ラブライブ!SNOW CRYSTAL (la55)
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NEXT SPARKING!! 第1話

NEXT SPARKING!!

 

 これはあるグループとあるグループを結びつける物語。そして、今まで輝いていた輝きが使命を終え消えていくとともに次の輝きを求めて旅立っていく、そんな物語・・・。

 

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」

「アクア~、サンシャイン!!」

内浦の海岸砂浜で、今のAqoursスタートの地、0の地で、Aqoursメンバー9人は最後になるであろう名乗りをあげていた。

「もうこれでマリーたち9人のAqoursはここでおしまいで~す」

と、鞠莉はほかの8人に元気よく言うと、

「でも、なんかさびしくなるね」

と、曜、ちょっと寂しそうに言う。これには梨子も、

「本当にそうねぇ」

と相槌を打つ。

「でも、これはこれでいいんじゃないかな」

と、ルビィもちょっと寂しそうに言う。念願だった姉ダイヤとのスクールアイドル活動、それがラブライブ!優勝というとても大きくて最高の結果とともに終わる、それでも先に進まないといけない、そう、ルビィはこのことを心の中で思っての発言だった。

 これにはすぐに、

「ルビィちゃんの言うとおりずら~」

と、花丸もルビィの考えに同意。しかし、ヨハネは逆に、

「ヨハネとしてはリトルデーモンが主の下を去るのはちょっと・・・」

と、寂しさを感じつつ言う。

 そんな1年生3人を見てか、ダイヤ、

「さっ、明日は本番ですわよ。長居は無用ですわ。さあ、帰りましょう」

と、解散を宣言すると果南も、

「それもそうだね」

と、ダイヤに同意する。

 というわけで、ここで解散・・・。

「やっぱり、ここでAqoursが終わるのはいやで~す!!」

「「「「「「「えっ!!」」」」」」」

あるメンバーがいきなり声をあげる。その言葉に発言者と千歌を除いた7人がびっくりする。ダイヤ、すぐに、

「鞠莉さん、今、なんて言ったのですか!!」

と、その発言者、鞠莉に聞く。鞠莉いわく、

「だぁ~て、このままAqoursを終わらせるなんていやで~す!!たしかに最後の名乗りをあげて終わるのは美しい~です。でも、マリーにとってこれだと落ち着かないので~す」

これにはダイヤ、

「でも、終わりの美学としては美しいでしょうが」

と言うと、鞠莉、

「たしかに今のAqoursの終わり方としては美しいで~す。でも、もっと大事なことを忘れていると思うので~す」

と、自分の考えを言う。これにダイヤ、

「それはなんですの?」

と、鞠莉に聞く。鞠莉はその答えをずばり言う。

「それはで~すね~、スクールアイドルとしてで~す」

これにはダイヤ、

「スクールアイドルとして・・・とは何ですか?」

と、鞠莉に改めて聞く。鞠莉、すぐに言う。

「それはスクールアイドルのために、未来のスクールアイドルのために、これからのスクールアイドルを目指すみんなにで~す」

これにはみんな、

「た、たしかに・・・」

と、意外すぎる鞠莉の答えに驚く。たしかにそうである。これまでのAqoursの活動はどちらかというと、自分たち、もしくは近くにいる人たちや仲間(Saint Snowなど)、それじゃなければ内浦や沼津のためが多かった。逆にμ‘sみたいに後世のスクールアイドルのために秋葉原でスクールアイドルフェスティバルを開催したといったことをしていなかったのだ。

 でも、ダイヤはある問題点を鞠莉にぶつける。

「鞠莉さん、で、明日には千歌さんたち新生Aqoursのライブがあるのですよ。この短時間でなにをするのですか、構成のスクールアイドルのために・・・?」

そう、たしかに鞠莉の考えにも一理ある。が、明日は新生Aqoursのライブとともに3年生は旅立っていく。なので、この短時間のうちにできることは少ない。

 が、鞠莉は自信をもって言う。

「それはですね・・・」

「「「「「「「それは・・・」」」」」」」

と、千歌と鞠莉を除く7人が鞠莉の方を見る。鞠莉はためにためて言った。

「それはですね・・・、未来のスクールアイドルを目指す人たちのために講座方式の動画を撮るので~す!!」

「「「「「「「動画!!」」」」」」」

鞠莉の突然の発案に驚く7人。まさか、あの鞠莉からまともともいえる案がでるとは。が、その発案に曜、

「でも、講座方式だったら、そのための台本なんか必要じゃないかな」

と、いつもみんなのツッコミ役の曜らしく鞠莉にツッコむ。

 が、そんな曜のツッコミに対し、意外な人物があることを言う。

「それなら問題ありませんわ。もうすでにここに台本が出来ているのです!!」

「ダイヤちゃん!!」

そう、今まで鞠莉にいろいろと言っていたダイヤがちょっと厚めの台本を持って鞠莉を援護したのだ。

「ダイヤちゃん・・・、なんですでに準備しているの!!」

と、これもAqoursの落とし・・・、ゴホン、もうひとりのツッコミ担当の梨子がダイヤに聞く。すると、

「それはですね・・・、鞠莉さんがそんなことを言うと思ったからですわ。人間、いつ、どんなときでも、なにがあっても、準備を怠らないことですわ、ですわ、ですわ・・・」

と、まるで自分でエコーをかけるように自信満々に答えるダイヤ。この鞠莉とダイヤのやり取りを見ていた花丸、

「もしかして、これまでのやり取りって鞠莉ちゃんとダイヤちゃんの芝居だったずら~」

と、的確なツッコミを言う。ヨハネはこの花丸の発言を受けて、

「よっぽど暇人としか見えないね・・・」

と、ダイヤと鞠莉をさげすましたまなざしで言うと、ルビィはただただ、

「ハハハ・・・」

と、苦笑いするしかなかった。これには鞠莉、

「だって、ちかっちたちがライブに向けて練習しているのに、マリーたち3年生は暇すぎたのです~」

と言い訳を言うと、その横から果南が、

「たしかに暇していたからね。でも、後世のスクールアイドルのために役に立つこと、それをAqoursとしてやってこなかったんじゃないかな、って、私たち3人が気づいたの。だから、その未来のスクールアイドルを目指す人たちのために3人で話し合って動画の構成や台本を作ったんだよ。もちろん、私は先生役だよ!!」

と、鞠莉の考えについて説明する。たしかに明日のライブは新生Aqours、今の1・2年生だけである。3年生は完全にノータッチだった。ラブライブ!決勝延長戦後、3年生3人は暇をもてあましていた。もちろん、新生Aqoursのライブを行うための活動資金を集めようと募金活動もしていたが、それでも時間はたっぷりと残っていた。そこで、3年生3人は話し合って、後世のスクールアイドルを目指す人たちのために、講座方式の動画を作ろうと思い、新生Aqoursのライブ前日である今日まで動画を撮る準備をしていたのだ。

 が、これには梨子、

「たしかにいい案だけど、本当に時間がないの・・・。どうすれば・・・」

と、的確な意見を言う。

 が、こんなとき、

「ちょっと待って!!」

と、今まで黙っていたメンバーが口を開く。

「千歌ちゃん!!」

全員が突然の発言をしたメンバー、千歌の顔を見て言った。千歌、ついにしゃべった。

「たしかに時間が限られている・・・」

この千歌の言葉にダイヤ、

「たしかにそうですが・・・」

と、少し諦めの表情をする。

 が、

「でも、とてもいいと思うよ。これまで千歌たちって後世のスクールアイドルのためにやってこなかったもんね。でも、今のAqoursがいるのも、μ‘sやA-RISEといった偉大なるスクールアイドルの先輩たちがいたからだと思うんだ。だから、私としてはダイヤちゃんたちの案に賛成だよ」

と、千歌、3年生の案に深く賛同する。でも、ヨハネはすぐに、

「でも、ヨハネたちにはそんな時間が・・・」

と、少し諦めの表情で言うも、千歌、

「まだ時間はあるよ。まだ明日のライブまで(夜も寝なければ)12時間以上あるんだよ。それを精一杯使えばやれないことはないんだよ!!」

と、元気よく答える。

 これを見ていた曜、

「そう千歌ちゃんは言っているけど、みんなはどうかな?」

と、ほかのメンバーに聞く。これにはヨハネ、

「千歌がそう言うのだったらヨハネとしては大丈夫だと思う」

と、これまで反対?していたヨハネも賛同する。千歌の言うことだからきっと最後までやり遂げることができる、そう判断したからだった。

 これを見た曜、すぐに、

「それじゃ、鞠莉ちゃんたち3年生の案に反対の人・・・」

と、鞠莉たち3年生の案に反対するメンバーがいないか確認する。が、誰も手をあげない。曜はさらに確認する。

「それじゃ、賛成の人・・・」

これには全員が手をあげる。たしかに短時間では最後まで作り上げることは難しいかもしれないが、リーダーである千歌が大丈夫と言えばきっと大丈夫、そんな考えが千歌以外のメンバー共通の認識だった。今のAqoursを0から1へと作り上げた原動力、それが千歌の前向きな考えだったりする。そして、それを必ず成し遂げる力、最後まで諦めないこと、それが千歌にはあった。リーダーとして求められる要素が千歌にはある。だからこそ、ラブライブ!優勝と言う大きな傷跡を歴史に残すことができたのかもしれない。そして、今回も3年生の案を必ず最後まで成し遂げることができる、そう千歌が言っている。確信できる、そう各メンバーが思ったからこその賛成だった。

「それじゃ、みんな賛成ってことで、鞠莉ちゃんたちの案を実行します!!」

と曜が言うと、

パチパチパチ

と、メンバー全員で大きな拍手が起きる。これを見た鞠莉、

「みんな、ありがと~で~す!!」

と、みんなに御礼を言った。

 

 こうして、未来のスクールアイドルを目指す人たちのために作りはじめた動画・・・であったが、作っているのがあのAqoursである。Aqoursは2つの側面がある。まず1つはスクールアイドルとしてのAqoursである。このAqoursの場合、どちらかというと真面目である。そして、青春を感じている、一生懸命頑張っている、みんなに笑顔を届けたい、そんな感じがする。では、もう1つのAqoursは・・・、それはお笑い集団のAqoursである。ある目標があればメンバー全員それに向かって突き進むのだが、それがなければただのお笑い集団と化す。一人一人の個性が強すぎるためか、たがが外れるとあっちに行ったりこっちに行ったりと迷走につぐ迷走をしてしまう。まるで迷走迷走メビウスループにどっぷりはまってしまうくらいに。

 というわけで、今回も悪いほうのAqours、お笑い集団のAqoursになってしまった。

「このカメラ、ハイテクずら、未来ずら~」

と、動画を撮るためのビデオカメラに関心をもつ花丸、が、

「もうすでに撮っているのですよ、花丸さん」

と、ダイヤが花丸に注意すると、その横から、

「みんなで一緒にシャイニー!!」

と、今度は鞠莉が冗談を言うと、ダイヤ、

「鞠莉さん、それは動画とは関係ないことでしょ!!」

と、鞠莉にも注意する。

 また、それとは別のシーンでは、

「堕天使リリィーよ、そこは違うぞ!!」

と、ヨハネが堕天使リリィー・・・、

「リリィーじゃないでしょ!!」

…、もとい、梨子から激しいツッコミが・・・。

「善子さんに梨子さん、ちょっと静かに!!」

と、ダイヤが2人に注意すると、まさかの・・・。

「よ~し、できたね。じゃ、できた記念に、全力前進、ヨ~ソロ~、からの敬礼!!」

と、あの曜すらなぜかふざけてしまうばかり・・・。

 さらに、別のシーンでも、

「う~ん、ここはこうだね。できたね、えらいね。じゃ、できたからご褒美。みんな、ハグしよ!!」

と、あの先生役の果南すらボケて?しまい、あのダイヤの妹も、

「あともう少しだよ。さぁ、がんばルビィ、だよ!!」

と、ルビィ、動画を見ている人たちのためにか、自分の必殺技?を繰り出してしまう。

 この状況にダイヤ、ついにキレる!!

「みなさん、ブ、ブーですわ!!」

ダイヤ渾身の注意!!をみんなに放つ!!が、これには、全メンバー、

「ダイヤちゃんもブ、ブーですわ!!」

と、この注意を真面目に返す。これにはダイヤ、

「え・・・」

と、逆に黙ってしまうこととなった。

 

 と、いうわけで、脱線につぐ脱線をしたのだが、ダイヤが中心となって作った台本と事前の準備がしっかりしていたこと、ダイヤの構成がよかったこと、ダイヤが中心となって撮影を次々とこなしていった?、というよりもほとんど、いや、まるごと全部、ダイヤがやっていたのだが・・・、無事に・・・、

「これでスクールアイドル講座を終わります!!」

と、先生役の果南の挨拶をもって無事に予定していた動画を全部撮りきることができた。

「ふう、なんとか無事に撮り終えることができましたわね」

と、ダイヤもなんとか時間内に撮り終えることができたことに安堵する。

 が、ヨハネ、あることに気づく。

「あれ、なんかまわり、暗くない?」

そう、動画を撮り終えたことはできたのだが、脱線につぐ脱線のためか、予定より大幅に時間がかかってしまった。そして、今の時間はすでに夜の10時を過ぎていた。これにはヨハネ、

「しまった。終バス、逃してしまった・・・」

と、がく然する。そう、沼津の中心地近くにヨハネや曜にとって終バスがすでに行ったことで自分の家に帰る手段をなくしてしまったのだ。これには花丸、

「じゃ、これからどう家に帰ればいいずら~」

と、悩む。

 そこに千歌、あることを提案する。

「それじゃ、みんなでどこかに泊まろうよ!!」

これにはヨハネ、

「千歌、全員で泊るっていうけど、私たち9人まるごと泊るところ、あるの?」

と、千歌に的確な意見を言う。これには千歌、

「あるよ。鞠莉ちゃん家に泊ればいいんだよ」

と、唐突に言うと、鞠莉、すぐに、

「それは名案で~す、と、言えるとですか?鞠莉の実家、小原ホテルは淡島にあるので~す。今から淡島にどうやっていくのですか?」

と、千歌に反論する。たしかに今内浦にいる。淡島までは少し遠い。が、千歌、すぐに、

「ヘリは?ヘリがダメだったら船とか・・・」

と、何も考えずに言うと、鞠莉、

「はい、そうですね~、すぐにヘリを手配し・・・、できるわけ、ないでしょ!!こんなに暗いのですから、ヘリなんて呼べませ~ん。船も同じで~す」

と、まともな反論。もう夜である。そう考えるとまともな意見である。

 これを聞いた千歌、

「いったいどこに泊ればいいの~」

と、頭をかきながら言う。

 そんなとき、果南があることを、これを打破するようなことを言う。

「それじゃ、千歌のところに泊ればいいんじゃないかな。千歌の家、旅館じゃん!!」

これを聞いた鞠莉、

「それはいいで~す!!たしかにちかっちの家は目と鼻の先で~す!!」

と、喜びながら言うと、みんなから、

「賛成!!」

と、千歌以外賛成にまわる。これを見た千歌、

「えっ・・・」

と、ただ唖然となるしかなかった。

 

「お願いです。厨房と大広間を使わせてください」

みんなの突然の賛成のため、千歌はお母さんに頭を下げる。これにはお母さん、

「厨房はいいけど、大広間はねぇ~」

と、厨房の利用はOKするも、大広間はNGをだす。これには千歌、

「そこをなんとか・・・」

としつこくお願いをするも、その横から、

「大広間は明日、予約がはいっているの。諦めなさい、千歌」

と、姉の美渡から諦めるように言われる。これには千歌、

「美渡姉は黙っていて!!」

と、反論するも、お母さんからは、

「たしかに美渡が言うのも確かだね。だからね、千歌、大広間はNG!!」

と、許可せず。これには千歌、

「うそ~!!」

と、がっかりするしかなかった。

 

 そして、厨房では。

「花丸ちゃん、ルー、とって」

と、曜が花丸にカレールーを取ってもらうようにお願いすると、花丸、

「はいずら」

と、曜にカレールーを渡す。今夜のメニューは曜特製船盛りカレー、そのファイナルエディションである。

「あともう少しで曜ちゃん特製のカレーが食べられる!!」

と、腹をすかした千歌が言うと、果南、

「そうだね~」

と、相槌を打つ。

 その横では、

「さぁ、シャイ煮ファイナルver.も作るのです!!」

と、鞠莉がシャイ煮を作ろうとしていた。さらに、その横では、

「さぁ、リベンジです。堕天使の涙フィナーレを作るのです!!」

と、ヨハネも堕天使の涙(という名の激辛タバスコ入り(たこがはいっていない)たこやき)を作ろうとする。ちなみに今回はフィナーレということもあり、タバスコ以外にメキシコ産のハバネロも入れていた。これには梨子、

「さぁ、鞠莉ちゃんに善子ちゃ~ん、あなたがたは部屋で待ってようねぇ」

と、鞠莉をヨハネ2人を厨房からはじき出そうとする。これには鞠莉、

「梨子、手を離すので~す」

と、抵抗。ヨハネも、

「善子じゃなくてヨハネ!!堕天使リリィーよ、これはリベンジなのです。リベンジなのですぞ!!」

と、必死に抵抗。これには梨子、

「堕天使リリィーは禁止!!」

と、ヨハネに対し注意しつつ2人を厨房からはじき出す。

「ギャフ~ン!!(鞠莉)」「ギャー(ヨハネ)」

2人はそう言うと部屋のところまで転がっていった。これにはルビィ、

「ハハハ・・・」

と、ただ苦笑いするしかなかった。

 そんなとき、

「なんか、あのことを思い出しますわね」

と、1人、この光景を懐かしむメンバーがいた。それに千歌、

「ダイヤちゃん・・・」

と、過去を懐かしむメンバー、ダイヤの横にいき、ダイヤの顔をみつめて言うと、ダイヤ、

「まるで夏休みの合宿のときのことを思い出しますわ」

と、半年前、夏休みのときに千歌の家で行ったAqours9人での合宿のときのことを思い出すように言う。これには千歌、

「なんで?」

と、ダイヤに聞くと、ダイヤ、

「あのときはただ廃校を阻止するため、そして、0から1へとするためにスクールアイドルを、Aqoursをやっておりました。私たち9人で、その9人で力をつけるために、ここで合宿をしたのですわよね」

と、考え深く言うと、千歌、

「たしかにそうかも。だって、この夏休みの合宿で、私たち9人の力、そして、チームワークが磨かれたのかもしれないね」

と、千歌としてはまともなことを言う。これにダイヤ、

「千歌さんの言うとおりですね。このとき、まさかあと一歩のところで廃校を阻止できなかったけど、スクールアイドルとしては、まさか、ラブライブ!で優勝して、浦の星という消え行く運命だったその名をラブライブ!の歴史に深く刻みこむことができるなんて考えてもいなかったですものね」

と言うと、千歌はすぐに、

「あれ、ダイヤちゃん、夏休みの合宿のとき、ラブライブ!に優勝できるなんて思っていなかったの?」

と、ダイヤに質問。これにはダイヤ、

「いや、そのときはまだAqoursとしてまだ始めたばかりですからね。優勝できるほどの実力がまだなかったと思っていただけですわ」

と、戸惑いつつも自分のほくろのところをかきながら言うも、すぐに、

「でも、この夏休みの合宿で実力を、結束力をつけたから夏季大会では東海予選まで進み、そして、冬季大会でついに優勝できたのですわ」

と、自信満々に答える。これには千歌、

「たしかにそうかもね。だって、夏休みの合宿によって千歌たち、パワーアップしたからね」

と、これまた自信満々に答える。これにはダイヤ、

「そうですわね」

と、千歌の意見に軽く賛同する。

 そんなときだった。

「曜特製船盛りカレー、ファイナルエディション、そして、完全版、できたよ~」

と、曜、カレーができたことをみんなに告げた。

 

「おいしいね~」

と、ルビィ、カレーを食べながら曜のカレーの感想を述べる。これには花丸、

「たしかにおいいしいずら。やっぱり、カレーは曜ちゃんにかぎるずら~」

と、これまた嬉しい感想を述べる。これには曜、

「そんなに褒められると嬉しいよ」

と、照れつつも喜ぶ。

 これに対し、鞠莉、

「シャイ煮ファイナルver.がはいればもっとおいしいで~す」

と、ヨハネも、

「堕天使の涙フィナーレ、本当においしいのに・・・」

と、2人とも恨みこぶしをきかせつつ言う。これには果南、

「で、堕天使の涙フィナーレってなにがはいっているの?」

と、ヨハネに聞く。これにはヨハネ、目をきらめかせて、

「よくぞ聞いてくれました。大量のタバスコに加えてメキシコ産のハバネロを・・・」

と、自信満々に答えると、果南、

「それは却下。食べなくてよかった・・・」

と、完全に拒否。これにはヨハネ、

「そんな・・・」

と、大きくがっかりする。これにはみんな、

ハハハ

と、大きく笑った。

 が、

「ハ~」

と、少し寂しそうな目で言ったメンバーがいた。これには千歌、

「ダイヤちゃん・・・」

と、寂しそうな目をするメンバー、ダイヤのほうを見て言うと、ダイヤ、

「みんなと一緒に食べるのもこれが最後なんですわね」

と、寂しそうに言うと、果南、

「たしかにそうかもね」

と、ただたんにダイヤの言うことに同意する。

 この果南の言葉に、

「たしかにそうずら・・・(花丸)」「なんか寂しいよ~(ルビィ)」「そうですね~(鞠莉)」「もう少しだけ時間が止まれば・・・(梨子)」「でも、でも、最後であることは間違いないし・・・(曜)」

と、なんだか暗いムードに・・・。

 そんなときだった。

「そんなことないよ!!」

「「「「「「「「えっ!!」」」」」」」」

と、突然の言葉にその言葉を言った人を除いた8人はある方向を見る。そこにいたのは千歌だった。千歌は続けて何かをみんなに伝えようと大きな声をあげて言った。

「たしかに、これがみんなとの、今のAqoursとしての最後の晩餐になるかもしれないよ。でも、これだけはいえるよ。たとえ離れ離れになっても、私たちはどこかでつながっている。だって、これまでAqours9人で得た思い出、9人の想い、そして、9人のキズナは決して消えない。ずっと私たちの心の中で残っている。どんなことがあっても消えない。0には戻ったりしない。1以上の、いや、100、1000、10000、それ以上へと進んでいける!!未来にだっていける!!だから、これが最後になるんじゃない、ずっと続くんだよ!!」

これを聞いたダイヤ、

「たしかにそうでしたね。私たちが得た思い出、想い、キズナ、そんな簡単に消えるものではないですものですわね。まさか、千歌さんからそんなこと聞かされるなんて意外でしたわね」

と、穏やかな表情で、そして、安心した表情で言うと、千歌、

「そんなことってどんなことだよ!!」

と、ダイヤに怒る。これを見たほかのメンバーからは、

ハハハ

と、大きな笑い声が聞こえてきた。今さっきまで暗いムードが一転明るいムードに変わる。これを見たダイヤ、

(もう私たち3年生がいなくてもやっていける、そんな感じがしますわ。やっぱり千歌さんはみんなの太陽ですわ)

と、千歌の方を見て安心するとともに笑っていた。

 



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NEXT SPARKING!! 第2話

「さぁ、明日はついにライブ当日だよ!!はやく寝ようね。電気消すね」

と、曜、部屋の電気を消す。結局大広間を借りることができなかった千歌たち9人。なので、今回も夏休みの合宿と同じ千歌の部屋で9人仲良く寝ることになった。

 が、

「電気消したのに眠れないで~す」

と、鞠莉、突然起きてしまう。これに果南、

「たしかに眠れないね~」

と、鞠莉に同意。1年生も、

「目がさえているずら(花丸)」「ルビィも眠れないよ~(ルビィ)」「堕天使の血が騒いで眠れない・・・(ヨハネ)」

と、次々に起きる。2年も、

「たしかに私も眠れない(曜)」「実は私も眠れないの・・・(梨子)」

と、次々と起きてしまう。これを見たダイヤ、

「でも、明日は大事なライブですわよ。はやく寝ないと明日のライブに悪影響が・・・」

と、みんなに向けて言うも、鞠莉、

「そんなダイヤはど~なので~す。ダイヤも眠れないので~す」

と、ダイヤに指摘すると、ダイヤ、

「た、たしかにそうですが・・・」

と、激しく動揺する。そう、みんな興奮してなのか、誰も眠れなかった。しかし、ダイヤの言うとおり、明日は大事なライブ当日、なので、はやく寝ないといけない、この二律離反の状況にみな陥っていた。

 そんなときだった。

「みんな、外を見て!!星が綺麗だよ!!」

それを言ったのは千歌だった。千歌は窓の外を見ていた。すると、

ダイヤ、千歌の部屋の窓のところまで行っては星空を見上げると、

「えっ、たしかに綺麗ですね・・・」

と、あまりにも綺麗な星空に感動する。これを聞いてなのか、

「どれどれ」「みせて、みせて」

と、メンバー全員星空を見上げる。すると、

「きれいで~す!!」「本当だ~」「くくく。これぞ堕天使のなせる業ですぞ」

と、綺麗な夜空に全員が感動した。

 このメンバーの様子を見た千歌、すぐに言う。

「この星空ってどこに行っても見られるんだよ。たとえどんなときでも、どんな場所でも、この星空を見上げたらこう思うんだ、私たちはどこに行ってもこの星空を一緒に見られるんだって。だって、みんなとはずっと心の中でつながっているから」

これには曜、

「うん、そうだね。私もそう思うよ」

と、千歌に同意。他のメンバーも、

「たしかにそうずら」「うんうん」「千歌としては立派にいえたね」「そ~ですね~」

と、次々に千歌に同意する。そして、さいごにダイヤ、

「千歌さんの言うとおりですわね。これからもずっと、どんなときでも、この同じ星空を見ることができますからね」

と、千歌に同意した。

 

 綺麗な星空を見上げ続ける9人。しかし、そんな静か過ぎることに、

「う~、じれったい~」

と、我慢できなくなるメンバーがいた。

「果南、どうしたので~す」

と、鞠莉は何かに我慢できない果南に問う。すると、果南、

「う~、ずっとこのまま、ずっと静かだとイライラする~」

と、少しずつ怒りながら言う。Aqoursで一番アクティブな果南にとってとても静かな、ずっと動かないことには我慢できないということだった。

「果南さん、少しは静かにしてください!!」

と、ダイヤが果南に注意する。すると、果南、とんでもないことを言う。

「こうなったら、私が星座の講義、しちゃうよ!!」

「えっ!!星座の講義!!」

果南の衝撃的な発言にある2人を除いた6人はとても驚いた。特に、

「What!!あの果南が星座の講義!!信じられないで~す!!(鞠莉)」

「果南さんが~、果南さんが~、壊れましたわ~(ダイヤ)」

と、3年生2人はおろおろし始めてしまった。

 すると、果南が意外なことを言った。

「あれ、知らなかったの。私の趣味って天体観測なんだよ」

「「「「「「えっ!!」」」」」」

果南の突然の告白にまわりは一瞬で凍りついた。しまいには、

「神様、仏様、スクールアイドルの神様~、果南ちゃんをもとに戻してずら~(花丸)」

「ピギィ~、誰か助けて~(ルビィ)」

「堕天使リリィーに命ずる、悪しき果南を滅せよ(ヨハネ)」

「リリィーって言うの、禁止!!(梨子)」

と、みんな、心ここにあらずの状態になってしまう。これを見た果南、

「私の趣味にけちつけるわけ?」

と、みんなに怒る。これを見たダイヤ、

「あの果南さんから考えられないことだからです!!」

と、心を取り乱しながら言う。

 が、心取り乱していないメンバーが2人いた。そのことに花丸、

「あれ、千歌ちゃんと曜ちゃんは驚いていないずら。どうしてずら?」

と、まったく驚いていない千歌と曜に尋ねる。すると、千歌はすぐに答えた。

「だって、ずっと前から知ってたもん、私と曜ちゃんは」

と、当たり前のように言うと、すぐに、

「私が説明するね」

と、曜が言う。そして、曜があらましを言う。

「だって、果南ちゃんと私と千歌ちゃんは昔からの幼馴染だもん。それに、昔からダイビングするために船の免許などが必要だからね。もちろん、船の操作も必要。でね、その船の操作を覚えるとき、星を使った観測技術も必要だって、果南ちゃん、昔から思っていたんだ。そして、星のことについて勉強していくうちに、果南ちゃん、星空の魅惑にはまってしまったの。だから、今では、果南ちゃん、天体観測が趣味になっちゃった、ってわけ!!」

 これを聞いた鞠莉、

「たしかにそれは一理あるで~す」

と、なんだか納得の表情。

 その鞠莉に対し、果南、再び衝撃の真実を言いだす。

「あっ、言っとくけど、小学校のときに鞠莉に渡した星図、実は私のものだよ!!」

「What!!」

鞠莉、再びノックアウト。果南が言う星図とは、鞠莉、果南、ダイヤが小学生のとき、親に黙ってロープウェイに乗り、山の展望台から星を見上げようとしていたとき、3人が一緒に持ってきていた星図のことである。そのときの天候は雨がすぐ降り出そうとしているくらいの雲行きであり、3人が山の展望台に着いたときにはすでに雨が降っていたのだ。が、それでも星空を見たい鞠莉に対し、果南とダイヤはその星図に流れ星を直接かいたのだ。それ以来、その星図は鞠莉の一緒の宝物になった。が、自分が宝物にしている星図の真実を知った鞠莉、

「それだったら、今、返すので~す」

と言うと、果南、

「もう、あれは鞠莉のものだよ。たしかに、昔は私のものだったけど、今は鞠莉の、いや、私たちの大切な宝物。だからね、鞠莉、大切にしてよね」

と言うと、鞠莉、

「サンキューで~す」

と、果南に抱きつく。これには果南、

「ぶつわよ」

と、鞠莉をけん制するもまんざらでもなかった。

 

 こうして、果南の星座の解説が始まった。

「あの星座はね、本当は川に逃げるゼウスのね・・・」

と、意外(失礼!!)にもやさしく語りかけるように解説する。これにはみんな、なんか心が温かくなる感じがした。

 しかし、時間がたつにつれて、

「眠たくなったずら」「ルビィも・・・」「くっ、堕天使のヨハネの力をもってしても・・・」

と、動画撮影のためなのか、動画用のダンスのしすぎなのか、みんな、次々と睡魔に襲われていき、ついには星座の解説をしていた果南も、

「あれが北斗七・・・星・・・で・・・」

と、眠ってしまった。

 そして、最後に残ったのが・・・。

「みんな眠っちゃったね。千歌だけが起きているのにね・・・」

と、千歌だけが起きていた。千歌、眠っているみんなを見て一言。

「みんな、ありがとうね。千歌1人だけじゃここまで来れなかったよ。スクールアイドルにならなかったら、私、普通怪獣のままだったよ。でも、みんなのおかげで千歌はとても立派な怪獣になれたんだよ。これもすべてみんなのおかげ。だからね、言うね。曜ちゃん、梨子ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、ヨハネちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、ダイヤちゃん、本当に、本当にありがとう!!」

みんなに御礼を言う千歌。そして、ついに眠りのときがきた。

「みんな、おやすみ・・・」

こうして、千歌は眠りの底へと沈んでいった。

 

 そして、夜もふけ落ちるころ。

「ダイヤ、ダイヤ、起きるので~す!!」

と、ダイヤを起こす声が聞こえてきた。これにはダイヤ、

「なんですの?まだ起きるのははやいでしょ!!」

と、いろいろ言いながら仕方なく起きる。すると、

「あれ、鞠莉さんと果南さん、どうしたのですの?」

と、ダイヤ、目の前にいる鞠莉と果南を見る。すると、果南、

「私たち、このままここを去ろうと思うの」

と、こっそり言うと、ダイヤ、

「みんなにさよならを言わなくていいのですか?」

と言うと、鞠莉、

「それだと寂しさだけが漂ってしまうので~す。そんなのいやで~す。フライするバード、バックをなんとかで~す」

と、わけわからないことを言うと、ダイヤ、

「それを言うなら「立つ鳥跡を濁さず」ですよ、鞠莉さん!!」

と、鞠莉にツッコむが、そんなダイヤも、

「たしかに、このまま残っていたら千歌さんたちが名残惜しそうになってしましそうですわね。わかりました。なにも言わずにここを去りましょうか」

と、鞠莉と果南に同意する。

 これを聞いた鞠莉、

「それじゃ、すぐにここからおさらばするで~す!!」

と言うと、果南も、

「そうだね」

と、鞠莉に同意する。

 そんな2人を見たダイヤ、残る千歌たち6人に対しこう告げた。

「千歌さん、曜さん、梨子さん、花丸さん、善子さん、そして、ルビィ、これまでのこと、ありがとうございました。鞠莉さん、果南さん、そして、私をここまでつなぎ続けたのもあなたたちのおかげです。本当にありがとうございました。さようならは言いません。だって、心の中でずっとつながっているから。だから、この言葉を送ります、「またね」って」

それを見てか、

「みんな、これまでのこと、サンキューです!!そして、「またね」で~す」

と、鞠莉が言うと、果南も、

「みんな、楽しい思い出、ありがとうね。さよならは言わないよ。その代わり、これを言うね。「またね、みんな」」

と静かに言う。

 そして、果南、鞠莉、ダイヤ、3年生3人は静かに千歌の部屋から去っていった。が、これを見ていた人がいた。そして、一言。

「またね、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん」

 

 そして、お日さまが顔をのぞかせようとしていたとき。

「あれ、鞠莉ちゃんたちがいないずら~!!」

目を覚ますなり、鞠莉たち3年生がいないことに気づいた花丸がいきなり声をあげた。

「どうしたの・・・」

と、曜などの寝ていたメンバー全員、花丸の声に起こされてしまった。そして、

「あれっ、本当だ!!お姉ちゃんたちがいない!!(ルビィ)」

「まさか、堕天使であるヨハネの力で消えてしまった・・・とか(ヨハネ)」

と、鞠莉たち3年生3人がいないことに驚くみんな。

 そして、花丸は言った。

「なんで、まるたちになにも言わないでいったずら。ちょっと寂しいずら~」

この花丸の言葉にあるメンバーがすぐに反応。

「花丸ちゃん、これこそ鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、果南ちゃんの優しさだと思うよ」

「千歌ちゃん!!」

花丸の言葉にすぐに反応したメンバー、千歌のの言葉に驚く5人。

「なんでそう思うの?」

と、梨子が言うと、千歌はすぐに答えた。

「鞠莉ちゃんたち3人はね、今日、ライブを行う私たちのために黙って去っていったの。このままいれば別れの辛さから100%の力で今日のライブを行うことができない、鞠莉ちゃんたち、そう思ったから何も言わずに言ったの。たしか、これって、「立つ鳥、前を濁す・・・」?」

これには梨子、すぐに、

「それを言うなら「立つ鳥跡を濁さず」でしょ」

と、千歌の言葉にツッコミをいれる。が、

「だけどね、これだけは言えるよ」

と、千歌、梨子のツッコミを完全スルーして言う。これに、曜、千歌に、

「それってなに?」

と聞くと、千歌は元気よく答えた。

「たとえ離れていても、どこにいても、きっと大丈夫だ、またきっと会える、ってこと。だって、どこにいても、なにがあっても、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、果南ちゃんとはずっと心の中でつながっているから。だからね、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、果南ちゃん、さよならは言わないよ。「またね」って言うね」

これを聞いた曜たち5人も、

「それもそうね」「たしかに」「ヨハネにはわかったおりました!!」

などと言って千歌の考えに賛同する。

 そして、千歌たち6人は去っていった鞠莉たち3年生3人に向かって言った、

「果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃん、またね。またどこかで会おうね」

と・・・。

 

 そして、ついに新生Aqoursとしての初めてのライブがついに始まる。場所はAqoursの本拠地、沼津の中心地、沼津駅前。そこにはむつたち浦の星のみんな、そして、月たち静真高校有志による手作りのステージがあった。新生Aqoursはここから新たなるスタートをきる。

 開演前、ステージにはルビィ1人が立っていた。

「開演前に注意事項を言いますね」

と、ルビィ、ステージ前にいる観客たちに注意事項を伝えると、

「それでは新生Aqoursのステージをぜひ見て言ってください」

と、観客たちに一礼をする。

そして、すぐにステージ袖の楽屋代わりのテントへと戻ると、そこにはルビィ以外の千歌たち、1・2年生5人がルビィを待っていた。

 千歌たちはいつものように円陣を組むと、千歌、

「それじゃ、いくよ!!」

と叫ぶ。すると、

「1」と千歌、「2」と曜、「3」と梨子、「4」と花丸、「5」とルビィ、「6」とヨハネが番号を叫ぶと、すぐに、

「7」とダイヤ、「8」と果南、「9」と鞠莉がまるでそこにいるかのように聞こえてきた。これには千歌、すぐに、

「聞こえた~」

と言うと、みんなに向かってこう叫んだ。

「1からその先へ、みんなと共に、その先の未来へ!!」

 そして、6人、いや、9人一緒に、

「Aqours、サンシャイン!!」

と、大きな声で名乗りをあげた。

 

 そして、ついに新生Aqoursとしての初めてのライブが始まる。最初の曲はこの日のために6人が力をあわせて作った曲、「NEXT SPARKING!!」一緒に作詞し、一緒に作曲し、一緒に衣装を作り、一緒にダンスを考えた、6人にとって今もてる力を最大限に使って作り上げた曲だった。そして、今、まさに旅立とうとしている3年生3人に向けた、6人の想いが一杯つまった曲だった。

(お姉ちゃん、ルビィたちの想い、受け取ってください(ルビィ))

(まるたちの力、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃんに届け、ずら!!(花丸))

(今こそヨハネの真の力、鞠莉たちに見せつけようぞ!!(ヨハネ))

(ダイヤちゃん、果南ちゃん、それに鞠莉ちゃん、私の、いや、私たちの想い、受け取ってください!!(曜))

(これは鞠莉さんたち3年生に送る歌。だから、私たちの想い、受け取ってください!!(梨子))

(私たちの想いを紡いだ歌、そして、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんたちに送る歌。だから、私たちの想い、感じて!!そして、受け取って!!(千歌))

6人ともステージの前に立つ鞠莉たち3年生3人の方を向きながら、その想いを伝えながら歌う。

 そして、その想いを受け取ったのか、鞠莉たち3年生3人とも、

(ああ、この歌は千歌さんたち6人の想いがつまった歌ですね。たしかに受け取りましたわ。(ダイヤ))

(なんか聞いていると感じるので~す、ちかっちたち6人の想いが。そして、とてもさわやかになるので~す(鞠莉))

(これが千歌たち6人が力をあわせて作った歌かぁ。なんか、6人の想いが私の心の中を満たしてくれている気がするよ。(果南))

と、千歌たちの想いを十分味わうこととなった。

 が、ついにそのときがきてしまった。

「果南さん、鞠莉さん、時間ですわ」

と、ダイヤが果南と鞠莉にこっそり言うと、

「もうこんな時間なのですね。時が経つのが早いで~す」

と、鞠莉は少しがっかりして言うと、果南、

「でも、千歌たち6人の勇姿、そして、想い、しっかり受け取ったよ」

と、鞠莉とダイヤに言うと、ダイヤ、

「それじゃ、行きましょうか」

と呼びかけると、果南、ダイヤ、鞠莉、3年生3人はそっとなにも言わずにその場から去っていった。

 しかし、去っていくとき、果南、ダイヤ、鞠莉の3人は千歌たち6人に対してメッセージみたいなものをその場に、6人の心の中に置いていった。

(千歌さん、曜さん、梨子さん、花丸さん、善子さん、そして、ルビィ、本当に心に残るみんなとの思い出、みんなの想い、そして、みんなとのキズナを私の心の中に残してくれてありがとうございます。この私、ダイヤ、ゆくゆくは黒澤家次期当主としてこの沼津に戻ってくるでしょう。そして、沼津のために頑張るつもりです。でも、これだけは忘れません、この1年間で得たみんなとの思い出、みんなの想い、みんなとのキズナ、それこそ私の大切な宝物であることを。(ダイヤ))

(ちかっち、梨子、曜、花丸、善子、ルビィ、本当にサンキューで~す。みんながいたから、マリーは自由のツバサを得たので~す。みんながいなければ、マリーは一生バードケース(鳥かご)の中の鳥だったので~す。でも、みんながマリーのために頑張ってくれたから、今、マリーは自由のツバサで大空に飛び立てるので~す。だから言えるので~す、みんなとの思いで、みんなの想い、みんなとのキズナがマリーのこれからの原動力になるので~す。(鞠莉))

(千歌、梨子、曜、花丸、善子、ルビィ、本当にありがとうね。みんながいたからこそ、私はダイヤと鞠莉と仲直りすることができたし、スクールアイドルとして、ダイヤと鞠莉と一緒に、自分たちだけでは成し遂げることができなかったこと、ラブライブ!で優勝することができた!!これも全部みんながいたからこそできたこと。みんなとの思い出、みんなとの想い、そして、みんなとのキズナ、こんなにとても大切で、とても重要なものだからこそ言えるよ、「私、みんなとの思い出、想い、そして、キズナ、心の中でずっと大切にする。そして、将来、ダイビングの資格をとって沼津に帰ってきたら自慢する、私にはとてもとても大切なものがあるんだって!!」(果南))

 そして、果南、ダイヤ、鞠莉たち3年生3人は千歌たち6人に向かってこう言って、それぞれの進む道に向かって旅立っていった。

「みんな、またね。また、会おうね」

 

「NEXT SPRKING!!」1番のサビを歌い終えたとき、千歌たちは鞠莉たち3年生がいた場所に顔を向ける。しかし、そこには鞠莉たち3年生はすでにいなかった。すでに去っていった、いや、旅立っていったあとだった。

 が、それを見た千歌はすぐにわかった。

(鞠莉ちゃんたち、私たちにメッセージ、残してくれた・・・)

そう、鞠莉たち3年生が残してくれたメッセージを(どうして感じ取れたかわからないが)感じ取ったのだ。千歌はすぐにまわりを見る。すると、曜たち5人も鞠莉たち3年生が残してくれたメッセージを感じ取ったみたいだった。

 そして、千歌たちは旅立っていく果南、鞠莉、ダイヤに向かってあるメッセージを送った。

(果南ちゃん、鞠莉ちゃん、そして、お姉ちゃん、ルビィ、お姉ちゃんたちの分まで頑張っていく。もうくじけたりしないよ。お姉ちゃんたちと再び一緒にライブしたこと、それがルビィにとって新しいルビィに生まれ変わるきっかけになったよ。もう弱々しいルビィには戻らない。なんでも自身をもってやっていく、そんなルビィを目指すよ。だって、ルビィ、たとえどんなに離れていてもお姉ちゃんとは、Aqoursのみんなとは、心の中でずっとつながっている、もう寂しくなんてない、そう気づいたからね。だからね、お姉ちゃん、安心して自由に羽ばたいていってね。(ルビィ))

(まる、もし千歌ちゃんたちに会わなかったら、図書館の主のままだったずら。でも、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんに出会えたから、親友のルビィちゃんと善子ちゃんと一緒に行動できたから、今の自分がいるずら。そして、果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃんというスクールアイドルの先輩がいたから、まる、さらなる高みへと登っていくことができたずら。だから、今からでも遅くないずら。果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃん、本当にありがとうずら。そして、3人がいなくても、ルビィちゃん、善子ちゃんと一緒に頑張っていくずら。だって、たとえ遠くに離れていても、果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃんとはずっと心の中でつながっているずらからね。(花丸))

(リトルデーモン7号(果南)、8号(ダイヤ)、そして、9号(鞠莉)、堕天使ヨハネのもとを去っていったか。しか~し、たとえいなくてもヨハネにはわかるぞ、たとえいなくなっても、ハートの中ではずっとつながっていることをな。ヨハネの中に強く刻み込まれた聖痕(スティグマ)、つまり、思い出、想い、そして、キズナ、それが7号、8号、9号との間に見えないが、どんなことがあっても切れない糸となってつながっているんだぞ!!だから、堕天使ヨハネが命ずる、7号、いや、果南、8号、いや、ダイヤ、9号、いや、鞠莉、これ先に行くこと、幸あらんことを。(ヨハネ))

(果南さん、あなたがいてくれたからAqoursのダンスは全国でも通用できるようになりました。ダイヤさん、あなたがいてくれたから個性が強すぎるAqoursを1つにまとめあげることができました。鞠莉さん、理事長であるあなたがいてくれたから、Aqoursはラブライブ!優勝という偉業を達成することができました。けれど、これから先、あなた方はいません。全部私たちがやらないといけないのです。でも、大丈夫です。心配しないでください。だって、私たちはこれからも頑張っているから、たとえ3人とは離れ離れになっても、心の中ではずっと鞠莉さんたちはいる、残っている、思い出、3人の想いとして、そして、みんなとのキズナでずっとつながっている。Aqoursの音楽は私が作っていく、私はそう思っているよ。(梨子))

(私は制服が好き。特にスクールアイドルの衣装っていつもまわりにいる人たちみんなを明るくしてくれる。そんなスクールアイドルの衣装だけど、そのなかで1番好きなのは鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんが2年前に着ていた衣装。シンプルなんだけど、「これぞスクールアイドル!!」と一瞬見ただけでときめいちゃった。そして、鞠莉ちゃんたちが私たちAqoursのメンバーになった。運命だったて思っちゃったよ。だけど、一緒に活動したのはたった9~10ヶ月だった。けれど、私にとって10年、20年、いや、それ以上に感じられたよ。そして、そのときの思い出、そのときの想い、そして、そのときに築いたキズナは私にとって一生の宝物としてずっと残っている。だからこそ、今、言えるよ、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、3人ともだいだいだいだい、だ~い好き!!(曜))

(私、最初、μ‘sにあこがれたからスクールアイドルを始めた。そして、曜ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃんはその私が始めたスクールアイドルグループAqoursの仲間として入ってくれた。しかし、東京のスクールアイドルのイベントのときにSaint Snowの聖良さんが言っていたように、スクールアイドルってそんなに甘くはなかった。東京のイベントのときに突きつけられた数字、0。そのイベントでの投票数、そして、廃校を阻止するために集めないといけなかった入学希望者、などなど、いろんなところで0が私たちに突きつけられていた。しかし、果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃんの3人が、先代のAqoursの3人が私たちと一緒になったから、0から1へ、そして、10、100、1000、それ以上にすることができた。廃校は阻止できなかったけど、スクールアイドルとして、ラブライブ!優勝によって、私たちはその先の未来へ突き進むことができたと思うよ。果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、もう3人は自由なツバサで私たちのもとから羽ばたいていった。けれど、私たちは、いや、みんなにはもうわかっているよ、けして0には戻ることはない、この1年間で得たみんなとの思い出、みんなの想い、そして、みんなとのキズナ、それは私たち1人1人の心の中にある、けして消えない、むしろ、これから先、どんどん増えていく、どんどんつながっていく、だからこそ、私たちはもっと進んでいける、虹の向こう側へ越えていける。そして、私、あえてこう言うよ、次の輝き、新しい輝き、NEXT SPRKING、それに向けて一生懸命走っていく、私たちAqours9人と一緒に・・・。(千歌))

 そして、6人は最後にこの想いを果南、鞠莉、ダイヤ、3年生3人に向けて精一杯伝えた。

「果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、またね、また、会おうね!!」

 

♪ツ、ツ、ツ、ツ、ツル ツル ツルー ルル

「ちょっと待ったーーー!!EDには早すぎる!!」

「って、ヨハネちゃん!!いい雰囲気なのに、なんでEDを止めるの?」(作者)

「まだ話が終わってな~~~い!!」(ヨハネ)

「もうクライマックスですよ」(作者)

「この話には後日談があるの!!」(ヨハネ)

「えっ!!後日談があるの!!聞きたい!!」(作者)

「よくぞ言ってくれました。それでは、スタート!!」(ヨハネ)

 



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NEXT SPARKING!! 第3話

 沼津駅前の震災Aqoursとしては初のライブを大成功に収めたあと、楽屋をかねたテントの中であることが起こった。

「あぁ、楽しかったずら~。もうこんなライブ、できないずら~」

と、花丸、ライブの余韻を今だに感じていた。ルビィも、

「たしかにそうかも。でも、まだ始まったばかりだよ。もっとガンバルビィしないとね」

と、これからが踏ん張り時であることを思い言う。

 各人とも思い思いに今回のライブの余韻に浸っていた。が、そんなときだった。突然、

「さっ、ライブは大成功したよ。でも、ルビィちゃんが言うとおり、まだ始まったばかり。気を抜かないでね」

と、千歌、みんなに釘を刺す。ここで喜びに浸っていてはこれから先、前に進むことができない、そう思っていたからだったのだろう。

 そして、千歌はあることを言った。

「さて、新生Aqoursとしてまずやらないといけないことがあります」

「なになに」「なにかおもしろいことなの?」「ずら、ずら、ずら!!」

と、千歌の発言に心をわくわくさせる。

 その状況のなか、千歌、

「それじゃ、善子ちゃん、いや、ヨハネちゃん!!」

と、ヨハネを指差す。ヨハネ、

「えっ、私?」

と、突然のことで驚く。

 驚いているヨハネに対し、千歌が一言。

「今からヨハネちゃんに新生Aqoursとして初めての仕事を命じます。ヨハネちゃんしかできないことです」

これを聞いたヨハネ、

「ヨハネしかできないこと?うふふ、うふふ」

と、不気味な笑い、喜びを隠せない様子。

 これを見た千歌は元気よく言った。

「それじゃ、ヨハネちゃんに命じます。その仕事とは・・・」

 

 その日の夜、ヨハネの自室。

「なんでこうなるのよ!!」

と、ヨハネはまわりのことを気にせずに叫んでいた。なぜなら・・・。

「なんで私が「スクールアイドル講座」の動画の編集をしないといけないのよ~!!」

そう、新生Aqoursとしての初めての仕事、ヨハネに与えられた仕事、それは沼津駅前のライブ前日に撮った「スクールアイドル講座」の動画の編集だった。実は果南、鞠莉、ダイヤが考えた案に沿って撮影をし、その日のうちにすべて撮り終えたのだが、撮り終わったときにはすでに夜の10時を越えていたのだ。また、リハーサルもしていたものの、本番となる映像はなんと4時間以上を越えていたのだ。もちろん、いろいろと脱線していたため、講座とはまったく関係ない部分も多く含まれていた。なので、このままだとただのネタ動画でしかなかった。お笑い集団Aqoursのネタ集、これではいけない、そう思った千歌は膨大な動画の編集をすべてヨハネに丸投げしてしまったのだ。

「でも、なんで私だけなの~~~!!」

と、ヨハネは嘆く。実はこれにも理由があった。それは・・・。

「だって、私、動画編集したことがないんだもん」(千歌)

「わ、私は新生Aqoursのために、今までの曲、6人用にアレンジしないと・・・」(梨子)

「私はどちらかというと衣装デザイン担当だから、それはちょっとね・・・」(曜)

「おら、パソコン、扱ったこと、ないずら・・・」(花丸)

「ルビィはちょっとお姉ちゃんの部屋の片付けがあるから・・・パス!!」(ルビィ)

と、ほかの5人とも動画編集をいろんな理由をつけて逃げてしまったのだ。もちろん、ヨハネは動画編集の実績があるのも理由の1つである。ヨハネはよく動画投稿サイトでライブ配信をしたり、自分で動画を撮って編集し、それをサイトに投稿していた。そして、その実力はAqours初めてのPV「夢で夜空を照らしたい」のPV編集で遺憾なく発揮され、ヨハネの編集したPVは東京のスクールアイドルイベントに招待されるくらいの、Aqoursの知名度を急激に上げるのに一役立っていたのだ。(むろん、このイベントに参加したことで、Saint Snowの鹿角姉妹2人と出会えたのと、0という数字を突きつけられたことは記憶に新しいことなのだが・・・)ということで、Aqoursが投稿したPVなどの編集などはヨハネ1人でやっていたのだ。が、PVは長くても5~6分程度。今回は4時間以上ある。それをヨハネ1人でやるのは酷である。

「うぅ、誰か手伝って、手伝って~!!」

と、深夜の真っ只中、ヨハネの叫び声だけがまわりに響き渡る。

 が、ヨハネ、

「善子、少しは静かにして!!まわりに迷惑でしょうが・・・」

と、先生をしているヨハネの母親から叱られる。さらには・・・、

「もう、いつになったら目を覚ますのかね・・・。はやく大人になってもらいたいものね」

と、自分の母親からいろいろと文句を言われてしまうヨハネ。

 が、そんなヨハネだったが、この母親の一言が・・・。

「もうくだらないこと、しないで、ちゃんとやってよね!!」

 これを聞いた瞬間、

「くだらない、くだらないですって・・・」

と、何か起こりそうな予感が・・・。そして、ついに、

ピギャー

と、ヨハネ、ついにキレてしまう!!

「なにがくだらないですって!!何もわかってくれないくせに!!こうなったらこうしてやる!!」

と、ヨハネ、ついに暴走状態に陥る。まさか、最悪の事態に・・・。

「こうしてやる~、こうしてやる~」

と、叫び続けるヨハネ。そして、なにをやっているかと言うと、

「ここで切って、消して、ここをこれをつなげて・・・」

と、なんと目にも留まらぬ速さで沼津駅前のライブ前日に撮った講座用の動画を次々と編集していったのだ。実はヨハネにとって新記録となる速さであった。ただ、速いあまり、ヨハネが考えて編集しているかというと疑問だった。だって、あまりにも速いため、考えて編集しているというよりもヨハネの感性だけで作っている、そんな感じだった。

 

 そして、ヨハネが動画を編集し始めてから2日後・・・。

「えっ、善子ちゃんが部屋から出てこないの!!」

ヨハネの母親からの電話で急遽ヨハネの部屋に着いたルビィ、すぐに、

「善子ちゃん、善子ちゃん、ルビィだよ。ここを開けて!!」

と叫びながらドアを叩くも返事がない。

「善子ちゃん!!善子ちゃん!!」

と、ルビィ、なんども呼びかけるも反応なし。

 そんなときだった。

「おらに任せるずら。この間のライブでつけた力、活かすずら」

と、ルビィと一緒にきていた花丸、力一杯ドアノブを引っ張る。すると、

バタンッ

と、ドアが大きく開いてしまう。そこから見えたのは・・・、

ギュ~

なんと、ヨハネ、干からびた状態で机にもたれるように倒れていた。

「善子ちゃん、善子ちゃん、しっかり起きて、起きて~!!」

と、ルビィ、必死にヨハネの顔を叩くが、そのヨハネはただ、

ギュ~

と、うなって動くことすらなかった。これにはルビィ、

「早く救急車、いや、パトカーを、早く呼んで~!!」

と、必死に叫んでいた。

 が、ルビィと一緒にヨハネの部屋に入った花丸は、

「あれっ?なにずら?」

と、ヨハネのパソコンを眺めつつ言う。その画面には10個の映写機を模したマークの形をしたファイルが映っていた。そして、その下には「×」のマークと「→」のマークがあった。さらに、パソコンのカーソルはちょうど「×」のマークのところを指していた。が、

「なんかおもしろうそうずら。扱うずら」

と、花丸、勝手にヨハネのパソコンのマウスを動かしてしまう。すると、パソコンの画面では矢印の形をしたカーソルが面白そうに動く。これには花丸、

「未来ずら!!未来ずら!!」

と、楽しくなってたまらないみたいだった。

 マウスを動かしてはパソコンの画面のカーソルが動くのを楽しんでいる花丸、だったが、動かしていくうちに、

「あれっ、この「→」ってなにずら?」

と、画面に映っている「→」に興味をもつ。

そして、花丸、

「この矢印を「→」に重ねるずら~」

と、カーソルを「→」のところにあわせる。すると、

「あれっ、「→」がへっこんだずら!!」

と、カーソルを「→」にあわせた瞬間、「→」がまるでへっこんでいるかのように見えた、そのことに驚く花丸。さらには・・・。

「押してみるずら!!」

と、なんと、花丸、興味本位でマウスを右クリックしようとしてしまう。

 そんなときだった。

「うぅ、頭が痛い・・・」

と、これまでのびていたヨハネがルビィの必死の呼びかけに応じて起きたきた。

 が、ヨハネが目を覚ました瞬間、

「ずら丸、クリックしちゃダメ~!!」

と、ヨハネ、花丸にクリックしないように言うも、

「ずら?」

と、花丸が振り返った瞬間、

ポチッ

と、なにかが押されてしまった。この瞬間、ヨハネ、すぐに、

「ず~~~ら~~~丸~~~!!」

と、まるで瞬間湯沸かし器のように花丸に怒る。これには花丸、

「な、なんで怒るずら~」

と、なんで怒られているのかわからなかったためか、少し困惑しているようだった。

 

「いったいどうしてくれるの、ずら丸!!私たちAqoursの汚点を世界中に配信しちゃったじゃない!!」

と、ヨハネ、花丸に説教するも、花丸、

「なんで怒るずら?まる、悪くないずら。理不尽ずら!!」

と、少しも反省するどころか、なんで起こられるのかわからない、納得がいかない感じだった。これにはヨハネ、すぐに花丸に怒りつつ言う。

「ずら丸、今さっきしたことはねぇ、沼津駅前のライブ前日に撮った「スクールアイドル講座」用の動画、それを編集したもの・・・」

これにはルビィ、

「えっ、もう(数日前に撮った「スクールアイドル講座」の)動画の編集、できたんだ~。やっぱり、善子ちゃん、凄い!!」

と、ヨハネを褒めると、ヨハネ、すぐに反応。

「「スクールアイドル講座」用の動画・・・、爆笑版・・・」

これにはルビィ、

「えっ、今、なんて・・・」

と、もう一度ヨハネに聞きなおそうとする。これにヨハネ、ぼそっと、

「「スクールアイドル講座」・・・、爆笑版・・・」

と、弱々しく言うと、ルビィ、ものすごい剣幕で、

「善子ちゃん!!」

と、ヨハネを大いに叱った。

 

「なんでそんな動画を編集したの?」

と、怒るルビィ。ヨハネはつい、

「面白いから・・・」

と、ぼそっと言うと、ルビィ、

「それじゃ理由になっていないでしょ!!」

と、ヨハネをどんどん攻める!!これにはヨハネ、

「は、はい!!」

と、びくっとしてしまう。

 そして、ヨハネ、ついに真実を口にする。

「ライブが終わって、動画編集を1人でするように言われて、編集してもうまくいかなかったの。それに加えてヨハネの仮の母親からいろいろ言われて、ついカッとなって、つい勢いだけで動画編集していたら、こんな動画ができてしまったの・・・」

どうやら勢いだけで編集してしまったもんだから、教えること重視ではなく、お笑い重視で動画編集してしまったみたいのようだ。

 そして、ヨハネはルビィについ投稿してしまった動画を見せると、

「こ、これ、お姉ちゃんが知ったら大変だよ。Aqoursの恥さらしって怒られちゃう・・・」

と言う。そこに映っていたのは脱線しまくりのお笑い集団Aqoursの姿だった。これにはヨハネ、

「ふっ、まさか、堕天使ヨハネの能力、ゴッドメイキングムービーの力が発揮・・・」

と言うと、ルビィの横にいた花丸から、

「ただの勢いだけずら」

と、ヨハネにツッコミ。これにはヨハネ、

「ふっ、天才といってほしい・・・」

と、かっこよく言うも、ルビィ、

「本当に本当に本当にお姉ちゃんに叱られる・・・」

と、何かに対してなのかおろおろしてしまう。

 が、

「あっ、そうだ!!この手があった!!」

と、ルビィ、なにやら妙案が浮かび上がったようだった。すぐにヨハネに命令。

「よし、こうなったら、善子ちゃん、今すぐ動画投稿サイトに連絡・・・」

そう、ルビィは考えた、今すぐ誤って投稿した動画、「スクールアイドル講座・・・爆笑版」をさっさと削除すればいいのだと。

だが、突然、ヨハネから衝撃の一言が・・・。

「実は削除したいのはしたいんだけど・・・(ごそごそ)」

これを聞いたルビィ、

「え~!!」

と、驚くしかなかった。

 



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NEXT SPARKING!! 第4話

 数日後・・・。

「なんなんですの、あの動画は!!私たちAqoursを恥さらしにするつもりですか!!ブ、ブーですわよ!!」

と、スマホのダイヤの怒鳴り声が聞こえてくる。これにはルビィ、花丸、ヨハネ、共に、

「ご、ごめんさい!!」

と、しゅんとなって謝罪。これにはダイヤ、

「あぁ、これではラブライブ!優勝という偉大な実績にもキズがつくってもんです!!どうしたらいいのか・・・」

と、大いに悩む。そこに、

「大丈夫で~す。なにも心配ないで~す」

と、スマホから鞠莉の超えも聞こえてくる。さらに、

「私も大丈夫だと思うよ」

と、果南の声も聞こえてくる。どうやら、ルビィ、花丸、ヨハネ、それにダイヤ、鞠莉、果南はスマホの無料通話アプリを使って、あの間違えて投稿してしまった「スクールアイドル講座・・・爆笑版」の動画の件について話し合っているみたいだった。ちなみに、ダイヤは東京に、鞠莉はイタリアに、果南はアメリカにいる。が、スマホ1つでどこにいても話すことができる。便利な世の中になったものである。

 とはいえ、鞠莉と果南が「大丈夫」と言うも、ダイヤ、

「それじゃいけないのです。Aqoursが、Aqoursが、コミックバンドに見えてしまうのです・・・」

と、さらに心配する。

 すると、

「あれ、ダイヤちゃん、どうしたの?」

と、千歌の声がスマホから聞こえてくる。その横から、

「なにか悩み事かな?」

と、曜の声と、

「みんなで話し合えばきっと解決しますよ」

と、梨子の声も聞こえてくる。どうやら、千歌たち2年生3人もグループ通話に参加したようだ。

 すると、鞠莉がある提案をした。

「対策は簡単で~す。投稿した動画を削除すればいいので~す」

これには果南、

「それもそうだね。削除なんて簡単だからね」

と、鞠莉の提案に同意する。これを受けてか、千歌、

「それじゃ動画を削除して、新しく編集したものを・・・」

と言うと、ヨハネ、

「それはそうなんだけど・・・」

と、なにやら悪そうな声で言うと、ルビィ、

「実は削除できないんだ・・・」

と、驚愕の真実を話す。これには千歌、曜、梨子、鞠莉、果南、ともに、

「「「「「なんで~!!」」」」」

と、大きく驚く。その理由をダイヤが答えた。

「実は投稿してからすぐに再生回数が大幅に上がりまして、今や、その動画投稿サイトで堂々の1位になってしまったのです・・・」

どうやら、投稿した「スクールアイドル講座・・・爆笑版(ヨハネ談)」が投稿してすぐに大人気になり、再生回数がどんどんうなぎのぼりに増えていき、今や、再生回数急上昇ランキングで堂々の1位、いや、動画は全部で10個あるので、それすべてがランキングトップ10を独占してしまったようだった。これでは削除しようにも削除できないものである。逆に削除してしまうと、なにか悪いことがあったのかと思われてしまうのである、Aqoursに対して。

 これにはみんな、

「う~ん」

と、悩んでしまう。

 そんななか、千歌だけは違っていた。千歌はすぐにヨハネにあることを聞く。

「ところで、この動画のタイトルってなに?」

これにはヨハネ、

「え~と、たしか、「サルでもわかるスクールアイドル講座」・・・」

これまたツッコミどころ満載のタイトルである。たしかに、初心者向けにダイヤたちが動画の構成を考えたこともあり、誰が見てもわかりやすい内容である。しかし、「サルでもわかる・・・」だと、ちょっと・・・。ちなみに、このタイトル、勢いのままに動画を編集していたヨハネが勝手につけたタイトルだった。動画編集中、ふと、「じゃ、動画のタイトルは?」と思ったヨハネ、こちらもついつい勢いのままにつけたタイトルだった。

「善子さん、まさか、このタイトルにまでふざけた名前をつけたのですか?どこまでAqoursの名を・・・」

と、ヨハネに怒るダイヤ。これにはヨハネ、

「ご、ごめんなさ~い」

と、みるみるうちに小さくなるような表情で言う。

 が、そんなとき、

「あっ、いいこと思いついちゃった!!」

と、千歌が大声で言うと、ダイヤ、

「千歌さん、それはなんですの?」

と、千歌に聞く。千歌はすぐに、

「善子ちゃん、「Aqoursの~」って、タイトルや(動画の)説明文には書いてないよね?」

と、ヨハネに聞くと、ヨハネ、

「えぇ、たしかにタイトルにも、説明文にも、「Aqoursの~」の文字ははいってないよ」

と言う。どうやら、勢いで動画を編集したこともあり、「Aqoursの~」という言葉はタイトルどころか、説明文にもいれるのを忘れていたようだった。

 で、これを聞いた千歌はすぐに、

キラッ

と、目を輝かせるとみんなにあることを言った。

「それじゃ、この動画のことは封印しよう!!」

これにはみんな、

「封印!!」

と、驚いてしまう。曜はすぐに、

「で、この動画、どうやって封印するの?」

と、千歌に聞くと、千歌、

「投稿した動画を消すことはできないよ。でも、この動画を作ったことを黙ることはできるよ」

と気軽に言うと、ダイヤ、

「いったいどういうことですか、千歌さん?」

と、千歌に聞く。すると、千歌、

「私たちAqoursが「この動画を作りました」なんて言わなければいいんだよ。作った、という事実は私たちの心の中にずっとしまっておくんだよ」

と、答える。が、ダイヤはすぐに、

「でも、動画を見ると「Aqoursが作った」とすぐにわかるんじゃないのでは?」

と、千歌に聞く。たしかに、動画のところどころに「ハグ、しよう」とか、「シャイニー」とか、「堕天使リリィー」とか、「全力前進、ヨ~ソロ~」とか、「ガンバルビィ」とか、さらに「ブ、ブーですわ!!」とか、Aqoursを知っている人なら動画を見ただけでAqoursのメンバーが作ったとすぐに気づくものである。

 が、千歌、真面目に答える。

「たとえ、私たちが作ったとしても、それを認めなければ、私たちが作ったものだと断定できないよ」

この千歌の答えにみんな、

「?」

と、首をかしげる。これを見た千歌、すぐに、

「もし、この動画を見て、私たちに「この動画、Aqoursが作ったの?」と聞かれたら、こう答えればいいんだよ、「記憶にございません」って」

と言うと、みんな、

「あ~あ、そういうこと・・・」

と、納得した。千歌以外のみんなはある光景を思い浮かぶ。それは、国会で中央省庁の偉い人がなにか省庁内で不祥事が起きたとき、国会議員からその不祥事について聞かれたときのセリフ、「記憶にございません」を。

 それを思ったダイヤ、

「つまり、しらをきるってことですね」

と、千歌に聞くと、千歌、

「そういうこと!!」

と、元気よく答えた。

 それを受けてか、

「それならいいかも」「私たちが認めなければいいんだ」「くくく、しらをきるか。とてもいい響きだ!!」

と、千歌の意見はAqoursメンバーのほとんどが賛成に傾いていた。

 千歌、それを感じてか、すぐに、

「それじゃ、この動画のことは永久的に私たちの心の中に封印することに賛成の人?」

と聞くと、ダイヤ以外、

「「「「「「「賛成!!」」」」」」」

と、千歌の意見に賛成の返事をする。

 これを聞いた千歌、

「それじゃ、この動画のことはみんなの心の中に封印することに決定!!」

と、この動画を作ったのはAqoursであることを言わないことに決定したことを宣言した。

 一方、ダイヤはというと、

「でも、これで本当に隠し通せるのかしら・・・」

と、少し疑問に思ったのか、賛成も反対もしなかった。

 が、ダイヤ以外のメンバーは、

「あぁ、これでなんとかなるね」「うん、そうだね」「安心したらおなかがすいたずら~」

と、もう解散ムードに。

 そんなときだった。

「マリーたちが考えて作った動画がまさかのSealing(封印)だなんて、マリーたちにブラックヒストリーができたのですね~」

と、鞠莉が元気よく言うと、ダイヤ、すぐに、

「ブラックヒストリー?」

と、すぐに鞠莉に聞き返す。すると、果南がそれを解説する。

「ブラックヒストリー、直訳すると、黒歴史?」

が、これを聴いた瞬間、ダイヤ、

「この私に黒歴史なんて、とても嫌ですわ~!!」

と叫びまくる。

 そして、ダイヤはすぐに、

「梨子さん、曜さん、黒歴史なんて嫌ですわよね」

と、梨子と曜に同意を求めるも、

「私も、できればこの動画のことは忘れたいかな」(梨子)

「まっ、千歌ちゃんが言うことだし、黙っていたほうがいいかな」(曜)

と、2人とも千歌の考えに同意してしまう。これにはダイヤ、

「あぁ、Aqoursの良心的存在の梨子さんと曜さんが・・・。これじゃ仕方がないですわ。頼りないですが、花丸さんと善子さんに・・・」

と、わらをもすがるように花丸とヨハネの方を見るが、

「これでまたみんなと一蓮托生できるずら」(花丸)

「くくく、堕天使であるこの私、ヨハネに黒歴史という輝かしいものが与えられるとは。天よ、とてもありがとうですぞ!!」(ヨハネ)

と、もうその気でいる感じだった。

 そして、鞠莉はさらなる言葉を口にする。

「これでまた、マリーたちに動画封印という共通の思い出、いや、ブラックヒストリーができたので~す!!」

さらに、果南も、

「それ、いいね。私たちAqoursのメンバーしか知らない思い出かぁ。なんかわくわくする!!」

と、鞠莉に賛同する。

 これを聞いたダイヤ、

「このままだとラブライブ!優勝という輝かしい実績をもつAqoursの、名家の出である、この私、ダイヤの顔に泥がついてしまいますわ」

と、とても心配そうに言うと、最後の頼みの綱、Aqours唯一の心のオアシス(ダイヤ談)といえるべき妹ルビィの方を向き、

「こうなったら、最後の手段ですわ。ここはイタリアの旅で一段とたくましくなった、いとしの妹、ルビィに・・・」

と、なにかルビィに期待するように言う。

 が、そんなダイヤの期待とは裏腹に、ルビィ、意外な答えを出してしまう。

「お、お姉ちゃん、いや、ダイヤさん、ルビィと一緒に黒歴史、作ろう!!」

この瞬間、ダイヤ、壊れる・・・。

「あぁ、私のルビィが・・・、私のルビィが・・・、私のルビィが壊れてしまいましたわ。ルビィが変な方向に進んでしまいましたわ。あぁ、私のルビィが、私のルビィが・・・」

そして、さらにダイヤ、壊れる・・・。

「あぁ、たった1本の動画のせいで、輝かしいAqoursのイメージが・・・。誉れ高き名家の出である私のイメージが・・・」

スマホから流れてくるダイヤの嘆き声。これにはみんな、

「こんなダイヤさん、初めて見た~」「これぞダイヤ、ですね~」「もう少しで収まるんじゃない」「そうずらね」「くくく、リトルデーモン、再召喚!!」「ダイヤさん、しっかり」「お姉ちゃん、ルビィがいるから大丈夫だよ」

と、さまざまな言葉でダイヤを励ます?

 そんななか、

「なんか、これもAqoursなのかな?」

と、みんなのやりとりを聞いていたのか、こう言い出した千歌だったが、すぐにあることを思ってしまった。

(みんなと、Aqoursみんなと、ただ話をしている。ただそれだけ。でも、とても楽しい。やっぱり、Aqoursは私にとって最高の仲間だよ!!)

 が、そんなことを思っていたのは千歌だけじゃなかった。

(私の1番の宝物はAqoursみんな!!だって、私にとって最高のフレンズだもの!!(曜))

(Aqoursみんながいるから私は作曲できる!!Aqoursみんなが私が作った音楽を表現してくれるから私は頑張れる!!私にとってAqoursそのものが宝物!!(梨子))

(まるたちAqoursこそが世界の至宝ずら。だからこそ、まるはその宝物を大事にするずら(花丸))

(ルビィ、Aqoursのみんながいるからここまで成長できた。だから言えるよ、ルビィにとってAqoursこそ世界中探しても見つけることができない、無二唯一の宝物だって(ルビィ))

(くくく、堕天使ヨハネが命ずる、ヨハネたちAqoursを、ヨハネの宝物と言うべきAqoursの存在をもっと世の中に知らしめようぞ!!(ヨハネ))

(私と鞠莉、ダイヤで始めた小さな宝物。それが、今では、私にとってとても大きな損じになった。だから言えるよ、Aqoursこそ、私、鞠莉、ダイヤにとって、いや、みんなにとってとても大きな宝物なんだって(果南))

(マリーにとって最初のころはスクールアイドルは廃校を阻止するための手段だけだったかもしれないで~す。でも、今では、マリーにとってとてもとても大切な存在になったので~す。それを気づかせてくれたのはAqoursのみんなで~す。だから、言えま~す。ちかっち、曜、梨子、花丸、ルビィ、善子、そして、ダイヤに果南、とてもとても大好きで~す!!(鞠莉))

(いろんなことがありましたが、それでも私たちAqoursはみんなの力でここまで大きくなりました。それは私だけの力ではできません。みんながいてくれたからできたのです。私にとってAqoursは、Aqoursのみんなは、とてもとても大切な宝物といえます(ダイヤ))

Aqoursメンバー全員、Aqoursのことを、Aqoursメンバーみんなを、大切な宝物である、そう思っている、千歌はそんなふうに考える。が、そんなとき、ふと、あることを考えてしまう。

(でも、なんでこの9人が集まったのかな?どうしてなのかな?)

すると、千歌はもしものことを考えてしまった。

(もし、私がμ‘sにあこがれなかったら・・・。もし、梨子ちゃんと沼津の海岸で会わなかったら・・・。もし、ルビィちゃんと花丸ちゃんが体験入部してくれなかったら・・・。もし、善子ちゃんがこのまま家に引きこもっていたら・・・。もし、果南ちゃん、ダイヤちゃん、鞠莉ちゃんが教室で言い争わなかったら・・・。そして、もし、曜ちゃんが私のためにスクールアイドル部に入部してくれなかったら・・・)

そう思った瞬間、千歌はる疑問にたどり着く。

(あっ、もしかして、これって1つの奇跡なのかな?もしかして、私たちはAqoursという1つの大きなものを作るために集まってきたのかな?Aqoursという原石を私たちみんながいろんなことを経験していくことで磨かれて、そして、最後には光り輝く大きな宝石に生まれ変わった。ダイヤモンドより固い、仲間という強い結束をもつ、とても大きな宝物になったんだ、そう思っていいのかな?)

そう思った瞬間、千歌はある不思議な感覚に陥る。

(あれ、なんかみんなと心と心がつながっていくような気がする)

その横から、

(あれ、千歌ちゃんだ(曜))

(あれ、みんなとつながっている気がする(梨子))

(ずら、ずら~!!(花丸))

(東京にいるお姉ちゃんが近くに感じられる!!(ルビィ))

(ま、まさか、堕天使ヨハネの真の力が・・・(ヨハネ))

(まるでみんながここにいるような気がする(果南))

(What!!なにかが起きたので~す!!(鞠莉))

(なんですの!!まさか、これがかの有名な霊界ですの!!(ダイヤ))

と、千歌の意識のなかにほかのみんなの意識がはいってくる。

 そのなかで、千歌は、

(みんな、ちょっと聞きたいことがあるの)

と、みんなに言うと、みんな、

((((((((な~に?))))))))

と、千歌の方を向く。そして、千歌はあることを聞いてみた。

(私たちってどうしてAqoursになったのかな?)

あまりにも漠然的な疑問。だが、その答えはおのずとでてしまう。

(それは簡単だよ。私たちは集まるべくして集まった、Aqoursというとても大きな、とても大切なものをつくるために)

と、曜がこう言うと、続けてこう言った。

(曜:私は千歌ちゃんと一緒になにかをしたいと思ったから名簿に名前を書いたんだよ)

(梨子:私は千歌ちゃんと曜ちゃんと一緒に海の音を聞いて、3人でなにかやれたらいいなと思ったから参加したの)

(ルビィ:ルビィはあこがれのスクールアイドルになりたくて、そして、あの講堂での初ライブを見て感動して入ったの)

(花丸:まるはルビィちゃんがAqoursに加入したいという夢を叶えたから、図書館の主に戻ろうとしていた。けれど、ルビィちゃんと千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんが自分もルビィちゃんと一緒にスクールアイドルをやりたい、そのまるの気持ちに気がつかせてくれたから参加したずら)

(ヨハネ:ヨハネは堕天使をやめようとしたとき、千歌、曜、梨子、ルビィ、ずら丸がこのヨハネが堕天使を続けてもいい、そう言ってくれたから参加したんだよ)

(鞠莉:マリーは1年のときの失敗で果南、ダイヤと断絶したと思っていました。けれど、ちかっちたちのおかげでそれは間違いだって気づかせてくれたので~す。そして、もう一度3人でなにかをやりたいと思って参加したので~す)

(果南:私も千歌たちのおかげで鞠莉たちと仲直りできた。鞠莉の想いを気づかせてくれた。だから、鞠莉とハグができた。そう考えると、Aqoursに参加することって必然だったのかもね)

(ダイヤ:私は1年のときに果南さん、鞠莉さんと一緒に成し遂げることができなかったことを千歌さんたちにやってもらおうとしていたのです。そして、私でも成し遂げることができなかった果南さんと鞠莉さんの仲直りさえもしてくれました。これで私の役目も終わった、そう思ったとき、千歌さんたち、そして、妹のルビィから一緒にスクールアイドルになってほしいと言われました。そのとき、私、気づきましたの、この9人だったらどんなことでも成し遂げてくれる、と。そう思って参加したのですよ)

 そして、8人は千歌に言った。

(そして、千歌、あなたがμ‘sに、スクールアイドルにあこがれてくれたから、今のAqoursが生まれたのです)

それを聞いた千歌は思った。

(そうだね。今のAqoursって私が始めたんだったね)

そして、さらに8人はあることを言う。

(千歌が始めたAqours、そのもとにみんなが集まり、いろんなことを経験していったんだよ。梨子とわかれてのラブライブ!夏季大会県予選、散ってしまった東海予選、再びラブライブ!優勝を目指すことになり、同日に行われた冬季大会県予選と学校説明会、そして、苦しい特訓の末に突破することができた東海予選、結局阻止できなかった統廃合、Saint Snowとの合同クリスマスライブ、そして、念願のラブライブ!優勝。千歌はみんなと一緒にいろんなことをやってきたなかで、当初、μ‘sのようになりたい、ただそれだけだったのが、今や、自分の輝きをも見つけたんだよ。そして、そこで得た私たちとの思い出、私たちの想い、そして、私たちとのキズナは、今や、私たちにとって、世界中で、いや、宇宙中でとても大切な宝物になっているんだよ)

 これを聞いた千歌は悟った。

(そうだよね、そうだよね。私、今、わかった。私たちの出会い、それは必然だった、荘断言できる!!そして、Aqoursは、いろいろと経験したことで、ただの原石からとても大きくて大切な宝石へと変わっていった、そこで得た思い出、想い、そして、キズナによってね)

 そう、今やSNSや無料通話アプリなどでどこにいても人と人をつなぐことはできる。ただ、それは1本の細いつながりでしかないのかもしれない。そして、会ったことがない人たちとただSNSなどでつながっているだけではいつきれてもおかしくないとても弱いつながりかもしれない。が、千歌たちは違った。必然ともいえる出会いによって導かれたAqoursという9人のメンバーはいろんなことを経験していくことで思い出、想い、そして、キズナを得ていくことで成長していった。結果、ラブライブ!優勝だけではなく、1人の少女(理亞)の凍りついた心をも溶かしていったのだ。そして、Aqoursはついに次の次元、未来へと進む・・・はずである。ただ、それでもいえることは1つだけ、たとえ、どんなことがあっても、太い糸で作られたキズナという綱は決して切れないことを。

そして、そのことを再確認した9人は遠くの空に向かって大きな声で言った、世界中のみんなに聞こえるように。

(千歌)「私がμ‘sにあこがれて、自分だけの輝きを求めて始めたスクールアイドルAqours」

(曜)「それが私たち9人が集まることで大きな原石となった」

(梨子)「その出会いは奇跡でもなんでもない、必然だったかもしれません」

(花丸)「けれど、そのままではただの原石でしかなかったずら」

(ルビィ)「でも、いろんなことを通じて、ただの大きな原石はやがて大きく光り輝く宝石へと変わりました」

(ヨハネ)「くくく、堕天使としてはとてもまぶしい。けれど、ヨハネたちにとってはとても神々しい輝きである!!」

(果南)「けれど、ただの原石から光り輝く宝石に変わるためにはいろんなことがあった。とてもつらいこともあった。とてもきついこともあった。それでも、私たち9人はそれらを成し遂げることができました」

(鞠莉)「なぜ、そんなことができたって。それはですねぇ、マリーたちだったからで~す。Inevitable(必然)に集まったマリーたち9人こそパーフェクトナインだったからで~す。たった1人かけていてはできなかったので~す」

(ダイヤ)「そして、私たちはスクールアイドルとしてとても大きな、そして、私たちだけの輝きを得ることができました。が、それ以上に、私たち9人の思い出、9人の想い、そして、9人のキズナというとても大切な宝物を得ることができました」

(千歌)「はじまりはたった1人の少女の小さなあこがれ。でも、そのあこがれがやがて大きな輝きになった。そして、今、その輝きは役目を終えて世界各地に散らばろうとしています。また輝けるかわからない。でも、きっと、今以上の輝きを放つことができるかもしれない。いや、できる!!だって、私たち9人とも・・・」

(みんな)「Aqoursが大好きだから!!」

(千歌)「そして、たとえバラバラになってもきっと大丈夫!!だって、私たちの心の中では・・・」

(みんな)「この1年間で、この9人で得た、とてもとても大切な思い出、とてもとても強い想いがあるのだから!!」

(千歌)「そして・・・」

(みんな)「9人のキズナというどんなことをしても切れないとても強い糸でずっと永遠につながっているのだから!!」

(千歌)「さぁ、みんな、やるよ~!!」

(みんな)「ハイッ!!」

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」

と、メンバー全員が番号を言っていく。そして、全員が言い終わるとき、

「10!!」

と、大きな声が9人に向かって降り注いでくる。これには千歌は答える。

「聞こえた。私たち9人以外の、いや、私たちAqoursを応援してくれる人たちの声が。わかった。私たちの心の中にある思い出、想い、そして、キズナ、それは私たち9人だけのものじゃない!!Aqoursを応援してくれるみんなのものなんだ。私、いや、私たちは嬉しいよ。だから、みんな、Aqoursを応援してくれているみんなと一緒に言おう!!そして、みんなと一緒にあの虹を超えてその先の未来へと進んでいこう!!じゃ、いくよ~。1からその先へ、私たち9人、そして、私たちAqoursを応援してくれているみんなと一緒に、その先の未来へ!!」

 

「Aqours」

 

「サンシャイン!!」

 

ED NEXT SPRKING!!

 

(ご、ごめんなさい。大人の事情で「NEXT SPRKING!!」の歌詞を載せることができませんでした。大変申し訳ございませんが、心の中でAqours9人との思い出、想い、そして、キズナを感じながらAqours9人と一緒に歌ってください。きっととても感動的なものになると思います)

 

(あっ、まだお話、続きますからね。だから、ここで終わり・・・じゃないからね。次回をお楽しみにね)

 



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NEXT SPARKING!! 第5話

~エンディング~

 Aqoursが沼津駅前のライブ前日に撮ったものの、勢いだけでヨハネが動画編集してしまい、さらには何かの手違いで投稿してしまった「スクールアイドル講座・・・爆笑版」、もとい、「サルでもわかるスクールアイドル講座」であるが、この動画を作ったであろうAqoursメンバーからは「そんなの作ったおぼえ、ありません」「さぁ、知らないずら」「くくく、天から勝手に降ってきただけですぞ!!」と、Aqoursがこの動画を作ったことを完全否定、それを貫いていた。が、別に顔にモザイクがかかっているわけではなく、また、どちらからどう見てもその動画に映っているのはAqoursメンバーご本人たちだったためか、この動画については「Aqoursメンバー全員が完全否定しているが、どちらからどう見てもAqoursが作ったものに間違いない」という、ある意味千歌の考えの斜め上、というか、なんかおかしい認識が広がっていた。

 が、この動画であるが、お笑い集団Aqoursとしての・・・、もとい、実際には初心者にもわかりやすい解説、今すぐにでも役に立つダンス技術、そして、ときどき脱線はするがそれが講座特有というかとても堅苦しくなく何度見ても見飽きない、むしろ、何度でも見たいものになっている、そう、この動画を見たスクールアイドルを目指す人たちにとってそう感じられていた。これについてはダイヤの動画の構成のうまさ?、それと、ヨハネの動画編集技術の高さ?からくるかもしれない、たぶん・・・?

 というわけで、Aqoursメンバー非公認なんだけど、ぜったいにAqoursメンバーが作った?動画「サルでもわかるスクールアイドル講座」1本10分、全10本は今やスクールアイドルを始める高校生たちにとってバイブルといってもおかしくない存在となっていった。ちなみに、このことをかんがみてラブライブ!運営本部はAqoursに感謝状を送ろうとしたところ、「私たちAqoursはこの動画を作っておりません」と完全否定され、感謝状じたい今だ運営本部の中にずっと眠っていることはまた別の話である。

 とはいえ、Aqoursはラブライブ!優勝、優勝するまでの感動的なサクセスストーリー、Saint Snowとのラブライブ!決勝延長戦、そして、(本人たち未公認だけど)「サルでもわかるスクールアイドル講座」によって、μ‘s、A-RISE、オメガマックスなどと同じレジェンドスクールアイドルの地位を確立することとなった(で、別にお笑い集団Aqoursとしてではないからね、たぶん・・・)

 

 そして、月日が流れて、2022年8月・・・。

「さぁ、この日がついに来ましたよ~!!今、ここ、秋葉ドームでは、ラブライブ!10年目突入・・・もとい、9周年記念ライブがついに開催されようとしておりますぞ~!!」

と、ラブライブ!としてはおなじみのレポーターが元気よくはしゃぐように実況していた。そう、この日はμ‘sのリーダー、高坂穂乃果の妹で、ラブライブ!優勝の実績を持つオメガマックスのリーダー、高坂雪穂突然の発案のイベント「ラブライブ!9周年記念ライブ!!」開催日当日であった。そして、このライブにはμ’s、A-RISE、オメガマックスといったそうそうたるレジェンドスクールアイドルたち全員が参加することになっていた。もちろん、AqoursやSaint Snowもである。

 そして、ここはAqoursの楽屋である。あともう少しで開演であるが・・・。

「千歌さん、遅いですわ!!」

と、ダイヤが怒り気味で話す。どうやら、千歌が遅刻しているようだった。これには鞠莉、

「ダイヤ、落ち着くので~す。ちかっちはリーダーとしてほかのスクールアイドルのバランスをとっているので~す」

と、鞠莉がダイヤをなだめると、すぐに果南が、

「鞠莉、バランス、じゃなくて、調整、ね」

と、鞠莉の間違いを指摘する。

 そんな果南に曜が近づき一言。

「果南ちゃん、ご結婚、おめでとう!!相手はたしか・・・千歌ちゃん!!」

これには果南、

「ありがとう・・・って、ちが~う!!私、千歌とは結婚してな~い!!」

と、完全否定。すると曜、

「だって、名前、松浦果南から高海果南になったんでしょ!!」

と言えば、果南、

「それ違うから!!たしかに干物を届けによく千歌の家に行くけど、結婚まではしてないから」

と、曜に反論するも、曜、

「だって、このジグソーパズル型のキーホルダーに「Kanan Takami」って書いてあるでしょ!!」

と、そのキーホルダーを見せて言うと、果南、

「そのイニシャル自体が間違っているから」

と、ツッコミをいれる。

 が、その果南、負けじと曜に反撃。

「そんな曜だって千歌との結婚おめでとう!!」

これには曜、

「えっ、私!!千歌ちゃんとは結婚してないよ!!なにかの間違いだよ!!」

と、すぐに否定。が、果南、

「だって、千歌の名前が最近変わったでしょ、高海千歌から渡辺千歌に・・・」

と言うと、曜、

「たしかに今でも千歌ちゃんとはよく遊ぶけど、結婚するところまではいってな~い!!」

と、果南に反論。すると、果南、

「だって、このシュシュ、千歌のアイコンなんだけど、色は曜のイメージカラーの水色になっているじゃない・・・」

と、そのシュシュを見せながら曜に言うと、曜、

「それ、完全に間違っている!!」

と、必死で間違いを指摘する。

 と、ここで2人はあることに気づく。

「ねぇ、曜。これ、グッズのほうが間違っているんじゃないかな?」

と、果南が言うと、曜、

「そうだと思う。いや、絶対に間違いない・・・」

と言うと、あるメンバーの方向を見る。果南もその方向を見ると、すぐに、

「このグッズ、作ったのって善子だよね」

と、果南、曜にこそこそと言うと、曜、

「たしかに善子ちゃんだよ」

と、果南の言うことを肯定する。

 そして、曜と果南、2人はヨハネに近づくとすぐに、

「善子ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど・・・」

と、曜がヨハネを呼ぶと、ヨハネ、振り向いて、

「今、精神統一を・・・って、曜に果南・・・。で、なんで怒っているの、2人とも・・・」

と顔を引きつりながら言う。そう、ヨハネの前には怒りの形相の曜と果南がいたのだ。その果南からきつい一言。

「善子!!また、グッズのデザインとその発注、間違っていたでしょ!!また、勢いのままで間違ったものをデザインして発注したでしょ!!」

そう、Aqoursのグッズの企画立案、そして、発注などを1人でやっているヨハネ、だったのだが、今回のライブのために作ったグッズのうち、果南のキーホルダーと曜のシュシュの名前とアイコンを間違えてしまい、そのまま発注したのだった。これにはヨハネ、

「だって、今回のライブのためにいろいろ作っていたら忙しくなって間違いがないか確認できなかったんだもん・・・」

と、弁解をするも、曜、

「ただの言い訳だよ!!そんなの、発注するな!!」

と、ヨハネを叱る。これにはヨハネ、

「だって、ずら丸がただたんにクリックし続けているからだよ~」

と、これまた言い訳を言う。が、ただでさえパソコンすら扱うことが少ない、ある意味機械オンチ?の花丸(失礼!!)のせいにするのはちょっと無理がある。(とはいえ、とても忙しいヨハネのかわりに花丸が「きれいずら、きれいずら~」と言いながら発注ボタンを連続クリックしているのではあるのですがね・・・)

 と、いうわけで、曜、果南、ともに、

「「善子!!」」

と、ヨハネに向かって怒りのカミナリを落とすと、ヨハネ、ついに、

「す、すみません・・・」

と、しゅんとなってしまった。

 これを見ていたのか、ルビィ、

「でも、人ってよく名前を間違えてしまうんだよね、花丸ちゃん」

と、花丸に向かって言うと、花丸も、

「それは言えるずら。でも、そのことで(Saint Snowの)理亞ちゃんが悩んでいたずら」

と、言うと、ルビィ、

「うん。今回のライブでもたしか、理亞チャンの名前が間違って記載されちゃったんでしょ、ラブライブ!公式SNSに・・・」

と、今回の理亞の舐めの間違いについて言う。さらに、花丸は付け加える。

「たしか、「鹿角理亞」を間違えて「鹿島理亞」と書いてしまったずら」

これを受けてか、ルビィは理亞のことについて、

「でね、その理亞ちゃん、今回の衣装、Saint Snowの衣装でいこうか、それとも、ネタとして旧海軍の教官みたいな衣装でいこうか迷っているみたい・・・」

と言うと、それについて、花丸、

「なんで迷うずら?」

と、ルビィに聞く。すると、ルビィ、

「それはね、間違いのもととなった「鹿島」なんだけど、とても有名なネットゲーム「艦隊こ○くしょん」、略して「艦○れ」でね、その「鹿島」というキャラクターが理亞ちゃんそっくりなんだって・・・」

と言うと、花丸、

「どこが似ているずら?」

と、再びルビィに聞くと、ルビィ、

「うんとね、髪型。理亞ちゃん、ショートだけど、少しツインテール気味じゃない。で、その「鹿島」も髪は理亞ちゃんよりちょっと長いけど、その子もツインテール気味なんだよね」

と言うと、花丸、

「たしかに似ているずら。でも、名前の間違いって言ったら、まだあるずら」

と言うと、ルビィ、

「なに?」

と、逆に花丸に対して尋ねる。すると、花丸、

「今日のライブのゲストにトップ声優の「佐藤日向(さとうひなた)さんが来るずら」

と言うと、ルビィ、

「たしか、舞台の主役をかけて日々クラスメイトたちと戦うアニメ、と、それをもとにしたレビュー、それに出演している声優さんだね。とても有名だよね。たしか、同じ有名声優の「三森すずこ」さんもそのアニメに参加しているよね」

と言うと、花丸、

「で、その名前、間違えて佐野日向(さのひゅうが)って書かれていたみたいずら・・・」

と言うと、ルビィ、

「うわ、とてもかわいそう、佐藤日向(さとうひなた)さん・・・」

と、佐藤日向(さとうひなた)さんのことを同情する。これを受けて、花丸、

「人は間違うことはよくあるずら。でも、人の名前までは間違わないようにしたほうがいいずら」

と、今日の格言じみたことを言うと、ルビィも、

「たしかにそうかも」

と、花丸に同情した。

 そのルビィと花丸の会話の横では、鞠莉が梨子にあることを尋ねる。

「梨子、ところであの子たちはどうしているのかな?」

これには梨子、

「あっ、あの子たちだったら別室で待っていますよ。なんでも、久しぶりにAqours9人全員が揃ったのだから、9人のひとときを少しでも味わってもらいたいですって」

と少し喜びながら言うと、鞠莉、

「なんか気をつかわせちゃってソーリーで~す。たしか、マリーたち9人、今や、パーフェクトナイン、じゃなくて、Aqoursオリジナルナインって言われているようで~す。その意味でも本当にすまないこと、したので~す」

と、少し誤り気味ながら言うと、梨子、

「それはあの子たち3人のできるだけの心遣いなんでしょうね。リーダーの子はちょっと威張っていたいみたいなのが玉にキズですが、それでも、少人数なら集まることがあっても、私たち9人が一緒に揃うことがあまりないことを気にしてくれたから、こんな機会をつくってくれたのかもしれません」

と、優しく言うと、鞠莉、

「それを考えるのととても嬉しいで~す!!」

と、嬉しさを表現していた。

 で、その話を受けてか、ルビィも花丸と今日のライブの参加者について語る。

「そういえば、理亞ちゃん、今日は大忙しみたいだね」

と、ルビィが理亞のことを心配そうに言うと、花丸も、

「たしかに、理亞ちゃん、今日は2つのグループを掛け持ちするって言ったいたずら」

と、なにかを思い出すように言うと、ルビィ、

「たしか、SSとSC、だったよね」

と、こちらもなにかを思い出すように言うと、花丸、

「そうずら。たしか、SSはお姉さんの聖良さんとのユニット「Saint Snow」で、SCは理亞ちゃんがリーダーの3人組ユニット○○ずら」

と、理亞のユニット名をあげて言うと、ルビィ、

「本当に理亞ちゃんはすごいよ」

と、理亞に感心すると、花丸、

「それもそうずらね。特にSCのほうは「Saint Snow」3人目のメンバーとまるたちの街から来た子のユニットずら。理亞ちゃんとしてもリーダーとして頑張っていたずら」

と、理亞のことに感心するように言うと、ルビィも、

「そんな理亞ちゃん、今日もガンバルビィ、だね!!」

と、理亞を励ますように言う。これには花丸、

「そうずらね。今日もガンバルビィ、ずら。もちろん、まるたちもずら」

と、ルビィに言うと、ルビィ、

「うん、そうだね!!」

お、元気よく返事した。

 が、そんなルビィ、いきなりしかめっ面にすると、

「でも、理亞ちゃんにとってあの天敵も今日のライブに参戦するんだよね。今さっきも理亞ちゃんの楽屋を襲撃されたみたいで、理亞ちゃん、困っていたよ」

と言うと、花丸、

「それはお気の毒ずら。あの双子、まるも苦手ずら。あのレジェンドスクールアイドルのメンバーの双子の妹、なんだけど、いたずら好きなのが玉にキズ、なんだずら。まるたちのところには襲撃しないでほしいずら」

と、なにかを心配そうに言うと、ルビィも、

「ルビィもそうあってほしいずら」

と、花丸の口癖が移ったかのように言うと、花丸、

「ルビィちゃん、おらのまねをしないでほしいずら」

と、ルビィに注意すると、ルビィ、

「ごめんずら、ハハハ」

と、突然笑う。これには花丸も、

「たしかにおかしいずら」

と、笑って答えていた。

 

 そんなルビィと花丸が楽しい会話を繰り広げているなか、

コンコン

と、楽屋のドアを叩く音がする。

「あっ、どうぞ」

と、曜がドアを開けると、そこには、

「Aqoursのみなさん、こんにちは。私たち、お台場にあります「虹ヶ咲学園」のスクールアイドル同好会です」

と、栗色の髪の少女が挨拶する。そして、その子を含めた9人のスクールアイドルらしき少女たちがAqoursの楽屋に入ってきた。そして、栗色の髪の少女、リーダーらしき少女が言った。

「私たち、Aqoursのみなさんに会えてとても嬉しいです。あっ、失礼しました。私、上原歩夢です!!」

と、歩夢と名乗る少女がAqoursメンバーに挨拶する。すると、梨子、

「あっ、私は桜内梨子です。みなさん、こんにちは」

と、梨子もその9人の少女たちに挨拶する。

 そして、曜は虹ヶ咲の少女たちを見て一言。

「なんかいろんな子がいっぱいいるね。特に外国人とか・・・、絵・・・で顔を表現!!」

と、なんか目立つ2人の方を見ると、その外国人はすぐに答えた。

「わっ、私、エマ・ヴェルデと言います。スイスから来ました。スクールアイドル、とても美しい響きです。私、好きです、スクールアイドル!!」

これには曜も、

「うん、スクールアイドル、私も大好き!!」

と答えた。

 そして、顔を紙で隠している少女に梨子、おもわず、

「で、なんで、顔を紙で隠しているの?」

と、その少女に聞くと、その子は、

「わ、私、感情を顔に出すこと、苦手なんです。でも、この紙で「顔」を、「璃奈ちゃんボード」で「顔」を描くことでコミュニケーションをとっているの。あっ、私、天王寺璃奈といいます。よろしくお願いします」

と、梨子の質問の答えとともに梨子に挨拶すると、梨子も、

「スクールアイドルにもいろんな人がいるんだね」

と、少し感心した表情で答えた。

 そんななか、Aqoursと虹ヶ咲の少女たちは、少しの時間だが、ちょっとした交流を果たした。だが、ちょっとした楽しい交流だったが、残された時間が経つのはあっというまだった。歩夢と名乗る少女は時計を見て、すぐに、

「あっ、もう時間だ。私たち、ステージに行かないと!!それでは、Aqoursのみなさん、私たちもステージでみなさんと一緒に出演します。そのときはよろしくお願いします」

と言うと、曜と梨子も、

「今日は本当によろしくね(曜)」「それじゃまたね(梨子)」

と、虹ヶ咲の少女たちとおわかれを言うと、虹ヶ咲の少女たちもお別れを言ってからAqoursの楽屋をあとにした。

 その後、曜は、

「いろんなスクールアイドルがいるんだね」

と、わくわくしながら言うと、梨子も、

「うん、そうだね。いろんな場所でいろんなスクールアイドルみんなと会えるのもスクールアイドルの、ラブライブ!の醍醐味だよね」

と、嬉しそうに言っていた。

 

 そうしているうちに開演のベルがもうすぐ鳴るときまできた。

「うぅ、千歌さん、遅い、遅いですわ!!もうすぐ開演っていうのに!!」

と、ダイヤのいらだちはピークに達しようとしたそのときだった。

タタタタタ

と、Aqours(オリジナルナイン)の楽屋に向かって近づく足音が聞こえてくる。これにみな、

「千歌ちゃん(曜)」「千歌ちゃん(梨子)」「千歌ちゃん(花丸)」「千歌ちゃん(ルビィ)」「千歌(ヨハネ)」「千歌(果南)」「ちかっち(鞠莉)」「千歌さん(ダイヤ)」

と、これに呼応する8人。

 そして、

バタンッ

と、楽屋の扉が開く。さらに、そこから千歌がみんなのもとへ飛び込んできた。そして・・・。

「みんな、ただいま!!」

「おかえり!!」

 

「Aqours」「Aqours」「Aqours」

観客席からはAqoursのステージを楽しみにしている人たちが、「Aqours」コールをだして、いまやいまやとAqoursを待っていた。

 そして、秋葉ドームの中が一瞬暗くなる。

オー

観客席からは驚きの声。そう、ついに始まる、Aqoursのステージが。

 その真っ暗の中で、一筋の光がステージを照らす。そこには、

「みんな、お久しぶり~!!」

と、千歌の掛け声とともに、Aqours(オリジナルナイン)のメンバーの姿が照らされていた。いつもの円陣を組み、千歌はすぐに、

「みんな~、いつもの、いくよ~」

と、大声で言うと、みんな一緒にいつものやつを行う、そう、名乗りを。

「1」と千歌、「2」と曜、「3」と梨子、「4」と花丸、「5」とルビィ、「6」とヨハネ、「7」と果南、「8」とダイヤ、「9」と鞠莉、各メンバーが自分のナンバーを言っていく。そして、鞠莉の声のあとに、

「10!!」

と、観客席から「10」の掛け声が会場中に響き渡る。「№10」、Aqours10番目のメンバー、そう、Aqoursを応援してくれる人たちこそAqours10番目のメンバーである。

 そして、このとき、ドーム全体に9色の虹、「Aqours Rainbow」がかかった。Aqoursのシンボル、虹。それを会場にいるみんな、Aqoursを応援してくれているみんながかけた虹である。そう、これこそAqoursを応援してくれているみんながAqoursに送るAqoursへの想いだった。

 この虹がかかった瞬間、Aqoursメンバー全員、その虹の方向を見る。「きれい」「素晴らしいで~す」「くくく、見事だ」と、喜びに満ちた言葉が飛び交う。そして、千歌は言った。

「みんな、ありがとう。みんなの想い、たしかに受け取ったよ」

 そして、千歌はこの虹を受けてこう叫んだ。

「みんなと一緒に未来へと進むために、新しい未来を見つけるために!!みんな、いくよ!!」

 

「1からその先へ、みんなと一緒に、私たちAqoursとAqoursを応援してくれているみんなと一緒に、その先の未来へ」

 

「Aqours」

 

「サンシャイン!!」

 

 このライブの様子は世界中にネットで生配信されていた。そして、雪穂が先生として勤めている鹿児島県奄美の離島の1つ、ここ九龍島でもそのライブの様子をネットで見ていた少女たち、雪穂の教え子たちがいた。その少女たちは楽しく歌って踊っているスクールアイドルたちの姿を見て驚嘆していた。

 そんななか、ある少女が雪穂たちや千歌たちの姿を見てあることを決めた。

「私もスクールアイドルになりたい!!そして、この高校を、この島を、この町を救いたい!!」

その少女、金城九はこのとき自分もスクールアイドルになろうと心に決めたのだった。そう、μ‘s、A-RISE、オメガマックス、そして、Aqours、Saint Snowなどといったレジェンドスクールアイドルたちはまた1人、スクールアイドルを目指す少女を誕生させたのだった。

 

 が、島に戻ってきた雪穂にスクールアイドルになれるように指導してもらいたいとお願いをした九だったが、とある理由で拒否されてしまった。が、これを「これこそ雪穂先生の愛のムチ」と変な方向に考えてしまった九は、自分だけでもスクールアイドルになれるための練習がないかネットで探していた。すると、九、

「あれっ、なんか凄いの見つけちゃった!!」

と、なにか凄い動画を発見したようだった。そこにはこんなコメントが載っていた。

「この動画はスクールアイドルを目指す少女たちにとってバイブルとなること、間違いないよ」

「スクールアイドル初心者の私にとってとても役に立ったよ。ときどき脱線することもあるけど、それがとても面白くて、いくら見ても飽きないよ。それどころか、スクールアイドルとして基本となることすべてが載っているから、本当に役に立ったよ。本当にありがとう」

などなど、この動画に対するお褒めのコメントがずらりと並ぶ。

 そのコメントに誘われてか、

「なんか面白そう。見よ見よ!!」

と、九はその動画をクリックする。すると、

「1,2,3,4」

と、ときどき脱線はするが、それでもスクールアイドルとして一番大事な基本的なことがわかりやすく解説されていた。それでいて、1本だいたい10分なので、どんなときでも見ることができた。それをみて練習することもできる。何度見ても飽きない。そう、単純明快な九にとってうってつけの動画だった。

「で、動画のタイトルは・・・、え~と、「サルでもわかるスクールアイドル講座」。タイトルの意味はちょっと感にさわりそうだけど、そんなの気にしない!!明日からこの動画を見て、スクールアイドルになる練習をしよう!!」

と、九が決心すると、明日の早朝から練習するぞ、っと、さっさと寝てしまった。

 この後、九はこの動画を使って1人でスクールアイドルになる練習をすることになるのだが、これがのちに九の友達のひろ子とともに練習することにつながり、さらに、九が通っている、さらに、雪穂が先生を務めている高校の生徒9人全員がスクールアイドルグループ「アイランドスターズ」結成につながり、さらにさらに、あのラブライブ!9周年記念ライブ後に行われたラブライブ!夏季大会にて優勝した「バックスター」と島の運命すらもかけた死闘をラブライブ!にて展開することになるのだが、それは別の機会に話すことにしよう。

 

 こうして、千歌たちAqours9人の物語はめぐりめぐって九たちアイランドスターズの物語へとつながっていく。Aqoursとアイランドスターズ、1つの動画が2つのグループを結びつけたのだ。その物語はついに終焉を迎える。

 しかし、これだけはどんなことがあっても消えない。それはラブライブ!を通じて得た、みんなとの思い出、みんなの想い、そして、みんなとのキズナ。それらはなにがあっても、どんなことがあっても消えない。最初、穂乃果たちμ‘s、ツバサたちA-RISEかラブライブ!、スクールアイドルは始まった。そのμ’s、A-RISEの思い出、想い、キズナはのちに雪穂たちオメガマックス、天たちK9の思い出、想い、キズナへとつながっていき、さらに、千歌たちAqours、聖良・理亞のSaint Snowの思い出、想い、キズナへとつながっていった。そして、今、九たちアイランドスターズの思い出、想い、キズナへと昇華しようとしていた。

 こうしてみてみると、ライブイブ!、そして、スクールアイドルとはそれに関わるものすべての思い出、想い、そして、キズナを結びつけるものかもしれない。

 

「ラブライブ!とは・・・、スクールアイドルとは・・・」

 

「みんなと叶える物語だから」

 

そして、

 

「みんなの思い出、みんなの想い、みんなとのキズナを」

 

「結びつけるものだから」

 

だから、一緒に言おう。

 

「1からその先へ、みんなと一緒に、その先の未来へ」

 

そして、

 

「みんなと一緒にスクールアイドルを、ラブライブ!を楽しもう!!」

 

で、もって、

 

「みんなといっしょに新しい、とてもとても大きな、とてもとても大切な輝き」

 

「一緒に見つけに行こう!!」

 

「NEXT SPARKING」 完

 




あとがき

 みなさん、こんにちは、いや、お久しぶりです。La55です。前作「ラブライブ!アイランドスターズ」最終回を投稿したのが今年(2019年)の1月3日。それから5ヶ月半ぶりの新作となります。前作は「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」の公開が翌日(2019年1月4日)に控えているため、集中投稿週間として年末年始にかけて本編最終回、そして、最終章、さらにはスピンオフと立て続けに投稿しました。本編最終回と最終章については投稿する1ヶ月前には書き終わり、パソコンに打ち込みも終了、あとは投稿するだけ、だったのですが、本編があまりにも薄すぎるとの指摘を受け、急遽スピンオフを12月の空いている時間全部使って書き上げ、さらには「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」の公開前には物語を終わらせたいという思いもあったため、年末年始に集中して全部投稿しようとしていました。で、結果的にですが、除夜の鐘が鳴り終えるころにスピンオフを含めた全作書き上げ及びパソコンへの打ち込みが終了、そして、年始の1月3日、つまり、「劇場版ラブライブ!サンシャイン!!」の公開日前日になんとか前作の物語をすべて投稿することができました。が、1つ忘れていたことが・・・。なんと、物語を全部書き上げることに集中していたため、肝心のあとがきを書くことを失念していました。本当に申し訳ございません。実は全部の物語を投稿し終えた後、あとがきは自分が暇になったときにでも書こうと考えていたのですが、年末年始が終わったあともいろいろとやることがありまして、というよりも、サボっていたというのが正直の理由でして、結局、この作品が投稿する日まであとがきを書いていなかったのが原因でした。本当にすみませんでした。と、いうわけで、前回のあとがきからすでに半年ものあいだ、あとがきを書き忘れていましたが、今回はちゃんとあとがきを書くこととなりました。えっ、誰も読んでいない・・・。ショック・・・。

 と、長い前説・・・はこれぐらいにして、今回のラブライブ!二次創作小説ですが、実は今絶賛執筆中(もちろん、順調に・・・遅れてます・・・)の新作・・・ではありません。ですが、その新作とも密接に関係してはおります。なぜなら、この小説はいわゆる先行カット、と言ってもおかしくない物語だったりします。ただいま絶賛執筆中の小説ですが、その小説のもととなった千歌たちAqoursが主人公の映画のサイドストーリーでもあります。それも3つ。うち1つは本編の序章として書く予定です。で、今回の物語はそのうちの1つの物語の後日談であり、もととなった映画のラストあたりで起こったことのサイドストーリーでもあります。なので、その映画を見ている方々ならこんなサイドストーリーがあったんだ、と、少しは楽しんでもらえたら幸いです。
 が、ここで終わったらただの二次創作小説でしかない・・・、と、いうわけで、この物語、前作「ラブライブ!アイランドスターズ!!」にもつながる物語だったりします。なぜかというと、前作「ラブライブ!アイランドスターズ!!」スピンオフの1番最初の物語「第3.5~6.5話 九・ひろ子編」でこの文章が出てきます。

「九はスマホの動画を見ながら声をあげ踊りの練習をしていた。ちなみに、その動画のタイトルはずばり、「サルでもわかるスクールアイドル講座第1回」…。九にしては一番いい動画かもしれない。ただ、「サルでもわかる…」の題名については九自体あまり気にせず選んだ気がするかもしれない。」

さらには・・・

「九、
「もしかして、Aqoursのこと?」
と言うと、ひろ子、
「そうだよ、Aqoursのことだよ。そしてね、九ちゃん、あの私たちが最初に受講した「サルでもわかるスクールアイドル講座」、あれをつくったのもAqoursなんだよ」
と言うと、九、
「えっ、あれってAqoursが作ったの!!」
と驚くと、ひろ子、
「あれね、Aqoursの3年生が卒業したあと、未来のスクールアイドルを目指す人たちのために何かを残したいという思いからメンバー全員が考えて作った映像らしいよ」
と言うと、九、
「未来のスクールアイドルのために…。へえ、そうなんだ。でも、なんで、映像の途中で黒魔術がでてきたり、「がんばルビィ」とか「未来ずら~」て聞こえてくるのかな?」
とひろ子に聞くと、ひろ子、
「それは…」
と、言葉に窮する。九、さらに、
「それにそれに、「ぶぶーですわ」や「シャイニー」、「ハグしよう」なんか聞こえてきたり、あと、「堕天使リリィー」とか呼ばれたりとか、さらにさらに、「全力前進ヨーソロー」といきなり言ったり、あと、みかん押しが強いというかさ…」
と言うと、ひろ子、これには、ただ、
「それはなんともいえません…」
というだけであった。」

と、前作のスピンオフの物語のなかで九とひろ子が「サルでもわかるスクールアイドル講座」の動画を見てスクールアイドルの基礎を学んだことになっているのですが、その動画を作ったのが千歌たちAqoursだったという設定がありました。で、その設定を活かして今回の物語が作りました。そう、この物語はAqoursが未来のスクールアイドルを目指す人たちに向けて作った?「サルでもわかるスクールアイドル講座」という動画の製作秘話、か、もしくは、動画製作のうらで起きていた裏話、と、言えるかもしれません。 
 ですが、この物語、エンディングで前作「ラブライブ!アイランドスターズ」の主人公の九がこの動画を見つけるシーンがあるのですが、九はこの動画を見つけたことにより九の親友のひろ子とともにスクールアイドルとしての基礎的なものを学んだのです(それについては前作のスピンオフ「第3.5~6.5話 九・ひろ子編」に載っています)。それに加えてですが、九がスクールアイドルを目指すきっかけなのが穂乃果たちμ‘s、雪穂たちオメガマックス、そして、千歌たちAqoursなどのレジェンドスクールアイドルたちがそう出演していた「ラブライブ!9周年記念ライブ」だったりします。そう考えた場合、千歌たちAqoursも出演したライブを見てスクールアイドルを目指そうとした九はAqoursが作成した?動画を親友のひろ子と一緒に見て練習しスクールアイドルの基礎を学んだ、そう、この物語は1本の動画によって千歌たちAqoursと九たちアイランドスターズをつないだ物語(ちょっと強引だったかな?)といえるかもしれません。ただ、この動画については(本編を読んでもらえたらわかると思いますが)千歌たちAqours全員が自分たちで作ったことを完全否定しているのですがね・・・。

 で、今回の物語を読んでみると、テレビアニメ版や劇場版のAqoursとちょっと違うのではないかと感じるかもしれません。Aqoursってこんなにへっぽこだったかな?と思われるかもしれません。もし、そのように感じたのなら本当に申し訳ございません。今回のAqoursはいろんな媒体に出てくるAqoursの性格を少しずつチョイスして作成しております。なお、テレビアニメ版及び劇場版の物語はそのほとんどが青春物の要素が強く、笑える要素は少なめだったりしますが、今回の物語の構成比率は青春物30%、ちょっとした時事ネタ10%、お笑い120%!!でお送りしております。そう、お笑い要素満載だったりするのです。これだとAqours自体本当にお笑い集団と化してしまう・・・、のですが、実はこれ、Aqoursのシングルにおまけで載っているボイスドラマパートやライブの幕間に放映されるアニメの要素を取り入れたために起きているのです。シングルのドラマパートでは、テレビアニメでは見られないスクールアイドルグループAqoursの姿が、いや、お笑い集団Aqoursの姿が見られたりします。たとえば、クリスマスなのになぜかルビィが(果南の影響を受けてか)男前の板前になったり、クリスマス会場となった喫茶店になぜか特攻服を着た○○の特攻旗が飾ってあったりするなどなど(もちろん、Saint Snowも例外ではありません。まさか、お笑い集団Aqoursの影響を受けてか受けてないかわかりませんが、あの真面目な理亞ちゃんがなぜか沼津のイカになってしまうことも・・・)。なので、今回はそのシングルのドラマパートの時のAqoursの印象を少し強めでこの物語を書いてみました。もし、気分を害されたのならこの場を借りてお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。
 とはいえ、それではあまりにもお笑い集団Aqoursが強すぎる・・・、というわけで、沼津駅前のライブ前日に動画を撮ったあと、遅くなりすぎたので千歌の家に泊る、というシチュエーションですが、これはμ‘sがラブライブ!決勝前、最後となる練習をし終えたあとにこれで最後にしたくないために学校に泊る、その場面をAqoursに置き換えたらどうなるか、それを考えて書いてみました。Aqoursの場合、最後、内浦の海岸に行きます。その場所はAqoursが夏休みに合宿した場所だったりします。それをμ’sのときと重ねた場合、こんなことが起きるのではないかな、そんな思いで作っていました。なので、夏休みの合宿のときみたいに曜がカレーを作る、と、いったシーンがあったりします。そういえば、μ‘sのときもにこちゃんがカレー作っていたような気が・・・。ただの偶然ですよね・・・。そして、μ’sのときは夜寒い中、屋上にあがってとても綺麗な星空を9人一緒に見るのですが、この物語でもAqours9人が綺麗な星空をみあげます。で、ここで出てくるのが果南の趣味!!果南、趣味がダイビング以外に天体観測があったりします。うそでしょ、と思われる方、シングルについてくるAqoursメンバーのカードの裏にそのメンバーのパーソナルデータが記載されているのですが、果南、そこにちゃんと趣味が天体観測だって書いているのです。あの超アウトドア派の果南と静かに星空を観測する天体観測、あまりにも似つかないかもしれません。しかし、そのカードに書かれているのです。これもテレビアニメ版と劇場版の果南からは考えられないかもしれません。とはいえ、その設定、今回は使わせていただきました。ちなみに、果南のアイコンですが、上はイルカですが、下は趣味が天体観測のためか月だといわれているみたいです・・・たぶん・・・。
 
 さて、ここでこの物語ができた経緯を少し話したいと思います。この小説を書くきっかけとなったのが今年(2019年)の6月8・9日にメットライフドームにて行われたAqours5thLIVEでした。で、このあとがきを書いているのが6月17日。なんと、この小説、たった1週間で作ったものでした。じゃ、証拠は?それはあとで。で、自分は、8日は現地で、9日は地元のLVにて参戦しました。そのLIVEは劇場版ラブライブ!サンシャインをそのままなぞるようにライブは展開され、Aqoursは一緒に出演していたSaint Snowとともに元気一杯ステージを駆け巡っていました。現地とLVで参戦した私にとってそれはとても感動的なものでした。本当に「感動した!!」、その一言しか言えない、そんな思いでした。
 というわけで、この感動を小説にしようとして完成したのがこの小説、「NEXT SPARKING!!」でした。これで終わり・・・、ではなく、ちょこっとした裏話も。この小説、前述のとおり、今書いてある二次創作小説の3つの物語のうちの1つの後日談なので、その3つの物語のあとで執筆する予定でした。なので、ある程度の話の流れは頭の中ではすでにできていました。が、そのLIVEを実際に見て、感じて、感動して・・・、と、感動したその想いを、劇場版、そして、それをもとにしたLIVEで言いたかったこと?を、小説に書いてみよう、と、いうわけで、今書いている二次創作小説の先行カット版という形にして、もとから頭の中で考えていた話の流れをもとにその想いを言葉にして書いたのがこの小説です。けど、読んでみると、劇場版での展開とちょっと違ってみえてしまうのでは・・・、と、思ってしまうことも・・・。
 で、話の流れはそのLIVEを見る前に一応できていたので、それを土台にして、Aqoursのライブでの自分の想いを言葉にしたのですが、今回はその想いが消えないうちに書きたいと思い、普通はプロットという小説の大まかな話の流れを書いてから小説を書くのですが、そのプロットすら書かずにそのまま小説を書いてしまいました。9日はLVで小説を書ける状況ではなかったので、小説は10日に書き始め、14日には書き終わるというハイペースで書いておりました。まっ、今回は(動画編集していたヨハネと同じように)勢いだけで書いていたような気がします。とはいえ、前作のスピンオフも短い時間で6つもの物語を書いていたので無理ではなかったのですがね(いや、無理をしているぞ、スピンオフも、今回も・・・)。そして、週末を使って書き上げた物語をパソコンに打ち込んで完成したのが今回の物語です。ですが、物語の長さとしては前作スピンオフ6つの物語のうち、1番長い「九龍島伝」よりも長い・・・というのはちょっと問題なのですが。ですが、今書いている二次創作小説3つのうち今のところ書き終わっている物語は今回の物語より長いノート1冊分の長さ・・・なんですがね・・・(今回の物語の長さはノート45ページぐらい、それより長い物語の長さはノート1冊=60ページぐらい・・・)。
 と、言っていますが、今回の物語、ちょこっと細工があったりします。それは、ある時事ネタをいれていること。それはどこだって。それはエンディングです。エンディングの最初のほうに出てくる曜と果南のやりとり、および、ルビィと花丸の会話のネタですが、6月8・9日に行われたAqours5thLIVEのとき、ある間違いがツイッターの「おすすめトレンド」にはいるくらいの話題になりました。それをすべて詰め込んでみました。このネタ、このLIVEのときに発生したので、それがこの小説を1週間で書き上げたという証拠に・・・なるわけないか・・・。それでも、それを見て、「ああ、たしかにあったな」と笑っていただけたら幸いです。
 そして、もう1つの仕掛けは今書いている二次創作小説に関する情報が載っているということです。Aqours5thLIVEに現地参戦した際、お会いした方には今書いている二次創作小説の今後の展開についても話したのですが、そのときに話した情報以外の情報も載っていたりします。また、その情報もこれまで自分が書いてきたラブライブ!の二次創作小説を読んでいる人なら「あっ、この双子だな!!」ってわかるかもしれません。とはいえ、ある物語のサイドストーリー3つよりもあとの物語の情報ですので少し違う展開もあるかもしれません。それでも、エンディングで書かれたヒントを基にどんな人が出てくるのかなぁ、と、想像を膨らませてくれたら幸いです。(ちなみにここでヒント。理亞ちゃん、これからどうなっていくの?さらに、Aqours9人は2022年8月に行われた「ラブライブ!9周年記念ライブ」で「オリジナルナイン」と呼ばれていた。で、別室にいる3人は誰?)

 と、あまりにも長くなったあとがきですが、ここで本当に終わります。長い文章を読んでいただきありがとうございました。まえに自分が書いたラブライブ!二次創作小説「ラブライブΩ」の「ラストメッセージ」で穂乃果たちμ‘sと雪穂たちオメガマックスから千歌たちAqoursをつなぐ短編を書いたことがありましたが、今度はその千歌たちAqoursから九たちアイランドスターズをつなぐ物語を書いたつもりです。そして、エンディングの最後、九が千歌たちAqoursなどが参加したライブを見てスクールアイドルになりたいと思い、さらに、千歌たちAqoursが作った?動画「サルでもわかるスクールアイドル講座」でスクールアイドルとしての基礎を磨いたことにより(前作「ラブライブ!アイランドスターズ!!」の物語のなかで)九たちアイランドスターズはどんどん成長していき、それはやがて大きな伝説となりました。そう考えたとき、あるグループからあるグループへと受け継がれる想い、それは不変かな、そう思えたりします。この物語を書いているとき、そう思えたのがとてもよかったかな、これが今回の小説を書いているときの感想だったりします。
 で、今書いている3つのサイドストーリーですが、できれば最初の1つを7月中にでも投稿したいと思います。それまでお待ちください。それではさよなら、さよなら、さよなら。


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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第1話


【挿絵表示】


~Spare the rod and spoil the child~
「かわいい子には旅をさせよ」旅とは人にとって自分を成長させるために必要なことかもしれない。旅先での出会い、体験、そして、別れ。人は旅をすることで普通では経験しないようなことを経験することができる。そして、その経験が自分を新たな次元へと突き進むのだ。あの伝説のスクールアイドルμ‘sもラブライブ!優勝後にニューヨークへと旅立ち、新たな発見、新たな経験をし、それをニューヨーク、さらに秋葉原でのスクールアイドルフェスティバルで昇華させた。これにより日本中、いや、世界中にスクールアイドル文化を根付かせることへとつながった。
 旅、それは自分を新たなる世界へと導いてくれるもの。そして、ある少女が、今まさに日本という小さな鳥かごから世界という大きな空へと旅立とうとしている。その少女は旅を通じてなにを思い、なにを経験し、どのように進化させていくのだろうか。




「お姉ちゃん、待っててね。今行くからね・・・」

その少女はそう言うと、小さな楕円形の窓から外を見た。そこには透きとおった地中海の海が広がっていた。そして、その少女は地中海の透きとおった青色、美しき地中海ブルーを見てさらに言った。

「(ダイヤ)お姉ちゃん、ルビィにとってお姉ちゃんはとても大切なものだよ。ルビィはお姉ちゃんなしじゃ生きていけないよ!!」

その少女、黒澤ルビィはその一言のあと、乗っている飛行機から降りる準備にはいった。あともう少しでルビィたちが乗る飛行機はイタリアの港町でなおかつ一大観光地であるベネチアの国際空港に降りようとしていた。ルビィたちAqours1・2年面メンバーはある目的のためはるばる日本沼津からイタリアに行くことになった。その目的とは、イタリアに卒業旅行に行ったダイヤ・果南・鞠莉たち、Aqours3年メンバーが行方不明になったので、その3人を探すため、そして、その3年生3人に会うことで新しいAqoursとはなにかを見つけるため。

 だが、ルビィは少し違っていた。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・」

降りる準備をしている最中にもこうつぶやいては涙を流していた。ルビィのお姉ちゃん(ダイヤ)を大事にする、それはこれまでもいろんなところで見られていたが、昔以上に姉ダイヤに依存している、そんな感じが伝わってくる、そんな様子に隣にいた花丸は、

「ルビィちゃん・・・」

と、大親友であるルビィのことをとても心配そうに見ていた。

 では、なんでルビィはこんな状況に陥ったのだろうか。それはルビィたちがイタリアへと旅立つ前までにさかのぼる。

 ことの発端はAqours3年生、ダイヤ、果南、鞠莉の3人が卒業旅行へと旅立った後に起きたある出来事だった。Aqoursのメンバーたちが通っていた浦の星女学院の閉校、そして、ラブライブ!冬季大会終了による沼津駅前の屋内練習場の使用期限が切れたことで練習場所を失った千歌たちAqoursのメンバー6人はそれならばと新しく通う高校に移動することに。そして、移動している最中、ルビィは、

(新しい学校、新しい学校、どんなところかな?ルビィたち6人、新しいところでもスクールアイドル、やっていきたいな!!)

と、心弾ませていた。

 が、乗ったバスは町を抜け、そして、とある山道へ・・・。これにはルビィ、

(や、山の中!!新しくかよう学校、だよね?本当に学校だよね?)

と、少しずつ心配になっていく。

 そして、メールで指定された場所で降りるルビィたち6人。が、そこにあったのは・・・。

(えっ、え~!!)

と、ルビィが心の中で驚いてしまう。そう、ルビィたち6人の目の前にあったのは、本当におんぼろの今にも倒れそうな(失礼!!)木造校舎のある廃校になった小学校だった。もちろん、ルビィたち6人とも唖然となる。本当にメールで指定された場所(新しく通う学校)で間違いがないか(その場所へと、スマホでメールで指定されたところへと道案内した)曜に詰め寄るヨハネ。

 が、そんなとき、

(あれっ、なんか書いてある。なんだろう?)

と、ルビィ、学校の校門の標柱に掲げていた木製の立て札に何か小さく文字が書かれているのを見つけ、じっくりその文字を見てみる。すると・・・。

「えっ、え~!!」

と、ルビィ、突然驚いてしまう!!そこに書かれていたのは、ある学校名、それは・・・、

「静真高等学校」

と、いう大きく書かれた文字、そして、

「浦の星女学院 分校」

と、小さく書かれた文字だった。これにはルビィたち6人、

「「「「「「分校!!」」」」」」」

と、大きな言葉を発するぐらい驚いてしまった。

 

 そして、いつもの喫茶店、やば珈琲店で、千歌たちの友達でいつもAqoursを陰から支えているむつたちから分校になった理由を聞く。それは、浦の星の統合先である静真高校の一部の父母たちから統合反対の声がおき、それがきっかけで分校のかたちをとることを聞かされる。さらに、曜の彼氏・・・、もとい、いとこで、静真高校に通っている月(曜と同じ2年生で静真高校の生徒会長を勤めている)からその詳細を聞くことに。その静真高校、実は県内有数のスポーツ強豪校であり、さらに、女子サッカーをはじめ全国大会の常連となっている部活を数多く有しているのだ。その高校の一部の父母から「浦の星との統合後、もし浦の星の生徒が静真高校の部活に加入すると部活内で士気低下、静真の学生と浦の星の学生とのあいだで対立が起きるなどにより部活自体に悪影響がでるのでは」との疑念があがってしまい、それが統合反対の動きにつながってしまった、というわけである。そして、月たち生徒や教師たちの働きかけむなしく、統合反対という一部父母たちの声に押し切られるかたちになったのか、それとも、月たち生徒と教師たちの働きかけのためなのか、結局、浦の星の生徒用の分校を作ることとなり、様子をみながら統合していくこととなった、とのことだった。

 これを聞いた千歌たちAqours6人だったが、それならばとある行動に出る。それは・・・。

 

(う~、ついに来てしまったよう~。本当に大丈夫・・・なのかな・・・)

と、ルビィは客席に座っている静真高校の生徒とその父母たちを見て心配になっていた。ここは静真高校が誇る講堂。今日、ここで新年度にむけての部活動発表会が行われようとしていた。千歌たち6人の行動、それは、その新年度部活動発表会で自分たちAqoursのライブを行い、静真高校の生徒や教師、そして、統合に反対する父母たちに対して、統合して浦の星の生徒が静真の部活に加入しても部活動に悪影響がでないことを伝えることだった。それは生徒が少なく部活動を掛け持ちしている生徒も多いために全国レベルの大会に実績を残すことができなかった浦の星女学院、けれど、最後の最後で消えいく浦の星の名前を歴史に大きく刻むことができた、そう、千歌たち浦の星女学院スクールアイドル部「Aqours」しかできないことだった。

 が、それを実施しようと発表会当日に静真高校の校門に立つ千歌たち6人だったが、まったく知らない(一部、善子、いや、ヨハネが知っている中学校の同級生たちもいましたが・・・)静真高校の生徒たちを見た千歌たち6人は一瞬で固まってしまう。これにはルビィ、

(こんな知らない人たちの前で歌うの~。ピギィ、になっちゃうよ~、助けて~)

と、心の中で助けを求めようとしていた。

 そして、時間はどんどん進んでいった。新年度部活動発表会は着実に進んでいった。そして、ついに千歌たちAqoursの出番がくる。前の演目である弓道部、その部員たちは多くの生徒たち、父母たちの目の前で次々と、それも平気で的をあてていく。もちろん、静真高校の弓道部としては当たり前のことであった。だって、弓道部も全国大会の常連だったりする。もちろん、ときたま、ふざけて「ラブアローシュート!!」と言っては矢を放つこともあるが(μ‘sのあるメンバーがそのことを知ったら「ふざけないでください!!」と厳しく注意しつつも、ちょっと照れてしまうと思いますが・・・)。だが、この弓道部の完璧な矢さばきにルビィをはじめとしたAqoursメンバー6人ともプレッシャーを感じてしまう。特にルビィには、

(こんな完璧なもののあとにルビイたち、ライブしないといけないの・・・。誰か助けて~)

と、心の中で叫びまくっていた。それほど、ルビィにとって、プレッシャー、重い重圧を感じていた。

 そして、弓道部の演目が終わると同時に舞台袖に移動する弓道部の部員たち。ついに千歌たちAqoursの出番である。

「曜ちゃんたちの番だよ!!」

と、月、千歌たちAqours6人に対して言うと、千歌たち6人は客席の方を見る。すると、そこには自分たちの知らない多くの静真高校の生徒たちとその父母たちの姿が、だれも自分たちのことを知っている人たちなんていない、ラブライブ!では多くの浦の星のみんなやその父母たちが応援してくれた、だが、今はそんな自分たちを応援してくれる人たちなんていない、完全アウェー、そんな気分が千歌たち6人に蔓延していた。

(ルビィ、こんなところ、いやだよ~!!でも、浦の星のみんなのためにも、ルビィ、頑張らないと・・・)

と、ルビィは空元気をだそうとする。いや、ほかの5人もそう思っていたかもしれない。完全アウェーの状態でも、浦の星の生徒たちの今後のためにもここは踏ん張るしかない、失敗なんてできない、そんな2つの重圧に千歌たち6人は重くのしかかっていた。

 が、千歌はなにか吹っ切れたようにルビィたち5人に言う。

「大丈夫だよ!!」

リーダーの千歌がルビィたち5人に対して鼓舞する。が、誰が見ても空元気に見える。が、千歌の言葉にルビィたち5人は千歌の励ましに答えようとする。

 そして、千歌たち6人は円陣を組むとすぐに、

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「Aqours、サンシャイン~!!」

と、小さな声で名乗りをあげる。その後、すぐに千歌たち6人はステージへと駆け上る!!

 

「来年度より本稿と統合します、浦の星女学院よりスクールアイドル部Aqoursの・・・」

と、講堂にはAqoursを紹介するアナウンスが流れる。

 そのアナウンスと共にステージへと駆け上った千歌たち6人は歌うフォーメーションの位置にそれぞれ移動する。歌う曲は「夢で夜空を照らしたい」。3年生が抜けたAqoursにとって唯一1・2年生だけで歌える曲、そして、結成当時東京で行われたスクールアイドルのイベントのために精一杯練習した曲、そして、千歌たち1・2年生6人にとってそのイベントで「0」をつきつけられた曲・・・。歌うのはそのイベント以来、だけど、この曲しか今のAqoursの、100%の実力をだせる曲はなかった。

 が、いざステージに立つと、完全アウェーの状況、浦の星の生徒たちのためにも失敗はできない、そんな2つの重圧に完全に飲み込まれてしまった千歌たち6人。それでも、

(新生Aqoursの、これからのスタートだ。大丈夫!!)

と、小さな勇気を振り絞ろうとする千歌たち6人、だったが、改めてまわりを見渡すと6人。これにはルビィ、思わず、

(あれっ、こんなにひろかったけ?)

と、驚いてしまう。たった6人しかいない、とても広いステージ。これまでとは違った感じ方だった。ルビィ、思わず、

(お姉ちゃん!!)

と、心の中で叫びまくる。

「はい、ルビィ!!」

と、ルビィの姉ダイヤの声が聞こえてきそうになるも、その声はしない。これに対し、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、ルビィは何度も心の中で叫びまくるも、ダイヤの声は聞こえてこない。そう、いつもと違うステージ、それはいつもダイヤたち3年生がいるはずの当たり前のステージ。だが、そんな3年生はもういない。けれど、それによっていつも以上にステージが広く感じる。いや、心配や不安といった広い海にたった6人しかいない、そんなステージ。それはルビィだけじゃなく、ほかの5人にも感じていた。が、ルビィはほかの5人以上に不安を感じていた。ルビィが困ったときにはいつも横に姉のダイヤがいた。が、今はもういない。「未熟DREAMER」で9人になったAqours。そのなかにはいつも姉ダイヤがいた。でも、今はもういない。そう、ルビィにとっていつもいるはずの姉ダイヤが今回はいないのだ。いや、これから先、姉のダイヤはいないのだ。ルビィにとって姉のダイヤがいないなかではじめてぶち当たった状況。はじめてがゆえに、ルビィはとても心配し不安になっていく。そして、ルビィは、まるで不安でできた底なし沼に沈んでいく、そんな状況に・・・。

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!助けて!!助けて!!)

心の中で叫びまくるルビィ。だが、とうの姉ダイヤはもういない、そんな不安という底なし沼に陥るルビィ。だが、ルビィ以外の5人も3年生がいないことにより、心配、不安という海をさらに拡大させていった。そんななか、千歌だけは「大丈夫!!」と空元気をだして歌い始めようとする。

 が、そんなとき、

カチャッ

と、千歌が髪につけていた三つ葉のヘアピンがステージの床に落ちてしまう。その瞬間、ルビィはヘアピンが落ちる音を聞くと、その瞬間、

(お、お姉ちゃん、助けて、助けて~!!本当に助けて~!!)

と、ついにルビィ自身、不安、心配に耐えることができなくなってしまった。そして、ついには・・・、

(本当にこれからやっていける、そんな自信ないよ~)

(もしかして、まえみたいにゼロ、ゼロに戻っちゃったの~!!もしや、お姉ちゃんがいないの!!ゼロじゃない!!マイナスになった、そんな気分だよ~)

と、ルビィ、マイナスの感情を抱くようになる。いや、ルビィだけじゃない。ほかの5人もそんな感情が生まれようとしていた。

(なんか、心配と不安でいっぱいだよ~)

と、いつも前向き思考の曜もこのときは後ろ向きになってしまう。さらには梨子も、

(あれっ、みんな、固くなっている。そう思うと私も不安と心配に飲み込まれてしまう~)

と、暗い表情に。千歌はそんなみんなの暗い表情を見て、

(やばいよ~。これじゃ、昔の私たち、0の時に戻ってしまう!!ここは私がなんとかしないと!!)

と、1人で頑張ろうとするも、不安と心配により、さらに空回りを起こしてしまう。そう、不安、心配の海はついに千歌たち6人を深き海底へと突き落とそうとしていた。

 こうなると、いつものハイレベルの、まるで楽しんでいるかのようなパフォーマンス、いや、素人のパフォーマンスすらも発揮することもできない、本当にラブライブ!で優勝したグループとはいえるほどのダンス、歌を披露できるわけがない。

そして、案の定、このライブは失敗に終わる。その失敗の機転となったのがルビィだった。マイナスの感情を表にだしてしまい、不安な表情で踊るルビィ。客席にいる静真高校の生徒、父母たちもそんなルビィの表情を見て不安になる。それがルビィにとってやまびこみたいに反射してしまったのか、さらに不安になる。ルビィ、そんな負のスパイラルに陥ってしまう。そんなためか、ルビィ、ついに、

「えっ!!」

ドカッ!!

と、ステージ上で大きくこけてしまう。さらに、その勢いで近くにいる花丸、ヨハネによりかかると、2人とも、

「ぐはっ!!」「ぐび!!」

と、3人揃ってステージ上に倒れこんでしまう。まるで、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選のSaint Snowの理亞みたいに。でも、3人はすぐに立ち上がり、まるでなにもなかったかのように踊る。が、一度でもそんなことが起きるとそれを挽回するのは不可能に近い。あの理亞と同じ状況が、たった今、ルビィ、花丸、ヨハネにも起きてしまったのだ。

 

「あ~!!」

発表会のあと、いつもの回転、いや、大判焼き(関東の人にとっては今川焼きっていえばわかるかな?)のお店の前で今日のライブの反省会をする千歌たち6人と月。その千歌たち、まるでお葬式ムードみたいにとても暗い表情をしていた。それもそのはず、初歩的なミス、いや、不安、心配という海の奥底に沈んでしまったゆえの失敗のために、静真高校の生徒や父母に対して「本当に浦の星の生徒が静真高校の部活に加入すると本当に悪影響を与えてしまう」と、これまで以上に悪い印象を与えてしまったのだ。その結果、静真高校の生徒会長である月たち静真の生徒会の働きかけのかいなく、当分の間は分校の形式をとり続けることになった。だが、この段階では千歌たち新生Aqoursの6人にはこの結果を知らなかった。が、その結果は、その結果を作ってしまった自分たちにとって今は知らなくてもこの結果になってしまうことはうすうすと感じていた。

 そのためか、暗い考えは自分たちの会話にも表れてしまう。

「気が緩んでいたわけじゃないと思うけど・・・」(曜)

「なんか落ち着かないずら、6人だと・・・」(花丸)

と、暗い表情で今回のライブについて後悔の念を言うメンバーたち。

 そんななか、ルビィは暗い表情をしつつ、小声で、

「お姉ちゃん・・・」

と、つぶやくように言った。いつも助けにくる姉のダイヤ、それが今日、ダイヤはいなかった。そこからくる不安、心配によってライブは失敗に終わった。そんな罪悪感、さらに、これから先、お姉ちゃんであるダイヤはもういない、そんな状況が続く、不安、心配はずっと続いてしまう。そんな思いのためか、ルビィはいつしか、ダイヤ、お姉ちゃんの名前を呼び続けてしまった。呼び続けることできっと助けにきてくれる、そんな実現しないことに対して淡い期待を抱いているように。

 が、こんなルビィの表情を遠くから見ている少女がいた。

「ルビィちゃん・・・」

と、つぶやく、月が・・・。

 その後、むつたちトリオが千歌たち6人の前にあらわれて、今回のライブを受けて、その後の通常理事会で静真本校と浦の星分校の統合についての話し合いの結果を聞く。もちろん、統合は当分の間、延期されることになった。

 これに対し、

「ごめんなさい」

と、むつたちに今回の件について謝る千歌。それに対し、むつは、

「大丈夫だよ」

と、逆に千歌たち6人を励ます。が、千歌たち6人とも暗い表情のままだった。

 

 翌日、千歌たちAqours6人は千歌の自宅である旅館がある内浦の砂浜で練習をしていた。そこは千歌、曜、梨子の3人がスクールアイドルをはじめるにあたり1番最初に練習していた場所、そして、(ダイヤの策略で?)Aqoursという言葉に出会った場所、そう、現在のAqoursのはじまりの地であり、なおかつ0の地ともいえるかもしれない。

「昔(Aqoursをはじめる前)、ここで練習していたんだ」

と、曜はルビィ、花丸、ヨハネに向かって、昔を懐かしむように言う。現在のAqoursの原型を作った2年生、千歌、曜、梨子にとってこの砂浜は今のAqoursを作る上ではじまりの地、ゼロからのスタートの地、そんな思いをルビィたち1年生に伝える、そんな様に見えてしまう。そして、曜の言葉を聞いたルビィ、ふとあることを考える。

(曜ちゃんたち2年生にとってここは0からの出発の地で、今、この地に戻ってきた。これってもしかして、ルビィたち、また0に戻っちゃったのかな・・・)

と、まるであの失敗で終わったライブのとき以上に不安と心配に乗り込まれるかのように思えてしまっていた。

 

そんななか、

「みなさん、こんにちは」

と、千歌たちを呼ぶ声が聞こえてきた。千歌たちは声のするほう、防波堤の上を見上げる。すると、そこには、

「Saint Snow(ずら)」

と、ルビィたちは大声をあげる。そこにはSaint Snowの鹿角姉妹、姉の聖良と妹の理亞がいた。聖良と理亞は防波堤から降りてくると、千歌たちに近づく。そして、千歌たちに挨拶をするとすぐに千歌と会話を始める。どうやら姉妹で卒業旅行しているみたいであり、姉妹揃って東京に遊びに来ていることを知った千歌がそれならばと鹿角姉妹を沼津に呼び寄せたみたいだった、今のAqoursが抱える問題を千歌自身で見つけるために。

 

「それじゃ、今のAqours、見せてください」

聖良の一言で千歌たちAqours6人は踊り始める。が、この前の発表会のライブの失敗がまだ尾を引きずっているのか、それとも、もう失敗しないようにしようとしているのか、6人のダンスはぎこちないものになっていた。

(あれっ、こうだったけ?それともこうだったけ?)

と、曜はこれまでのAqoursのダンスを思い出そうとするも、うまく体が動かない。さらに、ルビィにいたっては、

(理亞ちゃんにしっかりしたダンス、見せたいよ。でも、体がついていけていない。お、お姉ちゃん、助けて~)

と、心の中で姉ダイヤのことを叫んでいる始末。この前のライブの失敗により、体、心、ともにボロボロになっていた。Aqoursの6人、3年生がいない、それだけで新生Aqours、千歌たち6人は不安と心配という海の奥底に沈んでしまったのか、本来のAqoursの姿を聖良、理亞に見せることができなかった。また、その心配、不安がAqoursの持つキレのよさ、楽しさを前面に押し出す、それをも打ち殺していた

 

「ラブライブ!優勝時を100としたら、30、いや、20!!」

聖良の前で曲を披露した千歌たち6人に対し、聖良はきつい批評をする。さらに、聖良からこれまでのAqoursは3年生の存在が大きく、本来のAqoursが持っていた明るさ、元気さが3年生がいなくなったことで消えてしまい、さらに、それによって今の千歌たちAqours6人は精神的に不安定(理亞のいうところのふわふわしている)になっていることを指摘される。

「当たっている・・・」

と、千歌は聖良の指摘に納得せざるをえなかった。いや、千歌を含めて6人全員が不安、心配の海にはまっているという今の新生Aqoursの現状を聖良からずばり言い当てられていることに納得するしかなかった。

 そんななか、ルビィはこの聖良の指摘に対して、

(お姉ちゃん、助けて!!お姉ちゃん!!)

と、心の中で姉ダイヤに助けを求めようと叫んでいた。が、姉ダイヤのいない状況からすれば助けに来てくれるわけではない。どうすることもできないルビィ、ついには、

「どうすれば・・・」

と、つい口すさんでしまった。

 そのルビィの言葉に、ついに理亞が我慢の限界を超えてしまう。

「人に聞いたってわかるわけない!お姉さまはもういないの!!」

と、ルビに対し激高する。どうやら理亞はいつまでも姉ダイヤ離れしないルビィの今の思いをAqours6人のダンスとそれによる聖良の指摘に対してのルビィの表情から気づいたらしく、もうダイヤや聖良といったお姉さんたちは高校を卒業していなくなるのにそれでも姉ダイヤに頼ろうとしているルビィを見てとても情けない、そんな思いから発した言葉だった。

 そんな言葉を発した理亞、ついには3年生がいないというだけで不安と心配という海、もしくは泥沼に陥ってしまい、本来の姿とはかけ離れてしまったAqoursの姿、おして、姉ダイヤ断ちができない親友のルビィの姿を見てもう見てられないのか、その場を駆け足で離れてしまった。これには、

(理亞ちゃん、どうしてそう言うの?)

と、ルビィ、思わず、

「理亞ちゃん!!」

と、大きな声で言うと、そのまま理亞を追いかけようとする。そして、すぐに理亞に追いつくルビィ。だが、そんなルビィに対し、理亞はきつい一言をかます。

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

これにはルビィ、

(理亞ちゃん・・・)

と、愕然するしかなかった。

 

 一方、そんな理亞を追いかけるルビィを尻目に千歌は聖良にあることを聞く。

「理亞ちゃん、どうしたのですか?」

これには聖良は理亞の現状を千歌に説明した。

「実は理亞は新しいスクールアイドルグループを結成したのですが・・・」

そして、聖良の口から語られたのが、まず、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選が終わって、あのAqoursと一緒に、合体ユニット「Saint Aqours Snow」として函館でのクリスマスライブを行い、自分だけのスクールアイドルユニットを作ると心に決めた理亞は、そのライブ後、すぐに学校の有志4人と共に新しいスクールアイドルユニットを作ったのだが、Aqoursが優勝を決めた決勝大会後、なにかに追いかけられているかのごとく、理亞が勝手に練習メニューをよりきつく、いや、普通の人なら簡単に音を上げるくらいのハードなメニューに変えるようになり、2人がやめてしまう事態になったこと、そして、それでもその練習メニューをやめようとしない、いや、さらにハードになっている、そんな現状を理亞のユニットのメンバーから聞いた聖良は理亞にとってガス抜きが必要だろうと思い、理亞との姉妹2人で卒業旅行に行くことにした、と。これには千歌、

(なんか私たちと似ているのかなぁ、今の理亞ちゃん・・・)

と、思うようになっていく。が、それと同時に

(でも、今の私たちじゃどうにも・・・)

と、諦めの表情で思ってしまった。

 

 そんななか、聖良とルビィ以外の千歌たちAqoursメンバー5人がようやくルビィと理亞のもとに追いつく。

 が、そんなときだった。突然千歌たち6人と聖良、理亞、さらにその8人の様子を遠くから見ていた月の上にヘリが飛んできた!!

「デジャブ!!」

と、誰かが言うくらいあのときと同じ展開。そう、あのAqoursメンバーの登場シーンと同じ展開に・・・。

「鞠莉ちゃん!!」

そう、鞠莉のヘリからの登場シーンと一緒だった。少し淡い期待をする千歌たち6人。

 しかし、ヘリから降りてきたのは・・・。

「鞠莉ちゃんじゃない!!」

鞠莉とは違う、けれど、どこか似ている女性だった。その女性は鞠莉ちゃん風に言った。

「マリー‘sママで~す!!」

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第2話

 突然現れた鞠莉‘sママによって拉致?された千歌たちAqours6人と聖良に理亞、それになぜか月の9人は鞠莉の実家、小原ホテルの大ホールへと連れてこられた。そのヘリの移動中、ルビィはあることを考えていた。

(理亞ちゃんが怒っていた。たしかにお姉ちゃん(ダイヤ)はもういない。でも、今のルビィにはお姉ちゃんが必要だよ。お姉ちゃん、ルビィ、どうしたらいいの~?教えて~、お姉ちゃん~!!)

そう、今のルビィにとって姉ダイヤの存在が昔以上に大きくなろうとしていた。が、生まれて初めて姉ダイヤがいない状況に陥っていた。だからこそ、ルビィにとって今まさに姉ダイヤという神にすがろうとしているのかもしれない、そんな感じだった、ルビィは・・・。

 そして、小原ホテルの大ホール、そこでの鞠莉‘sママの言葉がそのルビィにとって運命的なものになってしまった。その言葉とは・・・。

「実は鞠莉たちが行方不明になったので~す!!」

この言葉にルビィ、

(お、お姉ちゃんが行方不明!!どうしよう~、どうしよう~)

と、驚嘆してしまう。あのルビィが頼ろうとしている姉ダイヤが行方不明になった、それを聞いただけで意識がとんでいこうとしていた。が、それでも平然でいられるようにごまかす。そこに鞠莉‘sママは千歌たちAqours6人にある提案を持ちかけた。それはイタリアの卒業旅行中に行方不明になった鞠莉たち3人を探してほしいと、そのための渡航費も出すし、見つけたら多額の報奨金も出すと。これにはヨハネ、金に目がくらんでしまうくらいだった。

 が、新生Aqoursのリーダーである千歌は悩んでいた。

「でも~」

行方不明である鞠莉たち3年生3人を探すこと、それが不安と心配という広い海、泥沼、そこに沈んでしまった千歌たちにとってプラスになるのだろうか、と、千歌はそんなふうに悩んでいた。

 そんななか、聖良が千歌に向かってある意見を述べた。

「行くべきだと思います。そして、3年生と1度会って話すべきではないかと」

聖良はこのとき、ある確信を持っていた。それは・・・。

(千歌さんたちが不安、心配の広い海、泥沼に沈んでしまっている理由、それはダイヤさんたち3年生3人がいないこと。ならば、その3年生ともう一度会うことでこの状況を覆すことができるのではないかと)

そう、Aqoursは本来千歌たち6人にダイヤたち3年生3人を加えた9人のグループである。そのうち、屋台骨だったダイヤたち3年生3人が抜けたことで千歌たち6人の心情はとても不安定になってしまい、それが心配、不安という広い海、泥沼に陥ってしまったのである。それなら、もう一度ダイヤたち3年生3人に会うことで昔のAqoursに戻れるのではないか、いや、もっと新しいAqoursになれるんじゃないかと。それほどAqoursというグループは個性がバラバラな9人がいることでこれまで見たことがない化学反応が起き、それが誰もが予想がつかない方向へと進化していった結果、ついにはラブライブ!優勝という輝かしい偉業を成し遂げることができた、それならば、もう一度9人になることで新しい化学反応を起こすことができるのではないか。それが理亞にとってもプラスに働くのではないか。そんな思いから出た考えだった、聖良にとっては。

 そして、その聖良の一言、さらに、曜、梨子からの助言を得た千歌、

「うん!行く!!」

と、元気な声で返事をして、行方不明になっているダイヤたち3年生3人を探すことを決めた。このとき、千歌は、

(ダイヤさんたち3年生3人にまた会える!!そしてら、今の私たちを変えられる、そんな気がする!!)

と、ある意味謎の確信に満ちた思いを見せた。さらに、千歌は思った。

(新しいAqours、ダイヤちゃんたちに会えたら絶対にわかる気がする!!)

 こうして、ついに千歌たちAqours6人とそれの連れ添いとして月の合計7人は行方不明になったダイヤたち3年生3人を探しに3人の卒業旅行先、イタリアへと向かうことになった、3年生3人を探すため、そして、3年生3人に会うことで新しいAqoursとはなにかを見つけるために・・・。

 

 こうして、沼津から成田へ、そして、成田から(千歌が3年生の果南にイタリアに行くことをメールで伝えたら、果南からの送られてきた返信メールに添付されていた写真があると思われる)ベネチアへと飛行機で移動する千歌たちAqours6人。

 そんななか、ルビィはベネチアに行く飛行機の中でこんなことを思っていた。

(理亞ちゃんが言っていた「お姉ちゃんはもういない」けれど、ルビィにとってお姉ちゃんは今でも必要。どうしたらいいの、お姉ちゃん!!)

この想いをルビィは飛行機の中で何度も思ってしまった。

 さらに、ちょうど成田とベネチアの中間地点において、ついには、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!ルビィ、お姉ちゃんが必要だよ~!!)

と、ルビィ、禁断症状に似たような表情になってしまっていた。

 

 そして、その思いはついに、イタリア、ベネチアに到着して弾けてしまう。

(お姉ちゃんのいるイタリアについたよ~。あともう少しでお姉ちゃんに会える!!お姉ちゃん、待っててね~)

昔以上にお姉ちゃんであるダイヤへの依存度が高くなっているルビィにとって姉ダイヤに会えることで心の安らぎを得ることができる、そんな思いから出た気持ちだったのかもしれない。

 が、そんなルビィにある言葉がよぎる。

(「お姉ちゃんたちはもういないの!!」)

そう、理亞の言葉。この言葉を思い出したルビィ、この瞬間、

(あれっ、でも、お姉ちゃんに会えたとしても、それって、ずっとそのままじゃないのよね。いつかはいなくなるんだよね。そうしたら、ルビィ、どうしたらいいの?これから先、ルビィはお姉ちゃん無しで生きていかないといけない。お姉ちゃんがいない。そうしたら、ルビィ、ガンバルビィ、できなくなるよ。どうしたらいいの~。助けて、お姉ちゃん~!!)

と、強く悩んでしまう。どうしたらいいか悩むルビィ。まるでマイナスとゼロの間をぐるぐる回ってしまう、そう、負のメビウスの輪の中に入ってしまったみたいに・・・。

 

「ついた~!!」

と、曜はベネチアの海が見える広場に着くなり、大きく第一声をあげた。そして、果南から送られてきたメールに添付された写真のところを探すことことに。探すだけでも大変な苦労が予想された。

 が、そんな苦労はしなくてすんだ。なぜなら・・・。

「そこ、ベネチアでも有名なところだよ」

と、月。話によると、月は昔イタリアに住んでいたらしく、イタリアのことならなんでも知っているみたいだった。で、今回はイタリア初体験の千歌たちAqours6人のために道案内役、ナビゲーター役をかってでたとのことだった。

 と、いうわけで、

「それでは、レッツ、ヨ~ソロ~!!」

と、曜、ではなく、月、がそう言うと、その写真の場所に移動しようとする。もちろん、

「それ、私のセリフ!!」

と、曜のツッコミを聞きつつも・・・。

 

 その写真の場所へはもちろん車で・・・、ではなく、歩きになってしまう。なぜなら、ベネチアは車の乗り入れは禁止されている。いや、車で移動できる道なんてない。だって、ベネチアは町中を水路が張り巡らせた水の都だから。なので、ベネチアの交通手段は小舟、もしくは徒歩しかないのだ。

 そんななか、

「う~、ジェラート、おいしいずら~」

と、花丸、歩きながら広場の移動屋台で買ったジェラートをほうばりながら食べる。が、そんなとき、月から、

「花丸ちゃん、はやく食べてね。本来であればベネチアでは食べ歩き禁止なんだからね」

と、花丸に注意する。そう、ベネチアでは指定の場所以外の食べ歩きは禁止されている。そのために月は花丸に注意していたのだ。

「それはごめんずら~」

と、花丸、いそいでジェラートを食べる。そして、食べ終わった後、

「ごちそうさまずら。とてもおいしかったずら~」

と、花丸がジェラートの感想を言うと、すぐにヨハネから、

「口のまわりにクリームがついているよ、ずら丸」

と、花丸に指摘する。花丸、すぐに手鏡で自分の口のまわりを見ると、

「そうだずら~。でも、これをこうすればいいずら~」

と、口のまわりについているクリームを指でとってそのまま口へ・・・。

「これはこれでおいしいずら~」

と、花丸、ここでも感想を述べる。これにはヨハネ、

「ずら丸、それ、みっともない・・・」

と、花丸の行動に少しうんざりしていた。これを見ていた月、千歌、曜、梨子はおもわず、

ハハハハハ

と、一連の花丸とヨハネの一連の流れに笑っていた。

 が、その一方で、ルビィはというと、

「・・・」

と、なにやらぶつぶつと浮かない様子だった。

 ただ、このときのルビィの心の中では、

(お姉ちゃんに会える!!お姉ちゃんに会える!!お姉ちゃんに会える!!)

と、なにやら呪文じみたものを念じているかと思うと、すぐに、

(でも、理亞ちゃんの言うとおり、これから先、お姉ちゃんはいない。そしたら、ルビィ、生きていけるのかな?お姉ちゃんなしでやっていけるのかな?)

と、これから先の不安を心配することもあった。こうして、ルビィ、みんなと一緒にベネチアの街中を歩いている最中、心の中ではこの2つの思いをループさせていたのだった。

 

 そして、ついにルビィにある限界がきてしまった。それは果南が送ってきたメールに添付されている写真の場所、目的地の場所近くにあるアーケード街のある一店であるとある店の前だった。

(う~、何か疲れてきたよ~)

2つの思いがループし続けたために少し疲れてしまったルビィ。すると、

(あれっ、なにか飾ってある。少し見に行こう)

と、ルビィ、とある店のショーウィンドーに近づく。そこには。

(あっ、見たことのない仮面だ~)

そう、その店のショーウィンドーにはいろんな仮面が飾ってあった。どうやらベネチア名物の仮面舞踏会やお祭りのときにつける仮面、もしくは、お土産用の仮面のようだった。

 が、ルビィ、その仮面を見ると、なにやらある感覚に支配されていく。

(あれっ、どうして、誰かに見られているような気が・・・)

ルビィ、なにやら誰からかの視線を気にしているようだった。そして、その視線のもとをたどろうとする。すると、ルビィ、あることに気づく。その視線の元は、ルビィが見ているショーウィンドーの中、たくさんのある仮面たちからだった。

(あれっ、これって仮面だよね。仮面だよね・・・。仮面・・・)

ルビィ、ショーウィンドーの中にある仮面たちの認識があるものに変わろうとしていた。

(仮面・・・、か・・・、人!!知らない人!!知らない人に見られている!!)

どうやら、ルビィ、仮面たちを知らない人たちの顔と認識するようになったようだ。さらには・・・、

(知らない人に見られている!!見られている!!見られているよ!!)

と、ルビィ、そう思い込むようになる。そして、しまいには、

(知らない人に見られている!!知らない人に見られているなんて、いや~!!)

と、仮面たちからの視線に嫌がるようになったルビィ。もともとルビィは大の人見知りで内向き思考のところがあるため、知らない人たちのからの視線にはとても敏感だったりする。そして、それが、今回、悪い意味で発揮してしまった。

(こんな知らない人からの視線なんて嫌だよ~。あれっ、なんか知らない人の顔を見えてきた・・・。知らない人がたくさんいる~。だ、誰か助けて~!!)

「ちょっと待ってね~」なんて言葉なんてかける人なんていない。ルビィにとって今の状況は最悪の状況だった。仮面たちをルビィは次々と知らない人の顔に見えてくるようになった。不安、心配の泥沼にはまっているルビィにとって、知らない人たちの顔はそれをさらに深きところへといざなう、そんな思いをルビィにさせるには絶好のものだった。

 そして、ついには・・・、

「ピギィッ!!」

と、ルビィ、仮面の店のショーウィンドーから逃げ出してしまった。

(知らない人の顔!!知らない人の顔!!いっぱいいる!!いっぱいいる!!もういや!!助けて~!!助けて~、お姉ちゃん!!お姉ちゃん、助けて~!!)

逃げているルビィ、心の中で「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」と、姉ダイヤに助けを求め続けてしまう。

 そして、ルビィは先に果南が送ってきたメールに添付されていた写真の場所についていた花丸に抱きついてこう言った。

「こわかったよ~、花丸ちゃん~」

すると、花丸、おびえるルビィを察してか、

「よしよし」

と、ルビィの頭をなでる。これにはルビィ、

(ふ~、安心する~。心安らぐ~)

と、少し落ち着いたみたいだった。

 だが、その一方で、ルビィ、

(でも、ルビィにとってやっぱりお姉ちゃんは必要だよ~。ルビィ、お姉ちゃんなしでは生きてられない。だって、ルビィ、お姉ちゃんがいるから生きていけるんだもん!!)

と、姉ダイヤがいない人生なんて考えられない、そんな姉依存をさっそうと決めてしまう、そんな思いも生まれてしまった。

 

 そんなルビィが花丸に飛び込んできたそのとき、近くにあった公衆電話から、

チリリ チリリ

と、ベルが鳴り響く音が聞こえてきた。月はすぐにその公衆電話の受話器をとり、電話にでる。そして、いきなり建物の場所を千歌たちに告げる。どうやら、電話の相手はダイヤたち3年生3人であり、ダイヤから指定された場所に待っている、とのことだった。

 その後、月と千歌たちの7人はダイヤに指定された場所に向かう。そこは上に昇る階段が印象的な建物、「コンタリーニ・デル・ボヴォロ」。千歌たちと月の7人はその建物に到着すると、その建物の1番上の階にいるダイヤたち3年生3人を発見する。

「ダイヤちゃんたちだ!!」

と、千歌が言うと、ダイヤたち3年生3人が待つ1番上の階に向かって全力で昇る、まるで、千歌たちが誰かに助けを求めるかのように。それに対し、月、

「ちょっと待って~!!」

と、千歌たちに言ってから追いかけようとする。

 が、そのとき、月の目線の先にあるものが飛び込む。それはある少女3人の絵とともに赤文字で大きく、

「WANTED!!」

と、書かれていた。それはまるでなにかの指名手配のポスターだった。そのポスターに載っている3人の少女の服装、それはイタリアでは見かけない、いや、日本のどこかの高校のセーラー服だった。そのセーラー服を見て、月、その高校のセーラー服がどこのものかがすぐにわかった。これに対し、月、

(これって、曜ちゃんたちが通っている浦の星の制服だよね。もしかして・・・)

と考え始め、月の脳に残る記憶のかけらを探し始める。そして、ついにそのかけらを見つける。

(もしかして、このポスターに載っている3人って、曜ちゃんたちが探している3年生じゃ・・・)

 だが、そう考え始めたときには千歌たちはダイヤたち3年生3人が待つ階へと先に進んでいた。そう、月にはそのことを考える時間はすでになかったのだ。ルビィたち1年生も千歌たち2年生に追いつくかとぐらい昇っていた。千歌たちに追いつくためには月であっても全力で昇るしかなかった。と、いうわけで、

(ちょっと待って~、曜ちゃんたち~)

と、月、ポスターのことはあとにして、千歌たちに追いつくために階段を全力で昇っていった。

 

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

階段を昇るルビィにとって心の中はこの言葉でいっぱいだった。もうすぐいとしの姉、ダイヤに会える!!その思いでいっぱいのルビィ、これまで見せたことがないような力で階段をさらに早く駆け登る。それはまるで姉ダイヤに会うことで心の安らぎを得ることができる、そんな思いがルビィに力を与えるかのように・・・。

 そして、ルビィは先に行った千歌たちを追い抜き、千歌たち7人のなかで一番にダイヤたち3年生3人が待つ階にたどり着いた。息を切らせながらもルビィは前を見る。そこにはルビィが会いたかったダイヤを含めた3年生3人がいた。ルビィ、思わず、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃんだ!!やっと会えた!!)

と思うと、そのまま、

「お姉ちゃん!!」

と、ダイヤのもとへと駆け寄ってきた。このとき、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

 

と、心の中でなにかを念じていた。それはまるで聖母にすがる人のように・・・。

 そして、ルビィは勢いのままにダイヤに抱きついたのだった。この瞬間、

(もうこれで大丈夫!!お姉ちゃんに会えた!!もう離さない!!)

と、ルビィ、もうダイヤと離れたくないと勝手に決めてしまった。で、対するダイヤはというと、

(もうルビィったら・・・)

と、こちらもまんざらでもない様子だった。

 その後、ルビィに続いて(体力があまり続かない花丸を除いた)千歌たち4人と月が次々にダイヤたちが待つ階に到着する。が、ダイヤたち3年生が知らない少女が1人・・・。そう、ダイヤたち3年生3人と月は初対面だったりする。それでも、月、ものおちせず、

「月で~す!!よろし~く~!!」

と、曜ばりの元気さ、陽気さでダイヤたち3年生3人に挨拶する。これにはダイヤたちもまんざらでもなかった。

 一方、そんな陽気な月の挨拶に千歌たちも少し笑いつつも、このとき、曜、梨子、ともに、

(これでもとのAqoursに戻れるよ!!(曜))

(まずは一安心だね(梨子))

と、安堵の表情を見せる。さらに、千歌にいたっては、

(ダイヤちゃんたちと出会った!!これで新しいAqoursを・・・)

と、なにかを期待するような感じを見せる。

 が、そう問屋が卸してくれるわけではなかった。

「疲れたずら~」

と、ようやく花丸がダイヤたちがいる階に到着する

と、同時に、

ざわざわ

と、花丸の近くにいる一般市民、さらには観光客がなにやら騒ぎ始めたのだ。ダイヤたち、そして、千歌たちにはいろんな言語が飛び交う。英語、フランス語、イタリア語、などなど。これにはイタリア語がわかる月を除く千歌たちには、

「?????」

と、ちんぷんかんぷんになるしかなかった。

 が、月と同じくイタリア語が堪能な鞠莉にはどんなことが起こるかすぐにわかった。そして、鞠莉、

(これはやばいですね~。ここで3人ロングスティは無理ですね~。じゃないと、あいつに捕まるので~す!!)

と思うと、すぐに果南とダイヤに合図を送る。このときのために鞠莉、果南、ダイヤは事前に打ち合わせてをしていた、それを決行する、そんな合図だった。すると、果南、ダイヤ、ともに深くうなずく。2人とも了解した、とのことだった。この了解の合図を確認した鞠莉、ふところからあるものを取り出す。それはボーダー色のTシャツだった。それを外めがけて投げる。そのとき、鞠莉が一言。

「曜、ごめん!!」

普通ならそんなTシャツ投げてもなにもおきない。のだが、それは普通の人の話である、普通の人ならば。でも、そのTシャツを投げることである反応を示す少女がいた。その少女の名は渡辺曜。制服マニアである曜にとってその行為はある意味効果的だった。じゃ、なんで効果的なのか。それは、このボーダーのTシャツが制服だからである。じゃ、どこの制服かって。実はこのボーダーのTシャツ、ベネチアでよく見かける、ベネチアに張り巡らされた水路を縦横無尽に進む小舟を舵一本で操る船頭さんの制服だったりする。で、曜は制服マニア。以前、ダイヤたち3年生3人が1年生のときに着ていたスクールアイドルの衣装を鞠莉が学校の窓から投げた際、曜、自分の身を気にせずにその衣装にダイブしたことがあった。それくらい曜にとって制服はとても大事なものだったりする。で、このときのことをあとで知った鞠莉、もし、緊急事態が起きたときに備えてボーダー色のTシャツを事前に用意していたのだ。そして、今回もベネチアの船頭さんの制服であるボーダー色のTシャツが外に投げられた。で、今回も曜、これに無意識に反応してしまった。

 というわけで、曜、鞠莉の投げたボーダー色のTシャツめがけて、自分の身を気にせずに飛び込んでしまう、この言葉と一緒に・・・。

「「制服!!」」

って、えっ!!曜以外にもう1人、ボーダー色のTシャツに飛び込む少女がいるぞ!!誰だ!!誰だ!!誰だ~!!その少女の名は、月!!なんと、月も曜と一緒に、自分の身を気にせずに鞠莉の投げたボーダー色のTシャツめがけて飛び込んでいったのだ。なんでだ?理由は簡単である。月も曜と同じ制服マニアだからである。月は曜のいとこである。もちろん、昔、曜と一緒に制服ごっこ、というよりも、お互いに制服を作っては着せ替えごっこしていたらしい。そのくらい月も曜と同じくらい制服が好きなのであった。て、いうか、一体どのくらい似ているのだろうか、この2人・・・。

 そういうわけでして、曜と月が自分の身も心配せずにボーダー色のTシャツめがけてダイブ!!その2人を千歌、ルビィ、梨子、ヨハネは身を挺して助けようとする。もちろん、まさか外に投げたただのTシャツに少女2人がダイブする、という突然の出来事に市民、観光客、共に曜と月の方を目を向けてしまう。この瞬間を鞠莉は見逃さなかった。

「ダイヤ、果南、逃げるので~す!!」

と、鞠莉はダイヤと果南に言うと、ダイヤたち3人は事前に示し合わせたかのようにその場を急いで立ち去ってしまった、千歌たちに、「どうやらダイヤたち3人はなにかに逃げまわっている」、そう感じさせながら。

 このダイヤたち3年生3人がその場を急いで立ち去っていく様子を、曜と月を助けるとともに見ていた千歌はこう思って見ていた、

(ダイヤちゃんたち、もしかして、なにかに逃げているの~。まさか、鞠莉‘sママから?でも、本当に待ってよ~。このままじゃ私たちの中には不安と心配しか残らないよ~!!ダイヤちゃんたちがいないと新しいAqoursが見つからないよ~)

と。まるで、ダイヤたちのことを心配しつつも不安と心配でこの先に進めない、そう見えてしまうくらいに・・・。

 が、千歌以上に混乱を生じている少女がいた。ルビィだった。ルビィ、

(お姉ちゃん、ちょっと待って~!!お姉ちゃん、ルビィ、このままじゃ生きていけないよ~!!お姉ちゃん、ルビィを置いていかないで~!!)

と、姉ダイヤが突然いなくなったことで今まで以上に混乱を起こしていたのだ。

 

 突然ダイヤたち3年生3人がいなくなったため、ダイヤたち3人と話し合う機会を失った千歌たち6人。しかし、ダイヤたちがこれから行く場所についてはなにもヒントがない、というわけではなかった。実は鞠莉が投げたボーダー色のTシャツ、そのなかにカードが挟まれていたのだ。そのカードにはこんなことが書かれていた。

「大天使ヨハネが守護する街」「妖精の導き」

どうやら、大天使ヨハネが守護する街へ行き、妖精の導きを探せばいい、そんな感じの文章だった。

 と、いうわけで、千歌たちはそのカードに書かれていることをそのまま鞠莉‘sママに伝え、すぐに守護聖人ヨハネが守護する街、フィレンツェに移動することになった。

 一方、千歌たちからの連絡でカードに書かれていた場所、フィレンツェに鞠莉たち3年生3人がいる、と、気づいた鞠莉‘sママはすぐにフィレンツェ近くの小原家の別荘に移動する。が、鞠莉’sママ、

「ガッテム!!」

と、舌を打つぐらい悔しがる。なぜなら、その小原家の別荘にはもぬけの殻、鞠莉たちがいなかったのだ。実はカードには鞠莉の真意が隠れており、よく読まないと、そして、鞠莉の考えをよく理解しないと本当の行き先を知ることができなかったのだ。なので、書かれている文章を表面上の意味だけで理解してしまった鞠莉‘sママは見事鞠莉の罠にはまってしまったのだ。

 が、そんな悔しい思いをしている鞠莉‘sママにラッキーなこと、というより、棚から牡丹餅みたいなことが起きる。悔しい顔をしている鞠莉’sママが持っているスマホから、

プルル プルル

と、突然呼び鈴が聞こえてきた。それに対し、鞠莉‘sママ、

「はい、小原ですが・・・」

と、スマホをとって電話にでる。どうやら鞠莉‘sママのイタリアにいる親友からの電話だった。

 そして、その電話の最中、

ニヤッ

と、鞠莉‘sママが微笑むとすぐに、

「鞠莉!!待ってなさい!!今、行くからね!!」

と、叫ぶとともに電話を切った。そして、そのままその場をあとにした。

 

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第3話

 そんなことを知らず、千歌たち6人と月はフィレンツェに電車で移動した。そして、ルビィはある思いが頭の中で駆け巡っていた。それは・・・。

(お姉ちゃん、待っててね!!ルビィ、絶対にお姉ちゃんを見つけてあげるよ。見つけたら、今度こそ離さないからね!!)

それはまさに凄い執念としかいえなかった。と、いうわけで、ルビィの顔はまさに修羅場のような顔だった。

 そんななか、

「はい、ルビィちゃん、隣に座っていい?」

と、修羅場な顔をしているルビィに声をかける少女が1人・・・。そんな呼びかけにルビィ、

「あれっ、月ちゃん!!月ちゃんだったらいいよ!!」

と、反応。どうやら、ルビィを呼びかけたのは月だった。ルビィは月を隣の席にエスコートする。

 そして、月はルビィの隣の席に座ると、すぐにあることを聞いた。

「ところで、ルビィちゃん、ダイヤさんのこと、どう思っているの?」

月、ルビィに直球ど真ん中の質問をする。これには、ルビィ、

「えっ、お姉ちゃんのこと・・・」

と、一瞬驚く。だが、ルビィ、すぐに月に聞き返す。

「月ちゃん、どうして、その質問するの?」

すると、月はすぐに答え返した。

「私、ベネチアのとき、ルビィちゃんがお姉ちゃんであるダイヤさんに抱きついたとき、ルビィちゃん、なんか幸せそうな顔していたの。僕、それ、ちょっと気になったんだ」

さらに、月はそう思った理由を言った。

「僕ね、実は一人っ子なんだ。両親はいるけど、子どもは僕1人だけだった。だから、小さいときから姉妹に憧れていたんだ。普通、妹がいたらどんな感じ、思いをするのか、姉がいたらどうなのか、そんなのを体験したい、感じたい、と、思っていたんだ。でも、結局、両親の子どもは僕1人だけ。だから、姉がいるルビィちゃんのこと、僕にとっては憧れでもあるんだ~」

 この月の突然の告白にルビィ、

「月ちゃん、そうだったんだ。ルビィにとって、お姉ちゃんは誰にでも誇れる偉~いお姉ちゃんだよ!!」

と、姉ダイヤのことを自慢する、まるで自分のように。ルビィ、続けて、

「お姉ちゃんはね、浦の星で生徒会長をしていたんだよ。さらにね、日本舞踊や和琴も超一流でね~」

と、姉自慢を続ける。そのルビィだが、とうの本人は、

(一人っ子の月ちゃんにお姉ちゃんのいいところ、どんどん言ってみよう、お姉ちゃんは凄いんだぞ、お姉ちゃんはルビィにとって大事ななんだよって!!)

と、いった感じで別の意味でエンジンがかかってしまった。ルビィは函館のクリスマスライブの理亞との姉自慢合戦のときみたいに姉ダイヤのことになると自分のように自慢したくなるたちみたいだった。

 こうして、

「でね、でね・・・」

と、ルビィの姉自慢話は2分を超えても続いていた。が、突然、姉自慢を始めてから黙っていた月が、

「で・・・」

と、ルビィの姉自慢話を遮ると、すぐに、

「で、そんなダイヤさんだけど・・・」

と、ルビィにある問いかけをする、それは・・・。

「ルビィちゃんにとってお姉ちゃんであるダイヤさんってどんな存在なの?」

これにはルビィ、

(えっ、ルビィにとってお姉ちゃんの存在・・・?)

と、月の突然の問いかけに一瞬頭の中が真っ白になる。あれだけ月に姉ダイヤの偉大さを語っていたにも関わらず月はそのことを気にせずにルビィにとっての姉ダイヤの存在について聞いてきたのだ。しかし、

(月ちゃん、お、お姉ちゃんはとっても偉大なんだよ!!大きな存在なんだよ!!それを今まで伝えてきたのになんで・・・)

と、ルビィ、月に対して少し怒った感情を持つも、すぐに、

「お姉ちゃんはとても凄いんだよ!!とても偉大なんだよ!!なのに、月ちゃん・・・」

と、月に反論すると、月、

「でもね・・・」

と、ルビィの反論を封じるとすぐに、

「でもね、ルビィちゃん、ダイヤさん、いつかはルビィちゃんのもとから旅立つんじゃないのかな?」

と、ルビィに言う。この突然の月の言葉に、ルビィ、

(えっ、お姉ちゃんがルビィのもとから旅立つ・・・)

と、一瞬体が凍り付いてしまう。そのためか、ルビィ、

「・・・」

と、黙ってしまった。これを見た月、

「ダイヤさん、いつかはルビィちゃんのもとを去っていくんだよ。だって、人っていうのはいつまでも拘束できるものじゃないからね。いつかは別れっていうものは起きるものだよ。そう、僕だって、昔、そうだったよ。ある人と別れて同じ経験をしたことがあるだ。だからこそ、今、それについて考えるべきじゃないかな。じゃ、ルビィちゃん、またね」

と、ルビィに対して言うと、ルビィのもとから離れていった。これについて、ルビィ、

(お姉ちゃんが離れていく・・・、いつまでも拘束できない・・・、お姉ちゃんはいつかは飛び立つ・・・。ルビィ、そんなのいやだよ~!!でも、月ちゃんの言うとおり、お姉ちゃんは離れていく・・・。ルビィ、どうしたらいいの~!!)

と、姉ダイヤと離れていくことにとても不安や心配を募らせていった。

 

「無事にフィレンツェに到着!!」

と、月はフィレンツェに到着後、すぐに第一声をあげる。千歌たち6人と月は無事?にフィレンツェに到着した。が、ルビィの頭の中は、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃんについに会える!!でも、そのお姉ちゃんとはいつかは別れのときがきてしまう・・・)

と、電車の中で言われた月の言葉について不安と心配を増幅させながら考えていた。その一方で、別にこんな言葉も千歌たちから聞こえてきた。

「ヨハネ、ヨハネ、ヨハネ、ヨハネ・・・」

と、まるでなにかの呪文か念仏を唱えている、そんな感じだった。むろん、この言葉が聞こえてきたのか、ルビィ、

(あれっ、なんで「ヨハネ、ヨハネ」って言葉が聞こえてくるの?もしかして、善子ちゃんじゃ・・・)

と、ちょっと不気味に感じるも、すぐに、

(それでもルビィにとってお姉ちゃんのことが心配だよ~)

と、姉ダイヤのことを考えるようになった。

 

 だが、フィレンツェについてからすぐに事件が起きた。それはフィレンツェについてからすぐに昼食をとりにフィレンツェ名物の屋台に行き、そこで昼食をとるときに起きた。

(お姉ちゃん・・・)

と、元気のないルビィ。それがみんなに広がっているのか、それとも、堕天使のオーラが足りないのか、千歌たちも元気がなかった。それを見ていた月、

「なら、ここは元気になれるものを食べて元気になろう!!」

と言うと、フィレンツェ名物のビステッカ・アッラ・フィオレンチィーナという大きな肉を使った料理を千歌たちのところに持ってくる。これには千歌、

キラキラ

と、見たことのない大きな肉の料理を目の前にして目を輝かしていた。どうやら食べたいみたいだった。これには月もちょっと安心する。

 が、そんなときだった。

「あれっ、誰かいない・・・」

と、月、ようやく1人足りないことを知る。いつも感じている堕天使のオーラが今感じられない・・・。と、いうわけで、花丸、ここにいない1人を呼ぶ。

「善子ちゃん!!善子ちゃん!!ヨハネちゃ~ん!!」

そう、ヨハネがいないのだ。花丸が何度呼んでも返事なし。このとき、ルビィ、

(えっ、善子ちゃんがいない!!あっ、まさか、駅で聞こえてきた「ヨハネ、ヨハネ」って・・・)

と、駅のホームのことを思い出す。そして、

「たしか、善子ちゃん、「ヨハネ、ヨハネ」って言っていた!!」

と、行方不明のヨハネについて重要なことを千歌たちに伝える。が、それだけの情報だけではヨハネの今現在の場所までは特定できず・・・。残念!!

 

 と、いうわけで、急遽ヨハネ探しをすることに。けれど、フィレンツェは広いし、フィレンツェという街全体が世界遺産でもあるために観光客も多い。探すのは至難の業だった。結局、3時間探しても見つからなかった。

 そして、夕暮れ時、ルビィが示したヒント「ヨハネ」の言葉を元にフィレンツェのシンボルドゥオーモ(大聖堂)へ。

「着いた~ずら!!でも、善子ちゃん、いないずら~」

と、花丸、いくら周りを見渡してもヨハネはいなかった。ただ、周りにいる中で1人だけ天使のツバサをつけた変人?らしき人はいるのだが・・・。

 でも、月はその変人?を見て、すぐに気づいた。

「・・・」

と、月、あまりの変人?の格好が誰か気づいたが、あまりの格好に、いや、中二病の格好にただただ唖然とするしかなかった。

 が、そんなのおかまいなしに千歌たち5人はヨハネの悪口?みたいなものを言う。すると、その変人?はいきなり千歌たちの前に立ち、

「それって、私のことでしょうか」

と言うと、千歌たちもようやくその変人?が誰なのか気づく。そして、一言。

「善子ちゃん!!」

そう、中二病の変人?はヨハネだった。そして、ヨハネは言った、

「天使の施しを受けたのです!!

と。そして、ドゥオーモの聖堂内で撮った写真を千歌たちに見せる。その写真は天井から入りこんだ太陽の光に照らされたヨハネの姿だった。なんと神々しいヨハネの姿・・・。まるで本当に天使の施しを受けたかのような写真だった。

 が、ヨハネ、すぐにあるものを千歌たち5人と月に押し付ける。

「今日最後の・・・」

どうやら、ヨハネ自身と一緒にドゥオーモにあるクーポラ(天蓋)に昇りたいみたいだった、そのための券を千歌たちと月に絶対売りつけたいがために・・・。

 

 こうして、ヨハネが(無理やり売りつけた)チケットを持ってクーポラに昇る千歌たち6人と月。そこで上り詰めたそのとき、

「き、きれ~い!!」

と、ルビィは日本と違ったフィレンツェの風景に感動を覚えるとともに、

(この中にお姉ちゃんが絶対にいる!!)

と、なにかを確信しているような雰囲気を出していた。

 そんなルビィだったが、フィレンツェの美しい街よりちょっと山側に視線を傾けたそのとき、

(あっ、あれって・・・)

と、突然、山の方に赤く光っているところを見つける。そして、ルビィ、すぐにある言葉を思い出す。

「天使の導き」

あのカードに書かれていた言葉、その光、それがあれでは・・・、そう思ったルビィ、思わず、

「天使の導き・・・、天使の導き!!」

と、大きな声で叫んだ。ルビィ、ついに探していた「天使の導き」を見つけた!!そのためか、ルビィ、

(ルビィが探していたもの!!そこにお姉ちゃんがいる!!お姉ちゃんが待っているんだ!!)

と、探し物が見つかり大喜びするような気持ちがこみ上げてきたのだった。

 

 その日の夜、千歌たち6人と月は追っ手?をまきながら「天使の導き」が灯っていた邸宅、小原家の・・・、ではなく、鞠莉の友達の別邸の前に着ていた。

「ま~り~ちゃん!!」

大声で鞠莉を呼ぶ千歌たち6人。すうと、その邸宅の2階バルコニーからある3人がこっそりあらわれて、

「シー!!」

と、千歌たちに大声をださないように注意する。そう、バルコニーからあらわれたのはダイヤ、果南、鞠莉の3年生トリオだった。

 

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

邸宅の2階に上るとき、ルビィはまるで長年待ち憧れていた人に会えた、そんな気持ちでいっぱいだった。いや、本当に待ち憧れている、その人にようやく会える、それが叶う、その思いでルビィの心の中はいっぱいだった。

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

はやる気持ちを抑えることなんてできない、そんな感じだった、ルビィが。

 そして、ルビィたちがダイヤたちが待つ2階の大広間の扉を開けると・・・。

「お姉ちゃん!!」

と、扉の向こう側にはルビィがとても会いたかったダイヤ、それに果南と鞠莉がいた。

「お姉ちゃん!!」

と、ルビィ、大広間の扉を開くといきなりこう言ってはダイヤに抱きついた。このとき、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!会いたかったよ!!もう離さないよ、お姉ちゃん!!)

と、まるでルビィの思いが叶ったが如くなり、さらに、もう離さないことすら考えていた。そんなルビィに対し、ダイヤは、

「よしよし」

と、まるで赤ちゃんをいさめるかのようにルビィの頭をなでていた。

 その後、なんでこんな状態に・・・、というよりも、なんでダイヤたち3人が鞠莉‘sママから逃げているのかを千歌が鞠莉に聞くが、それについては言いたくないのか、わざと誤魔化し続ける鞠莉。が、その鞠莉にかわり、果南から衝撃の言葉が・・・。

「結婚!!」

そう、これまでの鞠莉の勝手な行動に業を煮やした鞠莉‘sママはついに鞠莉を束縛するためにまったく知らない男性と結婚させようとしている、そのために逃げてきたのだというのだ。これには千歌をはじめとしたAqours1・2年生メンバー全員が驚いてしまった。

 が、そんなタイミングにあわせたかのように大変なことが起きる。鞠莉が観念したのか鞠莉‘sママから逃げていることを千歌たちに告げたそのとき、突然、

バタンッ

と、いきなり千歌たちがいる大広間の扉が開いた!!突然のことでその扉の方向を見た鞠莉、そこにいないはずの人間を見てしまった。そして、一言・・・。

「ママ!!」

そう、扉をぶち開けたのは鞠莉の奇策でまいたはずの鞠莉‘sママだった。

 では、なんで鞠莉‘sママが鞠莉の居場所を知っているのだろうか。それはある人からの電話だった。鞠莉’sママは鞠莉の奇策でフィレンツェ近くの小原家の別荘に行ったもののもぬけの殻だった。が、そんなとき、鞠莉‘sママに奇跡が起きたのだ!!鞠莉がいないことに悔しがる鞠莉’sママだったが、そのとき、鞠莉‘sママのスマホに鞠莉’sママの親友から電話がかかってきたのだ。その内容とは。

「実はね、鞠莉‘sママの子の鞠莉ちゃんが、私が所有している、フィレンツェにある別邸を貸して欲しいってお願いされた、って、私の子から聞いたのですが・・・」

これを聞いた鞠莉‘sママ、

「まさか、この私に幸運の女神が降りてきたのね・・・」

と、微笑んでしまう。そう、この情報は鞠莉‘sママにとって棚から牡丹餅?だった、のかもしれない。

 と、いうわけで、鞠莉‘sママ、すぐに行かないとまた鞠莉が逃げてしまう、と思い、1人バイクに乗ってフィレンツェの小原家の別荘から鞠莉のいる別邸までとばしてきたのだった。

 ようするに、なんで鞠莉の奇策が鞠莉‘sママに破られたのか、それは鞠莉に別邸を貸した鞠莉の親友、その親友の親は実は鞠莉’sママの親友であった、なので、鞠莉が親友の別邸を借りたという情報が親友からその親へ、そして、鞠莉‘sママへと流れたのが原因だった。その点については鞠莉にとって詰めが甘かったのかもしれない。

 と、話は元に戻る。鞠莉たちのいる大広間の扉をぶち開けた鞠莉‘sママ、すぐに、

「これはハグー(果南)の入れ知恵ですね!!」

と、少しキレ気味で言うと、続けて、鞠莉にいろんなことを言う。短く言うとこうである。

「「ハグー」(果南)と「ですわ」の影響で鞠莉は自分(鞠莉‘sママ)の言うことを聞かなくなった。さらに、鞠莉は浦の星の廃校を阻止するために勝手に外国の高校を抜け出し、浦の星に戻って理事長になったものの、浦の星は結局廃校となり、鞠莉も海外の高校の卒業資格を失った」

と。で、これを聞いた千歌、

(この人、千歌たちに、「これまでの苦労は無駄だった、なんかゼロに戻っただけ」と、言いたそうな気がする・・・)

と、思ってしまう。

 が、鞠莉、思わず反論する。

「でも、スクールアイドルは全うした!!」

このとき、鞠莉にとっては、

(たしかに私はスクールアイドルを復活させて廃校を阻止しようとした。0から1に、そして、その先へと進もうとした。けれど、廃校は阻止できなかった。でも、スクールアイドルとしてラブライブ!に優勝した!!そして、私たちは0から1へと進化していった!!私、それだけは絶対に言える!!)

と、力強く思っての発言だった。

 しかし、鞠莉‘sママはそれすら認めない痛撃の一言を言う。

「スクールアイドル、くだらない!!」

まるで鞠莉がやってきたことを全否定するような発言、いや、それは(日本が誇れる)アニメやマンガ、アイドルなどといったサブカルチャーそのものを完全否定するような、まるで一昔前の頑固親父が言っている、そんな感じの発言だった。

 この鞠莉‘sママの発言に、ルビィ、

(スクールアイドル、くだらなくないよ、スクールアイドルは!!)

と、姉ダイヤがいるためか強気に否定しようとする。だが、ルビィ以上に鞠莉‘sママに怒っている少女がいた。

(スクールアイドルがくだらない、そんな言葉、取り消して!!私たち、千歌たちがやってきたこと、否定しないで!!)

千歌だった。千歌はさらに思った。

(これまでの私たち、千歌たちの苦労を完全否定するの、鞠莉‘sママ!!千歌たちは廃校を阻止するために0から1へ、その先へと進んだよ。たしかに廃校は阻止できなかった。けれど、千歌たちは、Aqoursは、ラブライブ!に優勝して、学校のみんなとの約束、ラブライブ!の歴史に浦の星の名前を深く刻み込んできたんだよ。スクールアイドルとして0から1へ、その先へ進むことができたんだよ。それを完全否定するなんて!!千歌たちの苦労を、廃校を阻止できなかった、スクールアイドルはくだらない、その言葉だけで、結果だけで判断しないで!!)

そう思った瞬間、千歌は自然と鞠莉‘sママに反論しようとしていた。

 が、そのとき、

サッ!!

と、千歌の反論を、千歌の行き先を阻もうとする少女がいた。その少女の名はダイヤ、そう、ダイヤが反論しようとしている千歌を止めたのだ。そのダイヤ、千歌を止めると、すぐに、

(ちょっと待ってください!!鞠莉がちゃんとしますから)

と、千歌に目で合図する。これを見た千歌、

(うん、わかった!!)

と、動きを止める。それを見ていたルビィ、

(あっ、お姉ちゃんがなにか言いたそうにしている。あっ、反論しようとしている千歌ちゃんを止めた!!お姉ちゃんたち、なにかするのかも!!それなら、ルビィも立ち止まらないと!!ガマン、ガマン!!)

と、千歌に加勢?するのをやめた。

 そして、鞠莉、ダイヤが反論しようとしていた千歌たちを止めるのを確認してから、鞠莉‘sママに向かって自分の主張を言った。

「くだらなくないよ!!」

そんなときだった。

ガシッ

なんと、鞠莉に対して、鞠莉‘sママは鞠莉の手を引っ張り強引に大広間から連れ出そうとする。

 が、そんな鞠莉のピンチに対し、なんと、

ガシッ

と、鞠莉‘sママに強引に引っ張られそうになっている鞠莉の手をがっしりと掴む少女が2人いた。それは・・・。

(果南!!ダイヤ!!)

そう、鞠莉にとって凄い援軍、果南とダイヤだった。果南とダイヤにとってこの行動は、スクールアイドルの完全否定、鞠莉たちがこれまでやってきたことの完全否定、さらには鞠莉の自由を縛ろうとする鞠莉’sママへの反抗、それを体現したような行動だった

 その果南とダイヤの行動を見ていた千歌たち6人、

(これが鞠莉‘sママに対する鞠莉ちゃんたち3人の意思だ!!ここだ、鞠莉’sママに対する反抗の機会!!)

と思うと、すぐに鞠莉、ダイヤ、果南のそばに行き、鞠莉‘sママに敵意をむき出しにする。Aqours9人全員からの、鞠莉’sママに向けた、強い敵意。それは鞠莉‘sママの、鞠莉のこれからの自由を束縛すること、自分たちがやってきたことを完全否定したこと、そして、自分たちを含めてスクールアイドルを完全否定したこと、それすべてにおいての強い反抗の意思のあらわれだった。Aqours9人の強い反抗、強い敵意、これには鞠莉’sママ、思わずひるんでしまう。

 この瞬間、鞠莉は「ここが好機、チャンスです~!!」と思ったのか、ある決意を鞠莉‘sママに言った。

「スクールアイドルは素晴らしいものだって証明できたら自由にさせてくれる?」

この鞠莉の本気ととれる決意表明とAqours9人からの強い敵意や反抗、これらにより、鞠莉‘sママ、仕方なく、

「いいでしょ」

と、鞠莉の条件をのむことにした。

 

 鞠莉‘sママは月の皮肉に満ちたエスコートで自分の宿舎に戻っていった。その後、千歌は、

「鞠莉‘sママの登場でうやむやになったけど、鞠莉ちゃん、なんでこうなったのか、詳しく教えて!!」

と、鞠莉にことの詳細を聞く。

「それはね・・・」

と、鞠莉、千歌たち6人にことのあらましを聞く。簡単にいうと(前述の繰り返しですが・・・、鞠莉の口から聞いたほうが納得?するかもしれませんが・・・)、

「私は小学校のときから果南、ダイヤと一緒に(鞠莉‘sママのいうことを聞かず)勝手にいろんなことをしていたので~す。それに業を煮やしたママが私の自由を奪って拘束することを決めたので~す。そのために、私が知らない結婚相手と結婚させて、私を一生自分のいいなりにさせたい、そんなことをしようとしたので~す。鞠莉、そんなこと、とてもいやで~す!!だから、果南とダイヤにお願いして、卒業旅行と称して愛の逃避行をしていたので~す!!」

と。が、ここでダイヤから、

「愛じゃないでしょ!!自由になるためでしょ!!」

と、鞠莉に激しいツッコミを入れる。対して、鞠莉、

「ペロペロ」

と、舌を巻いてごまかしていた。

 が、意外にもある少女がとある反応を見せる。

(鞠莉ちゃんを・・・拘束・・・する・・・。これって・・・、これって・・・、ルビィが・・・お姉ちゃんを・・・拘束・・・している・・・)

そう、ルビィだった。ルビィ、鞠莉の言葉にあることに気づいたみたいだった。

(ルビィ、お姉ちゃんがいないとダメ!!お姉ちゃんを一生離したくない!!でも、それって、ルビィがお姉ちゃんを拘束している、そう見えてしまう・・・)

と、ルビィが思うと、それが顔に暗い表情としてあらわれてしまった。

 このルビィの暗い表情にある少女が反応した。

(あれっ、ルビィちゃん、なんか暗い表情しているよ。どうしたんだろうか?)

そして、その少女はあることを心の中で決めた。

(よ~し、あとでルビィちゃんの相談にのってあげようかな、僕!!)

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第4話

 その翌日、千歌たちAqours9人と月は鞠莉の決意を示すためにイタリアでライブを行い、それを鞠莉‘sママに見せることを決める。そして、そのライブをする場所を決めるために(鞠莉のお金で)イタリア各地を飛び回った。ベネチアのサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂、サンマルコ広場、ため息橋、フィレンツェのサン・ジョヴァンニ洗礼堂、ピザの斜塔、などなど。千歌たちはそこでAqours各メンバー自らモデルとして写真を撮っては、その移動中にどの場所でライブをすればいいか、ワイワイ、ガヤガヤと騒いでは相談していた。(ちなみに、劇場版ラブライブ!サンシャイン!!の前売り券第1弾のムビチケに写っている写真はそのときの写真だったりする)

 そんなライブをする場所探しの移動中、ルビィは、ただただ、

(鞠莉ちゃんはお母さんの永遠に続く拘束を嫌がってお姉ちゃんたちと愛?の逃避行をしていた。なら、ルビィもお姉ちゃんを一生離さないのって、鞠莉‘sママみたいに、お姉ちゃんを永遠に拘束し続けてしまうのかな?それっていいことなのかな?でも、ルビィ、お姉ちゃんなしでは生きられないよ!!お姉ちゃんがいるから、ルビィは生きていける、やっていける!!けれど・・・)

と、姉ダイヤ依存を続けるかどうか悩んでいた。

 

 そして、千歌たち一行はイタリアの首都ローマに降り立った。が、ローマといえば、スペイン広場、コロッセオ、ダビデ像、(イタリアじゃありませんが)バチカンなどなど、見所・・・じゃなかった、ライブに使える場所が多い。そのため、千歌たちAqours9人と月は手分けしてライブに使えそうな場所を探すことになった。

 そのなかで、

(よし、ルビィからお姉ちゃんを誘おう!!)

と、ルビィは姉ダイヤと行動を共にすることを決め、ダイヤのそばに行き、

「お姉~ちゃん・・・」

と、ダイヤに声をかけようとするが、突然、

「ルビィちゃん、一緒にまわろう!!」

と、ダイヤとルビィを引き裂くように、いや、遮るようにある少女がルビィとダイヤの間に立ちはだかる。これにはルビィ、

「つ、月ちゃん・・・」

と、つぶやく。そう、ルビィとダイヤの間を遮ったのは月だった。

(なんで、月ちゃんがここにいるの?)

と、ルビィは思うも、月はそのまま、

「ルビィちゃん、一緒にまわろう!!僕、ルビィちゃんにちょっと興味、持っちゃったんだ!!だから、一緒にまわろう!!」

と言っては、ルビィがダイヤのところに行かせないようにしていた。

 そんな月の行動にルビィ、

(ルビィはお姉ちゃんと一緒に行きたい!!)

と、必死な思いでダイヤのところに行こうとする。そらに、その思いがゆえに、

「ルビィ、お姉ちゃんのところに行く・・・」

と、心の思いがルビィの声として出てきてしまう。が、月、そんなのおかまいなしに、

「だ~め!!僕と一緒に来るの!!」

と言ってはルビィの手を強引に引っ張る。月、実はこうみえて超アウトドア派である。体力はかなりの持ち主である。それに比べて、ルビィはスクールアイドルの練習をしっかりしているので体力はあるもののインドア派である。超アウトドア派の月に比べてインドア派のルビィ、なので、月の体力にはルビィは非力であった。と、いうわけで、結局、

「おね~ちゃ~ん~」

と、ルビィ、そのまま月に引っ張られてしまい、ダイヤのところから離れていくこととなった。

 

「なんで、ルビィが月ちゃんと・・・」

と、ルビィ、ぶつぶつ言いながらある目的地へと歩いていく。そのルビィの心の中では、

(ルビィはお姉ちゃんと行きたかったんだよ。なのに、なんでルビィの邪魔をするの、月ちゃん!!)

と、月に対して怒っていた。が、とうの月はというと、

「ふふふ~ん」

と、上機嫌にルビィの手をまだ引っ張っていた。

 そうしているうちに、

「さあ、着いたよ~!!」

と、月はそう言うと、その目的地の場所を指差す。そこには・・・。

「ピギッ!!大きな顔!!大きな口!!なんか怖いよ~」

と、ルビィ、その場所にあるモニュメントを見て怖がり、月の後に隠れてしまう。そんなルビィとは対照的に月、

「こわくないよ。だって、あれ、「真実の口」っていうものだもん!!」

と、平気で答える。そう、目的地にあるモニュメント、それは「真実の口」だった。古代ローマのものではあり、ある言い伝えがあるのだが、月、そのことはルビィに伝えず、ただたんに、

「ルビィちゃん、そこに立ってポーズをとって!!う~ん、そうだな~、笑いながら手でハート、作っちゃおうか!!」

と、ルビィに注文する。それにはルビィ、

(なんで、(お姉ちゃんと一緒に行くのを妨げた)月ちゃんの言うことを・・・)

と、考えるも、これは鞠莉のためのライブの場所を見つけるためであり、仕方なく、「真実の口」の前に立ち、月と言うとおりに笑いながらハートを手でつくるも・・・。

「にや~」

と言っては笑うもなんか暗い表情に。これには、月、

「もう少し笑って~」

と、ルビィにさらに注文するも、ルビィ、

(ちゃんと笑っているもん!!)

と思いつつさらに笑おうとするも、暗い表情がさらに強調してしまう。月、このままではいけないと思い、

「仕方がないな~、一時中断しよ~」

と、撮影を中断した。

 そして、月は暗い表情のルビィに近づき、一言。

「どうして暗い表情しているのかな~?」

これにはルビィ、

(月ちゃんのせいでしょ!!)

と、思ってしまったのか、

「なんでもないよ!!月ちゃんには関係ないことでしょ!!」

と、月に反論する。

 このルビィの反抗を見た月、それならばとあることをルビィに命令した。

「じゃ、ルビィちゃん、この「真実の口」に手を入れて!!」

これにはルビィ、

(なんで月ちゃんの命令に従わないといけないの!!なんでこのモニュメント(「真実の口」)に手をいれなきゃいけないの!!)

と、月に反抗の意思を持つと、

「いや!!絶対にいや!!」

と、手を振って月の命令を拒否する。が、月、それでもおかまいなしに、

「なら、僕が(強制的にルビィの)手を入れちゃうからね!!」

と、ルビィの手を取ってそのまま「真実の口」にいれようとする。これにはルビィ、

(ちょっと、ちょっと、待ってよ~!!)

と、それを防ごうとするも、やっぱりここでもルビィの非力さ、というよりも、月の強引さに負けてしまい、ルビィの手はそのまま「真実の口」の口の隙間にはいっていった。

 そして、月はルビィにあることを言う。

「ルビィちゃん、僕に黙っていること、ない?ルビィちゃんが悩んでいること、ない?」これにはルビィ、

(勝手にルビィの手を口に入れちゃった月ちゃんに話すことなんてないよ!!お姉ちゃんのことで悩んでいるなんて、悪ふざけする月ちゃんには言わないよ!!)

と、月に対して反感を持つと、

「そんなもの、ルビィにはないよ!!」

と、月に反抗を示す。が、月、ルビィの手を「真実の口」の口の隙間に強引にいれたまま、ルビィを恐怖のどん底に突き落とすような一言を言う。

「本当になんでもないならいいんだけど、「真実の口」って、口のところに手を入れた場合、もし、うそをついていたり、偽りの心があれば、その手はちょん切られてしまうんだぞ~」

そう、「真実の口」、実は手を口の部分に手を入れた場合、うそや偽りの心を持つ持つ者であれば、手を抜くときに手首を切り落とされる、手を噛みちぎられる、手が抜けなくなる、といった言い伝えがあるのだ。もちろん、あの名作と名高い「○ーマの休日」という映画でもある有名なシーンがある、主人公が「真実の口」に手を入れて抜けなくなった、と・・・。

 で、この月の言葉にルビィ、

(えっ、うそでしょ!!ルビィの手首、ちょんぎられてしまう!!)

と、突然パニック状態に陥る。そして、慌ててしまったルビィ、

「ピギィ!!」

と言っては思わず手を「真実の口」の口の部分から引っ込んでしまう。これにはルビィ、

(しまった!!手を引き抜いてしまったよ~!!ル、ルビィの手、切れてしまったよ~!!どうしたらいいいの~!!お姉ちゃん、助けて~!!)

と、さらにパニック状態が深まってしまう。

(どうしよう~、どうしよう!!本当にお姉ちゃん、助けて~!!)

と、慌てふためくルビィ。とはいえ、ルビィ、

(でも、本当に手が切れていないか確認しなきゃ・・・)

と、恐る恐る自分の手を見る。

「う~」

と、うなりながら、心配そうに自分の手を見るルビィ。すると、ルビィの手首はちょん切られて・・・るわけがない。「真実の口」の言い伝え、実はたんなる迷信だったりする。「真実の口」、実は古代ローマのマンホールと言われており、今みたいに横に設置されたのは1632年ごろだったりする。「○ーマの休日」でも、主人公が手を抜けなくなった、という演技をしてヒロインを驚かしていた、というのが実情だった。

 とはいえ、月に騙されたルビィ、

(月ちゃん、からかうのはやめて!!たんなる嫌がらせだよ!!そんな月ちゃん、嫌い!!)

と、月に対して反感を持つようになり、すぐに、

「うそつかないでよ~、月ちゃん!!ルビィを困らせようとしたの!!」

と、月に激怒する。が、月、意外と冷静に、

「それって何か悩み事があるんじゃないかな、ルビィちゃん?」

と、ルビィに尋ねる。これにはルビィ、

(えっ、ルビィに悩み事!!えっ、えっ!!)

と、月からの不意打ちの質問に驚いてしまったのか、

「えっ!!なんでもないよ!!なんでもないよ!!」

と、なにかをごまかすように答える。が、月はさらに冷静に、

「なら、「真実の口」に手を入れたとき、なんで慌てていたのかな~、ルビィちゃん?」

と、ルビィに向かってさらに尋ねると、ルビィ、

(・・・)

と、頭の中が真っ白になったのか、

「そ、それは・・・」

と言っては、そのまま黙ってしまった。

 すると、月、

「「真実の口」に手を口に入れたとき、ルビィちゃんが慌ててしまった理由、それってダイヤさんのことがあったからじゃないかな?」

と、ルビィに対してど真ん中の指摘をしてしまう。これにはルビィ、

(お、お姉ちゃん、な、なんのことかな~)

と、心の中では動揺しつつも、

「なっ、なんでもないずら~」

と、月に対して花丸のまねをして誤魔化す。が、

「ルビィちゃん、ちゃんと答えて!!」

と、月、ルビィに対してこう言っては迫ってくる。これにはルビィ、

(つ、月ちゃんが怒っているよ~、怖いよ~、怖すぎるよ~)

と、月の強迫?にうさぎみたいに身を縮みこませるように怖がる。と、なれば、これはルビィの負け?、月の勝ち?といっても過言でもなかった。ルビィ、月への恐怖心からか、

(こ、ここは月ちゃんにルビィの悩んでいること、打ち明けたほうがいいかもしれないよ~)

と、思ってしまい、ここは観念したのか、

「は、はい、そう~です・・・」

と、月に正直に答えてしまった。

 これを見た月、今度は優しい顔になって、ルビィに対し、

「僕が相談にのってあげるから言ってみて」

と、ルビィに諭す。これにはルビィ、

(つ、月ちゃん・・・、なんてたくましいんだ。それだったら聞いてみよう)

と、これまでの月への反感はどこにいったのやら、180度態度を変えてしまったようだった。それほどこのときの月がルビィに与えた恐怖心はルビィにとって心が折れるくらいのものだったのかもしれない。

 と、いうわけで、ルビィ、

「実は・・・」

と、月に対して言うと、そのまま月にルビィが抱える悩み事を伝えた。

「実は、ルビィにとって今もお姉ちゃん(ダイヤ)のことはとても大事だと思っているんだ。ルビィ、ずっとお姉ちゃんに頼っていきたい、お姉ちゃんなしでは生きていけない、だから、ずっとお姉ちゃんのそばにいる、そう思っているんだ。でもね、その一方で、鞠莉‘sママが鞠莉ちゃんの自由を奪おうとしている、束縛しようとしているのと同じように、ルビィもお姉ちゃんの自由を奪おうとしている、束縛しようとしている、そう考えてしまうんだ。ルビィ、このままルビィの考えだけでずっとお姉ちゃんのことを束縛していいのかな?どっちがいいの~」

このルビィの告白に月は優しい顔で、

「ルビィちゃん、ダイヤさんとの関係で悩んでいたんだね」

と、ルビィを慰めるように言うとともにルビィの頭をなでる。

 そして、月は意外なことをルビィに言った。

「実はね、僕も同じ経験をしたことがあるんだ。それはね、曜ちゃんとのことなんだけどね・・・」

これにはルビィ、

「えっ、月ちゃんと曜ちゃんが・・・」

と、驚いてしまう。それを見た月はその話をルビィに対して語り始めた。

「僕はイタリアから沼津に帰ってきて初めてできた友達、それが曜ちゃんなんだ。いとこ同士だけど、まったく知らない地で同じ年齢の友達なんてだれもいなかった僕にとって曜ちゃんは僕がそのとき唯一一緒に遊べる同年代の友達だったんだ。僕はその曜ちゃんと一緒にたくさん遊んだんだ。そして、その曜ちゃんを通じていろんな友達となかよしになり、多くの友達をつくることができたんだ。だから、僕のとなりにはいつも曜ちゃんがいる、遊ぶときはずっと曜ちゃんと一緒、寝るときも一緒、ずっと一緒だった。曜ちゃんがいないのは曜ちゃんが千歌ちゃん、果南ちゃんたちと遊ぶときか髙飛び込みの練習をしているときだけだった。曜ちゃんは僕にとって双子同士、姉妹同士、そういっても過言じゃなかった。そして、それがずっと続く、そう僕は思っていた」

これを聞いたルビィ、

(月ちゃんと曜ちゃん、まるで、ルビィとお姉ちゃんとの関係と一緒だ・・・)

と、思ってしまう。

 が、月はすぐに暗い表情をする。これにはルビィ、

(あれっ、月ちゃん、どうしたのかな?あんな明るく話していたのに、なんで、いきなり暗い表情をしたのかな?)

と、疑問に思う。月、そのルビィの思いを汲み取ったのか、

「でもね・・・」

と、真面目に言うと、ルビィも、

「でも・・・」

と、ツバを飲み込んで月の次の言葉も待つ。月、そのルビィを見てからか、少しためて言った。

「でもね、別れの時はついに来たんだ・・・」

この言葉にルビィ、

「別れ・・・」

と、言葉を窮しながら言う。月はそのルビィの言葉にひかれるかのように語り始めた。

「僕と曜ちゃんが高校に進学するとき、曜ちゃん、僕と同じ静真高校、じゃなくて、千歌ちゃんが入学する浦の星女学院に入学してしまったんだ。曜ちゃん、僕じゃなくて千歌ちゃんを選んじゃったの!!」

これにはルビィ、

(えっ、なんで曜ちゃん、月ちゃんじゃなくて千歌ちゃんを選んだの?)

と、少し困惑すると、おもわず、

「な、なんで・・・」

と、言葉をまた窮してしまう。それを見た月、さらにあることを言い出す。

「実は曜ちゃん、本当は静真高校に推薦入学を決めていたんだ。曜ちゃん、実は、髙飛び込みの世界では世界大会でメダルが取れるほどの実力がある、そんな選手だっていわれていたんだ。だから、曜ちゃんは部活動が盛んで、髙飛び込みの実力を着実に伸ばすことができる静真高校に入学したほうがいい、静真高校に入学して髙飛び込みの選手として世界に飛び出していったほうがいい、そう、みんなから思われていた。僕もそう思っていた。でもね・・・」

これにはルビィ、月の貯めに、

「でもね・・・」

と、釣られて言うと、月、そのあとを聞きたいルビィのためにそのときの曜の想いを言った。

「でもね、曜ちゃんはその推薦を蹴って浦の星に入学したんだ。で、その理由を曜ちゃんに聞いたんだ。そしたら、曜ちゃん、こう答えたんだ。「だって、千歌ちゃんが好きだから」こうして、曜ちゃんは静真高校よりもっと弱小の水泳部のある浦の星に入学していった。曜ちゃんにとって、部活動が盛んでとても強い水泳部のある静真高校に入学することは大きなチャンスだったはず!!なのに、「千歌ちゃんが好きだから」そんな理由でせっかくのチャンスを蹴ってまで浦の星に入学した!!それには僕、曜ちゃんに怒ったよ!!本当に怒ったよ!!でもね、曜ちゃんは怒る僕に向かって笑いながら答えたんだ」

これにはルビィ、

(えっ、曜ちゃん、そんなに将来有望な選手だったの!!せっかくその選手になれるのに、なんで、千歌ちゃんを選んだの!!)

と、思うと、おもわず、

「曜ちゃん、なんて答えたの?」

と、月に聞く。月、曜ちゃんのものまねをするようにルビィの問いに答えた。

「「だって、千歌ちゃんが入学する浦の星って生徒数が少ないし、千歌ちゃんにとって一緒に入学する友達などはむっちゃんたちか(千歌や曜の)先輩で浦の星に通っている幼馴染の果南ちゃんしかいないんだもん。なら、私自ら進んで千歌ちゃんと一緒に浦の星に入学して、私と一緒に友達、いっぱい、い~ぱい作っていこう、千歌ちゃんたちと一緒に」って」

これにはルビィ、

(曜ちゃんって千歌ちゃんのことを考えて、自分の輝かしい未来、約束された未来すら捨ててまで浦の星に入学したんだ・・・)

と、曜に対して驚くも、月はそのときの想いをルビィに語った。

「で、僕、これを聞いて思ったんだ。僕はずっと曜ちゃんと一緒にいられると思っていた。双子のように、姉妹のようにずっといられる、ずっとこのままだ、そう思っていた。けれど、曜ちゃんは違っていた。曜ちゃんは僕の考えと一緒じゃなかったんだ。曜ちゃんは僕とは別の友達、千歌ちゃんが困っているから、大事な友達、千歌ちゃんのためになりたい、その想いだけで、自分が大切なもの、(髙飛び込みの選手としての)約束された将来すら捨ててまで千歌ちゃんのために浦の星に入学した。僕から飛び立とうとしていたんだ、曜ちゃんは!!だから、僕は愕然とした、もう曜ちゃんは僕の曜ちゃんじゃない!!曜ちゃんは僕を見捨てた、そう思ってしまった」

これにはルビィ、

(えっ、曜ちゃんってそんなに冷徹だったの!!いつも笑っている曜ちゃんからは考えられないよ!!)

と、月が語る曜のことにびっくりしてしまう。が、月の話は続いていた。

「でね、愕然とする僕に向かって曜ちゃん、僕のことを思って次の言葉を僕に送ったんだ、「でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ずっと、永遠に大切にしたい友達なんだよ」って。この言葉に僕、びっくりしたよ。だって、僕、曜ちゃんから見捨てられた、って、思っていたから。その曜ちゃんから「ずっと友達」だなんて言葉が出たからね。で、僕、曜ちゃんに「なぜ?」って聞いたらね、曜ちゃん、笑いながらこう答えたんだよ、「だって、私にとって月ちゃんは昔からいつも遊んでくれた、千歌ちゃんみたいにずっと遊んでくれた、だから、私から友達の縁を切ることなんて絶対にないよ!!だって、昔も、今も、そして、これからも、私、月ちゃんのこと、大大大大大好き、なんだからね。これからもずっと大大大大大親友、なんだからね、千歌ちゃんと同じくらいにね!!」って。これで僕、わかったんだ、僕と曜ちゃんの縁はこれからもずっと続く、曜ちゃんとのキズナが切れるわけじゃない、けれど、別れはいつかきっとくる、それなら、ずっと曜ちゃんを僕だけのものにする、べったりする関係に終止符を打とう、曜ちゃんを暖かく送ろう、と。そう思うと、僕、なんかすっきりしたんだ」

 そして、月は話をこのようにして締めた。

「で、このときの経験からある考えにたどり着いたんだ。それは、「未来というのは自分で自由なツバサでもって決めるものなんだ。それは、たとえ誰であっても拘束してはいけない、それくらい大切なものだって。そして、たとえ、自分のもとから旅立ったとしても、今までに培われた僕と旅立った者とのキズナ、縁は決して切れない」って。」

 これを聞いたルビィ、

(それって、今のルビィとお姉ちゃんにも言えることじゃないかな?お姉ちゃんは今、ルビィのもとから旅立とうとしている。けれど、ルビィはただルビィのためだけにお姉ちゃんを放そうとしない、お姉ちゃんを拘束している。でも、そうしたら、お姉ちゃん、未来という、これからお姉ちゃんが自由なツバサで自由に飛び立つ、そんなことができなくなる!!それをルビィはしたくない、でも・・・)

と、なにか悩んでしまい、そのためか、

「でも、お姉ちゃんとは縁を・・・」

と、小言で言うと、月、それを見逃さず、

「でも、ダイヤさんとルビィちゃん、姉妹というキズナ、縁はいつまでも切れないよ!!血を分けた姉妹、これって僕と曜ちゃん以上に強いキズナで結ばれているんだよ!!それを忘れないで、ルビィちゃん!!」

と、ルビィにアドバイスを送る。この月のアドバイスを聞いたルビィ、

(ルビィとお姉ちゃんの姉妹というキズナ、それはずっと続く・・・。それはたとえお姉ちゃんがルビィのもとから離れたとしてもずっと続く・・・。言われてみればそうかもしれない・・・。そう考えると、なんか、ルビィ、なんかわかった気がする!!ルビィ、なんか頭でもやもやしていたものが吹き飛んだ気がする!!ルビィ、なんかガンバルビィ、できる気がしてきた!!)

と、なにやら元気を取り戻してきたようだった。

 そして、ルビィはある決意を固める。

(お姉ちゃんとの縁、キズナは一生残る!!たとえなにがあってもそれは切れない。ルビィがこれまで忘れていた大事なこと、それは、たとえ、お姉ちゃんと離れていても、お姉ちゃんとの縁、キズナはずっと続く!!でも、お姉ちゃんとはずっと一緒にいられるわけじゃない、ずっとルビィのそばにいるわけじゃない。いつかは別れのときは訪れてしまう。ルビィにとってそれが今じゃないかな。なら、ルビィ、決めたよ!!ルビィ、お姉ちゃんを暖かく送ろう!!お姉ちゃんに、自分だけ、ルビィだけになっても強く生きていける、1人でも大丈夫なとこ、見せて、お姉ちゃんが安心してルビィのところから飛び立てるようにしよう!!そして、お姉ちゃんが自由なツバサで大空に羽ばたかせる、そんなことができるようにしよう!!)

ルビィがその決意を決めた瞬間、ルビィは自分の体のなかにあった重たいなにかが次々と剥がれていく、そんな気がしてきた。さらに、それにつれて、暗い表情だったルビィの顔はだんだん明るい、いつものルビィの楽しい表情に戻っていった。これを見ていた月、

「じゃ、ルビィちゃん、もう1回言うね。ルビィちゃん、「真実の口」に手をいれてみて!!」

と、ルビィにお願いすると、ルビィ、

「はい!!」

と、元気よく「真実の口」の口に手を入れた。そして、ルビィがその口から手を抜くと、ルビィの手は切れてなかった。もちろん、ただの石像だからそんなもの当たり前、たんなる迷信である。が、ルビィにとって、それはあるものとの決別を意味するものだった。それは「これまでの弱い自分」。いつも姉ダイヤの後ろでいつも姉ダイヤに守られていた自分、内気でもじもじしているだけの自分、姉ダイヤがいないとなにもできない、なにもしない、そんな弱々しい自分、そんな弱い自分と完全に決別する、ルビィにとってそんなふうに感じた。いや、ルビィ自ら自分の意思でそう決めたものだった。ルビィは「真実の口」でも噛み切れることなんてない、とても強い心、とても強い意思を手に入れたのだ。

 が、ルビィがそう感じた瞬間、月はルビィにあることを言った。

「でもね、旅立つというのはね、それで何もかもがなくなるじゃないんだよ」

これにはルビィ、

(えっ、たしかにキズナは残るけど、ほかになにか残っているの!!キズナ以外なくならないものがあるの!!)

と思ったのか、おもわず、

「えっ、それってどういうことなの!!別れてしまってもキズナ以外に残るもの、あるの!!」

と戸惑いながら言うと、月は元気よく答えた。

「じゃ、なんでそう思っているのかな?僕、曜ちゃんたちを見てずっと気になっていた。だって、大切なもの(ダイヤたち3年生3人)が旅立つことでなにもかもなくなる、そんな感じ、イタリアに来る前の千歌ちゃんたち6人にはそう感じられたんだもん」

これにはルビィ、

(えっ、たしかにイタリアに来る前、ルビィたち、そんな思い、持っていた気がする・・・)

と思うも、ただたんに、

「そ、それは・・・」

と、言葉を濁してしまう。たしかにダイヤたち3年生3人がいないだけで不安や心配の海、泥沼の奥底に沈んでしまい、それが静真高校の新年度部活動発表会で行われたライブの失敗へとつながった。

 けれど、月は言った、堂々と。

「でも、ルビィちゃんはもうすでにわかったんじゃないかな。「真実の口」を通じてその先にある真実を見つけたんじゃないかな?ルビィちゃんの心の中にその答えがあるんじゃないかな?」

これを聞いたルビィ、

「ルビィの心の中・・・」

と、自分の心の中に問いかける。すると、

(たしかにお姉ちゃんと別れても、ルビィとお姉ちゃんのキズナは残っている。あと、それと・・・、残るもの、残るもの・・・。あれっ、それってお姉ちゃんと一緒に暮らした時間のことかな?お姉ちゃんと一緒に暮らした、それかな?あと、そのときのお姉ちゃんの中にあったもの?あっ、もしかして、月ちゃんが言おうとしているものってそれじゃないかな?)

と、ルビィ、それに気づく。が、月の答えはその先を行っていた。

「ルビィちゃん、今思っていること、正解だと思うよ。でもね、それ以上に大事なことがあるんだよ!!」

その月の答えにルビィ、

「えっ、それって・・・」

と驚くと、月は続けてあることを言った。

「それはね、ルビィちゃんにあって僕にはないものだよ。それは仲間だよ。ルビィちゃんにはAqoursという仲間、キズナがあるんだよ。千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、それに、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、ダイヤさんという仲間がね。そしてね、その仲間を通じてあるものを得たはずだよ!!ルビィちゃん、それはね・・・」

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第5話

 その後、月とルビィは再び「真実の口」で写真を撮った。そのときのルビィの表情はとても笑顔であふれており、誰から見てもみんなと一緒に楽しんでいこう、そんな感じをルビィ自ら醸し出していた(もちろん、ルビィ、自ら手でハートを作ったよ!!)。しかし、かなり時間をかけてしまったこともあり、みんなと集まる約束の時間はもうすぐだった。と、いうことで、ルビィと月は急いでその集合場所に向かった。そして、月とルビィがその集合場所に到着したときにはすでに千歌たち8人はすでにそこにいた。

 こうして、千歌たちAqours9人と月、全員が集まったので、みんなで撮ってきた写真を見せ合う。それを見た鞠莉、

「真実の口、コロッセオ、スペイン広場にトレビの泉!!どこもライブ会場には最適で~す!!」

と、感嘆の声をあげるくらい、どこもライブの会場としては最適だった。撮ってきた写真を見比べても、写真を撮ってきた場所、9箇所、どこもライブ会場にしたい、そんな考えが10人共通の考えだった。でも、それだとライブをするのが大変だ、というわけで、今日の夕食のときにライブをどこで行うか相談しよう、と、決まり、そのまま解散となった。

 そして、解散したあと、

「あ~あ、果たしてどこがいいのかしら?」

と、ヨハネ、ライブ会場をどこにするか迷いながらホテルの自分の部屋に戻ろうとする。花丸も、

「今日の夕食、なにがでるずら。たのしみずら」

と、今日の夕食の献立について考えながら戻ろうとする。そんなときだった。

「ねっ、花丸ちゃん、善子ちゃん!!」

と、ヨハネと花丸を呼びかける声が2人には聞こえてきた。これにはヨハネ、

「善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」

と、いつもの通りの決まり文句を言うと、そのまま声がした方向へ振り返る。そこにいたのは・・・。

「ルビィ!!」

そう、花丸とヨハネ、2人を呼び止めたのはルビィだった。そのルビィ、2人にこう言った。

「ちょっと話があるんだ。ロビーに一緒に行こう!!」

こうして、ルビィ、花丸、ヨハネ、1年生3人はルビィに言われるままにホテルのロビーへと移動していった。

 

 ロビーに着いたルビィ、花丸、ヨハネの1年生3人はロビーにあったソファーに座ると、すぐにルビィが花丸とヨハネに対してある質問をした。

「ところで、ルビィたち1年生ってAqoursだとどんな立ち位置なんだろう?」

これにはヨハネ、

(1年生の立ち位置?今まで気にしていなかったよね)

と、考えるようになり、花丸も、

(ルビィちゃんにしてはもの凄い、けれど、的確な質問ずら!!どうしたずら?)

と、まるで別人に変わってしまったようなルビィの勇姿をただただ眺めているだけだった。

 が、ルビィはそんなヨハネ、花丸を見て、

「花丸ちゃん、善子ちゃん、答えてみて!!ルビィたち1年生ってAqoursだとどんな立ち位置なの?」

と、さらに強く聞いてみる。ルビィの強い押しに花丸、ヨハネ、少し困惑しつつもたまらずこう答えた。

「1年生の立ち位置ずら~、よくわからないずら~」(花丸)

「1年生の立ち位置って考えたことなかったわね」(ヨハネ)

 すると、ルビィは1年生の立ち位置について、自分の考えを力強く、花丸とヨハネに向かって力説した。

「ルビィね、Aqoursの中で1年生って、どちらかというと、ただついていくだけ、千歌ちゃんたちやお姉ちゃん(ダイヤ)たちのうしろをついていくだけの存在だと思うんだ。2年生の千歌ちゃんたちがAqoursの進む道を決めて、3年生のお姉ちゃんたちがスクールアイドルの先輩として千歌ちゃんたち2年生にアドバイスを送っていた、サポート役に徹していた。けれど、ルビィたち1年生はその千歌ちゃんたち2年生、お姉ちゃんたち3年生の進む道をただうしろからついていくだけ。ルビィたち1年生が自ら動いたのって函館の理亞ちゃんのとき、その1件だけだったような気がする・・・」

このルビィの発言、ルビィは心の中でこう思っての発言だった。

(ルビィたちが自ら動いたことってあったかな?千歌ちゃんたち2年生は今のAqoursをゼロのときから一生懸命頑張って育て上げ、今やイチ以上のものに作り上げた。初めての2年生だけのライブ、1・2年生6人のPV撮影、お姉ちゃんたち3年生の加入、そして、ラブライブ!への参戦!!千歌ちゃんたち2年生が中心となって今のAqoursを作り上げた。そして、もし、千歌ちゃんたち2年生が迷うとき、いつもお姉ちゃんたち3年生がサポート、フォローしてくれた。浦の星が存続できるようにお姉ちゃん、鞠莉ちゃんが一生懸命頑張ってくれた。そのお陰で千歌ちゃんたち2年生はAqoursのことだけに集中できるようにしてくれた。果南ちゃんは千歌ちゃんたち2年生、ルビィたち1年生のために先輩としてダンスなどを教えてくれた。お姉ちゃんたち3年生は千歌ちゃんたち2年生が自由に動けるように先輩としてサポートしてくれていた。じゃ、ルビィたち1年生は千歌ちゃんたち2年生、お姉ちゃんたち3年生の役に立っていたのかな?いや、ただただ、千歌ちゃんたち、お姉ちゃんたちについていくだけだった。今のAqoursを育てたのは千歌ちゃんたち2年生、それ以外を含めて千歌ちゃんたち2年生をサポートしてくれたのはお姉ちゃんたち3年生。じゃ、ルビィたち1年生は?1年生は?1年生はなにかしたの?いや、なにもしていない、ただ千歌ちゃんたち、お姉ちゃんたちについていくだけ。ルビィたち1年生が自ら動いたのって理亞ちゃんの函館での1件だけ。これって、ルビィとお姉ちゃんの関係と同じじゃないかな?ただ、お姉ちゃんに守られている、ただついていくだけ、そんな気がする)

 そのルビィの思いからの発言に、花丸とヨハネは、

(ル、ルビィにしては的確な意見ね(ヨハネ))

(たしかに言われてみるとそうずら~(花丸))

と、考えるようになる。そのためか、ヨハネ、

「じゃ、なにをすればいいのかな?」

と、ルビィに聞いてみる。そしたら、ルビィ、逆に花丸とヨハネに質問する。

「これから先、お姉ちゃんたち3年生はいなくなるんだよ!!千歌ちゃんたち2年生をサポートしてくれる人たちがいなくなるんだよ!!そうなると、誰が千歌ちゃんたち2年生をサポートしてくれるのかな?月ちゃん?むっちゃん?」

このルビィの質問に花丸、ヨハネ、共に、

「「・・・」」

と、一瞬で黙ってしまう。このルビィの質問に対して今の2人には答えるのは至難の業だったのかもしれない。それでもルビィは再び花丸とヨハネに質問する。

「誰が千歌ちゃんたち2年生を助けるの?」

ルビィの2人へのダメだしだった。

 このルビィのダメだしが聞いたのか、花丸、ぼそっと、

「・・・、おいらたち、・・・」

と言う。これにルビィはすぐに反応!!

「そう、ルビィたち1年生しかいないんだよ!!お姉ちゃんたちがいない新生Aqoursにおいて、千歌ちゃんたち2年生以外にはルビィたち1年生しかいないんだよ!!」

と、ルビィ、力強く訴える。このとき、ルビィ、心の中では、

(お姉ちゃんたち3年生がいなくなる今、ルビィたち1年生が千歌ちゃんたち2年生をサポートしていかなくちゃいけない!!もうお姉ちゃんたち3年生はいないんだ!!それならば、今度からはルビィたち1年生が千歌ちゃんたち2年生を助ける番なんだ!!)

と、ものすごくいきおいつけていた。

 が、花丸、ヨハネ、共に、

(たしかにダイヤちゃんたち3年生がいなくなることを考えると、まるたち1年生しか千歌ちゃんたち2年生を助ける人、いないずら~。でも、千歌ちゃんたち1年生を助ける自信、おいらにはないずら~(花丸))

(でも、でも、そのサポート役、私たちにできるのかな・・・(ヨハネ))

と、心配の様子。そして、そのためか、花丸、ついには・・・、

「でも、3年生がいないと・・・」

と、弱気の発言をする。

 しかし、弱気の2人に対し、ルビィは違った。そして、言った。

「お姉ちゃんたち3年生はいなくなるけど、すべてがなくなるわけじゃないんだよ!!お姉ちゃんたち3年生がいなくても、ルビィたち1年生はいる!!そして、お姉ちゃんたち3年生がいなくなっても、お姉ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんのとの思い出、想い、そして、キズナ、縁までもが消えるわけじゃないんだよ!!ずっと続くんだよ!!」

これにはルビィのある想いから放たれた発言だった。

(お姉ちゃんは今、大空へ自由のツバサをもって旅立とうとしている。ルビィ、それは止めない!!けれど、これまでお姉ちゃんと一緒にやってきたこと、その思い出、お姉ちゃんの想い、縁、そして、キズナまでが消えるわけじゃない!!そして、それらはずっとルビィの心の中でずっと残る、ずっと続く!!それはAqoursでのお姉ちゃんたち3年生と千歌ちゃん、ルビィたち1・2年生との関係も同じこと、同じことが言える!!ルビィ、今、そう確信している!!)

 で、このルビィの発言に花丸、ヨハネ、共に、

(うそ!!あんな弱々しかったルビィがこんな力強く見えるなんて、ありえない!!なんかおかしなもの、食べたんじゃない!!(ヨハネ))

(嘘ずら~!!あんな強気で堂々と意見するルビィちゃん、見たことないずら~(花丸))

と、これまで見たことのない、強気で、自分の意見をはっきり言う、そんなルビィの姿にビックリしていた。

 そんなビックリしている2人を見て、ルビィはある提案をした。

「ルビィ、実はあることをしたいの・・・」

これには花丸、すぐに、

「なにずら~」

と、不思議そうにルビィの方を見る。それをルビィは確認すると、自分の案を公表した。

「今度のライブはルビィたち1年生が主体となって成功させたいんだ!!これまで千歌ちゃんたち2年生、お姉ちゃんたち3年生についていくだけの1年生、じゃなく、これからルビィたち1年生もAqoursの一員として、本当の一員としてやっていけることを千歌ちゃんたち、お姉ちゃんたちに見せたいの!!示したいの!!」

ルビィ、この案を示すこと、それはある想いからだった。

(ルビィ、これからはルビィ自ら動いていく。ただついていくだけの存在になりたくない!!ルビィの足で、ルビィの考えでAqoursを盛り上げていく!!でも、ルビィだけじゃダメ!!それには・・・)

この想いからの発言のあと、ルビィは花丸、ヨハネに語りかけるように言った。

「でもね、それにはルビィ1人じゃできないんだ。花丸ちゃん、善子ちゃん、2人の力が必要だよ!!だって、Aqoursはルビィ1人だけじゃないんだよ!!花丸ちゃん、善子ちゃんがいる。千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんがいる。果南ちゃん、鞠莉ちゃん、そして、お姉ちゃんがいる。みんな揃ってのAqoursなんだよ!!だからね、ルビィたち1年生は、これまでのただ見るだけ、ついていくだけの存在なんてもういや!!これからはルビィたち1年生もどんどんAqoursに参加していきたい!!そして、Aqoursの、ルビィたち1年生の未来を切り開いていきたい!!でもね、ルビィ1人だけ動いたとしても力不足かもしれないよ。けどね、花丸ちゃん、善子ちゃんがいればきっとどんなことでもやっていける!!3人の力を合わせればきっと明るい未来を切り開くことができる!!だからね、花丸ちゃん、善子ちゃん、一緒にやっていこう!!ルビィたちの、Aqoursの明るい未来を一緒に切り開いていこう!!お姉ちゃんたちが残してくれた思い出、想い、キズナ、縁、すべてを糧にして、ルビィたちで、みんなで、Aqoursをもっと盛り上げていこう!!新生Aqoursの明るい未来という物語を一緒に紡いでいこう!!そして、安心してお姉ちゃんたちを旅立たせてやろう!!ねっ、花丸ちゃん、善子ちゃん!!」

そう、ルビィはルビィだけでなく、花丸、ヨハネも一緒にやっていこう、一緒にAqoursを盛り上げようと提案してきたのだ。これには、

(ルビィと一緒に新生Aqoursを盛り上げるには花丸ちゃん、善子ちゃんの力も必要!!だって、ルビィ1人だけじゃまだ力が弱すぎるから。ルビィ1人でやろうとしても絶対に力不足になる。それは絶対言える!!だって、千歌ちゃんは1人で今のAqoursを始めた。けれど、1人だけでスクールアイドルを始めても、たった1人だけだったら、今のAqoursのようなパーフェクトナインにはならなかった。けれど、千歌ちゃんの想いに曜ちゃんが、梨子ちゃんが賛同して集まり、さらに、ルビィと花丸ちゃんが、ヨハネちゃんが、そして、最後にお姉ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんが集まった。1人だけじゃなにもできない。でも、1人の思いはそれによってみんなをひきつけて、それが大きな力となる。で、今のルビィはたった1人。たった1人だけじゃなにもできない。けれど、今のルビィの想い、その想いに花丸ちゃん、善子ちゃん、2人が加われば、絶対に大きな動きになる!!だから、だから、花丸ちゃん、善子ちゃん、ルビィの想い、受け取って!!そして、3人で一緒に力を合わせて、みんなのために、Aqoursのためにやっていこう!!)

という、ルビィの想いからきた、花丸、ヨハネへの言葉だったのだ。

 なのだが、花丸、ヨハネの2人はというと・・・、

(なんか、ルビィちゃんが、本物のルビィちゃんに見えてこなくなったずら~!!力強く語るルビィちゃんがあまりにも迫力ありすぎて、おら、考えることができなくなったずら~(花丸))

(ルビィ、本当になにか悪いもの、食べてしまったんじゃないかな・・・(ヨハネ))

と、あまりにも変わりすぎたルビィの姿に戸惑いを感じていた。

 しかし、そんなルビィの想い、少しは2人に伝わったみたいで・・・、

(でも、ルビィちゃん、千歌ちゃんたち、ダイヤちゃんたちのために頑張ろうとしていること、少しわかったずら~(花丸))

(でも、ルビィが頑張ろうとしている姿、久しぶりに見たかも。それなら、ヨハネの力でもって、ルビィのやりたいこと、果たしてみせよ~ぞ!!(ヨハネ))

と、花丸とヨハネ、2人ともそう思うと、すぐに、

「そ、そうずら~!!まるたちにもわかったずら。今度のライブ、まるたち1年生3人が主体になって頑張るずら!!」(花丸)

「善子じゃなくて、ヨハネ!!でも、その心意気、よくわかったぞ。このヨハネの名のもと、リトルデーモン4号(ルビィ)に命ずる!!このヨハネとともに今度のライブ、成功させてみせよ~ぞ!!」(ヨハネ)

と、2人ともルビィの提案に同意した。これにはルビィ、

「ありがとう、花丸ちゃん、善子ちゃん!!」

と、2人を抱きしめながら言った。(もちろん、ルビィの言葉のあとにヨハネはいつもの通り、「善子じゃなくてヨ・ハ・ネ!!」って言っているけどね・・・)

 

 その日の夕食、Aqours9人と月はみんなで撮ってきた写真をもとにライブ会場を決めることに。しかし、千歌みたいに関心がなかったり、鞠莉みたいに「どこでもいいんだ」と言ったり、しまいには「写真に撮った場所全部使っちゃおう」と言ってしまうしまつに・・・。たしかに、μ‘sの「Angelic Angel」ではニューヨークのいろんなところでライブをしたことにより大成功を収めたことがあった。が、今回に限って、μ’sみたいにイタリアのいろんなところでライブをする予算がなかった(μ‘sのときはμ’sの海外ライブを企画したテレビ局の予算で行った。対して、Aqoursの場合、鞠莉のおこずかい、といっても、そのほとんどを果南、ダイヤとの愛の?逃避行、および、ライブの場所探しに使ってしまい、本当にすっからかんだった)。それなのに、イタリアのいろんな場所でライブしたがるとは・・・。これには、ダイヤ、

(ああ、いつになったらライブの場所、決まるのでしょうか。またもやみなさんの悪い癖がでてしまったのですね・・・)

と思ってしまうほど諦め顔になってしまった。実はAqours、9人とも個性が強すぎるためか、まとまるときはまとまるのだが、そうでないときはてんてんバラバラになってしまう。三者三様、ではなく、九者九様である。その実例がラブライブ!冬季大会東海予選の予備予選(というか、静岡県予選)直前に起きた1・3年生の曲作りである。1年生のルビィ、花丸、ヨハネ、3年生の果南、鞠莉、ダイヤ、6人とも性格が違うが、それ以前にインドア派、内向き志向の1年生、アウトドア派、外向き志向の3年生、水と油のような性格の違いがゆえに、曲作りがうまくいかなかった。が、なにかをきっかけに1つになる、それがAqoursである。1・3年の曲作りも、雨宿りに泊った無人のお寺、そこで雨漏りの音を聞いたことがきっかけに6人の心が1つになり、その音をもとに「My 舞 Tonaight」を完成させたのだ。その曲をきっかけに、Aqoursはラブライブ!優勝へと突き進むのだ。だが、今回は後者の方、てんてんバラバラになってしまった。こうなると、いつもAqoursのまとめ役であるダイヤも、

(これでは烏合の衆、小田原評定ですわね。なにかまとまるきっかけがあればいいのですが・・・)

と、悩んでしまう。

 が、ダイヤはふとある席の方を見た。そこには何もしゃべらないルビィがいた。

(ルビィ、どうしたのでそうか?今までに見たことがない顔ですわね。まるで何かを決めた、そのような顔ですね。ルビィ、本当に大丈夫なのでしょうか?)

と、ダイヤ、あまりに真剣な顔をしているルビィのことを心配していた。

 が、ダイヤはある光景にでくわす。それはこれまでに見たことがない光景だった。

「撮影は僕に任せてよ!!」

と、月が撮影役をかってでたそのとき、突然、

「ちょっと話があるずら!!」

と、花丸、ここでみんなの話に割り込んできた。

(さあ、おらがここでレシーブしたずら!!善子ちゃん、ルビィちゃん、決めるずら!!)

と、花丸、隣にいる少女を見る。その目線を受けてか、隣にいる少女、ヨハネが突然、

「実は私たち1年生でも話し合ってみたいの!!」

と、ここで思い切ったことを言う。

(さあ、私がここでトスをあげたわよ。ルビィ、思いっきり決めなさい!!)

と、ヨハネ、ある少女の方を見る。花丸もその少女の方を見た。

 花丸とヨハネ、2人の支援のもと、その少女は思った。

(花丸ちゃん、善子ちゃん、2人の想い、届いたよ!!・・・、絶対に決めるよ!!)

そして、ついにその少女は突然立ち上がり、みんなにこう大きな声で言った。

「ルビィたち1年生にライブの場所、決めさせてほしいの!!」

その少女、ルビィは、これまで見せたことがない、それでいて自信に満ちたような、それでいてなにかを決めたような表情で言った。これにはダイヤ、

(どうしたの、ルビィ!!あのルビィの表情、これまでに見たことがないですわ!!なんか起きたのですか!!)

と、少し取り乱してしまう。

 が、そんなルビィの決意を見た千歌、

(ルビィちゃん、なにがあったか知らないけれど、一皮むけた気がする!!なら、ルビィちゃんに任せたらいい方向に進む、そんな気がする!!)

と、思ってしまい、

「それだったら、ルビィちゃんたちに任せてみよう!!」

と、1人で勝手に決めてしまった。

 こうして、ルビィの決意表明と、それを受けての千歌の鶴の一声で、ルビィたち1年生がライブの場所というとても重要なことを決める大任を任されることとなった。

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第6話

 夕食後、ルビィとダイヤは一緒にシャワーを浴び、ベッドの上で2人仲良くほてった体を冷ましていた。そんななか、ダイヤ、ルビィに対し、

「さあ、ルビィ、髪をタオルで拭いてあげますわよ」

と言ってはルビィの濡れた髪を拭こうとする。見た目からしてルビィの髪は短そうに見えるのだが、それはルビィが髪を上げているだけであり、ルビィの髪を解くと案外長く見えるのである。なので、ルビィが髪を洗うと、いつもダイヤがルビィの髪を拭いてあげる、それがいつものことであった。

 が、今日ばかりは違った。ルビィ、すぐに、

「お姉ちゃん、ごめんね。今日はルビィが髪、拭くから・・・」

と、ダイヤがルビィの髪を拭くのを拒絶した。これにはダイヤ、

(えっ、ルビィが私を拒絶した!!こんなこと、初めてですわ!!)

と、ちょっと驚いてしまう。それでも、ダイヤ、

「大丈夫ですわよ。ルビィ、心配しないで。ちゃんといつもの通りに髪を拭いてあげますからね」

と、ルビィに優しく語り掛けるも、ルビィ、すぐに、

「お姉ちゃん、本当にごめんね。でも、これからはルビィ、自分で髪を拭くことに決めたの」

と、これまでのルビィ、お姉ちゃんであるダイヤ一筋のルビィ、とは違った答え方をする。これをきいたダイヤ、

(えっ、どうしてですの!!ルビィが、ルビィが、私を拒絶するなんて・・・)

と、これまでとは違ったルビィの反応に混乱してしまう。が、ダイヤ、すぐに心を落ち着かせ、改めてルビィの目を見る。すると、

(えっ、ルビィ、これまでに見たこともないような真剣な目ですわね。これはなにかありましたね)

と、これまでに見たことがない、しかし、何かを決めたような真剣な目つきをしているルビィを見て、ダイヤはルビィにある質問をした。

「ルビィ、いつも私がルビィの髪を拭いてさしあげているのに、今日に限って、どうして拭かせてくれないのですか?」

 このダイヤの質問に対し、ルビィ、すぐに、

(お姉ちゃん、ルビィがなぜルビィの髪を拭くことを断ったのか、それを知りたがっている。これってお姉ちゃんにルビィの決意を伝えるいい機会じゃないかな。それなら、ルビィの決意、お姉ちゃんに伝えよう!!)

と思うと、ルビィはすぐにベッドの上に正座をし、ダイヤの顔を真剣に、そして、真面目に見つめる。これにはダイヤ、

「ルビィ・・・」

と、一瞬おどけるも、すぐに、

(これは真面目なお話になりますわね。それほどルビィも真剣ですね。なら、こちらもそれ相応の対応をしないといけませんわね)

と、ダイヤもルビィに向かい合うように、ベッドの上で真剣な顔をしながら正座する。

 そして、ルビィはダイヤにこう告げた。

「ルビィ、これまでお姉ちゃんにべったりだった。いつも甘えていた。ルビィ、ずっとお姉ちゃんがいないとなにもできない子だった。けれど、これからは、ルビィ、1人でやっていく!!お姉ちゃんがいなくても大丈夫!!お姉ちゃんなしでもやっていける!!そう、ルビィは決めたの!!」

ルビィの決意、これを聞いたダイヤ、

(まぁ、ルビィったらそんなこと考えていたのですね。でも、そんなに心配しなくてもいいんですわよ。私はルビィから離れることなんてないんですわよ。ずっと一緒ですわよ、ルビィ)

と、思ってしまい、ルビィに優しく語り掛ける。

「ルビィ、私はルビィが甘えたいなら甘えていもいいと思っていますわよ。さぁ、我慢しないで、こっちにきたらどうです?」

だが、ルビィがダイヤに飛び込むことはなかった。それどころか、ルビィはダイヤにあることを告げた。

「ルビィ、これからはお姉ちゃんがいなくてもやっていけるよ。ルビィ、これまではお姉ちゃんをがんじがらめにしてきた。でも、これからは違うよ。これからは、お姉ちゃん、ルビィという大きな鎖から解き放たれて大空に自由なツバサで大きく羽ばたいてほしい、ルビィ、そう思っているの。だから、お姉ちゃんに甘えていた昔のルビィは今日で卒業。これからは1人前の女の子としてガンバルビィ、したいの!!」

 これを聞いたダイヤ、

(昔のルビィから卒業なんてこれまで考えたことなかったですわね。これからのルビィは1人で頑張るだなんて、今までのルビィからは信じられない言葉ですね。これまで私に頼ろうとしてきたルビィ。でも、これからは1人で頑張る、それを聞いただけでちょっと寂しいですわね。もっと私を頼ってほしい、もっと甘えてほしい、私はこれまでそう思っていました。それなのに、ルビィは自分の意思で私から離れようとしている。どうしてなんでしょうかね・・・)

と、なにやら寂しそうに思うと、その寂しさを感じさせながら言った。

「そうですか。ルビィからそんな言葉がでるなんてビックリですわね。でも、私としてはちょっと寂しいですわ、ルビィが私から離れようとしていることに・・・」

 だが、そのダイヤの寂しさに対して、ルビィは元気よく返答する。

「でもね、ルビィは思っているの、たとえ、これからはお姉ちゃんがいなくても1人でやっていく、お姉ちゃんなしでもガンバルビィ、できるって。でもね、これだけは忘れたくないの・・・」

これを聞いたダイヤ、

(ルビィにとって忘れたくないもの・・・)

と、一瞬考え、ルビィに、

「それはなんですの?」

と聞くと、ルビィはその答えを元気よく答えた。

「それはお姉ちゃんとの思い出!!お姉ちゃんの想い!!これまでやってきたことすべて!!そして、それで得たお姉ちゃんとのキズナ!!ルビィ、これまでお姉ちゃんと一緒にやってきたこと、経験したこと、すべて、そして、お姉ちゃんの想い、すべて、さらに、お姉ちゃんとのキズナ、すべて、すべてが大切なものに見えちゃうの!!でね、その大切なものをすべて、ルビィの胸に抱いて、これからはルビィ1人でやっていく!!だから、ルビィ、お姉ちゃんから卒業する!!でもね、卒業するとしても、お姉ちゃんの思い出、お姉ちゃんの想い、そして、お姉ちゃんとのキズナはルビィの心の中でずっと残っていくんだよ!!」

これを聞いたダイヤ、あることを考える。

(ルビィ、この旅で一皮むけたようですね。ルビィが私から卒業する、これって私もルビィから卒業することになるのかもしれませんね。ルビィがいつも私を頼っていると同様に、私もルビィに頼ろうとしていたのかもしれませんね。たとえ、ルビィが1人でできることも、私がかわりにしてあげる、こうしてルビィは私に頼ろうとしていた・・・)

そう、いつもダイヤを頼ろうとするルビィ、たとえ、ルビィ1人でもできることがあっても、ダイヤはすぐにルビィを助けようとしていた、それがルビィの成長に必要であっても・・・。こうして、ルビィは姉ダイヤなしでは生きていけない体になってしまったのだ。が・・・。

(でも、ルビィは今回の旅を通じて私から旅立とうとしている。これからはルビィ1人でがんばろうとしている。私ができること、それは・・・)

ダイヤはそう考えるとすぐにあの言葉を言った。

「ルビィ・・・、ブ、ブー、ですわ!!」

ダイヤの口癖、なにか間違いがあると大声で「ブ、ブー、ですわ!!」と全力で否定する、そんな言葉。だが、このことを知っているルビィ、おもわず、

「え、そんな・・・」

と、愕然してしまう。ルビィがこれまで築いていた自信がもろくも崩れようとしていた。

 が、ダイヤ、すぐにルビィに言った。

「ブ、ブー、ですわ・・・、この私が!!」

これを聞いたルビィ、

「えっ、お姉ちゃんが・・・」

と、ダイヤのことを心配そうに言うと、ダイヤは自分に「ブ、ブー、ですわ!!」を言った理由を答えた。

「なぜ、私に「ブ、ブー、ですわ!!」と言ったのか、それはですね、ルビィが私に依存していたのと同じように、私もルビィに依存していたからですわ。私もルビィのためにやっているように見えて、本当はルビィ1人でもできることでも、私のためだけに、勝手に私がルビィのかわりにやってしまっていたのですわ。私にとってルビィは大事な妹、だから大切にしてきたのです。けれど、本当はルビィが私を頼るように、私もルビィを頼っていたのです。だから、これまで、私は、ルビィを、私の思い通りに動かしていましたわ。でも、ルビィの今の決意、私から離れて1人でやっていく、それを聞いて気づきましたわ、私もルビィと同じようにルビィを頼っていたんだって。なら、私も決めましたわ、今日をもって私から卒業していくルビィと同様に、私も、今日をもってルビィから卒業することを!!」

これを聞いたルビィ、

(えっ、ルビィが「お姉ちゃんから卒業する」って言ったから、お姉ちゃんもルビィから卒業しちゃうの・・・)

と、少し困惑気味になったのか、

「でも・・・、姉と妹の関係は・・・」

と、姉ダイヤとのキズナについて心配になるも、ダイヤ、そのルビィの心配ごとを見透かしたかのように答える。

「ルビィ、心配しなくてもよろしくてよ。私との思い出、私の想い、私とのキズナがルビィの心の中にあると同様に、私にもルビィとの思い出、ルビィの想い、そして、私とルビィのキズナは私の心の中に深く刻み込まれておりますわ。私も、これからはそれらを大切にして、自由のツバサで大空に飛び立ちますわよ!!」

そして、ダイヤは自分の手をルビィの頭の上にのせて言った。

「そして、今のルビィを見て確信しましたわ、今のルビィは昔のルビィとは違うこと、いや、今や、ルビィは未来のAqoursを背負って立つ存在に成長したことを」

このダイヤの言葉を聞いたルビィ、感動したのか、いきなり泣きながら、

「お姉ちゃん・・・」

と、ダイヤに抱きつく。これにはダイヤ、

「あらら、昔のルビィに戻ったのですね」

と、優しくルビィの頭をなでながら言うと、ルビィ、すぐに手を引っ込め、

「ご、ごめんなさい・・・」

と、ダイヤに謝る。ダイヤ、これを見てか、

「いいんですわよ。でもね、ルビィ、これだけは約束してください」

と、最初は優しく言うも、すぐに真面目な顔をしてルビィに言う。これにはルビィ、

「?」

と、ハテナ顔になる。ダイヤ、このルビィの表情を見てか、あることをルビィに伝えた。

「ルビィ、夕食のときにルビィ自ら言ったこと、責任をもってちゃんと行動で示しなさい!!それが黒澤家たる者の責務なのですから!!黒澤家たる者に二言はありませんわ!!」

これを聞いたルビィ、自信をもって元気よく答えた。

「はい、わかっています、お姉ちゃん!!絶対に責務を果たしてみせます!!ガンバルビィにフンバルビィ、です!!」

 

 翌日・・・。

「どれもこれも良すぎて迷うずら~」

と、花丸がライブ場所を選ぶために撮ってきた写真を見て迷っていた。ルビィ、花丸、ヨハネの1年生3人は泊っているホテルの近くにあるカフェでその写真をもとにライブをする会場を決めようとしていた。が、どの場所も良すぎてしまい、花丸とヨハネは迷ってしまった。

(どの場所も良すぎるずら~。これから選ぶことなんてできないずら~(花丸))

(どの場所も堕天使の私からすれば、どこを選んでも、活躍できる!!これから選べというのが酷なこと!!ならば、逆転の発想で・・・(ヨハネ))

と、ヨハネ、ついに最後の切り札を使う。

「もういっそうのこと、全部の場所でやればいいのよ!!このヨハネのヨハネゲートで瞬間移動すれば道理のないこと!!」

が、これにはルビィ、

「それはダメだよ!!」

と、ヨハネの意見を全力で拒絶する。なぜなら、

(もし全部の場所でやったら、それで昔のルビィたちに戻ってしまう!!これまでの、ただ、千歌ちゃんたち、お姉ちゃんたちについていくだけの存在に戻っちゃう!!それに、お姉ちゃんとの約束、黒澤家の者としての責務を果たすことができなくなる!!)

と、ルビィが思ったから。全部の場所でライブを行うということはなし崩し的に決めてしまったことを意味している。これではルビィとしては、ダイヤとの約束、ちゃんとライブの場所を決める、その約束を破ること、黒澤家の者としての責務を果たさないことになる、そうルビィは判断していたのだ。また、このライブは鞠莉の今後を決める、とても重要なライブである。その鞠莉の未来を決める、その判定をするのが鞠莉‘sママなのである。もし、いろんなところでライブ・・・してしまっていたら、鞠莉’sママを引っ張りまわすことにつながり、鞠莉‘sママの判定に悪い影響を及ぼしかねない。では、いろんなところでライブを行い、それを1本の動画に編集して鞠莉’sママに見えることも・・・ちょっとそれは・・・。なぜなら、このライブは鞠莉‘sママという観客がこと前提なのである。鞠莉’sママにその編集した動画を見せたとしてもそれで鞠莉‘sママが納得する・・・気がしないのである。なので、全部の場所でライブを行うこと・・・というのは当初から無理なのである。

 が、ルビィの全力の否定にヨハネ、思わず・・・、

「じゃ、ルビィはどこがいいの?」

と、怒りながらルビィに迫る。が、そのルビィ、答えに窮したのか、

「それは・・・」

と、逆に黙ってしまい、さらに、

(どこも良すぎてルビィ1人じゃ選べないよ~。どうしたらいいの~)

と、悩んでしまう。ダイヤとの約束、責務を破るわけにはいかない、が、いい案がない、ルビィにとって八方塞り状態になる。

 が、こんなとき、花丸が1枚の写真を見て、

(あれっ、これってどこかに似ているずら。え~と、う~んと・・・)

と、何かを思いだそうとする。そして、花丸、ついに、

(あっ、あそこに似ているずら!!あそこずら~!!)

と、なにかを思いだすと、おもわず大声をあげた。

「あっ、ここってあそこに似ているずら~、・・・に!!」

これにはルビィ、おもわず、

「えっ、どれどれ!!」

と、花丸に駆け寄る。花丸はすぐに1枚の写真を手に取り、

「ここの階段ってあそこの階段に似ているずら~」

と叫ぶと、ルビィ、

「あっ、本当~だ~!!確かに似ている!!」

と、花丸の意見に同意する。

 そして、ルビィ、

(あっ、ここならいいかも!!ここなら鞠莉‘sママにスクールアイドルの素晴らしさを理解してもらえるかも。それに、千歌ちゃんたちにこれからのAqoursを指し示すなにかを見つけることにもつながるかも。いや、ここが、今からの、新生Aqoursの出発地点になるかも!!)

と考えると、すぐに、

「花丸ちゃん、善子ちゃん、今すぐここに行こう!!」

と、花丸、ヨハネを連れてその場所に行く。これにはヨハネ、

「ちょっと待って~!!ジュースが、ジュースが~」

と、飲んでいたジュースを最後まで飲むことができず、ルビィによって強引に連れて行かれたのだった。

 

「ここだ~!!」

と、ルビィは花丸、ヨハネ2人と一緒に花丸が示した写真に写っていた場所にたどり着くとすぐに大声をあげた。

「ぜ~ぜ~、ここはどこずら~」(花丸)

「やっとついた~」(ヨハネ)

と、花丸、ヨハネ、共に疲れつつも、できるだけ息を整えようとしていた。そして、

「で、ここは~?」

と、ヨハネ、連れてきた場所をルビィに聞く。すると、その横から花丸がすぐに、

「あっ、階段があるずら~。もしかして、ここって~?」

と、ルビィに尋ねると、ルビィ、すぐに2人を連れてきた場所の名を言った。

「そう、スペイン広場!!ルビィ、決めた!!ここでライブ、する!!」

そう、ルビィがライブの場所として選んだのは、美しくて大きな階段で有名なスペイン広場だった。ここは「真実の口」と同じく、とても有名な映画「○ーマの休日」でヒロインがジェラートを食べていた場所としても有名である。で、なぜ、ここにライブをしようとルビィは思ったのか、それはホテル近くのカフェでライブの場所を選ぶために1年生3人で写真を見て話し合っているとき、花丸が「なにか似ている」と指摘した(鞠莉が写っている)スペイン広場の写真をルビィが見たときだった。その際、その写真を一緒に見ていた花丸はこう言っていたのだ。

「ここの階段ってあそこの階段に似ているずら~!!そう、沼津内浦の砂浜海岸にある石階段にずら~!!」

この花丸の一言を聞いて、ルビィもスペイン広場の写真を見る。すると、ルビィ、

(あっ、花丸ちゃんの言うとおり、あの場所に似ている!!そう、あの場所、ルビィたちが最近練習していた場所、千歌ちゃん家の近くにある沼津内浦の砂浜海岸の石階段に!!)

と、驚いてしまう。そう、スペイン広場にある大階段と沼津内浦の砂浜海岸にある石階段が似ているのだ。これには、ルビィ、思わず、

「あっ、本当だ~!!たしかに似ている!!」

と、叫んでしまう。

 すると、ルビィの頭の中で、

(あっ、いいこと思いついちゃった!!)

と、妙案が思いついたみたいだった。その妙案とは・・・?

(たしか、イタリアに来る前、曜ちゃんがあること言っていたよなぁ。たしか・・・)

と、ルビィ、あることを思い出す。それは練習場が見つからず、沼津内浦の砂浜海岸で練習することになった際、千歌たち6人で練習しているときに曜が言っていたことだった。

「この砂浜はね、(スクールアイドルを千歌ちゃんと梨子ちゃんと一緒に始めたとき、)私たち2年が練習する場所がなくて、仕方なく、この砂浜で練習していたんだ。そのときに出会ったんだ、Aqoursに・・・」

この曜の言葉を思い出したとき、ルビィの頭の中では1つの答えが導かれていた。それが、

(沼津内浦の砂浜海岸、その砂浜海岸こそ千歌ちゃんたちが始めたAqoursの原点、今のAqours始まりの地、そして、すべてのみなもとであるゼロというなにもないところからの始まりの地だよね!!そうルビィは考えてしまう!!でも、それって千歌ちゃんたち、いや、Aqours全員がそう思っているかもしれない、心の奥底には・・・。なら、沼津内浦の砂浜海岸の石階段に似ているスペイン広場の石階段ですれば、千歌ちゃんたちにもわかるはず、ルビィたちはゼロに戻ってない、イチのその先へ進んでいるんだって!!千歌ちゃんたちがスクールアイドルを始めたときは千歌ちゃん1人しかいなかった。沼津内浦の砂浜海岸で練習を始めたときは千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの3人しかいなかった。でも、今は千歌ちゃんのまわりには曜ちゃん、梨子ちゃん以外に花丸ちゃん、善子ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、そして、ルビィにお姉ちゃんがいる!!それに、9人でいろんなことをやってきた!!学校の廃校を阻止しようといろんなことをした!!結局、阻止することはできなかったけど、ラブライブ!を通じて、スクールアイドルを通じて、いろんなことをやってきた、経験してきた!!Saint Snowという聖良さん、理亞ちゃんとも仲良くなった。そして、ついにラブライブ!で優勝もできた!!これらの思い出、経験、みんなの想い、そして、みんなとのキズナはどんなことがあってもなくならない!!お姉ちゃんたち3年生がいなくなったとしても、それは絶対になくならない!!ただ、千歌ちゃんたちはそれにまだ気づいていない。だから、沼津内浦の砂浜階段にある石階段に似ているスペイン広場の石階段でライブを行えば、千歌ちゃんたち2年生だけで練習を始めた、ゼロのスタート地点に戻ったんじゃない、今やAqoursは9人になっているんだ、9人でやってきたこと、経験したこと、その思い出、そして、それで得た9人の想い、キズナがあるんだって、だから、ゼロに戻ったんじゃない、イチのその先に進んでいるんだって、そう千歌ちゃんたちに気づかせることができる!!ルビィ、そう思っている!!)

そして、それを確かめるために1年生3人でスペイン広場に行くと、すぐに、

(ルビィ、スペイン広場を見て確信した!!ここでライブを行えば、千歌ちゃんたちにもルビィが伝えたいことがわかる!!そして、これからのAqoursの進む道が見えてくるはず!!)

と考えるようになり、すぐに、

「ルビィ、決めた!!ここでライブ、する!!」と、堂々とこのスペイン広場の石階段でAqoursのライブを行うことを宣言した。これには花丸、ヨハネ、共に、

(な、なんだずら~!!ルビィちゃん、今までにないくらい燃えているずら~!!こんなこと、初めてずら~!!(花丸))

(な、なんだこりゃ~!!ルビィが燃えている!!こんなルビィ、見たことない!!なにか悪いもの、食べているに違いない・・・(ヨハネ))

と、ビックリした様子。そのためか、ヨハネ、おもわず、

「ど、どうして、この場所、選んだの・・・?」

と、ルビィに尋ねる。すると、ルビィ、

「沼津内浦の砂浜海岸にある石階段に似ているから、かな・・・」

と、少しとぼけて言った。

 

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第7話

 この日の夜、千歌たちAqours9人はローマにある貸しスタジオにいた。今日からライブに向けた練習をすることになったのだ。だたし、鞠莉‘sママから示されたライブの日時までには時間がない。なので、かなりハードなスケジュールで、集中的に練習することになっていた。さらに、前回、静真高校の新年度部活動発表会で失敗し、Saint Snowの聖良・理亞の前でも失敗している。そのときのことで千歌たち1・2年生は自分たちのダンスや歌に自信をなくしているのでは、そんな心配もあった。それなのに、今回のライブは鞠莉の未来を決める重要なライブ。マイナスだらけの状況の中、失敗すら許されない、と、千歌たちはそう思えてしまっていた。

「え~、ルビィからライブの場所を発表します!!ライブする場所は・・・」

と、ルビィ、みんなの前でライブの場所を発表する。

(う~、みんな、見ているよ~。とても緊張するよ~)

と、ルビィ、慣れている人たちとはいえ、姉ダイヤを含めたAqoursメンバー8人の前で発表すること自体初めてであり、緊張していた。が、ここで緊張していたらもとのこともない。

(ここは、ここは、頑張らないと・・・。ガンバルビィにフンバルビィ~ずら~)

と、ルビィ、勇気を振り絞り、ライブを行う、その場所を発表した。

「ライブをする場所、それは・・・、スペイン広場です!!」

(言えた~、ちゃんと言えたよ!!で、みんなの表情は・・・)

と、ルビィ、おそるおそる千歌たちの方を見る。すると、全員、

ニカ~ ウンウン マル!!

と、どうやらまんざらでもない、そのような表情ばかりだった。そして、千歌がいきなり評決を取る

「ルビィちゃんの意見に賛成の人~」

すると、全員が手をあげた。これを見た千歌、

「全員一致でライブの場所はスペイン広場に決定!!」

と、大々的にライブ場所決定を宣言する。これにはルビィ、

(やった、やったよ、お姉ちゃん!!ルビィ、自分の力で成し遂げたよ!!お姉ちゃんの約束、責務を果たすことができたよ!!)

と、思い、思わず、

「やったー!!」

と、大きく喜んだ。これを見ていた千歌、

「ルビィちゃん、やったね!!」

と、ルビィの労をねぎらった。そして、ほかの1年生、花丸、ヨハネにも、千歌、

「花丸ちゃん、善子ちゃん、ルビィちゃんを支えてくれてありがとう」

と、花丸、ヨハネの労もねぎらう。が、ヨハネ、

(あれっ、私ってなにかしたかしら?)

と、頭をかしげてしまった。

 で、ここで千歌から重要なことが発表されることに・・・。

「で、みんな、ここで千歌から発表があるんだけど・・・」

と、なにか言いたそうな顔で話す千歌に対し、

「ゴクッ・・・」

と、ツバを飲み込むみんな。

「え~とね~、え~とね~」

と、なにか言いたそうにする千歌。それにより、全員の緊張が高まる。

 そして、千歌が・・・。

「え~とね~、なんだっけ?」

と、今までの張り詰めた緊張を台無しにするような一言が・・・。これには、みんな、

ドテッ

と、こけてしまう。今までの緊張を返せ!!である。

 この千歌のボケに対し、梨子が千歌のフォローにはいる。

「千歌ちゃんのボケはあとにして・・・」

これには千歌、

「ボケてないもん!!忘れちゃっただけだもん!!」

と、言い訳を言うも、梨子、

「はいはい」

と、完全に千歌のことをスルーして先に話を進める。

「でね、千歌ちゃんと私で今度のライブで歌う曲を決めたの。今度のライブ、新曲でいきます!!」

これを聞いたヨハネ、

(この前の静真高校でのライブに失敗しているのに、新曲だなんて大丈夫なのかしら・・・)

と、心配する。

 すると、千歌が新曲にした理由を真面目に(失礼?)に話し始めた。

「今回のライブは鞠莉ちゃんの未来がかかっているんだよ!!これまでの曲のほうがいいかもしれない。1度でも過去のライブでやっているからね。それにそんなに練習しなくてもいいかもしれないよ。でもね、それだと、この前の静真高校のときのライブときみたいに失敗する可能性もでてきてしまう。それよりも、今までの曲と思って安心してして練習を怠けていたら、スクールアイドルに否定的な鞠莉‘sママの心を変えることすら無理だよ!!」

これにはヨハネ、

「でも、新曲だったらなおさら・・・」

と、心配そうに言うと、千歌、すぐに答える。

「それはわかっている。むしろ、新曲にしたら時間がない今の状況のなかでやることにも限界がでちゃう。けどね、フィレンツェの時の鞠莉ちゃんの行動を見て思ったの、今までの曲じゃなく、新しい曲の方が鞠莉ちゃんの、千歌たちの想いを鞠莉‘sママにぶつけることができるんじゃないかって。だから、千歌、思わず筆をとったの。鞠莉ちゃんの想い、千歌の想い、みんなの想い、それを言葉に、詩にしたの!!」

この千歌の言葉にあわせてか、Aqoursの作曲担当である梨子からも言う。

「実は、私も千歌ちゃんと同じく、フィレンツェのときの鞠莉ちゃんの行動に触発されたみたいで、知らないうちに作曲していたの。そして、その曲と千歌ちゃんが作った詩を合わせてみたら、これまで聞いたことがない、それでいてなぜか、今の私たちにあった歌ができちゃったの・・・」

そして、千歌はその梨子の会話に続いて言った。

「でね、梨子ちゃんと2人でこの歌なら、鞠莉‘sママにも、鞠莉ちゃんの、私たちの想いをぶつけることができる、けれど、なにか足りない、そう思っていたの。そしたら、昨日、ルビィちゃんが夕食のときに言った決意表明、それから、夕食後に果南ちゃん、鞠莉ちゃんから「自分たちの想いはずっとここ(心の中)に残っている」って、言われたこと、それを聞いて、「この曲、もっといいものにできる!!」って思ってね、梨子ちゃんとこの曲をフラッシュアップしてきたの」

そう、実は千歌と梨子、昨日の夕食のあと、果南、鞠莉から「私(果南)の、ダイヤの、鞠莉の想いはずっとここ(心の中)に残っている」と言われていたのだ。それを聞いた千歌と梨子は、これまで見たことがなかったルビィの決意表明とあわせて、「これからのAqours」について少しわかった気がしたのだった。それを受けて、「これからのAqours」を見つけるため、そして、新曲をよりよいものにするため、昨日の夜、千歌と梨子は寝ないで新曲をフラッシュアップしてきたのだ。

 そして、千歌は言い終わると新曲の歌詞が書かれた紙をみんなに渡した。ルビィはその曲名を見る。

「Hop?Stop?Nonstop!!」

そして、歌詞を見る。と、同時に梨子が新曲のデモテープを流す。梨子の歌に流れてくるメロディー。これを聞いたルビィ、

(これって鞠莉ちゃんが鞠莉‘sママに伝えたいこと、いや、ルビィたちみんなが鞠莉’sママに伝えたいこと、それを言おうとしている!!スクールアイドルの素晴らしさ、スクールアイドルの無限の未来、無限の可能性、そして、ゼロに戻ったと思っているルビィたち1・2年生に対しての言葉、それを千歌ちゃんと梨子ちゃんが言いたい、そう思ってしまう。でも、千歌ちゃん、梨子ちゃん、それを無意識で作ってしまったんだね。けれど、2人が心の底から言いたいこと、それかもしれないね)

 そして、ルビィは千歌に言った。

「でも、なんでこの歌詞が書けたの、千歌ちゃん?」

これには千歌はなにも考えずに答えた。

「だって、鞠莉ちゃんのこと、ダイヤちゃんのこと、果南ちゃんのこと、みんなこと、考えたらこんな歌詞、できちゃったんだもん!!鞠莉ちゃん、千歌、そして、みんなの想い、それを想っていたら、自然と歌詞、できちゃったもん!!」

 

 そして、スペイン広場でのライブ前日まで、千歌たちAqours9人はローマの貸しスタジオで日が暮れるまで練習にのめりこんでいた。

そんななかで、ヨハネが心配していたこと、静真高校でのライブの失敗の影響についても改善が見られていた。

「え~と、ここはこうで・・・」

と、ヨハネはステップの確認をするが、なかなかうまくいかない。そんなとき、

「善子、ここはクルッとターンしてストップだよ!!」

と、ヨハネのステップについて横から教えてくれる少女が・・・。

「鞠莉!!」

ヨハネはその教えを言う少女を見るなり、その少女の名前を言った、鞠莉と。そう、鞠莉だった。鞠莉はヨハネがステップで悩んでいるのを見て、たまらず横から口をだしたのだった。

「善子がステップについて悩んでいるから、鞠莉が教えようとしたので~す!!」

と、鞠莉、いつもの口調で言うと、ヨハネ、

「あ、ありがとう、鞠莉・・・」

と、鞠莉に御礼を言うと、鞠莉の教えたとおりのステップをやってみる。すると、

「で、できた・・・」

と、ヨハネ自身驚いてしまった。ヨハネ、このとき、

(鞠莉がいるだけで安心できる。でも、3年生がいるから安心だなんて・・・。このままじゃ鞠莉たち3年生がいなくなったとき、また、静真高校でのライブの失敗を繰り返してしまう・・・)

と、心配になる。むろん、ヨハネの顔もそれにあわせてか、なにかを悩んでいる、暗い表情になる。が、これには鞠莉、

「善子、もう少し笑ったほうがいいです~」

と、ヨハネの顔に手であて、むりやり笑顔にする。これには、ヨハネ、すぐに、

「や、やめなしゃい・・・」

と、鞠莉の手をどかそうとする。すると、ヨハネに対し、鞠莉は本音を言った。

「善子、なにか悩んでいるよ~ですね!!そんな善子にアドバイスで~す!!たしかに、このライブが終われば鞠莉たちはグッバイで~す!!でも、すべてがすべて、グッバイじゃないので~す!!善子、そして、みんなの心の中には鞠莉たちと一緒に築き上げた大切なものがい~ぱい残っているので~す!!それを忘れないでくださ~い!!」

これにはヨハネ、

(私の心の中に鞠莉たちの大切なものがいっぱい残っている・・・。それって、思い出、想い、キズナ・・・?)

と、心の中で言うと、

(あれっ、なんか、私の中にあった重たいもの、曇っていたものが少しずつだけど、すっきりしてくるような気が・・・)

と、これまでヨハネの中に漂っていた不安、心配という雲が少しずつだが晴れてくるように感じられた。そして・・・。

(なんか、今だったら、ちゃんとできるかも・・・)

と、ヨハネ、今まで失敗していたステップをおもいっきり踏んでみる。すると、これまで以上に、いや、完璧にうまくできるようになった。これにはヨハネ、

(えっ、これが私のステップなの!!うそでしょ!!)

と、驚いてしまう。しかし、それは本当であった。ヨハネにとって鞠莉の一言は自分のカンフル剤になった、そう思えるものだった。

 

 一方、花丸はというと、Aqours全員でダンスを合わせるとき、

(あれっ、なんかテンポが1つ遅れるずら~)

と、花丸、みんなとテンポが1つ遅れてしまうことを悩んでいた。

それを遠くから見ていたメンバーが・・・。

「あれっ、花丸ちゃんが悩んでいる。ここはダンスが得意な私の出番、かな?」

と、言うと、その全体ダンス練習のあとの休憩中、すぐに花丸に近づき、

「花丸ちゃん!!なにか悩んでいるのかな?」

と、花丸に気づかれずに近づき、いきなり、暗い表情の花丸の顔の前にあらわれる!!それには花丸、

「ずら!!」

と、驚くも、すぐに、

「うぅ、誰ずら・・・、と、思えば、果南ちゃんずら・・・」

と、花丸の顔の前に突然あらわれた少女が果南であることにほっとする。

その果南、花丸の目を見て、一言。

「なにか悩み事かな?」

と、花丸の悩みに相談にのろうとする。これには、花丸、おもわず、

「果南ちゃん、そうずら。果南ちゃん、聞いてずら~」

と、果南に相談することを告げると、果南、

「なにかな?」

と、花丸の悩み事を聞こうする。すると、花丸、果南に悩み事を打ち明ける。

「実は、ダンスのとき、みんなとワンテンポ遅れてしまうずら~」

すると、果南、いきなり、花丸の額と自分の額をくっつけてこう言った。

「みんなとワンテンポ遅れちゃう?なんでかな?」

この果南の質問に、花丸、

「おいら、みんなと比べて体力がないずら~。体力がないからみんなとダンスを合わせることができないずら~」

と、答えると、果南、意外なことを言った。

「花丸ちゃん、そんなに体力がなかったかな?これまでのライブ、ずっと、みんなと合わせることができたじゃない。それなのに、今回だけ、体力がない、なんて、どうしてかな?」

これには花丸、

「これまではみんながまるにあわせてくれたからずら。でも、今回はみんなと合わないずら~。やっぱりおらは体力がないからずら~」

と、言い訳じみたことを言う。ただ、これを聞いた果南、花丸にあるアドバイスを送る。

「花丸ちゃん、そんなに自分のことを卑屈に考えない方がいいよ!!体力がない、それでいいじゃない!!体力がなければそれに合わせたことをすればいいんだよ!!それにね、これまで、花丸ちゃんにみんなが合わせてきたんじゃないんだよ。花丸ちゃんの頑張り、みんなの頑張り、そして、みんなとのキズナがあったからこそ1つにまとまり、それによってライブも大成功をおさめてきたんだよ!!だからね、花丸ちゃん、自分を卑屈に考えないで!!花丸ちゃんが合わなければ、みんながきっと合わせてくれる!!そして、花丸ちゃんの頑張りにみんなが触発されて、みんなの頑張りもあがっているんだよ!!」

だが、この果南のアドバイスを聞いても花丸の顔は晴れなかった。さらに花丸、言い訳を言う。

「けれど、それは果南ちゃんたち3年生がいたからずら。果南ちゃんたちがいないと千歌ちゃんたちみんな、余裕がなくなって、おらと合わせることができないずら・・・」

が、果南、これについて、花丸になにかを守るように言った。

「花丸ちゃん、たとえ、私たち3年生がいなくなっても残るものはあるんだ。それはね、私たちと一緒にやってきたこと!!その経験!!思い出!!私たちの想い!!そして、キズナ!!それが心の中でずっと残っていればきっと大丈夫だよ!!だって、それがあれば、みんな、また頑張ることができるんだからね!!」

そして、果南は花丸にあの言葉を送る。

「ねぇ、花丸ちゃん、ハグ、しよう!!」

この果南の言葉を聞いたか、花丸、自然と果南に抱きつく。果南も花丸に抱きつき、ハグ、した・・・。すると、花丸の心の中に曇っていた不安、心配といったものがどんどん晴れていく、そんな気がした。

(なにか起こっているずら!!果南ちゃんとハグしたら、なにか、心の中にあったもやもやがどんどん消えていくずら~)

花丸、そう思うと、ハグしたまま、果南に、

「なんかスッキリしたずら!!果南ちゃん、ありがとうずら!!」

と、御礼を言った。

 そんなとき、

「さあ、練習を再開しますわよ!!」

と、ダイヤの練習を再開する言葉が飛んでくる。花丸、すぐに手をほどき、新曲のフォーメーションの自分の位置に戻る。

「さぁ、休憩前と同じ、全体ダンス練習、いきますわよ!!」

と、ダイヤの一言で休憩前と同じ全体ダンス練習をする。花丸、

(今度は大丈夫?なのかなずら~)

と、少し心配する。

が、いざ、みんなと一緒にダンスをすると、

(あれっ、みんなとテンポが合っているずら~)

と、花丸がすぐにわかるほどみんなとテンポがあっていたのだ。これには花丸もビックリしていた。そして、

(果南ちゃんのハグパワー、凄いずら~)

と、なぜか果南のハグパワーに感心していた。

 

 こうして、短いけど、とても充実した練習の日々をやってきた千歌たちAqours9人。練習していくうちにこれまでのAqours、いや、それ以上のAqoursになっていくと千歌たちは感じていた。

 そして、ついにライブ当日!!スペイン広場を鞠莉の財力(これまで残っていたお金全部!!)で1日中貸しきることに成功!!そして、午前中に最終リハーサルをした千歌たちAqours9人は午後からのライブ本番を残すのみとなった。

 そんななか、千歌はSaint Snowの聖良にメールを送ることに。

「え~と、「このあと、イタリアローマのスペイン広場でライブを行います。この前(イタリア出発前の聖良・理亞の前で見せたもの)の失敗はないと思います。イタリアでの旅行、ダイヤちゃんたち3年生との再会、それを通じてわかったこと、それをこのライブでぶつけたいと思います。絶対に見てください」っと」

千歌はそう打つと、聖良にメールを送った。

 

 そして、日本、北海道、函館、深夜、千歌が聖良にメールを送ったそのとき、聖良はお風呂からあがっていた、そんなときだった。

プルル・・・

と、聖良のスマホから呼び出し音が聞こえてきた。

「あれっ、誰かしら?」

と、自分のスマホに送られてきたメールを確認する聖良。すると、突然、

ドタバタ

と、廊下を聖良は走っていく。目的地は理亞の部屋。

バタンッ

聖良は理亞の部屋の扉を開くとすぐに理亞に告げた。

「理亞、これから千歌たちがローマでライブを・・・」

だが、そんな聖良が言いかけたそのとき、聖良はあることに気づいた。そして、聖良は言った。

「理亞・・・」

このとき、理亞の身になにが起きていたのか。が、この話は近いうちに語ることになるだろう。

 

 一方、ローマのスペイン広場では・・・。

「忙しい私が来たので~す!!もし、絶対くだらないものを見せたらただじゃすまないので~す!!」

と、スペイン広場の石階段前には鞠莉‘sママが仁王立ちで立っていた。そのまわりにはなにかのライブが始まると思った観光客、ローマ市民たちがかけつけていた。

 そして、ついにそのとき、スペイン広場でのライブ、鞠莉の将来、そして、これからのAqoursを占う意味でも重要なライブ、そして、これが、果南、ダイヤ、鞠莉にとって最後になるであろうライブが始まった。

 

 そのライブの途中、

(やっぱり、3年生がいると落ち着くずら~。でも、この前の果南ちゃんの言葉で知ったずら!!もうなくなるものはないずら!!きっと大丈夫ずら!!(花丸))

(ふふふ、このスペイン広場にはこのヨハネが最大限に活動できるほどの魔力が満ちているぞ!!それに、鞠莉たち3年生というリトルデーモンもいる!!だからこそ、今や、ヨハネは無敵なり!!鞠莉が言っていたあの言葉、このライブで実感しておるぞ!!さあ、ヨハネの名のもとにここに宣言するぞ!!ヨハネ、これから先も、きっと、大丈夫、だぞ!!(ヨハネ))

と、花丸、ヨハネ、共に静真高校のライブの失敗のときとは違い、いや、今まで以上の歌やダンスを見せていた、そう、まるでなにかに安心しているように、いや、元気いっぱいに史上最高の笑顔をしながら。

 一方、ルビィはというと・・・。

(今、お姉ちゃんたちと一緒に踊っている!!歌っている!!今までやってきたこと、その思い出、みんなの想い、そして、みんなとのキズナ、この場所で、このときを、みんなと感じている!!そして、それはずっと続く・・・。それは決してもとに戻ることはない!!あっ、そうか、そうなんだね、月ちゃん!!月ちゃんが(「真実の口」のところに一緒にいったときに)言っていた一言、「旅立つことはゼロに戻るわけじゃないよね」、それって、今、このとき、この場所で実感している、ルビィ、そんな気がする・・・)

と、ルビィ、月の一言について考えていた。月が言った一言、それにより、ルビィは昔の内気な少女から1人前の女性へと生まれ変わることができたのかもしれない、その一言、それをこのライブで実感できること、それがルビィにとって嬉しいことかもしれない。

 そして、ライブはついにサビのところへと進む。鞠莉のソロに入るとき、ダイヤは一段下にいるルビィに向かって、

(おいで、ルビィ、私の大切な妹!!)

と、手を上にあげ、ルビィを招くよう「おいで、おいで」のポーズをする。前日までの練習でもここについてはルビィとダイヤ、2人で練習していた。が、それは平坦なスタジオでの話。それはダイヤにとっても、ルビィにとっても、単なるダンス練習だと思っていた。午前中の最終リハーサルには全体のダンスの流れを確認する、それだけだった。が、今回は違った。

(おいで、ルビィ!!)

と、なんども心の中でルビィを呼ぶダイヤ、それに、ルビィ、

(はいっ、お姉ちゃん!!)

と、ルビィはダイヤに近づく。そのルビィ、ついにダイヤのいる階段へと昇る!!

 そんなときだった。ダイヤはある感覚に襲われる。それは・・・。

(ルビィが、ルビィが、まるで1人前の女性に見えてきました。どうしてでしょうか・・・)

ダイヤのもとに駆け上ってくるルビィの姿を見て、ダイヤ、まるでルビィが1人前の女性に生まれ変わろうとしている、そう感じていたのだ。人は階段を昇る、それについて、あるたとえがある。「大人の階段を昇る」別にいやらしいことじゃない。人は人生という階段を1つずつ昇ることで子どもから大人へと変わっていく。ルビィはダイヤにとって、世話がかかる大事な子ども、もしくは、ダイヤにべったりの大切な子ども、いや、妹、だったのかもしれない。が、ルビィはAqoursの活動を通じて一段ずつ大人の階段を昇っていった。そして、今、このライブで、スペイン広場の石階段を昇ることで、ルビィはただの子どもからとても頼りになる大人の女性に変貌したのかもしれない、ダイヤにはそう感じていたのかもしれない。

 そして、ダイヤはこの不思議な感覚を感じつつも、それを踏まえた上で、ルビィに対して心の中で言った。

(ルビィ、あなたはこれまでいろんなところでいろんなことを経験してきたのですね。そうすることで、私の知らないところで着実に大人の階段を昇ってきたのですね。そして、今、ルビィは最後の会談、それを昇りきったのですね。もう、私は必要ありませんね。それほどルビィは1人前の女性として、私に頼らなくてもなんでもできる、そんな、1人前の女性になったのですね。それが実感できて、私、嬉しいですわ!!)

このダイヤの心の声と共に笑顔でルビィを迎えいれる。

 一方、ルビィも、

(この階段を昇ればお姉ちゃんと同じ1人前の女性になれる!!もうお姉ちゃんに頼らなくてもいい!!どんなことでもルビィ1人でできる!!そんな感じがする!!)

と、心の中でこう叫びつつもダイヤの待つ石段に昇る。

 が、こんなとき、ルビィにある思いが襲い掛かる。

(でも、よく考えたら、このライブはお姉ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃんにとってルビィたちと一緒に踊れる最後の機会になるんだよね・・・。もう、お姉ちゃんたちと一緒に踊ることはない!!それってなんか悲しい気がする!!お姉ちゃんたちとの最後のライブ、そんなの嫌!!お姉ちゃんたちとずっと楽しんでいきたい!!これからもずっとお姉ちゃんたちと一緒にスクールアイドル活動、したい!!)

と、昔のルビィ、内気で、小心者で、姉ダイヤに頼ってしまうルビィに戻ってしまう。そして、ルビィ、少し躊躇してしまう。ルビィはたしかに「真実の口」の一件以来、まるで生まれ変わったかのように自分の意思で、自分の考えで行動していた。それはその一件でルビィは大切なことに気づいたからだった。が、人は実際に最後の機会であると思うと、ずっとこれが続いてほしい、もっとこの状況が続いてほしい、もっと一緒にいたい、そんな思いが強くなってしまうものである。そして、ルビィにおいてもそれが発生した、それはまるで昔の泣き虫ルビィに戻ったかのように・・・。

 が、そんなルビィにある少女の声が聞こえた。

「ルビィちゃん・・・、ルビィちゃん・・・」

これにはルビィ、すぐに、

(あっ、月ちゃんの声だ・・・)

と、月の声だと気づく。ただ、月は今、ライブの撮影の真っ最中だった。が、

「ルビィちゃん、思い出して、僕の言葉を・・・、あのとき僕が言った、あの言葉を・・・」

と、ルビィには聞こえる。どうやら、ルビィの心の中にだけ聞こえているようだ。そして、ルビィの心の中に月のあの言葉が聞こえてきた。

「ルビィちゃん、僕が「真実の口」で言った言葉、覚えている?「ルビィちゃん、旅立つことはゼロに戻るわけじゃないのよね!!」それから、僕、ルビィちゃんに仲間がいるって、言ったよね。」

これにはルビィ、

(あっ、思い出した・・・、月ちゃんの言葉、その続きを・・・思い出した・・・)

と、その月の言葉の続きを思い出す、それは・・・。

「そしてね、その仲間を通じてあるものを得たはずだよ!!ルビィちゃん、それはね、Aqoursというみんなとの思い出、みんなの想い、そして、Aqoursを通じて得たキズナ、だよ!!でもね、人というのはね、実際に自分たちの仲間が旅立つんだと思うと、残った人たちは再スタート、つまり、今までのことはすべてなくなり、また最初から、ゼロに戻った、もとに戻った、そう感じちゃうんだ。イタリアに来る前、ルビィちゃんたちもなにもかもがなくなった、そんな気がしたかもね。でもね、僕、声を大にしてルビィちゃんたちに言いたいよ、大事なことを忘れちゃだめだよ、って。で、僕が言いたいこと、それはね、これまでやってきたことすべてが僕たちの心の中に残っていることなんだよ!!だって、たとえ僕たちの仲間が旅立とうとしても、旅立つ人たちと一緒にやってきたこと、築き上げてきたこと、その思い出、その想い、そして、それで得たキズナはね、残った人たち、そして、旅立つ人たちの心の中にずっと残るものなんだよ。さらにね、旅立つ人たちと一緒に暮らした地、思い出の地もずっと残っている。そう考えると、自分たちの仲間が旅立つ=ゼロに戻る、それ自体間違いだと思うんだよ。それよりも、僕たちや旅立つ人たちが一緒になって経験したこと、やってきたこと、それがみんなの思い出となり、みんなの想いへとつながり、みんなとのキズナへと変わっていく、そして、それらは僕らにとって宝物になっていく。その宝物は、たとえどんなことがあっても、なにがあっても壊れることはない。むしろ、僕たちは、たとえ、どんなに離れていても、その宝物を通じてずっと、永遠に、つながっている!!だからこそ言える!!ゼロなんか戻ったりしない!!ゼロからイチへ、その先の未来へ、僕たちは、いや、みんなは、宝物を通じて、一緒にその先へと進んで行ける、虹の先にある、未来という新しい輝きに向かって!!っと、僕はそう想うよ!!」

この言葉を思い出したルビィ、

(そうだよ!!お姉ちゃんたちは旅立つ、このライブをもって。お姉ちゃんたちはスクールアイドルを卒業する!!けれど、それですべてがなくなったたりしない!!ゼロに戻ったりしない!!)

と、自分を鼓舞する。

 そして、ルビィはダイヤの手を握って階段を、大人の階段を、昇る!!すると・・・。

(そして、今、この場所でお姉ちゃんたちと一緒に踊っている!!これも思い出として、ルビィの、みんなの心の中にずっと残っていく!!これまで、お姉ちゃんと一緒にやってきた、お姉ちゃんもルビィも大好きなスクールアイドルとしての、Aqoursとしての思い出と一緒に!!そして、それによって得られたみんなの想い、キズナ、それらすべて、ルビィたちの心の中に宝物として残っていく!!さらに、その宝物があるからこそ、お姉ちゃんと、みんなと、ずっとつながっていける!!その先へと進めることができる!!)

と、ルビィの心の中になにかを確信するような気持ちが生まれる。それにつれて、ルビィの顔には自信をにじませるような表情をすると、ルビィ、あることに気づく。

(あっ、だから、月ちゃん、ルビィにアドバイス、してくれたんだ。静真高校のライブに失敗したとき、ルビィたち、あの広いステージで、お姉ちゃんたちがいないことで、ゼロに戻った、なにもかも失った、そんな錯覚を起こしていたんだ。それによって、不安、心配という海、泥沼に陥ってしまった。特に、ルビィが1番陥っていたんだね。でも、月ちゃん、ルビィたちと一緒にいるうちにその海、泥沼に陥っていることに気づいたんだね。そして、ルビィを「真実の口」に誘って、あることを悟らせたんだね、たとえ、お姉ちゃんたちが旅立ったとしてもゼロには、もとには戻らない、お姉ちゃんたちとの思い出、想い、キズナ、それがルビィたちの心の中に宝物として残っていて、それを通じてずっと、どんなに離れていても、どんなことがあっても、Aqoursと、みんなとつながっている、そして、その宝物は、0から1、10、100、10000、10000、いや、無限大数以上の、その先の未来へ、みんなと一緒に進むための原動力になる、って。だから、ルビィたち、それを糧にガンバルビィ、しちゃうんだから!!)

 そして、ルビィはそのままダイヤとハイタッチを交わすと、千歌たちの方を見渡し、あることを想う。

(で、千歌ちゃんたち、ルビィの言いたいこと、気づいてくれたかな?このスペイン広場の石階段、実は千歌ちゃん家の近くにある沼津内浦の砂浜海岸にある石階段に似ているんだよね。そう、その場所こそ、今のAqours原点の地、スタートの地、すべてのみなもとであるゼロの地。その場所でルビィたちAqours9人が今、まさに踊っている、歌っている。それによって千歌ちゃんたちにも伝わるはず。昔みたいに、Aqoursが千歌ちゃんだけ、もしくは、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの3人だけ、ゼロの状態じゃない!!今、ルビィたちは9人、いる!!千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、それに、花丸ちゃん、善子ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、ルビィにお姉ちゃん!!今のAqoursは9人いるんだ!!そして、この9人で今までいろんなことをしてきた、やってきた!!みんなの思い出、みんなの想い、みんなとのキズナ、その宝物がある!!0の地でルビィたちがライブをする意味、それは、千歌ちゃんたちに、昔みたいにゼロじゃなく、ルビィたち9人がいること、そのルビィたち9人には思い出、想い、キズナ、いっぱい、いっぱい、宝物として残っている、そのことを自覚してもらうこと!!そして、たとえ遠くに離れていても、その宝物を通じて太くてどんなことでも切れることがないキズナという糸でずっとつながっている、その先へと進めることができる、そう感じてもらうこと!!千歌ちゃん1人じゃない!!ルビィもいる!!みんなもいる!!だから、千歌ちゃん、そして、みんな、それに気づいて!!ルビィ、そのためにも、笑顔で、精一杯、ガンバルビィするよ!!)

このルビィの想い、それがルビィの笑顔、元気いっぱいのダンス、歌、それにあらわれるようになった。それが良い意味でAqours全体に波及していく。Aqours9人全員が笑顔で、元気いっぱいに踊り歌う。それは、あの静真高校のライブのときみたいに不安と心配の海、泥沼に陥ったときのAqoursではない、本当のAqoursの、いや、今まで以上の、あのμ‘s以上のスクールアイドルグループAqoursの姿だった。その、スクールアイドルとして大切なもの、楽しく、元気よく、そして、笑顔で踊り歌う、それを体現したAqoursの姿、それにより、Aqoursのライブを見に来てくれた観光客、ローマ市民、そのすべてがAqoursを応援するだけでなく、自ら、楽しく、嬉しくなっていった。そのためか、観光客、ローマ市民から、「頑張れ~!!」「なんか楽しくなってきたぞ!!」「ワクワクします!!」などといった言葉が英語、イタリア語、フランス語、ドイツ語、などなど、スペイン広場に駆け巡ろうとしていた。この様子を遠くから見ていた鞠莉’sママ、思わず、

(う、うそでしょ!!鞠莉が言っていたスクールアイドルってこんなにものすご~い影響力を持っているのですか!!そんなの、信じられませ~ん!!でも、信じざるをえないですね~。だって、鞠莉たちを応援する声、どんどんビッグになっているのですから・・・)

と、驚愕の表情でもって受け取っていた。さらに、鞠莉‘sママ、歌の歌詞にもあるものを感じる。

(鞠莉、いや、鞠莉たちみんな、自分たちの意思で、自由なツバサで羽ばたこうとしているので~す!!それがたとえどんなことがあっても、なにがあっても、みんなの力でやろうとしているので~す!!これ、聞いてしまいますと、鞠莉‘sママ、観念するしかないで~す!!だって、鞠莉’sママが用意した鳥かごでは、Aqoursという仲間たちのなかで大きく成長した鞠莉という鳥を束縛すること自体、絶対に無理、なんですからね~!!)

そして、鞠莉‘sママはあることを決めた・・・。

 



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Ruby’s Determination(ルビィの決心) 第8話

 そして、曲が終わり、同時にライブも終わった。その瞬間、

ヒュー パフュパフュ ブラボー

と、Aqoursのライブを見て感動を覚えた観光客やローマ市民、いや、観客たちからはみなスタンディングオベーションでAqoursみんなを称えていた。

 そんななか、ダイヤはルビィのところに行く。それにはルビィ、

(お姉ちゃん・・・)

と、少し緊張してしまう。だが、それは杞憂に終わった。ルビィの前に立つダイヤ、そこから出た言葉が・・・。

「もう・・・、ルビィはなんでもできるのですね、なんでも・・・」

そう、ルビィを褒める言葉だった。あのルビィがダイヤがいるところまで階段を昇ってくるとき、ルビィはただの子どもから1人前の女性へと生まれか変わった、そうダイヤは感じたからでたダイヤの言葉だった。これを聞いたルビィ、

(お姉ちゃんから、1人前の女性になったこと、認められた!!やった~!!)

と、とても嬉しくなった。

 

 そして、ついに鞠莉‘sママによる評決のときがきた。この評決で鞠莉の未来が決まる!!鞠莉を含めてAqours9人みんな緊張している。

 そんななか、ついに鞠莉の目の前に鞠莉‘sママが立つ。すると、鞠莉は、

(これで私の未来が決まるので~す!!でも、もう悔いはありませ~ん!!ダイヤと、果南と、そして、千歌たちと一緒に一生懸命やったので~す!!もし、これでダメでも大丈夫で~す!!だって、私には、ダイヤ、果南、千歌たちみんなとの思い出、みんなの想い、そして、キズナがあるので~す!!それさえあれば、きっと、どんなことがあっても、やっていけるで~す!!でも、これだけはママに言いたいで~す、鞠莉の、鞠莉が言えるママへの最後の反抗を!!)

と、鞠莉、そう想うと、鞠莉‘sママに最後となるであろうママへの反抗を、自分の想いをぶつけた。

「パパとママが私を育ててくれたと同じように、Aqoursが、みんなが、私を育ててくれた!!(私にとって)なに1つ手放すなんてできない!!」

 これを聞いた鞠莉‘sママ、

(そうなんですね~。鞠莉はママとパパが育ててくれたのと同時にハグ(果南)とデスワ(ダイヤ)、そして、その仲間たちからも育ててもらっていたのですね。ママの知らないところで鞠莉は元気よく楽しく育っていた、そして、それが、このライブで、鞠莉たちは楽しいところ、元気なところを遺憾なく発揮していたので~す。結果、鞠莉たちを知らない観客のみんなを楽しく、元気にさせていた、それに感動した観客たちが鞠莉たちを応援してくれたのですね!!スクールアイドル、なんて恐ろしいほどの影響力を持っているのですね~、見ているみんなを元気に、楽しくさせるほどの!!そう考えると、ママ、間違っていました。スクールアイドルはくだらない、そのために鞠莉は堕落した、そうママは思っていました。が、それ自体が大きな間違いでした~!!本当はその逆でした!!鞠莉はママの思っていたこと以上の、ほかとは比べることすらできない、本当の1人前の大きな女性になっていたのですね~、スクールアイドル活動を通じて、そして、ハグとデスワ、そして、その仲間たちのおかげで・・・)

それを確信した鞠莉‘sママ、何も言わずに鞠莉のもとを去っていった。しかし、その顔には笑顔が、いや、鞠莉の成長を心から喜んでいる、そのような表情だった。

 

 こうして、ライブは大成功、それに鞠莉‘sママの凍りついた心すら溶かすほどの大成功を収めた。千歌たち、ともに大バンザイ!!そんななかでライブは終了した。

 そして、ライブ終了後、千歌はルビィ1年にあることを尋ねた。

「なんで、(ライブ会場に)スペイン広場を選んだの?」

これは花丸、すぐに、

「なんか、スペイン広場の石階段が、沼津(内浦)にある(砂浜)海岸の石階段に似ていたからずら!!」

と答える。これには千歌、

「スペイン広場の石階段と沼津内浦の砂浜海岸の石階段が似ている・・・。うん、なるほどね・・・」

と、なにかわかったような感じで答えていた。

 

 そして、ライブは大成功だったので、残った時間をローマの自由観光に使おう、ということで千歌たちは解散となった。そんななか、

「ルビィちゃん、ちょっといい・・・」

と、1人で歩いているルビィを呼び止める少女がいた。それにルビィ、

「誰、ルビィをよんだのは?」

ち、ルビィ、うしろを振り返ると・・・。

「あれっ、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん・・・、それに・・・、お姉ちゃん!!」

と、今さっき別れたはずの千歌、曜、梨子、それに姉のダイヤが立っていた。それに驚くルビィ。

 そして、千歌はあることを言った。

「なぜ、スペイン広場をルビィちゃんがライブ会場に選んだのか、なんかわかった気がする!!」

これにはルビィ、

「なにがわかったの?」

と、千歌に尋ねる。すると、千歌はその答えを言った。

「それって、千歌たちに、ルビィちゃんが言いたいこと、伝えたいことを気づかせるためだったんでしょ!!」

この千歌の答えにルビィ、

「え~、なんでわかったの・・・。で、その言いたいこと、伝えたいことってなに?」

と、逆に千歌に尋ねる。だが、そのルビィの問いに対し、千歌、

「え~と、え~と・・・」

と、なにかを言いたそうに言うと、ルビィ、

「うんうん!!」

と、関心をもって千歌の答えを待つ。が、その千歌、

「え~と、え~と、何だっけ?」

と、いきなり、(大マジで)ボケてしまった。これにはルビィ、

ガクッ

と、こけてしまう。そのためか、ルビィ、千歌に対して、

「期待させないでよ、千歌ちゃん!!」

と、千歌に怒ってしまう。

 が、そのかわりに曜が答えた。

「本当にわかっていない?千歌ちゃんに代わって私が言うけど、たとえダイヤちゃんたち3年生が旅立ったとしても、ゼロに戻ったわけじゃない、それを伝えかったんでしょ!!」

これにはルビィ、

「す、凄い!!的確な答え・・・」

と、曜の答えに驚いてしまう。曜はそれについて詳しい説明をした。

「沼津内浦の砂浜海岸、そこは私たち2年生がAqoursを始めた地、つまり、ゼロの地、最初のスタートの地、そして、本当の原点。で、私たちはイタリアに来る前、ダイヤちゃんたち3年生が卒業し、廃校などで練習場所をなくし、しかたなくそこに戻ってしまった。またゼロに戻った、なにもかもう失った、そう、私たち新生Aqours6人は全員そう思っていた。だから、私たちはみな、不安、心配といった海、泥沼に深く沈みこんでしまい、結果的に静真高校でのライブ、そして、聖良さんたちの前では失敗してしまった・・・。それが私たちがイタリアに来る前の状況だった」

と、なぜか、ここで千歌が、

「0に戻った・・・」

と、がっかりしちゃう。が、すぐに曜はそんながっかりしている千歌のため?か、その続きを話し始める。

「でも、イタリアでの鞠莉ちゃんがらみの騒動、そして、今日のスペイン広場でのライブでみんな気づいたんだ、0に戻ったわけじゃない、0の地、沼津内浦の砂浜海岸にある石階段に似ているスペイン広場の石階段で、私たちAqours9人はライブをした、それは私たち2年生だけの昔のAqoursじゃない、本当のAqours9人で行ったんだって。このこと自体に意味があるんだよね!!私を含めてみんな、0の地で、全力でライブをした!!そう、今のAqoursの原点、私たち2年生3人が始めた、そのときとは明らかに違う!!私たちAqours9人で、全力でライブを行った!!それを意味するものとは・・・」

この曜の答えを受けて、今度は梨子が答える。

「曜ちゃんが言いたいこと、それは、0の地で、みんなと、それもAqours9人で楽しく、元気に、全力でライブをした、いや、いろんなところでAqoursとして一緒に頑張ってきた、そのことによって、私たちの心の中にいろんな思い出、みんなの想いが積み重なっていき、さらに、それによってみんなと、いろんな人たちと深いキズナを結ぶことができた。その宝物は、たとえダイヤちゃんたち3年生が旅立ったとしてもずっと残っていく、私たちの心の中に!!ルビィちゃん、それを伝えようとライブ会場にスペイン広場を選んだんでしょ!!」

 この曜と梨子の答えにルビィ、

「そうだよ。その通りだよ!!」

と、元気よく言うが、すぐに、

「でも、もっと大切なこと、忘れているよ!!」

と、曜と梨子に言う。これには梨子、

「それって何かな?」

と、ルビィに尋ねる。これにルビィ、元気よく答えた。

「それはね、たとえお姉ちゃんたちが旅立っても、思い出、想い、キズナ、それらがいっぱい詰まった宝物を通じて、見えないけど、とても大きくて太いキズナという糸でずっとつながっていること!!だからこそ言える!!0に戻ったわけじゃない!!なにも失っていない!!むしろ、大切な宝物がルビィたちの心の中にいっぱいある!!それを通じてとてもずっとつながっている!!ルビィたちは1人じゃない!!まわりには千歌ちゃんたちが、旅立つお姉ちゃんたちが必ずいる!!どんなことがこれから起こっても、なにがあろうとも、ルビィたちの心の中にある宝物、そのキズナという糸は切れることなんてない!!むしろ、その先の未来へと一緒に進めることができる!!そのことが、新生Aqoursにとって大切なことだ、と、ルビィは思っているよ!!」

 このルビィの答えを聞いたダイヤ、

「まさか、あのルビィがこんなに大きく成長しているなんてビックリですわ。これで私もようやく自由なツバサで飛び立つことができますわね」

と、涙を流しながら喜んでいた。

 が、このとき、ずっと、ただ呆然と聞いていた千歌の目が変わった。

「ずっとつながっていく、先に進めることができる・・・。ピ、ピカンッ!!」

と、千歌、突然、奇声をあげる!!これにはルビィ、ダイヤ、ともに、

「「ピギッ!!」」

と、驚いてしまった。ただ、そのことはおかないましに、

「つながっていく・・・、その先へと進んでいける・・・、あっ、なにかわかったような気がする!!」

と、千歌、なにかわからないようなことを言い出すと、すぐに、

「千歌、今から部屋に籠もって書いてくる!!」

と、言い残して、自分の部屋に戻っていた。

 だた、これを見ていた曜、

「これはなにかいいことをひらめいた、そんな予感がします!!」

と、千歌になにか期待するかのように言うと、梨子も、

「それもそうですね。だからこそ、千歌ちゃんについてはほっといていいかも。それよりも、私たちは新生Aqoursとしてできること、しましょう!!」

と、ルビィに言うと、ルビィ、

「うん、そうだね!!」

と言って、自分たちが新生Aqoursとしてできることをしにその場をあとにした。

 これを見ていたダイヤ、

「これでようやく千歌さんたち新生Aqoursも軌道にのれるってものですね・・・」

と、まるでみんなのお母さんのような目で微笑んでいた。

 

 こうして、イタリアで、残された時間を使い、千歌たち6人は新生Aqoursとして今、自分ができることをやろうとしていた。千歌はできる限り自分の気持ち、Aqours9人全員の気持ちを代弁するかのごとく詩を次々と書いていく。ルビィ、花丸は新生Aqoursがステージで着る衣装の生地を探しに町中の布屋さんめぐりをしていた。曜とヨハネは新しいステップを身につけるため、ローマの現地ストリートダンサーのもとを訪れていた。そして、梨子は音楽の知識、認識を広げるために日夜イタリア各地で行われるコンサートを巡っていた。それは、今までのAqoursでは見られなかった、新生Aqours、そのものを自分たちの手で作っていく、成長させていく、そんなふうに、ダイヤたち3年生からは見られていた。

 

 そして、イタリアから帰国した千歌たちAqours9人と月、だったが、あの分校でのヨハネとヨハネの前世を知る者(ヨハネの中学のときの同級生のこと。中学のときのヨハネの素行を知っている同級生によって自分の素行をほかの人にばらしてほしくないと思ったヨハネはわざと浦の星に入学した。一方、同級生たちは静真高校に入学し、ヨハネの思惑は叶った、はずだった。なぜなら、今、浦の星と静真高校は統廃合することになり、もとの鞘に納まろうとしていたのだ!!)との邂逅・・・は、大変申し訳ございませんが、この物語では完全スルーでお願いします・・・。

 と、ここで・・・。

「こらぁ!!なんで、完全スルーなの!!ちゃんと書いてよ~、作者!!」

と、ヨハネの横からのツッコミ。これには作者、

「ごめん、この物語、あまりに長すぎて、それ書く余裕、なくなっちゃの・・・」

と、ヨハネに謝罪。これにはヨハネ、

「それでも、ちゃんと書いてよ!!」

と、作者に向かって怒ってしまう。

 というわけで、作者、

「そのかわり、ほかの物語で書いてあげるから、許して、ヨハネちゃん・・・」

と、かわりの提案をヨハネにする。これにはヨハネ、

「まっ、それならいいけど・・・。必ず書いてよね、ヨハネの物語・・・」

と、ツンからのデレを見せながら言った。

 

 で、そのことはあとにして・・・、千歌たちは新生Aqoursとして再び羽ばたかせるため、そして、自分たちの力で静真高校の分校問題、そう、浦の星との統廃合により、部活において、浦の星の生徒が入ることで起きるであろう、浦の星の生徒と静真高校の生徒との対立、部活内の士気低下など、そういった部活への悪影響なんて発生しないことを、浦の星との統廃合に反対している父母たちに教えるため、沼津駅前で新生Aqoursとして初めてのライブ、浦の星の生徒たちと一緒に初めて作り上げるライブを開催することを決意する(といっても、そのライブを行うことを考えたのはむつたちであるが・・・)。そして、千歌たちはむつたち浦の星の生徒全員で一丸となってそのライブの準備を進めていった。

 

 一方、千歌たち1・2年生と一緒に帰国していた果南、ダイヤ、鞠莉の3年生3人は3人で一緒にいられる最後の時間を、鞠莉の実家、小原ホテルの鞠莉の部屋で3人一緒に過ごしていた。

が、そんなとき、鞠莉のスマホに緊急電が入る。それに鞠莉、

「はいはい、待っていてです!!」

と、スマホを手に取り、電話にでる。と、突然、鞠莉の表情が変わる。

「What!!なんですって!!」

その電話は鞠莉たち3年生をあのステージへと再び上がらせるためのものとなった・・・。

 

 その鞠莉に届いた緊急電はすぐに千歌たち1・2年生6人にも伝えられた。そして、千歌たちはその緊急電についてみんなと話し合いたいため、いつもの喫茶店、「松月」に集まる。その緊急電の内容とは・・・。

「理亞ちゃんがAqoursにはいる!!」

そう、聖良の妹、理亞をAqoursの一員として加入させてほしい、そんな聖良の理亞を思うあまりのお願いだった。どうやら、理亞は自分が作ったスクールアイドルグループがうまくいかず、脱退する者が続出、結果的に理亞1人になってしまったらしい、とのことだった。これにはヨハネ、おもわず、

「別にいいじゃない・・・」

と、ただたんに聖良の案に同意してしまう。このままだと理亞のAqours加入が現実味を帯びることになる・・・。

 が、ルビィ、理亞のいまの現状について、あることに気づく。

(理亞ちゃんの現状って、まるで、イタリアに行く前のルビィたちと同じみたい・・・)

そう思った瞬間、

「ダメだよ!!理亞ちゃんはそんなの、望んでいないと思うよ!!」

と、突然、聖良の案に反対する。そして、ルビィはその理由を語った。

「Saint Snowが大切だからこそ、理亞ちゃんはSaint Snowを終わりにして、新しいグループを始めることを決めたんだよ!!それは、(理亞ちゃんにとって)Aqoursに入ることじゃないんじゃないかな?」

そう、理亞にとって、Saint Snowは姉聖良との大事な思い出が詰まったものだった。それほど、Saint Sonwは姉聖良と同じく大切な宝物である。だからこそ、理亞は姉聖良との大事な宝物であるSaint Sonwを終わりにして、自分で新しいスクールアイドルグループを作った。でも、うまくいかなかった。なら、理亞のことをよく知るルビィたちがいるAqoursに入ればいい、聖良たちは考えたのかもしれない。けれど、ルビィは違った。たとえ、理亞がAqoursに入ったとしても、それは、理亞の心の中に残っている姉聖良との大切な宝物、そして、理亞の想いを踏みにじることになるのかもしれない。それより、理亞はなにかに気づいていないのかもしれない、その姉聖良との大切な宝物が理亞の心の中にちゃんと残っていること、それによって、これから先、その宝物を通じて姉聖良と、そして、ルビィたちみんなとつながっていることを、そして、その先にある新しい輝きに向かって一緒に進むことができることを。そう考えたルビィ、自然と次の言葉を言った。

「(けれど、理亞ちゃんはただ、)たとえ、聖良さんが卒業しても聖良さんとの思い出、想いは理亞ちゃんの心の中に(ずっと)あって、それはなくなったりしない、(理亞ちゃんは)それに気づいていないだけ。(そして、)理亞ちゃんはSaint Snowの輝きと同じものを作らなきゃ、そうでなければ、聖良さんに申し訳ない、って、思っているんだよ!!」

 そして、ルビィはこう思った。

(今の理亞ちゃん、まるでイタリアに行く前のルビィたちと一緒だね。まるで、昔みたいに、聖良さんと一緒にSaint Snowを始める前に、0に戻った、なにもかもなくしてしまった、そんなふうに、理亞ちゃん、そう感じている、と、ルビィ、思ってしまうよ。けれど、理亞ちゃん、誰も相談できる人なんていないんだよね。卒業してしまった姉聖良さんに新しいスクールアイドルグループについて相談、なんて、できないもんね。だって、理亞ちゃんが大事にしているSaint Snowって、聖良さんと理亞ちゃんしかいなかったもんね。その聖良さんが卒業してしまい、残ってしまったのが理亞ちゃん、1人だけ・・・。また、理亞ちゃんの性格からして、ほかの人に相談なんてできないものね。そう考えると、理亞ちゃんにとって頼れる人なんて、いないのよね・・・)

けれど、そんな理亞ちゃんの問題にとって、今の、1人前の女性に成長したルビィにとって、けして解けない問題ではなかった。

(けれど、1つだけ、理亞ちゃんの問題を解決する方法がある。それは理亞ちゃんが今、唯一頼れる人たち、そう、ルビィたちがいる!!いや、ルビィたちしかいない!!だって、ルビィたち、理亞ちゃんと一緒にスクールアイドルを頑張ってきたから。だからこそ、ルビィたちが理亞ちゃんに教えてあげよう、とても大事なこと、たとえ再スタートをしても、それは0に戻ったわけではないこと、理亞ちゃんがこれまでに聖良さん、ルビィたちと一緒にいろんなことを経験してきた、その思い出、そのときのみんなの想い、それによって築かれたみんなとのキズナ、それらは宝物として理亞ちゃんの心の中にずっと残っていることを!!その宝物を通じて、ずっと、聖良さんと、ルビィたちと、みんなとキズナという見えないけど大きくて太い糸でつながっている、理亞ちゃんは1人じゃない、ずっと、みんながいるんだって!!そして、理亞ちゃんに伝えよう、それらによって、ルビィたちみんなは新しい輝きのあるその先に進むことができる、だからこそ、Saint Snowと同じ輝き、昔と同じ輝き、それを追いかける必要なんてない、聖良さんがいないから、必死になって昔と同じ輝き、昔の夢を追いかけることなんて、そんなこと、必要ないんだって・・・)

こう思ったルビィ、すぐに千歌を見つめる。すると、千歌はそのルビィの想いを受け取ったのか、ある提案をした。

「なら、理亞ちゃんの夢を叶えてしまおう!!」

千歌の提案、それは、昔の輝き、昔の夢を追いかけている理亞の夢、理亞たちSaint SnowとルビィたちAqoursのラブライブ!での対決、その夢を叶えるため、自分たちのためだけのラブライブ!、ラブライブ!決勝延長戦を開催しよう、というものだった。あまりにも無謀すぎる、それでいて残された時間も少ない、その状況のなかでの開催という案だったが、

(これはおもしろそうですね~(鞠莉))

(なんかワクワクしてきたよ!!(曜))

と、8人とも乗り気になっていた。そして、ルビィも、

(これなら、ルビィの言いたいこと、理亞ちゃんも伝えることができる!!理亞ちゃんも新しいスタートを切ることが絶対にできるはず!!)

と、確固たる自信を持っていた。

 こうして、千歌はすぐに評決をとる。

「ラブライブ!決勝延長戦をしたくない人!!」

誰も手をあげず、0人。

「したい人!!」

全員手をあげる。全会一致である。こうして、Aqoursとして、理亞の夢を叶えるため、ラブライブ!決勝延長戦を行うことを決めた。千歌はすぐに自分たちだけのラブライブ!、ラブライブ!決勝延長戦を行うことを聖良にメールで伝えた。聖良もその千歌の案に賛成、了承した。

 というわけで、決戦の日は数日後に行う、そう千歌と聖良のあいだで決めると、千歌と梨子、鞠莉はこれまで作っていたAqours用の曲をもう一度洗いなおし、この延長戦にふさわしい、そして、これからのAqoursを指し示す、そんな曲のブラッシュアップを急ピッチで行った。また、衣装担当のルビィ、花丸、ダイヤは延長戦で歌う曲のためにある目的のために作っていた衣装を延長戦用に仕立て直していた、延長戦用にある細工を施して。そして、ダンス担当のヨハネと曜、果南は千歌たちがブラッシュアップした曲のための前もって作っていたダンスをよりいいものにするために試行錯誤を繰り返していた。

 そして、すべての準備が終わった。その決戦までの残された時間、Aqoursは沼津駅前のライブの練習に加えて、この決戦用の曲の練習も行っていた。とてもハードといえるものだったが、それでも、千歌たちAqours9人にとって、苦にならない、いや、今度こそスクールアイドルとして一緒にできる最後のとき、それを精一杯楽しもう、そんな想いでいっぱいだった。

 一方、聖良も1人で、それも理亞にはばれずに決戦の準備を進めていた。こちらはラブライブ!冬季大会決勝のために準備していた曲だった。そのため、曲、衣装共にそこまで準備は必要なかったが、それでも、理亞がすぐに踊れるように、そして、自分が理亞と一緒にできるスクールアイドルとして最後の思い出として残しておきたい、自分の想いを理亞に直接伝えていきたい、その一心で、聖良は最後のときまで改良を加えた。

 こうして、ついに決戦の日を迎えた。Aqoursは沼津の街を見下ろせるビルの屋上で、聖良は2人思い出の詰まった地、函館のシンボル、旧函館公会堂で、決戦のときを待っていた。

 一方、理亞は走りこみのため、自分の家を出た。だが、なにかを思い出したのか、泣きながら一心不乱にダッシュしていた。そして、理亞と聖良の住んでいる家の近くにある旧函館公会堂の前に行く。が、その場所で理亞はそこで理亞を待っている人に出くわす。

「お姉さま!!」

そう、理亞の前にいたのは、理亞も通っている、それでいて、先日、聖良が卒業した、その学校の制服を着ていた聖良だった。いや、理亞と聖良、この2人以外にももう1人、その場にいた。その人は理亞と聖良のSaint Snow、その第3のメンバー、そうみんなから言われていた少女だった。

 とはいえ、これがスクールアイドル史上歴史に残る名勝負、ラブライブ!決勝延長戦、AqoursVSSaint Snowのゴングとなった。はたして、どちらが勝つのだろうか。それはまたの機会に述べることにしよう。

 

                                 続く

 



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Moon Cradle 第1話


【挿絵表示】


Moon Cradle

「SUN & MOON・・・、月と太陽・・・」
 月、昔から「月下美人」といわれるくらい美しいものの象徴としてとらえられることが多い。しかし、月というのは、本当のところ、太陽の光を反射しているから明るいのであり、月自ら輝いているわけではない。そう考えると、月の美しさは太陽があってはじめて成り立つことになってしまう。それほど月というのはほかの助けを借りないといけない、そんなか弱い存在になってしまうのだろうか?いや、そうとも言い切れない。たとえ、月であっても、心がけ次第では光り輝く星に、自ら輝く美しい存在、みんなを照らす素晴らしき存在へと生まれ変わることができるかもしれない。月、そんな無限の可能性を秘めている、そんな力を持っている。
 さて、今宵開幕する物語、はたして、月の進む道はどっちへ行くのだろうか?ずっと、太陽という助けがないと生きていけない、か弱い存在として生き続けていくのか、それとも、自ら輝く美しき存在、みんなを照らす素晴らしき存在へと変貌を遂げるのだろうか、それは、神のみぞ知る・・・。



「曜ちゃん、曜ちゃん、・・・、待って、待って~~~!!」

遠くに見える曜という名の少女に対して必死に呼びかける少女が・・・。その少女に対し、曜という名の少女が大きな声で呼びかける。

「月ちゃん、私、先に行くね・・・」

この曜という名の少女の言葉に対し、その少女をずっと呼びかける月という名の少女はさらに呼び続けた。

「曜ちゃん、待って!!僕をおいていかないで・・・」

この月という名の少女の必死の呼びかけに対し、曜という名の少女はあることを月という名の少女に言った。

「月ちゃん、忘れないで、たとえ、離れていても、月ちゃんの心の中に私はずっと居続けるんだよ!!だって、私との・・・、私の・・・、私との・・・は、ずっと月ちゃんの心の中に残り続けるんだからね。だから、月ちゃん、・・・!!」

この曜という名の少女の言葉は必死になってその少女を呼び続ける月という名の少女にも聞こえてきた。が、大事なところはなぜか聞くことができなかった。そのためか、月という名の少女はすぐに、

「曜ちゃん、曜ちゃん、待って、待って~~~!!」

と、大きな声で呼び続ける。

 が、曜という名の少女は月という名の声が聞こえていないのか、

「じゃ、またね、月ちゃん」

と、手を振って別れの挨拶をすると、そのまま、月という名の少女の視界から消えてしまった。これには、月という名の少女は必死になって、まるで断末魔の叫びかのように、ただ、

「曜ちゃん、曜ちゃん、待って、待って~~~!!」

と、叫び続けていた。

 そんななか、天からある声が聞こえてくる。

「・・・、会長、・・・、会長、起きてください!!」

この声のせいか、月という名の少女のまわりはどんどん明るくなっていく。

「曜ちゃん、曜ちゃん、待って、おいていかないで~!!」

月という名の少女の叫びはついに心の叫びともいうべきものまで出てくる事態となる。が、

「会長、起きてください!!大至急起きてください!!大事件です!!」

と、天の声がどんどん大きくなる。でも、月という名の少女はそれにめげることなく、

「曜ちゃん~!!」

と、曜という名の少女を呼び叫ぶのをやめようとしない。

 が、そんな月という名の少女の心からの叫びとはうらはらに、その少女のまわりはどんどん明るくなり、ついにはその少女は一瞬の明るい光とともに消えていった・・・。

 

「会長、起きてください!!大問題が発生しました!!」

突然の大声と体を揺さぶられたのか、机の上で自分の腕を枕代わりにして寝ていた少女は思わず、

「・・・、な・・、なに・・・」

と、その少女を起こそうとしている人になにか聞こうとするが、少し寝ぼけているのか、言葉があやふやだった。

 ときに2018年2月末、ここは静真高校の生徒会室。1週間前に静真高校のある沼津でも春一番が吹いていた。それにあわせてなのか、この数日、沼津では春を匂わせるような心地よい暖かさの陽気が漂っていた。「会長」といわれ起こされようとしている少女も、この陽気に誘われてか、それとも、学年末ゆえの忙しさに疲れたのか、つい、机に自分の腕を枕代わりにして眠っていた。が、それは安らかな眠り、戦士が戦いの間にほっとつける休み・・・とは程遠いものだった。なぜなら、その少女が眠っているあいだ、ずっと、

「曜ちゃん、曜ちゃん・・・」

と、誰かを呼んでいる、そんな声が聞こえてきたからだった。まるで、なにかに苦しんでいる、そんな様子だった。

 が、そんな苦しい表情をして眠っていた少女であったが、それも、突然の、

「会長、起きてください!!」

の声で起こされようとしている。その少女、無理やり起こされると、

「・・・、な、・・・、なに・・・」

と、少し寝ぼけているのか、言葉があやふやな状態で起こしてくれた人に答えるが、その心の中では、

(ね、眠い・・・。で、でも・・・、なんか・・・、とても・・・、苦しい・・・、そんな・・・、気分・・・。そんな・・・、いや・・・)

と、相当な悪夢だったようで、眠いが、それでももう苦しい気分になる、そんなのはいや、という気持ちでいっぱいだったようだった

 

「会長、早く起きてください!!大変です!!」

まだ「会長」と呼ばれている少女が寝ぼけているのか、その少女を起こそうとしている人はその少女を必死で起こそうとする。その方法とは・・・。

「起きてください!!起きてください!!」

と、言いつつ、その少女の頭めがけて、

ポカポカ

と、連続して(軽く怪我をしないように)叩く。いや、こんな起こし方、まねしちゃダメよ!!、と、言いたいのだが、その少女を起こそうとしている人にとって、それが最善の策だと思ってのことだった。が、それほど起こそうとしている人にとって「会長」と呼ばれる少女に大変なことが起こったことをいち早く、すぐにでも伝えたい、そんな切羽詰った思いからだった。

 で、これには寝ていた少女は思わず、

「や、やめて、副会長!!」

と、頭を叩くのをやめるようにその少女を起こそうと頭を叩く人に注意する。これを聞いたのか、寝ている少女を起こそうと頭を叩く人はすぐに、

「か、会長、す、すいません!!」

と、寝ていた少女に謝る。それを聞いた(寝ていた)「会長」と呼ばれた少女はすぐに、

「副会長、僕の方こそごめん。つい、眠ってしまったよ・・・」

と、その少女を起こそうとした「副会長」と呼ばれた人に謝る。が、その「副会長」と呼ばれた人も、おもわず、

「か、会長、そ、そんなに謙遜しないでください」

と、「会長」と呼ばれた少女のことを逆に謙遜してしまう。

 とはいえ、これではお互い謙遜し続ける堂々巡りになってしまう。と、いうわけで、「会長」と呼ばれた少女はすぐに襟をただし、一言。

「で、なんでしょうか、ナギ(生徒会)副会長?」

これに対し、寝ている「会長」と呼ばれる少女を起こそうとした人ことナギ副会長はその少女にむけて言った。

「あっ、そうでした、会長!!至急伝えたいことがあります、渡辺月、生徒会長!!」

そう、「会長」と呼ばれた少女、であり、この物語の冒頭で悪夢にうなされていた少女こそ、この物語の主人公、渡辺月、静真高校2年で、静真高校に通う生徒たちを束ねる生徒会の長、生徒会長を務める少女、である。学力優秀、スポーツ万能、文武両道を地で行く、そんな生徒である。さらに、ボーイッシュな顔立ちであり、さらに「僕っ子」でもあったため、女子高である静真高校にとって、生徒たちから憧れの存在、いや、宝塚の男役トップスター並みと存在であると称されていた。そして、外国語が話せ、特にイタリア語は得意中の得意といえるほどのバイリンガル、いや、マルチリンガル(多言語話者)だったりする。なので、生徒たちだけでなく、その保護者や学校の教師たち、はては近隣の学校の人たちからも尊敬されていた。

 そんな月であったが、寝ているときに見ていた悪夢の影響か、ナギ副会長が起こそうとしたときにはまるで苦しんでいるかのように見えていた。が、少しずつではあるが、顔に笑顔が戻ろうとしていた。なぜなら、

(あの悪夢なんて忘れよう。だって、新学期になれば、大親友の曜ちゃんと一緒に登校できるんだもん!!一緒に勉強して~、一緒にスポーツして~、一緒に遊ぶんだもん!!長年の夢だった曜ちゃんとの一緒の高校生活!!それが、それが、ついに叶うんだもん!!僕、それだけ考えるだけでご飯10杯も一気に食べれるんだもん!!)

と、月は期待に胸にふくませながら、寝ているときに見ていた悪夢をできるだけ吹き飛ばそうとしていた。いや、その悪夢以上に、長年の夢が叶う、そのときを待ち望んでいる、そんな純粋乙女みたいな思いで胸がいっぱいになろうとしていた。

 では、なんで月はそんな思いで胸がいっぱいなのだろうか。それは時を去年の12月まで巻き戻す必要がある。

去年の12月中旬、月はある報告を受けていた。

「えっ、浦の星との統合が決定したのですか?」

その報告を受けて月は驚いていた。最後まで浦の星と静真の統廃合を許可しなかった、浦の星のスポンサーであり、娘を浦の星の理事長にしていた小原家の当主がついに統廃合の許可を出したというのだ。小原家当主という浦の星と静真の統廃合の最後の障害が取り除かれたことにより、浦の星と静真の統廃合がようやく実現することになったのだ。では、なぜ、小原家の当主が最後まで首を縦に振らなかったのか?それは小原家の当主の一人娘である鞠莉との約束を守るためであった。小原家当主の一人娘であり、浦の星の理事長でもあった鞠莉は親友のダイヤ、果南、さらには千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、などと一緒にスクールアイドルグループAqoursを結成、ラブライブ!夏季大会はあと一歩のところで決勝進出を逃したものの、その悔しさをバネにし、夏季大会終了後に力をつけ、冬季大会予備予選である静岡県予選をトップで通過、そのいきおいを殺さないよう、リーダーである千歌がバク転をマスターするくらい練習を積み重ねていったのだ。でも、どうして高度で危険を伴う技術をマスターするくらい練習を積み重ねてきたのか。それは浦の星の廃校を阻止するため。3年生鞠莉、ダイヤ、果南をはじめ、メンバー全員が浦の星が好きであり、思い出が残るわが母校を残していきたい、そんな想いからスクールアイドルグループAqoursとして頑張ってきたのだ。Aqoursがラブライブ!で活躍を見せれば浦の星の注目度があがり、それが浦の星の入学希望者を増やすきっかけになれば、そんな想いでこれまで頑張ってきたのだ。で、その廃校を阻止するために鞠莉の父親で浦の星の大スポンサーでもあった小原家当主から提示された目標、入学希望者数100人!!ルビィたち1年である今年の入学者数が約30人くらいだったことを考えると、果てしない無謀な数字、だったが、それが鞠莉と鞠莉の父親(小原家当主)とのあいだで交わされた約束の数字だった。この数字をラブライブ!冬季大会東海最終予選の日の夜に達成すること、それが浦の星の廃校を阻止するために残された最後のチャンスとなっていた。で、千歌たちAqoursは最後のあがきになるであろう、バク転、ドルフィン、などといったダンス技術を完璧にこなせるよう一生懸命練習し、その結果、念願のラブライブ!東海最終予選のトップ通過へと結びつけたのだ。のだが、それが即入学希望者につながった・・・わけではなかった。最後のあがきなのか、約束の時間を翌日の早朝まで延ばしたものの、集まった入学希望者数は98人・・・。鞠莉たちの願いむなしく、約束の数字、入学希望者数100人にはあと一歩のところで届くことができなかった。これにより、浦の星の廃校、浦の星と静真の統廃合が正式に決まってしまった。

 が、その浦の星と静真の統廃合が決まった、という報告を受けた月はこのとき、こう思ってしまった。

(ああ、千歌ちゃんたち、浦の星の廃校を阻止することができなかったんだね。僕、とても悲しいよ。だって、あれだけ廃校を阻止しようと頑張ってきたのに、それが水の泡になってしまうなんて。統廃合先である静真の生徒会長の僕からしてもなんとか浦の星の存続を願っていたのに、それが叶わないなんて、とても悲しいことだね・・・)

そして、月はあるAqoursメンバーのことを特に心配していた。

(曜ちゃん、今頃とても悔しがっているかもしれないね。だって、大親友の千歌ちゃんと同じくらい好きだった浦の星が廃校になるから・・・。曜ちゃん、僕との電話で「絶対に浦の星の廃校を阻止するからね!!」って、いつも言っていたもんね。そして、たとえ、きつい練習があっても「それによって浦の星の廃校を阻止できるなら、そんなの気にしない!!」って、いつも言うくらい頑張っていたもんね。そして、曜ちゃん、いつも笑っていっていたもんね、「私、千歌ちゃんが、そして、Aqoursメンバー全員がいるから、どんなことがあっても頑張れる、この9人がいるから、どんな夢だって叶えることができる!!」って。でも、今となっては、その夢は潰えてしまった。それはつまり、曜ちゃん、それに、曜ちゃんたちAqoursメンバー全員の夢が、浦の星の廃校阻止という夢が叶えられなかったことなんだよね。それって、曜ちゃんたちにとって悲しすぎるものになってしまうんだよね・・・)

 そう、月はAqoursのメンバーである渡辺曜のことをとても心配しているのである。ではなぜ、月は千歌やダイヤ、鞠莉などではなく、曜のことを特に心配しているのか。それは月にとって曜はいとこであり、昔からの大親友だったからである。月は小さいときから親の仕事のために海外で暮らしていたのだが、小学生のとき、親の転勤で親の故郷である沼津に戻ることになった。慣れない日本の地での生活、それが(長い間海外で暮らしていた)月にとって苦にならないか、そう心配した月の両親は沼津に引越ししてすぐにしたのが、沼津に住む親戚の家を訪ねることだった。その際、月はその親戚の家に着くなり、

「・・・」

と、緊張しているのか、逆に黙ってしまった。何も知らない地で、自分の知らない人と会う、そう考えるととても不安でいっぱいだった、月が・・・。そんななか、テーブルを介して月の両親とその親戚(父親と母親)大人2人が向かい合って座っていた。その大人4人は久しぶりに会えたからか会話を弾ませていたのだが、とうの月はというと、

「・・・」

と、ただ黙っているだけだった。自分の親以外にまったく知らない大人2人の存在に、月、ただ不安だけを覚えてしまい、とても緊張した状態が続いていた。と、いうわけで、なにもしゃべることができず、両親とまったく知らない大人2人の会話の様子をただただ見ているだけ、そんな月にとって地獄ともとれる時間が続こうとしていた。

 そして、その時間が1時間を越えようとしたとき、その地獄ともとれる時間はすぐに終わりを告げる。つきの両親と自分がまったくしらない大人、親戚2人の会話、それがずっと続く、月にとって地獄の時間がずっと続く、そう、月が思っていた、そのときだった。大人4人の会話の最中、突然、

ピンポーン

と、玄関のドアの呼び鈴が聞こえてきた。すると、その親戚大人2人のうち、男(父親)が突然、

「あっ、曜が帰ってきたか・・・」

と言うと、すぐに立ち上がり、玄関のドアを開けようと行く。そして、

キー

と、玄関のドアが開く音が聞こえてくると、まもなく、

「パパ、ただいま!!」

と、玄関から遠くの部屋にいる月たちにも聞こえるくらいの女の子の大きな声が聞こえてきた。さらに、

バタバタ

と、廊下を走る音が聞こえてくると、間をおかず、

バタン!!

と、月のいる部屋のドアをものすごいいきおいで開ける音が聞こえてくる。そのドアが開いた音が聞こえるとすぐに、

「ママ、ただいま!!」

と、月が今まで聞いたことがない大きな声で親戚の女のほう(母親)に挨拶する、とても元気な女の子、これには月、

(だ、だれ・・・?)

と、まるで得体の知れない子どもがあらわれた、自分、本当に大丈夫なのかな、と、心配と不安に飲み込まれてしまったかのように固まってしまった。

 が、その女の子はすぐに、

「あっ、私の知らない子、みっけ!!」

と、月の方を指差し、元気よく言うと、月のところへ目にも留まらぬ速さで月に近づく。これには月、

(だ、だれか、助けて~)

と、(「ちょっと待ってね~」とみんなが言いたそうですが、)SOS信号をだそうとしていた。

 しかし、その女の子は警戒を続ける月のことなんてお構いなしに月にさらに近づく。これには月、

(ほ、本当に、だれか、助けて~!!)

と、SOS信号を必死にだそうとしている。そんな最大級の警戒を続ける月に向かってある一言を元気のある大きな声で言った。

「渡辺曜です!!よ~ろしく~!!」

これを聞いた月、

(えっ!!)

と、逆にきょとんとなってしまう。自分のことを曜と名乗る少女は警戒している自分に対して、ただ、大きな声で挨拶したのだ。その曜と名乗る少女は月に向かって元気な声で言った。

「で、あなたはだ~れ?」

この問いに月はただたんに、

(えっ、今なんて・・・)

と、ただ呆然となってしまう。月、思考停止に陥ってしまった。あまりにも唐突に起こったことに、月、頭がパニックになり、結果、頭がオーバーヒートを起こしてしまい、思考停止に陥ってしまった。しかし、曜と名乗る少女はそんな思考停止に陥ってしまった月に対して一言。

「あなたの名前、はやく聞かせてよ~!!はやく~、はやく~!!」

この言葉に、月、

(はっ!!今、一瞬止まっていたような気がしてきた・・・)

と、ようやく再起動を果たすと、すぐに、

(あっ、あの子、僕の名前を知りたがっている・・・)

と、なんとか、曜と名乗る少女が自分の名前を聞きたがっていることを理解する。そして・・・。

「ぼ・・・、僕・・・、月・・・、渡辺月・・・、と、いいます・・・」

と、小声で自分の名前を言う月。しかし、

「はっ、聞こえないよ!!もっと大きな声で言ってみて!!」

と、曜と名乗る少女は月に対しもっと大きな声で名前を言って欲しいと催促する。これには月、

(えっ、今のじゃダメなの!!もっと大きな声で言わないとダメなの!!)

と、少し困惑気味になるも、すぐに、

(曜って子、「もっと大きな声で言って」、って言っている。それなら、あの子以上の声、だそうじゃないの!!)

と、少し意地になったのか、曜と名乗る子に対し、

「僕、渡辺月、月っていいます!!」

と、曜と名乗る少女の挨拶以上の声をだして挨拶する。これには月、

(やった!!あの子(曜)に勝った!!)

と、自分の勝利を確信する。が、その月の挨拶に対し、曜と名乗る少女は月に対し意外な反応を示す。

「へぇ~、あなた、月ちゃんっていうんだね。それでいて僕っ子なんだ!!私、初めて聞いたよ~」

と、普通の反応を見せる曜と名乗る少女、だったが、すぐに、

「ところで、月ちゃん、少しは緊張、解けたかな?」

と、月に質問する。これには月、

(えっ!!緊張~?)

と、少し困惑すると、曜と名乗る少女はその真意を言った。

「月ちゃん、ずっと緊張しているって、私、感じちゃったんだ。なら、私の手で月ちゃんの緊張をほぐそうと思って、わざと大きな声で挨拶したの!!」

これを聞いた月、

(えっ、あの子(曜)、僕のためにわざと大きな声で挨拶したの・・・?)

と、曜と名乗る少女に対して驚いてしまうも、そんなの気にせず、曜と名乗る少女はすぐに月に対し、

「ねっ、今から私と一緒に遊ぼう~よ!!」

と、一緒に遊ぼうと誘おうとしている。これんは月、おもわず、

「あっ、はい・・・」

と、何も考えずに同意してしまう。それを見た曜と名乗る少女、

「それじゃ、今から外に行って公園で一緒に遊ぼう!!」

と、月の手をいきなり握り締め、そのまま月と一緒に外に出ようとしている。そんな、曜と名乗る少女に対し、親戚の女性(母親)は一言。

「曜、髙飛び込みの練習が終わって帰ってきたのに、すぐに月ちゃんと一緒に遊びに行くなんて、ほんと、大丈夫なの~?」

これに対し、曜と名乗る少女は、

「大丈夫!!」

と、これまた元気な声で答えていた。

 そして、その親戚の家から飛び出した、曜と名乗る少女と、その少女に無理やり?外に連れ出された月。その際、曜と名乗る少女は月に対し、ある一言を言った。

「月ちゃん、私、曜はね、ここで誓うよ!!月ちゃん、これからずっと友達として、いや、大親友として、月ちゃんと一緒にずっと遊んでいこうね!!」

これを聞いた月、

(なんか曜って子にいっぱい食わされたかもしれないね。なんかずっと緊張していたことがバカらしく見えてしまうよ。そう考えてしまうと、この曜って子と一緒にいるだけでずっと楽しんで暮らしていける、そう思ってしまうよ)

と、考えるようになり、すぐに、

「うん!!僕も曜ちゃんと一緒にずっと遊んでいきたい!!」

と、元気よく答えた。

 こうして、月にとって曜と名乗る少女、いや、曜とはいとこの関係ではあるが大親友といえるくらいの仲、つながりを持つようになった。それは小学校を卒業し、中学に進学しても変わらなかった。月と曜、一緒にいなかったのは、曜が小さいときからやっている髙飛び込みの練習のとき、もしくは、曜のもう一方の大親友の千歌たちと遊ぶ、それくらいだった。それ以外のときはずっと月と遊んでいた曜。それくらい長い間曜と一緒にいた月にとって曜と一緒にいることは幸せな時間、濃厚な時間を味わっていた、そんな気持ちだった。

そして、月はいつも元気を振りまいている曜を見習い、少しでも元気で、少しでも明るく、まわりに笑顔を振りまこうとする。すると、月のまわりには次々と親友といえる友達が増えていくようになった。それでも、月にとって、曜こそ自分の先生であり、それでいて大親友でもある、そんな自負が月にはあった。

 が、月にとって幸せな時間がずっと続く、わけではなかった。月と曜が中学3年のとき、月は学校の成績がとても優秀だったこともあり、沼津のなかで浦の星と同じく歴史が長く由緒ある女子高、静真高校の推薦入学を早々と決めていた。そして、曜も中学3年の夏の大会で全国上位の成績を収めたことにより、部活動が盛んであり、全国大会に出場するレベルの部活を数多く揃える(月と同じ)静真高校のスポーツ推薦入学を早々と決めていた。が、とある理由で曜はその静真高校のスポーツ推薦を蹴ってしまい、もう一方の大親友である千歌たちが入学する浦の星へと入学してしまう。このことがきっかけとなり、一時期、月と曜のあいだにほんの少しだけ険悪なムードが漂うも、曜のある一言によってすぐに仲直りしてしまう。そして、月と曜、違う高校に入学したことでこれまでより一緒にいる時間はかなり減ったものの、ときどき電話などで会話を弾ませる、それくらい2人のキズナはより強固なものになった。

 で、ここ最近の月と曜、2人の話題はというと・・・。

「私、最近、千歌ちゃんとAqours、始めたんだ~、東京から来た梨子ちゃんという子と一緒にね」

「月ちゃん、聞いて~。浦の星が廃校の危機だよ~!!でもね、千歌ちゃん、立ち上がったんだ~、「私たちAqoursは(浦の星の)廃校を阻止するために立ち上がります」って・・・」

「悔しいよ~、あともう少しで(ラブライブ!)決勝進出できたのに~!!」

「今度こそ、この前、乗り越えることができなかった(ラブライブ!東海)最終予選、乗り越えてみせる、千歌ちゃんたちAqoursのみんなと一緒にね!!」

と、曜がメンバーの1人として参加している浦の星女学院スクールアイドルグループ「Aqours」のことを話題にしていた。Aqoursのことになると曜は元気よくしゃべり、月もそんな曜の姿にいつもびっくりするも、一緒になって楽しんでいた。むろん、Aqoursのメンバーのことや浦の星の廃校を阻止するために曜たちAqoursが必死になって活動していることは曜との電話を通じて知っていた。さらにそのAqoursの活動内容についても月は曜を通じて知っていた。(少し長くなったが、)と、いうわけで、月は曜たちAqoursの必死の頑張りむなしく浦の星の廃校が決定したという報告を受けて、曜たちAqoursメンバー全員の無念さ、特に、曜については曜の気持ちが手に取るようにわかるぐらいの悲しさを共有していた。ただ、このとき、曜をはじめとしたAqoursメンバー全員はこれ以上Aqoursを続ける自信を失いかけていた。

 で、浦の星の廃校が決まった日の夜、月のスマホに曜からいきなり電話がかかってきた。そのとき、曜は、

「私の好きな浦の星がなくなっちゃうよう~、私たち(Aqours)が必死に頑張ってきたのに・・・。私、もうAqoursを続ける自信、なくなっちゃった・・・。廃校を阻止できなかったから、もうAqoursを続ける意味、なくしたのかもしれない・・・」

と、いつもの曜とは違う弱気を見せていた。これには月、

(曜ちゃんって、いつもAqoursのことになると元気よく話していたよね。でも、今、もうAqoursを続けたくないと曜ちゃん、思っているよね。でも、たとえAqoursをやめたとしても、いつも元気な姿の曜ちゃんが戻ってくるわけじゃないのよね。たしか、Aqoursってラブライブ!という大会の決勝にトップ進出していたよね。だったら、曜ちゃん、最後の最後まで頑張るべきだよ!!だからこそ、僕、(曜ちゃんに向かって)心を鬼にするね!!)

と、思うと、曜に向かってきつく発言した。

「曜ちゃん、Aqoursをやめたいって言っちゃダメ!!浦の星がなくなっちゃうけど、Aqoursとしてはまだラブライブ!という大会の決勝が残っているじゃない!!僕が思うに、最後の最後までAqoursのメンバーとして頑張る、それがとても大切だと思うよ!!だからね、曜ちゃん、Aqoursを続けて!!」

この言葉に曜、

「月ちゃん・・・」

と、月の言葉に愕然とした。結局、この月の言葉、それに、後日、浦の星の生徒たちからの「ラブライブ!で優勝して、浦の星の名前を(ラブライブ!の)歴史に刻み込んで!!」の言葉により、曜をはじめとしたAqoursメンバー全員はAqoursを続けることを決めた。

 一方、月はというと・・・、1月中旬、曜との電話のなかで・・・。

「月ちゃん、あと2ヶ月で浦の星と静真が統合するけど、統合の準備、進んでいる?」z

と、曜が月に質問すると、月は元気よく、

「うん、ちゃんと進んでいるよ。この前ね・・・」

と、順調に浦の星と静真の統廃合の準備が進んでいることを曜に報告する。月は浦の星がなくなる無念さよりもこれから先、曜たち浦の星の生徒たちが(浦の星と静真の統廃合後の4月以降)静真での学生生活をエンジョイできる、そのための準備を一生懸命頑張っていた。その頑張りにおいて、月はいつも、

(曜ちゃんたち浦の星の生徒のみんなが静真高校でも十分エンジョイできるようにちゃんと準備をしないとね。だって、僕、曜ちゃんと一緒に高校生活を楽しむことが夢だったんだもん!!たしかに心の中ではいつでも曜ちゃんとつながっているけと、それでも、(どんな形とはいえ)曜ちゃんと一緒にいられるなんて、ここ最近なかったからね。でも、それでも、曜ちゃんたち浦の星の生徒みんなが静真での生活を十分エンジョイできなかったら、生徒会長である僕にとってもとても悲しいもんね。だから、僕、頑張る!!曜ちゃんたち浦の星の生徒みんなが十分(静真での学生生活を)エンジョイできるように頑張るからね!!)

と、ちょっと本心をみせつつも、曜たち浦の星の生徒みんなが(浦の星と静真の統廃合後の)4月以降、静真での学生生活を十分エンジョイできるようにしたい、そんな心意気で(自分自身も楽しみながら)準備を進めていた。

 



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Moon Cradle 第2話

 と、(あまり長くなったが、)月の頭の中は、今さっきまで見ていた、あの「曜が月のもとを離れてしまう」という悪夢よりも、4月以降に曜たちと一緒に学生生活を暮らせるという期待、嬉しさの方が勝るようになった理由が上記の通りであった。

 そして、時は現在、2018年2月下旬、生徒会室の机の上でつい眠っていた月が生徒会副会長であるナギから起こされたところまで話は戻る。

 その悪夢のなか、ナギ副会長によって起こされた月、そんな悪夢のことは忘れ、来るべき4月以降、曜と一緒に学生生活をエンジョイできる、そんな期待、嬉しさで頭の中がいっぱいの月であったが、その期待、嬉しさがこのあと、一瞬で吹き飛ぶことになる・・・。

 そうとは知らず、月、ナギにあることを聞く。

「で、なんでしょうか、ナギ副会長?」

そう、(あまりに前置きが長すぎて忘れていたのかもしれないが)生徒会副会長であるナギは「大問題、大変なこと」が発生していることを伝えに生徒会長である月のいる生徒会室に行き、寝ている月を無理やり起こしたのだった。そして、ナギはすぐに、

「あっ、そうでした!!生徒会長!!大至急、伝えたいことがあります、渡辺月、生徒会長!!実は・・・」

と、なにかもったいぶったような言い方をすると、月、

「(ナギ)副会長、なんですか?」

と、ナギに催促する。これにはナギ、おもわず、

「ご、ごめんなさい、会長!!」

と、月に謝ると、すぐに重要なことを、月が持っている期待、嬉しさを全部吹き飛ばす、そんなことを言った。

「か、会長、大変です!!浦の星との統合がなくなってしまうかもしれません!!」

このナギの言葉に月、おもわず、

「えっ、今なんて・・・」

と、ナギにもう一度聞きなおす。すると、ナギ、

「浦の星との統合がなくなるかもしれないってことです!!」

と、声を大にして月に言う。これを聞いたのか、月、

「えっ、浦の星との統合がなくなる・・・」

と、愕然しながら言うと、

(えっ、浦の星と静真の統合がなくなる・・・?曜ちゃんと一緒に学生生活を暮らす、その夢が・・・)

と、考え込んでしまう。これまで月が持っていた曜との楽しい学生生活、その期待、嬉しさがナギの一言で一瞬で吹き飛んでしまった。これには月、おもわず、

「なくなる・・・」

という一言を残し、完全にフリーズしてしまう。そして・・・、

バタン・・・

と、その場で倒れてしまった。これにはナギ、おもわず、

「会長!!会長!!」

と、何度も月を呼びかけ続けていた。

 

 1分後・・・。

「はっ!!」

と、月、ようやく再起動。これにはいきなり月が倒れたので必死に月を呼びかけ続けていたナギも、

「会長、大丈夫ですか!!」

と、月のことを心配そうにみていた。そんなナギの心配に、月、

「ご、ごめんなさい、ナギ副会長・・・。浦の星との統合がなくなるなんてあまりに大きなことだったから、僕、フリーズしてしまった・・・」

と、ナギに謝ると、ナギも、

「それは仕方がないと思います。だって、浦の星との統合を果たしたあとのための準備を、生徒会長、一生懸命頑張ってきましたもんね、これまでは・・・」

と、月に同情する。そのナギの同情をよそに、月、すぐに、

「で、なんで、浦の星との統合がなくなるのですか?」

と、ナギに聞く。すると、ナギはすぐにその理由を答えた。

「実は、部活動保護者会の会長が(今になって)「浦の星との統合はなしにしろ!!」って言って、保護者会の幹部数人を連れて怒鳴り込んできているのです、たった今・・・」

これを聞いた月、

「あの部活動保護者会の会長が今、「浦の星との統合はなしにしろ!!」って言って怒鳴り込んでいるのですね。僕も今からその現場に行ってきます、静真高校の生徒全員の長としてね・・・」

と、即断即決で部活動保護者会の会長が怒鳴り込んでいる現場に行くことを決める。これには生徒会副会長であるナギも、

「それだったらお供します、会長!!」

と、月と一緒にその現場に行くことを決めた。

 

 そして、生徒会長として怒鳴り込んでいる現場に行くことを決めた月とナギであったが、(今となって)浦の星との統合を白紙に戻そうとしている部活動保護者会会長がいる校長室に近づく。すると、すぐに、

「浦の星との統合を白紙に戻せ!!」

と、言うとても大きな怒鳴り声が聞こえてきた。これには、月、

(なんて大きな声なんだ!!これじゃ、生徒たちみんなの静かな学生生活が壊れてしまうじゃないの!!)

と、その怒鳴り声を出している人に対してやや否定的な考えをしつつ校長室に近づく。

 そして、月とナギは校長室のドアを開けると、そこには、

「(部活動保護者会)会長、少しは静かにしてください・・・」

と、なんとか静かにさせようと必死で説得している校長や教頭の先生たち数人、それに、

「これは静真に大切な子どもたちを通わせている保護者を代表しての意見だ!!もう一度、声を大にして言う。「今すぐに静真と浦の星の統合をなしにしろ!!」絶対だ、絶対にしろ!!」

と、なにか偉そうに校長たちに言う、いや、威圧をかけている大人たち数人がいた。その大人たちを見た月、すぐに、

(あっ、部活動に参加している生徒の保護者全員を束ねている部活動保護者会の幹部の人たちだ・・・)

と、その大人たちの正体がわかった。そして、そのなかで1番大きな男性こそ、その保護者会の会長である木松悪斗だった。その木松悪斗という男が校長たちに向かって「浦の星との統合をなしにしろ!!」と大声で言ってきたのだ。そして、それが大の大人が先生たちを威圧する、そんな異様な光景を作り出していた。

 この状況を一瞬で把握した月、その木松悪斗に対し、いきなり意見する。

「木松悪斗(部活動保護者会)会長、なんで、今になって、「浦の星との統合をなしにしろ!!」って言うのですが?浦の星との統合が決まったこの2ヶ月、学校の先生たちは必死になって浦の星との統合に向けての準備をしてきたのですよ。それに木松悪斗会長も当初は統合に賛成していたでしょうが。それなのに、今になって、「統合はなしにしろ!!」って言うのはお門違いじゃないのですか?先生たちの苦労を水の泡にするつもりですか?」

これについて、木松悪斗は月に対して怒鳴り声で答えた。

「生徒会長、たしかに先生たちがこれまでしてきた苦労を水の泡にすること、私としても心痛みます。でもね、これは私たちの大切な子どもたち、静真に通わせている子どもたちのためなんです!!そう、みんな、私たちの大切な子どもたちのためなんですよ!!」

これには、月、すぐに反論。

「その木松悪斗会長の言葉からはその真意が見えてきません!!はっきりとした理由を答えてください!!」

この月の言葉に木松悪斗はまた大きな声で答えた。

「はっきりとした理由ね~。それならありますよ!!あのただたんに習い事みたいにお遊び感覚で部活動している浦の星の生徒たちが静真高校の、将来のため、勝利のために一生懸命頑張っている生徒たちがいる、静真の部活に参加するとねぇ、悪影響がでるのですよ!!いや、浦の星と生徒と静真の生徒、そのあいだで対立が起きてねぇ、静真高校の部活動そのものが弱体化しちゃうと思いましてねぇ~」

そして、木松たち部活動保護者会は浦の星の生徒たちが静真高校の部活動に参加することでどんな悪影響が起きるのかを説明してくれた。と、言っても、木松悪斗をはじめ、大の大人がいろいろ言っては、その横から、

「ああでもない」「こうでもない」

と、いろいろと横やりが入ってくるため、ただ聞いているだけではなにが言いたいのかはっきりわからない、というのが現実だった。が、月は、その大人たちの言っていることを、

「ふむふむ」

と、言いながらノートに書き留めていった。これは生徒会長になったときにすぐに身につけた月のやり方だった。生徒会には日夜数多くの案件、トラブルが持ち込まれる。それを月を中心とした生徒会自ら判断を下すのだが、月はどっちの言い分もちゃんとメモに残してからそれをもとに判断を下す。どっちにも肩入れしないこと、あとあと遺恨が残らないようにするための月なりのやり方だった。このやり方のためか、月たち生徒会に持ち込まれた案件、トラブルのほとんどが生徒会によって万事解決していた。というわけで、月の生徒会長としての(静真高校生徒の)支持率は90%をゆうに超えていた。それほど、月の生徒会長としての生徒たちからの信頼度は高かった。そして、今回も、月は木松悪斗を含めた部活動保護者会幹部数人の言っていることを1つずつメモに書き留め、それをもとに木松たち部活動保護者会の言い分をまとめた。

「浦の星の生徒たちは部活動をお遊び感覚、お友達感覚でやっている。それどころか、お子様の習い事程度としか思っていない。だから、(浦の星の部活動の実力は)弱いのである。対して、静真高校の部活動は全国大会の常連となっている部活が数多くあるなど盛んである。また、部活動に参加している生徒たちの多くが将来のため、また、全国大会に質上するため、プロの選手になるために真面目に一所懸命に、そして、真剣に部活動に取り組んでいる。部活動に対する士気も強い。よって、わが静真の部活動は全国でも指折りの実力校、強いのである。で、もし、お遊び感覚、お友達感覚といった、部活動に対する士気が低い、さらに実力すらない浦の星の生徒が真面目で優秀、それでいて、部活動に対する士気が高く、実力もある静真の部活に参加した場合、士気が低くてお遊び感覚、さらに平気で練習をサボろうとする浦の星の生徒の影響を受けて静真の生徒の(部活に対する)士気も下がってしまうはずだ。さらに、部活内で士気の差から、士気の低い浦の星の生徒たちと士気の高い静真の生徒のあいだで派閥対立が起きてしまう。この2点などが起きてしまえば静真の部活動全体において悪影響が出てしまい、結果、静真の部活動全体の質の低下へとつながってしまう」

 だが、生徒会長である月にとってなんで浦の星の部活動が全国大会に進出、いや、予選で初戦敗退してしまうほど実力が弱いのか、その真実を知っていた。

(部活動保護者会の木松悪斗会長は「浦の星の部活動の実力は弱い」「浦の星の生徒の部活動に対する士気が低い」と言っているけど、僕はそう思わないね。だって、浦の星の生徒の部活動に対する頑張り、士気は静真の生徒たちに負けないくらい高い。でも、それでもあんまり実績、成績が芳しくないのは、圧倒的に生徒数が少ないから。陸上や水泳といった個人種目ならいいけど、バスケ、サッカー、バレーなどといった団体競技にはたくさんの人数が必要。でも、生徒数が少ない浦の星じゃその団体競技をすること自体難しい。だから、浦の星はいくつもの部を兼部している生徒が多い。いくつもの部を兼部しているから、1つの競技、種目に対する練習時間が少なくなってしまう。静真みたいに1つの種目、競技にだけ集中して練習することができる、そんな当たり前のことでも浦の星じゃできない。もし、全国大会に出場したいなら、1つの種目、競技にのみ集中して練習したほうが効率的。でも、そんなこと、浦の星じゃできないよ。その事実を部活動保護者会の人たちは見落としている、いや、意図的に無視している、ただ、全国大会に出場していない、予選、いや、初戦敗退が続く、その結果論でしか物事をみていない、僕はそう思うね)

この月の指摘、十分、的を得ている。生徒数の少ない浦の星では複数の部を兼部するのが当たり前だった。その証拠に、Aqoursのメンバーで月のいとこで大親友の曜はスクールアイドル部と水泳部を兼部している。さらに、ダイヤ率いる生徒会も生徒会専属は生徒会長であるダイヤ、ただ1人であり、副会長以下ダイヤ以外の生徒会メンバーはほかの部の掛け持ちをしていた(さらにいえば、途中でAqoursに加入した生徒会長のダイヤも生徒会とスクールアイドル部の掛け持ちといえるし、1年の花丸もスクールアイドル部と図書委員の掛け持ちだったりする)。なので、月の言うことはもっともだった。その一方で、木松悪斗たち部活動保護者会一同は、浦の星の部活動はこれまで目立った実績、成績を残さなかった、そんな結果論だけで、浦の星の生徒たちの部活動に対する士気は低い、という考えを勝手に導いてしまった、そう考えても仕方がなかった。とはいえ、人というのはなんでも結果論だけで結論を導くことが多い。だって、その途中の功績、そのときの想いなどをずっと聞くより、てっとりばやく結果だけを聞いたほうが楽であり効率的である、と、知らないうちにそう考えてしまうものである。それほど人というのは楽なほうへ楽なほうへと進みたいものなのである。

 が、しかしである、月にとって、部活動保護者会の会長である木松悪斗の意見についてある危惧を持っていた。それとは・・・。

(でも、部活動保護者会の木松悪斗会長の意見、ただの1人の意見に思えるけど、一度でもこの保護者たちの前で言えば、この意見に賛同する保護者が一気に増えてしまう、そんな危険性をはらんでいる。もし、この意見に賛同する保護者が多ければ、本当に浦の星との統合はなくなってしまう!!なぜ、そんなことが起きるのかって?それは、ここ、静真は全国大会に出場できる部活動を数多く抱える。全国でも有数な部活動に力を入れている強豪校、それが、ここ、静真の姿だから!!)

月が生徒会長を務め、浦の星の統合先である静真高校、実は全国大会での優勝経験がある、なくても全国大会の常連といった全国レベルの実力を持つ部活を数多く抱えている。たとえば、女子サッカー部。静岡といえばサッカーが盛んな県、なのであるが、ここ静真はその静真の中でも毎年のように全国大会に出場するほどの実力を持っているといわれている。そして、去年のインターハイ女子サッカーにおいて全国優勝を果たしている。そのほか、弓道、テニスなども全国大会の常連だったりする。それほどの部活動の実力校かつ優秀校、それが静真の姿である。なので、将来プロ選手になりたい生徒たちが数多く静真に入学し、部活を通じて日々練習に明け暮れていた。もちろん、部活動に参加している生徒はみな自分の将来のために練習しているため、自然と士気が高くなるし、仲間同士で切磋琢磨しながら実力をあげているため、部活内での団結力は強い。また、静真としてもその生徒たちに応えるため、最新のトレーニング機器や優秀なコーチ・トレーナー陣を導入し、生徒たちを完全にバックアップしている。部活動の士気、実力の高さ、それに学校あげての部活動環境の良さなどにより、保護者たちは安心してとても大切で将来有望と期待している子どもたちを静真に通わせる、そして、部活動に参加させることができるのである。が、部活動に対する士気が低い、お遊び感覚で部活をしている浦の星の生徒たちが静真の部活に参加すると、士気の低下、部活内での対立など、その安心といえる部活動環境が一気に壊れてしまう、さらに、部活動そのものに悪影響を及ぼしてしまう、実力、質も低下してしまう、そんな危険性がはらんでいる、静真と浦の星が統合してしまうと・・・。その危険性を部活動保護者会の会長である木松悪斗が言えば、浦の星の統合に反対する保護者が多くなる、そう月は考えていた。むろん、木松悪斗という男が静真にとってどんな人物なのか、というのもあるが、それはのちほど・・・。

 と、正味1時間ぐらい部活動保護者会会長である木松悪斗たちのくだらない?浦の星との統合反対の意見という集中砲火を浴びた月であったが、その意見の集中砲火が少しやんだ、そのとき、月は少し怒りつつも、

「と、いうわけで、木松会長、もう下校時間です。このままだと埒が明きませんので、日を改めさせてくれませんでしょうか。今日はここでお引きください!!」

と、木松悪斗たちに言うと、木松悪斗も、

「たしかに日も落ちてきましたな。このまま長居をしてしまうと家で待つ大切なわが子たちの心配へとつながってしまう。なので、今日のところはここで引き上げます。ですが、これだけはこの場で言いたい!!絶対に、浦の星との統合、なんていう愚策をすることはやめていただきたい!!絶対に白紙に戻すべきです!!これは私たちの大切な子どもたちのためなのです!!将来のプロ選手を目指す若きアスリートのため、そして、真面目に自分の実力を伸ばそうとしている、そんな子どもたちのためなのです!!浦の星というけがわらしき者たちから大切な子どもたちを守るために立ち上がったのです!!そのことはご理解の程、お願いいたします・・・。では」

と、大声で言って校長室をあとにしようとした。

 が、そのときだった。突然、

「あの、木松悪斗、部活動保護者会会長!!あと1つだけお聞かせください!!」

と、月が木松悪斗に向かって言うと、木松悪斗も帰るために一度月に背を向けた体をふたたび月の方に向くと、

「なにかね、生徒会長?手短にお願いすよ。これでも忙しい身なんだからね」

と、月に聞く。これに月、木松悪斗に向かってある質問をぶつけた。

「木松悪斗部活動保護者会会長!!あなたにとって部活って何ですか?」

この月の質問に対し、木松悪斗の答えとは・・・。

「部活か・・・。それはな・・・、青春だ!!」

これには月、

「青春・・・」

と、ただ黙ってしまう。それでも、木松悪斗の答えは続く。

「いいか。部活というのはな・・・、子どもたちが自分の力を高めるために、そして、限界を超えるために汗水流して練習しているのだ!!その練習の量だけ、流した汗の量だけ、自分の力を伸ばすことができる、限界を超えることができるのだ!!その子どもたちのために、親たちは、学校は、最大限のサポートを子どもたちにしないといけないのだ!!子どもたちのために最適な環境を整えることがとても大事なんだ!!それなのに、浦の星という悪い虫がはいることでその環境が壊れてしまう、そんなことがあってはいけないのだ!!」

この木松悪斗の答えに、

(あに、うさんくさい!!まるで自分が正しいことを言っている、そんな気がするよ!!)

