね」

「あぁ、本当にな」

 

私達は自分の部屋の窓から下を見ていた

そこには神社へ向かう元気な3人の姿がある

 

「いろいろ、あったわね」

「まぁな、濃すぎる1年だったよ」

「貴方の予想外だった?」

「あぁ···」

 

カズマでさえ予測外の出来事が起こり続けた

今年は本当に濃い一年だった

 

「量子の海に単独でダイブしてくる阿呆はいるし」

「量子の海で優雅に寝ているクソ野郎はいるし」

 

そうして二人は空を同時に見上げた

 

「ねぇ、今・・・幸せ?」

「もう二度と失うものかと思うほどにはな」

「そう・・・」

「そういうお前はどうなんだ?」

「言われなくても分かっている癖に」

 

片方の人物が、問いかけられた質問に答える

 

「私も同じ思いよ、()()()()()()()()()

「そうか・・・」

「それに、1人にしとくと何するか分かんない要注意人物がいるしね?」

「反省はしている、ぞ?」

「どうだか」

 

女の方はそう言いながら笑う

 

「でも、貴方を取り戻せて良かったと私は思うよ」

「・・・」

「あなたと私は2人で1人、そうでしょ、カズマ」

「あぁ、同じ存在だからな」

 

答えた男の方は、苦笑いしながら近くの椅子に座る

 

「お前がいなければ、俺はあの海で眠り続けたままだっただろう。絶無に等しい可能性を探しながら」

「だけど、私というイレギュラーをその前に作り出していた」

「賭けだったよ、僅かな可能性にかけた」

「その賭けには勝ったみたいね?」

「知ってるだろ?オレは悪運に恵まれてるんだ」

 

微笑むように笑いながら、カズマはそう言った

 

「素晴らしい人間の下には、いい人材が集まるものだろ?それは敵であれ、敵であれ、敵であれ変わらない」

「貴方らしいわ、その思考回路」

「言ってくれるじゃないか」

 

そう言うとカズマはコーヒーを一杯要求する

それに答えるように私は淹れたてのコーヒーをカップに注いだ

 

「シュガー切らしてるからブラックで我慢しなさい」

「と言うと思って予備を用意してあるんだなこれが」

 

胸ポケットからスティックシュガー三本とシロップを取り出してカップに入れる

コーヒーをこよなく愛する方々へ喧嘩売ってるとしか言えない投入量だ

 

「毎度思うけど、入れすぎよ」

「苦いのは苦手なんだよ」

「だったらなぜコーヒーを選択するのよ」

「カフェインが恋しい」

ジャンキー(中毒者)になって死ねば?」

「辛辣ゥ!!」

 

ちなみに私は紅茶派だ、もちろんストレート

 

「あ、下品な泥水とか言ったら蓑虫吊るし刑な」

「簀巻きで吊るすのになんでそう言うのよ?」

「見た目が蓑虫みたいだから」

「・・・」

 

ネーミングセンスないのは相変わらずか、呆れてものも言えない

 

「初詣は済んだのか?」

「もう行ったわ」

「なら俺の番だな」

「行ってらっしゃい」

 

そうして私は見送る

そして···

 

「さーて、おせちの用意しますか」

 

皆を驚かせるために用意してきたおせち料理を準備するのだった




今年はギリギリ間に合(わなか)ったぞ!!


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これからの未来

謹賀新年
あけましておめでとうございます
本話はこれまでのストーリーを端折りまくった振り返りです


「よう、なぁに新年から黄昏れてんだ?」

「カズマ・・・黄昏ているわけではないよ」

「憂いている表情しといて言う事かよ、鏡見てこい」

「少し、これまでを思い出してたのよ」

 

新年あけて、朝日を見つめながら私はこれまでを思い出していた

この世界に来てから、自分の歩んできた道を

 

「B.O.W.の事件を解決して・・・そのまま崩壊を貴方の、いや、セリアの力で鎮圧したわね」

 

煌翼たれ、蒼穹を舞う天駆翔·紅焔之型(M k ・ b r a z e H y p e r i o n)は本来、セリアの持つ固有能力だ

火炎発生能力能力であり、炎と熱は彼に纏う不滅の鎧となり、武器である刀剣は火炎を宿し切れ味を上昇させる。

血に引火性が帯び、体外に流れたそれがバーナーのように噴出するのを利用し桁外れの機動力を得ることも可能だ(失血死のリスクが付き纏うのでやらないが)

 

「俺の介入がなかったらオットーの人形にされていたな、いやホント危なかった」

「その割には雑だったけどね」

「緊急対応だからな、仕方ない」

 

カズマはそう言って笑い、私の横に座る

 

「それからしばらくして、ウェンディを救うための賭けをしたり」

「あれは見ていて驚いた、まさかあの手を使うとは思ってもいなかったからな」

「一歩間違えばウェンディが死んでたけど、それでも賭けには勝てたよ」

「毎度あんなのされたら治療するこちらがかなわんがな、少しは自重してくれ」

「無理ね」

「即答かよ」

 

ウェンディを救うための賭け、彼女の心臓ギリギリにある律者のコアを体外に放出するための行為に、カズマは見ていて驚いたらしい

まさかその手を使うとは考えていなかったようで、治療班総出で見守っていたそうだ

 

「キアナが連れ去られた時は本当に精神的な限界に追いやられたわ」

「その結果最悪の選択をしたのは反省しているかな?」

「しているわよ、1ナノメートルだけ」

「それを反省とは言わねぇよ・・・」

 

私の命を賭して戦った結果、キアナはどうにか助けられた

その結果が自信を死に追いやりかける結果としても、そこに後悔や反省はない

たぶんではなく次も同じ事をやる、死なない限り何度でも

 

「8ヵ月眠って、目が覚めたら蘇生されてるし身体は変わっているしで気が遠くなったわ、貴方のせいよカズマ」

「謝罪はしねぇぞ」

「しなくて結構、十分受け取っているから」

「可愛くない奴め」

 

キアナは目論見通り大きく成長していたし、みんなも私と同等クラスまで進化していた

それでも私のアドバンテージが揺らぐ事はなかった

その理由はやはり、カズマの内側にいて彼を見て自身の糧としてきた事前学習の賜物だ

それがなければ今頃最下位だし、そもそもS級のバルキリーになれていない

 

「カズマ」

「なんだ?」

「この世界をどう思う?」

「世界は美しくなんてない、これは沢山の世界を渡り歩いた経験からそう思っている事だが・・・同時に俺はこう思う」

 

私の質問にカズマはすぐに答えた

しかし途中で言い淀み、何かを思い出しながら再び話す

 

「だからこそ、人は美しいものに感動し守ろうとする。それが環境であれ動物であれ人であれ・・・関りから生まれる()というものでもあると」

「そうね・・・」

 

その言葉は、カズマだからこそ生まれた言葉

かつて人の身で神となり、様々な世界を旅する事になった青年だからこその重みある言葉だ

 

「お前は?」

「私も同意見よ、一つ付け加えるなら・・・奪われたら取り戻す。という事くらいね」

「お前らしいな」

 

私の言葉にカズマは笑って、しばらく無言だった

いつもなら何か言い始めるが、何かを考えている

 

「これまでもそうだが・・・ここから先は地獄だぞ」

「既に地獄は嫌ほど経験したわ、それに比べればこんな事くらい平気よ」

「諦めという文字は?」

「貴方と同じで、頭の辞書にそんな言葉はないわよ」

 

そう返すとカズマは頭を抱えて笑う

 

「ははははッ!!そう言うと思ってたよ!!」

「カズマは少し自重して頂戴」

「そんな言葉は俺の辞書にないな!!」

「言うと思った」

 

そう言って私も笑い、外を見る

正月三が日とは言え、じっとしていられない性格のキアナは日付変わってすぐに神社に行くようで、外で芽衣とブローニャを待っている

 

「お前も行って来いよ、神頼みというのも案外面白いモノだと思うぜ?」

「神様がソレを言う?」

「俺は神としてなぁんにも出来ないんで」

「神様失格ね・・・あ、人間としてもか」

 

そう言うとカズマを捕まえに来たイセリアにあとは任せ、私もキアナたちに合流する事にした

なお、カズマがイセリアにつかまる理由は経費の無駄遣いである、震えて昼を迎えればいいと思う




今年は何とか間に合ったぞ!!(三度目の正直)
本編はこれから原作のストーリーを大幅スキップするけど、これでも頑張っているんだ許してくれ・・・


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胎動
Day 1


覚醒したら異世界でした、えぇ、驚きです


「ここはどこ・・・?」

 

目を開けたら異世界でした、謎すぎて分かりません

なぜ異世界だと分かるかと言えば、私の寝た場所は家の自室だから

普通に寝て普通に起きたら周りは建物だらけで私は公園の中のベンチで寝てました

そのせいか背中が痛いです

 

「とりあえず・・・」

 

身の回りの物を確認します

スマホ・・・ある、残り90%

モバイルバッテリー・・・ある、容量も満タン

財布・・・ある、学生証とお金、プリペイド式のクレジットカード、銀行のキャッシュカードも問題ない

 

「バックは・・・」

 

日傘・・・ある

教科書・・・ない、そもそも入れてなかったね

防犯ブザー・・・ついてる

護身用のスタンガン・・・ある

体操着・・・ある

ジャージ・・・ある

生理用品・・・ある

 

「ふぅ・・・とりあえず問題はないよね」

 

見たところ現金は普通に使えそう、公園近くのコンビニを覗いたら、財布の現金と同じ紙幣が使われていた

現在の紙幣価値も変わらないみたい(コレは無料Wi-Fiに接続して検索して分かった)

 

「とりあえず・・・ご飯かな」

 

お腹すいたよー

 

「ごちそうさま」

 

さて、ご飯も食べたし・・・どうしようかなー

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

「・・・?」

 

叫んでいる人がいた、そこには・・・

 

「え、あれ・・・ゾンビ?」

 

どう考えてもそれらしい奴がいた

某ゲームで有名になった例のアレ・・・ゾンビである

流石にB.O.Wではないよな?だとしたら非常に厄介だ

 

「泣けるね」

 

そう言ってすぐ後ろの工事現場からスコップ(剣スコ)を入手、簡易だけど武器になるそこそこの重みがあるものと言えばスコップだ

一発だけだけど距離が離れていれば拳銃弾を防げるくらいには硬い

 

「そいやッ!!」

 

後ろに回り込んで首の骨を折る、古典的なゾンビの始末の仕方だ

 

「あ、あなた・・・」

「早く行って・・・邪魔」

 

そう言って逃げさせながら私は振り返る・・・数は10体ほどか

 

「・・・悪くない」

 

食後の運動には良さそうな数だった

 

「せいッ!!」

 

剣スコの先を利用して首を斬り飛ばし、バックステップで倒れるソレを躱して次の敵をフルスイングで首の骨を折る

次に足を掴んだゾンビを突き殺し、迫るゾンビを突き刺した剣スコを軸にして両足で蹴り飛ばし、追撃として後ろに回って頭を拘束し捻り殺す

 

「まずは4体ね」

 

早くも残りは6体、案外つまらないものである

 

「つるはし欲しい・・・なんて言ってられないかなぁ」

 

五体目を倒したとき、ついに剣スコが折れた

これは仕方がない、逆によく持った方だ

幸いにして、近くには可哀そうにもご殉職された警官二名のご遺体がある

拳銃を拝借しよう

 

「お借りしますね」

 

先に謝っておき、銃を取る

 

双方共に一発だけ撃たれていた、警告で撃ったのだろう

さて、これで8発分確保だな

 

「うん、行ける」

 

SAKURA M360Jという拳銃だ、警官用の拳銃として配備されている日本警察の要請に応じたカスタマイズモデルだ

弾丸は.38スペシャル弾、装弾数は5発、うち一発を使用済み

元のモデルはS&W M360

改造点はシリンダーをチタンより安価なステンレス鋼製、銃身はアルミ合金の内部にステンレス剛製のライナーの2ピース構造

また、グリップはニューナンブM60の最終生産型やS&W M37の日本警察仕様と同様、フィンガースパーを付するとともに底面にランヤードリングが設置されている点である

 

「アレはただの的・・・私には撃てる」

 

頭に照準を合わせ、引き金を引く

旅行で行ったハワイで経験した銃の扱い方をトレースして見様見真似で撃ったけど予想以上の反動に驚く

 

「くっ・・・!!」

 

だが、上手く仕留めた

反射的に次のゾンビにも同じ事をしている

 

「残り3体!!」

 

迫ってきたゾンビを足で絡めて地面に倒し、頭を撃った

 

「これで終わり!!」

 

二丁目に切り替えて発砲し、最後の二体を同時に倒した

 

「ふう・・・これで終わり・・・かな・・・?」

 

そこに声が聞こえたのは、座り込んだ直後だった

 

「これ、全部アンタがやったの?」

「オバサンだれ?」

 

次の瞬間、頭に鋭い一撃を食らった

 

「誰がオバサンだクソガキ?」

「暴力ふるった!!この人短気すぎでしょ!!」

「まぁいいわ・・・もう一度聞くけどコレ、全部アンタの仕業ね?」

「そうだよ?何か文句ある?」

「ないわ・・・アンタのおかげで被害を最小限で済ませる事が出来たわ、ありがとう」

「それはどうも」

 

飲み物が欲しいなぁ・・・自販機で買おうかな

 

「ほら、これでも飲みなさい」

「ありがとうございます」

 

オバサンが飲み物をくれた、案外優しいらしい

 

「ところで・・・これから連行するけど身に覚えは?」

「窃盗に器物破損に銃刀法ですかね?」

「あるならよろしい・・・で、それを一括で解決する方法もあるわよ?」

「選択肢は?」

「あるわよ?」

「一択なだけですよね」

 

確実に一択のみだ、笑顔が胡散臭い

 

「あら、物分かりがいいわね」

「拒否ったら強制連行でしょう?」

「えぇ」

「だからです」

 

武器を預けて私は荷物も出す

 

「殊勝な心掛けね」

「下手したらヤバい手に出てくるでしょうし、警戒はしていますけど勝てないと思いますから」

 

勝ち目が出来たということと、だから挑戦することは全く別の概念なので、そこを誤るのはまさしくガキの所業だ

結局、自分のような負け犬が出来るのはどこまで行っても弱いものイジメなんだと、でもそんな臆病な自分でも真実譲れないものがあるのだと証明するかのように私は相手を見る

 

「参ったわね・・・」

 

そう、戸籍もない、家もない、ついでに言うとお金もそろそろヤバイ

銀行口座も使えないというトンデモ事態である

 

「まぁ、それはこれから解決しましょう」

 

さて、連れて行かれるのは大型の空を飛ぶ船の中

尋問室のようなものではなく、個室だった

 

「てっきり暗くてジメジメした所だと思ったら・・・」

「一応は事態を収束に導いた子が相手だからよ」

「あら、そうですか・・・」

 

紅茶がうまい・・・いい茶葉使ってるんだなぁ・・・

 

「で、どうしてあそこに居たのかしら?」

「さぁ?目が覚めたら何故か居ましたし、記憶との断絶があって私自身もわけわからないですね」

「そう・・・で、ここから先はどうするつもり?」

「まずは戸籍の確保ですかね・・・その次はダブりでもいいから高校生としての生活を楽しむだけです」

 

そう言って紅茶を飲み、私は相手の出方を見る

 

「戦う気はないという事かしら?」

「それによりこちらが不利益を被る場合において、私は正当な利益を守るための行動をするまでです」

「油断も隙もないわね・・・いいわ、こちらからの交換条件と行きましょう」

 

相手が出してきたのは二枚の紙

一枚は転入出書類、二枚目は・・・編入届?

 

「私の教師として勤めている学園よ、ここでなら上手く書類も誤魔化せるわ」

「うわぁ・・・腹黒い」

「何か言った?」

「いいえ何も」

 

でも、私としては魅力的だ・・・だが先ほど言った交換条件が気になる

まてよ・・・まさか・・・!!

 

「ああいうのと戦う子達を教える場・・・ですかぁ」

「まだ言ってもいないのに予測してくるなんて・・・」

「言い方に含みがありすぎです、予測してくださいと言ってるモノですよ」

 

そう言いながら書類にサインして印鑑も捺印する

 

「これでいいですか?」

「早いわね・・・」

「即断即決、やると決めたらとことんやる・・・アナタもそうでは?」

「痛い所をついてきたわね・・・でもその通りよ」

 

さて、それでは・・・

 

「これからお願いします」

「えぇ、よろしく」

 

さぁ、元気に行きましょう




ヤベーのはここから!!


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Day 2

転生した、状況分かんね、ゾンビ出た!!
倒した、誰か来た・・・拾われた、一日目終わり
2日目スタートなう


「なんか怪しいなぁ・・・」

「何が怪しいのよ?」

「一番影響を受けるはずの企業が、ピンピンしてるんだよねぇ・・・」

 

あれから私は株式関連も含めた複数の情報を集めていた

影響を受ける企業が多い中、そのタイミングで新商品を出した企業が一社だけある

AG・・・Aqua Genesis社、健康食品などを扱う大手企業だ

ほかの同業他社が大きな影響を受けた中、そこだけがまるでこの事態を想定していたかのように新商品を出してヒットしている

 

「ここが怪しいとみているのね・・・どうして?」

「ほかの同業他社が大きな被害を受けてるのに、ここだけはまるで狙っていたかのように新商品を大量に流通させています、ここの社屋から出てくるトラックと入るトラックの数が合わないのも1つの理由ですね」

「つまり、ココが意図的に起こしたことと言いたいわけ?」

「それをこれから調べるところです・・・と言いたいですが、私は学生なのでここまでが限界ですね」

 

パソコンを閉じて、ため息をつく

 

「誰か調べてくれないかなー」

 

チラッと横目で先生を見ながら私はそう独り言を言う

 

「誰かって・・・私を見るんじゃないわよ!!」

「えぇー?見てないですよぉ?」

「分かったわよ!!調べてあげるからしばらくの間待ってなさい!!」

「わぁい嬉しいなぁ!!」

 

この先生チョロい・・・

 

「で、アナタこれからどうする気?」

「そうですね・・・本格的に動く前に体が鈍ってないかテストしようかと思います・・・ココ最近運動してないですから」

 

軽く紙に出したテスト内容を見て・・・先生の顔が青くなった

 

「コレ・・・正気?」

「えぇ、そうですよ?」

 

フルマラソンに遠泳、自転車・・・それだけでなく

まるで軍人かと言いたくなるようなメニューだ

 

「流石に日は開けますよ・・・」

「それは分かるわよ・・・問題はコレをこなせるかよ」

「出来ますよ?」

 

簡単にそう言って・・・私は過去のデータを呼び出す

 

「うわ・・・」

「一応、オリンピック選手の選考会で上位に行けるくらいの成績はありますから」

「驚きね・・・」

「というわけで早速やりますかね」

 

学校での授業は終わっている・・・放課後の時間を利用するつもりだ

 

「とりあえず遠泳から行きますか・・・」

 

幸いにも学園は海岸沿いにある、その対岸までの直線距離は5㎞だ

5㎞の時間を単純に4倍にする事で記録とする

前回も確か、その方法で記録していた

 

「うわ・・・パツパツ・・・」

 

サイズが多少合わないけど我慢して泳ごう、対岸には先生が待っている

何時もより念入りに準備体操をして先生に言う

 

「それじゃ行きます」

「えぇ、対岸で待ってるわ」

 

さて、泳ぎますかね

 

「うわぁ、透明度高いな」

 

泳ぎながら感想が出た、意外に海底近くまで透き通ってる

余程綺麗な環境が維持されてないとここまで綺麗な場所にはならない

遠泳してきた中で1番綺麗な場所かも···

あ、ボラかいた、アジもいる、真鯵かな

 

「到着···時間は?」

「1時間半ね」

「むぅ···前回より遅くなってる」

「いや、十分以上に早いわよ!?」

「だって前回、1時間ちょいでしたもの···」

 

私はそう言って体を拭いて服を着替える

 

「羞恥心ないの?」

「今の時間ここにいるの、先生と私くらいですから」

「事前に調査済みというわけね···」

「えぇ」

 

昨日買い物のついでに時間における人の数も調べておいた

私のゴールする時間、ここに人がいないことは知っている

 

「さて、帰りますか···」

「と、言いたいところだけど···出動ね···」

「早速ですか···」

「あなたにも来ているようね」

 

私の携帯にも、着信が入っていた

DSDV(Dual Sim Dual Volte)な私の携帯に空いていたSimスロットに専用のSiMを差し込んで貰った

その回線からの電話のようだ

 

「はい、先生から聞いてます···私は大丈夫です」

 

さぁ、お仕事だぁ···!!




次話、戦闘開始


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Day 2.5

2日目の続きだよー
またゾンビ相手にファイトなう、でも今回は武器揃ってるから問題ないね!!


「崩壊感染によるゾンビ共の偶発的発生ではなさそうですね」

「なぜそう言えるの?」

「今までの崩壊感染によるゾンビ共の偶発的発生例と今回と前回のデータ、そしてそれに類似している記録からですかね」

「よく分析できるわね、こんな短時間で···」

「誤差を多少無視すれば誰でもできますよ···」

 

そういいながら、私は武装を整える

持ってく武器はHK416、m9銃剣とm203グレネードランチャーを装備してある

スコープは4倍を装着し、予備マガジンは15本、ポーチ内にはグレネード弾を10発

軽くレーションとかも詰めている

 

「死体は後で集めて下さい、私が分析します」

「回収出来なかったら?」

「血液採集でもいいです」

「わかったわ、行くわよ!!」

「えぇ!!」

 

戦闘服は私の要求したものがあった

日本自衛隊仕様の防弾戦闘服だ、扱いやすくなかなか着やすい

欠点としては他国製に比べて重い点にあるが、コレはその分の防弾性が保証されている保証にもなっている

実証実験では.45ACP弾の至近距離でも耐えるほどの性能を示した

 

「うわぁ、ゾンビだらけぇ!!」

「倒しなさいよ!?」

「当たり前じゃないですか!!」

 

その瞬間、3点バーストで三体の頭を撃ち抜いた

 

「うん、いいね」

 

正確に撃ち抜くためには繰り返しの経験が必要だけど、私はそれを自分の脳内シュミレートで繰り返し、その通りに行動する

 

「しかし、どうやってそこまで効率的な倒し方が出来るのよ」

「シュミレート、そしてその通りの実行ですよ」

「いや、無理でしょ」

「私には出来る、一種の才能ですよ」

 

そう言って6体目の遺体を作って私は手榴弾を投擲する

 

「手馴れてるじゃない」

「両親の就職先がPMC(民間軍事会社)だったもので···」

 

だが、教えて貰った事は少ない

娘の私には、成人になってから進路を決めて欲しいと言っていた

だから習ったのはあくまで護身術としてのCQCである

銃に関してはハワイに旅行に行った時初めて使ったのだ

まぁ、全ての銃を扱い終わるまで入り浸ったのは言うまでもないが

 

「やれやれ···困るね、こう沢山来ると」

 

数が減らない、発生個体数が多いようだ、ならば···

 

「先生、あと頼みます」

「ちょ!?」

 

その瞬間に私はバイクに乗り、爆音を鳴らして移動を開始する

案の定、音に反応してゾンビ共は私に誘引される

 

「そうだこっちに来い!!」

 

先生から通信が入る

 

「そこから真っ直ぐ進みなさい、あなたの後ろには発生してる個体の98.5%がいるわ」

 

Oh···そんなに誘引していたか···

 

「2つ先の交差点の中心に私がいるわ」

「了解、お手柔らかにお願いします!!」

「後で覚えてなさい」

 

先生の前ギリギリで停車したと同時に垂れ下がっているワイヤーを掴む

 

二人同時に巻き上げられ、戦艦に収容されるその直前の大火力の砲撃でゾンビ共は殲滅させられた

 

「よく分かりましたね」

「同じことやらかす奴がいたからよ!!」

 

あ、そうなんだ

 

「お疲れ様です」

「はぁ···ヒヤヒヤさせないでくれるかしら?」

「それは無理ですねぇ···」

「そこは嘘でも善処しますと言えないのかしら?」

「言えませんね、確実に繰り返すので」

 

私は確実に繰り返すだろう、というか絶対繰り返す

 

「まだ自己申告している分マシか···」

「先生、後で私のご飯あげますから」

「マズかったら承知しないわよ?」

「そこは保証しますよ」

 

私のご飯を食べた人は美味しいと言ってくれる

さて、驚きの表情を浮かべさせてやろう

 

「で、来たわけだけど···」

 

そのあと30分で支度して出したメニューは海鮮パスタ

味もくどくないサッパリしたものである

 

「しかもワインまで···」

「赤ワインでもいいですが、今回は恐らくこちらの白ワインがいいかと···05 年製のシャトー·オー·ブリオン·ブランです」

「あら、珍しくはないけど···」

 

くどくなく、味わいながら食す料理にうってつけのワインだ、今回は魚介料理である事を考慮してこちらを選んだ

05年は生産された中でも当たり年と言われるもので、とても美味しい

 

「なるほど···よく合ってるわ」

 

うんうん、良かった

 

「マルチな才能は羨ましいわね···」

「まぁ、色々興味があったので···」

 

私はそう言って先生を見る

至って健康そうに見えるけど、私にはその裏がわかる

 

「あまり長くなさそうですね?」

「見抜かれてたか···あと数年だそうよ」

「やっぱり···」

「どこで見抜いたんだか···」

 

それは簡単である

 

「戦闘終わって着替え終わった時、僅かにフラついたでしょ?その時に体を触りましたよね?」

「えぇ···」

「その時、体温が手に触れてわかるほど冷たかったので」

 

今は普通だけど···その顔には翳りがあった

 

「あなたの事情に関わるつもりは今のところありません、ですがアナタは大切な人だというのを忘れないで下さい」

「ありがと···」

「さて、とりあえずは···」

 

私はあるものを渡す、それは

 

「一応、私に出来る事です···錠剤型のカンフル剤になります」

「作ったの?」

「えぇ、薬剤師の資格を取れるくらいには詳しいので」

「・・・」

「効能は保証しますよ、中毒性もないですが多用は控えて下さい、あまり効かなくなるので」

 

渡したのは青と白で作られた錠剤型のカンフル剤だ

気休めでしかないがないよりはマシだろう

 

「受け取っておくわ」

「そうして下さい」

 

さて、私の用は終わったね

 

「では、また明日学校で」

「えぇ、また明日」

「っとその前に、渡すものがあったわ」

「・・・?」

 

渡されたのはマイクロSDだった

 

「あなたから頼まれていたモノよ」

「ありがとうございます」

「悲惨なものだ、と言っておくわ」

「分かりました」

 

さて、これで私の推測が始められる

 

「後は対抗策のみか···」

 

正体を掴み対策もねらなければ···さもなければ···

 

「第三次崩壊が、始まるかもしれない···」

 

この世界の文明を破壊してきた現象···崩壊を誘引してしまうかもしれないから




お、コレは···


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Day 3

2日目も終わった、相変わらずゾンビ共は多いけど敵にはならない
そろそろ敵になりそうなのは出てこないだろうか・・・処刑マ○ニくらいに


「検査ですか?」

「えぇ、バルキリーとしての適性の検査をしてなかった事を思い出したのよ」

「あぁ、なるほど・・・」

「いきなりで悪いけど、着いてきてくれるかしら?」

「いいですよ」

 

学園長から直々にそう言われては仕方ない、着いていこう

 

「検査機に両手を付けて、しばらくしたら分かるわ」

「何か、拍子抜けするほど簡単ですね」

「それでも重要よ・・・あれ・・・?」

 

検査機がエラー吐いた、なぜに

 

「おかしいわね・・・」

「何故にエラー吐いた」

 

すると、何かに気が付く

というより体の変化に・・・なんか

 

「何か背中が熱いんですけど」

「服脱いでくれる?もしかしたら・・・」

 

そう言われたので服を脱ぐ、すると・・・

 

「やっぱり・・・天然聖痕・・・」

「嘘だと言ってよ・・・!!」

 

思わずその声が出てしまった、適正ありという事は厄介事に首を突っ込まざるを得ないという事でもある

 

「でも、見た事ない模様ね・・・」

「写真にとって私に見せてください」

 

スマホを渡してすぐにシャッター音が聞こえ、私に渡される

 

「これなんだけど・・・」

「つっ・・・!!」

 

それに衝撃を受けた、だってその模様は・・・

 

「知ってる・・・」

「え・・・?」

「コレは・・・私の両親と・・・両親の勤めていたPMCのマークです」

 

母の指揮する部隊、父の指揮する部隊・・・そしてPMCのシンボルマーク・・・

それが私の背中に、聖痕として宿っている

それは少しだけ残酷で、そして勇気をくれるモノだった

両親は・・・私のあこがれた人は・・・いつも私の背中を押してくれていた

それは世界を超えても一緒だと言ってくれているようで・・・とても嬉しい

でもそれと同時に、二度と会えない可能性もあると考えるだけで、同じだけ悲しい

 

「ヨタカとイヌワシ・・・二億五千万年前に存在した超大陸パンゲアと髑髏を模したマーク・・・懐かしいなぁ」

 

もう会えない・・・そんな可能性があると分かっていても・・・懐かしい思いは変わらない

 

「懐かしいって・・・どういう事?」

「いよいよ・・・話すときですかねぇ」

 

私はそう言って・・・ため息をこぼした

 

「私についての全てをお話しします」

 

決めたなら、立ち止まらず突き進め・・・私の在り方は常に前進あるのみ

それ以外はないのだから

 

「何と言うか・・・驚きを通り越して何も言えないわね・・・」

「でも、辻褄が合う・・・」

 

場所を変えて全てを話した、三人しかいないそこはお通夜ムードだ

 

「私自身、何故こうなったかの原因は不明です、帰れるなら帰りたいですが・・・無理なら無理と割り切ります」

「簡単に割り切れるモノでもないでしょう?」

「それでも、必要なら・・・」

 

覚悟は既に出来ている、だからこそ、迷いはない

 

「今、分かったわ・・・アナタから感じていた違和感の正体が」

 

姫子先生が思っていたことは私の推測するに・・・

 

「前進あるのみの、怪物みたいな子ね・・・あなたは」

「よく言われます、どんなに悲しい場面であっても泣かない私に・・・怪物じゃないか・・・と」

 

でも、だからこそ思う

 

「涙を流せば、同情は得られるでしょう・・・だがそれは何の足しにもなりはしない・・・私が思うに、必要なのは決して諦めない事・・・何度でも、そう何度でも、涙を拭って歩き出す意思が必要だと思うんです」

 

交わした約束をいつか形とするために・・・それが私の行動原理だ

不撓、不屈、不滅の誓いが私に永劫の前進を齎している

 

「立ち止まる事を知らないというの?」

「知っていても、止まらないというのが正しいですね・・・止まる気もないですが」

 

立ち止まった結果、地獄を見た人を私は知っている

その果てに、時が止まったかのように・・・全てに対して無感情になってしまった人をよく、知っている

 

「私は、なりたくない・・・全てに対して何も感じられないような・・・そんな人にはなりたくないんです」

 

自由な民と自由な世界で穏やかに安らげる日々を願いながら

それを幻想だと理解していても、叶えずにはいられなかった・・・そんな愚直であっても心の優しかった人が身近にいたからこそ

 

「夢や幻想でも構わないんです···憧れは誰にもあるものだから」

 

それこそが私の思い···生涯ブレることの無い決意だ

 

「そう···」

「難しいわよ···それは」

「えぇ、よく知ってます」

 

それでも、彼の取り零した理想を···叶えたかった夢を受け継ぎたい

 

「まぁ、少女の夢見た理想の世界ですよ···」

「馬鹿ね···」

 

よく出来た夢だ···叶わないだろう、その夢に挫折する事もあるだろう

だが、何度でも立ち上がり、涙を拭って歩き出そう

あの日交わした約束をいつか形とするため

 

「応援してあげるわ、教師として」

「ありがとうございます」

 

さて、湿っぽい話はこれまでにして···

 

「お菓子作ったんで、食べます?」

 

2人が反応した

 

「開けていいかしら?」

「えぇ、いいですよ?」

 

箱を開けると中にはクッキー

簡単に作ったものだが味は保証する

 

「姫子···」

「はっ!?」

 

姫子先生が一瞬いつもの凛々しさがどっかに行った表情をしていた

 

「いただきます」

「はい、どうぞ」

 

二人が食べる、その感想は···

 

「美味しい!!けど···何だか負けた気分になるわね···」

「才能がマルチすぎて···」

 

私は悲しい事が嫌いだ、だから笑顔を守りたい

笑顔が多い生活の方が、絶対に幸せだから

 

「簡単ですよ・・・奇をてらわず、見本通りに行うだけですから」

 

見本を忠実に再現する・・・それがとても美味しいメニューなら尚更だ

それを基に、自分なりの調節をしていけばいい

 

「まぁ、料理ならよりうまい人が居ますし、私はまだまだ素人に毛が生えた程度です」

 

私も食べる・・・うーん

 

「粉をもう少し細かくした方がいいかなぁ・・・少し粉っぽい」

「いや、十分美味しいわよ!?」

「うーん・・・今度はもっと美味しくしますね」

「コレ以上美味しくするというの・・・」

 

うん、問題も発見したし・・・次のほうも

 

「こちらもどうぞ」

「今度は・・・ケーキ!?」

「クッキーに続いてケーキまで・・・」

 

これは自信作だ、イチゴのショートケーキ

生クリームはかなりこだわって作って塗った

 

「一流店並みの美味しさよ・・・これ」

「完全敗北だわ・・・」

 

さて・・・と

 

「これからどうするの?」

「学生ですから・・・学校生活を楽しみますよ?」

「そう・・・」

 

渡されたのは・・・ようやく発行された学生証

 

「やっとですか」

「色々と大変だったのよ?」

「まぁ、そうですよね」

 

それを財布に入れて私は席を離れる

 

「それじゃあ、また明日」

「えぇ、また明日」

 

さぁて・・・どうしようかな・・・?




主人公の設定は後日


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Day 4

それは宿敵との出会い


「まさか単独任務とは・・・」

 

単独の任務を与えられた、私の実力なら問題ないらしい

場所は洋館、そこそこに年代の古い建物らしい

使用する武器は前回と同じものである

HK416、m9銃剣とm203グレネードランチャーを装備してある

スコープは4倍を装着し、予備マガジンは15本、ポーチ内にはグレネード弾を10発、軽くレーションとかも詰めている

戦闘服は日本自衛隊仕様の防弾戦闘服

起きたのはバイオハザード

 

あれ、コレって某ゲームの有名な出来事の一つじゃね?

 

「洋館事件・・・」

 

そう、洋館事件だ

それとそっくりな状況である

 

「ってことはかなり警戒した方がいいかな?」

 

嫌な予感がした、気を引き締めなくては

ここから先は死地だ、死して屍を拾う者はいない

 

「分かっていたけど···似てるなぁ···」

 

内部構造も似ているようだ、厄介だなぁ···

 

「トラップの類は・・・」

 

適当に破片を投げる、空中でソレが裂けた

 

「なんて切れ味のワイヤーを仕掛けてるのよ・・・」

 

グレネードで破壊しておく、退路を作るためだ

 

他の仕掛けもあるけど、気にしないでおこう

というかこの屋敷、仕掛け多すぎ!!

 

「なんて仕掛けの数なのよ・・・!!」

 

結局仕掛けの数は15にも及んだ

中にはレーザートラップまであるという豪華ぶりである

流石に回避は至難の業だった・・・

 

「ちぃ!!」

 

ゾンビの数も減らないどころか増えている、コレはいよいよマズイな···

 

「ならば!!」

 

逃げることにした、2階から飛んで下に降りる

 

「つっ!!」

 

振り返りながら銃を構えて···その瞬間にいつの間にかその銃口を横から押さえられていた

 

「グレン···アリアス!!」

「おや、私は初見で君の名を知らないんだが?」

「つっ···!!」

 

私の本能が警告する、この男は危険だと

得体の知れない化け物のように見える

 

「ふっ!!」

「くっ!!」

 

一瞬の空白の後、今度は生身の人間同士の戦闘に突入する

 

「はっ!!」

「なっ!?」

 

ライフルの弾倉を落とされ、排莢される、何とか銃剣については取り外しが成功し自分の手持ち武器として使えるけど、それ以外には拾ったハンドガンがホルスターにある程度となってしまった

 

「・・・」

 

だが、これで確定した、この男は本気だと

本気で企んでいることがあると···

 

「ゾンビ共を生み出して、何をしようというの?」

「さぁ?私の経歴を調べればわかるのではないかな?」

「本人の口から聞いたいわね···」

「あいにく、名前も知らない人物にそんなことを教える程バカではないよ」

 

睨み合うなか、私は気がつく

 

「敵味方認識ができるゾンビ···B.O.Wか!!」

「ご明察、だが···」

 

戦闘しながらの会話、私は敵に背中から拘束されていた

 

「終わりだ」

「がぁっ!?」

 

3点バーストを背中に受ける

幸い、ボディアーマーで守られたが···

 

「つぅ···くっ!!」

 

あまりの痛みに身体機能が低下してしまった

体をよじるのが限界だ

 

「ほう、ボディーアーマーを着ていたか···命拾いしたな」

「くっ!!」

 

武器は無くしたが、肉体は無事だ

ならまだ戦える

 

「諦めたまえ、君では私に勝てない」

「それはどうかな?」

「敵は私だけでは無いだろう?」

「ちっ···!!」

 

ソンビ共が現れた、よく見ると相手に従って···

 

「私の製品の最大の特徴は、敵と味方の区別が着くということだ」

「・・・」

 

B.O.Wの性能が、まさか私の予測通りとは···

 

「貴方を、許さない」

「そうか、私には目障りだ、消えてもらおう」

 

敵が去る、私はまだ体を上手く動かせるほど回復してない

 

「くっ···!!」

 

もうダメかも···なんて私は思わない、何故なら

 

「私の辞書に、諦めなんて言葉は無いのよ!!」

 

気合と根性で何とか身体を立ち上がらせ、戦闘を続行する

 

「はあぁぁぁッ!!」

 

ナイフ1本で、残りの全ての個体を撃破した

 

「殺戮の荒野に一人立つ···か」

 

戦闘後、私は回収された

意識が途中で飛んでいたようで、気がついたらベッドの上で寝ていたのだ

 

「まだ寝てないとダメよ?」

「学園長···そうも行きませんよ···」

 

私には目的が生まれた、新たな指標がある

 

「私は奴を倒します···」

 

赫怒の雷火を使ってでも、果たすと決めた

だから、止まらない

止まることなんて知らないから




次話、日常生活


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Day 5

日常に戻る
それは運命の出会い


「ふいー・・・勉強オワタ」

「早いわね」

「記憶力もいいですよ?」

 

私の記憶力は同世代のそれを遥かに上回る

細かいこともしっかりと記憶しているのだ、それ故に隙も油断もない

 

「そういえば・・・」

 

最近気になっている子がいる

放課後にいつも図書室か理科工作室で実験している子がいるのだ

 

「話しかけてみようかな・・・」

「辞めといた方がいいよ?」

 

そうしようとした時、学友から止められた

 

「あの子・・・第2次崩壊の原因を作った人達の子供なの」

「生まれなんてどうでもいいよ・・・私は興味がある、それだけ」

 

第2次崩壊の原因は実験の失敗による被験者の暴走と同時に発生した別件のウイルスの拡散らしい

どちらかを考えたら、おそらく後者側の子供なんだろう

だが、それが接触を避ける言い訳にはならない

私にはむしろそういう事情がある上で付き合う方がマシだ

無用な不安を抱えなくていい

 

その後、その子の名前を聞き出して荒く調べた

名前はレベッカチェンバース・・・チェンバース家は元々貴族であり、細菌・ウイルス研究の分野においては最先端をだったようだ

第2次崩壊時に研究していたウイルスが崩壊現象で活性化、抑止のためのプロセスが完全に機能しなかったこと、研究所の超高熱自爆措置の遅れによるウイルス漏出によりバイオハザードが発生、結果的に第2次崩壊の要因の1つになったようだ

その際に、両親ともに感染死している

本人も感染したものの、ウイルスそれ自体への完全抗体を有していたため発症しないばかりか、後天的であるが高い崩壊耐性を得るに至った

そして本人の希望により戦乙女(バルキリー)育成機関である・・・私の学び舎でもある学園に入学したという

 

「なるほどぉ・・・」

 

避けているのではなく・・・恐れているのかもしれない

人に裏切られることに・・・恐れられることに・・・

 

「不器用な子だね・・・」

 

知ったからには行動しなければ

 

「なに・・・?」

「編入生だよ?」

「知ってる・・・」

「明日は放課後どこにいるの?」

 

反応がないように見えるが・・・返答は小さく返って来た

 

「理科工作室」

「私も行くね」

「じゃま」

「ううん、私の依頼をしたいから」

 

以前採集したゾンビの血液、それを分析して欲しいのだ

 

「好きにすれば」

 

そう言ってその日は終わる・・・そして翌日の放課後

 

「本当に来た・・・依頼ってなに?」

「これを解析してちょうだい、必要な許可と機材はこちらで用意するわ」

「・・・血液?」

「えぇ、でもただの血液ではない・・・これはもしかしたらB.O.Wかもしれない個体から採集した血液よ」

 

その瞬間、彼女の顔に浮かんでいたのは・・・呆れだった

 

「貴女も利用する立場なのね」

「私に足りないものを補ってもらうだけよ・・・そして貴女にはそれが出来ると確信している」

「帰って・・・やらないわ」

「そう・・・じゃあ帰る」

 

血液の入っている試験管は置いたまま、私は席を立つ

 

「臆病者に用はないしね」

 

それに彼女が予想以上の反応を返した

 

「誰が臆病者だ!!私の事は皆から聞いているんでしょう!?」

「他人の思う事なんてどうでもいいわよ、私の判断基準にそんなものなど参考にすらならない」

 

そうして私はもう一個置く

それは私への連絡先の書いてある紙

 

「気でも変わったら電話かメールしてちょうだい、その試験管は中身ごとプレゼントしてあげるわ」

 

そうして部屋を出て寮に戻る

 

「さて・・・どう反応が帰ってくるか・・・」

 

久しぶりの博打のようなものだ、不安しかない

これで彼女からの返答がない場合は、割り切るしかないだろう

そう思いながら食事をして寝ようとしていた22:00に・・・電話がなった

 

「はいはーい、どちらさまですか?」

「知っているでしょう・・・」

 

どうやら、賭けは私の勝ちのようだ

 

「電話では話せないことよ、コレは・・・部屋番号を教えて」

「えぇ、分かったわ・・・部屋番号は・・・」

 

部屋番号を伝えたら・・・すぐに来た

割と近い部屋なのかもしれない

 

「結論から言わせてもらうわ・・・血液を採集した個体は間違いなくB.O.Wよ」

「まさか・・・アレから急いで解析したの?」

「えぇ、癇に障ることを言われてムカついたから」

 

それでこれとは畏れ入る・・・

 

「詳しい事はこれから言う通りの場所と機材を用意してもらわないと無理ね」

「言ってくれる?」

「まずはL4レベルの実験室を絶対に用意する事、これは万が一バイオハザードが起きてもプラズマ処理をするために絶対に必要だから」

「うん」

「後は遺伝子解析用のマシン1台、新薬の開発製造マシンも」

 

ふむふむ・・・

 

「後は新鮮なものを調達して、今回のは期間が経過していて情報に欠如が見られた・・・出来れば新鮮な検体自体が欲しいわね」

「了解したわ」

 

その顔には・・・怯えがある

自分もまた、両親と同じ過ちを犯そうとしているのではないだろうかという恐怖からくるものが

 

「ご両親の行っていたことって・・・なんなの?」

「始祖ウイルス・・・史上初めて確認された人間のテロメアを回復させるウイルスの研究をしていたわ」

「テロメアを回復させるウイルスか・・・」

「でも、細胞を活性化するあまり凶暴化するリスクが高くて・・・研究は行き詰ってた」

「そのおりに起きたのが・・・バイオハザードと第2次崩壊か」

「えぇ・・・」

 

私はその肩に手を置く

 

「貴女に任せる以上、私が全ての責任を取るわ」

「・・・」

「全力で調べあげて、この世にB.O.Wなんてものは不必要だわ・・・それにこれはご両親の敵討ちに近いわ」

「えぇ・・・父さんたちは平和利用を目的として細菌とウイルスの研究をしていた・・・その分野で」

 

歯ぎしりするのは、純粋な怒りからか・・・

 

「父さんたちが命をかけて行っていた研究分野を汚す事は・・・娘である私が許さない!!」

 

それが彼女の根源にあるものだろう

私の両親は素晴らしい人だったと、誰よりも信じているから

最後に傷つけられた彼らの弔い合戦として、協力してくれるのだ

 

「私も戦うわ・・・私の出来る事で」

「えぇ、お願い」

 

協力者が出来た、即座に私は電話する

 

「姫子先生、お願いしたい事があります」

「もう聞きたくないんだけど?」

「諦めて聞いてください」

「はぁ・・・言いなさい」

 

要件を告げる、すると

 

「丁度、貸してくれるところが現れたところよ・・・運がいいわね」

 

場所を聞く、そこまでのルートも聞けた

 

「分かりました・・・ありがとうございます」

 

電話を切り、明日からの予定をあけて解散する

さぁ、暴いてやろう・・・全ての謎を




次話も日常・・・?