と、木松悪斗が言っていることに否定的になる。が、まだ、木松悪斗の答えは続く。

「そんでもって、部活動を通じて子どもたちはほかの子たちと切磋琢磨しながら力をつけるとともに団結力、固い友情を結んでいくのだ!!それによって、子どもたちは実力をつけるとともに、チームワークの大切さを知ることになる!!部活とはそういうものなのだ!!」

で、ここまでの木松悪斗の答えに、月、

(良いことばかり言っているけど、まだ、本当のこと、本心を言っていない、そんな気がする・・・)

と、木松悪斗の方をにらむ。ただ、木松悪斗は自分に陶酔しているのか、その月の行動を見らず、そのまま、自分の答え、意見を一方的に言い続けた。

「かの、有名な人が言っていた、「人にとって大切なもの、それは、「努力!!友情!!勝利!!」」だと。部活に対して高い士気を持つ仲間同士で努力し、その仲間たちとのあいだで熱い友情を結び、それにより、全国大会で勝利する!!それこそ、子どもたちにとって大切なこと!!そして、これを達成したとき、私たち大人はその子どもたちが成し遂げえたことに対して感動を覚えるのだ!!これまで子どもたちのためにやってきたこと、それが最高の結果へとつながってくれてほしい、それが親にとって切実な願いなのだ!!」

で、これについて、月、

(なんとか木松悪斗という男の本性をあらわす言葉がでてきたよ。だったら、ここでかまをかけてみよう)

と、考えると、月はある言葉を木松悪斗に投げかけた。

「木松悪斗、部活動保護者会会長、「努力、友情、勝利」、この言葉のなかでも「勝利」って言葉、とても大切にしているでしょ?」

これには木松悪斗、おもわず、月の誘導に引っかかってしまう。

「生徒会長、わかっているじゃないか。そうだ。「勝利」こそ1番大事なんだ!!たとえ努力しても、固い友情を結ぼうとも、それが結果につながらなければ、なにもかもが無駄になってしまうのだ!!特にトーナメント戦の大会では1度でも負ければ先に進めることができない、勝利し続けるしかないのだ!!だからこそ、勝利こそ絶対、勝利こそすべて、なのだ!!」

そして、木松悪斗は本誌をさらにさらけだした。

「勝利こそすべて、それを如実にあらわしたのが去年の女子サッカー部だ!!日々きつい練習に誰も音を上げず、ただ、自分のため、仲間のため、と、黙って黙々とやってきてくれた、努力してくれた、そして、仲間たち同士で固い友情を結び、切磋琢磨してくれた。でもな、1度でも負けるとそれはすべて無駄になってしまう!!すべてが灰と化してしまうのだぞ!!それでも、女子サッカー部は勝利という結果をずっと続けてくれた。そして、多くの勝利がインターハイ全国優勝という最高の結果を導いてくれたのだ!!勝利という結果こそすべてなのだ!!」

この言葉のあと、木松悪斗は月に向かってこう言った。

「ここで1つ、生徒会長に教えておく。この世の中は結果こそすべてなのだ!!人というのは途中の経過よりも結果でのみ判断することが多いのだ!!いや、絶対にそうなのだ!!むろん、途中の経過があるからこそ勝利という結果が生まれる。しかし、人は結果でのみ物事を判断してしまう生き物なのだ!!その結果には、成功・勝利と失敗・敗北、その2つしか存在しないのだ!!人が生き残るためには成功・勝利という最高の結果を得続けるしかないのだ!!だからこそ、勝利することこそ人として1番大事なのだ!!」

この木松悪斗の発言のあと、木松悪斗はドアのほうを向き、校長室をあとにしようとしていた。その際、木松悪斗は月とナギに対し、こう付け加えた。

「あっ、生徒会長に生徒副会長、近いうちに臨時理事会を開くからな。生徒代表として参加してくれ。そこで、生徒たち、私たちの大事な子どもたちの貴重な意見を聞かせてくれ。むろん、私が言ったことと同じ意見だと思うけどね・・・、くく・・・」

と、不気味な笑い声とともに月とナギのもとから去っていった。これには、月、

(言いたいことを言っちゃって、なんていう悪役なんだ!!)

と、腹の中は煮えだっていた。

 



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Moon Cradle 第3話

 木松悪斗たちが帰った後、月とナギは自分のかばんを置いている生徒会室に戻ることにした。その戻る最中、ナギは月にあることを聞いた。

「あの木松悪斗という男、まるで自分が言っていることがすべて正しいって顔をしていて、本当に腹に立ちますね。でも、なんで、あの小松悪斗という男、これまで、浦の星との統合に関してはたしか賛成してでしたよね。なのに、なんで、今になって反対に転じたのでしょうかね?」

たしかにナギの言うとおりだった。木松悪斗たち部活動保護者会、当初は浦の星との統合に賛成していたのだ。だから、これまでなんの障害もなく統合に向けた準備を進めることができたのである。が、今になって統合反対に転じたのか、ナギにとって疑問だった。

 が、このナギの疑問に月は簡単に答えた。

「ナギ副会長、それはね、部活動保護者会の会長である木松悪斗がつい最近、浦の星に恨みを持つようになったからだよ」

これにはナギ、

「えっ、なんで?浦の星って木松悪斗という男になにか恨みを持つようなこと、しましたっけ?」

と、ビックリするとともに、浦の星が木松悪斗に対してなにか恨みを持つようなことをしてなかったのか疑問に思う。もちろん、これも、月、簡単に答える。

「いや、浦の星は別に木松悪斗という男に対して恨みを持つようなことはしていないよ。いわゆる、木松悪斗という男の勝手な逆恨みだよ」

これを聞いたナギ、ある疑問を月にぶつける。

「でも、生徒会長、なんで、木松悪斗という男、浦の星に逆恨みを持つようになったのでしょうかねぇ?」

その疑問について、月はナギに、

「僕が思うに、こうじゃないかと思うよ。今から話すことは僕の推測だけどね」

と言うと、自分の考えをナギに語り始めた。

「まず、木松悪斗はこれまで浦の星との統合について賛成していたのか?それはね、木松悪斗はこれまで静真に対して多額の寄付をしてきた、いわゆる、静真の大スポンサーだったことが関係にあるんだ」

この月の言葉を知るためには木松悪斗という男について少し詳しく説明する必要がある。木松悪斗、実は日本有数の資産家、投資家、大富豪でもある。でも、ダイヤやルビィのいる黒澤家みたいな昔からの名家、地元有数の名士・・・というわけではない。実は、一代で富をなした、いわゆる(大変申し訳ないが、悪い意味で)成金である。でも、汗水たらして丁稚から社長へとステップアップした、というわけではなかった。木松悪斗が一代で財、富をなした方法、それは投資だった。2000年代ごろに起こった投資家ブームのなか、木松悪斗は自分が持つ独自の情報網、先を見通す先見性などにより、普通の人から日本有数の資産家・・・というより投資家になるくらいの莫大な富を短期間のあいだに築いたのである。で、その富をさらに株式、債券などといったものにさらに投資をして富をさらに増やすとともに、物言う株主として自分が大株主である日本や海外の企業に自分の要求を突きつけてきた。特に有名な話として、某関東の有名私鉄に対し、沿線の住民のことを考えず、ただ赤字だけという理由だけで赤字路線を廃止しろ、と、その私鉄会社の会長や社長に対し直に迫ったことがある。このニュースは日本においてとてもショッキングなニュースとして取り上げられ、木松悪斗とその木松悪斗を長とする投資グループは一躍有名になった。が、木松悪斗にしても、その木松悪斗を長とする投資グループも、長期的な視野で投資している、と、いうよりも、短期的な利益を追い求めることが多く、自分たちに有利な、多額の利益を短期的に得ると、その企業から手を引いてしまい、結果的にその企業は最悪の結末へと進んでしまうことが多く、世の中の人たちからみたら、木松悪斗とそのグループを冷たい目で見ていた。なお、投資というのは、超高度な情報戦、将来のことを見通す先見性、レイコンマ数秒というとても素早い瞬時の判断力などが必要であり、それらを統合して瞬時にどこに投資するのか、もしくは、引き上げるのかを指示する。たったれいコンマ1秒ずれただけで大きな利益を生むか、それとも、多額の大損失を被るのか、そんな大きな差が生まれてしまう、それが投資の世界である。そして、投資の世界において、莫大な利益を得る勝者はごく少数であり、のこりの大多数の人たちは敗者、すなわち、大損害を被っているのである。それほどリターンも大きいがリスクの大きい投資の世界、木松悪斗はその世界の住民であり、いつも大きなリターンを得るために大きなリスクを承知の上でその世界を生きていたのだ。そして、ちょっとした一瞬のミスが即命取りにつながることもあり、木松悪斗はどんなときでも油断しないよう、いつも神経を尖らせていた。さらに、投資の世界ではずっと成功し続けること、勝利し続けることが生き残ることためには必要だと考えているのか、木松悪斗は勝つことに執念をいつも燃やしていた。「勝利こそ正義」それこそ木松悪斗の信条である。どんなことをしても勝利することが必要である、努力や友情なんて二の次、最後に勝てばそれでいい、それが木松悪斗とそのグループの考え方だった。そして、それが木松悪斗が結果だけにこだわる理由、「勝利こそすべて」と、考える理由だったりする。

 とはいえ、その考え方だと木松悪斗とその投資グループは日本国民みんなからいつも冷徹な目で見られてしまう、それが結果的に自分たちにとって(遠まわしに)敗北につながることにもなりかねなかった。なぜなら、株式の場合、株主全員でその企業の物事・方針などを決める株主総会の場において、木松悪斗たちの要求(株主提案)の採決の際、ほかのある一定の株主の賛成票がないと否決されるなど、自分たちの要求を通すためには自分たち以外の方々の賛同が必要だったりするから。人々から悪い印象で見られると、それだけで悪者に見えてしまい、自分たちの要求に反対票を投じられることにもつながってしまう、そう木松悪斗は考えていた。その悪い印象を少しでも和らげるため、木松悪斗がしたこと、それは地域貢献、特に、自分の出身地の沼津への投資だった。その投資先として選んだもの、それが静真だった。

 静真高校、実は浦の星と並ぶ歴史が長い、由緒有る女子高だった。そのため、沼津といったら静真というくらい学校の名前は全国に響き渡っていた。が、そんな静真であるが、実は2008年ごろに廃校の危機が訪れていた。少子化の波、地域における人口減少、地元経済などの沈下などに加え、女子高ということもあり、生徒数は減少の一途をたどっていた。そのため、男女共学化しようという話も理事会であがることもあったが、歴史があって由緒ある女子高ということもあり、というか、それが足かせとなり、男女共学化の話は立ち消えになってしまう。さらに、この年に起きたリーマン・ショックにより、静真の当時のメインスポンサーが静真から手を引くこととなった。これにより、静真は廃校の危機を迎えてしまう。その静真廃校の危機を救ってくれたのが木松悪斗だった。自分の地元、歴史があって由緒ある女子高、静真の廃校の危機を知った木松悪斗はそれならばと、静真に多額の寄付をしてくれたのだ。木松悪斗は自分が持つ情報網と先見性により無傷でリーマン・ショックの波を超えていたため、静真への多額の寄付をすることが可能だった。これにより、静真は廃校の危機を脱した。

 ではなぜ、木松悪斗は静真に多額の寄付、いや、静真の大スポンサーになったのか?それは前述のように悪い印象を少しでも和らげるためでもあるが、それ以上に木松悪斗にとってプラスの印象、良い印象を日本国民に向かって与えることができるからである。自分の地元、それも歴史があって由緒ある女子高の静真に多額の寄付をしている、それを対外に向かってアピールすることで、木松悪斗は「地域振興にも力を入れてます」「地域に住む人たち、特に、将来に向かって頑張っている子どもたちのために(自分の)利益を地元に還元していますよ」と、堂々と言うことができるのである。なので、この寄付行為自体、木松悪斗の地元である沼津の住民はおろか、日本国民においても良い印象を与えることになる、木松悪斗はそれを狙っていた。いや、低いリスクで大きなリターンを狙うことができる、そう木松悪斗は感じていたのかもしれない。

 が、ただ、静真に多額の寄付をしただけではただ廃校の危機を脱しただけに過ぎない。そのままだと生徒数の減少は続き、また廃校の危機を迎えてしまう、そう考えた木松悪斗は静真に対しある注文をつけた。それは・・・。

「いいか、多額の寄付、それを部活動振興のために使え!!」

そう、木松悪斗の要求とは、静真の部活動の強化だった。木松悪斗は静真の部活動を強化し、静真の部活に全国大会を狙えるくらいの実力を持たせようとしていた。そうすることにより、全国から将来有望で実力のある生徒たちが多く静真に入学することになり、静真の部活全体の実力はさらに強化される、それにつれて、その静真の部活動に憧れて多くのまだ原石だけど実力のある生徒たちが多く入学してくれる、そのなかから金の原石を見つけることができれば、静真の部活のなかから全国制覇できる部活があらわれるなどして、静真の部活はさらに盛んになり、実力はさらに増す、こういった好循環を生み出せたら、そう木松悪斗は考えていた。

 で、大スポンサーとなった木松悪斗の要求を受け入れた静真だったが、木松悪斗の指示のもと、木松悪斗の多額の寄付金を最新トレーニング機器の購入、優秀なコーチ・トレーナー陣を雇うことなどに使った。また、全国にいる将来有望で実力のある中学生たちをスカウトしていった。これを毎年続けた結果、数年後、静真は全国大会の常連というべき部活を数多く抱える、全国有数の部活動が盛んな高校へと変貌を遂げていた。その陰には、毎年、静真のため、というよりも、自分のために静真に多額の寄付をする木松悪斗の姿があった。

 

 で、それを踏まえたうえで、月の話は続く。

「木松悪斗はこれまで静真に対して多額の寄付をしてきた。けれど、今以上に静真の部活を強化するためには自分の資金だけでは限界がある。それで目をつけたのが浦の星だった。浦の星の大スポンサーは世界中に名が轟いている小原財閥。でも、その浦の星は小原財閥の支援むなしく廃校を迎えようとしている。そこで、木松悪斗はその浦の星と静真を統合させることにより、小原財閥からも静真への投資を促そう、そう考えていたわけ。いわゆる皮算用ってやつかな」

そう、木松悪斗は浦の星と静真を統合させることにより、浦の星の大スポンサーだった小原財閥の静真への投資を促そうとしていた。その小原財閥のお金を使い、静真の部活動をさらに強化しよう、それがこれまでの木松悪斗の考えだった。なぜそう考えたのか、それは木松悪斗が静真に投資するお金にも限界があるからである。たしかに、静真は日本有数の部活動の盛んな、それでいて、全国大会の常連といえる部活を数多く抱える高校になった。が、それ以上に、全国大会に優勝できるほどの実力を持つ部活を数多く抱える高校へと進化するためにはもっと資金が必要だった。さらに、たとえ、そうじゃなくても、今の実力を維持するためにも多くの資金が必要だった。たとえば、購入した最新トレーニング機器の維持コスト、優秀なコーチ・トレーナー陣の給与など。それらは木松悪斗の多額の寄付金から賄われていたが、それにも限界を迎えようとしていた。じゃ、木松悪斗がもっと多額の寄付をすればいいのだが、木松悪斗にとっても今以上に静真に寄付することはできなかった。なぜなら、日本有数の資産家、投資家の木松悪斗でさえこれ以上静真の投資に回せるほどの資金がなかったこと、それに、世界経済の悪化など、日夜、めがぐるしく変わる経済状況のため、投資の天才、木松悪斗にしても、静真のために動ける時間がとれない、と、いった実情があった。資金、時間、ともに限界の木松悪斗にとってそれを解決する策、それが廃校を迎えようとしていた浦の星と統合することにより、浦の星の大スポンサーであった小原財閥のお金・力を静真に引き入れることだった。ただの成金の木松悪斗と違い、小原財閥は世界有数の財閥である。世界中に数多くの(かなり大手の)企業を数多く抱えており、資産の総額も木松悪斗の資産の数十倍だったりする。また、沼津に限らず、ここ静岡には小原財閥関連の企業が数多くあり、なかには、なにやら生態兵器、いや、仮面ライダーなるものを作ろうとしている、そんな噂すらある企業もあったりする。その小原財閥の資金、力を浦の星と静真が統合することで手に入れることができるのであれば、静真の力はさらに大きくすることができる、日本有数の、全国大会に優勝できるほどの実力を持つ部活を数多く抱える高校へと進化させることができる、これによって、木松悪斗の名声も上げることができる、そう、木松悪斗は考え、いや、皮算用をはじいていた。

 で、そのことも踏まえた上で、月はなぜ木松悪斗が浦の星に対して逆恨みを持ったのか、自分の考えを言った。

「で、なんで、木松悪斗が浦の星に対して逆恨みを持つようになったってことだけど、その皮算用が弾けちゃったからじゃないかな。当初、浦の星との統合によって、その浦の星の大スポンサーだった小原財閥のお金、力が静真にも流れる、自分も使うことができる、そう、木松悪斗は考えていた。そのために、木松悪斗、わざわざ浦の星の理事長のために静真の理事の椅子を用意していた。の、だけど、その浦の星の理事長、その静真の理事の椅子を蹴ってしまったんだよね。それに、それにつられてかわからないけれど、小原財閥、静真に対しての投資はしない、ノータッチである、そのことを決めちゃったのよね。結局、当初の皮算用が弾けちゃったのよね、木松悪斗。そして、浦の星と静真の統合はただ、浦の星の生徒だけを静真に引き継ぐだけになったわけ。これで、当初、自分が考えていた理想を叶えることができず、さらに、浦の星の生徒たちが静真に来るだけ、生徒数がただ増えるだけ、生徒に対するコストだけが増大してしまった、そんな、今より悪い結果を生んでしまった、そう、木松悪斗は思ってしまい、かなり怒ってしまったと思うよ。で、それが浦の星に対しての逆恨みへと昇華してしまい、さらに、浦の星との統合でより悪い結果を迎えないようにしたい、その2つの理由から、今になって浦の星との統合に反対しているんだと思うよ」

そう、木松悪斗の逆恨の原因、それは、当初予定していた?(というより、木松悪斗がこうなってほしいと期待していた)静真に対する小原財閥からの投資がご破算になったからである。木松悪斗は浦の星と静真が統合することにより、浦の星のバックにいる小原財閥の資金、力を、静真のため、いや、自分のために使おうと考えていた。そのためか、木松悪斗、浦の星の理事長であり、小原財閥を指揮する小原家の当主の一人娘(それでいて浦の星スクールアイドルグループAqoursのメンバーでもある)小原鞠莉のために静真の理事の椅子を用意していた。が、ご存知の通り、鞠莉はその静真の理事の椅子を蹴り、小原家の先祖の出身地、イタリアの大学に進学することを決めていた。と、同時に、とある理由で、小原財閥は浦の星との統合後の静真に投資しないという声明を世界中に向けて発信した。この2つのことについてはまったく関連性がない、まったくの偶然のタイミングで同時に発生したことであった。が、木松悪斗にとっては、同じタイミングで起きた、その結果だけで、この2つの出来事を関連つけてしまった。そう、浦の星の理事長である鞠莉が静真の理事の椅子を蹴った結果、小原財閥は静真に投資することをやめた、と・・・。そう関連つけた木松悪斗はこう考えてしまった、小原財閥は統合する静真に対してなにも援助すらしない、ただたんに浦の星の生徒だけを差し出すだけのことをしただけ、それは木松悪斗にとって最悪の結果へとつながってしまう、と。そして、木松悪斗はついに(感情的なのか)こういう結論を導いてしまった、「浦の星と静真の統合によって生じるはずだった、木松悪斗と小原財閥との結びつき、それを小原財閥は拒否した。それは自分の顔に泥を塗った」と。そういった結論を持った木松悪斗、ついには、浦の星、と、いうよりも、小原財閥に逆恨みを持つようになり、それが今になって、浦の星と静真の統合反対への方針転換へとつながってしまったのだ。

 この月の意見を聞いたナギ、

「へぇ、生徒会長ってやっぱり頭がいいのですね、凄いです!!」

と、月の答えに感心する。月、おもわず、

「そ、それは、生徒会長、だからだよ・・・」

と、謙遜してしまう。生徒会長である月にはいろんなところから静真に関する情報が日々届いてくる。それは先生経由、ほかの生徒たち経由、地元住民経由、いろんなところから届くのである。その情報をもとに、月、自分で考えた上でいろんな方針、判断を下す。それは静真のため、静真に通う生徒たちのため、よりよい学生生活を暮らしていけるようにするためであった。そして、月の優秀さゆえに、良い意味で月のとった方針、判断は静真のため、静真に通う生徒のため、よりよい学生生活を暮らせるために役に立っていた。そのなかで、木松悪斗関連の情報、浦の星の情報などもよく月の手元に届くことが多い。その情報をもとに月はなぜ木松悪斗が今になって静真と浦の星の統合に反対しているのか、その理由を推測することができた。もちろん、浦の星の理事長だった鞠莉が静真の理事の椅子を蹴ったことも知っていた。が、実は、月、浦の星の理事長が小原財閥の中心となる小原家の当主の一人娘である、との情報しか知らなかったため、その理事長の氏名の名前すら知らなかった。さらに、鞠莉という名のAqoursメンバーがいることは曜から聞いていたが、その苗字が小原であることは知らなかったらしく、その鞠莉が小原家当主の一人娘であること、浦の星の理事長であることすらも知らなかった。もちろん、浦の星の生徒である鞠莉が同時に浦の星の理事長をしている、なんて、現実に考えてありえないこと、でも、現実にあることについては現時点では知らなかった・・・みたいである、月は・・・。

 とはいえ、生徒会室にもどるなり、自分の荷物を持って下校する月、あることを考えていた。

(さて、近いうちに臨時理事会が開かれる。そこで木松悪斗は絶対に浦の星との統合を中止するような議案をあげてくるはず。そして、その議案が臨時理事会で通るよう、今日から臨時理事会がある日までなにか裏工作をしてくるはず。それを阻止するためにも僕たちは動かないといけない!!絶対に木松悪斗の思い通りにはさせないぞ!!だからね、曜ちゃん、待っててね!!絶対に静真と浦の星の統合を成し遂げてあげるからね)

その想いを胸に、月は自分の家へと帰っていった。そして、木松悪斗に対する対抗策を考えていた。

 

 その数日後、

「で、できた~、木松悪斗に対する対抗策が!!」

と、自分の知識などを総動員して、月は木松悪斗に対する対抗策、その案を完成させた。そして、

「さぁ、明日からこの策を実施していくぞ!!」

と、月、意気込みを見せる。が、ふと、月、ある想いを抱いてしまう。

「でも、部活動って、木松悪斗の言うとおり、勝つことがすべて、なのかなぁ?」

木松悪斗の言うとおり、部活動というのは勝つことこそ大事、いや、すべて、なのか、ふと疑問に思う月。さらに、

「部活動って勝つこと以外にとても大切なこと、あるような気がするけど・・・、今、それを思い出すこと、できないよ~」

と、自分の今の思いを吐き出す月。自分の不甲斐なさにがっかりしてしまう月、だったが、

「それがわかれば、静真と浦の星の統合もいい方向に進めることができると思うんだけどなぁ。僕、「部活動ってなにか?」「部活動ってなにが大事か?」それをこの統合問題を通じて知ることができたらいいんだけどなぁ~」

と、遠くに見える星に向かって嘆いてしまった。

 

 



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Moon Cradle 第4話

 翌日、早朝、静真高校、生徒会室・・・。

「今から緊急生徒会役員会を開きます!!」

と、月は自分の前にずらりと並んだ生徒会役員たちを見て、開口一番、声をあげて緊急生徒会役員会を開くことを宣言した。あの部活動保護者会の会長である木松悪斗への対抗策を考えついた月、その策をまとめたその日のうちに生徒会役員全員に「明日早朝、緊急生徒会役員会を行います」と緊急メールを送っていた。そして、その月の呼びかけに応じ、生徒会役員全員は早朝にも関わらず生徒会室に集まってくれた。「月生徒会長が緊急メールを送るってことは、静真にとって一大事が起こっているに違いない!!今こそ、私たちが力を合わせて月生徒会長のために頑張ろう!!」、この想いを胸に生徒会役員全員がつきのもとに集まってきたのだ。それほど月は生徒会役員全員から慕われていた。これも月の人柄ゆえの賜物だった。月が生徒会会長選挙のとき、全校生徒の95%もの信任を受けて当選した。ちなみに、そのとき、生徒会会長選挙に立候補したのは月1人だった。それでも、全校生徒の95%もの信任を受けての当選である。では、なぜ、月は選挙のときに95%もの信任を受けて当選したのか。それは、月が高1のとき、当時の生徒会長から静真一の才女と言われていた月を副会長に任命したあと、月は副会長として生徒たちのために日夜頑張っていたからだった。それは、たとえ、生徒たちから見えないところでも、月は決して気を引かず、こつこつと頑張っていたからだった。そのことを先生たちを通じて知った生徒たちは「月こそ次期生徒会長にふさわしい」と思うようになり、と、いうよりも、静真の生徒全員の想いとなっていた。そのため、月以外に生徒会長選挙に立候補しなかったし、95%もの信任率で月は生徒会長に当選したのである。そして、その月のもとで働きたいという生徒も多く、月はそのなかでも生徒のためになりたいという志が高い生徒たちを生徒会役員にした。その月に選ばれた生徒会役員たちは月の役に立ちたい、そして、静真の生徒たちのために働きたいという強い意思を持っていた。だからこそ、生徒会役員たちは月のためならどんなことでも月を助ける、そんな連帯意識が強いのだ。ただし、月に対して連帯意識の高い生徒会役員たちであったが、ただの月のイエスマンではなかった。それはのちほど・・・。

 と、いうわけで、月のために集まった生徒会役員全員に対し、月はあることを言った。

「実は、みんなに伝えたいことがある。この前、部活動保護者会の木松悪斗会長が浦の星との統合に反対を示した。今まで賛成してきた木松悪斗会長だったが、それを今になって反対に転じてしまった。僕としてはまことに遺憾であると思っている。そして、僕は当初の予定通り、浦の星との統合を実現したい、そう思っている、絶対にだ!!」

この月の言葉に生徒会役員からは、

「なんか珍しく静真のこと以外のことを言うのね、生徒会長」「私たちは月生徒会長のため、静真の生徒たちのために動くけど、他校のために動くことっていいのかな?」

と、少し困惑気味になっていた。が、それでも、月、

「僕はどうしても静真と浦の星の統合を実現させたい、静真の将来のために・・・」

と、生徒会役員たちに懇願する。が、いつもなら、「やりましょう」「しましょう」と、二つ返事で承諾する生徒会役員たちも、今回ばかりは、

「静真の将来って言っても、今回の統合は生徒数減少に悩む浦の星を救済するために仕方なくしたとの噂だよ」「本当に静真のため、なのかな?」

と、月の願いに対して少し否定的な意見が出てしまっていた。これには、月、

(いつもは僕の案には乗り気になるはずの役員たちだけど、今回は他校がらみだから、あまり乗り気になっていないかな。やっぱ、僕が選んだだけはあるね)

と、なぜか、自分の願いに否定的な生徒会役員たちに感心していた。実は、月、生徒会役員を選ぶ際、志が強いだけで選んだわけではなかった。月の指示なしでもちゃんと自分で考え、自分で行動できる、それも生徒会役員を選ぶときの選考基準だった。なので、月率いる生徒会は、月の指示がなくても自分たちの考えで静真の生徒のために活動している。そのため、静真の生徒会は、なにかあれば素早く行動し、素早く解決する、そんなスーパー集団だった。これにより、月たち生徒会は静真の生徒たちからはとても信頼されていた。が、今回は月にとってそれがマイナスに作用してしまった。月にとってこれはピンチ、なのかもしれない。

 そんな月にとってマイナスの状況のなかでも、月は生徒会役員の前でこう訴えた。

「この月、生徒会長の座を賭けてもいいくらい、この統合を絶対に実現させたいの!!だから、お願い、僕に力を貸して!!」

この月の必死のお願い・・・だったが、生徒会役員からはこんな意見が飛び出してしまう。

「そこまで月生徒会長が浦の星との統合に固執しているのはいいのですが、でも、それって、浦の星の通っている友達のためでしょ。なんか、公私混同していませんか、月生徒会長!!」

この生徒会役員の指摘に、月にとっては的を得ているらしく、

「そ、それは・・・」

と、月、珍しく動揺してしまう。たしかに、月は静真と浦の星の統合を実現させたい理由の1つ、と、いうよりも、かなりのウエイトを占めているのが、月のいとこで大親友、浦の星に通っている曜が安心して統合先の静真に通えるようにするためである。そのことを生徒会役員に指摘されたのだ。この挙動不審に陥っている月を見てか、生徒会役員全員、

「・・・」

と、黙り込んでしまった。いや、生徒会役員全員、公私混同している月に向かって少し冷ややかな目で見ていた。

 そんなときだった。

プルプルプル

と、副会長であるナギのスマホが鳴る。ナギ、すぐに電話にでる。が、すぐに、

「え~、なんですって!!」

と、驚きながら言うと、すぐに顔色が悪くなる。これには月、

「ナギ副会長、なにかあったのですか?」

と、ナギに聞く。すると、ナギ、すぐに月に今起きていることを伝えた。

「月、生徒会長、大変です!!学校のメールサーバーに大量の(浦の星との)統合反対のメールが届いたとのことです!!その数、約500通!!」

これを聞いた生徒会役員たち、

「500通・・・」

と、唖然としてしまう。まさか、浦の星との統合反対のメールが約500通届いているなんて考えてもみなかったことだった。ただ、それに関して、ある生徒会役員はある疑いを言う。

「でも、そのほとんどは本校(静真)とは関係ないところからのメールじゃ・・・」

「いや、メールの差出人のほとんどが静真に通う生徒の保護者たちからです・・・」

と、ナギ、そのメールの真実を言うと、生徒会役員からは、

「えっ、パパママからなの・・・」「うそでしょ、父さんたち、浦の星との統合に反対なの・・・」

と、動揺を隠しきれていなかった。これには、月、

(まさか、木松悪斗に先手を打たれるとはね。とはいえ、その情報はずっと前から届いていたけど、まさか、これほどの影響力がすぐに出てしまうとは、木松悪斗という男、あなどれない・・・)

と、木松悪斗のことを甘くみていたのを悔やむ。実は、月、学校に静真に通う生徒の保護者から統合反対のメールが届くことはあらかた予想していた。そして、その裏には部活動保護者会会長である木松悪斗たちの存在があることもあらかたわかっていた。なぜなら、木松悪斗が統合反対、統合白紙撤回を求めて校長室を訪れたその日のうちに静真の部活動に参加している生徒の保護者全員に、

「浦の星との統合で、(部活に対する)士気の低い、お遊び感覚で部活をしている、浦の星の生徒が、(部活に対する)士気が高く、真面目に練習している静真の生徒たちがいる部活に参加すると、絶対に、士気の低下、部活内での対立など、静真の部活動に悪影響を及ぼしてしまいます。だからこそ、私たちは浦の星との統合に反対し、即時白紙撤回を学校に要求しました」

というメールを送ったのだ。とはいえ、最初はそこまで木松悪斗の意見に賛同する保護者は皆無だった。ところが、木松悪斗の配下ともいえる部活動保護者会の幹部たちは、根も葉もない噂を木松悪斗の統合反対の意見と一緒につけてから保護者たちに広めたのだ。部活動保護者会の幹部はみな木松悪斗のイエスマンであり、その木松悪斗に取り入れてもらいたいばかりにどんなこともやってしまう。そして、今回もまったくのでたらめを言っていた。が、静真に通う生徒の保護者にとっては本当の真実の話として受け取ってしまい、さらに、噂話に尾ひれがついてしまうこともあり、ころころと話の内容が変わりながらも、木松悪斗が保護者たちに訴えたいこと、「静真と浦の星の統合反対、即時白紙撤回」のところだけは変わることがないまま、その保護者のあいだでその噂話が広がっていったのだった。

 で、さらに悪いことに、その噂話を聞いた保護者が生徒に通じてその噂話が本当であるか先生に尋ねたところ、先生からは、

「それ、うそに決まっているでしょ!!そんな噂話を信じないでください。そして、心配しないでください」

という答えが帰ってきたのだ。先生たちからしても、今回の静真と浦の星の統合のため、3ヶ月という短い期間に、寝る間を惜しんでその統合の準備を進めていたのだ。そして、あともう少しでようやく統合が実現できる、それなのに、今更統合はなしにしろ、って、いうのは先生たちからしてみれば酷だった。今までの苦労が水の泡と化してしまう、そう考えたのであろう、先生はその生徒を通じてその噂話の真実を知りたい保護者に対してこう答えたのだった。だが、人というのは、あることに対して疑念を持った場合、その当事者から「安心してください」「大丈夫です」「心配しないでください」と言われると、逆に、「本当に大丈夫なの?」と、さらに疑念を深めてしまう傾向がでてしまうことがある。そして、今回もその傾向にその保護者もはまってしまった。「「心配しないでください」と先生から聞かされた」と生徒がその保護者にそのまま言ったため、

(当事者が「心配しないでください」って言っていた。これってなんか裏があるに違いない。やっぱり、噂話は本当だったんだ!!)

と、その保護者は思ってしまったのだ。これにより、その保護者は噂話が本当であると信じ込んでしまった。さらに、悪いことに、

(この噂話が真実だったら大変だよ!!こりゃ、みんなに知らせないと!!)

.と、SNSを通じてほかの保護者にもその噂話を広げていった。これがのちに浦の星と静真の統合反対、白紙撤回のメール約500通につながる。

 で、このメールに対して、自分たちの親も浦の星との統合に反対なのではと動揺している生徒会役員たち。が、これには、月、

「みんな、動揺しないで!!」

と、動揺を見せている生徒会役員たちを一喝する。これにはある生徒会役員からは、

「とは言っても、私の親から統合反対だって言われたら・・・」

と、親に反抗してまで統合賛成を貫く自身がないがゆえに言葉に窮してしまう。これには、月、

(このままだと、本当に浦の星との統合がなくなってしまう!!統合がなくなり、行く高校がないために途方に暮れるしかなく、今にも泣きそうになっている、そんな浦の星の生徒たちの姿が目に浮かぶ・・・。あぁ、曜ちゃんが泣いている・・・、泣いている・・・)

と、静真と浦の星の統合がなくなり、どこの高校に行けばいいのか泣いている曜の姿を想像してしまう。そのためか、思わず、

ヒクヒクヒク

と、月、目から涙を流してしまう。これには生徒会役員たちからも、

「生徒会長・・・」

と、生徒会長である月を心配する。その月、思わず、生徒会役員たちに大声で訴えた。

「みんな、浦の星の生徒たちを路頭に迷わせていいの?もし、静真と浦の星の統合がなくなったら、浦の星の生徒たちは通う高校がなくなって路頭に迷うことになるんだよ!!みんな、それでいいの?」

この月の発言の内容だが、たとえ、静真と浦の星の統合がなくなったとしても、曜たち浦の星の生徒たちが通う高校がなくなり路頭に迷うことはない。なぜなら、そんなことになったら大問題になるから。2月という学年末という時期に大人たちの勝手な都合で静真と浦の星の統合がなくなり、さらに、ここで浦の星がなくなるのであれば、本当に浦の星の生徒たちはなにも対策を建てることができず、通う高校すらない、そして、路頭に迷うしかない、そんな最悪の状況に陥るかもしれない。だが、それは憲法や法律で守られている教育を受ける権利をも奪うことにもつながる。こうなると、これは静真、浦の星、だけの問題ではなく、沼津、いや、日本において大問題に発展しかねないのだ。そのため、もし、そんなことが起こっても、静真、浦の星、もしくは、沼津の関係者同士でなにか打開策を出すことになるだろう。なので、月の言っていることは極端な話なのである。

 とはいえ、その打開策を提示および実施するにしても時間がかかるのも事実である。そのあいだ、浦の星の生徒たちは本当に途方に暮れるしかない、そんな事実を感じていたのか、生徒会役員から、

「たしかに月生徒会長の言うとおりだ」

「私、このままだと、浦の星に通っている親友に顔向けできない。だって、静真のために、月生徒会長が言っていることが現実になったら、その親友、本当に困ってしまうもの」

「私も、私も。私にも浦の星に通っている親友、いるもん。その親友のこと、考えると、私、胸、痛めちゃうよ!!」

と、月の言っていることに次々と共感が湧き上がっていく。なんでこうなったのか、それは、月以外にも浦の星に通っている親友を持つ生徒が多いから。では、なんで、そんなに多いのか。それは、静真と浦の星は沼津のなかでも長い歴史を持つ由緒ある女子高だから。それに憧れて静真を受験したい子も多い。とはいえ、静真は部活動が盛んであり、将来のため、プロの選手になるために静真を受験する子が多く、受験倍率も結構高い。なんで、比較的簡単に受験できる浦の星を受験する子も多かった。しかし、沼津の中心地から通うのはとても難しいため、たとえ合格しても、沼津のほかの高校に入学する子も多く、浦の星はいつも生徒数減少により廃校の危機を迎えていたのだ。そして、小原財閥の援助むなしく静真との統廃合を迎えてしまったのだった。とはいえ、静真の生徒会役員の多くが浦の星に通う親友がいることもあり、月の言うことに生徒会役員の多くが共感したのだった。

 月の言うことに共感している生徒会役員の姿を見た月、その役員たちにあることを言った。

「みんな、僕の、一生のお願い!!浦の星のみんなのために、今から、生徒会一丸となってやっていきたいことがあります!!それは・・・」

と、月が数日かけて考え抜いた、木松悪斗たちへの対抗策、静真と浦の星の統合を実現するための策を生徒会役員全員に提示した。

 これを聞いた生徒会役員たちは、

「これはいいですね」「これだと、たしかに自分たちの想いを大人たちに示すことができますね」

と、その対抗策に次々と賛同する。これを聞いた月、

「それじゃ、この僕の案(木松悪斗たちへの対抗策)に賛成の人?」

と、採決を図る。すると、生徒会役員全員が手を挙げた。これを見た月、

「全会一致!!よ~し、これから僕たち静真高校生徒会は、浦の星との統合を実現するために行動します!!」

と、たかだかに宣言した。

こうして、月たち生徒会一同は、月が提示した対抗策にのっとり、行動を開始した。

 



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Moon Cradle 第5話

 次の日の昼休みの時間、月はナギを連れてある1年の教室を訪れていた。そのとき、月はその教室にいる生徒が集まっているところに行き、

「ねっ、ちょっといいかな?」

と、その生徒たちに声をかけると、その生徒の1人が、

「あっ、月生徒会長!!こ、こんにちは!!」

と、ちょっと緊張しながら月に挨拶する。その生徒に対し、月は、

「いやぁ、緊張しなくてもいいよ。もっとリラックスしてもいいんだよ。そこまで堅苦しいことを言いにきたわけじゃないからね」

と、少しでもその生徒の緊張をほぐそうとしていた。が、これには、その生徒、おもわず、

「あっ、ありがとう、ございます!!」

と、逆に緊張を強めてしまった。これを見ていたナギ、これでは埒が明かないということで、

「実は、みんなにお願いがあるんだ」

と言って、月が考えた木松悪斗への対抗策の説明をし、それに参加してもらえるようお願いした。が、

「でも、それって、私たちにとって意味あるものですか?」

と、そこにいるほとんどの生徒たちがその策に懐疑的に見ていた。さらには、

「私はその策はとてもいいと思いますが、親から、「絶対に浦の星との統合については反対しなさい、じゃないと、将来のためにならないからね」って、言われていますので、参加できません」

と、丁寧に参加を断る生徒もいた。これには、月、

(こりゃ、木松悪斗の考えが生徒たちにも浸透しているのでは・・・)

と、すぐに感じた。まず、月の策に懐疑的な生徒たちからすれば、浦の星との統合など大人たちに任せればいい、自分たちは静真で勉強さえしていれば高校も卒業できるし、自分が行きたい大学にだって進学できる、逆に、なにか行動を起こして、それが大問題に発展すれば、内申点にも響く、そうしたら、自分の行きたい大学に進学することなんてできない、そんなふうに考えているのかもしれない、と、月はそう考えていた。さらに、「策には賛成だけど、親から反対しなさいって言われているから参加出来ない」と言った生徒に関しては哀れとしかいえない、と、月はそう思ってしまう。なぜなら、静真の部活動については「木松悪斗が言っていることが絶対である」といった認識が静真の部活動に参加している生徒たち、そして、その保護者たちのあいだで広がっていたから。廃校寸前だった静真を建て直し、さらには、静真の部活動を全国大会の常連といえる部活を数多く持てるほどに実力をあげてくれた木松悪斗に対し、静真の理事長以下、理事の面々、そして、部活の(先生側の)部長をしている先生たち、さらには、静真の部活動に参加している生徒の保護者からは王様かそれ以上の存在として見られていた。木松悪斗もそのことは自覚しており、それを逆手にとって、静真のなかで権力?を振りかざしていた。たとえば、自分に反抗した理事をそこに通うその理事の子ともども静真、いや、沼津から追い出したり、静真が自分にとって不利益になるような方針をとろうとすると、自分の息がかかった理事、というよりも、理事全員を動かしてその方針を撤回させたり、などなど、静真の王様というくらいの権力を持っていた?で、今回の浦の星との統合の件も、浦の星の大スポンサーだった小原家のお金を使い、静真への寄付をもっと増やし、静真をもっと有名にし、それでもって、静真に大きな影響力を持つ自分の名声をさらに高めようとする、そんな皮算用があったために今まで賛成だったのだ。が、小原財閥、というよりも小原家が静真への寄付を拒絶したことにより、その皮算用が弾けただけでなく、浦の星という余計なものまで静真に入ってくる、それこそ自分にとって不利益になる、そう木松悪斗が判断したため、今になって木松悪斗は統合反対に転じたのだ。とはいえ、静真のなかでは絶対的な権力?を持つ木松悪斗が浦の星との統合に反対しているので、静真の理事たち、部活動に関係のある先生や保護者たちは木松悪斗の逆鱗に触れてしまえばどうなるかわからない、という恐怖で浦の星との統合については反対票を投じざるをえなかった。で、それが保護者を通じてその子どもである生徒たちにもその影響が出てしまっていた。月はそのことをこの場で実感していたのだ。

 しかし、月、ここで引き下がらなかった。そんな月の策に懐疑的、そして、親の命令で浦の星との統合に反対している生徒たちに対し、月はあることを訴えた。それは・・・。

「みんな、聞いて!!もし、浦の星との統合がなくなったら、浦の星の生徒たちはみな行き場をなくして困ってしまうの!!僕、そんな困って途方に暮れて泣いている浦の星の生徒たちの姿を思い浮かぶととても悲しくなってしまう!!僕、実は、自分にとって大親友と呼べる友達が今、浦の星に通っているんだ。でも、統合が中止になって、浦の星がなくなったりすると、その友達、とても悲しんでしまうよ!!だからね、お願い、浦の星に通っている生徒たち、いや、友達のために参加して・・・」

この月の訴えに、これまで月の策に懐疑的、反対だった生徒たちは、

「でも・・・」

「月生徒会長の話を聞くと賛成したいのはやまやまなんですけど、でも、親からは・・・」

と、ちょっと躊躇してしまった。

 そんなときだった。突然横から、

「私は月生徒会長の策に賛成です!!私、参加します!!」

と、大きな声で月の策に賛同することを表明した少女がいた。それに気づいた月、

「えっ、誰?」

と、まわりを見渡す。するおt、その少女が立ち上がり、月のところまで来ると、

「私は月生徒会長の言うことに賛成です。だって、私の友達、と、言えるかわかりませんが、中学生のときに知っている子が今浦の星に通っているんです!!その子、少し中二病患っていて、ときたま、自分のこと「堕天使ヨハネ!!」と称して(中学校の)校舎の屋上に上っては不思議なことを言ってしまう、とてもイタめな子なんですけど、それでも、私にとっては大事な大事なお友達、なんです!!その子を困らせることなんて出来ません!!その子のためにも絶対に浦の星との統合を実現させたいのです!!」

と、大きな声でみんなに聞こえるように言った。これにはこれまで懐疑的、反対している生徒たちからも、

「たしかに。私にも浦の星に通っている友達いるもんね」

「その友達が困らせるようなこと、それを静真の大人たちがしようとしていること、それって、自分たちから見たら、知らないうちにその子たちに迷惑かけていることにならない。それってとてもいやだよ」

と、だんだん月の策に賛同する生徒たちが増えていった。それを見たナギ、「ここだ!!」と思い、

「それじゃ、月生徒会長に賛同してくれる方はこちらに・・・」

と、もくもくと生徒たちにあることをさせる。とても簡単なことである。が、それをするためには自分の想い、考えをしっかり持つ、それが必要だった。そして、それをした生徒たちは浦の星にいる友達のために、月の考え、策に賛同したのだった。

 そして、突然の発言で懐疑的、反対していた生徒たちを賛成へと導いてくれた少女も月とナギの前でその行為をすると、突然、月が、

「本当にありがとうね。あなたの率直な発言がなかったら、今やどうなっていたのかわからなかったよ」

と、その少女に御礼を言うと、その少女はすぐに、

「だって、私、中二病を患っているその子と仲良くなりたい、と、中学のときにずっと思っていたのですが、その子、不登校気味で、中学校で会うことができないまま中学を卒業しちゃって、その子は浦の星に、私は静真と別々の高校に進学しちゃったんです。だから、私、その子と友達になりたい、その心残りがあるのです。だから、今度の統合でその心残りを解消できたら、そう思って、月生徒会長の考え、策に賛同したのです」

と、答えた。これには月、

「でも、本当に賛同してくれてありがとうね」

と、その少女にあらためて御礼を言うと、その少女も、

「いやいや」

と、少し謙遜していた。

 そんなときだった。月はあることに気づいた。

(あれっ?たしか、この少女の友達?って「中二病を患っている」「ときどき「堕天使ヨハネ!!」と称している」って言っていたよね。たしか、曜ちゃんがいるAqoursにそれに似た子、いたような気がするけど・・・)

 で、月、すぐにその少女に尋ねた。

「で、あなたが中学のときに友達になりたかった子の名前ってなにかな?」

すると、その少女はその子の名前を言った。

「たしか、苗字は・・・津島、あっ、津島善子!!善子ちゃん!!今は浦の星のスクールアイドルAqoursの一員として頑張っているはずですよ!!」

これを聞いた月、おもわず、

「えっ、あの善子ちゃん!!僕、知っているよ!!あのAqoursの善子ちゃん、だよね!!」

と言うと、その少女も、

「えっ、善子ちゃんのこと、知っているのですか!!私、月生徒会長が善子ちゃんのこと、知っているなんて、びっくりです!!」

と、目をパチクリしながら驚いてしまう。月はこれに対し、

「僕は善子ちゃんにあったことはないけれど、僕の大親友がAqoursの一員でね、その大親友と話すときによく善子ちゃんのこと、話題にしているんだ~」

と、喜びながら言うと、その少女も、

「えっ、月生徒会長の親友ってAqoursの一員なんですか!!誰ですか?」

と、月に向かって興奮しながら言うと、月、

「渡辺曜ちゃん!!曜ちゃんと僕はいとこ同士で大親友といえる仲なんだ~」

と、少し自慢げに言うと、その少女も、

「それは凄い!!Aqoursのなかでも1,2位の人気を誇る曜ちゃんといとこ同士で大親友だなんて、凄いです!!凄いです!!」

と、こちらも興奮気味で話していた。

 そんな、興奮状態の2人に対し、ナギ、冷静に、

「月生徒会長、あともう少しで昼休みが終わります。すぐに自分の教室に戻らないと」

と、月に忠告する。月、これに対し、

「あっ、あともう少しで昼休みが終わっちゃう!!また、今度、Aqoursについて話しましょうね。で、あなたのお名前は?」

と、その少女に名前を聞くと、その少女は元気よく自分の名前を言った。

「稲荷、稲荷あげはです!!」

これには、月、

「あげはちゃんね。また、あとでね!!」

と、元気よく別れの言葉を言った。

 そして、月は自分の教室に戻る・・・前に、月の策に賛同してくれた生徒たちの前に戻り、その生徒たちにあることを尋ねた。

「ところで、君たちにとって部活動ってなに?」

唐突な質問にほとんどの生徒たちはただただうなるしかなかった。が、そのなかで、ある生徒が月の質問に答えた。

「私たちにとって部活って「勝つことがすべてだ」と思います。勝つために日夜自分に対してきつい練習を課しています。特に高校の大会はそのほとんどがトーナメント戦だから、負けたらそこで終わりです。そう考えると、勝ち続けないといけない、勝ち続けるには日々の鍛錬こそすべてです。真面目にこつこつとやっていくこと、そして、それにより勝ち続けること、それこそ大事だと思います」

で、この生徒の意見を聞いた生徒たちは次々と、

「それもそうだね」

「それって(全国大会に出場できる部活を数多く持っている)静真にとってとても大事な考え方だよね」

と、その生徒の意見に次々に賛同していく。これには、月、

(本当にそうなのかな?僕、それって、今を生きる僕たちにとってとても危険な思想、考え方にならないかな?そう思うと、もっと大切なものがなにか、大事なものがなにか、あると思うんだけどなぁ。でも、今の僕にはまだそれがなになのか、わからない・・・)

と、その生徒の意見を否定しつつ、それに代わるなにかがわからない自分に対し少し悔しい思いを持ってしまった。

 

 こうして、月たち生徒会一同が行動を起こして1週間が経ったある日、

「た、大変です、月、生徒会長!!」

と、突然月のいる生徒会室にナギが叫びながら飛び込んできた。それに、月、

「騒がしいですよ、ナギ副会長。さぁ、これを飲んで落ち着きなさい」

と、紙コップに入れた水をナギに勧める。ナギ、それを一気に飲み干すと、月に対してある知らせを伝えた。

「月生徒会長、ついに決まりました!!明日の夕方、学校の会議室で臨時理事会が行われます!!」

これを聞いた月、

(ついに木松悪斗が勝負にでましたか。木松悪斗にとってみたら、下準備はすでに終わった、ってことかな)

と、木松悪斗が考えていることを想像していた。静真の理事会は月1回定期的に行われる通常理事会と臨時に行われる臨時理事会の2つがある。で、月1回の通常理事会はすでに3週間前に行われていた。なので、もし、次の通常理事会で静真と浦の星の統合について協議するのであれば、あと1週間ぐらい待たないといけない。で、今、現時点は2018年2月末である。そんでもって、次回の通常理事会が行われるのが3月上旬。こうなると、もし、通常理事会で木松悪斗たちの思惑通り、浦の星との統合中止、白紙撤回が決まったとしても、そのあとに発生する統合中止にむけた作業の期間はたった2週間ととても短い。だって、3月上旬の3週間後って4月である。新しい年度が始まってしまうのだ。と、いうわけで、たった3週間で統合中止に向けた作業を行うのは酷だといえる。結果、たとえ、木松悪斗の力をもってしても、3月上旬に行われる通常理事会にて浦の星との統合の中止、白紙撤回の案が採用されることは難しい。けれど、臨時理事会を今開けば、浦の星との統合中止に向けた作業の期間は1ヶ月と長くなる。いや、1ヵ月こそがその作業が行うことができるぎりぎりのラインだった。と、いうわけで、木松悪斗たちはそのぎりぎりとなる2月末に臨時理事会を開催することを決めたのである。

 しかし、月は「木松悪斗たちは下準備ができた」と思っていた。その下準備とはなにか。それは臨時理事会の開催と深くつながっていた。臨時理事会を開催するためには理事10人のうち、半数の5人以上での開催要求、もしくは、浦の星に通う生徒の保護者全体のうち過半数以上の開催要求があれば臨時理事会を開催しないといけないことになっていた。で、今回は前者の開催要求があった・・・わけではなかった。なぜなら、いくら木松悪斗の権力が強いために理事全員を牛耳っている・・・とはいっても、今回の臨時理事会開催の原因となった静真と浦の星の統合については、今後の静真の占う上でもとても重要な問題である。なので、いくら木松悪斗の権力を使っても臨時理事会を開催しても、学校運営を任されている理事たちとしてはとても慎重に協議しないといけない、そんな気持ちが強かったりする。そのことは木松悪斗も考えていたらしく、早々と理事を使っての臨時理事会開催は諦めていた。で、木松悪斗たちが採った方法が、後者の方、生徒の保護者全体の過半数以上の開催要求だった。で、木松悪斗たちがそれを実現させるために採った方法が、前述の通り、木松悪斗が静真の部活動に参加している生徒の保護者全員に送った、浦の星との統合反対、白紙撤回を訴えるメールだった。そのメールと木松悪斗の取り巻きである部活動保護者会の幹部たちの噂話(木松悪斗が訴えたい情報+根の葉もない噂)のおかげで今やその保護者の大多数が木松悪斗の考え、浦の星との統合反対、白紙撤回に賛成していた。だって、大切な子どもを静真に通わせている理由、それがその子どもがプロの選手になるために、将来のために静真に通わせているのだ。なぜなら、静真はプロの選手になるための環境が整っているから。最新のトレーニング機器を揃えていること、優秀なコーチ・トレーナー陣がいることなどなど。プロの選手になるために必要なものは全部揃っている、プロの選手を目指す生徒にとって最高といえる環境がここ静真にはある。そして、そのおかげか、静真の部活に参加している生徒たちの士気も高い。が、お遊び感覚で部活をしている(木松悪斗談)浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加すると、木松悪斗の言うとおり、その環境が崩れてしまう、そうと考える保護者が大多数いたのだ。この保護者が大多数いること、それこそ、今回において、木松悪斗が追い求めていたものだった。生徒の保護者の大多数を味方につけることで、生徒の保護者の大多数の声、すなわち、浦の星の統合による静真の部活動に悪影響、子どもたちにとって最強の(練習)環境の崩壊を起こさないための浦の星との統合反対、白紙撤回の声という大義名分を得たのである。そして、その保護者たちの声は臨時理事会開催要求につながり、規定により2月末での臨時理事会開催へとつながったのである。だが、実は、木松悪斗にとって保護者たちの声という強い武器はこの先の臨時理事会にも影響力を及ぼすのだが、それはのちほど・・・。

 とはいえ、月もこのまま何もせずに臨時理事会で浦の星との統合の白紙撤回を決めさせる腹はなかった。逆に月の闘志に火をつけることになった。

(このまま指をくわえながら木松悪斗のやりたい放題にさせる気はないね。そっちがその気なら、こっちにも対木松悪斗用の最終兵器、持っているもんね!!その完成目指して、今夜は鉄やだ~!!)

その月の思いゆえに、月、生徒会役員全員に対し、

「みんな、ついに決戦の日が明日に決まったよ!!もう待ったなしだよ!!さぁ、自分たちのためにも、浦の星に通う友達のためにも、あれを完成させよう!!今日は徹夜になるかもしれないから、覚悟していてね!!」

と、はっぱをかける。これには生徒会役員全員、

「はい、わかりました!!」

と、自分たちがこの1週間やってきたことに誇りを持って最後のラストスパートをかけた。

 

 翌日、月は対木松悪斗用の対抗策となる最終兵器の完成を目指して頑張っていた。が、あまりに膨大なものになっていたため、それを整理したりして時間が月の予想以上にかかってしまい、今だに完成していなかった。これには月、

(このままだと臨時理事会に間に合わない!!急がないと!!)

と、少し焦りを感じていた。しかし、ちゃんとしたものに仕上げないとただのなまくらの武器と同じになってしまう、そうすると木松悪斗に対してあまりダメージを与えることができなくなる、それでは用意した意味がない、月はそれを重々承知していた。だからこそ、手を抜くことは許されなかった。と、いうわけで、月は一瞬の気も抜かず、その最終兵器の完成目指して生徒会役員みんなと一緒に頑張っていた。

 



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Moon Cradle 第6話

 そして、ついに夕方になった。ついに、月vs木松悪斗、決戦の場となる臨時理事会がここ、静真高校の会議室で開かれようとしていた。今日はこれからの静真を決めるための重要な理事会であったため、通常理事会みたいに静真の理事10人だけ・・・ではなく、生徒代表として、生徒会長である月、そして、先生側の代表である校長や教頭、それに、木松悪斗の忠実なる僕(しもべ)である部活動保護者会の幹部数人も参加していた。が、スポンサー、先生、生徒の代表ともいえる人たちが参加しているなか、あともう1人、学校にとってかかせない人たちの代表が参加していなかった。その代表とは・・・。

 そのなかで、理事長の、

「それでは、これから臨時理事会を開催いたします」

と、いう声と共に、運命の臨時理事会はついに始まった。

 はずであった・・・が、最初はなにも起きなかった。と、いうよりも、拍子抜けだった。臨時理事会最初の議題、それはあと1ヵ月後に新年度がはじまるにあたり、部活用に新しいトレーニング機器の購入、新しいコーチ・トレーナーとの契約などの可否だった。これらの費用は保護者からの学費や寄付金・・・ではなく、全額木松悪斗の多額な寄付金から捻出されるため、学校としてもそんなにダメージを与えるコストにはならなかった。

 が、月はその可否について議論?が続いているなか、ある理事の方を見ていた。その理事の名は木松悪斗。そう、部活動保護者会会長である木松悪斗はそれと同時に静真の理事でもあった。とはいえ、それは当たり前である。だって、木松悪斗は静真の大スポンサーだから。浦の星も小原家が大スポンサーだったため、小原家当主の一人娘である鞠莉が理事長を務めていた。そう考えると、木松悪斗も静真の理事になっていてもおかしくなかった。それよりも、鞠莉の件を考えると、静真の大スポンサーである木松悪斗が静真の理事長であってもおかしくない。でも、木松悪斗が理事長ではなく理事にとどまっている理由、それは静真に何かが起こった場合、理事長だったらすぐに責任を取って辞任しないといけない場面がでてくることがある。それを木松悪斗は恐れていた。もし、理事にとどまっていたら、すべての責任を理事長になすりつければ言い逃れができる、そう、木松悪斗は考えているのだ。いわば、理事長は木松悪斗からすればスケープゴートだったりする。と、いうより、理事長自身木松悪斗の傀儡だったりする。大スポンサーである木松悪斗の権力?さえあれば、理事長はおろか、理事全員を陰から操ることなど容易いこと、なのである。と、いうわけで、木松悪斗という陰の帝王により、理事会そのものが木松悪斗の手のひらで起こる茶番劇だったりする。それでも臨時理事会を行うというのは、木松悪斗にとっても、さらに、静真にとってもそれほど浦の星との統合が静真の未来に係わる重大な問題のあらわれともいえる。

 

 とはいえ、こうして30分間はなにも起きず、ただ、いろんな議案の可否について議論?していただけだった。

 が、臨時理事会が始まって30分後、ついに木松悪斗が動いた!!

(さあて、場も暖かくなりましたか。それでは、ここで、あれを、大きな打ち上げ花火を打ち上げましょうかね)

と、木松悪斗がそう思うと、そのまま、

「あの~、理事である私から提案があるのですが・・・」

と、重低音を響かせて言うと、理事長から、

「はい、木松悪斗理事、なんでしょうか?」

と、尋ねられると、木松悪斗は席を立ち、大声で言った。

「この臨時理事会の開催原因となったもの、そう、浦の星との統合、その中止、及び白紙撤回についてです!!」

これを聞いた月、

(ついに木松悪斗が動いたか。でも、まだ、僕たちの最終兵器、木松悪斗に勝てるくらいの最終兵器は完成していない。急いでくれ、ナギ副会長!!)

と、木松悪斗の方を見ながら少し焦りを見せながら思っていた。そう、月の考えた対木松悪斗用の対抗策であるが、臨時理事会が始まるまで急ピッチに作業を続けたものの、結局、臨時理事会までには間に合わなかった。そこで、月はナギにその対抗策、対木松悪斗用の最終兵器の完成を急がせ、自分だけで臨時理事会に集積することにした。当初はナギも月の付き添いで臨時理事会に参加する予定だったが、その最終兵器の完成を急がせるため、ナギにその作業を任せた。しかし、浦の星との統合中止、白紙撤回の可否について、今、議論?が始まろうとしているのにかかわらず、まだその最終兵器は完成していなかった。そのため、月はその対抗策、最終兵器もないまま、木松悪斗と戦うことを決めようとしていた。

 とはいえ、最終兵器のないままでは、たとえ優秀な月であっても木松悪斗には戦えないので、月は黙って見ているしかなかった。が、その月の代わりに理事の1人が木松悪斗に対して釘を打つ。

「木松悪斗理事、あなたならご存知ですよね。もう、浦の星との統合はすでに決定事項です。統合に向けた手続きはすでに最終段階まで進んでいます。それを今やめろ、と、いうのは理不尽ですぞ。もし、やめることになれば、静真、浦の星、両方に修復不可能なダメージを与えることになりますぞ。いや、それ以上に、たとえ、大きな約束事すら自分の都合で平気で破ってしまう、と、噂になり、結果、静真の信用度は地に堕ちますぞ」

が、そんなこと、木松悪斗にとってみれば平気だった。この理事の発言に対し、木松悪斗、すぐに反論。

「それがどうしたのですか。1番悪いのは浦の星の連中なんですぞ。私たち静真に黙っていたのが悪いのですよ。浦の星の生徒たちは部活をお遊び感覚でやっていること、それを私たち静真に黙っていたのですよ。1番処罰すべきは浦の星の連中でしょうが!!」

その木松悪斗の発言に、木松悪斗に反論した理事はすぐに、

「それはただの言い訳にすぎないですぞ、木松悪斗理事!!浦の星の部活動全体の実力は確かに弱い。でも、それで「お遊び感覚で部活している」と言えるのですか?」

と、木松悪斗に反論する。これには木松悪斗、

「なにごとも結果がすべてを物語ってます!!わが静真は全国大会に出場できる部活が数多くあります。それ、すなわち、部活を真剣に、真面目に取り組んでいる生徒が多い証!!対して、浦の星は地区予選初戦敗退ばかり。それこそ、お遊び感覚で部活をしている証拠です!!」

と、強く反論。これを聞いた木松悪斗に反論する理事は、

「それはたんなる憶測に過ぎないぞ!!」

と、木松悪斗にごく当たり前のことを言う。たしかに、その学校の部活の実力の強弱によって、その部活を真地面にやっているのか、お遊び感覚でやっているのか、と断定することはできないものである。それでも、木松悪斗にとっては関係ないことである。なぜなら・・・。

「それはそうと言えるのですかな?」

と、大胆不敵な笑いを見せる木松悪斗。これには木松悪斗に反論した理事は、

「な、なんだ、その不気味な笑いは・・・」

と、少し後ずさりしてしまう。

 木松悪斗、ここは好機とみて、伝家の宝刀その1を抜いた。

「あなた方はたんなる憶測だとみておりますが、保護者の方々はそれをどう思っているのでしょうかね」

と、木松悪斗が言うと、机の上に、

バサッ

と、あるものを投げた。これには理事たち、

「それはなにかね?」

と、木松悪斗に尋ねる。すると、木松悪斗、声を高々にあげて言った。

「これはですね・・・。この臨時理事会の開催要求を出した保護者たちの名簿と、その保護者たちの意見書ですよ!!」

そう、木松悪斗が机に向かって投げたもの、それは、今行われている臨時理事会の開催要求を出した保護者たちの名簿とその保護者たちの意見書だった。と、いうより、一冊の分厚い本だった。その分厚い本を木松悪斗に反論した理事が手に取り、中身を読んでみる。すると、

「なんと、こんなに大勢の保護者たちが浦の星との統合に反対しているなんて・・・」

と、浦の星の統合反対を訴える保護者が多いことに驚愕する。それを見た木松悪斗、

「これは臨時理事会の1週間前にこの私が静真に通う生徒の保護者全員に緊急アンケートを実施し、それをまとめたものになります。なお、このアンケートに関しては部活動保護者会名義で静真に通う生徒の保護者全員にメールを送信し、1~2日後に返信してもらいました。それにあわせて、臨時理事会の開催要求書も送ってもらうようにお願いしております」

と、理事たちに説明する。理事たちは分厚い本となっている臨時理事会開催要求書の名簿と、木松悪斗が実施したアンケートを集計した意見書を見ると、

「えっ、統合反対の保護者が全体の70%を超えるだと!!」

「その理由については「浦の星の生徒が静真の部活動に参加すると、静真の部活動に悪影響がでるから」が圧倒的に多い!!」

「自由意見欄には「お遊び感覚で部活をしている浦の星の生徒たちを入れたら、静真の部活動はダメになる!!統合そのものがなくなればその心配をしなくて済む!!」「そのことを一言も言わないで浦の星と統合するなんて、なんて卑怯なの!!そんな卑怯がはびこるなんて、許されるわけない!!統合反対!!」と、書かれている・・・」

と、その内容に理事たち全員が驚愕していた。静真に通う生徒の保護者の7割以上が浦の星との統合反対を訴えている。さらに、その理由が木松悪斗が1週間前から言っている「お遊び感覚で部活をしている浦の星の生徒たちが静真の部活に参加したら、静真の部活動に悪影響がでる」というのが圧倒的に多い。さらにさらに、自由意見欄には統合反対の言葉ばかりがずらりと並んでいた。これを見てしまうと、さすがに、理事たちもぐうの音も出ないのである。

 が、実は木松悪斗が保護者に行ったアンケート、木松悪斗が保護者の考えが戸浦の星の統合反対に傾くように恣意的に作られていた。浦の星との統合について、賛成か反対かを選ぶ問いについては「賛成」の文字サイズをわざと小さくし、逆に「反対」の文字サイズを大きくみせたりしていたり、統合賛成の理由を選ぶ質問はなく、逆に統合反対の理由を選ぶ質問だけ載せていたりなど、各所に統合反対の考えへと誘導するような工夫が施されており、保護者たちが自然と統合反対の考えへと導かれるようになっていたのだった。さらに、このアンケートのメールにはアンケート以外にも、木松悪斗が浦の星との統合反対を訴える動画も添付されていた。そして、その動画を見ない限り、そのアンケートに答えることができない、また、アンケートに答えないと、大切な子ども(生徒)の今後に悪影響がでる、とも、そのメールには書かれていた。なので、強制的に木松悪斗が浦の星との統合反対を訴える動画を見てそのアンケートに答えないといけなかったこと、動画によって統合反対すべきと考えるようになった保護者たちは自然と、いや、恣意的に作られたアンケートに答えることで統合反対の意思を示す・・・ように仕向けられたのである、木松悪斗に。さらに、そのアンケートの提出期限がそのアンケートが送られた日の2日後だったため、返答をすぐにしないといけなかった。そのため、保護者たちはあとでじっくり考える余裕すら与えられていなかったのだ。

 と、いうわけで、インチキに近いアンケートではあるが、木松悪斗たち統合反対派は保護者の大多数が統合反対であることを理事たちに示したことになった。そのため、

「これを見て、浦の星と統合する気になりますかね。保護者の大多数が統合に反対なんですよね・・・」

と、木松悪斗、理事たちに詰め寄る。木松悪斗の伝家の宝刀その1「保護者たちの大多数が反対している」それを指し示す名簿と意見書、これにより、木松悪斗は保護者側の意見「浦の星との統合反対」を代弁している、そんな大義名分を前に、さすがの理事たちも、

「・・・」

と、黙るしかなかった。

 だが、木松悪斗は理事たちへの攻撃の手を緩めなかった。すぐさま、伝家の宝刀その2を繰り出す。それは・・・。

「これまでは保護者側の意見を聞いてもらいました。今度は生徒側の意見を聞いてください」

この木松悪斗の言葉に、月、

(えっ、生徒側の代表は、生徒会長である、この僕、のはずでしょ!!)

と、驚いてしまう。そんな月を尻目に、木松悪斗はある生徒を呼んだ。

「それではお入りください!!」

「はいっ!!」

と、会議室の外から大きな声が聞こえてくると、

バンッ

と、会議室のドアをおもいっきり開く音が聞こえてきた。そのドアから入ってきた生徒を見た月、

(な、なんで、あいつがここにいるの!!)

と、またまた驚いてしまう。なぜなら、その生徒は・・・。

「理事のみなさま、こんにちは。木松悪斗理事に呼ばれ、ここに参りました。私、静真の部活に所属している生徒たちをまとめております、部活動連合会の会長、そして、女子サッカー部部長でエースの木松旺夏(おうか)と申します」

部活動連合会、部活動が盛んな静真には運動部、文化部、ともにたくさんの部がある。そのたくさんある部をまとめあげる組織、それが部活動連合会である。なので、「静真の部活に所属している生徒たちをまとめております」、つまり、「部活に参加している生徒たちの代表」というのもあながち間違いではない。でも、それなら、「静真の部活に参加している」=「静真に通っている」生徒たちを代表している月たち生徒会との関係は?それは、部活動連合会は生徒の学校での活動のうち部活動関連のことのみを担当し、それ以外のことは生徒会が担当していたのだ。なので、部活動連合会は生徒会とは独立した生徒たちの組織であり、(静真においては)ちゃんとした生徒たちを代表する組織でもあった。ちなみに、予算など、部活動関連のことを担当する部活動連合会、それ以外を担当する生徒会、両方に係わりがある案件については両者一緒になって協議している。

 それよりも、月が部活動連合会会長の木松旺夏を見て一瞬の不安を感じた。なぜなら、

(木松旺夏、部活動連合会会長にして、女子サッカー部の部長でエース、そして、あの木松悪斗の娘・・・)

そう、木松旺夏はあの部活動保護者会の会長、木松悪斗の娘である。木松旺夏、静真高校2年である。木松悪斗の娘として生まれる。小さいときからサッカーの天才と称されるほどサッカーの資質に恵まれていた。それに目をつけた親、木松悪斗は旺夏にサッカーの英才教育を施した。朝から晩まで旺夏をサッカー漬けにしたのだ。結果、旺夏は親の木松悪斗の期待通り、将来の日本代表といわれるくらい将来有望な女子サッカー選手に変貌を遂げていた。その旺夏だが、父木松悪斗の勧めで日本の中でサッカーがもっとも盛んであり、日本一になれるくらいの実力を持つ女子サッカー部がある高校が群雄割拠している静岡県、その地にあり、そして、父木松悪斗の息がかかる高校、静真高校に入学、その天才といえる実力、父木松悪斗譲りのカリスマ性により、静真高校女子サッカー部をたった1年で全国大会に出場できるくらいへのチームへと成長させ、そして、ついに、去年のインターハイで念願の日本一へと導いていた。で、そのこと、プラス、静真の(部活動の)大スポンサーである父木松悪斗の強い推薦もあり、静真に多数ある部活を束ねる部活動連合会の会長に就任していた。ちなみに、父木松悪斗とその子旺夏は実の親子ということもあり、旺夏は父木松悪斗に忠実であり、さらに、父の考えと同じだったりする。なので、月にとってみれば、ある意味(この臨時理事会において)天敵ともいえる。なお、木松悪斗には旺夏以外にもう1人、娘がいる。旺夏の妹で、今年の春に静真高校に入学する予定なのだが、父木松悪斗としてみれば、その娘は「旺夏と違い、出来が悪すぎる!!私の娘じゃない!!」と言われているらしい。

 とはいえ、その父木松悪斗が絶賛する娘、旺夏は会議室に入るなり、乾坤一擲、大声をあげて宣言した。

「この木松旺夏、高々に宣言します!!生徒を代表して、浦の星との統合、その中止、白紙撤回を要求します!!理由は簡単、「お遊び感覚で部活をしている、(部活に対する)士気が低い、そんな浦の星の生徒たちが、静真との統合後、静真の部活動に参加したら、静真の部活動は士気の低下、部活内での対立が発生、それにより弱体化は避けられません!!だからこそ、私は静真の生徒を代表して言います、今すぐ浦の星との統合を即刻中止、白紙撤回してください!!」

この旺夏の言葉に月は我慢できずに旺夏に文句を言う。

「ちょっと、旺夏、静真の生徒代表はこの僕、渡辺月、でしょうが!!」

そう、静真の生と全体の代表は生徒会長である月である。が、それでも、旺夏はそんなことを気にせず、

「それはそうかもしれませんが、静真の全生徒のうち、95%もの生徒が部活動に参加しています!!そう考えると、静真の全生徒の95%が参加している部活動をまとめる部活動連合会の会長、この木松旺夏も、生徒の代表と言えるのではありませんか!!」

と、月に反論する。さらに続けて旺夏は言った。

「そして、その生徒の代表である木松旺夏の言っていることこそ、静真高校の生徒全員の総意なんです!!」

この言葉に、月、

(いやいや、それには僕は入っていないでしょうが!!)

と、心の中で旺夏にツッコミをいれる。

が、この臨時理事会の場において、生徒代表の2人、月と旺夏が揃い踏みしており、2人とも攻め手を欠けるなか、理事たちにとって、どっちが本当の生徒の代表なのか、どっちが本当の生徒たちの声なのか、判断できない状況だった。旺夏は自分の主張こそ生徒たちの声だと言っているが、それを示す証拠がない。月にいたっては理事たちに主張すらしていない。この状況で、どっちが本当の生徒の代表なのか、どっちが本当の生徒たちの声なのか、それを選べというのが酷であった。

 が、それでも、木松悪斗は浦の星との統合についての採決を強行した。

「さぁ、理事のみなさん、運命の時間ですよ。浦の星と統合して破滅の道に進むか、それとも、統合を中止して大いなる発展を遂げるか、2つに1つです。さぁ、選んでください」

これには、これまで木松悪斗に反論した理事が最後の反抗を試みる。

「もし、浦の星との統合が中止、白紙撤回した場合、浦の星の生徒たちはどうするんだね?もうすでに浦の星の先生たちの再就職先や浦の星の校舎などの学校施設の処分などについてはすでに決まっているんだぞ!!それなのに、今更、浦の星の生徒たちになにもせずにほっぽからしにしたら、それこそ、浦の星の生徒たちは不憫に思われることになるぞ!!それこそ、静真に修復不可能な大ダメージを与えるになるのですぞ!!」

が、その理事の言葉は木松悪斗にとってみれば造作のないことだった。木松悪斗は威圧的な声で答えた。

「そんなの、静真にとってみれば関係のないことでしょうが!!浦の星の校舎がなくなって、浦の星の先生たちもいない、そのために、浦の星の生徒たちの行き場がなくなる、それは仕方がないことでしょうに。いつ廃校になってもおかしくない、そんな浦の星に入学したことがそもそもの間違いだったのですよ!!まっ、因果応報ってやつですよ!!その報いが、今、まさに、浦の星の生徒たちに起きようとしているだけです!!さらに、静真には浦の星との統合をやめても特に問題は起きません。だって、浦の星は日本という国からみれば、ちっぽけな存在です。その1つや2つ、なくなっても、なにも痛くもかゆくもありません。むしろ、静真の好意を無駄にしたのですよ!!その報いも、浦の星の生徒たちに、今、降りかかろうとしているだけですよ!!そう考えたらたら当然の結果です。もし、そんな浦の星の生徒たちに救いの手が必要であるなら、浦の星の大スポンサーだった小原財閥がすればいいのですよ!!もっとも、浦の星の大スポンサーだった小原財閥が浦の星への援助を打ち切ったのが浦の星の廃校の原因なんですけどね!!」

この木松悪斗の言葉に、月、

(なに偉そうに言っちゃって。これじゃ、浦の星の生徒たちが可哀想だよ!!ただ、浦の星に入学した、それだけの理由で、今になって、勝手に苦しんでください、だなんて、身勝手な考え、としかいえないよ!!木松悪斗、きっと、浦の星が廃校になる、その結果だけみて、浦の星の生徒たちは苦しんでも仕方がない、と、みているにちがいない。それに、浦の星の廃校の理由のなかには、小原財閥が浦の星の援助を打ち切ったのも含まれているかもしれない。けれど、ほかにも理由がいっぱいあるはずだよ!!)

と、木松悪斗に対し、反抗の目をみせる。たしかに、浦の星の廃校の理由だけで今の浦の星の生徒たちを苦しめることは間違いかもしれない。さらに、浦の星が廃校になる理由のなかには小原財閥が浦の星に多額の寄付をしなくなった、のかもしれないが、実際には、浦の星を廃校にさせないために小原財閥はこれまでずっと多額の寄付を小さな学校である浦の星にしてきた。が、それでも、浦の星のある内浦は沼津の中心地からかなり離れていること(沼津の中心地と内浦は大きな内浦湾を挟んだ端と端にある)などいろんな理由で生徒減少を止めることができなかった。結果、ルビィたち1年生の生徒数が1クラス27人程度しかいないぐらいにまで生徒数が減少、それが決定打になって廃校にせざるをえなかった、というのが本当の理由だった。が、木松悪斗からすれば、理由はどうであれ、(結果的にみれば)浦の星は廃校となり、静真との統合がなければ浦の星の生徒たちは行き場を失う、その状況に陥ったのは「浦の星に入学した」という間違った判断をした浦の星の生徒たち自身のせいだ、だから、自分たちが助ける義理はない、そう木松悪斗は考えているのかもしれない。もっとも、その生徒たちの援助すべきは(浦の星の援助を打ち切ったという)直接的な(浦の星の廃校の)原因をつくった小原財閥がすべきだ、というあたり、ちゃっかり、(浦の星の統合により行われる、はずだった、と、木松悪斗が勝手に考えていた)静真への多額の寄付をやめた小原財閥への意趣返しをみせていた、と、思えるのだが・・・。とはいえ、木松悪斗に反論した理事も、さすがに・・・、

「・・・」

と、黙るしかなかった。

 誰も反論できない状況に、「これで勝負あり!!」と思ったのか、木松悪斗は浦の星との統合の採決を強行する。

「さぁ、理事のみなさん、さっさと決めてください。いや、さっさと浦の星との統合の中止、白紙撤回に手をあげてください。だって、こちらには、浦の星との統合を中止、白紙撤回してほしいという保護者たちの声、それに、生徒たちの声、その両方があるのですからね」

このとき、月は思った。

(ナギ副会長、まだ完成しないの!!はやく対木松悪斗用の最終兵器を完成させて!!じゃないと、このまま強行採決で浦の星との統合が中止、白紙撤回が決まっちゃうよ~。でも、まだ来ていない。なら、この僕が時間稼ぎしないと!!)

月がこの日(臨時理事会のある日)のために数日考えて出来た木松悪斗への対抗策、最終兵器、その完成のための時間稼ぎ、それを、今、するべきだ、そう考えた月、意を決する。そして、月、いきなり席を立ち、木松悪斗に向かって大きな声で言った。

「ところで、木松悪斗理事、1つ、伺いたいことがあるのですが・・・」

この月の言葉に、木松悪斗、

「あら、これは渡辺月生徒会長、この世に及んで、なんでしょうか?」

と、月に尋ねる。すると、月は木松悪斗に対し、ある質問をした。

「木松悪斗理事、あなたは保護者たちの声と生徒たちの声、2つを持っているって言いましたが、あなたがとても重要視しているのは、保護者たちの声、それとも、生徒たちの声、どっちですかね?」

この月の質問に木松悪斗ははっきりと答えた。

「それは保護者たちの声、でしょうかね。だって、保護者はとても大事にしているお子さまをわが静真高校に預けているのですからね。いわば、保護者は私たちにとって大事なお客様、なんですよ。だからこそ、大事なお客様である保護者の声を大事にすべきではありませんかね」

この木松悪斗の答えを聞いた月、

「それはそうですか。なるほど、なるほど」

と、大げさに言うと、木松悪斗、

「なにかおかしなこと、言いましたかね?」

と、月に聞く。すると、月、その木松悪斗に対して言った。

「いいや。でも、その答えを聞いて確信しました」

この月の言葉に、木松悪斗、

「なにを確信したのですかね?」

と、さらに月に聞く。月、その木松悪斗に対し、

バサッ

と、指を指し、こう答えた。

「木松悪斗理事、少し思いやがりましたね。あなたのその自信、今、まさに崩れますよ!!」

 



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Moon Cradle 第7話

 この月の言葉のあと、すぐに、会議室の外から

バタバタバタ

と、会議室のドア向かって走ってくる足音が聞こえ、そのまま、

バタンッ

と、会議室のドアが突然開く。そして、そこから、

「月生徒会長、ついに完成しました!!」

と、ナギが1冊の本を持って会議室に飛び込んできた。それを見た木松悪斗、すぐに、

「ナギ生徒会副会長、はしたないですぞ!!この会議室でこれからの静真を決める大切な会議をしているのですぞ!!ちょっとは場をわきまえなさい!!」

と、ナギに注意する。が、ナギはそんなの関係なしに月のところに行き、

「ついに完成しました!!この不利な場をひっくり返す、そんな、最終兵器が!!」

と、月に向かって言うと、月も、

「よし、でかした、ナギ副会長!!さあ、ここからが僕たちのターンだ!!」

と、木松悪斗に向かって元気よく言う。これには、木松悪斗、

「な、なんだね、この場をひっくり返す最終兵器とは?」

と、少しおどおどしながら月に聞く。これには、月、自信満々に答える。

「それはですねぇ、これですよ!!」

と、月は木松悪斗たち、そして、ほかの理事たちの前に、ナギが持ってきてくれた1冊の本を置いた。それを理事の1人が中身を確認すると・・・、

「あっ、これ、静真の生徒たちが自筆で自分の名前を書いているぞ!!それに、1人2人だけじゃない、1クラス全員分の生徒の名前が書いてあるぞ!!」

と、驚いてしまう。それを見た月は声を高々に言った。

「そうです。この本は、浦の星との統合に賛成であり、浦の星との統合を実現してほしい、という、静真の生徒たちの嘆願書です!!」

これには、木松悪斗、

「なんだって、統合実現への嘆願書だって!!」

と、驚いてしまう。月はそんな木松悪斗を見ながらさらに言った。

「ちなみに、静真全体の95%もの生徒のみなさんからこの嘆願書を受け取りました」

そう、月が考えた対木松悪斗用の対抗策、最終兵器とは、静真の全生徒の95%もの生徒たちからの「浦の星との統合を実現してほしい」という嘆願書だった。月とナギ、いや、生徒会役員全員が生徒たちに頭を下げてまで生徒全員(旺夏を除く)から集めたもの、それが「浦の星との統合を実現してほしい」という嘆願書だった。この嘆願書に署名した静真の生徒たちであるが、親(保護者)からは「統合に反対しろ」と強く言われたのかもしれない、けれど、浦の星に通う友達、親戚などのことを考えると、静真と統合して安心して静真に通えるようにしてほしい、そんな想いから、浦の星との統合に賛成、実現してほしい、といった嘆願書に署名したのかもしれない。それほど静真と浦の星の生徒たちのあいだには普通はみえないがとても強い糸で結ばれている、そう見られてもおかしくなかった。

 そして、その嘆願書の中身を見た理事長は月に向かって一言。

「たしかに、(ぱっと見ただけだが)全部直筆の署名だ・・・」

これには、月、

「たしかに、木松悪斗理事が出した意見書や(統合反対、中止撤回を表明した)保護者たちの名簿って、全部パソコンでまとめて、プリンターで印刷した文書ですよね。でも、こちらは生徒全員分の直筆の署名入りですよ。印刷した文書と直筆署名入りの文書、どっちが強いですかね・・・」

と、木松悪斗を含めた理事全員に尋ねる。そう、パソコンで集計したりまとめたりして、それをパソコンで印刷したものだと、組織の誰かが勝手に数字を操作し、票の水増しをすることができるかもしれない。もしかすると、その意見書、名簿がまったくデタラメと判断される、そんなことがあるかもしれない。一方、月たち生徒会が集めた「浦の星との統合を実現してほしい」という嘆願書であるが、生徒直筆の署名を何百人、何千人という単位で誤魔化すというのは、短期間であれば難しいものである。さらに、そんな誤魔化しがないように、月たち生徒会は全員で嘆願書1枚1枚本物の署名なのか確認していたのだ。そのため、この臨時理事会が行われる直前までその嘆願書の本を作成するのに時間がかかったのだ。

とはいえ、木松悪斗たちが作った、複製、偽物も簡単に作れるコピーしたものと、月たち生徒会が作成した生徒全員の直筆署名入りでコピー、複製が難しいもの、どっちが信頼できるのか、それは一目瞭然だった。というわけで、月の質問に、木松悪斗を除いた理事全員・・・、

「それは渡辺月生徒会長が出した嘆願書です!!」

と、一同に答えた。これを聞いた月、

「そうですよね~。で、僕たちの集めた嘆願書ですが、静真全体の95%もの生徒たちから託されたものです。これで一目瞭然ですよね~。僕たち生徒会は浦の星との統合に賛成です。そして、生徒全体の95%が僕たちの考え、統合賛成に賛同しています。木松旺夏、部活動連合会会長の言っていること、「静真の生徒全員、浦の星との統合の即時中止、白紙撤回を要求している」は、まったくのうそ!!本当の生徒たちの総意は、「浦の星との統合賛成、統合を実現してほしい」なのです!!」

と、はっきりと高々に宣言した。これを聞いた旺夏、すぐに、

「いや、私の言っていることこそ・・・」

と、月の言っていることを否定するも、ある理事から、

「旺夏くんよ、あなたが主張していることを証明してくれる者はいないよ。対して、月くんが主張していることにははっきりとした証拠がある。これを見てどっちを信じるかね?それはもちろん、月くんが主張していることだよね」

と、指摘されると、旺夏はおもわず、

「・・・」

と、ただただ黙るしかなかった。

 とはいえ、理事たちも困っていた。木松悪斗が言っているように保護者側は統合反対、月が言っているように生徒側は統合賛成、意見は真っ二つに分かれたのだ。どっちについくか悩む理事たち。そんなときだった。突然、会議室のドアが、

バタンッ

と開くと、

「遅れて申し訳ない!!仕事が長引いてしまった」

と、身長が2メートルを超える大男が突然あらわれた。それを見た校長、

「お、お疲れ様です、沼田PTA会長!!」

と、その大男、沼田PTA会長に挨拶する。これには、さすがの木松悪斗も、

「沼田殿、お久しぶりです!!」

と、まるでおどおどしながら沼田に挨拶する。その沼田も木松悪斗に対し、

「木松悪斗理事、お久しぶりですな~」

と、大声をあげて木松悪斗に言うと、木松悪斗、体を縮ませながら、

「ほ、本当ですね~」

と、おどおどした声を出して答えていた。あの、誰に対しても「自分が正しい」と言い切るほど、静真において絶対的権力?を振るっていた木松悪斗が、まるでなにかにおびえる子犬みたいな状態にさせた男、沼田、いったいなにものなのだろうか。それは、この静真に通う生徒の保護者全員が加入する、静真高校のPTAの会長、であると同時に、この静真を作った創業者の末裔だった。静真は明治時代、旧沼津藩の上級武士だった沼田の先祖がこれからの日本を背負って立つ女性を育てていこうと想い創立した学校だった。一方、浦の星は創立した明治時代当時は徒歩でしか沼津の中心地に行けず、行けたとしても半日かかっていた、そんななかで、内浦に住んでいたキリスト教の神父さんが市の中心地より遠方にあるため、そして、女性軽視の時代がゆえに十分な教育を受けられない内浦の少女たちのために創立した学校だった(その後、太平洋戦争などにより、浦の星でのキリスト色は時代がたつごとに薄くなってしまい、今現在の浦の星はそのキリスト色はあまり感じられなくなっている。が、その名残は残っており、寺の子である花丸が所属している聖歌隊もその1つである)。で、話を静真に戻すが、静真の創立者の末裔である沼田であるが、実はあの小原家とも親交があるくらい、沼津にとってとても有名な実業家だったりする。とはいえ、いろんな会社を経営しているため、静真に係わる時間がそんなに取れないのであるが、それでもときどき、静真にとってとても重要なことがあると、それにちゃんと係わる、そんな偉い人だった。そして、静真が廃校になりそうになったときに木松悪斗に援助を依頼したのも、さらに、小原家からの申し出で浦の星との統合を認めたのも、この沼田が考えたもしくは決めたことだった。と、いっても、月たち生徒たちから見れば、とても優しいおじいちゃんなのだが・・・。

 そんな沼田、ちょっと時間が空いた、と、いうこと、そして、今後の静真を決める重要な理事会だったので、遅れて臨時理事会にはせ参じたのだが、それがちょうど、木松悪斗によって浦の星との統合の採決を強行していたときだったので、臨時理事会のこれまでの経緯について知らない沼田、すぐに理事長からその経緯を簡単に聞く。すると、沼田は大きな声で言った。

「なるほどな。よし、ここはこの俺がその判断(浦の星との統合の可否)を下そう。理事のみなさん、それでいいかな?」

これには、木松悪斗を含めた理事全員、

「どうぞどうぞ」

と、沼田の意見に同意する。あのこれまで理事たちに「浦の星の統合を白紙撤回しろ」と迫っていた木松悪斗も沼田がその可否を判断することに同意している。なぜあの絶対的権力?のある木松悪斗すら同意しているのか?それは、静真において、沼田は木松悪斗以上の権力を有しているから。沼田という男だが、静真を創立したのが沼田の先祖、というわけで、その静真を創立した沼田一族は代々静真に多大なる影響力を有していた。それが、時代が経った今でもその影響力はまだ強かったりする。その権力の差であるが、木松悪斗が王様なら、沼田は神である。そんな神の存在というべき沼田が裁決を下す、それ自体、(静真においては)それだけで強制力を有するものだった。

「それでは、静真と浦の星との統合について、最終的な裁決を下す!!」

この沼田の言葉、これを聞いた木松悪斗たち、理事たち、校長、教頭、そして、月とナギ、ツバを飲み込む。緊張の瞬間、それを確認した沼田は大声で宣言した。

「静真と浦の星との統合、それについてはそのまま続行する!!静真と浦の星は今年の4月、新年度に統合する!!これは最終決定だ!!どんなことがあっても覆ることはない!!」

 これを聞いた月とナギ、

「「や、やった~!!」」

と、大いに喜んだ。

 が、この採決結果に納得がいかない人が1人・・・。

「なんで、なんでですか?保護者たちの声としては浦の星との統合反対が多いのに、なぜ?」

そう、木松悪斗だった。木松悪斗としては納得がいかないのか、沼田に食い下がる。が、そんな沼田、木松悪斗に対し大声で言った。

「理由はいくつかある。たしかに、保護者側としては、浦の星との統合に反対、白紙撤回を求める声が多いのも事実。それは認める。しかし、1番大切なことを忘れているぞ、木松悪斗理事!!それはな、この静真にとって主役ともいえる存在だ!!」

これを聞いた木松悪斗、おもわず、

「主役ですか。そうですねぇ、その主役、ともいえる大事な存在、それは、保護者じゃないですかねぇ」

と、言うと、沼田、すぐに、

「たわけ、木松悪斗理事!!」

と、木松悪斗に一喝する。これには、木松悪斗、

「ご、ごめんなさい・・・」

と、シュンとなってしまう。沼田、その答えを言う。

「静真、いや、学校にとって本当の主役、それは、保護者でも先生でもない。この学校に学びに来ている生徒たち、子どもたちである!!「学校」、と、いう文字の意味、それは、「校(まなびや)で学ぶ」じゃ!!そのまなびやで学んでいる人たちこそ、子どもたち、生徒たち、なのじゃ!!だからこそ、静真にとって生徒たちこそ、本当の主役、なのじゃ!!その生徒たちを代表しているのが生徒会である!!それを忘れるな!!」

だが、これには木松悪斗の娘で部活に参加している生徒たちを束ねる部活動連合会会長の旺夏が反論する。

「沼田PTA会長、それは違います!!本当の生徒の代表は私、部活動連合会会長のこの私、木松旺夏です!!」

だが、これにも沼田はすぐに一喝。

「たわけ、旺夏という小童!!」

これには、旺夏、おもわず、

「は、はい!!」

と、一瞬でしゅんとなる。そして、旺夏の意見に沼田は反論する。

「いいか、旺夏という小童が言った部活動連合会は部活動に参加している生徒たちの集まりでしかない!!それに比べて、生徒会というのは、静真に通う生徒たち全員から選ばれた人たちで構成されている組織、つまり、静真に通う生徒たち全員を代表する組織である!!連合会と生徒会、雲泥の差があるのじゃ!!旺夏という小童、それをよく心にちゃんと刻み込んでおれ!!」

 さらに、沼田はなぜ静真と浦の星の統合賛成なのか、その理由を大きな声で言った。

「そして、俺は生徒会の請願書を見て浦の星との統合に賛成した。それはなぜか。それは生徒会がいっていること、それを生徒たちからの(統合に関しての)声として受け取ったからだ!!なぜなら、この請願書一つ一つに生徒たち自ら直筆で署名している。それも、静真の生徒全体の95%もの生徒たちが署名しているのだ!!これを集めることは1日2日と簡単に終わるものじゃない。少なくとも3~4日はかかるだろう。それを生徒会が一丸となって集めた!!さらに、間違いがないか、偽物がないか、一枚一枚チェックしている。だからこそ、この請願書こそ、生徒会が、生徒たちが、浦の星との統合に賛成である、その生徒たちの声が本物である証拠になるんじゃ!!ただたんに、旺夏という小童が、ある生徒の集まりの長たるものが、たった1人で、「これが生徒たちの主張(声)である!!」と、言ったところで、この請願書の前ではただの犬の遠吠えにすぎないのじゃ!!旺夏という小童、それを忘れるな!!」

これを聞いた旺夏、

「は、はい・・・」

と、またまた縮こまってしまう・・・。

 そして、沼田は大きな声でその理由の続きを言った。

「そして、木松悪斗理事が出した保護者たちの声、生徒会が出した生徒たちの声を比較したとき、これも請願書のお陰だろう、ただのパソコンで打った文書である保護者たちの声と、足を使って必死で集め、すべて直筆の署名がある請願書といった生徒たちの声、どっちを選ぶ、か。それは簡単じゃ。足を使ってこつこつと集めた方、全部直筆の署名入りの方である生徒たちの声が圧倒的に優位!!それに、静真の主役は生徒たちなのだから、生徒たちの声を大事にする、そのことも考慮した上で、俺は浦の星との統合に賛成の立場を示したのじゃ」

だれが納得がいく理由、それを示した沼田だが、ちょっと茶目っ気をだそうとしているのか、

「あと、ほかにも理由があって、もうすでに国や県、市などの行政には浦の星との統合に関する書類を提出していてな、すでに行政の承諾済みじゃ。もし、それを撤回するのであれば、申請時より労力を要してしまう。それにな、もし、浦の星との統合を中止、白紙撤回してしまうと、(木松悪斗に反論した理事の言うとおり)浦の星の生徒たちの処遇がちゅうぶらりんの状態になってしまう。これだと、統合を一方的に破棄した静真に対し、「教育を受ける権利、機会をなくすつもりか!!」という非難が集中しまい、結果的に静真自体に深い傷跡を残してしまう、いや、静真そのものがなくなるかもしれない、それを俺は恐れ入るのだがな・・・」

この沼田の答えを聞いた月、

(沼田のおじさまも、結構苦労しているんだね・・・)

と、なぜか沼田に同情してしまう。

とはいえ、沼田の意見を聞いた理事たち、この沼田の助言?を聞いた上で、すぐに浦の星との統合について裁決をとる。

「それでは、沼田殿の意見を参考に、浦の星との統合について、裁決をとります。中止にすべきという方は?」

と、理事長が言うと、手をあげた理事、それは木松悪斗、ただ1人。

「では、統合を認める方は?」

こちらは木松悪斗以外の全員である9人が手をあげる。これを見た理事長、

「それでは、浦の星との統合を続けることを認めます!!」

と、浦の星との統合をそのまま続けることを認めた。これを見た月とナギ、

「「やったよ、やった!!」」

と、大きく喜んでいた。

 が、そんなとき、沼田はあることを言う。

「でも、たしかに木松悪斗理事の言うとおり、保護者たちのあいだにも、今回の統合で、静真の特色である部活動において、士気の低下、部活内での対立によって悪影響がでてしまう、と、いう危惧を懸念する声が多いのも事実・・・」

そう、沼田は静真に通う生徒の保護者全員が加入しているPTAの会長でもある。そのため、(木松悪斗によって作られたかもしれない)浦の星との統合によって静真の特色である部活動に悪影響がでることを危惧している、そんな保護者たちの声、意見が沼田のところにも多く寄せられていた。その意見が多いこと、それを鑑みてか、沼田はある決断を下す。

「その保護者の声も大事じゃ。ならば、こうしよう。この沼田、沼津市内、もしくは、その近郊に浦の星の生徒全員が通うことができる建物を探してやろう。そして、統合によって静真の部活動に悪影響がでる、そんな保護者の不安がなくなるまで、分校の形で浦の星の生徒たちを静真に通わせよう。もし、その保護者の不安がなくなれば、そのときは、浦の星の生徒たちははれて本校に通うことができる、そういうことにしよう」

この沼田の決断を聞いた月、おもわず、

「分校!!うそでしょ~!!」

と、愕然となる。浦の星との統合が実現する、という月の願いが叶った、そのために有頂天になっていた月だったが、この沼田の決断は、月にとってまさしく青天の霹靂だった。このとき、月、

(う、うそでしょ・・・。分校じゃ、僕の大親友、曜ちゃんと一緒に学生生活を楽しむ、そんな、僕の夢が崩れてしまうよ・・・。それに、僕も、曜ちゃんも、来年度から3年生だよ。あと1年で本校と分校を統合すること、できるのかな・・・)

と、自分にとって思っていないことが起きたことにがっかりし、そして、本当に1年以内に月が通う静真の本校と曜たち浦の星が通う分校を統合することができるのか心配する。

 そんな月に対し、木松悪斗はちょっと嬉しかった。どんな形にあれ、浦の星の生徒たちを静真の本校に通わせることを阻止した、というより、小原家に一矢報いたことになるだが、気をよくしたのか、つい、

「で、その分校に関することは誰が担当するのですか?分校の費用、それに分校の先生とかは・・・?」

と、口走るが、沼田、すぐに木松悪斗の問いに答える。

「それは、分校を作るという決断をしたこの俺、沼田が担当する。もちろん、俺が全部負担する。とはいえ、小原家にも支援を頼むことにもなりそうだけどな・・・」

これを聞いた木松悪斗、

(やった!!これで小原家にもダメージを与えることができるぞ!!)

と、おもわず、小さなガッツポーズをする。

 というわけで、自分の夢である浦の星の統合は叶ったものの、分校という形をとることで、本当に叶えたい夢だった、曜と一緒の学生生活を暮らす、を叶えることができなかった月、そして、浦の星との統合を阻止できなかったものの、分校の形をとることで、ある程度願いが叶った木松悪斗、この2人の思いが交差するなか、その状況を作った沼田であったが、その2人の思いを感じてか、どうかはわからないが、自分の決断を言ったあとすぐに、

「これで臨時理事会は終了じゃ!!じゃ、みんな、お疲れ様じゃ!!」

と、勝手に臨時理事会を終了させてしまった。

 こうして、どちらかというと、玉虫色、グレーゾーンでの決着により、波乱に満ちた臨時理事会はこうして終わりを迎えた。

 



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Moon Cradle 第8話

 臨時理事会終了後、木松悪斗は沼田にPTA会室に呼ばれた。突然のことで動揺を隠せない木松悪斗。不安のなか、木松悪斗はPTA室へ行き沼田と対峙する。すると、沼田は木松悪斗の方をにらみ怒声を上げた。

「木松悪斗理事、あれはどういうことだね?この俺に刃向かうつもりか!!」

これには木松悪斗、すぐに反論する。

「いや、そのつもりはありません!!ただ、あの浦の星が、あの小原家が、静真を裏切った、そのことが許せなかったからです!!今後の静真のことも考えて統合に反対しただけです!!」

ただ、これには沼田、おもわず、

「木松悪斗、浦の星との統合はすでに決定済みだ!!12月に小原家から統合に向けた申し出があった。だから、俺は、歴史ある浦の星、そして、そこに通う生徒たちのために浦の星と静真の統合を決断した。そして、この2ヶ月、俺は迅速に統合作業が捗るよう、小原家と一緒に骨が折れるような交渉を、沼津市、静岡県、さらには国などの関係各所でやってきたのだぞ!!それを、「浦の星が、小原家が静真を裏切った」、そんなしょうもない理由で無駄にしたいのか!!えっ、どうなんだ!!」

と、木松悪斗に向かって大声で怒鳴る。が、これには、木松悪斗、

「浦の星、さらには、小原家、本当に静真を裏切ったのですよ!!統合先である静真に寄付をしないなんて、浦の星は、小原家は、静真に対して無礼なことをしているのですよ!!私がわざわざ用意した静真の理事の椅子を、浦の星の理事長は、平気で蹴ってしまったのですよ!!これこそ、静真への完全なる裏切りの証拠です!!」

と、沼田に反論。しかし、興奮している木松悪斗に対し、これまで怒声で応戦していた沼田は一呼吸し、心を落ち着かせた上で冷静に答えた。

「木松悪斗よ。静真に寄付するかどうかは先方さん、小原家の自由です。それに、浦の星の理事長が誰かわかりますか?小原家の当主ではありませんよ。その当主の娘さん、それも浦の星の3年生です。まだ、高校3年生が理事長をしているなんて普通に考えればありえない話です。ですが、それが現実に起きているのです。じゃ、なんで、高校3年生の娘さんが浦の星の理事長をしているのですかね?その理由ですが、あらかた、浦の星の統廃合、廃校を阻止したかったのでしょうね。でも、結局、その娘さんの念願だった廃校阻止はできませんでした。が、それでも、その娘さん、理事長さんは一生懸命頑張って廃校を阻止しようとしていました。その努力は結果的には無駄に終わったかもしれませんが、それでも、その娘さん、理事長さんからみたらいい経験になったと思いますよ。そして、高校3年生である以上、これから先、自分が叶えたい夢だってあるのでしょうね。そして、この1年で得た経験を糧にして、その夢に向かって一から頑張る、そんな姿を思い浮かぶことができます。だからこそ、木松悪斗、あなたが勝手に決めた未来、静真の理事という決められた未来を提示し、それを断った、自分の思い通りにいかなかった、そんな理由で裏切ったと判断した、その考え方自体が誤りではないのでしょうかね」

浦の星の理事長だった小原鞠莉のことを褒めつつも、木松悪斗に対しては自分自身の考えが間違いではないかと諭す沼田。だが、それでも、木松悪斗は、

「いや、結果的には浦の星の理事長は自分が用意した静真の理事の椅子を蹴った!!小原家は、わざわざ、私たち静真が浦の星を統合してあげるというのに、そのお礼の寄付すらしない!!それって、浦の星が、小原家が、静真を裏切った証拠になるのですよ!!」

と、自分の考えに固執する。

 この沼田と木松悪斗の押し問答であるが、さすがの沼田もとても忙しい身であり、わざわざ時間を作ってまで臨時理事会に参加したのに、木松悪斗のせいで静真にとって大変なことになりかけたのを、沼田の力によって、なんとか、月たち生徒会と木松悪斗たち部活動保護者会両方の面目が立つような、ある意味、グレーゾーンともいえる、もしくは、玉虫色ともいえる、そんな結論に導いたのにも係わらず、それでも木松悪斗が納得していないこと、それに沼田はうんざりしていた。そのためか、「これでは時間の無駄だ」、そう判断した沼田は木松悪斗に対し、強く警告した。

「木松悪斗よ、今日は廃校寸前だった静真を救ってくれた恩、そして、木松悪斗たちが浦の星との統廃合を阻止するために裏で流した噂かもしれないが、保護者から「浦の星との統廃合によって静真の部活動に悪影響がでる、だから、統合を止めよ」、という意見書がPTAに多く届いたこと、それを鑑みて、今回は俺が動いた。が、次はないと思え、木松悪斗!!」

その強い警告のあと、沼田は興奮している木松悪斗に対し、ある忠告をだした。 

「そして、木松悪斗よ、1つ忠告しておく。結果だけで物事を見るな!!そして、勝つこと、勝利することに固執するな!!結果だけで物事を見ることは、全体のある一面だけを見ているに過ぎない。結果とは、途中のある行程があって初めて成立する。その行程を無視して結果だけ見てしまうと、その行程を見て初めてわかることすら見つけることもできなくなるぞ!!さらに、勝つことだけに固執してしまうと、失敗して初めてわかることすら無視してしまい、いや、失敗したときのリカバーすらできなくなるぞ!!だからこそ、木松悪斗、忠告しておく、結果だけで物事を見るな、勝つこと、勝利することだけに固執するな!!」

 だが、この沼田の忠告に、木松悪斗、

「ご忠告、ありがとう。でも、私、木松悪斗は、私の信じる道しか興味ありません!!投資の世界では、勝つことこそ正義、勝つことこそすべて、なのです!!それは世の中にとってとても重要なことなのです!!勝利こそ正義!!さらに、努力、友情、そして、もっと大切なのは勝利、なのですからね!!」

と、沼田に対し怒りながら反論すると、そのままPTA室を去っていった。これには、沼田、

「木松悪斗よ、俺は確かに忠告したぞ!!あとは俺の忠告を木松悪斗がどう受け取ってくれるかだ・・・」

と、PTA室を出ていった木松悪斗の後姿を見ながら言った。一方、木松悪斗、はというと、

(沼田さんよ、ご忠告、ありがとう。でも、私の考えは変わりませんよ。結果こそすべて、勝利こそすべて、それこそこの世界の理、なのですからね)

と、心の中で自分の信念を貫くことを決めてしまう。

 

 この沼田と木松悪斗のやり取りのあと、沼田は次の仕事先へと移動するため、時間をおかずに急いで静真本校の校舎を出ようとしていた。その沼田と沼田を迎えに来たハイヤーのあいだで、突然、

バサッ

と、沼田とハイヤーのあいだを遮るように少女が出てきた。これには、沼田、

「渡辺月生徒会長、なにごとです?」

と、沼田とハイヤーのあいだを遮った少女こと月に遮った理由を尋ねた。それには、月、

「なんで分校のかたちをとることにしたのですか?浦の星の生徒たちは統合先である静真での学生生活を楽しみにしているのですよ!!それを台無しにするなんてなんでですか?」

と、逆に沼田に尋ねる。すると、沼田、

「たしかに、浦の星の生徒たちからすれば、分校のかたちをとることで、本来楽しみにしていた静真での学生生活を奪ってしまう、とても残念なことかもしれない。しかし、統合により静真の部活動がだめになる、そう考える保護者も多いのも事実。その保護者の声を保護者全員の代表である、このPTA会長の、俺、沼田が代弁しただけにすぎない。そして、生徒会長以下生徒会が代弁した生徒たちの声と俺が代弁した保護者の声の両方を比較した場合、もっとも尊重すべき、そして、すでに浦の星との統合作業が最終段階であることを踏まえた上で、生徒からの声を主軸に置きつつ、統合反対である保護者の声をも取り入れた結果、浦の星との統合は維持しつつ分校のかたちをとることに決めたのだ」

と、わかりやすく分校策をとった理由を答えた。さらに、沼田は月に言った。

「そして、その浦の星分校についても無限にずっと続くわけじゃない。保護者たちが浦の星の生徒たちに対する誤解が解けたら、部活動に対する士気が低い、お遊び感覚で部活をしている、そんなに思われている浦の星の生徒が静真の部活動に参加しても、その保護者たちが心配していること、部活に対する士気の低下、部活内での対立、といった静真の部活動そのものへの悪影響、弱体化が起きないことを認識してくれたら、浦の星分校と静真本校を統合することを約束しよう」

この沼田が言ったことに、月、おもわず、

「じゃ、具体的にどんなことをすればいいのですか?どんなことをすれば、統合反対の保護者たちが納得してくれるのでしょうか?」

と、沼田に尋ねる。が、これには、沼田、

「それはな、月生徒会長、自分で考えて実行していくしかない。この俺でさえその答えを知っているわけじゃないからな」

と、答えると、月、

「そ、そんな~」

と、がっかりしてしまう。

 が、この月の姿を見た沼田、すぐにあることを言った。

「そんな月生徒会長のために俺なりのヒントをやろう。それはな、この統合反対騒動が起きたそのものの原因、いや、この静真の部活動そのものが抱える問題の原因、それが、「部活動とはなにか?」、「部活動をする上で1番大事なものとはなにか?」、その答えを静真にいる人たち、生徒、先生、保護者、全員、誰も知らないからだ。もちろん、月生徒会長、あなたもね」

この沼田のヒントに、月、

「それって、勝つこと、なの・・・、勝利こそすべて・・・、なの・・・」

と、沼田の言っていることへの答えがなになのか悩んでしまう。

 その月を見てか、沼田、

「それはどうかな?でも、静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうよりも、誰もが気づかずに実践しているかもしれないよ」

と、優しく月に教える。これには、月、

「?」

と、不思議がる。それを見ていた沼田、その月の隙をつき、急いでハイヤーに乗り込む。そして、

「月生徒会長、はやくその答えを見つけてね。それじゃ、さらば!!」

と、月に別れを告げてその場を離れた。これには、月、

「うわっ、沼田のおじちゃんにやられた~」

と、がっかりするも、すぐに、

(でも、沼田のおじちゃんが言っていた、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で一番大事なものとはなにか?」、の答えっていったいなんだろう?)

と、心の中でその答えがなにか悩んでいた。

 

 と、いうわけで、ハイヤーに乗って次の仕事先に行く沼田だが、その車中であることを言った。

「月生徒会長も木松悪斗と同じことを言っていたな。「勝利こそ正義」、「勝利こそ絶対」、「勝利すること、勝つことこそすべて」、というよりも、日本人って、「勝つこと」「勝利すること」だけに固執してしまう気がしてしまう。たしかに、慣用句のなかには、「勝てば官軍、負ければ賊軍」という言葉がある。言葉どおり、「勝つことこそ正義、負けれた悪・・・」の意味だけど、日本人の考え方はそれに近いかもしれない。そして、勝つ、勝利、という結果だけを見て、日本人は判断を下す、そのように見えてしまう。「その途中で起きたこと、発生したことなんて気にしない、勝てればそれでいい」、そう日本人は考えているかもしれない。もしくは、その途中の過程を意図的に無視して、結果論だけで、勝つことだけで判断しているのかもしれない。が、その結果だけ、勝つことだけで物事を判断すると間違いの元になる。それは歴史が証明しているのかもしれない」

 そして、さらに、沼田は続けて言った。

「そして、日本人は勝つこと、勝利することに固執するあまり、勝った事実、勝利した事実を美化してしまう、それが、たとえ、あとになって最悪な結果につながろうとしても。その例が大相撲かもしれない。横綱の貴乃花、そして、稀勢の里は怪我をしているにも係わらず横綱がゆえに強行出場した。そして、その怪我のなかでその場所で優勝を果たした。たしか、貴乃花のときは、そのときの総理が「感動した!!」って総理大臣杯を渡すときに言っていたな。この2人の優勝についてはこのあとすぐに美談になってしまった。怪我をしての優勝、たしかに、それは、日本人から見れば怪我しているにも係わらず「勝利した」「優勝した」という事実があったからこそ美談になったといえるかもしれない。しかし、それが美談で終わればよかったのかもしれない。けれど、現実はそうとはいかなかった。この2人の横綱はそのときの怪我が原因でこのあとも怪我に苦しんでしまった。そして、結局、その美談となった優勝から程なくして引退を決断せざるをえなかった。それって、横綱2人からすれば最悪の結末になったのかもしれない。さらに、甲子園でも、エースといわれる投手が全試合、全イニングを投げ続けて優勝したほうがいいという考えを持つ人が残っているかもしれない。たしかに、エースが全試合、全イニングを投げ抜いて優勝すれば、それは凄いといえるかもしれない。さらに、全試合、全イニング投げきる、そんな酷なことを成し遂げて「勝利した」「優勝した」こと、それが美談として後世に残るかもしれない。しかし、その「優勝」という美談の代償として、その投手はその際に体を酷使した結果、プロ野球選手になると短命に終わってしまう、大成しないケースもあるかもしれない。もし、それが正しければ、その若者にとって最悪の結末を迎えたのかもしれない。そう思うと、日本人は勝つこと、勝利することを美化してしまう。いや、勝つこと、勝利することに感動を覚えてしまい、それを得るために、勝利という美酒、いや、感動を追い求めてしまう傾向があるかもしれない。そして、それが、無理してまで、将来のことすら無視してまで、勝つこと、勝利することに固執してしまうことにつながっているのかもしれない。そう考えてしまうと、はたして、これからを生きる上で、将来有望な若者たちにそれを無理やり押し付けてしまうのは如何なものだろうか?そして、それを今もしているのなら、これからの日本という国の行く末が不安や心配でいっぱいになってしまう、と考えてしまうのは俺だけだろうか?」

 そして、沼田はこう言って話を締めた。

「さて、月という少女、「勝利こそ正義」、「勝利こそ絶対」、「勝利すること、勝つことこそすべて」、という日本人の心の根底にある考えに固執せず、本当の答え、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で1番大事なこととは?」という問いの本当の答えにたどり着くことができるかな?その答えを知る上で、月生徒会長、浦の星の生徒たちと交流すること、それが今、大事ではないか。だって、その答えは「静真の者にはわからないが、浦の星の者にとっては自然となにも気づかずにでているもの」だから・・・」

 

 臨時理事会があったその日の夜、月は自宅の自分の部屋のベッドの上でねっころがっていた。そのとき、月からはこんな言葉が出ていた。

「沼田のおじちゃんが言っていたことの答え、なんだろう?」

沼田から出された問いの答えについて真剣に悩む月。それでも、今の月からしたら、「部活をすること」の意義を知らない、今の月からすれば、その答えをだすことは難しかった。

 が、そんなとき、

プルル プルル

と、月のスマホが鳴る音が聞こえてきた。月のスマホ、それは、カメラ性能、映像編集など、世界中のどのスマホのなかでもダントツの高性能さを持つハイスペックスマホだった。そのスマホ、月が生徒会長に選ばれたときのお祝いに月の両親から贈られたものだったが、月にとってその高性能さをうまく使いこなしていない、そんな意味でちょっと残念すぎるスマホだった。

 そのスマホの呼び鈴に、月、

「はいはい、出ますよ~」

と、だらしない声をだして電話にでる。すると、そこから聞こえてきた声は・・・。

「月ちゃん、私たち、やったよ!!ラブライブ!に優勝したよ!!これで浦の星の名前をラブライブ!の歴史に深く刻み込むことができたよ!!」

と、ラブライブ!に優勝したことで喜びあふれている曜の声だった。この声を聞いた月、あることをひらめく。

(そうだ、そうだよ!!浦の星にあって静真にないもの、その答えを見つけるには、この僕が浦の星の生徒たちと行動を共にすればいいんだ!!そして、その答えを探してくれる存在、それが、曜ちゃんたちAqoursかもしれない!!僕、決めたよ、曜ちゃんたちAqoursと行動を一緒にする!!そして、沼田のおじちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で1番大事なこととは?」、その答えを曜ちゃんたちAqoursと一緒に見つけてやる!!)

 

                               つづく

 



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Moon Cradle 第2部 第1話

(決めたよ!!曜ちゃんたちAqoursと行動を一緒にする!!)

と、月は心に決めた。

 

・・・はずだったのだが・・・、4日後・・・。

「・・・と決めたのはいいけど・・・、この4日間、Aqoursのみんなはおろか、曜ちゃんにすら連絡をしていないよ~。このままだと、4月からずっと曜ちゃんと離れ離れになっちゃうよ・・・」

と、月は嘆いていた。実は月、Aqoursと一緒に、静真の創立者の末裔で、実質静真の影の神である、静真のPTA会長の沼田から言われた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」を見つけようと心に決めていた。と、同時にある皮算用も月の頭の中には働いていた。それは・・・。

(あと、運がよければ、ラブライブ!という全国大会で優勝したという実力で、統合に反対している保護者たちに浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加しても悪影響なんてでないこと、それをわからせれば、分校問題は一気に解決・・・できるはず!!)

この月の考え、いや、皮算用であるが、分校問題が起きた原因、それが、静真に通う生徒の保護者たちがいきなり静真と浦の星の統合に反対したからである。が、実は、浦の星の大スポンサーだった小原財閥が統合先の静真に多額の寄付をしないことに(静真の大スポンサーであり、静真の部活動に参加している生徒の保護者全員を束ねる部活動保護者会の会長の)木松悪斗が激怒してしまい、これまで統合賛成だったのが、その事実を知った2月始め、いきなり、統合反対・白紙撤回へと反旗を翻した、のがそもそもの原因だった。そして、その木松悪斗とその子分である部活動保護者会の幹部たちが保護者たちに、「(部活動に対する士気が低い)浦の星の生徒たちが(部活動に対する士気が高い生徒たちがいる)静真の部活動に参加すると、部活動に対する士気の低下や静真と浦の星の生徒間における対立が起きてしまい、静真の部活動に悪影響がでる」という考えを広めてしまったのだ。さらに、木松悪斗、木松悪斗以上の権力を持ち、静真の影の神である沼田がほかの仕事で多忙であるがゆえに静真に係わる時間があまりないことをいいことに、静真の影の帝王として権力を振りかざしており、(自分が保護者たちに広めた考えによって生まれた)統合反対という保護者たちの声と自分の権力をもって浦の星との統合を白紙撤回に追い込もうとした。が、静真の全校生徒の95%以上もの生徒の統合賛成の直筆署名を集めた月たち生徒会の活躍で、統合そのものは実施されることに決まった。これで木松悪斗の野望も潰えた・・・かのように見えたが、静真の影の神である沼田は、保護者たちの声「統合により静真の部活動に悪影響がでる」をも汲み取る形で、保護者たちが心配している「部活動への悪影響」、いや、保護者の浦の星の生徒たちに対する不信感、それを拭い去るまで、浦の星の生徒たちは沼田が用意した分校に通わせる、分校方式を採用することになった。

で、月はこの決定がなされた臨時理事会のあと、沼田に直接会ったのだが、そのとき、沼田から、「「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、その答えを見つければ保護者たちからその心配、不信感を拭い去ることができるだろう」と言われたのだ。

のだが、そもそも、浦の星の生徒たちの部活動に対する士気が低いと静真の保護者たちが見られてしまったのか。その理由だが、それは、全国大会の常連といえる部活を数多く抱える静真に比べ、浦の星の部活は地方予選初戦敗退ばかりという、一種の結果論だけでみられたからだった。「「全国大会に出場するほど実力が高い=士気が高い」静真の生徒、対して、「地方予選初戦敗退ばかりで実力がない=士気が低い」浦の星の生徒」、この構図が静真の保護者たちにあいだで認識されていたのだ(もちろん、この構図を考え出したのも木松悪斗だったりする)。だが、浦の星の部活が初戦敗退ばかりなのはちゃんと理由があった。それは、浦の星の全校生徒の人数が圧倒的に少なく、浦の星の生徒のほとんどが2部以上兼部していたのだ。そのため、1人の生徒が1つの部に集中して練習することができず、それがもとで部全体の実力をできないのだ。結果的にそれが原因で初戦敗退ばかり起きる事態になっているのだ。なので、別に浦の星の生徒たちの部活動に対する士気が低いわけではなかった。むしろ、ラブライブ!夏季大会東海最終予選、浦の星の学校説明会、閉校祭など、なにかあるとそれに対して全校生徒一丸となって(ときどき、浦の星がある内浦の住民全員と一緒に)行動する、そんな行動力、とても熱いハートを持っているのだ、浦の星の生徒たちは。そんな、士気の高い浦の星の生徒たちの勇姿を(部活動に対する士気が低いことで統合により静真の部活動に悪影響がでる、と、心配している)静真の保護者たちに見せることで、その心配、いや、浦の星の生徒たちに対する不信感を拭い去りたい、そんな気持ちが月にはあった。が、初戦敗退ばかりの浦の星の部活を静真の保護者たちの前で見せても、保護者たちが納得してくれるわけじゃない、むしろ、心配、不信感を増大させてしまうだけである。でも、ほかに、保護者たちを納得させられる、保護者たちがもつ心配、不信感を拭い去ることができる、そんな有効な手段を考え出すことができない、そんな思いが、臨時理事会後の月の心の中にあった。

 沼田からの問いと共に、静真の保護者たちが持つ心配、不信感を拭い去る手段について悩んでしまった月、そんな月に対して1つの光が降り注ごうとしていた。臨時理事会が行われた日の夜、2つのことで悩んでいた月に、いとこで大親友の曜からある連絡が届く。

「月ちゃん、やったよ!!私たち、ラブライブ!に優勝したよ!!」

ラブライブ!それは高校生だけがなれるアイドル「スクールアイドル」、その日本一を決める大会、通称「スクールアイドルの甲子園」。この曜からの連絡に月はある言葉を思い出す。それは臨時理事会後に沼田が月に対して「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」という静真の保護者たちの心配、不信感が起きた原因を知る上で重要な問い、それを月に指し示す際、沼田が月にその問いのヒントとして言った言葉だった。

「(この問いの)答えを静真にいる人たち、生徒、保護者、先生、全員、誰も知らない」

「静真にいる人たち全員知らないが、浦の星の生徒たちにすればそれが当たり前、と、いうよりも誰も気づかずに実践しているかもしれない」

その言葉を思い出した月、

(曜ちゃんたちAqoursと一緒に行動すれば、沼田のじっちゃんが言っていた問いを答えることができる!!その答えでもって静真の保護者たちの心配、不信感を拭い去ることができる!!)

と、思ったのだが、それと同時に、

(そういえば、曜ちゃんってスクールアイドル部に入っていたよね。で、そのスクールアイドル部のみんなと結成したのがAqours、そのAqoursはスクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝した・・・)

と、考えてしまう。月は続けて、

(で、スクールアイドル部って浦の星の部活の1つだよね。そして、ラブライブ!はスクールアイドル部の日本一を決める大会だよね。それって・・・、あっ!!)

と、なにかを思いつく。それは・・・。

(そうだよ、スクールアイドル部という浦の星の部活がラブライブ!という全国大会に優勝した!!それって、ついに浦の星の部活の1つが日本一になったってことだよね!!)

そうである。ついに浦の星にとって念願?の日本一になった部活が誕生したのである。その名は、浦の星女学院スクールアイドル部Aqours。そのことに気づいた月、あることをひらめいた。

(そうだ!!曜ちゃんたちAqours、いや、スクールアイドル部の勇姿を直接静真の生徒・保護者たちに披露すればいいんだよ!!ラブライブ!というスクールアイドル部の日本一を決める全国大会で優勝した実力、それを静真の生徒・保護者たちの前で見せつけたら、きっと、保護者たちが持つ心配「部活動への悪影響」、浦の星の生徒たちに対する不信感、なんて一気に吹き飛ばしてくれる!!だって、Aqoursは日本一になるくらいの実力があるんだから!!)

浦の星女学院スクールアイドル部Aqours、浦の星としては初めて日本一に輝いた部活、その実力を見せつけることで、「初戦敗退ばかりで実力がない=部活動に対する士気が低い」浦の星の生徒たちという静真の保護者たちの認識、それを根底ごと覆す、そんな、一発逆転ともいえることができる、そう、月がにらんでいた。たしかに、日本一になるくらいの実力をそんな静真の保護者たちに見せつけたら、その保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する認識、それを一変させることができるかもしれない。だって、日本一の実力をその保護者たちが見たら、その実力さゆえに、「「浦の星の部活動は初戦敗退ばかりで実力がない=浦の星の生徒たちの部活動に対する士気が低い」という構図が崩れてしまう→保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する認識も変わる→保護者たちが持つ心配・不信感が払拭される→保護者たちは浦の星との統合に賛成してくれる→分校状態が解消(無事静真本校と浦の星分校が統合される)→曜たち浦の星の生徒たちははれて静真本校に通うことができる」というサクセスストーリーができる、そう月は考えていた、このときは。

 そして、月はそのことを考えると、つい、あることを考えてしまった。

(そうだよ、別に沼田のじっちゃんが言っていた問いに答える必要なんてないんだよ!!だって、曜ちゃんたち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの実力、日本一になれるくらいの浦の星の部活動の実力さえ静真の保護者たちに見えつけたら、静真の保護者たちの心配、不信感なんてすぐに消し飛んでしまう!!そして、静真本校と浦の星分校は晴れて統合、曜ちゃんたちは無事静真本校に通うことができる!!な~に、簡単なことじゃないか。だって、日本一になれるくらいの実力を保護者たちの前で見せつけるだけでいいんだから!!)

こう思った月、すぐにAqoursの実力を、日本一になった実力を静真の生徒、保護者たちに見せつけるための舞台づくりを始めた。その舞台とは、1週間後、静真が誇る大講堂で行われる「新年度部活動報告会」ここでは静真が誇る数多くの部活が年に1度、一同に介して、この1年での実績を発表する場である。ここには静真の生徒をはじめ、保護者たちも数多く見に来てくれる。静真の部活に参加している生徒たちはこの会を通じてこの1年の実績を発表、その勇姿を生徒たち、保護者たちに見せつけるのである。そして、それを見せつけることで、来年度の部活の予算、新入部員の獲得へと導こうとしているのである。その会において、浦の星が誇る、日本一の実力を持つ浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの勇姿を静真の保護者たちに見せつければ、保護者たちが持つ心配、不信感をきっと吹き飛ばすことができる、月はそう考えていた。いや、このとき、Aqoursのことを過信しすぎていたのかもしれない、「沼田からの問いに答えることなんてしなくていい。Aqoursの、日本一の実力を見せつけるだけでいいんだ。それだけで、静真の保護者たちが持つ心配、不信感なんて吹き飛ばすことができる!!」と。

 が、ここで月にとってある誤算が生じていた。たしかに、そのときのAqours、ラブライブ!優勝という日本一の実力があれば、それは月の考え通りにいくことができる、可能かもしれない、そのときのAqoursなら。そう、Aqours9人であれば・・・。でも、4日後のAqours、新生Aqoursの実力は・・・、同等・・・、それ以上・・・、それとも・・・。が、そのことを月は知る由もなく、Aqoursの勇姿を静真の生徒たち、保護者たちに見せつける舞台づくりを始めてしまった。そして、月はこのとき知らなかった、沼田の示した問い、それが、静真の部活動にとってとても重要な問い、いや、問題点であり、その答えこそ、静真の部活動にとってとても重要なキーになることを・・・。

 

 と、月の心の中で決めたものの、この4日間、月は曜たちAqoursを静真に招待することはしなかった、いや、Aqoursメンバーに連絡することもなかった。なぜなら、月、曜以外のAqoursメンバーとの接点がなかったからだった。じゃ、いとこで大親友の曜に連絡すればいいんじゃないか・・・と。だが、月にはできなかった。理由は2つ。まず、浦の星も係わることではあるが、最初のうちは曜たちにあんまり迷惑をかけたくない、と、曜に気遣いをしている・・・、表向きは・・・。裏を返せば、最初のうちは月たち静真の生徒会だけで出来る限りの対処をしたい・・・、一種のプライド?に似たものがあったから。そして、もう1つは・・・。これは「曜たちに迷惑をかけたくない」ことにも関係することだが・・・。臨時理事会があった日の翌日(現時点においては3日前)、月のスマホに曜からある連絡が届く。

「月ちゃん、浦の星の卒業式と閉校式、とても楽しかったよ。学校の校舎にね~、みんなと一緒に(ペンキで)落書き・・・、ぐふん、寄せ書きしたんだよ。校舎いっぱい、い~っぱいに寄せ書き、したんだよ。みんなペンキだらけになってね、そのまま卒業式兼閉校式、したんだけど、とても楽しかったよ~」

と、曜は月にその日、浦の星で行われた卒業式兼閉校式で起こったことを楽しく話していた。曜たちは卒業式兼閉校式が行われる前、学校の校舎のいたるところにペンキで落書き・・・ではなく、この日で千歌の姉である志満や美渡、いや、その千歌姉妹の母も居っていた、浦の星、そして、その校舎に対し、長い間お世話になったお礼、そして、みんなとの最後の思い出作りのため、校舎を1つのキャンパス、いや、大きな、自分たちの浦の星に向けた感謝の気持ちを込めた色紙にみたて、ペンキで寄せ書きを描いたのである。ただ、その寄せ書きも、明日には建物などを業者に渡すための原状復旧工事のために消される運命ではあるが、それでも、曜たち浦の星の生徒たちからすれば、長い間お世話になった浦の星とその校舎に対し感謝の気持ちをあらわした、そんな気持ちのため、浦の星の生徒たち全員が自ら進んで行ったことだった。(もちろん、生徒会長で堅物な?ダイヤもね。ただ、たしか、最初、卒業式兼閉校式はしんみりとしないといけないから、というわけで、最後のはっちゃける場として閉校祭したはずなのですが・・・。結局、浦の星、そんな閉校祭のときの思い、以上に、どんどん楽しんでいこうという気持ちがあるから、卒業式兼閉校式、しんみりどころか、はっちゃけてしまいました。が、これも、部活動に対する士気が低い、という、静真の保護者たちの考え以上に、ないかがあれば、全校生徒一丸となって行動する、ある意味どんなことでも士気が高いことの裏返しになるかもしれませんね)

 で、これには月、

「うわ~、すごいこと、したね~」

と、驚きを隠せずにいた。そのつきの心の中には、

(いつもそうだけど、浦の星の生徒ってなにかあると僕を含めて誰もが予想していないことしちゃうんだね~)

と、驚きの声を心の中でもあげるとともに、

(でも、最後の最後まで楽しもうとしている曜ちゃんたちにお願いするなんて、なんかしのびない・・・)

と、少し後悔の念を持っていた。

 そして、卒業式兼閉校式の2日後、つまり、昨日・・・、また月のスマホに曜から連絡が届く。

「私、みんなと、Aqoursと・・・、浦の星のみんなと歌っちゃった!!なんかね~、私、誰かに呼ばれている~って感じちゃったんだ。それも1回や2回じゃないんだ~、なんか、「みんな集まれ~、浦の星に集まれ~」って。だから、私、知らないうちに(浦の星の)制服に着替えて、浦の星の体育館に来ちゃった!!でも、それって私だけじゃなかったみたい。千歌ちゃん以外のAqoursメンバーみんな、いや、千歌ちゃんを除く浦の星のみんながそこにいたんだ。みんな、誰かに誘われて来たんだって!!そんなこと、話していたら、ちょうど誰かの足音が聞こえてきたんだ。それって、ここにはいないけど、とても大事な人なんだってみんな気づいていたから、その人をびっくりさせようと、私たちAqoursみんなステージに上がって緞帳を下ろしたんだ。そしてら、その人が来たんだ。その人こそ、私たちの物語の主人公、高海千歌、千歌ちゃんだったんだ。千歌ちゃん、みんないるからびっくりしたんだよね。でも、これが浦の星みんなとの本当に最後の思い出になるからって、浦の星のみんなで歌ったんだ、「wonderful story」を。そしたら、千歌ちゃん、あることを言ったんだ、「私たちが追い求めていた輝き、見つけた!!」って。でも、私、このとき、思ったんだ、これって、これまで頑張ってきた千歌ちゃんに対する、浦の星という学校からの最後の、そして、最高の贈り物って!!」

曜が言っていること、それは的を得ているかもしれない。千歌がAqoursを続けた理由、それは浦の星の存続、そして、浦の星の存続が叶わなくなったとき、浦の星の全校生徒からの願い、浦の星の名をラブライブ!の歴史に深く刻み込んで欲しい、それを叶えるためであった。だが、それ以外にもう1つ千歌がAqoursを続けた理由があった。それは、自分だけの輝きを見つけること。それを叶えるためにラブライブ!優勝まで果たしたのだ。が、たしかに優勝して、一方の願い、浦の星の全校生徒の願い、消えゆく浦の星の名をラブライブ!の歴史に深く刻み込むこと、それは達成された。が、もう1つの願い、千歌だけの輝きを見つける、そのことは叶わなかった。ではあるが、浦の星のために一生懸命頑張ってきた千歌とその仲間たちのため、浦の星という学校は最後に千歌たちに大きなプレゼントを用意してくれた。浦の星という学校は浦の星に通う生徒みんなを呼び寄せた、本当に最後となる、浦の星の生徒全員が楽しめる場を、そして、その浦の星を1番愛し、浦の星のために1番働いてくれた、千歌に、この1年、みんなと一緒になってやってきたこと、その思い出、それを通じて得たみんなとの想い、みんなとのキズナこそ、千歌が追い求めていた輝きであること、それを千歌に気づかせるために、そんな千歌たちへの大きなプレゼント、それを浦の星という学校は千歌たちに贈ったのだ。そして、それは、千歌、それにその仲間たちにとって、とても大きな、とても大切な想い出、いや、礎になったのかもしれない。

 と、ここで脱線しすぎたので、話をもとに戻そう。この曜の話を聞いた月、思わず、

「それって本当に奇跡だよ!!だって、誰かに呼ばれたら、曜ちゃんにとって大切な仲間たちがいて、で、曜ちゃんの大切なお友達である千歌ちゃんが長年追い求めていたものを見つけたんだよ!!僕からしたら、それって本当に奇跡に感じちゃうよ!!曜ちゃん、これまで千歌ちゃんと一緒になって頑張ってきたこと、それが、奇跡という形で報われるなんて、僕、本当に嬉しいよ!!」

と、感嘆の言葉を曜に伝えた。月にとって自分の大切な大親友である曜にとってとても嬉しい出来事が起きたこと、それ自体、まるで自分が体験したかのように嬉しく思っている。が、それほど月にとって曜は大切な存在であり、まるで自分の分身でもあるかのような損時であった。だからなのか、月、おもわず、

(こんな千歌ちゃんたちと、浦の星のみんなと、最後の・・・、とても大切な・・・思い出作り、僕の考えだけでぶち壊す・・・なんてこと・・・したくないよ・・・)

と、自分が考えていること、Aqoursの力を借りて分校問題を解決したい、その考えを曜に伝えるのはしのびない、と、いう気持ちが強く、この時点では自分の考えを曜に伝えるのは控えてしまった。

 こんな風に、曜が千歌と、浦の星のみんなと、最後の想い出作りをしている中で、自分たちの学校である静真で起きた分校問題を曜に伝えることでその想い出作りをぶち壊す、そんなことをしたくない、そんな月の親心、親切心、遠慮が、この4日間、月の心のなかで働いていた。その月の思いを組んでくれたのか、曜は千歌と、浦の星のみんなと、浦の星での最後の楽しい想い出作りにいそしんでいた。

 が、実は、ラブライブ!が終わり、千歌たちが浦の星での最後の想い出作りにいそしんでいる間、静真では大変なことが起きていた。それは月にとって最悪ともとれる状態だった。この前行われた臨時理事会で浦の星との統合が最終的に決まったことにより、静真の生徒たちのあいだで安堵感が広がっていた。自分たちの友達である浦の星の生徒たちが無事に静真に通うことができる、そんな安心したような気持ちが静真の生徒たちのあいだで広がっていたのだ。しかし、「「静真の部活動に浦の星の生徒たちが参加しても悪影響なんてでない」、そう静真の保護者たちが思えるまで分校方式をとる」、そのことについては静真の生徒たちのあいだでは広がっていなかった。また、そのことを知っていても、「すぐに静真本校と浦の星分校は統合されるよ、きっと」「大丈夫、大丈夫、心配ない」と、分校方式の解消に対して楽観視している生徒も多かった。このことについては月たち生徒会もすでに把握しており、ずっと全校生徒に向かって、

「まだ統合問題は終わっていないのですよ」

「まだ浦の星の生徒たちが静真(本校)に通えるわけではないんですよ」

と、声を大にして言っていた。が、それに対して、生徒たちからは、

「もう統合って決まったんだから、この問題はすでに解決済み!!」

「大丈夫、大丈夫!!なんとかなる、なる!!」

と、その問題についてはすでに解決済み、もしくは、楽観視の声があがっていた。しまいには、

「もうこれ以上問題を大きくしないで!!今、とても大切な時期なんだ!!次のインターハイで上位に入れば、日本でも屈指の、日本一のスポーツ校、あの東都大学に推薦入学できるんだよ!!あぁ、いとしの神宮はやて様~、日本一のスポーツ校、東都大学、そのなかで期待の新人として入学が決定されている方~、未来の日本のエース、絶対にあなたのもとへ行きますからね~。だからこそ、それを叶えるためにも、今はただ勝ち続けていくのみ!!」

と、なぜか、今春、東都大学に入学する予定の、音ノ木坂学院の3年生、神宮はやてに憧れているのか、これ以上統合問題に口出ししないで、これ以上ことを大きくしないで、と、月たち生徒会に対して注文をつける生徒もいた。そのため、月たち生徒会は統合問題、もとい、分校問題について苦慮していた。

 だが、月たち生徒会が苦しんでいる姿を見て微笑んでいる者たちがいた。浦の星との統合について、2月初めに突然統合賛成から白紙撤回へと反旗を翻した、木松悪斗とその一味である部活動保護者会の幹部たちである。

「今、静真の生徒たちのほとんどが、浦の星との統合問題は統合することで決着した、として安堵しております。さらに、分校方式については楽観視すらしている始末。今こそ逆襲のときです!!」

と、静真の部活動に参加している生徒たちの総元締め、部活動連合会の会長であり、木松悪斗の長女である旺夏からの連絡を受け、木松悪斗、すぐに、

「聞け、ものども!!今こそ逆襲のときが来た!!私の鼻をあかした生徒会長、渡辺月を攻め立てるときは来たぞ!!」

と言うと、自分の部下である部活動保護者会幹部に対し、ある指示をだした。それは・・・。

「統合は決まりましたが、本当は分校を作ることになり、浦の星の生徒たちはそこに通うことになりました。ですから、浦の星の生徒が分校に通っているあいだは静真本校に通うことはありません。むろん、分校に通っているあいだ、静真の部活動に浦の星の生徒が参加することはありません。そして、分校は今の浦の星の1年生が卒業するまで続きます。が、もし、静真本校と浦の星分校が統合されると、浦の星の生徒たちはきっと静真の部活動に参加することになり、結果、静真の部活動に悪影響が出てしまいます。だからこそ、浦の星の1年生が卒業するまでの2年間、本校と分校の統合に反対し続けてください。そして、静真に通う子どもたちにきっちりお伝えください、分校が統合され、浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加すると、絶対に悪影響が出ると、そして、それが巡り巡って自分たちの将来に悪影響がでてしまうと」

まるで嘘を嘘で固めてしまった、そんな風に見える話、それを部活動保護者会の幹部たちは保護者たちのあいだで広めていったのだ。これこそ木松悪斗の放った矢の第2弾だった。この話を広げることで、浦の星の生徒たちに対する不信感、それを増長させることにしたのだ。で、この木松悪斗のたくらみは成功した。臨時理事会前に広げた浦の星の生徒たちに対する不信感、それが臨時理事会後にも静真の保護者たちのあいだで漂っていたのだ。そのことを沼田も察していたので、この不信感を取り除くまで分校方式をとることにしたのだ。だが、その不信感を木松悪斗はさらに増長したのだ。こうして、浦の星の生徒たちに地足手の不信感は日が経つごとに(保護者たちのあいだで)大きくなっていた。さらに、それが保護者を通じてその子である生徒たちにも伝播していった。

こうして、浦の星の生徒たちに対する不信感は徐々にではあるが、静真の生徒たちのあいだにも広がっていった。この事態、すでに月たち生徒会もすでに把握済みであり、「浦の星の生徒たちに対する不信感を持たないでほしい」と言ってまわっている。が、あかの他人である月たち生徒会に対して自分の血のつながりを持つ親、どっちを信じるかといえば、血のつながりのある親の方を信じてしまうものである。さらに、今回は月たち生徒会が臨時理事会前に行った署名活動のときの、統合問題がまだ未解決、というより、統合がなくなり、通う学校がなくなってしまう、そんな状況に陥れば友達である浦の星の生徒たちが困ってしまう、そんな状況と違い、すでに(学校としては)浦の星と静真の統合は決定しており、友達である浦の星の生徒たちは(分校ではあるが)無事に静真に通うことができるので、あえて月たち生徒会に義理立てする必要がなかったりする。さらに、臨時理事会前の(学校としての)統合問題において、統合反対の親(静真の保護者)に対し統合賛成の子ども(静真の生徒)、という意見の食い違いによる仲たがいが発生している家庭が以外に多く、子どもである静真の生徒からみても、親とこれ以上揉め事を起こしたくない、という気持ちを持った生徒が多かった。そのため、月たち生徒会の説得も焼け石に水としかいえなかった。

 こんな風に、臨時理事会で統合反対、白紙撤回を成し遂げることができないばかりか、沼田の怒りを買ってしまうなど、赤恥をかかされた木松悪斗、その原因を作った月たち生徒会に一泡ふかせよう、いや、徹底的に叩きのめそうと思っているのか、それとも、このまま分校方式を浦の星の今の1年生が卒業する2年間続けることで、間接的に浦の星の統合をなかったことにし、それによって、浦の星、そして、その大スポンサーであり、静真への多額の寄付をしなかった小原財閥に対し、しっぺ返しを食らわせようとしているのか、それとも、その両方なのか、わからないが、木松悪斗たち、統合反対派、改めて、分校方式継続派、の攻め手により、月たち生徒会率いる統合賛成派、改めて、(本校分校)統合推進派(いや、別に変わっていないだろ!!)、は日に日に劣勢になってしまっていた。

 とはいえ、月、ラブライブ!という全国大会で日本一になった曜たちAqoursの力を使ってこの劣勢となった状況をひっくり返す、そんな、一発逆転ともいえる、そんなことを成し遂げたい、そう思っていた。が、浦の星のみんなと浦の星最後の想い出を楽しく作っている曜のことを考えると、自分たちの都合でそんな曜たちに水を差すことはできなかった。そして、「Aqoursの力を借りたい、けど、今はそれができない」、そんなもどかしさをしつつ、月は、この4日間を暮らしてきたのだ。が、「日が経つにつれて、月たち生徒会率いる統合推進派は劣勢になっていく、このままだと木松悪斗率いる分校継続派に完全に押し切られてしまう、そんなこと、絶対にいや、けど・・・」、と、月、1人で押し問答を繰り返している、そんな状況に陥ったままこの1日をくらしていた、午前中は・・・。

「う~ん、なんとかしないと、このままじゃ、木松悪斗の思い通りになっちゃう。一生、曜ちゃんと一緒に学生生活を楽しめなくなるよ~、でも・・・」

と、月、学校が休みにも係わらず、家でただただ悩むことしかしてなかった。そんななか、

ツルルル ツルルル

と、突然月のスマホが鳴る。これには、月、

「あっ、誰からだろう?」

と、スマホの画面を見る。すると、そこには月がよく知る、いや、1番知っている、親友の顔がスマホの画面いっぱいに表示されていた。

「あっ、これって・・・、運命・・・?」

と、月はそう言うと、月のスマホにかかってきた電話にでる。すると、いきなり、

「月ちゃん、なんで、なんで、新しく通う学校が山の中の分校なの~!!」

と、月が1番知っている親友が、困ったような声、いや、大声をだしてしゃべってくる。これには、月、

「山の中の分校!!」

と、逆に驚いてしまう。そして、すぐに、月にとって一番の親友に対し、一言。

「これについてはいろいろと理由があるの~。でも、この電話じゃ話せないの。だから、今からどこかで会おうよ!!そのときに話すから!!」

これには相手側は、すぐに、

「それじゃ、(仲見世商店街にある)やば珈琲の前で打ち合おうよ!!」

と言うと電話を切った。このとき、月、

(もしかすると、僕にとって追い風が吹いてきたかもしれない!!これもきっと神様のおかげだよ!!)

と、これまで悩んでいたのがうそのような、そんな嬉しい表情になっていた。

 



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Moon Cradle 第2部 第2話

 ちょうどその頃、静真の生徒会で副会長をしているナギ、

(きっとこのままじゃ、月生徒会長が苦しみ続けてしまう。でも、これまでは月生徒会長自らが行動してくれたから、私たち生徒会役員一同はその月生徒会長の指示にしたがっていればよかった。けれど、今、その月生徒会長の力でもってして立ち行かなってしまっている。こんなときこそ、私たち生徒会一同自ら動くことが必要かもしれない・・・)

と、思い始めていた。そして、その思いはすぐにナギを突き動かした。

 ナギ、なんと、自分のスマホを持ち出すと、あるところに電話をかける。そして、すぐに、

「はい、・・・ですが・・・」

と、相手方が電話にでると、ナギ、すぐに、

「あっ、実はね、静真で、・・・が起こっているの。なぜなら・・・」

と、静真で今起こっていることをその相手方に向かって話し始めていた。

 

 そんなナギの行動のことを露知らず、月はある人のもとへ家を元気に出ようと・・・していなかった。まだ、家の中にいた。その月、実は洗面台のところにいた。

「帽子、よし!!髪、よし!!ジャンバー、よし!!Gパン、OK!!これで、誰から見ても僕が静真の生徒会長だってばれることはない!!いや、女じゃなくて、男にしか見えないよ!!僕、これから男として生きていこうかな?」

と、月、自分の姿を鏡で見ながら言っていた。野球帽を深くかぶることでボブヘアの髪は完全に隠れてしまっていた。さらに、Tシャツに男物のジャンバーに男物のGパン、こうなると、月は女性・・・ではなく、立派な男にしか見えなかった。それくらい立派な変装だった。なんだけど、その立派な変装がのちに大きな騒動を巻き起こす・・・のであった・・・たぶん・・・?

 でも、なんで、月、誰にもわからないような変装をしないといけなかったのか。それは、変装せずにそのままの姿で曜たちAqoursと会ってしまうと、すぐさまよからぬ噂を流されてしまいそうだから。なぜなら、月は静真の生徒会長である。静真の生徒会長、つまり、静真の生徒の代表である月が誰も知らぬ間にこっそり曜たちAqours、つまり、浦の星の生徒たちと密会していた、そんなことが知れ渡ると、「月生徒会長、統合先生の理由、それは、羅の星の生徒を静真の部活動に入れることで、静真の部活動に悪影響を与え、それにより、自分の静真での地位を上げるため」という噂を静真の関係者たちに広めてしまいかねないからだった。むろん、噂としては飛躍しすぎ、かもしれない。が、あの木松悪斗である、自分の権力をかさにしてそんな噂を広げかねなかったのだ。だって、初戦敗退続きである、ただそれだけの理由で、「浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い」と決め付け、それでもって浦の星の統合反対、白紙撤回を要求してきたのである。それほど、木松悪斗、なにをしでかすかわからないのである。そして、そのすべてが木松悪斗にとって都合のいいように進む、そんな高い運があったりする。いや、木松悪斗自体、自分にとって都合のいいように進むよう戦術(タクティクス)を巡らせているのかもしれない。と、いうわけで、今現在、月たち生徒会率いる統合推進派は劣勢。そんななかで、統合推進派の中心人物である月生徒会長にスキャンダルが起きる、いや、スキャンダルを起こそうと木松悪斗が仕掛けたら、ただそれだけで、統合推進派は崩壊してしまうのである。月はそのことを危惧していた。そのための変装だった。

 

 と、いうわけで、誰から見ても月・・・どころか女性・・・すら見られない、まさに男にしか見えない、そんな完璧な変装をした月、明るい足取りで家を出発、そのままやば珈琲がある仲見世商店街アーケードへ。その仲見世商店街に行く最中、歩く月の姿を見て、あるカップルの女性が一言。

「あっ、あの子、かっこいい!!どこかのファッション雑誌のモデルじゃないかな?」

これには男性の方からも一言。

「でも、どのファッション雑誌にもあの子は見たことがないなぁ。もしかすると、まだ、どこにもスカウトされていない、金の原石じゃないかな?」

と、カップルの2人とも月の姿に惚れ惚れしてしまう。それほど月の変装は完璧、いや、完璧すぎていた。

 とはいえ、そのカップルも見間違えるほどの変装をしている月、でも、このカップルの会話は月には聞こえていなかった。いや、早くあの人に会いたい、そんな気持ちで一杯でであっただろう、まわりの声は聞こえていた、月には。実は、あのカップル以外にもまわりにいる人たちはみなモデル並みの美しさを持つ、いわゆる美男子だと思っていたのだ。でも、本当の姿は女性、それも、あの伝統校の静真の生徒会長、渡辺月であることは誰も気づかれなかった。だから、あの騒動が起きたのであろう、多分・・・。

 

 と、ここで舞台とやば珈琲へと向かう月からやば珈琲の店内に移そう。月がやば珈琲に近づこうとしている直前、

「なにそれ!!」

と、激怒する声をあげる少女がいた。その少女の名は千歌、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursのリーダーである。その千歌の言葉に、

「なんでも・・・」

と、むつがある説明をしようとしていた。で、なんで、千歌は激怒するような声をあげたのか。それは、月がやば珈琲に行く理由にも深い関係があった。

 時間は少し前にさかのぼる。千歌たち新生Aqours6人が新しい練習場所を求めて、今度新しく通う静真を目指してバスで移動していた。これまで練習場所として利用していた浦の星はこの前の卒業式兼閉校式でもって立入禁止、さらに、ラブライブ!冬季大会終了までという約束で借りていた沼津駅前の屋内スタジオもラブライブ!が終わったので返してしまったのだ。なので、今現在、千歌たち新生Aqoursとして練習できる場所がない、と、いうわけで、新しく通う静真で練習しよう、と、いうことになった。と、いうわけで、いざ、その静真へ移動・・・しようとする千歌たち新生Aqours6人。浦の星の生徒たち全員に送られた、新しく通う学校、静真、その校舎の場所の地図が載っているメールをたよりにバスに乗った・・・のだが、その静真がある場所は市内の中心地・・・のはずが・・・、その市街地を抜け、住宅地を抜け、しまいには山間地にまで入ってきてしまった。これには、千歌たち新生Aqours6人、少しずつ不安になる。

 そして、メールで指示された場所にようやくたどり着く。が、そこにあったのは・・・廃校になった旧小学校だった。そう、その場所こそ、来月から浦の星の生徒たちが通う、はずであろう、静真高校浦の星女学院・・・分校・・・、通称、浦の星分校であった。でも、なんで市街地・・・ではなく、山の中に浦の星分校を設けることになったのだろうか。それは簡単な理由だった。浦の星1・2年生全員を一同に集め、勉強できる場所、それがこの廃校になった旧小学校しかなかったから。4日前の臨時理事会で、浦の星との統合はするが、静真の保護者たちの中にある浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭するまで分校方式をとる、そんな、静真の影の神である沼田の鶴の一声でそう決まった・・・のだが、それを言った沼田、その分校を設ける場所を探すも、あまりに急だったので、その物件を探すのに一苦労していた。ただたんに授業できるスペースを確保すればよい、というわけではなかった。授業できるスペース以外にも、職員室、さらに、体育の授業を行うための広大なスペース、広いグランドに屋内体育館が必要となる。あと、高校であれば、塾みたいに少人数を対象に教えるわけではなく、いくら生徒数が少ないとはいえ、浦の星の1・2年生あわせて70~90人、こんな大人数を対象に一度に授業を行うことができないといけない。その条件をすべて叶えることができる、そんな物件、静岡県有数の都市、沼津でさえあまりなかった、特に市街地には。なので、沼津に限らず静岡でもかなりの有力者である沼田でさえ、その物件探しは難航を極めていた。

 

 とはいえ、来月4月には浦の星分校を開校しないといけないため、沼田、仕方なく市街地での物件探しを諦め、山間部まで対象を広げてみた。すると、ちょうど沼津の市街地に近い山間部に、昔、廃校になっていた旧小学校を見つけることができた。ここなら、浦の星1・2年生全員を一度に収容でき、さらに、広いグランドや屋内体育館もある。まさに、沼田が求めていた条件にぴったりだった。と、いうわけで、この旧小学校を改装し、来月の4月から静真高校浦の星分校として開校することになったのだ。

 が、その改装、昨今の東京オリンピック・パラリンピックや相次ぐ自然災害の復興工事のため、どこの建設会社も今行っている工事で精一杯だった。さらに、旧小学校全体の改装なので、大規模改装になってしまう。と、いうわけで、急に決まった旧小学校の改装工事、それを請けてくれる建設会社はなかった。それが静岡でもかなりの有力者である沼田の力でもってしてもだ。ただ、その改装工事については、沼田の依頼で分校経営にかかわることになった小原財閥が、これもラブライブ!つながりで知り合った中堅の建設会社、土居建設に旧小学校の改装工事を依頼する。そして、土居建設、2つ返事で改装工事を受注してくれたのだ。ちなみに、土居建設、ラブライブ!の運営団体のスポンサーであり、その社長、土居建造はスクールアイドル、そして、ラブライブ!を応援しているのだが、この前のラブライブ!冬季大会で偶然、その土居建造と小原財閥の中心となる小原家の当主が知り合っていた。そして、そのとき、たまたま2人で名刺を交換していたのだが、それが、土居建設が旧小学校の改装を受注したきっかけとなったのだ。沼田から旧小学校の改装を行ってくれる建設会社がないことを聞いていた小原家当主、それならばと、ダメ元で土居建設に改装工事をしてもらえるよう土居建造に依頼したところ、たまたま、土居建設静岡支社で別の工事を終わらせて次の工事まで空きがあるグループがあったので、土居建造、その空いた期間を使って旧小学校の改装工事を行う、と、いう計画でその改装工事を受注したのだった。

 とはいえ、すぐに旧小学校全体を改装することはできないので、教室の一室をまず改装し、当分のあいだはそこで浦の星1・2年生全員の授業を行い、準備でき次第、すぐにでも全体の改装工事にはいることになった。ちなみに、旧浦の星の校舎を分校として使用できないのか、という考えもあるが、前述どおり、卒業式兼閉校式以降立入禁止となっており、このときすでに学校全体が別の会社に売却されていた。そのため、旧浦の星の校舎を分校として利用することができなかった。

 と、ここで話はもとに戻る。

「なんでも、浦の星と一緒になるのがいやだって声が一部であるらしくて・・・」

と、むつたちは千歌たちに、来月の4月以降、浦の星の生徒たちは浦の星分校に通うことを説明する。実は、むつたち、千歌たちがやば珈琲に来るちょっと前にその事実をある友達から聞いて初めて知ったのだ。その友達とは、静真高校の生徒会の副会長、ナギだった。ナギはある友達に浦の星の生徒たちは来月の4月以降、分校に通うことを千歌たちがやば珈琲に来る直前に電話でむつたちに伝えたのである。だが、そのときまでむつたちもその事実を知らなかったので、むつたちもナギの電話で初めてその事実を知ったのである。が、そのナギ、友達であるむつたちには、自分の学校、静真の印象を悪くしたくないためか、浦の星の生徒たち全員が4月以降分校に通うこと、そして、その理由が「浦の星と一緒になるのがいやだ」という声が一部であったため、この2点しか伝えていなかった。なので、むつたちも分校方式をとることになった詳しい理由などは知らなかった。ちなみに、ナギとむつたちだが、中学時代、同じ塾に通っており、そのときに友達になっていたのだ。と、いうわけで、むつたち、案外頭が良かったりする。少なくとも、千歌以上の頭脳は持っている。なので、Aqoursのライブのとき、軽々と音響設備を扱えたのはそのためだったりする。

 話を戻そう。むつたちの説明に、千歌、

「なにそれ、授業、できないじゃん!!」

と、わざと?ボケる。それでも、スクールアイドルの練習もできないほどの状態、という事実は変わりなかった。でも、なんで分校に通うことになったのか、梨子も不思議がっていた。

 と、そんなときだった。

「そういえば~、曜ちゃんはどうしたずら~?」

と、花丸、この場に曜がいないことに気づく。曜に電話がかかってきて、それから、外に出て行ったところまでは、むつたちも覚えていたのだが、そのあと、どこに行ったのか、わからなかった。すぐにまわりを見る千歌たちとむつたち。

 そんなとき、窓の外をのぞいたヨハネは見てしまった、なんと、曜が見知らぬ男性?と密会している現場を。

「うそっ!!」

と、驚くヨハネ。この声に乗じてか、

「え~!!」「ずら~!!」

と、ルビィと花丸もヨハネの近くに行き、曜の密会現場?を目撃する。あまりのことに驚く3人。この声に気づいたのか、千歌から、

「なに?」

と、ルビィたち1年生トリオの方を向く。これに対し、ルビィたち1年生トリオ、曜の密会現場?を千歌と梨子に見せないようにするため、窓を背にして3人で隠そうとする。が、あまりにも3人とも・・・、

「な、なんでもないずら~(ルビィ)」

「リトルデーモンが少しざわついているだけよ(花丸)」

「ピギィ~!!(ヨハネ)」

と、キャラが入れ替わってしまうくらい動揺が激しかった。これには梨子はおろかどんかん(失礼!!)な千歌もルビィたち1年生トリオの様子が明らかに怪しく見えてしまったらしく、ルビィたち1年生トリオに迫ってしまう。それでもごまかそうとするルビィたち1年生トリオだったが、動揺が激しいためにさらなる疑いを千歌と梨子に与えることになってしまう。これには千歌、

(ルビィちゃんたち、絶対何か隠している。きっと、外で曜ちゃん、なにかしているに違いないよ!!もしかすると、新しい制服、見つけたのかな?)

と、思ってしまい、ルビィたち1年生トリオの制止を振り切り、やば珈琲の外に出てしまった。

 が、そこで千歌はある光景を見て固まってしまった。その光景とは・・・。スクールアイドルとしてはあるまじき、いや、ラブライブ!という作品にとって禁句というべきシーンともいえるかもしれない、千歌の大親友であり、Aqoursのメンバーである、曜、その彼氏ともいえるであろう男性?との密会シーンだった。

 

 と、ここで、突然だが、時間は少し巻き戻る。やば珈琲で、千歌がむつたちから今度通う学校が分校なのか、その理由を聞こうとしたとき、曜、いきなり自分のスマホから、

ツルル ツルル

と、電話がかかってきたことを教える呼び出し音が聞こえてきた。これに、曜、すぐに電話にでると、

「あっ、着いた。じゃ、今から行くね!!」

と、曜、そう言ってからすぐに電話を切り、近くにいた千歌ちゃんに、

「ちょっと待ち合わせがあるから外にでるね」

と、一言言ってからやば珈琲の外に出てしまう。が、その曜の声であるが、分校に通うことにびっくりしてそれだけに集中している千歌の耳には聞こえていなかった。

 で、外に出た月、すぐにやば珈琲の前で待っていた待ち人を見つけると、すぐに、

「あっ、久しぶり!!待っていた?」

と、その待ち人に言うと、その待ち人も、

「いや、今、来たとこ!!」

と、曜に今来たことを伝える。その待ち人であるが、野球帽に男物のジャンパーに男物のGパンと、まるでかっこいい男性?の姿をしていた。と、いうことは、その待ち人は曜の兄と弟・・・ではなかった。なぜなら、曜は一人っ子である。なら、その待ち人、正体は・・・、やっぱり・・・、曜の彼氏!?

 と、そんなとき、曜はその待ち人に言った。

「で、なんで、月ちゃん、そんな男物、着ているの?」

月、ちゃん!!そう、曜の待ち人、その人の正体は・・・月だった。そして、月が会おうとしていた人、こそ、曜である。で、これについては時系列的に言うと・・・。まず、自分たちが来月の4月から新しく通う学校が静真本校ではなく、山の中にある浦の星分校である、と初めて知った曜はすぐに月に連絡、月は曜に対し、「なぜ曜たち浦の星の生徒たちが分校に通うことになったのかを曜に詳しく説明するため、やば珈琲の店の前で待ち合わせしよう」と提案すると、曜も了承した。そして、月がやば珈琲の店の前に着いたので、着いたことを曜に電話にて伝えると、やば珈琲の店内で月を待っていた曜はその店の外に出て月と会うことができた、と、いうわけである。

 と、ここで、曜、月がなんで男性の格好をしているのかを尋ねると、月、

「ちょっと、いろいろあってね・・・」

と、それについては誤魔化してしまう。まさか、浦の星の生徒である曜と密会しているところを静真の関係者にばれないようにするため・・・とは曜の前では決して言えなかった。なので、ちょっと誤魔化したのだった。

 と、そんなときだった。

ガリッ ゴソッ

と、なにか騒がしい音が聞こえてくるとともに、

「曜のビッグデーモン!!」

と、大きな声が曜の後から聞こえてきた。これには月とちょっとした話で盛り上がっていた曜ですら聞こえていたらしく、曜、すぐに、

(えっ!!)

と、少し気になったのか、後を振り向いてしまう。が、曜の後には誰もいなかった。で、聞こえてきたのが、

ニャー

と、いう、猫の鳴き声?だった。

 で、あるが、実はその猫の鳴き声、ヨハネが発した声だった。挙動不審なルビィたち1年生コンビの態度に千歌と梨子はこの3人を怪しく思い、なにかを隠しているのではと気づいてしまった。というわけで、千歌と梨子、ルビィたち1年生トリオの制止を振り切り、やば珈琲の外に出てしまう。すると、びっくり!!曜が自分たちの知らない男性?と密会しているじゃないか!!これには、千歌、

(うそ・・・、うそでしょ・・・。曜ちゃん、スクールアイドルとしてやってはいけないこと・・・、ラブライブ!という世界観すら崩壊しかねないこと・・・、してる・・・)

と、きょとんとしてしまい、固まってしまう。これには、梨子も千歌と同じ状況、考えに陥ってしまう。「これは夢、いや、幻なんだ・・・」と、思い込みたい千歌と梨子。しかし、ヨハネがこれが現実であることを教えると、千歌と梨子も、今現実に起きていることだと認識してしまう。そして、曜と密会している男性?が誰なのか、あとからきたルビィと花丸と一緒に、5人でこっそり話し合う。まず、兄弟説だが、曜は一人っ子だから消去。で、次にでてきたのが、曜の彼氏説!!これには、ヨハネ、いきなり、

「曜のビッグデーモン!!」

と、大きな声で叫んでしまった。この叫び声には、千歌たち5人に対して背を向けていた、なおかつ、その男性?との会話で千歌たち5人の存在すら気づいていなかった曜でも気づいてしまう。その声の主を探すため、うしろを向く曜。だが、誰もいなかった。そのために、曜、少し不思議がっていた。

 

 で、あるが、実は、その千歌たちの行為、月にはバレバレだった。だって、曜は千歌たち5人に対して後を向いていたために千歌たちの存在に気づいていなかったが、その話し相手である月から見れば千歌たち5人の位置は正面、つまり、千歌たち5人の姿、いや、行動なんて丸見え、なのである。それどころか、千歌たち5人の会話すら月にはまる聞こえだった。それほど月は地獄耳、いや、耳がよかったのだ。で、月、その千歌たち5人の行動を見て、

(あっ、あれが曜ちゃんと一緒にスクールアイドルグループAqoursをしている千歌ちゃんたちだね。これはグッドタイミング!!曜ちゃんには悪いけど、曜ちゃんをえさに千歌ちゃんたちを釣り上げようかね。そして、千歌ちゃんたちを釣り上げて、僕たち、分校統合推進派のために頑張ってもらうからね)

と、月、なんか悪巧みを考えると、ヨハネの叫び声につられて後ろを向いた曜に対し、

「と、ここではなんだから、別の場所に行こうか」

とささやくと、曜の手をひっぱりやば珈琲の店の前から立ち去ろうとする。これには、曜、

「えっ!!」

と、ビックリするも、月に引っ張られる形でその場を去ってしまった。

 で、千歌たち5人であるが、ヨハネの叫び声で後ろを振り向いた曜、その曜に気づかれないように隠れてしまう。が、その隠れている隙に月が曜の手をとってその場を走り去ったため、曜を見失ってしまう。が、月と曜が走り去った方向は一方向しかなかったため、すぐに曜を追いかけようとする。このとき、千歌、

(やっぱり、やっぱり、曜ちゃん、私の知らないところで、彼氏、作っていたんだ!!たしかに、たしかに、曜ちゃんは老若男女を問わず誰とでも仲良くなれるけど、彼氏だけは・・・作っちゃダメ!!)

と、スクールアイドルとしてあるまじき行為、いや、ラブライブ!という作品の根幹すら揺らしかねない状態を起こしている?曜に対してなにかを注意したい気持ちになっていた。

 で、千歌たち5人はすぐに曜と彼氏・・・みたいに男装している月に追いつく。が、そのとき、ルビィ、ヨハネ、花丸が少しざわついてしまう。これには曜、すぐに、

(あっ、私、誰かにあとをつけられている!!すぐに確認、確認、と・・・)

と、思うと、すぐに後を振り向く。が、誰もいない。そして、聞こえてきたのは「ニャ~」という猫の声?だった。むろん、この猫の声だが、ヨハネが曜をつけているのがばれないように誤魔化すように言った声だった。が、そんなこと、月にはバレバレだった。で、曜、すぐに月に対し、

「月ちゃん、なんか、私、誰かにつけられているかも・・・」

と、こそこそ言うと、月、

「たしかにそうかもね。でもね、曜ちゃん、ばれてないようなふりして歩こうか。そしたら、誰か、いや、大きな猫たちが釣れるかもしれないから・・・」

と、曜に対しこそこそ言う。

 と、いうわけで、曜と月、つけている人にはばれていない風に、一緒に歩いていく。そして、アーケードの外の小道に入っていく。もちろん、月にはバレバレなのだが、曜には、まだ曜をつけていることがばれていないと思っている千歌たち5人もこそこそと2人のあとを追う。

 その月と曜が入ってきた小道を月と曜が歩いている最中、突然、

(曜ちゃん、ちょっと後ろを振り向いて見て。そしたら、誰につけられているのかわかるから)

と、月、曜に対し、そのことを伝えるかのようにウインクして合図を送る。それに対し、曜、

(うん、わかった!!)

と、こちらも月にウインクして合図を送る。そして、曜、

(じゃ、やってみるね。いっせ~のせ!!)

と、月の指示?通りに後を振り向く。すると、そこには・・・、それまで小道の中央には無かったはずの、そして、今さっきまで途中にあった薬屋の前に置かれていた熊のモニュメントが置いてあり、そこから「ニャー」という猫の鳴き声?が聞こえてきた。むろん、これまでになかったはずの熊のモニュメントが堂々と小道の真ん中に置かれていたのだから、曜、すぐに、

(たしかに誰かにつけられている。こりゃ、ちょっとフェイントをかけてみようかな!!)

と、考えてしまい、すぐに、

「なんだ~、猫ちゃんか~」

と、わざと気づかれていないように前を向く。すると、その熊のモニュメントに隠れていたヨハネがいきなり登場!!そう、曜が、突然、小道の真ん中で振り向いたため、ヨハネを除く千歌たち4人はすぐに近くの電柱などに隠れたのだが、ヨハネだけは勝手に借りてきた熊のモニュメントに隠れてしまったのだ。だが、突然、これまで小道の真ん中になかったはずの熊のモニュメントがいきなりそこにあるなんて、鈍感(失礼!!)な千歌でさえ変に思えてしまう。そのため、曜も、誰かにつけられている、なんてこと、簡単に気づいてしまうものなのだ。で、曜が誰もつけられていない、と、安心して前を向いた(もちろん、わざとです!!)ことで、ヨハネ、安心してその熊のモニュメントから出てきたのだ。

 だが、安心してその熊のモニュメントから出てきたヨハネ、少ししてから前を向くと、そこにはいないはずの曜の顔が・・・。これには、ヨハネ、

(ビビでばびれブー!!)

と、混乱してしまい、本人すらなにを言っているのかわからない、そんなことを言い出すと、熊のモニュメントで自分の顔を隠してしまう。

 対して、曜、フェイントをかけて、すぐに後を振り向くと、そこには安心しきって熊のモニュメントから出てきてしまい、さらには、その熊のモニュメントを抱えようとしているヨハネの姿を見つける。これには、曜、

(なんだ~、善子ちゃんだったかぁ~。なら、私のあとをつけてきたのは千歌ちゃんたちかぁ。安心した~!!でも、なんでつけてきたのかなぁ?でも、ちょっと、善子ちゃん、少しからかってやろうかな!!)

と、思うと、熊のモニュメントを抱えるために下を向いているヨハネの目の前に行く。そして、立ち上がろうと前を向くヨハネに対し、

「よしこちゃ~ん!!」

と、曜が言うと、ヨハネ、混乱を起こしてしまう。むろん、混乱したヨハネ、持っていた熊のモニュメントで自分の顔を隠す。これには曜、少し、「してやったり!!」と、考えてしまう。

 が、混乱しているヨハネの姿を見て、

(ちょっとやりすぎたかな?)

と、曜、ヨハネに対して少し悪いことをしたかなと思ったのか、

「いや~、そうじゃなくて・・・」

と、ヨハネのことを少し心配する。

 で、この様子を月は少し離れたところから見ており、

(こりゃ、少しやりすぎたかな?ここが潮時かな)

と、思うと、少し混乱気味のヨハネを心配するように対し、

「どうかしたの、曜ちゃん?」

と、曜に声をかける。これには、曜、

「あっ、ごめんね、月ちゃん!!」

と、月の言葉に反応し答える。

 で、このときの曜の言葉を聞いたヨハネを除く千歌たち4人、すぐに隠れていた電柱などからあらわれては、

「月」「ちゃん!!」

と、月の姿、というよりも、男装姿、それと、曜が発した言葉、「月ちゃん」というまるで少女をあらわしているそんな言葉、その2つのギャップの差に驚いてしまう。千歌たち5人、これまで曜と一緒に歩いていたのは男性、それも曜の彼氏、だと思っていたのだからだ。が、曜の言葉で、「その人が男性・・・ではなく女性ではないか、いや、男性で間違いないだろうか」、そんな困惑が千歌たち5人に襲っていた。で、この困惑している千歌たち5人の姿を見て、月、

(あっ、しまった!!今、僕、男の姿にしか見えてなかった!!静真の関係者にばれないように男装していたのだけれども、まさか、千歌ちゃんたちに曜ちゃんの彼氏だって誤解されたんじゃないかな。こりゃ、曜ちゃんには悪いことをしたなぁ。すぐに変装を解かないと・・・)

と、曜のために野球帽を外す。すると、これまで隠れていた月のボブヘアがはらりとあらわれた。すると、どうでしょう、これまで男の姿に見えていたのが、とても可憐な少女の姿に変わってしまったではないですか。これには、千歌たち5人、あまりの変わり身に驚いてしまう。

 そんな千歌たち5人に対し、曜、なにもなかったかのように、

「私のいとこの月ちゃん!!」

と、月を紹介する。すると、月も、

「月です。よろしく~」

と、曜ばりに千歌たち5人に挨拶する。で、そのときの千歌たち5人はというと・・・。

「もしかして・・・」「女の子・・・」

と、千歌たち5人ともハモるようにいうと、月が女の子を確信したのか、

「な~んだ~」

と、安心しきってその場に座りきってしまった。

 と、いうわけで、こうして、曜と一緒に歩いていた人が男の子、曜の彼氏・・・ではないかという、世界中のラブライバーをも巻き込んだ大騒動であったが、その正体は曜のいとこで大親友の月であったことがわかったため、この大騒動は無事解決した。これにより、曜の彼氏登場?により、「ラブライブ!」という世界はこの根本が崩れ、世界そのものが崩壊する・・・そんなことは起きず、この世界は守られたのだった。めでたし、めでたし。これにてこの物語は終了・・・じゃない、まだまだ続きます!!

 



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Moon Cradle 第2部 第3話

 数十分後、千歌たち6人と月はいつもの今川焼き屋に来ていた。ここは千歌たちが沼津駅近くの貸しスタジオで練習する際、帰りによく寄っていたお店であった。1個100円という高校生にとってリーズナブル、それでいておいしい今川焼き、疲れた体を甘い食べ物でいたわる、それが簡単にできる場所だった。

 で、この今川焼き屋に移動する際、曜は月と会話を弾ませていた。これには、千歌、少し嫉妬してしまう。が、ものの数分でその今川焼き屋に到着してしまう。その今川焼き屋の前に置かれていたベンチに千歌、曜、梨子が座ると、少し間をおいて、月、いきなり、梨子に対し褒める。さらに、千歌、ルビィ、花丸、善子の名をあげ、いつも曜と会えばAqoursのことをよく話題にすることを話す。これには、曜、少し照れてしまう。

 が、いきなり、ここでルビィがあることを月に尋ねる。

「それと・・・、分校のこと・・・」

これを聞いた月、曜を除く千歌たち5人に分校問題が起きた理由を話す、静真は昔から部活動が盛んであること、その中で全国大会に出場できる部活も数多くあること、静真に通う生徒の保護者(父母)の一部に「静真の部活動に浦の星の生徒たちが参加したら、士気の低下、対立により、部活動そのものに悪影響がでてしまう」ことを危惧する声があること、と。これにより、千歌たち5人も、(むつたちが話していたことと月が話したことを統合して)「「(部活動に対する士気が低いと思われている)浦の星の生徒が、(部活動が盛んで全国大会に出場できる部活を数多くある=部活動に対する士気が高い生徒たちも多い)静真の部活動に参加したら、士気の低下、対立により、部活動そのものに悪影響がでてしまう」、その保護者の声が多く、その声に押される形で浦の星の生徒たちは分校に通うことになった」ということを理解した。

が、月は曜を含めた千歌たち6人には分校問題、そのさわりしか伝えていなかった。その裏では、統合によってすべき(と、勝手に木松悪斗が思っていた)静真への多額の寄付をしなかった小原財閥、それに、浦の星に回復不可能なダメージを与えるための、木松悪斗の悪巧みがあること、それについては、月、千歌たち6人には伝えていなかった。これについては、月自身、木松悪斗の魔の手から曜たちAqours6人を守りたい、そんな気持ちからしたことだった。あまり深くかかわってしまうと、きっと、木松悪斗が曜たちAqoursを潰しにかかるとするだろう、それをさせないためにも、と、いう、月の親心だった。が、これがのちのち、それが起きてしまうのだが、それにはついてはのちのちの話である。

 とはいえ、分校問題について、千歌たちも悩んでしまう。しかし、曜はそれについて一言。

「実は(月と)相談していたんだ」

実は、曜、仲見世商店街のはずれの小道から今川焼き屋に行くまでの間、千歌たち5人より先に月から分校問題とその原因について月から聞いており、それについて、今さっきまで月と相談していたのだ。

 そこで、曜はある結論を出す。それを千歌たちに話す。

「その人(静真の保護者たち)が気にしているのは、浦の星の生徒が(静真の)部活でも真面目にちゃんとやっていけるのか、ってところだと思うの」

曜、静真の保護者たちが浦の星の生徒たちに対して不信感を持っている原因、それが先ほどの曜の言葉、だと考えていた。たしかに、曜の答えも一部正解だったりする。初戦敗退が続く浦の星の部活動、その結果だけ見た場合、浦の星の部活動を実際に見ていない静真の保護者たちからすれば、「初戦敗退が続くほど浦の星の部活動の実力は低い=浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い、お遊び感覚でしている」と思われてもしかたがない、そう、曜には思えてしまっていたのだ。むろん、木松悪斗の悪巧みからなのだが、木松悪斗は次の構図を静真の保護者たちに埋め込んでしまっていた。

「初戦敗退が続く→浦の星の部活動の実力が低い→浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い→もし(生徒の部活動に対する士気が高い)静真の部活動に(士気が低い)浦の星の生徒が参加すれば士気低下・対立が起きる→静真の部活動に悪影響がでる」

でも、曜からすれば、浦の星の生徒たちが静真の部活動でも真面目にちゃんとやっていけること、それを静真の保護者たちに対して証明さえすれば、それにより、この構図は壊れる、そう、考えていた。

 そして、月はあることを言う、この分校問題を、この構図を壊す案を。

「だから、(浦の星に)実績のある部活もあるよ、と、証明できればいいんだよ」

だが、この月の言葉に曜を除く千歌たち5人は、浦の星にそんな実績がある部活があったか悩んでしまう。が、そのなかで、梨子はあることに気づく。

(あっ、1つだけあった、全国大会に優勝した、そんな実績を持つ部が1つだけ・・・)

その部の名を思い出した梨子、悩む千歌を見て、一言。

「あるでしょ!!」

その言葉に曜はその部の名を梨子は思い出したことに気づき、梨子の言葉に続いて言った。

「全国大会で優勝した部活が1つだけ・・・」

その言葉に千歌やルビィたちもその部活の名を思い出した。その部活の名は・・・。

「浦の星女学院スクールアイドル部Aqours」

そう、千歌たちの部活である。浦の星の部活の中で唯一、全国大会で優勝した部活、スクールアイドル部。それを受けて、曜はある提案をする。自分たちの部、スクールアイドル部が、静真の保護者たちに対して、浦の星の生徒たちが、静真のどの部活にも負けないくらい、真面目に、本気で、部活をしている、そのことを証明すればいいのでは、と。これにはついては千歌、すぐに曜の提案に乗る。

 で、曜の提案した、静真の保護者たちに自分たちスクールアイドル部がそのことを証明してみせる、そのステージについてだが、これについて、月、

(ついにここまで曜ちゃんたちを導くことができた。あとは、僕がその曜ちゃんの案を実行できるステージを、曜ちゃんたちに伝えるだけだ!!)

と、意気込んでしまう。実は、月、曜がその案を提案する、そのところまで、自分のシナリオ通りに曜たちを導いていたのだ。最初から月の手の上で動かされていたのである、曜たちは。月としては、曜たち浦の星の生徒たちには1日でもはやく浦の星分校ではなく、静真本校に通ってもらいたい、1日でもはやく分校方式を解消したい、と、思っていた。でも、それには乗り越えないといけない壁がある。それは、「静真の部活動に浦の星の生徒が参加したら悪影響がでる」という静真の保護者の声。その声を打ち消す1番手っ取り早い方法、それが浦の星で唯一(ラブライブ!という)全国大会で優勝した千歌たちスクールアイドル部Aqoursが、本気で、真面目に、部活をしている、活動していること、(そして、みんなに感動を与えること、)それを証明すればいいのである、それも、その声の元凶である静真の保護者たちが持っている、浦の星の生徒たちに対する不信感、それを一度に払拭するくらいの力で。それはまるで、「静真の部活動は盛んであり、全国大会に出場できる部活も多い。だから、静真の生徒の(部活動に対する)士気が高いし実力もある」という、木松悪斗が言う力の論理に対し、月も、「浦の星のスクールアイドル部は全国大会で優勝した。浦の星の部活はそれくらいの実力がある!!いや、浦の星の生徒たちの部活動に対する士気はどの静真の部活にも負けない!!」、と言う力の論理で対抗しているかのように。そして、その月の力の論理を証明すればきっと分校問題も解決できる、と。このときの月はそう考えていた。

 が、月はこの時点であることを見落としていた。あまりに急ぎすぎたのか、それとも、あまりに短絡的だったのかもしれない。たしかに、千歌たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの力でもってすれば、きっと、静真の保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭し、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら悪影響がでる」という保護者の声を打ち消すことができただろう。だが、そのとき、「浦の星の生徒たちの部活動に対する士気、真面目さ」、それを証明したのは千歌たちスクールアイドル部Aqoursだけ、それ以外の生徒については違うかもしれない、いや、Aqours以外の浦の星の生徒の部活動に対する士気は低いかもしれない、という疑惑を感じる保護者たちも少なからず残ってしまうかもしれない。そして、静真本校と浦の星分校が無事統合されたあと、もし、静真の部活動が不振に陥ってしまったら、必ず、その残っていた疑惑が確信へと変わってしまうかもしれない。そうなると、「浦の星の生徒たちの部活に対する士気が低い→静真の部活が不振なのは浦の星の生徒たちが静真の部活動に入ったことで静真の部活動に悪影響を与えたからだ」という構図が再燃しかねない。だって、この構図を浦の星の生徒たちが自ら証明してみせた、と、浦の星の保護者たちが見てしまうから。さらに、「浦の星との統合後に静真の部活動が不振に陥る→その原因って(木松悪斗が言っていた)統合後に静真の部活動に参加した浦の星の生徒たちの士気が低いからだ→「(木松悪斗が言っていた)浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら静真の部活動に悪影響がでる」それが証明された」と、静真の保護者たちは、「静真の部活動が不振に陥った」、その結果と、木松悪斗が静真の保護者たちに植え付けた浦の星の生徒たちに対する不信感と合わさったことにより、そう判断してしまうだろう。こうなってしまうと、(浦の星の生徒たちを不幸のどん底に落としたい)木松悪斗の完全なるターンを迎えてしまう。木松悪斗、これに乗じて浦の星の生徒たちを駆逐するかもしれない。でも、この状況になってしまうと、曜たち浦の星の生徒たちを守る人なんていないのである、静真の部活動の不振の元凶だから、と、静真の保護者たち、いや、その関係者全てがそう考えているから。静真の関係者の大多数が「浦の星の生徒たちを駆逐せよ」と声を大にして言ってしまい、浦の星の生徒たちを養護する人たちも少数のため、養護したいが言うと自分も迫害を受ける、そう思うと声をあげることすらできない。このように、月の考えた力の論理で木松悪斗に対抗することについてはそんな悲惨な状況に陥る危険性をはらんでいたのである。

 ただ、こんなふうに、結果だけで物事を見てしまう、静真の保護者たち、を含めた、静真に係わる者すべて、本当のところ、沼田が言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、その答えを言えるのだろうか、いや、言えない、いや、誰も知らない。それが、この分校問題、いや、それを含めて、静真における一番の問題点、なのかもしれない。その沼田の問いの答え、それが、静真におけるいろんな問題点をすべて解決してくれるのかもしれない、分校問題を含めて。だが、この時点において、その沼田の問いの答えを知る者はいなかった、月はおろか、あの沼田まで。でも、その沼田の問いの答えを知っている、いや、知らなくても知らないうちに実行している人たちがいた。それが曜たち浦の星の生徒たちである、かもしれない。その浦の星の生徒たちと一緒に行動すればきっと沼田の問いの答えを見つけることができる、そう沼田は考えていた。それを臨時理事会後、月に伝えたのだ。が、その沼田の思いなど無視してしまい、力には力にもって対抗しようと月は考えていた。が、力を追い求める者の末路、それは、滅、である。力を追い求めるあまり、その力に飲み込まれ、いや、その力に酔いすぎてしまい、結果的にその力によって滅する運命だったりする。それは、月にしろ、木松悪斗にしろ、である。そして、結果論だけで物事を見て結論をだす、その危うさ、そのことに月と木松悪斗、この2人は、いや、静真に係わる者全員が気づいていないかもしれない。そして、それを正すために必要なもの、それが沼田の問いの答え、なのかもしれない。

 とはいえ、曜たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの力でもって静真の保護者たちが持つ浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭したい、その力を証明する場所、それを曜たちは追い求めようとしていた。これに対し、月、ここぞとばかりに、

「ライブもいいけど・・・」

と、曜たちにある提案をする、それは、3日後に静真の大講堂で行われる「新年度部活動報告会」、そこで千歌たちAqoursがライブを行い、静真の保護者たちに対して実力を見せつけること、そして、浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が高く、真面目に、本気で、部活をしていることを証明してみせること、を。たしかに、この報告会には静真の部活動に参加している生徒の保護者も数多く見に来るのだ。だって、わが子の晴れ舞台だから。数多くある静真の部活動、そのなかにはマイナーな部もあったりする。その部にとってこの報告会はこの1年で唯一みんなの前で活躍できる場だったりする。その生徒を見に数多くの保護者たちが報告会がある講堂に集まる。でもって、静真が誇る大講堂は、その数多く集まる保護者たち全員を収容できるほどのキャパを持っていた。その多くの保護者たちの目の前でAqoursのライブを行い、千歌たちスクールアイドル部Aqoursの実力を静真の保護者たちの目の前で見せつければ、きっと、このAqoursのライブを見てくれた静真の保護者たちの考えも変わり、それにより、保護者たちの声、浦の星の生徒たちに対する不信感も一掃され、無事、分校問題は解決する!!そう、月は考えていた。

 そして、その月の提案に対し、千歌たちからも、

「うん、それ、いいね!!」

と、二つ返事でOKを出してしまった。月の策略にまんまとひっかかった千歌たちであるが、千歌たちからすれば、それが浦の星の生徒たちを救う、唯一の方法、最善の方法、だと思ったから月の提案にすぐにOKをだしたのだ。

 

 月が千歌たちAqoursと初めての邂逅を果たした翌日、月は静真の部活動をしている生徒たちの連合体、部活動連合会の連合会室にいた。「部活動報告会」、それを主催しているのは、静真の生徒たちの学校での活動のうち、部活動関連を担当している部活動連合会だったりする。ただ、この報告会で活躍次第では部の予算が決まってしまうことがあるので、その予算を担当している月たち生徒会も少なからず関与していたりする。なので、その生徒会の長である月が「部活動報告会」のために部活動連合会の連合会室にいてもおかしくなかった。いや、生徒会長という権力を使い、部活動連合会が主催する「部活動報告会」に介入することもできるのである。実際、月は自分の権力を使って、今、まさに報告会に介入しようとしていた。

(よしよし、連合会会長の旺夏はいないな!!部活動報告会に介入するなら今だ!!)

そう思った月、出来たばかりの報告会のプログラム表(仮)を見てあることを考えた。

(このプログラムなら、ここに曜ちゃんたちのステージを無理やり入れ込んだらいいかもしれない)

そう、月がここに来た理由、それは、曜たち浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursのライブの時間を無理やり報告会のプログラムに入れ込むためだった。とはいえ、事前に報告会の担当役員にはAqoursのライブの時間をとっておいて欲しい、と、月は依頼をしていた。ただし、Aqoursの名前は伏せられていたが・・・。なので、Aqoursが静真の生徒・保護者の前でライブをする時間はすでに確保されていた。しかし、どの時間でAqoursのライブを行うのかそれはあとで月が指示することになっていた。そして、そのライブの時間を指定しに月が連合会室を訪れていた、というわけである。

 で、月が注目した時間、それは静真の部活の中でマイナーな部活の発表が続く時間帯だった。軽音楽同好会、キャンプ同好会、などなど。特に軽音は普通の高校ではメジャーなところが多いが、スポーツ系の部活が多い静真においては、軽音はどうしてもマイナーだったりする。で、月はそのマイナーな部が続く時間帯のプログラムの順番を確認する。

「キャンプ同好会、軽音楽同好会、女子サッカー部、弓道部、・・・」

これを見た、月、にやりと笑うと、すぐに、

(軽音楽同好会の次が女子サッカー部か。こりゃ、このプログラムの順番の間にAqoursのライブの時間を入れたらとても効果的かも・・・)

そう、軽音楽同好会はAqoursのライブと同じく音響設備を使うことが多い。なので、軽音楽同好会のあとにAqoursのライブをすれば音響設備を準備する手間が省けたりする。さらに、女子サッカー部は去年のインターハイで全国優勝しており、静真における(報告会での)注目度も1番高かったりする。なので、その女子サッカー部を見に多くの静真の生徒・保護者たちが大講堂に集まる。なので、女子サッカー部の前にAqoursのライブを行えば、女子サッカー部を見に来てくれた静真の保護者(それも多数)にアピールすることができる。そう考えた、月、すぐに、

「あの~、この軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだに、例の、僕が言っていた演目を設けたいのだけど・・・」

と、報告会のプログラム編成を担当している役員に言うと、その担当役員はすぐに、

「それはいいのですけど、軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだで本当に良いのですか?」

と、月にもう一度確認する。なぜなら、女子サッカー部という部活動報告会一番の目玉の直前だったからだった。一番の目玉である女子サッカー部の直前に行うこと、それは、女子サッカー部の前座になることを意味している。さらに、女子サッカー部を見に多くの静真の生徒・保護者が大講堂に集まる。そのため、その大多数の人の前であまりに緊張しないか、それを心配しているのである。

 が、月はそれでも承知の上だった。だって、その大人数の人の前に立つことがあっても、曜たちAqoursなら、それすらも跳ね返してくれる、そう確信していたから。部活動報告会の観客の数とは比べ物にならないくらい、2万人以上もの観客が入る秋葉ドーム、そこで行われた「ラブライブ!」で優勝したのが、曜たちAqours、である。なので、部活動報告会での緊張なんて、Aqoursなら、関係ない!!、と、月は考えていた。それより、より効果的に数多くの静真の保護者にAqoursの勇姿を見せるには絶好の時間である、そう考えた、月、

「ああ、それでいいよ。でね・・・、この時間に発表する部活はね・・・」

と、その担当役員のところに行き、その時間帯に発表する部活の名を告げる。

「浦の星女学院スクールアイドル部Aqours・・・だよ・・・」

これを聞いた担当役員、

「えっ、あの、Aqours!!」

と、大声をあげる。その担当役員、Aqoursのことを知っていた。いや、静真の生徒のなかでAqoursの名前を知らない生徒はいなかった。沼津において、今をときめくスクールアイドルグループだった。あの「ラブライブ!」で優勝したこと、それが1番大きかった。その、Aqoursの、そのライブが、浦の星の統合先である静真で見られる、たとえ、わずかな時間でも。それを気に良くした担当役員、すぐに、

「わかりました!!その時間帯の枠、確保しました!!」

と、月に報告する。これに、月、

「ありがとね!!」

と、その担当役員に御礼を言った。ちなみに、その担当役員、あまりの嬉しさに、なにも考えずに月の指示通りに動いた、わけではなかった。月の狙い通り、軽音楽同好会の次にAqoursのライブを行うことで音響設備の準備をする時間を少しでも削ることができる、そう考え、軽音楽同好会の次にAqoursのライブを行うことを決めたのだった。

 で、このとき、月はあることを思ってしまう。

(旺夏、僕のために道化を演じてくださいね!!)

そして、月、にやにや笑うと、連合会室をあとにした。

 

 だが、そう問屋が卸さないのがこの物語である。夕方、木松悪斗の長女で部活動連合会の会長である旺夏が連合会室に立ち寄っていたのである。実は、旺夏、今日一日、沼津にあるサッカー場で対外試合を行っていたのである。相手は沼津にあるJリーグのサッカーチーム、そのユースチームであった。同じ年齢とはいえ、男と女、対格差がありすぎる。さらに、プロサッカーチームのユースである。その差は歴然!!それでも引けをとらない試合を旺夏率いる静真高校女子サッカー部はしてきたのだ。結局引き分けで終わったものの、そのユースチームに負けないくらいの実力を持っていたのだった。このように、静真高校女子サッカー部は男性のプロチームと試合を続けることで着実に実力をつけてきた。女子去年のサッカー部、その結果、去年のインターハイで念願の初優勝を果たしたのである。

 と、女子サッカー部の自慢話はこれにくらいにして、そのユースチームとの試合を終え、静真に帰ってきた旺夏、明後日に行われる報告会のプログラムを確認するために連合会室に立ち寄っていたのである。で、そのプログラムを見た旺夏。すると、ある演目を見つける。それはこれまで見たことがない部活の名だった。

(浦の星女学院スクールアイドル部Aqours・・・)

この名に気づいた旺夏、すぐに、報告会のプログラムの編成を担当したあの役員を呼ぶ。すると、すぐに、

「このプログラム、すでに決定稿ですか?」

と、その担当役員に尋ねる。すると、その担当役員、

「はい、これが決定稿ですが・・・」

と、言うと、旺夏、すぐに、

「その決定稿、白紙に戻しなさい!!」

と、その担当役員に命ずる。これには、担当役員、

「でも、そうしたら、明日のリハーサルが行えなくなるのですが・・・」

と、小声で言うも、旺夏、

「これは、連合会会長である、この私、旺夏の命令です!!従いなさい!!」

と、一喝する。これには、担当役員、

「は、はい・・・」

と、しょんぼりしてしまう。

 とはいえ、このまま報告会のプログラム編成を白紙に戻したまま翌日に持ち越してしまうと、翌日、つまり、報告会前日に行われる報告会のリハーサルが行えなくなるのは自明の理。そこで、旺夏、すぐにある場所に電話する。すると、数秒後、

「なにかね、旺夏?」

と、どす黒い声が旺夏のスマホから聞こえてくる。その声に対し、旺夏、

「あっ、お父様、旺夏ですわ」

と、その旺夏の電話相手、こと、木松悪斗に自分の名を伝える。そして、旺夏、木松悪斗に、

「実はこうなっていて・・・」

と、明後日に行われる報告会、その軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだに浦の星の部活であるスクールアイドル部Aqoursの発表の場が突然設けられていることを伝える。これを旺夏から聞いた、木松悪斗、

(ほほう。これは(統合推進派の)渡辺月生徒会長の差し金だね)

と考えると、すぐに、

「それは確かに驚いてしまったよ。まさか、月生徒会長、今、(沼津の中で)1番ときめいているアイドルグループ、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursを担ぎ出すとはね・・・」

と、月の行動に感服してしまう。これを聞いた、旺夏、

(なんだって!!あの、月生徒会長、あの、Aqours、を担ぎ出すなんて!!これは、どんな手段も選ばない、ってことを意味しているのよね、月生徒会長!!)

と、月の行動にご立腹の様子。

 が、そのとき、木松悪斗は旺夏にある指示を出す。

「旺夏、この月生徒会長の悪巧みを阻止しないといけない。そのためにも、この演目をここに移動させて・・・」

で、この木松悪斗が出した指示を聞いた旺夏、

(な、なんて凄い考えなんでしょう。その指示通りなら、月生徒会長の悪巧みを潰すだけでなく、月生徒会長、いや、浦の星にも大ダメージを与えることにもなる!!こうなれば、分校方式はずっと続く、安泰すること、間違いなし!!ああ、やっぱり、お父様、最高ですわ~!!)

と、父木松悪斗に惚れ惚れしてしまう。

 と、いうわけで、旺夏、プログラム編成の担当役員に木松悪斗の指示通りにプログラム編成を変更するように命令する。このとき、旺夏、

「これは、私の父、木松悪斗様が出した命令です!!もし、命令どおりに動かなかったら、あなた、この静真、いや、沼津はいられませんからね!!」

と、その担当役員に脅しをかける。実は、木松悪斗の名で脅しをかけること、この担当役員、いや、静真高校の生徒たちにとって、1番効果的だったりする。沼田ほどじゃない、が、それでも、静真において絶対的な権力を持つ木松悪斗、その名は静真に通う生徒すら知っていた。そして、その木松悪斗に逆らうこと、それは、静真、いや、沼津において、死を意味しちゃう。そのことを知っているからこそ、この担当役員も旺夏の命令には逆らえなかった。ちなみに、その旺夏の脅しに屈しない生徒たちもいた。それが、月たち生徒会の面々である。月という絶対的生徒会長に付き従う、それが生徒会の面々だった。

 とはいえ、旺夏の命令どおりに動いた・・・、というよりも、プログラムの演目の順番を少しいじっただけなのだが、その担当役員は改めて完成したプログラム表を旺夏に見せる。すると、旺夏、

「あぁ、これでいいですわ。これを決定稿にしなさい!!」

と、その担当役員に命令すると、その担当役員はこの修正したプログラム表を決定稿にした。このとき、旺夏はあることを思ってしまう。

(月生徒会長、私の代わりに道化になるのはあなたですわ!!)

 

 

 



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Moon Cradle 第2部 第4話

 そして、ついに運命の日、新学年部活動報告会の日を迎えた。

(ついにこの日が来た!!ついに、僕の夢、静真本校と浦の星分校の統合ができる、その日が!!)

と、いきようようと静真に行く月。しかし、意気込む月に対し、その月についていっている千歌たち6人はというと・・・、

(・・・)

と、まるでなにかにおびえる子犬みたいな表情を見せていた。いや、心、ここにあらず、と言っても過言ではなかった。

 と、話は前後するが、今から1時間前、仲見世商店街のやぱ珈琲の店の前で待ち合わせをしていた月と千歌たち6人。そして、全員集まってから、月が千歌たち6人を静真までご案内していたのだ。ちなみに、静真にとってとても重要な行司である部活動報告会、生徒会長である月がいなくても大丈夫か、であるが、報告会を主催しているのは部活動連合会であり、報告会の運営進行などの報告会関連業務については連合会が主に行うことになっていた。で、月たち生徒会はその連合会の補助、会場なの警備などをしていた。でも、ナギ以下生徒会全員優秀すぎるため、生徒会長である月がいなくても支障がなかった。なので、生徒会長の月は自由に動き回ることができるのである。とはいえ、千歌たち6人とも暗い表情のまま歩いているので、月も少しは、

(なんか、いつも以上に暗い雰囲気のままなんですけど・・・)

と、千歌たち6人を心配していた。が、このあと、すぐに、

(でも、きっと大丈夫!!ステージに立てば、そんな雰囲気、消し飛んでくれる、Aqoursなら!!)

と、千歌たち6人に絶対的な信頼を寄せていたためか、元気を取り戻した。

 と、元気ありあまる月と暗い雰囲気、お通夜モードの千歌たち6人、その状態のまま、ついに静真本校の正門前に着いた。

「さぁ、ついたよ!!」

と、月、千歌たち6人に静真に着いたことを伝える。だが、千歌たち6人が正面を向いた瞬間、

「!」

と、一瞬で固まってしまった。自分たちにとって知らない人ばかりだった、特にルビィ、花丸、ヨハネの1年生コンビが・・・。でも、一瞬固まってしまうのも仕方がなかった。Aqoursメンバー、いつも明るく裏表ないために友達が多い曜、いつも前向きに行動している千歌を除いては静真に通う友達がいないのが現状だった。梨子は東京から沼津内浦に引っ越してから1年しか経っていたい。ルビィ、花丸はインドア派でいつも引きこもり気味だったので、そのためか、もとから友達が少ないのである。では、ヨハネはというと・・・、

(げっ!!ヨハネの前世を知る者がいる・・・)

と、ヨハネの前にいる静真の生徒たちを見て、ここから逃げ出したい気持ちになっていた。ヨハネの前世を知る者とは、ヨハネが中学生のときの同級生のことである。ヨハネは中学時代、よく中学校の屋上で堕天使ごっこをしていたので、それにより同級生から白い目で見られていた、ヨハネの心のなかでは。そう思ってしまったこともあり、中学生のヨハネ、すぐに引きこもり生活、登校拒否状態に陥る。だが、中学は義務教育あので、必ず卒業はある。でも、高校進学、なのだが、静真だと同じ中学の同級生が多いから行きたくない、でも、教師であるヨハネの母の顔を立てないといけないので、静真と同じくらい歴史がある、沼津(内浦)が誇る伝統校の浦の星に入学したのである。むろん、ヨハネが住んでいる沼津市街地から離れたところ、内浦にある浦の星なら、自分を知っている同級生はいないだろう、と、ヨハネがふんだことも浦の星に入学した理由の1つでもある(が、実際には、同級生は同級生でも、幼稚園時代の同級生の花丸がいたことはヨハネにとって想定外だったが・・・)。が、そこでも、ヨハネ、堕天使オーラ全開してしまったため、入学早々引きこもり生活に逆戻りに陥るも、千歌たちの働きかけ、というよりも、堕天使ヨハネを受け入れたお陰で引きこもり生活を打破することができたのは周知の事実である。とはいえ、以前、静真と浦の星の統合の話を聞いたとき、ヨハネ、すぐに反対したのはこれらが理由だった。

 で、話をもとに戻す。一瞬固まってしまった千歌たち。特にルビィは誰かに助けを求めたい、そんな表情をしていた。さらに、ヨハネもこの場から逃げたそうにしている状態に。で、ヨハネ、実際に逃げてしまうのだが、すぐに梨子に気づかれてしまい、梨子によって捕獲、逃走失敗。とはいえ、千歌はすぐに、

(でも、ここで私たちが踏ん張らないと!!絶対にライブを成功させて、むっちゃんたち浦の星の生徒たちが静真本校に通えるようにしないと!!)

と、気持ちを入れ替えたのか、なにか覚悟を決めた表情になる。これには、月、

(あっ、千歌ちゃんの表情、なにか覚悟を決めたみたいになった。これなら安心かな)

と、千歌の表情を見て安堵した。

 

 そして、月は千歌たち6人に控室となる教室へと案内しようとしていた、そんなとき、

「月生徒会長、大変です!!」

と、月のもとにナギが慌てて駆け込んできた。その慌てた表情のナギを見て、月、

「ナギ副会長、落ち着いて!!はい、水!!」

と、自分が持ってきたペットボトルをナギに渡す。それを、ナギ、一気に飲み干すと、それで落ち着いたのか、月にあることを伝える。

「月生徒会長、大変です!!(今日行われる)部活動報告会のプログラムにおいて大変なことがわかりました!!」

これには、月、

「どこが大変なんですか?」

と、ナギに尋ねる。すると、ナギ、

「実はうちの高校(静真)とは別の高校の部活の名がありました!!」

と、大きな声で月に言うと、月、

「それはなにですか?」

と、ナギに再び尋ねる。すると、ナギ、

「浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursという名がありました!!」

と、これまた大きな声で答える。すると、月、ひょうひょうと、

「あっ、それ、実は、僕が連合会に直接行って入れてもらうようにお願いしたからですよ」

と、ナギに報告会のプログラムにAqoursの名があった理由を言う。

 が、このとき、ナギはすぐに、

「えっ、月生徒会長が報告会のプログラムの中にAqoursを入れたのですか?初耳です!!」

と、驚いた表情をみせる。どうやら、ナギにとって初めて知る事実だったみたいだ。

 そして、月は一緒にいた千歌たちAqours6人をナギに紹介する。

「で、この方々こそ、浦の星が誇るスクールアイドル部Aqoursのみなさまです」

さらに、千歌たちもナギに向かって挨拶をする。

「ナギさん、こんにちは。私たち、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursです」

この千歌たちの挨拶に、ナギ、

「あっ、はじめまして。私は静真で生徒会副会長をしているナギといいます。よろしくお願いします!!」

と、千歌たちに向かって挨拶する。

 が、ナギはすぐに月に対し、

「ところで、月、生徒会長、ちょっとお話があります。ちょっと席を外してもらえませんか?」

と、お願いすると、月、

「この場じゃダメなの?」

と、言うも、ナギ、

「いや、これは自分たちにとって重要なことです。できれば、Aqoursのみなさまには聞かれたくないことなので・・・」

と、言うと、月、

「わかりました」

と、ナギの言うことを了承した。で、月、千歌たち6人にはすぐに、

「曜ちゃんにみんな・・・、ちょっとだけ席を外すね。控室はこの廊下の突き当たりだから、そこで待っててね」

と千歌たちに6人に対し控室で先に待ってもらうようにお願いした。

 そして、月とナギはすぐに生徒会室に行く。で、生徒会室に月たち2人が着いたとたん、ナギから月へきつい一言。

「月生徒会長、初耳です、この静真の部活動報告会に(今は)他校の部活をいれてしまうなんて・・・!!」

これには、月、

「ごめん!!これは僕がしたことなんだ!!」

と、ナギに謝る。すると、ナギ、

「月、生徒会長、この静真の部活動報告会、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursが緊急参戦するなんて、今の今まで知りませんでしたよ、私も、ほかの生徒会役員も・・・!!」

と、大声で言うと、月、

「本当にごめん!!Aqours緊急参戦、これは僕だけが、僕の独断で決めたことなんだ!!」

と、これまで誰にも明らかにしていなかった事実を言う。そう、この報告会、Aqoursの緊急参戦、これは、月独断で決めたことであった。誰にも相談せずに月自身で決めて、月だけで行動していたのだ。なので、ナギ以下生徒会一同、このことについてはノータッチであった。

 で、これについて、ナギ、

「まっ、月生徒会長の独断専行のお陰で、生徒会は上から下まで大騒ぎですよ!!だって、ラブライブ!に優勝した、今の沼津で一番人気急上昇のグループ、それが、この静真でライブを行うのですからね!!」

と、今、生徒会で大騒ぎになっていることを月に伝える。どうやら、静真の部活動報告会にAqours緊急参戦、という突然の知らせに、それについての問い合わせが生徒会に殺到しているみたいだった。これには、月、

「本当にすいませんでした!!」

と、ナギに謝る。そんな月に対し、ナギ、

「でも、これは、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら悪影響がでる」、という、(静真の)保護者の声、(静真の)保護者が持つ浦の星の生徒たちへの不信感を、同じ浦の星の、そして、浦の星で唯一全国大会で優勝した、その実績のある、スクールアイドル部Aqours、その真面目さ、本気さを静真のみんなの前でだして証明させることで打ち消そうとしている、そんな打算が月生徒会長にあったからしたことでしょうね」

と、月の心の中を読んでしまうかのように言うと、月、

「ばれていましたか・・・」

と、ナギの推理に感服する。

 だが、そんなナギを褒めている月に対し、ナギ、

「まっ、それについては別にいいのですが・・・」

と、これまでのことは特に気にしていないみたいだったが、次のナギの言葉に、月、驚いてしまう。

「で、問題なのは、このプログラム順です!!」

「えっ!!」

驚く月に対し、ナギは自分のスマホの画面を月に見せる。そこには報告会のプログラム表が表示されていた。ちなみに、最近のペーパレス化の波はここ静真にも来ており、基本、会議資料を含めてあらゆる資料はすべてスマホ、もしくはタブレットにメールにて送られてくる、もしくは、静真の学校専用サーバーなどで保管されていて、自分で必要に応じてサーバーにアクセスしてからダウンロードすることになっていた。そのため、静真に関係する者はスマホ、もしくはタブレットが必須だったりする。で、その資料であるが、開始される直前にメールにて送られてくることがざらにある、会議直前までその資料を修正することがあるから。で、今日、報告会のプログラム表であるが、今日報告会が始まる直前に静真の全校生徒などを含めて、静真の関係者全員に送られてきたのだ。これも、報告会が始まる直前になってプログラム順を変更したい部活があらわれたりしたためだった。で、そんなことがあるため、報告会がある日の一昨日に、月が、そして、旺夏が、報告会のプログラム順を入れ替えることができたのである。あと、一言付け加えれば、2月末の臨時理事会、木松悪斗が理事たちの前にだした紙の資料、および、月が理事の前にだした浦の星との統合賛成の嘆願書であるが、これは、スマホ・タブレットで資料を送るより紙で理事たちの前にだした方が理事たちに与えるインパクトが強い、そんな理由からだった。

 と、話は元にもどすが、月はナギのスマホに表示されている報告会のプログラム表を見て、

「う、うそ・・・」

と、唖然としてしまう。そこに表示されたプログラム順は、

「キャンプ同好会、軽音楽同好会、女子サッカー部、弓道部、Aqours・・・」

そう、一昨日、月が報告会のプログラム編成担当役員にお願いした順番は、

「キャンプ同好会、軽音楽同好会、Aqours、女子サッカー部、弓道部・・・」

であった。が、月の計画だと、そのAqoursは軽音楽同好会と女子サッカー部の演目のあいだでライブをすることになっていたのだが、報告会本番の順番は弓道部のあとになっていたのである。

 これを見た、月、

「しまった!!旺夏、いや、木松悪斗の仕業だ・・・」

と、これが木松悪斗の仕業であることを見抜く。実は、軽音楽同好会と女子サッカー部にあいだにAqoursのライブを行うように月が考えた理由、それがもうひとつあった。それは、Aqoursにはのびのびと、緊張せず、本来の実力を発揮できるようにしたかった、からだった。キャンプ同好会にしても、軽音楽同好会にしても、静真においてそこまでメジャーではなく、さらに、内容もゆるゆるだったりする。そのため、この2つの同好会発表時の報告会会場の雰囲気もそんなにきつくない。なので、Aqoursとしては緊張が張り詰めた雰囲気のなかでライブを臨む、そんなことを気にせず、気持ちにゆとりを持ってライブに臨むことができる、そう、月はそれを狙ってこのプログラム順の考えていたのだった。が、木松悪斗の策略により、Aqoursのライブは、キャンプ同好会、軽音楽同好会、の次ではなく、女子サッカー部、弓道部の次になった。で、去年のインターハイに優勝した女子サッカー部もそうだが、弓道部、実は去年のインターハイで上位に入るくらいの実力を持っていた。なので、報告会の注目度としては女子サッカー部の次に高かったりする。そう考えたとき、注目度が高い女子サッカー部、そして、弓道部の発表の内容はとても凄いものになる、と、月は予想していた。女子サッカー部と弓道部の発表はキャンプ同好会、軽音楽同好会みたいなゆるゆるな内容ではなく、観客となる静真の生徒・保護者たちがかなり盛り上がる内容になる、こうなると、報告会の会場の雰囲気もかなり大盛り上がり、次の演目を行うAqoursにとってすれば、かなり緊張が張り詰める、そんな状況に陥る、そんなことが起きるかもしれなかった。この状態のままAqoursがライブに臨んだとき、とても堅苦しい、いや、失敗しちゃいけない、そんな気持ちになってしまう。で、人はあまり緊張しすぎると必ずミスを起こしてしまうものである、それが、このライブでむつたち浦の星の生徒たちの今後が決まる、そんなとても重要なライブであれば・・・。そのことを月は心配していた。

 が、月はすぐに、

「これがたとえ木松悪斗の仕業にしても、今から報告会実行委員に講義することはできない。なら、この状況のままで戦いましょう!!」

と、腹を決めた。「今からプログラム順を変更してくれ」と実行委員に文句を言おうとしても、報告会自体はすでに始まっており、今となってはプログラム順を変更することはできなかった。さらに、

「女子サッカー部、弓道部、Aqours」

と、注目度が非常に高い3つが立て続けに行われるので、報告会としてもとても盛り上がること間違いなしだった。特に(女子サッカー部、弓道部もそうだが、)Aqours、ラブライブ!で優勝したスクールアイドルグループ、そのライブはとても注目度が高かった。なぜなら、報告会のプログラムが発表されたのが報告会直前であり、それまで報告会のAqoursの緊急参戦は報告会開始直前までどこにも伝えられていなかった。報告会にAqoursが緊急参戦することを事前に知っていたのは、Aqoursの緊急参戦を立案した月、報告会を主催する部活動連合会の会長の旺夏、その旺夏からAqoursの緊急参戦を伝えられた木松悪斗、それに、報告会のプログラムを編成した担当役員、だけだった。そのため、報告会のプログラムが報告会直前に発表されて初めてAqoursの緊急参戦のことを一般の静真の生徒や保護者たちが知ることができたのである。もちろん、月を除いた、ナギたち生徒会一同もである。で、Aqoursの緊急参戦、ナギたち生徒会を含めた一般の静真の生徒・保護者たちにとってみれば、報告会での突然のサプライズ的なもの、と、捉えられていた。なので、報告会での注目度は非常に高いものだったりした、Aqoursは・・・。と、いうわけで、もし、今からプログラム順できたとしても、報告会実行委員としてはその順番を変更してまで盛り上がりを欠けたくない、そんな気持ちが働いてしまうので、特段重要な理由がなければ、そのプログラム順を変更することはできなかった。

 とはいえ、月はその状況になったとしても、

(大丈夫!!だって、Aqours、なんだから!!この報告会以上の会場、秋葉ドームでライブして、そのラブライブ!で優勝したのだから!!)

と、千歌たちAqoursに絶対の信頼を寄せていた。これまでAqoursはこの報告会以上に注目度が高い、「ラブライブ!」、そこで優勝した実績を持っている。だからこそ、少しでもAqoursにとって不利な状況であっても、それを覆す実力を持っている、そう、月は確信していたからだった。

 が、ここでナギが月にある心配事を言う。

「でも、本当に大丈夫ですかね~?なんか、あのAqours、たった6人しかいないのですけど・・・」

たしかにナギの言うとおりだった。今ここに来ているAqoursのメンバーは6人である。でも、本来のAqoursはたしか・・・。だが、そのナギの心配をよそに、月、

「絶対、大丈夫!!だって、Aqoursは、あの、「ラブライブ!」、で優勝したのだから!!」

と、ナギの心配事なんて関係なく、「Aqoursは絶対に大丈夫!!」、そのAqoursへの絶対的な信頼を盾に自分を鼓舞する、月。月、まるで、Aqoursの実力さえあれば絶対にこの危機を乗り越えることができる、そして、絶対に分校問題に終止符を打てる、そんな絶対的な自信に酔いしれているかのようだった。

 そんな月に対して、ナギ、

「そう、月生徒会長がおっしゃるならいいのですが・・・」

と、少し月に呆れつつも、月を信頼しているがゆえに、月の言うとおりにすればいいか、の気持ちで対応してしまう。で、そんなナギから月へ一言忠告。

「もし、取り返しのつかないことになってもフォローできませんからね」

このナギの忠告に、月、ただただ、

「大丈夫、大丈夫。絶対、大丈夫!!」

と、まるでナギの忠告を無視するかのような対応をとる。これに、ナギ、

「私は忠告しましたからね。それじゃ、講堂で会いましょう」

と、月に対してしばしの別れを告げてからその場をあとにした。これに対し、月、

「それじゃまたね」

と、ナギに対して別れを言うと、千歌たち6人が待つ控室へと向かった。

 そして、月と別れたナギ、

「でも、本当に大丈夫、かな?」

と、月のことを心配する。さらに、

「でも、たしか、Aqoursって、9人、だったよね~。でも、今、静真に来ているのは、6人、だけ・・・」

と、ある事実を述べる。そう、今、静真に来ているのはAqoursのメンバーのうち、6人、だけ。それも、1・2年生6人だけである。で、本来のAqoursは、9人、である。あと、3人、欠けている。そう、ナギは知らないうちにあることに気づいたのかもしれない、あの秋葉ドームで行われた、この報告会以上の注目度がある、あの、「ライブイブ!」、で優勝した、そんな実績を残すほどの実力を持つ、本来のAqours、は、本当は、9人組、であることを、でも、今、静真にライブをしに来ているAqoursは、1・2年生の6人、そう、本来のAqours、ではなく、新生Aqours、その6人組、であることを・・・。月はそれを見落としていたのかもしれない。いや、気づかないふりを知らないうちにしていたのかもしれない。その見落とし、気づかないふりが、あとあとに響く悲劇につながってしまうことになるとは・・・、このときの月、ナギ、そして、新生Aqours、は知らなかった。

 



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Moon Cradle 第2部 第5話

「1,2,3,4、2,2,3,4.ルビィちゃん、もう少し、テンポ、早くね~」

ナギと別れた月はAqoursの控室に近づくなり、控室から聞こえてくる声を聞き、

(あっ、曜ちゃんたち、練習している!!最後の最後まで練習に余念がないんだね)

と、本番直前まで練習を怠らない千歌たちAqoursに感心を覚える。

 そして、

「ただいま!!」

と、月は控室のドアを開けると、曜、

「あっ、おかえり!!ごめんね、騒がしくなっちゃって・・・」

と、曜は月に謝る。これには、月、

「いや、いいんだよ。それより、ここでも練習を怠らないなんて、感心、感心!!」

と、千歌たちAqoursを褒める。これには、曜、

「いやいや。だって、今回のライブ、浦の星のみんなの未来がかかっているライブだもの・・・」

と、逆に謙遜してしまう。

 そんななか、千歌は、

「曜ちゃん、話をしている最中でごめんね。最後にみんなとあわせるから、もとの位置に戻ってね」

と、月と話しているように言うと、曜、

「うん、わかった」

と、千歌に返事をすると、月に対して、

「月ちゃん、ごめんね。また、あとでね」

と、言い残し、自分の位置に戻る。そして、千歌たち6人は最後の通し練習を始める。

♪~

と、流れる曲にあわせて踊る千歌たち、新生Aqours6人。これを見た、月、

(す、凄い!!曜ちゃんたちAqoursを実際に、生で、見るのは初めてだけど、それでも、映像で見たときより凄いよ!!)

と、感動に浸る。Aqoursの踊っているところは月も動画サイトなどで映像として見たことがあったが、映像で見るより実際に見たほうが感動する度合いが高いものである。百聞は一見にしかず、それが、今、まさに、月に起こっていた。が、それと同時に、月、あることに気づこうとしていた。

(あっ、でも、なんか、違う気がする・・・、その・・・、なにかが・・・、映像のときのAqoursと・・・、今、僕の前で実際に踊っているAqoursと・・・、な、なにか・・・、なにか足りない・・・)

この月が感じた違和感、今はまだ確信していない、が、それが切実になってあらわれていた、そのことを、このときの月は知らなかった。

 

 この月が違和感を覚えた最後の通し練習のあと、ほどなくして、

「Aqoursのみなさん、時間になりました。すぐに講堂まで来てください」

と、報告会実行委員の1人が月と千歌たちAqours6人を呼びにきた。これには、月、

「さぁ、ライブの時間はあともう少しだよ。僕が行動まで案内してあげるよ」

と、千歌たち6人に対し、講堂までのエスコートをかってでる。

 そして、控室から講堂まで行くあいだ、

「・・・」

と、千歌たち6人、と、いうよりも、ルビィ、花丸、ヨハネの1年生コンビはかなり緊張・・・というよりも、まったく知らない土地にぽつんと自分たち3人がいる、そのためにまわりの人に対して恐れを抱いている、そんな表情をしていた。これには、月、

(ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、かなり緊張しているなぁ。こう見てみると、僕、なんか、心配になってくるよ・・・)

と、これまで抱いていたAqoursへの絶対なる信頼、確信が陰りをみせてしまい、逆に、「本当に大丈夫か?」、と、ライブが成功するのか、それについての不安、心配が、少しずつではあるが、月の中に積み重なっていく。が、それでも、月、

(いや、絶対、大丈夫!!だって、本来のAqoursは凄いんだもん!!だから、絶対に、大丈夫!!)

と、映像で見た、本気で凄い、本来のAqoursの姿を知っている月は、自分を奮い立たせるように、いや、ちょっと空元気になりつつも、自分に対して、「大丈夫だ!!」、と、言いきかせていた。

 

 その数分後・・・。

「さぁ、ついたよ」

と、月は大講堂の・・・、ステージ裏へと、千歌たち6人を案内する。そこには、静真が誇る部活のうちの1つ、女子サッカー部と弓道部の部員たちがいた。もちろん、女子サッカー部の部長でもある旺夏もここにいた。

 で、この部員たちを見て、

(う、う~、まったく知らない人たちだよ~。お、お姉ちゃん、助けて~!!(ルビィ))

(ル、ルビィちゃんが固まっているずら!!ここはおらが・・・、おらが・・・、や、やっぱり、まるじゃダメずら!!(花丸))

(こ、こんなに敵が多いなんて、ここはヨハネの堕天使たる力で・・・、なんて、絶対、無理!!(ヨハネ))

と、さらに緊張してしまう1年生コンビ。これだと、ライブが始まる前に別の意味でオーバーヒートを起こしてしまい倒れこんでしまうかもしれなかった。

 そんな、極限ともいえる緊張をしている1年生コンビ3人をよそに、報告会の司会は、

「以上、軽音楽同好会でした」

と、Aqoursの演目の3つ前の演目が終わったことを観客である静真の生徒と保護者たちに告げるアナウンスをすると、続けて、

「続いては、女子サッカー部です」

と、その次の演目(Aqours側から見ると2つ前)が始まることを告げるアナウンスをする。

 その(Aqoursからみて)2つ前の演目の女子サッカー部、その名前を呼ぶアナウンスがステージから聞こえてくると、その女子サッカー部の部長である旺夏はほかの女子サッカー部員に対し、

「さぁ、戦いの時間ですわよ!!いつもの通り、王者の筆画を見せてあげましょう!!」

と、みんなを鼓舞すると、ほかの女子サッカー部員も、みな、

「はい!!」

と、大講堂全体に響き渡る、そんな大声で返事をする。これには、ルビィたち1年生トリオ3人とも、

「「「ピギィ!!」」」

と、極限的に怯えるなかでさらにビビってしまう。このルビィたち1年生トリオ3人がビビっている姿、偶然自分の視野にはいったのか、旺夏、すぐに、

(これが月生徒会長の秘密兵器、Aqours、ですのね。たしか、「ラブライブ!」、という全国大会で優勝した、ってことは聞いたこと、ありますが、私たちの鼓舞にビビるようでしたら、あまりたいしたこと、ありませんね。とるにたらないものです。その意味で、月生徒会長、そのもの(Aqours)を秘密兵器にした意味、あったのかしらね?)

と、少し呆れかえりつつも、月の本位に疑問を感じていた。が、まもなく女子サッカー部の演目がはじまる、ためか、

(まぁ、あんな腰抜け(Aqours)なんて気にせず、私たちは私たちでできることをするだけ、ですわ!!)

と、旺夏、そう思いつつ、ステージへとあがっていった。

 

「私たち、女子サッカー部ですが、去年夏、ついに、念願のインターハイで、優勝を果たしましたわ!!」

開口一番、旺夏は客席に向かって叫びだす。さらに、

「そして、これが、そのとき得た、優勝旗とトロフィーですわ!!」

と、旺夏が叫ぶと、旺夏のまわりにいる女子サッカー部員たちは高々とインターハイの優勝旗とトロフィーを抱え上げる。すると、客席からは、

「オー!!」

と、大きな歓声が聞こえてきた。部活動が昔から盛んであり、全国大会の常連ともいえる部活を数多く持つ静真にとって、1つの大きな偉業、それを誇らしげに言う旺夏たち女子サッカー部、その勇姿に観客たちみんな歓喜に包まれていた、そのために起きた歓声だった。客席にいる観客たち、というよりも、静真の生徒・保護者たちは、まるで自分が成し遂げたみたいな感じをこの場で得たかのように自分のボルテージを上げてしまい、興奮しながら歓声をあげていた。

 その客席からの歓声を聞いてか、旺夏、

「そして、私たちは今なお常勝街道をつっぱしております!!この前も強豪を徹底的に潰してきました!!」

と、インターハイが終わっても勝ち続けていることを観客みんなにアピールする。これには、観客みな、

「オー!!」

と、驚きの声が聞こえてきた。インターハイが終わると、受験や進学などのため、3年生たちは引退することが多い。でも、インターハイ時の3年生レギュラーがいなくなっても、旺夏たち女子サッカー部1・2年生は常に勝ち続けていること、それを誇らしげに言う旺夏に、観客たちはまるで旺夏を1人の英雄として見ている、そんな感じがしていた。

 その観客たちからの声を聞いた旺夏、誇らしげに宣言した。

「静真の部活動、それは、「勝つことこそ正義!!」、なのです!!勝ち続けることこそ、静真の部活動にとってとても大きなこと、いや、必須事項、なのです!!」

これを聞いた観客たちこと静真の生徒・保護者たちは、

「そうだ!!」

と、旺夏の言うことを同意、肯定する。これには、旺夏、

(快・感!!)

と、自分が言ったこととそれを観客たちである静真の生徒・保護者たちが同意、肯定したこと、それに心酔していた。

 と、旺夏、ある方向を見る。そこは客席の・・・学校関係者の座る席だった。その方向を見た、旺夏、

(どうですか、お父様、それに、沼田のおじ様。この私の勇姿に惚れてくださいますわよね)

と、考えてしまう。そう、その関係者席には、旺夏の父であり、静真の大スポンサーである木松悪斗、それに、静真において影の(絶対なる)神の沼田がいた。

 で、旺夏の勇姿を見た木松悪斗、旺夏の思いが通じていたのか、

(そうだ!!「勝利こそ正義」、「勝利こそすべて」、なのだ!!負けることなんて許されないのだ!!常に勝ち続けること、それが、この世の中で1番大事なことなんだ!!)

と、旺夏の考え、いや、自分の考えに同意、肯定する。「勝利こそすべて」、それを信条とする木松悪斗、それをみんなの前で自分の娘である旺夏が証明してみせたこと、それに感動していた、みたい、だった。

 が、そんな木松悪斗に対し、沼田はというと・・・、

(本当にこのままでいいのだろうか。「勝つことが正義」「勝利こそすべて」それだけを信条にしたとき、もし負けることがくれば、果たして、その人は立ち直ることができるのだろうか。そう考えたとき、どれほど、木松旺夏、いや、木松悪斗、いや、静真全体において、「勝つことが正義」「勝利こそすべて」という考え方がとても危ういものなのか、それに気づく者はいるのだろうか。それよりも、それ以上にとても大切なものがあると思うのだが・・・)

と、「勝つことこそ素晴らしい」そう見えてしまっている旺夏の姿、そして、それを追認する木松悪斗の姿を見て、静真の未来を心配していた。

 

 と、いうことで、女子サッカー部の演目は終了・・・ではなかった。

「と、ここで、優勝報告・・・だけだと味気ないので、ここで、パフォーマンス、行います!!」

と、旺夏が大きな声で言うと、女子サッカー部員、ゴールキーパーと旺夏、それに部員1人を残して端っこに移動してしまった。そのあと、旺夏はすぐに、

「それでは、余興ですが、ゴールキーパーに向かってシュートを放ってみたいと思います」

と、言うと、会場中から、

「オー!!」

と、驚きの声が聞こえてきた。

 そして、サポーター役の部員がサッカーボールを旺夏の前に置くと、旺夏、

「まずは普通のシュート!!」

と、大きな声で言ってからゴールキーパーに向かってとても強力なシュートを放つ。すると、ボールから、

ゴーゴー

という凄い音が聞こえてくる、ような感じがした、そんなシュートだった。が、ゴールキーパー、それをやすやすと、

バシッ

と、軽々とキャッチする。ステージの端から端まで少し距離があるものの、それでも強力なシュートを放った旺夏、それを軽々とキャッチするゴールキーパー、さらに、そのゴールキーパーに向かってちゃんとコントロールしてちゃんと受け取れるようにしていた旺夏のボールコントロールのうまさ、これには会場中、きょとんとしているかのように、

シーン

と、なってしまった。

 それでも、旺夏は余興を続ける。

「そして、2つ目がボレーシュート!!」

この旺夏の言葉を聞いて、サポート役の部員が旺夏の前にボールを投げる。それを、旺夏、ジャンプしてはそのままボレーシュートを放つ。もちろん、ゴールキーパーもやすやすとキャッチする。さらに、

「そして、これが最後!!オーバーヘッドキック!!」

と、旺夏は大きな声で叫ぶ!!オーバーヘッドキック、サッカーの代名詞ともいえるシュートの一種である。あるとても有名なサッカー漫画の主人公がもっとも得意としているシュート。もし、そのオーバーヘッドキックを決めれば、本当にヒーローになれる、かもしれない、それを旺夏はしようとしていた。観客みんなが固唾飲み込みつつも旺夏の方を見る。その旺夏、サポート役の部員が山なりにあげたボールめがけてオーバーヘッドキック!!すると、ボールは旺夏のキックにあわせてそのまま一直線にゴールキーパーのもとへ。もちろん、「ゴー」という音は・・・聞こえてこない、そんな威力があるわけではない、それでも、ボールはゴールキーパーめがけて一直線に飛ぶ。それをゴールキーパー、

ガシッ

と、ちゃんとキャッチ!!この瞬間、

ウォー!!

と、客席からものすごい歓声が聞こえてくる。会場中が興奮のるつぼと化していた。それほど旺夏のオーバーヘッドキックは素晴らしいものだった。ちなみに、オーバーヘッドキック、普通のシュートやボレーシュート、ヘディングシュートのときよりも威力が弱かったりする。なので、本当の試合だとあまり多用されていないみたいである。それでも、シュートしたときの見た目がとてもダイナミックかつアクロバティックなので、インパクトとしてはほかのシュートよりとても大、である。それに、某超有名サッカー漫画の主人公の代名詞ともなったため、オーバーヘッドキックでシュートを決めたいと思っているサッカー選手が多かったりする。そして、それを見たい人も多かったりする。そんな、オーバーヘッドキック、みんなに希望を与える、ものかもしれない?

 で、この客席からの大きな歓声に、旺夏、

「余興とはいえ、私のシュートを見てくださり、本当にありがとうございます」

と、客席に向かって御礼を言う。と、同時に、旺夏、

(で、どうですか、Aqoursのみなさま。私の素晴らしいパフォーマンス、見てくださいましたか?そして、絶望に陥りましたか?)

と、ステージ袖を見る。そこには、なぜか、月と千歌たちAqours6人がいた。実は、旺夏、自分の融資を月と千歌たち6人に見せつけるため、わざと月と千歌たち6人を自分が見えるステージ袖に呼んでいたのである、Aqoursに絶望を与えるために。そして、それは旺夏の望みどおりになった。特にルビィたち1年生トリオ3人には・・・。

 時間は少し遡る。旺夏の余興が始まる少し前、ステージ袖では、突然、

「月生徒会長、そして、Aqoursのみなさま、ちょっといいですか」

と、ステージ袖に控えていた女子サッカー部員が月と千歌たち6人を呼ぶ。

「なんでしょうか?」

と、月がその部員に尋ねると、その部員、

「実は、旺夏様がみなさまに見せたいものがあるとのことなので・・・」

と言うと、月、曜に対し、

「曜ちゃん、女子サッカー部が見せたいものがあるってことだけど、見る?」

と尋ねると、曜、

「い、いいんじゃないかな」

と、月の言葉に同意する。そして、月と千歌たち6人はステージが見えるところまで移動する。それに呼応したのか、旺夏の余興が始まった。で、旺夏がシュートを決めていくなかで、月、

(なに、シュートを次々と決めちゃって!!僕にとってそのシュート、見たってへっちゃらだよ!!)

と、冷静?に思うも、Aqoursメンバーからすると、

(す、すごい・・・(ルビィ))

(ず、ずら~!!(花丸))

と、目を丸くしてきょとんとなってしまった。さらに、旺夏の余興が終わった瞬間、会場中から、

ウォー

という、会場中に響き渡る歓声を聞いた瞬間、

(ピ、ピギィ!!すごい声だ・・・。ルビィたち、このあと、ライブ、するの~。こ、これを見せられてからライブしても、ルビィたちのこと、霞んでしまうよ~(ルビィ))

(ず、ずら~!!とてもすごいシュートずら・・・。お、おらたち、このあと、ライブ、する、ずらか・・・。まる、ライブする自信、なくすずら・・・(花丸))

(こ、これが、展開に選ばれし者の実力!!こ、この、ヨハネの力には、およ、およばない・・・わけじゃないでしょ!!このあと、私たち、ライブ、なんだよ!!こんなの見せつけられたら、私たち、ただの道化でしかないじゃない!!(ヨハネ))

と、これまでの経験で得た自信、そして、やる気を完全に吹き飛ばされてしまった、Aqoursメンバーが・・・、特にルビィ、花丸、ヨハネの1年生トリオ3人は・・・。

 で、次々と自信喪失していくAqoursの姿をみたか、旺夏、

(ふん、やりましたわ!!)

と、なにか勝ち誇った、そんな気持ちになっていった。

 



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Moon Cradle 第2部 第6話

 女子サッカー部の演目は大盛況に終わった。そして、女子サッカー部に続くのは、静真が誇る部活の1つ、弓道部!!ただ、あまりにも華やか過ぎた女子サッカー部とは違い、弓道部は物静かに演目を進めていく。それはまるで、女子サッカー部が動での発表なら、弓道部は静での発表と言えた。

「え~、私たち弓道部は去年のインターハイで上位に・・・」

と、弓道部部長はしゅくしゅくと今年度の成績を述べていく。女子サッカー部ほどじゃないけど、それでも対外に向かって誇れる成績、ただ、弓道部部長は女子サッカー部の部長である旺夏みたいに大げさに、派手に言う、ことはせず、ただ、本当に、弓道部の成績を読み上げる、そんな、まるで、周りが静寂になる、そんな感じがしていた。

 だが、そんな弓道部部長がしゅくしゅくと、ただたんに、自分たち弓道部の成績を述べていることにより、講堂内も、女子サッカー部とは違った雰囲気になっていった。その雰囲気とは・・・?それは、その弓道部部長がしゅくしゅくと述べている姿を見ていた、ルビィ、このとき、こう思っていたみたいだった。

(さっきの女子サッカー部とは違って、静か過ぎるよ~!!(そのために)なんか、会場中、音一つ、聞こえてこないよ~!!騒がしいのも嫌だけど、いきなり静かすぎるのも嫌~!!これまで騒ぎすぎて、ハート、バクバクしていたのに、急に静かになって厳かになったから、もっと緊張してきたよ~!!)

そう、女子サッカー部のときは旺夏が派手に盛り上げようとしていたために、会場中がフィーバー、興奮状態に陥っていた。が、次の弓道部はその女子サッカー部のときとは違って、ただたんに、厳粛に、そして、まるで、「古池や かわず飛び込む 水の音」と、俳句が読まれたときの情景が思い浮かぶ、それくらい、本当に静かな状況に会場中が陥っていたのだ。それは、弓道部部長が厳粛に、そして、物静かに、そして、ただただ言葉を述べている・・・だけでなく、そのまわりにいる弓道部部員も1ミリも動かず、ただ、部長の言葉を聞いている、そんな感じがしていた。そんな、厳粛な心地で発表している弓道部の姿、そして、弓道部の一般的なイメージである、物静かにしないといけない、そのイメージと合わさった結果、会場中、本当に音一つしない、いや、音一つすらしてはいけない、それくらい、厳かで、とても緊張を強いられる状況に陥っていたのだ。

 で、実は、人によって急に場の雰囲気が変わることにより、精神的に苦痛、緊張を強いられることがあるのだ。環境の急激な変化に敏感な人間、その微妙な差により、心が掻き乱れることはよくある。そして、今回、会場中があまりに興奮状態に陥っていたのに、いきなり、物静かな、厳かな雰囲気にがらりと変わってしまったのだ。この激しい落差、それにより、人によっては心に変調が起きてしまい、精神的に大ダメージを被ることになってしまう。で、その状況が女子サッカー部と弓道部、その演目をすぐ近く、ステージ袖で直接見ていたAqours、特に、ルビィたち1年生トリオの3人に起きていた。ルビィもそうだが、花丸、ヨハネ、この3人は、インドア派で引きこもりに似た状況の中で暮らしていたため、この雰囲気の落差を経験したことはなかった。それが、今回、目の前で、急に、起きてしまった。で、これまで経験していない状況、興奮状態だった会場が急に厳かな、とても緊張を強いられる雰囲気になってしまった。で、女子サッカー部の演目開始前のルビィたち1年生トリオの3人のガラスのハートは、(浦の星の生徒たちの未来を賭けているために)今回のライブの失敗は許されない、そんな、緊張状態だったのが、この会場内の雰囲気の落差により、さらにさらに緊張の度合いを強めてしまった、のだ。そのため、ルビィたち1年生トリオの3人は、さらに顔をこわばらせてしまった。

ちなみに、弓道部としては、会場中がこんな状態に陥るよう、女子サッカー部と打合せをしていた・・・わけではなく、ただたんに、弓道部としてはこう発表しようと自分たちだけで最初から決めていた・・・だけだった。が、「弓道部!!」、と聞いて、「騒がしい」とか、「激しい」といったイメージ・・・なんて思いつかないものである。むしろ、「厳か」とか、「静か」といったイメージが強いものである。ただ、それについては、自分たち日本人において、いわゆる先入観からこのイメージが思い浮かんでしまう、と、言っても過言はなかった。そう考えると、先入観とは、その人・物・事を何も調べずに、ただたんにすでに得ている、まったく別の情報をすぐに結び付けてしまうことがあり、それが悪い方向に作用してしまうことがある、そんな危険性をはらんでいるのである。そうした意味でも、人はそれを常に自覚していく必要があるかもしれない。

 とはいえ、弓道部部長の、厳かで、しゅくしゅくと、それでいて、物怖じしない、今年度の弓道部の成績発表は1分ぐらいの短さで終わる。だが、ルビィたち1年生トリオの3人にしてみれば、逆に、その時間、長く感じられてしまった。その分、緊張の度合いが高まり続けてしまった。が、そんな、苦痛の時間は、弓道部部長の成績発表が終わる、と、共に終わる、と、思ったのか、ルビィ、

(ふう、これで一安心つけるよ。よかった、よかった。でも、この人たち(弓道部部員たち)がステージからいなくなったら、ルビィたちのライブ、本番だね。さぁ、頑張らないと!!)

と、極度の緊張状態から解放されたと思ったのか、安堵の表情を見せつつも、もうすぐ本番ということで、再度気合を入れなおそうとしていた。そして、その思いは、ルビィ以外にも、花丸、ヨハネ、共にしていた。そう、ルビィ、花丸、ヨハネ、共に、同じことを思っていたのだった。

 が、そんなルビィたちの思いとは裏腹に、なかなか弓道部の部員たちがステージから降りようとしない。これには、ルビィ、

(あれっ?なんかおかしいよ。もう演目、終わったはずなのに・・・)

と、なかなかステージから降りない弓道部部員たちを見て不思議がる。すると、いきなり、これまでしゅくしゅくと自分たち弓道部の成績発表をしていた弓道部部長があることを、でも、安堵しているルビィたち1年生トリオの3人からしてみれば、青天の霹靂、地獄に陥れるような、一言を放つ。

「では、これから、私たち弓道部による試技を行います」

これには、ルビィ、

(う、うそでしょ~!!まだ、あの緊張がずっと続くの~!!)

と、愕然としてしまう。そして、それは、花丸、ヨハネにも同じ状況に陥っていた。

 そんなルビィたちを尻目に、弓道部の部員たちはルビィたちのいるステージ袖、の反対側にある袖から的を持ってくる。と、同時に、和弓を専用の袋から取り出す。そして、すべての準備が終わると、弓道部の部員たちは試技を始める。弓道、道という言葉がつく通り、ある決まった型、基本動作を持っている。それを射法八節という。弓道の選手たちはその八節に則り矢を放つのである。で、試技を始めた弓道部の部員たちもその八節に則り矢を放つ。その、和弓と矢を持ち、矢を放つまでの間、弓道部部員の一連の動作に対し、客席にいる観客たちは、一言も言わず、会場中が静まりかえっていた。それはまるで、極限の緊張を強いられる、いや、そうじゃないといけない、そんな雰囲気だった。

 そして、弓道部部員が矢を放つと、矢はそのまままっすぐ飛び、

バシッ

と、的の中心に命中する。その瞬間、会場中から、

オオ!!

と、どよめきが起きる。が、すぐに、

シーン

と、静まり返る。極度の、とても張り詰めた、そんな緊張のなか、弓道部部員たちは八節に則り矢を次々と放つ。そして、的に命中すればどよめきが起き、すぐに静かになる、その繰り返しを観客たち、見る方はしていた。それはまるで、女子サッカー部のときとは正反対だった。女子サッカー部のときは(旺夏が派手に盛り上げようとしていたのがあったが)会場全体が盛り上がっていた。でも、それはこの講堂だけに限らず、普通のサッカーの試合でもそうである。大騒ぎになりながら、時にはブブゼラを鳴らしながら、好きなチームを応援している、サッカーの試合のときの観客席の様子なんてこれが当たり前である。たして、弓道やアーチェリーといった、矢を使い、矢を的に放つ競技は、少しでも的の中心に命中しないといけないため、その選手は弓で矢を放つ、そして、的の中心に命中できるように、極度の緊張の中で、ただそれだけに体中の全神経を集中させている。その選手の緊張状態を保たせるため、見ている方、観客たちも、なに一つしゃべらない、いや、しゃべることすら、音を立てることすらできない状況に陥る。だって、音一つすれば、それにより、選手の緊張状態はすぐに崩壊し、結果的に的を外してしまう恐れがあるから。しかし、選手が的に矢を命中させた瞬間、その会場中に張り詰めていた緊張状態は一瞬で消失し、矢を的に命中させたことに対し、どよめき、という言葉でもってその選手を観客たちは賞賛しているのだ。しかし、まだ競技が続いているので、すぐに、また前と同じ、緊張状態へと戻ってしまう。弓道やアーチェリーの試合はその繰り返しの連続だったりする。ずっと静の状態が続く中、一瞬だけ動を見せるも、すぐに静に戻る、これが弓道やアーチェリーの試合を見るときの観客たちのスタイルである。ずっと応援のために騒いでいるサッカーの試合とは本当に正反対である。もし、サッカーの観客たちの応援が動なら、弓道の観客たちの様子は静である。が、たとえ応援の方法に違いがあるとしても、選手たちを応援する気持ちはみんな一緒である。が、その競技の内容によってはその応援のスタイルが変わってしまう、そんなものである。ちなみに、弓道には3つの競技方法がある。1つはアーチェリーと同じ得点式、中心に近いところほど高得点となり、選手たちはその中心めがけて矢を放つ。2つ目は採点式、これは的に矢を命中させる、だけではなく、射形、射品、態度、など、その選手の作法すべてを見て採点するものである。華道などと同じく、「道」と名前についているくらい、弓道とは、心技体、をもっとも大事にしている。その意味でも、弓道とは奥深い、そんな競技である。そして、最後の1つは的中制、規定回数のうち、どれだけ的に命中できるのかを争うものである。なので、的のどこにあてようが、「当たり」と判定されたら、それは命中、的に当てたことになる。で、報告会で弓道部員たちが行っている試技、実は、的中制、であり、弓道についてあまり知らない観客たちに対して弓道部部員が解説していたりしていた。

 とはいえ、このずっと続く「静」とその一瞬に訪れる「動」、この極度の緊張状態のメリハリ、これが、ルビィたち1年生トリオの3人に悪影響を及ぼしてしまう。ルビィ、弓道部部員が的に矢を命中させるごとに起きる会場内の緊張状態の緩和とすぐに緊張状態に戻ってしまう、この繰り返しにより、

(こんな雰囲気、ルビィにとって心に毒だよ~!!はやく、はやく、こんな雰囲気、終わって~!!)

と、心から叫び、必死の叫びを出していた。が、これはルビィだけではなかった。ほかの1年生、花丸、ヨハネ、ともに、ルビィと同じ心情、表情に陥っていた。こうして、弓道部部員たちが的に矢を当てるたびに起きる、会場内での緊張の緩和、および、すぐに緊張状態に戻る、この会場内の雰囲気のメリハリにより、ルビィたち1年生コンビの3人の精神状態はただでさえ極度の緊張状態に陥っているのに、さらに緊張の度合いを高めてしまい、心のなかにあったわずかな心の余裕すら削られる、そんな状況に陥っていた。

 そして、ついに、ルビィ、

(こ、こんな完璧なもののあとに、ルビィたち、ライブ、しないといけないの・・・。誰か助けて~!!)

と、誰かに助けを呼びたい、そんな、μ‘sの花陽ばりに、誰かに、いや、もしかすると、姉ダイヤに、助けを求めたい、誰か助けて欲しい、そんな危機的状況に陥ってしまった。だが、それは、ルビィ、だけではなかった。、

(う、う~、もう我慢ができないずら~!!はやく終わらせて家に帰りたいずら~!!あの、心休まる、図書館みたいなところに戻りたいずら~!!(花丸))

(こんな危機的状況、これこそ、ヨハネにとって天からの試練・・・じゃないわよ~!!もう、こんなの、今すぐにでも逃げたいよ~!!(ヨハネ))

と、花丸、ヨハネ、共に、この緊張状態から逃げ出したい、そんな表情、いや、心情だった。

 こうして、ルビィたち1年生トリオの3人、弓道部部員たちが試技で次々と的に矢を命中させるごとにこわばった表情はさらにこわばっていく。この3人の表情を見ていたのか、そのルビィたち1年生トリオの3人の近くにいた、月、おもわず、

(ルビィちゃんに花丸ちゃん、そして、善子ちゃん、なんか、どんどん顔の表情が険しくなっていっているよ~!!4月に統合するとはいえ、今(3月)はまだ他校だから、ルビィちゃんたちからすれば、まったく知らない静真の生徒や保護者たち(観客たち)だから緊張しているのかな?)

と、ルビィたち1年トリオの3人のことを心配してしまう。と、同時に、

(でも、よく考えたら、「ラブライブ!」のときだって、同じ状況、まったく知らない観客たちの目の前で歌うんだよね。その「ラブライブ!」に優勝するくらいだから、その状況に慣れているはずだよね。でも、それでも、ルビィちゃんたち、険しい表情になっているなんて、相当緊張しているんだね。でも、僕、ルビィちゃんたちがこんな状態のままで、このライブ、行ったら、本当に成功、するのかな?少しだけだけど、心配してきちゃう・・・)

と、本当に千歌たち(新生)Aqoursが今日のライブを成功するかどうか、少しずつだが、心配してきてしまう。これまで、月は、「「ラブライブ!」で優勝するほどの実力がある(本来の)Aqoursなんだから、今回のライブも絶対に成功する!!」、そう確信していた。が、その月の絶対なる自信は、少しずつではあるが、綻びを見せ始めていた。絶対なるもの、それは、少しでも綻びをみせると、そこから崩れ始めるようになり、雪崩のように時間を経たずしてすぐに崩壊するものである。それがまさに、月の心の中で、起きようとしていた。

 

 そんな、緊張の度合いが高すぎてしまい、極度に険しい表情になるルビィたち1年生トリオの3人、それ見て、絶対なる自信が崩れ始めようとしている月、そして・・・、

(絶対に、今回のライブは成功させないと!!じゃないと、むっちゃんたちに申し訳たたないから!!(千歌))

と、このライブによって、むつたち浦の星の生徒の未来が決まる、だからこそ、絶対にライブを成功させないといけない、そう心の中で言い聞かせているためか、見た目は緊張していないように見えて実は相当緊張している千歌たち2年生コンビの3人。

 そんななか、月は、

(あっ、そうだ、こんあときこそ、曜ちゃんにあることを聞こう!!)

と、考えてしまい、曜にあることを尋ねた。

「ところで、曜ちゃん、Aqoursとして(表面上では)ラブライブ!決勝以来のライブ、なんだけど、大丈夫?」

これには、曜、すぐに、

「大丈夫かどうかはわからないけど、今持てる力を全部出し切るつもりだよ。だった、新生Aqours、として初めてのライブだもん!!」

と、元気よく、と、いうよりも、緊張していることを隠すためか、空元気をだして答えた。

 が、その曜の言葉を聞いた、月、その曜の言葉に出てきたある言葉に疑問を抱く。

(うん?曜ちゃん、たしか、新生Aqours、って、言ったよね。「新生Aqoursとして始めてのライブ」・・・?初めて?たしか、Aqoursって、1年前から活動していたよね?それなのに、初めてなんて・・・。それよりも、「新生Aqours」ってなに?「新生」って、曜ちゃん、なんで、そう言っちゃうの?今のAqoursは昔のAqoursと同じ、じゃないの~!!)

この疑問に対し、月、あらためて曜に尋ねようとする。

「曜ちゃん、ところで・・・」

そんなときだった。

「月生徒会長、もうすぐ弓道部の演目が終わります。Aqoursのみなさんにライブの準備をしてもらえるよう伝えてください」

と、報告会の実行委員の1人が月にもうすぐAqoursのライブの時間であることを伝える。これには、月、おもわず、

「あっ、わかりました!!伝えてくれてありがとう」

と、伝えに来てくれた実行委員に御礼を言う。「もうすぐAqoursのライブの時間」であることを認識した月、すぐに、

(新生Aqoursのことについてはライブが終わったあとで、曜ちゃんたちに聞いてみよう。それよりも、今から、運命のライブだ!!僕は応援しかできないけど、それでも、きっと、このライブは絶対に成功する!!だって、(ラブライブ!に優勝した実力を持つ)Aqoursだもん!!絶対に大丈夫、大丈夫・・・なはず・・・)

と、これまで見せていたいきおいは陰を潜め、本当に大丈夫か、心配になってきてしまう。それでも、裏の星の生徒たちの今後を、そして、木松悪斗に対する月の反抗、それを決めるための、運命のライブ、が、あともう少しで始まる、その現実は、どんなことをしても覆ることがないのだ、そのことを月も自覚している。そのため、月、決死の思いで千歌たち新生Aqoursの出番が近いことを伝えようとする。

 が、そのとき、月は見てしまった、

「緊張する・・・(でも、そう言わないと、緊張の渦に飲み込まれてしまう・・・)」(ルビィ)

「こんな大きいとこだったずらね(でも、まる、あの秋葉ドームよりも大きく感じてしまうずら・・・)」(花丸)

「な、なに、言っているのよ!!ラブライブ!決勝の会場(秋葉ドーム)の方が何百倍も大きかった、って、ひっ!!」(ヨハネ)

と、講堂に入ってから初めて言う、ルビィ、花丸、ヨハネの会話・・・というより弱音を・・・。これを受けてか、花丸、

「あのときはみんないたし・・・」

と、ここにはいないメンバーのことを言う。で、これを聞いた、月、

(えっ、まさか、これでAqours全員じゃなの!!まだ、誰かいるの!?)

と、今更だが、Aqoursにおいて重要な事実を知って驚く、月。そんな月とは裏腹に、Aqoursのリーダーである千歌は、

「いるよ、今も・・・」

と、ルビィたち1年生トリオの3人を励ます。そんな千歌であったが、心の中では、この緊張の中、心に余裕すらなかった。それでも、Aqoursのリーダーとして、ほかのメンバーを励まさないといけない、そんな気持ちからでた言葉だった。

 しかし、その千歌の励ましとは関係なく、ヨハネはあることをつぶやく。

「これで全員?」

それを受けて、花丸とルビィは、月にとって重要といえる事実を述べる。

「思ったより、6人って・・・」(花丸)

「少ないのかも・・・」

 これを聞いた、月、

(えっ、6人!!たしか、Aqoursって、9人、だったよね・・・、それが、6人、・・・)

と、ビックリしてしまう。たしかに、Aqoursは、9人組、である。それが、そのうちの6人しか静真に来ていないのだ。その事実を確認するため、月、すぐにAqoursメンバー9人の名前という記憶と、今ここに来ているメンバーの名前を一致させていく・・・。

(え~と、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、それに、ルビィちゃん、花丸ちゃん、ヨハネちゃん・・・、あれっ、6人、だけだ・・・。あとは、たしか・・・、ダイヤさん、果南ちゃん、それに、鞠莉ちゃん・・・、あれっ、3人がいない・・・)

そう、ダイヤ、果南、鞠莉の3人がここにいないのだ。その3人がいない、今のAqoursは・・・。なので、月はあとの3人を探そうとする・・・、が、探す時間は月にはなかった。もう、弓道部の演目が終わったからだった。

 そんな月、すぐに自分のやることをする。月、千歌たち(新生)Aqoursのもとに行き、

「曜ちゃんたちの番だよ」

と、千歌たち(新生)Aqours6人に対し、ライブの時間が来たことを告げる。そして、月、

「がんばって」

と、ライブの成功を祈りつつ、千歌たち(新生)Aqoursに対して応援の言葉を送る。

 こうして、千歌たち、新生Aqours、6人は、声は小さいかもしれないが、極度の緊張状態に陥っているメンバー全員に対して、自分たちを鼓舞するように、名乗りをあげる。そして、ついに、運命のライブが始まった・・・。

 



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Moon Cradle 第2部 第7話

 が、そのライブの内容は、月の期待、いや、観客たち、静真の生徒・保護者たちが持つ、(ラブライブ!に優勝するほどの実力を持っている・・・であろう)本来のAqoursへの、とてもとても高い、富士山くらいの期待、をも裏切るものとなる。

 この静真の部活動報告会で披露する曲は「夢で夜空を照らしたい」。今のAqours、新生Aqoursが歌うことができる、唯一の曲。そう、本来のAqours、ダイヤ、果南、鞠莉、もいる、本来のAqours・・・じゃなくても、その3人がいなくても歌える曲、そして、その3人がAqoursに加入する前、その曲のPVが大人気となり呼ばれた、東京のスクールアイドルの大会で、突きつけられた「0」という悲しい現実を千歌たち1・2年生6人が知ることとなった、そんなきっかけを作った曲・・・、その曲を、この報告会で歌うことになるなんて、今の、新生Aqours、にとってなんか運命を感じてしまう、かもしれない・・・。

 とはいえ、名乗りのあと、この曲のフォーメーションの位置につく千歌たち新生Aqours6人。が、本来のAqours、9人のAqoursのとき、とは違い、千歌たち6人はどこか硬い表情になっていた。それはまるで、とても小さな勇気を振り絞ろうにも、たった6人という、9人のときとは違い、とても大きなステージが・・・、いや、とても広い、心配、不安という海、底なし沼が広がっており、その海、沼にはまってしまった、千歌たち6人はそんな表情をしていた。特に、ルビィは、姉ダイヤに助けを求めようとするも、とうの姉ダイヤはここにはいないので、ルビィの不安、心配はどんどん深みにはまろうとしていた。それでも、ルビィが持つ、とても小さな勇気が、その深みにはまらないように踏みとどめていた。

 が、そんなとき、

ガチャッ

という音がステージ上に響き渡る。その音は、千歌が髪につけていた、三つ葉のヘアピン、それが千歌の髪から外れてしまい、そのままステージの床に落ちた音だった。が、これが、千歌たち6人の、新生Aqoursの、そして、月の、木松悪斗に対する反抗の崩壊、をも呼び起こす、そんなきっかけとなってしまった。それまでルビィが持っていた、心配、不安、という海、底なし沼が広がらないように、深きところに沈まないように、していた、小さな勇気という防波堤、ネットは、この音により、

(あっ)

というルビィの思いと一緒に崩壊していった。そして、ルビィ、

(お、お姉ちゃん、助けて、助けて~!!本当に助けて~!!)

と、もうここにはいない姉ダイヤに助けを呼ぼうとするも、もちろん、姉ダイヤが助けてに来ることない、その現実により、不安、心配という海、沼の深きところまで沈んでいった。

 が、それは、ルビィ、だけではなかった。この千歌のヘアピンが落ちた音が聞こえたことがきっかけとなり、花丸、ヨハネ、はおろか、ライブ前、平然そうに見えていたが、心のなかでは不安でいっぱいだった、梨子、そして、曜、までもが・・・、

(なんか、心配と不安でいっぱいだよ~!!(曜))

(私も、不安と心配に飲み込まれてしまう~!!(梨子))

と、心配、不安の渦に飲み込まれてしまった。

 しかし、ただ1人、千歌だけは、

(ここは私がなんとかしないと!!)

と、持てる小さな勇気を振り絞り、1人で頑張ろうとする。が、所詮は空元気、から起きた気持ちだったため、今、千歌の心の中で起ころうとしている、不安、心配、それがあいまって、ラブライブ!決勝のとき、みたいなキレキレのダンス・・・ではなく、なんか、ダンス初心者、のやるような、あまりにキレがない、いや、ただのロボットみたいなダンスになってしまった。

 と、こんな具合に、本来のAqoursが持つ、ハイレベル、かつ、まるで楽しんでいるかのようなパフォーマンス、ダンス・・・とは思えない、本当に素人レベルのパフォーマンス、ダンス、歌を、今のAqours、新生Aqours、がしてしまったのだ。これには、月、

(あっ、わかった・・・気がする。この違和感、それは、Aqoursが本来持っているパフォーマンスの凄さだ!!いつもなら、なんかものすごいキレがあって、ダイナミックに見える、言葉では言い表すことができないほどの凄いパフォーマンスを見せていたよ、昔のAqoursは・・・。でも、今のAqoursは・・・、まるで、何かに怯えているのが、こじんまりしていて、とても緊張しているのか、とても表情も、ダンスも、硬い雰囲気だし、パフォーマンスも小さい。それはまるで、いつものAqoursが打ち上げ花火なら、今のAqoursはしけってできない手持ち花火・・・)

この月が気づいたこと、それが、今のAqours、新生Aqoursの現在の姿なのだ。たとえ、練習しているときは完璧であったとしても、本番となれば、練習のときみたいに完璧に踊れる・・・なんてことはないものなのだ。特に、練習のときに完璧だと思っていた、ところが、実は、ただのメッキでしかないこともあったりする。むろん、それがただのメッキであると気づく人は非常に少ない。が、いざ本番のむかえると、ただのメッキが剥がれてしまい、練習のときに気づかず、ただのメッキで覆われていたところ、弱点、がいきなり出てくることがある。で、本来であれば、その弱点をフォローするほどのリカバー能力が必要なのだが、緊張状態、特に、失敗すら許されない場面だと、そのリカバーをするをすることくらいの心の余裕なんてない、そのため、弱点をリカバーできず、むしろ、弱点だけが強調されることになる、それが、今の、新生Aqours、に起きていた。実際、今さっきの練習のときでも、新生Aqoursとしては完璧に踊れたのだ。月もこれを見て、「大丈夫!!」と、太鼓判を押していた。が、今の新生Aqoursは、極度の緊張により、練習時に見せた完璧なパフォーマンスは影を潜め、ただ、心配と不安という深き海、沼の底に沈んでしまったためか、本当にぎこちない、素人のパフォーマンス、とも見えるものしかみんなの前で表現できずにいた。なので、これこそ、今の、新生Aqoursの実力である、そう観客である、静真の生徒・保護者たちは見ていた、のかもしれなかった。

 と、いうわけで、ライブ直前の練習とは違う、まるで、素人同然のパフォーマンスをしている、新生Aqoursの真実、本来のAqoursとは違う姿に気づいた、月、おもわず、

(このままじゃやばい!!絶対にライブは失敗に終わる!!このままじゃ、Aqoursのイメージが・・・、イメージが・・・。浦の星の生徒たちのイメージが・・・、イメージが・・・)

と、これまた、千歌たちと同じく、不安と心配が月の心の中でも起きては、それに満たされようとしていた。さらに、月、

(このままだと、僕の、僕の計画が・・・、静真本校と浦の星分校を統合させる、そんな計画が・・・、曜ちゃんたちと一緒に楽しい学校生活を送るという夢が・・・、夢が・・・)

と、自分が持つ願望が足元から崩れていく、そんな気がしてきた。

 そんな絶望のなか、月はついにある事実に気づく。それは・・・。

(あっ、たしか、曜ちゃん、さっき、「新生Aqours」って言っていたよね。もしかして、それが、今のAqoursの姿、なんだ!!本来のAqoursとは違う、新生Aqours・・・。だからなのか!!本来の、以前、映像で見た、本来のAqoursの実力、それが今でも残っている・・・、そう、僕は思っていた。けれど、今のAqours、新生Aqoursは・・・、本来のAqoursの力・・・なんてない・・・、まだ赤子のような存在・・・なのかもしれない・・・。だって、人前で見せるといった、本番のステージって・・・これが・・・はじめて・・・だから・・・)

そう、千歌たち新生Aqoursとしてははじめてのステージ、そのなかで、千歌たち6人は、ダイヤ、果南、鞠莉がいないことにより、不安、心配という海、沼にはまり込んでしまい、「ダイヤたち3年生がいなくなった」ことで、0に戻ってしまった、そう錯覚してしまったがゆえに、本来の100%もの実力をだすことすらできず、いや、不安、心配が体中を支配してしまったがゆえに、本当の実力の10~20%も満たないパフォーマンスしかだせずにいたのかもしれない。

 こんな情けないステージ(Aqoursファン、こんな表現をしてしまい、本当に申し訳ございません!!)に、月、

(もうやめさせないと!!じゃないと、曜ちゃんたちが、新生Aqoursのみんなが、立ち直れなくなる!!)

と、この、新生Aqoursのライブをやめさせようと、ボクシングでいうところの、セコンドが白いタオルをリングに投げてはギブアップさせる、そんなことをしようと動こうとする。月、突然、実行委員に向かって、

「実行委員、すぐにこのライブをやめ・・・」

と、そう言いかけた、その瞬間、あることが起こった。それは・・・。

 と、ここで物語の舞台はステージへと移る。

(もう、心配と不安で体がいっぱいだよ~!!本当に、本当に、お姉ちゃん、助けて~!!)

と、必死に姉ダイヤに助けを求めつつも、ついには不安と心配が体を支配されてしまった、ルビィ。こうなると、いつ、ルビィが崩壊してもおかしくなかった。そのルビィの不安、心配は、花丸、ヨハネの1年生はおろか、千歌たち2年生にまで波及してしまい、さらに、それが、6人同士で不安、心配を増大しあいあうことになった。このためか、新生Aqours全体のパフォーマンスはさらに悪化することになり、さらに、千歌たち6人の不安、心配は、観客たちである、静真の生徒・保護者たちにも伝播してしまう。

 そんな状況のなか、ついにそのときが、誰も気づかないうちに訪れようとしていた。

(どうしよう~、どうしよう~)

と、不安と心配に支配されてしまったルビィ、突然、ダンスのキレすらもなくなる。それどころか、ルビィ、足元がふらついているかのように見えてしまった。その足元がふらついている、そんなとき、ルビィの目にあるものが飛び込んできた。それは・・・。

(あっ、テープの切れ端!!)

そう、ステージの床に貼っていたテープ、だった。アイドルや演劇などのとき、立つ位置(ポジション)を示すためにわざとテープを貼る。それが新生Aqoursのライブのときに残っていたのである。ただ、本来なら、そのテープなんて無視するか、事前に取り除けばいいのだが、新生Aqoursの場合、あまりの緊張にそのテープを除去することを忘れてしまい、さらには、心に余裕すらないために、そのテープを無視することすら無理だった。そして、そのテープにルビィが気づいた、のだが、ダンスのいきおいあまって、ルビィ、そのテープを踏みつけてしまう。すると、

「えっ!!」

と、ルビィ、そのテープが剥がれていく、と同時に、足を滑らせてしまう。その結果、ルビィ、大きくこけてしまった。これくらいなら、すぐに挽回できたりする。が、運の悪いことに、そのルビィがこけた先に、花丸とヨハネがいたのだ。なので、大きくこけてしまったルビィのいきおいは、その花丸、ヨハネにも襲い掛かることになり、

「くはっ!!」「ぐびっ!!」

と、花丸とヨハネが言ってしまうくらい、3人揃ってステージ上に倒れこんでしまった。その瞬間、月、

(あっ、やっちゃった・・・。もう、これで・・・、終わった・・・、なにもかも・・・。浦の星の生徒たちの明るい未来が・・・、僕の計画が・・・、そして、僕の夢が・・・)

と、これまで、月の心の中で描いていたものすべてが崩れ去ることを自覚した。これまで、月自身が描いていた皮算用、それが、すべて崩れていく、そんな気が、月にはしていた。

 とはいえ、たとえ、1度失敗しても、それをリカバー、挽回するくらいのパフォーマンスを見せればいいのだが、そんな、リカバー、挽回できるくらいの心の余裕は、今の新生Aqours、特にルビィたち1年生コンビの3人にはなかった。ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、SaintSnowの理亞も、今の新生Aqoursのルビィみたいに大きくこけてしまった。夏季大会決勝で8位に入賞できるくらいの実力を持っていたSaintSnowであったが、このときの理亞のアクシデントをリカバー、挽回するくらいの力を発揮することはできなかった。1度の失敗により、理亞は立ち直れきれないほどの精神的なダメージを食らってしまったのだ。そのため、必死にその失敗を挽回しようにも、逆に気持ちに焦りがでてしまい、逆に、ダンスなどのパフォーマンスが悪化することにつながってしまう。結果、理亞はその失敗を挽回することはできずに最終予選は終了、最終予選敗退という理亞にとってとても辛い現実を突きつけられてしまう。そして、それがのちに、あのSaint Aqours Snowという奇跡の合体ユニットができるきっかけになる、函館のクリスマスライブの出来事、そして、理亞が新しく作るスクールアイドルユニットにとって大きな影響を与えることになった。それくらい、1度の失敗をほかでリカバー、挽回することはとてもたくさんの労力、実力を要するものなのである。が、そんな実力、今の、緊張のあまり、不安、心配の海、沼に沈みこんでしまった、千歌たち新生Aqours、にはなかった。そのため、千歌たち新生Aqoursは、そのあとも、みんなを感動させるには程遠い(あとでSaintSnowの聖良が言うところの)ラブライブ!決勝で見せたパフォーマンスの10~20%以下のパフォーマンスしか見せることができなかった。こうして、Aqoursのイメージは、静真の生徒・保護者たちを中心に、まえより悪くなる、そんな結果を生み出してしまった。

 

 で、この新生Aqoursのパフォーマンス、それを見ていた観客たちこと静真の生徒・保護者たちであったが、新生Aqoursのライブが始まる前、

「なんでも、ラブライブ!っていう全国大会に優勝するくらいの実力があるんですってね~」

「ほほ~、それは凄い実力の持ち主だな。あの浦の星の部活の1つだなんて、あの初戦敗退続きので、お遊び感覚で部活をしている、あの、浦の星の部活動のなかで全国大会で優勝できるくらいの実力を持つ部活とは、なんか楽しみだな」

と、浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursの実力を見に来ていた静真の生徒・保護者たち。そのラブライブ!という全国大会で優勝する、そんな実力を持つ、それはきっと、「勝利こそ正義」「勝利することがすべて」という静真の部活動の理念にも一致する、そう思っているがゆえに期待度は高かった。そんななかで、そんなAqoursの噂話をしている静真の生徒・保護者たち、その姿に、

「なに思っているのかなぁ、みんな。まるで、自分たちが、Aqoursの昔からの応援者、なんて顔をしている、そんな風に見えてしまうよ。でも、ヨハネちゃんだったらそんなの、気にしないよね!!」

と、辛口に静真の生徒・保護者たちのことを批評しつつも、ヨハネに対しては絶対の信頼を寄せている彼女、それは、月が臨時理事会前に生徒全員から統合賛成の署名を集めていたとき、少し署名するのをためらう1年生の生徒たちに対して真っ先に月の策、署名に賛成の意思を示した、そして、ヨハネが中学時代のときの同級生だった、稲荷あげはであった。彼女は中学時代、中二病全開のヨハネに対し、本当の友達になりたい、と、思っていた。が、ヨハネはすぐに登校拒否を起こして中学校に来なくなったため、あげはは仕方なくヨハネと友達になることを諦めてしまった。が、あげはが静真に入学して少し時間がたったある日、Aqoursが公開したPV「夢で夜空を照らしたい」にヨハネが出ていることを知ったあげは、すぐにAqoursのPVを見てみると、

「あっ、ヨハネちゃんが出てる!!」

と、興奮してしまう。そのPV、そして、夏に行われた沼津市の夏祭りにゲスト出演したAqoursの「未熟Dreamer」、それを直接見たことにより、あげははAqoursの大ファン、とりこになった。

 こうして、あげははラブライブ!夏季大会静岡県予選に東海最終予選、さらに、冬季静岡県予選に浦の星の学校説明会、東海最終予選に秋葉ドームで行われた冬季大会決勝まで、現地参戦するくらいのAqoursのおっかけ、もとい、大ファンになっていく。で、実は、あの奇跡のユニット、Saint Aqours Snowがライブをした、あの函館のクリスマスイベントにも現地参戦していたりする。なので、あげは、Aqoursだけでなく、SaintSnowのファンだったりする。

 そんなあげはをよそに、新生Aqoursのライブが始まる。が、あまりに緊張しすぎているのか、ぎこちすぎるダンス、あまりうまくない歌声など、パフォーマンスが悪い新生Aqoursの姿に、観客である静真の生徒・保護者たちからは、

「あれが浦の星が全国に誇れる部活、スクールアイドル部Aqoursの姿ですの?」

「なんか、期待したものよりとても悪い気がします・・・」

と、思っていたものよりも期待外れだったという声が次第に大きくなっていく。これには、あげは、

(本当のAqoursはこんな実力じゃない!!本当は、かなり凄いんだから!!)

と、現地で直接Aqoursのライブを見ているのからこそ本当のAqoursの実力を知っている、そんなあげはからこそ言える言葉、で、あったが、そのあげはとしても、今日の(新生)Aqoursのライブに、

(でも、たしかに、いつもよりパフォーマンスが悪い気がします。なんか・・・足りない・・・気が・・・)

と、いつもと違うAqoursの姿に不思議がるあげは。が、ライブが進むなかで、あげは、突然、

(あっ、わかった!!)

と、本来のAqoursと今のAqoursの違いに気づく、それは・・・。

(そういえば、今のAqoursメンバーの人数、もとより少ない!!いつもだったら9人いるのに、今は6人しかいない!!たしか、ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、の3人がいない!!もしかして、3人がいないから緊張してしまい、それでパフォーマンスが悪くなったんだ!!)

なんと、たった数分見ただけで今のAqoursの弱点を見抜いてしまうとは、やっぱりAqoursの大ファンのことだけはある、あげはは・・・。

 そのあげはであったが、時間が進むごとに不安、心配という海、沼の深きところに沈んでしまい、どんどんパフォーマンスが悪くなる新生Aqoursの姿に、

(もうやめて!!やめてあげて!!)

と、これ以上ライブをしてまでイメージを悪くなる姿を見たくないのか、必死にライブ中止を心の叫び声として言おうとするが、言う勇気が出ず、声として実際に発することはできなかった。

 そんななか、新生Aqoursのパフォーマンスに、突然、異変が起こる。ダンスの最中、ルビィが大きく転んでしまう。それにつられて、花丸とヨハネもルビィに巻き込まれる形で3人一緒に倒れこんでしまった。これを見ていた観客たちこと静真の生徒・保護者たちは、

「こんな小さなステージで大きく転ぶなんて、なんて実力のない部活ですわね」

「こんなもの、静真の部活だったら恥知らず、ですね!!」

「実力なんてまったくないじゃないか!!」

と、新生Aqoursを酷評する人が多くなっていった。そして、ついには、

「これだと、あの木松悪斗様が言っていた通り、ですわね。初戦敗退が続く中で唯一全国大会で優勝した、それくらい実力が高い、浦の星が誇る部活、スクールアイドル部がこんな低レベルな実力しかないなんて。と、いうわけだから、全体的に浦の星の部活動は低レベル、お遊び程度で部活をしている、部活動に対する士気が低い、と、いうのは本当の話ですね!!こんな、部活動に対する士気が低い、浦の星の生徒たちが、士気が高くて高レベルの実力もある、そんな、静真の部活に参加したら、絶対に士気低下、対立などが起きて、しまいには、静真の部活動そのものに悪影響を及ぼしますね!!」

と、いう声が静真の生徒・保護者たちのあいだで大きくなっていった。期待度が高い分、その期待を裏切るようなことが起きたときに受けるマイナス分も大きくなってしまう。それはこのときのAqours、新生Aqoursにも起きてしまった。千歌たち(新生)Aqours、ラブライブ!優勝という実績があるがゆえにライブ前の期待度はとても高いものだった。しかし、今回のライブでは、千歌たち新生Aqours、ラブライブ!優勝のときに、本来のAqours、が見せたときよりも非常に悪いパフォーマンスを見せてしまったために、Aqoursの、そして、浦の星の生徒たちのイメージに与えるマイナスのダメージははかりしれないものになってしまったのだ。こうして、静真の生徒・保護者たちが持つAqoursの、浦の星の生徒たちに対するイメージは悪化してしまった。そして、それは、木松悪斗が広めた考えを助長させる結果になってしまった。

 だが、1人だけ、その新生Aqoursの姿を見て幻滅しなかった少女が1人いた。

(いや、絶対になにか理由がある!!こんな悪いパフォーマンスになった理由が!!私、絶対に信じる、きっと、あの、ラブライブ!優勝のときに見せたパフォーマンスはよみがえるって!!彼女たち、Aqoursの実力なら!!たとえ、だれもがAqoursのことを信じなくても、この私、あげはは、絶対に最後まで信じる!!そして、それを信じて、私、今から行動する!!昔の凄いAqoursが戻ってきたときのための、みんなに見せつける、そのためのステージ、それを造るって!!)

あげはだった。あげははどんどんAqoursに見切りをつけていく静真の生徒・保護者たちを尻目に、これからのAqoursを信じ続けること、そして、これからのAqoursが活動できる場所を用意しよう、と、心の中で決意した。

 

 そして、この新生Aqoursが見せた、とても悪いパフォーマンス、そして、それにより、Aqoursに期待していた静真の生徒、保護者たちが次々とAqoursのことを見限っていく様子、それを喜んでいる人がいた。

(さぁ、どんどん悪いパフォーマンスを見せてくれ。それによって、浦の星の、浦の星の生徒たちのイメージをどんどん悪くなる。それは、すなわち、この私、木松悪斗の希望を叶えることになるのだ!!あの裏切り者、小原財閥、そして、その分身である、浦の星、に大ダメージを与えることになるのだ!!さらに、分校状態はずっと続く。それによって、私の、静真に対する負担も少なくなる!!浦の星の生徒だけを静真に入れたら、その際に起きる負担の追加分、私が損してしまうからな!!だからこそ、自分の負担が少なくて済む分校方式はずっと続く、それよって、分校に出資している小原財閥の負担も続き、それがのちに大きなボディーブローのようにじわじわ効いてくる。私にとっては一石二鳥って言えるんだ!!だからこそ、Aqoursのみなさん、どんどん悪いパフォーマンスを見せてくれ!!)

そう、木松悪斗だった。自分の希望を叶える、その意味でも、今のこの状況は、木松悪斗にとって嬉しいことだった。これにより、自分が盟主の分校推進派の勢力はどんどん拡大しいきおいづけることができるのだ!!こうして、月たち生徒会が中心となっている統合推進派の息の根を止めることができる、そう木松悪斗は考えていた。

 そして、ルビィがステージの床に残っていたテープを踏んだことで大きく転び、その拍子で花丸、ヨハネを巻き込む形で倒れてしまった、そのとき、木松悪斗、つい、

(これは傑作だ!!悪いパフォーマンスのうえに大げさに転ぶなんて・・・。これで、Aqoursというグループは回復不可能な大ダメージを被ることになったな!!これで、Aqoursのイメージは地に堕ちた、もう復活することはないだろう。さらばだ、Aqours!!)

と、自分のまわりにいる、Aqoursのことを見限ろうとしている静真の生徒・保護者たちと一緒に、Aqoursの最後?を見届ける、そんな気持ちになっていた。と、同時に、

(でも、なんで、ステージの床にテープが残っていたんだ?あの赤い髪の生徒(ルビィ)には悪いが、これも運命だと思ってくれ)

と、ルビィが大きく転んだ原因を作ったあのテープがなぜステージの床に残っていたのか、不思議そうに思っていた。

 

 対して、こちらはステージ袖。そこにはAqoursの勇姿を見ようと、Aqoursのライブの前の演目に出演していた弓道部部員たち、そして、女子サッカー部部員たちがいた。もちろん、そのなかには、あの女子サッカー部の部長で木松悪斗の長女、旺夏の姿もあった。で、その旺夏、悪いパフォーマンスを見せる新生Aqoursの姿を見て、

(これが月生徒会長が言っていた、Aqours、の真の姿ですか。片腹痛いですね!!なんていう低レベルなんでしょうか!!これなら、私自ら潰す必要なんてないですね。勝手に自滅してますわね。さぁ、これで、月生徒会長率いる統合推進派も風前の灯火ですわ。そして、お父様の天下が、私の望みどおりの、なにをしても許される、そんな世の中になりますわ。ほほほ)

と、これからくるバラ色の未来を想像しつつ、月、そして、新生Aqoursが苦しむ姿を想像しながら笑っていた。

 が、そんななか、大きく派手に転ぶルビィの姿を見て、旺夏はあることを思う。

(でも、あんなステージの床に残っていたテープで大きく転ぶなんて、あの赤毛の生徒(ルビィ)、お笑いの道に進んだら、立派なボケになれるだろうに。でも、そんなの、この私、旺夏が許しませんよ!!だって、この旺夏、以上に幸せになるのは許しませんわよ!!この旺夏、この静真の、いや、沼津の、いや、日本を支配するために生まれてきたのですからね!!)

と、自分こそ絶対である、そんな認識を示してしまう旺夏、その自画自賛のなかで、旺夏、そのテープについて、あることを思ってしまう。

(でも、あの床に残っていたテープ、実は、この私、旺夏がそのテープを剥がすのを忘れていた・・・なんて、今になっていえるわけ、ないですわね・・・)

と、とある重要な真実を心のなかで暴露してしまう。そう、ルビィが大きく転ぶ、その原因となったステージの床に残っていたテープ、実は、女子サッカー部の演目の際、撤収する前に旺夏が剥がし忘れていたテープだった。そのテープ、旺夏が3つのシュートを披露する際、旺夏が立つ場所を示す目印として貼ったテープだった。旺夏はそこに立ち、3つのシュートを軽々と観客の目の前で見せた・・・のだが、本来なら、そのあとで旺夏が剥がさないといけなかったのが、その旺夏、剥がすのを忘れてしまったのだ。で、その後、弓道部の演目へと続くのだが、弓道部部員は全員、そんなに動いていないため、そのテープの被害は起きなかった。対して、弓道部の次の演目は新生Aqoursのライブ、で、今回のライブで披露した「夢で夜空を照らしたい」、この曲はほかのAqoursの曲と違い、そんなに動かない、のだが、それでも、ステージ全体を使ってパフォーマンスする。そのため、運悪く、ルビィがそのテープの被害を被ってしまったのだ。が、ルビィが受けた被害に対し、その原因を作った旺夏、はというと、

(まっ、これも運命ですわね。いや、この私、旺夏にたてついた、その天罰ですわ!!)

と、まったく悪げない、いや、むしろ、その被害をルビィが被ったのは当たり前である、そんな気持ちだった。

 

 そして、新生Aqoursの失敗を笑う少女が1人、観客席のなかにいた。

「あれがAqoursか。たわいもない。あんなのに父様も姉様も振り回されているなんて、なんて情けない!!」

と、自分の父、そして、姉、そして、Aqoursを侮辱する言葉を口にする少女。そして、その少女、さらに、

「あんな弱腰なAqours、私の力ですぐにでも潰せるものですわ!!」

と、新生Aqoursを潰す、なんてむごいことを平気に口にしてしまう。

 そして、この少女はある決意を口にしてしまう。

「この私が、Aqoursを、潰してみせますわ、それも、スクールアイドルとしてね!!」

この少女の決意が、のちに、Aqoursに、そして、SaintSonw の理亞たちに牙となって襲い掛かる・・・かもしれない、たぶん・・・。でも、今、一つだけ言えることがある。それは、この少女の決意が、のちに、月、Aqours、木松悪斗、旺夏、そして、理亞たちをも巻き込む、大騒動、いや、この物語、いや、この長い序章を含む、この壮大なる物語におけるターニングポイントの1つになるとは、このときの少女、いや、この物語の登場人物全員が、このとき、誰も気づくことはなかった、たぶん・・・。

 



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Moon Cradle 第2部 第8話

 とはいえ、新学年部活動報告会でのライブ、新生Aqoursのライブは、大失敗に終わった。その事実はどんなことがあっても覆ることはできなかった。そして、このライブの失敗により、月が独断専行で行った木松悪斗への反抗、そして、静真本校と浦の星分校の早期統合を図ろうとする計画も失敗に終わった。「静真の部活動は全国大会の常連といえる部活を数多く抱えるくらい実力がある」という力の論理に対し、「ラブライブ!という全国大会に優勝するくらいの実力」があるAqoursをそのままぶつける、そんな力の論理でもって対抗する、そんな月の考えだったが、力の論理に対して力の論理で対抗したとしても、もし、その力の論理がただの空論であったら、対抗しようにも対抗できずに潰されてしまうだけだった。それよりも、沼田が言った問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なものとは」、それを答えることを無視してまで押し切ろうとした月であったが、今回は、完全なる敗北、となってしまった。

 そんなわけで、月、報告会終了後・・・、

「本当にごめんなさい~」

と、生徒会室でナギなどの生徒会役員たちの目の前で泣いて謝っていた。部活動報告会終了後、今後のことについて生徒会内で話し合うため、月とナギなど生徒会一同は生徒会室に集まっていた。そして、始まってすぐに月がナギたち生徒会役員たちの目の前で自分が独断で誰とも相談せずに実施した愚作に対して、自分以外の生徒会役員全員に迷惑をかけてしまったことを泣いて謝っていたのだった。

 この月が泣いて謝っている姿に、ナギ、

「たしかに、私たちに何一つ相談せず、独断専行で行動した月生徒会長の行為は許されざることです・・・」

と、月に叱ると、月、

「本当にごめんない~」

と、再び泣いて謝る。これを見た、ナギ、

「でも、それは、月生徒会長が私たちのため、浦の星の生徒たちのためにやったこと。その心意気は、私たち生徒会役員一同、みんな、認めています。そして、それにおける一連の行動については誰も攻めませんよ」

と、勝手に独断専行した月の心意気、その行動については誰も攻めないことを月に告げる。このナギの言葉に、月、

「みんな、本当にありがとう!!」

と、ナギたちみんなに御礼を言った。

 が、それでも、生徒会役員の1人が、現状を冷静に分析して言った。

「それでも、現状からいえば、私たちにとってとても不利な状況です。月生徒会長が独断専行した作戦が失敗に終わっただけでなく、浦の星の生徒であるAqoursのライブが失敗に終わったことにより、浦の星の生徒たちに対するイメージは前よりももっと悪化しました」

これを聞いた月、

「本当にごめんなさい~」

と、またまた泣いて謝るが、冷静に現状を分析する役員は、

「そんな月生徒会長はさておき・・・」

と、言って、月のことはほっといてしまい、次へと話を続ける。

「で、この現状を木松悪斗が見逃すはずがありません。絶対に攻勢をかけてくるはずです。浦の星の生徒たちに対する不信感、それを保護者だけでなく生徒たちにまで広げてくるでしょう。しかも、保護者たちだけでなく、生徒たちまでこう考えるでしょう、「あの浦の星の部活のなかでも全国大会で優勝できる、そんな実力を持つ、といわれていたスクールアイドル部Aqoursの実力、それが、自分たちが想像していた、いや、求めているものよりもとても低い実力でしかない、それが、今回のライブで証明された、そして、実力があると見られていた部活が低レベルとすれば、浦の星の部活動も全体的に低レベル、実力もない、お遊び感覚で部活をするくらい部活動に対する士気が低い、そのことが証明されたのと同じである、よって、部活動に対する士気が低い浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すれば、間違いなく悪影響がでてしまう。だから、それを防ぐためにも分校の統合は絶対させない!!」、って」

 この冷静な分析に、月、

「うう」

と、顔を引きずってしまう。さらに、その役員の冷静な分析はさらに続く。

「それに対し、私たち生徒会が中心の統合推進派ですが、月生徒会長の作戦の失敗で、静真の生徒・保護者たちに対しては逆に浦の星の生徒たちに対する不信感を増大させる結果を招いてしまいました。なので、これ以上私たちが、「統合して浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加しても悪影響なんてでない」って言っても、誰も信じてくれないでしょうね。まるで、ハーメルンの笛吹きみたいに・・・」

そして、ついに、その役員の冷静な分析は佳境を迎える。

「そう考えたとき、これ以上私たちがどう動いても、今以上に不利になってしまうのが自明の理です。なので、表面上はなにもせずにこのまま時を待つのが得策だと思います」

この生徒会役員の冷静な分析に、月、

「でも、それだったら、木松悪斗が浦の星の生徒たちに対する不信感を静真の生徒たちのあいだに広がるのを手を加えてなにもせずに見ているだけにならないかな?」

と、その役員に反論する。すると、その役員はすぐに言った。

「たしかにその通りですね」

これには、月、

「それだけはやりたくない!!なにもせずに木松悪斗のやりたい放題にさせるなんて、絶対、嫌!!」

が、その役員はだだをこねる月を見て、

「なんか、そんな月生徒会長を見るなんて初めてです。とても面白いですね」

と、笑いながら言うと、月、

「笑うなんて、失礼です!!」

と、怒ってしまう。そんな怒った月の表情を見て、その役員、すぐに、

「それは失礼しました、月生徒会長」

と、謝ると、月、

「それならいいんだけど・・・」

と、少しふくれっ面になる。

 そんな月を見てか、その役員、すぐに、

「でも、表面上はなにもしません。しかし・・・」

と、少しためる。これには、月、

「しかし・・・」

と、ついつられて言うと、その役員はそのあとに言った。

「しかし、木松悪斗から見えないところ、裏側において、私たち生徒会は行動を開始します。木松悪斗が見ていない裏側にて、私たち生徒会が暗躍することで、来るべき日、木松悪斗に反抗できる日に備えて、その準備を行います!!」

これを聞いた、月、

「影で暗躍!!なんか、かっこいいかも!!」

と、目をキラキラさせながら言った。これを聞いた、ナギ、すぐに、月に対して非礼とも言えることを言った。

「で、月、生徒会長、影で暗躍するため、失礼で申し訳ございませんが・・・、私、ナギから命じます。月、生徒会長、あなたの生徒会長としての権限を、すべて剥奪、します!!」

これを聞いた、月、おもわず、

「え・・・」

と、目が点になってしまう。それを見た、ナギ、すぐにあることを宣言した。

「そして、これから先・・・、というか、当分のあいだ、この私、ナギ、が、月生徒会長に代わり、会長代理として、生徒会長業務を行います!!」

 このナギの宣言に、月、

「え・・・、僕、生徒会長を解任されたの?これって、ナギたちのクーデター・・・?」

と、これまで自分を信じてついてきてくれたナギたちから反逆されたと思ってしまい、すぐに、

「ナギのバカ~!!なんで僕に反逆するの~!!」

と、ナギの胸を叩く。これに対して、ナギ、すぐに釈明する。

「月生徒会長、いや、月さん、これは一時的な処置です。表向きは月生徒会長のままです。ですが、そのまま生徒会長であり続けたら、月さんの裏での行動に制約がかかってしまいます。そのため、生徒会内では生徒会長の任を解き、月さんの裏での行動に制約をなくして、自由に行動してもらいたい、と、思い、そうしました」

と、月の生徒会長職の任を解く理由を話す。これには、月、

「それを聞いていたら、この僕になにかをさせたい、そんな考えがみえてくるよ」

と、ナギの言葉に隠された真実を見抜く。これには、ナギ、

「正解!!やっぱり、月さん、静真一の才女ですね!!」

と、月を褒める。が、月、そのナギのお褒めの言葉を無視して話を進める。

「で、ナギが僕にやらせたいことって、何?」

と、ナギに尋ねる。これに、ナギ、月にあるお願いをする。

「月さん、お願いです、Aqoursを、あのときのAqoursに、昔の、元気よく踊っている、あの「ラブライブ!」決勝で優勝したときの、そんな、本当の姿をしたAqoursを取り戻してやってください!!」

これには、月、

「えっ、ぼ、僕が、昔のAqoursに、本来の姿のAqoursに戻す!!なんで?」

と、ナギに質問する。これに、ナギ、すぐに、

「私たち生徒会のなかで、Aqoursメンバーと接点を持っているのは、月さん、しかいません。そして、本来の、昔のAqoursの姿を取り戻したとき、きっと、今の現状、私たち生徒会、そして、浦の星の生徒たちが不利になっている、そんな現状を打破できる、そんなきっかけを作ってくれる、と、確信しているからです!!」

と、今日のライブの失敗で浦の星の生徒たちでなく、自分たち生徒会が不利となっている現状を作ってしまった、Aqours、そのAqoursを今でも信じているナギたち、その姿に、月、

「なんで、僕たち生徒会を不利に陥れてしまったAqours、そして、僕、をなんで、今でも信じているの?」

と、自分の疑問をナギにぶつける。

 すると、ナギははっきりと言った。

「それは、昔のAqoursに、本来のAqoursに戻れば、あの沼田のじっちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、それに答えることができるからです!!たとえ、今回のライブが成功していても、「それは全国大会で優勝するほどの実力を持つ、とても士気が高いAqoursのメンバーだけの話であり、ほかの浦の星の生徒たちは士気が低い」と見られては今と同じ状況が続くと思います。そして、もし、静真の部活動が不振に陥ったとき、それは「士気が低い浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したからだ」って、木松悪斗たちから言われてしまうのが自明の理です。で、そんな状況に陥ると、私たち、いや、静真において、浦の星の生徒たちを守る手立てがありません。それよりも、今回の失敗により心に深い傷を負ってしまったAqoursを、月さん自ら癒すとともに、本来のAqoursの姿に、元気に、一生懸命、パフォーマンスをする、本来のAqoursの姿に、月さんの手で戻してやってください!!そして、そのAqoursと一緒に、沼田のじっちゃんが言っていた問い、その答えを導いてやってください!!だって、沼田のじっちゃんが言っていたでしょ、「静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうか、誰も気づかずに実践している」って」

 これには、月、

「ナギ・・・」

と、少し感動する。と、ナギは月に対してあることを言った。

「そして、その沼田のじっちゃんからの問い、その答えを、私たち静真の生徒たちが知ったとき、絶対に静真はぜったいに変われる、と、思います!!そして、この分校問題なんて簡単に解決できると思います。だから、月さん、Aqoursと一緒に沼田のじっちゃんが言った問いの答えを絶対に見つけてください!!」

このナギの言葉に、月、

「ナギ・・・」

と、感動して涙を流しながらナギに抱きつく。これに、ナギ、

「月さん、あなたがAqoursと一緒に行動しているあいだは、静真のこと、生徒会のことは心配しないでくださいね。月さんがいないあいだ、この私、ナギが立派に生徒会長代理を、月さんの影武者役を立派に務めてあげますからね」

と、泣いている月の頭をなでなでしながら優しく言うと、月、すぐに、

「でも、それだと生徒会が・・・」

と、自分がいないあいだの生徒会のことを心配する。これには、ナギ、

「月さん、そんなに心配しないでください。これでも、このナギ、あの静真一の才女、才色兼備、文武両道と誉れ高い、月さんに認められてこれまで立派委に生徒会副会長を務め上げました。私にはその自負があります。だから、月さん、このナギを信じてください」

と、月の心配をなくさせたい、そんな気持ちで答えた。これに、月、

「うん、わかった!!ナギ、副会長、いや、ナギ、生徒会長代理、あなたに生徒会を任せます!!」

と、ナギをことを認めた。これに、ナギ、

「月さん、認めていただきありがとうございます」

と、月に御礼を言った。

 そのナギ、月に突然あるお願いをする。

「で、月さん、実は、ある決意を示してもらいたいのですが・・・」

これには、月、

「その決意って?」

と、ナギに尋ねる。すると、ナギ、あることを言う。

「それはですね・・・、(ごりょごりょ)・・・、もちろん、私、ナギをはじめ、生徒会役員一同、その覚悟のつもりです」

これには、月、

「でも、それって、自分の将来において不利に働いてしまうよ。僕はともかく、ナギたちまでその覚悟をみせるのはちょっと・・・」

と、ナギたち生徒会役員一同の心配をするも、ナギ、すぐに、

「それなら大丈夫ですよ。だって、月さんと一緒なら絶対になんでもやり遂げることができますからね!!」

と、月に絶対の信頼をしていることを言うと、月、

「そ、それはどうも・・・。でも、ナギたちもその覚悟を決めているなんて聞いたら、僕、ナギたちに「やめて」なんて言えないよ。わかったよ、僕もナギたちと一緒にその覚悟、決める!!そして、ナギたち、僕がいないあいだ、静真のことを任せるね!!」

と、笑顔で答えた。

 そして、月はナギたちに言った。

「じゃ、僕は今日のライブの失敗で深く傷ついている曜ちゃんたちAqoursをなぐさめてくるからね。あとのことは任せたよ!!」

その後、月は千歌たちAqoursのところに行くため、生徒会室をあとにした。

 その月がいなくなった生徒会室にはナギたち生徒会役員がまだ残っていた。そのなかで、ナギはあることを言った。

「さぁ、月生徒会長はいなくなりました!!ここからは私たちのターンです!!さあ、このナギ、一世一代の晴れ舞台、見せてあげましょう!!」

このナギの言葉のあと、生徒会長代理になったナギを筆頭に生徒会役員一同はある部屋へと向かった、これから起こる、ナギ、一世一代の晴れ舞台、それを見せるために・・・。

 

 ナギたち生徒会役員一同が目指した場所、それは・・・。そのナギたち、その部屋の扉を開いた瞬間、

「女子サッカー部と弓道部は予算アップでよろしいかな?」

と、部活関連の予算の可否について採決をとっている理事たちの姿があった。そう、ナギたちが向かった部屋、それは、静真の会議室、であった。ちょうど、その会議室で、2018年3月期の定例の通常理事会が行われていたのだった。今回は、前の臨時理事会、とは違い、毎月1回定期的に行われる通常の理事会であった。そして、この日の議題だが、静真の部活動に関する予算、それを静真の数多くある部活にどう振り分けるか、だった。静真の部活動に関する予算であるが、静真の部活の多くがインターハイが行われる夏でもって3年生が引退したりするので、それにあわせて、9月から来年の8月までの1年間を1つの期間として1年間の予算が作られている。とはいえ、静真の部活動、特にスポーツ系の部活においては普通の部の予算に加えて、木松悪斗からの多額の寄付金を原資にした部活動強化費も支給されていた。その部活動強化費だが、主に、最新のトレーニング機器の購入・維持管理費、優秀なコーチ・トレーナー陣の給与を含めた費用に使われて・・・というより、それだけに使われているといっても過言はなかった。そして、それ以外の・・・、部の地方遠征費用や合宿費用などの費用はその部のもとからの予算から捻出される。が、女子サッカー部みたいに、チーム強化のためによく地方遠征や合宿を行くと瞬く間に部の予算を使い切ってしまう。そのため、各部活の1年間の予算については事前にその年の3月期に行われる通常理事会にて部活動全体の予算のうちどの部活にどう分配するかを話し合い、各部の大まかな予算を決めることになっていた。その後、静真での生徒の活動のうち、部活動関連(の予算)を担当する部活動連合会、それ以外(この場合、(部活動全体の予算を含めた)生徒活動に関する全体的な予算)を担当する生徒会のあいだで各部の詳しい予算が決められるのである。

 で、今日行われた部活動報告会であるが、このあとに行われる3月期の通常理事会、そこで各部の大まかな予算が決定されるため、各部とも、そのまえに少しでも自分の部に多くの予算を獲得できるよう、大まかな予算配分を直接決める理事たちに対して猛烈にアピールするための場として出演していたりする。なので、部活動報告会、実は、陰ではより多くの予算配分を獲得するために、各部とも熾烈な競争を繰り広げていたのである。特に、木松悪斗の多額の寄付金を原資にしている(スポーツ関係の各部を強化するために使っている)部活動強化費、がもらえない、文化系の部活においてはそれが死活問題にもなっていた。

 で、ナギたち生徒会一同がその通常理事会が行われている会議室に入室したときには、その各部への予算配分の話し合いは終わりを告げようとしていた。あの報告会でとても高い注目度を集め、それに見合うだけの発表をした女子サッカー部と弓道部、その部の予算を倍増することを決めたところだった。むろん、過去1年間の実績もあるが、報告会で、あのAqoursを、徹底的に痛めつけた?それに対する木松悪斗からの報奨金、という趣もあった(むろん、理事全員を牛耳っている木松悪斗の強い働きかけもあったが・・・。また、名誉のために言うが、木松悪斗の娘でAqoursを意図的に苦しめようとした旺夏が部長を務める女子サッカー部とは違い、弓道部は意図的にAqoursを苦しめたわけではなく、ただ、自分たちの出来ることを発表しただけだった・・・)。

 そして、ナギたち生徒会役員一同の入室を見計らってか、理事の1人である木松悪斗はある議題を理事たちに持ち出した。それは・・・。

「と、ここで、私から提案です。それは、浦の星分校の件、です」

この言葉に、ナギ、

(ついに本題に入ったか・・・)

と、心の中でつぶやく。そうとも知らず、木松悪斗はある提案をする。

「さて、浦の星分校について、ですが、ただでさえ静真本校の経営が大変なのに、来月からは浦の星分校も面倒を見ないといけない。これだと、静真を経営している私たちの負担も大きくなってしまいます。それに、分校となる旧小学校の改装費用代もばかになりません。そこで、私から提案があります。浦の星分校にかかる費用、そのすべてを、浦の星の生徒とその保護者たちに負担させましょう!!」

この木松悪斗の提案に理事たち、

「そうだ、そうだ!!」「浦の星の生徒とその保護者たちに全額負担させるべきだ!!」

との声があがってくる。

とはいえ、実は、この木松悪斗の提案、自分の懐を暖めるためのものだった。実際には、浦の星分校にかかる費用のうち、その一部は浦の星の生徒の保護者が支払う授業料やその他の学費で賄うことになっていた。が、その分では賄えない費用(オーバー分)については、浦の星分校創設を提案した沼田、それと、浦の星の大スポンサーだった小原財閥が負担することになっていた。で、木松悪斗の提案だが、提案内容を見てみると、「沼田と小原財閥の負担分も浦の星の生徒とその保護者たちに負担させる=浦の星分校の費用全額を静真の生徒とその保護者たちが負担する」、そう捉えられることができるかもしれない。が、木松悪斗の考えはそうではなかった。浦の星分校、その沼田と小原財閥の負担分、それはそのまま沼田と小原財閥に負担させるつもりだった。では、浦の星の生徒とその保護者たちから「沼田と小原財閥の負担分」と称して集めたお金はどうするのか。それは、理事たちがもらう給与、それを増額する際の原資にしよう、そう、木松悪斗は考えていたのだ。理事たちの給与を上げること、それを裏で理事たちに対して確約さえすれば、理事たちも木松悪斗の提案に賛成してくれる、そう考えていた。それどころか、木松悪斗、裏でそのことが起こっているなんて知らない、そんな浦の星の生徒の保護者たちに、沼田と小原財閥の負担分も自分たちで負担しないといけない、そう思わせようともしていた。これにより、浦の星の生徒たちの保護者たちは小原財閥に対しての不満を溜め込むようになり、それが結果的に小原財閥に大ダメージを与えるきっかけになる!!そう、木松悪斗は狙っていたのだ。ちなみに、浦の星分校にかかる費用のうち、浦の星の生徒の保護者たちが負担する分では賄えない費用については沼田と小原財閥が負担することは、臨時理事会の次の日に浦の星分校の場所を記した地図が載っているメール(千歌たちがその分校に向かう際、曜が見ていたメール)と一緒に伝えられていた。そのため、浦の星の生徒の保護者たちはそのことを知っていたので木松悪斗はその妙案?を思いついたのである。

そんな木松悪斗、理事たちから好感を得ている、そう思ってしまい、調子に乗ってしまったのか、ある無理難題を言ってしまう。

「でも、よく考えたら、浦の星の生徒の保護者たち、あの潰れてしまった浦の星に通わすほどのお金しかなかったのかもしれませんね。だって、もう少しお金があれば、この静真、とても優秀な学校である、この静真に通わせることができたのですがね・・・。あっ、いいこと、考えつきました。そんな、お金がない浦の星の保護者たちが(浦の星分校にかかわる費用のうち)負担できない分を浦の星の生徒たちに負担させましょう。そうですねぇ、静真が公認する会社でバイトをしてもらいましょうかねぇ。授業の時間を大幅に削って、その分をバイトの時間にしましょう。もちろん、浦の星の生徒たちのバイト代は全額静真がもらいますがねぇ。ハハ」

この木松悪斗の考えだが、もちろんそれを実行したら法律違反になってしまうだろう。学生とは勉強するのが本分である。それなのに、その勉強するための授業の時間を大幅に削り、その分、木松悪斗の(「沼田と小原財閥の負担分」と称して集めたお金で自分を含めた理事たちの給与を増額させるための原資にしたい、その)ためにバイトに明け暮れさせるなんて、そんなどっからどうみても児童搾取になってしまう。それはまるで、授業なんてせず、そこに通う生徒たちに違法に働かせようとしていた、どこかの日本語学校と同じようなものである。が、ここは静真の帝王こと木松悪斗がすべてを牛耳っている?静真である。木松悪斗の言うことは絶対・・・なのである。

 が、そんな木松悪斗に対し、ナギが反論する。

「でも、それだと、あとで大変なこと、起きませんかねぇ?」

そう、ナギが指摘しようとしたことは前に述べた法律違反についてであった。その法律違反により静真に警察が踏み込まれたことにより静真そのものがなくなってしまう、そんな結果を迎えてしまうのでは、それをナギは心配していた。

 が、そんなナギの心配をよそに、木松悪斗はあることを言う。

「それがどうしたのっていうんだね?そんなの、誤魔化せばいい、って、話だぜ!!バイトをさせている理由については、「社会授業の一環で」、って、言えばいいだけのことさ!!そんなこと、静真にとって朝飯前ってことですぜ!!」

これには、ナギたち生徒会一同、ただただ、

「・・・」

と、唖然とするしかなかった。それ以上に木松悪斗の口は止まらなかった。

「あっ、そうだ、浦の星の生徒たちに特別な授業を、「反省」という名の授業を受けてもらおう!!これまで間違った選択をしてきた、その「反省」をしてもらう授業だ!!そうだなぁ、内容としては・・・、「なぜ、「浦の星の入学」という間違った選択をしてしまったのか」「なぜ、「この静真に反抗する」、という間違った行動をしてしまったのか」、いや、「なぜ、この「木松悪斗様に対して反抗する」という間違った選択をしてしまったのか」、とかね。これによって浦の星の生徒たちはこの社会に必要な従順な僕(しもべ)になることができるのだから、浦の星の生徒から見ても、とても役に立つこと、間違いなしだぞ!!」

この木松悪斗の発言、もう、小原財閥の逆恨みを通り越して、浦の星の生徒たちに対するイジメ、としかみえなくもなかった。浦の星の生徒たちの人権、人格すら踏みにじる、そんな風に見えなくもなかった。が、その木松悪斗の言動に、理事たちも、

「そうだ、そうだ!!」「その案でいこう!!」

と、木松悪斗の言動に賛成する。いや、賛同するしかなかった。だって、木松悪斗に逆らうこと、すなわち、静真の帝王である、木松悪斗、から、理事をクビ、いや、この沼津に住めなくなることを意味していた。なので、理事たちも仕方なく木松悪斗に賛同していた・・・が、それでも、理事たち、図に乗りすぎだった。

 この木松悪斗の言動、そして、それに賛同する理事たちを見たナギ、

(このままだと、静真がダメになってしまう。しかたがない。それなら、あれを使おう!!私、ナギをも含めた、生徒会役員みんなの思い、覚悟を、ここで繰り出そう!!)

と、ある決意を胸に行動を起こした。それは、ナギが、

バシッ

と、あるものを理事たちの席のまえに突き出すと、あることをナギが言った。

「このナギをはじめ、生徒会一同は、その、木松悪斗理事の提案に、反対、します!!」

 すると、木松悪斗、ナギに対し、

「ナギ生徒会副会長、お言葉ですが・・・、一生徒であるあなたには、この理事会での発言権はありません!!よって、いくら、私の提案に不満があったとしても、それを拒否する権利はありません。理事の多数決でのみ案件の可否が決まります。もっとも、月生徒会長、自分の最終兵器であったAqoursが、今日のライブで失敗したことにより、あまりに自信喪失に陥ってしまった、みたいですね。だから、月生徒会長、今では生徒会室の隅っこにひきこもってしまった、そのために、仕方なく、副会長である、ナギ君が出てきてしまった。それが、現状・・・、でしょかねぇ」

と、ここにいない月にも失礼なことを言う。これに、ナギ、

(なにが生徒会室の隅っこに引きこもっているですって~!!月さんはそんな弱腰じゃない!!今は、Aqoursと一緒に極秘任務をしているところなんだ!!私だけならともかく、月さんの悪口を言うなんて、絶対に許せない!!)

と、怒り心頭になる。が、

(とっ、ここで一呼吸、一呼吸。ここで落ち着かないと木松悪斗にのせられてしまう。ここは冷静に、冷静に・・・)

と、深呼吸して落ち着きを取り戻す。

 そして、

(よしっ!!月さん抜きで自分たちだけで考えた、必殺のあれを繰り出すか)

と、覚悟を決めると、木松悪斗に対してこう言い放つ!!

「木松悪斗理事、あなたの提案に対し、これを突きつけます!!」

と、先ほど理事たちの前に突きだしたものを再び持ってはもう一度、

バシッ

と、理事たちの前に再び投げつけた。この投げつけたもの、それに対し、理事の1人が、

「これはなんだね?」

と、ナギに尋ねる。すると、ナギは言った。

「これは、木松悪斗理事の提案に対する、私たち生徒会一同の、決意表明です!!」

このナギの言葉を聞いたのか、理事たちはナギが自分たちの前に投げつけたものを開く。すると・・・。

「な、なんだね、これは!!た、退学届じゃないか!?」

そう、退学届であった。その退学届について、ナギが説明する。

「私たち生徒会一同は、来月4月、新学期が始まる日までに浦の星の生徒たちに対しての、静真本校と浦の星分校の統合を含めた、処遇の改善を求めます。もし、それが叶わない場合、月生徒会長を含めた生徒会役員全員、静真を退学する覚悟でいます!!」

そう、ナギたちは自分たちの退学をかけて、静真本校と浦の星分校の統合を含めた、千歌たち浦の星の生徒たちの処遇の改善を求めたのである。ただでさえ、浦の星の生徒たちは、山の中の分校、それも、改装工事が終わるまで1つの教室で70~80人もの生徒が一緒に勉強する、そんな普通ではありえない悪い環境におかれているのだ。それに加え、先ほどの木松悪斗の法律違反すらしている提案まで通れば、もっと環境が悪化してしまう。それを防ぐため、自分たちの退学をかけてまで浦の星の生徒たちの処遇の改善を求めたのである。

 が、これに対し、木松悪斗はこう考えてしまう。

(ふふ、ナギ副会長がだした退学届、これは使えるな。まず、この退学届を受理しよう。そして、4月の新学期が始まる日までは、生徒会は浦の星の生徒たちの処遇改善に向けて一生懸命に行動するだろう。でも、生徒会率いる統合推進派は今回のAqoursのライブの失敗で完全に修復不可能な大ダメージを被り、圧倒的な不利になってしまった。こうなると、この不利な状況を覆す、そんな一発逆転な方法なんてあるわけがない)

と、ナギたち生徒会の現在の状況を分析した上で、木松悪斗はあることを考えつく。

(それならば、まず、今は生徒会役員全員の退学届を受理しよう。ただし、退学届に書かれている条件、浦の星の生徒たちの処遇改善は反故しよう。ナギ付加会長は退学届に書かれた期限、4月の新学期が始まる日までに静真本校と浦の星分校の統合を実現しようと思っているはず。でも、沼田がだした統合の条件、「浦の星の生徒が静真の部活動に参加したら悪影響がでてしまう」という静真の保護者たちが持つ(浦の星の生徒たちに対する)不信感を払拭する、それをたった1ヶ月で達成するのは困難。そう考えると、あの、私にとって目の上のたんこぶみたいな、月生徒会長率いる生徒会全員が退学するのは確実。もし、そうなるなら、今度新しくできる新生徒会は、私の娘、旺夏を頂点にした、私にとっての傀儡政権にしてやろう。こうなれば、生徒側も私にとって意のままに操ることができる!!よって、私の静真での実効支配はより完璧なものになる!!)

そして、最後に、木松悪斗、これも付け加えた。

(でもって、4月の新学期が始まる日まで、こちら(木松悪斗率いる分校推進派)はなにもしない、と、ナギ副会長は考えているけど、こちらはこちらで動きますよ!!浦の星の生徒たちに対する不信感、もっと広げますよ!!さらに、浦の星の生徒たちの処遇も悪化させますよ!!浦の星の生徒たちの自由や権利なんてなくて当然!!もっと悪化させて、浦の星の生徒たちやその保護者たちの不満は、ぜんぶ、小原財閥に向けさせますからね!!そうなれば、小原財閥は大ダメージを被りますからね!!私にとって、あの裏切り者、小原財閥を倒す絶好の機会、到来、です!!)

と、木松悪斗、ちゃっかり自分の手を汚さずに小原財閥に責任を擦り付けること、それにより、小原財閥に大ダメージを与えること、それも忘れていなかった。

 と、いうわけで、こんな皮算用を考えだした木松悪斗、すぐに、

「その退学届、私としても受理したいのですが、みなさん、どうでしょうか?」

と、ナギたちの退学届を受理する旨を示すと同時に理事みんなの意見を確認しようとすると、

「木松悪斗様が言うなら・・・」「私も・・・」

と、木松悪斗の言葉に賛成の意を示す。これを見た、木松悪斗、すぐに・・・。

「理事全員の賛成を得たので、退学届を受理・・・」

「ちょっと待った~!!」

 



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Moon Cradle 第2部 第9話

 と、いうわけで、こんな皮算用を考えだした木松悪斗、すぐに、

「その退学届、私としても受理したいのですが、みなさん、どうでしょうか?」

と、ナギたちの退学届を受理する旨を示すと同時に理事みんなの意見を確認しようとすると、

「木松悪斗様が言うなら・・・」「私も・・・」

と、木松悪斗の言葉に賛成の意を示す。これを見た、木松悪斗、すぐに・・・。

「理事全員の賛成を得たので、退学届を受理・・・」

「ちょっと待った~!!」

と、いきなり、とても大きな、いや、脅しの効いた声が会議室内に鳴り響く。これには、木松悪斗、おもわず、

「な、なにごとです!!」

と、びっくりしてしまい、まわりを見渡す。が、その大声の主を見つけることができず、それでも、

「その退学届、受理するのはちょっと待ってくれ!!」

と、その大きな声がどこからか聞こえてくる。この声に対し、木松悪斗、

「おい、どこにいる?出てこい!!」

と、その見えない声の主に対して警告をだす。すると、なんと、掃除道具を入れておくためのロッカーから、

「なにかようかね、木松悪斗君!!」

と、これまた大きな男が出てくる。この大男を見た木松悪斗、おもわず、

「ぬ、沼田殿・・・」

と、唖然となってしまう。そう、ナギたちの退学届の受理に待ったをかけたのは、そのロッカーに隠れていた、静真の影の神、木松悪斗の権力以上の権力を持つ、静真のPTA会長であり、静真の創立家の末裔、の、沼田、であった。って、よくあのロッカーに隠れることできたな、と、ナギも心のなかでツッコミたくなっているが・・・。

 それでも、沼田、そんなナギのツッコミを無視し、勝手に話し始める。

「この生徒会全員の退学届だが、私が預かろう!!将来有望な若者たちである現生徒会役員全員がもし退学すれば、将来約束されるであろうバラ色の人生の道を完全に閉ざすことになりかねん!!それは俺とて悲しく思えてしまう。だからこそ、この退学届は私の預かりにしよう」

これには、木松悪斗、すぐに、

「でも、それは、ナギ生徒会副会長以下生徒会役員全員の総意です!!その生徒たちの自主性を妨げるのは・・・」

と、沼田に反論する。が、沼田はすぐに木松悪斗に対し、

「じゃ、この退学届にこの項目を付け加えて・・・、はい、これならいいだろう!!」

と、言っては退学届にあることを書き加えて木松悪斗にその退学届を渡した。

 その退学届を見た木松悪斗、その沼田が付け加えた項目を見て絶句する。

「沼田殿・・・、これは・・・なんですか・・・?」

あの木松悪斗が絶句した、沼田が書き加えた項目とは・・・。

『加えて、私、沼田も、4月の新学期が始まる日までに浦の星の生徒たちの処遇の改善が見られない場合、PTA会長の職を辞する』

そう、沼田も浦の星の処遇の改善が見られない場合、静真のPTA会長の職を辞任することを書き加えたのだ。これは、すなわち、静真の影の神である沼田が静真から手を引くことを意味していた。なぜなら、PTA会長という職が静真と沼田をつなぐ唯一の綱だったからである。静真の創業者の末裔である沼田であるが、PTA会長職以外の静真関連の職には就いていなかった。これは、沼田が創立家の末裔である自分がしつこく静あの経営に口出すより、静真の理事たち、先生たち、保護者たち、そして、生徒たちの自主性を尊重しよう、という沼田の思いからだった。無論、今回はそれによって木松悪斗の暴走を止められなかった、という負の部分もあるのだが・・・。それはともかく、ただ、静真にとってときには沼津の有力者でもある沼田の力が必要なときがきたりする。たとえば、2008年ごろに起きたリーマンショックなどによる静真廃校の危機など。そのためにわざとPTA会長職に沼田を就かせているのである。が、その沼田が静真と沼田をつなぐ唯一のつなであるPTA会長職を辞める、そのことは、沼田と静真を結びつけるものがなくなることを意味する。その結びつきがなくなると、沼田は静真から手を引いてしまう。で、もし、木松悪斗でも対処できないことが起きたとしても沼田との結びつきがなくなっているから沼田にお願いして対処してもらうことができない、その結果、静真はすぐに廃校の危機が訪れてしまう。これについてはあの木松悪斗も自覚していた。そして、沼田もこのことをわかっていたので、わざとナギたちの退学届に「PTA会長職を辞する」と書き加えたのである。ある意味、沼田にとって、伝家の宝刀、ともいえた。

 で、もちろん、ほかの理事たちも沼田が書き加えた文言についてなんの意味か知っていたので、

「本当に受理していいのか・・・」「これは受理しない方が・・・」

と、大騒ぎになった。これを見た、木松悪斗、あることを決める。

「わかりました。ナギ生徒会副会長以下生徒会役員全員の退学届、沼田殿に預けます。この退学届について、および、浦の星の生徒たちの処遇など、浦の星分校関連については一時保留にしましょう」

これは木松悪斗にとって苦渋の決断だった。浦の星の生徒であるAqoursのライブが失敗に終わったため、これから木松悪斗率いる分校推進派のいきおいが増し、物事を優位に進めることまちがいなし、これにより、浦の星の生徒たちの処遇を今よりもっと、そして、簡単に、悪化させることができる、その寸前だった。が、それが沼田によって、その物事、浦の星分校や浦の星の生徒たちの処遇などを自分の有利な方向に進めることができなくなった。なら、沼田に反論すればいいのだが、反論しても自分以上の権力を持つ沼田に逆らうことは静真において死を意味したりする。また、もし退学届を沼田の書き加えた条項付きで受理した場合、場合によっては沼田が静真から手を引くことになり、もし、自分でも手に負えない状況に陥る場合、沼津の有力者である沼田の手を借りることすらできなくなる。それを自覚している、木松悪斗、「もし自分でも対処できないことが起きたときに沼田の力を借りることができない、それをしたのは自分のせい、このとき、自分がナギたちの退学届を受理したから」、と、一瞬考えてしまう。そして、木松悪斗、ナギたちの退学届を受理した際のメリットとデメリットを比較したとき、デメリットのほうが大きいと判断、苦渋の決断を下したのである。

 とはいえ、木松悪斗はちゃっかりこの言葉を付け加えた。

「ただし、新学期の始まる日までに、静真本校と浦の星分校の統合の条件、静真の保護者たちの声の改善が見られないとき、そのときは、浦の星分校、浦の星の生徒たちの処遇については再考しますので、その点はお忘れなく」

ちゃっかり条件を付け加えた木松悪斗、この条件は、新学期が始まる日までに保護者の声、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら悪影響が出る、だから、本校と分校の統合に反対する」、この声がなくならない場合、今回の通常理事会で木松悪斗が提案した案件、「浦の星の生徒たちの処遇の悪化」などを実施していく、ということだった。

 とはいえ、4月の新学期が始まる日まで浦の星の生徒たちの処遇悪化などは実施されないことになるため、ナギたちにとってはその日までの猶予を確保したことを意味していた。これには、ナギたち生徒会一同、

「や、やったー!!」

と、喜びあう。なんとか生き延びることができたからだった。

 そして、沼田はあることを言い出す。

「で、静真本校と浦の星分校の統合であるが、まだ、浦の星分校との統合に反対している保護者たちが多いため、統合については当分のあいだは無しじゃ!!」

その言葉に、ナギ、思わず、

「そ、そんな~」

と、がっかりする。それでも、沼田はがっかりするナギに対してあることを言った。

「でも、生徒会長である月君がなにやら動いているみたいだね。その月君がAqoursのメンバーと一緒に俺が出した問い、その答えを見つけだしたら、そのときは統合に一方前進、いや、大きく前進、するかもしれないよ」

これには、ナギ、

「はい、沼田のじっちゃんが言っていた問い、月生徒会長なら必ず解いてあげる、って、信じています!!」

と、元気よく答えた。

 と、ここで、木松悪斗があることを小声で言いだす。

「月生徒会長が動いている、って・・・。なら、その妨害に・・・」

が、これを聞いた、地獄耳の・・・沼田、すぐに木松悪斗に警告する。

「それと、木松悪斗理事、あなたが決めた期限、4月の新学期が始まる日、までのあいだ、月君をはじめとする生徒会、そして、浦の星の生徒たちの行動を妨害することを禁ずる。もちろん、間接的にもな。もし、妨害好意が発覚したときは、俺の権限でお前を・・・」

これを聞いた、木松悪斗、おもわず、

「はい、わかりました!!妨害しません!!」

と、月たち生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害しないことを約束した。もし、約束を破ったりしたら、自分以上の権限を持つ沼田になにをされるかわからないから、だった。

 こうして、今回も、沼田の鶴の一声により、波乱に満ちた通常理事会は、沼田の思い通りにことが進み、そして、ようやく終わりを迎えた。

 

 通常理事会終了後、木松悪斗は部活動保護者会室にいた。

「くそっ!!」

通常理事会ではあと一歩のところでナギたち生徒会の息の根を完全に止めるところまでいった、ものも、最後の最後で沼田により妨害された、だけでなく、今こそ好機、静真本校と浦の星分校の統合破綻、と、いうより、永久的に統合させない、そんなことができたたのに・・・、それができない、それどころか、小原財閥、浦の星、その生徒たちを追い詰める、そんな絶好のタイミング、なのに、4月の新学期が始まる日まで自分の野望を阻止するために動いている月たち生徒会の行動を妨害することすら禁止させられたのだ。これだと、4月の新学期が始まる日まで木松悪斗側で打てる手段は限られてしまった、ことになる。

 これには、木松悪斗、

(くそっ!!沼田のやつ、どっちの味方なんだ!!全開の2月末に行われた臨時理事会では、俺が望んでいた、静真と浦の星との統合の白紙撤回、は叶わなかったものの、分校という形で自分の考え(統合反対、白紙撤回)に近い施策を沼田は採用してくれた。が、今回の、今日の、通常理事会では、統合推進派の中核、生徒会の延命を図った。2月末の臨時理事会は私に少し有利なことをして、今回の通常理事会は生徒会に有利なことをした。はたして、沼田はどっちの味方なんだ!?こっちの味方なのか?それとも、生徒会の味方なのか?はっきり判らなければ、こちらとしてはより有効な対抗策なんて打てないじゃないか!!ああ、むしゃくしゃする!!)

と、完全に怒りモードだった。

 そんなときだった。

「木松悪斗様、どうなりましたか?」

と、短身でいてお腹がでっぱている、まるで、これぞ「悪人!!」、と、見える、そんな男が木松悪斗に近づいてくる。これには、木松悪斗、すぐに、

「ああ、裏美か、ちょっとな・・・」

と、その男こと裏美に返事をする。この裏美、静真の部活動に参加している生徒の保護者全員を束ねる、そして、木松悪斗が会長を務める、部活動保護者会の幹部・・・、というより、筆頭幹部である。と、同時に、木松悪斗の本業である投資、その投資グループの№2、だったりする。いつも、木松悪斗のうしろをちょこちょことついてくる、いわゆる、コバンザメ、みたいな男であり、木松悪斗の腰ぎんちゃく、とも言われていた。で、あるが、実は木松悪斗からすれば、自分の指示通りに動いてくれるし、木松悪斗が不在のとき、部活動保護者会、もしくは、木松悪斗主宰の投資グループをうまく取り仕切ることができる、とても有能な人物でもある。そのためか、木松悪斗が、保護者会、もしくは、投資グループ、どちらかに集中的に取り掛かっていたとしても、もう一方がおろそかになる、ことがなく、むしろ、逆にうまくまわしている、そのことができるのも、この裏道という男がいるからだった。そのため、木松悪斗は裏美に対して絶対なる信頼を寄せていた、とても有能である、自分に従順、かつ、裏切ることがないから。

 で、その裏美、木松悪斗の返事に、すぐに、

「まさか、あの沼田に一杯食わされたのですか?」

と、木松悪斗に尋ねると、木松悪斗は、

「ああ、そうだ!!」

と、簡単に認めた。これには、裏美、

「と、いうことは、こちら(分校推進派)に有利な状況であっても、なにもすることができない、のですか?」

と、木松悪斗に再び尋ねる。すると、木松悪斗、すぐに、

「まぁ、それに近いかもな。4月の新学期が始まる日まで、浦の星の生徒たちの処遇を今以上に悪化させる施策を立案、および、実施することを禁止させられた」

と、答えると、裏美、すぐに、

「それはなんと!!あと、静真本校と浦の星分校の統合は・・・?」

と、木松悪斗に尋ねると、木松悪斗、

「そちらについては当分のあいだ、延期になった。分校状態はまだまだ続く・・・」

と、ただたんに答えると、裏美、すぐに、

「それはよかったではありませんか!!」

と、喜びながら答える。

 が、木松悪斗はすぐに怒り顔になると思わず、

「よくない!!生徒会のやつらが退学届をちらつかせて、統合を含む、浦の星の生徒たちの処遇の改善を求めたのだぞ!!私は、その退学届を受諾するが、処遇の改善については反故するつもりだったのだぞ!!それを、沼田のやつ、阻止したのだぞ!!そして、沼田の出した統合の条件、というものを満たすために、月生徒会長が浦で動いている、そんな状況なのに、その、統合条件を満たすための、月生徒会長を含めた、生徒会の行動、それを妨害してはいけない、とも言われたのだぞ!!」

と、怒りながら言うと、裏美、すぐに、

「でも、それも、反故、すればいいのでは・・・」

と、簡単に答えてしまう。これには、木松悪斗、すぐに、

「バッカモーン!!」

と、たまたま置いてあった灰皿(学校内禁煙のため、誰もタバコを吸わないのだが、このとき、たまたま・・・)を裏美に投げる。もちろん、裏美の頭に、

ポッカーン

と、約束どおりに当たってしまう。これには、裏美、

「木松悪斗様、ごめんなさ~い!!」

と、木松悪斗に謝ってしまう。木松悪斗、すぐに冷静になると、

「裏美よ、沼田の恐ろしさを知らなすぎる!!沼田の権力さえ使えばこの私すら消すことができる・・・」

と、裏美に、木松悪斗が沼田に逆らえないことを教える。これには、裏美、

「た、たしかに・・・。沼田の権力はこの静真だけでなく、この沼津、いや、静岡、日本にまで及びますからね・・・」

と、沼田のとても強い権力について再確認する。

 そして、木松悪斗は裏美にある指示を与える。

「裏美よ、私が命ずる、これまで通り、静真の保護者、および、生徒たちに、私の考え、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加すると悪影響が必ずでる」、を広めよ!!今は、私として、これしかとれる手段がない。別に生徒会の行動を妨害しているわけじゃないからな。それに、沼田のだした統合の条件、私の考えを信じていて統合に反対している保護者たちの声、それが、統合賛成へと傾いてしまう、それを阻止するにはこの方法が一番効果的だ!!」

これには、裏美、

「はい、わかりました!!申した通りにします!!」

と、返事をした。

 その後、裏美は保護者会室を退出すると、木松悪斗、

(たとえ、生徒会が、月生徒会長が、静真本校と浦の星分校の統合実現に向けた行動をとっても、今の、統合反対、分校継続、が優勢の状況のなかでは、一発逆転となるような方法なんてない。統合反対、分校推進の流れはずっと続く。そして、約束の日、4月の新学期が始まる日まで待てば、あとは、この私、木松悪斗のやりたい放題だ!!だから、焦ることなんてない、機が熟するのを待てばいいのだからな!!)

と、自分に有利である、今の状況、それがずっと続く、と信じて、微笑んでいた。

 一方、保護者会室を退出した、裏美、こんなことを考えていた。

(木松悪斗様はあの沼田にビビリすぎている。「窮鼠猫をかむ」ってことわざがある。月生徒会長をはじめとする生徒会役員たち、たとえ不利な状況であっても、なにか仕掛けてくるはずだ!!月生徒会長に限らず、生徒会役員1人であっても、とんでもない一手を繰り出す、かもしれない。それは、静真においても、投資の世界においてもだ!!それを少しでも阻止しなければ大変なことになる。仕方がない、私の部下の1人に月生徒会長を見張らせよう。そして、その部下からの情報で、この私、裏美が、月生徒会長たちの行動を妨害しよう)

そう考えながら、学校の長い廊下を歩いていった。

 

 



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Moon Cradle 第2部 第10話

 一方、ナギたち生徒会一同も生徒会室に戻り、一息ついていた。

「ああ、緊張してしまいました。理事たち全員の前だといつも緊張してしまいますね」

と、生徒会役員の1人が言うと、別の1人からも、

「そうですねぇ。それに、今回は突然変なところから沼田のじっちゃんが出てきましたからね、もっと緊張してしまいました。今でも、心臓、バクバク、していますからね・・・」

と、いまだに緊張し続けているのか、まだ激しく動いている自分の心臓を確かめるかのように自分の手を胸に当てて感じながら言うと、また、別の1人からも、

「普通の生徒たちと違って、これまで数多くの人たちを前に立つ、緊張を強いられる場面を数多くこなしてきた私たち、で、あっても、理事たち10人+沼田のじっちゃんの前ではいつも緊張しすぎてしまいます。そういう意味でも、いつも緊張せず、常に平然とした態度で理事たち10人全員+沼田のじっちゃんとやりあうことができる、月生徒会長、とても凄いと思います」

と、今、ここにいない月のことを褒めていた。

 そんないまだに緊張が解けない生徒会役員たちに対して、ナギから一言。

「お疲れ様!!今回はみんなのお陰で月生徒会長がいなくても、あの、木松悪斗とやりあうことができました。本当にありがとうね!!」

このナギからの御礼に、生徒会役員たちからは、

「ぜんぜん御礼なんてしなくてもいいですよ」

「そうですよ。これは私たちが決めたことですからね」

と、そこまでかしこまらなくてもいいことをナギに対して言うが、その1人からはというと・・・、

「そこまで気にしていませんよ、ナギ副会長・・・、あっ・・・」

と、なにか間の悪い言い方になってしまう。これには、ナギ、おもわず、

「今の私はナギ副会長・・・じゃないよ!!ナギ、生徒会長代理、だからね!!」

と、訂正をその役員に促すと、その役員はすぐに、

「そうでした、そうでした。今は、ナギ、生徒会長代理、でしたね、ぺろぺろ」

と、舌を出しながら茶目っ気をだしながら言うと、そこにいる生徒会役員みんなとも、

ハハハ

と、大笑いになってしまった。

 そんな笑顔に満ちた雰囲気のなか、ナギは生徒会役員たちに対し、

「で、今回なんだけど、「薄氷の勝利」ってことかな。月生徒会長のAqoursをも利用した作戦は失敗に終わり、静真の生徒・保護者たちが持つ、浦の星の生徒たちに対する不信感はより強いものになってしまった。そして、これに乗じて、木松悪斗は暴走を開始しようとしていた。ある意味、木松悪斗のやりたい放題になるとこだったわけ。でも、私たちの将来すら賭けた、木松悪斗との勝負、結局、静真本校と浦の星分校の統合はできなかったけど、それでお、私たちにとってとても不利な状況のなかで、木松悪斗の暴走を未然に防ぐこともできたし、来月(4月)の新学期が始まる日までの限定だけど、私たちにこの不利な状況をひっくり返す、そんなチャンスを得られる時間をゲットできたわけ、木松悪斗からの妨害を気にせずにね!!このチャンスだけど、もしかすると、そのまま統合へと結びつけることができるかもしれない。そう考えると、今回の通常理事会だけど、本当に首の皮一枚つながった私たちに対して、木松悪斗からすれば絶好の機会を逃したことになるね。だからこそ、私たちにとって、「薄氷の勝利」だと思えるんだよね、私からすればね」

と、自分の考えを言った。が、そのとき、ナギはこうも考えていた。

(でも、もしかすると、沼田のじっちゃんがいなかったら、私たち、木松悪斗の暴走を止めることができないばかりか、なにもせずに退学になってしまい、本当に、将来を棒に振ることだってありえたかもしれない。そう考えると、沼田のじっちゃんのお陰かもしれないね、圧倒的な不利な状況のなかで、「薄氷の勝利」を得ることができたのは・・・)

このナギの考え、あながち間違いではなかった。月による、Aqoursを使った、静真の保護者たちが持つ、浦の星の生徒たちに対する不信感、そのものを変える作戦は失敗に終わり、逆に、静真の保護者たちばかりか静真の生徒たちにもその不信感を広げてしまう結果となった。これは、この不信感を払拭することで静真本校と浦の星分校の統合を狙う統合推進派の中核たる、月たち生徒会にとって、より不利な状況に陥ってしまったことと、月たち生徒会とは逆の、その不信感を盾に分校状態を続けることで、浦の星とその大スポンサーだった小原財閥に対しダメージを与えたい木松悪斗にとってより有利な状況となってしまった。この自分の有利な状況の中、木松悪斗は自分の思い通りに、より浦の星と小原財閥に大きなダメージを与えたいがゆえに、浦の星の生徒たちの処遇をより悪化させようとしていた、いや、木松悪斗の暴走状態を引き起こしてしまう、それをわかっていた、ナギ、それを未然に防ぐため、月を含めた自分たち生徒会メンバー全員の、これから先の輝かしい未来、自分たちの将来、という、学生にとってとても大切なものまで賭けてまで出した退学届を出した。が、場数の差、経験の差は、月を含めた生徒会一同が束になっても木松悪斗に勝てない、のである。なので、木松悪斗にとって、ナギたち生徒会の行動はすでに読んでいたのかもしれない。実際、木松悪斗はこのナギたち生徒会一同の退学届を受理してナギたちの願いを聞き入れた・・・ふりをし、逆に、浦の星の生徒たちの処遇を今以上に悪化させようとしていた。で、これに対して、ナギたち生徒会が反論しても、ナギたちが出した退学届をもってナギたち生徒会一同を退学させるつもりだった。その後は、自分の娘で自分のことを崇拝している旺夏を頂点とした、新生生徒会、いや、自分にとっての傀儡政権を作り、静真の実効支配を強めるつもりだった。ちなみに、木松悪斗、ナギたち生徒会一同の将来なんてこれっぽちも気にしていなかった。いや、むしろ、自分にとって好都合だった。なぜなら、ナギたち生徒会役員全員、静真一の才女とも言われた月に選ばれたこともあり、月を含めて、生徒会役員全員ともにかなり優秀であり、将来、自分にとって天敵になると考えられていた、木松悪斗に。でも、一度でも出世コースを、道を外れてしまうと、外国の場合は復活のチャンスがあるが、日本だとそれがネックとなり、再び立ち上がるのが難しい、いや、それ自体が不可能になってしまう。木松悪斗、そのことをよくご存知だった。というより、木松悪斗、それが、勝利することにこだわりを持つ理由の1つかもしれない。

 まっ、それについては別にして、通常理事会においては、このまま行けば、木松悪斗の完全勝利、ナギたち生徒会一同は全員退学、木松悪斗に反抗する勢力は消滅する、結果、木松悪斗の静真での実効支配はより強固になり、木松悪斗はやりたい放題、浦の星の生徒たちは地獄の日々を卒業まで、いや、一生、暮らしていく、ことになってしまっていた。

 が、沼田の突然の(というか、掃除道具をいれておくロッカーから出てきたので、ある意味、変態の)登場により、木松悪斗、圧倒的有利な状況は一変する。沼田は、ナギたち生徒会一同の、自分たちの大事なものを賭けてまで木松悪斗の暴走を防ごうとする決意を組してか、期間限定とはいえ、木松悪斗の暴走を禁止すること、そして、その期限内に、静真の生徒・保護者たちが持つ、浦の星の生徒たちに対する不信感を払拭すれば、統合の道が開けるかもしれない、と、それらに対する生徒会の行動、それに対する木松悪斗からの妨害を禁じたのである。なので、沼田がその場に現れたこそ、自分たち生徒会は、薄氷だが、勝利を得ることができた。ナギはそのように考えていた。

 そんなナギ、すぐに生徒会役員全員に対し、あることを言った。

「とはいえ、私たち生徒会としては、今日から4月の新学期が始まる日までのあいだ、この不利的状況を覆す、そのための時間を得たわけだが、私たちとしても、この期間に自分たちにできることをすることにしよう!!」

これに、生徒会役員の1人からある意見がでる。

「でも、この不利的状況を覆すことができるのは月生徒会長とAqoursしかいないのでは・・・」

これについて、ナギはすぐに答えた。

「たしかに、この不利的状況を覆す、それ以上の力を持つのは、月生徒会長、それに、Aqours、しかいないかもしれない。でも、そんな力を持たない私たちでも、月生徒会長とAqours、そのお手伝いをすることはできるよ」

そのナギの言葉に、生徒会役員たちからは、

「たしかにそうかも」

「月生徒会長たちのお手伝いなら、力を持たない私たちでもできるよ!!」

と、前向きな意見がでてくる。が、ある役員からはある疑問がでてくる。

「でも、具体的になにをすればいいのでしょうか?時と場合によっては、私たちの力だけではできないこともありますが・・・」

これには、ナギ、すぐに答える。

「実はね、もう考えているんだ。それはね・・・(ごりょごりょ)」

と、生徒会役員全員を集めて小声でナギが月とAqoursの役に立つために考えた施策を伝える。これを聞いた生徒会役員たちからは、

「それはいいかも」

「これならいけます!!絶対成功しますよ!!」

と、絶賛の嵐に。が、ここでも、先ほど、ナギの考えに疑問を呈した生徒会役員の1人がまたナギに対し疑問を放つ。

「でも、これって、私たちがいまだかつて経験したことがない大掛かりなものになりますよ。たしかに、私たちは体育祭や文化祭でその経験はあるかもしれません。が、ナギ生徒会長代理が考えていることはそれ以上の規模になります。それに、Aqoursみたいなアイドルの・・・については、会場設営を含めて、そのノウハウがありません。体育祭や文化祭は昔の生徒会の先輩たちから受け継がれたノウハウがありましたが、Aqours関連だとまた違ったノウハウが必要では・・・」

が、これについても、ナギはすぐに答えた。

「たしかに、私たちだけだとね、それは無理かも。でも、私たちだけでやる、って、言っていないでしょ!!あの人たちの力を借りれば、きっとうまくいくよ!!」

このナギの言葉に、生徒会役員一同、すぐに、

「あの人たちの力?あの人たちって誰ですか?」

と、ナギに詰め寄る。すると、ナギ、またも、役員たちの耳を集め、

「それはね・・・」

と、その人たちの名前を言う。すると、役員たちからは、

「それは力強い見方だ!!」

「この人たちなら、静真の保護者たちが持つ不信感を一気に払拭できるいい機会になります!!」

と、喜びの表情をみせる。これを見ていたナギ、すぐに採決をとる。

「では、私たちは月生徒会長とAqoursのために、その手伝いとなるべきことをします!!みんな、それでいいかな?」

このナギの言葉に、生徒会役員全員、

「いいとも~!!」

と、大きな声で賛成の返事をする。これを聞いたナギ、

「それでは、私たち生徒会はこれから、月生徒会長とAqoursのバックアップ任務に就きます!!」

と、声高々に月とAqoursのための行動を行うことを宣言した。

 そして、このあと、ナギは生徒会役員全員にこう告げた。

「じゃ、今日の反省会はここまで!!通常理事会の結果についてはあとで月生徒会長に伝えておくからね。それじゃ、また、明日ね!!」

 この、ナギが、通常理事会後の生徒会反省会?の終了を告げると、生徒会役員たちは帰宅の途についた。その後、ナギはただ1人生徒会室に残っていた。そして、沈み行く夕日を見てあることを考えていた。

(さて、月生徒会長にはすぐにでも通常理事会の結果を、静真本校と浦の星分校との統合は認められなかった、当分のあいだ延期になった、それだけ伝えよう。あと、私の大事な友達、むっちゃんにも、このことを伝えよう。でも、むっちゃんに伝えるのはこれだけじゃないんだな。私たち、月生徒会長を除いた、生徒会役員全員が仕掛ける、月生徒会長とAqoursのための大掛かりなお手伝い、いや、一大プロジェクト、それに参加してほしいって、お願いしよう。だって、むっちゃんたちこそ、この一大プロジェクトの中核になるのだからね!!)

こう考えたナギ、すぐに月にメールする。ただし、内容は、ただ、「浦の星分校との統合は当分のあいだ、延期になる」と・・・。で、そのメールを月に送ると、ナギ、すぐに大親友のむつに電話をかける。すると、すぐに、

「あっ、ナギちゃん、こんにちは。どうしたの?」

と、ナギのスマホからむつの言葉が聞こえてくる。これに、ナギ、すぐに、

「あっ、むっちゃん、実はね・・・」

と、今回の通常理事会のことを伝える。すると、むつ、いきなり、

「えっ、ナギちゃんたち、退学するつもりなの!!それはやっちゃダメだよ!!」

と、むつ、ナギに対してきついことを言う。これには、ナギ、すぐに、

「今はしないよ!!でも、私、決めたの!!これから先、月生徒会長とAqoursは私たちが求めるものを見つけてくれる、って。そして、それを、静真のみんなにも伝えるためにもね、こんなこと、したいの!!それはね・・・」

と、むつに自分たち生徒会役員全員(月を除く)が行おうとしている、一大プロジェクトの内容を伝える。これに、むつ、

「それ、いいね!!でも、月ちゃんって子なしで、ナギたち、その一大プロジェクト、できるの?」

と、ナギに尋ねる。これに、ナギ、元気よく、

「たしかに、私たち生徒会だけなら難しいかもね。でも、むっちゃんたちが、その一大プロジェクトに参加してくれたら、きっと、いや、絶対に、成功するよ!!」

と、元気よく言うと、むつから、

「私たちが参加・・・、えっ、それって、とてもいい考えだね!!だって、私たち、これまで、浦の星のこと、全部、千歌たちAqoursにまかせっきりだったもんね。それを、これからは、私たちもそれに参加できる、って、とても嬉しいこと、楽しいこと、だもんね!!」

と、元気のいい返事をする。これに、ナギ、

「じゃ、むっちゃんたちも私たちの一大プロジェクトに参加、で、いいね?」

と、もう一度むつに尋ねる。すると、むつ、

「うん、いいとも!!」

と、元気よく答えた。

 と、ついでに、ナギ、むつにあるお願いをする。

「でね、この一大プロジェクトについてはまだ月生徒会長とAqoursには内緒にしておいてね。だって、この一大プロジェクトを月徒会長とAqoursに言ってしまったら、月生徒会長にAqoursのみなさんに余計なプレッシャーを与えることになるからね」

「うん、わかった!!この、むつの演技力、見ていてくださいね!!」

と、むつ、ナギのお願いを了承してから電話を切った。

 そのむつの電話のあと、ナギは夕日を見てあることを思っていた。

(私たちがやろうとしている一大プロジェクト、これにも弱点がある。Aqoursが今日見せた、不安と心配という深き海、沼に沈んでしまっている、そんな不安定すぎるものではなく、あの、「ラブライブ!」決勝でみせた、楽しくて、それでいて、華麗に踊っている、本来のAqoursの姿に戻っていなければ、この一大プロジェクトをやる意味がなくなってしまう。それもこれもAqours次第。これこそがこの一大プロジェクトの一番の弱点。でも、月生徒会長なら必ずやってくれるはず!!きっと、Aqoursを、今日みたいなAqours、ではなく、ラブライブ!決勝でみせた、本来のAqours、へと復活させてくれるはず!!そして、沼田の十ちゃんが言っていた問い、「部活とはなにか」「部活をする上で大事なこととは」、その答えをきっと見つけてくれるはず!!)

このナギの想い、月に対する絶対なる信頼、月は果たしてそれに応えることができるのだろうか・・・。

 

 そんなナギが夕日に向かって自分の想いを語っているころ、PTA会室では、沼田がたばこ・・・は吸わないので、そのかわりに大好物のシュガーチョコを食べながら物思いにふけっていた。

「さて、今回、月生徒会長は私がだした問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、この答えを探すどころか、Aqoursという浦の星の部活のなかでは唯一全国大会で優勝した実力がある部活の力を借りて木松悪斗に戦いを挑んだ。力には力でもって制する、そんな単純明快な考えで戦いに臨んでしまった。が、月生徒会長はあることを忘れていた。たしかに、全国大会で優勝したときには高い実力を有していても、それがずっと続くわけではない。高校の部活というは常に実力は変動するものだ。特に、最上学年である3年生が引退する、その前後においてではな」

そう、高校の部活において、実力は常に一定ではない。常に実力は変動してしまう。たった3年間という短い選手生命のなかで、選手たちはその実力を高めあうのだが、その決められた時間を過ぎると、とても実力のある選手であっても、部活については引退を余儀なくされ、ただの高校生の戻ってしまう。そう考えた場合、特にスポーツ系部活の多くが夏に行われるインターハイなどの大会をもって3年生が引退してしまうものである。そのため、(1・2年生が主力のチームならともかく、)3年生が主力のチームだと、夏の大会をもって3年生が引退し、控えだった1・2年生中心のチームになってしまう。それにより、3年生引退前、かなりの実力があったとしても、主力だった3年生の引退により、チームの、部活の、実力が下がってしまうことが多い。なので、インターハイや夏の高校野球において連覇を果たす高校が少ないのはそのためである。で、このことが、今回のAqoursにも起きてしまった、そう、沼田は考えていた。1・2年生しかいない新生Aqours、そのため、あの、「ラブライブ!」という全国大会で優勝したときの、ダイヤたち3年生がいた、本来のAqoursの実力、それよりもかなり下がってしまったのだ。いや、それ以上に、これまでダイヤたち3年生がいた、本来のAqoursと違い、その3年生がいない、そのためか、不安と心配という深き青い海、沼に深きところに沈んでしまった、そのために、本来の実力をだすことができなかったのである、と、沼田は考えていた。

 そして、沼田は月のことを思い、あることを言った。

「でも、今回、月君は自分の身をもって、力は力でもって対抗することのおろかさを知った。そして、その月君によってもたらされた圧倒的不利の状況のなか、ナギ副会・・・、ナギ、生徒会長代理たちは生徒会みんなの力で木松悪斗の暴走を食い止めてくれた。これで、月君は迷うことはないだろう。そして、月君はAqoursのみんなと一緒に、私の問いの答えを見つけてくれるだろう。もちろん、Aqoursとしても、本来のAqoursの、いや、自分たちだけの新しいAqoursを見つけてくれるはずだ!!」

この沼田の思い、からか、ある言葉をもって、自分の想いについてこう締めた。

「少年少女たちよ、大志を抱け!!月君よ、Aqoursのみんなよ、今、この時間は、非常に短い!!高校時代という、たった3年間という、とても短い時間を、必死になって生きていってくれ!!しかし、必死に生きたこと、それが、これからの人生、大切な宝物になっていくのだぞ!!そこで得た想いで、必死になって一緒に生きてきた者同士、仲間たちの想い、そして、そのキズナ、こそ、自分にとって、とても大切な宝物になるのじゃ!!そして、それは決して消えることはない!!いや、ずっと、自分の心の中で輝き続けてくれるのじゃ!!だからこそ、月君、Aqoursのみんな、そして、ナギ君たち生徒会のみんな、今を、必死になって生きてきてくれ!!頑張ってくれ!!」

 

(やっぱダメだったか~。僕のせいで浦の星の生徒たちに対する不信感を増大させてしまう、前よりも不利な状況に陥ってしまったもんね。それでも、分校方式が続くだけで済んで本当によかったんじゃないかな。もっと悪い状態になってもおかしくなかった、そのなかで、ナギたちの強い働きかけで、それだけで済んだもんね。ナギ、それに、生徒会のみんな、本当にありがとうね!!)

と、月はナギからのメールで通常理事会の結果を知り、そう考えていた。自分の独断専行ともいえる計画、浦の星の生徒であるAqoursをも巻き込む計画、だったのだが、この計画は失敗に終わり、月にとって、生徒会にとって、そして、浦の星の生徒たちにとって、より不利な状況を作ってしまった。結局、そのあとの通常理事会において、ナギたちの働きにより、その被害、というよりも、木松悪斗の暴走を食い止めたことは、プラス材料になるも、全体的にはマイナスが大きかった。

 その月、自分のスマホをポケットにしまうと、千歌たちAqoursのいる、いつもの今川焼き屋に行こうとする。が、その今川焼き屋に近づくと、そこには、ライブの失敗で落ち込んでしまっている千歌たちAqoursのメンバーの姿があった。

 そのなかで、

「気が緩んでいたってわけじゃいと思うけど・・・」(曜)

「なんか落ち着かないずら、6人だと・・・」(花丸)

と、今日のライブの失敗について、自分たちの思いを口にするメンバーたち。だが、そのあと、

「お姉ちゃん・・・」

と、つい、姉ダイヤのことを思い出したのか、ルビィ、その言葉を口走ってしまう。

 が、このルビィの言葉に、月、思わず、

(えっ、ルビィちゃん、お姉ちゃんのダイヤさんのことを思い出してしまったのかな?)

と、一瞬、ルビィのことについて考えてしまう。そのためか、

「ルビィちゃん・・・

と、月、ルビィの名前をつぶやいてしまう。そして、このとき、月はあることを考えてしまう。

(ルビィちゃんには、たしか、ダイヤさんというお姉さんがいたはず。そして、ルビィちゃん、姉ダイヤさんと、Aqoursとして一緒に活動していたのよね。そのルビィちゃんの姉のダイヤさん、今、この場にはいない。でも、なんで、ダイヤさん、ここにいないの?姉のダイヤさんもルビィちゃんと同じAqoursのメンバーでしょ!!なのに、なんでいないの!?それっておかしいでしょ!!)

この月の考えであるが、この考えについて、月、ある疑問がでてくる。

(でも、姉のダイヤさんはこの場にはいない。いや、ダイヤさん、だけじゃない!!果南ちゃんや鞠莉ちゃんすらいない。いったいどうして?どうしていないの?どうして・・・)

が、月、すぐに、今、この場にいないAqoursメンバー3人について、ある共通項を見つける。

(ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん・・・、あっ、たしか、3人ともある共通項があった!!それは、3人とも、3年生・・・、で、今は2018年の3月・・・、あっ!!)

そう、月は、今、この場にいないAqoursメンバー3人の共通項をもとに、なぜ、その3人がいないのか、その理由を知る、そして、ある思いにたどり着く。

(だから、あの3人が、今、この場にいないんだ!!そして、曜ちゃんたちがライブ直前に言っていた、「新生Aqoursにとって初めてのライブ」って言っていた意味も。もしかして、3年生がいないから不安、心配が・・・)

 その不安、心配の言葉を、月、思い出した、その瞬間、

(「月ちゃん、月ちゃん!!」

と、ある少女が月を呼びかける声が、月の頭の中でフラッシュバックする。そして、

(「でもね、月ちゃん、私にとって、月ちゃんは、いつまでも、ず~と、永遠に、大切な友達なんだよ!!」)

(「だからね、別れはね、すべてが終わる、ゼロに、もとに戻る、なにもかもなくなる、って、わけじゃないんだよ!!」)

と、月の頭の中に突然あらわれた少女、その少女から発せれれた言葉、月の心の中に強く突き刺さる。これに、月、

(あれっ、僕の心の中にある、忘れかけていた、それでいて、とても大切なもの、それを思い起こさせる、そんな衝動が、僕の中で動き始めている・・・)

と、思うようになる。その強い衝動に、月、あることを決意した。

(この衝動、もしかすると、今のAqoursに必要なのかもしれない。その意味でも、僕が絶対に、このAqoursを、本来のAqours、いや、本当の実力のある新しいAqoursに、生まれ変わらせてみせる!!)

 

 一方、千歌たち新生Aqoursの6人も、今回のライブの失敗を受けて、今まで以上に静真の生徒・保護者たちに浦の星の生徒たちに対する不信感を増長させてしまい、統合がより遠のいてしまったことに対し、罪悪感にさいなまれていた。そのためか、いつも陽気な曜ですら落ち込む、そんな、全員、お通夜モードに入ってしまっていた。

 そして、月が、遠くでお通夜モードのAqoursメンバーの姿をみてかあることを考え込んでいるあいだに、むつたちトリオが千歌たち6人の前にあらわれ、今回のライブのあとに行われた通常理事会、そこで出た統合に関しての結果を聞く。もちろん、統合は延期。それを聞いたのか、千歌たちは、

「だよね」(千歌)

「ごめんなさい!!」(梨子)

と、むつたちにこの状況に堕ちてしまったことを謝る。それに対して、むつたち、

「ううん、千歌たちが悪いんじゃない」「むしろ、悪いのは私たち」

と、これまで、廃校のときのことを含めて、Aqoursにおんぶに抱っこ、みたいな、浦の星のことはすべてAqoursに任せていた、そんな自分たちが悪い、と言う。しかし、千歌たち6人は、だからこそ、自分たちAqoursの力でもってなんとかしないといけないものも、大事なところで失敗をしてしまい、結果、むつたち浦の星の生徒たちに逆に迷惑をかけてしまったことを後悔してしまっていた。

 その、後悔している千歌たち6人に対し、むつたち、元気をだしてもらいたいのか、今川焼きを6つ買っては千歌たちに渡した。このとき、むつは、

(私たちは信じているよ、きっと、千歌たちAqoursは、絶対、本来の姿、本当のAqoursに戻ってくれる、って!!だからこそ、そのAqours、本来のAqoursを見せる、そんな、立派な舞台、ステージを、私たちの手で用意してあげるね!!)

と、あることを決意している、そんな表情をしていた。

 一方、千歌たち6人は、というと・・・、

(むっちゃんたち、浦の星のみんな、本当にごめんなさい!!私たち、これからどうしていいの、わからなくなっちゃった・・・)

と、むつたちに詫びつつも、不安、心配という深き海、沼の奥底に沈みこんでしまったのか、今どうすることもできないことに苦しんでいた。そして、善意からむつたちからもらった今川焼きも、むつたち、浦の星の生徒たちへの罪悪感からか、誰1人として食べることができなかった(ちなみに、千歌たちが食べなかった今川焼きですが、その後、千歌の姉の美渡姉が全部おいしくいただきました・・・?)

 

 こうして、波乱に満ちた新学期部活動報告会の日は過ぎていった。不安、心配という深き海、沼の奥底に沈んでしまった千歌たち新生Aqoursの6人、そのAqoursを絶対に生まれ変わらせようと誓う月、その新生Aqoursと月の知らない知らないところで一大プロジェクトを極秘裏に進めようとするナギとその生徒会一同、それに、むつたち、月たち生徒会が圧倒的な不利のなか、さらなる勢力拡大をもくろむ木松悪斗、その木松悪斗の右手として活動しつつ、ご主人の知らないところで月たちの行動の妨害をもくろむ裏美、さまざまな人たちの思いが絡み合う物語、次回以降、新たなる人物も登場し、さらに絡み合っていく。はたして、この物語の結末はいかに・・・?

 

                          第3部に続く!!

 



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Moon Cradle 第3部 第1話

(僕が絶対にこのAqoursを、本来のAqoursに、いや、本当の実力のある新しいAqoursに、生まれ変わらせてみせる!!)

あの部活動報告会でのライブの失敗により、今はこの場にはいない姉ダイヤのことを思い出したのか、ダイヤの名前を呼ぶルビィ、そのルビィの姿を見て、月は千歌たち新生Aqoursを本来のAqours、9人の時の・・・、それくらい実力がある、新しいAqoursに生まれ変わらせてみせる、そう決意した。

 

 が、翌日・・・。

(・・・と言ったものの、果たしてどうすれば曜ちゃんたち、新生Aqoursを、もとのAqoursの姿に・・・、実力のある新生Aqoursに・・・することができるのかな・・・)

と、月、1人で悩んでいた。昨日、不安・心配の深き海・沼に沈んでしまい、意気消沈しているルビィの姿を見て決意したものの、どうすれば本来のAqoursの姿に戻すことができるのか、そこまで考えが回らなかった。いや、それに対する明確な答えなんてないのだ。なぜなら、そんな答えがすぐに見つかるなら、もうすでに静真一の才女ともいえる月によって実施しているからである。でも、そこまで単純な問題ではない。どんな頭のいい学者であっても、この問題、ライブの失敗・・・以上に、自分たちにとって、1・2年生6人だけの、新生Aqoursとしての始めてのライブ・・・、その際に起きた、不安・心配という深き海・に、身・心、ともに沈みこんでしまった・・・千歌たち6人・・・、それを、本来のAqoursの・・・、9人のときの・・・姿に戻すこと・・・、それを簡単に解決するなんてたとえ神であってもできないのだ。特に、今回は現在のどん底の状態からラブライブ!冬季大会決勝のときの最高の状態へと変えないといけない。ボトム(どん底)からトップ(頂点)へ、それはある意味かなり難しいものだった。

(ああ、こんなとき、あのロボットがいればいいのだけど・・・、そう、ドラ○もん・・・、すぐに四次元ポケットから「タタタタッタタ~、やる気スイッチ!!」なんてもの出してくれるんだけどな・・・)

と、月、あるたぬき・・・、いや、ネコ型ロボットを思い出してしまう。たしかにあのロボットならこの問題を一気に解決することができるかもしれない。が、それを本当に実現したとしても、それは、月の、そして、千歌たち新生Aqoursのためにならないのだ。人とは何もせずにそのロボットの助けを借りてことを成し遂げることよりも苦労して成し遂げることの方が得るものが大きいのである。そして、沼田の問い「部活動とはなにか」「部活動をする上で重要なこととは」、その答えを知りたいのであれば、そのネコ型ロボットで簡単にこのAqoursの状態を改善するよりかは、ネコ型ロボットの助けを借りずに自分たちの力でものを成し遂げた方が見つかりやすいものなのである。

 とはいえ、月、ルビィのあの姿を見て以降どうすれば千歌たち新生Aqoursを本来のAqoursぐらいの実力に戻すことができるのか、そのことだけを考えていた。が、今日になってもぜんぜん良い案を出すことができなかった。

(いくら考えても良い案なんて考え出せないよ~!!でも、今の僕にとって、曜ちゃんたち新生Aqoursを復活させなければ、(自分の作戦により以前より圧倒的に不利になった(静真本校と浦の星分校を統合させたい)月たち生徒会率いる統合推進派、その状況のなかで一生懸命頑張ってくれた)ナギたち生徒会役員たちみんなにも申し訳がたたない、それでも、静真一の才女ともいわれている、この僕にしても、良い案がでてこない・・・)

と、月、八方ふさがりの状況に苦しんでいた。

 そんな月であったが、

(あぁ、こんなに煮詰まっている状況じゃ良い案なんて出てこない!!こうなったら気分転換だ!!あそこに行ってみよう!!)

と、気分転換のためか、ある場所へと向かった。それは・・・。

 

「う~ん、気持ちいい、ここだったら潮の香りがして心地いいんだよね」

と、月、ある場所に着くなり深呼吸してこのあたりに漂う塩の香りを体一杯に吸い込んでいた。ここは沼津の海岸、それも、内浦の砂浜海岸であった。沼津のなかでも市街地に近い住宅街に住んでいる月、であったが、昔、月の近くに住んでいる曜と一緒にこの内浦の砂浜でよく遊んでいたのである。そのため、月にとってこの内浦の砂浜に漂っている塩の香りは昔の曜との思い出、それを思い起こさせる、いや、つきの頭の中をすっきりさせる効果を、やる気を出させる効果を持っていた。なので、月、なにかに詰まると必ずここに来ては深呼吸し気分転換を図るのであった。ちなみに、なんで曜は自分たちが住んでいる住宅街から離れている内浦の砂浜で月と一緒に遊んでいたというと、大親友でいとこの月・・・のもう一方の大親友である千歌、果南が内浦、もしくはその近くの淡島に住んでおり、少しでも長く、千歌、果南、そして、(2人とは別に)月と楽しく遊びたいためであった、が、このことについては曜だけの秘密である。

 とはいえ、月は内浦の砂浜に来ているのであるが、気分転換以外にもう1つ、ここに来た理由があった。それは・・・。

(あっ、曜ちゃんたち、頑張っているね~。昨日、あれだけ落ち込んでいたけど、子の様子だとそこまで悩んでいないみたいだね。僕、安心しちゃった・・・)

そう、月は千歌たち新生Aqoursの6人の様子を見に来ていた。昨日の部活動報告会のライブの中で、不安・心配の海・沼の深きところまで沈んでしまった千歌たち6人、その原因を作った(と、自分で思っている)月は心配になって千歌たち6人の様子を見に来ていたのだった。

 内浦の砂浜で練習をしている千歌たち6人、その練習風景を月は内浦の砂浜海岸の遠くにある石階段の上から見ていた。そして、そして、月はその千歌たち6人の様子を見つつ、この場所のことについて考えてみた。

(でも、まさか、この場所で再び練習するなんて、曜ちゃんたちからすればなんか因縁めいたものになるのかもしれないね)

この月の考えだが、ある意味間違っていないのかもしれない。昨日の夜、月は曜からあるメールを受け取っていた。

「月ちゃん、今日のことは本当にごめんね。でも、私たち、また頑張るね。明日から誓っちゃんの家の近くにある内浦の砂浜海岸で練習を始めるつもりだよ!!じゃ、またね!!」

このメール、昨日のライブの失敗を謝りつつも、それをバネにして再び頑張ってみることが書かれていた。そして、月はある文言に注目する。それは・・・。

(内浦の砂浜海岸か・・・。たしか、あの場所って・・・)

と、月、あることを思い出していた。

(たしか、あの場所って・・・、曜ちゃんたちAqoursがまだ千歌ちゃん、梨子ちゃんの3人しかいない、本当に最初のとき、練習していた場所だったよね・・・。Aqours原点の地、最初の地、そして、0、源の地・・・)

そう、内浦の砂浜海岸、その場所は、まだ、Aqoursという名前さえ付けていなかった、千歌、曜、梨子、3人のスクールアイドルグループ、そのグループの最初の練習の地、であった。まだこのときは浦の星の体育館で3人で行ったファーストライブすらしていなかった。むろん、このときはまだ、部室なるもの、そして、浦の星の校舎の屋上を練習場所として確保するのもしていなかった。そして、このときまだAqoursのメンバーではなかったものの、浦の星の理事長に就任したばかりの鞠莉から、これまたスクールアイドルを始めたばかりの千歌、曜、梨子に対し、浦の星の体育館でファーストライブを行い、その体育館を満員にすればスクールアイドル部の承認、部室の授与を行うことを持ちかけられ、千歌たちはそれを受け入れたのだ。もちろん、それ相応のリスクもあった。満員にできなければ即解散、という相当リスキーなものだった。むろん、この裏では、千歌たちスクールアイドル部でもって浦の星の廃校を阻止しようとしている鞠莉と、表では、いつも千歌たちに対して厳しさでもって接するものの、裏ではまるで自分の手の平で躍らせるように、それもそれを悟られないように千歌たち3人をサポートしつつ、千歌たちスクールアイドル部に昔、鞠莉、果南と一緒にスクールアイドルグループとして活動していたときに名乗っていた名前、Aqoursを与えた。そんなダイヤと鞠莉の想いが錯綜したのだが、そんなことを知らず、千歌、曜、梨子はファーストライブで浦の星の体育館を満員にしようと一生懸命、この地、内浦の砂浜で練習に明け暮れていたのだった。こんな風に、内浦の砂浜海岸は千歌たちAqoursにとって原点の地、0の地であった。月にとって見れば、これは運命、因縁・・・としか言えなかった。

 そんな月の思いとは裏腹に千歌たちの練習は続く。砂浜での走りこみ、これには体力がありすぎて元気な曜を尻目に千歌たち5人は疲れた素振りをしながらも、遅れ気味ながらも、なんとか走っていた。そして、走り込みが終わったあと、ストレッチを開始する千歌たち6人。

 そんななか、石階段の上で千歌たち6人の練習の様子を見守っている月、その横をある少女2人組が通りがかる。これに対し、月、

「あっ、こんにちは」

と、その2人に挨拶すると、その少女2人のうち、髪の左側をサイドテールにしている少女から、

「こんにちは」

と、月に対して挨拶をする。そして、さらに、

「あれっ、男の姿をしているのに、声は女の子、みたいですね。私、びっくりしました」

と、月の格好を見て驚いた表情をみせる。これには、月、

「あっ、たしかに、僕、そんな格好、していますからね」

と、自分の格好を見て、そのサイドテールの少女が驚いていることに納得する。そう、月は、この前、曜を除く千歌たち5人と初めての邂逅を果たした、やばコーヒーの店に行ったときと同じ格好、全身男物の格好をしていた。もちろん、野球帽を深くかぶってもいた。これについては前日と同じ、静真の生徒会長である月が浦の星の生徒である千歌たち6人と会うことでよからぬ噂を立つことを未然に防ぐ意味もあるが、今回はもう1つ、もし、千歌たち新生Aqours6人と一緒に行動を共にするとき、木松悪斗たち、静真本校と浦の星分校の統合を阻止したい、分校継続派に気づかれずに裏でこそこそ行動できるようにしたい、そんな考えがあったりする、そのための男装でもあった。

 で、そのサイドテールの少女は月に対し、あることを言う。

「僕、だなんて、私、あなたのこと、少し興味を持つことができる、そんな感じがします。男の姿をしているけど、本当は女の子、それでいて、僕ッ子、私にとってこれまで会ったことがない子、ですね。もしかすると、近いうちになにか係わることがあるかもしれませんね」

と、笑いながら言うと、月、

「そ、そうですね・・・」

と、ちょっと苦笑いを浮かべていた。このとき、月、

(うわ~、このサイドテールの少女、短い時間に僕のことを全てわかりました、ってオーラをだしている・・・。なんか凄い気がする・・・。でも、僕も、これから先、この少女と一緒になにかをする、そんな気がしてしまう・・・)

と、なにかを感じていた。

 が、そんなサイドテールの少女とつきのやり取りをしているなか、2人の空気を読んでいないのか、もう1人の少女、短めのツインテールの少女から、

「お姉さま、もうすぐ約束の時間です。さっさと行きましょう」

と、サイドテールの少女に向かって言うと、そのサイドテールの少女も、

「わかったわ、理亞。じゃ、また今度、お会いいたしましょう」

と、月に別れを言ってその場をあとにした。このとき、月、

「あっ、さようなら」

と、サイドテールの少女に別れを言うと、

(あっ、なんか美しかったなぁ、あのサイドテールの少女。でも、そのそばにいた対天テールの少女、まるで、だれか・・・、あっ、ルビィちゃんに・・・、なんか表情が似ていたよね。なんか、なにかに苦しんでいる・・・そんな風に・・・)

と、今会った2人のことをこう思っていた。

 そんな、サイドテールの少女とその少女から「理亞」と呼ばれたツインテールの少女、2人があるところに向かって歩いているところを目で追っている、月、そんな2人が向かっている先を見て、月はすぐに思った。

(あれっ、あの2人、まっすぐ曜ちゃんたちのところに向かっている・・・、と、いうことは、あの2人、曜ちゃんたちに用があるんだ)

 その2人、月が思った通り、そのまま、ストレッチを行っている千歌たち新生Aqours6人のところに向かって行こうとしていた。そして、石階段の上に立ち、千歌たち6人に向かって大きな声で挨拶をした。

「お久しぶりです!!」

その声で反応してか、ルビィ、その2人に向かって一言。

「理亞ちゃん!!」

続けて、花丸からも。

「Saint Snowさんずら~!!」

この花丸の声を聞いた月、すぐに2人の正体を知る。

(あの2人がSaint Snow・・・。曜ちゃんがよくAqoursのライバルとして名をあげていた、そして、2人のことをよく話していた。あの2人がAqoursの永遠のライバル、北海道が誇るスクールアイドル、函館聖泉女子高等学院スクールアイドルユニット、Saint Snow・・・、なんだ・・・)

 

 Aqoursの前に現れたSaint Snowの2人、鹿角聖良・理亞姉妹、その突然の来訪だったが、どうやら千歌が聖良にたまたまメールしたら聖良・理亞姉妹2人で東京に卒業旅行に来ているとのことだったので、それならばと千歌が沼津へと呼び寄せた、とのことだった、自分たちの練習を見てもらうために。これには、理亞、

「まったく、せっかく姉さまとの卒業旅行中だったのに・・・」

と、ちょっとふてくされるも、聖良、すぐに、

「平気ですよ。理亞もすごく行きたがってましたから」

と、理亞の本音をばらしてしまう。これには、理亞、

「お姉さま!!」

と、聖良に少し反抗してみる。

 こんなやりとりを遠くから見ていた、月、

(やっぱ、Aqoursのライバルのことはあるよ。Saint Snowの2人、まるで戦友との再会・・・って感じがするよ)

と、千歌たち6人と聖良・理亞のやりとりに感心してしまう。

 が、聖良・理亞がここに来た理由、それは、千歌たち新生Aqoursの練習を、今の新生Aqoursのパフォーマンスを見てもらい、今の自分たちにとっての弱点を、今の自分たちに欠けているものを見つけてもらうためである。と、いうわけで、梨子、

「じゃ、早速ですけど、見てもらいますか?」

と、聖良・理亞に今の自分たちのパフォーマンスを見てもらうようにお願いする。これには、聖良、

「はい!!」

と、力強く返事をする。が、そんな自信に満ちた聖良の表情に対し、理亞の方は、

「・・・」

と、ちょっと暗い表情をしていた。これには、ルビィ、

(どうしたのだろう、理亞ちゃん・・・)

と、ちょっと大親友である理亞のことを心配してしまう。が、まずは自分たち新生Aqoursのパフォーマンスを見てもらうことになっているため、ルビィ、

(理亞ちゃんのことも心配だけど、まずはルビィたちが持てる力すべてを聖良さん、理亞ちゃんに見せないと・・・)

と、すぐに自分の持ち場、ポジションに赴く。

 ルビィが自分のポジションにつくと同時にルビィ以外の新生Aqoursメンバー5人も自分のポジションに着く。これを見た聖良、

(やっぱりあの曲を選んできましたか・・・)

と、なにか感づいたように思うと、すぐに、

(あの曲、千歌さんたちAqoursにとって初めて全国にAqoursの名を轟かせた曲、そして、ラブライブ!夏季大会前に東京で行われたスクールアイドルのイベントで初めて私たちSaint Snowに会いそこで披露してくれた曲、そして、千歌さんたちに「0」という過酷ともいえる現実を突きつけてしまったあの曲・・・)

と、今から千歌たち新生Aqoursが聖良・理亞の前で披露する曲のことを思い返してしまう。そして、

(そして、今、その曲を再び私たちSaint Snowの前で披露しようとしている。これは、もしかして、今、千歌さんたち新生Aqours、その今の状況を表そうとしているのかもしれない・・・)

と、つい聖良はそう考えてしまった。さらに、

(そして、それは、今の理亞にも当てはまろうとしているのかもしれない・・・)

と、隣にいる理亞のことも心配する。

 そんな聖良の心配もあったが、聖良、今は千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスを見ることが先、というわけで、

(ああ、今はいろんなことを考えてもしょうがない。今、千歌さんたち新生Aqoursのパフォーマンス見ることを優先しよう。そして、今、私が持っている、今の千歌さんたちに対する考えを確かめてみよう)

と、今やるべきことをしようと考える。と、同時に、

(そして、今、遠くから私たちを見ている、(きっと間違いなく)千歌さんたち新生Aqoursのことを心配しているあの少女(月)に、今、千歌さんたちが陥っている状況、それと、その原因を知ってもらおう)

と、月のことを気に留める。

 そんな聖良の思いとは裏腹に、千歌、

「じゃ、聖良さん、理亞ちゃん、始めます」

と、今からパフォーマンスを見せることを言う。これを聞いた聖良、すぐに、

キラッ

と、月のいる方向に顔を向ける。そのときだった。月、すぐに、

(あっ、あのサイドテールの少女(聖良)、僕の方を見ていた!!)

と、一瞬驚いてしまう。と、同時に、

(も、もしかして、サイドテールの少女(聖良)、僕に曜ちゃんたち新生Aqoursが陥っている状況、そして、その原因を教えようとしているのかもしれない!!)

と、月、聖良が月の方向に一瞬だけ向いたその理由をこれまた一瞬で悟る。その瞬間、月、

(僕、今から曜ちゃんたちのパフォーマンス、そして、あのサイドテールの少女(聖良)の言いたいこと、一言一句、聞き逃さないでおこう)

と、心で誓った。

 そんな月だったが、聖良はすぐい千歌さんたち新生Aqoursの方を向き、月にも聞こえるくらいの大きな声で言った。

「それじゃ、今のAqoursの、今持てる最大限の力でもって、私たちSaint Snowに最高のパフォーマンス見せてください!!」

 

 



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Moon Cradle 第3部 第2話

 聖良の一言で千歌たち新生Aqoursは踊り始める。が、遠くから千歌たち6人を見ていた月、思わず、

(あれっ、あれってどこか見たような気が・・・)

と、今、千歌たち新生Aqours6人が踊って歌っている姿を見て、なにかを思い出そうとすると、月、すぐに、

(あっ、この曲、昨日の部活動報告会で見せた、あの曲、たしか、「夢で夜空を照らしたい」だ!!)

と、昨日、静真で行われた部活動報告会でも披露された曲、「夢で夜空を照らしたい」を、この場でも、Saint Snowの聖良・理亞の前でも披露していたのだ。この「夢で夜空を照らしたい」という曲、今のAqours、新生Aqoursにとって、今のところ、人前で披露できる唯一の曲、だったりする。Aqoursといえば、ラブライブ!冬季大会決勝で優勝を決めた「WATER BLUE WORLD」や、夏季大会東海予選での「MIRAI TICKET」、はては、Aqours9人での初めての曲「未熟Dreamer」があるが、どの曲も9人で歌うこと前提の曲であり、浦の星の卒業式から昨日の部活動報告会までの1週間程度という短期間で千歌たち1・2年生6人で歌えるようにアレンジする時間がなかったりする。それに比べ、「夜空で~」はもとから1・2年生6人で歌うこと前提で作られた曲であり、今の1・2年生主体の新生Aqoursにとってすぐにでも歌える曲であった。が、前にも言った通り、この曲は(この曲のPVで)Aqoursの名を全国に知らしめた曲であり、Saint Snowの聖良・理亞の前で初めて披露した曲、そして、「0」という厳しい現実を千歌たちに突きつけた曲である。そう考えると、聖良がついそう考えてしまうのも無理がなかった。

 その聖良の心配は現実のものになってしまった。遠くから千歌たちを見ている月は、

(あれっ、昨日と同じ曲なのに、パフォーマンス、昨日以上にぎこちなくなっていないかな?)

と、スクールアイドル、いや、普通のアイドル、そのダンスや歌に疎い、悪く言えばド素人レベルの月にしてからも、昨日の部活動報告会のときよりもぎこちないパフォーマンスを、今の千歌たち新生Aqoursメンバー全員がしていた。なぜなら、昨日の失敗をいまだに引きずっている、いや、そのときに陥ってしまった、不安・心配の深き海・沼、それにもがき苦しんでいるようにもみえたからだった。たとえば、いつも陽気な曜も、

(あれっ、こうだったっけ?それとも、こうだったけ?)

と、今までのAqoursのダンスを思い出そうとするも、知らないうちに曜の体に染み付いてしまった、不安・心配のベールが曜が持つ陽気さ、元気さを隠してしまい、そのベールによって曜の体はうまく動くことができなかった。さらに、ルビィにいたっては、

(理亞ちゃん・・・)

と、理亞に自分たちのダンスを見てもらおうとガンバルビィするも、

(でも、体が、体が、ついていけない・・・。お、お姉ちゃん、助けて・・・)

と、ここにはいない姉ダイヤに助けを求めようとしてしまう始末。と、いうわけで、本来のAqours9人が持つキレのよさ、楽しさ、それを前面に押し出す、そんな姿は、心配・不安という深き海・沼に陥ってしまった結果、影を潜めてしまい、逆に、その不安・心配が、今、まさに、新生Aqoursのパフォーマンスとして、前面に押し出してしまった、そんな状況が、今の新生Aqoursに起きていた。

 で、この新生Aqoursの姿を見た、聖良、

(やっぱりですね。今の千歌さんたちからは何か焦りを・・・、いや、何かに対する不安・心配、それをかもし出している・・・、いや、振りまいている、そんな気がします・・。それは・・・)

と、考えると、すぐにあることに気づき、こう考えてしまう。

(今の千歌さんたち新生Aqours・・・からかもし出している不安と心配、それは・・・、9人じゃないから・・・。これまで9人でやってきたこと、その9人だからこそできたこと、それに対する自信、9人の想い、9人のキズナ、それらが今までのAqoursにはあった。だから、ラブライブ!で優勝できるくらいの実力を持つことができた。が、その9人のうち、3年生の3人が卒業でいなくなった。それにより、これまでのAqoursにあった自信、キズナ、そのすべてがなくなってしまった、欠けてしまった。もちろん、9人だからこそできたことなんて、今の千歌さんたち新生Aqours6人ではできない、そう千歌さんたちは知らないうちにそう考えてしまったのかもしれませんね・・・)

この考えのもと、聖良はある結論をだす)

(完璧なものほど1つの歯車が欠ければすぐに崩壊する。これまでのAqoursは9人がいて初めて完璧、だったのかもしれない。が、3年生という歯車が欠けてしまったことにより、これまで完璧さが失ってしまいもろくも崩壊してしまった、今残っているのは、その完璧さから程遠い、3年生がいないから生じている不安・心配、それだけかもしれない・・・)

 さらに、聖良、その結論に対し、ある思いを抱く。

(でも、果たして、今のAqours、千歌さんたち新生Aqoursって本当に3年生という歯車を失ったのでしょうか?ただ、失っている、欠けている、と、思い込んでいるだけじゃないでしょうか。ただの幻想・・・じゃないでしょうか・・・)

 そして、聖良はあることを決断する。

(もし、本当に幻想・・・であるなら・・・、もう一度、ダイヤたち3年生3人に会えば・・・もとに戻る・・・かもしれない・・・。なら、私が・・・、ダイヤたちに・・・連絡を・・・)

 が、そんなときだった。

「お姉さま、もうすぐ曲、終わりますよ!!」

と、理亞から聖良に千歌たちが踊り終わろうとしていることを言うと、聖良、

(あっ、もうすぐ曲が終わるのね!!なら、あとでダイヤたちには連絡しておこうかな?)

と、ふと思うと、さらに、

(でも、うちの理亞には、今の千歌さんたち新生Aqoursと同じこと、起きていない・・・かも・・・ね・・・?)

と、妹の理亞にある意味絶対的な信頼を持っているからなのか、ちょっと安心してしまう?

 が、実は、理亞、このとき、別の意味で、千歌たち新生Aqoursと同じ状況に陥っていたのだ。で、今回の2人だけの卒業旅行も、理亞のその苦しみを聖良が無意識に感じていたのか、その苦しみを少しでも和らげるために行っていたのだ。で、その理亞がこのとき持っていた、千歌たち新生Aqoursにも通じる、その苦しみとは・・・。それはまたの機会にも話そう。

 

 とはいえ、千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスは終わった。

「なるほど・・・」

石階段に座って新生Aqoursのパフォーマンスを見ていた聖良はこう言うと立ち上がっては千歌たち6人の前へと進む。そのなかで、

「はっきりいいますよ!!」

と、わざと大きな声で言う。その声の大きさは遠くにいる月にも聞こえるように。

 で、この聖良の大きな声、遠くから千歌たち6人のパフォーマンスを見ていた月にとって、

(あっ、サイドテールの子(聖良)、僕になにかを伝えたいのかもしれない、曜ちゃんたち新生Aqoursが今抱えている問題点、その原因を・・・。だから、わざを僕にも聞こえるくらいの大きな声で言っているしれないね)

と、わざと大きな声で言っている聖良の真意を感じ取る。

 そんな聖良、千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスを見て、千歌たち6人に対し残酷ともいえる現実を突きつける。

「そうですねぇ、ラブライブ!(冬季大会決勝)のときのパフォーマンスを100にすると、今のみなさん(のパフォーマンス)は30、いや、20くらいと言っていいと思います!!」

これには、さすがの千歌たちも唖然となってしまう。しまいには、ヨハネ、ルビィから唖然ともとれる発言が飛び出してしまう。

 が、そんな唖然とする千歌たち6人に対し、その不調の原因を聖良は教える。

「それだけ3年生3人の存在は大きかった!!」

この発言は千歌たち6人に対しある意味残酷ともいえる言葉だったのかもしれない。なぜなら、ほかの理由ならいろんな方法でまだ立て直すことができたのかもしれない。が、ダイヤたち3年生3人はもう卒業して戻ってくることなんてない。その3年生がいないこと、もう戻ってくることなんてないこと、それを考えると、これが原因であるなら、それを乗り越えることは並大抵の努力をしても不可能ともいえた。いや、不安・心配という深き海・沼の奥底に沈んでしまった千歌たち6人にとってその言葉は致命傷・・・なのかもしれない。

 それでも、聖良の言葉を真剣に聞いていいる千歌たち6人、聖良はこれを見てか、さらに言葉を続ける。

「松浦果南のリズム感とダンス、小原鞠莉の歌唱力、黒澤ダイヤの華やかさと存在感、それは(本来の)Aqoursが持つ明るさと元気さ、そのものでしたから」

そう、これまでのAqours、本来のAqours、9人のAqoursは、3年生の存在感が強かったのかもしれない。本来のAqours、千歌たち2年生3人はAqoursの行き先を決めていた。いわば船頭の存在であった。で、ダイアたち3年生3人はその千歌たち2年生3人が決めた行き先へと進めるためのエンジン役、かもしれない。ダイヤたち3年生3人は1年生のときにスクールアイドルとして活動していたこともあり、スクールアイドルとしての経験を持っていた。その経験のもと、いままでのAqours、本来のAqours、という船を安全に、そして、パワフルに進めてくれていたのである。いわば、Aqoursの屋台骨、だったのかもしれない。さらに、3年生3人というスクールアイドルとしての先輩がいたため、たとえ失敗してもすぐに取り返すことができる、そんな安心感を千歌たち1・2年生に与えていた。いわば、ダイヤたち3年生3人は家でいうところの、屋根、だったのかもしれない。その屋根のお陰で、本来のAqoursは観客たちに向かって明るさと元気さを押し出すことができたのかもしれない。が、その3年生3人がいなくなった、ただそれだけで、千歌たち1・2年生6人は、不安・心配という深き海・沼に陥るほどボロボロになった、ともいえる。ただ3年生3人がいないだけ、そんな簡単な言葉で言えるくらいたいしたことなんてない・・・、そう普通は考えるかもしれない。が、千歌たち1・2年生6人にとって、それがAqoursとして、スクールアイドルとしては死活問題ともいえた。なぜなら、ダイヤたち3年生3人という(船でいうところの)エンジン役、(家でいうところの)屋根がなくなったからである。船はエンジンがなくなれば、あとは潮の流れ、風の流れに身を任せるしかない、それはある意味自然任せ、いや、迷走迷走メビウスループに陥ることにもなる。また、家にしても、屋根がなければ雨風を防ぐこともできなくなる。それくらい千歌たち6人にとって3年生3人の存在は強く、その3年生がいない現状だと、(船であれば)いくら千歌たち2年生が指示をだしてもその指示の行く先に進むことなんてできず、むしろ迷走してしまう、(家であれば)屋根がないため、これまで3年生という屋根があったことで防ぐことができたいろんな問題、それに対処できずにのびのびとパフォーマンスを・・・、いや、身を縮めることしかできず、それが不安・心配という形で表に出てきてしまった、それが、今、聖良・理亞の前で見せたパフォーマンスにつながってしまった、のかもしれない。

では、ルビィたち1年生3人は・・・?それは、将来期待有望な新人、いわば、原石、なのかもしれない。で、あるが、新人、原石であるため、何も知らない、本当に真っ白、ともいえる。そのため、ルビィたち1年生3人は困難に直面したとき、どう動けばいいのかわからない、そんな危うさを持っていた。でも、これまではその問題を真っ向から挑んだダイヤたち3年生、守られながらもこれからの行き先を決めてくれた千歌たち2年生のお陰で函館の理亞の一件以外そんな困難な問題に直面することはなかった。が、その3年生という屋根がなくなった直後、今回の一件という問題、困難に直面したことにより、その危うさが表面化した、いや、心配・不安というものを噴出してしまった、ともいえた。その意味でも、子の問題、実はルビィたち1年生3人がどう化けるかがキーとなる、ともいえた。

 この聖良の残酷ともいえる言葉に千歌たち6人は唖然、いや、心がなにかにえぐられてしまい苦しんでいる、そんな表情をしていた。その聖良、最後にこう締めた。

「それがなくなって不安で心が乱れている気がします」

聖良の締めの言葉であったが、ただそれだけでも千歌たち6人にとっては相当なダメージを与えてしまった。さらに、苦しい表情をするルビィ。

 そして、聖良の言葉に続けとばかりに、理亞、トドメといえる言葉を発する。

「なんかふわふわして定まっていない感じ・・・」

まさに今の千歌たち6人の今の状況をいいあらわしている、そんな言葉だった。が、このとき、理亞もこの千歌たち6人と同じ状況に陥っていた、のかもしれない。

 が、この聖良の言葉、実は千歌たち6人以外にも強い衝撃を受けた子が1人いた。遠くから聖良の言葉を聞いていた、月、だった。月は聖良の言葉を聞いて、

(あっ、やっぱり、僕があのとき感じていた違和感、それが原因だったんだ・・・)

と、思ってしまった。月が言う違和感、それは、昨日の部活動報告会での新生Aqoursのパフォーマンスを見たときの本来のAqoursと新生Aqoursのパフォーマンスの差、だった。このとき、本来のAqoursが見せるキレがあってダイナミック、元気さ、楽しさを前面にだす姿、とは違い、新生Aqoursが見せたパフォーマンスは表情もダンスもともに堅い、とても小さなパフォーマンスという大きな落差を見せてしまっていたのである。この差に月は違和感として感じていたのだが、その原因について、月、このとき、本来のAqoursにいた3人、ダイヤ、果南、鞠莉、がいないだけ、という認識しかなかった。と、いうわけで、聖良の言葉を聞くときまでは、月、その3人がいないことでパフォーマンスが悪かった、たった3人、その3人がいない、ただそれだけ、と、月は聖良の言葉を聞く前はそんな認識だったが、聖良の言葉でそんな認識ががらりと変わってしまった。そのパフォーマンスの落差の本当の原因を月は初めて知ることができたからだった。そのここにいない3人こそ、本来のAqoursの屋台骨、とても重要な3人、であり、その屋台骨がいない、今の新生Aqours、そのために、不安・心配という海・沼の奥底に沈みこんでしまい、結果、迷走している、それが聖良の言葉を聞いた月の認識だった。

 そんな月、

(今の新生Aqours、ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんという3年生3人、Aqoursを支えた3人という大きな柱がなくなったことで、不安・心配という深き海・沼に陥ってしまった、これが今の新生Aqoursの現状なんだ・・・。それだけ3年生3人の存在は大きかった、そう考えると、僕、もう少しAqoursのことを勉強すべき、だったかな・・・。だって、僕、とても大切な存在だった3年生3人が抜けた、そのことを知らず、ただ、ラブライブ!で優勝した、その実力がある、と、思って、曜ちゃんたち新生Aqoursを自分のためだけに担ぎ出した、そんな気がするよ。でも、曜ちゃんたちにとってみれば、新生Aqoursとして始めて、いや、新体制が整える時間すら与えられないほどすぐに表舞台に出してしまった・・・、そして、ライブは失敗した・・・。そう考えると、僕、なんか曜ちゃんたちに悪いこと、しちゃったかもしれないね・・・)

と、自分を責めるような思いを持ってしまう。たしかに、本来であれば、千歌たち新生Aqours、その万全な体制を整える、そんな時間があったほうがよいのかもしれなかった。新生Aqours、万全な体制で臨めば、こんな不安・心配と言う深き海・沼に沈みこむ、そんなことは起きなかったのかもしれない。けれど、新生Aqoursは、万全な体制を整える、そんな時間、なんてない、いや、本当に赤子の状態のまま、すぐに表舞台に引き釣り出されたのだ。その意味では、月、今の新生Aqoursの現状を作り出した張本人、だったのかもしれない。が、逆にいえば、遅かれ早かれ、今の新生Aqoursの現状に陥ることは目にみえていたのかもしれない。本来のAqoursの屋台骨を支えた3年生3人がいない、そのことが原因で迷走してしまったこと、その問題点はいつ噴出してもおかしくなかった。むろん、今回は赤子の状態でこの問題点は噴出してしまったので、ある意味最悪だったのかもしれない。が、この問題点はいずれいつかは必ず千歌たち6人が直面してしまうことになるだろう。そう考えると、このタイミングでその問題点が噴出してよかったのかもしれない。なぜなら、今はまだ2018年3月である。ダイヤたち3年生3人、浦の星を卒業した、とはいえ、まだ、3月中である、身分上ではまだ浦の星に籍を置く高校生、つまり、3月末、今月末までスクールアイドル、であるのだから・・・。

 ともあれ、月、ふとあることを思ってしまう。

(あっ、そういえば、あのサイドテールの少女(聖良)、鞠莉ちゃんのこと、小原鞠莉、って言っていたのよね。小原・・・鞠莉・・・、あれっ?鞠莉ちゃんの名字ってなんだっけ?)

実はこのとき、月、鞠莉の本名を知らなかったのだ。用途Aqoursのことについて話すとき、鞠莉のことはいつも「鞠莉ちゃん」としか言っていなかったため、鞠莉の本名については、月、まったく知らなかったのだ。で、今回、聖良の言葉でようやく鞠莉の本名が小原鞠莉により、ちょっとパニックを引き起こしてしまった。なぜなら・・・。

(鞠莉ちゃんの本名は小原鞠莉・・・、小原・・・、小原・・・、小原・・・、って、たしか浦の星の大スポンサーだったところだよね。そして、鞠莉ちゃんの本名は小原鞠莉・・・。えっ、えっ!!)

そう、月、このとき初めて鞠莉が浦の星の大スポンサーだった小原家の娘、ではないかと疑うようになったのだ。さらに、

(小原・・・鞠莉・・・、小原・・・鞠莉、鞠莉ちゃんは浦の星の大スポンサーだった小原家の子ども・・・、なのかな・・・?)

と、月、少し困惑気味になってしまう。この疑い、月にとっては頭のなかでパニックを助長させてしまっていた。

 が、そんなときだった。聖良たちと千歌たちに動きがあったみたいだった。月、それを見て考えてしまう。

(あっ、ツインテールの少女(理亞)が突然ほかのところに走り出している!!)

どうやら、理亞が聖良と千歌たちのところから逃げ出したみたいである。これを見た、月、

(あっ、僕も追いかけないと・・・)

と、逃げ出した理亞を追いかけるように走り出す聖良と千歌たちを自分も追いかけようと走り出し、この場をあとにした。

 

 

 



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Moon Cradle 第3部 第3話

 と、ここで話の時間は少し巻き戻る。聖良の本当に的を射た発言に千歌たち新生Aqours6人は唖然と、いや、ズバリと聖良に今の新生Aqoursの現状を言い当てられたことにより動揺を隠せずにいた。さらに、理亞からは、

「なんかふわふわして定まっていない感じ・・・」

とも言われ、ヨハネが逆にすねてそこに座り込むぐらい、ただでさえ少ない自信すら失いかけていた。

 このことに、梨子、

「みごとに言い当てられたみたいね・・・」

と、聖良と理亞の言葉に納得せざるを得ない発言をする。それは、聖良と理亞の言葉は、千歌たち6人にとって、ラブライブ!優勝をものにしたものの、3年生が抜けたために、また、「0」に戻った、9人になる前のAqoursに戻った、そんなことを自分たちにとって思い起こさせるものとなってしまった。

 が、ダイヤたち3年生3人が入る前、と、その3年生が抜けた今現在、これには大きな違いが起きていた。それは、今現在において、ダイヤたち3年生3人はもう千歌たち6人の前にはもういないことである。3年生3人が入る前にはダイヤたち3年生3人はそこにいた。そのなかで、ダイヤの陰謀?と果南・鞠莉の歴史的和解などをえてAqoursはパーフェクトナインとなった。が、今現在、その3年生3人と千歌たち6人はすでに卒業という別れをしてしまったので、その3年生3人がAqoursに戻ってくる・・・わけではなかった・・・、

今現状では・・・。そのなかで、千歌たち新生Aqours、この現状を打破しようとしても、頼れる3年生3人がいないこの現状のなかでは、自分たち6人でなんとかしないといけない・・・のだが、昔と同じ「0」に戻った、いや、その以下に戻ってしまった、そう考えている千歌たち6人にとっては、ほぼ立ち上がることができない、回復不可能、そんな思いでいっぱいだった。

 その千歌たち6人、そのなかで、その思いが強く支配されていた少女がいた。

(ルビィ、こんな現状、いやだよ!!やっぱり、お姉ちゃん(ダイヤ)がいないとダメ!!)

ルビィだった。常に姉ダイヤのそばを離れなかったルビィ、小さいときからルビィの隣には姉ダイヤの姿があった。そして、ルビィがなにか困っていることがあると姉ダイヤがすぐにやってきてはすぐに解決してくれる、そのため、ルビィにとって姉ダイヤの依存度は相当高いものだった。けれど、ルビィ、スクールアイドルとしてAqoursに入るときは自分の意思で自ら入ったのではないか?たしかにそうともいえるが、千歌がスクールアイドルを始めたときから沼津の夏祭りでパーフェクトナインとなったときまで、これがダイヤの策略?ともいえるかもしれない。もしかすると、Aqours誕生の経緯において、ダイヤ以外のみんな、8人とも、ダイヤの手のひらで躍らせられていたのかもしれない。スクールアイドルを始めた千歌たちにとって(浦の星での)最大の敵として演じていたのも、「スリーマーメイド」という名も出てくるくらい迷走していた千歌・曜・梨子のスクールアイドルグループの名前決めにおいて、昔、鞠莉・果南と一緒にスクールアイドルをしていたときのグループ名、Aqoursの名を与えたのも、東京のスクールアイドルのイベントで「0」という残酷ともいえる数字を突きつけられた千歌たち6人に寄り添うように話したのも、そして、鞠莉と果南の和解の段取りをしたのも、その意味でも、ダイヤが決めた段取り?だったのかもしれないし、ダイヤの思い通り?になったのかもしれない。が、ダイヤがこんな回りくどいようなやり方で千歌たち8人を導いた理由、それが「ダイヤ以外のメンバーの夢を叶えてあげたい」だとしたら、これらのダイヤの策略・行動もうなずけるかもしれない。スクールアイドルといて自分だけの輝きを見つけたい千歌、昔、一度諦めたスクールアイドル、それを今度こそ大成したい、そして、その力でもって浦の星の廃校を阻止したい鞠莉、などなど、メンバーそれぞれに叶えたい夢があったりする。それをダイヤは誰にもわからないように裏で動いていた、のかもしれない。スクールアイドルとして、そして、Aqoursというグループとして、千歌たち8人を裏で導いていたのかもしれない、ダイヤは。さらに、鞠莉と果南の歴史的和解、そして、2人の加入でもって、千歌たち8人をAqoursという大きな船でもって送り出した後、自分はここで御役御免とばかりに誰にも気づかれず、こっそり退場しようとしていたのかもしれない。が、最後の最後で姉ダイヤを慕う妹ルビィに見つかり、ダイヤも9人目のメンバーとしてAqoursに加入することになった、というオチ?付き、であったが、そう考えると、ダイヤの、Aqoursの物語の立ち位置は、μ‘sの絵里と希の立ち位置を合わせたもの、になるかもしれない。けれど、ダイヤとしては、それぞれのメンバーの夢を叶えたい、ただそれだけで動いていたのかもしれない。

 で、もって、Aqoursに入る前のルビィがこのとき叶えたい夢はなんだったのか。それは、「自分が一番好きだったスクールアイドルになりたい」という夢だったのかもしれない。けれど、最初、スクールアイドルを嫌っている(と、ルビィに思わせていた)姉ダイヤのことを思ってAqoursに加入するのを躊躇っていたルビィ、のだが、自分の夢、そして、大親友でのちにAqoursとして一緒に活動する花丸の言葉によって勇気を振り絞りAqours加入を決めた・・・のであるが、ルビィの夢、「自分が一番好きだったスクールアイドルになりたい」、この言葉には続きがあった。それは・・・、

「自分が一番好きだったスクールアイドルになりたい、お姉ちゃんと一緒に!!」

である。そう、ルビィの夢とは、「一番好きな姉ダイヤと一緒にスクールアイドルになりたい!!」ことであった。小さいときから姉ダイヤと一緒にアイドルに憧れていたルビィ、そのなかで、A-RISE、μ‘sといったスクールアイドル、女子高生であれば誰でもなれるスクールアイドル、が大人気になるにつれて、ダイヤ、ルビィはスクールアイドルに、μ’sに憧れるようになった。が、姉ダイヤが1年生のとき、鞠莉の怪我の一件により姉ダイヤはスクールアイドルから遠ざかる(風にみせかけた)のだが、そんな姉ダイヤに対し、ルビィはいつかはスクールアイドルとして姉ダイヤと一緒に活躍したい、そう思っていたのかもしれない。そして、Aqoursがパーフェクトナインになったとき、ルビィの夢が成就したのかもしれない。いや、ダイヤの策略?により、浦の星の廃校阻止というAqoursメンバー全員の夢は途中で挫折したものの、ラブライブ!優勝というスクールアイドルとしての1つの到達点、その後の浦の星での出来事によって、Aqoursメンバー全員の夢は成就されたのかもしれない。そう考えると、ダイヤがAqoursメンバーのためにやってきたことは決して無駄ではなかったのかもしれない。姉ダイヤとしても、妹ルビィと一緒にスクールアイドルとして活躍したい、という夢があったのかもしれない。それすらも自分の手で成就させた、のかもしれない。

 で、話を今現時点のルビィに戻すが、小さいときから姉ダイヤの後をついてきていた、それくらい姉ダイヤに対する依存度が非常に高いルビィ、であったが、その姉ダイヤは、このときすでにルビィのそばにはいなかった。そのダイヤは浦の星の卒業によってルビィのいないところにいってしまったからだった。そして、木松悪斗とその娘の旺夏の策略によって、いや、もしかすると、遅かれ早かれ、2人の策略がなくてもこのような状況に陥っていたのかもしれない。

 千歌たち新生6人が直面した問題、不安・心配という深き海・沼に陥ってしまい、パフォーマンスが悪化してしまう問題、これには、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、心のなかから叫びまくるも、その肝心の姉ダイヤはもうここにいない、そのために、ついには、

(ルビィ、こんな現状、嫌だよ!!やっぱ、お姉ちゃんがいないとダメ!!)

と、いう心の叫びに結びついてしまった。が、もちろん、今のルビィから見えない遠くの地にいる姉ダイヤがワープしてルビィの前に現れる・・・わけではないため、姉ダイヤが来ることすらなかった。そのためか、しまいには、

(お姉ちゃん、助けて、お姉ちゃん!!)

と、必死に姉ダイヤを呼ぶも、ダイヤがスーパーマンになってルビィのところに飛んでくる・・・わけではないので、ルビィ、ついには、淡い期待から、

(お姉ちゃんが来ない・・・。どうしたら・・・、どうしたら・・・)

と、少し諦めの極地に達してしまう。

 そして、ルビィ、ついに、

「でも、どうしたら・・・」

と、姉ダイヤに助けを求めようとする言葉を発してしまう。

 が、このルビィの言葉により、ついにある少女がついにキレた。

「そんなの、人に聞いたってわかるわけ、ないじゃない!!」

理亞だった。理亞、続けてある言葉を言う。

「全部自分でやらなきゃ!!」

理亞の気持ち、卒業でもういないお姉さまたち、ダイヤ、そして、聖良、2人がいないなか、そのなかで、自分でなんでもやっていくしかない、理亞からの心の底からの叫び、だった。これにはルビィ、ついに・・・、

(理亞ちゃん・・・)

と、困惑した表情をしながら言うと、理亞、ついに本音をルビィにぶつける。

「姉さまたちはもういないの!!」

この言葉の後、理亞は聖良と千歌たち6人のもとからなにかに逃げるかのように走りだしてしまった。この理亞の行動に、ルビィ、

(理亞ちゃん、どうしたの・・・)

と、突然凶変した理亞の姿にさらに困惑を深めた。

 その困惑しているルビィに対し、聖良が一言。

「すみません」

この言葉を受けて、ルビィと千歌は聖良に理亞がなぜこの発言したのかと尋ねる。

「理亞ちゃん、新しいスクールアイドル(グループ)始めたのですか?」

と、ルビィが聖良に尋ねると、聖良、

「そのつもりはありますけど、なかなか・・・」

この言葉を受けてか、ルビィ、

(理亞ちゃん、待って!!理亞ちゃん、どうしてそう言うの?)

と、思ってしまったのか、おもわず、

「理亞ちゃん!!」

と、叫んでは理亞のあとを追いかけるように走っていった。

 そんなルビィと理亞を見て、千歌は聖良に対し、

「聖良さん、教えて!!理亞ちゃんになにがあったの?」

と、聖良に理亞のなかで今起きていることを詳しくきこうとすると、聖良、すぐに、

「実は、理亞は新しいスクールアイドルグループを結成したのですが・・・」

と、聖良の身に起きている状況について簡単に話した。

 あのクリスマスでの奇跡のAqours、Saint Snowが合体したユニット、Saint Aqours Snowのライブのあと、自分だけのスクールアイドルユニットを作ることを心に決め、そして、すぐにそのライブを見て理亞と一緒にスクールアイドルをしたいという学校の有志4人が集まる。これには、人見知りの理亞としてはおどろいたとのこと。それでも、理亞のなかでは、

「自分のスクールアイドルユニットができた!!」

という感動がとても強かった。理亞だけのユニット、そのなかには、Saint Snow活動時、つまり、聖良がスクールアイドルとして活動したとき、聖良と理亞を陰ながらもバックアップしていた、まわりから「Saint Snow第3のメンバー」ともいわれていた生徒も参加していた。であるが、その生徒についてはまたどこかでお話しする機会があるだろう。

 と、いうわけで、聖良・理亞が正月、正月ボケをかましている、いや、浦の星の生徒たちの夢、「廃校で消えゆく浦の星の名前をラブライブ!の歴史に刻んで欲しい」を叶えるために頑張っている?Aqoursメンバーを特訓するために沼津に行くのだが、その沼津旅行のあと、理亞とそのユニットメンバー4人は一緒に来年度のラブライブ!優勝を目指して楽しく、そして、一生懸命に頑張っていた・・・のだが、ある日を境に状況はがらりと変わってしまう。

 その日とは・・・ラブライブ!冬季大会決勝の日だった。そう、千歌たちAqoursがラブライブ!決勝で優勝し消えようとしていた浦の星の名前をラブライブ!の歴史に深く刻み込んだ、浦の星の生徒たちの夢を叶えた、その日だった。このとき、聖良・理亞もAqoursを応援しにラブライブ!決勝の地、秋葉ドームに来ていたのだが、この日を境に理亞は変わってしまったのだ。理亞が函館に戻ってくるなり、これまで楽しく練習していたのに、戻ってきた日から理亞は鬼教官へと変貌を遂げてしまったのだ。そのときの理亞の様子だが、まるでなにかにとりつかれたように、いや、なにかの狂信者、みたいになってしまったのだ。むろん、これまでは楽しく感じられる練習だったのが、この日を境にかなりきつい練習ばかりするようになる。いや、理亞以外のメンバー4人にとってみれば、地獄の練習・・・といっても過言ではなかった。さらに、弱音を吐くメンバーには、理亞、怒りの鉄槌?みたいなものをも下す始末。ついには、このきつい地獄の練習の日々にメンバーは理亞が見ていないときに弱音を吐くようになり、1人やめ、2人やめ、となってしまう。それでも理亞はきつい練習をやめなかった。

 そんな状況を理亞のユニットメンバーから聞いた聖良、少し危機感を抱く。

(理亞にとってガス抜きをしないと、このままじゃ、ほかのメンバーが倒れてしまう・・・)

と、考えた聖良、卒業旅行と称して理亞だけを連れ出した、ということだった。

 これを聞いた千歌、思わず、

(なんか、私たちと似ているのかなぁ、今の理亞ちゃん・・・)

と、考えてしまう。そして、

(今の私たちって、ダイヤちゃんがいないために良いパフォーマンスができていない・・・。対して、理亞ちゃん、聖良さんがいないなかで1人でもがき苦しんでいるみたい・・・)

と、思うようになる。が、同じ状況に陥っていると気づいても、その解決策なんて、今の千歌たちには考え出すことなんてできなかった。そんな状況に陥っている千歌、なのか、

(でも、今の私たちじゃどうしても・・・)

と、諦めの表情で思ってしまった。

 とはいえ、このまま遠くにいこうとしている理亞とその理亞を追いかけていったルビィをこのままにしていたのではよくない、というわけで、聖良と千歌、梨子、曜、花丸、ヨハネの6人はルビィと理亞を追いかけていった。

 

 そんな千歌と聖良のやり取りがあったのだが、肝心の理亞・・・はというと、疲れたのか、それとも、追いかけるルビィを待つためなのか、歩幅を小さくするように走るスピードを落とし、そして、止まった。これには、ルビィ、理亞が突然止まったことを知ると、なんとか理亞に追いつき、

(やっと理亞ちゃんに追いついた・・・、理亞ちゃんに・・・、理亞ちゃんに・・・)

と、少し安心したかのような表情を理亞に見せる。が、理亞はそんなルビィの表情を見たのか、すぐにうしろを向いてルビィのもとから逃げ出そうとする。対して、ルビィ、そんな理亞に対し、

「ごめんね!!」

と、理亞に謝る。このとき、ルビィ、

(理亞ちゃんに謝らないと・・・。ルビィも理亞ちゃんも大変困っている状況なのに・・・、ルビィには千歌ちゃんたちがいる・・・けど・・・、理亞ちゃんにはまわりに誰もいない・・・)

と、理亞に同情をみせるようになってしまう。そのためか、ルビィ、おもわず、

「理亞ちゃんは1人で頑張っているのに・・・」

と、同情ともいえる発言をしてしまう。このルビィの同情じみた発言に、理亞、おもわず、

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

という言葉、いや、理亞の本音ともとれる言葉を発してしまう。それはまるで、同情なんて必要ない、という理亞の気持ちを代弁しているかのようだった。物事に対して真面目、であるが、人見知りであり、人付き合いも苦手、そのために、なんでもかんでも1人でしょってしまう、そんな理亞の姿がそこにあった。

 で、この理亞の言葉を聞いたルビィ、

(理亞ちゃん・・・)

と、ただ黙るしかなかった・・・。

 

 



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Moon Cradle 第3部 第4話

 と、ここで忘れているかもしれないが、この物語の主人公は、Aqoursのメンバーの1人、渡辺曜のいとこで曜の大親友、そして、静真高校の生徒会長、渡辺月、である。なので、話の軸をそちらに戻そう。

 遠くから千歌たち、そして、聖良・理亞を見ていた月、あまりにみんなの声が大きかったのか、月にも、千歌たち、聖良・理亞の会話は筒抜けだった。そのなかで、月、

(どうやら、サイドテールの少女(聖良)とツインテールの少女(理亞)は姉妹みたいdね)

と、みんなの会話から聖良と理亞の関係を認識する。と、同時に、

(で、曜ちゃんたち新生Aqoursが不調である理由、それは、ここにいないダイヤさんたち3年生3人がいないため・・・、そして、ツインテールの少女も今の新生Aqoursと同じ状況に陥っている・・・そんな感じがしたよ・・・)

と、これまた的確な考えをみせてしまう。やっぱり、月、静真一の才女である。

 そんな月であったが、それと同時に、

(でも、いくら静真一の才女ともいえる僕であっても、ダイヤさんたち3年生3人の代わり・・・なんてできないよ・・・。僕、お手上げだよ・・・)

と、これまた諦めの表情を見せる。あのカリスマ性を持ち天才ともいえる月でもってしても不調の原因の一部を知ることがでたからといって千歌たち新生Aqoursの不調を直す打開策を考え付くことなんてできなかった、現時点では・・・。その思いがあったのか、月、

(沼田のじっちゃん、僕、曜ちゃんたちと一緒に行動しても、沼田のじっちゃんが言っていた問いに答える自信、ないよ~!!)

と、珍しく弱音をみせる。月は以前、静真と浦の星の統合について静真の影の神であり、静真高校PTA会長であり、静真高校創立家の末裔である沼田に直談判したとき、沼田から統合する上で必要ともいえる問い、

「部活動とは何か」「部活動をする上で大切なこととは」

その答えを導くためには浦の星の生徒と一緒に行動すればいい、と、沼田は月に言っていたのである。と、同時に、沼田、その問いの答えのヒントとして、「なぜなら、その問いの答えは「浦の星の生徒はしらないうちにそれを実践している」から」と言っていたのである。が、その浦の星の生徒である千歌たち新生Aqoursがまったく不調な状況である。それを考慮すると、まずは不調という状況をまずは打開しないと先に進めない、そう月は考えていた。

(あぁ、どうすればいいの・・・)

と、月、珍しく顔を抱え込んでしまう。

 そんな月であったが、突然、ある光景が月の頭のなかに浮かび上がる。

(「月ちゃん、私にとって、月ちゃんは、いつまでも、ず~と、永遠に、大切な友達なんだよ!!」)

という声と共にある少女が月の頭のなかに現れた。これには、月、

(な、なに!!なにか頭のなかが・・・)

と、困惑してしまう。が、この少女はさらに月にある言葉を投げかける。

(「だからね、別れはね、すべてが終わる、ゼロに戻る、なにもかもなくなる、ってわけじゃないんだよ!!」)

この言葉に、月はさらに困惑する。いや、以前、月の頭のなかに現れた言葉たち、だったが、それでも、月、

(な、なに、この言葉たちは・・・?)

と、困惑の度合いを強めてしまう。

 が、そんな困惑気味の月、であったが、突然、遠くから、

ブー ブブブ ブー

と、なにかが飛んでくるような音が聞こえてきた。これには、月、すぐに、

(なにかが飛んでくるような気がする・・・)

と、現実に引き返すと、すぐにその音が聞こえてくる方向へ、海へと視線を移す。

 一方、その音はルビィや理亞、そして、ようやくその2人に追いついた千歌たち5人と聖良にも聞こえていた。

(な、なにが飛んでくるよ~!!)

と、ルビィ、その音に少し驚いてしまう。いや、そこにいる全員、そう思ったに違いない。そのためか、千歌、

「な、なに!?」

と、遠くから聞こえてくる音に対して驚きの声をあげるも、それを見極めるためか凝視してしまう。

 が、遠くから聞こえてくる音は、千歌たち、そして、月のところに急速に近づいてきた。そして、誰でも目視できるくらいにまでそれが近づく。なんと、それはヘリだった。いや、千歌たち2年生3人にとってとても見覚えがある、白とピンクのヘリだった。そう、そのヘリとは・・・。

 で、そのヘリを見て、曜が一言。

「これ、まえにもたしか似たような・・・」

その曜が言っていたそばからそのヘリは千歌たちに近づく。このままだと千歌たちにぶつかる!!、そんなところまで千歌たちに近づくヘリ。「このままじゃぶつかる!!」そう千歌たちはそう思ってしまうほどヘリは近づいていたのだ。

 けれど、そのヘリもそれに気づいていた(当たり前?)のか、千歌たちにぶつかるぎりぎりの高度で、

ブブブブ

と、ローターが回る音を響かせながら飛んでいった。が、その先には月がいる!!月、すぐに、

(あっ、僕にもぶつかっちゃうよ!!)

と、おどおどしながら自分の方向に飛んでくるヘリの方を見る。が、月がいるのは千歌たちがいる砂浜より高い位置にある石階段の上だった。なので、ヘリ、千歌のところから少しずつ上昇し、月がいるところではある程度少し高い高度でもって月の上を飛んでいった。が・・・。

(あっ、僕の帽子!!)

と、心の中で叫んでしまう月。そう、ヘリが月の真上を飛んでいくと同時に月がかぶっていた野球帽も飛ばされてしまったのだ。

 そのヘリは月の真上を飛ぶと同時に旋回し千歌のところへと近づく。が、このときは真上に飛ぶ・・・わけではなく、完全に千歌たちの目の前に着陸しようとしていた。これには、千歌、曜、梨子、共に、

(((デ、デジャブ!!)))

と、まえにも似たようなことがあった、そんなことを考える、と、共に、

(((って、ことは・・・、私たちのところに帰ってきたんだ!!)))

と、少し淡い期待を抱く。

 そして、ヘリは千歌たちの目の前に着陸する。淡い期待を抱く千歌・曜・梨子の3人。そのためか、

「「「ま、鞠莉ちゃんだ!!」」」

と、千歌・曜・梨子、3人とも言葉をそろえて言う。そう、以前、千歌たち2年生3人がスクールアイドルを始めたとき、同じ砂浜で練習していたところ、突然、今回と同じヘリが3人の目の前に降り立ったのだ。そのとき、ヘリから現れたのが鞠莉だった。これが千歌・曜・梨子にとって鞠莉との初邂逅であり、ここから千歌たちAqoursの、スクールアイドルとしての歯車が回りだしたのだった、といっても過言ではなかった。なので、千歌・曜・梨子にとってこの展開は不振にあえぐ新生Aqoursにとって希望の光になる、そう思っていたのかもしれない。

 そして、ヘリの扉が開く・・・のだが、そこにいたのは鞠莉・・・には似ているものの、鞠莉とは別人だった。これには、「鞠莉ちゃん!!」という千歌・曜・梨子の言葉によって鞠莉が帰ってきたと思った花丸がびっくりして、

「ずら~!!」

と、鞠莉に似ているが別人だったことに驚きの声をあげてしまった。さらに、曜・梨子にいたっては、

「鞠莉ちゃん!!」(曜)「じゃない!!」(梨子)

と、言ってしまうほど、鞠莉に似ているけど別人がでてきたことに驚いてしまう。この展開だが、このとき、千歌・曜・梨子はそろいにそろって、心のなかで、

(((鞠莉ちゃんじゃない!!じゃ、誰なの?)))

と、誰なのかわからず、少し困惑すると同時に、

(((あぁ、期待してがっかり・・・)))

と、少し残念風に考えてしまっていた。

 が、ドアから見えた鞠莉似の金髪女性、ドアを開けたとたん、千歌たち6人と聖良・理亞に向かって挨拶を始めた。

「マイドールがいつもお世話になっていま~す!!」

言葉遣いがどこか鞠莉に似ている・・・、それでも、どこか大人の上品な雰囲気をかもし出している、その金髪女性、そんな感じがしていた。

 で、その金髪女性はその言葉に続けて自己紹介を始めた。

「鞠莉のママ、鞠莉‘sママで~す!!」

そう、その金髪女性こそ、鞠莉の母、鞠莉‘sママだった。鞠莉’sママ、目にかけていたサングラスを外すとどこか鞠莉と同じ顔立ち・・・といった感じがしていた。これには、千歌たち6人、ともに、

((((((えっ、鞠莉‘sママ!!))))))

と、驚いてしまい、きょとんとした表情をしてしまう。特に、千歌は、

「えっ!!」

と、言葉を発するくらいに・・・。

 そんなときだった。千歌の頭の上になにかが飛んできてはそのまま千歌の頭に覆いかぶさってしまう。これには、千歌、

(あっ、前が見えないよ~!!)

と、さらに困惑してしまう。が、曜、千歌の顔を覆いかぶさっているもの、男物の野球帽を見て、

(あれっ、これって・・・)

と、この帽子に見覚えがある、そんな感じがしていた。

 

 と、鞠莉‘sママを乗せたヘリ、そのまま砂浜に着陸・・・しようにもここは砂浜である。ヘリポートではない。そのまま降りると飛び立つときに細かい砂などが舞い上がりヘリに損害を与えてしまうなど支障が生じてしまう・・・。と、いうわけで、鞠莉’sママ、ヘリに搭乗したまま千歌たちにあるお願いをする。

「あなたたちがマリーが言っていたAqoursのみなさまで~すね!!実はお願いがありま~す!!詳しいことはホテル小原で言いたいので、このヘリに乗ってくださ~い!!」

突然現れた鞠莉‘sママのこれまた突然のお願い、千歌たちはただ、

(えっ、なんで?)

と、少し疑問に思う。が、それでも、

(でも、これがもしかしたら、この不振を振り切れるいい機会になるかも!!)(千歌)

と、これまた淡い期待をしているのか、

「わかりました!!」

と、二つ返事で承諾する。

 が、千歌たち新生Aqours6人は承諾・・・したのだが、鞠莉‘sママ、まったく関係ない?聖良と理亞に対しても、

「あなたたちも来てくれたらハッピーです!!」

と、千歌たちと一緒に来て欲しいとお願いされる。これには、聖良、

「まっ、乗りかかった船ですし、千歌さんたちがいなくなっては沼津に来た意味もありませんからね。一緒に行きましょう」

と、承諾する・・・のだが、聖良、すぐに、

「でも、ひとつだけ条件があります」

と、鞠莉‘sママについていくための条件をつける。それは・・・。

「千歌さんたちと私たち、そして、この石階段の上にいる少女も一緒に連れて行ってください!!」

と、石階段の上の方を指差しながら言う。その聖良の指差す方に千歌たちは振り向く。と、そこには・・・。

「月ちゃん!!」

そう、月がいたのだ。これには、曜、

(やっぱり月ちゃんここに来ていたのか~!!でも、なんで、ここに月ちゃんがいるの?もしかして、昨日の(部活動報告会のライブの)失敗で落ち込んでいる私たちのことを心配しにきたのかな?)

と、月がここに来た理由を考えていた。

 一方、聖良が指差したことでこっそり千歌たちを心配しに見に来ていたことがばれた月、千歌たちが「月ちゃん!!」と言ったことに、

「えっ!!」

と、驚くと同時に、

(なんで僕の方を指差したの、サイドテールの少女(聖良)!!なんで!!)

と、少し困惑してしまう。突然のことなので、月にしてもこれから先どうリアクションをとればいいのか困っていた。

 そして、聖良が指差したことでその指差した先にいた少女、月の存在に気づいた鞠莉‘sママ、月の方を見て、おもわず、

(あっ、あれがあの人が言っていた、渡辺月、って少女なのね!!静真の生徒会長!!これはあの人にとってみても好都合で~す!!)

と、少しにやりと笑いつつもそう思ってしまう。

 そして、鞠莉‘sママ、すぐに月についても、

「わかりました!!あの子も一緒に来てもいいですよ~!!」

と、月も一緒に行くことを承諾してしまう。この鞠莉‘sママの言葉に、月、おもわず、

「えっ、えっ!!」

と、なにが起きているのかわからない、まるで、パルプンテ、いや、パニック状態に陥ってしまった。

 



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Moon Cradle 第3部 第5話

 内浦の砂浜海岸からホテル小原沼津淡島まで、小原家所有のヘリ、いや、小原財閥が自衛隊の輸送用に開発・販売されている最新鋭ヘリ、HOO18-MSP(ヘリ・オブ・オハラ・18/Mari・スペシャル・エディケーション)、は、鞠莉‘sママと千歌たち新生Aqoursの6人、聖良・理亞、それに、わけがわからないまま連行?されている月を軽々と乗せて飛んでいた。

 そのヘリのなかで、千歌、外を見ながら、

「うわ~、私たち、空、飛んでいるよ!!(内浦の海、)とっても綺麗だよ!!」

と、子どもじみた感じではしゃいでいた。また、花丸はというと、

「未来ずら、未来ずら!!」

と、こちらもヘリで空を飛んでいることに花丸なりに喜んでいた。一方、ルビィはというと、

「うぅ、こわいよ~」

と、こちらは真下が海ということもあり、昨日のライブの失敗で起きた不安・心配をさらに増長させていった。

 そんな千歌たち6人に対し、月はというと・・・。

「こんにちは、僕、渡辺月といいます」

と、誰かに挨拶する。これに対し、挨拶された側も、

「こんにちは、私は聖良、鹿角聖良と申します」

おt、こちら、もとい、聖良も月に挨拶する。月と聖良、ともに初対面ということもあり、まずはお互い挨拶を交わすことから始まった。

 が、挨拶が終わると、月、すぐに聖良に対しある願いを言う。

「ところで、聖良さん、会ってそうそう申し訳ございませんが、1つ聞きたいことがあります!!」

この月の言葉に、聖良、

「いいですよ。私がわかることならお教えいたします」

と、承諾する。月はその聖良の言葉を受けて、すぐにあることを尋ねた。

「先ほど、曜ちゃんたち(新生Aqours)に対して「3年生の存在が大きかった!!」って言っていましたが、それってどういうことなのですか?」

この月の問いに対し、聖良は、

「少し真面目に話すけど、それでいい?」

と、月にある覚悟?を求めると、月、

「わかりました。たとえ、僕にとってつらいことでも覚悟はできています」

と、真面目に答えた。これには、聖良、

「わかりました。それじゃ、私が言った言葉の真実を伝えましょう」

と言うと、自分の発言についての真意を月に伝えた。

「「3年生の存在が大きかった」、それは、ここにいる千歌さんたち、新生Aqours、は、本来のAqours、ではない、ってことです!!」

これを聞いた月、

「新生Aqoursは本来のAqoursじゃない・・・」

と、驚く・・・、が、それについては、月、すでにそうではないかとうすうす感じていたので、それほど驚いていなかった。この月の様子を見て、聖良、

(あの月って子、私の真意を聞いてあまり驚いていないですね。と、いうことは、月さん、それについてはうすうすと感じていたってことですね)

と考えると、すぐにその真意の詳しい内容について語り始めた。

「本来のAqoursは今ここにいる2年生の千歌さん、曜さん、梨子さん、1年生のルビィちゃん、花丸さん、善子さん、それに加えて、3年生の黒沢ダイヤ、松浦果南、小原鞠莉、この9人です。この9人がいたからこそ、あのラブライブ!で優勝するくらいの実力、そして、実績を残すことができたのです」

これには、月、

(やっぱりそうでしたか・・・)

と思うと、すぐに、

「たしかに・・・」

と、昨日のライブで見た千歌たち新生Aqoursの姿を見てうすうす感じていたこと、それを聖良によって肯定されたことに、月、少し驚く素振りをする。この月の様子を見てか、聖良、

(この子、案外、人を見る目はいいのかもしれませんね。なら、これならどうでしょうか)

と、月を少しからかうかのような考えを持ち始める。

 そして、聖良、月に対して、

「その3年生ですが、本来のAqoursでの立ち位置、それが、1・2年生に対しての先輩、でした、学校の中でもあり、スクールアイドルとしてもですがね」

と、月にとって驚きの発言をする。これには、月、

(えっ、先輩役!!学校では3年生は最高学年だからわかるけど、スクールアイドルとしも先輩なの!!)

と、ビックリする。これを受けてか、月、

「えっ!!」

と、目を丸くするくらいの表情をみせる。その月をみてか、聖良、あることを話す。

「実は、ダイヤ、果南、鞠莉、1年生のときに浦の星の廃校の話を聞いて、当時から人気があったスクールアイドルになり浦の星の廃校を阻止しようとしました。ダイヤの日舞などで鍛えた華やかさと存在感、果南のダイビングで鍛えた無尽蔵の体力から繰り出されるダイナミックさ、それでいて繊細なリズム感とダンス、鞠莉の小さいときから鍛えられた歌唱力、これらによって、3人のスクールアイドル、まっ、初代Aqoursといえるのですが、その初代Aqoursは結成当事から快進撃を続け、ついには東京のスクールアイドルのイベントに呼ばれるくらいの知名度を獲得しました。まだ、レジェンドスクールアイドルであった、μ‘sの星空凛、小泉花陽、西木野真姫もスクールアイドルとして活動しているなかで、新世代のスクールアイドルとして注目されていました」

これを聞いた月、

(Aqoursの3年生っていったい・・・)

と、唖然となると、そのまま、

「えっ・・・、それって凄くない・・・」

と、口をあんぐりしてしまった。まさか、あのダイヤたち3年生3人が凄い人物だったなんて驚くしかなかった、月が・・・。そんな月に対してか、聖良、そのまま話を続ける。

「ですが、その東京でのイベントのとき、初代Aqours・・・、ダイヤたち3人は歌うことができず、そのまま、初代Aqoursは自然消滅してしまいました・・・」

この聖良の言葉に、月、

(えっ、将来有望なスクールアイドルだったのに、なんで自然消滅したの!!)

と、初代Aqoursが自然消滅したことに驚くと、そのまま、

「なんで・・・なんで・・・やめたの・・・」

と、月、聖良にその理由を尋ねる。すると、聖良、すぐにその理由を答えた。

「その初代Aqoursが自然消滅した理由・・・なのですが、東京のイベントでなぜ歌うことができなかったのか、それは簡単でした。そのイベントのとき、鞠莉は足を怪我していました。歌唱力が武器である鞠莉にとって、ダンスはかなりの高レベルだったダイヤ、果南に比べて少し苦手でした。日舞で鍛えたダイヤ、無尽蔵の体力がある果南、この2人についていく、そのことを考えると、鞠莉にとってダンスは鬼門でした。そのため、その2人についていくためのダンス練習もかなりハードだったと聞いております。そのきつい練習のせいで鞠莉は怪我をしたのですが、それについては私も仕方がないと思っております。ですが、鞠莉はそれを隠してまで、無理をしてまで東京のイベントにでようとしていました。が、それについては果南にはバレバレでした。また、ほかにも鞠莉が果南とダイヤにある隠し事をしていたのですが、それについても果南、ダイヤにはバレバレでした。その隠し事とは海外留学の話でした。実はこの東京のイベントの前、鞠莉には海外留学の話が舞い込んでおりました。が、鞠莉はスクールアイドルとして、ダイヤ、果南と一緒にやっていきたいため、その話には反対していました。が、果南にとってみれば、鞠莉の輝かしい未来、それを蹴ってまでスクールアイドルの道を究めたい、そんな鞠莉の考えに心痛めていました。そして、このとき、鞠莉が怪我をしていることを知ったとき、果南、輝かしい未来が待っている鞠莉のことを想い、その東京のイベントで歌うことをボイコットした、とのことでした」

この聖良の言葉に、月、

(果南ちゃんの想い、鞠莉ちゃんの想い、それが錯綜している・・・)

と、果南と鞠莉の行き違いを心配そうに思うが、聖良はそのまま話を続けた。

「そして、その果南のボイコットにより鞠莉と果南は仲たがいをしてしまいます。結果、鞠莉は果南の想いに気づくことなく、果南とダイヤにはなにも言わずに海外に留学してしまい、そのまま初代Aqoursは自然消滅してしまいます。さらに、鞠莉は果南の想いに対してある誤解を持ったまま1年半ものあいだ海外の高校で暮らすことになります」

この聖良の言葉に、月、

(誤解を持ったまま、1年半も海外で暮らすことになるなんて・・・、鞠莉ちゃん・・・可哀想・・・)

と、鞠莉に同情してしまう。そんななか、聖良はある言葉を口にする。

「とはいえ、鞠莉がなんで足を怪我してしまったのか、それは、非常に高いレベルのダンスをするダイヤ、果南に追いつくため、なんですが、あともう1つ、この当時のスクールアイドル界に流れていた風潮も・・・」

と、ちょっと口を濁す聖良。これには、月、

「えっ、2人に追いつくこと以外になにか理由が・・・」

と、聖良にもう1つの理由を尋ねるも、すぐに、聖良、

「それはそれとして・・・」

と、話の話題をそらすと同時に、鞠莉の話を続ける。

「で、海外留学した鞠莉ですが、それでも、鞠莉の中にあったスクールアイドルに対する熱意は消えることはありませんでした」

その言葉を口にした聖良、これにおもわず、月、

(えっ、海外留学しているのに、スクールアイドルに対する熱意が消えていないなんて・・・、なんという執念・・・)

と、鞠莉の熱意に感心する月。その月を見てか、聖良、話に熱が入る。

「その鞠莉が海外留学中にしたこと、それは、ダンス特訓、でした。ダイヤ、果南と比べてダンスが苦手な鞠莉。そこで、鞠莉は留学先のヨーロッパでダンス技術の向上を目指しました。クラシックバレエ、モダンダンス、民族舞踊など。その地にダンスがあるといえばそのダンスを習得するためにその地に飛んでいった、と聞いております。もちろん、将来社交界デビューするために社交ダンスもマスターしたとのことでした」

これを聞いた月、

(ま、鞠莉ちゃん、凄すぎ・・・)

と、鞠莉に対してなにも言えない状況になる。

 そして、聖良の鞠莉の武勇伝?もついに佳境を迎える。

「と、いうわけで、鞠莉、3年生になったときには苦手?のダンスをダイヤ、果南と比べて引けをとらないほどのレベルにまで上達したとのことでした。そんなとき、浦の星の廃校が不可避であることを知った鞠莉、ついに海外留学のために浦の星を離れたときから暖めていた、スクールアイドルをまっとうすること、そして、スクールアイドルとしての力でもって浦の星の廃校を阻止しようとする計画を実行します。まず、鞠莉は浦の星の大スポンサーであった小原家の当主、つまり、鞠莉の父親に頼み、浦の星の理事長に着任することに成功します。その理事長の権限を使い鞠莉は浦の星に舞い戻ると、当時スクールアイドル活動を始めたばかりの千歌さんたちをバックアップしつつ、東京のイベントでボイコットしたときの果南の想い、その真意を知らないまま、果南にスクールアイドルをまた一緒にやろうと迫ったそうです。むろん、果南は輝かしい将来のことを犠牲にしてまでスクールアイドルにのめりこもうとしている鞠莉のことを思って鞠莉の願いを拒否し続けました。でも、ダイヤの策略?によって鞠莉、果南、共にお互いの誤解を解き、お互いの想いを知ったことで2人は歴史的な和解をします。それを演出したダイヤでしたが、静かに退場するところをルビィちゃんたちに見つかり、ルビィちゃんの誘いを受け入れたことで、2代目Aqours、本来のAqours、パーフェクトナイン、になったそうです」

と、本来のAqoursの成り立ちの説明を聖良はついに終えた。その説明を聞いたのか、月、

(ま、まさか、Aqoursの歴史にこんな物語があったなんて・・・、そう考えると、僕、Aqoursのこと、あんまり知らないんだな・・・)

と、自分の考えの浅さかさに嘆いていた。

 そんな月に対して、聖良は今の新生Aqoursに起きていることを話す。

「で、少し脱線しましたが、本来のAqoursはラブライブ!で優勝するくらいの実力を持っている、けれど、もっと細かくみれば、1年生、2年生、3年生で役割分担をしていました」

これを聞いた月、

「えっ、各学年で役割が分かれていたの!!」

と、意外な事実に驚く。むろん、月、心の中では、

(そんな話、曜ちゃんから聞いていないよ!!ないよ!!)

と、本当に、いや、心の中でエコーがかかるくらいの驚きをみせる。

 だが、聖良の言葉は続く。

「まず、2年生。1番最初に2代目Aqoursを始めたこともあり、Aqoursの中心、船頭、といってもいいでしょう。Aqoursの行き先を決める、そんな役割を持っていました。対して、1年生は新人乗組員、2年生のあとをついていく、そんな存在。でも、新人は新人でもとてつもない未知のパワーを持っています。そのパワーを私は目撃しました。私の妹、理亞がラブライブ!冬季大会北海道最終予選で焦りから大きくこけてしまい私たちSaint Snowは予選敗退しました。それにより、理亞はそのまま塞ぎこんでしまいます。そのとき、1年生のルビィちゃん自ら理亞を励ましてくれたことにより、理亞は再び立ち上がることができました。そして、それは、奇跡のユニット、Saint Aqours Snowを誕生させる原動力ともなりました」

これを聞いた月、

(たしか、Saint Aqours Snowって、「函館で起きたクリスマスの奇跡」ってニュースになったよね。ま、まさか、そのメンバーがここにいる聖良さんと、ツインテールの少女、たしか、理亞ちゃん・・・、なんだよね・・・、それと、ここにいる曜ちゃんたち新生Aqoursなんだ・・・)

と、さらにビックリしてしまう。実は、Saint Aqours Snow、クリスマスに起きた奇跡、としてニュースになるくらい凄いライブだったのである。そのことをニュース番組で知っていた月、そのメンバーのほとんどが今ここにいることに驚いていたのだ。

 その月を見てか、なにか楽しいような感じをしているのか、聖良、ついに核心へと迫る。

「で、ダイヤたち3年生のAqoursでの立ち位置ですが、まえにスクールアイドルをしていたこともあり、2年生の指し示す方向へと進むためのエンジン役、さらに、家でいうところの屋根、みたいなものでした。3年生自ら、1・2年生の盾になっていろんなものから守りつつ、まだ見たことがないところに向かって自らの力で切り開いていったのです。特に、廃校のことについては3年生、特に生徒会長のダイヤと理事長の鞠莉がやっていました」

この月が知らない事実を聞いた月、おもわず、

(えっ、廃校問題を3年生2人だけで取り組んでいたの!!同じ高校生とは思えない・・・)

と、唖然となってしまう。廃校問題はとても難しいファクターである。それをたった2人で取り組んでいることを考えると、3年生のダイヤと鞠莉、かなりのハイスペック、である。

 が、話はついに最後を迎える。聖良、唖然となっている月を見てか、微笑みつつしゃべる。

「そのエンジン役、屋根役だった3年生が卒業してもうここにはいません。エンジンがない船っていうのは潮の流れ、自然の流れにそって動くしかありません。そのために迷走してしまいます。また、屋根がない、ということは、自分たちを守るものがない、いろんな問題を真正面から受けざるをえません。千歌さんたち1・2年生6人は今まさにその状態です。3年生がいない、本当にこれまで体験したことがない、そんな危険な状態です。そして、その状態のなかでなにかあったのかもしれませんが、その危険な状態だった千歌さんたち、もしかすると、ライブでもあったのかもしれませんが、自分たちでは対処できない問題に直面して、そのときのライブで、いつもいるはずの3年生がいない、ステージが広く感じる、そう思ったのでしょう、3年生がいないから、いつも守っていたはずの、自分たちが進みたい道へと進ませてくれるはずの3年生がいない、そのことにより、突然、不安・心配の海・沼に陥ってしまった、私はそう思います」

この聖良の考えに、月、

(この聖良さんのいうこと、的を射ていると思います。なんていうか、とても凄い人、と見えてしまいます・・・)

と、聖良の言葉にただただ感心するしかなかった。

 が、それと同時に、

(なら、この聖良さんなら、不安・心配の海・沼に陥ってしまった曜ちゃんたち新生Aqoursを復活させる方法を知っているに違いない)

と、聖良を頼ろうと思うようになり、月は聖良に尋ねてみた。

「聖良さん、だったら、曜ちゃんたち、新生Aqoursをよみがえさせる方法、なにかありませんか?」

 が、聖良の答えは意外なものだった。

「その方法を教えることはできるかもしれません。ただし、その根本たる原因、それを取り除けるかは、千歌さんたち新生Aqoursメンバー全員の心がけ次第です。そう考えると、今、この場で千歌さんたちに教えることはできません。だって、それをするには莫大なお金と労力、それに、相当な外国語の能力がないといけませんからね」

この聖良の答えに、月、おもわず、

(え~、そんな~。これじゃ、根本的に問題を解決できないよ~)

と、心の中で叫んでしまう。無論、少しがっかりな表情もしてしまう月。

 そんな月を見てか、聖良、月に驚くべきなことを言う。

「けれど、新生Aqoursをよみがえさせることについて1つだけ言えることがあります。それは、月さん、あなたがそれを果たすことができる、新生Aqoursをよみがえさせる、とても重要な存在である、ってことです!!」

この聖良の言葉に、月、

「えっ、僕が!!」

と、驚いてしまう。突然聖良から新生Aqoursをよみがえさせるための重要な存在と言われたからである。そのためか、

(え~、僕、まだ曜ちゃんたち新生Aqoursのことについてそんなに詳しくないよ~!!それなのに、なんで、なんで、そう思えるの~!!)

と、困惑してしまった。

 そんな月とは裏腹に、

「みなさん、もうすぐホテル小原沼津淡島に到着します」

と、ヘリのパイロットからもうすぐ目的地のホテルに到着することを告げられる。そんなときだった。突然、

(あれっ、ホテル小原って言ったよね。たしか、聖良さんが先ほどの言葉のなかに、「鞠莉は浦の星の大スポンサーであった小原家の当主、つまり、鞠莉の父親に頼み、浦の星の理事長に着任することに成功します」って言ったよね。で、鞠莉ちゃんの氏名、聖良さんによると、小原、鞠莉・・・、って、えっ、まさか!!)

と、月、ある答えに達する。それを確かめるために聖良にあることを聞く。

「あの~、聖良さん、ちょっとお伺いしますが・・・、鞠莉ちゃんってあの小原財閥の娘さん・・・なんですよね・・・」

この質問に聖良、間をおかずに答える。

「えぇ、たしかに鞠莉は沼津、いや、静岡、いや、日本を代表する財閥、小原財閥、その中心となる小原家、その当主の一人娘です。そして、浦の星最後の理事長でもあります」

この聖良の答えに、月、おもわず、

(え~、鞠莉ちゃんってそんなに凄かったの~!!それに、なんで、高校生が理事長を務めているの!!それって、漫画やアニメの世界の話でしょ~!!それが、なんで、それが許されるわけ~!!!)

と、なにがなんだかわからなくなってしまう。仕舞いには、

「なんで、なんで、鞠莉ちゃんが、高校生なのに、高校の理事長に就任できるわけ~!!」

と、声をあげてしまうことに・・・。これには、聖良、

「私にそう言われましても・・・」

と、月に対してどう対応すればいいのか困ってしまう。

 と、ここで少し解説であるが、月が困惑するのも仕方がないことである。このときまで、鞠莉が小原家の当主の一人娘であり、浦の星最後の理事長であることを知らなかったからである。なぜなら、曜が月にAqoursのことについて話すとき、鞠莉のことはいつも「鞠莉ちゃん」って言っているから。そして、鞠莉の名字がおはらであること、鞠莉が浦の星の理事長であったことは言っていなかったのだ。曜からすれば、博識ある月にとってそれくらいの知識はすでに持っている、そう思っていたからこそ自ら言わなかったのである。と、いうわけで、少しご都合主義的なところがあるが、月、このとき、初めて、鞠莉の素性を知ることができたのである。ちなみに、たしかに月の言うとおり、普通なら高校生が高校の理事長になるなんて考えられないかもしれない。が、この原作はアニメである。なので、このことが起こっても不思議ではない、たぶん・・・。

 とはいえ、月、聖良の意外すぎる言葉たちに、

(ガガ・・・ガ・・・)

と、口をあんぐりし続けるほど開いた口が塞がらない、そんな状況に陥るなか、突然、

ガタンッ

と、なにかにぶつかったような音が聞こえる。この音に反応してか、ヘリのパイロット、

「さぁ、着きましたよ!!」

と、目的地のホテルに着いたことをみんなに伝えていた。

 



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Moon Cradle 第3部 第6話

「連絡が取れない!!」

鞠莉‘sママとそばつきの黒服の男たちによってつれてこられた場所、それは、小原財閥所有、沼津のホテルのなかでは1・2を争う、ホテル小原沼津淡島、その大ホールだった。そこには、なぜか、すでに椅子が6脚あった。これには、月、

(鞠莉‘sママさん、曜ちゃんたち(新生Aqours)になにかさせようとしている気がする。なにか裏がありそうだね)

と、鞠莉‘sママを疑ってしまうが、とうの千歌たちはなんも疑いもなくその椅子に座ってしまう。

 そして、千歌たち6人が椅子に座ると、なぜか、鞠莉‘sママのピアノ演奏が始まる。無論、月、この鞠莉’sママの行動に、

(あのご婦人、曜ちゃんたちになにをさせたいの!!)

と、鞠莉‘sママに対して疑い深くなる。が、すぐに、

(っと、鞠莉‘sママさん、なにか尻尾を出すかもしれないから、スマイル、スマイル)

と、ポーカーフェースに徹することにした。

 そんななか、鞠莉‘sママはある驚愕のお知らせを千歌たちにする。

「実は、鞠莉たちが行方不明になったので~す!!厳密には、鞠莉たちと連絡が取れなくなったので~す!!」

この鞠莉‘sママの話を聞いた瞬間、千歌たち新生Aqours6人が発した言葉、それが、この文章の最初に出てきた「連絡が取れない!!」である。

 で、この鞠莉‘sママの、鞠莉たちが行方不明、その言葉を聞いた瞬間、ルビィ、おもわず、

(お、お姉ちゃん(ダイヤ)が行方不明!!どうしよ~、どうしよ~!!)

と、慌ててしまう。実は、ルビィ、理亞から怒られたことをいまだに引きずっていたのである。ルビィはヘリに乗っている最中、

(理亞ちゃんに怒られた~!!確かに、お姉ちゃんはもういない・・・、でも、今のルビィにはお姉ちゃんが必要だよ~!!お姉ちゃん、どうしたらいいの~!!教えて、お姉ちゃん!!)

と、姉ダイヤにすがりたい気持ちで一杯だった。もうここにはいない姉ダイヤの存在、それが今のルビィの中では大きくなっていたのである。その姉ダイヤが行方不明になった。姉ダイヤは、果南、鞠莉と一緒にある国に卒業旅行に行っていることを知っているルビィ、だったが、その国で行方不明になったのだ。なので、今のルビィからすれば一大事、であった。

 とはいえ、鞠莉‘sママのピアノ演奏に感動しつつも、ダイヤたち3年生3人が行方不明、で、今、心ここにあらずの千歌たち6人を見てか、鞠莉’sママ、

「そうなのです!!」「みなさんのことはマリーからよく聞かされました」「学校のこと、ありがとうございます!!」

と、ピアノ演奏が終わるとすぐに千歌たち6人に対してこれまでの学校のことに対しての御礼を言うと、すぐに本題へと入った。

「あの「ハグー」と「ですわ」の3人、一切連絡が取れなくなってしまったので~す!!」

どうやら、「ハグー」と「ですわ」、それに鞠莉、この3人がどこかで行方不明になったので探して欲しい、とお願いしたいみたいであった。とはいえ、「ハグー」と「ですわ」、間違いなく、「ハグー」は果南、「ですわ」はダイヤ、であることはすぐに千歌たち6人、聖良と理亞、共にわかったのだが、月はというと、

(「ハグー」と「ですわ」・・・、なんか、ネーミングセンス・・・、悪すぎ・・・)

と、鞠莉zママに突っ込みたくなるも、すぐに、

(でも、「ハグー」と「ですわ」・・・、包容力がある果南ちゃん、真面目さを感じられるダイヤさん、それを象徴していそうな言葉ではあるね)

と、2人の性格を言葉一つで実感していた。

 そんな月のことなんて知らず、鞠莉‘sママはついにあるお願いをした。

「あなたたちならきっとマリーたちを見つけてくれる~はず~!!」

 この言葉のあと、千歌、

「はっ!!」

と、上から何か落ちてくるのに気づく。それが落ちてきたあと、

コトンッ

という音が引き金となったのか、突然、

ザー!!

という音と一緒に大量のコイン?が千歌たち6人に降り注いでくる。

「わー!!」「なんでー!!」

と、びっくりするも、大量のコイン?から身を守ろうとするものが続出。これには、遠くから見ていた聖良と理亞も唖然となる。

 一方、月はというと・・・。

(まっ、まさか、このパフォーマンスのためだけに曜ちゃんたちをそこに座らせたの!!お金持ちだからってパフォーマンスでかすぎじゃない!!)

と、お金持ちの鞠莉‘sママに対しねたみを感じてしまう。

 ではあるが、実は、降ってきたコイン、本物のコイン・・・ではなく、チョコであった。いわゆるコインチョコ・・・である。そのコインの正体を知ったとたん、月、

(たとえコインの中身がチョコであったとしても、ざっと数えただけで20万枚以上ありそうだよ。それだけ考えても、経費としては100万以上かかっているよ!!やっぱお金持ちのやることは一般庶民の僕からすればわからない、というか、嫌味にしかみえないよ)

と、鞠莉‘sママに対しての憎悪を大きくしてしまった。

 だが、鞠莉‘sママはすぐにあることを千歌たちに伝える。

「(大量のコインチョコを降らせたことについては)渡航費用は出すという意味のパフォーマンスで~す!!」

これには千歌たち6人は大きくこけてしまうも、聖良からみたら、渡りに船、であった。なぜなら・・・。

(これは、渡りに船、に違いない。新生Aqoursをよみがえさせる方法、その1番のネックだったのがお金の問題です。なぜなら、新生Aqoursをゆおみがえさせるには、不安・心配の海・沼の奥底に沈みこんでいる千歌さんたちがある人と会う必要があるから。ただ、子の人たちは、今、日本から遠い国にいます。そのために、そこに行くための多額の渡航費用が必要だった。でも、そのお金を千歌さんたちが持っているなんて考えられませんでした。けれど、その問題についてはそのスポンサーが現れたことで無事に解決しました。それにもう1つの問題、外国語についてもあの子がいますから大丈夫ですね)

そう聖良がそう思うと、安心しきった表情をしていた。千歌たち新生Aqoursをよみがえさせるためのピースは全部集まった、そんな感じだった。

 そんな安心しきった聖良と比べ、肝心の千歌たちはというと・・・、意見が分かれてしまっていた。もし、鞠莉たち3人を見つけてくれたら多額の報奨金を支払うことを鞠莉‘sママから言われ、自分の「ヨハネ’sEYE」で見つけるなんて造作ではない、というヨハネに対しツッコミをいれる花丸、次回のライブ、新生Aqoursの本当の実力をみんなに見せつけるライブ、それをしないといけない、なので、3人を探すための時間があるかどうか心配するルビィ、鞠莉たち3年生3人の行方を心配になりつつも、次回のライブのことも心配になり、3人で相談している、千歌・曜・梨子の2年生トリオ。特にリーダーとしてこれからどうするか、どっちに進めばいいか悩んでしまう千歌。この千歌たち6人の姿に、鞠莉‘sママ、

(さぁ、私の作戦にはやくのるといいで~す!!)

と、不適な笑いをみせる。

 そんな鞠莉‘sママの不適な笑いとはうらはらに、ダイヤたち3年生3人を探すべきか、それとも、次回のライブの準備をすればいいのか、どっちがいいのか悩む千歌。このとき、千歌はこう思っていた。

(たしかに、鞠莉ちゃんたち3人が行方不明なんだから、私としては3人を探したいよ。でも、分校に通わざるをえない、むっちゃんたち、浦の星のみんなのためにも、今度こそちゃんとしたライブ、見せないといけないんだよ!!その準備をするための時間のことを考えると、鞠莉ちゃんたち3人を探す時間が・・・)

こんな風に、いつもなら悩むことはせずに即断即決の千歌ですら今回ばかりはどちらとも重要であり、選ぶことができずにいた。

 そんな千歌の姿を見てか、ついに聖良が動き出した。悩む千歌に対し、聖良はある言葉を口にする。

「行ってきたほうがいいと思います」

この聖良の言葉に千歌たち6人はみな聖良の方を向く。その6人の姿を見てか、聖良は話し続けた。

「先ほど、みなさんの練習を見て思ったんです、理由はどうあれ、1度、卒業する(鞠莉たち3年生)3人と話をしたほうがいいって」

この聖良の言葉、実は、聖良のある想いが籠もっていた。その想いとは・・・。

(不安・心配という深き海・沼に陥っている千歌たち新生Aqours、その根源は、鞠莉、ダイヤ、果南の3年生3人の存在、その存在がなくなったから、これまでその存在に知らないうちに頼っていた千歌さんたち、その存在が今はもうない、そのことに気づかないまま、千歌さんたちはライブをしようとした、が、その存在がもういないことに今気づいてしまい、それがもとで本来の実力をみせることができず、それ以上にパフォーマンスの悪化を引き起こすほどの不安・心配の海・沼に陥ってしまったのかもしれませんね。いや、昔、私たちに初めて会ったとき、もとに、「0」に戻った、そう思ったのかもしれません。なら、解決方法は1つだけ、それは、もう一度、鞠莉たち3年生3人に会うこと。会うことで千歌さんたち新生Aqours6人に3年生3人の存在を再確認できるはず、そして、3人と話し合うことで、その存在について、そして、昔のことについて振り返ることで新しいAqoursの姿を見つけることができるはず!!)

 とはいえ、聖良の言葉に千歌、

(でも・・・、でも・・・、そんな時間は・・・)

と、いまだに悩んでしまう。そのためか、千歌、

「でも・・・」

と、弱音の発言が飛び出す。これには、聖良、言葉を続ける。

「自分たちで新しい一歩を踏み出すために、今までをきちんと振り返ることは悪いことではないと思いますよ」

このとき、月、

(今までを振り返る・・・、それって、ルビィちゃん、それに理亞ちゃんに言いたいことなのかな?)

と、思ってしまう。すると、自然と理亞の方を向く月。それに気づいたのか、理亞、

「ふんっ!!」

と、すねたような姿をみせてしまう。

 一方、この聖良の言葉にルビィはというと・・・。

(聖良さんの言うことも一理あるかも・・・。もしかすると、もう一度お姉ちゃんに会えばなにかわかるかもしれないよ。あわよくば、お姉ちゃんと一緒に・・・)

と、少し淡い期待をしつつ、姉ダイヤと会うことを決意する。と、同時に、千歌以外の新生Aqoursメンバーも、

(鞠莉ちゃんたちに会えばなにかわかるかもしれない!!(曜))

(聖良さんの言う通りかも!!鞠莉ちゃんたちに会えばきっとなにかわかるかもしれない!!(梨子))

(ヨハネのヨハネ’sEYEでもってすれば造作もないはず!!きっとマリーたちに会える!!今こそ、ヨハネの出番!!(ヨハネ))

(鞠莉ちゃんたち3年生を見つけるずら!!そしたら、なにかわかるずら!!(花丸))

と、3年生3人を探すことで何かわかるかもしれない、そんな前向きな考えを持つようになる。が、とうの新生Aqoursのリーダー、千歌はというと・・・。

(でも、私からすれば、むっちゃんたち、浦の星のみんなのことが・・・)

と、むつたち、浦の星の生徒たちのことを持ち出しては前へと進めない様子・・・。

 そんな千歌を見て、曜と梨子がついに動き出した。

「聖良さんの言うとおりだと思う」(梨子)

「ライブの練習はどこだってできるし、これまでやってこれたじゃない!!大丈夫、できるよ!!」(曜)

このときの梨子、曜の心の中では、

(私たちが一歩を踏み出す、そのためにも、聖良さんの言うとおり、昔を振り返る、3年生3人と会う、そのことがきっと正しいこと、だと思う!!(梨子))

(ただやみくもに今の状態のままライブを練習したって結果は同じ。なら、鞠莉ちゃんたち3年生3人と会うことで、新しいAqoursをよみがせさせることができる、私はそう思うよ!!(曜))

と、前へと進む、そのための小さな勇気を持ち始めていた。曜と梨子、2年生3人の立ち位置としては千歌に対するロケットブースター、千歌の想いを加速させる役、なのかもしれない。自分の進みたい道を進む千歌。けれど、ときには本当にこっちに進めばいいのか、前に進んでいいのか、悩むことがある。そんなとき、千歌の思いに共鳴しさらに千歌の思いを加速させる存在、それが曜と梨子である。千歌がロケット本体なら曜と梨子はその千歌というロケットを加速させるロケットブースターともいえた。

 で、この梨子と曜の言葉、いや、思いを受け取ったのか、千歌、すぐに、

(そうだね!!曜ちゃんと梨子ちゃんの言うとおりだね!!急げば廻れ、って言うもんね!!私、決めたよ、鞠莉ちゃんたち3年生3人を見つけて会いに行く!!)

と、鞠莉たち3年生3人を見つけて会いに行くことを決めた。って、千歌ちゃん、言葉、違うよ!!「急げば廻れ!!」ではなく「急げば回れ!!」だよ!!前みたいに「スクールアイドル陪」みたいになっているよ!!

 と、千歌に対するツッコミはさておき、この曜と梨子の言葉のとき、月はというと・・・。

(鞠莉ちゃんたち3年生3人と会って昔を振り返るか・・・、なにか面白いことになりそうだよ!!)

と、聖良のいうことにちょっと楽しみに思える、とどうじに、

(でも、鞠莉ちゃんたち3年生3人がいない状況、まさか、理亞ちゃんも・・・)

と、理亞のことも心配になる。このときの理亞の現状について月は知らなかった、が、内浦の砂浜において理亞の行動からして、もしかして・・・と思えて仕方がなかった、その心配をしていたのか、月、うっかり理亞の方向を向く。すると、理亞、月の視線をわざとはずそうとしたのか無視してしまう。

 とはいえ、鞠莉たち3年生3人を探すことを決めた千歌に対し、鞠莉‘sママ、すぐに、

「オー、ベリーベリーサンキューで~す!!」

と、千歌に喜びながら抱きついてしまう。これには、千歌、唖然となるも、すぐに、

「で、鞠莉ちゃんたち3人はどこに卒業旅行に行ったのですか?」

と、冷静に鞠莉‘sママに尋ねる。そんな千歌の言葉を聞いたのか、ヨハネ、自分のヨハネ’sEYEでもって、

「北の試練の地、南の秘境!!」

と、言ってしまう。が、どちらとも的外れである。まっ、この言葉自体、後でグッズ化されるほどいい言葉なんですがね・・・。

 と、ここで姉ダイヤがその当事者であるルビィ、その卒業旅行先を知っているらしく、すぐに、

「それが・・・」

と言いかけるが、こんなとき、

(ここは私が言わないといけないので~す!!)

と、鞠莉‘sママ、ここにまで何か熱き使命を持っているのか、すぐに、

「3人が旅しているのは・・・」

と、ルビィの言葉を防ぐかのように言う。その地とは・・・。

「小原家の先祖が暮らしていた地・・・」

これを受けてか、千歌と曜は少し唖然となる。そう、自分たちでは想像できないところ、そこが鞠莉たち3年生3人がいる地、そここそ・・・と、突然ホールの照明が落ち、ステージのあるところにスポットライトがあたる。そこには・・・。

「ここで~す!!」

と、鞠莉‘sママ、いきなり手を挙げて突然ステージ前に現れた緞帳、いや、地図を見せた。そこに描かれていたのは・・・。

「伊太利亜!!」

伊太利亜、いや、感じだとそう書くけど、カタカナにすると、イタリア、である。やっぱり、鞠莉‘sママ、鞠莉の血筋ではある、のかもしれない。人をおどろかす、大きなパフォーマンスをしたい、そんな気がしてくる。むろん、こんな大きなパフォーマンスを見てか、それとも、あまり予想外の地だったのか、千歌、曜、梨子、ともに、

「「「エー!!!」」」

と、大きな声をあげて驚いてしまった。

 が、そんなとき、千歌たち以上に驚いている少女がいた。

(エー!!!!)

と、心の中で叫んでいた少女、それが、月、だった。この「伊太利亜」の名を見た瞬間、

(なんで、イタリア、なの!!これは運命なの!?この僕にとって縁もゆかりもある地じゃない!!神様、どうして僕にこんな現実を見せつけるのかい・・・)

と、神をも恨んでしまう。月にとってイタリアは大変縁もゆかりもある地、かもしれない。そこに千歌たち新生Aqours6人が見知らぬ地でたった6人だけで旅させるのである。ある意味残酷?かもしれない現実、なのかもしれない、月にとってみれば。

 そんなときだった。突然、聖良から、

「あの~、1つ提案があるのですが・・・」

と挙手して意見を述べようとしていた。これに、鞠莉‘sママ、すぐに、

「なんでしょ~か、その提案とは?」

と、聖良に尋ねる。すると、聖良、自分の案を言った。

「あの~、千歌さんたち6人、にもう1人、一緒に旅してもらいたい子がいるのですが・・・」

この聖良の言葉に、鞠莉‘sママ、すぐに、

「誰を連れていけばいいので~すか?むろん、あなたならNONですがね~」

と、答える。聖良、そのことを承知の上で言った。

「もう1人とは・・・、そこにいる・・・月さん、です!!」

 この聖良の言葉に、月、おもわず、

「えっ、なんで、僕?」

と、突然のことで驚きの声をあげる。なぜなら、

(えっ、なんで僕と一緒に行くことになるの!?これって、曜ちゃんたち新生Aqours6人の旅でしょ!!それなのに、なんで、僕が一緒に行くことになるの・・・。いや、鞠莉‘sママさん、即効で拒否するの、目にみえているのに・・・)

と、ある意味諦めの表情をすると、すぐに、鞠莉‘sママ、

「いいでしょう!!そこにいる月・・・さんも一緒に行ってもらいましょう!!」

と、聖良の提案に同意してしまった。これには、月、

「えーーー!!」

あんまりに信じられないことに驚いてしまう。

 そんなとき、聖良は近づき、この言葉を発した。

「千歌さんたちと一緒に頑張ってください、イタリアに縁もゆかりもある月さん・・・」

この言葉に、月、

「え・・・」

と、唖然とするしかなかった。

 一方、鞠莉‘sママはというと・・・。

(ふっ、これであの方の言うとおりにことは進みま~した!!これでいいのですよね・・・。これで、鞠莉は私のもとに戻ってくるので~すね~)

と、不敵な笑いを浮かべていた。

 



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Moon Cradle 第3部 第7話

「どうして、僕を曜ちゃんたち(新生Aqours)の連れ添いに選んだんですか?」

開口一番、月は一緒にいる聖良に向かって怒るようにいった。月としては思いがけないことだったからだった。このとき、月、

(なんで僕を選んだんだよ!!もし、曜ちゃんたち新生Aqours6人と一緒に鞠莉ちゃんたち3年生3人を探すのであれば、鞠莉ちゃんのことをあまり詳しくない僕より、Aqoursのライバルであり、面識のある聖良さんと理亞ちゃんが適任なのに・・・)

と、思っていた。あっ、ちなみに、今、月と聖良と理亞はホテル小原沼津淡島所有の船「シャイニー号」に乗って沼津市街地へと向かっていた。鞠莉‘sママに無理やり・・・というより拉致に近い形でホテル小原沼津淡島に連れてこられた千歌たち6人、聖良・理亞、そして、月。しかし、ホテルに到着したときにはすでに夕方・・・、それから大ホールでの出来事・・・だったので、すべてが終わるときにはすでに空は暗くなっていた。というわけで、鞠莉’sママの計らいで家の近くまで「シャイニー号」で送ってもらうことにしたのだった。なのだが、千歌たち新生Aqours6人はイタリアでの旅行計画を練るため、今夜は千歌の家に泊まって作戦会議・・・、というわけで、内浦の船つき場で千歌たち6人は降りてしまったのだ。なので、今、シャイニー号に乗っているのは、沼津市街地の近くにある住宅街に住んでいる月と、このあと沼津駅から新幹線で宿がある東京に戻る聖良と理亞、その3人しかいなかった。

 で、この月の発言に聖良はすぐに答えた。

「それはね、月さん、あなたが新生Aqoursをよみがえさせる、その大任を任せるのにうってつけだからです!!」

この聖良の言葉に、月、

「え~!!」

と、大きな声をあげる。すると、隣にいる理亞が、

「う、うるさい!!」

と、怒鳴るとそのまま、

「うるさい・・・」

と、言っては眠ってしまった。理亞、今日はいろんなことがありすぎて疲れて眠ってしまっていたのだった。そのためか、月の大きな声に反応したのか、「うるさい!!」と、月にどなったもののそのまま眠りについてしまったのだった。

 この理亞の寝言のあと、月は改めて聖良に聞く。

「僕のどこが適任なのですか?」

すると、聖良は月を選んだ理由を言った。

「理由は3つあります。1つは、あなた、イタリアに住んでいたこと、ありますね!!」

この聖良の言葉に、月、

「えっ、なんでわかったの!!」

と、驚いてしまった。これまで聖良どころか大親友の曜以外の千歌たち新生Aqoursメンバーにも言っていない事実・・・、それは・・・。

(僕、たしかにここ沼津に来る前、イタリアに住んでいた・・・)

そう、月、実は沼津に引っ越してくる前、イタリアに住んでいたのだ。そのため、日本語、英語以外にイタリア語も堪能、だったりする。さらに、千歌たち新生Aqoursのメンバー、聖良と理亞、月、この9人のなかでイタリアのことをよく知っている人物でもある。その意味でも道案内役としてはうってつけであった。ただ、このことについてはこれまで曜以外の誰にも話していないため、月にとってみれば・・・、

(この聖良って子、まさか、僕の個人情報を・・・)

と、聖良を疑ってしまう。まさか、ストーカー・・・とも思える発言、と、考えてしまう月。

 それに対し、聖良は月がイタリアに住んでいたことがわかった理由を言った。

「月さん、誰にも昔自分がイタリアに住んでいたことを言っていないのに、なんで私、聖良がわかったのか、疑問に思えるでしょう。それはですね、月さんの言葉を発するときの口の動きから判ったからです。「r」の発音のとき、月さん、知らないうちに舌を巻いて発音していますよ。それを見て、私、月さんが昔イタリアに住んでいたことがわかってしまいました!!」

そう、英語などで言葉を発する際、イタリア語なまりが強い人は「/r/」の発音のとき、イタリア語の特徴的な巻き舌で発音しがちになってしまうのである。月もイタリアから沼津に引っ越してから長い年月が経つものの、それでも小さいときから住んでいた、イタリア、そのときに身につけたイタリア語の影響はいまだに月の発音に影響を与えていたのだ。そんなこまかいところまで見てしまう聖良について、月、思わず、

(うわ、聖良さん、凄すぎ・・・。僕、もう聖良さんのまえでは嘘なんていえない・・・)

と、聖良の凄さに脱帽するしかなかった。

 とはいえ、たしかに聖良の言うとおり、イタリアの道案内だけなら月が適任・・・であるが、それでも、新生Aqoursをよみがえさせる大任を月が務める理由としては弱めである。でもって、聖良、2つ目の理由を月に言う。

「2つ目は、千歌さんたち6人、私(聖良)と理亞、そして、月さん、この9人の立ち位置です」

立ち位置・・・、これについては、月、

(立ち位置?どういうこと?)

と、少し考え込んでしまう。聖良はそんな月の疑問を解決するため、すぐにこのことについて解説した。

「今回、千歌さんたち新生Aqoursは不安と心配の海・沼の奥底に沈みこんでいます。でも、私と理亞だと千歌さんたち6人に近づきすぎてどうしても千歌さんたちに同情してしましいます」

そう、内浦の砂浜で千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスを客観的に評価した聖良・・・ではあるが、実際に新生Aqoursをよみがえさせるとき、どうしても同情的になってしまう、なぜなら・・・。

(私(聖良)と理亞、あまりに千歌さんたちと長い時間を共に過ごしてしましました。人間、こうなると、なにかするとき、そのものに甘くなってしまいます。こうなると達成できるものも達成できなくなります・・・)

と、聖良、こう考えての発言だった。長い時間を共に過ごしていると、人はどうしてもそのものに同情してしまう・・・かもしれない。聖良はそれを危惧したからの発言だった。

 その聖良、月にあることを話す。

「でも、月さん、あなたなら、千歌さんたちと一緒に過ごした時間は短い。たとえ同情的になっても、そこまで甘くはならないでしょう。むしろ、より客観的に物事を判断、より効果的な方法でよみがえさせることができると思います」

この聖良の言葉に、月、おもわず、

「そういうものなの・・・」

と、少しツッコミをいれようとしていた。

 であるが、聖良、月のツッコミを無視して言葉を続ける。

「そして、月さんの場合、以前、今の新生Aqoursの状況と同じ状況に陥ってしまった、そう私は感じていました。その経験を千歌さんたちに伝えることができれば必ず新生Aqoursをよみがえさせることができるでしょう」

この聖良の言葉に、月、

(えっ、僕、そんな経験、していたかな?)

と、なにかを思い出そうとするも思い出せず、

(う~ん、う~ん)

と、頭をひねってしまう月。

 そんなときだった。突然、月の脳内にあるビジョンが映し出される。

(「月ちゃん、忘れないで!!たとえ、離れていても、月ちゃんの心の中に、私、ずっと居続けるんだよ!!」)

この言葉に、月、思わず、

(だ、誰、僕に話しかけるのは!?)

と、誰か月を呼ぶ声がだれか周りを見渡す。が、誰もいない。それでも、月の頭の中には誰か知らない、いや、月がよく知っている人物の声が聞こえてくる。

(「月ちゃん、月ちゃん!!でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ず~と、永遠に、大切な友達なんだよ!!」)

(「だからね、別れはね、すべてが終わる、ゼロに、もとに戻る、なにもなくなる、ってわけじゃないんだよ!!」)

この言葉を聞いたのか、月、

(あっ、もしかして、僕、意図的にこの言葉を封印、していたのかもしれないね。もしかすると、この封印を解く必要があるかもしれないね。聖良さん、そのことを教えてくれたのかもしれないね・・・)

と、考えるようになる。3年生がいない千歌たち新生Aqours、心の底から聞こえてくる言葉、どこか、似ている、そんな想いからだった。

 そして、月は昨日の誓い、自分の力で新生Aqoursを生まれかわらせること、を思い出すと、ある決意をみせる。

(そうだ、昨日、僕、決めたんだ。僕の心の中にある、忘れかけていた、それでいてとても大切なもの、その衝動こそ今の僕、そして、新生Aqoursに必要なはず!!そして、その衝動をもって新生Aqoursをよみがえさせる、と、心のなかで決めたんだ!!だからこそ、僕、曜ちゃんたち新生Aqoursと一緒にイタリアに行く!!そして、絶対に新生Aqoursをよみがえさせてやる!!)

このつきの決意は、

(あっ、月さん、なにかあることを決意した、そんな表情をしています)

と、聖良が思うくらい、これまで見せたことがないくらいの凛々しい表情を月はしていた。

 と、凛々しい表情の月であったが、すぐに、本題、なぜ聖良は月を新生Aqoursが鞠莉たち3年生3人を探しにイタリアに行く旅、そのお供に推薦したのか、その残されたもう1つの理由について、

「あと、もう1つ理由があるってことですけど、なんですか?」

と、聖良に尋ねる。すると、聖良、すぐに答えた。

「あと、月さん、あなた、なにか悩んでいますか?」

これについては、月、嘘をついても聖良ならばれると思い、そのまま、今悩んでいることを話す。

「たしかに悩んでいます。これは曜ちゃんたち新生Aqoursの不調の原因ともつながっています」

そして、月が今悩んでいることを聖良に話す。自分の高校、そして、浦の星との統合を控える静真、その静真は昔から部活動が盛んであり、全国大会に出場する部活も多いこと、今年の2月、突然静真の大スポンサーである木松悪斗が「万年初戦敗退、そのため、部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が全国大会出場するくらい部活動が盛んであり、そのため、部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加したら、士気低下、対立によって静真の部活動全体の質が落ちてしまう」と言い出して浦の星との統合を白紙撤回しようとしたこと、それについては月たち生徒会のお陰でなんとか阻止したもの、木松悪斗に賛同する保護者たちも多く、その「木松悪斗が言っていること=保護者の声」がなくならない限り浦の星の生徒は別途用意した分校に通うことになったこと、それを阻止しようとラブライブ!という全国大会で優勝するくらい実力があるAqoursの力を借りてまで保護者の声を打ち消そうとし、昨日、部活動報告会で(新生)Aqoursのライブをしたものの、とてもパフォーマンスが悪く、それにより、より浦の星の生徒に対する印象が悪くなったこと、を。

 そして、最後に、月は聖良に対し、あることを言った。

「そして、分校方式を決めた沼田のじっちゃん、あっ、静真のPTAの会長で、創立家の末裔、それでいて、静真のなかで一番偉い人ね、そのじっちゃんから、保護者の声をなくすためのヒント、問いを提示されたんだ。「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」この問いについて、僕も考えているんだけど、なかなか答えが見つからないんだ~」

この月のことばに、聖良、

(ふ~ん、「沼田のじっちゃん」という人、かなりの策士、ですね。こんな問い、普通の人ならあまり考えつかないものですね。それでいて、この分校問題を解決する、かなりいい問い、だと思います)

と考えると、月にすぐにあることを尋ねた。

「そういえば、その部活動報告会のとき、なにか変わったこと、ありませんでしたか?」

これには月、

「う~ん、特には・・・」

と、なにもなくて悩んでしまう。突然聞かれたことなのか、少し悩むも、それならばと昨日のことについて思い出そうとする、月。すると、

「あっ、たしか、木松悪斗の娘で女子サッカー部部長の旺夏があること言っていたよね」

と、そのとき、旺夏が言っていたことを思い出す。と、同時に、

「あっ、聖良さん、たしか、今年のインターハイで優勝した女子サッカー部の部長(木松悪斗の娘!!)がこんなこと言っていましたよ」

と、月が言うと、そのときの旺夏のマネをする。

「静真の部活動、それは、「勝つことこそ正義」、なのです!!」

そのマネのあと、月はこう言葉を続けた。

「その言葉を考えると、どうしても、「勝利こそ正義」「勝利こそすべて」と聞こえてしまいます。僕の耳がおかしいのでしょうか?」

この月の言葉に対し、聖良、

(あっ、これって、2年前のラブライブ!のときと同じ状況・・・ですね)

と、今静真の部活動で起きていることと2年前にラブライブ!で起きたことが同じであることに気づく。

 そして、聖良は月に対し、あることを伝える。

「私にはその沼田のじっちゃんの問いに答えることができないかもしれません」

これには、月、

「え~!!なんでもお見通しの聖良さんですらわからないなんて~!!」

と、がっかりする。

 が、そんな月に対し、聖良は、

「それでも、ヒントぐらいなら言えるかもしれませんね」

と、言うと、そのヒント、2年前にラブライブ!にて、スクールアイドル界にて起きたことを話し始めた。

「実は、千歌さんたちAqoursが優勝したことがあるラブライブ!、そして、スクールアイドル界、なんですが、今から2年前、ある悪しき考えがスクールアイドル界ではびこっていました」

その聖良の言葉に、月、

「えっ、あの元気で明るいスクールアイドル界で!!」

と、驚いてしまう、みんな楽しく一生懸命なパフォーマンスをしているスクールアイドル界において悪しき考えはびこっていたことを。これについて、聖良は解説を始める。

「その悪しき考えとは、「スクールアイドル勝利至上主義」です。スクールアイドルにとって勝利こそすべて、勝つことこそ一番大事である、そんな考えがはびこっていました」

この聖良の言葉に、月、

(あれっ、これってうち(静真)と同じ状況・・・)

と、聖良の言っていることと自分の高校、静真が同じ状況に気づく。

 その月の思いを受けてか、聖良の解説は続く。

「その勝利至上主義により、その当時、いつも上位にいるスクールアイドルたちは下位のスクールアイドルたちを見下す風潮すらありました。私としてはその風潮は嫌でした。A-RISEやμ‘sみたいになりたい、そう思っていた私、ですから、その考え、その風潮がなくなるまでスクールアイドルになるのを控えていました。さらに、ヘリのなかで私が言っていた、初代Aqoursが東京のスクールアイドルのイベントのまえに鞠莉が怪我をしたのも、その勝利至上主義によって上位のスクールアイドルから見下されるのが嫌だったのも1つの理由である、と、鞠莉から聞いております」

これには、月、

(えっ、鞠莉さん、「スクールアイドル勝利至上主義」の犠牲になったの!!でも、なんで、今、「勝利至上主義」の考えがなくなったのだろう?)

と、疑問に思うようになる。

 それを受けてか、聖良はこう言った。

「でも、あるレジェンドスクールアイドルグループにより、その考えは打破されることになります」

この聖良の言葉に、月、つい、

「そのグループとは・・・?」

と、聖良に聞く。

 そして、聖良はついにあのレジェンドスクールアイドルの名前をあげる。

「スクールアイドル勝利至上主義、勝者が敗者を見下す風潮、それを打ち砕いたのは、そのグループ名は、「オメガマックス」!!」

そのグループ名に、月、おもわず、

「オメガマックス・・・」

と、復唱してしまう。この月の姿を見てか、聖良の話は続く。

「オメガマックス、あのμ‘sを輩出した高校、音ノ木坂学院最後のスクールアイドルグループ。高坂雪穂、綾瀬亜里沙、秋葉愛、代々木はるか、神宮はやて、京城みやこ、矢澤こころ、矢澤ここあの8人組のグループ。そのグループですが、当時スクールアイドル界にはびこっていた「スクールアイドル勝利至上主義」ではなく、スクールアイドルを心から楽しむことを前面に出したグループでした。最初は別々のグループとして対立したり、活動を邪魔されたりと紆余曲折をしつつもひとつのグループとして成長し、ついにはラブライブ!決勝まで進出、「勝利至上主義」の権現で絶対的王者だった福博女子大学付属のスクールアイドル、カリスマ的リーダー中州天率いるK9と対決しました。結果は・・・」

この言葉に、月、

「結果、どうなったのですか?」

と、聖良に尋ねると、聖良、すぐに答えた。

「結果、スクールアイドルを心から楽しむことで最大限のパフォーマンスをみせたオメガマックスが勝利し、そのエキシビジョンで福博女子の校長で天の母親、中洲博子が放った刺客、μ‘sすらも撃破、みごとにオメガマックスは「勝利至上主義」を打ち破ったのです」

 この話に、月、

(勝利至上主義を打ち破る・・・、それほどの実力があったオメガマックス・・・。でも、聖良さんの言葉の中には(オメガマックスに関して)勝つことに執着していない、そんな話し方だった・・・。むしろ、楽しむ・・・ことを強調している・・・そんな感じがします・・・)

と、思ってしまう。そのためか、これにはもうちょっと深堀しない、と、月はそう考えるようになった。

 そこで、月は聖良に対しある質問をぶつける。

「聖良さん、さっきから「楽しむこと」を強調しておりますが、そこはどうなんでしょうか?」

 が、そんなときだった。

ゴトンッ

と、なにかにぶつかった、そんな音が聞こえてくると、船員から、

「さぁ、着きましたよ」

と、沼津港についたことを聖良たちに教えにきてくれた。

 と、同時に、聖良は寝ている理亞を抱っこすると、

「今日は楽しかったです。今度はゆっくりお話しましょうね。またね」

と、聖良、そう言ってはそのまま船の外に出て帰ってしまった。

 このとき、月、船から去っていく聖良の背中を見て、あることを考えていた。

「楽しむこと・・・、それってとても大切なことなの・・・」

 



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Moon Cradle 第3部 第8話

 一方、そのころ、ホテル小原沼津淡島の最上階にある客室のベランダでは・・・。

「さぁ、これで役者はすべて揃ったので~す!!これで鞠莉は私のもとに戻ってくるので~wす!!」

と、鞠莉‘sママがワインを飲みながら沼津の夜景と星空のワルツを楽しんでいた。

 そんな鞠莉‘sママであるが、このとき、鞠莉’sママ、こう思っていた。

(鞠莉は小さいときから何度も「ハグー(果南)」と「ですわ(ダイヤ)」にそそのかされて行方不明になったので~す!!あの2人が小さいときにこのホテルの小さな隙間から入りこんで鞠莉に会わなければ、鞠莉はきっとおとなしい、私の言うことをよくきく子に育つはずで~した!!でも、あの2人が鞠莉に会ってしまったから、鞠莉は私の目を盗んではよく逃げ出してしまうようになったので~す!!そして、今回もあの2人にそそのかされて行方不明になったに違いありませ~ん!!)

もうテレビアニメ版の「ラブライブ!サンシャイン!!」を見ている人ならご存知だと思うが、鞠莉、果南、ダイヤが小学生中学年のころ、転校してきた鞠莉に興味を抱いた果南とダイヤ、鞠莉の住んでいたホテル小原沼津淡島にこっそり忍び込んではそのとき2階に住んでいた鞠莉に向かって果南がペンライトを振るのだが、鞠莉、興味本位で2人のもとに行ってしまった。そのとき、2人のもとに来た鞠莉に向かってハグをしてしまった。これが鞠莉、果南、ダイヤ、初めての邂逅、であったが、このときに仲良くなった3人はよく鞠莉‘sママの目を盗んではいろんなところに行っていたものである。で、よくあるパターンが、鞠莉がホテルをこっそり抜け出してはいろんなところに行ってしまうものの、鞠莉’sママたちからすれば鞠莉の行方不明騒動という大きな騒動を引き起こしてしまっていた、であった。そういうわけで、当初2階に住んでいた鞠莉、こっそり抜け出すごとに3階、4階、とだんだん上に住むようになり、しまいには最上階に住むようになってしまったのである。こんなふうに、鞠莉、果南、ダイヤは鞠莉‘sママに黙っていろんなところに行っては「鞠莉が行方不明」と鞠莉’sママが騒いでしまう、というオチが何十回も起こっているので、鞠莉‘sママからすれば、鞠莉の行方不明騒動は、悩みの種、ともいえた。そして、今回も鞠莉’sママの目を盗んではこっそりイタリアの卒業旅行に、果南、ダイヤと3人で行くことになり、その道中で行方不明になった・・・のである。が、実は、今回の鞠莉の行方不明騒動であるが、鞠莉からすれば、ある決意、のための行方不明、だったのである。それとは・・・。

 鞠莉‘sママは別の意味である決意でもって鞠莉を探していた。鞠莉’sママ、いわく、

(鞠莉は今月をもって高校を卒業しま~す!!それ、すなわち、あの「ハグー」と「ですわ」と別れることを意味しま~す!!そうなれば、鞠莉はこれから先、あの2人の影響を受けることはありませ~ん!!これは私としてはベリーグッドなことなので~す!!今度こそ、鞠莉、私の言うとおりにしてもらいま~す!!鞠莉、あなたのフリー(自由)なんてありませ~ん!!私の言うとおりに動いてもらいま~す!!そして、私が指示した許婚と結婚してもらいま~す!!)

この鞠莉‘sママの決意、尋常ではなかった。鞠莉は今まで自由きままに鞠莉’sママの目を盗んでは、果南、ダイヤ、と一緒にいろんなところに行っていたのは先に述べたが、実は、鞠莉‘sママにとってみたらそれは相当なストレス、と、なっていた。それも長い間である。が、それも高校卒業をもって、鞠莉、果南、ダイヤは別の道を進むために別れてしまうのである。ダイヤは都内の大学へ、果南は海外のダイビング指導者養成所へ、鞠莉はイタリアの大学へ。そのため、これから先、気軽に3人が集まってはどこかに行くことは難しかったりする。この状況こそ鞠莉’sママにとっては好機だった。気軽に3人集まることが難しいのであれば、鞠莉も鞠莉‘sママの目を盗んでこっそり抜け出す・・・ことはなくなるはずである。そこで、鞠莉’sママ、鞠莉を自分の監視下のもとにおき、自分の言うとおりに動く操り人形みたいにするつもりだった・・・はずなのだが、鞠莉もこのことを十分承知だったらしく、今回も鞠莉‘sママの目を盗んではこっそり卒業旅行と称して果南とダイヤと一緒にイタリアへと愛の?逃避行を行っているのである。逆にいえば、鞠莉、今世紀最大の逃避行?をしている、その理由は、自分のこれからの自由を、果南、ダイヤとのこれからのキズナを守る、その決意をもっての逃避行であった。これこそ、今回の鞠莉の世界をまたとかけた逃避行・・・、もとい、行方不明騒動の核の部分であった。

 鞠莉‘sママ、そんな決意のもと、さらに思い続ける。

(とはいえ、今回の行方不明騒動、鞠莉、スマホの電源を切っているら~しく、鞠莉たちの足取りはわかりませんでし~た。イタリアにある小原家の別荘という別荘を手当たり次第見て周りましたが、鞠莉はいませんでし~た!!むろん、イタリアの小原家探索網もひっかりませ~ん!!このままだと鞠莉に逃げ切られてしまいま~す!!でも、あの方がこの私に手を差し伸べてくれま~したからなんとかなりそうです!!「鞠莉と「ハグー」と「ですわ」の3人と仲がよく、一緒にスクールアイドルというくだらないものをしていた、あの、「Aqours」というグループの人たち、あの人たちがいればきっと鞠莉さんは見つけてくれる」って言ってくれたときは本当に助かりまし~た!!)

実は鞠莉の足取りがわからず、鞠莉の世界規模での逃避行、もとい、行方不明騒動には鞠莉‘sママも気が参っていたのである。が、「あの方」が鞠莉を探すための方法を鞠莉’sママに教えたことにより、鞠莉‘sママのその頭痛の種も消えたのかもしれない。だって、鞠莉、果南、ダイヤにとって、Aqoursメンバーである、千歌、曜、梨子、花丸、ルビィ、ヨハネはかけがいのない仲間、いや、戦友、といっても過言はなかった。それは、たとえ離れ離れになっても深いキズナで結ばれているのである。なので、たとえ、行方不明であっても、ほかのメンバーに心配をかけないようにこっそり連絡をとっている、そう、鞠莉’sママ、そして、「あの方」も思っていた。

 その「あの方」を尊敬している鞠莉‘sママ、「あの方」の助言について星空に語り始めた。

「そして、「あの方」の助言どおりに私はあのAqoursメンバーに逃避行を続けている鞠莉たちを探させるようにしむけま~した!!その第一段階、Aqoursのみなさんをイタリアに行かせること、には成功しま~した!!あとは鞠莉たちを見つけてもらうだけで~す!!でも、「あの方」も欲がないで~すね、「報酬はいらない」だなんて。そのかわり、助言をする条件として2つ挙げられましたね~!!1つは鞠莉を探してもらうためのAqoursのみなさんの渡航費用は全部私持ちであ~ること、そして、もう1つは、渡辺月という子をAqoursのメンバーと一緒にイタリアにゴーすること!!1つ目の条件は私だけでなんとかなりま~すが、二つ目の条件は私だけではどうすることができませ~んでした!!けれど、あのサイドテールの子(聖良)の助言のお陰でなんとかクリアすることができま~した!!」

そう、「あの方」の助言を受ける上での条件、それは、鞠莉たちを探させるための千歌たちAqoursの渡航費用は鞠莉‘sママが全額負担すること、そして、月もAqoursメンバーと一緒にイタリアに行かせることだった。が、1つ目の条件は誰もがみても納得できるが、2つ目は「あの方」がどうしてその条件をつけたのか、鞠莉’sママからしても不思議でしょうがなかった。

 とはいえ、これで鞠莉を見つけらたら自分の言うとおりに物事が進む、そう思った鞠莉‘sママ、

「助言、本当にありがとうございま~した!!本当に助かりまし~た、裏美さま!!」

裏美!!なんでここにこの名前が出てきたのか?小原家に恨みを持つ木松悪斗の右腕こと裏美の名前がなんでここに現れるとは!!その理由は・・・。

 

 鞠莉‘sママがホテル小原沼津淡島のバルコニーでワインを飲んでいるころ、こちらは東京のあるタワマンの一室。ここでは・・・。

「ほほ、これで渡辺月もおしまい、だね!!これで心置きなく木松悪斗様の思い通りに静真の学校改革を進めることができる!!静真、いや、沼津は木松悪斗様のものになった!!木松悪斗の駒として養成された子どもたちが沼津の行政、企業、その他もろもろに浸透すれば、沼津は木松悪斗様のものになる!!これで私も大出世、いや、木松悪斗様の後釜に座ることができる!!」

と、こちらもタワマンから見える東京の夜景をバックにワインをたしなんでいた。しかし、でっぱっているおなかのためか、かっこよく決めることができなかった。この男とは、そう、裏美である。

 では、この裏美、なんでこんなことをいっているのだろうか、というと、実はこの男こそ鞠莉‘sママに、月+新生Aqoursでもって行方不明の鞠莉、果南、ダイヤを探させるようにしむけた張本人だったからである。

 ときは昨日の部活動報告会のあとに行われた通常理事会で、木松悪斗率いる分校継続派が起こすであろう、静真本校と浦の星分校との統合のために動いているであろう、月たち静真高校生徒会と千歌たちAqoursを含めた浦の星の生徒たちの行動の妨害を、静真の影の神である沼田によって禁じられた、そのあとの出来事であった。裏美は統合実現へと動く月たち生徒会と浦の星の生徒たちの行動を妨害しようと本当に考えていた。が、

「裏美よ、私が命ずる、これまでどおり、静真の保護者及び生徒たちに私の考え、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加すると悪影響が出る」、(をいつもの通り)広めよ!!」

と、月たちの妨害をしようと考えた裏美に対し、木松悪斗は妨害行為を禁じ、これまでどおり、木松悪斗の考えを静真の保護者たち、生徒たちにひろめる作戦を徹底するように命じたのだ。もちろん、裏美、これには主人である木松悪斗から命じられたこととはいえ、納得することができなかったが、主人である木松悪斗の言うことなので当初は逆らうことができなかった。

 が、裏美、沼津の中心地近くにある自宅に戻っても、

「なんで止めるんだ、木松悪斗さま!!鉄は熱いうちに打て、渡辺月率いる統合推進派を壊滅できる絶好の機会なのに!!」

と、木松悪斗に向かって恨み節?を言い続けていた。

 そんなとき、

「あら、あなた、お帰りなさい!!」

と、あの裏美・・・とは似合わない、そんな絶世の美女があらわれた。彼女は裏美の奥さんである。とても綺麗であり、まわりからは裏美とその奥さんのことを、美女と野獣・・・、ではなく、美女と豚、と、言われていた。もちろん、豚は裏美のことである。決して空なんて飛びませんから・・・。その奥さんに向かって、裏美、一言。

「あぁ、あともう少しで木松悪斗さまの夢が叶うはずだったのに、沼田のやつに阻止されたんだ!!それどころか、敵のやりたい放題を、沼田、認めてしまったんだ!!これでは静真は木松悪斗様のものにならないじゃないか!!」

と、奥さんに怒りをぶつける。それに対し、奥さんはというと、

「あらら、それは大変でしたね」

と、裏美をねぎらう。これには、裏美、

「慰めてくれてありがとうな、いつも」

と、奥さんに御礼を言った。

 そして、裏美、ついにあることを口にする。

「よし、ならば、この俺、裏美が木松悪斗様の代わりに、渡辺月率いる生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害してやる!!」

これを聞いた奥さん、

「あらら、うふふ。気合、いれちゃって・・・」

と、優しく微笑む。と、同時に、

「なら、私の人脈も使ってもいいから、無理せず頑張ってね」

と、裏美に対して優しく言うと、裏美、すぐに、

「いつも恩にきるよ。お前の人脈がなければ、この地位、木松悪斗様の右腕という地位に上り詰めることができなかったからな」

と、奥さんの言葉をねぎらう。

 と、ここで、裏美が奥さんになぜ御礼を言っているのか、それについて説明しよう。実は裏美、木松悪斗に会う前はとある投資会社のディーラーの1人に過ぎなかった。けれど、1つだけほかのディーラーとは違うところがあった。それは、その会社の会長の息子、だったのだ。そのため、ディーラーとしての実力ではなく、親の人脈を駆使した働きをしていたため、ごくごく普通くらいの成績を収めていた。本当に普通だった、会長の息子ということ以外は・・・。

 けれど、ある日を境に裏美は大躍進を遂げる。それは、今、横にいる奥さんとの出会いだった。会長の息子ということもあり、お見合いで今の奥さんと出会うことになったのだ。ただ、その奥さんもただの人ではなかった。実は、裏美が働いている投資会社と付き合いがあるとある大企業の会長の娘、だったのである。そのお見合いのあと、ほどなくして2人は結婚する。すると、裏美、これまで使っていた親の人脈、いや、このときは自分自身の人脈、となっていたが、それ以外に、その奥さんが持つ人脈をも駆使するようになる。その結果、ディーラーとしての成績もぐんぐん伸びていき、その投資会社のトップディーラーまでになったのだ。そして、そのディーラーとしての能力を買われる形で木松悪斗からスカウトを受けることになる。その後、自分の人脈と奥さんの人脈を使い、木松悪斗のもとで力を大いに発揮し、多くの投資物件を成功に収めることになる。むろん、これについては、木松悪斗、大いに喜び、結果、裏美は木松悪斗の右腕、№2の地位を得ることができたのである。

 ちなみに、裏美とその奥さんの人脈の広さだが、沼津、静岡、日本はおろか、世界規模で広かった。むろん、木松悪斗にとって敵であったとしてもである。

 と、いうわけだが、今回、裏美、主人である木松悪斗の言うことを無視してしまう。そして、静真本校と浦の星分校の統合実現のために動く月たちを妨害するために自分たちの人脈を駆使して情報集めを行う。なにかをするときは闇雲に動くのではなく、まず、情報を集めることが鉄則である、一応・・・。で、裏美、集めた情報を月たちの弱み、そして、Aqoursや小原家の弱みへと変えようとしていた。

 で、裏美が決意した翌日・・・。

「あなた!!今、ある情報を得ましたわ!!」

裏美と奥さんの人脈を使った情報網にとある情報が、裏美、そして、木松悪斗にとって優位になる情報が手に入ったのである。もちろん、裏美、このとき、

「おお、でかしたぞ!!」

と、喜んだ。

 ところで、その優位な情報とは・・・。

「あなた、どうやら、小原家の当主の娘さん、行方不明になったみたいですよ!!」

この奥さんの情報・・・ではあったが、裏美、すぐに、

「あ、それっ、いつものことじゃないか・・・」

と、そっぽ向いてしまう。実は、鞠莉の行方不明騒動については、昔、日常茶飯事だったため、そんなに珍しいことではなかった。これは裏美はおろか、沼津の社交界の仲間内では有名な話だった。って、鞠莉、小さいときから親に迷惑をかける子で有名?だったのか・・・。

 ところが、奥さん、すぐに、

「それが、今回はスケールがでかすぎるのよ!!なんでも、鞠莉‘sママに黙ってイタリアに卒業旅行に行ったきり行方不明、音信不通になったみたいですよ」

と、言うと、裏美、

「な、なんだと!!」

と、驚いてしまう。有名財閥の当主の一人娘が行方不明、それも、世界規模、それはそれで大問題、といえざるをえなかった。当主の娘、ということは、大事な跡取りである、それを考えただけでも本当に大問題だった。

 であるが、奥さんの話は続く。

「でね、鞠莉‘sママさん、その娘さんが高校を卒業したあと、その娘さんを自分の監視下に置いて、自分の言うとおりにさせるつもりだったわけ、それが行方不明でなにもかも無駄になるかもしれない、そう嘆いていたみたいですよ」

この話を聞いた裏美、すぐに奥さんに確認する。

「それ、本当の話だろうな!!うそじゃないよな!!」

この裏美の確認に、奥さん、すぐに、

「それ、本当の話ですよ。だって、本人、鞠莉‘sママさんから直接聞きましたから」

あれっ、なんで、小原家に恨みを持つ木松悪斗の右腕、裏美、その奥さんと小原家の投手の奥さん、鞠莉‘sママがつながっているの?これこそ、裏美が木松悪斗の右腕、№2になった理由の1つである。裏美とその奥さんの人脈であるが、ときには木松悪斗の敵側の人たちとつながりをも持っていた。それは、裏美とその奥さんがお互い企業のご子息とご令嬢だったからでもあり、裏美とその奥さんの人脈、ネットワークは敵味方関係なくワールドワイドに広がっていた。裏美はその人脈を使い、敵側から情報をリークしたりしながら木松悪斗にそのリーク情報を流していたのだ。さらに、どんな汚いことでも裏美自ら行うことで木松悪斗の手を汚すことすらなかったのである。この裏美の働きにより、木松悪斗は数々の戦いに勝利を収めてきたのだった、投資の世界では・・・。投資の世界は多くの情報を持つもの、それをもとに瞬時の判断力を下すもの、それがものをいう世界である。その意味でも、裏美は木松悪斗にとって重要な駒、でもあった。それを鑑みても木松悪斗は裏美を重宝していた、重要な駒として・・・。というわけで、いまや裏美は木松悪斗の右腕、№2まで上り詰めることができたのである。なので、沼津の社交界という狭い世界では、裏美と鞠莉’sママがつながっていてもおかしくなかった。ちなみに、木松悪斗は一代で成り上がってきたこともあり、あの性格ゆえか、社交界を避ける傾向があったりする。その意味でも、社交界とつながりのある裏美を重宝する理由の一つがそこにあった。

 で、鞠莉の行方不明騒動の情報を得た裏美、すぐに、

(あっ、いいことひらめいた!!)

と、あることを、悪知恵を思いついた。それは・・・。

(そうだ、渡辺月とあの(千歌たち新生)Aqoursに小原家の娘(鞠莉)を探させよう!!)

裏美が考えついたこと、それは、月と千歌たち新生Aqours6人に鞠莉たちを探させることだった。なぜなら・・・。

(いくら地に堕ちたとはいえ、あのラブライブ!という日本一を決める大会で優勝したグループだ!!それに、どうやら小原家の娘さんはそのAqoursの、優勝したときのメンバーである、というではないか。その行方不明のメンバーを探しに行く、というのはとてもけなげで良い話になる。さらに、全国規模の知名度もあるから、騒ぎを大きくすれば、それだけ、この行方不明騒動はフューチャーされることになる。さらにさらに、この行方不明騒動が小原家の一大事、となれば世間からこのことが大注目を受けることになる。いや、その一大事が起きたと世間のみんなが知るところになったら、小原家の(人に対する)管理能力を問われられることになる。こうなれば小原家に大きなダメージを与えることができる。そうなると、小原家の名誉などは地に堕ち、木松悪斗様の地位はうなぎのぼり!!沼津に大きな影響力を持つ小原家に代わり、木松悪斗様が沼津の王様として君臨することができる!!あぁ、われながら良い考えだ・・・)

と、皮算用気味に裏美は考えてしまう。そう、たしかに全国的人気のスクールアイドルになったAqours、昨日のライブの失敗があったとはいえ、知名度としては沼津、いや、静岡一、である。そんなAqoursのラブライブ!優勝時のメンバーが行方不明になっている、そのメンバーを探している、となれば、ある意味大きなニュースである。さらに、そのニュースが大きくなるにつれて、小原家の管理能力の無さ?もクローズアップされるため、小原家にも大ダメージを与えることができる。そうなれば、静真の件で小原家に裏美を持つ木松悪斗にしてもなにかと好都合になる。なぜなら、鞠莉の失踪がもとで小原家が没落すれば、沼津において木松悪斗の影響力が強くなる?から。裏美はそう皮算用をたたいていた。ちなみに、木松悪斗は小原家当主の一人娘の鞠莉が浦の星の理事長であり、Aqoursの一員だったことは知らなかった。と、いうよりも、そのあたりは疎い、というよりも、100%静真と投資のことばかり考えているために知らなかったし知ることもしなかった。が、裏美はその情報を知っていた。これも沼津の社交界などから得た情報により知りえた、のだが、主人の木松悪斗にはそんなこと1つも教えていなかった。これは、自分になにかあったときのための道具にするためだった。木松悪斗が裏美に対してなにかしようとしたとき、この情報を木松悪斗に差し上げることでその場を脱する、みたいなものである。これも、裏美からすれば、自分以外の人のことを駒としてしか見てない木松悪斗に対する防衛策、だったのかもしれない。それほど裏美としてもそこまで木松悪斗を信頼しているわけではなかった。いや、裏美、木松悪斗のことをただのビジネスパートナーとしかみていないのかもしれない。それほど、木松悪斗、裏美、双方とも、そこまで冷めた人間関係・・・なのかもしれない。それは、木松悪斗のまわりにいる人々にもいえた。

 



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Moon Cradle 第3部 第9話

 と、いうわけで、裏美、ついに動く!!もうすでに昼を過ぎていたので、裏美、

ツルル 「はい、鞠莉‘sママですが!!」

と、なんと、直接、鞠莉‘sママに電話をしてしまった。そして・・・。

「鞠莉‘sママさん、私、裏美です。この前は・・・」

と、裏美、社交辞令を言うと、鞠莉‘sママ、すぐに、

「社交辞令はいいからはやく用件を言ってくださ~い!!私、とてもbusyですから!!」

と、裏美に文句を言うと、裏美、

「これは失礼。実は、今回は鞠莉‘sママさんにちょっとしたアドバイスを送りたいと思いまして・・・」

と、鞠莉‘sママにアドバイスを送る。そのアドバイスとはもちろん・・・。

「あなたの娘さん、以前、Aqoursというスクールアイドルグループという、なんともくだらない遊びをしていたそうですね」

これには、鞠莉‘sママ、

「たしかに、鞠莉、以前、スクールアイドルというくだらない遊びをしていましたね。でも、それとこの電話となんの関係があるので~すか?」

と、少し怒り口調で裏美に言うと、裏美、すぐにある提案をした。

「実は、そのAqoursのメンバーを使って行方不明の鞠莉さんを探してみたらどうだろうか、と、思いまして・・・」

この裏美の提案、鞠莉‘sママもおもわず、

「What!!」

と、驚いてしまう。鞠莉‘sママ、昔仲間だったAqoursのメンバーに行方不明の鞠莉を探させるなんて考えつかなかった、ある意味、天と地がひっくり返るほどのアイデアだった。

 裏美、ここぞとばかりにもうプッシュする。

「これまであなたの娘さん、鞠莉さんはAqoursのメンバーとして活動してきました、くだらないことをしてね。でも、そのくだらないことをしても、Aqoursのメンバーという仲間と一緒に長い時間一緒に行動してきました。今はお互い別々のところにいますが、そのAqoursのメンバーならきっと行方不明の鞠莉さんを探し出すことができるはずです」

この裏美の言葉に、鞠莉‘sママ、

(たしかに、裏美さんの言うとおりで~すね!!たしかに、くだらない時間を一緒に暮らしたとはいえ、鞠莉にとって戦友・・・、ともいえますしね。それに、一緒に行方をくらました「ハグー(果南)」「ですわ(ダイヤ)」の幼馴染や姉妹がAqoursのメンバーのなかにいるという話を聞いたこと、ありま~す!!たしかに、そのメンバーに鞠莉を探させるのは鞠莉を見つけてもらいたいこちら側にしてもなにかと好都合で~す!!ならば、そうするので~す!!)

と、鞠莉‘sママ側にしてもメリットがあると踏んでいた。そのため、鞠莉’sママ、ついにあることを決めた。

「わかりました、裏美さん、あなたのアドバイス、キープしましょ~!!」

と、鞠莉‘sママ、裏美のアドバイスを受け入れることにした。が、このとき、まだ、全国規模で有名なAqoursが自分の娘の鞠莉を探すことがどれだけ大きなニュースになるのか、鞠莉’sママが知る由がなかった。いや、鞠莉‘sママ、このことについては過小評価していた、Aqoursのことを。今日、スクールアイドルは日本を飛び越えて世界規模で人気になっていた。それは、2年前、あのA-RISEを輩出したUTX学園のスクールアイドル、「iD」、ナンシーとナターシャの登場により、さらに加速する。そして、日本はスクールアイドルの聖地として、虹ヶ咲のエマみたいに海外から日本にスクールアイドルになりたいという夢をもって留学してくる外国の学生も続出した。それほどスクールアイドル文化は世界で深く根付いていた。が、鞠莉’sママみたいにスクールアイドルのことなんて、いや、スクールアイドルやアニメ、マンガなどといったサブカルチャーのことなんて知らない、いや、興味がない人たちからみたら、サブカルチャーなんてただのオタク文化、としかみていないのかもしれない。そう見てしまうと、そう考える親の場合、学生とは勉学こそ大事という考えに固執してしまい、自分の子どもに勉学のみを押し付け、その子どもの大変貴重な高校の3年間という青春の時間、人生の中で一番輝ける時間を勉学のみにしてしまい、将来、その子どもはそれについて後悔することにつながる、そう思えてしまう。

 また、鞠莉‘sママみたいにサブカルチャーはただのオタク文化だという考えを持つ人ほど実際にスクールアイドルなどそのものを見たことがない、ふれたことがない、にも係わらず、ただ単に「くだらない」と評価してしまうものである。ただ、人間というのは、まったく会ったことがない、もしくは、経験したことがないものに対して、まったく知らないがゆえにそれに恐れてしまう、ものであり、それが、今世界中で起きている人々の分断に結びついているのかもしれない。が、鞠莉’sママの「くだらない」はそれすら超えて、スクールアイドルそのものを見たことも経験したこともなく恐れている・・・わけではなく、ただ、ひとくくりに、オタク文化だから、社会において非生産性であるから、ただ、それだけでスクールアイドルは「くだらない」、見下している、そうしかみえなかった。「恐れている」を通り越して「そんなもの、恐れる必要なし、ただ、社会的に(非生産性であって)必要ない」と、考えているのかもしれない。それほど、「くだらない」という言葉は「恐れている」以上に相手に対して深く傷つける、そんな言葉かもしれない。

 その「くだらない」であるが、もし、ゴッホの「ひまわり」みたいな名作も「くだらない」の一言で済ますことができるのであろうか。ゴッホが生きていたとき、ゴッホとゴッホが描いた「ひまわり」は有名ではなかった。その当時の、ゴッホの作品を見たことがない人々にゴッホの名前とその作品の名前を言ったとしても知らないと言うかもしれない。もしくは、「くだらない」と評価するかもしれない。だって、ゴッホが生きた時代において、その作品を見たことがある人にしてもそこまでゴッホの作品を評価していなかったから。そして、その評価が一般市民に伝わっているのであれば、その一般市民、ゴッホの作品を見たことがない人からしても、その伝聞で知ったこと、つまり、「くだらない」とそのまま言ってしまうだろう。そう考えると、それ自体、本当に危ないことにつながってしまう、そんなふうに見えてしまう。そのゴッホと「ひまわり」をはじめとする作品群であるが、ゴッホが自殺してから長い年月が過ぎたあと、ゴッホの壮絶なる人生とともにその作品群を見た人たちによって再評価を受け、いまや、ゴッホとその作品群は「素晴らしい」という評価が定着している。そう考えたとき、見たことがない、経験したことがない、そのものに対して、何も知らない、ただそれだけで「くだらない」と評価するのは本当に危ない、かもしれない。いや、それ以上に、何も知らないのにそのことを知っているかのように相手を「くだらない」と評価するのは本当に危険なこと、と言えてしまう、のかもしれない。

 でも、「くだらない」と言う人に、それについて「くだらない」と言えなくする方法、ってあるのだろうか。その方法であるが、実は簡単なことである。その方法とは、その人に「くだらない」というもの、ことに実際に触れてもらうこと、である。その人は伝聞によって「くだらない」と評価しているのである。なら、それに触れて再評価してもらったらいいのではないだろうか。もちろん、1度触れたからといってそれが「くだらない」という評価を変えない可能性だってある。しかし、何も触れることもなく、何も経験していない、ただそれだけで、周りの伝聞だけで「くだらない」というよりも、その人が触れた、経験したことにより、自分の考えでもって評価した方がよかったりする。そして、それによってその人がそれに対して評価を変えることができるかもしれない。だからこそ、1度はそれに触れてみる、経験してみることがとても重要である。なにも恐れることなんてない。もし、あなたがあるものことに対してなにも知らずにただたんに「くだらない」と思うのであれば、まずはそのものことに触れてみる、経験してみることをお薦めする。そうすれば、それに対する見方も変わるかもしれないから。そして、それがこのあと鞠莉‘sママにも起きることになるのだが、それについてはもっとあとで話すことにしよう。

 とはいえ、千歌たちAqoursのメンバーの力でもって、行方不明、いや、失踪している鞠莉たち3年生3人を探すことを決めた、鞠莉‘sママ、であったが、このとき、裏美はある条件を鞠莉’sママに押し付けた。それは・・・、

①Aqoursメンバーの渡航費用は全部鞠莉‘sママもち

②渡辺月という静真高校の生徒会長もAqoursのメンバーと一緒に連れて行くこと

だった。裏美がつけた条件であるが、①については少しでも小原家の財政的なダメージを与えたいからだったが、②については・・・、裏美にとってとても重要なことだった。それは・・・。

(もし、月生徒会長が浦の星の生徒であるAqoursメンバーと一緒に行動しているのであれば・・・、「実は月生徒会長は浦の星と内通している、内通しているから浦の星の生徒たちを養護している→静真本校と浦の星分校が統合すれば月生徒会長は静真での大きな権力を手に入れることができる」それを証明するきっかけとなる。このことが静真の保護者・生徒たちに広まれば月生徒会長の権威も地に堕ち統合推進派も壊滅、こうして、木松悪斗様の静真での権力は絶対的なものになる!!それに、ことを大きくすればするほどその効力はより強いものになる!!)

と、裏美は考えていた、からだった。

 そして、その助言は実際に(偶然でもあったが)千歌たちAqoursと一緒に月もイタリアに行って鞠莉を探しにいくことになったのだが、ホテル小原沼津淡島での出来事のあと、鞠莉‘sママからこの出来事を聞いた裏美、おもわず、

(よしっ!!これですべてうまくいった!!あとは渡辺月とAqoursというグループが鞠莉という小娘を探すことに苦労してくれたら万々歳だ!!苦労した分だけ小原家の信用にキズが付くってもんだ!!さぁ、私たちの駒たちよ、踊れ、動け、そして、小原家の名誉を傷つけろ!!そうすれば、小原家は没落、木松悪斗様は天下を市中に治めたのも同然だ!!もちろん、この私、裏美もこの地位から大躍進するつもりだ!!)

と、心のなかでガッツポーズを決めていた。

 一方、裏美の助言どおりにことを進めた鞠莉‘sママも、

(これで鞠莉を見つけて和つぃの監視下におけば御の字で~す!!リサーチしてくれるのが、高校でただのアイドルごっこをしている子たちですが、その子たちと一緒にアイドルごっこをしていた鞠莉のことだから、きっと尻尾をだすに違いないで~す!!そこを私が捕まえれば鞠莉は私の思い通りになりま~す!!ついに鞠莉を捕まえることができるので~す!!もう鞠莉の勝手にさせないで~す!!絶対に鞠莉を捕まえるので~す!!)

と、自信満々に星空に向かって言っていた。

 こうして、裏美と鞠莉‘sママ、2人の夜は更けていく。明日にはついにバラ色の人生が開かれる、そうこのときの2人から感じられていた。が、このあと、2人にとって意外ともいえる結果が訪れようとしていることをこのときの2人には知る由も無かった。なぜなら、裏美によって千歌たちAqoursの鞠莉探索の連れに選ばれた、月、実は昔イタリアに住んでいたことがあり、イタリア語も堪能であったので、イタリアのガイド役としてはうってつけであること、そして、これから始まるAqoursの復活劇、それを成し遂げるための重要なファクターになること、を、このときの2人、いや、月を含めたこの物語の登場人物全員が知らなかった、からである、ただ唯一そのことをしているのはSaint Snowの聖良のみ・・・だったが・・・。

 

 そんな大人たちの陰謀のことも露知らず、月は翌日イタリアに行く準備をすると、明日はイタリアに飛び立つ、ということで、ベランダに出ては沼津の星空にしばしの別れを告げていた。

「まさかこの僕が曜ちゃんたち新生Aqoursと一緒に鞠莉ちゃん探しをすることになるなんて信じられないよ。鞠莉ちゃん行方不明騒動に巻き込まれたかたちになったけど、Saint Snowの聖良さんによると、「新生Aqoursをよみがえさせるためにも1度3年生である鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤさんと会って話し合うべき」って言っていたけど、その鍵となるのが、この僕、って、なんでそんなこと言ってしまったのかな?」

と、星空に向かって言っていた。あの聖良から言われたこと、新生Aqoursをよみがえさせるための重要なキーであることを考えていた。たしかに、月、昔、イタリアに住んでおり、イタリア語も堪能なのでガイド程度にはなれる、ものの、千歌たち新生Aqoursをよみがえさせるための重要なキーになることなんてできない、そう月自身考えていた。

 さらに・・・、

「それに僕にとって一番やらないといけないこともあるんだよな。沼田のじっちゃんの問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なこととは」これに答えないと静真本校と浦の星分校の統合ができないんだよね。この問いの答えってなんなの?」

と、月は月自身に突きつけられていた問題も考え込んでしまう。力には力でもって木松悪斗を制しようと昨日の部活動報告会で(新生)Aqoursのライブをして失敗し、月たち生徒会率いる統合推進派は風前の灯、首の皮一枚つながった状態であった。でも、それでも、この沼田の問い、これに答えることができれば統合にむけて一歩前進する、かもしれない、そんな淡い期待が月の中にはあった。が、その答えがいまだに見つかっていなかった。

 けれど、ヒントはすでに沼田によって示されていた。それは・・・。

「沼田のじっちゃんは言っていたよね、「浦の星の生徒たちはそれを知らずに実施している」って、そして、「浦の星の生徒と一緒に行動すればわかる」って」

月は沼田が示したヒントを思い出していた。そう、ヒントは浦の星の生徒たちにあった。浦の星の生徒たちはそれを知らないうちに行っているのであり、浦の星の生徒と一緒に行動すればわかる、とも、沼田は言っていたのである。

 その沼田の言葉を思い出し、月はこう思った。

「明日から曜ちゃんたち新生Aqoursと一緒に行動するけど、そのヒントをもとに沼田のじっちゃんが言っていた問いに答えることができるかな?」

明日から(浦の星の生徒である)千歌たち新生Aqoursと一緒に行動すれば沼田からの問いに答えることができる、かどうか疑心暗鬼になってしまう月。また、月、それとは別に、聖良の言っていたことも気にする。

「そして、聖良さん、(昨日の部活動報告会で旺夏が言っていた)「勝利こそすべて」って言葉を聞いた瞬間、「2年前のラブライブ!でも似たような状況だった」って言っていたよね。ラブライブ!やスクールアイドル界で「勝利至上主義」がはびこっているなか、たしか、「オメガマックス」というグループがそれを打破した、って、聖良さん、言っていたよね」

 そして、その「オメガマックス」について聖良が言っていたことも気になってしまう。

「その「オメガマックス」について聖良さんが言っていたのが、「楽しむことを前面に出したグループ」だった、ということだよね。それでいて、あの「勝利至上主義」がはびこっていたスクールアイドル界でスクールアイドルの日本一を決める大会、ラブライブ!で優勝するなんて・・・」

そのグループのことを考えたとき、ふと頭の中で浮かんだ疑問を月は口ずさんだ。

「でも、ただ、「楽しむこと」・・・、それって本当に大切なこと・・・なのかな・・・?」

これまで「勝利こそすべて」という言葉でもって支配されていた静真の部活動、それを見てきた月にとって「楽しむこと」に対する疑問は強かった。

 そんな月だったが、3月とはいえいまだに夜空は寒い、ということもあり、

「さむっ、明日はイタリアに行くんだ。もう寝ないと・・・」

と、窓を閉めるために部屋の中へと入ろうとした、その瞬間、

「月ちゃん、月ちゃん!!」

と、月を呼ぶ声が聞こえてくるとともに、

「うわっ!!」

と、月、フラッシュバックを起こす。立ちくらみを起こす月、そのなかで、

「あれっ、あの少女は誰?」

と、突然月の前にあらわれた少女、いや、小学3~4年生の少女の姿を月は確認する。その少女は月に対しこう言った。

「でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつめでも、ず~と、永遠に、大切な友達なんだよ!!」

「だからね、別れはね、すべてが終わる、ゼロに、もとに戻る、なにもなくなる、って、わけじゃないんだよ!!」

いつもは声のみだったが、今回は月の目の前にあらわれては言っている、その少女を見た、月、おもわず、

「えっ、曜ちゃん!!」

と、その少女の名前を呼ぶ。いや、その少女、曜・・・かもしれない・・・、そう月は思った。

 が、その瞬間、

ドテッ

と、月、窓の冊子にぶつかったのか、頭からダイブしたのか、頭から床に倒れこんでしまう。そして・・・、

ドテッ

という音と共に、

「痛~い!!」

と、月、叫んではぶつけた頭をさすってしまう。それでも、月、あることに気づく。

「あれっ、それって、前、どこかで聞いたような気が・・・」

どこかで聞いたことがあるセリフ・・・、どこかで聞いたセリフ、それを、月、

「う~ん、う~ん」

と、必死になって思い出そうとするも、思い出すことができず。それでも、月、

(もしかすると、これがなにかのヒントになるかもしれない。もしかすると、新生Aqoursをよみがえさせること、もしくは、沼田のじっちゃんの問いに答えることができるヒントになるかもしれない・・・)

と、とてもたわいもないことかもしれない、しかし、月にとってはとても大きな・・・かもしれない、そう思った。すると、月、なんだか体が軽くなる感じがした。

 そして、月はある決意をする。

(僕、決めたよ!!絶対に、曜ちゃんたち新生Aqoursをよみがえさせてやる!!聖良さんが言っていたけど、新生Aqoursをよみがえせるためのキーマンに僕はなる!!そして、新生Aqoursと一緒に行動することで、沼田のじっちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なこととは」に答えてみせる!!)

 

 こうして、怒涛の1日が終わった。新生Aqours復活をするために行方不明になっている鞠莉たち3年生3人に会いにいこうとする者、新生Aqours復活のキーマンといわれ、絶対にそれになってみせると決意する者、新生Aqoursの鞠莉探索を利用して自分の娘を捕まえては自分の監視下におきたい者、それを陰から仕向けた者、四者四葉の姿を今回は見せてくれた。次回、ついに、イタリア編、に突入!!ついに、月の、千歌たち新生Aqoursの、鞠莉‘sママの、裏美の・・・ではなく、この三者の運命の歯車はついに動き始める!!はたして、結末はいかに・・・。次回に続く!!

 

 あっ、ちなみに、なんで月と千歌たち新生Aqours6人がイタリアに行くことを決めた日から2日後にイタリアに旅立つことができたのかというと・・・、月は毎年イタリアの友達に会いに行くため、パスポートは常に用意している・・・のであるが、一方、千歌たち6人はというと・・・、ラブライブ!冬季大会東海最終予選通過後、昔、μ‘sがラブライブ!優勝後にスクールアイドルを扱った特番のために海外(NYみたいな都市)でライブをしたことがあったこともあったため、いつでも海外に行ってはライブができるようにと、強制的に(本来の)Aqoursメンバー全員がパスポートを作らされた、ということです。

 と、いうことはほっといて、本当に次回に続く!!

 



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Moon Cradle 第4部 第1話

「うぅ、寒い!!」

2018年3月下旬、ここ成田空港は3月なのにいまだ冷たい空気が張り詰めていた。そして、その地にある決意をした少女、渡辺月が降り立った・・・電車で・・・。

「まだ3月だよね。3月だったら暖かいはずなのになんでこんなに寒いの~!!」

月はまだ3月なのに冷たい空気が張り詰めているここ成田の寒さに怒っていた。が、月、成田の寒さの比較対照が黒潮の暖かさによって3月でも暖かい沼津である。対して、成田は山の中にある。朝早いこともあり山の中にある成田が寒いのも無理はなかった。とはいえ、データ的にいえば、成田と沼津、気温についてはあまり差はないのであるが、寒さの感じ方は人それぞれである、年を通じて熱すぎず寒すぎずの沼津に8年ぐらい住んでいる月からすれば成田のこのときの寒さは身にこたえたのかもしれない。

 そんな月であるが、

「あともう少しで曜ちゃんたちが到着するって連絡あったし、みんな揃えばあとは・・・」

と、これから月と千歌たち新生Aqours6人が行くところについて考えていた。これから月と千歌たち6人が行くところはイタリア、で、イタリアに行く目的はというと・・・。

「まずは鞠莉‘sママさんからお願いされた鞠莉ちゃんたち探しをして・・・」

そう、表向きの理由は鞠莉‘sママからの依頼・・・であるが、本当のところ、鞠莉’sママにしてみれば、イタリアで行方不明になった鞠莉たちを探し出し、鞠莉を捕まえては自分の監視下におきたい、そんな思惑があったり、さらには、裏で鞠莉‘sママを操っている?、月の宿敵の木松悪斗の右腕である裏美の陰謀、小原家没落のきっかけを作りたい、など、鞠莉たち捜索の裏に隠された陰謀、というか、大人の事情、はあるが、月たちからすればそんなこと関係なく、まずは鞠莉たち3年生3人を探し出すことに専念したい、という月たちの思いもあったりする。

 が、そんな月と千歌たち6人、今回のイタリア旅行、鞠莉を探し出す以上に裏の目的があったりする。それは・・・。

「そして、鞠莉ちゃんたち3年生3人を探し出しだしたら、もう一度曜ちゃんたち1・2年生と鞠莉ちゃんたち3年生と話し合いをして・・・」

そう、それこそこの旅の、月と千歌たち新生Aqours6人の、真の目的であった。なぜなら・・・。

「鞠莉ちゃんたち3年生3人と会って話し合うことで新生Aqoursをよみがえさせられることができる・・・はず・・・」

そう、この旅によって静真での部活動報告会のライブでの失敗により、不安・心配の海・沼に陥ってしまった千歌たち新生Aqoursを再び羽ばたかせることがこの旅の真の目的だった。Saint Snowの聖良によれば、新生Aqoursとして初めてのライブとなった部活動報告会でのライブ、そのなかで、これまでのAqours、本来のAqoursのエンジン役、屋根役であった3年生がいないことに初めて気づき、その大きな存在感が喪失したことにより不安・心配の深き海・沼に陥った、そんな新生Aqoursの状況、それから抜け出す、甦るためにはまずはいなくなったはずの鞠莉たち3年生3人と再び邂逅しよく話し合うこと、それが必要である、とのことだった。

 そして、月に老いてもこれとは別にある目的、というか、役割、があった。それは・・・。

「僕にしても、この旅において重要な役割があるって聖良さんが言っていたよね・・・」

月が聖良から言われたこと、それは、新生Aqoursをよみがえさせるための重要なファクターであること。たしかに、曜とは小学生のときからの幼馴染であるが、それ以外のAqoursメンバーとの面識はこれまでなかった。もちろん、鞠莉たち3年生3人ともこれまで邂逅したことがなかった。なのに、なぜか聖良からは、千歌たち新生Aqoursをよみがえさせるための重要なファクターである、と言われたのである。月からすれば何かのお門違い・・・と思ってしまっていた。が、それについては不思議な感覚を持っていた。それは、月がときどき心の奥底から聞こえてくる声だった。それが・・・。

「でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ず~っと、永遠に、大切な友達なんだよ!!」

「だからね、別れはね、すべてから終わる、ゼロに、もとに戻る、なにもかもなくなる、ってわけじゃないんだよ!!」

この言葉たちがときどきつきの頭の中にフラッシュバックとして現れていた。が、これについては最初の頃、木松悪斗が静真と浦の星の統合に異を唱え始めた、2月始めごろでは声だけしか聞こえてこなかったのが、今、2018年3月中旬、新生Aqoursをよみがえさせる、そのためにイタリアに行く、となっては、その声の持ち主、小学3~4年生ぐらいの少女の輪郭を、ぼんやりだけど見ることができた。その少女とは・・・。

「曜ちゃん・・・」

その少女は月のいとこで大親友の曜・・・みたいな少女だった。今はまだぼんやりとしか見ることができない、けれど、長い間一緒にいた、月にとってみれば馴染みのある顔・・・だった。なのだが、はっきりと断言できないため、月の今の認識は曜みたいな少女が言っていること、というものでしかなかった、このときは・・・。とはいえ、月にとって聖良の一言は今のところお門違い・・・という認識だった。

 だが、月にとってそれよりも重要な問題があった。それは・・・。

「それよりも、僕にとってみれば、沼田のじっちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」、これに答えないと。じゃないと、(静真本校と浦の星分校の)統合は実現できない。それに、僕の失敗をカバーしてくれたナギたち(静真高校)生徒会メンバーにも申し訳がたたない・・・」

そう、静真本校と浦の星分校の統合、それを実現するために、静真において影の神であり、PTA会長であり、静真の創立家の末裔である、沼田、が月に言った問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」これに答えることだった。木松悪斗が静真と浦の星の統合を白紙にするために静真の保護者たちに広めたもの「(初戦敗退続きのため)部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が(全国大会に出場する部活が数多くあるくらい部活動が盛んであり)部活動の士気が高い静真の部活動に参加すると、士気低下や対立により静真の部活動に悪影響がでる」これが今や静真の保護者たちの声となってしまい、それが静真本校と浦の星分校の統合をより困難なものにしていた。対して、月たち生徒会は浦の星の生徒たちのために統合を推進しようとしていた。が、月が「力には力でもって制する」その考えから独断専行で行った、あの静真の部活動報告会での(ラブライブ!に湯称するくらいの実力をもった)Aqoursのライブ、これが失敗に終わり、木松悪斗の考えは今や保護者だけでなく生徒たちのあいだでも広がろうとしていた。月たち生徒会率いる統合推進派は今や風前の灯・・・だったのだが、ナギたちが頑張ったお陰で首の皮一枚つながっていた。月、そんなことがあったため、なんとか沼田からの問いに答えようとしていたのだ。が、その問いの答えはいまだもって出てきてなかった。

 のであるが、この沼田の問いの答えについて、月は聖良からヒント?みたいなものを聞いていた。それは、2年前、ラブライブ!に優勝した「オメガマックス」についてだった。月は聖良からあることを聞かされた。2年前、ラブライブ!、スクールアイドル界において「勝利至上主義」がはびこっている中、「楽しさ」を前面にだした「オメガマックス」というスクールアイドルグループがラブライブ!に優勝し、「勝利至上主義」を打破した、というのだ。で、静真の部活動の現状だが、「勝利こそすべて」と、(木松悪斗の娘で女子サッカー部の部長の)旺夏が言うくらい勝利至上主義がはびこっている、ので、こちらも、2年前のスクールアイドル界と同じ状況、なのだが、聖良の話を聞いただけでは、月、あまりピンとしなかった。むしろ、

「楽しむことっていいの?」

と、疑問を呈するくらいになっていた。とはいえ、月にとっては沼田の問いについては頭の片隅においておくことにした。

 と、こんな風に、月は新生Aqoursの復活、そして、静真本校と浦の星分校の統合、2つの使命を持っていたのだが、どちらともまだそれをこなすだけの力はなかった。が、この旅を通して2つの使命を成し遂げる、それが月にとって課せられた旅の意義、なのかもしれない。

 そんな月であったが、まずはイタリアに行くことが先決だった。そして、月が成田に到着してから10分後・・・。

「月ちゃん、お待たせ!!」

と、曜がまだ眠っている千歌を引きずって月の前に登場した。いや、曜、千歌以外に、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネもいっしょについてきていた。これを見た月、

「それじゃ、鞠莉ちゃんたちがいるイタリアにレッツゴー!!」

と、元気よく言うと、曜も、

「レッツ、ヨ~ソロ~」

と、自分の決まり文句を言って出発ロビーに移動しようとする。

 が、このとき、月、

(あっ、あれが曜ちゃんの新しい武器、「レッツ、ヨ~ソロ~」なんだね。あれっ、僕もしてみたいな~)

と、それをやる機会をさぐりつつ、千歌たち6人と一緒に出発ロビーへと移動していった。

 

 それじゃイタリアにいざゆかん・・・なのだが、今から向かう目的は成田から直接行く便がないため、1度韓国の仁川に行くことになった、月たち一行。その仁川に行く機上k、月は隣にいる曜と話していた。

「曜ちゃん、今から行くところって、水の都、ヴェネチア、だよね」

月が曜に尋ねると、曜、

「うん、そうだね。鞠莉‘sママさんが言っていたよ、「鞠莉たちを最後に見かけた~のは~、ヴェネチア~だったですよ~」って!!」

と、鞠莉‘sママのまねをしつつ答えていた。鞠莉’sママの話によると、小原家の関係者が鞠莉たち3年生3人を直接見かけたのはヴェネチアの運河、そのゴンドラに乗っているところ、これが最後だったそうである。ヴェネチア、別名ベニス、そして、水の都、あの戯曲「ベニスの商人」の舞台でも有名である。そのヴェネチアであるが、海上の潟(ラグーナ)の上にできた都市である。そのため、ヴェネチアの市内は運河が張り巡られている。さらに、現代の交通手段である鉄道、そして、車が通れるほどの道なんて無い。そのため、ヴェネチアの市内における降雨通手段は徒歩・・・、そして、舟、ゴンドラである。それほどヴェネチアは水の都といっておかしくなかった。

 このヴェネチアであるが、この都市、町全体が世界遺産となっている。それは、中世の都市をそのまま残しているからである。なので、この都市の主な産業は観光、である。その象徴的存在が、ゴンドラ、それを操るゴードリエーレ(船頭)である。舵一つでし何に張り巡らされた運河を縦横無尽に進むさまはヴェネチアにおける一つの省庁ともいえた。ちなみに、船頭さんの制服であるが、縦じまの白黒のゼブラ模様のポロシャツだったりする。あと、もし、加勢がテラフォーミングされて水の星になったとき、ヴェネチアとそっくりそのまま作ってしまった年、ネオヴェネチアがあって、そこにウンディーネと呼ばれる少女の船頭さんが操るゴンドラに乗れたら・・・と思ってしまう次第である・・・。なお、ヴェネチアと日本を直接結ぶ航空便はなかったりする。なので、日本からヴェネチアに行く場合ヴェネチアに直接行く便がある韓国仁川へとまずは行くことになる。月たち一行がまず仁川に行くのはそんな理由があった。

 で、話は戻るが、実は、愛の・・・じゃなく自由への逃避行をしている鞠莉たち3年生3人であったが、一応卒業旅行・・・と称しているためなのか、ヴェネチアにたまたま来ていた鞠莉たち3人、ここで鞠莉のわがまま?が発動してしまう。ヴェネチアの玄関口で島の入口にあるヴェネチアの駅に降り立った鞠莉たち3人。そのとき、突然鞠莉がこんなことを言い出してしまう。

「う~、ヴェネチア、久しぶりで~す!!ヴェネチアといったらゴンドラで~す!!ゴンドラに乗りたいで~す!!」

と、こちらも鞠莉‘sママばり、いや、鞠莉’sママゆずりの声をあげていた。この鞠莉に対し、ダイヤ、

「そんなことよりも、まずはこれから先の逃走計画を練るのが先です!!」

と、鞠莉に釘を刺す。が、鞠莉、ダイヤの言葉を聞いたのか、

「それより先にゴンドラに乗りたいで~す!!」

と、ダイヤの意見を否定する。が、これには、ダイヤ、

「今は鞠莉のお母さん、鞠莉‘sママさんから逃げている最中ですよ。それなのに、わざと見つかるようなことはしないでください!!」

と、さらに鞠莉に釘を刺すと、ここでダイヤの忠告に素直にきく鞠莉・・・ではなかった。鞠莉は自分がやりたいことに対し反対されると逆にヒートアップしてしまう、それくらい自分でやりたいことは必ず成し遂げる、それほど芯の強い少女である、が、それは、ある意味、自分のやりたいことはほかの人が注意しても絶対に曲げない、そんなことがあったりする。そのため、

「マリーは絶対にゴンドラに乗る!!絶対に乗る!!」

と、ただの駄々っ子・・・になってしまった。でも、ダイヤも芯の強い少女である。今回の旅の真の目的は鞠莉の母親、鞠莉‘sママから逃げることである。その新の目的を守るため、鞠莉に対し、

「この旅の目的は鞠莉の母親から逃げることです。鞠莉さんが言うゴンドラに乗るってことは逆に鞠莉の母親に見つかってしまうことになります!!」

と、本当に真面目に鞠莉に自分の意見をぶつける。海外に住んでいたこともあり、自由気ままに自分のやりたいことを熱心に行う鞠莉、対して、網元の娘として生まれ、みんなおことを思い、みんなのためと真面目にことを進めるダイヤ、2人とも芯が強い少女であるが、その根本となるところが違うものである。なので、2人が一つの目的対して意気投合すればたとえ困難なことがあっても必ず乗り越えることができる・・・のだが、意見が食い違うと2人はぶつかりあってしまう・・・ものだった。で、その2人の調停役・・・なのが・・・、

「2人とも少しは落ち着いて・・・」

そう、果南である。小さいときから親友だった果南とダイヤ、そこに転校してきたばかりの鞠莉を引き入れたのが果南である。果南、小さいときから両親が営んでいるダイビングショップの手伝いをしたこともあり、お客さんとのやり取りなどもよくしていた。そのため、3人のなかではコミュニケーション能力がとても高いのが果南である。なので、いつも意見がぶつかる鞠莉とダイヤ、2人を調停するのが果南だったりする。

 その果南であるが、ゴンドラに乗るかどうか対立している2人に対して、まずは鞠莉から、

「鞠莉、今は鞠莉‘sママから逃げている最中だよ。だkら、少しは目立つのは控えた方がいいかな」

これには鞠莉、

「でも・・・」

と、駄々をこねてしまう。が、果南、すぐにダイヤに対しても言う。

「でもね、ダイヤ、少しは息抜きも大事だよ。いつまでも気を張っていたら心も体もどんどん悪くなっちゃうよ」

これにはダイヤ、

「それもそうですが・・・」

と、果南の言うことにすこし納得していない様子。と、ここで、果南、あることを言う。

「それに、昨日、千歌からメール、きたでしょ、鞠莉‘sママからお願いされて私たちを探しに来るって。きっと、千歌たちになにかあったんじゃないかな。だから、千歌たち、私たちを探しにくるはずだよ。その千歌たちに会うためにも、私はここヴェネチアにいるのがいいと思うよ」

 この果南の意見に対し、ダイヤ、

「確かにイタリア中を動き回って千歌さんたちに会えないのはいけませんですね。果南さんの言うとおりですですね」

と、果南の意見に賛同する。これを聞いた果南、

「でも、ずっとヴェネチアの隠れ家にいるのもしのびないし、まずは、鞠莉が言うとおり、ゴンドラに乗ってヴェネチア観光を堪能しようよ!!せっかくイタリアに来たんだし、ずっと隠れるだなんて息苦しくて、私、嫌だよ!!」

と、鞠莉のやりたいことに賛同する。

 と、いうわけで、鞠莉たち3人はこの日1日、ヴェネチア観光をしていた・・・のだが、このとき、鞠莉‘sママの関係者がその3人を目撃していた・・・というわけである。

 と、ここで、鞠莉‘sママの関係者、その正体は・・・であるが、イタリア、ということもあり、ギャング・・・ではなく、小原家直属の私設警備隊の1人であった。世界をまたとかける小原財閥、その中心となる小原家の先祖が暮らしていた地、それがイタリアである。そのため、ここイタリアには小原財閥系の企業が多かったりする。むろん、そのなかには警備会社もあったりする。この警備会社、普通の警備業務以外にイタリアによく来る小原家当主の警護も担当していた。さらに、警備に使う装備も超一流であり、ベテラン勢も多い。その能力は軍の一個大隊の能力をはるかに上回るぐらいに・・・・。で、今回は鞠莉の護衛・・・という目的でその警備会社総出で鞠莉を護衛・・・ではなく探していた。のだが、なかなか鞠莉が見つからなかったのである。でも、今回に限り、あまりしっぽを出していなかった鞠莉たち3人がちょっとした息抜きでヴェネチアの観光、ゴンドラに乗っているのを偶然見かけたのである。

 で、これを聞いた鞠莉‘sママ、

「でかしたので~すよ!!」

と、喜んでいた。鞠莉‘sママにとってイタリア中どこを探しても見つからなかった鞠莉たち3人、それが今ヴェネチアにいることがわかったのである。そして、その鞠莉たち3人を探しに月と千歌たち6人がイタリアに行くことになっている。こうなれば、鞠莉を捕まえたのも当然である。

 と、いうわけで、鞠莉‘sママ、明日、月と千歌たち6人がイタリアに飛び立つ・・・その目的地をイタリアの首都ローマから鞠莉たち3人がいるヴェネチアに変更、そして・・・、

「鞠莉からすれば、たとえ、あの7人(月と千歌たち6人)が見つけても逃げてしまうはずで~す!!なので、さらなる策、やりま~す!!」

と、鞠莉‘sママ、すぐにイタリアにある小原財閥系の印刷会社にあるものをいそいで発注する。そして・・・、

「これでようやく、マリーをお縄にできま~す!!」

と、大胆不敵な笑いを浮かべていた。

 と、こんなことを露知らず、月たち一行は仁川にもうすぐ到着しようとしていた。そんななか、

「鞠莉ちゃんたちに会える!!」

と、千歌はなにかに対してか喜んでいる、そんな風に見えた。いや、千歌たち6人、ともに鞠莉たち3人に会える、そんな期待で胸がいっぱいだった。それを見ていた月、

(なんか曜ちゃんたち楽しそう)

と、千歌たち6人が喜んでいるさまに嬉しさを感じていた。

 



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Moon Cradle 第4部 第2話

 このあと、月たち一行は韓国仁川でイタリアのヴェネチアに行く直行便へと乗り換えた。その飛行機、イタリアヴェネチア直行便、その飛行機のなかでは、月と千歌たち6人は月と曜の昔話や世間話などをしながら楽しく時間を過ごしていた。のだが、直行便で8~9時間のフライトのため、話し疲れて、次第に、そして、次々と睡魔に襲われる千歌たち。一人寝ては一人寝る、という具合に千歌たち6人全員眠ってしまった。対して月はというと、ヴェネチアに到着するのがイタリア時間で昼前、ということで、時差ボケを防ぐために千歌たちが眠り始める少し前に短めの仮眠をしていた。そして、千歌たちが完全に眠っている中で、月1人読書灯をつけて本を読んでいた。

 その本を読んでいる最中、月、

「ふ~ん、そうなんだ~」

と、ときどきうなっていた。さらに、

「へぇ~、スクールアイドルって凄いんだね~!!」

と、驚きの声もあげていた。今、月が読んでいる本、それは、

「月刊スクールアイドル ラブライブ!5周年記念号!!」

だった。そう、(今、月が読んでいるものと少し違うが)ルビィと花丸がAqoursに加入する前、ルビィや花丸が図書館で読んでいた雑誌である。その中で、第1回ラブライブ!で優勝し、今でも芸能界の第一線で活躍しているA-RISE、そのA-RISEを破り第2回ラブライブ!で優勝した、そして、伝説のNYライブ、スクールアイドルフェスティバルを成功させ、スクールアイドルの人気を不動のものにしたμ‘sなどが特集されていた。なのだが、実は、「月刊スクールアイドル」これまでラブライブ!で優勝してきたグループを1巻1グループという風に各巻特集を組んでいたのだ。で、ルビィや花丸が読んでいたのはそのうちの1巻、μ’s特集号だったのである。で、前年度までにラブライブ!で優勝したグループ8組?を各巻ごとに特集していたのをムック本という形でAqoursが優勝した第10回ラブライブ!の決勝大会にあわせて刊行されたものが、今、月が読んでいる本である。で、その本にはスクールアイドルの歴史、ラブライブ!の歴史が綴られていた。

 その月、この本を読むきっかけとなったのが、2日前のSaint Snowの聖良との会話だった。月は静真本校と浦の星分校の統合について聖良と話しているとき、部活動報告会のときに木松悪斗の娘で女子サッカー部の部長、そして、静真の部活動に参加している生徒たちの連合体、部活動連合会会長の旺夏が言っていた言葉、「勝つこそすべて」、それについて聖良に言うと、聖良は2年前のラブライブ!、スクールアイドル界も「勝利至上主義」が蔓延していたことを月に言っていたのである。そして、それを打破したのが、μ‘sのリーダー、高坂穂乃果の妹、高坂雪穂率いる「オメガマックス」だった、とも言っていた。のであるが、それについて月が詳しく聖良に聞こうとしたのだが、あともう少しのところで聖良から聞くことができなかったのである。

 で、月、2年前にスクールアイドル界で蔓延していた「勝利至上主義」、そして、それを打破した「オメガマックス」を含めて、ラブライブ!、そして、スクールアイドルについてネットで調べようとしたところ、あまりに情報が多すぎて有能な月としても全部の情報を裁くことができなかった。むしろ、「○○陰謀論」など、本当のことなのか嘘なのか検討がつかないものも多かった。

 そこで、月は沼津の中心にある本屋に行くことにした。そこで、月、

「スクールアイドル・・・、スクールアイドル・・・」

と、スクールアイドルの本を探す。一万冊以上もある本の中からスクールアイドルの本を探すのは難しい・・・はずだったが、月、すぐに、

「あっ、あった・・・、てっ、えっ!!」

と、スクールアイドルの本を見つけるもすぐに驚いてしまう。なぜなら・・・。

「スクールアイドルの本がいっぱい・・・」

そう、本棚一面スクールアイドル関連の本でぎっしりだったのである。実は、スクールアイドル人気はワールドワイドに展開されていたが、ここ日本もスクールアイドルは一つの文化として認知されていた。さらに、ラブライブ!の回を重ねるごとに、ラブライブ!に参加するグループも増加するくらい盛り上がっていたのも関係があった。さらにさらに、ここ沼津は2月のラブライブ!決勝で沼津(内浦)を拠点にするAqoursが優勝したこともあり、いまや沼津は一大スクールアイドルフィーバーが起きていたのである。沼津のいろんな学校でスクールアイドルグループが結成され、学校側も初期費用やグループ運営にそこまでお金をかけなくても活動できるスクールアイドルに目をつけ、グループ結成を後押ししていた。で、浦の星のような女子高だけでなく、共学校、しまいには男子校までにもスクールアイドルグループが作られることにもなってしまう。むろん、男子校のスクールアイドルは女装・・・なんてしないのは当たり前であるが、それでも、男性スクールアイドルグループすら結成されるとは・・・。というわけで、沼津の中心地にある本屋もそのフィーバーぶりが講じて一大コーナーとしてスクールアイドルコーナーを作った、というわけである。

 が、月がそのコーナーの本をよく見てみると・・・。

「え~と、「スクールアイドルになる方法」・・・、「10日で完全マスター、スクールアイドル」・・・」

そう、そのほとんどがスクールアイドルになるための本、そして、過去披露されたスクールアイドルの曲の振り付け集だった・・・。むろん、それ以外にも、

「え~と、「スクールアイドルの裏方」・・・。なんか面白そう」

そう、スクールアイドルの裏方、その裏方に必要な音響やスポットライトなどの扱い方についての本も売っていた。あの千歌たちの友達のむつたちが大変喜びそうな本もあった。その中で、月はある本を見つける。それは・・・。

「え~と、「スマホで簡単に撮れる・・・、かっこいいスクールアイドルの撮り方」・・・」

そう、その本、スクールアイドルにとって必須ともいえる曲のPV、それをスマホで簡単に撮ることを目的とした、その撮影のやり方の解説本だった。その本を手に取った月、

「なんか面白そう!!」

と、その本をよく読んでみる。すると、月の心の中である野望が渦巻く。

(もし、僕が持っているハイスペックなスマホで曜ちゃんたちAqoursを撮ったら、とても凄いPVが撮れる、そんな気がする・・・)

自分がAqoursのパフォーマンスを撮る、そんなことを頭の中に描いていた月・・・、なのだが、月、あることを思い出す。

(あっ、そうだった。今日はスクールアイドルについて調べるつもりで来たんだ!!)

と、本来の目的を思い出した月、すぐにスクールアイドル全般について書いてある本を探し出す。

 すると・・・。

「あっ、こ、これだ!!」

と、簡単に見つけてしまう。それは、スクールアイドルコーナーの中央に平積みされていたものだった。その本は、一般的にいうところのムック本、であったが、単なるムック本としては何百ページもの厚さがあった。その本に書かれていたのが・・・。

「月刊スクールアイドル ラブライブ!5周年号!!」

そう、スクールアイドル創立期より刊行されていて、スクールアイドルを目指すもの、ラブライブ!優勝を目指して頑張っているスクールアイドルにとってみればバイブルといえる雑誌、「月刊スクールアイドル」、そのなかで、ラブライブ!5周年イヤーの今年度に特集として組んでいたものを再編集、さらに、これまでのスクールアイドルのデータをも載せていた本だった。

 で、その本を手にした月、

「よ~し、これを買おう!!」

と、そのムック本を買い物かごの中に入れる・・・が、ついでに・・・、

「あと・・・、この本も・・・」

と、さっきから気になっていたスマホでの撮影方法を記したあの本も買物かごの中に入れてレジへと進んだ。

 と、いう風に、月はこのイタリア旅行の暇のときに読む本としてこの2冊を持ってきていた。で、ちょっと重たそうなムック本、「ラブライブ!5周年記念号!!」をひざの上に広げると、その特集に載っているラブライブ!優勝グループのページをめくっていく。

「あっ、このグループ、なんか笑いながら歌っている・・・。なんか楽しそう!!」

と、月、笑顔でパフォーマンスをしているグループの写真を見る。そして、

「あっ、これが伝説のグループ、μ‘sなんだ!!」

そのグラビアページに乗っているμ‘sを見て喜んでいた。むろん、このページもあった。

「あっ、星空さんっ、かわいい!!ほかの写真はボーイッシュなんだけど、このウェディングドレス姿ってなんか綺麗・・・。これが星空さんの力なんだね!!」

あの、ルビィと花丸がスクールアイドルとしてAqoursに加入するきっかけとなった星空凛のウェディングドレス姿の写真もあった。

 が、月、グラビアページをめくり続けるとあることに気づく。

「あっ、μ‘sのときは笑顔の写真が多かったのに、最近のものになるにつれて笑顔じゃなくなっている・・・、なんか・・・、真面目・・・、いや・・・、真剣なもの・・・ばかり・・・」

そう、μ‘sのときから年が経つにつれて、笑いながらパフォーマンスをする顔からなにか真面目に、まるで真剣そうに、いや、ただたんにパフォーマンスをしている・・・そんな感じがする写真が多くなっていく。たしかに真面目にパフォーマンスすることはとても大事である。それにより、いってみれば乱れないパフォーマンスができる、そうなれは某有名な女性アイドルグループのPVを見たらわかるかもしれない。

 が・・・。

「でも、なんか、真剣すぎて、「これが本物のスクールアイドルなの・・・」って思ってしまう・・・」

月はそう思ったのはある理由があった。それは・・・。

(スクールアイドルって高校生がなれるものでしょ!!高校生がプロみたいに真剣になるのは仕方ないけど・・・、僕たちはまだ高校生・・・、笑顔も大切・・・じゃないかな・・・)

そう、月はこのとき薄々と感じていた。スクールアイドルっていっても1人の高校生である。プロのアイドルではない。高校生であること、それがスクールアイドルになれる唯一の条件である。悪くいえば、歌が下手でダンスもできない高校生でもスクールアイドルと称すればスクールアイドルになれるのである。その中で、たしかにプロとして真剣に取り組むスクールアイドルも必要である。が、スクールアイドルとして、ただそれだけでいいのだろうか。笑顔、それも大切である・・・、そう月は思ったのかもしれない。むろん、高校生・・・というのもあるが・・・。

 そんな月、ある2つのグループの写真を見比べてあることに気づく。

「第6回ラブライブ!優勝グループ、「K9」・・・、なんか真剣・・・というよりも・・・、なにかを見下しているような気がする・・・」

K9・・・、福博女子大学付属のスクールアイドル・・・、「スクールアイドル勝利至上主義」を地で行く、そんなグループ・・・。第6回ラブライブ!において破竹の勢いで優勝・・・したのだが、優勝したことにより、ほかのスクールアイドルを見下してしまう・・・そんなグループ・・・と、月、前もってwikiなどで調べたことを見比べながらK9の写真を見る。

 そして・・・。

「第7回ラブライブ!優勝グループ、「オメガマックス」・・・。このグループ、なんか笑いながらパフォーマンスしている・・・。なんか・・・楽しそう・・・」

オメガマックス・・・、μ‘sを輩出した音乃木坂学院最後のスクールアイドル。第7回ラブライブ!、このとき、優勝候補だったK9を「スクールアイドルを楽しむ」ことを前面に出して打ち破ったグループ・・・。そのオメガマックスの写真とK9の写真を見比べていくうちに、月、あることに気づく。

「あっ、K9よりもオメガマックスの方がスクールアイドルっぽい!!なんか笑っている方が僕の方も楽しい気分にしてくれる・・・」

そう、スクールアイドルの場合、真剣な姿でパフォーマンスするよりも笑顔でパフォーマンスをする方がよりスクールアイドルらしい、ともいえた。だって、高校生、だから。スクールアイドルはプロのアイドルグループじゃない。高校生のアイドルグループ、かつ、プロではない。そのなかで、高校生として求められるものがあったりする。勉学、スポーツ、いろいろあるが、そのなかで、笑顔、が求められる・・・のかもしれない。むろん、それは、高校生、に対する固定概念、かもしれないが、「プロ」ではできないこと、そして、高校生としてあらゆる場面において学ぶことが必要、と考えた場合、勝利すること、そういった結果が重要、であるが、高校生において、その結果に至るまでの過程がとても重要、だったりする。そして、その過程において学んだことが将来に活かされる・・・ことが重要かもしれない。結果だけを追い求めるあまり、その過程を疎かにする、それは本末転倒・・・なのかもしれない。それが、K9とオメガマックス、そしてμ‘sの写真に違いとして現れている・・・かもしれない。

 そんなK9とオメガマックスの写真を見比べた月、

「笑顔でパフォーマンスすること・・・、それがスクールアイドルにとってとても重要・・・。でも、それって、スクールアイドルだけのことなの・・・」

と、少し考え込んでしまう。笑顔でパフォーマンスするオメガマックス・・・。けれど、それはスクールアイドルだけに言えることなのか、それとも、それ以外にも・・・、その悩みに襲われたのは今が初めて・・・の月、だったので、とても悩んでしまう。旺夏の言葉、「勝つこそすべて」、それは2年前のスクールアイドル界に蔓延していた「スクールアイドル勝利至上主義」にも通じる。でも、楽しむことはスクールアイドルの世界だけに通じるものなのか、それともほかの世界にも通じるものなのか、それに、月、悩んでしまう。

「う~ん、う~ん」

と、悩み続ける月。そんなときだった。

「う~、お姉ちゃん!!お姉~ちゃん!!」

と、なにかうなるような大声が聞こえてくる。すると、月、

「なっ、なに!!」

と、その大声に驚いてしまう。そして、その大声のもとをたどると・・・。

「お姉ちゃん~!!」

と、まるでかわいらしい寝言で大声を出していたのはルビィだった。姉ダイヤを呼ぶ、そのルビィの姿を見て、月は千歌たちが寝る前のことを思い出す。

「あのねぇ~、月ちゃんはねっ、この日~」

と、曜が陽気に月との昔話を話している最中、みんな、

「そうだね~」「そうずら」

と、これから鞠莉たち3年生3人に会える、その期待からか、ちょっと嬉しそうにうなずいていた。のだが、ただ1人、ルビィだけは・・・、

「う、うん、そうだね・・・」

と、少し元気がないように感じられていた。これには、月、

(あれっ、ルビィちゃん、元気がないけど、どうしたのかな?)

と、ルビィを心配そうに見ていた。

 そして、それはルビィの苦しみに満ちた寝言としてあらわれてしまう。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・」

と、姉ダイヤを苦しみながら呼ぶルビィの姿に、月、

(もしかして、ルビィちゃん、お姉ちゃんであるダイヤさんを呼ぼうとしているのかもしれない。それほどルビィちゃんにとってお姉ちゃんであるダイヤさんの存在は強い、のかもしれないね)

と、ルビィのことを思ってしまう。

 と、そんなときだった。

(月ちゃん、月ちゃん・・・)

と、頭の中で月のことを呼ぶ声が聞こえてくる。月、すぐに、

「曜ちゃん、少しは落ち着いて・・・」

と、隣に眠っている曜の方を見る。すると、

「むりゃむりゃむりゃ」

と、曜、熟睡していた。これを見た、月、

(えっ、曜ちゃんじゃなかったの!!でも、あれは曜ちゃん・・・)

と、少し困惑するも、すぐに、

(あっ、あの曜ちゃんの姿、今の高校生の曜ちゃんじゃない!!あれは、僕が曜ちゃんと初めて会ったとき、小学3~4年生のときの姿だ!!それに、その曜ちゃんが言おうとしていたこと、たしか、どこかで聞いたことがある・・・)

と、なにか思い出そうとするも・・・、

(え・・・と、なんだっけ・・・、え・・・と・・・)

と、月、考える間もなくそのまま深い眠りについてしまった。

 

 数時間後・・・。

「あっ、寝てしまった!!」

と、月、いきなり起きると、隣にいた曜は、

「あっ、月ちゃん、おはよう!!」

と、月に対しておはようの挨拶をするとすぐに、

「月ちゃん、あともう少しでヴェネチアに到着するよ!!」

と、もうすぐ目的地のヴェネチアに到着することを月に言った。これには、月、

「あっ、そうだったの!!曜ちゃん、教えてくれてありがとう!!」

と、曜に御礼を言った。

 そして、月は開いたままになっていた「月刊スクールアイドル ラブライブ!5周年気年号」の本をかばんのなかにしまう。

 と、同時に、前の方から、

「お姉ちゃん、待っててね!!今行くからね・・・」

と、かわいらしく、けれど、なにかを決心したような声が聞こえてくる。それを聞いた月、

(ルビィちゃん・・・)

と、その声の主、ルビィのことを心配してしまう。ルビィ、昨日の姉ダイヤを呼ぼうにも姉ダイヤは来てくれない、そんな苦しみから逃れたいのか、姉ダイヤを探しきることでその苦しみから脱出したい、そんな気持ちが月からは透けて見えてしまっていた。

 そんな月の心配をよそに、ルビィは楕円の窓から見える地中海、その地中海ブルーを見ながら、

「(ダイヤ)お姉ちゃん、ルビィにとってお姉ちゃんはとても大切なものだよ。ルビィはお姉ちゃんなしじゃ生きていけないよ!!」

と、まるで心の中に広がる不安・心配を取り除きたい、そのためにも姉ダイヤを探し出し、もう離れたくない、そんな気持ちを代弁しているかのように言っていた。

 これには、月、

(ルビィちゃんの態度を見ていると、お姉ちゃんがいないと生きていけない、そう僕には見えてしまうよ。でも、ルビィちゃんは気づいていない。いや、気づくのを躊躇っているのかもしれない。お姉ちゃんであるダイヤさんはもう3年生であってすでに卒業してしまった。そして、やがて、ルビィちゃんのもとから去ることになる。そう考えると、ルビィちゃん、いつかは別れてしまう、その現実を受けいれないといけない、それから逃げようとしている、僕はそう思えてしまう・・・)

と、ルビィの態度に少し厳しい意見の持ってしまう。

 が、それと同時に、月はある思いもしてしまう。

(たしかにルビィちゃんと姉のダイヤさんにはいつかは別れてしまう。でも、別れる意ことって、何もかも手元からなくなる、すべて消えてしまう、もとに戻ってしまう・・・、ものなのかなぁ?)

別れとは、なにもなくなる、手元からなくなる、すべてが消える、もとに戻る・・・それについての疑問を感じてしまう。それって、一般的に考えるなら、別れとは、手元からなくなることを意味してしまう、が、果たして、それによってすべてが消えてしまうのか、それはどうなのか、それについては今の月にはわからなかった。

 

 



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Moon Cradle 第4部 第3話

 そして、月たちを乗せた飛行機は無事にヴェネチア国際空港、別名、マルコ・ポーロ空港に到着した。

「やっと着いた~!!」(曜)

「あともう少しで鞠莉ちゃんたちに会えるね!!」(千歌)

と、鞠莉たち3年生3人がいるイタリアの地に降り立った、その喜びで、1人を除く千歌たち5人はいっぱい・・・だったが、1人だけ様子が違っていた。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・」

まるでなにかの呪文を唱えている、そんな風に見えてしまう少女、ルビィ、このルビィの姿に、

「ルビィちゃん・・・」

と、花丸、ルビィのことを心配そうにみていた。

 そして、もう1人・・・。

(ルビィちゃん・・・、大丈夫かな・・・。これから起こる悲劇・・・にならないかな・・・)

と、月もルビィのことを心配する。それも、姉ダイヤとはいつかは別れるという現実を突きつけられたとき、そのときの絶望を含めて・・・。

 

「ヨハネ、かの地に堕天!!」(ヨハネ)

「着いた!!」(曜)

ヴェネチア国際空港に着いた月一行であったが、入国審査が終わり、すぐさま、ヴェネチアの島の入口にあるサンタ・ルチーア駅へと列車で移動した。そして、千歌たち新生Aqours6人はついにイタリア、ヴェネチアの地に降り立ったのだ!!でも、1人だけマイペースな人も・・・。

「ピスタチオ、ヴォート(おいしい)ずら~!!」

そう、花丸だった。花丸はヴェネチアの駅前に着いてそうそうイタリア名物のジェラートを駅前にあったジェラートを売る屋台で注文(それも2つ!!)してそのまま食べていたのである。グルメといったら花丸、何でも食べる(牛乳以外)花丸である。グルメと花丸、切っても切れない縁、である。いつも食べている花丸、それでいて太らないのが不思議である。とても効率的なエネルギー効率の体をしているのであろう、花丸は。それとも、お寺の子である花丸である、よっぽど体に優しい食事に心がけているのだろう、花丸の両親は・・・。対して、ヨハネはその花丸によく連れ添っているためか、ちょっと悲しい結果を迎えていた。とはいえ、大丈夫だ、ヨハネ、そこまで気にすることはないぞ!!(たぶん・・・)。たとえデジャブになったとしても気にするな、ヨハネ!!

 と、いうわけで、イタリアについてもマイペースさを見せる千歌たち6人。これには、月も、

(なんか、というか、個性的すぎるね・・・、Aqours・・・。これでよくラブライブ!で優勝できたね・・・。僕、ちょっと・・・、こんなチーム、見たことない・・・)

と、ただただ顔を引きつってしまうしかなかった。いや、苦笑いするしかなかった・・・。

 そのなか、鞠莉たち3年生3人の情報であるが・・・、お笑い集団Aqours・・・になるまえに、Aqoursの中で数少ないツッコミ(ときどきボケ)担当の梨子がお笑い集団化するまえに、

「それで、(鞠莉たち3年生3人との)連絡は?」

と、みんなに尋ね・・・、こほん、物語を先に進めるナイスフォローをする。いよっ、ナイスフォローだよ、梨子ちゃん!!

 なのだが、その肝心の鞠莉たち3人の情報であるが、その当事者であるダイヤを姉にもつルビィからは、

「お姉ちゃんからなにも・・・」

と、ちょっと残念そうに言う、何か心の中に隠すかのように・・・。

 そして、千歌はというと・・・、

「果南ちゃん、鞠莉ちゃんからはなにも・・・」

と、こちらも残念そうに言う。

 しかし、そのあと、千歌から衝撃なものがでてくる。千歌はそのまま言い続ける。

「最初は「こっち(ヴェネチア)に行くよ!!」って送ったときに届いた、これだけ・・・」

と言うと、自分のスマホを取り出し、みんなに対してスマホに写る写真を見せる。どうやら、事前に千歌が鞠莉行方不明騒動の当事者であり千歌や曜の幼馴染である果南にイタリアに行くことを伝えたとき、果南からの返信で届いたメール、それに添付されていた写真だった。ただ、そのメールにはなにも書かれていなかった。ただ、その写真だけ添付されていた、だけだった。さらに詳しくいうと、このメールが届いたのは、このヴェネチア国際空港に着いた直前だったのである。そのため、千歌たちはまだこのメールや添付されいた写真を鞠莉‘sママに送っていなかった。ちなみに、その写真であるが、「どこかの橋」から撮った写真、としかわからなかった。目立つものものといえば、両岸にびっしりそびえたつ建物と川に突き刺さったきの棒だけ・・・。そのため、わからないのか、曜、

「う~ん、この場所に行くしかないよね・・・」

と、少し諦め声だった。

 が、ここで凄いこが起こる。その諦め声の曜に対し、ある元気な声が聞こえてくる。

「ここ、すぐ近くだよ!!」

その声の主、なんと、月、だった。昔、イタリアに住んでいたことがある月、そして、ヴェネチアでも有名な場所だからこそすぐにわかった、のである。これには、千歌、

「わかるの?」

と、少し疑問に感じる。だって、千歌たちの付き添いで来ているのが月である。いわば、千歌たちのお目付け役、なのだが、ここに来て、月の存在的価値がぐっと上がってきたのだ。これに対して、月についてなにも知らない千歌が不思議になるのも無理でもなかった。

 そんな千歌の表情を見てか、曜、

(あっ、千歌ちゃん、月ちゃんのこと、不思議そうに見ている!!千歌ちゃんに月ちゃんのこと、ちょっと説明しないと・・・)

と、思ったのか、千歌の言葉のあと、

「月ちゃん、小さいときにイタリアに住んでいたから、(イタリアのこと)詳しいんだよ!!」

と、月について少し説明。これには千歌たちも、

(あっ、そうなんだ!!)

と、果南が送ってきたメールに添付されていた写真について月がなぜわかったのか納得する。

 それを受けて、月、

(曜ちゃん、ナイス!!ここで僕が決めてやる!!)

と、考えてしまい、

「ガイド役だね!!わからないことがあったらなんでも聞いてよ!!」

と、自分の胸を叩いて言う。が、これにより、千歌たち、

(す、凄いよ、月ちゃん!!)

と、尊敬の目を月に向けてしまう。が、これがいけなかった。尊敬のまなざしを受けた月、気をよくしたのか、

(あっ、僕、尊敬のまなざしが千歌ちゃんたちから向けられている!!なら、あれをするタイミングはいつでしょ、今でしょ!!)

と、某有名予備校講師ばりに自信に満ち溢れると、ついにあれを発動する。それは・・・。

「さぁ、レッツ、ヨ~ソロ~!!」

そう、月があれほどやりたかった曜の決め台詞、「レッツ、ヨ~ソロ~!!」だった。成田で飛行機に乗る前、曜がこれをやっているのを見ていつかは自分もやりたいと思っていた月、それを今、ここで実践してみせたのである。むろん、このことは曜には内緒だった。なので、自分の決め台詞を言われた曜、すぐに、

「こらっ、私のセリフ~!!」

と、月にツッコミをいれてしまう。これには、みんな、

ハハハ

と、2人のやり取りを見て笑ってしまった。これには、千歌、

(あっ、いつものみんなに戻った!!)

と、安心してしまう。これまで千歌たち新生Aqours6人は静真での部活動報告会のライブで、これまで頼ってきた鞠莉たち3年生3人がいないことにより、不安・心配という深き海・沼に陥ってしまい、とても暗い表情、思いを持ってしまっていた。しかし、紆余曲折をえてここイタリアでもうすぐ鞠莉たち3年生3人に会える、そして、この月と曜のやり取りによっていつもと同じ明るい表情をして笑っている梨子、花丸、ルビィ、ヨハネの姿を見てか、千歌、少し安心したのだった。

 が、それは表面上でしかなかった。特に、姉ダイヤに依存しているルビィにとってはとても顕著だった。実は、ヴェネチア国際空港からサンタ・ルーチア駅まで行く列車の中でルビィは1人百面相状態に陥っていたのである。

(あともう少しでお姉ちゃんに会える!!お姉ちゃん、待っててね!!)

と、ヴェネチア国際空港に着いて外に出たとたんに、姉ダイヤに会える、そんな嬉しい気持ちでいっぱいだった。そのため、ルビィの表情も、このときは「にた~」という表情をしていた。が、すぐに、ルビィの頭の中にある言葉がよぎる。

(「お姉ちゃんたちはもういないの!!」)

そう、前日の内浦の砂浜海岸でSaint Snowの2人、聖良と理亞に現時点でのパフォーマンスを見せたとき、不安・心配というものを前面に出したパフォーマンスをしてしまい、それを受けて理亞が言い放った一言である。その言葉がルビィの頭の中によぎった瞬間、

(あれっ?でも、お姉ちゃんに会えるにしても、それって、ず~と、そのままじゃないよね)

という不安・心配に襲われてしまう。たとえ、今、ここで会えたとしてもすぐに別れることになってしまうものである。それは、すなわち、また頼れる姉ダイヤとは離れ離れになってしまうことを意味していた。その現実を考えた場合、ルビィにとってまた暗い未来が待っている、ことを意味していた。

 と、いうわけで、

(いつかはいなくなるよね。そうしたら、ルビィ、どうしたらいいの?これから先、ルビィはお姉ちゃんなしで生きていかないといけないの?お姉ちゃんがいない、そうしたら、ルビィ、ガンバルビィ、できなくなるよ・・・。どうしたらいいの~?助けて、お姉ちゃん~!!)

と、姉ダイヤに助けを被る。こうなると、ルビィ、また不安・心配をしているくらい暗い表情になってしまう。

 そして、駅前に到着するまでのあいだ、ルビィ、この2つの思いを繰り返し繰り返し頭のなかでしてしまう。なので、明るい表情から暗い表情へ、そして、また明るい表情へと、まるで、1人百面相状態、になってしまっていた。

 こんなルビィをとても心配そうに見ている、それが月だった。月、そんなルビィを見て、

(どうしちゃったのかな?ルビィちゃん、なんか苦しそう)

と、ルビィのことを心配していた。

 

 しかし、月の心配は的中してしまう。その写真の場所へ、駅から近くに・・・といっても歩いてから25分ほどのところにあるため、月たち一行は歩いてその場所へと向かっていた。ちなみに、ヴェネチアは水の都である。車はおろか自転車で移動・・・できるほどの幅がある道なんてない。車の乗り入れすら禁止されているのである。なので、ヴェネチア市内の交通手段はゴンドラ(小舟)か歩きしかない。

 その歩きの最中、花丸はまだ・・・、

「う~、ジェラート、おいしいずら~」

と、まだジェラートを食べていた。ちなみに、このジェラート、すでに9~10個目である。それを見てか、月、

(花丸ちゃん、これだとルール違反になっちゃうよ・・・)

と、ジェラートを食べる花丸に対して少し困り顔。そう、ここ、ヴェネチアでは指定の場所以外での食べ歩きは禁止されているのだ。そのため、月、意を決して、

「花丸ちゃん、はやく食べてね。本来であれば、ここ、ヴェネチアでは指定の場所以外でのため歩きは禁止、なんだからね!!」

と、花丸に注意する。

 すると、花丸、月からの注意を受け、

(そうだったのずら~!!知らなかったずら~!!)

と、考えてしまい、すぐに、

「それはごめんずら~」

と言っては残っていたジェラートを急いで食べてしまう。そして、花丸、食べ終わると、

「ごちそうさまずら~!!とてもおいしかったずら~!!」

と、今まで食べていたジェラートの感想を言うと、すぐに、ヨハネ

「口のまわりにクリームがついているよ、ずら丸」

と、花丸に指摘する。これには、花丸、

「そうだったずら~」

と言っては、口のまわりについているクリームを手でぬぐってそのまま口へ。

「これはこれでおいしいずら~」

と、花丸、ここでもマイペースで感想を言う。が、これを見て、ヨハネ、

「ずら丸、みっともない・・・」

と、花丸のマイペースさにうんざりしてしまう。この一連の流れを見ていた月、千歌、曜、梨子、思わず、

ハハハ

と、笑ってしまった。

 が、この一連の流れの中で笑っていない子がいた。そう、ルビィである。

(お姉ちゃんに会える!!)

の嬉しい気持ちと、

(ルビィ、この先、生きていけるのかな?お姉ちゃんなしでやっていけるのかな?)

の不安の気持ち、これが永遠にループしていた。そう、ルビィは精神的に危険な状況を迎えていた。

 

 そして、ついにルビィにその限界が訪れようとしていた。

「凄いね~、どこに行っても川がある!!」

と、水の都ヴェネチアの水路の多さに驚く千歌。こんな風にヴェネチアについて話がはずむ、ルビィ以外の月と千歌たち5人。対して、ルビィはというと、嬉しい気持ちと不安の気持ち、その2つの思いがループしてしまい、それだけで精一杯だった。そのためか、ルビィ、ほかの6人との距離がどんどん離れていってしまっていた。

 そして、ルビィ、

(う~、疲れてきたよう・・・)

という疲れの心の声とともに、

「道、迷いちゃいそう・・・」

と、本当に弱気の発言をしてしまう。

 そんななか、

(あれっ、なんか飾ってある。少し見に行こう)

と、ルビィ、目的地近くのアーケード内にある店のショーウインドーの中になにか興味があるものを見つけた。いや、そのものに引き寄せられていく。で、つい、そのショーウインドーの中を見るルビィ。そこには・・・。

(あっ、見たことがない仮面だ・・・)

そう、そこにあったのは、イタリア名物の仮面、それがたくさん置かれていた。

 が、その仮面を見て、ルビィ、ある感覚に襲われる。

(あれっ、どうして、誰かに見られている、そんな気がする・・・)

と、ルビィ、誰かの視線を気にしてしまう。で、ルビィ、そのうち、その視線がショーウインドーの中にあるたくさんの仮面からだと気づく。すると、ルビィにある変化が起きる。

(仮面・・・、が・・・、人!!知らない人!!)

なんと、ルビィ、仮面たちが知らない人の顔だと認識してしまったのだ。で、ルビィは極度の人見知りである。たくさんの知らない人から見られている、ただそれだけであがってしまう。さらに、ルビィにとって不安・心配によって精神的に参っているなかではその効果は絶大だった。

 と、いうわけで、ルビィ、ついに精神的な限界を迎えてしまう。あがりすぎてしまい、逃げ出したいルビィ。そんなとき、ルビィの耳にある少女の声が聞こえてきた。

「ここだよ!!」

この声により、ルビィ、限界をこえてしまった。その瞬間、

「ピギィッ!!」

と、ルビィ、大きな声をあげてそのショーウインドーから逃げてしまった。その逃げている最中も、

(お姉ちゃん、助けて~!!お姉ちゃん、お姉ちゃん!!)

と、姉ダイヤに助けを求めようともしていた。

 

 そんなルビィより先に月と千歌たち5人はすでにその目的地に着いていた。

「ここだよ!!ここがその写真の場所、SS.アポスポリ川だよ!!」

と、果南から送ってきたメールに添付されていた写真とそっくりの場所であることを千歌たちに教える。ちなみに、ルビィが精神的に限界を迎えたときに聞こえてきた声の主はなんと月だった。月にとって悪気はなかった。のだが、あまりに大声だったため、それが結果的にルビィを苦しめることになってしまった。

 で、そのルビィであるが、ショーウインドーのある店から逃げ出した、ルビィ、アーケードを抜け、その先にある橋、そう、その目的地にいる花丸めがけて飛び込み抱きついてしまう。そして、ルビィは花丸に向けてこう言った。

「こわかったよ~、花丸ちゃん~」

これには、花丸、

(あっ、ルビィちゃん、なにかに苦しめられていたかずら~)

と、思ったのか、

「よしよし」

と、ルビィの頭をなでる。これには、ルビィも、

(ふ~、安心する~)

と、安らいでしまう。どうやら、ルビィ、少しは落ち着いたみたいだった。

 が、このとき、ルビィ、

(ルビィ、お姉ちゃんなしでは生きられない!!)

と、姉ダイヤへの依存を早々と決めてしまった、そんな思いが生まれてしまった。

 



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Moon Cradle 第4部 第4話

 そのルビィが到着したのと同じ頃、花丸の近くにいた千歌はスマホの果南からのメールに添付されていた写真と実際の風景を見て、

「本当だ!!」

と、まったく同じところだ、と、感嘆していた。

 その同じ頃、ヴェネチアのある高いところにいた少女たち3人組のうち、外国人みたいな少女1人が、

「あっ、ちかっちがメインターゲットに着いたみたいで~すね~」

と、言うと、

「それじゃ、手はずどおりにいきますわよ!!」

と、こちらも大和撫子みたいな少女1人が言えば、ポニーテールの少女1人も、

「それじゃ、電話をかけるね」

と言って、自分のスマホからある場所へと電話をかけた。

 

「本当だ!!」

と、千歌が言ってまもなく、

「たしかにここね」

と、梨子も写真と同じ場所であることを確認する。が、肝心の目的地についても、鞠莉たち3人はいなかった。

「ふ~ん」

と、ちょっと心配そうな梨子。

 そんなときだった。

チリ~ン チリ~ン

という音が梨子の耳に届く。

「あらっ」

と、その音が聞こえる方へと向く梨子。で、そこにあったのは公衆電話だった。そこから、

チリ~ン チリ~ン

と、なっていた。むろん、月と梨子以外の新生Aqoursメンバーも気づいたらしく、全員音がなる公衆電話の方を向く。

 そして、

「電話がなっているね」

と、曜が言うと、月、

(これだ!!これこそ写真を送ってきた本当の理由!!この場所にくればきっと鞠莉ちゃんたちに出会えるヒントがくる、そう思っていた。そして、このベルこそ、鞠莉ちゃんたちに会える、そのための合図なんだ!!

と、思ってしまい、そのベルのなる公衆電話へと駆け出すように向かった。

 そして、月、その公衆電話に着いて受話器を持つと、そこからある少女の声が聞こえてきた。

「What’s Ms.Watanabe’s decicion?(渡辺さんの決め台詞は?)」

この質問に、月、

「Let’s YO~SO RO~!!(レッツ ヨ~ソロ~!!)」

と、簡単に答える。

 それを聞いた少女、ただ一言。

「コンタリーニ・デル・ホヴォロ、上、いる」

と言うと、電話を切ってしまった。が、これを聞いた月、

(あっ、あそこだ!!)

と、気づく。「コンタリーニ・デル・ホヴォロ」実はそこまで有名ではない建物、でも、イタリアに住んでいた、ヴェネチアに小さいときに来ていた月にとって、その建物のことも知っていた。なので、その建物の場所も知っていた。

 その突然公衆電話に駆け出した月を追ってようやく千歌たち6人もその公衆電話に到着。千歌、すぐに、

「月ちゃん?」

と、なにがあったのか聞く。

 その月、受話器を置くなり、

「ホヴォロ・・・」

と、言うと、さらに、

「「コンタリーニ・デル・ホヴォロ」だって!!」

と、笑顔でもって答えてくれた。

 

 とはいえ、公衆電話にかかってきた電話であるが、

「どう考えてみても怪しくない?」

と、いうくらいヨハネはその電話を怪しんでいた。もしかすると、「元老院の・・・」というくらい疑っているヨハネに対し、

「いいから行くずら!!」

と、花丸、そのヨハネをけん制する。むろん、ヨハネ以外のメンバーも、

「たぶん・・・」

と、自分の言うことに少し自信を失いかけていた。

 が、それは指定された場所、「コンタリーニ・デル・ホヴォロ」に着くなり確信に変わる。ホヴォロに向かう小道を抜けると突然まわりが明るくなった。

 そして、そこには螺旋階段が大きくでっぱっている中世の建物があった。

「コンタリーニ・デル・ホヴォロ」

だった。この建物を見た千歌たち、

「うわ~、なにこれ~」(千歌)

「すご~い!!」(曜)

「中世にタイムスリップしたみたい!!」(梨子)

と、その建物に感嘆していた。

 それを受けてか、月、

「この建物の上にいるはずだけど・・・」

と、この建物の上の階に鞠莉たちがいることを伝える。

 すると、この建物の一番上の階から鞠莉たち3年生3人がひょっこりと顔をだしたのだ。これには、ルビィ、

(あっ、お姉ちゃんだ!!お姉ちゃんだ!!)

と、まるでわらをもすがるような勢いで、

「お姉ちゃん!!」

と、叫んでしまう。それにつれてか、

「鞠莉ちゃん!!果南ちゃん!!」

と、千歌も2人の名前を叫ぶ。

 そして、千歌たち、

(やっと鞠莉ちゃんたちに会える!!(千歌))

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!おねえ~ちゃん!!(ルビィ))

と、鞠莉たち3年生3人にやっと会える、そんな一心でその建物の螺旋階段を駆け上がろうとしていた。

 そんな千歌たちに対し、月も、

(ちょっと待って~!!)

と、心の中で千歌たちになにかを言って追いかけようとしたとき、その小道の壁に貼っていたポスターを目にする。そこには、赤で大きく、

「WANTED」

と書かれた文字、そして、浦の星のセーラー服を着た少女3人の絵が描かれていた。これを見て、月、

(あっ、もしかして、このポスターに載っている3人って曜ちゃんたちが探している3年生じゃ・・・)

と、考えてしまう。たしかにそのポスターに描かれているのは鞠莉たち3年生3人みたいだった。

 が、そう考えているとき、千歌たちはすでにボヴォロの螺旋階段を昇り始めていた。と、いうわけで、月、

(まっ、それはあとで考えようかな。ちょっと待って~、曜ちゃんたち~)

と、思うとともに、あともう少しでなんとかなる、そんな期待により幸せそうな表情を見せる千歌たちを見てか、

「よかった!!」

と言って、千歌たちのあとを追った。

 

(お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん!!)

まるで聖母マリア・・・ごほん、ダイヤにすがりたい、そんな気持ちのルビィはいの一番にボヴォロの螺旋階段を駆け上る。いや、ルビィ以外も、

(ようやく鞠莉ちゃんたちに会える!!)(千歌)

(これでようやく天界の道が開けようぞ!!)(ヨハネ)

と、ほかの千歌たち5人とも、浦の星での奇跡のライブ以来物理的に離れ離れになっていた鞠莉たち3年生と再会できること、そして、それ以外に、

(これで新しいAqoursを見つけることができるんだね!!)(曜)

と、聖良が言っていた、鞠莉たち3年生3人と会うことで新しいAqoursを見つけることができる、そんな淡い期待すらしていた。

 そして、ルビィはついに姉ダイヤたちがいる一番上の階まで昇りきる。急いで昇ってきたのか、息を切らせながらもルビィは前の方を向くと、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!やっと会えた!!)

と、これまでこらえていた姉ダイヤへの気持ちを爆発させると、

「お姉ちゃん!!」

と、ルビィの前の方にいる3人に呼びかける。そこには、ルビィが長年のように追い求めていた、鞠莉、ダイヤ、果南、3年生3人がいた。これには、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!ようやく会えたね・・・)

と、目をウルウルとさせていた。

 そんなルビィが姉ダイヤとようやく会えた、そんな気持ちのなか、千歌たち・・・、体力不足でまだ昇りきれていない花丸を除いた、千歌、曜、梨子、ヨハネ、そして、花丸すらも追い抜くほどの体力を見せた月もようやく一番上の階に到着する。

 だが、ルビィ、そんな千歌たち4人と月が到着すると、まもなく、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、ダイヤのもとに行きたいオーラがでまくっていたのか、ついに、姉ダイヤへの思いを一気に爆発させる。突然、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、心のなかで叫ぶと、

「お姉ちゃん!!」

と、ダイヤのところに走ってきてはそのままダイヤに抱きついてしまった。このとき、ルビィ、

(もうこれで大丈夫!!お姉ちゃんに会えた!!もう離さない!!)

と、もう姉ダイヤのもとから離れたくない、そんな気持ちでいっぱいだった。

 と、ルビィはそう思っているのだが、とうのダイヤというと・・・、いきなり抱きついてきた妹ルビィに対し、

「よくここまで来ましたね・・・」

と、ルビィの労をねぎらうとともに、

(もう、ルビィったら・・・、甘えん坊、なんだから・・・)

と、これまでと変わらず、いつも抱きついてくる妹ルビィのことを慰めていた。ある意味、いつものルーティーンかもしれない、姉ダイヤと妹ルビィ。ついついなにか困ることがあると、姉ダイヤを頼ってしまう妹ルビィ、その妹ルビィをいつも慰めてはつい甘やかしてしまう姉ダイヤ、これが、ルビィが1人立ちできない理由なのかもしれない、たぶん・・・。

 そんなルビィを慰めるダイヤ、それを見守る鞠莉と果南、そんなほほえましい状況のなか、花丸を除いた千歌たち4人と月もようやく鞠莉たち3人の前に到着する。

 で、あるが、ルビィがなんで大げさに姉ダイヤに抱きついてきた、それについてであるが・・・。それは妹ルビィのある言葉から始まった。

 抱きついてきたルビィ、だったが、

(ようやく会えた、お姉ちゃんに!!もう行方不明になんかにさせない!!)

と、思ったのか、

「だって・・・、だって・・・」

と、つぶやき始める。さらに、あとで鞠莉たち3人のところに到着した千歌たちも、

(ようやく鞠莉ちゃんたちに会えたよ!!本当に心配したんだから・・・)

と、思ったのか、

「よかった・・・、3人、一緒だったんだね」

と、鞠莉たち3年生3人のことを思ったのか、心配そうに言う。

 が、とうの鞠莉はというと・・・、千歌の言葉を受けてか、そのまま、

「オフコース!!ずっと一緒だよ!!」

と、千歌の言葉にそのまま答えてしまう。

 そして、ルビィはある言葉を発する。

(ルビィ、本当に心配したんだから!!行方不明と聞いて、もうお姉ちゃんに会えないと思ったんだから!!(でも、ルビィ、絶対にお姉ちゃんに会える、そう信じていたんだけどね・・・))

と、思ったのか、鞠莉たち3年生3人に対し、

「どうして行方不明になったの?」

と、つい尋ねてしまう。これには、鞠莉たち3年生3人も、

「行方、不明?」

と、首を傾げてしまう。このとき、ダイヤ、

(えっ、私たち、行方不明、になっているのですか!!ということは・・・やっぱり・・・)

と、あることに気づく。それは、果南、鞠莉、ともに同じだった。このとき、鞠莉、

(やっぱり、鞠莉‘sママの差し金だったのですね!!ママ、なんで、ちかっちたちを巻き込んでしまったのですか!!)

と、怒り心頭になっていた。そのためか、鞠莉、

「やっぱり、そうことになっているのね~」

と、怒り口調でしゃべってしまう。

 では、なんで、「行方不明」という言葉を聞いて鞠莉たち3年生3人は、一を聞いて十を知る、ことができたのか。それは、千歌がイタリアに行く前に果南に送ったメールに答えがあった。千歌はイタリアに行く前、果南にメールを送った、その返信でヴェネチアの有名な橋の写真を送ったのは前述したが、千歌が果南に送ったメールのなかに、こんな文章があった。

「果南ちゃんへ 私たち、鞠莉‘sママさんの依頼で鞠莉ちゃんたちに会いにイタリアに行くね。楽しみに待っててね」

そう、わざわざ「鞠莉‘sママの依頼で・・・」という文章をつけていたのである。と、いうわけで、事前に鞠莉’sママの依頼で行くことを鞠莉たちに知らせていたのである。が、そうだとしても、行方不明である鞠莉たち3人を探しに行くこと、なんて一言も言ってなかったのだ。しかし、このメールを見た、鞠莉、

(あれっ、なんでマリーたちに会いにここイタリアに来るのですかね?それも、鞠莉‘sママの依頼だなんて・・・)

と、少し疑問に思っていた。が、実際に千歌たちとここヴェネチアで会って、その疑問は解決した。ルビィの言葉、「行方不明」、ですべてを悟ったのである、鞠莉は・・・。

 とはいえ、果南も、

(行方不明だなんて、ことを大げさにするのは鞠莉と一緒だね・・・)

と、鞠莉‘sママと鞠莉、親子なのでやることは似ているな、と、思いつつも、

「鞠莉のお母さんは千歌になんて言っていたの?」

と、再度確認をとると、千歌、

「ただ行方不明で心配だから・・・」

と、本当に正直に話すと、果南、

(いちいち確認しなくてもよかったかな・・・)

と、少しうんざりしてしまう。

 

 そして、体力があまり続かなかった花丸もようやく息を切らせながら一番上の階にようやく到着・・・。そのとき、ダイヤはあることに気づく。

(え~と、今ここにいるのは・・・、千歌さん、梨子さん、曜さん、ルビィ、善子さん、それに今階段を昇っている花丸さん(注:このときは花丸も昇りきったのですが、千歌たちの陰に隠れてしまい、花丸が到着したことに気づいていません、ダイヤさん・・・)・・・。で、あと1人、誰です?)

と、あと1人、ダイヤにとってなにものか知らない少女がいる、そのことに気づいてしまう。そのためか、

「で、そちらの方は?」

と、ダイヤ、自分が知らない少女に尋ねる。

 すると、その少女はこう答えた。

「はじめまして、渡辺月といいます!!」

そう、ダイヤの知らない少女、その名は月・・・、と、言っても、読者の方ならわかっていたことだが、ダイヤ、鞠莉、果南にとっては月とは初対面だったりする。

 で、月にとって鞠莉たち3人のファーストインスピレーション・・・第一印象であるが、

(うわ~、まるで歩く日本人形みたい!!あの黒髪の少女がダイヤさんなんだ!!で、まるですっきりとした体つきで体力なら自信ありという表情の持ち主、それが果南ちゃん、そして、まるで外国人に見えるのが・・・、浦の星の理事長・・・で小原家の一人娘、鞠莉ちゃん・・・なんだ。なんか、3人とも個性的だけど、なんか優しそう)

と、好印象だった。

 対して、ダイヤたちであるが・・・。

(まさか、鞠莉‘sママさんの差し金・・・ですか?そうだとしたら・・・)

と、ダイヤ、月に疑い深くなってしまう。そのためか、ダイヤ、月に疑いの目を向けてしまう。

 そんなダイヤの表情を見たのか、月、

(これがこれは僕を疑っている目だね。こうなったら、奥の手だ!!)

と、思ったのか、ついに、月、初めての人でも仲良くなれる、その奥の手をだした!!

「曜ちゃんのいとこです」

と、月、曜との関係を言いつつも、すぐに、

「よ~ろしく~!!」

と、曜の「ヨ~ソロ~」ばりに陽気で元気な声で返事をすると、敬礼をする。これこそ、月の奥の手、だった。曜みたいに陽気で元気な声を出して挨拶をすればたいていの人とはすぐに仲良くなるものである。この対応に、千歌、梨子、ともに、

「さすが」(梨子)「曜ちゃんのいとこ」(千歌)

と、妙に納得してしまうほどだった。ただ、曜としては、

「?」

と、少し疑問を呈しているが・・・。

 が、この月の挨拶に、ダイヤ、

(なんだ、曜さんのいとこですか。なら安心ですね)

と、心をほっとなでおろす。もちろん、鞠莉も、

「オ~、プリティ~!!」

と、喜んでつきを向かいいれる。が、鞠莉、それとは別にあることを思っていた。

(お~、この少女が渡辺月ちゃん、で~すね~。そして、あの、静真高校の生徒会長・・・なんですね~。これはなにかの神の思し召し・・・なんでしょうか。それとも、運命のいたずら・・・)

と、実は鞠莉、浦の星の理事長だったため、浦の星の統合先である静真高校についてはいろいろと調べていたのである。むろん、浦の星の生徒たちが統合後もちゃんと楽しく学生生活をエンジョイできるようにとのことだったのであるが、その中で、鞠莉、静真高校の生徒会長が月であること、その月、静真一の才女、とも言われていること、さらに、静真の生徒のほとんどから慕われ、生徒第一の生徒会運営をしていることもわかっていた。なので、鞠莉、静真と浦の星の統合正式決定後、いろいろと静真のことを調べるときにこの月のことを知ったことにより、「これなら安心ですね~」と統合後の浦の星の生徒を月に任せることができる、そう思うほどだった。が、その後、静真の大スポンサーである木松悪斗が静真と浦の星の統合に反旗を翻したことは鞠莉にとって予想外だったが・・・。それに、鞠莉、プライバシーなどの問題により、そこまで月の身辺調査をしている・・・わけではなかったので、月が曜のいとこである・・・ことまでは知らなかった。

 ではあるが、鞠莉、この曜ばりの月の陽気さに、実際に月と会って、それを感じ取ったのか、

(この月っていう子、本当に、曜のいとこ、なんですね~。まるで曜とうり2つで~す。なら、あれも、曜と同じなら・・・、効果は2倍、で~す!!)

と、なにやらなにかを起こそうとたくらんでいるみたいだった。それは、鞠莉が手で隠している物と関係があった・・・。

 

 

 



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Moon Cradle 第4部 第5話

 そんな状況のなか、ようやく、花丸がみんなの前に到着、でも、一気に駆け上ってきたので、花丸、その場に倒れこんでしまった。

 と、同時に、果南、あることに気づく。

(でも、なんで、千歌たち、「ただの行方不明」としか鞠莉‘sママさんから聞かされていないのかな?あっ、もしかして・・・、私たちを・・・)

そう、果南、この千歌たちの行動を・・・、いや、鞠莉‘sママが千歌たちを差し向けた真の目的を知る、そう、鞠莉を探していることを・・・、さらに・・・鞠莉を拘束しようとしていることを・・・。が、果南、その兆候は薄々と感じていた。それは、町中に貼られているポスターだった。そのポスターには・・・、なんと、鞠莉、果南、ダイヤが載っていたのである。それは、鞠莉がダイヤ、果南から襲われる、そんな構図だった。で、そこには上に大きく「WANTED」という文字がでかでかと載っていた。そう、鞠莉’sママはあらかじめヴェネチアの町中にそのポスターを貼っていたのである。いや、それだけではない。ヴェネチアのいたるところ、新聞広告やチラシ、さらには、ヴェネチアのレストランのメニュー表まで、ありとあらゆるところにだしていたのである。

 なお、月がボヴォロの螺旋階段を昇る前に見たポスター、それがこのポスターだったりする。で、そのために今やヴェネチアは大変なことになっていた。これがのちのちに大変なことになる・・・。

 とはいえ、果南が思っていたことはそのほかの鞠莉、ダイヤも・・・、

(私たちだけではなく、千歌さんたちすら・・・)(ダイヤ)

(巻き込むなんて、ママ、許さない!!)(鞠莉)

と、果南と同じ思いだったみたいである。そのためか、

「千歌がなにも知らされていないことは・・・」(果南)

「ダシに使われたってことですね・・・」(ダイヤ)

と、鞠莉‘sママに怒り心頭になる。

 が、とうの千歌たちはというと・・・、

「ダシ?」

と、いまだ状況が掴みきれていない様子。しかし、それは仕方がないことだった。だって、千歌たちは鞠莉‘sママから行方不明になった鞠莉たちの捜索をして欲しいとしか言われていなかったからである。なので、千歌が、

「ダシ?」

と、不思議がってしまうのも無理ではなかった。むしろ、鞠莉たち3人に会えたことで、

(これで元のAqoursに戻れるよ!!(曜))

(まずは一安心ね(梨子))

(ダイヤちゃんたちと出会った!!これで新しいAqoursを・・・(千歌))

と、まずは一安心、これで新しいAqoursを見つけることができる、そんな期待感を持っていた。

 が、鞠莉たちにとってはとても大切な仲間である千歌たちすら巻き込んでしまった、その鞠莉‘sママのやり方に、

(ママったら、もう許さない!!(鞠莉))

(私の大切なルビィすら引きずり込むなんて、おふざけがすぎますわ!!(ダイヤ))

(これが、大人の汚いやり方、なんだね!!(果南))

と、本当に怒り心頭だった。

 そんな鞠莉たち3人、なにも知らない千歌たちに対して、鞠莉‘sママの真意を伝える、怒りながら言った、大声で・・・。

「ちかっちたちが来れば私たちが必ずコンタクトをとる」(鞠莉)

「それでおびき出して」(果南)

「(私たちを)捕まえるようという魂胆ですわ!!」(ダイヤ)

 そして、ダイヤは怒りながら取り出したのは・・・、あの、鞠莉たち3人の指名手配?のポスター、そう、あのポスターだった。その真実を聞いた瞬間、鞠莉‘sママの化けの皮が剥がれた。いや、行方不明そのものがでっちあげだったことに千歌たちは驚いていた。

 が、このときのダイヤの大声、それが、これから起こる騒動の幕開けとなってしまった。なんと、ダイヤの大声でなにごとかと螺旋階段が特徴的なボヴォロに観光に来ていた観光客、それに、地元の住民たちがダイヤたちがいる一番上の階に集まってきたのだ。その集まった人たちが手に持っているのは・・・、そう、鞠莉たちWANTEDのチラシであった。そして、英語、フランス語、イタリア語といろんな言葉が飛び交う。これには外国語についてはちんぷんかんぷんの千歌たちにはなにを言っているのかわからなかった。が、イタリア語が話せる月、そして、イタリア語、英語などが堪能な鞠莉にはその人たちが言っている意味がわかっていた。その人たちが言っていたのは・・・。

「あれがこのチラシに描かれていた行方不明の3人ですわ」

「あの子たちを捕まえたら賞金が出るみたいだぞ!!」

そう、鞠莉たちWANTEDのチラシにはなんと「鞠莉たちを捕まえたら1万ユーロ差し上げます」という文言が書かれていたのだ。なので、集まった人たち、鞠莉たちを捕まえようと虎視眈々と狙っていたのである。

 その人たちの会話を聞いた鞠莉、

(これはやばいですね~。ここで3人、ロングステイは無理ですね~。じゃないと、あいつ(鞠莉‘sママ)に捕まるので~す!!)

と、危機感を募らせる。

 そして、すぐに果南とダイヤに合図を送る。

(ダイヤ、果南、ここは逃げるので~す!!サーティーシックス、逃げるがWINで~す!!)(鞠莉)

これにダイヤ、果南が答える。

(鞠莉さん、それを言うなら、「三十六計逃げるが勝ち」ですよ!!(ダイヤ))

(鞠莉、ダイヤ、ここは逃げるのが先決だよ!!なら、打合せ通りにね!!(果南))

実は、鞠莉たち3人、こんなことがあろうかと、すでにここからの逃走計画を練っていたのである。それは、ここにいる少女の習性を利用したものだった。

 まわりが騒がしくなる、それによって千歌たちが鞠莉たちから目をそらした、そのとき、

(よ~し、これを用意したかいががありま~した~!!)

と、鞠莉、あるものを用意した。それは、ただの白黒のボーダー柄のポロシャツだった。が、それに反応した少女がいた。

クンクン クンクン

なんと、曜がいきなり犬のようににおいをかきだしたのだ。いや、もう1人、そのにおいをかきだした少女がいた・・・。それを千歌と梨子はただ引いてしまった。

 そして、ときをおかずして、

(今からマリーが投げるから、それを合図にエスケープ(脱出)よ!!)

と、鞠莉は果南とダイヤに目で合図を送ると、

(わかりましたわ(ダイヤ))

(OK!!(果南))

と、鞠莉の意図を理解する。

 そして、鞠莉は建物の外に向けてそのポロシャツを投げる!!

「曜、ごめん!!」

と、曜に謝りながら・・・。

 その鞠莉がポロシャツを投げるところを見ていた、曜、なんと、パブロフの犬みたいな反応を見せる。

「「制服!!」」

なんと、曜、そして、もう1人、そのポロシャツめがけて建物の外に飛び出してしまった。そう、曜にとってそのポロシャツこそ曜にとってとても大好きなものだった。なぜなら、そのポロシャツこそ曜がとても好きな「制服」だったからである。白黒のボーダーシャツ、実は、ここヴェネチアの船頭さんが着る服、つまり、「制服」・・・、だったのである。この曜の制服好き・・・であるが、それは、曜がとても好きで尊敬している男、父親の影響である。曜の父親は世界をまたとかけている・・・はずのフェリーの船長だったりする。そんな大好きで尊敬している父親の船長の制服姿は小さいときの曜にとってとても輝いて見えていた。そして、曜の夢はそんな父親と同じ船長になること。そして、船長としてみんなと一緒にやっていく必要があるため、曜、陽気で誰とでもすぐに仲良くなる、そんな性格になったのである。と、同時に、少しでも船長という夢を叶えたい、ということで、小さいときから船長ごっこ・・・船長の真似事をしていたのである。むろん、父親におねだりして自分のサイズにあった船長・・・のコスプレ衣装を買ってもらった曜、それを着て船長ごっこをしていたのである。で、それをすることで船長になりきっていた・・・のであるが、コスプレを・・・制服を着ることでその職業になりきることに味を占めた曜、船長だけに飽き足らず、いろんな制服を追い求めようとする。電車の運転手、巫女、芸子さん・・・などなど。というわけで、曜の制服好きはついにオタク・・・、いや、病み付きのレベルにまで達していた。

 で、その曜であるが、制服・・・とわかったところで、「もったいない」という心が働いてしまい、自分の命をなげうってまでそれを守ろうとする。鞠莉たち3年生がAqoursに入る前、果南と鞠莉が学校でケンカして、果南が自分たちが1年生のときに着ていたスクールアイドルの衣装を外に投げたときも・・・、そして、今回もである。

 が、今回はそのときとは違っていた。なんと、曜と一緒にその制服めがけて外に飛び出した少女がいた。誰だ!!誰だ!!誰だ!!その少女の名は月!!そう、この物語の主人公、月、である。では、なんで、月も曜と一緒に外に飛び出したのか?それは、簡単、である。月も、制服マニア・・・だった、からである。だって、月は曜のいとこ・・・、ということもあるが、実は、月の制服好きは曜ゆずり、だったりする。

昔、というか、小3~小4のとき、月と曜は両親の紹介で出会ったことは前述したが、少しばかりして、月は曜の部屋に遊びに行くことになった。そのとき、

「ちょっと、飲み物、持ってくるね!!」

と、曜が自分の部屋から出て行った。で、1人になった月、

「ここが曜ちゃんのお部屋なんだね!!こっそりのぞいちゃお!!」

と、つい好奇心丸出しで曜の部屋にあるものをのぞいていく。人間、誰もいなくなった部屋ではつい出来心でいろんなものを探りたくなるものである。それがこのときの月にはあった。

 で、まずは曜の机、ダンスなどを探る。が、これっといったものはなく、むしろ、きれいに整理整頓されていた。これでは月の好奇心は満たされない、と、いうわけで、月、ついに曜の秘密のクローゼット?を開ける。で、そこにあったのは・・・。

「うわ~、きれいな服・・・」

そう、そこにあったのは・・・きれいな服・・・だった。ただ、そこにあったのはただの服ではなかった。そこにあったのは・・・。

「あれっ?これって看護師さんが着る服、だよね・・・」

そう、看護師が着るナース服、をはじめとした、制服たち、それも、子どもサイズ、だった。

 で、このとき、運悪く、飲み物を持ってきた曜が自分の部屋に戻ってきてしまう。で、自分のクローゼット?の中身を見てしまった、月、の姿を目にした、曜、いきなり、

「ち、違うの・・・。これは・・・、これは・・・」

と、取り乱してしまう。まさか、自分の秘密が、自分のいとこの月にばれるとは・・・。これには、曜、いつもは見せない、慌てふためく、そんな姿をみせる。まさか、月に嫌われてしまうのでは、そう曜はこのときそう思ってしまった。

 が、月の次の一言は意外なものだった。月、慌てふためく曜を見て一言。

「この服、とてもかわいいね。僕にも着させて?」

そう、月も曜が集めていた制服コレクションに興味をもってしまったのである。自分が知らない職業、憧れていた職業の制服、それを着てみたい、本当に自分の好奇心からくるものだった。

 この月の言葉に、曜、すぐに、

「うん、わかった。月ちゃんにも着させてあげるね!!」

と、喜びながら月に自分が持っている制服コレクションを着させ始める。こうして、このあと、曜と月、2人だけの制服ファッションショーがはじまるのであった。

 と、いうわけで、曜と月、ことあるごとに制服ごっこ・・・というより制服の着せ替えごっこをするようになり、ついには、自分たちだけで制服を作ったりしてはそれを着せたりしていたのでる。

 こうして、月は曜に負けないくらいの制服マニアになりました・・・のであるが、今回ばかりは、鞠莉が投げた制服に対して、この2人の性格が悪い意味で発動してしまったのである。鞠莉の投げた船頭さんの制服に対して「もったいない!!」と思ったのか、「「制服!!」」と叫んではその制服めがけて外にダイブしてしまったのである、月と曜は・・・。もちろん、その制服を無事キャッチした2人であったが、ここはボヴォロの一番上の階である。外にダイブしたのならあとは下に落ちるだけ。まわりには何もない。即死コースである。なので、ダイブした2人に対して、千歌、梨子、ヨハネ、ルビィは身を挺して2人を掴む。このときの4人の働きにより、曜、月、2人ともなんとか助かった。これには2人ともことの重大さに気づいてしまう、あまりに命知らずなことに・・・。

 が、このときを狙っていたのが鞠莉だった。制服を投げた瞬間、鞠莉、

「ダイヤ、果南、今で~す!!逃げるので~す!!」

と、2人に小声で言うと、鞠莉たち3人はその場から駆け足で逃げてしまった、まわりにいる、鞠莉たちを捕まえようとしている人たちはいきなり外にダイブしてしまった曜と月の方を見てしまい、自分たちのことを気にしなくなったことを見計らって。

 で、この作戦は成功を収める。鞠莉たちを捕まえようとしていた人たちの網を無事にかいくぐることに成功した鞠莉たち3人はそのままこの場をあとにし、次の目的地へと移動することに成功した。

 が、逆に千歌たちにとってみれば、ちょっと逆効果、だったのかもしれない。3人が逃げていく様子を見ていた千歌、外にダイブした曜と月を掴みつつ、

(鞠莉ちゃんたち、もしかして、なにかに逃げているの~?まさか、鞠莉‘sママから?でも、本当に待ってよ~!!このままじゃ、私たちの中には不安と心配しか残らないよ~!!鞠莉ちゃんたちがいないと新しいAqoursが見つからないよ~)

と、嘆いていた。そう、ここに来た理由、それは、聖良が言っていたこと、鞠莉たち3年生3人に会って話し合うことで新しいAqoursを見つけだすこと、それがあと一歩のところでできる、それなのに、それがまた振り出しに戻った、それに対する不安や心配がここにきて千歌の心のなかに現れてしまっていた。

 が、その千歌以上に混乱を見せていた少女がいた。ルビィである。ルビィ、ようやく自分の心の拠り所だった姉ダイヤと会えたのに、また離れ離れになってしまったことにより、

(お姉ちゃん、ちょっと待って~!!お姉ちゃん、ルビィ、このままじゃ生きていけないよ~!!お姉ちゃん、ルビィを置いていかないで~!!)

と、さらなる混乱、いや、不安と心配という海・沼のより深いところまで沈んでしまった。

 



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Moon Cradle 第4部 第6話

 一方、そのころ、ヴェネチアのあるホテルにて・・・。

「ヴェネチアのサンタ・ルーチア駅から鞠莉様3名がトリノ行きの列車に乗ったという報告がきました・・・」

と、小原家の関係者、もとい、小原家直属の警備会社の警備員からの報告を受け取った鞠莉‘sママ、この報告を受けて、

「ガッテム!!」

と、怒鳴り散らしていた。せっかく大金をはたいて鞠莉を捕まえようとしたのに、その肝心の鞠莉がヴェネチアから逃げてしまった・・・のである。これでは大損である。これには、鞠莉‘sママ、

「せっかく鞠莉を捕まえるための多額の報奨金を用意して、さらに大金をはたいてチラシやポスターを作ったのに、なんで、鞠莉を捕まえることができないの!!」

と、さらに怒鳴り散らす。その悔しさを誰かにぶつけないと気がすまない、そんな気持ちだったのか、鞠莉‘sママ、

「「これからすぐにでも鞠莉を捕まえることができますよ」って、あの裏美っていう人が言っていたから、それを信じて大金をはたいたのに、それができないなんて、大損もいいところで~す!!」

と、なぜか裏美に対して怒りをぶつける。

 では、なぜ、鞠莉‘sママは裏美にいかりをぶつけているのか。それは、鞠莉’sママがヴェネチアで鞠莉を捕まえるためにやった施策、鞠莉を捕まえるための多額の報奨金、それをヴェネチア中に知らしめるために作った「鞠莉たちWANTED」のチラシやポスター、それを市内に行き渡らせるための施策、すべて、裏美が鞠莉‘sママに提案したことだったからである。

 実は、鞠莉‘sママ、ヴェネチアに行く前、静真の月たち生徒会の宿敵、静真本校と浦の星分校との統合に異を唱える木松悪斗の右腕、裏美と電話で話していたのである。

「裏美さん、私たちの関係者から鞠莉たちがヴェネチアにいることがわかりま~した!!あなたの提案どおり、鞠莉のグループであった、新生Aqours・・・を使って鞠莉たちをおびき寄せようとしておりま~すが、鞠莉のことで~す、それだけでは捕まえることができないかもしれないで~す!!何かいいグッドアイデア、ないで~すか~?」

と、鞠莉‘sママ、裏美に相談をもちかけると、裏美、少し考える。

(たしかに、浦の星の生徒である新生Aqoursと月生徒会長をヴェネチアに向かわせて自分の娘(鞠莉)をおびき寄せようと鞠莉‘sママは考えている。しかし、それによって月生徒会長の静真での影響力を失わせる・・・ことができても、小原家に大ダメージを与えることはできない・・・。なら、もっと、小原家に大ダメージを・・・、小原家の財政に大ダメージを与える方法はないか・・・。う~ん、う~ん)

と、鞠莉‘sママの願いを叶えつつも小原家そのものに大ダメージを与える方法を考えてみる。すると、裏美、

(あっ、そうだ!!行方不明の娘を探しているのだから、それに即したやり方をすればいいんだ!!)

と、単純明快な考えにたどり着く。

 そして、裏美は鞠莉‘sママにある提案をする。

「鞠莉‘sママさん、いい方法があります。まず、鞠莉案を捕まえたものに多額の報奨金を出したらどうです?」

この裏美の提案に、鞠莉‘sママ、

「そ、それはグッドアイデ~アですね~」

と、裏美の提案に賛成する。日本だけでなく世界中でお尋ね者には多額の報奨金が設定されていることが多い。むろん、ワン○ースほどではないが・・・。

 さらに、裏美はその報奨金のことをヴェネチア中に広めるために、

「でもって、それをヴェネチア中に広めるために大量のチラシとポスターを作りましょう。それをヴェネチア中に広げたら、それでもうヴェネチア中が鞠莉‘sママさんの味方になるでしょう。これで鞠莉さんを捕まえるのは時間の問題です!!」

と言って、鞠莉‘sママにさらなる提案をする。これには、鞠莉’sママ、

(たしかに、これな~ら、ヴェネチアの人たちはオール私の味方になりま~す!!)

と、感激してしまい、すぐに、

「そのアイデ~ア、採用、で~す!!」

と、すぐに了解した。たしかに、費用としては莫大にかかるが、報奨金のことを広めるにはコストの安いネットより効果が絶大である。だって、報奨金のことをネットで広げようとすると少し時間がかかるものである。さらに、ネットにおいてはちょっと見ただけでさっさとほかの情報へと移動してしまう、そんな不確実なことがあったりする。それに対し、紙なら必ず報奨金のところは見てくれる、といった確実性があったりする。そのことを理解していた鞠莉‘sママ、なので、裏美の案に賛成したのである。

 が、これも裏美の裏の考えがあたりする。鞠莉‘sママにポスター・チラシの案を提示するのだが、裏美の心の中では、

(ポスター・チラシを大量に作るには莫大なコストがかかる。そのコスト分、小原家の財政に大ダメージを与えることができる、ヒヒヒ)

と、思っていたのだった。そう、紙の媒体、ポスターやチラシを大量に作るには莫大なコストがかかる。それを鞠莉‘sママ負担にすれば、それだけ小原家の財政にダメージを与えることができるのである。が、それについては鞠莉’sママも承知の上だった。それでも、家出娘の鞠莉をこれから先拘束できるのでなら安いものだ、と思っての鞠莉‘sママの判断だった。

 が、その肝心のポスター・チラシに問題があった。特にデザインである。ポスター・チラシのデザインであるが、鞠莉‘sママがある有名絵師さんにデザインのもととなる写真を渡したのだが、それが浦の星の制服のときの写真、だったのである。さらに、鞠莉’sママはその絵師のデザインの構図として、鞠莉が果南とダイヤから襲われる、という構図でお願いしたところ、なんと、1つの立派な絵になってしまったのである。なので、1つの立派な絵・・・、そして、鞠莉たち3人が来ている服は浦の星の制服・・・、なので、ヴェネチアに大量のチラシやポスターが配布されたのはいいものの、ヴェネチアの人たちにとってみたら、ただの芸術作品・・・としか見られていなかったのだ。ただし、ポスター・チラシには多額の報奨金のことも一緒に書いてあったので、それ目当てで鞠莉たち3人を探していた市民もいた。しかし、このヴェネチア、観光都市である、たくさんいる観光客から鞠莉たち3人を見つけ出すのは至難の業である。鞠莉たち3人が見つかったのは、あの、ボヴォロのときの、ダイヤの大声、によるものだった。が、それも、鞠莉の方が一枚上手であった。このとき、すでに鞠莉たちの脱出ルートは確保されていた。また、このとき、すでに、鞠莉、ダイヤ、果南、脱出についてすでに確認済み、だった。それにより、当初のヴェネチア脱出計画(鞠莉考案)の打合せ通り、鞠莉たちはヴェネチアを脱出することができた。ちなみに、ボヴォロから駅までは・・・、ヴェネチアということもあり、腕に自信がある船頭さんを鞠莉は用意していた。そして、ゴンドラでその場を脱出していたのである。ヴェネチアの交通手段として役に立つのは、車でも自転車でもない、徒歩、もしくは、ゴンドラ、である。そのことを熟知していた鞠莉の勝ちである。

 というわけで、鞠莉‘sママ、すぐに裏美に国際電話をかける。その電話に、

「はい、裏美ですが・・・」

と、なにも知らずに受ける裏美。すると、開口一番、鞠莉‘sママ、

「裏美さん、あなた、私の顔に泥をペイントし(塗り)ましたわね!!どうしてくれるので~すか!!」

と、裏美に怒りをぶつける。これには、裏美、

「な、なんですか!!」

と、驚くしかなかった。

 この後、怒りを裏美にぶつけたのがよかったのか、少し落ち着いた鞠莉‘sママから事の顛末、裏美の案通り、大量のチラシ・ポスターを作り、市内中のいたるところに貼ったり配ったりしたのだが、思ったほど効果がなかったこと、鞠莉たちは見つけたものの逃げられたことを聞く。これに、裏美、

(たしかに、ポスターを大量にヴェネチア中に貼ったものの、すぐに、市の当局から剥がされてしまった、って、報告を受けていたな・・・)

と、自分の部下からの報告を思い出す。そう、実はポスター・チラシのデザイン問題、たくさんいる観光客から鞠莉たちを探すことが難しい、それ以外にも問題点があった。それは、大量にヴェネチア市内に貼ったポスターだった。実は、鞠莉‘sママ、無許可でポスターをしないに、それも大量に貼っていたのである。が、ヴェネチアだけでなくヨーロッパの観光都市において、景観、というものをとても大切にしている。日本みたいに無秩序に建物を建てる・・・ことはせず、条例を作って町の景観を大切にすること、ヨーロッパでは当たり前だった。むろん、建物の高さだけでなくデザインにまで徹底されている。もちろん、無許可でポスターを貼ることすら街の景観を壊すことになり許されないだろう。

 と、いうわけで、小原家の警備会社総動員してヴェネチアの市内のいたるところにポスターを貼ったものの、すぐに市の当局がそのポスターを全部剥がしてしまったのである。なので、ポスターそのものに効果ははなかった。

 が、そのことを裏美が知っているところで鞠莉‘sママの怒りが収まるわけではなかった。莫大なお金をかけたにもかかわらず、肝心の鞠莉を捕まえることができなかった、そのことについて怒っている鞠莉’sママ、裏美に対し、こんな殺し文句を言う。

「裏美さん、あなたのことはもう知りませんからね!!もう二度と私の目の前に現れないでくださ~い!!では、グッバイ!!」

 そして、鞠莉‘sママ、電話を一方的に電話を切ってしまった。これには、裏美、

(これでは、月生徒会長の行動を邪魔するという目的を果たすことができなくなる!!なんとかしないと・・・)

と、危機感を募らせる。そのため、

「おい、すぐにイタリアの俺の人脈を駆使しろ!!あの、鞠莉という小童を探し出せ!!」

と、自分の部下に鞠莉を血眼になっても探し出すように命令した。

 一方、裏美に自分の怒りを全部ぶつけたことで怒りをおさめた鞠莉‘sママ、

「さて、これからどうしましょう。鞠莉の行き先がまたわからなくなりま~した!!どうしましょ~!!」

と、悩んでしまう。せっかく見つけた鞠莉、なのだが、鞠莉、また逃げ出して雲隠れしてしまった。唯一判っているのは、トリノ行きの列車に乗ったこと。なので、トリノあたりを探そうか悩んでいた。

 そんなとき、鞠莉‘sママにある連絡が届く。

「あれっ、新生Aqoursからのメールですわね~」

その新生Aqoursからのメールを見た瞬間、

(なんてラッキーね!!私には幸運の女神がついているのか~しら!!)

と、なんか嬉しそうな表情をする。そう、そのメールには鞠莉たちがこれから行く都市について書いてあった。

 そして、鞠莉‘sママは言った。

「さぁ、レッツゴー、ですわ!!聖ヨハネが守護するところへ、いざ、いか~ん!!」

 

「お姉ちゃ~ん・・・」(ルビィ)

と、千歌たちを残して去っていく鞠莉たち3年生3人。その去っていったあと、千歌たちはまた鞠莉たちと離れ離れになったことにショックを受けた。特に、「もう離さない」と心に決めた姉ダイヤへの思い叶わなくなり途方に暮れるルビィの姿は痛々しいものだった。

 が、追いかけようにもどこに行ったのかわからない千歌たち・・・であったが、まだ希が潰えたわけではなかった。なんと、曜と月が必死?でダイビングして取った船頭さんの制服こと白黒のボーダーのポロシャツ・・・の中になんと鞠莉が残したメッセージカードが隠されていたのだ。それを曜が見つけるが、イタリア語で書かれているため、曜にはちんぷんかんぷんだった。

 が、ここにはイタリア語を訳せる少女がいた。そう、月である。月はすぐにそのメッセージカードを訳する。月いわく、こう書かれていた。

「ヨハネが守護する地を見下ろすとき、養成の導きが行き先を示すであろう」

これに、ヨハネ、いや、善子が反応する、が、もちろん、善子のことではない。月いわく、「ヨハネが守護する地」=「ヨハネが守護聖人の地」のことである。つまり、(キリスト教の)聖ヨハネを守護聖人としている都市、ということになる。なお、イタリアの各都市には(キリスト教の)守護聖人が必ずいる。ローマなら、「聖パオロと聖ピエトロ」、ミラノなら「聖アンブロージオ」といった具合に。そして、その守護聖人に関する日はその都市単独の祝日になり、盛大なお祭りが行われることもある。それほど、イタリアの都市と守護聖人の結びつきは強いものとなっている。(参考:HIS、イタリア観光ブログ、より)

 で、これを聞いたヨハネ・・・善子はとても喜ぶ・・・が、その守護聖人ジョバンニ・・・ヨハネの地(都市)というのはどこなのか・・・、それを月は盛大に言う。

「聖ジョバンニ・・・ヨハネが守護する街・・・、それは「フィレンツェ」!!」

そう、イタリアを代表する観光都市、街全体が世界遺産に登録されている、あの中世の町並みをそのまま残している、あの有名な都市・・・である。

 と、いうわけで、1人そわそわしているヨハネ・・・善子をよそに千歌たちは次の行き先をフィレンツェに決めた・・・が、1つ問題が・・・。この千歌たちの旅のスポンサーは鞠莉‘sママである。で、鞠莉’sママが千歌たちに旅の資金を出している理由、それは、自分の娘鞠莉を見つけて捕まえること・・・である。なので、千歌たち、その鞠莉たちがいる場所を鞠莉‘sママに伝えないといけない。でも、もし伝えないなら、それは鞠莉’sママにとってみれば、千歌たちが鞠莉を探すという約束を破ることになる。そうなると、旅の資金をこれ以上だすことはしないだろう。そうなれば、千歌たちはまったく知らないイタリアの地で路頭に迷うことになる、それだけは避けないといけない。でも、鞠莉たちの居場所を鞠莉‘sママに伝えたら、それにより、鞠莉たちは見つかってしまい、鞠莉は一生鞠莉’sママの拘束を受けることになる・・・。千歌たち、そのことで悩んでしまう。

 そんなときだった。

「曜ちゃん、僕にいい考えがあるよ!!」

と、月、あるいいアイデアがひらめいたのか、曜に自分のアイデアを伝える。それは・・・。

「鞠莉‘sママにはこのメッセージカードが書かれていることを伝えればいいんだよ!!」

が、それでは鞠莉の居場所をそのまま鞠莉‘sママに教えることになる。これには、千歌、

「それだと逃げている鞠莉ちゃんたちが・・・」

と、鞠莉たちのことを心配そうに言う。それには、月、あることを言う。

「でも、このメッセージカードの文、そのまま伝えるわけじゃないんだよ!!」

 これには、千歌たちみな、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。月は続けて自分の考えを述べる。

「鞠莉‘sママには「ヨハネが守護する地で待つ」のみを伝えたらいいんだよ!!」

そう、月のアイデアとは、メッセージカードの一部分のみ伝えることであった。そして、月はさらに言った。

「でね、その鞠莉ちゃんもなにか策を考えているんじゃないかな。聖ヨハネの地、「フィレンツェ」、そこで待つとしても、きっと、鞠莉‘sママさんが予想にもしていない場所に隠れていると思うよ。だって、浦の星の廃校騒動において最後まで抵抗するくらいの策士、なんだもん!!」

 この月の言葉に、千歌たち一同、

「あっ、納得!!」

と、言わせてみせた。ちなみに、鞠莉のメッセージカードは今のところ千歌たら6人と月しか見ていなかった。

 こうして、月の提案のもと、鞠莉‘sママには「ヨハネの守護する地で待つ」というメッセージカードがあったことだけを伝え、1人浮かれ気分のヨハネ・・・善子を連れて、一路、聖ヨハネが守護聖人の地、フィレンツェ、へと向かうことになった。

 

 ところが、この月のアイデアは不発に終わる。月の提案通り、「ヨハネの守護する地で待つ」というメッセージカードがあったことだけを伝えると、鞠莉‘sママから、

「そのメッセージカードを見せてくださ~い!!」

と、言われてしまったのである。鞠莉に会ったことで鞠莉‘sママは千歌たちに対して少し用心深くなっていたのである。鞠莉たちと一緒に鞠莉’sママから逃げる手はずを整えているのではないか思われたからだった。

 と、いうわけで、千歌たち、仕方なく鞠莉のメッセージカード?を写真に撮って鞠莉‘sママにメールで送付した・・・。それを見た鞠莉’sママ、それを信じてヨハネが守護する地、フィレンツェに行くことになったのだが・・・、そのフィレンツェの地で鞠莉‘sママはがくぜんすることになる。

 鞠莉‘sママ、千歌たちから送られてきたメッセージカード?の写真をもとにフィレンツェの街の中にある小原家の別荘に移動する。そして、その別荘の客室のドアを開けた、鞠莉’sママ、おもわず、

「あの子たち・・・、ガッデム!!」

と、舌を打つぐらい悔しがってしまう。なぜなら、その肝心の鞠莉たち3人の姿がそこにはなかったからである。そう、鞠莉‘sママがここにいると思っていたフィレンツェの小原家の別荘に鞠莉たち3年生3人がいなかったのである。

 では、なぜ、鞠莉‘sママ、こんな状態に陥ってしまったのか。それは、メッセージカードに2つの罠が仕掛けられていたからである。

 まず、1つ目、それは鞠莉が仕掛けた罠だった。実は、メッセージカードには鞠莉の真意が隠されており、よく読まないと、そして、鞠莉のことをよく理解していないと、さらに、鞠莉の考えをよく理解しないと本当の鞠莉たちの隠れ場所を知ることができない仕組みとなっていた。で、書かれている文章そのまま、表面上の意味だけでそのメッセージカードを理解した、鞠莉‘sママ、それをもとにフィレンツェの小原家の別荘に来てしまった・・・というわけである。で、そこには鞠莉たちがいないため、さらに鞠莉たちを探すため、鞠莉’sママはその近くにある小原家の別荘に行く、でも、そこにも鞠莉たちはいない、そして、その近くの・・・、と、それを続けることで鞠莉たちが本当にいる場所からどんどん遠ざかっていく、だけでなく、鞠莉たちが逃げるための時間稼ぎになる、というのが鞠莉の策略であった。

 そして、もう1つは、鞠莉‘sママに送った鞠莉のメッセージカード?、その写真にあった。実はこれ、鞠莉’sママを騙すためのフェイクだった。実は、このメッセージカード、イタリア語が書ける月が見よう見まねで書いたものだった。それを写真に撮って鞠莉‘sママに送ったのである。その月が書いたメッセージカードにはこう書いていた。

「ヨハネが守護する地にいるとき、妖精の仲間たちのなかにいるだろう」

で、これを鞠莉‘sママは鞠莉が書いたメッセージカードと誤認したのだが、このメッセージカード、ヨハネが守護する地とはフィレンツェであるが、そのフィレンツェの妖精の仲間、つまり、フィレンツェの人たちのいるところに鞠莉たちがいる、と、鞠莉‘sママはそう理解したのである。木を隠すなら森の中、鞠莉たちを隠すならフィレンツェの人々がいる市街地、といった具合に。で、偶然ではあるが、フィレンツェにある小原家の別荘はその市街地のなかにあった。なので、鞠莉’sママ、その小原家の別荘に鞠莉たちがいるとこの月が書いたメッセージカードをもって確信したのである。

 というわけで、まんまと鞠莉と月の策略にはまってしまった鞠莉‘sママ、とても悔しがっていたのだが、そんな鞠莉’sママに、棚から牡丹餅、みたいなことが起きる。悔しがっている鞠莉‘sママのもとに、突然、

プルル プルル

と、鞠莉‘sママのスマホに呼び鈴が聞こえてきた。それに、鞠莉’sママ、

「はい、小原ですが・・・」

と、その電話にでる。相手は鞠莉‘sママのイタリアにいる親友・・・と語る者だった。最初、とても不機嫌そうに対応する鞠莉’sママであったが、突然、にやっと微笑んでしまう。すると、すぐに、

「鞠莉、待ってなさい!!今、行くからね!!」

と、叫ぶとともに電話を切り、そして、そのままその場をあとにした。

 



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Moon Cradle 第4部 第7話

 一方、そんな鞠莉‘sママの行動については露知らず、千歌たち6人と月はフィレンツェに行く列車に乗ってフィレンツェへと移動していた。

 そんななか、月はある少女のことを思っていた。それは・・・。

(ルビィちゃん・・・)

そう、ルビィであった。あの静真での部活動報告会でのライブの失敗のあと、あの今川焼きのお店でみせたルビィのがっかりした顔、そこには「お姉ちゃん・・・」とつぶやくほど姉ダイヤにすがりたい、そんなルビィの姿があった。それを陰から見ていた月、そして、姉ダイヤのいるイタリアのヴェネチアに行き、実際に姉ダイヤに会ったことで、もうこれで安心、もうお姉さんを離さない、そんな明るい表情を見せたルビィの姿、しかし、突然ルビィのそばを去っていった姉ダイヤの姿に絶望を感じさせるくらいの表情を見せたルビィ、それについて、月、

(ルビィちゃんにとってお姉ちゃんであるダイヤさんの影響力って強いんだね。いや、姉ダイヤさんへの依存度が高いのかもね)

と、考えてしまう。と、ともに、

(でも、いつかは必ず別れがくるもの。それがルビィちゃんにとっては今ではないかな)

と、考えてしまう。が、それについて、月、

(でも、別れって本当に悲しいものなのかな?)

と、別れについて考えてしまう。本当に別れとは悲しいものなのか、それについて考える月。

 そんな月、ふとあることを思い出そうとする。

(そういえば、僕にも、その経験、あったかな?)

月は自分にとって別れを経験したことがあったか思い出そうとする。なぜなら、

(もしかすると、あのフラッシュバック、僕になにかを気づかせるようとしているのかもしれない。そして、それを思い出すことでルビィちゃんを救えるかもしれない・・・)

そう、月にときどき起きるフラッシュバックである。月はときどき曜に似た少女から、

「月ちゃん、忘れないで、たとえ、離れていても、月ちゃんの心のなかに私はずっと居続けるんだからね」

と、呼びかけられる、そんな記憶がフラッシュバックのようによみがえてくるのである。それは、あの部活動報告会の放課後、たそがれる千歌たちを見て、断片的だが、それを思い出すとともに、今の千歌たちに必要なものかもしれない、月はそう思えるようになった。そして、イタリアに来る前、月は、その少女が曜であると認識する。そして、それを思い出すことが必要ではないか、と、月は考えるようになった。

(あのフラッシュバック・・・、たしか・・・、あれって・・・)

と、月、少しずつだがそのフラッシュバックの記憶をよみがえさせようとする。が、なかなか思い出すことができない。

(う~ん う~ん)

と、必死に思い出そうとする月。でも、それでも思い出すことができない。

 と、そんなとき、

「月ちゃん!!」

と、月のことを呼ぶ声がする。それに気づいた月、振り向くと・・・。

「曜ちゃん・・・」

そこにいたのは曜だった。曜はすぐに月に言う。

「そんなに考え込んだりして。もしかして、悩み事?」

これには、月、

「いや、なんでもないよ」

と、軽く否定する。

 そんな月の表情を見てか、曜はすぐに話題を変える。

「ねぇ~、月ちゃん、私たちって小学校や中学のときってよく遊んでいたよね」

これには、月、

「うん、そうだね」

と、相槌を打つ。これに、曜、

「あのときって本当に楽しかったよね」

と、昔のことをしみじみに思い出す。これに、月、

「うん、そうだね」

と、ここでも相槌を打つ。そんな月を見てか、曜はすぐに、

「そう考えると、1度別れたのに、また一緒に旅をする、楽しいことができる、これってなんか奇跡だと思えてくるよ」

と、再び月と一緒に楽しいことができることに感動していた。

 が、月、ある曜の言葉に反応を示す。

「えっ、1度別れた・・・」

その月の言葉を聞いた曜、すぐに、

「うん、そうだよ。たしか、中学3年のとき、私、髙飛び込みでとてもいい成績を残していたじゃない。だから、部活動が盛んな静真高校に推薦入学が決まっていたじゃない。でも、私、みんなの反対を押し切って千歌ちゃんたちがいる浦の星に入学したじゃない・・・」

それを聞いた月、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。と、同時に、

(たしかにあったような気がする・・・)

と、そのときのことを思い出す。

 それは月と曜が中学3年のときのことであった。成績優秀な月、髙飛込みでかなり優秀な成績を残していた曜、2人とも静真高校への推薦入学を決めていた。これには、月、当時、

「また曜ちゃんと同じ学校に通えるんだ!!嬉しいなぁ」

と、喜んでいた。

 が、ある日、突然、曜が月に意外なことを伝える。

「月ちゃん、ごめんね。月ちゃんと一緒に静真に通うことができなくなっちゃった・・・」

これを聞いた月、

「えっ、なんで!!みんな、曜ちゃんが静真に行くこと、喜んでいたのに!!」

と、驚くとともに、曜に対し、

「なんで!!なんで!!なんで!!」

と、曜に詰め寄る。

 これには、曜、

「だって、(もう1人の大親友の)千歌ちゃんのことが大好きだから・・・。だから、私、浦の星に入る!!」

これを聞いた月、すぐに、

「なんで千歌ちゃんって子をとるの!!僕のこと大好きじゃなかったの!!」

と、曜に迫る。なぜなら、

(この大親友である僕、ではなくて、まったく知らない、千歌って子、をなんで選んだの!!僕たち大親友、でしょ!!本当の姉妹、いや、双子みたいな、そんな強いキズナで結ばれた僕たちでしょ!!それをまったく知らない子のために静真を入るのやめるの!!)

という曜に対しての強い反発があったから。月にとって曜は大親友、いや、同士、だと思っていた。それなのに、なんで、千歌という月にとってまったく知らない子をとるのか、それに対する反発があったからだった。また、これとは別に、

(それに、曜ちゃん、髙飛び込みの日本代表として世界で大活躍できる、それくらいの能力を秘めているのに、その能力を磨くために、部活動が盛んな静真高校の推薦入学を受けて合格したのに、部活動としては無名の浦の星に行くなんて・・・)

という思いもあった。髙飛び込みの選手として、夏の大会、そして、国体でかなり優秀な成績を残していた。そのため、将来、世界大会でもメダルがとれる、それくらい期待有望な選手であったのである、曜は。なので、部活動が盛んで全国大会にいく部活も数多い、スポーツ優秀校である静真に入れば絶対に世界を狙える髙飛び込みの選手になれる、そんな期待がまわりからはあった。しかし、曜はそのまわりの期待を裏切ってまで、千歌という友達が大好きだから、という理由で浦の星を選んだのである。それは、まわりからすれば裏切り行為と思えたのかもしれない、月には。

 しかし、曜はその月の言葉に対し、

「たしかに、月ちゃんにとって裏切りになるかもしれないけど・・・」

と、前置きしつつ、自分の想いを月に語った。

「でも、私にとって千歌ちゃんはとても大切な存在なんだ!!」

 この言葉に、月、

ガーン

と、傷ついてしまう。まさか、自分以上に千歌という子が好きって断言されたから、だった。それはこれまで曜にとって一番の親友はこの自分、月であると思っていたから。なので、曜の先ほどの告白は月にとって回復不可能な大ダメージを与えた。

 そんな月とは裏腹に曜は笑いながら自分の想いをさらに語った。

「私、聞いたんだ、千歌ちゃん、お母さん、お姉ちゃん2人、も通っていた浦の星に入学するのが夢だったんだって。でも、千歌ちゃんが通う浦の星は廃校の話が何度も出るくらい生徒数が少ないんだって。それに、千歌ちゃんが浦の星に入学したとしても、千歌ちゃんが知っている、(もしくは、)一緒に入学する友達って昔から友達のむっちゃんたちか(千歌や曜の)先輩で同じ浦の星に通っている幼馴染の果南ちゃんぐらいしかいないんだもん!!これじゃ、千歌ちゃん、寂しすぎるよ!!それなら、私が自ら進んで千歌ちゃんと一緒に浦の星に入学して、私と一緒に友達、いっぱい、い~ぱい、作っていこう、千歌ちゃんたちと一緒に、そう思えたんだ!!だから、私、静真をやめて浦の星に入るって決めたんだ!!」

 そして、最後に曜は自分の今の気持ちを月に伝えた。

「たしかに、月ちゃんの思い、まわりの期待を裏切ることになるかもしれない。私の輝かしい未来すら投げ捨てることになるかもしれない。けれど、私にとって千歌ちゃんはともて大切な友達なんだ!!そんな友達がとても困っている、そんな状況の中で、私、その友達のために大切なものを投げ捨ててまでその友達のためにやっていきたい!!」

 その曜の想いを聞いた月、このとき、曜に対してこんな思いを持ってしまう。

(曜ちゃんが変わってしまった・・・。もう僕が知っている曜ちゃんじゃない・・・。僕はずっと曜ちゃんと一緒にいられると思っていた・・・。姉妹のように、双子のように、ずっとずっといられる・・・そう思っていた。けれど、今の曜ちゃんの考えは違う・・・。曜ちゃんの考えは僕と違っていた・・・。曜ちゃんは僕とは別の親友である千歌ちゃんが困っているから、大事な友達、千歌ちゃんが困っているから、その千歌ちゃんのためになりたい、その思いだけ自分の大切なもの、(髙飛び込み選手としての)約束された将来、すら捨ててまで千歌ちゃんのために浦の星に入ろうとしている・・・。それって、もしかして、曜ちゃん、僕から飛び立とうとしているんじゃないかな?もう曜ちゃんは僕が知っている曜ちゃんじゃない!!曜ちゃんは僕を見捨てたんだ!!)

そう月が思った瞬間、月の表情がこわばってしまう。まるで、なにかに絶望したような、そんな表情をしてしまう。

 そんな絶望的な表情をした月に対し、曜はというと・・・、

「月ちゃん、なんで絶望的な顔をしているの?」

と、平気に、月に尋ねてしまう。すると、月、

「だって、僕、曜ちゃんに見捨てられたんだもん・・・」

と、弱々しく言うと、曜はそんな月を励ますかのようにこう言った。

「別に月ちゃんのことなんて見捨てていないよ!!」

この曜の言葉に、月、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。きょとんとする月。すると、曜はこう答えた。

「だって、月ちゃん、私にとって月ちゃんも大切な親友だよ!!月ちゃんは「私は見捨てられた」って思っているでしょ。でもね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでも、ずっと、永遠に、大切にしたい友達、なんだよ!!」

これには、月、

「えっ、僕のこと、裏切ったわけじゃないの・・・」

と、曜に確認をとる。すると、曜、

「そうだよ。だった、私にしてみれば、今でも、月ちゃんは千歌ちゃんと同じくらい大親友、なんだからね!!」

と、正直に言うと、月、

「なぜそう思うの?なんで「ずっと友達」って言葉、でてきたの?」

と、曜に聞いてみる。

 すると、曜は元気よくこう答えた。

「だって、私にとって月ちゃんは昔からいつも遊んでくれた、千歌ちゃんみたいにずっと遊んでくれた。だから、私から友達の縁を切るなんて絶対にないよ!!だった、昔も、今も、そして、これからも、私、月ちゃんのこと、大大大大大好き、なんだからね!!これからもずっと、大大大大大親友、なんだからね!!千歌ちゃんと同じくらいにね!!」

これを聞いた、月、

(あっ、これが曜ちゃんなんだね。忘れていたよ。曜ちゃん、誰に対しても優しい、自分のことよりもほかの人のことを先に助けようとしている、そんなやさしい人、曜ちゃん。名前のように太陽みたいな性格だったね。それに対して、僕、勝手に、曜ちゃんとの縁が切れた、って思っていたよ)

と、勝手に親友の縁が、キズナが切れた、そう思った自分を恥じた。

 そして、月はこのとき、ある決意をする。

(僕と曜ちゃんのキズナはこれからもずっと続く。曜ちゃんとのキズナが切れるわけじゃない。けれど、別れはいつかきっとくる。それなら、ずっと、曜ちゃんを僕だけのものにする、べったりする、そんな関係に終止符を打とう。曜ちゃんを暖かくおくろう。そして、なにもわだかたまりなく、なにもかも忘れよう。だって、別れることはキズナ以外のもの、すべてがなくなる、そんなものだから・・・)

こう決意した月、曜にこんなことを言う。

「そうだね。僕、勘違いしていたよ。なら、今、僕が曜ちゃんにできることは1つだけ、なにもかもさっぱり、なんもわだかたまりもなく送るよ。なにもかもなくなるかもしれないけれど・・・」

 が、これを聞いた曜、月に驚きの言葉を言う。

「月ちゃん、たしかに、私は月ちゃんから旅立とうとしている、そう月ちゃんから見えているかもしれないけれど、とても大切なことを忘れているよ!!」

これを聞いた月、

「えっ!!」

と、これまた驚いてしまう。その月の顔を見て、曜、さらに言った。

「月ちゃん、たしかに私は月ちゃんから旅立つけど・・・、旅立つっていうのはね・・・」

 その言葉を思い出そうとしている月、そんなとき、

「月ちゃん、月ちゃん、しっかり!!」

と、曜が月に呼びかける。これを聞いた月、

「あっ、僕、なんかボーとしていた?」

と、曜に尋ねる。曜はすぐに月に対して、

「うん、そうだよ!!月ちゃん、私が言っている最中になんかボーとしてしまっていたよ。まるで、今ここにあらず、そんな状況に陥っていたんだよ!!」

と、心配そうに言うと、月、

「あっ、曜ちゃん、心配かけてごめんね」

と、心配してくれた曜に御礼を言う。

 そして、月は曜にあることを尋ねる。

「ところで、曜ちゃん、僕たちが中学3年生のときのこと、覚えている?曜ちゃんが浦の星に入学を決めたとき、僕になにか言わなかった?」

これには曜、

「う~ん、たしか、なにか言っていたよね。でも、なんて言ったかな?う~ん、う~ん、思い出せないわ!!」

と、思い出そうとするも思い出せなかった。これには、月、

「あっ、ごめんね、曜ちゃん。頭を悩ませてしまってごめんね!!」

と、曜に謝る。これには、曜、

「月ちゃん、私のほうこそごめんね。とても大切な思い出なのに、思い出せないって。本当にごめん!!」

と、月に謝る。

 しかし、このままだとお謝り大会、謝罪の堂々巡り、になってしまう。と、いうわけで、月、

「でも、曜ちゃんのおかげでとても大切なことを思い出すことができたよ。本当にありがとうね、曜ちゃん!!」

と、言ってこの場をあとにした。これには、曜、

「うん、またね!!」

と、月に挨拶をした。

 そして、曜と別れた月はすぐに列車の中の多目的ルームに行くと、すぐに、

「全部・・・思い出した・・・。だから、聖良さん、僕が新生Aqours復活のためのキーパーソンに選んだんだ・・・」

と、曜と別れた中学3年生のときの出来事を全部思い出したこと、そして、Saint Snowの聖良がその新生Aqoursの復活のキーパーソンに選んだ理由を理解した。これに対して、月、

「たしかに、今、新生Aqoursに起きていることって、昔の僕、中学3年の僕、と同じ状況かもしれないね。僕は曜ちゃんと別れることですべてがなくなる、そう思っていた。そして、今の新生Aqoursもそう思っているに違いない。なら、この僕がそんな新生Aqoursを導いてやろう。そして、本当のAqoursの姿によみがえさせてあげよう!!」

と、決意表明をした。

 



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Moon Cradle 第4部 第8話

 月はその後、その決意のもと、あるAqoursのメンバーのところに行く。その名はルビィ。そう、今の新生Aqoursの中で一番不安・心配の海・沼の深き底に沈みこんでいるメンバーだった。

 そのルビィだったが、フィレンツェに向かう列車の中では座席に座ったまま、

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん・・・」

と、まるで念仏を唱えるかのように見えていた。これには隣に座っていた花丸から、

「ルビィちゃん、落ち着くずら。きっと大丈夫ずら」

と、ルビィを安心させるかのように声かけをする。が、それでも、ルビィは完全に修羅場、いや、ダイヤという神様にすがる熱狂的な信者、になっていた。

 そんななか、突然、花丸、

「うっ、いきたいずら!!ルビィちゃん、ごめんずら!!ちょっとお花を摘みにいくずら!!」

と、ルビィに言ってはそのまま席を離れてしまった。これを見ていた、月、

(あっ、チャンス!!これでルビィちゃんとお話ができる!!)

と、思うとすぐにルビィのところに行く。

 そのルビィ、心の中ではこんなことを考えていた。

(お姉ちゃん、待っててね!!ルビィ、絶対にお姉ちゃんを見つけてあげるよ!!見つけたら、今度こそ離さないからね!!)

そう、ルビィの頭の中は姉ダイヤに対する執念でいっぱいだったのだ。

 そんなルビィに対し、突然、

「はい、ルビィちゃん、隣に座っていい?」

と、ルビィのことを呼びかける声がする。その声に反応したのか、ルビィ、

(あっ、ルビィのこと、誰か呼びかけている!!)

と、その呼びかけに気づくと、すぐにその呼びかけた声がする方向に向く。すると、そこには・・・。

「あれっ、月ちゃん!!」

と、ルビィは言った。そう、そこにいたのは月だった。そして、すぐに、ルビィ、

「月ちゃんだったらいいよ!!」

と、ルビィの隣の席に月をエスコートする。

 その月、ルビィの隣に座るなり、すぐにあることを聞く。

「ところで、ルビィちゃん、ダイヤさんのこと、どう思っているの?」

これには、ルビィ、なぜそのことを聞くのか月に尋ねると、月、ヴェネチアのボヴォロのときに姉ダイヤにルビィが抱きついたとき、ルビィが幸せそうな顔をしていて気になったこと、自分は一人っ子であり、昔から姉妹に憧れていたこと、なので、姉がいたらどう感じているのか知りたい、姉がいるルビィに憧れている、そのことをルビィに告白した。これには、ルビィ、すぐに、

「ルビィにとってお姉ちゃんは誰にでも誇れるえら~いお姉ちゃんなんだよ!!」

と、姉ダイヤについてまるで狂信者みたいに月に自慢する。このとき、ルビィ、

(一人っ子の月ちゃんにお姉ちゃんのいいところ、どんどん言ってみよう!!お姉ちゃんは凄いんだぞ、お姉ちゃんはルビィにとって大事なんだよって!!)

と、一人っ子の月に姉ダイヤの偉大さを熱心に伝えたい、その心でいっぱいだった。

 しかし、そのルビィの姉ダイヤの自慢話を聞いている月からすると、

(これを聞いているだけでどれほどお姉ちゃんであるダイヤさんにかなり依存しているのかよ~く判る気がする。でもね・・・)

と、考えると、すぐに、

(でもね、だからこそ、ルビィちゃん、そのお姉ちゃん断ち、ダイヤさん断ちする必要があるんじゃないかな。ルビィちゃんにとってとても辛いことかもしれない。けどね、今の新生Aqoursが復活できるかはルビィちゃん次第、だと思うよ。今の新生Aqoursの姿はルビィちゃんそのもの。そのルビィちゃんが生まれ変わればきっと新生Aqoursも生まれ変われるはず。だからね、ルビィちゃん、僕、心を鬼にするよ。そして、本当に大切なもの、それをルビィちゃんに伝えてあげるね)

と、自分の想い、覚悟を決める。

 その月の想いのためか、姉ダイヤの自慢話をするルビィに対して一言。

「で・・・」

と、ルビィの自慢話を遮ると、月、すぐに、

「で、そんなダイヤさんだけど・・・、ルビィちゃんにとってお姉ちゃんであるダイヤさんってどんな存在なの?」

と、ルビィに尋ねる。

 これには、ルビィ、

(えっ、ルビィにとってお姉ちゃんの存在・・・?)

と、一瞬戸惑ってしまう。姉ダイヤの偉大さを月に話していたのに、月、そんなことを気にせずに姉ダイヤの存在について聞いてきたのだ。が、それでも、ルビィ、

(お姉ちゃんはとっても偉大なんだよ!!)

と、姉ダイヤの自慢話をしたのに、それをまったく気にせず聞いてきた月に少し怒ってしまう。そのためか、

「お姉ちゃんはとても凄いんだよ!!とても偉大なんだよ!!なのに、月ちゃん・・・」

と、月に反論しちゃうルビィ。

 が、そのルビィの反論に、月、

(たしかに、今までのダイヤさんの自慢話でルビィちゃんが姉ダイヤさんを慕うことはわかったよ。だからこそ、僕はそれを断つ!!そして、その先にみえるものをルビィちゃんと一緒に捜していきたい!!)

と、決意し、ついにその火蓋ともいえる言葉を言う。それは・・・。

「でもね、ルビィちゃん、ダイヤさん、いつかはルビィちゃんのもとから旅立っていくんじゃないかな?」

そう、ルビィにとって避けることができない現実・・・。この月の言葉に、ルビィ、

(えっ、お姉ちゃんがルビィのもとから旅立つ・・・)

と、一瞬体が凍りつくとともに、

「・・・」

と、黙ってしまった。

 このルビィの姿を見た、月、

(ルビィちゃんにとって認めたくない現実・・・。このまま僕がその現実の先にあるとても大切なことをここで教えることができるけど、それだとルビィちゃんのためにならない。ここはルビィちゃん自身でそのことを考える時間をあげるべきかな?)

と、思うと、ルビィにある言葉を言った。

「ダイヤさん、いつかはルビィちゃんのもとを去っていくんだよ。だって、人っていうのはいつまでも拘束できるものじゃないからね。いつかは、別れ、っていうものが起きるものなんだよ。そう、僕だって、昔、そうだった。ある人と別れたことがあって、今のルビlちゃんと同じ経験をしたことがあるんだ。だからこそ、今、それについて考えるべきじゃないかな」

 その言葉とともに月はルビィに対し、

「じゃ、ルビィちゃん、またね」

と言ってルビィのもとから去っていった。

 この月の言葉はルビィの心に深く突き刺さる。そのためか、ルビィの心の中は崩壊・・・。

(お姉ちゃんが離れていく・・・、いつまでも拘束できない・・・、お姉ちゃんはいつかは飛び立つ・・・、ルビィ、そんなの嫌だよ~!!なにもかもなくしたくない!!でも、お姉ちゃんはいつかは飛び立っていくんだよね。ルビィ、それはいや!!でも・・・)

 そして、ルビィ、こう思っては、より不安・心配の海・沼のさらなる奥底へと陥ってしまう・・・。

(お姉ちゃんとずっと一緒にいたい!!でも、そのおねえちゃんはルビィから旅立とうとしている。ルビィ、どうしたらいいの?どうすればいいの・・・。お姉ちゃん、助けて・・・)

 

 一方、席を離れた、月、陰からルビィが苦しんでいる様子を見ていた。このとき、月、

(ルビィちゃんにはちょっと悪いことしたかな。僕が新生Aqoursをよみがえさせるために決意したゆえの行動だけど、なんか、僕、心苦しいよ・・・)

と、思ってしまう、が、その月、あることを考えてしまう。それは・・・。

(でも、今、新生Aqoursに起きていること、ルビィちゃんがおかれた状況、それはとても似ている、と、僕は思うよ。“0”、これこそ、今の新生Aqoursと今のルビィちゃんに起きている、とてもにっくき数字。新生Aqoursと今のルビィちゃん、“0”、この呪縛に今でも拘束されている。そう、それはAqours誕生のときから起きていた・・・)

 そして、月はあることを思い出す。

(これは曜ちゃんから聞いた話、だけど・・・)

月が思い出したこと、それは、曜から聞いたAqoursの歴史・・・。それは“0”の歴史・・・。

 Aqoursと“0”という数字は切っても切れない関係だった。最初、Aqoursは“0”から始まった。最初、千歌と曜、2人で始めたスクールアイドル活動、そこに梨子が加入、3人で内浦の砂浜海岸で(ダイヤがこっそり書いた)Aqoursという言葉と出会い、3人は自分たちのグループ名をAqoursにした。その後、ファーストライブの成功後、1年生のルビィ、花丸、ヨハネが加入、浦の星の廃校危機に見舞われるも、千歌たちAqoursは“0”から大きく羽ばたく・・・はずたった。が、東京のスクールアイドルのイベントでまたしても“0”という数字を突きつけられる。この後、3年生の鞠莉と果南の歴史的和解、ダイヤの加入によりパーフェクトナインになるも、夏季大会東海最終予選まで学校説明会希望者数“0”、またしても“0”という数字を突きつけられる。けれど、千歌たちの頑張りにより、最終予選は敗退するも、“0”から“1”へと弾みをつけることに成功した。こうして、“0”の数字の呪縛を解き放った・・・わけではなかった・・・。

 続く冬季大会、その呼び寄せんが始まる前には“1”から“10”へと学校説明会希望者数を伸ばしていた。千歌たちはそれを“100”にしようとする。静岡県(予備)予選、学校説明会、東海最終予選と順調に勝ち進んだ千歌たちAqours、そして、入学希望者数を“98”まで伸ばすことに成功する。が、そこでタイムアップ・・・。こうして、浦の星の廃校は決定、千歌たちが目指していた廃校阻止は悲しくも散ってしまう。こうして、目指すものを失った千歌たち、このとき、またもや、なにもなくなった、“0”に戻った、千歌たち9人はそう思ってしまう。しかし、浦の星の生徒たち全員から「消えゆく“浦の星”の名前をラブライブ!の歴史に深く刻んでほしい」という夢を託されことにより千歌たちは新たなる目標、ラブライブ!優勝、を定め、正月返上するほど頑張った結果、ついにラブライブ!冬季大会で優勝を果たすことになる・・・。

 そのAqoursの歴史を思い返した、月、ある考えを示した。

(こうして、Aqoursはついに“0”の呪縛から解き放たれ、これまでAqoursとしてやってきたこと、それが自分たちの輝きである、そう気づいたはずだった・・・。しかし、鞠莉ちゃんたち3年生が卒業しAqoursから抜けたことにより、その輝きすら忘れてしまうほどの悪影響がでてしまう。これまで、船でいうところのエンジン役、家でいうところの屋根役だった鞠莉たち3年生がいなくなったことで、曜ちゃんたち新生Aqoursは迷走してしまった・・・。本当は僕が最初に気づくべきだったけど、鞠莉ちゃんたち3年生が抜けて初めてのライブ、静真での部活動報告会のライブで、鞠莉ちゃんたち3年生がいないことでステージを広く感じられたこと、エンジン役、屋根役がいないゆえに、これから先、どうすればいいのかわからなくなった・・・などにより、曜ちゃんたち新生Aqours全員が不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった・・・のかもしれない。いや、それ以上に、曜ちゃんたち新生Aqours、これまで頼っていた3年生がいない・・・、それにより、なにもかもがなくなった・・・、“0”に戻った・・・、そう思ったのかもしれない、そして、それが今でも続いている・・・、これが、今の新生Aqoursに起きている状況・・・)

この考えのもと、月はある想いにたどり着く。

(そして、それは今のルビィちゃんにも当てはまる。これまで頼っていた姉ダイヤさんの存在、それがなくなろうとしている、それはルビィちゃんにとって悲しい現実・・・、その現実に今直面しているルビィちゃん、僕がその現実を強く示したことにより、今のルビィちゃん、「姉ダイヤさんがいなくなる=なにもかもなくなる=“0”になる」、そう思っているのかもしれない・・・)

 そして、月、これらの考え、思いをもとにある決意を固める。

(でも、それは僕にも同じ経験がある。曜ちゃんはそのときのことを忘れているけど、僕にとってみれば、とても大切な経験だったと思うよ。そして、それを経験している以上、今の新生Aqours、ルビィちゃんを僕が導かないといけない・・・そんな気がするよ・・・)

 

 そして、心配・不安の度合いを深めたルビィ、ある決意をした月を乗せた列車はついに運命の地、フィレンツェ、に到着した・・・のだが、ここである事件が起きてしまう・・・。それは・・・。

 それは、フィレンツェに到着したときにその兆候があった。

「フィレンツェ、到着・・・」

と、千歌が嘆くほど長時間の列車旅で疲れた千歌たち。と、いうわけで、最初になにか食べることにした。が、1人だけ違っていた。その少女はガイドブック片手に、ただ、

「ヨハネ、ヨハネ、ヨハネ・・・」

と、呪文のように口ずさんでいた。

 そして、駅近くの市場で食事をすることにした千歌たち、ピザなどイタリア名物を食べている・・・のだが、それでも千歌たちは少し暗い表情をしていた。特に、ルビィに関しては、

(お姉ちゃん・・・)

と、あまり元気を感じさせない、いや、不安と心配で体中がいっぱいだった。どうやら、こちらから鞠莉たち3年生3人と連絡しようとするとすぐに鞠莉‘sママに鞠莉たち3人の場所がわかってしまうらしく、いくらこちらから連絡しても鞠莉たちと連絡がとることができないようだった。

 この千歌たちの様子を見ていた、月、

(このままじゃ、曜ちゃんたちがもたないよ・・・)

と、千歌たちのことを心配してしまう。

 と、いうわけで、

「なら、ここは元気になれるものを食べて元気になろう!!」

と、フィレンツェ名物、ビステッカ・アラ・フィオレンティーナという大きな肉を使った料理を注文。これには、グルメといったら花丸、をはじめとした千歌たち、目をキラキラさせる。

 そして、月はルビィの目の前にもフィオレンティーナを持ってきて、ウインク。

(今さっきはきついこと言ってごめんね)

と、月、思うと、ルビィも、

(月ちゃん、ありがとう)

と言うと、ルビィの表情も少し安らぐ。

 が、そんなときだった。いつもなら必ずあるはずの黒い堕天使のオーラが漂っていない!!それに、花丸、気づいたのか、

「善子ちゃんも・・・、あれっ?」

と、いつも隣にいるはずのヨハネがここにいないことに気づく。そのためか、花丸、

「善子ちゃん!!善子ちゃ~ん!!ヨハネちゃ~ん!!」

と、必死にヨハネを呼ぼうとするも、ヨハネ、あらわれず!!

 と、同時に、月も、

「あれっ?誰かいない・・・、え~と、曜ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、あと、善子ちゃん・・・」

と、小声で言うと、すぐに、

(あっ、善子ちゃんがいない!!)

と、ヨハネがここにはいないことを知る。そう、なんと、今度はヨハネが行方不明になったのである!!

 というわけで、当然ながら、みんな、ヨハネのことが気になるも・・・、月・・・、

「心当たりは・・・」

と、千歌たちにヨハネがいそうなところに心当たりがないか聞いてみる。すると、ルビィ、ヨハネの居場所に関するヒント?をだす。

「ヨハネ・・・、善子ちゃん、「ヨハネ」ってずっとつぶやいていた!!」

 と、いうわけで、ルビィのだしたヒントをもとに千歌たち5人と月、ヨハネ探しをする。が、フィレンツェは広いため、3時間探しても見つからず。結局、夕暮れになってしまった。

 しかし、まだ探していなかった場所があった。それは、「ドゥオーモ」、フィレンツェのシンボルである大聖堂である。これを見た千歌、

「うわ~、でっか~!!」

と、あまりの大きさに驚いてしまう。が、花丸、ドゥオーモに到着するなりまわりを見渡すも、

「でも、善子ちゃん、いないずら~」

と、ヨハネらしき少女がここにもいないこと?にも嘆く。これには梨子、怒りながら、

「あの堕天使は?」

と言っては自分もまわりを見渡すも気づかず。本当に、ヨハネ、どこにいったのだろうか。

 が、その梨子の言葉に反応したのか、千歌たちと月のすぐ近くにいる少女がいきなり、

「探し人ですか?」

と、逆に千歌たちに尋ねてきたのだ。月、それに気づいて振り向くと・・・、そこにいたのは・・・、背中に羽を背負った・・・いたいけな少女・・・、いや、中二病全開の少女がいた・・・。月、その少女を見るなり、自分がよく知る人物だとわかりなり、

「・・・」

と、その少女の姿、中二病全開の姿にただ唖然としてしまう。

 ただ、千歌たち5人はその少女の正体に気づいていないのか、ヨハネの悪口?を次々と言ってしまう。が、その少女、なにも怒らずに、

「なるほど、それはとても崇高なお方」

と、まるで自分自身を称えるような言葉遣いをする。その少女を見た、千歌たち5人、すぐに、

「どわぁ!!」

と、その少女に驚いてしまう。そう、その少女こそ、ヨハネ・・・であった・・・。

 で、そのヨハネいわく、堕天使ヨハネではなく、守護天使ヨハネに転生したらしく、今さっき、ドゥオーモこと大聖堂の中で天使の聖を授かった・・・らしく、ヨハネ、そのときの写真を千歌たちに見せる・・・が、そこに写っているのは大聖堂の中に降り注いだ光に照らされている自分の姿・・・だけだった。これには千歌たちもただ唖然となるしかなかった。月いわく、

「いろんな子がいるんだね、Aqoursには・・・」

と。いや、それ、褒め言葉になっていませんから、月さん・・・。

 そのヨハネ、ため息をつく千歌たちのことなんて気にせず、ドゥオーモの上を指差し、

「あの天上階を目指しましょう!!」

と、言いだす。どうやら、クーポラ(ドゥオーモの天蓋)に昇りたいみたいだった。そして、ヨハネ、手元から取り出して千歌たちに見せたのは・・・クーポラへの導きを示した・・・というより、ただのコーポラのチケットだった。それも15ユーロ!!いや、ヨハネ、それ、ただのチケット売りだよ・・・、天使じゃないじゃん・・・。

 

 と、いうわけで、(ヨハネから無理やり買わされた)クーポラのチケットをもってドゥオーモの天蓋、コーポラに昇った千歌たち6人と月、であったが・・・、そのクーポラの景色、フィレンツェで一番高いところから見た景色は格別だった。数百年も前から変わらない統一された町並み・・・、オレンジで統一された町並みと夕日のオレンジ、それに、あまり統一性のない日本の町並みに見慣れている千歌たちにとって新鮮に見えた。

 そんな新鮮味あふれる景色を見ていたルビィ、その心の中には、

(この中にお姉ちゃんが絶対にいる!!)

という、なにか確信めいた気持ちでいた。

 そのルビィの気持ちに応えたのか、ルビィ、ある山の中腹に視線を傾けたとき、

(あっ、あれって・・・)

と、突然山の方で赤く光っているところを見つける。そして、ルビィ、ある言葉を思い出す。

(妖精の瞬き・・・、妖精の瞬き!!)

そう、あの鞠莉のメッセージカードに書かれていた言葉、「妖精の導き」、であった。

 そして、ルビィ、ついに確信する!!

(ルビィ、ついに見つけたよ、妖精の導き!!そこにいるんだね、ルビィが探していたもの!!そこにお姉ちゃんがいる!!お姉ちゃんが待っているんだ!!)

そして、ルビィは声高々にこう叫んだ!!

「あの光は・・・お姉ちゃん!!」

 

 こうして、偶然にも?鞠莉のメッセージカードの真の意味を見つけることができた千歌たちと月、鞠莉‘sママの追っ手を振り切るため?にいろんなところに寄り道しながら鞠莉たち3年生が待つフィレンツェ郊外の鞠莉の知人の別荘を目指す。そして、ついに、千歌たち6人と鞠莉たち3年生3人はついに対面することになる・・・のだが、そう問屋が卸さないのが常である。このあと起きる過酷ともいえる残酷な運命が千歌たちに、そして、鞠莉たちに、さらに、月にも襲い掛かる。果たして、運命の歯車はどう回ってしまうのか、そして、みんなの運命は・・・。それは・・・、次の章へと続く・・・はずである・・・?

 

 と、いいつつも、いつものおまけ・・・、その1。

 鞠莉の書いたメッセージカード、実は、鞠莉の策略?の賜物だった。月が改変したとはいえ、メッセージカードの原文そのまま鞠莉‘sママに伝えたとしても騙されていただろう。なぜなら、鞠莉’sママ、鞠莉のメッセージカードに隠された真実なんて考えもせず、ただ、「ヨハネの守護する地」の言葉だけですぐにフィレンツェの小原家の別荘だと断言してしまう、そして、そこに行く。そう、鞠莉‘sママ、即断即決の人であった。でも、実はそのあとの文章こそ鞠莉の真意が隠されていた、のだが、結局、千歌たちはその文章だけでは鞠莉の真意に気づくことはできなかった。むしろ、偶然、ヨハネがドゥオーモのクーポラの天蓋に昇りたいばかりの昇って、そこで妖精の瞬き・・・、妖精の瞬き、こと、鞠莉たちの合図に気づいただけ・・・だったのかもしれない。

 が、実は、それこそ、鞠莉の策略だった。フィレンツェは聖ヨハネが守護聖人の地である。で、ヨハネ、こと、善子、はこのフィレンツェの地で必ず騒ぎ出すに違いない、そして、そのヨハネ、フィレンツェで一番天界に近いところ、そう、フィレンツェで一番高いところであるクーポラに昇って天界へと駆け上がろうとする、それを見越して合図をすればきっと千歌たちはそれを見つけてくれる・・・そう鞠莉が考えたことだったらしい。

 ただ、後日、鞠莉にこのメッセージカードの真実について千歌が尋ねたところ、

「ペロペロ」

と、誤魔化されたらしい。なので、その真実については今も闇の中である。

 

 おまけ・・・その2。

 この妖精の瞬きを見つけた千歌たち6人と月、そのまま鞠莉たちのいるフィレンツェ郊外の別荘に向かう・・・はずだったが、鞠莉‘sママの追っ手をかく乱するため、いろいろと寄り道してはその追っ手を振り切ることに成功した・・・のだが、実は、追っ手を振り切る・・・というよりも、いろいろと寄り道した・・・というのが正解だった。

 まず、花丸。なにかおいしいものを見つけると、

「あっ、あれ、食べたいずら!!」

と言ってはそこで見つけた屋台めがけて食べに行こうとしてしまう。

 さらに、ヨハネも、

「あっ、なんて神々しいところなんだ!!」

と、興味あるところを見つけてはそこに勝手に行こうとしていた。

 というふうに、千歌をはじめとするいろんな人たちにより、こっちに行ったりあっちに行ったりといろいろと寄り道をした結果、街の中心地にあるドゥオーモから鞠莉たちが待つフィレンツェ郊外の別荘まで3時間ぐらいかかってしまった。が、それにより、鞠莉‘sママの追っ手を振り切ることに成功したのである。これはこれでよし・・・なのかな・・・?

 

 と、いうわけで、運命の第5部に続く・・・?

 



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Moon Cradle 第5部 第1話

「やっと着いた~‼」

鞠莉‘sママからの追っ手を振りつつ・・・というよりも、食べ物を追い求めたり、いろんな観光名所を寄ったりと、いろんなところに寄り道をしてしまい、ついに最終目的地に着いた月と千歌たち一行。そのためか、月、歩き疲れてしまい、ついに本音が出てしまった。

 そして、月はまわりを見渡すと、すぐに、

「dめお、いろんなところに寄り道したから夜になっちゃったね」

と言いだす。そう、いろんなところに寄り道をしてしまったので、最終目的地に到着したときにはもう夜の9時を過ぎていたのである。これには、曜、

「そうだね。本当に空が真っ暗だよ・・・」

と、空を見上げる。そこには星がさんぜんと輝いていた。

 その月と曜のやり取りをしているなか、千歌は前のほうを見る。その千歌、すぐに、

(ここが妖精のまたたき、いや、妖精の導きで示された場所・・・)

と、つい思ってしまう。ヴェネチアで手に入れた鞠莉のメッセージカードに書かれていた文字、「妖精のまたたき」・・・。それを追い求めて聖ヨハネが守護する地フィレンツェに来た月と千歌たち。そして、偶然?フィレンツェを代表するドゥオーモのクーポロ(天蓋)でついに「妖精のまたたき」を見つけることができたのである。こうして、「妖精のまたたき」、いや、「妖精の導き」によってついにその導かれし地、最終目的地に到着した・・・のであるが、そこにあったのはお金持ちが持っていそうな「ザ・別荘」ともいえる建物だった。

 この建物を見たか、梨子、

(ここで間違いないよね。間違っていないよね)

と、少し疑心暗鬼になったのか、

「本当にここ?」

と、みんなに尋ねてしまう。これには、ルビィも、

(たしかにここから妖精のまたたきが発せられていたんだよ‼ここにお姉ちゃんたちがいるんだよ‼)

と、自分の姉ダイヤレーダーがここにいるっていっている・・・かのように、いや、確信めいたものをもっているかのように、自信に満ち溢れているのか、すぐに、

「うん‼」

と、力強くうなずく。

 そんな力強いルビィのうなずきを受けてか、千歌、意を決し、その建物に向かって、

「こんばんわ~‼」

と、大きな声で叫んだ。

 すると、その別荘のバルコニーから千歌たちにとって見慣れた3人がこっそり現れると、千歌たちに向かって、

「シーーーーー‼」

と言う。

 しかし、千歌、その言葉すら気にせず、またも大声で、

「鞠莉ちゃん‼」

と言ってしまう。そう、別荘のバルコニーから現れた3人、それは、あのヴェネチアで別れた、鞠莉、ダイヤ、果南、Aqours3年生の3人だった。

 が、この千歌の大声に、鞠莉たち3人ともに、

「シーーー‼シーーー‼」

と、千歌に注意する。それは何かに見つかるのを恐れている、そんな感じだった。

 そんな千歌と鞠莉たち3人のやり取りをしている最中、ある少女はバルコニーにいるある少女を見つめていた。

(お姉ちゃん・・・、ついに会えたよ・・・、ルビィのお姉ちゃん・・・)

そう、ルビィだった。ヴェネチアでダイヤと悲しき別れをしてしまったルビィ、しかし、それでもようやく姉ダイヤと再会できる、その喜びでいっぱいだった。静真の部活動報告会でのライブ失敗以降、姉ダイヤがいないと生きていけない、そんな気持ちでいっぱいだった。姉ダイヤという神にとても依存しているルビィ、であったが、その一方でこんな思いもあった。

(でも、月ちゃんが言っていた、「お姉ちゃんはいつかは旅立つ」・・・。お姉ちゃんはルビィのもとからいなくなる・・・、ルビィのもとからいなくなってしまう・・・、ルビィ、そんなのいやだよ‼でも・・・)

ヴェネチアからフィレンツェに行く列車のなかでルビィは月からあることを言われていた、いつかはルビィの姉ダイヤがルビィのもとから旅立ってしまうことを。姉ダイヤへの依存度が高すぎるルビィにとって残酷ともいえる現実・・・であったが、そのルビィとしては受けれ入れたくない現実だった。

 が、ルビィ、その受けれたくない現実のことを忘れてしまったのか、

(今はそのことは忘れよう・・・。それよりも、ルビィ、もうお姉ちゃんと離れたくない‼ずっとお姉ちゃんといる‼絶対に・・・、絶対に・・・)

と、もう姉ダイヤのことを離さない‼と心の中で決めてしまった。

 そのルビィの姉ダイヤへの真剣なまなざしに、月、

(ルビィちゃん・・・)

と、姉ダイヤへの永遠なる依存を決めてしまったルビィのことを心配そうにみていた・・・。

 

 鞠莉たちの手引きにより別荘のなかに入った月と千歌たち6人、お金持ちの別荘、ということもあり内装も豪華だった。これには千歌、

「す、すごい・・・」

と、内装の豪華さに驚いてしまう。いや、一人を除いて、皆、内装の豪華さに驚いていた。

 が、内装の豪華さに驚いていない少女が1人・・・。

(お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん‼)

と、まるで呪文のように心の中で叫び続けている少女、ルビィ・・・。まるで長年待ち憧れていた人に会える、いや、本当に待ち憧れているその人にようやく会える、それが叶う、そんな思いでいっぱいだった、ルビィは。ルビィにとって姉ダイヤは心の支えであった。そして、この旅を通してそれはより強固により頑丈になってしまった。そして、この旅ではいなかった姉ダイヤがついに降臨する。それにより、ルビィの心の中では姉ダイヤ教という大きな柱が完成する。それはルビィにとって、これから先、ずっと守っていきたい、絶対に手放しくない、そんな気持ちでいっぱいだった。

 そして、ついに、そのルビィの思いは完成しようとしていた。ついに鞠莉たち3年生3人が待つ大広間のドアの前に立つ月と千歌たち6人・・・。

(お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん!!)

と、はやる気持ちを抑えることができないルビィ、そのためか、

「ルビィがドアを開けるね」

と、ルビィが大広間のドアを、

バタンッと、大きく開けてしまう。

 で、そのドアを開けた瞬間、月、千歌たち6人、

「うわ~!!」

と、目をパチクリしてしまう。目の前に現れたのは・・・大きなシャンデリア、何億円ともしそうな壺がいくつも、ピカピカに磨かれている床、そして、大きなソファセット・・・。別荘の玄関から大広間まで高そうな壺をいくつも見てきたが、それすらも上回る高級なもの数々。大広間の豪華さは「THEお金持ち」ともいえる豪華さだった。むろん、果南曰く、

「だからお金持ちは・・・」

と、少しひがんでしまうこともあったが・・・。

 そして、そこには千歌たちが探していた鞠莉、ダイヤ、果南、Aqours3年生3人がいた・・・のだが、それよりも大広間の内装の豪華さに目をパチクリしている月と千歌たち6人・・・。なのか、突然、

「今度はつけられなかった?」

と、少女の声が聞こえてきて千歌たちに尋ねてくる。これには、曜、

「大丈夫!!」

と、優しく答える。何度も道を変えた?ことで鞠莉‘sママの追っ手から逃れたことを果南たちに報告する。もっとも、道を変えた・・・というよりも、寄り道しすぎた・・・、というのが正しいのだが・・・。

 そして、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、はやる気持ちのためか、ソファのところを見るルビィ。すると、そこには、鞠莉、果南、そして、ルビィが追い求めていたダイヤの姿があった。

 その姿を見たルビィ、

「お姉ちゃん!!」

と、姉ダイヤのもとにさっそく飛び込んでしまう。このとき、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!会いたかったよ!!もう離さない!!お姉ちゃん!!)

と、ついに願いが成就した、そんなうれしい気持ちとともに、もう二度と離さない、そんな決意をしていた。

 で、いきなり自分のもとに飛び込んできたルビィに対し、ダイヤ、

(ルビィ!!)

と、まるで自分もルビィを追い求めていた風に思うとともに、

(ルビィ、遠くの地からここまでよく来てくれましたのですね!!)

と、日本沼津よりはるか遠い地、イタリア・フィレンツェにダイヤに会いに来てくれたルビィの労をねぎらおうとする、と、同時に、ルビィを大事そうに抱擁していた。そして、ダイヤ、心の中でまるで赤ちゃんをいさめるかのようにルビィの頭をなでていた。

 



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Moon Cradle 第5部 第2話

 そんなほほえましいルビィとダイヤの姿・・・ではあったが、そんななか、鞠莉から、

「ママからなにか連絡あったの?」

と、千歌に聞く。このとき、鞠莉、

(あのヴェネチアでの騒ぎのあと、ママから千歌っちたちになにかよからぬことを吹き込んでいないでしょうね。あのママだから、なにか千歌っちたちになにかをしたんじゃないので~すか~)

と、疑心暗鬼に陥っていた。のだが、千歌、すぐに、

「ううん、特には・・・」

という、何もされていない、だれから見ても正直に発言している、そんな答えだった。

 これには、鞠莉、

(WHAT!?ママ、なんで千歌っちたちに何もしていないので~すか?)

と、ちょっと拍子抜けしてしまう。

 が、この鞠莉の表情を見てか、梨子、

(あれっ、鞠莉ちゃん、なんか隠し事をしている・・・。そういえば、ヴェネチアのときも何かに追われているかのようにその場から逃げていったよね。もしかして・・・、自分のお母さん(鞠莉‘sママ)と何かあったのかな?)

と、鞠莉に対し疑問を抱く。

 そして、そう思った梨子、鞠莉にあることを直接聞く。

「なにかあったの、お母さん・・・?」

これには鞠莉、

(梨子、なんかに気づいたようですね~。ここはTo feign ingnorannce(しらを切る)で~す!!)

と、思ってか、

「う~ん、ちょっと・・・」

と、口を濁してしまう。

 この鞠莉の言動に、千歌、

(あっ、鞠莉ちゃん、本当になにか隠し事をしている!!じゃないと、ヴェネチアで私たちから逃げた理由にならない~!!ここは梨子ちゃんを援護射撃だ!!)

という思いとともに、

「ここまで来たんだよ!!教えてよ!!」

と、鞠莉に迫る。が、とうの鞠莉は、

(ここはサイレントに徹するで~す!!)

と黙ったままだった。

 この鞠莉の行動にダイヤが、

「これでは・・・」

と、千歌たちに助け舟をだすも、鞠莉はただたんに、

「でも・・・」

と、黙ったまま。ダイヤの進言でもってしても鞠莉は千歌たちに真実を話さなかった。

 が、この鞠莉の行動に、1人、黙ることができなかった少女がいた。

(う~、こんな状況、じれったい・・・)

その少女はまったく話が進まないこの状況にいらだいていた。その少女は超がつくほど超行動はであり江戸っ子気質・・・のところがあるためか、場が停滞しているこの状況がとても嫌いであった。と、いうわけで、今、この停滞しているこの状況を作ってしまっている張本人、鞠莉、に対して、その少女、

(鞠莉がこんな状況を作ったんだよ!!なら、この私が、この場を、停滞しているこの状況をぶち壊してしまおう!!!)

と、思ってしまう。いや、思うより前に口がでてしまった。

「実はね、鞠莉が結婚するの!!」

この言葉を発したのは・・・これまで、鞠莉、ダイアと千歌たちのやり取りを紅茶を飲みながら眺めていた・・・、いや、発言する機会を待っていた?・・・果南であった。果南、この話が先に進めない、停滞している状況に嫌気になったのか、鞠莉‘sママが鞠莉たち3人を追いかけている、その真実を、鞠莉より先に言ってしまったのだ。

 が、この果南の言葉、なんと、逆にその場を凍らせてしまった。あまりに唐突に果南がその真実を言ってしまったのか、千歌たち、

(えっ・・・!?)

と、一瞬思考が停止してしまう。そして、遠くから聞いていた月も、

(結婚・・・?)

と、千歌たちと同じく思考停止に陥る。

 そして、逆に、鞠莉、ダイヤ、ともに、

(な、なんて・・・)

と、果南が唐突に鞠莉が隠したがっていた真実を言ったことにパニックを起こしていた。

 と、いうわけで、果南の突然の言葉、この停滞する場を壊すどころかこのあと起きるパニックをも引き起こそうとしてしまっていたのである。

 まず、それは千歌たちに起きてしまった。一瞬思考停止に陥ってしまった千歌たち6人、その直後、

(えっ、結婚・・・?)

と、あまり聞かれない、いや、ラブライブ!という世界ではあまり聞かれないような言葉がでてきたことに一瞬戸惑ってしまう。そのためか、

(結婚・・・?なにかの聞き間違いじゃないかな・・・)

と、思ったのか、

「誰かと戦うの?」

など、「結婚」と語呂が近そうな言葉を千歌たちは言っていく。「決闘」「潔癖」「傑作」「結末」「結界」・・・、それはまるでお笑い集団Aqours・・・のとんち合戦みたいなものになってしまった。そして、それは、お笑い集団Aqoursのなかで唯一のツッコミ役である曜ですらボケ役にまわるくらいのすごさに・・・。

 でも、このとんち合戦、いつもは予想の斜め上にいってしまうくらいのボケ役なのに、今回は珍しく?ツッコミ役の果南からすれば、

(なんで先に進まないの!!)

と、すました顔で紅茶を飲んでいるものの、心の中では話が先に進まないこの状況にかなりうんざりしていた。そのためか、このとんち合戦に果南は終止符を打つ。

「だから、結婚だって!!」

 この果南の言葉でもって千歌たちもようやく、

「結婚」

と、いう文字を受け入れてしまう・・・のだが、この言葉を認識した瞬間、

「「「「「「え~!!」」」」」」

と、驚いてしまう。むろん、月も、心のなかで、

(えっ、結婚!!この年齢で!!)

と、びっくりしてしまう。月を含めた千歌たちにとってこれまで自分たちにとってとても遠い・・・というよりもラブライブ!という世界そのものに初めて現れた言葉・・・だったからなのか、それよりも、高校を卒業したばかりの鞠莉がそのまま結婚してしまう・・・という事実、これには千歌たちからすれば信じることができない事実だったからである。

 と、いうわけで、この事実を聞いてパニックを起こしてしまった千歌たち6人。すぐに、

「結婚!!」(曜)

「いつのまに!!」(花丸)

「だれと、だれと、だれと!!」(梨子)

と、いつも沈着冷静な梨子すら慌てふためくくらい鞠莉に詰め寄ろうとする。これには、鞠莉、

(果南~、あとでお仕置きですね~!!)

と、騒ぎを大きくした?果南を恨みつつも、

(と、それよりも、まずは千歌っちたちをなんとかしないと・・・)

と、迫ってくる、曜、花丸、梨子の対処をしようとする。

 まずは、

「Wait!!しないよ!!」

と、やんわり?とその事実を否定する。と、同時に、

「果南、ふざけないで!!」

と、この騒ぎを大きくした?果南を叱る。

 が、果南からすれば、

(と、鞠莉は否定しているけど、このままだったら、鞠莉‘sママ、絶対に鞠莉に結婚させようとすると思うよ!!)

と、超現実思考で物事を見ているためか、

「でも、実際、このままだったらそうなっちゃうでしょ!!」

と、鞠莉に現実を言ってしまう。

 が、鞠莉、すぐに、

「だからそうならないようにしているんでしょ!!」

と、果南が言った事実に対して逆らおうとする。

 と、鞠莉と果南のやり取りを見ていた千歌、

(え~と、鞠莉ちゃんが結婚するって果南ちゃんが言っているけど、とうの鞠莉ちゃんは全力でそれを否定している。鞠莉ちゃんが結婚、それを否定する鞠莉ちゃん・・・、うわ~、わからないよ~!!」

と、頭がこんがらってしまう。そのためか、

「もう、わからないよ!!」

と、頭を抱えてしまう。いや、千歌以外の6人も同じ状況だった。そして、それを外野で見ていた月も、

(まさか、ドラマみたいなことが起こっている・・・わけないよね・・・)

と、その現実をいまだに受け入れることができなかった。

 そんな、なにがなんだかわからない千歌たちに助け舟を出したのは・・・ダイヤだった。

「つまり、縁談の話がある、ということですわ」

この言葉を受けて、鞠莉、

「それも一度もあったことがない人!!」

と、まるで鞠莉‘sママに恨みがあるかのような言葉で追加説明する。

 と、ここで、ルビィ、

(なんで鞠莉ちゃんが知らない人と結婚しないといけないの?どうして?)

と、思うようになる。いや、ここにいる千歌たち6人(+月)ともにその疑問を思ってしまう。と、いうことで、ルビィがさっそく、

「なんで?」

と、鞠莉とダイヤに尋ねる。

 が、ここでまたもや意外なことが起きる。縁談という事実を千歌たちに伝えたダイヤ、その相手が自分の知らない人であることを告白した鞠莉、であったが、そのダイヤと鞠莉の言葉を聞いた果南、思わず、

(う~、いらいらする!!今、そのことを考えるだけでいらいらする~!!そう、こんなことを引き起こしたもの、すべて、鞠莉‘sママに原因がある!!いや、それ以上に、鞠莉‘sママと(その当事者である)私たち3人の揉め事になんで千歌たちを引きずりこんでしまったの!!それを考えただけでもいらいらする~!!)

と、鞠莉‘sママに対し怒り心頭になってしまう。さらに、

(もとはといえば、鞠莉の自由を奪いたいためにしていることでしょ!!鞠莉‘sママ、絶対に許さない!!)

 と、いうわけで、果南、思わず、

ガチャンッ

と、持っていたティーカップを机の上に激しく置くと、そのまま、

「鞠莉の自由を奪いたいから!!」

と、鞠莉‘sママが鞠莉たち3人を追いかけている、その理由を言ってしまう。この果南の言葉に、千歌たち、すぐに、

「うわっ!!」

と、驚いてしまう。あまりに(鞠莉たちからすれば)身勝手ともいえる理由だった。むろん、このときすでに外野と化していた月からしても、

(あのお母さん(鞠莉‘sママ)、ああ見えて自分の娘に非常識なことをさせようとしていたんだね。なんていう身勝手すぎる・・・)

と、鞠莉に同情してしまう。

 そんな同乗していた月を尻目に、鞠莉、ダイヤ、果南は千歌たちに対して鞠莉‘sママがなんでこんな騒動を起こしてしまったのか、かいつまんで話した。と、言いつつも、この物語を読んでいる方にとっては耳にタコができるくらい?話したことなので、ここでは簡単に鞠莉たち3人が言ったことをまとめて伝えよう。

 鞠莉‘sママ、昔から鞠莉の親友であるダイヤ、果南のことをよく思っていなかった。なぜなら、ダイヤ、果南と出会って以降、2人と出会う前までは自分のことを素直に聞いていた鞠莉が勝手に行動するようになったからである。そして、高校3年のとき、鞠莉はイタリアの高校から日本沼津にある浦の星に勝手に転校してしまう。そんなこともあったのか、スクールアイドルについても印象がいい・・・というよりも「くだらない!!」と評価するぐらいに・・・。

 と、いったぐらいに、勝手に行動する鞠莉に対し、鞠莉‘sママ、ついに強硬的な行動にでる。鞠莉‘sママ、鞠莉が浦の星を卒業するタイミングを狙って、鞠莉を拘束(=縁談)をしようとしていたのだ。が、鞠莉、そのことをわかっていたのか、いや、鞠莉‘sママに自分の意思を伝えるために卒業旅行を、いや、自由への逃避行をしていたのだ、「私はあのとき(ダイヤと果南にである前)の私じゃない、自由にさせないなら戻らない」という置手紙を残して・・・。

 しかし、鞠莉‘sママは鞠莉を拘束したいがゆえにイタリアに来てまで・・・、千歌たちを使ってまでしつこく追いかけてきた。これには鞠莉たち3人も想定外・・・であった・・・。ある意味、世界規模の親子喧嘩・・・とみてもおかしくなかった・・・、のだが、この親子喧嘩に対し、なんと、

「争いごとはやめましょう・・・」

と、平和主義を唱える少女が出てきてしまった!!その名はヨハネ!!そう、ドゥオーモで天使を施しを受けた(と、自分で思い込んでいる)ヨハネである・・・のだが、目立とうとしているのか、なぜかバルコニーの手すりに上っては千歌たちを見下している・・・。でも、その手すりに上っている・・・ということは・・・、もちろん、バランスを崩すと下に真っ逆さまに落ちていくのは自明の理・・・。と、いうわけで、ヨハネ、このあと、足を踏み外して下に落ちていきましたとさ。

 で、この場合、ヨハネ、下に落ちていって大けが・・・、最悪の場合、死・・・、となるのであるが、ヨハネ、運よくちょうどバルコニーの近くにあった木に引っ掛かり、ひっかき傷程度ですんだ・・・が、このとき、ヨハネ、こう思ってしまう。

(う・・・、せっかく天使になれたのに・・・、なんで堕天しちゃったの~!!)

そう、ようやく念願の天使になれた(と、自分で思っている)のに、たった半日で堕天してしまったのだ。なのだが、ヨハネ、これをプラス思考に考える。

(でも、よく考えたら、ヨハネ、やっぱし、堕天使、なんだね!!よ~し、決めた!!これからずっと堕天使としてやっていくぞ!!)

と、いうわけで、ヨハネ、いつもの通り堕天使に戻ることになりましたとさ。ちゃんちゃん。

 が、このとき、ヨハネが髪につけていた羽が下へと落ちていった。そして、その羽はちょうど鞠莉たちがいる別荘近くの道に無事着地。が、その羽のもとに、

ブルルン

というバイクの音とともに一人の女性が降り立つ。その女性、バイクを降りるなり、

「ふんっ!!」

と、生意気そうに言うと、鞠莉たちがいる別荘の方を見てこう言った。

「ついに見つけましたよ~、鞠莉!!これで、鞠莉をホールドできます!!」

 その外の出来事なんてつゆしらず、下に落ちていったヨハネを救出した千歌たち。

「これからどうするか・・・」

と、これから先のことを考え始めようとする。月も、この鞠莉たちAqoursの姿を見て、

(もうこれで曜ちゃんたちが迷うことはないよね。これでいつものAqoursに戻れたら・・・)

と、淡い期待をする。が、この期待はすぐに打ち砕かれる。

 これから先のことについて悩む千歌たち。が、そんなときだった。

ガタンッ

と、突然、鞠莉たちがいる大広間のドアが開いてしまった。突然のことなので、その話し合いをやめてドアの方を見る千歌たちAqoursと月。そして、

「えっ!!」

と、千歌たちは大広間のドアから現れた女性をみてびっくりしてしまう。その女性を見た鞠莉、突然、こんなことを言いだしてしまう。

「ママ!!」

そう、大広間のドアを開けた女性とは・・・鞠莉と月の策略でここに来るなんて予想していなかった・・・鞠莉‘sママだった・・・。

 

 



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Moon Cradle 第5部 第3話

 と、ここで、鞠莉‘sママがなんで鞠莉たちがいる鞠莉の親友の別荘に現れたのか。その種明かしをしよう。思い出してほしい。鞠莉を探していた鞠莉‘sママ、第4部第6話で、鞠莉と月の策略で鞠莉‘sママはフィレンツェの小原家の別荘に行ったもののもぬけの殻だった。そのとき、鞠莉‘sママ、とても悔しがっていた。

 が、そんなとき、鞠莉‘sママに電話がかかってくる。鞠莉‘sママのイタリアにいる親友・・・と語る者からだったが、鞠莉‘sママはその電話で鞠莉たちはフィレンツェ郊外の鞠莉の親友の別荘にいることを知ったのである。

 が、それには実は裏があった。そう、鞠莉‘sママのイタリアにいる親友・・・である。その親友であるが、実は、その親友・・・と語る者の正体は・・・なんと、月たち静真高校生徒会の敵であり、あの静真本校と浦の星分校との統合に異を唱える、静真高校の大スポンサーであり、さらに、統合問題により、浦の星とそのスポンサーであった小原家に恨みを持つ、静真高校の部活動保護者会会長、木松悪斗・・・の右腕、裏美の関係者・・・というよりも、裏美の奥さんだった!!

 では、その裏事情について詳しく解説しよう。

 鞠莉たち3年生3人ヴェネツィアから無事脱出したことにより、鞠莉を捕まえるためにポスター代などの多額のコストをかけたにも関わらず鞠莉を捕まえることができなかった、鞠莉‘sママ、その怒りを、ポスター作製などを、いや、(敵である静真高校生徒会長の月を貶めるために)千歌たち新生Aqours6人と月を鞠莉を捕まえるためにイタリアに送ることも提案した裏美にぶつけた、だけでなく、「二度と私の目の前に現れないでください!!」とまで言って絶交したのである。

 で、これについて、裏美、

(これでは月生徒会長の(新生Aqours復活のための)行動を邪魔するという目的が果たすことができなくなる!!)

と、いう危機感を抱いてしまったのである。そのため、裏美、すぐにイタリアにいる裏美の人脈を総動員してまで鞠莉を探すように命じたのである。

 ちなみに、千歌たちがイタリアに来た理由を説明すると、表向きは、(鞠莉‘sママの要請で)鞠莉たち3年生3人を探し出すことが目的、なのだが、裏の目的としては、鞠莉たち3年生3人と会って話し合うことで、(あの静真での部活動報告会でのライブに失敗したことにより陥ってしまった)不安・心配という深き海・沼の奥底から這い上がりよみがえさせることだった。

 で、その千歌たち申請Aqours6人と一緒にイタリアに来た、月、であるが、小さいときにイタリアに住んでいた、という経験があるため、イタリア初体験の千歌たち6人のガイド役・・・というのとは別に、(Saint Snowの聖良から言われた)新生Aqours復活のキーパーソンとしての側面もあったりする。で、イタリアに到着したときは月もなんで自分が新生Aqours復活のためのキーパーソンとして聖良が選んだのかわからなかったが、ヴェネチアからフィレンツェに列車に移動中、いとこで大親友の曜との会話で聖良が月をキーパーソンとして選んだのか、その理由に月は気づいたのである。

 そして、すべてを思い出した月、すぐに行動を起こす。その列車の中でルビィにあることを話したのである。姉ダイヤと一緒にいたい、ずっと頼っていきたい、そう思っていたルビィに対し、月、いつかは姉ダイヤと離れ離れになる、その現実を突きつけたのである。が、これはよりルビィをさらなる不安・心配の海・沼の奥底に沈ませることになるのだが、月としては、避けることができない、いつかはくぐる道である、そして、それが新生Aqours復活のために必要である、そんな想いからの行動だった。

 そして、新生Aqoursの復活、これこそ、今の月にとってとても重要だった。なぜなら、月にとって新生Aqoursの復活こそ、自分の宿願を叶えるために必要なこと、だったからである。その月の宿願とは、「静真本校と浦の星分校の統合実現」である。

 この物語を最初から読んでいる方ならすればもうおわかりだが、静真と浦の星の統合が決まって以降、月たち静真高校生徒会はそれに向けて頑張ってきた。が、静真の大スポンサーである木松悪斗がいきなり統合に異を唱えると、その木松悪斗たちによって統合反対の動きが活発になる。表向きな理由は、全国大会に出場できるほどの実力を持つ部活を数多く持つくらい部活動に対する士気が高い静真の部活動に、地方大会初戦敗退ばかりで部活動に対する士気が低い(と、木松悪斗が勝手に言っている)浦の星の生徒たちが参加すると、士気低下、対立により、静真の部活動に悪影響がでる、なのだが、裏では、木松悪斗が用意した理事の席を鞠莉が蹴ったこと、その同時期に浦の星のスポンサーで鞠莉の父親が当主の小原家が静真に出資しないことがわかったこともあり、木松悪斗がその小原家と浦の星に恨みをもってしまった、その意趣返し、ともいえた。そのため、統合反対の動きが活発化して以降、月たち生徒会は生徒中心に統合実現のため、木松悪斗たちは保護者中心に統合反対のために動いていた。で、結果的に静真の創立家の末裔で静真の影の神である沼田の一声で静真と浦の星は統合することになった。のだが、木松悪斗たちが作った、保護者からの統合反対の声、もあり、その声がなくなるまで、浦の星の生徒たちは新たに作る浦の星分校に通うことになったのである。

 で、そのとき、月は沼田に対し、どうすれば静真本校と浦の星分校は統合できるのか、を直接尋ねたことがあった。そのとき、沼田が言ったのが、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」という問いだった。そして、その問いを解くヒントが、浦の星の生徒たちであり、浦の星の生徒たちと一緒に行動すればおのずとでてくる、と、沼田は言っていたのである。

 が、月、そのことを気にせずに、力には力でもって制しようとする。浦の星で唯一全国大会で優勝したことがあるスクールアイドル部Aqoursの力を借りて、木松悪斗の野望、統合阻止を打ち砕こうとした。が、それは失敗に終わる。木松悪斗とその娘で部活動に参加している生徒たちの連合体、部活動連合会会長の旺夏の策略、そして、鞠莉たち3年生3人がいないことにより、不安・心配の海・沼の奥底に沈んでしまった千歌たち新生Aqoursにより、部活動報告会でのライブは失敗に終わり、月の計画も頓挫してしまう。それどころか、木松悪斗の野望を促進する結果となり、いまや静真は静真本校と浦の星分校の統合は風前の灯になっていた。

 そのため、月にとって自分の宿願を叶えるために残された手段、それこそ、沼田の問いに答えること、だった。が、月と一緒に行動している(浦の星の生徒でもある)千歌たち新生Aqoursはライブ失敗によりいまだ不安・心配の海・沼の奥底に沈んだまま。そんなとき、突然、鞠莉‘sママから、行方不明?になった鞠莉たち3年生3人を探しにイタリアに行ってほしい、と、頼まれる。そして、たまたま一緒にいたSaint Snowの聖良から「鞠莉たち3年生3人と会って話し合う必要があるのでは」と言われ、千歌たち新生Aqours6人は鞠莉たちを探して会いにいくためにイタリアに行くことを決める。と、同時に、月もガイド兼新生Aqours復活のためのキーパーソンとして千歌たちと同行することになった。

 で、月からすれば新生Aqoursの復活は月にとってもプラスだったりする。新生Aqoursの復活は沼田の問いを解く意味でもとても重要だったりする。なぜなら、新生Aqoursの復活により、本来のAqoursが持っている魅力や力を見ることができるから。そして、それこそ沼田の問いを解くためにも重要なのだから。そう、本来のAqoursに沼田の問いの答えが隠されている・・・のかもしれない。その意味でも、月にとって新生Aqoursの復活こそとても宿願を叶えるために必要だった。

 対して、裏美であるが、とうのご主人である木松悪斗は新生Aqoursの部活動報告会でのライブの失敗後に行われた通常理事会で静真本校と浦の星分校の統合延期を勝ち取ったものの、またもや沼田の一声により、統合実現のために動いている月たち生徒会の行動を邪魔することを固く禁じられて動けない状況に陥っていた。ただ、裏美はそれにより統合実現に向かわれてはご主人である木松悪斗のためにならない、ということで、沼田を恐れて、月たちの行動を邪魔しないようにと木松悪斗から言われているにも関わらず、裏美、裏では鞠莉‘sママを介して月と千歌たち新生Aqoursの邪魔をしてきた(もちろん、鞠莉‘sママに多額のお金を使わせることで小原家にもダメージを与えていた)のだが、それにより、鞠莉‘sママの信頼を失うことになったのだ。そうなったことにより、裏美にとってこれ以上月たちの行動を邪魔することができなくなる、いや、これから先、ご主人である木松悪斗が沼津で活動するときにおおきな妨げにつながってしまう、そんな考えが裏美の頭の中を駆け巡った。なぜなら、沼津の経済界において世界有数の財閥である小原財閥とその中心である小原家の影響力は計り知れないから・・・、その意味でも、裏美は一度失った鞠莉‘sママの信頼を取り戻すためにも必死で鞠莉たちの居場所を探していた。

 のだが・・・。

「裏美様、まだ鞠莉という少女の足取りはつかめません!!」

と、イタリアにいる部下からの報告を受けた裏美、すぐに、

「はやく探せ!!絶対に見つけるんだ!!」

と、部下たちにげきを飛ばす。が、フィレンツェ、観光都市とはいえかなり大きい。人も多く住んでいることもあり、鞠莉、ダイヤ、果南を見つけるのは至難の業だった。

 と、いうわけで、鞠莉‘sママの絶交の電話から2時間後・・・。

「まだ見つからないのか!!」

と、怒り狂う裏美。でも、裏美の部下も必死に探しているのである。が、ここでも、見つからないという結果だけみて、自分の願望が叶わないことに怒り狂う裏美。ある意味、裏美の部下のほうがかわいそうに見えてきてしまう。

 そんな裏美に対し、

「あなた、少しは落ち着いたら・・・」

と、怒り狂う裏美をなだめようとする女性。これには、裏美、

「俺が探している人が見つからないんだぞ!!これは、俺にとって、木松悪斗様にとっても一大事なこと、なんだぞ!!怒らずにいられるか!!」

と、その女性にあたる。が、その女性はそんな裏美に対し、

「それなら、お茶でもどうぞ。お茶を飲んだら少しは落ち着きますよ」

と、自分がもってきたお茶を裏美の前に置く。

 そのお茶を見た裏美、

「お茶を飲むほど落ち着ていられるか!!」

と、言っては、その女性のほうを見る。

 と、すぐに、裏美、

「お茶を飲むほど・・・、あっ、お前か・・・」

と、お茶をもってきてくれた女性がだれかを知る。そう、その女性こそ、裏美が一番大切にしている女性、裏美の奥さんだった。なので、すぐに、裏美、

「お、お前・・・、悪口言ってごめん・・・」

と、奥さんに謝る。これには、奥さん、

「いや、いいんですよ。あまり気にしないで・・・」

と、奥さんに謝る裏美に対して気にしていないことを言う。だが、裏美、

「本当にごめんよ・・・」

と、奥さんに対し詫びを言い続ける。

 そんな裏美に対し、裏美の奥さんはあることを突然言い出す。

「あっ、そういえば、私のイタリアにいる友人からこんなメールが届きましたよ」

そして、裏美にそのメールを見せる。そこにはこう書いてあった。

「ミズ裏美(裏美の奥さんのこと)、お元気ですか。私も元気です」

そのあとは単なる送信者の家族の現状などたわいもない内容が続く。これには、裏美、

(あぁ、単なる世間話か・・・)

と、そのメールを読んでうんざりする。結果だけを追い求めるあまり、その途中の過程のことなんてあまり気にしない、というよりも、無駄である、そう考えている裏美にとって世間話なんて無駄なもの、だったのかもしれない。

 そんなたわいもない世間話が続くメールを読み続ける裏美、

「で、このメールと俺となんか関係があるのか?」

と、裏美の奥さんに尋ねる。すると、その奥さん、すぐに、

「たしかにあなたにとってみれば、このメール、たわいもないことかもね。でもね、メールの最後のほうを読んでもらいたいの・・・」

と、言って、このメールの最後のほうを裏美に読んでもらう。

「え~と、「そういえば、私の娘がね、フィレンツェにある私たちの別荘を友達のために貸してほしいって言ってきたの。たしかに私たちの別荘だけど、長い間使っていなかったのよね。それなのにわざわざ使いたいっていう方がいるなんて、私、驚いちゃった。だから、私、娘にその別荘を掃除してくれたらその友達にその別荘を貸してもいいよって返事しちゃった・・・」」

これもたわいもない世間話、そう裏美は思ってしまう。が、そのあとの文章を見て、裏美、愕然となる。

「「で、「その友達の名前は?」って娘に聞いたらね、その友達の名前が「マリ・オハラ」って言うんだって!!あの世界的な大富豪の小原家の一人娘、なんだって!!なんでも、卒業旅行でイタリアに来ているから、少しの間だけ使わせて、って・・・」」

この文章を読んだ瞬間、裏美、

「マリ・オハラ・・・」

と、つぶやく。そう、これまで必死で探しても見つからなかった鞠莉たちであったが、ひょうんとした拍子でその鞠莉の居場所を特定できるとは・・・世の中とは狭いものである。

 



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Moon Cradle 第5部 第4話

 で、このメールを見て、鞠莉の居場所を知った裏美、すぐに、

「お前、でかしたぞ!!これでこれまでの失敗を挽回できる!!すぐにイタリアにいる部下に・・・」

と、部下にすぐに鞠莉のいる場所に行かせようとする。

 が、そのとき、

「あなた、ちょっと待って!!」

と、裏美を止めようとする言葉がした。これには、裏美、

「な、なんだ、お前!!あともう少しで鞠莉という小童を捕まえることができるんだぞ!!」

と、裏美を止めようとする者、自分の奥さんに対して怒る。が、奥さん、すぐに、

「たしかにそうですけど、たとえ、あなたの部下さんが鞠莉さんを捕まえたとしても、小原家の奥さん(鞠莉‘sママ)はいい顔をしないわ!!」

と、裏美に対して意見する。たしかにそのとおりである。裏美の部下に鞠莉たち3人を捕まえて鞠莉‘sママにつきだしたとしても、鞠莉‘sママからすれば、自分の家の揉め事は自分たちでなんとかする、そんなプライドみたいなものがあったりするので、裏美が今からすることは鞠莉‘sママのプライドをずたずたにするものだったりする。なので、できれば、鞠莉‘sママのプライドを傷つけることなく物事を進めることが重要である。もし、そんなことを気にせずに裏美が勝手に行動すれば、小原家にしても、裏美のご主人である木松悪斗、そして、裏美にしても、プラスに物事が進むことはないだろう。

 この奥さんの意見に、裏美、

「でも、なんとかしないと、鞠莉‘sママの信頼を失ったままに・・・」

と、悩んでしまう。せっかく、「鞠莉たちの居場所」、という大きな武器を手に入れたのである。それなのに、なにも行動しない、というのは単なる宝の持ち腐れ、である。なので、裏美、これから先、どうすればいいのか悩んでしまう。

 そんなとき、裏美の奥さんからこんな提案がなされる。

「それだったら、私が鞠莉‘sママさんに電話しましょうか?」

この奥さんの提案に、裏美、

「えっ、鞠莉‘sママさんに電話・・・?」

と、一瞬固まってしまう。この裏美の様子を見て、奥さん、さらにあることを言う。

「そうですよ。私が鞠莉‘sママさんの友達として鞠莉‘sママさんにこのことを伝えるの。そうすれれば、鞠莉‘sママさん、大変喜ぶと思いますわ。そして、鞠莉‘sママさんその鞠莉さんって子のところに飛んでいくと思うわ。たしか、鞠莉‘sママさん、今、フィレンツェにいるんでしょ。なら、すぐにでも自分の子のところに飛んでいきますわ。あとのことは鞠莉‘sママさん次第だけど、これで、あなたと鞠莉‘sママさんとの信頼も回復できますし、鞠莉‘sママさんのプライドを傷つけることもありませんわ!!」

裏美の奥さん、かなりの策士である。いや、裏美以上の策士である。でも、奥さんの言うことは一理ある。裏美や裏美の部下からではなく、裏美の奥さん自ら鞠莉‘sママに電話をするのである。実は、裏美の奥さんと鞠莉‘sママとは友達としての間柄である。なので、あかの他人である裏美とその部下たちより友達である裏美の奥さんから言ったほうが鞠莉‘sママは信じてくれるものである。そして、その奥さんの進言通りに鞠莉‘sママが鞠莉たちがいる場所に直接行き、見つけては捕まえることができれば、鞠莉‘sママのプライドを守るだけでなく、その情報をもたらした裏美(の奥さん)に感謝してくれる、さらに、失った信頼を取り戻すことができる、そう奥さんは考えていた。

 で、この奥さんの言葉に、裏美、

「うん、わかった。なら、お前に任せる!!」

と、その奥さんの意見に同意した。

 こうして、裏美の奥さんはすぐに鞠莉‘sママに電話する。すると、受話器から、

「はい、小原ですが!!今、立て込んでいま~す!!また電話して・・・」

という鞠莉‘sママの声が聞こえてきた。ちょうどそのとき、鞠莉‘sママ、月と鞠莉の策略によりフィレンツェの小原家の別荘まで来ていたのだが、もぬけの殻だったためか悔しがっている最中だった。なので、かかってきた電話を急いで切ろうとする鞠莉‘sママに対し、裏美の奥さん、

「え~と、私、裏美の奥さんです・・・」

と、自分のことを言うと、鞠莉‘sママ、

「あっ、裏美さん、ソーリー!!今、立て込んでいる最中ですの~!!なので・・・」

と言って電話を切ろうとしている。これには裏美の奥さん、すぐに、

「え~とですね・・・、実は、鞠莉‘sママさんの一人娘の鞠莉ちゃんのことなのですが・・・」

と、鞠莉‘sママに言うと、鞠莉‘sママ、すぐに、

「えっ、なんですて~!!」

と、驚きの表情をする。裏美の奥さん、すぐに、

「実は、私の友達からメールを頂きまして・・・、そのなかで、鞠莉ちゃんのことが書かれていたの・・・」

と、答えると、鞠莉‘sママ、すぐに、

「裏美さん、そのことを詳しく教えて!!」

と、奥さんに迫るように言う。これには、裏美の奥さん、すぐに、

「鞠莉‘sママさん、わかりました!!」

と、裏美の奥さんが受け取ったメールの内容を鞠莉‘sママに簡単に話す。

「え~とね~、そのメールには、こんなことが書かれていたの、「実はね、「鞠莉‘sママの子の鞠莉ちゃんが私が所有している、フィレンツェにある別荘を貸してほしいってお願いされた」って、私の子から聞いたのですが・・・」」

これを聞いた鞠莉‘sママ、すぐに、

「裏美さん、その別荘の場所を教えて!!」

と、いきなり食いついてきた。これには、裏美の奥さん、

「わ、わかったわ!!その場所はね・・・」

と、鞠莉たちがい別荘の場所を話す。

 そして、その場所を聞いた、鞠莉‘sママ、

「まさか、この私に運命の女神がおりてきたので~すね~」

と、言ってはにやっと笑った。鞠莉‘sママとしてはついに鞠莉を捕まえることができる、そう、すでに詰んだ、と思ったのである。なぜなら、今、鞠莉‘sママがいる小原家のフィレンツェの別荘から鞠莉たちがいる別荘までバイクで数十分くらいでいけるのである。そして、鞠莉‘sママが鞠莉たちの居場所を知っていることについては鞠莉たちは知らない。なので、鞠莉たちからすれば逃げることも隠れることもできないのである。それは、鞠莉‘sママからすれば、詰んだ、と思ってもおかしくなかった。

 というわけで、鞠莉‘sママ、このまま時間をかけたくない、というわけで、裏美の奥さんに対し、

「裏美さん、情報提供、サンキューね!!」

と、お礼を言うと、

「鞠莉、待ってなさい!!今、行くからね!!」

と、言って電話を切ると、そのまま、その場を後にした。

 鞠莉‘sママとの電話のあと、裏美の奥さんは裏美に対して、鞠莉‘sママとの電話の内容を簡単に言うと、裏美、

「ふう、これでなんとかなったわ。ありがとう、お前」

と、自分の奥さんにお礼を言う。これには、裏美の奥さん、

「いいえ、私はあなたのために行っただけですよ」

と、ほほえましく言う。

 その後、裏美はあることを考えていた。

(でも、これで鞠莉‘sママさんとの信頼は回復できるだけでなく、月生徒会長の行動を妨害することもできた。部下たちからの情報によると、月生徒会長と新生Aqoursメンバーたちは鞠莉という小童と出会おうとしていたらしい。もしかすると、その小童たちと会うことで何かが起きる、そのために会おうとしていたのかもしれない。が、再開するより先に鞠莉‘sママがその小童たちを見つけて捕まえれば、月生徒会長の目的も果たすことができなくなる。その意味でも今回の一件で月生徒会長の妨害は成功したといえる。ああ、これで、木松悪斗様の天下はもうすぐだ!!)

そう、鞠莉‘sママが千歌たちが鞠莉たちがいる別荘に着く前に鞠莉たちを捕まえれば、月の目的、新生Aqoursの復活はできなくなってしまう、その意味でも意義がある、そればかりか、鞠莉‘sママとの失った信頼を取り戻すことができるので、裏美にとってみれば一石二鳥である。まさに、裏美の奥さんの情報は、裏美、そして、鞠莉‘sママにとって棚から牡丹餅であった。

 が、その裏美の思惑は外れてしまう。なんと、鞠莉‘sママが鞠莉たちがいる別荘に到着する前に千歌たち新生Aqoursの6人(+月)は鞠莉たち3人と再会することができたのである。そして、このあとの展開により、裏美が予想していたことが大きく外れてしまうことになってしまう。だが、このときの裏美にはそのことを知る由もなかった・・・。

 ではあるが、あとで鞠莉が鞠莉‘sママから、なぜ自分の居場所がわかったのか、直接聞いてみると、鞠莉に別荘を貸した鞠莉の親友、その母親が実は鞠莉‘sママの親友であった、なので、鞠莉が親友の別荘を借りたという情報が親友の母親経由で鞠莉‘sママに流れてきた、と、鞠莉‘sママは弁解したのである。けど、本当は月の敵方の幹部である裏美経由であることは鞠莉‘sママは誰にも話さなかった。なぜなら、静真・浦の星の統合問題で、対立している(と、勝手に木松悪斗が思っている?)同士、実は裏でつながっている、ということをおおやけにしたら、それはそれで大問題になるかもしれないからである。そうなると、小原家、木松悪斗、両方が傷ついてしまうものである。と、いうわけで、鞠莉‘sママはその点についてたとえ身内であっても黙っていた。

 



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Moon Cradle 第5部 第5話

と、話はそれてしまったが、ここで本題に戻ろう。

「ママ!!」

と、突然現れた鞠莉‘sママに驚く鞠莉。これには外野の月も、

(なんで、ここに鞠莉‘sママがいるの!!どこからか情報が漏れていた気がする・・・)

と、ちょっと驚きつつも、なんで鞠莉の居場所がばれたのか心配そうになる。

 その鞠莉‘sママはそのまま鞠莉のもとに行く、「こんなところに隠れているとは、またハグー(果南)の入れ知恵ですか!!」

と、鞠莉に怒りながら・・・。これには、鞠莉、完全否定、自分の考えだと言う。そして、

「ママがしつこいから・・・」

と、鞠莉‘sママに言い訳をする。このとき、鞠莉、

(ここがふんばりところで~す!!ここでママにlose(負け)したら、私はもう一生ママのWAX DOLL(蝋人形)にされちゃいま~す!!ダイヤ、果南、私、がんばりま~す!!)

と、考えていた。

 が、鞠莉‘sママ、ここはひかなかった。鞠莉‘sママも、

(ここでlose(負け)したら、私のプラン(計画)が台無しで~す!!絶対に、鞠莉を私の言いなりにするので~す!!)

と、考えていたのか、鞠莉に負けずに言い返す。

「しつこくしてこなかったからこうなったので~す!!」

 そして、鞠莉にしつこくなったその理由を話す。いや、いろいろと鞠莉に対して言った、ハグー(果南)とですわ(ダイヤ)の影響で鞠莉は小学校のときから鞠莉‘sママの言うことを聞かずに勝手に家を抜け出したこと、浦の星の廃校を阻止するため、勝手にイタリアの高校を抜け出し、浦の星に戻っては理事長になったことを・・・。

 そして、鞠莉‘sママ、ついに鞠莉に対してあることを突きつける。

「しかし、その結果がこれで~す!!」

「わからないのですか!!何一つ、良いことがなかったのではないですか~!!」

そう、鞠莉に言うと、鞠莉‘sママは鞠莉に対してその結果を突きつける。それは・・・、

「浦の星の廃校を阻止できなかったこと」、そして、「(鞠莉が)海外の高校の卒業資格を失ったこと」だった。このとき、鞠莉‘sママ、

(私が鞠莉にしつこくしてこなかったために、鞠莉の人生はとてもバッド(悪い)ものになりまし~た。これまで鞠莉がやってきたことはすべて、無駄、だったので~す!!この世の中、結果がすべて、なので~す!!結果が伴わなければなにもかも無駄なので~す!!そう考えると、これまでの鞠莉がやってきたことは、ただの自己満足、で~す!!むしろ、ただの自己満足がゆえに、なにもかもがゼロに、いや、ゼロ以下になったので~す!!)

といった気持ちだった。

 そして、それは千歌の心の中にも響いていた、

(この人(鞠莉‘sママ)、千歌たちに「これまでの苦労は無駄だった、なんかゼロに戻った・・・、いや、それ以下になった」と、言いたそうになっている・・・)

と、千歌が思えるほどに・・・。

 が、鞠莉‘sママの言葉に、鞠莉、

(たしかに、私は浦の星のスクールアイドルAqoursを復活させて浦の星の廃校を阻止しようとした。0から1へ、そして、その先に進もうとした。けれど、廃校は阻止できなかった。でも、でも、私、みんなと一緒に、ここにいるみんなと一緒に、スクールアイドルを精一杯やってきて、ついに、スクールアイドルの日本一を決める大会、ラブライブ!に優勝したんだ!!そして、私たちは、0から1へ、その先へと進化することができた!!だから言える、私、スクールアイドルは全うした!!私、それだけは言える!!)

と、いう気持ちになると、鞠莉‘sママにそのまま反論した。

「待って!!でも、スクールアイドルは全うした!!みんなと一緒にラブライブ!には優勝した!!」

 が、鞠莉‘sママはそんな鞠莉に対し、それすらも認めない、痛撃の一言を言う。

「それが!!いったいスクールアイドルというものをやってなんの得があったのです!!」

 

「くだらない!!」

 

 この言葉、鞠莉‘sママからすればそれは当たり前の意見だと思っていた。なぜなら、

(スクールアイドル?それって何ですか?たしか、パパ(鞠莉の父親で小原家の当主)などが言いていたのですね~、たしか、アイドルの真似事をしているって。本当にそうなら、ただの遊びじゃありませんか~。その遊びのためだけにこの貴重な高校の3年間を費やすなんて、本当に無駄としか言えませんね~!!物事は結果がすべてで~す!!結果からいえば、無駄なことに貴重な時間を費やすなんてナンセンスで~す!!スクールアイドル、裏美さんの言うことと一緒なのが気に食わないですが~、なんの得にもならない、本当にくだらないもので~す!!)

という考えのもとにした鞠莉‘sママの発言だったからである。

 が、この発言、スクールアイドルというものをまったく知らない、鞠莉‘sママの発言である。いや、この発言自体、鞠莉のこれまでの行動を全否定する、いや、日本が誇る、アニメ、マンガ、アイドルなどといったサブカルチャーそのものを知らず、ただ無駄である、という考えのもとで全否定する、まるで、一昔前の頑固親父が言っている、そんな発言だった。スクールアイドルという、人生の中で無駄なものに時間を費やす、それにより悪い結果しかならない、いや、そんな結果しか生まれない、だからこそ、そんな無駄なことに時間を費やすなんてくだらない、そんな物言いだった。

 が、この鞠莉‘sママの発言に対し、ルビィ、思わず、そ

(スクールアイドル、くだらなくないよ、スクールアイドルは!!)

と、鞠莉‘sママに反感を持つ。いや、姉ダイヤがいること、そして、自分の好きなスクールアイドルを全否定されたことに怒っていた。

 が、そのルビィ以上に鞠莉‘sママに怒っている少女がいた。千歌である。今の浦の星のスクールアイドルAqoursを始めたのが千歌である。なので、スクールアイドルに対しては、いや、Aqoursに対しては人一倍思いが強い千歌、そのためか、千歌、

(スクールアイドルがくだらない、そんな言葉、取り消して!!私たち、千歌たちがやってきたこと、否定しないで!!こまでの私たち、千歌たちの苦労を完全否定するの、鞠莉‘sママ!!千歌たちは廃校を阻止するために、自分たちだけの輝きを見つけるために、スクールアイドルとして、Aqoursとして、みんなと一緒に活動することで、0から1へ、その先へと進むことができたよ!!廃校は阻止できなかったけど、千歌たち、Aqoursは、ラブライブ!に優勝して、浦の星のみんなとの約束、ラブライブ!の歴史に浦の星の名前を深く刻むことができたよ!!スクールアイドルとして、0から1へ、その先へと進むことができたんだよ!!自分たちだけの輝きも見つけることもできたよ!!なのに、それを完全否定するなんて!!千歌たちの苦労を、廃校を阻止できなかった、だから、スクールアイドルはくだらない、その言葉だけで、結果だけで判断しないで!!)

と、思えるようになり、なぜか、無意識に千歌は鞠莉‘sママに反論しようとしていた。いや、千歌以外の、曜、梨子、花丸、ヨハネ、ルビィ、そして、外野にいるはずの月も、鞠莉‘sママに反論しようとしていた。特に、月は、

(僕はそんなにスクールアイドルについて知らないけれど、この僕からしても、鞠莉‘sママの発言は見逃すことができないね!!ここにいるみんながこれまでやってきたことを完全否定するなんて、鞠莉‘sママ、本当に許さない!!)

と、鞠莉‘sママに対して強い反感をもってしまう。

 が、そのとき、

サッ!!

と、千歌の行動を阻止するかのように、千歌の目の前に手を出して千歌を止める少女がいた。

(千歌さん!!ちょっと待ってください!!)

これには、千歌、

(ダ、ダイヤちゃん・・・)

と、千歌を止めた少女、ダイヤの行動に驚いてしまう。そのダイヤ、千歌に対し目でもって合図する。

(ちょっと待ってください!!鞠莉さんがちゃんとしますから!!)

これには、千歌、

(うん、わかった!!)

と、ダイヤに目で合図して反論するのをやめた。その様子を近くから見ていた、ルビィ、

(あっ、反論しようとしている千歌ちゃんを(お姉ちゃんが)止めた!!お姉ちゃんたちがなにかするかも!!)

と、思って、ルビィも反論するのをやめた。実は、ルビィ、まるでスクールアイドルのことをくだらないと言う鞠莉‘sママに対して必死の抵抗を試みようとしていたのだった。が、姉ダイヤたちがなにかしようとしていることに気づき、反論するのをやめたのだった。

 が、それはルビィと千歌以外の新生Aqoursメンバー、曜、梨子、花丸、ヨハネにも起きていた。みんな、自分たちのことを、Aqoursのことを、スクールアイドルのことを、完全否定する鞠莉‘sママに対して自分たちも反論しようとしていた。が、ダイヤが千歌を止めたことで、鞠莉たち3人がなにかすることに気づき、反論するのをやめたのだ。

 さらに、外野にいるはずの月にもそれが伝播していった。鞠莉‘sママへの強い反感を持った月、

(こうなったら、僕も鞠莉‘sママに反論しちゃうからね!!朝まで生激論、なんてこともしちゃうからね!!)

と、鞠莉‘sママに反論する機会を待っていた。が、真っ先に反論しようとしていた千歌をダイヤが止めたことで、月、

(あっ、反論しようとしている千歌ちゃんをダイヤさんが止めた!!これは、なにか起きる予感がするよ!!なら、ここは外野らしくおとなしくしておこう。そのほうがこのあとの展開が燃えるからね!!)

と、あっさりとひいてしまった。こうして、月の場外乱闘騒ぎはなくなった?

 と、いう具合に、千歌たち、そして、月の反論を防いだ、ダイヤ。そのダイヤの行動をみてか、鞠莉はこう言った。

「こういう人なので~す(、私の母は・・・)」

と、鞠莉‘sママについてこう言い放つ。物事を結果でしか見ない、たとえ、何も知らないことでも、自分の身勝手な価値観による判断により、勝手にくだらなにものと評してしまう、そんなあまりにも危険ともいえる人物、それが、鞠莉‘sママ、であると、その鞠莉‘sママに一生拘束されるなら、きっと、鞠莉にとって幸せになれるはずがない、そう言っているかのように・・・。

 そして、鞠莉のそばに、ダイヤ、果南が並ぶ。その果南から一言。

「だから、私たちが(鞠莉を)外の世界に連れ出したの!!」

そう、果南とダイヤが鞠莉を外に連れ出した理由、それは、一生、鞠莉‘sママという人物のもとで拘束されてしまう悲しい少女、鞠莉、を自由に外に連れ出した、籠のなかで動くことができない鞠莉を自由にするための行動だったのだ。

 が、鞠莉‘sママに、鞠莉、果南、ダイヤの想いは通じていなかった。逆に、

「鞠莉の行動は私が!!」

と、言っては、鞠莉の手をひっぱり、鞠莉を強制的に連れ出そうとする鞠莉‘sママ。ここは強硬的に鞠莉を連れ出して拘束するのが得策だと判断したからだった。

 が、こんなとき、

ガシッ!!

と、鞠莉の手をひっぱって強制的に鞠莉を連れ出そうとしている鞠莉の行動を阻止しようとひっぱられる鞠莉の手を逆にひっぱりかえそうとしっかり鞠莉の手を掴む手が2つ。鞠莉の手をつかんだのは・・・ダイヤと果南だった。それを見た、鞠莉、

(果南!!ダイヤ!!)

と、つい嬉しくなってしまう。そう、果南とダイヤの行動、スクールアイドルの完全否定、鞠莉たちがやってきたことの完全否定、鞠莉の自由を縛ろうとしている、鞠莉‘sママに対する反抗、それを体現したものだった。鞠莉にとってとても頼りになる援軍、だった。

 そして、鞠莉はその強い援軍のもと、鞠莉‘sママにこう言い放った。

「くだらなくないよ!!」

これこそ、鞠莉の、いや、鞠莉たちの、鞠莉‘sママに対する反抗ののろしとなった。鞠莉、このとき、

(ついに、STAND UP(立ち上がる)ときがきたので~す!!さぁ、みんな、あのわからずやに、レジスタンス(抵抗)するので~す!!)

と、みんなに、鞠莉‘sママに立ち向かうように合図する。

 この合図、ダイヤ、果南、千歌たち、そして、なぜか、外野の月にまで伝わる。この合図で、鞠莉‘sママ以外のここにいるみんな、鞠莉‘sママに対して冷たい目を向けた。果南とダイヤは必死に鞠莉を連れ出そうとしている鞠莉‘sママに対して逆に鞠莉の手をひっぱって少しでも鞠莉を連れ出そうとしているところを必死に阻止する。

 そして、鞠莉の言葉、それに、必死に自分に抵抗している、鞠莉、果南、ダイヤ、の姿に、鞠莉‘sママ、

「鞠莉・・・」

と、一瞬おののいてしまう。

 このとき、鞠莉、

(チャンス!!)

と、思ったのか、自分の想いを鞠莉‘sママにぶつける。

「スクールアイドル、くだらななくないよ!!」

この瞬間、鞠莉‘sママは鞠莉の手を引っ張るのを躊躇してしまう。鞠莉が自分に直接反抗的な態度をとるのはこれまであまりなかったからだった。これまでは自分が知らないうちに鞠莉がどっかに行ってはあとで鞠莉大捜索と称して大騒動になったり、手紙などで間接的に自分の意思を伝える、そんなものがほとんどだった。今回の卒業旅行もそうである。手紙に自分の反抗の意思を書いてイタリアに飛んでしまったのである。が、今回は鞠莉が自分の母親に直接反抗しているのである。これまであまりなかった鞠莉の態度、そのためか、鞠莉‘sママは、

(な、なに・・・)

と、驚いてしまい、鞠莉をひっぱるのを躊躇してしまったのである。

 さらに、このときの鞠莉の目は真剣そのものだった。それも鞠莉‘sママを躊躇させる原因となった。

(ママ、その言葉(「スクールアイドル、くだらない!!」)を取り消して!!私たちの3年間を、私たちがこれまでやってきたことを否定しないで!!私にとってこの3年間はとても有意義なものでだったので~す!!そして、ちかっち、曜、梨子、ルビィ、花丸、善子、それに、果南にダイヤ、この8人がいたから、スクールアイドルとして大成したので~す!!だから、この3年間を否定しないで!!そして、私を自由にして!!)

そんな、鞠莉の気持ちを代弁している、そんな真剣なまなざしだった。

 また、果南、ダイヤも、

(鞠莉の気持ちをわかって!!あなた(鞠莉‘sママ)はこれまで鞠莉がやってきたことを全否定している。ただ、廃校を阻止できなかった、海外での卒業の資格を失った、ただそれだけの理由で、いや、ただそれだけの結果だけで物事を判断している。私、そうじゃないと思うよ!!その経過を含めて、これまでやってきたこと、全部、それで評価すべきだよ!!だからこそ、「くだらない!!」の言葉を取り消して!!これまでの鞠莉のすべてを否定しないで!!」(果南)

(鞠莉のお母さま、私としてもあなたに反対ですわ!!あなたはこれまでの鞠莉のすべてを否定していますわ!!たしかに、廃校阻止失敗、海外での卒業資格喪失という結果になりました。廃校については私の力不足のところもありますが、それ以上に、鞠莉さんが得たものは大きいと私は思います。そして、そのなかで、鞠莉さん、スクールアイドルとして、私、果南さん、そして、千歌さんたちの夢を、浦の星みんなの想いを、みんなと一緒に叶えることができましたわ!!だからこそ、鞠莉のお母さん、これまでの鞠莉を否定しないでください!!そして、これから先も鞠莉を束縛しないでください!!)(ダイヤ)

そんな気持ちからか、果南、ダイヤ、ともに、鞠莉‘sママに対し、さらなる厳しいまなざしを向けた。

 さらに、鞠莉、果南、ダイヤの気持ちは千歌たち、そして、月にも伝播する。

(これが鞠莉‘sママに対する鞠莉ちゃんたち3人の意思だ!!ここだ、鞠莉‘sママに対する反抗の機会!!)(千歌)

鞠莉たち3人の鞠莉‘sママに対する強い反抗、その態度に感化されたのか、千歌は鞠莉のところに移動しようとする。いや、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、5人とも、千歌と同じような気持ちになったのか、自然と鞠莉のところに移動する。

 そして、月はというと、

(鞠莉‘sママさん、あなたはAqoursのすごさを知らなすぎる・・・。だからこそ、これから起きることについてパニックになるかもしれない!!僕はAqoursのメンバーじゃないからなにもできないけど、みんなを応援しているからね!!)

と、これからなにか起こそうとしているAqoursのメンバーたちに対し心の中で応援していた。

 この千歌たち6人の行動(+月の応援)、そして、果南、ダイヤの強い意志、それを感じ取った鞠莉、ついにあることを決める。

(果南、ダイヤ、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、善子、みんな、サンキューね!!マリー、決めたよ!!一世一代のビッグギャンブル(大博打)、ここではらせてもらうからね!!)

そう考えた鞠莉、意を決して鞠莉‘sママにある決意の言葉を言う。

「もし、スクールアイドルがくだらないって、すごく素晴らしいものだて証明できたら、私の好きにさせてくれる・・・?ママの前で、スクールアイドルが人を感動させることができる、って証明できたら、私の今までを認めてくれる?」

この鞠莉の決意に果南、ダイヤも、

「縁談なんかやめて」(果南)

「私たちと自由に会うことを認めていただけますか?」

と、鞠莉の決意を後押しする。

 そして、このとき、鞠莉‘sママが見たものとは・・・鞠莉たち9人、いや、(本来の)Aqours9人、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、そして、鞠莉、果南、ダイヤ、9人の鞠莉‘sママに対するするどいまなざし、反抗の目、だった。それは、これまでの鞠莉の生き方を否定した、だけでなく、これまで千歌たちがやってきた、Aqoursそのもの、いや、全世界にいるスクールアイドルそのものを全否定している、鞠莉‘sママという大人に対する反抗の目、であった。なにも知らず、ただ、踊っているだけ、遊んでいるだけ、ただそれだけの結果、いや、ひとりよがりの判断で、「くだらない」、と評してしまった、鞠莉‘sママに対する、きびしく、するどい、反抗の目、だった。スクールアイドルはただのお遊びじゃない、青春そのものなんだ、そんな気持ちすら千歌たちAqours9人全員から鞠莉‘sママに降り注いでいる、そんな感じもした。

 この千歌たちAqours9人全員の強いまなざしに、鞠莉‘sママ、

(これが鞠莉の決意表明、いや、鞠莉たち9人の私に対するストロングな敵意、反抗、いや、強い意志、ですね~!!それほど、スクールアイドルというものが素晴らしいものだ、ということを言いたいのですね~!!あなたたちの強い意志、私、感じましたわ~!!なら、それを証明させてください!!私は結果でしか物事をみませ~ん!!でも、それを証明させることができたら、私やあなたたちのことを知らないイタリアの人たちや観光に来ている人たちの前で感動させるができることを証明してみせたら、鞠莉の言うことをききましょう!!これまでの鞠莉を認めてあげましょう!!)

と、思うようになり、

「いいでしょう」

と、鞠莉の条件を飲むことにした。さらに、鞠莉‘sママ、続けて、

「ただし、だめだったら、私のいうことをきいてもらいま~す!!」

という言葉を言い残してこの場を去ることにした。

 

 と、これまでは鞠莉たち9人と鞠莉‘sママの視点(+おまけに月のちゃちゃ)から見てきたが、この一連の流れを近くで見ていた(外野の)月からすれば、

(こ、これが、曜ちゃんたち、Aqours、本来のAqours9人の姿なんだ・・・。Aqours1人1人がとても強い個性の持ち主、千歌ちゃんはみんなをひっぱっていく役、曜ちゃんは誰にでも明るく接する、梨子ちゃんはピアノが弾けて作曲もできる、ルビィちゃんは少し泣き虫、花丸ちゃんは文学少女、善子ちゃんは中二病気味、果南ちゃんは曜ちゃん以上に体育系、ダイヤさんはみんなのまとめ役、鞠莉ちゃんはなんか外国人みたい・・・。個性もバラバラ、なににかもバラバラ、でも、ひとつのことに集中するとき、必ず一つにまとまって一緒にそれに向かって邁進していく!!一つ一つの個性が個性が一つにまとまって行動する、だから、それによって強いパワーが生まれる!!そのパワーの大きさは例えることなんてできない!!もし、無理に例えるなら、地球、いや、太陽かもしれない!!それだけのパワーを持っているから、浦の星の廃校もあと少しで阻止できた、だけでなく、ラブライブ!で優勝できたんだ!!たしか、曜ちゃんが言っていた、「Aqours、パーフェクトナイン!!」って。その意味、僕、わかったような気がする・・・)

と、いった感想をもつと、ともに、

(そして、鞠莉‘sママさん、「廃校阻止失敗」「鞠莉ちゃんが海外での卒業資格を失った」、ただそれだけの結果だけで、いや、自分の価値観だけで鞠莉ちゃんのこれまでのことを、スクールアイドルそのものを全否定していた。それって、まるで、結果だけで物事を判断している、木松悪斗、と同じような気がする。勝利すること、それがすべてである、どんな過程であれ、最後に勝利という結果、さえあればそれでいい、そんなことを木松悪斗が言っていたような気がする。そう考えると、勝利という結果、それだけで物事を判断していいのだろうか?)

と、いう思いも持つようになった。

 そんななか、鞠莉‘sママが鞠莉のもとから去ろうとしていた。これを見た月、

(鞠莉‘sママさん、あなたは鞠莉ちゃんを、スクールアイドルを、全否定しました。けれど、本当の鞠莉ちゃんたち、(本来の)Aqoursの姿はあなたの想像以上のものをもっている、そう僕は確信しております。きっと、あなたにとって想像できないものをAqoursは見せてくれるでしょう。だからこそ、鞠莉‘sママさん、首を洗って待っててください!!)