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Day 6

それは運命の再会


「結構遠いね・・・」

「私は今の所長になる前に1度来ているから平気だが・・・」

「もうバテそう・・・」

「まだ早いぞ」

 

地図で見た時は近かったが甘く見ていた

標高差でなく直線距離であったことを忘れていた

 

「2000mも登るだなんて聞いてないよ」

「しかも相手からの要求は麓から登山という過酷なものだからな」

 

ちなみに、研究所までの道路はきちんと整備されているらしいが、それでも相手の要求はあくまで登山だった

登山道は相手の指定したコースであり、問題なくクリアしている

 

「なんでなのよぅ・・・」

「中途半端な覚悟ではないと試しているのだろうな」

「言葉で聞くより行動の方かわかり易いって言いたいの?」

「どっかの誰かさんのようにな」

 

さて、誰の事だろうか・・・

 

「私を焚き付けてここまでの道を歩ませているのは誰だ?」

「ホントに誰よって・・・私だったわ」

「本当に呆れてくる・・・」

 

あーだこーだと言いながら、登山自体は順調そのものだ

時折崩壊獣に遭遇するも簡単に倒している

というか・・・

 

「まさか、研究所周辺の崩壊獣を倒すのが主題なんじゃないだろうか」

「えぇ・・・萎えるんですけど」

「それでもやるしかないだろう・・・だるくなるのは仕方ないがな」

 

私が先行して注意を引き付け、彼女が強襲して撃破する

高い戦闘能力を持つ訳では無い彼女だが、その属性は一点突破に向いている

私のように器用貧乏でないだけマシだろう

私の場合は総合的に高い能力を持っていることが仇となり、ここぞと言う時の切り札が欠けている

器用貧乏とはそうことへの皮肉だが、それは考えれば窮地に陥りにくいことも意味しているためなんともいえない

 

「そろそろ見えるぞ・・・あそこだ」

「デカい・・・」

「それはもちろん、国内屈指の最先端技術開発拠点だからな」

 

最後に入口の前に立つ、自動で開く扉をくぐると、そこに居たのは呼び出した本人であるこの研究所の所長で・・・

 

「死ねオラァァァァ!!」

「ははは・・・やっぱり元気にしていたか、アヤカ君!!」

 

私のよく知る人物・・・森谷闘真だった

 

「知り合いなのか?」

「えぇ、でもその説明のために私とこの人の説明をしないといけないんだけど・・・」

「転生者と言うやつかねぇ・・・一度死んでから目が覚めたらこの世界に居たわ」

「はぁ・・・それではアレか?私の知らない技術も持っていると?」

 

それを言われると思っていた・・・だけどこれだけは言える

 

「君が悪用しないと確約してくれるなら、俺は自分の持つ技術全てを教える気でいるよ」

「私も、私達のいた世界の技術は危険な物だってある・・・ソレを教える事は絶対に出来ないし、ソレによって起きる未曽有の災害を私達は事前に防がねばならない」

「約束する、悪用だけは決してしないと。それは私のやり方にも反するからな」

 

強い意志の目・・・嘘はないと信じられる目だ

 

「ところで、闘真さんはなぜこの世界に?」

「俺もわからん、言えるとしたらきっと俺に出来る何かを成せという事だろうな」

「はぁ・・・で、今そこにあるのは船の設計図ですか?」

「あぁ、俺のこの世界での成果の集大成だ」

 

語られたのは、新型の空中戦艦の構想だった

 

「波動砲・・・あれを実装する気ですか?カズマさんでさえ、戦艦クラスでの実装は危険だと判断してましたよ?」

「確かに、波動砲には危険が伴う、元々次元兵器だからな」

「なんだ、その波動砲というのは?」

 

私が代わりに説明しよう、闘真さんだと誤解が生まれる言い方をするから

 

「正式名称は次元波動爆縮投射砲、そこの闘真さんとカズマさんが共に開発した新型機関、波動エンジンをエネルギー源として、その内部で発生した余剰次元を射線上に放出し、『我々の暮らす宇宙』を押しのけて『別の宇宙』として展開し始める際、その小さなサイズに見合わない膨大な質量によってマイクロブラックホール化し、それが放つホーキング輻射のエネルギーにより効果領域内の敵を破壊し尽くす兵器よ」

「崩壊現象とかが可愛くなるほどえげつない武器だな!?」

「えぇ、だから私達も使う時は慎重になってた、それこそ使わなくては全てが終わるという時でしか使わないというように」

 

かつて使用した際は、基地の中枢区画のみを破壊するつもりが基地そのものを破壊してしまったほどの力を見せつけることになった

その結果から反省し、使用は原則禁止として決戦用兵装として温存された

 

「だからこそ・・・闘真さん」

「分かっているさ・・・無闇には使わない」

 

さて、ここから先どうなるか・・・

それは私にも分からないものだ




次話、バトルの予感


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Day 7

それは最高の戦闘者との戦い


「俺と模擬戦がしたい?」

「はい、闘真さんの強さはカズマさんから聞いていますが、どれほどのものか体験するのも必要と思いまして」

「ふむ、なら仕方ないな···ステージはこちらで用意しよう···」

 

そう言うと、闘真さんは電話をかけ始めた

しばらくすると電話を切り、私を見る

 

「訓練施設の1つが使えるようだ、そこで模擬戦をしようか」

「わかりました」

 

そしてそこに移動して私は模擬戦用の武器を探す

想定は市街地戦、狙撃は禁止としてアサルトライフルとハンドガンに限定した武装での戦闘である

 

「条件と使用武器はおなじ···あとは経験のさをどう埋めるかだな···」

 

かつて、世界最強と呼ばれた戦士が相手だ、中途半端な覚悟で挑むのは無礼極まりないだろう、だから最初から本気で挑ませてもらう

 

「私の全力を発揮します」

「あぁ、発揮してもらおう・・・」

 

さて、私のかつてのコードネームを告げるか

 

「パシフィカ・オーシャン・・・行きます」

「森谷闘真・・・出る」

 

戦闘能力を限界まで発揮する

限界まで突破していた戦闘能力だが、それはあくまで同世代の中ではという話だ

世代も違う、そもそも経験自体が大幅に違う

生半可な覚悟では倒せない

 

「流石はカズマさんの師匠・・・行動に隙がない・・・!!」

「そういう君こそ・・・アイツの後継を名乗るだけはあるね・・・行動がよく似ている」

「それはどうも!!」

 

相手の強さはこちらの想定以上・・・そう来ると思ってはいた

相手は歴戦の戦士であり伝説の傭兵であり、憧れた人物の師匠である

それでも私は相手の行動予測をやめない

 

「おっと!!今のは流石に冷や汗ものだな」

「ちぃ・・・!!」

 

ハンドガンで殴りながら繰り出した攻撃は服を貫いただけで躱された

こちらの行動が完全に読まれている

 

「うん、悪くない・・・実によく勉強し、そして実戦を重ねて自分のモノにしてきたその努力、並大抵の決意でないと理解した」

 

来る・・・彼の本気が!!

 

「行くぞ・・・」

 

その瞬間、姿が消える

残像さえ残さない超高速移動・・・カズマさんも実戦で運用していたその技能

その行動の先は相手の死角!!

 

「なに・・・!?」

「それは相手の死角を狙い動く移動技術・・・私にその先が見えないとでも思いますか?」

「言うねぇ・・・では特別大サービスと行こうか!!」

 

距離をとって再度、闘真さんが動く

今度は残像が残っている、けど

 

「つっ!?」

 

その残像がまるで桜の花びらのように舞う、これは!?

 

「我流無音移動術、桜舞・・・これはアイツでさえ真似の出来なかったモノだよ」

「まさかそんな手を残していたなんて・・・」

「これは誰にも真似の出来ないモノだと思うよ?俺以外に出来た者なんていないしね」

「・・・」

 

どこまで極めれば、そんな事が出来るのか・・・

想像するだけでもゾッとする

 

「さぁ、これで勝敗は決したかな?」

「完膚なきまでに私の敗北ですね」

 

首元にはナイフがそえられていた、背後にまわられていたのだ

 

「久しぶりに汗を流せて良かったよ、君がしたい時にはいつでも言ってくれ」

「ありがとうございます」

「なに、アイツの師匠である俺からドンドン技術を奪ってくれていい、それくらいしか俺には君にアイツの事を伝える事が出来ない」

「それでも、あなたとカズマさんは互いを大切に思っていたんですよね?」

「あぁ、今でも大切に思っている・・・俺の大切な思い出だ」

 

闘真さんは懐かしそうにそう言って、空を見る

 

「俺がアイツだったら・・・間違わずにいれただろうか・・・」

 

そう言って、闘真は私を見て告げる

 

「アイツの後継というのなら、決意を曲げるなよ・・・俺もアイツも曲げてしまったから間違えた・・・」

「はい・・・」

「まぁ、そのうち分かるさ」

 

闘真さんは私の頭を撫でる

 

「アイツも全く・・・なんてモノを背負わせるんだか」

 

英雄の後継になる・・・その覚悟がどれほどのものか

 

「手伝い程度はしよう」

「ありがとうございます」

 

協力者を得た、それは憧れた人の師匠だった




主人公の戦闘BGMが決まったよ!!

Dark Prison (orchestra Ver)

だよ!!


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Day 8

物語は動き出す


「検体の新しいのから、私の予測した通りの結果が出た」

「兵器化されたウイルスね、感染経路の方は?」

「それに関してはまだだ、とりあえずのパターンの炙り出しはしているが、どれが正解かは私にも···」

「それでもすごいよ···私に一人じゃたどり着けない」

 

連絡を受けて私は確信を得た、奴の目的に関するものだ

 

「しかし、本当なのか?」

「えぇ、ホントよ···AGの社長がこれを作った人間」

 

グレン·アリアス···AGの社長である彼が何を考えているかなんてどうでもいい

だが、世界を破滅させる訳には行かない

だからこそ全力を持って阻止しよう···それか出来るのは私達だけだ

 

「渡してくれたモノを見たが、私には彼の気持ちも分からない訳では無い···だからと言って行動が許せる訳では無いがな」

「私も同じだよ、だからこそ止めないと···と思うからね」

 

野望を阻止する、そして訪れるであろう最悪の事態を回避する

人類の為なんてお題目ではなく、世界という訳でもない

理解出来るからこそ、止める必要があるのだ

それは、私がかつて見聞きした、最悪の地獄をこの世界で再現しないために

それは私の使命でもある

 

「私は奴を殺す···それが彼を解放すると思うから」

 

殺人を行う事に良心の呵責は当然ある

それでも何より、齎される被害を抑える事の方が優先だ

可能な限りは生かすべきだという意見には賛成するが、生かしては行けない存在もいるのだということを忘れてはならない

彼がその例だ、過去しか見えていない彼には世界など、どうでもいい存在でしかない

だがその世界があればこそ、人類は種として生き延びている

それを忘れてはならない、世界があって人類があるのだということを

 

「つっ···」

 

思い出したくない過去が甦ってくる

今も私を苛む、辛い過去···乗り越えたと思ったけど、まだのようだ

 

「どうした?」

「ううん、なにも」

 

現実を直視しなければ···理想だけを追い求めた先にあるのは破滅だ

 

「そう、今はまだ···」

 

止まるのは後でいい、ふとした時に笑って、そんな事もあったなぁ···と思い出せる時で

今は目の前にある問題を解決することを考えないと

 

「そうさ、分かってる」

 

私自身がどうしたいかなんて決まっている

それを果たすためにどのような選択をするかを、間違えなければ大丈夫だ

 

「今日はどうする?」

「寝る、ゲームする」

「はぁ···」

 

だから今楽しめる事を、全力で楽しむんだ

そんな小さな幸せが、やがて大きな幸福に繋がるんだから




スランプに陥りながら書きあげた


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Day 9

それは避けられぬ戦いの序章


「情報屋からネタを仕入れるかな」

「どんな情報を仕入れるつもりだ?」

「大規模テロとか、そういうのよ・・・そこに彼の影がある」

「なるほど・・・で、そこからどう動く?」

 

ふむ、その先ねぇ・・・

 

「そこから先は、行う場所の支社に乗り込みコレを制圧、テロを未然に防ぐわ」

「そう上手くいくか?」

「行かないでしょうね」

「おい・・・」

 

何故なら

 

「相手は元CIA局員・・・簡単に勝てる相手でないのは明白よ・・・経験も何もかもが相手以下であるのは言うまでもないわ」

「だが、勝てる可能性もある」

「えぇ、それに今この世界を彼の手で壊されるわけには行かない。テロの成功・・・それは私だけでなく、この世界で生きる人たちの未来が終わることを意味しているから」

 

だからこそ、戦う

だからこそ、守らなければならないものがある

 

「それに、彼の目を見てわかったこともある」

「・・・?」

「彼は死にたがっている・・・妻になるはずだった人を目の前で失った事・・・その人も、その場にいた人たちを守れなかったことを後悔している」

「そうか・・・」

 

全てがどうでもよさそうな目をしていた、その目の奥にあったのは諦念

諦めきった感情だ

そんな目をしていた人間を私は知っている、その末路さえも・・・

ならばこそ、止めなければならない、知る側としてできる事をするしかない

 

「でも・・・ねぇ」

 

紹介された人を私は知っていた、その人も私のいた世界から転生してきた人だ

知っている理由は簡単、憧れた人の後輩であり、会った事があるから

会話もした事がある、正義感が強く、多少の事では動じない冷静さと戦闘中でも余裕で軽口を叩く等ユーモア溢れるが大胆不敵な性格で、自身も苦しい中でも任務を確実に成功させるという強靭な精神力も合わせ持っている

ただし、時間にはとてもだらしない

初出勤にも拘わらず、恋人とのケンカ別れが原因でヤケ酒をあおり寝坊。朝には着くはずが夕方からの出勤と、遅刻ってレベルではないポカをやらかしている

 

「はぁ、ヤになってくるなぁ・・・」

 

確実にモメそうだ、本当に嫌になってくる

 

「それでもまぁ、行くしかないかぁ・・・」

 

あの人の優秀さは身を持って知っている

本気のあの人の力は、憧れたあの人に次ぐほどのものだ

それゆえに、もったいないと思う

だが同時に、尊敬もしている

壊れてしまってもおかしくない状況下でありながら、それでも自分の信念を貫いた彼に対して、敬服する心くらいはある

まぁ、時間にだらしないところがあったり、女運が悪く、また女性には振り回されやすい性分である事に関しては何とも言えないが




次話、窮地かも


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Day 10

それは悪夢の始まり


「はぁ・・・」

「なぜ酒場なのだ?」

「飲んだくれてるからよ」

 

私は合流場所として教えられていた住所についた

そこは大衆酒場、昼間っから飲んでいるみたいだ

 

「あぁ、全く変わらない」

 

広い店内で1人だけ飲んでいる男がいる

その人の名は・・・

 

「こんな平和な街中に、暗器を持ってきても使い道はないぞ?」

「昼間から酒を飲んで酔っ払っているあなたに言われたくないですよレオンさん」

「これはこれは、九条ちゃんにチェンバース家のお嬢様じゃないか」

 

口を開けば皮肉をよく言う・・・!!

 

「お仕事です、協力して」

「俺は休暇中だ」

「あなたがかつて壊滅させた組織、連中の技術についてあなたの見たことを聞きたい」

「そんな昔の事なんて忘れた」

「1週間後もこの街でグダグダしている気ですか?」

「そんな先の事は分からない」

 

店員の方に向いた彼は注文をしようとする

 

「ウイスキーもう一本くれ」

「あぁ、キャンセルで」

「いやキャンセルじゃ」

「もういい!!十分でしょ!?」

 

怒りを我慢できず、つい大声を出してしまう

 

「なんだ、いい加減にしろ、アヤカ」

「それはこちらのセリフよ、レオン」

 

次の瞬間、ポケットから出した瓶をこれみよがしに開ける様にさらに苛立つ

 

「つっ・・・!!」

「やめろ2人とも」

 

そこでレベッカちゃんが呆れた顔で仲裁してくれてなんとかなる

 

「レオンさん、休暇を邪魔した事には謝罪する。だが今はどうしてもあなたが持っている情報が必要なんだ」

「情報ってなんだ?」

 

それから全ての流れを話す

 

「既に何人もの民間人が犠牲になっているの」

「またか・・・またそういう手合いか」

「・・・?」

「休暇前、今の職の任務で、爆弾テロの未然阻止を行っていた・・・だが情報屋のネタが漏れて、トラップがドカン、同行した強襲チームを含めて山ほど死んだ・・・」

「・・・」

 

この人はそれを抱え込みすぎるきらいがある、だから酒に逃げやすいのも知っている

だが今回のはその中でも極めつけに悪いと言える

 

「俺の人生とはそういうものなのか?敵との戦いだけなのか?俺達のゴールはどこにあるんだ・・・」

「いいですか?」

 

私はノートパソコンの画面を向ける

 

「グレンアリアス、武器商人。裏で武器を売買しある国の暗殺対象となった、結婚式の最中に爆撃され両親と妻、親族と友人の多くを亡くし復讐の鬼に・・・暫くの潜伏の後にB.O.Wを扱い始めた、私に自慢げに言った、うちの商品は敵味方がわかると」

「一方は武器商人で、もう一方は結婚式を爆撃する政府か・・・どっちもロクデナシだ」

「アリアス!!この男を捕らえるのがゴールです!!」

「君のゴールであって、俺のでは無い!!」

「つっ・・・!!」

「やめろと言っただろうが!!」

 

レベッカちゃんに怒鳴られた、何気に初めてだ

 

「レオンさん、貴方は落ち込んでいる割に随分と饒舌だな?対してアヤカ、お前はやたらと苛立っている・・・2人には共通点がひとつある」

「「共通点・・・?」」

「自分の事しか考えていない事だ」

 

そう言って彼女がバックから取り出したのは拳銃型の注射器だった

それを自分の腕に指し、採血する

 

「ウイルスはずっと身近にあった、誰も気付かぬうちに」

「どういうこと・・・?」

「ウイルスそのものを探す必要はない、既に皆の体内に潜伏しているのだから、無論2人にも」

「・・・」

「探すべきは引き金、潜伏ウイルスを活性化させる誘因、トリガーを探すんだ。急がないと全人類が生きてようと死んでようと兵器にされてしまう。この長閑な町で、そうやって酒をあおりながら惨めな気分に浸ることさえ出来なくなる」

 

一息開けて、レベッカちゃんは続けた

 

「今の所、試薬が私には効いている。でも早くトリガーが何か見つけないと、試薬が誰にでも効くと思えないから・・・私の血に答えがある。私が死んだら、信頼出来る研究機関で解析してくれ」

 

そう言って一度荷物の方を向き、すぐに私達の方へ向き直して彼女は告げた

 

「辛い思いをしたのはわかる、でも私が知る二人はは言い争いばかりで世界を見殺しにするような人ではない・・・そうだろう?違う?」

 

いたたまれない気持ちになった

 

「レオン・・・!!」

 

1分くらいしてからだろうか、誰かが入ってきた

 

「パトリックッ・・・!!」

「レオン!!」

「情報屋の話をしたな、こいつがその情報屋だ!!」

 

その瞬間にレオンがキレながらその男の胸倉を掴んだ

 

「ちょっと、何してるの!?」

 

店員が来るが、レオンは左内側のポケットから手帳を出しながら店員に言った

 

「公務だ、問題ない!!」

「うわぁ・・・」

 

この人最初休暇中って言ってなかったけ?

 

「あんたが倒したヤツらの残党がとある武器商人の企てている大規模テロに資金提供したって情報が入ったんだ、それを知った俺は危ない状況にあって・・・」

 

床に崩れ落ちた男の発言に私はピンと来る

ちょっとユスってみようと、肩を掴みながら立たせた

 

「武器商人だって、私達はツイてる」

「ツイてる?逆だろ!?」

「グレンアリアスなんでしょ、その武器商人って」

「どうしてソレを!?」

「超能力だ」

 

私はそう言って手を話す

 

「お願いだ、助けてくれ!!」

「助けてやると思うか?助けて欲しかったらネタの詳細を話せ、それからどうするか決めてやる!!」

「いや・・・それは」

 

その瞬間、車の近づく音に気がついた

その車は店の入口に止まり、そこから出てきたのは黒い戦闘服を着た人間たちだった

 

「危ないッ!!」

 

即座に反応して店員さんをカウンターに隠して私は告げる

 

「追跡されやがってこの間抜け情報屋!!」

「もう遅い、コイツはもう助からん!!」

 

だが携帯は預かっていた、そこから察するに、情報はこの中にある

 

「つっ・・・レベッカ!?」

 

敵の方に、意識を失って抱えられているレベッカがいた

 

「ちいっ!!」

 

すぐに追うが、車に勝てるわけもない

 

「先生、レベッカが誘拐された、相手は黒の幌車、私のいる町の北方向に逃走、その先にある支社を割り出して!!」

「次から次に問題起こさないと気が済まないのアナタは!?帰ったら覚えてなさい!!」

 

さて、どうしようか・・・

 

「仕方ない・・・協力してやる、だから絶対に学友は生きて取り戻せ」

「了解、力を借ります!!」

 

私の学友を誘拐するとは舐めた真似をしてくれたものだ、絶対に許さん

これから先は私のターンだ!!




悲報、学友誘拐されるの巻


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Day 11

それは反撃の咆哮


あれから数10分後、先生達と合流した

 

「割り出しに成功したわ、長空市本社よ」

「わざわざ本社で決着をつけたいか・・・!!」

 

私はそう声を荒らげながら叫び、木を殴る

 

「落ち着けアヤカ」

「落ち着いてますよ、これでもね」

 

冷静になる、そうしなければ敵の思うツボだ

 

「あの子の資料データから、奴の開発したB.O.Wは三種類あることが判明しました」

「3種類?」

「えぇ、感染用の潜伏ウイルス、発症用のトリガーウイルス、そして治療用のワクチンです」

「じゃあ、今までの事件の理由は?」

「ウイルスの暴走じゃないかと思います、極めて低確率だけど条件が合ってしまった場合に発症用ウイルスなしでウイルスが活性化するんでしょう」

 

長空市周辺の水源地で起こるのが多かったのも、そこが条件として整いやすかったから

これは恐らく奴にとっても想定外の出来事だったのだろう

 

「武装はどうするんだ?」

「今ある装備では確実に不足ですね」

「そんな事もあろうかと、手配済みよ」

「うわぁお」

 

開けられたカーゴの中には各種装備が所狭しと並べられていた

 

「これはまぁなんとも・・・」

「これでもまだ足りないと思うくらいよ?」

「十分ですよ、真正面から行くわけでもないんですから」

 

確かに真正面からなら火力不足かもしれないが、今回のミッションはスニーキング、潜入に特化したミッションであるゆえに隠密性が重要視される

 

「装備は・・・」

 

そこから装備を選ぶ

使い慣れたM4にCQB対応のフラッシュハイダー、銃剣としてM9銃剣、大容量ファストマガジン、折り畳み伸長ストックを装着する

ハンドガンにはM1911A1を・・・ってあれ?

 

「これ、私の発注していたカスタム品じゃないですか!!」

 

思わずソレを鑑賞してしまう

 

「鏡のように磨き上げたフィーディングランプ・・・強化スライドね。更にフレームとのかみ合わせをタイトにして精度を上げてあるわ」

 

しっかりと隅々まで見る

 

「サイトシステムもオリジナル、サムセイフティも指を掛けやすく延長してある」

 

今度はトリガーとかを見る

 

「トリガーも滑り止めグルーブのついたロングタイプだ・・・リングハンマーに、ハイグリップ用に付け根を削り込んだトリガーガード」

 

その銃を私は空にかざした

 

「ほぼ全てのパーツが入念に吟味されカスタム化されてる・・・これほどの物を作れる職人がいるのね!!」

 

素晴らしいの一言に尽きる、これを作った職人は間違いなく天才だ

 

「おーい、皆ついてこれてないぞ?」

「はっ!?」

 

それでようやく私がハイになっていた事を知った

 

「ハンドガンを予備に持ってくのはいいとして、それは頼りないんじゃないかしら?」

「そんなことはないですよ!!狭い場所での戦闘ならライフルよりハンドガンの方が頼りになる場合もあります!!ナイフと同時に構えれば格闘への切り替えも同時に行えるんですから!!」

「な・・・なるほど」

 

先生がついてこれてないけど私は無視する

 

「ですが、貴女の持っているのはオリジナルとはだいぶ違うようですね・・・随分手が入っているようです」

 

委員長がそう言ってくる、それに私は答えた

 

「随分なんてものじゃないです!!」

 

随分なんてものじゃない、これはもはや一から作っているようなものだ

 

「まず、このフィーディングランプが鏡のように磨き上げてあるんです、これで給弾不良を起こす事なんてまずないでしょう」

 

部品を見せながら私は説明していく

 

「スライドは強化品へ交換してあります、フレームとのかみ合わせにもガタつきがないんです、フレームに鉄を溶接しては削る作業を繰り返して精度を徹底的に上げてあるんですよ」

 

素晴らしいカスタムだ、最高の職人による最高の作業といってもいい

 

「フレームストラップにはチェッカリングが施してあって、手に食いつくよう・・・これなら滑ることなんてないですね!!」

 

委員長がしまったという顔をしている、だがもう遅い、諦めてもらおう

 

「サイトシステムもオリジナル、スリードットタイプですね、フロントサイトは大型で視認性も高いです」

 

今度はハンマーとグリップ部分

 

「ハンマーもリングハンマーに変更、コッキングの操作性を上げてハンマーダウン速度も確保するためでしょうね、グリップセイフティもリングハンマーに合わせて加工、機能自体はキャンセルされてるプロ仕様」

 

今度はサムセイフティとスライドストップ

 

「サムセイフティとスライドストップも延長されてる、確実な操作が可能です」

 

さて、今度はトリガーだ

 

「トリガーガードの付け根を削り込んであるからハイグリップで握り込める、トリガーは指をかけやすいロングタイプ。トリガープルは3.5ポンドくらいかな?通常より1.5ポンドくらい軽い」

 

マガジンを外してそこを眺める

 

「マガジン導入部も入れやすいように広げられてる、マガジンキャッチボタンも低く切り落としてあるから誤動作も起こしにくいでしょう」

 

最後に銃の音も聞く、小気味よい音が響いた

 

「全て熟練した職人の技ですね、レストマシンでの射撃なら25ヤード、ワンホールも狙えるに違いありません」

「なるほど、すごい銃ですね」

「えぇ、私もこれほどのものは手にしたことがありませんよ!!」

 

さて、そうこうしている間に目的地についた

待ってて、レベッカ・・・いま助けに行くから!!




ハンドガンの説明でほとんどの内容が終わるってどうなってんだこれぇぇぇぇ!?


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Day 11.5

それは運命の序章を飾るもの
取り戻すための戦いが始まる


「よし、行くか」

 

なんとか本社ビル内に侵入した、目標の場所は不明であるため地道に全て調べる必要がある

 

「久しぶりじゃあないか、九条アヤカ君」

「つっ・・・!!」

 

監視カメラを即座に破壊した

 

「アリアス・・・!!」

「レベッカチェンバースには、改良版のウイルスを投与した。あと20分もすれば彼女も感染者の仲間入りだ、進化した彼女に会ってくれたまえ」

「ちっ・・・」

 

タイマーをセットする、この時間内に見つけ出し、処置をしないとレベッカが死ぬ!!

 

「君は仲間を失うのだ・・・ウイルス感染者の軍隊によって世界が変わる。近年の戦争における非対称性の是正だ。B.O.Wによって大国のエゴが打ち砕かれる瞬間をこれから実演しよう・・・一つ、また一つ」

「貴様はイカれている!!」

「残念ながら私は至って正気だ」

 

そういうやつの大抵はキチガイなんだよ!!

 

「よく言うものだ、大量殺戮が正当化される世界などあるはずがない!!そんな世界など誰にも作らせてやるものか!!」

「ならば仲間を助け出し、私を倒すことだ」

 

いいだろう、やってやる!!

 

「ゾンビ・・・!!」

「アニマニティウイルスの感染者達だ、君達と同じ人間を撃て・・・」

 

ためらいなく撃つ私にアリアスは一瞬黙った

 

「躊躇いもなく撃つのかね?」

「感染している以上自我は無い・・・躊躇いなく撃つ!!」

 

人殺しなのは分かっている、だがこれ以上増えるよりは何倍もマシだ!!

 

「せめて安らかに逝けるよう、痛みがないように殺してやる・・・!!」

 

M4を構えてゾンビを倒していく、マガジンを交換する際に腕を掴まれたが蹴り飛ばしながら残った弾丸で頭を正確に撃ち抜く

 

「く・・・!!」

 

キリがない、このままではジリ貧かな・・・そう思った時、レオンが現れた

 

「待たせたな」

「ここはお願い!!」

「任せろっ!!」

 

レベッカを助けるために力を貸すという約束は守ってくれるようだ

 

「あそこか」

 

警備の多い場所にいるはずと踏んでいたが、案の定、厳重な警備のある部屋を見つけた

そこにいるに違いない

 

「はっ・・・!!」

 

正確に2射で相手を倒し、私は扉を爆破する

 

「アヤカ・・・」

「助けにきた」

 

その一言だけを言い、迫ってきた手術着を着た人間を蹴り飛ばして足蹴にしながら質問する

 

「ワクチンは何処?」

「・・・」

 

無言か、ならば仕方ない

耳元に銃弾を1発叩き込み震え上がらせる

 

「どこか言え!!」

「社長しか知らない!!」

「ちっ・・・!!」

 

さっさとそう答えればいいものを無駄な時間工作しやがって

 

「眠ってろ、クソが」

 

腹を蹴って気絶させ、私はレベッカの拘束を解除する

 

「あの男は屋上の施設にいるはずだ・・・恐らくワクチンもその近くに・・・」

「分かった、今は私に任せて」

「あぁ・・・」

 

ウイルスに感染している状況下でそこまでの思考をしているレベッカに驚くと同時に、あの男を絶対に止めなくてはならないと決意を再度固くする

 

「そこのエレベーターが早い」

「ありがと」

 

エレベーターに入り、屋上を目指す

そして到着し、施設に入ろうとしたが射撃音と同時に

 

「あぐっ・・・!!」

「つっ・・・!?」

「仲間の救出を優先か、そこが君の甘さ、弱点だ」

「ふざけるな!!」

 

M4を声の方向に向けて乱射する、弾切れに驚くが、即座にハンドガンに持ち替えて出来るだけ背を低くして施設に近づく

 

「ふっ!!」

「ちぃ!!」

 

物陰から銃撃しようとした行動に反射的に反応し、こちらも応射する

それを同時に紙一重で躱しながら、相手の武器を落とそうとするが、それを読んでいたのか同じ行動を返された

 

「はぁぁ!!」

 

相手に組み付き、壁に叩きつけようとするが・・・

 

「はっ!!」

「がっ!!」

 

逆にこちらが壁に叩きつけられた

 

「くぅ・・・!!」

「ぐっ・・・!!」

 

お返しに膝蹴りを腹に叩き込み、距離を開ける

 

「死人に囲まれながら世界を燃やす・・・それがあなたの目的!?」

「あぁそうさ、私はずっと、これを見たかったのだ!!」

「そんな事で、復讐を完遂しようというの!?」

「では君ならどうする?」

 

無関係の他人を巻き込んで、復讐をするという相手、私の答えは決まっている

 

「相手の社会的地位を落とそうとは考えなかったの!?あなたならそれも出来たでしょう!?」

「確かに出来たかもしれないな。だがそれでは一時的なものに過ぎないのだ、またすぐに同じ事を繰り返す連中が現れる」

「つっ・・・」

「それで復讐などと笑える話ではないかね?」

「それでも、無関係な人達が多いこんな事より、何万倍もマシだ!!」

 

殴り合いに発展して戦いは続く

 

「そうか、ならばこう言わせてもらおう。人間など滅びてしまえばいいと」

「ほざくなッ!!」

 

強烈な一撃を叩き込み、私は告げる

 

「過去がどうであろうと私が知ったことか、間違いは正す、それだけだ!!」

「くっ・・・!!」

「あなたは間違っている、だから私が倒す!!」

「やってみろ、小娘がぁ!!」

 

互いに怒りを込めて殴る、私の方がほんの一歩早かった

 

「ぐっ···」

「はぁ···はぁ!!」

 

膝をついた相手を私は後ろ手に拘束して告げる

 

「確保、あなたには法の裁きが下ると覚悟しなさい」

「・・・」

 

そのあとすぐに駆けつけたレオンに彼をあずけ、私はワクチンを探し出す

建物全体を監視していた部屋の奥にそれはあった

 

「レベッカ・・・」

「・・・」

「良かった・・・」

 

なんとか間に合った、時間的猶予はほとんどなかったから心配したけど・・・

 

 




次話に続く

次話で新章突入だけどな!!


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覚醒
Day 12


それは能力の覚醒、その爆発的戦闘能力を見よ


「ここを急いで離脱して・・・」

 

先生たちが来るより先に、ある事をしないといけない

 

「私にはまだ、やる事が残っているから」

 

ヘリで飛び立つ彼女を見送り、私は眼下の町を眺める

 

「せめて、助けられる人達を・・・!!」

 

そして私は街へ出る、一人でも多くの人を救うために

 

「崩壊が起きている・・・ここはもう危険だな」

 

避難誘導をしながら、私は環境の変化を細かくみていた

 

「ここは危険よ、あっちに!!」

「は、はい!!」

 

私の服装をみて軍関係だと思うのか、一般市民はきちんと言うことを聞いてくれる

これで多少はマシかな・・・

 

「よし、次は・・・」

 

そう言って歩きだそうとした瞬間、視界がぐらついた

これまでの戦闘で体力はとうに使い果たしている

だがまだ、止められない・・・!!

 

「まだだ・・・!!」

 

気合いを入れ直す、まだ私は動ける!!

 

「はぁ・・・はぁ!!」

 

大勢の人間を誘導できたが、私には次の窮地が訪れる

 

「崩壊獣・・・!!」

 

対抗する力はない、助けを呼びたいが、どれほどの時間を稼げるか・・・

 

「やるしかないよね」

 

だから、人類の知恵を使うしかない

 

「こっちだ、ついてこい!!」

 

私に反応して迫ってくる、M4のグレネードランチャーで対応するが

 

「分かってたけど、少しくらい効いてもいいんじゃないかなぁ・・・」

 

1ミリも引かないどころかダメージすら入らなかった

 

「逃げよ」

 

その選択をしようとしたが、現実は非情で・・・

 

「嘘でしょ・・・」

 

四方を囲まれていたこれではどうやっても離脱不能だ

 

「つっ···!!」

 

だが、諦めはしない!!

 

「はぁっ!!」

 

四体の崩壊獣の同時攻撃を僅かに空いていた隙間をぬって回避する

同時に全力疾走で距離を開けるが、相手の方が僅かに反応が早い

 

「諦めなんて、するものか!!」

 

私は空にそう叫ぶ、どうにもならないとしても···

 

<ならば、私が力を貸そう>

 

響いた声は、自らの内側からだった

 

<英雄の後継たらんとするならば、使うがいい。既に有しているのだから>

 

手を伸ばす、そこに現れたのは銃と剣が一体化した兵器

 

<求めるべきは赫怒の炎>

「邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ!!」

 

その柄を強く握り、私は叫んだ

 

超新星(Metalnova)···煌翼たれ、蒼穹を舞う天駆翔·紅焔之型(Mk Braze Hyperion)!!」

 

その瞬間、吹き荒れる爆熱·爆光が周囲の崩壊獣を姿形も残さず消し飛ばした

 

「なに···あれ?」

 

それを観測していた人物達···その責任者であるテレサ·アポカリプスはそう呻いた

危機的状況だった、絶体絶命だった。また仲間を、学園長を務める学園の生徒を失うのかと自らに失望しかけていた

だが、目の前のモニターに映る生徒はその状況を打破してのけた

それだけならまだ、話は分かる、死までの時間が少し延長されただけだ

しかし、そこから続く事象はそれさえも嘲笑うがごとき展開をしていく

 

「こんなの···有り得ないわ···」

 

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目の前の不可能を、手にした武器一つで紙のごとく破り裂いているような···不条理としか言いようがない現象だ

それを目の当たりにして、その場にいたもう1人の人物、無量塔姫子は呆れながら呟く

 

「まるで火達磨ね、どれだけの熱量なのよ」

 

その肉体からは焔が発生している、その火焔が敵である崩壊獣の攻撃を減衰していた

完全相殺とは行かないが、それでも威力は殆ど抑えられているのだろう

その挙句、損傷した箇所から流れる血液がスラスターの機能を発現させる

理屈や道理を置き去りにしたまま、進撃は止まらない、敵を制圧前進していく

 

「気合と根性であんな事して・・・いずれ限界に行き当た・・・っているわね」

 

映像が一瞬白く焼ける、そのあとに再度表示されたモニターには・・・

 

「なんて威力の一撃なんだか・・・」

 

100m以上に及ぶ斬撃の後と、その斬撃によって切り裂かれた崩壊獣の痕跡が映されていた




そろそろ中ボス入れていいかな?


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Day 13

新たな闘いの日々へ歩き出す
それはゴールの見えない暗闇を進む物語


「いたたた・・・これはキツいなぁ」

 

あれから数日、私は能力を使った反動によって入院していた

今日は経過観察と、状態が良ければ退院の日だ

 

「うん、状態はだいぶ良くなっているね・・・これなら退院してもいいんじゃないかな?」

「やったぜ」

「でも、無理はしないこと。今回はこの程度で済んだけど、無理矢理力を引き出したら、下手するとその場で君が崩壊現象そのものになるんだからね?」

「サーセン」

「反省しているのかな?」

 

おおぅ、センセーの顔に青筋が

 

「反省はしてます、あの場で本来選ぶべきだったのは撤退だと・・・」

「でも市民をほっておく事が出来なかったんでしょ?」

「えぇ」

「その結果確かに多くの人達が救われたのは事実、でもそれが小を殺してきた結果の上であるのも真実よ、貴女が誰かを救いたいというなら、そのあなたが小の側になるのは避けなさい」

 

その言葉はとても重かった、まるであの人と話しているような気がしてくる

 

「それに、まだ君は若い。無理はいいけど無茶はダメよ?」

「えぇ、分かりました」

 

そして私は退院を言い渡された

 

「ふいー、退院できたよぉぉぉ!!」

「うるさいわよ」

「あっれー、なんでそんなに顔色悪いんですか?」

「尋問よ、これから」

 

うん・・・?うーん?

 

「第三次崩壊の・・・」

「律者になりかけた子の尋問ですか?」

「そうよ」

「私が代わりにやりましょうか?」

 

無言で調書を渡された、マジでやりたくなかったんだな

 

「さてさて、向かいますか」

 

姫子先生から尋問を行う部屋の番号も聴き出し、私はその部屋の中に入る

 

「初めまして、私は九条アヤカ。貴女の尋問を行う事になった者です」

 

テーブル越しに向かい合って座り、私はそう名乗った

 

「・・・」

 

生気のない顔だ、ほっといたらこのまま自殺しそうなくらいの

 

「お友達のキアナちゃんは順調に回復しているらしいよ」

「そうですか・・・良かった」

 

ほんの少しだけ、表情が浮かんだ・・・安堵のものが

 

「私の処分は・・・お任せします」

「殺すのもありかもしれないね。律者が滅びれば、世界は滅びの予言から逃れられる」

「そう・・・ならよかった。私が生きていれば必ず、人を傷つける事になります・・・だから私が死ねば」

 

その瞬間、私は目の前の同い年の子の胸ぐらをつかんで頭突きを食らわせた

 

「ふざけるな!!私と同い年のくせして死に急いでんじゃないわよ!!それに私は処刑人じゃない!!」

 

目の前の子は驚いた表情で私を見る

 

「そんなに簡単に捨てられる命なら私によこせ!!その力を制御出来る方法を編み出してやる!!」

「もし、それが出来なかったら!?また暴走して人を傷つけるかも・・・!!」

 

私は手を銃の形にして彼女の額に指を突きつける

 

「その時は私があなたを止める。どんな手を使ってでも」

 

手を離し、ちょっとしたマジックで温かいお茶を目の前において私は言う

 

「だから、生きて・・・最期の時まで足掻いて」

 

そう言って私は部屋を出る、その時に小さな声で···

 

「ありがとう」

 

そう、言われた気がした




次話、いきなり危機突入


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幕間 Another day

これは語られることなき物語の幕間
艦長へとなった男の物語


「俺が艦長に?」

「えぇ、お願いしたいのだけど」

「なんで俺なんだ?」

「あなたが最適なのよ」

 

俺はそう言われて呆れ返った

またなのか、俺は戦いから逃れられないのだろうか

 

「貴方の事は書類では知っているけど···精神的な所までは知らない」

「だからこれから教えてくれ、と?」

 

その回答は聞くまでもなかった

 

「俺がなんと言われているか知っているんだろう···?」

「そんなのどうでもいいわ、必要なのは私から見た目」

「・・・」

「あなたは、自分のしてきた事に後悔しているじゃないの?」

 

俺はそれを笑う

 

「してないというのがおかしい事ではないか?」

 

過去を振り返れば、あるのは死だけ

積み重ねてきた死の数の何百、何千、何億倍もの人達を救った

その代わりに少数の人達には絶望を背負わせた

本当はその少数の人達こそ救いたかったのに···

 

「だからって、今助けられる人を貴方は見捨てられる?」

「それは···」

 

回答に困る、回答が出来るほどの答えは持って···いや、見捨てるなど無理だな

 

「やれやれ···俺に艦長をしろと君は抜かしやがる···俺は艦隊司令などした事ないぞ?」

「貴方なら務められると信じているわ」

「はー、そんなあっさり確定系で言われてもねぇ···」

 

俺は溜息をつき、相手をやっと見つめ返す

 

「姫子、俺に何を望む?」

「勝利を、そしてその先へ人が進むための道を望むわ」

「貪欲だな君は···いいだろう。ならばこの、世界の破壊者が新たな未来を創出しよう」

 

ここに契約は成る、俺は明日から艦隊の司令へとジョブチェンジだ

 

「しっかし、なんでこんな所に隠れ住んでいたのかしら?」

「住みやすいからさ、それに灯台もと暗しというだろう?」

 

俺が住んでいたのは彼女が教師をしている学園の学生寮

そこで大家をしていたのだ、本来の持ち主との契約できちんとした正規手続き済みである

 

「あのねぇ···」

「住みやすいからいいよねー」

「生徒からあなたの顔に似ている人が大家していると聞かなかったら分からなかったわよ···」

 

そう言って呆れながら俺の前に座る彼女にお茶を出す

 

「あまり美味くは無いが、飲んで帰るといい」

「嘘言わないの、高級なの使っといて」

「バレてたか」

 

玉露使ってるのバレてた、こいつに隠し事はホントに出来ねぇなぁ

 

「ご馳走様、明日には手続きも終わるわ」

「全くご丁寧に服まで用意しやがって···俺の好むデザインなんだろうな?」

「それは明日開けてから確認してちょうだい」

「そうするよ」

 

そして姫子は帰る、俺はそれを見送り部屋に戻る

そして伏せてあった写真立てを戻して、そこに写るただ一人の家族に微笑みながら話す

 

「ねぇ、兄さん···まだ私は運命から逃れられないみたいだよ···そこに行くのはもう少し先になるかな?」

 

写真立てを胸に抱きながら俺は宣言するように1人話す

 

「兄さん、ほんの少しだけ···力を貸してくれる?」

 

答えはかえってこない、でも、言われた気がした

"しょうがないな、なら、ほんの少しだけ貸してやるか"···と




この人物は後々、一番重要なシーンで颯爽登場してくれます


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Day 14

それは覚醒する新たな力
人はそれを、模倣と呼ぶが···


「これはキツイかな?」

「冗談言っている場合か!!何とかしろ!!」

「何とかって言ってもさぁ···」

 

久しぶりに戦闘である、場所はロシア領の端っこらへん

寒くはないが、涼しくもない場所だ

そこで崩壊現象が発生した、本来ならロシアの管轄は別の支部なのだがこちらの方でも問題が起きており急行出来ないため、極東支部である私達にお鉢が回ってきた形だ

編成は現状最高レベルの人選である

フカ委員長にレベッカちゃん、そして私のスリーマンセルで行動している

バックアップとして先生方が待機している

 

「しっかしまぁ、範囲が広がらないのだけは助かったかな?」

「普通なら広がっているからな···しかし何故だ?」

「・・・」

 

フカちゃんはさっきから考え中だ、私は声をかける

 

「はいはーい、第3波、来るよ!!」

「もうか···少しは休ませてもらいたいものだな!!」

「アヤカ、突出は避けてくださいね?」

「はーい」

 

フカちゃんはそう言って崩壊獣を殴り飛ばした、私は弾薬でゾンビ共を蹴散らす

 

「そらそら!!私のノルマになりなさい!!」

「私達も同じなんだがね···」

「はぁ···」

 

フカちゃんが頭抱えてるね、私が原因かな?

 

「だから突出は避けてくださいと言っているでしょう!?」

「委員長が遅いんじゃない?」

「あなたに言われたくありませんね!!」

 

私と委員長が前線、レベッカちゃんは支援を担当する

さて、これでどうかな?

 

「やっと全体領域の半分と言ったところですか···やはり妙ですね」

「拡大してないのに数も変わらない、まるで逐一補充されてるように感じるね···」

 

さて、この判断は···

 

「まさか···」

 

外周から回っていた中心核からの侵攻···つまり

 

「ごめん委員長、先行するわ!!」

「どこに行くのです!?」

「研究所よ!!中心核からの侵攻なら数が減らなくて当然だ!!」

 

そう、見逃しかけていた

中心核から戦力が供給されている事を失念していたんだ!!

 

「えぇい、邪魔ッ!!」

 

崩壊獣の始末は2人に任せ、私は急行する

 

「やはり間違いない、ここからだ」

 

そしてたどり着いた先には、無限に湧き出てくるゾンビと崩壊獣の群れがあった

 

「よし、奇襲と行きますか!!」

 

あの時発現した力···蒼穹を舞う天駆翔·紅焔之型は今使えない

使えばどのような反動が来るか解明されていないのだ

それにあの力を使えばまた病院へ逆戻りだ

 

「ちいっ!!」

 

それでも、対崩壊現象装備で来ている分マシである

 

「大元はアレか!!」

 

大元の現象を起こしている個体を確認、撃破に移行する

 

「よし、これで決めるッ!!」

 

最後の一撃を決めようとしたその時···

 

「危ないッ!!」

 

私の頭上から、特大の奴が落ちてきた

 

「ぐっ···!!」

 

回避が何とか間に合ったけど、その代わり装備が一部失われた

 

「ちぃっ!!」

「大丈夫ですか!?」

「問題ない!!」

 

そう答えながら、戦闘を一時中断して退避する

 

「さて、把握には成功したがどうするか···」

 

それから話し合いを行うことになった

 

「やるしかないか」

 

そう、その状況に追い込まれているのだ

 

「アレは使うなと言われているはずです!!」

「そうするしかないでしょ!?」

「バックアップ要員の姫子先生から連絡だ、試作装備が出来たらしいぞ、お前宛てだ」

 

レベッカちゃんの声で冷静さを取り戻す

あぁ、そういえば作成依頼していたんだっけ?

 

「よっしゃあ!!受け取りは!?」

「今だ」

「へ?」

 

その瞬間、スコン!!と音を立てて頭の上に落ちてきた

 

「痛ったぁ!?」

「おぉ、ナイスコントロールだな姫子先生」

 

地面に落ちて開いたケースの中にあるのは、白と黒の彩色のされた両刃剣だった

 

「コレが?」

「えぇ、私の能力の安定稼働を目的にして開発された試作装備よ」

 

名はソルブレイブ、この剣の最大の特徴は分割して片刃の剣として運用したり、パイルバンカーのように相手を打ち貫くと言った運用ができる点にある

もちろん、私の能力の安定稼働を目的として制作されている。他の子が使えばその力を使用出来なくなるほどの負荷だが、私の場合は何故か安定するため、試作装備として開発が行われた結果のモノだ

 

その剣を取り、私は構える

 

「うん、これなら行ける」

 

その瞬間、能力である天駆翔を発動、爆発的なエネルギーを全て加速に使用して敵の懐へ駆け抜ける

 

「うおっ!?」

 

思わずその加速に驚く、身体能力の強化機能も従来より上のものが搭載されていると聞いていたがこれ程とは思っていなかった

 

「よっしぁ、死ねぇ!!」

 

加速状態のまま崩壊獣を纏めて5体斬殺する、その後ろから来るのは火球を飛ばして焼殺した

 

「てぇや!!」

 

地面に突き刺して亀裂にエネルギーを流し込めば、そこから壁のようにせり出したエネルギーの奔流が防御と攻撃を同時に行っていた

 

「よし、これで・・・!!」

 

崩壊現象の発生地点に舞い戻り、その場にいた大型崩壊獣を見る

 

「倒す!!」

 

エネルギーを剣に収束させる、限界を超えて収束されたエネルギーは眩いばかりの光を発生させていた

灼熱の赤を超えて、黄金の輝きへと昇華する

 

「これで決める!!ガンマレイ(絶滅光)エクスプロージョン(爆縮開放)!!」

 

砲撃と見間違うエネルギーの刺突により、敵は今度こそ撃破された

 

「ふう・・・これなら大丈夫そ・・・」

 

大丈夫そうだね・・・と言い切れずに私は倒れる

あれ、なんでだろうか・・・急に眠たく・・・




あ、反作用かな?


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Day 15

原作主人公達との日々がやっと始まるぞ!!(遅


「え?私があの子たちを鍛えるんですかぁ!?」

「えぇ、頼んだわよ?」

「姫子せんせもですよね!?」

「メインは貴女で私は授業としてよ」

 

ある日、私は学園長からの呼び出しで職員室にいた

そして言われたのが、キアナ·芽衣·ブローニャの3人の教練担当の拝命である

いや、するのはいいのだけど···ねぇ?