と、皮肉めいた気持ちを込めて、鞠莉‘sママに対して皮肉に満ちたエスコートをする。そのエスコートのもと、鞠莉‘sママは鞠莉たちがいる別荘から去っていった。

 



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Moon Cradle 第5部 第6話

 鞠莉‘sママが去っていったあと、大広間には千歌たちAqoursの9人、そして、月だけが残った。鞠莉‘sママに対する反抗のためか、いまだに張り詰めた空気が10人のまわりを漂っていた。

 が・・・、突然、

「う~、疲れた~!!」

と、いう大声とともにソファに倒れこむ少女が現れた。その少女に対し、ダイヤ、

「鞠莉さん、はしたない!!」

と、その少女に注意する。そう、ソファに倒れこんだ少女とは、鞠莉だった。自分の母親の前で大見えを切ったのである。その女性、鞠莉‘sママがいなくなった、それにより、鞠莉の緊張の糸が切れてしまったのだ。

 が、それでも、鞠莉以外のAqoursメンバーも緊張の糸は切れていた・・・わけではなかった。1人の大人のまえで「スクールアイドルは素晴らしいということを証明してみせる」と言った鞠莉に追随したのである。もし、それを証明できなければ、鞠莉の自由はなくなる、そう思うと、自分の行動で1人のこれからの人生を左右してしまうことをしてしまった、そんな思いがあったのだ。

 と、そんなとき、ある少女が声をあげる。

「ところで、鞠莉ちゃん!!」

この声にソファに倒れこんでいた鞠莉、すぐに、

「あっ、千歌っち、なに?」

と、鞠莉に声をかけた少女、千歌に尋ねる。

 すると、千歌はすぐに鞠莉に尋ねた。

「鞠莉‘sママさんの登場でうやむやになったけど、鞠莉ちゃん、なんでこうなったのか、詳しく教えて!!」

この千歌の発言に、ダイヤ、

「それは今さっき私たちが言ったように・・・」

と、千歌に注意すると、千歌、すぐに、

「ダイヤさん、私は鞠莉ちゃんから詳しくききたいの!!とうの本人からきいたほうが信じられるって思えるの!!」

と、ダイヤに言うと、ダイヤ、

「そ、それはそうですが・・・」

と、逆にひいてしまった。鞠莉もこれには、

「千歌っちがマリーの口から直接聞きたいんでしょ。減るもんでもないし、いいんじゃないかな」

と、千歌の意見に同意する。

 そして、鞠莉の口からその招請を聞くことになった。

「それはね・・・、私が小学校の時から果南とダイヤと一緒に(鞠莉‘sママのいうことをきかずに)勝手にいろんなことをしていたので~す!!それに業を煮やしたママが私の自由を奪って拘束することを決めたので~す!!そのために、マリーの知らない結婚相手と結婚させて、私を一生自分のいいなりにさせたい、そんなことをしたので~す!!マリー、そんなこと、とてもいやで~す!!」

 この言葉のあと、鞠莉、いたらぬことを言ってしまう。

「だから、果南とダイヤにお願いして、卒業旅行と称して、愛の逃避行、をしていたので~す!!」

 が、これにダイヤが敏感に反応する。

「愛じゃないでしょ!!自由になるため、でしょ!!」

と、ダイヤ、鞠莉に対して激しいツッコミ。これには、鞠莉、

「ぺろぺろ」

と、舌を巻いてごまかした。

 が、この鞠莉とダイヤの掛け合いにまわりは意外な反応をみせる。

「ぷ、ぷ、ぷ、ぷぷぷ」(曜)

「なんで、愛の逃避行、になるの!!」(梨子)

「言葉のあやずら!!」(花丸)

「でも、面白い」(曜)

「くくく、いい見世物だったぞ!!」(ヨハネ)

と、みんな笑い始めたのだった。

 そして、果南も、

「鞠莉、ダイヤ、まるで漫才コンビみたいになっているよ!!」

と、大笑いしながら鞠莉とダイヤにしゃべっていた。

 これには、ダイヤ、

「な、なんで私たちが、漫才コンビ、なんですか!!言葉を取り消しなさい、果南さん!!」

と、果南に発言の取り消しを求める。

 と、同時に、千歌、

「どう、少しは緊張が解けたかな?」

と、みんなにきいてみると、曜、梨子、花丸、ヨハネ、ともに、

「「「「うん、なんかとけた(ずら)」」」」

と、大きな返事をしてきた。

 これを見ていた果南、

(千歌、もしかして、みんなの緊張をほぐすためにわざと言ったんだね。そうだね、私たちに緊張なんて似合わないものね。それよりも、笑いながらスクールアイドルを楽しむ、それこそ、私たちの、私たちのAqours、本来の姿、なんだからね!!)

と、千歌のことを褒める。

 そして、果南、その感謝の言葉を口にした。

「ありがとう、千歌!!」

で、その言葉を受けてか、千歌、

「うん、なに?」

と、なぜかとぼけてしまう。どうやら、千歌の一連の行動は千歌にとって無意識?で行ったものだったのかもしれない。けれど、千歌はAqoursにとって、ムードメーカー、という一面をみせた、そんな行動だった。

 

 が、実は、意外にも、千歌たちAqours9人のなかで一人だけ違う反応をみせた少女がいた。

(鞠莉ちゃんを・・・拘束・・・する・・・。これって・・・ルビィが・・・お姉ちゃんを・・・拘束・・・している・・・)

そう、ルビィ、だった。ルビィ、鞠莉の言葉に、あること、自分にとってとてもショッキングなこと、に気づいたみたいだった。

(ルビィ、もしかして、お姉ちゃんのこと、拘束している・・・、のかな?ルビィ、お姉ちゃんがいないとダメ!!お姉ちゃんを一生放したくない!!もうお姉ちゃんと離れたくない!!そう、ルビィは思っていた、決意した・・・。でも、それって、鞠莉‘sママさんが鞠莉ちゃんを拘束してしまう、のと同じように、ルビィがお姉ちゃんを拘束している、そう見えてしまう・・・。ルビィ、もうお姉ちゃんと離れたくない!!でも、お姉ちゃんをルビィが拘束しちゃうとお姉ちゃんが・・・)

そう、鞠莉‘sママが鞠莉を拘束してしまうこと、と、ルビィが姉ダイヤを拘束委してしまうこと、そのふたつは一緒であることに気づいてしまったのだ。鞠莉‘sママが鞠莉の自由をなくすのと同じようにルビィは姉ダイヤの自由をなくす、そうなると、ルビィは鞠莉‘sママと同じようなことをしている、それはルビィとしてはいや、でも、姉ダイヤに永遠に依存することを決めたルビィにとって姉ダイヤを解放することは死活問題になってしまう、そんなジレンマにルビィは陥ってしまったのである。そのジレンマのせいでルビィはほかの8人とは違い暗い表情をしてしまっていた。

 が、そのルビィの暗い表情をみて、ある少女がそれに反応した。

(あれっ、ルビィちゃん、なんか暗い表情、しているよ!?どうしたのかな?僕なんか新亜pになっちゃうよ!!)

そう、月だった。ヴェネツィアからフィレンツェに行く列車のなかで「姉ダイヤと離れないといけない」という事実をルビィに突きつけた月であったが、その月、

(もしかして、あの列車のなかで僕がいったこと、そして、姉ダイヤと離れないことがあの鞠莉‘sママさんが行おうとしていることと同じようなものだと気づいたのかもしれないね。拘束と解放、そのジレンマに陥っているのかもね)

その考えのもと、月はあることを決めた。

(よ~し、あとでルビィちゃんの相談にのってあげようかな、僕!!)

 

こうして、月と千歌たちAqoursのフィレンツェの長い一日は終わった。Aqoursはこの後、鞠莉の未来、そして、スクールアイドルの存在意義をかけて、運命のライブ、を行うことになるのだが、このとき、まだ、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、は、いまだに不安・心配の深き海・沼に沈んだままだった。特に、ルビィは姉ダイヤに一生依存することを決めたものの、月が言った、いつかは姉ダイヤと離れ離れになること、そして、今自分がしようとしていることが鞠莉を一生拘束しようとしている鞠莉‘sママと同じことに気づいてしまったがゆえに、精神的にかなり不安定、拘束と解放、そのジレンマに陥っていた。この状態のままでライブをするとしても必ず失敗するものである。はたして、千歌、曜、梨子、花丸、ヨハネは不安・心配の深き沼から、そして、ルビィはそれに加えて、拘束と解放のジレンマから脱出することができるのだろうか。そして、運命のライブを成功させることができるのだろうか。さらに、千歌たち6人、新生Aqours、その復活のキーパーソンである月はルビィに、新生Aqoursにどのようなマジックをみせてあげるのだろうか。その話は次の部、第6部で語ることにしよう。

 今回は(今までの部と比べて)かなり短いが、第5部はこれまで!!

 

            次回へと続く!!

 

 



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Moon Cradle 第6部 プロローグ

 2018年3月中旬、イタリア・ローマ、スペイン広場・・・。ここでは今から1つのライブ・・・、いや、1人の少女の運命、そして、あるものの運命をかけた、絶対に失敗が許されないライブが今まさに行われようとしていた。

 スペイン広場の一番下にある踊り場には9人の少女たちがライブで披露する曲のフォーメーションの位置について曲が始まるのをいまかと待っていた。その9人に対し、この9人の雄姿を日本にいるみんなに映像で届けるため、スペイン広場の下で自分の高性能のスマホをもってスタンバイしていた少女、月、は、

(あともう少しで鞠莉ちゃんの・・・、いや、スクールアイドルの未来を、運命をかけたライブが始まる・・・。それって、まるで、あのμ'sの・・・、N.Y.でのライブ・・・みたい・・・)

と、一瞬考えてしまう。月が思い出したのは、数年前、μ'sがN.Y.で披露した「エンジェリック・エンジェル」のライブのことである。日本のテレビ局がラブライブ!の影響で急激に人気になっていったスクールアイドルの特集をするため、第2回ラブライブ!で優勝したμ'sに白羽の矢をたて、N.Y.でのライブをしないかとμ'sにもちかけてきたものだった。そして、μ'sはそれを快諾、N.Y.でライブをすることになった。そのN.Y.でのライブだが、大成功に終わる。そして、このN.Y.ライブは日本中に放送され、μ's、そして、スクールアイドルの人気は不動のものになった。ただ、μ'sはこのあと、秋葉原で行われたスクールアイドルフェスティバルをもって活動を終えることになるのだが、そのμ's、そして、今や大人気アイドルグループとなったA-RISEによって人気を加速されたスクールアイドルは、秋葉ドームでラブライブ!決勝が行われるくらい、いや、世界中にまで広がりをみせるくらいにまで成長していった。そして、μ'sの意思、「スクールアイドルを楽しむ」という意思は、μ'sのリーダー、穂乃果の妹、雪穂率いるオメガマックスをえて、日本中に、世界中にひろがりをみせようとしていた。

 しかし、月はμ'sが行ったN.Y.でのライブと今からローマスペイン広場で行われるライブについてこう考えていた。

(でも、μ'sのN.Y.でのライブって、特段、誰かの未来とか運命とか、そんなものをなにもかけていないよね。でも、今から行われるライブは、1人の少女の未来、これからの運命をかけたライブ・・・。そして、それをジャッジするのは、その少女の望む未来、運命を完全に否定している、その少女の母親・・・。同じ海外でのライブだけど、かけているものの差はこちらのほうが重い・・・)

そうである。この今からから行われるライブは1人の少女の、これからの未来、これからの運命をかけた大事なライブである。もし成功すれば、その少女は自分が望む未来、運命を手に入れることができる。だが、もし失敗すれば、その少女は一生鳥かごのなかに入れられてしまうのである。さらに、わるいことに、そのライブのジャッジをするのは、その少女を一生鳥かごのなかに入れたい、その少女の母親・・・だからである。ある意味、本当に厳しいライブになることが予想された。

 が、月はその9人の雄姿を見てこう思ってしまう。

(でも、そんな苦境のなかでも、あの9人は一生懸命頑張ってきた。短い間だったけど、あの9人は著しく成長していった。特に、これからをときめく、あの6人は精神的に大きく成長した。そのなかでも、ルビィちゃん、僕の想いを、気持ちを、熱心に、真正面から受け止めてくれた、それがほかの5人にも伝わってくれた!!だからこそ、もう大丈夫!!ルビィちゃんは、いや、新生Aqours、曜ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、ルビィちゃん、善子ちゃん、はもう復活してくれた、いや、前以上に輝いてくれている、そう、僕は思っているよ!!)

そのグループと敵対する母親との邂逅を果たしたフィレンツェでの出来事から今日のライブまでの短い間のことを思い出していた、月、そのなかで、静真の部活動報告会でのライブの失敗により、不安・心配の海・沼の奥底に沈んだ新生Aqoursの6人、それが、(本来の)Aqours3年生3人、鞠莉、果南、ダイヤ、との邂逅をえて、その奥底から這い上がってきたことにより、今まさにこれまでにない輝きをみせている、そう月は確信していた。

 そんな月・・・であったが、それでも、

(でも、一番大事なのは、今からのライブ、あの(静真での部活動報告会の)失敗のライブ以来のライブ・・・、いざ、本番、となると、その輝きも曇ってしまう・・・。また、不安・心配の海・沼の奥底に沈みこんでしまう・・・かもしれない・・・)

と、心配そうに新生Aqoursのメンバーを見る。いくら練習で輝きを取り戻したとしても、本番ではなにが起こるかわからない。一瞬の気の迷いにより、それまで成功していたとしても、それを台無しにするくらいの失敗をするかもしれない。そう、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選のSaint Snowのライブと同じように・・・。

 それでも、月は今からライブを行おうとしている9人の方を見る。すると・・・。

(でも、なんでだろう・・・、このライブ・・・、成功するような気がする・・・、そう思えてしまう・・・。だって、今、僕の前にいる9人、Aqoursのみんな・・・、笑っている・・・。これから失敗が許されないライブが始まるのに・・・、みんな、笑っている・・・。なんで・・・笑えるの・・・、なんで・・・笑顔・・・なの・・・)

と、思えてきてしまっていた。そう、今からライブを行う9人、(本来の)Aqours9人、は、みんな笑顔だった。これから1人の少女の未来、運命を決める、そして、スクールアイドルの未来、運命すら決めてしまう、そんなライブ、失敗が許されないライブが始まるのだ。それなのに、9人、Aqoursメンバー9人、ともに笑っている、笑顔になっている。これを見た、月、もうライブは成功する、そんな気になってしまっていた。

 そして、月はこれまでに起きたこと、今からライブを行う9人・・・、(本来の)Aqours9人、にとのあいだで交わった、このライブをジャッジする母親、鞠莉‘sママとのフィレンツェでの邂逅から始まった、そして、この日までの短い間での出来事を思い出そうとしていた。

 



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Moon Cradle 第6部 第1話

 まず、月が思い出したのは・・・。

 あのフィレンツェでの鞠莉‘sママとの対決のとき、後日、鞠莉‘sママの前でスクールアイドルの素晴らしさを証明させる、スクールアイドルの存在意義を鞠莉‘sママに見せつけることを鞠莉‘sママで宣言した鞠莉であったが・・・、翌日、

「で、どうやって鞠莉‘sママさんに「スクールアイドルの素晴らしさ」を証明させるつもりですの?」

と、開口一番ダイヤは鞠莉に尋ねる。ここは千歌たちAqours9人(+月)と鞠莉‘sママとの対決のあったフィレンツェ郊外の鞠莉の親友の別荘。これまで鞠莉‘sママの支援でイタリアに行くことができた千歌たちAqoursの1・2年6人(+月)であったが、昨日の対決で鞠莉‘sママと袂を分かつことになり、千歌たち6人としてはこの旅の支援者、スポンサーがいなくなったのだ。それによりこの旅を続けることができなくなった、けれど、日本に帰るお金もない、千歌たち6人、そのためか、しかたなく鞠莉のお世話を受けることになったのだ。ちなみに、月6にについては、昔、イタリアに住んでいたこともあり、ここフィレンツェににも親友ともいえる友達がいたりする。なので、その友達に頼んでお金を貸してもらえる・・・こともできるのだが、鞠莉からすれば、

「千歌っちたち6人のヘルプ(お世話)はマリーに任せなさい!!ついでに、6人も7人もtogether(一緒)だから月という子のお世話もしちゃいま~す!!」

と言ってしまうほどだったので、月も鞠莉のお世話を受けることになってしまった。

 と、話はもとに戻るが、翌日、千歌たちAqours9人+月の10人で朝食をとっている最中、ダイヤは前述のことを鞠莉に尋ねたのだが、鞠莉、すぐに、

「それならマリーにグッドアイデアがありま~す!!」

と、胸を張ってこたえる。これには、千歌、

「鞠莉ちゃん、なにか妙案があるの?」

と、鞠莉に尋ねる。

 これに、鞠莉、威張るような声で答える。

「それはですね・・・」

これには、千歌たち、みな、

「それは・・・」

と、鞠莉のほうを見る。

 そして、鞠莉はためにためて大きな声でこう答えた。

「映画を撮るので~す!!」

これには鞠莉以外みんな、

「映画!!」

と、驚いてしまう。

 鞠莉、このみんなが驚いた表情を見て、すぐに自分の考えを言った。

「そ~です!!映画、ムービーを撮るので~す!!これまでのマリーたちの軌跡を映画にするので~す!!」

これには梨子すぐに鞠莉に質問する。

「もしかして・・・私たちで映画を・・・?」

これには鞠莉すぐに答える。

「そうです!!マリーたちは自分たちで映画を・・・」

これには、ヨハネ、すぐに、

「くくく、ついにヨハネが主体の映画が・・・。題名は・・・そう・・・「ヨハネ in ワンダーランド」!!」

と言うものの、その横から花丸が、

「それはないずら!!」

と、ヨハネの意見をすぐに否定する。

 と、鞠莉、ヨハネの言葉を受けてか、曜はすぐに鞠莉にこう言った。

「でも、鞠莉‘sママさんから指示された日時までの期間はとても短いよ!!今から映画を撮っていても間に合わないような気が・・・」

 が、この曜の発言を受けてか、鞠莉、すぐに答えた。

「マリーたちが自分たちで映画を・・・メイク(作る)ことは・・・タイム(時間)がないから・・・ナッシングで~す!!」

この鞠莉の言葉に千歌たちみな、

「どて~」

と、大きくこけてしまう。たしかにそうである。短期間の間に映画を1本作るなんてとても無理な話である。

 と、大きくこけてしまっているみんなに対し、鞠莉、現実的な話をする。

「でも、これまでマリーたちがやってきたライブの映像はたくさん残っているので~す!!それをリメイク、エッティング(編集)するので~す!!」

これを聞いた千歌たち皆、

「なるほど!!」

と、妙に納得する。たしかに今までのAqoursに関する動画の数はかなりの数が残っている。自分たちのスマホで撮った日常の練習風景、これまでいろんな人たちの前で見せたライブなどなど。それはある有名な動画サイトで過去のAqoursのライブ映像をまとめたチャンネルがあるくらい残っている。それを編集すれば1つのドキュメント映画ができる、そう、鞠莉は考えたのであった。

 その鞠莉の案を聞いて、みんな納得した表情をの確認したのか、鞠莉、すぐにこう言った。

「なら、ドキュメント映画を作ることに・・・」

「ちょっと待って!!」

と、突然、鞠莉の発言を遮る声がしてきた。この声をあげたのは・・・ヨハネだった。

 ヨハネはすぐに鞠莉の案にこう反論した。

「これは自分が撮った映像をよく編集しているヨハネからの意見だけど・・・、私たち(Aqours)関連の動画ってあまりに膨大にありすぎて短時間で編集するなんて無理だと思います!!」

ヨハネ、実はよく自分で動画投稿サイトに自分の動画を編集しては投稿しているのだ。もちろん生配信もするのだが、それでも、動画を投稿することで自分のファン(リトルデーモン)を増やしたり生配信の視聴者を増やしたりしていたのだ。なので、ヨハネ、動画編集については「セミプロ」である。ちなみに、千歌たちAqoursが1・2年生だけだったとき、Aqoursの知名度を押し上げた、あの、「夢で夜空をてらしたい」、このPVを編集したのはヨハネである。なので、動画編集については折り紙付きである。

 とはいえ、ヨハネのまじめすぎる、そして、あまりに的確な意見に、花丸、

「ずら~!!善子ちゃんが壊れたずら~!!」

と、驚きをみせると、鞠莉も、

「え~、あの善子がブレイク(壊れた)~!!だれか、コールドピロー(氷枕)、持ってきて~!!」

と、右往左往する始末。いや、ここにいるみんな、パニックを引き起こしていた。

 が、その瞬間、

「たしかに、鞠莉さんの案・・・、

 

ブ、ブー

 

ですわ!!」

と、大声をあげて言う少女の声が部屋中に響き渡る。これには、鞠莉、

「ダ、ダイヤ・・・」

と、その大声をだした少女、ダイヤのほうを見る。ダイヤ、どうやら自ら大声をあげることでみんなのパニック状態を収めようとしていたのだ。

 そのダイヤ、すぐに鞠莉にむかってこう発言する。

「たしかに善子さんの意見はもっともですわ!!」

これには、ヨハネ、すぐに、

「善子じゃなくて、ヨハネ・・・」

と、ダイヤにツッコミをいれるも、ダイヤ、それは完全無視!!、すぐに自分の意見を言う。

「善子さんの言う通り、膨大な動画のなかから選んで編集すること自体無理としか言えません、この短期間のあいだでは!!それに、膨大な動画データから選ぶことができてもそれを編集できる設備をもったスタジオなんてここにはありません!!」

たしかにダイヤの言うとおりである。ヨハネの言った通り、膨大な動画データから鞠莉‘sママを納得させるほどの動画を選び出すことは短期間という制約から無理である。と、同時に、その膨大な動画データを1つの映画として編集できるほどの設備をもったスタジオなんてすぐに見つかることなんてとても難しいものである。ちなみに、千歌たちみんなが持っているスマホやパソコンで動画を編集することもできるが、それでも限界はある。鞠莉‘sママを納得させるくらいのものを編集するにはやっぱり編集専門のスタジオで編集するのが一番である。

 そして、ダイヤは1番大切なことを鞠莉に言う。

「それに、鞠莉さん、楽して鞠莉‘sママさんを納得できると思っているのですか!!これまでのライブの映像を編集して鞠莉‘sママさんに見せたら鞠莉‘sママさんは納得してくれるのですか!!」

ダイヤのこの思い、たしかにそうである。これまでのライブ映像を編集することで鞠莉‘sママさんを納得させることができるならもうすでにダイヤたちがやっている。が、ただたんにこれまでのライブ映像を編集した動画を見せたとしても、私たちみたいなAqoursを心の底から応援しているファンは納得できるにしても、もとから「スクールアイドルはくだらない」と評している、スクールアイドルという存在を否定している、鞠莉‘sママからすれば、「なにそれ!!」、と、突っぱねるのは目に見えていた、ダイヤはそれを危惧していたのある。

 が、鞠莉、この的確ともいえるダイヤの意見に、

「じゃ、どうすれば・・・」

と、暗い表情をする。自分の意見を大親友ともいえるダイヤに完全否定され、いったいどうすればいいかわからない、八方ふさがりの状態に陥る。

 そんなとき、

「ライブだよ!!」

と、これまた別の方向から声が聞こえてくる。この声にみんな、

「ライブ!!」

と、これまた大声をあげる。そして、曜、すぐに、

「千歌ちゃん、ライブって・・・」

と、その発言者、千歌の方をみる。いや、全員が千歌の方を見た。

 その千歌はみんなにあることを言った。

「私、ライブが一番だと思うよ、鞠莉‘sママを納得させるにはね!!だって、ライブって実際に見たほうが映像で見るより感動できるもんね!!それに、まわりにいるみんなと一緒に盛り上がったほうが鞠莉‘sママさんも納得させることができると思うよ!!」

千歌にとっては意外ともいえる意見であるが、それはそれとしても(失礼?)もっとも誰もが納得できる、そんな意見であった。ライブというのは現地で直接参戦した方が映像で見るより感動の幅が大きいものである。ライブでの雰囲気、特に、まわりにいるみんなと一緒に盛り上がる、それこそライブの醍醐味ともいえた。そして、それにより、その観客たちはよりアーティストを応援するようになるのだ。それを自分の身をもって知っているAqours9人、だからこそ、この千歌の意見はあまりにも的確な意見ともいえた。

 と、いうわけで、鞠莉、

「たしかに千歌っちの案はグッドアイデアで~す!!マリーたちのライブを見ることでママもきっとアクアのファンになってくれるので~す!!」

と、大変喜びながら言った。この鞠莉の意見を聞いたのか、Aqoursメンバーみんな千歌の案に反論することなく、

「それじゃ、千歌さんの意見に賛成の人は・・・?」

と、ダイヤがすぐに評決をとるとみんな手をあげた。

 こうして、

「それじゃ、鞠莉‘sママさんの前で直接ライブを披露することに決定します!!」

と、ダイヤの声とともに鞠莉‘sママの前で生ライブを行うことに決定した。

 それを受けてか、梨子、すぐにみんなにこう告げた。

「ライブを披露することに決定したけど、曲の選定については私と千歌ちゃんに任せて!!」

この梨子の発言に誰も反論せず。Aqoursの曲であるが、作曲を担当しているのは梨子、作詞は主に千歌が担当している。そして、その曲たちを一番理解しているのはそれを作り出した梨子と千歌である。だからこそ、鞠莉‘sママを納得させるための曲の選定についてはこの二人で任せるのが適任である、そう思っていたAqoursメンバー、だからこそ、誰も反論しなかった。

 と、いうわけで、ライブを披露する曲の選定は千歌と梨子に決まった・・・のだが、もう1つ大切なことが残っていた。なので、それについてはこれまでAqoursの話し合いにオブザーバーとして参加していたあの少女が口をした。そう、月である。

「曲の選定については担当者が決まったけど、あともう1つ大切なことがあるよ」

それを聞いた千歌、すぐに、

「で、それってなに?」

と、月に尋ねる。

 すると、月はこう答えた。

「その・・・ライブを行う場所・・・ってどこ?」

これには、みんな、こう口にした。

「あっ・・・」

 

「ヨハネも一緒に行く~!!」

別荘の玄関ではここに残ることになったヨハネがわがままを言っていた。ライブの場所を決めるため、イタリアの有名な観光地を巡ることになったのだが、今回はあまり時間がない、ということで、イタリア北部にある有名な観光地を巡る遠征組とフィレンツェに残る居残り組に分かれることになったのだ。まず、遠征組は曜、花丸、ダイヤ、そして、アクアの作曲担当の梨子と作詞担当の千歌が入った。そして、居残り組は鞠莉‘sママの対決の後始末のために残る鞠莉、ライブに向けて練習内容を(走って)考えるために残る果南、そして、昨日、足を踏み外してバルコニーから落ちてしまい怪我がないかフィレンツェの病院でみてもらうことになっていたヨハネが入った・・・のだが・・・、

「ヨハネも行く!!」

と、駄々をこねてしまうヨハネ。これにはダイヤ、

「これを自業自得というのですよ!!善子さん、あなた、昨日、バルコニーから落ちたでしょ!!これから

とても大事なライブがあるのに、あとで後遺症が見つかってライブを台無しにしたらいけないでしょ!!だから、善子さん、ここに残ってください!!」

と、ヨハネを叱る。それでも、ヨハネ、

「善子じゃなくてヨハネ!!それでも行きたい!!」

と、わがままを言ってしまう。

 そんなとき、そのヨハネに1人の少女が言った。

「ヨハネちゃん、ここってどこずら~?」

この質問に、ヨハネ、

「ここはフィレンツェ、聖ヨハネが守護する地!!」

と、元気よく答えると、その少女はすぐにこう言った。

「それだったら、ここに残って鞠莉ちゃんと果南ちゃんを守護するずら。あと、ここフィレンツェにもライブの候補地はあるずら。そこで写真を撮ってくるといいずら。そうすれば、「堕天使ヨハネ、ここにあり!!」といえるずら!!」

この少女の言葉にヨハネ、

「それはいいことを聞きました!!いいでしょ!!このヨハネ、ここに残って鞠莉と果南を守護する!!そして、この地にこのヨハネの聖痕(スティグマ)を残すべし!!」

と言うと、ここに残ることをさっそうと決めてしまった。

 と、この一連の流れを見ていた鞠莉、

「お~、花丸、ベリ~、ベリ~!!あの善子を一瞬で手なずけるなんて!!」

と、わがままなことを言っていたヨハネを一瞬のうちに黙らせた少女、花丸のことを称賛する。これに、花丸、

「別にそんなつもり、ないずら。でも、これ以上善子ちゃんがわがままを言っていたら先に進まないからしただけずら」

と、ただたんにヨハネをしずませた理由を言った。

 と、いうわけで・・・、花丸、ランクアップ!!花丸は「ヨハネテイマー(ヨハネ使い)」にランク・・・、

「そんな称号、いらないずら!!」

と、ここで花丸からツッコミ。はいはい。

 で、最後に残ったのがルビィ・・・であったが、そのルビィ、

(ルビィ、もうお姉ちゃん(ダイヤ)とは離れたくない!!)

その気持ちからか、遠征組の一員である姉ダイヤについていくことにした、のだが・・・、

(でも、お姉ちゃんと離れないことってお姉ちゃんを一生拘束してしまうってことだよね。これって鞠莉‘sママさんが鞠莉ちゃんにしようとしていることと同じだよね。そんなのいや!!でも、ルビィ、お姉ちゃんなしでは生きられない・・・)

と、苦悩に満ちた顔をしていた。

 そんなルビィの姿を見てか、ここではAqoursメンバー9人以外で唯一の人物、月、

(ルビィちゃんが苦しんでいる・・・。僕、ルビィちゃんを助けたい・・・。けど・・・、今はまだダメ!!だって、今、助けたとしても、ルビィちゃんのためにはならない!!けれど、ルビィちゃんを助けるためにもルビィちゃんのこと、もっと知らないと・・・)

と、思うようになり、千歌に、月、あることを伝えた。

「千歌ちゃん、僕、曜ちゃんたちと一緒に行く!!」

これには、千歌、

「うん、わかった!!」

と、二つ返事で認めた。



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Moon Cradle 第6部 第2話

 こうして、鞠莉、果南、ヨハネをフィレンツェに残して、千歌、曜、梨子、花丸、ルビィ、ダイヤ、そして、月ご一行は2泊3日の予定でイタリア北部にある有名な観光地を巡る旅、いや、ライブの場所を決めるための旅へと向かった。

 と、いっても、あらかじめガイドブックから選んだ・・・というよりも、鞠莉たちとの一連の騒動であまり観光できなかったヴェネチアとなぜか花丸が行きたいと懇談していたピサにだけ行くことになったのだ。

 まずはヴェネチア。

「あっ、ここ、ため息橋っていうんだ!!なんdめお、日没の時にゴンドラに乗ってキスをすると永遠の愛が約束さるんだって!!なんてロマンチック!!」

と、ため息橋の伝説を語る曜。そう、ため息橋にはロマンチックな伝説がある。それにひかれてここまで来たのである。そして、曜はさっそく、

「それじゃ、千歌ちゃん、写真、撮って!!」

と、千歌にお願いすると、千歌、

「うん、わかった!!」

と言うとカメラを構えた。

 そして、

「全力前進、ヨ~ソロ~」

という曜の言葉で曜の代名詞である敬礼のポーズをするとともに、

カシャ

というカメラからのシャッター音が聞こえてきた。

 実はライブの場所の選定のためにイタリアで有名な観光地の写真を撮る際、千歌たちAqours9人はあるルールを決めた。それは、自分たちがモデルになること。なぜそんなことを決めたというと、その風景をバックに自分たちをモデルにして撮ることでライブをする際の参考にする、というのは建前で・・・本当はただの旅の記念に・・・というのが本音であった。

 と、いうわけで、とてもロマンチックな伝説のある橋をバックに写真を撮ることができたことで満足の曜・・・であったが、一緒についてきた月からすると、

(曜ちゃんには伝えないでおこう、ため息橋の本当の意味を・・・)

と、知らぬが仏、といった感じで曜を見ていた。実はため息橋の名前の由来であるが、なんと、ため息橋、神殿の尋問室と隣の建物にある投獄施設を結ぶ橋であり、ため息橋からの眺めは囚人にとって投獄される前に見るヴェネチアの最後の景色となっていた。そのため、これが囚人にとってヴェネチアの美しい景色を見る最後の機会となるため、囚人たちはここでため息をつく、これがため息橋の名前の由来、といわれていた。というわけで、この話を知っている月にとってとても大切にしている曜の思いを壊しくない、そんな気持ちになっていた。

 そんな月の優しさに胸に撮影は進んでいく。サンマルコ広場でダイヤを、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂で梨子を撮影すると、少しのあいだ、ヴェネチア観光をしたあと、すぐにピサに飛んだ。

 そのピサに来た理由、それは、かなり傾いているのに倒れない、あのピサの斜塔に行くためだった、花丸の強い要望で・・・。

 と、ピサの斜塔に到着したとたん、花丸、

「すごいずら、すごいずら!!」

と、ピサの斜塔を見て目をキラキラしてしまう。これには、ルビィ、

「な、なんか、いつもの花丸ちゃんじゃない・・・」

と、花丸のかわりっぷりに驚いてしまう。いや、反丸以外のみんなが花丸の変貌ぶりに驚いていた。

 そんなみんなを尻目に花丸はピサの斜塔を穴があくくらいまで観察すると、一言、

「やっぱ未来ずら!!どんなに傾いても倒れないなんて未来ずら~!!」

と、ピサの斜塔に感動を覚えてしまう。どうやら、花丸がここに来たかった理由、それは、どんなに傾いても倒れないピサの斜塔、それを目の前で見てみたい、そんな好奇心からのものだった。これには、みんな、

「ははは」

と、苦笑いするしかなかった。

 こうして、ピサの斜塔で花丸をモデルに撮影すると、このままフィレンツェに戻ることになった。

 が、月はこの旅を通じてあることを考えていた。それは・・・。

(この旅、ルビィちゃん、姉のダイヤさんと一緒にいるのになんか楽しんでいないようにみえた。いや、苦しんでいるようにみえる・・・。もしかすると、このままじゃ、ルビィちゃん、壊れてしまうかも・・・)

そう、月、ルビィの様子をみるだけでとても心配になっていたのだ。

 そんなルビィ、この旅のなかでいつもこんなことを考えていた。

(鞠莉ちゃんはお母さんの永遠に続く拘束を嫌がってお姉ちゃんたちと愛の逃避行?をしていた。なら、ルビィもお姉ちゃんを一生離さないのって、鞠莉‘sママさんみたいにお姉ちゃんを永遠に拘束し続けてしまうことになるのかな?それっていいことなのかな?でも、ルビィ、お姉ちゃんなしでは生きていけないよ~!!お姉ちゃんがいるからルビィは生きていける、やっていける!!でも・・・)

と、ルビィは姉ダイヤ依存を続けるかどうか、いや、とても選ぶことができない、そんな思いになっていた。

 このルビィの苦しんでいる表情をこの旅を通じて見続けていた月、ついにこんなことを決める。

(このままじゃルビィちゃんが壊れてしまう!!それなら、僕、決めたよ!!この月、勝負にでるよ!!苦しんでいるルビィちゃんを救うため、そして、不安、心配という深き海・沼に陥っている曜ちゃんたち新生Aqoursをよみがえさせるため、月、一世一代の大ばくち、はるからね!!)

 こうして、月はついにある行動にでることを決めた。

 

 一方、そのころ・・・。

「鞠莉!!ここはちゃんと撮っておいて!!」

と、フィレンツェ居残り組のヨハネが鞠莉に指示する。どうやらヨハネもライブの場所探しのために撮影を行っているところであった。このヨハネをモデルに撮ろうとしている礼拝堂であるが、名のごとくキリスト教の洗礼を受けるときに使う建物なのだが、ヨハネにとってみれば、天使になれる場所?、といった感覚だったのかもしれない。しかし、昨日の出来事(バルコニーの落下)により堕天使に戻った(と自分で思っている)ヨハネは天使になった証拠としてここを選んで撮影することにしたのかもしれない。

 とはいえ、

「鞠莉、はやく撮って!!ハーリー、ハーリー!!」

カメラマン役の鞠莉をせかすように言うヨハネ、これには、鞠莉、

「わかったわ!!それじゃ撮るよ~、よ・し・こ!!」

と言うと、ヨハネ、

「善子じゃなくて、ヨハネ!!」

と、鞠莉に向かって注文する。

 が、その瞬間、

パシリッ

と、カメラのシャッターが下りてしまった!!むろん、できた写真は鞠莉に怒っているヨハネの姿・・・。これには、ヨハネ、

「鞠莉、撮り直し!!」

と、鞠莉に怒るも、鞠莉、

「でも、こうして、こうすれば・・・」

と、画像加工アプリを使って写真のなかに写っているヨハネにどんどん盛り付けようとする。が、

「鞠莉、ちゃんとやって!!はい、もう一度!!」

と、ヨハネ、鞠莉に注意。これには、鞠莉、

「もう、冗談が通じないんだから!!じゃ、撮るね、ハイ、チーズ!!」

と、冗談が通じないヨハネのことを思いつつもカメラをもってヨハネを撮る。

 すると、ヨハネ、

ギラン!!

と、言うと、決めポーズを決める。と、

カシャリ

と、シャッターが下りる音が聞こえてきた。

 そして、鞠莉が撮った写真を確認するヨハネ。

「よしっ!!これでよし!!」

と、納得がいく写真が撮れたので満足した。

 そして、このとき、ヨハネはこう思っていた。

(ヨハネはここフィレンツェで天使になった。けれど、すぐに堕天してしまった。ヨハネとしてはちょっと悔しいけど、でも、少しのあいだだけでも夢を叶えることがとできた!!!そして、この写真こそ、ヨハネがここで天使になった、その証拠になった!!聖痕(スティグマ)を残すことができた!!だから、ありがとう、天使、ヨハネ!!)

天使になれたというスティグマを残したヨハネ、その目にはなんかすがすがしく感じられた。

 が、それでも、

(でも、絶対に天使になってやる~!!)

と、いまだに天使に憧れるヨハネであった・・・。

 

 こうして、遠征組、フィレンツェ居残り組、それぞれライブの場所決めのための写真を撮ってきたため、一度フィレンツェに集まることになった、のだが・・・。

「ソーリー、もうここは使えないの」

と、遠征版が帰ってくるなりみんなに謝る鞠莉。どうやら鞠莉‘sママの差し金・・・ではなく、鞠莉の親友から今借りている別荘から出ていくように言われたようだ。理由は簡単。鞠莉の親友には当初卒業旅行のために貸してほしいとうそを言って別荘を借りたのだが、本当の理由が家出?ということがばれてしまったからだった。でも、最初のうちはその親友も別にそれでいいと言っていたのだが、その親友の親が「それが理由なら別荘をこれ以上貸すことができない」と言ってきたため、その親友も仕方なく鞠莉に別荘の受け渡しを言ってきた、とのことだった。

 と、いうわけで、急遽千歌たちAqoursメンバーは小原家のフィレンツェの別荘に移ることになったのだが・・・、実は一つ問題が・・・。

「月、ソーリー!!月の分まで止めることができないのよ!!本当にソーリー!!」

と、鞠莉、月に謝る。なんと、小原家の別荘、フィレンツェの街のなかにあるため、Aqoursメンバー9人を泊めるので精一杯だというのだ。むろん、このあと、それがある大問題へと発展する・・・のだが。

 で、月、曜ちゃんと一緒にいたいために拒否・・・ではなく、すぐにこれを受諾した。それはとある理由からだった・・・。

「鞠莉ちゃん、いいよ!!僕、ちょっと一足先に(次の目的地の)ローマに行くね!!」

と、月、鞠莉に一言言うと、曜にもローマに行くことを告げてそのままローマへと向かった。

 

 そして、月、ローマに着くなり、ローマの観光地巡りをする。しかし、ただの観光地巡りをしている・・・わけではなかった。トレビの泉、バチカン、コロッセオ、などについては、

「ふ~ん、今はこうなっているんだ・・・」

と、いろんなところを観察していた。実は、月、ライブで使える場所を絞り込むために下見をしていたのだった。ここローマは旧ローマ帝国時代から続く長い歴史をもつ都市である。そのため、いろんなところに有名な遺跡などが残っていいるのである。なので、ただネットなどで調べていてもライブ会場を多数のところから選ぶのは困難だったりする。なので、ローマに土地勘のある月が先発隊としてその有名な観光地を下見してはライブで使えるかどうかを見極めていたのだった。これには、月、

(たった1人でローマを見て回ること自体みんなといろんなところを見て回るといった旅の醍醐味はないかもしれない。でも、僕、なんかとっても充実している!!寂しくなんてない!!だって、曜ちゃんのため、いや、Aqoursみんなのためにやっているんだもの!!これまでは生徒会長として、静真のみんなのために一生懸命頑張ってきた。そして、これからは、それに加えて、浦の星のみんなのためにも頑張っていく!!それを実現するためにも、このライブ、絶対に成功させたい!!)

と思っていた。まるで自分の使命ともとれる考え。でも、月にとっては、それこそ生きがい、だったのかもしれない。今までは月は長い間海外に住んでいたため、日本沼津に来た時にはまったくなにもわからない、どんなことでも右往左往するほどだった。が、いとこで大親友の曜を通じて、日本の素晴らしさを知り、そして、みんなと楽しくやっていくことができたのである。そして、静真に進学したとき、月は曜と別れたときの想いのもと、今度は静真にいるみんなのために頑張ることを心に誓い、入学当初から生徒会に入っては静真のみんなのために働いてきたのだった。その月の想いに答えたのか、生徒たちからも絶大な信頼を得ることできたのである。そして、それは月を生徒会長として押し上げる結果となったのだが、一生懸命、一心不乱に働いているがゆえなのか、静真入学のときに持っていた、曜と別れた時の別の想いを月は今まで忘れていた。が、このAqoursとの旅を通じてそれを月は思い出したのである。そして、それを誰かに伝える・・・、そんな使命を月は持っている、そんな感じだった。

 その月、いろんな観光地を見るごとにこんな思いを持つようになる。

(今、アクアのためにいろんなところを下見してている。それは、これからのAqoursを占う上でとても重要になる。本当にとても大切なことをしている。これがもとでライブが成功するか失敗するか決まってしまうかもしれない。僕にとってそのプレッシャーは半端ない。でも、そんなプレッシャー、僕にとってとても心地いい、いや、これ自体とても楽しく感じられる。なんでだろう。相当のプレッシャーを感じること自体楽しく感じられるなんて、僕、おかしくなったのかな?)

 月にとって今やっていること自体相当のプレッシャー、なのに、楽しく感じられる、という二律背反の除隊に少し戸惑いを感じていた。

 

 その後、あらかたの場所を回った月、ライブの場所の候補地を絞り込む。今日の宿はローマに住む月の友達の家。そこで今日撮ったいろんな観光地の写真を見比べる。。そこで そして、月は候補地を4つにするため、まず3つに絞った。

「え~と、トレビの泉、スペイン広場、コロッセオ・・・」

どこもとても有名な観光地でライブができるくらいの広さをもつ場所、そして、イタリアローマを象徴できる場所であった。

 と、ここであともう一つの候補地を月は決めることに・・・。そこである写真を見て、月、一言。

「そして、ここは・・・、あっ!!」

その写真を見た、月、一瞬あることをひらめく。

「たしか、ここ・・・、ある言い伝えが残っているような・・・。それって僕の想いを〇〇〇に伝えるにはいい場所かも・・・」

そう、その場所こそ、あの有名な言い伝えが残っている、そんな場所だった。その場所だったらそこで自分の想いを〇〇〇に伝えることができる、そう月は確信した。

 そして、月はすぐに、

「この場所も候補地として残しておこう」

と言うと、その場所もライブを行う候補地として残すことにした。

 その後、月はすでに真っ暗になった空を見上げながらこう言った。

「曜ちゃんたち、Aqoursのみんな、僕が選んだ候補地で大きく羽ばたかせてね。とてもすごいライブを僕に見せてね・・・」

 

一方、そのころ、フィレンツェでは・・・、運命の(トランプを使った)くじ引きが行われていた。

「せ~の!!」

Aqoursメンバー9人が一斉にトランプをひくと、

「やったずら!!」(花丸)

「うそっ・・・、うそって言ってくれ!!」(ヨハネ)

と、喜びあう者もいれば阿鼻叫喚の地獄絵図とかす者まで・・・。どうやら、あまりの狭さ+これまで大人数で泊まることがなかったためにベッドの数が足りていないのが原因だった。

 というわけで、なんか充実した気分になっている(ローマにいる)月に対し、トランプ一枚によって今日寝る場所が天国が地獄かのどちらかになるため、必死になっているAqoursメンバー、本当に世の中世知辛いものである・・・。

(ちなみに、これ、アマ〇ンの劇場版限定特典のドラマCDからのものです。そして、(ネタばれですが・・・、)ローマの小原家の別荘に泊まろとしている鞠莉に対して速攻で反対したAqoursメンバー、鞠莉以外全員・・・。と、いうわけで、ローマでは月を含めて全員ちゃんとしたホテルに泊まることになりましたとさ。ちゃんちゃん)



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Moon Cradle 第6部 第3話

「う~、疲れた~」

と、千歌、ホテルに着くなり親父じみた声をあげる。ここはローマのホテル。ここにこれから先、Aqoursと月が宿泊することになっている。近くには貸しスタジオがいくつかあり、そこでダンス練習ができるため、このホテルが選ばれたのだった。

 そして、夕食のとき、ダイヤは月を含めたみんなにこう言った。

「昨日、月さんがライブに使えそうな場所を探してくれました。ありがとうございます、月さん」

月にお礼を言うダイヤ。これには、月、

「いや~、僕も久しぶりにローマをまわれて楽しかったよ!!」

と、謙遜する。

 この月の発言のあと、ダイヤはみんなにこう告げた。

「みなさん、今日はゆっくりお休みください。明日、私たちはついに動きます!!月さんが自分の足で見てきて選んでくれた(ライブを行う場所の)候補地4か所、そこに行って写真を撮ってきてください。そして、これまで見てきた(ヴェネチア、フィレンツェ、ピサの)5か所の写真とともに見比べてライブを行う場所を決めます!!」

 さらに、このこともダイヤは付け加えた。

「で、明日の予定ですが、あまり時間がないので、ローマの候補地4か所を全員でまわることはできません。と、いうわけで、明日、出発前に4班に分かれたうえで行動します。1班1か所ずつ、そこで写真を撮ってきてください!!」

 これについては誰からも反対意見はでなかった。やっぱり、ダイヤ、である。個性が強すぎるAqoursメンバーをまとめ上げるほどの優れた統率力を持ち主である。これには、月、

(あぁ、ダイヤさん、すご過ぎです~。ホレボレしちゃいます~。僕もダイヤさんみたいになりたいです~)

と、憧れのまなざしをしていた。

 と、いうわけで、夕食を食べ終えたAqoursと月はゆっくりと長旅の疲れをとることになったのだった。

 

 翌日・・・、ホテルの玄関前では・・・。

「みなさん、揃いましたね。それでは、これから班分け・・・」

と、ダイヤ、月を含めた全員を確認するとともに班分け・・・。

「班分け・・・と言いたいのですが、今回は自分たちで分かれることにしましょう。これから先、私、果南さん、鞠莉さんがいなくなっても千歌さんたち6人だけでも行動できないといけませんからね」

と、ダイヤとしては珍しく放任してしまった。まっ、先ほどのダイヤの言うことももっともである。

 と、いうわけで、勝手に班分けがはじまってしまう。

「千歌ちゃん、一緒にコロッセオ、行こう!!なんか大きな競技場の遺跡なんだって!!私、わくわくしちゃう!!」(曜)

「うん、わかった!!曜ちゃん、私についてきてね!!」(千歌)

といった具合にコロッセオには千歌、曜、梨子が、トレビの泉は果南と花丸が、スペイン広場では鞠莉とヨハネ・・・と2人の監視役としてダイヤが行くことになった。

 で、1人残った?ルビィはというと・・・。

(よしっ、ルビィからお姉ちゃんを誘おう!!)

と、姉ダイヤと一緒にスペイン広場に行くことを決めたルビィ。そこで、ルビィは意を決してダイヤのそばに行き、ダイヤに一言。

「お姉~ちゃん・・・」

 が、その言葉は1人の少女によってかき消されてしまった。なんと、ルビィがダイヤの隣に行こうとした瞬間、

「ルビィちゃん、一緒にまわろう!!」

と、ダイヤとルビィを引き裂くかのように、いや、遮るようにある少女がルビィとダイヤのあいだに立ちはだかったのだった。その少女を見上げたルビィ、思わず、その少女の名を呼ぶ。

「って、月ちゃん!!」

そう、ルビィとダイアのあいだを遮ったのは、月、だった。その月、このとき、こう思っていた。

(ルビィちゃん、ごめん!!僕だってルビィちゃんとダイヤさんのあいだを引き裂きたくないんだよ!!でも、こうでもしないと、ルビィちゃん、ずっとダイヤさん依存が続いてしまう。もう離れることなんてできなくなる。それはルビィちゃんのためにはならない。いや、新生Aqoursを、今のルビィちゃんを変えるにはこうするしかない!!だから、僕、ここは鬼となるよ!!新しい新生Aqours、そして、新しいルビィちゃんのためにもね!!)

そう、月、このとき、熱い使命感的なものを持っていたのである。

 では、なぜ、こんな熱い思いを月は持ったのだろうか。それは、昨日の夜までさかのぼる。昨日の夕食のとき、ダイヤはライブを行う場所の候補地4か所に4班に分けて撮影しに行くことをみんなの前で言ったのだが、このとき、月、あることを思いつく。

(あっ、これって千差一隅のチャンスじゃないかな?)

フィレンツェの出来事以来、姉ダイヤとのこれからの関係について悩み苦しんでいたルビィ、その姿を見て月はいつかはルビィが壊れてしまうのではと思っていた。そんなルビィを救いたい、不安・心配という深き海・沼の奥底から救いたい、そして、それをきっかけに千歌たち新生Aqours復活を果たしたい、と、このときから月はそう思っていた。そして、その機会を今か今かと月は待ち望んでいたのだ。で、その機会がついに来た、と、月はダイヤの話を聞いて悟ったのであった。なぜなら、ルビィと2人になる機会を、ルビィを諭すための時間が欲しかったからであった。人間というのはなにか怒られるとき、まわりに人がいるとそれを見られたことにより自分のプライドが傷つくことがある。そのため、人に怒るときにはまわりに人がいないときに行うのが望ましい。また、ルビィ個人を諭すとき、ほかの人がちゃちゃをいれることがあると、ルビィ自体月がこうしたいと思っているのとは違った方向に進んでしまうことがあったりする。月はそれを危惧しており、これまで月がルビィに対してこれから起こる事実を伝えたとしても自ら動きルビィを諭すことをしなかったのもそのためだった。が、ついにルビィと2人になる機会が巡ってきたのである。それも、ここローマである。ルビィを諭すのにうってつけの場所がある。その場所を月はわざと候補地として選んでいた。すべてが月にとってとても優位になるように進んでいた。月、だからこそ、こう思った。

(ついに僕が動く時がきた!!絶対にルビィちゃんをニュールビィちゃんに変えるときがきた!!いつ動くんだ?今でしょ!!」

と、勢いこむ月。こうして、月のルビィイメチェン計画は発動した・・・。

 と、いいつつも、月、ルビィと2人になるように根回しするのも忘れていなかった。なんと、月、夕食後、

「あの~、ダイヤさん、ちょっといいですか?」

と、ルビィの姉、ダイヤのもとに行くと、ダイヤ、

「あら、月さん、どんな御用ですか?」

と、月に尋ねる。すると、月、すぐにダイヤにあるお願いをする。

「ダイヤさん、お願いです、明日、ルビィちゃんと一緒に行動させてください!!それも2人だけで!!」

この月の願いを聞いたダイヤ、

(私の大事なルビィを、会ってから数日しかたっていない月さんに任せるなど・・・)

と、突然の月の申し出に月のことを疑い深くなるダイヤ。しかし・・・。

(でも、そんなことを冗談で言って・・・いないですね。月さんの目、なにやら真剣そのものですしね・・・)

と、月の目を見て月がまじめに言っていることに気づく。そう、このとき、月、

(ここで諦めたら、きっとルビィちゃんはただの姉ダイヤさん依存症になってしまう!!だからこそ、ここは絶対にひかない!!たとえダイヤさんであっても絶対に成し遂げてみせる!!)

と、岩をも通すほどの熱の入れようだった。

 この月のしんけんな目を見たダイヤ、

(どうやら、本当にルビィのためになにかをするつもりですね。わかりました!!あなたの真剣さに、このダイヤ、心を撃たれましたわ!!)

と、月の岩をも通す熱意に負け、大事な妹のルビィを月に託すことを決めた。

 そして、ダイヤ、月に対しこう告げた。

「わかりましたわ、月さん!!あなたの熱意に負けましたわ!!明日1日、私の大事なルビィを月さんに託しますわ!!ただし、ルビィになにかありましたらそのときはご覚悟を・・・」

これには、月、

(や、やった~!!これでルビィちゃんを苦しみの呪縛から解き放つことができる!!)

と、心の中でガッツポーズをするも、すぐに、

「わ、わかりました!!この身にかえてもルビィちゃんは守ってみせます!!」

と、なぜかルビィの結婚相手みたいなことを言ってしまう。

 こうして、ルビィの知らないうちにダイヤと月は裏でつながってしまうのだが、このときのダイヤにはこのあと起きるルビィの変化のことなんてまったく知る由もなかった・・・。

 

 と、ここで話はもとに戻る。姉ダイヤと一緒に行きたいルビィ、そのダイヤとルビィのあいだに月が立ちはだかる・・・のだが、このときのルビィには、このときすでに月とダイヤのあいだで密約が結ばれていたことなんて知っているわけでもなく、ただ、

(なんで、月ちゃんがここにいるの?)

と、戸惑うしかなかった。

 すると、月、

(よし!!ここで決めてやる!!絶対に決めてやる!!)

と思うと、すぐに、

「ルビィちゃん、一緒にまわろう!!僕、ルビィちゃんにちょっと興味持っちゃったんだ!!だから、一緒にまわろう!!」

と、言っては、ルビィをダイヤのところに行くのを邪魔をする。

 そんな月の行動に、ルビィ、

(ルビィはお姉ちゃんと一緒に行く!!)

と、必死にダイヤのところに行こうとする。そのためか、ルビィ、思わず、

「ルビィ、お姉ちゃんのところに行く・・・」

と、心の声がそのまま声として外にでてしまっていた。

 が、月からすれば、

(ここにルビィちゃんを行かせたら絶対にルビィちゃんは生まれ変わることなんてできなくなる!!)

という思いがあるので、つい、ルビィの言うことおかまいなく、

「ダ~メ!!僕と一緒に行くの!!」

と言ってはルビィの手を強引に引っ張ろうとする。これには、ルビィ、

(ルビィ、絶対にお姉ちゃんと一緒に行く!!)

と、逆に月がひぱっている自分の手をひっぱり返そうとする。ルビィと月、意地のぶつかりあい!!普通なら意地の強いほうが勝つ・・・というセオリーがあったりなかったりするのだが、今回はそんなことはなかった。月、なんと、超アウトドア派である!!というよりも、静真の才女、と言われるくらい頭がいい、のであるが、それに負けじとスポーツのほうもよかったりする。文部両道、これこそ月にとってふさわしい言葉がなかった。むろん、体力には、月、自信がある。対して、ルビィ、スクールアイドルの練習をしているものの、超インドア派である。なので、体力なんて(月と比べたら)ない方である。超アウトドア派の月と超インドア派のルビィ、この勝負、すでに目に見えていた・・・。

 

 と、いうわけで、体力がありすぎる月に対して非力のルビィ、結局、

「おね~ちゃ~ん~」

と、ルビィ、そのまま月にひっぱられてしまいダイヤのいるところに行くことができなかった。

 が、たとえルビィが月に勝ったとしても、ダイヤは月と一緒に行くことを言うだろう。なぜなら、月はダイヤに根回ししていたのだから。本当に、月、結構な策士、ともいえた・・・。



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Moon Cradle 第6部 第4話

「なんでルビィが月ちゃんと・・・」

と、ルビィ、ぶつぶつ言いながら歩いていく。このとき、ルビィ、心の中では、

(ルビィはお姉ちゃんと行きたかったんだよ!!なのに、なんで、ルビィの邪魔をするのかな、月ちゃん!!)

と怒っていた。対して、月、

(なんとかルビィちゃんを連れ出すことができたよ~。でも、これで僕の計画は次の段階に進めることができるよ!!)

と、上機嫌になりいまだ月と一緒に行くのを嫌がっているルビィの手を引っ張っていた。

 そんな対照的な2人だったが、目的地に近づくうちに2人は・・・なにもなかった・・・。上機嫌な月と不機嫌なルビィ、その状態のままついに旅の目的地・・・というよりも月がルビィのために選んだ場所に到着する。その場所とは・・・。

「さあ着いたよ~!!」

と、月は目的地に着くなりルビィにその場所にあるモニュメントを指さす。それを見たルビィ、

「ピギィ!!大きな顔!!大きな口!!怖いよ~!!」

と、そのモニュメントを見て怖がり月の後ろに隠れてしまった。これには、月、

(なんでもおびえてしまう、今のルビィちゃんにとってみれば刺激的・・・みたいだね。でも、これでも世界的にとても有名なモニュメント・・・なんだけどね・・・)

と、おびえるルビィを見て少し戸惑いつつもルビィにそのモニュメントについて語る。

「怖くなんてないよ。だって、あれ、「真実の口」って言うんだもの!!」

そう、月が目指していた目的地、それは古代ローマの遺物、「真実の口」である。そして、それはある言い伝えでとても有名である。その言い伝えこそ月がルビィをここまで連れてきた理由でもあった。もちろん、世界的にもとても有名な言い伝え・・・であるが、それは「真実の口」におびえている・・・というよりもなんにでもおびえてしまう今のルビィにとって知る由も・・・というよりも意識することすらできなかった。ただ、このとき、ルビィ、

(「真実の口」?なんか聞いたことあるけど、ル、ルビィ、今はどうすることもできない・・・。それよりも、あの荒々しい顔・・・ル、ルビィ、怖くてここから逃げ出したいよ~!!)

と、「真実の口」の(ルビィにとって)とても怖い顔の表情におびえていた。ルビィ、心ここにあらず・・・の状態であった。これには、月、

(あっ、ルビィちゃん、「真実の口」を見ておびえているなぁ。これなら僕が今からやることがより効果的になるよ!!これで、ニュールビィちゃんに生まれ変わらせることができる!!さぁ、頑張るぞ!!)

と、勢い込んでしまう。ただ、それを表情にだしてしまうと感のいいルビィに気づかれてしまうため、月、ポーカーフェースに徹していた。

 その月、ポーカーフェイスのまま、ルビィにあることを注文する。

「ルビィちゃん、そこに立ってポーズをとって!!う~ん、そうだな~、笑いながら手でハートを作っちゃおうか!!」

これには、ルビィ、

(なんで(お姉ちゃんと一緒に行くのを妨げた)月ちゃんの言うことを・・・)

と、月に対して反抗したい気持ちになるも、

(でも、鞠莉ちゃんのためにライブの場所を探しているもんね。仕方ないよ・・・)

と、しぶしぶ月の指示を受けることにした。

 のだが、今のルビィにとってとても恐ろしくて近寄りたくもないものの横でポーズをとるなんててもいや・・・だったためか、「真実の口」の横に立って笑いながら手でハートを作るも・・・、

(ルビィ、ここからはやく逃げ出したいよ~!!怖い怖いよ~!!はやく終わってくれないかな。はやく~!!)

と、とても嫌がっていたため、とても暗い表情・・・というよりも作り笑い・・・、いや、とても嫌がっている、そんな感じの表情をしていた。

 これには、月、

(ルビィちゃん、そんな表情だとはやく終わるものの終わらなくなるよ!!むしろ、ルビィちゃんにとって不利な状況になるような気がするんだけどね~)

と、作り笑いでとても嫌がっているルビィに対して冷たい表情もするも、

(ルビィちゃん、これはルビィちゃんにとって試練なの!!この試練に打ち勝って新しいルビィちゃんになって!!)

と、ルビィに対して熱い期待すらしていた。そのためか、

「もう少し笑って~」

と、ルビィにさらなる注文をするも、とうのルビィはというと・・・、

(ルビィだってちゃんと笑ているもん!!月ちゃんがいろいろ言ってくるけど、ルビィだって、こんな怖そうな今にでもルビィを襲ってきそうな像の前で一生懸命笑っているよ!!それなのに、月ちゃん、なんでわかってくれないの!!)

と、月に対してご立腹・・・ではあるが、

(でも、やっぱり、この像、こ、怖いよ・・・)

と、暗い表情がさらに強調されてしまう。

 そんなルビィの表情を見た、月、

(ん~、ルビィちゃん、「真実の口」を見て本当にびびってしまっている・・・。これじゃ新しいルビィちゃんは生まれてこないよ~)

と、思ったのか、ルビィに対して、

「仕方ないな~。一時中断しよう」

と、撮影を中断してしまう。このとき、ルビィ、

(よ、ようやく一息つけるよ~。つ、疲れた~)

と、少しだけ心が安らぐ。けれど、

(で、でも、それでも、ここで撮影するのでしょ!!ル、ルビィ、とてもいや~!!)

と、このあとのことをつい考えてしまい暗い表情に戻ってしまう。

 そして、そんな暗い表情のルビィに対し、月、

(このままじゃきっとルビィちゃんはずっと誰かに頼ってしまう、そんなか弱い存在になってしまう。それはたとえ姉のダイヤさんがいなくなってもきっとほかの人に頼ってしまう。そんなルビィちゃんを変える方法は一つだけあるけど、これはルビィちゃんに精神的なダメージを与えてしまう。もしかすると、ルビィちゃん、立ち直れなくなってしまう。いや、トラウマになるかもしれない。けれど、臆病になっている、不安・心配の海・沼の奥底に陥っているルビィちゃんを生まれ変わらせるにはもうこれしかない!!けれど、今はルビィちゃんの心のケアが大事かな~)

と、思いつつ、ルビィに尋ねる。

「ルビィちゃん、どうして暗い表情、しているのかな~?」

月のルビィに対する心遣い、であったが、とうのルビィからすると、

(こんなとてもいやな心になったのは月ちゃんのせいでしょ!!ルビィ、月ちゃんから言われてやっているけど、ルビィはね、もうこんなことはいやなの!!ここから離れたいんだよ!!)

と、月に対して反抗の意思を持ってしまい、そのためか、

「なんでもないよ!!月ちゃんに関係ないことでしょ!!」

と、月に反論してしまう。

 このルビィの反論、それが月のある闘志を生むことになる。月、このとき、

(ル、ルビィちゃん・・・、なんでもかんでもおびえてまう・・・。これじゃ本当のニュールビィちゃんになることなんてできない、いや、もっと悪い方向に進んでしまう!!こ、こうなったら、仕方がない!!もう唯一の手段を、今のルビィちゃんにとって劇薬かもしれない、あの方法を使うしかない!!そして、これには、僕と曜ちゃんにとってとても大事な出来事をルビィちゃんに伝えることにもなる。これによってルビィちゃんが、僕、そして、曜ちゃん、に対して悪い印象を植え付けることにもなるかもしれない・・・)

と、思うようになる。が、しかし、月とルビィ、2人で行動しようも、とうのルビィはおびえた小鹿に、いや、不安・心配の海・沼に陥ってしまい抜け出すことができない小魚のようになってしまう、それがさらに悪化してしまう始末。そんなルビィの姿を見た月は心の中からある思いが湧き出してくることがを感じる。

(でも、僕、わかったよ!!曜ちゃん、きっと、このときのために僕にずっと呼びかけてきたんだね!!最近、僕が寝ているときに幼い姿をした曜ちゃんが僕にあのことを呼び掛けてきたよね!!そして、ヴェネチアからフィレンツェに移動する際、曜ちゃんが僕にあのことを言ってくれたから、僕、すべてを思い出すことができたよ!!それもこれも、今、このときのためにしたことなんだよね!!)

この思いともに曜に対して感謝を述べる月。最近になって月が寝ているとき、幼い姿をした曜が現れてはその曜からとても大事な思い出を、とても大事な想いを月に投げかけていた。最初はなんのことだかわからなかった月だったが、曜と再び、Aqoursと一緒に触れ合うことで徐々に思い出してきた。そして、ヴェネチアからフィレンツェの移動の最中に曜との邂逅により月はすべてを思い出したのである。そして、今、その思い出、想いが月にとってとても強い武器になるのであった。

 そして、月、ついに腹を決めた!!

(ルビィちゃん、たとえ僕を嫌いになろうとしても絶対に実行するからね!!これは、ルビィちゃん、そして、新生Aqoursを生まれ変わらせるためにすること!!だからこそ、僕、心を鬼にするね!!僕、ここで決めてみせる!!)

その強い意思を持った月、ルビィに対しある命令をした。

 

「じゃ、ルビィちゃん、その「真実の口」に手を入れて!!」

 

 この月の命令に、ルビィ、

(なんで月ちゃんの命令に従わないといけないの!!なんで、この像に手を入れなきゃいけないの!!それよりも、なんで、月ちゃん、ルビィのこと、思ってくれないの!!なんで、ルビィの困ること、しているの!!)

と、月に反抗の意思を持つとともに、

「いや!!絶対にいや!!」

と、手を振っては月の命令を拒絶する。

 が、そんなルビィに対し、月、

(きっとこのままいったらどう堂々巡りになってしまう!!「ここで決める」って決めた以上、僕としてもここで引くことなんてできないね!!ルビィちゃんにとって少々手荒だけど、ここは強引にいかせてもらいますからね!!)

と、思ったのか、月、いきなり、

「なら、僕が(強制的にルビィちゃんの)手をいれちゃうからね!!」

と、ルビィの手を取ってそのまま「真実の口」の口の部分にルビィの手をいれようとする。これには、ルビィ、

(つ、月ちゃん、ちょっと、ちょっと待ってよ~!!)

と、強引に自分の手を「真実の口」の口の部分にいれようとする月の手を払いのけようとするも、ここでもルビィの非力さがゆえに月の強引さに負けてしまう。

 そして、

ズボッ

と、ルビィの手はそのまま「真実の口」の口の部分にはいってしまった。これには、ルビィ、

(うう~、月ちゃんのいけず~)

と、半泣きになってしまう。が、その当事者である月はというと・・・、

(さあ、ここからが本番!!もうあとには引き返すことなんてできない!!吉と出るか凶と出るか!!月、一世一代の大舞台!!とくとみておいてくれ!!)

というこれから自分が行おうとしていることに対して強い意気込みをみせる。

 そんな月であったが、ルビィのことも心配していた。

(さて、ルビィちゃんにとってこれからが正念場だよ!!ルビィちゃんの心がけ次第ではルビィちゃんの心が崩壊するか進化するかどちらに転ぶかわからない。でも、僕はどっちに転んでもきっとフォローしてあげるからね。だから、ルビィちゃん、ご覚悟!!)

 そして、月はルビィにあることを告げる。

「で、ルビィちゃん、僕に黙っていること、ない?ルビィちゃんが悩んでいること、ない?」

この月の言葉に、ルビィ、

(月ちゃんのいけず!!たとえ隠していることがあっても、勝手にルビィの手を口に入れちゃった月ちゃんに話すことなんてないよ!!お姉ちゃんのことで悩んでいるなんて、悪ふざけする月ちゃんには言わないよ!!イーだ!!)

と、月に対して反感の気持ちを持ってしまう。そのためか、

「そんなもの、ルビィにはないよ!!」

という言葉で月のことを軽蔑する。

 が、そんな言葉、今の月にとってみれば屁の河童である。むしろ、

(ルビィちゃん、その言葉、裏を返せばルビィちゃんの心の中に悩みがあることを証明しているだよね。それはきっとお姉ちゃんであるダイヤさんとの関係についてだよね)

と、まるでルビィの心の内が手に取るようにわかってしまうものだった。さらに、

(なら、今からルビィちゃんに対してお来ぬことはかなりの効果があるね!!ショックが大きいほど効果は絶大になる。それはルビィちゃんが大きく生まれ変われることにもつながる。もちろん、その逆もしかり。でも、僕は決めたんだ!!ルビィちゃんを大きく生まれ変わらせることに賭けたんだって・・・)

と、月がこれから行うことに対して大きな賭けにでることを決める。

 そして、月、ルビィにある事実を、ルビィの本幹を揺るがす、大きな一言を言ってしまう。

「本当になんでもないならいいんだけど、

 

「真実の口」の口のところに手を入れた場合、も、うそをついていたり、偽りの心があれば、その手はちょん切られてしまうんだぞ~

 

本当に大丈夫?」

実は「真実の口」には一つの有名な言い伝えがある。その言い伝えとは・・・、

「手を口の部分に入れた場合、うそや偽りの心を持つものであれば手を抜くときに手首を切り落とされる、手をかみちぎられる、手が抜けなくなる」

というものである。その言い伝えはあの名作「〇ーマの休日」の一シーンとしても有名だったりする。主人公の男の人がヒロインの前で「真実の口」の部分に手を入れて抜けなくなる・・・そんな有名なシーンがあったりする。

 むろん、この月の一言を聞いたルビィ、

(えっ、うそ・・・)

と、一瞬フリーズ状態に陥ってしまう。そして、

(えっ、うそでしょ!!ルビィの手、ちょん切られてしまう!!ルビィ、そんなのいや!!いや!!いや~!!)

と、突然パニック状態に陥ってしまう。月の一言により恐怖のどん底に叩き落されたルビィ、心の中で、

(ど、どしよ~、どうしよ~、どうしよ~!!)

と、あわてふためいてしまう。しまいには、

(もういや~!!)

と思ったのか突然手を口の部分から引っ込んでしまった。このとき、

「ピギィ!!」

と言ってしまうほどルビィの頭の中は本当にパニックを起こしていた。

 が、突然手を抜いてしまったことでルビィはさらにパニックを深めてしまう。

(し、しまった!!手を引き抜いてしまったよ~!!ル、ルビィの手、切られてしまったよ~!!どうしたらいいの~!!お姉ちゃん、助けて~!!)

まさかここに来てルビィの手がちょん切られてしまう、そんな最悪な状態に陥ってしまった、そうルビィが思ってしまったことでルビィの精神状態は崩壊寸前・・・。

 とはいえ、ルビィ、あることに気づく。

(あれっ、手が切れたはずなのに痛くない・・・。どうして・・・)

そう、手が切れたならそれによって大きな痛みが生じるはずなのにその痛みがないのだ。でも、ルビィ、

(も、もしかして、痛みを伴わないもの・・・なの・・・)

と、ちょっと不安・・・になる。

 が、いつかは現実をみないといけないので、ルビィ、意を決する。ルビィ、

(でも、本当に手が切れていないか確認しなきゃ・・・)

と、思っては、

「う~」

と、うなりながら心配そうに自分の手を見る。

 すると、ルビィは驚愕してしまう。

(ルビィの手・・・切れて・・・いない!!なんで、なんで!!真実の口に手を入れるとちょん切られてしまうはずじゃないの!!)

そう、ルビィの手首はちょん切れている・・・わけではなかった。ルビィの手は健在だった。実は「真実の口」の言い伝えは単なる迷信だった。「真実の口」の本当の正体は古代ローマのマンホールだったと言われており、今みたいな形に置かれたのは1632年ごろだったりする。さらに、「〇ーマの休日」のシーンも主人公がヒロインに対し手が抜けなくなったという演技をして脅かそうとしていた、というのが実情だったりする。なので、月がルビィに言ったことはたんなる迷信であった。

 が、迷信とはいえ、人間というのは不安・心配の海・沼のどん底に陥った場合、その迷信すら信じてしまう、といった状況に陥りやすい。それがルビィでも起きてしまった。そして、それは、騙されたと知ったとき、それは騙したほうに倍となって怒りとして返ってくるものである。むろん、ルビィも例外ではなかった。ルビィ、騙した月に対し、

(月ちゃん、からかうのはやめて!!単なる嫌がらせだよ!!ルビィをそんなに困らせてしまうのがいいわけ!!月ちゃん、ルビィのことで遊んでいない?ルビィをからかうのはやめて!!ルビィのことを困らせる、そんな月ちゃん、嫌い!!)

と、ルビィ、月に対して自分をからかったことへの怒り、反感を強めてしまう。

 そして、ルビィは月に対し、

「うそつかないでよ~、月ちゃん!!なんでルビィを困らせようとしたの!!」

と、激怒してしまった。

 が、とうの月はというと・・・、

(ルビィちゃん、ごめん!!別にルビィちゃんを困らせようとしたわけじゃないけど、これがルビィちゃんにとって最善ともとれる策だったんだよ!!)

と、ルビィに心の中で詫びつつも、

(でも、これが僕がとるべき手段に間違いないという証明はされた!!ルビィちゃんはお姉ちゃんのダイヤさんのことで悩んでいる!!なら、今から僕がルビィちゃんに諭すことでルビィちゃんは新しく生まれ変わる、そんな気がする!!)

と、ある確信を抱く。実は、月、ルビィを不幸のどん底に突き落としたのは理由があった。ルビィが深く傷つくことで今からルビィに対して行うことに対する影響力をルビィの体の中に染みわたらせようとしているのだ。人というの深く傷つくときなにかにすがろうとする。それは自分が頼ろうとしているもの、人や家族だったりする。そして、その影響力は

そのあとその人にとって深く染みつくものである。その影響力はその人の本幹に深く根付いてしまうため、その影響力から抜け出すことは並大抵なことではない。それを月は今からルビィに対して行おうとしていたのである。その、月がルビィにやろうとすることだが、それはルビィにとって今までのダイヤ依存とは正反対なもの、であった。

 その確信に満ちた、月、ルビィにある言葉を投げかける。

「ルビィちゃん、それってルビィちゃんの中になにか悩み事があるんじゃないか、それを証明していないかな?ねっ、ルビィちゃん!!」

これを聞いたルビィ、

(えっ、ルビィに悩み事!!えっ、えっ!!)

と、ルビィにとってみれば不意打ちともとれる質問がきたことで一瞬慌ててしまうも、

(ル、ルビィに悩み事なんでないよ!!あっても、(ルビィにとっていやなことをした)月ちゃんには言いたくないよ!!)

と、思ったのか、

「えっ!!なんでもないよ!!なんでもないよ!!」

と、悩み事をごまかすような素振りをみせる。

 が、月にとってみれば、

(ルビィちゃん、今更しらを切るつもりだね。でも、僕からすればもうバレバレだよ!!)

と、しらを切ろうとしているルビィに対してなんでもお見通しともとれる思いになる。それでも、月、ルビィに対してさらなる揺さぶりをかける。

「なら、「真実の口」に手を入れたとき、なんで慌てていたのかな~、ルビィちゃん?」

この言葉を聞いた瞬間、ルビィ、

(えっ・・・、えっ・・・)

と、頭の中が真っ白になる。ルビィにとってみればこの月の言葉は的を得ていた。ルビィの心の中を月によって読まれている、そんな気がした。そうなると、ルビィがとる手段はただ一つだけ、黙ることだけだった。そのためか、

「そ、それは・・・」

と、ルビィは月に対して黙り込んでしまった。

 が、これが月にとってみれば好都合だった。

(これで詰んだね!!ルビィちゃん、黙ればことが済むと思っているけど、それこそ僕にとってみれば好都合だよ!!さ~て、ここから僕のステージだ!!)

と、月、ルビィに対しこれからなにかを仕掛けようとしていた。

 そして、月はルビィに対して反撃ののろしをあげた。

 

「ルビィちゃん、「真実の口」の口に手を入れたとき、ルビィちゃんが慌ててしまった理由、それって、お姉ちゃんであるダイヤさんのことがあったからじゃないかな?」

 

 この月の突然の言葉に、ルビィ、

(えっ、えっ、月ちゃん、ルビィの心の中、よんだ?」

と、きょとんとしてしまうも、すぐに、

(つ、月ちゃん、あっ、あんなことを言っているけど、こ、ここはしらを切るしかない!!)

と、あいくまでもしらを切ることを決めるルビィ。そのためか、

(そ、それなら、まずは心の中、なんとかし、しないと・・・。え~と、お、お姉ちゃん、な、なんのことかな~)

と、心の底から知らないふりをするルビィ。そのためか、ルビィ、

「な、なんでもないずら~」

と、なぜか花丸の真似をしながらごまかそうとする。

 が、そんなもの、熱意を持った月には通じなかった。月、

(な、なんでここにきて花丸ちゃんのまね!?と、いうことは、きっと気が動転しすぎて(ルビィの中では)一番仲がいい花丸ちゃんのまねをしたんだね・・・)

と、ルビィに同情する。対するルビィも、

(えっ、えっ、ルビィ、なんで花丸ちゃんのまね、しちゃったの・・・。ど、どうしたらいいの~)

と、さらにパニックに陥る。

 そんなルビィに対し、月、

(こりゃ、このままいったら、ルビィちゃん、自爆しちゃうね。ここは仕方がない。僕、ここで押し切るよ!!)

と、ルビィに引導を渡すことを決めた。

 そして、月はルビィにあることを言った。

「ルビィちゃん、ごまかさないで!!ルビィちゃん、ちゃんと答えて!!」

このときの月の表情、わざとはいえ、鬼気迫るものだった。むろん、すでにパニック状態だったルビィには十分効果的だった。このときのルビィ、鬼の形相のように迫ってくる(とルビィが思っている)月の表情を見て、

(つ、月ちゃんが起こっているよ~!!怖いよ~!!怖すぎるよ~!!)

と、子ウサギのように身を縮ませてしまった。

 こうなるとあとは月の独断場ともいえた。ルビィ、身を縮ませてしまうも、月、

(ここは絶対に押し切る!!)

と、怒りの表情を一切変えないままルビィに迫ってくる。これには、ルビィ、

(え~、怖いよ~、怖い~!!白旗だよ~!!)

と、月に白旗をあげるとともに、

(月ちゃんの怒りを鎮めるために、どうすれば・・・。こ、ここは、月ちゃんにルビィが悩んでいること、正直に打ち明けたほうがいいかもしれないよ~!!そうすれば、月ちゃんの怒りも鎮まるよね~!!)

と、涙目になりながらも月の怒りを鎮めるために自分の悩み事を打ち明けることを決めてしまった。

 と、いうわけで、ルビィ、少し涙目になりながらも、

「は、はい、そうです・・・」

と、月に正直に答えてしまった。

 が、このルビィの涙目・・・にはとうの月も、

(あちゃ~、こりゃやりすぎちゃった・・・。新しいルビィちゃんに生まれ変わるためにも意を決してルビィちゃんに怒ったけど、ルビィちゃんに深刻なダメージを与えちゃったよ・・・。ルビィちゃん、ごめん・・・)

と、心の中でルビィに怒ったことを詫びると、すぐに、

(でも、これからは仏様モードだよ、ルビィちゃん!!ルビィちゃんの悩み、聞いてあげるからね。もちろん、僕は、ルビィちゃんの悩み事、気づいているけど、そこからルビィちゃんをニュールビィちゃんに導いてあげるからね)

と、ルビィんに対して今度は優しさでもって接しようとしていた。

 なので、涙目のルビィに対し、月、怒りの形相から一転満点の微笑みの表情に変わるとすぐに、

「ルビィちゃん、悩み事、ルビィちゃんだけで抱え込まなくてもいいよ。だからね、ルビィちゃん、ルビィちゃんが抱える悩み事、僕に言ってみて!!僕が相談にのってあげるからね!!」

と、ルビィを諭す。

 そして、この月の微笑みにルビィは・・・負けてしまった。

(月ちゃんの微笑み、なんて神々しいんだ~!!ルビィ、月ちゃんのこと、まるで仏様に見えてしまうよ~!!ルビィ、月ちゃんだったら、ルビィの悩み事、なんか解決してくれる気がするよ~!!)

と、ルビィが思うとともに、

(そして、つ、月ちゃん・・・、なんてたくましいんだ~!!もしかして、月ちゃん、ルビィのことを大事に思ってルビィを叱ったんだね~!!そんなこと考えただけで、ルビィ、キュンとしちゃう・・・!!なら、月ちゃんなら、ルビィの悩み、解決してくるかもしれないね!!それだったら聞いてみよう!!)

と、これまでの月への反抗心はどこへやら、180度態度を変えるだけでなく月に相談することを、月に頼ってしちゃうことを決めてしまったルビィ・・・であった・・・。それほど月がルビィに与えた恐怖心はルビィにとって心が折れるものだったのかもしれない。



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Moon Cradle 第6部 第5話

 こうして、月のお悩み相談コーナーが幕を開けることになった。相談人は黒沢ルビィである。

「実はね・・・」

と、ルビィ、この言葉を言うと続けてルビィが抱える悩み事を伝えた。

「実はね、ルビィにとって今もお姉ちゃん(ダイヤ)のことはとても大事だと思っているんだ。ルビィ、ずっとお姉ちゃんに頼っていきたい、お姉ちゃんなしでは生きていけない。だから、ずっとお姉ちゃんのそばにいる、ルビィ、そう思っているんだ」

が、これを聞いた月、あることを思う。

(うん、僕、知っていた。だって、見ているだけで、ルビィちゃん、お姉ちゃんであるダイヤさんにべったりだったもんね。だから、僕、ルビィちゃんにあんなことを仕掛けたんだよ)

そうである。月がルビィの心が折れるくらい迫ったのはルビィの姉ダイヤ依存を解消せるのも理由の一つだった。なお、ルビィのダイヤ依存はルビィの行動から簡単に推測できるものである。また、月はヴェネチアからフィレンツェに移動中、ルビィの会話などでそのことをすでに把握済みだった。

 そんな月の心からのツッコミなんて知る由もなく、ルビィの話は続く。

「でもね、その一方で、鞠莉‘sママさんが鞠莉ちゃんの自由を奪おうとしている、束縛しようとしているのと同じように、ルビィもお姉ちゃんの自由を奪おうとしている、そん考えてしまうんだ」

と、ここでも月からの心のツッコミ。

(うん、それも知っていた。ルビィちゃん、知らないうちに自分の考えていることが行動として表れてしまうんだよね)

ずばりそうである。これについてもルビィがフィレンツェの一件以来ダイヤと行動しているとき、ダイヤに近づこうと思ったらなぜか離れるなどルビィの態度でルビィの考えが如実に現れていた。と、いうわけで、ルビィ、いわずもがら、自分の考えを隠すのがとても苦手ともいえた。

 とはいえ、ルビィの告白はついに佳境を迎える。

「ルビィ、このままルビィの考えだけでずっとお姉ちゃんのこと、束縛していいのかな?どっちがいいの・・・」

このルビィの苦痛の叫びを聞いた月、ルビィの悩みについて考える。

(やっぱり僕がにらんでいた通りか~。ルビィちゃん、姉のダイヤさんのこれからについて結構悩んでいたんだね。僕はそのことはルビィちゃんの苦痛の叫びを聞く前から知っていたけど、ルビィちゃんからすれば、それは自分の根幹をも揺るがす問題かもしれないね。これからもダイヤさんを自分のものにしたルビィちゃん、その考え、もしかすると、僕の失敗から生まれた静真高校の部活動報告会でのライブの失敗、それにより不安・心配の海・沼の奥底に沈んでしまい、それは昔からあった姉ダイヤさんへの依存、それに回帰してしまったのが原因だったのかもね。けれど、それをルビィちゃんと同じく鞠莉ちゃんを束縛しようとしている鞠莉‘sママさんと重ね合わせてしまったんだね)

今ルビィのなかで起こっているルビィの姉ダイヤ依存、もとはといえば、月の願望、静真本校と浦の星分校の統合をいちはやくさせたい、それをするために、静真高校の部活動報告会、そこで行った千歌たち新生Aqoursのライブ、その失敗が発端だった。ダイヤたち3年生3人がいないことにより不安・心配の海・沼陥った千歌たち新生Aqours6人、そのなかでもルビィの落ち込みぶりは激しく、それが姉であるダイヤ依存に帰依してしまったのだ。が、フィレンツェの鞠莉‘sママとの一件以来、ルビィは姉ダイヤ依存を続けるべきか悩むようになった。それが今のルビィの現状、とてもあやふやすぎる状況を作ってしまったのだ。が、月は自分の手でそのルビィを変えようとしている。そのために今回のことを押し通したのだ。

 そして、その舞台が幕を開けた。

(ルビィちゃん、待っててね。僕がルビィちゃんを癒してあげるよ。いや、僕の手でルビィちゃんを新しいルビィちゃんへと変えてあげるからね)

その月の想いとともに月はルビィに対し優しい表情で、

「ルビィちゃん、ダイヤさんとの関係で悩んでいたんだね」

と、ルビィを諫めるように言うとともにルビィの頭をなでる。

 そして、月はルビィに対しルビィにとって意外なこと、いや、月が何度もフラッシュバックを起こしながらも思い出すことができなかったがヴェネチアからフィレンツェへの移動中に起きた曜との会話で思い出したことを語り始める。

「実はね、僕もルビィちゃんと同じ経験をしたことがあるんだ。それはね、曜ちゃんのことなんだけどね・・・」

これにはルビィ、

(えっ、本当に本当!!月ちゃん、ルビィと同じ状況に陥ったの!!それも曜ちゃんと・・・)

と、びっくりしてしまう。あの誰とでも明るい表情で接する曜とその親友の月の間でルビィと同じ状況に陥ったことについて信じられなかったからだった。そのためか、ルビィ、

「えっ、月ちゃんと曜ちゃんが・・・:

と、きょとんとした表情で言ってしまう。

 そんなルビィの言葉を受けてか、月は静かに月と曜とのあいだで起きたことを語り始める。

「僕はイタリアから沼津に・・・」

まず語ったのは、月がイタリアから沼津に帰ってきたとき、一番最初かつ同年代で唯一の友達が曜であり、その曜とたくさん遊んだこと、曜を通じてたくさんの友達ができたこと、そして、千歌たちと遊ぶ時や高飛び込みの練習の時以外はずっと曜と一緒だったため、月としては双子・姉妹同士と思っており、それがずっと続くと小・中のときはそう思っていたことだった。で、この話を聞いたルビィ、すぐに、

(月ちゃんと曜ちゃん、まるでルビィとお姉ちゃんとの関係と一緒だ・・・)

と、思ってしまう。姉妹という関係であるルビィとダイヤと同様に曜も月と同じ関係であるとルビィは悟ったのである。

 が、これまで明るく話していた月がいきなり暗い表情になってしまう。これには、ルビィ、

(あれっ、月ちゃん、どうしたのかな?あんなに明るく話していたのに、なんで、いきなり暗い表情をしたのかな?)

と、疑問に思う。一瞬戸惑うルビィ。これには、月、

(ルビィちゃん、ここからだよ!!僕はルビィちゃんと同じ状況に陥ったこと、それを今から伝えるよ)

と思うと、月はルビィに自分に起きたことを話し始めた。

「でもね・・・」

これには、ルビィ、

「でも・・・」

と、つばを飲み込む。月はそのルビィの様子を見てためてから言った。

「でもね、別れのときはついに来たんだ・・・」

この言葉にルビィはただ、

「別れ・・・」

と、言葉を窮してしまう。まさか、ここにきて「別れ」という言葉が出てくるとは・・・。ルビィにはそれについて想像すらできなかった。

 そして、月はまじめにこう話した。

「僕と曜ちゃんが高校に進学するとき、曜ちゃん、僕と同じ静真高校、じゃなくて、千歌ちゃんが入学する浦の星女学院に入学してしまったんだ。曜ちゃん、僕じゃなくて千歌ちゃんを選んじゃったの!!」

この言葉に、ルビィ、

(えっ、なんで!!曜ちゃん、月ちゃんじゃなくて千歌ちゃんを選んだの?)

と、少し困惑してしまう。そのためか、

「な、なんで・・・」

と、また言葉に窮してしまう。

 その困惑するルビィの姿を見てか、月はこのときの曜の状況を話した。曜、実は静真高校の推薦入学をこのときに決めていたのだった。高飛び込みの選手としては世界大会でメダルが獲れるほどの実力があるといわれており、そのために部活動が盛んでその実力を伸ばすことができる静真高校に入学したほうがいい、静真に入学して世界に羽ばたいてほしい、と、月を含めてまわりからそう思われていたのである。

 が、月はすぐに、

「でもね・・・」

という言葉のあと、このときの曜が行ったことを語り始めた。

「でもね、曜ちゃんはその推薦を蹴って浦の星に入学したんだ。で、その理由を曜ちゃんに聞いたんだ。そしたら、曜ちゃん、こう答えたんだ、「だって、千歌ちゃんが好きだから」こうして、曜ちゃんは静真高校よりもっと弱小の水泳部がある浦の星に入学していった」

この言葉のあと、月は「千歌ちゃんが好き」といった理由だけでせっかくのチャンスを蹴った曜を本気で怒ったこと、でお、曜は怒る月に対して笑いながらこたえたことをルビィい語った。このとき、ルビィ、

(えっ、曜ちゃん、そんな将来有望な選手だったの!!せっかくその選手になれるのに、なんで千歌ちゃんを選んだの!!)

と、今の曜から想像できないことを聞いてびっくりするとともにそれを蹴ってまで千歌を選んだことに困惑してしまう。そのためか、

「曜ちゃん、なんて答えたの?」

と、月に聞いてしまう。

 これを聞いた月は曜のこのときの想いを語った。

「「だって、千歌ちゃんが入学する浦の星って生徒数が少ないし、千歌ちゃんにとって一緒に入学する友達などはむっちゃんたちか先輩で浦の星に通っている幼馴染の果南ちゃんしかいないんだもん。なら、私自らすすんで千歌ちゃんと一緒に入学して、私と一緒に友達、いっぱい、い~ぱい、作っていこう、千歌ちゃんたちと一緒にね」って」

この曜の想いを聞いたルビィ、

(曜ちゃんって千歌ちゃんのことを考えて、自分の輝かしい未来、約束された未来すら捨ててまで浦の星に入学したんだ・・・)

と、曜に対して驚いてしまっていた。

 そんな驚いているルビィに対し、月はこのときの自分の気落ちを語った。それまでは姉妹のように、双子のようにいた曜と一緒にいられる、そう思っていたこと、でも、曜はそんな月とは違い、もう一人の友達である千歌が困っているから、千歌のためになりたい、その想いだけで、約束された未来すら捨ててまで浦の星に入学したことを。

 そして、月はこう訴えた。

「僕から飛び立とうとしていたんだ、曜ちゃんは!!だから、僕は驚愕した、もう曜ちゃんは僕の曜ちゃんじゃない、曜ちゃんは僕を見捨てたんだ、そう思ってしまった」

これを聞いた瞬間、ルビィ、

(えっ、曜ちゃんってそんなに冷徹だったの!?いつも笑っている曜ちゃんから考えられないよ!!)

と、月が語る曜の姿にびっくりいする。が、このとき、月、

(たしかにあのときは僕はルビィちゃんと同じことを思ってしまったよ。でもね、このあとの言葉に救われたんだ)

と、思うと、その話の続きをルビィに語った。

「でね、驚愕している僕に向かって、曜ちゃん、僕のことを思って次の言葉を僕に送ったんだ、「でね、月ちゃん、私にとって月ちゃんはいつまでもずっと永遠に大切にしたい友達なんだ」って」

これを聞いたルビィ、

(えっ、別れるのにずっと友達!!)

と、これまたびっくりしてしまう。月もこの曜の言葉を聞いて「曜から見捨てられた」と思っていたのにその曜から「ずっと友達」という言葉がでてきたことにびっくりしたようだった。

 そして、月の曜との話は佳境を迎える。

「で、僕、曜ちゃんに「なぜ?」って聞いたらね、曜ちゃん、笑いながらこう答えたんだ、「だって、私にとって月ちゃんは昔からいつも遊んでくれた、千歌ちゃんみたいにずっと遊んでくれた、だから、私から友達の縁を切ることなんて絶対にないよ!!だって、昔も今も、そして、これからも、私、月ちゃんのこと、大大大大大親友、なんだからね、千歌ちゃんと同じくらいにね!!」これで、僕、わかったんだ、僕と曜ちゃんとの縁はこれからもずっと続く、曜ちゃんとのキズナは切れるわけじゃない、けれど、別れはいつかはきっとくる、それなら、ずっと曜ちゃんを僕のものにする、べっとりする関係に終止符を打とう、曜ちゃんを温かく送ろう、と」

このときの月、

(僕、このとき、曜ちゃんのあの言葉にすべてが救われたと思ったよ。だって、あのとき、あの言葉が曜ちゃんから聞いていなければ、きっと、曜ちゃんとはずっと縁が切れたままだったからね。今の僕と曜ちゃんがあるのもあの曜ちゃんの言葉があったからだよ。サンキューね、曜ちゃん!!そして、あの言葉により僕は「別れ」に対する考え方を変えたんだ、「別れとはすべての縁が、すべてのものがなくなる、そんなもの」という考えから次のようにね・・・)

と、思い、その改めた考えの言葉でもって曜との昔話を締めることにした。

「で、このときの経験からある考えにたどり着いたんだ。それは「未来というのは自分で自由なツバサでもって決めるものなんだ。それは、たとえ誰であっても拘束してはいけない、それくらい大切なものだって。そして、たとえ、自分のもとから旅立ったとしても、今までに培われた僕と旅立った者とのキズナ、縁は決して切れない」って」

この月の言葉を聞いたルビィ、であったが・・・、

(これって、今のルビィとお姉ちゃんにもいえることじゃないかな?)

と、自分が今置かれた状況と月と曜が別れたときの話が似ていることに気づく。しかし・・・、

(お姉ちゃんは今、ルビィのもとから旅立とうとしている。けれど、ルビィはただルビィのためだけにお姉ちゃんを放そうとしない、お姉ちゃんを拘束している。でも、そうしたら、お姉ちゃん、未来というこれからお姉ちゃんが自由なツバサで自由に飛び立つ、そんなことができなくなる!!それを、ルビィはしたくない!!でも・・・)

と、ルビィのもとから自由なツバサで自由に飛び立とうとしている姉ダイヤ、それについて自分のためだけにその姉ダイヤを拘束しようとしている、けれど、そんなことをしたくない、そんな二律背反な考えに苦しむルビィ、それはまるで別れによって姉ダイヤとこれまでつながっていたキズナが別れによって切れるのを嫌がっているルビィの姿を、けれど、そんなことをしてまで自由なツバサで大空に飛び立とうとしているダイヤを拘束したくない、そんなルビィの姿、2つの姿のあいだでルビィは苦しんでいるかのようだった。そのためか、ルビィ、おもわす、

「でも、お姉ちゃんとの縁を・・・」

と、つい本音を言ってしまう。

 が、これを月は聞き逃さなかった。月、ルビィの本音を言葉を聞くと、すぐに、

(あっ、ルビィちゃん、とても大切なことを忘れているよ。僕、これは大にしていいたいよ!!別れによって切れるキズナなんてないって!!だからね、ルビィちゃん、今から僕が言うことをちゃんと聞いてね!!)

と、ルビィを見て熱く想うと、ルビィに対し寄り添うようにこうアドバイスした。

「ルビィちゃん、ちゃんと聞いて!!たしかにダイヤさんとは別れることになる。でも、ダイヤさんとルビィちゃん、姉妹というキズナ、縁はいつまでも切れないよ!!血を分けた姉妹、これって、僕と曜ちゃん以上の強いキズナで結ばれているんだよ!!それを忘れないで、ルビィちゃん!!」

 この月のアドバイスにルビィ、

(ルビィとお姉ちゃんの姉妹のキズナ、それはずっと続く・・・。それはたとえお姉ちゃんがルビィのもとから離れたとしてもずっと続く・・・、言われてみればそうかもしれない・・・)

と、月が言いたいことに気づく。そうである。月がルビィに伝えたかったこと、それはたとえ別れることになっても、これまで培われたキズナ、縁は切れることはない、そのことだった。ルビィをはじめ千歌たち新生Aqours6人は静真の部活動報告会でのライブでダイヤたち3年生3人がいないことで不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった。このとき、千歌たち新生Aqours6人は、

「3年生がいない=3年生とのキズナなどがなくなった=0(ゼロ)に戻った」

と、錯覚していたのかもしれない。これにより、千歌たち新生Aqours6人は不安・心配の深き海・沼の度合いを大きくしてしまったのかもしれない。特にルビィはもっとも近くにいた、そして、依存していた、姉ダイヤの存在が急になくなったことで6人のなかでは一番その度合いが大きかったのだ。これが、イタリア・ヴェネチアでのダイヤたちとの邂逅により姉ダイヤなしでは生きられない、ずっとダイヤに依存したいという考えへとつながってしまうのも、フィレンツェでの鞠莉と鞠莉‘sママとの出来事でその考えが鞠莉‘sママがしようとしていること、鞠莉を拘束しようとしていることと同じであると気づいてしまい、そんなことをしたくない、が、ずっと依存していないと生きていけない、そんなジレンマに陥ってしまったのだ。それは、裏を返せば、ルビィと姉ダイヤのキズナが別れにより切れてしまう、それにより、ルビィは姉ダイヤとの関係がなくなってしまう、結果、ルビィは生きていくことができない、それを心配したルビィ、それを阻止するために姉ダイヤを拘束したい、そんな構図が生まれたがゆえのルビィのジレンマだったのかもしれない。けれど、月のアドバイス「たとえ別れても、姉ダイヤとのキズナはいつまでも切れることはない」、つまり、ルビィと姉ダイヤとの姉妹というキズナは別れてもずっと続く、きれることなんてない、その言葉に、別れることでキズナが切れてしまう、そんな心配をしているルビィを癒すことにつながった。そして、ルビィのジレンマすらも解消、いや、ルビィを前向きにしてくれる、そんなカンフル剤になった。

 そして、ルビィはこう思えるようになる。

(そう考えると、なんか、ルビィ、なんかわかった気がする!!ルビィ、なんか頭でもやもやしていたものが吹き飛んだ気がする!!ルビィ、なんかガンバルビィ、できる気がしてきたよ!!)

その思いとともに、ルビィのこれまで暗かった表情が少しずつではあるが崩れていく、そんな感じがしてきた。これには、月、

(あっ、なんかルビィちゃんの中でなにかが変わり始めようとしている、そんな気がしてきたよ!!ルビィちゃん、あともう少しだよ!!ガンバ!!)

と、少しずつではあるが生まれ変わろうとしているルビィの姿を見てルビィを応援する。

 その月の応援からか、それとも、自分から生まれ変わろうとしているのか、ルビィの心の中である思いがルビィの中を駆け巡ろうとしていた。

(お姉ちゃんとの縁、キズナは一生残る!!たとえなにがあってもそれは切れない!!ルビィがこれまで忘れていた大事なこと、それは、たとえお姉ちゃんが離れていても、お姉ちゃんとの縁、キズナはずっと続く!!でも、お姉ちゃんとはずっと一緒にいられるわけじゃない。ずっとルビィのそばにいるわけじゃない。いつかは別れのときが訪れてしまう。ルビィにとってそれが今じゃないかな)

このルビィの思いがこれまでのルビィ、いつも姉ダイヤに依存していた、今までのルビィからみたら想像がつかない、いや、なにか自分の殻を突き破ろうとしている、そんな感がしていた。いあや、ルビィからしたら、それがこれからの自分、新しい自分へと変わるトリガーだったのかもしれない。そのトリガーをついにルビィは自らの意思で引いたのだ。

 そのトリガーを引いたルビィ、ついにある決意を固める。

(なら、ルビィ、決めたよ!!ルビィ、お姉ちゃんを温かく送ろう!!お姉ちゃんに、自分だけ、ルビィだけになっても強く生きていける、1人でも大丈夫なとこを見せて、お姉ちゃんが安心してルビィのところから飛び立てるようにしよう!!そして、お姉ちゃんが自由なツバサで大空に羽ばたかせる、そんなことができるようにしよう!!)

 この瞬間、ルビィにある変化が現れる。崩れかけていた暗い表情が次々と崩れていった。だが、これは悪い意味で崩れていく、そんなものではなかった。崩れていくなかで現れていくものがあった。それは・・・、ルビィの明るい表情、いつものルビィの楽しい表情だった。いや、それだけではない。その表情のなかになにか力強いものが感じられた。それはこれまでのルビィには見られないものだった。それはなにか。それは、自身満ち溢れる、これから1人でもやっていける、そう確信している、ルビィの信念だった。このときのルビィだが、あとでこんなことを言っている。

「ルビィね、このとき、自分の体のなかにあった重たいなにかが次々と剥がれていく、そんな気がしたんだよ」

ルビィにとってみれば、このときこそ新しい自分へのメタモルフォーゼ(変化)だったと自分でも気づいていたのかもしれない。それくらいルビィにとって新しい自分という新たなる体を手に入れた、そんな感じをしていたのかもしれない。

 そのルビィの変化をじかに横で見ていた月、だったが、その変化に、

(ついにルビィちゃんが新しく生まれ変わったよ!!僕、とても感動したよ!!1人の少女が1人の女性として生まれ変わる瞬間に立ち会えたんだからね!!でも、これでルビィちゃんは今までの甘えるだけのルビィちゃんじゃない!!これからは1人の女性として力強く生きることができる、そんなルビィちゃんになったんだから!!)

と、新しく生まれ変わったルビィを見て感動していた。

 そして、月はそんなルビィに対し、あるお願いをした。

「じゃ、ルビィちゃん、もう一回言うね。ルビィちゃん、「真実の口」に手を入れてみて!!」

これには、ルビィ、元気よく、

「はいっ!!」

と、「真実の口」の口の部分に自分の手を入れる。そして、その口から手を抜くルビィ。すると、ルビィの手は切れていなかった。ただの迷信・・・であるが、それはルビィにとってみれば新しい自分に生まれ変わるための通過儀礼ともいえた。「真実の口」は偽りの心のある者は手を抜くときにその者の手首を切り落としてしまう、手をかみちぎられる、という言い伝えがある。ルビィの場合、これまでのルビィはいつも姉であるダイヤに守られていた、内気でもじもじだけしている、姉ダイヤがいないとなにもできない、なにもしない、そんな弱弱しい姿をしていた。が、それが月のアドバイスによりルビィは生まれ変わった。自分の意思で弱弱しい自分、姉ダイヤなしではなにもできない自分、そんな自分と決別することを決めたのである。それはまるで、これまでの自分、「これまでの弱い自分」、という偽りのルビィを「真実の口」がすべてかみ砕いた、ともいえた。そして、偽りのルビィをかみ砕いたあとに残ったもの、それは、とても強い意志。そう、ルビィは「真実の口」に手を入れるという通過儀礼により、「真実の口」でもかみ砕くことができない、とても強い心、とても強い意志を手に入れることができたのである。

 

 



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Moon Cradle 第6部 第6話

 こうして、ルビィは強い心、強い意志を手に入れた・・・のだが、心の奥底にはある思いが残ってしまった。

(ルビィ、確かにたとえ別れても強いキズナは残るっていうことはわかったけど、でも、それ以外のものって残っている・・・わけないよね・・・。別れるってことはキズナ以外のものを失う、キズナ以外のすべてがなくなる、そんなものじゃないの・・・)

そう、このときのルビィはそう思っていた。あの静真での部活動報告会でのライブでは千歌たち新生Aqours6人は3年生がいないことによりなにもかも失った、すべてがなくなった、それにより不安・心配の深き海・沼に陥ってしまったのである。そんなかでキズナだけは残っている、たとえ別れてもキズナはずっと残っている、ずっとつながっている、ということを月のアドバイスによりそれに気づいたルビィであったが、それ以外についてはなくなってしまったと強い心を持った今でもそう思っていた。

 が、そんなルビィに対し、月は違うことを考えていた。

(これでルビィちゃんは新しく生まれ変わった!!でも、ルビィちゃんに伝えたいことはまだある!!いや、今まで伝えたこと以上に大切なものをまだルビィちゃんには伝えていない。それこそ、ルビィちゃんだけじゃなく、曜ちゃんたち新生Aqoursをよみがえさせるために必要なもの、だからね。だからね、ルビィちゃん、覚悟していてね)

そう、月は強い心を持ったルビィをさらなる高みへと導こうとしていた。そして、それが千歌たち新生Aqoursをよみがえさせる、新しく生まれ変わらせることにもつながると思っていた。

 そして、月、その想いを胸にルビィにあることを伝える。

「でもね、旅立つというのはね、それでなにもかもがなくなるんわけじゃないんだよ!!」

この月の言葉に、ルビィ、おもわず、

(えぅ、たしかにキズナは残るけど、キズナのほかになにか残っているの!?キズナ以外なくならないものがあるの!!)

と、驚いてしまう。別れというものはキズナ以外のものはなくなってしまう、そう思っていたルビィにとって意外ともいえる月の言葉だったからだった。そのためか、つい、

「えっ、それってどういうことなの!!別れてしまってもキズナ以外に残るもの、あるの!!」

と、口ずさんでしまう。これを聞いた月、

(ルビィちゃん、くらいついてきたね!!さぁ、ルビィちゃん、僕についてきて!!今からルビィちゃんをさらなる高みへと案内してあげるからね!!)

と、勢い込むとともに、

(でも、まずはルビィちゃんに今回の件を、なんで不安・心配の深き海・沼に陥ったのかわかってもらわないとね!!)

と、月にとって本題?ともいえることをすることを決めた。

 そして、月はルビィに対しあることを聞いてみる。

「じゃ、なんでそう思ているのかな?」

ルビィの言葉、「キズナ以外に残るもの、あるの!!」、この言葉、裏を返せばルビィの心の中には今さっき知ったキズナ以外のものはなくなる、そう思っていることを暗に示していた。それに月は気づいている、そう思ったルビィ、たまらず、

「・・・」

と、黙ってしまう。

 だが、月の言葉はまだ続いていた。

「僕、曜ちゃんたちを見てずっと気になっていた。だって、大切なもの(ダイヤたち3年生3人)が旅立つことでなにもかもなくなる、そんな感じ、イタリアに来る前の曜ちゃんたち6人にはそう感じられていたんだ!!」

この月の言葉を聞いたルビィ、おもわず、

(えっ、たしかにイタリアに来る前、ルビィたち、そんな思い、持っていた気がする・・・)

と、イタリアに来る前のことを思い出してみる。

(たしかに・・・、ルビィたち、(静真の部活動報告会での)ライブでお姉ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんがいないことに気づいて・・・、とても不安・心配になった・・・、お姉ちゃんたちがいないから・・・、何もかもがなくなった、すべて失った・・・と思ったかもしれない・・・)

と、月の言葉、「なにもかもなくなる」、その言葉を反芻する。さらに、

(そして、その思いのまま、お姉ちゃんたちに会いに・・・、ルビィたちが失ったお姉ちゃんたちを追い求めてイタリアに来ちゃった・・・)

と、イタリアに来た時のことを思い出す。Saint Snowの聖良の勧めもあったが、ダイヤたち3年生がいないことですべてを失ったと思った千歌たち新生Aqours6人はダイヤたち3年生3人に会うことでなにかがわかる・・・というよりも、まるで失ったものを補填したい・・・という思いも少なからず持ってそのままダイヤたち3年生3人がいるイタリアへと渡ったのかもしれない。

 それに気づいたのか、ルビィ、ただたんに月の言葉に対して、

「そ、それは・・・」

と、言葉を濁してしまった。

 が、そのルビィの言葉を聞いて、月、

(あっ、ルビィちゃん、ようやくわかったかもね。ルビィちゃん、いや、曜ちゃんたち新生Aqours6人に今まで襲い掛かっていたもの、それは、ダイヤさんたち3年生3人に対する喪失感、だったんだよ!!あの部活動報告会のライブでダイヤさんたち3年生3人がいないことでルビィちゃんたちはそれまで気づいていなかった喪失感に襲われてすべてがなくなったとそう思い込んでしまったんだよ!!)

そう、千歌たち新生Aqours不調の原因、それは、ダイヤたち3年生3人がいなくなったことによる喪失感だった。浦の星の奇跡のライブによりダイヤたち3年生3人は千歌たちから旅立った。そして、3年生3人が旅立って初めてのライブ、静真高校の部活動報告会でのライブのとき、千歌たちはダイヤたち3年生3人がいないという事実を突きつけられる。これまで千歌たちを守ってきた3年生3人がいないという喪失感、大切なものなどをなくしたときの悲痛な心境、そう、千歌たちはそんな心境に陥ってしまったのである。そして、それがなにもかも失った、全部なくなった、ゼロに戻った、といった心境に結び付き、しまいには不安・心配という深き海・沼に陥る元凶にもなったのである。それを月が気づいたのはあのヴェネチアからフィレンツェに移動中に起きた曜との会話であった。その会話で月は中学3年のときの曜との別れによって起きた月の心境と今の千歌たち、特にルビィの心境に似ていることに気づいたのである。同じ状況であると気づいた月、その心境から抜け出す方法も同じはず、そう思ったからこそ月はルビィに対し(少し遠回りになったが)その喪失感から抜け出そうと導いてきたのである。

 そんな月だったが、

(でも、僕の導きでルビィちゃんは新しいルビィちゃんに生まれ変わることができた。だからこそ、もうわかるんじゃないかな?昔のルビィちゃん、弱弱しいルビィちゃん、誰かに依存しないと生きていけない、そんなルビィちゃんだったらわからないだろう。けれど、今のルビィちゃん、自分ひとりで生きていける、強い心を持ったルビィちゃんだったらきっと見つけてくれるはずだよ!!)

というルビィに対しての熱い期待をしてしまう。それは次のルビィに向けた月の言葉にも表れていた。

「でも、ルビィちゃんはすでにわかったんじゃないかな?「真実の口」を通じてその先にある真実を見つけたんじゃないかな?ルビィちゃんの心の中にその答えがあるんじゃないかな?」

この月の言葉を聞いたルビィ、思わず、

「ルビィの心の中・・・」

と言っては自分の心の中に問いかける。すると・・・、

(たしかにお姉ちゃんと別れても、ルビィとお姉ちゃんのキズナは残っている。あと、それと・・・、残るもの、残るもの・・・。あれっ、それってお姉ちゃんと一緒にいた時間のことかな?お姉ちゃんと過ごした、それかな?あと、そのときのお姉ちゃんの中にあったもの?あっ、もしかして、月ちゃんが言おうとしているものってそれじゃないかな?ルビィの心の中にあるもの、お姉ちゃんとの長い時間で生まれた、とても大切なもの・・・)

と、ルビィの中でその答えに気づいたみたいだった。

 が、月の考えはその上をいく。月、なにかに気づいたルビィを見て、

(ルビィちゃん、ようやく答えを見つけたね。でもね、本当の答えはまだあるんだよ。それを今から教えるね)

と思うと、月はルビィにあることを言った。

「ルビィちゃん、今、思っていること、正解だと思うよ。でもね、それ以上に大事なことがあるんだよ!!」

これを聞いたルビィ、おもわず、

(えっ、まだあるの!!ルビィ、お姉ちゃんとの長い間で生まれた、とても大切なもの、だけだと思っていたよ!!)

と、思ってしまい、それが、

「えっ、それって・・・」

という驚きの言葉ででてしまった。

 このルビィの驚いた表情を見た月はそのまま続けて言った。

「ルビィちゃん、とても大切なものを忘れているよ。それはね、ルビィちゃんにあって僕にはないものだよ」

これを聞いたルビィ、

(えっ、月ちゃんになくてルビィにある!!あっ、ま、まさか・・・)

と、ルビィもその大切なものの存在に気づいたみたいだった。

 月はそのルビィの姿を見てその答えを言った。

「それはね、仲間だよ!!ルビィちゃんにはAqoursという仲間、キズナがあるんだよ!!千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、それに、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、ダイヤさんという仲間がね!!そしてね、その仲間を通じてあるものを得たはずだよ!!ルビィちゃん、それはね・・・」

この言葉のあと、月がルビィに本当に伝えたいことを言った。

「それはね、Aqoursというみんなの想い出、みんなの想い、そして、Aqoursを通じて得たキズナ、だよ!!」

このときの月、この言葉の裏ではこんなことを思っていた。

(曜ちゃん、あのときのこと、覚えているかな?僕、あのとき(ヴェネチアからフィレンツェのときに曜と月との会話)がすべてを思い出したんだ)

この思いのあと、浦の星に進学するために月と別れることになった曜が言った言葉を思い出していた。

 

 それは曜から浦の星に進学することを聞いた月が「曜から見捨てられた」「曜から裏切られた」と思い込んでしまったため、曜がすぐに「ずっと友達」と言って慰めるともに別れたとしても曜とのキズナはずっと残っていくことを月に伝えたときのことだった。

(僕、勝手に曜ちゃんとの縁が切れたって思っていたよ)

と、別れることで曜とのキズナが切れた、そう思って自分を恥じた月、このとき、ある決意をする。

(僕と曜ちゃんのキズナはこれからもずっと続く。曜ちゃんとのキズナが切れるわけじゃない。けれど、別れはきっとくる!!それなら、ずっと、曜ちゃんを僕だけのものにする、べったりする、そんな関係に終止符を打とう!!曜ちゃんを温かく送ろう!!そして、なにもわだかたまりなく、なにもかも忘れよう!!だって、別れることはキズナ以外のもの、すべてなくなる、そんなものだから・・・)

こんな決意をした月、曜にこんなことを言った。

「そうだね。僕、勘違いしていたよ。なら、今、ぼっくは曜ちゃんにできることは一つだけ、なにもかもさっぱり、なんにもわだかたまりなく送るよ。なにもかもなくなるかもしれないけれど・・・」

 が、この月の言葉を聞いた曜、月に驚きの言葉を言った。

「月ちゃん、たしかに月ちゃんから旅立とうとしている、そう月ちゃんから見えているかもしれないけれど、とても大切なことを忘れているよ!!」

これを聞いた、月、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。このときの月、

(えっ、まだなにか残っているの!!キズナ以外に残るもの、あるの?)

と、あのルビィと同じ思いを持ってしまう。

 その驚きの月の姿を見て、曜はさらに言った。

「月ちゃん、たしかに私は月ちゃんから旅立つけど、すべてがなくなるわけじゃないんだよ!!旅立つっていうのはね、すべてがなくなる、ゼロに戻った、そう感じるものだけど、本当は、私と月ちゃんが一緒にやってきたこと、築き上げたもの、これまでやってきたこと、すべてが私と月ちゃんの心の中でずっと残っている、私はそう思うよ。そして、それはとても大切な想い出、その中で得た私と月ちゃんの想い、そして、それによって作られた私と月ちゃんのとても固いキズナ、私たちのとても大切な宝物としてずっと残っていく、そう思うよ!!」

 この曜の言葉を聞いた、月、

(あっ、僕、本当に大切なことを忘れていたよ。たしかに曜ちゃんの言う通りだよね!!たとえ曜ちゃんと別れたとしても僕の中にはこれまでに得た曜ちゃんとの想い出、曜ちゃんと僕の想い、それに固いキズナが残っているんだよね!!)

と、曜の言葉に納得していた。

 そして、曜は月にとても大切なことを言った。

「「旅立つ=ゼロに戻る」、それって私から言わせたら勘違いだと思うよ。それよりも、その宝物はどんなことをしても壊れない、むしろ、その宝物を通じてずっと永遠につながっている!!だから、私、こう言えるよ、ゼロなんて戻らない、むしろ、その宝物を通じて渡したちは一緒にその先へ進んでいける、未来という新しい輝きにむかって!!」

 この曜の大切な言葉を聞いた月、おもわず、

(た、たしかにそうかも!!その宝物があれば曜ちゃんと僕はずっとつながっていられる!!それどころか、僕はその宝物を通じてずっと曜ちゃんとその先の未来へと進むことができるんだ!!)

と、曜の言葉に感化されたのか前向きな気持ちになる。

 そんな曜の言葉に感化された月に対し、曜、

「それよりも、これから先、あまり会えなくなるんだから、月ちゃん、もっと遊ぼう!!そして、大切な想い出、たくさんつくろう!!」

と、月に元気よく言うと、月、

「うん、そうだね、曜ちゃん!!」

と、曜が言うことに同意した。

 このあと、月と曜は夕暮れ時になるまで一生懸命遊んだのだが、それよりも帰りが夜遅くなってしまい両親からこっぴどく怒られたのであるが、それは月と曜からみればいい想い出になったのである。

 

 この昔の想い出を思い返していた、月、

(そして、今度はこの曜ちゃんの想いを僕がルビィちゃんに伝える番!!だからね、ルビィちゃん、ちゃんと聞いてね!!)

という想いとともにルビィにこう言うのであった。

「それはね、Aqoursというみんなとの想い出、みんなの想い、そして、Aqoursを通じえて得たキズナ、だよ!!」

 この月の言葉を聞いたルビィ、

(Aqoursというみんなの想い出、みんなの想い、みんなとのキズナ!!ルビィ、とても大切なことを忘れていたよ!!お姉ちゃんだけじゃないんだ!!千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、お姉ちゃん!!この1年間で得たもの、Aqoursを通じて得たもの、すべて、すべてが大切なものだったんだ!!)

と、月の言葉の真意を聞いて本当に大切なものを知ることができたみたいだった。

 が、月の言葉は続く。

「でもね、人というのはね、実際に自分たちの仲間が旅立つんだと思うと残った人たちは再スタート、つまり、今までのことはすべてなくなりまた最初から、ゼロに戻った、もとに戻った、そう感じちゃうんだ。イタリアに来る前、ルビィちゃんたちもなにもかもなくなった、そんな気がしていたね」

この言葉を聞いたルビィ、

(たしかに月ちゃんの言う通りかも。一言で言ったら「喪失感」かな?ルビィをはじめ、みんな、あのライブ(静真の部活動報告会でのライブ)でお姉ちゃんたちがいないことに気づいて、ステージが広く感じられて、不安・心配の海・沼に陥っちゃったもんね。そう考えると、月ちゃんの言うことも一理あるね)

と、ライブで失敗したときのことを思い出す。

 そんなルビィを見てか、月の話はまだまだ続く。

「でもね、僕、声を大にしてルビィちゃんたちに言いたいよ、大事なことを忘れちゃダメだって!!」

このあと、月はルビィに対してあるメッセージを言葉として送った。

「で、僕がいいたいこと、それはね、これまでのやってきたことすべてが僕たちの心の中に残っていることなんだ!!だって、僕たちの仲間が旅立とうとしても旅立つ人たちと一緒にやってきたこと、築き上げたこと、その想い出、その想い、そして、それで得たキズナはね、残った人たち、そして、旅立つ人たちの心の中にずっと残るものなんだよ!!さらにね、旅立つ人たちと一緒に暮らした地、想い出の地もずっと残っている!!そう考えると、「自分たちの仲間が旅立つ=ゼロに戻る」、それ自体間違いだと思うんだ!!それよりも、僕たちや旅立つ人たちが一緒になって経験したこと、やってきたこと、それがみんなの想い出となり、みんなの想いへとつながり、みんなとのキズナへと変わっていく、そして、それらは僕らにとって宝物になっていくんだよ!!」

 この月のメッセージに、ルビィ、

(月ちゃん、たしかにその通りかもね。だって、ルビィたちがあのライブの失敗で得た「喪失感」って「お姉ちゃんがいない=なにもかも失った=ゼロに戻った」といった構図から発生したものだよね!!でも、月ちゃんの言う通り、たとえ離れ離れになったとしても、ルビィたちにはこの1年間で得たものすべてがいい想い出となり、そのなかでみんなの想いへとつながり、そして、みんなとのキズナへと昇華されていく・・・、そう考えると、その喪失感ってルビィたちにとってみれば、幻、だったのかもね!!その幻のせいでルビィたちは苦しんでいたんだよね!!そして、想い出、想い、キズナこそルビィたちにとって宝物なんだよね!!)

と、自分たちが苦しんでいたものそのもの、そして、そのものの幻よりとても大切なものがなにかをより深く理解していった。

 そして、月の言葉はつに佳境を迎える。

「その宝物はたとえどんなことがあってもなにがあっても壊れることなんてない!!むしろ、僕たちは、いや、みんなは、宝物を通じて一緒にその先へと進んでいける、虹の先にある、未来という新しい輝きに向かって!!、って、僕はそう思うよ!!」

この言葉とともに月のルビィに向けた長いメッセージは終わりを迎えた。

 そんな月のメッセージを受け取ったルビィ、思わずこう思った。

(つ、月ちゃん、確かにそうだね!!ルビィ、なんかわかった気がする!!たとえ離れ離れになってもその宝物のおかげでずっとつながることができる!!そう考えると、ルビィ、これまであった、不安・心配というルビィの体に染みついたものがとれていくのを感じるよ!!)

 そして、つにルビィはある決意をした。

(そして、ルビィ、決めたよ!!もう迷わない!!ルビィ、お姉ちゃんたちがいなくても1人でやっていく!!だって、たとえルビィ1人になっても、その宝物を通じて、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、お姉ちゃんといつもつながっているんだから!!そして、たとえバラバラになっても、その宝物があるおかげでみんなと一緒にその先の未来へ、虹の向こう側に、Over tha Next Rainbow、それができるから!!)

この決意のためか、ルビィの表情はより凛々しいものになった。自身満ち溢れている、これまでのルビィでは見られなかった、そんな表情をしていた。このルビィの表情を見た月、

(ルビィちゃんがついに新しいルビィちゃんに完全に生まれ変わったよ!!僕、とても嬉しいよ!!ちょっと遠回りになったけど、僕の目標だった新しいルビィちゃんに生まれ変わらせることは達成できたかな?これであとは新しいルビィちゃんが率先して新生Aqoursを立て直してくれるだろうし、これで僕はお役御免、かな?)

と、自分の木庭を果たしたことに満足するとともに、自分の役割もこれで終わりであると実感していた。

 そして、月は思った。

(聖良さん、僕、やりましたよ!!聖良さんの言う通り、僕が新生Aqoursをよみがえさせるためのキーパーソンでした。そして、僕はついにルビィちゃんを生まれ変わらせることができました。これで新生Aqoursをよみがえせるのも時間の問題でしょう。僕、ついにやり遂げることができました。聖良さん、ありがとうございます)

と、聖良に自分がやり遂げたことを告げるとともにその聖良に感謝の言葉を送った。

 が、このとき、月は忘れていた、聖良が月を新生Aqoursメンバー6人と一緒にイタリアに行かせた理由を。たしかに新生Aqours復活のキーパーソンとして一緒に送ったのだが、もう一つ、聖良が月をイタリアに送った理由があった。それは、月自身が抱える問題、静真本校と浦の星分校の統合問題・・・、その統合を叶えるために必要なもの、そう、あの沼田の問い「部活動とはなにか?」「部活動をする上でとても大切なものとは?」だった・・・。それをこのときの月は忘れていた・・・。

 

 とはいえ、自信満ち溢れているルビィと自分の使命を全うしたとそのときはそう思っていた月、であったが、「真実の口」に来た本来の目的・・・を忘れてはいなかった。

「ルビィちゃん、「真実の口」の横に立って手でハートマークを作ってね」

と、月はルビィに対し指示をだすと、ルビィ、

「うん、わかった!!」

と、「真実の口」の横に立って満身の笑顔で手でハートマークをつくると、月、

「じゃ、撮るね!!はい、チーズ!!」

という掛け声とともに、

パシャリッ

と、スマホのカメラのシャッター音が聞こえてきた。本来の目的・・・あの運命のライブの会場探しのために写真を撮る。それはこれまでのルビィでは見られなかったなんと凛々しい、それでいて笑顔あふれている、そんなルビィの姿を撮った写真になっていた。

 その目的を無事に果たした月とルビィ、そして、

「じゃ、ルビィちゃん、ホテルに帰ろうか!!」

と言うと、ルビィ、

「うん!!」

と力強くうなずくと、2人仲良く自分たちが今日泊まるホテルへと帰っていった。

 



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Moon Cradle 第6部 第7話

 その後、集合時間がもうすぐに迫っていたため、少し駆け足になったが、月とルビィはみんなとの集合場所であるホテルの前に到着する。すると、ほかの8人はすでにその場にいた。

 と、いうわけで、Aqoursメンバー9人+月、合計10人全員が集まった・・・というわけでみんなが撮ってきた写真を見せ合う。その写真を見た鞠莉、

「真実の口、コロッセオ、スペイン広場にトレビの泉!!どこもライブ会場に最適で~す!!」

と、感嘆な言葉が出るくらい、いままで撮ってきた場所を含めてどこもライブ会場としては最適だった。むろん、これについては、月、

(あれっ?こんなはずじゃ・・・)

と、唖然としていた。なぜなら、実はライブの場所の候補地9か所のうち、「真実の口」については月がルビィを生まれ変わらせるために選んだ地、だったからである。「真実の口」の言い伝え(迷信)を口実にルビィを驚かせることで新しいルビィへと生まれ変わらせるために選んだものだった。そして、目的通り、ルビィは新しく生まれ変わった・・・のだが、その効果が絶大だった。これまでの弱弱しい自分から自信満ち溢れる自分へと生まれ変わったルビィ、その自信からみせる絶大の笑顔は「真実の口」を古代ローマの下水道のマンホールから1つの芸術作品へと昇華させてしまったのだ(※何度も言うが「真実の口」は本当は古代ローマの下水道のマンホールだったらしい)。なので、「まっ、ライブ会場の候補地から真っ先に外されるでしょう」と高をくくっていた月だったが、ルビィのまんべんの微笑みによりライブ会場の候補地として残ってしまったのだった。(ただし、候補地9か所すべて残ってしまったのでなんとも言えませんがね・・・)

 と、いうわけで、候補地9か所すべて甲乙つけがたい、どこもライブ会場にしたい、と、ここにいる10人全員同じ考え、だったのだが、それだとライブが大変・・・というわけで、今日の夕食のときにライブ会場についてもう一度相談しよう、ということになり、その場は解散となった。

 そして、解散した後、自分の部屋に戻ろうとするヨハネ、夕食を楽しみにしている花丸に対し、

「ねっ、花丸ちゃん、善子ちゃん!!」

と、呼びかける声が聞こえてくる。花丸、ヨハネ、2人ともその声の方向に振り向くと、そこにいたのは・・・。

「「ルビィ!!」」

そう、ルビィだった。が、2人とも、

(あれっ、いつものルビィちゃんじゃないずら!!(花丸))

(あらっ、いつものリトルデーモン4号(ルビィのこと)じゃないわね(ヨハネ))

と、いつもと雰囲気が違うルビィに驚く。

 が、ルビィ、驚く2人を尻目に、

「ちょっと話があるんだ!!ロビーに一緒に行こう!!」

と、2人に対して言う。これには2人とも、

((えっ、え~!!))

と、いつもの弱弱しいルビィとは思えない、そんなルビィの発言に驚く。

 と、同時に、ルビィ、花丸、ヨハネをホテルのロビーへと向かわせようとしていた。と、いうわけで、ルビィ、花丸、ヨハネ、Aqours1年生コンビはルビィの赴くままホテルのロビーへと移動していった。

 

 ロビーに着いたルビィ、花丸、ヨハネ、そのロビーに設置してあるソファーに3人とも腰かけると、開口一番、ルビィは花丸、ヨハネに対しある質問をした。

「ところで、ルビィたち1年生ってAqoursだとどんな立ち位置なんだろう?」

 しかし、そのことについてまったく気にしていなかったヨハネ、とても凛々しいルビィの雄姿にただ眺めているだけの花丸。これには、ルビィ、

(花丸ちゃんも善子ちゃんもちゃんと聞いて!!)

と、ルビィの言っていることを聞かない花丸とヨハネに対し少し怒り気味になる。そのためか、

「花丸ちゃん、善子ちゃん、答えてみて!!ルビィたち1年生ってAqoursだとどんな立ち位置なの?」

と、花丸とヨハネに力強く聞いてみる。

 この力強いルビィの押しに、花丸、ヨハネ、ともに、

((ルビィ、どうなっちゃったの~)

と、困惑するも、そのルビィの姿に根気負けしたのか、

「1年生の立ち位置ずら~、よくわからないずら~」(花丸)

「1年生の立ち位置って考えたことなかったわね」(ヨハネ)

と、答えてしまう。これには、ルビィ、

(これじゃいつものルビィたちになっちゃう!!やっぱルビィが率先して変えないと!!)

と、自ら進んで変わっていくことを決意すると、この言葉を花丸、ヨハネにぶつけた。

「ルビィね、Aqoursの中で1年生って、どちらかというと、ただついていくだけ、千歌ちゃんたちやお姉ちゃん(ダイヤ)たちの後ろをただついていくだけの存在だと思うんだ」

「ルビィたち1年生は千歌ちゃんたち2年生、お姉ちゃんたち3年生の進む道をただ後ろからついていくだけ。ルビィたち1年生が自ら動いたのって函館の(Saint Snowの)理亜ちゃんのとき、その一件だけだったような気がする・・・」

このルビィの発言、そこにはルビィのある考えがあった。それは、これまでのルビィたち1年生はなにもしてこなかった、ただついていくだけという存在だった、ということ。千歌たち2年生はゼロから今のAqoursを作り上げてくれた。ダイヤたち3年生はそんな2年生、そして、ルビィたち1年生をサポート、フォローしつつ、裏では浦の星の存続などに動いてくれた。これにより、2年生がAqoursのことだけに集中することができた。じゃ、ルビィたち1年生は2年生、3年生の役に立ってきたのだろうか。いや、ただついていくだけ。じゃ、1年生はAqoursのために何かしたのか。いや、なにもしていない。自ら動いたのは理亜の1件だけ。これって今のルビィとダイヤの関係と同じ、ただ2・3年生に守られている、ただついていくだけ、と。

 このルビィの発言、あまりにも的確な答えだったため、花丸、ヨハネ、ともに驚くとともに、ヨハネはルビィに質問した。

「じゃ、なにをすればいいのかな?」

 が、このとき、ルビィ、

(良子ちゃん、このままだと今までと同じ、ただついていくだけの1年生になっちゃうよ!!)

という気持ちとともに花丸、ヨハネに対して逆質問をする。

「これから先、お姉ちゃんたち3年生はいなくなっちゃうんだよ!!千歌ちゃんたち2年生をサポートしてくれる人たちがいなくなっちゃうんだよ!!そうなると誰が千歌ちゃんたち2年生をサポートしてくれるのかな?」

 このルビィの質問に無言になる花丸とヨハネ。この反応に、ルビィ、

(もうお姉ちゃんたち3年生はいないんだよ!!あと残るのはルビィたちだけなんだよ!!それに早く気づいて!!)

という気持ちになり、再び、花丸、ヨハネに対し、

「だれが千歌ちゃんたち2年生を助けるの?」

と、ダメ出しともとれる質問をする。これには、花丸、

(うぅ、ルビィちゃん、強気すぎるずら・・・)

というこれまでに見たことがないルビィの強気に負けそうになる。

 そして、花丸はルビィのダメ出しによってか、ぼそっとある言葉を言う。

「・・・おいらたち・・・」

この花丸の言葉こそルビィが欲しかった言葉だった。ルビィはこのとき、これから3年生がいなくなる今、千歌たち2年生を助けるのはルビィたち1年生しかいないこと、だからこそ、ルビィたち1年生が2年生を助けないといけないことを考えていた。それは言葉として表してしまう。

「そう、ルビィたち1年生しかいないんだよ!!お姉ちゃんたち3年生がいない新生Aqoursにおいて千歌ちゃんたち2年生以外にはルビィたち1年生しかいないんだよ!!」

 が、このルビィの力強い発言をもってしても、花丸、ヨハネが持つ不安・心配・・・、そう、3年生がいない、3年生の助けがないという不安・心配の海・沼から抜け出すことはできなかった。それどころか、これから先、千歌たち2年生をサポートできるかどうかの不安が大きいのか、

「でも、3年生がいないと・・・」

と、花丸から弱気の発言がでてくる。

 が、ルビィ、このとき、ある想いが胸からこみあげていた。旅立つ姉ダイヤをルビィは泊めない、けれど、ダイヤとこれまでやってきたこと、その想い出、その想い、そのキズナは消えない、ずっと心の中に残る、それはAqoursの3年と1・2年との関係でも同じこと、だからこそ同じことがいえる、と。それは言葉として、花丸、ヨハネに提示された。

「お姉ちゃんたち3年生はいなくなるけど、すべてがなくなるわけじゃないんだよ!!お姉ちゃんたち3年生がいなくなっても、ルビィたち1年生はいる!!そして、お姉ちゃんたち3年生がいなくなっても、お姉ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんとの想い出、想い、そして、キズナ、縁までもが消えるわけじゃない!!ずっと続くんだよ!!」

が、とうの2人、花丸、ヨハネは強気で自分の意見をはっきり言うルビィの姿を見て、ルビィの凶変ぶりにたじたじになってしまう。それでも、ルビィはその強気といきおいをもって2人にある提案をした。

「今度のライブはルビィたち1年生が主体となって成功させたいんだ!!これまで千歌ちゃんたち2年生、お姉ちゃんたち3年生についていくだけの1年生じゃなく、これからルビィたち1年生もAqoursの一員として、本当の一員としてやっていけることを千歌ちゃんたち、お姉ちゃんたちにみせたいの、示したいの!!」

 このルビィの提案のあと、ルビィは花丸、ヨハネに対し語り掛けるように言った。

「でもね、それにはルビィ1人だけじゃできないんだ。花丸ちゃん、善子ちゃん、2人の力が必要だよ!!」

「これからは、ルビィたち1年生もどんどんAqoursに参加していきたい!!そして、ルビィたち1年生の未来を切り開いていきたい!!でもね、ルビィ1人だけ動いても力不足かもしれないよ。けどね、花丸ちゃん、善子ちゃんがいればきっとどんなこともやっていける!!3人の力を合わせればきっと明るい未来を切り開くことができる!!だからね、花丸ちゃん、善子ちゃん、一緒にやっていこう!!Aqoursの明るい未来を一緒に切り開いていこう!!新生Aqoursの明るい未来という物語を一緒に紡いでいこう!!そして、安心してお姉ちゃんたちを旅立たせてやろう!!」

このときのルビィ、心の中ではたとえルビィ1人だけ動いても力不足だが、そのルビィの想いに、花丸、ヨハネが加われば絶対に大きな動きになる、だからこそ、今の自分の想いを受け取って3人で力を合わせてAqoursのためにやっていきたい、そんな気持ちでいっぱいだった。

 このルビィの提案に、花丸、ヨハネ、ともに当初はルビィの迫力に戸惑いつつも

ルビィの想いが伝わったのか2人ともルビィの提案に同意した。

 

 そして、夕食のとき・・・。

「それで決まりましたの?」(ダイヤ)

「うん、なんだっけ?」(千歌)

「歌う場所ですわ!!」(ダイヤ)

案の定予想通りだった。夕食時にライブ会場について相談することになっていたが、意見がまとまる・・・はずもなく、点々バラバラな意見がでてしまう。ダイヤはこのときのことを「小田原評定」、いや、「Aqours評定」と評するくらいいろんな意見がでてくる。ひとつの物事に対してAqours全体で動くときはそれだけに集中するくらいやるときはやる、ひとつにまとまる・・・のだが、いつもは三者三葉ではなく、九者九葉ともいえるくらい個々の個性が強すぎるためか点々バラバラになってしまう節がある。それが今回も実証されてしまったのである。そのためか、しまいには、

「全部使っちゃいたいくらいだよね」

と、千歌が発言するくらい9か所すべて使ってしまいたいという意見もでてしまう。だが、今回は鞠莉の将来、スクールアイドルの未来をかけたライブであり、そのジャッジをするのは鞠莉を永遠に拘束したい、さらにはスクールアイドルに否定的な考えを持つ鞠莉‘sママである。今回はその鞠莉‘sママに直接ライブを見せるのであり、複数個所でライブをしてしまうと鞠莉‘sママが鞠莉に、いや、Aqoursに不利なジャッジ、つまり、自分が鞠莉を拘束することを決めてしまうのは確実だった。また、そのライブをあとで動画として編集して鞠莉‘sママに見せたとしてお、鞠莉‘sママの考え「スクールアイドルなんてくだらない」それを覆すことなんてできない、なぜなら、人というのは動画を介して見るより直接見たときの臨場感や迫力というものが人間の五感を刺激するものであり、その人の考えを変えてしまう、なんてことを起こしやすいから。

 で、点々バラバラな意見に対して、ダイヤ、

(なにかまとまるきっかけがあればいいのですが・・・)

と、悩んでしまう。

 が、ダイヤ、このとき、

(あれっ?ルビィ、どうしたのでしょうか?)

と、ルビィの方を見ると、そこには何かを決めた、とても真剣な目をしたルビィの表情があった。

 そのダイヤとは別にそのルビィの真剣な姿を見ていた、花丸、ヨハネ、このとき、

(ついにルビィちゃんが立ち上がるずらね。ならば、ここはおらたちが切り出すずら!!)(花丸)

(ついに、ルビィ、覚悟を決めたわね!!なら、ルビィの想い、このヨハネが助けようぞ!!)(ヨハネ)

と、ここは自らルビィのために一肌脱ぐことを決める。

 そして、ついに1年生のターンが始まる!!曜、

「コロッセオとかは?」

と、発言すると、月、おもわず、

「ビデオカメラは僕に任せて!!」

と、少しでも千歌たちAqoursのためになりたいのか必死にアピール。

 そんなときだった。

「ちょっと聞いてほしいことがあるずら!!」(花丸)

「私たち1年生でも話し合ってみたいのだけど」(ヨハネ)

と、ルビィがすぐに切り出せるようにレシーブ、トスをあげていく。このとき、花丸、ヨハネ、

(善子ちゃん、ルビィちゃん、決めるずら!!)(花丸)

(ルビィ、思いっきり決めなさい!!)(ヨハネ)

と、心の底からルビィに声援を送る。

 この2人の声援に、ルビィ、

(花丸ちゃん、善子ちゃん、2人の思い、届いたよ!!絶対に決めるよ!!)

と、心の中で2人にお礼を言うと、意を決して席を立ちあがりこう訴えた。

「今回のライブの場所をルビィたち(1年生)に決めさせてほしい!!」

ルビィ、渾身の訴え。これにみんな唖然。ダイヤにおいては、

「えっ!!」

と、これまで見たことがないルビィの姿に驚く。ただ、月だけは、

(ついに、ルビィちゃん、決心したんだね!!これまでの弱弱しい自分とおさらばして新しい自分んを受け入れることを決めたんだね!!僕、本当に嬉しいよ!!)

と、感動していた。

 そのルビィ、続けてこれまでは千歌たち2年生、ダイヤたち3年生に頼ってばかりであったことを言うと、

「だから、このライブは任せてほしいの!!」

と、真剣なまなざしで自分の想いをみんなにぶつけた。

 そんなルビィたちの決意をみた千歌、

(ルビィちゃん、一皮むけた気がする。なら、ルビィちゃんたちに任せたらいい方向に進む、そんな気がする!!)

と、思ってしまう。そのためか、ルビィの訴えの後、すぐに、

「それだったら、ルビィちゃんたちに任せよう!!」

と、1人で決めてしまった。

 このことについて、普通なら「独断では」と反対するメンバーがあらわれるはずなのだが、

(千歌ちゃんが言うんだら、大丈夫!!)(曜)

と、千歌の言うことだから、というだけで誰も反対せず。なぜなら、いつも困ったときの千歌の判断は間違いないから、たとえ困難であっても千歌が言うのであれば絶対うまくいく、そんな気持ちが全員にはあった。それは、ラブライブ夏季大会で予選敗退し冬季大会への出場、そして、学校見学会をやめて浦の星が閉校への道へと進もうとしていることに悩んでいたAqoursメンバー、だが、そのときに言った千歌の「あがいていこう!!」という言葉のもと、最後の最後まであがくことを決めたのだ。それにより、閉校まであともう少しのところまで阻止することができたし、ラブライブ!冬季大会を優勝することもできたのだ。なので、千歌が「ルビィちゃんたちに任せよう」という言葉はAqoursメンバー全員にとってこれから先の道しるべだと感じていた。

 と、いうわけで、だれも千歌の決めたことに反論せず、ルビィたち1年生がライブ会場の選定という大役を任せることになった。

 が、このとき、ダイヤ、このルビィの雄姿を見て、逆に、

(えっ、ルビィ、なんでこうなったの?)

と、目を点にして驚いていたみたいだった。



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Moon Cradle 第6部 第8話

 このダイヤの疑問は夕食後のシャワーのときも続いていた。ルビィと一緒にシャワーを浴びているとき、ダイヤはふとルビィの方を見る。

(なんであんな弱弱しいルビィが変わったのですか?私の知らないところで何かあったのですか?)

と、ときどき一緒に浴びているルビィのほうを見るも、そのルビィはというと・・・。

「?」

と、ルビィ、首をかしげてしまう。これには、ダイヤ、

(なっ、なにかの間違いでしょう・・・)

と、なにかの間違いではないかと思ってしまった。

 が、そのダイヤの疑問はこのあと確信へと変わる。シャワーを浴びた後、ダイヤはルビィに対し、

「さあ、ルビィ、髪をタオルで拭いて差し上げますわよ」

と、ルビィにいつもの通り髪を拭こうとするも、ルビィ、すぐに、

「お姉ちゃん、ごめんね。今日はルビィが、髪、拭くから・・・」

と、ダイヤを拒絶した。これには、ダイヤ、ルビィが拒絶したのははじめて、ということもあり驚いてしまう。

 それでもダイヤはルビィに「心配しないで」と言ってはルビィの髪を拭いてあげると言うも、ルビィ、

「お姉ちゃん、本当にごめんね。でも、これからは、ルビィ、自分で髪を拭くことを決めの」

と、これまでのルビィ、ダイヤ一筋だったルビィ、とは違った答えをする。これには、ダイヤ、少し混乱してしまう。

 が、ダイヤ、心を落ち着かせ、もう一度ルビィのほうを見る。すると、ルビィの目つきがいつも以上に真剣だった。ダイヤ、意を決してルビィにある質問をした。

「今日に限ってどうして(髪を)拭かせてくれなのですか?」

 このダイヤの質問にルビィは自分の髪を拭くのを断った理由を姉ダイヤが知りたいことに気づく。そして、これこそ自分の気持ちを姉ダイヤに伝えるいい機会、ということで、

(それなら、ルビィの決意、お姉ちゃんに伝えよう!!)

と、自分の決意をダイヤに伝えることを決める。そして、すぐにベッドの上に正座をし、ダイヤの顔を真剣にまじめに見つめる。ダイヤもこのルビィの真剣さに答えるため、自らもベッドの上に正座した。

 ベッドの上で正座する2人。まず最初に口を開いたのはルビィだった。

「ルビィ、これまでお姉ちゃんにべったり、いつも甘えていた。ずっとお姉ちゃんがいないとなにもできない子だった。けれど、これからはルビィ1人でやっていく!!お姉ちゃんがいなくても大丈夫!!やっていける!!ルビィはそう決めたの!!」

このルビィの決意にダイヤは「ルビィから離れることなくずっと一緒」と思い、

「甘えていいんだよ!!さあ、我慢しないでこっちにきたら?」

と、ルビィに優しく話しかけるもルビィは意外なことを言う。

「ルビィ、これからはお姉ちゃんがいなくてもやっていけるよ!!」

 そして、これまでルビィが姉ダイヤをがんじがらめにしていたこと、けれど、これからはルビィという鎖を解き放って自由なツバサで羽ばたいてほしいことを言うと、

「お姉ちゃんに甘えていた昔のルビィは今日で卒業。これからは一人前の女の子として、ガンバルビィ、したいの」

と、自分が今思っていることをダイヤに告白した。これには、ダイヤ、ルビィ1人で頑張るなんて今までのルビィからしたらいまだに信じられず、これまで自分を頼っていた妹ルビィがこれからは1人でがんばることについてももっと自分を頼ってほしい、しかし、自分の意思でダイヤから離れてしまうことになんか寂しさを感じていた。

 そして、ダイヤはルビィにこう言った。

「でも、私としてはちょっと寂しいですわ、ルビィが私から離れようとしていることに・・・」

 が、このとき、ルビィ、

(お姉ちゃん、たしかにルビィはお姉ちゃんから離れるけど、とても大切なことを忘れているよ!!だから、ここでルビィが言うね、とても大切なことを・・・)

と思うと、ダイヤに向かって、

「たとえこれからお姉ちゃんがいなくても一人でやっていく、ガンバルビィ、できるって。でもね、これだけは忘れたくないの・・・」

という前置きのあと、元気にこう言った。

「それはね、お姉ちゃんとの想い出!!お姉ちゃんとの想い!!これまでやってきたことすべて!!それで得たお姉ちゃんとのキズナ!!」

そして、ルビィ、それらはすべてルビィにとって大切なものであることを伝えた上で、

「その大切なものをすべてルビィの胸のなかに抱いて、これからはルビィ1人でやっていく!!だから、ルビィ、お姉ちゃんから卒業する。でもね、卒業するとしても、お姉ちゃんとの想い出、想い、キズナはルビィのなかにずっと残っていく!!」

と、ダイヤにそう告げた。

 これを聞いたダイヤ、あることに気づく。

(ルビィが私から卒業する、これって私もルビィから卒業することになるかもしれませんね)

そう、ルビィが姉ダイヤを頼ろうとすると同様にダイヤも妹ルビィを頼ろうとしていたのだ。これまではルビィ1人でできることでもすぐにダイヤはルビィを助けた。これがルビィのダイヤ依存になってしまった理由。が、ルビィは今姉ダイヤから旅立とうとしている。これをみたダイヤはついに決心する。なんと、ルビィに、いや、自分自身に、

「ブ、ブー、ですわ!!」

をしたのだ。これにはルビィもダイヤに対して心配そうにするも、ダイヤは自分に「ブ、ブー」をした理由を語った。

「ルビィが私に依存していたのと同じように私もルビィに依存していたからですわ」

そして、ルビィ1人でもできることも自分のために勝手に代わりに動いていたこと、それはルビィをダイヤを頼るのと同様に自分もルビィに頼っていたこと、自分がルビィを思い通りに動かしていたこと、けれど、ルビィの決意で自分もそれに気づいたことを言うと、

「私も決めましたわ、今日をもって私から卒業していくルビィと同様に、私も今日をもってルビィから卒業する」

と、ルビィに自分の決意を語った。

 これには、ルビィ、困惑。「姉と妹の関係は・・・」と口で言うも、ダイヤはそんなルビィにこう答えた。

「心配しなくてもよろしくてよ。私との想い出、想い、キズナがルビィの心のなかにあると同様に、私にも、ルビィの想い出、想い、キズナは私の心の中に深く刻み込まれておりますわ。それを大切にして自由なツバサで飛び立ちますわ!!」

 そして、ダイヤはルビィの頭の上に自分の手をのせてこう言った。

「今のルビィは昔のルビィとは違うこと、いや、今や、ルビィは未来のAqoursをしょって立つ存在に成長したことを」

このダイヤの言葉に対し、ルビィ、ダイヤに抱き着く。「昔のルビィに戻った」と、ダイヤが言うと、ルビィは謝ってしまった。

 そんなルビィに対し、ダイヤはルビィにある約束事を言った。それは・・・。

「ルビィ自ら言ったこと、責任をもってちゃんと行動で示しなさい!!」

これには、ルビィも自信をもって元気よく答えた。

「はい、わかっています、お姉ちゃん!!」

 

 そして、ルビィを寝しつけた後、ダイヤは1人バルコニーにでて夜の星を眺めていた。そんななかで、

(でも、ルビィ、この旅を通じてとても成長したんですね。お姉ちゃんとしてとても嬉しいことです!!)

と、ダイヤはルビィの成長ぶりにとても感心していた。まさか、あのルビィが一昔前の弱弱しい姿とは比べ物にならないくらい凛々しい姿を姉ダイヤの前で見せてくれると姉としてはとてもうれしいののだった。

 そして、ダイヤ、ルビィをここまで成長させた月についてもある思いでいた。

(そして、月さん、あなたのおかげでルビィは大きく成長することができました。本当にありがとうございます)

ルビィを大きく成長させた月に対する感謝の心を持ったダイヤ、であったが、その一方でこんな思いも持っていた。

(でも、月さん、あまりに変わりすぎですよ・・・)

そう、月が根回ししているとき、ダイヤと約束したこと、「ルビィを変える」、そのことについて、自分の予想の斜め上以上にルビィが成長したことに少し苦慮もしていた。

 

 一方、そのころ、ホテルの入り口では・・・。

「なんか、ごめんね・・・」

と、果南がホテルに入ろうとする千歌と曜に突然謝ると続けて、

「鞠莉が急にあんなこと(鞠莉‘sママの前でライブを行うこと)を言いだすからだよ!!」

と、果南が言うと、果南の横にいた鞠莉から、

「SELL WORDにBUY WORDで・・・」

と、言い訳を言ってしまう。どうやら、鞠莉、「売り言葉に買い言葉で・・・」といいたそうだっだようだ。

 そして、果南は千歌と曜にあることを言いだす。

「もし、抵抗があるようだったら、私たち3人だけでなんとかする方法のあるから、千歌たちは・・・」

 しかし、このとき、千歌、

(果南ちゃん、私たちのことを心配してくれてありがとう。でも、今の私たちにとって、これこそチャンス、だって思っているんだよ!!)

と、思うと、

「ううん、いいの」

という言葉を発する。これに呼応してか、曜、

「私たちも嬉しいというか・・・」

と言ってしまう。

 そして、千歌と曜は果南と鞠莉にある真実を話す。

「実はね・・・」

その言葉のあとに言った言葉とは・・・。

「私たちを含めてルビィちゃんたちも不安だったと思うし、みんなちょっと悩んでいたんだよね、新しいAqoursってなんだろうって」

新しいAqours・・・。千歌たち新生Aqours6人は当初なにも考えていなかったのかもしれない。1・2年生6人で新生Aqoursを始める、最初はただそれだけしか考えていなかったのかもしれない。しかし、月と木松悪斗の争いに巻き込まれる形で最初に行ったライブ、分校というとても理不尽ともいえる、いや、木松悪斗にとってとても都合のいい、そんな環境に置かれた浦の星の生徒のために行ったライブ、木松悪斗とその娘の旺夏のたくらみ、そして、鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感により失敗に終わり、千歌たち6人は不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった。だが、この旅を通じてルビィは成長した、月によって成長した。しかも、ルビィは成長したことにより新生Aqoursメンバー6人のなかで一番その答えをしることができた。が、ほかのメンバーはいまだにその答えをだすことができていなかった。

「自分たちで見つけないといけないのはわかっているけど、なかなか・・・」

この千歌の言葉、裏では

(聖良さんは鞠莉ちゃんたち3年生と一度会って話せばいいって言ったけど、鞠莉ちゃんたちと会ってもいまだにわからないよ。いったいどうすれば・・・)

と、悩んでいた。そのためか、

「果南ちゃんはどう思う?」

と、果南に「新しいAqoursとはなにか?」を直接聞いてみる。

 が、とうの果南はというと・・・、

(千歌、それは自分たちで見つけるしかないと思うよ。だって、千歌たち新生Aqoursは、私たち、私、ダイヤ、鞠莉はもういない。部外者である私たちが言うのはちょっとお門違いだよ!!)

という気持ちが強く、果南、

「千歌の言う通りだよ!!千歌たちが見つけるしかない」

と千歌に言うと、鞠莉も、

「そうだね。私たちの意見が入ったら意味ないもん!!」

と、果南に同意する。鞠莉も果南と同じ考えだったようだ。これには淡い期待をしていた千歌と曜はがっかり・・・。

 でも、このとき、果南、

(たしかに私たちがその答えを教えることはできないよ。でも、そのヒントを与えることはできるよ。そのヒントはね・・・)

と思うと、すぐに立ち上がり千歌の前に立つ。そして、

「でも、でも、気持ちはずっとここにあるよ!!」

と言うと千歌の胸のあたりを突っついた。さらに、

「鞠莉の気持ち、ダイヤの気持ち、私の気持ちは必ずずっと・・・」

という言葉を千歌に送る。このとき、果南、

(千歌、私の言葉に気づいてね!!たとえどんなことがあっても私たちの気持ちはずっと千歌たちの心の中に残るものなんだって!!私たちから言えるのはそれだけ。だけど、このヒント、このヒントから千歌たちはきっと答えを導くことができる、私はそう思っているよ!!)

と思っての言葉だった。

 そして、この果南の言葉に、千歌、

(えっ、ずっと・・・)

と、果南の言葉を反芻すると、それが、

「ずっと・・・」

という言葉となって表れてしまう。これには果南も「ずっと・・・」という言葉を千歌と同じく反芻する。この言葉の反芻に、千歌、

(私の胸を突っついて果南ちゃんが言った言葉、「ずっと・・・」。ずっと・・・、ずっと・・・。あっ、それって、「どんなことがあっても鞠莉ちゃんたちの気持ちは私たちの心の中にずっと残っていく」・・・のことかな?それって・・・、それって・・・、あっ、もしかして、それが私たちにとって大切なこと、なんじゃないかな?そうだよ!!それこそとても大切なものだよ!!)

と、とても大切なことに気づいたのか、とても明るい表情をみせるようになった。そして、曜もそれに気づいたみたいだった。

 その千歌の明るい表情を見てか、果南、安心したのか、

「じゃ、おやすみ!!」

と言っては鞠莉と連れてその場をあとにした。

 その後、千歌は座っていたソファーから立ち上がると、曜の手を取り、

「なんか、ちょっとみえた、みえた気がする!!」

と言っては曜と一緒に笑いあっていた・・・。

 

 が、このとき、千歌と曜、2人がいるロビーの物陰にある少女が隠れていた。千歌と曜は気づいてなかったが、その隠れていた少女は笑いあう千歌と曜を見てこう思っていた。

(こりゃ、一足遅かったよ!!まさか、鞠莉ちゃんたちに先を越されるなんて!!本当だったら僕がビシッと決めるつもりだったのに~!!)

そう、月だった。月、どうやらルビィが大きく成長したことで新しいルビィに生まれ変わったように今度は千歌と曜に狙いを定めてルビィと同じことをしようと考えてみたいだった。が、鞠莉と果南に先を越されたことでその計画もおじゃんとなってしまったのだ。

 とても悔しがる月・・・ではなかった。むしろ・・・、

(でも、本当ならそれがいい方法かもしれないね!!だって、本当は自分たちでその答えを探すべきだから!!)

と、ちょっと嬉しくなっていた。ルビィにとって月の策略とはいえ月の進言で生まれ変わったのであるが、本来なら自分たちで答えを探すほうがよかったりする。なので、月にとってみれば、今回はそれでよかった、と思っていたのである。

 と、いうわけで、お役御免、と思った月、その場を離れようとした、そのとき・・・、

「あの~、月ちゃん、ちょっといいですか?」

と、月、凛々しい声をした少女に呼び止められる。その少女はバスローブ姿だったが、黒髪ストレートで、THE 大和なでしこ、ともとれる容姿をしていた。さらに、

「まさか、ルビィちゃんをあんな力強い少女に生まれ変わらせるなんてね!!まさしく、静真の才女、だね!!」

と、こちらは青い髪のポニーテールをなびかせる体つきもいい長身の少女、さらに、

「なんかマリーたちのお株をスティール(奪う)なんて、静真の生徒会長だけをしているのがとてもおしいです~!!」

と、こちらも金髪の外国人みたいな少女、その3人が月を取り囲んだ。

 これを見た、月、おもわずこう言って声をわずらわせた。

「ダイヤさん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、なんでしょうか・・・」

 

 鞠莉たち3年生3人は月を連れて別の階のロビーに移動した。そして、そのロビーに着くなりダイヤが開口一番この言葉を言い放つ。

「月さん、よくもルビィをあんな姿にしましたわね!!」

このダイヤの言葉を聞いた、月、

(えっ、僕、ルビィちゃんに悪いことをしちゃったの!!僕、曜ちゃんたち新生Aqoursのためにやったことなのに、どうして、どうして・・・)

と、戸惑いをみせると、

「あっ、あの・・・」

と、言葉に窮してしまう。

 この月の表情を見た、果南、すぐに、

「ダイヤ、月ちゃんを脅しているようにみえるよ」

と、ダイヤに指摘。これには、ダイヤ、

「ご、ごめんなさい、月さん・・・」

と、月に謝る。これには、月、

「ど、どうも・・・」

と、こちらもたどたどしてなってしまう。

 月とダイヤ、2人のあいだに気まずくなるような雰囲気が流れていた・・・のだが、こんな雰囲気に1人の少女が嫌気をさしてしまう。

「ダイヤ、月、なんでグローリー(暗い)のですか!!もっとブライト(明るく)に!!」

これを聞いた月とダイヤ、

「鞠莉さん・・・」(ダイヤ)

「鞠莉ちゃん・・・」(月)

と、2人とも鞠莉のほうを見る。鞠莉、どうやら2人の暗い雰囲気に嫌気をさしたのか、できる限り明るくふるまうように言ったのだ。そんな鞠莉に果南が援護射撃。

「ダイヤ、ここは月を脅かしにきたんじゃないんだよ!!」

これを聞いたダイヤ、

「ご、ごめんなさい・・・」

と、しゅんとなってしまった。

 そんなダイヤだったが、

「それはそうと・・・」

と言ってはすぐにまじまなダイヤに戻ると、月に対しあることを言った。

「月さん、ルビィを成長させてくれて本当にありがとうございます。もうこれでルビィは私なしで生きていくことができるでしょう。本当にありがとうございます」

このダイヤのいきなりのお礼に、月、

「えっ、ダイヤさん、そんなにかしこまないでください!!」

と、お礼を言うダイヤに頭を下げないようにお願いする。それでも、ダイヤ、

「それでも私はそんな月さんにお礼を言いたいのです!!」

と、月にお礼を言いたい、そんな気持ちを示していた。なんに対してもまじめ、それでいて網元の娘として律義に筋を通す、そんなダイヤの姿がそこにはあった。が、それがある意味悪い方向へと進んでしまった。もちろん、月も、

「ダイヤさん・・・、そこまで頭を下げなくても・・・」

と、こちらもダイヤに負けじとお願いをする。 

 そんなダイヤと月、またもやただならぬ雰囲気、というか、堂々巡り・・・、になるも、果南、これではいけないと、ダイヤをすぐフォロー。

「月ちゃん、本当にありがとうね!!ルビィちゃん、いつもお姉ちゃんであるダイヤにべったりだったんだよ。それが月ちゃんの頑張りでダイヤなしでも頑張れるルビィちゃんになったんだもの!!本当、月ちゃんって人を導くことがとてもうまいね!!」

この果南の言葉を聞いた月、

「あっ・・・、どうも・・・」

と、口を濁す。その月、

(え~と、どちらかというか・・・ショック療法と申しますか・・・脅しというか・・・)

と、おどおどしてしまう。たしかにルビィを生まれ変わらせることができたが、その方法、どちらかというと・・・ショック療法に近いもの・・・ということもあり、他人から褒めてもらえる・・・ということには気を引けてしまっていた。

 そんな月に対し、鞠莉がある話を始める。

「そんな、人を導くことが得意な月にお願いがありま~す!!」

そして、鞠莉はとても重要なことを言いだした。

「月、あなた、イタリアで行うAqoursのライブ、ヘルプ、してくださ~い!!」

 これを聞いた、月、思わず、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。たしかに月もイタリアで行うAqoursのライブの手伝いをするつもりだった。ただ、自分がするのはライブのときのビデオカメラでの撮影だけ、そう月は思っていたのだ。が、そんな月に思いもかけないことを鞠莉は言いだした。

「そのヘルプですが~、ライブの撮影だけでなく、Aqoursのライブを行うためのプリペア(下準備)をお願いしま~す!!」

これを聞いた、月、

(えっ、僕がAqoursのライブの下準備!!僕、やったことないよ~!!)

と、びっくりしてしまう。たしかにライブの下準備は必要である。しかし、それはAqoursのみんなかいつも手伝ってくれるよいむつコンビが行うこと。その下準備をしたことがない自分が行うなんて本当にできるか心配だった。

 それでも、月は鞠莉にあることを尋ねる。

「あの~、鞠莉ちゃん、その下準備って・・・?」

それを聞いた鞠莉、すぐに答える。

「それはね・・・、一言で言ったら、ディレクター、かもね!!」

ディレクター、この言葉を聞いた、月、

「ディレクター?」

と、なんのことだかわからないのか、すぐに鞠莉に尋ねる。すると、鞠莉、

「そう、ディレクター、だよ!!」

と、その言葉だけ言う。だけど、ただそれだけ言ってもなんのことだかわからなかった月。

 その月のためか、ダイヤ、鞠莉に対し、

「鞠莉さん、ただ、ディレクター、だけ言っても月さんにはわからないでしょ!!」

と、鞠莉に注意すると、ダイヤは鞠莉の言葉について説明し始めた。

「ディレクターって言うのは、文字通り、Aqoursの縁の下の力持ち、というものでしょう」

 そして、ダイヤはそのディレクターの主な仕事を言っていく。Aqoursの練習プランの策定、ライブ会場の使用許諾申請、必要なものの発注、などなど。小さいこともあるが、それらはすべてとても重要であるとダイヤは念押しして伝えた。

 そのダイヤの念押しのあと、果南はある事実を言いだす。

「で、このディレクター的な仕事、実は、私たち3年生がこれまでやってきたの。けれど、これからは私たちはいない。なら、千歌たちにやってもらう・・・といいたいのだけど、みんな今のことでいっぱいいっぱい。それに、たった6人しかいないから、これから先、ディレクター的な仕事ができるかどうか微妙・・・」

そう、Aqoursのディレクター的な仕事はダイヤたち3年生3人がやってきたのである。ダイヤと鞠莉はAqoursの対外的なことをしてきた。特にAqoursが9人になって初めてのライブとなった沼津の夏祭りにおいてはダイヤが全部対外とのやりとりを引き受けていたのである。そのあとは浦の星の理事長として鞠莉もダイヤの手助けをしつつ2人で対外との交渉をしていた、だけでなく、ラブライブ!冬季大会のホテルなどの手配、行程表の作成などもしていたのである。対して、果南はAqoursの内の部分、練習プランの作成、新しい練習方法の導入などを担当してきた。いわば、3年生3人が分担してAqoursのディレクター的な仕事をしてきたのだ。が、その3年生がいなくなる今、これまで3年生がしてきたディレクター的な仕事をかわりにしてくれる人がいないのが実情だった。2年生の千歌はそれをするのが苦手、曜はまじめで誰とでもフレンドリーになれるがそれがネック、なぜなら、ときには人に対して厳しく接する必要もでてくるから、梨子は作曲担当であり、それ以上に負担をかけたくない、ルビィ達1年生はたしかにこれからのAqoursをしょって立つ存在になるだろうが、今は成長時期でディレクターというとても重要なことを任せるのは忍びない・・・、そんなこともあり、なぜか月に白羽の矢がたったというわけである。が、その理由を鞠莉はこう答えた。

「でも、月だったらその大任を任せられま~す!!だって、月は静真でプレジデント、つまり、生徒会長、なんでしょ!!それに、生徒たちや静真の先生たちから絶大なる支持を受けているんでしょ~!!」

そうである。月は生徒会長として静真の生徒や先生たちから絶大なる信頼を得ていた。それは、月たち静真高校生徒会が生徒たちにとって満足しうる施策を行ってきたからである。だからこそ生徒たちから絶大なる信頼を得ていたのである、月は。そして、それは浦の星の理事長である鞠莉の耳にも入っていた。そのため、鞠莉は月を信頼してとても大事な浦の星の生徒たちを静真に預けることを認めたのである。が、まさか、あの静真の大スポンサーであり、裏で小原家と浦の星を恨んでいた木松悪斗が反旗を翻して浦の星の生徒たちを苦しめようとしているなんてあの鞠莉でさえ予想にもしていなかったのだが・・・。

 とはいえ、ダイヤは月にこう言った。

「月さん、今のAqoursは月さんを必要としております。あなたがAqoursに、私たち3年生がいない新生Aqoursにとって、今、必要な存在です!!だからこそ、月さん、手を貸してください!!」

このダイヤの必死のお願いに、月、

(うっ、僕、こんな困っている人を黙ってみていられないよ・・・)

と、自分が持つ、困っている人を見捨てることができない、その心がびんびんと働いてしまう。でも、その親切心があるおかげで曜というとても大切な大親友を持つことができ、そして、静真の生徒会長として絶大なる信頼を得てきたのである。

 と、いうわけで、月、

「わかりました、僕でよければ・・・」

と、鞠莉たち3年生のお願いを聞くことにした・・・。

 しかし、たとえ優秀な月であったも突然たった一人でやらせる・・・わけにもいかず、イタリアでのAqoursのライブについては月に必ず3年生の誰かが1人付くことになり、その3年生からディレクターとしての仕事を教えてもらうことになったのである。

 

 



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Moon Cradle 第6部 第9話

 そして、翌日・・・。

「う~ん、この日程だとすぐにでもスタジオの手配をしないといけませんね・・・」

と、ダイヤはうなっていた。ここは月たちが泊まっているホテル近くにあるカフェ。ここでダイヤと月はここイタリアでのライブまでの行程表を練り上げようとしていた。その際、練習するためのスタジオの手配についてダイヤは困っていた。日本であればすぐにでもスタジオの手配はできるのである。たとえば、ラブライブ!冬季大会中に使っていた沼津駅前の貸しスタジオ、これは曜の知り合いがAqoursのためにと貸してあげたものだったが、ダイヤはその際借りるために必要な書類一式をたった1日で作り上げたのだ。これには曜の知り合いもダイヤに感心していたのだが、今回はイタリアということもありたとえ有能なダイヤとしてもすぐに貸しスタジオの手配なんてできない・・・のであった。

 が、突然、

「あのう、ダイヤさん、それならすでにここの近くにあるスタジオをおさえましたけど・・・」

と、月が突然発言する。これには、ダイヤ、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。実は、月、昨日のうちにネットでホテル近くの貸しスタジオをおさえてしまったのだ。これには、ダイヤ、

(こ、これは規格外ですわ!!月さん、なんて有能すぎる!!まさか、昨日の今日でここの近くの貸しスタジオをおさえるなんて・・・。これは私としても教えがいがありますわね!!)

と、なぜかやる気をだしてしまっていた。

 そんななか、突然カフェのデッキ付近で、

ガタンッ

という椅子が動く音が聞こえてきた。これには、月、

「あれっ、あれはルビィちゃんたちじゃないかな?」

と、ダイヤにこっそと言うと、ダイヤ、

「確かにそうですね。でも、ルビィはまだこちらには気が付いていませんね」

と、月にこそっと話す。2人が見ている先、カフェの外のデッキ、そこにはAqoursの1年生トリオ、花丸、ヨハネ、そして、2人を引っ張ってきたルビィの姿があった。しかし、3人には月とダイヤの存在には気づいていないようだった。実は月とダイヤは静かなところで行程表を練りたいと思ったのか、カフェの奥のほうのテーブルに座っていたのだ。そして、そのカフェの外のデッキ付近にルビィたちが来たのだが、ダイヤと月はカフェの奥のほうにいるため、ルビィたちにはそのカフェの奥のほうにいるダイヤと月の存在に気づいていなかったのだ。

 そして、ルビィは奥にいる月とダイヤの存在に気づかないまま外のデッキに設置しているテーブル近くの椅子に座ると写真をテーブルの上に広げてはいろいろと写真を取って花丸とヨハネと一緒にいろいろと話し合っていた。これには、月、こそっとルビィのほうを見ると、

「ダイヤさん、どうやら、ルビィちゃんたち、ライブの場所決めをしている最中みたいですよ」

と、ダイヤにこそっと話すと、ダイヤも、

「たしかにそうですね・・・」

と、月に同意していた。

 そして、20分後・・・。

「どれもこれも良すぎて迷うずら~」

と、花丸が音を上げてしまった。候補となっている場所9か所ともライブの会場としては良すぎて選ぶことができなかったのだ。これにはヨハネも同じ状況だったのか、

「もういっそうのこと全部の場所でやればいいのよ!!」

と、すべての場所でライブを行うことを提案してしまう。

 が、これには、ルビィ、

(もし、ぜんぶの場所でやったら、それで昔のルビィに戻ってしまう!!)

と思ったのか、

「それはダメだよ!!」

と、花丸とヨハネに注意する。

 が、ルビィの全力否定に、ヨハネ、

「じゃ、ルビィはどこがいいの?」

と、ルビィに反論。これには、ルビィ、

「そ、それは・・・」

と、言葉に窮してしまう。ヨハネの意見に反論したルビィであったが、

(どこも良すぎてルビィ1人じゃ選べないよ~)

と、ルビィとしてもお手上げ状態であった。それでも遠くの場所からルビィたちを見守っている月、

(ルビィちゃん、頑張って、絶対に道は開けるから!!)

と、ルビィを陰から応援していた。

 その月の思いが叶ったのか、突然、ルビィにとって運命の扉が開かれようとしていた。それは花丸のある発言からだった。花丸、ルビィとヨハネの対立のあいだちゅう、これまで撮ってきた写真を見ているうちにあることに気づいた。それはある写真を見てからだった。花丸がその写真を見た瞬間、なんと花丸が大声をだしてこう言ったのだ。

「あっ!!ここってあそこに似ているずら~!!沼津内浦の砂浜海岸にある石階段にずら~!!」

これには、ルビィ、

(えっ、沼津内浦の石階段!!ここってイタリアだよね!!そうだよね!!)

と、びっくりすると、

「えっ、どれどれ!!」

と、花丸に駆け寄る。すると、花丸、その1枚の写真を手に取り、

「ここの階段ってあそこの階段に似ているずら~!!」

と言ってきたのだ。その写真を見たルビィ、

「あっ、本当だ~!!確かに似ている!!」

と、花丸の意見に同意する。このとき、ルビィ、ある妙案を思いつく、この場所なら鞠莉‘sママにスクールアイドルのすばらしさを理解させることができるだけでなく、これからのAqoursを指し示すなにかを見つけることができるかもしれない、と。

 そして、ルビィは思いもたっていられず花丸とヨハネに対しその写真の場所に行くことを告げてそのまま強引に2人を連れて行ってしまった。これを見ていた月、

(ルビィちゃん、なにか思いついたみたいだね。僕、それがなにか知りたい!!)

と思うと、すぐに、

「ダイヤさん、はやくルビィちゃんたちを追いかけましょう!!」

と、ダイヤに元気よく言うと、ダイヤも、

「あっ、たしかにそうですね・・・。ルビィのことだから心配ないと思いますが、ここはこっそりルビィのあとを追いましょう!!」

と、月に同意すると、月とダイヤはルビィを追いにカフェをあとにした。

 

 そして、ルビィ、ついにその目的地に到着するなり、

「ここだ~!!」

と、大声をあげてしまう。

 で、ルビィによって強引にこの場所まで連れられたためか息を切らしてしまったヨハネと花丸であるがここがどこかわかるまえに息を整えていた。その1人、ヨハネ、息を整えてまわりを見渡すと、ルビィに対し一言。

「で、ここは~?」

 すると、花丸、あることに気づく。

「あっ、階段があるずら!!もしかしてここって~」

 その花丸の言葉のあと、ルビィはその場所の名前を言った。

「そう、スペイン広場!!ルビィ、決めた!!ここで、ライブ、する!!」

それはルビィの妙案が確信へと変わった瞬間だった。

 

「月さん、あともう少しでルビィに追いつきますわよ!!」

と、ルビィを追いかけていたダイヤは一緒についてきた月に言うと、月も、

「うん、そうですね、ダイヤさん・・・」

と、うなずく。ルビィが早く走っていったので月もダイヤもルビィに追いつくのが大変?にも見えたが、元から体力に自信のある月と月と同じくらい体力に自信のある・・・というよりも超アウトドア派の鞠莉と果南と一緒にいる時間が長かったためか自然と体力がついたダイヤにとって朝飯前だった。

 そして、ルビィが目的地であるスペイン広場に到着してまもなく月とダイヤも到着。二人はルビィに見つからないように物陰に隠れると、ルビィ、突然大声をあげた。

「そう、スペイン広場!!ルビィ、決めた!!ここで、ライブ、する!!」

このルビィの大声を聞いた月、おもわずある言葉を思い出す。

「あっ!!ここってあそこに似ているずら~、沼津内浦の砂浜海岸にある石階段にずら~!!」

あのカフェの花丸の発言、そう、内浦の砂浜海岸にある石階段に似ている、それを聞いたルビィはなにを思ったのかこのスペイン広場に行き、ここでライブ会場にするって決めたのだった。

 月、そのルビィがここに来るまでの経緯をたどっていくうちにあるルビィの思いに気づく。

(あっ、さては、ルビィちゃん、ここでライブをして、千歌ちゃんたちに自分が伝えたいことを気づかせたいんだね!!)

そう、月は悟った、ルビィがこのスペイン広場をライブ会場に選んだ理由を。ルビィはここでライブをすることで千歌たちに自分が伝えたいことを、自分たちがゼロに戻ったわけじゃない、自分たちにはAqours9人がこれまでやってきたこと、経験したこと、その想い出、その想い、そのキズナがあることを、そして、イチのその先に進んでいることを気づかせようとしていることを。なぜなら、

(だって、曜ちゃんが言っていた、「この砂浜(内浦の砂浜海岸)は(千歌・曜・」梨子がスクールアイドルを始めたとき)練習する場所がなくて仕方なくこの砂浜海岸で練習していた地」って。つまり、曜ちゃんたちからすればその内浦の砂浜海岸は、いわば、ゼロの地!!)

そう、内浦の砂浜海岸は千歌たちからすればいわば、ゼロの地、であった。千歌たち2年生3人は最初その海岸で練習していた。その後、千歌たちはAqoursとして大活躍していく。その練習場所もその活躍により、学校の屋上、体育館、そして、沼津駅前の貸しスタジオへと移っていった。だが、廃校などにより、千歌たちの練習場所はもとの内浦の砂浜海岸へと逆戻りとなった。それは千歌たちにとって「ゼロに戻った」と知らないうちに思い込ませるようになったのかもしれない、が、それは違っていた。月はそう思った。

(たしかに練習場所はもとに戻った。けれど、もとの地に戻ってくるあいだに曜ちゃんたちAqoursはいろんな人いろんなものと触れ合ってきた。そのなかで、Aqours9人はいろんな想い出、いろんな想い、いろんなキズナを得てきた。だからこそ、ルビィちゃんは思った、ゼロの地である内浦の砂浜海岸、その石階段に似ているスペイン広場の石階段でライブをすることで千歌ちゃんたちにそれを気づかせようとしているんだね、ルビィちゃん!!)

このルビィの想いを悟った、月、次の瞬間、こう思い始める。

(なら、僕ができること、それは、ルビィちゃんの想いに応えること!!ルビィちゃんのその想い、きっと僕が叶えてあげるからね!!)

 それを受けてか、月、このとき、ダイヤにあることを言った。

「僕、今から市役所に行ってきます!!」

この月の言葉を聞いたダイヤ、

「えっ、市役所!!」

と、びっくりするも、月はそんなダイヤをおいて市役所へと向かおうとする。これにダイヤもびっくりしながらも月についていった。

 

 ローマ市役所・・・。月はそこに着くなりそのまんま市役所の窓口へと進む。そして、窓口に着くなり開口一番こう言いだした。

「すみません。スペイン広場を管理している方を出してもらえませんか?」

すると、しばらくしてちょっと小太りした男性職員が出てきた。その男性職員、出てくるなり月に向かってこう言った。

「私がスペイン広場を管理している部署の者ですが、何かごようでしょうか?」

 この職員の言葉のあと、月は、

「すみませんが、この日にスペイン広場でライブを行いたいと思っております。そのためにこの日にスペイン広場を借りたいのですが」

と、この職員にスペイン広場を貸してもらえるように頼んでみる。ヨーロッパの場合、映画などのロケで有名な観光施設を使うことがよくあるため、日本みたいにロケなどの許諾を断ることはそこまでない・・・のだが、今回は違っていた。男性職員はすぐに、

「日が近すぎますね。それに、Aqours?知らないアーティストだね。そんな人たちにこの偉大なスペイン広場を使わせるなんて、ローマの人たちから見れば恥と言えますね!!」

と、月たちのことを馬鹿にしつつ、月のスペイン広場のレンタル依頼を一蹴してしまった。

 これには、月、

(う~、この職員、僕たちのことを馬鹿にしちゃって・・・。このまままじゃ僕の腹の虫がおさまらないよ!!)

と、少し切れ気味になる。そのためか、月の表情が険しくなる。が、イタリア語がわからないために月と男性職員とのやりとりの内容がわからなかった(月と一緒に来ていた)ダイヤでさえ月の表情から交渉が決裂したことを理解していた。そのため、ダイヤ、

「月さん、ここはひきましょう。後日、あらためて来ましょう」

と、月に提案。それには、月、

「それなら、今日の午後、改めて来ます!!そのときは詳しく話し合いましょう!!」

という捨て台詞?を言ってその場を後にした。

 その後、月はというと・・・、

(なんなの、あの職員!!まるで僕たちのことを下手に見るなんて、納得いかない!!)

と、あの職員のことに怒り気味になる。が、月と一緒に来ていたダイヤは、

「やっぱりスペイン広場を借りるのは難しいみたいですね。私としても妹のルビィのためにスペイン広場をライブ会場にしたいのだけど、あの様子だとね・・・」

と、はんば諦め気味になったいた。

 が、月にはそんなことお構いなしだった。

(なんとかしてスペイン広場を借りたい!!でも、あの職員をぎゃふんといわせるものがない・・・)

と、スペイン広場を借りたいものの、あの男性職員を納得させるだけの材料がないことに困っていた。

 

(どうすればあの職員を納得させることができるのか・・・)

と、月は悩みながらもダイヤとともにホテルへと戻る。その途中、ダイヤから、

「月さん、この日は全体練習を1日中行います。それでいいですね」

と、スケジュールについて確認をとると、月、

「僕もそれでいいと思いますよ」

と、ダイヤの意見に同意する。それでも、月、

(いったいどうすれば・・・)

と、自分の頭の中で押し問答を続けていた。

 そう悩んでいる、月、であったが、ホテルに近づくと、突然、ダイヤから、

「あっ、月さん、見てください!!」

と、指をさして月にそちらの方向に見るように言うと、月もそっちを見てしまう。すると、月、

「あっ、すごい人混み!!人が多く集まっている!!」

と、驚いてしまう。

 その月、その人混みを見て、

(あっ、なんかいいヒントになるかもしれない!!)

と思ったのか、その人だかりのところに近づくことにした。

 その人だかりに着くなり、月とダイヤはその人混みのなかを進んでいく。すると、月、

「す、すごい!!」

と、驚嘆の声をあげる。そこにいたのは華麗に踊るストリートダンサーたちだった。そのダンサーたちは仮面をかぶりながら社交ダンスをすると思ったら、突然、仮面を取ってブレイクダンスみたいなダンスをするなど、縦横無尽なダンスをみんなに見せていた。

 社交ダンスとブレイクダンス、まったく異なるダンスを組み合わせたダンスはローマ市民だけでなくたまたまそこを通りかかった観光客からも好評だったみたいで、そのダンサーの周りには人だかりができてしまった、というわけである。そして、そのダンスに、ローマ市民と観光客、いや、観客すべてがそのダンスを見ては楽しんでいた。

 そんな周りの人たちの様子を見ていた、月、おもわず、

(あっ、いいこと、思いついちゃった!!)

と、なにか妙案を思いついたみたいで、一緒に来ていたダイヤに向かって、

「ダイヤさん、ちょっと外に出ましょう!!」

と言ってはダイヤと一緒にその人だまりのなかから脱出した。

 そして、抜け出すと、ダイヤ、すぐに、

「月さん、少し落ち着いてください!!私、もう少しダンスを見たかったのですが・・・」

と、月に苦言を言うものの、月、それについてはおかまいなしとばかりに、

「ダイヤさん、お願いがあります!!」

と、突然ダイヤに言う。これには、ダイヤ、

「つ、月さん、な、なんでしょうか?」

と、月の突然の発言におどおどしてしまう。その月、ダイヤに対し、

「ダイヤさん、これまでのAqoursのステージの映像、持っていますか?」

と、確認をとる。そのダイヤはというと・・・、

「ええ、たしかにあります。たしか、私のケータイにその動画データがあります」

と答える。ダイヤはこれまでやってきたAqoursのライブの映像データを持っていた。ダイヤはこの映像データでもっていつもダンスのおさらいやライブの反省を行っていた。それはAqoursをまとめるためでありよりよいものにしていこうというダイヤのまじめさからのものだった。が、卒業してからもその動画データはダイヤは消さずに残していた。ダイヤからすればそれは自分の大切な想い出であり、それを見返すことでこれまでのことを思い出すだけではなく、明日へと頑張っていこう、という気持ちを起こさせるもの、であった。

 その動画データの存在を知った、月、

「それなら、すみませんが、その動画データ、コピーしてもいいですか?僕にくれませんか?」

と、ダイヤにお願いする。これを聞いたダイア、

「それはいいですけど、何に使うのですか?」

と月に尋ねる。すると、月、こう元気よく言った。

「それはね、ルビィちゃんの願いを叶えるために使うのですよ!!」



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Moon Cradle 第6部 第10話

この日の昼、月は・・・、

「また来ましたよ、ローマ市役所!!待ったなさい!!絶対にぎゃふんって言わせてあげるからね!!」

と、ローマ市役所のまえに来ていた。さらに、

「わおっ、ここがローマ市役所ね!!宮殿みたい!!」

と、鞠莉が喜びながら言った。なんと、月、今度は鞠莉を連れてきていたのだ。なぜなら、鞠莉は浦の星の理事長として官庁とのやりとりをした実績があること、さらに、(鞠莉にとってみれば当たり前だが)イタリア語が堪能であることも加味されていたからだった。

 そんな月と鞠莉は市役所に入るなり重厚な部屋に通される。ローマ市役所は昔の宮殿を市役所として転用しているため、その部屋に到着したとたん、あまりの装飾品のすごさに、月、鞠莉、

「うわ~、すごい!!」(月)

「It’s beautiful!!」(鞠莉)

2人とも驚いていた。

 そんな驚いた2人のもとに、

コンコン

という音が聞こえてくると音がしたドアが開く。そこから、

「お待ちしておりました、小原様!!」

と、男性職員が3人部屋に入ってきた。

 そして、その職員たちはすぐさま、

「さぁ、おかけになってください、小原様」

と、ソファーへとおかけいただくように月と鞠莉に言う。これには、鞠莉、

「わかりました」

と言って月と一緒にソファーに座った。

 その職員たち、月と鞠莉がソファーに座るなり、すぐにこう切り出した。

「え~、この日にスペイン広場を借りる点ですが・・・、それについては大丈夫です!!」

これを聞いた、月、

(えっ、大丈夫なの!!朝はダメって言っていたのに、なんで、そんな簡単に手のひらを返してきたの!?)

と、職員たちに不信感を持つようになる。

 が、その職員たちの話は続いていた。その職員たちはなんといやらしいことを言いだしてきたのだ。

「しかし、そのためにはお金が必要です。小原様、まずはお金を収めてください」

と、鞠莉の目の前に請求書が出される。そこには月はおろか普通の人たちでも払うことができないくらいの額が書かれていた。これには、鞠莉、

「これってローマ市に払わないといけないものですか?」

と、職員たちに尋ねてみる。すると、職員たちは、

「はい、その通りです!!」

と、はっきり答えてしまった。

 が、鞠莉、この職員たちの対応にこう考えてしまう。

(これがいわゆる、賄賂、ってものですね~。世界有数の財閥である小原家から賄賂をもらおうなんて、本当に極悪非道、ですね~)

そう、鞠莉はわかっていた。今、職員たちが請求しているのは自分たちへの賄賂であった。実はイタリアは汚職が問題になったりそれがニュースとして世界中に流れてしまうことがあったりする。そして、今回も職員たちは鞠莉にお金を、いや、賄賂を要求してきたのだ。鞠莉の実家、小原家は世界有数の財閥、さらに、イタリアは小原家にとって先祖代々暮らしてきた地、なので、イタリアにも小原家関連の企業が多かったりする。で、それを知っている職員たちは小原家の娘鞠莉に賄賂を請求してきたのだ。で、これが、朝、月とダイヤがローマ市役所に来た時にスペイン広場の使用許諾を拒否された理由にもつながる。たしかに、ダイヤの実家、黒沢家は網元の家というだけあって名家である。が、それは沼津での話。世界ではそこまで名は知られていなかった。そのため、職員たちからすれば、月はおろかダイヤすらお金を持っていない、自分たちに賄賂を贈れない、普通の人として見られたために断った、というのが理由だった。

 で、これを鞠莉の対応で知った、月、

(なんて極悪非道な連中なんだ!!本当にけしからん!!)

と、怒り気味だった。

 とはいえ、鞠莉からすれば賄賂を職員たちに送ればその職員たちから弱みを握られずっとしゃぶられてしまう、そう思ったのか、鞠莉、すぐに、

「その要求にはお答えできません!!」

と、賄賂を贈るのを全力拒否した。これには職員たちからも、

「な、なんですと!!」

と、驚いた表情をする。鞠莉の全力拒否は、小原財閥は賄賂すら断るクリーンな企業、というイメージを職員たちに植え付けることになったのだ。

 と、いうわけで、話し合いは完全に決裂・・・、

「わかりました。この話はなかったことにしましょう」

と、職員たちが言うと、さらに、

「私たちに賄賂を送らないのであれば、一生スペイン広場はおろかローマ市全域どの場所でも使用許諾を出せないことになりますがいいですか?」

と脅しを言うと、鞠莉、

(そんなの、こちらから願い下げで~す!!)

と思ったのか、

「あなたたちにお金を渡すくらいなら、イタリアのほかの場所でライブを行ったほうがましです!!」

と、Sell word(売り言葉)にBuy word(買い言葉)で反論する。

 だが、このとき、月、

(鞠莉ちゃんの言うことも正しいけれど、そうしたら、ルビィちゃんの願いを踏みにじることになる!!ルビィちゃんががっかりする!!)

と、がっかりするルビィの顔を思い出したのか、ここはなんとかしないといけない、そんな思いになる。が、このままだとこの話は破談になってしまう、そんな危機感をもった、月、ついにある決意を固める。

(ルビィちゃんのがっかりした顔は見たくない!!こうなったらあれを使いしかない!!いつやるの、今でしょ!!)

この決意のあと、月は職員たちに向かってこう叫んだ。

「ちょっと待ってください!!これを見てください!!」

このあと、月、すぐに自分のスマホを職員たちの前に掲げてボリュームを最大にするとこう切り出した。

「見てください!!これが、これが、スクールアイドルという世界最大の輝きをもつ者の真の姿です!!」

 この月の言葉のあと、月のスマホからある映像が流れてきた。そこに移っていたのはAqoursのライブ映像だった。月はダイヤからそのライブ映像データをもらうと短時間でそれを編集し一つのドキュメント映像に仕上げたのだった。

♪~

スマホから流れるAqoursのライブ映像。職員たちはそれを食い入るように見る。

「ウォ!!」

と、突然声を上げる職員たち。ちょうど「MIRACLE WAVE」で千歌がバク転を成功させるところだった。さらに、

「It’s beautiful!!」

と、職員たちから感嘆の声が聞こえてくる。ちょうど「WATER BLUE NEW WORLD」の衣装の一部が羽に変わるシーンのところだった。この職員たちの姿を見た、月、

(これでなんとかなるかな?)

と、一安心だった。

 が、そんなとき、

ガチャッ

とドアが少し開く音がする。が、鞠莉を含めて誰も月のスマホから流れるAqoursのライブ映像に釘付けになってしまいその音に誰も気づいていなかった。

 とはいえ、映像が終わるとすぐに月が職員たちにこう言った。

「スペイン広場でライブを行うAqoursというスクールアイドルグループは日本でもっとも有名なスクールアイドルです!!だからこそ、スペイン広場でAqoursがライブをすることを認めてください!!」

月、このとき、Aqoursのライブ映像に釘付けになった職員たちの姿を見て、絶対に認めてくれる、と思っていた。。

 が、職員たちは意外な反応をみせる。職員たち、なんと、

「賄賂をくれ!!賄賂をくれないと許可しない!!」

と、言ってきたのだ。話はまた平行線・・・だった。これには、月、

(ルビィちゃん、ごめん!!僕、どうすることもできなかった・・・)

と、悔やんでしまう。

 が、このあと、誰もが予想できない展開が起きてしまう。職員たちがいまだに、

「賄賂をくれ!!賄賂をくれ!!」

と、月と鞠莉に言い続けると、まもなく、

「へぇ~、賄賂が欲しいんだ~」

と、ちょっとあか抜けた声が聞こえてくる。これを聞いた職員たち、

「はい、私たちは賄賂が欲しいのです~」

と、なぜか正直な気持ちで答える。これに対し、

「じゃ、私から賄賂を渡そう!!」

という声が聞こえてくると、

「やった~!!」

と喜ぶ職員たち。

 ところが、喜ぶ職員たちに対し意外な答えが返ってくる。

「賄賂は賄賂でも、警察の留置所という賄賂だけどな~。いや、ヴェネチアのため息橋の奥にある独房がいいかな?一生出ることができない独房という賄賂を送ろうかな?」

これを聞いた職員たち、

「やった~、て、えっ!!」

と驚いてしまう。

 そして、職員たちはちょっとあか抜けた声のする方を向いてみる。すると、そこにいたのは・・・、

「えっ、ローマ市長!!」

そう、市長だった。市長はすぐに職員たちに言う。

「おまえたち、どうやら賄賂をその少女たちにせびっていたように見えたのだがね・・・」

これには、職員たち、

「いや~、私たちはなにも・・・」

と、しばらくれるが、鞠莉、すぐに自分のスマホを取り出し、

「あなたたち、すでに賄賂の証拠はここに揃っているので~す!!」

と、職員たちの前で、まるで「水戸黄門」みたいに自分のスマホを突き出すとあるスマホ画面に映るスイッチみたいなものにタッチする。すると・・・、

「賄賂をくれ!!賄賂をくれ!!」

という先ほどの職員たちの声が聞こえてきたのだ。実は、鞠莉、用心のために職員たちとの面談が始まる前から自分のスマホでこの部屋の音声を録音していたのだ。鞠莉、最初、ダイヤと月がこの職員たちに会ったときにスペイン広場の使用許諾を断られたことを月とダイヤから聞いたとき、絶対に裏がある、と思ったのか、なにかがあったときのために用心して録音していたのである。

 この鞠莉の突き出した動かぬ証拠を聞いた市長、職員たちに対し鉄槌を下す。

「おまえたち、もうすぐ警察が来る!!そこでおとなしく待っとけ!!」

これには職員たち、

「はい・・・」

と、しゅんとなってしまう。これには、月、

(なんてかっこいい・・・)

と、市長に対してキラキラしたまなざしを見せていた・・・。

 そして、警察が職員たちを連れ出したあと、市長は鞠莉に対し、

「これは鞠莉様、よくぞはるばるローマに来ていただきありがとうございます」

と、挨拶をすると、鞠莉、

「これはローマ市長、この度は助けていただきサンキューで~す!!」

と、市長にお礼を言う。

 このあいさつのあと、鞠莉と月、ローマ市長はソファーに座る。どうやら、イタリアでも影響力を持つ小原財閥の中心、小原家、ここローマでも公共投資などで小原家の影響があるらしく、小原家の一人娘である鞠莉をローマの代表であるローマ市長直々に迎えてくれた・・・といった感じだった。

 そんなローマ市長、月に対しお願いをする。

「月さん、あの映像をもう一度見せてくれませんか」

あの映像、そう、月が編集したAqoursのライブ映像である。月、

(あれっ?市長さん、なんか食いつき、いいね!!なら、脈あり、かな?)

と思うと、すぐに、

「はい、どうぞ」

と、自分のスマホでその映像を流す。すると、

「これはすごい!!」

と、市長、大いに喜ぶ。どうやら、さっきのドアの音、大音量で流したAqoursの歌声にたまたまその部屋の近くを歩いていた市長が食いつきドアを少し開けてその映像を遠くから見ていた・・・というのが実情だったみたい・・・。

 その市長、映像が終わると、すぐに月のほうを向きこう言った。

「もし、このグループがスペイン広場でライブを行うのであれば私は全力で応援します!!だって、このグループには花がある。その花を咲かせる場所こそこの美しい街、ローマ、なのですから!!」

この市長の発言を聞いた、月、

「あ、ありがとうございます!!」

と、大喜びながら市長にお礼を言った。どうやら、ローマ市長自らスペイン広場の使用を許諾した、みたいだった。

 

 こうして、月が編集した動画でAqoursの大ファンとなった市長の働きかけによりスペイン広場の使用許諾を得た月と鞠莉、市庁舎から出てくるとき、

(やったよ、ルビィちゃん!!僕、ルビィちゃんの願い、叶えることができたよ!!)

と、心の中で大喜びしながら歩いていると、突然、

「月、どうだった?今回は月のおかげでなんとかなったで~す!!」

と、鞠莉から声をかけられると、月、

「はい、なんか嬉しい気持ちです!!」

と、素直な気持ちを鞠莉に伝えた。

 この月の素直な気持ちを聞いた鞠莉、月にあることを言いだす。

「月、今回はルビィのために、いや、Aqoursのために動いてくれま~した!!今回はライブ会場の使用許諾だけだったけど、その一つ一つの小さなサクセス(成功)を積み重ねて1つの大きなライブをサクセス(成功)にみちび~く、それがプロデューサーの醍醐味、で~す!!そして、それを楽しむのもプロデューサーの仕事で~す!!」

 これを聞いた、月、

(一つ一つの成功を積み重ねて一つの大きなライブを成功に導く、それって、僕がやっている生徒会長やいずれ鞠莉さんもなるだろう社長にも通じる・・・)

と思うとともに、

(たとえ小さな成功でも、こんなに楽しいことなんてはじめてかも・・・。でも、僕、とてもうれしい・・・)

と、自分にとって初めてとなる感覚に戸惑いつつも嬉しさをかみしめていた。

 

 そして、月と鞠莉はそのまま自分たちが泊まっているホテルへと帰るのだが、その途中で、

「あれっ、ルビィちゃん、どうしての?」

と、月、向こうのほうからルビィたち1年生3人が歩いて来るのを見つけてはルビィに、

「ルビィちゃん!!」

と声をかけた。

 これには、ルビィ、

「あれっ、月ちゃんこそどうしたの?」

と、月を呼び掛けると、月と鞠莉、ルビィと花丸、ヨハネはすぐに合流した。

「ルビィちゃん、どこかに行っていたの?」

と、ルビィに尋ねると、ルビィ、

(実はライブの場所に決めたスペイン広場に下見に行っていたなんて言えないよ~)

 

と、心の中で叫んでいた。ルビィにとって夜に行われる練習でサプライズとしてライブ会場を発表するつもりだったのでそのためにもう一度下見に行っていたのである。

 だが、このルビィの言葉に、月、

「ふ~ん、そうなんだ~」

と、白をきるつもりで言う。実は月にはルビィの行動なんてみえみえだった。

(ルビィちゃんは白をきることをしているけど、僕はなんでも知っているんだ!!今日の朝、スペイン広場をライブ会場にすることを聞いているし、ルビィちゃんが来た方向にはスペイン広場がある。なら、やることは一つ、ライブ会場に決めたスペイン広場をルビィちゃんはもう一度下見してきたんだね!!)

と、月、ルビィの行動を完全に把握していた、いや、見事の言い当てていたのだ。それを踏まえたうえで、

(なら、僕、ルビィちゃんに逆サプライズ、しちゃおうかな?)

と、茶目っ気なところを考え出す。

「でね、そんなに頑張っているルビィちゃんにプレゼント!!」

と、月、ルビィにあるものをみせる。それを見た、ルビィ、

「えっ、これって何?ルビィ、イタリア語、読めないよ~」

と、おどおどしてしまう。月がルビィたちの前に出したのはイタリア語で書かれたなにかの合意書・・・みたいなものだった。これには、月、

(しまった!!全部イタリア語で書かれているから、イタリア語ができないルビィちゃんにはとても難しすぎた・・・)

と、サプライズ(ちょっと)失敗にようやく気付くとこう言いだした。

「ルビィちゃん、これはね、スペイン広場の使用許諾書、だよ!!この日、つまり、ライブの日は一日中スペイン広場を貸し切ることができるんだよ!!」

 で、これを聞いた、ルビィ、

「えっ、そうなの?」

と、月の隣にいた鞠莉に尋ねる。すると、鞠莉、笑いながら、

「そうです!!このマリーが証人で~す!!」

と、元気よく答えてくれた。

 これを聞いたルビィ、思わず、

「えっ、月ちゃん、エスパー?なんでルビィの考えがわかっちゃうの?」

と、月に尋ねると、月、

「さて、なんでしょうね~?」

と、はぐらかされてしまう。それでも、ルビィ、

(でも、ルビィ、とても嬉しいよ!!ルビィ、スペイン広場をライブ会場に選んだけど、そのあとのことは考えていなかった!!だからこそ、ルビィ、月ちゃんには本当に感謝、だよ!!)

と、月に対して感謝の気持ちを持つようになり、ルビィ、それが言葉として出てきてしまった。

「月ちゃん、本当にありがとう!!ルビィ、本当に嬉しいよ!!」

このルビィの感謝の言葉を聞いた、月、

(ルビィちゃんに改めてお礼を言われるとこちらもうれしい気持ちになるよ!!)

と、自分の心がうれしさの気持ちでいっぱいになることにまんざらでもない様子だった。

 

「じゃあね、月ちゃん!!夜の練習のときに会おうね!!」

と、ルビィは喜びながら月にお別れを言うと、月も、

「うん、またね!!」

と、ルビィにお別れを言う。

 こうして、無事にホテルへと戻ってきた月と鞠莉、そのまま1階のロビーでくつろぐと、突然、鞠莉から、

「月、ど~ですか、ルビィからお礼をSay(言われた)された気持ちは?」

これには、月、

「うん、とても嬉しいよ!!人のためにすることはよくあるけど、こんなに感謝されたことは初めてだよ!!僕、ルビィちゃんのためにやってみて本当によかった~!!」

と、鞠莉に対して自分の本当の気持ちを言うと、鞠莉、

「でも、それってとてもinportant(重要)じゃないかな?どんなことをする上でもね!!)

と、月にその事実を伝えると、月、

(えっ、鞠莉さん、人のためにすることに対する嬉しさのことを言っているのかな?)

と思うと、月、おもわず、

「鞠莉ちゃん、それって人のためにすること?」

と、鞠莉に尋ねてしまう。すると、鞠莉、

「Non Non!!人のためにする、じゃなくて、どんなことをする上で、だよ!!」

と、月に対して言うと、鞠莉は自分の気持ちを言った。

「ある目標をする上で達成できたときは本当にHappyになれるよね!!でもね、それってただの通過点だとしたらどうかな?大きな目標ってまだ先だからとてもうれしい気持ちになれないよね。今回もマリーのためのライブの成功が目標だから、ただの通過点、で~す!!でもね、それを、その通過点を次々とクリアしていくときに感じる、エンジョイの気持ち、それがあれば、楽々と大きな目標もクリア、できるので~す!!いや、なんもかもエンジョイ、できるので~す!!」

 この鞠莉の気持ちを聞いた、月、

(たとえ小さな通過点であっても心から楽しむ、いや、なにもかもにエンジョイすること・・・、それが大事・・・)

と、鞠莉の言葉を反芻する。

 が、このときの月、

(楽しむこと・・・、確かに大事・・・。でも、それによってどう結果につながる・・・といえるの・・?)

と、少し疑問に呈することもあった・・・。

 

 そして、ホテルに入るとき、鞠莉は月に対し、

「それじゃ、ナイト練習のときにね!!」

と言っては月のもとを離れていく。

 その鞠莉と別れた月、そのままロビーへ・・・と行くと、そこには、

「ねっ、この詩でどうかな?」

と言う千歌、

「うん、これ、いいね!!私、好き!!」

と曜、そして、

「この詩なら私の曲とよくあっているよ!!」

と梨子、Aqours2年生コンビがそこで密会していた。

 それに気づいた月、

「あっ、曜ちゃんたち、どうしたの?」

と、千歌たち3人のところに行っては曜に尋ねる。すると、曜、

「ちょっと密談・・・、いや、世間話をしていただけだよ~」

と、ちょっと言葉を濁す。これには、月、

(あれって何かを隠している、そんな感じがする・・・)

と、不思議に思うも、

(でも、それには触れないでおこう)

と、空気を読んでか、それについてはあまり触れないでいた。

 その月、曜に対し、

「まっ、べつにいいけど、今日の夜、なにかサプライズがあるかもね!!」

と、今夜の練習になにかが起きることを予告する。

 すると、千歌も、、

「それなら私たちも・・・」

と、変なこと?を言いだすと、梨子、

「千歌ちゃん、それ以上はダメ!!」

と、千歌を止める。これには月も、

「ハハハハ・・・」

と、苦笑いするしかなかった。



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Moon Cradle 第6部 第11話

 その日の夜、月が借りた貸しスタジオ、そこにはAqoursメンバー9人とプロデューサー見習の月がいた。鞠莉‘sママから示されたライブの日時まで時間がない、というわけで、今夜からハードスケジュールで集中的に練習することになっていた。千歌たちにとてみれば失敗の許されないライブ、それに加えて静真の部活動報告会のライブ、Saint Snowの聖良の前でのライブ、両方とも失敗しており、千歌たち1・2年生はダンスや歌に自信をなくしている、そんな心配が月にはあった。むろん、千歌たちもそうだった。けれど、ルビィだけは違っていた。力強いなにかを持っていた。いや、ルビィだけではない、千歌、曜、そして、梨子もそのきっかけとなるものを持っていた。

 そんなちょっとした緊張のなか、練習が始まる。と、その前にルビィからなにか発表があったらしく、

「ちょっと待って!!ルビィから重要な発表があります」

と、練習に入るAqoursメンバーを引き留める。

 そして、ルビィはついに発表した・・・。

「え~、ルビィからライブの場所を発表します!!」

この瞬間、まわりはシーンとなる。誰もが真剣にルビィのほうを見る。このとき、月、

(さあ、ルビィちゃん、ここからがルビィちゃんの第2章が始まるんだよ!!ガンバ!!」

と、心の中からルビィに声援を送る。ルビィ、月からの心からの声援を受けてか、

「ライブをする場所は・・・」

という言葉のあと、緊張する自分を落ち着かせつつ勇気を振り絞り声をあげた。

「ライブをする場所、それは・・・スペイン広場です!!」

 この瞬間、まわりを見るルビィ。そこにはまんざらでもない表情をしたメンバーの姿があった。千歌、すぐに評決を採る。すると、全員手を挙げた。これによりライブ会場はスペイン広場に決定した。これには、ルビィ、

「やったー!!」

と、大きく喜んでいた。

 が、サプライズはこれだけではなかった。今度は千歌たちから発表があった。なんと・・・、

「え~と、なんだっけ?」

と、千歌がボケをかます!!これがサプライズ・・・ではなく、梨子の口から語られたのは・・・、

「今度のライブ、新曲でいきます!!」

そう、新曲でいくことになったのだ。それはこれまでの曲だったらといって安心して胡坐をかいていたらスクールアイドルに否定的な鞠莉‘sママの心を変えることは不可能、そして、フィレンツェの鞠莉の行動を見て今までの曲より新曲のほうが鞠莉、そして、千歌たちの想いを鞠莉‘sママにぶつけることができるから、だった。そして、フィレンツェでの鞠莉の行動を見ていた千歌、梨子は鞠莉の想い、みんなの想いを詩に、曲に込めて作詞作曲し、それをあわせてみたらこれまでにない、それでいて今の自分たちにあった曲ができた、とのこと。そこから昨日のルビィの決意表明、鞠莉、果南からのアドバイスを聞いて「これからのAqours」を見つけるためにさらにフラッシュアップしたとのこと。その曲の名は・・・、

 

「Hop?Stop?Nonstop!!」

 

そして、急遽梨子が作った新曲のデモテープを流すと、ルビィ曰く、「みんなが鞠莉‘sママに伝えたいこと、スクールアイドルの素晴らしさ、無限の可能性、さらに、ゼロに戻ったと思っている1・2年生に対しての言葉、それを無意識に千歌と梨子は作ってしまった・・・」といった感じにみんなはなっていた。月に至っては、

(これが千歌ちゃんと梨子ちゃんがみんなの想いを込めて作った曲!!いや、曜ちゃんもそこにははいっていた・・・。だって、今さっき、千歌ちゃん、曜ちゃん、梨子ちゃんの3人がホテルのロビーにいた!!そこにいた理由、それは、新曲をフラッシュアップしていたから!!千歌ちゃんと梨子ちゃん、自分だけの想いだけになっていないか曜ちゃんと一緒に確認していたんだね!!)

と、思ってしまう。実は月の言う通りだった。月がホテルに帰り着いてホテルのロビーにいたとき、千歌たち2年生トリオはロビーにいた。そこで3人がしていたことこそこの新曲のフラッシュアップだった。たしかに千歌と梨子は自分たちの想いを込めて作詞作曲していたのだが、もしかすると自分の想いだけになっていないか、昨日の晩の果南、鞠莉からのアドバイスを受けて、「これからの新しいAqours」とはなにか、をもとに千歌と梨子は新曲をフラッシュアップしていた。そして、さらに今度は第三者である曜と一緒に別の視点から見てみよう、そんな理由から曜を含めた3人で新曲をさらにフラッシュアップしていたのだ。こうしてできた新曲はあの月をもうならせる神曲ともいえる曲になったのだ。

これには、ヨハネ、

(これならいける!!あの悪魔(鞠莉‘sママ)に打ち勝つことができようぞ!!)

と、思えるくらい感動していた。いや、千歌たち2年生3人以外は感動しきっていた。

 と、いうわけで、千歌、

「この新曲をライブで披露したいと思いますが、賛成の人、手を挙げて!!」

と言うと全員が手を挙げた。これにより、

「それじゃ、今度のライブで披露する曲は新曲に決定!!」

と、スペイン広場での運命のライブは新曲を披露することに決定した。

 

 その後、かなりハードだが、3年生がいるためか、終始穏やかな表情で練習メニューをこなしていく。そして・・・、

「はいっ、今日はここまで!!」

というダイヤの一言で練習は終わった。全体的にみたら、

(す、すごい・・・。あのとき(内浦の砂浜海岸での練習)よりも、みんな、きびきびしている!!まるで、月とスッポン、みたい。これが本当のAqoursの真の姿、なんだ・・・)

と、月、感動しっぱなしでった。

 その後、各自解散・・・になったが、

「さぁて、僕も早くホテルに帰ってシャワーを浴びたいな~」

と、激闘の1日を過ごしてためか、はやく汗を拭きたい、そんな気分になっていた・・・、が、そんなとき、

「月さん、ちょっといいですか?」

と、月を呼ぶ声がする。これに、

「あっ、はい、いいですよ」

と、月、声がするほうに振り替えると、そこには・・・、

「あっ、ルビィちゃんにダイヤさん・・・」

と、ルビィとダイヤ、2人がいるではないか。なんで月のところに来たのかわけがわからなくなる月。

 そんな月に対し、ダイヤは口を開いた。

「月さん、ルビィがこんなに成長した姿を見せてくれたのは本当にうれしい限りです。私、感動しましたわ!!本当にありがとうございます!!」

と、月に対しまたまたお礼を言われる。さらに、

「月ちゃん、本当にありがとう。月ちゃんがいなかったら、ルビィ、ダメだったかもしれない。月ちゃんがスペイン広場の使用許諾をもらっていなかったら、ルビィ、本当に困っていたかも。月ちゃん、なにからなにもまでルビィのために動いてくれて本当にありがとう」

と、ルビィからもお礼の言葉をもらった月。このとき、月、

(え~と、これは僕のおせっかいの賜物で・・・。たしかに新生Aqoursをよみがえさせるためにもルビィちゃんを生まれ変わらせたけど、そこまでルビィちゃんが成長するなんて考えていなかったし、スペイン広場の使用許諾もいつかはしないといけないものだから、できる限りはやく取っただけだったし・・・)

と、言葉を並べてしまう。なんとも照れくさがっている月。

 が、ダイヤとルビィはそんな照れくさい表情をする月に足し、

「「本当にありがとうございました」」

と、2人そろって月にお礼をいうと、月、

「いや・・・」

と、さらに照れくさがっていた。

 それでも、ダイヤとルビィ、2人からお礼を言われたとき、月、

(でも、ダイヤさんとルビィちゃんからお礼を言われるなんて、僕、なんか嬉しい。やっぱりなにかを成し遂げることは、とても楽しい、とても嬉しい、ものだよね!!)

と、嬉しさ全開に思ってしまう。さらに、

(もしかして、鞠莉ちゃんが言っていたこと、これのことかな?)

と、鞠莉の言っていたことを思い出す。一つ一つの通過点をクリアすること、楽しむこと、それが大きな目標を成し遂げるために必要である、そう考えると、今回のこともそれを指し示しているのでは、と、月は思っていた。しかし、たった一つの通過点でしかないため、今の月にしてみれば、まだ本当にそうなのか、わからなかった。だが、もし、ルビィが今回のライブ会場発表が一つのゴールであるなら、それは鞠莉の言っていることは正しいのかもしれない。なぜなら、月がルビィにしたことはたとえショック療法だとしても弱弱しいルビィを力強いルビィに変えたことには間違いないし、それにより、小田原評定ならぬAqours評定みたいな状態に陥っていたにもかかわらずルビィは自分の責任でライブ会場を決めたのである。それは一つ一つの通過点でしかない。けれど、それを達成したときの嬉しさ、そのなかで得た楽しさはそれをしてきた人にとってかけがいのないものになるのである。そして、楽しむこと、嬉しくなることこそ一つの大きなゴールにたどり着くために必要なものかもしれない。ただ、今の月にはそのことを認識するのはちょっと先になるかもしれない。

 とはいえ、今の月からすれば、

(でも、今は小さな目標だけど、それを成し遂げたことで楽しく思える、嬉しくなっている自分を今は褒めたいと思うよ)

と、自分の頑張りを褒めていた・・・。

 

 こうして、千歌たちAqoursメンバー9人は短い間ではあったが、Aqoursとして久しぶりの・・・、いや、今の9人として最後になるであろう?練習の日々を暮らしていた。このあいだ、月はというと・・・。

「月、タオル、用意してね!!」

と、鞠莉からお願いされると、月、

「はいっ、わかりました!!」

と、9人分のタオルを用意する。普通ならメンバーが各自で用意するものなのだが、ここはイタリアであり、9人の持ち物もライブを行うなんて思っていなかったので、タオルなどの練習を行うために必要な物まで用意していなかったメンバーも多かったりした。むろん、それは別のところにも影響していた。Aqoursもそうだが、スクールアイドルがライブを行うのであればそのライブに着る衣装も別途用意するものである。が、今回のライブの場合、急遽決まったライブであったこともあり、さらに、イタリアということもあり、ライブ衣装を持ってくることなんてできなかった。さらに、短期間のあいだに仕上げて鞠莉‘sママの前でライブを行うため、ライブ衣装を作る時間もなかった。そのため、自分の私服のままでライブを行うことに決めていた。と、いうわけで、タオルの準備を含めて、雑務のほとんどをAqoursメンバー以外で自由に動ける月がやっていた。むろん、空いた時間でAqoursメンバーと一緒に月が買い物することもあったが、「できる限り練習に費やしたい」ということもあり、月が一人で動くことがほとんどだった。これには、月、

(これもプロデューサーの仕事なの?まっ、僕にとってみればAqoursのためにやっていること自体嬉しいけどね!!)

と、これもプロデューサーの仕事なのか、と思いつつ、なにか嬉しい自分がいた。でも、一応、それはプロデューサーの仕事じゃなくてマネージャーの仕事、なんですけどね・・・。

 そんな月であったが、月としてもびっくりすることがあった。それは月がルビィとダイヤからお礼を言われた、次の日に起こった。ダイヤ、ルビィからお礼を言われた日、月、その日の夜、

(今日の練習はとてもスローな感じがした。ただ、歌合せ、振付を一通りしただけ・・・。このままじゃ期日までに間に合わなくなる!!)

という思いでいっぱいだった。たしかにかなりのハード・・だったのだが、ダイヤが示した練習メニューは歌合せと振付を一通りするだけ。特に振付についてはいつも振付を考えている果南にかわり、曜が振付を考えていたこともあり、曜の指導のもと、振付を一通りやってみた。ちなみに、今回の「Hop?Step?Nonstop!!」であるが、作詞:千歌、作曲:梨子、振付:曜、と、オール2年生体制で作られていた。そのため、曜は鞠莉の一件以来、こっそりホテルの外に出ては近くの通りでストリートダンスをしている人たちに交じってダンスの研究にいそしんでいたとのこと。これについて、曜、

「これっ、みんなに知られたくないの!!」

と、みんなには内緒にしてもらったのだが、千歌曰く、

「あれっ、秘密だったの?みんな、知っているよ!!」

と、みんな(月を含めて)にはバレバレだった。

 と、いうわけで、曜の指導のもと、一通りの振付をするのだが・・・、

「え~と、ここはこうで・・・」

と、曜がひとつづつチェックしているためか、少しずつしか進まなかった。みんなの動きはきびきびしている、みんなまじめにやっている?つもりだが、どうしても合わないとおろがでてきてしまう。もちろん、新曲であるから、というのもある。けれど、Aqoursはメンバーそれぞれ個性が強すぎるため、どうしても人に個人差が生まれてくる。それでも、曜、

「それじゃ、もう一回、やってみよう!!」

と、何度も何度もトライを重ねる。これにより、振付、少しはましになった・・・というレベルにまであげることができた。そこまで仕上げるために何度も何度もトライを重ねる、普通の人からすればすぐにでも音をあげるほどのハードのものだったが、これを見ていた、月、

(僕、なんか心配になってきたよ!!このままでちゃんとしたものになるの?残された時間はあまりないんだよ!!)

という不安がでてきてしまった。

 と、いうわけで、月、

(こうなったら、生徒会長であるこの僕の力をみせてやる!!)

と、なにかを作り始めることに・・・。

 そして、次の日、練習が始まる前、

「あっ、ダイヤさん。僕、昨日のスロー調整に少し危機感を持ったので、こんなものを作ってみました!!」

と、ダイヤに月が昨日作っていたものを見せる。すると、ダイヤ、

「こ、これは・・・、ライブ前日までのスケジュール・・・」

と、月の自信作に驚いてしまう。そう、月が作っていたのはライブ前日までの予定がぎっしり詰まっていた練習のスケジュール表であった。実はライブの練習に入る前、月とダイヤはライブまでの行程表を作っていたのだが、それは悪くいうとざっくりしたものだった。だが、今回、月だけで作ったスケジュール表は「何時何分、ランニング」など、本当に予定がぎっしり詰まっていたものだった。月、この予定がぎっしり詰まったスケジュール表を作っているとき、で・・・

「たしか、僕が持ってきた本に・・・」

と、ある本を開いていた。それは「月刊スクールアイドル ラブライブ!5周年記念号」。そう、またもやあの本である。その本の中で・・・。

「え~と、たしか、μ'sさんのページに・・・」

と、μ'sのページを開く。すると、そこには・・・。

「あっ、あった!!これがμ'sさんの合宿したときのスケジュール!!」

と、μ'sが夏合宿のときにμ'sメンバーの一人である海未が作ったスケジュールが載っているページを開く。そう、海未が寝ずに考えた、あのかなりハードな合宿スケジュールであった。それを月も参考にしようとしていたのだ。が、これには問題があった。実はAqoursも夏合宿のとき、ダイアがそれを参考にして合宿メニューを組んでいたのが・・・、TVアニメを見ている方ならご存じだろう、それをAqoursみんなで実践したところ、その練習メニューをこなすことができたのは体力に自信がある果南だけだったのだ。そのことを知らない?月はその過酷ともとれる海未特製合宿メニューをもとにライブまでの練習スケジュールを組んでしまったのだ。

 そんなこともあり、ダイヤ、月が組んだ練習スケジュールを見るなり、

(あっ、この練習スケジュール、私と同じく、μ'sの合宿メニューを参考にしてますわね!!)

と気づいてしまい、

「ブ、ブー、ですわ!!即却下ですわ!!」

と、月の練習スケジュールを完全拒否!!してしまう。これには、月、

「えっ、なんで~!!」

と、嘆いてしまう。月、このとき、

(えっ、昨日、必死で作った練習スケジュール、ダイヤさんに即却下された・・・)

とがっかりしてしまう。これには、ダイヤ、

(あっ、ついうっかり・・・)

と、ちょっとやっちゃった感をだしてしまう。

 そのためか、ダイヤ、月に対し、一言。

「月さん、これだと私たちはライブ前に倒れてしまいますわ」

と、月にアドバイス。これには、月、

「えっ、でも、これほどハードにしないと鞠莉‘sママさんに鞠莉ちゃんのこと、認めてもらないかと・・・」

と、心配事をダイヤに言うと、ダイヤ、

「たしかに月さんが心配していることはもっともですが・・・」

と、月の心配していることを認めつつも、

「それでも、こんなにハードなのはダメ、ですよ」

と、月に対して怒る。ちなみに、月が作った練習スケジュールであるが、

「10:00~11:00 5kmランニング」「11:00~12:30 歌の練習」

「13:00~14:00 ダンス練習」「14:00~15:00 プールで2km遠泳」

と、本当に時間単位でぎっしりと練習スケジュールを組んでいたのである。これだと、夏合宿のときのダイヤの二の舞、ともいえた。その経験があるダイヤからこそ、月の考えた予定ぎっしりの練習スケジュールにNoを月に突きつけた、のも納得である。

 このダイヤのNoに、月、

(う~、なんでダメなの・・・)

と、少しうなだれてしまうものの、ダイヤ、すぐに、

「たしかに月さんの考えたスケジュールはしっかりしてます。ほぼ100点満点のものです。さすがに静真の生徒会長を務めていることはあります」

と、珍しく月のことを褒める。これには、月、

「えへへ」

と笑う。

 しかし、ダイヤは月に対して、

「ですが、このスケジュールには一つだけ欠点があります」

と言うと、月、

「えっ、その欠点とは・・・」

と、ダイヤにそれについて聞いてみると、ダイヤ、月にダメ出しをする。

「それは、Aqoursの実情に合っていない、ということですわ!!」

 このダイヤの発言のあと、ダイヤ、月の組んだ練習スケジュールに手直しを始める。

「え~と、これを消して、ここを消して・・・」

手際のよいダイヤ、月の練習スケジュールに書かれた文字をどんどん消していく。これには、月、

(ああ、どんどん消していったら練習の意味がなくなってしまうよ~)

と、心配そうになってしまう。月の練習スケジュールはぎっしりしたものだったが、それがどんどん削られていくのだ。月としては、失敗の許されないライブ、ということもあり、とてもハードでぎっしりしたものではなくては絶対にライブは失敗する、そう思ってこの練習スケジュールを組んだのだが、それをダイヤは次々と消していった。

 そんな月の心配をよそに、ダイヤはというと・・・。

「よしっ、これでいいですわ!!」

と、月にダイヤが修正した練習スケジュールを見せる。すると、月、

「ダイヤさん、これでいいのですか?」

と、ダイヤに逆に尋ねてしまう。月が心配するのももっともだった。だって、ダイヤが修正した練習スケジュールはというと・・・。

「10:00~10:30 1.5kmランニング」「10:45~12:30 歌の練習兼打合せ」

「13:00~18:00 ダンス練習」

と、なんともおおざっぱなもの、だったからだった。これには、ダイヤ、

「うっ、月さん、私になにかを疑っているみたいですね・・・」

と、月の目つきに対してちょっと不安を感じつつも、月に対して一言。

「このスケジュールがAqoursにとって一番、なのですわ、月さん!!」

 が、月、

(本当にそうかな・・・)

と、ダイヤに対しいまだに疑いを持ってしまう。これには、ダイヤ、

(こりゃ、仕方がないですね・・・)

と、ちょっと月に対してあることをしようと思うと、すぐに、

「月さん、それだったら、今日一日、私が書き直したスケジュールでやってみましょう」

と、月に提案する。これには、月、

(あっ、ダイヤさん、自分の作ったスケジュールでうまく機能するか試そうとしている)

と、考えると、

「はい、わかりました、ダイヤさん。今日はこのスケジュールでやってみましょう」

と、ダイヤの提案に同意した。

 その後、ダイヤが修正したスケジュール表通りに練習が始まった。

「うへ~、久しぶりのランニング、とてもつらかったよ~」

と、ヨハネ、1.5kmもランニングを終えて疲れてたのか、弱気を見せることも。このヨハネの姿に、梨子、

「まだ始まったばかりでしょ、善子ちゃん!!」

と、ヨハネに言うと、ヨハネ、

「疲れるときは疲れるの、堕天使リリー!!それに、善子じゃなくて、ヨハネ!!」

と、堕天使リリー・・・、

「リリーって言うの、禁止!!」

と、梨子からの激しいツッコミを受けつつも自分の気持ちを正直に話すヨハネであった。

 このランニングのあと、少し休んでから千歌たちAqoursメンバーは歌合せ兼打合せをすることに。

♪~

と、スタジオ内にAqoursのとても華麗な歌声が鳴り響く。これには、月、

(うわ~、とてもいいよ!!これなら大丈夫だね!!)

と、少し安心する。それほど昨日初めて歌ったとは思えないものだった。が、突然、

「千歌ちゃん、ちょっといいかな?」

と、ルビィが練習を中断させると、ルビィ、千歌に対し、

「ねっ、ここの部分だけど、歌詞をこう変えたらいいんじゃないかな?」

と、千歌に提案する。これには、月、

(えっ、これまでのものでよかったのに、なんで歌詞を変えるの、ルビィちゃん!!)

と、ルビィの提案にびっくりするも、千歌、

「う~ん、どれどれ。あっ、確かにそっちがいいかも!!こっちのほうが千歌たちの想いをストレートにぶつけることができるかも!!」

と言ってはルビィの言う通り歌詞を変えてしまった。これには、月、

(えっ、え~!!)

と、驚くしかなかった。このルビィの行動でこれまでの練習が水の泡になってしまった、そんな気がしたからだった。これまで練習してきたのに、ちゃんとしたものになっていたのに、それを自らの手で壊してしまったのだ。これには月としてもびっくりしてしまった。が、このあと、そのルビィの提案により歌詞を変えたこともあり、この変更部分についてどう歌うかAqoursメンバーみんなで話し合うことになり、それがもとで、このあと、まとまった歌の練習ができなかった。

 さらに、それはダンス練習についても同じことが起こってしまう。

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と、果南・・・ではなく、曜が音頭をとってダンス練習をすると、

「曜、ちょっと待って!!」

と、今度はヨハネが曜を止める。すると、ヨハネ、すぐに、

「ここはこうしてこうしてみたらどうかしら?」

と、自分で考えた振付を曜にみせる。すると、曜、

「う~ん、それはどうかな?」

と、少し考えると、すぐに、

「却下!!」

と、ヨハネの提案をはねのけた。これには、ヨハネ、

「えっ、ダメなの!!」

と言ってはしょんぼりとしてしまう。

 この一連のやりとりを見ていた月、

(あっ、いつものヨハネちゃんだ・・・)

と、ほのぼのになるも、すぐに、

(あっ、しまった!!あまりにほのぼのすぎて忘れていたけど、これが続くと・・・)

と、あることを心配しだす。

 が、その月の心配事がついに的中してしまう。なんと、ヨハネだけでなく、

「あっ、曜、私からも提案があるのだけど・・・」

と、今度は果南からも提案が・・・。これには、曜、

「あっ、果南ちゃん、なんかなぁ~?」

と、果南の提案を聞くと、すぐにみんなで果南が提案したものをやってみる。すると、

「うん、いいかも」

と、みんな納得・・・なのだが・・・、突然、ダイヤから、

「でも、それだと、ここからの流れが・・・」

と、果南が提案して修正した部分とその前後の部分の流れにもたつきが発生することを指摘される。これには、曜、

「う~ん、そうだったら・・・」

と、少し考えてはそのつなぎ部分を修正する。が、これにも、鞠莉、

「あっ、曜、このままだとそれがあまりにもベリーグッドすぎて、ほかの部分がベリーバッドになりま~す!!」

と、曜に指摘する。これにも、曜、

「それなら、どうすればいいと思う、みんな?」

と、ほかのメンバーにも意見を聞いてみる。

 といった具合にに、最後の最後まで振付のほとんどを修正することになってしまい、この日のうちに一曲通してのダンス練習ができなかった。これには、月、

(う~、今日、まともな練習ができなかったよ~!!これで間に合うの~!!)

と、本当にライブ当日に間に合うのか心配になるも、とのダイヤは、

「ちゃんとなりますよ!!」

と、ほかのメンバーに絶対的な信頼を持っていた。

 が、このダイヤの言葉は、その翌日、Aqoursメンバーを通じて真実となる。ランニングのあと、歌の練習に入るのだが、Aqoursメンバー全員で、

♪~

と、歌ってみると、月、

(あれっ、昨日よりもうまくなっている。いや、それ以上に曜ちゃんたちが言いたいことがストレートに聞こえてくる!!)

と驚いてしまう。その歌の練習も、なにもなかったのごとく、いや、今までのなかで月としては最高ともいえる、それでいて、自分たちの気持ちをよりストレートに伝えている、そんな感じがしていた。

 また、このあとのダンスについても、

「えっ!!」

と、月はびっくりする。昨日話し合って変えた部分がしっかりとダンスとして表現できていたのだ。いや、それ以上に、

(なんか、一昨日、曜ちゃんが考えてた振付よりもダイナミックに、それでいてそれ以上の出来になっている・・・)

と、驚いてしまった。曜の考えた振付よりもダイナミックに、そして、月の心をも動かすぐらいのダンスへと変貌を遂げていたのだった。が、それを終えても、千歌たちAqoursメンバーはというと・・・、

「曜ちゃん、ここはもっとこうして、ガバーっと・・・」

と、千歌が曜に提案するくらい、まだほかの部分を修正しようとしている。このAqoursメンバーの姿を見た月、

(たとえ完璧だと思えたものであっても胡坐をかくことなくよりいいものにしようとしている。まるで、果てしないハングリー精神・・・)

と、ただただ感心するしかなかった。

 そんな月に対し、

「どうですか、月さん。私が言ったこと、わかったかしら」

と、ダイヤが声をかけてくる。これには、月、

「あっ、ダイヤさん、なんか、Aqoursの真の姿、をみた気がします・・・」

と、自分の気持ちを正直に話すと、ダイヤ、すぐにこう言った。

「たしかに、月さんの気持ち、私にもわかります。でも、それは、私たちAqours、だけではありませんわ」

 そして、あることをダイヤは月に話す。

「これは私が聞いた話であります。80年代から90年代にかけて大活躍したテクノPOP系アーティストグループがいました。そのグループはTKと呼ばれるプロデューサーのもとで大人気になりました。代表作としては、80年代後半に大人気になった、新宿のヒットマンを描いたアニメのOP曲、があります」

これを聞いた月、

(もしかして、あの男3人組グループだね)

と、ダイヤが言っているグループについて思い出す。ちょうど両親がその世代だったりするので、話として聞いたことがあるのだ。

 そのグループについて、ダイヤはある事実を月に言った。

「そのグループですが、同じツアーであっても、ある曲については会場によって全く違うアレンジを変えていた、という話があります」

これを聞いた、月、

(えっ、同じ曲でも会場によってまったく別のアレンジになってしまうの!!)

と、驚いてしまう。たしかに同じツアーなのに同じ曲が会場ごとにまったく違うアレンジになるなんて聞いたことがなかった。

 が、それについて、ダイヤは自分の考えを述べる。

「たしかに会場ごとに違うアレンジなんて本当に大変だと思います。けれど、私が思うに、そのアレンジを担当していたTKというプロデューサーさんはその曲をそのままにしようとせずに、ずっといいものを、ずっとすごいものに作り替えようとしているのではないかと思って会場ごとにアレンジを変えていったと考えています」

 これを聞いた月、

(そ、そんなにすごいグループだったんだ・・・)

と、またまた驚いてしまう。

 が、本当はそのグループのことではなく・・・、

「で、月さん、私たちAqoursもそのグループと同じです。たとえ同じものであっても、よりいいものへと変えていく、それがAqoursがスクールアイドルの頂点、ラブライブ!に優勝できた要因、ともいえるでしょう」

と、ダイヤは月にAqoursの本当のすごさを伝える。これには、月、

(えっ、そんなすごいグループとAqoursが同じ・・・なんて・・・。た、たしかに、ひとつのことだけに満足せずに変えていくなんて、す、すごい・・・)

と、Aqoursの真の姿に絶句してしまった。1つのことだけに満足せず、よりいいものへと進化していく、それこそAqoursというもののすごさ、と実感した月であった。

 あっ、ちなみに、ダイヤ、このあと、月に対してこんなことも言いました。

「あと、ぎっしりとした練習スケジュールを削った理由ですけど・・・、あんなにぎっしりしていたら、いくら私たちであっても倒れてしまいます。それに、みんなの意見を出すための時間も余裕をもって作らないと、と思って・・・。だから、私はぎっしりとした練習スケジュールを削ったのです。たとえ、みんながさぼるから・・・じゃなくて、いろいろと脱線しまくるから、であって・・・じゃありませんからね!!」

これには、月、

(ダイヤさん、本音がただ漏れですよ・・・)

と、ダイヤのこともフォローしきれなかった・・・。



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Moon Cradle 第6部 第12話

 さて、このように、月にとってAqoursの知らない部分を垣間見れるごとに驚きの連続であったが、スケジュールのこと以外にも月がこれはと思うものもあった。それは、ヨハネ、花丸のことだった。月によって覚醒したルビィにダイヤたち3年生がいなくてもゼロに戻るわけではないことを諭されたヨハネと花丸。しかし、このときのルビィが一方的に、まるで機関車のごとく話したもんだから、十分納得いく・・・どころか、いまいちわかっていない・・・、悪く言えば、ルビィの言うことを100%理解できていないし、「あっ、ルビィが何か言っている、たしか、なにか心に残っているって言っていたな」という認識だった、ヨハネと花丸にとってみれば。そのため、どちらかというと、ルビィや千歌たち2年生と違い、いまだに静真でのライブの失敗・・・、不安・心配の深き海・沼の底でもがき苦しんでいた。

 そんななか、

「え~と、ここはこうで・・・」

と、ヨハネがステップがうまくいかずに困っているとき、

「善子、ここはクルっとターンしてストップだよ!!」

と、突然、鞠莉がヨハネにステップを教えにきたのである。どうやら、鞠莉、ステップで悩んでいるヨハネを見かねて、たまらず横から口を出してきたみたいだった。ヨハネは鞠莉にお礼を言うと鞠莉の教えた通りにステップを踏んでみると今度はできた。これには驚くヨハネ。しかし、そこには笑顔のヨハネはいなかった。暗い表情のままだった。

 すると、鞠莉は意外な行動にでる。なんと、自分の手をヨハネの顔にあて無理やり笑顔にする。鞠莉の手をどかそうとするヨハネ。しかし、鞠莉はそのヨハネに対し本音を言う。

「たしかに、このライブが終われば鞠莉たちはグッバイで~す!!でも、すべてがすべてグッバイじゃないので~す!!善子、そして、みんなの心の中には鞠莉たちと一緒に築き上げた大切なものがいっぱい残っているので~す!!それを忘れないでください!!」

この言葉を聞いたヨハネ、その表情は暗いものからじょじょではあるが明るい表情へと変わっていく。

 そして、ヨハネ、もう一度ステップを踏んでみる。すると、これまで以上にキレのいい、完璧なものへと昇華していったのだった。

 と、ここまではヨハネと鞠莉の視点だったのだが、実は、このヨハネと鞠莉の一連の流れを直に見ていた少女がいた。それは月だった。ちょうどこのとき、Aqoursメンバーのみんなにドリンクの差し入れをしに2人の前を通り過ぎようとしていたのだ。で、ヨハネがステップについて悩んでいるとき、

(あっ、善子ちゃん、ステップのことで悩んでいる!!自分がなんとかしたいよ~!!でも、僕にはそれについて相談されてもどうすることもできないよ~!!)

と、悩んでしまっていた。のだが、突然、ヨハネの近くにいた鞠莉がそのヨハネに近づいてアドバイスを送る。そして、先ほどの「大切なものがいっぱい残っているので~す」というヨハネに向けた精一杯の鞠莉のアドバイスを聞いた月、

(あっ、鞠莉ちゃん、善子ちゃんにステップが踏めない、いや、不調の原因がなにかわかっているみたいだね。3年生がいないことによるライブの失敗、3年生がいなくなることでなんもかもがなくなった、ゼロに戻った、そう思っていること自体が善子ちゃんの不調の原因。だから、鞠莉ちゃん、みんなで築いたものすべて心の中に残っていることを善子ちゃんに教えてあげたんだね。これで善子ちゃんもなんとかなるかな?)

と、ついて考えてしまっていた。

 

一方、花丸も3年生からのアドバイスで立ち直ろうとしていた。花丸はダンスにおいてみんなと比べてワンテンポ遅れてしまうことに悩んでいた。それに立ち上がったのが果南だった。休憩中、果南、

「花丸ちゃん、なにか悩んでいるのかな?」

と、花丸に近づき、花丸の悩み事を聞くことに。

「ダンスのとき、みんなとワンテンポ遅れてしまうずら~」

これに果南は、「なぜ?」と逆に花丸に聞くと「体力がない」とのこと。しかし、「これまでのライブはずっと合っていた。それなのに今回だけはなぜ?」と果南が逆に花丸に聞く。これには、花丸、「これまではみんあんが合わせてくれた。でも、今回は合わない、体力がないから」と言い訳を言いだす。

 そんなとき、果南はそんな花丸にあるアドバイスを送る。

「花丸ちゃん、そんなに自分のことを卑屈に考えないほうがいいよ!!」

 そして、「体力がなければそれに合わせればいい。花丸の頑張り、みんなの頑張り、みんなのキズナがあったため、1つにまとまり、ライブは成功してきた」ことを言うと、「卑屈に考えず、花丸が合わなければみんなが合わせてくれる。花丸の頑張りがみんなの頑張りを盛り上げる」というアドバイスを送った。

 だが、「それは3年生がいたから合わせることができた。3年生がいなくなったら合わせることができない」と花丸が弱気の発言を言いだすと、果南、さらなるアドバイスを花丸に送る。

「たとえ私たち3年生がいなくなっても残るものがあるんだ。それはね、私たちと一緒にやってきたこと!!その経験、想い出、私たちの想い、そして、キズナ!!それが心の中でずっと残っていればきっと大丈夫だよ!!」

 そして、果南は花丸にハグをすると花丸のなかにあった不安・心配が消えたかのように花丸の表情も徐々に明るいものへと変化していった。その後、休憩は終了し全体のダンス練習に戻ると、

(あれっ、みんなとテンポが合っているずら~)

と、花丸が思うくらい花丸とみんなのテンポが合うようになった。

 で、このときももちろんそばに月がいた。このときの月は冷えたタオルをAqoursメンバーに渡そうとしていたのだが、たまたま次に花丸にそのタオルを渡そうとしていたのだが、なにかに悩んでいる花丸を見て、

(あっ、花丸ちゃん、まだ不安・心配の海・沼から抜け出せていないんだね)

と思うも、近くにいた果南がその花丸のそばに行き、なにやらいろいろと相談しているみたいだった。これには、月、

(あっ、果南ちゃん、花丸ちゃんにアドバイスしている!!この前は鞠莉ちゃんが善子ちゃんにアドバイスしていたね。やっぱり3年生は1年生にとってとてもいい先輩なんだね~)

と、しみじみになっていると、花丸の表情がヨハネと同じように明るくなっていくことに気づく。これについても、月、

(あっ、花丸ちゃんから不安・心配のオーラが徐々に消えていく!!これでもう花丸ちゃんも大丈夫だね!!)

と、安心した気持ちになっていった。

 こうして、ヨハネ、花丸、ともに、不安・心配という深き海・沼から脱する機会を、鞠莉、果南から与えられたのだが、これを通じて月はある想いに達しようとしていた。

((Saint Snowの)聖良さんは3年生と会って話し合うことで新しいAqoursがなにかを指し示すだろうと言っていた。そして、曜ちゃんたちは鞠莉ちゃんたち3年生とイタリアで再び会うことができた。そのなかで、曜ちゃんたちAqours1・2年生6人はみんな、とても大事なこと、想い出、想い、キズナが自分たちの心の中に残ること、ゼロには戻らないことに気づいた。(ルビィちゃんだけ自分でやったんだけどね!!これでもう曜ちゃんたち新生Aqoursについては心配いらないね。よかったよかった~)

 このように、新生Aqoursについてはようやく安堵できる状態にすることができた(ただし、ルビィ以外は脱するきっかけを得ただけだけどね・・・)

 そんななか、月にもそれ以外とは別のある想いが芽生えようとしていた。

(でも、みんな(Aqours)のお世話をしているうちにこのプロデューサーという仕事も楽しく感じられるようになってきたね。僕、それって自分の知らないところを知ってなんか驚き、だな)

そう、月の中で芽生えたもの、それは、プロデューサーとしての仕事の楽しさだった。これまで月自身は静真の生徒たちのために生徒会長として人のためにやってきたのだ。が、それは生徒会長としての使命だから、という義務感からやってきたことが大半だった。それが、ダイヤたち3年生3人の言いつけだから、というのもあるが、Aqoursのプロデューサー見習としてAqoursメンバーのお世話から会場の手配などを自分でやってきたのである(もちろん3年生の助けもあるが)。そのなかでこれまで知らなかったAqoursの内面のいろんなところを知る楽しさ、人のために役に立とうとする自分、それ自体を楽しんでいる、そんな自分の姿に月自身驚いていた。しかし、その楽しさこそ沼田の問いの答えに通じているのか、これについてはこのときの月には知るよしもなかった。

 

 こうして、

♪~

と、曲が終わると、

「うん、完璧!!これにて練習は終わり!!」

という千歌の言葉とともに短くともとても充実した練習の日々は終わろうとしていた。あとは明日のスペイン広場での最終リハーサル、そして、本番を残すのみとなった。

 このとき、千歌、

(私、思った、これが鞠莉ちゃんたち(3年生)とできる最後の練習になるかもしれない。けれど、今までのなかで最高の練習だった!!だって、練習していくうちにこう感じちゃったから、これまでのAqours、いや、それ以上のAqoursになっていくって・・・)

と、心の底から感じていた。いや、千歌以外の全員、Aqoursメンバー9人全員が千歌の想いと一緒だった。

 が、それはAqoursメンバー9人だけではなかった。それは月にもいえることだった。月、最後の練習を終えたとき、こう思っていた。

(僕、この練習を見ていくうちにこう感じちゃった、練習をしていくうちにAqoursはどんどん成長しているんだって!!たとえ、ラブライブ!優勝という頂点にたったとしても、胡坐を組んだりしない、さらなる高みへと昇ろうとしている。だからこそ言える、Aqoursはまだ頂点に立っていない、いや、頂点なんてないんだ!!Aqoursはずっとチャレンジャー、なんだから!!)

この思いを受けてか、月はこう考えてしまう。

(でも、その場面に付き合えるなんて、僕、なんか嬉しい!!成長していくAqoursの姿を見ていると僕まで楽しくなっちゃう!!これこそ、仕事冥利につきる、ね!!)

 そんな思いにふける月、であったが、突然あることを月は思いついてしまう。

(あっ、そうだ!!このライブの様子を(Saint Snowなど)限られた人だけに中継するなんてもったいない!!世界中に生配信しちゃお!!)

実は月、明日スペイン広場で行われるAqoursのライブをSaint Snowなど限られた人たちに中継するため、Aqoursの練習が終わってからもビデオカメラの撮り方について1人で勉強していたのだ。たとえば・・・、練習2日目の夜・・・。

「う~ん、こうして、ああして・・・」

と、鞠莉から託されたビデオカメラを持ってある本を読みながらどう撮影すればいいか考えていた。で、その参考にしている本とは、「スマホで撮れる・・・かっこいいスクールアイドルの撮り方」・・・、そう、あの月がスクールアイドル関連の本を探して本屋に行ったとき、月が手に取っていたあの本である。実は、このとき、月はほかのスクールアイドルの本と一緒に買っていたのである。それは、あのとき、

(もし、僕が持っているハイスペックなスマホで曜ちゃんたちAqoursを撮ったらとてもすごいPVが撮れる、そんな気がする・・・)

と、一瞬考えてしまった、そのことを忘れることができずにあとで買った本だった。月、それとそのとき一緒に手に取った「スクールアイドルの裏方」という本とともに暇なときにビデオカメラの撮り方や裏方の仕事について勉強していたのであった。でも、月、あのAqoursの世話をしつつも夜も裏方の勉強をしているものだから、かなりきつい・・・と思いがちだが・・・、とうの月はいうと・・・、

(うへへ、へへへへへ)

と、少し浮かべ笑いをしていた。なぜなら、

(自分の撮った映像が世界中に配信される・・・、これって仕事冥利に尽きる!!それに、それだけ考えただけで本当に楽しい!!)

と、自分が撮った映像が世界中に生配信されることへの嬉しさのほうが強かった・・・。

 と、いうわけで、月が勝手にスペイン広場でのライブを世界中に生配信することを決めたのだが、

「あっ、あの子たちにも伝えちゃおう!!」

と、月、突然言い出すと、そのままあるところに電話をかけ始めた。

「あっ、ナギ、突然だけど・・・」

 一方、そのころ、日本の沼津・・・。このとき、日本は早朝だった。イタリアのローマにいる月の電話を受け取る少女が一人・・・。

「あっ、わかりました、月生徒会長!!こちらについては私の方でみんなに広めますね!!」

と言うと、電話口から、

「じゃ、お願いね、ナギ生徒会長代理!!」

という言葉とともに電話が切れてしまった。

 この電話のあと、その少女はあることを言いだす。

「さて、私たちも動きますか!!もうあの子たちもいろんな準備をしているはずですからね!!この私、ナギ生徒会長代理、以下正解役員一同、ついに動きます!!」

この少女の名はナギ。あの月生徒会長率いる静真高校生徒会のナンバー2、副会長を務めている少女である。で、今は月がここ沼津にはいないので、生徒会長代理として静真高校生徒会を率いている。とはいえ、あの静真高校の部活動報告会で千歌たち新生Aqoursのライブが失敗に終わったことにより、静真本校と浦の星分校の統合問題については木松悪斗率いる分校方式継続派の力が強くなり、統合推進派である生徒会の力は陰りをみせていた。それでも、ナギたち生徒会はその継続派の進行を抑えつつも反撃の機会を待っていたのである。そして、ついにナギたち生徒会が動こうとしていた。

 

 そんなナギたち静真高校生徒会に対し、沼津の別の場所ではあるトリオがあることで困っていた。

「むつ~、このままだとライブのスタッフ、絶対に足りなくなるよ~」

と、よしみがむつに向かって嘆いていた。そう、そのトリオこそ千歌たちAqoursを陰から支える浦の星の生徒、むつ、いつき、よしみ、通称よいつむトリオである。どうやらなにかをするためのスタッフが足りないことに嘆いていた。さらに、むつとよしみの隣にいたいつきからも、

「私もダメだった・・・」

と、こちらも嘆きの声をあげていた。これには、むつ、

「ナギたちはもうライブの下準備が終わって今さっきメールで知らせてきたけど、このライブのスタッフが集まらない限りライブをしたとしても失敗に終わっちゃうよ・・・」

と、こちらも嘆いていた。このとき、むつはあるものを持っていた。それは、浦の星の生徒たちの名簿。その名簿に載っている名前の横には「×」がずらっと並んでいた。どうやら、よいつむトリオ、浦の星の生徒たちを集めてなにかをしようとしていたみたいだった。だが、むつのなにかに嘆いている表情が察するに、それに参加しようとしている浦の星の生徒はそこまで多くなかった。多くて全生徒の半分・・・といった感じだった。

 が、そんなときだった。

「You Gut mail!!」

という音が突然鳴り響く。それに気づいたむつ。どうやらむつのスマホからの音だった。そのスマホの画面をむつが見るなり、これまで暗い表情だったのが明るい表情へと変わる。さらに、それがきっかけになったのか、いつき、よしみも明るい表情になる。そのなか、むつはあることを言いだす。

「千歌たちが・・・Aqoursが・・・復活したよ!!」

 この言葉のあと、よいつむトリオは明日の夜、千歌たちAqours9人がスペイン広場でライブをする、その日の夜に決行することを決めた、浦の星の生徒たちに向けたあることを・・・。それは、(静真において)浦の星の生徒の立場が不利になっている、それを打破する、そのためのステージを作るための布石、浦の星の生徒全員の力を結集しないとできない、そのステージを浦の星の生徒全員で築くための布石、だった。よいつむトリオ、その布石を打つことを決めるととすぐにその準備にはいった。 

 

 こんな風に、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たち、そのふたつが別々に動き始めた。それはそのままみたらまったく異なったものだと感じるかもしれない。しかし、これだけは言えた、むつたち、よいつむトリオ、ある共通の目的のために動いていることを、ナギ、むつ、(2人そろって)いわく、「「新生Aqours、そのお披露目ライブ」を・・・」

 

 



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Moon Cradle 第6部 第13話

 そして、次の日・・・、ついに運命の日、スペイン広場で、鞠莉、そして、Aqours、さらにはスクールアイドルの未来を賭けた運命のライブの日がやってきた。今日のスペイン広場はAqoursが1日中レンタルすることになっていた。それは月の計らいでスクールアイドルAqoursに一目ぼれしたローマ市長の粋な計らいとなっていた。とはいえ、1日中レンタルしているのでその分のレンタル料を払う・・・必要はなかった。なぜなら、ローマ市長の鶴の一声でレンタル料は無料・・・というよりもローマ市のプロモーション活動の一環とし取り扱われていたため、スペイン広場のレンタル料が必要なかったのだ。しかし、それでは小原家の名が廃る・・・というわけで、鞠莉が持っていたお金全部をローマ市への寄付というかたちで渡してしまった・・・。これで鞠莉は一文無し・・・というよりも、このライブこそ背水の陣で臨みたい・・・そんな鞠莉の決意を指し示すものとなっていた。

 

「1,2,3,4、2,2,3,4」

曜の掛け声ととともに最終リハーサルは進む。

「はい、千歌ちゃん、あともう少しはやく動いて!!」

と、曜の声が響く。これには、千歌、

「うん、わかった!!」

と、すぐに修正。ライブを行うのは午後、というわけで、午前中は最終リハーサルに徹しているAqoursメンバー。短期間とはいえとても充実した練習の日々、そのなかで、あのライブの失敗をきっかけに不安・心配の深き海・沼から脱するきっかけを掴んだ、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、この6人を導いた、ダイヤ、果南、鞠莉、9人それぞれの想いを胸に練習した結果、完璧ともいえる、いや、それ以上のものになっていた。Aqoursメンバー9人、そして、それをプロデューサー見習として9人のそばで見ていた月はそう思っていた。しかし、それは貸しスタジオでの練習においての話。スペイン広場の石階段は階段状になっており、本番はそこをステージに見立てて曲を披露することになっていた。貸しスタジオでもスペイン広場の石階段に見立てた踏み台を用意して練習していたが、本番の舞台となるスペイン広場の石階段と練習の踏み台では感覚が違ったりする。さらに、これはずべての未来を決める運命のライブである。そのため、リハーサルも入念に行われた。

 だが、リハーサル中にも関わらず、Aqoursメンバーはというと・・・。

「ごめんずら、ルビィちゃん。もっと近くに来てもらいたいずら」

と、花丸がルビィに言うと、ルビィも、

「うん、わかった!!」

と、笑顔で対応する。そう、Aqoursメンバー全員笑顔でリハーサルに臨んでいたのである。すべての未来を決める運命のライブ。たとえリハーサルであっても普通なら緊張して笑顔になるはずがない。もっとまじめともいえる表情をしているはずである。が、Aqoursメンバー全員笑顔をみせているんだ。これには、石階段の下でビデオカメラの最終点検をしていた月からすれば、

(みんな笑っている・・・。僕からすれば失敗が許されないライブだからとても緊張してる・・・はずなのに、全然その素振りがない・・・、むしろ、本当に大丈夫か心配になる・・・)

と、逆にライブに失敗するのではないかと思ってしまった。

 が、このときのAqoursメンバーはというと・・・、

(千歌のまわりには、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、果南ちゃんがいる!!みんないる!!だから大丈夫!!)(千歌)

(私の考えたダンスをみんなで踊る!!これって今までの私にとって経験したことがないことだよ!!よ~し、全力前進、ヨ~ソロ~!!)(曜)

(私の全力を込めて作った曲!!もうこれで鞠莉ちゃんたち3人と歌うのは最後・・・。でも、寂しくない!!だって、またどこかで歌うことになるかもしれない、そう思えてくるから!!)(梨子)

と、自分たちを鼓舞する千歌たち2年生、

(月ちゃん、ルビィをここまで成長してくれてありがとう。そして、お姉ちゃん、一緒に踊るのは最後になるかもしれないけど、悔いが残らないように、ガンバルビィ、するからね!!)(ルビィ)

(果南ちゃん、元気をくれてありがとうずら。果南ちゃんの想い、受け取ったと思っているずら。さぁ、がんばるずら!!)(花丸)

(ここスペイン広場にはヨハネが活動できるくらいの魔力が満ちているぞ!!さらに、マリーというリトルデーモンもいるぞ!!リトルデーモンマリーよ、見ておいてくれぞ、このヨハネの真の力を!!)(ヨハネ)

と、これで最後のセッションになるであろうダイヤたち3年生に対して頑張ることを誓うルビィたち1年生、そして、

(さぁ、これで最後だね!!私たちAqoursの集大成、ここでみせてあげようね!!だから、鞠莉‘sママ、瞬きしないで見ていたね!!)(果南)

(ルビィと一緒にいられるのも今日が最後、そして、私たち3年生にとってこれがAqoursという列車の終着駅、ですね。だからこそ、悔いが残らないよう、鞠莉‘sママさんの野望すら打ち砕く、そんなライブ、このダイヤがみせてあげますわ!!)(ダイア)

(ママ、私の意思、ここでみせてあげま~す!!「スクールアイドルはくだらない」、ノンノンで~す!!マリーたちの力でもって、スクールアイドルの素晴らしさ、マリーたちがやってきたことが無駄じゃなかった、むしろ、グローアップ(成長)したことをしらしめてあげま~す!!)(鞠莉)

と、このライブをジャッジする鞠莉‘sママに向けた想いを胸に秘めていえる鞠莉たち3年生、と、9人それぞれ、だけど、目指すものはただ1つ、そんな強い想いを胸に秘めていた。

 このようにとても自信に満ちたAqoursメンバーとそこからみせる笑顔で逆に心配になる月、あまりに正反対な思いをもったまま、

「はい、リハーサル、終了!!あとは本番を残すのみだよ!!」

というプロデューサー見習の月の一声で最終リハーサルは終了した。このとき、月、

(リハーサル中は終始笑顔のままだった・・・。でも、本番は大丈夫なのかな?僕、このまま本番に突入したらその笑顔が崩れるかもしれない・・・、いや、失敗できないという緊張のあまり笑顔すらできない・・・、そんな気がする・・・)

と、千歌たちAqoursメンバーのことを心配していた。何度もいうが、これから行われるライブは、鞠莉、Aqours、スクールアイドル、すべての未来を賭けた、失敗が許されないライブ、その重圧のなかで笑顔でいられるはずがない、そう月は思っていた。その心配がゆえか、月は食事すらのどを通らないほどAqoursメンバーに変わって緊張してしまっていた・・・。

 

 そして、昼食中、突然、千歌、

「あっ、ごめん、ちょっとお花摘み・・・」

と、みんなに言い残してスペイン広場近くにあるカフェのトイレのところまで向かった。千歌、そこで、

「さてさて、私は私でやることをしないとね・・・」

と言うと、自分のスマホを取り出しあるところにメールを送る。

「え~と、聖良さん、聖良さんと・・・。どう打とうかな?あっ、そうだ!!え~と、「このあと、イタリアローマのスペイン広場でライブを行います。この前の失敗はないと思います。イタリアでの旅行、ダイヤちゃんたち3年生3人との再会、それを通じてわかったこと、それをこのライブでぶつけたいと思います。絶対に見てください」っと」

 

 その日の夜、日本函館は夜の真っただ中、お風呂上がりの聖良、突然、自分のスマホから、

プルル

という呼び出し音が聞こえてくると、

「あれっ、だれかしら?」

と、自分のスマホ画面を見るとそこに表示されたのは千歌からのメール。そう、先ほど、千歌が入力した内容が表示されたメールだった。これをみた聖良、

「あっ、今から千歌さんたちのライブが始まるのですね!!こうしてはいられません!!すぐに理亜に見せないと・・・」

と、言ってはそのまま理亜のいる部屋へと行く。

 が、このとき、理亜の身になにかが起きていた。それは理亜にとって最悪ともいえる自体が起きていたのだ。その事態とは・・・。それは近いうちに話すことになるだろう。

 

 昼食後、いろんな準備をしつつついに本番を迎えることになった。

(本番、大丈夫かな~?)

と、本当にライブが成功するか心配になる月、その横では・・・、

「忙しい私が来たので~す!!もし、絶対くだらないものをみせたらただじゃすまないので~す!!」

と、本当に久しぶり?の鞠莉‘sママがスペイン広場の石階段に向かって陣取っていた。

 このとき、鞠莉‘sママ、

(いまだもってこの私は「スクールアイドルはくだらない、鞠莉はこの3年間棒を振った」って思っておりま~す!!その考えを覆すなんて無理中の無理で~す!!)

と、頭の中でその考えを反芻していた、それくらいこのライブで自分の考えを変えることなんてできない、そんな意思を強くもっていた。さらに、

(そして、私のまわ~りには私の味方ともいえる人たちでいっぱいで~す!!だって、まわりにいるのは、Aqoursというグループを、スクールアイドルという存在を知らな~い、海外から来た観光客で~す!!そんな自分たちを知らな~い人たちがいたら絶対に緊張するはずで~す!!絶対にライブは失敗するので~す!!)

と、千歌たちAqoursのことを高をくくっていた。たしかにその通りである。鞠莉‘sママの言う通り、千歌たちAqoursのまわりにいるのはたまたまスペイン広場に観光に来ていた観光客のみなさん+地元民である。この自分たちを全く知らない人たちのなかで自分たちの力だけでなにかを示そうとするのは至難の業、ともいえた。いや、この状況は最近似たような状況と一緒だった。それは静真での部活動報告会でのライブである。知られていたとはいえ、そのほとんどがこれまで会ったことがない静真の生徒たちとその保護者たちであった。むろん、全員Aqoursの存在は知っていたが、それでも、これまで会ったことがないあかの他人の目の前で千歌たち1・2年6人はライブを行ったのである。が、木松悪斗たちの陰謀、さらに、ダイヤたち3年生3人がいないという喪失感、さらにさらに、まったく知らない人たちの前で踊る、といったことが重なってしまい、不安・心配の深き海・沼に陥りライブは失敗した。それを考えるとこのライブのそのときの二の舞になることも予想できた。そのことを知っているのだろうか、鞠莉‘sママはこのライブは失敗すると読んでいたのだ。そして、このライブをジャッジするのは鞠莉‘sママ本人である。ジャッジマンである鞠莉‘sママが「「スクールアイドルはくだらない、鞠莉はこの3年間棒を振った」といった考えである限り千歌たちAqoursに勝利はない。それでも千歌たちAqoursメンバー全員が自分たちの想いを胸に頑張ろうとしていた。

 そんな横にいる鞠莉‘sママの、絶対に認めたくないオーラ、を直に感じていた月、

(僕も本当に大丈夫かどうか心配になってきているけど、ここは曜ちゃんたちを信じよう。だって、鞠莉‘sママさんの横にいる僕が心配そうな顔をしていたら、それこそ鞠莉‘sママさんにとってこのライブは失敗するという烙印を押すための格好の餌になってしまう!!だから、スマイル、スマイル!!)

と思うと、自ら律して笑顔になると、千歌たちAqoursメンバーを撮影する場所まで駆け足で移動、ビデオカメラを構えた。 

 こうして、ついに、スペイン広場でのライブ、鞠莉、Aqours、スクールアイドルの未来を賭けた運命のライブ、そして、果南、ダイヤ、鞠莉にとって最後となるであろうAqoursのライブがついに始まろうとしていた。



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Moon Cradle 第6部 第14話

 そして、ついに曲が始まった。

♪~

と、スペイン広場にPOP的な曲調の音楽が流れてくる。これには、鞠莉‘sママ、

(ふん、意外と軽快なリズムですね!!現代のPOP的な曲調ですね!!)

と、曲に関して一応認めている様子。しかし、

(とはいえ、これだけではこの私は納得しませ~ん!!)

と、いまだもってAqoursを認めていない様子。さらには・・・、

(スクールアイドル、いや、アイドルはとてもくだらないもので~す!!ただのひらひらしたスカートで男たちをノーサツするだけの存在で~す!!ここにいるみんな、このスペイン広場にいる観光客やジーモト民、そして、この私を笑顔にするなんて到底無理なことで~す!!そんな力なんてアイドルにはありませ~ん!!ミラクルが起きない限り私は認めませ~ん!!)

と、アイドルのことすら完全否定していた。

 そんな鞠莉‘sママであったが、

(さてと、きっと苦しんでいる鞠莉たちの顔でも見ときましょうか)

と、踊っている鞠莉たちの様子を見る。すると・・・、

(えっ、まわりにまったく知らない人たちばかりなのに、なんでスマイル(笑顔)なんですか!?信じられませ~ん!!)

と、鞠莉‘sママは困惑してしまった。そう、このとき、千歌たちAqoursメンバー全員・・・笑顔だった・・・。

 その千歌たちであるが、このときの千歌たちの気持ちはというと・・・、

(今、鞠莉ちゃんたちと踊っている!!それだけで安心できる!!そして、なんかわかった気がする!!ここの出来事を含めてすべてのものが残っていく、そんな気がする!!そして、いまならわかる!!私たち、いつも以上に輝いている!!その輝き、まわりにいる人たちにも伝わっているはず!!)(千歌)

(あっ、この場所、どこかに似ている・・・、あっ、いつも私たちが練習している内浦の砂浜海岸、そこの石階段だ!!たしかあそこって私たちが最初練習した場所、つまり、ゼロの地・・・。最初のころは私、千歌ちゃん、梨子ちゃんの3人だけ。でも、今は9人いる!!あっ、ルビィちゃんが言いたいこと、わかった気がする!!そして、それは私たちを通じてここにいるみんなにスクールアイドルの素晴らしさを伝えることができる気がする!!)(曜)

(私の作曲した曲がみんなの力で披露されている!!これって作曲家冥利に尽きるんじゃないかな?私はそれだけで幸せ!!でも、私はそれ以上に、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんと一緒にスクールアイドルを楽しんでいることの方がとても幸せ!!だって、この記憶、いや、想い出はずっと私たちの心の中に残っていく、3人の想い、キズナも残っていく!!そして、それがまわりにいる人たちにも伝わってくれる!!そんな気がしている!!)(梨子)

と、ルビィが伝えたいことをかみしめつつもまわりにいるAqoursのライブを見にきている人たちにもスクールアイドルの素晴らしさを伝えようとする者、

(これが最後のAqoursとしてのステージ!!もう悔いが残らないよう、そして、鞠莉‘sママに、ここにいるみんなに、スクールアイドルの素晴らしさ、教えてあげるんだから!!)(果南)

(私たちがこれまでやってきたことは間違いないと私は思います。だからこそ、ここで私たちのすべてを出し切るつもりです!!そして、ここにいるすべてのみなさんに、私たちの素晴らしさ、スクールアイドルの素晴らしさを教えてあげるのですわ!!)(ダイヤ)

(マリーたちにとってこのステージは最後のステージになると思いま~す!!でも、マリーならわかるので~す、ママ、そして、マリーたちを見に来てくれたみんな、私たちの素晴らしさ、スクールアイドルの素晴らしさ、それをフィーリング(実感)してくださ~い!!)(鞠莉)

と、最後のステージと思いつつもまわりにいる人たちにスクールアイドルの素晴らしさを伝えようとする者、さらに、

(やっぱり3年生がいると落ち着くずら~。でも、この前の果南ちゃんの言葉で知ったずら!!もうなくなるものはないずら!!きっと大丈夫ずら!!)(花丸)

(ふふふ、このスペイン広場にはこのヨハネが最大限に活動できるほどの魔力が満ちてるぞ!!それに、鞠莉たち3年生というリトルデーモンもいる!!だからこそ、今やヨハネは無敵なり!!鞠莉が言っていたあの言葉、このライブで実感しておるぞ!!さあ、ヨハネの名のもと、ここに宣言するぞ!!ヨハネ、これから先も、きっと、大丈夫、だぞ!!)(ヨハネ)

と、3年生と踊れることで安心感を持ちつつもなにかに気づいた者、そして、

(今、お姉ちゃんたちと一緒に踊っている!!歌っている!!今までやってきたこと、その想い出、みんなの想い、そして、みんなとのキズナ、この場所で、このときを、みんなと感じている!!そして、それはずっと続く・・・。それは決してもとに戻るわけではない!!あっ、そうか、そうなんだね、月ちゃん!!月ちゃんが言っていた一言、「旅立つことはゼロに戻るわけじゃないんだね」、それって、今、このとき、この場所で実感している、ルビィ、そんな気がしている・・・)

と、月の言葉を実感しているルビィ、9人それぞれちょっと違った想いをしていた。

 しかし、そんな9人ではあるが、心の奥底に眠る想いだけは一緒だった。それは・・・。

(ここにいるみんな、そして、鞠莉‘sママ、私たちの全力全開のステージを見て!!そして、スクールアイドルの素晴らしさ、楽しさ、すべてを感じて!!)

この共通する想いのためか、9人は一心同体ともとれる姿でもって踊り歌った。もちろん、この9人、ともに笑顔でもってまわりにいる観客すべてに、スクールアイドルの素晴らしさ、楽しさを振りまいていた。もう静真の部活動報告会でみせたみじめなAqoursではない、あのラブライブ!決勝でみせた、スクールアイドルを心の底から楽しむ、Aqours本来の姿に戻っていた。ついに千歌たち(新生)Aqoursは完全復活を果たしたのだった。

 そんな運命のライブであっても心の底からスクールアイドルを楽しもう、そこから生み出されるまんべんの笑顔のAqoursメンバーの姿を見た、鞠莉‘sママ、ここにきてある異変に気付く。

(Why?まわりが少しずつ変になっているので~す!!ど、どうしてのでしょうか!?)

鞠莉‘sママが気づいた異変、それは、自分のまわりにいる観光客、地元民の対応だった。最初は興味半分でみていた人たち、しかし、Aqoursメンバーの笑顔、そして、心の底から楽しもうとしている姿に、

(It excellent!!)(Very Good Girls!!)(It’s enjoy with me!!)

と、心の底から楽しもうとする観光客、

(Piacevole!!(イタリア語で「楽しい!!」)

と、Aqoursの歌を楽しんでいる地元民、と、Aqoursの歌う姿に心打たれる者が続出、その結果、笑顔をうかべる者、体でリズムを刻む者、目をキラキラさせる者が少しずつ、それもまるで鞠莉‘sママに迫るかのような広がりを見せていく。これには、鞠莉‘sママ、

(こ、これが鞠莉が言っていたスクールアイドルの素晴らしさっていうものなの!!)

と、驚きの表情をみせてしまう。

 が、この鞠莉‘sママ以上に驚いている少女がいた。それは、このAqoursのライブを直接撮っている、月、だった。ライブが始まる前、今日のライブは運命のライブであり、それをジャッジするのはスクールアイドルに否定的な人であること、それでも9人で必死に頑張ってきたこと、そのなかで、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、6人は著しく成長したこと、それにより今まで以上の輝きをみせることを思いつつもある思いをもってしまう。

(一番大事なのは、今からのライブ、あの失敗のライブ以来のライブということ。いざ本番となるとその輝きも曇ってしまう・・・、また、不安・心配の海・沼に沈みこんでしまう・・・かもしれない・・・)

そう、またあの静真の部活動報告会のライブみたいに失敗してしまうのではないか、それより、またもや、不安・心配の海・沼に沈み込んでしまわないか心配していたのだ。

 が、いざライブが始まるとき、ふとAqoursメンバー9人の表情を見る。すると、

(えっ、笑顔!!)

と、月、逆に驚いてしまう。これからの未来を決める運命のライブ、そんな重圧がのしかかっているのに苦しい顔なんて何一つない、本当の笑顔をみせる9人。これには、月、

(でも、なんでだろう・・・、このライブ・・・、成功するような気がする・・・、そう思えてしまう・・・。だって、今、僕の前にいる9人、Aqoursのみんな・・・、笑っている・・・。これから失敗が許されないライブが始まるのに・・・、みんな、笑っている・・・。なんで・・・笑えるの・・・、なんで・・・笑顔・・・なの・・・)

という逆に、このライブは成功する、という思いにもなってしまった。

 このふたつの矛盾する思いを感じつつ、月はカメラをまわしながらAqoursの方をずっと見る。そこには重圧を感じつつもずっと笑顔のままでさらに楽しそうな雰囲気を醸し出しているAqoursの姿があった。さらに、そのAqoursの出す雰囲気に触発されたのか、そのAqoursに興味をもってしまい、さらには、Aqoursのライブを一緒に楽しもうとしている観光客や地元民の姿がじょじょにではあるが広がりをみせようとしていることに、月、

(Aqoursのライブを見にきている人たち、なんか1つのライブとしてみんあんと一緒に楽しもうとしている気がする。いや、間違いない!!本当に楽しもうとしているんだ!!今、Aqoursが歌っているのは日本語。だから、歌詞の意味なんてみんなわからない。それでも、笑顔江で必死になってライブを行っているAqoursの姿に心打たれるものがあったのかもしれない。そうでないにしても、徐々にではあるが、このライブを一緒に楽しもうとしている人たちが増えている、それは間違いない)

と、ある確信を持つようになる。と、同時に、月、

(そして、なんでなんだろう・・・、この僕もこのライブをみんなと一緒に楽しもうとしてきている。僕は僕でこのライブを成功させようとこれまで頑張ってきた。それは、ダイヤさんたちに言われてプロデューサー見習として頑張ってきた・・・だけなのに、今も、ただ、このライブをカメラにおさめようと、日本にいるみんなにこのライブを見せようとカメラをまわしているだけなのに、だけど、これまでやってきたこと、この場に、伝説の場にいること自体楽しもうとしている自分がいる、そんな気がする・・・)

と、これまでやってきたこと、ここにいること自体楽しいものだと思えてしまうことに戸惑いを感じる月、そんな気持ちになったのは初めて、そんな気がしていた。

 

 そして、Aqoursメンバーがみせた笑顔、ここにいるみんなと一緒に楽しもうとしている姿はやがてスペイン広場にいる観光客、地元民、すべてを巻き込み、スペイン広場一帯を一つのライブ会場になってしまった。この様子をみた、鞠莉‘sママ、

(み、みんなが笑顔になって鞠莉たちを応援している・・・、いや、みんな、このライブを心の底から楽しもうとしている・・・。これがスクールアイドルっていうものなんでしょうか・・・。こ、これが鞠莉たちが持つ力っていうものなんでしょうか・・・)

と、一瞬戸惑ってしまう。しかし、それでも、鞠莉‘sママ、

(でも、これではっきりしましたね!!)

と冷静になるとこんな風に考えるようになった。

(でも、これではっきりしましたわ!!私はこれまで「スクールアイドルはくだらない」と思っていました。けれど、まったく知らない人たちも一緒になって楽しもうとしている姿、それにつられて、鞠莉たちを見に来てくれたオーディエンス(観客)さえもみんなと一緒になって楽しもうとしている、会場中が一体になっている姿、これを見てわかりました。たしかに、これまでスクールアイドルを見たことがない人たちから見たらスクールアイドルなんてくだらないと思うでしょうね。だけど、実際にスクールアイドルを見て私は気づきました、スクールアイドルは人々を楽しませてくれる、いや、会場中を一体にしてみんなと一緒に楽しませてくれる、そんな存在なんだって!!)

そんな想いを持った鞠莉‘sママ、そのときの表情はえらく険しいもから自然と笑顔へと変わろうとしていた。どうやら、鞠莉‘sママの心の中には鞠莉のことを心配する気持ちもあったみたいだった。それが鞠莉を中心としてライブを楽しもうとしているみんなの姿をみてほっとした・・・のかもしれない。

 

 が、そんなときだった。最後のサビに入ろうとしているとき、ダイヤは一段下にいるルビィに対し、

(おいで、ルビィ!!私の大事な妹!!)

と、手を挙げてルビィに対し「おいで、おいで」のポーズをする。これに、ルビィ、

(はいっ、お姉ちゃん!!)

と、ダイヤの思いに呼応し一段上に昇る、このとき、ダイヤにある感覚が襲い掛かる。それは・・・。

(ルビィがまるで一人前の女性に見えてきましたわ)

そう、ルビィは階段を一段昇ることにより、子どもから一人の女性へと変身を遂げた、ダイヤにはそんな風にみえたのである。ルビィはAqoursというものを通じてさなぎ(子ども)から大人へと生まれ変わる準備をしていたのである。そして、今、まさに、1人の大人へと生まれ変わった、そうダイヤには感じたのかもしれない。この感覚に襲われたダイヤはルビィが一人前の女性になったことに対して嬉しさを感じていた。

 が、ルビィは違った。階段を昇ろうとしたとき、ある不安をが頭をよぎる。

(でも、よく考えたら、このライブはお姉ちゃん、鞠莉ちゃん、果南ちゃんにとってルビィと一緒に踊れる最後の機会になるんだよね・・・。もうお姉ちゃんたちと一緒に踊ることはない!!それって悲しい気がする!!お姉ちゃんたちと最後のライブ、そんなのいや!!お姉ちゃんたちとずっと楽しんでいきたい!!これからもお姉ちゃたちと一緒にスクールアイドル活動したい!!)

その思った瞬間、ルビィは昔のルビィ、弱弱しいルビィに戻った、そんな感覚に襲われてしまう。人とは楽しいことが最後であると思った瞬間、ずっとこれが続いてほしい、もっと一緒にいたい、そんな思いが強くなってしまうものである。そして、それが今のルビィにも起きてしまったのだ。結果、昔の弱弱しいルビィに戻った、そんな感覚にルビィは襲われたのである。これには、ルビィ、

(あれっ、なんか笑顔になれない、わからないよ~)

と、少し躊躇してしまう。そのためか、ルビィ、一瞬顔がゆがんでしまう。

 このルビィの躊躇している姿にAqoursのライブを見に来ていた観客の人たちは、

(あれっ、ピンクの髪の子、ちょっと調子が悪くなったのかな?)

(あのピンクの髪の子、大丈夫かな?)

と、ルビィのことを心配してしまう。さらに、それが鞠莉‘sママにも伝わったのか、

(あのピンクの髪の子、一瞬笑顔じゃなくあんりましたね!!どうしたのでしょうか?)

と、鞠莉‘sママもルビィのことを心配してしまっていた。

 そのルビィの不安、それについて心配する観衆、その姿を見て、ある少女がルビィのことをとても心配そうに見ていた。そう、月である。月は一瞬不安・心配の海・沼に陥ったルビィを見て、

(ルビィちゃん、どうしたのかな?このままいったら、ルビィちゃんがまたのもとのルビィちゃん、弱虫のルビィちゃんに戻ってしまう)

と、ルビィのことを心配するも、

(でも、今はライブ中、僕にはどうすることもできない・・・)

と、月、諦めモードに突入・・・したかと思うも、

(でも、僕、ルビィちゃんを助けたい!!神様、助けて!!)

と、不安・心配の海・沼に陥ったルビィを助けたい、そんな一心で神に祈った。 

 ついに、ルビィ、ここで昔の弱虫ルビィに戻ってしまうのか、そんな心配が会場中を駆け巡った、そのとき、あるところから心の叫び、ともとれる声が聞こえてきた。

「加油、加油」

それはたまたまスペイン広場に来ていてAqoursのライブに出くわした中国人ファミリーの心からの声援だった。この心からの声援からか、会場中からこんな心からの声援が聞こえてきた。

「Hang in there」「Fai del tno meglio」「Gid dein Bestes」「Faites de votre mieux」

これに呼応したのが、なぜか、鞠莉‘sママ、だった。この心からの声援は鞠莉‘sママにも聞こえていたらしく、

(あの子には立ち直ってほしい、そんな声が聞こえてきま~す!!なら、私もあの子にあの言葉を(日本語で)いいましょう!!)

と、思ってか、自分の心の中からある言葉を叫び始める。

「頑張れ~!!」

と。そう、観客の心の中からの声援、それは「頑張れ!!」だった。ここスペイン広場は世界中のいろんなところから旅行のために集まった人たちが多い。そこに地元民もいるため、いろんな言語で「頑張れ!!」という心からの声援がルビィへの声援として会場中を包み込んでいたのである。

 そして、その声援はある奇跡を生み出す。

(ルビィちゃん、ルビィちゃん・・・)

と、ルビィに対し心の底から呼びかけている月。そのとき、突然、

(ルビィ、どうしたらいいの・・・)

と、突然、ルビィの声が月の頭の中に流れ込んでくる。これには、月、

(あっ、ルビィちゃんの声が聞こえてきた!!もしかして、ルビィちゃんの心の中に通じてしまったの・・・)

と、少し戸惑うも、

(でも、これでルビィちゃんの心の中に僕の声が聞こえてくれるはず!!)

と、前向きにとらえることにした。

 とはいえ、ルビィからすると、本当に月と心が通じ合っている、なんてことに気づいていないらしく、

(どうしたらいいの~、お姉ちゃん~)

と、ルビィはいまだ悩み続けていた。

 そんなとき、

(ルビィちゃん、ルビィちゃん・・・)

と、ルビィ、自分の心の中に突然月の声が聞こえてくる。これには、ルビィ、

(あっ、月ちゃんの声だ・・・。どうして月ちゃんの声がするの?」

と、ルビィ、不思議がるも、月、そんなことお構いなしに本題に入る。

(ルビィちゃん、思い出して、僕の言葉を・・・、あのとき、僕が言った、あの言葉を・・・)

 そして、月はルビィに対しその言葉を送った。

(ルビィちゃん、僕が「真実の口」で言った言葉、覚えている?「ルビィちゃん、旅立つことはゼロに戻るわけじゃないのよね!!」それから、僕、ルビィちゃんには仲間がいる、って言ったよね)

この月を言葉を聞いた、ルビィ、思わず、

(あっ、思い出した・・・。月ちゃんの言葉、その続きを・・・、思い出した・・・)

というと、「真実の口」で月が言った言葉を思い出す。ルビィには仲間を通じて、想い出、想い、キズナを得たこと、でも、人は仲間が旅立つとき、ゼロに戻ったと感じてしまうこと、それがイタリアに来る前のルビィたちにあったこと、しかし、本当はそれは間違いであり、むしろ、これまでやってきたこと、すべて、心の中に残っており、たとえ、仲間が旅立ったとしても一緒にやってきたこと、その想い出、想い、キズナはずっと心の中に残っていること、だからこそ、「旅立つ=ゼロに戻る」は間違いであり、想い出、想い、キズナなどが自分たちにとって宝物であり、その宝物を通じてずっとつながっていける、その先に一緒に進むことができる、未来という新しい輝きへと向かっていける、そのことを・・・。

 これを思い出した、ルビィ、

(そうだよ!!お姉ちゃんたちは旅立つ、このライブをもって。お姉ちゃんたちはスクールアイドルを卒業する!!けれど、それですべてがなくなったりしない!!ゼロに戻ったりしない!!)

と、自分を鼓舞する。そして、ダイヤの手を握って自分の力で階段を、大人の階段を昇った!!

 すると、ルビィの心の中にある確信めいた気持ちが芽生える、このライブを含めて、これまでAqoursとしてやってきたこと、それが想い出として、想い、キズナとして、自分の心の中に宝物として残っていく、その宝物を通じてずとみんなとつながっていく、前に進んでいけることを。さらに、ルビィは月がこのことを伝えるためにルビィにあえてつらくあたっていたこと、それを悟らせようとしたことに気づく。ルビィ、それをも糧としてこれから頑張ることを決心した。

 そして、ルビィはそのままダイヤにハイタッチを交わすと、千歌たちの方を見て、

(で、千歌ちゃんたち、ルビィの言いたいこと、気づいてくれたかな?)

と、ルビィ以外のAqours1・2年生5人がルビィがスペイン広場をライブ会場に選んだ意図にきづいたのか心配になる。ここを会場に選んだ理由、それは、ここが今のAqours原点の地(=ゼロの地)である内浦の砂浜海岸にある石階段に似ていること、その地で、今、自分たちは9人で踊り歌っていること、それは昔みたいにゼロに戻ったわけではなく、自分たち9人が今ここにいることを示すことでその9人で得た想い出、想い、キズナといった宝物が自分たちの心の中に残っており、その宝物を通じてキズナという絶対切れない糸でいつもつながっていること、その先に一緒に進める、それを含めて気づいてほしいから。

 このルビィの想いであるが、これが良い意味でルビィの笑顔、元気いっぱいのダンス、歌へとあらわれていく。さらに、このルビィの想いがAqoursメンバー全員に波及したのか、最後のサビのまえの鞠莉のソロに入るとき、Aqoursメンバー全員、これまでにない最高の笑顔、元気いっぱい、楽しさいっぱいのダンス、歌でもって観客みんなを楽しませていた。このAqoursの姿を見た月、こう思ってしまった。

(こ、これだよ!!これこそ、本来のAqours、その真の姿、だよ!!)

そう、これこそ、本当のAqoursの真の姿である。いや、それ以上だった。スクールアイドルとして大切なもの、それは、楽しく、元気よく、そして、笑顔で踊り歌うこと、それを体現したAqours、この姿に、Aqoursを見に来てくれた観客たちからは、

「がんばれ~!!」「なんか楽しくなってきた!!」「わくわくします!!」

など、これまで以上にヒートアップしていった。いや、会場にいる全員がAqoursを応援するだけでなく、自ら、楽しくて嬉しい、そんな状況に陥ってしまった。これには、鞠莉‘sママ、

(う、うそでしょ!!たしかに鞠莉の言っていた、スクールアイドルはみんなを元気を与える、ことは知りましたが、そのスクールアイドルって(自分が思っている以上に)ものすご~い影響力を持っているのですか?そんなの、(スクールアイドルのことを認めた私でさえ)いまだもって信じられませ~ん!!でも、信じざるをえないですね~。だって、鞠莉たちを応援する声、どんどんビッグになっているのですから・・・。いや、この私でさえ心の底からもっと応援したいと思っているのですから・・・)

と、驚愕の表情をもってスクールアイドルの素晴らしさを認めてしまった。

 だが、鞠莉‘sママに襲い掛かる衝撃はこれだけではなかった。鞠莉、このとき、自分の母親に対しこんな想いを貫こうとしていた。

(ママ、まわりの雰囲気だけ感じ取っちゃダメ!!私たちの歌をちゃんと聞いて!!この歌の歌詞自体、私たちの気持ちを代弁したものなんだから!!)

そう、最初は千歌がフィレンツェでの鞠莉の行動をもとに書き上げた歌詞だった。しかし、日々の練習のなかで、鞠莉にとってより良い歌詞に、そして、鞠莉の母親、鞠莉‘sママに自分たちの気持ちを直接伝えたいがゆえにAqoursのみんなでさらにフラッシュアップしたのである。つまり、「Hop?Step?Nonstop!!」は鞠莉をはじめとするAqours全員の今の気持ち、鞠莉‘sママに伝えたいことすべてを凝縮した歌でもあった!!

 そして、鞠莉の想いはついに自分の母親、鞠莉‘sママの心をも貫いた。「スクールアイドルの素晴らしさを肌で感じた鞠莉‘sママ、最後のサビのまえにある鞠莉のソロを聞いたとき、

「あっ、まわりのことでいっぱいでしたが、この曲の歌詞、これって、まさか・・・、鞠莉たちの今の気持ち・・・なのかしら・・・)

と、歌詞を聞いてふと考えると、鞠莉‘sママ、その歌詞にあるものを感じてしまう。

(あっ、わかりました!!鞠莉たちの気持ちが!!鞠莉、いや、鞠莉たちみんな、自分たちの意思で自由なツバサで羽ばたこうとしているので~す!!それがたとえどんなことがあっても、なにがあってもみんなの力で乗り切ろうとしているので~す!!これ(鞠莉たちの気持ち)、聞いてしまいますと、鞠莉‘sママ、もう観念するしかないので~す!!だって、鞠莉‘sママが用意した鳥かごでは、Aqoursという仲間たちのなかで大きく成長した鞠莉という大きな鳥を束縛すること自体、絶対に無理、なのですからね~!!)

この気持ちになったのか、鞠莉‘sママ、ついにあることを決断した・・・。

 



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Moon Cradle 第6部 第15話

 ついに曲が終わった・・・。この瞬間、

ヒューヒュー パフパフ ブラボー

と、観客たちはみなスタンディングオベーションでAqoursを称えた。これには、月、

(よかったよ、みんな!!僕、感動しちゃった・・・。だって、こんなステージを見たの、生まれて初めてだもの・・・)

と、感動していた。

 そして、歌い終わったAqours、そのなかで、ダイヤはルビィの方を向く。これには、ルビィ、

「お姉ちゃん・・・」

と、姉であるダイヤに呼びかけると、ダイヤ、そんなルビィに対し、一言。

「もうルビィはなんでもできるのですわ、なんでも!!」

 この歌を通じてダイヤが贈った、ただの子どもから1人の大人へと本当に生まれ変わったルビィに対しての最大限の誉め言葉、これには、ルビィ、

(お姉ちゃんから、一人前の女性になったこと、認めらえた!!やったー!!)

と、嬉しくなった。

 と、同時に曜はなぜここを会場に選んだのかわざとルビィに聞く。すると、横から花丸が

「沼津の海岸にある石階段に似ているから」

と言うと、みんななんのことだかわからいないようなふりをして笑ってしまった。

 が、梨子だけは、

(あっ、なるほどね。だから、ルビィちゃん、ここを会場に選んだんだ)

と、ルビィの意図を薄々と感じていた。

 

 そして、ついに、鞠莉‘sママの評決のときがきた。歌い終わって笑っている鞠莉の前に鞠莉‘sママが立つ。このとき、鞠莉、

(これで私の未来は決まるので~す!!でも、悔いはありませ~ん!!ダイヤと果南、そして、ちかっちたち、みんなと一緒に一生懸命やってきたので~す!!もし、これでダメでも、大丈夫、で~す!!だって、私には、ダイヤ、果南、千歌っちたち、みんなとの想い出、想い、そして、キズナがあるので~す!!それさえあれば、きっと、どんなことがあっても、やっていけるので~す!!)

と、すべてのことをやりつくしたことを感じつつも、

(でも、これだけはママに言いたいので~す、鞠莉の、鞠莉が言える、ママへの最後の反抗を!!)

と、自分にとって最後になるであろう、自分の母親、鞠莉‘sママへへの反抗をすることを決めた。

 そして、鞠莉は最後の反抗を、自分の想いを鞠莉‘sママにぶつけた。

「私がここまで会うんできたのはすべてもう私の一部なの、私の一部なの!!ママとパパが私を育てたように、Aqoursやみんなが私を育てたの。何一つ手放すことなんてできない!!それが今の私のなの!!」

 これを聞いた、鞠莉‘sママ、あることを確信した。

(そうなんですね~。鞠莉はママとパパが育てたのと同様にハグー(果南)とですわ(ダイヤ)、そして仲間たちから育ててもらっていたのですね。ママの知らないところで鞠莉は元気よく楽しく育っていた、それがこのライブで、鞠莉たちが楽しいところ、元気なところをいかんなく発揮させていたのですね!!結果、鞠莉たちをまったく知らない観客のみんなを、楽しく、元気にさせてくれた、それに感動した観客たちが鞠莉たちを応援してくれたのですね!!スクールアイドルはくだらない、そのために鞠莉は堕落した、そうママは思っていました。しかし、それ自体が大きなミステイク(間違い)でした!!本当はその逆で~した!!ものすごい影響力を持っていたのですね、スクールアイドルは!!そして、鞠莉、鞠莉‘sママが思っていた以上の、ほかとは比べ物にならないくらい、本当に一人前のおおきな女性になっていたのですね~、スクールアイドル活動を通じて、そして、ハグとですわ、その仲間たちのおかげで!!)

 仲間たちのおかげで一人前の大きな女性となった鞠莉、そして、スクールアイドルがどれだけ素晴らしいものなのか、それを実感した鞠莉‘sママは一瞬笑うと、そのまま鞠莉たちのもとから立ち去っていった。しかし、その笑顔には鞠莉の成長を心の底から喜んでいる、そんな想いが隠されていた。

 

 ライブは鞠莉‘sママの凍り付いた心すら溶かすほどの大成功・・・だったのだが、なぜか、千歌、ルビィたち1年にまたもやどこか似たような質問をする。

「なんで(ライブ会場に)スペイン広場を選んだの?」

ここでもさっさと答えたのが花丸だた。

「デジャブ!!でも、いいずら。なんか、スペイン広場の石階段が、沼津(内浦)にある砂浜海岸の石階段に似ていたからずら」

 またもや同じことをいう花丸、これには千歌もようやく、

「スペイン広場の石階段と沼津内浦の砂浜海岸の石階段に似ている・・・、うん、なるほどね・・・」

と、なにかわかったような感じで答えていた。

 

 一方、そのころ、月はというと・・・。

(ふ~、ようやく終わった・・・)

と、ライブが大成功に終わったことに安堵しつつも、

(さてと、ついにAqoursも復活したし、僕がイタリアでできることはすべて終わった!!あとは・・・、曜ちゃんたちと一緒に祝賀会だ!!)

と、千歌たちみんなと祝賀会の開こうと思ったのか、曜のところに近づく。

 すると・・・、

「ルビィちゃん、ちょっといい・・・」

と、月がよく知る人物の声が聞こえてくると、その声に呼びかけられた少女、ルビィはそのまま、

「だれ、ルビィを呼んだのは?」

と、言っては後ろを振り返る。すると、そこにいたのは、千歌、曜、梨子、それに、ダイヤたち3年生3人であった。これに気づいた、月、

(あっ、なにかが始まる予感!!)

と、胸をわくわくしつつも、

(でも、僕が出ていったら、この場面をぶち壊すことになるかもしれない・・・)

と、いうわけで、近くの物陰に隠れてルビィの方を見る。

 すると、突然、千歌はあることを言いだした。

「なぜ、スペイン広場をルビィちゃんがライブ会場に選んだのか、なんかわかった気がする!!」

これには、ルビィ、すぐさま、

「なぜ?」

と、聞くと、千歌、その答えを言った。

「それって、千歌たちに、ルビィちゃんの言いたいこと、伝えたいことを気づかせるためだったんでしょ!!」

この千歌の答えを聞いた月、おもわず、

(えっ、千歌ちゃん、今日のライブだけでわかったの!!)

と、びっくりする。だって、たしかにルビィの言いたいこと、それについてのヒントは、ルビィがライブ会場を1年生の手で選ぶことを宣言したあの夕食のあとに起きた、千歌、曜と鞠莉、果南の会話の中であった、が、そのヒントと今回のライブの件ですべてわかるとは、「やっぱりAqoursのリーダーだ」と、感心したからだった。

 が、みなさんの期待通りに答えるのが千歌である。ルビィ、

「で、その(ルビィが)言いたいこと、伝えたいこと、ってなに?」

と、逆に千歌に尋ねる。すると、千歌、

「え~と、え~と」

と、ためにためて・・・、一言!!

「え~と、え~と、なんだっけ?」

これには、月、

ガクッ

と、こけてしまう。いや、そこにいるみんなこけてしまった。これには、月、

(う~、やっぱり千歌ちゃんだ・・・)

と、期待を裏切らない千歌の姿にただただ納得してしまっていた。

 そんな千歌に変わって曜が答えた。

「たとえダイヤちゃんたち3年生が旅立ったとしてもゼロに戻ったわけじゃない、それを伝えたかったのでしょ!!」

これには、ルビィ・・・はおろか月すら驚く。

(うそっ!!やっぱり曜ちゃんだ!!1を聞いて10を知る、なんて、やっぱり曜ちゃんはすごい!!)

と、曜のことをべた褒めする月・・・であったが、そんな曜はそのまま詳しい説明にはいる。沼津内浦の砂浜海岸、そこは今のAqoursのスタートの地、ゼロの地、原点であり、千歌たちがイタリアに来る前、3年生がいない、練習する場所もない、つまり、ゼロに戻った、なにもかも失ったと思った千歌たち1・2年生6人、そのために、不安・心配の海・沼に沈みこんでしまったために静真の部活動報告会でのライブ、Saint Snowの聖良の前でみせたライブは失敗に終わったことを。これにはさすがの千歌もがっかりする。

 そんな曜の説明はまだまだ続く。

「でも、イタリアでの鞠莉ちゃんがらみの騒動、そして、今日のスペイン広場でのライブで、みんな気づいたんだ、ゼロに戻ったわけじゃない、ゼロの地、沼津内浦の砂浜海岸にある石階段に似ている、スペイン広場の石階段で、私たちAqours9人はライブをした。それは、私たち2年生3人だけの昔のAqoursじゃない、本当のAqours9人で行ったんだって!!このこと自体意味があるんだよね!!私を含めて、みんな、ゼロの地で、全力でライブをした!!そう、今のAqoursの原点、私たち2年生が始めた、そのときとは明らかに違う!!私たち9人で、全力で、ライブを行った!!それを意味するものとは・・・」

と、その説明は曜から梨子へと変わる。

「曜ちゃんが言いたいこと、それは、ゼロの地で、みんなと、それも、Aqours9人で、楽しく、元気に、全力で、ライブをした、いや、いろんなところでAqoursとして頑張ってきた、そのことによって、私たちの心の中に、いろんな想い出、いろんな想いが積み重なっていき、さらに、それによってみんなといろんな人たちと深いキズナを結ぶことができた、そして、それは私たちにとって宝物になった、その宝物は、たとえ、ダイヤちゃんたち3年生が旅立ってもずっと残っていく、私たちの心の中に!!それを伝えようと、ライブ会場にスペイン広場を選んだのでしょ!!」

この曜と梨子の答えを遠くから聞いていた、月、

(曜ちゃん、梨子ちゃん、ほぼ正解だよ!!でも、100点満点じゃないのよね!!)

と、曜と梨子の説明・・・というより答えに足りない部分があることを指摘しつつ、

(それじゃ、ルビィちゃん、正解をどうぞ!!)

と、ルビィの方を見る。すると、ルビィ、

「でも、もっと大切なこと、忘れているよ!!」

と言った後、その曜と梨子の答えに足りない部分を言った。

「それはね、たとえお姉ちゃんたちが旅立っても、想い出、想い、キズナ、それらがいっぱい詰まった宝物を通じて、見えないけれど、とても大きな太いキズナという糸でずっとつながっていること!!だからこそ言える!!ゼロに戻ったわけじゃない!!なにも失っていない!!むしろ、大切な宝物がルビィたちの心のなかにいっぱいある!!それを通じて、ずっと、つながっている!!どんなことがこれから起こっても、なにがあろうとも、ルビィたちの心の中にある宝物、そのキズナという糸は切れることなんてない!!むしろ、その先の未来へと一緒に進めることができる!!そのことが、新生Aqoursにとって大切なことだ、と、ルビィは思っているよ!!」

このルビィの言葉を聞いたダイヤ、涙を流しながら喜んでいた。

 が、ここで意外な反応をみせる少女が1人・・・。

「ずっとつながっていく、先に進めることができる・・・」

と言うと、いきなり

「ピッ、ピカンッ!!」

と、奇声をあげてしまう。その少女の名は千歌。この千歌の奇声に、ルビィ、ダイヤ、ともに驚くも、そんなことお構いなしに、千歌、

「つながっていく・・・、その先へと進んでいける・・・」

という言葉を言い残すと、目の色を変えてこんなことを言いだしてしまう。

「あっ、なんかわかった気がする!!」

このことばのあと、

「千歌、今から部屋に籠って書いてくる!!」

と言い残してホテルの自分の部屋へと戻ってしまった。そんな、少し変に見えた千歌であったが、曜と梨子からすればそんな千歌を期待しつつ自分たちができることをしようと決心した。ルビィもその曜と梨子に同意した。これにはダイヤも、

「これでようやく千歌さんたち新生Aqoursも軌道にのるってものですね・・・」

と、まるでみんなのお母さんみたいな目でほほ笑んでいた。

 

「ふう、本当によかったよ!!ライブは大成功!!プロデューサー(見習)冥利に尽きるよ!!これで新生Aqoursのお話も大団円で終わったよ!!僕、大団円で終わったこと、本当に嬉しいよ!!」

と、物陰に隠れていた月、ルビィと新生Aqoursの不安・心配の海・沼から脱する物語は大団円で終わったことを喜びつつ、

「さてと、それじゃ、僕は一目散に退散して・・・」

と、物陰からこっそり抜け出そうとしていた・・・・、そのとき、

「ところで、新生Aqoursのお話ってなにかな?」

と、突然、月に向かって声が聞こえてくる。これには、月、

「ふ~、それは簡単だよ!!ルビィちゃんを使って僕が新生Aqoursを生まれ変わらせる話!!」

と、なんも考えなく言ってしまう。この瞬間、

「ふ~ん、なるほどですね~。私たちたちはまんまと月さんの手のひらで踊らされていたわけですね!!」

と、聞きなれた声が聞こえてくる。これには、月、

「そういうこと・・・」

と、気まずそうな声を出してしまう。月、なにか異変に気付いたみたいだった。

 そして、月は後ろを振り向く。そこには・・・。

「あっ、曜ちゃん、梨子ちゃん、それに、ダイヤさん・・・」

そう、月は知らなかった。月が知らないうちに曜、梨子、ダイヤが月のところまで来ていたのだった。

 その、月、バツが悪そうにダイヤの方を見ると、

「で、僕になんか御用でしょうか・・・」

と、ダイヤに尋ねてしまう。この月の言葉を聞いたダイヤ、突然怒り始める。

「月さん、たしかにルビィを生まれ変わらせてありがとうございます!!でも、それもこれも月さんの思惑通りであるなら、私、堪忍袋の尾が切れますわ!!」

 これには、月、

(あの~、たしかにルビィちゃんを生まれ変わらせるところは僕の思惑通りですけど、鞠莉‘sママさんとのトラブルや今日のライブについては、僕、完全ノータッチなんですけど・・・、僕の思惑通りではないのですが・・・)

と、ダイヤにツッコミをいれようと思うも、すでに怒っているダイヤにいくら言っても無駄であることは月でも知っていた。そのためか、月、

「そこは黙秘いたします!!」

と、完全に黙りこんでしまった!!これには、ダイヤ、

「黙らないでください!!」

と、月に注意する。

 と、ここで、曜、

「ダイヤちゃん、ここは落ち着いて!!ルビィちゃんが生まれ変わったことへの裏話については私も梨子ちゃんも知らないけど、今はそれよりももっと大事なことが・・・」

と、ダイヤをなだめると、梨子も、

「そのことについては置いときましょう。今はほかの件で月さんのところに来たのですから」

と、物事を先に進めようとする。

 そんなわけで、曜、いきなり、月に話しかけてくる。

「で、月ちゃん、今日のライブのことなんだけど・・・」

このとき、月、

(もしかして、曜ちゃんもダイヤさんと同じく怒っているのかも・・・)

と、戦々恐々とするも、曜、

「てっ、私、月ちゃんのことを別に攻めているわけじゃないよ!!」

と、月に対してあまり怖がらないように言うと、月、

(あっ、そうなんだ・・・)

と、ついほっとしてしまう。

 そんな月に対し、曜、いきなり、

「でね、月ちゃん、今回は本当にありがとうね!!」

と、お礼を言いだしてきたのだ!!これには、月、

「えっ、えっ!!」

と、驚いてしまう。自分はそこまで力になっていない、そう思っている月だったので、いきなり曜からお礼を言われるとは思いもしなかったのだ。

 そんな少しパニックになっている月に対し、曜は自分の想いを口にした。

「私、今さっき、ダイヤちゃんから聞いたんだ!!私たちがライブを行う上で月ちゃんが裏で大活躍していたって!!ローマに来てすぐに練習場を押さえてくれたし、ライブ会場ですら押さえてくれたときも月ちゃんが一肌脱いだってことだし、それに、それに、私たちがライブをできるように裏方というか、マネージャーみたいなことをしてくれたみたいだし・・・」

これを聞いた、月、

(全部自分のことだけど、聞くだけでとても恥ずかしいよ~)

と、顔が真っ赤になってしまう。曜が言った前3点については自分から動いたことだったが、最後のマネージャーについてはダイヤたち3年生からお願い?されておこなったものなので、全部自分の意思・・・で動いていたわけはなかったために本当に喜んでいいのかわからなかったのだ。

 そんな月のことを知らずか、曜はある言葉を月に送る。

「月ちゃんが裏で頑張ってくれたから、私たちは今日のライブを心の底から楽しむことができたよ!!月ちゃん、本当にありがとうね!!」

 この曜の素直なお礼を聞いて、月、

(曜ちゃんたち、今日のライブ、心の底から楽しむことができたんだね!!なら、(このライブのためにやった)僕の苦労も報われるってものだよ!!)

と、少しうれしくなると、月、

「いや~、そうかな?」

と、少しは御神ながら答えた。

 だが、次の瞬間、月はびっくりしてしまう、曜のある一言に・・・。

「でね、月ちゃん、月ちゃんも楽しかった?」

この曜の言葉、そのとき、月、

「えっ、楽しかった・・・?」

と、一瞬フリーズしてしまう。そんな月に対し、曜は月に圧倒する。

「月ちゃん、私ね、鞠莉ちゃんと鞠莉‘sママさんとの最初の(フィレンツェでの)出来事から今日のライブまで一生懸命やってきた!!ダイヤちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃんとの最後のライブ、最初はそう思ってしまって、とても悲しくなった。けれど、ダイヤちゃんたち3人と練習していくうちにそれすら忘れて練習に没頭しちゃった!!私、いや、みんな、この時間をとても楽しんでくれた、と思うの!!でも、そんな貴重な時間を共有できたのも、みんな、月ちゃんのおかげ!!」

この月へのお礼を再び言いつつ、曜は本題へと入る。

「で、そんな月ちゃんも楽しむことができた?」

 この曜の言葉に、月、

(えっ、僕も楽しむことができた?)

と思っては頭がポカンとなってしまう。そんな月に対し、曜はさらに畳みかける!!

「月ちゃん、月ちゃんもちゃんと楽しめたと思うよ。だって、月ちゃん、熱心に私たちのサポートしていたじゃない!!それに、練習場やライブ会場の確保だってすぐにやってくれたじゃない。それって、とても楽しいから、私たちを熱心にサポートしたいから、やってくれたと思うよ!!」

 この曜の言葉を聞いた月、このとき、月の心の中にある想いが浮き上がってくる。

(あっ、そういえば、曜ちゃんの言う通りかも。僕、みんなのために頑張ってきた。最初はルビィちゃんを変えよう、新生Aqoursを復活させようとしていた。それによって静真高校が変わればと思っていた。けれど、今は違う。練習場を確保しようとしたのも曜ちゃんたちAqoursのため、スペイン広場をライブ会場として確保したのはルビィちゃんの想いに答えるため。本当だったら僕がそんなことをしなくてもダイヤさんたちならきっとやってくれたかも。でも、そんなことを気にせずに僕が最初から動いてしまった。それって、僕が、Aqoursのライブを成功させたいためにしていたのかも。そして、僕は最初、ダイヤさんたち3年生から卒業する私たちの代わりにとプロデューサー見習として僕にAqoursの練習のサポートをさせていた。たしかにきつかった・・・。でも、そのかわりに僕の知らないAqoursの一面を知ることができた。無計画的にみえて本当はより良いものにしようとしている曜ちゃんたち。僕はそんな一面を知ることができて本当にうれしかった。もっともっといろんな一面を見たいと思ってしまった。だから、僕はどんなことがあってもAqoursのサポートを頑張ってきた、そんな気がする!!それって、僕自身、それを楽しんでいたのことになるのかな・・・)

 そして、そんな想いに浸る月に対し、曜は月にある言葉を贈った。

「月ちゃん、もう一回言うけど、私たちのために頑張ってくれて本当にありがとうね!!」

さらに、梨子からも、

「私も曜ちゃんと同じ気持ちだよ!!だから言うね、月ちゃん、私たちを助けてくれてありがとうございます!!月ちゃんのおかげで新生Aqoursは復活できたし、ダイヤさんたち3年生と楽しい想い出を最後に築けたと思います!!本当にありがとう!!」

と、月にお礼の言葉が贈られる。

 最後に、ダイヤも、

「まっ、ルビィの件についてはあとにしますけど、私としてもヴェネチアで再会したとき、千歌さんたちに元気がなかったのはとても気になりました。それをあなたはたった1人の力で千歌さんたちを元気にさせただけでなく、あなたの行動により、今日の(スペイン広場での)ライブを成功に終わらせることができました。これは私たちの力、ではなく、月さんの力によるものです!!それは誇ってください!!渡辺月さん、本当にありがとうございました!!」

 この3人からのお礼に、月、

(う~、3人からお礼を言われると、僕も嬉しくなっちゃうよ!!僕、プロデューサー見習として頑張ったかいがあったよ!!)

と、とても嬉しい気分になった。

 人というのはなんか一生懸命頑張って成功したとき、とても嬉しくなるものである。それは自分にとってかけがいのないものとなる。が、もし、ただ勝つだけ、ただそれだけを目標にするのであれば、ズルなどをして勝ったとしても、結果としたは「勝ち」となる。最終目標が「勝利」、それに固執するのであればそれでいいだろう。しかし、その「勝利」というものを得るためにしてきたことがとても淡泊なものであるなら、それは人の成長という機会を喪失したものになる。月の場合、たしかにSaint Snowの聖良に言われたこと、さらに、静真での木松悪斗との闘いのこともあり、今回のイタリアの旅は新生Aqoursの復活こそ目標であったが、月はそれをする上でまずルビィを生まれ変わらせることにし、さらに、そのルビィのために自ら動いてライブ会場となるスペイン広場の確保に努めたのである。それと合わせて月はAqoursのサポートをすることになった。それはただ自分の使命だけ動いた・・・わけではない。最初のころはそうだった。しかし、月はルビィのため、Aqoursのために自ら動いたのだ、少なくとも、練習場やライブ会場の確保については・・・。では、その月は使命のためだけに動いていなかったのならどんな思いで動いたのか?それは、自分の意思で楽しみたい、Aqours、特に、ルビィのために役に立ちたい、そんな気持ちから、かもしれない。人というのは、目標のために淡々と物事を進めるだけだとつい飽きてしまったりするものである。たとえ、そうでなかったとしても、どこかで力を抜いたりさぼったりすることで中途半端なものになってしまうことがあったりする(とても管理された状況であれば話は別になるかもしれないが・・・)。しかし、その目標において自ら楽しむのであればそれは話が別になる。楽しんで物事にあたったり練習をするのであれば、途中で飽きることなくそれに熱中できるものなのである。むろん、熱中するあまり途中でダウンすることもあるが、「自ら楽しむ」というのはそれくらい強力な武器ともなりえるのである。そして、たとえ、誰からの指示で最初仕方なくしていたとしても、知らないうちにそれに対する面白さにひかれていき、結果、自分の自覚がないのにそれを楽しんでしまうことがはよくある話である。今回の月もそれにあたるかもしれない。しかし、それであっても、ただたんに管理された状態で成功したのと自ら楽しんで結果的に成功した、どっちの方がその人にとって自分に対する達成度を多く感じられるのだろうか。それは、いわずもがな、自ら楽しんで達成した方が自分に対する達成度を多く感じられるのである。その意味でも、月にとって自ら楽しんでサポートしたAqours、そのAqoursのライブが大成功に終わったことについて、月にとってみればとても嬉しい気持ちになるとともにこれまで自ら楽しんできた自分の姿に気づいたのかもしれない、自分に対する達成度を多く感じられたがゆえに。それに対して、ただたんに管理された状態で成功したときの気持ちってどうなのだろうか。それについてはあとで話すことにしよう。

 とはいえ、3人からお礼を言われたことにとても嬉しくなるも、月、

(うん、これで僕の役目も終わり!!あとは日本に帰るだけ!!でも、その前に、ローマに来たんだし、いろんなところに観光したいな~)

と、ことが終わったことで有頂天になっていた。そんな月に対し、

「それじゃ、月ちゃん、またね!!」(曜)

「また、明日、お会いしましょう」(梨子)

と、曜、梨子から別れの挨拶を受けると、月、

「うん、またね!!」

と、月も2人に別れの挨拶をする。

 そして、、

「さてと、今からバチカンに・・・」

と、月が言った、その瞬間、

「月さん、お待ちなさい!!」

と、浮かれる月を引き留める声が聞こえてくる。これには、月、

「あれっ、この僕を引き留める声が・・・」

と、言ってはその声がするほうを向く。すると、そこには・・・、

「月さん、忘れてないでしょうね。私のルビィを生まれ変わらせたこと・・・」

と、怒りの形相になっているダイヤが月の前で仁王立ちしていた。これには、月、

「さて、なんのことでしょうか・・・」

としらばくれてしまう。

 すると、ダイヤ、

「ルビィの件と今回のことが月さんの思惑であった件ですわ!!」

と、月に対して怒鳴ってしまう。これには、月、

「え~と、それについては黙秘ということで・・・」

と、バツが悪そうに言うと、ダイヤ、

「ちなみに、ルビィについてはあとで、く・わ・し・く、ルビィに聞きます。まずは、今回の思惑について、月さんにきつい、バツ、を与えないといけませんですわね!!」

と、月に対してきつく言うと、月、

「え~!!」

と、がっかりするような大声をだしてしまった。



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Moon Cradle 第6部 第16話

 こうして、ライブの大成功と鞠莉の輝かしい未来、スクールアイドルのこれからの未来を手に入れることができたAqoursメンバーはイタリアでの残されたわずかな時間を使って、今、自分たちができることをやろうとしていた。千歌はできる限り、自分の気持ち、Aqoursメンバーの気持ちを代弁するかのごとく作詞に力をいれることにした。ルビィ、花丸はAqoursがステージで着る衣装をスケッチしてはそれに使う生地を追い求めて町中の生地屋さんを巡っていた。曜、ヨハネは新しいダンスをAqoursのダンスに取り入れたいため、ローマの現地ストリートダンサーのもとを訪れていた。梨子は自分の音楽の知識や認識を広げるために日夜イタリア各地で行われるコンサートを巡っていた。それはこれまでのAqoursには見られなかった、新生Aqours、そのものを自分たちの手で作っていく、成長させていく、そんな風にみえていた。

 一方、月はというと・・・、たった一人、ローマを観光・・・ではなく、

「さあ、月さん、今度はAqoursの歴史です!!」

と、ダイヤが大きな声で言うと、月、

「は、はい!!」

と、びくびくしながら言ってしまう。ここは千歌たちが泊まっているホテルの一室。なんと、月、ダイヤ、果南、鞠莉、3年生3人によってなかば監禁状態になっていた。ダイヤ曰く、

「あのあとルビィから聞きました。すべてがすべて月さんの思惑通り・・・じゃなかったのですね」

これには、月、

「すべてがすべて僕の思惑通りに動いていた・・・わけじゃないですよ!!僕は新生Aqoursを復活させるために、ルビィちゃんを生まれ変わらせるようとしただけです!!鞠莉‘sママさんのことはただの成り行きです!!」

と、ダイヤに言うも、ダイヤ、すぐに、

「それは私の早とちりでした・・・。ごめんなさい」

と、月に謝罪するも、

「でも、ルビィの件については話が別です!!」

と、自分の大切な妹であるルビィのこともあり、怒りパワー爆発になる。続けて、ダイヤ、月をにらみつけて一言。

「月さん、たしかにルビィは生まれ変わりました。けれど、そのやり方がほとんど脅かしと一緒というのはどういうことなのですか!!」

そう、たしかにルビィは月によって生まれ変わった。が、第6部を最初から読んでいる方ならもうお分かりだろう。月は、最初、ルビィに対し、姉のダイヤはいつかはいなくなる、と言っていたのである。たしかに事実だが、ダイヤ依存症であった生まれ変わる前のルビィとしては効果絶大だった。というよりも、それにより、ルビィは情緒不安定な状態に一時期陥ってしまったのである。が、そのあと、「真実の口」のところで「ゼロに戻るわけじゃない」などとそれに対する真意を月が言ったことによりルビィはその真実に気づき、安心するとともに旅立つ姉ダイヤに対し自分の意思でこれから生きていくことを心から誓ったのだった。月からしても、ルビィからしても、結果的にはよかった・・・のだが、その過程が悪かった。ルビィは生まれ変わったが、その過程がどちらかというと、恐喝、に近いものだった、そうダイヤは感じたのである。人というのは恐喝的なものを受け、そのあと、手を返したようにやさしく対応すると、その人にとってより効率的に効果を与えることができるものである。月もそれを知っており、ルビィにもその方法を使って新しく生まれ変わらることに成功したのである。が、それが妹であるルビィ想いのダイヤにとって気に入らなかった、いや、脅しという方法自体義理人情に熱いダイヤにとってとても許されるものではなかったのである。

 と、いうわけで、ダイヤの逆鱗に触れてしまった月、ダイヤ、果南、鞠莉によってなかば監禁状態にされてしまったのである。

 とはいえ、実際には監禁とは名ばかりのものだった。じゃ、実際のところは・・・というと、スペイン広場でのライブ前に行っていたプロデューサー見習の続きであった。新生Aqoursを無事に復活させたことで暇になった月、同じく、最後のライブ?も終わったことでAqours関連でやることがなくなった、かといってイタリアを十分堪能してしまったのでとても暇だった、ダイヤ、果南、鞠莉、4人とも暇だった・・・ということもあり、ダイヤの発案で月を徹底的にしごいて本当のプロデューサーにしてしまおう、ということになってしまったのである。けれど、たしかに暇だけだけど、残された時間はそんなに残っていいなかった、というわけで、朝から夜まで部屋に缶詰になりながらも座学で月にみっちり教える・・・だけでなく、

「月、この機械はね・・・」

と、音楽スタジオに行っては音響設備の使い方を月は果南と鞠莉から教えてもらっていた。これに対して、月、とても「うぅ~」と、いやがって・・・いなかった。むしろ、

(へぇ~、そうなんだ!!)

と、向学心丸出しで聞いていた。だって、月からすると、

(もう曜ちゃんたちAqoursに首を突っ込んだもの!!なら、もっと曜ちゃんたちの役に立とう!!)

と、思っていたからだった。そりゃ、スペイン広場でのライブ前でも本で裏方の勉強をしていた月である。それが本職?から直々に教えてもらえるのだから、とても役得、だと感じていただろう。

 しかし、月に残された日々の暮らしはダイヤたちからのしごき?だけではなかった。夜、

「う~、疲れた~」

と、ベッドに倒れこむ月。正味12時間ずっとダイヤたち3人の教鞭をまじめに聞いていたのだ。なので、疲れるのも無理ではなかった。

 が、

「たしかに疲れたよ!!でも、僕にはまだしないといけないことがある!!」

と、言うと、ベッドの近くに置いていた本を取り出す。そのまま、

「え~と、こうして、ああして・・・」

と、自分のスマホを構えながらその本を見ては恰好をつけていた。実は月が今読んでいるのは、

「スマホでも簡単に撮れる・・・かっこいいスクールアイドルの撮り方」

であった。月はその本を読みながら自分のスマホでもってどうすればAqoursをかっこよく撮れるか研究していたのだ。自分が持つハイスペックなスマホをこれまではうまく使いこなしてなかった。が、今こそそのスマホの真価が問われていたのだ。それは、あのスペイン広場でのライブ以外でスクールアイドルを撮ることなんてしたことがない月にとっても同じことだった。そう考えたとき、月はこのハイスペックなスマホを使いこなすことで少しでも千歌たちAqoursのために役に立とうとしていたのである。そして、このときの苦労は近いうちに報われることになる・・・のだが、それはあとの話である。

 とはいえ、こんな過酷ともいえる数日を月は暮らしていたが、

(それはすべて曜たちAqoursのため)

と、月はそう思ってやっていた。その中で、月はふとある想いに至る。

(僕の知らないことを知ることができる!!それはあとになって曜ちゃんたちAqoursのためになる!!そう考えると、前以上にもっと楽しいよ、僕!!こんな楽しい時間がずっと続いてほしいよ!!)

 

 そんなわけで、Aqoursメンバー、それに月は自分ができることを精一杯頑張っていた。それはすぐにでも発揮されることなんてない。けれど、その努力の積み重ねによりそれはのちに大きな力として発揮されるものである、そうみんなが思っていた。そのためか、Aqoursメンバー、月、ともに今を一生懸命頑張っていた。

 こうして、数日が過ぎ、Aqoursメンバー9人と月は自分がやれることはやり抜いたことを実感しつつ帰国の途についた。イタリアローマの空港から日本成田行きの飛行機に乗った月、このとき、

(さあ、これで激闘のイタリアからおさらばになるね!!)

と、思いつつ、

(でも、僕はやることはやったよ!!新生Aqoursは復活した!!もうこれで木松悪斗と十分に戦える!!)

と、勢いつけてしまう。

 が、そんな月だったが、ひとつだけ気になることを口にする。

「でも、沼田のじっちゃんが言っていた問いの答え、まだ見つかっていないんだよね・・・」

そう、月たち静真高校生徒会が目指しているもの、静真本校と浦の星分校の統合、それを叶えるために月に静真の影の神である沼田から出されていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なものとは」その答えにまだ行きついていない、と、月はこのときそう思っていたからだった。

 しかし、このときの月は知らなかった、実は、このイタリア旅行を通じて月はその答えにつながるヒントをすでに持っていたのである。いや、それに月は気づいていなかったのかもしれない。けれど、その問いのヒント・・・というより、答え、はすでに月の中にあった。あとは月がそれに気づくことができればいいのだが・・・。



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Moon Cradle 第6部 第17話

 と、いうわけで、これで千歌たちAqoursと月のイタリア旅行の話はここで終わる・・・が、これと同じくして別の物語も同時進行していた。

 

 まずは一つ目。それは鞠莉‘sママの話である。あのローマ・スペイン広場でのAqoursのライブで、鞠莉の成長、だけでなく、スクールアイドルの素晴らしさすらも実感した、鞠莉‘sママ、ローマの小原家の実家に帰ってきてまもなく、こんなことを言いだした。

「しか~し、今日のライブはしびれま~した!!あんなライブ、結婚する前に私のハズバンド(夫)と一緒に行った日本のロックバンド以来で~す!!それも、私のマリーがあのAqoursの一員として今日のライブをしたので~す!!私の知らないところであんなに成長していたなんて本当に驚きで~す!!それを知らずに私はマリーをバードゲージ(鳥かご)のなかに詰め込むところで~した!!それだとマリーのためにはならなかったので~すね!!私としては本当に失礼なことをしました。でも、それでも、マリーがあんなに成長してくれて本当によかったで~す!!Aqoursの皆様、本当にサンキューで~す!!」

鞠莉‘sママ、今日のライブがあまりにも刺激的だったらしく、かなり興奮していた。

 そんななか、鞠莉‘sママに近づく方が1人・・・。

「鞠莉‘sママ様、お疲れ様です」

その人の声に、鞠莉‘sママ、

「おや、爺やではありませんか!!ただいまで~す!!」

と、鞠莉‘sママに近づいた方、こと、爺やにただいまを言う。どうやら、鞠莉‘sママに近づいてきたのは長い間小原家に仕える執事こと爺やであった。その爺やに対して、鞠莉‘sママ、

「ところで、爺や、聞いてくださ~い!!私のドーター(娘)のマリーがね、とても成長していたのよ~」

と、娘である鞠莉の自慢話を始めようとしていたが、これに対し、爺や、

「それはよかったですね。でも、その話はあとで詳しくお聞かせください」

と、のらりくだりとかわしつつも、鞠莉‘sママに伝えたいことを言いだした。

「ところで、鞠莉‘sママ様、あと1時間後に裏美様という方がこちらに来られるとのことです」

 これを聞いた、鞠莉‘sママ、

(ほ~、あの裏美もこっちに来ているのですか。でも、なんでここイタリアに裏美がいるのですかね?)

と、なぜこのイタリアに裏美がいるのか疑問に思ってしまう。それどころか、

(しかし、それよりも、なんで私とマリーのいざこざに裏美という者が介入してきたのでしょうか?今回はマリーが私の知らないところで成長していたために私はマリーを換金するのを諦めました。けれど、もし、マリーを認めずに私がマリーを監禁していたら、裏美はどんな得をしていたのでしょうか?もっとも、なんで、私とマリーのいざこざになんで介入してきたのか気になりま~す!!)

この考えを持ったのか、鞠莉‘sママ、すぐに爺やに命令する。

「爺や、お願いがありま~す!!裏美が来る前に、今回の件、私とマリーのいざこざに裏美がなぜ介入してきたのか、できる限りの範囲で調べてきなさ~い!!」

この鞠莉‘sママの言葉に、爺や、

「鞠莉‘sママ様、わかりました・・・」

と言っては裏の方へとひっこんでしまった。

 

 そして、30分後・・・。

「鞠莉‘sママ様、こちらが資料です」

と、爺やがこの30分間で裏美と今回の件について調べてまとめた資料を鞠莉‘sママに渡した。さらに、爺や、

「私の口から言うのはおぞましいですが、今回の裏美の件ははっきし言って「真っ黒」といっても過言ではないでしょう。それよりも、この小原家存亡の危機につながるところでした

と、鞠莉‘sママに言うと、鞠莉‘sママも爺やが作成した資料を見たのか、おもわず、

「ガッテム!!」

と、怒りの形相になってしまった。さらに、

「たしかに、この資料からすれば、裏美が裏で糸を引いている気がしま~す!!それだけじゃなく、私たち小原家の信用すら失墜させるつもりみたいで~すね!!それは許せません!!懲らしめないといけないので~す!!」

と、言っては、鞠莉‘sママ、裏美が来るのをいまかいまかと待っていたのだった・・・。

 

 30分後・・・、そのことを知らない裏美は小原家のローマの実家に行く途中、こんなことを考えていた。

(さて、あともう少しで、悔しがっている鞠莉という小童の顔が見れる!!いや、これこそ小原家没落のスタートラインになるのだ!!今回の件で小原家は多額の出資をしたはずだ!!これにより、小原家の財政は火の車!!それに、娘である鞠莉を拘束して鞠莉‘sママの決めた許嫁と結婚させるなんて、なんて古臭い考えなんだ。いや、それをしたことにより小原家の名誉は地に落ちることになる!!さて、どんな見ものになるのでしょうかね~)

 そして、裏美を乗せた車は小原家の実家に到着。裏美はそのままその家の扉を開けると、

「あっ、これはこれは、鞠莉‘sママさん、直接私を出迎えてくれるとは、なんと嬉しい限りです!!」

と、裏美は言った。そう、鞠莉‘sママ自ら裏美を出迎えていたのである。その鞠莉‘sママ、すぐに、

「裏美さん、ここだと話すのにしのびありません。この私が直接ご案内しま~す!!」

と、裏美をある場所へとご案内する。その場所とは・・・。

「おお、これは広い大広間ですな!!」

そう、大広間だった。通常、ここでは小原家主催の晩さん会をひらいてはヨーロッパの起業家たちや社長、会長といった方々の接待をする場所として使われている、のであるが、裏美、あることに気づく。

「あれっ、ここには高価な壺や絵画がないのですかね~」

そう、この大広間には高価な物が一切なかったのだ。通常、大広間はヨーロッパの社交界の人たちをお招きするため、高価な物、たとえば、壺や絵画などが飾られているのだ。それは小原家は高いステータスを持っている、その証になるからなのだが、今回のところはそんなもの、この大広間にはないのだ。これには、裏美、

(ほ~、もしかすると、今回の件でお金を使い過ぎて高価な物を売りに出したというわけですな!!それほど、小原家の財政は火の車、ですね!!)

と、にやりと笑っていた。

 そんな裏美に対し、鞠莉‘sママは重い口を開いた。

「裏美さん、今回の件(鞠莉の件)でご助力ありがとうございました」

これには、裏美、

「いや~、私も今回の件はとても心配しておりました」

と、言うと、続けて、

「ところで、無事に鞠莉さんを拘束できましたでしょうか?私も拘束された鞠莉さんを見たいものです」

と、へらへらしながら言う。裏美、このとき、

(さて、私も悔しがる鞠莉という小童の顔を見てみたいわ。本当は悔しがる月生徒会長の姿を見てみたいのですがね・・・)

と、考えていた。

 が、ここから裏美の顔は真っ蒼になってしまう。その口火を切ったのが、裏美の発言を受けての鞠莉‘sママの一言だった。

「拘束されたマリーを見てみたいですって!!そんなに悔しがるマリーの顔を見たいのですか!!」

このときの鞠莉‘sママの顔は、鬼そのもの、だった。鞠莉‘sママ、続けて、裏美に自分の怒りをぶつける。

「私のマリーはもうここにはいません!!私の手を離れて自由なツバサで大きく羽ばたきました!!そうともしらず、ただ、悔しがるマリーの顔を見たい、ですって!!笑止千万で~す!!」

 これを聞いた裏美、

(えっ、まさか、鞠莉‘sママの思惑が外れたのか・・・)

と、驚きをみせたのかポカンとなる。鞠莉‘sママ、ポカンとする裏美に対しさらに怒りをぶつける。

「それに、今回の件、裏美さんが裏で糸を引いていた、というより、黒幕だったので~すね!!この私にヴェネチアのマリー探しに多額のコストをかけさせた件、さらにフィレンツェでのマリーの居場所を私に教えたのも、すべてはこの小原家を財政を苦しめるだけでなく、信用すらも陥れようとしていたので~すね!!」

これには、裏美、

(な、なぜわかったんだ!!うまく隠したはずなのに!!)

と、驚きを隠せない様子。たしかに、裏美は鞠莉‘sママにばれないように鞠莉‘sママに指示したのである。が、よくよく考えれば、これまでの鞠莉‘sママと裏美のやり取りを見ていればわかってしまうことであった。だって、「イタリアに行く千歌たち新生Aqours6人+月の渡航費用は全部鞠莉‘sママ持ち、さらに、ヴェネチアの鞠莉たち探しの費用も全部鞠莉‘sママ持ち、というとどうしても裏美が小原家の財政を火の車にしたい魂胆がみえみえだったりする。さらに、爺やの調べにより、ヴェネチアのとき、鞠莉を探すためのポスターなどを印刷する際、その印刷費用は市中の価格より少し高かったのである。なおだが、実は鞠莉‘sママ自らその印刷業者に頼んだわけでなく、鞠莉たちが逃げる時間を作らせないように裏美が指定した業者に頼んでいたのである。先に裏美によって依頼していたため、すぐに鞠莉‘sママのところに納品できたのだが、その印刷に使った代金のうち、何パーセントかをなんと裏美にキックバックさせていたのだ。これは爺やがその印刷業者を懲らしめ・・・こほん、その印刷業者の証言により発覚したことだった。それがわかったことでも裏美が小原家を貶めようとしていたのが明白となったのである。

 自分がこれまで裏でやってきたことがばれてしまった裏美、そのためか、

(うぅ、このままだと大変なことになる・・・。ここはなんとかしないと・・・)

と、動揺しつつもこの場をなんとかしよとする。それが・・・、

「あっ、でも、今でも、スクールアイドルはくだらない、と思っているでしょ!!」

そう、スクールアイドルをけなすことだった。話題をスクールアイドルへとすり替えようとしてきたのだ。裏美、さらにこんなことを言いだす。

「ただひらひらしたスカートで踊って男たちを悩殺するだけの存在、さらには、生産性があまりにも低すぎる、それがスクールアイドルというものです。ほんと、けがわらしいものですな!!」

スクールアイドルをけなすような発言、昔は裏美と同じく鞠莉‘sママもスクールアイドルについては否定的な立場だった、それを思い出した裏美の発言・・・。しかし・・・、

「裏美さん、昔の私だったらそうだったかもしれません・・・」

と、鞠莉‘sママはこう発言すると、大声で威圧的に裏美に対して言った。

「でも、マリーたちAqoursのライブを直接見たことで考え方を変えました!!スクールアイドルは世界を変えるパワーがありま~す!!笑顔で踊りながら歌う姿はまわりを幸せにするだけでなく、頑張っていこうとさせるパワーがありま~す!!さらに、あの笑顔の下には絶え間ない努力があると思いま~す!!人というのはどんなときでもどんなことがあってもずっと笑顔でいるのはとても難しいもので~す!!それを当たり前のようにやるのは相当な努力が必要で~す!!だから、言えま~す、スクールアイドルというのはとても素晴らしいもので~す!!」

この鞠莉‘sママの言葉を聞いた裏美、

(う、うそだろ・・・)

と、唖然とするしかなかった。

 されに、鞠莉‘sママは追い打ちをかけるように裏美にこう言った。

「そして、裏美さん、あなたは私の娘マリーの大事な仲間であるAqoursや私たちに対してもひどい仕打ちをしたそうですね!!」

そして、鞠莉‘sママは裏美を恨むように、いや、木松悪斗たちがやってきた悪事を言いだす。

「まず、あなたたちは自分たちの利益やその維持のためだけに、いや、小原家をつぶそうとするために、突然、浦の星と静真の統合に反対したそうですね!!そして、自分たちの地位を利用して静真に通う生徒の保護者たちに至らぬ噂を流し、統合を阻止しようとした。さらに、分校方式での統合が決まると、今度はAqoursに対してひどい仕打ちをした!!それは、静真の部活動報告会での(新生)Aqoursのライブの妨害!!あなたのご主人、木松悪斗がプログラムの順番を(新生)Aqoursが不利になるようにしただけでなく、ステージのポジションを示すためのテープをわざと残して(新生)Aqoursメンバーが転びやすいようにした!!」

これには、裏美、

(な、なんで、私たちがやってきたことがばれているんだ!!で、でも、最後のテープの件については私も知らないのだが・・・)

と、うろたえてしまう。まさか、自分たちがやってきたことば鞠莉‘sママには筒抜けになっていることに驚いてしまったからだった、自分の知らないことを含めて・・・。

 ちなみに、なんで木松悪斗たちがやってきたことが鞠莉‘sママには筒抜けになっていたかというと・・・。まず、木松悪斗たちが突然静真と浦の星の統合に反対したことについては、沼津の経済界で小原家と交流がある人たちからの情報だった。なんと、木松悪斗、その人の前で、

「俺は静真と浦の星の統合に反対なんだ!!だって・・・」

と、どうやら言いふらしていたみたいだった。さすがに木松悪斗が小原家を潰すためとまでは言ってはいなかったが、だれからどうみても小原家を潰そうとしている、と感じられていたらしい。だって、浦の星を支援していたのは小原家である。その浦の星と静真の統合が破談したときに一番被害を被るのが浦の星の生徒たちと小原家である。一方、静真についてはダメージは軽微である。だって、統合できない理由があるのは浦の星の方だから、そう木松悪斗たちはそうしようと噂を広げたのだから。

 そして、部活動報告会でのライブの失敗についてはネットでの調べでわかったことだった。実はプログラム順の変更およびテープの件についてはそれに関する情報がネットでアップされていたのである。それはそれに関係した人たちのSNSからだった。プログラム準の変更については、あの部活動報告会実行委員の学生が自分のSNSで「木松悪斗様からAqoursが不利になるようにプログラムを強制的に変更させられた」と書いてあったのだ。テープの件についても、テープをそのままにした木松悪斗の娘でAqoursの前に発表を行った女子サッカー部の部長、旺夏、その旺夏の取り巻き、というよりも、女子サッカー部の部員がSNSで「Aqoursがライブで失敗した。でも、私は見てしまった。ピンク色の髪の少女(ルビィ)がステージの床に残っていたテープを踏んでしまい、それがもとで大きく転んでしまったことを・・・。でも、それを部長(旺夏)は平気で笑っていた、「あれは私がわざと残しておいたのですよ。Aqoursのだれかが転んでしまうように」って言いながら」と書いてあったのだ。補足として、ステージに残っていたテープは旺夏がただテープを外すのを忘れただけなのだが、旺夏がそんなことを言ってしまったがゆえにわざとテープをはがしていなかったことになってしまった。

 と、いうわけで、関係する者がそれに関係する情報をSNSでアップされたことで木松悪斗の悪行が目にさらされることになったのだが、木松悪斗もSNSについてはずっとそのままにしていたわけではなかった。その情報は木松悪斗側がすぐに見つけては強制的に削除していくのだが、ネットというものは怖いものである。そのSNSを見た別の者たちがそのSNSにある情報をすぐにスクショ、もしくは画面保存してほかのSNSにアップしてしまったのである。木松悪斗側もそれについてもすぐに見つけては強制的に削除していくのだが、それでも現れてはすぐに削除、その繰り返し、いや、いたちごっこになっていたのである。そして、削除できなかったものが鞠莉‘sママの爺やによって見つかった、というのが事の顛末である。

 

 と、いうわけで、ついに、鞠莉‘sママ、裏美に対して怒りの鉄槌を下す。

「もうわかっていますね、裏美さん。もうこれ以上、小原家、そして、私の娘、マリーに対して困らせるようなことはしないでくださいね!!いや、これ以上関わることはしないでもらいたいで~す!!あなたを含めて、木松悪斗一派、小原家への立ち入りを禁止いたしま~す!!もし、これ以上悪いことをしたら、木松悪斗様の沼津での経済活動ができなくなる、と、思ってもらっても構いませ~ん!!なお、これは、私の夫、小原家当主の承諾済みで~す!!」

この鞠莉‘sママの怒りの鉄槌をくらった裏美、思わず、

「ヒッヒー」

と、顔を引きずるような表情をしてしまう。さらに、鞠莉‘sママ、

「こんな小汚い者をつまみ出しなさ~い!!」

と、言うと、爺やがでてきて裏美を猫のようにつまんでは、

「お~りゃ~」

と、力いっぱい裏美を外に向かて投げ飛ばしてしまう。そんな、裏美、

「あ~れ~」

と、言っては小原家実家の敷地の外に飛ばされてしまった・・・。

 

 その後、爺やは鞠莉‘sママに対し一言。

「これでよろしかったのでしょうか。このままだと木松悪斗様と小原家の闘争に発展しかねませんが・・・」

爺やの小原家に対する心配であったが、鞠莉‘sママ、

「それはないでしょう。小原家に対して戦うということは、沼津、いや、日本、いや、世界中を敵にまわすことにつながります。それだけは木松悪斗も避けるでしょう。木松悪斗という男ももう立派な大人なのです!!その点については律するでしょう」

と言って、木松悪斗に淡い期待をする。しかし、それは裏目にでてしまう。木松悪斗は「かつこそすべて」を地でいく男である。戦いこそすべて、の男である。たとえ世界中を敵にまわしても戦い抜く、それが木松悪斗である。と、いうわけで、このあと、木松悪斗を巡るひと騒動が起こるのであるが、それはあとの話である。

 と、木松悪斗に対して楽観視している鞠莉‘sママ、ふとここで、

(でも、もしかすると、木松悪斗がAqoursの行動を妨害するかもしれないで~す!!なので、ここはひとつ布石を打つので~す!!)

と、思ったのか、

「爺や、電話を持ってきてくださ~い!!」

と、爺やに指示、

「はい、ただいま」

と、爺やが電話を持ってくると、鞠莉‘sママ、あるところに電話をした。

「あっ、沼田様のおうちでしょうか。あっ、沼田様、鞠莉‘sママで~す!!実はですね・・・」

 

 一方、小原家の家から放り出された裏美、

「いた、いたたた」

と、自分の体をいたわりつつも、すぐに、

「あの鞠莉‘sママ、なんていう心変わりなんだ!!」

と、鞠莉‘sママに対して怒ってしまう。だが、裏美を迎えに来た者は、

「でも、このままだと木松悪斗様が・・・」

と、裏美のご主人である木松悪斗のことを心配してしまう。

 すると、裏美、

「ふん、そんなこと、関係ありません!!私たちはこれからもAqoursを、月生徒会長を妨害する、ただそれだけです!!」

と、いまだに妨害するのをやめないことを宣言してしまう。これにはほかの者から、

「でも、それをしたら小原家から小原家を妨害したと認定されるのでは・・・」

と、心配そうに言うも、裏美、

「それは小原鞠莉という少女を妨害したときの話!!私が妨害するのは、鞠莉という少女がいない新生Aqoursの方です!!」

と、言ってしまう。これにはまわりの者はただただ唖然とするしかなかった。

 だが、完全復活したAqours、そして、鞠莉、ダイヤ、果南がいない新生Aqoursを妨害するというのは今からすれば至難の業であった。それは裏美も自覚していた。

(でも、これ以上は妨害が・・・)

と、悔しがる裏美。

 そんななか、裏美にある一報が届く。突然、まわりにいる者の一人がある連絡を受け取るとすぐに、

「裏美様、まだ挽回する機会があるみたいです。実は・・・」

と、裏美に耳打ちする。すると、裏美、

「それはそうか!!でかした!!すぐに日本に戻るぞ!!」

と言ってはそのままローマの空港へと引き返した。このときの裏美はこう思っていた。

(まだ私にもチャンスがあったとは!!神の思し召しですな!!待ってなさい、新生Aqours、そして、月生徒会長!!)

 

 

そして、二つ目。イタリアローマのスペイン広場でAqoursのライブがちょうど終わったとき・・・静岡沼津・・・静真高校、生徒会室・・・。

「こ、これがAqoursのライブ、なんですね!!」

ある女子生徒が自分のスマホを見て泣いていた。これにある少女が声をかける。

「うん、そうだよ。これこそ、月生徒会長が私たちに本当に見せたかった、本当のAqoursのライブだよ!!」

この声を聞いた女子生徒はすぐに、

「うん、あんなに楽しく踊っている姿を見てとても感動しました・・・、ナギ生徒会長代理!!」

と、声をかけた少女ことナギに泣きながら言う。そう、ナギたち静真高校生徒会は真夜中にも関わらず生徒会室に集まり、Aqoursのスペイン広場のライブをライブビューイングと称して一緒に見ていたのである。そして、楽しみながら踊り歌うAqoursの姿にそこにいるみんな感動していたのだった。

「静真の(部活動報告会での)ライブの失敗で本当に大丈夫か心配だったけど、これを見る限り、完全復活、しましたね!!」

「それよりも、これまで見てきたどのライブよりもとてもよかったよ!!私の中でベストオブベストだよ!!」

Aqoursのライブを見ていた生徒会役員たちからうれし涙とともに感動的な声が聞こえてきた。

 そんななか、ある生徒会役員がナギにある事実を伝える。

「たしかにとてもよいライブでした。しかし・・・」

そして、あるPCの画面をナギに見せる。すると・・・、

「うん、そうだと私は思っていた・・・」

と、ナギはたんたんと答える。

続けて、

「でも、それが今の静真高校生徒会の現実っていうもんだ・・・」

と、これもたんたんと答える。ナギが見たPCの画面、そこにあったのは・・・、

「Aqours生ライブ・・・【50】・・・」

という文字。実はこれ、生徒会が学内のSNSを通じて配信したAqoursのスペイン広場でのライブの動画再生回数・・・というよりこのライブの生配信を見た人の人数であった・・・。むろん、ナギたち生徒会のみんなもこの数にはいるから、ナギたち以外でこの生配信を見た生徒はざっと30~40しかいないことを示していた。これには、ナギ、

(これが今の私たち生徒会を慕う生徒の数なんだ。もう真夜中だからとこの生配信を見ていない生徒もいるけど、それでも、この数字は過酷すぎる・・・)

と、ちょっと険しい表情になる。過酷ともいえる数字。新生Aqoursの部活動報告会でのライブ前は生徒の大半が生徒会を支持していた。しかし、それが今となってはごくわずか・・・、そう今のナギにとってみればそう思えてしまっていたのである。昔、Aqoursがまだ1・2年生だけだったとき、ゼロという数字を突きつけられた。それが今となっては1から10へ、10から100へ、そして、その先へと進むことができるようになったが、今のナギからすればAqoursがゼロを突きつけられたそのときぐらいどん底に突き落とされた、そんな感じだった。そのためか、ナギの言葉とともに騒いでいたまわりも暗くなる。ナギだけでなく生徒会役員たちからしてもとてもつらい現実。生徒会室は一瞬お葬式モードに突入してしまった・・・。

 が、そんなとき、

プルル プルル

と、ナギのスマホから呼び鈴が鳴る。

「う~、だれから?」

と、ナギ、電話をとると、いきなり、

「ナギ、Aqoursのライブ、よかったよ!!」

と、ナギのスマホから大きな声が聞こえてきた。これには、ナギ、

「あっ、むつ、Aqoursのライブ、見ていたんだね!!」

と、むつに話す。どうやらナギの電話の相手はむつみたいだった。

 そのナギのスマホから別の声も聞こえてきた。

「ナギ、私たちみんなでAqoursのライブ、見たんだよ!!」

これには、ナギ、

「えっ、みんなでAqoursのライブを見たの、いつき?」

と、今度は別の声の主こといつきに言う。それに対し、また別の声その2の少女の声で、

「そうだよ!!私たち、クラスのみんなと一緒に内浦の砂浜に集まってでっかいスクリーンで見たんだよ!!」

と言うと、ナギ、

「それ、すごいじゃない、よしみ!!」

と、別の声その2の少女ことよしみの声を聞いて大声をあげて驚いていた。どうやら、ナギの電話の相手、むつ、いつき、よしみ、通称よいつむトリオによると、Aqoursのライブを生配信するからということでクラスメイト全員内浦の砂浜に集まってでっかいスクリーンを用意してライブビューイングをしていたみたいだった。これには、ナギ、

「それってすごいじゃない!!私もそこに参加したかったよ~!!」

と、むつに言うと、むつ、

「うん、みんなに言うとね~、みんなと一緒に大きなスクリーンでみたいっていうことになってね、結局、大きな映写機と大きなスクリーンを借りてみんなと一緒に大画面でAqoursのライブを楽しんじゃった!!」

と、楽しそうにナギに話した。これには、ナギ、

「う~ん、ずるい、いけず~」

と、駄々っ子のように言う。

 そんなナギとむつのやり取り・・・であったが、むつはナギに対しこんなことを言いだした。

「でね、実はね、今さっきみんなと話し合ったんだけど・・・あの計画「オペレーション・オブ・New Aqours」、実行することに決まったよ!!」

「オペレーション・オブ・New Aqours」・・・この名を聞いたナギ、おもわず、

「えっ、ついに実施することを決めたんだ!!」

と、驚きの声をあげると、むつ、

「そうだよ!!これはね、私たち浦の星の2年生だけでなく、浦の星の1年生からも今さっき私たちに「ぜひ私たちも!!」って連絡がきたんだよ!!どうやら1年生の方もみんなと集まってライブビューイングをしていたみたい!!」

と、大きな声で喜んでいた。

 この喜ばしいむつの声を聞いたナギ、

(ふっ、浦の星のみんなはもうやる気でいるんだね。もうこうなったら賽は投げられた!!こちらも力いっぱい動くべし!!)

と、あることを心に決めると、そのむつたちに対しこう言いだした。

「むつたちの言葉を聞いて、私、決めたよ!!むつたち浦の星の生徒たちに負けないくらい私たち静真の生徒も一生懸命やってやりますよ、私たちの目標、「オペレーション・オブ・New Aqours」、成功のためにもね!!」

 

 といった具合にここ沼津では、Aqoursのライブの生配信、静真としては盛り上がりに欠けたものの、浦の星としては大いに盛り上がったようで、よいつむトリオ発案の「オペレーション・オブ・New Aqours」はついに発動したのであった・・・のだが、あんまり盛り上がりに欠けてしまった静真の方としてもごく一部にある動きがあった。それはある少女に起きた。その少女は自分のスマホでAqoursのスペイン広場のライブの生配信を静真の学内SNS経由で見ると、

「あっ、ヨハネちゃん、楽しそうに踊っている!!う~、わくわくが止まらないよ~!!」

と、声をあげて喜んでいた。さらに、その生配信が終わると、その少女は、

「Aqoursのライブ、とてもよかったよ~!!特にヨハネちゃん!!とてもよかったよ!!」

と、ヨハネのことをべた褒めしていた。

 そして、その少女はあることを決意する。

「私、Aqoursを応援するだけなんてもういや!!(実際に)Aqoursの役に立ちたい!!だって、私の知っているヨハネちゃんがあんなに楽しく踊っていたんだもん!!中学の時、私、ヨハネちゃんと仲良くなりたいと思っていたけど、いつのまにか、ヨハネちゃん、学校に来なくなっちゃった。私、あのときからずっと思っていた、ヨハネちゃんと仲良くなりたい、って。だから、私、決めた、ヨハネちゃんと仲良くなりたい!!そのためにも、ヨハネちゃんのいるAqoursの役に立つんだ!!」

 

 翌日・・・。

「ふわ~夜は眠れなかった・・・」

と、ナギは大あくびしながら言った。どうやら昨日のAqoursのライブの生配信を見て興奮して眠れなかったのだろう。そんなナギに突然、

「ナギ副会長、お話があります!!」

と、ナギを引き留める声がした。これには、ナギ、

「えっ、私になにか?」

と、ナギを引き留めた声のするほうを見る。すると、そこには1人の女子生徒がいた。その少女は続けて、

「ナギ副会長、お願いがあります!!Aqours(のヨハネちゃん)のお手伝いをさせてください!!」

この少女のお願いに、ナギ、

「えっ、今なんて・・・」

と、もう一度聞きなおす。すると、その少女は再び大声で言った。

「ナギ副会長、Aqours(のヨハネちゃん)のお手伝いをさせてください!!」

その少女の大声に、ナギ、

「Aqoursのお手伝いだね!!うん、わかった!!私が月生徒会長にお願いするね!!」

と、言うと、その少女は、

「あっ、ありがとうございます!!」

と、大声で喜んでいた。

 この喜びの声のあと、ナギはその少女に尋ねた。

「ところで、あなたのお名前は・・・?」

すると、その少女は自分の名を元気よく言った。

「私、稲荷、稲荷あげは、1年生です!!」

 

 こうしていろんなところで物語の歯車は動き始める。それはいろんなところで絡み合い、1つの大きなうねりとなっていく。1つ1つは小さい歯車かもしれない。が、それは1つの大きな物語を構成する大事な歯車の1つでもある。この歯車が動き始めた今、この物語はついに最後のときを迎えようとしている。それはどんな結末を迎えるのだろうか。ハッピーエンドで終わるのだろうか。それとも、最悪の結果を迎えるのだろうか。それは神のみぞ知る。

 ついに始まる最終章、どんな結末で終わるのだろうか。それは楽しみにお待ちいただきたい。

 

これにて、(とても長かった)第6章、これにて閉幕・・・。

 

                    第7章(最終章)その前編に続く・・・



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Moon Cradle 第7章前編 第1話

「月ちゃん・・・、月ちゃん・・・」

月を呼ぶ声がする・・・。そんな月への呼びかけに、月、

「う~、むりゃむりゃ・・・」

と、眠たい目をこすると、

「う~、なんだよ~」

と、月、声がする方に目を向ける。

 すると、

「月ちゃん、もうすぐだよ!!」

と、月がよく知る子どもが月の目の前にあらわれた。それに、月、

「う~、曜ちゃん・・・」

と、月の目の前にいる子どもこと曜に言う。が、そんな月、あることに気づく。

(あれっ?曜ちゃんってこんなに小さかったかな?)

そう、ここ最近一緒にいる曜と比べて背が少し小さかった。いや、背だけじゃない、姿、形、ともに、高2の曜じゃない、まるで、月が初めて曜と会ったときの・・・、そう、小3から小4のときの曜とそっくりだった。

 でも、月からすれば懐かしい・・・とは思っていなかった。いや、お久しぶり、と言えた。なぜなら、月はここ最近、小3から小4のころの・・・幼いころの曜と会ったことがあるからだ。それは、イタリアローマの「真実の口」にて月がルビィに伝えたこと「旅立つとはなにもかもがなくなる、ゼロに戻るわけではない」、それに月が気づいた、そのきっかけとなった夢、その夢の中での出来事だった、月が幼い曜と出会ったのは。中3の時に月とは違う高校に進学することを月に伝えた曜に月は、大親友だった曜が自分と別れてしまう、なにもかもがなくなる、そんな絶望的な考えを持ってしまう。しかし、そんな月に対し、曜は、「旅立ちとはなにもかもがなくなる、ゼロに戻るわけじゃない。むしろ、これまで築いていた、月との想い出、想い、キズナは残っていく」「それは宝物になり、それを通じてずっとつながっていく」と月に伝えたのだ。その忘れていた記憶、その想いを幼い曜は夢を通じて月に伝えたのだ。そして、幼い曜によって月はその記憶、想いを思い出したことにより、あの弱弱しいルビィを一人前の立派なレディに生まれ変わらせたのである。のだが、そのとき以来、月の夢の中に幼い曜が出てくることはなかった。

 しかし、そんな幼い曜がふたたび月の目の前にあらわれたことに、月、

(あれっ、あれれ・・・)

と、戸惑うばかりだった。ルビィは生まれ変わることができた。新生Aqoursは無事復活を果たした。もうAqours関連のことは一部を除いてもう解決した・・・はずなのに、月を導く者、幼い曜がふたたび月の目の間にあらわれた、ということは、幼い曜は月になにかを伝えようとしているのか、そんな疑問が月にでてきてしまう。いや、またなにか大事なことを忘れていないか、なにか大事なことを思い出す必要があるのか、そんな心配が月のなかに生まれたからだった。しかし、月が戸惑っているのはそれだけではない、自分が今感じているものがいつもと違っていたのだ。

 そんな戸惑う月、であったが、

(あれ、あれ、って、少しは落ち着かないと!!)

と、さすがは月、急いで落ち着きを取り戻すと、すぐさま、なぜか自分の今の姿を確認してみる。すると・・・、

(な、なんじゃこりゃ!!)

と、月、驚いてしまう。自分の姿を確認した月、その姿、いつもと違うその姿に驚いてしまう。なぜなら・・・。

(ぼ、僕、小さくなっている・・・)

そう、月の今の姿、なんと、昔の自分・・・、小3から小4のころの幼い曜と同じく小3から小4のころの月、曜と会ったばかりのころの姿になっていたのだ。これには、月、

(幼い曜が僕の夢の中にあらわれたときは驚いていたが、まさか、この僕も小さくなるなんて・・・)

と、ただただ茫然するしかなかった。

 そんな月であったが、そんなことおかまいなく、曜、

「月ちゃん、もうすぐ着くよ!!」

と、幼くなった月の手を引っ張るとそのまま目の前にある階段を一生懸命駆け上った。これには、月、

「ちょ、ちょっと待って~」

と、曜の勢いに巻き込まれてしまう。

 と、このとき、月、あることに気づく。

(あれっ、僕、どこかで見たことがあるところに来ている・・・)

そう、月が今いるところ、そこは、昔、曜と一緒に行っていたところ、というよりも、ビル・・・、その階段だった。月は昔、曜とこのビルによく来ていたのだ。そして、そのビルの階段を曜と一緒に(・・・というよりも、曜が強引に月を引っ張りながら)駆け上ろうとしていたのだった。

 その階段を駆け上がる曜と月。そして、ようやくその階段の頂上にたどり着く。すると、曜、

「着いた~!!」

と、大声をあげると、月、

(ふ~疲れた~!!)

と、元気ありすぎる曜に強引に引っ張られたこともあり息切れしてしまっていた。

 が、そんな月に対し、曜、

「ほら、あともう少しだよ!!」

と、どこ吹く風、月が息切れするくらい疲れている・・・ことなんて完全無視、なのか、先へ先へと進もうとする。これには、月、

「本当にちょっと待って~!!」

と、曜に立ち止まるように言うと、曜もようやく月の様子に気づいたのか、

「あっ、月ちゃん、ごめん!!」

と言っては立ち止まってくれた。

 そんな曜であったが、息を整えている月に対し突然あることを言いだす。

「でも、あともう少しで美しいもの、見れるよ!!」

この曜の言葉に、月、

「美しいもの?」

と、首をかしげてしまう。そんな月に対し、曜、

「この扉の向こう側にあるんだよ、美しいもの!!」

と、声を高々にあげると、曜、階段の先にある扉を開ける。すると、そこには・・・、

「うわ~、美しい・・・」

と、月も高々に声を・・・、

「美しいもの?」

と、なぜか首をまたかしげてしまう。

 そして、月は曜に言った。

「このどこが美しいものなの?人がいっぱいいるだけだよ!!」

と、曜に文句を言う。たしかに月の言うとおりだった。扉を開けて目の前に広がっていたもの、それは・・・たくさんの人たちが群がっている光景だった。このどこが美しいものなのか、月にとってみれば疑問だった。

 しかし、曜は違っていた。

「月ちゃん、この人たちもその美しいものを見るために来ているんだよ!!」

と、月に言うと、またもや月の手を強引に引っ張っては、

「この人たちの先にあるんだよ、美しいもの!!」

と言って、曜、月と一緒にその人混みのなかを必死にかき分けていく。むろん、月、そんな曜に強引に引っ張られているためか、

「曜ちゃん、痛い、痛いよ~!!」

と、人にぶつかっていっては悲鳴ともいえる声をあげていた。

 が、そんな痛みなんて一瞬で終わった。

「痛い、痛い・・・、あっ!!」

と、月、人混みから抜け出した瞬間、月の目の前にある光景が広がる。そこには・・・、

「あっ、沼津の街並み・・・」

そう、月の目の前には沼津の街並みが広がっていた・・・が。

「でも、薄暗い・・・」

そう、本来なら沼津の美しい街並みが広がっているのだが、なぜか薄暗かった。

 そんな月に対し、曜はなんで薄暗いのか答えてみせた。

「だって仕方がないんだもん。まだ朝の6時だもん!!まだお日さまも昇っていないよ!!」

そう、今の時間、まだ太陽なんて昇っていない、早朝であった。まだ東の空が少し明るくなっただけであり、美しい沼津の街並みを照らすはずの太陽すらまだ顔を見せていなかった。

 が、突然、曜はあることを言いだす。

「でも、あともう少ししたらこの美しい街並みはさらに美しくなるよ!!」

その曜の言葉を聞いた月、

(たしかに僕の目の前の広がる沼津の街並みも美しいよ。でも・・・)

と、曜の言葉に不信感をもつ。たしかに、月の目の前に広がる沼津の街並みも暁に照らされて綺麗である。が、それ以上にこの街並みがもっと美しくなるのだろうか、それが疑問だった。

 そんな疑問を持った月であったが、そんなことを知らないのか、曜はのほほんと月に言った。

「あっ、もうすぐ始まるよ、沼津で一番美しい光景がね!!」

その曜の言葉とともに月の目の前で驚きの光景が繰り広げ始めた。

「えっ、あっ、あっ、建物が輝き始めている・・・」

そう、月の目の前にあった沼津の街並みがどんどん輝き始めていた。この輝きに、月、つい、

(うわ~、ダイヤモンドみたいにどんどん輝き始めているよ!!美しい!!)

と、目をキラキラさせながら感動していた。

 この月の姿に、曜、

「どう、これこそ沼津の中で一番美しいもの、だよ!!」

と、月に対して言うと、月も、

「うん、そうだね!!」

と、曜の言葉に同意していた。

 その月と曜の周りにいる大人たち・・・であるが、あるものは沼津の街並みに向かってはお辞儀をする者、手を合わせて拝む者もいた。むろん、その人たちは沼津の街並みに対してお辞儀をしたり拝んだりしたわけではなかった。その美しいものを作り出したものに対してお辞儀したり拝んだりしていたのである。日本は古来よりそれに対して敬っていた。それゆえにこんな光景が起きてもおかしくなかった。が、そんなこと、このときの月と曜には知る由もなく、ただ、目の前に繰り広げられる美しい光景をただただ感心していたのだった。

 そして、この美しい光景が繰り広げられたあと、曜は月に向かってこう言った。

「私、この美しい光景を月ちゃんに見せたかったの!!だって、月ちゃんと楽しい思い出、たくさん作りたいから!!月ちゃんと楽しいこと、もっと、もっと、やっていきたいから!!」

この曜の言葉に、月、

「僕もそう思うよ!!曜ちゃんと楽しいこと、いっぱい、いっぱい、やっていきたい!!」

と、曜の言葉に同意した。

 そんな月に対し、曜はあの言葉を送った。

「あっ、忘れていた!!え~と、え~とね~、月ちゃん、あけましておめでとうございます!!」

 

 この曜の言葉に月も、

「あっ、曜ちゃん、僕からも言うね、あけまして・・・」

と、言いかけた瞬間、突然、

「月ちゃん、月ちゃん、起きて!!」

と、どこかで聞いたことがある、そんな声が天から降り注いできた。これには、月、

「う~、とてもいい場面なのに~」

と、ちょっと眠たそうな声で言うと、すぐに、

「月ちゃん、起きて!!もうすぐ到着するよ!!」

と、月に衝撃的な言葉が降り注ぐ。これには、月、

「もうすぐ・・・到着・・・、って、えっ!!」

と、天変地異が起きた、そんな声をあげると、そのまま、

「えっ、もうすぐ到着するの!!」

と、言っては驚きの表情になって自分の顔をあげた。

 そして、月はまわりを見渡す。すると、目の前には曜の顔が見えた。その曜、

「私、心配したんだからね!!起こそうと思って何度も月ちゃんに呼びかけたのに、月ちゃん、起きないんだもん!!」

と、月に対して言うと、月、

「あっ、僕、寝ていたんだ・・・」

と、自分の置かれた状況を把握する。月の目の前にいる曜は今さっきまでいた小3から小4の幼い曜・・・ではなく、高2の体育会系美少女、曜、であった。これに気づいた月、

(あっ、僕、また夢をみていたんだ・・・)

と、これまでのことを悟った。どうやら、今までのことはすべて月の夢の中の出来事だったようだ。

 しかし、月、このとき、ある思いをしていた。

(でも、これって、僕がルビィちゃんを諭すきっかけをつくった、あのときの夢と同じもの、かもしれない・・・。もしかすると、僕にとって今必要な思い出、記憶・・・なのかもしれない・・・。それを僕は完全に思い出さないといけないのかな・・・)

 

「ぬまづ~、ぬまづ~」

成田から電車で沼津駅まで戻ってきた千歌たちAqoursメンバー9人と月。

「それじゃ、グッドラ~ク!!」

と、鞠莉が元気に言うと、千歌も、

「それじゃ、またね、鞠莉ちゃん!!」

と、鞠莉に向かってお別れの挨拶をする。沼津駅までは一緒に行動していた千歌たちAqoursメンバー9人。ただ、このあと千歌たち1・2年メンバー6人はちょっと用事があるらしく、沼津駅で鞠莉たち3年生3人と別れることになったのだ。

 こうして、鞠莉たち3年生3人と別れた千歌たち1・2年メンバー6人、その微笑ましい光景を見ていた月、曜に対しあることを尋ねる。

「ところで、鞠莉ちゃんたち(3年生3人)ってこれからどうするの?」

これには、曜、すぐに答える。

「たしか、鞠莉ちゃんの家(ホテルオハラ沼津淡島)に一緒に泊まるみたいだよ!!イタリアでとれなかった(3年生3人の)時間をここでとるんだって!!」

この曜の言葉を聞いた月、

(ふ~ん、そうなんだ。僕にプロデューサーのイロハを教えてくれていたから、3人だけでいられる時間がなかったんだね。そう考えると、鞠莉ちゃんたちにちょっと悪いこと、したかな・・・)

と、ちょっと悪いことをした、そんなことを考えてしまった。

 が、そんな考えに陥った月であったが、

(それでも、これまで僕にいろんなことを教えてくれてありがとうございます、鞠莉ちゃんたち!!これからはごゆっくり3人だけの時間を楽しんでくださいね!!)

と、鞠莉たち3年生3人に対して心の底からお礼を言っていた。

 そんなときだった。突然、

チリリン チリリン

と、いう音がどこからか聞こえてきた。これには、曜、

「あれっ、月ちゃん、なんかスマホから音が鳴っているよ!!」

と、月に月のスマホから音が鳴っていることを教える。これには、月、

「あっ、本当だ~!!」

と、言っては自分のスマホを取り出しその画面を見てみる。すると、

「あっ、ナギたちからだ!!」

と、言っては、

「ちょっと席を外すね!!」

と、曜たちに言ってはその場を離れた。

 

月がその場を離れたあと、曜は千歌にあることを伝えた

「ところで、千歌ちゃん、むっちゃんたちにあのこと、伝えていいの?」

と言うと、千歌、

「あっ、そうだった!!むっちゃんたちに伝えないと!!」

と、よいつむトリオにあることを連絡することを忘れていたのかそれを思い出して言った。これには、梨子、

「もう、千歌ちゃんったら、電車の中でみんなと確認したこと、忘れていたなんて・・・」

と、呆れかえってしまう。そう、千歌たちAqoursメンバー9人は電車の中であることを確認しあっていたのだ。そこで確認したことを沼津に到着してからよいつむトリオに連絡することになっていたのだが・・・、それを千歌は忘れていたのだった・・・。これには、千歌、

「ご、ごめん、梨子ちゃん・・・」

と、それについて指摘した梨子に対し謝罪する。これには、みんな、

ハハハ

と、苦笑いするしかなかった。

 とはいえ、よいつむトリオに電車の中で確認したことを連絡すること、それを思い出した千歌、すぐに、

「え~と、070・・・」

と、自分のスマホにむつの電話番号を入力して電話をかける。すると、

「はい、むつですが・・・」

と、千歌のスマホからむつの声が聞こえてくると、千歌、

「あっ、むっちゃん、おひさしぶり!!実はね・・・」

と、むつに電車の中で確認したことを伝えた。

 

 一方、月はというと・・・。

「あっ、ナギ、お久しぶり!!」

と自分のスマホに向かって言うと、そのスマホのスピーカーから、

「あっ、月生徒会長、お久しぶりです!!」

と、ナギの元気な声が聞こえてきた。これには、月、

「で、なにか大事なことがあったのかな?」

と、ナギに言うと、ナギ、嬉しそうな声で、

「はい!!月生徒会長がイタリアで頑張っていたとき、こちらでも進展がありました!!それはですね・・・」

と、月がいないあいだ沼津であったことを月に伝えた。さらに、ナギ、

「それに、私たちに強力な仲間が加わったんです!!」

と、新しい仲間が加わったことも月に伝えた。このナギの報告を聞いた月、

「えっ、すごいじゃない!!」

と、驚きの声をあげていた。

 その後、月はナギから新しい仲間を紹介したいと言われたため、

「それじゃ、このあと、そっちに向かうからね!!それじゃ、よろしく!!」

と言っては電話を切ってしまった。

 

「ヨハネ、帰還!!」

月がナギの電話を切ったあと、沼津駅の北口に向かってみると、ヨハネが元気よくこう叫んでいた・・・のだが・・・、

「着いたずら~」(花丸)

と、千歌たち(ヨハネ以外の)5人はヨハネの言うことなんて完全無視していたのかそのまま駅前のバス乗り場へと向かっていた。これには、ヨハネ、

「ちょっと待ちなさい!!」

と、千歌たちに向かって叫ぶもそれも完全無視!!これには、月、

「あはは・・・」

と、ヨハネに哀れみつつも苦笑いするしかなかった。

 

 こうして、千歌たち新生Aqours1・2年6人と月は沼津駅北口のバス乗り場から直接ある場所へと向かっていた。自分たちの家に荷物を・・・というよりも大きなキャリーケースを置いていくことすらせずにそのまま向かった場所とは・・・、

「静真高等学校浦の星分校」

そう、沼津市市街地近郊の山の中にある、これから千歌たち浦の星の生徒たちが1~2年間通うであろう、あの廃校になった学校であった。どうやらそこで千歌たちはある人物と待ち合わせをしていたみたいだった。

 その浦の星分校にバスで向かっている最中、月は千歌にあることを尋ねてみた。

「今から向かう場所って浦の星分校がある場所だよね!!そこで秘密の作戦会議でもするのかな?」

これには、千歌、

「うん!!電車の中でみんなと確認しあっていたのだけど、これくらい大規模なことをすることで、私たち(浦の星の生徒たち)、静真本校に通えることができればいいんだけどね・・・」

と、月に元気よく言う。しかし、月、その千歌の期待にあることを心配してしまう。

(たしかに、こんな大規模なことをすれば静真本校と浦の星分校の統合に反対している静真の生徒たちや保護者たちに浦の星の生徒たちはやればできることを示すことができるかもしれないけど・・・)

そう、思い出してほしい。静真本校と浦の星分校の統合に反対している静真の生徒と保護者はなぜ統合に反対しているのか。それは、「(地方予選初戦敗退続きになるくらい)部活動に対する士気が低い(と思われている)浦の星の生徒たちが(全国大会に出場する部活動が数多くあるくらい)部活動に対する士気が高い生徒たちがいる静真の部活動に参加すると、士気低下、対立により、静真の部活動に悪影響がでる」だからである。なので、千歌たちはこれから大規模なことを浦の星の生徒たちで行うことにより「浦の星の生徒たちは一つの大きなことを成し遂げることができるくらい(部活動に対する)士気が高い」ことを証明しようとしているのだ。

 が、ただそれだけしたとしても統合に反対している生徒や保護者たちを納得するだけの保証になるかははなはな疑問である、と、このとき月は思っていた。なぜなら、たしかに大規模なことを浦の星の生徒たちだけで行うのであれば「(部活動に対する)士気が高い」という証拠にはなるかもしれない。けれど、ただそれだけである。いや、それ以上にある問題が発生してしまう可能性があった。その問題、実際に浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したときに発生してしまうのではないか、そう、月は思っていた。その問題点とは・・・、部活動に対する士気が高い浦の星の生徒、同じく、部活動に対する士気が高い静真の生徒、そのあいだで対立が起きるかもしれない、ということであった。士気が高い者同士仲良く?やっていれば対立は起きないだろう。しかし、士気が高い、ということは、自分に対するプライド、もあったりする。その場合、士気が高いがゆえに自分のやり方にこだわりを持ったりプライドが高かったりすることもあるので、その士気の高いほかの生徒に自分のやり方を無理やり進めたりその生徒のやり方に口を出したりする可能性がでてきてしまう。そうなると、その(士気の高い)生徒は自分のプライドがずたずたに切り裂かれてしまったと思うかもしれない。たとえ、それが悪気もなくその生徒のためと思って言ったことだとしても、である。そんなことが浦の星の生徒、静真の生徒、そのあいだで起こるのであれば、それが部活動内での対立につながるのでは、と、月は考えてしまったのだ。

 で、そんなことを心配していた月・・・であったが、

(でも、そんな対立すら生まれないようにナギたちがそのための助っ人を用意してくれている!!その存在、それが浦の星の生徒たちと静真の生徒たちのあいだに大きな架け橋となる、それくらいすごい助っ人をね!!)