 

「私より委員長の方が適任じゃ」

「近接オンリーのあの子より、各方面オールグランドの貴女が適任よ」

「fuck!!」

「何か言った?」

 

あ、ヤベぇ

 

「何もございません」

「そう、早速今日からお願いね?」

「ちっ···BBA」

 

ボソッと言ったはずなのに、首元には出席簿がスレスレのところで止められていた

 

「何か言ったかしら?」

「いいえ、何も」

「さっき、BBAと言わなかったかしら?」

「気の所為では?」

 

しばらく睨み合いが続き···

 

「はぁ···まぁいいわ」

「助かった···」

「貴女には授業中の模擬戦で負担を背負わせてあげるから」

「この鬼がァ!!」

 

サラッと言われた一言が私を地獄に突き落とした

 

「痛ァ!?」

「ふん、口の利き方には気をつけないとダメねぇ?」

「このドS教師ィ!!」

「あら、まだ足りないかしら?」

 

ここは降参するしかないか

 

「ハイハイ降参ですよ!!やりますよやればいいんでしょ!?」

「分かればよろしい、任せるわよ?」

「任せてください、やるからには···」

 

その瞬間、私は笑みを浮かべながら言っていた

 

「あの子達を、私を倒せる程度には強くしてみせますよ」

「今、すごく悪い顔してるわよ?」

 

だって、あの子達と来たら···

「え?同級生なの?下級生かと思った!!」や、「本当に主力なのですか!?」や、「実力があるように見えません」等とほざきやがったのである

 

「私を舐めているようですので」

「少しくらい優しくしてあげなさいよ?」

「えぇ、地獄でも生温い程度に収めてあげますよ?」

「あ···もうダメだこれ」

 

なんて言い様であろうか、優しくしてあげるというのに

 

「絶対に優しくしてあげる気なんてないでしょ?」

「なんて言われ方なんだ、する気があるというのに」

「一応、フカを監督にするから」

 

よし、決まった

 

「じゃあ、先生には剣での戦闘訓練の時に協力してもらいますね?」

「えぇ、任せなさい」

 

そして内容を練る

打撃系はフカに、剣撃系は姫子先生に、銃砲系は私が担当する

キアナは中距離、芽衣は近接、ブローニャは遠距離だから、この構成で問題は起こらないはずだ

まぁ、キアナに関しては近接戦闘にも対応できるように鍛え上げる必要があるし、芽衣は遠距離戦に対応出来るようにしないといけない

ブローニャは経歴を洗い直した結果、特に教える事はなさそうではある

その代わりに身体能力が2人に対してかけているため、そこの強化が必須か

 

「良くまぁ、こんなに綿密なの練れるわね?」

「両親のおかけですよ」

 

私はそう言って、薄く笑う

 

「教官のような立場にいましたから、私にもそういった目線が出来るようになっているんです。そこは親に感謝ですね」

 

PMCで教官に近い立場であった親の影響は間違いない、それがあるからここまでのプランを練れた

それにこれは効率重視のメニューである、そこに非効率な部分はなく、計算され尽くしたものだ

三人には凄まじい負担かもしれないが、そこまで完全に計算済みである

 

「さぁて、楽しみだなぁ?」

 

これが後に3人から、"二度と経験したくない地獄のトレーニング"と呼ばれるのは、もう少しあとの事だった




次話にてそのメニューが明らかに!!


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Day 16~23

今話合わせて何話かはダイジェスト方式となります
何故か?やってる内容同じだもの


「はーい、それじゃあ訓練始めようかー」

「・・・」

 

私のその声に、3人の反応は様々だった

芽衣ちゃんは何かを察したのか、やる気のようだ

ブローニャちゃんは無表情を演じているけど実際には不満そう

キアナは···

 

「え?なんでアンタなの!?」

「あらー、不服かな?これでも私はA級のヴァルキリーなのよ?」

 

戦闘効率的にいえばS級とまで言われたが、実務経歴がゼロに近いため現状取れる最高ランクであるA級に落ち着いた

その際に特殊部隊への引き抜きもあったが全て断っている

私は学生である、故に学業を優先すると形で

まぁ実際には何だか煙たい上層部が嫌いなだけだが

 

「それに貴女達を教えるのは私だけじゃないよ、フカちゃんに姫子先生や学園長も一応、教えてくれるから」

 

私がやるのは基礎中の基礎、体力作りである

そこから先は経験を積んでもらうとしよう

 

「じゃあ、まずは軽く限界を見てみようか?」

「体力測定···ですか?」

「芽衣ちゃんザッツライト、文句はあるかな?」

「いいえ、ありません」

 

うん、なんという大和撫子何だこの子は、眩しさに目が痛い

 

「2人も何か意見は?」

「ありません」

「···ない」

 

キアナは不服そうだが、芽衣ちゃんの返答により言い返せない状況のようだ

まぁ、それはそれで良しとして、私はメニューを出す

 

「まぁこんなものかな、今日やるのは」

「・・・」

 

3人の顔が暗くなった、どうしたの誰かのお通夜かな?

 

「これ、本気で?」

「あくまで目標値が出されているだけよ。自分の全力を出せばいい」

 

私とフカちゃんを基礎データにして割り出したA級合格最低ラインだ

学業はおいおい詰め込むとして、まずは基礎体力の実戦投入レベルでの向上を目的としている

 

「まぁ、この合格点は今の段階では出せないはずだからそこは安心しなさい」

「言ってくれるじゃん···!!」

「元気なことはいい事ねぇ···実力が伴っていればな」

 

次の瞬間、私は威圧を与えた

 

「威圧程度でビビるな、この程度戦場ではありふれている事だ」

 

刀を地面に突き立て、私はもう一度3人を見る

 

「いい緊張具合だ、では始めよう!!」

 

そして始まる地獄の訓練メニュー

今日から7日で基礎を固めて次の週からは応用を加える

そこから先は総合的な面を強化する流れだ

学業も疎かにはさせない隙無しの短期育成コース、楽しんでくれたまえ!!

 

「も···無理ぃ···」

「・・・」

「流石にきついです···」

 

流石にこれは参ったわ、1週間で足りるか分からんね

 

「うん、すこぶる悪い···だがまぁ、意気込みだけは認めよう」

 

だけどこの子達なら行ける気がする。とても強い意志の宿った目をしている

 

「よし、では···」

 

私はこの子達の可能性にかけることにした




何だか煙たい上層部···煙たいなんてレベルじゃねぇぞ主人公!?


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Day 24

シリアスやりたい病です。


「んん?これは夢かな?」

 

ある日、私は夢の中にいた

明晰夢というものだろうかというものだろうか?

辺りには瓦礫があり、火災も起きている

 

「あ···」

 

その中に、私がよく知る人がいた

憧れた人物···藍澤カズマが···

 

「何故···ここに?」

「さぁ?分からないな···」

 

火災の中で私がいるその対面に座る彼からは、私が最後に見た姿そのものだった

 

「カズマさん、聞きたかったことがあるんですけど···」

「何かな?」

 

私は聞きたいことがあった、それは···

 

「カズマさんは、自分の選択に後悔した事がありますか?」

「そうだな···」

 

カズマさんは少し言葉を選ぶようにして、再び話し始めた

 

「俺が選び、背負い、歩んだ運命に後悔の念はないよ」

「・・・」

「何故ならそれは世界でただ一人、自分が耐えればいいだけの事だから、藍澤カズマという破綻者だけが苦しみ抜けば済むだけだから」

 

そこから語られるのは彼の一面、世界を壊した男の精神である

 

「光の怪物を対価にして、愛する世界が繁栄していくのなら、是非もない。それこそ破格の取引だ。俺は自分の願った通りに無限の地獄を駆け抜けた」

「そう···ですね」

 

私もそれを見ていたから知っている、理解している

この人がとても強く、優しく···寂しい人だった事を

 

「その地獄の先にこそ、誰かが笑顔でいられる···輝く明日があると信じて」

「・・・」

「気力を武器に戦い続けた誓いは今も変わることは無い。たとえ人外の怪物に成り果てようと、人の善と幸福こそ守るべきだと感じているさ」

 

それこそが彼の理想、自分よりも他人を優先していた彼の意思だ

 

「だからこそ、案じないでいいよアヤカちゃん、英雄の後継にふさわしい若人···君に滅びは訪れないし、訪れさせない」

「私はあなたに憧れている身です、同じ末路は辿りませんよ?」

「あぁ、そうだね···」

 

ふっ···と笑い彼は話す

 

「俺の運命は俺が耐えればいい事だからな···鏖殺の雷霆だけが苦しめばいいのだから···その果てで誰かの涙を止められるのならば、依然変わらず是非もない」

 

そして宣言するように呟く

 

()()()という塵屑(ゴミクズ)は、愚かしいほど無敵のままだよ」

 

そう、だからこそ私は答えなければならない。尊敬している、偉大なる先人に

 

「知ってます、だから私も、私の答えを貴方に見せたい···目指す偉大な先人に、示したいと想うんです」

「あぁ、その返答こそ俺には眩しく···いや···」

 

一瞬、言い淀んで···彼は微笑みながら喋った

 

「そうだな···楽しみにしておこう」

 

その言葉を聞くと同時に、私の視界は白に染められた




これが後に多大な影響を与えることになるのはいつか来る未来の話


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Day 25~31

詰め込みパート2、基礎訓練終了後のエピソード


「はい、1週間ご苦労さま」

「これでどれだけ上がっているか見ものだな」

「レベッカちゃんもお疲れ様、補佐してくれてありがと」

「暇だったからな、それにいい運動になった」

 

3日目辺りからレベッカちゃんも手伝ってくれていた

私が別件で出動しなければならない事態があったからだが、その間のサポート役として入ってくれていたのだ

私と変わらないスパルタぶりを発揮したとか聞いたな···

 

「うん、1週間前とは別人クラスの成長ね···後は」

 

応用編の開始だ、早速···

 

「よーし、ここから先は模擬戦漬けの日々だよー」

「やっと憂さ晴らしができる!!」

「やっとですね···」

「・・・」

 

さて、お前らに地獄を味あわせてやろう!!

 

「キアナは私と、芽衣ちゃんは姫子先生と、ブローニャちゃんはレベッカちゃんと模擬戦ね。開始は30分後」

 

私はそう言って訓練場に向かう

時間経過後、キアナはちゃんと訓練場に来ていた

 

「で、どうするの?」

「簡単よ」

 

その瞬間、私はキアナの左耳ギリギリを通るように発砲した

 

「んな!?危ないじゃない!!」

「安心しなさい、ゴム弾よ、当たれば死ぬほど痛いけどね」

 

キアナが選んでいたのはコルト·ガバメント、対する私はマテバ、モデロ6·ウニカのディナミカスポルティーヴァモデルだ

こちらの方が親しんでいる拳銃である、わざわざ販売している国まで買いに行ったのは言うまでもない

銃身長は6インチ、もちろん使用弾薬は.357マグナム弾だ

これよりさらに威力の高い弾薬を使うとなると、ハンターモデルへの変更が必要になる

流石にそちらは私で扱えるほどの反動では無いためやめておいたが

 

「ルールは簡単、私に一撃当てられたらそれで終わり」

「やってやるっ!!」

「では行こう」

 

そして模擬戦を開始する

最初に動いたのはキアナだった、余程鬱憤が溜まっていたのか、初手から激しい攻撃してくるが···

 

「あらあら、胸もなければ我慢も出来ないのかしらね、この子は」

「むきぃぃぃ!!」

 

あ、これは不味かったかな、怒っちゃった

 

「絶対倒すんだから!!」

 

そう言ってマガジンを変えるとき、私は彼女の癖を見た

薬室の弾丸の有無に関わらず初弾を排莢する···中東方面で教わるテクニックの一つだ

誰かに聞いたか、それとも見たのか···試してみようと思ったのだろう

 

「こんのぉ!!なんで当たらないの!?」

「ふふっ、甘い甘い!!」

 

しかし撃ち方はすごく上手い、見事な早撃ちと曲射をしてくる

リフレクトショットに関しては同世代の子では真似出来ないレベルだろう

だが、やはりまだまだという所か

 

「よし、なら今度はこちらの番ね!!」

 

それに、自動拳銃であるコルト・ガバメントでリコイルの衝撃を受け止めないとどうなるかは明白だ

おそらく本人も気づいていないだろうが、リコイルの衝撃を受け流す癖がある

これは致命的な欠点であると同時に天与の才能でもある、大口径のリボルバーを持たせて磨きをかけていけば、いい使い手になるだろうなぁ···

 

「つっ!?しまっ!!」

「おバカさんね、ジャムなんて」

 

そう、弾詰まり(ジャム)するのを待っていた

自動拳銃で衝撃を受け止めないとほぼ確実にこうなる

自動拳銃は大抵の場合、リコイルの衝撃···つまり反動力を作動エネルギーに使用する、だから衝撃を受け流すより、受け止める必要がある

リボルバーにその機構は無いため、受け止める必要はなく、むしろ効率よく受け流す事は肘や手を傷付けない為に大切なことだ

 

「かはっ!!うぅ···」

 

銃を持っていた方の腕をつかみ、一本背負いで地面にたたきつけ、そのまま銃を奪う

同時に手動で排莢、再度撃てる状態へ戻す

 

「初弾を手動で排莢していた、考え方は悪くない。だけど見聞きしただけの行為を実戦で試すものでは無い、だからジャムなんてアホなことになるのよ」

「う···」

 

思い当たる節があるのか、キアナは呻いた

 

「それにアナタはオートマティック(自動拳銃)に向いてない。リコイルの衝撃を肘を曲げて吸収する癖がある。どちらかと言えばリボルバー向きよ」

「こん···のぉ!!」

 

立ち上がり、攻撃してくるけど最初ほどの勢いはない

腹部を殴り付け、蹲った瞬間に背中を叩き地面にもう一度叩きつける

 

「がはっ!!つっ!?」

「だけど早撃ちと曲射は見事だった、いいセンスよ」

 

そう言うと、何か言いたげに睨みながら···気絶した

 

「うむ、これは成長が楽しみですな」

 

気絶したキアナを抱えながら私はそう言う

本当に楽しみだ




出てきた銃は全て実在した火器になります


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Day 32

これは主人公に課せられた十字架


「やはり、君の身体はこれ以上の出力を出せないよ」

「限界ですか」

「突破出来ない限界もある、コレがそうだ」

 

ある日、私は診断を受けていた

ここ最近、戦闘時に能力の出力制御が上手くいかない事があった

その原因を探ってもらいに来たのだが、真相は簡単なものであった

私という器の限界に達していたのだ

 

「第一、今の時点ですら擬似律者と言える程の力を有しているんだ」

「それでも律者に勝てる確率は低いハズです。擬似はどこまで行っても擬似、本物に勝てる訳では無い」

「それはどうかな?」

 

私の発言を反論するように、後ろから声がする

 

「闘真さん···」

「擬似的に神に匹敵する力を発現して、神格化した俺を打ち破ったのが君の憧れたアイツだ。不可能なんて訳では無い」

「ですが、私とあの人では違う所がありすぎます」

「確かに、違うな。だが、それを見越してアイツも君に力を受け継がせた」

 

そう、あの人に託されたのは力だけでないと私もわかっている

 

「君のやりたいことをやればいい、現状出せる限界が今というだけであり、超えていくことが出来ない訳では無いのだから」

「はい···」

 

そう、限界は超えていける

私がそうであるようにこの人だって···

 

「そう言えば、君に開発を依頼されていた装備の件だが、試作品が完成したよ」

「本当ですか!?」

「あぁ···」

 

渡されたのは大きめのアタッシュケース

そこには制作を依頼していた私専用の戦乙女装甲がある

従来モデルの装甲では私の能力に耐えられず内部が破損することがあった

依頼していたのは能力に耐えられる耐久性を有しながら、安定して使えるようにする機能を持たせたモノだった

異世界のテクノロジーを有する私と闘真さんの共同研究という形であったが実質は丸投げ状態である

 

「HT-IBF01、イミテートブラックフレーム···あいつの機体の再現機だ」

 

カズマさんのかつての乗機···自分で研究開発し制作、使用してした歩兵複合兵装システムをこの世界で再現した

その際に幾つかの機能はオミット···飛行用の姿勢制御システム、及び背面スラスター類、外装型サブジェネレーターなどだ

これにより再現前より18%の重量削減に成功している

一方で強化した部分もある、ジャンプ用パワージャッキは出力を向上したバンカーシリンダーへ換装、これによりジャンプに使うエネルギーをそのまま兵器転用できる

その他には関節部モーターユニット、各種センサー類も強化仕様だ

 

「陸戦配備型という所だな、仕様としては」

 

装甲色は黒、内部構造材に一部金色の合金があるが、これは主機周りの特殊合金である

エネルギー供給コードは通常時は薄い赤色であり、高出力モード時には鮮血色になる

 

「外した飛行システムの代わりに武装懸架部分は増設してある」

「出力には余裕を?」

「持たせてある、緊急用のエネルギーコンバーターも内蔵済みだ」

 

そのうえで徹底したユーザビリティは完全再現している

総合性能は飛行能力をオミットしているぶん低下こそしたが、陸戦能力はより高められている

この再現の成功には、カズマさんがブラックフレーム以前に試作として制作した雛形機、ダークストライカーの陸戦能力強化改修仕様のデータも転用出来たからである

 

「ありがとうございます」

「とりあえず、次の出撃あたりで使ってみてくれ、感想が聞きたい」

「了解です、早速使いますね」

 

さて、明日は久しぶりの戦闘だ···



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Day 33

久しぶりの戦闘でエキサイトする主人公ェ・・・


「久しぶりの戦闘だぜヒャッハー!!」

「はぁ・・・」

 

 

久しぶりの戦闘である、今回の戦闘は大型崩壊獣のでないものであるとは言え難易度は高い

 

「それじゃあ行くにゃー!!」

「あぁもう!!少しは・・・って早すぎですよ!?」

「え、別にいいんじゃね?」

 

あっさり一体目を撃破、返す刀を二体目に投げつけて屠る

 

「はい次行くよ!!」

 

さっさと次に行かう、今回のは自分専用の装甲のテストを兼ねている

 

「しかし、運動性能は高いようですね」

「元になった機体が、それだけの高い性能を誇っていたからね」

 

ブラックフレームの性能は折り紙付きだった

この機体でも、そこだけは継承している

 

「さて、本格運用を始めようか」

 

システム制限を解除、全力運転開始・・・!!

 

「さぁ、行くぞ!!」

 

次の瞬間、解放された力が世界に降誕する

 

「それが本来の姿ですか」

「えぇ、これがね」

 

黒色の装甲に金色と赤色のライン、青いセンサー・・・原型機をギリギリまで再現した

 

「これを試すかな・・・?」

 

腰背面に装備された荷電粒子砲を取り出して構える、エネルギー充填率は85%に設定して有効射程はおおよそ1250m、目標は中型の崩壊獣二体

 

「行けぇっ!!」

 

軽い反動とともに光の速さの15%で放たれたビームは二体同時に貫くと同時に近くの小型崩壊獣を巻き込んでいた

 

「威力高すぎワロタ」

「・・・」

「使いどころに困るねぇ・・・これにしてみるか」

 

今度は腰側面のビームサーベル機能付きビームマグナム二丁にする

今回は全力で使う、周囲に集まった敵に単騎突撃、攻撃を加えながら性能試験だ

 

「いいねぇ、凄くいい!!」

 

ババババババ!!という音と共に放たれる弾丸は正確に敵を撃ち抜く

そしてエネルギー効率も誤差の範囲内で安定している

 

「それじゃあ今度は・・・」

 

限界出力ギリギリまでエネルギー解放を行う、すると・・・

 

「試験中止!!繰り返す、試験中止!!」

「なにっ!?」

「大型崩壊獣出現!!場所は・・・」

 

空を見る、そこには・・・

 

「アヤカ、頭上だ!!」

「既に見えている!!」

 

後方に回避して私は大型崩壊獣を見る

 

「タイプは!?」

「戦車型!!かなり強力な個体だ!!」

「試験を邪魔してくれやがって!!屠ってやる!!」

 

ソルブレイブを構えて私は告げる

 

「限界出力試験は続行だ!!この一撃で終わらせる!!」

 

能力開放、システム制御範囲内、圧力臨界・・・!!

 

「ガンマレイ・・・ケラウノス!!」

 

放たれた高出力の斬撃は一刀で戦車型崩壊獣を両断した

 

「試験終了・・・!!」

 

ソルブレイブをしまいながら私はそう告げた



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海底遺跡調査編
Day 34


本話より海底遺跡調査編開始


「海底遺跡の調査ぁ?」

「えぇ、あなたとキアナ達3人、それとフカを連れて行くわ」

「委員長は外だとして私は?」

「単独で独自調査してもらう予定よ」

「うひぇ···」

 

いつもの無茶ぶりである、私としては不必要に仲間に危険を負わせなくて済むが、難易度は当然その分高くなる

 

「調査と同時に入手できるなら、これを入手してくれるかしら?」

「両刃剣?」

「えぇ、説明は入手後にフカからあるわ」

「ふーん」

 

明らかに私が入手する計画である

というより、これは···

 

「学生には荷が重くない?」

「だから単独行動の特殊編成枠があるのよ」

「なるほ、理解」

 

行くことは避けられない、だから私は装備を変更する事にした

イミテートブラックフレームはその仕様を水中戦闘用に差し替える

海底遺跡内部に侵入後は戦乙女装甲として再展開、閉所戦闘用に設定するようにして···

 

「今回は施設破壊を抑えるために火器は必要最低限のみ装備として···」

 

その代わりに斬撃装備を増量する

サーベルを2本から4本に増やし、各出力合計で75%として運用すれば問題は無いだろう

これにより火器は腰のビームマグナムのみとなる

 

「よし、私はいつでも行けるようにしておく」

「明日よ」

「早すぎィ!!」

 

私はそう言って設定を大急ぎで行う

それを見て姫子先生は笑った

 

「まぁ、万が一の事態の時は指揮権を預けるわ」

「ヤダー!!やりたくなーい!!」

「ちなみに手当は着くわよ?」

「ぜひやらせて頂きます」

 

金が降りるらしい、ならやるしかないな!!

 

「仲間と金どちらが大切なのかしら?」

「マネー!!」

「最低ね」

 

でも姫子先生は知っている、私がそこまで腐っていない事を

 

「まぁ、単独先行はあなたの得意分野でしょ?その結果の上で私達本隊が動くわ」

「任せろ、飛びっきり難しいコースにしてやる」

「実地試験では無いから程々にね」

 

ちっ、仕方ないか···

 

「よし、装備の確認は済んだし」

 

明日からの行程に備えて、必要な資料を集める事にする

ここから先はその遺跡に詳しいであろう···

 

「だからって私の所に来ますか普通?」

「委員長は詳しく知ってるでしょ?明日から向かう遺跡がどういう謂れのあるものなのか」

「知ってはいますが···私が入れない理由でもあるのですよ?」

「共鳴現象でしょ?」

「既に知ってましたか···」

 

古代中国の遺跡だ、委員長はその遺跡に眠る何かと反応をしてしまう可能性が考慮されている

だから今回はサポートに回るのだ

本人としてはとても行きたがっていたが、万が一の可能性を極力減らすために仕方がない

 

「では、明日からの行程、任せますよ?」

「うへー、了解」

 

さて、詳しく聞けた事だし、私の方でも対策を立てておくか




次話から大変だぞー!!


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Day 35

今話の出来事

主人公、遭難


「うへぇ···」

 

翌日、私は遺跡の中に単独先行した

単独先行の探索要員という何気に重要なポストだ

私の失敗は全体の失敗と同義である

 

「やれやれ、単独任務が得意とはいえコレは困るね」

 

今まで単独任務が出来ていたのは、後方からの支援が確実に得られるという確証があるためだ

今回のように、補給線のない任務も出来なくはないが···

 

「難易度を考えてくれないかなぁ···」

 

難易度は凄まじいほどに跳ね上がる、今までの任務など子供のお使いというレベルに感じるほどだ

 

「よし、事前情報通り、チェックポイント2だな」

 

そうこうしているうちにチェックポイント2に到着した

ここから先は事前調査の不足しているエリアになる

 

「崩壊獣の出現も予測されてるんだっけ、委員長?」

「えぇ、十分に気をつけてください」

「あいあいさー」

 

そう言ってチェックポイント2を通過した次の瞬間···

 

「ふぁ!?」

 

床に空いた穴に私は落ちた

 

「痛いなぁもう、ここはどこよ?」

 

着地の衝撃がほとんど無いことから、そこまで高い訳では無いかもしれない

上を見たら、人一人分くらいの穴が上に空いていた、私が落ちた穴だろう

 

「意外に遠くね?」

 

ジャンプしても縁には届かないだろうなぁ、と感じる距離だったけど

 

「通信は···ダメだな繋がらない」

 

通信機自体は生きているようだけど、ノイズが聞こえる

恐らく電波の通じないところに入ってしまったのだろう

 

「位置レーダー···死んでやがる」

 

位置レーダーも情報は落ちる1秒前で停止している、それから理解するに

 

「あはは···あははははッ!!」

 

数秒ほど笑ったあと、すぅ···と深く息を吸い、私は思いっきり叫んだ

 

「ふっざけんなぁぁぁぁ!!」

 

そのせいで崩壊獣が私の周りにうろつき始めるのも構わず私は叫ぶ

 

「なぁにが私なら簡単だと!?見事に古典的なトラップにかかったじゃねぇか!!」

 

そして、突撃してきた戦車型を一刀で切り伏せて私は再び続ける

 

「お前ら···全てブチ殺す」

 

鬼気迫ると言うよりもはや狂気のそれな顔をしていようがお構いない

切って、抉って、蹴り、殴り殺す

もはや掃討ですらない蹂躙である

 

「死にてぇ奴だけ、かかってこい!!」

 

ゾンビ型の敵にそう叫ぶ、自我は無いはずだが、凄まじいまでの気迫に押されているのだろう

 

「せぇい、やぁ!!」

 

黒い瘴気を纏い、私は爆走する

駆ける速度は以前能力を発動した時より向上している

システムも正常、性能を十分に発揮している

 

「死ねぇ!!」

 

ゾンビ型の最後の一体を蹴り殺し、私は一息ついた

 

「ふうっ···」

「アヤカ、無事ですか!?」

「えぇ、通信回線は今しがた回復したのかしら?」

「えぇ、位置レーダーはまだですが···」

「それだけでもいいわ」

 

そう言って通信を切る、敵はまだまだいるのだ

全て屠り尽くすまで、暫くは通信をしないでおこう




遭難していることにまだ気づいてません


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Day 36

作者が忘れないためのあらすじ

海底遺跡を調べるよ!!

先行調査ぁ!?

始めたのは良いが遭難した←いまここ


「うーん」

 

位置情報が死んでいるため詳しい調査は困難になった

念の為写真撮影と動画録音はされているため後で地図情報と併せて何とかマッピングは可能と判断しているが···

 

「同じ構造の作り方だな、複数のブロックを一個の構造体として形成しているみたいだ、潜水艦の耐圧殻構造と似ているな」

 

これには参った、遭難しているようだ

 

「あー、ヤベーなー」

 

だが、脱出は出来る

それも限りなく薄い可能性ではあるが

 

「無駄に体力使いたくないし···どうするか」

 

既に目的は達した、あとは帰還するのみである

だが遭難中である、帰り道が分からない

しかもここは海底遺跡、下手な行動は自滅を誘発するだけだ

まぁ、それ覚悟で能力をオーバードライブさせるのもいいかもしれないが

 

「却下、リスキーすぎ」

 

文化的にも非常に高い価値を持つこの遺跡を壊すのとでは、釣り合いがとれない

ので···

 

「ダルいけど、使わないといけないか···」

 

その時のための装備を持ってきといてよかった

ワイヤー射出銃と太めのロープである

 

「よし行け!!」

 

それを落ちた穴の上···岩盤に当てる

すると4角に広がるように固定用ピンが展開ししっかりと固定される

 

「まさか使う羽目になるとは···」

 

この時が来ないことを期待していたが、いまや背に腹は変えられない

そもそもこの事態を想定していることからして、危険とは隣合わせだったのだから

 

「よし、行けるな」

 

体重をかけて落ちてこないことを確認し、登り始める

ここから先は私も未知の事だ、どれだけの高さか分かってはいるが不安要素はあるからだ

 

「どういう状況ですか?」

「登り始めて半分と言ったところかな?」

 

委員長からの無線にそう答え、残り半分を気合を入れて登る

体力は既に限界寸前、登りきったら小休止入れないと帰れなくなる

 

「よし、登りきった」

 

落ちた地点に戻ることに成功した、位置情報が復旧すると同時にデータを送信、確認していく

 

「ふむ、裏ルートを通ってたみたいだね、通路から上の情報も読み込めてて良かったよ」

 

通信機器はしっかりと位置情報を記録していたようだ

同時に探査装置も機能しており、空洞のある所はしっかりと認識していたようである

 

「いやはや、今回のミッションは大変だった···」

「いえ、そうならないようです···」

 

委員長がいつになく真剣な声でそう反論してきた

 

「···何があった」

「姫子先生が、この遺跡に眠る存在に体を乗っ取られたようです」

「マジかよ···」

 

送られてきた場所に急いで向かう、間に合えばいいが···

 

「うわぁ···最悪のさらに上かぁ···」

 

完全にアウトな流れになっている、しかたない···使いたくはなかったが閉塞環境での戦闘能力はこちらが上だ

 

「使うしかないよねえ···」

<Exterminate Evolution!!>

 

イミテートブラックフレームを起動する

 

「ブートアップ!!」

<Perfect Rise!!>

 

黒い瘴気が私を包む、電子音声がながれる

 

<Darkness is the cornerstone of light>

 

「やれやれ···めんどくさい先生だ事」

 

さーて、先生を助けるぞー




仮面ライダーゼロワンをパクってるよね、最後らへん


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Day 37

強い女の人はいかがですか?乗っ取られてますけど


「やっぱり大変だなぁ先生相手はさぁ!!」

 

斬り込むがそれをあっさりと見切った敵はお返しに反撃までしてきた

しかもその一撃は先生のそれと同一だ、早く鋭く正確な一太刀に一瞬背筋が凍る

 

「なにより腹立つのが、その豊満すぎる胸を自慢するかのように!!見せつけてくるところなんだけどねぇ!!」

 

剣戟の間にそう言うと、距離を一旦開けて相手を見る

 

「強い···」

 

確かに強い、圧倒的な強さだ。強すぎて笑いさえ起きやしない

だが相手は···

 

「なんで、そんな顔をするんだよ!!」

 

私を見て、笑うでもなく悔しがるでもない···何かを悔いているかのように涙を流していた

 

「あぁそうか!!そういう事かよクソッタレがァ!!」

 

ここに来るまでに、この遺跡に眠っていた存在の事を委員長に聞いた

 

「ふっざけんな!!古代の人間のクソ共がァ!!」

 

そう、彼女は力を持っていた。崩壊を止める力を、持っていたから

戦った、闘った、全ては守るべき人達の為に

そこに自分の意思はなく、ただ命じられたから戦った

最後の最後まで、自分の願いを押し殺して、その果てに心さえも擦り減らしてでも守るためだけに

その最後は今の遺跡と化したこの場所を守るための装置となる事

その事を後悔しているのではなく、そうすることしか出来なかった自分の人生を悔いているのだ

 

「結局、いいように利用されただけじゃないか!!」

 

この場に来て流れ込んでくる記憶はきっと彼女のもの

理解してもらおうなど、思ってないだろう

だが、言葉にしないからこそ伝わるものもある

 

「いいだろう終わらせてやる!!だから安心してあの世に行きやがれ!!」

 

そう言った瞬間、目の前の彼女は微笑んだ

自分を救ってくれる存在が来たのだと、安堵したかのように

 

「創成せよ、天に描いた星辰を、我らは煌めく流れ星!!」

 

そして、私は流れ込んで来るもう一つの力を発動させた

 

「愚かなり、無知蒙昧(むちもうまい)たる玉座の主よ。 絶海の牢獄と、無限に続く迷宮で、我が心より希望と明日を略奪できると何故(なにゆえ)貴様は信じたのだ?」

 

詠唱の内容は分からない、だがこれは世界を壊しかねない力だと理解できる

 

「この両眼(りょうがん)を見るがいい。視線に宿る猛き不滅の(ほむら)を知れ。荘厳な太陽(ほのお)を目指し、高みへ羽ばたく翼は既に天空の遥か彼方を駆けている!!」

 

焔が猛る、烈火を超えて断罪の剣が光を放つ

「融け墜おちていく飛翔さえ、恐れることは何もない。罪業を滅却すべく闇を斬り裂き、飛べ蝋翼(イカロス)・・・怒り、砕き、焼き尽くせ!!」

 

この間にも攻撃を躱して、反撃も同時進行する

「勝利の光に焦がされながら、(あまね)く不浄へ裁きを下さん!!」

 

裁きを下すは我が剣、剣が突破するのは世界という常識

 

「我が墜落の(あかつき)に創世の火は訪れる。ゆえに邪悪なるもの、一切よ。ただ安らかに息絶えろ!!」

 

そう、ただ安らかに息絶えろ

 

超新星(Metalnova)・・・煌翼たれ、蒼穹を舞う天駆翔・紅焔之型(Mk・braze Hyperion)!!」

 

完全に詠唱を終えた瞬間、今までの出力が嘘のような爆発的なエネルギーが吹き荒れた

システムの設計限界ギリギリという最高出力が表示されている

 

「これで決める!!」

 

最高出力を維持して敵を切り裂く

姫子先生を殺さずに、敵だけを切る・・・繊細を突破したその斬撃を私は成功させた

 

「あぁ・・・ありがとう・・・異世界の者よ」

「安らかに逝くと良い・・・旧世界の守護者」

 

光の粒子となって敵は消えた、姫子先生は・・・だいぶ体力を使っていたようで息が荒い

 

「無茶苦茶してくれたわね・・・」

「あなたこそ、だいぶ抵抗していたようですね?」

「私の身体は私のモノよ、誰にも自由にさせないわ」

「さて、ここの探査はまだまだでしょう?」

 

それから私達は得ていた情報を元に探査を続け・・・この遺跡に来た目的、旧世界の遺物を発見した




やったぜ次からやっと本編だ(遅)


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本編第一章編 Destiny Awaking
Day 38


本編開始(激遅)


「コンディションアラート?」

 

ある日、学園に滅多に流れないコンディションアラートが鳴り響いた

 

「先生達の所に行って、私は単独で行動する」

「分かった!!」

 

私は単独で移動する、場所は戦闘機を置いてあるエリア

 

「よし、あるな」

 

私の依頼した機体の製造は完了していた

 

「F-22A···ラプター」

 

そう、F-22Aラプターを依頼していたのだ

装備は対崩壊·爆装仕様、機動性を僅かに犠牲としつつも性能は従来型より上げられている

 

「それじゃあ皆さんお先にぃ!!」

 

アフターバーナー全開で出撃し目標の高度へ飛翔する

 

「お、見えた見えた」

 

加速していきながら撮影していく

その映像は即座に送信され、学園側は対策と侵入経路を策定するだろう

 

「よーしよし、いい子にしてろよ?」

 

進行速度は鈍足であることが確認出来た、ほぼ停船状態らしい

だが巨大さゆえに早く感じるようだ

 

「攻撃なし···もしかして無人?」

「可能性は高いわ、一度帰投して」

「了解」

 

姫子先生からの指示に従い、最後に熱量測定を行って帰還する

 

「ん?」

 

その途中で、不思議な反応を検知する

帰還途中であったのでデータだけを取り、帰投する

 

「よし、対策を考えておいたわ」

「わーい、たのしーなー」

「外すわよ?」

「大変申し訳ございません真面目にやります」

「よろしい」

 

具体的な方法は策定が同時進行していたようだ、だが···

 

「先生質問がありまーす」

「何かしら?」

「私が解析を頼んでいたものはどうなってますか?」

「あぁ、アレね。画像化処理をかけてあったわ」

 

それがメインモニターに映される

それを見た瞬間、私は息を飲んだ

 

「そん···な···なぜこの世界に···コレが!?」

 

呼吸が安定しない、あまりの衝撃に言葉が詰まる

それどころか意識も不安定になってきた

無理もないだろう、何故ならそれほどのトラウマ···

 

「次元間···相転移式、核融合炉八番機ッ!!」

 

そう、それは私の世界を壊しきった、禁断の力の1つだったのだから

 

「何なのそれは?顔が真っ青になるほど危険なのはわかるけど···」

「キアナ···皆も、今から言うことは狂気の事だと認識して」

 

私は少しずつ話す、その危険性を

 

「この炉は、次元間相転移波動エネルギーという、私の世界の新技術を使って開発された機関なの」

「あ···」

 

ここで勘のいい子はわかったようだ

 

「兵器転用されたですか?」

「それだけならまだいい」

 

私はそう言って、服の胸元をあける

そこにあるのは縦にはしる傷···

 

「人体にそのエネルギーと呼応する金属細胞を移植する事で、様々な超常能力を引き出す」

「なっ!?」

「私の場合は心臓に移植された、だから私は簡単に死ねない」

 

そう、覚醒なんてしていない、なにか特殊な力が宿った訳では無い

()()()()()()()()()()()()()()を、()()()()()()()()()()だけ

その人体改造が、()()()()()()()()()()()()()()ものだとしても···守りたいものがあった

それは今でも変わらない、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから

かつてのあの人のように、燃え盛る情熱は今でも変わらない

 

「そして世界の終わりに向き合った、ただ一人の人間の赫怒によって滅びた世界の終焉に」

 

そう、その人間こそ藍澤カズマに他ならない

赫怒の雷火によって全てを壊し尽くし、世界を破滅に導いてしまった存在

それに憧れを抱いている事に偽りはない、破綻していようとどうであろうと

その愛は···自分以外の誰かのために注がれた愛は本物だったから

彼が信じ、愛し、守り抜いたものの価値が如何程のものか、分かるから

 

「でも、この力を使えば···私は人で無くなっていく」

 

擬似的な不老不死だ、肉体が完膚無きまで壊されない限り何度でも再生し何度でも立ち上がる

それを利用して戦闘に応用することも可能な程に、その力は絶大である

 

「覚醒なんて出来なくても、何度でも···そう、何度でも涙を拭い、歩き出そう」

 

そう、それが私の行動理由

 

「無限の希望も絶望も、重ねた全てが私の力だから」

 

そこに宿るは冷たい海の底であっても消えぬ執念の焔、無限に重ねた希望も絶望も、ソレを束ねて力と変える情動の強さは破格そのもの

しかし···

 

「今となっては、儚いものだけど」

 

その芯が今はない、無限の前進を謳うだけの信念が欠けている

だから副作用も大きい、無理やり使っているからだ

 

「・・・」

「なんなの皆?静かになっちゃって?誰かのお通夜?」

 

真剣すぎたのでちゃちゃ入れたら返ってきたのは···

 

「本当の事をなんでそんなに簡単に流せるの!?」

「だからこそよ、そこで止まったら意味が無い」

 

そう、前進あるのみなのだ

自分の全てをかけてなお足りないならば、全霊をぶつけるだけ

しかしその芯となる情熱が今はない

 

「私が本当にしたいことってなんだろうなぁ···その芯が欠けてるから今のような体たらくだからね」

「つまり、全ては自己責任と?」

「まぁね、でも、だからこそ言える事もある」

 

そう、これはその言葉を言われた時から一度たりとも忘れた事の無いモノだ

それは···

 

「それは···なに?」

「自分が手に入れた力で誰かを助けることは出来るようになれる。だけどその力は時に、見ず知らずの誰かを心になくとも傷つけてしまう事がある」

「つっ!?」

「力とはそういうもの。善悪の判断に関わらず、無作為に傷つけてしまう事だってある」

 

その時々で幾ら正しくあろうとも、後世に間違いであったと言われることは割と多い

その時々で最善を選ぶしか、私達には出来ないけど···だからこそ、未来という希望を持って前に行くのだから

私にはその芯が今ない、燃え盛る焔は未だ健在なれど、些か火力が落ちている感はある

 

「いつか見つけてみせるよ、芯になるモノを」

 

それはきっと何よりも大切なものだから

 

「私が、皆を護ってみせる」

 

それこそがあの人の果たせなかった誓いだから

 

「さて、これからどうしようかね?」

 

その積み重ねのために、今は目の前の問題を片付けよう




内容重すぎないかコレェ


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Day 39

内部潜入すっぞ!!


「よし、キアナ達は予定通り崩壊炉と管制室の方にお願い。私は星辰炉に向かうわ」

「星辰炉?」

「次元間相転移式核融合炉の別名なのよ、つい昔の癖で短縮していたわ」

「わかった、気をつけてよ!?」

「言われるまでもないわ」

 

キアナ達を見送り、私は僅かな期待を胸に向かう

トラウマに足がすくむと同時に、もしかしたらという僅かな期待もあるのだ

もしかしたら、まだ使えたら···あの人に逢えるかもしれない

その期待が私を向かわせている

 

「その為には、邪魔な奴らに退場してもらわないとね」

 

崩壊獣が出てきた、走り始めると同時に抜刀、一刀のもとに切り伏せる

その亡骸が音を立てて倒れるまでにつぎを斬り伏せる

 

「今さら中型風情に手間取るかっての」

 

そう言いながら第一波を皆殺し、剣を納めた

 

「さて、この扉の先か」

 

内部の構造も調べ尽くされていた、そのマップ通りならば今目の前にある扉の先にあるはずだ

 

「パスコードが必要なの!?知らないわよそんなの!!」

 

適当に押す、当然帰ってきたのはエラーだった

 

「ちぃ!!やはりダメか!!」

 

だが、そこで私は閃いた

 

「199405021624」

 

そう言いながら入力し、Enterを押す

返って来たのは···OPENの文字だった

 

「ウッソダロマジカヨ」

 

思わずそう言いたくもなる、なんで私の生年月日+時間なのよ

 

「やはり定格稼働状態ではなかったか」

 

モニターを見ると予備出力モードに固定されていた、制御盤は壊れていないようで、ところどころガラス面にヒビこそあるが炉自体に損傷は無いようだ

これなら、ガラスさえ変えればいつでも稼働出力へ切り替えられるだろう

問題は接続先である、次元間相転移式核融合炉は単なるエネルギー生成装置では無い

その恩恵を人のみで受け取ることも可能な、使い方を間違えると最悪な結末を産む魔法のランプなのだ

 

「やはりあの人も恩恵を得ていたか···私にも接続がある···最後は···」

 

その文字を見た瞬間、目眩がした

まさか···その名があるとは思ってなかったから

 

「カズマさん···」

 

その瞬間、光に包まれ···気づいたら草原の中にいた

 

「あ···」

 

視線の先にいるのは···あの日と何も変わらないあの人の後ろ姿

声をかけようとすると、その人は遠ざかっていく

追いかけて横に並ぼうとして···

 

「つっ···!?」

 

すぐに元に戻っていた、時間は···15分経過していた

 

「炉心制御システムの立ち上げは完了してる···」

 

今のはなんだったのだろう···胸騒ぎがする

 

「まさか···ね」

 

カズマさんがこの世界で存命している可能性を一瞬考えた

でもその可能性は薄いとみていいだろう、死体も確認されていたというし




次話、本作発の主人公以外の視点回


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Day 40

一難去ってまた一難


「うえ、これは最悪のパターンかな?」

 

星辰炉の部屋で付帯機能の再始動のブロセスを立ち上げていた時、キアナ達から救援要請の電話が来た

 

「トラブル?」

「大問題だよ!!」

「ブローニャが操られでもした?」

「その通りだよ何とかしてはいるけど抑えるので精一杯!!」

「3分待って、すぐに行く」

 

イミテートブラックフレームを纏い、キアナ達の方へ向かう

途中の壁や障害物を足場に軌道を変えて飛び、目的地まで最速最短で向かう

やってる事は簡単そうだが、実際には天才的な姿勢制御能力でありながら動物的な感も必要とする超高等テクだ

 

「優先排除対象を確認、撃破します」

「ありゃ?タイミングミスった」

 

ブローニャを見た瞬間的認識された、オワタ

空間潜航されたら流石の私でも追いかけられないなぁ···

 

「これはやりたくないんだけどねぇ」

 

右手にエネルギーを収束して、地面を殴る

その瞬間、空間潜航能力の影響を超えて放たれたエネルギーを御しきれずブローニャが現出した

 

「見っけたぞオラァン!!」

「つっ!?」

 

見つけた瞬間、紫電を纏って懐に迫る

同時にそのまま殴りつけ、甚大なダメージを与える

紫電による感電と殴りつけた際の衝撃のダメージにより一撃でブローニャの意識を刈り取った

 

「危な、誰だよこんなのやったのは」

「通信の向こうだよ···」

 

キアナにそう言われて画面を見る

画面の方にはSound Onlyの文字があった

まだ通話中だったんかい···

 

「やってくれたわね···」

「あぁ?何なのこのBBA」

「何ですって?」

 

おや、聞かれていたようだ

 

「今、何を言ったのかしら?」

「BBAにBBA言って何が悪い!!」

「覚えておきなさい、手加減などしないから」

「うるせー!!さっさと失せ···通信切れたぁ!?」

 

回線が切れていた、よっぽど怒りを買ったに違いない

 

「よし、現状維持を最優先!!教師陣の到着まで警戒待機よ!!」

それから待機中、敵が来ることは無かった

 

「アレ、もしかして私ここに来るまでに敵を殲滅していたのかなぁ」

「ちょっ!?私達のスコア横取りする気!?」

「いやいや、そんな気は無いよ」

 

武器を置いて、軽く整備しながら私はそう言う

 

「うわ、予想以上に負担が来てるな」

 

剣を繋ぎ合わせるレールマウントの一部が予想より早く劣化していた

これは意外にヤバいかもしれない

開発当時にはそこまでの劣化が発生すると考えていなかったからだ

 

「うーん」

 

全力戦闘への対応は持ってあと数回が限界だろう

節約して使えばあと10回程度は行けるか···それも少し怪しいな

 

「新造部品があればいいなぁ···」

 

何せ一点物の試作品だ、そうあるものでは無いだろう

武装としての運用であればこうなる事を想定しておくべきだったな···

 

「こればかりは仕方ないな」

 

武装をしまい、私は他の3人を見る

ブローニャも意識を取り戻し、見かけ上は普通にしている

だが一瞬見せる後悔の表情を私は見逃さない

 

「何か悩みでもあるの?」

「私は2人を傷つける所でした···」

「そうねぇ」

「ありがとうございます」

「いいわよ、このくらい」

 

2人には言わないと分かっているのだろう

だが発散する方法もなかった、そこに私がいきなり核心に入ってきたのだから思った事を言ったのだろうな

何故か分からないが、ブローニャは私を信頼してくれている

本人はその理由を教えてくれないが

 

「さて、先生達も合流ね」

 

私達のミッションはこれで終わり、あとはこのでかい船をどうするか考えないと




やったね!!タダでおっきい船ゲットだよ!!


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Day 41

それは運命の···


「あれに搭載されている兵器の名前がわかった?」

「えぇ、可能性としてだけどね」

 

私はもうだいぶ古い資料を目の前に出す

これはあの戦艦の中央司令室にあったものだ

 

「ムーンライトスローン···超高出力崩壊エネルギー転用熱放射兵器よ」

「そんなもの···誰が···!?」

「ネゲントロピーに決まってるでしょ、こんなロクでもないの作るのは」

 

恐らく何かの目的があって作ったのだろうが、これは現人類には明らかに早すぎる技術だ

崩壊に対抗するためとはいえ、明らかにやり過ぎの代物···

これを全力で運転したら、世界そのものが焼き尽くされてしまう

 

「世界を天秤にかけるほどの博打なんて誰が認めるかっての」

 

そう言って私は現在判明していることを告げる

 

「設計は50年以上前、開発と建造も同じ頃から、とある出来事でその性能が一時的に使われたことがあるようね」

 

またその際に、異世界からの来訪者による妨害が確認されている

この資料によると、開発者側を支援したようであるが

 

「日本だけでなく世界各国のメーカーが極秘裏に開発建造費を負担していたみたい、それだけでなく···」

 

そう、私が知りたかった事がそこにはあった

 

「愛国者達が関与しているわね」

 

愛国者達···かつて私の世界に存在した組織

目的のためにどんな事でもやっていたマッドな連中だ

その壊滅にカズマさんは酷く苦心していた

最後は何とか倒したが、それはカズマさんの人生に影を落とし、狂わせた

その名を持つ組織がこの世界にもあると知ったのは、学園に入る少し前だった

それから痕跡を探し、動向を探り、そして今に至る

 

「あいつらはこの世界に存在してはならない組織よ、何としても潰すわ」

 

そう、それが彼の後継を名乗る私の使命の一つだ

 

「なんでそうするの?」

「非人道的な人体実験を平然とする奴らよ?」

「確かにそうだけど···それだけじゃないんでしょ?」

 

キアナが痛いところを突いてきた、この子は意外と勘が鋭い

 

「私の親も、人生を狂わされたのよ」

 

そう、私の親の人生までも狂わせた

故に許さない、根絶やしにしてくれる

 

「そっか···道を踏み間違えさえしないなら、協力するよ」

「ありがと、でもこれは私の問題だから、自分で出来る所までするわ」

 

そう、これはあくまで私の問題なのだから、自力で出来る所までしなくてはならない

 

「私の全力を超えた先の力で、倒してみせる···代償は大きいだろうけど」

 

その瞬間、声が聞こえた

 

「確かに、君に本気を出されると少しばかり困るな」

 

黒いモヤが現れ、そこから一人の男が現れる

 

「スカルフェイスッ!!」

「ふっ、相変わらず元気ではないか、ウェスカーの娘」

「つっ!!」

 

相変わらずこの男は、人のカンに触る事を平然とッ!!

 

「何なのあんた!?」

「何者かと問われれば、こう答えるしかあるまい」

 

私と奴の言葉は同時だった

 

「「世界を報復で一つにする者」」

 

そう言って私はやつを睨んだ

 

「そう睨むな、照れてしまうだろう?」

「スグに死ね」

 

そう言って私は奴に斬り掛かる

だが、像がまるで霧かのように雲散した

 

「ホログラムか」

「その通り、私は映像を送っているだけさ」

 

つくづく嫌な奴だ、マジでぶち殺したい

 

「待っていろ、すぐに殺してやる」

「待っているとも···奴の後継たる君が、私を殺すその時を」

 

そうしてやつは消えた、終話したらしい

 

「あの人···怖い人ですね」

「え···?」

「目が···憎悪に染ってました···」

「でしょうね···」

 

私は奴の過去を知っている、知っているからこそ止めなければならないのだから




敵の過去とは?


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Day 42

それはかつての記憶の再演


「ここは・・・?」

 

目を開けたら、懐かしくも嫌な思い出を見ていた

それは両親と自分の運命を変えられた日・・・

 

「あの日の景色か」

 

忘れもしない、そんなことなど許されはしない景色

私の始まりにして、最初の記憶

運命の始まった、あの日

 

「死ぬ覚悟はあるのか?」

「ないさ、あるのはただ一つ」

 

その景色を見て、次にいたのは瓦礫に包まれた空間だった

言うまでもなく、私のいた場所

両親の声と、あの日との声が聞こえる

私を助けてほしいと叫ぶ両親と、その声を聞いて私の場所を聞くあの人の声

 

「・・・」

 

暗闇が晴れ、そこにいたのは心の底から安堵する両親と、何かから救われたような表情の彼だった

 

「あぁ、そうだ」

 

なぜ私が彼の後継を目指したか

 

「彼のような人になりたいから」

 

自分よりも他人を救いたいから

それも本音で、本当は救ってくれた彼を支えたかったから

だから、彼の後継を目指した

彼がその重責から心を壊してしまわないように、その負担を少しでも減らしてあげたくて

 

「あ・・・」

 

そして、再び景色が変わる

 

「私が選び、背負い、歩んだ運命に後悔の念は一つもないよ」

 

一人の人間の背中を私は見ていた

その人は、優しくそう私に言ってくる

 

「なぜならそれは、私が耐えれば良い事だから。藍澤カズマという破綻者だけが苦しみぬけば済むことだから」

「・・・」

「人工生命という化け物を対価にして、愛した世界が繁栄するなら、是非もない。まさに破格の取引だろう。私は自ら願う通り、無限の地獄を駆け抜けた」

 

それを聞くと、むなしくなる

彼を支えられたのか、わからなくなる

 

「私の戦いの先にこそ、誰かが笑顔でいてくれる輝く明日があると信じて・・・」

「・・・」

「気力を武器に戦い続けた誓いは今も変わらない。たとえ神と呼ばれる存在になり果てようとも、人の善と幸福こそ守らねばと感じている」

 

そうして横に立った私に彼は微笑みながら続ける

 

「だからこそ、案ずるがいい、アヤカ・・・英雄の後継に相応しい、尊敬すべき子・・・いずれ来る終末においても、君に滅びは訪れない。なぜなら世界でただ一人、自分が耐えればいいことなら、鏖殺の雷霆だけが苦しみぬけば済むことなら・・・その果てに誰かの涙を止められるならば、依然変わらず、是非もなし。悪の敵という塵屑は、愚かしいほど無敵のままさ」

「分かっています、だから私も、私の答えをあなたに見せたい・・・目指す偉大な先人に、示してみたいと思うから・・・」

「その返答こそ私は眩しく・・・いや」

 

彼は一瞬、素の自分に戻っていた

それほど私の発言が意外だったのだろう

 

「そうだね、楽しみにしておこう」

 

視界が白く変わっていく、どうやら目覚めのようだ




あれ、見覚えが


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Day 43

それは始まりの狼煙


「久しぶりに模擬戦がしたい?」

「えぇ、貴女を倒すと息巻いてますよ」

「それはまぁ、何ともご苦労さまと言いたくなるわね・・・」

「どうします?」

「受けるに決まっているでしょ、フカ委員長」

 

ある日、私はフカ委員長からそう言われていた

キアナたちが私に模擬戦を挑んできているのだ

 

「よし、こんなものかな」

「これは・・・?」

「今後の行動予定」

 

私はそう言い、3人の待つ場所に向かう

 

「あ、来た!!」

「そりゃ誘われればくるわよ、で、今回は3人同時というわけね?」

「数で押すのは性にあわないけど、手段を選んでられないからね!!」

「それはまた何とも・・・でも負けてやらないわよ?」

 

3人が構えるのを見て、私は笑みを浮かべていた

3人とも構えに隙がないのだ、ブローニャに関しては元々無かった隙がさらに無くなっている

これは意外と苦戦するかもなぁ・・・

 

「さて・・・行くわよ!!」

 

同時に模擬戦は開始された

気迫の1歩で3人の少し先まで移動し芽衣を攻撃する

予測していた芽衣はそれを回避、スイッチするように現れたキアナのハンドガンの銃口を蹴り上げ、追撃を仕掛けるブローニャに牽制攻撃を与える

 

「ふぅ・・・今の連携は怖かったよ、危うく一撃貰うところだった」

「絶対に当ててやるんだから!!」

「それでは私もこう言わせてもらうわ、やれるものならどうぞ?」

「絶対倒す!!」

 

キアナの叫びと同時のファニングショットで私の武器が壊される

 

「つっ!?」

「もらったッ!!」

「甘いな」

 

蹴りを叩き込もうとした瞬間、私は迷わずガラ空きのボディに一撃を叩き込んでいた

同時に手に持っているハンドガンもバラしておくのも忘れずに

 

「なっ!?」

「ほら、ここぞと言う時に油断するからそうなる」

「はぁ!!」

「おっと、危ない」

 

キアナを盾にするという卑怯極まりない行動で芽衣とブローニャの行動を止める

 

「卑怯ッ!!」

「戦闘に卑怯もクソもないわよ?私はいつも言ってるでしょ?相手は常に自分の考える最悪の手段で来ると想定せよ。とね」

「つっ・・・!!」

 

そのままキアナを押し飛ばし、瞬時に横合いから芽衣の腕を掴んで捻り上げる

だが、ここで芽衣は驚きの行動を取った

 

「つっ!?」

 

捻り上げられたまま、私の脇腹に重い一撃を叩き込んできたのだ

 

「・・・やるわね」

「少しは効果があると思ったんですが・・・」

「効いているよ、今のは地味に想定外だった」

 

殴られた箇所を一瞬押え、再び構える

 

「そこまでです」

「おや、いつの間に後ろに?」

 

いつの間にかブローニャに後ろを取られている、私は振り返ることなくそう言い、同時にしゃがみながら足払いをしてブローニャの意識の裏をかく

 

「つっ!!」

「はい、躊躇したわね?」

 

ブローニャは一瞬躊躇した、その理由は簡単だ、自分の攻撃の射線上に二人がいたから

二人を巻き込む可能性があったため攻撃の判断がほんの一瞬遅れた

そのスキをついて、私は彼女の武装を使用不能にした

 

「はぁぁッ!!」

「ふっ!!」

 

背後から来たキアナを即座に迎撃、一瞬の攻防で位置を変えていたキアの奇襲であったが、私はそれを事前に予測している

 

「流石、裏をかくのは上手になったわね・・・」

「くっ!!」

「だけどまだまだ、私を倒すには能わない・・・見せてあげましょう、ほんの少しだけ、私の本気を」

 

その瞬間、私は持ちうる全能力をほんの一瞬だけ展開した

たったそれだけで、3人は地面に膝をつき顔面を蒼白させる

 

「い・・・今のは、なに?」

 

キアナのその声で、芽衣とブローニャも動けるようになる

 

「まるで深海の底に叩き込まれたような、そんな薄寒さを感じました」

「あるいは、無限に積層された地層のようなものをものを・・・」

「どれもこれも正解よ、これが私、無限に重ねてきた希望(ひかり)絶望(やみ)・・・それが全て私の力」

 

武器をしまい、私は3人を立たせる

 

「模擬戦はこれまで、勝利は私よ」

「悔しい!!」

「アレを受けて意識を失わないだけでも合格よ、B級くらいはね」

「きぃぃぃ!!」

「頑張りなさい、貴女たちはやれば出来るのだから」

 

私はそう言って部屋に帰る

今日のことをレポートに纏めるからだ




やっべえよ、ネタが浮かばねぇよ!!


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Day 44

それは奇跡より残酷な再会


「そう言えば、艦長さんに会ってないな」

 

私はそのことに気がついた

艦隊行動を取っているが、私自身は艦長に会ったことがないのだ

聞いてみたら、キアナ達を含め、教師以外の全員が艦長と会った事がないらしい

教師連中でも、幹部クラスの実力者以外は数回しか会ってない

 

「今度の出撃で、会いに行くか」

 

そしてその時は来た

 

「失礼します、艦長はどちらに?」

「艦長!!バルキリーの子が来てますよ!!」

「そろそろ来ると思っていたよ···」

 

艦長席に座っていたその人は、そう言いながら立ち上がった

その声を、聞いた事がある···纏う気配も鮮明に思い出して

思わず私は相手を蹴り飛ばそうとしていた

 

「おいおい、挨拶がそれとはなかなか過激だな?」

「ノインツェーン!!」

「その名で呼ばれるのは久しぶりだな···九条アヤカ」

「なぜこの世界にいる!?」

 

蹴りから殴りに移行し、互いに目を見る

 

「それは私にもわからんよ、私にもやるべき役割があるんだろうな」

「つっ···!!」

「そう怒るな、今の私は味方だぞ?」

「ほざけ、裏切り者が!!」

「過去の話を蒸し返すな」

 

そう言われた瞬間、私は一瞬で床に叩きつけられていた

 

「つっ!!」

「私は兄さんから直接CQCの指導を受けたんだぞ?君相手に倒されるわけなど無い」

「ちぃ!!」

 

力を使おうとした瞬間、そのデバイスを奪われていることに気がついた

 

「森谷さんだな、これを作ったのは?」

「・・・」

 

私は質問に答えず睨みつける

 

「あの人も無粋にしていた割には堪えていたのかな···」

「何を言ってるの?」

「君は調べていたんではないか?14年前、何があったのか」

「つっ!!」

 

その言葉に、息が詰まった

それは、確かに調べていたことだから

 

「知っているの?」

「当事者だからな、当然全てを知っているとも」

「教えなさい、何があったか!!」

 

次の瞬間、私は壁に投げ飛ばされていた

 

「がはっ!!」

「人に物を頼めるくらい冷静になってから出直して来るんだな」

 

そう言ってノインツェーンは私を連れてCICを出る

 

「さっき、カズマさんの事···」

「あぁ、あの人は血の繋がりで見れば兄だからな···良い意味でも悪い意味でもな」

「それだけじゃないんでしょう?」

「あぁ、何度も争い、殺しあって私たちは互いを理解した」

 

ふと、昔を懐かしむように目を細め、ノインツェーンは話を続ける

 

「あの人と同じ目的で任務に赴き···小さな笑顔の花と出会い、私の全ては打ち砕かれた」

 

その手に握っているのはきっと、ひとつの花びら

 

「呆然としたよ。理解できなかった。何がなんだかわからず、どれだけ放心していただろう。だけど、それでも···瞳の奥が熱かったのを覚えている」

 

それはきっと、今まで感じたことも無い感情だったに違いない

 

「初めて、感謝されたんだよ。認めてもらった気がしたんだ。お前も周りと変わらない、ちゃんと()()()()()なんだと。こんな、こんなどうしようもない塵屑のような複製(クローン)でも……誰かの為に生きていいと、美しいものを守れるのだと」

 

そう言って、ノインツェーンは外の景色が映る窓に手を触れる

その瞳に宿しているのは、誰よりも優しく誰よりも強い人への憧れ

 

「そう、その瞬間に私は、命を懸ける、理由を知った」

 

渡された花弁を濡らす涙とともに、壊すことしかできなかった拳を、握りしめるべき意味を知った

だから···家族として隣にいることを選んだのか···

 

「私も、無辜の民(だれか)の為に生き、無辜の民(だれか)の為に死んでいこう」

 

光輝く明日を、彼らが笑顔で生きられるように。

いつか自分に代わり、平和の中で笑顔の花を咲かせてくれると信じているから

だからこそだからその想いは、あの人が死んだとしても変わらないし見誤らない。

上か下かに強いか弱いか?強者に報いを?馬鹿馬鹿しい。

最も大切なのは心一つ、想い一つで限界を超えられるという()()()()()()()()()()()()()()()

無敵の力が一体どこから生まれてくるか、何を守り抜くために戦士として誇りを抱くかという部分こそ、最も重要な矜持だろう

 

「そう、だからこそ守り抜く。兄さんが何より大切にしたものを。次の世代を笑って生きる子どもたちは、立派な大人になるんだ。きっと胸を張りながら、私や兄さんさえ超えていくんだ」

 

そしてそれは簡単なことだ、パンでも焼けるようになれ。花を育てられるだけでもいい。そんなことさえ私やあの人はできないんだよ。馬鹿だろう?

そう苦笑いして語った時、わかったと頷く子どもたちの笑顔がために。ならば戦士としてこれ以上の喜びは、この世の何処にもないだろう

小さな命が成長し、やがてそれぞれの道を歩んで先人たちを超えてゆくこと。

自分たちにはできなかった優しくて、穏やかな、新たな境地を描いてくれるその姿に胸の震えは止まらない。守り抜こうと何度でも思えた。

ならばこそ

 

「あの子たちの未来(ユメ)を、奪う奴らは許さないし認めない」

 

ふざけるな。ふざけるんじゃないぞオットー·アポカリプス

だからこそ、地に足をつけた無敵の戦士、ノインツェーンは止まらない。

オットーの計画を破壊すべく、さらなる炎をその鋼の炉心(こころ)に灯す

 

「私は、不死の破壊者。いつの日か、次の世代に未来(セカイ)を託すその瞬間(とき)まで、あらゆる悪を撃ち砕く、笑顔の盾だ」

 

それが、すれ違いの果てに理解へと至った人間の言葉だった




重いぞコレ


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Day 45

次に向けた小休止


「報告書出来ましたよー姫子先生」

「そこに置いといて、あとで見るわ」

「はいはーい」

 

私はあれから数日後、作戦報告書を提出していた

これでも、私はA級バルキリーである

S級も取れなくはないが、あえて取らない方針なのは姫子先生も知っている事だ

何せ本人の目の前で発言してる訳だし

 

「さて、この先生の問題は」

 

姫子先生の自室は一見綺麗なように見える・・・だがそれはそれ、実際には物を適当に隠しているだけである

 

「さて、始めますか」

 

整理整頓が苦手な先生のために、少しばかり部屋を綺麗にして差し上げよう

 

「アヤカ、まだ居た・・・あぁぁぁ!?」

「あら、先生。こんなに汚していたんですね?」

 

風呂場から出た先生の第一声は悲鳴だった

無理もない、私が寝室で整理整頓をしているのだから

 

「そこにあるのは洗濯に出すものです、はい、ランドリーへ行ってらっしゃい」

「うぅ・・・」

「早くしないと蹴りだしますよ?」

「ここ、私の部屋なのに・・・」

 

それはもう少し部屋を綺麗に片付けられるようになってから言って頂きたい

 

「さて、一気に片付けるか」

 

あるのはどうせ発泡酒(ビール)の空き缶ばかりだ、少しの時間で直ぐに終わらせられる

 

「おや、ココにこんなものが」

 

大人のアレもあったが、あえて触れないでおこう

これは私も見てないことにして、次は照明器具のチェック

 

「うわ、球切れてるじゃん」

「失礼します、姫子先生は?あら?アヤカさん?」

「うん、先にお邪魔してるよ」

「何故そこでそれをしてるのか聞いても?」

「くっそズボラな我らが教師の部屋をクリーニングしているのであります」

 

そこにやってきたのは芽衣ちゃんだった

 

「先生来るまでそこで待っててよ、ランドリーからだからそこまで遅くはならないだろうし」

「もう着いたわよ」

「あらお早い帰りで、芽衣ちゃんの報告書でも見てください」

「えぇ、あんたのは先延ばしよ」

「なん···だと」

 

少しだけ驚くふりをして私はクリーニングの続きをする

 

「うん、簡潔に纏められているわね、今後の課題に関しても認識がしっかりしている、受け取るわ」

「ありがとうございます」

「キアナはどうして報告が遅いのかしらね···」

「面倒くさがってしてないんでしょうどうせ、後でちょっと言っておきます」

 

キアナの性格的にまずそうだろう、後で叱っておくか

まぁ、改善は望み薄だからどうしようもないけど

 

「しかし、あんたのも理路整然としていて報告書のテンプレのような作りね」

「それはどうも、でも色々と動き始めましたね」

「そうね、今までのが何だったって言うくらいに激しく動き始めたわ」

 

今、この学園を含めた天命自体が激しく動き始めている

S級認定条件の緩和を初めてとして妙な動きがある

 

「場面を整えているのか···それとも」

窓から空を眺めて、私は告げる

 

「そろそろ私も動きます、やつを妨害しなければ」

「敵として現れることもあると言うのね?」

「はい、その時は加減なしで」

「了解よ、任せなさい」

 

さぁ、こちらも手を出していくか




次章、トラウマ


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第2章 Winds vs Metal
Day 46


それは意外な繋がり


「お、メール来てた」

 

ある日暇をしていた私はメル友から受信したメールを確認していた

 

「うわぁ、大変だなぁ···」

 

綴られていたのは相手の現況であった

少し前に体調を崩してから回復してないそうだ

 

「内部に崩壊エネルギーが溜まりすぎて臓器を痛めているのか···住所でも聞くかな?」

 

私からのプレゼントとして、崩壊エネルギー減衰薬剤をプレゼントしようと思った

これは本来、空気中に液体として散布する人体に有害な成分を無害化しつつ効果を残すように工夫して開発した最新薬剤だ

実験台に姫子先生を使ったが気がついてはいないだろう、戦闘後に負担が軽かった事に少し怪しんだくらいだし

 

「お、来た」

 

早速、配送の準備に入る

国際郵便になるが速達メール便で送るため問題は無いだろう

 

「お礼に本名を教えてくれた···ウェンディって言うのか、いい名前だね」

 

私も名前を教えてくれたお礼にペンネームではなく本名を教える

 

「住んでいるのはオセアニア支部のほうか···夏休みに行こうかな?」

 

そう言って私は今までのメールを見返す

 

「年齢は私と同じか少し若いくらい、文章の書き方からして恐らく元は孤児。メールのやり取りは自由だが外出を余り出来ない環境下にある···軟禁状態か。バルキリーとしての素質は中の下程度···って昔の癖出てる」

 

いけない、昔の癖が出ていた

 

「早く会いたいな···どんな子なんだろう?」

 

それが、最悪の形で実現すると···その時の私は想像してなかった

最悪の出会いから始まる、その悲劇を···

 

「オセアニア支部が壊滅っ!?」

「律者の攻撃でね···映像すら残ってないわ」

「馬鹿な···律者の誕生は数年単位ではなかったはず!!」

「芽衣は完全に律者として覚醒する前だったから、イレギュラーなのはそっちの方よ」

「つっ!!」

 

言われてみればその通りだ、そこに気がつけなかったのは私の想定の甘いところだろう

 

「緊急出動の許可を、相手が律者なら降りるはずです」

「ダメよ」

「何故です?」

「ロシアの時と同じく管轄外だからよ、あの時は特例で許可が降りたけど、今回は降りなかったわ。それに今のアンタは私情で動いている」

「管轄外は分かりますが···私が私情以外で動いた試しがあると?」

 

次の瞬間、私は振り抜かれた剣を片手で止めていた

 

「ふざけている場合ではないのよ!!」

「それはこちらのセリフだ、管轄など知るかボケェ!!」

「そういう所が子供なのよあんたは!!」

「おうさそうとも子供だよ、それがどうしたァ!!」

 

距離を取り、私は姫子先生を睨む

 

「そんな顔ができるなんて意外ね」

「つっ···」

 

一瞬···私は自分がどんな表情を浮かべているか分からなかった

 

「心の底から誰かを助けたがっている···普段の自分を忘れるほどに」

「つっ···!!」

 

そう、オセアニア支部の壊滅を聞いて、真っ先にうかべたのはウェンディちゃんの事だった

 

「会いたい子がいるんですよ、あそこに」

「そう、ブローニャも同じことを私に言っていたわ。親友がいると」

 

構えをとき、私は告げる

 

「ブローニャは冷静だったのでしょう?」

「えぇ、任務を優先にはするけど、探すのだけは許可して欲しいと言ってきたわ」

「···少し、頭冷やしてきます」

 

そう言って私はシャワー室に向かう

冷水で興奮している頭を冷やして冷静になるために

 

「・・・」

 

さて、状況を整理しよう

まず、何らかの要因によりオセアニア支部にて律者が誕生したのは間違いない

次にオセアニア支部が壊滅した理由についてだが、これは律者を倒せるだけの力を持ったバルキリーが所属してない事と、比較的最近できた支部であるため戦力の増強途中であり、対抗手段が少なかった事が要因として挙げられる

次に律者が誰かについてだが、これは以前不明のままだ

推定として、所属しているバルキリーの誰かということしか分かっていない

よって優先順位は

1 オセアニア支部を壊滅させた律者への対処

2 付随して発生している崩壊現象の沈静化

3 要救助者の救助

となるだろう

「よし···」

 

頭は冷えてきた、あとは···

 

「必ず···助け出す」

 

覚悟を決めるだけだ




最悪の展開スタート、と同時にキャラが暴走を始めた


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Day 47

それは残忍で最悪な選択


「オセアニア支部のあった地点に到着、酷い有様ね···施設そのものが壊滅的な被害を受けているわ···生存者はゼロよ」

「報告了解、引き続き任務続行よ」

「了解」

 

あれから10時間程度が過ぎ、私達はやっと降りた許可を得て速攻で駆けつけた

オセアニア支部の建物は見るも無惨な有様だった

まるで至近距離で竜巻を受けたかのような損傷が、建物外部だけでなく内部にも及んでいる

人間なんてひとたまりもなく引きちぎられるように切り裂かれただろう

実際に原型を留めていない遺体があちこちにあった

 

「支部内部に強力な崩壊エネルギーを検知、下降中ではあるものの危険性大」

「了解、十分に注意して探索して」

「言われなくても」

 

そう言って私は通信を切り、キアナたち3人を後につかせながら探索を続ける

 

「ブローニャ、私とパソコンが一部生きていたらデータを抜き出して、ここで何が行われていたか突き止めたい」

「了解です」

「キアナは敵の接近時に迎撃、芽衣はサポートしてあげて」

「アイアイサー!!」

「わかりました」

 

さて、私はデータの抜き出し作業にあたるか

 

「サーバールームに行かないとデータの完全抜き出しは出来ないみたいだな···」

 

そうして向かうはサーバールーム

そこは地獄だった

原型を留めている遺体などほんの僅かしかない

血の池地獄だ、ここからデータを抜き出すのは躊躇われるが···この原因を突き止める為に倫理観をここでは無視するしかない

 

「これは、あまりに酷いな」

 

データを抜き出し、私はやっと全ての全容を理解し始めた

 

「HQ、HQ、応答願う」

「・・・」

「ちっ、無線がやられた」

 

無線がダメになった、恐らく崩壊エネルギーによる無線の無効化作用だろう

 

「3人とも、これからは私の指揮下とするわ、本部との通信が出来ないからね」

「えー!?」

「キアナちゃん、ここは経験のあるアヤカさんの判断が正しいわ」

「私もそう思います」

「状況を伝えるわ」

 

キアナの意見はガン無視するとして、私は状況を整理するため地面に落書きを書く

 

「オセアニア支部の壊滅は確認できた、施設内の生存者はゼロ。外郭建造物にも同じくゼロ。データを抜き出しのために訪れたサーバールームが主な犯行場所と見ているけどこれはおそらく初期に暴れた場所に近かったからと思われるわ」

「根拠はあるの?」

「壁に付着した血痕が乾いていた、他のところはまだ乾きかけたからね」

「それを行ったのは律者で間違いないんでしょうか?」

「そうだと思う、他のと殺害方法は共通している」

 

風で切り裂いたような痕をつけるから、律者の能力は恐らく風を操るものと推測される

 

「律者誕生の理由だけどこれは間抜けとしか言えないわね···律者の欠片を用いて人為的に律者の力を引き出す研究が行われていたわ」

「それは···」

「そう、その最悪が現実になったのよ」

 

律者を人為的に作りだす···その結果がこのザマだ、笑えもしない

 

「サーバーにはセキュリティがあったけどブローニャのおかげで突破出来たわ、被験者の名前は抹消されていたけど」

「そこまでして···!!」

「正義のためなら人は何処までも残酷になれるんだよ···」

 

私は苦虫を噛み潰したような気分になった

最悪すぎて反吐が出る

 

「ぶっ壊れて当然よ···クソ喰らえ」

 

亡くなった方々には言いたくないが、そう言うしかない

知らなかった人もいるんだろうけど、だからそれで?

被害者は律者の方だろう、与えた損害を無視して言うのならば

 

「さて、ここからの方針は···」

 

3人が私を見る、私は告げる

 

「律者を捜索、確保する」

 

さて、相手はどんな子かな?




困惑···キャラ暴走止まらず


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Day 48

それはありえない現実


「うわぁ···これは酷いな」

「惨すぎでしょ···吐き気がするんだけど」

「生贄祭壇と言ったところか」

 

その場に広がるものを表現するのに、私の言葉は恐らく的確だった

 

「律者の反応は近い···ってちょっと待て!!これは!!」

 

次の瞬間、風の壁が迫ってきていた

 

「やるしかない!!全員しゃがめ!!」

 

全員がしゃがんだことを確認した瞬間、私は莫大なエネルギーを水平方向に迸らせた

 

「あっぶな!!」

 

まさか罠を仕掛けられていたとは思わなかった

まぁ、それでも何とか対応できただけマシか

 

「いやはや、今度の敵は厄介だな」

 

そう、厄介だ

あの時でも、ここまでの対策をしてきた相手は強かった

強かだからこその念入りな対策・・・油断するほどの事は無い

 

「リストが来た・・・通信は安定してないけど文書だけは送れるまでに回復したか・・・」

 

送られてきたのは行方不明者のリスト、そこに記載されている人物の名を見て・・・ブローニャの表情が僅かに陰った

 

「友達がいるの?」

「はい、とても仲の良い友達が・・・」

 

「探し出さないとね」

「はい、絶対に見つけてみせます」

 

よし、作戦は決まった

 

「作戦決定よ、まずは要救助者を発見、保護する。後に律者の反応を調べて探す、以上よ」

「シンプルイズベストだ!?」

「そう、だからこそ必ず達成しなくてはならない」

 

だから、ここは適材適所で行く

 

「ブローニャ、生命反応の探索を任せる」

「了解です」

「芽衣とキアナはツーマンセルで行動、私は単独で行くわ」

 

今回も私は単独行動、慣れているから問題はない

それに不慣れな3人にも経験を積ませるならこの方法がベストだと判断した

まぁ、やれるだけのことはやる

 

「よし、それでは行動開始」

 

私も本気で見つけ出さないと、今回の件で一番重要な証言を得られる生存者かもしれないのだから

 

「よし、広域サーチ起動・・・反応は2か、一つはキアナたちが向かっているみたいね・・・」

 

生命反応広域サーチシステム・・・精度に関しては僅かにこの世界の類似システムに劣るが、走査範囲においては破格のスペックを誇る人命救助活動支援システムだ

戦うだけでなく、守るための力としてもブラックフレームは開発されているのだから、当然それを行う為の機能も備えている

 

「よし、話を聞けるようだな・・・3人とも、一時母艦に帰港する、ポイントL31に集合」

「「「了解!!」」」

 

ポイントL31、緊急時に指定されていた集合地点、そこにはかつての軍港跡がある

緊急時の補給も兼ねているため選ばれた場所だ

 

「意識はないけど、怪我もない・・・良かった無事で」

 

この人から、少しでも多く情報を聞き出さなくてはならない

そう、少しでも多く・・・そう思って行動したことが、この先の惨事を招く事になると、この時の私は考えていなかった




次話、惨劇開始


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Day 49

見つけたのは真相を知る鍵だけではなかった


「よし、私の方の要救助者の収容は完了ね」

 

私の方は幸い、無傷だったからフルトン回収してもらった

打ち上がる時なんか叫んでたのは気の所為だと思う

そうこうしているうちにキアナ達が来た、目を開けて振り向くとこちらに歩いて来ている

 

「···その子がブローニャの?」

「はい、友人です」

「良かったね、無事で」

「えぇ···」

 

だが、私は車椅子に座るその子を見て違和感を感じた

身なりが綺麗すぎるのだ、車椅子の汚れ方から見て

見た所、足が悪いと分かるのに、その違和感が拭えない

 

「収容をお願いするわ、迎えを」

「えぇ、分かったわ···ってちょっと待って!?」

 

違和感の正体は、すぐに分かった

 

「崩壊指数急上昇!?1000、1500、2000!?一体どうなって」

「崩壊指数2000かぁ···これだけあればあの艦を落とせるかな···?」

 

その声に、私は納得した···あぁ···

 

「この偽善者め、アンタらが憎い!!全部が憎い!!纏めてバラバラにしてやりたいほど憎い!!」

 

憎悪の目で、理解した

コイツはもうダメだ···でも助けないといけない

 

「ふふふ···あははは···あははははは!!」

「律者···あの子があの惨劇を産んだのか!!」

 

私のとる行動は決まっている

 

「あの子を助けるぞ、崩壊の意思に操られているだけだ!!」

「わかった!!」

「了解です!!」

「必ず助けます!!」

 

3人もすぐに行動する

 

「これで行かせてもらう!!」

 

イミテートブラックフレームは現在改修中、だから私は体内のナノマシンを利用する武装システムを使うしかない

まぁ、そのシステムだけでもこの世界のバランスを壊せるくらいの高性能なのだが

 

「変···身ッ!!」

 

武装システム起動の掛け声はソレである

一瞬の光が発生して、私の服装はかつて着用していた軍服に変わっていた

 

「ここで新しい力を使うの!?」

「残念ね、これは私の本来持つ力の一端よ」

 

そう言った瞬間、私は一歩で律者となったブローニャの友達の目の前にいた

 

「つっ!?」

「遅い!!」

 

そしてかかと落としで地面に叩きつける

 

「はぁぁぁぁ!!」

「ちいっ!!風を操る律者の力か!!そんな···」

 

この身から溢れるものの正体を教えてやろう

 

「小賢しい真似で勝てる思っているのか!!ふざけるなぁ!!」

 

嚇怒の叫びが自分の限界を一段棄却した

その裂帛と共に、風の刃が全て霧散する

 

「許さない!!認めない!!敗北してなるものか!!」

 

嚇怒の力は、この世界に亀裂を作り始める

 

「時よ、止まれ!!息絶えろ、薄汚い崩壊の意思が!!その子は絶対渡さない!!」

 

私の願い通りに世界が凍てつき始める、その空間は時間の停止した領域だ

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気迫がその領域を急速に拡大していく

最初は半径数メートルが、一瞬後には数千メートル、30秒経つ頃には数キロまで拡大した

さすがに末端は停止できず減速している程度だが、それでもこの領域は絶対防御性能に特化してると言える

 

「その力···どこから!!」

「気合と根性だ!!思い一つ、気合一つで限界を棄却してやる!!」

「人の身で···!!」

「がぁぁぁぁぁッ!!」

 

次の限界もまた棄却する

だが、そこに···

 

「それは困るな、彼女にはまだ働いてもらわないと困る」

「つっ!?」

 

その声に気を取られた一瞬、私はいつの間にか現れた新形戦術機甲に殴り飛ばされていた

 

「なっ、にぃ!?」

「彼女は我々が利用させて貰う」

「まて!!」

 

スモークをたかれ、律者が姿を消し、敵も消えた

 

「クソッ!!」

 

武装を解除する、ここにいても意味は無い




次話、急転


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Day 50

それは取り戻すための切り札


「・・・」

 

一転して会議室、そこは沈黙に包まれていた

発覚した律者の覚醒、支援する謎の人物···混迷する状況下でこれだけの出来事でも神経をすり減らすのに十分だ

謎が謎を呼び込み、深い沼の底にいるような気分になりそうなほど重い空気がそこにある

 

「アヤカ、知ってることがあるなら言ってちょうだい」

「・・・」

 

質問に私は一度目を閉じ、一瞬考えた

知っていることがあるのなら···そんなの一つしかない

 

「支援している人物の特徴が、私の聞いた人物であるのなら···」

 

あくまで仮定でしかないが

 

「あの人は、私の世界から来た人です」

「知り合い?」

「私は知ってるけど、多分彼は知らないはず···だと思う」

 

だから仮定でしかない、私にも分からないからだ

 

「名前は牧瀬セリア、かつて正義の側にいた人物です」

 

私の知る中では、彼は最強の剣士らしい

カズマさんでさえ、得意とする武器を持たれたら勝てる確率は50%を下回ると言ったほどの人だ

それほどの人であるが···

 

「カズマさんと袂をわけてからは一転して闇の側に着いたそうですが···」

「つまり今は闇の側というわけ?」

「えぇ、何故なのかは分かりません···当時の記録を見ることが出来れば理解出来るかも知れないですが···」

 

この世界では無理だろう、しかし私の知る断片情報から想像出来ることはある

 

「恐らく、何らかの目的があるのだと思います。目的も無しに敵側に着くなど有り得ない人物だと聞いているので」

 

かつて敵対したのは、カズマさんに確実な勝利をしてもらう為

そのために自身の全てを捧げたのだと教えてもらった

では今回は?

 

「闘真さん、会ってますね?」

「確認系なのがアレだが、先月会ってるよ」

「では彼がこう動くと?」

「予測してたが?」

 

次の瞬間、テレサ学園長と姫子先生がその首元に鋭利な刃先を突き付けていた

 

「アンタ···何考えてるの?」

「俺は俺の戦争をしているだけさ。今も昔もそしてこれからもな」

「その影響でどれだけの人が巻き込まれるか、分かってるの!?」

「大を生かすためには小の犠牲が不可欠だろう?」

 

あっさりとそう言い返す闘真さんに2人はただただ呆れかえるばかりだ

 

「巻き込まれた側がそれで納得すると思う!?」

「納得はしなくても理解はしてもらわないとな」

「つっ···!!」

 

絶対的強者のセリフとしてこれ程強いものは無いだろう···それが最悪の発言だとしても

 

「アヤカが、アンタを尊敬しない理由がわかったわ」

「俺など、尊敬されるに値しないさ。されるべきは弟子のような高潔な意志を持った連中だろうよ」

「尊敬はしてないですけど、参考にはしてますよ」

「それだけで十分だ」

 

議題から少し逸れた、元に戻そう

 

「セリアさんが何の為に行動しているかわかった気がします」

「なんなの?」

「セリアさんなりの方法で、あの子を人に戻そうとしているんだと推測してます」

「それが可能なら私達もしているわよ!!って···ちょっと待ちなさい、なら貴女たちを攻撃したのは?」

「真意を悟られないようにするためかと、この場合その相手は···」

「十中八九、オットーだろうな」

 

闘真さんのその発言に、誰も否定的な発言を返せなかった

状況が整いすぎているのはわかっていたから、それができる人間など1人しか居ない

それこそ、天命のトップしか出来えないのだから

 

「やれやれ、こちらも本格的に動きたいところなのだがな」

「別にどうぞご勝手に」

「辛辣ぅ···まぁ言われるまでもないか」

 

方針は今決まった

 

「協力は出来ると思います。というよりあちらから共闘を申し出るかと」

「その時になるまでは待ちの姿勢ね」

「えぇ、まぁ、そうまで遅くはならないと思いますけどね」

「···?」

 

全員が不思議がる中、私は自分しか知らない周波数へと通信を入れてみた

 

「この周波数を知っているという事は、君はカズマの事も深く知っていると推測されるな」

「えぇ、心の底から尊敬している方ですから」

「なるほど、君がアイツの言っていた子か···アヤカ」

「既にあなたの目的には薄々勘づいてます。共闘しませんか?」

「いいだろう、あいつの光景を名乗る者よ、その力見せてもらうぞ」

 

通信が切れる、全員が呆れていた

 

「あんたねぇ···」

「こうした方が早いので」

 

よし、これで駒は揃った

あとは最後のピースを嵌め込むだけだ




次話にて救われる子がいますよ!!


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Day 51

それは取り戻すための決意の大火


「よし、行けるな」

「全く大したものよ、ここまで用意周到に準備をしていたのかしら?」

「まさか、あの子だったのは想定外ですよ・・・」

「じゃあ、それすらも計算の内だったというわけ?」

 

一瞬間を開けて回答する

 

「万が一の場合の異常事態にも即応するだけの汎用性を持たせるのが、私の作戦立案の基本コンセプトなので」

「凄まじいまでの対応能力の秘密はそれなのね」

「えぇ・・・」

 

だが、懸念事項もある

 

「今回の作戦の成功率は正直いって50%を切ります。はっきり言うと分が悪い賭けになる」

「それでも、可能性に賭けるんでしょう?」

「えぇ、人は限界を、可能性を超越していく存在だから」

「だから全力で戦う・・・それが貴女の示す回答ですか?」

 

学園長と話していたらいつの間にか委員長がいた

 

「まぁね、これぐらいでしか自分を示せないから」

 

戦うことでしか自分を示せないから、だからこそ自分に出来る事には常に全力なのだ

 

「その結果がどうであれ、選んだ事に後悔はしたくないの。そうなれば最後、私は私でいられなくなるから」

 

きっとそうなった自分は最悪の災禍をこの世に撒き散らすであろうと思うから

 

「ままなりませんね・・・」

「そうと決めて今の自分があるからね」

 

全ては自分の選んだ事、その責も罪も罰も自分のものだ

誰かに委ねたり渡したりするなど誰であろうと出来る訳が無い

 

「さて、作戦開始時刻(ゼロ・アワー)だ」

 

意識を切り替える、ここから先は戦闘だ

 

「作戦状況は?」

「追い込みには成功しています、予想範囲内での戦闘になりますね」

「よし、出来るだけ悟られないでよ?」

「了解!!」

 

反応地点に爆撃をお見舞しながら市街地を出来るだけ遠ざけさせる

人的被害を極限まで抑えるためだ

 

「ミサイル効果なし、風の防壁で防がれてますね、流石は律者というところですか」

「砲撃は?」

「実体弾はまるで効果ありません、レーザーは限定的ですが効果がありますね」

「粉塵で曲げに来たかぁ···なんでもありかよ···」

 

呆れながら私は告げる

 

「レーザーの発振周波を変更してみて、意外にダメージあるかも」

「了解です」

 

さて、追い込みながらこちらも迎撃体制を整える

 

「キアナと芽衣ちゃんと私で前線を構築。ブローニャちゃんは後方から、適宜前線に出て支援」

「了解!!」

「わかりました」

「了解です」

 

さて、3人の返事もいいものだ

こちらも仕掛けておいたトラップに掛かってくれればいいが

 

「トラップの作動確認しました!!崩壊エネルギーの減衰を確認!!」

「よし、ステップ2に移行!!飽和攻撃開始!!」

 

敵の戦闘能力を低下させる為にここまでの行動が必要になってくる

律者とはそういう存在だ、だからこちらも容赦なく戦闘能力を奪いにいく

 

「そちらに向かっています、会敵まで10秒です」

「よし、行くぞ!!」

 

さぁ、今から始まるのは私達のターンだ

 

「攻撃開始っ!!」

 

見つけた瞬間、私は攻撃を指示した

 

「これでも喰らえ!!」

 

崩壊エネルギー変換型ビーム速射狙撃砲を構え、3連射するが···

 

「風の障壁を粉塵で強化した!?そんなのあり!?」

「ならばこれなら!!」

 

今度はビームサーベル兼ビームマグナムを使うがコレも

 

「ですよねぇー!!」

 

効果なしだった、仕方ない···ここはジリ貧だけど使うしかないか

 

煌翼たれ蒼穹を舞う天駆翔·紅焔之型(M k B r a z e H y p e r i o n)!!」

 

実体剣として装備しているソルブレイブに持ち替えて戦乙女(バルキリー)としての力を使う

ジリ貧なのはこの能力を使う度に私の体に過負荷が生じる事だけど···今はそんな事言ってられない

 

「燃え尽きろ!!」

 

風を切り払い、粉塵を燃やして爆発さえも利用して接近する

火の粉を残像の様に残しながら最高速で近づき、腹部を殴った

 

「くっ!!」

「逃がさない!!」

 

交代しようとした瞬間、隙を突いて攻撃を加えたキアナに気を取られる

攻撃は避けたが···その後ろから来ていた芽衣までは想定してなかったのだろう、痛打を受けた

 

「しまっ···!?」

「終わりです、ウェンディ!!」

 

ブローニャの砲撃で地面にたたきつけられる、3人の連携による初めての有効打···それを受けてウェンディは

 

「ふざけるな···私が、人間ごときにぃぃぃぃ!!」

「いいや、終わりだ」

 

ブラックフレームのパワードポートと呼ぶ特殊機能を発動する

 

「滅亡しろ、渇望の嵐(デザイアジェム)···第2律者の残骸!!」

<オール·エクスティンクション>

 

破壊のエネルギーを一点収束、殴る形でウェンディにぶつける

 

「はぁぁぁ!!」

 

狙うのはウェンディの体内の崩壊エネルギーの収束点、そこが恐らくコアとなる渇望の嵐(デザイアジェム)の埋め込まれた場所だろう

意地汚い事に左心房のギリギリ上という凄まじい難易度だが

 

「あ、あぁぁ···あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

命中、急速に崩壊エネルギーが減衰した

 

「よし、成功だな」

 

手に握りしめている欠片を見る

一撃を与えた際に分離した渇望の嵐(デザイアジェム)

 

「これが欲しいんでしょ?」

 

そう言って、私はそれを河川敷に向かって投げた

そこに潜んでいた無人型戦術機甲がステルスを解除してそれをキャッチする

 

「好きにしなさい、私たちには不要なものだから」

「敵に塩を送る真似をするの!?」

「今はそれが得策よ」

 

そう言って、地面に倒れているウェンディちゃんを抱きかかえる

 

「その代わり、この子の身柄はフレイア学園が貰う。異論は言わせないわ」

「良いでしょう、労せず欲しいものが手に入った事だしね」

「話は終わりよ、私の気分が悪くならない内に消え失せろ」

 

最後に睨みつけて画面の先に殺意を送る

 

「さーて、目が覚めるまで治療だー。できるだけ徹夜はなしで頑張るぞー」

「目が既に死んでますよ···アヤカさん」

 

誰かがそんなこと言ってたが無視して帰る




ウェンディちゃんを人間に戻したのは神業としか言えない


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Day 52

あとの話


「うん、経過はよしかな」

「何を作ってんの?」

「あの子が戦いに戻ると決意した時のための力、かな」

 

あれから1週間、私は次へと移っていた

あの子が非凡を選ぶか平凡を望むか、それは誰にも分からない

でも、力を欲するのなら、それに合ったものを用意しておきたいのだ

 

「ライダーシステム···これが新たな切り札になればいいけど」

 

ライダーシステム···フレームシリーズの兼価版としてこの世界で開発した、次世代型戦乙女装甲だ

作ったのはライジング、シャイニング、シャイニングの機能強化ユニットアサルトグリップ、メタルクラスタの4つになる

 

「本当なら使う必要は無いようにしたい、これはこの世界の技術で作ってこそいるけど、設計思想自体は私の世界のものだから。どのような作用をもたらすか私でも分からない」

 

「よって、機能制限をかけてある」

 

そう、危険性の非常に高いものになるから、それだけの制限をかけてある

初期ではライジングの機能しか使えず、経験を積んで機能制限のリミッターが次の段階への以降を認識したら自動的に機能が解除される

流れとしてはライジング→シャイニング→シャイニングアサルト→メタルクラスタの順になる

ライジングではB級、シャイニングとシャイニングアサルトでA級、メタルクラスタがS級の戦乙女(ヴァルキリー)というようになっている

 

「私はウェンディに戦って欲しくありません··本人の意見は尊重したいですが···」

「誰だってそうだよ、大切な人に傷ついて欲しくなんてない」

「でも、だからこそ、身を守る力として作るんでしょう?」

 

ブローニャちゃんはウェンディの事をとても心配している

それ故に、私に問いかけたのは、何のための力であるかだった

答えなんて決まっている、あの人も私も、そのための力として求めて欲した力だから

 

「えぇ、だから常に私の出来ることをしているだけよ」

 

コアユニットはウェンディちゃんから取り出した崩壊エネルギーの結晶体、律者の欠片の欠片だ

それだけでも相当のエネルギー量であり、素のまま使えばまた律者化しかねない程のものである

なのでこれを応用して新たな力へと変換した

 

「メタルクラスタが問題なんだよなぁ···」

 

唯一、メタルクラスタだけがまだ未完成だ

律者としての全能力を発揮できる代わりに安全装置を実装出来ていない

切り札ではあるが強力すぎて使えないのだ

 

「ウェンディちゃんは?」

「安定しています···意識はまだ···」

「そう···気長に待ちましょう」

 

容態は安定したようだがまだ目を覚ましていないらしい

あるいは、もう目覚めたくないのかもしれない···

それでも、あの子なら必ず目を覚ますと私は思った

 

「よし、これで完成!!」

 

メタルクラスタは問題として残るが、一応の完成を見た

メタルクラスタの制御のみ、追加装備で補うしかないだろう

問題はその登録が命綱レベルで危ないことにあるけど···その時はその時だ、何とかしてみせる

 

 




しれっと混ざる仮面ライダー要素、しかも令和最初の仮面ライダー
なお、悪堕ち主人公という仮面ライダーシリーズ初の出来事である


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Day 53

目覚めたら?