と、ある自信を持っていた。そのナギたちが用意した助っ人とは・・・、それはのちほどのお楽しみである。

 



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Moon Cradle 第7章前編 第2話

と、いうわけで、千歌たちが乗ったバスは千歌たちが待ち合わせ場所として指定された場所、浦の星分校という廃校になった学校、その前のバス停に到着すると、千歌たち新生Aqours1・2年6人と月は重たいキャリーケースを持って木造校舎前に到着、すると、

「誰もいないずら~」

と、花丸が言うくらい周りにだれ一人もいなかった。これには、千歌、

「むっちゃんたち、ここだって言っていたけど・・・」

と、いろむつトリオがここにいないためか心配になる。

 そのときだった。

ガタン!!

と、校舎の2階の窓が開く音が聞こえてくると、その窓から、

「お帰り!!」

と、千歌たちがよく知る少女3人の顔があらわれた。これには、千歌、

「あっ、むっちゃんたち!!ただいま!!」

と、窓から千歌たちを迎えてくれた3人組ことよいつむトリオに向かって「ただいま」の挨拶をした。そう、千歌たちが待ち合わせていた相手とはよいつむトリオであった。

 

「むっちゃんたち、なんかすごいものを見せたいんだって。楽しみ!!」

と、よいつむトリオがいる2階の階段を駆け上る千歌たち新生Aqours1・2年6人と月。

 そして、2階に昇り終えたとき、

「月!!」

と、月のことを呼ぶ声がする。これには、月、

「あっ、ナギ!!」

と、月に声かえた少女ことナギに声をかける。これに、曜、

「あっ、月ちゃんの友達?」

と、月にナギのことを聞こうとすると、月、

「うん、友達!!」

と、ナギが静真高校生徒会副会長であることを伏せつつも曜にナギは自分の友達であると伝えた。

 そのナギ、月に近づくなり、月の耳元にこそっと話す。

「月生徒会長、例の少女、連れてきました」

これには、月、ナギに向かってこっそり話す。

「わかった。会ってみましょう」

 そして、曜に向かって、月、一言。

「曜ちゃん、ちょっとごめん!!先に行ってて!!すぐに追いつくから!!」

これには、曜、

「うん、わかった!!」

と、月に言うと2人はしばし別れることになった。

 その曜たちと別れた月、

「で、ナギ副会長、僕に会わせたい人って?」

と言うと、ナギ、

「今、こっちに来ています」

と、言っては月をその少女がいる空き教室へと招待していった。

 一方、月と別れた曜・・・であったが、月の先ほど言っていたことに少し疑問が生じていた。それは・・・。

(あれっ、あの子、どこかで会ったような気が・・・)

このときの曜の疑問、あながち間違いではなかった。だって、曜、ナギと少なくとも1度会ったことがあるから。そう、静真の部活動報告会のときに月が千歌たち新生Aqours1・2年6人を控室に案内しているとき、生徒会の用事でナギは月を呼びにきていたのだ。そのとき、ナギと曜は少しの時間ではあるが会っているのだ。しかし、このときは曜も緊張していたためかそのときの記憶はあいまいだった。なので、先ほど月を呼びにきたナギのことについて記憶があいまいなのはいかしかたないことである。

 と、いうわけで、曜、

(まっ、いいか!!)

と、ナギのことをあまり気にせずに千歌たちと一緒によいつむトリオがいる教室へと向かうことにした。

 

 そして、5分後・・・。

「曜ちゃん、待った~!!」

と、月が曜の前にあらわれるなり、

「いや、そんなに待っていないよ!!私たちもこれからのこと、一緒に相談していたところなんだよ!!」

と、月をいたわる。どうやら、よいつむトリオのいる教室まで移動したものの、

「少し準備をしているから待っててね」

と、よいつむトリオから少し待ってほしいことを言われ、仕方なくこれからについて6人で相談していたところだった。

 そんなわけで、無事再会できた千歌たち新生Aqours1・2年6人と月・・・であったが、ちょうどそのとき、

「千歌ちゃん、お待たせ!!ちょっと来て!!」

と、むつの声が教室の外の廊下に響き渡ると、これを聞いた千歌、

「うん、わかった!!今行くね!!」

と、大きな声をあげた。

 

 千歌たち新生Aqours1・2年6人と月はよいつむトリオがいる教室へと入る。すると、

「ようこそ、いらっしゃい!!」

と、むつが千歌に対して言うと、千歌も、

「いらっしゃいました!!」

と、よいつむトリオに向かって言い返す。むろん、ちょっとした冗談ではあるが、そのやりとりこそ千歌とよいつむトリオはそれほど仲がいい、そんなことを指し示す証拠でもあった。

 そんな千歌とよいつむトリオのやり取りのあと、千歌たちが持ってきたキャリーケースを教室の外の窓近くの一角に集めることになり、そのあと、千歌たちとよいつむトリオはこれからについてこの場で話し合うことになった。

 まず、開口一番、口を開いたのは千歌だった。

「ごめんね!!ライブの手伝い、お願いしちゃって!!」

ライブの手伝い・・・、そう、千歌たちが沼津駅に向かう電車の中で確認していたこと、それは、千歌たち1・2年6人、つまり、新生Aqoursを沼津のみんなにお披露目するためのライブ、それを行うことだった。ただ、このライブ、旧浦の星でやった学校説明会みたいな小規模なライブ・・・ではなかった。規模からして大規模、ちょっとしたフェス規模並みのライブであった。新生Aqours、初披露であった静真での部活動報告会でのライブに失敗したとはいえ、Aqoursという名前はラブライブ!に優勝しているということで知名度は全国クラス、折り紙つきとも言えた。そのためか、千歌たち、大規模といえるくらいのライブを新生Aqoursとして行おうとしようとしていたのである。

 むろん、これには裏がある。先述の通り、千歌たち新生Aqours、大規模なライブを浦の星の生徒たち主体で行い成功させることで、浦の星の生徒たちの底力、ひとつの物事をやり遂げるくらい士気が高いことを証明させようとしていたのである。ただ、これにも先述の通り、士気が高いがゆえに静真の生徒と浦の星の生徒のあいだで対立が生じるのではないか、という問題点もあげることができるのだが・・・。

 ただ、この千歌の言葉に、

「ぜんぜん大丈夫!!メールをした時点でみんなに連絡したから」(よしみ)

「すぐに協力してくれるって!!」(むつ)

「へっへ~ん!!」(いつき)

と、よいつむトリオ、誇らしげに言ってしまう。このとき、むつ、

(へっへ~ん!!絶対に千歌たちがそう言ってくると思ってね、もうライブをする準備はすでに始まっているもんね!!)

と、自信たっぷりな気持ちになっていた。たしかにそうであった。このとき、ライブ計画はすでにライブの場所決めを含めてだいたい計画の50%もの進捗状況をみせていた。ライブに使うステージを組み立てるための材料はおろか音響設備、スポットライトなどライブに必要なものはすでにすべて確保していた。あとは千歌たちの意見を聞いて足りないものを発注、さらにもともとあったステージプランに千歌たちの意見を取り入れては練り直し、それに沿ってステージを(手作りで)作ってはライブ会場に設置、そうすればすぐにでもライブができる、という段取りになっていた。とはいえ、まだステージプランも千歌たちの意見を反映させたいのでまだステージは基礎部分しか組みあがっていないのだが、それでも現時点ではかなりの進捗率といえてもおかしくなかった。

 では、なぜ、よいつむトリオはこの時点で新生Aqoursのお披露目ライブの準備を進めることができたのだろうか。それは、あの静真の部活動報告会の新生Aqoursのライブ失敗までさかのぼる。



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Moon Cradle 第7章前編 第3話

(ちょっと長くなったこともあるので、)ここからは第1部第2部を簡単に振り替えつつよいつむトリオがこれまでやってきたことをお話しすることにしよう。

 まず、ことの始まりは2月初めだった。当初は静真高校と浦の星女学院は4月に統合することで合意していた。だが、静真の大スポンサーで日本を代表する投資家であり、物言う株主でも有名であり、静真の部活動に参加している生徒の保護者たちを束ねる、部活動保護者会会長、木松悪斗が突然その統合に反対すると反旗を翻したのだ。表向きの理由は「初戦敗退続き、だからこそ、部活動の士気が低い浦の星の生徒が、全国大会の常連である部活を数多く持つ、だからこそ、部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すると、士気低下や対立により静真の部活動に悪影響がでる」なのだが、裏の理由が、統合にあたって浦の星のスポンサーだった小原家から静真に多額の寄付がなかったこと、鞠莉が木松悪斗が(勝手に)用意した静真の理事の席を蹴った、などにより、木松悪斗、小原家と浦の星に恨みを持つようになり、その恨みを晴らすために統合に反対している、というわけである。であるが、浦の星女学院との統合を望む月たち静真高校生徒会はこの木松悪斗の統合反対に対して真っ向から対立する。

 この統合問題における両陣営の動きであるが、木松悪斗は表向きの理由、その考えを静真の保護者達に広めていったの対し、月たち生徒会は生徒たちを中心に、「統合が実現できなければ友達である浦の星の生徒たちが困ることになる」と言って統合賛成の署名活動を展開する。

 そして、2月末の臨時理事会で静真の裏の神である沼田の采配で月たち生徒会は月たち生徒会の勝利となった。これで静真高校と浦の星女学院の統合は正式に決定、これで無事に2つは統合・・・するわけではなかった。木松悪斗の頑張りにより静真の保護者たちの多くが木松悪斗が統合に反対する(表向きの)理由、「部活動の士気が低い浦の星の生徒が士気の高い静真の部活動に参加すると悪影響がでる」という考えを持つようになり、それが保護者の声にもなっていた。その声をくみ取った沼田、その声がなくなるまでは山奥にある廃校になった学校に浦の星分校を立て、浦の星の生徒たちはそこに通うことになったのだ。

 この話を聞いた月、それを決めた沼田に直接抗議するもそれを覆すことはできなかった。ただ、このとき、沼田はあることを月に言ったのだ、「部活動とはなにか」「部活動する上で大事なものとは」、その問いに答えることができたら統合は実現できるだろう、と。

 この問いを聞いた月・・・だったが、その沼田の問いに答える・・・のではなく、浦の星の部活のなかで唯一全国大会(ラブライブ!)に出場し優勝した実力を持つ、浦の星女学院スクールアイドル部Aqours、その実力をもって統合を実現させようという作戦を独断専行で実施してしまう。静真のほとんどの生徒は「部活動とは「勝利こそすべて」」という考えを持っており、月もその考えをもって「力には力でもって制する」作戦を実行したのだ。

 が、木松悪斗たちの妨害、鞠莉たち3年生3人がいないことによる喪失感が千歌たち新生Aqours1・2年6人のなかに生まれたことにより6人とも不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった、このことにより部活動報告会の新生Aqoursのライブは失敗、月の作戦もこれをもって作戦失敗という結果で終わってしまった。

 そのため、新生Aqoursのライブの失敗(といいつつも月のAqoursの実力がゆえの(新生Aqoursである千歌たちを巻き込んでの)統合に向けた作戦の失敗)により、そのあとに行われた通常理事会、木松悪斗、恨みの相手である浦の星の生徒たちに永遠の苦しみを与える、自分が唱えている統合反対に歯向かう月たち生徒会全員退学、それを成し遂げようとしていた・・・のだが、ここでも自分より権力をもっている、いや、静真の裏の神である沼田によって阻止されてしまった。

 こうして、静真本校と浦の星分校の統合はこのときは叶わなかったものの、これ以上、浦の星分校、そして、浦の星の生徒たちの処遇の悪化、月たち生徒会全員の退学はなんとか回避できた・・・のだったが、それにはある条件があった。次の新学期が始まる日の前までに統合反対の理由となった「部活動の士気が低い浦の星の生徒が士気のこれに静真の部活動に参加すると悪影響がでる」という静真に通う保護者たちの声、それを改善すること、それがそれを回避するための条件だった。むろん、この声は木松悪斗たちが広めた噂によるものだったが、この声がこのとき、保護者たち全体の意見へと発展していたのだった。さらには、その声は新生Aqoursの報告会でのライブ失敗により静真の生徒たちのあいだにも浸透していったのだった。これにより、通常理事会終了時、静真のなかでは統合反対という意見が大多数を占めているという自体に陥ってしまっていた。なので、この声を覆すことは容易ではなかった。

 

 が、そんな状況を一気に覆す、一発逆転の策、それがあった。それが、新生Aqoursによる大規模な(お披露目)ライブ、作戦名「オペレーション・オブ・New Aqours」だった。その作戦を考え出したのはよいつむトリオ・・・ではなく、なんと、静真高校生徒会副会長、ナギ、だった。

 報告会での新生Aqoursのライブ失敗により統合実現を目指していた月の作戦は失敗に終わり、そのあとの通常理事会であともう少しのところで浦の星の生徒たちの処遇悪化、さらには自分たちの退学の憂き目にあってしまったナギ、であったが、沼田のおかげでそれは新学期が始まるまで延期されることが決まったため、それまでの猶予が与えられることになったのだ。これについて、通常理事会があった会議室から生徒会室に移動していた最中、ナギはこんなことを考えていた。

(さてと、新学期が始まるまでという期限付きだけど、なんとか首1つつながったし、「統合反対」という保護者達の声をひっくり返すことができれば統合に一歩前進、できるかもしれないという一筋の光が差し込んできたのかもしれない・・・)

そうナギが考えるのももっともである。新学期が始まるまでに「浦の星の生徒たちが静真の部活動に入ると静真の部活動に悪影響がでる」という保護者の声をひっくり返すことができれば自分たちの退学はおろか浦の星の生徒たちの処遇の悪化を阻止できるのである。いや、それ以上に、その保護者の声がなくなれば静真本校と浦の星分校の統合を阻む障害は完全になくなる、ともいえた。だって、統合反対の理由、それは、その保護者の声、が強いから。その統合反対の理由である保護者の声さえなくなれば統合を阻む障害もなくなるのも当然、ともいえた。それはある意味コロンブスの卵的発想ともいえた。

 とはいえ、そんな一発逆転ともいえる有効策をすぐに思いつくなんて無理ともいえた。そのことに関してはナギもわかっていたらしく、

(とはいえ、そんな保護者の声をひっくり返すほどの一発逆転的な有効策なんてすぐに思いつく・・・わけじゃないし・・・)

と、半場諦めた状況だった。沼田の鶴の一声によりナギたち生徒会は薄氷の勝利を部活動報告会後の通常理事会で得たのだが、それはつかの間の平和を得たにすぎなかった。新学期が始まるまでに統合反対の理由となった保護者の声を払しょくしないかぎり浦の星の生徒たちは地獄の日々を、ナギたち(月を含めた)静真高校生徒会全員が退学になるのは目に見えていた。しかし、それを覆す有効策をすぐその場で思いつくなんて無理であった。

 しかし、それでもナギは理事会から生徒会室に戻るまでのあいだ、あることを考えていた。

(「浦の星の生徒たちが静真の部活動に入ると悪影響がでる」、その保護者の声を打ち消すこと、静真本校と浦の星分校の統合実現、それを叶えるにはやっぱり沼田のじっちゃんが言っていた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、その問いに答えるのが一番かもしれない。しかし、その問いの答えを見つけることができるのは、浦の星の生徒であるAqoursと密接な関係があり、今、そのAqoursと行動を共にしている、月生徒会長、しかいない。だった、その問いの答えのヒントは、「静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒からすれば、それが当たり前、と、いうか、誰も気づかずに実践している」、という沼田のじっちゃんの言葉だけだから・・・)

ナギ、このとき、統合反対の理由になっている保護者の声を覆すためには、さらに、統合実現するためには月の働き・・・というよりも、月が沼田の問いに答えることが不可欠、と考えていた。なぜなら、いくらナギたち月以外の静真高校生徒会役員全員がいくら頑張っても(、「静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒からすれば、それが当たり前、と、いうか、誰も気づかずに実践している」という沼田の問いのヒントからすれば)浦の星の生徒と密接な関係を築いているのが月だけである以上自分たちがその沼田の問いに答えることなんてできない、そんな認識があったからだった。

 が、ナギ、それを踏まえたうえでこう考えていた。

(でも、たとえ月生徒会長がその沼田の問いに答えることができたとしてもそれを保護者の前で証明しなければ意味がない。そして、月生徒会長がその問いの答えを保護者の前でただ言ったとしてもおいそれと統合反対という保護者の声を打ち消すことなんてできないだろう・・・)

ナギの言う通りである。たとえ月が沼田の問いの答えを見つけたとしても、その答えを保護者の前でただ言うだけでは保護者の声を覆すことなんてできないものである。だって、統合反対の理由である保護者の声、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が高い静真の部活動に入ると、士気低下、対立により静真の部活動に悪影響がでる」、それはある強い信念に基づくものだからである。その信念とは「勝つこそすべて」という考えである。静真高校は木松悪斗の多額の寄付金などのおかげで今では静岡でも1・2位を争うほどの部活動優秀校となっていた。静真高校は全国大会の常連ともいえる部活動を数多く持っている、そのためか、静真の生徒、保護者たちのほとんどが「勝つこそすべて」という考え、強い信念を持っていたのだ。それは、月もしかり、である。たとえどんな過程があったとしても最後に勝てばそれでいい、「勝利」という結果こそすべて、それが静真の生徒たち、保護者たちの共通認識だった。その考え、強い信念がある以上、いくら月が沼田の問いの答えを言ったとしてもその考え、強い信念をすぐに覆すことなんて難しいことは自明の理であった。

 その考えのもと、次にナギは自分たちにできることを考えていた。

(なら、どうすれば月生徒会長が見つけてくれた沼田のじっちゃんの問いの答え、それを保護者たちのあいだで広げることができるのだろうか。月生徒会長講演会を開く、いや、それをしたとしても保護者たちに広めることはできないだろうな。なら、私たちで噂を流す・・・、はっとすそれも却下だな・・・)

ナギ、いろいろ施策を考えていたがなかなか妙案が浮かばない。

 そんななか、考え込むナギにある生徒会役員があることを言った。

「しかし、今回のAqoursのライブはひどかったですね。てんてんバラバラだったし、最後はピンクの髪の子(ルビィ)が大きく転ぶなんて、あれがラブライブ!で優勝したAqoursなのでしょうか。私、ラブライブ!決勝でAqoursのライブを直に見ていたのですが、あのときのライブ、とても幻想的で、私、感動しちゃったのですが・・・」

この役員の言葉、ナギ、ハッとする。

(えっ、Aqoursのライブを直に見て感動した!!)

この言葉をナギは何度も反芻すると、ナギ、その役員の目をぎっしり見つめ、こう言いだした。

「おい、今さっき、ライブで感動したって言わなかった?」

これにはその役員、すぐに、

「は、はい、言いましたよ!!あのときのAqoursのライブ、テレビで見たときよりも感動したことは今でも覚えていますよ」

と、答えた。

 この役員の言葉に、ナギ、あることに気づく。

(Aqoursのライブを直接見たときの方がテレビなどで見るときよりも感動を覚えやすい・・・)

そうである。テレビなどの映像で見るよりも直接ライブを見たときの方が感動を覚えやすいものである。なぜなら、そのライブの臨場感などを直接自分の五感で感じとることができるから。そのことをこのときのナギは気づいたのだった。そのためか、ナギ、

(保護者たちの声を覆す方法、それって、保護者たちに直接衝撃的なことをすればいいのでは?その手っ取りばやい方法、それは・・・、Aqoursのライブ!!)

と、ようやく保護者の声を覆すための方法の糸口を見つけることができた。

 ナギ、その方法について考え始める。

(Aqoursのライブを直接保護者たちの前で見せつける、そうすればそのライブの臨場感などによって感動して考え方を変えるかもしれない・・・)

しかし、ここである疑問が生じる。

(しかし、よく考えてみたら、月生徒会長もその考え、Aqoursのライブを直接(静真の)生徒たちや保護者たちの目の前で見せることで保護者の声を覆そう、のもと、部活動報告会のときにAqoursのライブを実施したけど、それは失敗に終わった・・・)

そうである。部活動報告会での新生Aqoursのライブは今日のナギの考えと同様に月もその考えに基づいて実施したのである。が、木松悪斗たちの妨害、Aqours3年生3人がいないという喪失感がもとで新生Aqoursである千歌たち6人ともに不安・心配の深き海・沼に沈み込んでしまい失敗に終わったのである。そのためか、

(それじゃ、なんであのライブ(部活動報告会でのライブ)は失敗に終わったのか、って考えても、私じゃわからないわ!!)

と、ナギ、その失敗の原因を考えるもさっぱりわからず。まっ、本当の原因は月が全国大会であるラブライブ!に優勝するくらいの実力がある(浦の星の部活の一つ、スクールアイドル部の)Aqoursの実力を静真の保護者たちの目の前で見せつけることで「浦の星の部活動にも実力がある部活がある=(浦の星の生徒たちの)部活動に対する士気が低い」という固定概念を完全否定し、統合反対の原因となっている保護者の声を払しょくさせようとしていた、そんな月の策略が新生Aqoursのライブの失敗ですべて無に喫した、そのライブの失敗の原因が(もう一度言うが)木松悪斗たちの妨害と鞠莉たち3年生3人がいないことによる喪失感によるものだった、というのが正解?なのだが、このときのナギはそのことなんてまったく考えていなかった。

 が、そんなナギ、であるが、あることに気づく。

(でも、今日のライブ、月生徒会長たった一人で考えて実行したのでしょうね。とうのAqoursのみなさんも月生徒会長の思惑通りに動いていた、って考えていいでしょう)

そうである。部活動報告会のライブはなんと月の独断専行の作戦だった。月が独断専行して勝手にやった作戦である。なので、とうの千歌たち新生Aqoursも月の手のひらで踊らされていた・・・のかもしれない・・・。

 そんなことを考えていた、ナギ、ある思いをもってしまう。

(もし、そうであるなら、もし、月生徒会長の独断専行ではなく、私たち生徒会みんなに相談してくれていたらこんな結果にならなかったのかもしれない)

たしかに一理ある・・・かもしれない。月がもしほかの人に相談していたら今回のようなことは起きなかったのかもしれない、少なくとも、月の暴走を食い止めることができたかもしれない。そして、部活動報告会のときの新生Aqoursの状況でライブを行うならどっちみちライブは失敗しただろう。しかし、そのライブをほかの人の意見でもって中止にすることもできたかもしれない。だって、部活動報告会での千歌たち新生Aqoursの状況でライブをしたらそんなこと誰だって失敗するってわかっていたことだから・・・。

 とはいえ、ナギ、その思いをもとにある考えにたどり着く。

(もし、今回みたいにたった1人の独断専行で物事を行うのではなく、みんなと相談して進めていけば今回のことは起きなかったかもしれない。いや、もっといいライブにすることもできたかもしれない!!)

たった1人の独断専行ではなくみんなの合議制にすることでよりよいライブを行うことができる、そう考えた、ナギ、だった。たしかにナギの言う通りかもしれない。たった1人ですべてのことをやるのであればどこかで限界を迎えるかもしれない。しかし、複数の人たちで分担して行えば無理だと思えるものも無理ではなくなるかもしれない。それはたとえ人の考えを変えるほどのライブであったとしてもである。

 そんなナギの考えであったが、それがナギの中で1つのきっかけを与えることになる。

(あっ、そうだ!!今度、Aqoursのライブをする際にはみんなの合議制にしよう!!たった1人ですべてのことを抱え込まなくてよい、みんなと話し合ってより良い考えを採用していこう!!そうすればきっと次のAqoursのライブはより良いものになってくれるはず!!)

次のAqoursのライブ、より良いものにするためにみんなとの合議制にする、そんなことを考えたナギ、このとき、あることを思い出す。

(で、たしか、月生徒会長に、私、(千歌たち)新生Aqours(6人)をよみがえらせてほしい、本来のAqoursを取り戻してほしい、そんなこと、言ったよね。本来のAqoursに戻ることで沼田のじっちゃんの問いに答えることができる、そう、私が思ったから、そう、月生徒会長に、私、そんなことを言ったんだよね)

そうである。ナギは部活動報告会の失敗により浦の星の生徒たち、静真高校生徒会の立場を悪くした、その原因を作った月に対して、昔のAqoursの姿に、元気に、一生懸命に、パフォーマンスをする、本来のAqoursの姿に戻すように月にお願いをしたのである。それは、本来のAqoursの姿に、元気に、一生懸命に、パフォーマンスする、そんな本来のAqoursの姿に沼田の問いの答えが隠されているのではないか、そうナギが思ったからである。

 そんなことを含めたうえで、ナギ、ついにある考えを思いつく。

(もし、月生徒会長がAqoursをもとの姿によみがえさせることができるのであれば、そのAqoursの姿を直接ライブという形で静真の保護者たちの目の前で見せつけることができるのであれば、今度こそ、保護者たちの声を覆すことができるかもしれない!!)

ナギ、このとき、今度こそ本来のAqoursの姿をライブの形で静真の保護者たちの目の前で見せつけることができるなら今度こそ大丈夫かもしれない、そう考えたのである。

 が、このとき、ナギはある心配をしてしまう。

(でも、もし、私たち静真高校生徒会中心でAqoursのライブを実施しちゃうと今日の失敗を繰り返すことになるかもしれない・・・)

たしかにそうかもしれない。ナギたち静真高校生徒会が中心となってAqoursのライブが成功したとしても、その時点ではすべてが解決・・・するわけではなかった。もし、浦の星の生徒であり、全国大会(ラブライブ!)で優勝した実績のある浦の星女学院スクールアイドル部Aqoursのライブを成功させたとしても、一部の保護者たちから言いがかりを言われるかもしれないのである。それは、浦の星の生徒たちのなかで部活動に対する士気が高いのはスクールアイドル部だけではないか、という言いがかりだった。たしかにライブが成功すれば保護者たちの声、統合反対の力は弱まるかもしれない。しかし、ある保護者たちはこう言うだろう、「たしかに浦の星にもスクールアイドル部みたいな部活動に対する士気が高い生徒がいるかもしれない。しかし、それは本当にごく一部であり、ほとんどの生徒は部活動に対する士気が低い」、と。たしかにそう思われても仕方がなかった。この時点、部活動報告会での時点では、「勝利こそすべて」、の考え方が静真の生徒たち、保護者たちのあいだで蔓延していたから。それを打ち消すほどの、それができるといわれている沼田の問いの答えがわからない、そんな今、たとえ、Aqoursの本当の実力を見せつけたとしても、「実力がある=士気が高い」、そんな構図に当てはまる浦の星の生徒はスクールアイドル部の部員、つまり、千歌たち6人のみ、そう思われても仕方がなかった。それは、ライブの失敗のあと、月に向かってナギが指摘したことでもあった。そう考えたとき、ナギにとって自分たちでAqoursのライブの準備を進めるのは静真の保護者たちに対して逆効果かもしれない、そう思えてしまった。

 そのためか、ナギ、

(じゃ、誰がAqoursのライブの準備をすべきなのか?沼田のじっちゃん、それとも、(浦の星のスポンサーだった)小原家?)

と、誰がよみがえった(新生)Aqoursのライブ計画の主体になればいいのか考えてしまう。沼田、それとも、小原家?でも、どちらとも的外れ?かもしれない。

 と、そんなときだった。別の生徒会役員があることを言いだす。

「たしかに、Aqoursのライブってすごいもんね~!!たしか、浦の星の学校説明会のとき、Aqoursって伊豆の山中にあったラブライブ!静岡県予選からいそいで浦の星に戻ったもんね!!そして、その学校説明会で見せたライブ、急いできたとは思えないくらい迫力のステージだったよね!!私、あの学校説明会にこっそり行っていたのだけど、あのときの感動、今も覚えているよ!!」 

その言葉に触発されたのか、今度は別の生徒会役員からもこんな発言が飛び出す。

「たしかにそうだよね!!私、その学校説明会には行かなかったけど、浦の星の閉校祭に行ったとき、まさか閉校や受験などで忙しい時期なのにあんな立派で大きなイベントを開くことができるなんて、浦の星の生徒たちの底力、本当にすごいと思うよ!!」

が、その生徒会役員の発言、ナギ、聞き逃さなかった。

(えっ、とても忙しい時期に大きなイベントを開いた~!!)

 そして、ナギはその生徒会役員の方を向くとその生徒会役員に向かってこんなことを言いだした。

「ねっ、そのこと、詳しく聞かせてよ、浦の星の生徒たち、忙しい時期に大規模なイベントを開いたことを!!」

じっくりその生徒会役員を見るナギ。すると、その生徒会役員はある事実を言いだした。

「はい、たしかに、浦の星の生徒たち、閉校や受験で忙しいはずの2月に閉校祭を開催したそうです。それも、その閉校祭、学校の先生や大人たちは完全にノータッチ、すべて浦の星の生徒たちだけで行った、とのことです。たしか、(浦の星の)学校説明会も(浦の星の)生徒たちが主体となってやっていた、と聞いております」

 この役員の言葉を聞いた、ナギ、あることを考えてしまう。

(学校説明会に閉校祭、そんな大きなイベントを浦の星の生徒たちの力だけで成し遂げるなんて、なんて恐ろしいほどの行動力・・・)

たしかにナギが驚くのも無理ではなかった。浦の星という生徒数が少ない学校で大規模なイベントを浦の星の生徒たちの力だけで成し遂げるなんて現実的にみたらとても無理な話である。静真だって部活動報告会などの大きなイベントのときは先生たち、大人たちの力を借りることはよくある話である。それと同じくらいの規模のイベントをを自分たちの力だけで成し遂げるなんて本当にすごいことだった。

 そんな浦の星の生徒たちの行動力に驚いた、ナギ、そのナギの頭の中に、このとき、あるひらめきが起きる。

(あっ、そうだ!!もしかすると、Aqoursのライブ、浦の星のみんなにお願いすればいいのでは!!そのすごい行動力でもって、Aqoursのライブ、成功へと導いてくれるかもしれない!!)

このときのナギの考えはこうだ。ナギたち静真高校生徒会中心・・・ではなく、よいつむトリオたち浦の星の生徒たちが主体となってAqoursのライブの準備をしてもらったら、そのすごい行動力できっと素晴らしいライブを実現してくれるかもしれない、それも、自分たちのために頑張っている、同じ浦の星の生徒である千歌たちAqoursのためならなおさら・・・である。そんな皮算用がナギの頭の中ではじき出されていた。

 さらに・・・。

(あと、これは思いがけない副産物を生み出すかもしれない。それは、浦の星の生徒たちみんな1つの物事に対して必ず成し遂げる、それほど士気が高い、そのことが証明できること!!もし、それが証明されることができるなら、もしかすると、保護者たちの声を払しょくするくらいの影響力を(静真の)保護者たちに与えるかもしれない!!)

と、ナギ、頭のなかでそんなことまで考えてしまった。たしかにそうである。ある1つの物事を実現するための実行力、行動力、それを維持するためには、その物事を行う人たち1人1人の高い士気が必要である。そんな高い士気が浦の星の生徒達にはある、そのことを大規模なライブの成功でもって証明することができるなら、「浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い」という保護者の声の大前提が崩れることにもつながる、そうナギは考えたのである。とはいえ、士気が高いもの同士同じ部にいると、もしそれが原因で対立が起きる・・・という問題が残ってしまうのだが・・・。

 とはいえ、ナギ、

「よし、私、決めた!!もし、Aqoursが月生徒会長によって完全復活を果たしたなら、むっちゃんたち浦の星の生徒たち主体でAqours完全復活ライブを、いや、新生Aqoursお披露目ライブをやってもらおう!!)

こう決めたら吉日・・・とばかりにナギの頭の中はそのお披露目ライブのことでいっぱいになってしまった・・・。



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Moon Cradle 第7章前編 第4話

 その後、生徒会室に戻ったナギたち静真高校生徒会役員たちは通常理事会の反省会を行うのだが、このとき、ナギ、新学期の始まるまでのあいだ、静真のほとんどの生徒や保護者たちが静真本校と浦の星分校の統合反対に傾いてしまったという自分たちにとって不利的状況、それを覆すために自分たちにできることをしようとほかの生徒会役員みんなに提案する。

 が、その不利的状況を覆すことができるのは月とAqoursしかいない、とほかの生徒会役員が指摘するも、ナギ、それを認めつつも「月たちのお手伝いをすることができる」と発言、自分で考えた施策を生徒会役員たちに披露した。

 役員曰く、

「でも、具体的になにをすればいいのでしょうか?」

これに、ナギ、生徒会役員たちを集めて小声でこう答えた。

「実はね、もう考えているんだ。それはね、新生Aqoursのお披露目ライブ!!月生徒会長の手によって復活した(新生)Aqours、それを静真の生徒や保護者達、いや、沼津のみんなにお披露目するための大規模なライブをね!!」

 これを聞いた生徒会役員たちはナギの考えを絶賛するもこれまで大規模なイベントを開催したことがないナギたち静真高校生徒会にとってそのノウハウがないことを嘆くことに・・・。

 それについて、ナギ、その嘆く生徒会役員たちに向かって、

「たしかに私たちだけだとね、それは無理かも・・・」

と、それについては認めつつも、

「でも、私たちだけでやる、って言ってないしょ!!あの人たちの力を借りればきっとうまくいくよ!!」

と、元気よく言いきった。これには、生徒会役員たち、そんなナギに期待するようになると、ナギ、その助っとの名前を元気よく叫んだ。

「それはね・・・、浦の星の生徒たち、だよ!!浦の星のみんなはこれまで学校説明会や閉校祭といった大規模なイベントを自分たちの力だけで成し遂げてきたんだ!!それに、内浦で行われるイベントの運営などにおいても浦の星の生徒たちが積極的にかかわっている、って聞くよ!!そんな大規模なイベントのノウハウを持つ浦の星のみんなの力を借りれば絶対に成功するよ!!」

このとき、ナギは知っていた、内浦にある由緒ある歴史を持つ高校である浦の星女学院、その生徒たちは、内浦で行われるイベントにおいて中心的な役割を担うことが多かった、そのことを。たしかに、浦の星の生徒たちの力だけでAqoursの単独ライブを実施した経験はなかった・・・が、自分たちが通っている浦の星がある内浦のためになりたい、その一心で、浦の星の生徒たち、内浦で行われるイベントの運営・管理などにおいて貴重な若い人材として活躍していたのである。だからこそ、よいつむトリオは千歌、曜、梨子、たった3人だけで行った、Aqoursファーストライブ、そのスポットライト、音響設備をいとも簡単に使いこなしていたのだった。

 そんな、浦の星のみんなという強力な助っ人の名前を聞いた生徒会役員たちはみな、

「これは力強い味方だ!!」

「この人たちなら静真の保護者たちが持つ(浦の星の生徒たちに対する)不信感を一気に払しょくできるいい機会になります!!」

と、ナギの考えに絶賛するとともにナギの作戦に同意した。

 

 こうして、生徒会役員たちとの反省会?は無事に終了。ナギは部活動報告会のライブの失敗で意気消沈している千歌たち(新生)Aqours1・2年6人を慰めに行った月に「統合は当分のあいだ延期」というメールを送るとすぐによいつむトリオに電話をかけた。ちなみに、ナギとよいつむトリオは中学のときに同じ塾に通っていた仲であり大親友ともいえた。そのよいつむトリオへの電話のなかでナギはむつに部活動報告会後に行われた通常理事会での出来事を洗いざらい話した。むろん、自分たちの退学を賭けて浦の星の生徒たちの処遇の守ろうとしたことも。これには、むつ、

「それはやっちゃダメだよ!!」

と、ナギに対してきついダメ出しをするも、ナギ、「今はしないよ」と、やんわりと否定しつつ、

「でも、私、決めたの!!これから先、月生徒会長とAqoursが私たちが求めているものを見つけてくれる、って、そして、それを静真のみんなにも伝えるためにね、こんなこと、したいの!!」

と、むつに逆提案を仕掛ける。むろん、その提案とは・・・。

「それはね、静真のみんなを含めた沼津の人たちに新生Aqoursのお披露目を行うライブ!!どこかの大きなフェスみたいにたくさんの人たちの目の前で、私たちの生徒会長、渡辺月、の手によって復活した新生Aqours、それを大々的にお披露目するの!!ラブライブ!決勝みたいに、凛々しく、一生懸命、そんな新生Aqoursのパフォーマンスを沼津のみんなに見てもらうの!!」

 これを聞いたむつ、

(千歌たち新生Aqoursが復活すればきっと素晴らしいライブになるはず!!私たちもやりたい!!でも、それって、ナギたち静真高校生徒会が中心で行うことになるから、私たちじゃ・・・。いや、それよりも、ナギたち静真高校生徒会だけでそんな大規模なライブ、できるのかな・・・。特に、生徒会の中心ともいえる渡辺月生徒会長って子はいないんだよね・・・。たしか、渡辺月っていう生徒会長、深く傷ついた千歌たちを復活させたい、そう思っているんだよね・・・)

と、ナギたちのことを心配していた。このとき、むつ、ナギから月が不安・心配という深き海・沼に陥っている千歌たち(新生)Aqours1・2年6人を復活させるためにナギたちとは別行動をとっていることを教えてもらっていたため、その生徒会の中心ともいえる月なしでそんな大きなライブが成功させることができるのかちょっと不安になっていた。

 が、ナギ、このとき、

(むつ、よしみ、いつき、あなたたちがこの計画の主役、なんだからね!!あなたたちが中心になって盛り上がってくれたら絶対にうまくいくよ!!)

と、大変乗り気であったためか、むつに対しこんなことを言いだした。

「たしかに、私たち(静真高校)生徒会だけなら難しいかもね。でも、むっちゃんたちがその一大プロジェクト(新生Aqoursのお披露目ライブ)に参加してくれたら、きっと、いや、絶対に、成功するよ!!」

 このナギからの発言を聞いたむつ、

(えっ、私たち、浦の星の生徒がそのAqoursのライブに参加していいの!!もし、そのことをみんなに言ったら、みんな、絶対に参加するよ!!いや、これって、浦の星と静真の合同のライブになるんだよね!!それって、もしかすると、静真(本校)と浦の星(分校)の統合にプラスに働くんじゃないの!!)

と、驚きの心の声とちょっとした皮算用をはじいてしまう。むろん、静真本校と浦の星分校の統合にプラスに働く、といった皮算用をはじいたのには理由があった。それは・・・。

(これまで、浦の星のこと、学校存続のこと、などはすべて千歌たちAqoursに任せきっりだった。私たち(むつたち浦の星の生徒たち)はずっとそれを遠くから見ているしかなかった。そのAqoursが、今、統合のことなどで苦しんでいる・・・。そんな状況で私たちはただそのAqoursを遠くから見守るだけでいいのかな・・・。いや、よくない!!これからは私たちも自分たちの力で動く!!千歌たちAqoursのためにも、私たちの力で動いてみせる!!)

そう、これまでは、というよりも、学校関連の問題(統廃合など)においてはむつたち浦の星の生徒はダイヤとルビィの関係と同じく千歌たちAqoursに依存していた節があった。学校の統廃合においてはAqoursが最後まであがいているものの、むつたちはそのときもただそのAqoursに任せっきりだった。結局、統廃合が決定したあと、目標を失いやる気を失ったAqoursに消えゆく「浦の星」という名前をラブライブ!に深く刻み込んでほしい、という願いを千歌たちAqoursに送ったことによりAqoursは完全復活、結果、ラブライブ!に優勝して「浦の星」の名前をラブライブ!に深く刻み込むことに成功した、のだが、学校関連についてはそれ以外すべて最後までAqoursに任せっきり、だったのである。しかし、そのAqoursが、今、危機的状況に陥っている、そのなかで自分たちができることをして、そのAqoursを救いたい、役に立ちたい、そんな気持ちがむつの心の中を駆け巡っていた。いや、むつだけじゃない、むつと一緒にいた、いつき、よしみも同じ状況だった。

 そんなむつからなのか、そのむつからこんな言葉が飛び出してきた。

「私たちが参加・・・、えっ、それって、とてもいい考えだね!!だって、私たち、これまで、浦の星のこと、全部、千歌たちAqoursに任せっきり、だったもんね!!それを、これからは、私たちもそれに参加できる、って、とても嬉しいこと、楽しいこと、だもんね!!」

むつの参加表明、それはむつの隣にいた、よしみ、いつき、も同じ想いだった。

 と、いうわけで、ナギはむつたち浦の星の生徒たちも新生Aqoursお披露目ライブに参加することをむつから聞いた上で、このライブのことは月とAqoursには秘密でいるように約束してから電話を切った。

 このあと、ナギは夕日に向かって想った、ナギが考えだした一大プロジェクト、新生Aqoursお披露目ライブ、その弱点、それが、部活動報告会のライブの失敗により不安・心配の深き海・沼に陥ったAqours、ではなく、ラブライブ!決勝でみせた、楽しく、華麗に、そして、ダイナミックにパフォーマンスをしている本来のAqours、じゃないといけないことを、そうでなければこのお披露目ライブは失敗に終わる、そのためにも、月にはAqoursを無事に復活させてもらいたい、そして、沼田からの問い「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、それに答えてもらいたい、と・・・。

 

 その翌日、ナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオは秘密裏に新生Aqoursお披露目ライブの準備を始めることにした。まず、ナギとよいつむトリオはやばコーヒーでどのように行動するか話し合った。最初に決まったのが、このライブの主体はよいつむトリオたち浦の星の生徒たちであることだった。というよりも、ナギからお願いされた、というのが実情だった。その理由は、「「部活動に対する士気が低い」という静真の保護者たちの浦の星の生徒に対する認識を、大規模なライブを浦の星の生徒たちの力で成し遂げることにより、「浦の星の生徒たちは一つの物事を成し遂げることができるくらい士気が高い」、そんな認識に変えてもらう」ということだった。もちろん、これも立派な理由の一つ・・・なのだが、これにはもう一つ裏の理由というものもあった。それは、ナギたち静真高校生徒会が表立って動けば、静真高校生徒会の敵である木松悪斗たちから妨害を受ける可能性があったからだった。でも、実はとある理由で木松悪斗たちはナギたち静真高校生徒会の妨害をすることは強く禁じられていたのだが、外にはばれないように妨害されることも予想されていた。なので、浦の星の生徒たちが主体となって行動し、ナギたち静真高校生徒会が裏でバックアップすることでその妨害を少しでも防ぐことができるかもしれない、そうナギが考えていたのだ。むろん、理由はまだあった。表向きの理由である「静真の保護者たちの認識を変える」ことにおいて、ナギたち静真高校生徒会が浦の星の生徒たちと同じ位置で行動してしまうと、静真の保護者たちに与えるインパクトが欠けてしまう危険性があったのだ。あくまで、「部活動に対する士気が低い」という認識を変えるのが目的だったので、静真高校生徒会、浦の星の生徒たち、両方とも同じ立ち位置で行動してしまうと、その認識を変えるほどのインパクトを静真の保護者たちに与えることができない可能性が出てきてしまう。それを危惧したナギ、そのことをよいつむトリオに伝えるとよいつむトリオもそれについては了承し、このお披露目ライブは自分たち浦の星の生徒たちが主体となって動くこと、ナギたち静真高校生徒会はそのバックアップに就くことが決定したのだった。

 さらに、ライブにおける分担についても話し合われた。メインとなって動くよいつむトリオら浦の星の生徒たちがライブをするためのステージの立案・作成などの内務全般、ナギたち静真高校生徒会がライブ場所の確保、音響機器などのステージ機材のレンタル、ライブ会場に出店してくれるお店の受付などの外務全般を担当することになった。とはいえ、このお披露目ライブ、大規模なイベントになるため、浦の星の今の生徒(1・2年生合わせて60~70人くらい・・・)だけでは音響などのステージスタッフすべてを賄うことができないため、スタッフの足りない分については静真の生徒が助っ人として参加することが決まった。とはいえ、静真高校生徒会としても静真における影響力が大幅に縮小した今、それほど静真の生徒たちをそんなに動員できないこともよいつむトリオには伝えていた。

 そして、最後にこれからどう動いていくかを決めた。まずは仲間集めに専念することにした。それは、静真、浦の星、両方ともいえた。静真においてはナギたち生徒会の影響力が大幅に縮小した今、生徒会を慕う生徒はそんなに多くはなかった。さらに、そのなかから、浦の星の生徒のために動いてくれる生徒の数、といったらそのごく一部しかいなかった。なので、静真でこのお披露目ライブのために手伝ってくれる生徒、現状ではそんなに多くはいなかった。

 では、浦の星は・・・というと、こちらも喜ばしい現状ではなかった。こんな大規模なライブのために浦の星の生徒たち一丸となって動く・・・ことがこのときにはできなかった。なぜなら、部活動報告会でのライブの失敗により不安・心配という深き海・沼に陥った千歌たち(新生)Aqours1・2年6人、その状況のなかでお披露目ライブを行ったとしても失敗するのではないか、そんな心配をする浦の星の生徒が数多くいたからだった。たしか、こんな状況にAqoursは一度だけ陥ったことがある。それは、ラブライブ!冬季大会東海最終予選をトップ通過したものの目標だった廃校阻止を叶うことができなかったときだった。このときは自分たちの目標を失ったことにより千歌たちAqoursメンバー9人はスクールアイドルを続けるやる気を失ってしまった、のだが、これまで廃校阻止へと頑張ってくれたAqoursに浦の星の生徒たちが新しい目標、ラブライブ!に消えゆく浦の星の名前を深く刻み込んでほしい、それを全員でAqoursにお願いしたことによりAqoursは復活、結果、ラブライブ!に優勝し浦の星の名前をラブライブ!に深く刻み込むことに成功した、のがだ、今回はそのとき以上に千歌たち(新生)Aqours1・2年6人が落ち込んでおり、励まそうにも肝心の浦の星がなくなった今、みんな一緒に千歌たちを励ますことができないこと、前回はラブライブ!というちゃんとした目標を達成できる場所があったが、今回はその目標となる、そう確実にいえる場所がないこと、たとえ自分たちがその場(新生Aqoursお披露目ライブ)を準備しても失敗すれば自分たちにも大きな損害がでてしまう、という大きなリスクを懸念していた、そんな理由からだった。

 そこで、まずはよいつむトリオら浦の星側としてはほかのみんなを説得していくことにし、ナギたち静真側としてはそのあいだお披露目ライブに向けての下準備に着手することになった。



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Moon Cradle 第7章前編 第5話

 その後、ナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオはそれぞれ動きまわることになったのだが、ナギたち静真高校生徒会、最初、木松悪斗たちの妨害を予想したか、お披露目ライブの下準備はかなりの困難を極めるだろうと思っていたのだが、その予想に反して、木松悪斗たちの妨害なんてまったくなく、スムーズにことが進むことができていた。これには、ナギ、

(えっ、なんでこんないスムーズにことが進むことができるの?)

と、あっけにとられてしまった・・・。

 が、これにはちゃんとした理由があった。ナギたち静真高校生徒会の人望が厚いおかげ・・・というのもあったが、いくつかの幸運に恵まれていたからだった。

 たとえば、音響設備などライブ機材のレンタルについては内浦で行われるイベントでお世話になっているイベント会社から格安で借りることができた。詳しくいうと、内浦のイベントの運営にかかわっている浦の星女学院、そのなかでよいつむトリオはそのイベントの運営に深くかかわっていることもあり、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオ経由でその内浦のイベントでライブ機材を提供してくれているイベント会社にお願いしたら格安でレンタルすることができた、というわけである。

 また、ライブ会場に出店してくれるお店も続々と決まっていった。大規模なフェス、といえばたくさんの露店がつきもの、なのだが、それと同じくらいのお店から「(新生Aqoursお披露目ライブに)出店したい」という依頼がナギたち静真高校生徒会にどんどん届くようになったのだ。もちろん、Aqoursや浦の星に対する人望の厚さ、というものもあった。内浦の自治会、婦人会、など、これまでお世話になった浦の星に対するお礼の気持ち、これまで浦の星を、内浦を盛り上げてくれたAqours、それに報いるために出店してを決めた、というお店も多かった。また、Aqoursというネームバリューの大きさもその原因の1つだったりする。部活動報告会のライブに失敗して不安・心配の深き海・沼に沈み込んだとはいえ、スクールアイドルの甲子園ともいえるラブライブ!に優勝したこともあり、Aqoursの持つブランド力は今や全国規模、となっていた。そのAqoursが大きなライブを行うのであれば出店しない手はない、ということで、Aqoursとはまったく関係ないところからも多数の「出店したい」という依頼がどんどんナギたち静真高校生徒会に届くようになったのである。

 ちなみに、新生Aqoursお披露目ライブ、ナギとよいつむトリオは沼津のどこかに大きな野外ステージを作り、音楽フェスみたいな形式で大規模なライブを無料で行うことは当初から決めていた。これは、できる限り多くのみんなに新生Aqoursのライブを楽しんでもらいたいこと、多くのお店に出店してもらい食べながら気軽にライブを楽しんでもらいたいこと、それに、その多くのお店からいくらかの手数料をもらうことで新生Aqoursのライブを多くの人に無料で見てもらうことができるだけでなく、その収入でこのライブにかかる費用すら賄ってしまおう、という考えからだった。

 が、こんなに「出店したい」という依頼がたくさんきたことによりライブ会場の場所を探すのはちょっと大変だった。たくさんの「出店したい」という依頼を一度に叶えるため、より大きな場所でライブを行う必要性がでてきたからだった。ただ、沼津でそんなかなり大きなライブを行える場所はそんなに多くはなかった。

 と、いうわけで、ナギとよいつむトリオはもう1度集まり、ライブ会場の選定をすることになった。いろんな場所をあげては消えていく・・・、それを繰り返していき、ついにある候補地が浮上してきた。むつ曰く、

「それじゃ、沼津駅前はどうかな」

むつが沼津駅前を推す理由・・・それは、

①交通の便がよく、多くの方々が新生Aqoursのライブを見に来ることができる

②沼津駅南口付近には大きな通りがあり、駅前に大きなステージを作り、その通りにそってお店を設置すればライブの場所を確保しつつより多くのお店を出店させることができる

などなど。

 このむつの考えを聞いたナギ、よしみ、いつきはこのむつの考えに同意、ライブ会場は沼津駅南口付近と決定した・・・のだが、それには沼津市や静岡県警など関係各所からライブ会場の使用許諾が必要だった。そこで、それについては静真高校生徒会生徒会長代理であるナギに一任された。

 そのナギ、当初、

(大丈夫かな?沼津駅南口で大規模なフェスを行うなんて前代未聞だもんね。そう考えると、すぐに使用許諾を受理してくれたら本当にミラクルだよ・・・)

と、思っていた。たしかに、沼津駅前で大きなライブを行うなんて誰も想像できない、そんな前代未聞なことを自分たちがやろうとしているのだ。なので、ナギ、沼津駅南口付近の使用許諾の受諾にはかなり時間がかかるし、どっちみち関係各所への説得も必要だろう、と考えていた。

 が、それは杞憂に終わった。ナギ、市役所のなかにある担当部署に行くと、その担当者から、

「え~と、沼津駅南口でAqoursのライブを行いたいのですね?」

と、開口一番、それを言われたため、ナギ、

(えっ、そんなこと、一言も話していないのに・・・、なんで、今からお願いすることをすでに知っているの?)

と、唖然となってしまう。そんな唖然とするナギを尻目に、担当者、

「それならいいですよ。なんだったら、「沼津市後援」になってもいいですよ」

と、逆提案されてしまう。これを聞いたナギ、

「えっ、あっ、え・・・」

と、開いた口がふさがらない、それくらいびっくりしてしまう。

 と、いうわけで、沼津市から沼津駅南口付近の使用許諾が下りたばかりか、「沼津市後援」という支援すら取り付けることに成功した。このとき、ナギ、その理由を聞くと、担当者曰く、

「だって、Aqoursの人気はすでに全国規模です。そのAqoursが沼津で大きなライブを行うことになれば沼津駅前の町おこしにつながります。それに、Aqoursのメンバーとはいえもとをただせば沼津市の一高校生です。その高校生たちがここ沼津で頑張っていることをアピールすることができれば、Aqoursみたいな元気な子を育てたい、そう思っている大人たちがここ沼津に移住してくれますから」

 そんなわけで、なぜかいとも簡単に沼津市のお墨付きを頂いたナギ、そのお墨付きが効いたのか、静岡県警などの関係各所に行ってもすぐに使用許諾が下りてしまった。これには、ナギ、

(いったい裏でなにが起きているのだ!!なんで、木松悪斗たちの妨害がないのだ!?)

と、なにかを疑っている、そんな気がしていた。

 

 このナギの疑い、実は正解だった。なんとこれらについてはちゃんと裏があったのだ。その裏とは・・・、ナギたちが動いているその陰で静真の裏の神ともいえる沼田が暗躍していた、ということだった。

 まず、時系列的には部活動報告会のとき、新生Aqoursのライブ失敗したところから始まる。その部活動報告会後に行われた通常理事会で沼田の采配により静真の保護者たちの声「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動にはいると静真の部活動に悪影響がでる」、それを新学期が始まる前までに払しょくすることができればこれ以上の浦の星の生徒たちの処遇の悪化、月を含めたナギたち静真高校生徒会みんなの退学を取り消すことができることが決まったのだが、もっといえば、その保護者の声が払しょくすることができるのであれば静真本校と浦の星分校の統合の障害もなくなることも意味していた。だって、ナギたち静真高校生徒会の敵である木松悪斗たちが統合反対を唱える(表向きの)理由、それがこの保護者の声である、からだった。この声が払しょくできれば統合反対を唱える理由もなくなる、別の(みんなが納得するくらいの)理由がない限り統合に反対することもできなくなる、結果、統合に向けて進むことができる、というわけなのである。

 そういうわけで、月はその保護者の声を打ち砕く、そのためのヒントともいえた、沼田の問い、「部活動とは何か」「部活動をする上で大事なこととは」、その答えを追い求めるととともに(新生)Aqours復活のために千歌たち(新生)Aqours1・2年6人と一緒に行動し、ナギたちとよいつむトリオははその復活した新生Aqoursをみんなの前で披露するための、そして、静真の保護者たちに向かって大きなライブを成功するくらい浦の星の生徒たちは一つの物事(部活)に対しても士気が高いことを証明してみせるためのライブの準備をすることになったのだ。

 であるのだが、これらの月やナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちの行動においてそれを妨害してくるであろう(月やナギたち静真高校生徒会の敵である)木松悪斗たちに対して(木松悪斗以上の権力を持つ)沼田は通常理事会のときにある制限を加えることを言ったのである。その制限とは・・・、

「浦の星の生徒や月(とそのナギ)たち生徒会の行動を妨害しないこと」

であった。そう、沼田のこの制限、木松悪斗たちからすれば静真本校と浦の星分校の統合実現に向けて行動する月やナギたちだけでなく、浦の星の生徒たちの行動すら妨害できないことを意味していた。これでは、木松悪斗たち、ただ指をくわえて月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を見ているだけしかできない。

 それじゃ、木松悪斗たち、陰に隠れてこっそり妨害すればいいのでは、と思うかもしれないが、木松悪斗自身はそれをしなかったのだ。なぜなら、もし沼田に黙ってこっそり月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害をくわえていたら、それは木松悪斗にとって、ここ沼津、いや、日本での経済活動ができなくなることを意味していたからだった。

 なんでそんなことになるのだろうか。それについては第2部第9回にて軽く話したが、ちょっと詳しく言うと、この沼田、静真の影の神ともいわれるくらい静真の中では一番の権力を持っている。それは、この沼田、由緒ある歴史を持つこの静真の創立家の末裔であったりする。なので、静真の大スポンサーである木松悪斗すら沼田の前では、ただの子猫、みたいになってしまうのだ。が、それ以上に、この沼田、意外な事実が隠されていた。それは、この沼田、沼津、いや、静岡、いや、日本を代表する企業の会長、だったりする。その企業、いや、企業グループの名、その名も、「沼田グループ」!!静岡市に本社があり、商社として日本の輸出入にも関わっていたり、日本の物流を陰から支える、それくらいの大企業グループ、だったりする。そして、最近では地方を活性化させようと自前で航空会社を持つ(ちなみにその航空会社のハブといえる空港は静岡富士山空港だったりする)など、静岡、いや、東海、いや、日本をまたにかける企業グループ、それが「沼田グループ」だった。そのグループの総帥、会長の地位にあるのが、あの沼田、であった。なので、沼田、沼津、いや、静岡、いや、日本の経済界に強い影響力を持っていたりする。それは、あの浦の星のスポンサーだった、世界有数の大財閥である、あの小原家すらも超えるくらいの・・・、である。なので、木松悪斗からみれば、沼田に歯向かうことは、それすなわち「日本での経済活動ができなくなる=死」と言っても過言ではなかった。あの木松悪斗すら沼田の権力でいつでも消すことができる、それくらいの権力を沼田は持っている、それが木松悪斗の沼田に対する認識だった。

 と、いうわけで、木松悪斗自ら月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの統合実現に向けた行動の妨害をする・・・わけでもなく、地盤固め、保護者たちの声、統合反対、その考えを静真の生徒や保護者たちにさらに広める、といった今まで行ってきた策でもって自分たちにとってとても有利であるこの現状を新学期が始まるまでキープする、そんなことに専念しようとしていた、もし、この期限を過ぎればあとは自分の思い通りになる、そのことを信じて・・・。

 

 ところが、そんな木松悪斗一派から主人である木松悪斗に背く人もいた。それが木松悪斗の右腕ともいえる存在、あの裏美、であった。裏美は木松悪斗からこれまで通り、保護者の声、いや、自分の考えを静真の生徒や保護者たちに広めるように命令されていた。のだが、その裏美、

(月生徒会長をはじめとする生徒会役員たち、たとえ不利的な状況であったとしてもなにかを仕掛けてくるはずだ!!)

と、危機感をもってしまったこともあり、あの沼田のことを過小評価しつつも自らの手で月やナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの行動を妨害することを決めてしまった。

 と、いうわけで、裏美は鞠莉‘sママを通じて月と千歌たちAqoursの妨害をしてきたのだった。たとえば、ヴェネチアでの鞠莉たち3年生3人を捕まえるための大量のポスター・チラシ投下作戦(もちろん、その費用は全部鞠莉‘sママもち、にすることでわざと小原家の財政にもダメージを与えていた)、フィレンツェでの鞠莉たちの居場所を鞠莉‘sママに教えることで鞠莉と鞠莉‘sママを対立させ、鞠莉‘sママのイメージを悪化させる(鞠莉を束縛しようとしていたなど)だけでなく、月の(新生)Aqours復活計画を阻止しよう?としていたのだった。

 では、裏美、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちへの妨害はなにをしたのか。それは、沼津にある企業やお店への圧力、だった。その圧力とは、

「たとえなにがあったとしても、(ナギたち)静真高校生徒会、および、浦の星の生徒たちの手助けをしてはいけない。これは木松悪斗様からの命令である」

だった。そう、たとえ、ナギたち静真高校生徒会や浦の星の生徒たちがなにかしようとしてもその手助けをしてはいけない、そんな命令だった。それは、ライブ機材のレンタル、フェスの出店依頼、だけでなく、ライブを行う場所の提供すら含まれていた。むろん、沼津の市街地だけじゃない。内浦を含めた沼津市全域にいたるお店や企業、はては、沼津市といった行政にも裏美は圧力をかけていた。で、もし、ナギたち静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの手助けをした場合、「木松悪斗の名をもって断罪する」、そんな言葉すら裏美は沼津市にあるお店、企業、行政にちらつかせていた。

 なお、この裏美の沼津の行政、お店、企業に対する圧力に関しては、このとき、木松悪斗本人は完全にノータッチ、であった。この圧力はすべて裏美が仕組んだことだった。木松悪斗すらこんな圧力を裏美が沼津の行政、お店、企業にかけているなんてまったく知らなかったのだ。なぜなら、このとき、木松悪斗は、たとえ、月によって一発逆転的なことをしようとしても、今の統合反対という(自分にとって)優位的状況を覆させないように、保護者の声、もとい、自分の考えをもっと静真の生徒や保護者たちに広めようと苦心していたこと、さらに、ここ最近静真のことに力を入れ過ぎてしまい、本業である投資が疎かになっていたこともあり、沼津に戻らずにずっと東京の自分のオフィスで株式投資をしていたこともあり、裏美の暴走に気づくことができなかった。



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Moon Cradle 第7章前編 第6話

 と、いうわけで、裏美、勝手に自分の主人である木松悪斗の名をかたって沼津の行政、お店、企業に圧力をかけていた、のだが、そう簡単に問屋はおろさなかった。なんと、ここで登場するのが、あの沼田、であった。

 その沼田、通常理事会のあと、静岡市内にある沼田グループの中枢企業、その会長室に戻った・・・わけではなく、沼津市内にある自分の実家にずっといたのだ。実は、沼田、沼田グループの経営は社長である自分の息子に任せていた。その息子がかなりのやり手であり、沼田本人がいなくても沼田グループの経営は常に安泰、であった。ただ、沼田が会長なのは、もし、その有能な息子でも対応できないことがあったとき、その沼田が自ら陣頭指揮を執りグループ一丸となってその危機を乗り越える、いわばセーフティーネット、最後の砦的存在として会長の席に座っているため、だった。それほど、沼田の持つ求心力はとても強い、ともいえた。が、そんな危機的状況がそんなに起きるわけでもなく、さらに、息子がかなりのやり手なので、沼田の沼田グループにおける出番はそんなになかった。なので、実は、沼田、案外ひま、だったりする。それでも、沼田、毎日沼津のいろんなところ(ときどき日本各地)を訪れてはその地の人たちと一緒にいろんなお話(というか、いわゆる世間話?)をするのが日課になっていた。

 ただ、その日課のおかげで沼津で起こるいろんな問題を沼田はすぐに察知することができ、その問題を沼田はすぐに解決することができた。たとえば、浦の星女学院と静真高校の統合であるが、沼田が内浦を訪れていたとき、偶然、小原家当主、つまり、鞠莉の父親に会うことができたのだが、このとき、「内浦にある浦の星は生徒数が減少しており、このままだと浦の星は近いうちに閉校しなくてはならないだろう。どうしたらいいか」と、小原家当主が沼田に相談していたのだ。その沼田、「自分のご先祖が創立し、浦の星と同じく由緒ある歴史を持つ静真と対等に統合したら」と小原家当主に提案、それが静真高校と浦の星女学院の統合へと結びついたのだった。むろん、千歌たちAqoursの抵抗などいろんなことがあったものの、2月初めまでその統合は決定事項になっていたのだが、今は木松悪斗によって紆余曲折な状態になっている。とはいえ、浦の星女学院と静真高校の統合、もとのはじめは内浦での小原家当主と沼田の相談がことの発端だった。

 と、いうわけで、沼田、部活動報告会後に行われた通常理事会があった日の翌日、いつもと同じように沼津市内の山間の小さな集落に行ってはその集落に住む人たちとたわいのない話をしていた。その最中、ある敬老者から沼田にびっくりするようなことを突然言いだしてきたのだ。その敬老者、曰く。

「ところで、沼田殿、木松悪斗という若造をご存じですか。その若造がこのたわいもない老人たちに圧力をかけているのじゃ。なんでも、あなたの学校、静真高校の生徒会、それに、静真と同じく、沼津でも歴史がある浦の星の生徒たちの手助けをしないでくれ、って言っているのじゃ。この私としても、もし静真の生徒たちや浦の星の生徒たちが助けてほしいって言われたら助けたいのじゃ。だって、2校とも由緒ある歴史を持っておるし、2校の生徒とも礼儀正しい若者たちじゃ。そんな若者が困っているときはこのおいぼれであっても親切に手助けするのが当たり前じゃ。が、その手助けをすると木松悪斗という若造の名のもとこのおいぼれたちを一瞬でひねりつぶしてしまう、と、その若造は言っておるのじゃ。くわばら、くわばら」

 この敬老者の一言で、沼田、

(なんだって!!あれだけ昨日(通常理事会で)この俺がお灸をすえたのに、木松悪斗めぇ~、まだ懲りていなかったんだな!!けしからん!!)

と、木松悪斗に向かってげきおこぷんぷん丸、になってしまう。まっ、本当のところ、木松悪斗ではなくその腹心の裏美が自分のご主人である木松悪斗の名をかたって圧力をかけた、というのが本当なのだが、それでも、この沼田からしたら、どんなことがあったとしても木松悪斗が沼津のみんなに圧力をかけた、と感じてしまうのも無理ではなかった。ちなみに、裏美が木松悪斗の名のもと勝手に沼津の行政、お店、企業などに圧力をかけ始めたのは通常理事会が終わってすぐだった。それも通常理事会終了後、仕事のためにすぐに東京に戻った木松悪斗が沼津から去った、その瞬間に裏美は木松悪斗の名のもとに圧力をかけ始めたのだ。裏美、ある意味、確信犯、というよりも、相当な悪、であった。

 そんな木松悪斗(の名をかたった裏美)の圧力に心配の敬老者の言葉に沼田はこう返事した。

「〇〇さん(敬老者の名前)、それを心配する必要はありませんよ。この沼田、命に代えましてもこの圧力をすぐに打ち消してみせますよ。だから、心配しないでください。もし、静真の生徒たち、浦の星の生徒たちがあなたに手助けを求めてきたら心配せずにその子たちの手助けをしてください。もし、木松悪斗という若造があなたに危害を加えたら遠慮なく、この私、沼田、にご一報をください。そしたら、この私、沼田、があなたをお守りいたします」

これを聞いた敬老者は沼田に対し、

「沼田殿、いつもいつも助けていただき本当にありがとうございます」

と、お礼を言った。

 

 そのあとの沼田の行動は早かった。このあとの予定をすぐにキャンセルすると、その足で沼津の商工会議所に向かい、その商工会議所の会議室で臨時の理事会を開いた。議題はもちろん、木松悪斗(の名をかたった裏美)の沼津の行政、お店、企業などへの圧力について、であった。そのなかで、「一個人が自分の権力においてほかの者に圧力をかけることは本当にあってはならないこと」という意見がとても強かった。

 なのだが、「その圧力を打ち消す」という合意文書を作成できずにいた。なぜなら、この理事室にいる理事たちも木松悪斗の権力に恐れているから。実は、木松悪斗の沼津の経済界における影響力はかなり強いものだった。木松悪斗と関係が深い企業が沼津には数多くあり、木松悪斗の圧力を打ち消そうとすると、そのことによって木松悪斗からきついお仕置きをされるかもしれない、下手すれば、理事たちが経営している企業が潰れてしまうかもしれない、そんな心配を理事たちはしていたのだ。

 が、そんなの、沼田にとってみればバレバレだった。

(どいつもこいつも腰抜けじゃのう。ここは仕方がない。この俺自ら動くことにしよう)

と、沼田、ある決意を固めると、理事室にいる理事たちに対しこう言いだした。

「理事のみなさん、あなたたちが自分の企業の心配をするのは仕方がないことです。とても権力のある者が自分の権力の名のもと、ある特定の者とのやり取りを禁止すること、経済、商売としてはあってはならないことです。が、実際にそのことが起きようとしております。もし、その禁止行為をしてしまうと、その権力者の名のもと、その企業はつぶされてしまう、そのことが実際に起きるかもしれません」

この沼田の言葉にここにいる理事たちはつばを飲み込む。それほど沼田の言葉は的を得ていたからだった。

 が、そんな理事たちに対し、沼田、ついにある言葉を言い放った。

「しかし、それに屈しないのが商売人のあるべき姿なのです!!私たち商売人はもし困っている者がいればその者のために動くのが当たり前なのです!!それがたとえ理不尽ともいえる権力ある者からの圧力であってもです!!だから私はこう言いたい、権力ある者の圧力に屈しないでください!!」

この沼田の言葉に、理事たちは、

「たしかにそうだが・・・」

「でも、私の会社が潰れたら従業員たちの生活が・・・」

と、次々と心配なことを口にする。

 が、そんなこと、沼田にとって百も承知だった。すぐに、沼田、そんな理事たちに助け舟をだした。

「ちなみに、もし権力ある者の圧力によってあなたたちの会社が潰れそうになるのなら、この私、沼田、に相談しに来てください。私が絶対にあなたたちの会社を潰させることなんてさせませんから」

もし木松悪斗の圧力によって理事たちの会社が潰れそうになっても沼田の力でそれを阻止してあげる、その沼田の言葉を聞いた理事たち、

「もし潰れそうになってもあの沼田殿が守ってくれる!!」

「たしかに沼田殿の言う通りだ!!木松悪斗様のやり方は間違っている!!」

と、安堵する言葉とともに木松悪斗の圧力に対する反発の言葉もでてくる。さらには・・・、

「あの沼田殿が言うのだから安心だ・・・」

「木松悪斗様より沼田殿の言うことがもっともだ!!」

と、手のひらを返したかのように沼田に同意する理事たちもいた。ちなみに、沼津の経済界のヒエラルキー(階級)の頂点は、あの沼田、だったりする。なお、その2番目は小原家、3番目は木松悪斗、と、権力的には木松悪斗より沼田の方が上、だったりする。なので、権力的にトップの沼田がこういえば右に同じ、という考えも成り立ってしまうのである。

 

 と、いうわけで、ここでも沼田の鶴の一声?により木松悪斗からの圧力に屈する必要がなくなった者、沼津の経済界において一番権力のある沼田の言う通り、という者、と、いろいろたものの、全会一致で、

「木松悪斗が沼津市内の行政、お店、企業などに出している「静真高校生徒会、浦の星の生徒の手助けをしてはいけない」という文書は(沼津の商工会議所としては)無効と判断しております。もし、木松悪斗からの圧力により被害を被ったらすぐにでも商工会議所に連絡してください」

という文書を作成することになった。

 これに加えて、

「もしなにかあったら沼田が助けますので、1人で抱え込まずにまずは相談しに来てください」

と、いう沼田の一文が記載されると、この理事との会合の翌日(部活動報告会の翌々日)、商工会議所のHPのトップページに掲載された。また、沼津市内の行政、お店、企業などにすぐにこの文書を見るように周知徹底されたため、この文書は沼津市内の行政、お店、企業などすべてに知れ渡ることになった。

 また、沼田はこれとは別に沼津市などの行政や沼津市内にあるお店や企業に対しあるお願いをしていた。

「ごく近いうちに静真高校と浦の星女学院が合同で大きなイベントを行うかもしれない。その際には便宜を図ってほしい」

と。実は、このときの沼田、すでにナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオら浦の星の生徒たちが秘密裏に大きなイベント(新生Aqoursのお披露目ライブ)を行うことを把握していたのである。

 けれど、その大きなイベントを計画していること、このとき(部活動報告会の翌々日)はまだナギたち静真高校生徒会、そして、よいつむトリオとその関係者ぐらいしか知らなかった。いや、部活動報告会の翌日、つまり、昨日、ナギとよいつむトリオがこのイベントについてやばコーヒーで相談していたばかりである。しかし、沼田はそのイベントについてこのときすでに把握していた。それはなぜだろうか。

 それは簡単だった。ナギとよいつむトリオがやばコーヒーで話し合っていたとき、この4人が話し合っていた席の隣に座っていたお客さんが4人の話を聞いていたのである。そのお客さん、なんと、沼田率いる沼田グループの一企業の役員だったのである。あまりに4人とも話が盛り上がっていたらしくかなり声が大きかったみたいだった。なので、この役員には4人の話は筒抜けだった。その役員を通じて沼田はナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオら浦の星の生徒たちが大きなイベント(新生Aqoursのお披露目ライブ)を行うことを知るところとなったのだ。

 とはいえ、沼田の影響力が沼津の経済界においては絶大だからこそ、

「ごく近いうちに静真高校と浦の星女学院が合同で大きなイベントを行うかもしれない。その際には便宜を図ってほしい」

というお願いができたのかもしれない。

(ちなみに、東京にいる木松悪斗はおろか、月への妨害に熱中していた裏美にはこの商工会議所の文書、および、沼田のお願いについては知りませんでした・・・、あるときまでは・・・)

 

 と、いうわけで、ナギたちがすんなりと下準備を進めることができたのは沼田が裏で活躍していた・・・というのが実情だった。

 が、ライブ場所の使用許諾についてはもう一つ幸運だった。それは、ナギたち静真高校生徒会の行動を妨害すべき裏美、ナギが沼津市役所でライブ会場となる沼津駅南口の使用許諾を得ていたとき、このときすでに、沼津、いや、日本、にいなかったのだ。

 では、どこにいたのか。それは、イタリア・ローマ、だった。ライブ会場の使用許諾の申請をナギが行おうとしたときの前日、裏美はイタリア・ローマに向かっていた。ローマに向かう前日(ナギが申請を出す日の一昨日)、裏美はは鞠莉のフィレンツェの居場所を突き止め、鞠莉‘sママに連絡していたのだが、このあと、裏美、

(月生徒会長の行動は妨害できた!!あともう少しで木松悪斗様の天下だ!!)

と、安心しきっていた。

 が、次の日、

(う~、心配だ!!本当に大丈夫なのか・・・)

と、本当に月の妨害が成功するのか心配になっていた、小心者の裏美、といっても過言ではなかった・・・。

 この心配が2時間ものあいだ、裏美の体中を駆け巡っていた。そして、ついには、

「もう我慢できん!!この私自らイタリアに乗り込んで確かめてやる!!」

と、我慢の限界を超えたのか、裏美、本当に月の妨害が成功したのか直接確かめることを決めてしまう。こうして、イタリアに行くことを決めた裏美、そう決めてから6時間後には、裏美、機上の人となっていた。

 と、いうわけで、ナギがライブ会場となる沼津駅南口の使用許諾の申請を出す日には、ナギたちを妨害するはずの裏美はおろか木松悪斗すら沼津にはいなかった、という幸運があったこともあり、誰の妨害を受けることもなく、ナギ、沼津駅南口の使用許諾を得ることができた。

 こうして、ナギたち静真高校生徒会、裏美や木松悪斗らの妨害を受けることなく、4月の初旬に沼津駅南口とその大通りで新生Aqoursのお披露目ライブを開くための下準備を着々と進めることができたのだ。

 ちなみに、イタリアに渡った裏美、フィレンツェでの鞠莉と鞠莉‘sママとの言い争いの中で、鞠莉、Aqours、スクールアイドルの未来をかけた運命のライブを行うことが決まったことをあとで聞いたうえで、

「あのスクールアイドルはくだらない、いや、存在すら否定している、そして、頑固者の鞠莉‘sママが首を縦に振ることなんてない!!絶対にありえない!!これで月生徒会長の運命も潰えた!!」

と、安心しきっていた。

 が、裏美、このあと、その運命のライブが失敗に終わり、鞠莉‘sママに拘束されている鞠莉の悲しきった顔を見てみたい、月の絶望的な表情を見てみたい、と思ったのか、このまま、イタリア・ローマにstayすることになる。しかし、結果としてはその運命のライブは大成功、鞠莉‘sママは、鞠莉、Aqours、スクールアイドル、いや、鞠莉たちの想いを受け入れることになったのであるが、その後、これまでの木松悪斗や裏美の悪事を知った鞠莉‘sママによって裏美が成敗されたのはいうまでもない。

 

 こうして、ライブ会場となる沼津駅南口の使用許諾、フェス会場の出店、ライブ機材などのレンタルなどの下準備をちゃくちゃくと進め、ついにその下準備が終わったナギたち静真高校生徒会、その一方、よいつむトリオの方はかなり困難を極めていた。ナギたち静岡高校生徒会がお披露目ライブの下準備が終わったとき、よいつむトリオは浦の星の1・2年全員にお披露目ライブへの参加を呼び掛けていた。だが、参加を表明したのはその半数にも満たなかった。やっぱり、千歌たち新生Aqoursが部活動報告会でのライブに失敗したことで大きく落ち込んでいる、そんな現状ではいくらライブをしても失敗に終わる、と、半場諦めている生徒たちが多かった。

 しかし、このとき、よいつむトリオにチャンスが訪れる。それは、よいつむトリオがお披露目ライブの参加する浦の星の生徒の人数について悩んでいるときに起きた。

「むつ~、このままだとライブのスタッフ、絶対に足りなくなるよ・・・」

と、よしみがむつに向かって嘆いていた。この日も浦の星の生徒の家を巡ってはお披露目ライブの手伝いのお願いをしてきたのだが結果はいまいちだった。隣にいるいつきも、

「私もダメだった・・・」

と、よしみに続いて嘆いていた。

 この2人の言葉に、むつ、

「ナギたち(静真高校生徒会)、もうお披露目ライブの下準備は終わった、って、今さっき、メールで知らせてきたけど、そのお披露目ライブのスタッフが集まらない限りお披露目ライブを行ったとしても失敗に終わっちゃうよ~」

と、こちらも嘆いていた。

 そんなときだった。

「You Gut Mail!!」

という音が3人のスマホから同時に聞こえてきた。これには、むつ、

「あっ、私にメールだ!!」

と、言っては自分のスマホの画面を見てみる。

 すると、むつの表情が変わった!!今まで暗かったのがだんだんと明るくなったのだ。このむつの変わりように、いつき、

「むつ、なにかあったの・・・」

と、むつのことを心配する。が、これには、むつ、

「いつき、そんなに心配しないで!!」

と、いつきに言うと、すぐに、

「それよりも、今さっき届いたメール、見て!!よしみも見て!!」

と、今届いたメールを見るように勧める。

 このむつの勧めにいつきとよしみも自分のスマホに届いたメールを見てみる。すると、いつき、

「えっ、これってうそだよね!!うそだよね!!」

と、びっくりするも、むつ、

「いや、本当だよ!!」

と、これが真実であることを諭す。これに、よしみ、ついに声をあげた。

「千歌たちが・・・Aqoursが・・・復活したよ!!」

こうして、歓喜に包まれるよいつむトリオ。3人が見たメールにはこう書かれていた。

「むつ、いつき、よしみ、お待たせ!!私たち、Aqours、イタリア・ローマのスペイン広場でライブを行うんだ!!今度は鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんも一緒だよ!!絶対みんなでみてね!!私たちのライブ、全世界に配信するからね!! 千歌より」

そう、千歌からのメールだった。千歌はイタリア・ローマのスペイン広場で行う運命のライブの日の前日、よいつむトリオに、そのライブを行う、というメールを送っていたのだ。それがちょうどお通夜モードの3人に届いた、ということなのだ。

 この千歌からのメールを見たことによりよいつむトリオのやる気が復活した。

「千歌たちが、千歌たちが、ついに復活したよ!!」

と喜ぶむつに対し、よしみ、

「え~と、え~と、(運命の)ライブを行うのがローマ時間で午後3時ごろだから・・・、日本だと・・・、真夜中だね!!」

と、スペイン広場でのライブを行う時間を逆算すると、それを受けて、いつき、

「それじゃ、それじゃ、2年のみんなに内浦の砂浜に集まってみんな一緒に千歌たちAqoursの(運命の)ライブ、そのライブビューイングを行っちゃおう!!」

と、とてつもない提案をしてしまう。

 が、むつ、そんなことお構いなしに、

「その提案、のった!!よ~し、みんなと一緒にAqoursの復活ライブ、見てみよう!!」

と、なにも考えず、そのままの流れでAqoursのスペイン広場での運命のライブ、そのライブビューイングを行うことを決めてしまった・・・。

 

 が、なにかが決まるとそれを実現するために素早く動くのがよいつむトリオのいいところである。すぐに浦の星の2年生みんなにAqoursのスペイン広場でのライブ、そのライブビューイングを内浦の砂浜海岸で行うことを連絡すると、すぐに、2年生全員、そのライブビューイングに参加することを表明してくれたのだった。さらい、よいつむトリオとは別の2年生が浦の星の1年生に「自分たち(浦の星の2年生)はAqoursのスペイン広場のライブ、そのライブビューイングを行う」ことを伝えると、1年生は1年生で2年生と同様に(場所は別になるが・・・)Aqoursのスペイン広場のライブ、そのライブビューイングを行うことを決めた、とのことだった、それも1年生全員で。やっぱり、浦の星の生徒たち、千歌たちAqoursのことを1番に思っていたのだった。

 

 と、いうわけで、よいつむトリオ浦の星の2年生は千歌からメールが届いた日の翌日の深夜、ラブライブ!の優勝旗が刺さっている内浦の砂浜海岸でスペイン広場で行われるAqoursの運命のライブ、そのライブビューイングを全員で鑑賞していた。ちなみに、ライブビューイングの機材は千歌の実家の旅館の提供でお送りいたしました(by 美渡姉!!)。

 そのライブビューイングであったが、終わった瞬間、

「とてもいいライブだったよ~」「とても感動したよ~」

「静真の(部活動報告会での)ライブは失敗に終わって(千歌たち)落ち込んでいないか心配していたけど、これ(運命のライブ)を見る限り、千歌たち、完全復活、したんだね!!」

と、ここにいる全員、歓喜の声をあげていた。つい最近まで部活動報告会のライブの失敗で不安・心配の深き海・沼に沈み込んでしまっていた千歌たち新生Aqours1・2年6人、それが(月によって)完全復活を遂げた、それを証明するような、いや、今までのなかで1番のライブ、そうここにいるみんなが思っていた。

 このAqoursの勇姿を見てとても感動している浦の星の2年生全員の姿を見たむつ、

(よし、このときこそ好機!!)

と、思ったのか、突然、みんなに向かってこう言いだした。

「ところで、みんなに提案なんだけど、完全復活を果たした千歌たち(新生)Aqours、そのお披露目ライブを行いたいんだけど、みんなどうかな?手伝ってくれないかな?」

ただ、むつはこのとき少し心配していた。これまで2年生みんなに同じことを提案してはそのお披露目ライブのお手伝いをしてほしいと頼んでいたのだが、その半数から断られていた。そして、今回はAqoursの完全復活を遂げたとはいえ、ここにいる全員がお披露目ライブのお手伝いに参加してくれるわけじゃない、そう思っていた。

 しかし、それは杞憂に終わった。このむつの提案に、ここにいるみんな、

「Aqoursが完全復活したんだ!!それだったら、お披露目ライブ、成功、間違いなしだね!!」

「いやいや、この私たちがAqoursのためにライブを開くんだよ!!そんなもの、この私たちにかかれば、お茶の子さいさい、だよ!!」

と、かなり乗り気になる。

 そして、むつは再びここにいるみんなに聞いてみた。

「で、どうかな、みんな?」

このむつの言葉に、みんな、口をそろえてこう言った。

「うん、わかった!!新生Aqoursのお披露目ライブ、私たち、参加します!!」

 これを聞いた、むつ、いつき、よしみは口をそろえてこう言った。

「「「みんな、ありがとう」」」

 さらに、このとき、むつのもとにあるメールが届く。そのメールの内容は以下の通りだった。

「むつ先輩、私たち1年生もAqoursの(スペイン広場での)ライブ、1年生全員で見てました!!とても感動しました!!Aqours完全復活、ですね!!そして、みんなと話し合って決めました、千歌先輩たち、新生Aqoursのお披露目ライブ、私たち全員、参加します!!」

 そのメールを見たむつは浦の星の2年生みんなに向かってこう言った。

「たった今、1年生のみんなからこんな報告が届いたよ、1年生みんな、新生Aqoursのお披露目ライブ、全員参加するって!!」

これを聞いたよしみ、

「ということは・・・」

と、言うと、いつきは喜びながらこう言った。

「浦の星の生徒、新生Aqoursのお披露目ライブ、全員参加、決定!!」

そう、よいつむトリオはついに成し遂げたのである、これまでナギたち静真高校生徒会と一緒にやることを決めた新生Aqoursのお披露目ライブ、最初は千歌たち(新生)Aqours1・2年6人が部活動報告会のライブに失敗したことにより深く落ち込んでしまったこともあり、浦の星の生徒たちはあまり乗り気ではなかったが、千歌たちAqoursが完全復活を果たした今、その新生Aqoursのお披露目ライブ、浦の星の生徒全員の力で成功に導いていく、そのスタート地点に立つことができた、のだ。これには、

「むつ、いつき、私たちはやったよ!!」

と、むつ、いつきを抱きしめては喜ぶよしみ。これには、むつも、

「でも、まだ全員参加することが決まっただけで、新生Aqoursのお披露目ライブが成功したとはまだ言えないのでは・・・」

と、2人に諭すも喜んでいるには間違いなかった。

 そんなときだった。ある浦の星の2年生がこんなことを言いだした。

「むっちゃん、ちょっと、そのライブの名前、変えない?なんか、「新生Aqoursのお披露目ライブ」という名前だとちょっとダサくないかな?」

これを聞いたむつ、

「そうかな?じゃ、どんな名前がいいかな?」

と、逆に質問する。

 すると、その生徒はこんな名前を提案した。

「え~とね~、「オペレーション・オブ・New Aqours」!!ちょっとかっこいい作戦名にしたんだけど・・・」

この提案を聞いたむつ、

「う~ん、う~ん」

と、悩むも、すぐに、

「うん、なんてかっこいい名前!!よ~し、決めた、これからは、「オペレーション・オブ・New Aqours」、そんな作戦名にしよう!!」

と、言いだしてしまう。あまりにも短絡的・・・であったが、それには、みんな、

「賛成!!」

と、「新生Aqoursのお披露目ライブ」、改め、「オペレーション・オブ・New Aqours」に作戦名を変えてしまった!!

 こうして、無事、よいつむトリオら浦の星の生徒たちはそのお披露目ライブの準備をスタートさせた・・・のだが、一方、お披露目ライブの下準備が完了したナギたち静真高校生徒会はある問題に直面していた。Aqoursのスペイン広場でのライブは月を通じてナギたちにも伝えられており、ナギたち生徒会はそれを静真の生徒たちに向けて学校内のSNSを通じて生配信を実施したのだが、そのライブの生配信を生で見ていてのは静真の生徒たちのごく一部だった。いや、生配信を見ていた生徒の数こそ今の生徒会を慕う生徒の人数にほかならなかった。人気絶頂だった1か月前とは違って今の生徒会を慕うのはわずかしかいない、それにナギはがっかりしていた。

 が、そんなナギにも知らせが届く。よいつむトリオら浦の星の生徒全員が「新生Aqoursのお披露目ライブ」改め「オペレーション・オブ・New Aqours」に参加すること、これにより、浦の星側も本格始動することをよいつむトリオが伝えてきたのだった。

 これでナギも決心した、ついに賽は投げられたのだ、たとえ自分たち(静真側)のお披露目ライブにサポートできる人数が少なくとも浦の星側が動き始めるならこちらも本格的に動き始めることを。

 だが、ナギの苦労も無駄ではなかった。このAqoursのスペイン広場でのライブ、その生配信を見て、ある静真の生徒、自分も行動に移すべき、と、心に決めたのだから。



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Moon Cradle 第7章前編 第7話

と、あまりにも前置きが長くなったが、ナギ考案・・・といいたいのだが、これだと浦の星の生徒主体でやっている、というイメージがなくなってしまうので、表向きには「よいつむトリオ提案」となっている、新生Aqoursのお披露目ライブ、通称「オペレーション・オブ・New Aqours」はついに千歌たち新生Aqours6人の前で発表することになったのだが、このとき、いつき、

「実はステージのイメージもできちゃっているんだ!!」

と、言うと、黒板にかけてあったカーテンをよいつむトリオが一気に外した。そこに描かれていたのは・・・。

「わ~!!」

と、千歌たち6人、その黒板を見て驚きの声をあげていた。そう、そこに描かれていたのは新生Aqoursお披露目ライブのステージのイメージ図。Aqoursのシンボル、9色の虹、その虹に掲げられていた、Aqoursのシンボルカラーである水色のバルーンで表現されていた「Aqours」の文字。まさに新生Aqoursが羽ばたくために作れたステージ(のイメージ図)だった。このステージのイメージ図は浦の星の生徒全員がこのお披露目ライブ参加を決めたあと、その全員からどんなステージがいいかよいつむトリオが聞いて回った結果、そのほとんどが「Aqoursのシンボルである「9色の虹」をステージに取り付けてほしい」と答えたのである。「9色の虹」・・・、それはAqoursにとって切り離すことができないもの・・・。学校説明会のとき、廃校を阻止するため、Aqoursは到底無理と思われていた(学校説明会と同日に行われた)ラブライブ!冬季大会静岡県予選の地から学校説明会がある浦の星への移動を奇抜な方法で成功させ、浦の星に作られたステージで「君の心は輝いているかい」を歌い上げた。そのとき、そらには虹がかかっていたのだ。そして、Aqoursは虹の向こう側に行くために成長し続けた結果、Aqoursはラブライブ!優勝を果たすのだが、閉校式のとき、これまでお世話になった学校に感謝の意味を込めて校舎の壁一面に落書き・・・、もとい、お別れのメッセージを描いたのだが、その際、1階の目立つところに「9色の虹」が描かれていたのだ。その虹はAqoursが浦の星のために頑張ってきた、その証、ともいえた。そんな意味でも、「9色の虹」はAqoursにとってシンボルともいえる存在だった。と、同時に、そのシンボルをバックに新生Aqoursが羽ばたく様子を見てみたい、それが浦の星の生徒全員の願いだった。

 が、そのイメージ図を見て、花丸、

「すご~い!!」

と、感嘆の声をあげると、梨子と曜、現実的なことを言いだす。

「でも、立派なステージ」(梨子)

「とてもじゃないけど間に合わないんじゃ・・・」(曜)

そうである。このイメージ図にも弱点があった。あまりに壮大過ぎてライブ当日までに間に合うかどうか、である。たしかに、バルーンなどいろいろ準備するものが多すぎて本当に間に合うかどうか梨子と曜が心配するのも無理ではなかった。

 が、よいつむトリオはそんなこと関係なしにこう言いだした。

「私も言ったんだけどさぁ」(むつ)

「なんかみんなに話したら、Aqoursにふさわしい、すごいステージを作って、浦の星だってちゃんとできるとこ、証明してやる、って!!」(いつき)

2人ともちょっと自信がある発言であった。そう、このときにはすでにステージ作成は開始されていたのである。このステージのイメージ図、完成したのが浦の星の生徒全員がお披露目ライブの参加を決めた日、つまり、Aqoursがスペイン広場で運命のライブを行った日の2日後だった。よいつむトリオは浦の星の生徒全員に連絡していたのだが、連絡している最中、まだ連絡していなかった生徒たちから、

「ねっ、9色の虹、ステージにかかげたらどうかな」

「バルーンをたくさん置いたらすごくな~い!!」

と、ステージについての意見をメールでどんどん送られていたのだ。そのため、よいつむトリオは浦の星の生徒全員にステージについて意見を聞くための必要な日数を3日とみていたのだが、たった1日で浦の星の生徒全員から意見を集めることができたのだ。

 こうして、よいつむトリオは浦の星の生徒全員の意見をもとにステージのイメージ図を作成・・・したのだが、いろんな意見がでてしまったため、みんなの意見を反映しすぎてしまい、あまりに壮大なイメージ図が完成したのだった。でも、よいつむトリオとしては新生Aqoursのはれのステージ、ということもあり、あまりに壮大なイメージ図をもとに新生Aqoursお披露目ライブのステージを作ることに決定した。

 このイメージ図が完成した翌日、よいつむトリオら浦の星の生徒たちはステージ作成に取り掛かった。では、なぜ、イメージ図完成の翌日からステージ作成にとりかかることができたのか、そう疑問に思われる方もいると思うが、それはナギとよいつむトリオの頑張りがあったからだった。

 まず、ステージ作成、といってもまずは土台となる部分から作ることになっていたため、イメージ図が完成してなくてもステージ作成を始めることができた。また、ステージ作成に使う木材などの資材であるが、その基礎的な部分に使う資材はすでにナギが発注していたため、イメージ図完成の翌日にはステージ作成の作業場となる浦の星分校にその資材は用意されていた。なお、基礎的な部分以外の追加資材(ステージに使うバルーンなど)についてはすでにナギが発注済みである。

 なお、ステージ作成にかかる費用についてだが、それについては大丈夫だった。沼田の根回しがあったためか、ナギが資材を発注する際、その発注先から、

「この資材でいいんだよな!!わかったよ!!」

と、元気よく資材の発注を受諾する。すると、その発注先、続けて、

「ところで、この資材、なにに使うんだい?」

と、聞かれてしまい、ナギ、ついうっかり、

「え~と、新生Aqoursのお披露目ライブ、ですけど・・・」

と、口を滑らせてしまう。が、その発注先から、

「えっ、新生Aqoursのお披露目ライブに使いのかい!!それはめでたい!!」

と、言われては、続けて、

「なら、お代はいらないよ!!これは俺たちからの寄付だ!!」

と、なんとタダで資材を提供することを決めてしまった。これには、ナギ、

「で、でも・・・、本当にタダでいいのでしょうか・・・」

と、恐る恐る聞くと、発注先、

「あのAqoursだろ!!ナギの嬢ちゃんは「内浦のAqours」だと思っているかもしれないけれど、俺たちからすれば「沼津を代表するスクールアイドル、Aqours」なんだよ!!そのAqoursの新しい旅立ち、そのステージであればタダでもお釣りがくるってもんだよ!!」

と、元気よく答えてくれた。そうである。Aqoursという存在は、今や、浦の星の、内浦の、ものではなくなっていたのだ。沼津のみんなからすれば、「Aqoursは沼津のもの!!」、といっても過言ではなかった。沼津を代表するスクールアイドルAqours、そのAqoursが活躍するために使うのであればタダでも構わない、そんな心意気がこの発注先の人の中に渦巻いていた。

 と、こんな具合に「Aqoursのために使うのであれば」といった理由で、タダ、もしくは原価で提供してくれるところが多く、そんなにコストをかけずにライブに使うための資材を集めることができた。

 ただ、それでも、新生Aqoursお披露目ライブ、その資材集め以外にもコストがかかってしまっていた。そのコストをナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちだけで賄うのは困難だった。資金不足・・・、ライブなどを興行する際、よくある問題・・・なのだが、ここでも救いの神があらわれた。まだ、イメージ図を完成させてまもないころ、突然、静真高校生徒会に電話がかかってきたのだ。それに、ナギ、

「はい、静真高校生徒会ですが・・・」

と電話を受けると、その電話口からいきなり若い女の声でこう聞こえてきたのだ。

「あっ、あなたがナギ生徒会長代理、ですね~!!そのナギさんにお伝えしま~す!!あなたたち、静真高校生徒会のBANK(銀行口座)に、何百万円、振り込みま~した!!」

このあまりにもデカすぎる話を聞いてか、ナギ、

「えっ、なんでそんな大金を私たちの口座に振り込んだんですか!?もしかして、間違えて振り込んだんじゃ・・・」

と、びっくりしつつも、その若い女の人になんで大金を振り込んだのか尋ねてみる。すると、

「ミステイクして振り込んだんじゃあ~りませ~ん!!あなたたちは沼津駅南口で新生Aqoursのお披露目ライブ、通称、「オペレーション・オブ・New Aqours」を開催する予定、で~すね~!!その運営資金にUSEしてくださ~い!!」

と、ちゃんとした物言いで答えた。これには、ナギ、

「えっ、こんな大金をあっさりとAqoursのために・・・」

と、唖然としてしまう。それでも、電話口の若い女の人、

「これは私からのお気持ちで~す!!この資金を使って新生Aqoursが大きく羽ばたく、そんな立派なステージを作り上げてくださ~い!!」

と、強い口調でナギに言った。

 と、いうわけで、ナギ、この相手の気持ちを受け取ったのか、

「はい、わかりました!!このお金は新生Aqoursが大きく羽ばたく、そんなステージを作り上げるために使います!!」

と、元気よく答えた。

 そして、ナギは最後にあることを相手に尋ねた。

「で、ところで、あなたのお名前、お聞かせいただけませんか?」

これに、電話口の若い女の人はこう答えた。

「私の名前は・・・、鞠莉‘sママ、で~す!!」

そう、お披露目ライブの運営資金として大金をナギたち静真高校生徒会に振り込んだのは、鞠莉‘sママ、だった。

 実は、鞠莉‘sママ、スペイン広場でのAqoursのライブを見て、スクールアイドルの凄さを身をもって知ったのだが、それと同時に、

(私も、世界を変える力を持つくらいとてもすご~い、そんな、スクールアイドル、サポート(応援)したくなりま~した!!)

という、スクールアイドルを心の底から応援したい、そんな想いが生まれてしまったのだ。

 そんな想いが生まれた、そのときだった。鞠莉‘sママにあるメールが届く。そのメールの相手を見た、鞠莉‘sママ、

(あれぇ、ミスター沼田からじゃあ~りませんか!!なんでしょうか?)

と思うとすぐに沼田からのメールの内容を読んだ。そのメールを読んだ後、鞠莉‘sママ、あることに驚く。

(なんですて~!!4月初旬に、沼津駅南口で、新生Aqoursのお披露ライブが行われるので~すか~!!これはサプライズ(驚き)で~す!!)

そう、その沼田からのメールには4月初旬に千歌たち新生Aqoursのお披露目ライブがことが書かれていたのだ。

 で、このメールを読んだ鞠莉‘sママ、こんなことを考えてしまう。

(新生Aqoursのお披露目ライブ!!私もなにかの形でサポート(支援)したいで~す!!)

と、いうわけで、鞠莉‘sママ、なにかこのお披露目ライブにかかわる方法がないか考えてみる。すると、鞠莉‘sママ、

(あっ、このライブを行うためにもその運営資金がが必要で~す!!それなら、この私がその運営資金をPAY(差し上げて)しまいましょう!!)

と、新生Aqoursお披露目ライブ、その運営資金のためにナギたちに資金援助をすることを決めたのである。

 こうして、鞠莉‘sママはすぐに沼田に連絡、ナギたち静真高校生徒会の銀行口座を沼田から聞き出してはそのままお金を振り込んでしまったのだ。

 

 と、いうわけで、千歌たち新生Aqours1・2年6人がこの浦の星分校に到着したときには、資金面についてはすでにクリア、資材の発注などもすべて終わっている、そして、今、お披露目ライブに使うステージ作成も浦の星分校の体育館で絶賛作成中、そんな状態だった。

 これですべてがすべて順調・・・ではなかった。ステージのイメージ図を発表した後、いつきはこのとき発生していた問題点を千歌たち6人に話す。

「でも、ライブの音響のスタッフとか、人手不足、ではあるのだけどね・・・」

そう、今起きている問題、それは、スタッフ不足、だった。大規模なフェスぐらいのライブを行うため、プログラム進行、会場内警備、など、多くのスタッフが必要になっており、浦の星の生徒全員を総動員しても足りないくらいだった。特に、音響などのステージ進行のためのスタッフが圧倒的に不足していた。音響などはその機材を扱えるのがよいつむトリオか元放送部員数人だけだった。そのためにステージ進行のためのスタッフが圧倒的に足りなかったのだ。

 また、このとき、このお披露目ライブでとても大切な役職の人がいなかった。その役職とは・・・、そう、「ディレクター」、つまり、このお披露目ライブの総括責任者、だった。ライブの進行はもちろん、フェスの運営など、このライブ全体を統括してくれる人がいなかったのである。

 では、そのディレクター、ナギかよいつむトリオの誰かがすればいいのでは、と、思えるのだが、この4人には、ディレクター、を任せるのは難しかった。ナギ、よいつむトリオ、ともに静真と浦の星、それぞれをまとめるので精いっぱいだった。また、ナギはライブ進行などの仕事を行ったことがない、よいつむトリオも音響などのステージ設備などは簡単に扱えるものの、ライブ進行などはあまりやったことがない・・・、というのもあった。

 が、これについてはもうすでに解決済みだった。なぜなら・・・、ここに適任者がいるから・・・。それに本人はすぐに気づいていた。そう、静真高校生徒会生徒会長、渡辺月、である。月、よいつむトリオからスタッフが不足していることを聞いたうえで、

(あっ、そういえば、もう一つ、足りないもの、あったね!!それは、このライブの統括責任者、ディレクター、だね!!)

と、統括責任者であるディレクターがいないことに気づく。が、

(でも、ナギたちやあの3人(よいつむトリオ)、たしか、ディレクター、みたいな仕事、やっていなかったな・・・)

と、ナギとよいつむトリオ、この4人が、ディレクター的な仕事、したことがなかったこともわかっていた。あれっ、ナギのことは別にして、なんで、月、浦の星の生徒であるよいつむトリオのことも詳しく知っていたの?それは、このときすでに、月、よいつむトリオのこともよく知っていたのだ。なぜなら、静真高校と浦の星女学院の統合が決定したとき、月は浦の星の生徒全員のプロフィールを覚えていたからだった。より円滑に浦の星の生徒たちの静真での暮らしをフォローできるようにとの月の考えによるものだった。だkら、月はよいつむトリオがこれまでディレクター的な仕事をしていなかったことを知っていたのだ。

 それでも、月は落ち着いていた。なぜなら、

(まっ、そのディレクター的な仕事、この僕がすればいいか。だって、僕しかできない仕事だから・・・)

と、自分がこのお披露目ライブのディレクター職に就くのが一番、ということに気づいてしまったから。月は生徒会長としてこれまで静真高校の学校行事すべてを取り仕切ってきた。なので、ライブ以外の運営についてはよく知っていた。さらに、ライブについてもイタリアで鞠莉たちAqours3年生3人にディレクターのイロハを徹底的に叩き込まれていた、音響機器などのステージの機材の扱い方、ライブの進行などを。月もライブの進行はやったことがない。だが、その方法は鞠莉たち3人から骨の髄まで叩き込まれていたのだ。その2つの意味でも、お披露目ライブの統括責任者、ディレクター、の仕事は月が適任、ともいえた。

 が、肝心のスタッフ不足はいまだ解消されていない。それでも、月は落ち着いていた。

(たしかにスタッフ不足はいまだに解消されてはいない。だけど、それについては僕たちがなんとかできるかもしれない)

そう月が思っていた瞬間、教室の前の扉のところからある声が聞こえてきた。

「「「こんにちは~、初めまして~」」」

その声に反応したのか、声がした教室の前の扉の方向に目をやる千歌たち6人と月。そこにいたのは静真の制服を着た少女3人組だった。この3人組をみた、月、笑いながらこう思った。

(ようやく来たね、頼もしい助っ人さん!!)



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Moon Cradle 第7章前編 第8話

 教室の扉からあらわれた3人組、この娘たちこそ、月にとってとても頼もしい助っ人、いや、月にとって最強の切り札だった。この最強の切り札とはいったいなにか?それについて語るために少し時を戻すことにしよう。

 月が沼津駅に着いたとき、急に自分のスマホから電話の呼び鈴が聞こえてきたので、千歌たち6人のもとから離れてその電話をとる。どうやら、その相手はナギからだったようだ。そのナギから部活動報告会から今日にいたるまでのこちら(沼津のナギたち静真高校生徒会の動き)の経緯を聞くとともに、そのナギから、

「それに、私たちに強力な仲間が加わったのです!!」

と、ナギたちに新しい仲間が加わった、との報告を受けていたのだ。このとき、月、

(ついに、ついに、僕が一番欲しがっていたものが来てくれたんだ!!)

と、心の中では喜んでいた。そう、この新しい仲間こそ、月にとって待ち望んでいた最強の切り札であった。で、その切り札となるべき新しい仲間について、月、自分もすぐに会いたい、ということで、ナギとの待ち合わせ場所(兼千歌たち6人が向かう場所)である浦の星分校に向かうことになったのだ。

 で、浦の星分校に到着後、千歌たち6人と一緒に校舎の2階に上ったのだが、その2階に到着すると、月、そこで月を待っていたナギに呼び止められてしまう。このとき、ナギ、

(月生徒会長、ついに、私たちに待望の仲間ができました!!)

と、喜びの表情で月に接すると、月、

「あっ、ナギ!!」

と、ナギのことを呼ぶのだが、このあとすぐ、ナギは月に近づき、月の耳元でこっそり、

「月、生徒会長、例の少女、連れてきました・・・」

と、小声で話す。このナギの小声に、月、

(例の少女って、まさか、あの娘、かな?それなら安心だ!!だって、あの娘はAqoursのあるメンバーのことをよく知っていて、かつ、Aqoursのことがとても大好きなんだから!!)

と、今まで持っていた不安が吹き飛んだ、そんな感じになっていた。

 新しい仲間、それは、これから先、Aqoursのために自分から動いてくれる、そんな心構えが必要だったりする。月のために動く、じゃダメなのである。月が今求めている人材、それは、月のために動く、ではなく、自ら進んでAqoursのために頑張ってくれる、そんな人材だった。月はこのとき知っていた、ナギ考案の作戦のことを。木松悪斗たちが広めた考え、「保護者の声」、それを吹き飛ばすための作戦、それが、新生Aqoursお披露目ライブ、通称、「オペレーション・オブ・New Aqours」。その作戦のことを月は沼津駅でのナギからの電話で知ったのだ。そして、月はすぐに気づいた、この作戦の主役は千歌たち新生Aqoursであり、浦の星の生徒たちなのであることを。が、それと同時に、この作戦にはある弱点があることも見抜いていた。この作戦の弱点、それは、浦の星の生徒たちだけでこの作戦を成し遂げることで浦の星の生徒も1つの大きな物事を成し遂げるくらい(部活動に対する)士気が高い、それが証明できるが、もし、(部活動に対する)士気が高い浦の星の生徒が静真の部活動に入ると、その士気の高さゆえに、おなじく(部活に対する)士気が高い静真の生徒と部内で対立してしまう、そんな問題が発生してしまうのではないか、と。

 が、この助っ人がこの作戦に加わることによりその弱点は克服できる、そう月は考えていた。この助っ人がこの作戦に加わることで、たとえ士気の高い者同士同じ部活にいたとしても対立なんて起きることはない、それを証明してくれる、そう月は思っていた。しかし、そのためにも、その助っ人にはある条件が課せられていた。それは、生徒会長である月のために動く、のではなく、この作戦の主役である千歌たちAqours、そして、よいつむトリオら浦の星の生徒たちのために自ら動いてくれる、そんな人材だった。

 そんな人材を月はのどから手がでるほど欲しがっていたのだが、今、まさに、その人材を、いや、最強の人材を月はついに手に入れることができた、と、このときの月は確信していたのだった。

 そして、そんなことを思っていた、月、迎えに来たナギに向かって一言。

「わかった、会ってみましょう」

 その後、月は曜にちょっと席を外すことを言うと、ナギと一緒にナギが連れてきてくれた例の少女が待つ空き教室に向かうことになった。

 

その空き教室の扉の前に立つ月。その空き教室からは誰かの声が聞こえてきた。

(あれっ、1人じゃない・・・。少なくとも3人はいる・・・)

と、月、空き教室に複数人いることに気づく。これには、月、

(と、いうことは・・・、友達を連れてきたな・・・)

と、もしかすると、自分が思っている以上にすごい人材たちなのでは、と、期待してしまう。

 そして、期待しながらこう言って月は扉を開けた。

「こんにちわ!!」

月、とても元気な挨拶!!が、これに対して空き教室にいた少女たち3人は月がびっくりするぐらいの返事で言い返す。

「「「こんにちは!!」」」

まるでオペラぐらい・・・、いや、大学の応援団ぐらいの大声、それも三重奏!!これには、月、

(えっ、えっ!!)

と、一瞬驚いてしまう。いや、「こんにちは」ほど世界中のどの言葉の中でも大声で言うのに適している、そんなことに気づかせてくれる、そんな大声だった。

 そんな大声をだす娘たちを見た月、

(とても元気な娘たちだな!!やっぱり、この娘たち、最高だよ!!)

と、その娘たちのことを感心しつつ、その娘たちに、

「僕は静真高校で生徒会長を務めている、渡辺月、と言います!!」

と、自分のことを自己紹介すると、続けて、

「って、どこかで会いましたね。お久しぶりです」

と、その娘たちの1人の方を見る。ここにいる3人のうち1人は月と面識があるみたいだった。その娘は月に対し、

「はい、お久しぶりです!!たしか・・・1か月ぶりですね!!」

と、月に1か月ぶりに再会できたことに嬉しい表情を見せて言った。

 そして、月、その娘を見てはその娘の名前を言った。

「たしか・・・、署名活動していたときに真っ先に署名してくれた、稲荷あげはちゃん、ですよね!!」

 この月の言葉に、その娘ことあげはは元気よくこう答えた。

「はい、そうです!!稲荷あげは、稲荷あげはです!!私のことを覚えていてくれたなんて本当にうれしい限りです!!」

 月、そのあげはが元気よく答える姿を見て、あることを思い出していた。

(稲荷あげはちゃん、中学の時、(Aqoursのメンバーである)善子ちゃんの同級生であり、(中学の時は)不登校だった善子ちゃんの友達になりたい、そうずっと思っていた少女・・・)

そう、月の目の前にいる少女こそ、(第1章第5話で)浦の星女学院との統合実現のための署名を集めに1年のクラスを訪れていた月に対し自ら進んで署名した少女、1年の稲荷あげは、だった。月が署名を集めていたときは木松悪斗の突然の反対により静真高校と浦の星女学院の統合が破談になる可能性があった。そこで、月たち静真高校生徒会は統合実現のための署名を集めていたのだ。その最中、月とナギは1年のあるクラスで署名を集めようとしていたのだが、統合に懐疑的な生徒、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に入ると悪影響がでる」という木松悪斗たちが広めていた噂(これがのちに「保護者の声」となる)に侵された保護者によって「反対しなさい」と強要されている生徒が多く、署名があまり集まらなかった。そのとき、浦の星に通う同級生のヨハネのためにあげはが自ら進んで署名してくれたのだった。このとき、あげは、ヨハネたち浦の星の生徒たちのことを思う自分の気持ちをクラスのみんなに大きな声で語りかけたのだが、この言葉により、クラスのみんなは自分の友達である浦の星の生徒たちのことを思うようになり、みんな署名するようになったのである。(が、このあと、月はそのクラスの1人に「部活動ってなに?」と尋ねてみると、「勝つことがすべてだ」という答えが返ってくるばかりだけでなく、その答えにクラスメイトあっちが次々と賛同していったことにちょっと複雑な心情になったのだが・・・)

 と、いうわけで、あげはと月、ついに再会・・・なのだが、その月、あげはに対し、

「あげはちゃん、わざわざ来てくれて、本当にありがとう!!あなたが来てくれたら百人力だよ!!」

と、嬉しい表情であげはに感謝の言葉を贈る。だって、月にとってみれば、

(このあげはちゃんこそ、僕にとって最強の切り札となるべき存在だもの!!だって、中学時代に友達になれなかった善子ちゃんのために、そして、Aqoursのために、一生懸命頑張ってくれる、そんな力強い仲間、なんだもん!!)

と、あげはに期待していたのだから。

 そのことはあげはも理解しているのか、あげは、

「月生徒会長のお言葉、本当にうれしい限りです!!私、今度こそ、ヨハネちゃんのために頑張りたいと思っております!!だって、私、中学に、ヨハネちゃんと友達になれなかったから、ヨハネちゃんのためになにもできなかったから。だからこそ、私、今度こそ、ヨハネちゃんのため、Aqoursのために頑張りたい!!」

と、自分の抱負を熱く語った。

 そんな熱くなっているあげはに対し、その横にいた娘が、

「あげは、ちょっと落ち着きなさい!!月生徒会長が引くでしょうが!!」

と、あげはに注意をすると、あげは、

「いや~、ごめん、ごめん。つい、熱くなっちゃった!!本当にごめんね、東子」

と、あげはに注意した娘こと東子に言うと、またあげはの横にいた別の娘が、

「あげは、少しは落ち着きなさい!!この私みたいに落ち着きがあれば、どんなことがあっても大丈夫なのですから!!」

と、なんか自分のことを誇張しているようなことをあげはに言うと、あげは、

「シーナ、それはシー、だよ!!だって、思い立ったら吉日、っていうじゃない!!私、こう思ったらすぐに行動する派だもん!!」

と、言い訳を言うと、自分のことを誇張した娘ことシーナ、

「まっ、それがあげはのいいところ、だもんね!!」

と、あげはのことを褒めちぎる。これには、あげは、

「えっへん!!」

と、勝ち誇ったような仕草をする。そんなあげはの仕草が面白かったのか、空き教室にいるみんな、

ハハハ

と笑ってしまった。

 と、月、

(あっ、なんで和やかな雰囲気になっているんだ!!ここは先に進めないと!!)

と、この物語の主人公らしく先に話を進めることに・・・。

 と、いうわけで、月、あげはいあることを尋ねる。

「あげはちゃん、ところで、隣にいる2人は誰かな?」

この月の問いかけにあげはは元気よくこう答えた。

「あっ、紹介が遅れました!!ショートカットの娘が(私たちのリーダー的存在の)東町東子、髪を2つに分けているのが(ちょっと高飛車な)浜方椎名(シーナ)です!!」

このあげはの紹介のあと、

「東町東子です!!真面目だけがとりえです!!」

と、東子、

「あげは、高飛車って一言多い!!これでも、私、気にしているんだから!!あっ、挨拶が遅れました!!浜方椎名です!!椎名と書いてシーナって呼びます!!」

と、シーナ、2人とも月に挨拶をした。

 が、そんなシーナに対し、あげは、

「シーナ、そんなこと言っていいのかな~。たしか・・・、「私の右手に触れたら、どんな魔術も打ち消すことができる」っていう挨拶、しないの?」

と、わざとらしく言うと、シーナ、

「も、そんなこと、言わないでよ!!まるでヨハネちゃんみたいに中二病っぽく見られちゃうでしょ!!」

と、あげはに(わざと)怒るように言うと、あげは、

「あっ、ごめん!!」

と、舌をぺろっとだしてシーナに謝る。これには、みんな、

ハハハ

と、大いに笑ってしまった。

 そんなあげはとシーナのやり取りで場の雰囲気が温まった、というわけで、月、あげはたち3人に対し、

「でも、本当に来てくれてありがとう、あげはちゃん、東子ちゃん、そして、シーナちゃん」

と、お礼を言った。

 この月の言葉に、あげはは、

「月生徒会長、それは私たちが決めたことです!!あの、私たちの大事な友達であるヨハネちゃん、そして、私たちが大好きなスクールアイドルAqours、のためになりたいのですから!!)

と、自分たちの今の想いを心の中で言うと、これまでのことを思い出していた・・・。



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Moon Cradle 第7章前編 第9話

 ことの始まりは木松悪斗が静真高校と浦の星女学院の統合反対を唱えたときだった。あげはは自分たちのいる静真高校とヨハネがいる浦の星女学院が統合することを聞いたとき、

(ヤッター!!これでAqoursが静真に来る!!そうすれば、ヨハネちゃんとまた一緒になれる!!)

と、とても喜んでいた。あげはは中学のときにヨハネと同じ中学校に通っていた。が、そのヨハネ、このとき、というか、幼稚園のときからずっと(自分が不幸体質だからなのか)「自分は堕天使!!」と心の中では思っていたため、堕天使・・・というか、いわゆる、中二病、的なところがあった。そのため、中学に入学しても、ときたま屋上に上がっては、

「私は堕天使!!」

と、(周りからみたら)ちょっといたいことをしていたのだ。

 しかし、そんなヨハネだったが、中学時代のあげはからすると、

(なんて個性的なの!!これならシーナといい勝負、できるね!!)

と、ヨハネのことをかなり好意的に見ていた。で、あげは、このことをあげはとヨハネと同じ中学に通っていたシーナに話すと、

「それ、私のこと、バカにしていない!!私、中二病じゃないし、私の設定、そのほとんどがあげはが考えた設定でしょうが!!」

と、シーナ、あげはにかんかんに怒る。そんな2人に対し、シーナと同じく、あげはとヨハネと同じ中学に通っていた東子は、

「まあまあ、2人とも、落ち着いて・・・」

と、あげはとシーナをなだめていた。ちなみに、あげは、東子、シーナはいわゆる、幼馴染、であった。3人とも住んでいた家が近所だったため、小さいときから3人で遊んでいたのだ。さらに、幼稚園、小学校、中学校、と、同じところに通っていたこともあり、周りからは「腐れ縁」ともいわれていた。なので、どこに行っても3人は一緒に行動することが多かった。むろん、その意味でも、ヨハネは、あげは、東子、シーナとの関係は同じ中学に通っていた同級生、とも言えた。

 で、そんな個性的なヨハネを見て、中学時代のあげは、

(個性的すぎるヨハネちゃんと一緒に遊びたい!!)

と、思ったのか、

「絶対にヨハネちゃんと友達になりたい!!」

と、ヨハネと友達になることを決意する・・・のだが、中学のときでも中二病的なことをしてしまった(中学時代の)ヨハネ、

(このままだとみんなから白い目で見られる!!また、お母さんに怒られてしまう!!)

と、考え込んでしまう。幼稚園、小学校のときも中二病的なことをしてはその都度自分の母親に怒られていたのだ。そのヨハネの母親であるが、その母親の職業が「教師!!」だったためか、違う学校で教鞭をとっていたヨハネの母親の耳にも「自分の娘である善子ちゃんがまたおかしなことをしている」という情報が流れてしまい、ヨハネの母親、いつも恥ずかしい思いをしてしまっていた。そのため、そのヨハネの奇行?をやめてほしいとばかりにいつもいつもヨハネにつらく当たっていた。これには、中学時代のヨハネもかなりつらかったらしく、

(もういや!!ヨハネ、もう学校に行きたくない!!)

と、中二病的なことをしたために周りから白い目で見られたくない、自分につらくあたる母親から叱られたくない、といった理由で、中学時代のヨハネ、中学校を不登校になってしまったのである。

 そして、ヨハネが不登校になったことはヨハネが学校に行かなくなってすぐに学校中に知れ渡った。なぜなら、ときどき、中二病的なこと(屋上に昇って中二病的なことをするなど)をヨハネがしていたため、中学校のなかではとても有名な存在としてヨハネが見られていたからだった。ただ、学校に通う生徒たちからしたら、

「あの津島(善子)ちゃんってとても面白い子なのに、来ないとなるとちょっと寂しいよね・・・」

「もっとすごいことをしてもらいたかったよ、津島(善子)さん・・・」

と、ヨハネが来ないことにちょっと残念的な感じになっていた。それほどヨハネのことを好意的に思ってくれる生徒が多かった。

 また、ヨハネが不登校になったことでとても悔しい想いを持った子もいた。そう、あげはである。そのあげは、ヨハネが不登校になったことを知ると、

「えっ、津島(善子)さんが不登校に!!なんで、なんで、来ないのよ~、津島(善子)さん!!私、友達になりたかったのに!!」

と、ヨハネと友達になれなかった悔しい想いを東子とシーナにぶつけてしまう。これには、東子、

「あげは、それは仕方がないことだよ!!だって、津島(善子)さん、自分が、「自分は堕天使!!」って言っておかしなことをしている、って自覚しているのなら、それにより、「周りから「おかしな人」と思われている」ってそう思ってしまうものだよ!!そうなれば、「周りから白い目で見られたくない」って考えてしまい、津島(善子)さん、それで引きこもりになったのかもしれないよ!!でも、本当のところは、津島(善子)さん、学校のマスコット、とても個性的な子、としてみんなから慕われているんだけどね」

と、あげはを慰めるように言うと、シーナも、

「まっ、それに、たしか、津島(善子)さんのお母さんって、別の学校の先生、している、って聞いたことがあるよ。で、津島(善子)さんの行動って周りからみたら奇行とみられえるかもしれないからほかの学校でも噂になるでしょ。そうなると、津島(善子)さんのお母さん、その噂の張本人の母親、って後ろ指をさされるかもしれないよ。そうなると、津島(善子)さんはその母親から奇行をやめるように怒るはず。それが何度も続けば、母親から怒られたくない、ってことで、津島(善子)さん、学校に行きたくなくなるものだよ!!」

と、あげはに諭す。

 が、とうのあげは、シーナに対し、

「それじゃ、シーナの頭の中に眠る10万3000冊の蔵書のなかから・・・」

と、わざとらしく?言うと、シーナ、

「あげは、またそれ!!あげは、私は津島(善子)さんみたいに中二病じゃない!!それに、そんな大量の本の内容を覚えていたら、この私だって頭がパンクしちゃうよ!!」

と、あげはにツッコむ。これには東子もただただ笑うしかなかった。

 とはいえ、ヨハネが中学校に来なくなったこと自体には間違いないので、とうのあげはも、

(ああ、はやく津島(善子)さんに会いたいな!!会って、いろんなことを話して、友達になったら楽しいのに・・・)

と、ヨハネが中学校に来ないことには残念そうに思っていた。そのためか、

(津島(善子)さん、待っててね!!今度会うときは絶対に友達になってあげるからね!!)

というかなり強い願望を持つようになる。

 ちなみに、不登校になったヨハネ、であったが、中二病気質は引きこもりになったことでさらに磨きをかけることになる。学校という楔から解き放たれたヨハネが頼ろうとした場所、それはネットであった。誰もが買わないような中二病グッズをネットオークションやフリマアプリで格安に購入した、と思えば、そのグッズを使って動画投稿サイトに動画を投稿したり、生配信をしたりと、なぜか中二病ライブをエンジョイしていた。自分を堕天使だともっと思い込もうとしていたヨハネ、その堕天使?オーラを生配信の場でいかんなく発揮したことにより、ヨハネの生配信はネットのなかでもちょっと名の知られた存在となっていた。その生配信でのヨハネの決め台詞、

「ヨハネ、降臨!!」

は、ヨハネの代名詞、とも言われていた。

 むろん、このヨハネの生配信については、

「あげは、知っていた?あの津島(善子)さん、ネットで生配信、しているんだって!!」

と、シーナがあげはに言うと、あげは、

「えっ、津島(善子)さんが生配信しているの!!」

と、初めてそのことを聞いて驚いてしまうほど、あげはにとってみればかなりショッキングなことだった。

 で、これを知ったあげは、

「なら、その生配信、見ちゃお!!」

と、いうことで、そのヨハネの生配信をなんの偏見もなく見てしまう。ちなみに、ヨハネの生配信は中二病乙の生配信だったため、見る人は見るけど見ない人は見ない、という、ちょっと見る人に偏りが生まれてしまう、そんなものだった。であるが、あげはからすれば自分がずっと友達になりたいと思っていたヨハネが元気に自分の個性をいかんなく発揮している姿にとてもうれしかったらしく、

(津島(善子)さん、すごい、すごいよ!!まるでいきいきしている!!私、とても感動したよ!!)

と、ヨハネのいきいきとした姿にとても嬉しく感じていた。さらに、

(「ヨハネ、降臨!!」、私、なんか真似したくなっちゃった!!)

と、思うと、すぐに、

(私、決めた!!津島さん、いや、ヨハネちゃん、私、絶対に友達になってやる!!絶対に、絶対に、友達になるぞ!!)

と、絶対にヨハネと友達になることを心の中で決意したのだった(なお、ヨハネ、この生配信によりある程度のお金を稼ぐことができたため、ヨハネ、そのお金でさらなる中二病グッズを買うことになるのだが、結果、ヨハネの部屋は本当の意味で、魔の巣窟、になってしまった・・・)

 で、そう決めたあげは、まずはその仲間集め・・・ということで、

「ねっ、東子、シーナ、ヨハネちゃんの生配信、見ちゃお!!」

と、東子、シーナにしつこく言うと、シーナ、

「え~、なんで一緒に見ないといけないの!!」

と、嫌々ながら言うも、東子、

「シーナ、諦めなさい!!あげはがこう言うとどんなことがあっても地獄の底まで追いかけてくるだけだよ!!」

と、諦めの極致にいる感じで言ってしまう。

 と、いうわけで、あげたたち3人はヨハネの生配信を一緒に見るのだが、その生配信が終わったあと、シーナ、

「なんというか、ヨハネちゃん、あのとき(ヨハネが中学に通学していたとき)とまったく変わっていない!!いや、自分の個性に磨きをかけている感じ!!」

と、ヨハネの生配信のときのヨハネの姿に感心すると、東子も、

「たしかに!!まったくぶれていない!!私、これには感心してしまう・・・」

と、ヨハネが昔も今もまったくぶれていないことに感心してしまう。さらに、あげは、ヨハネの生配信のときの決め台詞、

「ヨハネ、降臨!!」

と言うと、2人そろって、

「「ヨハネ、降臨!!」」

と、ヨハネの真似事をしてしまう。それほど、透谷、シーナ、ともにヨハネ色に染まった、そんな感じがしていた。

 と、いうわけで、あげは、東子、シーナ、いつかは絶対にヨハネの友達になる、そんな3人共通の願いを持つようになっていった。

 なのだが、この後、ヨハネは不登校を貫き、たとえ中学に投稿しても保健室に数分いるだけ、といった生活をしていたため、あげはたちとヨハネが接する機会は中学のときはあまりなかった。さらに、ヨハネ、中学校での自分がしてきた中二病的な行動により、まわりから白い目で見られたくない、自分を軽蔑ほしくない、恥ずかしい思い出を封印したい、などといった理由で自分が住んでいる沼津市街地から少し離れた内浦、そこにある、(静真と同じく)由緒ある歴史をもつ浦の星に進学することになった。(むろん、ヨハネが通っていた中学校の生徒は浦の星にはいなかったこと、教師であるヨハネの母親からすれば由緒ある歴史をもつ浦の星にヨハネが進学することである程度母親の体裁を保つことができる、そうヨハネがふんでいたことも浦の星の進学を決めた理由だった)対して、あげはたちはヨハネとは違う静真に進学することになり、結果、あげはたちとヨハネはまったく違う道を進んでしまうことになった。これには、あげは、

(ああ、なんで、ヨハネちゃん、静真に通わなかったの~)

と、とても残念に思っていた。ただ、ヨハネにとってみれば浦の星に進学したことでまさか幼稚園で一緒に通っていた花丸がヨハネと同じ浦の星に進学していた、なんて予想外ではあったが・・・。

 だが、その予想外のことがのちにヨハネの運命を変えることになった。ヨハネは浦の星進学後、花丸、そして、その花丸が中学のときに友達になったルビィと一緒のクラス(というか1クラスしかなかったから当たり前なのだが・・・)になったことでヨハネの運命の歯車が回り始める。浦の星でも中二病的なことをしてしまったヨハネ、すぐに不登校になるも、花丸、ルビィ、そして、そのとき花丸とルビィが加入していた、Aqours、そのメンバーとなる、千歌、梨子、曜、この5人が中二病、いや、堕天使であるヨハネの存在自体を肯定したことによりヨハネは再び外の世界へと旅立つことができたのである。

 そのあとのヨハネの働きはみんなの知るところであるが、ヨハネは中二病、いや、堕天使である自分を肯定してくれた千歌たちAqoursメンバー9人とともに魔の都市東京で行われたラブライブ!決勝で優勝を果たすことになったのだが、それは別の話である。

 で、そのヨハネがいるAqoursがスクールアイドルとして大活躍をみせていたことに対し、静真に進学したあげは、

(あ~、Aqoursにヨハネちゃんがいる!!ヨハネちゃん、いきいきしているよ!!私、なんか嬉しいな~)

と、ヨハネの大活躍にうきうきしつつも、

(こんなヨハネちゃんが見れるなら、私、ヨハネちゃんの大ファンになっちゃう!!ヨハネちゃん、心の底から応援しているからね!!)

と、あげは、ヨハネのことを心の底から応援することを決めた。

 その後、Aqoursは大進撃を続けることになるのだが、12月下旬、そのAqoursがいる浦の星女学院とあげはたちがいる静真高校の統合がついに正式発表された。これには、あげは、ヨハネたち浦の星の生徒には申し訳ないと感じつつもヨハネとまた一緒に学校に行くことができることを心の底から喜んでいた。

 

 が、2月初め、そんなあげはに青天の霹靂が起きる。いきなり、木松悪斗という(部活動に参加している生徒の保護者たちの連合体の)部活動保護者会の会長という気に食わない親父(あげは談)がいきなり静真高校と浦の星女学院の統合に反対しているという情報が学校中を駆け巡った。この情報を聞いたあげは、

(なんで私の学校(静真高校)と、ヨハネちゃんの高校(浦の星女学院)の統合があの気に食わない親父(木松悪斗)によって破談しちゃうのよ!!キー!!)

と、ヒステリーを起こすような怒りがふつふつと湧いてしまう。だが、だからといって自分だけの力ではなにもできないので、これにはさすがのあげはもお手上げだった。

 が、そんな状況に立ち向かう少女がいた。それが静真高校生徒会長の月だった。その月との運命・・・というのが、月とナギが静真高校と浦の星女学院の統合実現に向けた署名活動をしていて、そのためにあげはのクラスを訪れたときに起きた。月とナギがあげはのクラスを訪れる直前、あげは、

(どうすればあの親父(木松悪斗)にぎゃふんといわせることができるの?)

と、木松悪斗になんとかぎゃふんといわせたい、そんな気分であった。これには、東子、

「ちょっと眉間のところにしわができているよ、あげは」

と、眉間にしわができていることをあげはに言うと、あげは、

「ううう」

と、うなだれるだけだった。

 そんなときだった。

「ねっ、ちょっといいかな?」

というどこか聞いたことがあるような声が突然教室にこだました。これにあげはの隣にいたシーナが気づき、

「あれっ、あの人って月生徒会長じゃない!!」

と、驚きの声をあげてしまう。まさか、静真の生徒たちからの支持率も高く(当時)、みんなから慕われている、そして、雲の上の存在と思っていた月が副会長のナギを連れて自分たちのクラスに来るなんて、と、シーナからすれば驚くしかなかった。が、あげはからすれば、

(なんか騒ぎすぎるけど・・・、あっ、月生徒会長が来ていたんだ・・・)

と、ただたんに生徒会長である月が自分のクラスに来ている、そんな感じでいた。

 が、月の次の言葉を聞いたあげはははっとした。その月の言葉とは・・・。

「実は、みんなにお願いがあるんだ。今、部活動報告会の木松悪斗理事が静真(高校)と浦の星(女学院)の統合に反対していて統合が白紙になろうとしているんだ。だから、僕たちは立ち上がったんだ。僕たちの大事な友達である浦の星の生徒たちのために統合実現に向けた署名活動をして、自分たち生徒の意見を理事たちにぶつけようと思っているんだ。だからね、みんな、静真(高校)と浦の星(女学院)の統合のためにこの請願書に署名してくれ!!)

 この月の訴えにみんな署名・・・してくれなかった。「署名したところでなんか意味あるのか」と署名に懐疑的な生徒、親が「木松悪斗という静真において絶対的な王様の逆鱗に触れたくない」といった理由で統合実現に反対しているために署名をしたくない生徒などいたため、誰もが月がお願いしている請願書への署名を拒否していた。

 これに月はここにいる生徒たちに向かって浦の星の生徒たちのことを一生懸命訴えかけるも誰一人署名してくれない。これには、あげは、

(なんで誰も署名してくれないの!!ヨハネちゃんをはじめとする浦の星の生徒たちが困っているのよ!!私たちにとってとても大切な友達なんだよ、浦の星のみんなは!!)

と、まわりのクラスメイトたちに対して怒りがこみあげてきた。

 そして、あげは、ついに堪忍袋の緒が切れた!!

(う~、じれったい!!もう我慢できない!!私が口火を切ってやる!!)

そう思った瞬間、あげは、ついに行動を始めた。

「私は月生徒会長の策に賛成です!!私、(その署名に)参加します!!」

この瞬間、あげはの運命の歯車は回り始めた。あげはは自分にとってとても大事な?友達であるヨハネのことを言って、最後に、

「私にとって大事な大事なお友達、なんです!!その子(ヨハネ)を困らせることなんてできません!!その子のためにも絶対に浦の星(女学院)との統合を実現させたいのです!!」

と、みんなの前で大声で訴えたのだった。

 このあげはの訴えはクラスの雰囲気をがらりと変えることになった。また、あげはの隣にいた、それでいて、ことのなりゆきを見ていた東子とシーナが、

(あのあげはがついに動いた!!私だってあのヨハネちゃんが困ることをあの親父(木松悪斗)がしようとしているなんて許さないんだから!!だから、私もあげはに続く!!)(シーナ)

(あげはの怒り、私もよ~くわかるよ!!だって、私、ヨハネちゃん以外にも浦の星に進学していった(私にとって)仲が良かった友達や先輩がいっぱいいるのだから!!いつもはおとなしい私だって私の大事な友達や先輩を困らせることをするなんて絶対に許せない!!)(東子)

と、木松悪斗がしていること、統合反対に反抗の意思を示そうとしていた。そのため、

「はい、私もあげはの意見に賛成です!!」(シーナ)

「これは私個人の意見ですが、あげはのいうことに私も賛成します!!」(東子)

と、シーナ、東子、とも、あげはの意見に賛成した。

 さらに、東子はクラスメイトに向かってこう言った。

「この私、東町東子、それに、稲荷あげは、浜方シーナ、は、月生徒会長の「統合実現」のための請願書に署名します!!」

 この東子の決意を聞いて、教室にいるクラスメイトたちはざわつき始めた。

「あの東子がついに動いたぞ!!」

「クラスの学級委員である東子がついに動いた!!」

そう、クラスメイトたち、あの東子が動き始めた、そのことにびっくりして騒ぎ始めたのだ。実は東子、根は真面目であり、行動力もあり、それでいて、誰に対しても温厚な性格だった。そのため、東子、このクラスの学級委員を務めていた。その温厚な性格の東子がついに自分の意思で動いたのである。これにはさすがのクラスメイトたちもびっくりするとともに、

「でも、たしかに、あげはや東子、シーナの言う通りだね」

「たしかに、私にも浦の星に進学した大事な友達がいるもんね。そんな友達が困ることをするなんて許さない!!」

と、木松悪斗の悪事を許さない、そんな思いにクラスメイトたちは傾いていった。

これにより、教室にいたクラスメイトたちのほとんどが統合実現に向けた請願書に署名することになったのだ。

 このあと、月はクラスメイトたちが署名してくれたきっかけをつくったあげはにお礼を言うと、あげはも、「自分には、中学時代、中二病の子(ヨハネ)と一緒に仲良くなりたかったが、中学のときはそれができず、中学を卒業してから別々の高校に進学したためにそれが心残りであった、それが今度の統合で解消できると思い、月に賛同した」ことを月に伝えたのだった。

 が、月、あげはの言ったことを聞いて、Aqoursにその子と似たような子がいることを思い出し、その子の名前をあげはに聞くと、あげは、その子の名前が、「津島善子」、つまり、ヨハネ、であることを月に伝えると、これに月が反応、自分もそのヨハネがいるAqoursに月の大親友である曜がいることをあげはに伝えると、2人にはAqoursという同じ共通点がある、そのことに、月、あげは、ともに興奮したのだった。



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Moon Cradle 第7章前編 第10話

 こうして、月、静真の生徒のほとんどから統合実現の署名をもらったことにより静真高校と浦の星女学院の統合は決定した・・・のもの、木松悪斗の統合反対の表向きの理由、「浦の星の生徒が静真の部活動に参加すると悪影響がでる」、これが静真の保護者たちに浸透してしまい、それが「保護者の声」になってしまったため、その声が払しょくされるまでのあいだ、浦の星の生徒たちは山の中の分校、浦の星分校に通うことになったのだ。これには、あげは、

(たしかに静真高校と浦の星女学院は統合したけど、それって形だけじゃない!!実質的には統合前と同じじゃない!!)

と、静真高校と浦の星女学院の統合前とあまり変わっていないことに怒りを感じていた。

 しかし、あげはが浦の星分校ができることを知ってから数日後、驚きの情報があげはのもとに舞い込む。その日は静真で部活動報告会が行われるために学校自体お休みだった。なので、あげは、自宅でのんびりと過ごしていた。なお、あげはは帰宅部であり、静真のどの部活にも所属していなかった。部活に入っていないから、(部活に参加している生徒の保護者たちに強い影響力を持つ)木松悪斗のことなんて関係ない、木松悪斗のしがらみなんて気にしなくてもいい、だからこそ、あげはは統合実現に向けた署名の場において強気に発言することができたのだ。

 と、いいつつ、そんな休日をだらだらと過ごしていたあげは、だったが、突然、自分のスマホから、

ジリリ ジリリ

という呼び鈴が鳴り出した。これには、あげは、

(なんだよ、ゆっくりしていたのに!!)

と、少し怒りながら電話にでる。すると、

「あげは、大変だよ!!」

と、スマホのスピーカーからシーナの声が聞こえてきた。これには、あげは、

「なにが大変なの?」

と、少し怒り口調で言うと、シーナ、慌てた様子で、

「今日の報告会でAqoursが緊急参戦だって!!」

と、言ってきたのだ。

 が、このシーナの言葉にあげは、突然、

「えっ、Aqoursが緊急参戦!!」

と、驚いてしまう。シーナの話によりと、来年度に静真高校と浦の星女学院が統合するから特別ゲストとしてAqoursの緊急参戦が決まった、とのことだった。が、実際は、月、静真本校と浦の星分校の統合を強行したいがゆえに、「力には力を、(全国大会で優勝するくらいの)実力には(ラブライブ!で優勝したほどの)実力を」、といった具合にごり押しで、Aqours、というか、新生Aqours、を強行出場させたのが真実なのだが・・・。

 で、(新生)Aqoursの緊急参戦に驚いたあげは、すぐに制服に着替え、(新生)Aqoursが参戦する部活動報告会の会場となっている講堂へと向かった。実は、なにをかくそう、あげは、Aqoursの大ファンであった。きっかけはあげはがAqoursの「夢で夜空を照らしたい」のPVを見たときだった。そのPVにヨハネがいることにあげはが気づき、あげは、Aqoursのライブを見たい、そう思っていたのだ。そして、その機会はすぐに訪れる。なんと、沼津の夏祭りにAqoursの参加が決定したのだ。なので、あげは、Aqoursのライブ見たさに夏祭りのステージ最前列を長い間待ってキープしたのだった。そして、その夏祭りのステージでAqoursは「未熟Dreamer」が披露したのだが、これを見た、あげは、

「うわ~、なんてかっこいいんだ!!特にヨハネちゃん、和の服装と相まってかっこよかったよ・・・」

と、Aqoursのライブに感動を覚えたのだった。こうして、あげは、Aqoursのとりこ・・・というか、ヨハネのとりこになったのだった。

 と、いうわけで、夏季大会静岡県予選に東海予選、冬季大会の静岡県予選、東海予選、決勝に、あげは、必ず参戦してしまう。いや、それどころか、Saint AqoursSnowの函館クリスマスイベントにも参戦するほどの強者だった。というか、ヨハネを追いかけていた・・・感じだった・・・。そのAqoursが自分の学校である静真にライブをしに来る、それを聞いたのであれば、Aqoursの大ファンであるあげはが行かないはずはなかった。

 そして、学校に到着したあげはは校門のところで東子と待ち合わせそう、一緒に講堂のシーナのいる席へと移動した。シーナ、どうやらあげはのためにわざわざ席をとってくれていたみたいだった。シーナ、曰く、

「だって、あげはがAqours・・・というか、ヨハネ命、だからね!!」

とのこと。これには、あげは、席をとっておいてくれたシーナに感謝だった。

 そのあげは、Aqoursの出番を待つことに。キャンプ同好会、軽音楽同好会、とプログラムが次々に消化されるごとにあげはも緊張してしまう。さらに、女子サッカー部、弓道部と静真においてビッグともいえる部活が登場するとあげはのまわりにいる静真の生徒や保護者たちも興奮していく。これには、あげはも、

(はやくAqoursの出番、はじまらないかな・・・)

と、緊張の度合いが高まっていく。それほど、あげはとそのまわりにいる静真の生徒・保護者たちのAqoursに対する?期待は高いものだった。

 そして、ついに(新生)Aqoursの出番となった。が、(新生)Aqoursのパフォーマンスは、とてもぎこちないもの、あまりにうまくないもの、となっていた。これにはラブライブ!に優勝できるほどの実力をもつAqoursに期待していた静真の生徒・保護者たちからの、思っていたものとは期待外れ、といった声が会場中から聞こえてくるようになってしまった。

 ただ、Aqoursのことをよく知っている「Aqoursの大ファン」であったあげはは、なんで(新生)Aqoursのパフォーマンスがぎこちなかったのか、その理由がすぐにわかった。その理由とは・・・、「今、ここにいるAqoursのメンバーが少ない、いつも9人いるのに、今は6人しかいない。そう、鞠莉、ダイヤ、果南、3年生3人がいない。だからこそ、それで緊張している」だと。

 しかし、どんどん新生Aqoursのパフォーマンスが悪くなるごとに会場中から、期待外れ、という声が大きくなってしまった。そsちえ、新生Aqoursのメンバーの1人(ルビィ)が大きく転んだことにより、それが、Aqoursの酷評、へと生まれ変わり、木松悪斗の広めた考え、「浦の星の生徒が静真の部活動にはいると静真の部活動に悪影響がでる」、それを静真の生徒・保護者たちに今以上に知らしめる結果へとつながってしまった。

 が、そんな新生Aqoursの姿を見ても幻滅しなかった生徒が1人いた。むろん、あげはだった。あげははこのとき、

(私、絶対に信じる、きっと、あの、ラブライブ!優勝のときにみせたパフォーマンスはよみがえるって!!彼女たち、Aqoursの実力なら!!)

と、Aqoursがよみがえることを信じつつ、

(そして、それを信じて、私、今から行動する!!昔のすごいAqoursが戻ってきたときのための、みんなに見せつける、そのためのステージ、それをつくるって!!)

と、よみがえった新生Aqoursのステージを自分の手でつくることを決意した。

 

 だが、新生Aqoursの部活動報告会のライブ失敗以降、学校中は新生Aqoursや浦の星に対する風当たりが強くなったため、気の強いあげはでさえすぐに行動を起こすことはとても難しかった。あげはが、

「私、ヨハネちゃんのために、Aqoursのために行動する!!」

と、言ったとしても、まわりにいる東子、シーナから、

「今は表立って動かないほうがいいよ。私だって、Aqoursのこと、ヨハネちゃんのこと、応援したいよ。でもね、今、Aqoursのために行動していることがバレたら周りから叩かれること間違いなしだよ」(東子)

「私もAqoursのため、ヨハネちゃんのために行動したい。でも、今は耐えたほうがいい。だって、今、表立って動けばきっと大変なことになる。だからこそ、今は陰に忍んで動いたほうがいい」(シーナ)

と、落ち着くように諭されてしまう。これを言われると気の強いあげはも我慢するしかなかった。

 が、それでも、あげは、東子、シーナはヨハネのため、Aqoursのため、浦の星の生徒のために裏でこっそり動いていた。やっていたこと、それは・・・、

「ねぇ、新生Aqours復活のために私たちの仲間にならない・・・」(あげは)

そう、新生Aqours復活のための仲間集めだった。もし、新生Aqoursが復活したあかつきにはもう一度ライブをしてくれるはず、そのためのステージをつくる、そのための仲間を探していたのだった。むろん、静真本校と浦の星分校の統合に反対する声が強い現状だと新生Aqoursのためのステージを作るための仲間を集めるのはとても困難であると予想されたが、それでもAqours復活を信じている、浦の星の生徒のために統合を実現させてやりたい、そう思う生徒も少なからずいた。その生徒たちをあげはたちは必死になって探し、見つけては仲間にしていくことを3人とも心の中に決めていた。

 

 そんな仲間集めをしているあげはたち。しかし、最初のころは・・・。

「私、あのとき、Aqoursのみんなは不調だったんだよ!!だから、本気さえだせば・・・」

と、小声で新生Aqours擁護の発言をしている2年の生徒。だが、その隣にいた生徒からは、

「しっ、あまり大きな声をだすとみんなから嫌われるよ!!」

と、新生Aqours用語の発言をした2年の生徒に注意をする。が、そのAqours擁護の発言をした2年の生徒の声が聞こえたのか、

「ねっ、ちょっと話があるのだけど・・・」

と、突然、あげはがこの2人の間に割ってはいると、そのまま、

「たしかAqoursの話をしていたみたいだけど・・・」

と、前置きしつつ、あげは、新生Aqours用語の発言をした2年の生徒に向かってこんなお願いをした。

「そんなAqoursを信じているあなたにお願い!!私と一緒にAqoursを応援して!!」

このあげはの突然のお願いにその2年の生徒はただ、

「え・・・」

と、きょとんとなってしまった。が、その2年と会話していた生徒はすぐに、

「ねっ、そんなこと言っていたら、私たち、みんなから嫌われてしまうよ!!それどころか、私たちの将来すら危なくなるよ!!はやく、行こう!!」

と、言っては、新生Aqours擁護の発言をした2年の生徒を連れてどっかに行ってしまった。これには、あげは、ただ、

「あはは・・・」

と、苦笑いするしかなかった。

 こんな風に予想されていたことだが困難を極めたあげはたちの仲間集めだったが、それでも、Aqours擁護の声が少しでも聞こえてくるとあげはたちはすぐに、

「ねっ、お願いなんだけど、私と一緒にAqoursを応援して!!」

と、お願いしてまわっていた。

 

 そんな働きかけのおかげか、Aqoursを敵視する木松悪斗の影響力が強く、Aqoursのことを話すのが禁句という今の静真の状態のなかであってもAqoursを応援しようとしている静真の生徒たちのあいだであげはたちのことが話題となっていた。そのためか、

「ねぇ、あげはちゃんたち、Aqoursのために頑張ろうとしているよね。私たち、このままでいいのかな?」

と、ある生徒Aが言うと、その生徒と話していた生徒Bも、

「そんなわけないじゃん!!私たちだってAqoursのことを応援しているんだよ!!」

と、答える。その生徒Bの発言を受けてか、生徒A,

「それだったら、私たちだってAqoursのために頑張ってやるんだから!!」

と、元気よく答えてくれた。

 と、いった具合に、こんなやり取りがAqoursを応援している静真の生徒たちのあいだで交わされるようになった。そのやり取りの場所は学校の中・・・では木松悪斗の影響力が強いためにAqoursの話をすればすぐに叩かれる今の静真の現状を考えるとそこでするのは無理なので、放課後の学校外、もしくは、SNSの中で行わることが多かった。

 そんなやり取りがAqoursを応援している静真の生徒たちのあいだで日がたつごとに活発化するようになり、そのためか、

「ねっ、あげはちゃん、お願いがあるんだけど・・・あげはちゃんの仲間に加えてくれない!!」

と、あげはのところに行っては、あげはの仲間になりたい、とあげはにお願いにくる生徒が続出した。これには、あげは、

(Aqoursを応援してくれる人はみな私たちの仲間だよ!!)

と、思っていたのか、

「うん、いいよ!!私たちと一緒にAqoursを応援しよう!!」

と、来るもの拒まず、のスタンスで自分の仲間に引き入れることにした。

 さらには・・・。

「ねぇ、あげはちゃん、私、最初は断ってしまったけど、私だって、Aqoursを応援したい、と思っているよ。こんな私だけど、仲間に入れてくれるかな・・・」

と、あげはの前にあの生徒、そう、あのとき、Aqours擁護の発言をしていた2年の生徒が来ていたのだ。そんな生徒に対し、あげは、

「そんなの関係ないよ!!あなただってAqoursを応援しているんだよね!!その気持ちだけで十分だよ!!だからね、心配しないで!!」

と、元気よく言うと、その2年の生徒は、

「あげはちゃん・・・」

と、涙を流しながら言うと、あげは、その生徒に対して元気よくこう言った。

「Aqours静真応援団にようこそ!!」



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Moon Cradle 第7章前編 第11話

 こうして、あげはたちは陰に隠れていたAqoursを応援している生徒たちを仲間にしつつ、「静真Aqours応援団」(あげは命名)として静かに勢力を拡大していった。

 そんななか、あげはたちに嬉しい一報が届く。それは静真の学内SNSのなかで発表された。その学内SNSの情報を見たシーナ、突然、

「ねっ、あげは、これ見て!!」

と、隣にいたあげはに学内SNSが表示されている自分のスマホを見せると、あげは、

「えっ、えっ!!」

と、驚いて声をあげてしまう。あまりの驚きに開いた口がふさがらない。そんなあげはに対し、これまた隣にいた東子があげはの代わりにその学内SNSに書かれていた情報を読み上げる。

「え~と、「明日の夜、復活を果たしたAqoursがイタリア・ローマのスペイン広場でライブを行います。生徒会はそのライブをこの学内SNSを通じて生配信いたします。ぜひ見てください」

そう、ナギたち静真高校生徒会は月からAqoursのスペイン広場でライブを行うこと、そのライブの生配信を世界中に向けて行うことをメールで連絡してきたことを受けて学内SNSを通じてその生配信を配信することに決めたのだ。で、シーナのスマホに送られてきた情報とはそれを伝えるものだった。

 この東子の言葉から数秒後、

「うわっ、なんとかなった・・・」

と、開いた口をなんとはふさぐことに成功したあげは、ここでようやく、

「ヨハネちゃんたち、Aqours、ついに復活したんだね!!これでもう大丈夫!!」

と、喜びの声をあげた。このあげはの言動に、シーナ、

「本当に復活したかはわからないけどね・・・」

と、ちょっと心配そうに言うと、あげは、

「シーナ、ストレス溜っているなら外に行ってレールガン(超電磁砲)をぶっ飛ばしてものいいんだよ!!」

と、わけがわからないことを言うと、シーナ、

「いや、あげは、そのメタネタはいいから、話を先に進めて」

と、あげはに冷静なツッコミをぶちかまっしてしまった。

 このシーナのツッコミを受けてか、東子、あげはに対し、これまた冷静に分析していた。

「でも、生配信するぐらいだから、Aqoursは完全復活したって言ってもいいと思うよ!!」

この東子の言葉に、あげは、

(ついに、ついに、ついに、ヨハネちゃんたちが完全復活したーーーー!!なら、私たちもそれ相応のお祝いを・・・)

と、思ったのか、突然、とんでもないことを言いだした!!

「そらなら、静真Aqours応援団、全員でライブビューイング・・・」

 が、東子、これまた冷静だった。東子、このあげはの言葉を聞き始めてすぐに、

(た、たしか、その生配信があるのって真夜中だよね!!その時間にみんなが集まるのはちょっとやばくないかな!!)

と、思ったのか、あげはの言葉を遮るかたちであげはに冷静なツッコミをぶちかます。

「それはダメ!!このライブをおこなうのって真夜中だよね!!そんな時間にライブビューイングを行うなんて、学生の私たちからしたらいけないことでしょ!!」

そうである。あげはたちはまだ高1、つまり、高校生である。その高校生が真夜中に集まってライブビューイングなんてもってのほかである。でも、ナギたち静真高校生徒会や浦の星の生徒たちはみんな集まって、Aqoursのスペイン広場のライブ、そのライブビューイングを行ったではないか・・・というツッコミはおいといてください・・・。で、これには、あげは、

「えっ、ダメなの・・・」

と、応援団全員でライブビューイングを行うことができず、がっかりしてしまった。

 と、いうわけで、あげは考案の応援団全員でのライブビューイングは諸事情・・・というよりまだ高校生だからといった理由でできなくなったが、シーナ、このとき、残念そうな表情をみせるあげはを見て、

(でも、あげはの気持ち、よくわかる!!たしかにみんなと集まることができれば楽しさ倍増だもんね!!でも、私たちはまだ高校生。真夜中に集まるのはダメ!!なら、それに代わる方法を提案すればいい!!それとは・・・)

と思ってしまう。そのためか、シーナ、あげはにあることを言いだした。

「ねっ、あげは、みんなが集まるのがダメなら、みんなと一緒に楽しむなんてどうかな」

このシーナの言葉に、あげは、

(えっ、みんなと楽しむ!?それってなに?)

と、心の中で疑問に思ったのか、あげは、シーナに対し、

「えっ、集まらずにみんなと一緒に楽しむ?それってどうすればいいの?」

と、いきなり尋ねてしまう。

 そのあげはの言葉を聞いて、シーナ、自分があげはのために考え出したアイデアを発表した。

「え~とね~、SNSを使うの。自分のパソコンとかでAqoursのライブを見て、SNSで(リアルタイムで)コメントしていくの!!そうしたら、集まらなくてもみんな一緒に楽しむことができるでしょ!!え~と、これって、つまり、リモートライブビューイング?」

今(2020年春)流行りのリモートを使ったもの?、リモートライブビューイング?、ともいえるシーナの案、これには、あげは、

(リモートライブビューイング、なんていい響きだ!!それにこの方法だとたとえ離れていても応援団のみんなと一緒に楽しむことができる!!それ、いただき!!)

と、シーナの提案に乗り気なのか、

「それ、いいね!!それに決まり!!」

と、勝手にシーナの案を実行することを決めた。

 

 その後、あげははそのシーナの案に沿って応援団の団員(全員Aqoursを応援している静真の生徒!!)全員に対し、SNSアプリのグループチャットを通して、Aqoursのスペイン広場でのライブ、その生配信をSNSアプリのグループチャットを通じてみんなで楽しむことを提案、すると、

「OK!!」「とても楽しみ!!」「みんな一緒に楽しもう!!」

と、応援団団員全員から「OK!!」のコメントが届く。

 これにより、あげはたち、静真Aqours応援団、はAqoursのスペイン広場でのライブ、その生配信をSNSアプリのグループチャットを通じてみんな一緒に楽しむことになったのだ。(それに対して、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たちは真夜中にもかかわらずみんな集まって一緒にライブビューイングを楽しんだじゃないか、それはどうなのか・・・なんてツッコまないでください・・・)

 

 そして、リモートライブビューイングを行うことを決めた日の翌日、深夜、ついにAqoursのスペイン広場でのライブ、その生配信がついに始まろうとしていた。

「うぅ、元気なヨハネちゃんが久しぶりに見られるよ~!!」

と、うきうきしているあげは。このとき、あげは、

(この前の静真の部活動報告会でのライブは、ヨハネちゃんを含めて、新生Aqoursメンバー全員、元気がなかったよね!!そう考えると、元気に踊っているヨハネちゃんを見るのは久しぶりな感じがする!!だからこそ、今日のライブ、ラブライブ!決勝みたいにヨハネちゃんたちが元気に踊っている姿、ちゃんと目に焼き付かないとね!!)

と、そう思ってしまう。まるで今からライブを楽しみにまっている、そんなAqours大ファンの姿がそこにはあった。

 だが、その思いはあげはだけではなかった。SNSアプリのグループチャットには、

(シーナ)「本当にヨハネちゃんが復活してくれたら嬉しいよ!!」

(東子)「Aqours全員のライブ、本当に楽しみです!!」

と、シーナと東子が今から行われるライブを楽しみに待っている、そんなコメントがあったり、

「Aqours(9人)全員のライブがまた見られるなんて、とても嬉しい!!」

「ラブライブ!決勝でのライブがAqours9人での最後のライブ、だと思っていたけど、まさか、また、Aqours9人でのライブが見られるなんて・・・。ああ、現地(スペイン広場)に行きたかったな~」

と、応援団団員全員、このライブ、いまかいまかと楽しみに待っている、そんなコメントが続々と出現していった。

 

 そして、ついにAqoursのスペイン広場でのライブが始まった。すると、突然、チャットが騒ぎだしてしまう。

「えっ、これが本当のAqoursのライブなの!!信じられない・・・」

「あのとき(部活動報告会でのライブ)のときよりすごい・・・。いや、私のなかでは、べスト・オブ・ベスト、なライブだよ!!」

チャットにはAqoursの本気のライブのすごさ、それに驚く、いや、感動している旨の言葉たちが次々へと生まれていった。このチャットを見た、あげは、

(みんな、Aqoursの本気のライブを久しぶりに見たんだね!!ずっと現地でAqoursのライブを見てきた私がいうのもなんだけど、Aqoursはいつもライブで本気をだしているんだよ。だから、Aqoursはいつも迫力あるライブを見せてくれる。みんな(団員たち)は部活動報告会でのライブを比較して今のAqoursのライブのすごさに驚いているのかもしれない。たしかに部活動報告会でのライブはなにもかもが悪かった。でも、これこそ、本当のAqours、なんだよ!!だからね、みんな、この本気(マジ)のAqoursのライブ、しっかり心に深く刻み込んでね!!)

と、チャットにあらわれてくる言葉たちをみてそう想っていた。そう、Aqoursはいつも本気でライブに臨んでいたのである。その本気のライブをずっと現地で見ていたあげはだからこそ言える想いだった。対して、団員たちはネットを通じてAqoursのライブを見ていたのかもしれない。そのためか、初めて生で見た部活動報告会での新生Aqoursのライブは本気とは程遠いライブを見てしまい、団員たちはAqoursのライブに向けた本気さを過小評価していたのかもしれない。が、今回のスペイン広場でのライブは本来のAqours9人の本当に本気(マジ)のライブであった。さらに、千歌たち新生Aqours1・2年6人はこのイタリアの旅を通じてAqoursがこれから進むべき道を見つけようとした、だけでなく、ルビィが月によって新しく生まれ変わったなど、メンバーそれぞれがイタリアに来る前より格段にスケールアップしていた。それがこのスペイン広場でのライブではプラスに働いた。結果、過去のライブとは一線を画すライブが展開されることになった。そのためか、団員隊からすれば、これまで自分たちが見てきたAqoursのライブの中で一番ともいえるライブ、と認識されたのかもしれない。

 が、それはあげはにもいえることだった。ライブが進むにつれて、あげは、

(う~、なんか心が落ち着かないよ~)

と、自分の心がざわついている、そんな鼓動が生まれているのを感じていた。そして、その鼓動がどんどん大きくなっていく、そんな感じをにもなっていた。さらには、あげは、それが言葉になってあらわれてしまう。

「あっ、ヨハネちゃん、楽しそうに踊っている!!う~、わくわくがとまらないよ~!!」

そのあげはが言ったその言葉はついにチャットにもあらわれてしまう。

(あげは)「ヨハネちゃん、ヨハネちゃん、すごい、すごいよ~!!心のわくわくがとまらないよ~!!」

チャットに、あげは、そんなコメントを記すると、シーナ、東子もコメントで反応してきた。

(シーナ)「あげは、あげは、大丈夫?大丈夫・・・ならいいんだけど・・・」

(東子)「でも、私もあげはと同じだよ!!自分のわくわくがとまらないよ~!!」

(シーナ)「えっ、東子も!!私もこのAqoursのライブを見てわくわくがとまらないよ~!!私がもつ、その幻想をぶち壊す、いや、スクールアイドルの概念すらぶち壊す、そんなライブだよ~!!」

と、2人ともスペイン広場でのAqoursのライブのすごさからか興奮状態に陥っていた。

 

 そして、ついにAqoursのスペイン広場でのライブが終わった。その瞬間、

「私、Aqoursの大ファンになっちゃった!!」

「いや、昔からAqoursの大ファンだろ!!でも、その気持ち、わかる!!だって、これまで私たちが気づいていなかった、「本気(マジ)のAqours」、そんなものを見せられたら、誰だって、Aqoursの大ファン、になっちゃうよ!!」

と、チャットではAqoursのスペイン広場での本気(マジ)のライブに歓喜の嵐が巻き起こっていた。

 むろん、東子、シーナも、チャットに、

(東子)「Aqoursはやっぱり日本一のスクールアイドルだよ!!Aqoursのライブ、最高!!う~、ほかの人にも見せたいよ~!!」

(シーナ)「東子、キャラが崩壊しているよ!!でも、私も、(今回のAqoursのライブ、)そのくらい、いや、それ以上のライブだった思うよ!!特に、ヨハネちゃん、まじ天使、ですよ!!いや、堕天使・・・だよね・・・多分・・・」

と喜びの言葉を残すほど、いや、チャットの中から聞こえるくらいの声をあげる、それくらい喜んでいた。

 で、とうのあげはというと・・・、

(すごい!!すごい!!すごいよ~!!これこそ、Aqoursのライブ!!これこそ、私が知っている、Aqoursのライブ!!いや、ちがう、それ以上のライブだよ!!特にヨハネちゃん!!かっこよかった~!!すごかったよ~!!)

と、だれにも止めることができないくらい興奮していた。そのあげは、その気持ちはチャットのコメントでもあらわれていたらしく、

(あげは)「Aqoursのライブ、とてもよかった~!!最高によかったよ!!まじ、最高!!特にヨハネちゃん!!かっこよすぎ!!本当にすごかったよ~!!」

と、Aqoursやヨハネのことをチャットでべた褒めしていた。

 こんな興奮状態にはいっていたあげは、そのいきおいのまま、ついにはあることを思いついてしまう。

(私、もう、Aqoursのライブを見に行く、そんな生ぬるいものなんて、もういや!!これからは、Aqoursのために頑張る!!Aqoursのために自分が持てるものすべてをAqoursに注ぎ込みたい!!)

そう、もうAqoursのライブを見に行く、それだけに飽き足らず、Aqoursのために頑張りたい、そんな気持ちがあげはのなかにふつふつと湧き上がっていたのだ。そのあげは、さらに、

(そして、ヨハネちゃんと一緒に頑張りたい!!ヨハネちゃんと友達になって、ヨハネちゃんがいるAqoursの役に立ちたい!!)

と、自分がもとからもっていた願望、ヨハネと友達になりたい、それと、今湧き上がっていた気持ち、Aqoursのためになりたい、それらがついに合体、とてつもない願望へと生まれ変わてしまう。いや、ヨハネ愛、Aqours愛を語り始めてしまった。

 そして、そのあげはのとてつもない願望はついに言葉としてあらわれてしまった。

「私、Aqoursを応援するだけなんてもういや!!(実際に)Aqoursの役に立ちたい!!だって、私の知っているヨハネちゃんがあんなに楽しくパフォーマンスしているもん!!中学のとき、私、ヨハネちゃんと仲良くなりたい、と、思っていたけど、いつのまにか、ヨハネちゃん、学校に来なくなっちゃったもん!!私、あのときからずっと思っていた、ヨハネちゃんと仲良くなりたい、って!!だから、私、決めた、ヨハネちゃんと仲良くなりたい!!そのためにも、ヨハンちゃんがいるAqoursの役に立ちたい!!」

この言葉を発したあと、あげははチャットにこんなコメントを記した。

(あげは)「私、このライブを見て決めた!!もう、Aqoursを応援する、そんな立ち位置なんてもういや!!私、これからはAqoursの役に立ちたい!!Aqoursのライブを支える、そんな存在になりたい!!」

 このあげはのコメントにチャットでは次々とこのようなコメントが載っていくことになる。

「あげは、私もそう思うよ!!私だってAqoursの役に立ちたい!!」

「そうだよ!!私たちは仲間だよ!!みんなでAqoursの役に立ちたいよ!!」

このコメントたちを見た、あげは、

(みんな、私と同じ想いなんだ・・・。みんな一緒にAqoursの役に立ちたい・・・、そんな同じ想いを、みんな、持っているんだ・・・)

と、団員みんな、自分と同じ想いであることを実感する。

 そして、最後に東子、シーナからこんなコメントがきた。

(東子)「あげは、私もあげはと同じ想いだよ。いや、ここにいるみんな一緒の想いだよ!!こうなったらやることは一つだけだよ!!この想いを、みんなの想いを、Aqoursに伝えないとね!!)

(シーナ)「そのAqoursに一番近い人って・・・、たしか・・・、ヨハネちゃんと同じくAqoursに所属している、曜ちゃん・・・とは大親友って言っていた、月生徒会長・・・だよね・・・。なら、その月生徒会長に直談判したらどうかな?」

この東子とシーナの後押しを受けた、あげは、ついにあることを決意する。それはチャットのコメント、いや、決意表明、に言葉としてあらわれていた。

(あげは)「わかった!!みんなの想い、この私が受け取ったよ!!私、明日、あたってみる!!生徒会に行って、月生徒会長に、みんなの想い、届けてくるからね!!」

 

 その翌日・・・、

「ふわ・・・、夜は眠れなかったな・・・」

と、静真高校生徒会副会長・・・、もとい、生徒会長代理のナギが昨日のスペイン広場のAqoursのライブ、その生配信を見て興奮し過ぎたためか、夜、あまり眠れなかったらしく、大きなあくびをしながら学校に向かって歩いているとき、突然、

「ナギ、副会長、お話があります!!」

と、1人の少女がそんなナギに声をかけてきた。その声に気づきその声がする方向に向くナギ。そんなとき、その少女、

「ナギ、副会長、お願いがあります!!Aqours(のヨハネちゃん)のお手伝いをさせてください!!」

という、決意表明、をしてきたのだ。これに、ナギ、もう一度その少女に対して言ってもらえるようお願いすると、まえと同じ決意表明が返ってくる。これには、ナギ、

(Aqoursのお手伝い!!これって、私たち生徒会にとって大きな一歩になるかもしれない!!だって、月生徒会長がAqoursと一緒にイタリアに行ってから私たち生徒会にとって同士ともいえる存在はいなかった。でも、その同士がついに見つかった!!私たちの仲間が増える、そんな気がする!!)

と、心の中では喜びつつも冷静にその少女に向かってこう言った。

「Aqoursのお手伝いだね!!うん、わかった!!私が月生徒会長にお願いするね!!」

このナギの言葉にその少女はお礼を言ったのだが、ナギ、このとき、

(でも、私たちの仲間が増える、嬉しいな~!!って、ひとつ大事なことを聞き忘れていた!!)

と、とても大事なことを聞き忘れていたことに気づいてか、その少女にとても大事なことを尋ねてみた。

「ところで、あなたのお名前は?」

そう、ナギが聞き忘れていたこと、それは、相手の名前、だった。とても大事なこと、であった。なにかあったときに相手の名前がわからなければ対処が難しかったりする。なので、相手の名前を知ることはどんなときでもとても大切だったりする。

 まっ、今はそんなことは抜きにして、話に戻ろう。ナギがその少女の名前を尋ねると、その少女は元気よく自分の名前を言った。

「私、いなり、稲荷あげは、1年生です!!」

そう、ナギの前にあらわれた少女、それは、あげは、だった。あげはは自分のなかに湧いてくる想い、「Aqoursの役に立ちたい!!」、その想いがとても強かったのか、居ても立っても居られず、翌朝、月生徒会長の側近で生徒会副会長(今は月がいないため、生徒会長代理)であるナギのもとに直談判しにきた、というわけだった。

 が、ナギ、そのあげは、以外になにかを感じとる。それは・・・。

(むむ!!この近くには私の目の前に稲荷あげはさん以外にまだ潜んでいる者がいる!!いったい誰だ?)

そう、ナギはあげは以外にこの近くに誰か潜んでいることに気づいたのだ。そのためか、ナギ、

「ところで、そこに隠れてないで出てきたら!!」

と、まわりに聞こえるように大声で言うと、ナギの後ろから、

「あっ、ナギ副会長にはバレバレだったんですね!!ナギ、副会長、お久しぶりです!!私、1年〇組の学級委員、東町東子です!!」

と、東子があらわれると、ナギ、

「東町さん、とても真面目で有名だけど、私になにかようですか?」

と、東子に尋ねると、東子、

「それはですね・・・」

と、なにか言いたそうにしている。が、そんなとき、

「ここからは私のターンだ!!」

と、あげはと東子、とはまったく反対側からナギに向かって誰かが飛び出してくると、開口一番、こんなことを言いだした。

「私は世界で一組しかいないAqoursを助けるためにここに立っているんだよ!!」

これを聞いたナギ、

「えっ、Aqoursを助ける・・・」

と、きょとんとしてしまう。どうやら、その少女、意味不明なことを言っている、そんな感じがしたようだ。

 そんななんか意味不明な名言?を言った少女を見た、あげは、

「シーナ!!なんで自分1人で決めているの!!」

と、どなってしまう。そう、名言?みたいなことを言っていたのはシーナだった。ただ、あまりに意味不明な名言?なのか、ナギ、なんのことなのかわからなかったみたいだった。

 と、いうわけで、あげは、ナギに自分たちが言いたいことをお願いする。

「ナギ副会長、この私、あげは、そして、私の友達、東町東子に浜方シーナ、Aqoursの役に立ちたい、Aqoursのお手伝いをしたい、その一心でここに来ました!!どうかお願いします、私たちにAqoursのお手伝いをさせてください!!」

 このあげはのお願いに、ナギ、

(まさか、1人、じゃなくて、3人、とはね!!でも、私たちが今からやるプロジェクト、「オペレーション・オブ・New Aqours」は今のところ人手不足状態!!だからこそ、たった3人とはいえ、このあげはさんたちのお願いは本当に助かるよ!!)

と、今の現状を考えてみて、新生Aqoursお披露目ライブ、「オペレーション・オブ・New Aqours」、そのためのスタッフの数は、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たち全員を集めても足りない、そんな人手不足、の状態のなか、あげはたち3人の参戦はナギにとって願ったり叶ったりだった。

 で、そのナギはあげはたちに喜びながらこう言った。

「わかった!!稲荷あげはさんたち3人、この私、ナギが快くむかいいれるよ!!」

 だが、このナギの言葉に、あげはたち、少し違った反応をみせる。

「3人!?いや、違いますよ、ナギ副会長!!たった3人ではなく、30人以上、ですよ!!」

このアゲハの一言のあと、いろんなところから静真の制服を着た少女たちが次々とあらわれてきた。これには、ナギ、

「えっ、なんなの!!」

と、ただただ驚くしかなかった。

 その驚いている表情をしたナギを見てか、あげははナギに向かってこう言った。

「ここにいる全員、私たちの仲間です!!私たち、「静真Aqours応援団」、全員、Aqoursのために、浦の星の生徒たちのために、役に立ちたい、そう思っております!!だから、ナギ副会長、お願いです、私たち全員、Aqoursのお手伝いをさせてください!!」



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Moon Cradle 第7章前編 第12話

 と、こんな具合に(またもや長くなって申し訳ないが・・・)、あげはたち「静真Aqours応援団」はナギによって新生Aqoursお披露目ライブ、通称、「オペレーション・オブ・New Aqours」のお手伝いをすることになったのだが、今日はその応援団と本当の静真高校生徒会のトップである月との顔合わせ、かつ、お披露目ライブの主役である千歌たち(新生)Aqours1・2年との顔合わせのため、あげは、東子、シーナ、この3人はここ浦の星分校に来ていたわけである。なお、本当は応援団全員で浦の星分校に来る、というプランもあったのだが、新生Aqoursは顔見知りのメンバーが多いらしく、それだと新生Aqoursメンバーを怖がらせることになりかねない、というわけで、応援団の発起人かつ代表であるあげはたち3人だけで顔合わせをすることになったのである。では、残りの団員たちは・・・というと、お披露目ライブのステージの材料となる木材などの調達など雑務をこなしていた。

 そして、あげはたち3人には顔合わせとは別の任務が残されていた。あのヨハネに関連することだった。そのあげはたちの任務が今まさに始まろうとしていた。

 月とあげはたちの顔合わせが終わってから数分後、あげはたち3人は指定された教室のところまでやってきていた。その教室から、

「みんなに話したら、絶対Aqoursにふさわしい、すごいステージ、作って、浦の星だってちゃんとできるとこ、証明してやるって!!」

という声が聞こえてくる。どうやら、教室の中では千歌たち新生Aqoursによいつむトリオ、そして、月が、新生Aqoursお披露目ライブ、「オペレーション・オブ・New Aqours」について話している最中のようだった。

 その教室の中からそのライブについて今問題になっていることについての話が聞こえてきた。

「でも、ライブの音響のスタッフとか、人手不足ではあるのだけどね」

で、そのことを教室の外で聞いていたあげはは、

「だからこそ、この私たち、「静真Aqours応援団」がいるんだよね!!」

と、自分たちこそ救世主であると言わんばかり小声で言うと、シーナ、

「あげは、威張るのはそこまでにしとけ!!」

と、あげはにツッコミをいれると、東子も、

「どうやら、私たちの出番みたいだね!!さぁ、教室の中に入った、入った」

と、シーナ、あげはを諭す。これには、あげは、

「うん、わかった!!」

と、返事しては3人一緒に教室へと突入した。

 

「「「こんにちは、はじめまして~」」」

突然、千歌たちがいる教室にとある3人が教室へと入ってきた。これを見ていた、ヨハネ、

(あれっ、誰かきたわね。誰なのかな?)

と、突然の来訪者に少しびっくりしつつも誰か来たのか少し気になる様子。いや、千歌たち新生Aqours1・2年6人全員、誰が来たのか気になってしまう。ひとつだけわかること、それが、その突然の訪問者、3人とも静真の制服を着ている、つまり、静真の生徒である、そのことだった。

 そんな千歌たちをよそに月はその3人組に近づき、その3人組について簡単に説明してくれた。

「僕のところに相談しに来てくれたんだ。まだ一部の保護者の反対もあるけど、(新生Aqoursに)協力したい、って!!」

そう、この3人組こそ、新生Aqoursを応援したい、浦の星のみんなと一緒にAqoursを盛り上げたい、そんな想いで集まった、「静真Aqours応援団」、その代表であるあげはたち、であった。このあげはたちの登場で、

(うわぁ、私たちに強力な助っ人、来たよ!!)(よしみ)

(これなら人手不足も少しは解消できるね!!)(むつ))

と、よしみとむつ、2人一緒に抱き着きながら喜んでしまった。また、

(静真の生徒の中にもルビィたちのことを応援してくれる子、いたんだね!!ルビィ、嬉しい!!)(ルビィ)

(あんな(部活動報告会での)ライブ失敗で私たちを応援してくれる子っていなくなったと思っていたよ。でも、それでも、私たちAqoursを応援したい、って子はいたんだね。それだけでも、私、嬉しいよ)(千歌)

と、自分たち新生Aqoursを応援してくれる静真の生徒がいることに、千歌たち新生Aqours1・2年6人は感動していた。

 ただ、月の話は続きがあった。

「でも、少人数だけどね、へへ」

このとき、月はこう思っていた。

(Aqoursを応援してくれる静真の生徒はまだ少ない。そのためにも、今の静真の状況、浦の星の生徒にとって不利な状況、その元凶となっている、「浦の星の生徒が静真の部活動にはいると静真の部活動に悪影響がでる」、その保護者の声、その声を少しでも払しょくしたい、そのためにも、沼田のじっちゃんの問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」それに答えたい!!)

 とはいえ、今は少ないけれど、千歌たち新生Aqoursを応援してくれる仲間(あげはたち)を月が連れてきてくれたことに、曜、

「さすが、生徒会長!!」

と、月のことを褒めると、千歌も、

「(私たち新生Aqoursを応援してくれる人たちを連れてきてくれて)ありがとう」

と、心の底から月にお礼を言った。

 一方、ヨハネはというと・・・。

(このヨハネたちを応援してくれるなんて、なんて嬉しいことぞ!!)

と、ちょっと嬉しくなるも、すぐに、

(でも、あれっ?たしかどこかで見たことがあるような気が・・・)

と、月が連れてきてくれた3人組を見て、以前どこかで見たことがある、そんな感じがしていた。

 が、そんなヨハネに青天の霹靂が起きる。それは、その3人組の1人が発したある言葉だった。

「あ~、もしかして、ヨハネちゃん!!」(あげは)

そう、その3人組こそ、あげはたちだった。あげはたちはヨハネが通っていた中学の出身であり、ヨハネとは同級生の間柄だった。ただ、ヨハネは中学時代、自分の中二病からくる?出来事(屋上に上がっては堕天使じみた行動をしていた、など)により不登校になっていたため、あげはたちにとってみれば中学の入学のとき以来の再会だった。(ただ、ヨハネにとってみれば自分の中学のときに行った行為で恥ずかしい思いをした(ヨハネ談)ために不登校になったので、あげはたちとは本当にお久しぶり・・・という思いがあったのかもしれない・・・)

 で、そのヨハネを見つけたあげは、このとき、

(あっ、ついにヨハネちゃんに会えた!!私、ついにやったよ!!ついに念願の夢、ヨハネちゃんに会う、それが叶ったよ~!!)

と、自分の夢が叶った、そんな嬉しさを噛みしめつつ、

(でも、今日はヨハネちゃんに会いに来た・・・だけでは終わらないよ~!!私たちの長年の夢、ヨハネちゃんと友達になる、それを叶えることが今日の最終目標だからね!!)

と、自分たちが本当に叶えたい夢、ヨハネと友達になる、そのことにばく進しようとしていた。そう、もうお気づきだろう。あげはたちがここに来たもう一つの理由、それは、あげはたちにとって長年の夢であった、中学の同級生だったヨハネと友達になる、それを叶えることだった。中学のとき、いつも中二病みたいな行動をしていたヨハネを見て、あげはたちは、そのヨハネと友達になりたい、とずっと思っていたのだ。しかし、ヨハネは中学に入学してからすぐに中二病的なことをしてしまい、入学して早々不登校になってしまっていた。そのため、あげはたち、ヨハネと友達になることができなかったのだ。そのため、ヨハネと友達になること、それがあげはたちにとって長年の夢となってしまったのである。が、それがこの地でようやくヨハネと友達になれる、自分たちの長年の夢が叶う、そう思ってあげはたちはこの地に乗り込んだのである。

 が、とうのヨハネはというと・・・、「あぅ、もしかして、ヨハネちゃん!!」というあげはの言葉を聞いて、

(げっ、思い出した!!あれは能力者・・・、ヨハネの前世を知るもの(つまり、ヨハネの中学のときの同級生(花丸談))!!)

と、昔の同級生と再会したことにあわてふためくとともに、

(こ、ここは否定しないと!!)

と、思ったのか、

「ち、違います!!」

と、自分はヨハネであることを完全否定してしまった!!

 でも、そんなもの、目の前に立っている人物こそヨハネ本人である、と確信しているあげはたちにとってみれば効かないもので・・・、そんな完全否定しているヨハネに対し、

(ヨハネちゃん、会いたかったよ!!本当に会いたかったよ!!)

と、東子、ようやくヨハネと会うことができた、そのためにいつも以上に興奮してしまい、そのためか、

「私(たち)中学(ヨハネちゃんと)一緒だった!!」

と、興奮状態のまま、ヨハネに近づいてしまった。

 が、これにもヨハネ、

(ち、近寄らないで!!わ、私はヨハネじゃない!!赤の他人です!!)

と、ついには自分のことすら完全否定しつつも、

(本当に近寄らないで!!ヨハネの苦い記憶(中学のときのヨハネの行い)が・・・!!このヨハネにそのときの報いを受けさせないでくれ・・・)

と、自分が中学のときに行っていたこと、その報いを今まさに受けようとしていること、それを恐れているかのような思いをしているのか、苦々しい表情をしながらも後ろに下がってしまっていた。

 が、それでも、あげはたちは怖気つかなかった。ヨハネに迫っていた東子のところにあげはとシーナが一緒に来ると、シーナ、このとき、

(ヨハネちゃん、ヨハネちゃんにとってみれば、私たちが会うのって中学のとき以来だけど、私たちからすれば、いつもヨハネちゃんのこと、ずっと見ていたんだよ!!ヨハネちゃんが投稿している動画、それに、いつもネットで行っている生配信、私たち、ずっと見ていたんだよ!!)

と、思ってしまった。そう、ヨハネが中学の時から定期的に動画投稿サイトで自分で撮った動画を投稿したり生配信をしたりしているのだが、それをあげはたちはいつも欠かさず見ていたのである。そして、その動画を見た後、あげはたち3人はその生配信や動画について語り合っていたのだ。そのため、ヨハネのことは何でもお見通し、と、あげはたち3人はそう思っていた。

 と、いうわけで、シーナ、ヨハネに対し、あることを言ってしまう。

「いつも(ヨハネが投稿している動画や生配信を)ネットで(いつも欠かさず)見ているよ!!」

このシーナの言葉に、ヨハネ、

(うわ~、うわ~、私の恥ずかしい行い、それを思い出させないで・・・)

と、逃げ腰になってしまう。実は、ヨハネ、動画や生配信で見せる中二病じみた行いにはちょっと恥ずかしい思いを持っていたりする。中二病というまわりの人からみたら相当痛いこと、それをついしてしまう、そんな自分に対して、ヨハネ自身、というか、素の自分も恥ずかしい思いを常日頃からもっていたのだ。そして、Aqoursに入る前のヨハネ、いろんなことがあった(千歌たちAqoursを小悪魔風スクールアイドルとしてブレイクさせようとしていた、など)ために中二病である自分が嫌になり、自分の部屋にあった堕天使グッズを捨てようとしていたのだ。でも、このとき、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、そう、ヨハネが入る前のAqoursメンバー5人が、そんな中二病気質のヨハネ、堕天使であるヨハネ、を認めてくれたことにより、ヨハネは中二病気質の自分を受け入れた、それにより、今のヨハネがここにいる、と、いうわけである。なのだが、今でも、そんなヨハネ自身、中二病気質のヨハネに対して自分の母親を含めて世間から冷たい目で見られてしまうことには負い目を感じてしまっていた。特に、誰も堕天使である自分を認めてくれなかった(と、ヨハネ自身は思っている)前世(中学時代)を、そのときのヨハネのことを知っている中学の同級生、という存在はヨハネにとってそのとき(中学時代)の辛い記憶がよみがえってしまう、そんな存在だった。

 そんな辛い思いをしているヨハネであったが、それでも、あげはたちは、

(ここは絶対に友達になってやる!!だって、ここでヨハネちゃんと友達になれなかったら、これから先、絶対にヨハネちゃんと友達になることができなくなる、そんな気がする!!)(あげは)

と、絶対にヨハネと友達になってやる、そんな気持ちでいっぱいだった。

 そして、シーナの言葉のあと、3人はヨハネに対しある決めポーズをとる。それは、自分の目のところに手をもっていき、横にむかってのピースサイン?、それに合わせて、あげはたち3人、ある決め台詞をヨハネに向かってこう叫んだ!!

「「「ヨハネ、降臨!!」」」

そう、あげはたちがしていたのは、ヨハネにとってある種の決めポーズ、「ヨハネ、降臨!!」だった。自分の目のところに手を持っていっては横に向かってのピースサイン、それにあわせて「ヨハネ、降臨!!」と叫ぶ、これこそヨハネの決めポーズだった。この決めポーズ、ヨハネ、生配信や動画のなかでは必ずこの決めポーズをするのだが、今回はそれをあげはたちがヨハネに向かって行ったのだ。

 が、このあげはたちが見せた自分の決めポーズに対し、とうのヨハネはというと・・・、

(うわ~、恥ずかしい!!恥ずかしいから、その決めポーズ、やめて~!!)

と、このとき、自分がいつもしていること(中二病みたいなことをしていること)、自分が堕天使であること、それをヨハネ自身が恥じている、そんな思いがヨハネの体中を駆け巡っていた。いや、それだけはなかった。中学のときに行っていたヨハネの中二病的な行い、それがヨハネのなかでフラッシュバックしたのか、その生き証人である(ヨハネと同じ中学校に通っていた)同級生(あげはたち)がここにいる、あのときの行いを直接見ていた人たちがここにいる、そのときの恥ずかしい思い、それをまたこの場で感じてしまっている、そんなことにヨハネはついうろたえてしまっていたのである。

 そんなわけで、ヨハネ、

(この3人がいるとヨハネの恥ずかしい記憶(中学のときの行い)がよみがえってくる!!そんなのいや~!!こ、ここは逃げないと!!)

と、思ってしまい、ついに、ヨハネ、教室の前の扉から教室の外の廊下へと逃げ出してしまった。



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Moon Cradle 第7章前編 第13話

 が、そんなヨハネを全力で遮る少女がいた。逃げるヨハネに対し、突然、教室の後ろの扉からその少女があらわれてはヨハネの進む道を遮る。そして、その少女は(その少女が)進む道を遮ったことにより逃げ場所を失ったヨハネに対し怖い顔でこう言った。

「せっかく応援してくれているのに、逃げちゃだめでしょ!!」

これには、ヨハネ、自分を遮るその少女を見てこう思った。

(だ、堕天使リリー!!)

そう、ヨハネの逃げ道を遮ったのは、堕天使リリー・・・。

「ご、ごほん、(堕天使)リリー、って言うの、禁止!!」

お、おっと、ごめんなさい、禁句でした・・・。ヨハネの逃げ道を遮ったのは梨子だった。梨子、ヨハネの決めポーズをとるあげはたちを見て逃げようとするヨハネの姿を見て、

(あっ、善子ちゃん、善子ちゃんのことを応援しようとしている娘たち(あげはたち)から逃げようとしている!!たしか、あの娘たちって、静真の部活動報告会のとき、静真の校門前で善子ちゃんがこの娘たちを見て逃げようとしていたよね。たしか、花丸ちゃん、曰く、「善子ちゃんの(中学のときの)同級生だったよね!!)

と、あげはたちのことを思い出していた。実は、静真の部活動報告会のとき、千歌たち新生Aqours1・2年6人、静真の校門から学校に入ろうとしていたとき、偶然、あげはと東子もそこで待ち合わせをしていたのだ。で、そのときも、ヨハネ、自分の中学の同級生であるあげはと東子を見て、

「げっ、ヨハネの前世を知るもの!!」

と言ってはその場から逃げようとしたのだ。が、梨子、逃げるヨハネに対し、それはさせまいと、ヨハネの首根っこを掴んではヨハネが逃げるのを阻止したのである。で、このときに花丸からヨハネが逃げる原因となった、ヨハネの目の前にいる人物(あげはと東子)こそ、(ヨハネ曰く)ヨハネの前世を知る者、いや、ヨハネが中学のときの同級生である、と教えられていたのだ。

 と、いうわけで、梨子、部活動報告会のときみたいに、今回もあげはたちから逃げ出そうとしているヨハネに対してあることを思ってしまう。

(なら、ここは私の出番ですね!!善子ちゃん、中学のときの辛い記憶(ヨハネが中学に行った中二病的な行い)から逃げだそうとしているみたいだもんね!!その記憶の生き証人であるあの娘たち(あげはたち)から逃げ出すことでその記憶を封印しようとしている、そう私にはみえてしまうよ。でも、今の善子ちゃんはその記憶を封印すべきじゃない!!いや、(善子ちゃんにとって)その記憶が絶対に必要だよ!!だって、今の善子ちゃん、過去の自分と立ち向かい、過去の辛い記憶そのものを乗り越える必要があるもの!!辛い記憶に逃げ回るあまり孤独になってしまった昔の善子ちゃんに戻っちゃダメ!!絶対に辛い記憶を乗り越えて、善子ちゃん!!じゃ、どうすれば、善子ちゃん、それを乗り越えることができるのか。それはすごく簡単なこと!!あの娘たち(あげはたち)と友達になること!!ただそれをするだけで、善子ちゃん、辛い記憶なんて乗り越えることができるよ!!そして、それを乗り越えたことにより、善子ちゃん、きっと、あの娘たち(あげはたち)、いや、善子ちゃんにとって仲間といえるものを得ることができる、そう確信しているよ!!だからね、善子ちゃん、私、全力で逃げるの、阻止、するね!!)

そう、梨子、過去の辛い記憶から逃げようとしているヨハネを全力で阻止しようとしているのだ。ヨハネの辛い過去(中学のときの記憶)から逃げだそうとしている今のヨハネ、でも、それだと、昔のヨハネ、辛い記憶から逃げるあまり孤独になってしまったヨハネに戻ってしまう、でも、その記憶の生き証人である(中学のときの同級生でもある)あげはたちと仲良くなればそんな記憶なんて乗り越えることができる、いや、ヨハネにとってかけがえのない友人という仲間を得ることができる、そう思ってからの梨子の決意だった。

 が、梨子の思いはそれだけではなかった。梨子、続けてこう思ってしまう。

(それにね、今の善子ちゃん、昔の自分を見ているみたい・・・。辛い過去から逃げようと思って浦の星に来てしまった私。でも、その浦の星で出会った千歌ちゃん、そして、曜ちゃんのおかげでその辛い記憶を乗り越えることができた!!だからね、善子ちゃん、今こそ、辛い記憶を乗り越える、そのときが来たんだよ!!)

そう、それはまるで、浦の星の転校前、音ノ木坂に通っていたとき、緊張のあまり、ピアノの大会でピアノを引くことができず、そのまま逃げ帰った、でも、浦の星に転校したことで千歌と曜という一生の友達ともいえる存在と出会い、この2人のおかげで復活を果たした、そんな梨子自身と今のヨハネを重ね合わせていた、そんな感じがしてもおかしくなかった。

とはいえ、梨子、

(と、いろんなことを思ってしまったけど、善子ちゃん、私、これだけは言うね、全力で逃げるのを阻止させていただきます!!)

と、ヨハネが逃げるのを全力で阻止しようと動く。が、このとき、

(あと、私が嫌がっている、堕天使リリー、それについての積年の恨み、ここで晴らしてあげますわよ!!)

と、梨子、ついでにそんなことまで思ってしまう。どうやら、(梨子が一番嫌がっている)堕天使リリー、それについての積年の恨み、ここで晴らそうとしている、そんな感じもしてきた。

 で、そんな恨みつらみを晴らしたいのか、それとも、本気でヨハネに辛い記憶を乗り越えてもらいたいのか、どっちかわからないが、それでも全力でヨハネが逃げるのを阻止しようとしている梨子、それでも逃げようとしているヨハネに対し最後通告をだす。

「逃げちゃダメでしょう、ガシガシ!!」

この最後通告のとき、梨子、ヨハネに向かって手を上にあげては「逃げるならヨハネの胸を揉みますよ」的なポーズをとる。おっ、梨子が今から繰り出そうとしている技、それは、伝説のスクールアイドル、μ's、のメンバーの1人、希、が得意だった技、「ガシガシ」!!この技はみんなの前から逃げ出そうとする相手(特にμ'sメンバー)に対し希が相手の後ろから相手の胸を掴んでは揉みまくるという、あまりにセクハラじみた技、だった。って、その技、「ガシガシ」じゃないでしょ!!「ワシワシ」でしょ!!というツッコミをしつうも、それに近い技、「ガシガシ」、それを今、まさに、梨子がヨハネに繰り出そうとしていたのだ。これには、ヨハネ、

(うわっ!!その「ガシガシ」、されたらたまらんわ!!それだけはいや!!)

と、思ってか、梨子に対し、

「うるさいっ!!」

と、どなってしまう。

 が、そんなとき、ヨハネ、

(あっ、うしろにだれかいる!!)

と、これまで誰もいなかったはずの自分の後ろに誰かがいることに気づく。それは誰か・・・というと、その人物の名は花丸だった。花丸もヨハネが逃げようとすると、

(あっ、善子ちゃん、中学のときの同級生(あげはたち)から逃げようとしているずら!!きっと、過去の辛い記憶(ヨハネの中学のときの記憶)から逃げようとしているずら!!それだと、ずっと孤独だった昔の善子ちゃんに戻るずら!!だからこそ、まる、心を鬼にするずら!!善子ちゃん、友達というかけがいのない者を得るためにも、まる、善子ちゃんが逃げるのを全力で阻止するずら!!善子ちゃん、(中学のときの)辛い記憶を必ず乗り越えてくれずら!!)

と、思ったのか、梨子に続いてヨハネが逃げるのを全力で阻止しようと体が動いていた。ヨハネと同じ幼稚園に通っていた花丸、小・中ではヨハネとは別の学校に通っていたが、浦の星に入学したことによりヨハネと再会することができたのだ。そのヨハネだったが、浦の星に入学したのもの、中学と同じく中二病じみた行為をしてしまったためにすぐに不登校になる。が、ヨハネ、しばらくしてちょとと気になったのかこっそり浦の星に登校してしまいそこを花丸が見つけてしまった、それが花丸とヨハネの運命の始まりだった。中二病じみた行為をしてしまうヨハネに対し、花丸、そのヨハネが浦の星に再び通うことができるよう常にアシストしていたのだった。そして、花丸、運命の始まりから今日まで、ヨハネの後見人的な立ち位置としてヨハネのことをずっと見守ってきたのだ。そして、今、そのヨハネにとってかけがいのない、あげはたちという存在、いや、仲間を得る、そのためのチャンスがついに来た、と、花丸はこのとき思ったのかもしれない。ヨハネにとって中学のときの辛い記憶、それに立ち向かい、それを乗り越えるためのチャンス、だからこそ、ヨハネ、それから逃げてほしくない、絶対に乗り越えて、あげはたちというかえがいのない仲間を手に入れてほしい、そんな思いが花丸をヨハネの逃走全力阻止へと向かわせようとしていた。

 そして、花丸はそのヨハネに追いつき、梨子の全力阻止で行き場をなくし完全に慌てふためいているヨハネの後ろをとることに成功、結果、花丸はヨハネの逃げ道を完全に塞ぐことに成功した。これには、ヨハネ、後ろに花丸がいることに気づき、

(し、しまった~!!逃げ道がもうない!!)

と、自分が逃げるすべがもうないことを悟る。これには、ヨハネ、

(う~、これからどうすればいいの!!)

と、これからどうすればいいか完全にうろたえてしまった。

 そんなヨハネに対し、花丸、痛恨の一撃を放つ。

「一緒に撮りませんか~、ヨハネちゃんと!!」

この花丸の言葉に、ヨハネ、

(ずら丸、なんてことを言ってくれるの!!)

と、花丸の痛恨の一撃に文句をいいつつも、

「な、なにって!!」

と言っては花丸に抵抗、というか、ちょっとした言葉の反抗、を試みるヨハネ。

 でも、その花丸の突然の提案に、あげはたち、

(あっ、茶髪の子(花丸)、ナイスアシスト!!)(あげは)

(こ、これは、ヨハネちゃんと友達になれる絶好の機会!!)(東子)

(これはこれで家宝になる!!)(シーナ)

と、完全に乗り気になる。そのためか、あげはたち、

「本当!!」(あげは)「撮る、撮る!!」(東子、シーナ)

と、教室の前の扉から飛び出してきて花丸の提案に賛成する。

 むろん、これにも、ヨハネ、

(ねっ、私の意見は!!ヨハネ、前世を知る者(あげはたち)とは写真を撮りたくな~い!!ここから逃げ出した~い!!)

と思ってなのか、

「ま、待て~い!!」

と、本当に最後の抵抗を試みる。

 が、そんなヨハネの本当に最後の抵抗に対し、梨子と花丸、

「逃がさないわよ~」(梨子)

「頑張るずら~」(花丸)

と言っては自分のスマホを持ってヨハネに迫ってきた。これには、ヨハネ、

(う、う~、堕天使リリーにずら丸、なんでこのヨハネに迫ってくるの~!!こ、これって、これまで、このヨハネが2人にしてきたことへの天罰なの~!!うわ~、2人とも迫ってこないでくれ~!!こ、これが、噂に聞く、リトルデーモンの反逆~、このヨハネに対する反逆だ~」

と、迫ってくる梨子と花丸に対して怯えてしまう。 

 そして、ヨハネは涙目になりながらこんな最後の断末魔を叫んでしまう。

「ひどい、リトルデーモンの反逆・・・」

 こうして、ヨハネはついに降伏、梨子、花丸、2人のリトルデーモンの反逆はついに達成されたのだった。

 

 その後、ヨハネとあげはたちは、ヨハネの決めポーズ、「ヨハネ、降臨!!」をしつつ、一緒に写真を撮ることになるのだが、このとき、あげはたち、

(ついにヨハネちゃんと友達になることができたよ~!!ヤッター!!)(あげは)

(いや、それだけじゃない!!まさか、あのヨハネちゃんと一緒に写真を撮ることができるなんて、本当に幸せ!!)(東子)

(ふふふ、これこそ私たちが追い求めていたもの!!あのヨハネちゃんと永遠の誓い(友情)を結ぶことができた!!)(シーナ)

と、自分たちの長年の夢、ヨハネと友達になる、その夢が叶った、いや、そればかりか、その先のこと、ヨハネと一緒に写真を撮ることすらできた、そのことで喜んでいた。その喜びのあまり、のりのりで写真に写るあげはたち。対して、ヨハネ、

(あ、あ・・・)

と、いまだもって自分の辛い過去の記憶(中学のときの辛い記憶)にさいなまれている、そんな感じをだしているのか、顔がひきつった状態で写真に写ってしまった。それでも、あげはたちからすれば大きな一歩だったらしく、

「うわ~、ありがとう!!」「大切にするね!!」

と、ヨハネに対しお礼の言葉を贈られる。これには、ヨハネ、この一件で精魂尽き果てたのか、

「なんくるないさ~」

と、沖縄の言葉がつい出てしまう。

 が、これだけでは終わらなかった。このあと、高校生のあいだでは恒例?の行事が待っていた、そう、とても大事なことが・・・。それをするため、あげは、ヨハネの前に立ち、こう言った。

「写真を送るから、ID、教えて!!」

そう、SNSアプリのID交換である。あげはたちにとってヨハネとはもう友達の関係を結んでいる、そんな気持ちをもっていた。その友達とまずやること、それは、SNSアプリのID交換、だった。IDを交換することでSNSアプリのグループチャットを通じていつもいろんなことを話すことができる、そのためのID交換だった。これには、ヨハネ、

(えっ、えっ、ID交換!!)

と、突然のあげはの言葉に少し慌てふためいてしまう。それでも、ヨハネ、

(えっ、え~と、ID交換は・・・)

と、慌てつつもすぐさま自分のスマホを出しては、

「フリフリ」(あげは)

「フリフリ・・・」(ヨハネ)

と、自分たちのスマホをフリフリする。今はもうスマホをフリフリしてもID交換をすることができなくなったが、このとき(2018年3月)にはこのフリフリをすることで自分たちのSNSアプリのIDを交換できる機能があった。これにより、相手にIDを教えなくても簡単にIDを交換できる、そんな便利な機能だった。それをあげはとヨハネはしたのだった。これにより、あげはとヨハネは無事にIDを交換できた。これで、ヨハネ、

(あっ、IDが交換できた・・・。でも、これであの子たち(あげはたち)と友達になることができた・・・気がする・・・)

と、あげはたちと無事に友達になることができた、そんな気持ちになることができた。

 で、このID交換のあと、あげははヨハネに対し、自分の手を出してこう言った。

「(IDを交換してくれて)ありがとう!!(これからも)よろしくね!!」

これを見た、ヨハネ、

(ふっ、まさか、この堕天使ヨハネを認めてくれるなんて、あの子たち(あげはたち)、やるじゃない!!)

と、思ってしまう。そう、堕天使ヨハネと称するくらいヨハネは本当に痛い子である。これまで、こんな痛い子であるヨハネを認めてくれたのは千歌たちAqoursメンバー、もしくは、浦の星の生徒たちだけであった。が、その人たち以外にこのヨハネを認めてくれる人が自分の目の前にあらわれたのだ。ヨハネにとってそれは本当に嬉しい限りである。

 が、このとき、ヨハネがあげはたちを見て思ったことはそれだけではなかった。ヨハネ、さらにこんなことまで思ってしまう。

(それに、なにもかも吹っ切れた気がする!!なんか、いろいろと悩むのが馬鹿らしくなっちゃった!!)

そう、無理やりとはいえ、ヨハネにもっとも近い存在だった梨子と花丸により、昔の自分が犯した過ち・・・、いや、昔の自分が行っていたこと、それに対して自分が恥じていたこと、それを、あげはたち(中学のときの同級生)という生き証人と出会い友達になることでそれを乗り越えることができた、もう、昔持っていた恥ずかしい思いを今回のことで完全に吹き飛ばすことができた、そんなものが今のヨハネから感じることができた。もう、ヨハネは昔のヨハネじゃない、本当に生まれ変わったルビィ、ほどではないが、これまで孤独に生きてきた、あのヨハネではない、これからは、あげは、東子、シーナ、という、堕天使ヨハネを認めてくれた素晴らしい仲間と一緒に先に進んでいける新しいヨハネに生まれ変わることができた、そういっても過言ではなかった。

 そして、それはヨハネの(このときの)想いにもあらわれていた。そのヨハネの想いとは・・・。

(なんか、いろいろと悩むのが馬鹿らしくなっちゃった!!)

そう思えてきた、ヨハネ、その思いに続けとばかりにこう思ってしまった。

(だからこそ、これだけは言える!!このヨハネ、前世(中学時代)を知るものと永遠の契り(友情)を結ぶことができた!!それこそ、奇跡!!いや、この堕天使ヨハネだからこそできたミラクルなり!!ふふふ、神ぞ、堕天使ヨハネ、新たなるリトルデーモン(あげはたち)をついに手に入れましたぞ!!)

そう、なにか得意げになってしまった、ヨハネ、であったが、その一方で、

(そして、このヨハネ、神に向かって誓うぞ、堕天使ヨハネ、このリトルデーモンたち(あげはたち)と一緒に前へ前へ進んでいくぞ、そして、一緒に進んで新しい自分を見つけていく、さらに、この者たちと新しい未来を切り開いてみせましょうぞ!!)

と、あげはたちと一緒に前に進んでいく、そのことをヨハネは神に向かって誓うのであった。その誓いのもと、ヨハネは自ら手を突き出し、これから永遠なる契り(友情)を結ぶあげはたちと固い握手を交わした。

 こうして、ヨハネは新しい一歩をあげはたちと一緒に踏み出すことになった、いや、堕天使ヨハネの新しい物語、その第一章が幕を開けたのだった。

                          (ヨハネ伝、終わり・・・)

 

「で、これでヨハネの物語は終わり?」(ヨハネ)

「そ、そうだけど・・・、あのときの約束(Ruby’s Determination第8話のこと)は果たしたつもりだけど・・・」(作者)

「もっと詳しく書きなさ~い!!「Yohane’s Determination」っていうタイトルで~!!」(ヨハネ)

「ご、ごめんなさい!!これ以上長くなるとこの物語(Moon Cradle)が終わらなくなる~)(作者)

「ごめん、と言えば警察はいらないよ~」(ヨハネ)

「本当にごめんなさ~い!!」(作者)

 

 と、いうわけで、ヨハネとの約束は無事果たした・・・、「ガシッ!!」(ヨハネが作者の頭にかみついている音)、閑話休題、はここまでにして、話をもとに戻します・・・、「ガシ、ガシ!!」(ヨハネが作者の頭をさらにかみついている音・・・、い、痛い・・・)

 



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Moon Cradle 第7章前編 第14話

 と、いうわけで、ヨハネとあげはたちの一件を見ていた、千歌、

(私たちが考えた(←ただし、計画自体は部活動報告会後、ナギとよいつむトリオが千歌たちに伝えずに進めていた)ライブ、むっちゃんたちや静真高校のみんな(あげはたち)という強力な仲間もできたことだし、あとは頑張って成功さえるだけ!!さあ、頑張るぞ!!)

と、自分の心の中に熱い魂を燃やしながらこう思うと、黒板に描かれていたステージのイメージ図に向かってこう叫んだ。

「さあ、やるぞ!!」

 しかし、やる気満々の千歌とは別に本当にお披露目ライブが成功するのか心配になるAqoursメンバーもいた。

(たしかに、スペイン広場のライブは成功したずら。でも、それって、鞠莉ちゃんたち(3年生)がいたから成功したずら。でも、これからやろうとしているライブ(お披露目ライブ)はこの前のライブ(部活動報告会でのライブ)みたいにおらたちだけずら!!まる、また失敗するかもしれない、そう思うと心配になるずら・・・)

そう心の中で思っているのか、ついにそれが言葉となって出てしまう。

「でも、向こうで歌ったとき(スペイン広場でのライブ)と違って、鞠莉ちゃんたちはもういないずら・・・」

そう、花丸だった。いつもは気が弱いルビィに対して前向きにルビィを励ます花丸、だったが、部活動報告会でのライブの失敗のことが今でもひきづっているみたいで、この時ばかりは、花丸、つい弱音を吐いてしまっていた。

 しかし、そんな花丸に対し、花丸にとって一番の親友はまったく別の反応をみせる。その親友は花丸の弱音に対して力強くこう言い返した。

「できる、(絶対に)できるよ!!」

その親友の名はルビィ!!これまでだったら、花丸、そして、姉ダイヤの後ろをついていくだけ、そんな弱弱しい存在、みんなの妹分、そんなルビィだった。しかし、今のルビィは昔のルビィとは違っていた。もう一人前の少女、もう誰も頼ることなく前に進むことができる、そんな少女にルビィは生まれ変わったのだ。そして、その力強いルビィの言葉はルビィのある想いから発せられていた。その想いとは・・・。

(たとえ、お姉ちゃんたち(ダイヤたち3年生)がいなくても、これから先、ルビィたちはやっていける!!だって、みんなとの想い出、みんなの想い、みんなとのキズナ、そんな宝物を持っているから。そして、たとえ、離れ離れになったとしてもその宝物を通じてみんなとつながっていける!!だから、ルビィたちはもう一人じゃない!!だからいえる、このライブ(お披露目ライブ)は絶対に成功する!!ルビィ、花丸ちゃん、善子ちゃん、千歌ちゃん、梨子ちゃん、曜ちゃん、それに、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、そして、お姉ちゃん!!ステージにはルビィたち6人しかいないけど、心の中では9人いる!!この9人で先に行ける!!この9人が(心の中で)つながっているかぎり、ライブは絶対に成功する!!)

Aqours9人の想い出、想い、キズナ、その宝物を通じてずっとつながっている、ゼロに戻ったわけじゃない、宝物を通じてつながっているからこそこの9人でさきに進むことができる、それに気づいたルビィだからこそ言える言葉だった。昔は花丸の後ろをついていくだけ、そんな弱弱しい存在だったルビィ、それが今ではその逆、弱気になっている花丸を引っ張っていける、そんな頼もしい存在へと変わったのだ。

 この自信満ち溢れたルビィの姿、言葉に、花丸、

(ル、ルビィちゃん、なんか頼もしいずら~)

と、見とれてしまっていた。そのためか、花丸、

「ルビィ~ちゃん~!!」

とルビィに憧れしまったような声をあげてしまう。

 しかし、そんな凛々しい姿をしたルビィに見とれてしまったのは花丸だけではなかった。ヨハネも、

(あの(弱弱しい)ルビィがまさかこんなに凛々しく感じるなんて・・・、ああ、このヨハネ、ついルビィに見とれてしまったぞ・・・)

と思ってしまい、そんなルビィに、ヨハネ、ホレボレしてしまっていた。

 が、自身満ち溢れている、とても凛々しい姿をしていたのはルビィだけではなかった。その少女は凛々しい姿で発言するルビィに対してこう思っていた。

(ルビィちゃん、その気持ち、千歌にもわかる気がする!!果南ちゃん、鞠莉ちゃんから(千歌の胸を突っつきながら)「でも、気持ちはずっとここにある!!」って言われて、それから、(鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんと)スペイン広場でライブをしたことで、ルビィちゃんが言いたかったこと、(千歌なりに)わかった気がする!!だからこそ、言える・・・かな?このライブ、たとえその場にいなくても、鞠莉ちゃん、果南ちゃん、ダイヤちゃんとずっとつながっている・・・、だから、たとえなにがあっても大丈夫・・・)

そう、千歌だった。その千歌はルビィの言葉に呼応してか、

「私もできる!!」

と、元気よく答えた。この千歌の言葉に、ルビィ、

「千歌ちゃんも!!」

と、千歌がルビィと同じ?意見であること喜びをみせていた。これには、千歌、

「うん!!」

と、返事をした・・・のだが、千歌、心の中では、

(・・・)

と、少し無言になってはすぐに、

(・・・はず!!)

って、え~!!、そこまで確信・・・していなかったみたいだった・・・ガクッ。

 とはいえ、自信満々の千歌とルビィの姿を見た、曜、梨子、花丸、ヨハネ、ともに、

(この2人が言うんだから、大丈夫!!)(梨子)

(なんか2人とも自信満々だね!!これだったら、私も、全力前進、ヨ~ソロ~、できるね!!)(曜)

(ルビィちゃんが頑張るならまるも頑張るずら!!きっと大丈夫ずら!!)(花丸)

(このヨハネ、天から授かりしもの、新たなるリトルデーモンたち(あげはたち)と契約を交わしたなり!!それに、リトルデーモン4号(ルビィ)はついに覚醒したなり!!もうこれでヨハネに恐れるものなんてないぞ!!)(ヨハネ)

と、前向きに進むことを考えつつも、4人ともルビィと千歌のもとに集まると、6人・・・ではなく、だれか1人を除いて・・・5人は笑顔で接していた。

 この千歌たちの様子をすこし離れた位置で見ていた月、

(もうなにも恐れることなんてない!!新生Aqoursはルビィちゃんを中心によみがえった!!さらに、ナギたちのおかげで(まだ少ないけれど)Aqoursを応援してくれる、支えてくれる仲間もできた。まだ(お披露目ライブの準備は)始まったばかりだけど、たとえなにがあっても新生Aqoursはきっとやってくれる!!そのためにも、僕たちは、曜ちゃんたち新生Aqours、そして、浦の星のみんな、と一緒に頑張っていく!!)

と、自分たちも千歌たち新生Aqours6人を一生懸命支えていくことを心の中で決めた。

 そして、月はこの想いのもと、ある言葉を発する。

「僕たちも頑張らないとね!!」

そう、自分たち静真の生徒も新生Aqoursのため、浦の星の生徒たちのため、そして、静真本校と浦の星分校の統合実現のために頑張っていく、そのことを月はこの言葉をもって誓うことにしたのだった。

 

 そんな、千歌たち新生Aqours、よいつむトリオ、そして、月たち静真の生徒たち、ここにいる教室のみんな、新生Aqoursお披露ライブに向けて一丸となってやっていこう、そんな空気がこの教室に漂っているなか、ある少女だけ、それとは違う、また別の思いが生まれていた。それは、その少女がルビィの言葉に千歌が同意、それ以外の新生Aqoursメンバーがルビィと千歌のもとに駆け寄る場面で起きた。ルビィと千歌のもとに駆け寄っては「もう心配ない、私たちはできる!!」そう思ったのか、自信を持ちにっこりと笑う、梨子、花丸、ヨハネ。しかし、その少女だけは、

(なんか2人とも自信満々だね!!これだったら、私も、全力前進、ヨ~ソロ~、できるね!!)

と、一瞬思ったのもつかの間、もう一度、自信満ち溢れたルビィの姿を見ては、

(でも、なんかルビィちゃんを見ていると、昔の甘えん坊上手だったあのころがとても懐かしく思えるよ。でも、本当に、ルビィちゃん、変わったね!!)

と、生まれ変わったルビィのことに感心する、も、

(でも、なんで、ルビィちゃん、生まれ変わることができたのかな?)

と、ルビィが生まれ変わったことについてふと疑問に思ってしまう。

 そこで、その少女はあることを思い出してみる。

(たしか、スペイン広場のライブのあと、ダイヤさんから教えてもらったよね・・・)

そう、その少女はルビィの姉であるダイヤから、ルビィが生まれ変わった、その顛末を一通り聞いていたのだ。それを思い出したその少女、今度は月の方を見ると、

(たしか、ルビィちゃん、月ちゃんのおかげで生まれ変わったんだよね)

と、ふと思ってしまう。たしかにそうである。(ちょっと脅迫めいたものではあったが)スペイン広場のライブ前までにルビィは月におかげで新しく生まれ変わることができたのである。

 そのことを思っていたその少女、その目線の先にある月であるが、お披露目ライブ成功に向けて勢い込む千歌たちを見て、

「僕たちも頑張らないとね!!」

と、自分たち静真の生徒もお披露目ライブに向けて頑張っていく、そんな意気込みをみせていた。

 そんな月の姿を見て、月を見つめるその少女はあることに気づく。

(そういえば、なんで、月ちゃん、こんないいタイミングで私たちに援軍(あげはたち)を連れてきたのかな?なんかタイミングが良すぎるよ・・・)

そう、「自分たち(新生Aqours)がお披露目ライブを行う、そう決めてから間もないのに、初めての打ち合わせというちょうどいいタイミングで援軍(あげはたち)を連れてくるなんて、なんか話が良すぎる・・・」、と、その少女は思ってしまったのだ。

 と、いうわけで、その少女、イタリアのルビィの一件、援軍を投入するタイミングが良すぎる点、その2つを踏まえた上である想いにたどり着いてしまう。

(イタリアでルビィちゃんを生まれ変わらせた点、とてもいいタイミングで援軍を連れてきた点、ふたつとも月ちゃんがしてくれたこと・・・、って、それってもしかして、月ちゃんが裏で、私たちAqoursを導いてくれていた・・・ってこと!!)

そう、イタリアで新しく生まれ変わったルビィ、お披露目ライブの人手不足問題解決のための援軍、その裏で月が大活躍していた(・・・のかな・・・?前者は月がやったことだけど、後者はナギたち静真高校生徒会が主にやっていたことなのですが・・・、その少女は月が裏でやったことだと思っているみたいです・・・)ことに気づいてしまったんだ。

 だが、その少女がそう思っているあいだにも話はどんどん進んでいく。集まっては(その少女を除いて)笑顔を見せる千歌たち新生Aqours1・2年の6人。その中心にいた千歌に対し、突然、よいつむトリオ、突然、あることを尋ねる。

「ところで、お土産は?」

そう、よいつむトリオ、イタリアのお土産がないか千歌に尋ねたのだ。が、しかし・・・、

(あっ、千歌たちのこと(Aqoursのこと)で頭がいっぱいだった・・・)

と、千歌、とても大切なこと・・・、親友であるよいつむトリオにお土産を買うことを忘れていたことを思い出してしまったのだ。そのためか、

「ああ、忘れていた・・・」

と、千歌、よいつむトリオに謝ってしまう。これには、よいつむトリオ、

「「「え~!!!」」」

と、がっかり!!!そんなよいつむトリオを見た、花丸、つかさず3人をフォロー。

「それじゃ、これ見て食べた気になればいいずら!!」

と、同時に、花丸、よいつむトリオに1枚の写真を取り出しそれを見せる。で、この写真を見たよいつむトリオ、

(((えっ、大きな肉のかたまり!!!)))

と、びっくり!!!そう、花丸がよいつむトリオに見せた写真、そこに写っていたのは、イタリア・フィレンツェの屋台街で食べた、フィレンツェ名物「ビステッカ・アッラ・フィオレンチィーナ」、だった。が、この写真を見せられてもおなかが満たされる・・・わけでもなく、これには、よいつむトリオ、すぐに、

「「「これだけ見せられてもなにもならないよ!!!」」」

と、花丸に激しいツッコミ!!!これには、花丸、

「ず、ずら~!!!」

と、びっくりしてしまう。これには千歌たち教室にいたみんな苦笑い。

 が、ここで壮大なオチが待っていた。この「フィオレンチィーナ」の写真を見た人のうちの1人が意外な反応をみせる。その子はよいつむトリオの花丸の激しいツッコミのあと、こんなことを言いだした。

「ヨハネ、その肉のかたまり、食べてない・・・」

そう、その子こと、ヨハネ、だった。実は、ヨハネ、フィレンツェに到着するなりすぐに単独行動に移ったのである。そして、ドォーモ(大聖堂)のなかで天使の位を授かった(とヨハネ本人はそう思っている)のだが、その一方で、ヨハネが抜けた新生Aqours1・2年の5人と月はおなかがすいていたので、まずは腹ごらしにとフィレンツェの屋台街に移動、そこで食べたのが「フィオレンチィーナ」だった。なので、ヨハネ、フィレンツェに行ったものの、フィレンツェ名物「フィオレンチィーナ」を食べ損ねていたのである。

 そういうことで、ヨハネ、ここで駄々をこねる。

「(フィオレンチィーナ、)食べたい、食べたい、食べたい」

が、これには、花丸、ヨハネに、

「我慢するずら!!」

と、激しいツッコミ!!が、ヨハネ、ここで食い下がる。

「それじゃ、鞠莉にお願いして、もう一度、イタリアに行くか、ここにお取り寄せを・・・」

が、ここでもは花丸が(もう一度)激しいツッコミをヨハネに繰り出す。

「善子ちゃん、諦めるずら!!」

この花丸の激しいツッコミに、ヨハネ、

「そんな~~~~~!!」

と、断末魔のような言葉を発してしまう。これには、教室にいるみんな、

ハハハ

と、大笑いをしてしまった。

 むろん、このやり取りを見ていた、月、

(ヨハネちゃんも面白いけど、Aqoursと一緒にいるだけで笑いが絶えないような気がするよ!!これこそ、Aqoursのいいところ、なんだね!!)

と、思いつつも、「フィオレンチィーナ」を食べることが叶わなかったヨハネを見ては、

ハハハ

と、円満の微笑みをみんなにみせていた。

 そんな月の円満の微笑みを見ていた(月のことを見つめている)その少女はふとあることを思い出してしまう。それは・・・。

(「月ちゃん、もっと遊ぼう!!そして、大切な想い出、たくさん作ろう!!」)

それは、過去に自分が発した言葉だった、そして・・・、

(「うん、そうだね、曜ちゃん!!」)

と、円満の微笑みで元気に返事する(過去の)月の姿だった。

 これを受けてか、その少女、

(あれっ、これって、たしか、私が中3の卒業のときに月ちゃんのあいだで起きたこと、だよね・・・。たしか、私が千歌ちゃんのために静真の推薦を蹴って浦の星に入学することを決めたから月ちゃんとけんかになったときの出来事・・・だよね・・・)

と、それがその少女が中3のときに月とのあいだで起きた出来事であることを思い出した。そして、その少女はその出来事について詳しいことを思い出そうとしていたのか、

(たしか、私が静真の推薦を蹴って浦の星の進学することを月ちゃんに伝えたら、月ちゃん、その理由を私に尋ねたんだよ。それに、私、「千歌ちゃんが好きだから」って伝えたら、月ちゃん、それに怒ったんだよね。でも、私が、「千歌ちゃんが入学する浦の星は生徒が少ないし、一緒に進学する友達も少ない。だからこそ、私が千歌ちゃんと一緒に入学して友達をいっぱいつくろう」って言ったんだよね!!それに、月ちゃん、まるで親友を失ったかのように泣いちゃったんだよね)

と、そのときの様子を次々と思い出していた。さらに、

(で、私、泣いている月ちゃんにこう言ったんだよね、「ずっと、永遠に大切にしたい友達」って。で、それについて月ちゃんが尋ねてくると、私・・・、たしか・・・、あっ!!)

と、とても大切なことを思い出す。それは・・・。

(あっ、思い出した!!あのとき、私、こう言ったんだよね、「私から友達の縁を切るなんて絶対にないよ!!」「昔も、今も、これからも!!」)

その大切な言葉たちを思い出した瞬間、その少女の心の中には、いろんなものがよみがえってくる、そんな想いが生まれていた。そのいろんなものとは・・・。

(それに、月ちゃんにこんなことも言っていたんだよね、「たしかに私は月ちゃんから旅立つけど、すべてがなくなるわけじゃないんだよ!!」「私と月ちゃんが一緒にやってきたこと、築き上げたこと、これまでやってきたこと、すべて、私と月ちゃんの心の中に残っている」「そして、それはとても大切な想いたしか出、想い、とても固いキズナ、大切な宝物としてずっと残っていく」「その宝物はどんなことをしても壊れない、むしろ、その宝物を通じてずっと永遠につながっていられる!!」「ゼロなんて戻らない、むしろ、その宝物を通じて私たちは一緒にその先へ進んでいける、未来という新しい輝きに向かって!!」って・・・)

 これまで忘れていた自分にとって大切な記憶、それを思い出したその少女ヨハネの完全なオチに笑っていた、そして、その少女にとってともて大切な親友である、月、に対してこう言った。

「ねっ、月ちゃん、ちょっといいかな?」

これには、月、

「うん、いいよ。なにかな?」

と、その少女の方を向いてこう言うと、その少女はすぐに、

「月ちゃん、ちょっとこっちに来て!!」

と言っては教室の廊下に月を連れ出すと、そのまま月にこう言った。

「月ちゃん、これって、全部、月ちゃんが仕掛けたことなの?」

その少女の問いかけに、月、

「まあ、だいたい正解、かな・・・」

と、これまでの一連の流れ、新生Aqoursに関する出来事、それに自分が関わっていることをすんなり認めてしまった。

 この月の答えに、その少女は、

「でも、なんでこんなこと、したの?」

と、月に再び尋ねると、月、その少女を見て、

「それはね、今度はこの僕が曜ちゃんたちを導きたい、そう思ったからだよ、曜ちゃん!!」

と、その少女こと曜に言うと、月、自分の想いを曜に伝えた。

「僕が中3の卒業のとき、曜ちゃんがこの僕から旅立つ、そのことに悲観していた、そんな僕を曜ちゃんはこのとき未来へと導いてくれたんだよ。なら、鞠莉ちゃんたち3年生がいなくなったことで不安・心配の深き海・沼に陥っていた曜ちゃんたちを今度は僕が未来へと導いてあげよう、そう思ったからしたまでだよ!!」

この月の言葉を聞いた曜、

(なんか月ちゃんらしいね!!中3の卒業のとき、悲観していた月ちゃんを私が救いだしたように、今度は深く落ち込んでいた私たちを月ちゃんは救い出してくれた。私にとって月ちゃんはとても大切な親友であると同じように月ちゃんにとって私はとても大切な親友とみているんだね!!だからこそ、困っているときはともに助け合う、それが月ちゃんのいいところだね!!)

と、月の心意気に感心する、と、ともに、

(そして、そんな大切な想い出を忘れていたなんて、なんか、私、ダメだね!!)

と、自分のことを戒めようとしていた。中3のときに曜が月にやったことを今度は月が曜たち新生Aqoursにしてみせてあげた、そのきっかけとなった、中3の卒業のときの曜と月のやり取りの記憶、それを今まで忘れていた、とはいえ、月がその気持ちで曜たち新生Aqoursに接していたこと、それを今まで気づくことなんてできなかった、そんな自分を恥じた、そんな感じだった。

 そんな自分を戒めようとしている曜を見てか、月、

(あっ、曜ちゃん、なんか自分のことを恥じている、そんな感じになっているよ!!)

と、曜のことを心配してしまい、すぐに曜にこんなことを言った。

「曜ちゃん、なんか険しい表情になっているよ!!」

この月の言葉に、曜、

「えっ、そうなの!!」

と、驚いてしまった。自分が恥じていた曜、どうやら、それが険しい表情となって表にあらわれていたみたいだった。

 そんな曜の険しい表情を曜に伝えた、月、そんな曜に、つい、こんなことを言いだす。

「曜ちゃん、僕ね、曜ちゃんと親友でよかった、と、思っているよ!!だって、僕が悲しんでいるときは曜ちゃんが僕を助けてくれたし、逆に、曜ちゃんが苦しんでいるときはこの僕が曜ちゃんを助けてあげる。これって、親友、友達、としては当たり前、かもしれないけれど、そんなことができること自体、友達冥利に尽きる、って、僕はそう思うよ!!」

 この月の言葉に、曜、少しはみかみながらも、月の方を見てこう思った。

(たしかに月ちゃんの言う通りだね!!私が困っているときは月ちゃんが、月ちゃんが困っているときはこの私がお互いを助け合う、それこそ、友達、親友、のあるべき姿、なんだよね!!)

 そして、曜、ついにこんなことを悟ってしまう。

(だからこそ言える、月ちゃんは私にとって最高の友達だよ、千歌ちゃんたちと同じくらいにね!!)

その曜の想いからか、曜、月に対してこう答えた。

「月ちゃん、私も月ちゃんと同じ考えだよ!!私も、月ちゃんと親友でよかった、そう思っているよ!!こんな頼もしい友達が私の隣にいるなんて、本当、とても嬉しいよ!!」

 この曜の言葉を聞いた月、

(なんか、曜ちゃん、なにか吹っ切れたみたいだね!!やっぱり、元気が一番、「全力全身、ヨ~ソロ~、からの敬礼!!」、そんなことが平気で言える、とても元気な曜ちゃんが一番、だよ!!)

と、元気を取り戻した曜をみては安心しような気持ちになっていた。

 そんな元気を取り戻した曜、突然、月にこんなことを言いだす。

「でね、月ちゃん、私、大事な想い出(中3卒業時の月とのやり取り)を思い出したんだけど、あともう一つ、大事な想い出、覚えていない?」

この曜の言葉に、月、

(えっ、まだなにか別の大切な想い出、あったかな?)

と、ほかに曜との大切な想い出がなかったか思い出そうとするも、

(でも、いろいろとありすぎて思い出せない・・・)

と、これまで曜とはいろんなことをしてきたこともあり、そんなたくさんの思い出から曜が今言おうとしている想い出を引っ張りだそうも引っ張り出すことができなかった。そのためか、月、

(え~と、え~と・・・)

と、困惑してしまう。

 そんな困惑している月をみてか、曜、あるヒントを月に与えた。

「月ちゃん、初日の出のこと、覚えている?私は今でもちゃんと覚えているよ!!」

この曜のヒントに、月、あることを思い出す。

(あっ、たしか、曜ちゃんと一緒にイタリアから戻ってきたとき、そんな夢を見ていたよね。たしか・・・たしか・・・)

必死になってその夢を思い出そうとする月、しかし、思い出すことができずにいた。そんな月に足し市、曜、

「月ちゃん、今は必死になって思い出さなくてもいいよ。私だって大事な想い出を思い出すのに時間がかかったから。だからね、月ちゃん、そんなに苦しまなくてもいいよ」

と、月のことを慰めてくれた。

 とはいえ、月、

(自分にとってとても大切な想い出・・・、それを思い出せないなんて・・・、曜ちゃん、ごめん・・・)

と、心の中で曜に謝っていた。

 

 こうして、千歌たち新生Aqours、月、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たち、そして、それらを支えるあげはたち静真Aqours応援団、それらが絡み合い、Aqoursの物語として大きな進展を遂げた、そんな一日が終わった・・・はずだった。

 が、このあと、Aqoursのあるメンバーにかかってきたある電話により物語は大きくうなりをあげていく。それは、千歌たちAqoursだけではなく、聖良・理亜のSaint Snow、月、そして、木松悪斗たちをも飲み込んでいく。ただ、そんなことはこのときの月、千歌たちAqoursは知る由もなかった。

 しかし、月が忘れていた「初日の出」の想い出、それにより物語はついに最終局面へと向かっていく。それは月が追い求めていた沼田の問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、それにもつながっていく、そんな感じもしていた。

 はたして、月、千歌たちAqoursの運命はどうなっていくのか。そして、月と木松悪斗の戦いの行方は・・・。それは次回から始まる第7章後編で述べることにしよう。

 と、いうわけで、「Moon Cradle」第7章前編、これにて閉幕・・・。

                  次回 第7章後編へと続く・・・?

 

 



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Moon Cradle 第7部後編 プロローグ

Moon Cradle 第7部後編(最終章) プロローグ

 

 夢・・・、それは地球上に存在する生物の中で唯一人類が持つもの・・・。夢には2つ意味がある、「その人にとって目指すべき目標のこと」、そして、「寝ているあいだに人がみるもの」。

 そのうちの1つ、「目標」は前向きに生きる人であれば誰もが持つことができる。その「目標」に向かって人は行動する。たとえどんなことがあっても人は「目標」に向かって進むことができる。それはスクールアイドルに憧れ、自分たちだけが持つ「輝き」、それを見つけるために仲間たちと一緒に一生懸命頑張り、結果、自分たちだけが持つ「輝き」、そして、仲間たちとの「宝物」を見つけた、いや、「目標」としての「夢」を叶えた千歌のように・・・。「目標」としての「夢」、それはその人にとって自分が目指すべきもの、「道しるべ」、であると同時にその人をその「道しるべ」へと突き動かす、そんな「原動力」、ともいえる。ただし、それは良い意味でも悪い意味でもある・・・。

 対し、「人が寝ているあいだに見ているもの」、それは(今のところ)無意識のうちに起きるものである。むろん、無意識のうちに起きるものなので、人が意図的に起こすことなんてできない。しかし、人は昔から「夢」、特に縁起のいい「夢」を見るためにいろんなことをしてきた。もちろん、日本も、である。その日本においては室町の時代から七福神の乗った宝船を枕の下に敷いてから寝ることでよい「夢」を見ようとしていた。ヨーロッパでは寝る前にチーズを食べることで「夢」を見ようとしていた。そして、現代、良い「夢」を見るためのスマホアプリがあったりする。だが、科学が発達した現代においても未だに人は「夢」を完全にコントロールすることはできない。

 そんな人が未だにコントロールできない「夢」であるが、その「夢」の中身、それは人によって千差万別である。その人にとって縁起がいい「夢」であれば、「悪夢」かもしれない。もしくは、本当にたわいのないものであればその人にとって、これから先、生きていくための、いや、これからその人が進むべき道しるべを指し示す、そんなその人にとってとても重要なものだったりする。そう考えると、「夢」というのは人がコントロールができない分、玉石混交、になってしまうのも仕方がないのかもしれない。

 だが、逆に言えば、「夢」というのは人にとって無限大のパワーを与えてくれる、そんな可能性を秘めている、ともいえる。たとえ「悪夢」であったとしても、それが「正夢」になるかもしれないとしても、人はその「夢」を見ることでその「夢」をバネに、もしくは、その「正夢」を回避するために一生懸命になることもある。さらには、その「夢」を見ることで自分がこれから進むべき道を知ることができ、その「夢」で示された「道しるべ」を叶えるために自ら動くことにより自分の「夢」を叶える、だけでなく、みんなの「幸せ」すら叶えてくれる。そう考えると(眠りのあいだに見る)「夢」というのは場合によっては人の生きるための糧・・・だけでなく、別の意味での「夢」、目指すべき「目標」、それと完全に融合することで輝かしい未来へと進むことができる、そんな未知の・・・無限大のパワーを秘めている・・・といっても過言ではないかもしれない。

 そして、今、ある少女はその(寝ているあいだに見る)夢によって自分が求めていた答え、それを知るためのステージを駆け上ろうとしていた。その少女はそれとは別の「夢」によって不安・心配という深き海・沼に陥っていた少女たちを救い出すことができた。そして、今度は自分がその「夢」によってあるステージへと導かれようとしていた。

 「夢」、それは人類にとって、未知の、そして、無限大のパワーを秘めているもの。そのパワーはその少女にどんなステージへと導こうとしているのか。そのパワーはその少女が抱え込んでいる、問い、それを解いてくれるのだろうか。そのパワーはその少女にどんな未来へと導こうとしているのだろうか?

 

「Moon Cradle」最終章 第7部後編

 

ある少女の長くとも短くともいえる、そんな「夢」物語・・・、その最終章・・・

 

はじまります・・・・



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Moon Cradle 第7部後編 第1話

「・・・あともう少しで美しいもの、見れるよ!!」

この突然の言葉にその少女ははっとした。

(えっ、僕、どうしたの!?)

一瞬のことで戸惑ってしまう少女、であったが、すぐに今の状況を把握するためにその少女はまわりを見渡す。すると・・・、

(あっ、ここってあるビルの中・・・。たしか・・・、たしか・・・)

と、その少女はなにかを思い出そうとする。すると、それがどこなのかすぐに気づいた。

(あっ、たしか、ここって、昨日の〇のなかに出てきたビルの中だ・・・)

そう、その少女が今いるのは昨日自分が見ていた〇のなかに出てきたビルの中だった。

 そんな少女は次に自分の今の姿を確認する。すると・・・、

(あっ、僕、今、小さくなっている・・・。昨日と同じく僕が小3~小4のときの姿とそっくりだ・・・)

そう、昨日の〇と同じくその少女は小さくなっていた、いや、その少女の小3~小4のときの姿とそっくりだった。

 そして、その少女はあることをする、これが現実か虚像なのか、それをはっきりするために・・・。そのあることとは・・・、

(え~と、たしか、これが昨日と同じなら・・・自分の頬をつねると・・・)

そう、自分の頬をつねる。これは古来よりこれが現実か虚像・・・というよりも、夢・・・、とを判断するためのやり方だった。それを、今、その少女はしていた。

 その少女であるが、その行為により、今、自分がおかれている状況をおおかた把握した。

(痛く・・・ない・・・。と、いうことは、今、僕がいるのは、夢のなか・・・、それも、昨日と同じ夢・・・)

そう、その少女は昨日自分がみていたのと同じ夢のなかにいたのだ。昨日の夢、それは・・・、その少女は自分にとって一番大切な親友と一緒にあるビルの階段をのぼっていた、ある美しいものを見るために。そして、階段をのぼりきりあともう少しでその美しいものを見ることができる、そんな夢だった。

 であるが、昨日と同じ夢・・・」ということなら、このあとの展開も昨日と同じ・・・ということで、その少女、

(昨日と同じ夢なら展開も昨日と同じ・・・。なら、そんなにおどろくこと、ないか・・・)

と、逆に落ち着いてしまう。人というのは2回目・・・であれば初回での経験をもとにどう動けばいいかすぐにわかるものなのでそれに対してすぐに対応できるものである。さらに、今回は昨日(初回)とまったく同じ・・・ということで、このあとの展開も昨日と同じ・・・なので、その少女にとってこのあとどう動けばいいかおのずとわかってしまうものである。それはまるで、基礎の繰り返し・・・、といえるものである。そんなわけで、その少女はどんなことにもおどろかず、むしろ、逆に冷静になっていた。

 そんな少女であったが、その少女は自分の周囲をもう一度見渡すとあることに気づいた。

(あっ、このビルの中って、たしか、今もある。いや、僕がよく行くビルと一緒だ・・・)

そう、その少女は気づいてしまった、今、自分がいるビル、そのビルは現在でも存在している、というか、現実の自分もよく行っているビルであった。その少女はそのビルのことを思い出す。

(え~と、たしか・・・、たしか・・・、このビルって沼津駅の近くにあったよね・・・。それも、僕たちが今からしようとしている、新生Aqoursお披露目ライブ、その会場の近くの・・・)

 そう、その少女がいる場所、それは、現実の世界、において沼津駅の近く・・・というよりも、その少女率いるあるグループ、そして、自分たちの士気、やる気をみせるために頑張ろうとしている、そんな人たちが中心となってやろうとしている、新生Aqoursお披露目ライブ、その会場である沼津駅南口の近くにある、沼津に住む人たちにとってはとても有名なビル、であった。

 が、その少女の思考はすぐに止まる。なぜなら・・・。

(え~と、このビルの名前って、たしか・・・、たしか・・・)

必死になってそのビルの名前を思い出そうとする少女。しかし、そのビルの名前を一向に思い出すことができない。その少女にとってみればとても歯がゆいものだった。

 そんな少女であったが、そのあいだにも夢は進む。考え込んでいる少女に対しその少女の隣にいた、その少女にとって一番大切な親友はあることを言う。

「月ちゃん、どうしたの?なんか考えていたの?」

自分にとって一番大切な親友一番大切な親友の言葉を聞いたその少女はあることに気づく。

(あっ、忘れていた・・・、一番大切なこと・・・、僕の名前は、渡辺月、月、だった・・・)

そう、その少女、名を、月、といった。いや、この物語の主人公・・・というか、前回(第7章前編)では影が薄くなりがちだったこの物語の本当の主人公、月、であった。と、いうか、前回では影が薄くなったためか、自分の名前すら忘れてしまった・・・のかもしれない。

 と、いうわけで、自分の名前を思い出した月、隣にいる親友に対し、

「あっ、曜ちゃん、なんでもないよ!!ちょっと眠かったためかな・・・」

と、その親友こと幼い曜の言葉に答える。これには、曜、

「たしかにそう言えるかも。だって、まだ明け方だもんね・・・」

と、月の言葉に妙に納得する。これには、月、

(たしかに曜ちゃんの言う通り、(昨日と同じ夢なら)まだ明け方の時間帯だもんね・・・)

と、今の時間帯について考えてしまう。今から見ようとしている美しいものを見るためにはまだ空が暗い時間帯からその美しいものを見るための場所に行く必要がある。とはいえ、月にとってみればその美しいものがなにか少しもわからない・・・のであるが、昨日と同じ夢であるなら、このあとの展開を知っている月にとってみれば曜の言葉に妙に納得してしまうのは無理な話ではなかった。

 そんな月と曜であったが、自分たちの前には昨日と同じ扉があった。その扉に向かって、曜、月に対し、

「でね、月ちゃん、この扉の向こう側にあるんだよ、美しいもの!!」

と一言。しかし、月からすると・・・、

(あっ、昨日と同じセリフ・・・)

と、昨日と同じセリフを聞いたことを思い出すと、月、

(と、いうことは・・・、この扉の向こう側にはたくさんの人だかりがあるんだよね・・・)

と、昨日のことを思い出すとちょっと白けてしまった。

 と、そんな月の思いとは裏腹に曜は、

「よっこらしょ!!」

と、その扉を力いっぱい開ける。すると・・・そこには・・・、

(あっ、昨日と同じ・・・)

と、月、昨日と同じ展開にテンションが下がってしまう。そう、そこには広がっていた光景は・・・、昨日と同じたくさんの人たちが群がっている光景だった・・・。

 そんなわけで、月、わざとらしく、というか、白けてしまい、

「このどこが美しいものなの?人がいっぱいいるだけだよ・・・」

と、セリフ棒読みともとれる反応をしてしまう。むろん、この月の反応に、曜、

「月ちゃん、この人たちもその美しいものを見るために来ているんだよ!!」

と、白けている月に対し元気よく答える。まっ、昨日と同じ展開なんですけどね・・・。

 そんな曜、突然月の手を握るとそのまま強引に月を引っ張りその人混みのなかを元気よく突き進む。これには、月、人混みのなかを突き進むように引っ張られている、というわけで、

「痛い、痛いよ~!!」

と、昨日と同じ痛みを感じる。で、これには、月、

(あっ、これ、夢だよね・・・。夢って痛みを感じないはずだよね・・・。さっき、自分の頬をつまんだけど痛くなかった。でも、今は痛い・・・。なんで・・・)

と、不思議がる。たしかに今さっき自分の頬をつまんでも痛くなかった、それなのに、なんで(人混みのなかを突き進むときに)人にぶつかってしまう、そのときの痛みを今感じている、その差ってなに?、と、月がそう考えたとしても無理ではなかった。まっ、これにはついては夢と関係ない行動(頬をつまむ)については意図的に痛みを感じていなかったのに対し、夢と関係してそうな行動(人混みのなかを突き進む)の痛みは感じてしまっている・・・としか言えないのが現状であるが・・・。

 そんな不思議な感情を抱いてしまった月・・・であったが、昨日と同じく、その痛みは一瞬んで終わってしまった。そして、それと同時に月の目の前には昨日と同じ光景が広がっていた。その光景とは・・・、

「あっ、沼津の街並み・・・」

そう、沼津の街並みだった。それも昨日と同じ薄暗い・・・そんな光景だった。

 で、これには、月、

(まっ、昨日と同じならあともう少しでその美しいものが見れるんだもんね・・・)

と、妙に納得してしまう。昨日と同じなら、まだ朝の6時ごろ、なので、その美しいものが見られるまであともう少しである、そう月は思っていた。

 そんな感じをしていた月に対し、曜も、

「月ちゃん、あともう少しでこの美しい(沼津の)街並みもさらに美しくなるよ!!」

と、元気よく言うと、もうすぐその美しいものが月たちの目の前に現れることを予告する。

 そして、そのときはついに始まった。それは曜のある一言から起きた。

「あっ、もうすぐ始まるよ、沼津で一番美しい光景がね!!」

その瞬間、月の目の前に美しい光景が繰り広げられていた。これには、月、

「えっ、あっ、あっ、建物が輝き始めている・・・」

そう、沼津の街並みを構成している建物たちが次々とダイヤモンドみたいに輝き始めたのだ。これには、月、

(き、昨日も夢のなかで見たけど、この光景は何度見ても美しいよ・・・)

と、昨日と同じものを見たのにそれでも感動してしまう、そんな気持ちだった。とても美しものというのはいつ見てもとても感動してしまうものである。それが、そのときだけ、といった具合に限定された状況でした見られないものであればなおさらである。なので、月にとって見れば昨日と同じものであったとしても感動してしまうものなのである。

 で、この美しい光景に、曜、

「どう、これこそ沼津のなかで一番美しいものだよ!!」

と、月に対し言うと、月も、

「うん、そうだね!!」

と、曜の言葉に同意する。って、これも昨日の夢と同じセリフ・・・ではあるがこれについては月も同じ行動しかとれなかった・・・。

 

 そんな美しい光景が月たちの目の前で繰り広げられたあと、曜は月に対し昨日と同じセリフを言った。

「私、この美しい光景を月ちゃんに見せたかったの!!だって、月ちゃんと楽しい思い出、たくさん作りたいから!!月ちゃんと楽しいこと、もっと、もっと、やっていきたいから!!」

昨日と同じセリフ、これには、月、

(このセリフ、昨日、曜ちゃんが私に言ったのと同じセリフだけど、この僕にとってみれば、これが曜ちゃんの僕に対する想い、なんだよね・・・)

と、曜のセリフから読み取れられる曜の自分に対する想いに納得する。こんな曜の想いを感じられる、そんなセリフ、月からすればとても感動ものだった。

 そんなわけで、月もそんな曜に対し最上級の言葉をもって返した。

「僕もそう思うよ!!曜ちゃんと楽しいこと、いっぱい、いっぱい、やっていきたい!!」

 そして、曜は月に対しある言葉を送った、昨日の夢と同じように。

「あっ、忘れていた!!え~と、え~と、月ちゃん、あけましておめでとうございます!!」

この曜の言葉に、月、あることを思い出した。

(あっ、たしか、昨日の夢だと、僕が言い返した途中で現実の(高2の)曜ちゃんい起こされたんだよね・・・)

そう、昨日はこの場面で現実の曜に起こされたのだ。しかし・・・今は・・・、

(でも、ここには現実の曜ちゃんはいない。僕を起こす人なんていない・・・)

そう、寝ている月を起こす人なんてここにはいなかった。それを知っていた月、ついにある願望を叶える。

(なら、昨日、(夢のなかで)曜ちゃんに言えなかったこと、それが言えるね!!なら、僕、言うね、あの言葉を!!)

そう思った月、目の前にいる幼い曜に対しある言葉を送った。

「あっ、曜ちゃん、僕からも言うね。あけましておめでとうございます!!今年もよろしくね!!」

 

 が、この月の言葉がトリガーだった。月がその言葉を言った瞬間、

バタンッ

と、あたり一面真っ暗になってしまった。世界の大停電・・・ともいえるくらい、いや、本当になにも見えない、それくらい真っ暗になってしまった。これには、月、

(えっ、なにが起こったの?なんで真っ暗になったの?)

と、なにが起こったのかわからずパニックになるも、

(うっ、ここはしっかりしないと・・・)

と、すぐに自我を取り戻すと、すぐに、

(いったいなにが起きたんだろう・・・)

と、現状を把握するためにまわりを見渡す・・・。

 が、いくらまわりを見渡してもどこも真っ暗。この空間には月しかいなかった。これには、月、

(ここには僕だけしかいない・・・。いったい曜ちゃんはどこにいったんだろう?いや、なぜ、あの美しい光景が突然消えてしまったんだ・・・)

と、幼い曜、そして、あの美しい光景が突然消えてしまったことに不思議がってしまう。なぜ不思議なことが起こったのか、そう月は考えてしまっていた。

 だが、そんな月に対し、月がよく知っている声でこんな声が聞こえてきた。

「月ちゃん、思い出して・・・、月ちゃんにとってとても大事な想い出を・・・」

この声を聞いた月、おもわず、

「えっ、曜ちゃん、なに?」

と、その声の主に対して逆に尋ねてしまう。月、その声の主のこと、すぐにわかったようだ。この声の主、それは、曜、だった。月はこのときこの暗闇の中、自分に対して曜がなにかを言おうとしている、そう思っていたのだ。

 その月の想いが具現化したのか、月の目の前にある少女が現れた。それを見た月、おもわずある言葉を口にする。

「曜ちゃん・・・」

そう、月の目の前に現れた少女は曜だった。そして、暗闇の中で月に聞こえてきた声の主、それが月の目の前にいる曜だった。

 その曜は月に対しあることを言った。

「月ちゃん、思い出して、月ちゃんにとってとても大切な想い出を、月ちゃんが前に進むためのとても大切な想い出を・・・」

この曜の言葉に、月、

(えっ、僕、とても大切な想い出、あったのかな?中3の卒業のときの想い出以外にも大切な想い出、あったのかな?)

と、ふと考えてしまう。以前、月は夢のなかで幼い曜と会っていた。それは中三の卒業のとき、月とは違う進路に進もうとしていた曜、それによってとても大切な親友である曜と別れてしまう、もう親友ではない、そう思ってしまった月に対し曜はこれまで2人で築き上げた想い出、想い、キズナといった宝物はずっと自分の心の中に残っており、その宝物を通じてずっとつながっていることを悟らせたのである。が、それ以外になにか大切な想い出があるのか、月は必死で思い出そうとしていた。

 しかし、月、

(う~、必死に思い出そうとするも全然思い出せないよう・・・)

と、思い出すことを諦めてしまう。いろいろと思い出すもなかなかピンとこなかったみたいだった。

 そんな月に対し、幼い曜は月にあることを言った。

「月ちゃん、以前、私が月ちゃんに思い出してもらった想い出(中三の卒業のときの想い出)があったでしょ。その想い出のおかげで現実の私(高2の曜)たちは立ち直ることができたんだよ!!」

そう、この中3卒業のときの想い出、その想い出によりイタリアに旅する前に鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感などによって不安・心配という海・沼に陥ってしまった千歌たち新生Aqours1・2年6人は復活を果たしたのである。厳密にいうと、月がイタリア・ローマの「真実の口」のところで新生Aqoursの中で一番その海・沼に陥っていたルビィにこの想い出を話すとともにこの想い出の中で悟ったことを話したのだ。で、この話を聞いたルビィは一人前の少女として生まれ変わることができたのである。また、それが新生Aqours復活の原動力となったのだ。

 そして、幼い曜はこの言葉のあと、月にあることを言った。

「でも、今はそれとは別の想い出だよ!!その想い出は今の月ちゃんにとってとても大切な想い出であると同時に月ちゃんが前に進むために必要な想い出だよ!!」

この幼い曜の言葉に、月、

(う~ん、そんな大切な想い出、あったかな・・・)

と、思い出そうとするも思い出せず、しまいには、月、苦い表情になってしまう。

 そんな苦しんでいる月に対し、幼い曜、

「月ちゃん、まだ思い出すことができないみたいだね。あ~あ」

と、ちょっとがっかりするも、すぐに、

「でも、月ちゃんならきっと思い出してくれるはずだよ!!だって、今さっきまで月ちゃんが見ていた夢そのものが月ちゃんにとって大切な想い出なんだもん!!」

と、とても重要なヒントを出してきた。これには、月、

(えっ、今さっきまで見ていた夢そのものが大切な想い出!?)

と、びっくりしてしまう。だって、今さっきまで見ていた夢そのものが大切な想い出だ、というのだ。これにはさすがの月もびっくりするしかなかった。

 が、この曜の言葉に、月、あることを思い出す。

(でも、それは一理あるかも。だって、中3の卒業のときの想い出もまえに僕が見ていた夢とまったく同じだったから・・・)

そうである。この物語を最初から読んでいた方々ならご存じだろう。イタリアに行く前、ことあるごとに月は中3の卒業のときの想い出を夢のなかで再現していたのである。そして、月は新生Aqoursとのイタリアの旅の途中でその夢を通じて中3の卒業のときの想い出すべてを思い出すことになるのだ。で、その想い出をルビィに話したことによりルビィは大きく成長し、それが新生Aqours復活へと結びついたのである。なので、月、

(なら、今さっきまで見ていた夢も、今、自分が必要としている大事な想い出の一部かもしれない・・・)

と、考えるようになる。中3の卒業の想い出のときみたいに同じことが月の身に起きている、そう考えると今回も同じことが起きていると考えるのが妥当である、これには月も納得するしかなかった。

 そんな納得した表情をしていた月に対し、幼い曜、

「月ちゃんならきっと思い出すことができるはずだよ!!私、そう信じているから!!それも近いうちにね!!じゃ、またね!!」

と、言っては月の目の前からこつんと消えてしまった。むろん、これには、月、

「わっ、曜ちゃん、待って、待ってよ・・・」

と、消えてしまった幼い曜に対し何度も呼びかけるも返事なし。これには、月、

(曜ちゃん・・・)

と、突然消えてしまった幼い曜に未練を感じていた。

 が、そんなときだった。突然、

バタンッ ドテンッ

という音が聞こえてきた。これには、月、

(えっ、えっ)

と、一瞬驚くも、すぐに、

(な、なんか、目が回るよ~!!)

と、突然目の前が反転してしまう、そんな感覚に襲われてしまった。そして、その感覚に襲われてしまったあと、月の目の前はどんどん明るくなっていった・・・。

 



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Moon Cradle 第7部後編 第2話

ピヨピヨピヨピヨ

突然月の耳に目覚まし時計の音が聞こえてきた。これには、月、

(あっ、なんか聞こえてきた・・・。これって目覚まし時計の音だ・・・)

と、少しずつではあるが自分の意識が戻ってくることを感じていた。

 そして、1分後・・・。

(なんか意識は戻ってきたけど・・・、今の僕、なんか恥ずかしいんだけど・・・)

と、完全に意識が戻った月であったが、今の状況に少し苦慮する。なぜなら・・・。

(だって、なんで、僕、ベッドから落ちているの・・・)

そう、月、なんと自分のベッドから落ちていたのである。で、月が今さっきまで見ていた夢の最後に聞こえてきた音、それこそ月がベッドから落ちた時の音だった。その音が夢のなかまで響くとは・・・不思議なものである・・・。

 そんな月であったが、ふと今さっきまでみていた夢について思ったのか、

(でも、今さっきまで僕がみていた夢、なんか、本当にリアル、そう感じてしまうよ・・・)

と、今さっきまでみていた夢の感想を述べると、すぐに、

(そして、夢のなかの(幼い)曜ちゃんは言っていたよね、今さっきまでみていた夢は今の僕にとってとても大切な想い出であると同時に僕が前に進むために必要な想い出・・・。だったら、僕、その想い出を完全に思い出すよ、僕が前に進むためにもね!!)

と、夢のなかにでてきたとても大切な想い出を思い出す、そう決意した。

 が、このとき、月のスマホにあるメールが届いていた。そのメールは現実の曜から送られてきたものだった。その内容とは・・・。

「月ちゃんへ ごめん!!(浦の星分校である山の中の)学校に行くの、少し遅れてしまうよ!!なんか、鞠莉ちゃんがね、とても重要なことでAqoursのみんなと話したいんだって!!だから、ごめん!!先に学校に行ってて!!」

 

「ああ、曜ちゃん、今頃、Aqoursのみんなと何のことを話し合っているのかな・・・」

月はそんなことを言うと校舎の窓から空を見上げていた。ここは浦の星分校。曜からのメールを見た月、とても重要なことをAqoursのみんなで相談する、ということで、月は曜に「了解」のメールを返信すると、たった一人で浦の星分校に来てしまった。そして、今、ちょうど正午ごろになるのだが、月はずっと空を見上げていた。月がいる教室・・・であるが、その教室には誰一人もいなかった。じゃ、ほかのみんなは・・・というと、まず、曜たちAqoursは先述の通り、Aqoursのみんなと集まって重要なことを別の場所、というか行きつけの喫茶店「松月」で相談中、ナギたち(月を除く)静真高校生徒会は新生Aqoursお披露目ライブ「オペレーション・オブ・New Aqours」に出店してくれる団体・お店・企業、それにライブを支援してくれる自治体との打ち合わせ、そして、

「これくらいでいいかな?」

と、あげはが言うと、むつから、

「うん、いいよ!!この大きさで木材を切断しようか・・・」

と、あげはたちに同意する、そう、よいつむトリオたち浦の星のみんなとあげはたち静真Aqours応援団はここ浦の星分校でライブに使うステージなどを作っていたのだ。あの壮大なライブステージ・・・のイメージ図通りにするため、浦の星のみんなと静真Aqours応援団は総力を挙げてステージを作ろうとしていた・・・のだが、あまりに壮大なイメージ図だったため、まずは土台を作り、そのうえでどのように舞台装置などを設置すればいいのか1つずつ確認しながらステージ作成を進めていた。

 で、肝心の月はというと・・・、今のところ、なにもすることがなかった。お披露目ライブのプロデューサーとして手を挙げた月・・・であったが、プロデューサーに決まったとはいえすぐにすることなんてなかった。大まかなライブ会場の見取り図はすでにナギたち静真高校生徒会が作成していたし、外部との交渉もナギたちだけで十分だった。一方、内側、ライブに使うステージなどの準備は浦の星のみんなと静真Aqours応援団がいるので大丈夫だった。じゃ、月は・・・というと、当面のあいだは千歌たち新生Aqours(1・2年)のライブに向けた練習のサポートと全体的な進行確認、もし、ナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星の生徒たち、あげはたち静真Aqours応援団では対処できないような問題が発生したときの控え、などをすることになっていた。が、その新生Aqoursは、今、「松月」で話し合い中、全体的な遅れも発生していない、これといった大きな問題も起きていない・・・と、完全に開店休業中・・・だった。そんなわけで、月、ときどき、校庭にいるむつやあげはたちを見ては空を見上げていた・・・というわけである。

 そんな月であったが、空を見上げては、

(ああ、今やることがないからとても暇だよ・・・)

と、あまりの暇さかげんにさすがの月もだらだらするしかなかった。

 が、そんな暇にしている月の今の状況に突然終止符が打たれようとしていた。

「ああ、暇だな・・・」

と、暇をもてあましていた月・・・であったが、突然、月のポケットから、

トゥルルル

と、けたたましい音が聞こえてくる。で、これには、月、

「えっ、なんで「Hop?Step?Non Stop!?」が聞こえてくるわけ!?」

と、驚いてしまう。が、月、すぐにあることに気づく。

「あっ、スマホの着信音、「Hop?Step?Non Stop!?」にしていたんだった・・・」

そう、月、自分のスマホの着信音、「Hop?Step?Non Stop!?」にしていたのだった。あのローマ・スペイン広場でのAqoursのライブで直接「Hop?Step?Non Stop!?」を聞いて以降、月はこの曲をとても気に入っていたのだった。そのため、月はライブ終了後、わざわざ鞠莉にお願いしてこの曲の音源を入手、それを自分のスマホの着信音にしていたのだった。

 で、月、突然、ポケットから聞こえてきた音の正体がわかったからか、

「ふ~、これで一安心だ・・・」

と、落ち着くも、

「って、そうじゃない!!」

と、とても大事なことに気づく。そう、自分のポケットに入れてあったスマホの着信音が鳴っているのである。それもその着信音は月にとってとても大切な人からの電話を指し示すものだった。それは・・・。

「よ、曜ちゃんから電話だ!!はやくでないと!!」

と、月、珍しく慌ててしまう。そう、この着信音は月にとって一番の親友である曜からの電話の着信音だった。その曜は今さっきまで喫茶店「松月」でAqoursメンバー全員と話し合い中・・・。なので、なんでその曜から電話とは・・・。これには、月、

(なんか重要なことが決まったのかな?いや、曜ちゃんがこの僕に急いで電話をしてくるのだから、とても重要なことかもしれない!!もしかして、(μ'sと同じく)突然解散?じゃないよね・・・)

と、心ここにあらずの状態に・・・。とても心配になる月、そのためか、

「ふわっ、と、ととと・・・」

と、自分のポケットからスマホを取り出すも手を滑らせてしまいスマホが落ちてしまう。が、月、慌ててそれをキャッチすると、そのまま、

「はい、渡辺月ですが・・・」

と、通話ボタンを押して電話にでる。すると・・・、

「あっ、月ちゃん、大至急、喫茶「松月」に来て!!お願い!!」

と、月のスマホから慌てたような曜の声が聞こえてくる。これには、月、

「えっ、「松月」?僕、その「松月」に行くの?」

と、突然の曜のお願いにポカンとなってしまった・・・。

 

「う~、おいしい!!」

月は目の前にあるみかん味のアイスをほおばりながら食べていた。これには、ヨハネ、

「ごくり・・・」

と、つばを飲み込みながら見ていた。で、これに気づいた月、

「あっ、善子ちゃん、(みかん味の)アイス、食べる?」

と、ヨハネに自分のアイスを食べるか尋ねてみるも、ヨハネ、

「そ、そんなもん、いらんわ!!」

と、一蹴してしまう。ちなみに、ヨハネ、嫌いな食べ物はみかんだったりする。そのため、今日Aqoursメンバー全員が「松月」に集まったときもヨハネ以外のAqoursメンバー全員みかんジュースだったのに対し、ヨハネ1人だけ、「水!!(ただし、霊峰富士山の山中からくみ上げられたミネラルウォーター!!)」だった。あと、これはお決まりであるが・・・、

「あと、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」

と、いう言葉もヨハネは忘れていなかった・・・。

 と、そんなことはおいといて、(「おいとかないで!!」byヨハネ)、ここは喫茶「松月」、今さっきまでAqoursメンバー全員でとても重要な話し合いをしていたのだ。そして、その後、月は(Aqoursメンバーである)曜から「松月」に来るように言われたのである。で、月、急いで「松月」に来ると、

「急いできたから体が火照ってきたでしょ!!」

と、曜のおごりでみかん味のアイスをごちそうになっていたのである。

 で、みかん味のアイスを平らげた月は月を「松月」に呼んだ曜になんで自分がここに呼ばれたのか尋ねてみた。

「ねっ、なんかあったの?この僕が呼ばれたんだから、なんか重要なことが起こったんでしょ!!」

これには、曜、

「それはね、私たちAqoursから月ちゃんにお願いあるの・・・」

と、言うと、続けて、Aqoursのまとめ役であるダイヤから月にあるお願いがなされた。

「月さん、あなたにお願いがあります。私たち(今の)Aqoursにとって本当に最後のライブ、そのプロデューサーになって欲しいのです」

このダイヤのお願いに、月、

「えっ、この僕が(今の)Aqours最後のライブのプロデューサーに・・・」

と、あまりのスケールのでかさ・・・というより、ダイヤたち3年生3人を含めた(今の)Aqours最後のライブ、そのプロデューサーになってほしいとお願いをなされたことに、月、

(えっ、えっ、「最後」って・・・とても大切じゃ・・・)

と、唖然となるしかなかった。

 が、月、あることに気づく。

(あれっ、たしか、ダイヤさんたち3年生3人を含めた(今の)Aqours最後のライブって、この前のローマ・スペイン広場じゃなかったかな・・・)

そう、ダイヤたち3年生3人を含めた今のAqours、その最後のライブ、それはローマ・スペイン広場でのライブ、というのが今の月の認識・・・というか月を含めたまわりの関係者の認識だった。が、今、そのAqoursメンバーであるダイヤの口から「本当に最後のライブ」と言われたのだ。これには、月、

「あの~、ダイヤさん、1つお聞きします。たしか、(ダイヤたち3年生3人を含めた)Aqoursの最後のライブってこの前のスペイン広場でのライブ、ですよね・・・。それが終わった今、なんで「(今の)Aqours最後のライブ」って言うのかちょっと疑問で・・・」

と、ダイヤに対し今のダイヤの言葉の意図を尋ねてみる。

 すると、ダイヤはあることを言いだしてきたのだ。

「たしかに、今まではスペイン広場でのライブが(今の)Aqours最後のライブ・・・のはずでした。が、昨日の夜になって状況は一変したのです。ある少女の夢を叶えるため、私たちAqoursは今再び立ち上がりました、今度こそ(今の)Aqours本当のライブ、「ラブライブ!決勝延長戦」、それをするために!!」

 このダイヤの言葉に、月、

「ラブライブ!決勝延長戦・・・」

と、ダイヤの言葉を反芻すると、ダイヤは月に対してこう言った。

「そうです、「ラブライブ!決勝延長戦」、それを行うために!!」

その後、ダイヤは「ラブライブ!決勝延長戦」を行う、それにいきつくまでのことの顛末を月に話し始めた。

 

 ときは昨日の夕方にまでさかのぼる。沼津駅で千歌たち(新生)Aqours1・2年と別れたダイヤ、鞠莉、果南の3人は鞠莉の(沼津での)実家である「ホテル小原沼津淡島」の鞠莉の部屋に戻っていた。

 そして・・・、

「でも、まさか鞠莉‘sママからこんなプレゼントをされるなんて意外だな・・・」

と、果南は夕日がみえる鞠莉の部屋のベランダに出ては、ダイヤ、鞠莉に向かって言うと、ダイヤも、

「たしかにそうですわね。鞠莉‘sママさんから「ホテル小原沼津淡島」の2週間無料宿泊券をもらうなんて・・・」

と、まさかの鞠莉‘sママからのプレゼントに驚いていた。それには、鞠莉、

「でも、これが(自分の)ママからのせめてものatonement(罪滅ぼし)なんですからね!!」

と、元気よく応えた。たしかに鞠莉‘sママからのプレゼントは鞠莉‘sママからすればせめてもの罪滅ぼしとして果南とダイヤに送ったものだった。本当ならイタリアで3人仲良く卒業旅行・・・のはずだったのに、鞠莉‘sママ、鞠莉が当事者だったとはいえ、鞠莉を自分の思い通りに動かすための駒にしようとしていたのだ、それを嫌がった鞠莉が卒業旅行と称して愛の逃避行?をしてしまったのである、本来、3人最後の楽しい旅行になるはずが鞠莉‘sママによってすべてが台無しになってしまった・・・、あのスペイン広場でのAqoursのライブを見て心を入れ替えた鞠莉‘sママ、それを反省したのか、それならばと、このイタリア旅行の代わりにとダイヤ、果南に対し鞠莉が住む「ホテル小原沼津淡島」の2週間無料宿泊券を送ることで、鞠莉、ダイヤ、果南、3人と最後の沼津のひと時を過ごしてもらいたい、そう思ってした親心だったのかもしれない、このプレゼントは・・・。ちなみに、鞠莉、ダイヤ、果南は2週間後に行われる千歌たち(新生)Aqoursのお披露目ライブを見たあと、果南はダイビングの資格が取得できる学校のあるアメリカへ、ダイヤは進学先である東京へ、鞠莉も進学先であるイタリアへそれぞれ旅立つことになっていた。なので、この2週間は3人にとって一緒に過ごすことができる最後の時間となっていた。その意味でも、鞠莉‘sママ、Good Jobである。

 そんなわけで、鞠莉、

「マリーとしてはvery dislike(とても嫌い)なママでしたが、果南、ダイヤとこんなtime(時間)を作ってくれたことにはvery thank you(とても感謝)で~す!!」

と、自分の母親に感謝の言葉を述べると、ダイヤも、

「たしかにそうですわね」

と、鞠莉に同意した。

 そんな夕日をみながらホテルから望む景色を楽しんでいた、鞠莉、ダイヤ、果南の3人だったが、鞠莉が突然こんなことを言いだしてきた。

「それにしても、新しい学校(静真)がそんなことになっているとはね・・・」

そう、鞠莉たち、千歌たち浦の星の生徒1・2年生が編入する静真の現状について憂いたのである。まさか浦の星分校を作ってそおに浦の星の生徒たちを通わせようとしているとは・・・、これには、ダイヤ、果南も、このことについてはそのことを知ったときに千歌たちに対し「事前に事情を知っていたら助けたかもしれない」ことを伝えるも、その千歌たちからは、

「私たちがなんとかするから鞠莉ちゃんたちは見ていてね」

と、沼津駅で別れたとき、このときまで今の静真の現状を知らなかった鞠莉たち3人にその現状を教えるとともの釘を刺されたのだ。これには、果南も、

「(あとは)自分たちだけでなんとかしなかやだもんね!!」

と、今にでも千歌を助けたい、そんな仲間のピンチに絶対駆け付けたい、そんな成果の鞠莉に先に釘を刺してしまった。

 しかし、その鞠莉・・・であったが、果南の言葉に、

「つまんない!!なにもできないなんて!!」

と、千歌たちを助けたいもなにもできない自分たちのことを歯がゆく思って言うも、ダイヤ、果南から、

「仕方ないでしょ!!」(ダイヤ)

「千歌からも「このライブに関してはみていてほしい」って言われたし・・・」(果南)

と、鞠莉にどんどん釘を刺してしまうことに・・・。

 が、とうの鞠莉はというと・・・、

(ダイヤ、果南、この静真の現状には裏があるのですよ!!この静真の現状の裏には、静真の大スポンサーである木松悪斗の悪だくみがあるので~す!!)

と、この静真の現状に潜む陰謀について千歌たちのことを心配していた。沼津駅で千歌たちと別れる前、(当たり前だが)千歌たちから今の静真の現状、そして、それが「(部活動に対する)士気の低い浦の星の生徒が(部活動に対する)士気が高い静真の部活動に入ると(士気低下・対立などにより)静真の部活動に悪影響がでる」という声が多くの静真の生徒・保護者たちからでているために起きている、そう聞かされたため、ダイヤ、果南としては今の静真の現状は「その理由でこういった現状になっている」と理解してしまった。

 が、鞠莉はそれ以外にもこの静真の現状について千歌たち以外のところから別の情報が与えられいた。それは鞠莉‘sママからの情報だった。その鞠莉‘sママからの情報であるが、

「マリー、今、あの娘たち(千歌たち新生Aqours1・2年)は大変な状況に陥っていま~す!!どうやら新しく編入するスクール(静真)、どうやら、分校になるみたいで~す!!でも、その陰に木松悪斗というとてもダーク(悪)な存在がありま~す!!その存在に注意しなさ~い!!」

というメールを、鞠莉‘sママ、旅先イタリアから帰国しようとしていた鞠莉に送っていたのである。さらに・・・、

「あとね、そのスクール(静真)にはあの娘たち(千歌たち)をストロング(強力)なサポーター(味方)がいま~す!!ツキ、ワタナベ、そのスクールでプレジデント(生徒会長)してま~す!!もし、なんかあったら、その子(月)を頼るといいで~す!!その子(月)、私たち(小原財閥)も目星をつけている将来有望な子、ですからね~!!」

ともそのメールには書かれていた・・・。

 この鞠莉‘sママのメールで、今、千歌たち新生Aqours、よいつむトリオら浦の星の生徒たちのおかれている状況を把握した鞠莉・・・であったが、そのことを知ったところですでに浦の星を卒業した自分たち3年生が自ら動くことなんてできず、むしろ、千歌たち1・2年にすべてを任せるしかない、そう思っていたのか、鞠莉、

(う~、なんとかしたいよ・・・。マリーたちも千歌っちたちをヘルプ(助け)たいよ~!!)

と、心のなかでただただうなだれるしかなかった。

 が、そんな鞠莉に、突然、緊急電がはいる。突然、鞠莉のポケットから、

ツルツルツル

といった大きな音が聞こえてくる。これには、鞠莉、

(はいはい、待ってで~す!!)

と、自分のポケットから自分のスマホを取り出し電話にでる。

 そして、それから数秒後、突然、鞠莉、慌てたような表情になると、

「What!!なんですって!!」

という大声をあげてしまう。

 その後、鞠莉、ダイヤ、果南、そして、鞠莉の電話の相手方といろんなやり取りをしたあと、鞠莉はこんなことを言いだしてしまう。

「すぐに千歌っちたちにコンタクト(連絡)して!!緊急Aqours全体会議、オープン(開催)で~す!!」



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Moon Cradle 第7部後編 第3話

 で、翌日、いつもの喫茶店「松月」ではAqoursメンバーによって緊急Aqours全体会議が行われていた。会議が始まってまもなく、開口一番、鞠莉が、

「実はですね・・・」

と、昨日鞠莉にかかってきた電話のことをAqoursメンバーみんなに話すとすぐに、

「え~」「理亜ちゃんが」「Aqoursに入る!!」

という大声が店内にこだましてしまった。なんと、あのSaint Snowの理亜がAqoursに入る、というのだ。実は鞠莉が昨日ホテルのベランダにてとった電話の内容、それこそが、理亜のAqoursの加入、だったのだ。で、そのときの流れを簡単にまとめておく。

 突然鞠莉にかかってきた電話、その着信音を聞いた鞠莉、

(はいはい、待っててで~す!!)

と、思っては自分のポケットからスマホを取り出し電話にでる。すると、その電話口から、

「あの~、小原鞠莉さんの携帯でお間違いないでしょうか?」

と、どこかで聞いたことがある、いや、自分たちがよく知る人物の声であることに気づいた鞠莉、すぐに、

「イエ~ス!!そうです!!マリーの携帯ですよ!!」

と元気よく言うと、その電話口からその人物が自分の名前を名乗りだした。

「鞠莉さん、私です!!聖良、鹿角聖良です・・・」

そう、鞠莉の電話の相手、なんと、理亜と同じくSaint Snowのメンバーであり理亜の姉である聖良であった。聖良は妹の理亜といっしょにスクールアイドルユニットSaint Snowを結成した・・・のだが、その聖良も鞠莉たちと同じく3年生、というわけで、高校を無事に卒業した身であった。そんな聖良から突然の電話、というわけで、鞠莉、

「聖良、このマリーになんか御用でしょうか?」

と、聖良になんで鞠莉に電話をかけてきたのか尋ねてきた。

 すると、聖良、突然、こんなことを言いだしてきた。

「鞠莉さん、お願いです、理亜を、鹿角理亜を、Aqoursに、Aqoursにいれてください!!」

この聖良の突然の発言に、鞠莉、

(えっ、なんて・・・)

と、びっくりするも、すぐに、

「What!!なんですって!!」

と、驚きの声をあげたのだ。無理もない、まさかあの理亜がAqoursにはいる、なんてだれも予想だにもしていなかったことであった。むろん、それはあのトリックスターである鞠莉からしても寝耳に水、であった。

 そんわけで、鞠莉、すぐに、

「果南、ダイヤ、大変で~す!!実は・・・」

と、果南とダイヤに対し聖良から理亜をAqoursに入れたいということを言われていることを伝えると、

「えっ、それ、本当!?」(果南)

「これは鞠莉さんだけで決めるわけにもいけませんわ!!ここは聖良さんから詳しい事情を聞く必要がありますわね!!」(ダイヤ)

と、果南、ダイヤともに驚くも、すぐに詳しいことを聖良から聞くことを決める3人、すぐに電話をスピーカーモードにすると、鞠莉たち3人と聖良、緊急3年生会議が始まった。

 まず、聖良はここまで至った事情を説明する。

「実はですね・・・」

と、ここで簡単に聖良が鞠莉たち3人に話したことをまとめてみた。理亜はあのAqoursとの合同ユニット、Saint Aqours Snow、のクリスマスライブのあと、自分だけのスクールアイドルユニットを有志と一緒に結成したのだが、とある理由で次々のメンバーが脱退する状態に陥っていたのだ。で、これを見ていた聖良、ちょっとした息抜きが必要、ということで、妹の理亜を連れて東京へと卒業旅行に行ったのである。が、このとき、千歌から自分たち新生Aqoursのことで相談したい、ということで、沼津まで足を延ばした、のだが、そこで目にしたのが、ラブライブ!優勝を果たしたはずのAqoursのみっともない姿であった。これにはさすがの理亜も激怒してしまった。その後、函館に戻った聖良と理亜だったが、またもや同じ理由で理亜作ったユニットから次々とメンバーが脱退してしまう。その脱退したメンバーのなかには聖良としたは理亜以外で一番仲がよかった親友でありSaint Snowの裏方として聖良のよき相談相手であった、(まわりの人たちからは)Saint Snow第三のメンバー、と言われていた女子生徒もいた、が、その女子生徒もその理亜のユニットから脱退すると、すぐに最後まで残っていたメンバーすらも脱退、結果、またもや理亜たった一人になってしまった。それでも理亜はたった一人になったとしても自分が追い求めている、姉聖良と一緒に果たすことができなかった、ラブライブ!優勝を目指して苦しみながらも一生懸命頑張っていた、それはまるで自分のせいでラブライブ!冬季大会決勝に進めなかった、そのことを悔いているかのように・・・。そんなまるで自分のことを悔いているかのように苦しみながら頑張っている理亜の姿を見て、聖良、そんな苦しみから解放させたいのか、それならばと、その理亜を静真に転校させてAqoursの新メンバーとしてむかえたほうがいいのではと思った次第、ということだった。

 が、この聖良からの説明を聞いたダイヤ、とても大事なことを聖良に尋ねた。

「で、聖良さん、このこと、理亜さんは承諾しているのですか?」

たしかにそうである。いくら聖良がこんなことを言っても肝心の理亜から承諾を得ていないのであればそれは理亜にとって不幸、ともいえた。理亜がそれに納得しているのであれば考慮できるであろう。しかし、理亜がこのことに納得していない、もしくは、全く知らない、のであればそれは理亜の気持ちに反することになる。

 で、聖良の答えはというと・・・、

「いえ、まだ理亜にはまだ話しておりません。これはまだ私としての案のままです・・・」

と、まだ理亜から承諾を得ていない、いや、まだ話していないこと、とのことだった。これには、ダイヤ、

「それだと話にもなりませ・・・」

と、そこで話を打ち切ろうとするも、突然、聖良、

「ダイヤ、お願いです!!理亜を、Aqoursに入れてあげて!!そうじゃないと、理亜、きっと壊れてしまう・・・」

と、あのいつでも冷静であるはずの聖良が大事な妹のためにと必死になって頼み込んでしまう。そんな妹想いの聖良の姿にさすがのダイヤも、

「・・・」

と、つい無言になってしまった。

 が、これでは埒が明かない、というわけで、鞠莉、

(このままだと大変なことになりますね・・・。ならば!!)

と、困り果てているダイヤと必死になってダイヤに頼み込んでいる聖良に対して大声で一言!!

「セーラ、落ち着いて!!まずはこのことを千歌っちたちAqoursのほかのメンバーにも相談してみるから、ちょっとキープ(待って)!!」

これにはさすがの聖良も、

「た、たしかにそうですね!!まずは理亜を受け入れる側、Aqoursのみなさんのなかで話し合う必要がありますね・・・」

と、鞠莉の言うことに納得すると、

「それではAqoursのみなさんの意見がまとまり次第私から理亜に話すことにしましょう」

と、これからの段取りを聖良は勝手に決めてしまった。しかし、この段取りについては、鞠莉、果南、ダイヤ、ともに異論ななく、まずはAqoursメンバー全員でこのことについて話し合うこととなり、聖良との電話はここで終わってしまった。

 その後、

「でも、あのいつも冷静な聖良さんの慌てよう、かなり切羽詰まったものだったんでしょうね・・・」

と、聖良の慌てぶりにダイヤ、しみじみに言うも、これには、果南、鞠莉、

「それ、あのダイヤが言うこと?」(果南)

「シスター愛はどこにいってもsame(同じ)なんですね~!!」(鞠莉)

と、ダイヤの言葉になんかひっかるものがあったみたいだった。このとき、鞠莉、

(セーラの妹想い、それはダイヤの妹ルビィに対する想いと同じで~す!!)

とつい思ってしまった。聖良の妹理亜に対する想いと同様にダイヤも妹ルビィに対する想いはとても強いものだったりする。だからこそ、あの冷静な聖良が妹である理亜のことを心配して切羽詰まる想いでこんな行動にでてしまった、と同様に、いつも冷静なダイヤも妹ルビィのことを心配してしまったためにときどき暴走してしまうが多かった。まっ、そのときはあの完璧超人であるダイアがものの見事にポンコツとなり果てるのであるが・・・、ただ、今の鞠莉の発言に、ダイヤ、

「?」

と、ちょっと不思議がってしまった。

 まっ、そんなことは置いといて、果南、冷静にこんなことを言いだしてきた。

「で、その話し合いだけど、すぐにでもAqoursのみんなに電話したほうがいい?」

これには、鞠莉、

「えっ?」

と、ちょっぴりびっくりするも、ダイヤからも、

「鞠莉さん、そうですよ!!理亜さんのAqours加入、それを審議するための話し合い、それをするための場を設けないと・・・」

と言うと、鞠莉、

「えっ、私、そんなこと、言った?」

と、自分の発言について疑問になるも、ダイヤ、

「たしかに先ほどそのことを言っておりましたわ!!「Aqours(のほかの)メンバーにも相談してみる」って言っておりましたわ!!」

と、鞠莉のこれまでの発言を指摘すると、鞠莉、

「Oh NO!!たしかにそうでしたね!!つい、say(言って)しまったので~す!!」

と、自分の発言に後悔してしまうもすぐに、

(うっ、たしかにこのマリーが言ったことでしたわね~。でも、このマリー、小原家の跡取りとしても二言はありませんわ!!こうなったら、最後の最後まできちんと話し合うまでですわ!!)

と、思ったのか、大声でダイヤと果南に命令した。

「すぐに千歌っちたちにコンタクト(連絡)して!!緊急Aqours全体会議、オープン(開催)で~す!!」

 

 その後、ルビィ、花丸、ヨハネ、曜とは連絡が取れたものの肝心の千歌(+梨子)はというと・・・、なんと、千歌のおっちょこちょいで千歌のスマホのバッテリーが切れていたため、千歌の実家である旅館の固定電話経由でなんとか千歌と梨子に連絡を取ることに成功した(ちなみに、千歌の言い訳になるのですが、「今度のお披露目ライブに向けての新曲を必死に作詞していたため」がスマホ充電忘れにつながったそうですが、たしかにその通りでした。千歌、やることをみつけるとそれに対して寝る間を惜しんで必死になってやるためにまわりがみえなくなるくせがあり今回もそれが発揮されたみたいです・・・)。そんなわけで、千歌に連絡が取れたのが真夜中・・・ということもあり、話し合いは翌日の朝行われることとなった。

 

 翌日、いつもの行きつけの喫茶店「松月」に集まったAqoursメンバーたち、そこで鞠莉から、

「(メールに書いてあった通り)セーラから、理亜をAqoursに入れたい、って、言われたので~す!!」

と、Aqoursメンバー全員に向かって言うと、その提案に驚いてか、

「え~」「理亜ちゃんが」「Aqoursに入る!!」

という仰天の声が店内に響き渡ってしまった。

 で、これには果南から今のうちに転校手続きをすれば理亜は晴れてAqoursの一員になれる、その方が理亜ちゃんにとってはなじみやすい、といった説明をする。これは、昨日の夜、Aqoursメンバー全員と連絡が取れたあと、(電話で)聖良、果南、ダイヤ、鞠莉が一緒になって話し合い、もし、理亜がAqoursのいる静真に転校するのであればどうすればいいのかシミュレーションしてはじき出されたものだった。

 が、このとき、ルビィ、このことについて、

(えっ、理亜ちゃん、本当にAqoursに入るつもりなの?それが理亜ちゃんの意思なの?)

と、つい疑問に思ってしまう。ただ、鞠莉たちから「理亜がAqoursに入る」ことを聞かされただけではそれが理亜の真意なのかわからなかったからだ。

 そこで、ルビィは鞠莉たちにあることを尋ねてみた。

「理亜ちゃんはそうしたいと言っているの?」

これには、鞠莉、

「いいえ、まだ(聖良は理亜にそのことを)話してないみたい・・・」

と、これが理亜の真意ではないことを告げた。ただ、聖良としてはこれが理亜にとって一番いい方法であること、でも、まずは千歌たち新生Aqours(1・2年)にも相談したほうがいい、とも鞠莉たちは千歌たちにそう告げた。

 この鞠莉たち3年生の言葉に、

(理亜ちゃんがAqoursに入るって勝手に決めていいのかな・・・)(曜)

(それって理亜ちゃんの心次第だけど、聖良さんの言うことも一理あるし・・・)(梨子)

と、Aqoursメンバーそれぞれ思うところがあった。また、それに関することの顛末については事前にメールで伝えられたため、

(同じラブライブ!で頑張った仲だし、困ったときは助け合い、とも言うしね・・・)(千歌)

と、聖良の言葉に同意してしまうメンバーもいた。そのためか、

「いいんじゃない、めんどくさそうだけど・・・」(ヨハネ)

と、聖良の想いを受け取ったのか理亜のAqours加入を認める論調が強くなってしまう。

 が、そこに待ったをかけたメンバーがいた!!

「だめだよ!!」

その言葉を言ったメンバーのほうをみんな向く。そのメンバーとは・・・、ルビィ、だった。このとき、ルビィ、

(確かに聖良さんの言うことも一理あるけど、とても大切なこと、忘れているよ!!それはね、理亜ちゃんの気持ち、だよ!!聖良さん、とても大切にしている理亜ちゃんの気持ち、それを確かめもせずに勝手に物事を進めているよ!!)

と、理亜の気持ちに関係なく、ただ理亜のためだと思って勝手に理亜のAqours加入を進めようとしている、そんな聖良のことを考えると、

「理亜ちゃん、そんなこと、絶対に望んでいないと思う!!」

と、聖良の案に反対してしまう。さらには、

「Aqoursに入っても(理亜ちゃんの)悩みは解決しないと思う」

と、断言してしまった。

 これには、鞠莉、その真意をルビィに問い直すと、ルビィは断言した理由を語った。

「だって、理亜ちゃんは(理亜ちゃんにとって大事な)Saint Snowを終わりにして新しいグループを始めるんだよ!!お姉ちゃんと続けたSaint Snowを大切にしたいから、新しいグループを始めるんだよ!!それって(理亜ちゃんが)Aqoursに入ることじゃないと思うよ!!」

これにはルビィのある想いからのものだった。それは・・・。

(理亜ちゃんにとってSaint Snowは大好きなお姉ちゃんである聖良さんとの大事な想い出が詰まったもの!!それって理亜ちゃんにとって(聖良さんと同じく)大事な宝物なんだよ!!それを理亜ちゃんは大事にしたいから、Saint Snowを終わりにして新しいグループを始めたんだよ!!それがうまくいかなかったから、それなら、これまで一緒に頑張ってきたルビィたちAqoursに入る、それって理亜ちゃんの気持ちをないがしろにしているんじゃないかな・・・)

そう、理亜はとても大切な想い出が詰まったSaint Snowという宝物を守るためにSaint Snowを終わりにして新しいグループを作ったのだそれがうまくいっていない、ただそれしか知らない聖良からすれば、ただうまくいっていない、それでは理亜が不憫に感じる、そう思って聖良はSaint Snowのこと、理亜のことをよく知っているAqoursに入らせようとしている、けれど、それは理亜の気持ちを汲み取ろうとせず理亜に相談もせずに勝手に決めた、そんな聖良の暴走ではないか、そういう風に考えているのかルビィはちょっとご立腹だった。

 そして、ルビィはこの前のスペイン広場でのライブで感じとったこと・・・というよりも月から教えてもらったことを口にした。

「お姉ちゃんたちはいなくなるんじゃないんだって!!同じステージに立っていなくても一緒にいるんだって!!」

そう、ルビィは月から「たとえ離れ離れになっても気にすることはない。その人と築いた想い出、想い、キズナ、それが宝物となって心の中にずっと残っている、その宝物を通じてずっとつながっている」、そのことを教えられ、ルビィはそれをスペイン広場でのライブで実感したのだった。そのことをもう1度この場でみんなに伝えようとルビィはしていたのだ。

 そして、このルビィの言葉のあと、ルビィは今の理亜の現状について語った。

「ただ、たとえ、聖良さんが卒業しても、聖良さんとの想い出、想い、キズナ、そんな宝物は理亜ちゃんにの心のなかにずっとあってそれはなくなったりしない、理亜ちゃんはそのことに気づいていないんだと思う!!」

このとき、ルビィはこう思っていた、今の理亜はイタリアに行く前の自分たちと一緒であると、理亜は、今、聖良と一緒にSaint Snowを始める前、ゼロに戻った、そう無意識に思っている、けれど、仲間たちがいる、月がいる、そんなルビィとは対照的に理亜は相談できる仲間なんていない、卒業してしまった姉の聖良に今自分で起きていることを理亜は相談できない、また、人見知りの理亜の性格上、まわりの誰とでも相談することもできない、そのため、理亜はとても大事なこと、大事な宝物のことにも気づくこともできない、と・・・。

 そして、ルビィはそれらを踏まえた上でこんなことを言いだした。

「いなくなった聖良さんの分をどうにかしなきゃって、(そして、)理亜ちゃんはSaint Snowと同じものを、Saint Snowと同じ輝きのものを作らなきゃって、そうでなければ聖良さんに申し訳ない、って、思っているんだよ!!」

このときのルビィの想い・・・であるが、

(そんな理亜ちゃんだからルビィはわかるよ!!理亜ちゃんは焦っている、自分の失敗によってSaint Snowを終わりにした、そんなうしろめたさがあるから、理亜ちゃん、そのために失った聖良さんの分まで頑張ろうとしている。自分のミスで最初に戻った、ゼロに戻った、そう無意識のうちに思ってしまった理亜ちゃん、そのために、失った聖良さんの分を埋めようと必死になって頑張っている!!そして、Saint Snowと同じものを、同じ輝きのものをつくらなきゃって思っている、そうすることで聖良さんへの罪滅ぼしをしようとしている!!)と・・・。そう、理亜はラブライブ!冬季大会北海道最終予選での自分のミス、それによって、姉聖良との大事な宝物であったSaint Snowを終わらせてしまった、そのことにうしろめたさを感じていたのだ。これにより、なにもかもが元に戻った、ゼロに戻った、と、理亜は無意識のうちに思ってしまい、その失った聖良の分まで必死になって頑張ろうとしていたのだ。が、それが理亜が作った新しいグループ、そのメンバーの離反へとつながっていたのだが、それでも、理亜はその離反につながった本質に気づくことなく今日も必死になって頑張ろうとしていた、なぜなら、それによってSaint Snowと同じもの、同じ輝きを取り戻せると信じているから・・・。

 そして、ルビィはある言葉をもって自分の想いを締めた。

「お姉ちゃんと果たせなかったラブライブ!優勝を絶対に果たさなきゃ、聖良さんに申し訳ないって・・・」

そう、このとき、ルビィは理亜の想いをこう悟っていた。それは・・・。

(そして、あの理亜ちゃんが必死になっている理由、それは、「ラブライブ!優勝」!!それを理亜ちゃんは目指している!!自分のせいでその夢を、姉聖良さんと一緒に目指していた夢、それを自分のせいで打ち砕いてしまった、そんなうしろめたさのせいで理亜ちゃんは、今、必死に頑張ろうとしている。自分のせいで失った聖良さんの分まで頑張ろうとしている、いや、ぽっかり開いた聖良さんの穴を必死になって塞ごうとしている!!でも、それって、理亜ちゃんの心のなかにあった聖良さんというとても大切な存在、それがゼロに戻った、もとに戻った、そう無意識のうち感じてしまい、失った、そう思ったのかも。そして、理亜ちゃん、それを、今、必死になって埋めようとしている・・・、それって、イタリアに行く前のルビィたちと、お姉ちゃんたち3年生の存在がなくなった、そんな喪失感に襲われたルビィたちと同じように・・・)

そう、理亜はラブライブ!優勝を目指していた。それは自分にとって大事な存在である姉聖良とともにラブライブ!に優勝し、A-RISEやμ's、オメガマックスなとどいった頂点に立ったチームがその頂から見えたものを自分たちも確かめたい、そのために聖良と理亜はこれまで頑張ってきたのだ。そして、2人はその目標を目指して頑張り勝利を追い求めたのだ。そして、初出場ながら夏季大会は8位という成績を残した。が、続く冬季大会では理亜のミスでまさかの北海道最終予選敗退・・・。これにより、姉聖良との夢、ラブライブ!優勝の夢は潰えたのである。で、これにより、ゼロに戻った、元に戻った、姉聖良という大事な存在を失った、そう無意識のうちにそう感じてしまった、錯覚してしまった理亜、Aqoursとの合同ユニット、Saint Aqours Snowのクリスマスライブにより幾分かは緩和されたものの、理亜、いざ新しいスクールアイドルユニットを作るもののなにが原因かわからないもののその錯覚はさらに度合いを深めるものとなってしまい、それでも必死になって失った(と錯覚した)聖良という穴をなんとか埋めようとしていたのだ。が、そんなことをしてもその穴をうめることができず、さらに動くほどもっと深くなってしまうばかり、結果、さらに必死になる・・・という悪循環に理亜は陥っていったのだ。

 さらにルビィはこんなことまで考えていた。

(それに、理亜ちゃん、とても真面目だもんね!!真面目過ぎてそう考えても仕方がないかも・・・)

そう、理亜はとても真面目である。真面目に自分の夢を突き進んでいた、勝利を目指していたのだ。だからこそ、ラブライブ!に参戦する前のルビィたち、そして、あのダイヤたち3年生に対する喪失感に襲われてまともにパフォーマンスすることができなかった、あのイタリアに行く前の、沼津内浦の砂浜階段でのルビィたち新生Aqours(1・2年)に対し、あまりの不真面目さを感じたのか、理亜、

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

という言葉を言い放ったのだ。それはあまりの真面目さゆえにストイックに自分たちの夢を目指そうとしている、そんな理亜の想いから放たれた言葉・・・なのかもしれない。が、それが今になって理亜にそれが跳ね返ってきた・・・のかもしれない・・・。

 と、いうわけで、こんな理亜の苦しみに気づいているがゆえに自分の想いから言い放たれたルビィの言葉たちにより、姉ダイヤ、ヨハネ、花丸はルビィの想いに激しく同意する。が、ルビィはそんな想いのはるか上を飛ぼうとしていた。ルビィ、さらにこんなことまで考えていた。

(けれど、1つだけ、今の理亜ちゃんの問題を解決できる方法がある!!そう、理亜ちゃんにはルビィたちがいる!!いや、ルビィたちしかいないんだ!!)

そう、理亜はあまりの必死さについ忘れているかもしれないが、理亜にはちゃんと仲間がいる、そう、これまで一緒に頑張ってきたルビィたち、Aqoursが!!それを踏まえた上で、ルビィ、このとき、こう考えていた。

(だからこそ、ルビィたちが理亜ちゃんに教えてあげよう!!とても大事なこと、ゼロに戻ったわけではないこと、これまで一緒になって経験したこと、その想い出、想い、キズナ、それが宝物になって心のなかに残っていくことを!!そして、その宝物を通じてずっと聖良さんとみんなとつながっていける、理亜ちゃんは1人じゃない、ずっとみんなとつながっているんだって!!で、それらによって理亜ちゃんはルビィたちと一緒に新しい輝きであるその先の未来へと進むことができるんだって!!だからこそ、Saint Snowと同じ輝きを追いかける必要はない、聖良さんがいないから、そんなわけで必死になって同じ輝き、昔の夢を追いかける必要なんてないんだって!!)

そう、ルビィの想い、それは、これまで築き上げた想い出、想い、キズナ、それはずっと宝物として心のなかに残っている、その宝物を通じてずっとみんなとつながっている、みんなと一緒に先に進むことができる、だからこそ、Saint Snowと同じ輝き、夢を追いかける必要はない、聖良さんがいないから、自分のミスで自分たちの夢が潰えてしまった、それによる聖良へのうしろめたさ、それからによる、ゼロに戻った、という喪失感、それを埋める、そんなことなんて必要ない、そのことを理亜に教えてあげよう、であった。

 そんな考えがあってか、ダイヤ、花丸、ヨハネの同意に関して、ルビィ、

「うんっ!!」

と、強い意志でうなずくと千歌の方を見る。すると、千歌、そんなルビィの想いを受け取ったのか、どうすればルビィの、いや、自分たちの想いを理亜に伝えることができるのか、

「だとしたら・・・どうすれば・・・」

と、梨子が悩ましい言葉のあと、突然立ち上がりこんなことを言いだしてきた。

「そうだよ!!教えてあげるのが一番だと思う!!」

これを受けて、果南もルビィの想いを受け取ったのか、たとえ自分たちがいなくなってもずっとつながっている、ずっと一緒にいることを自分の言葉と一緒にみんなと再確認しあうことに・・・。

 そして、この千歌、果南の言葉、いや、想いは、鞠莉の言葉によって収束された。

「理亜ちゃんの大きなDream(夢)を1つ叶えて・・・」

そう、理亜に、ルビィの想い、いや、Aqours全員の想い、大事なことを理亜に伝える、そのための手段、それは、理亜が叶えたくて叶うことができなかった夢、ラブライブ!優勝、その夢を叶えることだった。そして、それは、Aqoursメンバー全員の想い、でもあった。

 これを受けてか、千歌はあることを言った。

「なら、理亜ちゃんの夢を、ラブライブ!という場所で、私たちAqours、聖良さんと理亜ちゃんのSaint Snow、お互い全力をかけた勝負を、その上でのラブライブ!優勝、という夢を、叶えてしまおう!!」

千歌の言葉、それは、Aqoursメンバー全員同じ想い、それを代弁したものだった。昔の輝き、昔の夢を追い求めようとする理亜の夢、理亜たちSaint SnowとルビィたちAqoursの全力全開のラブライブ!での勝負を、その上でのラブライブ!優勝、そんな理亜の夢を叶えるために、自分たちだけのラブライブ!、自分たちだけのステージ、ラブライブ!決勝延長戦、それを開催しよう、そんな想い、からのものだった。

 が、ここで一つ問題が発生・・・。それは、あまりこの延長戦にかける、そんな残された時間が少ない・・・、ということだった。それでもAqoursメンバー全員の想いは一緒、完全に乗り気であった。いや、

(これなら、ルビィの言いたいこと、理亜ちゃんに伝えることができる!!理亜ちゃんも新しいスタートを切ることができるはず!!)

と、ルビィが自身に満ち溢れているぐらい、全員やる気だった。そのため、すぐに評決をとるも、全員賛成、ということで、理亜に大事なことを伝えるための自分たちだけのラブライブ!、ラブライブ!決勝延長戦を実施することが決定!!そして、すぐにこの案は聖良にも伝えられるも聖良もAqoursメンバー全員の想いを受け取ったのかすぐに同意。こうして、理亜には内緒でラブライブ!決勝延長戦を行うことが決まるとそれに向けての準備が始まった。

 

 が、ここでもまたもや別の問題が再浮上してしまう。それは・・・。

「でも、そんなに時間が取れないよ・・・」(曜)

そうである、本当に残された時間が少なかった・・・のだ。今は3月下旬にはいったところ。4月上旬には鞠莉たち3年生3人は千歌たちAqoursのもとから旅立ってしまうのだ。さらには、千歌たち新生Aqoursも同じことに新生Aqoursお披露目ライブを開催することが決まっている。とても短い期間、それも、延長戦とお披露目ライブ、その2つを同時進行しないといけない、それくらいこの問題は切羽詰まったものだった。

 が、それに対して、鞠莉、ある秘策を考えていた。

(まあ、お披露目ライブについては1から作らないといけないから、ベリーハード、だけど、延長戦についてはそんなに大変じゃないもんね~。だって、Saint Snowと戦うために用意していたもの、それをuseすればNothingだし、ステージについても、千歌っちたち(今の)Aqoursのファーストライブのときみたいにありきたりの場所でやればNotingで~す!!あとは、人員についてはとてもFit(適任)なgirlがいるもんね!!たしか、今、なにか、free(暇)しているでしょうしね!!」

いや、それどころか・・・、鞠莉、

(それに、これで千歌っちたちが、今、困っていること、今のスクール(静真)の状況をひっくり返す、いや、あの木松悪斗をギャフンと言わせる、そんなことにもつながるかもしれないで~す!!)

と、秘策、というか、悪だくみ、を考えていた。鞠莉からすれば、元浦の星の理事長として、今、静真で起きている問題、静真本校と浦の星分校の統合問題、それについて完全にノータッチ、これについてはちょっと不満に感じていた。が、それが思わぬ形でかかわることができるのだから鞠莉からすれば本当に一石二鳥だった。

 そんなわけで、鞠莉、Aqoursのみんなにある提案をした。

「ねぇ、延長戦だけど・・・、こうしたどうかな?たしか、Saint Snowとバトルするために用意していたもの、あったよね。今回はそれをUse(使ったら)したらどうかな?ステージは今あるものをPrepare(用意)して・・・、スタッフ(人員)もできる限りSmall(少人数)にしましょう!!」

この鞠莉からの提案に、

「それはいい考えですわ!!」(ダイヤ)

「たしか、対Saint Snow用に作っていたもの、たしか、あった!!それが日の目をみれるなんて、本当に嬉しいよ!!」(曜)

と、Aqoursメンバー全員、完全に乗り気に。そんなことで、延長戦の準備については鞠莉の提案通りに進めることにした。

 さらに、鞠莉、こんなことまで提案してしまった。

「でね、スタッフ(人員)についてはね、少人数、なんだけど・・・、そのためにも、できる限り優秀なスタッフで延長戦を取り仕切ろうと考えているので~す!!浦の星だと・・・、よいつむトリオ、がvery goodで~す!!」

そう、できる限り少人数で延長戦を取り仕切りたいためにも優秀なスタッフを用意すべきでは、と提案してきたのだ。たとえば、よいつむトリオは音響やスポットライトなど、いろんな裏方をそつなくこなせるかなり優秀なスタッフである。なので、よいつむトリオは鞠莉の提案にはうってつけの人材であった。

 ところが、鞠莉は意外な人選をしてきた。

「それに、この延長戦の(Aqours側の)プロデューサーとして、たしか、この前の(スペイン広場での)ライブにスタッフとして参加していた・・・、たしか、渡辺、月、って子、どうかな?」

ここに来てまさかの月!!これには鞠莉の隠された意図があった。それは・・・。

(この月って少女、たしか、静真で生徒会長、しているんだよね~。それに、月って少女、たしか、あの木松悪斗と敵対関係、なんだよね・・・。なら、この月って子を使って静真の問題に介入できますね~!!そう考えるとワクワクしちゃうので~す!!)

と、月を使って静真で起きている分校問題に介入できる、そんな魂胆だったのだ。であるが、そのことを鞠莉を除いたAqoursメンバー8人が知る由もなく、むしろ、スペイン広場での月の働きぶりを知っていることもあり、すんなりと月を延長戦Aqours側のプロデューサーとして向かい入れることが決まってしまった。

 

 こうして、鞠莉の策略?のためか、延長戦のプロデューサーとして迎え入れられられた月、この一連の流れをダイヤから聞いた月であったが、それを聞いた瞬間、

(うわ~、なんか面白いことが起きようとしているんだね~。そんな面白いこと、それに関われるなんて、僕、ワクワクしちゃうよ!!)

と、かなり乗り気の様子。それどころか、

(それに、「本当に最後のライブ」、そんな記念すべきライブに関われるなんてとても嬉しいよ!!!)

と、嬉しい気持ちになる。たしかに「(今の)Aqours、本当に最後のライブ」、そんな記念すべきライブにか関われるなんてプロデューサー冥利に尽きるとはこのことだった。

 そんなわけで、月、二つ返事で、

「わかりました!!そのある少女の夢を叶えるためのライブ、ラブライブ!決勝延長戦、その(Aqours側の)プロデューサー、この僕が務めさせていただきます!!」

と、プロデューサーになることを承諾した。

 が、そんな月であったが、プロデューサーをする上である条件をだした。それは・・・。

「静真側からもスタッフを派遣したいのだけど・・・」

と、言っては月はあるリストをダイヤの前に出した。そのリストには、

「え~と、稲荷あげは・・・」(ダイヤ)

で、あげはの名が載っていたそのリストはあげは以外に、東子、シーナの名があった。そう、月が提出したリスト、そこにはあげはたち静真Aqours応援団の中心メンバー3人の名が載っていたのである。そこには月のある意図が隠されていた。

(即戦力としてはナギたち静真高校生徒会の面々の方がいいけど、その生徒会のみんなはお披露目ライブの対外交渉を任せてある。ならば、将来、Aqoursのために頑張ってくれる、そんな金のタマゴたちを育てたほうがいい。その金のタマゴたちこそ、あげあはちゃんたち、なんだよ!!あげはちゃんたちこそ、心の底からAqoursのことを応援してくれる、そんな熱いやつら、なんだからね!!)

そう、月はこのライブを通じてあげはたちを育てようと考えていたのである。それは、将来、千歌たち新生Aqoursのために頑張ってくれる、そんな優秀なスタッフになってもらいたいからであった。あげはたちはAqoursの大ファンである。そのAqoursを自分に代わって支えてくれる、そんな人材として月はあげはたちを育成しようとしていた。月にとってあげはたちはそんな人材に育成できる金のタマゴであった。その金のタマゴたちを育てるステージ、それがこの延長戦であった。で、この月の条件についてはAqoursのだれも反対しなかったため、ダイヤたちはこの月の条件をのむことを承諾した。こうして、静真側から、月、そして、あげは、東子、シーナのラブライブ!決勝延長戦の参戦が決定したのであった。



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Moon Cradle 第7部後編 第4話

そんなわけで、急遽、新生Aqoursお披露目ライブの準備とは別にラブライブ!決勝延長戦の準備もすることになったため、月、すぐにお披露目ライブの準備をしているみんな、よいつむトリオら浦の星の生徒たち、ナギたち静真高校生徒会、あげはたち静真Aqours応援団、その全員を集め、みんなの前でこう叫んだ。

「新生Aqoursお披露目ライブとは別に私たちだけのラブライブ!、ラブライブ延長戦を行います!!これは暗闇のなかをさまよっているとても悲しい少女を救うために行われるものです!!だからこそ、みんな、お願いがあります!!この少ない人数で2つのことを同時に進めることは難しいかもしれません。もしかすると延長戦は私たちの自己満足としか感じないかもしれません。それどころかそれによって進行状況がひっ迫するかもしれません」

そう、月は少ない人数で延長戦とお披露目ライブ、2つ同時に物事を進めることにより両方とも共倒れしないか心配していたのだ。いや、そうじゃなくても、お披露目ライブ自体中途半端に終わる可能性もあった。それくらい月はそのことを恐れていたのだ。そして、それは延長戦にもいえることだった。それに、実は、延長戦そのものを配信を含めて見ることができるのはごく一部、自分たち、そして、その関係者、だけに限定しよう、そう月はこのとき考えていた。なぜなら、この延長戦、Aqours vs Saint Snow という歴史上類をみない好対決・・・なのだが、ラブライブ!決勝延長戦といっても実は身内だけで行うものなので、Aqoursのローマ・スペイン広場のライブみたいに全世界に配信・・・ではなく、ここに集まっているみんな+Aqours・Saint Snowの関係者だけに生配信しようと月は考えていたためだった。まあ、いろんな意味でもこの延長戦はとてもイレギュラーなもの、なので、月としてはそこまで大ぴらなものにしたくない、そんな思いもあったのも確かである。が、この延長戦、結果的にはこの月の考え以上のものになってしまうのですがね・・・。

 と、話は戻して、月はそんなことを言いつつも月のまえにいるみんなに向かってげきを飛ばした!!

「それでも僕は延長戦を絶対にやりたい、と思っている。それは、悲しい少女を救うため、そして、ここにいるみんなに、Aqours、Saint Snow、最後のステージを実感してほしい、そう考えているからだ!!生配信を通じてからだけど、Aqours、Saint Snow、最高のステージをこの身で実感してほしい!!さらに、それを自分の五感でもって体に刻み込んでもらいたい!!そして、それをお披露目ライブへと活かしてほしい!!」

そう、月はこの延長戦を通じて、Aqours、Saint Snow、全力全開の戦いをここにいるみんなに実感してほしいと考えていたのだ。とはいえ、ここにいるみんなは過去にいくつものAqoursのライブを見てきた強者たちである。それなのに、月はこの延長戦をここにいるみんなに見てもらいたかった。なぜなら、この延長戦こそ、Aqours、Saint Snow、最高のライブになる・・・だけでなく、2つのスクールアイドルの終焉を見ることになるのだから。月はここにいるみんなにげきを飛ばしていたとき、こう考えていた。

(たしか、μ'sは最後のライブを自分たちを支えてくれた人たちにだけにみせた、いや、それだけでなく、自分たちの痕跡すら学校には残さなかった。たしかにこれも美しい終わり方かもしれない。でも、僕はそんな終わり方はいや!!μ'sの終わり方は大きな打ち上げ花火のあとの線香花火みたいに静かな終わり方。でも、僕はその終わり方よりもっと大きな終わり方がいい!!人気バンドみたいに大きな会場で多くの人たちとともに賑やかに終わるわけじゃないけど、全力全開の、そして、最後のライブをここにいるみんなとともに見届けたい!!そして、このとき感じたことを新しく生まれ変わる新生Aqours、そのお披露目ライブに活かしてもらいたい!!)

そう、μ'sの終わり方は本当に静かなものだった。μ'sは秋葉原でスクールアイドルフェスティバルをA-RISEをはじめとする全国のスクールアイドルたちとともに開催したが、これが終わりではなかった。その後、μ'sは身近な人たちだけに本当の最後のライブを行ったのだ。それはμ'sメンバーの身近な人たち、そして、μ'sメンバーからスクールアイドル研究部を引き継いだ、雪穂、亜里沙、によってそのライブを記録したBDを見ることができた研究部の新入部員、その人たちだけしか知らない、そんなステージだった。そんあ意味でも大きな打ち上げ花火(スクフェス)のあとの線香花火、といってもいいくらいの静かな終わり方、だった。そして、μ'sメンバーの想いを受け取った雪穂たちオメガマックスによって学校からスクールアイドルの痕跡は消されてしまった。それはμ'sというものそのものがその学校にはいなかった、みたいな・・・。でも、月は、Aqours、Saint Snow、の終わり方はμ'sみたいに静かなものなんかにしたくなかった。2グループとも叶うことができなかった直接対決、それをこの延長戦の場で叶えようとしているのだ。いや、2グループともこのステージをもって(3年生を含めた今の形としては)最後になるだろう。なら、2グループともこの延長戦では絶対に悔いが残らないよう全力でもって戦うことになるだろう。ただ、この全力全開のライブを見ているのはこのライブにかかわっているスタッフ、月やよいつむトリオだけ・・・ということもなりえたかもしれない。なぜなら、この延長戦、急遽決定したものなので延長戦に使うステージ自体そんなに大きなものを急いで借りることなんてできるものではない。さらに、普通ならビラ配りなどでこの延長戦を宣伝したいものの残された時間はごくわずかなのでそれすらできない。結果、全力全開のライブ・・・なのにそのライブを見ることができるのは数人だけ・・・そうなっても仕方がなかった。が、そんなもの、月にとってみれば嫌だった。Aqours、Saint Snow、の最後の、全力全開のライブ、それをたった数人だけで・・・、2グループともとても輝いているのにその輝きをみれるのはたった数人だけ・・・、そんな(月たち見ている側からしたら)とても静かなライブ、なんて月にはしたくなかった。それなら、全体的に少ないかもしれないが、μ'sみたいに身近な人たちだけに見せる、わけでなく、(スマホなどを通じて)ここにいるみんなと一緒に、Aqours、Saint Snow、最後の、そして、最高のライブを体の底から楽しんでもらいたい、体に刻み込んでもらいたい、そのとき感じたものを新生Aqoursのお披露目ライブにも生かしてもらいたい、そう月は考えていたのだ。

 そんな月のげきのあと、月は今後のことについてここにいるみんなに伝えた。

「なので、僕はこうしたいと思う。延長戦については僕を中心とした数人だけで行う。そして、残ったみんなはお披露目ライブの準備をしていてほしい。たった数日だけではあるが僕たちはいない。それでも、ここにいるみんなの力が合わせればきっと延長戦もお披露目ライブも絶対に成功する!!ここが正念場だ!!みんな、頑張ってもらいたい!!」

月が決めたこと、それは延長戦を少人数で行うことだった。といっても、これは鞠莉の提案を受け入れてのものだった。だが、それこそここでとれる最善の策といえた。少人数で行うことでお披露目ライブへの影響を最小限にすることもできるし、もし、延長戦によってここにいるみんなの士気を高めることができればなおさら、であった。こうなればお披露目ライブも成功する、といっても過言ではない。

 とはいえ、たった少人数といっても千歌たち新生Aqoursを含めてお披露目ライブの中心人物たちがごそっと抜けるわけなので、お披露目ライブに対する影響がないわけではなかた。よいつむトリオ、月、あげは、東子、シーナ、この中心人物が抜けるのだ。こうなるとお披露目ライブの準備に支障が・・・でないようにと月はあることを考えていた。静真側に関してはナギたち静真高校生徒会に一任した。対外交渉の担当をしていたナギたち静真高校生徒会、であったが、関係各所とのやり取りはある程度まで進んでいたために時間に余裕ができていた。。また、よいつむトリオら浦の星の生徒たちもよいつむトリオによって育てられた信頼できる生徒たちにみんなの取りまとめを依頼することもできたため、たとえよいつむトリオがいなくても浦の星の生徒たちは一丸となって準備にとりかかることができた。そんなわけで、これで後顧の憂いを断つことができた。なお、あげはたち3人が抜ける静真Aqours応援団のみんなは引き続き浦の星の生徒たちと一緒にお披露目ライブに使うステージの作成にとりかかることになった。

 こうして、月たち延長戦準備班、ナギたちお披露目ライブ準備班の2班にわけた月、最後にここにいるみんなに向かって強い決意でもって鼓舞した。

「みんな、数日後にはきっと、Aqours、Saint Snowの最後で最高のライブを見せることができるぞ!!だからこそ、みんな、延長戦、お披露目ライブ、絶対に成功させよう!!」

この月の鼓舞にみんなから、

オーーーー!!

という叫び声がこだました。



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Moon Cradle 第7部後編 第5話

 こうして、お披露目ライブの準備をナギたちに託した月、あげは、東子、シーナ、そして、よいつむトリオを引き連れて千歌たちAqoursメンバーが待つやばコーヒーの店に向かう。そんなとき、

「でも、なんで私たちも一緒に行くことになったのかな・・・」

と、あげは、月に対しなんで自分たちも延長戦のお手伝いをすることになったのか尋ねてみる。すると、月、

「それはね、あげはちゃんたちがこれからのAqoursを支えることができる存在だからだよ」

と、あげはたちが選ばれた理由を簡単に答えた。たしかに、月はあげはたちをこれからのAqoursを支えていく人材として育てようとしていた。そのことをあげはたちに対して言った月に対してあげはも、

「な、なんか直接言われるとちょっと恥ずかしいですね・・・」

と、ちょっと照れながら言うと、

「でも、とても嬉しいです、そのことを言われると・・・」

と、少しうれしそうに答えた。

 そして、やばコーヒーに着くとそのままAqoursと合流、延長戦について話し合うこととなった。まずは・・・、

「では、3班に分かれて延長戦の準備を進めることにしましょう」

と、司会役のダイヤが言うと、この話し合いに参加している全員から、

「異議なし!!」

と、いう答えが返ってくる。最初に決めたこと、それは、3班に分かれて延長戦の準備をすること、だった。たった数日しか準備する時間がないため、3班に分かれて行動することにしたのだ。その3班とは・・・。

「まずは千歌さん、梨子さん、鞠莉さん、そして、あげはさん、あなたたちはAqoursの曲のなかでこの延長戦にふさわしい曲を選曲・・・といってもほぼ決まっているでしょうけど、もう一度選曲してその曲を延長戦にふさわしい曲としてブラッシュアップしてください!!」

と、延長戦に披露する曲の選曲(というかある程度決まっているいるが念のため)とその曲のブラッシュアップをする班、さらに、

「ルビィ、花丸さん、私、さらに東子さん、この4人は千歌さんたちが選曲した曲、それに似合う既存の衣装、その仕立て直しをします!!」

と、延長戦で歌う曲の衣装・・・というか、ある目的のために作られた衣装の仕立て直しをする班、そして、

「善子さん、曜さん、果南さん、そして、シーナさんはこの曲のダンスをよりよいものにしてください」

と、選曲した曲のためのダンスをよりいいものにしていくための班、と、ダイヤ、この3班ときっちりとと分けれくれた。で、おまけに・・・、

「そして、曜さん、Aqoursの衣装担当としてダンス班以外に延長戦に使う衣装をルビィたちと一緒に準備しにいってください!!」

と、ダイヤ、曜にお願いをした。

 ところで、なんで新曲ではなく既存の曲でAqoursは延長戦に挑もうとしているのか。それは先述の通り延長戦のために準備する時間があまりないない、というのもあるのだが、実はAqoursには隠された名曲があった。それは、本来なら延長戦がなければ永久に封印されていたかもしれない曲だった。でも、なんでその曲が日の目をみせることになったのか。それは、延長戦の相手がSaint Snowだったから。この曲はSaint Snowの直接対決のために作られた曲だった。しかし、とある理由でこの曲は封印されてしまう。せっかく衣装もダンスもできていたのになぜ封印されたのか、それはあとで話すことにしよう。

 で、肝心のプロデューサー役の月はというと・・・、

「で、月さんはこの3班の調整役と対外との交渉をお願いします!!」

そう、プロデューサーらしく、この3班の調整役、そして、関係各所との調整役を任せれることに。あっ、ちなみに、よいつむトリオはライブに使う機材の準備とあげはたちにその機材の使い方をレクチャーするかかりとなった。

 その後、話し合いでいろんなことを決めていき、ライブまでの数日間のスケジュールなどを決めていくと、正味1時間ぐらいで話し合いは終わった。

 そんな話し合いもついに最後となった。そのとき、ダイヤ、

「あっ、月さん、月さんにとても大事なことを決めてもらいます!!」

と、月を指定すると、月、

「うん、なにかな?プロデューサーであるこの僕に重要な使命?」

と、ダイヤに尋ねると、ダイヤ、大きな声をあげてこう言った。

「月さん、あなたに命じます、このライブで行う場所、この延長戦にふさわしい、そんなステージを探してきてください!!」

「えっ・・・?」(月)

 

「う~、どこがいいんだろう・・・」

月はあのダイヤの話を聞いて悩み続けていた。なぜなら・・・、

「だ、ダイヤさん・・・、「浦の星」とか、「内浦の砂浜」でやるのはどうでしょうか?」

やばコーヒーでの話し合いのあと、月はダイヤと延長戦に使う場所について2人で話し合っていた。そこで月は最初「浦の星」や「内浦」を提案した。これには、月、

(Aqoursの本拠地にしていた「浦の星」や「内浦の砂浜」なら(今の)Aqoursの最後を締める場所としてはとてもいいはず!!だって、Aqoursといったら「内浦」にある女子高「浦の星」女学院のスクールアイドルなんだから!!)

と、思っての提案だった。たしかに、Aqoursは「内浦」にある女子高「浦の星」女学院のスクールアイドルである。そのAqoursのホームグランドである「内浦」「浦の星」で最後を迎える、それこそ、最後のステージとしては最高のシチュエーション、だった。

 が・・・、

「月さん、「浦の星」や「内浦」で延長戦を行うこと、ブ、ブ、ブー、ですわ!!」

と、ダイヤ、即効で月の提案を拒絶する。これには、月、

「え~、なんで~」

と、愕然となるも、

「なんでダメなのでしょうか?」

と、ダイヤに拒絶した理由を尋ねる。すると、ダイヤ、

「実はですね・・・」

と、拒絶した理由を月に言う。まず、「浦の星」であるが、これはまえに伝えたと思うが、このとき、というか、千歌たちがイタリアに旅立つころには浦の星の所有権は学校の運営母体からほかの業者へと移っていたのである。なので、黙って浦の星を使うと不法侵入なるし、使用許可を得ようにもいろんな手続きが必要であり数日のうちに使用許可を得ることは不可、だったのだ。

 で、「内浦」が使えない理由としては・・・、ダイヤ曰く、

「実は、もう延長戦を行う日時はすでに決まっているのです・・・」

そう、延長戦を行う日時はこのときすでに決まっていたのである。これについてはダイヤはこう説明した。

「私たち(Aqours)が延長戦をすることを決めたあと、(Saint Snowの)聖良さんとこのことについて電話で話し合ったのです。そのなかで、延長戦を行う日時については〇日後の明け方前にすることに決定したのです」

で、なんで〇日後の明け方前に延長戦をすることを決めたのか、というと、この延長戦、AqoursとSaint Snow、2つのスクールアイドルグループ(ユニット)のあいだだけで行う、私的な戦い、だったからである。ラブライブ!、実は「ラブライブ!実行委員会」が中心となって行う、いわば、ちゃんとしたところが行っている大会だった。だが、今回の延長戦、ラブライブ!決勝延長戦、といってはいるが、その中身は聖良の妹理亜の夢、ラブライブ!決勝でのAqoursとSaint Snow、その直接対決、そして、ラブライブ!優勝、という夢を叶えることで理亜のなかにある迷い、いや、深淵なる闇から理亜を救い出す、そのために行う、「私的な戦い」、である。なので、できれば、AqoursとSaint Snow、2組とその関係者だけで行いたい、それがダイヤと聖良の考えであった。ただ、これについては変な方向へと進んでいくのですがね・・・。

 で、そのことと浦の星とどう関係があるかというとなんと大ありだった。実は「内浦」、沼津市街地から離れているのであるがとても風光明媚なところとして有名だった。いわゆる、一大観光地、であるとともに内浦を望む駿河湾のクルーズ船などの出発地、でもあった。なので、千歌の実家である有名な旅館や内浦の近くにある淡島に「ホテル小原沼津淡島」があるのはそのためである。さらに、風光明媚な景色を求めて内浦に住む人たちも多かったりする。むろん、東京から引っ越してきた梨子がここ沼津内浦に住んでいるのもこの風光明媚な内浦の景色があったためだった。内浦に引っ越す前、ピアノに対するスランプに陥っていた梨子を見た梨子の両親は少しでも梨子の心のためにと思ってここ内浦に引っ越してきたのだ。もちろん、この梨子への両親の想いは梨子に良い影響を与えた。梨子は隣に数千歌と出会ったこと、そして、ここ沼津内浦の海のおかげでピアノに対するスランプを脱することができた、だけでなく、Aqoursというかけがいのない宝物、そして、自分というとても強い意志を手にいることができたのだ・・・。まっ、それは置いといて、そんなわけで、もし(明け方前とはいえ)内浦の人たち、観光客たちが寝ている深夜帯にライブをして大きな音を出してしまったら、それこそ、ご近所迷惑、いや、騒音問題へと発展してしまうものである。だって、内浦の砂浜海岸はまわりに壁となるものはないので、音はそのまままわりに広がってしまうから・・・。

 そんなわけで、ダイヤ、月が最初に提案した場所、「浦の星」「内浦」はあっさり却下してしまった・・・。ならば、月、

「それじゃ「浦の星分校」!!」「なら、「静真高校」!!」「あいだをとって、「シャイニー号」!!」

と、いろいろと案をだすも、ダイヤから、

「ダメ!!」「ダメ!!」「絶対にダメ!!」

と、次々と却下する。どうやら、ダイヤ、この延長戦が「私的な戦い」であること、騒音問題などが起きることなど周りに迷惑をかけたくない、そのことを気にしているみたいだった(あと、「シャイニー号」みたいに不安定な場である船などでライブはできない、そんなにお金をかけることができないなど、いろんな理由があるのですけどね・・・)

 で、結果的に月が出した案すべてを却下されたことで、月、

「ダイヤさん、1日だけ待ってください!!すごくいい場所、見つけてきますから!!」

と、言ってはこの場で延長戦を行う場所を決めるをやめることにした。

 そして、

「う~、どこがいいんだろう・・・」

と、いう月の言葉につながってしまったということなのだ。

 で、自分が提案した場所すべてダイヤの手で却下されたことで、月、

(う~、それだったら、沼津といったら静岡!!静岡といったら富士山!!Aqoursはラブライブ!で日本一になった。なら、日本一高い山である富士山であればダイヤさんも納得するはず!!それに、あそこならまわりに誰も住んでいないから、ライブの場所にうってつけ!!)

と、考えてしまうしまつ。え~、月さん、3月の富士山ってまだ雪残っているし、真夜中じゃかなり冷え込んでいるのですがね・・・。

 と、すべての提案をダイヤに却下されたことで極端な考えに走ってしまう、月、であったが、突然、

トゥルルルル

と、いうどこかで聞いたよう曲が自分のポケットから聞こえてきた。これには、月、

「あっ、なんだろう?」

と、言っては自分のポケットから自分のスマホを取り出し、そのスマホの画面を見ると、月、突然、こんなことを言いだしてしまう。

「曜ちゃんからメールだ!!え~と、なになに、「月ちゃん、今すぐここに来て!!お願い!!」」



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Moon Cradle 第7部後編 第6話

「うわ~、スクールアイドルの衣装がいっぱい!!なんか幸せ~!!」

と、曜と同じく制服好きの月、曜から指定された場所に着くなりこんなこと言いだしてしまう。が、そんな月に対し、曜、

「助かったよ、月ちゃん!!私たちじゃ重たくて、出すの、大変だったよ・・・」

と、月にお礼を言うと、月も、

「でも、なんか曜ちゃんがとても困っているからと思って来てみたけど、まさか、スクールアイドルの衣装のかたずけだったんだね!!制服好きの僕からしたらとても幸せな気分になれるから別にいいよ!!」

と、嬉しそうに言う。

 と、ここで今の状況を説明しよう。ここは沼津市内にある大きなトランクルーム。突然、曜から「このトランクルームに来てほしい!!」というメールを見た月、すぐにこのトランクルームに向かうと、そこには、曜、そして、なぜか、ルビィ、花丸、ダイヤがそこにいた。これには、月、

「え~と、、なんで僕がここに呼ばれたのかな?」

と、曜に尋ねると、曜、

「実はね・・・」

と、前置きをしつつ、月をここに呼んだ理由を言った。

「実はね、ある曲の衣装を取りにきたんだよ・・・」

で、曜、このトランクルームについて月に説明した。「未熟Dreemer」「Mirai Ticket」など、数多くのAqoursの衣装を制作した曜とルビィ・・・であったが、その衣装たちはだいたいAqoursメンバーがそれぞれ自分の家で保管していた。しかし、衣装が多すぎて自分の家のクローゼットなどにいれることができない(例 堕天使グッズがたくさんありすぎて部屋の中が散らかっているヨハネ)こともあり、曜がちゃっかり作っていたコスプレ(制服)衣装・・・、もとい、試作品などがあったりするので、これまでは鞠莉のご厚意でそれらはすべて全部浦の星で保管されていた。しかし、その浦の星が廃校になったため、これまで浦の星で保管されていた衣装たちを保管する場所がなくなってしまった。そんなわけで、曜、父親のつてをまた借り、格安でそれらの衣装を補完できるトランクルームを借りることにしたのだ。

 と、ここで月にこのトランクルームについての説明が終わった曜、さらに、

「でね、このトランクルームに目的の衣装が保管されているというわけ!!」

と、月に説明をした。これには、ルビィ、

「その衣装って、なんか白くて美しいんだ!!まるで、白い翼、みたい!!」

と、目をキラキラさせながら言うと、月、

「へぇ~、それは僕も見てみたいな~」

と、お手伝い、というよりも一制服好きとしてルビィと同じく目をキラキラさせながら言った。

 で、月、ある衣装箱を見つけて一言。

「あっ、これが目的の衣装だね!!」

と、同時にその衣装箱を開けようとする。が、これには、曜、

「あっ、それ、待って・・・」

と、月を止めようとするも、月、

「えぃっ!!」

と、その衣装箱をついに開けてしまった!!これに対して、曜、

「あっ、あ・・・」

と、唖然となってしまった。

 そして、曜禁断の衣装箱を開けてしまった月、その衣装箱の中身を見て一言。

「うわ~、すごい・・・、すご・・・い・・・、女性警官の衣装?」

なんと、その衣装箱に入っていたのは・・・なぜか女性警官のコスプレ衣装(制服)だった・・・。これには、曜、頭を抱えながらこの衣装箱について語った。

「月ちゃん、ごめん。それ、私が趣味で作ったコスプレ衣装(制服)・・・。家の中に置けなくなったコスプレ衣装(制服)も一緒にここに置いておこうかなって・・・」

そう、なんと、この衣装箱に入っていたのは曜が趣味で作ったコスプレ衣装(制服)たちだった。曜はよく趣味でコスプレ衣装(制服)を作るのだが、長年作っていたこともあり、自分の家に保管できないくらいのコスプレ衣装(制服)を作ってしまったのだ。で、その保管場所に困っていた曜であったが、運よく今まで浦の星で保管していた衣装をこのトランクルームで保管することが決まったのでそれならばと、曜、ちゃっかり自分が作ったコスプレ衣装(制服)もこのトランクルームで一緒に保管してしまった、ということである。

 と、公私混同してしまった曜・・・であった。が、月がその衣装箱をあさっていくと、突然、月、手を止め、曜に対してこんなことを言いだしてしまう。

「あっ、曜ちゃん、これ、覚えている?このコスプレ(制服)、僕と小4のときに一緒に着ていた衣装だよ!!」

と、同時にそのコスプレ衣装(制服)を月は取り出した。その衣装を見た、曜、

「あっ、これって・・・、ああ、懐かしいよ・・・」

と、しみじみに言うと、そのコスプレ衣装(制服)について曜が語り始めた。

「この衣装って、私がコスプレ(制服)にはまるきっかけになった衣装だよ・・・。たしか、お医者さんごっこをしたいと思って作った白衣だよ!!コスプレ衣装(制服)としては簡単だけど、月ちゃん、この衣装を着てとても喜んでくれたよね。私、このときの月ちゃんの喜びが嬉しくてコスプレ(制服)衣装を作るようになったんだよね・・・」

そうである。曜のコスプレ(制服)愛、なんと、小4のときに月と一緒に遊ぶために作った白衣が原点だった。曜が小4のとき、月とお医者さんごっこ(エロい意味ではなく、本当になりきりごっこだった)をする際、より本格的にしたい、ということで曜が白衣を作ったこと、それが曜のコスプレ(制服)愛を目覚めさせるきっかけとなった。月と一緒に本格的ななりきりごっこをしたいため、曜は一生懸命白衣を作った。それは父親の(使わなくなった)ワイシャツを少し加工したものだったが、曜がそれでも一生懸命作ったこともあり、その白衣を着た月からは、

「曜ちゃん、白衣を作ってくれてありがとう!!」

と、まんべんの笑顔を見せて曜にお礼を言ったのだ。これには、曜、

(月ちゃんが喜んでくれた!!なら、月ちゃんに合うコスプレ衣装(制服)、どんどん作っちゃおうかな!!)

と、気をよくしてしまった。こうして、曜は月のため、いや、のちに、自分のためにコスプレ衣装(制服)を作っていった、というわけである。

 で、懐かしのコスプレ衣装(制服)を見て喜んでいた曜を見て、月はこう思ってしまう。

(曜ちゃん、嬉しそう!!この白衣、ただの白衣だけど、曜ちゃんにとってみれば、自分が作ったコスプレ衣装(制服)第1号、だもんね!!僕もこの白衣を着て喜ぶ曜ちゃんを見て、コスプレ衣装(制服)、好きになったんだもんね!!)

そう、月にしてもこの白衣が自分がコスプレ(制服)にはまるきっかけになったのだ。この白衣を着た月の嬉しい一言でとてもよろこんでいた曜、そんな曜の姿を見て、月も、

(ああ、こんな曜ちゃん、ずっと見ていたいな・・・。僕も、コスプレ(制服)、好きになろうかな・・・)

と、喜ぶ曜を見てみたい、ということで、曜が作るコスプレ衣装(制服)を着るようになったのだ。こうして、曜と月のコスプレ(制服)愛は生まれたのである・・・。

 と、話はもとに戻る。曜の思い出話に、月、

「うん、そうだったね!!なんか懐かしいよ!!」

と、曜と一緒にそのときの情景に思いふけっていた。と、ここで、部外者が1人・・・。

「へぇ~、曜ちゃんと月ちゃんにとって思い出深いコスプレ衣装(制服)なんだね・・・」

と、ルビィ、感慨深くなっている月と曜に対し割り込もうとするも、月、

「あっ、ルビィちゃん、もしかして、コスプレ(制服)、興味あるの!!だったら、この白衣、着てみようか?ルビィちゃんの大きさならちょうどいいかも・・・」

と、ルビィをロックオンしたのか、想い出の白衣をルビィに着せようとするも、ルビィ、

「ピッ、ピッギィ!!ま、また、今度でいいから!!」

と、月から逃げようとする。これには、月、

「ルビィちゃんもこの白衣を着たら絶対にコスプレ(制服)に目覚めると思うよ!!」

と、逃げるルビィを追いかけようとする。こんな月とルビィの追いかけっこを見た、曜、

ダイヤ、花丸、ともに、

ハハハ

と、つい笑ってしまった。

 ・・・のだが、つい笑ってしまった花丸、月があさっていた衣装箱の中身を見て、

「あれっ、これって見たことがあるずら!!」

と言うと、その衣装箱からある衣装を3着取り出す。その取り出した3着の衣装を見て、花丸、一言。

「あっ、これって、「未熟Dreemer」のときに来ていた衣装ずら!!」

そう、花丸が取り出した衣装、なんと、「未熟Dreemer」のときに来ていた衣装・・・なのだが、花丸、あることに気づく。

「あれっ、和風の衣装じゃないずら!!「The スクールアイドル」の衣装ずら!!」

そう、花丸が取り出した衣装、なぜか和風テイストの衣装、ではなく、「これこそスクールアイドルの衣装」といえるものだった。たしか、「未熟Dreemer」のときに着ている9人の衣装は和風テイストの衣装である。が、それではない・・・、ということは・・・。

 と、ここで、ダイヤ、花丸が取り出した衣装3着を見て、突然、声をあげてしまう。

「ああ、なくしていたと思っていた、(私たち3年が)1年のときに着ていた衣装!!」

そう、花丸が取り出した衣装、なんと、ダイヤ、鞠莉、果南が1年生のときに着ていたスクールアイドルの衣装、だった。この衣装、「未熟Dreemer」を披露した沼津の夏祭りのステージで、鞠莉、ダイヤ、果南が最初に着ていたのだ(ただ、、そのあと、3人とも「未熟Dreemer」の衣装にチェンジしてしまいます)。で、実はこの衣装、ダイヤたち3年生3人にとってスクールアイドルを始めたときに着ていたとても大切な衣装だった。そして、初代である3年生3人だけのAqoursから9人のAqoursへと変わっていく、それを象徴づける、「未熟Dreemer」、それを語るうえでも重要な衣装だった。だが、実は、ダイヤ、鞠莉、果南、3人とも、あの夏祭りのあと、その衣装を紛失した、と思っていたのである。そんな想い出のある衣装、ということで、浦の星でずっと保管していたのだが、数多くの衣装のなかに埋もれてしまい、3人とも、ついうっかり紛失してしまった、と、思ってしまったからだった。

 が、なんでここで見つかったのか。それは夏祭りのあとにさかのぼる。夏祭り前、絶縁状態(と思っていた)鞠莉、果南は3年の教室で、(鞠莉の)スクールアイドルをやろう、という強引な勧誘のせいで言い争いになったのだ。そこで、鞠莉、は1年のときに着ていたスクールアイドルの衣装を果南の前に突き出したのだ。が、その衣装を果南は外へと投げ捨てたのだ。で、それをちょうど3年の教室の真下にある2年の教室のベランダにいた曜がダイビングキャッチ、したのだが、このとき、曜、

(この制服、絶対に欲しい!!)

と、この衣装をとても気に入り、自分のコレクションにしたい、と、つい考えてしまったのだ。で、鞠莉と果南が歴史的な和解をし、鞠莉、果南、そして、最後に、ダイヤ、がAqoursに加入、沼津の夏祭りで「未熟Dreemer」を歌い上げた・・・のだが、そのあと、ダイヤたち3年生3人はこの衣装を浦の星のAqoursの衣装を保管する場所にしまった・・・はずだった。が、このとき、曜、

(よ~し、これはチャンス!!)

と、思ったのか、3人がしまったはずのその衣装を勝手に持ち出し、自分のコレクションとして自分の部屋のクローゼットになおしこんでしまったのだ(で、なんでこんなことができたというと、浦の星の衣装保管場所の管理はAqoursの衣装担当だった曜が管理していたから。いわば、職権乱用である)。そして、曜の家に眠ってあったその衣装・・・だったのだが、自分の家に入りきれないコスプレ衣装(制服)の保管に悩んでいた曜はこのトランクルームを借りて浦の星で保管していたAqoursの衣装を保管することになり、それならばと自分のコスプレ衣装(制服)をこのトランクルームに運び込んでしまったため、そのときにこの衣装もほかの曜のコレクションと一緒に運び込んでしまった・・・というわけである。

 で、この衣装をついに見つけたダイヤ、曜の方をにらんでは、

「曜さん、なんでここに(私たち3年生にとって)大事な衣装があるのですか?」

と、怒り口調で言うと、曜、

「え~とですね~、それは・・・いわゆる、ちょっとした気まぐれで・・・」

と、とぼけて言うも、そんなもの、怒っているダイヤに効くわけもなく・・・、

「曜さん、今の気持ちを6文字以内で言いなさい!!」

と、鬼の形相で曜に大声で言うと、曜、そんなダイヤに恐れを抱いたのか、6文字以内で今の気持ちを伝えた。

「ごめんなさい!!」



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Moon Cradle 第7部後編 第7話

「うぅ・・・」

と、ダイヤからこっぴどく怒られてしまいうなってしまった曜・・・であったが、

「まっ、それはそれとして・・・、さあ、衣装の整理しちゃおうよ!!」

と、すぐに気分を入れ替えてしまった。まぁ、過去のことなんてくよくよしない、いつものポジティブシンキング?なところが曜のいいところ、なんですけどね・・・。そんないいところがあるからこそ曜はまわりから好かれているのですよ!!

 とはいえ、気持ちを入れ替えた曜の働きぶりはすごかった。てきぱきと、月、ダイヤ、ルビィ、花丸に指示を出し、曲ごとに衣装を分けていく。そんな衣装の片付けの最中、突然、ルビィから、

「あっ、これっ、ヨハネちゃんが「My 舞 tonight」の衣装!!お姉ちゃんと一緒にセンターをした曲だ~!!なんか懐かしい気がする!!」

と、いう嬉しい声が聞こえてくる。すると、ダイヤも、

「ルビィ、そうですわね。この曲はルビィと一緒にセンターをはった曲でしたわね。とてもいい思い出ですわ」

と、「My 舞 tonight」のときの懐かしい思い出を思い出してはそのときのことをしみじみと感じていた。

 が・・・、

「ルビィちゃん、ダイヤちゃん、思い出に浸るのはあとにして!!まずは体を動かして!!じゃないと今日中に終わらないよ!!」

と、曜、ダイヤとルビィに対し注意する。これには2人とも、

「「は、はい・・・」」

と、しゅんとなってしまった。

 そして、ある程度衣装の整理が終わると曜がある衣装箱を取り出し、

「あっ、これが私たちが探していた衣装箱だよ!!」

と、言ってはその衣装箱を開けると、月、

「うわ~、なんか白い翼みたいな衣装だ~!!ルビィちゃんの言った通りだ~!!」

と、驚嘆したような声をあげる。その衣装箱にはいってあったのはまるで白い翼をモチーフにしたような衣装たちだった。

 で、その衣装たちを見て驚きの表情をしている月に対し、曜、その衣装たちのことについて語り始めた。

「そう、この衣装こそ、私たちが延長戦のときに歌う「Brightest Melody」のために作った衣装たちだよ!!」

この曜の言葉に、月、

「「Brightest Melody」?そんな曲、聞いたこと、ないよ!!」

と、?の顔をしながら曜に言うと、曜はさらに言った。

「「Brightest Melody」、私たちAqoursにとって未発表の曲、そして、聖良さんたち、Saint Snow、との直接対決のために作られた曲だよ!!」

 この曜の言葉を聞いた月、思わず、

「曜ちゃん、その曲、聞きたい!!その・・・、「Brightest Melody」・・・、ああ、「ブラメロ」、でいいや!!その「ブラメロ」、この僕に聞かせて!!」

と、言っては曜に迫ってくる。これには曜も、

「曜ちゃん、食いつきいいね!!それじゃ、仮歌だけど聞かせてあげるよ!!」

と、言っては自分のスマホに月が持っていたイヤホンをつけ、月に「ブラメロ」を聞かせてあげる。

 すると、その「ブラメロ」を聞いた月から、

「う、うわ~、この曲調、僕、とても好き!!」

と、嬉しい悲鳴をあげていた。

 そして、曲を聞き終わると、月、曜に向かって、

「曜ちゃん、仮歌だけどとてもいい曲だよ!!僕、とても好きになっちゃった!!」

と、まんべんの笑顔で曜に言うと、曜も、

「月ちゃんが気に入ってもらえたら私もうれしいよ!!」

と、喜びながら言った。

 が、月、あることに気づく。

(でも、なんで、この曲は未発表なの?)

そう、月も聞いた途端に気に入った曲、それなのになんでいまだに未発表なのか気になってしまう。たしかにそうである。この「ブラメロ」、かなりいい曲、いや、Aqoursの曲のなかでも1番ともいえる曲、なので、なんでいまだに未発表なのか月が疑問に思ってしまうのも無理ではなかった。

 が、これについてはすぐに曜が答えた。

「この・・・、「Brightest・・・」、ごほん、この「ブラメロ」はね、(今さっき言ったけど、)Saint Snowとの直接対決のために作られた曲だからなんだ。私たちAqoursとの直接対決のために聖良さんたちもこれまでのなかで1番の曲を作ってぶつけてくるはず!!ならば、私たちAqoursもその曲に対抗するためにこれまでのなかで1番の曲をぶつける必要がある。それは本気と本気のぶつかりあい!!だからこそ、この曲は作られたんだよ!!」

この曜の言葉に、月、

「へぇ~、この曲にはそんな想いが込められていたんだ・・・」

と、とても関心をみせていた。

 そんな関心をみせていた月に対し曜はこの曲に関するとても重要な秘密をつい口にしてしまった。

「月ちゃん、実はね、この曲、あのラブライブ!決勝で歌うかもしれなかったんだよ!!」

この曜の突然のカミングアウトに、月、

(えっ、この曲、ラブライブ!決勝で歌うはずだったの!!)

と、びっくりしてしまう。だって、この「ブラメロ」、あのラブライブ!決勝で歌うかもしれなかった、と聞いたらびっくりするしかないからだ。が、月、そのラブライブ!決勝で披露した曲のことを思い出す。

(でも、たしか、Aqoursがラブライブ!決勝で披露した曲って、「Water Blue New World」じゃ・・・)

そう、Aqoursが実際にラブライブ!決勝で披露した曲は「ブラメロ」ではなく、「Water Blue New World」、略称「WBNW」だったのだ。なので、曜に対し、月、一言。

「でも、実際にラブライブ!決勝で披露された曲って「WBNW」じゃ・・・」

 で、これについて、曜は月に対してある隠された事実を言ってしまう。

「月ちゃん、実はね、ラブライブ!決勝前、「WBNW」と「ブラメロ」、どっちを歌うか、みんな、悩んでいたんだ・・・」

これには、月、

「えっ・・・」

と、さらに驚いてしまう。

 そんな月に対し、曜は「WBNW」と「ブラメロ」に関するある昔話を語り始めた。

「私たちAqoursがラブライブ!決勝進出を決めた夜、閉校阻止のために必要な数100にあと2足りなかったことで閉校が決まってしまい、やる気を失ってしまった私たちAqoursを浦の星のみんなは新しい目標、「消えていく浦の星の名前をラブライブ!という歴史に深く刻み込んでほしい」、それを与えてくれたことで前に進むことができたことは月ちゃんも知っているよね」

この曜の言葉に月も、

「うん、それは前に聞いたことがある」

と同意。それに続けて、曜、

「でね、千歌ちゃんと梨子ちゃんはその出来事をもとにラブライブ!決勝で歌う曲を2曲つくったわけ。1つは「WBNW」、そして、あと1つが「ブラメロ」だったんだ・・・」

この曜の言葉に、月、

「えっ、2曲も!!でも、なんで、2曲も作ったわけ?」

と、曜に聞き返す。

 すると、曜はそれに関する話を話し始めた。

「実はね、新しい目標ができたとき、その決勝には必ずSaint Snowがでてくるはず、そう私たちは考えていたんだ。で、先に言った通り、Saint Snowだったらこれまでで1番の曲を私たちにぶつけてくるはず、ならば、私たちAqoursもこれまでのなかで1番の曲で勝負したい、私たちがこれまで積み重ねてきたものすべて、この決勝で表現したい、Saint Snowにぶつけてみたい、そう思って作られたのが「ブラメロ」なんだ・・・」

で、これには、月、

(へ~、この曲(ブラメロ)って自分たちが積み重ねてきたものすべてをラブライブ!決勝の場で表現しようとしようとしていたんだ・・・)

と、感じてしまう。

 が、ここで曜の話は意外な展開を迎える。

「でも、聖良さんたちSaint Snowはまさかの予選敗退でラブライブ!決勝に進出できなかった。これには私たちも驚いたけど、あの函館のクリスマス合同ライブで予選敗退の原因を作ってしまい意気消沈してしまった理亜ちゃんを救い出すことできたんだ。で、その後、聖良さんと理亜ちゃんから「絶対にラブライブ!で優勝して!!」ってお願いされたんだ・・・」

この曜の言葉に合わせてか、ルビィ、

「うん、ルビィもまさかあの理亜ちゃんから直接お願いされるなんて本当に驚いちゃった!!」

と、このときに感じた思いを口にした。

 が、まだまだ曜の話は続く。

「でね、そんなこともあって、千歌ちゃんと梨子ちゃん、浦の星のみんなの想いだけでなく、聖良さんと理亜ちゃんの想いの分まで頑張らないと思ったのかもね、ラブライブ!決勝のための曲をもう1曲作ったんだ。それが「WBNW」だよ!!」

で、これには、曜、

「えっ、まさか、あのSaint Snowの想いすらもくみ取って「WBNW」を作ったの!!」

と、びっくりする。まさかの新事実発覚である。

 で、これを受けてか、曜の話は急展開を迎える。

「だけど、ここで問題が起きたんだ。ラブライブ!決勝で披露できる曲は1曲だけ。でも、決勝用に用意された曲は2曲。だから、どっちを決勝で歌えばいいのか、みんな、困ってしまったんだ・・・」

が、ここでも、月、あることに気づく。

(えっ、でも、たしか、曜ちゃんたちAqoursって、ラブライブ!決勝で2曲歌わなかったけ?)

そう、ラブライブ!決勝ではAqoursは2曲披露していたのだ。で、月、

「でも、たしか、Aqoursって、ラブライブ!決勝、2曲、歌わなかった?」

と、曜に尋ねてみる。

 すると、曜はその月の疑問にこう答えた。

「たしかに月ちゃんの言う通り、私たちAqoursはラブライブ!決勝で2曲歌ったよ!!でもね、厳密に言うとね、2曲目というのはラブライブ!に優勝したスクールアイドルがそれに感謝してアンコールと称してもう1曲歌うという暗黙の了解があるんだよ。で、私たちAqoursがラブライブ!で優勝したから2曲目を歌っていた、というわけ」

これには、月、

「へぇ~、納得!!」

と、納得の表情をみせる。たしかに曜の言う通りであった。ラブライブ!決勝では優勝チームがアンコールと称してもう1曲歌うという暗黙の了解があった。それは第2回大会の優勝チームであるμ'sが歌い終わったあと、突然のμ'sコールによってもう1曲歌ったことが起源だとされている。事実、これ以降、優勝チームはアンコールと称してもう1曲歌っている。むろん、Aqoursも例外ではなかった。Aqoursも優勝が決まった瞬間、すぐに楽屋に戻り2曲目の準備に入った。そして、準備が終わると、2曲目、「青空Jumping Heart」を歌うこととなった。

 が、まだ曜の話の途中だった。曜、すぐに本題に戻る。

「でね、これについて、私たちもどっちを歌えばいいか結構話し合ったんだ。「ブラメロ」はこれまでのAqoursのなかで1番の曲、対して、「WBNW」は浦の星のみんなだけでなく聖良さんたちの想いすらも打ち秘めた曲。2曲ともとてもいい曲。だからこそ、みんな、選ぶのに苦慮したんだよ」

この曜の言葉に、月、

(たしかに、「ブラメロ」と「WBNW」、どちらもいい曲だよね・・・。僕だってどちらかを選べと言われても選べないよ・・・)

と、このときの曜たちの悩みについて納得する。たしかに2曲ともこの物語を読んでいる私たちからしてもとてもいい曲である。そのどちらかを選べ、と言われたらとても悩んでしまうのも無理ではない。

 が、曜、ついにその論争に終止符を打った。

「でも、私たちは「WBNW」を選んだんだ・・・」

この曜の言葉に、月、

「あっ、たしかに、ラブライブ!決勝では「WBNW」を歌ったね。でも、なんで「WBNW」を選んだの?」

と、曜に逆に質問する。

 すると、曜はその理由を述べた。

「それはね、ラブライブ!決勝の場において(私たちが)歌う曲を通じて私たちAqoursがみんなに伝えたいこと、それがマッチしていたのが、「WBNW」、だったんだ!!」

が、これには、月、

(えっ、ラブライブ!決勝の場において「WBNW」が1番マッチしていたわけ・・・。意味わからないよ・・・)

と、唖然となってしまう。まっ、これについては曜もすぐに察したみたいで、

「あっ、月ちゃん、それについては少し説明するね」

と、曜がラブライブ!決勝で披露する曲に「WBNW」を選んだ理由を月に説明した。

「「ブラメロ」と「WBNW」、2曲とも未来へと進もうとしている曲なんだけど、「ブラメロ」は今まで積み重ねてきたもの、その輝きをもってメンバーそれぞれが未来へと進もうとしている曲なんだ。出会いと別れを繰り返すけれど、それでもこれまでの経験で得た想い出、想い、キズナ、そんな宝物と輝きを秘めて私たちは新しい道へと進んでいく、そんな想いが詰まった曲なんだ。対して、「WBNW」、は新しい世界に対する決意を指し示す曲。これまでの積み重ねによってラブライブ!決勝というこの瞬間を楽しんでいる、けれど、その先へと進む、それに対する決意、それを指し示す曲なんだ。いや、ラブライブ!決勝という場所で、浦の星のみんな、聖良さんたち、そんなみんなの想い、それだけじゃない、私たちAqoursの想いそのものを叶えるための曲といっても過言じゃないよ、「WBNW」は!!」

そんな自分たちの想いを曜は月に伝えると曜の話はついに終焉を迎える。

「私たちはSaint Snowがいないラブライブ!決勝の場において、みんなの想いが込められた、みんなの想いを叶えるために、ラブライブ!優勝のために作られた曲、「WBNW」、その「WBNW」こそラブライブ!決勝で披露する曲にふさわしい、そう思って私たちAqoursは「WBNW」をラブライブ!決勝で歌うことを選んだんだ・・・」

曲に対するとらえ方は人によって変わってしまうものである。しかし、1つだけ言えるものはある。それは、曲というのは必ずその曲を作った人たちの想いがたくさん込められている、ということである。「ブラメロ」「WBNW」それぞれ違った見方ができるかもしれない。が、すべてが間違いではない。すべてが正解だったりすることもある。それでもこの2つの曲を作った曜たちAqoursからすればたった1つの想い、それをもって「WBNW」を選んだのかもしれない。

で、この曜の力強い言葉に、月、

「うん、たしかに曜ちゃんの言う通りだね。ラブライブ!決勝にふさわしい曲だもんね、「WBNW」は」

と、曜の言葉に同意するも、すぐに、

「で、選ばれなかった「ブラメロ」は?」

と、曜に尋ねてみる。

 これに、曜、答える形で昔話を締めた。

「対して、「ブラメロ」はラブライブ!決勝をもって鞠莉ちゃんたち3年生3人がいる今のAqoursは終わりになる、ということで永久に封印・・・するつもりだったのだけど、深淵なる闇に落ち込んでいる理亜ちゃんのために、ラブライブ!決勝延長戦、それを行うことになってね、それならばと、昨日、千歌ちゃんと梨子ちゃん、すぐに「ブラメロ」の封印を解いちゃったの!!千歌ちゃん曰く、「あの聖良さん、理亜ちゃんたち、Saint Snow、との全力全開での勝負なんだよ!!とても苦しんでいる理亜ちゃんの心にぐいっといく、そんな曲なんだよ、「ブラメロ」は!!「WBNW」がラブライブ!決勝にふさわしい曲であると同時に「ブラメロ」は延長戦にふさわしい曲なんだよ!!」だって!!だから、私たちもこの曲を延長戦で歌うことに決めたんだよ!!」

この曜の言葉に、月、

(千歌ちゃんらしい答えだね!!でも、たしかに千歌ちゃんの言う通りかもね・・・)

と、これについても納得していた。「ブラメロ」はラブライブ!決勝においては「WBNW」ぐらいのふさわしい曲ではなかったのかもしれない、が、この延長戦においては「ブラメロ」ほどふさわしい曲はないかもしれない、自分たちのこれからの想いを歌にした曲、孤立無援になって苦しんでいる理亜を救うための曲、そして、本当に(今の)Aqours最後にふさわしい曲、それこそ「ブラメロ」なのかもしれない、そう、千歌、いや、Aqoursメンバー全員同じ想い、そうなれたからこそ、この「ブラメロ」を曜たちAqoursメンバーは延長戦で歌う曲として選んだのかもしれない。そう思ったのか、月、

(そう考えると、僕も曜ちゃんたちの選択、大賛成だよ!!)

と、曜たちが延長戦で歌う曲に「ブラメロ」を選んだことに賛同していた。



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Moon Cradle 第7部後編 第8話

 と、「ブラメロ」と「WBNW」の思い出話で盛り上がっていた曜と月・・・であったが、

「月さん、曜さん、思い出話で盛り上がるのはいいですけど、あまり時間がありませんわ。さっさとやることをやりましょう!!」

と、ダイヤ、「ブラメロ」用の衣装の整理を先に進めようとする。これには、月、曜、ともに、

「「は~い!!」」

と、軽く返事をした。

 こうして、衣装整理という仕事をもくもくとしていく、月、曜、ルビィ、ダイヤ、花丸。そのなかで、「ブラメロ3年生衣装」と書かれた衣装箱を見つけた月、

「へぇ~、3年生の衣装ってどんなものなのかな?」

と、その衣装箱を開ける。すると、

「うわ~、全体的に青っぽい・・・。まるで大人っぽい雰囲気の衣装だ・・・」

と、感嘆な声をあげる、が、月、あることに気づく。

「ズボンも青・・・って、あれっ、今さっき見た「ブラメロ」の衣装って、白、だったよね・・・」

そう、今出した3年生の衣装は青を基調としている。それに対して、その前にみた「ブラメロ」の衣装は白を基調としている。これには、月、

(あれっ、これだと9人の衣装のバランスがおかしくならないかな?)