「んー、そろそろかな?」

 

脳波計を見て私が呟いたのはその言葉だった

 

「分かるのか?」

 

レベッカがそう質問してきたので私はウェンディちゃんを見ながら話す

 

「脳波の振幅が変わってきてる。強くなってる···というのかな?」

そう言ってデータを見せて場所を示す

 

「これならあと数時間くらいで目を覚ますよ」

「ブローニャを呼んでくる」

「うん、お願い」

 

同じ孤児院にいたブローニャは本当に心配している

真っ先に会わせた方が良いだろう

 

「おや、息を切らせながらどうしたの?」

「もうすぐ、目を覚ますと、聞いて!!」

「駆けつけたのね?」

「はい···!!」

 

いい子だなー、ほんとにいい子だー

さて、私は最後の仕上げをしますか

 

「何をしているんです?」

「フィッティング」

「はぁ···変な事はしないでください」

「善処はするよ」

 

ジー、っと私を見てくる

絶対に疑っている目だ

 

「どうかした?」

「なんでもありません」

 

おや、そう来たか

 

「素直じゃないなぁ」

「子供扱いしないで下さい」

「私から見たら子供よ」

「···?」

「私、18よ?」

 

その瞬間、ブローニャがありえないものを見る目になった

 

「もしかして···初めて知った?」

「えぇ、初耳です」

「oh···」

 

先生方何してんですかね?いや言わなかった私にも問題はあるけどさ

 

「まぁ、気にしなくてもいいけどね」

「留ね」

「早生まれなだけよ」

 

誰が留年だコラ、今日の訓練メニュー鬼畜コースにすんぞ?

 

「さて、私は帰るよ、せっかくの再会に水を指すのはマナー悪いからね」

 

一式のセットを鞄に詰めて私は退室する

 

「さて、どう動くかな?」

 

布石は作った、後はこの流れがどうなるか

最悪の可能性も想定内に収めながら、次の次の次を用意する

全てはただ一つの可能性を掴むために

 

「conclusion oneってね」

 

そう、全ては自分のわがままから始まっている

その罪と罰は甘んじて受ける覚悟がある

だが、それでも···未来を掴む可能性を残したい

人類と崩壊の歴史が那由多の時を過ぎようとも、勝利者が人類である為に

そのただ一つの答えにたどり着くために、一人の人間のわがままが人類を救えるのなら、その犠牲は安くない

 

「アークを開発しないと」

 

アーク、フレームシリーズの最終機体

色を冠するフレームシリーズの中で唯一、色がない機体

かつて私の親族の一人が強奪し、ゴールドフレームと改名して運用した機体

私にとって重要な意味を持つ機体だ

 

「名付けるなら、アークゼロ···かな」

 

ゼロからのリスタート、正義の力として···

私の力として、いずれ返さなければならないブラックフレームの後継機として開発しよう

その基礎データは私の頭の中にある、何故なら

 

「あぁいや、今は思い出さなくていい」

 

吐き気がした、未だにトラウマからは抜け出せないらしい

 

「分かってる、分かってるさ···そう簡単には行かないって」

 

それでも、やらなければならないんだ




主人公が何故か少しずつ追い込まれているこの状況、いずれプッツンしてもおかしくねぇぞ!?


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Day 54

満を持してウェンディちゃん再登場
強力な助っ人だァ!!


「ちぃ!!雑魚共がァ!!」

 

あれからおよそ1週間、私は任務に明け暮れていた

というのも、新デバイス作成のために貯めていた資金が枯渇したためである

これはもうすぐで借金してしまうレベルだった事を考慮しても異常事態だった

まぁ、これ幸いに雑魚ではあるが崩壊獣の発生が増えたため、その殲滅任務で再度資金調達しているわけである

 

「さっさと私の資金になりやがれぇぇぇぇぇ!!」

 

新規開発したバスターライフルで数体を一射で葬り、残党を殲滅しようと···

 

「ちょいまち!!なんでお前がいるんだよォ!?」

 

ゾンビだけかと思ったら、何故か突撃型がいた

しかもこちらに攻撃を仕掛けてくる!!

 

「邪魔だァ!!」

 

それらを1射で仕留め、距離を離すために離脱を選ぶが

 

「頼むから···冗談と言ってよ!!」

 

突撃型の後ろから戦車型が登場した、これはさすがに想定外だよ!!

 

「HQ!!緊急要請!!人員が足りないから送って!!」

「すぐには無理よ!!こちらも人材不足なの!!」

「クソがF〇CK!!」

 

少し汚い言葉が出たが、言葉を選ぶ余裕が無いのも事実だ

 

「ライフルのエネルギーが···!!」

 

残り数発でエネルギーが尽きる、そこから先は戦乙女の力を使うしかない

そうなればまた病院送りは確実で、最悪お泊まり(強制入院)コースだ

 

「クソが!!」

 

ソルブレイブに持ち替え、近接戦に移行する

後ろから来ていた奴に構えながら剣を突き立て、そのまま捻じるように切り払い、左側方から来ていた別個体に投げつけた

 

「滅びろ!!」

 

そのまま2体纏めて横凪にして破壊し、次の目標はグレネードで混乱させて破壊した

 

「まだ増える···これは不味いな」

 

完全に読み違えた、最悪だ

切り札を使うしかないか···?

 

「くっ···!!」

 

早く何とかしないと、このままではジリ貧だ!!

 

「分かってる、分かってるさそんな事は!!」

 

救援は絶望的、間に合ったとしてもそれまでに私の体力が持つかが不明だ

気合と根性で限界を突破しようとも、それは自分の寿命を代償とする危険行為に他ならない

 

「だとしても・・・!!」

 

助けを求める声がある限り、私は何度でも立ち上がろう

だからそう・・・

 

「まだだ、なんて言わないでください!!」

 

その声と共に、緑色の光が駆け抜けた

そして、私に振り返りながら姿を変える・・・いや、私の作ったデバイスを解除したのだ

 

「そんな姿を見ていると、私やみんなが妬んでしまうかもしれないんですから」

「ウェンディちゃん・・・」

「私は・・・もう一度人間を信じたいんです・・・あなたが作ってくれたこの力で」

 

その手に持っていたのは間違いなく私の開発したライダーシステムだった

 

「だから、私の戦いを見ていてください」

「それは違うでしょう?」

 

そう言って横に移動し、私は告げる

 

「行くわよ、ウェンディちゃん」

「無茶はしないでくださいね」

「言ってくれるわね・・・」

 

ウェンディちゃんが手に持つデバイスのスイッチを押す

同時に、電子音声がなった

 

<Wind !!>

「跳ぶよ、未来に向かって!!」

<Authorize!!>

 

私も自分のデバイスを起動する

 

「世界に見せよう、私の進化を!!」

<Striker System !!>

 

そして、同じ言葉を叫んだ

それぞれのデバイスの電子音声が鳴る

 

「「変身!!」」

<プログライズ!!>

<Armor Drive !!>

 

眩しい光に包まれ、私たちは同時に敵を攻撃していた

 

「はぁ!!」

<ライジングウィンド!!>

「せい!!」

<Black Frame !!>

 

緑の光が天空を駆け抜け、黒の闇が大地を疾走する

その度に倒されていく大型の崩壊獣に、逃げ場などなかった

 

「これで!!」

<ライジング インパクト!!>

「終わりだッ!!」

<ブラック エンド!!>

 

ウェンディちゃんが風の刃を纏った蹴りを崩壊獣に叩き込み、私は別個体に黒の高出力ビーム砲を放った

 

「初めてにしてはよく動けたわね?」

「作ってくれたこの力が、私に上手くあっていたからからだよ···」

 

解除して向き合いながら、そう感想を言い合う

1歩こちらに踏み出そうとしたウェンディちゃんだが、よろめいたところで私が支えていた

 

「あれ···急に眠気が···」

「ありゃりゃ、力を全開で使った反動ね。おやすみなさい、良くやったわ」

「そっかぁ···ありがとう」

 

そう言うとウェンディちゃんは意識を手放し眠りについた

私は彼女を抱えながら、迎えに来た人達と手短にやり取りをして引継ぎ、帰路に着く

 

「・・・」

「ブローニャ、睨まないでくれる?」

 

帰ったらブローニャに睨まれた、何故に?

 

「睨んでなどいません」

「いやあんた今睨ん」

「いません」

「アッハイ、ソッスネ」

 

ダメだ、拗ねてる

めっちゃ拗ねてる、感情を出さないブローニャが分かりやすい迄に拗ねている!!

一体私が何をしたというのだ!?

 

「ウェンディは、自分の意思で戦闘をしたのですか?」

「えぇ、そうよ」

「・・・」

 

質問に事実で答えた

 

「仕方ないですね···」

 

あ、少しはマシになったかな?

 

「貴女には言いたい事が山ほどありますが、今回だけはお礼を言います」

「良いわよ別に、私がやりたいようにしているだけなのだから」

「それでもです、ありがとうございます」

「そう、こちらこそありがとう」

 

そう言って私はウェンディちゃんとブローニャを見る

 

「少し気が楽になったわ」

「・・・?」

 

私がそう言うと、ブローニャちゃんは頭の上にクエスチョンマークをうかべた

 

「おかけで私もこれから自由に動ける、ここからは私の戦争をする為に暗躍するわ」

「成程、いままでは私たちの練度が不安だったのですね」

「正直に言うと今でも一抹の不安はあるよ、でもあなた達ならやって行けると確信したわ」

 

芽衣ちゃんにキアナにブローニャちゃん、そしてウェンディちゃんならやって行ける

その確信を得た、だからこれからは私のやる事をやっていくだけだ

 

「さて、始末書と報告書作成だー。今夜は徹夜コースだなぁー」

 

そして、今日という一日が終わった




ウェンディちゃん救済案はコレだから、次はどうするかな


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第3章 ME社強行偵察
Day 55


新章突入!!今度は芽衣ちゃん関連だぞ!!
(ただし芽衣ちゃんは蚊帳の外に置かれてしまう模様)


「うーん、そろそろ追いかけるかなぁ···」

「何をいきなり言ってんの?」

「デザイアジェムの行方」

 

お昼時、独り言に反応したキアナにそう告げると、周りの空気が凍った

 

「は···?」

 

キアナの呆れた顔と声を無視して私は続ける

 

「いやぁ実はあの時GPS仕掛けてあってね」

 

そう、あの投げ渡した時の少し前、私は小さなGPSユニットをデザイアジェムに取り付けていたのだ

 

「その反応をそろそろ掴めそうだから」

「事前に次善の用意をしていたのですか?」

「まぁね、目星は付けていたよ」

 

コンソールを開き、GPSの反応を調べる

意外にもすぐに反応を捉えた

 

「おやおや、まさかの所で反応があるではないか···」

 

反応があったのは···

 

「私の、実家の近く···ME社ですね」

「カカリアめ、実効支配したのをいい事に面倒事を押し付ける気だな?」

 

次の次を用意しておこう

 

「芽衣ちゃん、君は今回の任務であえて外す、理由はわかっているね?」

「納得は行きませんが···分かっています」

「ならいい、理由を言うほどの事でもないしね」

「どういう事?」

 

アホがいた、いやもう馬鹿かコイツは···

 

「自分の思い出のいっぱい詰まった所で破壊行為なんて貴女に出来る?」

「それは···」

「その迷いがあれば、敵に付け込まれて人質にされかねないのよ、だから今回の任務は外す」

 

だが、関わらせないのもよろしくは無い

 

「でも内部に詳しいのも芽衣ちゃんを除いて他にいない、だから無線で抜け道を案内してもらうわよ?」

「了解です」

「あ、それと」

 

隣に移動してヒソヒソと話す

 

「それは可能なのですか?」

「やれるだけやるしか無いよ」

「それを、お願いしても良いですか?」

「いいよ、滅多に聞けない芽衣ちゃんのわがまま、叶えてあげましょう」

 

話してたのは芽衣ちゃんの父親が犯したとされる罪の証拠を集める事

芽衣ちゃんも怪しいと思っているらしい

状況に対する証拠があからさまに多すぎるのだ、それこそ、おかしいと言う程に揃えられている

これが本当に犯した罪ならば間抜けとしか言えないほどに···

だから芽衣ちゃんも私も、これは冤罪なのではないかと思っている

それを立証するためにはまず証拠を集めることが最優先だ

 

「さて、威力偵察と行きますか」

 

ついでに証拠資料の略取任務も追加だ

作戦名はサイレントゲットバック、人員被害は限界まで押えておきたい

 

「まずは···」

 

そう思い、私は芽衣ちゃんの所へ向かう

間取り図にはないルートを知っているのは彼女だけだ

 

「来ると、思ってました」

 

芽衣ちゃんは屋上で夜空を見上げていた

その姿は同性でも美しいと感じるほどだ

 

「既に作ってあります」

 

渡されたチップを受け取り、私は告げる

 

「任務終わりに街に行きましょう、私が奢るわ」

「えぇ、中身を空にしますから、覚悟して下さいね?」

 

おぉ、怖···これは絶対に成功させねば




主人公、財布が消し飛ぶってよ


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Day 58

3日飛ばして作戦開始


「よし、作戦開始だ」

「で、まずはどこから行くの?」

「その前に警備状況の確認からだよ、偵察衛生からの確認だけど···レベッカ、どうかな?」

「至って普通だな、特段変わった動きはない」

「警備のモニタリングは?」

「抜かりなくやっている、アンドロイドに警備を任せるから、カメラは豊富にあるのが助かるな」

 

キアナが頭の上にクエスチョンマークを浮かべた

 

「レベッカの得意分野よ、クラッキングは」

 

そう、レベッカには警備をしているアンドロイドのクラッキングをしてもらっている

 

「それでは、状況開始」

 

作戦は2班に分かれて実行される

キアナとブローニャとフカの三人は主題であるME社の威力偵察

私は単独潜行して前社長の冤罪を立証するための証拠を入手する

 

「まったく、これでも大変なんだぞ」

「請け負った以上完遂するのが心情なのだろう?がんばれ」

「いい顔しやがってチックショウ」

 

そう言って私は単独でルートを確保していく

 

「やれやれ、強行偵察は私の得意分野ではあるけども···」

 

相手は元軍人、どこまで行けるかは未知数だ

 

「上手く行きすぎだ、ハメられているかもしれんな」

「そうだな、警戒を厳にするよう3人には伝えておく」

「予定の半分はクリアか?」

「あぁ、目的地に到着だ」

 

目的地は前社長の社長室

カカリアはここに入る権限がないため入れないらしい

私は告げる芽衣ちゃんに残されている数少ない権限からここへの入室権限を作成、堂々と侵入した

いやぁ、前社長親バカすぎますわ、まさか芽衣ちゃんの誕生日を10進数に変換し英単語を割り当てたのがパスなんて誰も考えられまい

 

「よっし、レッツ家探し」

 

部屋を見渡す、質素な部屋だ

調度品は派手ではなく、質実剛健な作りといえる

見た感じ、不自然な点はない

棚も普通だし、性格的に綺麗好きなのだろう、丁寧に整理されている

 

「ん···?」

 

そんな中、飾られた絵に不自然な点を発見した

額縁に飾られているが、その中央部が少し盛りあがっているのだ

 

「これはまさか?」

 

そう思い、裏を見る

するとそこには小さな鍵があった

 

「ということは?」

 

その鍵を取り、ボタンを押す

すると棚の方から音がした

カチンという金属音、何かが外れた?

 

「うわぁお」

 

酒瓶の入った棚が畳めるようになっていた

それを内側に畳む、するとそこには隠し部屋があった

 

「趣味の部屋···ではなさそうだなこれは」

 

その部屋にあったのは社内の全システムに繋がるコンソールだった

しかも事前に掴んでいた監視カメラとは違う視点の映像もある

すごい人だな前社長は、自分がどうなるか予測していたという事か、置き手紙まである

これは私より先に芽衣ちゃんに見てもらわないと

 

「わざわざ資料まで残してくれるなんて、ご丁寧な人だ」

 

挙句の果てには自分の会社の資金繰りを詳細に書き記した帳簿データまで用意してある始末だ、至れり尽くせりとはこの事だろう

 

「3人は···うわぁめっちゃ苦戦してるぅ···」

「なら助けにいけ、このバカ」

「なんとかなるっしょ、私はこの資料を一度届けに行くわ」

 

その時、後ろから銃口を突きつけられた

 

「それをこちらに渡しなさい」

「あらぁ···肉声を聞けるとは思ってなかったよ、年増のおば様」

「人を苛立たせるのが趣味のようね」

 

押し付けられる、その瞬間に私は足を踏んでやった

 

「つっ!?」

 

それと同時に振り向き、腹部に重い一撃を与える

よろめいた隙を逃さず背後に回りこみ、首に押し付け型麻酔注射器を当てる

 

「ぐっ···!!」

「眠っててくれるかな?」

 

そして押し当て、注射して眠らせた

 

「あっぶねぇ、ヒヤヒヤしたわぁ」

「こちらもな、元はと言えばロックしてない貴様に問題があるがな」

「忘れてたのよ」

 

そう言って私は変装キットで変装し、カカリアを抱えて彼女が使用している隣の部屋に移動した

 

「さて置き手紙と」

 

ついでに置き手紙も残しておく

 

「3人は?」

「ブローニャがまさかの裏切り、というより操られるてるなこれは」

「またかよ、あの子も難儀だねぇ」

「あ、増援で勝手にウェンディが出撃、ライジングインパクトであっさりブローニャの意識を刈り取ったぞ」

「ウェンディちゃんパないっすわ」

 

まだ使い始めて数週間しか経ってないというのに、そこまで使いこなしているのか、マジでヤバイな

 

「シャイニングの解放も近いな」

「そうだね」

 

社屋から出た私は、すぐ横の空き地を見る

そこには、1台のバイクがあった

 

「ボンネビル···T140」

 

トライアンフ、ボンネビルT140

かずまさんの愛車だったバイクだ、この世界にも存在している会社で、全く同じ形のものがあった為、即座に購入した

この作戦においては使うはずのないものだがどうして?

 

「合流地点まで歩く気か貴様は?肝心なところで抜けている作戦を立てやがって、途中で見つかったらどうする」

「あ···」

 

そう、帰る方法を考えてなかったのを今更思い出した

 

「はぁ···お前の愛車で帰ってこい、自己責任でな」

「了解でーす」

 

そして帰る事にした




うわぁい次は主人公以外の視点だよ!!


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Day 59

主人公ある意味ピンチ


「よーし、帰ってきたよー」

「お帰りなさい···証拠は集まりましたか?」

「あぁ、トンデモ爆弾級の証拠がね」

 

渡したのは芽衣宛の手紙、筆跡は彼女の父親のもの

 

「親バカすぎるわ、貴女の父親」

「え···!?」

 

手紙の中には···

 

「自分の持っている全株式を貴女に譲渡、同時に社長に就任させるという爆弾。しかもその発動は貴女が社長室に入った瞬間から」

 

なるほど、カカリアが彼女を会社から遠ざけるわけだ、そんな爆弾仕掛けられていたらビビるだろう

 

「そして、その際に自分が会社運営に携わってない場合は緊急株主総会を自動発動する旨も併記済み···恐るべき未来予測ね」

「お父様···」

「オマケに考えられる全てのパターンに応じた対応方法まで···よっぽどカカリアとは関わりたく無かったらしい」

「・・・」

 

その中には今の事態への対処法まで···本当に親バカとしか言えない

 

「さて、どうする?」

「決まっています、まずは···取り戻します」

「いいねぇ、では早速」

 

私はバイクに跨り、2つ目のヘルメットを芽衣に投げ渡す

 

「行くわよ、乗りなさい」

「はいッ!!」

 

さて、これでターンエンドだ、カカリア!!

 

「さて、到着ね」

 

そして社屋に今度は堂々と入り込む

というか社員一同、芽衣ちゃん見た瞬間に道を開けてたよ···社長令嬢の力ってすげぇな

 

「カカリアさん、私が来た理由は知ってますね?」

「えぇ、知っているわ···そこの小娘にまんまと嵌められたわね」

「それはどうもー、で、ここにきた理由を知っているということは···」

「引くしか選択肢が無いのでしょう?」

「豚箱に入りたくなければ、ですけどね?」

 

私がそう言うと、芽衣にちゃんは私を少しだけキツイ眼差しで見た

 

「カカリアさん、貴女を責める事はしません。私はここから逃げていたのですから、責める資格もないです」

「なら何故、今更になって行動を起こしたのかしら? 」

「貴女が、犯罪を犯してでもこの会社を乗っ取りたかった理由が分かったからです···私の体内に埋め込んだ律者コアの欠片、それが理由ですね?」

「・・・」

 

おい、そのことは初耳だぞ?

埋め込んだのがカカリアのグループだと言うのは今の発言で理解した

だが埋め込んだ理由って何?

 

「欠片がコアとして安定するまでの入れ物として、私を利用する···それが貴女達の目的だった」

「そうよ、今更となってはどうしようもないけれど」

「えぇ、そうですよね、貴女にとって想定外の出来事が起きていたのですから」

「まさか、融合しているとは思ってもみなかったわ···普通ならありえないもの」

 

あ、やべぇ···これ私も無自覚に関わってるパターンじゃね?

 

「そこの小娘の計画かしら?」

「想定外だよ、私にとってもね···つか初耳だわ」

 

そう言って私がジトーっとした目線を向けても芽衣ちゃんは涼しい顔だ

くっそう、取り尽くしまもねぇ···

 

「私が来た目的が分かっているなら、既に用意もされていますね?」

「言われずとも出ていくわよ、でも···」

「孤児院への支援は続けます、孤児を救うという所だけは理解していますし納得しています」

「そこだけは素直にありがとうと言っておくわ」

 

そう言ってカカリアたちは去っていった、引き際は心得ていた様だ

 

「はぁぁぁぁぁ···」

「慣れない演技ご苦労様、お父様は部屋の外でヒヤヒヤしているようだよ?」

「え···?」

 

私のカミングアウトに、芽衣ちゃんが凍った

 

「ここに来るまでに保釈が完了したので、駆けつけさせた次第だよ」

「聞いてないのですが?」

 

真実を言うべきかな···そう思った瞬間、開かれていく扉の向こうから回答が来た

 

「それは私がサプライズとして黙っておくよう、私がお願いしたからだ、芽衣」

「お父様···」

「少し大きくなったな、先程の演技は中々にヒヤヒヤさせられたぞ?」

「まずは謝罪をしてもらいましょうか?」

 

あるぇー、おかしいなぁ···感動の再会のはずなのに、何故か背筋が寒くなっていくぞー?

つか、芽衣ちゃん顔が笑っていてもマジで目が笑ってない

怖ぇ···めっちゃ怖ぇよ!!

 

「め、芽衣?」

「なんですか?アヤナさん」

「何故に?私も座らされてるのでしょうか?」

「分かりませんか?」

 

わかんないから聞いてるんですが!?

 

「サプライズでもしていい事と悪い事があるでしょう?」

「あ、はい、すいません!!」

「芽衣、悪かった···」

「謝ってくれたのならいいのですよ、お父様」

 

わーい、それじゃ私も!!

 

「貴女にはまだ話があります」

「え···?」

 

そのあと私は30分以上に渡り説教をくらったのであった




最後に説教オチとはな


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Day 60

日記は60日、物語は50ページ目


「戦闘開始だ!!」

 

ある日、私は新装備の実戦テストに出ていた

 

「早速新装備を試させてもらう!!」

 

両肩の新装備、大口径バスターライフルをパージしてグリップを持ち構える

今回のライフルは大口径化と同時に連射性能を犠牲にしている代わりに、威力は従来品の数倍に上げられている仕様のものだ

今回の実戦テストで優秀な成績だった場合、予備兵装として配備する予定である

 

「ビーム収束軸に僅かなブレがあるな、テスト優先で作ったのが仇となったか」

 

2、3回射撃してズレを確認する

システムで自動最適化されるとはいえ、制式化の前までには解決したい問題だ

 

「制式採用版ではもっと精度を高めないと、ただでさえ安い品から作ったものだから品質だけは1級でないとな」

「評価はいいから目の前の的に集中しろ!!」

「大丈夫だ、問題ない」

 

近づく敵は接触どころか姿を現した瞬間に撃ち抜いている

反射速度が常人より上だから出来る芸当だ、制式化の際はスペックを僅かに落としてある程度の連射性も持たせた方が良さそうだ

 

「状況は?」

「全体の半分というところだ、油断するなよ」

「了解だよ、レベッカ」

「ならいい、残りはお前の好きにしろ」

「了解、根絶やしにしてやるわ」

 

近くの屋根にあがり、空から来る敵を迎撃する

空いている片方は地上目標を狙撃しながら

その時、遠距離からの攻撃が来た

 

「うぉ!?」

「大丈夫か!?」

「当たってはいないけど、正確に狙われた!!」

 

目標は1000m以上先から私を狙撃してきた、ゾンビの中でもかなり知能を残している個体のようだ

 

「見えたッ!!そこだッ!!」

 

移動地点を先読みし狙撃し、残りの敵を殲滅する

 

「追加機能のテストだ、光栄に思うがいいゾンビ共、一撃で死ねるのだからな!!」

 

ドライツバークバスターモード、銃身部に追加装備であるメッサーツバークを3個つける事で使用可能となる大出力モードだ

一応これをつけた状態での設計強度も計算してあり、3連射に耐えられるように出来てはいる

だがそれはあくまで設計での話、実戦で使えなければ意味が無い

 

「いけぇ!!」

 

立て続けに3連射して、反応の消滅を確認する

銃口を下ろした瞬間、メッサーツバークが壊れ、ライフル本体の機関部が爆散した

 

「うわっ!?」

「もう何も言わんぞ、自業自得だ」

「少しは私の心配しないの!?」

「するかボケ、早く帰って来い先に帰るぞ」

「ちょっと、待ってよぉ!?」

 

このままだと置いていかれるので急いで車に乗り込む

 

「そこまで急ぐという事は、何かあるんでしょ?」

「あぁ、厄介で面倒なのがな」

「キアナか···」

「奴にテストの対策をさせねばならん、実に面倒な事だ全く···」

 

レベッカは意外と面倒見がいい、私が来る前まではみんな彼女を避けてたし、レベッカ本人も避けていた

私がみんなに言った言葉が、変化をもたらしたのか、あれからみんなが少しづつレベッカを受けいれた

レベッカ本人にしてみても思うところはあったのか、避けるだけでは変わらないし変われないと考えたのか、口では面倒とか言いながらも皆を受け入れているようだ

そうなると後は本来の性格が出る、面倒見がいいのは本人の本来の性格だろう

 

「全く、アイツは何ですぐに頼ろうとしないのだか···こんなの傾向の予測とそれに対応した対策をしておけば問題ないものだろうに」

「キアナ的には頼るのは自分のポリシーとかプライドが許さないんじゃない?」

「それで飯が食えたら幸せだかな」

「違いないわね」

 

過去の自分がそうだったのか、少し苦そうな顔でレベッカが呟くが、今の彼女なら問題ないだろう

 

「なんだ、ニヤニヤして」

「いやー、レベッカ先生には感謝ですわー」

 

その時、頭から鈍い音がしていっしゅん意識が飛んだ

 

「殴るぞ?」

「殴って···から···言うな!!」

「ちっ、意識が飛べばいいものを」

「物凄く痛いんですけど!?」

「当たり前だ、全力だからな」

 

あ、これは怒らせたらまずいわ

 

「それで、今日は何を教えるの?」

「数学と社会だ」

「レベッカの得意分野ね」

「ふっ、まぁな」

 

レベッカがそう言ってキアナ用のテスト問題を作り始めたので、私は着くまでの間にレポートを作る事にした




レベッカちゃんに出番を!!MOREDEBANは避けないとね!!


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Day 61

それは次の段階へのアプローチ


「よし、設計完了だ」

 

アークフレームの基礎設計を思い出しながら、今いる世界の技術で作れるレベルに改良を施す作業がやっと終わった

やり始めてから2ヶ月も掛かった、まぁ、任務や他の技術開発と並行していたからこれでも早く終わった方である

 

「全体性能比で3%向上したのは思わぬ収穫だけど、装甲の一部が犠牲になるし、追加装備のいくつかは装着出来なくなったのが問題かな···まぁ使うことも無さそうだし割り切るしかないよね」

 

一部の装着型追加装備が使えなくなったのは改良によって不要になったのと、装甲の一部が干渉するからだ

ほとんど使ってなかった装備が対象なので気にするほどではないにしろ、やはり惜しまれる点ではある

 

HiBst(ハイブースト)が使えなくなったのは少し痛いけど、通常時に少し毛が生えた程度の加速しか無かったからいいか」

 

HiBst(ハイブースト)···通常時の装備に加えて大型ミサイル用エンジン4発によって莫大な大推力を得る装備だ

しかし、通常時に毛が生えた程度の加速しか得られなかった

というのも、ブラックフレームには元々、大推力スラスターに加えてレーザーパルス推進装置という、大推力を単機で得るための装備があったからだ

原理としては大規模の水蒸気爆発を推進力に変える代物で、推進剤は水にアルミの粉末を均一に混ぜたものになる

そこに大出力のレーザーを当てることでアルミの爆発的燃焼と水の水蒸気爆発を利用する事で推力を得る

 

「光の翼を再現したかったけど、この世界の技術水準じゃ無理なんだよねぇ···」

 

それが出来たのは、あくまでも元の世界の技術水準がこちらよりも高いからだ

確かに技術的に再現出来る事が多いものの、それはあくまでコアパーツ以外のところだ

コアパーツはこの世界の技術では再現できなかった、では何故ブラックフレームが存在しているかというと、コア自体がこの世界にあったからだ

まぁ、私のバックの中に転がっていたのだが···

 

「偶然にしては出来すぎよ、全く」

 

だがまだ人工知能(AI)の復旧には至っていない

今はまだ、マスター権限を持つ私の思考と指示に反応して応答しているだけに過ぎない

完全復旧には、アークフレームへの強化改修が絶対不可欠だ

 

「はぁ、全く···」

 

何てものをあの人は開発して運用したのだか···そう思いたくもなる

だが、それ程までに求めたもの(平和)には、私も尊敬の念を抱いている

その結果として惨劇を招いたとしても、その思いと願いだけは間違いでは無いのだから

 

「私もあなたのようになれますか?カズマさん」

 

天井の、その先の空を見ながら、私は呟いた




アークフレームの性能は次章にて明らかに


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第4章 新たな力
Day 62


それは変革の始まり


「え、私の昇格試験?」

「えぇ、そうよ、なんでこの時期なのかは不明だけど」

「うわぁヤダなぁ」

「そうも言ってられないわ、大主教直々の命令よ」

 

ある日、私は最悪の展開に出くわしていた

S級への昇格試験の実施だ、最悪以外の何物でもない

 

「しかも大主教直々という事は相手もエリートでしょう?」

「不朽なる刃の隊長、だって」

「うわぁ最悪だぁ···相性悪すぎんだろ」

「どっちに?」

「もちろん相手に」

 

私の対応速度は相手を混乱させるのに特化していると誰もが思っているが実はそうでは無い

私の対応速度はあくまでも強引に状況帰るためのものであり、今回の相手には非常に相性が悪いのだ

 

「確認ですけど、こちらはフル装備でやって構わないんですね?」

「えぇ、相手の隊長はそれを望んでいるわ」

「分かりました、では」

 

私は空間モニターを出し、みんなを驚かせる

 

「これで行きます、相手が全力を望むならそれに答えないといけないですから」

「いやいやいや!!コレ頭おかしいでしょ!?なんなのこの化け物みたいな性能は!?」

「これが私の本来の機体です、AGX-11a アークフレーム"オーヴェロン"の」

 

アークフレーム"オーヴェロン"それが私の新たな力

機体本体の性能は今使っているイミテートブラックフレームのおよそ2倍以上

汎用性はオプションに分散し、本体は基本性能のみを追求するという発想の元に改良を施した機体

通常時は武装数こそやや少ないが全距離に対応できる基本形態で運用し、各状況に合わせて装備を換装する方式をとる

換装に関しては戦闘時でも円滑に行える方式を採用し隙を作らない

今回の装備は基本形態そのままだ、追加装備の開発は実の所まだ未了であるが装備面に関しては刷新してある

ビーム·ショットライフル、ビームサーベル、シールド、シールド内拡散メガ粒子砲、ヒートシザースとこれだけでも相応の汎用性だ

特にシールド内拡散メガ粒子砲に至ってはこちら世界の艦船に搭載されるビーム砲と同程度の火力を誇る

 

「まぁ、偽装を施した方が賢明でしょ。最初から本気よりも相手に合わせて本気の方がね」

「偽装用のパーツをつけた形態は?」

「これです」

 

偽装パーツをつけた形態を出す、それを見て皆は···

 

「ずんぐりむっくり」

「デカい的」

「重そう」

「舐めプ?」

 

と様々な反応を返してきた

 

「いやいや!!性能は全く下がらないどころか機動性はむしろ上がってるんですけど!?というかずんぐりむっくりと舐めプとか言った奴、後でシバくぞ?」

「ひっ!?」

「いや事実じゃ···」

「あ···?」

「何でもございません」

 

同じく呼ばれていたキアナとレベッカにそう言って少しだけ脅しをかけて静かにさせ、私は告げる

 

「これで勝てないと判断したら即座にパージして本来の姿で戦うさ」

 

アーマーはすぐに外せるようにしてあるし、装備もあまり変わらないから問題は無い

せいぜい拡散メガ粒子砲が使えなくなる程度だ

 

「ならいいがな、そのタイミングを見誤るなよ?」

「まっかせなさい!!私はそのようなヘマをやらないわ!!」

「どうだか」

 

レベッカの冷やかしにそう答えて、その場は解散となった

さて、本体の製造と洒落込むか!!




今話より第4章開幕


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Day 63 (上)

今回は上下段構成である


「え、今度の戦闘に着いてくるんですか?」

「えぇ、どれ程使えてるかのテストも兼ねてね」

「分かりました、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね」

 

戦闘は明日、ウェンディちゃんの担当だが私も参戦する

私は主に戦闘補佐を行うが、その作戦自体が実は私の立てたものだ

HALO降下を学生にさせる奴がいるわけがないだろう

ウェンディちゃんもHALO降下って何?という顔だったし

 

「さて、やりますか」

 

装備も今回は潜入用にカスタムする

と言っても外装をステルス装甲化するだけの簡易改造だが

 

「よし、あとはウェンディちゃん用の装備を作っておしまいね」

 

ウェンディちゃん用の降下装備を作り、明日に備える

そして翌日、私達は武装した戦術輸送機の中にいた

 

「1つ質問いいかな?」

「何かな?ウェンディちゃん」

「HALOって何?」

「高高度降下低高度開傘の略ね、潜入ミッションで空からの侵入時に使う方法の1種よ」

「学生としては初めての事?」

「誰にも教えられないけどね」

 

私はそういい、昨日作った装備を渡す

 

「ありがとう、でもこの作戦、先生達だと作れないよね?」

「そうね、難しいわ···天命本部からの亡命を望んでいる科学者を奪取する作戦なんて」

「立案したの、アヤカちゃんでしょ?」

「バレたか」

「こんな無茶振りできるの、私やブローニャか経験者であるアヤカちゃんしか居ないよ」

「お、おう···」

 

ジト目で言われた、確かにそうだけども

何故かといえばウェンディちゃんは風を操る事で衝撃を緩和可能で、ブローニャちゃんは重装ウサギを使う事で衝撃を相殺するし、私に関しては言うまでもなくブラックフレームの飛行能力で安全に着地出来るからだ

レベッカにやらせたらトラウマになって、それ以降しばらくのあいだ手伝ってくれなかったくらいには、一応危ない方法ではある

 

「私やブローニャみたいに対策がないんだから当たり前だよ···」

「何も言ってないんですが」

「顔に書いてあったよ、他のやつにやらせたらダメだったみたいに」

「oh......」

 

なんという事だ、衝撃に言葉が出ない···

 

「というより、レベッカさんがアヤカさんの事を高く評価していることが私には分からないんだけどなぁ···」

「まぁ色々あったのよ、色々とね」

 

そう、色々あったのだ···喧嘩(先生達が割と本気で止めに入るレベル)もしたし怪我(処置しないと死ぬレベル)を負った際の治療もした仲だ

 

「それに、みんなには見せない姿もあ···」

 

本人に正確なチョップを食らった、非常に痛い

 

「黙れ、そろそろ作戦開始時間だ」

「だからってそれする必要なくない!?」

「生身で放り出してやろうか?」

「すんません」

「なら良い」

 

酸素マスクを被ったレベッカに私達も見習い準備する

 

「降下6分前、後部ハッチ開くぞ」

 

レベッカの合図と同時に後部が開く

 

「日の出だ、この光景は美しいな。降下はしたくないが」

 

しばらく見蕩れる、意識を切り替えて任務を挑もう

 

「大気温度摂氏マイナス47℃、降下2分前、起立せよ(スタンドアップ)

 

言われたので立ち上がり、ウェンディちゃんに告げる

 

「時速130マイルで降下するわ、風速冷却での凍傷に気をつけて」

「分かった」

「降下1分前、後部に移動しろ」

 

ハッチの縁に立ち、下を見る

現在高度は14500フィート

HALO降下としては少し低めではある

 

「5···4···3···2···1、鳥になってこい、幸運を祈るぞ」

 

その言葉と同時に私達は降下を開始した




次は奪取作戦かな?


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Day 63(下)

これがフラグになろうとは


「こっちは着地地点に着いたけど、アヤカちゃんは?」

「より深くに先行したよ、私からウェンディちゃんは見えないなぁ」

「分かった、それぞれ目標近づく形で行こう?」

「了解、そのまま先行して行くね」

 

私はウェンディちゃんより相手に近い地点におりた

というのも、今回の任務にはもう一つ裏の事情があるのだ

 

「全く、私の部隊を使って実地演習ですか···昇格試験の相手によくそんな芸当が出来ますね」

「ありゃ、担当者がまさかの隊長とはね」

「役が不足しますので、私が急遽出向きました。不服ですか?」

「いいえ、驚いただけですよ···デュランダル隊長」

 

そう、今回の任務は潜入工作と見せかけた実地演習だ

その事を知っているのは学園の上層部と相手の部隊長であるデュランダル、そして立案者の私だ

まぁ、コレには部隊の錬成と私の事を知りたいデュランダル隊長と、相手を探りたい私、大主教の手の内を知りたい学園の思惑が絡み合ったからこその成果だし、手を抜くような真似は当然できない

でもなぜこうしたかといえば単なるサプライズが真相である

 

「よく受ける気になりましたね」

「私もあなたの人となりを知りたかったのです」

「それはまた」

「噂よりも、実際に会う方がよく理解出来るでしょう?」

「それは確かに」

 

私の質問にあっさり答えるデュランダル隊長に違和感を感じない

この人は本当にただそれだけで来ているのだと理解する

 

「それに貴女は油断出来ない人物だと思いましたので」

「おや、私のような小娘が?」

「貴女の目を見ていると、ある人物を思い出します···かつて私を救ってくれた2人のような」

「1人は大主教ですね?」

 

デュランダル隊長は空を見上げながら呟いた

 

「えぇ、そしてもう1人は恐らくあなたも知る人物。藍澤カズマ様です」

「どんな繋がりで?」

「人の過去を漁るのはいい趣味ではありませんね」

「あぁ、今ので理解した」

 

恐らく、過去のどこかで知り合ったのだろう

そしてその時、デュランダル隊長は危機的状況にあったに違いない

それを救ったのがカズマさんと大主教···ん?あれ、なにか違和感があるぞ?

カズマさんと大主教が、その場に居合わせた?

何故だ?

 

「真剣なところ申し訳ないですが、貴女の方の隊員は予想より早くこちらに向かってますよ」

 

その言葉で、思考を一時中断する

今はこちらが優先だ

 

「あぁ、その点なら問題ないですよ」

 

笑いながら返事し、私は続ける

 

「ここからが本番ですから」

 

そう言ってとある機材を持ち、ウェンディちゃんが来るルート上の吊り橋に向かう

 

「アヤカちゃん?」

「奇遇ね、こんな所で会うなんて」

「なんでそっちから来たの?私は···きゃ!?」

 

博士役のアルヴィトルさんは上から現れたステルスヘリのウィンチで吊り上げられた

 

「くっ!!」

「私はあちらに着く」

「どういうつもり!?」

「こういう事よ」

 

吊り橋の床に落としたものを見て、ウェンディちゃんの顔色が変わる

 

「崩壊弾仕様のデイビー·クロケット!?何でアヤカちゃんがそれを!?」

「これを手土産に、反乱するのよ」

「どうして!?」

「さぁ?時々の気分ね」

 

次の瞬間、ウェンディちゃんが向かってきた

 

「ふざけないで!!」

「残念だ、残念だよウェンディちゃん」

 

殴ってくる左手を掴み、そのまま一本背負いの要領で床に叩きつける

同時に肩も脱臼させる

 

「つっ···!!」

「貴女達は、私の理解者になれなかった」

 

立ち上がり、蹴りこんでくる足を掴んで今度は100メートルの深さに達する峡谷に投げ捨てる

ウェンディちゃんならこの程度、難なく降りられるだろう

 

「自分の部隊員にそこまでやりますか」

「なぁに、あの子なら意地でも追ってきますよ」

「恐ろしいまでの評価の高さですね」

「信用してますから、信頼もしてますしね」

 

後ろから見ていたデュランダル隊長にそう返し、流れ着いたウェンディちゃんを見下ろす

 

「この程度の難関、突破してみなさい。ウェンディ」

 

そして待ち構える場所へ向かった




峡谷落ちる、ウェンディちゃん
いくら元風の律者といえど普通なら死にますよ主人公さん?
(作者は鬼畜だもんね仕方ないね)


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Day 64

それは新たな力の覚醒


「ようやく、追い詰めたよアヤカちゃん!!」

「よもやここまで追い詰められるとは私も想定してなかったよ」

 

アレからウェンディちゃんは怒涛の勢いで追いかけてきた

鬼気迫るとはあの事を言うのだろう

 

「どうしても貴女に聞きたいことがあるの」

「そう、私がその質問に答えると思うの?」

「答えてもらう、何が何でも!!」

「そう、なら来なさい」

 

私は緩く構える

今はその行為だけでも私が真剣であると分かるはずだ

 

「ライジング!!」

「ブラックフレーム」

 

それぞれの力を取り出し、起動する

 

「変身ッ!!」

「変身」

 

黄緑の光と黒の闇が世界に生まれる

そこから現れたのは、緑の目の色に変わったウェンディちゃんと黒の闇を纏う私だ

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

「ふっ!!」

 

風の攻撃をステップだけで躱し、こちらの反撃を繰り出す

 

「ダークネス、ブラスター!!」

 

ライフルの出力リミッターを解除、最大出力で放つ

 

「ライジングインパクト!!」

「ちぃ!!」

 

ウェンディちゃんはそれを風の壁で反らし、お返しの反撃を繰り出してきた

 

「なかなかの威力に仕上がっているわね、驚いたわ」

「涼しそうな顔で言われたって、説得力ないよ」

「あら、それは手厳しい」

「貴女を倒す、そのための力をあなたに示します!!」

 

次の瞬間、ウェンディちゃんは変身を解き、プログライズキーを握り締めた

 

「眩い光を今ここに!!」

<shining jump !!>

「変身!!」

<The rider kick increases the power by adding to brightness!!>

 

光に包まれ、ウェンディちゃんは新たな鎧を待とう

 

<shining hopper !!>

「はぁ!!」

<When I shine,darkness fades>

 

各部の鋭利さが増した新たな姿

その姿は律者だった時に更に近くなった

当然それだけでは無い、戦闘能力もそれだけ高まっている

 

「行きます!!」

「来るがいい」

 

斧とショットガンの機能を備えた特殊装備、オーソライズバスターも持っている

いやはや、初回起動で持ちますか普通?殺す気満々じゃん

 

「てやっ!!」

「あぶなっ!?」

 

よそ見してたら攻撃をされていた、それを紙一重で躱し、お返しに蹴り上げるが躱される

 

「くっ!!」

「いやー、今のは危ないね、まさか()()()()()()()()()()()()とはね」

「躱したのによく言いますね!!」

「言えるだけの余裕もそろそろ無くなるんだけどね」

 

ウェンディちゃんの成長を喜ぶ半分、その速度に驚きもある

いやはや、予想の斜め上どころか真上を高速飛行してくれるな···

 

「だから私も、本気で行こう」

 

次の瞬間、機体の全リミッターを解除し星辰炉の出力を遠隔で最大出力に移行しそのエネルギーを受け取る

 

「全出力最大、一撃で倒してあげよう」

 

オールドライブ、フルパワー

Ex-S(Extraordinary Superior)モード、起動

 

「なに、その姿は···!?」

Ex-S(イクスェス)モード、参る!!」

 

4基の追加大推力スラスターに加え、2基の大容量プロペラントタンク

それらを支えるために全身を覆う追加装甲を施し、遠隔攻撃システムも追加した重装仕様

元の全備重量が約65kg、総合推進力が350kgに対して、全備重量185kg、総合推進力は1490kgという化け物のような強化を果たした

なお、これでもまだ機動性が低下しているのを無視している

欠点としてはそれだけの高性能を発揮するためには高い素養を必要とする点であるが、私自身がそれをすでに満たしているため実行している

 

「くっ!!速度では私の方が速いのに!!」

「装甲強度と手数では私が上だ、早く解決しないとジリ貧だぞ?」

「分かってるよそんな事っ!!」

 

削れるだけ削ろうとしているのだろうけど、私の方が経験と勘で上回る

速度では確かに手も足も出ない程にウェンディちゃんが速い

しかしこちらはそれを補い余りある能力で後塵を拝させない

 

「これでッ!!」

「甘いッ!!」

 

アックスモードにしたオーソライズバスターでの攻撃を、リフレクターインコムで曲げたビームで軌道をそらす事で回避する

同時にビームサーベルで切り払い、そのまま壁に叩きつけた

 

「がはっ!!」

「終わりよ、ウェンディ」

「つっ!!」

 

首元にビームサーベルを突きつけ、私はそう宣言する

 

「降参···するしかないね」

「えぇ、そして···」

 

レベッカに持たせていたあるモノを受け取り、ウェンディちゃんに見せつける

 

「えっ?」

「これはドッキリでーす!!楽しんでいただけたかな?」

 

ドッキリ成功!!というプラカードを見せられ、ウェンディちゃんの思考が停止した

ようやく認識し、ウェンディちゃんがとった行動は···

 

「あれ?なんで変身しようとしているのかな?」

「絶対···絶対に···」

「・・・?」

「絶対許さない!!」

「のわぁぁぁぁ!?」

 

全力の鬼ごっこが始まった




これは酷い


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Day 65

天命最強VS最強の後継
その力の激突が始まる


「よし、行くか」

 

あれからウェンディちゃんに丸一日追いかけられた

最終的にウェンディちゃんがダウンしてどうにかなったけど

 

「オーヴェロンの偽装は完了、本体がまだ未完成なのはどうにもならなかったか···まぁ、どうにかするしか無いでしょうね」

「勝てる見込みはあるのか?相手は最強のバルキリーだぞ?」

「相手の思考パターンは既に演算している、後はそれを適宜補正、再演算する事で精度を高めていくしかないよ」

「行き当たりばったりか、お得意の」

「正直な話、勝てる自信は無い」

 

私のその発言に、レベッカは驚いた顔をした

 

「珍しいな、お前からその言葉が出るとは」

「戦闘スタイルが真逆だからね、やりずらいの」

 

挙句、相手の得意とする距離(レンジ)が私の苦手とする距離(レンジ)と来た

対処ができない訳では無いが、それでも慎重になるのはそれだけ相手が強いからだ

 

「で、どうする?」

「決まっているわ、偽装自体を攻撃に転化するのよ」

 

偽装の解除は検討時は剥がれ落ちるようにする分解方式としていたが、相手の戦績から再検討した結果、炸裂ボルト·リベット溶接による爆砕方式へと変更した

幸い、この変更による重量増加は無い

 

「相手が接近した所で爆裂させて装甲で押し飛ばすのか?」

「まぁね、自爆と見せ掛けるにはなかなかインパクトがあるでしょ?」

「呆れた」

「即座に返してくれてありがとう」

 

見た目のインパクトは今回の相手に意味は無いかもしれない

だがしかし、こう思わせることは可能だ

"次は何をしてくるか?"

そう、こちらが次にどう動くか、その予測をさせない為の布石なのだ

 

「全ての行動に意味があるのは分かるが、少しは自重しろ」

「えぇ、分かっているよ」

「と言ってやらかすから信用出来んのだ」

「これは手厳しい」

 

あちゃー、と言うふうに笑いながら全てのチェックを完了する

 

「さて、開始まであと数分だね」

「一応聞くが、負ける気は無いんだよな?」

「当然、何がなんでも勝たせてもらうよ」

「なら良い、お前の気合と根性、見せてくるがいい」

「オーライ、任せろ」

 

レベッカと手の甲と甲をぶつけ、笑いながら最後の用意をする

 

「システムOK、パワーコンジットオンライン、ジェネレーター正常、スラスタークリア、アークフレーム"オーヴェロン"、出撃()る!!」

 

そして戦いの場へ飛んだ

 

「待ってました?」

「いえ、私もつい先程用意が終わったところです」

「そうですか」

 

降り立った時には既に待たせていた

本人は待ってないように言っているが、それにしては裾の汚れ方がおかしい

 

「時間も余りありません、早速ですが」

「もう少し話したいですが仕方ありませんね、では」

 

次の瞬間、同時に動いていた

 

「参ります!!」

「行くっ!!」

 

槍と剣がぶつかり火花を作る

音の速さを超えて、光がきらめく

 

「はっ!!」

「ちっ!!」

 

ビームサーベルが1本叩き落とされた、残る片方で攻撃を捌く

 

「そこっ!!」

「なめるな!!」

 

脇を狙う攻撃を、肘と太ももの装甲で止めて反撃をお見舞する

 

「つっ!!」

「もらった!!」

「かかりましたね」

 

次の瞬間、飛来してきた槍に後ろから···貫かれることは無かった

 

「なっ!?」

 

全装甲を一括でパージ、真の姿を現す

 

「これが私の真の姿、ここからは私のステージだ!!」

 

シールドに装備されたメガ粒子砲を放つ、その威力は30階建ての建造物を一撃で倒壊させるほどのものだ

 

「その威力···あまりにも危険すぎますね」

「回避しておいて良く言いますね」

 

やはり苦手なタイプの相手だ、面倒くさい!!

 

「では、奥の手を使いますか!!」

 

切り札全て切らせてもらおう




次話にて決着


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Day 66

約1ヶ月も遅れて済まない


「そこっ!!」

「甘いですよ」

 

あれから全てのリミッターを外して戦闘をしているがなかなか相手を捉えられない

回避速度とそこからの反撃の速度が早い、単純な機動性だけならむしろあちらが優位だ

しかし相手も私にダメージを与えられていない、装甲強度が違うからだ

 

「それが本来の姿であるのはわかりました、ですがまだ裏がありそうにも思えます」

「あぁそうかい!!」

 

攻撃のお返しにビームサーベルで斬り掛かるが槍でそれを防がれた

 

「仕方ありませんね、まだ完成はしてないですが使わせてもらいましょう」

「やはり隠していましたか···」

 

一度距離を取り、追加デバイスを取り出す

 

「変身···」

<Ark Rise !!>

 

オーヴェロンの外装が剥がれ落ち、その裏にあった金色の装甲までも剥離する

 

「それが本当の姿ですか···禍々しいですね」

「未完成だからね、仕方ないさ」

 

その瞬間、必殺の一撃を起動させる

 

「しかし、機密中の機密だ、そうそうに倒れてもらおう」

<All Extinction !!>

 

エネルギーを一点に収束し蹴りを放つ、それを槍で受けたデュランダル隊長だったが、思いもしない高出力に対応しきれず手から槍が落ちた

 

「終わりだ」

<All Extinction !!>

 

そして再び発動させ、緊急で展開したシールドごと蹴り飛ばした

 

「なるほど···それが全力ですか···」

「案外しぶといな···厄介なんだよそういうのは」

 

アークフレームに姿を戻し、その上で追加装備であるオーヴェロンまで差し戻す

流石に機密中の機密の姿を長時間晒すわけにも行かない

 

「私は最強の戦乙女(ヴァルキリー)です、敗北は許されてないのですよ」

「あっそう、なら···」

 

ビームショットライフルの銃口を向けて私は告げる

 

「これが貴女の初敗北だ」

 

圧縮したエネルギーを解放した

しかし、その一撃はかき消される

 

「あなたも隠していましたか···」

「スターアンカー···使わせてもらいます」

 

あちらも隠していた姿があったらしい

その名はスターアンカー、美しい姿と名だ

だが···

 

「ちいッ!!」

 

攻撃力は恐ろしいまでに跳ね上がっている、いや、総合性能の時点で既に桁違いの上昇か

 

「はぁ!!」

「くっ!!」

 

後ろ蹴りを防ぐ、しかし···

 

「なにぃ!?」

 

巨大な弓が形成され、そのまま弾き飛ばされた

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

致命的なダメージを被る前に、気合と根性でそれを突破する

しかしこれによりシールドは破壊された

機体性能を活かして戦うということは既にそのアドバンテージの基礎から崩壊している

ならばどうする?どうすればいい?

簡単だ、それが出来るのは···

 

「オーヴェロン、解除···アークフレーム、戦闘を続行する!!」

 

オーヴェロンの偽装を解除、黄金の鎧を纏うアークフレームへの移行を行う

相手が格闘型なら、こちらもそれに合わせればいい

 

「行きます」

「来るがいい」

 

デュランダル隊長が迫る、その速さは先の比ではない

だが、それを私は片手で防いだ

 

「つっ!?」

「これで終わりだ」

<Strike Impact !!>

 

必殺を叩き込むため、腰にあるエネルギーローダーを押す

それにより機械音声と同時にエネルギーが再度収束する

それを全面に解放、吹き飛ばしてフィールドから離れさせた

これによりデュランダル隊長は無条件で敗北となる

 

「まさか、その方法を取るとは思ってませんでした」

「私としても不本意だよ、貴女とは正々堂々と勝負したかった」

 

そう、本来ならフィールド内で決着をつけるつもりだった

だが、相手の強さは私の想定のはるか上だった、そんな相手に勝つ方はこれくらいしか無かったのだ

 

「では、またいつか戦える時は全力で正々堂々と」

「えぇ、またいつか」

 

最後に握手し、今回の件は終わる

そして私は極東支部所属のS級ヴァルキリーとして昇格した···あんまり嬉しくないなぁ




次話、新章突入!!


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第5章 過去と自分の正体
Day 67


ここから明かされる主人公の正体
それは一人の男の人生の終わりから始まるものであった


「キアナが攫われた!?」

「えぇ、最悪な事態よ・・・」

「指示したのはオットー大主教、やったのは直属部隊の不朽の刃だ」

「恐らく実行者はリタ・ロスヴァイセだな・・・」

 

いま、学園は朝になる前から慌ただしい

それもそのはずだ、学園の生徒が上層部から何の通達もなしに連れ去られたのだから

 

「やってくれる・・・と言いたいけど」

「なんで私がここまで静かにしてるか疑問ですか?」

「えぇ、普通なら貴女ここでマジギレしてるでしょ?なのにここまで静かなのには理由があるはずよね?」

「えぇ、そこまで深い理由ではないんですけどね」

 

私はそう言うと、小型端末を出す

 

「さて、そろそろ」

 

次の瞬間、ホログラムディスプレイが出る

 

「これは・・・今のキアナの位置!?」

「えぇ、こうもあろうかと学園生に配布される通信端末にバックドアを仕掛けてあってね」

「いつの間に・・・」

 

それこそ、少し前に言われた事だ

先生達の手が足りないから、生徒に配っていた端末の保守管理を任されたのだ

 

「私に端末の管理を依頼した時から」

「あっきれた!!どんなひどい手癖なのかしらね!!」

「でも役に立ったでしょ?」

「今回はね!!」

 

キアナの現在地・・・それは天命の研究施設の本部・・・バビロン

 

「防御は完璧と言ってもいい・・・でもそれを切り崩す術はある・・・」

 

そう言うと、闘真さんは少し青い顔で私に質問してきた

 

「おい、まさかと思うが俺のところから徴用する気じゃねぇだろうな?」

「借りますよ、返せるとは言わないですが」

「俺も行く、何しでかされるか分からねぇし、第一お前には艦隊戦なんて無理だろ」

「それもお願いしようと思っていました」

「はぁ・・・まぁいい、艦の指揮は任せろ」

 

そう言うと闘真さんは席を立ち一旦自分の研究所へ帰っていく

明日の朝には簡易艤装を済ませて学園の近くに来ているだろう

 

「さて、ここからが問題だけど・・・」

「キアナがナニカされている可能性があるのは間違いないね、そしてそれは碌でもないことだ」

「どうするというの?それでキアナがどうなると思っているのかしら?」

「律者にでもなるんじゃない?あるいはソレが目的なのかもね」

 

学園長、姫子先生、その場にいた全員が青い顔になる、それは薄々感じていた事でもあった

芽衣の半律者化の際のキアナの行動による沈静化・・・それは普通ありえない事でもあったからだ

それが可能なのは恐らく、同等の存在のみとされるから

例外はウェンディの際の私の行動、崩壊エネルギーを消滅させながら、身体には殆どダメージを与えないどころかむしろ異常を治して律者化を防いだ

 

「貴女の場合は自分自身の性質と過去と経験によるものだけど、キアナの場合は最悪を想定してはいたわ・・・それがこんな形で現実になるなんて悪夢以外の何ものでもないけど」

「まだ、防ぐ方法はある」

「何を仕掛けるのかしら?」

「まだ試作段階ではあるけど、崩壊エネルギー対消滅兵装を作っている。既存の崩壊現象のほぼ全てを対消滅可能だ」

 

レベッカ達技術班による試作兵装、それは私も聞いていたがまさかそういうものだとは初耳だった

 

「後は実戦でどれほど使えるか試す段階だが、予定を早めてキアナ奪還用に使う」

「可動の安定性は?」

「現在大急ぎで調整させている、2日あれば運用可能まで行けるだろう」

「よし、任せるよレベッカ」

「あぁ、任せろ」

 

レベッカも退室した、これから大急ぎで調整作業の取り掛かるのだろう

 

「さて、問題は貴女ね」

「武装はメンテ中だし、アークも装備の見直し中だし、ないないづくしだけど問題はないよ」

 

切り札がないわけではない、その代わり危険性は言うまでもないが

 

「さて、明日に備えましょう・・・明日から一気に世界が変わるから」

 

それは私自身も含めてのことだと、この時の私には分かっていなかった




新章開始、ここより胸糞展開注意


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Day 68

それは地獄の幕開け
絶望の底へと落とす記憶と記録
それはある男の視点から見た世界そのもので・・・


「やれやれ、想定していたとは言え、これはいささか相手が上だったとしか言えないな」

 

私は作戦会議後、自分の機体を再構成し直していた

現状使える装備は対崩壊用の通常装備のみ、前の世界で使用していた装備は保存こそしているが再度使えるようにするには、いくつかの回路を調整する必要がある

 

「それだけでなく、摩耗の激しい部材の交換に、システムの全面刷新と・・・やること多すぎだよ」

 

幸い、システムに関しては闘真さんから基礎システムを貰い受けているためそれを専用に改修するのみでいいのは救いだが・・・

 

「このデータ、一体どこから仕入れてきたのやら・・・」

 

そう、システムデータが完璧な形で揃っているのだ

それこそ、カズマさんの愛機であったブラックフレームの基礎データが丸ごと揃っている

 

「あの人の機体は前世代機で、ブラックフレームの試作機であるからカーネルだけは似てるのは理解できるけど、ここまで似ているなんて事はありえないはずなんだけどなぁ・・・」

 

機体の再構成は幸いにもあとはシステムの再インストールのみ

それも一晩あれば終われる

 

「しかし、闘真さんは一体ここからどうやって研究所に戻って用意してくるんだろ?」

「それは簡単、相棒使って高速移動するのさ」

「まさか、今からかっ飛ばして帰るつもりですか?」

「というより、既に呼んでいるんだなこれが」

 

・・・は?何言ってるのこの人?

 

「簡単な話さ、あの研究所自体が偽装工作だということ」

「あぁ、なるほど、お得意の分野でしたか・・・またやりましたね、クソ野郎」

「俺はもともと、スパイだからな、裏から回せる手ならどんなものでも回してみせるさ」

「マッチポンプまでやる必要があるんですか?世界を壊す気?」

 

そう、この人はこの世界でも自分のシンパを作った上で科学技術の発展を支援していたのだ

世界が今のような事態に陥ることを想定しその対策のために

かつてスパイをしていた時に得た知見を最大限活用し、その上ですべての想定しうる事態に対処するべく

自分を蚊帳の外にいる演者と見せかけながら、裏からと表の両方で関与する

マッチポンプまで駆使して

 

「はて、マッチポンプとはどうゆうことかな?」

「あなたは、キアナの行方を私に聞かなかった。知っているとしたら私とレベッカのどちらかだというあの状況で」

「それで?その根拠は?」

「その時には既に、キアナのおおよその位置は知っていたから。聞く必要自体がないから聞かなかった」

 

それに、と私は続ける

 

「動態保存されていたコンコルドの回送が日本のとある企業に行われていた事をレベッカが掴んだ。そしてその企業は闘真さん、貴方の研究所のフロント企業体の一つだった」

「ありゃりゃ、そこまでバレてたか」

「回送もおそらく演技でしょう、最初から貴方は大主教に奪わせるために手配した・・・違いますか?」

「まっさかー、流石にそれは想定外だよ。本来なら日本着後に奪われる予定だった」

「それまさか空中で行われるなんて考えてなかったと?」

 

私はそう言う、闘真さんは相変わらず普段と変わらない笑顔のままだ

 

「そこも考えて、それなりの戦闘力を有した人材を載せていたんだが・・・まさかスパイがスパイを仕込まれるとは笑い種だよ」

「・・・」

「俺も一杯食わされたってことさ・・・まぁ、これから高い授業料をふんだくってやるがな」

 

どうやら、真実は彼も騙されたと言うことらしい

今の声には静かな怒気も入っていた

 

「俺はこれから自分の専用鑑を取りに行く、準備はしておけよ?」

「えぇ、戻ってくる頃には終わっていますよ」

「それもそうだな」

 

そう言って闘真さんは自分の相棒を身に纏い、空を駆けていった

 

「さて、残りの工程を終わらせるか」

 

作戦決行まで残り一日、この作戦は必ず成功しなければならない

失敗は人類の敗北を意味するのだから




Q,何故こんなに空いてたか言え
A,死にかけてた、気がついたら半月も意識なかったらしい
ちなみに理由は頭部をうっての一時的な脳圧の上昇によるもの、心臓が3回ほど止まりかけたらしい
いや、死にかけたのは初めてだったよ・・・幸い復活したけど
医師からもこれは非常に珍しいとの事・・・二度と経験したくねぇ・・・


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Day 69

世界を破滅に導いたものの再会
そして主人公の意外な正体


「ちっ・・・オットーめ、厄介なものを厄介な場所においてやがる」

「まさか、対要塞砲を防衛に用意しているなんてね・・・」

「攻略しようにも難しいぞ、これじゃあ」

 

そこで私はデータを出す

それはかつて、あの人が集めていたものだ

 

「それはカズマが集めていたデータか?」

「えぇ、偶然、暗号化状態で学園のサーバにあったのを見つけて復号化したわ」

「これは・・・」

 

そこにあったのは・・・

 

「これは・・・建設中のデータじゃない!?一体どこで見つけて保管してたのよ!?」

「それだけじゃありません、このデータにはウィークポイントまで起債されているんです」

「マジだわ・・・一体あいつはどこまで先を行ってたのよ・・・」

「おそらく最終的には全面戦争を計画していたのだと思います、ここまで綿密に調べていることからの推測ですけど」

 

そして・・・

 

「あぁ、それとこれは今更ですけど、私はカズマの分身ですね」

「・・・は?」

 

全員が私を見て唖然としている

 

「いやー、実はですね」

 

私は先程の言葉の理由を告げる

 

「カズマの残したデータを見た際に、本当の記憶を思い出したんです」

 

もう、名前だけしか呼ばない

なぜならそれは自分自身だから

 

「まず、前提から言いますと。カズマの女性的な人格を一個の知性体として分離したのが私です」

「それが出来るわけないじゃない!!一個の知性体には一つのクオリアが原則と教わったわよ!?」

「カズマに、ですよね?」

「えぇ・・・」

 

テレサの言葉に私はそれを教えた人間の名前を告げる

そう、それを教えたのはカズマ・・・すなわち私だ

 

「個有知性体としての認識ならそれで間違いないわ。でも、複数のクオリアを持つ一つの知性体・・・共生知性体ならば話は別よ、その点は闘真さん。解説お願いします」

「やれやれ、そこで俺の出番か・・・まぁ、俺も同じく共生知性体だからな」

 

そう言って闘真さんは自分の愛機をテーブルに置く

 

「相棒、一緒に解説するぞ」

「はいはーい、資料だしますね!!」

 

彼の相棒であるダークフレーム・・・共生知性体としての半身が元気に答えてホログラムの姿を現す

 

「まず、私と闘真、アヤカとカズマを除いた皆さんに該当するのが個有知性体、一つのクオリアを持つ一つの知性体です。これは当たり前ですがそうした方が進化の都合が良かったからですね」

「都合が良かった・・・?」

「えぇ、複数の知性体が集まれば、どうなるかは火を見るより明らかでしょう?」 

「争いが起こるわね」

「はい、だから進化の過程で不要となった部分である共生知性体は淘汰されました」

 

そうすることで、早期の絶滅を回避した

だが、そうしたことで不都合も生じる

 

「ですが、それによる不都合もありました。まずは人間同士の抗争が長期化と激化を繰り返すようになったことですね」

「そうなると、どうなるのよ・・・?」

 

それには私が答える

 

「知性体の氷河期が来るわ。知性体としての閉塞期間。人類が自らの生存領域を荒廃させ得る能力を獲得してから、その精神性が一向に進歩しておらず、むしろ緩やかに衰退している状態ね」

「まぁ、それを克服するために、私と闘真、それで足りなくてアヤカとカズマが生み出されたんですけどね」

「生み出されたって・・・それじゃあ貴女達は・・・!!」

「えぇ、生まれからしてロクでもないわ、救いようもない」

「そもそも、救われようとも思わんがな」

 

闘真さんが余計なことを言ったのでヒールの先で足の甲を踏みつけて黙らせた

 

「まぁ、そのおかげか、そのせいかは知らんが俺達の生まれた世界は無事に崩壊しちまったがな」

 

闘真さんがそう言い、笑う

 

「えぇ、カズマがブッ壊しましたね、一つ残らず」

「アイツはキレたら何しだすかようわからんからなぁ・・・美点は沢山あるんだがそれをたった一つのことで台無しにしてしまうし・・・」

「おう、師匠なんか言ったか?」

「君たちも怒らすなよ?」

「は・・・はい」

 

思わずキレかけてカズマの喋り方で言ってしまった

 

「まぁ、俺達はこのように人間としては狂ってるといっても過言じゃねぇんだが、なぜ安定していると思う?」

「それが、貴女達の使うソレなのね?」

「そう、ストライカーシステムっていう正式名称があるんだが、これは不安定な共生知性体としての在り方を安定させると同時に戦闘時において一人で一国軍と互角以上の戦果を発揮するために開発した兵装だ」

「私の使うのはその最新の後継システム、フレームシステムと呼ばれるものね。基本コンセプトは同じだけど、これに関してはある程度の自由な運用が可能になっている点が違うかしら?」

「元々はカズマが一般向けに開発していたものを軍部が丸ごと接収して軍事向けに無理やり作らせたのが始まりだけどな、カズマのあの時のキレようは凄まじかったぞ」

 

思い出したら寒気がした

その時の自分の感情を思い出し、おぞましさに恐怖する

 

「まぁ、反旗を翻す寸前にクーデターで軍事政権が終わって、カズマも本来の目的に戻れてひと安心したんだけどな」

「軍用も後期型を合わせても50機行かないくらいで設計と一部生産が終わりましたからね」

「おかげで部隊運用には向かない代物って認識になって倉庫の肥やしになったのもあるがな」

「知りませんよそんなの」

 

そうって私は相棒を出す

 

「あれ、気づいてた?」

「当たり前でしょう」

 

そう、AIとしての機能は復旧していたのを気づいていた

これまで私とともに戦ってきた半身を皆の前に置く

 

「はぁ・・・まぁ、皆さんお気づきかと思いますが、このダメダメな面が目立つ残念な人の相棒してます、ゴールドフレームです」

「おいこら、誰がダメダメだって?」 

「え・・・?独断行動に問題発言と行動、命令無視の常習犯である自覚がないと?」

「くっ・・・!!」

 

言い返せない・・・!!

 

「まぁ、こんな人ですけど皆さんの思うような人物でもあります。一つ訂正するなら、この人以外とさびしがり屋なので」

「余計な事を言ってんじゃないわよ!!」

「あぁ、それと、そこにいる医師の方、そろそろ正体を現しては?いい加減イライラしてきてます」

 

全員がこの場にいる唯一の医師・・・古参の人に目を向ける

 

「いつから気づいていた?」

「アヤカは最後にしようと我慢していたようですが、私はそれほど我慢できませんので」

「はぁ、バレてんなら今更偽装するまでもないか」

 

次の瞬間、その姿が変わる

 

「カズマ・・・アンタ死んだんじゃ・・・」

「表向きはな、辛うじて生きながらえていたんだがかと言って表立って行動するのも出来なくなったから、アヤカを分離してお前たちの学園に保護してもらった」

「最初から私達はアンタの手の上で踊らされていたといいたいの?」

「いや、そうじゃない。お前達のおかげでコイツは俺から完全に独立できた。このことには感謝してもしきれんよ」

「私に精神干渉してきといてよく言うわよ」

「そうしないとお前がオットーのコマにされそうだったからな」

 

カズマがそう言い、私の頭を撫でる

 

「俺と師匠で舞台は整えてやる、後はお前たちこの世界の人間とそこで生きる異世界の出身者が未来を作れ、壊すのは俺達だけで十分だ」

「あぁ、久しぶりに全力で暴れ散らかすぞ、カズマ」

「おう、本気でブッ壊してやる」

 

これで方針は決まった

最強戦力二名を最前面に送り込みその戦力を持って正面突破する




Q なんでまた一ヶ月以上空いた?

A 退院してヒャッハーして不摂生したら尿路結石と膀胱炎と肝臓炎の
 トリプルコンボを食らった


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Day 70

それは取り戻さなければならないもの
大切な存在にして、自分の存在証明


「ところでカズマ、一つ疑問なんだけど」

「なんだ、言ってみろ」

 

互いの相棒をメンテナンスしながら、私は疑問に思っていたことを質問する

 

「イセリアは?彼女もワンセットがあなたでしょ?」

「こちらの世界の神にNTRされた」

「あぁ、つまりあなた、この世界の神様の正体を知っているのね」

「最悪だと言っておく、詳細な正体は俺でもよく分からん」

 

帰ってきたのは意外な言葉だった

カズマですらその正体におおよその予測しか出来てないのという事実に驚く

 

「辛うじて、俺の権能を維持するのでやっとさ、イセリアは自分から接続を解除してその瞬間に敵に乗っ取られた」

「どうする?」

「決まっている、イセリアはそうすることで俺がこの世界の神を倒すであろうと予測していたのだからな」

 

そう、行動は決まっている

 

「倒してやるさ、でも、俺ではないこの世界の住民の手でな」

「そのためには敵対もする?」

「あぁ、もちろんさ」

 

だが今は、キアナの奪還が最優先だ

 

「光も闇も境界線も、あるがままにあっていいのさ・・・人類の可能性は三次元の世界で語れるようなものではない、それを阻害するだけの神性(カミ)など時代遅れの枷でしかない」

「それでも神性(カミ)に弓引けないというのなら、私達の責を果たすまで。結末を知っていた存在(モノ)として、必ず新羅を新たな世界に昇華させてみせるよ」

 

その先の言葉を奪って、私は呆れる

 

「まったく、前とどこも変わらないわね」

「人間そう簡単には変われないさ」

「だとしてもあなたの場合は変わらなすぎよ、少しは自覚しなさい」

「片腹痛いな同一存在」

「シバくぞ?」 

「そういうとこだぞ・・・」

 

カズマが何か言っていたが、知らんふりしてメンテを続ける

 

「あ、カズマ、星辰炉はどうするの?」

「現状維持、あれは本格稼働させるとこちらの世界との干渉で空間軸が壊れる」

「あぁ、元が元だしね、最後まで温存するのね」

「あぁ、ここぞという時以外には役に立たんからな」

「それまでは動力として使うだけって事ね」

 

周りに誰も居ない事をいいことにこれからの動きを確認する

 

「俺はとりあえず雑魚共を掃討する、お前は迷わず、教え子達と奪還してこい」

「そうさせてもらうわ、先にっておくけど討ち漏らさないでよ」

「あぁ、一匹だって通してやらん」

 

そう言うと右手をあげたので、私は左手をあげる

同時に手の甲を打ち合わせ、互いに微笑む

 

「にしてもお前は変わったな、前とはえらい違いだ」

「そうかしら、本質では変わってないように感じてるけど」

「そうでもないさ、以前のお前なら今のような事はしてないだろう」

 

先にメンテを終えたカズマはそう言って私の頭を撫でる

 

「その変化は正しいものだ、俺から分離し、自らのアイデンティティを確立し、同じ道を歩んで別の答えを見つけてくれ」

「えぇ、そうするわ」

 

返答した時には部屋にいなかった

私の回答など分かりきっていたのだろう




主人公「それで再び1ヶ月近く空いてた理由は?」
作者「原神が楽しすぎたんや、俺は悪くなあぁぁぁぁ!?」(電気ショックで意識シャットダウン)


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Day 71

それは決戦の前段階、英雄はかつての仲間を呼び寄せる


「そろそろ呼ぶかー」

「早く呼んでよ、後から集めるの大変なんだから」

「相棒、全員に繋げ」

「こちらに来ている方全員ですね?」

「あぁ、もちろんだ」

 

その瞬間、私はこの場にいる全員···芽衣にブローニャに委員長と、姫子先生と学園長に耳を塞ぐようジェスチャーする

 

「全員集合ッ!!」

「「やかましいわボケェ!!」」

 

全員に同時に返されてやんの、笑えるわ

 

「通信切れました」

「泣いていいかな···?」

「自業自得かと、私のマイクも壊れるかと思いました」

「・・・」

 

相棒にすら容赦なく批判されてやがる、やばい笑いが堪えられん

 

「おい、アヤカ···」

「そうしてると、恋人に尻しかれてたのを思い出してね」

「思い出さなくていいものを思い出しやがって···」

「それじゃそのまま尻に敷かれてちょうだい、横から見ていて楽しいから」

 

私はそう言って厨房に向かう

 

「私も手伝います」

「ありがと、芽衣。それと、私の真実を聞いても変わらずに接してくれて嬉しいわ」

「アヤカさんの事を改めて聞いた時は驚きました。でも、知っているのとあまり変わらないように思えたのも事実なんです」

「おや、それは何でかな?」

「藍澤さん··でしたよね?あなたの半身とも呼べる人···」

 

質問に関して、わたしは頷く

 

「えぇ、そうよ」

「今もですけど···初めて見た時、男性としてみた時のアヤカさんだなぁ···と感じたので」

「はい···?」

「だって、自分以外の事に本気じゃないですか、アヤカさんも、彼も」

 

そう言われて、初めて気がついた

確かにそこだけは同じだ、本質として似ているのだ

 

「それにどことなくですけど、私たちを見る目が同じだと思いました」

「あぁー、言われてみれば」

 

そう、カズマも私も、みんなを同じ目線で見ている

もちろんそれに悪意はない、むしろ私たちは皆に期待している

 

「何と言うか、暖かい目をしてるんです」

「そうねぇ···私達では到底たどり着けない幸福な人生を歩んで欲しいと思うわ。あと充実した人生もね」

「そのための戦いですね」

「えぇ、もちろん」

 

そう言って厨房に入り、お茶の用意をする

 

「もう用意を始めるのですか?」

「えぇ、全員集合をかけたら、最優先で駆けつけてくれるもの、そのお礼はしないとね」

「何時間か掛かるのでは?」

「最速10分よ」

「え···?」

 

そんな馬鹿なという顔の芽衣に驚きの事実を告げる

 

「ストライカーシステムの使用者達は最速10分で駆けつけられるよ、例え5000キロ離れていようとも」

「何でそんなに早いんですか!?」

「空気抵抗をゼロにしながら、ロケットエンジンよりハイパワーなスラスターを全開にしてカッ飛ばせばねぇ···」

「それでは小刻みな操作は?」

「ベクタードスラスターに加えて全身の高推力アポジモーターに重力加速度偏向装置、コレがあればミリ以下の単位で操作可能よ」

「そんな無茶苦茶な···」

「それが実現しちゃうのよねぇ···」

 

多分アイツが最速で来るだろうなぁ···

 

「あれ、1人だけ違うんですか?」

「紅茶党でね、多分あと数分でレーダーに補足されるわね」

「早いですね」

「芽衣にとってはいい師範になるかもね。カズマや私より強い剣士よ」

「本当ですか!?」

「えぇ、保証するわ。彼は間違いなく最強の剣士だと。私やカズマは彼の得意とする距離での模擬戦で勝てる確率が50%を切るもの」

 

彼は間違いなく最強だ、剣においては

それ以外がズボラである事を除けば、だが




雷電将ぐ···芽衣ちゃん「同じ日に2話目を上げた理由はなんでしょう?それと誰かと間違いかけませんでしたか?」
作者「PUBGで精神をズタボロにされて原神で癒されたら閃いた、あと間違えたのは原神のキャラに芽衣ちゃん似のキャラがいたから、いいおっp」(ここから先は紙面が赤黒く変色しており解読不能)


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Day 72

最強戦力全員集合
全員転生者で、主人公の元仲間である
ここから始まるのは逆襲劇だ


「さて、そろそろね」

 

甲板に出た私はそう呟いた

その直後

 

「誰か止めてくれぇぇぇ!!」

 

聴き慣れた声が聞こえた

 

「はぁ、カズマ」

「あぁ、ハッチ開け、ネットも展開」

「了解です、ハッチ開放、保護ネットも展開します」

 

甲板要員にそう命令すると、カズマは一言

 

「セリア、俺の指示するように動け、スラスター左に15%、下に2%だ」

「了解!!」

 

すると少しずつ人影が大きくなる

 

「よし、そのまま」

「すまねぇ!!」

 

その人物はそのままカズマのいる方に向かい・・・

 

「止めてくれ!!」

「そのまま突っ込みやがれ阿呆が」

 

横を通り抜けて保護ネットの展開されていたハッチに吸い込まれた

 

「ひでぶ!?」

 

そんな声が聞こえたが無視しておこう

 

「お茶出してくるわ」

「あぁ、頼んだ」

 

カズマはそのまま仲間を待つようだ

私はさっきハッチに吸い込まれた仲間の元に向かう

 

「いってぇ・・・止めてくれても良かったろ・・・」

「貴方がいつまでたっても一人で高速度から着地できないからよ」

「そんなこと言ったって俺は近接戦特化だぞ?ってぇ!?アヤカお前分離してたのか!?」

「えぇ、勝手にされていたわ」

「お前も被害者か・・・」

 

吸い込まれた人物・・・私の仲間

牧瀬・セリア

近接戦特化の最強戦力の一角だ

 

「まぁ、カッコはよくないけど・・・久しぶりねセリア」

「おう、お前もな・・・アヤカ。ところで美味い紅茶はあるか?この世界に来てから一度も美味いの飲んでなくてそろそろお前の淹れたのが恋しくなってきてるんだが」

「用意してあるわ、それと私がいれたのもカズマがいれたのも味は変わらないと思うけど?」

「バカ言え、バトルジャンキーマッドサイエンティストボーイとクールビューティ爆殺ガールじゃ後者のほうが圧倒的にマシだ」

「カズマが聞いたら笑いながら蹴飛ばしてたでしょうね」

 

冗談を言い合い、近くの部屋に招き入れる

そこには芽衣ちゃんもいた

 

「アヤカさん、その方が?」

「えぇ、近接戦特化の最強戦力よ」

「アヤカ、一ついいか?」

 

割と真剣そうな目でセリアは私を見る

こういう時は割と真面目にふざけた事を言うので警戒しておこう

 

「何かしら?」

「この子、抱いていい?」

「芽衣、もし抱きついてきたら殺していいわよ」

「そうします」

「ひでぇ・・・」

 

やっぱりふざけた事だった、本当にセリアはいつも胸の大きい子が好きなのだ

淫らな行為はしないと知ってはいるが・・・

 

「というかこの体の私には反応しないでなんで芽衣には反応するのよ?」

「お前に関してはやっぱり知った仲というのがなぁ・・・それに・・・」

「よし、そのまま座ってろ撃ち殺してやる」

「まだ何も言ってないぞ?」

「一点をガン見してたら誰でもわかるわ!!」

 

変態発言に加えてデリカシーのない行動

それに加えてこの態度である

 

「というか早く自己紹介しやがれ、次が差し支えてんだよ!!」

「オーライ早くそれを言ってくれ」

 

セリアは私の入れた紅茶を一口飲み、芽衣ちゃんに挨拶する

 

「牧瀬セリアだ、これからよろしくな。近接戦の訓練ならいつでも頼んでくれていいぜ」

「はい、よろしくお願いします」

「いい返事だ」

 

さて、次は・・・多分あの人だな

そう思いながら次に来るであろう人物のためにコーヒーを淹れる事にする




次話、遠距離特化型の人物登場


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Day 73

それは決戦の準備
未来をかけた物語の始まり


「それじゃあ次は・・・ってもう来てたか」

「迎えに来るの遅いよアヤカ!!」

「仕方ないでしょ、この(ふね)意外と大きいんだし」

「まぁたしかにね、見たところ設計は闘真さんかな?なんか前に見たような形状だったし」

 

たしかに、この艦の全体形状は見たことのあるものだ

というか・・・

 

第二次世界大戦(W W 2)時の日本の戦艦、大和の残されていた資料の数点、それを基本コンセプトの一部として採用。それを現代の技術水準でブラッシュアップして建造したらしいぞ」

「またなんでそんな骨董品を・・・今の世紀で考えて2つ前の時代じゃない」

「だが現代の艦では出せない最高戦速は叩き出せるし、生存性という意味では次世代艦よりも上だ、それにヒューマンフレンドリー設計は師匠の一番得意とするところだしな」

「たしかに、コンソールは扱いやすいし、ディスプレイもわかりやすい表示がされているわね・・・」

 

すでに来ていた、早い到着だ

 

「まぁ、なにはともあれ。久しぶりね、ミドリ」

「うん、久しぶりね、ところでエスプレッソ用意してあるかな?」

「えぇ、用意してあるわ、好きなだけ飲んで」

「やったー!美味いの飲めるぞぉ!!」

「マップ渡しておくから、自分で行って」

「了解よ!!」

 

さて、次を待つか

 

「まったく、闘真さんの設計した艦船はなんでこういつも設計が古いのを参照にするかな」

 

アヤカからマップを貰った私は一人で艦内をあるいていた

目的とする部屋の場所はすでに分かっている

 

「よし、ここね・・・」

「アヤカさんのお知り合いの方ですか?」

「えぇ、吉川ミドリよ、得意とするのは遠距離戦ね、近距離も出来なくないけど、そこで優雅そうに葉っぱの出がらしのお湯飲んでるのには劣るわ」

「ほう、来てそうそう喧嘩したいようだなミドリ、受けて立つぞ?俺には好き好んで汚い泥水飲むのがわからんが」

「表出ろ」

 

部屋を開けたら嫌なヤツが先に来ていた

早速喧嘩腰になるが、これはいわゆる犬猿の仲だからだ

 

「まぁいい、それよりもお前の腕、落ちてないだろうな?」

「あら、自分より他人の心配できるほど余裕がお有りで?」

「お前の心配など俺がしてやるものかよ、背中預けるんだから正直に答えろや」

「大丈夫よ、この世界に来てから延々、得意分野をやり続けてたんだから」

「ならいい」

 

セリアはそう言ってまた紅茶を飲む

黙っていればイケメンなのだが、この男、女性(特に胸の大きな人)にだらしない変態でもある

まぁ、淫らな行為はしない奥手な奴でもあるんだが

 

「あ、この変態に変な事されなかった?」

「はい、アヤカさんも釘を差しているので」

「コイツが変態発言したらマジでぶっ飛ばいていいからね?」

「そうします」

「俺の肩身が狭くなるんだが」

 

セリアの発言は無視してエスプレッソを飲む、うん、美味い

 

「あ、そういえば貴女の名前は?」

 

いかにもセリアが抱きつきそうな女の子の方を向き私は尋ねる

 

「雷電芽衣といいます」

「雷電・・・ME社のご令嬢さんね?」

「ご存知なんですか?」

「カカリアとの繋がりがあってね、ここだけの話、貴女の暗殺依頼も来ていたけど断ったわ」

「え・・・?」

「カカリアが支払い渋ったのが理由なんだけどね」

 

あははは、と笑いながら私は告げる

 

「暗殺部隊の出身でね、そういうの得意なのよ。今はしてないしする気もないんだけどね」

「それにもしコイツが暗殺依頼を受けたなら、今君はここにいないさ、コイツは仕事がクソ早いからな」

「さっさと終わらせてゆっくりしたいじゃん?」

「こういう性格だからな、ちなみに支払いを渋ったら鉛玉が届けられる」

「非常に怖いんですが・・・」

 

もう一杯もらい、私は続ける

 

「まぁ、事前に調査してタイミングを考えるところまでは行ってたんだけどねぇ」

「そこで渋られたのですか?」

「えぇ、そこで渋りやがったわ、だから断って鉛玉届けてあげた」

「ということは・・・」

 

芽衣ちゃんのその先の言葉を私は奪う

 

「趣味趣向には何も言わないよ?」 

「他言無用でお願いします」

「えぇー?どうしよっかなぁ?」

「今度、いいアクセサリショップを教えますから・・・」

「よし交渉成立」

 

私はそう言って、もらった分を飲む

 

さて、このあとは誰が来るかな?




次は誰だ?


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Day 74

それは最後の一人


「最後の一人ね」

「あぁ、これでベストメンバーが揃うな」

「最後はやはり彼女か···」

 

暗くなり始めた空に赤い光が生まれる

それはやがて人の形となり、私たちの前に降り立った

 

「久しぶりね、カズマ」

「お久しぶりです、教官。まさか貴女がこの世界にいるとは思いもしてませんでした」

「嘘言わないの、最後は私だと予測していたでしょう?」

「流石に分かりますか」

「分かるわよ」

 

降り立ったのはかつての私達の教官、櫛灘アサミ

カズマですら、一体一では苦戦を強いられる人物だ

本人曰く、戦闘能力は平均値しかないとの事であるが、カズマに言わせれば対応能力がワロエナイくらい高いから平均値が意味を成さないらしい

 

「アヤカも久しぶりね?分離しているから初めてがいいかしら?」

「いえ、お久しぶりです。教官はなぜこちらの世界に?」

「私にも不明よ、しいてあげるなら、カズマに巻き込まれたと見るべきね」

「ご愁傷さまです、こんなアホに巻き込まれて」

「この迷惑は、カズマに後で払わせるわ」

 

そんな話をすると、カズマは"え?なんで?"という表情を浮かべたので2人で同時に鉄拳制裁を加えた

 

「アンタの間抜けな対応が今のこの世界のザマでしょうが」

「おら、そうした分キリキリ働くんだよ」

 

私の怒りを込めた声と、教官のドスの効いた声にカズマが震える

 

「はい、おっしゃる通りです。キリキリ働きます」

 

若干涙を浮かべながらカズマはそう返事して···

 

「あ、逃げた」

「逃げたわね」

 

走り去って言った、よっぽど恐ろしかったのだろう

 

「まぁいいわ、一発殴って気が済んだし。それよりも···」

「···?」

「セリアはいるわね?あのもう1人の間抜けは2発くらい殴らないと気が済まないわ」

「全力で殴らないでくださいよ、死にますから」

「じゃあ半死半生位で終わらせてあげるわ、どうせ胸の大きい子を見て興奮してんでしょうけどね」

 

おぉう、なんて鋭い読みだ。まさしくその通りだ

 

「まぁいい、それよりアナタの淹れたコーヒーが欲しいわ」

「ブラックで良かったですよね?」

「一杯目はブラック、二杯目はシュガー入れて、三杯目はミルク入れてちょうだい」

「了解です」

 

そうして彼女を案内する

 

「あぁ、闘真の設計した船は懐かしいわね。機能美の塊と言っていいのも相変わらずだわ」

「その癖やたらとユーザーフレンドリーですしね、その才能をなんで他に生かせないんでしょうかね?」

「アホだからよ、師弟揃って」

「ボロカス言いますね」

 

あはは、と笑いながら案内して教官が先に見たのはブローニャだ

 

「あら、可愛い子がいるじゃない」

「教官の得意なレンジの子ですよ、是非教えてあげてください」

「OK、これからよろしくね?先に言っとくけど、私はそこにいる近接バカと芋砂とイカレマッド2匹と爆殺魔の教官をしていた時期があるから」

 

共感はそこにいるメンバー···セリア、ミドリ、闘真、カズマ、私の順番にそう説明した

流石に発言の訂正を求めたいが否定も出来ないので何も言えない

 

「さて、これからの動きをどうするか、休憩終わったら聞かせなさい」

「了解です、教官。皆の用意ができ次第教えますよ」

「よろしい」

 

さて、これからの動きをどうするか

それは教官の休憩が終わり次第話が始まる




作「よし、これで終わったぞ···!!」
(ガラスの割れるような音と床に倒れる音)
主人公「あ、やっべ、間違えて作者の息の根止めちまった」


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第6章 そして始まる次の・・・
Day 75


それは反撃の砲火


「さて、反撃と行くかね・・・」

「天命部隊、各地より移動しています。目的地はバビロン実験室です」

「まぁ、そうするだろうな、それも予測済みだ」

 

CICの中で報告を受ける、相手は天命内部に潜らせている内通者の一人

カズマは艦橋で自分の妹、ノインツェーンと居残りだ

特記戦力の一部として温存しなければならない

 

「作戦の概要を説明する」

 

その言葉と同時に、CICの大型モニターに映像が出される

 

「天命最重要拠点、バビロン実験室を攻撃する。この施設は天命でも最高の防衛戦力が構築されており、難攻不落を誇る要塞だ」

 

マップには三箇所の赤いマークが浮かんでくる

 

「事前調査と設計時の資料によって脆弱な場所は判明している、地点は今示している三箇所。それぞれを各部隊で抑える」

「内訳は?」

「ポイントAは俺達、転生者集団で抑える。ここは三箇所の中でもっとも戦力が集中している箇所だ、俺達の戦闘能力なら十分に撃破可能だろう。」

「ポイントBは学生たちの有志で抑えてください、ここは比較的手薄で配置されている敵の練度も低いです」

 

カズマの説明を受け継ぎ、私がポイントBを説明する

 

「じゃあポイントCは教師陣で抑えるという事ね?」

「あぁ、ここは俺達の次にキツイ所だからな」

「作戦の成功はキアナの奪還、律者に覚醒していてなおかつ人類を害する場合は殺害」

「失敗は?」

 

その言葉に全員が私とカズマを見る

 

「キアナの死亡もだが。覚醒の阻止失敗と大崩壊、そして人類の滅亡。これを作戦の失敗とみなす、それ以外なら悪くても引き分けだ」

 

そしてカズマは机を叩いた

彼は判断を下す時、机を叩く癖がある

 

「作戦は以上だ、参加各員には自らの限界を発揮してもらう。だが死を前提とした行動は絶対に取るな。あくまで生き残る事を考えろ!!」

 

作戦は至ってシンプル、だが多面作戦により敵の混乱を誘い、あまつさえ翻弄する

 

「作戦名は?」

脱獄(プリズンブレイク)

 

カズマはそう言って笑った

なんの捻りもなく、ただ普通にそう言いたいだけのように

実際、捉えられているキアナにしてみればその通りだ

そして、そんな彼女を脱獄させるのが私達の任務になる

 

「雑よねぇ・・・」

「つまらないですね、アヤカより残念なセンスです」

「及第点も出せないわね」

「お前ら・・・」

 

学園長にブローニャに姫子先生から一言ずつ酷評を叩きつけられカズマは撃沈させられた

 

「まぁいい、既に決まったものだ。文句は言うなよ?」

「それで、各部隊の失敗を補うのは誰なのよ?」

「俺とノインツェーンと師匠と教官がいればどうとでも盛り返せる。特記として温存しているのはそのためだしな」

「え、俺もしかしたらガキのおもりするのか?」

「したくないならここから紐なしバンジーさせるぞ?あぁ、もしかしたらパラなしのスカイダイビングになるかもな」

「果てしなくごめんなさい」

 

闘真さんが余計な事を言ったので速攻で教官にシメられた、この人は冗談のような本気でそれをやるから怖いのだ

 

「よし、作戦まであと24時間、各員気合を入れてかかれよ!!」

 

もうすぐだ、キアナを必ず取り戻す!!