と、ふと疑問に思ってしまう。たしかに月がそう思うのも無理ではなかった。白を基調とした衣装と青を基調とした衣装、それらをきてパフォーマンスする際、それを意識したフォーメーションならいいのだが、もし、それを意識していなかったら、たとえいいパフォーマンスだったといてもその色の不均一さにパフォーマンスを見る方は少し戸惑ってしまうかもしれないからである。

 そんなわけで、月、曜にある質問をする。

「ねぇ、曜ちゃん、今さっき見た白を基調とした衣装、まだあるの?」

すると、曜、元気よく月の質問に答えた。

「うん!!たしか、私たち1・2年生が着る衣装はすべて白を基調としているよ!!」

この曜の言葉のあと、曜は次々とブラメモの衣装をハンガーに掛けていくと「ブラメロ」の衣装9人分をその場に並べた。たしかに曜の言う通りだった。1・2年生の衣装は白を基調としたもの、対して、3年生の衣装は青を基調としていた。これには、月、曜にあることを言った。

「へぇ~、1・2年と3年じゃ衣装が違うんだね!!なんか、1・2年のものって、白い羽って感じがする!!」

これには、曜、

「たしかにそうかもね!!白を基調としたも白い羽で飛び立とうとしているのを現したのかもしれないね!!」

と、少し照れながら説明する・・・も、月、ついにあることを指摘する。

「でも、これだと、フォーメーションによって見栄えが悪くならないかな?」

 が、この月の指摘に、曜、簡単に言い返す。

「月ちゃん、それは大丈夫だよ!!ここに掛けている1・2年の衣装は下に着るものだよ!!これとは別に上に着るもの(上着)もちゃんと用意しているんだよ!!」

この曜の言葉のあと、曜は別の衣装箱を持ってきた。その衣装箱にはこう書かれていた。

「ブラメロ 1・2年用上着」

その衣装箱を曜は開けた。すると、そこには青を基調とした上着が入っていた。曜、その上着を取り出すと、1・2年の白を基調とした衣装のハンガーに羽織るように掛けていく。

 そして、すべての上着をかけ終わると、曜は月に向かってこう言った。

「どう?これならすべての衣装が青を基調にしているようにみえて統一感を感じるでしょ!!」

たしかにそうである。これまで白を基調としていた1・2年の衣装が青色の上着を着せることで一瞬のうちに青を基調とした衣装に変わったじゃありませんか!!これには、月、

(た、たしかに曜ちゃんの言う通りだね!!青色の上着を追加するだけで白を基調としたものが青を基調としたものにかわった!!曜ちゃん、天才・・・)

と、曜の衣装センスに感服する・・・も、月、それとは別にあることにも気づく。

(でも、あまりに青に統一しすぎてあまりインパクトがない・・・)

そうである。たしかに青を基調とした上着をプラスすることでこれまで白と青という色のバランスがよくなかった「ブラメロ」の衣装たちに統一感を与えることに成功した。が、青を基調にしすぎてしまい、「ブラメロ」の衣装を見ている人たちに対するインパクトがかなり弱くなってしまった。インパクトが弱いと見ている人たちのこの「ブラメロ」の衣装を着ている人たち(Aqours)に対する印象までも薄くなってしまう、そんな危険性があったりする。なので、月、

(青と白という色のバランスが悪くなるのもよくない・・・、でも、青に統一しすぎてインパクトが弱くなるのもよくない・・・。ど、どうすれば・・・)

と、延長戦のプロデューサーらしく衣装についてつい悩んでしまった・・・。

 

 そして、1時間後・・・。

「はい、はい、こちらでございます!!」

と、ダイヤはこう言うとワゴン車をトランクルームの入り口近くに誘導していった。トランクルームの衣装整理が終わり、月たちは「ブラメロ」用の衣装をトランクルームの外に出すとそれをワゴン車に積み込もうとしていた。

 で、月、トランクルームの入り口付近に到着したワゴン車に「ブラメロ」用の衣装を積み込むとき、月と同じく「ブラメロ」用の衣装を積み込もうとしているルビィにあることを尋ねた。

「ねぇ、ルビィちゃん、この衣装たち、これからどうするの?」

これには、ルビィ、元気よく答えた。

「あっ、この衣装たちね、ルビィの家の蔵で陰干しするんだ!!あと、仕立て直して本番に備えるんだ!!」

そう、「ブラメロ」用の衣装たちはそのまま使うわけではなく、まずは陰干しをして仕立て直してから本番に備えようとしていたのだ。「ブラメロ」、未だに未発表・・・ということもあり、この「ブラメロ」用の衣装は一度すそ合わせをしただけでまだ未使用、といえた。けれど、それでもちゃんとすぐにでも着れるように仕立て直してから完全な形で延長戦を、Saint Snowとの直接対決に望みたい、そんな意思が今のルビィたちAqoursにはあった。それほど延長戦についてはAqoursメンバー全員本気(ガチ)だった。

 そして、この衣装たちはすべてワゴン車に詰め込まれた。さらに、ダイヤ曰く、

「え~と、私たちが1年生のときに着ていたスクールアイドルの衣装、無事に詰め込みましたわね!!」

これに対し、曜、

「う~、持っていかないで・・・、私の大事なコレクション・・・」

と、嘆いていた。そう、曜がこっそりトランクルームに持ち込んでいたダイヤたち3年生が1年のときに着ていたスクールアイドルの衣装もダイアの手によってワゴン車へと運ばれてしまったのである。が、そのスクールアイドルの衣装をワゴン車のなかに運びこんでもなお曜はダイヤにすりよっては、

「う~、それだけはもっていかないで・・・」

と、泣きながらお願いしていた。

 が、とうのダイヤはというと、

「曜さん、あなた、私たちをだまして大事な衣装を自分のものにしようとしました。そのところ、曜さん、今、どう思っているのでしょうか?」

と、曜に対し怒り口調で言うと、曜、反省しているのか、

「ご、ごめんなさ~い!!」

と、ダイヤに謝罪。ところが、ダイヤ、曜に対し、ある言葉を放つ。

「曜さん、この衣装は没収・・・」

これには、曜、

「ダイヤちゃん、それだけはご勘弁を~」

と、ダイヤに頼み込む。

 すると、ダイヤから意外な言葉が出てしまう。

「この衣装は没収・・・せずに、「ブラメロ」の衣装と一緒に陰干しする予定です。そして、「ブラメロ」の衣装の仕立て直しと一緒に補修したあと、曜さんに返す予定です!!」

これを聞いた曜、

「えっ、ダイヤちゃんたちにとってとても想い出のある衣装なのに、この私がもらっていいの?」

と、ダイヤにその真意を尋ねると、ダイヤ、自分たちの真意を語った。

「たしかに、この衣装は私たち3年生3人にとってとても想い出のある衣装です。でも、それを私たち3人だけのものにしたらこの衣装がかわいそうです。なら、これからAqoursに加入してくれる新入生のために残してあげるのが一番いいと私たち3年生3人はそう思っております。新入生にAqoursの本当の原点を、私たち3年生3人が始めた軌跡を、kの衣装でもって教えてあげてください、曜さん!!」

そう、このとき、ダイヤはこう思っていた。

(私たち3年生はラブライブ!決勝延長戦でもってAqoursを卒業する。そうなれば、千歌さんたちの記憶以外私たち3年生の痕跡はAqoursのなかでは残らなくなる。でも、この衣装を、私たち3年生3人が1番最初に着ていた、この衣装を残していけば私たち3年生3人の痕跡を残すことができる。いや、もし、千歌さんたちが道に迷うことがあっても、この衣装をみれば千歌さんたちは自分たちの心のなかにある(想い出、想い、キズナといった)宝物があること、それを通じていつもつながっていることを思い出しては先に進むことができる、そして、それは新しくAqoursに加入してくれる新入生にもつながっていく。だからこそ、曜さん、この衣装を大事にしてください。そして、Aqoursにとって大事なもの、心のなかにある宝物のことをみんなに伝えていってください)

そう、ダイヤたち3年生3人が1年のときに着ていた衣装、それは今のAqoursを、これから続くであろうAqoursの原点そのものである。そして、イタリアを旅して千歌たちが気づいたこと、この1年でAqoursメンバー9人共に歩んできたもの、想い出、想い、キズナ、そのな宝物、それがずっと自分たちの心のなかにあり、それを通じてずっとつながっている、それをAqoursの原点であるこの衣装が物語ってくれるかもしれない。さらに、この衣装を通じてこれからのAqoursに加入してくれる新入生たちにその宝物の存在、その宝物の大切さをこの衣装は教えてくれるだろう。そう、ダイヤは思ったのかもしれない。

 で、このダイヤの言葉に、曜、

「ダイヤちゃん、ありがとう・・・。ダイヤちゃんの言う通り、この衣装、大切にするね。そして、新入生にはこの衣装を通じて宝物の大切さを教えていくね・・・」

と、泣きながら答えていた。

 しかし、この曜の対応にまわりもつられてしまう。なんと、曜の隣にいたルビィ、花丸も、

「お姉ちゃん、ルビィ、この衣装、大事にするからね・・・」(ルビィ)

「おらたち、責任重大ずら・・・」(花丸)

と、ダイヤの言葉に感動したのか、涙を流しながら言葉を口にした。これには、ワゴン車を運転してきた鞠莉から、

「ダイヤ、曜だけでなくルビィと花丸も泣かせるなんて、なんて罪深きガール(少女)だね・・・」

と、ダイヤのことをはやしたてると、ダイヤ、

「う、うるさいですわよ、鞠莉さん!!」

と、鞠莉のことを怒ろうとするも鞠莉は負けじとダイヤのことをたきつけようとする。で、曜、ルビィ、花丸はというと・・・、

「これからは私たちがAqoursを盛り立てないとね!!」(曜)

「そうずら!!」(花丸)

「ルビィも、ガンバルビィ、するよ!!」(ルビィ)

と、痴話げんかみたいになっているダイヤと鞠莉を尻目にこれからの決意を固めていた。

 で、この5人のやり取りをみて、月、一言。

「う~ん、青春だね~」

 

 こうして、無事ワゴン車に「ブラメロ」の衣装+ダイヤたちにとって大切な衣装をすべて運び込んだあと、

「曜ちゃん、またね!!」(ルビィ)

「またあしたずら!!」(花丸)

と、ルビィ、花丸は曜と月にお別れを言うとそのままダイヤと一緒にワゴン車に乗り込み、鞠莉のつたない?運転のもと、ダイヤとルビィの実家に向けて走り去っていった。ちなみに、延長戦の衣装班である、ダイヤ、るびぃ、花丸はこのあと、ルビィ、ダイヤの家に行き、「ブラメロ」用の衣装たちとダイヤたち3年生想い出の衣装を陰干しする予定である。

 で、トランクルームの入り口前で現地解散となった月と曜・・・であったが、そのとき、すでに空の色は赤くなっていた。どうやら衣装の整理で時間を取りすぎたのか、もう夕方になっていたようだ。

 で、夕方、ということで、月、

「じゃ、僕たちもおうちに帰ろうか!!」

と、曜と一緒に家に帰ることを提案する。すると、曜は意外な答えを出してきた。

「ねぇ、月ちゃん、あそこ、行かない?」

これには、月、

「えっ、あそこ?」

と、頭の上に?マークを浮かべてしまう。こんな月に対し曜はあることを言った。

「そう、あそこ!!昔、私たちがよく行っていた場所!!そして、私が一番好きな場所!!」

が、この曜の言葉を聞いても、月、

「昔、よく行っていた場所?曜ちゃんが一番好きな場所?どこ?」

と、まだわからないようだった。

 そんな月を見てか、曜、月の手をいきなり握っては、

「そう、昔よく行っていた場所!!私が連れて行ってあげる!!」

と、月の手を引っ張ってはその場所へと駆け足で向かってしまった。

 

 そして、数十分後・・・。

「着いた~!!」

と、曜は全力で走ったにも関わらず息が切れることなくその場所に着くと元気よく声をあげていた。で、月はというと・・・、

「月ちゃん、早すぎだよ・・・。この僕じゃなかったら疲れ切っていたよ・・・」

と、こちらも息1つ切れせずに曜の言葉に対応する。あの・・・、トランクルームからその場所までゆうに2㎞ぐらい離れいたのですが、全力で走って息1つ切らしていないとは・・・、超人レベル、超えていない・・・、2人とも・・・。

(でも、月と曜、2人とも超人なら、たとえライブで100曲くらい歌っても全然疲れず、むしろ、200曲目指してしまう果南は神レベルじゃ・・・)

 と、いうことはあとにして、月、その場所に着いてまもなくまわりを見渡すと一言。

「あれっ、ここって、新生Aqoursのお披露目ライブを行う沼津駅前(南口)じゃ・・・)

そう、曜が月を連れて向かった場所、それは、お披露目ライブを行う予定の沼津駅、その南口だった。

 が、曜はそんな月の言葉に対しツッコミをいれる。

「月ちゃん、確かにここは私たち新生Aqoursのお披露目ライブを行う沼津駅前(南口)だけど、今日はここが目的地じゃないんだな・・・」

この言葉のあと、曜はすぐに、

「今日の目的地はここだよ!!」

と、ある建物を指さしながら言った。で、月も曜が指さす方を向くとこんなことを言いだしてしまう。

「ここって、「らぐーん」!!」

そう、曜の目的地、それは沼津駅の南口にそびえたつエンタメ施設ビル、「らぐーん」であった。この「らぐーん」、長い間、沼津市民の遊びの場所としてよく使われているビルである。この「らぐーん」の中には、カラオケ店、プリクラ施設、子ども用の巨大遊園地が入っており、さらには、お笑い芸人の劇場も備えていたりする。そんな意味でも沼津市民に知らない人はいない、それくらい有名なエンタメビルだった。

 で、月、曜に対し、

「で、もしかして、久しぶりに2人でプリクラを撮るつもり?それとも、カラオケ?」

と、尋ねると、曜、

「ううん、2つとも違うよ!!」

と、月の言っていることを否定しつつも、

「それよりも、あともう少しで閉まっちゃうから急ぐよ!!」

と、またもや月の手を引っ張りビルの中へと突入してしまう。むろん、月、

「曜ちゃん、あまり引っ張らないで!!痛いよ~」

と、曜に注意する。

 すると、月の頭の中にあるものがフラッシュバックする。

(あれっ、これってどこかでなかったかな・・・)

そう、月は気づいた、今朝見ていた夢、その時の光景、沼津駅前のあの光景と一緒だったのだ。ただ、その光景に少し違うところがあった。それは・・・。

(でも、たしか夢で見た光景と今の光景が少し違う・・・。違うというか・・・、7~8年前の(沼津駅前の)光景、それと夢で見た光景、とても似ている・・・)

そう、夢で見た光景は今の沼津駅前とは少し違っていた。7~8年前、そう、月と曜がまだ小3~小4のときの光景と似ていたのである。これには、月、

(もしかして、これって・・・)

と、あることに気づこうとするも、

「月ちゃん、ついてきてね!!」

と、曜に強引に引っ張られてしまいこの光景を確認できないまま、月、

(あ~れ~)と、「らぐーん」のビルのなかに吸い込まれていった。



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Moon Cradle 第7部後編 第9話

「ほらほら、月ちゃん、私についてきてね!!」

「ラグーン」内のエレベーターで6階まであがると曜は月に向かってこう言うと、そのまま屋上に続く階段を全力で駆け上る!!これには、月、

「少し落ち着こうよ!!」

と、曜に言うも、曜、聞く耳もたず、そのまま全力で階段を駆け上ってしまう。

 そして、屋上に続く踊り場に近づくと、曜、月に向かってこんなことを言いだしてきた。

「月ちゃん、もうすぐ着くよ!!」

これには、月、

「曜ちゃん、ちょっと待ってよ~」

と、急ぐようについ注意してしまう。

 が、そんなときだった。月の脳内にまたもやフラッシュバックが起きる。

「曜ちゃん、ちょっとまって~!!」

そう、この光景も、あの夢、今朝の夢と同じだった。そのため、これには、月、

(えっ、これも今朝見た夢と同じだ・・・)

と、そのことに気づいてしまう。そのためか、月、

(えっ、もしかして、ぼ億、今朝の夢と同じこと、今、しているのかな・・・)

と、戸惑ってしまう。まさか、今朝見た夢と同じことを追体験していると錯覚していてもおかしくなかった。ただ、ひとつだけ違ったところがある。それは・・・。

(でも、たしか、今朝の夢って、僕、小3~小4のときの姿をしていたよね・・・。でも、今は、僕、高2、なんだけど・・・)

そう、今朝の夢の中では、月、小3~小4のときの姿をしていた。でも、今は、月、高2である。なので、月自身としては、今朝の夢と今現時点、小3~小4の姿と今の姿、その点が違っている、いや、その点だけ違っていた。月、その違いにようやく気付いたのだった。

 が、そんなことを月が気づいたものの、今の曜は階段を上り切り目的の場所に到着することにのみ熱心になっており、今、月が思っていることなんて知る由もないためか、

「あともう少し!!あともう少し!!」

と、月のことなんてお構いなく強引に月を引っ張りながら階段を上っていく。なので、月、夢のことを気にかけるも、

(う~、曜ちゃん、はやいよ・・・)

と、考える暇すらなかった・・・。

 

 そして・・・、

「着いた~!!」

と、階段を上り切り屋上に続く踊り場に着いた曜、開口一番こう言うと、続けて、

「曜ちゃん、飛ばし過ぎだよ!!」

と、月、元気ありすぎる曜に注意する・・・もそんなのどこ吹く風、

「ほら、あともう少しだよ!!」

と、待つことすらなく先に進もうとする曜。さらには、

「ほら、あともう少しだよ!!」

と、月を元気づける始末。

 とはいえ、曜、月の忠告すら聞かずに飛ばし過ぎたこともあり、すぐに、

「曜ちゃん、本当にちょっと待って~!!」

と、力強く曜に注意する。これには、曜、ようやく我に返ったのか、

「あっ、月ちゃん、ごめん!!」

と、ようやく立ち止まってくれた。

 しかし、このやりとりをして、月、またあることに気づく。

(あっ、これって、一語一句、あの夢と同じだ・・・)

そう、月が、最近、というか、今朝も見た夢と同じやり取りを、今、していたのだ。これに関して、月、

(ま、まさか・・・、デジャヴ!!)

と、一瞬考えてしまった。

 が、いったんは止まった曜であるが、とてもアクティブな持ち主である曜は今にでも動きそうである。そんな曜、月に対し、突然、こんなことを言いだした。

「でも、あともう少しで美しいもの、見れるよ!!」

この曜のことには、月、

「美しいもの?曜ちゃん、なんなの?」

と、首をかしげては曜に尋ねる。

 すると、曜、屋上と踊り場をつなぐ扉の方を指さしこう言った。

「この扉の向こう側にあるんだよ、美しいもの!!」

この曜の言葉を聞いた月、あることを思い出す。

(あっ、これもあの夢と同じ!!やっぱり夢と同じ展開なんだ!!)

そう、月はようやく気付いた。「ラグーン」に入る前からこの扉の前までの展開は月が最近よくみる夢と同じ展開だったのだ。で、それに気づいた、月、

(こ、これって、もしかして、(夢に出てきた幼い)曜ちゃんがまた僕になにかを伝えたいのかな?)

とも思えるようになってくる。これまで夢を通じて幼い曜は月に対して何度もなにかを伝えようとしていた。静真高校と浦の星女学院の統合問題が起きた時から月の夢の中に幼い曜が出てくるようになった。そんな幼い曜に月は1度救われたことがある。そう、静真の部活動報告会でのライブ失敗で不安・心配の海・沼の奥底に沈み込んでしまった千歌たち新生Aqours1・2年、それを救うヒントを幼い曜は月に夢を通じて与えてくれたのである。その幼い曜が夢を通じて言いたかったこと、「これまで築いてきた想い出、想い、キズナ、それは宝物となって自分の心の中に残り、それを通じてずっとつながっている」、そのことに気づいた月はルビィを介して千歌たち新生Aqours1・2年に伝えたことにより新生Aqours1・2年は復活を果たしたのである。そして、今回も今度の延長戦について、いや、静真本校と浦の星分校の統合問題について悩んでいる月を幼い曜は導いてくれるのでは、と、月は淡い期待をしていたのである。

 で、最近よく見る夢の次の展開をうろ覚えながら月は思い出していく。

(たしか・・・、このあと、曜ちゃんが扉を開けて・・・)

そう月が思った瞬間、曜、その展開通り、

バーーーン

と、屋上に続く扉を開けた。

 で、その次の展開は・・・、

(そして、その扉の先には屋上とたくさんの人だかりが・・・)

そう月は思い出しつつその扉の先に見える光景を確認する、が・・・、

(って、あれっ?なんか違う気がする・・・)

と、月、夢とは違う光景に少し戸惑う。たしかに夢の通り月と曜のまわりには屋上の光景が広がっていた。が、屋上にはそんなに人がいなかった。いたとしても外の光景を見に来ていた人たちが数人だけ・・・。これには、月、

(あれ・・・?これは夢とは違った展開だよ・・・)

と、ちょっとがっかり。夢なら屋上とたくさんの人だかりが目の前に広がっており、曜はその人だかりの中に向かって月の手を強引に引っ張りながら突入、月は曜に強引に引っ張られているため、人にぶつかっていたい思いをする・・・はずが、今現在、月の目の前にはただっびろい屋上、それにほんの数人だけしかいない・・・、これでは夢の中で見た人だまりに曜がつっこんで月は痛い思いをする、そんな展開は望めない。そんなわけで、月、

(ああ、デジャブじゃなくて単なる思い過ごしか・・・)

と、ちょっとがっかりしてしまった。

 が、そんな月の思いとは裏腹に曜は月に対してこんなことを言いだした。

「さぁ、月ちゃん、私と一緒に見ようよ、沼津で2番目に美しい光景を!!)

この発言のあと、またしても月の手を強引に引っ張り、その美しい光景が見える場所へと走り出す曜。これには、月、

(えっ、曜ちゃん、夢と同じように強引だよ・・・)

と、夢とは少し違った展開になりつつもその夢の幼い曜と同じような強引さに、月、ちょっとびっくりする。そんな曜の強引さもあってか、夢みたいに人ごみのなかに突っ込んだためにした痛い思いをしないものの、すぐにその美しい光景が見える場所へと着いた。

 そして、曜、月に対し、一言!!

「さぁ、月ちゃん、これこそ私が沼津で2番目に美しいと思う光景だよ!!」

その曜の言葉のあと、月は曜とその美しい光景が見える場所、屋上のフェンス越しから外を見る。すると、

「うわ~、きれい・・・。街がとても輝いているよ・・・。まるでフィレンツェのドゥーモの天蓋から見た光景とそっくり~!!」

と、月、感嘆の声をあげる。月が今見ている美しい光景、それは、あのイタリア・フィレンツェのドゥーモの天蓋から見た光景にそっくりな、夕日の光があたり光り輝いている沼津の街並み、だった。それには、月も、

(ともてきれい!!本当に光り輝いているよ!!まるで宝石箱みたいだよ!!)

と、光り輝く沼津の街並みに感動していた。いや、それ以上に、

(こんな美しい光景、僕、見たことがない!!フィレンツェと同じくらい、いや、それ以上だよ!!)

と、まさか自分の住む街にこんな美しい光景があるなんて、と、びっくりしていた。

 が、このとき、曜は意外なことを言ってしまう。

「どう、月ちゃん、これが私が、2番目、に美しいと思う光景なんだよ!!」

その曜の発言に、月、あることにびっくりする。

(えっ、これが2番目なの!!これが2番目なら1番はなんなの!?)

そう、曜、この夕日の光によって光り輝いている沼津の街並みを、2番目の美しさ、と言っているのだ。では、これ以上の美しさをもつものとはなんなのか、ふと疑問に思ってしまった、月が。そんなわけで、月、2番目に美しいものを月に見せて満足している曜にあることを尋ねた。

「ねぇ、曜ちゃん、この夕日の街並みが2番目なら、1番目はなんなの?」

 すると、曜からまたもや意外な答えが返ってきた。

「えっ、月ちゃん、覚えていないの!?昔、私と一緒に見てきたじゃない!!眠い目をこすりながら毎年見に来てたじゃない!!」

このちょっと怒り口調の曜の言葉に、月、

(えっ、昔から曜ちゃんと一緒に見に来ていた?それも毎年・・・、眠い目をこすりながら・・・)

と、なんのことだかわからず、ポカーンとしてしまう。

 こんな月の姿に、曜、あることを言いだす、とても重要なことを・・・。

「月ちゃん、思い出して!!昔、お正月の元日の日に、私と月ちゃん、2人一緒に、この「ラグーン」にのぼって、初日の出、見ていたじゃない!!」

この曜の言葉に、月、

「えっ、初日の出・・・」

と、曜の言葉を反芻する。

 すると、これがトリガーになったのか、月の脳のなかである変化が生まれてきた。

(えっ、初日の出・・・、たしか、そんな記憶、あったはず・・・。たしか・・・、たしか・・・)

そう、月のなかで忘れていたある記憶の存在、それに月は気づいたのだ。その想い出を必死になって思い出そうとする月。しかし・・・、

「う~ん、う~ん」

と、うなるだけ。あともう少しで思い出すことができるのにそれができない。そんな苦しみを受けていた月・・・、であったが、苦しんでいる月の姿を見て溜らず言ってしまった曜のある一言がそれを一変させる。

「ねぇ、月ちゃん、思い出して!!たしか、初日の出のとき、いつも、私、月ちゃんに言っていたよね。

 

「月ちゃん、あけましておめでとうございます!!」」

 

この曜の言葉を聞いた瞬間、

(あっ、思い・・・出した!!)

と、月の頭のなかで記憶をため込んでいたダムが一瞬のうちに崩壊、月はついに曜との大事な想い出を思い出した、小3~小4、曜と初めて行った、あの日の出来事を・・・。

 

 人ごみのなかを痛い思いをしながらかき分けながら進んだ曜と月、外のフェンスのところに到着したものの、そのフェンス越しに見える光景はたしかに美しいもののまだ薄暗かった沼津の街並みだった。これには月もがっかりしてしまうも、曜は、

「でも、あともう少ししたらこの美しい街並みがさらに美しくなるよ!!」

と言っては月を激励するも、その曜の言葉に月は不信感を持つ。

 が、そんな月に対し曜はこんなことを言い放つ。

「あっ、もうすぐ始まるよ、沼津で一番美しい光景がね!!」

その曜の言葉とともに東の空から太陽が昇ってきた。すると、それにつられて月の眼下に見える沼津の街並みにも変化が生まれる。

「えっ、あっ、あっ、建物が輝き始めている・・・」

そう、昇ってくる太陽の光に照らされて沼津の街並みが光輝いてきたのだ。これには、月、

(うわ~、ダイヤモンドみたいにどんどん輝き始めているよ!!美しい!!)

と、目をキラキラしながら感動していた。

 そんな月の姿に、曜、

「どう、これこそ沼津のなかで一番美しいものだよ!!」

と、月に対して言うと、月も、

「うん、そうだね!!」

と、曜の言葉に同意していた。

 そんな月と曜のまわりにいる大人たちは沼津の街並み・・・というか太陽に向かってお辞儀をしたり手を合わせて拝んだりしていた。それは、日本人は昔から、太陽、いや、お日さま、に、この美しいものを作り出してくれるものに対して敬っていた、ということを再確認できる、そんな光景であったが、そんなこと、幼い曜と月が知る由もなく、ただたんに月と曜はお日さまと沼津の市街地が織りなす美しい光景をただただ感心しているだけだった。

 そして、この美しい光景を見たあと、曜は月に向かってこう言った。

「私、この美しい光景を月ちゃんに見せたかったの!!だって、月ちゃんと新しい想い出、たくさん作りたいから!!月ちゃんと楽しいこと、もっと、もっと、やっていきたいから!!」

この曜の言葉に月も、

「僕もそう思うよ!!曜ちゃんと楽しいこと、いっぱい、いっぱい、やっていきたい!!」

と、激しく同意していた。

 そんな月の言葉に曜はあの言葉を送った。

「月ちゃん、あけましておめでとうございます!!」

 

(そうだった。僕、すっかり忘れていた・・・。一番美しい光景、それを初めて月ちゃんと見たときのこと、小3~小4の、この「ラグーン」から見た、初日の出の光景を・・・)

そう、月はようやく思い出した、曜にとって(沼津で)1番美しい光景を、「ラグーン」から見た初日の出の光景を・・・。そんな月を見てか、

「月ちゃん、ようやく思い出すことができたね!!」

と、いう声が聞こえてきた。これには、月、

「えっ、誰なの?」

と言っては目の前を見る。

 すると、そこには月がよく知る、小3~小4くらいの少女がいた。その少女を見た、月、思わず叫ぶ。

「えっ、(夢の中に出てきた)幼い曜ちゃん!!」

そう、月の目の前にいたのはいつも月の夢の中に出てくる、幼い曜、だった。その幼い曜は月に対しこう言った。

「月ちゃん、ようやくとても大切な想い出を思い出してくれたよ!!これでようやく月ちゃんも先に進めることができるね!!」

これには、月、

「えっ、この想い出で、僕、先に進めることができるの?」

と、幼い曜に尋ねると、幼い曜から意外な答えが返ってきた。

「月ちゃん、この大切な想い出によって、月ちゃんが抱えている問題、そのすべてが解決できるはずだよ!!」

この幼い曜の言葉に、月、

「えっ、それってどういうこと?」

と、再び幼い曜に尋ねる。

 すると、幼い曜はさらにあるヒントを月に与えた。

「月ちゃん、この想い出のことを今(高2)の私に話して!!そうしたら、きっと月ちゃんの役に立つものを与えてくれるはずだよ!!」

その言葉のあと、幼い曜は月に対してあることを言ってしまう。

「月ちゃん、私の役目はここで終わり!!きっと、月ちゃんはこれから先、私なしでも道を切り開くことができるはずだよ!!それじゃね、さようなら!!」

そう、幼い曜との突然の別れ。これには、月、

「えっ、曜ちゃん、ちょっと待ってよ・・・」

と、薄くなっていく幼い曜のことを呼ぼうとするもその姿はじょじょに消えていった。

 

「月ちゃん、月ちゃん、起きて!!」

(現実において)曜は必死に月のことを呼び続ける。そんな曜の頑張りもあったのか、

「はっ!!」

と、月、ついに目を覚ます。これには、曜、

「月ちゃん、ようやく起きたよ~!!私、とても心配したんだよ!!」

と、月のことを心配する。でも、月からしたら、

「えっ、曜ちゃん、なんで僕のことを心配してくれたの?」

と、逆に聞き返してしまう。これには、曜、ある事実を月に述べる。

「月ちゃん、いきなり倒れこんだんだよ!!私、とても心配したんだよ!!私がしゃべった途端に倒れこんじゃって、そのまま失神したんじゃないかと思って、店員さん、呼んじゃったんだよ!!」

で、その曜の言葉通り、曜の隣にはAEDを持った「ラグーン」のスタッフがいた。これには、月、

「曜ちゃん、心配をかけてしまってごめんなさい。僕、もう大丈夫だから!!」

と、体を動かしてはピンピンしていることを証明する。すると、曜も、

「もう心配をかけないでよ、月ちゃん!!」

と、月のことを本当に心配そうに言った。

 そんなこともあったもののピンピンしている月は曜に対し、

「それでね、曜ちゃん、僕、曜ちゃんとの大切な想い出、思い出したんだよ、あの、曜ちゃんと初めて見た初日の出のことを!!」

と、夢の中に出てきた幼い曜の言う通り、初日の出の想い出を思い出したことを曜に言うと、その曜も、

「月ちゃん、ようやく思い出したんだね、あの初日の出の想い出を!!よかった、よかった!!」

と、感慨深く言うと、続けて、

「私にとって1番美しいと思える光景、それって、初日の出・・・」

と言うと、その曜の言葉を遮るかのようい月があのときの想い出のことを言った。

「たしかに美しかったよね・・・。東の空から昇ってきたお日さまが沼津の街並みを照れしてくれて、それがダイヤモンドみたいにキラキラ見えていたんだよね・・・」

が、これには、曜、

「あの~、月ちゃん、私、まだ話の続き・・・」

と、月に注意!!そのため、月、

「あっ、ごめんなさい・・・」

と、曜に謝ってしまった。

 と、いうわけで、話の続きをする曜。なんと、その途中に意外な言葉が出てくる。

「でね、それって、初日の出・・・みたいに朝日が昇るシーン、なんだよね!!」

この曜のカミングアウトにを聞いたのか、月、

(えっ、初日の出・・・限定じゃないの!!朝日が昇るところ、なの!!)

と、びっくりしてしまう。なんと、曜が言う沼津で1番美しい光景、それは初日の出限定、じゃなかったのだ。毎日のように朝日が昇る、そのときの沼津市街地の光景こそ曜の言う沼津で1番美しい光景、だったのだ。なので、月、

「あの~、曜ちゃん、初日の出限定じゃなかったの・・・、1番美しい光景って・・・」

と、曜にツッコミをいれるも、曜から意外な答えが返ってきた。

「たしかに初日の出は特別なものだよ!!でもね、月ちゃん、たとえ一緒に見えても、日によってはまえとは違った輝きをするもんだよ!!その違いを楽しむのもそのシーンを私が(沼津のなかで)1番美しい光景だと言っている理由なんだよ!!」

この曜の指摘に月も、

「う~ん、納得!!たしかに日によってお日さまが昇ってくる方角も違ってくるもんね!!」

と、納得してしまう。

 が、次の瞬間、月はびっくりする。それは曜の答えに納得した月を見て言った曜の一言だった。

「でね、毎日のように朝日は昇るけど、毎日、その朝日を見ているとね、「あっ、またこれで新しい輝きが生まれたんだな!!」って思えてくるんだよね~」

この曜の言葉に、月、ふとあることを考えてしまう。

(うんっ、昇ってくる朝日を見て、曜ちゃん、毎日のように新しい輝きが生まれた、って思っているの!!ふ~ん、新しい輝き・・・)

その瞬間、月の頭の中にある事実が浮かび上がってくる。

(たしか、「ブラメロ」の白い衣装って、白い羽みたいなもの、だったよね。でも、それだと3年生の青い衣装と一緒になると色に統一感がなくなるから、その白い衣装の上に青い上着を着るんだよね・・・)

 で、月、つい、この2つのことを並べて考えてしまった。

(白い衣装・・・、白い羽・・・、昇ってくる朝日・・・、新しい輝き・・・。白い羽、新しい輝き・・・)

で、月のなかでいろんなものが混ざり合ってしまう。

(白い羽、飛び立つ、新しい輝き!!)

 この瞬間、月にある妙案が生まれた!!

(あっ、そうだよ、そうだよ!!これなら、「ブラメロ」をよりインパクトに見せることができる!!いや、それだけじゃない!!日本一のスクールアイドル、Aqours、と、1番美しい光景である朝日と沼津の街並み、これはすごいコラボになる!!)

月にとって今までのなかで最高の妙案だったのか、月、すぐに曜に対し、こんなことを言った。

「曜ちゃん、ダイヤさんたち(衣装班)に衣装の仕立て直しは明日の朝まで待って、て言って!!」

これには、曜、

「あっ、なにかいいアイデアが生まれたんだね!!なら、わかった!!ダイヤちゃんたちには私から伝えておくね!!」

と、月のお願いを2つ返事で了承した。曜にとって月は千歌たちAqoursと並ぶ最高の友達である。なので、曜の月に対する信頼は最高ランクである。その月がなにかをひらめいた、とすぐにわかった曜はその月のお願いに絶大なるものを感じていた。

 そして、月は曜の隣にいた「ラグーン」のスタッフに対してもあるお願いをした。

「あの~、そこの(「ラグーン」の)スタッフさん、お願いがあります。明日の早朝、僕に屋上を使わせてください!!お願いします!!屋上を開けてください!!」

 

 その日の夜・・・。

「え~と、これして、あれして、それを塗って・・・」

と、月は自分の部屋であるものを作っていた。月の目の前には青と白の絵の具が大量に置いてあり、それをなにかに塗っていたのだった・・・が、

「う~、早く塗り終わらないと・・・、うっ、眠い・・・」

と、眠い目をこすりながらも黙々と作業を続けていた。



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Moon Cradle 第7部後編 第10話

 そして、早朝・・・。

「うぅ、徹夜したよ~、眠い・・・」

と、月は嘆いていた。どうやら昨夜していた作業に熱中してしまったためか徹夜になったみたいだった。なので、月、眠い目をこすりながらある場所に立っていた。で、その横には・・・、

「本来ならこの時間帯は屋上を開けることがなのです。ですが、月様のご要望で開けさせてもらいました」

と、無表情の「ラグーン」の屋上管理責任者、それから、なぜか・・・、

「ほほほほほ・・・」

と、なんと、この「ラグーン」の運営会社の会長もいた。ちなみに、この「ラグーン」の運営会社、ここ以外に関東にいくつかここと同じようなエンタメビルを持っており、ほかにもパチンコ屋や劇場などエンタメ関連のお店・施設を持っていたりする。で、その采井会社の本社だが、2つあって、1つは東京に、そして、もう1つは静岡にある。って、静岡・・・?誰かと関係ある?

 と、いうわけで、東の空が少しずつなかで、月たち3人は「ラグーン」の屋上に来ていた。もうすぐ明るくなるとはいえ屋上は外灯以外暗かった。そんななか、月、

「さてと、この人形たちにこれを着せて・・・」

と、言っては事前に持ってきた人形(それも9体!!)にあるものを着せる。それは・・・、月が徹夜して作っていたもの、白いワンピースと青い上着の衣装が6体分、青色の紳士服みたいな衣装3体分、それを、月、9体それぞれに着せると、

「それで、この人形たちをここに置いて・・・」

と、その人形たちを東側のフェンスのところに横一列に置く。で、人形たちを設置した月、

「さて、あとは日が昇るのを待つだけ!!」

と言ってはお日さまが昇るのを待つだけとなった。

 そんな月のとても奇妙な行動を近くで見ていた屋上責任者は、

「(「ラグーン」運営会社の)会長、月様、本当に大丈夫でしょうか?」

と、月のことを心配してしまう。たしかにそうである。昨日の夕方、突然、早朝に屋上を開けてほしいと月からお願いされ仕方なく今日の早朝に屋上を開けたものの、その屋上でまさかの人形遊びを月は始めたのだ。そんな月の行動を近くで見ていた屋上責任者、月がおかしくなったのではと心配してしまったのだ。が、その屋上責任者の隣にいる運営会社会長はというと・・・、

「ほほほほ」

と、ただほほ笑んでいるだけだった。

 そんな屋上責任者に心配されている月だったが、その人形たちの前に自分のスマホを設置すると、

「もし、僕の思っている通りだったら、絶対にインパクトある演出ができる!!」

と、かなり自信を持っている、そんな感じがしていた。が、このとき、月、あることを考えていた。

(僕はあのステージを超えるものを作りたい!!あの、ラブライブ!決勝でAqoursが見せた「WBNW」のステージを・・・)

そう、月はあのステージ、ラブライブ!決勝でAqoursが見せた「WBNW」のステージを超えるものを目指していた。その「WBNW」についてだが・・・、

(僕は直接そのステージを見たわけじゃない。でも、あとで映像で見てはっとした、あんな幻想的なステージがあるなんて!!まるで、雲の上で踊る9人、いや、そこから9人が飛び立とうとしている、そんな感じがしていた・・・)

と、月、初めてそのステージ映像を見た時のことを思い出していた。以前、ラブライブ!夏季大会で8位入賞を果たしたSaint Snowの聖良が言っていた、「決勝のステージに立った時、こう思いました、「雲の上のようだった」」、その言葉を体験したようなステージだ、と、月はこのときそう感じてしまった。スモークがたかれた、いや、まるで雲の上にいるようなステージで千歌たちAqoursは今まで自分たちを応援してくれた人たち、その人たちへの感謝、そして、その人たちの想い、自分たちの想い、みんなとのキズナ、みんなの夢を叶えるための覚悟、それを指し示すかのようなパフォーマンスを行ったAqours、それはこれまでの自分たちの集大成をみせるかのようなものだった。そして、その覚悟のもと、Aqoursは、先に進もう、飛び立とうとしていた、そう月はこのときついそう思ってしまう。 

 そして、月はその「WBNW」のステージのなかでも特にあのシーンを意識していた。

(そして、あのシーンを見て僕はショックを受けた。サビに入る直前、鞠莉ちゃん、花丸ちゃん、そして、梨子ちゃんのロングスカートのすそがパージされるシーン。あのとき、パージされたスカートのすそが青い羽に変わったんだよね。鞠莉ちゃん、花丸ちゃん、梨子ちゃんは、ジレンマ、つらい過去を持っていた。しかし、Aqoursの活動を通じてそれらを克服、新しい自分を手に入れた。つらい過去を乗り越えて新しい自分を手に入れた、それをあのパージシーンは指し示したのかもしれない・・・)

月がショックを受けたシーン、それは、鞠莉、花丸、梨子のロングスカートをパージするシーン、だった。鞠莉、花丸、梨子はそれぞれつらい過去を持っていた。鞠莉は1年のときにあるスクールアイドルのイベントでけがをかけたまま強行出場、それがきっかけでこれまで仲がよかった果南と仲たがいをすることとなった。花丸は小さいときからあまり目立つことが好きではなく(典型的な)インドア派として図書館の主となることが多かった。梨子は高1のときにピアノコンクールでスランプに陥ってしまい、それ以降ピアノを弾くことができなくなった。が、千歌たちAqoursメンバーとの交流のなかで3人はそれぞれのつらい過去を克服することができた。鞠莉は「未熟Dreemer」の一件で果南との歴史的和解を果たし、花丸は同じ1年のルビィ、ヨハネと一緒に行動することでμ'sの凛みたいな?活発とはいかないまでも1人で行動できるくらいの少女へと成長、梨子は同じ2年の千歌、曜との交流でそのスランプを克服、ピアノコンクールで優勝を果たした。3人とも昔の自分を卒業、新しい自分に生まれ変わる、そんな想いがあのロングスカートのパージにより青い羽に生まれ変わる、そのシーンには込められていたのかもしれない。

 なお、そのシーン、実際は、パージされたロングスカートのすそが青い羽に生まれ変わった・・・わけではなかった。あのパージされたスカートはステージの前に投げ捨てると同時に青い羽がステージ前に設置された装置によって噴出される、そんなギミックが発動していたのだが、あまりに幻想的なステージだったため、見ている方からすれば、パージされたスカートが青い羽に生まれ変わった、そんな風に見えていたのだ。

 とはいえ、月からすればあのシーンはとても衝撃的だったものらしく、この延長戦のステージにおいても、月、

(僕はあのシーンを超えるものを作りたい、絶対に作りたい!!)

と、眠い目をこすりながらあのシーンを超えるものを作りたい、そんな熱意を持っていた。さらに、

(そのためにも、僕が考えたこのアイデア、本当にすごいのか、ここで確かめてやる!!)

と、自分の考えたアイデア、それがそのシーンに負けないくらい、いや、超えるものなのかここで確かめようとしていた。が、そのアイデアを試すための時間はまだきていなかった。なぜなら・・・、

(でも、自分のアイデアはあるものの助けが必要だったりする。そのアイデアはそのもののあることが起きなければ実現しない。だからこそ、お願い、はやく起きて!!あともう少しでそれが起きる!!だから、はやく、はやく・・・)

そう、月はそれが起きるのを、ある自然現象が起きるのを待っているのだ。その自然現象が起きないと月のアイデアは完成できない。だからこそ、月はその自然現象が起きるのをいまかいまかと待っていたのだ、自分のアイデアが「WBNW」のスカートパージシーンを超えるものなのかを確認するために。

 そんなわけで、月、その自然現象が起きるのを熱き思いをたぎらせたまま時間が過ぎるのを待っていた。

 

 そして、ついにそのときがきた!!東の空がどんどん明るくなっていく。と、同時にそれまで薄暗かった沼津の街並みも明るくなっていく。で、これを見ていた、月、

(ついにこのときがきた!!僕のアイデアが試されるときがきた!!)

と、ついに自分のアイデアが試される、その瞬間がきたことを自覚する。さらには、

(このアイデアには弱点がある。1日に1回しかできないんだ!!だからこそ、失敗は許されない!!絶対に成功してみせる!!)

と、絶対に成功してみせる、その意気込みをみせていた。いや、月からしたら絶対に失敗は許されない、そんな覚悟を持っていた。なぜなら、月のアイデアを実現させるためにはあるもののある現象が必要だから、その現象は1日に1回しか起きないから、失敗は許されない、そう月は思っていたからだった。

そして、そのあるものがついに東の空から現れた。それにより、眼下に広がる沼津の街並みが光り輝き始めようとしていた。その瞬間、

(えいっ!!)

と、心の中で掛け声をかけると人形たちを撮っていたスマホをそのあるものの方に向ける。さらには、

(えいっ!!)

と、月は手に持っていたひもを引っ張った。

 すると、人形にある変化が訪れた。なんと、人形6体が着ていた青い上着はパージされ中に着ていた白いワンピースがあらわになったじゃないか。と、同時に、

(えいっ!!)

と、月はそのあるものに向けていたスマホを再び人形の方に向ける。

 そして、ついに月のチャレンジは終わった。月はすぐにスマホの画面を見る。すると、

(うん、まずはちゃんと映っているね!!)

と、録画できたことを確認する。どうやら、月、スマホであるものを撮っていたみたいだった。で、一通り録画した動画を見た。さらに、月、もう一度録画した動画を確認する。その動画とは・・・、青一色の衣装3体と青い上着を着た人形6体、それがすぐにフェードアウトすると新しい輝きなるもの、お日さま、が山から顔をみせる。すると、沼津の街並みがダイヤモンドみたいに光り輝き始めたではないか!!その瞬間、人形たちにフェードイン!!そこに映っていたのは青い衣装を着た人形3体と・・・白いワンピースの人形6体。で、その人形たちはそのお日さまの輝き+沼津の街並みの輝きに照らされてまるで自分たちも輝いているかのようにみえた・・・。月が今まで撮っていた動画はそのようなものだった。

 しかし、この動画を確認した瞬間、月、

「よしっ!!これならあの「WBNW」のスカートパージシーン以上のものができるはず!!ついに成功した~!!」

と、喜びにあふれていた。この動画はただそれだけの動画であったが、月からすれば延長戦成功への第一歩ともとれる、そう思えるくらいの動画、ともいえた。

 いや、このとき、月はこう思っていた。

(たしかに、これは単なる動画かもしれない。でも、僕からしたら「WBNW」のスカートパージシーン以上のインパクトを与えるものになった。僕のアイデアに間違いはなかった!!いや、今は単なる人形を使って行ったに過ぎない。でも、本番なら、延長戦なら、曜ちゃんたちAqoursがこれをすることでつか今以上にインパクトを与えるものになる、いや、歴史に残るライブになるはずだ!!)

と、自分が思っていた以上のインパクトを与えるものになった、いや、本番、延長戦のときに千歌たちAqoursが行ったらきっと歴史に残るぐらいのライブになる、それくらいのインパクトがある、と、確信していたのだった、月は・・・。

 そして、月は「ラグーン」の屋上責任者と運営会社の会長に向かって、

「今日は早朝にもかかわらず僕のために屋上を開けてもらってありがとうございました。僕が思っているもの以上のものを得ることができました。本当にありがとうございました!!」

と、お礼を言ったが、とうの屋上責任者はというと、

「あっ、そうですか・・・」

と、ただ茫然としていた。なぜなら、屋上責任者から見たら月がスマホを構えて人形遊びに興じている、と、思ってしまったからだった。で、その横にいた運営会社の会長はというと・・・、

「ホホホホ、青春だね~」

と、ただただほほ笑んでいるだけだった。

 で、月、これに続けとばかりに屋上責任者と運営会社の会長に対しあるお願いをした。

「で、お願いがあるのですが、数日後の早朝、ここ(「ラグーン」の屋上)を使わせてもらえませんでしょうか?」

が、これには、屋上責任者、

「えっ、また早朝からここを開けないといけないのですか!!あのねぇ、この私も早朝からここに来るのはきついのですよ!!」

と、最初にみせた無表情・・・という化けの皮が剥がれたのか、月に対し相当ご立腹になる。それでも、月、

「お願いです!!今は単なる人形遊びにみえたかもしれません。しかし、今日のは数日後に行われるものに対する試験的なものです!!これをもとに、数日後、きっとここで素晴らしものを、素晴らしいライブを、見せることができると思います!!だからこそ、数日後の早朝、ここを使わせてください!!」

と、熱意をもって屋上責任者にお願いする・・・も、屋上責任者、

「でもね・・・」

と、言葉を濁そうとする。どうやら、月の熱意をもってしても屋上責任者の冷徹な心は折れそうにもなかった。

 が、そんなときだった。屋上責任者が、

「でもね・・・、でもね・・・、ここを・・・」

と、言った瞬間、その横から、

「おい、屋上責任者、お前の事情、いや、「ただ早朝からここに来ないといけない。ああ、やだやだ」というたんなるわがままのためだけにこの少女(月)のお願いを聞かないといいうのか!!」

という怒りの声が聞こえてきた。これには、屋上責任者、

「ひぃ!!」

と、怯える声をだすと、その怒りの声がする方を向く。

 すると、そこには怒りの形相となった「ラグーン」運営会社の会長が立っていた。その運営会社の会長は屋上責任者に対し、

「屋上責任者、その少女(月)は早朝にあるものを、いや、ライブというものをしたいと言っているのだ!!それはきっととある利中があるからだろう。その理由を聞いてみてから判断したらどうかな?」

と言うと、屋上責任者も、

「会長がそんな風に言うなら理由を聞きましょう。月さん、数日後の早朝、ここを借りる、その理由を答えてください」

と、ちょっと折れたのか、月に対し、数日後に屋上を借りる、その理由を尋ねた。

 すると、月は真剣な目つきをして熱き心でもってこう答えた。

「ここを借りたい理由、それは、道に迷ってしまったある少女を救い出すための、そして、ある偉大なるスクールアイドルグループの1つの歴史に終止符を打つ、集大成となる、そのためのライブ、それを行いたいからです!!」

この熱意がこもった月の答えに、運営会社の会長、あることを尋ねる。

「ほほう。ある偉大なるスクールアイドルグループとは、何かな?」

 これにも、月、熱意をもって答えた。

「それは、今は亡き沼津を代表する女子高、由緒ある女子高、沼津内浦にあった女子高、

 

浦の星女学院スクールアイドル部、Aqours

 

です!!」

 Aqours・・・、この月の言葉を聞いて、運営会社の会長、

「う~ん」

と、少し考えると、月に対し、

「Aqoursか・・・。そこの少女よ、あなたの言うことはわかった!!」

と、威厳のありそうな声で言うと、続けて、

「そこの少女(月)よ、まずはこの申請書に必要事項を記入してくれ!!」

と、1枚の紙を月の目の前にだした。で、月、その紙を見てみる。すると、そこには、「屋上使用申請書」と書かれていた。で、運営会社の会長はその申請書を見てはこう断言した。

「この申請書に書いてもらえたら数日後の早朝の屋上使用を認めてやろう!!」

 この会長の言葉に、月、

「えっ、屋上を使わせてくれるのですか!?や、ヤッター!!」

と、数日後の早朝、屋上を使わせてくれる、と思ったのか喜んでいた。

 が、運営会社の会長の話はまだ続いていた。運営会社の会長、

「そこの少女、ちと待てい!!まだ、話は続いておるぞ!!」

と、月に注意すると、月、

「えっ、あっ、はい・・・」

と、急に黙ってしまう。どうやら勇み足だったようだ。

 で、運営会社の会長は話の続きをした。

「ただし、この申請書を提出してから1日は待っておいてくれ。この1日の間にほかのところから反対意見、もしくは、クレームがあった場合、私たち「ラグーン」の運営会社を含めた当事者間の話し合いで申請側に不備があるなどのことが発覚したり反対したものの意見が採用された場合、申請は却下されることになるから、それをお忘れなく」

 この会長の言葉を聞いた月、

「たとえそのことを聞いたとしてもここでAqours最後のライブを行う機会を得る可能性がもらえただけでもうれしいです!!ありがとうございます、(運営会社の)会長!!」

と、会長にお礼を言った。

 で、運営会社の会長はというと・・・、

「ホホホ、青春っていいねぇ・・・」

と、ただほほ笑みながら言った。

 が、このとき、1人だけ顔をゆがませる人物がいた。それは屋上責任者だった。このとき、屋上責任者、

(こ、このままだと、Aqours最後のライブ、が行われてしまう!!こうなると、裏美様、いや、木松悪斗様の野望が潰えてしまう!!なんとかしないと・・・)

と、思っていた。そう、この屋上責任者、実は、木松悪斗、というか、裏美のシンパ、だったのだ。ここでAqours最後のライブを行ってしまうときっと裏美の状況が不利になってしまう、屋上責任者はそう考えてしまったのである。

 そういうことで、この屋上責任者、すぐにあるところに電話した。

「あっ、裏美様ですか。「ラグーン」の屋上責任者です!!それよりも、大変です!!大変なことが起きました!!実は・・・」

 

 で、そんなことも知らず、月は上機嫌で自分の家に帰るとすぐにルビィに電話をした。

「あっ、ルビィちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど、ルビィちゃんたち1・2年生が着る青い上着、それを少し加工してもらいたいんだ!!うん、実はね、その上着、すぐに脱げるようにボタンをちょっと加工してもらいたいんだ・・・。うんうん・・・」

 

 こうして、なにかを企んでいてた月であったが、数日後、無事に延長戦を迎える・・・はずもなかった。そう、あの男が残っていた。その男の名は裏美・・・ではなく、木松悪斗、だった。黙って月の思惑通りに進むことんなんて許さない、それが、木松悪斗、である。なにがなんでも勝利にこだわる、それが、木松悪斗、である。木松悪斗には敗北という文字は許されない、のである。そんな、木松悪斗、がここで黙っているはずがない!!

 そんなわけで、木松悪斗のターン、とすぐにはならなかった、残念・・・。



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Moon Cradle 第7部後編 第11話

 と、言いたいのだが、月優位のこの物語であったが、ある1つの電話により急展開を迎える。そう、あの屋上責任者が裏美にかけた電話である。「ラグーン」の屋上責任者が裏美に電話をかけた、そのとき、裏美はというと・・・、

グ~ グ~

と、いびきをかきながら寝ていた。いや、それが当たり前である。だって、まだ早朝だったから・・・。が、それによって裏美の電話の呼び鈴がけたましくなってしまう。むろん、恨みの家の中ではその呼び鈴が激しく響き渡っていた・・・のだが、どうやら、裏美、相当疲れているのか、その呼び鈴が鳴っても起きる気配すらなかった。

 で、その呼び鈴、であるが、ようやく裏美以外の人物が気づいた。で、けたましく鳴る電話、その受話器を誰かが「ガチャン」という音とともに取ると、そのまま、若い女性の声で、

「はい、裏美ですけど・・・」

と、電話の相手、つまり、屋上責任者に話すと、その電話の受話器から、屋上責任者の声、それも、慌てた口調でこう聞こえてきた。

「あっ、裏美様ですか。「ラグーン」の屋上責任者です!!それよりも、大変です!!大変なことが起きました!!実は・・・」

 が、そんな慌てた口調の屋上責任者をいさめるかのようにその情勢は優しくこう話した。

「慌てないでくださいね。今、夫(裏美)を呼んできますからね」

で、この女性の声を聞いた屋上責任者、

「はい、大至急、お願いいたします!!」

と、落ち着きを取り戻すことなく裏美を呼ぶようにお願いする。

 で、その女性はすぐに裏美の寝ている寝室に行くと、ぐっすり寝ている恨みを揺さぶりながらこう言った。

「あなた(裏美)、電話ですよ!!緊急の用事があるみたいですよ!!」

でも、ぐっすり寝ている裏美、これで起きるわけがなく・・・。

「うぅ、なんだ、お前か・・・。いったいどうしてんだね?」

と、なんと、その女性こと裏美の奥さんに起こされた裏美、その奥さんになにがあったのか尋ねてみる。すると、

「あなた、「ラグーン」の屋上責任者の方からお電話がかかっておりますわよ!!」

と、突然かかってきて電話のことを話す。で、これには、裏美、

(「ラグーン」の屋上責任者、たしか、(私が沼津での経済界の動向を調べるための)私のシンパ、だったはず。ただいつもなら定期的な報告のみで終わっているのを早朝から私に電話をしてくるなんて、なんか緊急なことが起きたに違いない!!)

と、裏美にとって緊急なことが起きていることを悟る。そんなわけで、裏美、

「わかった」

と、自分の奥さんにそう言い残して屋上責任者の電話にでることにした。

「はい、裏美ですが・・・」

と、裏美が電話にでると、開口一番、屋上責任者、

「裏美様、大変です!!Aqoursが、Aqoursが、急遽ライブをすることになりました!!」

と、悲痛な叫び声をあげた。これを聞いた裏美、

(えっ、なんだって!!あのAqoursがライブを行うだって!!)

と、驚いてしまう。だって、裏美にとってみればローマ・スペイン広場でのライブが今のAqoursの最後のライブだと思っていたからだ。そのためか、裏美、屋上責任者に対し、

「あのAqoursがね・・・」

と、冷静を装うも、すぐに、

「でも、なんでAqoursはライブを行うのですかね?」

と、その屋上責任者にAqoursがライブを行う理由を尋ねる。すると、その屋上責任者曰く、

「どうやら、道に迷っている少女を導くため、と、言っておりました。また、このライブは「私的なもの」みたいです」

と。これには、裏美、

(ふぅ、「私的なもの」だったら我らが優位になっている静真本校と浦の星分校の統合問題に直接影響はでないな)

と、少し安心した。

 と、ここで、あまりに長い物語のためか忘れているかもしれないので、その統合問題について少し振り返ることにしよう。

①2月上旬、静真高校と浦の星女学院の統合が決まっていたにも関わらず静真の大スポンサーである木松悪斗が、静真への投資を断った、自分が用意した静真の理事の椅子を蹴ってしまった、などの理由で小原家と浦の星女学院を恨んだため、突然、その統合に反対。一方、月たち静真高校生徒会は統合実現のための行動にでる。

②木松悪斗は静真の生徒の保護者たちに「部活動に対する士気が低い裏の保持の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に入ると士気低下や対立により静真の部活動に悪影響がでる」と言いふらし、浦の星の生徒たちに対する不信感を広げていた。対して、月たちは静真の生徒たちを中心に統合賛成の署名活動を展開。

③2月末の臨時理事会で静真高校と浦の星女学院の統合問題について協議するも静真の陰の神である沼田によって統合が正式決定。しかし、浦の星の生徒たちに対する不信感、という保護者たちの声が多いことを理由にその声がなくなるまで浦の星分校に浦の星の生徒たちを通わせることになってしまう。

④月はそれを決めた沼田に、どうすれば静真本校と浦の星分校が統合できるのか、を尋ねてみると、沼田、その保護者の声がなくなる必要がある、と言った上で、「部活動とはなにか?」「部活動をする上で大事なものとは?」、この問いに答えらえたら統合への道が開けることを伝える。

⑤月、その沼田の問いを無視し、部活動報告会に千歌たち新生Aqours(1・2年)を強行出場させるも、木松悪斗たちの妨害や鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感によりそのときのライブは失敗、静真本校と浦の星分校の統合は風前の灯に。

⑥そのときのライブの失敗により不安・心配という深き海・沼に陥った千歌たち・・・だったが鞠莉‘sママ(と陰で動いていた裏美)の策略とそのとき一緒にいたSaint Snowの聖良のアドバイスにより鞠莉たち3年生が卒業旅行中に行方不明となった地、イタリアに飛ぶことに。そのとき、(聖良の助言もあったためか、それとも、鞠莉‘sママ、裏美の策略が働いたのか)月も付き添いで一緒に行くことに。

⑦その月と千歌たち一行、イタリアにてついに鞠莉たち3年生3人と再会。その後、紆余曲折を経て鞠莉‘sママの前でライブを行うことに。その過程のなかで、ルビィ、月のアドバイスにより1人前の少女へと成長、そのおかげで千歌たち新生Aqoursは復活を遂げる。そして、無事に鞠莉‘sママでのライブ、ローマ・スペイン広場でのライブは成功に終わる。ただ、そのなかで、月、ルビィの更生?方法が反則すれすれ、というわけで、鞠莉たち3年生3人からプロデューサー業をみっちり叩き込まれる。

⑧一方、そのころ、沼津では月が抜けたものの静真本校と浦の星分校の統合実現を諦めていなかったナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星のみんな、あげはたち静真Aqours応援団、はともに、(「士気が低いとみられている浦の星の生徒、実は士気が高い」、それを証明し統合実現を進めるために開催する)新生Aqoursお披露目ライブ、の準備を進めていた。で、イタリアから帰ってきた千歌たち新生Aqours(1・2年)と月もそれに合流する。

⑨しかし、そこに理亜の問題が発生。道に迷った理亜に大切なことを伝えたい、理亜を救いたい、ということで、急遽、理亜の夢を叶えるため、ラブライブ!決勝延長戦、を行うことを決める。で、月、そのライブのためのステージを探していたところ、「ラグーン」の屋上を見つける。そして、月、その屋上の使用申請書を出した。

 

と、いうことになる。で、統合問題についてはいまだに木松悪斗たち(裏美を含む)の統合反対、というか、保護者の声がまだまだ強い、そんな状況だった。で、今回のラブライブ!決勝延長戦、「私的な」ライブ、ということで、ローマ・スペイン広場でのライブみたいに一般やネットでそのライブを公開するわけではないため、そこまで統合問題にい影響はないだろう、と、このときの裏美はそう考えていた。なので、そんなライブを披露したとしても別に問題はない、と、裏美は高をくくっていた。

 しかし、裏美はそのことよりもあることを心配していた。それは・・・、

(とはいえ、スペイン広場でのライブの成功によって今のAqoursは復活した、だけでなく、勢いすら感じさせるものになった。このままいくと、沼津駅駅前の(新生Aqoursお披露目)ライブが成功に終わってしまう。で、こうなってしまうと、せっかく我らが優位になっている(静真本校と浦の星分校の)統合問題にも悪影響がでてしまう。そう考えると、このライブの成功によってAqoursの勢いが加速してしまいかねん・・・)

そう、裏美の心配、それはAqoursの勢いが今以上に加速してしまうのではないか、というものだった。生き返ることすらできないくらい地に堕ちたAqours、しかし、ローマ・スペイン広場でのライブによって息を吹き返しただけでなく勢いすら感じられるようになってしまった、そして、たとえ「私的な」ものとはいえライブを行う、Aqours、もし、それが成功に終わればその勢いはさらに加速、新生Aqoursお披露目ライブすら成功してしまう、結果、静真本校と浦の星分校の統合実現に一歩近づいてしまう、そのことを裏美は危惧していたのだ。

 で、肝心のお披露目ライブ、であるが、これについても、裏美、

(う~、あの沼田のせいで我らの妨害工作も不作に終わっている・・・。う~、イタリアに行かずにここに残ればよかった・・・)

と、悔やんでしまう。月とAqoursがイタリアに行っている間、沼津に残ったナギたち静真高校生徒会は披露目ライブの下準備をしていた。これに対し裏美はナギたち静真高校生徒会、よいつむトリオら浦の星のみんなの手助けをするな、と、沼津のお店・企業・団体に圧力をかけていたのだ。ただ、その裏美、イタリアにいる月とAqoursの行動を妨害するため、ローマ・スペイン広場のAqoursのライブの時期にイタリアへと飛んでいたのだ。が、そのあいだに裏美の圧力のことを知った沼田の一声によってその圧力も一掃され、ナギたちはお披露目ライブの下準備を着々と進めていた、というわけである。こうして、ナギたちとよいつむトリオらはライブ会場やライブのための資材確保などにも成功、ステージ作成などに遅れが生じなければ、計画通り、4月上旬に沼津駅南口付近でお披露目ライブを開催できる手筈となっていた。。

 さらに、裏美、こんなことまで悔やんでいた。

(う~、今となってはあの(お披露目)ライブをやめさせることはできない。もし、やめさせてしまったら、こちらがダ額の賠償金を支払わないといけない・・・)

そう、なんと、その新生Aqoursお披露目ライブ、それを、裏美、いや、木松悪斗の力で勝手にやめさせることができない、そんな状況までことは進んでいたのだ。なぜなら、すでにお披露目ライブに向けて後戻りができないくらいライブの準備が進んでいたのだ。このときすでに市のホームページや広報誌を通じてお披露目ライブの開催が宣伝されていた。また、警察などの関係各所もお披露目ライブを開催すること前提で話し合いを進めていた。さらに、お披露目ライブに出店するお店・企業・団体もその準備を進めていた。で、もし、ここで裏美や木松悪斗たちがこのライブを中止に追い込んでしまったら、このライブに関わっている人・お店・企業・団体などから大ブーイングが起きるだけでなく、その準備をふいにさせた責任として多額の賠償金を請求されることは目にみえていた。なので、このお披露目ライブについては裏美や木松悪斗たちがどうすることもできなかった。

 そんなわけで、裏美が今とれる手段、それは延長戦自体を中止に追い込み、Aqoursの勢いを止めることだけだった。なので、裏美、

(こうなったら、そのライブ(延長戦)、絶対に阻止してやる!!)

と、延長戦自体を阻止することを決め、「ラグーン」の屋上責任者に対し力強く命令した。

「おい、屋上責任者、このライブ(延長戦)を絶対に阻止せよ!!絶対にな!!」

 で、これには、屋上責任者、あることを裏美に伝える。

「裏美様、今のところ、まだライブ会場となる「ラグーン」の屋上の使用申請を月生徒会長が出しているところです。申請を出してから1日のあいだにちゃんとした理由で反対意見、クレームを入れたらその申請を受理しないこともあります」

 この屋上責任者の言葉を聞いた裏美、

(そ、それはいいことを聞いた。なら、すぐにでもその申請に対し、反対意見、クレームを入れることにしよう)

と、月の使用申請に反対意見、クレームを入れることを決めるとすぐにその屋上責任者に対し、

「よし、そうだったらすぐにでもこの裏美名義で月生徒会長の使用申請に反対意見、クレームをいれよう!!」

と、力強く宣言する。

 が、その屋上責任者の答えは意外なものだった。

「あの~、裏美様、ただ、反対意見、クレームをいれただけでは申請却下にはなりません。ちゃんとした理由がないといけません。「ただやらせたくないから」といった単なる理由だけでは無理です」

そう、ただたんに「ただやらせたくないから」といった理由で月の屋上の使用申請を却下させることは無理だった。なぜなら、それはその人の活動の場を奪うことにつながるからである。「ラグーン」の屋上を管理している運営会社の会長さんはかなりの人格者であった。なので、少しでも若者の活動の場所を提供したい、ということで、「ラグーン」内に劇場を作ったり、屋上をみんなのために解放してはいろんな人たちのために活動の場として「ラグーン」全体を提供していたりしていた。なので、「ラグーン」の運営会社としては屋上の使用申請については「来るもの拒まず」の姿勢で柔軟に対応していた。で、月の申請も別に悪いことをするために屋上を使わせてもらうわけでもなく、むしろ、理亜という迷える少女を救い出す、そんな大義名分があるため、おいそれと月の使用申請を拒むことはできなかった。なので、月の使用申請を却下するにはそれ相応の理由が必要だった。

 しかし、たとえそうだったとしても自分の思い通りにいかないことに、裏美、ついに業を煮やしたのか、屋上責任者に対し、

「いいか、これは私裏美からの命令である。絶対に月生徒会長の使用申請を却下せよ!!この裏美の名を使ってもいい!!絶対に、いや、強引にでも申請を却下せよ!!」

と、きつい口調で命令するも、屋上責任者、

「裏美様、たとえ裏美様の名前を使っても無理に月生徒会長の申請を却下することはできません!!あまり言いたくないのですが・・・、裏美様のネームバリューではあの(「ラグーン」の運営会社の)会長を納得させるだけのものにはなりません!!せめて、木松悪斗様、ぐらいのネームバリューがないと・・・」

と、裏美に現実を突きつける。そう、裏美の権力をもってしてもあの運営会社の会長をひれ伏せることはできないのである。むしろ、返り討ちにあってしまうのがオチである。せめて(沼津の経済界で3番目の権力を持つ)木松悪斗ぐらいの権力ぐらいないとあの運営会社の会長はひざまつかないのだ。

 そんなわけで力づくで月の使用申請を却下しようとしていた裏美であったが屋上責任者からそんなことを言われても諦めきれず、

「それなら、朝から反対意見、クレームをいれてやる!!力づくでもやめさせてやる!!」

と、半分やけになりながら屋上責任者に言ったあと、

ガチャン

と、電話を一方的に切ってしまった。

 と、いうわけで、裏美にAqoursのライブ(延長戦)という重要な情報を伝えたもの、その裏美から無理やりにも、それも一方的にやめさせるように攻められた屋上責任者、

(このままだと、裏美様、いや、木松悪斗様、にとって大変なことになる!!)

と思ったのか、すぐにあるところに電話した。

「あの・・・、私、「ラグーン」の屋上の責任者ですが、取り急ぎ伝えないといけないことがあります・・・、木松悪斗様に・・・。え~、はいはい、実は・・・裏美様が・・・」



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Moon Cradle 第7部後編 第12話

 そして、朝・・・、沼津の木松悪斗の事務所では裏美が全従業員を使ってあることをしていた。

「おいっ、そこのお前、すぐに「ラグーン」の運営会社に大量のクレームをいれろ!!いや、脅迫じみたものでもいい、すぐにだせ!!Aqoursのライブをやめさせろ!!月生徒会長の屋上使用申請を却下させろ!!」

そう、なにがなんでも月の屋上使用申請を却下させよう、Aqoursのライブ、ラブライブ!決勝延長戦、を阻止しようと「ラグーン」の運営会社に対し大量の反対意見・クレームを送っていたのだ。ただ、反対する理宇う、それがまったく書かれていない、もしくは、Aqoursだから、といったまったく的外れな理由だったため、運営会社のほうからは「そなた様のご希望通りにそえることはできませんでした。申し訳ございません」というメールが贈られてくる、だけだった。なので、裏美、

「いいか、相手が音をあげるまで(反対意見・クレームを)送り続けろ!!いいな!!」

と、運営会社のほうがひれ伏すまで反対意見・クレームを送り続ける暴挙にでてしまう。

 それから20分後・・・、

「まだ相手(「ラグーン」の運営会社)は音をあげないのか」

と、あの裏美もあまりに首を縦に振らない運営会社の対応に焦りを感じていた。そんなわけで、裏美、ついにあることを言いだす。

「そんなに音をあげないなら、お前ら、いいか、この裏美様の命令であることを伝えろ!!俺の権力をもってして無理やりでも従わせろ!!いや、それ以外にも静真高校部活動保護者会の名を使え!!所詮、Aqoursは(静真に統合される)浦の星の部活の1つだぞ!!なら、その部活を管理しているのは月たち静真高校生徒会じゃない、(木松悪斗の娘である)旺夏様率いる(静真の部活動に参加している生徒たちの連合体である)部活動連合会だ!!なら、その互助組織である保護者会の名をだせばきっと運営会社もひれ伏すはずだ!!」

なんと、裏美、ついに奥の手を出してきた!!自分の名前、裏美、その裏美が持つ権力をかざして「ラグーン」の運営会社を従わせようとしていた。いや、それ以外にも、木松悪斗率いる部活動保護者会の名、いや、権力すら使ってしまえ、そんなことまで言ってきたのだ。部活動保護者会、静真の部活動に参加している生徒の保護者たちの連合体である。で、木松悪斗がその会の会長を務めているし、裏美はその会の幹部の一人として名をつられている。さらに、木松悪斗の娘で女子サッカー部の部長を務めている旺夏率いる(静真の部活動に参加している生徒たちの連合体であり静真の部活を管理している)部活動連合会、その互助組織が部活動保護者会だったりする。そんなわけで、浦の星の部活の1つであるスクールアイドル部Aqours、であるが、その浦の星が静真と統合されるのでそのAqoursも静真の部活の1つ?としてみることができる、だからこそ、保護者会の命令によって(保護者会と互助関係があり静真の部活を管理している静真高校部活動連合体の管理下にある?浦の星女学院スクールアイドル部の)Aqoursのライブを中止に追い込むことができる、そう、裏美はあまりに自分のいいように解釈していたのかそう考えていた。で、木松悪斗もそうだが、裏美も人の意見を聞くことなんてしないワンマン体質であったりする。なので、あんまり無茶な理論の名のもとに行われた裏美の命令であってもその命令は絶対、これがこの事務所にいる全員の考え、であった。と、いうわけで、ここにいる全員、次第に裏美と静真高校部活動保護者会の名のもと、「ラグーン」の運営会社に反対意見・クレームを大量に送り始めたのだ。

 だが、それから1時間後、裏美の強権的な手段をもってしても運営会社は縦に首を振ることはなかった。それよりも・・・、

「これ以上悪質なメールや電話をしてくるなら営業妨害などで警察などに訴えることになります。なので、これ以上悪質なメールや電話をしてこないでください」

という警告のメールを運営会社のほうから送られてきてしまった。これにはさすがの裏美も、

「うぅ・・・」

と、頭を抱えるしかなかった。だって、こんな警告文を出された以上、これ以上、反対意見・クレームを送ったとしても自分の主人である木松悪斗に迷惑をかけることになる、いや、自分を含めて木松悪斗一派、ここ沼津に居づらくなってしまう、そう裏美は考えてしまったのである。そのためか、

(もし、これ以上(「ラグーン」の運営会社に)反対意見・クレームを入れると木松悪斗様にご迷惑をおかけすることになってしまう。でも、ここで手を引いたら、月生徒会長のたくらみ、Aqoursのライブ(ラブライブ!決勝延長戦)が実現してしまう・・・。うぅ、どうすればいいのか・・・)

と、裏美、相当悩んでしまう。

 が、そんなときだった。裏美は「ラグーン」の屋上責任者の言葉をふと思い出す。

「せめて木松悪斗様のネームバリューがないと・・・」

この言葉を思い出した瞬間、裏美にある考えが浮かび上がる。

(あっ、そうだ!!木松悪斗様の名前を使えばいいんだ!!たしか、新生Aqoursのお披露目ライブのときも木松悪斗様の名を借りてお店・企業・団体に圧力をかけていた!!それと同じことをすればいいのだ!!)

そう、裏美はナギたち静真高校生徒会が新生Aqoursお披露目ライブの下準備を進めている最中、木松悪斗の名を借りて沼津のお店・企業・団体にナギたちの手助けをしないよう圧力をかえていたのだ、もし、裏美たちに従わなければ木松悪斗の名において断罪する、そう脅しをかけて。しかし、それは木松悪斗より権力・・・、いや、沼津の経済界の頂点にたつ沼田によって無効化されたのだが、裏美、これに懲りずにまた同じことをしようとしているのだ。そんなわけで、木松悪斗の名を・・・。

 と、そんなときだった。

「ほう、俺の名を勝手に語ろうとしているのか、裏美!!」

突然、事務所中にけたがましい声が聞こえてくる。これには、裏美、

「うっ、誰だ!!」

と、後ろを振り向く。すると・・・、

「き・・・木松悪斗様・・・」

そう、そこには本業である投資の仕事を進めるために東京にいるはずの、木松悪斗、本人がいたのだ。で、木松悪斗、ご主人の突然の登場で唖然となっている裏美に対しきつい一言をぶちかます。

「おい、裏美、よくも俺の名を勝手に語ってくれたな!!俺の名を勝手に使うということは俺の経歴に傷がつくだけでなく、俺の知らないところで俺に被害を与えることになるんだぞ!!どう責任を取ってくれるんだ!!」

で、この木松悪斗の言葉に、裏美、

(うっ、なんで、私がやってきたことを木松悪斗様は知っているんだ?)

と、愕然としていた。それよりも、なぜ、ここに木松悪斗がいるのか、裏美、慌てふためくも不思議に思っていた。

 

 では、なぜここにいないはずの木松悪斗が突然裏美の前に現れたのか、それは以前、というか、今朝、裏美に電話をしたある人物の存在があった。その人物は、今朝、裏美にAqoursが「ラグーン」の屋上でライブ(ラブライブ!決勝延長戦)を行うこと、月がそのための使用申請を出していることを伝えたものの、その裏美から無理をしてでも使用申請を却下せよ、と、命令されてしまったのだ。これには、その人物、

「このままいけば木松悪斗様にとって大変なことになる」

と、いうことで、すぐにあるところに電話をかけたのだ。その電話の相手とは・・・、そう、木松悪斗、その東京事務所だった。

 そして、電話が通じた。

「はい、木松悪斗事務所ですが・・・」

と、最初は木松悪斗の東京事務所の係員が電話にでる。すると、開口一番、その人物は、

「大変です!!取り急ぎ木松悪斗様につないでください!!」

と、焦るような声で係員に言った。で、その人物の焦り具合に係員も自分のご主人である木松悪斗に大変なことが起きていることに気づいたらしく、

「はい、わかりました!!今すぐおつなぎいたします!!」

と、言って、取り急ぎ木松悪斗に電話を取り次いでくれた。

 で、そのとき、木松悪斗はというと・・・、

「う~ん、ここの株はこれくらい売ってしまおう!!」

と、自分の目の前にあるモニター数台を見てはどの株をどのくらい売るか、もしくは買うか決めてからマウスを動かして株の売買を行っていた。でも、今はまだ早朝である。でも、木松悪斗はすでに起きていた。と、いうよりも、株トレードなどの仕事をしていた。でも、今はまだ早朝である。日本の株式市場はまだ眠っていた。では、木松悪斗はなにを相手に株トレードをしていたのか?それは、海外の株式市場、だった。木松悪斗、海外の株式市場の動向を注視して株の売買を繰り返していたのだ。たとえ日本の株式市場が眠っていたとしても欧米にお株式市場はこの時間開いていることが多い。なので、少しでも株式売買で儲けたいために、木松悪斗、朝早く起きて仕事をしていたのだ。

 で、海外株式市場の株トレードもひと段落・・・、

「ほっ・・・」

と、一息つく木松悪斗。が、突然、

「木松悪斗様、電話がはいっております。どうやら緊急の用事みたいです」

と、事務所の係員から連絡が入ってきた。これには、木松悪斗、

「うむ、俺につないでくれ」

と、一言言うとすぐに電話に出た。

「はい、木松悪斗ですが・・・」

この言葉のあと、電話口から焦りの声が聞こえてきた。

「あの・・・、私、「ラグーン」の屋上責任者ですが・・・」

そう、木松悪斗に電話をしてきた相手、それは、あの「ラグーン」の屋上責任者、だった。続けて、屋上責任者、あることを木松悪斗に話した。

「取り急ぎご連絡しないといけないことがあります、木松悪斗様に・・・。実は、裏美様が暴走を始めようとしております!!」

 この屋上責任者の言葉に、木松悪斗、

「えっ、あの裏美が暴走を!!」

と、驚いてしまう。屋上責任者、さらに話を進める。

「え~、はいはい・・・、実は、裏美様、私が務めております「ラグーン」の屋上、その使用申請を無理やり却下するよう迫っております・・・」

これには、木松悪斗、

「ふ~ん、そんなもの、最初から無視しとけばいいものを・・・」

と、あまり関心がない態度をとる。

 が、次の屋上責任者の言葉によりその態度は一変する。

「実は、その申請をしているのが、静真高校の渡辺月生徒会長なのです!!どうやらAqoursがライブを「ラグーン」の屋上でしたいらしく、先ほど屋上の使用申請をだしたのですが・・・」

で、この屋上責任者の言葉に、木松悪斗、

(な、なんだって!!あのAqoursのために、いや、あのにくっき小原家の一人娘のために月生徒会長が動いているのか!!)

と、驚きの表情になるも、すぐに、

(でも、そのAqoursは今や風前の灯火だ!!なぜなら、部活動報告会のときに徹底的に叩きのめしたからな・・・)

と、逆に安心してしまう。どうやら、木松悪斗、イタリアでの月とAqoursのことについて今の今まで知らなかったみたいだった。と、いうか、木松悪斗、その報告会で徹底的に、月、そして、千歌たち(新生)Aqoursを潰したあと、滞っていた仕事をすらうために東京に行っては一歩も東京の自分の事務所から出ることなく日中ずっとモニターの画面とにらめっこをしていたのだった。で、これによりかなりの収益をあげることができたのだが、沼津や静真のことについては東京に行く前に、静真本校と浦の星分校の統合問題において(沼田により禁止された)統合実現に向けて行動している月やAqours、浦の星の生徒たちの妨害をするな、保護者の声をもっと広めろ、その命令を出したこと以外は裏美をはじめとする部下たちに任せっきりだった。むろん、事務所に引きこもっていたのと仕事に四六時中仕事に集中していたため、木松悪斗、なんと静真やAqoursに関する情報を得ることすらしなかったのである。まさに、木松悪斗、浦島太郎状態・・・。なので、その屋上責任者に対し、木松悪斗、ついこんなことを言いだしてしまう。

「ふん!!もう虫の息のAqoursがいくら頑張ってもライブをしたとしても静真本校と浦の星分校の統合問題に支障はない。むしろ、単なる悪あがきだ!!」

 そんな木松悪斗の楽観論であるが、次の屋上責任者の一言によりもろくも崩れ去った。

「木松悪斗様、実は・・・、そのAqours、完全に復活しております・・・」

これには、木松悪斗、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。で、屋上責任者はこれまでの月とAqours、そして、沼津で今起きていることを伝えた、報告会のあと、月と千歌たち新生Aqoursはイタリアに飛び、鞠莉たち3年生3人と再会、これによりスペイン広場でのライブでAqoursは完全復活を果たしたこと、その月とAqoursのいない沼津ではナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオら浦の星の生徒たちによって完全復活を果たした新生Aqours、そのお披露目ライブが沼津駅前の南口にて4月上旬に行う準備を進めていること、さらに、そのお披露目ライブはすでに決定事項であり勝手にやめさせることができないことを・・・。

 そして、屋上責任者、最後にこんなことを言いだした。

「で、裏美様はそれらに対して抵抗しておりました。イタリアの件については小原家の一人娘(鞠莉)の母親を使ってAqoursや月生徒会長の妨害をしようとしました。沼津の件については木松悪斗様の名を借りて沼津のお店・企業・団体に静真高校生徒会や浦の星の生徒たちに関わることがないように圧力をかけておりました。しかし、どれも力不足でした。うぅ、ごめんなさい・・・」

 で、これを聞いた、木松悪斗、

(うっ、なんだって!!あのAqoursが完全復活を果たしただと!!これでは静真本校と浦の星分校の統合反対という(静真での)優位な立場が危うくなる!!いや、それだけじゃない!!静真高校生徒会と浦の星の生徒たちによってその(新生)Aqoursのお披露目ライブが行われる!!もし、そんなことをされたら、俺が広めた考え、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加したら、士気低下、対立などにより静真の部活動に悪影響がでる」、その考え、その保護者の声が覆ることになるかもしれない・・・。そうしたら、統合実現へと向かってしまう!!)

と、危機感をつのらせてしまう。報告会で潰したはずの(新生)Aqoursが完全復活しただけでなく(静真高校生徒会と)浦の星の生徒たちの手でその(新生)Aqoursのお披露目ライブが行われてしまうとこれまでの(静真で)優位だった統合反対の声が急にしぼみ、逆に、月や静真高校生徒会が望んでいる統合実現へと向かってしまう、そのことを木松悪斗は危惧していたのだった。

 で、屋上責任者、さらにこんなことまで言いだしてしまう。

「噂によると、イタリアの件については月生徒会長が、沼津の件については沼田殿が陰で動いていたみたいです」

で、これには、木松悪斗、

(なんだと!!沼田殿はともかく、まさか、月生徒会長が暗躍していたなんて、う~、悔しい!!)

 

と、苦虫を噛み潰してしまう。まさか、月によってAqoursが完全復活するなんて思ってもいなかったのだ。が、新生Aqoursのお披露目ライブの開催が決定している以上、木松悪斗がどうあがいたとしてもそのライブを止めることは無理だった。それよりも、木松悪斗、あることを恐れていた。それは・・・、

(それに、(お披露目)ライブの妨害をしたとなると、あの沼田によって俺は痛い目にあってしまう。うぅ、どうすれば・・・)

そう、実は、木松悪斗、すでに決定事項となっている新生Aqoursお披露目ライブ、その妨害を今から無理してでもしようと思ってもできない事情があった。そう、あの沼田の存在だった。報告会のあとに行われた通常理事会で静真本校と浦の星分校の統合は実現できなかったものの、4月の新学期が始まるまでの期限付きで、月、そして、ナギたち静真高校生徒会の統合実現に向けた行動を静真の影の神である沼田に認められたのだ。ただし、この期限を過ぎても実現できなかった場合、月とナギたち静真高校生徒会の役員全員静真を退学する、という条件付きである。ただ、この行動について、沼田、木松悪斗側に対し妨害を認めない、妨害したら痛い目にあう、そう警告していたのだ。なので、木松悪斗本人からしたら妨害したいけどできない、そんな状況に陥っていたため、これまで通り、「浦の星の生徒たちが静真の部活動に参加したら悪影響がでる」、その考えを静真の保護者たちと生徒たちに広げることのみに注力したいた。が、そのあいだにもAqoursは月によって完全復活を果たし、ナギたち静真高校生徒会とよいつむトリオら浦の星の生徒たちはその(新生)Aqoursのお披露目ライブの準備をしていた。こうして、月とナギたち静真高校生徒会、Aqoursとよいつむトリオら浦の星の生徒たちは逆転の機会をうかがっているのだ。それに対し、木松悪斗、自分より権力がある沼田に恐れてなにもできずにいた。

 が、沼田のことを恐れていた木松悪斗であったがふと屋上責任者の言葉を思い出す。

「裏美様はこれらに対して抵抗しておりました!!」

この言葉を思い返した木松悪斗、突然、怒りの形相になるやいなや、

「裏美め~、なんてことをしてくれたんだ!!これでは俺が沼田殿から殺されるではないか!!」

と、裏美に対し恨みを持つようになる。そりゃそうだ。月とAqours、そして、ナギたちやよいつむトリオらの行動に対する裏美の妨害、それは、たとえご主人である木松悪斗が知らなくても沼田にとってみればそんなの関係ない、沼田からすれば、裏美の妨害はすべてが木松悪斗の差し金とみられてもおかしくなかった。さらには・・・、

「それに、裏美、なんで俺の名前を勝手に使っているんだ!!」

と、さらに裏美のことを激しく恨んでしまう。だって、裏美はなぎたちやよいつむトリオらの行動を妨害するために勝手に自分の名前を語って沼津のお店・企業・団体に圧力をかけていたのだ。なので、いくら沼田から言い逃れをしようにも、「自分の名前で妨害したのだから、そんな言い逃れなんてできない」と沼田から言われてしまうのがオチである。そのため、木松悪斗からしたら裏美の妨害はすべて自分の悪行にされてしまい、それにより、沼田から粛清されるのが確定してしまった、そう木松悪斗が思っても仕方がなかった。そんな意味でも、裏美は自分を裏切った、と、木松悪斗はそう考えてしまっていた。

 まあ、そんなこともあり、木松悪斗のなかでは月たちやAqoursのことよりも裏美の裏切りに対する怒りの方が大きかったのだが、まだ屋上責任者の話は続いていた。裏美に対する恨み節をきかせている木松悪斗であったが、突然、屋上責任者は大きな声をあげた。

「木松悪斗様、今は裏美様のことよりもAqoursのことが先決です!!このままいくと「ラグーン」の屋上でAqoursのライブが行われます!!それがもし成功したとしたら、今勢いがあるAqoursの勢いがさらに加速してしまいます!!もしそうなると誰もAqoursの勢いを止めることができなくなります!!だからこそ、木松悪斗様、ここはなんとかしてください!!Aqoursの勢いを止めることができるのは木松悪斗様だけです!!」

 この屋上責任者の言葉に、木松悪斗、すぐに、

(あっ、たしかに屋上責任者の言う通りだ!!今は内輪もめしている場合じゃない!!それよりも、これ以上Aqoursの、いや、月生徒会長の勝手を許すわけにはいかない!!この俺が、Aqours、月生徒会長の勢いを止めないと静真本校と浦の星分校が統合してしまう!!いや、俺の立場も危うくなる!!)

と、思ったのか、ここは自分が動かないと静真本校と浦の星分校の統合に一歩前進するだけでなく、静真や沼津での自分の立場も危うくなることを危惧してしまった。たしかにそうである。もし、Aqoursのラブライブ!決勝延長戦のライブが成功すればAqoursの勢いはさらに加速、誰も止めることができなくなる、いや、統合なんてすぐにでも実現できるかもしれない、そのAqoursと月の勢いを止めるには裏美では力不足、それなら、大将である木松悪斗しか今のAqoursの、月の勢いを止める者はいない、そう木松悪斗が考えても仕方がない状況だった、今は。

 そんなわけで、木松悪斗、ついに決意した。

(沼田殿のことを恐れている場合じゃない!!たとえ何があっても俺の力で、Aqoursの、月生徒会長の野望を止めて見せる!!そして、俺の絶対的支配による、静真、そして、沼津の統治を実現してみせる!!)

ついに賽は投げれた、そう思った木松悪斗、屋上責任者に対しこう宣言した。

「わかった!!この件についてはこの俺直々に対応する!!今残っている案件を片付け次第、沼津の俺の事務所に行って俺自ら陣頭指揮をとってやる!!俺が直接動けばAqoursも月生徒会長もただのごみくず同然だ!!だから、大船に乗ったつもりでいろ!!」

この木松悪斗の言葉に屋上責任者も、

「木松悪斗様が直接動けばもう安泰だ!!これで月生徒会長も、Aqoursも、もう恐れることなんてありませんね!!やっぱり、木松悪斗様は天才です!!」

と、木松悪斗のことをほめたたえた。

 そんな屋上責任者であったが、その屋上責任者に対し、木松悪斗、

「そして、お前に命ずる!!」

と、突然言うと、屋上責任者も、

「は、はい!!」

と、襟を正して木松悪斗の指示を待つ。そして、木松悪斗、その屋上責任者に対してこう命じた。

「俺が沼津の事務所に行くまでそちら側(「ラグーン」の運営会社)の状況を逐一報告しろ!!」

この木松悪斗直々の命令に、屋上責任者、

「は、はい!!」

と、大きな返事をした。

 

 こうして、裏美の・・・もとい、木松悪斗のシンパである「ラグーン」の屋上責任者との電話を終えた木松悪斗はすぐさま残っていた案件をものすごいスピードで全部こなしたあと、電話から1時間後には自分の車で沼津まで猛スピードで直行することとなった。

 



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Moon Cradle 第7部後編 第13話

「どうなっているんだ!!」

突然自分の前に現れた木松悪斗にこれまで自分がしてきたこと、それらに対する責任をどうとるのか、それを言われたことでたじろいてしまう裏美、そのためか、

「あ、あの・・・、木松悪斗様・・・、これには深い事情が・・・」

と、なぜか言い訳を言おうとしてしまう。まさかの木松悪斗の登場に、裏美、頭の中が真っ白になってしまったようだった。

 だが、すぐに木松悪斗は態度が変わってしまう。木松悪斗、突然、こんなことを言いだしてきた。

「と、裏美のこれまでの行動についてはあとできつくお仕置きするとして・・・」

この木松悪斗の言葉に、裏美、

「ほっ」

と、胸をなでおろした・・・のだが、そんなことお構いなしに、木松悪斗、ついに本題に入る。

「さて、今は「ラグーン」の屋上で行われるAqoursのライブの件のほうが先だ!!今回、俺がここに来たのはそのライブを阻止するためだ!!」

 で、この言葉のあと、裏美、

「うぉ~、木松悪斗様、すごいです!!」

と、なんと、木松悪斗にゴマをすり始めてしまった。が、木松悪斗、そんあ裏美のことなんてほっといて話を先に進める。木松悪斗曰く、

「もし、このライブが成功に終わった場合、Aqoursの、そして、月生徒会長の勢いはさらに加速する!!そうなってしまうと誰もそいつらを止めることができなくなる!!いや、そのあとに控えている新生Aqoursのお披露目ライブの成功にもつながってしまう!!そうなってしまうと俺が反対してきた静真本校と浦の星分校の統合も実現してしまうだろう。だからこそ、このライブは死んでも阻止しないといけない!!」

むろん、ここでも、裏美、

「よっ、木松悪斗様、すごいですね!!」

と、よいしょする・・・も、木松悪斗、完全無視!!

 そして、木松悪斗、ついにこれに対する決意を事務所にいるみんなに知らしめた。

「この戦いこそ天王山なり!!ここで、Aqoursの、月生徒会長の息の根を止めて見せる!!」

この木松悪斗の決意に、裏美、

「すごいですね、木松悪斗様!!」

と、よいしょする・・・も、木松悪斗から、

「って、そんなに俺のことをよいしょするなら俺のためにもっと働け!!」

と、裏美に激しいツッコミ!!これには、裏美、

「は、はい!!」

と、背筋をピンとしてしまった。

 と、そんわわけで、木松悪斗、裏美に対しビデオカメラを用意するとすぐに事務所にいる全員に対し事務所内に響くような大声でこう言った。

「いいか、今から相手(「ラグーン」の運営会社)に向けてビデオメッセージを送る。そのビデオメッセージは相手がひれ伏すぐらいの迫力ある動画になるだろう。だからこそ、お前ら、俺様の迫力ある動画になるように加工しろ!!」

 

 そして、それから1時間後・・・。

「また裏美様から反対意見が来ました!!」

ここは「ラグーン」の運営会社、今日は朝から同じ内容のメールを大量に送られ、また、同じ内容の電話が大量にかかっていた。その内容とは、「Aqoursのライブの使用申請を即刻却下せよ!!」、そう、裏美が陰で運営会社に大量のメールと電話攻勢をかけてきたものだった。と、言いつつも、ただ「却下せよ」「やめろ」の一点張りであり、月と運営会社の会長が一緒にいた早朝に運営会社の会長が言っていた通り、反対意見やクレームがあるならそのちゃんとした理由を提示する、てことなんてなく、ただ「却下せよ」「やめろ」の文言しかないため、運営会社としてはこれらのメールや電話をただあしらっているだけ、門前払いの状態だった。

 しかし、無視続けていたことによりより状況が悪化した。なんと、今度は裏美名義の反対意見・クレームのメール・電話が大量にくるようになった。ただ、そのメール・電話の内容は前と同じ、反対・クレームの理由なんて提示しておらず、ただ、「却下しろ」「やめろ」の一点張り。けれど、すこしよくなってきた?のか、「もし却下しなければ裏美のの名において・・・」と裏美の権力でもって運営会社を従わせることをちらつかせてきたのだ。また、「静真高校部活動保護者会の名において断罪する」ともいってきたのだ。それはまるで、権力の名において相手を従わせる、そんな脅しに感じられていた。

 だが、実はこれ、運営会社からすれば、「裏美って誰?」「ただの高校の保護者たちの集まりの団体がこんなことを言っているの?」といったレベルでしかみていなかった。だって、裏美は木松悪斗の腹心とはいえそこまで名が通っているわけでもなく、運営会社の会長からしたら、「あぁ、木松悪斗様の腰ぎんちゃくね」としか思っていなかったし、部活動保護者会にしても静真において絶大なる影響力を持っていたとしても静真の外では(その保護者会の会長である木松悪斗以外は)そんなに影響力を持っているわけではなかった。そんなわけで、裏美名義の反対意見・クレームも、運営会社、無視し続けた。

 が、ここで運営会社に大変なことが起きてしまった。裏美からの大量のメール・電話に運営会社の全従業員で対応した結果、なんと、日常業務に支障がでてしまったのである。そんわけで、運営会社、大量のメール・電話攻勢をしかける裏美に対し警告文を送ったのである、「もしこれ以上するなら警察に訴える」と。で、この警告文を送ってから大量のメール・電話攻勢はやんだ。これでようやく終わった・・・と運営会社としてはほっと一息をつくことができた、そう思っていた。

 が、それから1時間後、またもやその裏美からメールが届いたのだ。これには、運営会社の役員、

「もし同じ内容であるなら警察に訴えてやるぞ!!」

と、勢い込んでしまう・・・が、そのメールの差出人を見て、運営会社の役員、びっくりする。

「えっ、このメールの差出人、木松悪斗様だと・・・」

そう、メールの差出人の名義は木松悪斗になっていたのだ。が、運営会社の役員、少し冷静になると、

(たしか、裏美様は木松悪斗様の部下だったよな。なら、裏美様、勝手にご主人様の名を語ったに違いない!!)

と、たかをくくってしまった。

 が、そのメールを開いた瞬間、これまでたかをくくっていた役員をはじめまわりにいた人たちの血の気が引いた。なぜなら、そのメールには1つのビデオメッセージが添付されていた。それ以外はなにもない。これまで送られてきたメールみたいに「却下しろ」「やめろ」な文字もない、本当にビデオメッセージが1つだけ。これには運営会社の役員やそのまわりにいた人たち、なにかがあるのではないかと不審がるも、そのビデオメッセージを見ないといけない、と、思ったのか、そのビデオメッセージを再生した。

 すると、画面いっぱいに大男が出現し怒声でこう言いだしてきたのだ。

「俺の名は木松悪斗!!その木松悪斗の名において命ずる。いいか、今すぐにでも渡辺月の「ラグーン」屋上の使用申請を却下せよ!!渡辺月、および、静真高校生徒会、そして、浦の星の生徒たち、Aqours、はすべて世に潜む悪なり!!悪は滅せるべきなり!!そんな悪と手を組むのであればあなたの会社は地獄へと陥るでしょう。いや、これ以上悪が広がらないためにも、この俺、木松悪斗、の名をおいて悪とともに、断罪、いや、滅亡、することになります、悪と組むのであれば。だからこそ、この俺が命じる、今すぐ渡辺月の使用申請を却下せよ!!」

渡辺月の使用申請を却下しろ、それは以前、裏美が送っていたものと同じであった。が、それとは別のものがそのメールにはあった。それは・・・木松悪斗本人がクレームをいれてきたことだった。これには、運営会社の役員も、

「おい、あれって木松悪斗本人じゃないか・・・」

と、顔面真っ青になってしまう。いや、そこにいる者すべてが顔面真っ青になっていた。なぜなら、木松悪斗自身が出てきて直接命じている、と、いうことは、この命令自体絶対な力を持っている、そのことを意味していたから。運営会社の役員はおろかそこにいる者すべて知っていた、木松悪斗の命令に背いた者たちの悲惨な末路を。沼津の経済界のヒエラルキー(階級)において1番トップにたつ沼田、2番目の小原家はどちらかというと穏健的な考えのもと物事を進めるため、そこまで強制的な命令を出すことはない。が、それに比べて3番目の木松悪斗は自分の思い通りにならないと気が済まない、いわば、わがままなところがあり、木松悪斗の名のもと、強制的な命令を連発していた。で、それに従わない場合、いや、自分にとって気にくわない場合、自分の名のもと、断罪、いや、粛清してきたのだ。それが大きな会社であれ、小さい会社であれ、個人であれ、その犠牲者は何百人を超える。なので、この「月生徒会長の使用申請を却下せよ」という木松悪斗の命令に背くと木松悪斗がなにをしてくるのか恐ろしくて考えることすらできなかったのだ、運営会社の役員とその従業員からしたら・・・。

 しかし、そんなとき、ある従業員があることを口にした。

「あっ、でも、(木松悪斗より権力がある)沼田殿が守ってくれるじゃないですか?」

そうである。先述の通り、裏美が「静真高校生徒会、浦の星の生徒たちの手助けをするな」と言って沼津のお店・会社・団体に圧力をかけていたものの、すぐに沼田が「そうなった場合、この沼田が助けてやる」と言って裏美の命令を無効化してことがあった。で、今回も、もし、木松悪斗がこの会社を潰しにかかろうとしてもきっと沼田が助けてくれる、その従業員はそんな淡い期待をしていたのだろう。

 だが、運営会社の役員のある一言で淡い期待が泡となって消えた。

「たしかにそうかもしれない。しかし、今回は前とは違う。以前、裏美様が出してきたものは木松悪斗様の名を借りたはったりだった。しかし、今回は木松悪斗本人が直々に命令している。この動画は本物だ!!合成でもなんでもない。木松悪斗様は本気だ!!もし、木松悪斗様の命令に背いたらこの会社でさえ潰しかねない・・・」

たしかに運営会社の役員の言う通りである。裏美が木松悪斗の名を借りて沼津のお店・会社・団体に圧力をかけてきたときは裏美の単なるはったりだった。が、今回は木松悪斗が本気になれば自分たちの会社すら躊躇なく潰せる、そんな恐ろしさをこの動画から感じさせていた。

 さらに、運営会社の役員はあることも付け加えた。

「それに、いくら沼田殿がいるから大丈夫といっても、沼田殿は多忙だ。すぐに我らを救いに来るとは考えにくい・・・」

そう、沼田は日本を代表する企業グループ「沼田グループ」の会長、もとい、総帥、である。なので、沼田、とても多忙だったりする。そんな沼田がすぐに自分たちを助けに来る、とは思えなかった。

 そんなわけで、運営会社の役員、まわりにいる従業員は、今、頭を抱えていた。本当であればなんの反対意見・クレームがなければ月の使用申請は受理される。だが、その申請に木松悪斗自ら反対意見・クレームを入れてきたのだ。この場合、規定であれば、運営会社を含めた三者の話し合いにより受理されるか決定するのだが、木松悪斗はそれすら無視し、一方的に「却下しろ」と、言ってきているのだ。それも、もし、この申請を却下しなければ自分たちの会社を潰すことすら言ってきている、いわば、脅迫めいたものをちらつかせているのだ。さて、自分たちの会社を潰される覚悟で規定通りに話し合いを行うか、それとも、自分たちの会社を守るため、木松悪斗の脅迫に屈して月の使用申請を却下するのか、残酷な選択をしないといけない、と、運営会社の役員とその従業員はみな苦しんでいた。

 であったが、運営会社の役員、この2つの選択肢ではないもう1つの選択肢を選んでしまった。

「あっ、そうだ!!こんな重要な案件、(運営会社の)会長にお願いしちゃおう!!」

あらら・・・。たしかに運営会社の役員の言うことも一理ある。この案件はもう役員たちに任せることができないくらい大きくなっていた。会社の存亡にかかわる、とても大きな案件だ、なので、ここは運営会社で一番偉い、というか、総責任者である会長に任せるしかない、と、いうことである。

 そんなわけで、運営会社の役員はすぐに会長のところに行き、この案件、つまり、月の屋上使用申請からここまでの経緯と木松悪斗から脅迫を受けていることを話した。で、これを聞いた運営会社の会長、

「う~ん、ちょっと考えさせてくれ・・・」

と、言って少し考えだした。

(う~ん、まさか、あの木松悪斗が暴挙に出るなんて考えもしなかった。それくらい、木松悪斗は渡辺月生徒会長や静真高校生徒会、それに浦の星や小原家を恨んでいるみたいだね。でも、おいそれと木松悪斗に屈してしまったら、それこそ末代の恥!!とはいえ、木松悪斗の命令に背いてしまうとこの会社ごと潰しにかかるだろう。それくらい木松悪斗はやるって言ったら徹底的にやってしまう。う~ん、困った、困った・・・)

たとえ百戦錬磨の運営会社の会長であったとしてもなにをしでかすかわからない、まるで暴走するイノシシみたいな木松悪斗への対応に苦慮していた。

 が、そこはやっぱり百戦錬磨の運営会社の会長だった。ついにあることを決める。

(とはいえ、ここで木松悪斗という若造に屈しては、私、だけでなく、会社のプライドに関わってしまう。ならば、ここは規定通りにしよう・・・)

運営会社の会長、こう思ったあと、すぐに役員に対しこう命じた。

「役員よ、ここは規定通り、私たち(「ラグーン」の運営会社)を含めた三者での話し合いでその申請を受理するか決定する!!全責任はこの私が持つ!!木松悪斗様なんかにこの会社を潰させるわけにはいかない!!お前たちを路頭に迷わせることはさせない!!」

この運営会社の言葉に、役員からは、

「うわ~、会長、やっぱりすごいです~」

と、感嘆な声をあげていた。

 と、いうわけで、運営会社の言う通り、木松悪斗の脅迫には屈せず、規定通り、屋上の使用申請を出した月、それに反対している木松悪斗、そして、「ラグーン」の運営会社とその会長、その三者による話し合い、その路線でいくことになった。そのため、月、木松悪斗、両方に、「今日の夕方、月生徒会長の屋上使用申請についての話し合いを行います」旨のメールを送ることになった。

 そんななか、運営会社の会長はある心配をしていた。

(たしかに月生徒会長と木松悪斗との話し合いになったが、きっと、話し合いの場には木松悪斗本人が登場してくるだろう。そうなると、自分たちに有利になるように恫喝めいたことをしてくるに違いない、木松悪斗は・・・9

その心配はある意味当たっていた。実際、木松悪斗と交渉する場合、木松悪斗は必ず自分にとって有利な流れになるように、まず、最初に恫喝めいたことをしてくるのである。これによりほとんどの相手方はひるんでしまい、結果、木松悪斗に有利な条件で契約を結ぶことが多かった。むろん、その恫喝すら効かない相手もいる。木松悪斗、そのときはあの手この手を出してはこれまた自分に有利な条件で契約を結んでいた。とはいえ、今回も必ず、木松悪斗は最初から恫喝めいたことをしてくるに違いない。対して、月も静真高校の生徒会長である。が、それ以外は単なる高校生でしかない。そんな相手にまったく躊躇なく恫喝しまくる木松悪斗はある意味、悪魔、としか言えなかった。

 そんなわけで、運営会社の会長、これに対して、ある保険、をかけることにした。

(もし恫喝めいたものを木松悪斗がしてきたら、それはもう話し合いじゃない。単なる脅しの場だ。ならば、そうならないようにあの人に来てもらおう。そうすれば、少なくとも話し合いの場が荒れることはなくなるだろう)

と、思った運営会社の会長、すぐにある人に電話をかけた。

「もしもし、私、「ラグーン」の運営会社、その会長です。実は・・・にお話がありまして・・・」

 

 一方、そのころ・・・、

「ねぇ、こんな演出にしたいの。どうかな?」

ここは浦の星分校。ここで月はAqoursメンバー全員とあげは、東子、シーナ、それに、よいつむトリオ、を集めて今朝「ラグーン」の屋上で撮った動画を見せていた。

 で、この動画を見たルビィ、

「うん、これだったらインパクトがあるね!!」

と、驚きの声をあげると、千歌も、

「この演出だけでも私たちの想いを理亜ちゃんに届けることができるね!!」

と、喜んでいた。さらには、

「It’s Great!!」(鞠莉)

「ふふふ、堕天使らしい演出だわ!!」(ヨハネ)

「これこそAqoursの最後にふさわしい、いや、新しい旅立ちにふさわしい演出だね!!」(曜)

と、Aqoursメンバーから大絶賛を受ける。

 また、月はあげはたち3人にこんなことも言った。

「で、この演出は、あげはちゃん、東子ちゃん、シーナちゃん、この3人の働きがとても重要だよ!!映像としては見えないけれど、Aqoursとのタイミングなどがとても重要だったりするからね!!」

これにはあげはたちも、

「この私たちがこんな重要な役目を担うなんてとても光栄だと思います!!」(あげは)

と、喜んでいた。

 そんなAqoursメンバーやあげはたちの言葉に、月、ついこう思ってしまう。

(あぁ、そんなみんなの笑顔を見ていたら、僕、なんか嬉しいよ。こんなに楽しい時間が続いたらいいな。でも・・・)

 だが、すぐに月の表情は暗くなってしまう。と、すぐに月はAqoursメンバーみんなにこんなことを言った。

「ただ、この演出は1日に1回だけ、日の出のときしかできない演出だし、この演出はあの「ラグーン」の屋上でやること前提ですることになっている。でも、まだ「ラグーン」の屋上使用申請が受理されていない限り、この演出ができるとは限らないし・・・」

で、月、このとき、屋上の使用申請についてこう考えていた。

(たしかに普通なら使用申請を出せば十中八九受理される。けれど、これはAqours最後のライブ、それも「私的な」ライブだ。ならば、あの男が黙っているはずがない。絶対に動くはず・・・)

そう、この月の屋上使用申請にかみついてくる輩がいることを月は想定していた。それは月にとって最大の敵、ともいえた。その敵がついに月に牙をむいてくることは月も重々承知していた。

 そして、月の予想は当たってしまった。

「You Gut Mail!!」

と、月のスマホからメールが届いたことを知らせる音が聞こえてきた。これには、月、

(ついにきたか・・・)

と、ついにそのときがきた、と、悟ると、そのメールをすぐに開き、その内容を確認すると、月、Aqoursメンバーにこう言った。

「ついに決戦のときがきたみたいだよ!!今日の夕方、場所は「ラグーン」の会議室。ここで「ラグーン」屋上の使用申請についての話し合いがある。そこで、あの男と決着をつけてやる!!」

このとき、月はこう思っていた。

(ついにきたんだ・・・、あの男・・・、木松悪斗との再戦のときが・・・)



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Moon Cradle 第7部後編 第14話

 それから数時間後、ついに夕方になった。

(さぁ、着いたよ!!ここが決戦の場・・・)

月はそう思うと上を見上げた。ここは月と木松悪斗の決戦の地、沼津駅南口にそびえたつエンタメビル、「ラグーン」の入り口。月が今朝していた「ラグーン」屋上の使用申請、それについての話し合いをしに、月、(Aqoursメンバーから)ルビィ、曜、ダイヤ、を連れてきていた・・・、のだが、なぜか予想外の人も・・・。

「うわぁ、なんて面白いこと、起きそうだよ!!ワクワクしちゃうので~す!!」

なんと、本当は月と一緒に行くメンバーには選ばれなかったものの勝手についてきた鞠莉がいた。これには、ダイヤ、

「マリさん、今から重要な話し合いが行われるのですよ!!はしたない!!」

と、鞠莉に忠告するも、鞠莉、

「そんなのUnderstand(わかっている)ので~す!!それでもenjoy(楽しく)しなきゃLife(人生)真っ暗なままで~す!!」

と、聞く耳持たず。これには、月、

「ははは・・・」

と、苦笑いするしかなかった。

 が、そんなときだった

ツルルル

と、鞠莉のスマホが鳴り出すと、鞠莉、月に対し一言。

「ソーリー、マリーに電話で~す!!ちょっとStay(待って)くださ~い!!」

このあと、鞠莉は月たちから離れ、陰になるところまで移動すると、鞠莉、電話にでる。そして・・・、

「はいはい、あ~、はいはい、わかりました。それじゃ、マリーのテレフォン、そのままにするので~す!!だから、あとのことはお願いするので~す!!」

と、言って電話を切り自分のスマホをポケットにしまうと、

「ソーリー、単なるテレフォンで~した!!Stay(待たせて)してしまってソーリーで~す!!」

と、軽い口調で月たちに謝った。

 そして、鞠莉も合流したことで月は大きな声で言った。

「さぁ、乗り込みましょう、決戦の地へ!!」

 

 そして、ついに決戦の地、「ラグーン」の会議室へと入る月たち一行。すると、そこにはすでに先客がいた。それは・・・、

「ほう、この俺様が木松悪斗であることを知っていての狼藉ですか!!この木松悪斗を待たせるなんて、あぁ、その時点で、悪、決定、ですな~」

と、大声でもって月たちを威嚇する木松悪斗、それに・・・、

「本当に愚行の輩ですね・・・」

と、裏美、そして・・・、

「あぁ、同じ学校に通っているって考えるだけでとても恥ずかしい思いがします。本当に恥ずかしい!!」

と、なぜか木松悪斗の娘で静真の部活動に参加している生徒たちの連合体である部活動連合会の会長、そして、静真高校女子サッカー部の旺夏、月の敵である3人、だった。

 で、この3人が月たちに対し「遅れてきた」とブーブー文句を異っているも、月、それについて、反論!!

「あの~、約束は15時ですよね・・・。で、今の時間は14時50分・・・。こちらとしては社会ルールとして5分前行動・・・、そのさらに5分前、合計10分前に行動しております。それなのに、「遅れてきた」と言われても僕たちとしてはどうすることもできないのですが・・・」

と、当たり前のこと言うも、木松悪斗、なんと的外れなことを言ってきたのだ!!

「言っておくが、月生徒会長、俺の前ではそんな常識なんて通じない。俺の前では俺が来る前にすでにその場にいないといけないのだ!!で、今日、俺はこの会議室に、14時15分、

今から35分前にすでに来ていた。ならば、お前はその前、14時ごろに来るべきなのだ!!」

自分勝手な極論・・・、なのだが、その木松悪斗の隣にいる、裏美、旺夏、からは、

「木松悪斗様、素晴らしい考えですぞ!!」(裏美)

「たしかにお父様の言う通りですわ!!」

と、援護射撃してくる始末。ただ、この木松悪斗の力説に、月、

(あぁ、なんでこんなくだらないことで威張り切っているんだよ・・・)

と、白けてしまった。

 ただ、そのことだけで、月、木松悪斗、両者が来たわけではない・・・というわけで、両者の間に立つ「ラグーン」の運営会社の会長がついに口を開いてこう言った。

「あの~、木松悪斗様、今日着てもらったのは社会的ルールのことについてではありません。ここにいる渡辺月さんが「ラグーン」の屋上の使用申請を出していることについての話し合いです。もし、それ以外のことについて言いたいのであればよそでしてください」

この運営会社の会長の言葉に木松悪斗も、

「うん、そうだな。とても貴重な時間をあの渡辺月という小童のために使っているんだ。本当は感謝されてほしいものだが、ここは「ラグーン」運営会社の会長に免じてそのことは不問にしよう」

と、ここに来る時間についてこれ以上追求しないことを嫌味ながら言うも、月も、

(ふんっ、最初からとやかく言わなくてもいいのに・・・)

と、木松悪斗に対ししらじらしく見ていた。



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Moon Cradle 第7部後編 第15話

そんなわけで・・・、

「では、これから本題に入ります」

と、月と木松悪斗の話し合いの仲裁役になった「ラグーン」運営会社の役員がこう言うと、その隣にいた屋上責任者が今回のいきさつについて言った。

「今回の案件ですが、「数日後の早朝、Aqoursのライブ会場として私たちのビル「ラグーン」の屋上を使いたい」と、ここにいる渡辺月さんから申請が出ております。ですが、それに対して木松悪斗様より反対および申請却下の意見が出ております。これらについて私たちは規定にのっとり私たちを含めた三者での話し合いを行います。両者ともそれでよろしいでしょうkか?」

この屋上責任者の言葉に、月、

「はい、わかりました」

と、軽く同意するも、逆に木松悪斗からは、

「ふんっ、そんあ話し合いなんて時間の無駄だ!!はやく却下しろ!!すぐに却下しろ!!絶対に却下しろ!!俺のいう通りにしろ!!」

と、俺様気質ですぐに却下という結論を下すように運営会社の役員に迫る。これには、月、

(木松悪斗・・・、最初から話し合う気すらないの!!自分の権力でどうにでもなろって思っているわけ(怒)!!」

と、忘却無人な木松悪斗の対応に怒ってしまう。

 が、これについてすぐに木松悪斗に注意する人物が現れた!!

「木松悪斗様、ここは話し合いの場です!!最初から話し合う気がないのなら、あなた方の不戦敗ということで月さんの申請を通しますが、いかがですか?」

これにはさすがの木松悪斗も、

「ふんっ、そんなことを(運営会社の)会長に言われてはここにきた意味がありません。時間の無駄だと思いますが、ここは会長に免じてそうさせていただきましょう」

と、言ってはそこにある椅子に座ってしまった。これには、月、

(うわ~、あの木松悪斗に対してもの落ちしないなんて(運営会社の)会長、やる~!!」

と、感心してしまった。ちなみに木松悪斗に対しもの落ちせずに注意したのは運営会社の会長である。

 と、いうわけで、仲裁役の運営会社の役員、話を先に進める。運営会社の役員、

「それでは双方の言い分をこれから聞いていきます」

と、お互いの言い分を聞くことにすると、月の方を向いて、一言。

「では、申請した側、渡辺月さん、どうぞ」

 この運営会社の役員の言葉を聞いて月は席を立つと運営会社の会長の方を向いて一例、そして、自分たちの言い分を言った。

「今回、僕たちが「ラグーン」の屋上使用を申請したのはある少女の夢をかなえるためのものです!!その夢を叶えるため、Aqours最後のライブを「ラグーン」屋上にてやらさせてください!!」

と、ここで月の後ろから嬉しい援護射撃!!

「たしかにそうですわ!!私、鞠莉さん、果南さんはもうあのローマ・スペイン広場のライブをもって私たちのAqoursとしてのライブは終わったと思いました。しかし、私たちはAqoursメンバーとしてまだやることが残っておりました。それは未だに暗闇の中をさまよっているかわいそうな少女を救うこと。その少女を救うため、私たち3年生3人は再び立ち上がりました。そして、その少女を救うためにはその少女の夢、ラブライブ!優勝、それを叶えることが一番!!だからこそ、この「ラグーン」の屋上という場所こので、私たちAqours最後のライブをひらきたいのです!!」(ダイヤ)

「私と月ちゃんにとってこのビルでの想い出はいっぱいあるの!!だって、毎年、初日の出は月ちゃんと一緒になってここの屋上で見ていたもん!!そして、今、私たちは道に迷っている少女を救うため、私と月ちゃんにっとてこの想い出のある地にて、Aqours最後のライブを行うんだよ!!これって素晴らしいことだよ!!」(曜)

「2人の言う通りです!!マリーたちの想いは誰にもIn the way(邪魔)できませ~ん!!ですから、はやく認めてくださ~い!!」(鞠莉)

 そして、最後にルビィからこんな言葉がでてきた。

「ルビィね、まだ暗闇の中をさまよっている、道に迷っている理亜ちゃんを救いたいと思っているの。理亜ちゃんはとても大切なことに気づいていないの。それを気づかせるためにはその理亜ちゃんの夢、ラブライブ!でのルビィたちAqoursと理亜ちゃんたちSaint Snowの直接対決、そして、ラブライブ!優勝、その夢を叶えるのが一番いいの。それに、これが本当のお姉ちゃんたちとの最後のライブ、なの。ルビィにとってとても想い出に残るライブになるの。だから、お願い、この「ラグーン」」の屋上でAqours最後のライブをさせて!!理亜ちゃんの夢を叶えさせてあげて!!お願い!!」

この4人の援護射撃に、月、

(ダイヤさん、曜ちゃん、鞠莉ちゃん、ルビィちゃん、とても強い援護射撃をありがとう。それを聞いただけでも百人力だよ・・・)

と、感謝の言葉を自分の心の中で言った。

 だが、月たちの言葉はこの男には通じていなかった。月の言い分を聞いた、ということで、運営会社の役員、

「それでは木松悪斗様の言い分を聞きましょう」

と、木松悪斗の方を向いては木松悪斗の言い分、月の申請に反対する理由を尋ねる。

 すると、開口一番、木松悪斗は月たちや運営会社の会長たちを威圧するように大声でこう言った。

「それは、俺が反対しているからです!!」

これには、月、

(あの~、ただ威圧的に言っているには言っているけど、よく聞けば単なる逆恨みにしか聞こえないのですが・・・)

と、威圧的に言っているもののその中身はスカスカ、いや、ただ、自分が嫌だから、ただそれだけの理由で自分の申請に反対していることに唖然となってしまった。

 まぁ、これについては月以外のここにいる人たちも月と同じ考えみたいで・・・、仲裁役の運営会社の役員も、

「あの・・・、ただ威圧的に言っているだけにしかみえないのですが・・・。それよりもちゃんとした理由を述べてください、木松悪斗様!!」

と、木松悪斗に注意をする。

 しかし、木松悪斗の態度は変わらなかった。今度は仲裁役の運営会社の役員に向かってこう叫ぶ。

「ちゃんと理由を言っているだろうが!!俺が反対と言ったら反対なんだ!!」

このときの木松悪斗、こんなことを考えていた。

(何度言えばわかるんだ!!俺が反対って言ったら反対なんだ!!それがわからないのか!!(

と、最初から頭の血管が切れるくらい怒りMAXの状態。どうやら、木松悪斗、「自分が言っているから月生徒会長の申請に反対しているんだ!!そのことがわからないのか!!」と強制的に自分の言うことを言い聞かせようとしているみたいだった。

 が、そんな威圧的な態度をみせる木松悪斗に対しついにこの人が切れてしまう。突然、木松悪斗に対し怒声が降りかかる。

「木松悪斗、そんな威圧的な態度で「自分が反対だから反対」と言われても、こちらとしては何を言いたいのかわからないではないか!!これでは木松悪斗の反対意見を退けるしかないのですが、本当にそれでいいのですか?」

その力強い言葉を聞いた運営会社の役員、その声がする方を向くとこう言った。

「会長・・・」

そう、威圧的な態度をみせる木松悪斗に対し強く抗議したのは・・・運営会社の会長だった。運営会社の会長、どうやら威圧的な態度をみせるもちゃんとした理由を言わなかった木松悪斗に対し社会人としてちゃんと意見を言うように強く抗議したみたいだった。

 で、この運営会社の会長の抗議に、木松悪斗、

(はぁ~、だから老人(運営会社の会長)は少し苦手なんだよね~。だった、あまりに力がないのに、ただ、社会のルールにあわないからってこの俺に忠告するなんて、ふんっ、犬がただ吠えるだけしか見えないね!!)

 

と、運営会社の会長のことを馬鹿にしつつも、

(でも、ここは月生徒会長との戦いの場。この老人(運営会社の会長)の言うことを聞かないとこちらが不利になるかもしれないな。まぁ、そんなことだから、今は従ってやるよ!!)

と、あくまで運営会社の会長の言うことに従うことに決めた。

 そんなわけで、木松悪斗、ようやく反対意見を述べた。

「月生徒会長の申請に対して反対する理由、それは、あのとき、反対意見としてメールに記した通り、月生徒会長、静真高校生徒会、浦の星の生徒たち、そして、Aqours、そのすべてが、この世に潜む悪、なのです!!その悪を俺は断罪したいのです!!悪は滅びるべし!!この俺こそ正義、なのです!!」

あの~、いくらこれを言われましても、単なる中二病、としかみれないのですが・・・とツッコミを入れそうな反対意見・・・であったが、とうの木松悪斗からすれば・・・、

(ふんっ!!このおれが悪と認定すればそれこそが悪なのだ!!この俺に歯向かうもの、そのすべてが、悪!!その悪は滅するべきなんだ!!だからこそ、正義である俺がいるんだ!!)

と、自分で酔いしれている、そんな木松悪斗であった。そんな木松悪斗に対しこちらも援護射撃!!

「木松悪斗様、そうです!!月生徒会長一味はすべて悪なのです!!わかっていらっしゃる~!!」(裏美)

「お父様、もっと言ってやってください!!この悪の一味に正義の鉄槌をくらわせてあげてください!!」(旺夏)

 誰から見ても飛躍しすぎ・・・、けれど、かなり威圧的な木松悪斗側・・・、なのですが・・・、仲裁役の運営会社の役員、意外と冷静でした・・・。

「あの・・・、木松悪斗様、ここは相手をののしりあう場所ではありません!!本当の理由を述べてください!!」

さらには、月側にいた鞠莉も木松悪斗に対しこんなことまで言う。

「木松悪斗さん、ここはNegotiation(交渉)の場で~す!!ちゃんとしたreason(理由)を言ってください~い!!」

で、この鞠莉の言葉に、木松悪斗、すぐに反応。

「へぇ~、この俺に意見するとは・・・、この悪の権現め!!(「ラグーン」の運営会社の)会長、こいつこそ悪の大元締めです!!すぐにたたき出しましょう!!」

なんと、木松悪斗、鞠莉に対しきつい言葉で攻撃した!!このとき、木松悪斗、

(ふんっ、この女(鞠莉)こそ、あのにっくき小原財閥の大元締め、小原家の一人娘!!そして、俺を苦しめた元凶!!絶対に許せない!!)

と、鞠莉のことをにらんでいた。まぁ、木松悪斗が鞠莉のことをにらむのには理由があった。木松悪斗が静真高校と浦の星女学院の統合に異を唱えた理由、それは、静真高校と浦の星女学院が統合するにはかかわらず浦の星の大スポンサーだった小原家が静真に投資してくれなかったからである。と、同時に、それにあわせてか、せっかく木松悪斗が浦の星女学院の理事長だった鞠莉のために用意してくれた静真の理事の椅子を鞠莉が蹴ってしまったのだ。そんなわけで、それが同時に起きたことにより、木松悪斗、

「せっかく浦の星を静真は統合させてあげようとしているのに、(浦の星の大スポンサーであった)小原家は静真に投資してくれないし、せっかく用意した理事の椅子をも蹴ってしまった!!これでは俺の顔に泥を塗っただけでなく浦の星の生徒というお荷物を押し付けただけである」

と、考えてしまい、小原家、浦の星を逆恨みしてしまった、というわけである。で、Aqours、浦の星の生徒たちのことに気を使っている月やナギたち静真高校生徒会のことも恨んでいるのもその延長戦上のこと、なんですけどね・・・。でも、木松悪斗の逆恨み、本当のことをいえば、本当に言ってただの逆恨み、なんですけどね・・・。

 と、言いつつも、ここでは唯一の小原家の一員である鞠莉の方をずっとにらんでいる木松悪斗・・・であったが、そんなこと、仲裁役の運営会社の役員からすればどうでもいいことだったらしく、

「え~、木松悪斗様、言いたいことはそれだけですか?私からしたら、たんなるひがみ、にしかみえません。それでしたら、すぐにでも採決に移りますがいいですか?」

と、運営会社の役員、木松悪斗に対しさらに忠告する。これには、木松悪斗、

「ふんっ、それだけはいやだね!!」

と、完全拒否!!そのため、運営会社の役員、木松悪斗にもう一度問いかける。

「では、木松悪斗様、月さんの申請に反対するちゃんとした理由を言ってください!!」

 これには、木松悪斗、今度は襟を正してこう答えた。

「それは、Aqoursというスクールアイドル自体がたんなるお遊び、だからです!!そのお遊びのためにこの屋上を使わせるなんて納得いきません!!」

この発言に、月、

(なんだって!!スクールアイドルはお遊びじゃない!!ちゃんとした文化そのものなんだ!!)

と、怒りMAX!!

 だが、月以外にもこの木松悪斗の言葉に怒っている人たちもいた。それは月の後ろにいる人たち。その人たちはスクールアイドルへの暴言を吐いた木松悪斗に対し反論する。

「スクールアイドルそのものに対する暴言、この私として許せるわけじゃないのですわ!!即刻、取り消しなさい!!」(ダイヤ)

「スクールアイドルというのはすでに、日本、いや、世界の文化として定着しているんだよ~!!そんなことを知らないなんて、それっておかしくない?」(曜)

「お姉ちゃんの言う通りだよ!!るびぃも激おこぷんぷん丸だよ!!その言葉、本当に取り消して!!」(ルビィ)

「あぁ、これだから大人はいやなので~す!!自分の価値観だけでしか物事をみないなんて、ナッシング、で~す!!」(鞠莉)

そう、木松悪斗に反論しているのは木松悪斗が冒とくしたスクールアイドル、その代表であるAqoursのメンバーだった。この1年、スクールアイドルとして一生懸命頑張ってきた、そして、自分たちだけの宝物、輝きを見つけることができた、スクールアイドルAqours、それを完全否定してくる木松悪斗にダイヤたちは相当怒っているみたいだった。

 が、木松悪斗の話は続いていた。今度は自分に反論してきたダイヤたちをにらみつけるとともに大声でこう叫んだ。

「スクールアイドル、ふんっ、そんなものつまらないものだ!!スクールアイドル、ただのアイドルの真似事だ!!そんなもん、将来なんの役にも立たない!!たんなる真似事だ!!そんな真似事をする時間があればそんなことやめてしまえ!!時間がもったいないわ!!」

スクールアイドルに対するさらなる暴言、これには、月、

(う~、スクールアイドルについてなにも知らないのにそんなに暴言を吐けるなんて、絶対に許せない!!)

と、ついに堪忍袋の緒が切れた!!ついに、月、木松悪斗に対し反論する。

「木松悪斗、スクールアイドルについて何も知らないのにそうべらべらとスクールアイドルの悪口が言えるね!!その発言、いますぐ取り消せ!!」

 しかし、木松悪斗、そんな月に対しこんなことを言いだした。

「月生徒会長、この私も浦の星と統合するにあたり、浦の星を代表するスクールアイドルAqoursのこともちょっと調べたのですよ。でね、調べてわかったことがあるんですよ。それはね、スクールアイドルというのはたんなるアイドルの真似事をするだけ、ってことですよ!!アイドルというのは誰もが簡単になれる、ってものじゃないのですよ。ちゃんとオーディションというふるいにかけられて勝利した者だけがなれるものなのです!!でもね、スクールアイドルというのは高校生であれば誰でもスクールアイドルになれるものなのです。ある高校生が「私、スクールアイドル!!」って言えば誰もがなれるものなのです。その意味でもスクールアイドルはたんなるアマチュア、いや、アイドルの真似をしているだけなのです!!」

まぁ、木松悪斗の言うこと・・・について一部は正しかったりする。プロのアイドルについては例外を除きオーディションというふるいによって選ばれた人たちがアイドルとしてデビューすることが多かったりする。対して、スクールアイドルについてはごく一部を除いて、「スクールアイドルになりたい」、と言えばスクールアイドルになることができていたりする。μ'sにしてもAqoursにしても別にオーディションによって選ばれた人たちがメンバーとしてデビューした・・・わけではない。みんな、μ'sに、Aqoursに参加したい、という気持ちがあったからこそメンバーになれたのである。が、ただ1つだけいるのは、μ's、Aqoursへの参加はそのメンバーそれぞれの強い意志によるものであり、また、μ'sなら穂乃果の、Aqoursなら千歌の考えなどに賛同したからであり、ただたんに軽い気持ちでたんなる遊び感覚でメンバーになったわけではない。それなのに、木松悪斗、そのことを考慮せず、ただ「アイドルの真似事をしている」「ただのお遊び」でしかスクールアイドルをみていないのは本当にいかがのものではないかと思ってしまうのは作者である私だけだろうか・・・。

 とはいえ、まだ木松悪斗節は炸裂していた。木松悪斗、誰にも話を割り込ませないくらいの言葉の連打で話を続けた。

「それに、高校生の本分は勉強とスポーツである!!勉強でとても優秀な成績を残すか、もしくは、誰にも負けないくらいの能力をもってスポーツの世界のなかの王者になるか、そのどちらかが必要なのだ!!いや、勉強であれ、スポーツであれ、誰にも負けないくらいのものを見せるべきなのだ!!たとえ高校生であったとしても誰にも負けてはいけない、いわば、高校というの勝負の世界なのだ!!いや、この世の中、すべてが勝負の世界なのだ!!弱肉強食の世界、なのだ!!この世界はわずか一握りの勝者と残り多くの敗者の2つしかないのだ!!そして、敗者はただ滅んでいくのみなんだ!!」

 この木松悪斗の言葉に、月、

(勝者と敗者、その2つだけで世の中は構成されていたら世界はもうすでに滅んでいるよ!!本当はいろんな人たちによってこの世界は構成されているんだ!!だからこそ、みんな楽しく暮らせているんだ!!それなのに、ただ、勝った、負けた、のみで判断されるのってどうなの?)

と、つい木松悪斗の言葉に対して疑問をもってしまう。この世界にはいろんな人たちがいる。その人たちが協力してこの世界をよくしていこうとしているのだ。このことを木松悪斗は忘れているのかもしれない、いや、意図的に忘れているのかもしれない。それに、ただ勝ち続けるだけの人生っていうのは本当に面白いものなのか、それは疑問である。勉強であれ、スポーツであれ、人は必ず失敗する動物である。山あり谷ありの人生だからこそ人生は面白い、ともいえる。たしかに木松悪斗の言う通り、この世の中は勝負の世界、弱肉強食の世界である。しかし、ずっと勝ち続けることで本当に幸せなのだろうか。また、本当に弱肉強食の世界なのか、というのも疑問である。なぜなら、人間というのはほかの人のこともいつくしみあうことができる動物だから。たとえ、ずっと勝者だったとしてもいつかは敗者になる。それでもほかの人のこともいつくしむことができればきっと勝者でも敗者でもみんなが幸せになることができる、そう思えてしまう。しかし、それが何事も勝負に持ち込んでしまう、そんな世の中にとってとても大切なことなのかもしれない。

 で、あるが、木松悪斗の暴走はまだまだ止まらない。今度もダイヤたちをにらみつけるとこう言い続けた。

「そんな世の中なのに、スクールアイドル、そんなお遊びをしていては時間がもったいない!!たしかにここにいるAqoursのメンバー(ダイヤ、曜、ルビィ、鞠莉)には沼津でも有数の網元の美人姉妹に(にっくき)小原家の一人娘がいる」

この木松悪斗の言葉を聞いて月は気づいた。

(それってここにいる、ダイヤさん、ルビィちゃん姉妹、それに、鞠莉ちゃんのことだ・・・)

そんな月のことはほっといて、木松悪斗、続けて、

「それに、ここにはいないが、内浦で有数の旅館の娘、沼津でも名が通ったお寺の娘、母親が有名教師の娘、淡島でダイビングを生業としている沼津の自然をこよなく愛する子、それに、東京のピアノコンクールで優勝するくらいのピアニスト・・・」

と、次々と言っていく。これには、月、

(あっ、それって、千歌ちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、果南ちゃん、それに、梨子ちゃん、のことだ・・・)

と、気づく。そう、木松悪斗、Aqoursメンバーのことを次々と言っていたのだ。

 で、1人を除いてAqoursメンバーのことを言っていった木松悪斗、続けて言った。

「これだけ優秀な人材がいるのに、なんで、スクールアイドルというお遊びに夢中になるのか!?そんなお遊びをするだけなら時間がもったいない!!その時間を勉強やスポーツに費やすだけでとても優秀な人材になれるはずなのに・・・」

ただ、これに関して、ようやく月から激しいツッコミがくる。

「え~と、それって、木松悪斗さんからしたら、「自分の優秀なコマ」の間違いじゃ・・・」

 ところが、この月の激しいツッコミを、木松悪斗、完全無視!!まだ話を続ける。

「特に、そこにいる、渡辺曜、あなたは浦の星に入学する前は飛び込みで世界大会に出場できるくらいの能力を持ちながらその能力を静真で磨くわけでもなくその能力を磨くことができない浦の星に入学してしまった!!それってとてももったいないことじゃないか!!今からでも遅くない!!静真で自らの能力を磨いて世界大会に出るんだ!!」

なんと、木松悪斗、曜に狙いを定めて口説いてきたではないか!!これには、ルビィ、

「えっ、曜ちゃんて、そんなに優秀な選手だったの!!知らなかった・・・」

と、驚いてしまう。たしかにいつも陽気な曜がまさかそんあに優秀な選手だったなんて想像にできないことだろう。しかし、木松悪斗の曜に対する熱烈アタックに、月、

(あの~、そんないい歳をしたおっさんが女子高生を口説くなんて、なんか白けるよ・・・。でも、曜ちゃんなら、このおっさんの猛烈アタック、絶対に断るよ!!)

と、木松悪斗の言葉にひくとともに曜のことを信頼していた。

 で、この木松悪斗の猛烈アタックに曜はというと・・・、

「えっ、私、そんなの、いや、に決まっているじゃない!!私は千歌ちゃんたちと一緒にスクールアイドルをやっている方が楽しいもん!!だから、ごめんなさい!!」

と、木松悪斗のお誘いを断ってしまう。木松悪斗、ハートブレイク・・・。

 そんなわけで、木松悪斗、ついにトーンダウン・・・。

「うぅ、嫌われた・・・」

これには木松悪斗の横にいた裏美、旺夏から、

「木松悪斗様、どんまいです!!まだ希望はあります!!」(裏美)

「お父様、あの子がいなくてもこの私がいます!!だから、がっかりしないでください!!」(旺夏)

と、がっかりする木松悪斗のことを励まそうとsるう。

 と、そんなときだった。

「あの~、木松悪斗様、ちょっと時間をかけすぎです!!はやく要点だけ言ってください!!」

と、仲裁役の運営会社役員、木松悪斗に注意する。すると、木松悪斗、

「うっ、すまない・・・。とても優秀な人材が目の前にいたから口説こうとしていた・・・」

と、運営会社の役員に対しお詫びを言うと、気持ちを入れかえて、月に対し襟を正してこう言った。

「つまり、私が言いたいのは、「スクールアイドルというお遊びに時間を費やすより、勉強やスポーツ、そんな有意義なもものに時間を費やしたほうがいい!!そのために、今回のライブ、そんなお遊びのためだけに屋上を借りるなんて、無駄の極致、と、いえる、愚行である!!いや、そんなことをするだけでなんて時間がもったいない!!今すぐスクールアイドルというお遊びをやめ、もっと有意義な時間を過ごすべきだ!!」ということだ!!」

 そして、ついに、木松悪斗、まとめに入った。

「と、いうわけで、この世の中は勝負の世界である。だからこそ、勝つことこそ絶対的命題なのだ!!「勝つことこそすべて」「勝利こそ正義」、それを実現するためにもスクールアイドルというお遊びを認めるわけにはいかない!!むろん、お遊びのためだけにこのビルの屋上を借りるなんてもってのほかだ!!もう一度言う、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、その名のもと、スクールアイドルというお遊びなどせず、すべてのことに勝利するために、勉強やスポーツ、いや、部活をするべきである!!そのことをこのおろかな者たち(月たち)に知らしめるために反対しているのだ!!そして、すべてのことに勝利をささげるべきなのである!!」

 で、これには、月、

(ふ~、とても長い、いや、くだらない話が終わったよ・・・。ある意味、支離滅裂な言い訳だったよ・・・。それに、あまりに非常識な意見、だったよ・・・)

と、木松悪斗の考えを一刀両断する。たしかにその通りである。ただ、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の名のもとに物事を進めていたらいつかは行き止まりにぶつかるものなのである。それでもそれに固執してしまうと前に進めなくなる。だから、なにごとにも、いろんな経験をする、特に負けること、それに、いろんな見方を知る、べきなのである。そして、スクールアイドルというものは、いろんな経験をしたりいろんな見方を知る意味でとても有意義なものだったりする。さらに、木松悪斗はそれをただのお遊びということでそれを無駄だと決めつけるのはどうかなと思う。けれど、木松悪斗は、スクールアイドルなどお遊びというものはどんどん排除すべきである、そして、勝利のためだけに勉強やスポーツに励むべきなのである、それを正当化しようしていると思えるのは私(作者)だけだろうか。そして、この世の中、自分たちにとっていらないと判断されたものをことごとく排除していくことで絶対いい世の中になれる、という幻想に、みんな、憑りつかれていると思えるのは私(作者)だけなのだろうか。



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Moon Cradle 第7部後編 第16話

 と、そんなわけで、ようやく木松悪斗の長い長い言い訳が終わったのだが、そのとき、会議室のドアのノブから、

ガチャガチャ

と、いう音が一瞬聞こえてきた。これには、月、

(あれっ、なんかドアの方から音がした・・・)

と、ドアから聞こえてきた音に気づく。が、月、まわりを確認すると、このドアからの音は月以外誰も気づいていなかった。

 で、そんなドアからの音に気付かなかった仲裁役の運営会社の役員、

「え~、これでお互いの言い分を知ることができました。それでは、これから論議に・・・」

と、論議に移ろうとした。

 が、そんなとき、木松悪斗、とんでもないことを言いだした。

「そんな論議、必要ありません!!時間の無駄です!!もう決まっているではありませんか!!」

この木松悪斗の発言に、運営会社の役員、

「あの~、お言葉ですが、まだ何も決まっておりませんが・・・」

と、木松悪斗に言うと、木松悪斗、すぐさま怒声でこんなことを言いだした。

「いや、もう決まっている!!月生徒会長の屋上使用申請は即刻却下だ!!いや、この大騒動の責任をとって月生徒会長の生徒会長職の即刻解職、および、Aqoursの即時解散、なのです!!」

これには、月、

(う~、言いたいことだけ言っているじゃないか・・・)

と、木松悪斗の忘却無人さに激怒。いや、そう思ったのは月だけではなかった。

(なんていういい加減な大人、なんでしょうか!!月さんだけでなく、この私たち、Aqours、すらも貶める行為、許すわけにはまいりませんわ!!)(ダイヤ)

(私と千歌ちゃん、それに、みんなの想い、それが詰まった、このAqoursをただ気にくわない、だけで解散させるなんて、木松悪斗、許すまじ~!!)(曜)

(ルビィにとってAqoursは、お姉ちゃんと、みんなの、大事な想い出、が詰まったものだもん!!だからこそ、あのおじさん、勝手に解散させようとするなんて、絶対に許せないもん!!)(ルビィ)

(この木松悪斗という男、本当に意地汚い大人、なので~す!!このマリーたちにとって大切なAqoursを潰させることなんて絶対にさせないので~す!!)(鞠莉)

なんと、月の後ろにいるAqoursメンバー4人とも怒りMAXだった。無理もない、まさかこの場にかこつけて、Aqours解散しろ、と、言ってくるなんて、男の風上にもおけないものである。

 まあ、あまりもの木松悪斗の忘却無人ぶりに、月、つい口が滑った。

「でも、本当に理由は、静真での部活動報告会で徹底的に潰したはずのAqoursがローマ・スペイン広場でのライブで息を吹き返しただけでなく、4月上旬に沼津駅南口で行われる新生Aqoursお披露目ライブ開催が決まったことで勢いを取り戻した、いや、それ以上に勢いがある、そして、今回、このビルでライブを行えばその勢いは誰も止められなくなる、それを危惧したからでしょう」

そう、月はこのときすでに知っていた、と、いうよりも気づいていた、木松悪斗が月の申請に反対する理由。と、いっても、そのことは今のAqoursの状況と木松悪斗の突然の反対にある程度わかるもの・・・なのであるが、自分の本音を月にいわれたことに、木松悪斗、

「えっ、そんなこと、あるわけないじゃないか・・・」

と、今まで見せたことがない、おどおどした姿で言ったかと思えば、いきなり、運営会社側を向いては、

「おい、お前ら、俺の言うことをきけ!!はやく、月生徒会長の申請を却下しろ!!」

と、運営会社に圧力をかけてきた。これには、運営会社の会長、

「ふんっ、そんな脅し、この私に効くわけないじゃないか!!」

と、木松悪斗の脅しに屈しない姿勢をみせる。

 しかし、次の瞬間、この強気の運営会社会長すら地に伏せることが起きてしまう。それは木松悪斗の次の言葉からだった。

「ふ~ん、この俺に対して強気な態度をとるのですか?なら、仕方ありません。あなたの会社に融資している銀行から、ここの融資、この俺、木松悪斗が止めましょうかね~!!あなたの会社に融資している銀行、そこと俺とは長い間お付き合いがありましてね~、俺が一言言えばここの融資を止めることぐらい簡単なのですよ・・・」

これにはさすがの運営会社の会長も、

「・・・」

と、渋い顔をしながら無言になってしまった。では、なぜ、運営会社の会長、木松悪斗の発言で、渋い顔、無言、になったのか。それは、なんと、木松悪斗、運営会社の会長に対して言うことを聞かないと銀行の融資を止めると脅しにかかったからだった。会社にとって業務を拡張するだけでなくいろんな業務を行っていく上でお金は必要である。そのためのお金を会社は銀行から融資という形で借りているのだが、その融資をしてもらえなくなるということは、すなわち、会社から業務をしていくためのお金がなくなる、結果、会社を存続させることができない、ことになってしまう。それは、いわば、会社にとって死刑宣告を受けたのと同じようなものである。とはいえ、そんなこと、一個人の意見だけで簡単にできないはずである。それほど融資というものは会社の存続においてとても重要なものでありとても慎重に取り扱うべきものである。なので、銀行の融資をするしないの選択権を一個人が支配することで一個人が「ラグーン」の運営会社みたいな大企業の生殺与奪権を握り自分の考えだけでその企業を簡単に潰すことなんて本当はあってはならない話なのである。けれど、これが木松悪斗となれば話は別である。木松悪斗は日本有数の投資グループの代表である。当然、銀行にも顔は知られている。いや、太いパイプを持っていたりする。また、銀行も1つの企業である。なので、木松悪斗、その銀行の株式を大量に持っていたりする。なので、木松悪斗が運営会社に融資している銀行に運営会社の融資を止めるように圧力をかければいとも簡単に運営会社に対する融資を止めてしまい、結果、運営会社はほどなくして潰れることになるかもしれない。なので、運営会社の会長、そのことをすべて木松悪斗の発言によって悟った、みたいだった。

 そんなわけで、運営会社の会長、まるで手のひらを返したかのように、

「うぅ、そんなことを言われるとこちらとしてはどうすることもできません。ここは木松悪斗様の言う通り、月さんの屋上使用申請を却下・・・」

と、諦めたかのように言ってしまう。が、この運営会社の会長の言葉に、月、

(あっ、このままいったら木松悪斗の思惑通りになってしまう!!なんとかしないと・・・)

と、焦りが出てしまう。

が、運営会社の会長、ここにきて、

「却下・・・、却下・・・」

と、口を濁してしまった。なぜなら、ここにきて会議室のドアからまた、

ガチャガチャ ガチャガチャ

という音がしたからだった。ただこの音に気づいたのが運営会社の会長と月だけだった。で、運営会社の会長、この音を聞いて、

(あっ、ついに心強い援軍が来ましたか!!心待ちわびたですぞ!!)

と、自分にとって心強い援軍がようやく来たことに気づいたのかその援軍の登場までできる限り時間を引き延ばそうとしていた。で、あるが、これには隣にいた木松悪斗のシンパである屋上責任者から、

「はやくはやく却下しましょうよ!!」

と、一番上の上司である運営会社の会長に却下の催促をすると、木松悪斗も、

「はやく結論を言ってください!!もちろん、答えは、「却下」、ですよね!!」

と、これまた「却下」の催促をしてしまった。

 が、その瞬間、月、突然のドアからの音とそれに気づいた運営会社の会長の言動に、

(あっ、もしかすると、あの(運営会社の)会長、なんか企んでいるみたいだね!!もしかすると、(運営会社の)会長、誰かを待ちわびているのかもしれないね!!なら、この僕がその時間を作ってあげるよ!!)

と、何かを感じたのか、意を決して木松悪斗にこんな質問をした。

「あっ、ところで、木松悪斗様、ちょっと質問なんですが、先ほど、「すべてのことに勝利をささげるべきである」と木松悪斗様はおっしゃっておりましたが、その勝利をささげる相手って誰のことなんですか?」

この月の質問に、木松悪斗、つい快く答えてしまう。

「おぉ、月生徒会長としてはとてもよい質問だな。なら、その質問にこの私が直々に答えてやろう。それはな、静真高校にだよ!!お前たち、静真高校の生徒たちは勝利を目指すため、日夜、勉強や部活、スポーツに打ち込むべきなのだ!!そして、そのあかつきにはすべての勝利を自分を育ててくれた静真にささげるべきなのである!!」

こう力説した木松悪斗。だが、このとき、月、ついに、木松悪斗に対し、

「木松悪斗様、本当にすごいですね~」

と、なぜかよいしょしてしまった。むろん、この月のよいしょに、木松悪斗、

「いやいや、まさか敵から褒められるなんて、なんか嬉しいものですな!!」

と、ついつい照れてしまう。どうやら、まさか突然の月からのよいしょに、木松悪斗、気をよくしてしまったみたいだった。

 そして、月、また、ついうっかり口を滑らせてしまう。

「でも、本当のところ、静真での生徒たちの手柄はすべて木松悪斗様のものになるのでしょう!!だって、木松悪斗様は静真の大スポンサーで、静真のなかで1番権力をお持ちの方なのですから・・・」

こんな月の言葉に、木松悪斗、つい本音が出てしまう。

「う~ん、たしかにその通りだ!!だって、この俺こそ静真の中で1番偉いんだから!!」

 だが、この瞬間、

バタンッ

と、会議室のドアが開くとすぐさまそのドアから1人の大男がずかずかと会議室の中に入り込む。

 しかし、木松悪斗、敵である月からよいしょをもらって嬉しかったのか、そのことすら気づかず、ついべらべら自分の本心をしゃべってしまう。

「この俺こそ静真の中で1番偉いんだ!!なぜなら、静真に1番投資しているのは、この俺、木松悪斗、だからな!!企業において1番株を持っている者が大きな力を持つのと同様に静真においてはこの俺が1番投資している。だからこそ、静真においてはこの俺が1番偉いんだ!!」

 だが、有頂天になっていた木松悪斗の態度がここにきて一変する。なんと、突然、

「へぇ~、静真で1番偉いのは、木松悪斗、なんだ~、このわしを差し置いて・・・」

という声が聞こえてきた。これには、木松悪斗、

「はい、そうなんです・・・、って・・・」

と、なにかに気づいたみたいだった。そして、木松悪斗、その声がする方、ドア側に立っていた運営会社側を見て絶句する。なぜなら・・・、

「ぬ、沼田殿・・・」

そう、そこにいたのは・・・静真の創立家の末裔であり、日本有数の大企業「沼田グループ」の総帥であり、木松悪斗が唯一頭があがらない相手、なおかつ、静真において、いや、沼津の経済界において本当に木松悪斗より権力をもっている、あの沼田であった。なんと、沼田、大男にも関わらず会議室のドアノブを繊細に「ガチャガチャ」と回すことで運営会社の会長にだけ自分が来たことを知らせるとともに、誰にも気づかれずに、それでもずかずかと会議室に入ることに成功したのだった。なのだが、そのドアノブの音がまさか月にも気づかれたことは予想外であった、が、その音に気づいた月の機転と沼田搭乗までの時間を稼ぐことについては、月、グッジョブである。

 そんなわけで、突然の沼田の登場で絶句している木松悪斗に対しなぜ沼田がここに来たのか、運営会社の会長、その理由を教えてくれた。

「実はな、木松悪斗様が直接こちらに来られる、と、いうことで、脅迫めいたものを言ってくるに違いない、そうなってしまうとこちら側としても公平な判断ができなくなる、と、思いまして、木松悪斗様が唯一頭があがらない、プラス、静真の関係者、というわけで、沼田殿を呼んだ、と、いうわけです」

 で、この運営会社の会長の言葉に、月、おもわず、

(運営会社の会長さん、グッジョブ、です・・・)

と、運営会社の会長のファインプレーに感謝の意をあらわした。

 そんなわけで、突然の沼田の登場によりおどおどする木松悪斗、それに追い打ちをかけるがごとく、沼田、木松悪斗にあることを言った。

「ところで、先ほど、静真での手柄はすべて木松悪斗のものになる、って、言っていたよね。それはどういうことですか、木松悪斗君!!」

このときの沼田の口調はまるでエンマ大王そのもの、とてもおぞましいものだった。なので、木松悪斗、おどおどしつつも、

「え~、そんなこと、言っておりませんが・・・」

と、弱弱しく否定するも、沼田、

「はぁ、このわしの聞き間違いとでも言いたいのか!!ちゃんとこの耳で聞いていたぞ!!とぼけるのもいい加減にしろ!!」

と、木松悪斗に対し激怒。これにはさすがの木松悪斗も、

「しゅん・・・」

と、小さくなるしかなかった。

 で、そんな木松悪斗とのやり取りのあと、沼田は月に対してこう言った。

「月生徒会長よ、先ほどの行動、よいフォローであった。まさか木松悪斗の本心が聞けるとはな。この俺からお礼を言おう、ありがとう」

この沼田のお礼に、月、

「いや~、たまたまですよ~」

と、謙遜してしまった。

 そして、沼田、木松悪斗の方を向いてはエンマ大王みたいな顔になってまるで天国か地獄かの判決を下すがごとく断罪する。

「さて、木松悪斗の暴言の数々、あと、この(運営会社の)会長に対する脅迫めいた言動、それについてはあとで処罰を加えるとして・・・」

どうやら、木松悪斗の「静真のものは俺のもの」発言?、それに、運営会社とその会長に対する脅迫の数々はこそこそ会議室に入ってきた?沼田の耳に入っていたらしく、木松悪斗、ついに沼田から断罪予告を出されてしまった。これには、木松悪斗、

「う・・・」

と、下を向いてうなだれるしかなかった。

 しかし、沼田の言葉はまだ続いていた。沼田、月と木松悪斗、その両方を見ると、

「それでは本題に入ろう」

と、言ってはとんでもないことを言いだしてきた。

「わしがここに来た理由、それは、月生徒会長の屋上使用申請を受理するか却下するか、その判断をするためだ!!」

で、この沼田の言葉に、月側、木松悪斗側、全員、

「え~!!」

と、驚いてしまった。

 と、ここで運営会社の会長がことのあらましを語った。

「実はな、もしかすると、このわし(運営会社の会長)をもってしてもこの申請を受理するかどうか公平に審査できないかもしれない、と、思ったのだ。なぜなら、木松悪斗様が力ずくでも申請却下に持ち込もうとするかもしれないからだ。だから、ここはお二人と同じ静真の関係者でこの沼津において唯一この件で公平にジャッジできる沼田殿にこの件の審査をお願いしたまでじゃ」

たしかにその通りである。今さっきまで運営会社の会長を脅迫するくらい木松悪斗は力ずくで月の申請を却下させようとしていた。でも、木松悪斗より権力のある沼田であればそんな脅迫なんて通じない、公平にジャッジできる、そう踏んでいたのだ、運営会社の会長は・・・。

 そんなわけで、沼田、突然、月の申請の受理についての判断基準について説明を始めた。

「さて、2人とも、これから、このわし、沼田、がある質問をする。その答えを2人とも理由をつけて答えよ!!そして、2人の出した答えのなかで、この俺、沼田、が「ずばり、その通り!!」と思った答えを出した方、それを勝者とする。もし、それが月生徒会長の答えであれば月生徒会長の屋上使用申請を受理、木松悪斗の答えならその申請は却下される。いいな!!」

これには、月、木松悪斗、両者とも、

(なんてシンプルな判断基準なんだ・・・。こりゃ、中途半端な答えを出すことなんてできないよ・・・)(月)

(ふんっ!!なんて簡単なものなんだ!!こんなもの、簡単に勝利してやる!!)(木松悪斗)

と、それぞれの心意気をみせていた。

 そして、沼田、ついに運命の質問を2人に出した。それは・・・。

「それじゃ、2人に質問じゃ!!これは簡単な質問じゃ。あまり固く考えるなよ!!それじゃ、いくぞ!!静真は部活動が盛んな高校じゃ。そんな静真においてとても大切なことを2人に尋ねたい。さて、2人に問う、

 

「部活動とは何か」「部活動をする上で一番大切なものとはなにか」

 

2人とも答えよ!!」



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Moon Cradle 第7部後編 第17話

(「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとはなにか」えっ、いきなり、その質問なの!!ぼ、僕・・・、まだその答えを見つけていない・・・)

と、月、唖然となる。月は静真高校と浦の星女学院は統合するものの分校方式をとることに決定した2月末の臨時理事会のあと、あの沼田から今回と同じ問いを言われていたのだ。で、この3週間弱のあいだ、月はその問いの答えを必死になって探していた・・・のだが、いくらその答えを探しても見つけることができない、そう月は思っていたのだ。そして、その問いの答えを、今、沼田から求められてきたのだ。が、その答えをいまだに見つかっていない、そう思っていた月、

(う~、どう答えたらいいのか・・・)

と、言葉に窮してしまった。

 対して、月の敵である木松悪斗はというと・・・、

(ふんっ、その答えなんてとても簡単じゃないか!!いつもの通りに答えるだけでよい!!それに、すでにその答えに関する実績はあるからな!!)

と、余裕の表情をしていた。

 そんな対照的な2人を見てか、沼田、2人にあることを言いだした。

「ふ~ん、月生徒会長はわしのの問いの答えに窮しているようだな。それに対して、木松悪斗は自信満々だな!!」

 そして、ついに沼田が動いた!!

「それじゃ、まずはすでに答える準備ができているようにみえる木松悪斗からその答えを聞こう」

この沼田の言葉に、月、

(こ、このままでは木松悪斗のペースにのせられてしまう!!)

と、思ったのか、おもわず、

「あっ、えっ、おっ・・・」

と、声を発するも言葉にならず。反対に、木松悪斗から、

「月生徒会長よ、今はこの俺が答える番だ!!少しは黙っていろ!!」

と、注意を受けてしまう。これには、月、

(うっ、木松悪斗に言い返したいけどどうすることもできない~!!)

と、打つ手も出せないためか、逆に、

「は~い・・・↓↓↓」

と、逆に黙り込んでしまった。

 そんなわけで、完全に木松悪斗のターンになってしまった・・・わけでして、木松悪斗、月たちを威嚇するような大声で、

「沼田殿、そなたの問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で大事なこととは」、その問いであるが・・・」

と、言うと、一瞬、月たちの方をギロリと見る。これには、ルビィ、

「うわわ・・・」

と、身を縮めてしまうも、木松悪斗、そんなことお構いなしに自信満々ともとれる今日1番の大声で自分の答えを言った。

「それはすなわち、「勝利すること」だ!!」

 で、これには、月、

(・・・って、それ、いつも木松悪斗が言っていることじゃないか!!)

と、心の中でツッコミを入れてしまうも、その問いを言った沼田、冷静に木松悪斗に対し、

「ほ~、部活動とは、「勝利」、となぁ~」

と、確認をとると、木松悪斗、

「ずばり、その通りだ!!」

と、自分の答えに間違いないことを認めた。

 で、沼田、そんな自信満々の木松悪斗に対しあることを尋ねた。

「と、いうことは、「部活動をする上で大事なこととは」という問いの答えも「勝利すること」で間違いないかな?」

これにも、木松悪斗、

「その通りである!!」

と、肯定した。本当に自分の考えがぶれない、そんな木松悪斗であった。

 と、ここで、沼田、そんな木松悪斗に対し怒涛の質問ラッシュを始めた。

「ほ~、「勝利すること」がとても大事であると言っておるが、なんでそんなに勝利にこだわるんじゃ?」(沼田)

「そんなの当たり前だ!!「勝利こそすべて!!」「勝利こそ正義!!」だからだ!!」(木松悪斗)

「「勝利がすべて」かぁ。たしか、(2月末の)臨時理事会後に、おぬし、「投資の世界では勝つことこそ正義、勝つことこそすべて」と言っていたなぁ。それは高校の部活でも同じことが言えるのかな?」(沼田)

「そんなの当たり前だ!!いや、部活だけじゃない!!「勝利すること」、それこそこの世の中では絶対的な答えである!!勝つことこそこの世の中で唯一の判断基準である!!」(木松悪斗)

「ほう、そうであるか。でも、その判断基準だと必ず敗者というものがあらわれる。それについてはどうなのじゃ?」(沼田)

「そんな敗者、切り捨てればよい!!この世の中は「弱肉強食」なんだ!!常に勝者たるもののみ生き残るものだ!!敗者はその勝者にこき使われるか野垂れ死ぬか、ただそれだけだ!!]

(木松悪斗)

「なるほど・・・。でも、勝者は常に勝者とは限らない、いつかは敗者になるものじゃ。それについてはどう思う?」(沼田)

「そんなもの、関係ない!!常に勝ち続ければいいだけだ!!敗者になることなんて考えなくてもよい!!」(木松悪斗)

「ほほ~、そうか。では、聞くが、「勝利こそすべて」というが、それに至るまでの過程についてはどう考えておるのじゃ?」(沼田)

「過程?そんなもの、関係ない!!どんな過程であれ、結果的に勝利すればいいだけのこと!!勝利することだけ考えればよい!!」(木松悪斗)

「ほほ~、過程すら関係ないとは・・・。しかし、その過程すら無視するにしても「勝利すること」というのは並大抵なことじゃない。それについてはどう考える?」(沼田)

「並大抵なことじゃない、そんなもの、関係ない!!どんな手を使ってでも「勝利する」、ただそれだけのことだ!!たしかに「勝利」するために「努力」「友情」も大切かもしれない。けれど、ただ、「勝利」というのはそれすら無視できるほど1番重要なものなんだ!!そのためにどんな手を使ってでも「勝利」をもぎ取ることが必要なんだ!!」(木松悪斗)

「そうか、そうか。で、常に勝利だけを追い求めていると自分たちを応援してくれる人たちや自分たちを見ている人たちからどう見られるか心配じゃないか?」(沼田)

「はぁ、そんな心配、関係ないね!!まわりの人たちが自分たちに追い求めているもの、それすなわち「勝利」のみ!!誰もがみな自分たちが「勝利」することのみを追い求めているものだ!!「勝利」することで常に勝利の美酒を飲む、ただそれだけだ!!「勝利」することこそ最高で唯一の美談なり!!敗者になんてだれも見向きもしない。そんなもの、気にするだけ、無駄無駄!!それよりも、常に勝ち続けることこそこの世に生きる者たちにとってとても嬉しいことなり!!勝者のみいつもスポットライトを浴びているものなんだ!!「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、それこそこの世の中で唯一の考えなんだ!!」(木松悪斗)

次々と質問を繰り出す沼田に木松悪斗は自信たっぷりに大声で答える。それはまるで一種の国会の参考人質問みたいなものだった。で、このことについて、月、

(うわ~、なんか木松悪斗1人独演会みたいにみえてきたよ・・・)

と、つい思ってしまう。たいsかにそんな感じであった。沼田は質問しているだけなのだが、それに気をよくしてか、木松悪斗、自分の考えをこの会議室にいる者全員に押し付けているかのように力強く大声で叫んでいるのだ。こうなると、参考人質問ではない、選挙前に行う候補者の講演会、もしくは、街頭演説、といっても過言ではなかった。

 そして、木松悪斗に、沼田、最後の質問をした。

「ほう、それでは、木松悪斗、最後にこの質問じゃ。「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」、その答えは「勝利すること」と言っておるが、その実例はないのか?」

この質問に、木松悪斗、

「実例?そんなもん、決まっていますよ!!簡単ですよ!!」

と、前置きを言いつつ、ここが見せ場、とばかりにこの日一番の大声でこう答えた。

「それこそ、静真の部活動、です!!」

これにはルビィが、

「ピ、ピギッ!!」

と、これまた怯えてしまうくらい、この事務所にいる者たちみな、一瞬たじろいてしまうも、木松悪斗、ここぞとばかりに自分の正論を振りかざす。

「この10年、私は「常に勝利する」「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の考えのもと、静真の部活動に崗円と人材を投入してきました。そして、ここまできてようやく静岡でもトップクラスの実力を持つ部活を多数そろえる高校になりました!!いや、弓道部などインターハイ全国大会で実績を残すほどの部活もあらわれております。そして、去年、ついに全国大会で優勝できるまでに成長した部活があらわれたのです!!」

この木松悪斗の言葉のあと、木松悪斗の娘で静真高校女子サッカー部の部長である旺夏が木松悪斗の横に立ってはこんなことを大声で言いだした。

「それが私たち、女子サッカー部、ですわ!!去年の夏、インターハイ全国大会で日本一に輝きましたわ!!そして、今も、連勝街道、まっしぐらですわ!!」

そう、インターハイで日本一になった静真の部活、それこそ、旺夏率いる女子サッカー部、である。その部はまるで木松悪斗の考えを具現化している、そんな感じがしていた。さらに、その部を率いている旺夏本人がこの場でこう発言しているあたり、木松悪斗の考えに信ぴょう性を与えている、そんな感じもしてきた。

 そんな旺夏の言葉のあと、木松悪斗は話を締めた。

「そんな具合に、私の沼田殿の問いに対する答え、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、それこそ絶対なる答えであり唯一の答えなり!!そして、その答えを具現化しているものこそ、「静真の部活動」なのです!!」

そんな木松悪斗の締めに木松悪斗のうしろに控えていた裏美と旺夏は、

「き、木松悪斗様、す、すご過ぎです!!とてもいい演説です!!」(裏美)

「お父様、素敵!!」(旺夏)

と、木松悪斗のことをべた褒めしていた。が、自分の考えのみを押し付けてきた木松悪斗とそれをべた褒めする裏美と旺夏を見て、月、

(う~、なんか嫌味を通り越してドン引きしちゃう感じだよ・・・)

と、つい思ってしまう。それはまるで「自分の考えこそこの世の摂理なり!!」とも言い切る木松悪斗のその取り巻き(裏美・旺夏)、この3人が自分たちにその考えを押し付けている、それに対して月は嫌がっている、そんな感じがしていた。いや、月だけじゃない、月の後ろにいる、ルビィ、曜、ダイヤ、そして、鞠莉からも・・・、

(ルビィからみてもそれって違うんじゃ・・・)(ルビィ)

(私、無理やり自分の考えを押し付ける人っていやだな・・・)(曜)

(まるでどこかの独裁者みたいな考えですね・・・)(ダイヤ)

(話がfly(飛び過ぎて)なにが言いたいのかわかりませ~ん!!)(鞠莉)

と、目の前で繰り広げられている光景にドン引きされていた。

 とはいえ、ようやく木松悪斗のターンは終わった。だが、これについて、

(ようやく木松悪斗の出番は終わった。そして、次は僕・・・。でも、まだ答えなんて出てきてないよ・・・)

と、自分の出番が巡ってきたものの未だに沼田の問いの答えを用意できていないことに焦りを感じていた。



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Moon Cradle 第7部後編 第18話

 そして、ついに月の出番がまわってきた。沼田は月の方を見るとこう言いだしてきた。

「さて、月生徒会長、あなたにも聞こう、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」」

この沼田の言葉に、月、

(え~と、え~と、なんて答えたらいいの・・・。え~と、「勝利すること」・・・?でも、これだと木松悪斗と一緒の答えだし・・・、え~と、え~と・・・9

と、どう答えたらいいのか困ってしまう。が、それでも沼田から、

「どうした、月生徒会長?」

と、月のことを心配そうに言うも、月、

(え~と、え~と・・・)

と、悩んでしまったのか、

「・・・」

と、つい無言になってしまう。それでも、沼田、

「どうした、月生徒会長?答えることができないのか?」

と、月のことをさらに心配そうに言うも、月、なんとか答えようとしているのか、

「う~、う~」

と、うなっているも肝心の答えが出ず・・・。これには木松悪斗から、

「ほう、月生徒会長、なにも答えることができないのですか?これでは話にもなりません。この私の不戦勝ですな!!」

と、月が沼田の問いに答えることができないためか、勝手に勝利宣言すら言われてしまう始末。

 だが、沼田、そんな木松悪斗の勝利宣言なんて、

「はいはい」

と、簡単にあしらうと、月に対し別の質問をした。

「それなら別の質問をしよう。月生徒会長は、先日、ここにいるAqoursメンバーと一緒にイタリアに旅行をしていたよね。その旅行を通じて、感じたこと、学んだこと、なにかないかな?」

この沼田の別の質問に、木松悪斗、

「おい、沼田殿、その質問はこの場、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとは」の問いとは関係ないだろうが!!」

と、沼田にいちゃもんをつけるも、沼田、

「木松悪斗、今はわしと月生徒会長とのやり取りの最中だ!!外野はそこでおとなしくしてろ!!」

と言っては木松悪斗を突き放した。これには、木松悪斗、

「うぅ・・・」

と、叱られて縮まってしまった子犬のようになって黙りこくるしかなかった。

 そんなわけで、沼田、月に再度同じ質問をした。

「それで、月生徒会長、Aqoursメンバーとのイタリア旅行、それを通じて、どんなことを感じた、そして、学んだ?」

 これには、月、

(た、たしか・・・)

と、イタリアでの出来事を思い出す。そして、それが言葉としてあらわれた。

「たしか、僕、ルビィちゃんを生まれ変わらせようとして・・・」

これには、ルビィ、

「うん、そうだよ!!月ちゃんのおかげでルビィは生まれ変わったんだよ!!月ちゃんがルビィを導いてくれたことで、ルビィ、生まれ変わることができたんだよ!!ううん、ルビィだけじゃない!!千歌ちゃんたちもだよ!!そして、新生Aqoursを新しい次元へと月ちゃんは導いてくれたんだよ!!ルビィ、そんな月ちゃんのこと、とても感謝しているんだよ!!」

と、月にお礼を言った。これには、月、

(うん、たしかに僕はルビィちゃんを、新生Aqoursを復活、いや、新しい次元へと導くことに注力していた。そして、それが成功したことに、僕、とても嬉しい思いをしたんだよ!!)

と、ルビィたちのことを新しい次元へと導いたことで感じた嬉しい思いを再び感じていた。そう、月は報告会での新生Aqoursのライブでの失敗により不安・心配の深き海・沼に沈み込んでいた千歌たち新生Aqoursに対し、そのなかでも1番落ち込んでいたルビィを介してよみがえさせようと奮戦していた。その月の奮戦ぶりのためか、ルビィは一人前の少女として生まれ変わることができ、さらにはそれが新生Aqours復活へとつながっていったのだ。

 さらに、月、次のイタリアでの思い出を振り返る。

「そして、鞠莉ちゃんの未来を、Aqoursの未来を賭けて、イタリア・ローマのスペイン広場でライブを行った・・・」

これには、ダイヤ、

「月さん、私たち3年生3人のお願いでプロデューサー見習としてスペイン広場でのライブのサポートをしてくださいました。そこで、月さん、ルビィのために必死な思いでライブ会場としてスペイン広場をおさえようとしてくださりました。その意味でも、月さん、あなたは最高のプロデューサー(見習)でしたわ!!」

と、月のことをほめると、ルビィも、

「うん、ルビィ、月ちゃんのおかげでライブ会場を決めるという大任を果たすことができたんだよ!!あのときは本当にありがとう、だよ!!」

と、月に対してお礼を言った。これにも、月、

(あっ、たしかにダイヤさんとルビィちゃんの言う通りだね!!僕、突然、ダイヤさんたちから「プロデューサー見習になれ」と言われたときはびっくりしたけど、僕、曜ちゃんたちAqoursのためなら、と、引き受けたんだよね!!そして、ライブ会場の選定というとても重要なことを任せられたルビィちゃんたち1年生のために、僕、必死な思いでルビィちゃんたちが探して決めたライブ会場、スペイン広場をおさえようとあの悪徳公務員と戦ったんだよね!!これにも、僕、スペイン広場をおさえることに成功したとき、とても嬉しかったよ・・・)

と、自分が成し遂げたこと、そのときの達成感を再び感じていた。そう、月はプロデューサー見習としてAqoursのスペイン広場のライブを支えていた。それはダイヤたち3年生3人からの押し付け?みたいなものになっていたが、それでも月は苦にも思っていなかった。いや、ライブを成功させるために積極的に動いていた。とくに、ルビィが中心となってやっていたこと、このライブでとても重要なこと、ライブ会場の選定、には、月、そのルビィの頑張りを必死になってサポートしてくれた。ルビィがライブ会場として決めた場所、スペイン広場をおさえるため、月、鞠莉と一緒にローマ市役所に出向き、悪徳市役所職員、と対峙するも必死の頑張りにより勝利、これによりスペイン広場をライブ会場として使うことができるようになる、結果、月はルビィの想いを叶えることができたのだ。

 さらにさらに、月はイタリアでの思い出をさらに振り返った。

「そして、僕、Aqoursをサポートすることで僕が知らないAqoursみんなのいろんな一面を知ることができた。僕、そんなみんなのことを必死にサポートした。そして、スペイン広場でのライブは大成功に終わった・・・」

これには、曜、

「月ちゃん、その通りだよ!!月ちゃんのサポートがあったからこそ、私たちAqoursのスペイン広場でのライブは大成功に終わったんだよ!!月ちゃんはいろんなことをしてAqoursをサポートしてくれたんだよ!!私たち、そんな月ちゃんのサポートがあったからこそスペイン広場のライブを心の底から楽しむことができたんだよ!!だから、スペイン広場のライブは大成功で終わったんだよ!!」

と、月に対してこおことを思い出しては月にお礼を言った。で、これにも、月、

(あっ、たしかにそうかも!!僕、ライブ会場の選定以外にもいろんなことをサポートしていたんだよね!!そのサポートを通じてAqoursメンバーのいろんな一面を知ることができたんだ。いや、Aqoursというグループの素晴らしさを知ることができたんだ!!そんなことがあったからこそ、僕、Aqoursを必死にサポートしていたんだ!!そして、曜ちゃんたちAqoursは笑顔でもってスペイン広場のライブに臨んだ。結果、ライブは大成功したんだ!!で、そのとき、僕、このライブを見てとても感動したんだよね・・・)

と、そのときのことを思い出しては、ライブが大成功をした、そのときの感動を再び感じていた。月はライブ会場選定以外にもAqoursのサポートを必死にしていた。それはこれまで自分が知らなかったAqoursの新たなる一面を知ることができただけでなく、Aqoursのために自分も頑張りたい、そんな月の頑張りすら引き出すことができたのかもしれない。そんな月の頑張りのおかげか、鞠莉の未来、Aqoursの未来を賭けたとても重要な、運命のライブ、のはずなのに、千歌たちAqoursは心の底からそのライブを楽しむことができた、それが運命のライブの大成功へと導くことができたのだ。

 そして、曜は月に、また、ある言葉を投げかけた。

「それでね、月ちゃん、そのスペイン広場でのライブ、いや、私たちAqoursとのイタリア旅行、楽しむことができた?」

この言葉に、月、

(あっ、曜ちゃんたちAqoursとのイタリア旅行、それを振り返るだけでも、この言葉、すぐに浮かんでくるよ・・・)

と、思うと、そのまま、その言葉を口にした。

「うん、僕、とても楽しかった!!だって、僕、最初は深く落ち込んでいた曜ちゃんたち新生Aqoursをよみがえさせるために動いていた。それは自分のエゴ的なところが大きかった。でも、みんなと一緒に旅行していくうちにそれは変わっていった。ルビィちゃんを生まれ変わらせただけでなく、そのあとのAqoursのためのスペイン広場でのライブを通じて、僕、Aqoursのために必死になって頑張っていた。それはAqoursの新しい一面を見つけることができただけでなく、そのライブを絶対に成功させよう、Aqoursメンバーみんなが楽しめるライブを目指そう、としていた。そのためか、曜ちゃんたちAqoursはその時間を一生懸命楽しむことができた。けれど、そんな僕自身も知らないうちにそれを曜ちゃんたちと一緒に楽しんでいたのかもしれない。そして、僕を含めて全員が楽しむことが出来たからこそスペイン広場でのライブは成功した。だからこそ、僕はこう思うことができる、僕にとって曜ちゃんたちAqoursとのイタリア旅行はとても楽しい旅だった、って!!」

そう、月はAqoursとのイタリア旅行を通じて「楽しむこと」を学んでいたのだ。最初は自分のせいで勝手に部活動報告会に新生Aqoursを強行出場したものの木松悪斗たちの妨害と鞠莉たち3年生3人がいないという喪失感などにより不安・心配のという深き海・沼に陥った千歌たち新生Aqoursをよみがえさせることにより、自分の願望である静真本校と浦の星分校の統合を叶えたい、そんな願望、「新生Aqoursの復活」という使命感、みたいなものが強かった。そして、それらを抱えてAqoursと一緒に旅行を続けていくうちにスペイン広場でのライブ成功を共に目指すこととなった。そんななか、月、そのAqoursメンバーと交流をしていくうちに、Aqours、そして、Aqoursメンバーの新たなる一面を知るだけでなく、そのAqoursのためになろうと必死にサポートしようと一生懸命頑張ろうとするようになる。そして、そうしていくうちに月のなかでは、イタリア旅行前に持っていたもの、自分の願望、自分の使命感、そのものが、「Aqoursのみんなと一緒に楽しむ」こと、それへと昇華していったのかもしれない。さらに、そのことが結果的にスペイン広場でのライブの成功へと導いたのかもしれない。

 そんな月とルビィ、ダイア、曜のイタリア旅行の回想が終わった後、ついに沼田は月にもう一度あの問いを言った。

「さて、月生徒会長、もう一度問う、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大切なものとはなにか」、そのイタリア旅行を通じて学んだことを言ってみろ!!」

 この沼田の問いに、月、

「え~と、イタリア旅行で学んだこと、それって・・・、たしか・・・、たしか・・・」

と、ちょっと間をとりつつもこう答えた。

「それって、もしかして・・・、

 

「楽しむこと」「みんなと一緒に楽しむこと」・・・

 

ですか?」

これには、沼田、

「ほほ・・・」

と、力強くうなずくも、敵である木松悪斗から、

「なんだ、その答えは!!まったくもってけしからん答えだ!!そんな答え、幼稚園生が言う答えだぞ!!恥っていうものを知れ!!この小童が!!」

と、激しくブーイングするも、それについて沼田から、

「こらっ、木松悪斗、黙っておけ!!今は月生徒会長が答えているんだぞ!!外野は少し黙っていろ!!」

と、激しく注意を受けると、木松悪斗、

「は~い」

と、不機嫌そうに答えていた。

 そして、沼田は月に対しこう尋ねた。

「「楽しむこと」が。それじゃ、なんで、そう答えたのだ?」

これには、月、沼田に対しこう答えた。

「だって、僕はこのイタリア旅行を通じてAqoursのみんなと一緒にその旅を楽しむことができました。最初のころは僕は(千歌たち)新生Aqours(1・2年)を復活させたい、そんな使命感、と、それによって、自分の願望、静真本校と浦の星分校を統合させたい、それを叶えたい、それだけしか考えていませんでした。そして、旅行を続けていくうちに、スペイン広場でのライブの成功、という大きな目標を一緒に目指すことになりました。そのなかで僕は旅を通じてAqoursのみんなとつながっていくうちに、Aqoursのみんなのために一生懸命Aqoursのみんなをサポートしていきたい、Aqoursのみんなと一緒に楽しみたい、そう思えるようになりました。そのおかげか、僕、Aqoursのみんなと一緒に楽しい時間を過ごすことができただけでなく、それによってスペイン広場でのライブ成功へと導くことができました。なので、そう考えると、「楽しむこと」、それが1番大事じゃないかな、って、思ってきてたりします・・・」

 しかし、このときの月、内心では・・・、

(とは言っているけど、本当に大丈夫かな・・・。さっきまで曜ちゃんたちとイタリア旅行の話の流れでついこう言っちゃったえど、僕、そう答えていいのか自信が持てない・・・)

と、自分の発言そのものにちょっと自信が持ててなかった。どうやら、月、いまさっきの曜たちとの話の流れで、つい、「楽しむこと」、と答えてしまったみたいだった。このときの月、木松悪斗みたいに自信めいた確信的な答え、じゃなく、ただ、今さっきのイタリア旅行の話のなかで気づいたことをただ言ってみただけ・・・のようだ。そんなわけで、月、とっさに思い浮かんだ言葉を言ってしまったことについてちょっと後悔してしまっていた。

 しかし、とうの沼田というと・・・、

「ふむふむ、月生徒会長の答えが「楽しむこと」とはな・・・、納得、納得」

と、逆に月の答えに納得しているかのようだった。

 が、そんなときだった。突然、月のスマホから、

チリリン チリリン

と、いう呼び出し音がなる。これには、月、

「あっ、すいません。スマホの呼び鈴をオフにしていませんでした・・・」

と、言ってまわりに詫びると、すぐさま部屋の片隅に行き、かかってきた電話をとった。すると、

「月生徒会長、すみません、助けてください!!」

と、生徒会副会長(兼生徒会長代理)のナギの泣き声がこだました。これには、月、

「どうした、ナギ副会長!!なにかあったの?」

と、ナギに尋ねると、ナギ、泣きそうな声でこう答えた。

「月生徒会長、大変なことになりました!!さきほど、お披露目ライブの出店申込のメールが自分たちでは処理できないくらいたくさん届いてしまいまして、こちらとしてはてんてこ舞いな状態に陥っております!!」

どうやら、4月上旬に行われる新生Aqoursお披露目ライブの出店申込のメールが先ほどたくさん届いたみたいだった。これまで沼田の働きかけやAqoursのネームバリューの大きさなどからもとからお披露目ライブの出店申込は多かったのであるが、それでも月のいないながらもかなり優秀なナギたち静真高校生徒会の能力からすればこなせるものだったのだが、今日、突然、そんなナギたちの処理能力をはるかに超えるくらいの出店申込が届いてしまったため、急遽、ナギは月にSOSを発信したみたいである。

 そんなわけで、月、

(今はとても重要な場面だけど、静真の生徒会長である以上、ナギたち生徒会役員を助けないといけない)

と、自分の生徒会長としての使命感を感じたのか、

「沼田(静真)PTA会長、申し訳ございません、急遽、予定が入りましたので、この場はここで失礼させていただきます。本当に申し訳ございません」

と、沼田にお詫びを言うと、沼田も、

「いやいや、月生徒会長、(静真高校)生徒会の役員たちが困っているのなら、生徒会長である以上、それに対処しないといけないことは仕方がないことだ。それこそ、静真高校の生徒を代表する静真高校生徒会を束ねる者としての責務、ともいえる。だからこそ、心配するな」

と、言っては、月の言葉に理解を示すとともに、

「それじゃ、月生徒会長、行って御上げなさい」

と、優しく言っては月を送り出そうとする。これには、月、

「はい、沼田PTA会長、お気持ちありがとうございます。それでは失礼いたします」

と、言っては会議室をあとにした。

 そんな月の行動に月のうしろにいたAqoursメンバーたちからも、

(月ちゃんが行っちゃった・・・。ルビィ、月ちゃんのあとを追いかけなくてもいいのかな・・・)(ルビィ)

(月ちゃん、私もついていこうかな?月ちゃんだけに任せるのも嫌だしね・・・)(曜)

と、月のあとを追うべきか迷うも、そのことを悟ったのか、沼田から、

「え~と、ルビィと曜という者よ、月生徒会長のあとを追いなさい。もしかすると、月生徒会長の役に立つかもしれないからな」

と、言って、ルビィと曜に対して月のあとを追うようにと諭す。これには、ルビィ、曜、ともに、

「えっ、追っていいの!!それじゃ、ルビィ、これでお暇します!!」(ルビィ)

「うん、私も月ちゃんのことが心配だから、これで失礼します!!」(曜)

と、言っては月のあとを追った。

 そして、そんな2人を見てか、ダイヤも、

(ルビィと曜さん、2人だけで行かせるのはちょっと心配ですね。ここは私が・・・。でも、月さんのいないなか、月さんの屋上使用申請の受理、もしくは、却下、その判定を聞かないといけないのでは・・・)

と、どうすればいいか悩んでしまう。

 が、そんなとき、鞠莉、ダイヤの耳元に口を近づけると、

「ここはこのマリーに、お・ま・か・せ、で~す!!このあとのことはこのマリーがちゃんとやるので~す!!」

と、こそっと言う。これには、ダイア、

「でも、そうしたら鞠莉さんだけに・・・」

と、鞠莉のことを心配そうに言うと、鞠莉からこんな発言が飛び出してしまう。

「ここからは、アダルト(大人)のシーン、で~す!!マリーは浦の星の理事長であり、小原家の一人娘であり、ここでの浦の星と小原家の代表で~す!!なので、ダイヤ、ルビィと曜のこと、任せるで~す!!」

この鞠莉の言葉を聞いたダイヤ、鞠莉の意図を理解すると、

「鞠莉さん、わかりました!!それではあとのことはお任せします!!」

と、言っては2人のあとを追った。

 こうして、会議室には、沼田、「ラグーン」運営会社の会長と役員、屋上責任者、それに、木松悪斗と取り巻き2人、それに、鞠莉、だけとなった。これには、木松悪斗、

「ふんっ、月生徒会長とその取り巻きたち(ルビィ・曜・ダイヤ)は逃げ帰ってしまったか!!こうなってしまうと、この俺の完全勝利、で決まったようなものだな」

と、自信たっぷりに言うと、沼田、ついに、月と木松悪斗、その2人の戦い、その勝敗の判定をついに下した。

「それじゃ、判定を下す!!勝者は・・・」



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Moon Cradle 第7部後編 第19話

「終わった・・・」

夕方6時、ナギからの依頼でとり急ぎ静真の生徒会室に戻ってきた月、ナギたちの手伝いがようやく終わった・・・ということで机の上に倒れこんでしまった。これには、ナギ、

「月生徒会長、本当に助かりました。ありがとうございました」

と、月にお礼を言った。

 そして、月は顔をあげると隣にいる人たちにこんなことを言った。

「ルビィちゃん、曜ちゃん、そして、ダイヤさん、手伝ってくれてありがとうございました」

そう、月のあとを追った、ルビィ、曜、ダイヤも生徒会室に入るなりナギたちの手伝いをしていたのだ。そんなわけで、手伝ってくれたお礼を月が言うと、3人から、

「別に大丈夫だよ!!」(ルビィ)

「困ったときはお互い様だよ!!」(曜)

「そんなにかしこまなくてもいいですよ」(ダイヤ)

と、そこまで低姿勢にならないようにと月に言う。

 だが、月、このとき、あることについて後悔していた。

「しかし、この様子だと、僕たち、負けちゃったのかな・・・」

おす、今さっきまで「ラグーン」の会議室で行われた月と木松悪斗の対決のことである。月からしたらあまり自信のない答え、対して、木松悪斗からしたら自信たっぷりの答え、どっちが勝つかは一目瞭然、と、月はこのとき思っていた。

 そんなときだった。突然、月のスマホから、

ツルル ツルル

という呼び出し音が鳴る。これには、月、

「はいっ、渡辺月ですが・・・」

と、自分のスマホを取り出しかかってきた電話に出る。すると、突然、月のスマホから、

「マリーで~す!!月のテレフォンですか?」

と、鞠莉の大きな声がこだました。これには、月、

「あっ、鞠莉さん!!ところで、結果はどうでしたか?」

と、さっそく、月と木松悪斗の対決の行方を鞠莉に尋ねる。

 すると、鞠莉から信じられない言葉が飛び出してきた。

 

「勝負の行方は・・・、Big Win、大勝利、ですね!!マリーたち、Aqoursの大勝利で~す!!」

 

この鞠莉の言葉を聞いた瞬間、生徒会室から、

「ヤッター!!」

という声がこだました。そう、あの木松悪斗から大勝利をもぎ取ったのだ。それは、あの木松悪斗という大敵を討ち果たした瞬間でもあった。そのため、たった1人を除くこの生徒会室にいる全員、歓喜に満ちた大声をあげたのだった。

 が、たった1人だけ唖然となっていた。

「「楽しむこと」、ただそれだけを言っただけなのに・・・」

そう、月だった。とても自信がなく、ただその場の話の流れで言った答え、「楽しむこと」、それなのに、まさかそれによってあの木松悪斗という大敵を討ち果たすことができるなんて思ってもいなかったからだった。そのため、あまりの衝撃的なことだったためにただただ唖然となるしかなかったのだ、月が・・・。

 こうして、月とナギたち静真高校生徒会、そして、Aqoursの長い1日は終わった・・・、あの大敵である木松悪斗との勝負に打ち勝つことができた、その喜びと、それがたんなるその場の話の流れの中で言った答えによるものであることにただただ唖然となる月を残して・・・。

 

 



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Moon Cradle 第7部後編 第20話

 翌日・・・。

「はいっ、ここでさっと脱いで!!」

月の言葉が教室内にこだまする。ここは山の中にある浦の星分校の一教室。ここでは、翌日早朝の本番にそなえて延長戦の通しのリハーサルが行われていた。とはいっても、実質的にはお披露ライブのこともあり、延長戦の練習は今日1日しかできない・・・ことになっていたが、それでも、Aqoursとしてはこれが、今の9人としての最後の練習になる、ということで、9人全員張り切っていた。

 ちなみに、延長戦の下準備であるが・・・。まずは作詞作曲班・・・、

「ねぇ、梨子ちゃん、ここの歌詞、こう変えたらどうかな?」(千歌)

「うんうん、とてもいいかも!!でね、千歌ちゃん、それだったら、そのところ、こう編曲したいのだけど、いいかな?」(梨子)

「うん、それ、いいかも!!」(千歌)

と、すでに作ってあった「ブラメロ」の歌詞、曲を延長戦用に少しずつ編曲などしていた、自分たちの想いを理亜に、そして、この延長戦をみないけど、それでもこの地球に住むみんなに伝えるために・・・。そして、ダンス班・・・、

「果南、ここはこうあるべき!!イタリアで得たこの黒きまがまがしいダンスさばきをここに入れようぞ!!」(ヨハネ)

「善子、うん、いいかも!!あと、そこ、別に黒くまがまがしくないから!!」(果南)

「そこ、ツッコミ、いらない!!あと、善子、じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)

「ははは・・・」

と、ヨハネと果南が中心となってもとから作ってあったダンスにイタリアで得たダンス技術を融合させることでよりいいものに仕上げようとしていた。で、ダイヤ、ルビィといったメンバー2人が抜けてしまい花丸1人にしかいなかった衣装班であるが・・・、

「まる1人だけで大丈夫だったずら!!とても簡単だったずら!!」(花丸)

と、花丸1人で9人分の衣装の仕立て直しと事前に月から指示を受けていた1・2年の上着の加工を終わらせていた。で、実際のところ、事前に作られていた衣装についてはこれまで大事に保管されていたこともあり、そこまでほつれなどがなかったこと、たとえきつい練習などにより少し体形が変わったとしても大丈夫なように曜が少し余裕をもたせて作ってあったこと、さらに、月の指示した加工もボタンの付け替え程度で済んだこと、極めつけに、裁縫が得意はルビィの手伝いをしていくうちに花丸の裁縫の技術も磨かれていったこともあり、花丸1人で対応することができたのだ。そう考えると、花丸、かなりすごい少女、なのかもしれない・・・。

 そんな具合にたった1日であるが、延長戦の下準備も順調に進めることができ、その日の夜には月の加勢に来ていた、鞠莉、ルビィ、曜、ダイヤ、もそれぞれの班に合流、延長戦の下準備を終わらせて・・・、

「あっ、いいこと、思いついちゃった!!今夜、浦の星分校でみんなと、合宿、しちゃおう!!」(千歌)

と、千歌、突然の発案により、なぜか浦の星分校で、Aqoursメンバー9人、合宿をすることになってしまう。で、なんで千歌がこんなことを言いだしてしまったというと・・・、

「だって、μ'sもラブライブ!決勝の前日、学校で合宿していたんだもん!!」(千歌)

と、いうことです・・・。ただ、その裏では月が千歌のこの案を実現させるために急遽関係各所との調整を図っていた、というのは言うまでもない。月、お疲れ様・・・。

 そんなわけで、急遽、浦の星分校に集まったAqoursメンバー9人は最後の衣装合わせをしつつ最後の追い込みをかけていた。作曲作詞班の千歌、梨子、鞠莉は全体を通しての曲の最後の調整、ダンス班の曜、ヨハネ、果南もダンスの最後の手直しを、衣装班のルビィ、花丸、ダイヤは最後の衣装合わせによって補正が必要なところの手直しをしていた。

 そして、本番前日といった本日、すべての下準備が終わったAqoursメンバー9人は早朝から延長戦の関係者、月、よいつむトリオ、あげは、東子、シーナ、その全員を集めて、本番に向けて最初で最後の練習を、ここ、浦の星分校の一教室で行っていた。だが、「ブラメロ」の歌詞やダンスはすぐに覚えるわけではない・・・とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、それについては大丈夫?だったようだ。なぜなら、昨日の夜・・・、

「さぁ、一晩でこの曲(「ブラメロ」)の歌詞とダンス、覚えるよ!!」(果南)

と、鬼教官!!の果南指導のもと、たった一晩・・・というか、一夜漬け、でAqoursメンバー全員、「ブラメロ」の歌詞とダンスを覚えてしまった。なお、この果南のスパルタ教育に各メンバーはというと・・・、

「うぅ、頭からなにが出てきそうじゃない・・・」(ヨハネ)

「果南さん、もしかすると、変なスイッチがはいってしまった、そのような気がします・・・」(ダイヤ)

「ハハハ・・・」(曜)

と、いろんな意見が出てきているみたい・・・。

 といった具合に地獄の一夜漬けで「ブラメロ」の歌詞とダンスを覚えたAqoursメンバー、最初から全力で練習をしていた。ただ、この練習については、

(さぁ、覚えてtomorrow(明日)はついにラストライブで~す!!だからこそ、このpractice(練習)も全力でいくで~す!!そして、今を一生懸命enjoy(楽しむ)ので~す!!)(鞠莉)

(私、これで9人での練習も最後だと思うととても悲しいよ。でも、だからこそ、私、一生懸命頑張る!!だって、悔いを残したくないからね!!そして、最後の最後まで一生懸命楽しむ!!)(曜)

(これが(9人での)最後の練習ずら!!でも、悲しくないずら!!だって、この9人といつも一緒に練習することができる、そう思えるからずら!!だから、全力でいくずら!!そして、みんなと一緒に、今、このときを、楽しむずら!!)(花丸)

と、この練習が9人にとって最後の練習になるからこそ全力で練習する、昨晩の地獄の一夜漬けの疲れすらみせない、いや、それを含めて、今を楽しもう、一生懸命に楽しもう、そんな心意気をしていた。

 で、そのおかげか、基礎的な練習すら全力投球のAqoursメンバー、たった短時間で全体的な通し練習ができるようにまでになると、今度は、月、よいつむトリオ、あげはたち3人、を入れての本番を想定した通し練習に入る。月は早朝からの練習の最初からAqoursメンバーと一緒にいたこともあり全体的な曲の流れをすでに掴んでいた。そのため、

「ねぇ、鞠莉ちゃん、そこ、ちょっとはやいかも」

「善子ちゃん、そこ、ワンテンポ、遅れているよ!!あと、花丸ちゃん、善子ちゃんにつられている!!」

と、的確な指示を出す。これには月から指摘を受けたAqoursメンバーからも、

「わぉ、ミステイク!!みんな、ソーリーソーリー、で~す!!」(鞠莉)

「月、それはすまないことをした。次からは、瞬間移動、致します!!あと、善子じゃなくてヨハネ!!」(ヨハネ)

「これまたいけなかったずら!!ごめんずら!!」(花丸)

と、月の的確な指示に従う。こうして、月の的確な指示のもと、Aqoursメンバーは少しずつより良いものへと進化させていった。

 そして、ついに月が考え出したパフォーマンスのところに突き進む。

「はいっ、ここで脱いで!!」

この月の掛け声のもと、1・2年メンバーは上着を脱いだ。ただ、それと同時にフォーメーション、各メンバーの立ち位置も変わるため、動きながらの脱衣となる。が、このとき、

「きゃっ!!」

と、突然、あげはが声をあげる。と、同時に、

バシッ

という人と当たる音が聞こえてくると、すぐに

ドテッ

という人が倒れこむ音も聞こえてきた。さらには、

「いてっ!!」

と、ヨハネの悲痛な叫び声が聞こえてくる。これには、月、

「あげはちゃん、善子ちゃん、大丈夫?」

と言うと、あげはとヨハネ、2人のことを心配する。でも、2人から、

「うん、大丈夫!!で、ヨハネちゃんも大丈夫?」(あげは)

「ふんっ、そんなもの、このヨハネからすれば微々たるものだぞ!!それよりもちゃんと前を向いて動きなさい!!じゃないと、また同じこと、起きるからね!!」(ヨハネ)

「ヨハネちゃん、本当にごめんね!!」(あげは)

と、2人ともとくに怪我とかしていないみたいだった。これには、月、

(ふ~、よかった・・・)

と、一安心する。

 と、いった具合に、全力投球のAqoursメンバー9人とそのメンバーとタイミングをあわせようとするあげはたち3人によいつむトリオ、ここにいる全員で行っていた通し練習は滞りなく進んでいった。最初はある目的のためにライブに介入するあげはたち3人、その介入するタイミングがずれていたのだが、練習を進めるうちに少しずつタイミングが合うようになり、夕方になると、

「はいっ、あげはちゃんたち、入って!!」(月)

「はいっ!!」(あげは)

「そうそう、あげはちゃん、そのタイミング!!」(月)

「あげは、ばっちりじゃないか!!このヨハネ、あげはのこと、認めるぞ!!これぞヨハネの眷属なり!!」(ヨハネ)

「あっ、ヨハネちゃんから褒めららた!!とても嬉しい!!でも、眷属って・・・!?」(あげは)

「あげは、それは気にしないほうが・・・」(シーナ)

と、Aqoursとあげはたち3人のタイミングがばっちり合うようになっていった。

 こうして、明日早朝の本番に向けての練習は夜遅くまで浦の星分校で行われた。最後には・・・、

「うん、とてもばっちりだね!!」

と、プロデューサー役の月が太鼓判を押すくらいばっちりとしたものになった。あとはこの分校でみんな一緒に寝泊まりし、明日早朝、「ラグーン」屋上においての最終リハーサルと本番を残すのみとなった。が、この練習を通じて月はあることを考えていた。それは・・・。

(今日、曜ちゃんたち(Aqoursメンバー)9人は全力でもって練習していた。9人にとって最後の練習、それってとても悲しいことだよね。もう9人で練習できない、その寂しさがあってもいいと思うけど、だれもそんな感じがしない。たしかに、この9人での想い出、想い、キズナ、という宝物が心の中にある以上、ずっとつながっていけるけど、現実的にはもう練習することなんてできない、それってとても寂しい、と、思ってもおかしくない。けれど、今日の練習中、9人とも笑顔で練習していた、寂しさなんてまったく感じさせないくらいに・・・。この9人の(練習中の)想いってなんだったの・・・)

そう、今日の練習中、Aqoursメンバー9人はずっと笑顔だった。9人にとって、現実的に、最後の練習、なのに、そこからくる寂しさなんて感じさせない、それくらいの笑顔だった。これには少し戸惑いを感じてしまった月、ついには・・・、

(もしかして、これも「楽しむこと」からくるものなの!!それくらい「楽しむこと」というのはみんなが練習中ずっと笑顔になるくらい強い魔力を持ったものなの!!)

と、昨日の「ラグーン」の会議室で、木松悪斗、そして、沼田、に対して月が言った言葉、「楽しむこと」、その言葉が持つ膨大な力についてつい考えてしまう。なので、月、

(それくらい、「楽しむこと」、とてもすごいものなの!?本当にそうなの!?)

と、「楽しむこと」、それが持つ魔力に驚きと戸惑いを感じていた。

 一方、本番を明日早朝に控えたAqoursメンバーはというと・・・、

(ついに明日が、私たちの、スクールアイドルとしての、そして、Aqoursとしての、最後のライブになります!!でも、私、これが最後だと思っておりませんわ!!だって、私たちは心の中にある宝物を通じてずっとつながっている、ずっと一緒だってわかっていますから!!だからこそ、明日は、全力で、そして、悔いが残らない、とても楽しいライブ、見せてあげますわ!!)(ダイヤ)

(この9人で歌うのも明日で最後。私はこれまでこの9人で歌うための、いや、一緒に楽しむためにAqoursの曲を作ってきた。それも明日で最後。でも、私、寂しくない!!だって、ずっと心の中にある宝物を通じてずっとつながっていけるもの!!それに、これから私が作る曲だって9人で一緒に歌い続けてくれるはず、心の中の宝物を通じて!!だからこそ言える、明日、絶対に楽しいライブにしてみせる、って!!)(梨子)

(お姉ちゃん(ダイヤ)たち3年生とは最後のライブになっちゃったよ~。もし、これまでのルビィだったらきっとそれから逃げ出してしまったかも。だって、最後だと思ったらとてもいやな気分になるから・・・。でも、今のルビィは昔のルビィじゃない!!たとえお姉ちゃんと離れ離れになったとしても、心の中の宝物を通じてずっとつながっている、そのことに気づいたから、たとえ最後のライブになったとしても寂しくないもん!!ずっとずっとルビィたち9人は、Aqours、なんだ!!だからね、お姉ちゃん、そして、理亜ちゃん、このルビィの姿を見てください。たとえ最後のライブであっても寂しい顔なんてみせない、絶対に、みんな楽しい、そう思える、そんなライブにしてみせるから!!だからね、ルビィ、こう言うね、「みんな一緒に、ガンバルビィ」!!)(ルビィ)

と、Aqoursメンバー全員、明日の本番に向けて絶対に楽しいライブにしてみせる、そんな力強い心意気を感じさせていた。

 こうして、絶対に楽しいライブにしたいと意気込むAqoursメンバー、対して、その「楽しむこと」、その言葉が持つ魔力に驚きと戸惑いを感じている月、それぞれの想いを見せつつ、ついに夜は明けようとしていた・・・。

 

 そして、翌日早朝・・・。

「はいっ、最終リハーサル、おわりっ!!あとは本番を残すのみだよ!!それまで、各自、休憩!!」

と、「ラグーン」の屋上では月の掛け声がこだましていた。今は4時30分ごろ。あともう少しで延長戦本番を迎える。その本番となる時刻は今日の日の出の時間、5時40分ごろ。なので、それに向けて浦の星分校で仮眠をとったあと、午前3時ごろから延長戦のAqoursのライブ会場となる「ラグーン」屋上にて最終リハーサルを行ってきたのだ。そして、月の最終リハーサルの終了を告げる声とともに最終リハーサルは終わりを迎えた。あとは本番を残すのみとなった。これには、Aqoursメンバーみな、

(さぁ、私たち最後のライブ、絶対に後悔が残らないように、とても楽しいライブを目指して頑張るからね!!)(果南)

(やることはやった。あとは、千歌たちの想い、Aqoursみんなの想い、それを、理亜ちゃんに、そして、みんなに届けるだけ!!さあ、楽しいライブ目指して、やるぞ!!)(千歌)

(くくく、ついにヨハネの真の姿をみせるときがきたぞ!!迷えるリトルデーモン10号(理亜)を明るい未来へと導くため、このヨハネ、一肌脱ごうぞ!!)(ヨハネ)

と、延長戦本番に向けて、(今の)Aqours9人本当に最後のライブに向けて、絶対に楽しいライブにしよう、と、意気込んでいた。

 また、このライブで重要な役目を担っていたあげはたち3人も、

「さぁ、あとは本番を残すのみ!!絶対に頑張るぞ!!」(あげは)

「「「オー!!」」」(あげは、東子、シーナ)

と、気合をいれていた。

 そんななか、この延長戦、(Aqours側の)プロデューサーである月はというと・・・、

(最終リハーサルを見ている限り心配するものはなかった。いや、むしろ、絶対にすごいライブを見せてくれる、そう思えてしまうほどだった。やっぱり、Aqours、すごいよ・・・)

と、最終リハーサルでみせたAqoursのすごさに、実感、いや、感嘆、していた、とともに、

(でも、「楽しむこと」、それと、「部活動」、それってどんな関係性があるのかな?)

と、数日前に「ラグーン」の会議室で木松悪斗たちの前で言った言葉、「楽しむこと」、それと、月がつい「楽しむこと」と答えてしまった沼田の問い、「部活動(とはなにか)」、その関係性について悩んでいた。そのなかで、月、あることを思い出す。

(あっ、でも、Aqoursって、たしか、浦の星の部活の一つ、だったよね・・・。たしか・・・、浦の星女学院スクールアイドル部、って・・・)

そう、Aqoursはたしかにスクールアイドルではあるが、それと同時に浦の星の部活の1つでもあった。そして、2月の臨時理事会のあと、沼田が月に沼田の問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で1番大切なこととはなにか」、そのヒントを言っていた、「でも、静真にいる人たち全員は知らないが、浦の星の生徒たちからすれば、それが当たり前、と、いうよりも、誰もが気づかずに実践しているかもしれないよ」って。

 だが、そのヒントによってか、月、

「でも、たとえ浦の星の部活の1つであるAqoursと「楽しむこと」を結び付けたとしてもね、どう考えればいいのか・・・)

と、浦の星の部活の1つであるAqoursと沼田の問い「部活動とはなにか」、それに「楽しむこと」、その3つの関係性のことでずっと考えてしまっていた。いや、それだけでなく・・・、

(それに、部活といったらどこかの学校と勝負することになる。それって、勝つこと、が重要になるのでは?それって、「楽しむこと」、とは真逆のことになるのでは?)

と、勝負と「楽しむこと」の関係性すら悩んでしまう。

 と、いうわけで、月、本番がはじまるまで、

(「楽しむこと」、Aqours、部活、勝負、勝利・・・)

と、5つの言葉の関係性についてついつい考え込んでしまっていた。



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Moon Cradle 第7部後編 第21話

 そんななか、ついに本番がきてしまった。午後5時ごろ、

(うぅ、なんか頭のなかで5つの言葉がぐるぐる駆け巡っているよ・・・)

と、月、考え続けたのか、少し疲れた様子だった。だが、月は本番となればすぐに本気モードになれる子、なので、

(でも、ついに本番だ!!プロデューサー自ら頑張らないと!!)

と、月、気合を入れなおし、今は延長戦のプロデューサーとしてこの延長戦をやり抜くことを決意する。

 そして、月は自分のスマホをポケットから出す。月のスマホはとても高性能だった。が、これまではその高性能さを発揮する機会がなかった。それは、つまり、その高性能は無駄であった、といえるかもしれない。が、今回、この延長戦を撮るにあたり、月のスマホの高性能さがついに発揮することになるだろう。なぜなら、今回の延長戦、「私的」とはいえ、AqoursとSaint Snowの本気の勝負、となる。なら、相手であるSaint Snowに対して迫力あるライブをみせる必要がある。しかし、普通のスマホだとそれが伝わらないかもしれない。それならビデオカメラの方がいいのだが、月のスマホはそれに負けないくらいの映像を撮ることができる。いわば、月のスマホは、今、その高性能さを発揮できる機会を得たことになる。まわりから無駄だと思えるものも無駄だとはいえない、それを証明しているのかもしれない、月のスマホは・・・。

 とはいえ、月、自分のスマホをAqours側に向けると自分のスマホ画面を見る。その画面にはこの延長戦用にカスタマイズされた生配信用のアプリ、その画面が表示されていた。メインとなる画面には自分のスマホで撮っているものを、その画面の下に表示された小さな画面には別のスマホで撮っているものを表示されている。そして、そのアプリは、Aqours、よいつむトリオ、聖良、そして、Saint Snow側にいるある人物のスマホとリンクしていた。

 その月のスマホであるが、今、月のスマホの画面にはそのスマホのインカメラで撮っている自分の姿のほかに(小さい画面の方に)聖良のスマホで撮っているものが映っていた。その聖良側で動きがあった。最初はなにも映っていなかったのだが、聖良、自分のスマホを動かしたのか、突然、理亜の姿が映ってしまう。

 そして、これが合図となった。月、このとき、

(ついに始まった!!さぁ、ここ1番の大勝負、絶対に成功させてやる!!)

と、こちらも意気込みつくと、ハイテンションで、月、大声でこう叫んだ。

「それでは、これより、ラブライブ!決勝延長戦を行います!!」

このハイテンションな月のボイスに小さな画面に映る理亜は唖然とあるも、月、そんなことを気にせずに、さらにギアをあげてこう叫びだした。

「決勝に残った2組を紹介しましょう!!」

この月のハイテンションな叫び声に、よいつむトリオ、

「すごい」「のりのりじゃん」「負けそう・・・」

と、弱気になってしまう。とはいえ、よいつむトリオもこの延長戦を行うために裏で頑張っていたのだ。本来、「ラグーン」の屋上は地元アイドルのライブ会場として使われたこともあったが、早朝での利用はこれまでやったことがなかったので屋上の照明だけでAqoursのライブを行うのは心もとないものだった。いや、そればかりか、音響用の機材の用意などもしないといけなかった。それをよいつむトリオはあげはたちに音響用の機材の扱い方を教えながらやってきたのだ。なので、よいつむトリオも立派な延長戦のメンバー、なのである。だからね、よいつむトリオ、そんなに自分たちのことをひけめに捉えないでね・・・。

 とはいえ、月、そんなよいつむトリオの声とは関係なく、ついにテンションMAXになると、延長戦に出場する2組を紹介した。

「浦の星からあらわれた超新星!!初の決勝進出ながら実力はトップクラス!!スクールアイドル、Aqours!!」

この月の言葉とともにAqours9人が画面いっぱいに飛び出す!!

「「「「「「「「「オー!!!!!!!!」」」」」」」」」

・・・なんだけど、1つのスマホにAqoursメンバー9人全員を、それも超接近して自分たちを撮っているため、どうしてもぎゅうぎゅう詰めに見えてしまう・・・、それでも、この延長戦にかける想いはとても強いため、そんな状況でも元気いっぱいの表情をしていた、Aqoursメンバー9人とも・・・。

 そんなAqoursを見つつ、月は延長戦に出場するもう1組も紹介する。

「そして、もう1組は、北の大地が生んだスーパースター、Saint Snow!!」

この月の言葉のあと、聖良は理亜に向けてこんな言葉を送った。

「今から私たちだけのラブライブ!決勝を行います・・・」

この聖良の言葉のあと、聖良は理亜に延長戦用の衣装を差し出すと、もし決勝に進出していたら披露する曲を2人で決めていたことを言うと、その衣装を理亜に私、聖良、とても重要なことを理亜に話した。

「もし、Aqoursと競うことになったら、決勝のステージに立つことができたなら、あなたに伝えようとしていた(ことがあります)」

これには、理亜、

「お姉さま・・・」

と言っては聖良に抱き着いてしまった。このときの理亜はとても苦しんでいたのだ。あることが原因で理亜はとても苦しんでいた。なぜなら、ある理亜の行動により、クリスマスのときのSaint Aqours Snowの合同ライブのあと、理亜がたった1人で新しく作ったスクールアイドルユニット、その仲間たちが次々と理亜から離れていったのだ。そして、ついには、理亜、たった1人になってしまった。この一連の流れのなかで、理亜の心中にはイタリア旅行に行く前のルビィと同じ心情があったのかもしれない。いや、それ以上に、理亜は暗闇という深淵の奥底に沈みこんでいたのかもしれない。なぜなら、その原因となるものは理亜自身が引き起こしたものだったからだった。その負い目ゆえに理亜は新しく仲間になった人たちに対しあるときを境にある行動をとるようになる。が、その理亜の行動により次々と離れていく仲間たち。それにより、理亜はルビィ以上の暗闇に陥ってしまった。そして、そんな暗闇を抱えたまま、理亜は今日まで生きてきた・・・のだが、今、目の前にいる聖良の言葉を聞いて、理亜、その深淵なる闇から離れることができる、そう感じ取ったのかもしれない。なので、このときの理亜は聖良のことを、天使、だと思ったかもしれない。

 そんな聖良に抱き着く理亜のもとにとても大事な盟友の言葉が聞こえてきた。

「(ルビィと)一緒に進もう、理亜ちゃん!!」

そう、ルビィの声である。理亜にとってルビィはいろんな共通項を持つ、いや、盟友ともいえる存在だった。そして、ルビィは理亜より先に1人前の少女として成長を果たしていた。そんなルビィから理亜に対し意外な言葉が放たれた。

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

この言葉、いつもは理亜がルビィに、いや、Aqoursに言うセリフである。これまで、真面目に、一生懸命に、ラブライブ!を目指してきた理亜、そんな理亜だからこそ言える言葉、それを今度は逆にルビィが言ってきたのだ。これには、理亜、そして、聖良、も驚く。

 が、このルビィの言葉に、理亜、ついに覚悟を決めたようだった。理亜、これまで苦しい表情をしていたのだが、ルビィの言葉で、一転、いつもの、真面目で、なにごとにも真面目で、どんあことでも、真剣に、本気で、全力をもって取り組む、そんな表情に変わった。と、同時に、画面越しに見えるAqoursに向かって、理亜、聖良、2人そろって宣戦布告した。

「歌いましょう!!」(聖良)

「うん!!」(理亜)

「2人で、このステージで、Aqoursと全力で!!」(聖良)

 そして、ついに延長戦の火ぶたが切って・・・、

「あっ、ちょっとすいません。そのまえに、私たちの準備、してきますから、ちょっとまってください!!」(聖良)

ガクッ

この聖良の言葉に、Aqours、月、よいつむトリオ、ともにこけてしまう。たしかにそうである。理亜に黙って聖良はある人物とともに延長戦の準備をしてきたのだ。なので、理亜、このとき、まだ延長戦の準備なんてしなかったのだ。そんなわけで、Aqoursはすでに「ブラメロ」用の衣装を着ているのだが、Saint Snow側は、聖良は学校の制服姿、理亜にいたっては日課である朝のランニングをするためのジャージ姿だった。それに、ラブライブ!決勝用に用意していた曲とはいえ、聖良としてもその曲の歌詞やダンスを理亜の一緒に再確認することも必要だった。そういうことなので、Saint Snow側としてはAqoursと全力をかけたライブを繰り広げるための準備の時間が必要だった。で、そのことに気づいた延長戦の(Aqours側の)プロデューサーである月も、

「それはたしかに(理亜ちゃんにとって)突然の出来事だからね。全力をかけたステージを繰り広げるための準備は必要だね」

ということで、そこにいる全員の了解を得てSaint Snow側の準備のための時間を設けることにした。とはいっても、この時間については、月、この延長戦のプログラムを組み立てる段階ですでに組み込まれていたので、プログラムの進行についてはそこまで影響はなかった。

 ではあるが、Saint Snow側ではある問題が残っていた。それは・・・。

「ところで、お姉さま、私たち、Saint Snowのステージ(ライブ)を撮る方はいるのですか?」

と、理亜、聖良に尋ねる。たしかにそうである。Saint Snow側は今のところ、聖良と理亜の2人しかこの場にはいなかった。その2人は、このあと、ライブを行うので、この戦いはいわば、リモートでの戦い、となる。なので、Aqours、Saint Snow、両方ともライブの様子を撮影するスタッフが必要となる。でAqours側には月やよいつむトリオがいる。でも、Saint Snow側は・・・、そこを理亜は指摘したのだった。

 が、聖良はその点についてすでに手を打っていた。聖良、理亜に対し、

「それなら心配ありません。すでに助っ人は呼んでおります」

と言うと、その助っ人がいる方を向いて理亜に対してこう言った。

「○○さん、出てきてください!!」

その理亜の言葉のあと、物陰からある少女が出てきた。その少女、聖良と理亜が通っている学校の制服を着ていた。で、その少女は聖良と理亜に対しこう告げた。

「聖良先輩、呼んでいただきありがとうございます。そして、理亜さん、お久しぶりです」

で、この少女を見た瞬間、理亜、びっくりしたのか、ただただ唖然となってしまい、その拍子に、

「あっ、あなた・・・」

と、言葉に窮してしまった。その少女であるが、聖良にとって1番の親友であり、聖良が悩んでいるときや困っているときにはいつも聖良を助けてくれていた、それでいて、Saint Snowの活動を、2人の活躍を、裏から支えていた。そのため、まわりのみんなから、Saint Snow第3のメンバー、とも言われていた、その少女は・・・。そして、その少女も理亜と同じく自分の心に深き深淵なる闇を持つ者だった。この少女と理亜との関係とは・・・。それはまた別の機会に話すことにしよう。

 

 そんなわけで、Saint Snowがライブの準備をしているあいだ、Aqoursと月、よいつむトリオ、それに、あげはたち3人は最後の打ち合わせをしていた・・・のだが、このとき、月、

「で、なんでここに沼田のじっちゃんと(「ラグーン」の運営会社の)会長がいるわけ!?」

と、ここにいなくてもいい客、沼田とこの「ラグーン」の運営会社の会長がいることにツッコミを入れる。だって、この2人、月、ここに呼んでいたわけではなかったのだ。けれど、なぜかここに2人は来てしまっていたのである。

 で、この月のツッコミに対し、運営会社の会長はというと・・・、

「オホホホ・・・」

と、ただ笑っているだけ。逆に沼田はというと・・・、

「まぁ、別に気にせんでもよい!!来年度からの静真の生徒になる者たちの晴れの舞台をみん来ただけだからな!!そんなに気にするな!!」

と、月に自分たちのことなんて気にしないように言う。これには、月、

「はぁ、そうですか・・・」

と、半場諦めた表情で言った。

 そんなときだった。下から、

ボコ ベタ ガチャン ガチャガチャ

と、なにか物騒な物音が聞こえてくると、つづけて、

「ギャフッン!!」「あれ~~~!!」「覚えていろよ!!」

と、つい最近聞いたことがあるような人たちの声が聞こえてきた。が、この捨て台詞みたいな声と一緒にその物騒な物音はピタリとやんだ。これには、月、

(ところで下でなにが起きていたんだ・・・)

と、少し気になるも、すぐに、

(でも、もうすぐ延長戦のステージが始まる。そのためにも今はこのライブのことだけ考えないと!!)

と、延長戦のことだけを考えるようにした。

 ただ、このときの沼田、この物騒な物音を聞いてあることを考えていた。

(ふんっ!!あんだけ来るな、って、言っていたのに、ここに来たなんて、あとできつい罰を与えないとな!!)

どうやら、沼田、下から聞こえてきた物騒な物音となにか関係性があるみたいのようだ。だが、それでも、沼田、

(まぁ、それは後回しにして・・・)

と、それについては後回しにしつつ月に対してある思いを投げかけていた。

(さて、月生徒会長、AqoursとSaint Snowの真剣勝負、おぬしならどうみるかな?スクールアイドル部とスクールアイドル部、同じ部活の真剣勝負、本気のバトル、そのなかで月生徒会長は知ることができるかな、「部活動」と「楽しむこと」、その関係性、そして、そのなかで部活動にとってとても大切なものとはなにか、をね・・・)



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Moon Cradle 第7部後編 第22話

 そして、聖良と理亜が延長戦の準備を始めてから5分後・・・、

ドゥドゥ ドゥルルルールル ドゥドゥ ドゥルルールル

と、月のスマホから突然音が流れてくる。これには、月、

(ついに始まった・・・、Saint Snowの全力を賭けた本気のステージが・・・)

と、自分のスマホ画面に映る2人の・・・聖良と理亜の姿を見て、ついにSaint Snowの本気のライブが始まったことを実感する。そう、ついに、Saint SnowとAqours、最初で最後の・・・全力で・・・本気の・・・真剣勝負、が始まったのだ。その先手はチャレンジャーであるSaint Snow。2人はあのラブライブ!冬季大会北海道最終予選以来のライブであると同時に、Aqoursとは違い、このライブ・・・延長戦の練習なんてしてこなかった。

 が、それすら感じさせないオーラが2人から漂っていた。なぜなら・・・、

(今さっきまで悲しんでいた、苦しんでいた、理亜ちゃん、なのに、ライブになったとたん、まるで、別人の・・・、いや、本気で、Aqoursとやりあう、そんな、真剣な目つきになった・・・)(月)

そう、延長戦が始まる前、いや、延長戦の(Saint Snow側の)ステージとなる函館旧公会堂にて姉聖良と出会うまで、自分のなかにあった深淵なる闇に落ちてしまったためにとても悲しい苦しい表情をみせていた理亜、それが、この延長戦で、姉聖良と再びSaint Snowとしてライブを始めたとたん、まるで別人、いや、これこそ、なんにでも真面目でいつも全力でもって対応してしまう、本気と書いてマジと読む、そういえるくらいのスクールアイドル、鹿角理亜、へと変貌を遂げていたのだ。むろん、月もSaint Snowのライブについては映像を通じてどんなライブを行うのか知っていたが、それを、今、このとき、(スマホの映像を通してだが)生で実感していたのだ。そのため、月、

(こ、これが、Saint Snowの本気のライブ・・・。ラブライブ!夏季大会第8位、の実力は伊達ではない・・・)

と、Saint Snowのすごさを感じつつも、

(でも、このライブ、今まで見てきたSaint Snowのライブ以上のものを感じられる・・・、いや、今までのなかで1番すごい、それしか言葉が浮かばないよ・・・)

と、圧巻のライブに茫然となるしかなかった。さらに、

(こ、これって、もしかして、自分たちが認めた、そして、今や日本一のスクールアイドルとなった、永遠のライバル、Aqours、そのグループと本気でやりやろうとしている、いや、それすら乗り越えようとしている、そんな本気さがみえてしまう・・・)

と、月、Saint Snowの今の姿にある種の恐ろしさを感じていた。

 だが、月はこれとは別のあるものを感じていた。

(でも、そんな本気でAqoursとバトルしようとしている、そんなSaint Snow・・・なんだけど、なんだろう、そんなもの以上の別のあるものをあの2人から感じ取ることができる・・・。それってなんなの・・・)

月は、このとき、戸惑っていた、Saint Snowの2人は、永遠のライバル、Aqoursに対して、必死で、本気で、戦いに挑んでいた、が、そこから感じられるものは、Aqoursを乗り越えようとする、Aqoursに勝とうとする、本気さ・・・、とは別の、それも、その本気さすらかすれてしまいそうな、そんな別のあるものがある・・・、と、それがなになのか、と・・・。

 が、そんな月でああったが、たったひとつだけSaint Snowの2人から見えたものがあった。それは・・・、

(でも、この僕でもわかる・・・、Saint Snowの2人、とも、笑っている・・・、心の底から笑っている・・・、そんな気がする・・・)

そう、Saint Snowの2人、聖良と理亜、は、心の底から笑っていたのだ。これについて、月、

(2人とも心の底から笑っている・・・。たしか、これまで叶わなかったAqoursとの直接対決、それがこの場で実現した、理亜ちゃんの夢が叶った、ただそれだけなのに、なんで、なんで、笑っているの!?)

と、少し不思議そうに思うと、月、それについて少し考えてしまう。

(Aqoursとの直接対決が叶った、自分たちの願いが成就しと、そのために笑っている・・・というのはありかも。だって、Saint Snowの2人にとって、そして、理亜ちゃんにとって、Aqoursとの直接対決、ラブライブ!の優勝、という夢を叶えることができるのだから。でも、それ以上に、あの2人、なにか別のある想いを持っている、そんな気がする・・・)

Saint Snowの2人にとっては、永遠のライバル、Aqours、との念願の舞台、ラブライブ!決勝、そこでの直接対決、そして、ラブライブ!優勝、それが夢であった。それが私的とはいえ、その夢がついに叶ったのである、が、それ以上に、この2人を突き動かしているものがある、そう月は思ったのである。

 そんな月であったが、曲はついにサビへとはいる。

トゥートゥ トゥートゥ トゥトゥトゥ トゥートゥ トゥトゥ トゥートゥ トゥトゥ

サビに入った瞬間、2人の表情、

ピカーン

と、まるで弾けたような笑顔になっていた、むろん、その笑顔の陰でライブに対する本気さをにじませながら・・・。で、この弾けるようなSaint Snowの2人の笑顔を見た瞬間、(す、すご~い!!こ、これって、ルビィが思っている以上のものだよ!!やっぱり、理亜ちゃん、すごいよ・・・)

と、ルビィが感心するくらい、自信に満ちた、本気の、それでいて、心の底から笑っている、そんなSaint Snowの姿に、Aqours、よいつむトリオ、そして、あげはたち3人は見とれていた。

 そして、それは月にも・・・。

(えっ、今、僕、心、ときめいちゃったよ・・・。サビに入った瞬間、なにか2人からあるものを感じ取った気がする・・・)

まるで、月の目の網膜に永遠に残る、それくらいの衝撃を感じてしまった、月、ふと、あることを思い出す。

(たしか、笑顔って、人のある想いを受けて起きる表情、だよね・・・。たしか、みているものが面白かったり・・・)

そう、笑顔とは、人がみせる表情の1つである。それはその人にとってある想いを受けて起きるものである。その1つは自分がみているもの、それが面白かったりすると笑ってしまう、そのときに起きる。が、ほかにも、いや、笑顔になるには必ずこんな想いから欲することが多い、それを月は必死に思い出そうとする。

(え~と、え~と、たしか・・・、あっ!!)

 月、ついにあることに気づく、それは、月の進化の目覚めを指し示すかのように・・・。

(あっ、たしか、笑顔って、自分にとって楽しい想いを持つことで起きるもの、だよね!!なら、Saint Snowの2人は、今、何かを楽しんでいる!!だからこそ、今、2人はまんべんの笑顔、なんだ・・・9

そう、月はついに気づいた、Saint Snowの2人はこのライブにてなにかを楽しんでいる、そのことを。そして、月、すぐに、それがなんなのか、気づいてしまう。

(Saint Snowの2人からはまんべんの笑顔にみえるけど、その裏では、この勝負、バトル、それに対する本気さがみえてくる・・・。Aqoursとの真剣勝負、だからこそ、全力で、本気で、戦いに挑んでいる。そう考えると、でてくる答えは1つだけ、

 

聖良さん、理亜ちゃん、2人とも・・・

 

この戦いを楽しんでいる。心の底からこの戦いを楽しんでいる・・・、

 

そんな気がする・・・」

そう、月の思った通りだった。聖良、理亜、ともにこのバトルを心の底から楽しんでいたのである。2人とも、このAqoursとの真剣勝負、それ自体を楽しんでいた。2人にとって永遠のライバルであるAqoursと最初で最後の真剣勝負をしたい、その夢を叶える、そして、Aqoursを超える、その想いでこの延長戦に臨んでいた。それは、千歌たちと初めて会ったときは聖良すらその実力を認めていない、本当にひよっこで、いや、「0(ゼロ)」としかみえなかった、そんなAqours、それがパーフェクトナインになったことで夏季大会では東海最終予選までに上り詰めることができるくらいに成長、さらに、浦の星の統廃合などの苦難を乗り越えつつも一歩ずつ成長し、そして、聖良や理亜が叶えることができなかった、ラブライブ!優勝、すら成し遂げることができるくらいに大きくなったのである。そんな、最初のころには予想だにしないくらい成長してしまった、大きな巨人、Aqoursに、ラブライブ!決勝の場で、全力をもって、本気で、勝負がしたい、そんな気持ちが千歌たちの成長をライバルとしてみていた、そんな夢が聖良と理亜の2人にはあった。が、とうのSaint Snowであるが、理亜の失敗によりその夢は潰えてしまった。もうその夢を叶えることができない、2人はそう思ってしまった、特に理亜は・・・。が、Aqours、そして、理亜のとても大切な人であり、そして、姉である、その聖良によって、Aqoursとの決戦の場所、夢を叶える場所、ラブライブ!決勝延長戦、それを得ることができた。そうなれば、やることは1つだけ、それに応えるためにも自分たちが持つものすべてを賭けてAqoursに挑みたい、このときの聖良と理亜はそう思っていたのかもしれない。が、ただ、Aqoursに勝ちたい、それだけではきっと2人はAqoursに負けてしまうだろう。だって、Aqoursはその気持ち以上のものを、Saint Snow以上のあるものを自分たちは持っている、そんな自信を持っているから。ただ勝つことだけ、ただ本気で真剣にライブをこなす、これまでの2人のステージではAqoursに負けてしまう、それは冬季大会の結果でわかっていた。ならば、そのAqoursがもっているもの、そのものが自分たちには必要、いや、Aqours以上のものを見せる、そう思った、聖良と理亜、2人がたどり着いた答え、それは・・・

 

「この戦いそのものを楽しむ、Aqoursとの、全力の、本気の、この勝負を心の底から楽しむ、そして、Aqoursがもつ、「楽しむこと」、「楽しむ心」、それ以上のものをAqoursに見せてやる!!」

 

だったのかもしれない。いや、Aqoursとの直接対決という夢を叶えたことで2人はそれに対する嬉しさを、

 

「この戦いを楽しむ、心の底からこの戦いを楽しむ」

 

そんな想いへと昇華させていったのかもしれない・・・。その結果が2人のまんべんの笑顔に現れたのかもしれない。

 そして、2人の想いに気づいた、月、このとき、

「この戦いを心の底から楽しんでいる・・・、そんな2人を見ていると・・・、こちらもなんかワクワクしてきちゃうよ・・・」

と、つい思ってしまった。そのためか、月、聖良と理亜が奏でるリズムに合わせて自分もリズムをとってしまう。いや、月だけじゃない。月の近くにいるあげはたち、よいつむトリオ、そして、2人の対戦相手である、あのAqoursメンバー、すら、なんかワクワクしながらリズムをとってしまっていた。それは2人が、この戦いを、このライブを、心の底から楽しんでいる、そのことをここにいるみんなに伝播させていった、そんな瞬間だったのかもしれない。

 とはいえ、こうして、Saint Snowは、このステージを通じて、日本一となったAqoursと同等、いや、それ以上のスクールアイドル、そんなユニットへと昇華していったのである・・・。

 

 そして・・・、

ドゥドゥドゥ ドゥドゥドゥ ドゥドゥ ル

と、いう音とともに、Saint Snowの、聖良と理亜の、全力の、本気の、心の底からこの勝負を楽しんでいる、それがここにいるものすべてに伝播していった、そんなライブが終わった。この瞬間、月、

(うわ~、これがSaint Snowの本気のライブなんだ~!!僕がこれまで見てきたなかで1番だった、いや、それ以上のもの、だったと思うよ・・・。特に、本気で、真剣に、全力を出し切っているにも関わらず、この戦いを心の底から楽しんでいる、その姿は本当にすごかったよ・・・)

と、あのAqoursのローマ・スペイン広場でのライブすら超えるくらいのSaint Snowのライブであった、そう思えてしまう、そんな気持ちになっていた。

 そして、ついにAqoursの番がやってきた。Saint Snowが歌い終わったころにはすでにいつものライブ前に行う名乗り、それを行うための円陣を組んでいた。そのなかでは・・・、

「うぅ、とても感動的な儀式(ライブ)だったぞ!!このヨハネ、とても感動した!!」(ヨハネ)

「たしかに善子ちゃんの言う通りずら!!こんなステージ、どんな物語にも負けないくらいのものだったずら!!」(花丸)

「私もそう思う!!これこそ、スクールアイドルのステージ、だって言えるね!!」(曜)

「「Believe again」・・・、なんかこの曲を聞いて嫉妬しちゃうのって私だけかしら・・・」(梨子)

「でも、ルビィ、これだけは言えるよ、理亜ちゃんたちにとってこれまでのなかで1番の、いや、歴代のなかで最高のステージ、そして、理亜ちゃんが大きく羽ばたいた、そんなステージ、だって!!」(ルビィ)

Aqoursメンバーそれぞれ、Saint Snowの本気の、いや、今までで、いや、どのスクールアイドルのなかでも最高のライブ、ステージを見てか、口々にSaint Snowのすごさを語りだす。

 さらに、それを受けてか、このライブ、ステージをもってスクールアイドルを卒業する3年生からも、

「なんか聖良たちを見て、マリー、こうthink(考えて)しまいま~す!!あぁ、楽しいな、スクールアイドルは・・・」(鞠莉)

「ですが、これが最後ですわ!!」(ダイヤ)

「だから、最後に伝えよう、私たちの想いを!!」(果南)

と、このラストステージにかける意気込みを口々にした。

 最後に、Aqoursのリーダーであり、今のAqoursの発起人である、この人が、

「これが本当に最後の・・・、私たち9人としての・・・、ラストステージ!!だからね、みんな、悔いが残らないよう、一生懸命に・・・、本気で・・・、全力で・・・、あの聖良さん、理亜ちゃんに負けないくらいの・・・、楽しく・・・、これこそAqoursだ、そう思えるくらいの、史上最大の・・・、最高に楽しく・・・、最高に元気いっぱいの・・・、そんなステージに、みんな、していこう!!」

そう、千歌がAqoursメンバー9人の想いをまとめて大きな声で叫んだ。

 そして、ついに、Aqoursメンバー、9人で、最後の、最高の、あの名乗りをあげた。

 

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」

「Aqours、サンシャイン!!」

 

 そんなAqours9人の、この名乗りにかけるAqoursメンバー9人の、熱意、を見てか、月、

(あんな(Saint Snowの)ライブを見せられても動じない、それどころか、逆に燃えている!!これこそ、曜ちゃんたち、Aqours、なんだ!!)

と、Aqoursの真の姿に驚きつつも、

(でも、これはただの前振りでしかない。曜ちゃんたちAqoursはこの(延長戦の)ライブ、ステージにむけてこれまで一生懸命頑張ってきた!!このメンバーとしては本当に最後のライブ、ステージ、いや、永遠のライバル、Saint Snowとの最初で最後の直接対決、なんだ!!だからこそ、最後まで悔いが残らないように曜ちゃんたちAqoursは練習してきた。そして、あとは本番を残すのみ!!この本番で曜ちゃんたちAqoursは、本気で、全力で、史上最強のパフォーマンスするはず!!だからこそ、僕の責任は重大だといえる。ライブの撮影は僕が行う。少しの失敗すら許されない・・・。いや、この延長戦、この僕がプロデュースしているんだ!!絶対に悔いを残さない、AqoursとSaint Snow、どっちとも想い出が残る、最強で最高のライブ、ステージに、してやる!!)

と、自分にとって、いや、史上最高のライブ、ステージにしてやる、そんな意気込みをみせていた。

 そんな月に対し、沼田、

「月生徒会長、少しは落ち着いてはどうかな?あまり勢い込んでしまうと失敗するもんじゃよ・・・」

と、つい勢い込んでしまっていた月に冷静になるように注意すると、月、

「あっ、すいません、沼田のじっちゃん・・・」

と、少し落ち着きを取り戻したのか、かしこまるように沼田に謝る。どうやら、月、Saint Snowのすごすぎるライブ、ステージを見てか、ちょっと興奮しすぎたみたいだった。

 そんなわけで、

(ふ~、は~、冷静に・・・、冷静に・・・)

と、高ぶる気持ちを少しクールダウンした月。そんな落ち着きを取り戻した月に対し、沼田、ある忠告をした。

「月生徒会長よ、このAqoursのライブ、ステージをよく見ておくんだぞ!!今まで見ていたSaint Snowのライブ、ステージ、そして、今から行うAqoursのライブ、ステージ、この2つから、これまで、このわし、沼田が言ってきた問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」、その答えを導くことができるはずだ!!」

これには、月、

(えっ、Saint SnowとAqoursのライブから沼田のじっちゃんの問いの答えがわかるわけ!!)

と、一瞬びっくりしてしまう。

 が、そんな月に対し、沼田、その問いの答えのヒントなるものを教える。

「わしの言葉に驚いている、そんな月生徒会長にわしからあるヒントをあげよう。

 

「スクールアイドルとは高校生なら誰でもなれるアイドルのことであり、それは部活と同じといえる。そして、高校を含めて学校というのはこれからの人生にむけていろんなことを学んでいく場所、自分の心を成長させていく場所」、

 

とな!!」

このヒントに、月、

「えっ、それって・・・」

と、唖然となってしまう。そのためか、月、

(えっ、それって、この延長戦とどういう関係が・・・)

と、一瞬悩んでしまう。

 が、そのとき、Aqoursメンバーの円陣の中央に紫色の羽根が落ちてきた。それは、Saint Snowの理亜のある決意をした、そんな想いがこもった羽根だった。その羽根がAqoursの円陣中央に落ちてくる、と同時にAqoursのもう一つのシンボルともいえる青い羽へと生まれかわった。

 そして、これが合図となって。月、このとき、

(あっ、ついに始まる、Aqoursのステージが、本当に今の9人としてのラストステージが!!沼田のじっちゃんが言ったヒントについてはちょっと気にしつつ、まずはこのライブ、ステージ、絶対に成功させてみせる!!さぁ、頑張るぞ!!)

と、気を入れなおして自分が今やるべきことをする、そのことを決めた。そう、この合図こそ、Aqours、本当に最後のライブ、ステージ、そのスタートを指し示すものとなった!!



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Moon Cradle 第7部後編 第23話

 そして、ついに、Aqours、ラストライブ・ステージ、が始まった。曲はもちろん、「Brightest Melody」!!

トゥートゥートゥ トゥトゥトゥ トゥトゥ トゥトゥー トゥートゥ トゥトゥ

曲が始まったとたん、

(さぁ、私たちの最後のステージが始まりますわ!!)(ダイヤ)

(マリーたちにとって、最高で、最後のステージ、みせてあげるので~す!!!)(鞠莉)

(鞠莉の言う通り!!私たち、初代Aqoursにとって本当に最後のステージ、だもんね!!だからね、鞠莉、ダイヤ、悔いが残らないよう、とても楽しいステージにしようね!!)(果南)

と、最後のステージ、ということで、最初から全力でもってこのライブ・ステージを楽しもうとしている3年生の3人、さらには・・・、

(たとえ最後のステージだとしても寂しくないずら!!だって、これまでやってきたこと、すべてが宝物になって心の中にずっとあるずら!!その宝物を通じてずっとつながっていけるずら!!だから、前に進むずら!!)(花丸)

(これまでやってきたものすべてが、今、トレジャー(宝物)になった!!もう寂しくなんてない!!だからこそ、このヨハネ、ここに誓うぞ、絶対に楽しい、想い出に残る、そんなステージにするぞ!!)(ヨハネ)

(理亜ちゃんたちはあんなにすごいステージをみせてくれた!!なら、ルビィたいtもそれに応えないとね!!ルビィ、Aqoursとしてやってきたこと、それが大事な宝物となっていったこと、その宝物を通じてずっとみんなとつながっていくことをあのイタリアの旅を通じて知ったよ!!そのことを理亜ちゃんにちゃんと伝えないと!!そのためにも、ルビィ、絶対に楽しい、これまでの中で一番の、いや、史上最高のステージにするつもりだよ!!だからね、ルビィ、一生懸命、ガンバルビィ、しちゃうからね!!)(ルビィ)

と、1年は「ブラメモ」を通じて、理亜に、みんなに伝えたいこと、今まで積み重ねたものその輝きをもって未来へと進もうとすること、それを体いっぱいに表現したい、楽しみながら伝えたい、そんな気持ちになっていった。

 そして、2年も・・・、

(これは千歌ちゃんと私がこのときのために作った曲、そして、Aqours9人としての本当に最後の曲。けれど、この最後のステージもきっととても大事な輝きとなって宝物として私たちの心のなかでしっかり残ってくれるはず!!だからこそ言える、私、最後の最後まで一生懸命輝きたい!!自分と千歌ちゃんが一生懸命に作ったこの曲を最後の最後まで楽しんでいきたい!!)(梨子)

(私はこの「ブラメモ」の衣装を作ったとき、対Saint Snow用に作ったはずだった。けれど、今、それが、Saint Snowとの本気の勝負以上に、自分たちの旅立ちを指し示す、そんな衣装になった!!それもこれも月ちゃんのおかげ!!だから言える、私たちはこの曲をもってAqours9人の活動を終える。けれど、それは終わりじゃない!!始まりなんだ!!今までの想い、想い出、キズナ、そんな宝物の輝きでもって新しい道へと踏み出す!!そのためにも、この衣装とともに絶対にこのステージをめいいっぱい楽しんでやる!!)(曜)

(最初、Aqoursは私1人だけだった・・・。たった1人から、「0(ゼロ)」からはじめた。それが今は、曜ちゃん、梨子ちゃん、ルビィちゃん、花丸ちゃん、善子ちゃん、果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、そして、私、9人になった。最初は私はμ'sの輝きを追い求めようとしていた。けれど、今は、私たちだけの、とても大きな宝物という輝きを得ることができた!!それもこれも、このメンバー9人のおかげ!!ううん、この千歌に関わったみんなのおかげ!!だからね、みんな、ありがとう!!私の夢を叶えてくれてありがとう!!そして、今、私たちはみんなから得た宝物の輝きをもって先に進もうとしている。ならば、今、できることは1つだけ!!最後の最後まで、この9人でやってきたことすべてを、このステージに賭ける!!いや、最後の最後まであがいてみせる、楽しんでやる、この9人こそ、私にとって最高のパートナーだって証明させてやるんだって!!)(千歌)

と、自分の想いをこのライブ、ステージに全力をぶつけていた。

 そんなこともあり、

(えっ、Aqoursも最初から、全力、フルスピードを出すわけ!!)

と、月が驚くほど、あのSaint Snowに負けないくらいのド迫力のステージをAqoursはみせていた。で、あるが、月、

(でも、たしかに全力は全力だけど、Aqoursのみんなの表情、なんか笑っているようにみえる・・・。Saint Snowみたいに本気でとても真剣にパフォーマンスをしている。けれど、それ以上に、この戦いを心の底から楽しんでいる・・・、みんな、笑っている・・・)

と、AqoursメンバーもSaint Snowと同じ、本気で真剣になりつつも笑顔でもってこの戦いを心の底から楽しんでいることにびっくりしていた。そのためか、月、あることで悩んでしまう。

(Saint SnowもAqoursも全力投球で本気の真剣勝負・・・、なのに、なんで、この戦いを楽しんでいるの?勝負事ってそんなに楽しいものなの?本当にそうなの?)

そう、月にとってみても、あの木松悪斗と同じ、「勝負というのは勝ちにいくものだ。そのためには勝つために真面目にやることが大切」、だと思っていた。が、今、Saint SnowとAqours、その真剣勝負、そんなときなのに、2組とも笑っている、戦いを心の底から楽しんでいる、そんな感じがしていた。これには、月、これまで経験したことがないためか、とても困惑していた。そんなわけで、月、

(戦いを楽しむ・・・、心の底から楽しんでいる・・・、それっていったいどうなの!?)

と、なにがなんだかわからなくなってしまった。

 が、そんなときだった。

(月ちゃん・・・、月ちゃん・・・)

と、月の心の中にある少女の声が響き渡る。この声に、月、

(あっ、この声って、ルビィちゃん!!)

と、すぐに反応する。すると、月がルビィとよんでいる声の主はすぐに反応した

(うん、そうだよ!!ルビィだよ!!)

なんと、月の心の中に響き渡っていた声の主はルビィだった!!

 そのルビィであるが、月に対しこんなことを言いだしてきた。

(月ちゃん、月ちゃんのおかげで、ルビィ、今、とても楽しいよ!!)

これには、月、

(えっ、今、楽しいの!?今、Saint Snowとの真剣勝負、その真っ最中、だよね?)

と、びっくり!!しかし、ルビィは月に今の想いを口にした。

(たしかに今は理亜ちゃんたちとの真剣勝負のときだよ!!でもね、それ以上に、今、このとき、お姉ちゃんたちと、Aqoursのみんなと一緒に最後のライブを行っている、それ自体とても楽しく感じちゃっているんだよ!!いや、それ以上に、これまでルビィたちが積み上げてきたこと、その想い出、想い、キズナ、その宝物でもって、ルビィたちと同じく、聖良さんと一緒にこれまで積み上げたもの、その宝物を持つ理亜ちゃんと本気の全力の勝負ができること、それ自体、とても楽しく感じられているんだ!!)

 このルビィの想いに、月、

(えっ、なんで楽しく感じられちゃうの?)

と、ルビィにその想いについて問いかけてみる。すると、ルビィ、ひょんなことを言ってしまう。

(えっ、だって、ルビィたちと理亜ちゃんたち、それぞれ自分たちの実力を認め合った仲、だもん!!そんなお互いを認め合った2組が、今、ここで、真剣勝負をしている、これまで積み上げてきたもの、その宝物、そのすべてを賭けて、今、ここで、全力をもって勝負をしている、そんなもの、絶対に楽しいに間違いないよ!!)

 これには、月、

(えっ、互いを認め合った仲・・・?そんでもってその2組が、今、この場で真剣勝負をしている・・・、って、えっ、えっ・・・?)

と、思考が停止してしまう。

 突然の思考停止に陥った月、なのだが、ルビィ、そんな月に対しあることについてお礼を言ってしまう。

(月ちゃん、ルビィ、お姉ちゃんたちが卒業して間もないころ、お姉ちゃんたちは卒業した、またゼロに戻った、最初に戻った、そう錯覚してしまったんだよ!!そのために部活動報告会でのライブはぼろぼろ、不安・心配という深き海・沼に陥っちゃった!!でもね、月ちゃんのおかげでルビィの心の中にある宝物、その輝き、それを見つけることができたんだよ!!そして、今、その宝物の輝きでもって盟友である理亜ちゃんと本気の勝負をすることができる、そんな意味でも月ちゃんに感謝しているんだよ!!ありがとう、月ちゃん!!)

そう、ルビィを含めた(新生)Aqours1・2年はダイヤたち3年が卒業したことでその3年生がいないという喪失感ゆえに不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった。が、イタリア旅行での月や鞠莉・果南の活躍でルビィたちはこれまで9人で築き上げてきた想い出、想い、キズナ、その宝物の存在、そして、その宝物はずっと心の中にあり、それを通じてずっとつながっている、そのことに気づいたのである。そして、今、その宝物の輝きによって、AqoursとSaint Snow、その2組が全力をもって戦っている、そのことができるようになったのも、月がルビィを生まれ変わらせた、その結果によるもの、だった。で、これには、月、

(いや~、それほどでも・・・)

と、ちょっと照れてしまう。

 が、ルビィの話は続く。

(でね、ルビィ、こう想うんだ・・・、こんな一生に一度しか味わえないようなこんな戦い、それ自体、楽しまきゃ損、だって!!)

これには、月、

(えっ、楽しむ・・・)

と、目が点になるも、ルビィ、そんな月に対して畳みかけるように話す。

(だって、ルビィたちがこれまでやってきたこと、楽しんだこと、嬉しかったこと、学んできたもの、ルビィたちの成長した心、いや、それだけじゃない、それらによって生まれたこれまでルビィたちが築いたもの、想い出、想い、キズナ、その宝物、そのすべてを賭けて、ルビィたちとおなじものを賭けている、そんな理亜ちゃんたちと全力で戦っている、それってとても素晴らしいことだよ!!すごいことだよ!!そんなもの、楽しまないことなんて絶対にない!!)

ルビィ、さらに、ダメ押しとばかりにこんなことまで言ってしまう。

(それにね、ルビィ、この1年を通じてあることを知ったんだ!!千歌ちゃんたちと、お姉ちゃんたちと一緒に、スクールアイドル、Aqours、をやってきてとても楽しかった!!とても嬉しかった!!でね、お姉ちゃんたちが卒業してしばらくのあいだはそのことを忘れていたけど、月ちゃんのおかげで、その楽しさ、嬉しさ、を思い出すことができた!!だからね、それを含めて、月ちゃん、ありがとう!!)

 このルビィからのお礼を聞いた、月、ふとあることを思う。

(ルビィちゃんは今を楽しんでいる・・・、この1年で曜ちゃんたちAqoursのみんなと一緒にやってきたこと、楽しんできたこと、嬉しかったこと、そんなものすべてを賭けて、いや、それだけじゃない、ルビィちゃんたちがそのなかで学んだもの、成長した心、そのすべて、そこから来る、これまでルビィちゃんたちが築き上げたもの、想い出、想い、キズナ、その宝物すらこの戦いに賭けている、自分たちが持つものすべてをこのSaint Snowとの戦いにつぎこんで戦っている、それどころか、その戦いそのものを楽しんでいる・・・)

そう、ルビィはこの1年で得たものすべて、この1年で千歌たちAqoursメンバーと一緒に楽しんだこと、嬉しかったこと、学んだこと、成長した心、それらによって生まれたこの1年でみんなと一緒に積み重ねたもの、その想い出、想い、キズナ、その宝物、そこから発せられる輝き、それらすべてをもってこの戦いに臨んでいた。その戦いの相手は、ルビィと同じく、聖良とのあいだでルビィたちと同じものを積み重ねた、築いた、その宝物を持つ、そんな理亜、そんな2人、お互いを認め合った2人、その同じ宝物を持った2人、いや、2組、だからこそ本気で全力をもって戦うことができる、戦いを楽しむことができる、のである、ルビィたちは・・・。

 これを踏まえたうえで、月はこうまとめてしまった。

(ルビィちゃんはこのスクールアイドル自体を、今、楽しんでいる。それは、今までルビィちゃんがやってきたこと、楽しいこと、嬉しいこと、それによって学んだこと、自分の心が成長したこと、そのすべてをもって、ルビィちゃんはこの9人とのとの大切な想い出、想い、キズナ、を築いていった。そして、それらは宝物としてずっとルビィちゃんたちの心の中に残っていく、ずっとつながっている。けれど、それはルビィちゃんたちだけではなかった。理亜ちゃんたち、Saint Snowも同じもの、同じ宝物を持っていた。そんな同じ宝物を持つ2組が、今、全力でもって本気で戦っている。同じ宝物を持っている、同じ楽しさを知っている、そんな2組だからこそ、ルビィちゃんたち、理亜ちゃんたちは、この戦いを心の底から楽しんでいたんだ・・・)

 そんななか、月、ふと、沼田のもう一つのヒントのことを思い出す。

「スクールアイドルというのは高校生ならだれでもなれるアイドルであり、それは部活と同じである」

この沼田のヒントを思い出した月、その瞬間、

ピカッ

と、ある結論が月の頭の中に浮かび上がった。それは・・・。

(あっ、もしかして、沼田のじっちゃんが言おうとしていたこと、それって・・・、

 

「スクールアイドル、いや、部活というのは、「楽しむことがすべて」

 

なんだ・・・。私たち学生は、学校を、部活を通じて、楽しいこと、嬉しいこと、いろんなことを経験していく、学んでいくんだ。そして、それは自分にとってとても大切な宝物、みんなとの想い出、想い、キズナへと昇華していく。その宝物はほかの人たちも持っている。そんな人たちと、お互いを認め合った者たちとその宝物を賭けて行う、本気の勝負、それって、その人たちにとってかけがいのないものになっていく、いや、その戦いそのものをお互い楽しむ、そんな戦いになっていく、そんな気がする・・・)

そう、月はついに沼田の言いたいこと?に気づいたみたいだった。そして、それは月の心とリンクしているルビィからも、

(月ちゃん、ルビィもそう思うよ!!いや、その想いこそ、とても大切なもの、なんだよ!!)

と、月のこの結論を追認していた。

 が、そんなときだった。

トゥトゥトゥトゥー トゥトゥトゥー

ダイヤのソロがもうすぐ終わる。曲はついにサビへと入っていく。そう、ついにあのシーンへと突入するのだ、月が必死に考えた必殺のあの演出のシーンに!!これには、月、

(あっ、もうすぐ、僕、渾身のアイデアのシーン、だ!!ルビィちゃん、そういうことなので、あとでね!!)

と、自分の心とリンクしているルビィにそう言うと、ルビィも、

(うん、そうだね!!それじゃ、月ちゃん、またね!!)

と、言って月との心のリンクを切ってしまった。

 その後、月はスタンバイ状態のあげはたちにこんな合図を送った。

(あげはちゃんたち、出番だよ!!)

これには、あげはたち、

(((ラジャー!!)))

と、月に了解の合図を送る。これを受けて、月、

(さぁ、ここからが、僕の、この渡辺月、渾身の演出だよ!!)

と思ってはその演出に向けて身構えた。

 そして、ついにそのときがきた!!

トゥトゥートゥトゥー

この音とともに月は少しずつAqoursを撮っている自分のスマホを上へと傾けていく。と、同時に、Aqoursも今までのフォーメーションから例のフォーメーション、右に3年、左に1年、そして、真ん中に2年、そんなフォーメーションへと変わろうとしていた。そんなときだった。月、

(今だよ!!みんな、上着を脱いで!!)

と、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネに合図を送る。これには6人とも、

(はいっ!!)

という心の掛け声とともに青い上着をさっと脱いだ!!本来なら青い上着は曲が終わるまでずっと着ていることを想定していたためそう簡単に脱ぐことができなかった。が、月が考えたこの演出のため、月はルビィたち衣装班に上着を加工してもらい、すぐに脱げるようにしてもらった。なので、当初とは違いルビィたちはすぐに上着を脱ぐことができたのだ。

 そんなルビィたちの上着の脱衣(パージ)と同時に月はあげはたちにも、

(あげはちゃんたち、今だよ!!)

と合図を送ると物陰に隠れていたあげはたちも、

(((はいっ!!)))

と、OKの合図を月に送ってはすぐに、それでも、誰にもぶつからずにAqoursのもとに駆け寄ると、

(はいっ、上着、回収!!)

と、Aqours1・2年が着ていた青の上着を・・・東子は千歌、曜の、シーナは梨子、花丸の、そして、あげはは・・・、

(ヨハネちゃん、ルビィちゃん、上着、もらうね!!2人とも頑張って!!)(あげは)

(あげはちゃん、ありがとう!!)(ルビィ)

(ふっ、当たり前のこと、言われなくてもわかるわ!!)(ヨハネ)

と、ルビィとヨハネに声援を送りつつ2人の上着を回収。すると、6人の上着を回収したあげはたち3人ともまた物陰に隠れてしまった。

 そして、あげはたち3人がAqours1・2年6人の上着を回収し終えた瞬間、

ツツツ ツツツ ツー

と、いう音とともに踊っているAqoursのバックに映っている沼津の市街地や山々からお日さまが姿を現した!!これには、月、

(さぁ、ここがこの曲最大の見せ場、だよ!!)

と、Aqoursを撮影していたスマホのカメラをお日さまの方にズーム、したかと思ったら、すぐにズームアウトする。すると、そこに映っていたのは、青い衣装のままのダイヤたち3年、そして、白い、いや、今にも新しい世界へと旅立とうとしている千歌たち1・2年、そんなAqoursの姿があった。

 この瞬間、自分のスマホでこのカメラ演出を見ていた沼田、

(な、なんだ、このカメラ演出は!!ま、まるで、新しい輝きとともに新しい世界へとAqoursが飛び立とうとしている、そんな感じがしたぞ!!こんなカメラ演出、見たことないぞ!!す、すご過ぎじゃ・・・)

と、あまりの凄すぎる、いや、とても感動的なカメラ演出にびっくりしてしまう。そう、このとき、月はこう思った。

(沼田のじっちゃん、たしかにその通りだよ!!これが僕が考えた渾身の演出、これからのAqoursを現した、そんな演出だよ!!)

そう、月は沼田が指摘したことを意識してこのカメラ演出を考えたのである。お日さま、それは、Aqoursメンバーにとって自分たちがAqoursというものを通じて得た経験、その想い出、想い、キズナ、その宝物、そこから放たれる新しい輝き、そのものであった。それはAqoursメンバーが愛する沼津の街並みを輝かせる、と、同時に、千歌たちAqours1・2年は青い上着に象徴されたこれまでの自分たちという古い殻を脱ぎ捨て、白い衣装、新しい翼で大空へと羽ばたこうとしている、その表現をこのカメラ演出で表現しようとしていたのである。ちなみに、あげはたちであるが、千歌たちが青い上着を脱いでそのままにしていたり放り投げたとしてもそのあとでパフォーマンスしているAqoursメンバーの邪魔になることは目にみえていた。そのため、パフォーマンスしているAqoursの撮っているカメラ(月のスマホ)が上を向いている少しのあいだ、急いで千歌たちが脱ぎ捨てた上着を回収する、という重要な役目を担っていた。が、「カメラを上を向いている=Aqoursが映っていない」、その時間は数秒しかなかったため、すぐに青い上着を回収しないといけなかったのだが、このときもAqoursはフォーメーションを変更するために動いている、なので、Aqoursメンバーとあげはたち3人がぶつからないようにしないといけない、そのために、このシーンの練習ではそこを重点的に行っていたのである。そして、本番では、あげはたち3人はAqoursにぶつかることなく青い上着を回収するという重責を全うできたのである。まさに、Aqoursメンバー、あげはたち3人のあうんの呼吸、とはこのことを示していた。それくらい、Aqoursメンバーとあげはたちの練習は実を結んだ、ともいえた。そんなわけで、大役を果たしたあげはたち3人に対し、月、

(グッジョブ!!)

と、お礼を言うと、大任を果たして疲れてしまったあげはたち3人からも、

(あ、ありがとうございます!!)

と、月にお礼を言ったのである。

 こうして、月、最大の、そして、とても感動的なカメラ演出は終え、曲は次々と進む。お日さまという新しい輝きをバックに青い衣装のダイヤたち3年、白い衣装の千歌たちあ・2年は優雅に踊っている。それはまるで、新しい輝きのもと、新しい世界へと旅立とうとしている鳥たち、のようだった。これには、月、

(僕、優雅に踊るAqoursの姿を見ると、本当にプロデューサーをやってよかった、と思うよ!!だって、この曲、最初から最後までこの僕が関わっているんだからね!!)

と、つい考えてしまう。と、同時に、こんな想いも月のなかで生まれてくる。

(そう考えると、僕、このとき、この時間がとても楽しく思えてくるよ・・・)

そう、ついに月の心のなかに「楽しい」という思いが生まれてきたのだ。そして、その瞬間、

(あれっ、僕、つい、「楽しい」、と思っちゃった・・・)

と、この2か月のあいだ、感じたことがない感情、「楽しい」、が自分の心のなかに芽生えたことを知る、と、同時に、

(でも、僕からしたら、この「楽しい」という感情、なんか温かく感じちゃうよ・・・)

と、この「楽しい」という感情に心温かくなるものを感じていた。

 そして、曲はついにクライマックスへ・・・。

トゥートゥー トゥトゥトゥ トゥートゥー

の最後の曲調に差し掛かると、月の心のなかで、

(ついにAqoursのステージが、ラストステージが終わる・・・、そう思うと、僕、曜ちゃんたちAqoursやよいつむトリオ、あげはちゃんたち、みんなと一緒に一大プロジェクトをついにやり遂げることができた、やったー!!、そんな想いになってきちゃったよ!!あぁ、とても嬉しいよ!!)

と、Aqours、よいつむトリオ、あげはたちと一緒に一大プロジェクトを成し遂げることができた、そのことへの嬉しさを爆発させていた。さらに、月、

(そして、このみんなとのひと時を一緒に楽しむことができた、それには誇りに思えるよ・・・)

と、このプロジェクトをみんなと一緒に楽しむことができたことに嬉しさを感じていた。

 そして、月、ついに、ある想い、月にとってとても大切な想い、それが月のなかで浮かんできた。

(みんなと一緒に楽しむ、それって部活にもいえるかもしれない。だって、AqoursもSaint Snowもこの戦いを心の底から楽しんでいた、いや、この戦いに関わった者すべてがこの戦いに至るまでの時間そのものをみんあと一緒に楽しんでいた。みんな一緒に楽しむことこそ自分たち高校生には大事なのかもしれない。そして、スクールアイドルは沼田のじっちゃんの言う通り部活みたいなものなのかもしれない。そう考えると、僕、こう思ってきたよ。

 

部活とはみんなと一緒に楽しむこと!!みんな一緒にいろんなことをやって楽しむことでいろんなことを学び経験していく、その経験、その過程こそ一番大事なんだ!!

 

とね!!そして・・・、

 

その結果がこのAqoursとSaint Snowの直接対決、ラブライブ!決勝延長戦、なんだ!!あの部活動報告会での新生Aqoursのライブ失敗以降、僕たちはいろんなことをやってきた。そのなかで僕とAqoursはそれをやる上で知らないうちにそれを心の底から楽しんでいたんだ。そして、そこから僕たちはいろんなことを学びいろんなことを経験していった。いや、僕たちだけじゃない!!この戦いに関わる者すべてがこの延長戦に至るまでにいろんな経験をしそれを楽しんできた。だからこそ、言える、この延長戦、全力で、本気の戦い、だけど、自分を含めて、この戦いに関わった者すべてがこの戦いを心の底から楽しむことができたんだ!!

 

そう言えるのかもしれないね!!)

そう月が思った瞬間、月の表情はこの戦いにかける鋭い表情から、すべてを理解した、そんな穏やかな表情へと変わっていった。この月の表情の変化に、沼田、

(おぉ、ついに月生徒会長も私の問いの答えにたどり着いたんだな!!)

と、月がついに自分の問いの答えにたどり着いたことを悟った。

 と、同時に、沼田、

(ふ~、あまりに鈍感な月製会長もようやく、って感じだな!!でも、自分でそのことに気づいたことは、あっぱれ、じゃ!!でも、もし、あの場面で私が言ったことを月生徒会長が聞いていたらどうなったじゃろうかな?そう、あのとき・・・、月生徒会長と木松悪斗、ここ「ラグーン」屋上の使用申請の受理をめぐる、あの会議室での戦いのときにな・・・)

と、ようやく自分の問いの答えにたどり着いたとはいえ、自分の力でその答えにたどり着くことができた月のことを褒めつつも、あの時の出来事、そう、月と木松悪斗の「ラグーン」屋上の使用申請受理をめぐる、あの戦いのことを沼田は思いだしていた。



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Moon Cradle 第7部後編 第24話

「楽しむこと」「みんなと一緒に楽しむこと」

そう月が沼田の問いの答えを(一緒に来ていたルビィ、曜、ダイヤ、鞠莉とのイタリア旅行の話の流れで無意識に)言ったあと、静真高校生徒会副会長のナギからの突然の呼び出し電話により月は、ルビィ、曜、ダイヤを連れて会議室をあとにした、鞠莉を置いて・・・。

 で、月が去った後、審判者である沼田、この会議室での議題、「ラグーン」屋上の使用申請受理について、その判断基準となる沼田の問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」、それを使用申請を受理してもらいたい月側、使用申請を却下してもらいたい木松悪斗側、その両方の答えを参考したうえでその使用申請受理に対する最終決断を下すことにした。ちなみに、「部活動とは楽しむこと」という答えを出した月に対し木松悪斗は「部活とは勝利こそすべて」という答えを出していた。

 そして、ついに、沼田、その最終決断をすると、大きな声で自分が下した決断を言った!!

「それじゃ、判定を下す!!勝者は・・・、月生徒会長、とする!!「ラグーン」屋上の使用申請を受理する!!」

この沼田の言葉に、月側で唯一残っていた鞠莉からは、

「オー!!グレート!!」

と、大きな喜びを示すとともに小さくガッツポーズをした。

 が、この沼田の決断に納得いかない者が・・・。

「沼田殿、どうしてですか!!こちら側はしっかりとした答えを出したじゃありませんか!!足して、月生徒会長の答えはただ話の流れで言った答え!!俺からしたら納得いきません!!」

そう、木松悪斗である。自分の考えを堂々と言ったにもかかわらず、つい話の流れで答えを言ってしまった月に負けてしまった、いや、自分の答えこそ一番正しいのだ、そう主張したいみたいだった、木松悪斗は・・・。そのためか、

ドシドシ

と地響きを鳴らしながら沼田に詰め寄る、いや、脅しをかけていた。

 が、そんな脅しなんて百戦錬磨の沼田にとって別に大したことではない、逆に、

「このたわけが!!そんな薄っぺらな脅しなんてこのわしには効かぬわ!!」

と、なぜか隠し持っていた扇子で木松悪斗を叩くと、沼田、その木松悪斗をそのまま、

ぐわんっ、

と、合気道技で、裏美、旺夏のところまで大きく飛ばしてしまった。これには、裏美、旺夏、ともに、

「大丈夫ですか、ご主人様!!」(裏美)

「お父様、大丈夫ですか?」(旺夏)

と、沼田に投げ飛ばされた木松悪斗のことを心配する。

 が、沼田、そんな木松悪斗なんて気にせず、この問いに関する自分の考えを語り始めた。

「なぜ、私の問い、「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」、その答えに、月生徒会長の答え、「楽しむこと」、それを選んだのか、それはな・・・、部活・・・、いや、すべてにおいて、木松悪斗の考え、「勝利こそすべて」、それがとても危険な考えであること、それに、部活動においてとても大切なことを忘れている、そう思ったからじゃよ」

 ところが、この沼田の言葉に、木松悪斗、つかさず反論!!

「ほう~、私の答えが危険なものなのですか。これほど今の世の中にとってとても大切な考えだと思えるのですがね・・・」

 だが、この木松悪斗の反論を受けてか、沼田、あることを話し始めた。

「まぁ、木松悪斗の反論も正しいのかもしれないな。なぜなら、私たちが知る歴史そのものが、「勝者の歴史」、そのものなんだからな!!」

これには、木松悪斗、

「たしかにそうだな!!」

と、相槌を打つ。

 が、沼田、この木松悪斗の行動は無視しつつ話を進める。

「歴史を英語に訳すると「history」なのだが、その言葉をバラバラにすると、「his+story」、つまり、「彼の物語」となる。その彼とは誰なのか?それはな、勝者、である。なぜなら、今、わしらに伝えられている過去の歴史とは勝者側がまとめた勝者によって都合のいい歴史物語であることが大きかったりするものだからな!!」

このとき、沼田はこう思っていた。

(今、自分たちが知っている歴史、近現代を除けば勝者によってまとめられた勝者にとって都合のいい書物によるものが大きかったりする。たとえば、裏切り者として後世に伝えられている明智光秀のようにな・・・)

そう、歴史というのは勝者側にとって都合といいものが大きかったりする、というよりも、敗者側の本当の歴史が書かれた書物があまり残っておらず、逆に、勝者側中心の歴史が書かれた書物が多かったりすることでそんなことが起きた、とも考えられる。むろん、それが意図的かどうかはさておいて、今、私たちが知っている歴史はどうしても勝者側に偏っている、としかいえないかもしれない。たとえば、沼田の言う通り、裏切り者として有名な明智光秀であるが、彼が治めていた国では名君として誉れ高かったりする。が、それを証明するものは少なく、多くの書物でどうしても「裏切り者」というレッテルを貼られているため、今を生きる自分たちも光秀のことを裏切り者として認識してしまっていたりする。ほかにも、宮本武蔵と戦った佐々木小次郎(若いというイメージがあるが一説によるとお爺ちゃんであるといわれている)という敗者の詳しいこと、さらには、大化の改新で中大兄王子(天智天皇)らによって討たれた蘇我蝦夷・入鹿親子、古代ローマの暴君ネロが本当に悪者だったのか、それを知るすべは今はないため、その者たちがどういう者だったのかは当時の書物や伝記をもとに推測するしかない。が、その書物や伝記も勝者側によって、もしくは、勝者側に有利になるように書かれたものであったら、本当のことすら知ることができないかもしれない。それほど、自分たちが知る歴史というのは「勝者の歴史」と言えるのかもしれない。(ただ、現在において、これまで見つかっていなかった敗者側のことが書かれている書物などが見つかってきている。それにより私たちの歴史そのものが変わってしまうことが起きるかもしれない、そのことも記しておこう)

 で、この沼田の言葉に、木松悪斗、

「ほらね!!やっぱり、私が言うことが一番正しいのですよ!!」

と、自分の考え、「勝利こそすべて」、それが正しいことをこの会議室にいるみんなに大声で言うも、沼田、これには、

「おいっ、木松悪斗、わしの話はまだ終わっていないぞ!!」

と、木松悪斗に対して一喝すると、さすがの木松悪斗も、

「はい・・・」

と、またもやしゅんとなってしまった。

 このあと、すぐに沼田は自分の話に戻る。

「けれど、たとえそうだとしても、勝利のみを追い求めること自体とても危険なことなのじゃ!!」

この沼田の発言に木松悪斗以外の会議室にいる者すべて、

(えっ!!)

と、驚いてしまう。それを目撃した沼田はその発言について自分の考えを述べた。

「と、いっても、このわしが考える「勝利」であるが、「勝利」といってもわしからすれば、大きく分けて2つの、まったく意味が異なっている、2つの「勝利」がある、とわしはそう考えておる。1つ目は「意味をもつ勝利」そして、もう1つは「それ以外の勝利」じゃ!!」

この沼田の考えにここにいる者すべて「?」とハテナを頭の上に浮かべてしまった。

 だが、それを見越してのことか、沼田、自分のなかにあるある考えを披露した。

「で、今、木松悪斗が言っている「勝利」、それこそ、2つの意味をもつ「勝利」のうちの1つ、「それ以外の勝利」なのじゃ!!」

が、これには、木松悪斗、すぐに反論!!

「沼田殿、そのどこが「それ以外の勝利」といえるのですか!!勝利することで自分たちの希望が叶うのですよ!!勝利し続けることが俺たちが生き続ける、歴史に残る上でもとても重要なことなんですよ!!」

 だが、沼田、その木松悪斗の反論を言い返した。

「木松悪斗、それこそが「それ以外の勝利」につながるのじゃぞ!!」

これには、木松悪斗、突然の沼田の反撃に、

「ぐぐぐ・・・」

と、黙るしかなかった。

 そして、沼田は「それ以外の勝利」について持論を展開した。

「その「それ以外の勝利」とはな、「ただ相手を徹底的に潰すため、自分、もしくは自分たちの自己利益のためだけ、そして、敗者、特に弱者のことなんて心配せずただ自分たちのためだけに、ただそれだけのためだけに、勝つことのみを信条にし、敗者・弱者を排除しながら勝利のみを邁進する」、そんな勝利のことを言うのじゃ!!」

この沼田の言葉に、一瞬、(木松悪斗を除く)ここにいるみな、つばを飲み込む。(木松悪斗以外の)ここにいるみな、沼田の言葉に一喜一憂してしまっている、そんな感じがまわりから湧き出しているようだった。

 だが、沼田の持論は続く。

「そして、なぜ、「それ以外の勝利」が危険だというと、それにより、わしたち人類が滅亡してしまう、それくらい危険なものだからだ!!」

沼田、こう言うと、会議室にあったホワイトボードをもってきてはなにやらなにかを書こうとしているのか、マジックを用意しては自分の話を続けた。

「そして、危険だといえる理由なのじゃが・・・」

この言葉の後、沼田、持っていたマジックでもってホワイトボードに以下の3つの言葉を書いた。それは・・・。

①「それ以外の勝利」により、敗者・弱者が排除されることになったり新たなる争いの火種になりかねない!!それどころか、それにより人類滅亡につながる可能性もある。

②「それ以外の勝利」により勝者そのものに残酷な運命が訪れることがある。場合によっては自滅することもある

③「それ以外の勝利」を追い求めるあまり、とても大事なことを知る機会を失ってしまうことがある。

 この3つの言葉をもとに、沼田、

「では、これらについて、1つずつ話をしていこう」

と、言うと、沼田の説明がついに始まった・・・。



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Moon Cradle 第7部後編 第25話

「まず、①の「「それ以外の勝利」により、敗者・弱者が排除されることになったり新たなる争いの火種になりかねない!!それどころか、それにより人類滅亡につながる可能性もある」だが、人の歴史というのは、「勝者の歴史」、つまり、「争いの歴史」でもある。事実、歴史上いろんな争いが起きており、その勝者が歴史を作ってきたのじゃ」

人の歴史においていろんな争いが起きている。百年戦争、ばら戦争、アメリカ独立戦争、ナポレオンの戦い、近現代においても、第1次・第2次世界大戦、大きいものをあげていってもきりがない、それくらいかなり多くの争いが起きている。そして、その勝者がそれから先の歴史を作ってきたのだ。で、この沼田の言葉に、木松悪斗、

「やっぱり、俺の言っていることが正しい!!「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」なのだ!!」

と、自信満々に、自分の考えが正しい、歴史はそれを証明している、と、威張っていた。

 が、沼田、すぐにトーンを落とし、話の続きを語った。

「だがな、その争い、そして、「それ以外の勝利」により、その争いに関係ない、もしくは、そんな争いなんて好まない、そんな弱い者たちから勝者はいろんなものを奪っていったのじゃ!!たとえば、住む場所、仕事、お金、そして、大事な家族もな!!

そう、争いが起きると弱き者たちにそのしわ寄せがきてしまうのだ。自分たちが住む場所が戦場になることでそこの住民たちは、住む場所、仕事、お金、そして、大事な家族すら失ってしまうのである。むろん、たとえ自分の住む場所が戦場にならなくても、その争いの影響で平穏だった生活がすぐに壊れてしまうこともあった。

 で、それを踏まえたうえで、沼田、あることを言った。

「そして、それは、今、現代においても起きてしまっておる!!第2次世界大戦後に起きた冷戦がその例だ!!この冷戦で多くの弱き者たちが難民となった!!」

このとき、沼田はこう考えていた。

(この冷戦は2つの陣営の戦いだった。しかし、その中心となる国同士で戦うことはなかった。そのかわり、いろんなところでその代理戦争が起き、結果、多くの者たちが難民となった・・・)

第2次世界大戦後、世界はアメリカを中心とした自由民主主義陣営と旧ソ連を中心とした社会主義陣営、2つの陣営が世界の覇権をめぐって対立する、冷戦の時代へと突入する。この冷戦、それぞれの陣営の中心だったアメリカと旧ソ連が直接戦争することはなかったため、「冷たい戦争」、つまり、「冷戦」、と名付けられた。が、この争いだが、直接的な戦争という形ではなく、いろんな分野で2つの陣営が対立する、そんなことが起きていた。たとえば、月面着陸などといった宇宙分野、オリンピックなどを舞台としたスポーツ分野など。そして、この争いは、アメリカ、旧ソ連の代理戦争というかたちで世界中に争いの火種をばらまいてしまった。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン侵攻、などなど。これにより、戦場となった場所に住む多くの人たちは家族がバラバラになったり難民になったりと災難が降りかかることになる。まさに、争いが弱き者たちをつぶそうとしている、といってもおかしくなかった。

 さらに沼田の話は続く。

「その冷戦のさなか、人類最終戦争の一歩手前といえる事態が起きる。もし、このとき、一歩でも間違えたら核戦争が起きて人類は滅亡していただろう。それくらい、争い、それによる「それ以外の勝利」を追い求めてしまうあまり一歩でも間違えたら人類滅亡に進む可能性だってあるのじゃ!!」

この沼田が言っている争い、それは、キューバ危機、のことである。アメリカとは目と鼻の先にあり社会主義国でもあるキューバに旧ソ連が核ミサイル基地を作っているところをアメリカが発見、アメリカはすぐにキューバを海上封鎖した。これにより、アメリカと旧ソ連は一触即発の危機を迎えることになる。ただ、このときは当時の両国のリーダーとのやり取りにより旧ソ連はキューバでの核ミサイル基地建設を断念、アメリカの海上封鎖も解除となりその危機は去った、のだが、そのやり取りがなければ本当に核戦争が勃発してもおかしくなかったのだ。このことを知っている沼田、

(もし、核戦争が起きたら、人類はすぐに滅亡してしまう。だからこそ、争いというものは本当に怖いものなのじゃ!!)

と、その恐ろしさを感じとっていた。

 で、さらにさらに、沼田の話は続く。

「そして、冷戦は終わるも、今度は世界中で「それ以外の勝利」を追い求める風潮が強くなり、それによって新しい争いの火種、いや、新たなる争いが実際に起きてしまう。そして、勝者と敗者、強き者と弱き者、富豪と貧しき者、その格差は次第に拡大していき、それに伴って社会のひずみも大きくなった。もしかすると、いろんな争いの「それ以外の勝利」によってその格差が広がっていった、いや、勝者・強者が敗者・弱者を排除していったのかもしれない・・・」

冷戦は旧ソ連を中心とする社会主義国の崩壊により終結した。が、それにあわせて経済などを中心に、個人間、国内、世界中で「それ以外の勝利」を追い求めていろんな形で争いが起きてしまった、のかもしれない。たとえば、株式市場などにおいてその争いは勃発した、のかもしれない。そして、その争い、勝負に勝った者はさらなる勝利を追い求めて新たなる争いを始める。こうして、そんな争い、勝負に勝ち続けた者は勝者・強者・富豪となり、負けてしまった者は敗者・弱者・貧者となる、そんな世界になってしまったのかもしれない、現代においては。そして、ただ1つだけ真実としていえるのは、たとえそうみえないとしても、冷戦が終わって30年もの間に、勝者・強者・富豪と敗者・弱者・貧者の、貧富を含めた、いろんな格差は広がってしまったこと、それに伴って社会のひずみも拡大してしまった、のはたしかである、そのことだった。

 そして、沼田は「勝利こそすべて」という自分の考えを押し通している木松悪斗に向かってこう言った。

「そして、木松悪斗の考え、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、さらに、「勝ち続けること」、それは、「それ以外の勝利」を追い求めるあまり、その敗者・弱者すら排除してしまう危険性をはらんでおるのじゃ!!」

沼田、木松悪斗にこう言ってしまうのも理由があった。「それ以外の勝利」とは相手を徹底的に叩き潰す、自分もしくは自分たちの利益のためだけ、ただ自分たちのためだけ、敗者・弱者のことなんて気にせず、いや、むしろ、敗者・弱者を排除しながらする「勝利」のことである。そして、その「勝利」こそ木松悪斗が追い求める「勝利」であった。以前、木松悪斗は「某有名私鉄の赤字路線を廃止しろ」と命令したことはこの物語の第1章において述べたことがある。で、なんで木松悪斗がこんな命令を某有名私鉄にできたかというと、木松悪斗はその某有名私鉄の大株主だったからである。で、木松悪斗が某有名私鉄にそう命令した理由、それは、赤字路線を廃止することで某有名私鉄の株の価値を上げ、少しでも自分が持つ株の時価総額、つまり、自分の資産(利益)を増やそうとしたからだった。が、その赤字路線が廃止になることはその沿線住民は貴重な足を失い困ってしまうことになる。でも、木松悪斗からしたら、そんな人たちのことなんて関係ない、自分たちの資産(利益)を増やしたい、ただそれだけで行った命令だった。と、こんな具合に、木松悪斗が「勝利」、いや、「それ以外の勝利」を追い求めることは、相手を徹底的に叩き潰す、自分たちの利益のためだけ、自分たちのためだけに勝利を目指す、それと同義である。そして、それは、木松悪斗の勝利により敗者・弱者は次々と排除されてしまうことすら意味している。さらに、木松悪斗の勝利が続けばその被害は拡大してしまう、いや、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」という言葉ですべてが片付けられることになり、その言葉自体、悪魔の言葉しか聞こえなくなってしまうだろう。なぜなら、「勝利」、いや、「それ以外の勝利」が正当化されると、それは、敗者・弱者の排除、それすらも正当化されてしまうから。そういうわけで、沼田、これらのことを危惧してあんなことを言ったのである。

 と、言いつつ、沼田、話をもとに戻す。

「そんな社会のひずみや「それ以外の勝利」を追い求める風潮、さらに、冷戦以降の「それ以外の勝利」のための争いのなかで生まれた難民などの諸問題、そして、人種・民族・宗教などといった要素が複雑に絡み合い、今、個人・集団のあいだで「それ以外の勝利」を追い求めて新たなる争いの火種が次々と生まれようとしている。さらに、それらによって、弱者、自分たちが認めないものを排除する傾向が強くなっている。そして、新たなる争いの火種や排除というものは国同士のあいだにまで起きようとしている。お互い同士を認めない、徹底的にそれらを排除する、これらにより、現在、世界では、新たなる冷戦、新冷戦が勃発しようとしている。いや、それ以上に、徹底的に「それ以外の勝利」を追い求めてしまうあまり、理性という歯止めすら効かなくなってしまい、結果、人類滅亡、につながってしまうかもしれない・・・」

このときの沼田はこう考えていた。

(今、世界中において、自分たちのことしか考えず相手すら認めない風潮が起きている。それは、社会のひずみ、「それ以外の勝利」を追い求める、そこから起きているかもしれない。そして、その風潮がはびこってしまうと、自分たちより弱者、自分たちが認めないものを徹底的に排除してしまう傾向が強くなってしまう。いや、それはもうすでにその傾向は強くなっているかもしれない。さらに、その傾向は国同士のあいだでも強くなっている。そして、それが世界の新たなる分断、新冷戦へとつながりかねない。こうなってしまうと、今度こそ人類滅亡の核戦争、そのカウントダウンが始まってしまう・・・) 

今、世界中において、この30年ものあいだ、人類は「それ以外の勝利」を追い求めたことによりいろんな格差が広がってしまった。それにより、少しでも「それ以外の勝利」にありつこうとしているのかどうかはわからないが、人々のあいだで自分の考えしか認めない、他人を排除する、そんな考えが広がってきてしまった気がする。そして、それは、自分より弱い者、自分の考えにそぐわない者を徹底的に排除するといった行動・運動につながってしまう、いや、それ以上にこれらの行動・運動同士がぶつかることで新たなる争いの火種が起きようとしている。さらに、これらの行動・運動がその国の政府にすら影響を及ぼそうとしている、いや、国自身がこれらの行動・運動により、より「それ以上の勝利」を追い求めてしまい、結果的にいろんな国同士でぶつかりあってしまっている、のかもしれない。事実、自分たちのことだけしか考えていなかったり、自分たちの考えでしかものをみない、そんなことがまかり通っているのか、平気で国同士の約束事を簡単に破ったり弱者などを徹底的に排除してしまう国、自分たちの利益・利権の拡大のためかどうかしらないが、それでも、他国とのあいだで軋轢を繰り返そうとしている国、その国同士でいがみ合った末、新冷戦、そんなものが起きる、その一歩手前、まできているのかもしれない、今は。いや、場合によっては、「それ以外の勝利」をお互い追い求めてしまうあまり、お互いの歯止めすら効かないため、人類滅亡となる核戦争を引き起こしてしまう、そんなことを心配してしまうのは自分だけだろうか。とはいえ、そんな意味でも、現代、いろんなもの同士が「それ以外の勝利」を追い求めてしまうあまり新たなる争いの火種を世界中に振りまいている・・・そういっても過言ではないのかもしれない。

 そんなわけで、沼田、①について、こうまとめた。

「そうみていくと、人々は長い歴史のなかで「それ以外の勝利」を追い求めて醜い争いをしてきた。その結果、世界は敗者・弱者などを排除したり新たなる争いの火種を次々と生み出しておる。むろん、その争いは自分たちが生き残るためなどの理由があるなら考える余地はあるが、たとえそうであったとしても、争いというのは弱者などを守るためにも絶対に避けるべきだろう。そして、もし、人が「それ以外の勝利」を追い求めて勝ち続けようとすれば、最悪の場合、人類は滅亡するかもしれないだろう」

 

 続けて、沼田は②について語り始めた。

「続けて、②、「「それ以外の勝利」により勝者そのものに残酷な運命が訪れることがある。場合によっては自滅することもある」ことだが、それは「それ以外の勝利」を追い求めたあまりいけないものにまで手をだしてしまうことがあったりするのじゃ。こうなってしまったら最後本当に過酷な運命が待ち受けておる。こんなことはいろんな分野で起きておるのだが、特にスポーツの世界ではそれに対する影響力は半端ない・・・」

この言葉のあと、沼田はその一例をあげた。

「スポーツの世界というのはフェアプレーが基本理念じゃ。だが、人というのは「それ以外の勝利」を追い求めてしまうあまり、人の身体能力などを意図的に増強させるもの、ドーピング、というものに手をだしてしまうことがあったりする。それは個人でも国でもじゃ。だが、そのドーピングじゃが、身体能力などを格段にあげてくる、と、同時に、体に対する副作用もかなり強い。そのため、ドーピングに手をだした者にはつらい後遺症、最悪の場合、死、すら訪れてしまうこともある。だからこそ、スポーツの競技団体はドーピングに対してとてもきびしい対応をとるようにしているのじゃ」

そう、スポーツの世界の歴史は対ドーピングの戦いの歴史でもあった。フェアプレーを信条としているスポーツの世界、しかし、昔から人々は「それ以外の勝利」を追い求めるあまり、ドーピングという悪魔の薬に手を出してしまった。その悪魔の薬に手を出したのは、個人、だけでなく、国、もあった。国の場合、国威発揚のためにドーピングに手を出していた。①の冷戦の説明のとき、スポーツの世界でもオリンピックを中心に2つの陣営の戦いが起きていたのだが、そのなかで社会主義国だった旧東ドイツ(ドイツは第2次世界大戦後から1989年ごろまで自由民主主義陣営の西ドイツと社会主義陣営の東ドイツに分かれていた)は国威発揚のために積極的にスポーツ選手たちにドーピングを行っていた。また、自由民主主義陣営のなかでも、オリンピックで金メダルが獲れたら多額の富が得られることもあり、ドーピングに頼る選手も現れたりした。だが、ドーピングは身体能力を著しく高めることができる反面、それに伴う副作用も強く、それによる後遺症に一生悩まされたり、最悪の場合、死、に至るケースが相次いでしまう。これを重くみた国際オリンピック委員会などのスポーツ競技団体はドーピングを禁止したり、オリンピックをはじめとする大会で抜き打ちのドーピング検査をするなど、ドーピングに対してとても厳しい対応をとるようになった。そのドーピングに対する対応だが、今において、市販の風邪薬すらドーピングとして摘発されるほど年々厳しくなっている。だが、ドーピング技術も日々進化しているため、それに合わせてそのドーピングを見つけるための技術も日々進化している。なので、ドーピングの技術に関してはいたちごっこの日々が続いている、しかし、その裏では、少しでも「それ以外の勝利」を追い求めようとしている人の姿が見え隠れしている、といえるのかもしれない。

 さらに、沼田、昔のことを思い出したのかのようにあることを言った。

「そして、②において、「勝利」という物語を作ろうと思って急ぎ過ぎたあまり、勝者となった者のこのあとの運命すら過酷なものにしてしまうこともあるのじゃ。大相撲で言えば、貴乃花や稀勢の里、高校野球において、は全試合・全イニングを投げ切って優勝したほうがいい、という考えがもたらすもの、とかじゃな・・・」

これについては第1部第8話でも取り上げているが、(日本人だけかどうかはわからないが、)日本人はよく「勝つこと」「勝利すること」という結果論だけを追い求めてしまうことがある。そのため、無理をしてでも勝利しようとしたりする。それは、大相撲の貴乃花、稀勢の里のとき(大怪我したにもかかわらず無理して出場しその場所を優勝することができたものの、その無理がたたり、その後、けがに苦しんでしまったために早期での引退を余儀なくされた)だったり、高校野球のエースでも、全試合・全イニングを1人で投げ抜き全国優勝した、という美談を作ったものの、そのエースはその後、それに対する無理がたたってしまい大成することができなかった、などのことが起きていたりする。そう考えると、その者にとって無理してまで「勝利」という美談を作ったものの、それを引き換えにその者に残酷な運命を課してしまった、といるのかもしれない。いや、それこそ、最悪の結末、を迎えさせてしまったのかもしれない。

 さらに、沼田はあることについても語った。

「さらに、たとえ勝者であったとしてもそれがずっと続くわけではない。勝者もやがて敗者になってしまう。それは歴史が語っている。いあ、もうすでに、「平家物語」の最初の一文に載っている!!勝者が常に勝者とは限らないのじゃ!!」

沼田の言っている「平家物語」の最初の一文とは、「祇園精舎の鐘の音・・・」で始まる文のことである。意味としては、「栄華を誇った者であっても必ず衰える。勢いが盛んな者も結局は滅亡してしまう」、だったりする。が、この一文は歴史がすでに証明していたりする。世界史においてはローマ帝国などが、日本史においては室町幕府や江戸幕府、そして、平家といったものもだ。それらはすべて一時期栄華を誇ったものの、最後には歴史の表舞台から去っていった。その意味でも、勝者・強者がずっと勝者・強者であり続けてるわけではないのだ。

 そんなわけで、沼田、②についてこうまとめた。

「こうしてみてみると、たとえ、「それ以外の勝利」」を追い求めてしまうあまり、場合によってはその者にとって過酷なる運命、いや、自滅の道に進むことがあったりする。また、たとえ今は勝者・強者であったとしてもいつかは敗者・弱者になってしまうものなのじゃ!!」

 

 そして、最後に③について沼田は話し始めた

「そして、③の「それ以外の勝利」に追い求めるあまりとても大事なことを知る機会を失ってしまう」ことじゃが、主に買っても負けてもそこからいろんなことを学ぶことができるのじゃ。故人曰く、「価値に不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」じゃ!!」

「勝ちに~」、この名言は江戸時代の平戸藩主松浦静山が自分の書物に書いた一節である。そして、プロ野球の名監督である野村克也さんの座右の銘でもあった。この一節の意味であるが、

 

「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に何か負ける要素がある。勝ったときでも、何か負けに繋がる要素があった場合がある」

 

である。そして、この一節から次のことがいえる。

 

「勝負は時の運とはいうものの、ひとつだけはっきり言えることがある。

 偶然に勝つことはあっても、偶然に負けることはない。

 失敗の裏には、必ず落ち度があるはずなのだ。

 勝った負けたで一喜一憂する必要はない。

 そこから何を学びとるのかが問題なのだ。」

 (株式会社コンパス・ポイント(フーガブックス・Chinoma)HPより)

 

つまり、たとえ勝ったとしても負けたとしてもそこから何かを学び取ることが大切なのである。そして、それを沼田は会議室にいるみんなに向かってこう言った。

「人というのはいろんなところで勝負を行おうとしている。そして、勝負には必ず勝ち負けというものも発生してしまう。そして、それにより「勝った」「負けた」と一喜一憂したりするもんだ!!じゃが、勝負において「勝った」「負けた」が1番重要ではない。1番重要なのは、勝ったとしても負けたとしてもそこからなにかを学び取ることなのじゃ!!人は勝負をして、勝ったこと、負けたこと、そこからとても大切なことを学び取ることで先へと進むことができるのじゃ!!人生とはその繰り返しであり、それによって1人前の大人へと成長していくものなのじゃ!!」

人はいろんなターニングポイントにおいていろんなことを学び成長していく。特に勝負においてはただ「勝った」「負けた」だけで済ませるだけでは人は成長しない。その勝負において勝った負けたとしてもそこから勝敗を決したものがなんなのかを知る必要がある。そして、それを学び取ることで人としてさらに成長することができるのだ。人の人生は平たんではない、むしろ、岩山ばかりである。そんななかでいろんな経験をしそこからいろんなことを学ぶ、それが人として成長していく、それこそ人生においてとても重要なこと、なのかもしれない・・・。

 そして、沼田は木松悪斗の方をにらみ、こう言い放った。

「そして、木松悪斗が言う「勝ち続けること」、いや、「「それ以外の勝利」を続けていく」、それ自体、③の一文で言えば、そんな大事な機会をみすみす見逃している、そう思えてしまうものなのじゃ。特に、負けたとき、には!!」

そうである。木松悪斗が言う「勝ち続けること」、いや、「「それ以外の勝利」を続けていくこと」はそんな貴重な機会をみすみす見逃している、そんなことが言えたりする。木松悪斗みたいにただ勝ちにこだわってしまうと「その勝利からとても大切なものを学ぶことができなくなってしまう」、いや、それ以上に、「負けるという経験を得ることができなくなる」、そのことは人にとってとても痛手である。なぜなら、勝つときよりも負けるときのほうが得るものが大きい、から。そのことは、松浦静山の一節、「偶然勝つこともあるが偶然負けることはない。負けには必ず理由がある」、自体それを証明している。勝ちにおいてそれが偶然なものがあるかもしれない。しかし、負けには偶然というものは存在しない、必ず負けた理由がある、というものなのである。そして、人は、偶然勝ったのであればそこから学ぶものは少ない、対して、負けた場合は必ず理由があるので人はその理由を知ることでいろんなものを学びとるができる。なので、人は負けたとき、その理由、その要素から自分の人生にとってとても大事なものを(勝つときよりも)多く学ぶことができる、と、いえるかもしれない。

 そして、このことから次のことが言えるかもしれない。

「人は一人前の大人に成長していく過程を経るなかで、ときには負ける、挫折する、そんなことを経験したとしても、そこから大事なものを学んでいく、そんな姿勢がとても大事なのかもしれない」



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Moon Cradle 第7部後編 第26話

 と、こんな具合に、ホワイトボードに書いた①②③について順に説明した沼田は部活においてとても重要なことを話し始めた。

「そして、部活において特に③はとても重要だったりする。部活とは「学校での部の活動」のことをいう。そして、学校というのは「学生たちが校(舎)に集まっていろんなことを学ぶ場所」なのじゃ!!さらに、そのいろんなことは学問だったりいろんな経験のことであり、学生たちはそこから自分の人生にとって大事なものを学び自分を成長させていくものなのじゃ!!つまり、部活というのは、「学校での部の活動を通じて学生たちがいろんな経験をし、そこから自分の人生にとって大事なものを学ぶことで自分たちを成長させていく場所」、なのじゃ!!」

そう、部活とは、学生たちが部の活動を通じていろんな経験をし、そこから自分の人生にとって大事なものを学び成長させていく場所、といっても過言ではなかった。学生たちは部活を通じていろんな経験を得ることができる。それは、小さなある目標を達成できた、でもいい、○○に勝つことができた、でもいい。とても大切なのは、そこからなにを得られたのか、なにか学ぶことができたのか、なのである。特に勝負の世界であるスポーツ系の部活においてはとても重要なことである。勝負の世界である以上、勝ち負けは必ず発生する。そのなかで、なぜ勝ったのか、なぜ負けたのか、それを分析し、そこから、その勝敗を分けた要素、その理由、そこからくるとても大事なものを自ら学び、それをもってさらに研鑽を積んでいくことで自分たちを成長させていく、ものなのである。むろん、それは文化系の部活にもいえる。いや、そのもの自体すべての部活においてとても重要だったりする、のかもしれない・・・。

 そして、そのなかで沼田はあることを言いだした。

「その意味でも、部活において、ある1つの勝利、大きな目標の達成、そこに至るまでの過程がとても重要だったりする。その過程のなかで学生たちはいろんな経験をする。むろん、それが勝負であったら「負ける」という経験もあったりする。その経験のなかで学生たちは紆余曲折をしながらいろんなことを学ぶことで一歩ずつ成長していく。その過程こそ部活においてとても重要なものなのじゃ!!」

部活において「○○優勝」「○○を実現」といった大きな目標を立てることが多い。その目標に向けて学生たちは日々部活を頑張るのだが、大きな目標を達成するためにはいくつもの過程を経る必要があり、そのなかでその目標達成のために経た過程、それこそ部活においてとても重要である、なぜなら、その過程でいろんな経験をすることができるから。そして、その過程での経験こそとても重要である。前述の通り、部活とは「いろんな経験をし、そこから自分の人生にとって大事なものを学ぶことで自分たちを成長させていく場所」なのだが、そこから得つぶしtられる経験はたった1つだけではない、いくつもの経験をしていく、その経験の都度、そこから自分たちにとってとても重要なものを学び続けることになる。そして、それが目標達成という大きな経験へと結びつけることができるだけでなく、これらの経験で得たもの、そのすべてが自分たちにとってとても大きな財産となる、いや、1人前の大人へと成長することができる、のである。だからこそ、部活においてその過程こそ重要だったりするのだ。

 そして、それを踏まえたうえで、沼田、木松悪斗の考えの弱点を言った。

「そして、木松悪斗の考えである「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」「勝ち続けること」であるが、とても重要である過程すら吹っ飛ばして結果のみを追い求めようとする、こうなると、人というのは成長しない。ただ勝利という結果のみ固執してしまうと、その途中の過程での経験で得られたはずの自分たちにとってとても重要なものそのものを学ぶ、その機会を失ってしまうものなのじゃ。そして、それは学生たちにおいて自分たちを成長させる貴重な機会をつぶしてしまう、いや、その過程においても勝利のことしか考えていなかったとしたら、その経験そのものを奪ってしまうことになるのじゃぞ!!学生たちにとってこれ以上にとても悲しいものなんてないはずはない!!学校や部活は学生たちが自分たちを成長させる場所である!!そんな貴重な機会を奪ってしまう、それこそ、木松悪斗の考え、もとい、「勝利至上主義」の欠点なのじゃ!!」

木松悪斗の考え、「勝利至上主義」であるが、勝利の結果のみを追求したりする。そのなかで、「勝利」という大きな目標達成においてその途中にある過程自体を無視することがよくある。たとえ経過を無視していなくても、その経過自体ただ勝つことにのみ固執してしまう傾向がある。そして、こうなってしまうと、部活においてとても重要なことである、その過程での経験において自分たちにとってとても大事なことを学び取る、その機会を失ってしまうことになるだろう。結果、たとえ「勝利」という大きな目標を得ることができとしても学生たちは部活においてとても重要なことである「自分たちを成長させる」、そのことができなかったことになる。それはある意味、部活、学校、ともに、その存在意義、「学生たちを成長させる」、それすら失わせることになる。さらに、その過程のにおいて勝つときよりも負けるときのほうがその経過での経験のなかで得られるものが大きい、と考えると、たとえ負けることがあってもそこから多くのことを学び自分たちを大きく成長させることができるのであれば、勝ち続けること、勝利のみを追求すること自体とても哀れ、としかいえないのかもしれない。それを含めたうえで沼田はこう指摘したのである。

 だが、その沼田の持論に、木松悪斗、たてつく。

「しかし、沼田殿、もし勝利を目指すことを諦めたら、部活や勝負に対するモチベーションが保てなくなりますぞ!!」

むろん、木松悪斗の言う通りである。人というのはものを行うにおいて、やる気、モチベーションが重要だったりする。モチベーションが低くなると、やっている行為自体いい加減なものになったり非効率になったりsるう。そうなると結果的にその行為自体失敗したもの、なにも残すことができない、ただやっているだけ、と、マイナス面ばかり目立つことにつながってしまう。それくらいモチベーションというのはとても重要だったりする。

 が、沼田、この木松悪斗の意見に対して自分の持論を展開した。

「だからこそ、「楽しむこと」が大事なのじゃ!!なぜなら、心の底から「部活を楽しみたい」、そう思えるようになれば、学生たちはどんな困難があっても部活を続けることができるのじゃ!!そういうことなので、学生たちは部活においてはその部活自体をみんなと一緒に楽しみながら大きな目標に向かって突き進んでいく、そのなかで、その過程においていろんな経験をみんなと一緒にやっていく。むろん、そのなかで勝つこともあれば負けることもある。成功することもあれば失敗することもある。が、それを通じてみんなと一緒に楽しみながら自分たちにとってとても大事なものを学んでいく。そして、そうしていくうちに大きな目標を達成することができるのじゃ!!」

「(部活そのものをみんなと一緒に)楽しむこと」、それは本当に素敵な魔法かもしれない。だって、それだけを思い続けるだけでどんな困難もみんなと一緒に太刀打ちできるのだから。対して、ただ「勝利のみを目指したい」という形でモチベーションをあげているのであれば、その学生たちは負けたとたんにそのモチベーションを失ってしまう傾向が強くなる。むろん、「今度こそ勝ってやる!!」という気持ちでモチベーションを持続させることができるのだが、その負けによって学生たちにとってとても大事なもの(負けた理由など)を学ぶことをしないのであればその学生たちは人として成長することはできないだろう。なので、また勝利を目指すことになっても人として成長していないのであればまた勝利することは難しいかもしれない。こうなってしまうとモチベーションを持続させることはできなくなるだろう。

 対して、「その部活そのものをみんなと一緒に楽しむ」という考えであれば、たとえ負けたとしても、みんなと一緒にその部活を続ける、みんなと一緒に楽しむ、みんなと一緒に自分たちの大きな目標に向かって進むことができる、そこからくるやる気のもと、みんなと一緒に「負け」という経験から自分たちにとってとても重要なものを多く学ぶことができ、結果、自分たちは人として大きく成長していくことができるのである。そして、人として大きく成長していった学生たちは大きな目標に向かって突き進むことができるのである。それくらい、「部活を楽しむ」という考えは部活をする者たちにとって「いろんな過程のなかでいろんな経験をし、そこから大事なものを学び、自分たちを成長させる場所」という部活の存在意義を叶えるためにも必要な考え、なのかもしれない、それは部活を続ける、そんなやる気を持ち続けるにしても、大きな目標のためにいくつもの過程を経るためにしてもだ・・・。

 さらに、沼田は静真高校女子サッカー部の部長である旺夏に対してあることを尋ねた。

「ところで、旺夏という小童、サッカーは好きか?」

これには、旺夏、

「はっ、それは当たり前でしょ!!サッカー、好き、に決まっているじゃない!!」

と、怒りながら返答するも、沼田、さらに旺夏に対しまた質問する。

「本当にそうか?心の底からサッカーが好きか?ただ勝つことのためだけにサッカーが好きではないのか?」

この沼田の質問に、旺夏、つい本音を言ってしまう。

「そんなの、関係ないでしょ!!「勝ち続ける」こととそれとは関係ないでしょ!!私はサッカーの技術に秀でいている、だからこそ、勝ち続けること、それこそ、この私にとって、サッカーを続けていく、私の存在意義を示すものなんだ!!」

だが、そここそ沼田が旺夏に求めてものだった。沼田、本音を言った旺夏に対し、

「旺夏という小童よ、よく聞け!!部活とは道具ではない、自分たちの心などを成長させる場所なんだぞ!!勝ち続けること、勝ちのみに固執してしまうと大事なものも見えなくなってしまうぞ!!」

と、叱るように言うと、沼田、ついに本題へと入った。

「そして、「心の底から楽しむこと」、その根底にあるのは、「部活そのものが好き」という気持ちなのじゃ!!部活をすることが好き、その競技そのものが好き、その気持ちだけあればみんなと一緒に部活を楽しむことができる、どんな困難があってもみんなと一緒に乗り越えることができる、そういうものなのじゃぞ!!そして、いろんな経過のなかでみんなと一緒にいろんなことを経験していく、たとえ、負けたり挫折してもな、その経験のなかで自分たちにとって重要なことを学んでいく、その積み重ねによって学生たちは一歩ずつ成長していき、やがて大きな目標を達成するとともに一人前の大人になることができる、それこそ部活おいてとても大切なことなのじゃ!!」

部活そのもの、競技そのものを好きであること、それこそ部活をする上でとても大切なのかもしれない。だって、「好き」という気持ちは人にとってあることを成し遂げる上では必要なものだから。いや、「好き」という気持ちほど強い動力源はないのだから。「好き」という気持ちを持ち続けることにより、たとえだんな失敗をしても、そのものを「好き」という感情をバネにまた一からやり直すことができるから。それくらい「好き」といいう気持ちはどんな感情よりもとても強い力をもつものなのである。なので、その「好き」という気持ちが元になっている「心の底からそれを楽しむ」というのはどんなことがあってへこたれることなんてない、万能の薬、なのかもしれない。そんな意味でも、「部活を楽しむ」というのは大きな目標を成し遂げるためにもとても大切なことといえるかもしれない。

 そして、それは(第6部第15話に書いた)月にもあてはまるかもしれない。月はプロデューサー見習として千歌たち赤生のサポートをしてきた。そのなかで月は、Aqoursそのもの、いや、スクールアイドルそのものを好きになった、のかもしれない。さらに、そのなかで月はいろんな経験を経ることで「スクールアイドルそのものを楽しむ」ことを知り、それによって発生した、「Aqoursのみんなと一緒にスクールアイドルを楽しむ」、その気持ちと「スクールアイドル、Aqoursが好き」という無限の動力源によりローマ・スペイン広場でのライブの成功という大きな目標を達成することができたのかもしれない。そんな意味でも、月にとってみればイタリアでのプロデューサー見習としての経験は自分を成長させる大きな機会となった、のかもしれない。

 そして、それは千歌たちAqoursにもいえた。千歌たちAqoursはこれまで、ラブライブ!夏季大会前の東京でのスクールアイドルイベント、ラブライブ!夏季大会東海最終予選、浦の星の廃校決定、と、3回の挫折を味わっている。そのなかでも浦の星の廃校決定のときにはスクールアイドルそのものをやめようとしたときもあった。が、それでも、その度ごとに千歌たちAqoursは立ち上がり、きつい練習をこなしていき、いろんなことを経験していくことで、千歌たちAqoursはラブライブ!で優勝するくらいにまで成長することができた。それはひとえに、千歌たちAqoursメンバーがスクールアイドルが好きだから、そんな気持ちがあったから、かもしれない。「スクールアイドルが好き」、という気持ちがあったからこそ、千歌たちAqoursは何度も挫折しても何度も立ち上がることができた、のかもしれない。いや、それ以上に、ラブライブ!優勝できるまで成長させるほど底知れぬ力を秘めていたのかもしれない、「(スクールアイドルが)好き」という気持ちには・・・。(むろん、そこには千歌たちAqoursのことが「好き」であり心の底からAqoursを応援してくれたよいつむトリオら浦の星の生徒たち、そして、内浦の人たちの存在も忘れてはいけない。だが、その根底にあるのは千歌たちAqoursのことが「好き」という気持ちであり、そんなよいつむトリオたちAqoursのことが「好き」という気持ちが千歌たちAqoursをうしろから支える原動力になっていることも忘れてはならない)

 それに対して、旺夏の場合はどうなのだろうか。月とAqoursとは違い、勝つことだけを信条としている。本当にサッカーが好きかどうかは不明である。ただ1つだけ言えるのは、旺夏は「勝つこと」のみに執着していること、「勝つこと」でのみサッカーが「好き」という気持ちを保たせている、そのことであった。そして、旺夏はそれを叶え続けるため、「好き」でありたいがために「勝利」にのみ固執してしまったため、(旺夏でいうところの)女子サッカー部という部活はきっちりと管理された状態でチーム一丸で行動することになっているのかもしれない。その部活においては「勝利」という大きな目標の名のもと、ただたんに「勝利」のみを追求していく・・・、それが部活の究極の形である、と、旺夏は思っているのかもしれない。が、そこに大きな落とし穴があったりする。それは、負けた場合のときに発生する。きちっと管理された状態で勝ち続けれているのであればそのやっていること(旺夏ならサッカー)を「好き」という気持ちを持ち続けることができることだろう。だって、「勝つこと」に執着しているので、「勝利」したことで自分のそれに対する「好き」という欲求を満たすことができるから。が、負けてしまった場合、「勝つこと」に執着しているものの「勝利」という美酒を得ることができなかったために「好き」という欲求を満たすことができないことにつながってしまう。いや、もし、ケガなどで挫折したとしたら「勝利」という美酒から遠のいてしまうことは誰からみてのあきらかである。それはすなわち「好き」という欲求を当分のあいだ満たすことができなくなることを意味してしまう。これらのようなことが起きてしまうと「好き」という欲求を満たすことができなくなってしまい、それによって自分がやっていることを好きでいられなくなる、そうでなくても、やっていることに対するやる気、モチベーションを失うことにつながってしまう。いや、もしかすると、負けること、挫折することがなくても、管理された状態のなかで「勝利」だけを追い求めてしまうあまり自分たちの本当の気持ちなんて無視し続けてしまうと、部活などチームそのものがシステム化されてしまい、結果的に自分たちがやっていることに対する「好き」という感情、そこからくるやる気、モチベーションを失ってしまうかもしれない。こうなってしまうと、部活、チームそのものが崩壊するのは時間の問題である。それくらい、「好き」という感情はときと場合によってはマイナスに働くこともあるのだ。

 そして、沼田はこんなことまで言いだしてしまう。

「それじゃ、「楽しむこと」と「好きであること」、それ自体お互いに補完関係でもあるのじゃ!!「好き」という気持ちがあるから「楽しむこと」ができ、「楽しむこと」ができるから「好き」という気持ちに磨きがかかるのじゃ!!それはスクールアイドルもサッカーも、いや、すべてにおいていえることなのじゃ!!」

まさにその通りかもしれない。なぜなら、「好き」だからこそ心の底から「楽しむこと」ができるのであり、みんなと「楽しむこと」ができれば自分の心のなかにある「好き」という気持ちに磨きがかかるものなのである。Aqoursの場合、千歌たちはみなスクールアイドルのことが、Aqoursのことが大好きである。そして、いくつもの過程において千歌たちはみんなAqoursとして練習やライブを心の底から楽しんだ。それはたとえとてもきついものであってでもある。そんなきついものまで耐えるだけでなく楽しむことができた理由、それは、千歌たちみなスクールアイドルやAqoursのことが好き、という気持ちがあったからである。そして、その過程において千歌たちはみな、スクールアイドルとして、Aqoursとして、練習やライブを心の底から楽しむことができたことで千歌たちはさらにスクールアイドルやAqoursのことが好きになっていったのだ。こうして、千歌たちAqoursは

「好き」→「楽しむ」→「好き」→「楽しむ」

というサイクルを何度も何度も繰り返した結果、ラブライブ!優勝という夢を叶えた、ばかりではなく、自分たちだけの輝きを得ることができたのである。

 また、「好き」→「楽しむ」→「好き」→「楽しむ」のサイクルは「好き」という気持ちをずっと保持し続ける効果を持っていたりする。人というのはよっぽどのことがない限り、そのものに対して「好き」という気持ちを持続することができなかったりする。日々

いろんなものに晒されている現代において、人というのは1つのものに執着することが難しかったりする。なぜなら、人というのは日々いろんなものにさらされているためにころころと自分の興味が変わってしまうからである。なので、今、そのものが好きであっても、1年後、10年後も同じものが好きである、と、断言できなかったりする。が、自分が好きなものを通じてみんなと好きなものを楽しむ、その行為が起きるのであれば、みんなと一緒にそのものに対して「好き」を共感できるから、好きなものについてみんなと嬉しい感動を分かち合うことができるから、それによって「好き」という欲求を満たすことができるばかりではなく、「好き」という気持ちにより磨きがかかるものである。こうして、「好き」→「楽しむ」→「好き」→「楽しむ」という好サイクルにより、その人が持つ「好き」という気持ちは言葉では言い表せないようなとても大きな存在となっていく。こうなれば、いろんな失敗や挫折が起きたとしてもくじけることがない、そんな強い心を持つことができる、そういっても過言ではないだろう。そして、それは月にもいえるし、千歌たちAqoursにもいえることだろう。

 一方、旺夏みたいに「勝利」のみに固執してしまうと、「好き」→「楽しむ」→「好き」→「楽しむ」というサイクルは起きない、だって、たとえ、今、それが「好き」であっても「楽しむ」という気持ちがない、それどころか、「好き」よりも「勝利」を優先してしまうから。で、こうなってしまうと、自分の心のなかでは「勝利」という2文字しか目に見えなくなってしまい、もし、敗北、失敗、挫折が1度でも起きたら、「勝利」という2文字を達成できない、と、勝手に思ってしまい、さらいは、「勝利」という2文字を喪失したことでそれに対して「好き」という気持ちすら喪失してしまう、そんな危険性すら潜んでいる。だからこそ、「好き」という気持ちは持続させるにはみんなと「楽しむ」ことが重要である、いや、それ以上に、「好き」→「楽しむ」→「好き」→「楽しむ」という好サイクルがあるからこそ人というのは未知のパワーを引き出すことができるのかもしれない。

 そんな話に熱がはいる沼田であったが、これについても忘れていなかった。

「しかし、「楽しむこと」「好きであること」の好サイクルにより自分たちの能力、やる気などを高めたチームは、たった1つ、自分たちだけ、ではない。そんなチームが全国にごまんといる。むろん、部活、特にスポーツ系は全国大会があるくらい、そんなチーム同士で戦うステージというものがある。そこで自分たちのすべてを高めたチームは、自分たちと同じく、「好き」「楽しい」の好サイクルにより持てるものすべてを高めたほかのチームと戦うことになる。これはそういう部活をしている以上、仕方がないことなのじゃ」

 と、ここで外からヤジが・・・。

「ふんっ、やっぱり戦うのか!!むろん、勝つことを目指すのですよね!!」(木松悪斗)

これには沼田も、

「むろん、全国制覇をしたい、少しでも上を目指したい、という目標があるなら勝つことを目指すことになるな」

と、木松悪斗の意見をあっさり認めてしまった。これには、木松悪斗、

「ふんっ!!やっぱり俺の言うことは正しいのだ!!勝つことこそすべて、なのだ!!」

と、逆に意気込んでしまった。

 が、これについては、沼田、しっかり否定してしまう。

「木松悪斗、それは違うぞ!!お前の言う勝つことはただ勝ちに行くことを意味しているのだぞ!!どんな手段を使ってでも勝利を目指す、それは人の気持ちとか関係なく、いや、人を勝利するための道具、相手を屈服させたい、徹底的に叩き潰しにいく、相手のことなんて関係ない、本当に勝つことのみに執着した、本当に最悪のものだ!!」

しょこの沼田の力説に、木松悪斗、ただ、

「ぐぐぐ・・・」

と、うなるしかなかった。



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Moon Cradle 第7部後編 第27話

 そして、沼田は自分の話へと戻った。

「木松悪斗が言う戦うこと、勝つこと、とは、ただ勝ちにいくだけのもの。それに対し、わしが言う、戦うこと、勝つこと、とはそれとはまったく違うものだ!!それはな、ただ勝ちにいくのではなく、お互い相手のことをリスペクトしつつ、自分たちが持つものすべてを賭けて全力全開で戦い打ち勝つもの、なんじゃよ!!」

「楽しい」「好き」、この気落ちによって日々のきつい練習にも耐え、自分たちが持つものすべてを高めあった同士なら自然と相手のことをリスペクト(尊敬)する。そう、お互いが、相手の実力、熱意、頑張り、その他もろもろ、そのすべてを認め合ている、こうなれば、お互い、相手のことをリスペクトしつつ、自分たちが持てる力そのすべてを賭けて勝負しようとする。だって、お互いいくつもの失敗、挫折を味わいながらも「好き」「楽しい」という最強の気持ちでもって自分たちのすべてを最強なまでに引き上げた者同士じゃ少しでも手を抜けば負けてしまうのは目にみえている。だからこそ、お互い自分たちが持つものすべてを賭けて死力を尽くそうとする。その戦いこそ沼田のいう戦い、であった。

 さらに、沼田はその戦いによる勝利についても力説した。

「そして、この戦いの果てにあるもの、それこそ、「意味のある勝利」なのじゃ!!自分たちが持つものすべてを賭けて死力を尽くして得た勝利、それはこれまで苦しい想いで頑張ってきた、「好き」「楽しい」という最強の気持ちで自分たちが持つものすべてを高めることができた、そんな自分たちに対する勲章、といえることができるのじゃ!!いや、自分たちの頑張りがみんなから認められた、その瞬間、といってもいいだろう!!」

 

 さらにさらに、沼田は勝負に負けたチームについても語った。

「また、負けたほうも負けたほうで得るものが大きい。たしかに負けたかもしれない。けれど、死力を尽くして戦ったんじゃ、負けたことに対する悔いなんてないかもしれない。いや、むしろ、すがすがしいものを感じているのかもしれない。そして、負けた者はこう思っているかもしれない、この負けをバネに「好き」「楽しい」という気持ちともにまた頑張っていける、今度こそ自分の力で勝ってみせる、ってね!!」

人というのはお互いのことをリスペクトしつつ自分たちがもつものすべてを賭けて全力全開で死力を尽くして得た勝利ほど最古のご褒美はないのかもしれない。だって、自分たちのすべてを賭けて勝負し勝ったことでこれまで自部たちがしてきたつらい練習などが勝利というかたちで実を結んだ、それを実感することができるのだから。そして、その達成感こそ部活をする上でとても重要だったりする。なぜなら、この経験で、さらにこの達成感をまた得たい、そう思ってさらに自分のすべてを磨こうと思うから、さらに、それが「好き」「楽しい」の好サイクルにより人をさらなる高みへと昇らせることになるのだから。「ただ勝つ」ことだけを目指すものとは違い、このときの勝利は人をもっと進化させることができる、それこそ、沼田のいう、「意味をもつ勝利」、であった。

 また、この勝利には負けたほうにもメリットがある。それは、負けたとはいえ、自分たちが持てる力をすべて出し切った、戦ったのである、たとえ負けて悔しい思いがあるのかもしれない。が、それでも、自分たちはやりきった、という思いのほうが強いかもしれない。さらに、この敗北そのものが自分たちにとっていい経験になる。なぜなら、人はこのような敗北をしたとき、なぜ負けたのか、その理由をすぐに分析し、それを次に活かそうとするからだ。さらに、この敗北を教訓に人はさらに自分を磨こう、と、成長しよう、と、頑張ることができるのだ。それは、今まで自分たちが目指したもの以外にもいえる。さらに、その敗北によって今まで自分たちが目指していたものへの道が閉ざされたとしてでもいえることである。人というのはたとえ目指していたもの、夢への道が潰えたとしても、なにかのきっかけにより、また別のもの、別の夢を目指すことができる生物である。そこで活かされるのは、これまで目指してもの、その夢の道の途中で得た経験、だったり、想い、キズナ、だったりする。なので、敗北したという経験そのものが自分たちにとってまた別のかたちで強力な武器となることができるのだ。そう考えると、勝っても負けても、「意味のある勝利」を目指して、魂と魂のぶつかり合い、勝負することこそ意味をもつのかもしれない・・・。

 

 そんなわけで、あまりに長かったが、ようやく、沼田、今回のまとめにはいった。

「と、言った具合に、わしは「部活とはなにか」「部活をする上で一番大事なものとは」についてざっと言ってきたが、これらについてはこうまとめたいと思う。

 

部活動というのは学生が部活そのものが好きになり、部活のみんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していく、そんな貴重な場である!!つまり、

 

「部活動とは楽しむことがすべて」

「部活動にとって一番大事なものとは、その部活が好きであり、みんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していくこと」

 

なのじゃ!!

 

そして、そのなかで学生たちは自分たちが持つ未知のパワー、いや、パワーの原石をみんなと一緒に楽しみながら磨いていくことで、「(部活が)好き」「みんなと一緒にもっと楽しみたい」、そんな最強の想いとともに自分たちが持つものすべてを成長させていくのじゃ!!さらに、たとえ、同じ志をもつ者同士が死力を尽くして戦って勝ったしても、負けたとしても、お互いに意味をもつものとなるのじゃ!!それはな、

 

「勝ったことで、これまでやってきた苦労が報われた、そんな達成感を得ることができ、それが、自分たちにとって自分たちが持つ力をさらに高めようと思う、そんな起爆剤になるんじゃぞ!!そして、負けたとしてmこ自分たちが持つものすべてを賭けたこと、死力を尽くしたことでやり切ることができた、この敗北そのものがいい経験となった。それがこれから進む道において強い武器となる」

 

と、いうことなんじゃよ!!」

と、強気でまとめた沼田、であったが、つい本音が漏れてしまう。

「まぁ、本当のところ、相手同士、お互いをリスペクトしつつも自分たちが持つものすべてを賭けて、全力全開、死力を尽くして行う戦いというものは、第三者、死力を尽くした戦いを見に来ている者からしても手汗握る展開にハラハラするものなのじゃよ!!いや、そこにいる者すべてがその戦いを楽しみながら見ているものなのじゃ!!で、その者とは、野球、サッカー、でいうところの監督やマネージャー、試合のアナウンサー、ボールキーパーなど、スクールアイドル関連だと、プロデューサーやマネージャー、スタッフなどじゃ。白熱握る戦い、いや、戦いじゃなくても、路上ライブやちょっとしたお祭りのような小さな催し、学園祭や体育祭といった学校行事、スクールアイドルフェスティバルや沼津夏祭りのような大きなイベントでもそのことはいえる。そこに関わる者すべてがそれに対して「好き」であると同時に「みんなと一緒に楽しみたい」と思うことができるのであるなら、たとえどんな困難があっても必ずやり遂げることができる、必ず成功する、といえるだろう。そして、たとえ最初それについて「好き」でなくても、ただやることになったからやるだけ、と思っている者がいたとしても、まわりのみんなからそれに対して「好き」であり、その者たちと一緒にそれをやっていくうちにそれに対して、「楽しい」、そんな気持ちが生まれてしまえば、その者も自分が知らないうちにそのものが「好き」になってしまい、しまいには、「みんなと一緒にそれを楽しみたい」、と思えるようになるものなんじゃよ!!それほど、「好き」「楽しい」の好サイクルによる影響力はとても強いものなんじゃよ!!いや、人を、人類を、進化させるためにはその好サイクルこそ必要だといえるのじゃぞ!!」

人というのはまわりのものの影響を強く受けることでそのまわりの色に染まりやすいものである。たとえば、まわりに強い者がおり、その者が弱い者をいじめていれば、それに抗う強い意志がないかぎり自分もその弱い者をいじめたり、たとえそうでないとしても、自分は関係ないとばかりその弱い者を無視する傾向がでやすい。むろん、その逆もある。まわりの者がやっていることにあまり興味がないと思っている者がおり、その興味がない者がまわりの者と一緒にそれをするとしよう。もし、そのまわりの者がそれを行うことがとても好き、であれば、そのまわりの者は楽しみながらそれをやっていることになる、こうなると、興味を持っていない者もそのまわりの者たちが楽しくやっているのを見てその者もなぜか楽しく思えてきてしまうものなのである。こうして、それをまわりの者と一緒に繰り返していくうちに、それについて最初は興味をもっていなかった者も自分が知らないうちにそれを好きになってしまい、同じ好きもの同士であるまわりの者と一緒に楽しいことをもっとしたい、そんな気持ちになることで自ら進んでそれを行ってしまう、そして、それをさらに好きになってしまう、そんなことが起きるだろう。そう考えてしまうと、「好き」「楽しい」の好サイクルは沼田の言う通り、たとえ好きでないものすら「好き」という色に染めてしまうほど強い力を持っている、ともいえる(むろん、その逆もしかり、なのだが・・・)。

 そして、それは月にも当てはまる。月はスクールアイドルについてあまり知らなかったのかもしれない。だって、最初、千歌たち新生Aqoursを宿敵である木松悪斗を倒すためだけの道具として使おうとしていた?のだから。が、月自身がAqoursとのイタリア旅行を通じて千歌たちAqoursメンバーと触れ合うことで、少しずつ、Aqoursのこと、スクールアイドルのことがどんどん「好き」になっていったのかもしれない。そして、今、月はそんなとても好きなAqours、スクールアイドルのために、もっとみんなと一緒に楽しみたい、と思うあまり、ラブライブ!決勝延長戦の(Aqours側の)プロデューサーを引き受けたのかもしれない。むろん、そこに至るまでの過程のなかで月は成長することができた。最初、大親友である曜と一緒に学校に通いたい、それゆえに、宿敵である木松悪斗を倒すことのみを考えていた。が、今では、Aqoursのみんなと一緒に素晴らしいステージを作りたい、みんなと一緒にスクールアイドルを楽しみたい、と思えるようになってきた。むろん、それはお披露目ライブを行おうとしているよいつむトリオやあげはたちにも当てはまる。不安・心配という深き海・沼にもがき苦しんでいた千歌たち新生Aqours1・2年のため、少しでも静真本校と浦の星分校の統合を認めてもらいたい、そのためによいつむトリオら浦の星の生徒たちとあげはたち静真Aqours応援団は新生Aqoursのお披露目ライブを行えるように行動を開始した。最初のうちは夢物語のようだったが、それでも必死になって行動した。そして、その行動がもとで少しずつ形となっていった。さらに、Aqoursがスペイン広場でのライブを成功させたことで新生Aqoursのお披露目ライブは現実味を帯びるようになると、今度は沼津の人たちが、協賛、ライブへの出店などのかたちで新生Aqoursのお披露目ライブを応援するようになった。その人たちの根底にあるもの、それは、Aqoursのことが好き、スクールアイドルのことが好き、だからこそ、沼津のみんなと一緒にこのライブを楽しみたい、そんな気持ちかもしれない。そんな意味でも、「好きであること」「みんなと一緒に楽しむこと」という気持ちはとても大切だといえる。

 なのだが、沼田、ついうっかり、あることを言ってしまった。

「まぁ、人というのは、そんな「努力・友情・勝利」という三要素が入った物語が好きだもんね!!それに、相手をリスペクトしつつすべてのものを賭けて、全力全開で、死力を尽くして戦う、というシチュエーションはとても燃えるもんだよね!!さらに、最初、まったく力がなかった主人公が仲間たちと一緒になって力をつけていき、最後、大きな偉業を成し遂げる、といった物語、みんな、とても好き、だもんなぁ!!」

この沼田の発言には、会議室にいるみんな、

ガクッ

と、こけてしまった。沼田のじっちゃんよ、それ言うたらあかんでしょ・・・。

 と、おちゃめなことを言った沼田に対し、沼田の隣にいた(「ラグーン」の運営会社の)会長はこの沼田の持論を受けてこう発言した。

「まぁ、ちょっとおちゃめな沼田殿はほっといて(「ほっとくな!!」by沼田)、私も沼田殿の意見に賛成だ。学校というのは学生たちがいろんな経験をしていくうちに自分の力などを成長させていく場所、そして、部活動とはそれをする上でもうってつけの場所である。そして、部活動において、学生たちはその部活でやること、いや、部活動そのものが好きであり、そんな好きなもの同士、日夜、楽しみながら切磋琢磨しながら部活をやることでいろんな経験を積むことができ、それによって自分たちが持つ能力や心などを成長させることができる。こうして、学生たちはそんな経験をしていくことで一人前の大人へと成長、社会へと羽ばたくことができるようになるのだ。だが、木松悪斗の考え、ただ勝つこと、のみを目指してしまうと、勝つことにのみ執着してしまうことになる。そうなると、学生たちは一人前の大人へと成長することを忘れてしまう。そうなれば、その学生たちは子どもの心のままで社会に進出することになる。こうなってしまうと、学生たちはおろか、日本の種界全体がおかしくなってしまう。私はそれを危惧している。だからこそ、私は沼田殿の考えに賛成であり、沼田殿の判定は妥当だと考えておる」

 沼田の持論を援護する運営会社の会長・・・、しかし、この男はこの2人が言うことになびかなかったようだ。

「ふんっ!!そんな説教、この私には効きませんよ、この木松悪斗様にはな!!」

そう、木松悪斗である。あんなに沼田が力説していたのにも関わらず、自分の考えに固執してしまっていたのである、木松悪斗は。そんなわけで、木松悪斗、持論を展開する。

「言っておきますが、今の世の中は「勝利こそすべて」なのですよ!!負け、すなわち、人生の終わり、なんですよ!!それは人が生まれたときから、誰かとの競争、戦いに晒されているからですよ!!そして、生き残るためには他人との競争、戦いに勝ち続けるしかないのですよ!!負けたらそこでゲームオーバー、再び這い上がることなんてできなくなる!!それは自分の子ども、子孫にも影響する!!、その家計は未来永劫底辺を這いずり回るしかない!!だからこそ、勝ち続けることがとても大事なんですよ!!」

 が、そんな木松悪斗の持論に対して、沼田、ばっさりと切る。

「だからこその学校であり部活なのだ!!学校での経験、特に部活動を通じて得た経験、想い、キズナ、というものは一生の宝物としてずっと学生たちの心の中に残っていく。そして、その宝物を通じてずっと仲間たちとつながっていけるし、厳しい社会を生き抜く糧にもなる!!さらに、ことと場合によってはそれにより社会のなかで躍進することだってできる!!「好き」であること、「みんなと一緒に楽しむこと」こそ、子どもたち、学生たちにとってとても大切なことなのじゃ!!」

 沼田の力強い言葉・・・だったのだが、自分の考えにのみ固執している木松悪斗の心に響いたわけでもなく、

「そんなもん、この私には関係ない!!おれの言うことが正しいのだ!!」

と、自分の考えのみを主張、そればかりか、

「ふんっ、こんなわからずや、頑固爺めっ!!こうなったら、力づくで(月の屋上使用申請受理を)止めてやる!!」

と、言っては自分の手元にある書類を取り出す。そこには・・・、

「使用申請受理却下書」

そう、木松悪斗、最悪の場合に備えて屋上の使用申請受理却下の書類をちゃっかり自作して用意していたようだ。そして、それを、今、木松悪斗は使おうとしていた。もし、「ラグーン」運営会社の会長がそれに捺印したら、半場強制的に月の屋上使用申請受理が却下されてしまう。そんなわけで、木松悪斗、

「裏美、旺夏、あの親父(運営会社の会長)を拘束しろ!!」

と、自分の隣にいる裏美と旺夏に運営会社の会長を拘束するように命令!!すぐさま、裏美、旺夏、目にもとまらぬ速さで運営会社の会長を拘束すると、

「それじゃ、(運営会社の)会長、捺印してもらいますからね~」

と、木松悪斗、一歩ずつ、悪人のオーラを出しながら運営会社の会長へと近づいていった。



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Moon Cradle 第7部後編 第28話

 が、最悪の場合を備えていたのは木松悪斗だけではなかった。運営会社の会長に近づく木松悪斗、そこに、

「ちょっとSTAY(待つ)ので~す!!」

と、言っては、木松悪斗の運営会社の会長のあいだに立つ少女がいた。これには、木松悪斗、

「はぁ~、これはこれは、小原家のご子息、じゃありませんか~。王子様気取りですか?」

と、自分の前に立つ少女こと鞠莉の目を見てはにらみ返す。が、鞠莉、頑として、

一歩も動かず、逆に木松悪斗にがん飛ばししてにらみ返しては、

「まさか、ここに、Bad Man(悪い人)がいるなんて、この世はThe END(終わり)ですね~!!」

と、言っては、木松悪斗に対し言い返す。これには、木松悪斗、

「ふんっ、この若造(鞠莉)が!!お前なんてひとひねるだ!!」

と、言っては運営会社の会長のまえを立ちはだかる鞠莉を強引にどかそうとする。

 が、鞠莉、この木松悪斗のいきなりの対応にもの落ちせず、逆に、

「ふ~ん、これを見て同じことが言えるのですかね~」

と言うと机の下に隠していた映写機をテーブルの上に置くと、そのまま、

「スイッチオン、で~す!!」

と、言っては映写機の電源を入れてしまった。

 そして、会議室の白い壁には大きな男が・・・、

「おう、鞠莉、映っておるかな?」(壁に映る大きな男)

「えっ、いったい誰・・・?」(木松悪斗)

「あっ、これはミステイク(失敗)で~す!!(壁に映る映像を)調整するの、忘れていたので~す!!」(鞠莉)

なんと会議室の白い壁には大きな男がぼんやりと映っていた・・・。どうやら、鞠莉、映写機をテーブルの上に置いて電源をいれることしか頭になかったらしく、白い壁に映る映像を調整することをついうっかり忘れていたようだ。

 そんなわけで、鞠莉、

「ふぅ、これでばっちり見えるので~す!!」

と、映写機の映像を調整。すると、とつぜん、木松悪斗、白い壁に映る大きな男を見てこう叫んだ。

「こ、これは、小原家当主!!」

そう、白い壁に映っていたのは、鞠莉の父親、さらに、世界に名を知られている、小原財閥の総帥である小原家当主、だった。それに・・・、

「は~い、、鞠莉、元気にしてた?」

と、鞠莉の母親、鞠莉‘sママも映っていた。で、沼田、つい、白い壁に映る鞠莉‘sママに対して、

「お~、これはこれは鞠莉‘sママさん、ご機嫌麗しゅう。映像越しとはいえ、とても美しい限りですぞ!!この沼田、今にでも鞠莉‘sママさんとご一緒したいものですぞ!!」

と、夫である小原家当主が鞠莉‘sママの隣にいるにも関わらず鞠莉‘sママを口説こうとするも、鞠莉‘sママ、そんな沼田に対して一言。

「お~、これはこれはとてもHappy(嬉しい)ですね~!!でも、沼田さん、本当にSorry(ごめんなさい)で~す!!だって、この私にはここにいるダーリン(小原家当主)一筋なんで~す!!ただ、そうであったとしても、お世辞とはいえ、そう言ってもらえるのは本当に嬉しいもので~す!!」

 と、ここで沼田と鞠莉‘sママの茶番はここでおしまい・・・ということで、小原家当主、ついに本題へと入る。

「さて、木松悪斗君、あなたの失礼な行いのすべて、沼津にいる私の部下たちから聞いておる。それに、この場において、木松悪斗、あなたの言葉、いや、暴言、一言一句、すべて聞かせてもらった!!」

この小原家当主の言葉に、木松悪斗、

「えっ、私の過去の行いについては知っていてもおかしくないが、なんで、たった今のことなのに、この会議室の私の発言を数々をなんでここにいないはずの小原家当主が知っておるのだ?」

と、戸惑ってしまう。まさかここでの自分の発言がここにいないはずの小原家当主に筒抜けになっているとは・・・。

 だが、その謎はすぐに解決された。鞠莉、自分のポケットから自分のスマホを取り出すと、木松悪斗に向かって一言言い放つ。

「いや~、今は便利な世の中になったのですね~!!だって、誰にもバレずに、それも無料で、遠くにいるパパ(小原家当主)にここにいるみんなのトーク(会話)、聞かせることができるのですからね~!!」

なんと、鞠莉、自分のスマホにインストールされていた無料通話アプリを起動しては通話できる状態のまま、この会議室に入る前に自分のポケットに自分のスマホを入れていたのである。で、その通話アプリの相手、それが自分の父親、つまり、小原家当主、だったのである。こらや、木松悪斗のこの会議室での発言、いや、暴言、鞠莉のスマホ(にインストールされた無料通話アプリ)を通じて小原家当主に全部筒抜けになるのは当たり前か・・・。

むろん、このことを知ったとたん、木松悪斗、

「この小童(鞠莉)め~」

と、鞠莉のことを叱るもあとの祭りである。

 そんなわけで、ついに始まった、木松悪斗の断罪タイム・・・。小原家当主、鞠莉に向かって叱っている木松悪斗に対し、強い口調で、

「この狼藉ものめが!!この俺のかわいい一人娘に汚い言葉を投げかけるとは、不届き千万!!」

と、一喝!!これにはさすがの木松悪斗も、

「は、はい・・・」

と、たじろいてしまった。これで勝負は決まった!!ついに弱腰になった木松悪斗に対し、小原家当主、まるでエンマ大王みたいな形相で木松悪斗をにらむと、そのまま、木松悪斗の罪状を読み上げる。

「木松悪斗、お前は静真に小原家が投資してくれなかったことで自分の思い通りにならなかった、そのことで、小原家と浦の星に恨みを持つようになり、自分の権力をかさに、当初決定していた静真高校と浦の星女学院の統合を白紙に戻そうとした、(静真高校の部活動に参加している生徒の保護者たちの連合体である)静真高校部活動保護者会の会長であることをいいことに、静真の生徒や保護者たちに事実とは異なる噂を流すことでな!!」

これには、木松悪斗、

「それは俺の考えからであり、決して間違いじゃ・・・」

と、弱弱しく反論するも、

「黙れ!!」

と、小原家当主、これを一括、木松悪斗、黙ってしまう・・・。この様子を見ていた小原家当主、すぐに木松悪斗の罪状を読み続ける。

「そして、沼田殿の働きかけでなんとか統合したものの、その嘘の噂によって起きた保護者たちの声により、その声がなくならない限り分校方式をとらざるをえない結果を招いてしまった。そして、お前は静真本校と浦の星分校の統合を阻止するため、静真本校と浦の星分校の統合を果たそうと頑張っていた渡辺月生徒会長率いる静真高校生徒会と鞠莉の大事な仲間たちである(新生)Aqoursを陥れようとしていた。これにより、(新生)Aqoursは不安・心配という深き海・沼に陥ってしまった。そればかりか、これをいいことに、私の大事な浦の星の生徒たちの学ぶ環境すら破壊しようとしていた!!」

これには、木松悪斗、

「・・・」

と、無言。まぁ、(新生)Aqoursの件については月の思惑通りにいかなかったことのほうが大きいのですが、木松悪斗とその娘である旺夏の悪だくみによるものも大きかったですし、半ば当たっているかも・・・といってもそんなこと小原家当主には関係ないことですしね・・・。

 とはいえ、小原家当主の話はまだまだ続く。

「そして、ここでも沼田殿の働きによってなんとかなったが、木松悪斗、あのとき、3月の通常理事会のときに沼田殿から言われていたこと、統合に向けての月生徒会長とその生徒会、さらには、私の娘、鞠莉が参加しているAqoursを含めた浦の星の生徒たちの行動の邪魔をしないこと、それを言われていたにも関わらず邪魔をしていたではないか!!それも自分の手を汚さず、ただ小原家も一緒に潰したいがために私の大事なハニー(鞠莉‘sママ)までかどわかすとは・・・、本当に根が腐っているとはこのことなんだな・・・」

むろん、これにも、木松悪斗、

「そ、それは・・・、ここにいる裏美本人がしたことでして・・・」

と、言い逃れようとする。まぁ、これもある意味当たっているのだが・・・。実は沼田から木松悪斗に対して月やその生徒会、浦の星の生徒の統合に向けた行動を妨害しないようにと部活動報告会後に行われた3月の通常理事会のときに言われていたのですが、(この会議室の一件以外)Aqoursや月、浦の星の生徒たちに対しての妨害工作は全部裏美が単独で行っていた・・・なんて言ったとしてもそんなもの小原家当主には言い訳にしか聞こえず、逆に、

「ふんっ、そんな言い訳は聞きたくもない!!げんに、お前はなぜそこにいる?そんなの聞かなくてもわかる!!月生徒会長とAqoursの行動を妨害するためにそこにいるんだよな!!」

これにはさすがの木松悪斗も、

「うぅ・・・」

とうなるしかなかった。

 そして、小原家当主、ここにきてさらにヒートアップする。

「それにたとえそうでなくてもしても部下の不始末は長であるお前の責任とも言えるんだぞ!!これが社会のルールってもんだ!!」

大の大人がこう言われてしまったらもうどうすることもできない。木松悪斗、

「むむむ・・・」

と、顔をゆがませながらただ聞くだけになってしまった。

 そんな顔をゆがませたままの木松悪斗に対し、小原家当主、ついにこのときが来たとばかりに、

「さて、これが、木松悪斗、お前がこれまで犯してきた罪状である。本当に自分勝手、忘却無人な行いの数々である。こんな罪人をほっておくことなんてできない!!」

と、木松悪斗をしかりつけるように言うと、そのまま、

「それじゃ判決を言い渡す!!」

と、本当に地獄で罪人を裁くエンマ大王になったのかごとく木松悪斗ににらみを利かせる。

 が、このとき、木松悪斗にある気持ちが芽生える。

(こ、これはまずい・・・。このままいけば絶対に人生が終わる!!)

そう、本能的に、今、自分が危険な状態に置かれていることを悟ったのである。このまま小原家当主から判決を下されたら自分の人生は終わりである、たとえそうでなくても、もう経済の世界にはいられなくなる、そのことを木松悪斗は本能的に悟ったのである。で、そんなわけで、

(自分としてはふがいないことだが、生き残る意味でもここは三十六計逃げるが勝ちだ!!)

と、思ったのか、木松悪斗、沼田と「ラグーン」運営会社の会長、そして、鞠莉に対し、

「あっ、たしか、これから東京で大事な方との解職があった。もう行かないと。それでは私はこれにて。さらば!!」

と言っては裏美と旺夏をおいて逃げようとする。

 が、あともう少しでドア・・・というところで、

「ここはマリーにお任せで~す!!このマリーのスクールアイドルで鍛えた脚力をなめないでいただきたいで~す!!」

と、鞠莉、目にもとまらぬ速さで会議室のドアのところまでダッシュすると、まさかのとうせんぼ!!これには、逃げる木松悪斗、

「邪魔するな、この小童(鞠莉)が!!」

と、とうせんぼする鞠莉をどかそうとするも、鞠莉が持っているタブレットから、小原家当主、

「黙るのはお前だ、木松悪斗!!」

と、木松悪斗を一喝!!

 そして、小原家当主、そのまま木松悪斗に判決を下した。

「さてと、木松悪斗、お前に判決を言い渡す!!木松悪斗、もうこれ以上静真本校と浦の星分校の統合に口出しをするな!!さらに、あの(報告会後に行われた)3月の通常理事会のときに決めたこと、「来月の新学期が始まるまでに「浦の星の生徒が静真の部活動に参加すると悪影響が出る」という保護者の声を改善しなければ月生徒会長以下静真高校生徒会役員全員退学する」、それ自体を無効にする!!」

そう、あまりにも物語が長すぎてお忘れのかたもいるかもしれない。月とナギたち静真高校生徒会は3月の通常理事会のときに静真本校と浦の星分校の統合の障害となっていた保護者の声、それを来月の新学期までに改善できなければ退学する、そんなことを約束していたのだ。そのため、月はこの期日までに(新生)Aqoursを復活させようと頑張っていたし、ナギたち静真高校生徒会もその期日ぎりぎりとなる4月上旬に(新生)Aqoursお披露目ライブを行って保護者の声を打ち消そうとしていた。対して、木松悪斗側の裏美も3月の通常理事会のときに一緒に決まった月たちへの妨害禁止を聞かずに勝手に月たち、そして、Aqoursの行動を妨害していたのだ、この期日を越えれば月たちを退学に追い込むことができるから。だが、その退学の条件が無効になってしまえば月たち静真高校生徒会の役員全員を退学に追い込むことができなくなってしまう。そんなわけで、木松悪斗、その他もろもろを含めたうえで、

「そんな・・・」

と、がっかりしてしまう。

 しかし、小原家当主、そんながっかりする木松悪斗の姿を見ては、

「これでもこれまでお前がしてきた、月生徒会長たち静真高校生徒会と浦の星の生徒たちに対しての悪行の数々と比べてみたら優しすぎるもんだ!!」

と言うと、続けてこんなことまで言ってきた。

「そして、これ以上、月生徒会長たち静真高校生徒会、Aqoursを含めた浦の星の生徒たちの行動を邪魔するなら本当にこの沼津にいられなくなるくらいの罰を与えてやるから覚悟しておけ!!」

 この小原家当主直々の判決に、木松悪斗、

「ううう・・・」

と、下を向きながらうなだれるしかなかった。

 が、木松悪斗、自分のプライドをずたずたにされたが気に食わなかったのか、

(ううう・・・とうなだれ続ける俺ではない!!これが俺本来の姿ではない!!いつもの俺は堂々と自分の道を突き進む男なり!!おれは「勝利」のみを追い求める男なり!!このままあの男(小原家当主)の言いなりなんてなるものか!!俺のプライドを傷つけた恨み、絶対に晴らさせてもらう!!俺の邪魔なんてさせない!!絶対に静真本校と浦の星分校の統合を白紙にしてやる!!俺の思い通りにしてやる!!だからこそ、今は引き下がってやる!!勝利に向けた戦略的撤退だ!!今に覚えておけ!!)

と思ったのか、

「ふんっ、そんな判決、これ俺には関係ないね!!この俺がルールブックだ!!そんな判決、無効だ!!」

と言うと、そのまま会議室のドアの前に立っている鞠莉に対し、

「この小童(鞠莉)、そこをどけ!!」

と、強引に鞠莉をどかしてしまった。これには、鞠莉、

「キャッ!!」

と、悲鳴をあげるも、木松悪斗、それすら無視してそのままドアを蹴り飛ばすと、

「俺の道は俺が決める!!誰も俺様に指図するな!!」

という捨て台詞を言っては会議室をあとにした。この木松悪斗の逃走に木松悪斗のお供である2人からは、

「ちょっとお父様、待ってください!!」(旺夏)

「ご主人様、この私を置いてきぼりにしないでください!!」(裏美)

と言っては木松悪斗のあとを追った。この木松悪斗たちの一連の行動に、みな、

ポカーン

となってしまった。

 

 その後、鞠莉は運営会社の会長から直々に屋上の使用受理書の認め印をもらうと、

「ふ~、これで決着で~す!!結果はもちろん、鞠莉たちAqoursのビッグウィン、大勝利で~す!!」

と、声高々に喜んでいた。

 が、このとき、沼田はというと、こんなことを考えていた。

(わしら日本人は昔から勝利という結果のみを追い求めてきた。いや、勝利そのものにこだわってきたのかもしれない。たとえば、時代劇において、ほとんどのTV番組は「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」みたいに勧善懲悪の物語が主流だったりする。そして、それは現代においてもいろんな小説や漫画、さらには、ライトノベルやゲームにおいてでも言える。たとえいろんな苦難があっても最後は主人公が悪に勝つ、それがお決まりだったりする。また、大相撲の貴乃花や稀勢の里みたいに大ケガしつつも優勝を遂げるというサクセスストーリーが喜ばれたりする。だが、それは大ケガをしつつもその場所で優勝するという短期的な勝利という感動をみんなが追い求めた結果なのかもしれない。ただそれによって起きるそのあとに続く悲劇の物語なんて誰も気にしないのかもしれない。

 しかし、それでもみんなは勝利という結果のみにこだわってしまうのは、もしかすると、自分たちにとって自分の力ではどうすることもできない、そんな理不尽な現実、のなかで唯一「勝利」という名の(疑似的な)経験を欲しているからじゃないか、と私はそう思っている。自分の力では「勝利」という経験を得ることができない、ならば、空想の物語などで主人公と自分を重ねながら「勝利」を疑似的に体験することによって自分のなかにある「勝利」に対する欲求を満たそうとしている、のかもしれない。

 まぁ、それくらいならある程度許される、とわしをそう思っている。まぁ、日本人以外にもアメコミなどで日本の小説や漫画などと同じ展開をしているから、もしかすると、それは日本人以外にも言えるかもしれない。

 けれど、今、それだけでは、「勝利」、いや、それ以上に、「それ以外の勝利」という名の欲求を満たすことができなくなってきている。冷戦が終わってから30年、経済中心の時代になったことで、木松悪斗の言う通り、人が生まれたときから常に、競争、争い、戦い、に追われる毎日を暮らすようになってきた。これにより、人のまわりには敵だらけといった状況が日常茶飯事となってしまった。さらに、「(それ以外の)勝利こそすべて」といった考えが優先されてしまったことで、勝者と敗者、強者と弱者、富豪と貧者、その格差が昔以上に拡大、それどころか、一度でも敗者・弱者・貧者になるとそこから抜け出すことが難しくなった。そうなったために社会のひずみが昔以上に大きなってしまった。また、今から100年前のスペイン風邪(今のインフルエンザ)みたいに見えない敵によって自分たちの生活や心すらずたずたにされるかもしれない。こうなってしまうと誰もがみな相手のことを思いやるくらいの心の余裕すらなくなってしまうのは自明の理である。さらに、それが最悪の形で「それ以外の勝利」という名の欲求と結びついてしまうかもしれない。

 そして、そこから起こるもの、それは、自分よりも弱い者に対する迫害・・・、自分より下だと思っている者を、弱者、敗者とみなして攻撃してしまう、それかもしれない。むろん、もしかするとそこにいろんな要素が絡み合っているのかもしれない。が、それでも、意図的だとしても、無意識なものであほしったとしても、「それ以外の勝利」を追い求めて、自分にとってまったく知らない者、知っていても自分より弱い者、それをできる限り排除しようとしている、それが今の世の中では当たり前になろうとしている。さらには、その当たり前になろうとしていることに付け込んで国自体がその弱者を排除しようとしている。その国自体も「それ以外の勝利」を追い求めてほかの国と対立、その国を完全に潰そうとしている。もうこうなってしまうと待っている先は、戦争、いや、地獄、としかいえないのかもしれない。

 しかし、それを阻止する方法が1つだけある。それは古来日本において大切にしてきた存在、「寛容さ」、なのかもしれない。あいまいな気持ちを持つことで人は物事に対して寛容になることができる。その「寛容さ」こそまわりの人たちと上手に付き合う秘訣となるだろう。だって、寛容になることで自分の心に余裕が生まれ、弱い者に対してマウント、「それ以外の勝利」を追い求めようとしないからだ。さらに、悪いことをした相手を許すくらいの広い心を持つことができるかもしれない。

 だからこそ、わしはこう願っている、今の世の中にとってとても大切なもの、それこそ、どんな相手でも無慈悲な心でもって対応するくらいの広い心、つまり、「寛容さ」、そして、「謙虚さ」、であり、それが世界中に住む人たちのなかで芽生えてほしい、と・・・)



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Moon Cradle 第7部後編 第29話

 と、まぁ、沼田の長い長~い回想は終わるのだが、

(部活とはみんなと一緒に楽しむこと!!みんな一緒にいろんなことをやって楽しむことでいろんなことを学び経験していく、その経験、その過程こそ一番大事なんだ!!)

と、部活動にとってとても大切なことに気づいた、月、なのだが、曲はすでに終わりを迎えようとしていた。

トゥトゥトゥ トゥトゥトゥ トゥトゥ~

曲に集中しているためか、とても疲れているにも関わらず笑顔を絶やさずにAqoursメンバー全員がこの戦い、延長戦、を楽しんでいる、これには、月、

(やっぱりAqoursはすごいよ!!この僕も、いや、この戦いに関わるもの全員、この戦いを全力で楽しもうとしている。それと同時に、Aqoursを、Saint Snowを、スクールアイドルをもっと好きになろうとしている、僕が・・・、いや、この戦いに関わる者すべてが・・・)

と、心奥底から高まろうとしている気持ちを抑えきれなくなってしまった。

 そして、この気持ちの高まりにより、月、ある衝動が生まれてしまう。

(こ、こんな戦い、僕たちだけで共有していいのだろうか。たとえ私的的な戦いだったとしても、こんな戦い、絶対にスクールアイドルの歴史に残る戦いになるはずだよ!!だって、第2回ラブライブ!のμ's対A-RISEや第X回のオメガマックス対K9、そのあとのオメガマックス対μ's、これらの戦いはスクールアイドルの歴史において、歴史上の分岐点、としてとても有名・・・(2つ目の戦いはちょっと違うけど・・・)。これらの戦いは自分たちの信念、想いなどすべてを賭けて全力全開で死力を尽くして、けれど、心の底からこの戦いを楽しもうとしていた戦いだった(2つ目の戦い以外・・・)。それに匹敵するくらいの戦いをAqoursとSaint Snowが行っている。けれど、この戦いを見ているのは一部の子たち(新生Aqoursお披露目ライブの準備を手伝っている浦の星の生徒たちと静真Aqours応援団の子たち)以外はこの戦いの関係者のみ。そんなのってもったいない!!この戦いを僕たちの秘密にするなんてもったいない!!)

 だが、そんな楽しい時間も終わりを迎えようとしていた。

トゥトゥ~

この曲調と同時に今のAqoursの、鞠莉、果南、ダイヤ、3年生3人のスクールアイドルとしてのラストステージはついにフィナーレを迎えた。

 で、普通なら最後を迎えたことでちょっと寂しい気持ちになるのだが、ラストステージを迎えたAqoursメンバーはというと・・・、

(もうお姉ちゃん(ダイヤ)とスクールアイドルとしてパフォーマンスすることはないかも。でも、ルビィ、絶対にそう思っていないよ!!だって、ルビィの心のなかにある宝物を通じてずっとお姉ちゃんとつながっているから!!もうこれがラストステージだって思っていないから!!ずっとここにいるメンバー全員と宝物を通じていつでもパフォーマンスでkりうと思っているから!!)(ルビィ)

(ラストステージ、やりきったずら!!いや、これってラストステージじゃないずら!!だって、おらたちはずっとつながっているずら!!だからこそ、自分が好きなときに好きな分だけみんなとパフォーマンスができるずら!!)(花丸)

(ふふふ、素晴らしきラストダンスだったぞ!!リトルデーモンのみんな、このヨハネ、十分楽しんだぞ!!けれど、これがラストダンスにあらず!!またどこかでリトルデーモンたちと一緒にできるぞ!!だって、このヨハネとリトルデーモンたちはずっとつながっているのだからな!!)(ヨハネ)

(曲が終わった~!!全部やり切った、そう思えてくるよ!!疲れた~!!でも、疲れたは疲れたけど、心地いい疲れだよ!!それにこれが終わりじゃないしね!!ずっとみんなとつながっている、だからこそ、これから先もまた一緒にやれると思えるよ!!)(曜)

(私の作った曲で最後を迎える、普通ならちょっと寂しいと思えるのだけど、今は違う。私、みんなと一緒にやり切ったんだ!!私の作った最高の曲でみんなと歌い切ったんだ!!とても嬉しい!!でも、これが最後じゃない。私の心のなかにある宝物を通じてずっとみんなとつながっている、また一緒に私の作った曲でパフォーマンスができる、私はそう思うよ・・・)(梨子)

(あぁ、もうこれでスクールアイドルをすることはないのかな・・・。もっとやりたかったな・・・。でも、私にとってこの1年は最高の1年だったよ!!あの鞠莉とダイヤと和解しただけでなく、この9人で、私たち3人の夢、ラブライブ!優勝を果たした、それどころか最後の最後まで楽しい想い出作りができた、そう考えると、この9人こそ私にとってベストパートナーだった、と、私はそう思うよ!!それに、これが終わりじゃないと思うよ!!だって、、私の心のなかにある宝物を通じてずっとみんなとつながっているから、いつでも、どんなときでも、このベストパートナーである、この9人でスクールアイドルとしてパフォーマンスできるのだから・・・)(果南)

(ふ~、これで私の大事な役目、個性が強すぎる千歌さんたちをまとめ上げる、そんな大任から解放されますね。けれど、一度も大変だって思っていませんでした。だって、この9人でやってきたこと、そのすべてが私にとって一生の宝物になったのですから!!そして、最後の最後まで退屈すらできないくらい楽しすぎる時間をすごせたのですから!!ですから、私、今、こう思っております、この9人、この宝物をつうじてずっとつながっている、ずっとつながっているからその先の未来へと進むことができるのだから、って!!)(ダイヤ)

(ラストステージ、やり切ったで~す!!疲れたで~す!!でも寂しくないで~す!!だって、この1年、マリーたちパーフェクトナインはずっとenjoyしてきた(楽しんできた)で~す!!そのなかでGetしたJewelry box(宝物)によってよってみんなとずっとにconnect(つながっている)ので~す!!だからこそ、Going My Way・・・じゃなく、Going Aqours way、ので~す!!)(鞠莉)

と、三者三葉、もとい、九者九葉の気持ちでこのラストステージ、そして、これからの未来について考えていた。そのためか、集中力が切れてしまって息があがっているにも関わらず、今なお、みな、笑顔をみせていた。

 で、このAqoursメンバーの姿を見た、月、ついにあることを決める!!

(この素晴らしいステージ、僕たちのものだけにするのはもったいないよ!!本当にもったいない!!このステージを静真のみんなに、いや、世界中のみんなに見てもらいたいこれが本当の戦いなんだって、AqoursとSaint Snowの全力全開の、自分たちがもっているものすべてを賭けて死力を尽くして戦った、魂の籠った、それだけじゃない、それでいて、まわりの者たちすら楽しむことができる、そんな戦いだって、そして、これこそスクールアイドルの素晴らしさ、なんだって!!)

 そして、それは月のある言葉へと変化した。

「スクールアイドルって本当にすごい!!このラブライブ!(決勝延長戦)を僕たちしかみていないなんて、こんなの、もったいないよ!!)

 この言葉のあと、月、

(え~と、これをこうしてこうして・・・)

と、今さっきまでAqoursのラストステージ(ライブ)を撮っていた自分のスマホの画面を触ると、

(よ~し、これで完成!!あとはこの動画をサイトにアップするだけだ!!)

と、何かを成し遂げた感じがした。どうやら、月、自分のスマホにインストールしていた動画加工アプリを使い、AqoursとSaint Snowの戦いを、魂と魂のぶつかり合いの様子を撮っていた映像を1つの動画として編集していたようだ。そして、その動画を自分たちのサイトにアップして全世界に配信するつもりのようだ。

 そんな月であったが、突然踊り終えたAqoursのなかから1人だけがお日さまに向かって歩いていた少女を見かける。それに気づいた月、ふとこう思った。

(あっ、千歌ちゃんだ・・・)

そう、お日さまに向かって歩いている少女とは・・・千歌だった。千歌、このとき、こう思っていた。

(私、ようやくわかった気がする・・・、いや、ローマ・スペイン広場でのライブではそう確信は持てなかったのかもしれない、でも、このステージでようやく確信が持てたよ!!だって、私、今、こう言えるもん、この9人で得たこれまでの想い出、想い、そして、キズナ、それは宝物になってずっと私の心のなかに残っていく、その宝物を通じてみんなとずっとつながっていける、ずっと一緒にその先の未来へ進むことができる、新しい未来ともいえる、そんな虹の先まで、Next Over the Rainbow、だもん!!そして、その先の新しい輝きへ・・・)

 そして、千歌は新しい輝き、お日さまに向かってこう大声で叫んだ。

「わかった、私たちの新しいAqoursが!!」

 この瞬間、ここにいる全員がある幻想を見ていた、1つの白い紙飛行機、それがお日さま、新しい輝きへと向かっているのを・・・。

 

 その後、ラブライブ!延長戦、そのプログラムのすべてが終わると、月、

(さてと、さっそくこの動画をサイトにアップして・・・)

と、延長戦の様子を撮った動画を自分たちのサイトにアップしようとしていた。

 が、そのとき、

「月生徒会長、すまんがその動画をアップするのを待っていただけないか!!」

と、図太い男の声が聞こえてきた。これには、月、

「あっ、沼田のじっちゃん、なぜ動画をアップするのを待たないといけないのですか?」

と、月に声をかけた男こと沼田にその理由を尋ねる。すると、沼田、

「ちょっとな、この吾輩もその動画に興味があってな。このわしが責任をもってこの動画をアップするからその動画データをこのわしにも渡してもらえないか?」

と、月にその動画データをもらないか月にお願いする。これには、月、少し考えた末、

「うん、わかりました。でも、沼田のじっちゃん、もし、この僕が納得がいかないようなアップの仕方をしたら躊躇なく今の動画データをこの僕がサイトにアップするからね!!」

と、念を押して沼田にその動画データを渡した。これには、沼田、

「月生徒会長が納得がいかないような編集はしないよ!!それだけは絶対に約束する!!月生徒会長、本当にありがとうな!!」

と、月にお礼を言った。

 そして、月から延長戦の動画データを入手した沼田はふと「ラグーン」の下の方を見てこう思った。

(鞠莉‘sママさん、どうでしたか?娘さんのラストステージ、十分楽しんでいただけましたか?)

 

 このとき、「ラグーン」の入り口近くには・・・。

(沼田殿、そして、Aqoursのみなさん、サンキューで~す!!この私、鞠莉‘sママ、マイドーター(鞠莉)のスクールアイドルとしてのラストステージ(最後の晴れの舞台)、十分エンジョイ(楽しむこと)できたので~す!!)

と、鞠莉‘sママが「ラグーン」の入り口のところに立ってこう思っていた。鞠莉‘sママ、続けて、

(本当はsee liveしたかった(生で見たかった)のですが、ラストステージの生の映像がとてもすごかったから十分enjoy(楽しむことが)できたので~す!!)

と、鞠莉の最後の晴れ舞台が(生映像を通じて)見ることができたためか十分満足していた。

 が、鞠莉‘sママ、まわりの惨状の様子を見ては、

(でも、この人たちがいなかったらもっとenjoy(楽しむこと)できたのですがね・・・)

と、少し呆れかえっていた。そう、鞠莉‘sママのまわりには鞠莉‘sママ以外に鞠莉‘sママを守るためのSP、それと、小原家のローマの別荘であの裏美を吹っ飛ばした力強い小原家直属の執事、そして・・・、

「うぅ・・・」

と、うなだれながら倒れている黒いスーツの男たちがいた。この倒れれている男たちを見て、鞠莉‘sママ、

(やっぱりここにいて正解でした、まさかあの娘(鞠莉)のラストステージを壊そうとする木松悪斗たちが攻めてきたのですからね・・・)

と、自分の予想していたことが正しかった、と、思っていた。

 そう、それは数十分前の出来事だった。延長戦が始まったもののまだ延長戦の準備をしていなかったSaint Snow、その準備の最中、「ラグーン」の入り口付近では、

「おい、お前ら、今、このビル(「ラグーン」)の上でにっくき敵であるAqoursのライブが始まろうとしている。俺はそのライブをぶっ潰す!!潰してこれ以上月生徒会長の勢いを加速させないようにしろ!!いや、Aqoursそのものを、月生徒会長そのものを完全にぶっ潰せ!!」

と、大男が大声でこう叫んでいた。それに呼応してか、

「そうですわ、お父様!!絶対に月生徒会長とAqoursを完全にぶっ潰しますわ!!」

と、1人の少女と、

「ご主人様、その通りでございます!!」

と、太った男がこの大男の横に立っていた。その3人の後ろには黒いスーツを着た男たちが数人太い金属製のパイプなどの凶器を持って立っていた。

 そして、その大男が、

「よし、突撃!!」

と言っては「ラグーン」の入り口目指して突撃を敢行した・・・そのときだった。

「木松悪斗様、ちょっとお待ちなさい!!」

と、華麗な女性がそう言うとその大男こと木松悪斗の行方を阻んだ。これには、木松悪斗、

「おう、これはこれは、鞠莉‘sママ様、ご機嫌麗しゅう」

と、華麗な女性(と同時に木松悪斗の行方を阻んだ女性)こと鞠莉‘sママに対し挨拶をすると、その木松悪斗の後ろから、

「なに、あのババァ、はやくどっかに行ってよ!!」(旺夏)

「そうだ、そうだ!!」(裏美)

と、その少女こと旺夏と太った男こと裏美が鞠莉‘sママにヤジを言う。

 が、そんなヤジ、鞠莉‘sママに効く、わけでもなく、逆に、鞠莉‘sママ、冷静に木松悪斗にあることを尋ねる。

「木松悪斗様、どうしてここにいるのですか?このビルの屋上では私のかわいい一人娘のラストステージが行われようとしているのはご存じなのですか?」

 これには、木松悪斗、

「えぇ、知っております。だから、この俺、木松悪斗が直々に派手に演出しようと思いましてね」

と、言っては鞠莉‘sママを威嚇する。

 が、とうの鞠莉‘sママはすでに木松悪斗がここに来た本当の理由を知っていた。そのため、鞠莉‘sママ、木松悪斗に対し力強い口調でこう言い返した。

「へぇ~、派手なdirect(演出)ですか~。でも、本当は、このラストステージ、そのものをBreakしに(壊しに)きたのではないのですか~?」

 この鞠莉‘sママの言葉を聞いた木松悪斗、すぐに、

「ほ~、この俺がここに来た本当の理由をすでに知っているとは。なら、話がはやい。この大人数を相手にかよわい淑女1人でここを抑えることなんてできないでしょうし、ここは強引にでも行かせてもらいますよ!!」

と、余裕をみせて鞠莉‘sママに対してこう言うと、旺夏、裏美、自分の手下に対して、

「よしっ、行け!!」

と、強引にでも「ラグーン」のなかに突入するよう命令した。と、同時に、

「うぉ~!!」

と、鞠莉‘sママに向かって木松悪斗の手下たちが突撃しようとしてきた。

 が、鞠莉‘sママ、少しにやりと笑うと、

「この私がなんの準備をしていないと思っていないでしょうね!!」

と、大声で木松悪斗と自分に向かって突撃しけいせいぎゃてくる手下たちに向かって言うと、すぐに、

「おりゃ!!」

という大きな叫び声とともに手下たちに向かってものすごい突風が襲ってきた。これには、手下たち、

「うわ~」「ギャー」

と、いう悲鳴に近いような声を出しながらその場に倒れこんでしまった。どうやら、木松悪斗の手下たち、突然襲ってきた突風に耐えることができず、窒息に近い状態で倒れこんでしまったみたいだった。

 そして、その突風を引き起こした男が鞠莉‘sママの前に立つと、裏美、すぐにその男が誰かわかった。

「あっ、あの男、俺がローマの小原家の別荘に行ったとき、この俺を野外へと吹っ飛ばした、小原家の執事だ・・・」

そう、突風により木松悪斗の手下たちを倒した男とは、ローマの小原家の別荘であの裏美を屋外へと吹っ飛ばした、小原家直属の執事、であった。さらに、鞠莉‘sママのまわりにはその執事以外にも・・・、

「母上様、大丈夫でしたか?」

と、鞠莉‘sママを守るためのSP数人が鞠莉‘sママを取り囲む形であらわれた。これで形勢逆転である。なので、木松悪斗、

(こ、これはやばい・・・)

と、危機感を募らせていた。

 が、この場の事態を理解していない子が1人・・・。

「なにをびびっているの、お父様!!この私がいる限りなんの心配もございませんわ!!」

そう、旺夏だった。この旺夏、今なお、自陣営、木松悪斗の方が優勢であるとたかをくくっていたのだった。そして、それを証明みせるためか、旺夏、

「おい、このババァ、この私の華麗なるシュートを受けてみなさい!!」

と、言っては持っていたサッカーボールを上に高くあげては、

「食らいなさい、オーバーヘッドシュート!!」

と言って、鞠莉‘sママめがけて華麗なるオーバーヘッドシュート!!ボールは旺夏に蹴られたあと、鞠莉‘sママめがけて一直線・・・なのだが、

「ふんっ!!」

という執事の普通のパンチングによりボールはどうっかに飛んでいった・・・というよりも、オーバーヘッドキック(シュート)、技としてはかなり派手にかっこよく決まるのですが、威力のほうは足を踏ん張って蹴る普通のシュートよりも弱い、というか、本当に威力は弱いため、普通のキーバーでも防ぐことができる?ものなのである。むろん、これには、旺夏、

「そ、そんな・・・」

と、当たり前だが自信喪失してしまった・・・。

 そして、木松悪斗、ついに覚悟を決めた。

「なら、やけくそだ!!これでもくらえ!!」

と言っては裏美を軽々と持ち上げると、裏美、

「ご、ご主人様、な、なにを・・・」

と、突然のことでパニックに陥るも、木松悪斗、そんなこと気にせずに、小原家直属の執事に向かって、

「おりゃっ!!」

と、裏美を投げてしまったではないか!!これには、裏美、

「ご、ご主人様~!!」

と、泣きながら叫ぶも投げた勢いが大きかったかそのまま執事に向かって一直線!!

 が、それを、執事、

「フンッ!!」

という一言を言っては飛んできた裏美に対して空手チョップ!!で、裏美、

「ぐふぅ!!」

という叫び声とともに執事の下に勢いよく叩き込まれてしまった。

 が、飛んできた裏美を空手チョップで仕留めた執事がすぐに目の前を見ると、その目線の先にはいるはずの木松悪斗の姿がいなかった。で、その執事の横から、

「それじゃ、さようなら!!」

と、木松悪斗の声が聞こえてきた。どうやら、木松悪斗、裏美を投げたあと、「ラグーン」の入り口めがけて走り抜けようとしたようだった。

 が、その木松悪斗の声がした瞬間、

「ふんっ!!」

と、執事の横を走り抜けようとした木松悪斗めがけてパンチを繰り出す。これには、木松悪斗、

「ぐはっ!!」

と、いううめき声とともにもといた場所へと飛んでいってしまった。どうやら、突然の執事のパンチに、木松悪斗、よけることができず、執事のパンチはそのまま木松悪斗の腹にクリーンヒット、そのまま執事の前方へと飛ばされたみたいだった。

 こうして、鞠莉‘sママの前方には木松悪斗たちの屍?と自信喪失状態の旺夏の姿が展開されていた。この屍?に対し、鞠莉‘sママ、大声でこう言いだした。

「木松悪斗、この前の(「ラグーン」の)会議室でマイダーリン(小原家当主)の言葉を忘れていないでしょうね、もし、これ以上、Aqoursの邪魔をしたらただじゃすまない、tって!!それを破ったのならそれ相応のペナルティ(罰)を受けてもらわないといけませんね~」

 この言葉のあと、鞠莉‘sママ、約束を破った木松悪斗に対し厳しいペナルティを与えた。

「木松悪斗、この小原家、そして、沼田の連名において命令します。今後、小原財閥、沼田グループとのすべての取引を禁止しま~す!!また、自分の権力、お金をかさに、沼津、いや、静岡の企業・団体・行政などに不当な要求・扱い、そして、圧力をかけることも禁止しま~す!!」

この鞠莉‘sママの命令、木松悪斗にとってとても厳しい罰となった。小原財閥、沼田グループ、ともに自前の銀行・証券会社を持っていた。むろん、日本有数の投資グループを率いる木松悪斗もその会社と大きな取引がある。が、その大きな取引が禁止されると木松悪斗率いる投資グループは大損失を被ることになるのだ。また、静岡にある企業の株式を大量に持つことで静岡での大きな権力を持つことができた木松悪斗、その権力でもって自分の思いのままにことを進めることができたし、逆に、金を使ったり権力をかさに圧力をかけたりすることで相手方を屈服させることもできた。が、この命令により、沼津、いや、静岡における木松悪斗の権力というか影響力は大きく削られることにもなった。いや、もう自分の思い通りにことが進まなくなることを意味していた。なので、そのことに気づいているがどうすることもできない、そんな木松悪斗はただ、

「ううう・・・」

と、うめくしかなかった。

 そんなわけで、もうすでに虫の息であった木松悪斗たちに対する大掃除が始まる。鞠莉‘sママ、自分の執事に向かってこう命令した。

「ここにいる敵の中心人物3人(木松悪斗・旺夏・裏美)が目ざわりで~す!!私にとってあの3人は大事な一人娘のラストステージにふさわしくないで~す!!執事、この3人をどっかに飛ばしてやりなさ~い!!」

これには、執事、

「はいっ!!」

と言っては鞠莉‘sママの命令を忠実に実行する。それすなわち、木松悪斗、旺夏、裏美、それぞれに対し、1人ずつ、

「おらっ!!」「はいっ!!」「さっ!!」

と言っては3人をはるか遠くへと飛ばしてしまった。むろん、3人とも、

「ギャフッン!!」(裏美)「あれ~!!」(旺夏)「覚えていろよ!!」(木松悪斗)

と、なんか捨て台詞を言い残して・・・。

 そんなわけで、大掃除を終えた鞠莉‘sママであったが、大掃除が終わったときにはすでにSaint Snowのステージは始まっており、生で自分の一人娘の晴れ舞台を見ることはできなかった。なので、月が自分の仲間たちだけに配信していた映像を通じてその舞台を見ることになったのだ。

 とはいえ、迫力のあるステージを映像を通じてみることができた、鞠莉‘sママ、

「でも、映像で自分のマイドーター(鞠莉)のラストステージを見れて本当にHappyであ~す!!ならばやることは1つで~す!!みんなでパーティーしましょう!!セレブレーションで~す!!」

と言っては自分の家である淡島のホテル小原沼津淡島の大ホールで祝賀パーティーを開くことを勝手に決めてしまった。

 こうして、ラブライブ!決勝延長戦は無事に幕を下ろすことになった。この延長戦後、鞠莉‘sママによって強引に連れてこられたAqoursと月たち一行は鞠莉‘sママによって盛大に開かれたパーティーでみんな大はしゃぎするのだが、このとき、鞠莉、月が延長戦のときにAqoursを撮っていた月のスマホを見て一言。

「へぇ~、こんな小さなスマホであんなすごいムービー(映像)が撮れるのですか?」

これには、月、

「はい、そうですけど・・・」

と、正直に話すと、鞠莉、

(あっ、ちょっといいこと、思いつきました~!!)