気づいたらUAが8000行ってて驚いた作者です


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Day 76

それはいつかたどり着く未来
世界を超えて求め続けたモノ
人はそれを祈りと呼んだ



「あぁ、そろそろか」

 

時間を確認する、もうそろそろ作戦準備の時間だ

 

「ゴールドフレーム」

<準備は出来ています、P-GCTX-01の開発とフィッティングは済んでいます>

「そう、ありがと」

<ですが、覚悟はしていてください。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()>

「思考汚染の問題か」

<使えば使うほど、()()()()()()()()()()()()()()()()()になります。()()()()使()()()()()()()()()()です>

 

問題は元々、開発を開始した頃から確認されていた

P-GCTX-01、暁・未来(試作型)・・・カズマがこの世界の戦士・・・戦乙女(ヴァルキリー)達のために開発していた、ブラックフレームをベースとした新設計の装甲だ

名前である暁・未来も、暁という、新たな未来を得るための力、という祈りと願いが込められている

現在はまだ試作段階だが、完成したらその性能は現在使用されているもののおよそ数倍に匹敵し、神殺し装甲の性能すら上回る

試作型であるため、安全性は正式仕様より劣るし、正式版でオミットされる予定の機能もいくつか有する

その一つに、思考リソースの機械的優先順位変更機能がある、これは思考汚染の可能性があり危険であるため正式版で削除される機能だ

それに万が一の場合の強制停止機能もない、暴走したら自壊するまで止められないのだ

 

<それでも行くんですね?>

「えぇ・・・」

<それは何故ですか?>

「・・・」

<はぁ、そこは即答してくださいよ・・・>

 

答えられない質問が来た、なんのためかなんてキアナの為だ

だが相棒はそんな回答など望んでいない

どうしてそうするのかを聞いてきている、答えを知っていて

 

<貴女は、寂しがり屋なのです>

「だから憎む、だから愛する」

<なら、()()()()()()()()()()()()・・・()()()()()()()()()()()()>

 

そう、失敗したとしても・・・何度でも!!

 

<行きましょう、世界の破壊者。貴女の理想に至るために>

了解(ヤー)!!」

 

燃え上がる決意は力となり、私を包む

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()、それどころか()()()()()()()()()()()()()()

この世界で分離され、自ら積み上げた研鑽の果てが今だというのなら、その先にある未来を見届けたい

 

「ゴールドフレーム、暁・未来・・・出撃する!!」

 

金の装甲をまとう白き閃光が空を翔ける

その先にあるのは巨大な建造物

決戦の始まりは静かなものだった




今話から新章突入


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Day 77

決戦幕開け
そして主人公を襲う異変
最悪のカウントダウンが始まる


「よし、作戦領域に入ったか」

 

バビロン実験室に強行侵入し作戦領域に降りる

既にそこには防衛の為の人員が割当てられていた

目の前の戦力は想定2000、最低でもB級から上という揃えようだ

だが···

 

「その程度か?」

 

私は不敵に笑った

戦力としては確かに優れている人員なんだろう

だが、相手が悪すぎる

 

「悪いが、かまっている暇がないんでな」

 

攻撃を躱し、そらし、いなしながら能力を発動する

 

「死んでくれ」

 

そう言って指を鳴らす

その瞬間、視界に映る全ての人員の命が絶たれた

 

「すまないな、こんな殺し方しか出来なくて」

 

血と肉の平原とかしたその場に佇み、私は俯きながらそう詫びる

 

「許せ、とは言わん。ただ、己の悲運を嘆いてくれ」

 

そう冷たく言い放ち、歩きはじめる

 

「死にたくないなら、背を向けて逃げろ···逃げる者を殺すほど非情ではない」

 

極めて冷静に、感情を押し殺して静かに言い放つ

殺したくはない、彼女達とも話し合えればわかるはずだ

だが今はそれだけの時間的余裕がない

キアナが律者化するまでの時間的余裕がないのだ

 

「それでいい···」

 

仲間を無惨に殺され、従わなければ殺すと言外に言われた敵はそれだけで武装を解除して投降した

投降した敵を殺すほど非情では無いため後から来る部隊に回収を依頼する

 

「キアナ···」

 

バビロン実験室の建物を睨みつける

芽衣、ブローニャを中核とした潜入部隊がキアナの救出に当たっているはずだ

 

「さて、私も行くか」

 

立ち上がった瞬間、眩暈に襲われた

 

<マスター・・・>

「いずれ来るとは分かっていたさ・・・だが、まだだ。この程度で倒れるわけにはいかない」

 

その症状は、少し前からくる様になっていたものだ

律者、あるいはそれに近い者、そして高濃度の崩壊エネルギーに晒されてきた私の身体は、姫子先生よりも酷く汚染されている

症状が発生するまではナノマシンの浄化機能で何とか耐えられていたが、それももう限界を超えている

 

「そう、まだ・・・な」

 

今この瞬間にも、私は人類にとっての害悪になりかねない状況にある

だから、私はカズマに万が一の場合を想定してとある依頼をしている

カズマなら、文句を言いながらも確実にやってくれると信じているから・・・

 

<敵多数接近中です、一個中隊規模>

「了解・・・殲滅する」

 

相棒の報告にそう答え、敵を殲滅する

 

「相棒。私の限界とキアナの律者化、どちらが早い?」

<まだ、キアナの方が早いです・・・ですが・・・>

「時間的にほぼ余裕がない状況・・・か?」

<えぇ、数分しか余裕はありません>

「秒でないだけマシだ」

 

敵の第二波を睨みつける、その瞬間、後方から来た黒色のビームに全ての敵が撃ち抜かれていた

 

「カズマ・・・自分のエリアはどうした?」

「めんどくせぇから解体(バラ)してきた」

「脳筋が・・・」

 

今頃、大主教は頭を抱えているだろう

まさか敵一人にバビロン実験室の一区画以上を解体されるのだから

 

「時間の余裕はないんだろ?」

「・・・」

 

その問いかけに、私は答えなかった

心配されている事に気づいたから・・・

 

「行けよ、どうにかしてやる」

「分かった・・・任せるぞ」

 

だが、それが逆に答えになってしまったようだった

カズマは私の顔も見ずに先に行くように私を促す

それを断るようならどうなるかなんて、考える時間はない

 

<マスター、吹き抜けを一気に突っ切ってください、合流出来ます>

「もとよりそのつもりだ!!」

 

階段からそのまま吹き抜けに飛び出し、垂直に上昇する

途中で建造物の一部が降ってくるが、それはビームライフルで撃ちぬいて破壊するか、回避可能なら回避して速度は緩めない

 

「よし、着いた!!」

「アヤカさん!?」

「芽衣とブローニャもいま到着?」

「えぇ・・・」

 

最後のフロアに着いた瞬間、そこにいた崩壊獣を蹴落として床に降りる

ちょうどそのタイミングで芽衣とブローニャもついたようだ

 

「さて、そろそろ最後の場所ね」

 

目標の場所まで残り3ブロック

決戦まであと少しだ




主人公限界もあと少し
限界が早いかキアナちゃん律者化が早いか・・・


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Day 78

決戦、激闘、その果てに


「さて、それでは・・・二人にここを任せる」

「キアナちゃんをお願いします」

「あぁ、任せろ・・・」

 

あれから更に防御を突破する事に成功していた

最後のピースはあと少しでハマる所まで来ている

その少しのために、最適の行動を選択する

 

「この先か・・・」

「えぇ、この先にいます・・・」

 

相棒の返答に笑い、その直後に咳き込んだ

 

「いよいよ・・・か」

「マスター・・・」

「まだ倒れるわけにはいかない・・・キアナを取り戻す、までは」

 

血を吐いて、それでも立ち上がり歩く、走れるからまだ大丈夫のはずだ

 

「キアナ・・・」

 

着いた時にはキアナは外に出ていた

円筒状の容器が割れている事からその中に入れられていたのだろう

 

「・・・」

 

私にキアナが一歩、近づく

その瞬間、私は反射的に武器を構えていた

 

「なんで構えるの?」

「貴様、何者だ?」

 

反射的に出てきた返答はそれだった

そう、目の前に確かにキアナがいるのに、それでも・・・

 

「隠しているようだが、隠しきれていない。そして私が知るキアナはそのような芸当が出来るほど器用な奴ではない。だからあえてもう一度だけ聞いてやる、何者だ?」

「やはり人類は度し難い」

 

その返答を聞いた瞬間、最悪の事態が目の前で起きた

 

「空の律者・・・やはり想定より早かったか」

「ですがまだ幼体です!!まだ間に合うはずですよ、マスター!!」

「あぁ、全力で行くぞ!!」

 

たぶん、私の人間として最後となるであろう決戦が始まる

 

「貴様に絶望を味あわせてやろう」

「あぁ、そうかい・・・やれるものならやってみろ」

 

別空間に飛ばされる、空の律者の能力だろう

だがこれは私にとって都合がよかった

 

「ありがとう、わざわざ戦場をズラしてくれて・・・おかげで全力戦闘が可能になったよ」

「なに・・・?」

()ぜろ」

 

意思に応じて起爆する質量のない見えない爆弾を幾つも設置し、その一部を一斉起爆させた

 

「この・・・力は・・・!?」

「異世界法則を全開で作用させてやるさ・・・私がここで倒れようとな!!」

 

それから次々に発動させていく

放たれた亜空の矛に衝撃を付与、それがキアナの身体を奪った相手のもとに来た瞬間起爆させ破片でダメージを負わせる

 

背後から来たものは私に触れる前に衝撃が起爆し軌道がズレ当たらない

そればかりか新たに衝撃を付与される始末

キアナの身体を奪った相手と私の戦術的な相性は最悪そのものだった

 

「馬鹿な!!」

「人類を・・・人間を・・・舐めるなぁぁぁぁ!!」

 

最後の一撃・・・顔面への渾身のパンチがキアナに届いた

同時にその背中にあるモノを突き立てる

これで私の布石は終わり、後はキアナ自身の問題だ

 

「あ・・・あぁぁ・・・あぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

叫びは途中から聞こえなくなった。もう、私も限界を超えているのだろう

視界が黒く染まっていく、意識が落ちる

その時に・・・私は再び(とき)を見た

 

「あぁ・・・そうか」

 

私の行動に間違いはなかったと理解して、安堵して・・・

 

「私は行くよ・・・カズマ」

 

その光の中に、私は進んだ




次回、一気に時間は飛んでしまう
それは新たな旅ではなく、運命を始めるための準備だった


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Day 79

それは別存在から見た世界
世界が美しくないとは知っていて、それでも人の善性・・・美しさを愛してなお世界を壊した男の視点で・・・


「逝ったか・・・アヤカ・・・」

 

空を見上げて俺はそう呟いた

胸に穴があいたように感じる喪失感は、それを裏付けるに十分なモノだろう

 

「また、命が消えていく・・・」

 

今しているのが、失われる命の数に見合った行動かと言われれば、俺は断じて否と答えるだろう

それであってもアヤカは一人を選んだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()

それが未来において自身が責められる理由になるんだと分かっていて

 

「それがお前の選択なんだな?だったら」

 

俺は世界の境界に穴を穿ち、そこに手を突き入れる

 

「無理くりでも取り戻してやる・・・お前を逝かせはしない」

 

そして引っ張り出したのはアヤカの肉体そのものだ

肉体を取り戻せば後はそれを足掛かりに魂の繋がりを確保、存在を何とか繋ぎ止めた

自分が現人神として使える数少ない権能の一つを、一度限りのそれをためらいなく行使する

 

「だが、やはりこれでは足りんか」

 

それでも何とか繋ぎ止めれたという程度、ならばと次の一手

 

「お前にとっては不服極まりないだろうが、今一度俺と一体不可分になってくれ」

 

本人に意思があったら張り倒されているだろう、それでも死なせないために、失わないための一手としてやるしかない

 

「すまんな、後でいくらでも謝罪する」

 

それでも蹴り飛ばされるだろうな・・・と思いながらも、やめたりはしない

 

「さて、ここから先は俺達のペイバックタイムだ・・・総員に通達、直ちに退避せよ」

 

全員に退避勧告を発令、次の一手を用意しておいて正解だった

 

「さらばだ、砂上の楼閣、砕けろ」

 

アヤカにも内緒で各所に仕掛けてもらった爆薬が一斉起爆、バビロン実験室が火の海に包まれる

 

「撤退戦用意、キアナの回収は後にしていい、彼女なら自力で脱出できるだろう」

「了解、芽衣とブローニャは?」

「眠らせてでも連れ帰れ、後で幾らでも何度でもぶつかってやる」

「了解、じゃあこちらも動くぞ、カズマ」

「あぁ、好きにしてくれ、先生。どうせ師匠もいるんだろうがな」

 

各員に判断を任せつつ行動の指針を出し、俺は運用している艦に戻る

 

「やってくれたわね」

「姫子か、俺を裁くか・・・?」

「そうしたいのは山々だけど、まずはアヤカを助けてくれた事には感謝するわ」

「肉体を戻したに過ぎない、魂がない器だ・・・魂に関しては俺と一体不可分に戻した、俺の持てる権能の一つでな」

「一回限りと昨日聞いたわね、どうして分岐させた存在にそこまで・・・」

「ならばこそだ、こいつ等にはこいつ等の物語を描いて欲しいからな・・・それにアヤカはあくまで緊急手段で分岐させただけで、完璧とは言えない部分があったしな」

 

そう言ってから抱きかかえていたアヤカを別途に眠らせ、俺は椅子に座る

 

「アヤカは本来、光の属性ではないんだ・・・性格的には確かに合ってはいるんだがな」

「どういう意味よ?」

「アヤカは俺と違って真人間すぎるんだよ、感覚的にも、性格的にも一般人そのものだ・・・それが()()()()()()()()()どうなると思う?」

()()()わね、()()()()()()もの」

「正直、今回の作戦も・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()察する事さえ俺にはできない」

 

そう、本来戦闘に不向きな性格をしている人物だから・・・無理し続けた結果がコレなのだ

それではあまりにも、アヤカが不憫だ・・・だから

 

「だから俺の持てる全てで、アヤカを救ってみせる。それは俺と言う人間を捨てた存在の最後の意地だ」

 

それが俺の答え、そしてアヤカにできる最後の事

 

「アヤカに、彼女が本来保有する力を使ってもらうために俺が出来る事は全てやるつもりだ・・・と言うか既にほぼ終わっている」

「後はアヤカの心次第・・・まで終わらせたと?」

「肉体が傷ついてないだろう?」

「まさか・・・スペア?」

「いいや違う、こちらが本来のアヤカの身体なんだよ、今までのが予備なんだ」

 

俺はそう言って、額に手を触れる

 

「アヤカの今までの身体は、俺の女性としての器を転用していたにすぎない、こちらが本来の身体だ」

 

髪色は黒色、身長は170㎝台で大人の身体

子供の身体は俺にとってのサブボディでしかないものをアヤカ用に微調整したものだった

 

「この身体・・・あなたの願望盛沢山ね?」

「それを言われると言い返せないんだよなぁ・・・いやまぁ確かに?大きい胸の女性大好きですよ?なおかつ甘えさせてくれるともうすぐにオチル自信ありますわ」

「それを恋人の前で話せるクソ度胸は凄いと思うよカズマ?死にたい?」

 

その場にいないはずの人間の声に姫子は驚いたが俺は平然とした声で振り向きながら告げた

 

「結局自力脱出してたんだな、イセリア」

「キアナ・・・いや、空の律者の力のお零れを利用してね。逃げ出せたのはついさっきよ」

「リソースの悪用は十八番だものな?」

「それで、私の体形の何が不満なのよ?」

 

声が非常に冷たい・・・正直に答えないと殺されますわ

 

「いい方が酷くて済まないが・・・その、一部分がね?」

「姫子さん、判決」

「ギルティ、問答無用」

「逃げさせてもらっ・・・」

 

振り向いた先にはもう一人の女性・・・先生が居た

 

「おう、カズマ、遺言の用意は出来たか?」

「・・・」

 

何てことだ、もう逃げられないぞ・・・




主人公が一時交代ってマジですか?


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Day 80

それは世界を壊した男の力
人でありながら神に成り果ててしまった青年の力であり・・・


「うわぁお、こんだけの数出てきてたか・・・まだまだ増えるなこれは」

「なんで貴方はこんな時でも平然と笑えるのですか?」

 

あれから4か月が経過した

キアナは逃げ切ったようで行方が掴めていない、フカにキアナと共に行動するよう伝えていたが最後の連絡以降音沙汰無しだ

その最後の連絡ですら合流できた事だけであり、詳細は不明である

まぁ、こちらはどうにか上手く行ってるだろうと考えておく

 

「なんだい芽衣ちゃん、この程度の数でビビってちゃ律者の討滅やキアナちゃんの奪還なんて夢のまた夢だぜ?」

「奪還って・・・そもそも行方が分かってないのにそれを言うのは間違いでは?」

「それはどうかな?」

 

ニヤニヤと笑いながら、俺は続ける

 

「どうせそうなるさ、キアナはいい意味でも悪い意味でも注目の的だからな」

「つっ・・・!!」

「さーて、作戦だ・・・はい全員画面に注目!!」

 

ブリーフィングルームの中では今回の作戦に必要なメンバー全員を招集している

 

「たった今、CICから展開領域における推定の敵数が判明したとの連絡があった、その数は推定7,000!!だがこの部屋にいるメンバーならなんて事のない数だ」

 

マップに強い反応のある地点を出し、さらに続ける

 

「展開する天穹市は大崩壊後の人類の生活圏でも最大に近い人口を抱えている、人口密集地での戦闘は極力避けなければならないが、不可能の場合は建造物の破損を抑えつつ戦闘を行え、それも無理なら撤退しても構わん」

「撤退が不可能の場合は?」

「即座に自決。選択はこれ以外ないな」

 

姫子の質問にそう答え、俺はさらに続ける

 

「作戦は基本スリーマンセルで行う、例外として俺、藍澤カズマと森谷闘真、櫛灘アサミの三名は単独行動だ」

「それについて質問、なんで三人は単独行動なの?」

「藍澤と森谷は単純に誰かに合わせるのが出来ないからだ、私は上空で待機して各部隊の補佐を即座に行えるようにするためだな」

 

テレサの質問に先生が答え、俺は頷き肯定する

 

「今のが答えだ、付け加えるなら俺たち二人で一番反応の強い地点を抑えるので各員は散開して反応のある地点を潰してほしい。という事くらいだ」

「律者の可能性は?」

「これまでのデータ解析の結果から、それはないと断言できる。だが、空の律者の反応が僅かに見られるため注意は怠らないで欲しい」

 

空の律者の反応、これだけで場がざわついた

 

「だがもし、キアナ・カスラナとしての意識で・・・意志で戦っているのなら、どうか力を貸してあげて欲しい。それが彼女の為になる」

 

続く言葉に場が静まり返る、この場の意思決定は既にされている

 

「作戦は2時間後、天穹市到着と同時に開始する。各員最善のコンディションで挑んでくれ。健闘を祈る!!」

 

そしてゼロアワーまで、俺は愛機であるブラックフレームの整備に取り掛かった

今回の作戦は市街地戦想定のため大火力兵装は使えない

そのため装備としては近接系に絞られる

遠隔攻撃端末もそれに合わせて火力投射用のバレットファンネルから近接攻撃用のソードファンネルに変更、余剰エネルギーは万が一の場合の緊急回避用に余分にストックしておく

手持ち装備もビームライフルからビームショットガンに変え、ビームサーベルは出力を上げておく

シールドも実体盾とビームの幕を展開する物に換装して継戦能力を向上させて全ての作業を終了した

 

「さて、フカとキアナに会えるかな?」

 

あの二人に会えることを期待して、作戦開始を宣言した




後書き・・・書くことがないんです、ネタ切れなんです・・・


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Day 81

主人公代理、ヤバい事やらかす


「うーむ、旗色が悪いな」

<戦術的には最適解です、旗色が悪いのは最初から想定済みでは?>

 

作戦開始後すぐに俺は戦域の上空で待機していた

各部隊の展開は今のところ想定の範囲内ではあるがやはり旗色が悪い

士気が低下しているのが問題だろう

テレサと姫子はそこを何とかしようとしているが、生徒会長のフカが行方不明、同級生のキアナに至っては律者化したとなれば相当なショックで士気が低下するのは自明の理だ

問題は時間で解決するしか方法がない

 

<敵反応、数は25、飛行型です>

「迎撃する、最適武装は?」

<スナイパーライフルがお勧めですね、貴方なら急速接近してビームサーベルでも切り伏せられますが>

「安価で行く、武装展開!!」

<了解です(ラジャー)>

 

武装の展開と同時にホログラフィックスコープ機能がオンになる、照準した敵はまだこちらに気づいていない

 

「右翼を叩く、照準補正は任せるぞ相棒?」

<いつでもどうぞ>

「狙い撃つ!!」

 

同時に狙撃開始、右翼の5体を3射で撃破した

 

「やっぱ苦手だな、狙撃(これ)は」

<一流には及びませんね、それでも肉薄する勢いですが>

「分野が違うからな、しゃあないさ」

 

そういいながらも次に左翼を叩いている

最後は最も数の多い中央、こちらは・・・

 

<ソードファンネル、有効圏内です>

「斬り込むぞ!!」

<脳筋ですね>

 

そう言いながらも相棒は俺に合わせて姿勢制御を担当する

俺の思考の先を読んで合わせてくれるのだ

 

「これで終わり!!」

<いえ、まだです・・・数は10、増援とみていいでしょう>

「よし、屠ってやろう」

<森谷隊長から文書通達。こちらで迎撃するので移動不要、現地展開の部隊に即支援できるよう待機せよ。との事です>

「あ、師匠が近いか・・・命令了解、待機すると返しておいてくれ」

<了解しました>

 

その瞬間、増援とみられる反応の地点で黒い光が生まれた

 

「おいおい、マジかよ・・・あんな低い数に大技かましたのか?」

<いえ、その後ろにさらに反応がありました・・・その反応ごと葬ってますね>

「こっわ・・・いくらジェネレーターが相棒の次に高出力だからって大盤振る舞いしなくてもいいだろうに」

 

いくら何でもあんまりにも目立ちすぎだ・・・少しくらい自重してくれ・・・

 

「む、ヤバいな・・・行くか」

<えぇ、行きましょうマスター>

 

そうこうしているうちに展開している部隊の一つがピンチになっていた

部隊長は・・・

 

「よりにもよってテレサかよッ!!」

<焦りすぎですね、まったく・・・>

 

よりにもよってテレサだった、焦りで急ぎすぎて気づいたら部隊ごと敵に囲まれていたのだ

 

「こっちもやはり血筋かねぇ!!」

<カスラナのですか?>

「料理だけでいいものを・・・まったく厄介なものだぜクソッタレ!!」

 

そう言いながらも上空から急降下、同時にエネルギーチャージを終了したソードファンネルを再展開、大型を上から最大出力にしたビームサーベルで一刀両断、残る雑魚共はソードファンネルで縦横に切り伏せた

 

「あ・・・ありがと・・・」

「あとで帰ったらお仕置きだこのアホンダラ、これで少しは冷静になったな?」

「え、えぇ・・・」

「無理な行動はやめておけ、自分ではなく部下の方がついてこれんぞ」

 

そう言い残して再度飛翔、上空に待機・・・ではなくとある地点に移動した

 

「そろそろ来るかな?」

<こちらの指定した時間通りであればそろそろかと・・・来ましたね>

 

その場所とは天穹市でも身を隠しやすい住宅地の一部にある犯罪の多いエリア

そこの一角に指定していた合流ポイントだ

四方はビルで囲われ、日が差すのは上のみである

 

「来ていましたか」

「よっす、元気だった?」

「気軽なモノはこれくらいにしましょう・・・キアナ?」

「初めて会う人だから・・・」

 

あ、そういえばキアナちゃんは俺の正体を知らないんだったわ

 

「こっちならわかるかな?」

「保健室の!?」

 

というわけで変装したのはキアナちゃんと会っていた頃の姿、久しぶりすぎて懐かしい

もちろんすぐに変装を解いて元に戻る

 

「というわけで保健の先生は俺なのでした。いやはや久しぶりに変装したわ」

「でも、なんでここに?」

「説明している時間はないんだけどね?でも今の君にはわかるんじゃないかな?俺がどういう存在か」

 

キアナにそう言うと・・・俯きながら答えた

 

「分かるよ・・・けど・・・」

「俯くな、前を向け!!」

「つっ・・・!?」

 

アヤカとそっくりな声で俺がそういった瞬間、キアナは俺の方を向いた

 

アイツ(アヤカ)なら、今の君にそう言うだろうな。キアナ・カスラナ・・・逃げる事は悪い事ではないし、今の君はこの都市で起きようとしている問題を裏から解決しようと動いている、違うか?」

「そうだけど・・・」

「なら、皆を頼ってみろ。巻き込みたくないのは分かるが、いつまでもやせ我慢などするものではない。それはいつか君を蝕む毒と化すぞ」

 

今のキアナを見ての俺の言葉に、思うところがあるのかキアナは目線をそらした

 

「目を逸らすな」

「いや、その・・・」

「 目 を 逸 ら す な 」

「怖いんですけど!?」

 

やっと素が出てきたか・・・心配していたが重度ではないだけマシか

 

「で、何か言いたげだったが?」

「アヤカとそっくりな性格に感じたけど・・・気のせい?」

「クリソツなのは認めるよ、アイツ(アヤカ)はもともと俺の一部だったからな・・・俺の中にアイツ(アヤカ)の存在があるのは分かっているね?」

「うん、取り込んでいるけど同化はしてない・・・いや、ボロボロになっているアヤカを治してくれてるの?」

「死にかけだったからな、辛うじて間に合ったというところだ」

 

俺がそういうと、キアナは少し顔をほころばせた

 

「ありがと・・・」

「そのセリフは君を心配している他の子たちに言ってやれ、みんな君を待っている」

 

そう言い、俺は持ってきていたケースをフカに投げ渡す

 

「君にアイテムを届けに来た、今日ここに呼んだ理由はそれだ」

「これは・・・?」

「エンシェントスパークレンス、君のためにわざわざ採掘してきた古代の神器だ。その歴史は5万年どころか3000万年前と推測されている」

「なぜ、ですか・・・?」

 

その理由に俺は笑いながら告げる

 

前文明(5万年前)の生き残りが、願いと希望で作られた神器で新たな領域に至る・・・その可能性に賭けてみようと思ってね」

「つっ・・・!?」

「それの正体は願いや希望、祈りという光を何代にもわたって、途方もない年月をかけて集めた神器だ、そのエネルギー総量は未知数だよ」

 

俺はそう言って立ち上がり、二人に紙を渡して告げる

 

「俺たちのいる座標と連絡用の周波数だ、いつでも連絡してくれ。必ず迎えに行く」

「でも、知られたら・・・?」

「安心しろ、それは天命ですら使用しない周波数帯だ。それに暗号化方式をあえて超古典的なものにしているから電波として捉える事は出来ても傍受などは出来んよ」

 

そう言って二人を置いて歩きだし、最後に振り向くことなく告げる

 

「待ってるぜ、俺も合わせて、皆がな」




おい主人公代理、お前なんてモノを渡してんだ?


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Day 82

それは次のための用意


「さて、そろそろこちらの出番かな?」

 

それから数日、俺は色々な準備に追われていた

まずは最優先でキアナの為の治療施設を艦内に用意

その次に火器管制システムの最適化(実は今いる艦、まだ未完成である)

天命に潜入させているスパイとのやり取り、今後の方針決定etcetc・・・

当然のことながら、その仕事量は情人で賄いきれるものではないが、作業の単体で見れば効率的に分散化した分負担自体はとても軽いものだ

 

「セリア」

「キアナ用の施設ならもう稼働できる位の完成度だぜ、あとは内装を少し変えるだけでいいらしい」

「よし、頼むぞ」

「あぁ、頼まれてやるさ」

 

セリアに任せているのは、まさしくソレである

一応、医療系の学生をしていた事もあるセリアは俺と同じく医療系に明るい人物だ

効率的な機器配置に万が一のための対策など抜かりなくやってくれている

 

「師匠」

「火器管制システムは最適化率65%といった位だ、完了まではあと三日だな」

「出来るだけ急いでくれ、早いにこした事はないだろ?」

「分かっている、急がせてはいるさ。それで補給だが、このままポーランド沖に向かえばいいんだな?」

「あぁ、そこで補給可能なプラットホームを用意している」

 

補給の問題もあったが、それは自分の方で対応してある

というより・・・

 

「まさかこんなのを極秘裏に作っていたとはな」

「元々、いずれ生まれるであろう難民を受け入れて生活できるように作っていたからな」

 

俺の主導で作っていたメガフロート連結型超大規模難民船である

名前は某ゲームで舞台になった地名から、シエラプラタと命名している

 

「だがこれだけの大規模となると水平維持には莫大な演算能力を持ったスパコンが必要だろ?」

BALDR(バルドル)システムを使っている、アレなら十分以上の演算力はあるからな」

「またなんつーもん作ってんだか・・・だがまぁ、妥当といえば妥当か」

「動力源は50年は連続稼働可能な空母用の原子炉を計5基、システム運用専用が1基と姿勢制御と航海用が2基、生活のための設備用が2基だ」

「割とカツカツだな」

「なので一世帯当たり1週間分の電力割り当てを決めているんだ・・・ただまぁ、補給の間はその問題も解決するな」

 

俺はそう言って少し前から用意していたプランを提示する

 

「なるほど、この艦から電力供給するのか・・・たしかにこの艦で賄いきれる電力だしな・・・」

「あぁ、ココの動力がアレで良かったと思うよ」

「波動エンジンの有効活用ってか?」

 

そう、今使っている艦のメインエンジンは波動エンジンだ。艦内の電力はそれをコンバートして生み出されている

その総出力は人口50万の都市のおよそ2ヶ月分に相当する

 

「入港したら作業員に通達しとくわ」

「あぁ、そうしてくれ」

 

そして次の相手は・・・見えんな

 

「ちょっと、ワザとしてるの!?」

「あぁすまん、小さくて見えんかったわ、テレサ」

「絶対ワザとでしょう!?怒るわよ!?」

「まぁまぁ落ち着けって」

 

紅茶を淹れながらそう言ってソファーに座るよう促し俺も対面に座る

 

「学園生の方は私達で何とかしているわ、でも・・・ひとつお願いがあるの」

「下船希望者の受け入れは師匠に言ってくれ、俺は作戦の方の責任者であって艦全体の方は師匠にぶん投げたからな」

「それなんだけど、今向かっているところは貴方の主導で作った場所でしょう?」

「あくまで主導であるだけで責任者じゃない、現地には一応自治体があるからそこの長との話し合いの場を作るので限界だがそれでもいいか?」

「それだけでいいわ、後は私で何とか出来るから」

 

テレサはそう言い、俺を見て笑う

 

「なんだ?」

「そうしていると良い所のお坊ちゃまね?」

「育ちだけは無駄に良いからな、どうしても素の方が出る時だってあるさ」

 

たぶん、飲む時の所作のことだろう

育ての親がとても良い人物であり、マナーなども受け継いだ

普段はそれこそヤクザかチンピラな対応だが素は今のようなモノであり、どう隠してもそれが表に出る時もある

 

「アヤカもそうだったわね・・・」

「アイツは俺よかお淑やかだろ・・・一応、女だし」

「本人いたら今頃首と胴体泣き別れよ?」

「俺があいつに負けるわけない・・・とは言い切れんな、なんだかんだで俺の事一番理解してるし、対応されて手段防がれたら打つ手がないわ」

「ハメ殺し得意だったわね、そう言えば」

 

アヤカの得意な戦闘スタイルは相手の行動全てを事前に防ぐハメ殺しだ、ゆえに敵となれば俺とて勝てる見込みは非常に薄い・・・というより分が悪すぎる

 

「逆に貴方は圧倒的な手数で相手に息つく暇すら与えないスタイルね?」

OODA(ウーダ)サイクルが俺の戦術の基本だからな」

 

観察(Observe)、適応(Orient)、決定(Decide)、行動(Act)

このサイクルがOODA(ウーダ)サイクルという。OODAループとも言われるが円環に繋がる為俺はあえてサイクルとしている

観察は意思決定者自身が直面する、自分以外の外部状況に関する「生のデータ」の収集

適応は観察段階で収集した「生のデータ」をもとに情勢を認識し、「価値判断を含んだインフォメーション」として生成する段階

決定は行動として具体化するための方策・手段を選択し、場合によっては方針・計画を策定する段階

行動は採択された方針に基づいて、意図・命令を踏まえて、実際の行動に移る段階を意味する

人間相手ならこれを正確に高速で繰り返し続ける事で相手の対応能力をオーバーフローさせ消耗を促すのが常套手段だ

逆に崩壊獣やゾンビ相手なら理論が似ているPDCAサイクルで十分な成果が出るので使わないが

 

「おかげでこっちも効率よく戦えているわ・・・みんな無事に帰ってくるのがベストだし」

「最善なのはケガなく、だな?」

「えぇ、当然よ!!」

 

たしかにそうだ、最善は怪我無く帰ってくる方がいい

しかし反応した側がチビッ子である

 

「今、失礼な事考えたでしょ?」

「ナンノコトデショウ?」

「片言になって誤魔化すんじゃないわよ!!」

 

叩かれた、こいつチビの割に強いな!?

 

「とにかく、これからも頼むわよ!?」

「言われなくても頼まれてやるさ、テレサ学園長?」

 

そういうと少し不貞腐れた顔で彼女は退室した

 

「さて、こちらもそろそろかな?」

 

再度世界が動き出すまで、もうすぐだ




チビ・・・テレサ「最近投稿が遅れてる気がするけど?あと今チビってあったの気のせい?」
グータラ作者「並行世界(原神)の方で忙しくてな・・・あと気のせいではない」
テレサ「誰が豆粒ドチビよ!!」(誓約の十字架持って攻撃開始)
作者「誰もそこまで言ってねぇぇぇ!!」(何故か全ての攻撃を変態挙動で躱しながら逃亡開始)


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Day 83

それは一人の男の告白


「・・・」

 

今も眠る一人の女性の横に座っている

今の俺がどういう表情を浮かべているのか、自分でも分からない

それでも、そうしたい・・・そう思う存在が今も眠っている

 

「ここにいたのか、カズマ」

「あぁ、俺の仕事だからな」

「お前だけの仕事ではないさ、誰もがコイツの目覚めを待っている」

「あぁ・・・そうだな」

 

師匠がそう言って俺の横に立ち、今も眠るアヤカを見下ろす

 

「移し替えはすんだのか?」

「少し前に・・・だが目覚める気配がしない」

「拒否ってやがるな・・・無理やりはしないが、そろそろ目を覚まさねぇと犯すぞ?」

「その時は教官の銃がアンタに向くぞ?」

「・・・やっぱやめとく、あの女傑怒らすと怖いし」

 

その瞬間、分厚い本の背表紙が師匠の頭にクリーンヒットした

 

「いってぇ!?」

「不謹慎な発言をするからだ馬鹿者、何ならもう一発くれてやるぞ劣等生?」

「いつまでも過去の事言ってんじゃねぇよ耄碌する年でもないだろうがぁ!?」

「そうかそうか、過去の地獄を自ら味わいたいとな?ならばついてこい。スペシャルメニューで味合わせてやろう」

「イヤダァァァァ!!」

 

教官が師匠を連れて部屋を出る、その少し前に俺を横目に見ながら告げた

 

「背負いすぎるなよ、藍澤・・・それはお前の悪癖だからな」

「分かっていますよ、教官」

 

やはりこの女傑にはどうやっても敵わないな・・・そう思いながらアヤカを見なおす

やはり変わらず眠っているままだ

そうこうしているうちに、ほかの人物が来た

 

「今日もここにいたのね」

「おや、チビッ子学園長。デスクワークは終わったのかな?」

「・・・給与減らすわよ?」

「おや、それは嘱託職員へのハラスメントかな?」

 

俺の返しにぐぬぬ、と唸りながらもテレサは続ける

 

「目覚めないの?」

「どうやら本人が引き籠っちまっててな・・・まぁそういう奴なんだけども」

「・・・どういう意味?」

「テレサ、まさかと思うがアヤカが豪放で自由闊達で誰よりも情深い性格だとでも思ってるか?」

 

小首をかしげたテレサにため息をつきながら俺は続ける

 

「コイツは、無理をしすぎるだけの一般人だよ」

「アヤカが・・・?にわかには信じがたいわよ?」

「大丈夫、明日はきっとよくなる。こんな言葉をよく言ってなかったか?ふとした時に、悲しそうな顔で」

「・・・あるわね」

 

俺はそれを聞き、持参していた紅茶を飲む

 

「現実というものを誰よりも理解しているんだよ、いかんせん頭が俺以上に良いからな。だから自分が仲間にかけている言葉が希望的観測でしか無いことなど当たり前のように自覚していて、それでも守り抜くためにあらゆる犯罪に手を染める覚悟もある」

「でも、一般人の感覚じゃあ・・・」

「そう、いずれ限界が訪れる・・・アヤカはそれを無視し続けた。罪の意識で・・・後悔と慚愧で壊れそうな心を押し殺して」

 

わたしは・・・一人だけ馬鹿みたいに、笑い続けていなきゃ駄目?

いつかの次元で耐えられなくなった彼女が漏らした心からの声を思い出す

この世界ではそんな余裕すら与えられなかった・・・

 

「甘えたい、愛されたい、誰かに寄りかかっていたい。その願いを抱え込み続けた結果、ついに折れたのが今の状態さ」

「どうにか、出来ないの・・・?」

「あるとすれば・・・一つだけだな」

 

俺はついに限界を迎えて折れたその先を知っている、何せ自分が身に受けて味わったから

 

「その・・・方法は?」

「内輪揉めが起こればいい」

 

その瞬間、艦内に大音声の警告が鳴った




はい、次話にて主人公目覚めます(最悪の存在として)


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第7章 境界戦域
Day 84


新たな目覚め、新たな戦い


「あの二人は何してるのよ!?」

「好きだからこそ、守りたいからこそだろうな・・・馬鹿らしい」

 

俺はそう言ってチビッ子学園長を退室させ、アヤカを見る

そこには既に誰もいないベッドがあった

 

「お前も、そういう類だったな・・・アヤカ」

 

苦笑いし、俺は電話をかける

その相手はアヤカと親友と言える絆を結んだ一人の少女・・・レベッカ・チェンバース

 

「あぁ、レベッカちゃん?アヤカが多分格納庫に行くと思うから先回りしてくれるかな?アレを持って行ってくれると助かるかも」

「それは構わないが、目覚めたのか?」

「目覚めて速攻出て行っちゃったわ、せわしない奴だよ」

「アイツらしい・・・そこから先は私も自由行動に移るがいいか?」

「構わないよ、どうせ君もついていく気だろう?」

 

俺がそう言うと、彼女は呆れながら応答した

 

「止める気はないんだな?」

「俺のやらかしを、君達に押し付けるのは申し訳ないが・・・今一度耐えてくれ」

「いい加減にしてほしいものだ・・・だがまぁ、アイツと一緒ならそれも悪くない」

「頼む」

「任せろ」

 

そう言って通話を切り、俺はCICに向かう

 

「遅いぞカズマ」

「すまん、少し手間取ってな・・・」

 

入った瞬間、師匠に怒られた

だが俺の顔を見て、察してくれたようで苦笑いを浮かべている

 

「あのバカ、またやったな?」

「あぁ、本当にな・・・」

 


 

「・・・」

 

電話を切り、私は格納庫に着いていた

そこでしばらく目を閉じていると物音がしたので目を開ける

音の方角の方を見れば、そこにはアヤカがいた

 

「レベッカ・・・」

「どうせお前の事だ、止めても行くつもりなんだろう?」

「・・・」

 

私の質問にアヤカは頷いて答えた、おしとおる気でいるようだ

 

「だったらコレを持っていけ、お前の相棒だ」

「つっ・・・!?」

 

そう言って投げ渡したのは藍澤カズマに頼まれて改修したアヤカの愛機、ゴールドフレーム

ゴールドフレームから提示された改修案に則った大幅改修を施した最強の姿だ

 

「止めないの・・・?」

「私はこの世界で誰よりも長い時間お前と共に活動した相棒だぞ?お前の性格ぐらい知ってるさ。這ってでも行こうとするなんて分かりきってるさ」

「そう・・・だけど」

「だから先に行け、すぐに追いついてやる」

 

そう言って背中を押し、私は告げる

 

「お前はいつも迷いながら、悔やみながら・・・それでも誰かを守るために勇気を出せる人間だと、私は信じている」

「ありがとう・・・」

 

そう言って、アヤカはゴールドフレームを展開して飛翔した

闇夜を切り裂き、星の光になりながら

だが私は確信していた。この星の光が、やがて大きな・・・星の海そのものになると

 

「さて、追い付くと言ったからな・・・到着した瞬間に私もあちらに向かうか」

 

私も小さな切り札を切らせてもらおう。私の崩壊の力は、たぶんアヤカの役に立つ

遠隔瞬間移動(アポーツ)、それが私が崩壊に触れて得た力

厳密には私の心象風景から切り出した欠片であるらしいが、私自身上手く理解できていない

だが確実に切り札となるだろうという自信がある

 

「座標を特定するか」

 

この能力の応用で、座標さえ正確に特定できればどんなに距離が離れていても瞬間的に移動できる

対象は自分と、自分が指定した相手のみであるが数に制限はない

 

「速いな、もう着くのか・・・私も行くか」

 

そうこうしているうちにアヤカは馬鹿二人のいる場所に着く手前になっていた

私も座標の特定が終わったので準備する




新章突入


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Day 85

遂に明らかになる主人公の真の力


「あの馬鹿共め・・・!!」

 

目覚めた私はあの二人が喧嘩している事を艦内のアラートで知った

そのあとは適当に格納庫内のモノを利用してあの馬鹿二人にお灸をすえに行こうと思ったがそこでレベッカが私を待っていた

相棒であるゴールドフレームを渡された後はそのまま飛び立ち、急ぎ向かっている

速度は既にマッハ9.5に達し、未だに加速を続けている

 

「お灸をすえてやる・・・覚悟していろ馬鹿共が!!」

 

そして最高速のマッハ11.9に到達した

 

「流石に、直線機動が限界か・・・よし、ならば!!」

 

ここまで加速をかければ、フレームシリーズの機体といえど機動には限界がある

そこで私は、馬鹿二人が激突する直前に超大型ビームサーベルで二人の中間にある床を切り裂いて減速、その先の建物の壁面を床代わりにして軌道を強引に変更、二人を上から見下ろす事にした

 

「間に合えよ・・・!!」

 

タイミングをミスれば二人のどちらか、あるいは二人共を傷つけてしまう

が、それでもやると決めた

 

「見えた・・・!!」

 

見えたと同時に超大型ビームサーベルを展開、最大出力で発振させ二人の間を駆け抜けながら減速

同時にスラストリバースを最大でかけてその先の建物の壁を蹴って斜め上に上昇、二人を見下ろす

 

「アヤカ・・・!?」

「アヤカさん!?」

喧嘩している場合か!!この馬鹿共がぁ!!

 

私の怒号に、二人が強張る

 

「痴話喧嘩も大概にしろ!!見ていてうんざりするんだよ!!」

「貴女には・・・」

「関係ないとは言わせないぞ、雷電芽衣。私も見ていてイラつくのでな」

「レベッカ・・・本当に追いついたわね」

「これこそ、私が崩壊に触れて得た力でね。まぁ、正確には応用だが」

 

レベッカが瞬間移動してきた、応用の幅が広そうな力のようだ

 

「今のお前達にいくら言葉で言っても、聞くことはないだろう・・・だからこちらも肉体言語で行かせてもらう・・・いいな、アヤカ」

「元よりそのつもりよレベッカ、で、どっち?」

「私は芽衣を叩き潰す」

「じゃあ私はキアナね・・・」

 

レベッカは芽衣を睨みつけている

私は言葉をかけずにキアナの顔面を鷲掴みして無理やり離れた

 

「離してッ!!」

「おう、離してやるともさ」

 

そう言って思いっきり別の建物の屋上に叩き付け、相対するように降り立つ

 

「なんで・・・」

「そんなことを聞く余裕があるのか今のお前に?」

「つっ・・・!!」

「来いよ、今のお前の実力を見てやる」

 

そう言って足を肩幅に広げて腕を緩く広げる

それはキアナにとって間違いなく挑発とうつる行為である

 

「芽衣先輩を止めるために・・・!!」

「それについては安心しろ、レベッカが一方的なワンサイドで勝つさ」

「律者とバルキリーじゃ雲泥の差があるのに!!」

「それがどうした?結局は経験がモノを言うんだよ何事も・・・たとえ律者になったとして、それが何だという?積み重ねも浅いヒヨコが一体何を出来るという?」

「それは・・・」

 

キアナが回答に困る・・・やっぱコイツ律者になっても頭の回転遅いわ・・・

 

「お馬鹿なキアナちゃんはこんな事も分からないかな?」

「馬鹿にしてっ・・・!!」

「するとも・・・実際お前馬鹿だし」

 

次の瞬間、キアナが飛び掛かってくる

それを難なくかわし、逆にガラ空きの腹部を殴りつけてうずくまらせて、脇腹に追撃で蹴りを叩き込み2メートルほど飛ばした

 

「この程度の安い挑発にも乗るようでは・・・成長してないも同然だよ全く」

 

やれやれ・・・と大げさに身振りをしてキアナを更に挑発するが、今度は冷静だった

 

「おや、これは通じないか・・・」

「痛いの2発も叩き込まれたら・・・流石に冷静にもなるよ」

「そうかい・・・では先に言うが、勝てる見込みは?」

「押し通る!!」

「駄目だこりゃ」

 

やっぱ冷静じゃないわコイツ、本気で潰すか

 

「なっ・・・!?」

「・・・遅い」

 

律者の力で対抗するべく亜空の矛で私を囲おうとしたキアナだが、それを読んでいた私はその全てを到達する前に迎撃、破壊した

 

「成長している面があるとすれば攻撃密度のみだな。それも毛が生えた程度か・・・一体お前は誰の何を見て成長したんだか・・・」

 

律者になっても戦い方は殆ど変わっていない

だからこそ対応には困らないが・・・それは欠点にもなっていた

 

「その程度ではたかが知れる、浅いにも程があるぞ・・・」

 

そして、私は能力の一部を解放した

 

「セリア、貴方の力・・・貸してくれる?」

「いいだろう、使ってみろよ、アヤカ」

 

借り受けた力を実体剣に纏わせ、叫ぶ

 

「天を穿て絶滅光(ガンマレイ)、煌めく勝利を具現しろッ!!」

 

一閃と共に放たれたのは爆熱爆光、過去最高の殲滅光として具象し、視界一面を埋め尽くしたそれにキアナは亜空間を展開し逃れようとするが

その先に私は先回りし、次を用意した

 

「力を貸しなさい、カズマ」

「俺には命令形なのかよ、まぁいいが・・・」

 

再び剣に纏わせる、今度は光ではなく闇・・・

 

「怨嗟の叫びよ、天へ轟け。輝く銀河を喰らうのだ!!」

「しまっ・・・」 

 

キアナが気づいた時にはもう遅い、既に射程圏内だ

 

闇の竪琴、謳い上げるは冥界賛歌(H o w l i n g S p h e r e r a z e r)ッ!!」

 

その一閃は亜空間そのものを形成する崩壊エネルギーを消滅させ、展開させたキアナに特大級のダメージを与えた

存在するあらゆる物質・現象を死や消滅に至らしめ得るという恐るべき性質は律者だけでなく、バルキリーにとっても鬼門として作用する

それをほぼ至近の距離で叩き付けられれば、特大のダメージなるのは自明の理である

 

「が・・・は・・・!!」

「それがお前の限界だ。いくら強くなろうとも、内側にいる存在と向き合えない以上、お前は私に勝てないんだよ・・・キアナ」

 

キアナは自身の内にいる律者人格・・・シーリンと向き合えていない

それでも何とか、律者の力を発揮出来てはいるが・・・やはり劣化しているのは言うまでもないだろう

 

「だから今は眠れ、お前は少し休んで頭を冷やすべきだ」

 

発動したのは事前に協力を取り付けた櫛灘教官の力、不壊金剛の独眼鍛冶よ、鉄を打て(Adamansmith Kyklops)

物質を硬化させるその力でキアナの猛攻を小動もせず受け止め、反撃に重い一撃を叩きこんで気絶させた

 

「さぁて、レベッカは・・・もうすぐ終わりそうね」

 

レベッカの戦っている方を見ると、もうすぐ終わるのが分かった

 


 

アヤカがキアナを連れ去るのを横目に見ながら、私は息を整えて雷電芽衣を見る

 

「さて・・・アイツに宣言した以上、お前を倒すのは決定事項だ」

「どいてください、レベッカさん」

「そう言われて退ける阿呆がいると思うのか箱入り娘?」

 

私の発言に眉をひそめる芽衣に私は続ける

 

「律者になってでも大切な人を護りたいという気持ちは私にも理解は出来る、私自身もそう思っていた時期があったからな」

 

家族を失ったあの日から、それを思った事は何度もあった

アヤカに出会って一緒に戦い、藍澤カズマからアヤカの過去を聞いて、それは別のものに変わった。

その事に、私は深く感謝している。畏敬さえ覚えている

 

「だが、それに無関係の誰かが巻き込まれるなら話は別だ。理解は出来ても納得は出来ん」

 

そう言って、武器を召還する

愛用の武器(小銃)ではなく、芽衣と同じ剣を二振り

その片方を彼女の足元に投げる

 

「抜けよ、今のお前に言葉などかけるだけで無駄だ」

 

芽衣が剣を拾い、言われたとおりに抜く

そして構えて私を見て・・・

 

「邪魔するなら、倒します」

「あぁ、その言葉を待っていたよ」

 

その瞬間、私は応用ではあるものの能力を最大稼働させて告げた

 

「全力で潰してやろう」

 

展開されたのは莫大な量の兵器

剣だけにあらず、軽火器から重砲、ミサイルまで揃えた武器の暴力

 

「耐えてみろ・・・耐えられるならば」

 

同時に放ったのは第二次世界大戦中のドイツ軍が使用した野戦高射砲、Flack37、通称アハト・アハトだ

その絶大な威力で連合国軍を震え上がらせた重砲である

 

「いきなり・・・!!」

「殺す気だとも、それと空にいていいのか?いい的だぞ」

 

次はAIM-9Xサイドワインダー、照準はあえて定めず適当にバラ撒く

一定の距離・・・芽衣がいる地点の近くで起爆するようにセットした

 

「くっ・・・!!」

「そら、逃げれると思うか?」

 

更に用意したのは、M61バルカンならびにGAU-8アヴェンジャー

アメリカ軍の有名な機関砲の二つから、人間なら簡単に吹き飛ばす大量の砲弾が芽衣に襲い掛かる

 

「この力・・・!!」

「お前とは理解度が違う。律者として覚醒したばかりで、まだその本質に掠った程度の身で私に勝とうなど笑止だ」

 

降り立った芽衣にそう告げて今度は無数の剣を叩き付ける

それを芽衣は先ほどと同じく雷の力で撃墜した

だが、それこそが私の狙いでもある

 

「おいおい、全てを打ち落とすかよ」

「この程度ですか?」

「言ってくれる・・・だが、お前の敗北は既に確定しているさ」

 

それと同時に指を鳴らして私は告げた

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 

打ち落とされ、床に刺さった武器が一斉に起爆する。これこそが私の切り札の二つ目だ

召還した武器を特製の爆弾として起爆させる。その破壊力は内部に貯蔵されているエネルギーの総量に比例する

今回のモノは全て事前に限界まで貯蔵されているため破壊力は絶大である

 

「が・・・ぁ!!」

「終わりだ、芽衣・・・お前ではどう足掻こうとも私に勝てん」

「それ・・・でも・・・!!」

「お前も寝ろよ、冷静でない頭で何を考えても結果は変わらないからな」

 

そう言って腹部を殴り、意識を失わせ、キアナを抱えてこちらに来ていたアヤカと合流する

 




さて次話をどうするか・・・


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Day 86

そして帰還


「やらかしたな、アヤカ」

「反省はしないわよ、カズマ」

「・・・そうか」

 

レベッカの力で艦に戻った私達を迎えたのは、ニヤニヤしながら近づいてくるカズマだった

あまりにもムカついたので返答と同時に腹にパンチをお見舞いしている

 

「で、私を止めなかったのは感謝しているけど・・・この件、防げたはずよ?」

「だが、蓋をし続ければやがて暴発するさ・・・お前のように」

「だからあえて見逃したと?」

「まぁな・・・」

 

私が質問し、カズマは即答した。次のレベッカの質問にも即答している

コイツはいつもそうだ・・・いつも率先して自分から損な役回りをしている

 

「で、この馬鹿共どうしようか?」

「キアナは医務室で反省文確定だな、そもそも戦闘出来ない身というのにやりやがった・・・後でお小言を学長と一緒にやるか」

「なら、芽衣もお願い・・・律者に覚醒したばかりだから」

「不安定だろうからな・・・よし、キアナと同室で隣り合わせにしてやる」

「ありがと」

 

そう言うと二人をそのまま医務室に運ぶ。着くころには既に準備が出来ていた

 

「セリア・・・」

「お早いお帰りだなァ、目覚めて挨拶もなしでいきなり協力要請するバカ娘?」

「それに関しては反省しているよ・・・」

「俺には?」

「「何か言ったか?」」

「いえ、なにも」

 

中で機器の設定を行っていたセリアに声をかけると、持っていたバインダーで私の頭を叩きながらセリアは返答してくれた

反省している事を伝えると、バインダーを下げて頭を撫でてくれる

カズマが何か言ってきたが二人で同じ言葉を同時に言って黙らせた

 

「キアナは右のベッド、芽衣は左に寝かせろ、機器の設定も済ませている」

「了解」

「カズマ、これの補充を頼むぞ」

「おう、任せろ」

 

セリアは私とレベッカ、カズマに指示を出して帰っていった

多分この後は艦内を散歩するのだろう

 

「ついでにお前もじゃ」

「は・・・?」

 

カズマがそう言ってきた瞬間、レベッカに後ろから拘束された

 

「レベッカ!?」

「お前も目覚めてすぐに無理な事をしているのだ。休ませるために、キアナ達と同室で反省しろ!!」

「クソ・・・!!離せぇ!!」

「カズマさん、ベッドは?」

「カーテン開ければ用意済み、セリアに頼んで用意してもらっていたからな」

 

そう言ってカズマがカーテンを開ける

そこには私専用に用意したであろうベッドがあった

抵抗を試みるがレベッカの言う通り、無理が祟ったのか上手く力が入らずあっさりとベッドに寝かされた

 

「お前もしっかり反省しろ、アヤカ」

「レベッカが冷たい・・・」

「頭から冷水を浴びてみるか?」

「冗談よ」

 

そう言って、抵抗を諦めておとなしくする

それを見てレベッカは毛布を掛けてくれた

 

「少しの間だけ、寝ていろ」

「そうするわ、レベッカ」

 

かけられると同時に襲ってきた睡魔に身を任せてレベッカの笑顔を見ながら寝る事にした




お、百合の花咲きますか?(咲きません)


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Day 87

それは復帰した主人公の戦い


「数が多いな」

「事前予測の3.5倍ね。カズマめ、復帰早々ハードスケジュールにしやがって」

「お前も大して変わらんと思うがな、アヤカ」

 

あれから数週間、私達は久しぶりにコンビを組んで崩壊獣の掃討作戦に参加していた

今回の作戦は他にキアナと芽衣、ブローニャとゼーレが組んでいる3チーム合同である

ちなみに立案者であるカズマは今頃CICで本でも読んでいるのだろう

 

「さて、ウォーミングアップは終わったな・・・」

「えぇ、行くわよ」

 

事前想定を上回る敵の数であるが、3.5倍程度なら何とかなる

そして今までは体を温めるためのウォーミングアップ、ココから先が本気だ

 

「では、行かせてもらおう!!」

 

そう言ってレベッカは自分の手元に剣を召還した

これがレベッカが崩壊に触れて得た力である、厳密には固有結界のようなものの中にある武器を選択して召還しているらしい

応用として武器以外の物も入れて召還可能であるらしい

しかも本人曰く内部との時間の流れはないに等しいらしい。実験で温かい紅茶を数日入れたままにしておいて取り出したところ温度の変化は殆どなかったそうだ

 

「豪快にぶん投げるのね?」

「剣の腕の方は芽衣からはっきりと"ない"と言われるくらいだからな。いっそ投擲武器代わりに使った方が良いだろうと思った」

「随分と豪華な投擲武器だぁ・・・」

「剣自体に高密度のエネルギーを充填しているから爆弾としても使える。しかも任意発動型のな」

 

そう言うとレベッカは剣が刺さっている崩壊獣に手を向け、指を鳴らした

直後内部から爆発する崩壊獣を見て私は一言感想を述べる

 

「グロ・・・」

「じゃあ銃にするか」

 

そう言うと召還したのはM4A1、しかも崩壊獣用専用弾を使う仕様だ

レベッカはグレネードランチャー付きのものを、私用も同時に召喚しておりそちらには銃剣を装備している

 

「ほい、お前のも同時にやってみたぞ」

「流石、天才科学者は違うわね」

「まだまだ、駆け出しにすぎんがな」

 

そう言って二人で小型の方を狩っていく

目指すのは発生地点の制圧、大型崩壊獣の撃滅である

マップを確認したところ、今のペースでいけば私達が最速で到達する予定だ

 

「見えた!!」

「最速はいただきだ、銃ではここまでだな」

「じゃあ・・・」

「ココから先は、こっちの出番だ!!」

 

そう言ってレベッカは再度武器を召還する

私の剣も同時に召喚しており渡してくれた

 

「切りこめアヤカ!!サポートしてやる!!」

「背中は預けるわよ!!」

 

そう言って私は駆け出す、私に気づいた崩壊獣が迫ってくるがその行く手を阻むのは大量に召還されて飛んでくる剣。しかも今回は加速をかけて飛んでくる

加速の方式は上下の空間を繋げてその間に剣を通して無限に自由落下をさせているだけのものだが、最終的に大気圏突入時の速度に達するその速さはどんなものであろうとも貫通する

 

「これで終わりだ、くたばれぇぇぇ!!」

 

カズマとセリアの能力を同時に借り受け、闇と光の相互作用によって大型崩壊獣を撃滅する

その反動で少し体力を持って行かれたが、前回よりは反動は小さいものだった

私の精神的な面が今の身体に慣れ始めているという事だろう

 

「最速到達者により大型崩壊獣の撃滅が確認された、作戦はこれをもって終了とする。各員帰投のための合流ポイントに集結せよ」

「了解、向かうわ」

 

地図に移された合流ポイントはキアナと芽衣のいる近く、ブローニャとゼーレが二番目に近く、私達からは離れているが・・・

 

「パルクール、久しぶりにしてみるか?」

「いいねぇ・・・」

 

私達はそのポイントまでパルクールしながら移動することに決めた




レベッカちゃんはサポート向けだけど前線でもバリバリ戦える・・・強くね?


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Day 88

それは助けられた者と助けた者の再会
しかし待っていたのは戦いで・・・


「これが俺の運命だとは思いたくないな・・・あまりにも悲しすぎる」

「それでも、やると決めたんでしょ?」

「あぁ、これだけは譲れんというものがある」

「なら、貫いて・・・カズマ」

 

あれからさらに数週間、ついにオットーは動いた

旧天命本部施設にて決戦を仕掛けてきたのだ

 

「あいつは俺からかつて奪った力をも利用して偽神の昇華を行うだろう、そしてそれを安定稼働させるためにいくつもの罠を仕掛ける気だ」

「切り札を塞ぎに来るでしょうね、こちらは戦力も何もかも不足しているし」

「だが保有する戦闘員はどれも粒揃いだ、数では大いに負けていようと質では大いに勝っている。それがこちらの持ち味だし、切り札を見分けやすくしている弱点でもあるがな」

「勝てるわよ、必ず」

「予感か?」

「いいえ、確信よ」

 

私はカズマにそう告げて別行動を取る

キアナ達と合流して目指す所がある


「あぁ、お前がそう言って外れたことはなかったな・・・」

 

残った俺はアヤカの最後の台詞を思い出しながら呟いていた

あいつがああ言ってそれが外れたことなど、思い出す限り一度もない

 

「だから悪いんだが、殿は俺だ・・・デュランダル」

「なぜ、そこまでして彼女たちのかたを持つのですか?あなた一人でも侵攻できる力を有していながら」

「だからだよ・・・俺だけでこの世界を救った所でどうなる?破壊には破壊で返されるのがオチだ。そこから新しい世界を見ようとした所で結果は生き地獄になるだけだ、それを望むほど人は愚かではあるまい?」

「だから次世代に託す、と?」

「お前もその託される側だよ、デュランダル・・・俺やオットーではどうやってもこの先でいつか詰む、どうあがいても絶望が待っている。だからそれを打開できる若い力が必要なんだ」

 

俺は自分の考えを述べる

これが俺がこの世界でたどり着いた答えだ

 

「それがお前達なら出来ると信じている」

「では、ここで殿をする理由はなんです?あなたが捨て石になる必要がどこにあるというのです!?」

「あぁ、それか・・・」

 

俺はそう呟いて笑う

 

「お前の過去を見せてやろう」

「つっ・・・!?」

 

そう言って展開したのは、この世界で唯一自由に使える能力、アカシックレコード閲覧能力だ

空間に展開してそこにデュランダルを巻き込んだ

 

「お前はすでに経験しているのだろうが・・・もう一度見てもらおうか」

 

そして見せたのはアカシックレコードに記録されていた彼女の記憶

それでも、彼女は・・・

 

「やはり、そうするよな・・・」

「誰かが言った言葉です・・・嘘や偽善から始まったものであろうと、最後まで貫けばそれは真実へ変わると・・・」

「あぁ、誰かが言った言葉だったな、それは」

 

それでも彼女は立ち上がった

そして続ける

 

「彼女と私の人生が嘘から始まったものだとしても、その行動が主教の計画であったとしても・・・彼女も私も、誰かの駒ではありません」

「そうだな、そしてそれが人の・・・」

「えぇ、これまでの行為は全て自身の意志によるもので、歩いた道は全部、彼女にとっての宝物でしょう」

 

自分がそう信じているからこその答え、そして戦う理由・・・

それに俺は感動さえ覚えていた

デュランダルでもシャニアテでもない、一人の人間として、美しい世界を守るために戦う戦乙女(ヴァルキリー)であることに変わらないのだと

 

「過去も今も・・・そして未来も・・・迷いなく自身の道を歩んで、果たすべき使命を守り続けます!!」

「人類が崩壊に勝つ、その日まで。そしてその後も変わらず、か・・・」

 

ずっと、心の何処かに迷いはあった。彼女戦うことに関して。それでも、彼女は今自分の意志を強く示した

ならばもう、迷いは断ち切ろう。意思を示したその相手に対してあまりにも無礼すぎる

 

「それでは、言葉による問答は終わりだ」

 

ブラックフレームを纏い、俺は告げる

 

「力を示せ、デュランダル。そして超えて行け、お前にならば、出来るはずだ。お前の正義を貫いてみせろ!!」

 

かつて彼女を救った者の一人として、彼女をこうした者として、俺のもてる最後の事を、その責任を果たそう

それが彼女にとってどんな意味を持っていようと、それが俺の出した答えを超えるものであると信じている

そうして全力で戦闘を行い・・・やはり俺は負けた

これが俺にとって清々しい敗北だったのは言うまでもなく、人生で三度目の、文句なしの敗北だった

 

「なぜ、負けたのに笑えるのですか?」

「久しぶりなんだよ、この感覚・・・打ち砕かれる快さ・・・って言うべきかな」

 

地に倒れなお笑う俺に対しデュランダルの顔は浮かないものだ

 

「おいおい、デュランダル・・・勝者が、そんな浮かない顔をしてどうする?それにその装備、俺の開発した夕闇を運ぶもの(ダスクブリンガー)だろう?」

 

彼女はこの場に、俺が天名に属していた頃に開発した装備であるダスクブリンガーを身に着けていた

しかし、その名前は今の彼女に似合わないだろう・・・

 

「今の君には似合わんな・・・夜明け(ドーン)夜明けを運ぶもの(ドーンブリンガー)がいいだろう・・・どうだ?」

「良いと、思います」

「そうか、良かった・・・」

 

今の彼女に似合う名を付け、名称も即座に変更する。開発者権限での変更であるため誰も変更はできない

 

「行けよ、今はしばらく動けねぇが・・・すぐに追いついてやる」

 

彼女は、俺に小さくお辞儀をして去っていった

何もそこまで礼儀正しくなくても良いものをと思いまたひとしきり笑い、体を引きずって石柱を背中の支えにして座る

 

「あぁ、タバコ切らしちまった」

「だろうと思って持ってきたわよ、カズマ」

「イセリア・・・」

「ずいぶんと清々しい負けっぷりね?」

 

気づけば、すぐ横に最愛の恋人が座っていた。おまけに持ってきてくれたタバコを差し出される

それを咥えて、ついでに火も付けてもらった

 

「見てたのか?」

「地面に倒れながら笑うところからね」

「うっわはっず・・・見なかったことにしてくれないか?」

「考えとくわ」

 

そう言って二人で笑う。やはり誰かと笑えるのは良いものだ、それが心から愛する者ならなおさら

 

「あの子達に託したんでしょ、これからのこの世界を」

「あぁ、俺に出来るのはこれくらいだからな」

「なら、これからは見届けましょう、あの子達の選択を」

「そのつもりだ、これからは楽して暮らせる隠居生活が待ってるしな」

 

そう言って、決戦の場を俺は見る

そこではこれから、人類のこれからを決する戦いが始まるはずだ




主人公代理あっさり負けてんな?


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Day 88.5

今回はデュランダル視点・・・彼女から見た主人公代行の姿とは・・・?


「・・・」

 

命の恩人の一人である藍澤カズマを倒して数分、私は移動しながら彼の言動の意味を考えていた

私の問いにおかしな回答し、私の記憶にない過去を見せた理由

それ等には何かしらの意味があるはずだと・・・

 

「あそこで倒れる意味が・・・」

 

そこで私は思わぬ解を出す

あそこで私に負ける事が、何かしらの引き金なのではないかと

 

「しかしそれでは・・・」

 

早すぎるのではないか、タイミング的に・・・

そう思う自分がいる

なぜなら彼は無意味な事を一切しない人物だからだ

全ての行動には何かしらの意味があって、過分はあっても不足はないからだ

その彼が、重大局面のここで無駄な事をするはずがない

 

「まさか・・・」

 

そこで脳裏によぎったのはキアナ・カスラナという少女の姿だった

過去の私の名前を貰い、その定められた運命に翻弄されながらも自分の意志を貫く子の姿を

彼は言わなかったが、彼が望んでいるのはおそらく・・・

 

「彼女と共闘しろと言うのですか・・・?」

 

そんな事、言葉で直接言ってほしい・・・少なくとも任務以外で彼女と険悪な事にはならないのだから

そして任務でも、私は彼女達の側に立つ

それが天命への裏切りであろうと、これ以上、人としての間違いを犯したくないからだ

主教が何を企んでいて、その結果がどうなろうとも、これだけは変わらない

 

「言葉が足りないのです、貴方は」

 

損な役回りをするのは昔からだと、リハビリの時の会話で言われた事がある

確かにこれでは、損をするだろう・・・一言が足りないのだから

 

「まぁ、アレをリハビリと言えるかは疑問ですが」

 

そのリハビリを思い出してしまった

やっと身体が少し動かせるようになった私を床に置き、部屋内の指定した場所まで這って移動させることから始め、物に摑まり歩けるようになれば別の部屋まで移動させられた

よろめきながら歩けるようになればさらに遠距離を歩くように言われた時は恐怖したものだ

そうしてやっとまともな運動が出来るようになった時、その理由を教えられた

 

「その事も、関係しているのですね・・・」

 

それだけの過酷なリハビリの理由は自らの過去によるものだった

彼は当時の私と同じころに戦災により重度の負傷をした、それこそ後に彼の師となる人物が決死の努力で手術を行い成功させなければ死んでいて当然というほどの・・・

しかしその過程で彼は両親の死も体験した・・・

私にその過去を話していた時の彼はどこか懐かしむように自分の身体を抱いていた

彼の身体には両親から貰った多くのものがある。彼曰く、この血も肉も、骨ですら両親からの最後のプレゼントだと・・・

その言葉の意味はすぐに分かった、全て移植によるものだと

そしてそれを同時並行で成功させる確率を聞いてみたところ、返って来たのはどんな医療技術をもってしても不可能という無慈悲な回答

それでも彼は笑っていた、そして続けた

"それから様々な経験をしたし、時には傷ついてボロボロにあった事もある。そして生き延びる度に俺は両親に感謝していた、今回も生かしてくれてありがとう。今度は俺が誰かにあなた達の勇気を分けるから、とね"

その時の笑顔が、とても印象に残っている

そしてその言葉の意味はバルキリーになってから理解した

 

「どんなに暗い人生だったとしても、過去が血にまみれていようとも・・・」

 

人が人として、()いままでいれたならば・・・

どんなに冷たい凍土であろうとも、やがて溶け出し芽が息吹き、花を咲かせる

 

「そうですね、藍澤さん」

 

彼の至った領域に私が辿り着けるかは分からない

それでもその精神性は少しだけ、理解出来た気がした




実は仲間達の次に主人公代行を理解していたデュランダル様・・・
そして少しだけ語られた主人公代行の過去
その重い過去を語るほどデュランダルに自分を重ねていたのか・・・あるいは・・・


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Day 89

それは一人の男の辿り着いた答え


「・・・」

 

イセリアと別れ、俺は宣言通り後を追うことにした

その途中で霧に阻まれる

オットーの差し金ではない、これは俺の迷いから生まれたものだろう

 

「過去を見たいと思ったことは何度だってあるさ」

 

その度に、決意を新たにするために

その確認のために過去を思い出しては涙を流したことが何度あるだろうか

しかし今は涙ではなく別の物に変えるときだ

 

「あぁ、そうだな」

 

後ろを振り返る

そこには俺はこれまで歩んでは殺してきた人の壁がある

その総数は数え切れないほど、モヤに包まれている

ただ一人のために、それだけの死を重ねてきた

たった一度、自分の願いを叶えるために、それ以外の全てを捧げてきた

それももう終わりだ、ここで全ての終止符をうってもいいだろう

 

「あぁ、そうさ・・・もう一度」

 

この世界での最後のワガママを

たった一人を思い続けた、愚直なクソ野郎の目的を叶えてやるためにも

 

(そこから先は地獄だぞ?)

 

誰かの声が聞こえた、その声はおそらく未来の、どこかの時間軸の誰か(自分)

その声に俺は微笑みながら歩を進める

 

「あぁ、そうだな・・・俺の足跡に幸福なんてなかったしこれからもないのかもしれない」

 

ゆっくりと、踏みしめるように丘を登る

その頂上にあるのは、一振りの剣と一本の旗

俺が人として最後に手にしていた武器と立ち上げた組織のシンボル

その両方を手にして、再確認していた決意を胸に言葉を出す

 

「俺は、正義の味方で有り続ける。それが俺の人生を壊したとしても、仲間と共にある自分を選ぶために」

 

心の底から信頼している仲間達と共にいる自分

それが俺の存在証明

誰かのためでも自分のためでもない、でも誰かがいたから今の自分になれた

自分がいたことで、誰かの背中を支えることが出来た

ならばそれが俺にとっての正義だ、絆を胸に新たな未来を得るために

仲間のいる今の世界がどれだけの異常な世界であるかも認識して、それでもこの世界を守るのは俺達だけではないと確信してる

未来は次世代に託されるべきだ、今を生きる先達である自分達に出来るのは今の世界をありのままに残すことだから

 

「だから、いま一度、俺に力を貸してくれ・・・みんな」

 

刀を抜いて腰にある鞘に収め、手にした旗を力強く掲げる

その瞬間、モヤに包まれていた人々が光となって消えていく

そして残されたのは一人の人間・・・俺と全く一緒の容姿の人物だった

 

「行くがいい、それがお前の存在意義であると再認したのならば」

「あぁ、行ってくるよ、人であった頃の誰か(自分)

 

背を向けて、向かうべき方角へ足を踏み出す

その足はいつの間にか軽くなっていた

迷いはもう無い、せいぜいあのクソ野郎の悔しそうな顔を拝むために横紙破りを敢行しようじゃないか




後書き

書 く こ と が な い


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Day 90

横紙破りを敢行する者たち



「数が多いわね・・・」

 

オットーの計画ではおそらく、これも想定内だろうという数の妨害を受け、私は呆れた声を出した

場所は既に別の空間に移行している

今いる場所は過去にすら干渉可能な異次元空間、この空間を形成するのはカズマから奪った力と・・・推測ではあるがカスラナ一族の誰かの力も転用されていると思われる

 

「あぁぁもうめんどくせぇ!!空間ごと爆破解体してやる!!」

 

そう言って指を鳴らした瞬間、超絶規模の爆発が発生する

私の能力である楽園を照らす光輝よ、正義たれ(セントスティグマ・エリュシオン)を最大威力で行使したのだ

 

「ダメだぁ効いてなぁぁい!!」

「アヤカ、遊んでいる場合じゃないよ!!」

「安心しろ、遊んでない」

 

敵が更に湧いた瞬間、その足元が爆砕された

 

「私の能力は悪辣でな、一度使い始めれば、それを意識して解除しない限り・・・」

 

拡大していく爆発半径の外側で私はそれを見て呆れている連中に告げる

 

「このように、指数関数的に威力が上がっていくのさ」

 

そして解除のためにもう一回指を鳴らした瞬間、最初の一撃を大きく上回る極大規模の爆発が起きた

 

「これが私の特殊能力、楽園を照らす光輝よ、正義たれ(セントスティグマ・エリュシオン)だ」

「そして小技も効くってか?」

 

巻き込まれかけたセリアがそう言って私に近づき、一言

 

「やるならやるって言ってくれよ、巻き込まれかけたじゃねぇか!!」

「あなたならどうにか躱せるでしょ?心配はしてないわよ、信頼はしているけどね」

「まぁ、そうだけどさぁ・・・」

ちょろいわぁ

「今なにか言ったか?」

 

おっと、地獄耳なの忘れてたわ

 

「全く、そこそこ進んでいるのかと思えば、大して進んでいないではないか馬鹿どもめ」

 

カズマの声が聞こえた瞬間、黒色の波動が敵を纏めて爆砕していた

 

「この程度で足を止めるな、まだまだ先は長いんだぞ」

「カズマ、お前・・・」

 

セリアの声で私も気づく、腰にさした剣と手に持つ物が変化していることに

 

「いま一度、助力してもらった。ココが俺の決戦の場でもあるからな」

 

そう言って旗を振り、石突を地面に突き立てる

ひろがった旗には、かつてカズマが作った組織のシンボルが描かれている

そしてそれは、私の身体にバルキリーとして宿った聖痕でもある

 

「さぁ、横紙破りをしに来たぞオットー!!阻止したいならさっさと終わらせやがれ!!」

 

いつの間にかこちらを見ていた大主教は呆然とした顔でカズマを見ていた。明らかにボロボロの身でそんな啖呵を切るのだからそうなっても当然だろう

だけど私や、私のいた世界でカズマと共に戦い続けた人間達は知っている、この状態こそが最高最強の姿であると

 

「それとも破いてほしいか?だったらそのまま呆けてろよ、すぐにぶん殴ってやるからなぁ!!」

 

そこまで言った瞬間、大主教はカズマの意図に気がついたのか背を向けて走り始めた

目指すのは一点、アカシックレコードの編集地点。そこでやることは唯一つ、自身の大切な人が生還できる未来を作ること

そのために彼は全てを捧げ・・・犠牲にしてきたのだから

 

「俺としてはヤツに同情するよ、俺が奴ならば全く一緒の事をしていただろう」

「貴方には止めてくれる仲間がいるでしょ?」

「そこが違いでもあるけどな」

 

カズマとそう言い合い、私はレベッカに背中を預ける

 

「こういうのも、悪くはないな」

「エキサイティングでしょ?」

「・・・行くぞ、アヤカ」

「えぇ、レベッカ!!」

 

そして、一陣の風が吹き荒れる

その発生源は言うまでもなく、ウェンディの・・・律者形態?

 

「ってあれぇ!?律者形態!?なんでぇ!?」

「お前が与えたプログライズキーは元々、あの子の体に入っていた崩壊の欠片を流用したものだろう?あの子はそれに気づいていたのさ」

「だから、力を上手く制御する方法を考えて実践し続けて律者形態を安定して使えるようになったの」

「あ、なるほどぉ・・・」

 

納得はしたが一瞬理解できなかった・・・相性の差かあるいは何か他の要素があったと考えておこう

 

「防御は私とレベッカさんに任せて!!」

「お前は突き抜けろ、アヤカ!!」

「背中は任せたよ、二人共!!」

 

そして私も後を追いかける、いつの間にかカズマが並走していた

 

「行くぞ、合わせろ!!」

「借りるわよ、カズマ!!」

 

私のカズマの持つ剣から闇の瘴気が吹き荒れる

今の私達の相性は過去最高値だろう、だから全開で使用できる

 

「怨みの叫びよ、天へ轟け!!」

「輝く銀河を喰らうのだ!!」

 

そして振り抜くは前面の敵、それらを一切残らず撃滅しよう

 

「「闇の竪琴、謳い上げるは冥界賛歌(H o w l i n g S p h e r e r a z e r)ッ!!」」

 

かくして放たれた一撃は目的通り、オットー・アポカリプスに微塵のダメージも与えず、周辺の敵を一掃した




まるで新旧主人公みたいな奴らだなお前ら


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最終章 Last Days
Last Day (1)


それは全ての終わりの時



「終わったな」

 

その声を出したのはカズマだった

その横には自身と同じく途中で加勢に加わったデュランダルがいる

 

「あぁ、君のお陰で・・・」

「戯言を抜かすな、オットー。ここにいる全ての人間の人生を狂わせてやっとだろうが。あぁ、俺は許してやるぞ、条件としてお前が大主教辞めるならな」

「元よりそのつもりさ、僕の後は、テレサに継がせようと思う」

「えぇぇ!?」

 

こちらに歩いてきていたオットー大主教は、彼の愛している人物、カレン・カスラナが眠っていた

彼の計画は完遂したのだ

なお突然の発言にテレサは驚くが私は適任だと思っている

 

「だけど戦闘の終わりじゃあねぇんだよなぁ・・・いや、これからがやっと最終章ってところだが」

「どういう意味なんだい?」

「説明する時間くらいはあるから説明してやる、がその前に質問だ」

 

カズマそう言って私達を見る

 

「お前らずっと不思議に思わなかったのか?崩壊獣が霊長類の系統から外れた個体が少ないことに」

「・・・」

「もっというなら、律者が崩壊適性の高い者に集中していたことにもだ」

 

地面が揺れた、しかもそこそこに大きい

 

「その正体・・・GODはとある神のことを意味している。その神の名は、ティアマト」

 

更に揺れる、カズマの背中のその先には一つの巨大な影が生まれつつあった

 

「原初の創造における混沌の象徴、原初の海の女神。俺は崩壊とは地球の免疫システムが生み出す白血球のようなものであると同時に、ティアマトの後悔が残留思念として残ったものではないか?と推測している」

 

でなければ他の可能性だけどな、と言葉を濁し、カズマはやっと影の方に振り返る

 

「であればこの世界の住人たる君達がその残留思念を浄化すればいい。その輝きをしかと相手に見せつけて誇り、前へ進む意思を貫くのであれば」

 

崩壊が終わる。とカズマは口にした

しかしその後に、戦争は終わらないけど、と小さくつぶやいた

 

「そしてここには神話を再現するに足る要素が揃っている、風と矢があるからな」

 

カズマの言う風と矢はおそらく律者を含めた人間そのもの

気がつけば全員がカズマの声を聞いていた

 

「みんな、清聴ありがとう。少しばかり賭けをしてみない?」

 

カズマの横に立ちながら、私は皆に背を向けつつ意地悪な笑みを浮かべて質問する

 

「賭けの内容は何?」

「人類の未来について、神に怯えるか、神を超えるかよ」

「ティアマトは抵抗などしないだろう、彼女にとって人類とはそれ全体が自らの誇るべき子であり、慈しむ存在だ。後悔より生じた残留思念は彼女にとっての影であり、その思想は真逆であれど、な」

 

現に攻撃は今も起きてない。超巨大な影があるだけだ

その影が少しずつ色を付けつつあるのは復活の兆しだろうか?

 

「故に、選んでくれ。彼女を倒し世界を人類の手で守り抜くか、彼女に怯えながらその庇護のもとで過ごすか」

「答えは出ているよ」

 

カズマの問に最初に答えたのはキアナだった

その瞳に宿っているのは決意の焔だ

 

「神様も知らないヒカリで歴史を創っていけるって、手向けの光を送ろう」

「・・・全員、答えは出ていたようだな」

 

もう私達が質問するまでもないだろう。それが彼女達の答えだ

異世界の人間に出来るのはここまで、後は彼女達に全てを託す

誰が指示を出すまでもなく、彼女達は動いていた

 

「後は彼女達の帰還を待つだけだ、帰るぞ、アヤカ」

「私はここで見届ける仕事が残っているわ、カズマ」

「・・・そうか」

 

カズマに声にそう返して私は皆を見る

カズマはそれ以降私に何も言わずに帰っていった

そして全てを見届けて、私も帰る

 

ここまで頑張り続けた彼女達が少しでも癒やされるように、ささやかな、でもとびっきり盛大な祝勝会を開くために



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Last Day (2)

それは全ての終わった頃


「それでは全ての事件が終った事を記念して、静かに乾杯しようかね」

 

カズマはそう言って乾杯の音頭をとった

 

「さて、これで俺達の戦争の一幕は終わったな・・・だが全ての結末はまだだ」

「これから先は、自分達が変えた世界の行末を見届ける・・・んだよね?」

「お、正解だぞキアナちゃん。君には特製のチーズケーキをプレゼントしよう」

「ありがと、でも他の欲しいな?」

 

お、キアナめ、上手く交渉を開始したな?

 

「んー、ならばこれはどうかね、バームクーヘン」

 

これもカズマの特製のものだ、カズマはアレから最速で帰って料理を開始し様々なお菓子を作っていたのだ

私は今マカロンを食っているがこれはイセリアが作ったものである

 

「美味い・・・」

「アヤカのも美味しいわよ?」

「イセリアには劣るよ」

 

私のと同じ作り方をしているのに何故ここまで違うものになるのか分からないくらい美味い

私の作り方が間違っている訳では無いが、きっとなにかが足りないのだろう

 

「というわけでここに参加している元大主教様にはこれから罰ゲームだおらぁ!!」

「何をするんだい!?」

「うるせぇ俺に付き合えこの野郎!!さっさとついてくるんだよぉ!!」

 

カズマはそう言ってオットー大主教を連れて外に出た、きっと男二人で何か話すことがあるのだろう

 

「私はこっちとかな」

 

そう言って私は残されたカレンさんに目を向けて近づく

私とほぼ同タイミングでデュランダルとキアナも来ていた

 

「初めてお目にかかりますね、カレン・カスラナさん。私は横にいるあなたの子孫であるキアナと同級生にして彼女の師の一人、九条・アヤカ。そちらにいるのは現在の天命最強バルキリーであるビアンカ・アタジナです」

「アヤカさん、それは私がやろうとしていたのですが?」

「必要以外しゃべらないのによく言えるわと言ってみた方がいい?」

 

私がそう言うとデュランダルは黙り込んだ

それはそうだろう、言われて思い当たるフシがあるのだから

 

「オットーから聞いたわ、私達のせいで要らぬ負担を負わせてしまってごめんなさい」

「それでも、大切な人達に会えたから幸せだよ。デュランダルも、でしょ?」

「えぇ、そこは同じですよ、キアナ」

 

何かと馬が合わない二人だが、その思想はやはり同じ遺伝子を持つ者なのか共通している

 

「所で失礼なことを聞くのだけど、良いかな?」

「何かしら?」

「料理はできる?」

 

3人の顔が凍った

これはアレですね・・・地雷だったわ

 

「い、一応は・・・」

「目がすっごく泳いでますけど、出来ないなら出来ないで問題はないですよえぇ」

 

私はそう言って、いい笑顔で返す

私の目が黒いうちに矯正してやろう、3人共な!!

 

「手取り足取り、スパルタンに教えて差し上げますので、どうぞご安心ください」

「鏡があったら今の貴女に見せてあげたいくらい良い笑顔しているわよ」

「意中の人に振る舞いたいでしょう?」

「オットーとはそんな関係じゃ・・・」

 

私の質問に返したカレンさんの顔は真っ赤だった

自身の好意に気づいた今、とても恥ずかしいのだろう

 

「まぁ、そう言っても答えはもう出ているわ・・・貴女の言う通りよ」

「まずは今の世界を旅して満喫してください、教えるのはその後です」

 

そう言って用意していたとある紙を渡す。それは世界一周の船旅のペアチケット

カズマがイセリアといつの間にか立ち上げていた旅行会社の最高級の旅のプランだ

普通に入手するならば最低でも750万は下らない代物で、問い合わせが殺到しているのだとか

それを無理を承知で融通してもらい、ペアチケットを確保した

 

「まずは世界中で美味いものを食いましょう、そしてこの世界が美しいと再認識してください」

「貴女は・・・自分以外に優しいのね」

「それは少しだけ違いますよ、カレンさん。自分に厳しく在れるから、誰かに優しく出来るんです」

 

そう言って渡し、渡しは二人に目配せをした

あとは子孫との語らいの時間であると思ったから

 

「アヤカ・・・あなたはこれからどうするの?」

「やれることはやるだけやった、あとはその結果を見ていくだけだよ、イセリア」

「カズマと一緒じゃない」

「ほとんど中身同じだしね、違うのはそのために何を成すかの考え方と、性別くらいかしら?」

「これからも戦うの?」

「どうだろう、少なくとも今はゆっくり休みたいわね」

 

そう言って、頑張り尽くしだった相棒を優しく撫でる

ゴールドフレームも大変良く頑張った、しばらくは休みたいだろうしそれだけの時間は当然ある

問題はその時間の後自分がどうするかだ

 

「私達の生まれた世界と、この世界では戦争の意味が違うわ」

 

ふと、これまでこの世界で過ごしてきた時間の感想を口にし始めていた

 

「国家や思想でもなく、利益や民族のためでもない。人が人のままに尊厳を持って生きるために戦う・・・ここはまだそんな世界のままで、それこそが私の守りたいもの」

 

かつて私やイセリア、カズマですら人としての尊厳を蝕まれた

尊厳を踏みにじられ、戦わされた

この世界はそこまで腐っていない、人が人のままに尊厳を持って生きている

 

「命を消費する戦争が、合理的で痛みのないビジネスに変わることはないと思う、そうなりそうなら私が死力を尽くして止めるけどね」

「全てが制御された世界という地獄を作り出さないために?」

「もちろん」

 

ナノマシンによって遺伝子を、情報を、感情を・・・あまつさえ戦場ですら監視され、統制された世界など地獄と言わずしてなんという

たしかにそんな世界では抑止ではなく制御されているから、大量破壊兵器によるカタストロフィなどおきはしないだろう

だが、戦場の制御は歴史のコントロールとも言える

戦場が制御管理されたとき、戦争は普遍のモノに成り下がった

そんな世界に私達は生まれた、そして反旗を翻し、本来あるべきと想った形に世界を作り直した

その結果として100億を超えていた世界人口が4割以下に減ってしまったけども、その屍を超えて来たことに後悔などはしていない

 

「だからまだ、この身が燃え尽きぬ限り、私は戦い続けるわ。ありのままの世界を守るために、ね」

「今度は仲間も一緒に、ね?」

「えぇ・・・」

 

そう言って、私とイセリアは互いの手の甲をぶつける

親愛と、信頼の証として。そして、この世界を守る同士として

そう、私達の戦いはあくまで一区切りがついただけだ

これからも戦いは続いていく、この身体が朽ち果てるその時まで




おっもいけどこれで本編は終わり、次回はついに・・・


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END DAY And to a new world

それは全ての終わりで次の始まり


「あれから八年もたったかぁ・・・そりゃあ成長もするよね」

「人の胸を見ながら何を言ってるのですか貴女は?」

「いやぁ随分と一部の主張が激しくなってるなぁって思ってつい」

 

あれから八年の月日がたった

とある任務で約6年ぶりに合同で動いているブローニャのたわわに実ったある部分を凝視してしまうのもある意味で無理はない。だってそこまで成長するって思ってなかったから、ぶっちゃけると貧乳枠のままだと思っていた

ところが時間というものは意外な実りを齎すようで、巨乳とはいかないが美乳枠にインしていたのである

 

「そんな事より、今は調査です。この類に詳しいのは貴女でしょう?」

「そう言われてもねぇ・・・もう見た時からコレの正体が分かってるのよねぇ・・・」

 

目の前にあったのは武骨な一つの門扉だった

突然現れ、謎の空間歪曲が開いた先で起きているとの事である

だがそれは見たことのあるデザインであった、というか私の記憶が正しければコレは異世界への移動も可能な並行世界観測装置の一部だ

一部ではあるがこれだけでもある程度の観測、移動能力は有しており、帰還も可能である

問題は本格始動に莫大な電力を有するという事だが、こちらの世界に流れ着いた個体は既に始動されており、維持システムを再設定するだけで済みそうである

なので一度システムをスリープさせ現在の本部へ移送、そちらで最終調整を行いスリープを解けば問題ないという評価を下す

 

「なるほど、ではさっそく行いましょう・・・迂闊に地元住人が触れたら危険ですから」

「賛成ね、この門扉の重量はおよそ3.7トンだから・・・今運用しているヘリ二機で十分足りるわ」

「では処理の方は任せます、私はヘリの用意を」

「お願い」

 

そしてシステムを一時的にスリープにして本部に持ち帰る

その途中でカズマ達を含めた特殊部隊を全員招集、見覚えがないか確認を取る

該当は全員、総合して自分達がこの世界に来たことで因果が生まれて呼び出されたものであると結論が出た

ただ、脅威度の判定であればランク外と言っていいほど人畜無害なものであるためしばらくは天命が既に有している並行世界観測システムの補助装置として運用することになった

 

「ただまぁ、なぜか最初から登録されている世界が一つだけあるのよね・・・」

「シンフォギア・・・どのような世界なのでしょう?」

「カズマ、知ってるでしょ答えなさい」

「行ってみればわかるとしか言えんぞ、あの世界を言葉で表現する方法が俺には存在しねぇ」

「はーつっかえ」

 

そう言って自分の部屋に帰り、ブローニャと今後を話し合う

しばらくは私とブローニャが預かることになった門扉であるが、ブローニャはこれでも忙しい身だ、そう長い事一つの事に関われるほどの余裕はない

なのでここで私はある人物を召還することにした、その人物とは・・・

 

「やっほー、久しぶり。今はどうしてるかな・・・キアナ」

「今はこっちも暇していたよ、そろそろそっちに戻る予定だけど・・・どうかしたの?」

 

キアナである

あの日以降、キアナもあちこちの部隊で働き詰めだったので一か月前から休暇を得ていた

それの終わりの日が近づいており、こちらに帰る用意をしていたようだ

 

「貴女に朗報よ、帰ったら仕事が待っているわ、私と合同の」

「今から延長のお願いしてもいいかな・・・」

「私から答えるわ、却下よ」

「どぅおあ!?いつのまにぃ!?」

 

いつの間にか招いてもいないのにテレサがいた、忙しい身で良くここに来れたものだ

 

「キアナ、残念だけど仕事の前にお説教タイムよ!!貴女任務中に買い食いと衝動買いをしていたそうじゃない!?」

「うげ・・・!!」

「S級(笑)が聞いて呆れる行為ですね」

「帰ってきたらすぐに私の所に顔を出しなさい、いいわね!?」

「はぁい・・・」

 

残念だがキアナには帰った後お説教が待っていたようだ、そして・・・

 

「貴女には正式にあの門扉についての資料をお願いするわ、コレは比較的長期のお願いになるから」

「まぁ、そういう事だと思っていたよ。で、本題は?」

「し・・・しばらく匿ってもらえないかしら?」

「あーもしもし、リタさん?え、デュランダルが何で電話でてるの?リタはテレサを探している?」

 

言っている最中に面倒な事態だと理解して速攻でリタに電話を入れていた、だが出たのはデュランダルで、リタはテレサを探しに出ているとの事だった

コイツはコイツで仕事をほっぽって出てきていたのだ

 

「私の部屋にいるわよ、逃げないようにブローニャが抑えているわ」

「くぅぅ!!離しなさい!!」

「逃がしません!!」

 

ブローニャがテレサをしっかりと抑え込み、数分してからリタが部屋にやってきた

顔は笑っているが頬には青筋が浮かんでいる・・・間違いなくキレている

 

「さて、帰りますよ、テレサ様?」

「少しだけ休むとかは・・・?」

「今の書類の束が終わりましたら、今日の分はおしまいです」

「リタさん質問、あと何枚?」

 

リタさんはにっこりと微笑みながら、普通な声で私の質問に答える

 

「50枚ほどです」

「私なら1時間ね、ブローニャは?」

「同じくらいか、少しだけ長いくらいですね」

「リタさん、判決」

「有罪です、今日のおやつは半分ですね」

 

テレサが固まった、心なしか涙目だ

 

「さ、行きますよ」

「あ、あぁぁぁぁ」

 

小さな機械音を立てて扉は締まった

ちなみにこの後テレサにはデュランダルからもお小言が飛んだそうだ

 

「ふぅ・・・」

「写真また増えてますね?」

「送られてくるからね」

 

テーブルには三つの写真立てがある

その一つには幸せそうな顔のオットー元大主教とカレンさんの間に男の子と女の子が一人ずつ。当然ながら二人の子供であり、一卵性双生児だったそうだ

しかも妊娠発覚は世界旅行の終わった直後である、旅行中にこさえたのかね?

妊娠初期から担当していたカズマ曰く、性別の違う一卵性双生児はかなりのレアケースとの事、健康にも異常なく成長している。その記録のおすそ分けのようなものだ

見ていて和む・・・そう言えばもう8歳なのか、時間とは早く過ぎるものだ

もう一つは姫子先生のデート写真、見切れているがたぶん相手は同僚か?年齢の差はあまりなさそうだ

寿命の問題がなくなったことで行き急ぐ事もなくなった結果、今まで疎かにされていた部分が矯正されキレイになった事で、意中の相手が生まれて婚約者ゲットという嬉しい棚ぼただったようだ。確か1年前に結婚したとの事、しかもデキ婚だそうで、こちらもカズマが初期から担当しているらしい。計算が合えばもうすぐ産まれる時期だ。

比較的高齢での妊娠と出産であるがそこはカズマの知識と経験の見せ所。母子の健康はしっかりと守っている

最後のはキアナと芽衣、ブローニャを中心に全員で取った集合写真、一番の宝物で、この笑顔のために戦ったと実感している写真だ

この写真を撮って以降、なかなか同じ仕事で顔合わせ出来ないがみんな元気にしている

 

「さて、テレサにお願い事があるから私は出るわ、ブローニャは?」

「私は一度仕事に戻ります、多分またすぐに会う事になるのでしょう?」

「えぇ、異世界調査任務という仕事でね」

 

そう言って二人で部屋を出る、ブローニャはそのまま自分の仕事場へ

私はテレサのいる執務室へ

そしてこれからさらに数年後、異世界にて・・・新たな戦いの物語が始まった




これが シンフォギア Fake Ideal へと繋がる過程の始まりである
そして新たな世界で、彼女たちの新たな物語が始まるのであった


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