と、あるアイデアが浮かび上がると、月に対し、

「月、お願いがありま~す!!ムービーの撮り方、編集の仕方、レクチャーして(教えて)!!」

と、お願いする。これには、月、

「はい、いいですけど・・・」

と、言って鞠莉のお願いを了承した。このとき、鞠莉、

(なら、決まりで~す!!あとはダイヤと果南に相談で~す!!)

と、なにか悪だくみをしていた。

 その後、鞠莉、果南、ダイヤの3人は千歌たちの知らないところで密談をするとその鞠莉のアイデアをもとにお披露目ライブ前日にそれを実行することを決断、その準備をした。そして、お披露目ライブ前日に3人は密談で決めたことを実行してしまう。これがのちに「お笑い集団Aqours」の名を広めた「サルでもわかるスクールアイドル講座」騒動につながるのであるが、それはまた別の話である・・・、チーン・・・。



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Moon Cradle 第7部後編 第30話

 そんな延長戦から数日後、

「お母さん、ただいま!!」

ここは静真高校に通う女子高生の家。その女子高生はインターハイ全国大会に出場する選手も輩出しているテニス部に所属していた。その女子高は母親にただいまを言うと、母親も、

「お帰り!!」

と、お帰りをその女子高生に対して言った。

 その後、自分の部屋で私服に着替えた女子高生は母親がいる居間に行くとすぐに、

「ねぇ、お母さん、今日ねぁ、PTA会長の沼田さんからメールをもらったよ!!なんか(静真に通う)全校生徒全員に送ったみたい・・・」

と、母親に言うと、自分のスマホを取り出し、そのメールを母親に見せた。すると、母親、

「おや、本当だね~!!沼田PTA会長からなんて、なんか珍しいねぇ~」

と、あまりに珍しいことに驚いてしまう。まぁ、無理もない。PTAからのメールは学校で行うPTA総会の開催を知らせるものなど年に数回しかなかった。さらに、通常はPTAの名前でメールを送られてくるので、PTA会長である沼田の名でメールが届くことはあまりなかった。が、そのPTA会長である沼田の名でメールが届いた、ということは、沼田直々に静真の全校生徒にメールを送ったことになる、となれば、母親がそれから導かれる結論、それは・・・、

(こりゃ、あの(静真の創立家の末裔で静真での陰の神である)沼田殿が出てくるくらいのとても重要なメールだ・・・)

そう、今、その女子高生が見せたメールはその女子高生はおろか自分たちにとってみてもとても重要なメールである、ということであった。

 そんなわけで、母親、女子高に対し、

「はやくそのメールを開きなさい!!」

と、そのメールを開くことを催促。これには、女子高生、

「う、うん、わかった!!」

と言ってはすぐにそのメールを開いてみた。

 すると、そこには、

「静真に通う学生のみなさん、そして、その保護者のみなさんへ」

という題名と思しき分、さらには、1つのPDFと2つの動画データが添付られていた。そこで、母親はすぐにメールに添付されていたPDFを開くことに。そこには、

「静真に通う学生のみなさん、そして、その保護者のみなさんへ」

というメールの題名と同じ名、しかし、とても達筆だとすぐにわかる、いや、沼田の直筆の文字であるとすぐにわかるような文字で書かれた題名があらわれた。これを見て、母親、

「おや、これは沼田殿直々の手紙(文書)だね・・・」

と、すぐに悟った。そう、このPDF、静真に通う学生とその保護者たちに向けて沼田が送った手紙(文書)だったのだ(って、当たり前か・・・)。

 そんなわけで、女子高生とその母親はその沼田の手紙を読むことにした。そこには・・・。

 

「静案に通う学生のみなさん、そして、保護者のみなさんへ

 

 学生のみなさん、「部活動は好きですか?」「部活をみんなと一緒に楽しんでいますか?」

今現在、静真に通う学生のうち、95%もの方が静真において何かの形で部活や同好会に所属しております。そのおかげもあり、静真の部活動は活気に満ち溢れております。また、近年、静真の部活自体力をつけてきたこともあり、弓道部やテニス部など、スポーツ系を中心に全国大会に出場する部活も多くなりました。そして、女子サッカー部のようにインターハイで全国優勝する部活も出てきております。

 しかし、そのなかで、私、沼田はある心配をしております。それは、強くなって勝つことが多くなった結果、部活をする上でとても大事なことを忘れてしまい、勝つことのみを求めようとしているのでは、ということです。今年度の部活動報告会の場において、ある学生(旺夏のこと)が「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」と言ってはそれを会場にいる学生たち、保護者たちが大声で復唱しておりました。これを聞いて、私、この沼田が「静真の未来は本当に大丈夫なのか」と心を痛めてしまいました。たしかに保護者のみなさんに置かれましても勝ち続けて大会に優秀な成績を残すことで大事なお子さまがプロの道に進む足掛かりを得ることができるかもしれません。もしくはそうなることで「お子さまの将来は安泰だ」と思えるかもしれません。

 しかし、この私、沼田は本当にそれでいいとは思っておりません。なぜなら、勝つことのみに執着することで人として大切なものを学ぶことを忘れてしまうからです。はたしてその大切なものとはなんでしょうか。

 私はこう思います、それは「心」だと、「ほかの人を思いやる心」だと。静真に限らず学校というのは保護者のみなさまにとってとても大切な存在であるお子さま(=静真の学生)の心などを成長させる場所だと私はそう考えております。そのなかでも「自分だけでなくほかのものにも慈しむ心」の成長はとても大切です。学校において自分の知らない人たちとの共同作業はとても大変なものです。しかし、その共同作業を通じて人というのは自分一人ではできないことでもみんなと力を合わせることでどんなことでもできることを学びます。また、社会というのは自分と同じものはごく一部だったりします。ほとんどの場合、人種、民族、宗教、主義、思考などまったく異なったものを持つ方が多いものです。学校はそんな社会の縮図ともいえるかもしれません。なので、そんな自分とは異なったものを持つ方と一緒に活動することでその方たちとお互いを認め合い一緒に力を合わせることの重要さ、そして、それには「ほかの人を思いやる心」が必要であることを知ります。また、それにより学生たちはほかの方と切磋琢磨しながらその心を養っていきます。そんな意味でも学校というのはその「心」を育てる場といえると思います。

 そして、学校活動のなかで特に部活はその心をさらに伸ばしていく、成長させることができる場所だと私は考えております。なぜなら、まったく異なった者同士、同じ目的のもと、お互いを認めながら一緒に行動することで普通の学校生活で得るもの以上に自分のその心を著しく成長させることができる、先へと進むことができる、からです。特に他校との交流、戦いというのは部活でしかできないものです。その他校との交流、戦いを通じて学生たちは自分の学校では味わえない新しい刺激などを得ることができます。そこから学校の仲間たちのなかでは気づくことができない新しい知識、考えを知り、さらに自分の能力、技術、そして心を磨くことができます。部活とはそんな素晴らしい場所だといえます。

 ですが、もし勝利することのみに執着してしまうと、その大切なものすら忘れ、ただ勝つことのみを目指してしまいます。いや、学生にとって悪影響を与えることになるでしょう。勝利のみを目指すということはとことん負ける要素を排除することにつながるかもしれません。もしこうなってしまうと、力のないもの、弱きものなどをすべて排除することにつながります。結果、自分さえよければよい、強者さえいればいい、それ以外のものはすべて排除すべき、という考えを学生たちは持つようになります。これは、学校、そして、部活、その存在意義を自ら否定することにつながります。「排他的な心」というのは「慈しむ心」とはまったく正反対のものです。もし、この「排他的な心」の持ち主が多ければ社会というのは争いの絶えない、強者しか生き残れない世界へと変貌してしまう、いや、それ以上に争いの結果、世界は「荒廃した世界」へと変貌する危険性すらあります。

 だからこそ、もう1度、この私、沼田は言います、部活とは「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」ではない、みんなと一緒に行動することで「人を慈しむ心」「慈愛の心」を育てる場であると」

 この沼田の文書を見た母親からは、

「えっ、あの沼田殿がこんなことを言うの?で、でも・・・、あの木松悪斗様が言う通り、勝つことがとても重要だと思うけど・・・」

と、自分がこれまで信じてきた考え、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、それがあの沼田に否定されていることに戸惑いを感じていた。

 が、そんな母親に対し女子高生はあることを言いだした。

「でも、沼田のじっちゃんが言う通りかもしれないよ。私、部活でみんなと一緒に一生懸命頑張ってレギュラーになって全国大会にいくことができた。けれど、少しでも勝ちたい、勝って上へ行きたい、勝ち続けたい、そう考えたとき、ふと思うんだ、勝って相手を完膚なきまでにしたい、勝つために必要ないものはすべてなくなればいい、弱いものなんていなくなればいい、そんな気持ちになったことがあるんだ!!」

この女子高生はあることを考えていた。

(私、みんなと一緒に一生懸命頑張ってレギュラーになったし全国にいくこともできた。けれど、勝ち続けることで、いつしか、私、ほかのみんなのことを見下していたかも・・・。自分より実力がないものがテニス部にいる必要なんてない、自分より弱い相手なんて徹底的につぶしてやる、いつしかそう思うようになっていたのかもしれない。でも、よく考えたら、私一人の頑張りでレギュラーになったわけではないもんね。みんなと一緒に頑張ってレギュラーになったんだもの!!いや、みんながいてくれたからこそ全国に行けたんだもの!!そう考えると、もっとみんなのことを考えるべきだった気がするよ。そして、この私に対して戦ってくれた他校の学生さんにも「自分に対して全力で戦ってくれてありがとう」ってお礼を言わないといけないかもしれないね・・・)

そう、このとき、女子高生は少し悔やんでいた。これまで自分は自分の力、努力だけでレギュラーを勝ち取り、全国まで行くことができた、と思っていた。そして、勝ち続けていくうちに自分より弱い相手、どころか、自分のまわりにいるレギュラーになれなかった部員たちのことを見下し、その人たちのことを「無駄だ」と排除しようとしていた。が、沼田の言葉(文書)によりあることを悟ったのである。自分がレギュラーになって全国まで行くことができたのはこれまで自分が見下していたレギュラーになれなかった部員たちがいてくれたから、みんなと一緒に切磋琢磨しながら、力を、技術をみにつけてきた、自分の心などすべて成長させることができたから、だと。また、自分より弱い、だからこそ負けたのだと思っていた(自分と戦った)相手、その相手と全力で戦ったことで自分はより成長できたのかもしれない、のだと。そして、そのことに自分はこれまで気づくことができなかったことを恥じていた。

 そして、女子高生は自分の母親に対してこう言った。

「私、(テニス部の)みんなにお詫びを言いたい。私、レギュラーになって全国まで行くことができた。全部、私の努力や才能のおかげだ、と思っていた。そして、勝つためにレギュラーじゃない子、すべていらない、そんな気持ちになった。けれど、それは間違いだったよ。ほかの部員のみんながいてくれたからこそ、みんなと一緒に頑張ってきたからこそ、私、レギュラーになったんだよ、全国に行けたんだよ、って、私、みんなのまえで言いたい!!そして、みんなにお礼を言いたい、「みんな、私を支えてくれてありがとう、私のすべてを成長させてありがとう」、って!!もちろん、私、これまで私と戦ってくれた相手にもお礼を言いたい、「この私と全力で戦ってくれてありがとう、それによって、私、もっと成長することができた」って!!」

 これには、母親、

「うん・・・」

と、娘の言葉に涙を流して応えていた。このとき、母親、

(なんか前よりも凛々しく感じられるよ。だって、これまで、あの子、テニス部に入ってからなんか険しい表情をみせていたし、さらに、弱いものに対して見下す、そんな顔なんてしていた。でも、あの子、今、とてもいきいきしている!!なにか大切なものに気づいた、そんな表情をしている。もしかすると、沼田殿の言う通りなのかもね・・・)

と、内心思っていた。とうの本人は自分の表情なんてこれまで気づいていないようだ。けれど、いつも娘の表情をみている母親だからこそわかることだった。娘である女子高生は静真に入学してテニス部に入部して以降、次第になにかに憑りつかれたようにだんだん暗くなっていったのだ。と、同時に、弱者に対してなにか見下したような表情をみせるようになっていった。そして、女子高生は「勝たないと・・・」「勝ち続けないと・・・」とときどき言うようになっていった。それはまるで「勝利しないといけない・・・」「そのためにも弱者を排除しないと・・・」と切羽詰まるものがあった。が、それが、今、沼田の文書のおかげで女子高生に憑りついたなにかがどっかに飛んでいった、なにか悟りを開いた、そんな感じを母親はその女子高生から感じ取っていた。そのためか、テニス部に入部する前と同じ明るい表情、いや、それ以上に、すがすがしく凛々しい表情をその女子高生はしていたのだ。この女子高生の変化を見てか、母親、沼田の言うことはもっともではないか、そう確信してきたのだった。

 が、沼田のメールにはまだ続きがあった。

「そして、その心を育てる意味でとても大切なものがあります。それは「部活を好きになる」「みんなと一緒に部活を楽しむ」ことです。「好き」という気持ちほど強いものはありません。それはたとえなにかが原因で挫折したとしても乗り越えることができるほどです。それくらい「好き」という気持ちはどんな困難すらはねのけるくらい強いものなのです。

 しかし、その「好き」という気持ちを常に保たせることはとても大変なことです。そこで必要となってくるのが、「みんなと一緒に部活を楽しむ」ことなのです。部活はみんなと一緒に楽しむ、それをするだけで、「好き」という気持ちを、部活を続けたいという気持ちを持続させることができるだけではなく、みんなと楽しみながら部活をすることで、自分、そして、みんなの能力や技術、心を成長させることができるのです。学生のみなさん、入部したときのことを思い出してください。あなたが部活に入部したとき、あなたのまわりにはこれから一緒に成長していく新しい仲間たちがいたはずです。そして、一緒に練習していくなかで自分がとても成長していくことにみんなと一緒に喜んでくれていたでしょう。そのなかでこう思ったでしょう、「この仲間たちと一緒に成長していくことを考えると、私、このとき(部活をみんなと一緒にするとき)が一番楽しいよ!!」って、そして、「私、部活のこと、もっと好きになっちゃったよ!!」って)

 この文章を読んだ瞬間、女子高生は昔のことを思い出していた。

(あっ、たしかにそうだ。私、入部したころ、ちょっと不安だった。だって、私が入部したころから静真のテニス部は県内でも随一の強さを誇っていた。むろん、まわりはかなりの実力者ばかり。私は中学のときにテニス部にいただけのただの人。でも、それでも、私、みんなと一緒に一生懸命練習した!!わからないところがあったらみんなに聞いて実践した!!みんなと一緒にやってきたんだ!!そんなことがあったから、私、最初のころは、「仲間たちと一緒にテニスをやることができてとても楽しいよ!!あぁ、テニス、もっと好きになっちゃった!!」なんてつい考えてしまったよ。それに、そのころは「自分もみんなと一緒に成長できている」なんて実感していていたような気がする。そのためか、私、このころからめきめきと実力をつけてきて、気がつけばレギュラー入りを果たしていたよ。けれど、レギュラー入りしてから、レギュラーの座を必死に守ろう、少しでも勝ちにいこう、としていた。そう思った瞬間、なんか、テニス、楽しくなくなちゃった。いや、それ以上に、テニスのこと、好きではなくなった。ただ勝ちにいくだけ、勝ってほかの仲間たちのことを見下そう、自分だけよければそれでよい、なんて考えるようになっちゃった・・・)

そう、女子高生、沼田の言葉を聞いてはっとしたのだ。女子高生は入部当初、まわりには実力者ばかりだったため、この先テニス部でやっていけるか心配をしていたのだった。が、それでも女子高生は部の仲間たちと一緒に一生懸命テニスを練習した。わからないところがあれば部の仲間たちから教えてもらい実践してみた。そうすることで女子高はめきめきと実力をつけていったのだ。むろん、それにあわせて、自分も仲間たちも成長していった。そのときの自分はその仲間たちとの時間が、いや、部活(テニス)そのものが好きで楽しいと思っていた。が、レギュラーになったとたん、レギュラーの座を死守しよう、勝利のみを追い求めようとしたあまり、これまであった、楽しさ、部活(テニス)が好きという気持ち、それがなくなってしまい、逆にレギュラーになれなかった仲間たちのことを見下したり、自分だけがよければそれでいい、そう考えるようになってしまった。それは「勝利」しないといけないというプレッシャーから起きたものかもしれない。そして、そんな「勝利」というプレッシャーにより忘れていた大事な心、「部活(テニス)が好きである」「仲間たちと一緒に楽しむ」、そのことを沼田の文書を通じて女子高生はやっと思いだしたのだった。

 そんな女子高生、すぐさま、自分の今の想いを母親に語った。

「私、昔みたいにみんなと一緒に部活(テニス)を楽しみたい。もっと楽しんで部活(テニス)をもっと好きになりたい・・・」

これには、母親、

「たしかにそうかもね・・・」

と、自分の娘の想いに同意するも、すぐに、

「でも、昔に戻ったら浦の星の生徒たちみたいに部活に対する士気が低下しちゃうんじゃないかな。だって、浦の星の生徒たちは部活をお遊び程度としか思っていないじゃない。それってみんなと一緒に楽しんでいるだけとしか言えないんじゃないかな。これだと静真の部活動は弱体化しちゃうんじゃないかな」

と、指摘する。このときの母親、こんなことを考えていた。

(私としては娘の言うことももっともだと思うよ。だって、沼田殿の文書で言っていることだもんね、娘の言っていることって。でもね、私としてはそれがとても心配に思えてくるんだよね。今の静真の部活動は、勝利を目指す、勝利し続ける、その目的があるから士気が高いんだよ。でもね、浦の星の生徒たちみたいにお遊びで部活をみんなと一緒に楽しんでしまうと部活に対する士気はかなり低下しちゃうよ。いや、もう静真の部活動は崩壊しちゃうよ)

そう、この母親、いまだに木松悪斗が静真本校と浦の星分校の統合阻止のために広めた考え、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すると、士気低下・対立により、静真の部活動に悪影響がでる」、それにとらわれていたのだ。木松悪斗の考えからすれば、「楽しむこと=お遊び=部活動に対する士気が低くなる」という構図が成り立つのかもしれない。その構図にとらわれている限り、いくら沼田がどう言ったとしても、娘である女子高生が部活に対する考えを変えたとしても、母親の考えを変えることができないだろう。だって、部活動に対する士気の低下はすなわち浦の星の生徒たちの部活動に対するレベル(初戦敗退レベル)と同レベル、というか、静真の部活動そのものに悪影響を与え、結果的に部活動優秀校の静真の地位の失墜につながるから。



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Moon Cradle 第7部後編 第31話

 が、沼田の文書にはそんな母親の心配していることについての答えも書いていた。それは・・・。

「でも、「みんなと一緒に部活動を楽しむ」ことで浦の星の生徒たちと同じように部活動に対する士気が低下してしまうと心配している保護者の方々もおるかもしれない。が、それは間違いである。むしろ、部活動を楽しむことで、自分の能力、技術、心、そのすべてが成長し、部活をもっと好きになる、もっと好きになりたいからもっと楽しもうとする、そんな好循環を生むのだ。だからこそ、楽しむことで部活動に対する士気が下がるわけではなく、むしろ、部活動に対する士気があがるものなのである。さらに、他校との戦いの場においてもそんな仲間と一緒に部活を楽しむ者同士戦うことで熱いバトルが起きる。部活動が好きでみんなと一緒に楽しもうとする、それは相手との関係も一緒のことがいえる。戦う者同士その戦いを一緒に楽しもうとする。が、それだけではお互いともに馴れあいになってしまう。これでは勝負がつかない。ならばどこで勝負をつけるか、それは、これまで自分が仲間たちと一緒にやってきたことで成長してきた、自分の能力、技術、心、さらに、「楽しいこと」「部活が好きであること」、その気持ちの強さ、である。そのために、戦う者同士はお互いのことをリスペクトしつつも自分が持つものすべてを賭けて全力全開で死力を尽くしてのバトルを行おうとする。それはそうしないと戦う相手に失礼だから、というのもあるが、そうすることでとても発熱したバトルとなる。だからこそ、「楽しむこと」「好きであること」は部活動に対する士気低下につながることにはならない」

 が、この沼田の言葉を見ても、母親、

「本当かな?」

と、逆に心配になってしまった。

 が、沼田の文章の続きがあった。それを読むと、母親、

「はっ!!!」

おt、驚いてしまった。なんと沼田の文章の続きにはこう書いていた。

「もし、それが本当かどうか疑問に思っている方がおりましたら添付された動画ファイルその1を見てほしい。この動画はある戦いを撮ったものである。参考になるだろう」

この沼田の言葉に、母親、娘である女子高生と一緒にタブレットの画面を見ながらメールに添付されていた動画ファイルその1を再生してみた。

 すると、突然、

トゥトゥ トゥートゥートゥー トゥトゥ トゥートゥートゥー

と、いきなり音楽が鳴り出したではないか!!で、そのタブレットの画面に映る少女2人組を見て、女子高生、はっとする。

「あっ、これって・・・、Saint Snow・・・」

そう、タブレットに再生された動画に映っていたのは、なんと、Saint Snow、だった。これには、女子高生、母親、ともに、

「なんか自身に満ち溢れている・・・」(母親)

「いや、私にはなんか楽しそうにみえるし、それでも全力全開で死力を尽くしているように感じるよ・・・。それどころか、Saint Snowの2人とも、スクールアイドルが好きであることを前面にだしているような気がする・・・」(女子高生)

と、Saint Snowの、全力全開で、死力を尽くしている、けれども、自信に満ち溢れており、それでいて、戦いそのものを楽しんでいる、いや、それ以外に、Saint Snowの2人ともスクールアイドルが好きであることを全面にだしている、そんなステージに圧倒されていた。まさに、圧巻のステージ、いや、沼田が言う「楽しむこと」「好きであること」、それを体現しているステージだった。

 そして、Saint Snowの曲が終わる。このとき、女子高生、

(あんなに全力全開の圧巻のステージ、なのに、まさか笑顔で楽しんでいる・・・。でも、これで終わり、と思うとちょっと寂しいかな・・・)

と、これまで見たことがないステージが終わることにちょっと寂しさを感じていた。

 が、動画にはまだ続きがあった。突然、

トゥ トゥトゥートゥトゥトゥ トゥトゥトゥ トゥトゥトゥトゥー

という曲の始まりととおにどこか見たことがあるスクールアイドルがパフォーマンスを始めた。こにれは、女子高生、すぐに、

「あっ、このグループって、Aqours!!」

と、今、パフォーマンスをしているグループがAqoursであることに気づく。と、同時に、

「で、でも・・・、Aqoursってたしか、報告会のときにダメダメだったはず。それなのに、今見ているのはそれとは別人・・・。これって一体・・・」

と、絶句していた。女子高生がもつAqoursのイメージはあの部活動報告会で見た(新生)Aqoursの、不安・心配の深き海・沼に陥ってしまいダメダメなパフォーマンスをした姿だった。が、今、その女子高生の前で繰り広げられているAqoursのパフォーマンスはその報告会のイメージすら払しょくするくらいの圧巻のパフォーマンスだった。さらに、

「そして、Aqoursも全力全開で死力を尽くしてパフォーマンスしているのに・・・笑顔・・・楽しんでいる・・・」

と、これまた絶句してしまう。そう、AqoursもSaint Snowと同様、全力全開で、死力を尽くしている、それなのに、笑顔、この戦いそのものを楽しんでいる、そんな風に見えていたのだ。

 そして、曲が終わると同時に動画も終わった。そのとき、女子高生は大声で、

「す、すごい・・・。Saint SnowにAqours、圧巻のステージだったよ。それに、2組とも相手のことを認め合いつつも手加減なんてしない、全力全開、死力を尽くしてのパフォーマンス、それを2組とも繰り広げていた。それでも2組とも戦いそのものを楽しんでいた。私、こんなステージ、いや、戦い、見たことがないよ!!とても感動したよ!!これが沼田のじっちゃんが言っていたことなんだね!!」」

と、この戦いの感想を言いつつも沼田が言っていることを理解していた。

 一方、母親はというと、

「うん、そうだね。あなた(女子高生)の言う通りだわ。あんな圧巻とした、それでいて、戦いを一緒に楽しもうとしている、そんな戦いは見たことがないよ・・・。これが沼田殿が言いたかったことなのね・・・。お互いをリスペクトしつつ全力全開の死力を尽くした、それでいてそれすら楽しんでいる、そんな戦いだったね。そして、これが沼田殿がいう、「楽しむこと」「好きであること」のすごさなんだね・・・」

と、娘である女子高生と沼田の言うことに同意していた。このとき、母親、

(私はこれまで木松悪斗様の考え、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」、が正しいと思っていた。けれど、この戦いを見て初めて知った、「楽しむこと」は遊びでもなんでもない、むしろ、「楽しむこと」こそとても重要なんだね。みんなと一緒に楽しむ、そして、部活がもっと好きになる。こうして仲間たちと一緒に成長していく、「慈愛の心」を育てることにもつながる。そして、その者同士が戦うとき、お互いのことをリスペクトしつつ、全力全開の死力を尽くした戦いをする、そのなかでその戦いを楽しもうとしている。そう考えると、「楽しむこと」が持つ莫大なパワーを感じてしまうよ・・・)

と、沼田が言う「楽しむこと」のすごさを痛感していた。さらに、

(それに、沼田殿の言う通り、戦いを楽しみながらも白熱した戦いを繰り広げているあたり、AqoursとSaint Snow、同じスクールアイドル部という部活だけど、ともに部活に対する士気が高いとみえる。いや、それ以上だよ・・・。これだと日頃から部活動に対する士気が高いようにみえる。こう考えるだけで(沼田殿が言う通り)「楽しむこと」は士気低下につながらない、いや、それ以上に士気がどんどん高くなっていようにみえるよ・・・)

と、自分が持つ疑問が解消されたように感じられた。

 が、このとき、娘である女子高生はこんなことを言った。

「お母さん、あのね、Aqoursって浦の星のスクールアイドル(=生徒)だよ。でも、たしか、木松悪斗様、「浦の星の生徒は部活動に対する士気が低い」って言っていなかったけ?」

これを聞いて、母親、はっとする。

(あっ、たしかに、木松悪斗様は「浦の星の生徒は部活動に対する士気が低い」って言っていたよね。けれど、今のAqoursが浦の星の生徒だとするとそれ自体違うことになる。浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低いわけじゃない、逆に士気が高いことになる・・・)

そう、ここで、母親、木松悪斗の考えが違うことに気づく、「勝利こそすべて」、その信条でのみしか部活動に対する士気が高くならない、だからこそ、それを信条としている静真の部活動はそれに対する士気が高い、これまでそう思っていた母親、が、沼田の文書と添付されていた動画により、「楽しむこと」を信条にしても部活動に対する士気を高めることができる、それが浦の星の生徒たちにも言える、そのことに・・・。

 母親、このことを受けて、娘である女子高生にこう話した。

「ねぇ、もしかすると、浦の星の生徒たちって逆に(部活動に対する)士気が高いのかもしれないね。私たち、勝利のことがばかりこだわりすぎて「(初戦敗退続きの)浦の星の生徒たちは(部活動に対する)士気が低い」と勘違いして浦の星の生徒たちのことを見下していたのかもしれないね・・・」

と、反省の弁を言いつつも浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が高いことを認めた。これには女子高生も、

「うん、そうかもね・・・」

と、母親に同意していた。

 ただ、沼田の文書はまだ続きがあった。女子高生、さらにその先を読む。

「動画を見てわかったと思う。「楽しむこと」「好きであること」、それは部活動に対する士気を下げるどころか高めるものである。さらに、その者同士の戦いはお互い相手のことをリスペクトしつつ全力全開の死力を尽くしつつも白熱した、そして、お互いとも楽しいと思える戦いとなる。そして、この戦いはお互いともに得るものは大きい。この戦いによって、お互い、自分たちの心などすべてをさらに成長させることができる。また、この戦いを教訓にさらに自分たちを磨こうとするだろう。戦いを通じて、心技体、すべてを向上させることができる、それこそ、「楽しむこと」「好きであること」の無限のパワーだといえる。

 一方、勝つことだけに執着してしまうとそんなことなんて起きないかもしれない。「勝った」「負けた」だけの気持ちしか起きないのかもしれない。むしろ、負けたことで挫折しもう2度と立ち上がることができなくなるかもしれない、そんな危うさすらはらんでいる。だからこそ、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」という考えについては沼田としては疑問に残ってしまう」

 この沼田の文書を見て、母親、あることを悟った。

(た、たしかに沼田殿の言う通りかも。私たちはこれまで木松悪斗様の言う通り、「勝利こそすべて」、勝つことのみに執着していた。けれど、学校というのはいろんなものを学び成長させる場所。娘(女子高生)もその学校で仲間たちと一緒に、心技体、すべてを成長させてきた。けれど、「勝利こそすべて」という考えがあると社会にとってとても大切なもの、「慈愛の心」、を育てることができない。もしかすると、それによって娘はほかの人のことを見下すような大人に成長するかもしれない。けれど、「みんなと一緒に楽しむ」、それを心掛けることで「慈愛の心」を含めて娘はとてもいい大人、人のことを思いやる大人に成長できるのかもしれない。そう考えると、沼田殿の言う通り、学校でも部活でも「みんなと一緒に楽しむこと」「好きであること」がとても大切なんだね・・・)

 そして、母親は娘である女子高生にこう言った。

「ねぇ、もしかすると、私たち、木松悪斗様の考えに縛られていたのかもしれないね。部活だけでなくすべてにおいても「勝つこと」を優先してきた。そのためにとても大切なもの「慈愛の心」を育てることができないばかりか心そのものを成長させることができなかったのかもしれないね。だからこそ、人として成長していくには、沼田殿の言う通り、「楽しむこと」「好きであること」、それがとても大切なのかもしれないね」

これには娘である女子高生も、

「うん、わたしもお母さんと同じ考えだよ!!」

と、激しく同意していた。

 そして、沼田の文書はついに終わりを迎える。

「少し長かったが最後まで読んでもらえて感謝しておる。これには私の手紙は終わる。今日、家族でこのことを話し合ってみたらどうかな。それは、今後、自分たちの子どもの育て方にとても役に立つかもしれない。

 私の話は以上だ。それではこれにて失礼する。

2018年3月○○日 沼田」

 

 ついに読み終わった、そう思った女子高生、母親に対してある決意を語った。

「わ、私、この文書を見て自分の考えが愚かだと思ったよ。私、もっと部活を、みんなと一緒に部活を楽しもうと思う!!もっと部活(テニス)のことを好きになろうと思う!!そして、みんなと一緒にもっと成長していきたい!!立派な大人の女性になりたい!!」

これには母親も、

「うん、そうだね。私もあなたと同じ思いだよ。あなたのやり方で部活のみんなと一緒に部活を楽しんで成長していきなさい!!」

と、優しく答えた。

 が、実は沼田の文書はまだ続きがあった。これには、女子高生、

「あっ、まだ手紙に続きがあった!!」

と、驚くと、その文書の続きを言った。

「追伸

 今、浦の星の生徒たちは来月(4月)初旬、沼津駅南口付近にて新生Aqoursお披露目ライブを開催しようとしている。それに向けて浦の星の生徒たちの士気はとても高まっておる。が、規模が巨大フェス並みとなるため、人材が不足しておる。あんな素晴らしいステージを繰り広げた、浦の星、いや、来年度からは静真を代表するAqoursのライブである。とても素晴らしいものになるだろう。なので、もし、新生Aqoursと一緒に、浦の星のみんなと一緒に素晴らしいライブにしたい、一緒に楽しみたい、そう思える者がいたら、静真高校生徒会、もしくは、稲荷あげは君率いる「静真Aqours応援団」まで一報を頼む」

 これを見た瞬間、女子高生、すぐに、

「わ、私、私もこれに参加してみたい!!みんなと一緒に新生Aqoursの素晴らしいライブを作りたい!!」

と、なんと、新生Aqoursお披露目ライブ、その準備への参加を表明してしまう。さすがに母親からは、

「でも、テニス部はどうするの?」

と、少しだけ心配そうに部活について心配そうに言うも、女子高生、すぐに、

「それは大丈夫だよ!!だって、今、部活、休みだもん!!」

と、元気よくこたえた。まぁ、これには理由があって、このとき、静真の部活動のほどんどがお休みだった。なぜなら、(木松悪斗の多額の寄付金を使って)静真の部活動棟の改修工事を行っていたからだった。部活動棟にあるトレーニングルームを含めての全面的な改修工事になるため、その改修工事期間となる春休みのあいだ、部活は自主練が中心となっていた。なので、沼田、それを逆手にとって静真の全校生徒に新生Aqoursお披露目ライブ準備の参加を呼び掛けたのだ。そんなわけで、

「それだったらあなたの意思を尊重するわ」

と、母親もそれについて承諾、こうして、女子高生のお披露目ライブの参加はすんなりと決まった。

 が、文書の追伸はもう1つあった。それを母親が読む。

「追伸2

 添付ファイルその2はある男の本性を暴いたもの、そして、ある少女がその男に対して戦いを挑み、さらに、この私、沼田によってその男が論破された動画である。参考程度に見てもらいたい」

で、母親、添付ファイルその2の動画を再生すると、

「お前たち、静真高校の生徒たちは勝利を目指すため、日夜、勉強や部活、スポーツに打ち込むべきなのだ!!そして、そのあかつきにはすべての勝利を自分を育ててくれた静真にささげるべきなのである!!」(木松悪斗)

「でも、本当のところ、静真での生徒たちの手柄はすべて木松悪斗様のものになるのでしょう!!だって、木松悪斗様は静真の大スポンサーで、静真のなかで1番権力をお持ちの方なのですから・・・」(月)

「う~ん、たしかにその通りだ!!だって、この俺こそ静真の中で1番偉いんだから!!」(木松悪斗)

と、木松悪斗が月に対して自分の本性をさらけ出したシーンや、

「それって、もしかして・・・、「楽しむこと」「みんなと一緒に楽しむこと」・・・ですか?」(月)

と、沼田の問いに月が答えるシーン、そして、

「つまり、「部活動とは楽しむことがすべて」「部活動にとって一番大事なものとは、その部活が好きであり、みんなと一緒に楽しみながらいろんなことを経験していくこと」なのじゃ!!」(沼田)

と、沼田が木松悪斗を論破するシーンが流れていた。そう、この沼田の文書には、あの延長戦のライブ会場として月が運営会社に申請していた「ラグーン」屋上の使用、それをめぐる月と木松悪斗の戦いの出来事、いや、あの日の会議室の出来事を撮った動画が添付されていたのである。この動画、なんと、鞠莉と沼田がグルとなって撮影したものだった。沼田はあの日、「ラグーン」運営会社の会長に対し秘密裏に会議室の何か所かに隠しカメラの設置するように依頼、運営会社の会長はそれに従い会議室の何か所かに隠しカメラを設置した。で、その隠しカメラを使って月と木松悪斗の戦い、その一部始終を撮影していた。さらに、鞠莉、自分のスマホの無料通話アプリを起動させつつもこっそり自分の服にも隠しカメラを仕込んで木松悪斗の言動をすべて撮影していたのだ。それらを編集したのがこの添付された動画その2であった。

 むろん、kれには、女子高生、

「あ~、月生徒会長、カッコ良すぎです~。あの報告会のときはちょっと失望したけど、この動画を見ていると、月生徒会長のこと、もっと応援したくなっちゃうよ・・・」

と、凛々しい姿をした月にホレボレするも、とうの母親はというと、

「う、うそでしょ・・・。木松悪斗様、静真を自分のものにしようとしていたのね・・・。だから、私たちに「勝利こそすべて」という考えを押し付けたわけね・・・」

と、木松悪斗の本性を見て木松悪斗に失望してしまった、そんな思いを感じていた。と、同時に、

「それに比べて、沼田殿、とてもお忙しい身なのに、静真のこと、学生のみんなのことをとても大事にしていたのね・・・」

と、沼田の静真における偉大さをあらためて実感していた・・・。

 

 と、そんなわけで、静真高校のテニス部に所属している女子高生に沼田のメールが届いて家族のあいだで大きな話題になったわけだが、沼田、これと同じメールを静真の全校生徒に送っていた。 

 で、沼田、このメールのために月と鞠莉にあるお願いをしていた。月には月が撮っていたラブライブ!決勝延長戦の動画を渡すようにお願いした。これに対し、月、沼田に対し、この動画、月自身が納得がいかないような編集をしないよう釘を刺していた。もちろん、沼田もそのことを重々承知していたため、この動画をまったく編集もせずにそのままメールに添付していた。なので、静真の学生全員、月が撮影したラブライブ!決勝延長戦の動画をみることができた。むろん、Saint SnowとAqours、お互いをリスペクトしつつも全力全開で死力を尽くしてのバトルは静真の学生たちのだけでなくその保護者たちのハートすら揺れ動かすものとなった。また、鞠莉には事前に「ラグーン」の会議室に隠しカメラを数台設置することを伝えた上で鞠莉の服の中にも隠しカメラをつけてもらうように依頼、それらの隠しカメラで撮ったものを沼田自ら編集した動画を自分のメールに添付した。とはいっても、ほぼノーカットの動画だったため、木松悪斗の発言、もとい、暴言すらもばっちり映っており、悪意ある編集はしてないものの、それでも沼田が木松悪斗を論破する展開までもがばっちり映っていたので、どちらかというと動画の内容自体は木松悪斗にやや不利な内容になっていた。そして、この沼田の文書である。こうなると、このメール、月にとってとても有利になる、そんな内容といっても過言ではなかった。

 であるが、そこに沼田のある想いが隠されていた。沼田、このメールを静真の全校生徒に送るとき、こんなことを考えていた。

(このメールは別に木松悪斗を批判するものではない。このメールを読んで木松悪斗の考えの方が素晴らしい、木松悪斗の考えを信じる、と、思っても別に構わない。しかし、わしからすれば、少しでも日本が明るい未来へとつながれば、と思ってこのメールを静真の全校生徒に送った次第である。今、日本だけでなく世界において「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」という考えがはびこっている気がする。が、その考えがはびこり続ければきっと、敗者、弱者などは排除され、また、一度でも敗者、弱者などになれば這い上がることできない、そんな世の中になってしまう。選ばれた者のみが謳歌する世界、それほど恐ろしい世界なんてない。才能があるから、お金があるから、ただそれだけで勝者になるならきっと不条理な世界になってしまう。敗者、弱者の子というだけで勝者、強者になることを許されずずっとが這いつくばる生活を強いられる、結果、生きることすら諦める、そんなことが起きてしまう。それだけは絶対にダメだ!!才能がなくても、お金がなくても、少し要領が悪くても、努力すれば報われる、そんな世界であってほしい。そんな意味でも、「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の許される世界でなく、正直者は救われる、「めんなと一緒に楽しみながら成長する」「自分がやることを好きになって楽しみながら一歩一歩前に進んでいく」、そんな世の中になってほしい。それこそ、日本の、いや、世界の明るい未来へとつながるのだから・・・)

沼田にとって静真に通う学生は全員自分の大切な子どもたちである、が、その大切な子どもたちが「勝利こそすべて」「勝利こそ正義」の名のもとに他人を排除する、見下す、そんな大人になってほしくない、沼田はそう思っていた。そのためにも少しでも沼田にとって大切な子どもたちがもう1度そのことについて考え直してほしい、できれば、「みんなと一緒に楽しむ」「やっていることが好きになる」、そんな考えにシフトしてもらい、結果、これが、寛容さ、謙虚さ、を持った大人へと成長してほしい、と、思って沼田はこのメールを全校生徒に送ったわけなのである。

 とはいえ、沼田、このメールを送ったあと、あることにちょっと後悔していた。それは・・・。

(あっ、しまった!!このメールの内容、月生徒会長にかなり有利に働いてしまうのではないか。となると・・・、木松悪斗、この先、静真においてとても苦しい状況に陥るかもしれない・・・。こりゃ、やりすぎたかも・・・。そして、明日、月生徒会長とあげは君も大変な思いをするかも・・・)



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Moon Cradle 第7部後編 第32話

 この沼田の予想は当たってしまった。翌朝・・・。

「ねぇねぇ、あのメール、見た?なんか、木松悪斗様、静真を自分のものにしようとしているんですってね」

「木松悪斗様のことを信じていた自分が馬鹿だったわ!!もう、あんな親父の言うことなんて絶対に信じない!!」

沼田のメールに添付された動画その2により、木松悪斗の失態、というより、木松悪斗の本性、を見てしまった静真高校の生徒の保護者たちは木松悪斗に見切りをつけようとしていた。

 一方、そのころ、浦の星分校の前では・・・、

「あの~、稲荷あげはさんですか・・・。ちょっとお願いがあります・・・。私、私・・・」

なんと、稲荷あげは、校門前である静真の女子生徒から口説かれそうになっていた。これには、あげは、

(あ、あの~、私、そんな趣味、持っていないのですけど・・・)

と、これには突然のことだったのでびっくりしてしまった。あげはにはそんな趣味なんて持っていなかった・・・。

 が、その女子高生はあげはに対し驚きのことを言った。

「私、私を、静真Aqours応援団に入れさせてください!!」

これには、あげは、

「あっ、そういうことなんだ・・・」

と、ついほっとしてしまった。だって、まさかあげはが女子高生から告白されたとあげは自身思っていたのに、ふたを開けてみたら、あげはたち率いる静真Aqours応援団に入りたい、ということだったのだ。なので、あげは、ちょっとほっとしてしまった。

 が、あげは、気を取り直して、その女子高生に対しあることを尋ねた。

「でも、なんで、私たちの静真Aqours応援団に入りたいの?」

これに、その女子高生、元気よくその理由を述べた。

「だって、あのラブライブ!決勝延長戦のAqoursとSaint Snowの白熱した戦い、なんか心動かさられるものを感じたんだもの!!だから、私、これから静真のスクールアイドルになるAqoursを応援したくなったんです!!応援団に入ってみんなと一緒に楽しんで、もっとAqoursのこと、好きになりたいんだもん!!」

これには、あげは、

「でも、それだと、今入っている部活は大丈夫なの?無理しなくてもいいんだよ」

と、その女子高生に心配そうに言うも、その女子高生、元気よくこう答えた。

「それについては大丈夫です!!だって、春休みのあいだは部活はお休みだし、今はAqoursのために働きたいんだもん!!」

先述の通り、静真の部活は只今部活動棟の改修工事のためにお休み、自主練中心となっている(ちなみに、改修工事の期間は春休みのあいだみたい)。また、新生Aqoursお披露目ライブの開催は春休み期間中の4月上旬なのでその女子高生のお披露目ライブ準備の参加は可能、とのことだった。

 で、それを聞いたあげは、

「うん、わかった!!ようこそ、静真Aqours応援団へ!!」

と、その女子高生に応援団に入ったことに対してお礼を言うと、すぐさま、

「で、あなたはどこの部活に所属しているの?」

と、女子高生がどこの部に所属しているのか尋ねてみた。

 すると、その女子高生、自分の所属する部活を元気よく答えた。

「私、テニス部でレギュラーをしています!!あの延長戦、私、あれ見てびびっときたんです!!これまでは勝つことだけ目指していた。けれど、私、あの延長戦を見てその考えを変えました!!みんなと一緒に楽しみたい、もっとテニスを好きになりたい、だからこそ、私、この応援団に入ってそれについて知りたい!!いや、もっともっと静真のみんなと一緒に楽しんで、Aqoursのこと、みんなのこと、好きになりたい!!

そう、この女子高生こそ、あの沼田のメールを見て今までの自分を捨て去り新しい自分へと変わろうとしている、あのテニス部のレギュラーである女子高生だった。

 で、この女子高生の答えを聞いたあげは、

「うん、それだけあれば、静真Aqours応援団に入る動機、十分だよ!!あなたの気持ち、ここにいる静真Aqours応援団のみんなと一緒だよ!!」

と、元気よくその女子高生をあげはたち率いる静真Aqours応援団に迎えた。

 が、テニス部の女子高生、

「あの・・・、実は・・・、私だけじゃないんです・・・、入団希望者・・・」

と、言うと、なんと、校門の近くにある木のところから、

「私も入団したい!!」「Aqoursのために働きたい!!」

と、入団希望者が次々と現れてきてしまった。むろん、全員、静真の生徒である。その生徒たちの前でその女子高生は言った。

「全員、テニス部の子たちです。昨日、私が声を掛けたら、こんなに集まってしまいました・・・」

これには、あげは、

「あはは・・・」

と、苦笑いするも、すぐにそのテニス部の部員たち、いや、静真Aqours応援団の入団希望者に向かってこう宣言した!!

「よしっ!!みんな、入団、OK!!ようこそ、静真Aqours応援団へ!!」

 

 そして、月の方でも・・・。

「月生徒会長、大変です!!生徒会室の前に生徒たちが並んでおります!!」

と、ナギは月に対し慌てながら言うと、

「えっ!!」

と、月、つい驚いてしまう、も、すぐに月は落ち着きを取り戻すと、ナギに対し、

「なんの目的でここに並んでいるのですか?」

と、生徒たちが生徒会室前に並んでいる理由を尋ねた。すると、ナギ、

「なんか、新生Aqoursお披露目ライブの手伝いをしたい、って言っております」

と、嬉しい悲鳴をあげてしまう。これには、月、

「こ、これはチャンス!!」

と、このときこそ好機、とばかりに生徒会役員全員に対し、

「よしっ、今すぐ生徒会室の机を並び替えて!!並び替え済み次第、生徒会室の前にいる生徒たちの列を整理したら、臨時お披露目ライブ準備スタッフ登録会、始めるよ!!」

と、命令を下した。

 こうして、月の命令のもと、生徒会役員たちは生徒会室の机を並び替え、生徒会室前にいる生徒たちの列を整理すると、すぐさま、臨時お披露目ライブ準備スタッフ登録会が始まった。そのなかで、生徒会室の前で並んでいた生徒たちが口々にしていたのが、

「あのラブライブ!決勝延長戦、私、あれ見てとても感動しました!!だから、新生Aqours、私、支えたい!!」

「あの延長戦ほど白熱したバトルはないよ!!それに、AqoursとSaint Snow、二組とも戦いそのものを楽しんでいるなんてなんか素晴らしいことだよ!!私、考え方、変わっちゃった!!」

と、延長戦を見て部活に対する考えが変わったこと、新生Aqoursを応援したくてお披露目ライブを手伝いたい、そのことだった。これには、月、

(ははは、沼田のじっちゃんめ、やりおったな!!でも、僕、今回のメールの件、本当に感謝しているよ!!だって、部活についてとても大切なこと、それを僕はあの延長戦で見つけた。それと同じことが、今、静真の生徒たちにも起きている。それが今の状況を引き起こしたんだ!!)

と、沼田に対しお礼を言っていた。月はもちろん沼田のメールの件は知っていた。が、そのメールにより静真の生徒たちのあいだで部活に対する認識の変化が起きている、それを証明しているのがあげは・月たちの目の前で起きている光景であった。その点について、月はそのきっかけをつくった沼田に感謝していた。

 

 そして、2時間後、臨時スタッフ登録会は終わった。その後、月はあげはたちを呼び、今後のことについてすぐに打ち合わせを行った。そんとき、あげはたちも月と同じ状況に陥ったことを聞いてかなり驚いていたが、すぐに実務的な話し合いとなった。

 そして、話し合いの結果、次のことが決まった。

①あげはたち静真Aqours応援団はこれまで通りステージ作成や音響設備の準備などお披露目ライブ準備の内務のほうを手伝い浦の星の生徒たちのバックアップに務める

②ナギたち静真高校生徒会と臨時スタッフ登録会で登録された生徒たちは外務の部分、お披露目ライブに出店してくれるお店・企業・団体などのサポートや会場設営などを担当する

③お披露目ライブの総合プロヂューサーである月のもと、お互いスタッフを融通しながらお披露目ライブの準備を行っていく

①についてはある程度目星はついていた。延長戦が終わったことで千歌たち新生Aqours1・2年を含めた主力が現場に復帰しお披露目ライブの準備に集中することができるようになったため、ステージ作成などの準備のスピードが格段とあがった。それをあげはたち静真Aqours応援団がサポートすることでお披露目ライブ開催日の数日前にはステージや音響設備などの準備が終わる手筈となった。でも、②については猫の手も借りたいほどだった。フェス規模のお披露目ライブに出店するお店・企業・団体はすでに100以上を超えており、その方々1件1件の十分なサポートができない状況だった。そこで、月はお披露目ライブ準備の手伝いを表明し今回の登録会で登録してくれた生徒たちを使いその方々への十分なサポートを行うことを決めたのである。部活動優秀校である静真ではあるが勉強においてもかなり優秀だった。なので、静真の生徒たちはかなり優秀でありその方々への十分なサポートもお手の物だった。そんなわけで、月とナギたち、そして、あげはたちはお互いのスタッフを融通しながらお披露目ライブの準備を進めることにした。

 

 こうして、お披露目ライブに向けて、千歌たち新生Aqours、月とナギたち静真高校生徒会、あげはたち静真Aqours応援団は一丸となって頑張っていた。一方、お披露目ライブの準備を一緒に進めていた浦の星と静真の生徒たちはというと・・・、

「ねぇ、こっちの方がステージ映えするんじゃないかな?」(静真の生徒)

「うん、いいかも!!それだったら・・・、これとこれを組み合わせたらどうかな?」(浦の星の生徒)

「うん、それ、いいね!!採用!!」(静真の生徒)

と、まったく対立するわけもなく、わきあいあいと一緒に行動していた。お披露目ライブの成功という大きな目標のために一丸となって進もうとする両校の生徒たち、そこには木松悪斗が予想していた対立なんてなかった。そこにあったのは、お披露目ライブを成功させたい、そんな士気の高い者同士が高い頂きに向かって一緒に楽しもう、一緒に進もう、という姿だった・・・。

 

 そして、Aqoursにもある変化が訪れていた。お披露目ライブ前日、予定より少し伸びたものの、あともう少しでお披露目ライブに使うステージも完成・・・のなかで、ヨハネと花丸、

(ついに明日だ・・・、このヨハネ様の旅立ちの・・・。ただ、そう考えると・・・)(ヨハネ)

(ついに明日ずら・・・。そう考えると・・・)(花丸)

と、つい、明日のライブに向けて緊張・・・していたかと思ったのだが、

「緊張・・・しないずら?」(花丸)

「本当だ・・・。なんで?」(ヨハネ)

と、自分が前の部活動報告会でのライブみたいに、緊張どころか不安・心配の深き海・沼に陥ってしまった、そんなことなんて気にしない、それくらいの自信を自分のなかにあることに驚いてしまう。これには、ルビィ、

「ちょっぴり大きくなったのかも」

と、自部たちがこの1ヵ月のあいだにちょっぴりどころか大きく成長したことを花丸とヨハネに伝えた。この1ヵ月のあいだ、報告会でのライブの失敗、行方不明?になったとても大事な存在であるダイヤたち3年生3人を探すためのイタリア旅行、そのなかで、ローマ・スペイン広場で行った、Aqoursの、スクールアイドルの、未来を賭けた運命のライブ、闇なる深淵へと陥った理亜を救うために行ったラブライブ!決勝延長戦、と、いろんな経験をしてきた千歌たち新生Aqours1・2年の6人、そのなかで、Aqoursみんなとの大切な想い出、想い、キズナ、それが宝物となって自分の心の中でずっと残っていく、そして、それを通じてずっとみんなとつながっていける、そのことにみんな気づいたことで、ダイヤたち3年生3人を含めて、Aqoursメンバー全員、大きく成長した、そのことを、今、花丸とヨハネは実感したのかもしれない。

 

 そして、それは月とて同じだった。最初のきっかけは木松悪斗の突然の静真高校と浦の星女学院の統合反対だった。これがきっかけで月は「部活動とはなにか」「部活動をする上で大切なものとは」といった高校としてはとても重要な問いを考えるようになる。そして、月はその問いを無視して、ラブライブ!優勝を果たした、その(新生)Aqoursでもって木松悪斗を制しようとしたものの、報告会での新生Aqoursのライブ失敗をもって月の企みは破綻、月も挫折を味わった。が、Aqoursとのイタリア旅行やラブライブ!決勝延長戦を通じて、その問いの答え、「部活動とはみんなと一緒に楽しむこと」「みんなと楽しむことでいろんなことを学び経験していく、その経験こそ1番大事」、ということに気づくことができた。そして、今、月のまわりにはラブライブ!決勝延長戦を見てその問いの答えを知りそれを実践するために集まってきてくれた仲間たちがいる。

 

「Moon Cradle」、月のゆりかご、これまで月はみんなのために動いていた。静真のみんなの楽しい高校生活のために頑張ってきた。そして、月は、Aqoursの、浦の星の生徒たちの、これからの静真での生活をよりいいものにしようと最初は頑張っていた。が、1度の挫折を経て、月は、月自身は、みんなだけでなく自分自身もみんなと一緒に楽しむことでいろんなことを学び経験していく、その大切さを知ることができた。もう「Moon Cradle」ではない、。これからは、月自ら、静真、浦の星、そのみんなと一緒に楽しみながら前に進んでいくはずである。月は太陽から照らされて光る、そう考えると、太陽がなければ月は光り輝くことなんてできない。が、そんな月でもあることをすれば自ら光ることはできる。それは、自らみんなと一緒に前に進もうという気持ちを持つことである。そう、今の渡辺月は自ら光を放とうとしている。それは昔の月ではない。みんなと一緒に前に進もうとしている、自ら光を放とうとしている、そんな大きな星へと変貌していったのだ。そんな月の光に月と同じ志を持った仲間たち、ナギたち、あげはたち、そして、静真のみんなが集まってきてくれた。これには、月、

(みんな、こんな僕に集まってきてくれてありがとう!!)

と、心からお礼を言うと、自分のまわりにいる静真のみんなに向かってこう叫んだ。

「さぁ、静真のみんな、一緒に行こうか、新生Aqoursのところに、浦の星の、これから新しく静真の仲間となる、そんなみんなのもとに!!」

 

「千歌たちは帰ってなよ!!」

自分たちは少しは成長した、そう実感していた千歌たち新生Aqours1・2年メンバーに対しよいつむトリオは明日の本番に備えて先に帰ることを進言、これには、千歌たち、ちょっと戸惑う。そんな千歌たちの姿に、よいつむトリオ、少し休んでいいパフォーマンスを見せて、と千歌たちに言い聞かせるも、千歌からは、

「でも・・・」

と、逆に明日のおひろめライブの準備のことを心配してしまう。ライブに使うステージなどはほぼ完成しているもののそれらを浦の星分校からライブ会場である沼津駅南口に運ぶなど最後の作業が残っていたからだった。

 が、よいつむトリオ、そのことについてはすでに手を打っているらしく、

「大丈夫!!私たちのほかにも(仲間は)たくさんいるから!!」

と、よいつむトリオたちのことを心配している千歌たちを安心させようとする。で、よいつむトリオの意外すぎる答えに、千歌たち6人とも、

(えっ!!)

と、逆に驚いてしまう。

 と、同時に千歌たちの後ろから足音が聞こえてくる。これに気づいた千歌たち6人は後ろを振り向くと、そこには、

「いよいよだね!!」

と、月の掛け声とともにあげはたちをはじめとする静真のたくさんの仲間たちがそこにいた。そう、月は、月のもとに駆け付けてくれた同じ志をもつ仲間たちとともにお披露目ライブの最後の作業のために浦の星分校に駆け付けてくれたのである。

 ただ、これには、ヨハネ、「聖戦」というくらい少しびびってしまった。が、曜、ここに駆け付けてくれた月のこと思ってか、月にあることを尋ねた。

「月ちゃん、どうしたの?」

これには、月、

「あの(延長戦の)ライブ動画を見て集まってくれたんだよ、僕たちもなにかできないかって!!」

と、元気よく答えると、千歌、

「だけど、反対されていたんじゃ・・・」

と、逆にこの状況に違和感を覚えたのか心配そうに言う。

 が、月、そんな心配そうに言う千歌に対し、大声で、笑顔で、こう答えた!!

「気づいたんだ、僕たちはなんのために部活をやっているのか、父兄の人たちも。

 

「楽しむこと」!!

 

みんなは本気でスクールアイドルをやって心から楽しんでいた。僕たちも本気にならなくちゃダメなんだ!!そのことを、Aqoursが、Saint Snowが、気づかせてくれたんだ!!ありがとう!!」

このあと、あげはをはじめとする静真のみんなからこのお披露目ライブに対する意気込みをみせると、千歌、月と静真の仲間たちの言葉を聞いて安心したのか、

「じゃ、甘えようか!!」

と、よいつむトリオたち、そして、月のお願いを聞き入れることにした。

 そして、月はここにいる静真のみんな、浦の星のみんな、そして、千歌たち新生Aqoursに向かって大声でこう叫んだ!!

「みんな、準備はいい?みんなと一緒に楽しんで、みんなと一緒に前に進んでいこう!!そして、みんなと一緒に明るい未来へと進んでいこう!!それじゃ、みんな、いくよ~!!

 

明るい未来に向かって・・・、

 

全力前進、ヨ~ソロ~、からの、敬礼!!」

 

「それ、私のセリフ~!!」(曜)

 

「ハハハハ」(みんな)

 

 このとき、月、こう思った、この笑顔があればきっと大丈夫、この先、みんなと一緒に楽しんで先に進むことができる、と、そして、みんなと一緒に明るい未来へと進むことができる、と。

 

2018年4月上旬、月、このとき、新しい未来への第一歩を踏み出すこととなった・・・。

 

ED:「キセキヒカル」(・・・なんですが、諸事情により歌詞の部分はカットさせていただきます。ごめんなさい・・・)



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Moon Cradle グランドエンディング・・・?

「Moon Cradle」グランドエンディング・・・?

 

 そして、翌日・・・。

「みなさん、こんにちは!!私たちは浦の星、あっ、元浦の星女学院のスクールアイドル、Aqours、です!!これからこの(沼津駅)南口特設ステージにてライブを行います!!今のルビィたち、新生Aqours、を見てください!!よろしくお願いいたします!!」

このルビィのアナウンスが沼津駅南口にこだまする。そう、ついにこのときがやってきたのだ、新生Aqoursお披露目ライブ、「オペレーション・オブ・New Aqours」、が・・・。沼津駅南口には浦の星の生徒たちとあげはたち静真Aqours応援団が力を合わせて作った特設ステージが設けられていた。そのステージのバックにはAqoursのシンボル、9色の虹、そして、「Aqours」というAqoursのシンボルカラー水色の巨大バルーンが飾られていた。それあの浦の星分校の黒板に描かれていたイメージ図とそっくりであった。さらに、南口に通じる大通りにはそのステージを起点に大小100以上の露店が立ち並んでいた。そして、その特設ステージを中心に多くのお客さまが集まろうとしていた。

 そんななか、月は、

「あともう少しで始まりますのでそれまでお待ちください」

と、来賓客への挨拶回りをしていた。このお披露目ライブの総合プロヂューサーである月にとってライブの来賓客への挨拶回りも立派なお仕事の一つであった。

 そして、最後の来賓客への挨拶が終わると、月、なにを思ったのか、ふと後ろを振り替える。そこから見えた光景とは・・・、

「どう、ライト、OK?」(むつ)

「OK、OK!!ところで、増設したスピーカーの調子はどう?」(いつき)

「こっちもOKだよ!!で、そっちのスピーカーとそれをつなぐコードはどう、大丈夫?」(よしみ)

「うん、こっちも大丈夫だよ!!」(静真の生徒その1)

「コード類もばっちりだよ!!」(静真の生徒その2)

と、静真と浦の星、ふたつの学校の生徒たちが仲良くお披露目ライブに向けた最終チェックを行っていた。そう、これこそ月が待ち望んだものだった。月は静真の生徒たちのため、そして、その静真に新しく入ろうとしている浦の星の生徒たちのためにこの2日月のあいだ頑張ってきたのである。そして、今、その願いは成就されようとしていた。これには、月、

(ついに、ついに、僕の願いが叶うんだね!!静真と浦の星の融合がついに叶うんだね!!僕、とても嬉しいよ!!)

と、笑いながらこの光景を楽しんでいた。

 と、そんなときだった。

「月生徒会長、どうかね、お披露目ライブは?」

と、月がよく知る大男の声が聞こえてくる。これには、月、

「あっ、沼田のじっちゃんだ!!こんにちは!!」

と、大男こと沼田に挨拶をする。さらに、月、

「そして、あのメール、静真の全校生徒に送ってくれてありがございます!!」

と、この前、沼田が静真の全校生徒に送ったメールについてお礼を言う、が、とうの沼田はというと、

「ほほほ、あれはわしの気まぐれじゃ!!あまり気にするな!!」

と、笑いながら謙遜していた。

 そんな沼田、月に対し、

「ところでじゃ、このライブを行って自分が叶えようとしたものは叶ったかな?」

と、尋ねる。これには、月、

「はい、叶いました!!静真の生徒たちも、浦の星の生徒たちも、1つになってくれたからこんな素敵なライブを行うことができました!!みんなには本当に感謝しております!!」

と、元気よく答えた。そんな月に対し、沼田、

「ほほほ、それはよかった、よかった!!」

と言うと、ステージの方を向いて、月に一言。

「さぁ、ついに始まるぞ、新生Aqoursお披露目ライブ、そして、月生徒会長が叶えようとしたもの、静真と浦の星の融合の証、がな!!」

この沼田の言葉に、月、

「はいっ!!」

と、元気よく言った。

 

「「「「「「Aqours、サンシャイン!!」」」」」」」

特設ステージ横に設置されていた楽屋用テントのなかから新生Aqours6人の掛け声が聞こえてきた。ついに新生Aqoursお披露目ライブが始まる、そんなとき、月、まわりを見渡す。そして、月はある人を見つける。観客たちの後方、そこにいたのはこのお披露目ライブの大スポンサーとなった、鞠莉‘sママ、だった。その鞠莉‘sママ、このとき、

(さぁ、ついにスタートするので~す、New Aqours、がで~す!!私、あの(スペイン広場での)ライブでAqoursのファンになりま~した!!さらに、スクールアイドルのすごさ、素晴らしさを感じ取りま~した~!!これからも、Aqoursのこと、スクールアイドルのこと、チア(応援)するので~す!!)

と、まるで新生Aqoursのお母さん、になったような思いで千歌たちを見つめていた。

 そして、その鞠莉‘sママの近くには、鞠莉、ダイヤ、果南、Aqoursの3年生3人の姿もあった。このお披露目ライブで千歌たち新生Aqoursの旅立ちを見届けたあと、それぞれの道へと旅立つことになっていた。この3人の姿を見て、月、

(鞠莉ちゃん、ダイヤさん、果南ちゃん、今までAqoursを引っ張ってくれてありがとう。もう3人がいなくても曜ちゃんたちは大丈夫だよ!!だから、3人とも、安心して旅立ってね!!)

と、3人にお礼を心のなかで言った。

 さらに、月はもう一度まわりを見る。そこにある景色、それは、静真の生徒たち、浦の星の生徒たち、そして、静真の生徒の保護者たちを含めた沼津の人たち、その他大勢の観客の、多くの笑顔、であった。これには、月、

(沼田のじっちゃんに助けられたとはいえ、まさかこんな光景が見れるなんて本当に嬉しいよ!!そして、この光景はずっと続く、そう思うよ!!)

と、ここまでやってきたことがついに実を結んだことを実感していた。そして、こんな光景がずっと続く、月はそう確信していた。

 そんななか、ついにライブは始まった。最初の曲は「NEXT SPARKING!!」、新しい輝きである。このとき、月、ふとステージの方を見る。すると、そこには鞠莉たち3年生3人の新たなる旅立ちを祝おうとしている千歌たち1・2年生6人の姿があった。これには、月、

(曜ちゃんたちは鞠莉ちゃんたち3年生3人が旅立ったとしてもきっと大丈夫だね!!だって、たとえ離れ離れになっても心のなかの宝物のおかげでずっとつながっているから!!)

と、もう鞠莉たち3年生3人がいなくても千歌たち1・2年生6人は大丈夫、そう確信していた。

 そんな月であったが、

(あっ、なんかとても大きな気配が3つ消えた・・・、けど、なにか残っている・・・)

と、なにかを感じたのか、突然消えた気配のあった場所、観客たちの後ろのほうを見る。すると、そこにいたはずの鞠莉たち3年生3人の姿がなかった。これには、月、

(あっ、鞠莉ちゃんたちはもう旅立ったんだね!!でも、鞠莉ちゃんたちはあるものを残してくれた、この9人で得た一生の宝物、それに対する感謝の気持ちを!!)

と、鞠莉たちが残してくれたものを感じていた。

 そんなときだった。突然、月の目の前にある光景が広がっていた。

(えっ、ここってどこ?えっ、僕の目の前のステージには曜ちゃんたち(新生Aqours1・2年)6人しかいないはずなのに、いないはずの鞠莉ちゃんたち(3年生3人)がなぜいるの!?)

そう、月の目の前に広がっている光景、それは、千歌たち1・2年生6人、それに、その6人の前に突然あらわれた鞠莉たち3年生3人、そう、Aqours9人の姿だった。そして、その9人が円状に並ぶと「NEXT SPARKING!!」を一緒に歌っているでないか!!これには、月、

(まっ、まさか、これって、幻覚じゃないよね・・・)

と、一瞬戸惑うも、すぐにあることに気づいた。

(あっ、もしかして、これって、僕も曜ちゃんたちAqours9人とつながっていることを示しているのでは・・・)

そう、月はこの1ヵ月という短いあいだであったがAqoursと一緒に行動を共にしていた。そのなかで、月はAqoursメンバー全員と深いキズナを結んでいたのである。そして、その深いキズナを通じてAqours9人の心のなかのライブを月も一緒になって楽しんでいたのである。

 そして、月はこう思った。

(そう考えると、この僕のなかにも大切な宝物が、Aqoursメンバー9人との想い出、想い、キズナがあるのかもしれない。そして、その宝物は僕にとって一生の宝物になった、僕はそう思えてくるよ。だからね、みんな、この宝物、一生大切にするからね!!そして、僕、この宝物をもって、ここにいるみんなと一緒に、前へ、未来へ、進んでいくよ!!)

自分の心のなかにあるAqoursとの大切な想い出、想い、キズナ、それがいっぱい詰め込まれた一生の宝物、それを大切にしていく、その気持ちを胸に秘め、ここにいるみんなと一緒に月は前へ進んでいく、そう決意した。

 

 その後、このお披露目ライブは沼津の他校のスクールアイドルの乱入(これについては月も知らなかった。千歌が誰にも内緒で仕組んでいたことみたいだった)、はては、男子校なのになぜかスクールアイドルと言っているグループの乱入など、いろんなことが起きたものの、夜まで楽しい宴は続いていた。このライブは後日、新生Aqoursお披露目ライブ・・・というより沼津のスクールアイドルのライブと言われるくらい有名なライブとして後世に語り継がれるものとなってしまった。が、それでも、ライブとしては大成功を収めることとなった。と、同時に、このライブを成功に導いた浦の星の生徒たちの士気の強さ、このライブを準備する際、一緒に行動を共にした静真の生徒たちとのあいだに対立がなかったこと、それらにより、「浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低いから(部活動に対する士気が高い)静真の部活動に浦の星の生徒が入ると士気低下・対立により悪影響がでる」、そんな(沼田のメールでほとんどの保護者たちが考えを改めたものの一部の保護者たちのあいだでまだ言われていた)保護者の声、いや、木松悪斗の考え、そんなものすら一気に吹き飛ばす、そんなことまで起きてしまった。

 

 そして、そのお披露目ライブから2週間後・・・。

「ほら、急がないと学校に遅れちゃうよ!!」

静真の校門前では新2年生となった6人組が急いで校門に駆け込もうとしていた。そのなかの赤色がかった髪の色の少女が慌てながらこう言うと、その横から、

「ルビィ、それはわかっています!!でも、なんでこのヨハネが学校に遅れたのかしら?」

と、赤色がかった髪の色の少女ことルビィに対して、まるで堕天使?の少女が言うと、ルビィ、

「善子ちゃんたちが昨日夜遅くまで騒いでいたからでしょ!!」

と、堕天使?の少女ことヨハネにツッコミを入れる。そう、この6人組は浦の星分校で運命?の再開以来友情を育んでいた少女たち、ルビィ、花丸、ヨハネ、そして、あげは、東子、シーナ、だった。

 とはいえ、もうすぐ授業が始まる、というわけで、急ぎながらもわいわいがやがや騒いでいた。

「でも、昨日は楽しかったよね!!まさか夜遅くまで堕天使ごっこしていたなんてね!!」(あげは)

「あげは、昨日のは堕天使ごっこじゃな~い!!全国にいるリトルデーモンへのミサだ!!」(ヨハネ)

「でも、本当のところ、ただの生配信、でしたし、まさか、この私まで夜遅くまで遊んでしまうとは、うぅ、不覚・・・」(東子)

「だから、ごっこじゃな~い!!大事なミサ!!」(ヨハネ)

「とはいえ、あともう少しで授業が始まります!!ほら、急ぎますよ!!」(東子)

「ねぇ、東子、そんなに急いでいるなら、ここにいる腹黒少女のシーナに、テレポート、頼んでみたら?」(あげは)

「あげは、私は腹黒少女じゃないし、テレポートなんてできないよ!!そんな冗談を言うのは善子ちゃんだけで十分だよ!!いや、ジャッジメント、ですわ!!」(シーナ)

「善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)

「あぁ、なんていう茶番ずら!!これでは絶対に授業に遅れるずら!!でも、こんな楽しい時間、ずっと続くといいずらよ!!」(花丸)

「花丸ちゃん、それだけはご勘弁だよ!!私のイメージが、「真面目」というイメージが、足元から崩れてしまうよ!!ほんと、冗談だけは善子ちゃんだよ!!」(東子)

「だから、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)

「ハハハハ」(ヨハネを除く5人)

 こんなルビィたち6人の楽しいやり取り、であったが、この6人の様子を3年生の教室から眺めていた少女がいた。その少女は、

「ルビィちゃんたちも静真の生活に慣れたみたいだね!!よかった、よかった」

と言うと、その横からその少女の大親友が、

「月ちゃん、そうだね!!これも静真本校と浦の星分校の統合に尽力した月ちゃんのおかげだよ!!」

と、ルビィたちのことを眺めている少女こと月が言うと、月も、

「曜ちゃん、ありがとう!!」

と、月の大親友こと曜にお礼を言った。実はあのお披露目ライブのあと、月の希望通り、静真本校と浦の星分校はついに統合を果たすことができたのだ。先述の通り、お披露目ライブ前に送られてきた沼田のメール、そして、ラブライブ!決勝延長戦の動画により、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に入ると士気低下・対立により静真の部活動に悪影響がでる」、という保護者の声、というか、木松悪斗が流した考えが間違いであることに気づいた静真の生徒たち、そして、その保護者たちは「そんなことを心配する必要なんてない」と思うようになり、ほとんどの静真の生徒とその保護者たちは統合に賛成の意向を示すようになった。が、それでも、「本当に浦の星の生徒の部活動に対する士気は高いの?」「本当に対立しない?」という心配の声が一部で出てきたのだが、それもお披露目ライブでの浦の星の生徒たちの働き、静真の生徒たちと一緒に頑張っている浦の星の生徒たちの様子などによりその心配の声も払しょく、こうして、「保護者の声」はごく一部を除いて完全に払しょくすることに成功、こうして、お披露目ライブ後に行われた4月期の通常理事会にて・・・、

「俺は絶対に統合は許さん!!理事のみなさんもそうですよね!!」

と、静真の理事でもあり、自分以外の理事たちを陰で操る木松悪斗の猛反対、というか、木松悪斗、最後の抵抗を試みるも、沼田から、

「木松悪斗、黙れ!!月生徒会長はわしが出した統合のための条件、「保護者の声がなくなる(払しょくする)」、それを達成したんだぞ!!それに、ほとんどの静真の生徒たちとその保護者たちは統合に賛成しておる。もう統合の障害はなくなったんだぞ!!それなのに統合に反対だなんて、木松悪斗、またわしの顔に泥を塗るつもりなのか!!恥を知れ!!」

と、木松悪斗とそのしもべであるほかの理事たちを叱りつけては木松悪斗の意見を一蹴、

「では、評決に移る。静真本校と浦の星分校の統合に賛成の者?木松悪斗以外全員・・・、よって、静真本校と浦の星分校は統合することに決定する!!」(沼田)

ということで、無事に統合することが決定した。

 とはいえ、静真本校、浦の星分校、その両方で統合に向けた準備が必要、ということで、すぐに統合するわけでもなく、通常理事会が開催された日から1週間、浦の星の生徒たちは浦の星分校に通っていた。で、その1週間、月を含めた静真高校生徒会を含めて統合に向けた準備でてんやわんやの状態が静真本校と浦の星分校、その2つで起きていた。そして、今日、ついに浦の星の生徒たちは静真本校に登校することができた、というわけである。

 で、これに関して、月、

「あぁ、また曜ちゃんと一緒に学校に通えるなんて幸せだな~」

と、曜と一緒の学校に通えることに感謝の意を告げると、曜、

「うん、そうだね!!」

と、笑顔で月に同意していた。

 そんな2人であったが、2人の話題が統合の話からスクールアイドル、Aqoursのことへと移ると、月、

「で、曜ちゃん、スクールアイドル同好会、どう?」

と、曜に尋ねると、曜も、

「うん、ここでもスクールアイドルができんるなんて本当に嬉しいよ!!」

と、笑顔で答えてくれた。

 が、笑顔から突然、月、一瞬のうちに険しい表情になると、曜に対しこう言った。

「でも、本当にごめんなさい。僕としてはスクールアイドル同好会じゃなくてスクールアイドル部にしたいんだけどね・・・」

これには、曜、

「月ちゃん、心配しないで!!部じゃなくても同好会でスクールアイドル活動できるんだよ!!だからね、月ちゃん、そんなに心配しないで!!」

と、月のことを慰める。このとき、月、

(くそ~、木松悪斗のやつ~、統合を阻止できなかった腹いせに、曜ちゃんたちAqoursのスクールアイドル部創立を許可しなかったな!!結局のところ、同好会で落ち着いたけど、僕としては納得いかないよ!!)

と、木松悪斗に対して腹を立てていた。そう、今、静真において、千歌たち新生Aqoursは、スクールアイドル部、ではなく、スクールアイドル同好会として活動していた。それは裏で今なお静真の部活動に強い影響力?を持つ木松悪斗の存在があった。なんと、今なお、月と木松悪斗の戦いは終わっていなかったのだ。そして、なぜ、スクールアイドル部、ではなく、スクールアイドル同好会として千歌たち新生Aqoursは活動しないといけないのか、その疑問すら生まれてしまった。この2人の戦い、そして、その疑問により、月とAqoursは新しい物語へと旅立つことになった。

 

 一方、そのころ、木松悪斗率いる(静真の部活動に参加している生徒の保護者たちの連合体である)部活動保護者会の部屋では、

「く~、月生徒会長にAqoursめ~、絶対に許さないからな!!」

と、木松悪斗が外を見ては苦々しい表情をしていた。この2週間、木松悪斗にとって地獄であった。4月期の通常理事会で沼田からの横やりで静真本校と浦の星分校の統合は実現となり、統合白紙・撤回という木松悪斗の野望は潰えてしまった。さらに、木松悪斗、あの沼田のメールに添付された「ラグーン」会議室での木松悪斗と月とのやり取りの様子が映った動画で木松悪斗の真実の姿を目にしたことにより静真の生徒の保護者たちからの人望をなくしてしまった。そのため、その保護者たちから部活動保護者会の会長職解任の動議がだされてまった。まぁ、これについては、木松悪斗、自分が持ちうる権力全てを行使してなんとか阻止したものの、(静真においては)これまでみたいに自分の権力をかさに自分の思い通りに動くことができなくなってしまった。また、本業である投資においても世界的大企業である小原財閥と沼田グループとの一切の取引ができなくなってしまったため、その仕事にも支障がでる事態に。さらに、自分の権力でもって静岡の企業・団体・自治体に圧力をかけることもできなくなったため、沼津・静岡の経済界における木松悪斗の地位は失墜した。いや、それ以上に、日本の経済界での地位ですら危ういものとなっていた。これにより、木松悪斗、毎日頭を抱える日々を暮らすこととなった。

 そんな暗い表情の木松悪斗に対し、

「ご主人様、そんなに気を落とさず、あの沼田というじじいに痛い目をくらわす、いい案を考えましょうよ!!」

と、木松悪斗の腹心である裏美が木松悪斗を元気づけようとするも、木松悪斗、

「う・ら・み~、全部お前のせいなんだぞ!!俺の知らないところで月生徒会長の邪魔をしなければこんなことにならなかったのだぞ!!」

と、逆に裏美に対して逆恨みを持つが如くキレてしまった。これには、裏美、

「ご、ご主人様、ごめんなさい~」

と、反射的に謝ってしまう。

 けれど、それでも木松悪斗の腹の虫は収まらないらしく、その腹いせに、裏美に対して、

「裏美、お前にはそれ相当のきつい罰を与えないといけないな!!そうだ、決めたぞ!!裏美、お前の、この木松悪斗投資グループにおけるすべての地位、それをはく奪する!!これからは一兵卒として私のために働いてくれ!!いいな!!」

と、本当にきつい罰を与えてしまった。これには、裏美、

「そ、そんな~、これまで木松悪斗様のために一生懸命働いてきたのに・・・」

と、嘆いてしまった。が、木松悪斗、すぐに、

「俺が求めているのは勝利という結果のみだ!!お前がいたらすべてが負けになってしまう!!」

と、裏美に向かって怒りながら言うと、さらに、

「裏美、ここから去れ!!いいな!!」

と、大声で怒鳴ってしまい、本当に裏美を部屋の外へと追い出してしまった。

 で、部屋の外に追い出された裏美・・・はというと・・・、

「ご、ご主人様から追い出された・・・、いったい、どうすれば・・・」

と、途方に暮れてしまうも、こんな仕打ちに、裏美、心の底からある思いがこみ上げてくる。それは・・・、ご

「ご、ご主人様、いや、木松悪斗、許すまじ・・・。この私のことを侮辱するなんて、この恨み、晴らしておくべきか・・・」

そう、これまで必死になって仕えてきた主人、木松悪斗に対するこの仕打ちへの恨み、だった。この恨みがのちに新しい物語にも影響するのだが、それについては後日語ることにしよう。

 そして、その裏美を外に追い出してしまった木松悪斗は、今、自分が静真において置かれている状況を整理した。

「たしかに静真における俺の地位はあやふやなものになった。静真の部活動においては今までみたいにいかないけれど、それでもいまだに強い影響力は保持している。教師たちに対しては俺が人事権を握っているから大丈夫だろう。それに、沼田がいるとはいえ、いまだに理事たちは俺の言いなりだ!!沼田さえ来なければ理事たちは俺の思いのままだ!!心配することなんて一つもない!!静真において、この俺が1番(仕事の都合であまり静真に来ない沼田を除いて)だ!!」

で、これに、木松悪斗、一安心する。自分の地位はいまだに健在であると自覚したのであろう、あんまり心配することではない、そのことに気づいたからだった。

 そして、木松悪斗、あることを考えていた。

「それに、あのにっくきAqours、さっそくスクールアイドル部創立を言ってきたが、俺の権力のおかげで創立申請は却下してやったわ!!今頃、同好会として活動しているが、それでも苦しんでいるはずだろうしな!!」

そう、木松悪斗、残っている権力をフルで使い、千歌たちAqoursのスクールアイドル部創立の申請を却下したのであった。ちなみに、スクールアイドル部として創立すれば専用の部室がもらえたり学校から部の活動資金をもらうなど活動していくうえで有利になることが多い。一方、同好会だとそれがないため、その点からすれば千歌たちAqoursに学校での活動などを含めて多方面において打撃を与えることにもつながる。そんな意味でも、木松悪斗、これまでの仕返しができた、と、思っていた。と、同時に、これに関してある重要なことを言いだしてしまう。

「しかし、俺にとって失敗作だと思っていたあの娘がまさかAqoursの部創立申請を却下することを進言してくるとはな、まさに、棚から牡丹餅、ではないか!!この俺すら考えられなかったことを言いだすとは、本当にびっくりしたぞ!!」

そう、Aqoursの部創立申請を却下するという策を考えたのは木松悪斗ではなかった。それを考えだしたのは木松悪斗の娘である。と、言っても、あの女子サッカー部部長で木松悪斗の娘である旺夏ではない。では、いったい誰なのか。みなさん、第2部のことを思いだしてほしい。実は木松悪斗には2人の娘がいる。1人は長女で女子サッカー部の部長としてインターハイ全国優勝を成し遂げた(木松悪斗にとって)かなり優秀な娘、旺夏、そして、もう1人、今年、静真に入学したものの、木松悪斗からすれば、得意なものなんてなく、人に誇れるような優秀なものなんてなにもない、だから(木松悪斗からすれば)失敗作である、そう評される次女、であった。その次女がAqoursの部創立申請を却下するように木松悪斗に進言したのだ。で、この進言を聞いた木松悪斗、月やAqoursに仕返しができる、と思ったのか、それをすぐに受諾、持てる権力をフルに使い千歌たちの部創立申請を阻止したのだった。

 とはいえ、これは、月とAqours、そして、沼田へのささやかな反抗である、と木松悪斗は思っていたらしく、すぐに、

「さて、月生徒会長にAqours、そして、沼田、今にみていろ!!おれは絶対復讐してやるからな!!」

と、月とAqours、そして、沼田、に対して恨み節を聞かせていた。

 こうして、木松悪斗も、旺夏も、Aqoursの部創立申請却下の裏に隠されたある野望を持つ次女とともに、複雑に絡み合った新しい物語へと進もうとしていた、この物語が木松悪斗にとって予想できないものになることも知らずに・・・。

 

 こうして、月、Aqours、木松悪斗、は新しい物語へと進んでいく。そこには、なにが起きるのか、どんな運命が待っているのか、そんなことなんて知るよしもなく、ただそうだとしても、人は前へと進んでいく。誰も知らない未来、とても不安・心配でいっぱいの、もしくは、希望や期待でいっぱいの、そんな未来、であったとしても人は必ず前へ進んでいく。それは生きる意味でも避けることなんてできないものである。

 そして、人はその前に進んだ先にある未来・運命がどうなのかわからない。どんな未来なのが、どんな運命が待っているのかそれすらわからない。幸せなのか、不幸なのか、その未来・運命そのものを事前に知ることなんてできない。

 けれど、人はある力を有している。それは、前に進んだ先にある未来・運命を変える力。そう、自分の強い意志のもと、その運命・未来そのものを変える、そんな力を持っている。自分がこうでありたい、そんな強い意志があれば運命そのものを切り開く、そんなことだってできる。それくらい、人が持つ意志の強さは強靭である。

 だからこそ、今のこの時代のことを悲観しないでほしい。たとえ見えない強敵がいたとしても強い意志があればそれすら乗り越えることだってできる。そして、明るい未来へと紡いでいってほしい。

 

 とはいえ、今、ここでも新しい物語が始まろうとしている。それは、ある少女の、運命の、いや、ある少女のある強い意志、強い野望という糸が絡み合った、ちょっとせつない、そんな物語のはじまり、なのかもしれない。しかし、そのある少女を中心とした、少女3人の、運命の歯車が、ついに、回り始めた。それは、ある少女の、ある野望をもった、ある一言によって・・・。

 

 あの新生Aqoursお披露目ライブから1週間後、ここはAqoursがこれまで練習に使っていた、そして、Aqoursの原点、ゼロの地、沼津内浦の砂浜海岸。ここに静真の制服を着た少女2人が立っていた。

「来た~~~!!」

と、ある少女が元気よく言うと、その相方は、

「ってか、なんでここに来たの?」

と、その少女に尋ねる。すると、その少女はこう答えた。

「聖地だよ、せ・い・ち!!」「え~、この前あった、沼津の(あるグループのお披露目)ライブ、見てなかったの?私、高校生になったらスクールアイドル部に入るんだ~!!」

そう、その少女は高校生になったらスクールアイドル部に入りたい、そんな夢を持っていた。とはいえ、その少女、もうすでに静真に入学している。なので、本当のところ、すでに高校生であるのだが・・・。

 ただ、この少女の言葉に対し、相方は、

「またはじまった(、その話)!!」

と、相槌を打つと、その少女はライブのときにそのグループが光り輝いていたことを言うと、そのまま、

「私も輝きたい!!」

と、自分の夢、スクールアイドルとして自分も輝きたい、それを相方に告げた。

 そして、それを受けてか、相方、

「それで、(そのお披露目ライブを行ったスクールアイドルグループって)なんていう名前なの?」

と、そのお披露目ライブを行った、とても輝いていた、そのスクールアイドルグループの名をその少女に尋ねると、その少女は、

「うん、名前はね・・・」

と、言っては砂浜に大きく、

 

Aqours

 

という文字を描いた。その少女とその相方はのちに、

 

「99番目の、100番目の、幻の、浦の星の入学生]

 

といわれる存在になるのだが、そんな運命なんてつゆ知れず、その少女とその相方はAqoursみたいに自分たちもスクールアイドル部に入って一緒に輝きたい、そんな希望・夢を確認しあっていた。

 が、それにより、この2人の運命の歯車はすでに動き始めていた。それは、このとき、2人で一緒に夢を確認しあった、そんなときに、突然、2人のもとに飛び込んできた、ある少女の、ある野望を持ったある少女の、一言、それも最後の部分はその2人には聞こえないくらい小さな声、によって・・・。

 

「ねぇ、君たち、スクールアイドルにならない?私と一緒にスクールアイドルにならない?

 

 

Aqoursをつぶすためのね・・・」

 

Love Live! SC intorodaction (ラブライブ!SC 序章)

 

「Moon Cradle」 the end

 

And next new story of Aqours

    

「Love Live! Red Sun 、Blue Planet」

     

And main Story「Love Live! SC」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL プロローグ

 夢、それはシャボン玉みたいなものである。夢とは未来の自分に向けた目標である、未来の自分への願望である。シャボン玉は上へ上へとあがっていく。夢もシャボン玉と同様に未来の自分に向かって昇っていく、いや、駆け上がっていくものなのである。しかし、シャボン玉はもろくてはかない。ちょっとした拍子にシャボン玉はすぐに割れて弾けてしまう。夢も同様である。夢もあることがきっかけで弾けやすい。それほど夢というものはもろくてはかない存在なのである。

 夢、それははかなくてもろい存在である。ある者は自分が犯した過ちによって夢が弾けてしまった。ある者は自分の成長によって夢が弾けてしまった。ある者はその夢を持つきっかけとなったものを失ったことにより夢が弾けてしまった。三者三葉、夢が弾けた原因は人それぞれである。しかし、ひとつだけいえること、それは、たとえどんなきっかけがあったとしても夢というのははかなくてもろい存在なのである。

 だが、夢というのは本当にはかなくてもろい存在なのだろうか。たったひとつのきっかけだけで弾けてしまった、それで夢というものを諦めないといけないのだろうか。シャボン玉みたいにもう一度吹くことで夢というものを再び空へ、将来へと飛ばすことができないのだろうか。夢、それは確かにはかなくてもろい存在である、と同時に何度でも立ち上がることができる、何度でも、空へ、将来へと飛ばすことができる、そんな存在ではないだろうか。

 さて、今から開幕する物語は雪が似合う港町、北海道・函館を舞台に夢破れし少女たちが集い、出会いと別れ、そして、ライバルたちとの交流を通じて再び、空へ、夢へと紡いでいく物語、はたして夢破れし少女たちはどんな物語を紡いでくれるのだろうか。そして、夢破れし少女たちはどんな・・・

 

SNOW CRYSTAL 雪の結晶 雪の華

 

を見せてくれるのだろうか。

 

それでは始めよう、彼女たちのNEW STORY、NEW DREAM、

 

LOVELIVE!SNOW CRYSTAL

 

を・・・。

 

※この物語は夢破れし少女が同じ夢破れし少女たちと一緒にもう一度立ち上がっていく物語です。けれど、その少女たちには一度は頂点に立った者たち、そして、絶対的な王者ともいえる者たちなどライバルといえる存在がそびえたちます。はたして、夢破れし少女たちはそのライバルたちに打ち勝つことができるのでしょうか。そして、そのなかで大事なことを知ることができるのでしょうか。本編は雪が降る月に登校する予定です。お楽しみに。



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SNOW CRYSTAL 序章 第1話

「ラブライブ!優勝は・・・、浦の星女学院スクールアイドル部、Aqours!!」

2月月末、秋葉ドームに鳴り響く声。この瞬間、

「ヤッター!!」

という9人の少女の声がドーム内に響き渡った。ついに9人の、いや、学校の仲間たちとの夢を叶えた瞬間だった。

 そんな9人の姿を観客席から見ていた少女は、

「ルビィ、そして、Aqoursのみんな、優勝、おめでとう・・・」

と、Aqoursと名乗る9人に対して、特に、その少女がルビィと呼ぶ親友に対して賛辞を送っていた。さらに、その少女は続けて、

「次はきっと私だって「ラブライブ!」で優勝してやる!!」

と、自分の決意を語った。

 だが、そんなことを考えた瞬間、その少女はある出来事を、自分にとって闇が生まれた、そんな出来事を思いだしてしまう。

(や、やめて!!あの日の思い出なんて、私にとって姉さまとの夢を終わらしてしまった、そんな思い出なんて、思い出させないで!!)

それはこのラブライブ!冬季大会最終予選での出来事、勝たないといけない、決勝にいかないといけない、そう自分に言い聞かせて、いや、自分で自分を追い込んでしまった結果、本番でパフォーマンスをしている最中に大きく転倒した、その瞬間の出来事だった。

 そして、それを思いだしたことにより、その少女はこう考えてしまった。

(もし、あの失敗がなければ、あれさえなければ、きっと、姉さまと私は、いや、Saint Snowは、ルビィと、Aqoursと同じステージに上がれたはず・・・)

その考えによりその少女の顔の表情は次第にこわばっていく。と、同時に、

(そう考えてしまうと、このままだと、私たちは、私が作ったユニットは、ただ楽しんでいるだけのユニットなんて、「楽しむ」というお遊びをただしているだけのユニットなんて、お遊びというゆるゆるの練習だけしかしないユニットなんて、ラブライブ!で優勝できないじゃない・・・)

という思いに支配されていく。その少女が新しく作ったユニットは「スクールアイドルを楽しむ」ことをメインにしていた。だが、その思いに支配されたその少女によれば自分が作ったユニットはただのお遊びの集団としか見ることができなかった。そうなればそのユニットのままだとAqoursと呼ばれる9人の少女たちみたいに「ラブライブ!」に優勝するなんて夢のまた夢、そうその少女は考えてしまった。

 そして、その思いに支配された少女は苦しみに満ちた小さな声でこう言った。

「もっと練習しないと・・・、もっと本気で練習しないと・・・、勝つためのユニットにしないと・・・、じゃないと、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、できない・・・。だって、

 

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

 

なんだから・・・」

 そんなその少女の苦しみに満ちた小さな声が聞こえたのか、その隣にいるその少女の姉はその少女の姿を見て、

「理亜・・・」

と、根気詰めているその少女に対し心配そうに言った。

 

LOVE LIVE! SNOW CRYSTAL PROLOGUE

 

Saint Snow said “Believe Again”

 

 それから1週間後・・・。

「いらっしゃいませ!!」

店員の声が店内に響き渡る。ここは北海道函館市にある茶房旧茶屋亭。函館ではよく見かける、1階部分の外装が和風で2階部分が洋風な建物、上下和洋折衷住宅を改装してできた喫茶店である。函館の人たちはここでお茶をすることがよくあったりする。そして、そんな函館に住む少女がここ旧茶屋亭を訪れていた。その少女の名は蝶野あつこ、函館のなかで一番歴史のある由緒ある女子高、函館聖泉女子高等学院、通称、聖女、の2年生である。

 そんなあつこはいつもの席に座る。そこは大通りが見える窓の席だった。そこにあつこが座ると店員に対し、

「あっ、註文はあとでお願いします。連れがもうすぐ来る予定ですから」

と、声をかけると店員も、

「はい、わかりました」

と、あつこに対し一礼をしてから店のカウンターへと戻っっていった。

 そんなあつこは大通りを見て一言、

「でも、聖良さん、遅いですね・・・」

あつこは人を待っていた、聖良という少女を。いつもは自分がこの喫茶店に到着すると同時に来るのだが今回に限ってまだ来ていないのだ。それでもあつこはそんなに怒っていなかった。それどころか、むしろ、

「聖良さん、なにかあったのでしょうか」

と、逆に聖良という少女のことが心配になっていた。

 そんなあつこであったが、突然、

「あの~、蝶野あつこ選手ですか?」

と、あつこ、ある女子高生に声をかけられてしまった。それに対し、あつこ、

「はい、そうですが・・・」

と、条件反射でつい応えてしまう。で、これには、女子高生、

「あっ、昔からあつこ選手のファンでした!!サインください!!」

と、あつこの前に黒のペンと色紙をつきだすと、あつこ、

(あっ、まだ昔の自分のことを知っているんだ・・・)

と、一瞬、そう思ってしまうも、

(でも、昔の自分のファンなんだから、ちゃんと対応しないと・・・)

と、気持ちを入れ替えてはその女子生徒から色紙とペンを受け取っては、

「いつも応援してくれてありがとう」

と言っては色紙に自分のサインを書いてその女子高生に渡した。

 すると、その女子高生、あつこに対し、

「あ、ありがとうございます!!一生大事にします!!」

と、目をキラキラさせながら言うと、あつこ、

(こんなしがない私のサイン、一生大事にしなくてもいいのに・・・)

と、つい考えてしまう。

 だが、そんなあつこに対してその女子高生はこんなことを言いだしてきた。

「ところで、いつ、競技に復帰するのですか?」

この女子高生の言葉を聞いた瞬間、あつこ、

(えっ、それは・・・)

と、ちょっと躊躇するもすぐに、

「まぁ、いつの日かね・・・」

と言葉を濁してしまう。

 だが、そのあつこの言葉を真に受けてか、女子高生、

「わ、私、あつこ選手が競技に復帰するの、待っています!!」

と言ってはあつこの元を去ってしまった。

 そんな女子高生を見てか、あつこ、ぽつりと、

「ごめん、競技、もうやめちゃったの・・・」

と、小声で謝っていた。その女子高生は昔のあつこに憧れを抱く少女であった。だが、あつこからすれば、今の自分は昔の自分とはだいぶ違っている、そう思っている。そのため、昔の自分に憧れを抱くその女子高生に対しいわゆる罪悪感をあつこは持ってしまった。いや、その女子高生だけではない。昔の自分に憧れを抱く人々と会うごとにその罪悪感は増していく、そして、その罪悪感が増えていくごとにあつこは重い十字架を次々と背負ってしまう、そんな悪循環にあつこは陥っていた。それはあつこにとって1つの大きな影を、いや、あつこのなかにある闇を成長させることにもつながった・・・。

 そんな大きな闇を抱えるあつこであったが、突然、

「あつこ、また暗くなっていますよ!!」

と、あつこにとって聞きなれた声がする。これには、あつこ、

「あっ、聖良さん、これは申し訳ありません・・・」

と、その声がする方を向いて返事をする。すると、その声の主は、

「あつこ、本当に遅くなってすみません」

と、あつこに謝る。で、その声の主とは・・・、聖良、鹿角聖良であった。鹿角聖良、あつこと同じく聖女に通っている高3の少女である。とはいえ、もうすぐ聖女を卒業する身であるのだが・・・。だが、この聖良、女子高生のあいだではちょっとした有名人だったりする。

 そんな聖良に対し、あつこ、自分の向かい側に聖良を座らせるとすぐに店員に註文すると、さっそく、聖良に対しこう言いだしてきた。

「聖良さん、今日は来てもらって本当に申し訳ございません」

これには、聖良、

「あつこ、私とあつこの仲です。それは言わなくてもいいですよ」

と、あつこを諭す。これは、あつこ、

「聖良さん、そのお気持ち、恩に切ります」

と言ってしまう。ちなみに、聖良とあつこは同じ高校に通う仲、ただのお友達、ではなかった。実は、いわゆる、幼馴染、であった。聖良とあつこは同じ幼稚園、いや、小中高と同じ聖女に通っているうちに一緒になって遊んでいた、そして、それは今でも続いている、いや、公私ともに支えあっている仲であった。そして、今日、あつこは聖良に対しある相談をするためにここ旧茶屋亭に聖良を呼び寄せたのである。

 そんなわけで、あつこ、すぐに聖良にある相談を持ちかける。

「ところで、聖良さん、実は聖良さんにご相談があるのです。聖良さんの妹の理亜さんのことなのですが・・・」

これには、聖良、

「あぁ、理亜のことなのですね・・・」

と、あつこが自分に対してなにが言いたいのか察したのか、あつこの言葉を受け止めると、聖良、続けて、

「理亜と一緒にやっているあつこが理亜のことで相談をしにくる、ということは、理亜、暴走、しているのですね・・・」

と、あつこのことを心配そうに言うとあつこも、

「はい、聖良さんの言う通りです・・・」

と、聖良の指摘を肯定した。

 で、それを受けてか、聖良、あつこに対し、

「ところで、理亜、どんな風に暴走しているのでしょうか?」

と尋ねると、あつこ、今、自分の近くで起きていることを話した。

「聖良さん、実は、理亜さん、東京から戻ってきてからこれまでの練習の1.5倍以上もの練習を私たちに課すようになったのです。それで、そんな練習に不満をもつユニットメンバーたちも出てきたわけです・・・」

これには、聖良、

「東京から戻ってきてから理亜が暴走し始めた・・・」

と、小言でつぶやいていた。

 と、ここで、あつこ、聖良に対しある疑問をぶつけた。

「理亜さんは、今、暴走している・・・。でも、なんで、理亜さん、暴走しているのでしょうか?」

このあつこの疑問に対し、聖良、あることを言いだす。

「まぁ、理亜の暴走については私譲りのストイックさに原因があるのかもしれませんが、そんな理亜が暴走するくらい理亜が自分を追い込んでしまっている理由を考えてみましょう」

この聖良の言葉に、あつこ、あるアイデアを出す。

「それだったらこれまで私たちのあいだで起きたことを順にたどっていきましょう。そうしたたら理亜さんが自分を追い込んでいる理由がわかるかもしれません」

このあつこのアイデアに聖良も、

「たしかにそうですね。それだったら、これまでのことを、私たち、Saint Snowの歴史を思いだしてみましょう」

とあつこに言うと、あつこ、

(あのう、聖良さん、私、Saint Snowのメンバーじゃないのですが・・・)

と心のなかでツッコみを入れつつも2人でこれまで起きたことを思いだすことにした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第2話

 ことは1年前に遡る。あつこのところに聖良が来ていた。そのとき、突然、聖良があつこに対し、

「あつこ、理亜が聖女に入学したらついにあれを実行しようと考えております!!」

と言うと、あつこ、

「えっ、それってもしかして?」

と聖良に尋ねると、聖良、あつこに対しこう宣言した。

「そうです!!ついに実行に移します!!妹と、理亜と、一緒に、スクールアイドルをやります!!そして、ラブライブ!優勝します!!こ」

この聖良の宣言に、あつこ、

「あっ、理亜さんと一緒にスクールアイドルをついに始めるのですね!!聖良さんの夢だったスクールアイドルですね!!私、とても楽しみです!!」

と、喜びに満ちた声をあげた。これには、聖良、

「まぁ、あつこは別に驚くわけでもありませんですしね。ただ、私の周りの人たちにスクールアイドルを始めることを言うとみんな驚くのですがね」

と、ちょっとした事実を話すと、あつこ、そんな聖良に対し、

「まぁ、私は聖良さんからそんなことを言われても驚きませんよ!!だって、聖良さん、昔から私の前で言っていたじゃありませんか、「私、スクールアイドルになります」って!!」

と言うと聖良も、

「あぁ、たしかにそうでしたね」

と、あつこの言葉に同意する。

 聖良は数年前にモニターの画面に映るステージ上でパフォーマンスををしていたA-RISEやμ'sの姿を見て、自分も妹の理亜と一緒にスクールアイドルをやりたい、そう思うようになっていった。

 そして、聖なる雪が降る日、妹の理亜と一緒に、同じ高校に入りスクールアイドルになる、ことを聖なる雪に誓ったのである。で、その誓いの場にあつこは証人として2人の前に立っていた。

 けれど、なぜあつこは2人の誓いの証人いなったのか。それは聖良がその誓いを立てる前、聖良があつこに対しこう言ったからだった。

「私、理亜と一緒にスクールアイドルになってラブライブ!で優勝します!!」

この聖良の発言にあつこも、

「聖良さんがそういうのなら、今は自分のことで精一杯だからそこまで力になれないけれど、いつかはきっと聖良さんと理亜さんの2人を全力でサポートしてあげるからね!!」

と、いつの日か聖良と理亜の2人をサポートすることを誓ったのだ。ただ、そのあつこの誓いはあることがきっかけで果たされることになるのだが・・・。

 とはいえ、聖良とあつこはついにあることを実行することを決めた、あの計画を・・・。

 

 そして、ほどなくして理亜が聖良とあつこが通う聖女に入学することになった。ついに聖良と理亜の夢が動きだすときが来たのである。そのスタートの号令があの聖良の宣言によって打ち鳴らされたのである。

 むろん、聖良とあつこ、そして、理亜の3人はその計画の下準備をすでに終わっていた。あつこはこれまで聖良と理亜の夢を叶えるためにいろいろと準備をしてきた。聖良と理亜がこれから行うスクールアイドルに向けての練習プログラムの作成、スクールアイドルとして聖良と理亜が披露する曲、あの「Self Control」などの作曲や編曲、などなど。なので準備はすでに万端だった。

とはいえ、なんでスクールアイドルを始めるにあたってすでに準備万端かというと、それは聖良に理由があった。実は聖良は理亜が聖女に入学した年にすでに高校としては最高学年である高3となっていた。で、スクールアイドルというのは高校生の女子生徒が学校の部活動として活動していくアイドルのこと。そう、聖良がスクールアイドルとしていられるのは1年しかないのだ。それでも聖良にとってみれば、妹である理亜と一緒にスクールアイドルをする、自分たちの夢、ラブライブ!優勝を叶えるためにも十分すぎる機関であった。この限られた1年という期間を駆け抜けるためにも、悔いを残さないためにも、聖良はあつこと理亜と一緒にスクールアイドルを始めるための下準備をこれまでやってきたのである。そして、ついに聖良によってその号令が打ち鳴らされたのである。

 そんな今か今かとスクールアイドルを始めようとしている聖良を見てか、あつこ、あることを聖良に尋ねる。

「ところで、聖良さん、もうすでに自分たちのユニット名を決めたのですか?」

そのあつこの言葉に聖良は力強くうなずき、

「はい、もうすでに決めております。あの聖なる夜に誓った、あの日を忘れないために、「Saint Snow」と・・・」

とこれまた力強く応えた。これにはあつこも、

「「Saint Snow」ですか・・・。なんかとても良い響き、いや、聖良さんと理亜さんにぴったりな名前ですね」

と、微笑みながら応えた。「Saint Snow」、数年前、聖なる雪の降る日に自分たちの夢を誓い合った聖良と理亜、そんな2人にぴったりな名前である、そうあつこはこのときは思っていた。

 

 その後、理亜が聖女に入学するとついに聖良と理亜は本格的なスクールアイドル活動を始めた。まずはあつこがたてた練習プログラムに沿って2人はスクールアイドルとしての練習を行うこととなった。それはこの1年でラブライブ!で優勝するためのハードな練習だった。ずぶの素人がたった1年でスクールアイドルの頂点というべきラブライブ!優勝をするためには、いや、どんなときでも勝利するためには必要というべきとてもハードな練習だった。だが、たとえそうであっても2人は自分たちの夢を叶えるべくがむしゃらにこのハードな練習を行った。

 そして、週末には、いろんなところに行ってはそこで行われるイベントに参加していた。たとえそれが小さな街レベルであってもである。むろん、それは、自分たちのユニットの名前、Saint Snow、その知名度をあげるためだった。ただの無名なスクールアイドルグループ、いや、スクールアイドルユニットではラブライブ!優勝なんて夢のまた夢である。なので、聖良と理亜は積極的に各地で行われるイベントに参加していた。

 で、あつこはというと、そんな2人に対して完全なサポートに徹していた。これまであつこは大切な親友である聖良とその妹である理亜の夢のためにスクールアイドルユニット「Saint Snow」、その準備を聖良と理亜とで一緒に行ってきた。それにより聖良と理亜は準備万端の状態でスクールアイドル活動を始めることができた、なのだけど、だからといって2人がスクールアイドル活動を始めてからといってこれまでみたいに、聖良と理亜のサポートをしていく、そんな2人との関係性が変わることなんてなかった。むしろ、あつこ、

(聖良さんと理亜さん、2人は自分たちの夢に向かって頑張り始めている。なら、私もその2人のサポートをしっかりやっていくよ!!)

と、2人の前で心のなかでそう誓うくらい、2人を、Saint Snowを、精一杯バックアップしようと考えていた。

 そして、あつこはその誓いを果たすかのごとく2人のサポートをこれでもかというくらいしてきた。例えば、聖良があつこに対して、

「ねぇ、あつこ、この「Self Control 」だけど、私のほうでこんな風に編曲したのだけど、つこだったどう思う?」

と尋ねるとあつこは聖良の編曲した曲を聞いてはすぐに、

「うん、とてもいいかも。でも、こことここは・・・」

と、自分が気になったところを次々と指摘すると、自分の部屋からキーボードを持ってきては、

「そのところはこうすればもっと良い曲になりますよ」

と、自分なりにすぐに編曲してはそれを聖良に聞かす。すると、聖良、

「うん、たしかにあつこの言う通りですね。あつこの案を採用しましょう」

と、あつこの案を採用することとなった。

 と、こんな具合にあつこは聖良が作詞作曲した曲の編曲、聖良と理亜のために作った連数プログラムの管理や変更、週末に2人が出たいイベントに対しての出演交渉や2人のスケジュール管理など、Saint Snowに関わるもの全てのサポートを一手に引き受けていたのである。それはあつこにとって、

(昔の私たちみたいに私が表舞台に出るわけじゃない。けれど、私は私で聖良さんと理亜さん、Saint Snowの完全なサポートをすることで2人が活動しやすいように、2人の夢、ラブライブ!優勝のために、私は2人の裏で頑張っていくのだから!!)

と考えるくらい、聖良と理亜、Saint Snowのために2人のサポートを一生懸命頑張っていた。

 そして、あつこの完全なるサポートのおかげか、聖良と理亜、Saint Snowの知名度も日がたつごとに上がっていった。いや、それ以上に、聖良と理亜、2人にはスクールアイドルとしての適性があったのかもしれない、聖良の自信満ち溢れる力強い歌声とダンス、理亜のたぐいまれなる運動センスと力強い理亜ラップ、それにより、4月の最初のころには知名度のないただのスクールアイドルユニットだったのが少しずつ大きなイベントに呼ばれるようになっていき、6月初旬にはあの札幌のよさこいソーラン祭りのステージに呼ばれるくらいまでに急成長するまでになった。むろん、その陰にはあつこの苦労もあったみたいで、あつこ、よさこいソーラン祭りのステージに立ってパフォーマンスをする聖良と理亜の姿を見ては、

(この祭りのステージの出演のOKがもらえたときは私の知名度のおかげで聖良さんと理亜さんはこのステージに立つことができたと思っていたけど、今の2人の雄姿を見ていて確信したよ、2人は2人の実力でもってこのステージに立つことができたんだって!!)

と思えるくらい2人の雄姿にほれぼれしていた。実は最初の交渉のときはこのステージを管理している団体としてはそこまで知名度のないSaint Snowを出演させることを渋っていたのだがそこをあつこが昔の自分の知名度を活かして強引にそのステージのプログラムにねじりこもうとしていた。だが、突然、その団体はSaint Snowの出演にOKを出した。ではなぜその団体はそうしたのか。それは日に日に上がっていく、聖良と理亜、Saint Snowの知名度によるものだった。たとえ小さなイベントでも積極的に参加していくSaint Snow、そのイベントのステージで繰り広げられる圧巻ともいうべき2人のダンスや歌がSNSを通じて、北海道、いや、日本中に拡散されていったのだ。そんなこともあり、6月初旬にはその団体もSaint Snowの参加を認めざるをえないものとなっていった。

 そんな全国的にも有名な札幌のよさこいソーラン祭りでのSaint Snowの圧巻ともとれるステージは、聖良と理亜、2人の名を、Saint Snowの名を、全国規模へと押し上げるくらいにまでになった。そして、そのステージを聞きつけた東京のスクールアイドルイベントの運営がSaint Snowに対しオファーを出してきたのだ。これには、あつこ、

(これで聖良さんと理亜さんの夢、ラブライブ!優勝、にぐっと近づくことができる!!)

と、二つ返事で了承、Saint Snowは東京のスクールアイドルイベントに参戦することが決まった。

 その後、聖良と理亜は2人のサポート役、というか、2人のマネージャー役だったあつこを連れて東京に上京、そこでまた1・2年のみだったAqoursと神田明神で初めて邂逅することになる。このとき、Aqoursは動画投稿サイトに公開された自分たちのPVによって知名度を伸ばした結果、Saint Snowと同じくそのイベントの運営からオファーを頂いた、というわけである。だが、このときのAqoursはμ'sみたいなスクールアイドルを目指したい、ラブライブ!に出て廃校の危機に瀕していた浦の星を救いたい、という漠然とした目標しか持っていなかった。対して、聖良たちSaint Snowは、ラブライブ!に優勝したい、という完全なる目標を持っていた。そんなこともあり、結果的にはSaint Snowは完璧なるステージを見せつけては入賞できないまでも上位に食い込むことができた。一方、Aqoursは最下位、というか、「0」という数字をたたきつけられてしまう。だが、このときの「0」がこれから続くAqoursというサクセスストーリーの原点になったということはいうまでもない。

 ただ、この結果は聖良と理亜にとって今の自分たちの実力とトップレベルのスクールアイドルの実力の差を見せつけたものになってしまった。これには、あつこ、

「聖良さん、理亜さん、私がオファーを受けたばかりにこんなことになってしまってごめんなさい・・・」

と聖良と理亜に謝ると、聖良、逆に、

「いや、あつこのおかげで今の私たちの実力を知ることができました。あつこ、オファーを受けてありがとうございます」

と、あつこにお礼を言うと、すぐに、

「さぁ、ラブライブ!まで時間がありません。やることは1つだか、ラブライブ!優勝を目指して、日々精進、です!!」

と気合を入れなおす。むろん、あつこに対しても、聖良、

「あつこ、これからもこんな私たちのために一生懸命サポートしてくれますよね!!」

と言うとあつこも、

「もちろんそのつもりです!!」

と元気よく返事した。

 こうして、聖良と理亜は、自分たちの夢、ラブライブ!優勝を目指して一生懸命スクールアイドル活動を邁進してきた。2人はとてもきつい練習に音をあげることもなく、武者修行と称していろんなイベント、特にスクールアイドルのイベント、に次々と参加していくことになる。むろん、イベントがない日に関しては2人は率先して自分たちの路上ライブの宣伝ビラを配っていたりきつい練習をしていた。そんな2人に対してあつこは今以上に2人のサポートをしていく。Saint Snowの路上ライブのビラのデザイン作成や印刷、練習プログラムの見直し、イベントへの積極的な売り込みなど、2人のためになるものはすべて自分でやる、そんな心意気があった。

 こうして、Saint Snowは、実力、知名度、ともに伸ばすことができた結果、ラブライブ!夏季大会では北海道予備予選、北海道最終予選を順当に勝ち進んでは決勝に進出、そこで初出場ながら全体の8位という成績を残すことができた。これには、あつこ、

「聖良さん、理亜さん、やったよ!!8位じゃない。凄い成績だよ!!」

と2人を褒め称えるも、聖良、

「8位じゃダメ!!優勝しないと!!優勝しないといけなかったのです!!」

と、まるで自分たちを責めるかのように言ってしまう。これには、あつこ、

(あっ、確かにそうだよね。聖良さんと理亜さんの夢、それって、ラブライブ!優勝、だもんね。ただの8位じゃダメだったね)

と、8位という成績に喜んでいる自分を恥じると聖良に向かって、

「聖良さん、ごめんなさい。8位という成績で喜んでいた私がバカだったね・・・」

と謝ってしまう。これには、聖良、

「いや、あつこ、あなたが私たちを褒めたい気持ち、本当に嬉しいです。それなのに、そんなことに気付かずに責めてしまったようにみえてしまい大変申し訳ございません」

とあつこに逆に謝ってしまう。これには、あつこ、すぐに、

「聖良さん、謝らないでください。ほら、顔をあげてください」

と言うと聖良も下げていた頭をあげると、あつこ、続けて、聖良に対しこう言った。

「でも、ラブライブ!で8位という成績じゃ聖良さんも理亜さんも納得いかないでしょ!!なら、冬季大会は優勝目指して頑張らないとね!!」

と、聖良と理亜を元気づけるように言うと聖良も、

「たしかにあつこの言う通りですね。私、聖良、これからも、私たちの夢、ラブライブ!優勝、目指して頑張っていきます!!」

と言っては元気を出すような仕草をした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第3話

 こうしてラブライブ!初出場ながら全体の8位という好成績を残したSaint Snowであったが、目標であった優勝ができなかったことで悔しがる、聖良、理亜、そして、あつこ、をよそに、予想外の出来事と3人の周りはお祭り騒ぎとなっていた。北海道のスクールアイドルとしては好成績、それも初出場としては立派な成績を残した、ということで3人の周りは聖良と理亜のことを褒め称えていた。ある人からは、

「聖良ちゃんに理亜ちゃん、初出場なのに8位という好成績を残したなんてなんて立派な姉妹だこと」

と、聖良と理亜のことを褒め称える言葉でてくるとまた別の人からは、

「Saint Snowこそ函館が生んだ大スターだ!!」

と、Saint Snowのことを函館出身の大スターとしては褒め称えようとしていた。

 だが、そんな周りの声を気にしてか、聖良、

(たしかに周りからみたら8位なんて好成績かもしれませんが、私たちからしたら負け犬と同じなのです!!ラブライブ!優勝だけなのです、私たちが目指しているのは!!)

と思うくらいストイックになっていた。

 一方、あつこも2人の熱心なサポートをしていたためか、周りから、

「あつこさん、あなたのあついサポートのおかげでSaint Snowは8位という好成績を残しました。だからこそ言えるのです、あつこさんは「Saint Snow第3のメンバー」だって!!」

という声がちらほらと聞こえてくるようになった。そう、「今のSaint Snowはあつこのあついバックアップのおかげである、だからこそ8位という好成績を残すことができたのだ」、その声が日に日に増していったためか、あつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」と呼ぶ人も少しずつであるが出てきたのである。ただ、これに関しては、あつこ、

(「Saint Snow第3のメンバー」と言われるなんてなんか嬉しいな・・・)

と喜びつつも逆に、

(でも、聖良さんと理亜さんは8位という成績に納得していない。目指しているのは優勝あるのみ!!)

と、自分に対して「ラブライブ!優勝こそ私たちの目標」だと言い聞かせようとしていた。

 だが、その周りの反応が次第に、聖良、理亜、あつこを追い詰めようとしていた。ラブライブ!夏季大会で8位という好成績を残したことで3人のことを祝う態度から次第に、

「今度こそ、ラブライブ!優勝、だな!!」

「次こそ、ラブライブ!優勝、間違いないな!!」

というラブライブ!優勝という声が聞こえてきた。これは、あつこ、

(これって昔の私と一緒じゃない!!このままじゃ聖良さんと理亜さんが苦しむだけじゃない!!)

と、昔の自分と同じ状況に聖良と理亜が陥ってしまう、そんあことを危惧していた。

 そして、周りからラブライブ!優勝の期待の声があがるなか、あつこは聖良と理亜に対し、

「あまりまわりの声に振り回されないでね!!自分は自分、なんだからね!!」

と、声をかけると、聖良、

「まぁ、確かにそうですね!!私は私、周りは周り、です。周りの声に振り回されないようにしましょう」

と、あつこの声に耳を傾けてくれた。実は、聖良、このとき、Aqoursのリーダー、千歌とはメールのやり取りをする仲となっていた。このとき、Aqoursはラブライブ!夏季大会で東海地方最終予選落ちしたものの、昔の、6月の東京でのスクールアイドルイベントのときとは違い、μ'sとは違う、自分たちだけの輝きを見つける、という目標をもつところまでに成長していた。また、6月のイベのときとは違い、Aqoursはダイヤたち3年生という初代Aqoursともいえるスクールアイドルの先輩たちも一緒に活動することになった、いや、パーフェクトナインとなっていた。それが今の千歌たちの自信へとつながっていた。そして、その千歌たちの姿に聖良も千歌たちのことを認めるようになり、Saint Snowの正式なライバルとして認めるまでにもなった。

 そんな千歌とのメールのやり取りをしていくうちに聖良も少しずつ変わっていった。例えば、ある日の夜、聖良のスマホにこんなメールが届いていた。

「私、今度、ラブライブ!冬季大会に出る予定なんだ。でも、その日はね、なんと、学校説明会もあるんだ。だから、私、ある秘策を考えちゃった!!ラブライブ!予選のあるところの近くにあるところから学校の近くにあるところまでね、みかんのためのモノレールが走っていてね、そのモノレールで近道をしようと想うんだ!!ふたつのことをこなすことはとても大変。でも、私、ふたつのことを絶対に成功させたいもん!!聖良さんも、ラブライブ!予選、頑張ってね。 千歌より」

で、この千歌からのメールを見て、聖良、

(なんか千歌さんらしい文章ですね。なんかこちらの方が千歌さんのことを心配しちゃいそうです・・・)

と思うと同時に、

(それに、このメールを見て、私、つい思ってしまうことがあります。私と違う発想をする人がこんな近くにいるのですね。人ってなんて面白い動物なんですね!!)

と、自分とは違った発想をする千歌をみてはそれを面白がっていた。

 そして、聖良はそんな千歌のことを思ってか、こんなことまで思ってしまう。

(そう考えるとたしかにいろんな考え方があります。私とは違ったリーダー、それが千歌さんです。そんな意味でもAqoursというのは本当に面白いスクールアイドルグループといえます。だからこそ、Aqoursはきっと上へと、ラブライブ!決勝へと進んでいくでしょう)

と、Aqoursのことを高く票かしていた。とはいえ、最後には、聖良、ちゃんと、

(だからこそ、この聖良、ラブライブ!の決勝でそんなAqoursと戦い勝つつもりです。待っていてください、Aqoursのみなさん!!)

と、自分たちの勝利宣言を出していた。とはいえ、聖良、このとき、ラブライブ!優勝という目標を高々にあげてはそれに向かって練習しつつも心には余裕すら感じさせていた。

 一方、理亜はというと、あつこの声掛けには、

「そんなこと、わかっています!!ラブライブ!は遊びじゃない!!だからこそ今を頑張るしかない!!」

と、あつこの声なんて気にしない、いや、自分は頑張っているのだから、ラブライブ!優勝という目標に向けてがらむしゃに頑張っているのだから、黙っていて、そう言わんばかりの態度をとった。これには、あつこ、

(理亜さん、大丈夫かな・・・)

と、理亜のことを心配そうにみてしまった。事実、理亜には時々こんな独り言をつぶやいていた。

「ラブライブ!優勝・・・、姉さまとの夢・・・、そして、みんなからそう期待されている・・・、人下手な私だからこそ・・・、それに向かって頑張らないと・・・」

それはまるで理亜がラブライブ!優勝という呪縛を受けている、まわりからの声という呪縛にとらわれている、そんな感じがしていた。

 

 そして、その呪縛が最悪の形で表に出てしまう。ラブライブ!冬季大会北海道予備予選は無事にトップで通過すると続く北海道最終予選、聖良と理亜は毅然とした姿で会場となるはこだてアリーナの楽屋に来ていた。

「ラブライブ!予選、一緒に頑張りましょう」

挨拶に来ていたほかのスクールアイドルグループの少女たちに挨拶をする聖良、対して、理亜はただ、

「・・・」

という無言を貫いていた。

 そんななか、

「おじゃまします」

と、Aqoursの千歌たちが聖良と理亜に激励しに楽屋を訪れていた。これには、聖良、

「あっ、Aqoursのみんさん、こんにちは!!」

と、千歌たちの存在に気づいたのか千歌たちに挨拶をしていた。実は、Aqours、鬼門だった東海地方最終予選を無事に突破、そんなこともあり、ラブライブ!の運営から北海道最終予選のゲストとして呼ばれていたのである。

 そして、千歌たちと聖良はいろいろと会話で楽しんでいたのだが、理亜はただ黙々と予選への準備をしていた。Aqoursのみんなが自分たちの激励をしに来ている、聖良は楽しくその対応をしている、対して、理亜はただ1人自分のことだけに集中していた。そんな聖良と理亜の対照的な姿に、あつこ、そんな2人を見ては、

(聖良さん、なんか楽しそう。対して、理亜さんはなにか根気詰めているところがあります。本当に大丈夫でしょうか、理亜さんは・・・)

と、理亜のことを心配そうに見ていた。

 だが、そのあつこの心配が現実のものとなる。いざ予選のステージへと上がった聖良と理亜、聖良はこのとき、

(Aqoursのみなさんは決勝に進みました。今度は私たちの番です。今の私たちをこのアリーナにいるみんなに見せつけてやるつもりです!!そして、今を楽しむつもりです!!)

と、本気で理亜と一緒にこのステージを楽しもう、そんなつもりでいた。

 一方、理亜はというと、曲が始まるまえ、

「勝たないと、ちゃんとしないと・・・。じゃないと、私と姉さまとの夢が・・・」

と、まるで呪文を唱えているかのように自分になにかを言い聞かせていた、そんな感じがした。

 そんな全く異なった2人の心中のなか、ついにSaint Snowのステージが始まった。最終サビの直前までは完璧、あとは最終サビを残すのみとなった。だが、その瞬間、聖良

(えっ、理亜!!)

と、はっとしてしまう。なんと、聖良の近くでパフォーマンスをしていた理亜が突然バランスを崩したのだ。これによって聖良もそれに巻き込まれるかたちでバランスを崩してしまう。こうして、聖良はまるで尻もちをつくように、リハは外側に大きく転倒するかのように倒れこむ。

(痛っ!!)

と尻もちをつく聖良、すぐに理亜の方を見る。するとまるでスローモーションのように理亜は転倒していった。いや、聖良だけじゃない、観客席から見ていたAqoursも、いや、観客全員がまるでスローモーションのように転倒する理亜の姿を見ていて。こrねいは、ステージ袖で2人を見ていたあつこも、

(あっ、理亜さん!!)

と、つい声をかけたくなるような気がしていた。

 そして、ついに理亜がステージの床に倒れこんでしまった。これには、聖良、そんな理亜の姿を見てか、

(理亜!!)

と、ついに叫びたくなるも理亜はすぐに立ち上がり何事もなかったかのように曲の続きを踊りだした。これには、聖良、

(もう理亜ったら・・・)

と、理亜の様子に安心しつつも自分も再び立ち上がり曲の続きを踊りだした。

 だが、ステージ袖で2人を見ていたあつこは、このとき、あることに気づいていた。

(いつもの2人じゃない・・・。まるで、緊張の糸が切れた道化師みたいだよ・・・)(あつこ)

そう、2人の動きは今までとは違う、Saint Snowらしさを失った、そんなパフォーマンスだった。いや、そうではない。聖良はちゃんと今までと同じようなパフォーマンスを繰り広げられていた。一方、理亜はというと、聖良とは対照的なキレの悪いパフォーマンスをしていた。そんな対照的な2人の姿を見て、あつこ、審査員を含めて観客のみんなは今の2人をまるで道化師のように見ている、そう感じてしまった。

 そして、そんな感じ方をしてしまったあるこはこう思ってしまう。

(あぁ、これは予選敗退かな・・・)

 

 そんなあつこの予想は現実のものになった。

「ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、決勝進出は・・・」

ここでSaint Snowの名前が呼ばれることはなかった。これには聖良と理亜は強くショックを受けてしまった。楽屋近くの廊下で2人は悔し涙を流していた。そのなかで、聖良、

(あぁ、これで、私たちの夢、ラブライブ!優勝、は儚く消えてしまったのですね。なんか悔しいです・・・)

と、自分の中にある悔しさを噛みしめていた。一方、理亜の方も悔しい思いでいっぱいだった。そんな2人を見てか、あつこ、

(あぁ、これで私たちの夢が潰えてしまったのですね。私、2人を十分サポートできませんでした・・・。私としてもとても悔しいです・・・。)

と、自分が完全に2人のサポートができなかったことがとても悔しく感じていた。

 だが、そんな大粒の悔し涙を流す姉聖良の姿を見たのか、理亜、突然、一緒になって悲しんでいる聖良を突き放しては聖良のもとから離れようとする。これには、聖良、

「理亜!!」

と、理亜の方に向かって叫ぶも理亜は悔し涙を流しながら遠くへと走り去っていってしまった。むろん、これには2人の近くにいたあつこも、

(なんか理亜さん、この件で心に深い傷を負っていないかな・・・)

と、理亜のことを心配してしまった。

 そして、そんな自分のもとから走り去ってしまった理亜の姿を見てか、聖良、

(理亜、どうしたのですか・・・。私、理亜のこと、とても心配です・・・)

と、理亜のことが心配になってしまった・・・。

 

 そして、あつこが予想した通り、今回の件で心のなかに深い傷を負ってしまった理亜・・・だったがある少女のおかげでもとに戻る?ことができた。その少女の名は黒澤ルビィ、Saint Snowのライバル、Aqoursの1年生である。そのルビィがAqoursのみんなとふらっと立ち寄った茶房菊泉、その住居部分に侵入してしまったルビィ、そこで自室で1人で悲しんでいる理亜を発見する。その後、ルビィは理亜と話しあううちに理亜が落ち込んでいる理由が「自分のせいで姉さま(聖良)とのスクールアイドルユニット、Saint Snow、を終わらせてしまったこと」ということがわかり、ルビィは理亜に対し、それを終わりにさせない、というわけでクリスマスイベでのライブを提案する。これには理亜も了承、2人は同じ1年の(Aqoursメンバーの)花丸とヨハネを巻き込みながらもそのライブに向けて準備を4人一緒に楽しみながら進めていた。これには、聖良、

(あっ、なんか楽しそうなことをしようとしていますね。こうしてみていると、なんかほっとします)

と、つい思ってしまうとこそっと4人が今からしようとしているところをのぞいていたりしていた。

 

 また、あつこの方も理亜とルビィの行動に意外なかたちで巻き込まれてしまった。理亜とルビィは初めて作詞に挑戦してはそれが出来上がるとすぐにあつこのところに持って行っては、

「あつこ、お願いがあります。この歌詞に曲をつけてください」

と、あつこに作曲を依頼してきたのだ。曲を作ったことがない理亜とルビィ、なので、作詞の方ななんとかなったものの作曲についてはずぶの素人であった。そのため、いつも聖良と一緒に作曲をしているあつkに作曲の依頼をしてきたのだ。これには、あつこ、

(ふ~ん、理亜さん、ルビィさんという大事な仲間を見つけたんだね。なら、私も、そんな理亜さんの力にならないとね!!)

と、思っては二つ返事でOKを出した。

 こうして、ルビィ・理亜作詞、あつこ作曲の「Awaken the power」は完成した。その後、いろんなサプライズを経て、函館のクリスマスイベのオープニングセレモニーにて、Saint Snow、Aqoursの奇跡の合体ユニット、Saint Aqours Snowのライブが行われた。そこで、「Awaken the power」は理亜とルビィが2人の姉であるダイヤと聖良に送る・・・というよりも、その2人を含めたSaint Aqours Snowとして、函館の、いや、全国にいるみんなに対してクリスマスプレゼントとして送る歌として歌われたのである。

 そして、このライブのあと、自分のなかにあるSaint Snowとしての踏ん切りがついた理亜は姉の聖良に対し、Saint Snowとしての活動にピリオドを打ち、自分だけの新しいユニットを作ることを聖良を前にして宣言したのである。

 

「・・・と、ここまでがSaint Snowの歴史なんだけど、一緒に振り返ってみて、聖良さん、ここまででなにか気づいたこと、ありませんか?」

と、あつこは聖良に対し問うと、聖良、自分の意見を述べた。

「たしかに理亜はあの(ラブライブ!冬季大会)北海道最終予選で心に深い傷を負いました。けれど、それはルビィさんたちのおかげでクリスマスイベのときに癒されたと思います」

この聖良の意見にあつこ、

「まぁ、たしかにその通りかもしれませんね。だって、理亜さん、Saint Snowを終わりにして新しい自分だけのユニットを作る、って宣言しましたしね」

と、激しく同意していた。



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SNOW CRYSTAL 序章 第4話

 そんなわけで2人は次にそのクリスマスイベのあとのことについて思いだすことにした。まず、あつこはそのクリスマスでのライブのあとのことについて話し始めた。

「たしか、クリスマスでのライブのあと、理亜さん、張り切って新しいユニットを同級生の人たちと一緒に作ったのですよね」

このあつこの発言に、聖良、

「あぁ、たしかにそうですね。あのときの理亜はとてもいきいきしていましたから」

と、懐かしそうに言うと2人はクリスマスイベのライブのあとのことを思いだしていた。

 

「ねぇ、理亜ちゃん、私もスクールアイドルになりたいのだけど、いいかな?」

クリスマスイベのライブ後、理亜の周りには同級生が4人くらい集まっていた。まぁたんにyoppi、まみにしのっち。4人とも理亜と一緒にスクールアイドルをやりたいようだった。これには、理亜、

「え~と、え~と」

と、これまで接点のなかった4人が目の前にいることで人見知りな性格ゆえに戸惑ってしまった。

 とはいえ、理亜は自分のもとに集まった4人に対してあることを聞いてみる。

「ところで、なんでスクールアイドルをやりたいの?」

すると、4人を代表してyoppiがそれに答えた。

「だって、昨日のSaint Aqours Snowのライブ、それを見て、私たち、ときめいちゃったんだもん!!私たちも理亜ちゃんと一緒にスクールアイドルをして理亜ちゃんと一緒にときめきたいんだもの!!」

このyoppiの答えに、理亜、

「スクールアイドルにときめいたわけね」

と、一応4人の気持ちに納得すると、すぐに、

「そうなら仕方ない。4人とも、厳しい練習になると思うけど、私についてきなさい!!」

と、4人を前に胸を張った。

 

「・・・ふ~、理亜さんが作る新しい(スクールアイドル)ユニット、これでなんとかうまくいくかも

と、理亜のことが心配だったのか、陰からこそっとみていたあつこがそういうとそのまま、

「さてと、これでSaint Snowの物語はめでたく終了、ということで、私はこれにておさらばしちゃお!!だって、「Saint Snow第3のメンバー」とか言われているけど、私は単なるSaint Snowのサポーターだもんね!!そのサポートがなくても理亜さんはやっていけるだろうし、私はこれでお役御免だね!!」

と言ってはその場から去ろうとしていた。

 ところが、そんなとき、突然、

「あつこ、ちょっと待って!!お願い!!

というあつこにとって聞きなれた声が聞こえてきた。これには、あつこ、すぐに声がするほうを振り向くと、そこには、

「えっ、聖良さん、どうしたの?」

と、その声の主、聖良がいることに驚いてしまう。

 そんな驚いているあつこに対し聖良はあるお願いをしてきた。

「あつこ、お願いがあります。ぜひ、理亜が作る新しいユニットに入ってください!!」

これには、あつこ、

「えっ、聖良さん、今、なんと・・・」

と、一瞬固まりつつももう一回尋ねると聖良はもう一度あつこに対しお願いをした。

「あつこ、お願いです、理亜の作る新しいユニットに先輩として入ってください!!」

この聖良のお願いに、あつこ、

「聖良さん、それって・・・」

と、少し戸惑いつつもすぐに自分の意見を聖良にぶつけた。

「聖良さん、たしかに理亜さんが今から作ろうとしているユニットは1年生だらけです。でも、そのなかに私みたいな2年生が入ると、理亜さん、困るではないでしょうか。だって、1年生だけだったら同じ1年ということで割とまとまりやすいかもしれません。けれど、私みたいな違う学年の人が入ると、理亜さん、かなりの人見知りなのにみんなをまとめようとして無理をするのではありませんか。それに、理亜さん、私のこと、ちょっと苦手そうにしているみたいですし・・・」

そう、理亜はあつこのことをちょっと苦手にしていた。あつこはまわりから「Saint Snow第3のメンバー」と言われるくらい聖良と理亜のサポートをしてきた。とはいえ、聖良とあつこの仲はとてもいいのだが、あつこと理亜の関係はどちらかというとドライ・・・といえなくもなかった・・・というか、理亜はあつこのことを「姉さま(聖良)と一緒にいる友達」・・・としかみていない・・・というか・・・大事な姉さまにまとわりつく人・・・としかみていなかった。だが、これまではあつこが全力で聖良と理亜のサポートをしてきたため、理亜もそこまで邪見に扱うことはなかった。が、聖良がスクールアイドルを卒業、つまり、あつこと関わるべきSaint Snowは今はもうない、というわけで理亜はあつこのことを毛嫌いする心配があつこのなかにあった。

 だが、そんなあつこに対し聖良はというと、

「あつこ、お願いです。理亜を、理亜を見守るために理亜が作るユニットに参加してください!!」

と、少し困惑するあつこを尻目に深くお願いをした。これには、あつこ、

「聖良さん、いつものキリリとした聖良さんじゃないですよ・・・。なにかあったのでしょうか?」

と、逆に聖良のことを心配してしまう。

 そんなあつこの心配に気づいたのか、聖良、自分の思いをあつこにぶつけた。

「あつこ、私、とても心配なのです!!理亜は、理亜は、これまで私がここまで引っ張ってきました。でも、これからは理亜1人でなにもそれをかもしていかないといけないのです。そう考えるだけで、私、私、理亜がちゃんとやっていけるのか心配なのです!!だから、あつこ、お願いです、あなたが理亜の先輩として理亜のことをちゃんと見てやってください!!」

聖良、その思いをあつこにぶつけたあと、あつこに詰め寄りウルウルとした目であつこに迫ってきた。これには、あつこ、

「まぁ、たしかに聖良さんの言うことも一理あるけど、それって過保護じゃないかな・・・」

と、聖良についきついことを言うも、聖良、そのあつこの言葉をきいてか自分が心配していることをさらけだした。

「あつこ、たしかにあつこの言う通りです。私は理亜に対して過保護かもしれません。しかし、私はこれまで理亜を見てきました。そして、わかったことがあります。理亜は私以上に純粋かつ真面目です。自分がやりたいことに対してたとえどんなことがあっても熱心にこれでもかという具合にストイックにそれをやり遂げようとするでしょう。ただ、理亜は真面目というか誰に対しても融通が利かない、いや、自分が求めているもの以上のものを相手にも求めてしまう傾向があります。もし、それが理亜が作るユニットの中で起きたら絶対に理亜のユニットはバラバラになります。いや、理亜自身自滅するかもしれません。そうなってしまうと、私、もう生きていくことなんてできません!!だからこそ、あつこ、あなたが理亜の保護者的存在をして理亜のことを支えてください。お願いです、あつこ、理亜のことを見守ってやってください!!」

この聖良の言葉に、あつこ、こう考えてしまう。

 この聖良の言葉に、あつこ、こう考えてしまう。

(たしかに聖良の言う通りですね。だって、理亜さん、聖良さんと言う通り、真面目で、純粋で、ストイックなところがあります。でも、理亜さんはこれまで聖良さんのうしろをついてきただけ。そんな理亜さんがこれから1人で自分だけのユニットを作った場合、もし、理亜さんがユニットの仲間に対して自分が求めているもの以上のものを求めてきた李したらきっと空中分解は避けられないでしょう。なら、私がそんな理亜さんのお目付け役になればそれも防ぐことができるでしょう。たしかに聖良さんの言う通りですね)

そんなことを考えていたあつこに対し、聖良、最後のお願いとばかりに90度お辞儀をして切羽詰まった表情でこう言った。

「あつこ、お願いです!!いや、私からの一生のお願いです!!理亜のユニットに入ってください!!」

これには、あつこ、

(え~、聖良さんってそんなことまでする人だったかな・・・。いや、あのプライドが高い聖良さんがそれすらも捨ててまで必死にお願いをしている、そのことを考えると、私、聖良さんからのお願い、断れきれないよ・・・)

と、自分のプライドすら捨ててまで必死にお願いをする聖良の姿を見てか、ついに、あつこ、折れてしまった。

「わかりました。聖良さんの必死のお願いですもんね、私、蝶野あつこ、理亜さんの作るユニットに入ることにします!!」(あつこ)

このあつこの発言に、聖良、

「あ、ありがとうございます、あつこ、本当にありがとうございます!!」

と、泣きながらあつこにお礼を言った。ただ、この聖良の表情に、あつこ、

(まぁ、これも聖良さんの妹の理亜さんに対する、愛、なのかもしれませんね。だって、理亜さんが(姉の聖良に対して)「姉さまLOVE」なのと同様に、聖良さんも(妹の理亜さんに対して)「妹さんLOVE」であることは間違いではありませんから・・・)

と、聖良のことは呆れつつも仕方がないかな、とも思ってしまった。

 

 そんなわけで、あつこ、聖良のお願いを受けてyoppiたちがいる理亜の元へ何気ない素振りをみせつついくも、その中にいる理亜に対して、

「理亜さん、お願いです、私も理亜さんのユニットに入らせてください!!」

と、理亜にお願いをする。すると、理亜、あつこに対して、

「これはこれは、あつこ、どうしてあなたがここにいるわけ?あなたはなんのためにここに来たわけ?」

と、疑い深くあつこの方を見てそう言ってしまう。これには、あつこ、

(こりゃ、かなり警戒されているかも・・・

とちょっと引いてしまうもそれだとせっかくの聖良からのお願いが不意になると思ったのか、すぐに、

「ほら、理亜さん、昨日、私が作曲した曲、披露したじゃないですか。それ見て、私、これからは作曲だけでなく理亜さんと一緒にスクールアイドルをやってみようかな、って思っていまして・・・」

と言い訳じみたことを言ってしまう。むろん、これには、理亜、

「あつこ、本当にそう思っているのですか?」

と疑り深くあつこの方を見るも、あつこ、ダメ押しともとれることを言ってしまう。

「でも、これから先、聖良さんばかりに作曲をお願いするのもあれだし、いつまでも聖良さんがいるわけじゃないでしょ。だからこそ、この私、作曲できるこの私がいればいいのでは・・・」

これには、理亜、一瞬考えてしまう。

(まぁ、たしかに、いつまでも姉さま(聖良)がいるわけじゃない。これからは私がこのユニットを引っ張っていかないといけない。それに、ラブライブ!ってオリジナルの曲しか披露できないことになっている・・・)

そう、ラブライブ!は一時期を除いて完全なオリジナルの曲を披露しないといけない決まりになっていた。そのため、作詞作曲ができない、もしくは、そのような人が近くにいない、そんなスクールアイドルグループはラブライブ!に出場することができなかった。これがスクールアイドルにとって最初の難関、となっていた。で、今、理亜が組もうとしているユニットに作曲できるメンバーはいなかった。むろん、その作曲をを聖良に頼むこともできるのだがいつまでも聖良に頼む、というか、聖良におんぶにだっこなんてできないものである、だって、いつまでも聖良が理亜のそばにいるわけではないのだから・・・。なので、そのことを知っていた理亜はあつこにそのことを指摘されて戸惑っていた。でも、理亜のまわりで聖良以外に作曲できる人間がいるわけ・・・、いや、いた!!そう、あつこ、である。あつこは昨日のクリスマスイベのライブ、クリスマスライブので理亜たちSaint Aqours Snowで披露した曲を作曲した実績がある。いや、これまで理亜と聖良、Saint Snowが披露してきた曲すべてに関わっている。なので、理亜が今求めている人材、作曲できる人材にあつこはぴったりというわけである。

 まぁ、そんなことにすぐに気づいた理亜、あつこに痛いところをつかれたのか、小声で、「たしかに作曲できるメンバーは必要だし、それなら仕方がない・・・」

とぼそっと言うと、理亜、あつこに対しこう言った。

「わかった!!あつこ、あなたも私が作るユニットのメンバーにしてあげる!!」

これには、あつこ、まんべんの笑顔で、

「理亜さん、ありがとう!!」

とお礼を言うも心のなかでは、

(聖良さん、あなたが心配していること、この私がなんとかしてあげますからね!!)

と、聖良に対し聖良が心配していることを自分がなんとかしてあげる、と誓っていた。

 

「こうして理亜さんのユニットが始まったのだけど・・・」

とあつこが言うと聖良も、

「たしかにそうですね、あつこが理亜のユニットに入ったことでこれまで暴走することなくちゃんとやることができていたのですから」

とあつこの言うことにうなずいていた。

 たしかにあつこの言う通りだった。理亜が東京から戻ってくるまではそこまで理亜が暴走することはなかった。いや、なごやかにスクールアイドル活動をしてきたのだ。とはいっても、理亜が新しいユニットをを結成してから今まで季節は冬である。そして、ここは北海道函館である。そんなわけで外は一面の銀世界・・・、雪が積もっているのは当たり前である。そんなわけで・・・、

「はいっ、ここでターン!!」

理亜の掛け声のもと、あつこを含めたユニットメンバー5人がダンスの練習をしていた。ここは聖女の体育館の講堂。ここで毎日ダンスの練習をしていた。いや、それ以外にも校舎の階段を使っての駆け足昇り、空き教室での基礎体力作り、はては、(外が晴れてて除雪されていれば)旧公会堂に続く坂道である基坂という坂を駆け上っていりしていた。

 とはいえ、理亜、疲れているユニットメンバーに対して、

「はいっ、タオル!!これで汗を拭きなさい!!じゃない、風邪、引いちゃうから・・・」

と、ぶっきらぼうにタオルを渡すなど微笑ましい行動をとっていた。

 そんな理亜の姿を見てか、あつこ、これには、

(ははぁ、これは、理亜さん、聖良さんじゃない仲間ともいえるメンバーに会えたことがとても嬉しかったのですね)

と、ニヤニヤしながら理亜を見ていた。たしかにそうである。理亜にとってここにいるメンバーは理亜としては初めての仲間ともいえる人たちであった。これまでは姉の聖良の後ろをついていく、「姉さまLOVE」な人生だった。だが、これからはその姉の聖良はいない、そんな理亜にとって初めてともいえる仲間であった。それには、理亜、

(あぁ、これこそ私が求めていたもの!!!人見知りがゆえに私はこれまで仲間ともいえる人がいなかった。いつも姉さまの後をついていくだけだった。けれど、これからは自分のことをは自分でしないといけない。もう姉さまなんていない、誰も頼れない、そう思っていた。けれど、そんな私に仲間がついにできた!!いつも助け合うことができる仲間ができた!!だから、私、とても嬉しい!!)

と思ってしまうほど嬉しいことだった。

 そして、学校が閉まる週末には・・・、

「「Drop Out」だけど、こんな振付にしたけどどうかな?」(理亜)

「うん、すごくいい!!」(yoppi)

「素晴らしいです!!」(しのっち)

「これは編曲のしがいがあります!!」(あつこ)

と、これまた函館が誇る市民活動の本局であり函館山の麓にある函館公民館で自分たちの曲の振付などを考えては一緒に踊っていたりしていた。で、その曜は今までのSaint Snowではみられなかった和気あいあいとした雰囲気を醸し出していた。それくらい理亜にとって初めての仲間ともいえる仲間と一緒に充実した日々を楽しんでいたのかもしれない。

 

「と、ここまでが理亜さんが東京から戻ってくるまでの出来事でしたけど、理亜さんは東京に旅立つまでそうやってユニットの仲間たちと一緒に楽しんでいた・・・のですが・・・」とあつこはコーヒーを飲みながら聖良に言うと聖良も、

「たしかにあつこが言っている通りですね。理亜が東京に行くまで学校から戻ってきたときには、「う~、毎日が楽しい!!」と、嬉しそうに言っていたことを思いだします」

と答えた。それくらい理亜にとって東京に行くまでの出来事は喜ばしいものだったのかもしれない。

 だが、ここであつこはきつめな表情に変わると聖良に対しこう言った。

「けれど、理亜さんは東京から戻ってきてからその状況が一変しました、まるで地獄の番人になったかのようにね・・・」

このあつこの言葉に聖良も、

「たしかにそうかもしれないですね・・・」

とあつこに同意していた。

 そして、あつこは聖良に対し理亜が東京から帰ってきた日の翌々日のことを話し始めた。

「聖良さん、実はですね・・・」



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SNOW CRYSTAL 序章 第5話

 その日、外は晴れていた。さらに校門前の雪かきも聖女の学生や先生たち、近くの住民たちのおかげですっかりと除雪されていた。そんなわけで久しぶりに外での練習・・・となったのだが、校門前に集まっていたyoppiたち1年生4人とあつこ、そこに遅れてやってきた理亜。そんな理亜に対しyoppiは、

「あっ、理亜ちゃん、今日もいつもの通り、基坂でのダッシュでしょ!!」

と嬉しそうに理亜に対し言った。

 だが、理亜の口から出たのは意外なものだった。

「いや、今までの練習じゃ生ぬるい!!このままじゃラブライブ!優勝なんてできないじゃない!!」

これには、あつこ、理亜に対し、

「別に今はラブライブ!優勝を目指す必要はないよ。だって、私たち、まだスクールアイドル初心者だし・・・」

と、言い訳じみたこと(理亜談)を言うと、理亜、まるで誰かにキレかのような口調で、

「スクールアイドルはね、そんなに生ぬるいものじゃないの!!このままじゃ、私たち、ただの思い出作りのためのスクールアイドルユニットを結成したことになるじゃない・・・」

と言ってしまう。これには、まぁちゃん、

「でも、今はこれmでの練習をして基礎体力をつけることが大切じゃ・・・」

と、まるで理亜に口ごたえ(理亜談)するかのように言うと、理亜、そんなまあちゃんい対し、

「あなたね、スクールアイドルをなめているでしょ!!これまでラブライブ!の頂点に立つことが出来たスクールアイドルたちは死に物狂いできつい練習をしてきたの!!なら、私たちもそれくらいの練習をするべき!!きつい練習をした先にスクールアイドルとしての栄光があるわけ!!」

と、まるでまあちゃんを屈服させるかのような早口でまくしたてるかのごとくどなった。これには、しのっち、

「まぁ、ここは、理亜ちゃん、落ち着いて!!どうどう」

とまるで競走馬を落ち着かせるかのように理亜に言うと、理亜、

「しのっち、私は馬じゃない!!それに真剣に言っているわけ!!それ、わかるでしょ!!」

と、今度はしのっちに対して逆ギレ。もう誰も理亜を泊めることができない。

 そんなわけで、理亜、一方的にあつこたちユニットメンバー5人に対してこう命令した。

「そんなわけで、今から、私たち、函館山の登山口まで駆け足!!」

これにはあつこたちから大ブーイングが起きるも、理亜、そんなことお構いなしに、

「さぁ、行け!!」

と言ってはあつこたちを無理やり走らせては函館山の登山口まで移動してしまった。

 そして、函館山の登山口に到着すると、理亜、あつこたちに対してとんでもない命令をしてきた。

「今から全力で函館山の山頂まで走ってもらう!!」

これにはあつこ以外の1年生4人から大ブーイングが起きる。

「理亜ちゃん、今、冬、ですよ!!函館山には雪が沢山積もっています!!」(まみ)

「この雪道のなかを全力で走るなんて八甲田山の旧日本軍の遭難を再びここで起こすつもりですか!?」(yoppi)

「そうです、そうです!!それに雪道だから、滑ること、間違いなしです!!」(まあたん)

「私たちを殺すつもりですか、理亜ちゃん!!」(しのっち)

だが、そんな4人の声なんてっく耳を持たない理亜、その4人に対し、

「あれやこれやと文句をいわずに私の言うことを聞きなさい!!」

と一喝してしまう。これにはさすがの4人とも、

「「「「・・・」」」」

と無言になるも、それが気に障ったのか、すぐに、

「私の言う通り、早く走って!!」

と怒るように1年生4人に言ってしまう。

 だが、こおであつこが動いた。あつこ、怒りMaxの理亜に対し、

「理亜さん、この4人の言う通りです。私たちをケガさせたいのですか?」

とこちらも一喝。これにはさすがの理亜も、

「でも、こうでもしないとラブライブ!優勝だなんて夢のまた夢だし・・・」

と言い訳を言いたそうに言うも、あつこ、

「ケガをしたらもとのこうもありません!!」

と理亜をさらに叱りつける。誰に対しても温厚な性格で有名だったあつこがここまで怒るとなるとさすがの理亜もここでは空気を読んだのか、

「・・・」

と、無言になってしまった。

 とはいえ、あつこ、そんな理亜の思いをくみ取ったのか、

(こりゃ、さすがに怒りすぎたかな・・・。たしかに理亜さんの言う通り、これまでの私たちの練習は本当に甘々なものだったかもしれません。けれど、さすがにこんな雪道である山道を走るのは危険すぎる。なら、ここは発想の転換というわけで・・・)

とあることを考えみんなの前で理亜の考えた練習メニューに変わるもの、自分のアイデアを発案した。

「それなら、理亜さんの考えをくみ取って、あそこにある観音様まで短距離ダッシュ、なんてどうでしょうか?」

実は函館山には山道(散策道)に33体もの観音様が設置されている。そのうちのあつこたちがいる登山口の近くにある観音様のところまで短距離ダッシュをしようというのだ。ちなみにその観音様があるのはあつこたちがいる登山口、函館山の山頂に続く車道を昇って最初のカーブを越えた先にあった。で、あつこはこう踏んでいた、たしかに短距離ダッシュなら函館山の山頂に続く雪道を走るまでの危険性や体力の喪失はないかもしれない、けれど、雪道でのダッシュはたとえ1本だけやったとしてもかなりきついものである、これなら理亜も納得してくれる、と。

 もちろん、あつこの提案にyoppiたち4人からも、

「たしかに面白いかも!!」「それならなんとかやれるかも!!」

と前向きな発言が出てくる。これには理亜も、

「まぁ、たしかにそれなら体力がつきそう。なら、あつこの案を採用します」

と言ってはちょっとふてくされそうになりながらもあつこのアイデアを採用することを決めた。

 そんあわけで、山頂までの雪道走破・・・ではなく、雪道での短距離ダッシュを行うことにした理亜たち。むろん、これにはyoppiたちも実際にやってみて予想外にきついことに気づいたのか、

「うそ・・・、こんなにきついなんて、聞いていないよ~!!」

「予想外に疲れるよ・・・」

「まさに地獄だよ・・・」

と、ブーブー文句を言いながらも短距離ダッシュを行っていた。ただ、理亜はというと・・・、

「たしかにこれなら体力がつきそう。ある意味理に叶っている・・・」

と、まんざらでもない様子。

 そんな理亜の姿を見てか、あつこ、こう思ってしまう。

(これで理亜さんの欲求不満も解消された。よかったです。だって、これを毎日していたらいつかはきっと私たちの誰かがケガをしてしまいますからね。それくらいこの練習も危険があるのですから・・・)

 

 だが、これに、理亜、味を占めたのか、その次の日、理亜はまたもやあつこたちを地獄へと突き落とすようなことを言ってしまう。

「さぁ、今日も函館山で、短距離ダッシュ、するから」

これにはyoppiたちから、

「え~、あれ、もうやりたくないよ~」「いけず~」

と、批判殺到!!むろん、あつこも、

(これはさすがにやりすぎでしょう・・・)

と理亜に呆れてしまう。

 だが、そんな批判なんてなんのその、理亜、つかさず、

「さぁ、早く行く!!」

と、メンバーをせかすように函館山の登山口に活かせるとすぐに、

「さぁ、今から昨日のように短距離ダッシュ!!」

と言っては昨日と同じように1つ目の観音様のところまでダッシュ走をさせた。むろん、これにはyoppiたちから、

「うわ~、きついよ~」「こんな練習、本当に必要なの!!」

と、ブーブー文句を言いながらダッシュするも、とうの理亜はというと、

「こんなの、まだまだ序の口!!本当のスクールアイドルの練習はこんなものじゃない!!」

と、これまた凄いこと?を言ってはyoppiたちを走らせていた。むろん、あつこも、

(これは大変なことになるかも・・・)

と、このあとのことを心配してしまった・・・。

 だが、そんなあつこの心配は的中してしまう。その次の日、またもや理亜はとんでもないことを言いだしてしまう。

「さぁ、今日も函館山で短距離ダッシュ、します!!」

この理亜の言葉を聞いた瞬間、yoppiたちからは、

「もういや!!」「やりたくないよ!!」もうやめたい!!」

と弱気ともとれる言葉が出てきてしまう。むろん、これには、あつこ、

(はっ、なんか、理亜さん、暴走している!!このままじゃ理亜さんのユニットが空中分解しちゃう!!)

と、危険を察したのか、理亜に対しある提案をした。

「理亜さん、このままじゃみんなが壊れてしまいます!!ほら、ここ最近、理亜さん、切羽詰まっていたでしょ!!このままだとユニット内の空気も悪くなっちゃうし、ここで無理でもしたら絶対に誰かがケガをしちゃうよ!!だからね、理亜さん、今日と明日は休みにして少しは体を休ませようよ!!」

これには、理亜、

「でも・・・、でも・・・、このままだとラブライブ!優勝が・・・、勝つためのユニット作りが・・・」

となにか言いたそうにするも、あつこ、ここは先輩特権で、

「理亜さん、ここでメンバーの誰ががケガしちゃうとラブライブ!どこじゃないよ!!」

と脅迫めいた?表情で理亜に迫るとさすがの理亜も、

「う~、たしかにあつこの言う通り・・・。誰かがケガをしてしまうとたしかにラブライブ!どころじゃすまないはず・・・。うぅ~」

とうなりつつも、結局、

「はい、あつこの言う通りにします。今日、明日は練習を休みにします・・・」

と、仕方なくあつこの言う通りにした・・・。

 

「と、そんなわけで今日はお休みになったわけ」

と、あつこは昨日までに起こったことを隣にいる聖良に話終えると、聖良、

「たしかに東京から戻ってきてからなんか理亜の様子がおかしい感じがしていました。まるでなにかに憑りつかれている、いや、なにかに切羽詰まっている感じでした」

と、東京から戻ってきてからの家での理亜の様子について語るとすぐに意外なことを言いだしてしまう。

「でも、たしか、理亜、東京から戻ってきてから・・・というか、あのときからも切羽詰まっていました・・・」

 この聖良の発言を聞いてあつこはすぐに聖良にあることを尋ねた。

「聖良さん、それっていつからなのですか、理亜さんが切羽詰まり始めたのは?」

このあつこの質問に、聖良、なにか慌てたのか、

「えっ、あつこ、そ、それはですね・・・、たしか、ラブライブ!決勝のときからです・・・。詳しく言うと、Saint SnowのライバルであるAqoursが優勝を決めた時点からです・・・」

と、理亜が切羽包まるような態度をとるようになったのがラブライブ!決勝のとき、詳しくいうと、Aqoursがラブライブ!で優勝を決めたとき、からだったことを白状した。

 この聖良の暴露に対しあつこは大事なことを話し始めた。

「聖良さん、たしか、聖良さんと理亜さんが東京に行ったのってラブライブ!決勝を見に行くためでしたよね」

これには、聖良、

「たしかにそうです。私と理亜はSaint SnowのライバルであるAqoursを応援しに東京に行きました」

と、東京に行った理由を述べた。たしかにそうである。シエラと理亜は自分たちSaint SnowのライバルであるAqoursを応援しに東京に行ったのだ。そして、自分たちが進出できなかったラブライブ!決勝でAqoursを応援していたのだ。

 そして、聖良はある重要なことを言った。

「で、たしか、ラブライブ!決勝で私たちが応援していたAqoursが優勝してしまった・・・」

これを聞いた瞬間、あつこ、ある仮説を立てては聖良にその仮説を話した。

「聖良さん、もしkして、理亜さんが暴走しているのって自分たちSaint SnowのライバルであるAqoursがラブライブ!で優勝したことが関係あるのではないでしょうか」

このあつこの仮説を聞いた聖良、

「う~ん」

と、いっしゅんうなりながら考えうとすぐに、

「う~ん、それはどうでしょうか。たしかに、私たちSaint SnowのライバルであるAqoursが優勝した、しかし、それであの理亜がそこまで自分自身を追い込むでしょうか?」

と、あつこの仮説に疑問を呈する。これには、あつこ、

「まぁ、たしかにライバルであるAqoursが優勝したことと自分が作ったユニットを空中分解させるくらいの無理な練習を押し付けることの因果関係が成り立つとは思えない気がします。だって、これから活躍するのはあのAqoursの後継グループと理亜のユニットですしね・・・」

と、聖良の疑問・・というか考えに同意してしまう。

 そんなわけで、聖良とあつこ、理亜が暴走している理由をいくら考えても思いつかないため、今回はこれでお開きとなってしまった。だが、家路に着こうとしているあつこに対し、聖良、あるお願いをした。

「あつこ、もし理亜がまた暴走して、自分自身、もしくは、その仲間たちが傷つくことがありましたら必ず私に連絡してくださいね」



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SNOW CRYSTAL 序章 第6話

聖良が危惧していた理亜の暴走によて人が傷つくこと、であるが、聖良とあつこが旧茶屋亭で話し合った翌日、ついに起きてしまった。それはその日の放課後、練習のときに起きてしまった。その日は、昨日、一昨日と晴れていたのが一転、小雪がパラついていた。あつこはそんな小雪がパラつく空を見てはこう思った。

(今日は雪が降っているから中で基礎体力作りかな)

いつもなら雪が降る日は外で練習すると転倒する危険性があるため、中で基礎体力作りなどを行っていた。なので、あつこはいつもの通りなかで練習する気でいた。また、

(それに、1日置けばあの理亜さんも頭を冷やしてくれるでしょう)

とあつこはそう思っていた。そう、あつこが強制的に1日のお休みを入れてた理由の1つとして理亜が頭を冷やして冷静になってくれるのを期待していたからだった。たった1日であるがあの理亜が頭を冷やしていつもの理亜に戻ってきてくれたらいつもの練習をすることができる、そうあつこは考えていた。いや、淡い期待をしていた。人というのは休むことで熱くなりすぎた脳を休ませることができる、そうすることで冷静になり暴走を食い止めることができるのである、あつこはそれを狙っていたのである。

 そんなわけで、あつこ、

(さてと、なかで練習をする準備もできたし、いつもの集合場所でいいかな?)

と思って雪が降る日の集合場所である1階の玄関前に移行としていた。

 だが、そんなとき、突然、あつこのスマホが、

「LIME!!」

という音が聞こえてきた。これはあつこのスマホにインストールされているSNSアプリ「LIME」に新しい投稿が届いた、という音だった。これには、あつこ、

(はて、なんだろう?)

と思って自分のスマホを取り出し「LIME」を起動、新しい投稿を見る。すると、そこにはあつこが驚くようなことが書かれていた。それは・・・。

(理亜)「大至急、学校の校門に来れり!!」

これには、あつこ

(えっ、学校の校門前!?そ、それって・・・)

と驚いてしまう。いや、この理亜からの投稿を見てすぐに、

(ま、まさかね、こんな雪が降る日に外で練習、するわけないよね・・・)

とつい思ってしまう。。実は中で練習をするときは校舎1階の玄関前に集まるのだが、外で練習するときは学校の校門前に集まることになっていた。なので、今日みたいな雪が降る日は中で練習・・・なのだが、そらが外で練習・・・という常識はずれなことを理亜がするわけがない、そうあつこは無理やり考えてしまったのである。

 とはいえ、リーダーである理亜からの命令・・・ということもあり、あつこ、厚着をして校門前に行くことにした。むろん、校門前に行くと理亜の投稿によって集まっていたyoppiたち1年生4人の姿もあった。そんなyoppiたちに対し、あつこ、

「ねぇ、今日、なにをするのか聞いていますか?」

と尋ねるとyoppiから、

「いや、理亜ちゃんからはなにも聞かされていないのですが・・・」

という答えが返ってきた。どうやらyoppiたちも理亜から今日の練習内容について聞かされていなかったようだ。

 そんなとき、校舎の方から何かに怒っているかのような表情をした理亜がいた。そして、開口一番、あつこやyoppiたちに向かって、理亜、こんなことを言いだしてきた。

「さぁ、今日もラブライブ!に優勝するためにあそこに行く、函館山の登山口に!!」

これを聞いた瞬間、あつこ、

(えっ、うそでしょ・・・。なんか、理亜さん、前よりヒートアップしているような気がします・・・)

と、頭が真っ白になってしまった。理亜、頭を冷やすどころかさらにヒートアップしているようだった。むろん、そんな理亜の発言にyoppiたちからは、

「えっ、こんな雪が降る日に外で練習するわけ!?」

「信じられないよ・・・」

「これじゃ凍えて死んじゃうよ・・・」

という弱気ともとれる発言が聞こえてきた。だが、とうの理亜はというと、

「ほら、そんあことを言うのなら、はやく、函館山の登山口に行きなさい!!」

という強い口調であつこやyoppiたちに命令すると無理やりでも函館山の登山口まで行かせようとしていた。

 

 そんなわけで、理亜にせかされて函館山の登山口に連れてこられたあつことyoppiたちだったが、到着したとたん、理亜はとんでもないことを言いだしてきた。

「さぁ、今日はこれまで以上に練習するから!!まずは2つ目の観音様まで短距離ダッシュ!!」

これには、あつこ、

(えっ、これまでは最初の観音様のとこまでのダッシュだったのに、練習メニューがさらにグレートアップしているよ・・・)

と唖然となってしまう。たしかにこれまでは登山口から1つ目の観音様までの短距離ダッシュだたtのが今日はその先の2つ目の観音様までのダッシュにグレードアップしていたのだ。あっ、ちなみい、2つ目の観音様は1つ目の観音様よりももっと先、2つ目のカーブの先にある。まぁ、それに加えて今日は雪が降っている、下手すると誰かがケガをするかもしれない。それについては、あつこ、

(前よりもきつい練習をこんな悪条件のなかでやったら絶対に危険なことが起きる・・・)

と、なにかを危惧していた。

 だが、そんなあつこの心配をよそに、理亜、yoppi立ちに対し、

「ほら、はやく、ダッシュ、ダッシュ!!」

とせかすようにダッシュを強要する。これには、yoppi、

「は、はい・・・」

と、仕方なく2つ目の観音様に向かってダッシュをする。むろん、あつこもダッシュをする。まずは1本目は無事に終わった。

 だが、問題が起きたのは2本目・・・というかその帰りだった。理亜、突然、こんなことを要求してきた。

「さぁ、次は下りながらダッシュ!!」

これには、あつこ、

(えっ、それって危ないよ、理亜さん!!)

と、一瞬びっくりしてしまう。上りに関しては別にいいのだが下りに関しては下り坂のために走るとスピードがついてしまう、そんな簡単に止まることができない、などの問題が起きてしまう。そして、そんななか雪が降っているのでダッシュする雪によって途中で足を滑らせてしまう危険性をはらんでしまう、なので、あつこ、そんな危険性があるにも関わらずにそれでもダッシュを強要する理亜の言動にびっくりしたのである。じゃ、yoppiたちはというと、ここでも反論。

「・・・」

いや、無言を貫き通してしまっていた。なぜなら、いくらyoppiたちが理亜に対して反論しても理亜はそれ以上に反論してくるのは目に見えていたから。なので、ここは無理に反論するのをやめにしたのである、yoppiたちは・・・。

 そんなわけで、次々と下にある登山口に向かってダッシュをするユニットメンバーたち。あつこも足を滑らせながらも無事に、

(ふ~、足を滑りそうになりながらも無事にダッシュすることができたよ・・・)

と一安心する。

 だが、理亜以外のユニットメンバーがダッシュしていくなか、一番最後にダッシュを行ったyoppiのときに問題が起きた。

「はいっ、スタート!!」

という理亜の掛け声とともにスタートするyoppi、一つ目の観音様のところまではなんとか無事にダッシュできた。これには、yoppi、

(まぁ、これくらい、余裕、余裕!!)

と思ってしまう。だが、1つ目の観音様を越えたところで、

(あれっ、足の踏ん張りが効かないよ・・・)

と、yoppiの体勢が崩れようとする。どうやら足の踏ん張りが効かないようだ。それでもyoppiは、

(けれど、これくらい、大丈夫!!)

と、思ってか体勢を立て直そうとする。だが、

(あれっ、なんか体が動かない・・・)

とyoppi自身、自分の体がいうことがきかないことに気づいてしまう。そう、なんと、このとき、yoppiが自覚できないくらい自分の体を動かすことができなかった・・・というよりもそれくらいyoppiの体に疲労が蓄積されていたのだ。たった1日の休みではリカバリーできないくらいの疲れが溜っていたのである、yoppiの体のなかには。むろん、それはyoppiの日常生活のなかで築盛されたものであはなかった。理亜との練習のなかで蓄積されたものだった。それくらい冬の函館山の短距離ダッシュというものがかなりハードであることを指し示すものだった。そんなわけで、体勢を立て直すことができないyoppi、それでも倒れないように足を動かして自分の体勢を必死になって立て直そうとする、そんなときだった。もう一方の足が地面に着いた瞬間、

(あれっ、あれれれ・・・)

と思うとまるで宙に浮かんだと一瞬感じたyoppi、そして、そのまま、

ドスッ!!

という鈍い音とともに、

(痛っ!!)

と感じるくらい地面にたたきつけられてしまった。このとき、yoppi、こんなことを一瞬考えてしまった。

(わ、私・・・、足を滑らせてしまったみたい・・・)

そう、なんと、yoppi、足を滑らせてしまったのだ。体勢が崩れたままもう一方の足が地面に着いた・・・まではよかった。だが、運悪く足を滑らせてしまったのだ・・・というよりも、雪の下にあった氷状のものによって足を滑らせてしまったというのが正解だった。で、この氷状のもの、実は理亜たちの手で作られたものだった。この数日、理亜たちはここで短距離ダッシュをの練習をしてきた。そのとき、何度も同じ場所でダッシュしたものだから雪が踏み固まってしまったのだ。そのため、踏み固まった雪がアイスバーンのような状態へと変化してしまった。その上に新しく降った雪が積もったため、yoppiはそのアイスバーン状になった雪のところに知らないうちに踏みつけてしまい足を滑らせた、ということなのである。

 とはいえ、新しく積もった雪がクッションになったのか、yoppi、そこまでケガをすることはなかった。そんなyoppiに対し、あつこ、

「大丈夫?ケガ、していない?」

とyoppiのもとに駆け寄っては心配そうに言う。いや、あつこ以外の、まあたん、まみ、しのっちもyoppiのところに駆け寄ってくれた。それに対し、yoppi、

「あっ、大丈夫、大丈夫!!ちょっと足を滑らせただけ!!」

と、大丈夫だったことをアピール。これには、あつこ、

「ふ~、よかった・・・」

と一安心した。

 だが、そんなあつことは違い怒った表情でyoppiのところに駆け寄る少女がいた。それは・・・。

「今、なんで転んだの!!」(理亜)

そう、理亜だった。練習中に派手に足を滑らせて倒れたyoppiに対し怒りMAXだった、理亜は。どうやら理亜にとってyoppiが足を滑らせたことはなにかのおふざけにみえたのかもしれない。

 そんな理亜の質問にyoppiは笑いながらこう答えた。

「どうやら雪に足を滑らせてしまったみたい。理亜ちゃん、ごめ~ん~」

 だが、そんあふざけたようなyoppiの答えに、理亜、ついにキレてしまう。

「yoppi、そんな悪ふざけのような答え方をしないで!!もっと真面目に練習をして!!昨日、休みだったからだって少し気が緩んでいるんじゃない!!」

そのときの理亜の表情はまるで地獄の閻魔大王そのものだった。これには、あつこ、

(り、理亜さん、少しは落ち着いて!!)

と、心の中で理亜に対して落ち着くように叫ぼうとする。けれど、理亜はそんなあつこのことなんて気にせずにyoppiに詰め寄ろうとする。これにはさすがのyoppiも、

(こ、このままじゃ、私、理亜ちゃんに潰される!!)

という危機感を持ったのか、ついに本音が出てしまった。

「だ、だって・・・、あまりにもきつい練習が続くんだもん。スクールアイドルの練習ってそんなにきついものだって思っていなかったもん!!けれど、こんなにきつい練習が続くととても疲れるもん!!もう、私、へとへとだよ・・・」

そんなyoppiの本音がきっかとなたのか、ほかのユニットメンバーたちからも、

「そうだよ!!もうこんなきつい練習なんてこりごりだよ!!」(まあたん)

「私も、私も!!」(まみ)

と、ついに理亜が課すとてもきつい練習に音をあげてしまった。これには、あつこ、

「み、みんな・・・」

と、音をあげたユニットメンバーたちのことを心配そうに見る。

 だが、そんな音をあげるメンバーたちに対してついに理亜の怒りのメーターが振り切ってしまった。

「もっと真面目に練習して!!これくらいの練習を今からしないと絶対にラブライブ!で優勝できないわけ!!」

それはまるできつい練習に音をあげたメンバーたちに向けた怒りの咆哮だった。なので、この理亜の怒りの咆哮にyoppiたちからは、

「でも、でも、これ以上こんな練習をしたら、いつかは、きっと、体、壊しちゃうよ・・・」

と、理亜からみたら言い訳みたいな言葉を言うと、理亜、こう言ってはさらにぶち壊れてしまった。

「そんなの関係ない!!トップレベルのスクールアイドルたちはこんなきつい練習を平気にこなしている!!だからこそ、ここで音をあげていたら絶対にラブライブ!優勝だなんて、そのために勝ち続けることなんて、できないんだ!!」

 さらに、理亜、ついにこんなことまで言いだしてきた。

「ほら、ここで文句を言わないで!!すぐに練習を再開して!!」

理亜、どうやら、yoppiたち音をあげるメンバーのことなんて気にせずに雪の中での短距離ダッシュというきつい練習を続ける気のようだ。

 そんな理亜の発言に、あつこ、

(あっ・・・)

と思ったのか、ある昔の出来事がフラッシュバックで蘇ってしまう。それは・・・。

(あっ、私・・・、これと同じこと・・・、している・・・)

それはあつこの昔の出来事・・・だった。そんなあつこの脳内に映し出されたものとは・・・。

 

(もっと練習しないと・・・前みたいに・・・優秀な成績を・・・残せない・・・、誰にも・・・勝つことが・・・できない・・・)

これは自分の思いとは裏腹に体がいうことをきかない・・・そんな苦しい状況のなか、少しでもそれを改善しようと無謀といえる練習で疲れた体を鞭打ちながら無謀といえる練習を続ける自分の姿・・・、そして、

(あともう少しで昔みたいな演技ができる!!あともう少し・・・あともう少し・・・)

そう思って大会に出場し、あともう少しで完璧な演技ができる、そう思った瞬間、

(えっ、体が・・・いうことを・・・きかない・・・)

最後の肝心の大ジャンプのとき、これまで無理してまで無謀といえる練習を続けていた、そのときに蓄積された疲れからなのか、それとも、一瞬の気の遅れからなのか、どちらかわからないが、それによって一瞬体勢を崩してしまい、結果、下に激突、さらに、そのままその近くにあった壁に大きくぶつかってしまった・・・、それにより競技を続けることができなくなるくらいの大けがをした、そのときのことを・・・。

 

 そんなフラッシュバックが頭のなかに駆け巡ったあつこ、その瞬間、

「理亜さん、もうこんな練習、止めにしませんか!!これ以上したらほかのメンバーたちも大けがしちゃいますよ!!」

と、理亜に対し反論する。この反論、言っているあつこ自身、

(あっ、理亜さんに、こんなこと、言っちゃった・・・)

と、ちょっと後悔するもすぐに、

(でも、これ以上こんなきつい練習をしていたら、きっと、いや、絶対に大けがするメンバーが出てしまう、昔の私みたいに・・・)

といった昔の自分みたいに大けがをするメンバーが出てしまうことを危惧してしまった、それくらい、あつこはこの練習がとても危険なものと班だ印してそれを中止するように理亜に忠告したものだった。

 だが、そんなあつこの忠告に対し、理亜、逆ギレ!!

「あつこ、勝手にそんなことを言わないで!!このままじゃ、ラブライブ!優勝だなんて、勝つためのユニットづくりなんて、夢のまた夢じゃない!!」

これには、あつこ、

「り、理亜さん・・・」

と困惑するも、理亜、つにこんなことまで言ってしまう。

「あつこ、このユニットのリーダーは私なの!!リーダーである私の言うことを聞いていればいいの!!ただのメンバーであるあつこがそんなことを言わないで!!」

これには、あつこ、そんな理亜に対し、

「理亜さん、あなたは、今、きつい練習をさせてここにいるメンバーに大けがをさせようとしています。そんなことをしていたら、ラブライブ!どころかの話になりません!!μ'sの高坂穂乃果さんみたいなことをしたいのですか!!」

と、きつく反論する。ここでいう高坂穂乃果というのはラブライブ!で優勝したことがあるレジェンドスクールアイドルの1つ、μ'sのリーダー、高坂穂乃果のことである。穂乃果は第1回ラブライブ!出場をかけてランキングを上げるために、雨のなか、無理して走るなど無理ともいえる練習をしていた。そのため、雨のなか行われた学園祭のステージにて大熱を出して倒れてしまったのだ。これいよりμ'sは第1回ラブライブ!出場を辞退sるうはめになったのだ。これと同じこと、いや、それ以上のことを理亜はしようとしている、そうあつこが危惧したからこそ言ったことだった。

 だが、そんなあつこの言葉に対し理亜はさらにこう反論した。

「そんなの、やってみないとわからないじゃない!!それよりも、今、やっている練習を続けないと、ラブライブ!優勝だなんて、どのグループにも勝つことなんて、できないじゃない!!もっと練習をしないと・・・」

この理亜の発言に、あつこ、

「り、理亜さん・・・」

と呆れかえってしまう。

 しかし、このとき、理亜、ついに本音とも言えることをつい言ってしまう。それは・・・。

「もっと練習しないと・・・、もっと練習しないと・・・、姉さまと・・・、Saint Snowと・・・、同じ・・・、輝き・・・、同じもの・・・、が・・・、できないじゃない・・・、Aqoursみたいに・・・、ラブライブ!優勝だなんて・・・、ほかのグループに勝つための・・・、ユニット作りなんて・・・、できないじゃない・・・。そうじゃないと・・・、姉さまに・・・申し訳ない・・・じゃない・・・」

この理亜の言葉に、あつこ、

(えっ、今、なんて・・・)

と、一瞬はっとする。あんまり自分の本音を他人に対して話すことがない理亜、それが、ほんの一瞬だけ、自分の本音をつい滑らせて言ってしまったのである。いや、それ以外にも、理亜は、自分の心奥底にしまってある自分の思い、いや、闇を口にしたのである、このときは・・・。

 そして、理亜はさらにこんなことまで言ってしまう。

「それに、私にはもう頼れる人なんてもういない!!(昔自分が頼っていた)姉さまなんてもういないんだ!!これからは私1人でやるしかないんだ!!」

この理亜の魂の叫びを聞いた瞬間、あつこ、

(こ、これが、理亜さんの本音なの・・・)

と、それが理亜の心のなかにある本当の思いではないかと思ってしまった。

 

 とはいえ、これ以上無理をしてまで練習を続けていたら本当に誰かが大けがをしてしまう、また、これ以上理亜を刺激していては理亜がさらにヒートアップしてしまいユニットの空中分解は避けられないかもしれない、そう思ったあつこはまたもや先輩特権でこの日の練習を中止にしてその場で解散を言い渡した。それくらいあつこからしたら今日の練習と理亜の言動は異常なものにみえたのかもしれない。しかし、その言動からみえた理亜の本音と思い、いや、そのなかにある闇はあつこにとって昔の自分に通じるくらい衝撃的なものだったのかもしれない。



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SNOW CRYSTAL 序章 第7話

 そして、このときの出来事が最悪の事態を招くことにつながった。その日の夜、あつこはなにげに自分のスマホでネットニュースを見ていた。すると、突然、

「LIME!!」

という音が自分のスマホから流れた。これには、あつこ、

「あっ、誰かLIMEに投稿している!!」

と、SNSアプリ「LIME」に投稿通知が来ていることに気づきすぐに「LIME」を起動さた。 

 そして、「LIME」のトーク画面を広げてみると、あつこ、

「えっ!!」

と、驚いてしまう。なぜなら・・・。

「こ、これって・・・、yoppiたちがやめようとしている・・・、スクールアイドルを・・・、理亜さんのユニットを・・・」

そう、yoppiたちが理亜のユニットから抜けようとしているのだ。そのトーク画面は以下の状況だった。

(yoppi)「理亜ちゃん、これから先も今日みたいな練習を続けるつもり?」

(理亜)「もちろん!!」

(まみ)「それって考えものだよ!!もうやめたいよ、こんな練習・・・」

(理亜)「これくらいしないといけない。スクールアイドルになった以上、弱気になるな!!」

(yoppi)「それって地獄だよ!!なんか、私、続ける自信、なくしちゃうよ・・・」

(理亜)「これくらいしないといけない!!それに弱気になる時間すらおしい!!」

(まあたん)「でも、今日のが最高だよね・・・。今日以上の練習、しないよね・・・」

(理亜)「いや、今のでも足りない!!」

(まあたん)「練習、そんなに(増やすの)?」

(理亜)「うん、ラブライブ!に出るには」

(まあたん)(驚きのスタンプ)

(理亜)「(ところで、)明日から来れる?」

(yoppi)「ごめん・・・」

(まみ)「少し考えさせてくれる?」

(まあたん)「私も・・・」

この投稿を見て、あつこ、すぐに反応する。

(あつこ(あっちゃん)「みんな、もう少し考え直して!!」

だが、返ってきた反応は冷たいものだった。

(yoppi)「あっちゃん、ごめん、これ以上は無理・・・」

(まみ)「私もyoppiと同じ意見・・・」

(まあたん)「あっちゃん、ごめん・・・」

この投稿を最後に、yoppi、まみ、まあたんの3人は理亜のユニットのグルから退会、つまり、抜けてしまった・・・。

 

 ちょうど同じころ、聖良はお風呂が沸いたことを理亜に伝えに理亜の部屋のドアを開けた。そのとき、理亜は自分のベッドでうずまきながら自分のスマホを見ていた。そのときの理亜の様子はとても悲しそうなものだった。そんな理亜の姿を見て、聖良、こう思ってしまう。

(理亜・・・、大丈夫・・・でしょうか・・・)

だが、このときの理亜はもうここにあらず・・・の状態だった・・・。

 

 翌日・・・、

「あっ、今日は、理亜ちゃん、お休みだよ!!」

あつこは昨日のLIMEでのやり取りで理亜がショックを受けていなかったか心配になり理亜のクラスを訪れていた。そして、案の定、理亜は昨日のやり取りにより強いショックを受けたのか今日は学校をお休みしていた。これには、あつこ、

(理亜さん、yoppiたちがユニットを抜けたことでかなりのショックを受けているみたいですね。浦東に大丈夫でしょうか・・・)

とさらに理亜のことを心配していた。

 そんなときだった。

「あっ、あっちゃん(あつこ)、こんにちは!!」

と、あつこのことを呼ぶ声がした。これには、あつこ、声がする方を振り向く。すると、

「あっ、yoppiさんにまみさん、それにまあたんさんではありませんか。こんにちは」

と3人に挨拶をする。そう、あつこの前にいたのはyoppiたち、理亜のユニットを抜けた3人だった。

 と、ここで、あつこ、あることを思いつく。

(あっ、そうだ!!3人に理亜さんのユニットを抜けた理由を詳しく聞こう!!)

あつこ、昨日のLIMEでのトークでもって理亜のユニットを抜けてしまった3人にユニットを抜けた理由を詳しくきこう、と思いついたのだ。

 で、そんなわけで、あつこ、

「ところで・・・」

と前置きを言いつつ3人に対し核心をつくような質問を投げかけた。

「3人は、なぜ、理亜さんのユニットから抜けることにしたのですか?最初のころは理亜さんと一緒に楽しんでいたのに今になってなぜ?」

このあつこの質問に対し3人は口々にその理由を述べていった。

「たしかに最初のころは楽しかったし、「これがスクールアイドルだ!!」なんて実感すらしていたんだ」(yoppi)

「でも、理亜ちゃんが東京から戻ってきてから、理亜ちゃんの様子が、ユニット内の様子が、変わってしまったんだ!!」(まみ)

「なんか最初のころよりも、練習、練習、まるで理亜ちゃんが、鬼軍曹、みたいになった感じできつい練習を課してきちゃったんだもん!!」(まあたん)

「こうなってくると、最初の頃の楽しさなんて吹き飛んでしまったよ・・・。過酷な練習をすること自体なんかの苦行かと思えてきたんだよね・・・」(yoppi)

「それに、いくら私たちが声をあげても、理亜ちゃん、私たちの声に傾けることなく過酷な練習を無理やりやらせようとしてくるし・・・」(まみ)

「こうなってしまうと、私たち、最初のころに抱いていた、きらびやかなスクールアイドル、なんてイメージ自体崩れてしまっちゃった・・・。いや、まるで理亜ちゃんからスクールアイドルを強要されてしまっている、そう思えてしまって、スクールアイドルを続ける気持ちすら失っちゃたんだよね・・・」(まあたん)

 この3人の気持ちを聞いて、あつこ、こう思ってしまう。

(やっぱり、理亜さんのきつい練習をさせる行動、そして、それを強要しているような言動、これがyoppiたちが理亜さんのユニットから抜けた理由になったんだね。と、なると、このままだと理亜さんはyoppiさんたちが抜けたショックで寝込んでしまうか、めげずにユニットに残った私としのっちさんに過酷な練習を押し付けてくるかもしれない。どちらにしてもこのままの状態が続けばきっと最悪な結末になってしまう。なんとかしないと・・・)

理亜や自分、しのっちの心配をついしてしまうあつこ、これからどうすれあいいかついつい考えてしまうあつこ。

 そんなあつこに対し、yoppi、

「あの~、あっちゃん、昨日のことで気づいたことがあります」

と言うと、あつこ、一瞬、

「えっ!!」

と驚いてしまうもすぐにyoppiに対し、

「それってなんですか?」

と逆に尋ねてしまう。

 すると、yoppi、昨日の理亜の行動について気づいたことを語った。

「あっちゃん、昨日、理亜ちゃんは私たちやあっちゃんから言われて反論したとき、こんなことを言っていたのです、「ラブライブ!優勝なんてできない・・・」「姉さまと・・・、Saint Snowと・・・、同じ・・・、輝き・・・、同じもの・・・、が・・・、できないじゃない・・・」「Aqoursみたいに・・・、ラブライブ!優勝だなんて・・・、ほかのグループに勝つための・・・、ユニット作りなんて・・・、できないじゃない・・・」って!!」

このyoppiの言葉を聞いた瞬間、あつこ、あることに気づいた。

(あっ、理亜さん、なんか、「ラブライブ!優勝ができないこと」、それを気にしているのかもしれない・・・、いや、理亜さんにとって今まで(理亜が東京に行くまで)の練習のままだと「ラブライブ!優勝なんてできないこと、もっときつい練習をしないとラブライブ!優勝だなんて無理!!」と思っているのかもしれない、いや、そうしないといけない、そんな思いによって自分を追い込んでいるのかもしれない、理亜さんは・・・)

まるで自分を追い込んでいるかのようにみえてしまった理亜、そのことをあつこが考えるとあつこが経験したある出来事があつこの脳裏を駆け巡ってしまう。

「もっと練習しないと・・・、もっと練習しないと・・・、前みたいな優秀な成績を残せない・・・、誰にも・・・勝つことが・・・できない・・・、みんなの期待を果たすことができない・・・」

自分の思いとは裏腹に自分の体はいうことをきかない、そんな状態でも無理してまで無謀な練習を続ける自分・・・、そのあとに起きた最悪の結末を・・・、それをあつこは思いだしてしまった。

 そんないやな思い出を思いだしたあつこ、

(このままじゃいけない!!このままだと理亜さんが・・・理亜さんが・・・壊れてしまう!!なんとかしないと・・・、聖良さんに早くこのことを伝えないと・・・)

と、理亜のことを心配したのか、すぐに自分のスマホを取り出してはどこかに電話をする。すると、あつこのスマホから、

「はい、鹿角聖良ですが・・・」

と、あつこの1番の親友であり理亜の姉である聖良の声が聞こえてきた。そして、電話に出た聖良に対しあ、あつこ、焦りながら聖良にあることを伝えた。

「聖良さん、実はですね・・・」

 

 翌日・・・、

「ごめんなさい・・・、yoppi、まあたん、まみは私たちのユニットから抜けることになりました・・・」

そう、理亜は悲しそうにあつことしのっちに対しあることを伝えた。ここは学校の玄関。スクールアイドルの練習をしに集まった2人に対し理亜は悲しそうにyoppiたち3人が理亜のユニットから抜けたことを伝えたのだ。これには、あつこ、

(やっぱり3人が抜けたことが相当ショックだったみたいですね、理亜さん・・・)

と理亜のことを心配していた。

 だが、3人がやめたことを伝え終わると、理亜、

「でもね・・・」

と前置きを言いつつ真剣な顔になるととんでもないことを言いだしてきた。

「さてと、やる気のない3人が抜けたことで私たちの結束は固まりました。これならラブライブ!優勝を目指してきつい練習をしてもついてきてくれるはず!!さぁ、万々鍛えるから覚悟していて!!」

この理亜の言葉に、あつこ、

(って、え~、理亜さん、さらっと大変なことを言ってしまいました・・・)

と唖然となってしまう。あのきつい練習のせいでyoppiたち3人は理亜のユニットから抜けたにも関わらずその練習を続けると宣言までしまったのだ。これには、あつこ、

(うぅ、こりゃこのままじゃyoppiたちだけでなくしのっちまでユニットをやめてしまうよ。いや、それ以前に、私の体、壊れてしまうよ・・・)

と、しのっちどころか自分の体の心配名でする始末。むろん、あつこだけでなくしのっちも、

「・・・」

と無言になってしまった。

 そんなわけで、理亜、ただ茫然となるあつことしのっちに対し、

「さぁ、今日も函館山で短距離ダッシュ、する!!行くよ!1」

と、今日も2人を函館山へと無理やり行かせようとしていた。

 と、そんなとだった。突然、遠くの方から、

「理亜、探しましたよ!!」

という少女の声が聞こえてきた。これには、理亜、

「あっ、姉さま!!」

と声がする方を振り向くと、なんと、聖良が遠くにいた!!

 そんな聖良、すぐに理亜のもとに駆け寄るとすぐに、

「理亜・・・」

と理亜の名を呼ぶ。これには、理亜、

「姉さま・・・」

と目をキラキラさせながら言うと続けて、

「でも、姉さま、もう学校は卒業したはずでは?」

と、聖良がここにいることに疑問に思う。そう、聖良は3年生であり、先日、聖女を卒業したばかりだった。なので、学校に聖良がいること自体理亜にとって不思議なことだった。

 だが、そんな理亜に対し、聖良、大事なことを言う。

「理亜、今度、私は東京に卒業旅行に行きます。理亜、その旅行についてきなさい!!」

なんと、聖良、妹である理亜に対し卒業旅行をしに東京に行くのでそのお供をするように言ってきたのだ。これには、理亜、

「でも、姉さま、本当は姉さま1人で行く予定じゃ・・・」

と聖良に尋ねてみる。たしかに最初の計画では聖良たった1人で卒業旅行をする予定だった。りあは新しいユニットでスクールアイドルの練習をしているため、それを邪魔しないために聖良たった1人で卒業旅行をすることになっていた。だが、それが今になって妹の理亜と一緒に行くことにした、というのだ。これには、理亜、つい戸惑いを感じてしまう。

 けれど、聖良はそんな理亜に対し理亜を卒業旅行に連れていく理由を述べた。

「理亜、ここ最近、なにか切羽詰まったような感じがしていました、それはまるでなにかに苦しんでいるかのように。もし、それが続くと理亜はきっと壊れてしまいます。ならば、私と一緒に卒業旅行に行くことで少しでも理亜の気分転換になればと思いまして理亜を卒業旅行に連れていくことにしたのです」

この妹理亜思いの聖良の発言に、理亜、

「姉さま、私のことを心配してくれていたのですね。その気持ち、本当に嬉しいです」

と、姉聖良の言葉に感動を覚えるとすぐに、

「なら、この理亜、その姉さまの気持ち、たしかに受け取りました。私、姉さまと一緒に卒業旅行に行きます!!」

と、それまでの暗い表情から一転、明るい表情になって聖良と一緒に卒業旅行に行くことを聖良に伝えた。そして、理亜は聖良に抱き着くと、

「姉さま・・・」

と聖良成分をたっぷり吸い込んでいた。

 そんな妹理亜に抱き着かれた聖良・・・だったが、聖良、なんと、あつこにお辞儀をするとあつこも聖良に対してお辞儀をした、と、同時に、

(聖良さん、私たちと理亜さんのために動いたんですね。本当にありがとうございます)

と、心の中で聖良にお礼を言った。そう、理亜を卒業旅行に連れていくことを決めたのは聖良とあつこだった。それはyoppiたちが理亜のユニットのSNSのグルから抜けた次の日、つまり、あまりのショックで理亜が学校を休んだ日のことだった。あつこ、yoppiたちが理亜のユニットから抜けた理由を聞いたとき、すぐに聖良に電話をしていたことは覚えているだろうか。そのとき、あつこは聖良に対し、

「聖良さん、実は、理亜さんのユニットの件で大変なことが起きています!!」

と言うと、これまであったことを聖良に話した。あつこと聖良が旧茶屋亭で話した翌日、理亜がさらに過酷な練習を強要したこと、そのときの出来事がきっかけでyoppiたちが抜けたこと、その理由が理亜からのきつい練習の強要やそのときの理亜の言動からによるもの、そして、その理亜がこうなってしまった原因、それは「今までの練習だとラブライブ!優勝なんてできない・・・」などの理亜の思いから自分を追い込もうとしているのではないかと・・・。

 そして、あつこはそれらのことを聞いて、聖良、あることを考えてしまう。

(たしかいあつこの言うことも一理ありますね。東京から戻って以降、理亜はなにかに迫られている、切羽詰まっている、そんな感じがしていました。それに、昨日、理亜は自分のスマホを見てなにかに困っている、苦しんでいる様子でしたし、今日はそれも影響しているのかわかりませんが体調不良で学校を休んで自分の部屋で寝込んでいますしね・・・)

そう、あのLIMEの一件以来、理亜は体調不良を理由に自室で引きこもってしまったのだ。その理由を知らない聖良、このあつこの言葉でその理由を知ることができたのだ・・・、今の段階では・・・。

 そんなことを踏まえ、聖良、あることを考え始める。

(もし、あつこのいうことが正しければ、このままだと絶対に理亜は壊れてしまいます。いや、それ以外に、あつこや理亜のユニットに残っているメンバーにもその影響が出るかもしれません。それならば、そんなに苦しんでいる理亜に対し理亜が最も信頼しているこの私が動く必要がありますね。ならば、ここは理亜の気分転換を兼ねて・・・)

 そして、自分の考えがまとまった聖良、あつこに対してこんなことを提案してきた。

「あつこ、理亜のこと、報告してありがとうございます。なら、ここは私がなんとかしないといけませんね。今のままだとあつこの言う通り、理亜は自分の思いによって絶対に壊れてしまいます。でも、その理由が理亜が自分の思いのせいで自分自身を追い詰めようとしている、苦しんでしまっているからだ、と、私も思います。ならば、ここは理側一番信頼を寄せているこの私、聖良、が動くべきでしょう。今の理亜には気分転換が必要のはず。そのためにも、この私、聖良の卒業旅行、それに理亜を同行させることにしましょう」

この聖良の提案に、あつこ、一瞬、

「でも、聖良さんの卒業旅行、たしか聖良さん1人で行く予定ではありませんか」

と、聖良に指摘してしまう。たしかに聖良の卒業旅行は聖良1人で行くことを前提にしていた。それを、急遽、理亜と一緒に行くことにしたことに少しの戸惑いをあつこはしていた。

 しかし、聖良は戸惑いを感じるあつこに対し、

「あつこ、たしかに、本当なら私1人で卒業旅行に行く予定でした。しかし、今のままでは絶対に理亜が壊れてしまいます。そんな理亜には気分転換が必要です。ならば、この理亜が一番信頼しているこの私が動くのが筋でしょう。この私と一緒に卒業旅行に行けるのであれば、理亜にとっても高校最後の私との思い出が残せると大変喜ぶはずですし、最高の気分転換にもなるはずです」

と言うとあつこもそんな妹理亜思いである聖良の姿に、あつこ、

「聖良さん、すご過ぎです!!」

と、目をキラキラさせながら尊敬のまなざしを聖良に向けていた。

 だが、そんなあつこに対し、聖良、つい本音が出てしまう。

「でも、本当のところ、私も理亜との高校最後の思い出を残したい、そんなことを考えてしまっていたりするのですけどね・・・」

まぁ、聖良のこの提案は、80%、理亜のため、残り20%、自分のため、だったのかもしれない。それでも、聖良にとってみればその提案は苦しんでいる理亜を救うためのものだったのかもしれない・・・。

 

 そんなわけで、急遽、理亜、姉の聖良の卒業旅行に同行することが聖良は決めたのだが、その聖良の提案に妹の理亜が断るはずもなくすんなりと、理亜、同意してしまった・・・、のだが、理亜、十分姉聖良成分を吸収したのか、ほどなくしてから姉の聖良から離れるとつことしのっちに対しある指令を与えた。

「あつこにしのっち、私は姉さまとの卒業旅行に一緒に行きます!!そのあいだ、2人には私が決めた練習メニューをしっかりこなして!!私の考えた練習メニューをこなすことであなたたちは立派なスクールアイドルに近づくことができるはず!!だから、私が旅行に行っているあいだ、しっかりと私の決めた練習メニューをこなして!!」

これには、あつこ、

(え~、せっかくの気分転換のために、理亜さん、聖良さんと一緒に旅行に行くのに、私たちに対しては容赦がないのね・・・。これじゃ、これから先のことが思いやられるよ・・・)

と、理亜からの指令にうんざりしていた。

 

 そして、ほどなくして理亜は姉聖良と一緒に東京へと卒業旅行をしに旅立っていた。その旅立つ全日、あつことしのっちに対し、理亜、

「はいっ、これ、私が旅行に行っているあいだに行う練習メニュー!!ちゃんとこなして!!」

と、理亜考案の練習メニューが渡された。その練習メニューを見て、あつこ、絶句した。

(うわ~、これを全部こなすの・・・)

その練習メニューの中身はあのμ'sの夏休み合宿のときに園田海未が考案した地獄の練習メニューに匹敵するくらいのものだった。なので、あつこ、すぐにこう思ってしまった。

(この練習メニューをこなしていたら確実に私もしのっちも壊れてしまうよ・・・。ならば、そうならないためにも・・・)

そう思った瞬間、あつこ、あることを決めてしまった。

 

 そして、理亜が姉聖良と一緒に東京へと旅立ったそのひ、

「あの~、この練習メニューをこなさないといけないのでしょうか・・・」

としのっちが心配そうに言うとあつこは楽しそうにこう言いだしてしまった。

「そんなの、さぼってしまえばいいんじゃないかな」

このあつこの意見に、しのっち、

「え~、そんなことをしていいのでしょうか・・・」

とびっくりしたような表情をみせて言うとあつこはそんなしのっちに対しこう言った。

「こんな練習メニュー、私たちが実際にやったら絶対に壊れてしまいます。それに、これを指示してきた理亜さんはここにはいません。それなら、私たちも気分転換しに遊びにいったほうがいいんじゃないかな。今まで理亜さんからきつい練習をさせられてきて、それによってyoppiさんたちがやめてしまった、そう考えると、なんかいやな気分になるじゃない。そんなもの、忘れるためにも、私たちも気分転換が必要だよ!!」

これには、しのっち、

「た、たしかにあっちゃん(あつこ)の言う通りですね!!yoppiさんたちがやめて、なんかユニット内が暗い感じになってしまいました。このままだとあっちゃんも私も暗い気分のままになってしまいます。もしかすると、いつかは私たちも壊れてしまうかもしれません。それなら、理亜ちゃんがいないあいだ、私たちも気分転換しましょう!!」

と、あつこの考えに同意してしまった。これには、あつこ、

「しのっち・・・」

と、自分の考えに賛同してくれたしのっちに感動しつつも、

「それなら、今から五稜郭に行こう!!」

と、しのっちに言うとしのっちも、

「はいっ、あっちゃん!!」

と声をあげてくれた。

 こうして、あつことしのっちは五稜郭へと本当に行ってしまった。いや、理亜がいないことをいいことに2人はこの日、太陽が沈むまでいろんなところに行ってはめいいっぱ遊んだ。それは、これまでスクールアイドルの練習のために遊ぶことができなかった、そんなうっぷんを晴らすかのようだった・・・。

 



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SNOW CRYSTAL 序章 第8話

 そんな理亜の決めた地獄の練習メニューをさぼることを決めたあつことしのっち、一方、卒業旅行のために東京に行くことになった聖良と理亜であったが、旅行初日の夜、

「姉さま・・・」

と寝言を言いながら聖良の隣のベッドでぐっすり眠っている理亜、それに対して、聖良はというと・・・、

「もう、理亜ったら・・・」

と、理亜の寝顔を見ながら笑っていた。

 とはいえ、もう夜である・・・というわけで、明日も早い、ってこともあり、聖良、

「さぁ、私も寝ることにしますか」

と、自分のベッドに行っては寝る準備をしていた・・・、そのときだった。突然、聖良のスマホから、

ブルル ブルル

と着信音がなった。これには、聖良、

「あっ、誰からでしょうか?」

と自分のスマホの画面を見る。すると、

「あっ、ダイヤからLIMEですね・・・」

と言ってしまう。そう、なんと、Aqoursのメンバーで3年生、いや、Aqoursのまとめ役だったダイヤから突然の連絡、というか、SNSアプリLIMEを通じて連絡がきたのだ。

 そんなわけで、聖良、SNSアプリLIMEを起動、すると、なんと、画面いっぱいにダイヤのコメントがずらりと並んでいた、こんな風に・・・。

(ダイヤ)「どう、どうしましょう・・・、私のルビィが、ルビィが・・・」

(ダイヤ)「ルビィが、ルビィが、苦しんでいます・・・。私、どうしたらいいのでしょうか・・・」

(ダイヤ)「でも、和足は、私は・・・、ルビィのもとにはおりません・・・」

(ダイヤ)「それでも、私、ルビィを助けたいのです・・・。でも、でも、今は・・・、私は・・・」

これが50件以上・・・。これにはさすがの聖良も、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・のだが、それでも、聖良、

(あのダイヤが我を忘れて困惑しているということは、なにかルビィさん(Aqoursのメンバー(1年生)でありダイヤの妹)になにかがあったに違いありません。ここは同じ妹を持つ私がダイヤの相談に乗るべきかもしれませんね)

と、聖良、同じ言おうとを持つ身としてダイヤの相談に乗ろうとしていた。

 まぁ、そんなわけで、聖良、すぐにコメントを返す。

(聖良)「ダイヤ、なにがあったのですか?」

これには、ダイヤ、すぐに反応。

(ダイヤ)「あっ、聖良さん、こんにちは・・・。うぅ、私の大事なルビィが、ルビィが、大変なことになってしまいました・・・」

いつもは冷静なダイヤがルビィの件で心配になっている・・・、そう思った聖愛らはすぐにコメントを返信する。

(聖良)「ルビィさんの身になにか起きたのでしょうか?」

この聖良の質問に、ダイヤ、すぐに返信する。

(ダイヤ)「ルビィ・・・だけでなく千歌さんたち新生Aqours(千歌・梨子・曜・ヨハネ・花丸・ルビィたちAqours1・2年だけで作った新しいAqours)にいえることなのですが、今日行われた新生Aqours初めてのライブが失敗に終わったのです。私、失敗したライブの動画を見て、私の大事な妹であるルビィがかなり落ち込んでいると心配で心配で・・・)

このダイヤの心配に満ちたコメントを見て、聖良、

(大事な妹であるルビィさんのこととはいえ、あのダイヤがかなり心配していると考えると、そのライブ、ダイヤにとって相当ショッキングなものだったかもしれませんね・・・)

と考えるとダイヤに対しこうコメントを返した。

(聖良)「ダイヤ、そのライブの動画、私にも見せてもらえませんでしょうか?)

すると、ダイヤ、すぐにその動画のURLをLIMEに投稿した。聖良、そのURLをだっぷすると、今日行われた新生Aqours初めてのライブの映像が流れた。実は、この動画、今日、千歌たちが通っていた(廃校となった)浦の星の統合先である静真の講堂にて行われた「静真高校部活動報告会」でこれまたとある理由で浦の星代表として参加した千歌たち浦の星スクールアイドル部新生Aqoursのライブ・・・というか、千歌たち(ダイヤたち3年生3人が抜けた)新生Aqours初めてのライブを映したものだった。あっ、ちなみに、この動画、ある静真の生徒が新生Aqoursのライブということで勝手に撮影して動画サイトにアップしたものであり、決して、(曜のいとこで静真高校生徒会長の)月や(その敵である)木松悪斗とは関係ないのであしからず・・・)

 で、その動画を見て、聖良、こう思ってしまう。

(あっ、ルビィさんが盛大に転んでいますね・・・。こ、これがラブライブ!で優勝したAqoursの今の姿・・・なのでしょうか・・・)

唖然となる聖良。でも、たしかに聖良が唖然となるのも仕方がなかった。ラブライブ!に優勝するくらい実力を有しているAqours・・・なのだが、聖良の目の前で映っていたのは、ラブライブ!優勝時を100にすると、40,いや、30、くらいの実力しか発揮していない新生Aqoursの姿であった。ダンスの動きもいつもよりキレキレ・・・ではなく、本当にガクガク、歌声もよくない、しまいには、なにかの拍子に大きく転倒してしまい、ヨハネ、花丸を道ずれにステージの床に倒れこっむルビィの姿・・・、これにはさすがの聖良もダイヤが心配になるのは仕方がない・・・と思えてしまうものだった。

 そして、聖良、この動画を見ての感想をLIMEに投稿する。

(聖良)「たしかにひどいものですね。でも、ラブライブ!優勝してからそんなに日が立っていないはずなのですが、なんで、こんなに千歌さんたちはパフォーマンスがひどくなったのでしょうか?」

この聖良の投稿に、ダイヤ、すぐに返信。

(ダイヤ)「それはきっと私たち3年生3人がいないからだと思います・・・」

このダイヤの投稿に、聖良、なにを思ってか、すぐに返信する。

(聖良)「えっ、それはどういうことですか?」

すると、ダイヤ、あることを聖良に伝えた。

(ダイヤ)「実は、私、まりさん、果南さんは、今、とある理由でイタリアにいるのです。なので、今、ルビィのそばに私たちはいないのです・・・」

これには、聖良、

(聖良)「えっ、ダイヤ、今、ルビィさんのそばにいないのですか?」

とダイヤに尋ねると、ダイヤ、すぐに返答した。

(ダイヤ、)「はい、なので、今、私がルビィを助けることができない・・・というか、私たちは、今、どうすることもできない、と、思います・・・」

だが、これには、聖良、さらにダイヤに問う。

(聖良)「ダイヤ、どうしてそう思うのですか?」

これにも、ダイヤ、すぐに答えた。

(ダイヤ)「ルビィたち新生Aqoursのライブの失敗の原因・・・、それは、私たち3年生3人が抜けたからだと思うからです」

これには、聖良、すぐに、

(聖良)「ダイヤたちが抜けたことでルビィさんたちはボロボロになったのですか?」

とダイヤに尋ねるとダイヤは少し考えたのか、間をおいてから返答した、ある真実を含めて・・・。

(ダイヤ)「はい・・・。私たちAqoursは学年それぞれに役割がありました。私たちAqoursという船に例えると、千歌さんたち2年は船頭、船長としてAqoursという船の進路を決めていました。また、ルビィたち1年生は新米の船員として私たち3年生や千歌さんたち2年生に必死になってついてきました。一方、私たち3年生はエンジン役として千歌さんたち2年生が決めた進路に船を進ませるとともに、屋台骨として、洲ククールアイドルの先輩として1・2年生を導き、そして、支えてきました。しかし、今、Aqoursという船の3年生というエンジン役、屋台骨がなくなった今、千歌さんたち1・2年生だけとなった(新生)Aqoursは漂流している・・・、闇のなかを漂っている・・・、そんな感じがあのライブから見えてしまったのです・・・」

ダイヤの言葉、それは今のAqoursの現状を如実にあらわしていた。ダイヤたち3年生というエンジン役、屋台骨がいなくなった千歌たち(新生)Aqours、それgは船でいうところの漂流中の船、潮の流れにただ身を任している、もがいてもがいてもどうすることができない、いや、心配・不安という深き海・沼の底に沈んでしまった・・・そういえるのかもしれない。

 そんなダイヤの言葉を知ってか、聖良、すぐにあることをダイヤに尋ねる、それは・・・。

(聖良)「でも、ダイヤ、あなたなら千歌さんたち(新生Aqours)に手を差し伸べることができるのでは?」

そう、たとえ離れ離れになってもSNSなどを通じて日本にいるルビィたちとやり取りができるはずである・・・のだが、これには、ダイヤ、少々困りつつもこう返信した。

(ダイヤ)「聖良さん、すみません。今、とある理由でルビィたちとは連絡がとれないのです」

そう、実はこのとき、ダイヤ、鞠莉、果南の3人はある人のせいでルビィたちと直接連絡をとることができなかったのだ。さらには・・・、

(ダイヤ)「それに、私たちは、今、イタリアにいます。なので、直接、ルビィたちと会うこともルビィたちがここに来ることも難しいのです・・・」

そう、ダイヤたち3年生3人は、今、イタリアにいる。ルビィたちがいる日本・沼津から1万キロ以上も離れている。なので、ルビィたちがおいそれとダイヤたちがいるイタリアに行くこともダイヤたちがルビィたちがいる沼津へと行くこともできないのである。これには、聖良、

(聖良)「あっ、たしかにそれはそうですね・・・」

と、ダイヤの言うことに納得の様子。

 しかし、ダイヤはその件についてさらなる心配をしていた。それは・・・。

(ダイヤ)「それに、このライブの失敗を見て、私、こう思いました、今の千歌さんたちがいなくなったことで「0に戻った、もとに戻った」、知らないうちにそう思い込んでいるのではと・・・」

これには、聖良、

(聖良)「ダイヤ、それは・・・」

と言い返すと、ダイヤ、こんな弱気の発言をしてしまう。

(ダイヤ)「私たちAqoursは夏祭りのときに私たち3年生3人が加入したことで(鞠莉さんの言うところの)パーフェクトナインになりました。9人になったことで、パーフェクト、完璧となりました。けれど、今はそんな私たち3年生3人が抜けてしまい、昔の6人、Aqours結成時の6人に戻ってしまいました。こうなると、千歌さんたち、「昔に戻った、もとに戻った、「0」に戻った」、そう考えてしまったのかもしれません。今、千歌さんたちから漂っている不安・心配はそこから来ているのではないでしょうか?」

このダイヤの弱音に、聖良、たまらず、

(聖良)「ダイヤ、それって単なる考えすぎではねいでしょうか?」

と、ダイヤのことを心配するも、ダイヤ、そんな弱音からか、聖良にあるお願いをしてしまう。

(ダイヤ)「聖良さん、お願いがあります、もし、千歌さんたちから聖良さんに連絡がありましたら千歌さんたちの力になってあげてください。お願いします」

このダイヤの必死のお願い、ということもあってか、聖良、

(あのダイヤがこんなにルビィさんたちのことを心配している・・・。ならば、私もそんなダイヤのためにも助けることにしましょう。ちょうど理亜のこともありますしね・・・)

と、ルビィたちのことで心配しているダイヤ、そして、なにかの原因で暴走している?理亜のために一肌脱ぐことを聖良は決意した。

 そして、すぐに、聖良、

(聖良)「ダイヤ、わかりました。この聖良、なにかあったら動きましょう!!」

とコメントを打つと、ダイヤ、すぐに、

(ダイヤ)「聖良さん、本当にありがとうございます。恩に切ります」

と、お礼のコメントを送るとそこで聖良とダイヤのSNSでのやり取りは終わりを迎えた。

 

 その後、聖良はダイヤとのやり取りを受けてこう考えていた。

(千歌さんたちが大変なことになっています。あのライブを見る限り、千歌さんたちは不安・心配の深い海・沼の底に陥っております。その理由がダイヤの言う通りダイヤたち3年生3人がいないためであるならそれはとても危ういものかもしれません。不安・心配という深き海・沼の底に陥ってしまいそこでもがき苦しんでいるとそこから簡単に抜け出すことなんてできなくなりますからね)

たしかにその通りであった。人というのは不安・心配という海・沼に陥ってしまうとそこから抜け出そうともがき苦しむ。しかし、そこから抜け出すことは容易ではない。いくらもがいてもまるで蟻地獄のようにどんどん深みにはまってしまうものなのである。もしこうなってしまうとまっているのは絶望である。絶望をむかえた人がとる行動、それは言葉では言えないものになってしまう。そうならないためにもその人たちに対して十分なサポートをするのが必要である、が、不十分なサポートであるとその人たちはさらに不安・心配という深みにはまってしまう、そのことに気づいていた聖良は、

(そして、ダイヤからそんな千歌さんたちに対してサポートをしてほしいと私に頼んでいましたが、果たしてそれによって千歌さんたちを不安・心配という深い海・沼の底から救い出すことができるのでしょうか。私にはそんな力があるのでしょうか。むしろ悪化するのでは・・・)

と、つい考えてしまった。ダイヤにお願いされたこととはいえ、理恵のことで精一杯な自分が千歌たちのことまで十分にサポートできるのか、むしろ、逆に悪化するのではないか、と逆に心配になっていたのである、聖良は。

 とはいえ、今のところ、そんな千歌たちから連絡はきていない。そんなこともあり、聖良、

(とはいえ、今のところは様子見ですね。もし、千歌さんたちから連絡があれば動くことにしましょう)

と、今のところは様子見・・・というわけで、ちょっと千歌たちと理亜のことは考えつつも寝ることにした。

 

 だが、そんな聖良にある連絡が入る。それは理亜と一緒に浅草に観光しに来ていたときのことだった。

「姉さま、この人形焼き、とてもおいしいです!!」

久しぶりに姉との2人だけの時間・・・ということもあり、今さっき仲見世で買った人形焼きを食べては笑いながら姉の聖良に語りかける理亜、それに対し聖良は、

「本当に理亜の言う通りですね」

と、こちらも2人水入らずの時間を楽しんでいた。

 そんなときだった。突然、聖良のスマホから、

You Gut Mail!

という音が聞こえてきた。どうやら、聖良のところにある人からのメールが届いたみたいだった。そのことに気づいた聖良、

「あれっ、誰からでしょうか?」

と仲見世の陰に入っては自分のスマホを取り出しその画面を見てみる。すると・・・、

「あっ、これは・・・千歌さんからですね!!」

そう、聖良に届いたメールは千歌からのものだった。これには、聖良、

(これはもしかすると千歌さんたちからのSOSではないでしょうか。昨日の夜、ダイヤが言っていた通り、不安・心配という深き海・沼に陥った千歌さんたち、そこから抜け出したいために私にSOSを送ってきたのでしょうね)

と考えていた。ダイヤたち3年生3人がいないという喪失感のためか、不安・心配という深き海・沼に陥った千歌たち新生赤生、だが、助けを求めようにもダイヤたち3年生3人はもう千歌たちのもとにはもういない、なら、お互いに力を認め合った仲、ということもあり、ちょうど東京に来ていた聖良、理亜のSaint Snowに助けを求めてきた・・・、そう聖良は思っていた。

 と、同時に、聖良、こんなことまで考えていた。

(千歌さんたちからすると私たちが東京に卒業旅行に来ていることを事前に伝えていたのでそれならついでに沼津に来てほしい、と短絡的に考えたのかもしれませんね)

そう、聖良、千歌には事前に東京に卒業旅行のために行くことを事前に伝えていたのだ。なので、千歌、「それならば聖良たちを直接沼津に呼び寄せてしまえばいいじゃない、そして、直接見てもらえれば」と短絡的に考えていたのかもしれない。だって、自分たちのパフォーマンスを直接見てもらえれば確実なアドバイスをしてもらえるはずだから。このネットが発達した現在、ネットを介してそこにいなくてもスマホやタブレット、ビデオカメラからの映像を見ることでいろんなアドバイスをもらうことができる。しかし、そんな間接的なものよりも直接的に実際に見たほうが的確なアドバイスをもらうことができるものである、なぜなら、直接見ることでその場でしか感じることができないものを感じることができるものであるから。映像で見るより直接見るほうがよかったりするものである。聖良はそのことをすでに知っていたのかもしれない、多分・・・。

 そんなわけで、聖良、理亜に突然ある提案をする。

「理亜、突然ですが、沼津に行きませんか?」

これには、理亜、突然の聖良の発言だったためか、

「ね、姉さま、突然どうしたのですか?」

と困惑そうに聖良に言うと、聖良、

「理亜、先ほど、千歌さんたちから東京に来ているのなら沼津に来てみませんか、というメールが届きました。私としてもラブライブ!で優勝したAqoursの実力を直接見てみたいと思います。理亜としても久しぶりにルビィさんと会うことができると思います。理亜、どうでしょうか?」

と、理亜に沼津に行くか尋ねると、理亜、元気よく、

「私、行きたい!!沼津に行きたい!!」

と、答えた。

 こうして、急遽、聖良と理亜は沼津へと行くことになったのである。

 

 そして、聖良と理亜は沼津駅に到着すると待ち合わせ場所である内浦の砂浜海岸までバスで行くことに。さらに、2人はバスで内浦に到着すると待ち合わせ場所まで少し歩くこととなった。その途中、聖良は帽子を深くかぶった男の身なりをしていた人を見つける。それに、聖良、

(あれっ、誰かいますね?)

とその人の存在に気付くとその人を少し観察してしまう。すると、

(なんか、あの人、帽子を深くかぶりながら練習をしている千歌さんたちのこと、じっと見ているみたいですね)

と、聖良、その人が砂浜で練習をしている千歌たちのことを見ていることに気付く。そのためか、聖良、

(なんか気になりますね)

とその人のことがちょっと気になってしまった。

 まぁ、そんなわけでして、聖良、わざとそのひとのそばを通ると聖良の狙い通りその人は自分の近くを通った聖良たちに対し、

「あっ、こんにちは」

と聖良たちに挨拶をすると聖良も、

「こんにちは」

と挨拶をした・・・のあdが、ここで、聖良、その人についてあることに気付く。

(あれっ、この人、男の身なりをしていましたが、声は少女のような声をしていましたね。なんか、私、この人に、興味、もってしまいました)

そう、その人は男の身なりをしているのだがその人が発した声はまるで少女のものだった。これには、聖良、その人に興味をもったのか、すぐに、

「あれっ、男の姿をしているのに、声は女の子、みたいですね。私、びっくりしました!!」

と、ちょっと皮肉?みたいなことを言うとその人も、

「あっ、たしかに。僕、そんな格好、していますからね」

と、ちょっと戸惑いを感じつつもそう答えた。

 だが、その人のこの言葉に、聖良、さらに興味が湧いてしまう。

(うわぁ、少女の声かと思えば一人称は僕とは。これが俗に言う「僕っ子」なんですね。私、この人にとても興味を持ってしまいました)(聖良)

 なので、つい、聖良、その人に対して笑いながらこう話してしまう。

「僕、だなんて、私、あなたのこと、少し興味を持つことができる、そんな感じがします。男の姿をしているけど、本当は女の子、それできて、僕っ子。私にとってこれmで会ったことがない子、ですね。もしかすると、近いうちになにか関わることがあるかもしれませんね」

この聖良の少しいたずらめいた言葉に、その人、困惑しながら、

「そ、そうですね・・・」

と、返答してしまった。

 だが、そのとき、聖良の隣にいた理亜がしびれを切らしたのか、

「姉さま、もうすぐ約束の時間です。さっさと行きましょう」

と、聖良に早く待ち合わせ場所に行くよう催促してきた。これには、聖良、

(あっ、たしかに理亜の言う通りですね。ちょっと時間を費やしてしまいました)

と、少し反省しつつ、理亜に対し、

「わかったわ、理亜」

とうなずくとその人に対しては、

「じゃ、また今度、お会いいたしましょう」

と言ってはさよならをした。これにはその人も、

「あっ、さようなら」

とさよならを聖良たちにした。

 その後、聖良はあることを考えていた。それは途中に出会った「僕っ子」のことだった。それは・・・。

(あの「僕っ子」、私の見る限りでは、昔、イタリアに住んでいたような気がしています)(聖良)

そう、その「僕っ子」、イタリアに昔住んでいて、そのことを聖良は気づいていたのだ。なぜなら・・・、

(あの「僕っ子」、「r」の発音のとき、舌を巻いて発音していましたから)(聖良)

そう、その「僕っ子」、知らないうちに「r」の発音のときに舌を巻いていたのだ。イタリア語なまりの強い人は「/r/」の発音のとき、イタリア語特有の巻き舌をしてしまうことがある。それをあの「僕っ子」がしていたのである。なので、聖良はその「僕っ子」が昔イタリアに住んでいたことを見抜いていたのである。

 ではなぜ聖良がそのことを知っているのか。それは身近なところにイタリアに住んでいたことがある親友がいたから。その親友とは・・・もちろん鞠莉のことである。鞠莉の家の先祖はイタリア系の家系なので、昔、鞠莉はイタリアに住んでいことことがあるし、一時期、浦の星を離れていたのだが、そのときはイタリアの高校に留学していたのである。なので、鞠莉がしゃべっているときにイタリア語特有の発音になることがときどきみられていた。なので、聖良は鞠莉を通じてイタリア人特有の発音のことを知っていたのである。

 そんなわけで、聖良、ついこんなことを考えてしまった。

(これはAqours復活に役に立つかもしれませんね、イタリアにいるダイヤたちに会うための通訳兼ガイドとして・・・)

まぁ、実際のところ、聖良の思惑通りになるのですがね・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第9話

 と、思いつつもついに待ち合わせ場所に到着してしまった聖良、待ち合わせ場所に到着するなり、すぐに、

「お久しぶりです!!」

と千歌たちに挨拶すると、ルビィ、花丸から、

「理亜ちゃん!!」(ルビィ)

「Saint Snowさんずら!!」(花丸)

と聖良たちが来たことに驚いてしまう。

 とはいえ、ルビィと花丸が驚くのも無理ではなかった。千歌以外には聖良と理亜がここに来ることを伝えていなかったから、というか、千歌もそのことをほかの梨子、曜、ヨハネ、花丸、ルビィに伝えていなかったようだ。

 まぁ、そんなわけで、千歌がことの推移(東京に聖良たちが来ているため、それだったらちょっと練習をみてもらいたいと思って沼津に聖良たちを呼んだ)を梨子たち5人に伝えると、理亜、

「まったく、せっかく姉さまとの東京旅行中だったのに・・・」

と嫌味を言うと、聖良、

(まぁ、理亜、正直じゃないんだから・・・)

と思ったのか、千歌たちに補足というか、

「平気です。理亜もすごく行きたがっていましたから」

と、ついいたずらとばかりに理亜の本音を暴露してしまった。これには、理亜、

「姉さま!!」

と、こちらも聖良に反抗しそうになっていた。

 だが、聖良と理亜がここに来た理由はただ遊びにきただけではない。不安・心配という深き海に陥った千歌たちの練習を見てはアドバイスをする、ことだった。なので、新生Aqoursのメーンバーである梨子が、

「じゃ、さっそくですけど、(練習を)みてもらいますか?」

と聖良たちにお願いすると聖良も、

「はいっ!!」

と力強く返事をしていた・・・のだが、一方、理亜はただ、

「・・・」

と無言になってしまった。これにはさすがの(理亜の一番の親友である)ルビィも心配するほどだった。

 

 さっそく練習・・・というか、パフォーマンスを直接みることとなった聖良と理亜、まずは千歌たち新生Aqoursメンバー6人がそれぞれのポジションにつく。このとき、聖良はあることに気付く。

(千歌さんたち、あの曲を選んできましたか・・・。「夢で夜空を照らしたい」・・・)(聖良)

「夢で夜空を照らしたい」・・・、6人となった新生Aqoursにとって今のところ、唯一、人前で披露できる曲、そして・・・、

(あの曲、「夢で夜空を照らしたい」・・・、千歌さんたちAqoursにとって初めて全国にAqoursの名をとどろかせた曲、そして、ラブライブ!夏季大会前に東京で行われたスクールアイドルのイベントで初めて私たちSaint Snowに会いそこで披露してくれた曲・・・)(聖良)

そう、この曲のPVにより千歌たちAqoursの名は全国規模に広がり、それによって東京のスクールアイドルのイベントにAqoursは呼ばれることとなったのである。そこで千歌たちは聖良と理亜のSaint Snowと初めての邂逅を果たしたのである。さらには・・・、

(そして、千歌さんたちに「0」という過酷ともいえる現実を突きつけてしまった曲・・・)(聖良)

そう、そのイベントで観客たちから出場した各スクールアイドルのステージでの出来について投票を取ったのだが、この投票結果は千歌たちに残酷ともとれる現実、最下位・・・どころか誰も投票してくれなかった、「0」という厳しい現実を突きつけた曲でもあった。これには、聖良、

「そして、今、その教区を再び私たちSaint Snowの前で披露しようとしている。これは、もしかして、今、(ダイヤの言う通り、)千歌さんたち新生Aqours、その今の状況を表そうとしているのかもしれませんね・・・)

と、まるでこれは運命なのでは、とも思えるくらい千歌たちのことを心配してしまった。

 いや、それどころか、聖良、つい弱気になったのか、東京に卒業旅行に行く前まで自分のユニットに関して過酷とも練習をしようとしていた、いや、してしまった、そんな理亜の方を見ては、

(そして、それは、今の理亜にも当てはまろうとしているのかもしれませんね・・・)

と、理亜のことも心配になってしまった・・・のだが、聖良、すぐに気を取り戻しては、

(ってことはないですね。だって、今、ダイヤたち3年生がいないいない千歌さんたちとは違い、理亜には私がいますから・・・)

と、理亜には自分がそばにいる、なので、困ったときはすぐに自分に頼ることができる、だから理亜のことは大丈夫だろう、とたかをくくってしまった。

 とはいえ、今の千歌たちのパフォーマンスを見てアドバイスをすることが先決、ということで、聖良、

(あぁ、今はいろんなことを考えてもしょうがないです。今、千歌さんたち新生Aqoursのパフォーマンスを見ることを優先しましょう。そして、今、私が持っている、今の千歌さんたちに対する考え、ダイヤが心配していたこと、それを確かめてみましょう)

と、今やるべきことを考えることとし、さらには、

(そして、今、遠くから私たちを見ている、(きっと間違いなく)千歌さんたち新生Aqoursのことを心配しているあの「僕っ子」、いや、あの少女に、今、千歌さんたちが陥っている状況、それと、その原因を知ってもらいましょう)

と、遠くから自分たちや千歌たちを見守っている「僕っ子」のことも気に留めうとちらっと「僕っ子」のほうを見てはその「僕っ子」もそれに気づいたのかはっとしていた。

(「じゃ、聖良さん、理亜ちゃん、始めます!!」

この千歌の言葉に呼応したのか、聖良、すぐに千歌たちの方を向いては、すぐさま、

「それじゃ、今のAqoursの、今もてる最大限の力でもって、私たちSaint Snowに最高のパフォーマンスをみせてください!!」

と、遠くにいる「僕っ子」にも聞こえるくらいの大声で言うと千歌たちはパフォーマンスを始めた。

 

 ・・・のだが、始まって早々、

(あぁ、なんか昨日より悪いパフォーマンスになっていますね・・・)

と、聖良が呆れるくらい千歌たちのパフォーマンスはひどいものだった。いや、昨日のものより悪化していた。昨日の静真でのライブパフォーマンスは聖良からダイヤの送ってくれた動画サイトのURLを通じてすでに見ていた。そのときはルビィが、ヨハネ、花丸を道連れに大々的に転倒していた。で、今日は大々的に転倒することはなかった・・・のだが、昨日のライブでの失敗のせいか、昨日以上にぎこちない、まるで初心者・・・、いや、それ以下かもしれない、そんなパフォーマンスをしていた。いや、そのパフォーマンスを見て、聖良、千歌たちのことをこう見えてしまった。

(なんか、千歌さん隊が今しているパフォーマンス、まるで、不安・心配を前面に押し出したような、「私たちは不安・心配という深き海・沼の底に沈んでいます」、そんなことを言いだそうな感じがします)

そう、今の千歌たちのパフォーマンスはまるで、不安・心配という深き海・沼に陥っていっている、今の千歌たちの状況を物語っている、そんな感じがしていた。

 そんなわけで、聖良、まだ千歌たちのパフォーマンス中にも関わらず、まとめに入ろうとしていた。聖良、

(今、千歌さんたちのパフォーマンスを見てわかりました。まさか、ダイヤが心配していたことがずばり当たってしまうだなんて、意外でした・・・)

と、ダイヤが昨日の夜、LIMEで聖良に伝えた通り、ダイヤが心配していたことがずばり当たってしまった、そのことに驚きつつも、今、千歌たちの身に起きていることに自分の言葉ではっきり言った。

(とはいえ、昨日のパフォーマンスを含めてこう断言できます。やっぱりですね、今の千歌さんたちはなにか焦りを・・・、いや、なにかに対する不安・心配、それを醸し出しています・・・、いや、振りまいている、そんな気がします・・・、それは・・・)

 そして、聖良は、(ダイヤから指摘されたこととはいえ、今の千歌たちのパフォーマンスを見て、)今、千歌たち新生Aqoursがこんな状況に陥った原因に気付く。

(今の千歌さんたち、新生Aqours・・・から醸し出している不安と心配・・・、それは・・・、9人じゃないから・・・)(聖良)

そう、千歌たち新生Aqoursのパフォーマンスが悪くなったのは、不安・心配という深き海・沼に陥っているから。その原因、それは、9人、パーフェクトナインじゃないから。聖良曰く、

(これまで9人でやってきたこと、その9人だからこそできたこと、それに対する自信、9人の想い、9人のキズナ、それらが今までのAqoursにあったから、だからこそ、ラブライブ!で優勝できるくらいの実力をもつことができた)

とのこと、そう、これまでAqoursは9人で活動してきた。9人が学年ごとにそれぞれの役割を果たし、9人でしかできないことを9人の想い、キズナでもってやってきたのである。それによりラブライブ!で優勝をは出すことができたのである。が、今は9人のうち、ダイヤたち3年生3人がいない、そのためか、

((ダイヤたち3年生3人がいない、)それにより、これまでのAqoursにあった、自信、キズナ、そのすべてがなくなってしまった、欠けてしまった、と千歌さんたちが思っているのでしょう。もちろん、9人だからできたことなんて今の千歌さんたち新生Aqours6人ではできない、そう千歌さんたちは知らないうちにそう考えてしまったのかもしれませんね)(聖良)

そう、千歌たちは知らないうちにこれまであった自信、キズナ、いや、その想いすら全て失った、そう思い込んでいるのかもしれなかったのだ。これまでAqoursは9人の想い、キズナ、自信でもって頑張ってきた。それは、ラブライブ!優勝、を果たすくらいのものとなった。だが、それらは、ダイヤたち3年生3人がいない、その喪失感により、それらは、もろくも崩れ去ってしまった。今の千歌たち新生Aqoursのなかにあるのは、これまでの9人の想い、思い出、キズナ、自信、ではなく、それらを失ったことによる不安・心配という深き海・沼の底に沈み込んでしまった、そんな気持ちであった。

 そんあことを考えた聖良は1つの結論を出す。

((Aqoursみたいな)完璧なものほど1つの歯車が欠ければすぐに崩壊する。これまでのAqours9人がいて初めて完璧、だったかもしれませんね。が、ダイヤたち3年生という歯車が欠けてしまったことにより、これまでの完璧さを失ってしまい千歌さんたちの心のなかにあったAqoursという想い、キズナ、自信はもろくも崩壊してしまった。今千歌さんたちに残っているのはその完璧さから程遠い、3年生がいないから生じてしている不安・心配、それだけかもしれませんね・・・)(聖良)

そう、今の千歌たち新生Aqoursは昔みたいな9人のキズナ、想い、自信から来る完璧さとは程遠い、ただ、不安・心配とだけが残ったただのスクールアイドルになってしまった、そう聖良は結論付けたのである。

 と、同時に、

(でも、まさか、ダイヤがそれを前もって見抜くなんて、ダイヤ、よくあの子たち(千歌たち)のことを見ていますね・・・)

と、ダイヤの千里眼には舌を巻いていた。

 とはいえ、聖良、ここである疑問が生じる。それは・・・。

(でも、果たして、今のAqours、千歌さんたち新生Aqoursって本当に3年生という歯車を失ったのでしょうか。ただ、失っている、欠けている、だから、もとに戻った、私たちSaint Snowと初めて会ったときに戻った、「0」に戻った、と、思い込んでいるだけではないでしょうか。ただの幻想・・・、じゃないでしょうか・・・。理亜の心のなかには私という歯車がちゃんとあります。と、同時に、ダイヤたち3年生3人という存在がいない、ただ、それだけで、千歌さんたちは3年生という歯車を失った、そう思い込んでいるのではないでしょうか)(聖良)

今の千歌たちはダイヤたち3年生3人がいない、ただそれだけで3年生という歯車を失った、3年生がいないkという喪失感により、不安・心配という深き海・沼の底に陥ってしまったのではないか、聖良はそう疑問に思ってしまったのだ。3年生がいない、ただそれだけでここまで落ち込みが激しいものになったのではないか、それが聖良にとって不思議に思えたのかもしれない。

 そんな疑問に対し、聖良、ある仮説を立てる。

(もし、本当にその幻想が千歌さんたちのなかにあるのなら・・・、もう一度、ダイヤたち3年生3人に会えば・・・もとに戻る・・・かもしれませんね。もう1度ダイヤタイt3年生3人に会えば千歌さんたちが抱えている、不安・心配、3年生3人がいない、その喪失感・・・、それに対する確認・・・、それが・・・できるかも・・・知れませんね・・・。いや・・・、それ以上に・・・、今の自分たちにおける・・・ダイヤたち3年生3人の・・・立ち位置・・・、3人の存在感・・・、3人の想い・・・、キズナ・・・、それを・・・再確認・・・できるかも・・・しれませんね・・・)

 そして、しらは千歌たちを立ち直らせるべくある決断をする。

(なら、この私が・・・ダイヤたちに・・・連絡を・・・とって・・・、これから先・・・どうするか・・・千歌さんたちを・・・3人にどう会わせるか・・・その段取りを・・・しないと・・・いけませんね・・・)

そう、なにかのかたちで千歌たち1・2年とダイヤたち3年生3人を会わせて、今、千歌たちが持っている3年生3人の存在意義などを再確認させることで千歌たちを復活させようと聖良は考えるようになったのだ。

 と、ここで理亜が聖良に対しこんなことを言いだしてきた。

「姉さま、もうすぐ、曲、終わりますよ!!」

そう、曲がもうすぐ終わろうとしていたのである。これには、聖良、

(あっ、たしかに、もうすぐ曲が終わりますね。私としたことがついうっかり考え込んでしましました)

と、曲が終わろとしているにも関わらずつい考え込んでしまったことに反省しつつ、

(とはいえ、あとはダイヤたちに連絡をしないといけませんね)

と、あとでダイヤたちに今日のことを連絡と相談をすることを心のなかで決めていた。

 だが、このとき、ふと、理亜の顔を見る聖良、すると、

(理亜・・・、なんか・・・、とても辛い表情・・・になっていますね。まるでなにかに苦しんでいる、そんな感じがします・・・)

と、理亜がなにかに苦しんでいる表情をみせていたためか理亜のことが心配になってしまうも、すぐに、理亜のことを信頼しきっているのか、すぐに、

(でも、うちの理亜に限って、今の千歌さんたち新生Aqoursと同じこと、起きていない・・・はず・・・、ですよね・・・?だって、理亜には、この私、聖良がついていますから、なにかあったら私に相談してくれるはずですから)

と、理亜が千歌たち新生Aqoursと同じ状況に陥っている、そんなことなんて起きていない、そう理亜のことを信じていた。

 が、このとき、理亜のなかでは千歌たちと同じ状況に陥っている、いや、それ以上のことが起きている・・・のかもしれなかった。そして、このときの聖良の判断がのちに、理亜、そして、あつこやしのっちたちにさらなる不幸をもたらすことになるとはこのときの聖良には知る由もなかった・・・。

 

 そして、曲が終わると同時に千歌たちのパフォーマンスも終わった。すると、聖良、

(今、ここで、私が、千歌さんたちにできること、それは、千歌さんたちに現実というものを伝えること、そのあとのことはダイヤたちと相談することんいしましょう)

と考えるとすぐに、

「なるほど・・・」

という声をあげては立ち上がり、千歌たち6人の前に進むと、

「はっきりと言いますよ!!」

と、わざと・・・特にいる「僕っ子」にも聞こえるような大声をあげて、千歌たちに、「僕っ子」に、今ある現実を突きつけた。

「そうですねぇ、ラブライブ!(冬季大会決勝)のときのパフォーマンスを100にすると、今のみなさん(のパフォーマンスは)は、30,いや、20くらいと言っていいと思います!!」

これには、千歌さんたち、唖然となる。さらに、ヨハネ、ルビィからは唖然ともとれる発言が出てしまう。

 だが、聖良、そんな千歌たちに対し、

(でも、今から言うことはこれから千歌さんたちが必ず乗り越えなくてはならない現実

だと思います。いや、ダイヤたちももそうあってほしい、必ず乗り越えてほしい、そんな現実かもしれません。その現実を突きつけるのは私としても嫌なのですが、千歌さんたちならその現実を乗り越えてくれると信じております。なので、言います!!)

と、なにかに覚悟を決めた、そんな思いをもったのか、心を鬼にして、千歌たちに、遠くにいる「僕っ子」に対し、千歌たちが不調である、いや、不安・心配という深い海・沼の底に沈んでしまった、その理由、現実を、千歌たちに突きつけた。

「それだけ(ダイヤたち)3年生3人の存在は大きかった!!」「それがなくなって不安で心が乱れている気がします!!」

この聖良の言葉は千歌たちに辛い現実を突きつけた。自分たちが不安・心配という深い海・沼の底に沈んだ原因、それは、3年生が、穂t脳のAqoursが持つ明るさと元気さ、その大事な部分を持つ3年生が、いないこと、これまでAqoursという船のエンジン役として、屋台骨として支えてくれた3年生がいないこと、それによる喪失感により、千歌たち6人は不安・心配という深き海・沼の底に沈んでしまった、そのことを、自分たちのライバルであるSaint Snowの聖良に言われたこと、いや、聖良からの残酷ともとれる言葉、それにより、千歌たち6人は唖然・・・、いや、心がなにかによってえぐられてしまい苦しんでいる、そんな表情になっていた。

 そして、この時の聖良の表情には一種の諦め・・・、いや、残酷な現実を千歌たち6人に突きつけたことに、聖良、

(千歌さんたち、ごめんなさい。残酷ともとれる現実を突きつけてしまいました)

と、千歌たちに対して心のなかで謝罪しながらも、

(けれど、きっと、千歌さんたちなら自分の手で立ち上がることができると思います。そのための段取りは、私たち、私とダイヤたちのあいだでなんとかしたいと思っております)

と、千歌たちが再び立ち上がることができる、そんな思いをもっていた。

 だが、このとき、なにかによっと不機嫌になっていた理亜から思いもよらない、いや、聖良によって厳しい現実を突きつけられたために自信喪失気味の千歌たちにとってダメ出しともとれる発言が飛び出す。

「なんかふわふわして定まっていない感じ・・・」

その言葉とともに理亜は不安・心配という深い海の・沼の底に陥った千歌たちのことを見限った、そんな感じでぷいっと顔を横に向けてしまった。

 だが、その理亜の言葉にヨハネが拗ねてしまいそこに座り込むくらい、ただでさえ残酷な聖良の言葉、いや、自分たちに突きつけられた残酷ともとれる現実によって失いかけていた自信を完全に失ってしまうくらいの大ダメージを千歌たちに与えてしまった。そんためか、梨子、

「見事に言い当てられたみたいだね・・・」

と、聖良と理亜の言葉に納得せざるをえない発言をしてしまう。いや、千歌たちにとってダイヤたち3年生がいない、それによる喪失感が今の自分たちが不安・心配という深き海・沼の底に陥った原因、いや、それが今の自分たちの現実である、しかし、その現実を打破したいものの、頼りになる3年生が率先して戻ってくることなんてない、なので、自分たちだけでなんとかしないといけない・・・ものの、「0」、いや、それ以下に戻ってしまった、そう思っている自分たちにとってこの現実を打破することなんて不可能・・・、そんな袋小路に千歌たちは入ってしまった。

 だが、それでも、藁にもすがる思いなのか、姉ダイヤに頼りたい、そんな気持ちからか、ルビィ、

(お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!)

と、自分の姉であるダイヤのことを心の中で呼び続けるも、姉ダイヤは、今、イタリアにいるのでここに来るわけでもなく、それにより、

(お姉ちゃんが来ない・・・。どうしたら・・・、どうしたら・・・)

と諦めの極致に達してしまい、しまいには、

「でも、どうしたら・・・」

という、これまでだったらいつでも頼ることができた姉ダイヤがここにはいない、自分たちでなんとかしないといけないけれど、現状、どうすることもできない、どうすればいいかわからない、そんな気持ちが言葉になって出てきてしまった。

 だが、このルビィの悲痛ともとれる発言により1人の少女のある苦しみともとれるある思いを爆発させてしまった。ルビィの言葉の後、突然、その少女はルビィに向かって怒鳴るように叫んだ。

「そんなの、人に聞いたってわかるわけ、ないじゃない!!」

その苦しみととれる叫びを発したのは・・・理亜だった。理亜、続けて、自分の本心、いや、その苦しみをルビィに向かって爆発させた。

「全部、自分でやらなきゃ!!」「姉さまたちはもういないの!!」

それはまるで理亜の苦しみともとれる叫びのことだった。それは、理亜の、今でも姉であるダイヤに頼ろうとしているルビィ、それに対する、幻滅してしまった、今の気持ちを妙実に表していた。

 そして、理亜はその言葉のあと、ルビィのもとから逃げるように走りさってしまった。これには、ルビィ、

(理亜ちゃん、どうしたの・・・)

と困惑してしまった。とはいえ、理亜のことをほっとけず、ルビィ、走り去った理亜を追いかけることにした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第10話

こうして、今、自分が抱えている苦しみをルビィにぶつけるかの如く言い放っては逃げるように走り去ってしまった理亜とそんな理亜のことが心配で理亜を追いかけているルビィ・・・がいなくなったあと、千歌はどうして理亜がこんなことをしでかしたのか知りたくて、聖良に対置、

「聖良さん、教えて!!理亜ちゃんになにかあったの?」

と、聖良に尋ねると、聖良、これまで理亜の身に起きたことを簡単に話した。Saint Snowを終わりにしたあと、理亜は学校の有志(あつことを含む)と新しいユニットを結成したこと、最初のころは楽しく一生懸命あユニットのメンバーとともに頑張っていたこと、それがラブライブ!決勝でAqoursを応援しに東京に行ったその日以降、理亜は人が変わっってしまった、これまで楽しく練習していたのが、一転、まるで地獄の練習をユニットメンバーに対して課するようになったこと、それにより一部のユニットメンバーが理亜のユニットから抜けたこと、その言葉を聖良が発するごとに聖良はこんな思いになってしまった。

(理亜・・・、どうしてそんな態度を一番の親友であるルビィさんにとるのですか?なんか、昔の・・・、私以外の人とは離さない、自分の心を閉ざしてしまった、誰に対しても冷たい、そんな昔の理亜に戻った感じがします・・・)

そう、このとき、あの聖良すら困惑していたのである、今までの理亜、いや、あのクリスマスライブを経て誰に対しても心を開くようになった、そんな理亜が、あの日、ラブライブ!決勝で、Aqoursを応援しに東京に行ったあの日、その日を境に、昔の理亜、心を閉ざしてしまった、誰に対しても冷たい、そんな理亜に戻ってしまったことを・・・。いや、昔以上に苦しんでいる理亜、その理亜の、少しでもその苦しみを和らげるための、あつこたちにとってみればちょっとした息抜きのための、理亜と2人だけの卒業旅行、それを楽しんでいた理亜、しかし、今の千歌たちの・・・、3年生がいないという喪失感により不安・心配という深い海・沼の底に沈んでしまった、そんな千歌たち・・・、特に理亜にとって一番の親友だったルビィの、今はもうここにはいないのにそれでも姉ダイヤを頼ろうとしている、その姿を見てしまったのか、卒業旅行に行く前の理亜に戻った、それに対して、聖良、困惑していたのだ。

 だが、千歌、聖良からこのことを聞いた瞬間、こう考えてしまった。

(なんか、今の私たちに似ているのかなぁ・・・。今の理亜ちゃん、今の私たちだってダイヤちゃんたちがいないために良いパフォーマンスができていない・・・。対して、理亜ちゃん、聖良さんがいないなかでなにかに対して1人でもがき苦しんでいるみたい・・・)

そう、千歌は、今、ここにいない、そんな姉のダイヤに頼ろうとしているルビィに対して冷たい言葉を言い放った理亜、その理亜の状況、思い、苦しみは今の自分たちと同じである、いや、それ以上に聖良という大切な人なんてもういない、そのなかで、たった1人で、なにかに対してもがき苦しんでいる、そんなことを感じていたみたいのようだ。だがその理亜の苦しみに対し、千歌、申し訳なさそうにこう思ってしまった。

(でも、今の私たちじゃ、どうしても・・・、どうすることも・・・、できないよ・・・)

 

 ここには姉ダイヤに今でも頼ろうとしているルビィ、そんなルビィの姿に幻滅してしまった同じく姉の聖良を持つ理亜、そんなルビィの姿はもう見たくない、そう思ったのか、ルビィのもとから走り去っていく。だが、このとき、理亜の心んおなかではある思いにより理亜は苦しんでいた。それは・・・。

(もうあんなルビィなんて見たくない!!ルビィは、ルビィは、あのラブライブ!で優勝したAqoursの一員!!なのに、それが、ラブライブ!で優勝したときよりも、いや、それ以前の、や、初めて会ったときよりも、姉のダイヤさんに頼ろうとしている、そんなルビィ、見たくない!!もう、ダイヤさんは・・・、姉さまは・・・、もういないんだ!!いや、私たちは、私たちは、姉さまたちを含めて、なにもかも失ったんだ!!それなのに、もういないはずの(姉の)ダイヤさんに今でも頼ろうとしている、そんなルビィなんて、もうしらない!!)

そう、もうここにいない姉のダイヤに今でも頼ろうとしているルビィ、そんなルビィの姿に対して、理亜、とても嫌な気持ちに、そんなルビィのことなんて嫌、そんな気持ちになっていた。いや、それ以上に・・・、

(ルビィも千歌さんたちもわかっていない!!もうダイヤさんたち(3年生)も姉さまもいないんだ!!もういないんだ!!それなのに、ルビィ、そんな(姉の)ダイヤさんに今でも頼ろうとしている。これからは自分たちだけでなんとかしないといけないんだ!!いつまでも姉さまたちに甘えてちゃいけないんだ!!)

そう、理亜、心のなかではもう姉の聖良やルビィの姉のダイヤたち3年生はすでに高校もスクールアイドルも卒業している、なので、自分たちのことは自分たちの手でなんとかしないといけない、そう思っていたのだ。いや、それくらい理亜のなかでは切羽詰まるものであったのだ。

 だが、それ以外にも理亜の心のなかには深い闇が住みついていた。それは・・・、

(それに、私は、理亜は、あのときの・・・、あのときの思いなんてしたくない!!私は、理亜は、姉さまとの・・・、姉さまとの・・・、それくらいのものを、いや、ラブライブ!で優勝したあのルビィたちみたいに・・・、ルビィたちみたいに・・・、・・・しないといけないんだ!!そのための、勝ち続ける、そのためのユニットを、作らないと、いけないんだ!!そうでもしないと姉さまに申し訳がたたないんだ!!)

そらはまるで理亜に重い十字架を背負わせる、いや、理亜自らその重い十字架を背負っている、それくらい理亜にとって千歌たち以上に深い海・沼、いや、それ以上に深淵なる闇を背負っている、そんな感じが漂っていた。

 そんな、闇からくる苦しみ、それに打たれながらも、姉ダイヤに今でもすがろうとしているルビィの姿はもう見たくない、その一心で逃げるように走る理亜・・・だったが、突然、不慣れな砂浜で走ったのが悪かったのか、疲れてしまい、ついに止まってしまった。そこに理亜のあとを追ったルビィがようやく追いつく。けれど、理亜、そんな弱弱しい、不安・心配という深い海・沼の底に陥った、そんなルビィの姿を見たくないのか、

(ルビィ、ルビィの顔なんて見たくない!!)

と、理亜、そう思ってルビィのもとから去ろうとする。

 ところが、ルビィ、そんな理亜の現状に気づいたのか、

(理亜ちゃんに謝らないと・・・。ルビィも理亜ちゃんも大変困っている状況なのに、ルビィには千歌ちゃんたちがいる、だけど、理亜ちゃんのまわりには誰もいない、聖良さんは今も近くにいるけど、理亜ちゃんの性格じゃ・・・)

と、理亜に同情的になるとその理亜に対し、ルビィ、

「ごめんね!!理亜ちゃんは1人で頑張っているのに・・・」

と同情的な発言をしてしまった。

 だが、このルビィの同情的な発言に、理亜、ついにキレてしまった。理亜、

(ルビィ、私のことなんてほっといて!!ルビィみたいにいつまでも姉のダイヤさんに甘えたい、そんなルビィなんて、もういや!!姉さまも、ダイヤさんも、もうここにはいないんだ!!それなのに、それでも姉のダイヤさんを頼ろうとするなんて、ルビィ、スクールアイドルを・・・、ラブライブ!を・・・、甘く・・・、甘くみている・・・、そう思えてくる!!ルビィ、スクールアイドルは・・・、ラブライブ!は・・・、ラブライブ!は・・・)

そう理亜が思った瞬間、ついにあの言葉を・・・、理亜のラブライブ!に対する強い想い、いや、今は、自分ではなんもできない、姉ダイヤに頼ろうとしている、そんな甘い考えのルビィに対する、あの理亜の代名詞といえるあの言葉を理亜は発した、そう、あの言葉を・・・。

「(ラブライブ!は・・・、)ラブライブ!は、遊びじゃない!!」

このときの理亜の言葉、それは自分と同じくとても苦しんでいる理亜に対するルビィの同情、それを払いのけるものとなってしまった。これには、ルビィ、思わず、

(り、理亜ちゃん・・・)

と、ただ黙るしかなかった。

 

だが、そんなとき、理亜の、いや、理亜を含めた千歌たち、そして、聖良、さらには遠くから千歌たちののことを見守っていた「僕っ子」の状況が一転する。無事に理亜とルビィのもとに到着した千歌たちと聖良・・・だったが、突然、空から、

ブー ブブブ ブブー

という音とともに一台のヘリが千歌たちと聖良、理亜のもとに近づいてくる。いや、千歌たちにぶつかっちゃう、そんな高度で千歌たちに近づくと、「僕っ子」の帽子を吹き飛ばしつつも旋回、千歌たちの目の前に降りてきた。これには、千歌たち、

「「「まりちゃんだ!!」」」

と、Aqoursメンバーの3年生が1人、鞠莉が来た・・・と思って鞠莉の名を叫んでしまう・・・のだが、実際に出てきたのはちょっと年の増した・・・、こほん、麗しきレディ、だった。いや、たしかに、鞠莉は鞠莉でも、鞠莉の母親、鞠莉‘sママであった。

 そんな鞠莉‘sママ、千歌たちに対しこうお願いした。

「実はお願いがありま~す!!詳しいことはホテル小原で言いたいので、このヘリに乗ってく打さ~い!!」

この鞠莉‘sママからのお願い・・・、とうの千歌はと言うと、あまりに怪しいので断る・・・、

(でも、これが、もしかして、この不信を振り切れる良い機会になるかも!!)(千歌)

と、千歌、今の自分たちがおかれている状況を変えるべく二つ返事でOKを出してしまった。

 そして、鞠莉‘sママ、なんと、聖良と理亜に対してもこんなことまで言ってきた。

「それに、あなたたち(聖良と理亜)も来てくれたらハッピーです!!」

この鞠莉‘sママのお誘い、これには、聖良、その言葉を鞠莉‘sママがかけてくるまでは、

(なんで理亜はルビィさんに対してあんなことを言ったのでしょうか?気になります・・・)

と、理亜がルビィに対して冷酷ともとれる発言をしたのか悩んでいたが、鞠莉‘sママのお誘いの言葉を聞いたとたん、

(まぁ、そのことはあとでじっくり考えることにしましょう)

と、いったん理亜のことは棚に上げることにして、

(それよりも、これは千歌さんたちにとって「渡りに船」といえるかもしれませんね)

と、すぐに、千歌たちにとってこれは立ち直るためのチャンス、その機会を得ることができた、そう考えてしまった。なぜなら・・・。

(なぜなら、今、千歌さんたちが復活するためには、ダイヤたちに、3年生3人に、もう一度会うことが1番だからです!!)(聖良)

そう、千歌たちが不安・心配という深い海・沼の奥底から抜け出すためにはダイヤたち3年生3人にもう1度会うことが1番だから、である。近田一が不安・心配という深い海・沼の底に沈み込んだ理由、それは、ダイアyたち3年生3人がいない、そんな喪失感によるものだった。なら、もう1度、ダイヤたち3年生3人に会い、そのことについてもう1度話し合う、いや、あることを再確認すればいい、そう聖良は考えたのだ。

 だが、聖良にはそれをするために乗り越えないといけないものがあった。それは・・・。

(とはいえ、それをするためには、2つ、問題があります。1つはダイヤたちは、今、イタリアにいます。そこに行くための渡航費用、お金が必要です。そのお金の工面をどうすればいいか、ということが問題なのです)(聖良)

そう、ダイヤたち3年生3人は、今、イタリアにいる。なので、そのイタリアに行くための渡航費用が今現時点では圧倒的に足りない、ということだった。さらには・・・、

(それに、たとえ千歌さんたちがイタリアに行くことができたとしても、そのイタリアにいるダイヤたちのところに行くまでのガイド兼通訳、が必要です!!)(聖良)

そう、たとえ千歌たちがイタリアに行けたとしても、ダイヤたちがいるところまでの道案内、いや、それ以上に、日本語が通じない異国の地でどうやってイタリアの人たちと意思疎通を交わすことができるのか、それが1番の問題だった。

 だが、その2つの問題に対し、聖良、

(けれど、この女性の方(鞠莉‘sママ)のお誘い、その2つの問題を一挙に解決できるかもしれませんね)

と、鞠莉‘sママのお誘いこそ千歌たちを復活させるための2つの問題、関門、それを突破できる、ちょうどいい機会である、そう聖良はにらんでいた。なぜなら・・・、

(まず、この女性の方(鞠莉‘sママ)、鞠莉の母親なら、もしかすると、鞠莉のところまで行く資金を出してくれるかもしれませんですし・・・)(聖良)

そう、鞠莉は世界的財閥の1つである小原財閥の当主(鞠莉の父親)の一人娘である。なので、その母親である鞠莉‘sママから資金援助してもらえば千歌たちはダイヤたち3年生3人がいるイタリアに行くことができるのである。さらには・・・、

(それに、もう1つの問題点についてはすでに目星はつけています)

と、聖良、近くにいる「僕っ子」の方を見る。どうやら、聖良、もう1つの問題点についても人材をすでに見つけていたようだ。

 そんあわけで、聖良、鞠莉‘sママに対し、

「まっ、乗りかかった船ですし、千歌さんたちがいなくなっては沼津に来た意味もありませんからね、一緒に行きましょう!!」

と、鞠莉‘sママと千歌たちと一緒に行くことを承諾した・・・ものの、すぐに、聖良、鞠莉‘sママにあるお願いをした、聖良が目星をつけていたいい人材を指さしながら・・・。

「千歌さんたちと私たち、そして、この石階段の上にいる少女も一緒に連れて行ってください!!」

これには、聖良が指さした少女、「僕っ子」も突然のことでびっくりしてしまう。それ以上に、千歌たちが・・・、その「僕っ子」の存在を知った千歌たちはびっくりして口を揃えてその「僕っ子」の名を叫んだ。

「月ちゃん!!」

そう、その「僕っ子」こそ、曜のいとこで大親友、そして、この物語とは対となる物語、「Moon Cradle」の主人公である、渡辺月、であった。

 



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SNOW CRYSTAL 序章 第11話

そんなわけで、千歌たち6人、それに、聖良と理亜、と、なぜか月を連れてヘリはホテル小原沼津淡島へと向かう。そんなヘリのなかで聖良と月はお互い挨拶をすつお、月、あることを聖良に聞いてきた。

「先ほど、曜ちゃんたち(千歌たち新生Aqoursのこと)に対して「3年生の存在が大きかった!!」って言ってましたこど、それってどういうことですか?」

この月の質問に聖良は自分の言った言葉の真実を述べた。今の千歌たち新生Aqoursは本来のAqoursではない、本来のAqoursはダイヤたち3年生3人を含めた9人であること、を。月、それを昨日の新生Aqoursのライブで「いつものAqoursではない」という違和感として感じていたのだが、その違和感が聖良によって肯定されたことに少し驚く素振りをみせた。これには、聖良、

(この子(月)、案外、人を見る目がいいのかもしれませんね」

と、少し興味を持ったのか、少しからかいつつも月にこれまでのAqoursの歴史を教えた。ダイヤたち3年生が1年のとき、初代Aqoursとして活躍していたこと、そのなかで鞠莉がケガをおしてまで無理に東京のイベントに出場しようとしたところ、ダイヤと果南と一緒に続けたい鞠莉、対して、鞠莉の将来について心配していた果南、その心の行き違いなどもあり初代Aqoursは消滅したこと、けれど、浦の星が廃校になる、それを阻止するため、パワーアップして浦の星に帰ってきた鞠莉と1年のときのことで未だに引きずっている果南、その2人の交差する想いをダイヤの策略?によってその誤解が解けたこと(+こっそり退場しようとしたダイアもなぜかルビィに見つかりちゃっかりメンバーになったこと)があり、Aqoursはパーフェクトナインになったこと、など。これには、月、Aqoursの本当の歴史を知らなかった、そんな自分の考えの浅はかさに嘆いていた。

 そして、聖良はそんな月に対し、今、千歌たちに起きていることを伝えた、Aqoursが各学年ごとに役割があること、2年が船頭、Aqoursという船の行き先を決める役、1年は新人乗組員、2・3年についていく、けれど、とても強い未知のパワーを持っている、3年はエンジン役とAqoursという船の屋台骨であること、そのエンジン役・屋台骨である3年がいなくなった今、千歌たちは迷走している、自分たちを守ってくれるものがない、いろんな問題に真正面から受けざるをえないこと、そんな危険な状態であること、昨日のライブにより、そのことを、3年生3人がいないという喪失感を感じたことにより、千歌たちは不安・心配という深い海・沼に陥ったことを。

 そんなことを聞いて、月、聖良に対しあることを尋ねた。

「聖良さん、だったら、曜ちゃんたち、新生Aqoursはよみがえる方法、なにかありませんか?」

この月の質問に、聖良、つい、こんなことを考えてしまう。

(たしかに、この場でこの月さんという方に千歌さんたちを復活させる方法を教えることができます。しかし、今はそのときではありません。それに、これを、千歌さんたちを3年生に会わせる、それをしたいと思っても今の私ではそれができません。ほかの人の協力が必要です。あとは千歌さんたちのね・・・)

 そして、聖良は月に対しこう答えた。

「その方法を教えることはできるかのしれません。ただし、その根本たる原因、それを取り除けるかは千歌さんたち全員の心がけ次第です。そう考えると、今、この場で千歌さんたちに教えることができません。だって、それをするには莫大なお金と労力、それに、相当な外国語の能力がないといけませんからね」

これには、月、がっかりするもそんな月の姿を見てか、聖良、月に対しこう思ってしまう。

(けれど、その千歌さんたち復活のための大事なピースの1つ、それは、月さん、あなたですよ!!)

そう、千歌たち復活の貯めの大事なピース、その1つが月であった。それはなぜか、それについてはおいおい話すとして、そのことを知っているのか、聖良、月に対しいたずらぽっくこう言った。

「けれど、新生Aqoursをよみがえさせることについて、1つだけ言えることがあります。それは、月さん、あなたがそれを果たすことができる、新生Aqoursをよみがえさせる、とても重要な存在である、ってことです!!」

この聖良の言葉に月は驚いては困惑していた。

 そんななか、ヘリはついにホテル小原沼津淡島に到着した。だが、そんなとき、聖良、月の方を見てはこんなことを考えていた。

(なんか月さんと話していると、いろんな経験をしてきた、そんな感じがしてきました。そんな経験があるからこそ今の千歌さんたちが不調になった原因、それをあのライブのときから薄々と感じていた、そんなことができたのかもしれません。ならば、月さんに千歌さんたちのこと、全部任せることができるかもしれませんね・・・)

 だが、それと同時に、聖良、こんなことすら考えてしまう。

(けれど、なんか、月さん、ヘリで一緒にいたとき、笑ったところ、一度も見ることがありませんでした。もしかして、千歌さんたちが不調になった原因、それと月さんとなにか関係がある、というか、なにかを知っているのではないでしょうか。それに対して、月さん、尻目に感じているいのではないでしょうか)

そう、聖良との会話のとき、月は笑う素振りがなかった。これに関して聖良は不思議に感じていた。いや、なにか裏がある、そう感じていたのかもしれない、聖良は・・・。

 

 そして、ホテル小原沼津に到着したあと、すぐに千歌たちと聖良に理亜、月はホテルの大ホールへとそのまま通される・・・わけもなく、ちょっとした用意があるからと、鞠莉‘sママ、千歌たち、聖良、理亜、月、をホテルのロビーに待たせては1人でどっかに行ってしまった。どうやら、今回の兼で大がかりな仕込みをしているみたいだった。これには、聖良、

(鞠莉‘sママさん、果たして何をお願いするのでしょうか。まぁ、それに合わせてなにか仕込みをしている気がします。それについてはほっときましょう)

と、鞠莉‘sママが何かを仕掛けてくる、そんな気をしつつもほっておくことにした。

 それよりも、聖良、この時間を使ってなにかを確認しようとしていた。それは・・・、

(と、まずはあの月さんについて知りませんとね・・・)

そう、月のことについて確認しようとしていたのである、聖良は。千歌たち復活のための大事なピースの1つである月、それを確認するためだった。なので到着して早々、聖良は千歌に対してらうことを尋ねた。

「ところで、千歌さん、月さんっていう「僕っ子」を連れてきましたが、月さんってどういう人物なのでしょうか?」

すると、千歌、すぐに、

「う~んね~、う~んとね~、月ちゃんってね~、なんだっけ?」

がくっ!!聖良、尋ねる相手を間違えたようだ。千歌、月のことなんてなにも知らないようだ。そりゃそうだ!!だって、千歌、月と初めて会ったのはつい最近のことである。なので、月のことなんて全く知らないのも無理ではなかった。

 だが、その代わり、隣にいた曜が月についてこう答えてくれた。

「聖良さん、私が月ちゃんのことについて教えてあげるね。月ちゃんは私のいとこで大親友なんだ!!それでいて、今度、私たち浦の星と統合する静真高校で生徒会長をしているんだ!!でもね、月ちゃん、そこでかなり慕われているみたいで、自分や優秀な生徒会役員たちと一緒に静真の生徒たちをより良い方向へと導こうとしているんだ!!」

この曜の言葉に対し、月、照れながらも、

「曜ちゃん、ちょっと、よいしょ、しすぎだよ・・・」

と、曜はけん制するも、曜、すぐに、

「でも、それって本当のことがよ!!それくらい月ちゃんって凄い人なんだよ!!」

と、月のことをこれでもかという具合にべた褒めしていた。

 そんな曜のよいしょを聞いて、聖良、こう思ってしまう。

(やっぱり私の見立ては間違いなかったようですね、月さんは。静真といったら部活動がとても盛んなところとして有名です。そこで生徒会長をしている、それは並大抵なことではありません。そこで生徒たちから慕われているのなら、それくらいの力量、生徒みんなを導くことばリーダーとしての気質を持っているはず。いや、それくらいの経験もしてきたはず。ならば、不安・心配という深き海・沼に陥った千歌さんたちを導くことができるかもしれません)

そう、聖良は確信した、不安・心配という深き海・沼の奥底に沈み込んだ千歌たちをあの月が導いてくれる、と。

 だが、聖良、あることについても確信しようとしていた、それは・・・、

(ですが、今、もう一つ確認したいことがあります。それは千歌さんたちが不安・心配という海・沼に陥った原因、3年生がいないという喪失感、そこから生まれてくるもの、それは、「0」に戻った、もとに戻った、そんな思いだったりします。そして、そんな気持ちが私の目の前ででパフォーマンスをした千歌さんたちにはありました。なので、千歌さんたちが復活するためにはその気持ちを払しょくさせる必要があります。それを払しょくさせるためにはダイヤたち3年生3人と出会って3年生の立ち位置を改めて確認すること、そして、「0」に戻った、もとに戻ったという思いそのものが間違いであると気づかせる必要があります。そんな経験を月さんはしたことがあるのでしょうか?)

そう、聖良は気づいていた、人が何もかも失ったという喪失感に襲われたとき、まず真っ先に思ってしまうこと、それは、「0」に戻った、もとに戻った、そんな思いであった。それが今さっき聖良と理亜の前でパフォーマンスをした千歌たちから感じられていた。だが、その思いそのものが間違いだったりする。それ以上にとても大切なものがあるのだか、それについてはあとで話すとして、その思いそのもの間違いであることを人に、千歌たちに教える、伝えるためには、教える側、伝える側も同じ経験、なにもかも「0」に戻った、もとに戻った、という経験があるかどうかだ。人は経験を積むことで、人に教える、伝える際の説得力を増すことができるのである。経験則というものである。自分も1度そんな経験をしているからこそ、人への発言の際、その発言の重みも増すものなのである。そして、今日、千歌たちは3年生がいないという喪失感、そこからくる、「0」に戻った、もとに戻った、という思いから不安・心配という深い海・沼に陥ってしまった。けれど、ダイヤたち3年生3人とと会って今の3年生の立ち位置などを再確認するとともに、「0」に戻った、元に戻った、という思いこそ間違いである、もっと大事なことがある、そう伝える、教えることが千歌たちを復活させるために必要だったりする、特にルビィには・・・。だが、ただそれを教える、伝えるだけではダメである。ただ教える、伝えるだけなら誰でもできるが、かなり重症といえる千歌たちがそれを気づかせる、その思いが間違いである、だからこそ復活しよう、と思わせるにはそれだけでは不十分である。それに対してその経験をしたことがある者であれば、「その思いが間違いである」、その言葉の力、説得力はかなり強力である。なので、かなり重症である千歌たち、特に姉ダイヤに今でも頼ろうとしているルビィにとってみればその者の言葉の説得力はかなり強力となる。たとえどんな状況であっても良い方向へとその状況をひっくり返すことができるであろう。そのためにも、月にそのような経験があるか確認したかったのだ。

 というわけで、聖良、すぐに、月・・・ではなく、月のいとこで大親友の曜に対してそのことを尋ねることにした。なぜ曜に尋ねるのかというと、当事者である月に菊より第三者である曜に聞いたほうがいいから、当事者にそのことを聞いた場合、人によっては本当にたわいのない経験なのに拡大・・・というか、話を盛ることがある。それに対し、第三者ならその当事者の経験について客観的に話してくれたりする。なので、用心のため、第三者である曜に尋ねることにしたのである。そんなわけで、聖良、曜に対し、月に聞こえないように次のことを尋ねた。

「ところで、曜さん、ちょっとお尋ねなのですが、月さん、なにもかも失った、そう思えるような経験、ありませんでしたか?」

これには、曜、

「う~ん、う~ん、たしかあったような・・・」

と言うと、すぐに、

「あっ、もしかすると、あのことかも?」

と言っては聖良に月と曜に関わるあるお話をしてくれた。

「たしかね、私と月ちゃんが中3のとき、別々の高校に行くことになったんだけど・・・」

と、曜は中3の卒業のときのことを話してくれた、「中3の卒業を迎えたとき、月は曜から別々の高校に行くことを告げられた。このとき、月は、自分という大事な親友を差し置いてでも別の高校に進学すること、そのことを曜に対して怒るも、それは曜のもう一人の親友である千歌のためであると曜から告げられてしまう。このとき、月はこう思ってしまっう、「大親友である曜から捨てられた。昔の私に、なにもない、もとに戻った、「0」に戻った」と。しかし、曜から「たとえ離れ離れになったとしてももとには戻らない、「0」に戻ったりしない、むしろ、これまでの私と月ちゃんとの想い、想い出、キズナは宝物となってずっとのこっている」と。それを曜の口から聞いたことにより月は立ち直ることができた」と。

 それを聞いた瞬間、聖良、ついにあることを確信する。

(やっぱり私の見立ては間違いではありませんでした。月さんこそ、千歌さんたち復活のためのキーパーソンです!!月さんなら千歌さんたちのこと、任せられそうです!!)

そう、聖良の思った通りだった。月こそ千歌たち復活のためのキーパーソンであった。月には今の千歌たちが抱えているもの、「「0」に戻った、もとに戻った」、その気持ちを払しょくさせるための説得力、それに必要な経験がある。なので、その思いこそ間違いである、それを教える、伝えることができる。それに、ダイアたちがいるイタリアに千歌たちを行くことになったとしてもその千歌たちのための通訳兼ガイド役として月はピッタリである。これほどいい人材は月以外にいなかった。

 そんなわけで、聖良、ついに決めた。

(もし、千歌さんたちがイタリアに行くことになった場合、この私、聖良、その同行役として月さんを指名したいと思います)

そう、もし、千歌たちがイタリアにいくことになったら月をガイド兼通訳、そして、千歌たち復活のためのキーパーソンとして月を推薦することを決めたのである。

 と、ここで曜、聖良に対しあることを尋ねる。

「ところで、聖良さん、なんで月ちゃんのこと、聞いてくるの?」

これには、聖良、

「あぁ、曜ちゃん、ちょっと月さんのことが気になりましてね・・・」

とごまかしつつも、

「さてと、もうすぐ移動することになるでしょう。とはいえ、曜さん、これまで、月さんのこと、私に教えてくれてありがとうございます」

と、曜にお礼を言っては曜のそばから離れた。これには、曜、

「?」

と、頭の上にハテナマークを浮かべてしまった。とはいえ、このときの曜は、その後、このとき、聖良に話したことがのちに自分たちが復活するために必要なピースの一部になるとは知る由もなく、ただ、聖良に自分と月との昔話をしただけとしか思っていなかったようだ。そして、聖良に対しても同じことがいえた。今、千歌たちが抱えているその思い、それと同じ思いを持つ者が身近にいることを、それに気付かずにその者の状況がもっと悪化することも、このときの聖良には知る由もなかった。



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SNOW CRYSTAL 序章 第12話

「連絡がとれない!!」

ホテル小原沼津淡島の大ホールに千歌たち6人の驚きの声がこだましていた。なんとダイヤたち3年生3人と連絡がとれないというのだ。これは鞠莉‘sママからもたらされた情報だった。鞠莉‘sママ、大ホールに到着するなりなぜか大ホールのステージにあったピアノを引き始めるといきなり「鞠莉たちと連絡がとれない」と言いだしてきたのだ。

 で、この情報を鞠莉‘sママから聞いて、聖良、ピンとくる。

(あっ、だから、ダイヤは私に千歌さんたちの世話をお願いしたのですね。ダイヤたちはこの鞠莉‘sママから逃げている。だから、表立って動けない、なので、第三者である私にお願いをしてきたのですね」

そう、このとき、聖良、ダイヤたちは鞠莉‘sママから逃げていることを悟ったのである。なのだが・・・、聖良、なんでそんなことにすぐに気づいたのか。それは、ダイヤが昨日の夜、聖良に対して、

「もし、千歌さんたちから連絡があったら、千歌さんたちのこと、助けてあげてください」

と、送ってきたのがことの始まりだった。。このとき、聖良はそれについて了承したのだが、翌朝、その履歴を見て、聖良、ふとこう感が手しまった。

(でも、千歌さんたちのことが心配ならダイヤ自ら連絡すればいい話ではないでしょうか)(聖良)

そう、千歌たち新生Aqoursが初めてのライブで失敗したことは動画サイトを通じてダイヤも知っていた。なら、それに対してダイヤ自ら千歌たちをフォローするのが筋である。自部たちはもう卒業したからノータッチ・・・という考えならともかく、世話好きであるダイヤたちがそんなことなんてするハズがない、たとえ自分たちが卒業したってライブの失敗で不安・心配という深き海・沼の底に陥ってしまった後輩たち(千歌たち)のことを見捨てるはずがない。しかし、そんなダイヤたちが自ら千歌たちのために動こうとしない、その代わり、第三者である聖良にそれをお願いしてきたことに聖良は不思議を感じていたのである。だが、それも、鞠莉‘sママの登場と鞠莉‘sママの先ほどの発言でダイヤたちが鞠莉‘sママから逃げていることがわかったのである。鞠莉‘sママから逃げている、そのためにダイヤたちは表立って動くことができない、もし、千歌たちのために表立って動けば鞠莉‘sママに自分たちの詳しい居場所を察知されるかもしれない、そのことを危惧しての聖良へのお願いだったのである。あっ、ちなみに、千歌たちからダイヤたちに連絡をすれば・・・という疑問もあると追おうが、事前に聖良はそのことについてもダイヤの妹のルビィに確認している。ロビーから大ホールに行くとき、聖良、ルビィに対し、

「ところで、ルビィさん、(姉の)ダイヤとは連絡をとっているのですか?」

と尋ねると、ルビィ、聖良に対し、

「ううん。お姉ちゃんと鞠莉ちゃん、果南ちゃん、3人にとって一緒にいられる最後の時間だもん。そんなの、ルビィ、邪魔できないもん!!だから、尾根絵チャたちとは連絡をとっていないよ」

と、少し泣きそうになりがらもけなげに正直に答えてくれた。これには、聖良、

(ルビィさん、本当に純粋な心の持ち主ですね・・・)

と、ルビィに心がけに感心しつつも、

(ということは、ルビィさん、千歌さんたちからダイヤたちに連絡をとっていない、ということですね・・・)

と、千歌たちからダイヤたちに連絡をとっていないことを確認した。とはいえ、この時点でダイヤたち先輩に千歌たちが連絡をしていない、ということは、千歌たちも卒業したダイヤたち先輩たちの手を借りずに自分たちのことは自部たちの手でなんとかしたい、そんな心意気がとても強かった、ともいえた。けれど、それでも、ダイヤたちに頼らずにライバルである聖良に頼ろうとすることは千歌たちなりにダイヤたちに対する配慮、なのかもしれない。もしくは、ダイヤたち3年生に頼ることをしない、千歌たちなりの頑張り・・・なのかもしれない。ただ、千歌たち以上に、自分のことは自分でなんとかする、誰にも頼れない、自分の決めたことはなにがなんで自分の手で誰の手も借りずに自分でなんとかする、それがたとえその道が困難な未知であっても・・・、そんないばらの道を自ら進もうとし、結果、自分の首を自分の手で締めてしまいもがき苦しんでいる少女が聖良のすぐそばにいることについてはこのときの聖良は知る由もなかった・・・。あと、鞠莉‘sママの一言で全てを知る、聖良、一を聞いて十を知る、そんなことを地でいく、完璧少女とは聖良のことを言うのですね・・・、ある一部分を除いたは・・・。

 とはいえ、「鞠莉たち(3年生)と連絡がとれない」。その鞠莉‘sママの言葉は、千歌たち、特に

ルビィに、今、姉のダイヤに頼りたい、そんなルビィにとってさらなるショックを与えた・・・のだが、ここで、鞠莉‘sママ、そんな千歌たちに対し、あることを言いだす。

「あなたたちならきっと、マリーたち(3年生3人)を見つけてくれる~はず~!!」

そんな鞠莉‘sママの言葉のあと、千歌たちのもとに大量のコイン?が降り注ぐ!!これには、千歌たち、

「わ~!!」「なんで~!!」

という悲鳴に近いような声をあげてしまう。これには、聖良、

(うわ~、千歌さんたち、痛そうですね・・・)

と、苦笑い・・・。むろん、今のところ、ルビィたちのふがいなさ?にむっとしていた理亜、そして、月も唖然・・・、なのですが、本物のコインが降ってきた・・・わけではなく、チョコ、コインチョコが大量に降ってきた・・・のでした。この事実を知った聖良、おもわず、

(やっぱり鞠莉の母親ということもありますね・・・)

と、なぜか納得の表情。それもそうだ。だって、鞠莉、意外とサプライズ好きだもの・・・。TVアニメの初登場シーンだって自家用のヘリを使ってスクールアイドルの練習を始めたばっかりの千歌たちの前にさっそうと現れたり、生徒会長のダイヤなんて気にせずに自分の理事長特権でスクールアイドル部を認めたり、本当に自由奔放・・・、こほん、それくらい活発な少女だといえる、鞠莉は。そのDNAは母親譲り・・・なのかもしれない・・・。

 とはいえ、この鞠莉‘sママのパフォーマンスは千歌たちにとって、そして、聖良にとって、渡りに船・・・、だった。なぜなら・・・、

「(大量のコインチョコを降らせたことについては)渡航費用は出すという意味のパフォーマンスで~す!!」(鞠莉‘sママ)

そう、鞠莉たちを探す代わりにダイヤたちがいるイタリアへの渡航費用を鞠莉‘sママが代わりに出してくれる、ということだから。聖良、このとき、こう思った・・・、

(これは本当に「渡りに船」に違いありません!!(千歌さんたち)新生Aqoursをよみがえさせる方法、その1つの問題点だったのがお金の問題です!!)

そう、不安・心配という深き海・沼の底に沈み込んだ千歌たちを復活させるための方法、ダイヤたち3年生3人と会うこと、それを困難とさせていたのはダイヤたちがいるイタリアへの渡航費用をどう工面するか、とういうのは少し前に書いたことなので読んでいる方ならもうご存じだと思うが、そんなことを見越して聖良は鞠莉‘sママについてきたのであり、それがこの場で鞠莉‘sママ自ら「千歌たちの渡航費用を出す」と宣言したのである。これで聖良が千歌たち復活のための2つの大きな障害のうちの1つが取り除かれることになったのであう。

 そして、残るもう1つの障害も、聖良、

(それに、もう1つの問題点・・・については・・・)

と、月の方を見てにやりと笑っていた。そう、あの子がいますから大偉丈夫ですね、聖良さん!!

 と、ここで、千歌たちがあることに悩んでいた。そう、ダイヤたちを探しにいくかどうかで悩んでいたのである。昨日のライブの失敗を挽回するためのライブ、それをしないといけないのに、(鞠莉‘sママや千歌たちから見て)行方不明のダイヤたちを探しに行くべきか、それとも、次回のライブの準備をしないといけないのか、悩む新生Aqoursのリーダー、千歌、大いに悩む。

 そんな千歌を見てか、聖良、

(千歌さん、相当悩んでいるみたいですね。たしかに、次回のライブのための時間はあまりないかもしれません)

と、千歌が悩んでいることを認めつつも、

(しかし、今の状態では次回のライブも必ず失敗します。それよりも、まずはダイヤたちと会うことが先決です。「急げば回れ」です)

と、今は千歌たち復活のためにダイヤたちと会うことが先決、というわけで、

(ならば、この私が千歌さんたちを導いてあげましょう)

と、自ら千歌たちをダイヤたちへと導こうとした。

「(千歌さん、ダイヤたちに会いに)行ってきた方がいいと思います。先ほど、みなさんの練習を見て思ったのです、理由はどうあれ、1度、卒業する(ダイヤたち3年生)3人と話したほうがいいって」

 しかし、それでも悩む千歌に対し、聖良はダメ出しともとれる発言をする。

「自分たちで新しい一歩を踏み出すために今までをきちんと振り返るということは悪いことではないと思いますよ」

これまでは卒業するダイヤたち3年生3人には頼らない、そう思っていた千歌たち、けれど、それにより、初めてのライブで3年生3人がいないという喪失感に襲われてしまい、不安・心配という深き海・沼の底に陥った千歌たちにとって聖良の一言は、目からうろこ、だった。いや、それ以上に、2人の少女、ルビィと理亜にとってこの聖良の発言を受けての気持ちにより2人の運命を分ける、分水嶺になってしまった。ルビィはこの聖良の発言を受けて、

(あっ、もしかすると、もう1度お姉ちゃん(ダイヤ)と会えば何かがわかるかもしれないよ!!あわよくば、お姉ちゃんと一緒に・・・)

と、ちょっとした下心はありつつも、ダイヤたち3年生3人と会う決意をした。一方、理亜はというと・・・、

「・・・」

と、下を向いてはなにかふてくされているような感じ、いや、月が理亜の方を見ると、「むっ」として知らんぷりをしてしまった・・・。

 とはいえ、この聖良の発言により、これまで千歌を支えてくれてきた2年生2人、梨子と曜、からも、

「聖良さんのいう通りだと思うよ」(梨子)

「ライブの練習はどこだってできるし、これまでもやってこれたじゃない!!大丈夫、できるよ!!」(曜)

と、ダイヤたちに会いに行く、そのことに賛成した。

 こうして、曜と梨子、2人の後押しもあり、千歌、

「うん、わかった!!行こうか!!」

と、不安・心配という深き海・沼から脱するべく、ダイヤたち3年生3人に会いにいくことを決めた・・・のだが、その後、鞠莉‘sママからダイヤたちが今いるところ、それがイタリアであることにみんな驚いていた・・・。ただ、ダイヤとのSNSでのダイヤたちのいる場所を知っていた聖良にとって、

(鞠莉‘sママさん、やっぱり、鞠莉の母親、ですね・・・)

と、鞠莉‘sママのパフォーマンスにただただ唖然としていた。だって、鞠莉‘sママ、ただ、ダイヤたちがいる場所を千歌たちに発表するだけに超巨大な(大きさにして大ホールのステージを覆いつくすぐらいの大きさの)イタリアの地図を用意、さあrに、一瞬、大ホールを暗くしてからの大ホールのステージの垂れ幕みたいなイタリア地図へのスポットライト、やっぱり鞠莉の母親も母親、ですね・・・。

 まぁ、そんなわけで、ダイヤたちを探すため、千歌たちはイタリアへと旅立つことを決めたのだが、ここで、聖良、ある提案を、千歌たちと鞠莉‘sママにしてきた。それは・・・、

「あの~、千歌さんたち6人、にもう1人、一緒に旅してもらいたい子がいるのですが・・・」

そう、千歌たちの旅にもう1人連れて行ってほしい方がいる、そう提案してきたのだ。これには、鞠莉‘sママ、それが誰なのか、聖良に尋ねる。す

 すると、聖良、その人の方を向いてこう言った。

「もう1人とは・・・、そこにいる・・・、月さん、です!!」

これには、月、驚くも、鞠莉‘sママ、あっさりと、

「いいでしょう!!」

とOKを出してしまった。ただ、鞠莉‘sママ、そう答えたとき、不敵な笑いを浮かべていた。そう、この千歌たちの旅、その裏では、鞠莉‘sママ、そして、鞠莉‘sママを裏で操ろうとしていた黒幕・・・みたいなものの思惑が動いていた。それは、あの月がいる静真、そして、沼津、いや、静岡、日本、世界の経済において、その覇権?を争う、そんなものまでにも影響を及ぼそうとしていた。果たして、月、そして、千歌たちの運命はいかに・・・、それについては別のお話である・・・、いや、もう投稿しているけどね・・・。

 まぁ、そんなことはさておき、あっさりと千歌たちの旅に同伴することが決まった、その同伴者となったことで驚いてしまった月、それに対し、聖良、こんな言葉を月に送った。

「千歌さんたちに一緒に頑張ってください、イタリアに縁もゆかりもある月さん・・・」

この聖良の言葉に、月、

「えっ・・・」

と唖然となってしまった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第13話

「どうして僕を曜ちゃんたち(新生Aqours)の連れ添いに選んだのですか?」

と、月、聖良に食って掛かっていた。ここはホテル小原沼津淡島が所有している船、シャイニー号の船室。千歌たちのイタリア行きが決まった・・・ということもあり、鞠莉‘sママによるイベ?もここまで、というわけで、ついにお開き、になったものの、もう夜、というこどで、千歌たち6人、そして、聖良と理亜、月はシャイニー号に乗って帰宅することとなった。が、千歌たち6人は急遽決まったイタリア旅行の計画を練るため、子にゃは千歌の実家である旅館に泊まっての作戦会議・・・というわけで内浦で降りてしまった。そんなわけで、現在、シャイニー号に乗っているのは沼津市街地近くの住宅街に住んでいる月と、この後、沼津駅から新幹線に乗って宿がある東京まで戻ろうとしている聖良と理亜、その3人だけだった。

 そんなわけで、千歌たちのイタリア旅行に月を同行するように鞠莉‘sママに進言した理由を進言した方、聖良に対してなぜそうしたのか月が聞こうとしていた。で、そんな月に対し、聖良ははっきりとした声でこう答えた。

「それはですね、月さん、あなたが(千歌さんたち)新生Aqoursをよみがえさせる、その大任を任せるのにうってつけだからです!!」

この聖良の答えに、月、

「え~!!」

と、驚いてしまうも、その隣にいた理亜から、

「う、うるさい!!うるさい・・・」

と怒鳴っては、

ZZZ

とすぐに眠りに落ちていた、いや、眠っていた理亜。どうやら、いろんなことがありすぎて疲れて眠っているようだ。で、先ほどの怒鳴り声も寝言・・・みたいなものでした。

 と、それは別にいいとして、月は聖良に対し千歌たちのイタリア旅行の同伴として月を選んだ理由を尋ねると、聖良、大声で月に対し、

「理由は3つあります」

と言うとその理由をあげていった。まずは1つ目。

「1つ目は、あなた(月)、イタリアに住んでいたこと、ありますね!!」(聖良)

これには、月、驚く。だって、月、実は・・・、

(僕、たしかに・・・、ここ沼津に来る前、イタリアに住んでいた・・・)

そう、月、なんと、沼津に住む前、イタリアに住んでいたのだ。月は小3・4のときに父親の転勤でここ沼津に引越してきた。その際、月のいとこである曜を通じて月の世界は広がった。でも、沼津に引越してくる前、どこに住んでいたのか。それはイタリアであった。なので、月にとってイタリアは自分の庭・・・とまではいかないまでも自分の想い出のある地、であった。また、イタリア、海外に長く住んでいたため、月は日本語以外にイタリアの言語であるイタリア語、そして、国際的にはよく話されている英語が堪能だってりする。いやゆる、マルチリンガル、なのである。月はただこのことについては曜以外知っている者はいなかった・・・のだが、それなのに、聖良はそのことを知っていた。これには、月、

(この聖良って子、まさか、私の個人情報を・・・)

と、疑い深くなるも、聖良、しごくまっとうなことをいう。月がイタリアに住んでいたことがわかった理由、それは・・・、

「月さんの言葉を発するときの口の動きからわかったのです。「r」の発音のとき、月さん、知れないうちに舌を巻いていますよ。それを見て、私、月さんが、昔、イタリアに住んでいたことがわかりました」(聖良)

そう、これも前にも書いていたが、聖良は月と同じく、昔、イタリアに住んでいた鞠莉の発音を通じてイタリア人特有の発音の仕方を知っていた。そして、聖良が千歌たちに会う直前、遠くから千歌たちを見ていた「僕っ子」こと月と出会い、その月の発音から月が昔イタリアに住んでいたことを見抜いていた・・・のだが、このときから、聖良、

(月さんなら千歌さんたちがダイヤたちと会うための必要なピースの1つ)

と、考えていた。なぜなら、千歌たちがダイヤたち3年生3人と会うために乗り越えないといけない障害が2つ、1つはダイヤたちがいるイタリアへの渡航費用、そして、もう1つはイタリアという千歌たちにとって全く知らない地に行く、ということである。イタリアの地理や言語などまったく知らない、そう、千歌たちにとってイタリアは未知のエリアだった。そんななかでただ千歌たちだけをイタリアに行かせてしまったら、日本語が通じない地、そんな中で、千歌たち6人、なにもわからないまま右往左往するだけ・・・というのは目に見えていた。しかし、月というイタリア語が堪能、イタリアの地を熟知している、いわゆる、ガイド兼通訳が同行していたら、たとえ、イタリアのことがまったくわからない千歌たちでも迷わなくて済む。ダイヤたちのところまで確実に行ける、と言えた。なので、聖良は月をイタリア未経験の千歌たちのガイド兼通訳として鞠莉‘sママに推薦したのだった。まぁ、月にとって自分の発音だけでイタリアに住んでいたことを見抜いた聖良の凄さには脱帽していたのですがね・・・。

 そして、2つ目の理由は・・・。

「千歌さんたち6人、私と理亜、そして、月さんの立ち位置です」(聖良)

そう、千歌たちとの立ち位置・・・というか、関係性、である。聖良曰く、

「私と理亜は(あまりに長い間一緒に千歌たちと過ごしてきたために)千歌さんたち6人に近づきすぎてどうしても(千歌さんたちに)道場いしてしまいますし・・・」

そう、聖良は知っていた、あまりに対象者と長い時間、一緒に過ごしてしまうと、なにかあったとき、人はどうしてもその対象者のことに同情してしまう・・・かもしれないことを。それを聖良は危惧していたのだ。一方、月はというと、

「でも、月さん、あなたなら、千歌さんたちと一緒に過ごした時間は短い。たとえ同情的になってもそこまで甘くならないでしょう。むしろ、より客観的に物事を判断、より効果的な方法で(千歌さんたちを)よみがえさせることができるでしょう」(聖良)

月は曜を除いて千歌たちと一緒にいた時間が短い。なので、そんなに同情的に物事を判断しない、そう聖良は思っていたのだ。でも、これについて、月、本当にそうであるか疑問に思ってしまった。

 しかし、聖良の2つ目の理由に関して、の本当の理由は別にあった。聖良は2つ目の理由について月に言っていたとき、こう考えていた。

(月さん、あの静真で生徒会長をしている。それを曜さんから聞いてわかりました。あの部活動がとても盛んで全国的に優秀な成績を残している、あの静真で生徒会長をしていること、それにも関わらず、生徒たちをより良い方向へと導こうとしている、そのことを聞いて、月さんなら客観的に千歌さんたちを見ることができる、そう思いました)

そう、聖良は月のことを高く評価していた。聖良、実は静真が部活動がとても盛んで全国的に優秀な成績を残していることを知っていた。そんな静真で月が生徒会長として頑張っている、生徒たちをより良い方向へと導こうとしている、そのことを曜からホテルのロビーで聞いていた聖良、彼女なら誰に対しても客観的に物事を判断できる、とみていた。静真という静岡の中でもすごい部類に入る高校、なので、生徒会長として抱える案件は一筋にはいかないものがほとんどである。さらに、そこに私怨が入ってしまうとどちらか一方の方に傾いてしまい、最悪の場合、学校がいけない方向へと進むことがありえる。そんあこともあり静真という凄い高校で生徒会長をする場合、私怨をを持ち込まず客観的に者後を判断しながら案件を進めていく必要がある。それを月はちゃんとしているのである。生徒会長としてなので、聖良、たとえ千歌たちに対しても月なら客観的に千歌たちのことを判断できる、そう考えたのである。

 さらに、2つ目の理由の付け加えとして、聖良、こんなことまで言ってしまう。

「そして、月さんの場合、以前、今の新生Aqoursの状況と同じ状況に陥ってしまった、そう私は感じていました。その経験を千歌さんたちに伝えることができれば必ず新生Aqoursをよみがえさせることができるでしょう」

そう、聖良は月に今回の千歌たちと同じ状況に陥ったことがある、そう思えた・・・のではなく、曜から聞いていたのである、ホテルのロビーのところで・・・、といっても前にも書いていたのだが、くわしいこについては別の機会に話すことにして、繰り返しにはなるが、曜と月が中3の卒業のときのこと、である。そこで月は、もとに戻った、「0」に戻った、そんな錯覚に陥るも、曜から「離れ離れになってももとに戻らない、、「0」に戻らなない、むしろ、これまでの曜との想い出、想い、キズナは宝物としてずっと残っている、(と、もう一つ、)その宝物を通じてずっとつながっている」と月に言ったことにより月は立ち直ることができたのである。で、今回の千歌たちにもそれが当てはまるのではないか、そう聖良はにらんでいた。今回、ライブの失敗というより、ダイヤたち3年生3人がいない、という喪失感により不安・心配という深き海・沼に陥ってしまった千歌たち、その心のなかには3年生がいないことにより3年生が入る前の聖良たちSaint Snowに出会う前の、もとに戻った、「0」の状態に戻った、その思いが生まれてきたのかもしれない。ならば、以前に同じことを経験している月を通じて、そして、3年生と再び会うことでその思いこそ間違いであり、本当は今でもダイヤたち3年生とのこの1年で一緒に得た想い出、想い、キズナ、その宝物はずっと残っていくこと、そして、その宝物を通じてずっとつながっていること、それに気付く、そう聖良は思っていた。事実、この後、千歌たちはイタリア旅行での出来事を通じてそのことを知ることができる・・・というか、月がルビィを更生させて・・・とこれについて話すととても長くなるので、こちらの件も別の機会に話すこととして、結果、それによって千歌たちは復活を果たす。なので、このときの聖良の見立ては間違いではなかったのだ。まぁ、このときの聖良はそうなるだろうと月に期待していたのであり、月は結果的にその期待を果たしたのである。えっ、曜から聞いたのだから曜を中心にそれをしたらすぐに復活をするのでは・・・。たしかにその通りだが、このときの曜は失意のどん底を味わっていたため、中3の卒業のときの出来事と今回の件とが同じであるということにこのときは気づいていませんでした。なので、その点についてはあまり追求しないでください。

 まぁ、2番目については長々となったが、2番目の理由を聞いて、月、なにか決意した、みたいのようだが、すぐに、月、3番目の理由を聖良に聞く。すると、聖良はすぐに月にこう尋ねた。

「あと、月さん、あなた、なにか悩んでいますか?」

 この聖良の問いかけに月は、

「これは曜ちゃんたち新生Aqoursの不調の原因にもつながっています」

と前置きしつつも次のことを話してくれた。千歌たちの学校浦の星と統合することとなった静真、その静真の大スポンサーである人物が突然その統合自体を白紙撤回しようとしていること、その理由が初戦敗退続きで部活動に対する士気が低い(とその人物が言っているのですが・・・)、そんな浦の星の生徒が(部活動が盛んで全国大会に出場する部が多い)部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すると静真の部活動に対する質が落ちてしまうこと、月たち生徒会の頑張りもあり統合白紙撤回は阻止できたもののその人物が掲げた理由に賛同する保護者が多く、それが「保護者の声」となってしまい、その声がなくならない限り浦の星の生徒は新しく作られる分校に通うことになったこと、そして、月の策略により浦の星のなかで唯一全国制覇した千歌たちスクールアイドル部Aqoursの力を借りてその声を打ち壊そうとするも昨日のライブの失敗により浦の星の生徒たちの印象が逆に悪くなったこと、そして、最後に、「「沼田のじっちゃん」という静真のなかで一番偉い人が月にその保護者の声を打ち消すためのヒントとして「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」という問いを月に投げかけてきたものの月としてはまだその問いの答えを見つかっていないこと、を。

 で、それらのことを聞いたうえで聖良は「沼田のじっちゃん」という人はかなりの策士、と褒めつつも、これらは今静真で起きている「分校問題」を解決するいい問いである、と認めていた。なぜなら・・・、

(この静真で起きている分校問題、それは、部活動における考え方、ともいえるでしょう。なぜなら、初戦敗退が続くことがあっても楽しみをもって部活をしている、それが浦の星のいいところです。それに、それは昔のAqoursにも見られました。一方、静真というところは部活動は盛んですがなにか浦の星とは違った考え方をもっているのかもしれませんね)(聖良)

そう、浦の星の部活動、それは楽しさを全面的に出したものだった。それは昔のAqours、ダイヤたちを含めた9人でのAqours、でもみられるものだった。なので、たとえ初戦敗退続きでも浦の星の部活動をする生徒たちはどんなことがあってもへこたれない、楽しさを前面に出していく、そして、なにかあったとき、生徒一丸となって楽しみながらそれをこなしていく、そんなことを平気でしてしまうのであった。一方、静真の部活動はそんな浦の星の部活動を是としない、いや、それ自体を認めていない、そんな風にみえてしまったのである、聖良にとってみれば。なので、「沼田のじっちゃん」という人が言った問い、それは浦の星と静真の部活動の違い、それを明確にしたもの、いや、本来、どちらが部活動に地する考えが正しいのか、それを問いかける、とてもいい問題、ともいえた。

 そして、聖良は月に昨日の千歌たちのライブの失敗、その舞台となった部活動報告会のときに、

「なにか変わったこと、ありませんでしたか?」

と尋ねると、月

「あっ、たしか・・・」

と前置きしつつ、昨日のライブ、部活動報告会で起きたことを語った。それは報告会で去年のインターハイで優勝した女子サッカー部の部長が言っていたことだった。

「静真の部活動、それは、「勝つことこそ正義なのです」

「その言葉を考えるとどうしても「勝利こそ正義」「勝利こそすべて」と聞こえてしまいます」

そのことを聞いた聖良、あることを思いだす。

(あっ、これって、2年前のラブライブ!のときと同じ状況・・・ですね)

と、聖良、今、静真の部活動で起きていることと2年前にラブライブ!で起きたことが同じであることに気付いた。

 そして、聖良は月に対し、

「私はその沼田のじっちゃんの問いに答えることができるかもしれません」

と前置きしつつもその問いの答えのヒントになること、あることを話し始める。2年前、スクールアイドル界では悪しき考え、「スクールアイドルにとって勝利こそすべて、勝つことが一番大事である」、そんな、「スクールアイドル勝利至上主義」、がはびこっていたこと、を。その聖良の言葉に、月、

(あれっ、これってうち(静真)と同じ状況・・・)

と、今静真で起きている状況と聖良が言ったことが同じ状況であることに気付く。

 そんな月を見てか、聖良、その状況を踏まえた上で過去に起きたことを語った。その悪しき考えにより上位にいるスクールアイドルが下位にいるスクールアイドルを見下す風潮が生まれたこと、自分としてはその風潮がいやでその風潮がなくなるまでスクールアイドルになることを控えていたこと、を。

 そして、月はその悪しき考え、「スクールアイドル勝利至上主義」、勝者が敗者を見下す風潮、それをあるスクールアイドルグループ、あのレジェンドスクールアイドルであるμ'sの高坂穂乃果や絢瀬絵里の妹、そして、矢澤にこの双子の妹といった音ノ木坂最後にしてレジェンドスクールアイドルであるそのグループが打ち砕いたことも話した、そのグループは当時はびこっていた悪しき考えとは違う、スクールアイドルを心の底から楽しむことを全面的に出したグループであり、紆余曲折しつつも1つのグループとして成長した結果、ラブライブ!決勝まで進出し、「勝利至上主義」の権現で絶対的王者だったグループと対決、その楽しさを前面に出した戦いによりそれを撃破、このあと、いろんなことがありつつもそのグループのおかげで「勝利至上主義」という悪しき考えを討ち果たすことができたことを・・・。これには、月、

(楽しむことを強調している・・・)

と、思ったのか、聖良に対しこんなことを尋ねてきた。

「聖良さん、さっきから「楽しむこと」を強調しておりますが、そこはどうなんでしょうか?」

 だが、このとき、運悪く船は沼図港に到着してしまう、と、同時に聖良は寝ている理亜を抱っこすると、

「今日は楽しかったです。今度はゆっくりお話ししましょう。それでは、また」

と言ってはそのまま船の外へと出ていってしまった。

 そんな船を去っていく聖良の後ろ姿を見て、月、あることを考えてしまう。

「楽しむこと・・・、それってとても大切なことなの・・・」

 

 月はその後、千歌たちとのイタリア旅行、ダイヤたち3年生との邂逅、その中で起きたいろんな騒動、そして、静真の分校問題を通じて楽しむことの大切さをしっていくのだが、それについては、長い、長い、そんな別のお話しである・・・といってもこの「SNOW CRYSTAL 序章」とはあとでつながりがあるのですがね・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第14話

 だが、月が言った言葉、「楽しむことを強調している」、その言葉は寝ている理亜を背負って沼津駅へ直行している聖良にとって深く心揺さぶるものがあった。なぜなら・・・、

「でも、たしかに、この私が、まさか、あの月さんに、「楽しむこと」を伝える日が来るなんて、運命とは皮肉なものですね・・・)

そう、聖良にとってまさかの静真の分校問題、特に、静真の部活動、いや、静真全体ではびこっている考え、「勝利こそすべて」、そのことで悩んでいる月に対し、まさか、自分が、「楽しむこと」、そのことについて語る日が来るとは思っていなかったのだ。なぜなら、

(だって、私こそ、その勝利のみを望んでいたのだから・・・)(聖良)

そう、聖良・・・というか、理亜を含めた、Saint Snow、それ自体、勝利を追い求めていたのだから・・・。

 そして、聖良は昔のことを、理亜と一緒にSaint Snowを結成した1年前のある日のことを思い返していた。

(たしか、私と理亜はあつこの助けを借りて理亜が入学するまでのあいだ、Saint Snowを結成する貯めに準備をしていました。なぜなら、私と理亜の夢、「ラブライブ!に優勝してA-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼってどんな景色が見えるのか確かめたい」、それを叶えるために・・・)

そう、聖良と理亜がスクールアイドルになってSaint Snowを結成した理由、それは、「ラブライブ!に優勝してA-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼりその景色がどんなものかしりたい」、その夢を叶えるためだった。そのため、聖良と理亜はSaint Snowを結成する前から聖良の幼馴染であり、大親友でもあり、音楽にも精通している、そんなあつこの力を借りて入念に下準備を続けていたのである。

 その後、理亜は聖良やあつこと同じ聖女に入学すると、当初の計画通り、聖良と理亜はSaint Snowを結成した。そして、入念にした下準備もあり、Saint Snowはスクールアイドルとしてはほかの上位のスクールアイドルに引けを取らない、いや、全国でも1・2位を争うことができる、そんなレベルの高いパフォーマンスを披露、それがSNS上で拡散され、Saint Snowの名はすぐに全国規模となった。

 だが、このとき、聖良と理亜の心のなかにあったもの、それは・・・、

 

「勝利に対する貪欲さ」

 

であった。なぜなら、聖良と理亜がスクールアイドルに、Saint Snowになった理由、それは、自分たちの夢、「ラブライブ!で優勝を果たしA-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼりその景色がどんなものか知りたい」、それを叶えたいから。ラブライブ!は、別名、「スクールアイドルの甲子園」、とも言われ、いわゆる、勝ち抜き戦、だったりする。そのため、勝ち抜くためにはほかのスクールアイドルとの戦いを制していく、勝つことが必要だったりする。なので、聖良と理亜は自分たちの夢を叶える貯めにほかのスクールアイドルと戦って勝ち抜くこと、そのことを考えるようになった。まぁ、このことに関しては、今の聖良からすると、

(これについては、私、ミイラ取りがミイラになった、そんな感じがしてとても恥ずかしい気分です・・・)

とのこと。昔、スクールアイドル勝利至上主義がはびこっているあいだ、聖良はそのときの風潮が嫌で、それがはびこっているあいだh自分はスクールアイドルなんてならない、そう考えていたのだが、いざふたをあけてみれば、自分自身が自分たちの夢のために勝つことを追い求めようとしていた、そんな自分がそこにいたのである。それはまるで、ミイラ取りがミイラになってしまった、そんな感じになってしまったのである、今の聖良からすればね・・・。

 とはいえ、そんな自分たちの夢を叶えるために勝利を追い求めていた、聖良と理亜、だったが、千歌たちAqours、まだダイヤたち3年生がまだ加入する前のAqours、まだ、千歌たち1・2年、今の新生Aqoursと同じ、1・2年6人だけのときに初めて千歌たちと聖良・理亜は邂逅するのだが、このときの千歌たちはまだ結成して・・・というか、、千歌がスクールアイドル活動を1人で始めてからまだ3か月、ということもあり、ただ、μ'sの輝きを追い求めていた、真剣にスクールアイドルというものに向き合っていなかった、そんなふわふわした状態、だったこともあり、A-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼりたい、スクールアイドルとしては真摯に向き合っていた、ほかのスクールアイドルに負けたくない、そんあ思いが強かった聖良と理亜にとって千歌たちは見下していい存在、スクールアイドルはタダのお遊び、そんな風にしか考えていない、そんな存在に見えたのかもしれない。それがTVシリーズの聖良たちSaint SnowがAqoursのことを冷たくあしらう、そんなシーンにつながったのかもしれない。

 だが、そのイベントを境にして千歌たちは生まれ変わった。そのイベントにて突きつけられた「0」という現実、それにより、千歌たちはとても悔しい思いになり、その「0」という数字をバネにスクールアイドルに真摯に向き合おう、スクールアイドルを一生懸命頑張ろう、そう心を入れ替えたのである。

 そして、ダイヤたち3年生3人が加入、パーフェクトナインになったことで千歌たちAqoursはスクールアイドルを真剣に取り組むように、いや、「0」を「1」に、「10」、その先に進もうとしていた。

 一方、Saint Snowも自分たちの夢を叶えるため、スクールアイドルに真剣に取り組んだ結果、Saint SnowAqours、ともに地区予備予選を順当に勝ち進喪ことができた。まぁ、このことについて聖良はこう思い返していた。

(私たちSaint Snowは自分たちの夢を叶えるためにがらみゅしゃに勝ち進むことのみを追い求めてきました。そのため、あまり努力をしていない、真剣にスクールアイドルに取り組んでいない、そう、まだスクールアイドルに対して真剣に取り組んでいなかった、初めて千歌さんたちと出会ったころのAqoursみたいなそんなスクールアイドルに対しては冷たい態度で接していました。これについては今となっては本当に恥ずかしいこと限りないです。あのときに出会ったスクールアイドルたちに謝りたい気分です、今は・・・)

 だが、このあと、2つのグループに天気が訪れようとしていた。スクールアイドル活動を続けるなかで、Aqoursのメンバー、特にAqoursのリーダーである千歌がμ'sみたいな輝きを追い求めていいのだろうか、と、疑問を持ち始めたのだ。そして、それを確かめるために再び東京へとAqoursは行くことになった。このとき、Saint Snowの2人である製あrと理亜も千歌の頼みで東京まで行くことになったのだ。で、μ'sのことについて聞くため、その2組は秋葉原にあるUTX学院の大広間で再び相まみえることとなった。このとき、知千歌は聖良に対しあることを聞いてきた、

「勝ちたいですか?」

と。これは千歌が地方予備予選を突破したSaint Snowを褒めたとき、聖良が言った言葉、

「でも、決勝では勝ちますけどね」

この言葉ではっとした千歌が聖良に対し言った言葉だった。これには、聖良、A-RISEやμ'sを見てスクールアイドルになろうとしたこと、(ラブライブ!で優勝した)A-RISEやμ'sのなにがすごいのか考えたがわからなかったこと、そのことを伝えた上で、

「(そのすごさがわかるには)ただ勝しかない、勝って追いついて同じ景色を見るしかないのかも」

と千歌にそう言い放ったのである。この聖良の言葉にはさすがの千歌もつい疑問に思ってしまった。

 その後、千歌たちAqoursはμ'sのすごさを確かめるべくμ'sの母港である音ノ木坂に行くのだが、そこで、μ'sの意向でそのメンバーの妹たちが結成してはラブライブ!に優勝、そして、「スクールアイドル勝利至上主義」を打ち破ったそのレジェンドグループを最後にここ音ノ木坂ではスクールアイドル活動が行われていないことを知る。結局、千歌たちもμ'sのすごさについてはわからなかったが、音ノ木坂を訪れた、そのときに知ったμ'sメンバーの考え、それを知ったことにより、μ'sの輝きと同じものを落ち求める、そのことをやめ、自分たちだけの輝きを追い求める、そのようにAqoursメンバー全員、そう心のなかで誓うこととなったのだ。

 そして、このとき、千歌と聖良、なぜかお互いに連絡先を交換していた。なぜこのようなことを行ったのかはお互いに覚えていなかったのだが、これについては聖良はこう振り返っている。

(私としては「勝ち進めること、そして、それにより、ラブライブ!で優勝してA-RISEやμ'sが見た景色を見たい」、その考えに疑問を持った千歌さんのことをまだ認めていなかったのですが、つい、「あっ、なんか、千歌さん、この前会ったとき(千歌たちAqoursと初めて会ったとき)と比べてスクールアイドルに対する熱意の強さみたいなものを感じてしまった」と思ってしまい、「もしかすると大化けするかもしれない」「もしかすると私達とは違ったものを持つようになるのではないか」、そう期待してしまいました。そんな千歌さんのすごさを予見したのでしょうか、つい、千歌さんと連絡先を交換してしまいました)

 だが、これがこれまで勝利することのみを追求してきた聖良にとってある意味転機となった。千歌たちAqoursが音ノ木坂でこれからの自分たちが目指すべきもの、自分たちだけの輝きを追い求める、そう心のなかで誓ったあと、Aqoursは東海最終予選を戦うもあともう少しで決勝に届きそうだったのだがそこで夏季大会は終戦を迎えてしまった。ただ、これについては聖良も千歌たちAqoursのことを高く評価しており、Aqoursを正式に自分たちSaint Snowのライバルとして認めたのである。なお、Saint Snowは、夏季大会、勝ち続けることのみを追求し自分たちを追い込んだ結果、北海道最終予選を余裕で突破、最終的には、ラブライブ!最終予選、初出場ながら全体の8位という輝かしい成績を残した。これには聖女のみんなをはじめ、まわりの人たちからは称賛の声と次への期待の声が聞こえてきたのだが、とうの本人たちは「8位なんてだめ!!もっと上を、ラブライブ!優勝を目指さないと・・・」という気持ちでいっぱいだった。むろん、このときのことを聖良はこう振り返る。

(私たちにとって目指すべきもくひょうはただ1つ、ラブライブ!優勝のみでした。なので、夏季大会の成績(全体の8位)では納得するわけがありませんでした。なので、冬季大会でもっと上を、ラブライブ!優勝を目指す、そのことだけを考えていました、このときまでは・・・)

 そして、ラブライブ!夏季大会が終わると、千歌たちAqours、聖良たちSaint Snow、は次の冬季大会に向けてまたスクールアイドル活動を再開した。そんななか、Aqoursのリーダーである千歌はよく千歌と同じ(Saint Snowの)リーダーである聖良に練習のことなどを相談していた、いや、それよりも、スクールアイドルについて2人は夜遅くまで語り合うこともあった。これには、聖良、こう振り返っている。

(千歌さんからはいろんな相談を受けました。スクールアイドルについても熱く語り合いました。それで、私、千歌さんのこと、見直しました。初めて会ったときはただスクールアイドルをしているだけ、そんな感じがしていました。でも、いざ連絡を取り合うと、千歌さん、スクールアイドルのこと、熱心に感がテイルんだな、スクールアイドル活動を通じてなにかを追い求めようとしている人だな、と、わかるようになりました。そんな人、私は好きですよ。なので、千歌さんと同じくスクールアイドルについて熱心になれる自分にとって千歌さんは私にとってライバル、とも思えるようになりました。でも、このとき、私は気づいていなかったのかもしれません、千歌さんと連絡を取りあうなかで私も千歌さんの影響を受けて変わっていくことに・・・)

そう、聖良、千歌とのやり取りのなかで千歌の影響を受け始めていたのだ。では、聖良にとってどんな影響を受けることになったのか、それは、

 

「スクールアイドル活動に対する考え」

 

だったのかもしれない。聖良はこれまでスクールアイドル活動について、「勝ち続けること」をモットーにしてきた。対して、千歌は「スクールアイドル活動そのものを楽しむ、みんなと楽しむ」、そのことを大事にしてきた。まったく対照的な2人であったが、その2人が連絡を取り合うなかで聖良は次第に千歌色に染められていったのである。ただ、これに関しては、聖良、こう振り返っている。

(私はこれまで「勝ち続けてラブライブ!で優勝し、A-RISEやμ'sと同じ景色をみたい」、そのことだけを考えてスクールアイドル活動をしてきました。しかし、千歌さんと連絡を取り合っていくうちに私の知らないところで千歌さんの影響を受けるようになりました。「スクールアイドル活動とは楽しむことが大事。楽しんで、元気で明るく、そんなパフォーマンスを目指すんだ!!」、そんな千歌さんの考えに次第に染まっていったのかもしれません。それは、これまで自分たちだけしか見ることがなかった私の世界を広げることにつながった、そうなのかもしれません。ただ、これについてはあのときまで私は気づきもしませんでした、あのときまでは・・・)

そう、あのときまで聖良は千歌の考えに次第に染まっていたことに気付くことはなかったのだ。なので、そのことに気付くことなく聖良はラブライブ!優勝を目指して頑張っていた。ただ、それでも聖良の心のなかにある変化が訪れていた。それは、ほかのスクールアイドルに対して気軽に挨拶を交わすように、ちょっとした会話をするようになったのだ。例えば、あるスクールアイドルに対して夏季大会のころまでは、

「・・・・」

と、なんか見下すような態度でもって接してきたのだが、千歌と連絡を取り合うようになってからは、

「あっ、おはようございます!!」

と、気軽に挨拶を交わすようになったのだ。また、ラブライブ!決勝で8位になったこともあり、ほかのスクールアイドルからは、

「あの~、聖良さん、教えてほしいのですが・・・」

とお願いされたとき、夏季大会前の聖良だったら、

「あっ、ほかのところ、あたってください」

と、完全シャットアウト、だったのだ、千歌と連絡を取り合うようになってからは、

「あっ、わかりました。どんなことでしょうか?」

と、気軽に応対するようになったのだ。これには、聖良、

(そのことを指摘されると、私、なんで、これまでの私とは違う態度をとるようになったのか少し不思議でなんか戸惑いを感じていました。これまでだったらあまり熱心にスクールアイドル活動をしていないほかの人たちのこと、無下にしてきたはずなのに、千歌さんと連絡を取り合っていくうちに次第にほかのスクールアイドルに対しても優しく接していくようになりあmした。ある意味、私にとって、大きな変化、でした。この変化については、私、本当に、なんでこうなったのか、不思議で、本当に、戸惑いを、感じていたのです。でも、それが、あとになって、それが千歌さんの影響を受けたからだとわかったときには、「あぁ、私、知らないうちに、千歌さんの影響を受けていたんですね」と思うようになったのです」

と、振り替えていた。



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SNOW CRYSTAL 序章 第15話

 そして、聖良と理亜としてはXデー、あのときが訪れてしまった。そのときとは・・・、そう、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、である。このとき、Saint Snowのライバルである千歌たちAqoursは鬼門だった東海最終予選をトップで通過、ラブライブ!決勝進出を決めていた。なので、Saint Snowも北海道最終予選を突破しよう、今まで通り勝ち続けよう、そう2人は心のなかで決意していた。だが、このときの2人はそれ以外については対象的だった。ほかのスクールアイドルに対して気軽に挨拶や応対をしていた聖良、対して、理亜は自分の殻に引きこもり、ただ勝つことだけを、自分で自分を追い込もうとしていた。それはゲストとして呼ばれたために北海道最終予選の地、函館、に来ていた、聖良たちに激励に来ていた、千歌たちAqours、に対してもだった。

 だが、運命とは残酷なものだった。それは、Saint Snowのパフォーマンスのときに起こった。最終サビ直前まで完璧なパフォーマンスをしていた聖良と理亜。だが、そのときだった。突然、理亜が転倒してしまったのだ。それは理亜のなかでなにかが起きたのかもしれない、ただ、それに巻き込まれるかたちで聖良も尻もちをついてしまったのだ。たった1回のミス、だが、これが命取りになった。このあと、Saint Snowは満足がいくパフォーマンスをすることができずに終わってしまった。結果、まさかの最終予選敗退、2人にとって残酷ともとれるものとなってしまった。

 だが、このあとの、聖良と理亜、2人の対応は違った。聖良はなにか踏ん切りが

ついたのか、そのことについてくよくよ考えることなく、これまで通りの生活を送っていた。一方、理亜は自分が犯したたった1回のミスにより、姉聖良との夢を潰してしまった、そのことを悔いているのか、学校でも1人で引きこもってしまう、そういったふさぎ込んだ対応をとってしまった。これについては、聖良、こう振り返る。

(私はあのあと、「あぁ、終わってしまいました。でも、悔いなんて残っていません。私たちは一生懸命スクールアイドルをやってきました。なのに、あの結果で終わるなんて、なんか残酷な気がします。でも、私としてはそれでよかったと思います。妹の理亜と一緒に、これまで、一生懸命、スクールアイドル活動をしてきました。そのことが、私にとって、とても大切な宝物、になりました。これからは未来に向かって頑張っていきます」と思うようになりました。これについては千歌さんの影響が、「スクールアイドル活動を楽しむことが大事」、その気持ちがあったから、あのときのこと(北海道最終予選敗退のこと)を引きずらずに前に向けて歩き出すことができたと思います。ただ、妹の理亜は、そのときのミスのショックがいまだに抱えている、そんな感じがします)

そう、聖良は千歌の影響を受けて、当初は、「勝ち続けること」、そのことだけ考えてスクールアイドル活動をしてきたのに、次第に、「スクールアイドルそのものを楽しむ」、そのものへとその考えを変えていった、それを実感した瞬間だったのかもしれない。そして、それが聖良にとって最終予選敗退というショックからすぐに立ち直ることにもつながったのかもしれない。

 一方、理亜はこのときのショックを引きづっていた。このときの理亜の思いとは・・・、それはあとで話すことにしよう。だが、理亜のふさぎ込む姿を見てか、理亜のことが心配であったルビィはそんな理亜を元気づけようとあることを決めた。それは、理亜の後悔を癒すこと。ふさぎ込んでいる理亜のなかに残っている後悔、それを癒すことこそ理亜を立ち直らせるには不可欠、といことで、ルビィは同じAqoursの1年であるヨハネと花丸を巻き込んでは理亜にある提案をした。それは、クリスマスイベのオープニングセレモニーにて姉の聖良とダイヤと一緒にライブを行うこと。そのルビィの提案を聞いた理亜、自分のなかに残る後悔を癒すためにルビィと一緒にライブをすることを決意する。そして、理亜とルビィはそれに向けて一緒に行動することになるのだが、一緒に行動していくうちに理亜の表情から、自分のなかにある後悔の念、そこからくる暗い表情、がみるみるうちに消えていった。これには、聖良、

(ルビィさんの提案に乗ってルビィさんと一緒に行動していた理亜、その姿を見て、私、「なんか理亜の表情から暗いものが取れていく」、そう思ってしまいました。そう考えると、理亜にとってルビィさんは、同じ友、いや、初めての親友、なのかもしれません。私にとってそんな理亜を見ることができて本当に嬉しかったです)

とのこと。

 そして、ついにクリスマスライブ当日が訪れてしまった。サプライズと称してルビィと理亜は自分たちの姉であるダイヤとしらに対して一緒にライブをしようと誘うのだが、姉側、いや、それを含めて、千歌たちほかのメンバー全員がルビィと理亜に対して逆サプライズ・・・、Aqours、Saint Snow、メンバー全員で一緒にライブを行う、という前代未聞のことをしてしまったのである。とはいえ、奇跡のユニット、Saint Aqours Snowはついに函館の地にて奇跡のライブを行ったのだが、このときの聖良の心のなかにある思いが生まれた。それは・・・、

(私は奇跡のユニット、Saint Aqours Snowのライブを通じてあることを知りました。Aqoursがここまで(東海最終予選まで)快進撃を続けてきた、急成長した理由、それは、メンバー全員が「スクールアイドルそのものを楽しもうとしている、精一杯、一生懸命、スクールアイドルを楽しんでいる」、そう考えているからだと。これまで私たちは自分たちの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるために、「勝ち続けること」、それを目標に頑張ってきました。けれど、それだといつかは限界を迎えるかもしれない、そして、北海道最終予選、そのときにその限界を迎えてしまったのかもしれません。その限界を迎えてしまったため、理亜にとって最悪ともとれる状態になってしまったのです。それに対して、千歌さんたちAqoursメンバーが持っている考え、「楽しむこと」は無限の力を与えてくれます。その無限の力はどんな困難でも乗り越えることができる、そんな感じがします。だからこそ、アクアは、きっと、ラブライブ!でも優勝できるかもしれません、いや、優勝できるでしょう。だって、「楽しむこと」という無限の力を持っているのですから、Aqoursのみなさんは・・・)

そう、「楽しむこと」はとても大事である。聖良たちはこれまで勝つことのみを追求してきた。しかし、それではいつかは限界を迎えてしまう。けれど、「楽しむこと」を追求していけばそれは無限のパワーとなる。なんでも乗り越えることができる、そのことに聖良は気づいたのである。

 さらに、ここにきて初めて、聖良、自分のなかに眠っていた、いや、それが自分のなかで強くなっていることを知った。それは・・・、

(そして、私のなかにも、「スクールアイドルを楽しむこと」、その気持ちが生まれていました。いや、その気持ちに気付かないまま私は知らないうちにスクールアイドルを楽しんでいた・・・、それがあのときの戸惑い、千歌さんと連絡を交換して以降、ほかのスクールアイドルたちに優しく接していたときに感じていた戸惑い・・・だったのかもしれないですね。だから、今ならこう言えるかもしれません。「あぁ、私、知らないうちに千歌さんの影響を、「スクールアイドルを楽しむ」、その影響を受けていたんですね」、と・・・)

クリスマスライブでAqoursというグループと初めて混ざりあったとき、聖良ははじめて、「スクールアイドルを楽しむ」、その大切さを知ったのかもしれない。だが、それ以前に、千歌を通じて「楽しむこと」の素晴らしさを知らないうちに徐々に知っていったのかもしれない。なので、たとえ、予選敗退というショッキングなことがあってもすぐに頭を切り替えて立ち直ることができたのかもしれない、聖良は・・・。

 一方、理亜についてだが、あのXデーのとき、理亜はそのミスについてかなりのショックを受けていた。そのために一時的にはふさぎ込むようなことが起きていた。だが、ルビィのおかげもあり、クリスマスライブを通じて踏ん切りがついたようだ。これについては、聖良、

(一時はミスしたことによりショックでふさぎ込んでしまった理亜はルビィさんという初めての親友によって立ち直ることができました。きっと理亜のなかにあったわだかたまりがとれたのかもしれません。いや、もしかしたら、自分のせいで私たちの夢が、Saint Snowという灯が消えた、それに対する贖罪、そのものが理亜のなかで昇華していった、消えていった、のかもしれません。それもこれも、ルビィさん、あなたのおかげかもしれません)

と、理亜のことを立ち直らせたルビィに感謝していた。

 そして、今、千歌たちAqours、いや、新生Aqoursで起きていることについて聖良なりに考えていた。それは・・・。

(そして、今、千歌さんたちは昨日のライブの失敗、いや、ダイヤたち3年生3人がいないという喪失感からか、不安・心配という深い海・沼の底に沈み込んでしまいました。それより、9人でいたときに感じていた、「スクールアイドルそのものを楽しむ」、そのものを千歌さんたちから感じることができなくなりました。いや、それをするくらいの心の余裕が千歌さんたちからなくなった気がします。なので、今、私ができること、それは、スクールアイドルを心の底から楽しむことができなくなった千歌さんたちをそうできるように導くこと、あのクリスマスライブを通じて「楽しむことの素晴らしさ」を千歌さんたちから私は教わりました。なら、今度は私がそれを見失った千歌さんたちに以前と同じになるように導くことにしたのです)

聖良にとって千歌たちはライバルであり仲間でもあった。そして、千歌たちAqoursから楽しむことの素晴らしさを教えてもらった。だからこそ、今度はその素晴らしさそのものをそれを見失った、いや、それを感じさせることができるくらいの心の余裕を失った、そんな千歌たちを、以前と同じように、いや、それ以上に、「スクールアイドルを楽しむ」、そのように導いていこう、それこそ、千歌たちAqoursから楽しむことの素晴らしさを教えてもらった、自分としての責務、そう聖良は思っていたのだろう。

 だが、それと同様に、聖良、ある思いもあった。それは・・・、

(けれど、私ができることはその道筋をつくるところまで。これから先は千歌さんたちの頑張り次第です。だって、「楽しむことの素晴らしさ」、それを気付かせるためにはそれ自体を経験することが大事です。私が千歌さんたちと一緒にクリスマスライブをしたという経験によって私はその素晴らしさに気づいたのですから・・・)

そう、今、聖良ができること、それは、千歌たちが再び楽しむことの素晴らしさを再発見できるようになるために、再びそのように思えるようになるために、それを経験できる、その場所へと導くところまで。だって、聖良がクリスマスライブで初めて楽しむことの素晴らしさに気づいたときと同様に千歌たちが再びそのことに気付くためにはそれを経験することが唯一の手段だから。なので、当事者である千歌たちがその経験できる場所へと導くことこそ聖良が千歌たちにできる唯一の手段であった。

 そして、聖良は月に対してこう思っていた。それは・・・、

(そして、今の千歌さんたちと同様に、あの月さんも、「勝利こそすべて」、その文言のせいで心に迷いが生じていました。いや、静真のなかでその文言が学校全体を支配している、そう思ってしまいました。けれど、それ以上に、大切なこと、「楽しむこと」、そのことを月さん自身が気付くことこそ静真という学校が生まれ変わる唯一の手段かもしれません。そんな意味でも、千歌さんたち復活のため、そして、静真という学校が生まれ変わるため、このイタリア旅行、月さんにとって、試金石、いや、次へのステップへ進むための試練、なのかもしれませんね)

聖良は不安・心配という深い海・沼の底に沈んでしまい以前みたいなスクールアイドルそのものを楽しむことができなくなった千歌たち、それを復活させるために月を千歌たちのイタリア旅行へと同行させることを提案し、鞠莉‘sママ(千歌たちの旅のスポンサー)に承認された。その月も、今の静真の現状、「勝利こそすべて」、その考え方がはびこっている、そのことで悩んでいた。だが、このイタリア旅行を通じて月が楽しむことの素晴らしさに気付くことができれば今の静真の状況は一変するだろう。だが、それについては月がそのことに気付くことができるかどうかにかかっているともいえた。もし、月がそのことに気付くことができなかった場合、それは静真の状況はより一層悪化する、「勝利こそすべて」の考え自体が静真にとって最悪ともいえる事態を引き起こしてしまう、そういってもいいだろう。それは、これから先、静真に統合される、千歌たち、浦の星の生徒たちにもいえた。なので、月の行動次第で、千歌たちの未来も、静真の未来すらも、決まってしまう、そういう意味で、月にとってイタリア旅行は試金石だといえた。むろん、千歌たち新生Aqours復活についても、月の行動、心がけ次第、ともいえた。

 そして、再び、聖良はそんな月に対して、「楽しむこと」をなぜ強調したことについてもふれた。

(そして、私は今さっきまで月さんに「楽しむこと」を強調していました。私はこれまで自分たちの夢を叶えるために、「勝利」を、「勝ち続けること」を、追い求めてきました。しかし、Aqours、特に千歌さんと交流していくなか、私が知らないうちに楽しむことの素晴らしさを、「スクールアイドルそのものを楽しむこと」、そのものを考えるようになった、感じられるようになりました。ただ、それを知ったのはあのクリスマスライブのときでした。でも、私は知らないうちにそんなふうに考えるようになったために理亜ほどそのとき(北海道最終予選のこと)のショックを受けずに済みました。いや、それ以上に、楽しむことの素晴らしさ、大切さを感じることができたのです。そして、今、それに対する恩返しを、楽しむことができなくなった、いや、楽しむことすら忘れてしまった、そんな千歌さんたちを私は導こうとしています。そのための刺客として、今の千歌さんたちと同様に楽しむことの素晴らしさに気づいていない、いや、「勝利こそすべて」、そのまやかしによって道に迷っている月さんを送りました。その月さんに私は「楽しむこと」を強調して言いました。それは昔の自分、「勝利」のみを追求していた、そんな昔の自分では考えられないことかもしれません。けれど、今の私なら言えます、「楽しむこと」、それこそ素晴らしい、それは「勝利」を目指す以上に大切なものである、と」

そう、昔の聖良なら「勝利こそすべて」と言うかもしれない。しかし、今の聖良なら違う。「勝利」以上、に心の底からスクールアイドルを楽しむ、楽しむことこそ大事である、そう聖良は言うかもしれない。なぜなら、千歌との交流によって新しく生まれ変わったNew聖良だったから、かもしれない。クリスマスライブを通じて、いや、千歌との交流を通じて楽しむことの素晴らしさを徐々に知っていった、そんな聖良だからこそ、今の聖良の姿、New聖良、なのかもしれない。そんなNew聖良は昔の自分と同じく、「勝利こそすべて」、その文言によって道に迷っている月に「楽しむこと」を強調して言った。それは、昔の聖良だったら考えられなかった、New聖良だからこそいえること、なのかもしれない。そして、月を通じてNew聖良はは昔みたいに「楽しむこと」ができなくなった千歌たちをそれができるように導こうとしていたのである。それはある意味、聖良の成長、なのかもしれない。

 そして、聖良は自分の後ろで寝ている理亜を見てこう思った。

(けれど、理亜はこれまでどう思ってここまでやってきたのでしょうか。私みたいにあのクリスマスライブで楽しむことの素晴らしさを知ったのでしょうか。いや、もしかすると、まだ、昔の呪縛から解き放たれていないのかもしれません。けれど、そのことについては理亜からそんな相談を受けたことがありません。私はいつもそばにいますのに、そんな相談はしてきていません。けれど、今でも理亜は苦しんでいる、そう私には感じております。けれど、それについては理亜は一言も話してくれません。理亜、私には今の理亜の気持ちがわかりません。理亜、私はあなたにどう接すればいいのでしょうか・・・」

聖良は千歌によって新しく生まれ変わることができた、クリスマスライブ、いや、千歌との交流によって・・・。一方、理亜はどうなのだろうか。今でも理亜は苦しんでいる、そのことは今の聖良もわかっていた。今日も千歌たちの(聖良たちからみて)ふがいないパフォーマンスを見て、理亜、不機嫌になるどころか1番の親友であるルビィにくってかかるくらい荒れていた。けれど、今の聖良からしても、なぜ、理亜が苦しんでいるのか、理亜の苦しめているものの正体がなんなのか、わからないままだった。これについてはさすがのパーフェクトヒューマンである聖良からしてもわからずじまいであった。そのため、それが今の聖良にとって悩みの種ともいえた・・・。

 

 とはいえ、聖良は東京の宿に到着すると理亜を寝かしつけ、ダイヤに対してこうメールを送った。

「ダイヤ、近いうちに千歌さんたちがダイヤたちに会いにイタリアに行く予定です。どうか、千歌さんたちを、昔のAqoursみたいに、心の底からスクールアイドルを楽しむことができる、そのことができるように導いてあげてください」

 その後、ダイヤは聖良からのメールを受け持ってまもなく、果南経由で千歌たちからもイタリア旅行に行く旨のメールが届いていたことを知った。それにより、ダイヤ、果南、鞠莉は鞠莉‘sママの追っ手を振り切りつつも千歌たちと再開する手筈を整えていった。こうして、千歌たちは月と一緒にイタリアへとダイヤたち3年生3人に会いに日本を旅立っていったのだが、このあとに起こる、月、静真、を巻き込んだ大騒動が起きるとは、このときの聖良は知る由もなかった。その大騒動については・・・、のちの機会に、長い、長い、そんな話として話すことにしよう・・、というか、すでに、その話、投稿しているのですがね・・・。

 

 と、千歌たちの話はここまでにして、聖良と理亜の話に戻ることにしよう。沼津で、不安・心配という深い海・沼に沈み込んでしまった千歌たちを見てしまった聖良と理亜。その翌日・・・、

「理亜、なんか、今日起きてからずっとむっとした表情をしていますが、大丈夫でしょうか?」

と、聖良が理亜に言うと、理亜、なんか不機嫌そうな表情で、

「姉さま、私は大丈夫です!!」

と、怒り口調で言ってしまった。ただ、そんな理亜の姿に、聖良、

「理亜・・・」

と、逆に妹理亜のことが心配になってしまった。

 まぁ、聖良が理亜のことを心配するのも無理ではなかった。だって、理亜、朝起きてからずっとむっとした表情・・・、いや、不機嫌そうな表情をしていたのだ。これには、聖良、

(理亜、本当に大丈夫でしょうか・・・。なんか悪いものを食べたのでしょうか・・・)

と、ずっと理亜のことを心配していた。であるが、とうの理亜は自分の姉である聖良にはなにも言わずにただずっと不機嫌な表情をしているのみだった。なので、理亜、別にほかのものに怒りをぶつけたりほかの人に対して言いがかりを付けたりすることはなかった。ただ、それゆえに、聖良にとってみればこの理亜の表情は不気味ともいえた。そのためか、聖良、終始、理亜のご機嫌をとろうとするも、理亜はずっと不機嫌な表情のままだった・・・。

 

 こうして、聖良と理亜の卒業旅行は幕をおろした。だが、聖良にとってみれば、旅行前、あつこやしのっちといったユニットメンバーに対してきつい練習をさせようとしていた、そんな根気詰めていた理亜の息抜きにもなれば、と思って理亜を誘ったのに、結局のところ、理亜の表情はずっと不機嫌のまま、だった。これには、聖良、

(理亜、本当に大丈夫でしょうか?明日から学校というのに、旅行に行く前以上に険しい表情に、不機嫌な表情に、なってしまいました。果たしてあつこたちへの態度は変わるのでしょうか。私、とても心配です・・・)

と、理亜のこと、そして、明日からその理亜と一緒にスクールアイドルの練習を再開するあつこたちのことを心配してしまった。

 だが、しかし、この旅行により、理亜、そして、あつこたちに最悪ともとれる状況が訪れようとしていた・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第16話

 聖良と理亜が卒業旅行から帰ってきた日の翌日の放課後・・・、

「さぁ、今日から練習、再開!!」

いつもの通り、学校の校門前に集まった理亜とあつこ、しのっちの3人、そこで理亜が2人に対して言うも、理亜、なんか険しい表情であつことしのっちをにらむ。これには、あつこ、

「どうしたの、理亜さん?なにか私たちを疑うような目をしているけど・・・」

と言ってしまう。そう、理亜、険しい表情・・・とういか、あつことしのっち、2人に対し鋭い目でにらんできたのだ。

 そして、その理亜は2人に向かって鬼の形相で怒り口調になりながらもこう言ってしまう。

「2人とも、私が旅行にいっているあいだ、練習、さぼっていたでしょ!!」

この理亜の発言に、あつこ、知らぬ顔で、

「いや、私としのっち、理亜さんが旅行にいっているあいだも練習していました」

と答えてしまう。まぁ、こおではうそをついてでも「練習をしていた」と言うしかないのだろう。だって、「練習していない」、なんて答えたら理亜がさらに怒るのは目にみえているから。

 だが、理亜、あつこの答えに対し疑っているのか、ギアをあげてさらに怒ってしまった・・・。

「あつこ、うそ、つかないで!!2人が練習していなかったのは、私、わかっているんだから!!」

これには、あつこ、理亜がそんなことを知っていることに、

(えっ、うそ・・・)

と驚きつつもポーカーフェースを貫こうとしたのか、理亜に対しあることを尋ねてみた。

「へぇ~、旅行中にここにいなかった理亜さんがなぜそんなことを知っているのですか?」

このあつこの質問に、理亜、さらにギアをあげてこう答えた。

「みんなから聞いてきた!!私が旅行中、2人がスクールアイドルの練習をしている姿、誰もみていない、そう答えてくれた!!」

この理亜の言葉に、あつこ、

「へぇ~、とても人見知りの理亜さんにしてみればほかの方に聞いてまわること自体かなり大変だと思いますがね・・・」

と、理亜に嫌味を言いつつもある事実を理亜に突きつけた。

「ですが、理亜さん、私としのっち、こうみえても、スクールアイドルに必要な発生練習をしていたのですよ。だって、ここ最近、発声練習なんてしてこなかったでしょ!!」

そう、ここ最近、スクールアイドルに必要な発生練習をしていなかったのだ。ここ最近していたのは、そう、雪がいまだに積もっている函館山での短距離ダッシュだけである。なので、スクールアイドルにとって欠かせない、歌唱、その基礎練習となる発声練習をあつことしのっちはしていた・・・のだが、これには、理亜、激怒してしまう。

「発生練習・・・って、ただ、カラオケに行っただけでしょうが!!あつこ、うそ、つかないで!!」

そう、あつこがいう発声練習、なんと、「カラオケ!!」、だったのだ。ただ、これについては、あつこ、こんなことを言いだしてきた。

「カラオケだって立派な発声練習です!!それにストレス発散にもなります!!」

まぁ、たしかに、カラオケだって立派な発声練習・・・になるのかもしれない?だって、声をだすことには・・・歌を歌う・・・には間違いない・・・のかなぁ・・・。

 でも、頭に地が上っている理恵にとってみればあつこの主張なんてただの言い訳でしか聞こえていなかったのか、理亜、

「あつこ、言い訳なんて見苦しい!!カラオケはただのお遊び、でしょうが!!」

と、完全にブチギレ状態・・・。まぁ、理亜からしたらカラオケも立派なお遊びの1つでしかみえていないのかもしれない。ただ、これについては、あつこ、

「でも、カラオケも立派な・・・」

と理亜に言い返すも、理亜、

「そんなうそ、聞きたくもない!!」

と、あつこの言葉を一蹴してしまった。

 そして、理亜は理亜が旅行前に決めたきつい練習をしていなかったことについて怒鳴るようにこう言い切ってしまう。

「あのね、練習というのは1日休むともとに戻るのに3日ぐらいかかるの!!スクールアイドルもそれと同じ!!1日休んだらもとに戻るまで3日以上かかってしまう!!つまり、1日でも休んだら3倍以上もの努力が必要なの!!」

なんと、理亜、とんでもないことを言いだしてしまう。そりゃ、1日休んだら3日かかるってよくいうけど、人は休むことも大切・・・なのだが、今の理亜からしたら、そんなもの、机上の空論、としかみえていないのであろう。だって、今の理亜はまるでどこかのスパルタ教師にみえてしまうのだから・・・。

 と、まぁ、とんでもないことを言った理亜にあつことしのっちはともに、

「・・・」

と、無言、いや、唖然となるも、そんなもの、理亜は気にせずに2人にに対してこんなことを命令してきた。

「あつこにしのっち、さぼった分まで練習するから、覚悟してなさい!!さぁ、函館山まで、長距離走、する!!」

この理亜の命令にあつことしのっちはただただ従うしかなかった。ここで反抗したら、火に油を注ぐ・・・、いや、火山に隕石を叩き込む、そんあことになりそうだから・・・。

 

 そんなわけで、あつことしのっちは理亜に強制的にいつもの函館山の麓まで走らされてしまった。そして、3人が函館山の麓に到着すると、理亜、あつことしのっちに対し、こんなことを言ってきた。

「あつこ、それに、しのっち、これから練習に入るけど、さぼった分まで取り返す、いや、それ以上にするから、覚悟、していて!!」

 そんな恐ろしい前置きを言いつつ、理亜、さらに恐ろしいことを言ってきた。

「今日は前よりもちょっと長いから覚悟していて!!これまでは2番目の観音様のところがゴールだったけど、今日からは、その倍、3番目の観音様までダッシュで走るからね!!」

これには、しのっち、

「え~、3番目の観音様、って、かなり距離、あるよ・・・」

と、理亜の言葉に絶句してしまう。だって・・・、

「理亜さん、少し考え直してください!!3番目の観音様って2番目の観音様との距離の倍じゃない・・・。それって、山の中腹までダッシュして走ることになるじゃない・・・。それって無謀過ぎ・・・。それに、これ、もう、短距離、じゃなくて、中距離、になってしまうよ・・・」(あつこ)

そう、あつこがこう指摘しても不思議ではなかった。麓から3番目の観音様までのダッシュ、それは麓から2番目の観音様の距離の倍もの距離を走ることを意味していた。ちなみに、3番目の観音様であるが、2番目の観音様がある場所、その先に車道と細長い山頂へと続く登山道が交差する場所がある。その交差する場所からその細長い登山道へと入って少しいった先に設置されている。ただ、その場所、実は、函館山の中腹の位置にあるといっても過言ではなかった。なので、あつこのご指摘通り、もうこれは、短距離ダッシュ、ではなく、中距離ダッシュ、となるので、かなり体力が必要ともいえる。また、それに加えて雪も積もっているのだら、もう人間の体力の限界すら越えるくらいの体力が必要、ともいえた。なので、もうここまできたら、地獄の・・・でいうより、絶望に満ちた練習・・・としかいえなかった。いや、この練習自体、無謀、なのかもしれない。

 だが、そんなあつこの指摘なんて完全無視!!、あのか、理亜、あつことしのっちに対し、

「そんな無駄話なんてしないで、さぁ、3番目の菅野さんまでダッシュ!!」

と、無理やり短距離・・・、いや、あつこの言う通り、中距離ダッシュ、をさせてしまった・・・。

 

 ただ、1本目、2本目はなにごとも起こらずに終えることができた。雪が積もっているとはいえそれに注意しながら3番目の観音様までダッシュ(ただし、全力ではなく、転倒しないように注意しながらほどほどの力でのダッシュ)をあつことしのっちはしていた。

 とはいえ、そんな自分の感覚を研ぎ澄ましながらのダッシュ、なので、たった2本のダッシュであったとしても、あつこ、しのっち、ともにほどんどの体力をもっていかれてしまった、いや、精神的にも体力的にも相当きつい、それくらい、とても疲れた、立つのがやっと、そんな状態になってしまった。ただ、2人とも全力を出していない、そんなダッシュをしていることに気に食わないのか、理亜、相当疲れている2人に対し、剣幕を起こすくらいの大声で、

「2人とも、もっと真面目にやって!!次、全力でダッシュ、しないと、罰、与えるから!!」

と、脅迫めいたことを言ってしまった。これには、あつこ、

(う~、このままだと、理亜さん、私たちをさらに苦しめてしまう。ここは理亜さんの言う通りにしましょう・・・)

と、ついに白旗をあげたのか、仕方なく、次のダッシュ、3本目のダッシュは全力でいくことに決めた。

 そして、この3本目のダッシュのときについに事件が起きてしまった。いや、誰から見ても起こっても仕方がない、そんなことが起きてしまった。理亜、あつこに対し、

「はいっ、3本目のダッシュ、いく!!あつこ、はいっ!!」

と言うと、あつこ、

「どりゃ~」

という大声とともに全力で3番目の観音様めがけて全力でダッシュをする、そんなときだった。あつこ、なんと、1本目、2本目のダッシュの際に踏み方溜まっていたアイスバーン状態となっていた雪に足が取られてしまったのだ。これには、あつこ、

(う~ん!!)

と、必死になって転倒しないようにバランスをとろうとするもそんなあつこの頑張りの甲斐なく、

(あれっ?)

と、あつこが思うくらいふわっとあつこの体は宙を舞った、いや、足を滑らせてしまった、そういってもいいだろう。あつこは雪に足を滑らせてしまい、あつこの体は一瞬宙を舞ったと思うとそのまま地面へとたたきつけられようとしていた。

 そんなあつこ、一瞬、あつの脳内にある光景が浮かび上がった。それは・・・。

 

「もっと頑張らないと、もっと頑張らないと!!そうじゃないともとに戻らない!!あのときみたいに立派な成績なんて残せない!!あのときみたいに勝ち続けることなんてできない!!みんなの期待に応えることができなくなる!!」

そう思ったあつこは昔の栄光を取り戻したい、昔みたいに優秀な成績を残したい、それを期待している自分のまわりにいるみんなの声に応えたい、そんな思いからか、今まで以上にきつい、あつこの体が壊れるかのような過酷な練習をするあつこの姿があった。

 そして・・・、

(あともう少しで、昔の私みたいな、誰もが納得がいく、そんな成績が残せる!!)

と、昔の、栄光があったときの自分と同じ、自分に期待している、そんなまわりのみんなが納得がいく、そんな演技をしている、そう自分言い聞かせていたあつこ、だったが、最後の締めの大ジャンプをして跳ぼうとしていた、そのとき、

(さぁ、これを決めたら優勝だ!!)

と思った瞬間、

(あっ、体が・・・いうことを・・・きかない・・・)

とそう思えるくらい、これまでの無謀な練習がたったのか、その練習の疲れがどっと出てしまったのか、それはわからない、でも、あつこの体は一瞬、バランスを崩してしまう。それでも、

(なんとか体のバランスをもとに戻さないと!!)

と、あつこ、諦めずに体勢をもとに戻そうとするも体は言うことをきかない、。そのため、

(えっ!?)

と、一瞬、あつこの体が宙に舞った・・・と思うとすぐに、

(うっ、痛い!!)

と、あつこの体はそのまま地面に、いや、氷の上にたたきつけられてしまい、そのまま、あつこの体はたたきつけられたときのスピードを保持したまま氷の上を滑っていき、ついには・・・、

バタンッ!!

という音とともにあつこの体は氷を取り囲むように築かれていた壁へと叩きつけらえてしまった、その光景、さらには、

「うぅ、あつこには期待していたのに・・・」

「なんであんなことが起きたんだ・・・」

「まさか、大きな大会で転倒して大けがをするなんて・・・」

と、自分に期待していたものの大きな大会で大けがをしてしまい半引退状態になってしまった、そんなあつこの姿に大きく落胆してしまった、いや、それ以上に、

「お前に期待して損した!!」

「もっと頑張ればよかったのに・・・、お前の頑張り不足だ!!」

と、あつこに言いがかりをつけるまわりの人たちの光景だった。

 

 そんな光景が走馬灯のように自分の脳内を駆け巡ったためか、あつこ、一瞬、

(このままだと前と同じことが起きてしまう!!このままだと、私のスティグマ、開いてしまう、悪化してしまう!!)

と思うと宙に舞った自分の体を半回転させては自分の背中が地面にぶつかるような姿勢をとる。そして、そのまま柔道の受け身の体勢をとると、次の瞬間、

ドスッ!!

という鈍い音とともにあつこの体は地面にたたきつけられた・・・のだが、このとき、あつこ、

(い・・・、痛く・・・ない!!)

と、体をぶつけたときの痛みがないことに気付く。どうやら、あつこ、とっさにした受け身の姿勢、そして、ダッシュでアイスバーン状態になった場所はあるもののあつこが地面にたたきつけられたときの衝撃を和らげるくらいの雪が残っていた、のがよかったのかもしれない、あつこは地面にたたきつけられたものの、ケガどころかたたきつけられたときの痛みすらない、そんな奇跡的なことが起きていた。

 しかし、これが理亜にとって気に食わないものとなってしまった。理亜、足を滑らせて宙を舞うあることを見て、

「あつこ!!」

と、あつこに対して声をかけるも、あつこ、地面にたたきつけられた・・・のだが、なにごともなかったかのように、

「えへへ、転んじゃった!!」

とはいかみながらそう言うと平然とした姿でその場から立ち上がった。

 だが、そんなあつこの姿を見てか、理亜、

「あ~つ~こ~!!」

と、怒りに身をまといながらあつこに近づくと、あつこ、

「あれっ、理亜さん、どうしたの?」

と、なにごともなかったかのような感じで理亜に接する。すると、理亜、

「あつこ、なんで転んでしまっわけ?一瞬ひやっとしてしまった・・・」

と転倒したあつこのことを心配する素振りをみせると、あつこ、

「いや~、なんか、疲れてしまっていたのかもしれませんね。一瞬気が緩んだみたいですね・・・」

と、理亜に対し、笑いながら言った。

 しかし、理亜の次の行動はあつこにとって驚くものだった。理亜、笑いながら答えるあつこに対し、誰もが驚くような大声で、

「あつこ、なんで転ぶわけ?それってただの疲れから起きたわけじゃない!!この練習に取り組んでいなかったから起きたわけ!!本当に真剣に取り組んでいたらそう簡単に転ぶわけ、ないから!!」

と、怒鳴るように言ってきた。これには、あつこ、

「り、理亜さん・・・」

と、一瞬たじろいてしまう。だが、理亜の咆哮は止まらない。たじろいだあつこに対し、理亜、集中砲火を浴びせ続ける。

「あつこ、あなたは真剣にスクールアイドルになろうとしているわけ?私にはそう見えない!!だって、真剣に取り組んでいたなら、転ぶってこと、起きないから!!真剣にやっていないから、一瞬、気が緩んでしまったから転んだわけ!!わかる、あつこ!!あなたが真剣に練習に取り組んでいたら未然に防ぐことができたわけ!!それくらいあつこはスクールアイドルに対して真剣に取り組もうとしていない、ただのお遊びにしか思っていない!!」

この理亜のあつこに対する口撃に、あつこ、

「り、理亜さん・・・」

と唖然となりつつもすぐに言い返す、ある事実を突きつけるために。

「理亜さん、私に対していろんなことを言っていますが、私からしたら、この練習、とても無謀といえる、いや、取り返しがつかないことをしている、そんな練習をしています。もし、この練習を続けていたら絶対に後悔します!!そんな練習を理亜さんは私たちに強要しているのです!!いや、もしかすると、理亜さんの好きなスクールアイドル活動ができなくなる、それくらいの練習を私としのっちにさせようとしているのですよ!!理亜さん、そのことを自覚してください!!」

 だが、理亜、そんなあつこの忠告なんて無視!!、すぐにあつこに対しこんなことを言いだす。

「あつこ、あなたたちがいけないことをしていたからこの練習をしているわけ!!私の言う通り、あの練習メニュー(理亜が卒業旅行前にあつことしのっちに対し突きつけた旅行期間中に2人がやるべき地獄の練習メニューのこと)こなしていればよかったわけ!!それを2人はさぼってしまった、そのさぼった分を取り返すため、こんなきつい練習をしないといけない!!わかるでしょ、あつこ!!」

むろん、これについては、あつこ、売り言葉に買い言葉、ということで、理亜に起こりながら反論した。

「理亜さん、あの練習メニュ、スクールアイドルを始めた、いや、普通のスクールアイドルの高校生すら、普通に無理、ともいえるものです!!それを私たちにさせるなんて、理亜さん、鬼、ですか?いや、3番目の観音様までダッシュをやること自体、理亜さんは鬼です、悪魔です!!大ケガではすまない、そんなレベルではありません!!」

 そんなあつこの反論に火がついたのか、理亜、完全にキレてしまった。なので、理亜、あつこに対しこう言い返してしまった。

「あつこ、こんな練習をしないといけない、それくらいのことをあつこたちはやったわけ!!私が(卒業旅行前に突きつけた)練習メニューをこなしていれば今日の練習(3番目の観音様までのダッシュ走)を平気でこなすことができる!!けれど、それをあつこたちはさぼった、いや、それ以上に、今日の今日までお遊び感覚でスクールアイドルの練習をしてきた、そのつけがまわっているわけ!!だからあつこは大きく転倒してしまった!そのことを、あつこ、反省しないなんて、やぱっぱりあつこは本当にいい加減にすぎる!!スクールアイドルを甘く見過ぎている!!」

むろん、あつこ、ここで黙ってはいられない。理亜に対し、

「理亜さん、黙って聞いていれば・・・」

と言い返そうとしていた。

 もうここまできたら、理亜とあつこ、戦争状態に突入したといっても過言ではないだろう、そんな一発即発の状態に2人は陥ってしまった。これには、しのっち、

「理亜ちゃん、あっちゃん、少し落ち着いて・・・」

と、2人のあいだを取り持とうとするも2人のあいだがこのような状態に陥っているためか、

「わ、私、どうしたらいいの・・・」

と、おどおどし始めてしまった。

 もうここまできたら誰も、あつこと理亜、2人を止められない、そう思えたときだった。突然、

「理亜にあつこ、2人ともにらみ合うのはやめなさい!!」

と、理亜とあつこ、2人ともよく知っている声が聞こえてくる。その声に反応したのか、理亜、その声がする方を向くと、その声の主の名を呼んだ。

「ね、姉さま・・・」

そう、突然2人を止めに入ろうとしてきたのは・・・聖良だった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第17話

「う~ん、少し理亜のこと、心配になってきてしまいます・・・」

卒業旅行のときから不機嫌そうな表情をしていた理亜、そのことに聖良は卒業旅行から帰ってきてからずっと理亜のことが心配でたまらなかった。

 そんな心配があったためか、聖良、旅行から帰ってきてから次の日、つまり、今日、その日の昼、

「う~、このままだと落ち着きません・・・。あんな理亜の表情、それが放課後のときまで続くとなると、理亜、また、あつこたちに対して暴走しないか心配になってしまします・・・」

と、聖良、理亜に対する心配の度合いが大きくなってしまった。

 そして、ついに聖良は行動に移す。聖女が放課後の時間を迎えようとしていたとき、

「このままでは理亜のことが心配で心配で夜も眠れなくなります。もうこうなったら、理亜の様子、見に行くしかありません!!」

と、聖良、突然、こんなことを言いだしては実家を飛び出してしまった。聖良、即断即決の娘である。自分がそうであると考えるとすぐに行動に移す、まさしく、即断即決の娘、それは別の意味であの静真の才女で曜のいとこで曜の大親友、渡辺月と同じくらい、聖女の才女、ともいえる聖良のすごいところである。

 まぁ、そんなわけで、自分の家から聖女まで歩いて数分・・・ということもあり、聖良、すぐに聖女に到着するとすぐ近くにいた聖女の生徒に対し、

「あの~、妹の理亜のことで聞きたいのですが・・・」

と尋ねると、その生徒、

「あっ、聖良様・・・」

と、聖良に対し目をキラキラさせながら見つめてしまった。そう、聖良は聖女において月と同じくらい、才女、として有名だった。Saint Snowとしてスクールアイドル活動をしつつ、勉強も、スポーツもできる、眉目秀麗、才色兼備、とは聖良のことをいう、それに加えて、スクールアイドル活動を通して聖女の名を全国に轟かせてくれた、そんなこともあり、聖良は学校一のスター、ともいえた。その聖良から声をかけられた、となれば、その生徒が目をキラキラさせたとしても仕方がなかった。

 とはいえ、そのことを今の聖良にとってみればどうでもよく、その生徒に対し、聖良、

「あの~、すみませんが、妹の理亜はどこに行ったか知りませんか?」

と尋ねてみると、その生徒、少し思いだしては、

「あっ、妹の理亜さんでしたら、あつこさんたちを連れて函館山へと向かって走っていきましたよ」

と、正直に理亜の居場所を教えてくれた。これには、聖良、

「教えてくれてありがとう」

と、その生徒にお礼を言うとその生徒も、

「はいっ、どういたしまして!!私も聖良さんの役に立てたのであれば光栄です・・・」

と、あこがれの聖良の役に立ったことに天にも昇る気持ちになっていた・・・。

 その後、聖良はその生徒が教えてくれた通り、函館山の麓まで歩いていくことに。その途中、聖良はあることを考えていた。それは・・・、

(この前と同じ場所・・・。もしかすると、理亜、また、前と同じことをしている、暴走している、のかもしれませんね・・・)

そう、前と同じ、理亜と一緒に卒業旅行に行く前、あつこや(旅行前に理亜のユニットから抜けた)yoppiたちに課していた、雪の函館山での短距離ダッシュ走、そんあ過酷な練習を理亜は理亜のユニットに残ったあつこやしのっちに対してまたもや課そうとしている、そんな予感をしていたのだ。

 そして、聖良、ついに函館山の麓に到着・・・。すると、目の前に繰り広げられていたのは・・・、

「あつこ、こんな練習をしないといけない、それくらいのことを・・・」

とあつこに迫る理亜、そして、

「理亜さん、黙って聞いていれば・・・」

と、理亜に反抗するあつこ、さらには、

「あぁ、私、どうしたら・・・」

とおどおどするしのっちの姿だった。これには、聖良、

(このままだと2人が喧嘩をしてしまう!!それだけは止めないと!!)

と、2人のあいだに戦争が起きてしまう、それだけは阻止しないと・・・、ということで、聖良、ついに2人のあいだに割って入った、

「理亜にあつこ、2人ともにらみ合うのはやめなさい!!」

と、大声をいいながら・・・。

 

 突然の聖良の乱流、これには、理亜とあつこ、2人とも、

「ね、姉さま・・・」(理亜)「聖良さん・・・」(あつこ)

と、唖然となってしまう。聖良、そんな2人に対し、

「理亜、これ以上、あつこやしのっちさんに対し、無謀といえる練習を強要するのはやめなさい!!あつこ、少しは落ち着いて!!あんまりかっとなると暴力沙汰に発展しかねないよ!!」

と、2人を叱るように言うと、2人とも、

「「は、はい・・・」

とおとなしくなってしまった。

 とはいえ、戦争状態へと発展しかねない、そんな2人を止めたということで、しのっち、

「あ、あの・・・、聖良先輩、2人を止めてくれてありがとうございます。私だったら2人を止めることができませんでした」

と、聖良に対し感謝の言葉を送った。

 その2人を止めた聖良だったが、このとき、こんなことを考えていた。

(しかし、なんで理亜はまた暴走しかけたのでしょうか?なにか理亜のなかでなにか心配事があるのでしょうか?それとも、なにかに対し理亜は切羽詰まるもの、自分で自分を追い込もうとするものがあるのでしょうか?)

そう、聖良、このとき、あの温厚なあつこを怒らせるくらい暴走しようとしていた理亜の心中のことを心配していた。あの理亜が暴走するくらいなにか理亜の心のなかになにかが起きている、それによって理亜は苦しんでいる、そのことを聖良は心配していたのだ。

 まぁ、そういうことなので、聖良、

(今こそ理亜の本心を聞くいい機会ではないでしょうか?)

と、今ここで理亜の本心を聞き出すちょうどいい機会、と思ったのか、理亜に対しこう尋ねてみた。

「理亜、なにかに対して苦しんでいる、そう私には思えてなりません。理亜、正直に答えてください、理亜はなにに対して不安を感じているのですか?言ってもらえたら・・・」

 だが、そんな聖良の質問を遮るかのように理亜は実の姉である聖良に対しこんなことを言ってしまう。

「姉さま、姉さまには関係ないことです!!これは私が解決しないといけないことです!!この私にしかできないことです!!」

その言葉のあと、理亜は聖良に背を向けるとぶつぶつとこんなことを言いだしてきた。

「私は必ず成し遂げないといけない、私のミスのせいで私は姉さまとの夢を・・・、私は必ずしないといけない、姉さまの分まで、この私が・・・、この私が・・・、Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・、いや、それ以上のものを・・・」

これには、聖良、

「理亜・・・」

と、理亜のことを心配そうに理亜に言うと、理亜、

「私は・・・、私は・・・、姉さまの分まで・・・、私のミスのせいで・・・、姉さまと叶えることができなかった・・・、あのルビィたちが成し遂げてしまった・・・、ラブライブ!優勝・・・、私たちの夢を・・・叶えないと・・・、私がしないと・・・、いけない・・・。そのための・・・、勝ち続けるための・・・、ユニット作りを・・・、私は・・・、私は・・・、しないと・・・いけない・・・。そうじゃないと・・・、姉さまに・・・申し訳・・・ない・・・」

とぶつぶつ言ってはいきなり大声をあげてこう叫んでしまった。

「私は・・・私は・・・失った姉さまの分までやらないといけない!!」

この理亜の叫びのあと、理亜はその場から逃げるように去ってしまった。これには、聖良、

「り、理亜・・・」

と、走り去っていく理亜の様子を見て、ただ理亜を見送ることしかできなかった。

 まぁ、そんなわけでして、今日の練習はここでお開き、となってしまった・・・のであるが、とうのあつこはというと・・・、

(このままじゃきっと私としのっちは理亜さんの練習で壊れてしまう。けれど、あの理亜さん、何かに苦しんでいる、そんな風に見えてきます。果たしてどうすれば・・・)

と、戸惑いの表情をみせていた。

 

 そして、翌日、

(今日は、理亜さん、お休み、ですか・・・。きっと、理亜さん、昨日のことで学校に出席するだけの気力すら残っていなかったのかもしれません。それくらい、理亜さんは自分を追い詰めているのかもしれませんね・・・)

と、今日、学校を休んだ理亜のことを心配していた。そう、理亜は昨日のこともあったのかもしれない、体調不良で学校を休んでいた。

 とはいえ、昨日、理亜から無謀ともいえる練習を強要されていたことには、あつこ、納得していなかった。

(でも、もし、これ以上、理亜さんの暴走を止めることができなければ、私としのっち、きっと体を壊してしまう、いや、それ以上に、もうなにをすることもできないくらいに心も体もずたぼろになってしまうかもしれない・・・)

と、あつこ、理亜の暴走によって自分としのっちが理亜によって壊されてしまう、そのことを心配していた。

 そして、あつこは自分の靴下をめくってはそこにあった古い傷跡を見てはこう思ってしまった。

(もし、そうでなかったとしても、私の場合、足に古傷が残っている・・・。それが理亜さんの暴走によってその傷跡が開いてしまったら、きっと、一生立つことができなくなるだろう・・・。もし、そうなってしまうと・・・)

そう、あつこは足に古傷を抱えていた。それは、昔、とある理由で苦しんでいたあつこ、それを払しょくすべく無謀ともいえるきつい練習を自分に課した、そのことが原因で大きな場面で大きな事故を起こしてしまいそれによって負ってしまった、そんな大きな古傷だった。

 その古傷を見てか、あつこ、こう昔を振り返ってしまう。

(あのとき、私は無理をしてでも無謀といえる練習をしてきた。それは私を応援してくれるまわりのみんなの声に応えようとしたからだった。それに、もしかすると、それに加えて、昔の自分を、昔の栄光を取り戻したい、昔みたいに勝ち続けないといけない、そんな自分の欲望を叶えたい、そんな気持ちがあったからかもしれません。。けれど、そんな無謀といえる過酷な練習のを続けた結果、私は大事な大会で、私はミスを犯してしまった。たった1回のミス、けれど、起きるべくして起こった・・・、無謀といえる練習、そのつけがここにきて起きてしまった・・・。そのつけのせいで自分は自分を制御できなくなってしまった。そのために、私は大事な大会で大きく転倒してしまい、そのまま、氷の上を滑って壁に激突、もう競技には復帰できない、それくらいの大ケガをしてしまった。それにより、私のことを応援してくれていたみんなから聞こえてきた落胆の声、それに、大ケガした私に対する暴言、それを聞いた瞬間、私、もうみんなの声に応えることができない、それくらい絶望しました・・・)

昔した自分のミス、それによって大ケガを負ってしまい、周りにいる、自分のことを応援してくれていたその人たちを落胆させてしまった、それによる自分への暴言、それら含めて、自分の過ち、そのものにあつこは苦しい思いを抱え込んでしまった。

 そして、そのときにできた古傷を見て、あつこ、こんなことを考えてしまった。

(そんなことを考えると、この私の足に残っている古傷、それって、私にとって、ある種のスティグマ(聖痕)、なのかもしれませんね)

古傷・・・、スティグマ・・・、それはあつこにとってとても苦しい思い出、を思いだしてしまう、そんな役割をしていたのかもしれない・・・。

 そんな苦しい思い出を思い返してしまったあつこ、

(そして、このままだと理亜さんは、私としのっち、2人に対して、昔、私がしてしまった同じ過ち、それをしようとするでしょう。そうなってしまうと、私としのっち、壊されてしまうでしょう。私がもしそうなってしまうと、きっと、私たちのまわりにいる人たち、特に、聖良さん、は絶対に絶望してしまいます。それだけは阻止しないと・・・)

と考えてしまった。昔の自分の過ちと同じことを理亜がしてしまい、その結果、自分としのっちは壊されてしまう、そうなってしまうと自分たちのまわりにいるみんな、特に、自分と理亜、2人と深い接点がある、そんな聖良はきっと落胆、いや、絶望してしまう、そのことをあつこは心配していたのだ。

 そして、あつこはついにあることを決意する。それは・・・、

(聖良さんのお願いで理亜さんのユニットに入ったのですが、その聖良さんが絶望するくらいなら、聖良さんのお願いを反故するかもしれませんが、仕方がないことです・・・、私・・・、理亜さんのユニットから・・・抜けます・・・)

 

 その後、あつこは理亜に対しSNSアプリLIMEで言葉を選んでこんなコメットを送った。

(あっちゃん(あつこ))「理亜さん、私、決めたの。理亜さんのユニット、抜ける・・・」

このコメントに、理亜、すぐに返信する。

(理亜)「あつこ、なんでユニットをやめるの?」

すると、あつこは理亜の逆鱗にふれないように言葉を選びながらこう答えた。

(あつこ)「私、思ったの・・・」

(あつこ)「理亜ちゃんのスクールアイドルにかける気持ちはすごくわかる」

それには、理亜、

(理亜)「うん」

と返答するとあつこはこう切り出してきた。

(あつこ)「でも、私はそこまでやっぱり(スクールアイドルにかける気持ちは理亜ほど熱くなるとは)思えなくて・・・」

あつこなりに理亜の思ってのうその理由、これには理亜はただ、

(理亜)「そっか」

とただ返答するのみ。これに対し、あつこ、こんな返し方をした。

(あつこ)「(私としたら理亜ほどの)レベルが高すぎて一緒に頑張っても迷惑をかけるだけじゃないかなって・・・」

それもうそ。最初のころは理亜も今くらいのきつい練習をしていなかった。理亜にしても、自分だけのユニットを作った、そのときはあつこを含めて、楽しみながら練習をしてきた。それが、突然、あつこすらも音をあげる、それくらいの無謀といえるくらいの過酷な練習を課すようになってしまった、そのことを「レベルが高すぎて・・・」とごまかしつつも、みんなに、いや、聖良を含めたまわりのみんなに迷惑をかけてしまう、そのことを理亜に気づかれないようにごまかしながらコメを投稿すると、あつこ、理亜に対して決定打ともいえるくらいのコメを投稿した。

(あつこ)「だから、私は(理亜さんのユニットを)やめた方がいいのかなって・・・」

このコメを投稿した瞬間、あつこ、こう思ってしまった。

(聖良さん、ごめんなさい・・・。私、これ以上、聖良さんやまわりの人たちの迷惑をかけたくない・・・。理亜さんの無謀といえる練習により、私が、しのっちが、壊れたら、きっと、まわりにいるみんな、特に聖良さんには迷惑をかけてしまう、落胆させてしまう、いや、絶望させてしまう・・・。だから、聖良さん、あなたのお願い、破ってしまってごめんなさい・・・。でも、こうでもしないと、きっと、いや、絶対に、聖良さんを絶望させてしまいます・・・)

もうこれ以上聖良に迷惑をかけたくない、そんな思いから送ったユニット脱退のコメ・・・であったが、そのコメを送った瞬間、あつこの目から、

(あっ、私、涙、流している・・・)(あつこ)

そう、涙を流していたのだ。それは、あつこにとって、自分にとって大事な親友である聖良に対する懺悔、ともいえる思い、それとも、これ以上聖良に迷惑をかけたくない、けれど、それでも、聖良の自分い対する期待を裏切ってしまった、その思いからだったのかもしれない。

 だが、その後、そのコメに「既読」という文字はついたものの、理亜からの返答はなかった・・・。

 

 ちょうど同じころ・・・、聖良と理亜の実家では・・・、

(あっ、どうやら、千歌さんたち、ダイヤたち3年生3人と再開できたみたいですね。まさか、鞠莉さんの未来すらを決めてしまう大騒動になるとは思いもしませんでした。でも、それによって千歌さんたちが大事なことに気づいてくれたら、きっと、千歌さんたちは復活することができるでしょう)

と、聖良は自分のスマホの画面を見ながらこう思っていた。実はこのとき、千歌から、ダイヤたち3年生3人と無事に再会できたこと、そのとき、鞠莉‘sママが乱入してきて鞠莉がこれまでしてきたこと、スクールアイドルのことを否定してきたこと、それは完全に間違いであり、スクールアイドルが素晴らしいこと、これまでの鞠莉の行動には意味があることなどを証明するために鞠莉‘sママに対してライブを行うこと、そのようなメールが千歌から届いていたので聖良はそれを読んでいたのだ。その千歌のメールを読んでこう思った聖良、

「ふう」

と、もう千歌たちのことは大丈夫と思ったことで安心しきった、そんな表情をしていた。

 が、そんなときだった。

バタンッ!!

という音が聖良の部屋に響き渡る。これには、聖良、

(なにか理亜の身に起きたのでしょうか?)

と、音がするほう、理亜の部屋を向いてそう思うとそのまま、聖良、理亜の部屋に行ってみることに・・・。

 そして、聖良、理亜の部屋のドアを開けると部屋は真っ暗・・・。これには、聖良、

(理亜、なにかあったのでしょうか?)

と、理亜のことを心配しつつも理亜に対し、

「理亜、千歌さんたちから連絡がありました・・・」

と言っては部屋の電気をつけつつ、後日、千歌たちがライブを行うことを理亜に伝えるも、

「その結果で・・・」

と言葉にした瞬間、自分の足元に理亜のスマホが落ちていることに気付く。そして、そのスマホの画面を見て、聖良、ショックを受けてしまう。

(まっ、まさか、あのあつこが・・・、理亜のユニットから抜けた・・・)(聖良)

そう、このとき、初めて、聖良はあつこが理亜のユニットから抜けたことをしったのだ。

 だが、あつこがユニットを抜けたショックはある人物のほうが大きかった。そう、理亜である。自分の1つ上の学年で唯一参加していたあつこが抜けた、そのショックは相当理亜を苦しめていたのだ。自分のベッドで掛け布団を自分の体にくるみながら、誰にも会いたくない、そんな雰囲気を出しながら、そっとしてほしい、そんな状況に陥っていた。そのためか、部屋の電気をつけた聖良に対し、

「姉さま、お願いだから、明かりを消して・・・(そっとしておいて・・・)」

と、小言で、弱弱しい声で、お願いしてきた。これには、聖良、

「理亜・・・」

と、ただ誰にも会いたくない、そんな絶望に満ちた理亜の姿に、どう理亜に接すればいいかわからない、そんな気持ちになりながらもそう答えてしまった・・・。

 

 翌日・・・、理亜は昨日に引き続き、学校を休んだ。そのことを友達伝いで聞いたあつこ、

(やっぱりですか・・・。理亜さん、私が理亜さんのユニットから抜けたこと、相当ショックを受けてしまったのかもしれませんね)

と、理亜のことを同情しつつも、

(でも、これは理亜さんとそのまわりにいる人たち、そして、聖良さんにとって仕方がないこと。それを理解してください、理亜さん・・・)

と、理亜に対し自分の行動を理解してもらいたい、そんな淡い期待をしていた・・・。

 

 そして、あっというまに放課後になってしまった。理亜はお休み、いや、それ以前に理亜のユニットを抜けたことで放課後の時間は自由に使える・・・、ということで、あつこ、

「さてと、今日はどうしようかな・・・」

と、このあとのスケジュールをどうするか考えながら学校の校門を抜けようとしていた・・・そのときだった。突然、

「あつこ、ちょっと・・・」

と、あつこの名を呼ぶ少女の声が聞こえてきた。これには、あつこ、

「あっ、聖良さん・・・」

と、あつこの名を呼ぶ少女、聖良の名を呼ぶ。そう、聖良、あつこに会いに聖女まで来ていたのだ。

 そんな聖良、あつこに対し、

「あつこ、ちょっとお話があるのだけど、このあと、いい?」

と尋ねてくると、あつこ、

「はい、いいですよ。このあと、フリーでしたから・・・」

と、素直に答えていた。

 ただ、このとき、

「あっ、聖良様とあつこさんだ!!きっとなにかあったのですかね・・・」

「いやいや、今日、(聖良の妹である)理亜さんがお休みだから、きっと、理亜さんがらみの取り合い、なんかじゃないでしょうか?」

と、まるでどこかの井戸端会議なおんか、ああでもない、こうでもない、と、いろんなことを妄想しては、聖良とあつこ、2人に対していろんなことを言ってはそれをネタに話が盛り上がる(2人のまわりにいる)聖女の生徒たち。まぁ、聖女において、聖良とあつこ、2人はSaint Snowで聖女の名を全国に轟かせてくれた功労者、ということもあり、生徒たちのあいだでも人気者、だった。まぁ、そんなことを重々承知の上だった聖良とあつこ、だったのか、あつこ、

「聖良さん、いつもの場所でいいでしょうか?」

と聖良に尋ねると聖良も、

「はい、そうですね。そこだと十分2人で話し合うことができますから・・・」

と、2人のことを茶化すまわりの生徒たちを見てはいつもの場所に移ることを承諾すると、2人はそそくさとその場をあとにした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第18話

 いつもの場所、それは2人がいつもお茶をしている茶房旧茶屋亭であった。そこで聖良とあつこはいつもの場所、大通りが見える窓のそばのテーブルに向かい合って座った。そして、座ってまもなく、聖良はあつこに対し、あつこの真意を問うた。

「あつこ、ここに来て間もないけれど、まわりくどいことはいやだから、ずばり言います。あつこ、なぜ、理亜のユニットを抜けたのですか?正直に答えてください」

そんな聖良の真摯な質問、これには、あつこ、

(聖良さんが真剣な表情で私に尋ねてきている・・・。これはどうごまかしても聖良さんは納得しないだろう。正直に理亜さんのユニットを抜けた理由を述べよう・・・)

と、ここは正直に聖良に本当のことを言おうと心に誓うと聖良に対し真剣な表情で理亜のユニットを抜けた理由を正直に述べた。

「私としては聖良さんのお願いもあってか当初は理亜さんのユニットから抜けようとは思っていませんでした。でも、最初のころ、みんなと一緒にユニットを結成したころと比べて、今の理亜さんは変わってしまいました。昔はわきあいあいしていたのがうそだと思えるくらいに変わってしまいました、理亜さんは。まさか、理亜さん、私たちに対して無謀といえるくらいの練習を課するようになってしまうなんて思っていなかったです。そして、たとえ、その練習によって疲れて転倒してしまったとしても、理亜さん、そんな私たちを責めようとしてきました。それを見て、私、はっとしました。昔の私みたいに、無謀といえる練習によって大ケガしたことにより、私に期待していたまわりの人たちをがっかりさせてしまう、落胆させてしまう、そんな私の二の舞にならないように、それをわからせるために理亜さんのユニットから抜けることにしたのです。特に、聖良さん、あなたの落胆した様子、私は見たくありません!!」

このあつこの真意を聞いて、聖良、

「あつこ、もしかして、昔のこと、まだ引きずっているのですか・・・」

と、あつこに対し少し心配そうに言うと、あつこ、自分の足をあげては靴下を脱いで昔の古傷を聖良に見せながらこう答えた。

「この傷は私にとってある種の聖痕、スティグマです!!私にとってあの日の出来事はこのスティグマによっていつでもよみがえってくるのです!!このスティグマを見ると、私、あのときの愚かさを身をもって思い返してしまうのです!!このスティグマこそ、この私の過ち、そのものであり、それは、あのときに私に期待していたまわりのみんなの落胆する姿、それを思い返してしまう、いや、もう、みんなの落胆させない、そう心に誓った、その心の誓い、それを証明するものなのです!!」

 そして、あつこはある少女の物語を語り初めた。

「聖良さん、私、ある少女の、ある女性のスポーツ選手、あるフィギュアスケートの若い女性選手の残酷すぎるお話をします。聖良さん、ちゃんと聞いていてください」

このあつこの言葉に、聖良、

「は、はい・・・」

と、ただうなずくしかなかった・・・。

 

(あつこ)

「今から私が語る物語、それは、将来を有望視された、そんなフィギュアスケート選手だった少女の悲しい物語・・・。

 昔、この函館の地に将来を有望視された少女がいました。彼女は小さいときからフィギュアスケートに取り組んでいました。そんな少女でしたが、たぐいまれな運動センスや音楽センス、そして、どんな練習すらも音をあげずに前向きに取り組んでいった結果、彼女のフィギュアスケート選手としての実力はめきめきと上達していきました。そして、その実力が開花したのか、小学高学年のとき、各地で行われたフィギュアスケートの大会でいつも上位に食い込むような成績を残していきました。そんな彼女のまわりにいた人たちはその少女について、「あのオリンピック金メダリストの再来」「将来はオリンピックの金メダリストになれる!!」と太鼓判を押すくらい、彼女はフィギュア選手として将来を有望視されるようになりました。そんなまわりからの人たちの期待に応えたのか、その少女は一生懸命フィギュアを頑張りました。その結果、その少女が12歳のとき、日本のジュニアの大会で優勝、それにより、その少女は日本中で名声を響き渡らせただけでなく、日本のフィギュアスケート界をしょって立つ少女として有名になりました」

このあつこの語りに、聖良、あることに気付く。

(そ、それって、もしかして・・・)

 だが、聖良のことは無視したのか、あつこ、そのまま、その少女の悲劇の物語の続きを語り始めた。

 

(あつこ)

「けれど、その少女にも女性フィギュアスケート選手に必ず訪れてしまう、恐ろしい壁にぶつかってしまいます。それは・・・、

 

成長・・・、厳密には、第二次性徴・・・。

 

この時期、少女の体にも大きな変化が訪れていました。胸などの発達などにより、昔の体形とは全く違う、背が伸び、女性らしい体つきになってしまう、そんな体型変化により、その少女は昔の自分が跳ぶことができたジャンプすら跳ぶことができない、いや、最盛期、つまり、ジュニアの大会で優勝していたときに感じていた(跳ぶときなどの)感覚とは違うものを、その感覚のズレを感じるようになり、それによってその少女はフィギュア選手としての大きなスランプに陥ってしまいました。けれど、そんなことすら知らないまわりの人たちからは、「不調の原因は木の迷いからだ!!」「単なる経験不足だ!!もっと練習しろ!!」「もっと根性みせろ!!」という、その少女が抱える悩み、大スランプすら気にしないような声が次々ときていました。

 ただ、普通ならそんなヤジみたいなものは気にしない、それよりも、自分のことを大事にしつつも復活のために自分のペースで練習をすべき、そうなるのがよかったのですが、その少女は違っていました。その少女は小さいときからフィギュアを通じてまわりのみんなから期待されて育ってきた、そのために、その少女は、「自分の不調の原因は気の迷いのせいなんだ!!もっともっと練習して、昔みたいないい成績を残さないと・・・、昔みたいに勝ち続けないと・・・」と思い込み、普通のフィギュア選手の倍ともいえる練習をこなしてしまいました。ただ、それについてはその少女は自分の体の成長のせいで昔の感覚と今の感覚にズレが生じていた、それによる不調、大スランプに陥っている、と薄々と感じていたのかもしれません。けれど、まわりからのその少女のことなんてまるで心配していない、そんな心無いヤジのためにそれすら忘れようとしていたのかもしれません・・・」

 

このあつこの語りに、聖良、

(それって、やっぱり、あの子のことでは・・・)

と、その少女の正体に薄々と感じていた。だが、あつこ、そんなこと気にすることなく、物語の続きをまた語り始める。ついに悲劇の少女の物語も佳境を迎える。

 

(あつこ)

「しかし、その少女がいくら頑張っても、いくら連取しても、昔みたいな優秀な成績を残すことができませんでした。そのため、まわりのみんなからは「もう限界を迎えているのでは?」「単なる甘えだ!!自分に甘えるな!!もっと練習しろ!!」「もっともっと練習しろ!!そうすればきっと昔みたいにいい成績を残せるはずだ!!」、そんな少女の苦悩すら無視するような言葉が飛び交っていました。普通なら無視した方がいいものの、その少女はその言葉たちすら真面目に聞いてしまい、「もっと練習しないと、もっと練習しないと、昔たいな栄光を、昔みたいな優秀な成績を残すことができない、昔みたいに勝つことができない!!」、そう思ったのか、それとも、そうあるべきと自分をさらに追い詰めてしまったのか、その少女は普通のフィギュア選手の倍の倍、普通ならどんな人間だって音をあげてしまう、いや、人間の限界を超えた練習を自分い課すようになりました。普通なら音をあげるくらいの限界を超えた練習、むろん、それによってその少女の体のいろんなところから悲鳴に近いようなものが発せられたのですが、その少女は、「それこそ自分い対する甘えからくるものだ!!もっともっと頑張らないと・・・」と、自分を律する、いや、無理をしてでももっと練習をしないと、もっとみんなの声に応えないと、と、そのことだけを考えて、たとえ無理をしてでも、限界を超えたとしても、その限界を超えた練習を続けてしましました。

 だが、その少女のその先にあったのは、地獄、いや、地獄より恐ろしい、絶望、という名の運命でした。限界を超えた練習に次ぐ練習、、それにより悲鳴をあげる少女の体、それでも少女はその悲鳴すら無視して限界を超えた練習に明け暮れていた・・・。それにより、ついにその少女は限界を・・・崩壊を迎えてしまう。

 その少女の中学最後の大会、限界を超えた練習に次ぐ練習により少女の体は疲労困憊、いや、限界を迎えていた。それでも無理して大会に出場、でも、縁起の最中、その練習のかいもあってか、高難易度のジャンプや演技を次々とこなしていった。そして、迎えた最後の大ジャンプ、ここで決まれば優勝間違いなし、そんなときだった。これまでの限界を超えた練習による疲労のせいか、一瞬、態勢が崩れてしまう。それでも必死になって態勢を戻そうとするも、ここでも無理な練習をし続けてきたツケがまわってきたのか、少女の体は言うことをきかない、まるで、制御不能の状態に少女は陥ってしまった。

 そして、その少女に訪れたのは、無、だった。一瞬、体が宙に浮かんだと思うと、その少女の体は重力により落下、そのまま氷へとたたきつけられてしまいました。だが、その少女の悲劇はここでは終わりませんでした。最後の大ジャンプ、ということで、勢いよく滑っていたのがあだとなりました。地面にたたきつけられたと思うとその少女の体はそのまま氷の上を滑るようにスケートリンクの壁めがけて猛スピードで一直線!!誰も止めることができずにそのまま壁に激突してしまいました。

 この事故により、その少女は体の何か所も複雑骨折しただけではなく、これまでの無理な練習、それによってできた事故のツケがまわったのか、自分の足にも深い傷が残りました。本当に最悪ともとれる結果を招いてしまった、いや、それ以上に、その少女の心には、深い深い、修復不可能な傷が残ってしまいました。

 しかし、それ以上にその少女にとってショックだったのは大ケガをした少女に対するまわりからの声でした。「とても期待していたのに・・・」「期待外れもいいとこだ!!」「こんな大ケガをするなんて、本当に根性が足りないからだ!!」、そんなまわりから聞こえてくる落胆の声、失望ともとれる声はその少女の生きる希望すら奪うものでした。こうして、その少女はフィギュアスケートを続けることを諦めざるをえませんでした。

 これがとても愚かな少女のお話、昔の栄光を取り戻すために、みんなの声に応えるために無理をしてしまった結果、もうフィギュアスケートすらできない、そんな残酷な運命を背負ってしまった、いや、それ以上に、まわりのみんなから最初は期待されるも最後は落胆、失望されてしまった、本当に恐ろしい、いや、本当に愚かな少女の物語・・・」

あつこはそう言うと、ストーリーテラーとしての役目を終えた・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第19話

 とても残酷ともとれる少女の物語を語り終えたあつこだったが、聖良はそんな迫真に満ちた口調で語ったあつこの姿を見てか、ただただ、

ポカ~ン

と口を開けていた。そんな聖良に対し、あつこ、

「どうだった、聖良、とてもためになったでしょう。私、あの少女のように、今の理亜さんのように、無謀といえる過酷な練習を課したことであの少女の結末のように、最悪の結末に、まわりにいるみんなにとって、特に、理亜さんの身近にいる聖良さんにとって、とても辛い、そんな最悪な結末を迎えないために、私、それを理亜さんにわかってもらいたくて、いや、私にとってあの結末を2度と迎えたくない、その一心で、理亜さんのユニットを抜けたわけ!!聖良さん、わかる、私の今の気持ち・・・」

と、聖良に向かってこんな残酷ともとれるような少女の物語を語った理由、いや、あつこが理亜のユニットから抜けた理由を言った。

 だが、聖良、そんなあつこに対し、こんなことを言いだしてきた。

「あつこ、その少女の正体、あつこ、ですよね!!」

この聖良の言葉に、あつこ、

「せ、聖良さん・・・」

と、少しびっくりするも、すぐに聖良に対し、聖良の言っていることの答えを言った。

「聖良さん、よくわかりましたね。たしかに、その残酷ともとれる少女の物語、その少女の正体は・・・、そう、私、でした!!」

そうあっけらかんな表情で答えるあつこ、それに対し、聖良、黙ってしまう。そのためか、あつこ、そんな聖良に対し、

「でも、なんで、私がその少女の正体だってわかったの?」

と尋ねてみる。

 すると、聖良、そんなあつこに対し、真剣な目つきになってこう言い放った。

「それは、長い間、あつこと親友達を続けてきたからです!!あつこのことでわからないことなんてありません!!それに、まわりからの声によって苦しんでいる、そんなあつこの姿、私が忘れるなんてありません!!もちろん、無理な練習を続けてしまい、大切な大会で大ケガをしてしまった、そのときのあつこの苦しみに満ちた姿、今でも思いだすことができますよ!!私だってそんなあつこの姿を見て心苦しかったのですから」

そう、あつこは聖良にとって昔からの大親友、幼馴染であり、とても大切な親友でもあった。そのためにあつこのそばにはいつも聖良の姿(+聖良のあとをついてきた理亜の姿)があった。なので、あつこが12歳のときに日本のジュニアの大会に優勝したときも、そのあとのあつこが自分の体の成長により苦しんでいたときも、さらには、限界を超えた練習を続けたことにより中学3年の大会のときに大事故を起こしてしまい大ケガをしてしまったそのときも、さらには、その時々でころころ変わってしまうまわりの人たちの意見に振り回されてしまうあつこの姿も、聖良はあつこのそばにいてはずっとあつこの様子を見てきたのだ。なので、このことを当然ながら知っているあつこ、

「やっぱ、聖良さんには敵わないわ・・・」

と脱帽してしまった。

 だが、聖良の言葉はまだ止まらなかった。あつこに対し、聖良、こんなことを言いだした。

「それに、体の成長によって苦しむ女性フィギュアスケート選手、その話はあつこに限ったことじゃないから・・・」

この聖良の言葉に、あつこ、

「た、たしかにその通り・・・」

と、聖良が言っていることが当たっていることにびっくりしてしまう・・・(って、あつこ、自分の物語を語っているときに、「女性フィギュアスケート選手に必ず訪れてしまう、恐ろしい壁にぶつかってしまいます」って、同じこと、言っているよね・・・)

 と、まぁ、そんなツッコミは無視して・・・、たしかにあつこと聖良の言う通りである。実は、女性のフィギュア選手にとって自分の体の成長によってフィギュア選手としての選手生命が左右されやすかったりする。日本の女性フィギュア選手の数はかなり多かったりする。その女性フィギュア選手の競争率は男性の10倍以上。なので、かなり激しい競争が繰り広げられていた。それに加えて、第二次性徴という人には必ず訪れてしまう、そんな体の成長、それからくる体型の変化にほどんどの女性選手たちは苦しんでしまう。フィギュアスケートほど体の感覚に敏感になるスポーツなんてない。そのために、成長する前の感覚で跳ぼうとするとその成長した体型によって感じる感覚とズレが生じてしまう。結果、そのズレなどのせいで、背が伸び、女性らしい体つきをした、ただそれだけでこれまで跳ぶことができたジャンプ全てでできなくなってしまう、そんなことが起きてしまう。そんあこともあってか、少しでも、甘いもの、体型が変わってしまう、そんなもの、例えば、アイス、それを食べること自体禁止するチームもあったりする。さらには、ロシアの選手のあいだでは、アイスショーの楽屋でふるまわれたお菓子を手につけてはいけない、そうコーチから命令されるも、それを守った選手はオリンピック選手になれたがそれを守らなかった選手は太ってしまいオリンピックには出られなかった、そんなエピソードが残っていたりする。

 とはいえ、そんあ成長期の苦しみを乗り越えたとしても、ある有名な日本人選手でさえも、「私のジャンプは背が伸びる前、3年くらい前が1番よかった」というくらいフィギュアスケート選手のピークはとても早かったりする。このあとからくる成長期の苦しみ、もしくは、ピークを過ぎた体で戦う、そんなこともあり、多くのフィギュア選手は無理やり自分の身体の成長を抑えたり、過度なダイエットをして体型を維持しようとしていたりする。それくらい、女性のフィギュア選手が抱えるナーバスな問題はその選手生命すら左右するくらいとても大きな問題だったりする。(ただし、フィギュアスケートというスポーツは身体能力だけで点数が決まるものではない。豊かな感情表現、より深い音楽や物語の表現、といった芸術性を競うスポーツでもある。そのため、それに長けた選手、たとえば、稀勢バウバー、じゃなかった・・・、イナバウアーで有名な日本の女性フィギュア選手、いや、金メダリストのような芸術性に長けた選手もいることも付け加えておく。(以下、現代ビジネスHP、青嶋ひろの氏執筆、フィギュアスケート世界選手権、「女性シングルの抱える闇(成長期をどう乗り切るか)」より))

とは説明したものの、聖良、そのことはそのこととして終わりつつも、あつこに対しとても大切なことを言ってしまう。

「あつこ、確か、あつこが理亜のユニットから抜けたとしても、理亜はあつこの言いたいことを理解してくれるのでしょうか、私には疑問に感じてしまいます。だって、たとえあつこの言いたいことを理亜が理解したとしても理亜はやめることはないでしょう、あつこたちに課した限界を超えた練習を・・・。それくらい、理亜は自分に対しても、みんなに対してもストイックすぎるところがあります。まぁ、私に似ていて本当に言える立場ではないのですがね・・・」

そう、理亜は聖良と同じくらい、いや、それ以上にストイックすぎるところがある。それは理亜のどんなことに対しても真面目に取り組む、その姿勢からきているのであるが、その対象は自分だけでなく、自分のまわりにいる人たちに対してもである。たとえどんなことがあっても自分の目指すべきものがあればそれに向かって一生懸命頑張ってしまう、それが理亜のいいところであって同時に悪いところでもあった。それを物語っているのが、理亜の代名詞というべき言葉、

 

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」

 

である。理亜はこれまで姉聖良と誓い合った夢、「ラブライブ!で優勝してスクールアイドルの頂きにのぼり、A-RISEやμ'sが見た景色を確認したい」、その夢に向かって、姉聖良とともに一生懸命頑張ってきた。それに対し、目標という目標を掲げていない、まだ、μ'sという輝きを追い求めていた、ただそんなことを考えていた、まだ1・2年しかいなかった、ラブライブ!夏季大会前に行われた東京のスクールアイドルのイベントで初めて会った、千歌たちAqours、に対し、理亜は、「ラブライブ!は遊びじゃない!!」、そんな言葉を千歌たちに浴びせてしまった。それは当時の理亜にとってそのときの千歌たちAqoursは、「自分は追い求めている夢に向かって頑張っている。対して、Aqoursは、ただのお遊び感覚でしかスクールアイドルをしていない、そんな悪ふざけのグループ」、そう見られたのかもしれない、当時の理亜からすれば・・・。と、まぁ、それくらい理亜は目標に向かってストイックに頑張ろうとする、その対象が自分であっても相手であってもである。その意味でも、理亜はそのストイックさゆえに残酷ともとれる、いや、限界を超えた練習を続けるだろう、そのことを聖良は危惧していたのである。

 さらに、聖良、あつこに対し、あの子の存在をも指摘する。

「あつこ、それに、まだ理亜のユニットに残っている子、たしか、しのっちさん、その子に対しても理亜はこれから先も限界を超えた練習を課すことでしょう。おれは、たとえ、あつこ、あなたが理亜のユニットから抜けたことで助かった、としても、しのっちさんはこれから先もその練習の犠牲となる、そのことを考えていなかったのですか?」

そう、理亜のユニットにはまだしのっちが残っていた。あつこが理亜のユニットから抜けた今、ユニットに残っているのはしのっちだけ、そのしのっちに対し、理亜、これまでと同じ、限界を超えた練習を課してしまう、そのことを危惧していたのだ、聖良は。

 ただ、このことに対し、あつこ、聖良に対しこんなことを言ってしまう。

「ああ、それなら大丈夫ですよ、聖良さん。しのっちには、私、必ずユニットを抜けるようにお願いしていますから。なので、安心してください!!しのっちもこれ以上理亜さんから限界を超えた練習するのはいやなのです。なので、しのっちのユニット脱退も時間の問題だと思いますよ!!」

 だが、このあつこの発言により聖良は混乱を迎えてしまう。聖良、突然、あつこに対し、

「あつこ、今、なんて言いましたか?しのっちさんのユニット脱退・・・ですよね・・・」

と尋ねると、あつこ、

「はい、たしかに、しのっちのユニット脱退の話をしましたよ」

と、あっさりと答えてしまう。

 が、そのあつこの答えを聞いた瞬間、聖良、これまでクールビューティーを貫いていたのだが、その表情が次第に壊れてしまった。いや、突然、慌てた表情となり、聖良、

「こ、このままだと、理亜が・・・理亜が・・・壊れてしまう!!」

と、とんでもないことを言いだしてきたのだ!!これには、あつこ、

「えっ、理亜さんが壊れる!?なんで!?しのっちのユニット脱退だけで理亜さんが壊れてしまうのですか!?」

と、慌てふためく聖良に対しどうしてか尋ねてみると、聖良、慌てた表情ままで、

「は、はいっ!!もし、しのっちさんが理亜のユニットから抜けたら、理亜はまたたった1人になってしまいます!!もし、こうなってしまったら、理亜、自分のせいで自分のユニットからメンバーが次々と脱退させてしまった、そのことを自分自身に責めるでしょう!!そうなってしまったら、理亜、絶対に壊れてしまいます!!」

と言ってきた。ただ、そんなことを聖良が言って、あつこ、

「ただそれだけで理亜さんが壊れるわけないでしょ、聖良さん」

と高をくくっていたが、次の聖良の発言で、あつこ、はっとする。

「あつこ、それくらい、理亜はとても繊細な子、なんです!!理亜のストイックさは自分にも向けられています。なので、しのっちさんが自分のユニットから抜けたことで理亜はそのストイックさ、責任感の強さから自分を責めるでしょう、あのときと同じように、あのラブライブ!冬季大会最終予選、そのときの自分のミスで決勝進出を逃した、そのときに、自分を、理亜自身が自分を責めたときのように・・・」

そう、理亜は聖良以上にストイック、どんなことに対しても責任感が強かったりする。そのために自分が犯したミスに対しても自分を責めたりすることがあったりする。たとえば、あのラブライブ!冬季大会北海道最終予選、そのときに自分が犯したミスによって決勝進出を逃した、自分たちの夢を叶えることができなくなった、そのことに対し、理亜はそのことにより、理亜のストイックさ、責任感の強さから自分を責めてしまった。このままいくと理亜は自分自身を傷つける恐れもあった。だが、このとき、偶然にも自分を責めていたのか、自分の部屋で泣いていた姿をルビィに見られてしまう。そのルビィが機転を利かせたことにより理亜は立ち直ることができたのであるがその一方で理亜の心のなかには・・・。と、この話はあとにして、このままいくとしのっちのユニット脱退が決定的になる、もし、そうなると、それがトリガーとなり、理亜は自分で自分のことを責めるようになるだろう、自分のせいで自分のユニットを空中分解させてしまったことを、また自分1人になってしまったことを・・・、そして、最悪の場合、理亜は思いつめてしまい、自分で自分を傷つける、そんなことまでに発展する恐れもある、それを聖良は気づいてしまったのだ。まぁ、これには、あつこ、

「た、たしかに、その恐れはありますね、理亜さんなら・・・」

と、聖良の言葉に理解を示す。まぁ、あつこも長年聖良の親友であるためにその聖良にいつもついてきていた理亜のこともよく知っているので聖良の言葉に納得してしまうのですがね。

 でも、理亜がそうなってしまう可能性が高い、というわけで、当初していた聖良のあつこに対する取り調べ?は、急遽、理亜のこれからについて、そのための相談会へと変わってしまった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第20話

「どうすれば、あの理亜を救うことができるのでしょうか。そうしないと、理亜が・・・理亜が・・・」

理亜のことが心配で心配でたまらない聖良。そんな聖良に対し、あつこ、

「たしかにこのままだと、聖良さんの言う通り、理亜さんは自分で自分を追い詰めてしまいます」

と、聖良の言うことを理解するとともに、

「なので、ここは理亜さんがそうならないためにもこのあとどうすべきか一緒に考えていきましょう、聖良さん」

と、これから先、理亜をどうするか、一緒に考えることを聖良に提案。これには、聖良、

「う、うん・・・」

とうなずいてくれた。

 とはいっても、漠然と決めたのでは理亜も納得してくれない・・・というわけで、あつこ、

「理亜のこれからを決める前になぜ理亜さんが暴走しているのか考えてみることにしましょう」

と、理亜が暴走した理由を考えてみることを聖良に提案すると理亜のことが心配で心配でたまらなかった聖良も心を落ち着かせることができたのか、

「うん・・・」

とうなずいてくれた。

 そんなわけで、理亜が暴走した理由について考えてみる、ということで、あつこ、

「これまでの理亜さんの行動で理亜さんの本心を知る糸口がありましたでしょうか・・・」

と、理亜の本心を知る糸口がないか、これまでの理亜の行動を振り返ってみる。すると、聖良、

「あっ、あつこ、たしか、この前、理亜はこんなことを言っていました!!」

と、思いだしたかのように言うと、あつこ、

「えっ、聖良さん、いつのことですか?」

と、聖良に尋ねてみる。

 すると、聖良、そんなあつこに対し、、

「たしか、あつこが理亜とぶつかったあの日のことです!!」

と、聖良が答えた。そう、卒業旅行から帰ってきた次の日、理亜があつことしのっちに対し函館山の3番目の観音様まで中距離ダッシュを無理やりさせた日のことである。その日は無謀な練習をあつことしのっちに課したあつこが理亜に反抗、また、理亜のことで心配で理亜の様子を見に来た聖良が対立する理亜とあつこの仲裁に入ったものの、理亜は怒ってどこかにいってしまった、あの日のことである。そのときのことを聖良は思いだしたのだ。

 そして、聖良はあつこにその日の理亜の言動のことを話した。

「あつこと理亜が喧嘩して私が仲裁したあと、理亜はその場を離れましたが、そのとき、理亜はこう言っていました。

 

「これは私が解決しないといけないことです!!この私にしかできないことです!!」

「私は必ず成し遂げないといけない、私のミスのせいで私は姉さまとの夢を・・・、私は必ずしないといけない、姉さまの分まで、この私が・・・、この私が・・・、Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・、いや、それ以上のものを・・・」

「私は・・・、私は・・・、姉さまの分まで・・・、私のミスのせいで・・・、姉さまと叶えることができなかった・・・、あのルビィたちが成し遂げてしまった・・・、ラブライブ!優勝・・・、私たちの夢を・・・叶えないと・・・、私がしないと・・・、いけない・・・。そのための・・・、勝ち続けるための・・・、ユニット作りを・・・、私は・・・、私は・・・、しないと・・・いけない・・・」

「私は・・・私は・・・失った姉さまの分までやらないといけない!!」

 

と・・・」 

 この聖良の言葉に、あつこ、あることに気付くと聖良にこう言った。

「聖良さん、もしかして、理亜さん、まだ、あのことを後悔しているのではないでしょうか」

このあつこの言葉に、聖良、

「えっ、あつこ、あのこととはいったい・・・」

と、あつこに尋ねると、あつこ、理亜が後悔しているあのことについて言った。

「聖良さん、あのことっていうのは、聖良さんとの夢が潰えたあの日のこと、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選の日のことです!!」

そう、あの日のこと、それは、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選の日のことである。みなさんもご存じの通り、予選本番、「姉さまとの夢を叶えないと・・・」と自分を追い込んでしまった理亜、その思いのせいか、それにより焦ったのか、理亜は聖良を巻き込むかたちで大転倒してしまった。これにより、このあと、満足がいくパフォーマンスができず、聖良と理亜、Saint Snowはラブライブ!決勝に進めることができなかったのだ。

 だが、これについては、聖良、反論する。

「でも、そのときの後悔はあのクリスマスライブで理亜のなかから消えたのではありませんか?」

たしかに聖良が言っていることも一理ある。あのあと、理亜は自分のミスでSaint Snowを終わりにした、姉の聖良に申し訳ない、その後悔の念を持つようになった。が、前述の通り、その様子を偶然ルビィが見つけたのだが、そのルビィの機転によりクリスマスライブというかたちで昇華させたはずだった。あっ、ちなみに、その際、ルビィと理亜は同じ1年の花丸・ヨハネを巻き込む形で一緒に行動、自分たちが作詞したものを理亜から依頼を受けたあつこが作曲、その曲を理亜とルビィはそのライブで披露したのだった。また、このライブのあと、理亜は姉の聖良に対し「Saint Snowを終わりにする。自分だけのユニットを作る」、そう宣言もしていた。

 だが、その聖良の反論に対し、あつこ、とんでもないことを言った。それは・・・。

「聖良さん、もし、その後悔がなにかがきっかけで復活していたらどうですか?」

このあつこの説に、聖良、思わず、

「た、たしかに・・・」

とうなずいてはたじろいてしまった。

 そのあつこ、たじろく聖良に対し、自分の考えを述べた。

「聖良さん、もし、その後悔が復活していた、いや、消えたと思っていたけど理亜さんの心の奥底にまだ残っていたとなれば理亜さんの言動にも説明がつきます。「私のミスで姉さまとの夢を・・・」、それって、あの北海道最終予選のことを言っているのかもしれません。そのため、その夢を自分の力で叶えようとしたいために理亜さんはスクールアイドル初心者である私たちにきつい練習を課してラブライブ!優勝と目指そうとしていたのです!!これが理亜さん暴走の理由です!!」

で、このあつこの考えに、聖良、

「た、たしかにそう言われると納得がいきますね・・・」

と、あつこの考えに理解をみせる。

 そして、あつこは聖良に対しある確認をした。

「そんな意味でも、聖良さん、これまでSaint Snowの歴史をもう1度、簡単に、振り返ってみましょう!!」

これには、聖良、あまりのあつこの勢いに、

「う、うん、そうですね・・・」

と、ただ答えるしかなかった。

 

 あつこはSaint Snow結成の理由について振り返る。

「聖良さん、たしか、Saint Snow結成の理由は、「ラブライブ!に優勝してA-RISEやμ'sと同じ頂きに昇ってそこから見える景色を確かめてみたい」、でしたよね」(あつこ)

このあつこの言葉に、聖良、

「た、たしかにそうでした。たしか、あれは・・・」

と、昔を振り返る。スクールアイドルが人気になりだしたころ、スクールアイドルの甲子園ともいえるラブライブ!が開催されるようになった。そのとき、もっとも活躍していたのが、第1回ラブライブ!優勝チームのA-RISE、そして、その第2回を制したμ's、だった。その2組の活躍を函館の地にて見ていた聖良と理亜、2人はその2組に憧れ、「いつかはきっと2組と同じ頂きにのぼってそこから見える景色を確かめたい」、そのような夢を抱くようになった。そして、聖良の幼馴染であったあつこを巻き込み、理亜が高校に入学するときにスクールアイドルユニットを結成することを誓い合ったのである、聖なる雪が降る日にその夢を誓って・・・。その後、スクールアイドルの世界は「勝利至上主義」など紆余曲折しながら大きく発展していく・・・。

 そんな聖良の思い出話をしたあと、あつこは続けて、

「そして、理亜さんが聖女に入学するまで聖良と私、そして、理亜さんはユニット結成のための下準備をしていました。その後、理亜さんが聖女に入学、聖良さんと理亜さんのスクールアイドルユニット、Saint Snow、は本格的に活動をスタートさせました」

と言うと聖良も、

「たしかにそうね」

とうなずくとここでまた昔のことを振り返った。理亜が聖女に入学するときにユニットを結成する、そのことを決めたときから聖良と理亜、あつこの3人はそのための下準備を始めた。スクールアイドルに必要な練習はなにか、どのような練習メニューがいいか、オリジナル曲の作詞作曲、そんな下準備を3人は行っていた。その下準備であるがあつこが大会で大事故を起こしフィギュアスケートを半引退状態になったことである影響を受けてしまう。あつこが半引退状態になったため、その大事故で負った(身体、精神ともに傷ついた)あつこはそのリハビリを兼ねてあつこはその下準備をせっせと行ったのだ。それは、あつこにとって大事故を起こして大ケガをした、そのことに対しての後悔の念を忘れさせることにもつながった・・・はずである。一生懸命下準備をすることであつこはいつしかその後悔を表面上は忘れることができたのである。その後、その下準備も終わりを迎える。理亜が聖女に入学してきたのだ。こうして、聖良、理亜のユニット、Saint Snow、は始動した。

 そんな聖良の昔話を聞くとあつこは続けて、

「そして、聖良さんと理亜さんはSaint Snowとして活動するとちゃんとした下準備をしてきたせいか快進撃を続け、ついにはラブライブ!夏季大会で全体の8位までのぼりつめたのですよね」

と言うと聖良は、

「たしかにそうね。このときは、私たち、自分たちの夢を叶えることで必死でただ勝ち続けることしか頭になかったのよね」

と言っては昔を思いだしていた。聖良たちSaint Snowはちゃんとした下準備をしていたおかげで快進撃を続けていた。下準備したときに作成したロードマップにのっとり、最初のころはきつい練習メニューをこなしつつ小さなイベントにも参加していくことでSaint Snowの知名度をあげていった。そして、それが実を結び、東京のスクールアイドルのイベントに呼ばれるまでに成長・・・したのだが、それには満足せず、日々精進を重ね、ついには、ラブライブ!夏季大会で全体の8位という好成績を残した。ただ、このとき、聖良と理亜、2人とも、自分たちの夢を叶えるため、勝ち続けることしか頭になかった。そのため、ラブライブ!全体の8位という好成績であっても2人は満足していなかった。

 そんな聖良の昔話のあと、あつこ、ついにあのときのことを思いだしては言った。

「そして、Saint Snowはラブライブ!優勝を目指して頑張ろうとした、そのとき、あの日がきてしまったのです。ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、Saint Snowは理亜さんのミスにより予選敗退してしまいました・・・」

このあつこの言葉に、聖良、

「たしかに、このとき、私も悔しかったです。けれど、すぐに気持ちを入れ替えることができたのでそのことを後悔することはありませんでしたが、理亜はそのことを後悔してふさぎこみました。ですが、ルビィさんの働きかけにより理亜は立ち直ることができました。なので、あのときのルビィさんには感謝しております」

と言った。ついさきほど記述した通り、Saint Snowはラブライブ!優勝を目指して頑張っていたものの、理亜のミスによりSaint Snowは北海道最終予選で敗退してしまった。その後、聖良と理亜の対応はわかれてしまった。聖良は千歌との交流により勝つことより楽しむことの大事さを自分が自覚していないにもかかわらずそれに染まってしまったこともありそこまで後悔することはなかった。しかし、理亜の場合、自分のミスのせい、ということもあり、ルビィが機転をきかすまでずっと後悔し続けたのである。

 そして、最後にあつこは、

「そして、立ち直った理亜さんは自分だけのユニットを作ったものの、まさかの暴走でメンバーが次々と脱退していく状況に陥ってしまう、これが、今現時点、のことです」

と言うとすぐにある仮説をあつこは立てた。

「聖良さん、私としては、理亜さん暴走の理由、それは、あの日の後悔、ラブライブ!北海道最終予選の日の後悔、聖良さんとの夢を自分のミスで終わらせてしまった、その後悔を挽回すべく、いや、その後悔の末、「昔のSaint Snowと同じ、いや、それ以上のものを作り今度こそラブライブ!優勝を目指す」、その思いを叶えるべく、ラブライブ!に勝ち続けるためのユニット、それを作ろうと素人同然の私たちに無謀といえる練習を課したのかもしれません」

 このあつこの仮説に、聖良、

「た、たしかにそう言えるかもしれませんが、そう断定できないのでは・・・」

と少し反論するも、あつこ、ある事実を聖良に突きつけた。

「でも、理亜さん、私と喧嘩した日、こう言っていました。「私は必ずしないといけない、姉さまの分まで、この私が・・・、この私が・・・、Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・、いや、それ以上のものを・・・」と・・・。これって、昔のSaint Snow、それを追い求めていたからじゃないでしょうか、理亜さんが・・・。なので、こういえるのですが、理亜さん、昔のSaint Snowを追い求めたい、同じものを、同じ輝きを、いや、それ以上のものを作りたい、追い求めたい、その一心で素人同然の私たちに限界を超えた練習を課したのです」

このあつこの考えに、聖良、

「た、たしかにそう言われてみるとそうですね・・・」

と納得の表情。たしかにあつこの言う通りである。理亜はあつこと喧嘩した日、「Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・」と言っていた。その同じもの、それは、昔の聖良と理亜、昔のSaint Snow、そのことを指しているといえた。なので、理亜が暴走しているとき、理亜の心には、昔のSaint Snow、あの勝ち続けていたときのSaint Snow、それと同じもの、同じ輝き、いや、それ以上を追い求めようとしていたのだ。それがあつこたちユニットメンバーに対する限界を超えた練習に結びついた・・・のかもしれない。だって、スクールアイドル経験者とは違い、あつこたちユニットメンバーはスクールアイドルを始めたばかりに初心者なのだから・・・。

 だが、ここで聖良、こんなことをあつこに尋ねてしまう。

「でも、たしかにあつこの言う通りだとすると納得いくけど、そんな理亜を暴走へと突き動かしている元凶ってなんなのでしょうか?私、あの日の後悔以外にも理亜のなかにないか、気になってしまいます・・・」

そう、たしかに、あつこの言う通りなら、昔のSaint Snowと同じもの、同じ輝き、それ以上のものを追い求めているために理亜は暴走している、と言えるのだが、聖良に言わせると、それ以外にもなにか元凶となるものがあるのでは、と疑問に思ってしまうというのだ。

 で、この聖良の疑問に、あつこ、

「う~ん、たしかに・・・」

と少し考えるとすぐに、

「あっ、大事なこと、忘れていた!!」

と言っては聖良に対しあることを言った。

「聖良さん、たしか、「私は・・・私は・・・失った姉さまの分までやらないといけない!!」って言ってませんでしたか、私と理亜さんが喧嘩したとき、理亜さんが!!」

これには、聖良、そのときの理亜の言動を思いだすとすぐに、

「た、たしかにそうでしたね!!」

とあつこの言うことに同意した。

 すると、あつこ、聖良に対し新たなる仮説を立ててはこう言った。

「聖良さん、もしかすると、理亜さん、自分のミスで叶わなかった夢、そのなかで、自分と一緒に夢を叶えようとして叶えることができなかった聖良さんのぶんまで頑張ろうとしていたのではないでしょうか!!!だって、聖良さんにとって(北海道最終予選があった)ラブライブ!冬季大会が自分たちの夢を叶える最後の機会でしたから!!」

たしかにその通りである。ラブライブ!夏季大会を全体の8位という好成績で終えたSaint Snow、その次のラブライブ!冬季大会は自分たちにとって自分たちの夢を叶える最後のチャンスであった。なぜなら、聖良は高3である。で、スクールアイドルは高校生ならなれるアイドルのこと。この大会のあと、聖良は高校を卒業する。なので、次の冬季大会が自分たちの夢を叶える最後のチャンス、ともいえた。ところが、そのチャンスを自分のミスのせいで潰してしまった、そのことを理亜は後悔していたのだ。ただ、この後悔はルビィの機転による働きかけによりあのクリスマスライブというかたちでその後悔は消えた・・・はずだった。だが、なにかがきっかけで理亜さんのなかでその後悔が復活した。ただ、復活したときには肝心の聖良はすでにスクールアイドルを引退していたため、その夢を叶えるため、いや、それ以上に、自分のたちの夢を叶えることができなかった聖良の分まで自分でなんとかしないといけない、そう思ってしまい、理亜は暴走した・・・、ともいえた。このあつこの新仮説に、聖良、

「た、たしかにそうかも。あつこの言う通り、引退した私の分まで頑張ろうとした結果、理亜は素人同然の温子たちに対して無謀と言える練習を強要した、理亜は暴走した、といえなくもありませんね・・・」

と、納得してしまった。

 で、そのことを踏まえた上で、あつこ、聖良に対し、

「けれど、それによって私を含めて理亜さん以外のメンバー全員が理亜さんのユニットを脱退したことになります。こうなると、理亜さん、このあと、どうなると思いますか。聖良さん・・・」

と尋ねてみると、聖良、いやなことを考えたのか、

「いや~、私の理亜が・・・、私の理亜が・・・、壊れる!!」

と発狂じみた声をあげる。これには、あつこ、

「たしかに、聖良さんの考え通り、理亜さんはきっと自分のせいでほかのユニットメンバーが抜けた、また1人になってしまった」、って後悔するでしょう。その後悔と「自分のミスのせいで失った聖良さんの分を含めて聖良さんとの夢を今こそ叶える」という思い、それが合わさってしまった結果、今度は自分を罰するがごとく理亜さん自身に対して無謀といえる練習を課してしまう、そんな危険性がでてくるかもしれません。こうなると、私の二の舞、つまり、理亜さんは自分自身を追い込んでしまい、自滅、壊れることになるでしょう」

と聖良に言ってしまう。そう、理亜は聖良譲りにストイックさがある。また、なにに対しても真面目である。いや、それ以上に融通がきかない子でもある。そのため、「自分の暴走のせいでほかのユニットメンバー全員が抜けて自分1人になってしまった」という後悔の念が生まれてくる、その後悔、さらに、「失った姉さまの分まで頑張らないと、姉さまtの夢を叶えないといけない」、その思い、あの日の後悔、それが合わさってしまい、それによって自分で自分を律する、いや、それ以上に、無謀といえる練習を自分に課する、いや、それ以前に、その思いたちによって理亜の心は、体は、壊れていく、そうあつこは言いたいのだ。これには、聖良、

「あつこ~、私、どうしたらいいのでしょうか。理亜が壊れていくところ、私、見たくありません!!」

とあつこに泣きつく。

 これに対し、あつこ、聖良にある提案をした。

「それなら、それを止めてくれる人に頼んでみましょう」

このあつこの提案に、聖良、

「えっ、ある人に頼む?」

とあつこに尋ねると、あつこ、

「はい、あの暴走している理亜さんを止めてくれる人に頼むのです」

と、平気にこんなことを言った。むろん、その人について、聖良、

「それって誰のことでしょうか?」

とあつこに尋ねると、あつこ、その人のことを言った。

「Aqoursのみなさんのことですよ!!」

このあつこの言葉に、聖良、

「あつこ、なぜ、Aqoursのみなさんに頼むのでしょうか?」

とあつこに逆に尋ねてしまった。

 すると、あつこ、その理由を答えてくれた。

「それは理亜さんの性格がゆえに、それと、高校を卒業する聖良さんのこともあるからですよ」

で、この理由を聞いて、聖良、あつこに再び尋ねる。

「あつこ、なぜ、理亜のことをAqoursのみなさんに頼むのと私のこととどう関係があるのですか?」

 すると、あつこ、そのことを含めて自分の発言に対する解説を始めた。

「理亜さんがもっとも信頼している聖良さんですが、函館の大学に進学するとはいえ、いつかは理亜さんと離れ離れになります。そうなると、人見知りの理亜さんの性格上、誰にも相談することができなくなります。だって、理亜さん、ほかの人とはあまり話したがらないですから、人見知りだから。これだと、もし、理亜さんの身になにかあったら、きっと、理亜さん、誰にも相談できずに自分を追い込んでしまい、結果的には、自滅、するでしょう。しかし、理亜さんにはまだほかにも理亜さんのことを理解してくれる信頼できる人たちがいます。それがAqoursのみなさんなのです。特にルビィさんは北海道最終予選敗退によって聖良さんに対する後悔の念を持ってしまった理亜さんのためにクリスマスライブを提案してくれました。ルビィさんはそれくらい理亜さんのことを理解してくれています。なので、Aqoursのみなさんにお願いして理亜さんの良き相談相手として動いてもらったら、きっと、理亜さんのなかにあるその後悔の念も消してくれる、暴走を止めてくれる、と思います。それに、同じスクールアイドルでありライバルでもありますからね」

たしかにあつこの言うことも一理ある。誰とでも仲良くなれる聖良とは違い、理亜は内向的というか、極度の人見知り、である。その理亜の一番の理解者は聖良であるが、その聖良も聖女を卒業する身、なので、理亜がずっと聖良に頼ることができないのだ。けれど、極度の人見知りの性格上、理亜は自分の悩みなどを打ち明ける、そんな人が理亜のまわりにはいなかったりする。いや、なにかあった場合、理亜は姉であり理亜の1番の理解者である聖良以外に頼ろうとはせずに自分一人でなんとかしようとするだろう。だが、それにより、それに加えて、なにに対しても真面目に取り組む理亜の性格もあいまって、理亜自身暴走してしまう、そんなことが起こってしまう、その危険性があったりする。現に、今、理亜はそれらによって暴走状態に陥っている。でも、そのことについて、今は理亜の隣には聖良がいるのだから、聖良に相談の1つぐらいすればいいのでは、という疑問が浮上すると思うが、まぁ、それついてはおいおい話すとして、それは抜きにして、というか、あつこ自身、それについては忘れていたのかもしれないが、あつこの考えによれば、今、暴走状態である理亜を止めるためにも、理亜にとって聖良以外の理亜の理解者にその役を頼もう、というのだ。で、その聖良以外の理亜の理解者・・・というのが、Aqours、だったのである。あのクリスマスライブによってAqours、特に、理亜と同じく姉妹の妹であり姉思いであるルビィとは互いに分かり合える存在、理亜にとって自分の理解者、となってくれたのである。また、Aqoursは理亜と同じくスクールアイドルであり、互いを認め合ったライバル同士でもあった。なので、同じ穴のむじな?であり理亜にとって理解者であるAqoursにお願いして理亜の暴走を止めてもらう、と、あつこはそう考えたのである。

 だが、あつこの解説は続いた。

「それに、このままだと理亜さんはたった一人でこの聖女でスクールアイドル活動をすることになるでしょう。こうなると、もし、今みたいなことが起きたらまた今と同じことが起きてしまう。なので、理亜さんがAqoursに加入してくれたら今回みたいなことを未然に防ぐこともできますしね・・・」

このあつこの解説に、聖良、

「理亜がAqoursに加入ですか・・・。なんか、Aqoursのみなさんに理亜を押し付けているだけのような気がするのですが・・・」

と、少し考え込んでしまう。たしかに、あつこの言う通りである。もし、今回の暴走のことが終わったとしても、これから先、理亜はたった1人でこの聖女でスクールアイドル活動を理亜が続けるのであればきっと今回と同じことが起きるだろう。こうなってしまうと理亜は絶対に壊れてしまうだろう、だって、頼りになる唯一の存在である姉聖良、もう聖女にはいないのだから。ならば、理亜のことを理解してくれるAqoursに加入すれば、今回と同じようなことが未然に防ぐことができるだろう、もし、今回と同じことが起きたとしても理亜自身相談できる相手がいるAqoursなら今回みたいに大きくなることはないだろう、そうあつこは考えていたのだ。ただ、それについては、聖良、Aqoursに理亜のことを押し付けているだけなのでは、という心配もあった。

 が、しかし、

「でも、今考えられる案としてはそれが一番妥当ですね・・・」

と、聖良、あつこの案、「理亜をAqoursとして加入させる」、それが理亜にとって1番いい案である、と認めてしまった・・・、というか、これからの理亜のことを考えるとあつこの案以上のものを考え出すことができなかったのだ。なので、聖良、あつこの案に賛成してしまった。

 そういうことで、あつこ、聖良にあるお願いをする。

「聖良さん、Aqoursのみなさんに理亜さんAqours加入の打診をお願いします」

そう、Aqoursと接点があるのはこの函館では理亜以外に聖良しかいなかったのだ。なので、あつこ、聖良に理亜Aqours加入の打診をお願いしたのだ。これには、聖良、

「あつこ、わかりました。今、Aqoursは大事な案件がありまして、すぐには打診できないのですが、数日後、Aqoursが日本に帰ってきたその日にそのことを打診しましょう」」

と答えてくれた。今、Aqoursは、鞠莉の未来のため、Aqoursの未来のため、そして、スクールアイドルの未来のためにイタリアでライブをする準備をしていた。なので、すぐの打診はできなかった。が、それが終わって数日後、Aqoursがイタリアから帰ってくる、その日にそのことを打診することを聖良は決めたのである。

 だが、このとき、聖良とあつこは表面上のことしか気づいていなかった、理亜の暴走の

理由、「自分のミスで予選敗退したため、)叶えることができなかった夢、それを叶えるために、その夢を叶えることができなかった姉の聖良の分までそれを叶えたい!!「ラブライブ!優勝という頂きにのぼってA-RISEやμ'sと同じ景色をみたい」、その思い、もしくは、あの日の後悔、その裏に潜む真意、いや、理亜の心のなかに潜むある深淵なる闇、それがあることに・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第21話

 とはいえ、理亜のことで悩む聖良はすぐにダイヤたちに連絡・・・するわけもなく、ダイヤたちを含む千歌たちAqoursが日本に帰ってくるのを待った。その待っている日の最中、

(このパフォーマンスを見て確信しました。千歌さんたちは無事に復活を果たしました。もうこれで千歌さんたちの心配をする必要はなくなりましたね)

と、自分のスマホを眺めてはそう思った。聖良が見ていたもの、それは、イタリア・ローマのスペイン広場で行われたAqoursのライブの映像だった。イタリアに行った千歌たちは無事にダイヤたち3年生3人と再会?したものの紆余曲折を経てローマ・スペイン広場で、鞠莉の、Aqoursの、そしって、スクールアイドルの未来を賭けた運命のライブをすることとなったのだ。そのなかで、千歌たちの旅行の通訳兼ガイド役の月によりルビィが覚醒、それを起点に千歌たちも生まれ変わる?ように復活を果たしていく。そして、ローマ・スペイン広場での運命のライブ・・・、それは、あの静真でのライブに失敗した(新生)Aqoursの姿とは・・・、いや、これまでのパフォーマンス以上の・・・そんな言葉にはいえないくらいのものすごいパフォーマンスをAqoursはみせていたのである。これで千歌たちは・・・、いや、Aqoursは復活を果たした・・・、いや、それ以上のものになった・・・、そう聖良が思えるくらいのステージだったのだ。

 そんなライブから数日後・・・、

(ようやくダイヤたちが帰ってくるのですね)

と聖良はダイヤたちが日本に帰ってくるのを心待ちにしていた。昨日の夜、ダイヤから日本に帰国する旨のメールが聖良のスマホに届いていたため、聖良、今日、ダイヤたちが千歌たちと一緒に日本に帰ってくることを知っていたのだ。

 そして、その日の夕方・・・、

(もうダイヤたちは沼津に到着したはず。もう電話をしていいでしょう)

と、聖良、そう思うと、すぐに自分のスマホを取り出しては電話帳を開き電話をしたい相手を選び電話を・・・、

(あっ、しまった・・・。ダイヤではなく鞠莉に電話してしまった・・・)

と、ここで、聖良、つい焦ってしまったのか、ダイヤに電話するつもりが間違えて鞠莉に電話をしてしまったのだ。あの完璧超人である聖良としてはとても珍しいミス!!でも、それくらい聖良は切羽詰まるものがあったようだ。

 とはいえ、

(まぁ、鞠莉に電話をしてもダイヤと一緒にいるはずですから大丈夫でしょう)

と、聖良、そのまま、鞠莉に電話をすることにした。実は昨日のダイヤからのメールのなかで、ダイヤ・鞠莉・果南は沼津に帰ってきたらその日から2週間くらい鞠莉の実家であるホテル小原沼津淡島にて高校最後となる3人だけの時間を過ごす予定だということが記載されていた。なので、聖良、そのことを知っていたのでダイヤの携帯に電話しなくても鞠莉のスマホに連絡すれば必ずダイヤにつながると考えたのである。

 そんなわけで、聖良、少し待ってから鞠莉のスマホにつながったことを確認すると、いきなり、

「あの~、小原鞠莉さんの携帯でお間違いないでしょうか?」

と言うと、聖良のスマホからある少女の声が・・・、

「イエ~ス!!マリーの携帯で~す!!」

と鞠莉の声が聞こえてくる。この声を聞いて無事に鞠莉のスマホにつながったことで少し安堵する聖良。その聖良、そのまま、

「鞠莉さん、私です!!聖良、鹿角聖良です・・・」

と、自分の名前を名乗ると、鞠莉、

「聖愛、このマリーになんか御用でしょうか?」

と尋ねてくる。

 と、ここで、聖良、

(人に頼み込むなんていつもの私じゃないかもしれません。でも、それくらい、私にとって、今の理亜を救うためには鞠莉の・・・ダイヤたちAqoursの力が必要なのです!!ダイヤ、鞠莉、果南、理亜を助けてください!!)

と、自分の思いを胸にし、鞠莉に対してとても重要なお願いを、必死な思いを、力強く、言った・・・。

「鞠莉、お願いです、理亜を、鹿角理亜を、Aqoursに、Aqoursに入れてください!!」

そんな聖良からの悲痛ともとれるお願い、であったが、とうの鞠莉はというと・・・、

「What!!なんですって!!」「果南、ダイヤ、大変で~す!!実は・・・」(鞠莉)

「えっ、それ、本当!?」(果南)

「これは鞠莉さんだけで決めるわけにもいけませんわ!!ここは聖良さんから詳しい事情を聞く必要がありますわね!!」(ダイヤ)

と、突然の、いや、トリックスターの鞠莉すら寝耳に水、というくらい、誰も予感すらしていなかった、そんな聖良からのお願い、に、鞠莉、ダイヤ、果南も困惑している様子・・・、なのだが、さすが、ダイヤ、まずは聖良にそのお願いに至った事情を聞くことでなんとかその場は収めた。

 そして、鞠莉が自分の洲あほをスピーカーモードにすると、聖良、

「実はですね・・・」

と、そのお願いに至った事情を話した。あのクリスマスライブのあと、理亜が新しいユニットを有志と一緒に作ったこと、最初のころは順調だったものの、ある日(ラブライブ!決勝に進出したAqoursを応援しに東京に行った日)を境に理亜がユ暴走し始め、ほかのユニットメンバーに対して無謀といえる練習を課すようになった結果、次々とユニットメンバーが抜けていったこと、それを見かねて聖良が息抜きと称して理亜を連れて東京に卒業旅行にいったものの千歌からのお誘いで沼津に来たときに千歌たち新生Aqoursのみっともないパフォーマンスを見て理亜が激怒したこと、そのせいか、理亜の暴走もヒートアップ、これには、これまでSaint Snow第3のメンバーとして聖良と理亜を支えてくれていた、そして、聖良のお願いで理亜のユニットに参加していたあつこも(自分のスティグマ悪化を懸念してか)理亜のユニットを脱退、あと1人理亜のユニットに残っているものの、その人も理亜のユニットから脱退することが決定的、なので、理亜は、今、たった1人になってしまった、と・・・。

 そして、聖良はダイヤたちに対し、

「それは私の憶測なのですが・・・」

と前置きを言いつつ、なんで理亜が暴走したのか、その理由も話した。理亜は(たった1人になっても)自分と一緒に果たすことができなかった夢、ラブライブ!優勝、自分のミスにより果たすことができなかった夢、それを叶えるため、一生懸命頑張っている、その思いが暴走しているのではないか、と・・・。さらには、自分のミスでラブライブ!冬季大会決勝に進出できなかった、そのことに理亜は後悔している、いや、それによって失った自分の分まで理亜は補おうとしている、そして、昔のSaint Snowと同じものを、同じ輝きを理亜は追い求めようとしていること、それらによって、理亜は自分やほかのユニットメンバーを極限まで追い込もうとしていることも伝えた。

 その上で、聖良、ダイヤたちに対し、自分の思いを語った。

「ほかのユニットメンバー全員が理亜のユニットから抜けた今、理亜はたった一人になりました。そんな理亜がこれから進む道、それは、破滅という道・・・、これまでほかのユニットメンバーに向けていた思い、「自分のミスで私(聖良)との夢を叶えることができなくなった。ならば、自分だけの力でその夢を叶えないといけない。自分のミスのせいで失った私(聖良)の分まで頑張らないといけない」、その理亜の暴走の原因と思えるその思い、それを今度は理亜自分自身に向けれるでしょう。こうなってしまうと理亜は自分で自分を追い詰めていくのは明白・・・。その思いからくる苦しみ、その起因たる(ラブライブ!冬季大会北海道最終予選での)自分のミスへの後悔、それを悔いている理亜の姿・・・、もがき苦しんでいる理亜の姿、そんな理亜の姿を見て、私、「理亜からそんな苦しみを解放させたい」、そう思えるようになりました。けれど、私はもうすでにスクールアイドルを卒業した身。私には理亜をその苦しみから解放することができません。でも、私の次に理亜の理解者であるルビィさんたち、Aqoursのみなさんが理亜の近くにいればきっといつかは理亜をその苦しみから解放してくれるだろうと思います。だって、孤独な理亜が頼れるのは私以外にルビィさんたちAqoursしかいないのですから。それに、Aqoursのみなさんなら理亜が困っているときはいつもそばにいてくれる、理亜もAqoursのみなさんを信頼していつでも頼ることができる、そう思っていますから」

そんな自分の思いを伝えた上で聖良は、今一度、ダイヤたちに対しお願いをした。

「なので、聖良、一生に一度のお願いです!!理亜をAqoursに、Aqoursに入らせてください!!理亜を、(ルビィたちAqoursがいる、旧浦の星の統合先である)静真に編入させてAqoursのみなさんと一緒にスクールアイドル活動させてください!!」

 熱く熱くお願いをする聖良、対し、ダイヤは冷静だった。ダイヤ、とても大事なことを聖良に尋ねる。

「で、聖良さん、このこと、理亜さんは承諾しているのですか?」

そりゃそうだ!!理亜のAqours加入、それに対し、とうの本人、理亜が承諾していることが理亜のAqours加入にとってとても大事なことである・・・のだが、もう、みなさん、お気づきだろう、聖良とあつこはそのことを理亜には話していない、というか、聖良とあつこが勝手に決めたことである。なので、聖良、

「いえ、まだ、理亜には話しておりません。これはまだ私としての案のままです・・・」

と正直に話した。なので、まだ、理亜本人がまだそのことを知らない、となれば、理亜本人の承諾なしに聖良たちだけで勝手にその話(理亜のAqours加入)を進めていては理亜のためにはならない、というわけで、ダイヤ、

「それだと話になりませ・・・」

と、そこでその話は打ち切ろうとしていた。

 だが、ここで、聖良、

(でも、このままだと私の大事な理亜が、妹の理亜が、壊れてしまう!!)

と気持ちを先走ったのか、突然、

「ダイヤ、お願いです!!理亜を、Aqoursに、入れてください!!そうじゃないと、理亜、きっと壊れてしまいます・・・」

と、これまでのクールビューティーさを壊すくらいの、それくらい必死になって、大事な妹、理亜のために必死になってダイヤたちにお願いした。これには、ダイヤたちも突然のこと・・・というか、自分のイメージすら殴り捨ててまで必死にお願いする聖良の姿を見て困惑してしまう。

 けれど、それだと埒が開かないため、鞠莉、

「セーラ、落ち着いて!!まずはこのことを千歌っちたちAqoursのほかのメンバーにも相談してみるから、ちょっとキープ(待って)!!」

と、聖良に対し大声で一喝!!これには、聖良、

「た、たしかにそうですね!!まずは理亜を受け入れる側、Aqoursのみなさんのなかで話し合う必要がありますね・・・」

と理解を示すとともに、

「それではAqoursのみなさんの意見がまとまり次第、私が理亜に(このことを)話すことにしましょう」

と、聖良が勝手にこのあとの段取りを決めてしまった・・・のだが、これについてはこのときは、ダイヤ、鞠莉、果南から異論がなく、まずは理亜Aqours加入についてAqoursメンバー全員で話し合うことが決まった・・・わけでして、これで聖良は安心したのか、電話を切ってしまった・・・。ただ、このあと、ダイヤ、鞠莉、果南、は鞠莉が勝手に「理亜Aqours加入についてAqoursメンバー全員で話し合う」ということを決めってしまったことに気づいてしまい、鞠莉、自分の発言に慌てふためくも、持ち前の切替のよさもあってか、すぐに千歌たちに連絡、緊急Aqours全体会議を開催することとなった・・・。

 

 そして、ダイヤ、鞠莉、果南は手分けしてほかのAqoursメンバーに、急遽、いつも集まる喫茶店「松月」で緊急Aqours全体会議を行うことを連絡していった。

 そんなわけでして、もちろん、この少女も・・・。

「ルビィ、急遽、「松月」で緊急Aqours全体会議を行います。必ず来てください」

とダイヤから電話でそう告げれたからか、

「うん、わかった、お姉ちゃん!!」

と、連絡を受けた方、ルビィもそれについては了承する。

 ただ、このとき、ルビィは急遽決まった全体会議でのぼる議題について薄々と感じていた。それは・・・、

(きっと、理亜ちゃんのことだ・・・。理亜ちゃん、まだ元気がないんだね・・・)

そう、ルビィにはわかっていた、会議の議題、それは理亜のことについてだと・・・。

 そして、ルビィは理亜のある言葉を思いだしていた。それは・・・、

(あのとき、ルビィたちが、不安・心配を前面に出したパフォーマンスを理亜ちゃんたちのまえで見せた時、理亜ちゃん、ルビィたちに対してこう言っていたね。

「そんなの、人に聞いたってわかるわけ、ないじゃない!!」

「全部、自分でやらなきゃ!!」「姉さまたちはもういないの!!」、って・・・)

そう、静真でのライブ失敗の翌日、内浦の砂浜海岸で理亜たちのまえで見せた、不安・心配に満ちたパフォーマンスをルビィたちはしたのだが、そのとき、姉のダイヤに頼ろうとしていたルビィに対し理亜が言った言葉、その言葉を反芻したルビィは遠い空を見上げてこう思ってしまった・・・。

(あのときはルビィたちも不安・心配という深い海・沼の底に陥ってしまってわからなかったけど、その海・沼から抜け出すことができた今だからこそ、ルビィ、こう言えるかもしれない、あのときの理亜ちゃん、いや、今の理亜ちゃん、なんか、昔のルビィの姿に、お姉ちゃんたちを探しにイタリアに旅立つルビィたちの姿に、なんか似ている気がする・・・)

 

 その後、千歌のスマホ充電忘れもあり、Aqoursメンバー全員に連絡がついたのは夜遅くだった。そのため、緊急Aqours全体会議は、明日の朝、いつもあつまる喫茶店「松月」で行うこととなった。

 そして、ダイヤ、鞠莉、果南は聖良を加えて、理亜がAqoursに加入できるのか、この3月下旬に(浦の星の統合先である)静真に編入できるのか調べてみた。だって、もうすぐ新学期という時期に編入できないのであればいくら理亜のAqours加入が決まっても静真編入ができなければ意味がないから。

 で、結果は・・・、

「まさか、この時期でも静真に編入できるなんて・・・」(ダイヤ)

と、ダイヤもびっくりするくらい、この新学期に迫っている時期であっても静真に編入できることがわかった。どうやら、静真、より成績優秀な生徒やスポーツ競技に秀でた生徒を自分の学校に引き入れたいらしく、3月末まで編入試験の受付をしていたのである。まぁ、その浦にはあの男の存在があるのですが、その男と静真の生徒会長である月との争いについては別の話(「Moon Cradle」)です・・・。とはいえ、これで理亜も静真の編入試験を通れば晴れて静真の生徒の一員に、Aqoursの一員になれる、ということがわかりました。また、理亜の学力は相当高いものであること、輝かしい実績(ラブライブ!夏季大会8位入賞)があるため、静真の編入試験は一発で合格できるレベルであることもわかった。あとは、Aqoursメンバーの考え、理亜の考え次第といえた。この結果に、聖良、理亜Aqours加入のための第1段階は無事にパスした、と安心しきっていた・・・。

 そのためか、聖良、こんなことを言いだしてきた。

「あとはAqoursのみなさんが理亜のAqours加入を認めてくれたら、私の理亜は、理亜は、壊れなくてすみます!!ダイヤ、鞠莉、果南、本当にありがとうございます!!」

ただ、この聖良の発言には、ダイヤ、鞠莉、果南、ともに、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第22話

 翌日、

「ついに理亜さんもAqoursの仲間入りなんだね・・・」

と、あつこは温泉に入りながら理亜のことを考えていた。ここは函館の奥座敷、湯の川温泉。函館を走る路面電車の終点の地でもあり、湯治を兼ねて、多くの函館市民、観光客、湯治客がこの温泉に集いていた。で、あつこは、毎週、自分の古傷、スティグマの湯治を兼ねてこの湯の川温泉につかりにきていた。で、あつこ、温泉につかりながら理亜のことを考えていたのだ。理亜のAqours加入の件、あつこの発案とはいえ、聖良がダイヤたちにそのことを伝えた、これで聖良や理亜も安心できる、そう、あつこは思っていた。

 だが、そう考えたとき、あつこ、

(でも、そう考えると、なんか自分のことを思いだしてしまいます・・・)

と、自分のスティグマを見ながら昔の自分を思いだそうと・・・、いや、なぜか自然と自分の過去を・・・、自分にとって辛いときのことを思いだしてしまった・・・。

 

「優勝、おめでとう!!」「将来有望な選手だ!!」

「いや、未来の金メダリストだ!!」

12歳のとき、あつこはフィギュアのジュニア大会で優勝した。あつこのまわりにいる同級生はすでに第二次性徴に入っており大きく成長していたがあつこにはまだきていなかった。だが、それでものびのびと演技、高難易度のジャンプを跳んだこともあり、あつこは日本有数のジュニア大会で優勝することができた、そのことについて、当時のあつこは、

(私、フィギュアの世界でもっともっと頑張る!!そして、いつかは、オリンピックで、金メダルを取る!!)

 だが、そこがあつこの、フィギュアにおける頂点、となった・・・。この日を境にあつこの体は急成長を遂げる。あつこもついに第二次性徴を迎えたのである。男性ほどではないが日に日に大きくなっていく体、さらに、女性特有のもの、胸も大きくなっていった。そのため、

(あれっ、このジャンプ、先日まで跳べていたのに、なんか跳べない・・・。なんか、これまでの感覚にズレが生じている・・・)

と、これまで跳ぶことができたジャンプが急に跳べなくなったりと、あつこ自身困惑するくらい、これまで掴んでいた(ジャンプや演技の)感覚にズレが生じてきてしまっていた。が、そんなこと、あつこのまわりにいる大人たち、それについて知らない、もしくは、無視しているのか、あつこに対し、

「おい、あつこ、なんでこれまで跳ぶことができたジャンプが跳べなくなっているんだ!!先日まで簡単に跳べただろ!!ほら、跳んでみろ!!」

「お前、練習をさぼっていたから跳べなくなったんだ!!休まず練習しろ!!」

と、あつこの苦労すら知らずに檄を飛ばしていた。

 だが、その大人の言葉を鵜呑みにしたあつこは今以上にたくさん練習をするも、日々変わるあつこの体、それにともなって感覚のズレが大きくなっていく。あつこの努力は凄いものだったが、あつこの体の成長はそれをも上回るものだった。いくら感覚のズレを修正しても次の日にはまた感覚にズレが生じてしまう・・・、いや、大きくなっていった。

 そんなこともあり、あつこ、

「うぅ・・・、また大会で上位に入れなかったよう・・・」

と悔し涙を流すくらいあつこのフィギュアの成績は下降線をたどることとなった。と、同時に、まわりの大人たちから、

「もっと練習しろ!!」「もっと根性をだせ!!」

「練習が足りないんだ!!日々鍛錬あるのみだ!!」

と、あつこのことなんて考えなしに、ただ、あつこの努力不足、練習不足として、あつこにとって辛い、とてもきつい言葉攻めをしていた。

 とはいえ、あつこのまわりにはきつい言葉を言い放つ大人たち以外にも同じ世代の人、同級生などがいるはず。特に同じフィギュア選手なら同じ境遇なので相談しやすいはず・・・なのだが、あつこにとってみればそうではなかった。なぜなら・・・、

(私のまわりにいる同じ歳の子は、みな、私と同じフィギュアの選手。私からみたら、みなライバル!!だから、お互いのことをあまり干渉されたくないと思っているに違いない・・・)

なんと、あつこ、まわりにいる同じ歳の子はみなフィギュアの選手、だったためか、「みんなライバル」という認識が強かった。なので、お互いのことはあまり干渉したくないしされたくもない、そんな認識をあつこはもっていた。あと、あつこはこれでも12歳のときにジュニアの大会で優勝をしている。そこからくる意地、というか、その栄光が逆にまわりの同じ歳の子たちからあつこを遠ざける要因ともなっていた。

 そして、あつこにとって幼馴染の聖良については、あつこ、

(それに、聖良は、自分の夢、スクールアイドルになって頂点に立つ、その夢に向かって邁進している。そんな聖良に心配をかけたくない・・・)

と、このとき、すでにスクールアイドルとしての夢を叶えるべく頑張っている聖良に心配をかけたくない、その一心で聖良に相談できずにいた。

 そんなこともあり、誰にも相談できずにきつい大人たちからの言葉攻めもあってか、あつこ、

(大人たちの言う通り、もっと練習して、もっと頑張って、昔みたいないい成績を、昔みたいな栄光を、昔みたいに勝ち続ける、そんな選手にならないと!!)

と、大人たちの言葉を鵜呑みにして自分を極限まで追い込もうとしていた。そのため、普通ならしないような人間の限界を超えたと思えるくらいの練習をあつこはするようになる。これには、大人たち、

「これを続けていたらきっと体が壊れてしまうのでは・・・」

と、あつこのことを心配する声もあがるも、それ以上に、

「もっと練習しろ!!俺が小さいときはきつい練習をした。だからこそ、俺はとてもいい成績を残すことができたんだ!!だからこそ、もっと練習しろ!!」

と、練習をもっと強要する声が多かった。

 だが、それがあつこにとって最悪の事態を招いてしまう。それは中学3年のある大会での出来事だった。この大会で、あつこ、

(これこそきつい練習の成果だよ!!今日はこれまで以上にいい出来!!)

と、これまでの不審な成績がうそみたいだと思えるくらいいい演技をしていた。あのときまでは・・・。

 そして、最大の見せ場、最後の大ジャンプに差し掛かったとき、あつこに異変が起きる。ジャンプを跳びにいった瞬間、

(あれっ、体が・・・いうことを・・・きかない・・・)

なんと、ここにきて、限界を超えた練習の疲れがどっときたのか、それとも、限界を超えた練習を続けてきたツケがここできたのか、わからないが、あつこ、自分の体の制御が突然きかなくなってしまう。と、同時に、あつこの体のバランスも崩れてしまう。ジャンプ失敗、そう誰から見ても明らかな状況・・・、それでも、あつこ、

(私の体・・・動いて・・・ちゃんと・・・動いて・・・)

と、諦めずに自分の体を制御しようとするもできず・・・、あつこの体は一瞬宙を舞うとそのまま、

どしんっ!!

という音とともに氷の上にたたきつけられてしまった。

 だが、あつこの悲劇はこれでは終わらなかった・・・。大ジャンプを跳ぶ瞬間に体のバランスを崩し、そのまま氷の上に落下したこともあり、跳ぼうとしたときの勢いがまだ残っていたのだ。そのため、あつこの体はそのまま氷の上を滑るように、いや、絶望への道へと滑り落ちるようにある場所へと突き進んでいた。これには、あつこ、

(止まって、止まって!!)

と、自分の体が止まるように願うもあつこの体は止まることがなかった。

 そして、

ガタンッ!!

という鈍い音がスケートリンク内に響き渡る。そう、あつこの体は跳んだときの勢いのまま、スケートリンクの壁にぶつかってしまったのだ。そのため、

(い、痛い・・・、痛いよ・・・)

と、あつこは苦しみに満ちた声を心のなかに響き渡らせていた。いや、それ以外にも・・・、

「血、血よ!!」

と観客が叫ぶくらい、あつこのいる場所には血が広がっていた。どうやら、ぶつかったときにあつこが履いていたスケート靴のブレードの歯がもう一方の足に触れてしまい、それによってあつこの足のふくらはぎを切ったようだ。

 こうして、あつこはすぐに緊急搬送され病院で入院する羽目になった。診療結果は体の何か所かで複雑骨折、それに、ふくらはぎを何センチも縫う大ケガ。これには、あつこ、

(うぅ、どうして・・・どうして・・・)

と、悲痛に満ちた気持ちになってしまった。

 だが、あつこの悲劇はそこでは終わらなかった。大ケガをしてしまい悲痛に満ちた気持ちになっていたあつこ、そんなあつこの傷跡に塩を塗るがごとくまわりの大人たちからあつこにとって冷酷に満ちた、失望ともとれる、そんな言葉をあつこに浴びせてしまった。

「とても期待していたのに・・・」「期待外れもいいところだ!!」

「こんな大ケガをするなんて、本当に根性が足りないからだ!!」

あつこの悲痛に満ちた気持ちを逆なでするかのごとく浴びせらえる冷酷な言葉たち、これにより、あつこ、

(もうフィギュアなんたやりたくない!!この大事故で私はなにもかも失ったんだ!!過去の栄光も、フィギュアにかける思いも、すべて、すべて、なっくなったんだ!!)

と、これまでのものを全て失った、そんな絶望に満ちた思いになってしまった。また、

(もう誰のことも信じられなくなった・・・。私の気持ちなんて気にせずに、ただ、自分の言いたいことだけを私に押し付ける、そのな人たちなんて、もういや!!)

と、ある人以外の人の言うことを信じることができなくなってしまった。また、人付き合いについても誰に対しても角が立たないように接するようになってしまった・・・。

 そんな絶望の底に・・・、深き深淵なる闇に閉じ込められてしまったあつこ、であったが、このとき、そのあつこに救いの手が差し伸べられた・・・。

「あつこ・・・、あつこ・・・、私です・・・、聖・・・」

 

と、そんなときだった。

「痛っ!!」

というあつこの声とともにあつこは目を覚ました。これには、あつこ、

(あっ、ついつい、気持ちよくて、私、眠っていたみたい・・・)

と一瞬そう思ってしまう。どうやら、あつこ、温泉の気持ちよさでつい眠ってしまったようだ。で、今さっき、浴槽のふちに頭をぶつけたことでようやくあつこは目を覚ました、というわけである。

 だが、今さっきまで眠っていたあつこ、つい、今さっきまで見ていた夢について、

(でも、今さっきまでみていた夢、本当にリアルな夢・・・、いや、私がこれまでやってきたこと、それがまるで走馬灯のごとく流れていたな・・・)

と、自分のスティグマを見ながらそう思った。どうやら、自分の辛い過去を振り返り始めたときについ眠ってしまったので、その流れのまま、自分の辛い過去が夢として走馬灯のごとく流れたようだ。ただ、その夢、いや、自分の辛い過去を振り返ると、あつこ、こんな考えが浮かび上がってくる。

(なんか、あの大事故のせいで私はフィギュアという大きな柱を失った。すべてを失った、そのときの私と自分のミスで姉との大事な夢を叶えることができず、それにより今でも苦しんでいる、そんな理亜さん、なんか似ている気がする・・・)

そう、あの大事故ですべてを失ったと思ってしまったあつこと自分のミスで姉との大事なな夢を叶えることができず、そのときの悔いにより今でも苦しんでいる、そんな理亜、それがなんか似ている気がしているようだ、あつこは。

 とはいえ、これ以上長湯すればのぼせてしまう、と思ったあつこはすぐにあがるとそのまま更衣室へと移動した。そのときだった。突然、あつこの着替えを置いてあるロッカーから、

ブルブル ブルブル

という音が聞こえてきた。これには、あつこ、

「あっ、電話だ!!」

と、自分のロッカーから自分のスマホを取り出す。どうやら、「ブルブル」という音はあつこのスマホに電話がかかてきたことを教えるマナーモードのバイブ音だったようだ。

 そして、あつこ、すぐに通話ボタンを押しては、

「はい、蝶野あつこですが・・・」

と電話に出る。すると、スマホのスピーカーから、

「あつこ、私、聖良です!!」

と、電話の相手、聖良がこう言うと続けて、

「あつこ、今すぐ私の家に来てください!!理亜のAqours加入について決まったようです!!」

という声が聞こえてきた。これには、あつこ、

(ついに決まったんだね、理亜さんのAqours加入について!!)

と思うとすぐに、

「聖良さん、わかりました。すぐに行きます!!」

と言っては電話を切り、自分の服を着るとそのまま聖良の家へと急ぐことにした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第23話

 そして、

「聖良さん、遅れてすいません!!」

とあつこが聖良の部屋に到着。聖良も、

「あつこ、ちょうどよかったです。今、Aqoursのみなさんとつながりましたから!!」

と言うと聖良の前に設置されていたタブレットから、

「あら、聖良さん、その方はどなたなのでしょうか?」

と、タブレットの画面に映る人物たち、Aqoursメンバーうち、3年生のダイヤがあつこについて尋ねてきた。ダイヤを含め、Aqoursのみんなとあつこはこれが初対面である。そんなわけで、聖良、

「彼女は蝶野あつこ、私の幼馴染で、私たち、Saint Snowを陰から支えてくれたサポーターであり同志です」

と、あつこのことを紹介するとあつこも、

「蝶野あつこです。宜しくお願いいたします」

と、ダイヤたちに挨拶をした。

 このとき、鞠莉、あることに気づいたのか、あつこに対しこんなことを言いだしてきた。

「あっ、蝶野あつこってName(名前)、鞠莉、聞いたことがありま~す!!たしか、昔、フィギュアのジュニアの大会でチャンピオンになったことがある、悲劇のフィギュア選手でしたね~」

これには、ダイヤ、

「鞠莉さん、それはあつこさんに失礼ですよ!!」

と鞠莉に注意するも、あつこ、

「ま、まさか、私のこと、知っていたなんて、驚きです!!」

と驚きの表情を浮かべるも、すぐに、

「でも、悲劇なんて・・・」

と、鞠莉の言葉、「悲劇」、にちょっと困り顔になる。それでも、鞠莉、こう言い続けた。

「でも、悲劇というのは本当の話で~す!!だって、あれだけ苦しんで頑張っていたのに、Adult(大人)の心無い言葉のせいで大ケガという大事故を起こしてしまった、Tragedy Girl(悲劇の少女)なのですからね~」

そんな鞠莉の言葉に、あつこ、

「でも、鞠莉さん、本当に優しいのですね。私にとってとても辛い過去なのに、それを「悲劇」として受け取ってくれるなんて、本当に嬉しいです!!」

と、少し泣きながら鞠莉に向かってお礼を言った。これには、ダイヤ、

「鞠莉さん、あつこさんが泣いたではありませんか」

と、鞠莉を叱るも、鞠莉、

「でも、鞠莉からすれば、あつこは大人の犠牲になった少女で~す!!悲劇と言ってもOver(過言)ではありませ~ん!!」

と、平気でそう言ってしまう。ただ、これについては、あつこ、

(でも、これって鞠莉さんなりの心遣いなんでしょうね)

と、鞠莉のことを素直に認めた。

 だが、そんな鞠莉から驚く言葉が出てくる。鞠莉、嬉しくて泣いているあつこに対しこう言った。

「そして、あつこ、あなたは「Saint Snow第3のメンバー」としてSaint Snowを支えた素晴らしきサポーターで~す!!あの「Self Control」や「Drop Out」などのSaint Snowの曲をセーラとともにMake(作り上げる)したり、あのクリスマスライブで披露した「Awaken the power」を1人で作曲した、Saint Snow、陰のPowerful person(実力者)で~す!!」

で、この鞠莉の言葉に、聖良、

「鞠莉、なんで、あつこのことをよく知っているのですか?私、鞠莉に、あつこのこと、紹介したこと、ありましたでしょうか?」

と、鞠莉の情報にびっくりするとあつこも、

「なんか、私のこと、よく知りすぎている感じがします、鞠莉さん・・・」

と、逆に引いてしまった。これには、鞠莉、

「マリーの情報網を侮らないでくださ~い!!聖良の懐刀、この情報通のマリー様にかかればお茶の子さいさい、で~す!!」

と、鼻高々になるも、ダイヤ、そんな鞠莉に対し、

「あの~、鞠莉さん、あなたのせいであちらさんがドン引きしているじゃありませんか!!」

と、呆れて何も言えるない、そんな状況になっていることを鞠莉に伝えるも、鞠莉、そんなことを気にせずに、ただ、

「ぺろぺろ」

と、笑ってごまかしていた。

 と、ここでこれまでなにも言えなかった果南から、

「鞠莉、ダイヤ、そのことはあとでいいから、話を先に進めるよ!!」

と至極まっとうな意見が飛び出す。

 と、まぁ、そんなわけでして、さっそく、今日の本題、理亜のAqours加入について、ダイヤたちから先に話すことにした・・・はずなのですが、とうの理亜はといいますと・・・、ちょうどそのとき、理亜、

「姉さま、私、トレーニングに行ってくる・・・」

と、暗い表情のまま、トレーニング・・・というか、午後の走り込みをしていた。これには、聖良、暗い表情のまま家を出ていった理亜の姿を見て、

(理亜・・・)

と、理亜のことがとてもとても心配になっていた・・・。

 

 そんな理亜の姿を今日で終わる、そう思った聖良、すぐに、

「ところで、理亜のAqours加入、どうなりましたか?」

と、ダイアに尋ねてみる。

 すると、ダイヤ、聖良の方を向いた素振りをしつつ、

「理亜さんのAqours加入ですが・・・」

と、前置きを言いつつ話し合いの結果を伝えた、申し訳なさそうに・・・。

「大変申し訳ございませんが理亜さんをAqoursに入れることはできませんでした・・・」

 このダイヤの断りの言葉に、聖良、

「えっ、理亜がAqoursに入れない・・・。なぜ、なぜですか、ダイヤ!!」

と、理亜のことを思ってか、ダイヤに泣きながらその理由を尋ねる。聖良のこの言葉、

(なんで、なんで、なんで!!理亜はAqoursに入れないとなると、理亜は一生1人のまま・・・。このままだと、このままだと、理亜は、理亜は、自分で自分を追い込んでしまい、しまいには・・・、理亜は、理亜は、壊れてしまう!!)

と、自分の愛すべき妹の理亜の今後について心配のあまり発した言葉だった。

 だが、そんな聖良の叫びを最初から聞いていたのか、ダイヤ、

「その理由については、私の妹、ルビィからお話しさせてください」

と言ってはAqours側のカメラを動かすと、そこには・・・、

「聖良さん、お久しぶりです、ルビィです」

と、ダイヤの妹でAqoursメンバーの1人、ルビィの姿があった。で、ルビィとは初対面のあつこに対して、鞠莉、

「ルビィとは初めてのあつこにTeach(教える)しま~す!!ルビィは、ダイヤのsister(妹)であり、理亜にとってFirst(1番)のUnderstander(理解者)なので~す!!」

と、ルビィの説明をすると、ダイヤ、

「鞠莉さん、どうでもいいことを言わないでください!!まずは本題に入るのが先決です!!」

と、鞠莉に説法をすると、鞠莉、

「はいはい!!」

と、わざとらしい声をあげた。これには、あつこ、

(Aqoursってお笑い集団・・・なのかな・・・)

と、ダイヤたちのことそう思ってしまった・・・。まぁ、半分正解なのですがね・・・。

 と、まぁ、鞠莉とダイヤの茶番劇はあとにして、ルビィはカメラのレンズを見つめるように、いや、その遠くにいる聖良に向かって自分の想いを告げた。

「ルビィね、こう想うの、理亜ちゃん、自分がAqoursに入ること、絶対に望んでいない、って・・・」

 だが、このルビィの想いに聖良は真っ向から反論する。

「ルビィさん、それは違うと思います!!理亜も私と同じ意見!!Aqoursに入りたいと言うはず!!」

だが、いつもは温厚なルビィには珍しく、聖良に意見する。

「聖良さん、それは違うよ!!たとえ、理亜ちゃんがAqoursに入っても、理亜ちゃんの悩みは解決しないよ!!」

むろん、これについても、聖良、

「それはやってみないとわからないじゃないですか!!」

と、こちらも反論する。ヒートアップする2人。これには、ダイヤ、

「ルビィ、聖良さん、2人とも落ち着いてください!!」

と2人をなだめる。

 だが、ダイヤの忠告も聞かずにさらにヒートアップする2人。まずは、ルビィ。

「じゃ、聖良さんに聞くけど、理亜ちゃん、なんでSaint Snowを終わりにして新しい自分だけのユニットを始めたの?」

と、ルビィ、聖良に尋ねると、聖良、すぐに答えた。

「それは簡単なことです。理亜にとってSaint Snowは私との大事な想い出が詰まった大切なものなのです!!その大切なものを大事にしたいから、理亜はSaint Snowを終わりにして自分だけの新しいユニットを作ったのです!!」

それは正解である。自分のミスで「ラブライブ!に優勝してA-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼりそこから見える景色を確認したい」という姉聖良との夢を潰してしまった、その後悔によりそのミスが起きたラブライブ!冬季大会北海道最終予選から一時期ふさぎ込んでしまったことがあった。これをたまたまルビィが見つけ、「Saint Snowを終わりにしなければいいのでは」とルビィは理亜に提案、、あのクリスマスライブとそのライブのための曲「Awalken the power」(の作詞)をルビィと理亜は一緒になって作り上げたのである。そのことがきっかけとなり、理亜は姉聖良との大切な想い出が詰まったSaint Snowを大事にしたい、そのためにSaint Snowを終わりにして自分だけの新しいユニットを作ったのである。この聖良の答えに、ルビィ、

(少なくとも聖良さんは理亜ちゃんの今の想いの始まりについて認識しているみたいだね)

と、聖良のことを心のなかで少し褒めるとすぐに、

「じゃ、なぜ、理亜ちゃんはそんなユニットを崩壊するくらいのことをしているの?理亜ちゃんはなぜそれをするくらい苦しんでいるの?なぜ、理亜ちゃんはそれをするくらい自分を追い込んでいるの?」

と、聖良に対し理亜の思いの核心について尋ねてきた。

 すると、聖良、

「そんなの、ルビィさんに言われなくてもわかっています!!だって、理亜は、私の大事な妹、なのですから!!」

と、ルビィに向かって言うと、自分が、今の理亜の思いについて、知る限りのことを吐いた。

「理亜はね、理亜はね、とても苦しんでいるのです!!なぜなら、理亜はあのことを、あのときの、自分のミスによって私たちの夢を果たすことができなかった、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選のことをいまだに引きずっているのです!!自分のミスのせいで私たちの大きな夢、「ラブライブ!に優勝して、A-RISEやμ'sと同じ頂きにのぼって2組が見た景色を確認したい」、それを叶えることができなかった、その後悔の念がいまだに理亜のなかにあるのです!!そのために理亜は、理亜自身は、その夢を自分の手で叶えようとしているのです!!その後悔の念のため、理亜は、自分の力で、自分の力で、ラブライブ!優勝を目指しているのです!!それは自分と同じ夢を叶えようとして叶えることができなかった私の分まで、その分まで埋めようとしているのです、理亜は・・・」

 そして、聖良はルビィに対してこう叫んだ。

「ルビィさん、ルビィさんなら、理亜の気持ち、わかりますよね。理亜は、理亜は、今も苦しんでいます。自分のミスで失った私の分まで無理をしてでもそれを埋めようとしています。そうすることで、私たちの夢、ラブライブ!優勝を果たしたい、その思いのせいで、理亜は、理亜は、苦しんでいるのです!!」

この聖良の発言にルビィ、

(やっぱり聖良さんは理亜ちゃんのお姉ちゃんだよ!!だって、そこまで、理亜ちゃんのこと、理解しているんだから)

と、聖良の言うことを認めつつも、

(でもね、聖良さん、それは表面上の理由だよ。本当の理由、その理亜ちゃんの思いの裏に隠された核心ともいえるものがあるんだよ)

と、理亜の思いの裏に隠されたものがあることを自分は知っている、そんな風に思いながら聖良のことを見つめていた。

 そして、ルビィ、自分の知りうるものをぜんぶぶちまけた聖良に対し、

「聖良さん、それって、半分、正解かな、理亜ちゃんの気持ち・・・」

と言うとそのまま、

「でもね、聖良さん、とても大切なことを忘れているよ、今の理亜ちゃんがなぜ苦しんでいるのか、その核心たる部分をね・・・」

と、聖良に対し優しく語りかけるように言うと、聖良、

「ルビィさん、それはなにですか?」

と、ルビィに対し尋ねてみる。

 すると、ルビィ、聖良に対し、理亜が苦しんでいるその核心というべき理由を述べた。

「それはね、理亜ちゃんが知らないうちにこう思っちゃったんだよ、

 

「私(理亜)はもとに戻った、ゼロになってしまった」、

 

って・・・」

このルビィの答えに、聖良、

「えっ・・・」

と唖然となってしまう。だって、そんなこと、聖良はおろかあつこさえ考えていなかったから。

 そんな唖然となる聖良に対しルビィはこう言い続けた。

「ルビィ、理亜ちゃんと同じ状況に陥ったからわかるんだ。ルビィは静真でのライブでお姉ちゃんたちがいない、そんな喪失感から、「ゼロに戻った、もとに戻った」って思っちゃって不安・心配の海・沼に落ちちゃったんだよ!!だから、ルビィたち、(イタリアに行く前に)聖良さんや理亜ちゃんにパフォーマンスを見せたのだけど、その不安・心配から最低なパフォーマンスを見せちゃったんだ。でもね、実は、そのときには、それが、理亜ちゃんのなかにもあったんだ。理亜ちゃんの場合、聖良さんの言う通り、理亜ちゃんは自分のミスでお姉ちゃんの聖良さんと大事にしてきたSaint Snowを終わりにしちゃった、お姉ちゃんと目指していた夢を潰してしまった、その後悔が理亜ちゃんのなかにある思いを生み出したんだ。それはね、ルビィたちと同じ、「ゼロに戻った、もとに戻った」・・・、かな・・・?ルビィたちとちょっと似ているんだけどなんか違うんよな・・・」

 そのルビィの言葉を受けて、聖良、

「あっ、たしかに、ルビィさんたちAqoursみたいにダイヤたち3年生がいない状態、私たちと初対面を果たしたあのとき、東京のスクールアイドルのイベントのとき、それが確か、Aqoursにとって「0」のとき、でしたね。そんなときなんて私と理亜にはありませんでしたから。なぜなら、私と理亜はこれまでずっと一緒でしたから・・・」

と言うと、ルビィ、突然、

「あっ、それだ!!」

となにか思いついたふうに言うと、今さっきの続きを言った。

「理亜ちゃんの場合、ルビィたちみたいな「ゼロに戻った、もとに戻った」、じゃなくて・・・、

 

「ゼロになってしまった、なにもかも失った」

 

じゃないかな!!理亜ちゃん、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」と無意識に思っちゃったんだと思うよ。自分のミスのせいでお姉ちゃんとの大事な想い出が詰まったSaint Snowを終わりにしてしまった、お姉ちゃんと一緒に目指していた故を終わらせてしまった、その後悔から、「お姉ちゃんはもういない」という喪失感にさいまれたんだと思うよ、ルビィたちと同じようにね!!でね、理亜ちゃん、その喪失感から、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」って思い込むようになったんじゃないかな」

このルビィの意見に、聖良、

「そのルビィさんの話、なんか当たっている気がします・・・」

と、ルビィの意見に納得すると続けてこんなことを言った。

「ルビィさんの話が正しいなら理亜の暴走も納得できます。私の前で理亜はこう言っていました。「私は・・・失った私のぶんまでやらないといけないのです!!」って。その理亜の言葉、それは理亜のなかにある理亜自身が気づいていない思い、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」、そこからくるのであれば、自分のせいで姉すら全部失った、その分を補おうとしていた、けれど、その失った分は大きかった、だから、限界を超える練習をあつこたちほかのユニットメンバーに課そうとしていた、だって、あつこたちはまだスクールアイドルを始めたばかり、そんな素人同然の人たちを私たちと同じレベルにするには限界ともとれる練習をして急成長させるしかない、そう理亜は思ってしまったのかもしれませんね」

 だが、この聖良の言葉に、ルビィ、あることを言いだす。

「聖良さん、それもそうだけど、理亜ちゃんはそれ以上のものを追い求めようとしていたんだと思うよ。聖良さん、それってなにかわかる?」

このルビィの問いに、聖良、

「失った私の分まで取り戻したいこと、それとも、ラブライブ!優勝という夢を叶えること?」

と、ルビィに答えを言うと、ルビィ、大声で、

「聖良さん、それもあるけど、それを含めて全部だよ!!」

と言うと、聖良、

「それってまさか・・・」

とそれがわかったからか絶句してしまう。そう、ルビィの問い、答えは・・・、

「聖良さん、聖良さんが思った通りだよ!!理亜ちゃんが追い求めようとしているもの、それは・・・、

 

「Saint Snowの輝き」

 

だよ!!」

そう、ルビィの答え、それは「Saint Snowの輝き」だった。で、それを受けて、聖良、

「た、たしかに理亜はそれを追い求めていた気がします・・・。だって、理亜、言っていました、「Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・」、って・・・」

と理亜の言葉を思い返しながら言った。そんな聖良の言葉を受けてか、ルビィ、話を進める。

「理亜ちゃんはね、自分のミスのせいでSaint Snowを終わらせた、その後悔のせいで「ゼロになってしまった、なにもかも失った」という思いが理亜ちゃんのなかに生まれちゃったの!!そして、理亜ちゃん、その思いのせいで理亜ちゃんは「Saint Snowと同じもの、Saint Snowと同じ輝き」、つまり、「Saint Snowという輝き」を追い求めるようになったの!!」

このルビィの考えに、聖良、

「たしかにルビィさんの言う通りだと思います」

と、ルビィの考えに同意するとともに、

「でも、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、を理亜が今でも追いかけているとなると・・・、もしかして、理亜が今でも追い求めようとしているものって・・・」

と、なにかに気づいたように言うと、ルビィ、元気よくこう答えた。

「そう、聖良さんの思った通りだよ!!理亜ちゃんが今でも追い求めているもの、それはね、

 

Saint Snowそのもの、

 

聖良さんと理亜ちゃんの夢、ラブライブ!優勝を目指せるくらいの完全無欠のスクールアイドル、だよ!!Saint Snowは完全無欠のユニット!!「初出場ながらラブライブ!全体の8位!!、今度こそラブライブ!優勝を目指せる、自分たちの夢を叶えることができる!!」、そんなSaint Snowと同じものを、同じ輝きを、Saint Snowそのものを理亜ちゃんは目指したわけ!!でも、自分が高校にいるあいだに自分の作ったユニットがSaint Snowと同じレベルに到達するのは不可能、これでは理亜ちゃんが追い求めているもの、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、Saint Snowそのもの、それに到達できない、これでは自分のミスのせいで失った聖良さんの分まで補うことができない、お姉ちゃんの聖良さんとは果たせなかったラブライブ!優勝なんて絶対に無理、これではお姉ちゃんに申し訳ない、いや、それどころか、「自分のせいでゼロになってしまった、なにもかも失った」、それに対する、理亜ちゃん自身は気づいていなくても理亜ちゃんの心のなかにあるその罪悪感、それを癒すことなんてできない、そう理亜ちゃんは知らないうちにそう思っちゃったわけ。でね、理亜ちゃん、はやく、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、それを取り戻したい、そう焦ってしまったから理亜ちゃんはあつこさんたちユニットメンバーに対して限界を超えた練習を課したわけ!!」

そう、Saint Snowは完全無欠のスクールアイドルユニットである。それと同じものを、同じ輝きを、Saint Snowそのものを目指していた、というのも理亜にとって無理でもない話である。



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SNOW CRYSTAL 序章 第24話

 が、ここで、聖良、ある疑問がわく。それは・・・、

「でも、ルビィさん、それならそれで理亜は私に相談すればいい話です。だって、ダイヤたち3年生がイタリアにいるために相談できなかったルビィさんたちに対し、理亜のそばにはずっとこの私がいたのですから」

たしかにそうである。静真のライブ失敗時、ルビィの妹であるダイヤを含めたダイヤたち3年に相談できなかったルビィたちに対し理亜のそばにはいつも姉の聖良がいた。

 ただ、これについては、ルビィ、

「それは・・・もう3年は高校を、スクールアイドルを卒業した、だから、自分たちだけで解決しないといけない・・・という思い・・・というか、それが理亜ちゃんやルビィたちの認識なんだけどね・・・」

と、前置きしつつあることを指摘した。

「理亜ちゃんの場合、真面目過ぎるところものあるし、ルビィと同じく人見知りだし・・・、それに、理亜ちゃん、聖良さんと同じくストイックだし・・・」

このルビィの指摘に、聖良、

「あっ!!」

と、つい納得してしまう。そりゃそうだ!!だって、理亜、かなり真面目である。なので、理亜は自分の思いに、「姉さま(聖良)はもうすでにスクールアイドルを卒業した、もう姉さまはいない、姉さまに頼ることなんてできない、だからこそ、自分でなんとかしないと」、という思いに忠実であった。スクールアイドルを卒業した姉聖良に頼ることなく自分1人でなんでもする、いわゆる、「融通が利かない」、ところが理亜にはある。また、理亜はルビィと同じく人見知りなので心を許した姉の聖良以外を頼ることなんて理亜にはできない。さらに、姉聖良ゆずりのストイックさもある、なので、たとえどんなことがあっても極限まで自分を追い詰めてしまう傾向がある。いや、それを他人にも追い求めようとしてしまう。そう考えた場合、理亜が1人で自分を追い詰めてしまう、他人にもそれと同様のことを追い求めしまうあまり限界を超えたものすら課してしまう、その行動もわからくもない・・・のかな・・・。

 と、そんなわけでして、聖良、

「ルビィさんの説明で理亜が暴走している本当の理由がわかりました。ですが、その理亜の暴走を止める方法はあるのでしょうか。その方法がわからないと理亜は自分を極限まで追い詰めようとします!!そうなれば、理亜は・・・理亜は・・・壊れてしまう・・・」

と、自分を極限まで追い詰めようとしている理亜のことを思ってか、泣きながらルビィに教えを乞う。

 すると、ルビィ、そんあ聖良に対しあることを言った。

「聖良さん、理亜ちゃんはね、とても大切なことを忘れているよ!!そして、それを理亜ちゃんが思いださない限り、たとえ、理亜ちゃんがAqoursに入ってもいつかは暴走しちゃうよ。だって、その大切なものを思いださない限り、理亜ちゃんはずっと「ゼロになってしまった、すべて失った」、その苦しい思いにさいまされることになるもん!!理亜ちゃんはずっとSaint Snowと同じ輝きを追い求めてしまうよ!!ルビィたちAqoursに入る、それは、理亜ちゃんが追い求めているSaint Snowと同じ輝きとは違う、Aqoursという輝き、それを追い求めることにつながるよ!!理亜ちゃんがAqoursに入ること、そんなの、理亜ちゃんからしたら違うことだとわかってがっかりしちゃうもん!!」

このルビィの考えを受けてか、聖良、

「では、ルビィさん、その大切なこととはなんですか?」

と尋ねてしまう。

 すると、ルビィ、はっきりと大きな声でこう答えた。

「それはね、聖良さん、

 

Saint Snowそのもの

 

なんだよ!!理亜ちゃんはそれを失ったと思っているけど、実際には理亜ちゃんのなかに残っているんだよ!!」

このルビィの答えには、聖良、

「た、たしかにそうですが・・・、ルビィさん、具体的には・・・」

と言葉を詰まらせてしまう。そう、「Saint Snowそのもの」と言っても抽象的な捉え方の答え、にしかみえてこないかもしれない。なので、ルビィ、その答えについて具体的に答えてみた。

「聖良さん、具体的にはね、聖良さんと理亜ちゃん、そして、あつこさん、この3人が歩んできた、Saint Snow、その活動のなかで得たものすべてのことを言うんだよ!!理亜ちゃんは聖良さんと一緒にSaint Snowとして活躍してきたんだ!!あつこさんは・・、あつこさんは・・・、そう、その2人をずっとサポートしてくれた。そのなかで理亜ちゃんは聖良さんとあつこさんとの想い、想い出、キズナ、を得てきたんだよ!!でも、今の理亜ちゃんはそれを・・・、Saint Snowそのものを・・・、すべて失った、と、知らないうちにそう思い込んでしまったの!!それはイタリアに行く前のルビィたちと同じことなの!!」

このルビィの答えに、聖良、

「Saint Snowと活動のなかで得た私やあつことの想い、想い出、キズナ・・・、それをすべて失った、と、理亜は知らないうちにそう思い込んでいる・・・、それって、私にとってとても悲しいことです。私にとってSaint Snowで得た想い、想い出、キズナ、それこそ、私にとってかけがいのない宝物ですから・・・」

と言うと、あつこ、

「私は・・・、私は・・・」

と、なにかを言いたそうにも言葉が窮してしまった。

 だが、そんなあつこのことはそのままにし、ルビィ、話を進める。

「そう、聖良さん、その宝物、それ自体、理亜ちゃんからしても、宝物、なんだよ!!理亜ちゃんにとってSaint Snowの活動のなかで得た聖良さんとあつこさんとの想い、想い出、キズナ、こそ、宝物、というか、それらを全部合わせて、

 

Saint Snowそのものが宝物

 

っていえると想うんだ!!」

このルビィの心強い言葉に、聖良、

「たしかに私やあつこだけでなく理亜にとっても、Saint Snowそのものが宝物、といえますね」

と納得するととものにある疑問が浮かんでくる、それは・・・、

「とはいえ、その宝物の存在を伝えたところでそれによって理亜は変わるのでしょうか?」

そう、たとえ、理亜にそうであると伝えたところでその行動によって理亜が変わるのかどうかは不透明である。

 だが、ここで、ルビィは聖良に対しこう言った。

「聖良さん、もっと大切なこと、忘れているよ!!」

これには、聖良、

「もっと大切なこと?」

とルビィに聞き返す。

 すると、ルビィ、またまた強い口調でもっと大切なことを言った。

「もっと大切なこと、それはね、

 

その宝物はずっと自分のなかに残っていること

 

だよ!!そして、

 

たとえ離れ離れになっても絶対になくなったりしない!!それより、むしろ、その宝物を通じていつでもつながることができる!!

 

だからこそ、こんなことだって言えるよ!!お姉ちゃんたちはいなくなるんじゃないないんだって!!たとえ、同じステージに立っていなくてもその宝物を通じてずっとつながることができるんだって!!いつまでも一緒にいられるんだって!!」

このルビィからの力強い言葉、これには、聖良、

「う~、たしかにそれは大切なものですね・・・」

 

と納得の表情。

 そして、ルビィ、畳みかけるように聖良に諭す。

「その宝物、それって

 

理亜ちゃんが追い求めている、Saint Snowという輝き、そのもの

 

なんだよ!!理亜ちゃんは自分のミスで「なにもかも失った、ゼロになってしまった」、だからこそ、姉の聖良さんの分まで自分でなんとかしないといけない、頑張らないといけない、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、Saint Snowそのものを追い求めようとしているんだ!!だけどね、実際には、もう理亜ちゃんはすでに持っているだよ、それをね!!理亜ちゃんにとってSaint Snowの活動で得た、聖良さんやあつこさんとの想い、想い出、キズナ、そのものが宝物でありSaint Snowという輝きなんだ!!それは理亜ちゃんのなかに今も存在している。だからこそ、理亜ちゃんにはこう言えるの、

 

「無理にそれを追いかけなくてもいい。すでに理亜ちゃんのなかには、それ自体、Saint Snowという輝きという名の宝物、Saint Snowそのもの、があるんだって!!そして、その宝物さえあれば、ルビィたちは、理亜ちゃんたちは、ずっとつながることができる、一緒に新しい輝きのある未来へとすすもことができるんだから!!」、

 

ってね!!」

 このルビィの言葉に、聖良、

「そう言われると、私、なんか、目からうろこ、がでてきました。まさか、あのルビィさんから自分が悟られるなんて・・・」

と、とても驚いていた。これまでルビィは、姉ダイヤについていくだけのかわいい存在、だった。けれど、イタリア旅行など、一連の行動を通じてルビィは1人の、一人前の少女、として成長していたのだから・・・。

 だが、ここで、聖良、ある疑問をルビィに投げかける。

「でも、そのことを理亜にどう伝えばいいのでしょうか。たとえルビィさんから理亜にそのことを伝えても理亜がルビィさんの言うことをちゃんと聞くのでしょうか。理亜は私が言うのもあれですが、かなり融通が利かない、悪く言うと、頑固者、です。なので、人の言うことをちゃんと聞く、というのかが疑問なのです。それに、理亜はSaint Snowと同じ輝きを追い求めているのですが、同時に「ラブライブ!優勝」という私との夢を果たそうと必死なのです。なので、もしその宝物の存在に気づいたとしてもまだその夢を追い求めてしまうと思うのですが・・・」

 たしかにそうである。理亜は頑固者である。なので、たとえルビィがそのことを理亜に言ったとしても理亜は聞き入れてくれないだろう。それに理亜は失ったものを埋めるべく、また、Saint Snowと同じもの、同じ輝きを得るべく、聖良との夢、「ラブライブ!優勝」を叶えることに必死になっている。さらに、理亜のストイックさが故に宝物の存在に気づいたとしても自分の方針を曲げることはしないだろ。むしろ、そのまま無理をしてでも夢を叶えようとするだろう、たった1人になっても・・・。

 だが、ここで、ルビィ、あることを言いだす。

「だからこそ、イタリア旅行やローマ・スペイン広場でのライブを通じてルビィたちがその宝物の存在を知ったように理亜ちゃんにもそれと同様の行動でもってその宝物の存在、それに、これ以上Saint Snowと同じもの、同じ輝きを追いかける必要がない、その宝物によってみんな一緒にその先の未来へ進むことができる、それを理亜ちゃんに教えることができるよ!!」

 と、同時に、ダイヤ、ルビィの発言の補足説明をした。

「私たちは話し合いました、理亜さんにルビィが言ったことをどう教えたらいいかと。そして、決まりました、理亜さんの暴走を止める、これ以上理亜さんが自分自身を追い詰めないように、理亜さん自身自分を傷つけない、そのためになにをすべきか、を。それは・・・、理亜さんの夢を、Saint Snowの公式ライバルである、この私たち、Aqours、そして、聖良さんと理亜さんのSaint Snow、お互いともに全力を賭けた勝負を、その上でのラブライブ!優勝、という夢を叶えてしまおう、というのです!!」

これには、聖良、

「そ、それって、まさか・・・」

とつばをごくりと飲み込むと、鞠莉、その横から、

「もちろん、決まっているで~す、Duel(決闘)で~す!!」

と、ちゃちゃをいれてくる。これには、ダイヤ、

「鞠莉さん、ちゃんとしてください!!とても大切な場面です!!」

とちゃちゃを入れた鞠莉に対し怒るも、

「でも、間違いではないで~す!!」

と、鞠莉は平然と答えていた。これには、あつこ、

「ははは・・・」

と、ただただ笑うしかなった。

 と、いうわけで、いったん仕切り直し・・・。そなわけでして、鞠莉に対して怒り顔のダイヤにかわり果南が聖良にある提案をする。

「聖良、私たちAqoursはSaint Snowに戦いを申し込みます。私たちが力ずくで手に入れたこのラブライブ!優勝旗を賭けて、真のチャンピオン戦、

 

ラブライブ!決勝延長戦、

 

そこで、私たちAqoursと聖良たちSaint Snow、どちらが強いのか、白黒はっきりつけるよ!!」

 そして、その果南が手にしていたのは・・・、深紅の優勝旗、そう、ラブライブ!優勝者しか手にすることができないラブライブ!の優勝旗、だった。これには、聖良、

「ラブライブ!決勝延長戦ですか・・・。そう聞くと、私、スクールアイドルをしていた者としてわくわくが止まりません!!だって、私、この勝負、Aqoursに勝って、その優勝旗、絶対に手に入れたいですからね・・・」

と、こちらもAqoursの挑発を受けてか、Aqoursの挑戦を受けて立つ、そんな心意気になっていた。

 だが、ここで、あつこ、ダイヤたちにあることを尋ねる。

「でも、なんでAqoursと戦うのですか?理亜さんに宝物の存在を伝えることが重要なのでは・・・」

たしかに戦いあうことよりも理亜に宝物の存在をどう伝えるべきなのかを考えることが先決・・・なのだが、ここで、鞠莉、こんなことを言いだしてきた。

「人というのはDuelを通じていろんなことを学ぶので~す!!だって、人はよくこう言うので~す、「人はこぶしをまじ合わせることで相手が言いたいことをわからせることができる」、って!!それとも、これだったですか~、「人は戦いを通じていろんなことを学ぶ」?」

これには、ダイヤ、

「鞠莉さん、なにを言いたいのかわからなくなっているのですが・・・」

と、鞠莉の言うことに困り果てていた。

 と、ここで、果南、鞠莉とダイヤに代わり、鞠莉の発言によりさらに困惑しているあつこに対し答えてくれた。

「理亜ちゃんに宝物の存在などを教えるには、理亜ちゃんの夢、ラブライブ!優勝、を叶えるのが一番だって思ったんだ。だって、理亜ちゃんが自分を追い詰めようとしてしまう理由、暴走している理由、それは理亜ちゃんがまだ宝物の存在、それに気づいていないから。だから、理亜ちゃん、「ゼロになった、すべて失った」、そう思い込んでしまったんだよね。そうなると、理亜ちゃん、それを補おうと、Saint Snowと同じもの、同じ輝きを追い求めようと無理をしている、それが理亜ちゃんの現状。なら、ラブライブ!決勝延長戦、自分たちだけのラブライブ!、自分たちだけのステージで、私たちAqoursと聖良たちSaint Snow、2組による真剣勝負、その上でのラブライブ!優勝、それならあの理亜ちゃんも満足するし、その戦いを通じて、私たちが伝えたいこと、宝物の存在、などなど、いろいろと教えることができると思うんだ!!」

 さらにここにきて、ルビィ、果南の横から飛び出しては、

「あつこさん、ルビィたちはね、ローマ・スペイン広場でのライブでお姉ちゃんたちともう1度一緒にライブを行ったことでその宝物の大切さを知ることができたんだよ。まぁ、ルビィの場合、月ちゃんからそのことを教えられたんだけどね。でね、理亜ちゃんも聖良さんともう1度一緒にライブをしたらきっとそのことについて気付くことができる、理亜ちゃんにそのことを教えることができると思うんだ!!」

と、自分の体験談を交えてあつこに言うと、あつこ、

「た、たしかに、ルビィちゃんという体験者からそんなことを言われると、たしかにそうかもしれない、と思えてきてしまいます・・・」

と、ルビィの言うことに妙に納得してしまった。

 そんなわけで、聖良、

「ダイヤ、果南、鞠莉、それにルビィさんにAqoursのみなさん、私、わかりました。その勝負、受けて立ちます!!理亜のため、そして、いつかは決着をつけないといけない、AqoursとSaint Snow、その雌雄を決するため、ラブライブ!決勝延長戦、こちらも全力で戦います!!」

と気合を入れてこう宣言した。もちろん、Aqours側も、

「う~、これは腕がなるね!!」(果南)「やってやるので~す!!」(鞠莉)

「お姉ちゃん、全力でガンバルビィ、しよ!!」(ルビィ)

「ルビィ、こちらも全力で頑張りましょう!!」(ダイヤ)

と、こちらもやる気満々だった。

 なのですが・・・、ここで1人、ある思いにふける少女が・・・。

「ラブライブ!決勝延長戦か・・・。私って、やること、あるのかな・・・」(あつこ)

そう、あつこである。あつこはSaint Snowのサポートメンバーである。なので、この延長戦、聖良に交じってパフォーマンスをする・・・わけではなかったので自分が延長戦に関わる、ってことがあるのかどうか心配していたのだ。

 だが、そんなあつこの心情を悟ったのか、聖良、あつこに対しこんなことを言いだしてきた。

「あつこ、あなたにもやることがあります!!延長戦に使う曲のブラッシュアップが必要です!!そのためにも、あつこ、あなたの力が必要です!!」

この聖良の言葉に、あつこ、

「聖良さん、たしかにそうですけど・・・」

と言葉をつい濁してしまう。このときのあつこ、聖良の発言を聞いてか、

(でも、私ってただのSaint Snowのサポートメンバー。こんな私がこの延長戦を手伝うなんて本当にいいのかなぁ。だって、私、Saint Snowに対して、聖良さんや理亜さんみたいに深入り、しているわけでもないのですが・・・)

と心配になっていたのだ。

 だが、このあつこの発言に対し、ルビィ、意外なことを言いだす。

「あっ、あつこさん、なんか、ルビィ、あつこさんから昔のルビィみたいなもの、感じちゃった。なんか、とても大切な宝物の存在、そんなものなんてなくしちゃった、もしくは、そんなものなんて初めからない、、そんな表情をしていたよ・・・」

このルビィの言葉に、あつこ、

「えっ!!」

と驚くも、ルビィ、そんなこと、気にせずに聖良に向かって、

「ところで、聖良さん、なんで聖良さんが言ったこと、忘れちゃったの?」

と聞いてくる。これには、聖良、

「えっ?」

と驚くも、ルビィ、そんな聖良に対し変なことを言う。

「だって、月ちゃんから聞いたよ、イタリアに行く前、月ちゃんに、聖良さん、その宝物の存在について語っていたって!!それで、月ちゃん、イタリア旅行をしていくうちに、昔のこと、その宝物の存在、それについて思い出したんだって!!でも、聖良さん、理亜ちゃんもルビィたちと同じ状況に陥っていること、知らなかったんだよね。どうして?」

これには、聖良、

「え~と、それはですね・・・、理亜のことを信じていたというか・・・、なんというか・・・」

と言葉を濁すも、ここで、ダイヤ、とんでもないことを言ってしまう。

「聖良さんの気持ち、よ~くわかります!!同じ妹思いの私にもその経験はあります。無理してでも頑張っている妹の姿を見ると、私、「もっと頑張れ~」と応援してしまいますから!!」

 このダイヤの失言?に、鞠莉、

「ダイヤもセーラも妹LOVEなのは間違いないで~す!!」

とダイヤと聖良のことを茶化すも、果南、

「まぁ、たしかに、自分の妹を最後まで信じる、という気持ちはとても大切なことだもんね!!」

と、ダイヤと聖良のことを褒め称える。これには、ダイヤ、

「鞠莉さんに果南さん、そんなに茶化さないでください!!」

と2人をけん制するも、聖良、そんな3人のやり取りをみてか、

「やっぱ、ダイヤたち、お笑い集団、ですね・・・」

と大笑いしてしまった。

 一方、あつこはというと・・・、

(私にも、そんな宝物、あるわけないよね・・・。そんなもの、私のなかに存在していなよね・・・)

と、ルビィの言ったことをいまだに気にしていた・・・。

 



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SNOW CRYSTAL 序章 第25話

「あつこ、あの曲の封印を解くときがきました」

ダイヤたちとの電話のあと、聖良はあつこに対しこう言うとクローゼットから「封印」というシールで封していた段ボールを出すとその封を解く。すると、段ボールの中から楽譜やCD、ダンスが収められたDVD、そして、ボンテージ風の衣装がでてきた。これには、あつこ、

「あの曲って、まさか・・・」

と言うと、聖良、すぐに、

「はい、そうです。あの曲、「Believe Again」、です」

と、はっきりと答えた。

「Beleve Again」・・・、それは聖良がラブライブ!決勝であの千歌たちAqoursと戦うために用意していた曲である。Aqoursがラブライブ!決勝でSaint Snowと戦うために「Brightest Melody」を用意していたのと同様にSaint Snowもそのために「Believe Again」という曲を用意していたのだが、Saint Snowがラブライブ!冬季大会北海道最終予選で敗退し、たため、聖良はもうこの曲は歌うことはない、もうAqoursと戦うことがない、と思いクローゼットの奥に封印していたのだ。だが、今回、ラブライブ!決勝延長戦、ライバルである千歌たちAqoursとの最初で最後の死力を尽くした全力全開の戦い、をする、ということで、聖良、Aqoursと戦うならあの曲しかない、という強い思いのもと、「Belive Again」の封印を解いた次第なのである。あと、延長戦まで残された時間があまりない(数日後に延長戦を開催予定)ため、新曲などを準備するよりもまえに作っていた曲をブラッシュアップしたほうがより良いものを延長戦で披露できると考えたこと、この延長戦のことは理亜には延長戦開催日まで秘密にすることが決まっていたため、そんな理亜でもすぐにパフォーマンスができるようにしたい、という配慮が必要、というのも「Believe Again」を延長戦で歌う曲として選んだ理由の1つとなった。

 そんなこともあり、聖良、あつこに対しあるお願いをした。

「あつこ、あまり時間がありませんが、この「Believe Again」を(延長戦で)あのAqoursに勝てるくらいにまでブラッシュアップしてください。私はこの衣装の補修とパフォーマンスや曲の構成などの見直しなどを行います。千歌さんたちAqoursも私たちSaint Snowを本気で倒すためにこれまで以上に、いや、最大限のものを披露してくるはずです。ならば、私たちSaint Snowも最大限の力で迎え撃つ、いや、あのAqoursを倒しにいく、そんな気持ちではないといけないと思います。なので、あつこ、お願いです、これぞ私たちSaint Snow、これぞ私たちにとって最大限の力である、それを示すくらいの曲に、「Believe Again」に仕上げてください」

これには、あつこ、

「聖良さん、うん、わかりました!!私、この「Believe Again」をあのAqoursに勝てるくらいに、私たちSaint Snowにとって最大限の力である、それを示すくらいの曲に仕上げるね!!」

と元気よく答えた・・・のだが、すぐに、

「仕上げる・・・、仕上げる・・・、ね・・・」

と、なんか歯切れの悪い方向に進んでしまった。

 そんなあつこに対し、聖良、

「あれっ、あつこ、なんか元気がないみたいですが・・・」

と、あつこのことを心配そうに言うと、あつこ、、

「そ、それは・・・」

と、つい言葉を濁してしまう。

 だが、聖良、そんなあつこに対しあることを話す、

「もしかして、あつこ、ルビィさんに言われたことが気になるのでしょうか?」

この聖良の発言に、あつこ、

「!」

とはっとした感じになると、聖良、続けて、

「ルビィさんの言った通り、あつこ自身、「とても大切な宝物、それをなくしてしまった、もしくは、最初からそんなものなんて初めからなかった」、そう思っているのかもしれませんね」

と言うと、あつこ、さらに、

「!!」

とさらにびっくりしてしまった、いや、図星を言われた、そんな表情になってしまった。

 そんなあつこに対し、聖良、ある言葉を投げかける。

「でも、あつこ、私はこう思っております、あつこのなかにも大切な宝物がある、いや、もっと大切な宝物があつこのなかにも存在する、と・・・」

 そして、聖良はあつこに対しこんな言葉でもって締めた。

「あつこ、「Believe Again」をブラッシュアップしていくうちにきっとその宝物の存在に気付くと思います。なので、あつこ、「Believe Again」をより良い曲に、これがSaint Snowの力なのだ、それを指し示す曲に作りかえてください、あつこのなかにある、あつこがまだ知らない宝物とともに・・・」

 

 その日の夜、

「・・・と聖良さんは言っていたけど、本当に私のなかにそんな宝物が存在するのかな・・・」

と、あつこ、ルビィ、そして、聖良、に言われたことを思い返しながら「Believe Again」をブラッシュアップしていた。とはいっても、あつこ、これまでSaint Snowの曲すべてに関わってきたこともあり、これぞSaint Snowの曲、というものに作りかえることなんて容易い・・・というか、もともと自分たちのライバルであるAqoursと戦うために作られた曲であったため、Saint Snowらしさを追求した曲にもともとなっていた、ので、そこまで手直ししなくてもよかった・・・のだが、あつこ、今回は、

(この曲はAqoursと戦うために作られた曲・・・、だけど、今回はそれに加えて理亜さんに、聖良さんと一緒に紡ぎあげてきたSaint Snowという名の想い、想い出、キズナ、そんな宝物の存在、その宝物を通じてずっと聖良さんと、みんなと、つながっていける、それを気付かせることが必要。だからこそ、よりSaint Snowらしさを追求した曲にしないと・・・)

という心意気で「Believe Again」をブラッシュアップしていた。

 そんなあつこ、「Believe Again」をブラッシュアップしていくなかでルビィと聖良に言われたことなんてつい忘れては陽気に作業を進めていた。なぜなら・・・、

(あぁ、私、聖良さんに誘われてSaint Snowのサポーターをしていろいろやってきたけど、この「Believe Again」をSaint Snowらしさがいっぱい詰まった曲にブラッシュアップしていると、なんか、いろんな想い出が蘇ってくるよ・・・)

そう、あつこ、「Believe Again」というSaint Snowらしさがいっぱい詰まった曲にブラッシュアップしていくうちいあつこのなかに眠る、聖良と理亜、Saint Snowと関わった楽しい想い出が蘇ってきたのだ。たとえば・・・

 

(あれは聖良が私に対し夢を語ったときのこと・・・、

 

「あつこ、実はあることをしようと考えています」(聖良)

「えっ、それってなんでしょうか?」(あつこ)

「私、理亜と一緒にスクールアイドルになってラブライブ!で優勝します!!」(聖良)

 

そのあと、私が証人となって聖良さんはあの誓いをしたんだよね・・・、

 

「私、鹿角聖良はここにいる理亜、そして、あつことともにスクールアイドルになってラブライブ!優勝を目指します!!」(聖良)

「わ、私も、姉さまと一緒にラブライブ!優勝を目指します!!」(?)

「この私、蝶野あつこ、この2人の誓い、たしかに確認しました!!2人の証人として、私、いつの日か、その誓いを果たすため、全力でサポートをすること、ここで誓います!!」(あつこ)

「って、あつこ、しれえっと、変なこと、言ってた!!なんで、あつこが、そんなこと、誓うの!!」(?)

 

それに、私が大ケガをしたとき、聖良さんはこんなことを言ってくれました。

 

「うぅ、もうフィギュアスケートなんかできないよ・・・。でも、私、フィギュアスケートない生活を考えたらもう生きる価値なんてないよ・・・」(あつこ)

「あつこ、それだったら、、あの日の誓いを・・・、その誓いを果たしてください!!あつこ、お願いです、私と理亜の夢のサポートをしてくれませんか」(聖良)

「えっ、聖良さん・・・、それって・・・」(あつこ)

「そうです、私と理亜の夢、スクールアイドルになってラブライブ!優勝を目指す、そのお手伝いです!!あつこ、私たちのユニット、私たちの夢を叶えるためのお手伝いをしてください!!私たちにはあつこの力が必要なのです!!」(聖良)

 

それに、それに、Saint Snow本格始動したときも・・・、

 

「理亜が聖女に入学してくれました。ユニット・・・、本格始動です!!」(聖良)

「でも、聖良さん、私、これまでその下準備をしてきたからその自覚がないのですが・・・」(あつこ)

「でも、これからは理亜とともにスクールアイドル活動をしていくつもりです。残された時間はそんなにありません。これからは本気でやっていくつもりです!!」(聖良)

「私だって頑張る!!絶対に私と姉さまとの夢を叶えてみせる!!」(?)

 

あと、ラブライブ!夏季大会で8位になったときも・・・、

 

「聖良さん、理亜さん、やったよ!!8位じゃない。すごい成績だよ!!(あつこ)

「8位じゃダメ!!優勝しないと!!優勝しないといけなかったのです!!」(聖良)

「姉さまの言う通り!!私たちは優勝を目指していた!!あともう少しだった!!けれど、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝は叶わなかった!!悔しい!!とても悔しい!!」(?)

「聖良さん、理亜さん、ごめんなさい!!8位の成績じで喜んでいた私がバカだったね・・・」(あつこ)

「でも、ラブライブ!8位の成績じゃ聖良さんも理亜さんも納得いかないでしょ!!冬季大会では優勝を目指して頑張らないとね!!」(あつこ)

 

(そして、あの日、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選で敗退したときも・・・、

 

「あつこ、ごめんなさい、こんなみっともない姿、見せてしまって・・・」(聖良)

「聖良さん、それは仕方がないことです。だって、まさか予選敗退するなんて、自分タイの夢を叶えることができなかった悔しさ、これまで聖良さんたちのことを全力でサポートしてきた私だってこう思うます、とても悔しい、って・・・」(あつこ)

「あつこ、ありがとう。私、普段なら、こんな姿、見せたくないんだけど、今だけ、今だけ、させて・・・。あつこ、ごめん、あつこの胸、貸して・・・、泣かせて・・・」(聖良)

「聖良さん、わかりました・・・、2人で一緒に・・・、この悔しさ・・・、泣いて・・・晴らしましょう・・・」(あつこ))

 

「Believe Again」・・・、Saint Snowらしさがいっぱい詰まった曲・・・、それをブラッシュアップしていくうちにあつこのなかに眠っていた聖良と理亜との想い出、Saint Snowとの大事な想い出、それが次々と想いだされていく。これには、あつこ、

(なんか、いろんな想い出、想いだしちゃった。1冊のにまとめられないくらい、それくらいたくさんの想い出・・・、私にとってどれもこれも大切な想い出・・・、辛いこともあったし、楽しいこと、うれしこともあった・・・、どれもこれも私にとって本当に大切な想い出・・・)

そんな想い出とともに「Believe Again」はさらによりSaint Snowらしい曲へ、あのAqoursの「Brightest Melody」に負けないくらいの曲に仕上がっていく・・・。

 のだが、あつこ、ここでふと思うことがあった。それは・・・、

(なんか「Believe Again」をブラッシュアップしていくうちに私と聖良さんたちとの想い出がどんどんよみがえってくる・・・)

そう、ついにあつこも気づいたのだ、自分のなかにも聖良と理亜との、Saint Snowとの想い出が残っていることを・・・。そのため、あつこ、こう考えてしまう。

(たしかに、ルビィさんの言っていたことって、これまで私たちが一緒になって築き上げたもの、想い、想い出、キズナ、それが宝物だって言っていたよね。もしかして、私のなかにも、その宝物、眠っている、存在している・・・ってことなのかな・・・)

そうあつこ、自分のなかに眠るもの、その一部に気付くことができたのである。だが、

(でも、その宝物が完全にわたしのなかにあるっていうのは今のところ断定できない。私はSaint Snowのサポーター、Saint Snowの一員じゃない・・・)

と、あつこ、その宝物の存在を自分のなかにもあるとは断定できずにいた。あつこのなかには「自分はSaint Snowのサポーター、Saint Snowの一員じゃない」、その思いがあった。なので、Saint Snowの一員である理亜みたいにSaint Snowという宝物が完全に自分のなかにある、そう断定できずにいたのだった。

 しかし、それでも、あつこ、あることを決める。

(けれど、私のなかにも、聖良さんや理亜さんとの想い出、Saint Snowとの想い出、が残っている、それだけは言える!!ならば、私も、ラブライブ!決勝延長戦、そこで、私のなかにもその宝物が存在しているのか、理亜さんとともに確かめてみる!!」

そう、今はその宝物が自分のなかに眠っている、存在している、そう断定できない、ならば、ラブライブ!決勝延長戦でその宝物が存在しているのか、その宝物の存在を忘れている理亜とともに確かめてみる、そんな決意をあつこはしたのだった。

 だが、あつこ、ここであることに気付く。

(・・・なんだけど、次々と湧き上がる聖良さんと理亜さんとの想い出、と、止めきれないよ・・・。これじゃ私の頭がパンクしちゃうよ・・・)

そう、あつこは「Believe Again」のブラッシュアップによってどんどん湧き上がる聖良たちとの想い出、それを止めきれずにいたのだ。このまままだとあつこの頭がパンクしちゃう、ブラッシュアップの作業に支障がでてしまう、そうあつこは危惧したのだ。

 そんなわけで、あつこ、あることを決める。

(ならば、「Believe Again」のブラッシュアップ作業はいったん置いといて、この想い出を一気にぶつけてしまおう!!その方法とは・・・、ただ1つ、この想い出を、この想いを、曲として、1つの曲として作ってぶつけてやる!!)

なんと、あつこ、今湧き上がる聖良と理亜との想い、想い出を1つの曲としてぶつけてしまおう、というのだ。なんというあつこの熱量!!でも、それくらい、あつこの頭にのなかで湧き上がる聖良と理亜との想い出、想いは膨大なものだった。

 こうして、あつこは「Believe Again」のブラッシュアップ作業をいったん止め、1つの曲を作り上げることにした。どんどん湧き上がる歌詞、どんどん紡がれていく曲、それはこれまでのあつこには見られなかった、とても熱い作業となった・・・。

 そして、1時間後・・・、

「ふ~、なんとかできた・・・。でも、それくらい、とてもいい出来に仕上がった・・・。Saint Snowみたいに、Aqoursみたいに、虹という輝きを越えた先にある、新しい輝き、新しい虹、それを目指して行く、これまで気づき上げてきた、みんなとの想い、想い出、キズナ、その宝物、それによってずっとみんなとつながっていける、みんなと一緒にその虹を、その輝きを越えることができる、そんな曲に仕上がった・・・」

と、あつこ、これまでにないくらいいい曲、これからのみんなのことを、いや、自分を含めてみんなと一緒に虹という輝きを越えて次へと進む曲、それができた、と自信満々に言えるくらい曲ができた、と思っていた。そう、今ここに、あつこ、最高の1曲を完成させたのだ。

 そんなあつこ、この曲に対しあることを決めた。

「そうだ、この曲の名は・・・、みんなと一緒に虹という輝きを越えたその先にある新しい輝き、新しい虹、それを目指していく、そう、この曲の名は・・・、「Over the Next Rainbowだ!!」



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SNOW CRYSTAL 序章 第26話

 それから数日後・・・、

(私、たった1人になって数日が経ったんだ・・・。でも、ラブライブ!優勝という姉さまとの夢を叶えるために1人になっても頑張らないと・・・)

と、理亜、朝早く起きるとすぐに練習着に着替え日課の早朝のランニングをしに玄関へと出る。早朝のランニング、理亜にとっては毎日行っている日課の1つである。理亜は、理亜と聖良、自分たちの夢である、ラブライブ!優勝、それを目指して早朝のランニングを含めた日課をできるだけ毎日こなしていた。でも、あの日、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選最終日の日まではそこに自分の姉である聖良もいた。その日までは自分たちの夢を叶えるために一緒に日課をこなしていた。が、予選敗退が決まり、姉聖良がスクールアイドルを引退することになり、その日の翌日から理亜1人でその日課をこなすことになった。それは自分だけのユニットを作ってからも同じだった。来る日も来る日も同じ日課をこなす理亜。たとえ、ユニットメンバーが次々と抜けたとしても理亜はその日課を黙々と続けていた。なぜなら・・・、

(私は必ず成し遂げないといけない・・・、姉さまとの夢を・・・、ラブライブ!優勝を・・・、成し遂げないといけないんだ!!)(理亜)

そう、自分たちの夢、ラブライブ!優勝を叶えるため、必ず自分たちの夢を叶えるるため、だった。理亜にとってそれは必然事項となっていた。

 ただ、この日課を姉聖良とともに始めた当初は姉の聖良と一緒にラブライブ!優勝という夢を一緒に叶えたい、その一心でその日課をこなしていた。が、その夢が潰えた、あの日の次の日、理亜1人でその日課をこなしていくうちに、その夢を叶える、その思いは少ししぼんでしまった。が、クリスマスライブで「Saint Snowを終わりにする。自分だけのユニットを作る」と姉聖良の前で宣言して以降、自分のユニットに集まってきてくれたあつこを含めた有志と一緒にスクールアイドルになる練習をし始めると、その有志と一緒にラブライブ!優勝を目指す、その夢ができたのか、その夢に向かって楽しみながらその日課をこなしていった。

 けれど、理亜が東京で、ラブライブ!決勝で、自分たちのライバルであるAqoursが、優勝した、その日から、その思いは変わった・・・。次第に理亜のなかでなにかが変わっただろう、次第に、その夢は、「自分のユニットに集まってくれた有志と一緒に」から昔の「姉との~」に変わってしまった。さらに、夢そのものが希望から必然に変わってしまった・・・。そのため、自分のために集まってくれた有志たちにつらく当たってしまった。その結果、その有志たち、ユニットメンバーたちは次々と理亜のユニットから抜けていき、そして、理亜は1人になった・・・。

 けれど、理亜はたった1人になっても自分たちの、姉聖良との夢を叶えたい、、いや、叶えないといけない、そう思い込んでしまい、いつもの日課を続けている・・・。では、なぜ、理亜は姉の聖良から暴走と言われるくらいのことをやってしまったのか・・・、いや、そこまで自分自身を追い込むようになったのか・・・、それは・・・。

 

 と、いいつつも、理亜は玄関で靴を履いて外へ出ると自分の手を自分の息で温める。3月とはいえ函館の早朝はかなり寒い。それでも、「自分たち、姉さまとの夢を叶えないといけない」、そう思って日課を続けている理亜にとってはいつものこと・・・、いや、今の自分の姿、自分のなかにある深淵なる闇、それによって自分を極限まで追い詰めようとしている、外の厳しい寒さそのものが今の自分に置かれた状況と似ている・・・のかもしれない、が、それでも、理亜は自分を厳しく縛り付ける鎖という名のその思いとともにランニングを始めた・・・。

 が、この日は少しだけ違っていた。理亜が外に出たちょうどそのころ、

(理亜、いつものランニングに行きましたね・・・)

と、理亜が日課のランニングをしに外に出たことを確認すると、そのある人物がつい最近まで着ていた聖女の制服を着ては、

(まぁ、この制服を着るのも今日で最後だと思うと少し寂しい気になってしまいます・・・)

と、少し寂しい思いをしつつも玄関の陰から現れた、自分のスマホを持ちながら。で、そのスマホの画面にはこんなコメントがSNSアプリのタイムライン上に現れた。それは、

(ダイヤ)「こちらの準備はできました。あとは聖良さんたちの準備が終わり次第開始することができます」

(あつこ)「こちらも準備できたよ!!すぐに、あの場所、Saint Snow始まりの地、旧函館公会堂に来て!!」

とある準備が終わったことを示すコメントだった。そのコメントを見て、その人物はこう言った。

「それでは行きましょう、あの理亜を救うため、理亜と私の夢を叶えるため、あの場所へ、ラブライブ!決勝延長戦、その決戦の地、そして、Saint Snow始まりの地、旧函館公会堂へ!!」

 

 理亜はいつものコース、少し大周りのコースでランニングをしていた。だが、理亜にとってこのランニングは地獄そのものだった。なぜなら、そのランニングをしている最中、理亜のなかでは自分たちの、姉聖良との夢を絶対に叶えないといけない、という脅迫めいた思い、とともに、それまでに至ったつらい思い出が次々と思いだされるから、それも毎日・・・。理亜にとってみれば、それは、絶望に満ちた思い、ともいえた。

 そして、今日もその絶望の思いに満ちた地獄の時間が始まる。理亜、町中の大通りに出ようとしたとき、ある思い出がよみがえってしまう、それは、あの日、理亜が深淵なる闇に飲み込まれた、そのきっかけとなった、あの日の出来事だった・・・。

 

 ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、それが目の前に迫るなか、理亜は楽屋でただ1人、こう考えていた。

(あともう少しで予選が始まる・・・。私、頑張らないと・・・。いつもと同じはず・・・、いつもと同じことをすれば必ずトップで予選を通過できる!!だって、私と姉さま(聖良)はSaint Snow、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、どんなことがあっても勝利すること、それを宿命づけられた、そんなユニット、なのだから・・・。だからこそ、1つのミスなんて許されない!!絶対に完璧なパフォーマンスをみんなにみせつけて予選をトップで通過してやる!!)

そう、理亜は1つのミスなんて許されない、完璧なパフォーマンスをみせてこの北海道最終予選をトップで通過し、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、に向けて弾みをつけたい、そんな気持ち・・・というかそれによって自分を追い込んでいた。そのためか、理亜は終始厳しい表情、まわりからすると理亜の姿はまるで、「自分には近づかないでください」、といった風に見えていたため、まわりの人たちは理亜に対し声をかけずらい状況になったいた。それは、Saint Snow、理亜と聖良に会いに来ていた(北海道最終予選のゲストとして呼ばれていた)Aqoursメンバーとて同じことだった。千歌との交流により丸くなった・・・、こほん、理亜みたいに根気詰めていなかったためか気軽にAqoursメンバーと話すことができた聖良とは違い、理亜は誰にも話しかけることもなく、誰からも話しかけられることもなかった。それくらい、このときの理亜は、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、にかける意気込み・・・、というか、熱量、というか、悪い意味で自分で自分をとことん追い詰めていた・・・。

 

 だが、根気詰めていた理亜についにそのときがきた。それは、北海道最終予選、Saint Snowのパフォーマンス中に起きた。最後のサビ直前まで完璧にこなしていた。これには、理亜、

(ここまで完璧なパフォーマンス!!あとは最終サビのところを完璧にこなせばトップ通過は間違いなし!!だからこそ、最後まで完璧にこなさないと・・・、こなさないと・・・)

と、パフォーマンス中にも関わらず、「最後まで完璧にパフォーマンスをしないと、こなさないと」、という気持ち、というか、焦り、を感じていた。

 そんな理亜・・・だったからだろうか、その焦りからだろうか、一瞬、理亜の心のなかで、

プッツン

という音が響き渡った。その音の正体とは・・・緊張の糸によるものだった。理亜、「完璧なパフォーマンスを最後までしないと」という気持ちにより自分で自分を追い詰めてしまった、それくらい、理亜の心のなかにはその気持ちによる緊張の糸が縦横無尽に張り詰められていたのだ。だが、あまりにも張り詰めていたため、その緊張の糸が耐えきれなくなり、ついにその糸がキレてしまったのだ。

 そんなわけで、理亜、緊張の糸が切れた瞬間、

(あっ!!)

という心の声とともに理亜はなにかにつまづいてしまった。いや、理亜、あまりにも根気詰めていたため、足がもつれてしまった・・・のか、姉の聖良を巻き込むかたちでその場に倒れてしまった。これには、聖良、尻もちをつきながらも、

(理亜!!)

と妹の理亜のことを心配していた。一方、理亜はと言うと・・・、その場に倒れこんだ瞬間、

(痛っ!!)

という突然倒れこんだときの衝撃をもろにくらうと、

(えっ、私、倒れた・・・わけ・・・)

とすぐに自分の状況を理解するとともに、

(まさか、自分がミスをするなんて・・・。これではダメになる!!なにもかもすべて失ってしまう!!ゼロになってしまう!!私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、それが叶わなくなってしまう!!なとかしないと・・・。なんとか自分のミスを挽回しないと・・・)

と、自分のミスで理亜と聖良の夢、ラブライブ!優勝、それが遠のいてしまう、そうならないためにもそのミスを挽回しないと、いや、それ以上に、「自分のせいでこれまで築き上げたもの、そのすべてがなくなってしまう、ゼロになってしまう、なにもかも失ってしまう」、そう無意識のうちに思えてしまい、そうならないためにも必死に頑張っていた・・・のだが、それが逆に理亜のパフォーマンスを悪くすることにもつながってしまった・・・、それはまるで自分の手でこれまで築き上げたものすべてがなくなった、そう自覚していたのごとく・・・。

 こうして、理亜は自分のミスを挽回することができず、Saint Snowは予選敗退となってしまった・・・。その事実を理亜が知ったそのとき、聖良と理亜、2人はステージ近くの廊下で2人抱き合って泣いていた。

「グス・・・、グス・・・」

自分たちの夢を叶えることができなかった、その悔し涙を流す聖良。その涙を感じとった理亜。その理亜のなかでは、

(私がミスをしなければ、私があのときちゃんとパフォーマンスをしていれば、姉さまはこんなに悔しがることなんてなかったんだ・・・)

と、自分のミスで決勝進出を逃した、そのせいで自分にとって大切な姉である聖良にこんな悔しい思いをさせてしまった、そのうしろめたさ、もしくは、悔い、が生まれてしまった。

 そして、理亜のまえで悔し涙を流す姉聖良・・・、そんな姉の姿なんてみたくない、いや、これ以上、自分にとって大切な姉である聖良のまえで自分みたいな取返しのつかないミスをした人間なんていなくなったほうがいい、そんな思いが理亜のなかにあったのだろうか、理亜、

(姉さま、ごめんなさい!!私のミスで私と姉さまが大事にしてきたSaint Snowを終わりにしてしまった・・・。姉さま、本当にごめんなさい・・・)

と、姉聖良に対して心のなかであやまりつつも抱きついていた聖良を突き放してはそのまま逃げるようにその場をあとにしてしまった・・・。

 

 その後、理亜はただ一人、自分の部屋で泣いていた、

「私のせいで、私のせいで、姉さまと大事にしていたSaint Snowを終わりにしてしまった・・・。私のミスで、私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、を叶えることができなった・・・。全部、私のせいだ・・・。私のせいでなにもかも失ってしまった・・・、ゼロになってしまったんだ・・・」

と言いながら・・・。

 

 理亜はこれまで自分たちの夢、ラブライブ!優勝、にむけて姉聖良とともに一生懸命頑張ってきた。それは、あの日、聖良のある一言から始まった。

「理亜、決めました。私、スクールアイドルになってA-RISEやμ'sみたいに、スクールアイドルの頂点、ラブライブ!で優勝し、A-RISEやμ'sが見た景色を見てみたいです、理亜と一緒に!!」

今から数年前、ネットで中継されていたラブライブ!決勝を見て、聖良、こう言いだしてきた。フィギュアスケートで頑張っているあつこを見習い自分もなにか目標を決めてやってみたい、そう聖良は思っていた。そんななか、聖良、ふと見ていたラブライブ!の中継を見て、自分もスクールアイドルに憧れるようになったのでこう言いだしてきたのだ。ただ、聖良はやると想ったらやる少女、なので、スクールアイドルになってラブライブ!優勝を目指す、そんな夢だとしても聖良はやる気だった。

 そんな聖良、対して、突然、聖良の夢に巻き込まれてしまった理亜・・・なのだが、理亜、このとき、

(あの姉さまが燃えている!!それも私と一緒に夢を叶えようとしている!!)

と、驚きの表情になるも、すぐに、

(でも、私も、姉さまの夢、いや、姉さまと私の夢、絶対に叶えたい!!だって、姉さまの夢は私の夢!!私だって、姉さまと一緒に、その夢、一緒に叶えたい!!)

と、姉さまLOVEの理亜らしく、姉聖良の夢に追随しようとしていた。

 こうして、聖良と理亜は聖良の幼馴染であるあつこ証人のもと、聖なる雪が降る日、あの場所で、「スクールアイドルとしてA-RISEやμ'sみたいに、ラブライブ!優勝、という頂きに昇り、その2組が見た景色を見てみたい」、その夢を誓い合ったのだ。

 そして、その日から理亜と聖良は自分たちの夢を叶えるために早朝のランニングなどの日課をこなすようになった。ただ、その日課は生半端なものではなかった。聖良にしても、とてもきつい、そう思えるくらいの練習量だった。それを毎日こなす2人。それでも理亜は苦にはならなかった。いや、とても楽しかった。なぜなら、

(私の好きな姉さまと一緒に同じ夢を目指す、そのために姉さまと同じ日課を続ける、同じ時間を一緒に過ごしている、それってとても嬉しいことだと私は思う!!)(理亜)

そう、姉LOVEな理亜にとって姉聖良と一緒に同じ夢を目指す、そのためにきつい日課だったとしても、2人一緒に過ごす時間、それは理亜にとって、うれしい時間、楽しい時間、となっていた。いや、それどころか、

(私は必ず、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、を絶対に叶えます、絶対に!!)

と、理亜、姉聖良との夢を絶対に叶える、そんな使命感すら帯びるようになっていった。

 ただ、理亜にはその日課以外にすることがあった。それは、勉強、だった。理亜の目指そうとしている、姉聖良が通っている聖女は函館のなかで一番の伝統校、ということもあり、函館に住む少女からすれば憧れの的だった。そのため、おのずと入学希望者は多く、結果、偏差値も志願倍率も高いものへとなっていた。なんで、相当勉強をしないと入学試験に通らない・・・、なんてこともあった。そのため、姉聖良と同じ聖女に入学するために、理亜、日々の日課以外に勉強にも励むようになった。まぁ、人見知りの理亜からすれば姉聖良以外とは友達を作ることなんてなかったし、その分、日々の日課と勉強に費やす時間も確保できたこともできたこともあり、その甲斐があったのか、聖良が聖女の2年、あつこが1年の冬、理亜は聖女を受験、無事に一発合格を果たすことができた。

 そして、理亜が聖女受験の勉強で頑張っていたあいだ、聖良とあつこはスクールアイドルユニット始動に向けた下準備を進めていたこともあり、理亜が聖女に入学してからすぐに、理亜と聖良のユニット、Saint Snowは本格始動した。このとき、理亜、

(ついに姉さまのいる聖女に入学できる!!これで私と姉さまの夢を叶える手筈は整った!!今、姉さまは私と一緒にスクールアイドルを始める下準備を終えたはず!!あとは私と姉さまでスクールアイドルの道を・・・、ラブライブ!優勝という輝かしい道を駆け抜けるのみ!!そのためにも頑張る!!決して諦めない!!絶対に・・・、絶対に・・・、ラブライブ!優勝・・・、してみせる!!)

と、勢い込んでいた。

 その後、理亜は姉聖良とともに聖女スクールアイドル部Saint Snowを立ち上げるとともに、聖良とあつこが決めたこれまで以上にきつい練習プログラム、そして、週末の数々のイベントをこなしていった。それは理亜の、

(絶対に私と姉さまの夢を、ラブライブ!優勝を、叶えてやる!!」

という、姉聖良との夢を絶対に叶いたい、そんな使命感の賜物あってのものだった。

 そんなこともあり、いや、入念にしていた下準備がしっかりしていたせいか、もしくは、絶対に自分たちの夢を叶えたい、そんな、聖良と理亜、そして、あつこの熱い想いがあったためなのか、Saint Snowの実力は日が経つごとに急上昇していき、さらには、それとともに、地方のお祭り、札幌のソーラン祭のゲスト、東京のスクールアイドルのイベントと、Saint Snowの知名度もどんどんランクアップしていった。これには、理亜、

(少しずつだけど、Saint Snowとしての実力が、知名度が、上がっていく・・・、そう考えるとうれしい・・・)

と、ちょっと嬉しそうな気分になるも、すぐに、

(とはいえ、日々精進、精進。ここで甘えていたら、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、なんて、夢のまた夢、になってしまう!!今は気を引き締めないと・・・)

と、気持ちのゆるみを引き締めていた。

 だが、それと同時に理亜にある思いも浮上してきてしまう。それは・・・、

(私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるためにも、私と姉さまは、Saint Snowは、絶対に勝たないといけない!!どんな相手であっても勝ちにいかないといけない!!じゃないと、私と姉さまの夢、それを叶えることができなくなる!!勝利こそすべてなんだ!!)

そう、勝利への執念、いや、「勝利こそすべて」、勝利に対する思いだった。ラブライブ!はいわば勝ち抜き戦である。なので、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるためにはまわりにいるスクールアイドルたちに勝たないといけない、理亜はそう思っていた。いや、このときの聖良も理亜と同じ思いだった。そのためか、理亜、真面目にスクールアイドルに取り組んでいない、ラブライブ!に取り組んでいない、お遊び感覚でスクールアイドルをしている、そう判断した相手には辛辣的な言葉を投げかけてしまっていた。いや、理亜なりに、スクールアイドルに、ラブライブ!に、取り組んでいない、勝利しようと努力していない、そんなスクールアイドルに対して、見下してはいないまでも、真面目に取り組んでいない、それならスクールアイドルなんてしないでもらいたい、そんな真面目な思いがあったのかもしれない。その代表的な理亜の言葉、それが・・・、

 

ラブライブ!は遊びじゃない!!

 

なのかもしれない。ただ、それは、理亜は、不器用なりに、真面目に、スクールアイドルを、取り組んでいた、「勝利こそすべて」、その気持ちで、自分たちの夢、目指して頑張っている、その証拠、だったのかもしれない。



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SNOW CRYSTAL 序章 第26話

 そんな思いのせいか、それとも、地道な努力のせいか、理亜と聖良、Saint Snowは結果を残していくようになった。東京のスクールアイドルのイベントでトップレベルのスクールアイドルとの差を痛感させられた聖良と理亜は自分たちの夢を叶えるために、あつこ監修のもと、自分たちの力を磨いていく。これまでよりもみっちりした練習プログラムをしつつも路上ライブやスクールアイドルのイベントをこなしくことで、実力、知名度、ともに前以上にあげていった。それにより、ラブライブ!夏季大会は、地方予備予選、最終予選を次々と勝ち進み、ついに決勝に進出した。ここで、理亜、

(絶対にラブライブ!で優勝してやる!!これまで、私と姉さまは、自分たちの夢、ラブライブ!優勝を叶えるために一生懸命頑張ってきた!!絶対に完璧なパフォーマンスをみせて、絶対に勝って、ラブライブ!、絶対に優勝してやる!!)

と、優勝に対する執念、絶対に勝利することへの執念をみせていた。

 ただ、この執念は今回はプラスに働いた。その理亜の思いと妹理亜と同じ思いだった聖良の思いががっちり噛みあい、これまでのなかで最高のパフォーマンスをみせることができた・・・のだが、上には上がいた・・・。Saint Snowとしては、勝利への執念、優勝への執念をみせていた、そんな聖良と理亜にとってみても最高のパフォーマンスをみせることができた・・・のだが、まだ初出場のユニット・・・ということもあり、Saint Snow以上の執念をみせるグループすらあった。いや、それ以外にも・・・、

「私たちだってやればできるのです!!」「そうだ、そうだ!!」

「私たち、レジェンドスクールアイドルグループ、そのなかでも銀河ナンバーワンのお姉さまの妹である私たちの手にかかればお茶の子さいさいで~す!!」

「そうだ、そうだ!!って、私たちもレジェンドスクールアイドルの一員だったでしょ!!」

「こらっ、2人とも、真面目にやりなさい!!でも、2人とも、スクールアイドルを心のそこから楽しんでいるね!!」

「うんっ!!だって、スクールアイドルって楽しんでなんぼ、でしょ!!」

「そうそう。スクールアイドルを楽しむ、そのおかげで、私たちがまえにいた学校、音ノ木坂、その最後のスクールアイドルグループとしてラブライブ!に優勝、さらに、あのお姉さまのいるμ'sすら勝つことができたのです!!」

「確かに2人の言う通りだね!!私も2人の考えに賛成だよ!!だって、私たちの先輩、(高坂)雪穂さんはこう言っていたもんね、「スクールアイドルは楽しむことがすべて」、だって!!」

と、ちょっと小さな双子の姉妹となぜかガテン系の少女、その3人のグループすらいた。

 そして、ラブライブ!夏季大会決勝の結果は・・・、Saint Snowは初出場ながら全体の8位という好成績だった。あっ、ちなみに、優勝したのは、なぜか、ちょっと不真面目そうにみえたものの、心の底からスクールアイドルを楽しんでいた、あの双子の姉妹とガテン系の少女のグループだった。

 と、まぁ、全体の8位になったことで喜ぶあつこに対し、聖良はそんなあつこを諭す。これを見た理亜もまた、

「あつこ!!あと一歩のところで、私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、叶うはずだったんだ!!それなのに、全体の8位だなんて、私、とても悔しい!!もっと頑張らないと!!もっと上を目指していかないと!!」

と、あつこに対し、自分の今の思いを吐いた。それくらい理亜も、ラブライブ!優勝ができなかったこと、自分たちの夢を叶えることができなかったこと、ほかのグループにかつことができなかったこと、それに対して悔しがっていた。いや、それ以外にも、理亜、

(まさか、あのふざけていいるような双子のいるグループが優勝するなんて・・・、「スクールアイドルを楽しむ」・・・、そんな思いのグループに負けるなんて・・・。たしかに、あの双子は私と姉さまが目指しているあのグループのメンバーの妹かもしれないし、その双子を含めた、優勝を果たしたグループの3人とも、あのレジェンドスクールアイドルグループの一員であるってわかっていたけど、それでも真面目に頑張ってきた私や姉さまが8位で、スクールアイドルを楽しんでいた、いや、遊び感覚でしていた、あの3人組が優勝だなんて・・・)

と、優勝した3人組グループについても少し恨み節をきかせていた・・・。

 ただ、このとき、悔しがる聖良と理亜、そして、あつこはその悔しさをバネに、今度こそラブライブ!優勝を、そのためにもラブライブ!を勝ち抜くことを誓い合うのであった。

 

 その後、夏季大会で全体の8位という成績で終えたSaint Snow、なのだろうか、まわりから、「初出場ながら全体の8位という(まわりからみたら)好成績をあげた」ということで褒め称えられていた、のだが、とうの理亜も、(もちろん、聖良も、)そんなことに胡坐をかかず、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、それを目指して精進を、いや、

(もっと、もっと、頑張らないと!じゃないと、私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝なんてできない!!もっと、もっと、頑張らないと・・・、もっと、もっと、勝たないと・・・)(理亜)

と、理亜、これまで以上に、練習に、イベ(ライブ)に熱を入れるようになった。と、同時に、まわりからは、「次こそ、ラブライブ!優勝、間違いなし!!」、という期待の声が聞こえてきていた。

 だが、このとき、理亜と聖良、その2人のあいだでスクールアイドルに対する考えに違いが出てきてしまう。聖良はAqoursの千歌との交流で本人は気づいたいないまでも少しずつであるが、スクールアイドルを楽しもう、とする気持ちが出てくるようになる。

 一方、理亜は、

「今度こそ優勝だ!!」「あともう少しで優勝できる!!」

「もっと頑張れ!!」

というまわりからの声援もあってか、

(今度こそ、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝を果たす!!)

という、姉聖良との夢を絶対に果たそうとする思いが強くなってしまった。いや、それどころか、

(私と姉さまの夢を果たすためには勝ち続けるしかない!!だからこそ、もっと頑張って、もっと勝ち続けないと・・・)

という勝利に対する執念も強くなってしまった。

 だが、その勝利への執念が理亜にとって自分を追い詰めるきっかけとなってしまった。その勝利の執念からなのか、それとも、日々強くなっていくまわりからの期待の声からなのか、それはわからないが、理亜は次第にこんな思いを持つようになる。それは・・・、

(もっと、もっと、頑張らないと・・・。もっと頑張って、もっと練習して、もっと場数を踏んでいないと、もっと勝ちにいかないと・・・。そうじゃないと、ラブライブ!優勝、なんてできない!!私と姉さまとの夢なんて絶対に叶うことなんてできない!!)

と、自分を追い込みはじめ・・・いや、前から自分のことを追い込んでいたのかもしれない。ただ、これまでは、それが表面化していなかったのかもしれない。だが、理亜のなかにある、勝利こそすべて、その考え方、そして、勝利への執念、それが起爆剤となり、「もっと頑張らないと!!もっと頑張っていかないと、勝ち続けないと、ラブライブ!優勝、なんてできない!!」と理亜は思い込むように、自分で自分を追い詰めようとしていたのかもしれない。だって、理亜はとても真面目で、ある目標に対して自分を追い込むくらい一生懸命頑張る、それくらい、姉聖良ゆずりのストイックさがあるのだから。それに、理亜は、融通の利かない頑固者でもあった。

 そんなこともあり、理亜はどんどん自分を追い詰めていく。ラブライブ!冬季大会が近づくにつれてまわりからの、自分たち、Saint Snowに対する声援は強くなっていった。それにつられてか、それとも、冬季大会が近づいているせいか、理亜の勝利に対する欲求、それとも、理亜の焦り、が強くなったのか、その両方ともなのか、断言することができないのだが、それでも、理亜は次第に、

(もっともっと自分を追い込まないと!!じゃないと、姉さまとの夢が一生叶わなくなる!!)

と、どんどん自分を追い込んでしまった。

 こうなってしまうと理亜がおかしくなってもおかしくない、そう危惧したのか、あつこ、そんな理亜に対しこう釘を刺した。

「あんまりまわりに振り回されないでね、理亜さん!!それに、そこまで自分を追い込まないように!!自分は自分、なんだからね!!」

 だが、そんなあつこの忠告も、理亜、

「そんなこと、わかっています!!ラブライブ!は遊びじゃない!!だからこそ今を頑張っている!!」

と、完全に無視・・・しているような感じで対応してしまった。実は、このとき、理亜、

「ラブライブ!優勝・・・、姉さまとの夢・・・、それを叶えないと・・・、勝利しないと・・・」

と、ついこんな独り言を言うくらい、いや、それ以上に、

(私はもっと頑張らないといけない!!みんなから期待されている、いや、それ以上に、私と姉さま、そのただ1つの目標、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、それを目指す、その思いは誰にも負けない!!だからこそ、私と姉さま、Saint Snowは勝ち続ける!!たとえきつい練習があったとしても、どんなステージがあったとしても、私、絶対にへこたれない!!絶対に私と姉さまとの夢、それを絶対に叶えてみせる!!絶対に勝ち進んで、絶対に夢を叶えてみせる!!)

と、これまで以上に自分を追い詰める、どんなことがあっても絶対にへこたれない、絶対に夢を叶えてみせる、そんな思いになってしまった。そのため、たとえきつい練習があったとしても、どんなことがあったとしても、理亜はへこたれない、いや、諦めずに全うする、そんな心構えをするようになった。いや、それ以上に、その心構え、いや、その思いは日に日に増し、それに伴って理亜は無理をしてでも極限まで自分を追い込むようになっっていった・・・。

 

 しかし、それは理亜にとって諸刃の剣となった。自分を極限まで追い詰めてまで得たもの、それは、「Saint Snowとしての実力」、だった。「最後の最後まで自分を追い詰めることにより、自分たちの夢を叶える、ラブライブ!優勝という夢を叶える、そのために絶対に勝ち続ける」、そんな思いに支配されていた理亜はどんな練習でもどんなイベントやライブであってもいつも全力で対応、パフォーマンスをしてきた。それは、練習を重ねるごとに、ライブをこなしていくごとに、自分の実力として十分に発揮されていく、いや、前以上のものをみせてくれることにもつながった。なので、まわりから、「今回こそ、ラブライブ!優勝、間違いなし!!」と言われるくらいの実力にまで伸ばすことができた。だが、その一方で、もしなんか起きたら理亜はその思いがゆえに壊れてしまうのでは、という危うさも持ち合わせてしまった。いつも全力でパフォーマンスをしている理亜、これには、あつこ、

(理亜さん、いつかはきっと壊れてしまうかもしれない・・・)

と、心配になるも、

(でも、理亜さんの性格じゃ、私の忠告、またしたとしても無視されるかもしれないし・・・)と、前回の理亜への忠告のこともあってか、どんなことが言っても無駄、そんな諦めに似た思いをあつこはするようになってしまった。

 だが、ついに、そのときが、あつこが心配したことが現実となってしまった。そう、あの日、Xデー、北海道最終予選、Saint Snowのパフォーマンス中、理亜が、突然、聖良を巻き込むかたちで転倒してきたのだ。これにより理亜のなかにあったものすべてが無と化してしまった。このあと、いくら理亜がそのミスを挽回しようと必死になって頑張るも後の祭り・・・、結果、Saint Snowはまさかの予選敗退、それが、理亜にとって、「ゼロになってしまった、なにもかも失ってしまった」、そんな後悔、いや、深淵なる闇が理亜のなかに生まれた瞬間だった。

 

 そして、理亜のなかで生まれた深淵なる闇のせいで理亜は、これから先、苦しむこととなった。まず、最初に現れたもの、それは、理亜の姉聖良に対する懺悔の言葉・・・、

「私のせいで、私のせいで、姉さまと大事にしてきた、Saint Snow、それを終わりにしてしまった・・・。私のミスのせいで、私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、を叶えることができなくなってしまった・・・。全部、全部、私が悪いんだ・・・」

それだった。これまで理亜は理亜と聖良との夢、ラブライブ!優勝、に向けて自分を追い込んでまで必死に頑張ってきた、が、それも自分のたった1回のミスにより全てが無となってしまった、これまでの苦労なんて水の泡、そんな絶望的な状況に陥ってしまった、そのことに理亜は絶望していた。これまでの姉聖良との想い出も、想いも、キズナも、なにもかもすべて、無になってしまった、「ゼロになってしまった、なにもかも失ってしまった」、そう知らないうちに理亜はそう考えるようになったのかもしれない。むろん、それが、理亜にとって、「自分のたった1回のミスのせいでSaint Snowを終わりにしてしまった、姉さまには申し訳ないことをしてしまった」、そんな無念さを、いや、姉聖良に対する罪悪感ともとれる、そんな思いへとつながってしまった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第27話

 だが、その思いはすぐにある少女によって癒えていった。そう、理亜としては姉聖良以外に初めてといえる親友となった、Aqoursメンバーであり、理亜と同じ1年、そして、理亜と同じく姉思いのルビィであった。理亜が自分の部屋で深淵なる闇のせいで起きた姉聖良への罪悪感からか泣いていたとき、たまたま、理亜と聖良の実家である甘味処の店のなかに入っていったAqours、そんななか、泣いている声がきこえてきたのか、その声を求めて居住スペースまで入ってしまったルビィ、泣いている理亜を見つけてしまった。

 そして、紆余曲折を経て、その思いに苦しむ理亜に対し、同じ姉思いのルビィはこんな提案をしてくる、レンガ倉庫の前に光るクリスマスツリーの前で、

「歌いませんか、一緒に曲を、お姉ちゃんに送る曲を作って、この光のなかで、もう1度!!」

そう、ルビィはすべてを失った、そう思っていた理亜に対し、もう1度、姉聖良のために、Saint Snowとしてもう1度ステージに立つことを、姉聖良、そして、姉ダイヤに送る歌を自分たちで作ってそこで披露することを提案してきたのだ。これには、理亜、

(もう1度、姉さまと歌える!!姉さまたちのために作った自分たちの曲を、それをみんなの前で歌える!!それって、Saint Snowを、続けることにもつながる!!)

と、これまでもっていた思いを打ち消しにしたどころか、それにより、自分のミスでSaint Snowを終わりにした、それへの姉聖良への罪悪感、それへの贖罪ができる、その思いが大きいのか、それとも、再び姉聖良と一緒にSaint Snowを続けることができる、その喜びの方が強かったのか、それについてはわからないが、少なくとも前向きに理亜は考えることができるようになったのは確かである。

 

 その後、理亜とルビィは同じ1年の花丸とヨハネを巻き込んで自分たちのライブの場となる函館のクリスマスフェスタ、そのオープニングを飾るライブに向けて、自分たちだけの曲、親愛なる姉たちに向けた曲、その曲作りに励むことになる。そのなかで、

「理亜ちゃん、ここの歌詞だけど、これでどうかな?」

とルビィが言うと理亜も、

「ルビィ、そこはこれが一番!!」

と言っては2人で張り合うこともあった。とはいえ、実は理亜とルビィはこれが曲制作を本格的に行うのは初めてのことだった。理亜の場合、Saint Snowの作詞作曲はいつも聖良とあつこが担っていた。また、ルビィに関しては「My 舞 tonght」のときにちょっとだけ加担したことがあったものの、それ以外の曲は主に作詞は千歌が、作曲は梨子がしていたため、そこまで曲制作に携わることがなかった。なので曲制作初心者の2人(+それに巻き込まれた花丸とヨハネ)は初心者張りにいろいろと回り道をしていた。

 だが、理亜にとってそれは新鮮なことだった。なぜなら、

(私はこれまで、ただ、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、に向けて一生懸命頑張ってきた。だから、優勝するためには勝ち続けるしかない、勝たないといけない、それがスクールアイドルとしては必要だ、と思っていた。けれど、今は違う。姉さまとSaint Snowを続けるために、私は今、(私たちのライバルである)Aqoursのルビィと一緒に曲を作っている!!それって今までの私、勝つことだけを追い求めてきた、そんな私からしたらとても新鮮に感じられる・・・)

そう、理亜、これまでは自分たちの夢を叶えるために、勝ち続けるために、自分を極限に追い込むまで一生懸命頑張ってきた。それが、一転、今は姉聖愛とSaint Snowを続けるためにライバルであったメンバー、ルビィと一緒に曲を作っている、それは理亜にとってこれまでの経験とは違う、なにか新しいもの、いや、これまで、「スクールアイドルとは勝つことこそ意義がある、(じゃないと、自分たちの夢であるラブライブ!優勝を叶えることができない、)」、そう考えていた理亜にとって180度変わった経験、ある人のためにスクールアイドル活動をしている、そんな意味で理亜はこの曲制作という経験を新鮮だと感じていたのだ。いや、このとき、理亜は、心の底から、スクールアイドルを楽しんでいた、のかもしれない。

 そして、

「最後は・・・、できた!!」(ルビィ)

「うん、すごくいい!!」(理亜)

「「う~ん、ヤッター!!」(ルビィ、理亜)

ついに、理亜とルビィ、2人はライブで歌う歌、そして、姉たちに送る歌、「Awalken the power」、その歌詞を完成させたのだ。これには、理亜、

(ついにできた!!ついにできた!!姉さまたちに送る歌の歌詞ができた!!)

と、心のなかで喜ぶとともに、

(なんか歌詞を作っていると、私、こう思ってしまう、「私、今、青春している!!スクールアイドルをしている!!スクールアイドルを楽しんでいる!!」って)

と、自分自身スクールアイドルを楽しんでいることを実感していた。

 また、このとき、理亜にある変化があらわれるようになる。それは、あつこに対する扱い方。これまではあつこが聖良に近づくとすぐに、理亜、

「この姉さまの腰ぎんちゃくが!!あっち行って、しっ、しっ」

と、自分が愛する姉聖良をあつこが奪おうとする、その思いからか、あつこのことを邪見に扱ってきたのだが、ルビィとともに作詞したものの、作曲についてはずぶの素人、だったため、作曲ができるあつこに自分たちが作詞した曲、「Awalken the power」、を作曲するようにルビィと一緒に依頼することとなった。で、あつこにその作曲を依頼する際、理亜、少し照れながらも、

「あつこ、お願いがあります。この歌詞に曲を付けてください・・・」

とお願いをしてきたのだ。このとき、理亜、

(認めたくないけど、あつこの作曲の実力は折り紙付き。だって、Saint Snowの曲すべての作詞作曲にあつこが関わっているから。あつこのこと、これまでは姉さまの腰ぎんちゃくとしか見ていなかったけど、今は認めてあげる、あつこがいなければ今の私たち、Saint Snowはいなかった。それだけは認めてあげる)

と、あつこのことを理亜はある程度認めてくれたのだ。ある意味、ツンデレ、みたいな理亜らしいといったら理亜らしい表現、なのだが、とうのあつこはというと、これまで姉聖良以外とは関わりをもたなかった理亜がまさか自分たちのライバルであるAqoursメンバー(ルビィのこと)とともに1つのことを成し遂げようとしている姿を見て、

(ふ~ん、理亜さん、ルビィさんという大事な仲間を作ったんだね!!なら、私もそんな理亜さんの力にならないとね!!)

と、これまでとは違う理亜の願いを聞き入れたい、その一心で、理亜とルビィが2人一緒になって作詞した曲、「Awalken the power」の作曲を受け持つことを承諾した。

 

 こうして、理亜・ルビィ作詞、あつこ作曲の、理亜とルビィが愛する姉たちに送る歌、「Awalken the power」は完成、函館のクリスマスフェスタのオープニングライブで披露することが決まった。まぁ、理亜、ルビィの姉たちへのサプライズ、それに対する、姉聖良と姉ダイヤ、そして、千歌たちの逆サプライズ、を経て、奇跡のユニット、Saint Aqours Snow、として、ここ函館の地で、奇跡のライブとして、この歌、「Awalken the power」は歌われたのだった。で、その曲はそのライブを見に来ていた函館市民、そして、なぜかこの情報を聞きつけてAqoursの故郷である沼津からはせ参じた、この物語の対となる物語、「Moon Cradle」、その重要人物となる(Aqoursメンバーの1人、ヨハネの前世を知る者(というか、ヨハネの中学時代の同級生である)稲荷あげはにとって心に残るライブとなった。

 そして、それはこのライブを関係者席から見ていたあつこにとってみても同様だった。あつこ、このライブを見て、

(聖良さん、理亜さん、2人ともとても輝いてみえます!!これまでは、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、に向かって、それを叶えるために一生懸命頑張ってきました。いや、勝つことだけに集中してきました。しかし、それが一転して、2人とも、ライバルであるAqoursのみなさんと一緒に楽しくパフォーマンスをしています。それはまるで、2人とも、スクールアイドルそのものを楽しんでいる、そんな風にみえます・・・)

と、これまでの聖良と理亜、ただ自分たちの夢を叶えるためだけに頑張ってきた、勝つことに執着してきた、それが、このライブでは一転して、2人ともスクールアイドルを楽しんでいる、そうあつこには見えたのである。そのためか、あつこ、こうも考えるようになる。

(なんか2人ともスクールアイドルを楽しんでいる姿を見て、私、とても感動しております!!こんな2人を見ているだけで、私、とても嬉しく感じちゃいます!!)

そう、これまでとは違う聖良と理亜、その2人の姿を見て、あつこ、感動していたのだ。

 さらに、このライブを通じて理亜にもある変化が生まれた。それは・・・、

 

(私、ルビィたちと一緒に行動してわかった・・・、スクールアイドルって楽しむことがとても大切なことが・・・。だって、いくら勝つことばかり考えていたっていつかは負けることだってある。ならば、悔いのないように一生懸命スクールアイドルを楽しむ、頑張ることが大切。だって、ルビィたちAqoursは、これまで、スクールアイドルを心の底から楽しんできた。それがあったからこそ、Aqoursはラブライブ!(冬季大会)決勝まで進出することができた。対して、私と姉さま、Saint Snowは自分たちの夢を叶えるためだけに「ただ勝つことだけ」のことに執着してきた。けれど、それによって私は大事な場面でミスをしてしまった、結果、「負けてしまった」・・・、そう考えるだけでも、楽しむことがとても大切である、そう思えてしまう。いや、それ以上に、今、ここにいるみんなと一緒にこのライブを楽しもう、スクールアイドルを楽しもう、そんな自分がいる・・・。そんなことを考えると、私、楽しむこと、それって大切だと思えてきてしまう・・・)

そう、理亜は楽しむことの大切さを初めて知ったのだ。ルビィがこのライブを提案してからこのライブの日まで、理亜はルビィたちと一緒にこのライブの準備をしてきた。それは、これまで「スクールアイドルは勝つことこそすべて」と考えていた理亜にとって新鮮なことだった。いや、ルビィたちと一緒に「スクールアイドルを楽しむこと」という新しい感覚に理亜は触れることができたのだ。それにより、あの頑固者、「スクールアイドルは勝つことこそすべて」という考えに固執していた理亜もついにその考え、ベールを脱ぎ去ることができたのだ。いや、このライブを通じて、理亜の前身に「スクールアイドルを楽しむこと」のすばらしさを染みわたらすことができたのかもしれない。それくらい、理亜にとってこのルビィとの経験は今までの自分を脱ぎ去るきっかけになったのかもしれない。

 そして、理亜はついにあのことを決意した。このライブのあと、理亜は聖良に対しこう告げた。

「姉さま、私、Saint Snowは続けない。だって、これは姉さまとの(大切な)想い出だから。世界に1つしかない雪の結晶だから。だから、新しいグループ(ユニット)で違う雪の結晶を見つけて、姉さまにも、みんなにも、喜んでもらえる、スクールアイドルを作る。(だから、姉さま、)見てて」

そう、自分の口からSaint Snowにピリオドを打つ、新しいユニットを作る、そう、姉聖良に宣言したのだ。これには、聖良、新しい理亜の旅立ちとして理亜を祝福したのだった。

 

 だが、それでも、なお、理亜のなかにはまだ深淵なる闇が残っていった。ルビィのおかげでそれをぬぐい去ることができた・・・はずだった。しかし、そのほとんどを取り除いた・・・というか、取り除くことができた、かのように見えていたのだが、実際のところ、理亜の心の奥底までその闇は根付いていたのかもしれない。ただ、ルビィのおかげもあり、当面のあいだはその闇は姿をみせることはなかった。なぜなら・・・、

(人見知りな私はこれまで仲間といえる人がいなかった。けれど、そんな私にも仲間ができた!!いつも助け合える仲間ができた!!私、とてもうれしい!!)

と、理亜が思えるくらい(姉聖良とAqours以外で本当に)仲間といえる仲間が理亜のもとに集まったのだ。それはあの奇跡のクリスマスライブを見て、「自分んもスクールアイドルをやりたい!!」、そう思える有志が理亜のもとに集まったのだ。なので、これまで仲間といえる仲間がいなかった理亜にとってみればうれしいことだったのだ。まぁ、聖良の必死のお願いで理亜のユニットに入ったあつこもそのなかにいたのだが、理亜、そこについてはあまり追求してこなかった。

 また、このとき、理亜のなかにはある思いがあった。それは・・・、

(私、なんかみんなと一緒に練習をしていると、「みんなと一緒になってスクールアイドルを楽しんでいる」、そんな感じになる!!もしかすると、ルビィたちAqoursも今の私みたいな想いになっているかも!!)

そう、理亜は自分のユニットのために集まってくれた有志、仲間たちと一緒に練習していること自体楽しいと思えるようになったのだ。これまでは自分と姉聖良の夢のため、ただ一生懸命自分を追い込んでまでスクールアイドルの練習や活動をしてきた。だが、自分だけのユニット、それができた当初はこれまでとは違いあのクリスマスライブで感じたこと、スクールアイドルを楽しむこと、それを仲間たちと一緒に感じていたのだ。それは理亜にとって大きな進化だったのかもしれない。これまでは、理亜、姉聖良との夢の実現という大きな目標のために頑張ってきた。その理亜が今度は自分の仲間たちと一緒になってスクールアイドルを楽しんでいる、それは理亜にとって大きな収穫であった。

 とはいえ、理亜以外のユニットメンバーはスクールアイドル初心者、ということもあり、ユニット結成当初はスクールアイドルにとって不可欠な基礎体力をつける練習が主だった。それはこれまで入念な下準備のもと最初からたった1年という短い期間でラブライブ!優勝という夢を叶えるために勝ち続けるための練習をしてきたのとは違い本当に初心者用の練習ともいえた。なので、理亜からすれば姉聖良との練習とは程遠い、本当に物足りない、と理亜が思える練習だったのかもしれない。

 けれど、ユニット結成当初の理亜からすれば、

(まだ初心者の仲間たちだけど、私、そんな仲間たちを立派にスクールアイドルに育ててみせる!!だって、ルビィたちも最初は初心者だったけど、たった1年のあいだにラブライブ!決勝に進めるくらいに成長した!!だからこそ、私、やってやる、初心者の仲間たちを立派なスクールアイドルに成長させてやる!!)

と、まるでどこかの某音楽ゲームのプロデューサーみないな思いになっていた。理亜としては、まだ初心者の仲間たち、それを1年後にはルビィたち(最初は初心者だった(一部例外もあり))Aqoursみたいな立派なスクールアイドルに成長させる、そんな心意気があった。なので、たとて立派なスクールアイドルになったとしても基礎をしっかりとしてないといけない、ということで、理亜、ユニットメンバーたちに基礎をみっちりと叩き込もうとしていたのだ。もちろん、昔の自分とは違い、理亜、仲間たちと一緒に楽しみながら・・・、である。基礎、それは本当にとても大事です、はい・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第28話

 だが、それも長くは続かなかった。ある日を境に理亜は変わってしまった。そのあの日とは、そう、ラブライブ!決勝があった日、そう、理亜と聖良がラブライブ!決勝に進出したAqoursを応援しに東京へ行った日である。

 それはすべての戦いが終わり、ついに結果が発表されるときに起きた。ステージに集まる決勝進出者たち、そこにはルビィたちAqoursのメンバーの姿もあった。そんなAqoursメンバーたちを見た理亜、

(あともう少しですべてが決まる・・・。ルビィ、Aqoursのみんな、頑張って・・・)

と思いつつルビィやAqoursメンバーに向かって声援を送る。決勝に進出できなかった理亜もまるで決勝に進出したかのような思いでかたずとその結果を待ち望んでいた。

 そして、ついに結果が発表された。ステージ上ではドラム音が鳴り響く。そして・・・、

「ラブライブ!優勝は・・・、浦の星女学院スクールアイドル部、Aqours!!」

その瞬間、ステージ上にいたAqoursメンバー全員が一斉に、

「ヤッター!!」

という喜び声を会場中に響き渡らせるとともに、

「よしみちゃん、いつきちゃん、むつちゃん、そして、浦の星のみんな、やったよ。私たち、みんなとの約束、消えゆく浦の星の名、ラブライブ!の歴史に刻み込んだよ・・・」

と、千歌はうれし涙を流しながら観客席にいる浦の星のみんなに向かってそう言った。そう、Aqoursはある目標をもって決勝に臨んでいた。それは、廃校となる自分たちの学校、浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻み込むこと、だった。Aqoursは当初、廃校阻止のため、少しでも入学希望者を増やすためにラブライブ!に臨んでいた。だが、ラブライブ!冬季大会では決勝に進出できたものの、浦の星の入学希望者はそこまで伸びなかった。そして、冬季大会東海最終予選の翌日、つまり、入学希望最終締切日までに98人までは伸びたものの、最低ラインだった100人を越えることはできなかった。これにより、Aqoursはあと一歩のところで浦の星の廃校を阻止することはできなかった。それにより当初の目標を叶えることができずスクールアイドルを続ける意欲を失ってしまったAqoursメンバー、せっかくラブライブ!決勝に進出できたもののそれすら辞退することも考えてしまう。だが、このとき、よいつむトリオら浦の星のみんながそんなAqoursメンバーに対し新しい目標を提示してくれた。それが、「消えゆく浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻み込んでほしい」、というものだった。そんな浦の星のみんなの声もあり、Aqoursメンバーは再び立ち上がり、新しい目標のもと、今日まで頑張ってきたのだ。そして、ついに、Aqoursメンバー、その目標を叶えることができたのである。

 ラブライブ!優勝と自分たちの目標達成、それを成し遂げたことでとても喜んでいるAqoursメンバー、そんな様子を観客席から見ていた理亜、そのAqoursメンバーに対し、

「ルビィ、そして、Aqoursのみんな、優勝、おめでとう・・・」

と賛辞を送ると続けて、

「次はきっと私だって「ラブライブ!」で優勝してやる!!」

とこれからの抱負を語っていた。

 だが、このとき理亜のなかであるものが動き出していた。それは、これまで理亜のなかにずっと潜んでいたもの、理亜がもうその存在を忘れていた、あの日、クリスマスライブですべてが消えたと思っていたものだった・・・。理亜、これからの抱負を語った瞬間、この思いにとらわれてしまう。

(でも、もし、あれさえなければ、私も、あのステージに・・・)

こう思った理亜、その直後、自分のなかであるものが動き出してしまう。それに、理亜、

(きゃっ!!)

という心の叫び声とともに、あの日の出来事、北海道最終予選の出来事、理亜がミスをして決勝を逃した、あの日の出来事、がフラッシュバックしてくる。これには、理亜、

(や、やめて!!あの日の思い出なんて、私にとって姉さまとの夢を終わらしてしまった、そんな思い出なんて、思い出させないで!!)

と、困惑してしまう。だが、それはすぐに収まる、いや、収まるというか、ある思いが理亜のなかで駆け巡る。それは・・・、

(もし、あの失敗がなければ、あれさえなければ、きっと、姉さまと私は、いや、Saint Snowは、ルビィと、Aqoursと同じステージに上がれたはず・・・。そう、私、姉さまに申し訳ないことをしてしまったんだ・・・。私のせいで、私のミスのせいで、姉さまは、姉さまと私の夢、ラブライブ!優勝、その夢を叶えることができなかったんだ・・・)

そう、あの日、クリスマスライブで捨てたはずの後悔、いや、深淵なる闇、それが理亜のなかで復活を果たしたのだ。

 だが、これだけではすまなかった。理亜、さらにあること、Aqoursのことを考えた。

(ルビィたちはAqoursのみんなは・・・あの目標に向かって・・・、「消えゆく浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻む」・・・、その目標に向かって頑張ってきた・・・、私と姉さまが正月のときに渡したとてもきつい練習メニューを渡した・・・、ルビィたちはそれを毎日こなし・・・、目標を果たした・・・、浦の星のみんなとの約束を果たした・・・)

実は理亜と聖良は、正月、沼津に出向いては新しい目標に向かって頑張っているAqoursに対して臨時コーチとして指導していたのだ。そのなかで理亜と聖良はAqoursがいる浦の星が廃校になること、それが決まった際、Aqoursが浦の星のみんなと消えゆく浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻むという約束をしたこと、その約束のもと、Aqoursはその約束を果たすという目標を新たに掲げ頑張っていることを知った。そのためか、聖良、そんな新しい目標に向かって頑張っているAqoursメンバーに対し、その目標が達成できるように聖良(+少しあつこ)考案のきつい練習メニューを記したメモを渡していたのだ。その練習メニューをAqoursメンバーは毎日こなした結果・・・かどうかはわからないがAqoursはその目標を果たすことができたのだ。で、そのことを思いだした理亜、そんなAqoursと自分を比較してしまう。

(ルビィたちAqoursは私たちが渡した練習メニューを毎日こなしつつ浦の星のみんなと決めた目標に向かって「絶対に叶えたい」という強い想いで頑張ってきた・・・。そして、その目標は達成された・・・。けれど、私は・・・、私は・・・、私のミスさえなければ・・・、あのとき・・・、私が・・・、もっとしっかりと・・・していれば・・・、あのときのミスなんて・・・なかった・・・。私たち・・・Saint Snowも・・・きっと・・・ラブライブ!決勝・・・、ルビィたちAqoursと・・・同じステージに・・・立てたはず・・・。もっと・・・もっと・・・強い想いで・・・やっていれば・・・きっと・・・姉さまとの夢を・・・叶えることが・・・できた・・・はず・・・)

そう、理亜、もっと強い思いでやっていれば姉聖良との夢を果たすことができた、と再び後悔し始めたのだ。Aqoursは新しい目標に向かって、浦の星のみんなと約束したその目標に向かって、「絶対に叶えたい」という強い想いで頑張ってきた、それによりその目標を達成することができた、対して、理亜はそんな強い思いがなかったから姉聖良との夢を、「ラブライブ!優勝」という夢を叶えることができなかった、それを再び後悔していたのだ。

 さらに、理亜、こんなことまで考えてしまう。

(それに、ルビィたちは、Aqoursは、自分たちの輝きを追い求めてきた。自分たちだけでの輝き、それを追い求めて、私たちより強い想いで頑張ってきた。そして、その輝きは、Aqoursという輝きは、より磨き上げられ、日本一の輝きになった・・・。それに対して、私と姉さまの、Saint Snowの、輝きは、私のミスのせいで、予選敗退したせいで、その輝きは失ってしまったんだ・・・。全部、全部、私が悪いんだ・・・。私が、Saint Snowという輝きを失わせてしまったんだ・・・、Saint Snowそのものを失わせてしまったんだ・・・)

ルビィたちAqoursはAqoursという輝きを追い求めてきた。それはたんに自分たちだけの輝きを探していたのかもしれない。けれど、理亜からすれば、Aqoursという輝きはルビィたちAqoursメンバーがこれまで築き上げてきた想い、想い出、キズナ、そのものだと思ったのかもしれない。そんなAqoursという輝きは、ラブライブ!優勝、そして、新しい目標を達成したことで日本一の輝きとなった、と理亜は思ったのに違いない。対し、自分たちの輝き、Saint Snowの輝きは、理亜と聖良がこれまで築き上げたもの、それは、あのときのミス、北海道最終予選での理亜のミスによりすべてが無ときした、Saint Snowの輝きそのものが理亜のあのときのミスによりすべてなくなってしまった、そう理亜は思い込んだのかもしれない。

 そして、理亜、そのことを踏まえてある結論に達してしまう。それは・・・、

(そう考えてしまうと、このままだと、私たちは、私が作ったユニットは、ただ楽しんでいるだけのユニットなんて、「楽しむ」というお遊びをただしているだけのユニットなんて、お遊びというゆるゆるの練習だけしかしないユニットなんて、ラブライブ!で優勝できないじゃない・・・)

なんと、理亜、このままだと自分が作ったユニットではラブライブ!優勝なんてできない、

「楽しむ」というお遊びをしているだけのユニットではラブライブ!優勝なんてできない、そう思い込んでしまったのだ。なぜなら、

(だって、私が作ったユニット、これまではスクールアイドルを楽しみながら練習してきた。私を除いて全員初心者だったから、私、これまで基礎的な練習しかしてこなかった、それもかなりゆるゆるの・・・。だから、成長するスピードもゆるかった・・・。でも、このペースでいくと私が卒業する2年後であってもラブライブ!で優勝できるまでの実力はつかない・・・。それに、これまで「楽しむこと」を重点的にしてきたけど、どう考えてみても「楽しむ」ことなんてただの「お遊び」じゃない!!それじゃ、私のユニット、ラブライブ!、優勝できないじゃない・・・)

そう、これまで、理亜、あのクリスマスライブで知った「楽しむことこそ大事」という想いのもと、自分の新しいユニットでもそれを実践するがごとくあつこを含めたユニットメンバー全員がスクールアイドルを楽しめるように、そして、初心者であってもスクールアイドルをするのに必要な基礎の部分が育つようにゆるゆるとした練習をしてきたのだ。だが、このペースで進むと理亜が卒業する2年後までにラブライブ!で優勝することなんてできない、いや、それ以上に、「楽しむこと」、それ自体、ただの「お遊び」である、そう理亜は断定してしまったのだ。

 さらに、理亜、こんなことまで考えてしまう。

(私はこれまでSaint Snowの一員として姉さまと一緒に「ラブライブ!優勝」という夢を叶えようとしてきた。だから、Saint Snowという輝きはとても美しいものだった・・・。でも、今の私のユニット、実力はまだまだ、私以外初心者、だから、ラブライブ!地方予備予選すら突破できないレベル・・・。そして、ゆるゆるの練習のままだと、「楽しむ」という「お遊び」の考えのままだと、そこまで実力は伸びない・・・。私のユニット、このままだと「お遊び」集団と化してしまう・・・。いや、ただ「楽しんでいるだけ」の集団、「楽しい」という「お遊び」を実践している集団と化してしまう!!このままだと、姉さまとの輝き、Saint Snowと同じ輝きになるなんて夢のまた夢!!)

なんと、理亜、Saint Snowの輝きと今の理亜のユニットの輝きを比較してしまったのだ。で、このままだと、たとえ理亜が卒業する2年後になってもSaint Snowという輝きと同じものに達することなんてできない、そう理亜は結論づけたのだ。

 そして、理亜は最初に立ち返り、こう考えてみた。

(でも、そんな私だってスクールアイドルとしてある夢を持っている。それは、ルビィたちと同じ場所、ラブライブ!優勝、その場所に立つこと!!一スクールアイドルとして、私だってあの場所に立ちたい!!あの場所に立って、今度こそ、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝を果たして、A-RISEやμ's、そして、ルビィたちAqoursが立った頂きから見える景色を見たい!!)

その瞬間、理亜のなかにあった深淵なる闇、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」、その闇が理亜の全身を駆け巡った、いや、その触手が理亜の全身を覆いつくしてしまった!!理亜、ついにある思いに達してしまう。

(そうだ、このままだといけない・・・。あのゆるゆるとしたペースで練習していたら、「楽しむこと」という「お遊び」なんてしていたら、きっと、私の夢、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、それを果たすことができなくなる・・・。なんとかしないと・・・)

なんと、理亜自身で作ったユニット、このままだと、自分の夢、いや、自分と姉聖良の夢、ラブライブ!優勝、なんてできない、そう自覚してしまったのだ。さらには・・・、

(私は、私は、絶対に、絶対に、ラブライブ!に優勝しないといけないんだ!!だって、私のミスのせいで姉さまは、夢を、ラブライブ!優勝という夢を、叶えることができなかったんだ!!私のせいで、私は、姉さまは、Saint Snowという輝きを失ってしまったんだ!!だから、私は、その姉さまの分まで頑張らないといけないんだ!!その夢を叶えることができなかった、Saint Snowという輝きを失った、そんな姉さまの分まで、頑張らないといけないんだ!!そんな姉さまのかわりに、この私が、絶対に、私と姉さまの夢を、ラブライブ!優勝を、叶えないといけないんだ!!そうじゃないと私のせいですべてを失くしてしまった姉さまに申し訳がたたない・・・)

と、理亜、これまで忘れていた後悔、そこから発せられた姉聖良への懺悔の思い、それに浸食されていった。理亜はストイックなところがある。それが悪い意味で作用してしまった。自分のミスのせいで自分が大事にしている姉聖良はSaint Snowという輝きを、いや、それを含めたすべてを失ってしまった、そんな姉聖良のためか、いや、自分のミスのせいですべてを失った姉聖良に対する罪滅ぼしのためか、理亜、そんな姉聖良の分まで頑張って、いや、自分のせいですべてを失った姉聖良の分を埋めないといけない、姉聖良と自分の夢、ラブライブ!優勝、を果たさないといけない、そう自分に言い聞かせるように理亜はそう思い込むことになったのだ。

 そして、理亜、ついに、あることを思い立ってしまう。

(今のままだと私の作ったユニットは「ラブライブ!優勝」なんてできない!!なら、仕方がない、私、今の私のユニット、絶対に、「ラブライブ!」優勝できる、そんなユニットに生まれ変わらせてみせる!!「ラブライブ!優勝したい」という強い思いのもと、もっともっと強いユニットに、勝つことができるユニットに、してみせる!!もっと強いユニットにして・・・ルビィたちと同じ場所に立たないといけないんだ!!少なくとも、私と姉さまの・・・、Saint Snowと同じもの、同じ輝きにしてみせる!!そして、今度こそ、私のミスですべてを失った姉さまの分まで頑張って、もっと頑張って、絶対に、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、を叶えてみせる!!)

なんと、理亜、ついに、姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、それを自分の作ったユニットで叶えてみせる、ルビィたちAqoursと同じ強い思いのもと、必ず夢を叶えてみせる、少なくとも、失ったSaint Snowと同じもの、同じ輝きにしたい、そう理亜は決意したのだ。さらには・・・、

(けれど、私には頼れる人なんていない。だって、姉さまはもうスクールアイドルを卒業した。また、私のまわりにはほかに頼れる人なんていない。だからこそ、この私がすべてをしないといけない・・・)

と、理亜、自分でなにもかもしないといけない、そう自覚してしまった。実際のところ、親友といえる(遠くの沼津に住んでいる)ルビィを除けば姉の聖良以外すぐに頼れる人はいなかった極度の人見知りの理亜。そんな理亜が唯一すぐに頼れる存在だった姉聖良はすでにスクールアイドルを卒業した身。なので、理亜、すぐに頼れる人材は皆無に等しかった、このときの理亜の認識では・・・いや、ルビィの存在すら忘れるくらい視野が狭くなっていたのはこのときの理亜の、「絶対に姉さまとの夢を叶えないといけない」、その思い込みが強かったのかもしれない。

 と、そういうわけでして、理亜、これからについてこう考えてしまう。

(今のペースだと私のユニットは、ラブライブ!優勝、なんてできない!!なら、優勝できるように、これまで以上に、いや、今の2倍、3倍の練習をして急速に実力をつけるのが1番!!だって、あのμ'sも夏の合宿のときにきつい練習をこなしたからラブライブ!優勝できたのだから・・・)

そう、理亜、なんと、今の2倍、3倍もの練習をユニットメンバーに課することでユニットの実力を急いでつけようと考えてしまったのだ。あっ、ちなみに、ここでいうμ'sの夏の合宿の練習なのですが、μ'sが夏の合宿に入るとき、μ'sメンバーの海未が独自で作った遠泳10キロなどのとてもきつい練習メニューだらけの合宿スケジュールのことをいう。ただ、実際のところ、それだと合宿どころではなくなる、ということで同じμ'sメンバーの絵里によってやめることとなった・・・のですが、そのことを知らずにAqoursもその海未考案の合宿メニュー、同じ練習メニューでやってみた結果、無尽蔵の体力を持つ果南以外初日でOUT・・・となりました、って、果南、どれくらい体力があるの・・・。と、まあ、それはほっといて、Aqours同様、そんなことなんてこのときの理亜も気づいていなかったのか、海未考案の練習メニューと同じもの、とはいかないまでも、それ同等の、いや、それ以上のものを自分のユニットメンバーにも課そうとしていたのだ。

 ということで、理亜、その練習メニューを考えてみることに・・・。

(あの練習を取り入れたらいいのでは。いや、もっと練習をきつくしないと。そうしないと姉さまとの夢を叶えることができない。もっともっときつくしないといけない。もっともっときつい練習にしないと・・・。もっともっとれんしゅうしないと・・・)

と、理亜、その練習メニューを考えていくごとに自分をどんどん追い込んでいく。「もっと練習をしないと、姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、なんてできない」、そんな呪縛に理亜は締め付けられていく。そのためか、

(もっと練習しないと・・・、もっと練習をきつくしないと・・・、姉さまとの夢が・・・、夢が叶わなくなる・・・。だから、もっと練習しないと・・・、もっと練習をきつくしないと・・・、もっと本気で練習しないと・・・)

と、どんどん、理亜、その呪縛によって締め付けられていく。

 そして、ついにそれが言葉として現れてしまった。理亜の隣にいた聖良、理亜と一緒にAqoursの優勝を喜んでいたのだが、喜んでいるはずの理亜の様子を確認しようと理亜の方を向くと、その瞬間、

(あれっ、理亜、なんか、一瞬、なにかに苦しんでいるように見えましたが・・・)

と思ってしまうほど理亜の表情が暗くなるとすぐに理亜の口から、

「もっと練習しないと・・・、もっと本気で練習しないと・・・、勝つためのユニットにしないと・・・、じゃないと、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、できない・・・」

という呪文めいた言葉とともに、理亜、

(じゃないと・・・、じゃないと・・・、ただの「楽しむこと」・・・、ただの「お遊び」になってしまう・・・、だって、だって・・・)

という思いとともに、

「だって、「ラブライブ!は遊びじゃない!!」なんだから・・・」

という本音がつい口になってでてしまった。むろん、これには、聖良、

「理亜・・・」

と、根気詰めるような表情をしている理亜の姿にある種の心配をしてしまった。

 こうして、理亜はこのことをきっかけとしてこれまで楽しくスクールアイドルの練習を続けていたのを、一転、鬼軍曹のようにあつこを含めた自分のユニットメンバーに対してきつい練習を課するようになるのであった。



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SNOW CRYSTAL 序章 第29話

 で、それは東京から帰ってきた翌々日にはその片鱗をみせることとなった。理亜が東京から帰ってきてから日の翌々日、

(このままじゃいけない。今以上に、いや、もっともっと練習をしないと・・・)

と、まるで自分に呪文を唱えているがごとく自分に言い聞かせようとしている理亜、しかし、肝心の練習メニューについては、理亜、考えつかなかった。そのため、

(これまでの基礎練習だと生ぬるい・・・。もっともっときつい練習をしないと・・・)

と、その練習メニューについて考えていた。

 そんなとき、理亜の目の前に函館山が見えた・・・というか、理亜の家も聖女も函館山の麓にあるのでいやがなくても目に見えているのですが・・・。だが、それが理亜に良い、いや、地獄のアイデアを生み出すことにつながった。理亜、ふと、函館山の方を見る。すると、

(あっ、そうだ!!函館山!!函館山をダッシュでのぼれば持久力などがつく!!函館山の山頂目指してユニットメンバーを走らせそう!!)

と、とんでもないことを思いついてしまった。たしかに函館山の山頂までは車道を含めていくつかの登山道がある。もちろん、その登山道はちゃんと整備されている。なので、普通のときなら登ろうと思えば登れるのである。だが、忘れていないだろうか。今はまだ3月であってここは、北海道函館、である。なので、雪がふることなんてざらにある。そして、今年、季節外れ?の大雪が函館で降っていたのだ。なんで、函館山、まだ雪が積もっている状態だった。それを考えると、雪の函館山を登る、いや、山頂まで走ることは、ある意味自殺行為、運が良くても事故が起きるのは必然的・・・ともいえた。それを、理亜、まったく気にせずに地獄の練習メニューを考えてしまったのだ。

 そういうわけで、理亜、さっそく、ほかのユニットメンバーを集めると、理亜、

(今日、ここから変わる!!ただの「お遊び」集団じゃない・・・ルビィたちAqoursと同じように、ラブライブ!優勝できる、私と姉さまの夢、それを叶える、そんなユニットに生まれ変わる!!)

と勢い込むとともに、

(その第一歩として、今から、きつい練習を、みんなに、やってもらう、絶対に、ラブライブ!優勝、できるくらいの超一流のスクールアイドルユニットに生まれ変わるために!!だら、私、心を鬼にする!!)

という強い信念のもと、

「あっ、理亜ちゃん、今日もいつもの通り、基坂でのダッシュでしょ!!」

と、晴れた青空を見ていつもの練習をする、そう言ったyoppiに対して、

「いや、今までの練習じゃ生ぬるい!!このままじゃラブライブ!優勝なんてできないじゃない!!」

と一喝、さらに反抗するあつこに対しても、

「スクールアイドルはね、そんなに生ぬるいものじゃないの!!」

とこれまた一喝する。そして・・・、

(私は絶対に・・・絶対に・・・ラブライブ!に優勝して・・・姉さまとの夢を・・・、叶えてみせる!!そのための・・・ユニットづくり・・・しないと・・・、もっと・・・もっと・・・練習・・・しないと・・・、勝つための・・・ユニット・・・づくりを・・・しないと・・・)

という思いからか、理亜、

「これまでラブライブ!の頂点に立つことが出来たスクールアイドルたちは死に物狂いできつい練習をしてきたの!!なら、私たちもそれくらいの練習をするべき!!きつい練習をした先にスクールアイドルとしての栄光があるわけ!!」

というまるで人を屈服させるようなごとき大声で言うとあつこたちを函館山の登山口まで駆け足で移動させるとその場で山頂までダッシュで登るように命令してきてしまった。

 ただ、函館山、雪が積もっていることもあり、ユニットメンバーからは文句を言われ、あつこからは「ケガをさせたいのですか」と逆に一喝されてしまい、これには、理亜、

(それはそうだけど・・・、けれど・・・、けれど・・・、きつい練習をしないと・・・)

と一瞬しょんぼりしてしまう。まぁ、理亜からしたら年上から怒られたのは姉聖良のとき以来・・・なので、突然のことでしょんぼりしたのかもしれない。ただ、その理亜の姿をみてか、あつこ、それならばと折衷案として登山口から山に登ってすぐにある1番目の観音様までの短距離ダッシュになったのだが、これには当初、理亜、

(う~、このままだと「ラブライブ!優勝」が遠のく・・・)

と、ちょっと不満であったが、雪が残るなかでのダッシュ、ということもあり、かなりきついためか、ブーブーと文句を言うユニットメンバーたち。これを見てか、理亜、

(あっ、よく考えてみてみればこれもかなりきつい練習・・・。まぁ、これは(ユニットメンバーである)あつこの提案ということもあるし、ほかのメンバーから文句もこないはず。それに、これを続けていれば体力もつく。今は長時間のパフォーマンスができるくらいの体力をつけないことを考えるとこの練習を続けていくことで、ラブライブ!優勝、に近づくことができるはず!!)

と、一筋の光が理亜にさした・・・かのように思ったのか、この練習を毎日することを決めたのだった。

 

 だが、これにより、あつこたちユニットメンバーは地獄をみることとなった。その翌日、理亜はまた函館山で短距離ダッシュをすることをユニットメンバーに対して強要してしまう。これにはいろいろと文句を言うユニットメンバーたち。しかし、とうの理亜はというと、

(こんな練習、たんなる序の口!!もっときつい練習をしないと、ラブライブ!優勝、できるスクールアイドルにはなれない!!もっと練習して、もっと練習して、絶対に、ラブライブ!優勝、私と姉さまとの夢、それを絶対に叶えてみせる!!そして、Saint Snowと同じもの、Saint Snowと同じ輝きを掴み取らないと・・・)

という自分の夢・・・、いや、願望とともに、

(そうじゃないと姉さまに申し訳ない・・・。もっときつい練習をして、ラブライブ!優勝、できるユニットにして、姉さまとの夢を叶えないと・・・。だから、姉さま、みていてください、私、きっと、姉さまとの夢を叶えて、失った姉さまの分まで取り戻してあげますからね!!)

という姉聖良への思いをもってユニットメンバーたちに対してきつい練習を課そうとしていた。そのためか、文句をいうユニットメンバーに対し、

「こんなの、まだまだ序の口!!本当のスクールアイドルの練習はこんなものじゃない!!」

と一喝することも・・・。

 こうして、おのれの願望・・・いや、自分の思いのもと、理亜は姉聖良への贖罪、自分と姉聖良との夢を叶えるべく突き放すも、それに反比例してあつこたちユニットメンバーの疲労とストレスは増大していってしまった・・・。

 そんなユニットメンバーたちの姿をみて、あつこ、

(はっ、なんか、理亜さん、暴走している!!このままじゃ理亜さんのユニットが空中分解しちゃう!!)

と、危険を察したのか、理亜に対し今日と明日の練習の中止を勧告、これには理亜もしぶしぶ了承しないといけなかった・・・。

 だが、理亜にとってみれば、

(このままじゃ、ラブライブ!優勝、なんて夢のまた夢!!私は姉さまのためにも、ラブライブ!優勝、したい!!どんなことがあっても、ラブライブ!優勝、しないといけない!!だって、そうでもしないと、私の姉さまみたいに、Saint Snowと同じもの、同じ輝きにしないと・・・姉さまに申し訳ないじゃない・・・。私のミスで・・・姉さまとの夢を・・・叶えることができなかった・・・。なら、今度は私が、和足がそれを、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、いや、それ以上のもの・・・にしないと・・・、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝なんてできない!!だからこそ、決めた、もっときびしく、もっときびしく、する!!必ず、ラブライブ!優勝、勝ち続けるためのユニット、にする!!)

と、逆に燃えてしまった・・・。

 

 そして、それが最悪のかたちとなってあらわれてしまった。あつこが強制的に休みにしたあと、あつこと聖良は理亜のことで話し合ったものの、なんの解決策もみつからかった・・・、その翌日、外は雪が降っていたのだが、それでも理亜はユニットメンバーに対し函館山の登山口まで強制的に移動させると、いきなり、

「2つ目の観音様まで短距離ダッシュ!!」

と、まえの倍以上の距離のダッシュを強要しようとしてきた。まえの倍以上、さらに雪が降っているのだから足場が不安定、才作、足を滑らせることも・・・。明らかに危険・・・、それでも、理亜、

(これくらいしないと初心者であるあつこたち(ユニットメンバー)がラブライブ!で優勝できるまで成長できない!!この練習によって初めて一人前の、いや、ラブライブ!優勝できるユニットへの第一歩が踏み出せるんだ!!)

と、自分と姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、にむけてやらないといけない、そんな思いでいっぱいだった。そのために理亜はこの練習を強要するのだが、あつこたちユニットメンバーがいくら理亜に反論しても逆に理亜から反論がでてしまうのがオチ、ということで理亜に反論すらできなかった・・・。

 そして、ついにこのときがきた。。それは理亜が、

(ただこれだけじゃ、上りのダッシュだけじゃ体力がつかない!!なら、下りもダッシュあるのみ!!)

と考えたのか、ユニットメンバーたちに対して下りのダッシュも強要してしまう。これには、ユニットメンバーたちも「危ない」と思うも理亜の迫力に押されて無言でダッシュ、そんなときに最悪の状態が起きてしまった。ユニットメンバーの1人がこれまでの疲労の上、アイスバーン状のところに足をとられてしまい転倒してしまった。で、転倒したメンバーは、

「あっ、大丈夫、大丈夫!!ちょっと足を滑らせただけ!!」

と大丈夫のアピールをするも、そのメンバーが転倒したことに、理亜、

(なんで転倒するわけ!!少し気が緩んでいない!!もっと真面目に練習していたらこんなことは起きなかった!!ちゃんと真面目にして!!ちゃんと練習して!!ちゃんと真面目に練習して!!)

と、完全に激おこ状態に。そのため、転倒したメンバーに対しては、

「もっと真面目に練習をして!!昨日、休みだったからだって少し気が緩んでいるんじゃない!!」

と、激しい怒りをぶつけてしまった。

 だが、この理亜の発言がユニットメンバーたちに火をつけた。ここ数日、理亜からきつい練習を強要されていたことでメンバーたちのなかに不満が溜っていた。それが理亜の発言により爆発してしまった。ユニットメンバーのうち3人から理亜のきつい練習に対する文句がとんでくる。(まぁ、ユニットメンバー3人からすればこの練習に対して音をあげているだけなのですが理亜からすればそれは「文句」として受け取ってみてしまったようだ・・・)

 そんな文句を受け取った理亜はまさに火に油を注いだ状態になってしまう。

(なんで、なんで、なんで、ちゃんと練習しないとばかりか、この私に文句をいうわけ!!私は、私は、このユニットを・・・、ラブライブ!優勝できるくらいの、勝ち続けるくらいの、そんなユニットにするために(きつい)練習をさせているわけ!!ただのお遊びをしているわけじゃない!!私は・・・私のユニットは・・・絶対に、ラブライブ!優勝しないと・・・いけないわけ!!私のミスのせいですべてを失った姉さまの分まで・・・なにもかも失った・・・ゼロになってしまった・・・その分まで、私は取り戻したいだけ!!Saint Snowと同じもの・・・、同じ輝き・・・、それを私は手に入れないといけない!!それはあなたたち(ユニットメンバー)のためにもなる!!それなのに・・・ただ練習を真面目にしていないのに・・・それでこの私に文句を言うわけ!!いい加減にして!!)

と、理亜、文句を言うメンバーに対してさらに怒りを増大させるとともに、

「もっと真面目に練習して!!これくらいの練習を今からしないと絶対にラブライブ!で優勝できないわけ!!」

と、ついにメンバーの前で本音がでてくるくらい文句をいうメンバーに対して怒りをさらにぶつけてしまった・・・。むろん、これにはさすがのあつこも昔の自分みたいになると思い理亜に注意するも、理亜、それを聞き入れることをせず、逆に、

(もっと練習しないと・・・、姉さまみたいな・・・、Saint Snowと同じもの、同じ輝きに・・・ならないよ・・・。Aqoursみたいに・・・ラブライブ!優勝・・・できないじゃない・・・)

と、まるで自分で自分に呪いをかけるがごとく心のなかで年次てしまうと、それが、

「もっと練習しないと・・・、もっと練習しないと・・・、姉さまと・・・、Saint Snowと・・・、同じ・・・、輝き・・・、同じもの・・・、が・・・、できないじゃない・・・、Aqoursみたいに・・・、ラブライブ!優勝だなんて・・・、ほかのグループに勝つための・・・、ユニット作りなんて・・・、できないじゃない・・・。そうじゃないと・・・、姉さまに・・・申し訳ない・・・じゃない・・・」

という言葉として出てしまった。さらには・・・、理亜、

(私だって・・・、私だって・・・、私だって・・・、ルビィたち(Aqours)みたいに、ラブライブ!優勝、したい!!いや、優勝しないといけないんだ!!そのために一生懸命頑張っているんだ!!それなのに誰もわかってくれない・・・。私は・・・私は・・・もう頼れる人なんていない!!だって、姉さまはもういないんだから・・・。私・・・私一人で・・・すべてを決めないといけないんだ!!)

と、1人でなにもかもしないといけない、そんな強迫めいた思いすら湧き上がってしまった。そのためか、理亜、

「それに、私にはもう頼れる人なんてもういない!!(昔自分が頼っていた)姉さまなんてもういないんだ!!これからは私1人でやるしかないんだ!!」

と、自分の苦悩すら表に出してしまった・・・。

 

 その後、あつこはすぐに練習を中止にしたが、その日の夜、文句を言ってきたメンバー3人とも理亜のユニットを抜けるというコメントがSNSのグループチャットで流れてきた。これに、理亜、翌日は休むくらいのショックを受ける。なぜなら・・・、

(なんで、なんで、わからないの!!私は、私は、ラブライブ!優勝を、私と姉さまの夢を、叶えたいため、あの姉さまと一緒のに組んだ、そんなSaint Snowとの同じもの、同じ輝きを、追い求めていたいんだ!!だからこそ、私は、初心者である、メンバーに、そのレベルにすぐになれるように、あえてきつい練習を、課してきたのに、なのに、なんで、なんで、わかってくれないの!!なんで、私のユニットから、抜けるの!!私、私、そんないやな人、なおn!!私を、私を、1人にしないで!!姉さまを失った、なにもかも失った、それを取り戻すために、したいのに、なのに、なんで、私から、離れるの?なんで、なんで!!」

と、理亜、ユニットメンバー3人が抜けたことで自分で自分を責めていた。自分が目指すべきもの、いや、ぽっかりあいた自分の心を埋める、自分のミスのせいでなくしたと思っているSaint Snowそのもの、それと同じもの、同じ輝きを追い求めてあえてきつい練習をユニットメンバーに課してきた、それなのに、それが原因でメンバーが抜けてしまった、理亜のもとから離れてしまった、また自分1人になってしまうのでは・・・、そんな悲観めいた思いが理亜に襲い掛かっているようだった。いや、その現実をみたくないためか、そのSNS上でのやり取りが画面上にあらわれていた自分のスマホすら投げ捨ててしまい、z分はそれに逃げるがごとく自分のベッドの上でふさぎ込んでしまった・・・。

 このとき、理亜が直面していたもの、それは、「孤独」、だったのかもしれない。理亜はこれまで姉聖良に頼ってこれまで生きてきた。いや、姉聖良を介して見えていたものが、理亜の世界、だったのかもしれない。そのため、姉聖良と同じものを目指すことが大きかった。また、理亜の姉聖良への依存度は高く、理亜のほとんどは姉聖良によるもの・・・、姉聖良なしでは生きられない・・・だったのかもしれない。

 そして、姉聖良と妹理亜はあつこを巻き込んで、1つの夢、ラブライブ!優勝、を目指すことを誓った。それが、理亜・・・、真面目過ぎる理亜・・・、姉聖良への依存度が高い理亜・・・にとって絶対なる命題となった。姉聖良と決めた夢、それに向かって理亜は一生懸命頑張った。なにがあっても叶えないといけない、それが当たり前、こう理亜は思い続けていた、昔も、今も、そして、未来永劫に・・・。ただ、その命題は姉聖良という者がいるとき、Saint Snowとして活動していたときはプラスに働いた。その命題のおかげで辛いときも悲しいときも、それへと向かって理亜は頑張ることができた。だが、その命題により理亜はSaint Snowとsちえ活動していくうちにその命題を果たすべくどんどん自分を追い込むようになってしまった。そして、それが、理亜最大の悲劇、北海道最終予選の理亜のミスへとつながった。そして、理亜はそれにより、自分のなかに深淵なる闇、「ゼロになってしまった、なにもかも失ってしまった」を抱えるようになり、その命題と深淵なる闇の狭間で理亜は苦しむこととなった。当初はルビィのおかげで「自分のせいでSaint Snowを終わりにしてしまった→ゼロになってしまった、なにもかも失ってしまった」という深淵なる闇、そして、絶対なる命題を叶えることができなかったことによる姉聖良への罪悪感はなくなった・・・と思えたのだが、それがそのルビィが所属するAqoursがラブライブ!で優勝し、自分たちの夢を逆に叶えてしまった・・・そのことにより、深淵なる闇がまた活性化、理亜はふたたび姉聖良に対する罪悪感が復活したばかりか、この命題を絶対に叶えたい、Saint Snowと同じもの、同じ輝きを求めたい、という絶望に満ちた願いとともに、「そうじゃないと姉さまに申し訳ない」→姉聖良に対する罪悪感がさらに増大する、そんな負のスパイラルに理亜は陥ったのかもしれない。

 だが、それ以上に、理亜を苦しめるもの、それは、「たった1人ですべてを抱え込んでしまうこと」、だった。これまでは姉聖良が隣にいた。なので、なにかあったら完璧超人である姉聖良に頼めばすぐに解決することができた。だが、自分のミスによりSaint Snowを終わりにしてしまった、そのために姉聖良は理亜のもとから去ってしまった(=「ゼロになった、なにもかも失った」)、そう思っていた理亜はなにもかもたった1人で抱え込んでしまった。いつは隣にいる姉聖良がいる。けれど、その思いを持つ理亜はいまでも隣にいる姉聖良をあえて頼らず自分1人ですべてを解決しようとしていた。さらに、理亜は極度の人見知り・・・ということで友達ともいえる友達はいなかった。けれど、理亜には大親友であるルビィがいる・・・のだが、そのルビィは自分より先に自分たちの夢と同じものを叶えてしまった・・・ということもあり相談しにくかった。そのため、誰かに相談しようと思っても相談できない、そんな状に理亜は陥ってしまった。まぁ、もしかすると、ほかのひとに弱味をみせたくない、という理亜のプライドもあたたのかもしれない。とはいえ、理亜は誰にも相談したくない、ただ自分一人ですべてをやり遂げないといけない、なんとかしないといけない、そんな思いにとらわれたのかもしれない。ただ、それが理亜にとって悪影響を与える。理亜は頑固者である。たとえ、ほかの人がYESと言っても理亜はNOを最後まで貫いてしまうだろう。そして、それが理亜の・・・自分の思い・・・自分の強い思い、いや、絶対なる命題・・・、それを自分の手で絶対に叶えたい・・・、その強い衝動が理亜の行動の原理だったのかもしれない。その衝動が自分のなかにある姉聖良に対する罪悪感を増大させ、Saint Snowと同じもの、同じ輝きをさらに追い求めることにもつながった・・・、たとえそれが自分であっても他人であっても絶対である・・・曲げることは許されない・・・、そう理亜を縛り付けたのかもしれない。

 だが、それは理亜にとってさらなる重石となった。他人、いや、ほかのユニットメンバーに対してもそれを強要した結果、せっかく自分のもとに集まったユニットメンバー5人のうちの3人を失う事態へとつながった。それは理亜にとってたった1人になってしまう、姉聖良もいない、そんな自分1人しかいない、そう、「孤独」になるのでは、という不安・心配に理亜は陥ることになってしまった。それは、あのときと同じ・・・、自分のミスにより「ゼロになってしまった、なにもかも失った」=深淵なる闇に取り込まれた、あのときと同じ、もう姉聖良はいない、だれもいない、そんな状況に陥るのでは、そう理亜は思い込んだのかもしれない。理亜・・・彼女ほど不器用なスクールアイドルなんていない。彼女は、今、たった1人で「孤独」という不安・心配、さらに自分の心奥そこにある深淵なる闇に苦しんでいる・・・、誰も助けてくれない、たった1人でなにもかも取り組まないといけない・・・、そう自分も知らないうちにそう思い込んでいる、自分で自分を苦しめている、追い込もうとしている・・・のかもしれない。これまで姉聖良に頼ってきた、けれど、自分のミスにより、姉聖良、いや、これまで姉聖良と一緒に築き上げた想い、想い出、キズナ、つまり、Saint Snowという輝き、をすべて失ってしまった、ゼロになってしまった、そんな深淵なる闇に陥ってしまった理亜、その闇のせいで理亜は誰にも頼ることなくたった1人で孤独に戦っている、いや、闇そのものに飲み込まれようとしている、それいあがらうかのように、いや、その闇からくる姉聖良への罪悪感のために、絶対なる命題を叶えるべくもがき苦しんでいる、それをほかのユニットメンバーにも求めようとしている、が、それによりユニットメンバーは次々と脱退、結果、理亜はさらに苦しむ、そんな負のスパイラルに理亜は陥っていたのかもしれない。



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SNOW CRYSTAL 序章 第30話

 だが、それでも理亜は、無理やりだが、立ち上がった。もしかするとたとえ3人抜けたとしてもあと2人が残っている、まだ1人ではない・・・、いや、やる気のなかった3人が抜けたことでよりユニットの結束が固まった、自分と姉聖良との夢、ラブライブ!優勝に向けて前進することができる、そう自分に無理やり言い聞かせたのだろう、理亜が休んだ翌日、理亜、なにごともなく聖女に登校すると、放課後、ユニットに残ったあつことしのっちに対しこれからもきつい練習を続けることを宣言した・・・のだが、あつことの話し合い、そして、理亜がユニットメンバー3人が抜けたことで「孤独」を感じていた、そのために理亜がふさぎ込んでいる様子を見て心配したのか抜けたメンバーからユニットを抜けた理由をあつこを介して知った聖良が苦しんでいる理亜が少しでも気分転換してもらえるように理亜に自分との卒業旅行を提案、これには、理亜、

(まさか姉さまと一緒に卒業旅行だなんて・・・、う~、私、とても幸せ~)

と、久しぶりの2人だけの時間を過ごすことができる、その思いが強かったのか、その提案を了承した。それでも、理亜、

(姉さまとの久しぶりの2人だけの時間・・・ですが、あの2人(あつことしのっち)は私がいないあいだ、少しでもラブライブ!優勝できるユニットに近づくためにも、私の決めた練習メニューをしてもらう!!Saint Snowと同じもの、同じ輝きに近づくためにも必要なこと!!)

と、あつことしのっち、2人には理亜が旅行にいっているあいだ、自分の決めた練習メニューをこなすことを強要した。

 

 そして、理亜は久しぶりに姉聖良との楽しい時間という幸せな気持ちで卒業旅行を満喫していた。それは自分の抱える闇を少し取り除いたのかもしれない、あのときまでは・・・。

 それは理亜が姉聖良と一緒に浅草を観光していたとき、聖良のスマホにあるメールが届いたことにより起きた。そのメールはAqoursの千歌からのものだった。理亜と聖良はそのメールにより急遽沼津まで足を延ばすことに。これには、理亜、

(久しぶりにルビィに会える!!ルビィ、元気にしていたかな・・・。それに、ラブライブ!に優勝した実力を生で見れる!!)

と、自分の心奥底に眠る闇のことなんて忘れているかのごとく、それとも、ラブライブ!優勝のAqoursの実力を生で見て自分の命題を叶える参考にしたい、そんな思いが強かったのか、わからないが、それでもルビィと会えるということで理亜はわくわくしていた。

 が、そこで理亜が見たものは、ルビィたちの・・・ダイヤたち3年生3人がいないという喪失感により、理亜と同じ、いや、似たような状況、「ゼロに戻った、もとに戻った」、そんな、理亜ほどひどくなかったものの、不安・心配という深い海・沼の底に陥ってしまったルビィたち新生Aqoursのみっともないパフォーマンスであった。このみっともない新生Aqoursのパフォーマンスを見た瞬間、理亜、

(えっ、これがあのAqours・・・、ラブライブ!で優勝したはずなのに・・・、あのとき以下・・・、いや、私と初めて会ったときよりも悪化している・・・)

と愕然となるも、すぐに、

(まるで心ここにあらず・・・といった感じ!!不安・心配がただ漏れている!!いや、それ以上に、「誰か助けてください」・・・、そう言っている感じ!!言葉で言うと・・・、「なんかふわふわしている感じ」!!」

と、ルビィのことを酷評、さらには・・・、

(そんなルビィたちのふがいなさを見ていたら、思いだしちゃうじゃない!!私だって・・・、私だって・・・、姉さまとの夢を・・・、ルビィたちAqoursが立つことができた場所、ラブライブ!優勝・・・、成し遂げたいんだから!!私は・・・、私は・・・、私のミスで失った・・・姉さまの分まで・・・一生懸命頑張る・・・、それが姉さまへの罪滅ぼし・・・、だからこそ・・・、私は・・・、私は・・・、今のルビィたちになんてなりたくものない!!

あんな醜い姿になりたくない!!)

と、まるで自分の深淵なる闇や命題が復活したのだろうか、まるで、それらによって苦しめられている、そんな心情のもと、苦しい表情になりながらも、ルビィたちのことを軽蔑したような目で見ていった。

 そして、パフォーマンスを終えたルビィたちに対し、理亜、なんのためらいもなく、

「なんかふわふわして定まっていない感じ・・・」

と、ド直球で感想を述べてしまった理亜。聖良の方も厳しい言葉を投げられたこともあり、ルビィはついこんな言葉を漏らしてしまう。

「でも、どうしたら・・・」

とても弱気な発言、いや、理亜にしてみれば、それは・・・、

(ルビィ、もしかして、もうここにはいない姉のダイヤさんに助けを求めたいわけ!!)

と、なんと、ルビィがもうここにいない姉のダイヤに助けを求めていると思ったのだろう、さらに、

(ルビィ、言っておくけど、もう姉さまもダイヤさんもすでに卒業してもういないの!!全部、全部、自分たちだけでなんとかしないといけないわけ!!そんなこと、わかっているわけ?それなのに、まだ姉のダイヤさんに頼ろうとするなんて、本当にいい加減にして!!)

と、ルビィに対しキレてしまった。そのためか、(本当に姉ダイヤに頼ろうとしていた)ルビィに対し、

「そんなの、人に聞いたってわかるわけ、ないじゃない!!」

「全部、自分でやらなきゃ!!」「姉さまたちはもういないの!!」

と、辛辣なる言葉を浴びせるかけるとそのままその場から逃げるように走り去っていった。

 

 そして、理亜は走っている最中、こんな思いが体中を駆け巡った。それは・・・、

(もうあんなルビィなんて見たくない!!ルビィは、ルビィは、あのラブライブ!で優勝したAqoursの一員!!なのに、それが、ラブライブ!で優勝したときよりも、いや、それ以前の、や、初めて会ったときよりも、姉のダイヤさんに頼ろうとしている、そんなルビィ、見たくない!!もう、ダイヤさんは・・・、姉さまは・・・、もういないんだ!!いや、私たちは、私たちは、姉さまたちを含めて、なにもかも失ったんだ!!それなのに、もういないはずの(姉の)ダイヤさんに今でも頼ろうとしている、そんなルビィなんて、もうしらない!!)

それは・・・今なお姉のダイヤに頼ろうとしているルビィに対する幻滅の思いだった。いや、それどころか、

(これからは自分たちだけでなんとかしないといけないんだ!!いつまでも姉さまたちに甘えてちゃいけないんだ!!)

と、まるで自分やルビィたちに現実を知らしめるがごとく言い聞かせようとしている始末。しまいには・・・、

(それに、私は、理亜は、あのときの・・・、あのときの思いなんてしたくない!!私は、理亜は、姉さまとの・・・、姉さまとの・・・、それくらいのものを、いや、ラブライブ!で優勝したあのルビィたちみたいに・・・、ルビィたちみたいに・・・、ラブライブ!に優勝しないといけないんだ!!そのための、勝ち続ける、そのためのユニットを、作らないと、いけないんだ!!そうでもしないと姉さまに申し訳がたたないんだ!!)

と、まるでルビィたちと同様に、いや、それ以上に、心のうちに潜めていた闇そのものを外に出している理亜自身、その闇に苦しんでいる、そんな感じに理亜はなっていた。

 そして、それはルビィにも向けられてしまう。理亜、自分を追いかけてこようとしているルビィの姿を感じ取ったのだろうか、ルビィに対し、

(それなのに、ルビィは・・・、ルビィは・・・、現実をわかっていない!!姉さまたちは、ダイヤさんたちは、もういないんだ!!それでも姉ダイヤに甘えようとしている、そんなルビィ、私、もう、そんなルビィの顔なんて、見たくない!!)

と、なんと拒絶宣言を出してしまった。

 けれど、それでも理亜のことが心配になって駆け付けてくれたルビィ。理亜が走り去ったあと、聖良から理亜の実情を知ったルビィは理亜に対し同情的な言葉を投げかけるも、これが理亜には深く傷ついたみたいで、理亜、同情的になっているルビィに対し、

(ルビィ、私のことなんてほっといて!!ルビィみたいにいつまでも姉のダイヤさんに甘えたい、そんなルビィなんて、もういや!!姉さまも、ダイヤさんも、もうここにはいないんだ!!それなのに、それでも姉のダイヤさんを頼ろうとするなんて、ルビィ、スクールアイドルを・・・、ラブライブ!を・・・、甘く・・・、甘くみている・・・、そう思えてくる!!ルビィ、スクールアイドルは・・・、ラブライブ!は・・・、ラブライブ!は・・・)

と、ルビィはスクールアイドルを、ラブライブ!を甘くみている、と断言するとともに、その思いが強かったせいか、ルビィに現実をみせつけるがごとく、こんな言葉でもってルビィを攻撃した。

「(ラブライブ!は・・・、)ラブライブ!は、遊びじゃない!!」

この言葉、それはいつもなら姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、それを目指すために真面目にスクールアイドルに取り組んでいる理亜の言葉のはずだった。だが、今、理亜から発せられたこの言葉はルビィに対して現実をみせるかのごとく理亜は言ったつもりだが、実際は、理亜のなかにある深淵なる闇、そして、絶対なる命題、それをたった1人でもがき苦しんでいる、そんな理亜の姿を妙実にあらわしているかのようだった・・・。

 

 その後、鞠莉‘sママの突然の登場により物語は急展開を迎える。鞠莉‘sママ、千歌たちに対して行方不明?になってしまったダイヤたち3年生3人をそのダイヤたちが渡航して探してほしいと言ってきたのだ。これには、千歌、一瞬迷うも、「1度卒業する(ダイヤたち3年生)3人と話したほうがいい」という聖良の後押しもあってか、千歌たち、ついにイタリアに行くことを決意する。ただ、そんなときも、理亜、

(ふんっ、たとえダイヤさんたちに会えたとしても変わることなんてない!!だって、姉さまもダイヤさんたちもスクールアイドルを卒業した身!!これからは自分たちだけで解決しないといけないんだ!!)

と、自分の考えに固執するあまり不機嫌そうな表情をしていた。このときの聖良の千歌、ルビィたちに対する発言、「自分たちで新しい一歩を踏み出すために今までをきちんと振り返るということは悪いことではないと思いますよ」、これは、千歌、ルビィたちだけに言っただけでなく理亜にも向けられたものかもしれない。

 だが、理亜は、「姉さまはもういない。自分ですべてをしないといけない」、その自分の考えに固執するあまり、姉聖良の忠告すら聞けずにいたのかもしれない・・・。ただ言えること、それは、このときのルビィと理亜の判断がのちに2人の運命を大きく分けることになった、そういうことだった・・・。

 

 そして、理亜は聖良とともに卒業旅行を続けていたが理亜は不機嫌な表情のままだった。いや、理亜のなかにある深淵なる闇によって理亜の心のなかは、絶対なる命題、「姉聖良との夢、ラブライブ!優勝」、それを叶えないといけない、という思いとそうしないと姉聖良に申し訳ない、という罪悪感、そして、そのためにも、Saint Snowと同じもの、同じ輝きを作らないといけない、そんな必死な思いのなかで苦しんでいた。

 

 そんななか、卒業旅行から帰ってきてから次の日、理亜はあつことしのっちに対し疑いの目を向く。2人とも理亜と聖良の卒業旅行中に自分の決めた練習メニューをせずにさぼっていると。これには、理亜、

(あつこにしのっち、練習、さぼっていること、すでにわかっている!!練習をさぼっていた、ということは、さぼった分だけ「ラブライブ!優勝」が遠のくことにつながる!!そんなことも知らないでさぼるなんて、最低!!)

と、最初から頭に血がのぼっているのか、あつこがいろいろと言っても聞く耳持たず、いや、あつこの言っていることすべて言い訳でしかないと断定してしまった・・・。

 そして、いろいろ言ってくるあつこに対し、

「そんなうそ、聞きたくもない!!」

と、完全拒否!!さらには、

(さぼったらその3倍努力しないといけない!!だから、今から、あつことしのっち、2人にはさぼった分の3倍もの練習を課する!!この3倍もの練習に耐えてもとに戻る、いや、それ以上になるはず!!ラブライブ!優勝、それを叶えるにはこの3倍もの練習に耐える必要がある!!私と姉さまの夢、自分のミスで失った姉さまの分まで、それを補うため、2人と一緒に、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、それを手にいるためにはそれが必要!!)

と、理亜、思ったのか、あつことしのっちに対し人間の限界を超える、かどうかはわからないが、雪が積もる函館山、その麓から2番目の観音様・・・のもっと先にある中腹の3番目の観音様までの短距離・・・、いや、中距離ダッシュを強行した、あつこの指摘すら無視をして・・・。

 

 1・2本目はなにも起こらずに無事に済んだ。だが、この2本のダッシュによりあつこ、しのっち、ともに体力的に精神的に限界を超えようとしていた。そして、3本目、あつこに異変が起きる。3本目のダッシュの最中、あつこ、このまえのメンバーみたいにアイスバーン状の雪によって足を滑らしてしまったのだ。ただ、このときはフィギュアスケートによって鍛えられられたあつこの身体的能力によってあつこは受け身をとることができたため、そこまで大きくない・・・というか尻もちをつく程度で終わった・・・のだが、これに、理亜、尻もちをついたあつこに対し堪忍袋の緒が切れた、こんな風に、

(あつこ、なんで転倒するわけ?このまえのメンバーといい、真剣に練習に取り組んでいない、ラブライブ!優勝という夢に真剣に取り組んでいない、その証拠だよ、あつこ!!ちゃんと真剣に練習に取り組んで!!真剣に、ラブライブ!優勝、それを目指して!!Saint Snowと同じもの、同じ輝き、それを追い求めて!!ちゃんと、真剣に、スクールアイドルに、取り組んで!!)

そう、このとき、「真剣に練習に、スクールアイドルに取り組んでいない」、だからあつこは転倒した、と理亜は勝手に決めつけ、そんなあつこを断罪しようとしたのだ。だが、いつもは温厚なあつこもこのときばかりは理亜に反論した、これ自体、無謀な練習、だと。けれど、理亜にとってみればあつこの言うことはただの戯言ばかりと決めつけさらに反論、ついに2人は口論になってしまった・・・。ただ、このときも理亜のこの考えの裏では、

(私は、私は、ラブライブ!優勝しないと、姉さまに申し訳ないんだ!!私のミスですべてを失った・・・、なにもかも失った・・・、そんな姉さまの分まで頑張らないと・・・、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、それを手に入れないと・・・、姉さまに失礼になってしまう・・・)とという姉聖良への罪悪感が見え隠れしていた・・・。

 しかし、そんな理亜の罪悪感は理亜のあつこに対する批判を、いや、自分が叶えたい夢、ラブライブ!優勝、そのための練習、それに真剣に取り組まない(と理亜自身思っている・・・)あつこへの反論をたきつける結果となってしまった。が、あつこも黙っていない。以前、今回と同じく無謀な練習をしてしまいすべてを失ったことがあるあつこはそのことを思いだし、理亜が強要している(理亜はそう思っていないけど・・・)無謀な練習について理亜に対し反論。もうこうなったらどちらともヒートアップするしかない・・・ということで、互いに、自分の思い、信念?のもと、言い争いになる・・・が、ここで思わぬ登場人物が言い争う2人を遮った・・・。それは・・・、

(ね、姉さま!!)(理亜)

そう、理亜の姉、そして、あつこの幼馴染、聖良、であった。卒業旅行の途中から不機嫌・・・、なにかに苦しんでいる理亜のこと・・・というか、理亜がまた暴走しているのでは・・・、と心配になり理亜を探しに函館山に来ていたのだ。で、ちょうどそこで理亜とあつこが言い争っているところに出くわした・・・というわけである。

 で、さっそくヒートアップしすぎた2人を止める聖良。そして、本当に理亜のことを心配しているためか、聖良、理亜に対しある言葉を投げかけた。

「理亜、なにかに対して苦しんでいる、そう私には思えてなりません。理亜、正直に答えてください、理亜はなにに対して不安を感じているのですか?言ってもらえたら・・・」

 だが、この聖良の言葉に理亜は・・・初めて・・・姉聖良に反抗した。聖良の投げかけた言葉を聞いた瞬間、理亜、心のなかで、

(姉さま、私、私は、これからは1人でなにもかもしないといけないわけ!!姉さまはスクールアイドルを卒業したんだ!!もう姉さまはいないんだ!!すべて、すべて、自分で、なにもかも、決めないといけないんだ!!)

という姉聖良に向けて反抗するような思いを抱くとともに、姉聖良に向けて、

「姉さま、姉さまには関係ないことです!!これは私が解決しないといけないことです!!この私にしかできないことです!!」

と、姉聖良への反抗ともとられないような言動をする。

 そして、理亜の心のなかでは姉聖良に対して自分の抱える闇・・・そこからでる思いをぶつけてしまう。

(私は必ず成し遂げないといけないんだ、ラブライブ!優勝を、姉さまと目指した、あの夢を、そのためにも、私のせいで失くした姉さまの分まで・・・、Saint Snowと同じものを、同じ輝きを・・・、いや、それ以上のものを・・・)

 だが、このとき、理亜には気づいていなかった、その思いが勝手に自分の口から発せられていることを・・・。

「私は必ず成し遂げないといけない、私のミスのせいで私は姉さまとの夢を・・・、私は必ずしないといけない、姉さまの分まで、この私が・・・、この私が・・・、Saint Snowと同じものを・・・、同じ輝きを・・・、いや、それ以上のものを・・・」

いや、それどころか、理亜の抱えている闇そのものすら口にしてしまう理亜・・・。

「私は・・・、私は・・・、姉さまの分まで・・・、私のミスのせいで・・・、姉さまと叶えることができなかった・・・、あのルビィたちが成し遂げてしまった・・・、ラブライブ!優勝・・・、私たちの夢を・・・叶えないと・・・、私がしないと・・・、いけない・・・。そのための・・・、勝ち続けるための・・・、ユニット作りを・・・、私は・・・、私は・・・、しないと・・・いけない・・・。そうじゃないと・・・、姉さまに・・・申し訳・・・ない・・・」

 そして、理亜、

(私、私は・・・しないと・・・いけない・・・しないと・・・)

と、自分になにかを言い聞かせようとしているのか、突然、こんなことを大声で叫んでしまう。

「私は・・・私は・・・失った姉さまの分までやらないといけない!!」

 だが、その瞬間、理亜にある思いが生まれた。それは・・・、

(姉さま、私は、私は、こうやると決めたのです!!自分1人でしないといけないのです!!だからほっといてください!!)

それはこれまで姉聖良には見せたことがない、自分の意思・・・、ではなく、自分のなかにある深淵なる闇と絶対なる命題の狭間で苦しむ、理亜の、苦しみに満ちた反抗、だったのかもしれない。その後、理亜はその苦しい思いに振り回されたのか、姉聖良のもとから走り去ってしまった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第31話

 だが、そんな姉聖良にも反抗するくらい深淵なる闇からくる思いに振り回されていた理亜の行く末は・・・完全なる「孤独」だった・・・。あつこは、自分のスティグマ、それを見て、このままだと、昔の自分、自分の体の成長のせいで大事故、大ケガをしてしまいすべてを失った・・・、その自分の過ちを思いだしてしまい、理亜もそんな自分と同じ過ちを犯してしまうこと、それにより自分としのっちが壊されてしまうことを危惧して理亜のユニットから抜けることをSNSアプリのグループチャットで伝えてきたのだ。これには、理亜、

(なんで、なんで、あつこ、なんで裏切ったの!!私は、私は、ただ、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるための、絶対に勝ち続けるための、そんなユニットを作ろうとしていた!!Saint Snowと同じもの、同じ輝きを目指していた!!私のミスで失った姉さまの分まで自分の手で掴み取ろうと思っていた!!だから、スクールアイドル初心者のあつことしのっちにそれに見合うだけの練習をしてきたわけ!!それなのに、なんで、なんで、誰も、私のやること、受け入れてくれない!!)

と、あつこに対する恨み節・・・というか、自分の思いすら受け入れてくれなかったあつこに対する思いに理亜自身潰れそうになっていた。

 が、それ以外にも理亜を苦しめるものがあった。それは・・・、

(あつこが私のユニットを辞める・・・、それって・・・、私のユニットは・・・しのっちしか・・・残らない・・・。たった2人になる・・・。私は、また、仲間を失ってしまう・・・。私は・・・また1人になる・・・。なにもかも失ってしまう・・・。そんな状態に・・・なってしまう・・・。そんなのなんて・・・いや・・・)

それは「孤独」へのカウントダウン、それに対する理亜の苦しみ、だった。これまで理亜のユニットにはあつことしのっちがいた。が、そのうちの1人、あつこが理亜のユニットから抜けた。それにより理亜のユニットにはしのっち1人しか残らなかった。それは理亜にとって、「孤独」、あのときの自分、北海道最終予選、自分のミスで「ゼロになった、なにもかも失った」、そんな自分に戻ってしまう、いや、それ以上に、たった自分ひとりで、「孤独」のなか、たった1人で、深淵なる闇、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」、それと絶対なる命題、「ラブライブ!優勝」、その狭間でもがき苦しむ、そんな自分になってしまう、そのカウントダウンが始まってしまった・・・、そう理亜は実感したのかもしれない。

 とはいえ、その2つの苦しみのなか、理亜はただ「孤独」へのカウントダウンに怯えてしまい、心身ともにこれ以上耐えることができない、そんな状況に陥ってしまった。

 そして、それらの苦しみのせいか、理亜、また自室のベッドでふさぎ込んでしまった。それはまるで2つの苦しみから、「孤独」へのカウントダウンからできるだけ逃げたい、でも、自分ではなにもすることができない、もう逃げたい、そんな意思表示、だったのかもしれない。

 

 とはいえ、このときの理亜にはまだ一筋の希望が残っていた。なぜなら、ユニットメンバーが残っていたから。そう、しのっち、である。あつこが理亜のユニットから抜けたとしてもしのっちがいれば理亜は「孤立」せずに済む・・・はずだった。

 だが、その希望もすぐに断たれてしまった・・・。なぜなら、あつこが理亜のユニットから数日後、そのしのっちから「理亜のユニットを抜けたい」とSNSを通じて理亜に伝えにきたのだ。表向きはスクールアイドル活動について「自分では無理・・・」ということであるが、本当のところ、理亜が強要してくる無謀といえる練習についていくのができなかった・・・というものだった。むろん、そこにはあつこのしのっちに対するアドバイス・・・というか、「はやく理亜のユニットを抜けたほうがいい」という理亜のユニットに残ったしのっちのことを心配してのアドバイスであったのだが、これが理亜にとって一筋の希望という光すら断つことにつながった・・・。

 そして、すべての希望を断たれてしまった理亜、そこに残ったのは・・・、「孤独」、という絶望だった・・・。理亜、「ユニットを抜ける」、というしのっちからのメッセージを見てついに・・・ついに・・・、

(し、しのっちが私のユニットから抜けた・・・。これで私はまた1人になった・・・。あのときと同じ、北海道最終予選と同じ・・・。あのときは私のミスで姉さまを含めてすべてを失った・・・、なにもかも失った・・・。そして、今回も、私の、私のせいで、すべてを失った・・・、なにもかも失った・・・。私は1人・・・、私は1人・・・、これからもずっと・・・、その先もずっと・・・、私1人でなにもかもしないといけない・・・、仲間なんていない・・・、もちろん、姉さまもいない・・・、もう誰もいない・・・。私は・・・、私は・・・、また・・・たった・・・1人に・・・なって・・・しまった・・・)

ついに・・・絶望という名の扉を理亜は開けてしまった・・・。理亜はラブライブ!冬季大会北海道最終予選で自分のミスによりSaint Snowを終わりにしてしまった、ゼロになってしまった、姉聖良を含めてすべてを失った、そんな罪悪感、いや、深淵なる闇により「孤立」、1人になってしまった。そして、今回も、その闇のなか、自分にとって絶対なる命題といえる、ラブライブ!優勝、それを叶えるため、あのときに失ったもの、Saint Snowと同じもの、同じ輝き、それ以上のものを追い求めようとしたため、初心者ばかりの自分のユニットメンバーに対して無謀といえる練習を強要して少しでもその輝きに近づけようとしていた。それが自分のミスのせいで自分たちの夢を叶えることができなかった姉聖良に対しての罪滅ぼし、もしくは、自分のミスで失った姉聖良の分を埋めるものになると理亜は思ったのだろう。だが、それが結果的に自分のユニットの空中分解につながってしまった。

 ただ、普通の人ならそれは理亜の自業自得と言ってしまえばいいのだろうが、理亜の場合、そうとも言い切れないといえる。なぜなら、理亜は理亜なりに頑張っていたのだから。たとえ、深淵なる闇、そして、絶対なる命題、を抱えてもなお理亜は理亜なりに頑張ろうとしていた。だが、理亜の場合、極度の人見知り、これまで姉の聖良に頼りきっていた、自分に対しても他人に対しても極限まで求めてしまうくらいのかなりのストイックさ、超がつくほどの真面目、それでいてすべてに対して一生懸命頑張ってしまうところ、そして、不器用で頑固者・・・(最後のはちょっと・・・)、それが悪い意味で互いに作用してしまった、これまで姉聖良に頼りっきりだったため、なにもわからないまま、なにもない原野にたった1人置き去りにされた人のごとく、どう動けばいいかわからないまま、たった1人で行動しないといけない、そんな心境が理亜にはあった。また、今回の理亜の場合、極度の人見知り、頑固者・・・、これにより、姉聖良に頼らず、さらにほかの人と相談しないまま、たった1人で絶対なる命題に向けて頑張ろうとしていた、たった1人ですべてを決めようとしていた、さらには、その頑張り、決めたことは自分にも他人にもこうあってほしいと求めてしまう、極限まで、そんなストイックさばかりが目立ってしまった。そして、これらにより、理亜の自分のユニットメンバーに対する無謀な練習、そして、その後の理亜の残酷なる運命へとつながってしまった。むろん、その裏には自分の抱える深淵なる闇、それからくる姉聖良への罪悪感、そして、それらをつなぐ、絶対なる命題を叶えるために無理をしてまで頑張ろうとする理亜の苦悩が隠されていた。

 だが、それらによってもたらされた理亜の運命は・・・、「孤独」、だった・・・。すべてがすべて悪い方に作用してしまい、理亜は再び「孤独」、いや、深淵なる闇へと回帰してしまった・・・。むろん、理亜は気づいていた、「孤独」に陥った先の末路を・・・、「絶望」という名の死のロードが待っていることを・・・。

 

 そして、今に至る・・・。理亜はこれまでのことを走馬灯のごとく思いだし、そのたびに絶望を、「孤独」を味わった。そして、すべてを思いだすと、理亜、

(私は・・・、私は・・・、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、その頂きから見える景色を見たくて、それを叶えようと必死で頑張ってきた!!だから、そうなるくらいの、絶対に勝ち続けるくらいのユニットにしようとほかのユニットメンバーにもそのための(理亜はまだ気づいていないが無謀といえるくらいの)練習をさせてきた。なのに、なのに、誰も、誰も、その練習から逃げてしまった・・・、私のユニットから逃げてしまった・・・。そして、今は、私1人・・・、たった1人・・・、私1人・・・)

と、自分は、今、「孤独」、であることを身をもって感じていた。

 そして、理亜はついにこう感じるようになってしまった・・・。

(私1人・・・、私1人・・・、たった1人・・・、でも・・・、でも・・・、1人でも・・・、スクールアイドルは・・・できる・・・。私1人で・・・姉さまとの夢・・・ラブライブ!優勝・・・目指せる・・・。なら・・・、そうなれるように・・・、いや・・・、ぜったに叶えるために・・・、私・・・、もっと・・・もっと・・・限界を超えてまで・・・練習・・・したほうが・・・いい・・・、絶対・・・)

なんと、理亜、ついにターゲットを自分に変えてしまった!!これまでは初心者であるユニットメンバーたちをターゲットに無謀といえる練習をさせて、ラブライブ!優勝できる、絶対い勝ち続けるためのユニットを作ろうとしていた。が、そのターゲットがいなくなった今、理亜、そのターゲットを自分に変えて、なにがなんでも自分と聖良との夢、ラブライブ!優勝を目指して、人間の限界を超えた練習すらすることを誓おうとしていた。

 が、このとき、理亜の脳内にある人の声が聞こえてきた。

「理亜!!理亜!!」

それは理亜がよく知る人物だった。理亜、その声を聞いてはっとする。

(ね、姉さま!!)

そう、その声の主は理亜がもっとも大事にしてきた姉、聖良、だった。なのと、聖良の声が理亜のなかでこだましたのだ。

 だが、この聖良の声に、理亜、マイナスイメージとして捉えてしまった。

(あぁ、ここにはいないはずの姉さまの声がする・・・。きっと、これは、私に対する断罪の声・・・。私が・・・、私が・・・、ミスしたせいで・・・姉さまは・・・私との夢を・・・ラブライブ!優勝を・・・叶える・・・ことができなかった・・・、私のせいで・・・姉さまは・・・私は・・・なにもかも・・・Saint Snowも・・・すべて・・・すべて・・・失って・・・しまったんだ・・・)

自分のなかから湧き上がってくる深淵なる闇の波動、それが理亜を、姉聖良からの断罪として苦しめていた。いや、それだけじゃない。あの様子が・・・、北海道最終予選での理亜のミス、それによって予選敗退し泣き悲しむ聖良の姿、これが理亜のなかで、何度も、何度も、リピートされてしまう。そして、リピートするごとに、理亜は、

(私のせいで姉さまはなにもかも失ってしまった・・・。私も・・・、なにもかも失ってしまった・・・。全部、私のせいだ・・・、私のせいなんだ・・・)

と、どんどん自分を苦しめていく、自分で自分を追い込んでしまう・・・。

 そして、ついには、理亜、姉聖良に対し懺悔してしまう・・・。

(姉さま、ごめんなさい!!私のせいで、私のせいで、姉さまは、なにもかも失ってしまった!!全部、私のせい!!それに、私、そんな姉さまのために、すべてを失った姉さまのために、姉さまとの夢を叶えるために、ユニットメンバーと一緒に頑張ってきたけど、そのメンバーもいなくなってしまった・・・。私1人になってしまった・・・。私、失った姉さまの分まで、一緒に失ってしまったSaint Snowと同じもの、同じ輝きを取り戻そうと、私、頑張ってきた・・・。けど・・・、今は、私、ただ1人・・・。姉さま、ごめんなさい、本当にごめんなさい・・・、私・・・、私・・・)

姉聖良への懺悔の気持ち、それは、理亜にとって、本当に辛いこと、だった。だって、理亜にとって姉の聖良はとても大切な人物、いや、一番大切にしたい人物だから・・・。だが、あの自分のミスにより、理亜は、姉聖良は、すべてのものを、Saint Snowそのものを、失ってしまった、そう理亜は信じているから。だからこそ、理亜にとって姉聖良のためにこれまで頑張ってきた・・・が、それが最悪のかたちになってしまった・・・、それでも理亜のなかにある姉聖良の懺悔の気持ちはその理亜そのものを苦しめている、いや、苦しみ続けている。

 そして、そこに、理亜、自分をさらに苦しめるワードを出してくる。それは・・・、

(そして、今、私、1人・・・、私、1人・・・、なんだ・・・)

ここでも理亜は「孤独」を感じてしまう、もう自分しかいない、だからこそ、ここで「孤独」というものを強く噛みしめている、のかもしれない。いや、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」という深淵なる闇自体が理亜を「孤独」という名の地獄へといざなおうおうとしているのかもしれない・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第32話

 そんな姉聖良への懺悔の気持ち、そして、「孤独」、その2つの思いにより、理亜、ついに・・・、

「いや~~~」(理亜)

この2つの苦しい思いから逃げたいのか、理亜、石畳の道を泣きながら走り抜ける。だが、それは、理亜にとって地獄へ誘う、いや、理亜自体が壊れてしまう、そんな前触れ・・・になるはずだった。

 しかし、そんな理亜に救いの神があらわれた。とつぜん走ったからなのか、石畳の道の先にある旧函館公会堂で立ち止まる理亜。そこに・・・

パンパンパン

という靴の音が聞こえてくる。これには、理亜、

(えっ、だれ?)

と、その靴音のする方を振り向く。そこには・・・、

「姉さま・・・」(理亜)

そう、そこには聖女の制服を着た理亜の姉、聖良が立っていた。そんなこともあってか、理亜、

(姉さまには、今の私の姿・・・、泣いている姿、見せたくない・・・)

と涙をぬぐうと、

(でも、なんでここに姉さまが・・・、それに、なぜ、姉さま、聖女の制服を着ているの?)

と、なぜここに姉聖良がいるのか疑問に思ったのか、

「その格好、どうして?」

と、姉の聖良に尋ねる。

 すると、聖良、

(さぁ、理亜、ついに、私たちの、Saint Snowの、最後の、本当に最後の、全力全開の洲gてーじ、ですよ)

と、理亜に語りかけるように心のなかで言うと持っていた自分のスマホを取り出しスマホのカメラを理亜に向ける。すると、そのスマホからこんな大声が聞こえてきた。

「それでは、これより、ラブライブ!決勝延長戦を行います!!」

とてもハイテンションな少女の声、これには、理亜、

(えっ、ラブライブ!決勝延長戦!?)

と、突然のことで驚いたのか、

「えっ!?」

と驚いた表情をみせた。

 だが、そんな理亜にはお構いなしに聖良のスマホから、

「決勝に残った2組を紹介しましょう!!」

と、ハイテンションな声そのままに少女はその2組を紹介する。

「浦の星からあらわれた超新星!!初の決勝進出ながら実力はトップクラス!!スクールアイドル、Aqours!!」

そのハイテンションな少女の声とともに画面いっぱいに・・・いっぱいに・・・ぎゅうぎゅうづめになりながらも元気いっぱいの表情であらわれたAqours、いや、それどころか、

「「「「「「「「「オー!! 」」」」」」」」」

という元気いっぱいの、やる気のある、そんなAqours9人の掛け声が聞こえてくる。これには、理亜、

(えっ、Aqours!?も、もしかして、ルビィたち!?)

と、これまた驚いてしまう。

 と、同時に、少女は、Aqoursの対戦相手を、あのユニットを、理亜が大切にしてきたユニットの名を、叫んだ。

「そして、もう1組は、北の大地が生んだスーパースター、Saint Snow!!」

その瞬間、理亜、

(えっ、えっ、Saint Snow!?それって、私たち、のこと!?えっ、えっ、どういうこと!?)

と、なにがなんだかわからず困惑してしまう。

 そんな理亜の姿を見てか、聖良、

(理亜、これはAqoursとSaint Snow、あなたがこうあってほしいと思い描いていた、理亜と私、そして、あつこ、その3人の夢を叶えるための、そして、深淵なる闇にとらわれた理亜、そして、あつこ、2人を救うためのステージです。だから、理亜、全力全開で、Aqoursを本当に倒すつもりで、私たちの夢を叶えるための、このステージを、駆け抜けましょう)

という強い意志で理亜にこう伝えた。

「(理亜、)今から私たちだけのラブライブ!決勝を行います・・・」

その言葉とともに聖良は理亜にある衣装を前に出した。その衣装を見た理亜、はっとする。

(こ、これって、たしか、私のミスのせいでラブライブ!決勝進出を逃したから封印していた、「Believe Again」の衣装!!)

そう、理亜は知っていた、「Believe Again」のことを・・・。自分のミスのせいでラブライブ!決勝進出を逃し、1度も歌うこともなく封印された曲、「Believe Again」、それが、ここで、その封印が解かれた、そのことを知り、理亜は聖良の意図を察した。

(もしかして、姉さま、今、ここで、「Believe Again」を歌うってことは、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、それも、あのルビィたち、Aqoursと、互いの夢を賭けた真剣勝負、それを、今、ここで、行う、つもり、AqoursとSaint Snow、ライバル同士の決着を、今、ここで、つける、つもり)

そんな聖良の意図を理解した理亜に対し、聖良、

(理亜、それもそうですが、理亜、あなたはそれと同時に、とても大切なもの、そのものの存在を、とても大事なこと、それを知るためのステージでもあります。なので、理亜、そのものを知るために、私、理亜、あなたに、伝えたいことがありあす)

という心持ちでこう理亜に話した。

「もし、決勝の舞台に立てたら、この衣装とダンスと曲だって決めていましたね」

この聖良の言葉のあと、理亜、

(ね、姉さま・・・)

と、ちょっと唖然となったのか、

「姉さま・・・」

と姉聖良になにか問いかけようと思うも、聖良、

「もし、Aqoursと争うことになったら、決勝のステージに立つことができたなら、あなたに伝えようと思っていた(ことがあります)」

と言うと、理亜、

(あっ、まさか、姉さま、私になにかを伝えようとしている・・・。私の今の姿、それを見て、姉さま、なにか大切なこと、伝えようとしている・・・)

と、自分の今の姿、自分のなかにある深淵なる闇、絶対なる命題、そして、「孤独」、その狭間でもがき苦しんでいる自分の姿、それを救おうとしているこことに少し驚くとともに、

(でも、姉さまに頼りたくないけど・・・)

と、少し躊躇する表情をみせる・・・が、理亜、ここで、

(でも、姉さまでもなんでもいい!!もう苦しむのはいや!!こんな苦しみから逃れたい!!)

と、もうこの苦しみから逃げたい、その一心で、理亜、

(姉さま、助けて!!)

と、姉聖良に助けを請うばかりに、

「姉さま・・・」

という声とともに姉聖良にだきつくと、

グスグスグス

という理亜の鳴き声が聞こえてきた。これには、聖良、

「泣いている場合じゃないですよ・・・」

と泣く理亜を諭した。

 そして、理亜の救いを求める鳴き声が聞こえてきたのか、聖良のスマホから、

「(ルビィと)一緒に進もう、理亜ちゃん!!」

というルビィの声が聞こえてきた。このとき、ルビィ、

(理亜ちゃん、ルビィと一緒に進もう!!理亜ちゃんはルビィたちと同じような苦しみを、いや、ルビィたち以上に苦しんでいた。ただ、それは、理亜ちゃんがとても大切なもの、とても大事なこと、それに気づいていなかったから。だから、理亜ちゃん、1人で苦しまないで!!この延長戦で、理亜ちゃんにとってとても大切なもの、とても大事なこと、それに気づいて!!そして、理亜ちゃん、その先の未来へ、その先の新しい輝きへ、ルビィたちと一緒に進もう!!)

という理亜に対する心強い声援という名の思いをもっていた。ただ、このルビィの突然の言葉に、理亜、

(えっ、ルビィ、「一緒に進もう」ってどういうこと?)

と、少し困惑する。

 しかし、ルビィ、困惑している理亜に対し、自分の想いを、ルビィの今の理亜に送る熱きこの想いを、理亜に伝えるがごとく、あの言葉でもって、自分たちの夢に向かって一生懸命頑張っている、そんな理亜がいつも言っていた、あの言葉でもって、ルビィは、理亜を、励ました。

「甘えてちゃダメだよ!!理亜ちゃんや花丸ちゃん、善子ちゃんと出会えたからルビィは頑張ってこれたんだよ!!

 

「ラブライブ!は遊びじゃない!!」」

 

このルビィの、いや、自分のライバルでもあり盟友でもあるルビィの力強い声援を聞いて、理亜、

(ルビィ・・・、まさか、あの弱弱しいルビィから力強い、いつも私が言っている言葉を言われるなんて・・・。そう思うと、私、なにかどうかしていたみたい・・・。いろんなことで苦しんでいた私がバカだった・・・)

と、まさかあのルビィから、いつも姉ダイヤの後ろをただ歩いているだけの、姉ダイヤに依存していた、弱弱しいルビィ、そして、自分と同じく?、不安・心配という海・沼に陥ってしまった、あの弱弱しいルビィ、自分が知っている、そんなルビィとはかけ離れた、もう姉のダイヤなんて必要ない、本当に一人前の少女に生まれ変わった、自信満ち溢れている、そんなルビィからの力強い、いつも自分が言っている言葉を言われたことに、理亜、深淵なる闇によりルビィと同じく苦しんでいた自分がバカらしく思えてくると同時に、

(けれど、今は心配ない!!今は姉さまが隣にいる!!姉さまがいるから、私、安心して、全力でいける!!だから、見ていて、ルビィ!!姉さまとともに、ルビィたちを、Aqoursを、全力全開で、私と姉さま、2人の力でもって、本当に、ぶっつぶす!!)

と、ルビィが先ほど言っていた「一緒に進もう」という言葉はさておいて・・・(おいっ!!),

もう2度と一緒に歌うことがないと思っていた姉聖良がここにいる、その安心感からか、理亜、これまでの苦しみなんてなんのその、姉聖良とともに全力前回のステージをルビィたちの目の前で見せつけてあげる、そして、今、ここで、延長戦で、ルビィたちを、Aqoursを倒してみせる、そんな心意気になっていた(って、あつこの存在は・・・)。

 さらに、聖良も、

(私もこのステージで、理亜とあつこと一緒に、私のなかにある、あの輝き、その先にある宝物、でもって、Saint Snow、ラストステージ、全力全開でもって、Aqoursを、千歌さんたちを、打ちのめしてみせます!!)

と、高ぶる気持ちを、理亜、そして、Aqoursに見せつけようとしていた。

 そして、スクールアイドル王者であるルビィたちAqoursに対し、チャレンジャーSaint Snowの2人は、Aqoursに、宣戦布告した!!

「歌いましょう」(聖良)

「うん!!」(理亜)

「2人で、このステージで、Aqoursと全力で!!」(聖良)



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SNOW CRYSTAL 序章 第33話

 こうして、ついに、ラブライブ!決勝延長戦、最初で最後の、Aqours vs Saint Snow、本気のバトルを、今、幕を・・・。

「あのう、姉さま、その格好のままで歌うつもりですか?」

と、ここで、理亜、本気と書いて「マジ」と読む、それくらい、Aqoursとの戦いに熱き想いを抱いていた聖良に対し聖良の耳に近づいてはぼそっと言ってしまう。が、これには、聖良、

「あっ、そうでした。私、今、聖女の制服のままでした・・・」

と、自分の格好を確認してはっとしたのかこう言ってしまう。たしかにそうである。聖良は、今、聖女の制服を着ていた。このまま理亜と2人でそのまま「Believe Again」を歌うことができるのですが・・・、それだと延長戦としてのあれが・・・。まぁ、今さっきまで理亜には延長戦のことを秘密にしていたので、Saint Snow側がパフォーマンスの準備をする時間もなかったことですし・・・、その準備をする時間は必要でしょうね・・・。あっ、ちなみに、理亜も今さっき延長戦のことを知ったこともあり、練習着のまま、対して、Aqoursはすでに延長戦で歌う、こちらもラブライブ!決勝でSaint Snowと歌うために用意していた幻の曲、「Brightest Melody」の衣装を着ていた。このまま延長戦に突入していればAqours側に有利になる明白・・・。

 そんなわけで、聖良、カメラの向こう側にいるAqoursに対し、

「あっ、ちょっとすいません。その前に、私たちの準備、してきますから、ちょっと待ってください!!」

と言ってしまった。これには、Aqours側の全員、

ガクッ、

とこけてしまった。まぁ、それくらい、Aqours側も延長戦に向けて熱い想いで挑もうとしているのに、聖良のこの発言によって水を差された格好となってしまった。

 とはいえ、Aqoursを撮っている少女、というか、Aqours側のプロデューサーの少女はこの聖良の発言に対し、

「それはたしかに(理亜ちゃんにとって)突然の出来事だからね。全力を賭けたステージを繰り広げるための準備は必要だね」

と、事情が事情だけにOKをもらった・・・というか、プログラム自体、それを加味してくんでいたため、時間には少し余裕があった。プロデューサーの少女としてはそのプログラムのなかでSaint Snowが準備する時間の確認をとった・・・という認識だったかもしれない。ただ、このAqours側のプロデューサーの配慮には、聖良、

「月さん(Aqours側のプロデューサー)、ありがとうございます」

と、Aqours側のプロデューサーをしている少女こと月に対しお礼を言う。とても律義な性格である、聖良は・・・、

 と、まぁ。理亜、聖良、Saint Snow側も延長戦の準備を・・・というとき、またもや、理亜、聖良に対しあることを尋ねる。

 「ところで、姉さま、私たち、Saint Snowのステージを撮る方がいるのですか?」

たしかにそうである。Aqours側はすでにカメラマン役を用意していた。それがプロデューサー兼カメラマン役の月であった。Aqours側は月を中心にこの延長戦にむけて準備をしていた。その月がパフォーマンスの演出がてらAqoursのステージ映像を迫力いっぱいに撮る予定である。そのための仕掛けもばっちりである。対して、Saint Snow側に今いるのは聖良と理亜の2人だけ。なので、2人を撮る人が現時点ではいないのである。なので、そのことを理亜はずばり指摘してきた、というわけである。

 が、完璧超人の聖良?、その点についてにすでに手を打っていた。聖良、尋ねてきた理亜に対し、

「それなら心配ありません。すでに助っ人は呼んでおります」

と、自信たっぷりに答えるとすぐに聖良、

「あつこ、出てきてください!!」

と、あつこという少女を呼んだ。

 そして、建物の物陰からその少女は堂々と出てきた。それも聖良と同じ聖女の制服を着て・・・、と同時にその少女は聖良と理亜の方を見てこう告げた。

「聖良さん、呼んでいただきありがとうございます。そして、理亜さん、お久しぶりです」

これには、理亜、

(えっ、なんで、ここに、あつこが、裏切り者が、いるわけ?なぜ?)

と唖然となってしまう。そう、物陰からあらわれたのは、あつこ、だった。そのあつこの存在を知ったとたん、理亜、

「えっ、あなた・・・」

と、言葉に窮してしまった。理亜にとってあつこは自分が強要した練習から逃げ出した裏切り者。それなのに、なぜ、あつこ、そんな理亜の目の前に堂々とあらわれたのだ。普通なら裏切り者が堂々と裏切った者こと理亜の目の前にあらわれるなんて考えられないこと。なので、理亜、ただそれだけで困惑気味になったのだ。

 そんな困惑している理亜に、聖良、あることを話す。

「理亜、あつこはこれまでこの延長戦の準備を私と一緒にしてきました。。それは理亜のため、理亜のなかにある深淵なる闇から理亜を救うため、そして、理亜にとても大切なことを教えるためです。決して理亜のことを裏切っていたわけではないのです」

そう、これまであつこは理亜のため、深淵なる闇などにより苦しんでいる理亜のため、理亜にとても大切なことを教えるためにこの延長戦の準備をしてきた。そう、このとき、あつこ、理亜を見つめてこう思っていた。

(私は最初、聖良さんのためい理亜さんのユニットに入りました。しかし、ラブライブ!決勝で理亜さんがAqoursのみなさんの応援しに東京に行ってから理亜さんは変わりました。私たちユニットメンバーに対して無謀といえる練習を強要するようになりました。私は、最初、理亜さんがそうするようになった原因が理亜さんの身勝手な暴走だと思っていました。いや、ユニットメンバー全員がそう思っていたと思います。なので、私を含めて、ユニットメンバー全員、自分の身を守るため、暴走した理亜さんに幻滅した、かどうかはわかりませんが、理亜さんのユニットから抜けることを選択したのです)

たしかにあつこの言う通りかもしれない。理亜のユニットに参加してくれたメンバーたちはあつこを除きあのクリスマスライブで見せたSaint Aqours Snowのパフォーマンスを見てスクールアイドルにあこがれ理亜のユニットに参加してくれた。最初のころは理亜と一緒にスクールアイドルを楽しもうとしていた。だが、最初のころはそれでよかった・・・のだが、理亜がラブライブ!決勝のAqours応援のために東京に行ったあの日を境に理亜は変わった。ユニットメンバーに対し理亜は無謀といえる練習を強要してきた。ケガをしかねない状況でも理亜は無謀といえる練習を続けようとしたばかりか「真面目にしない」と勝手にレッテルを貼り付けてはさらに練習を強要してきた。これには、ユニットメンバー、理亜の表面だけを見て、「暴走している」と判断、自分の身を守るため、そして、これまであった理亜と一緒にスクールアイドルを楽しむ、その希望が潰えた、理亜に幻滅した、それらの理由でもって理亜のユニットから次々と抜けていったのかもしれない。

 が、あつこ、その理亜の裏についてこう考えた。

(でも、実際は、理亜さんは自分のなかにある闇に苦しんでいた。北海道最終予選での自分のミス、それにより、「ゼロになってしまった、なにもかも失った」、そんな深淵なる闇に理亜さんは飲み込まれてしまったのです。自分のミスのせいでSaint Snowそのものを失ってしまった、姉の聖良さんを失ってしまった、そして、聖良さんもなにもかも失うことにつながった、そう理亜さんは思ってしまった。だから、聖良さんとの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるために、必死になって頑張ってきた。それはまるで自分が失くした聖良さんという穴を埋めるために、さらに、Saint Snowと同じもの、同じ輝きを手に入れないと聖良さんに申し訳ない、そんな罪悪感をぬぐうがごとく・・・、そんな苦しみから逃れるため、理亜さんは初心者ばかりのユニットメンバーをラブライブ!優勝できるレベルにまですぐにあげたいと思ってこんなことをしたのですね)

そう、理亜は姉聖良との夢、ラブライブ!優勝を叶えるためにみんなから暴走だとみられるくらいのことをしてきたのだ。それは理亜にとって、深淵なる闇、聖良との夢をいう絶対なる命題、聖良への罪悪感、その狭間で理亜が苦しんでいたからだった。だが、あつこ、このことについてもこう考えてしまう。

(でも、理亜さんの場合、理亜さんの性格上、その苦しみを相談できる相手がいなかった。たった自分1人でその苦しみと戦った。けれど、それが悪い意味で暴走へとつながった。それってなんかやるせないよ・・・)

そう、理亜の性格上、その苦しみを相談できる相手がいなかった、たった1人でその苦しみに挑んでいた、が、それがその苦しみに振り回されたかたちとなった、いや、暴走というかたちに見られてしまった、というわけである。これにはあつこも理亜のことをあわれだと思っていた。

 が、それを踏まえた上であつこは理亜に対しこう立ち向かおうとしていた、ここで・・・。

(そんな理亜さんを見て、私、同じユニットメンバーとして、そして、Saint Snowのサポーターとして、自分の抱える闇などに苦しむ理亜さんを救いたい、理亜さんに大切なことを教えたい、その想いでこの延長戦の準備をしてきました。だから、理亜さん、この延長戦、一緒に頑張って、理亜さんにとっててても大切なもの、それを気付かせてあげます!!)

あつこは深淵なる闇などにより苦しんでいる理亜を救いたい、そんな理亜にとって大切なことを教えたい、その想いでこの延長戦の準備をしてきた。それは、同じユニットメンバーであるから、理亜と聖良、Saint Snowをこれまで陰から支えてきたから、そんな理由からだった。

 が、そんなあつこに対し、理亜はまだ、

(あつこ、あなたは私を裏切ったじゃない!!あつこ、あなたは私が決めた練習から逃げ出した。それって、私にとって、裏切った、と見られても仕方がないこと!!)

と、あつこをいまだに、勝手に理亜のユニットから逃げ出した者、裏切り者、だと思っていた。そのためか、理亜、

「あつこ、よく私の前にのこのことあらわれた。この裏切り者!!」

と、あつこに対し恨み節をきかせていた。

 だが、このとき、聖良、そんな理亜に対し、

「理亜、それは違います!!あなたは気づいていないかもしれませんが、あなたのユニットメンバーに対し、理亜、あなたは無謀といえる練習を強要していたのです!!それから逃げたいのは人として当たり前です!!理亜、そのことを理解してください!!」

と、これまでの所業について注意をすると、「姉聖良の言うことは絶対」と思っている理亜、

「は、はい・・・」

と、しょぼんとなってしまった。

 だが、聖良、

(でも、それもこれも理亜が自分のなかにある闇によって苦しんだのが原因、いや、それどころか、理亜にとってとても大切なもの、大切なことを理亜自身が気づいていないことが原因。なら、ここは、私とあつこ、そして、理亜、この3人一緒に頑張って、その大切なもの、大切なこと、それを一緒に見つけてしまえばいいのです、この延長戦で・・・)

いう想いととおに、理亜に対し、

「でも、理亜がそうなってしまったのも仕方がありません。理亜、あたなにとってとても大切なもの、大切なこと、それに気づいていなかったからこうなってしまったのです」

と、理亜を元気づけるかのごとく優しく語りかけると、理亜、

(私にとって大切なもの、大切なこと、それってなんなのですか?姉さま、それってなんなのですか?)

と、不思議に思ったのか、聖良に対し、

「それって一体・・・」

と尋ねると、聖良、優しく理亜にこう言った。

「理亜、それはこの延長戦で知ることができると思います。だから、理亜、この延長戦、私と一緒に一生懸命頑張るとともにそれを見つけにいきましょう」

この聖良の言葉に、理亜、

「ね、姉さま、はいっ!!」

と、元気よく答えた。

 そんな2人を見てか、あつこ、

(あぁ、これこそ、鹿角姉妹、聖良さんと理亜さん、Saint Snow、互いを信頼した印、っていうのですね。感動ものです・・・)

と、2人の姿に感動するとともに、

(さてと、私はそんな聖良さんと理亜さんを一生懸命バックアップして一生に残る戦いにしていきましょう!!)

と、自分はバックアップとして一生懸命頑張る、そんな心意気を見せていた。

 だが、そんなあつこに対し、聖良、こんなことを言いだしてきた。

「そして、あつこ、あなたも理亜と同じく、大切なもの、大切なこと、が自分のなかにあると自覚しておりません。だから、あつこ、

あなたも、この延長戦、理亜と同じく、いや、あつこ、理亜、そして、私、一緒になって一生懸命頑張ってそれを見つけにいきましょう」

この聖良の発言に、あつこ、

(えっ、私のなかにも理亜さんと同じもの、同じことが存在するの?えっ、それって一体・・・?もしかして、私が延長戦の準備をしているときに思いだした、昔の記憶のこと?)

と困惑してしまう。たしかに、Aqoursメンバーの1人、ダイヤからこの延長戦を持ちかけられた日、聖良は一緒にいたあつこに対し、今、聖良が言ったことと同じことを言われていた。そのため、あつこは延長戦の準備の最中、そのことを考えていた・・・というか、そのせいで、昔のこと、あつこがSaint Snowのサポーターとして頑張っていたときのことを思いだしていた。それを、今、ここで思い返すことになるとは、今のあつこはそう思っていなかっただろう。

 けれど、あつこ、そんな聖良の言うこと、なので、

(でも、あの聖良さんの言うことだから、私のなかになにかあるのかもしれない。なら、それをこの延長戦で私も確かめてやる!!)

と、前向きに考えることにした。



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SNOW CRYSTAL 序章 第34話

 そんなわけで、聖良と理亜は旧公会堂の控室で「Believe Again」の衣装に着替えていた。そんなとき、理亜、

(ルビィが私に「ラブライブ!は遊びじゃない!!」って言ってきたとき、ルビィ、なんか自信満ち溢れた、強気の発言だったけど、ルビィたち、本当に復活したわけ?私と姉さまが沼津に行ったとき、ルビィたち、ダメダメだったはず!!)

と、沼津のときのことを思いだしていた。そう、理亜が知る今のAqoursの姿は不安・心配という深き海・沼の底に沈み込んだ、本当にダメダメなラブライブ!決勝のときを100にすると20~30くらいの実力しかない、そんな(新生)Aqoursの姿だった。だって、理亜、これまで絶対なる命題を叶えることに熱心だったかふさぎこんじゃって情報を遮断していたから、あのAqoursのライブのことも知らずにいたのだ。

 そんなわけで、理亜、姉の聖良に尋ねてみた。

「あの~、姉さま、延長戦とはいえ、今のAqours、ダメダメなのでは・・・」

すると、聖良、自分のスマホを理亜の目の前に置きAqoursのことをこう称した。

「理亜、今のAqoursはあのA-RISEやμ'sをも超えるスクールアイドル界の王者の中の王者になりました。ルビィさんを中心に自分たちのなかにあった不安・心配、それらを払いのけ、さらに、ダイヤたち3年生3人が合流、完全無欠のグループになってしまいました。私たちSaint Snowすら足元に及ばない、それくらいとても強力なものになっています。いや、それ以上に、自分たちだけの輝きをすでに取り戻しています。Aqoursは今、世界一のアイドルと言ってもいいでしょう」

 そして、聖良のスマホに映る動画サイトの再生ボタンを押すと、理亜、

(えっ、これがルビィたち・・・、今のAqours・・・。あのとき(理亜たちが沼津に行ったとき)よりも・・・、いや、ラブライブ!決勝のときよりも・・・すごいパフォーマンスをしている・・・。まるで世界一のアイドル・・・、自身に満ち溢れている・・・、誰からみてもすぐにそう見える・・・、いや、圧倒されてしまう・・・、言葉では言い表せないような・・・そんなパフォーマンスだ・・・)

と、着替える手が止まるくらい圧倒的なAqoursのパフォーマンスに驚いていた。そう、このAqoursのパフォーマンスの映像、それはAqoursが鞠莉の未来、自分たちの未来、そして、スクールアイドルの未来を賭けて挑んだローマ・スペイン広場でのライブ映像、だった。このときのAqoursは月の働き替えなどによりこれまで自分たちのなかにあった不安・心配という海・沼を完全に払いのけ、さらに、そこにルビィたちの精神的支柱だったダイヤたち3年生3人が合流、さらにさらに、自分たちだけの輝きを取り戻して・・・いや、極限まで磨き上げられた、そんな完全無欠の状態だった。この完全無欠のパフォーマンス、いや、それプラスして、これまでのAqoursメンバー全員が心がけてきた、スクールアイドルにとってとても大切な想い、それが妙実にあらわれた、そんなパフォーマンスをみせていたのである。もちろん、それはあのスクールアイドルに対して「くだらない」と評していた鞠莉‘sママを一瞬にしてスクールアイドルの虜にしてみせた、それくらいすごいパフォーマンスだった。

 そんなAqoursの圧倒的なパフォーマンスをまえについ固まってしまう理亜。そんな理亜に対し、聖良、

「けれど、私たちSaint Snowだって負けるわけにはいきません!!理亜には私がいます!!理亜、今、あのAqoursに対抗できるのは、私たち、Saint Snowしかいません!!私という強力な援軍がいる今、理亜は100%、いや、200%、500%、1000%、いや、無限大の力を発揮することができるはずです!!理亜、そのことを自覚してください」

と、力強い言葉を送る。これには、理亜、

(たしかに、姉さまがスクールアイドルを卒業してから今まで私1人ですべてをやってきた。そのせいで私は苦しんでいた。でも、その姉さまがついに戻ってきた!!ただそれだけで、私、頑張れる!!いや、姉さまがいることで私の実力は、100%、いや、1000%、いや、無限大になる!!どんな相手だって簡単に倒せる!!あの圧倒的なパフォーマンスをみせたルビィたちAqoursにだって一撃で倒せる!!それくらい、すごいパワーを、今、私、感じる!!)

と、これまでの暗い表情から、一転、自信満ち溢れる表情をみせては聖良に対し、

「はいっ、姉さま!!」

と、元気よくこだました。

 そんな理亜に対し、聖良、次にあることを話す。

「でも、理亜、今の理亜はまだ完璧じゃありません」

これには、理亜、

「えっ、姉さま、それはどういうこと?」

と逆に尋ねると、聖良、力強く言った。

「理亜、今の理亜は私が戻ってきた、ただそれだけで自分を奮い立だしている状態です。でも、先ほど言った通り、理亜のなかにあるとても大切なもの、とても大切なこと、それをこの延長戦で私たちと一緒に見つけることで理亜は私と同じくらい完璧なものになります。だから、理亜、この延長戦、それを私たちと一緒に見つけて完璧になりなさい!!そして、私たち、Saint Snow、あの完全無欠のグループ、Aqours、すら超える、そんなユニットとしてこのスクールアイドル界に君臨しましょう!!」

この自分だけでなくSaint Snowの全員を奮い立たせる、そんな力強い聖良の言葉に理亜も、

「はいっ、わかりました、姉さま!!」

と元気よく答えてくれた。

 と、そうしているうちに理亜と聖良は「Believe Again」の衣装に着替え終えていた。これまで数々のイベントのライブをこなしていたこともあり、早着替えはお手の物だった。そんなわけで、聖良は理亜に別の動画を見せてはこう言った。

「理亜、突然ですが、たった1回だけでこの「Believe Again」のパフォーマンスを思いだしなさい、この動画を見て」

その聖良が理亜に見せている動画、それは、聖良を含む少女2人で「Believe Again」のパフォーマンス、歌とダンスを撮影した動画だった。この動画を見て、理亜、

(え~と、ここはこうで、そこはこうで・・・)

と、自分の記憶を頼りに「Believe Again」のふりつけ・・・、いや、パフォーマンスのすべてを思いだしていた。実は過去に数回だけ、聖良と理亜は「Believe Again」のパフォーマンスを練習したことがあった。それは、あの北海道最終予選前、聖良とあつこは必ず決勝進出すると思って対Aqours戦用に「Believe Again」を制作、歌詞、振付、ともに完成すると聖良と理亜はそれをもとにその曲のパフォーマンスの練習をしていたのだ。だが、まさかの最終予選敗退によりそのパフォーマンスを含めて「Believe Again」を封印したのだ。だが、その「Believe Again」が本来の目的だったAqoursと戦うための曲としてラブライブ!決勝延長戦でSaint Snowが歌う曲として復活したのだ。しかし、延長戦直前まで理亜には延長戦のことは秘密にしていたため、聖良と理亜は一緒に練習できなかった。そのため、聖良はそんな理亜のためにこの動画を作成、それを理亜に見せて昔練習でやったパフォーマンスを思いださせようとしたのだ。

 しかし、たった数回の練習、それも3か月以上前のこと、そんなの、さすがの理亜もそれを完璧に思いだすことは・・・、

(え~と、こうで、ああで、それで・・・)

と、理亜、その動画を見ながら、足の動き、手の動き、それを1つずつ確認している。そう、理亜、なんと、たった数回の、それも3か月以上前にやったパフォーマンスを完璧に思いだしていた!!とはいうものの、函館でも1,2位を争う進学校であり歴史由緒あるお嬢様学校、その聖女、その生徒である理亜は学力でもトップクラス・・・、さらに運動も得意・・・ということもあり、過去に覚えたパフォーマンスならすぐに思いだすのも朝飯前・・・であった。だが、それ以上に、理亜役のパフォーマー、

(でも、このダンス、なんか私が覚えていたダンスと一緒!!それでいて次にどう動けばいいかわかりやすい!!誰なの、このパフォーマー?私以上にできている!!)

と理亜が嫉妬するくらい完璧なダンスをしていたのだ。

 そんな理亜の嫉妬とともに1分半くらいで「Believe Again」のパフォーマンス動画は終わった。すると、聖良、

「理亜、「Believe Again」のパフォーマンス、全部思いだしましたか?」

と、理亜に尋ねると、理亜、

「姉sま、ばっちし、完璧!!」

と、Vサインを出して答えた。そう、理亜、たった1回で「Believe Again」の歌詞、振付、これら含めて、パフォーマンスのすべてを思いだしたのだ。 

 しかし、ここで、理亜、聖良に対しあることを尋ねる。

「ところで、姉さま、さきほどの動画で私の代わりにパフォーマンスをしていた人、誰?なんか私よりうまい・・・」

そんな理亜の嫉妬めいた言葉に、聖良、

「あぁ、そのパフォーマーですかぁ。あの人は理亜にとって意外な人物ですよ」

と言うと続けて、

「それに、あのパフォーマーならすでに理亜の近くにいますよ」

とそのパフォーマーの方を見る。すると、理亜、

「って、まさか、あつこ!? 」

と、聖良のヒントをもとにそのパフォーマーがあつこだとわかってびっくりしてしまう。

 と、そんな理亜の注目を受けたあつこ、ちょっと照れているのか、

「え~と、理亜さん、はい、その動画のパフォーマーは確かに私です・・・」

と、おどおどしながら言うと、理亜、

「でも、なんで、あつこ、私より、ダンス、うまいわけ?」

と、あつこに対し迫る勢いで言ってくる。これには、あつこ、

「え~と、それは、それは・・・」

と、迫ってくる理亜に押されてか言葉に窮してしまう。

 と、ここで、聖良、あつこに助け舟をだす。聖良、理亜に対しあることを話す。

「理亜、あつこはもともとフィギュアスケート選手であることは知っていますよね」

これには、理亜、

「はい、たしかにあつこは小さいときからフィギュアスケートをしていたことを知っていますが、それと先ほどのダンスとどう関係性が・・・」

と、聖良にもう1度尋ねると、聖良、理亜がびっくりするほどのことを言う。

「理亜、あつこは中3のときまで日本でトップクラスの選手でした。なぜあつこがそこまで上り詰めることができたのか。それは、あつこにはたぐいまれな運動センス、音楽センスを持っていたからです。あつこは小さいときからその運動センスと音楽センスを磨くため、フィギュアの練習以外にも基礎練習で運動センスを、音楽教室で音楽センス、そして、作詞作曲の能力を伸ばしてきました。また、そのセンスを今でも保たせるために基礎の鍛錬を毎日こなしてきたのです、理亜みたいに・・・」

この聖良の発言に、あつこ、

「聖良さん、それ、ちょっと、褒めすぎでは・・・」

と、ちょっと謙遜していたが、理亜、それを聞いて、

「えっ、あつこ、姉さまと同じくハイパーガールだったわけ!?それじゃ、私が(ユニットメンバーに対して)課していた練習って必要なかった・・・」

と、あつこのあまりものスペックに驚いてしまう。まぁ、たしかにあつこも聖良と同じくハイパーガールである。あつこは日本でもトップクラスのフィギュアスケート選手だったことは前にも記したが、そうなるまでにはあつこのたぐいまれなセンスと汗と涙の努力があった。あつこは小さいときからたぐいまれな運動センスと音楽センスを持っていた。それをあつこはフィギュアスケートのために一生懸命伸ばしてきた。フィギュアスケートの練習以外にも基礎といえる練習を毎日欠かさず行うことで運動センスを、音楽教室で音楽センスとなぜか作詞作曲の能力を伸ばしてきた。こうして、あつこは日本でもトップクラスの選手となった・・・のだが、なかば引退状態の今でもそのセンスを保たせるために毎日欠かさず基礎鍛錬をこなしてきたのである。

 そんなわけで、理亜、

「それじゃ、私の代わりにあつこが出れば・・・」

と、あつこに対し嫉妬深く言うと、あつこ、

「でも、私、歌、得意じゃないし、ラップも苦手で・・・」

と謙遜風に言うとともに、

「それに、Saint Snowって、理亜さんラップも特徴的だし・・・」

とも言ってしまう。たしかにそうである。「Believe Again」をはじめ、Saint Snowの曲には理亜のラップがつきものというの多かったりする。それくらい理亜のラップ、理亜ラップはSaint Snowのの曲の特徴だった。対して、あつこはフィギュアスケートと歌うことは関係ない・・・のか、歌う練習をしてこなかった。そのため、歌うことに関してはあつこの不得意分野ともいえた。

しかし、理亜、そんなあつこを見て一言。

「それってひがみ?頭くる!!」

理亜、少し怒り気味。どうやら今さっきのあつこの態度に、理亜、頭にきたみたい。

 そんな理亜の姿を見てか、あつこ、

「それに、私、足にスティグマがあるからこれ以上踊るのは無理・・・」

と言っては自分の靴下をめくり、あつこの足に残っている古傷、スティグマ、を理亜に見せた。これには、理亜、

「あつこ、それって・・・、あつこが中3の最後の大会でミスして大ケガした、あのときの・・・」

と言葉に窮してしまう。理亜は知っていた、あつこが中3のとき、フィギュアの大会でミスをして大ケガしたことを・・・。そんな理亜を見てか、あつこ、

「このスティグマがある限り、私は今以上に頑張ることは無理なんだ。だって、私、理亜さんと同様に限界を超えた練習を続けてきたから大ケガをしてすべてを失ったから・・・。そのときにできたのがこのスティグマ・・・。このスティグマは私にとってすべてを、なにもかも失った、それを指し示す、そして、これ以上頑張るとまた大ケガしたときと同じことが起きる、それを忠告しているものだから・・・」

と、少し落ち込むように言う。あつこにとってそのスティグマは、昔、限界を超えた練習をしてすべてを失った、そのことをあつこに思いださせる、そして、これ以上頑張るとまた大ケガしたときと同じことが起きる、それを忠告する、そんなものだった。このスティグマがある以上、あつこは活発に動くことすらできなかったのだ。

 そんなあつこのことを思ったのか、聖良、あつこに対しこう言った。

「あつこ、あなたの中にも理亜と同じ、深淵なる闇、がはびこっています」

これには、あつこ、

「えっ、私にも理亜さんと同じ闇が・・・」

とびっくりすると、聖良、続けて、

「あつこ、その闇こそ、そのスティグマ、なのです!!」

と、あつこのスティグマを指さして宣言してしまった。これには、あつこ、

「えっ、このスティグマ自体、理亜さんと同じ闇・・・」

と、はっとしてしまう。まさかあつこが持つスティグマそのものが理亜と同じ闇、ということにびっくりしたのだから、あつこは・・・。

 そんなびっくりしているあつこに対し、聖良、

「あつこ、そんなあつこだから言います、あつこのなかにも私たちと同じとても大切なもの、とても大切なこと、それが存在しています。だからこそ、あつこ、私たちと一緒にそれを探しにいきましょう、この延長戦を通じて・・・」

と、あつこのなかにも自分たちと同じ、大切なもの、大切なこと、それが存在すること、それをこの延長戦で自分たちと一緒に探しにいくことを提案すると、あつこ、

「えっ、それを探しにいくなんて・・・」

と、これまたびっくりしてしまった・・・。

 そして、聖良、今度は理亜に対して、

「そして、理亜、この延長戦で理亜も、大切なもの、大切なこと、それを見つけてください。それが、今の理亜、深淵なる闇により苦しんでいる、あつこと同じ、その苦しみから解放するための唯一の手段ですから・・・」

と言うと、理亜、

「えっ、たしかにそうだけど、なんであつこと同じ・・・」

と、自分が抱える苦しみがあつこと同じものだと言われてむっとしてしまった。

 が、それ以上に、聖良、さらっとこんなことまで言いだしてしまった。

「さぁ、理亜、そして、あつこ、

 

私たち、3人、Saint Snow!!

 

そのラストステージ、この延長戦で、Aqoursに、勝利して、勝利の美酒に酔いしれましょう!!」

聖良にとってみれば、理亜とあつこ、2人を奮い立たせるために言った言葉、であったが、理亜、あつこ、ともに、

(えっ、今、姉さま、言ったよね、あつこの名を!!Saint Snow、私と姉さま、2人だけのはず・・・。あつこはただの私と姉さまのサポーター、なのに、なんで、あつこをSaint Snowに入れるわけ?)(理亜)

(あのぅ、聖良さん、私、ただのサポーター、ですよ・・・。なのに、なんで、しれっと、私をSaint Snowの一員にしているのですか・・・)(あつこ)

と、突然の聖良の発言にパニック・・・まではいかないまでもそれに近い状態に・・・。そのためか、

「姉さま、あつこはSaint Snowじゃない!!Saint Snow、私と姉さまの2人だけ!!」(理亜)

「聖良さん・・・、私、ただのサポーターですけど・・・」(あつこ)

と、聖良にいくら抗議しても、聖良、聞く耳持たず・・・、そのまま外に出てしまった。ただ、この聖良の真意はこのあとの延長戦ではっきりとわかることに・・・。とはいえ、一波乱も二波乱も起きつつも、聖良、理亜、あつこは外に、Saint Snow、ラストステージ、その舞台となる、Saint Snow、始まりの地、旧函館公会堂、正面へと向かった・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第35話

(でも、なんで、姉さま、Saint Snowが3人、って言ったわけ・・・)(理亜)

(私はただのサポーターのはず・・・。なのに、なんで、聖良さん、私のこと、Saint Snowの一員にいれたのでしょうか・・・)(あつこ)

2人は先ほどの聖良の発言に疑問を感じつつも自のポジションにつく。もうすぐ延長戦が始まる。この延長戦、はじめにパフォーマンスをするのは、チャレンジャー、Saint Snow、なので、聖良と理亜は旧公会堂の正面に到着するとすぐに「Believe Again」の自分のポジションにつく。あつこもその2人を撮るべく2人の正面に立っては撮るスタンバイをした。

 そして、ポジションにつくなり、聖良、あつこに対し、心のなかでお礼を言った。

(あつこ、この延長戦、Saint Snow始まりの地、この旧函館公会堂の場でできること、いや、延長戦のことすべて、あなたがやってくれたこと、本当に感謝しております。本当にありがとうございます、あつこ)

そう、この延長戦、Saint Snow側の準備のほどんどをあつこがしていた。あつこは昔日本でも有数のジュニアのフィギュア選手だったことを活かし、旧公会堂の使用許諾をすぐにとってきてくれた。また、音響設備などもフィギュアやSaint Snowのサポーターとして培われた人脈をフルに活かし用意してくれた。それとあつこはあわせて「Believe Again」のブラッシュアップまでしていたのだが、外的交渉を含め、あつこの延長戦における活躍はめざましいものだった。いや、この延長戦自体、函館が誇るスクールアイドルユニット、Saint Snow、ラストステージ、として函館市民の心のなかに残る、そんなステージへとあつこは昇華させたのかもしれない。それくらいあつこの延長戦にかける想い、理亜のためのステージにかける想いはとても強かったのかもしれない。

 だが、そんなあつこの苦労なんてしらず、理亜はただ、

(なんで、あつこ、Saint Snowの一員って、姉さま、言っているわけ?)

と、少し怒りを覚えていた。

 そんなときだった。突然、旧函館公会堂に音楽が鳴り響く!!

ドゥドゥ ドゥルルルールル ドゥドゥ ドゥルルー ルル

そう、ついに延長戦が始まったのだ。旧函館公会堂に鳴り響く「Believe Again」のイントロ、これには、理亜、

(とはいえ、これが、姉さまとの、ラストステージ!!全力、だす!!)

と気持ちを切替ては延長戦に全力でもって臨むことにした。

 そして、イントロのあと、さっそくSaint Snowの十八番、理亜ラップが炸裂する。これには、あつこ

(これまでの理亜さんは自分のなかにある闇などによって苦しんでいました。そんな理亜さんでしたが、今、ここにいる理亜さんは、それとは想像がつかないほどの熱量・・・、いや、これまでのなかで一番といえる、それくらい迫力に満ちたラップを繰り広げいます・・・)

と理亜のこれまでにないほどの熱量のラップに驚いていた。

 そのなラップを披露する理亜、その心のなかでは、

(今は姉さまがいる!!だから大丈夫!!私は、私は、とても輝いている!!私は、今、最高の気分!!湧き上がるこの想い、今、ここで、ラップとして、みんなに、そして、ルビィたちAqoursに、ぶつけてやる!!)

と、熱き想いをラップとしてぶつけてみせる、そんな心意気を感じていた。そのためか、理亜ラップはこれまでのなかで1番炸裂していた。むろん、スマホの画面越しに見ていたルビィも、

(なんか昔の理亜ちゃんに、いや、今まで以上に元気な理亜ちゃんだよ!!)

と、今の理亜の姿に感動していた。

 だが、理亜のラップが終わると、理亜、すぐにこんなことを考えてしまう。

(でも、この延長戦が終わると姉さまはいなくなる・・・。そうなると、私、また1人・・・。また1人・・・。私、また1人であの苦しい思い、しないといけない・・・。今ある、この輝き、姉さまと一緒にやっている、この輝き、失ってしまう・・・。また、今と同じ輝き・・・、たった1人で・・・、見つけないといけない・・・)

そう、この延長戦が終わると姉の聖良がいなくなる、たった1人になってしまう、今ある輝き、Saint Snowという輝き、それがまたなくなってしまう、あの北海道最終予選で自分のミスで失ったその輝きがまたなくなってしまう、もう一度自分の手でたった1人で同じ輝きを見つけないといけない、そのためか、そんな絶望に満ちた思いになってしまった、理亜は・・・。

 だが、そんなときだった。理亜の心のなかに、

(理亜、理亜、聞こえていますか?)

という理亜にとって一番大事な存在である少女の声が聞こえてくる。これには、理亜、

(えっ、姉さま!!なんで!!)

と、その少女の声が姉の聖良だとわかると、なぜか自分の心のなかに聖良の声が聞こえてくるのかわからずびっくりしてしまう。

 と、同時に、

(そして、あつこ、聞こえているのなら返事をしてください!)

と、聖良があつこを呼ぶ声が聞こえてくる。すると、

(えっ、聖良さん!!どうしたのですか!?これって幻覚なのでしょうか・・・)

と、あつこ、突然のことで困惑してしまう・・・が、あつこ以上に困惑しているのが1人・・・。

(えっ、あつこ!!なんで、あつこの声、聞こえているわけ?これって、幻覚・・・?)

そう、理亜だった。どうやら理亜の心のなかに聖良となぜかあつこの声が聞こえているのかわからず頭がパニックになっているようだ。

 そんな理亜に対し、聖良、

(理亜、そして、あつこ、少し落ち着きなさい!!はい、深呼吸!!)

と、2人を落ち着かせることに・・・。

((スーハースーハー))(理亜・あつこ)

と、理亜とあつこ、なぜか心のなかで深呼吸をすると少し落ち着きをとり戻したのか、

(しかし、なぜ姉さまとあつこの声が聞こえているわけ?)(理亜)

(そうです!!これって神様のいたずらでしょうか・・・)(あつこ)

と、聖良に対しいろいろと言ってくる。

 ただ、聖良、これについてある仮説を出した。

(もしかすると、今、私たちは、この延長戦、3人が心を1つにして「Believe Again」を紡ごうとしています。3人の力で、あの、ラブライブ!覇者、王者のAqours、この巨人を打ち倒そうとしています。そんな、私、理亜、あつこ、この3人の熱き想いが3人の心をつなぎ合わせた、のかもしれませんね)

そんな聖良の仮説に、理亜、

(姉さま、そんな非現実的な仮説、言わないでください・・・)

と否定的な意見をいうも、あつこ、

(でも、実際に、今、私たち3人の心はリンクしています。そう考えると聖良さんの仮説も否定できません)

と、今起きていることは現実に起きていることなのであっさりと聖良の仮説を信じてしまう。まぁ、これには、理亜、

(たしかにそうだけど・・・)

と、少し納得いかない様子・・・。

 そんな理亜に対し、聖良、突然こんなことを言いだしてしまう。

(ところで、理亜、今、一瞬悩んでいたような気がしたのですが・・・)

そんな聖良からの突然の指摘に、理亜、

(えっ、姉さま、なんでそんなことがわかったわけ?)

と、図星だったらしくあわてながらも聖良にその指摘の理由を尋ねてしまう。す

 すると、聖良、

(それは簡単です。私は理亜の姉をずっとしてきました。なので、妹の理亜のことなんてすぐにわけるのです!!)

と、胸を張って言うと、横からあつこが、

(たしかにそうでしょうか?聖良さん、ここ最近、理亜さんが苦しんでいること、なんで理亜さんが苦しんでいるのかわからず、ずっと理亜さんのこと、心配していたような気がするのですが・・・)

と、つい、聖良の本音を言ってしまう。これには、理亜、

(姉さま・・・)

と、理亜のことを心配していた聖良のことを知って涙をにじませようとしていた。ただ、これについては、聖良、

(そ、そんなの、今は関係ありあせん!!)

と、恥ずかしながらも突っぱねてしまった。

 と、そんな聖良だったがすぐに本題へと入る。

(と、ここで本題ですが、理亜、なんでそんなに苦しんでいるのですか?)

これには、理亜、

(そ、それは・・・)

と言葉に窮してしまう。理亜にとってこのラストステージで本当にスクールアイドルを卒業してしまう姉の聖良に迷惑をかけたくない、そんな心境だったのかもしれない。が、そんなこと、聖良はお見通し・・・というか、事前にルビィから理亜のなかにある深淵なる闇について聞かされていたので、すぐに、

(理亜、もしかして、理亜のなかになる闇、それについて悩んでいるのですね)

と、聖良が優しく言うと、理亜、

(えっ、私のなかに、闇・・・)

と、聖良の言っていることが信じられない、そんな声をあげてしまう。まぁ、理亜、このとき初めて自分のなかに深淵なる闇が存在していることに気づいた、と言っても過言ではなかった。だって、理亜、このときまでそんな闇が自分のなかにあったことを自覚していなく、ただ、絶対なる命題であった姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、にむけて必死になって頑張っていたから。そのためか、理亜、これまでは自分のミスですべてを失った(と理亜が思っていた)姉聖良の分まで、いや、Saint Snowという輝き、そのものを失った、そのために、それと同じもの、同じ輝きを求めていたのだ、その原因が自分のなかにある深淵なる闇によるものとは知らずに・・・。そんなわけで、理亜、

(私のなか、闇がある・・・。いったい、どんな闇が私のなかに存在しているわけ・・・?姉さま・・・、教えて・・・)

と、聖良に尋ねてみる。

 すると、聖良、理亜に対しその闇の正体を教える。

(理亜、あなたのなかにある深淵なる闇、それは・・・、

 

Saint Snowというもの、すべて、Saint Snowという輝き、そのすべて、なにもかも失った、ゼロになってしまった、

 

です、理亜はその闇のせいで失ったもの、Saint Snowという輝き、それと同じもの、同じ輝きを追い求めようとしていたのです)

 この聖良の言葉に、理亜、

(そ、それって、ルビィたちと同じでは・・・)

と、唖然となる。なぜなら、理亜と聖良は沼津に行ったとき、不安・心配という深い海・沼の底に沈み込んだルビィたちと同じ状況に自分自身も陥っていた、そう思ったからだった。ルビィたちも「ダイヤたち3年生3人がいない」という喪失感により「ゼロに戻った、もとに戻った」という思いになってしまったのだ。

 けれど、これについて、聖良、答える。

(理亜、理亜の状況はたしかにルビィさんたちが陥った状況に似ていますが、理亜が抱えるその闇はそれ以上のものです。なぜなら、「ゼロに戻った、もとに戻った」なら「まだなにか残っている」とも言えるでしょう。でも、理亜の場合、「すべて失った、ゼロになってしまった」のですから、「なにもかも失った、なにかもない状態になった」と言えます。つまり、なにも残っていない、そんなことになります)

この聖良の説明に、理亜、

(た、たしかにそうですけど・・・)

と、聖良の鋭い指摘にただただ言葉を濁すしかなかった・・・。

 そして、聖良の牙はあつこにも向く。

(そして、あつこ、あなたは、自分のスティグマ、いや、理亜と同じ深淵なる闇によって、「なにもかも失った、ゼロになってしまった」、そう思い込んでいるはずです、今も!!)

この聖良の指摘に、あつこ、

(えっ、私!!別になにも失っていません!!なのに、なぜ、そう断言できるの)

と珍しく聖良にたてつくと、聖良、つかさず、

(あつこ、別に私たち関連じゃあありません!!)

と言うと、あつこ、

(では、なんでしょうか?)

と、聖良に尋ねてみる。

 すると、聖良、そんなあつこに対するある事実をつきつける。

(あつこ、あなたの場合、過去にしていたこと、そう、

 

フィギュアスケートにおいて限界を超える練習のせいで中3の大会のときに大ケガして半引退状態になってしまったことで、自分のフィギュアスケートにおけるものすべて、失ってしまった、ゼロになってしまった

 

ではありませんか?」

 で、この聖良の指摘に、あつこ、

(そ、それは・・・)

と、急に言葉を濁してしまう。どうやら図星のようだ。あつこの場合、自分の体の成長により、これまであった跳ぶときなどの感覚にズレが生じてしまい、結果、これまでジュニアの大会で優勝していたのが優勝したときを境に成績が落ち込んでしまった、ただ、まわりからは結果論だけで判断し、あつこにはきつい言葉をあびえるようになった、そのため、次第に限界を超える練習をあつこは次第に取り組むくらい自分を追い込んでしまった、それにより、限界を超える練習からくる披露などにより中3の大会で大ケガをしてしまい半引退状態になってしまった、そんな状態になったあつこにまたもまわりから失態ともとれる発言をあびせられてしまった、結局、その発言により傷ついたあつこの心のなかには「私のなかにあったフィギュアスケートそのもの、私の輝き、そのすべてを失ってしまった、ゼロになってしまった」と理亜と同じ深淵なる闇が生まれてしまった、というわけである。

 ただ、これには、あつこ、

(でも、聖良さん、今でもその闇を抱えている、その証拠があるのですか?)

と聖良を問い詰める。たしかに、あつこの場合、それは2年前の出来事である。今もその闇を抱える、とは言い切れなかったのだ。

 だが、聖良はあつこに対しこう指摘する。

(あつこはその闇をいまだに抱えている、そう断言できます。だって、あつこ、言っていましたよね、自分の足にあるスティグマのこと。そのスティグマこそあつこにとって今もその闇で苦しんでいる証拠です!!)

この聖良の指摘、これには、あつこ、

(ス、スティグマが・・・私の・・・闇・・・)

と絶句してしまう。たしかに聖良の言う通りである。あつこが持つスティグマは大ケガしたときにできた傷跡、そして、あつこが理亜から強要された練習をしているといつもそのスティグマにより大ケガしたときの思い出がフラッシュバックされるのである。それは温子自身に理亜と同じ深淵なる闇から発せられるものだった。あつこにとってそのフラッシュバックは「自分もその大ケガにより「(これまで自分が大切にしてきた)フィギュアそんもの、自分のなかにあるフィギュアという存在をすべてなくしてしまった、ゼロになってしまった」、という認識を思い起こさせる、いや、深淵なる闇に陥るトリガーにもなった。こうしてあつこは理亜と同様にその深淵なる闇により今も苦しんでいる、いや、あつこのスティグマが発動するたびに大ケガしたときのことを思いだしてはその闇から放たれる苦しみによってあつこは苦しんでいた、ということである。

 そんなわけで、あつこ、

(私のなかにも理亜さんと同じ闇があったんだ・・・)

と、ただ茫然となってしまった・・・。

 そんな、言葉を濁すことしかできない理亜、突然の聖良の指摘に唖然となるあつこ、そんな2人に対し、聖良、こんな言葉を投げかけてきた。

(でも、理亜にあつこ、その闇によって自分は苦しむ必要はあるのでしょうか。なにか大切な存在を忘れていないでしょうか)

この聖良の投げかけに、理亜、あつこ、ともに、

((えっ、それってどういうこと?))

と、頭をハテナマークを浮かべてしまう。

 が、聖良、そんな2人に対し、

(理亜にあつこ、私たちなかにはあるものが、大切なものが絶対にあります。そのものをただ2人は認識していないのだと私は思います)

と言うと、あつこ、あることを思いだしたのか、

(あっ、それって、この前、ルビィさんが言っていたもの・・・、宝物・・・では・・・)

と言うとともに、

(でも、それって、私のなかにあるのでしょうか?私はただのSaint Snowのサポーターに過ぎないのですが・・・)

と、なにか自信なさそうに話す。

 そんなあつこに対し、聖良、

(それについてはこれからあることをするのでそれによって証明されるでしょう)

と言うと、あつこ、

(って、聖良さん、、今からなにかするつもりですか?)

と聖良に尋ねる。

 すると、聖良、にこっと笑い、あつこと理亜に対しこう言った。

(理亜、そして、あつこ、思いだしてください、私たち、Saint Snowの想い出を・・・)

この聖良の言葉のあと、聖良、理亜、そして、あつこ、3人は、昔の自分たち、Saint Snowとしての想い出を振り返った・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第36話

「理亜、決めました!!私、スクールアイドルになってA-RISEやμ'sみたいに、スクールアイドルの頂点、ラブライブ!で優勝し、A-RISEやμ'sが見た景色を自分も見てみたいです、理亜と一緒に!!」

まず想いだしたのは聖良と理亜が自分たちの夢を決めたところだった。聖良はネットで中継されていたラブライブ!決勝の様子を見てそう言うと理亜も、

「姉さま、私の夢は姉さまと同じです!!私、姉さまと一緒にスクールアイドルになってラブライブ!で優勝する!!」

と理亜も聖良の夢に賛同した。 

 その後、聖良は幼馴染のあつこに対し、

「あつこ、実はあることをしようと考えております」

と言うと続けて、

「私、理亜と一緒にスクールアイドルになっラブライブ!に優勝します!!」

と、自分の夢を語った。それに対し、あつこ、

「聖良さんがそう言うのなら、今は私のこと(フィギュア)で精一杯だからそこまで力にはなれないけれど、いつかはきっと2人のことを全力でサポートしてあげるからね!!」

といつの日か2人を全力でサポートすることを誓った。

 そして、聖なる雪が降る日、旧函館公会堂の庭で、聖良と理亜、あつこ証人のもと、こう誓い合った。

「私、鹿角聖良はここにいる理亜、そして、あつことともにスクールアイドルになってラブライブ!優勝を目指します!!」(聖良)

「わ、私も、姉さまと一緒に、ラブライブ!優勝、目指します!!」(理亜)

「この私、蝶野あつこ、この2人の誓い、たしかに確認しました!!2人の証人として、私、いつの日か、その誓いを果たすため、全力でサポートすること、ここで誓います!!」(あつこ)

「って、あつこ、しれっと、変なこと、言ってた!!なんで、あつこが、そんなこと、誓うの!!」(理亜)

「理亜さん、いけず!!私だって、2人の誓い、絶対に果たしたいんだもん!!仕方ないでしょ!!」(あつこ)

「あつこ、あんまり理亜をおちょくらないでくださいね」(聖良)

 

そんな出来事を思いだした3人、すると、理亜、

(こ、これって、たしか、私たちがラブライブ!優勝という夢を誓い合った日・・・)

と言うとあつこも、

(たしかにとても懐かしい感じがします。たしかに、そんなこと、言っていましたね)

と、昔を懐かしむように言うと、聖良、

(そう、私たちはあの日、ラブライブ!決勝の中継映像を見て、私たちの夢を決め、3人でその夢を叶えることを誓いあいました。それは私たちにとってSaint Snowを始めるきっかけとなりました。そして、その聖なる雪の降る日での3人の誓いが今の私たちを作り上げたのです)

と2人に対して言うと2人とも、

(たしかにその通りです、姉さま・・・)(理亜)

(私にとってスクールアイドルを目指そうとしている2人をサポートすることを決めたのですから、そう考えると聖良さんの言う通りです・・・)(あつこ)

と、聖良の言うことに納得していた。

 

 そして、次に思いだしたのは・・・、あつこが聖良と理亜のサポートに入るきっかけとなった出来事、だった。あつこのは限界を超える練習による披露などにより中3の大会で大ケガを負ってしまう。そのため、あつこは長期の入院を余儀なくされた。そんなあつこが入院しているさなか、あつこがいる病室に、

「あつこ、お見舞いにきました。容態はどうでしょうか?」

と、聖良が見舞いにしに入ってきたのだが、あつこ、突然、

「うぅ、もう、私、ダメ・・・。この前の大会の大事故で、私、複雑骨折してしまったし、壁にぶつかってしまった拍子に靴のブレードで足に深い傷ができちゃったよ・・・」

と、聖良にすがるように弱弱しく泣いてしまう。これには、聖良、

「あつこ・・・」

と、あつこを心配そうに言うと、あつこ、聖良に対し弱音を吐くがごとく泣きながらこう言ってしまう。

「私、もうダメ!!この大事故、大ケガで、私、これまでの栄光も、これまでやってきたこと、全部、失くしてしまった、そんな気になってしまったよ・・・。もう、フィギュアをするやる気がでないよ・・・」

 そんな弱弱しいあつこを見て、聖良、

(このままだとあつこがダメになってしまいます。なら、今こそ、あなたの誓い、果たしてもらいます!!)

と、あつこにあの日の誓いを果たしてもらうことでなんとか立ち直ってもらおうと思ったのか、あつこに対しこんなことを言いだしてしまう。

「あつこ、それだったら、あの日の誓いを・・・、その誓いを果たしてください!!あつこ、お願いです、私と理亜の夢のサポートをしてください!!」

 この聖良の提案に、あつこ、

「えっ・・・、聖良さん・・・、それって・・・」

と、唖然となるも、聖良、そんあつこを元気づけるためにこう言った。

「そうです!!私と理亜の夢、スクールアイドルになってラブライブ!優勝を目指す、その夢のお手伝いです!!あつこ、私たちのユニット、私たちの夢を叶ええるためのお手伝いをしてください!!私たちにはあつこの力が必要なのです!!」

 この聖良からの熱いラブコール?、これには、あつこ、

「私が・・・聖良さんと理亜さんのお手伝い・・・」

と、もう1度聖良に確認すると、聖良、

「はいっ!!あつこ、あの日の誓い、聖なる雪の日に誓ったあの誓い、今から、果たしてくださいね!!」

と力強く言うと、あつこ、

「うぅ、聖良さん、ありがとうございます!!私に生きる意味を与えてくれて本当にうれしいです!!」

と、泣きながら答えてくれた。

 その後、聖良は理亜にあつこが正式に自分たちのサポートにつくことを話すと、理亜、

「へぇ~、あのあつこが私と姉さまのサポートをするとは・・・。本当に役に立つわけ?」

と、疑い深く言うと、聖良、そんな理亜に対し、

「あつこなら十分に私たちのサポートをしてくれます。だって、あつこ、作詞作曲することもできますし、私たちのことをよく知っていますからね」

と、あつこのことを信じるかのごとく言うと、理亜、

「ふ~ん。姉さまの言うことですから、その点は心配ない、と言える・・・」

と、妙に納得していた。

 

(えっ、あつこがこのときケガをしたこと、知っていたけど、こんな大ケガだったなんて、私、知らなかった・・・)

と、理亜にとって初めて知る事実に驚嘆する理亜。そんな理亜に対し、あつこ、

(理亜さん、そうなんです!!これが私にとってのスティグマ、聖良さんの言うところの、深淵なる闇、になってしまいました・・・)

と、悲しそうに話す。これには、理亜、

(私、そんなことを知らずにあつこに対して過酷な練習をさせてしまった・・・。どうお詫びすればいいわけ・・・)

と、肩をがくしと落としながら言うと、聖良、

(たしかに、理亜、理亜が持つ闇からのものとはいえ、理亜が行った無謀といえる練習はあつこにとって自分のスティグマを再発させるようなものでした。それくらい理亜が強要してきた無謀といえる練習は、ほかの人にとって、そして、理亜自身にとって深く傷つけるものだったのです)

と理亜に対し言うと、理亜、

(あつこ、そうとも知らずにあつこに対し過酷な練習を課してしまい、本当にごめん・・・)

とあつこに対し謝るとあつこも、

(いや、それは別に大丈夫だから・・・。でも、理亜さん、私に謝ってくれてありがとう)

と理亜に対し自分に謝ってくれたことに感謝した。

 そんな2人に対し、聖良、

(でも、これであつこも私たちに加わり、私たちは3人で、私たちの夢、ラブライブ!優勝を目指すようになりました。私、理亜、あつこ、このときから3人の物語は始まったのです!!)

と、元気よく言うと、理亜、あつこ、からも、

(まぁ、あつこ、このとき、私と姉さまのサポートを行ったこと、それは事実だし、そう言えなくもない・・・)(理亜)

(たしかにそうでしたね・・・)(あつこ)

と、聖良の言うことをに同意していた。

 

 次に3人が思いだしたのは理亜が聖女に入学したころ、そう、3人が自分たちのユニットを本格始動したとき、だった。あつこが本格的に聖良と理亜のサポートについてときから理亜が聖女に入学するまでのあいだ、3人は「Self Control」などの曲作り、さらに、あつこが作った練習プログラムなどにそってスクールアイドルに必要な能力を伸ばすなどの下準備を続けていた。それはたった1年という限られた期間のあいだで自分たちの夢を叶えるためであった。

 そして、ついに理亜が聖女に入学した、そのとき、

「理亜が聖女に入学してくれました。スクールアイドルユニット、本格始動です!!」

と聖良が元気よく言うとあつこも、

「でも、聖良さん、私、これまでの下準備をしてきたからその自覚がないのですが・・・」

と申し訳なさそうに話すと、聖良、

「でも、これからは理亜とともにスクールアイドル活動をしていくつもりです。残された時間はそんなにありません。これからは本気でやっていくつもりです!!」

と、元気いっぱいにこれからの抱負を語った・・・その横で理亜が、

「私だって頑張る!!絶対に、私と姉さまの夢、叶えてみせる!!」

と、こちらもやる気いっぱいの気持ちで取り組む姿勢をみせていた。

 そんなやる気いっぱいの2人に対し、あつこ、ある大事なことを聖良に尋ねた。

「ところで、聖良さん、もうすでに聖良さんと理亜さんのユニット名、決まったのですか?」

そう、聖良と理亜のユニット名、これはこれから自分たちがそのユニット名を名乗っていくことになるのだから、とても大切なこと、であった。そのユニット名を尋ねてきたあつこ、対し、聖良、自信満々の様子でこう答えた。

「はい、すでに決めております!!あの聖なる雪に誓った、あの日のことを忘れないために、「Saint Snow」と・・・」

この聖良の言葉に理亜も、

「Saint Snow・・・、「聖なる雪」・・・、私、この名前、とても好き!!姉さまと一緒に決めたから、とても好き!!」

と、「Saint Snow」というユニット名に太鼓判を押すくらいの気持ちになっていた。

 そんな2人を見てか、あつこも、

「「Saint Snow」ですか・・。なんかとてもいい響き、いや、聖良さんと理亜さんにぴたったりなユニット名、ですね・・・」

と微笑みながらそう答えた。

 

(Saint Snow・・・、このとき、その名を聞いて、私、「聖良さんと理亜さんがスクールアイドルとして大成できる」って思っていました・・・)

と、あつこが言うと理亜も、

(私と姉さま、この名前を考え出したとき、あの聖なる雪の日に誓った、そんな私と姉さまに一番あった名前だとピンときた!!)

と、Saint Snowの名前を考え出したときのことを思いだしていた。

 そんな2人に対し聖良も、

(Saint Snow、私たちはこのとき、この名前に恥じないように頑張っていこう、そう思っていました。それは、私、理亜、あつこの夢を、ラブライブ!優勝という私たちの夢を叶える、それを目標に向けて頑張ろうとしている、そんな私たちの姿があったのかもしれません)

とこのときのことを思いだしてはそう振り返った。

 

 そして、次に思いだしたのは、ラブライブ!夏季大会に向けて頑張っている3人の姿だった・・・。聖良が今度のイベに向けて「Self Control」を編曲してのだが、その際、聖良、あつこに対し、

「ねぇ、この「Self Control」だけど、こんな風に編曲したけど、どう思う?」

と尋ねると、あつこ、

「えぇ、とてもいいかも。でも、こことここは・・・」

と、自分が気になっているところを指摘するとすぐに、

「そのところをこうすればもっといい曲になります!!みんなの心にSaint Snowの音楽を響き渡らせることができます!!」

と、自分なりにすぐに編曲してはそれを聖良に聞かせる。これには、聖良、

「うん、たしかにあつこの言う通りですね!!それを採用しましょう」

と、答えた。

 だが、このときだった。横にいた理亜から、

「私、姉さまの編曲した方が良い!!そっちの方がとてもかっこいい!!」

と、あつこにいちゃもんをつけてきた。これには、あつこ、

「でも、こうなると、聖良さん、「また振り出しに戻った・・・」なんてがっかりしない?」

と、理亜に反論すると理亜も、

「いや、姉さまが編曲した方が良い!!姉さまの方がよりみんなの心にSaint Snowの音楽が鳴り響く!!」

と、あつこと真っ向勝負を挑む。

 そんな対立する2人・・・であったが、聖良、冷静に物事を判断するがごとく2人に対して、

「理亜、あつこ、2人の意見は聞きました。なら、あつこが指摘したところを入れつつも私なりにもう少しアレンジしたいと思いますけど、2人とも、どうでしょうか?」

と、仲裁案を出すと2人とも、

「姉さまの言うことだから、異議なし!!」(理亜)

「まぁ、聖良さんのいうことですから私も異議はありません」(あつこ)

と、聖良の案に賛成した。

 

(こうしてみてみると、理亜とあつこ、このときからいがみ合っていたって感じですね)

と聖良が思い返しながら言うと、理亜、

(だって、あつこに姉さまを取られると思っていたから・・・)

とその理由を言うとあつこも、

(あのときは大人げないことをしていたかもです。でも、音楽にかける情熱は本物です!!曲に関しては絶対に譲れない気持ちでした!!)

と、あのときのことは謝りつつも音楽やSaint Snowにかける情熱は本物、だから、曲げたことはしない、そんな気持ちになっていた。むろん、これには、理亜、

(でも、姉さまの作る音楽の方が良い!!)

と、姉聖良が作る音楽に誇りをもっているのか、あつこに反論する。

 そんな2人を見つつも、聖良、

(まぁまぁ、2人とも、それについては今はいいとして・・・)

と、前置きしつつ、

(けれど、私を含めて、3人、もっと良い曲にしよう、もっとSaint Snowの音楽を広めよう、そして、それによって私たちの夢を叶えていこうそ、その2人の気持ちはこのときも、いや、ずっと変わらない、そう思っております。そして、今もそれは変わらない、ずっと変わらない、だと思います)

と、自分の今の気持ちを口にした。これには、理亜、あつこ、ともに、

(今、そう思うと、私のなかに、その気持ち、残っているかもしれない・・・)(理亜)

(Saint Snowの曲を作っていた私からしても、その気持ち、ずっと大切にしてしていきたい・・・)(あつこ)

と、聖良の言ったことについて自分のなかにもその気持ちが残っていることを実感していた・・・。

 

 そして、次に思いだしたのはラブライブ!夏季大会決勝のときのことだった。決勝の結果発表、そこで、

「第8位!!函館聖水女子高等学院、Saint Snow!!」

と、Saint Snowの名が呼ばれた瞬間、会場中から、

「えっ、初出場なのに8位!!」「すごい、すごい!!」

という声とともに大歓声が湧き上がっていた・・・が、とうの本人たちは、

「・・・」

と、無言になりつつも悔し涙を流していた。

 そして、すべてが終わり、舞台袖に移動した聖良と理亜、そこに、

「聖良さん、理亜さん、やったよ!!8位じゃない!!すごい成績だよ!!」

と、あつこが喜びながら2人のもとに駆け寄る・・・も悔し涙を流している聖良を見てか、あつこ、

「聖良さん・・・」

と、ちょと心配そうに言ってしまう。

 すると、今までため込んでいた気持ちを吐き出すがごとく聖良はこう叫んだ。

「8位じゃダメ!!優勝しないと!!優勝しないといけなかったのです!!」

さらに、理亜も姉に続けとばかりに自分の思いを吐き出した。

「姉さまの言う通り!!私たちは優勝を目指していた!!あともう少しだった。けれど、私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝は叶わなかった!!悔しい!!とても悔しい!!」

この2人の悔しい思い、それには、あつこ、

「聖良さん、理亜さん、ごめんなさい。8位という成績で喜んでいた私がバカだったね・・・」

と2人に謝るように言うと聖良も、

「いや、あつこの気持ち、嬉しいです。それなのに、そんなことに気付かずに責めてしまって大変申し訳ありません」

と、あつこに謝っては頭を下げた。が、これには、あつこ、

「聖良さん、謝らないでください。ほら、顔を上げて」

と言うと聖良も頭を上げた。

 そして、あつこは聖良と理亜に対しこう言っては元気づけた。

「でも、ラブライブ!で(全体の)8位という成績じゃ聖良さんも理亜さんも納得いかないでしょ!!冬季大会では優勝を目指して頑張らないとね!!」

そんなあつこの声援に、聖良、気持ちを切り替えたのか、

「たしかにあつこの言う通りです。私、聖良、これからも頑張っていきます!!」

と力強く言うと理亜も、

「ね、姉さんがそうおっしゃるなら、私も、理亜も、一生懸命頑張る!!私と姉さまの夢、ラブライブ!優勝、目指して頑張る!!冬季大会では絶対に優勝してやる!!」

と力強く宣言した。

 

(このときは本当に悔しい思いでいっぱいでした。けれど、あつこの声援のおかげで次へと気持ちを切り替えることができました。あつこ、あのときは本当にありがとうございました」

そう聖良は改めてあつこにお礼を言うと理亜も、

(私も、あのときのあつこの言葉、あれがあったから、気持ち、入れ替えることができた・・・。つこ・・・、ありがとう・・・」

と、ぽつりとあつこにお礼を言った。これには、あつこ、

(あっ、あのときは2人とも悔しい思いだったからね。だから、私、そんな2人を元気づけようとあんなことを言ってしまったんだよ!!でも、それによって2人が前向きに気持ちを入れ替えることができたなら2人のサポーターとしては本当に嬉しい限りです)

と、自分の思いを語った。

 そして、聖良はあつこと理亜にこんなことを言った。

(でも、8位という成績は私と理亜、そして、あつこがいたから成し遂げることができたのです。1人が欠けてしまったら絶対にこんな成績にはならなかったと思います)

この聖良の言葉に対し、理亜、

(その成果は私と姉さまの成果といえる。けれど、たしかに、あつこのサポートなしじゃ難しいかも・・・。その点では、あつこ、あなたの功績はすごいかも・・・)

と、理亜なりにあつこを褒めると、あつこ、

(理亜さん、褒めてくれてありがとう)

と、理亜にお礼を言った。これには、理亜、

(ほ、褒めたって、なにもでない!!)

と、ツンデレが出てしまった・・・。

 が、聖良、ここである重大なことを言った。

(けれど、Saint Snowとしての輝かしい歴史はここが一番輝いていた時期だったのかもしれません。このあと、私と理亜のなかで少しずつ気持ちのすれ違いが起き、Saint Snowはそこから下り坂へと進んでいきます・・・)



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SNOW CRYSTAL 序章 第37話

 そして、次に思いだしたのは・・・、ラブライブ!夏季大会後のある1コマだった。

「聖良さん、この「DROP OUT」だけど、この曲調はどうですか?」

と、あつこは聖良に尋ねる。ラブライブ!冬季大会、Saint Snowは「CRSH MIND」で北海道予備予選をトップで通過、北海道最終予選に向けてそこで歌う曲、「DROP OUT」を作っていた。

 そんなあつこの質問に、聖良、

「あつこ、ここは少し激しくしたらどうでしょうか」

とアドバイスを送ると、あつこ、

「聖良さん、わかりました。ここは激しくしましょう」

と、答えていた。これには、聖愛、微笑みながら、

「あつこ、よろしくね」

とあつこに返事をしていた。

で、そんな聖良の微笑みを見て、あつこ、ふとこんなことを言ってみる。

「でも、聖良さん、ここ最近、微笑みが増えている気がします。これまではどんなことでも真面目そうな表情が多かったのですが・・・」

そんなあつこの意見に、聖良、すぐに、

「まぁ、なんと言いますか、ここ最近、スクールアイドルとして活動していると、なんか楽しくなってしまうのです。これまではどんなことでも真面目に取り組まないといけない、「楽しい」だなんてそんな感情なんていらない、と思っていました。けれど、ここ最近、スクールアイドルをしていること自体、なんか楽しくなってしまうのです。なので、私、その感情に戸惑いを感じてしまいます」

と、今の心境を言うとあつこも、

「それって、もしかして、Aqoursの千歌さんとのやり取りが原因ではないでしょうか。Aqoursって、なんか、「スクールアイドルを楽しんでいる」、そんな感じがしますから」

と自分の意見を言うと聖良も、

「それはどうでしょうか」

と、言葉を濁してしまった。

 が、そんなとき、

「姉さま、それ、少し気が緩んでいる証拠!!少しは気を引き締めて!!」

と、聖良の横にいた理亜が聖良に注意すると、

「理亜・・・」

と、聖良、理亜の言葉が気になったのか、つい、理亜の名前を言ってしまう。

 が、理亜、そんな聖良のことなんて気にせずに、

「姉さま、私たちは勝ち続けないといけない!!そのためにも、「DROP OUT」を完成させてほかのスクールアイドルたちに力の差を見せつけてやるべき!!私と姉さま、Saint Snow、その目標はただ1つ、ラブライブ!優勝、あるのみ!!それを肝に命じるべき!!」

と、姉の聖良に意見してしまう。これには、聖良、

「理亜・・・」

と、理亜のことを心配そうに見ていた。

 その後、理亜はランニングの準備のために外に出ると、あつこ、理亜のことで心配している聖良に対し、

「理亜さん、まわりから「次こそ、ラブライブ!優勝だ!!」「もっと頑張れ!!」「もっと練習して上を目指せ!!」などなんて言われて、そのために「勝ち続けないと・・・」という気持ちが高ぶっているのかもしれません。それに・・・、今度こそ、聖良さんと理亜さんの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えないといけない、そんな気持ちが先走っている、のかもしれません。しかし、こうなってしまうと、理亜さん、いつ壊れてもおかしくない、そう思ってしまいます」

と、あつこから見た理亜の心情について語ると聖良も、

「たしかにあつこの言う通りかもしれませんね。ただ、それが本番に出なければいいのですが・・・」

と、理亜のことを心配していた。

 そんなあつこと聖良の心配をよそに理亜は自分の部屋で練習着に着替える途中、こんなことを言いだしてしまう。

「もっと勝ち続けないと・・・、もっと上を目指さないと・・・、絶対に・・・、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝、目指さないと・・・」

 

(私は千歌さんとの交流により少しずつですが、「スクールアイドルを楽しみたい」、そんな想いになってきました。そのため、スクールアイドルとして活動すること自体楽しく思えるようになりました。けれど、理亜は私とは対照的に、勝利に対する思い、「私と理亜の夢を絶対に叶えたい」、その気持ちが高ぶってしまい、結果、「勝ち続けないといけない、夢を絶対に叶えないといけない」、そんな思いがだんだんと強まってしまいました。いや、このとき、理亜はその思いによって自分で自分を追い詰めようとしていたのかもしれません)

と、聖良、このときのことを思いだしては自分の考えを述べるとあつこも、

(たしかに、このときも理亜さんは自分を極限まで追い詰めようとしていたと思います)

と、聖良の考えに賛同してしまった。

 で、とうの理亜はというと・・・、

(た、たしかに、このとき、その思いが強かった・・・。でも、そうでもしないと、姉さまと私の夢、叶えることができない、そう思っていた・・・。勝ち続けないと姉さまと私の夢、絶対に叶わない・・・)

と、自分のこのときの思いを答えた。

 ただ、この理亜の思いを聞いて、聖良、こう述べた。

(しかし、このとき、私と理亜のあいだでスクールアイドルに対する考えにおいてすれ違いが起きていたのかもしれません。私も、このとき、「勝つことも大切」だと思っていたいたのですが、それでも相手をリスペクトする心の世湯がありました。けれど、理亜にはそんな心の余裕なんてなかった、それくらい、理亜は自分を追い詰めていた、そう言えるかもしれません。それが、あの日の、あのときの出来事で、私と理亜、2人の差が妙実にあらわれてしまいました・・・)

 そして、ついに、聖良、理亜、そして、あつこはあの日のことを、理亜とのなかに思念なる闇が生まれた、その日のことを思いだした・・・。

 

 それは、あの日、ラブライブ!冬季大会北海道最終予選の日の出来事だった。聖良が危惧していたことが実際に起きてしまった。予選本番、自分自身を極限まで追い込んでしまった理亜、それまで完璧にパフォーマンスをしていた理亜だったが、最後のサビに入る直前、理亜の心のなかでは、

プツンッ

という緊張の糸が切れてしまい、聖良を巻き込んだ大転倒を起こしてしまった。これにより、Saint Snowは予選敗退となってしまった・・・。

 その後、自分たちが予選敗退になったこと、自分たちの夢への道が潰えたこと、そのために舞台近くの廊下で一緒に泣いていた聖良と理亜・・・であったが、そんな理亜が見ていたもの、それは・・・、

グスグス・・・

と泣く姉聖良の姿だった。

 そして、理亜はそんな姉聖良の姿を見て、

(私のせいだ!!私があんなミスをしなければ、ラブライブ!決勝に進出できた!!姉さまと私の夢に近づけることができた!!それなのに、私、あんなミス、してしまった!!全部、わたしのせい!!私があんなミス、したから、姉さまと私の夢、ラブライブ!優勝、叶えること、できなかった!!Saint Snow、終わりにしてしまった!!姉さまに申し訳ないこと、してしまった!!姉さまとの・・・、姉さまとの・・・、もの、すべて、失ってしまった!!姉さまも、全部、なにもかも、すべて、失ってしまった!!もう、姉さまに、顔向け、できない!!)

というまるで自分を追い詰めるような思いが理亜の前進を駆け巡っていた。いや、このとき、理亜のなかに深淵なる闇が生まれてしまった。

 そして、そんな思いに耐えられなくなったのか、理亜、

バシッ

と、聖良を突き放しては遠くへと走り去ってしまった。

 で、これには、聖良、理亜のことを心配してか、

「理亜・・・」

っと叫ぶも聖良はただ自分から理亜が離れていくのを見ているしかできなかった。

 そんな聖良に対し、2人の様子を物陰から見ていたあつこが聖良のそばに行くと、聖良、そんなあつこの存在を知ってか、

「あっ、ごめんなさい、こんなみっともない姿、みせてしまって・・・」

と、泣きながら言うおとあつこも聖良のことを思ってか、

「聖良さん、それは仕方がないことです。だtって、まさかの予選敗退なんて、自分たちの夢を叶えることができなかった、その悔しさ、これまで聖良さんたちのことを全力でサポートしてきた私だってこう思っています、とても悔しい、って・・・」

と、自分のなかにある悔しさをにじませて言った。

 そんなあつこの思いを受け取ったのか、聖良、あつこに対し、

「あつこ、ありがとう、私、普段なら、こんな姿、見せたくもないんだけど、今だけ、今だけさせて・・・。あつこ、ごめん、あつこの胸、貸して・・・、泣かせて・・・」

と、あまり見せたことがない聖良の弱弱しい姿を見せつつもこう言っては自分の顔をあつこの胸のなかにうずめると、あつこ、

「聖良さん、わかりました・・・。2人で一緒に・・・、この悔しさ・・・、泣いて・・・、晴らしましょう・・・」

と優しく言うと2人一緒に

クス・・・クス・・・

と悔し涙を流した・・・。

 

(姉さま、私、あのとき、姉さまに失礼なこと、していた・・・。本当に、ごめんなさい、姉さま・・・)

と、理亜、このときのことに対し、姉の聖良に失礼なことをしたの思ったのか、突然謝ってしまう。これには、聖良、

(このときは理亜のなかに深淵なる闇が生まれてしまい、突然のことだったために理亜もパニック・・・、いや、その闇のせいで自分を追い詰めてしまったのです。それは仕方がないと思います。なので、そのことについては大丈夫ですよ)

と、このときの理亜の心境のことを考えてあまり心配しないように理亜に諭すとあつこも理亜のことを思ってか、

(理亜さん、私だって理亜さんの立場になればきっと理亜さんと同じ行動をとると思います。なので、理亜さん、そんなに落ち込まないでください)

と言うと、理亜、

(姉さまにあつこ、私のこと、心配してくれて、ありがとう・・・)

と2人にお礼を言った。

 そして、聖良はこれを受けてこんなことを言いだした。

(理亜は「勝ち続けないといけない、ラブライブ!優勝という私との夢を叶えないといけない」、そんな重圧により、自分で自分を追い詰めてしまいました。結果、それが理亜のミスへとつながったと思います。これにより、私たちの夢は潰えてしまい、ミスをした理亜は、「自分のミスのせいでSaint Snowを終わりにした。Saint Snowという輝きを失ってしまった」、という思いになってしまい、それが、「なにもかも失った、ゼロになってしまった」、という深淵なる闇を自分の手で作り出してしまったのです・・・)

この聖良の発言に、理亜、

(姉さま、そう思うと、私、とても苦しい・・・)

と、今なお、その闇に苦しむ自分を重ねあわしたのか、とても苦しい思いになると、聖良、

(あっ、理亜、ごめんなさい・・・)

と、理亜に謝ってしまう。これには、あつこ、こう言ってはこのときの話を締めた。

(でも、たしかにその闇によって、理亜さんは、この出来事以降、苦しむことになります。ただ、それも、あの出来事、Aqoursのルビィさんとの交流によって和らいでいった、と思います。そう、あのときの出来事、理亜さんとルビィさんのサプライズな出来事によって・・・)

あつこはそう言うと3人はあの日の出来事、理亜とルビィのサプライズな出来事のことを思いだした・・・。

 

「さいごは・・・できた!!」(ルビィ)

「うん、すごくいい!!」(理亜(

「「う~ん、ヤッタ~!!」」(ルビィ、理亜)

自分のミスにより予選敗退、それどころか、それにより、自分のなかに深淵なる闇が生まれ、それにより苦しんでいた理亜、だったが、偶然自室のベッドで泣いている理亜を見つけたルビィ、予選敗退で終わるはずだったSaint Snowを続けるため、クリスマスライブをルビィは理亜に提案、それにより理亜は元気を取り戻した。そんなルビィと理亜は同じ1年の、花丸、ヨハネ、2人の力を借りて、クリスマスライブで歌う曲を作詞していた。そして、今、その歌詞が完成した・・・のだが、作曲については理亜もルビィも素人、だったため、理亜は仕方なくある人のもとへ・・・。

「あつこ、お願いがあります。この歌詞に曲をつけてください!!」

そう、あつこだった。理亜の数少ない人脈のなかで聖良以外に作曲できる人物があつこしかいない、いや、あつこのことを毛嫌いしていた理亜さえ認めるほどの作曲能力を持つあつこだからこそ理亜も作曲をあつこに依頼してきたのだ。ただ、あつこからしたら、暗く沈んでいた理亜がルビィという新しき仲間を得て頑張っている姿を見て、自分も理亜のために頑張ろう、と思ってか、

「うん、わかった!!ルビィさんと理亜さんの作詞した曲、私が立派に作ってあげるからね!!」

と、元気よく返事をしたのだった。

 

 そして、ついに、クリスマスイブ当日・・・。

(ついに始まる!!これが姉さまに贈るサプライズプレゼント!!姉さま、このライブが本当の、Saint Snowとしてのラストステージ!!姉さまにとって、サプライズプレゼント、だけど、私と一緒に、このサプライズライブ、駆け抜けてください、姉さま!!)

ステージとなる基坂にてルビィとともにスタンバイする理亜、そして、ついに最初の曲、この日のために、(このときの)Saint Snowとしてのラストライブのための、そして、姉の聖良、ダイヤに贈る曲、「Awalken the power」が始まった・・・・が、イントロが終わった瞬間、

(えっ、なんで、姉さまとダイヤさん以外に、Aqoursのみんな、出てきたわけ!?)

と、理亜がびっくり、いや、ルビィもびっくりのことが!!なんと、本来、聖良とダイヤだけの登場だったのが、なぜか、それ以外の千歌以下、Aqoursメンバー全員が一緒になって登場してきたのだ。

 実は、これ、聖良とダイヤがルビィと理亜に向けて仕向けた逆サプライズだった。これには、聖良、

(理亜には申し訳ないのですが、ここはやっぱり、Saint SnowとAqours、Saint Aqours Snowとして一緒に登場してライブをするのが一番だと思いました。でも、これで理亜が立ち直ってくれたら私としてはうれしい限りです。理亜、私からの逆サプライズ、どうだったでしょうか?)

と、理亜に向けてメッセージを送ると理亜も、

(姉さま・・・、まさか、姉さまにサプライズ、だったのに、逆サプライズを受けるとは・・・、姉さま、いじわるです・・・)

と、少しびっくりしつつも、

(でも、姉さま、私へのプレゼント、ありがとうございます)

と、逆サプライズというプレゼントを送ってくれた姉聖良に向けてお礼を言った。

 

 そんなライブの最中、理亜は自分の隣で一緒になってパフォーマンスをする聖良を見ては、

(なんか、今、姉さまと一緒にパフォーマンスをしている、そう思うと、私、なんか楽しい気がする・・・)

と、つい思ってしまう。

 が、このとき、理亜のなかである違和感を覚える。それは・・・、

(でも、これまで、私と姉さま、一緒にしてきた、それとは違う感じがする・・・)

そして、その違和感がなんなのか考える理亜。すると、

(あっ、これまで、姉さまと私、「勝つこと」だけ、考えていた・・・)

と、これまでの思いに気付く。そう、理亜が感じていた違和感、それは、これまで聖良と理亜は自分たちの夢、ラブライブ!優勝、それを目指して「勝つこと」だけを考えてスクールアイドル活動をしてきたこと、だった。対して、今は、これまでとは違う、姉聖良とAqoursのみんなと一緒にスクールアイドルを楽しんでいる、そんな自分がいた。それは理亜のなかで初めて生まれたものかもしらない、もしくは、「スクールアイドルを楽しもう」とするAqoursメンバーから影響を受けたものかもしれない。ただ、今、言えることは、理亜は、今、スクールアイドルを楽しんでいる、ということだった。

 そんな違和感を感じつつも、理亜、

(でも、楽しむこと、それを考えるだけで、これまでにないパワー、感じてしまう・・・。これまで、「勝つこと」を、一番に考えていた。だが、それで、私、ミスをした・・・。対して、「楽しむこと」、そのことを考えるだけで、私、ミスなんて関係ない、もっと姉さまと、みんなと、スクールアイドルを、楽しみたい、そう思えてしまう・・・)

そう、理亜は「楽しむこと」の無限大の可能性を感じていた。

 そして、理亜はついにあることに気付く。

(私、ルビィたちと一緒に行動して、わかった!!スクールアイドルって楽しむこと、それがとても大切!!今、ここにいるみんなと一緒に、このライブを楽しもう、スクールアイドルを楽しもう、そんな私がいる!!そんなことを考えると、楽しむこと、それってとても大切、そう思えてきてしまう・・・)

そう、楽しむことの大切さをついに理亜は知ったのだ。これまでの理亜はは自分たちの夢のため、勝ち続けることを第一にしてきた。けれど、それにより、理亜は自分を追い込んでしまった。それにより、理亜はミスをしてSaint Snowを終わりにしてしまった。そのため、理亜のなかに深淵なる闇が生まれた。だが、しかし、このクリスマスライブで理亜は楽しむことの素晴らしさを知った。それにより、理亜のなかにある闇を一時的だが塞ぐことができた。

 

 そんな、Saint Aqours Snow、奇跡のライブ、が終わるとすぐに、、

「理亜ちゃん、ルビィと一緒に考えたクリスマスライブ、楽しめた?」

と、ルビィが言うと理亜も、

「うん、ルビィ、私、なんかわかった気がする、これまでにない感じ、楽しむこと、それがこのライブで、感じることができた!!ルビィ、このライブに私を誘ってくれて、ありがとう!!」

と、笑いながらお礼を言った。そんな2人を見てか、聖良、

「理亜、なんか変わった気がします・・・」

と言うと、聖良の隣にいたダイヤも、

「ルビィも変わったと思いますわ」

と、ルビィと理亜、2人を見ては微笑みながらそう答えていた。

 そんな微笑ましい光景のなか、突然、聖良と理亜のもとに、

「聖良さんに理亜さん、すごいライブでした!!なんか2人を見ていたら私もみんなと一緒にライブを楽しみたいって感じになりました!!」

と、あつこ、飛び込んできてはライブの感想を大声で言ってしまう。これには、聖良、

「あつこ、このライブはあなたの力によるものが大きいと思います。なぜなら、このライブ、その最初の曲、「Awalken tha power」、それを作曲したのがあなたですから。あの曲のおかげで、この私を含めて、ここにいるみんなが一緒になってこのライブを楽しむことができたのですから・・・」

と、あつこに対し自分の思いを述べると理亜も、

「まぁ、姉さまの言うこと、一理あるかも・・・。私とルビィはあの曲を作詞した、けれど、作曲はできなかった・・・。それを、あつこ、作曲してくれたから、あの曲は完成した。あの曲のおかげで、私と姉さま、ルビィたちAqoursのみんな、それに、観客も、みんな、このライブを楽しむことができた!!今だけあつこに感謝してあげる・・・」

と、ぶっきらぼうに、でも、不器用な自分なりに最大限のお礼を言った。これには、あつこ、

「2人とも、ありがとう!!」

と、お礼を言う2人に感謝した。

 そして、理亜のなかにある想いが生まれた。それは・・・、

(私、決めた!!この楽しい想いを、これまで姉さまと一緒にやってきた、一緒にスクールアイドルをやってきた、そんな大切な想い出、その想いのなかで、私と姉さま、2人が大切にしてきた想い、そして、そのなかではぐくんだ姉さまとのキズナ、それを大切にしていきたい。だから、今、決めた!!私、Saint Snowを・・・、そして、自分だけの新しいユニットを・・・)

その想いのもと、理亜は聖良に対し、

「姉さま、私、決めました!!」

と、突然、そう言うと、聖良、

「理亜、なんでしょうか?」

と、理亜に尋ねると、理亜、ついに自分の決意を語った・・・。

「姉さま、私、Saint Snowを続けない。だって、これは姉さまとの(大切な)想い出だから、世界で1つしかない雪の結晶だから。だから、新しいグループ(ユニット)で違う雪の結晶を見つけて、姉さまにもみんなにも喜んでもらえる、(そんな)スクールアイドルを作る!!(だから、姉さま、)みてて!!」

 

(このとき、私は確信しました、理亜ならきっと素晴らしいユニットを作ることができるって・・・)

クリスマスライブでの出来事を思いだした聖良はこのときの理亜に対する想いを口にすると、理亜、

(でも、私は・・・、私は・・・、そんなことすら忘れて・・・、自分のユニットを・・・、壊してしまった・・・)

と、このあとの自分の暴走によりせっかく作った理亜のユニットが壊れてしまったことを後悔するも、あつこ、

(たしかにそうですけど、私としてはあのときのクリスマスライブのときの理亜さんの想いだったら今なお理亜さんのユニットは続いていたと思います。だって、理亜さんがクリスマスライブのときの想いをもとに作ったユニット、理亜さんが暴走するまで誰も辞めずに続いていました。いや、和気あいあいと楽しみながらやっていましたから・・・)

と、自分の考えを述べた。理亜が暴走するまで、理亜のユニットは誰も辞めずに続いていた。いや、理亜があのクリスマスライブで気づいた「スクールアイドルを楽しむこと」、その想いのもと、理亜のユニットメンバーはみんなと一緒にスクールアイドルを楽しみながら練習を続けていた。そんな同じユニットメンバーであったあつこの指摘に、理亜、

(うぅ、たしかにあつこの言う通り・・・。ぐうもでない・・・)

と、がくしと肩を落とした。

 そんな理亜に対し、聖良、

(でも、理亜、今、あのクリスマスライブのことをを思いだしてみてどう感じましたか?)

と、理亜に尋ねると、理亜、はっきりとこう答えた。

(姉さま、私、あのとき、初めて、スクールアイドルでよかった、スクールアイドルは楽しい、って感じてた。そして、その想いを胸に自分だけの新しいユニットを作ろうとしていた。けれど、私は、もし、自分のなかに姉さまから指摘された闇があるのなら、その闇によってみんなに迷惑をかけた、そんな気がする・・・)

それはまるで理亜が暴走を始めた日、理亜がラブライブ!決勝にて優勝を遂げたAqoursの姿を見て、「自分がミスしなければあのステージに、Aqoursと同じように、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝を果たすことができた」、そんな後悔ゆえに自分のなかにある深淵なる闇、「(自分のミスのせいで)なにもかも失った、ゼロのなってしまった」、その闇の封印を解いてしまった日、その日より理亜は暴走してしまい、結果、自分のユニットメンバー全員が理亜のユニットを辞めてしまう事態を迎えてしまった、それに対する反省の弁、それを言っているかのようだった。

 だが、そんな理亜に対し、あつこ、

(でも、それでもなお、ここで理亜さんが反省しているなら、きっと理亜さんにも新しい仲間ができますよ。だって、理亜さん、たとえ、深淵なる闇がなくなったとしても、みんなと一緒にスクールアイドルを楽しむ、そんな想いは残るのですから」

と、理亜に優しく語りかけるように言うと、理亜、

(あつこからしたら、ちょっと恥ずかしいセリフ、にみえてしまう・・・)

と、ついあつこにツッコミを入れてしまう。これには、あつこ、

(理亜さん、それは余計なお世話です!!)

と、ちょっとプンプンしながら言った。



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SNOW CRYSTAL 序章 第38話

(と、ここまで、私と理亜、あつこ、3人でこれまでのことを振り返ってきたけど、理亜、それで、なにかわかりましたか?)

と、聖良、これまでのことを振り返った上で理亜にそれによってなにか気づいたことがないか尋ねてみると、理亜、

(たしかに、これまでいろいろあった。なら、もし、自分の中に、深淵なる闇、それがあるなら、私、あの日、あのとき、私が(北海道最終予選で)私がミスしたことで、Saint Snow、そのすべて、失ってしまった、なにもかも失った、それが私が持つ、闇、だとみえてしまう・・・)

と、これまでのことを振り返ってもなお自分のなかにある闇にとらわれてしまう。

 だが、そんな理亜に対し、聖良、

(理亜、それならどうしてこれまでのことを、Saint Snowとしての想い出を思いだすことができたのですか?すべてを失ったのならそんな想い出なんて思いだすことができないはずです!!)

と、熱く問い直すと、理亜、

(た、たしかにそうですけど・・・)

と、言葉に窮してしまった。

 しかし、ここで、聖良、ここだとうばかりに理亜に対し攻勢にでる。

(理亜、気づいてください、私と理亜、そして、あつこのあいだにはSaint Snowとしての想い出がいっぱいいっぱい残っています!!だから、こうして、この場で、これまで3人で紡いできたSaint Snowとしての想い出を思いだすことができたのです!!理亜、そのことに気づいてください!!)

この聖良の熱い想い、これには、理亜、

(た、たしかに姉さまのおっしゃる通りかも・・・。わ、私のなかに姉さまとの想い出が、Saint Snowとしての想い出が今なお残っている・・・、そんな気がします・・・)

と、まるで「聖良の熱い想い、岩をも通す」といえるくらいに理亜の心のなかにある深淵なる闇に一筋の光が通った、そんな感じで理亜の氷の心を溶かし始めたようだ。

 でも、聖良の熱い想いはこれだけではすまなかった。聖良、ここが踏ん張りどころと思ったのか、さらに理亜に攻勢をかけた。

(理亜、気づいてください!!私と理亜、そして、あつこはSaint Snowとしてこれまで3人でやってきました。その想い出のなかで大切に育ててきた3人の想い、そして、その想いのもとで紡がれていった3人のキズナ、それがあったと思います。いや、今なお、これからもずっとそれは残っていくと確信できます!!)

そう、今行われている、このSaint Snowラストステージ、そのなかで、聖良と理亜、そして、あつこがこれまで3人で築き上げてきたSaint Snowの想い出を振り返ってきた。それは理亜のなかにもその想い出が残っていた、それがあって初めてできたものである。なので、理亜のなかにもまだその想い出が残っていた、いや、自分のなかにある闇のせいでその想い出ごと理亜の心の奥底に封印されていたのである、それを聖良は解放したのだ。さらに、その想い出のなかには3人がこれまではぐくんでいた3人の想い、そして、その想いのもと、3人一緒に紡いできた3人のキズナ、そのものがあった。聖良はそれすら理亜に気付かせようとしていたのだ。

 そんな聖良の熱い想い、熱き攻勢に、理亜、ついに折れた!!

(姉さま、たしかにそうかもしれませんね・・・。私と姉さまはこれまで一緒にSaint Snowとしてやってきました。そして、その想い出は私のなかに今でもあります。いや、それ以上に、Saint Snowとしてやってきたこと、それは私と姉さまとの一緒の想いがあった・・・、いや、その想いを一緒になって育ててきた、だから、私と姉さまのキズナはSaint Snowを始める前以上に強くなった、キズナそのものが私と姉さまによって紡がれ、そして、今、より強いものになった気がする!!そう思うと、私、なんかわかった気がする!!私のなかにも、まだ、Saint Snowという想い出、想い、キズナはちゃんと残っている!!)

このとき、理亜のなかにある闇は少し晴れたのかもしれない。理亜のなかにある闇、それは、「Saint Snowというものすべて失った、ゼロになってしまった」、それに対する後悔だった、だが、理亜のなかにもSaint Snowという想い出、想い、キズナが残っている、そのことは理亜のなかにある闇を否定することにもつながるから・・・。

 だが、そんな理亜に対し、聖良、こう注意する。

(理亜、残っているのではなく、存在している、心のなかにある、でしょ!!)

これには、理亜、

(はいっ、姉さま、そうでした!!残っている、のではなく、自分の心のなかにもある、存在している、です!!)

と、まるで怒られた子どものように聖良に謝ってしまう。

 そんな理亜をみてか、聖良、

(理亜、ところで、私と理亜、あつこのなかにあるSaint Snowという想い出、想い、キズナ、それをまとめてなんというかわかりますか?)

と理亜に尋ねると、理亜、

(姉さま、それって何ですか?)

と、逆に聖良に尋ねてしまった。

 すると、聖良は理亜対しこう答えた。

(理亜、覚えていてください。それこそ、

 

Saint Snowという輝き、そして、宝物、

 

なのです!!私と理亜、あつこがこれまで築き上げてきたSaint Snowという想い出、想い、キズナこそSaint Snowという輝きであり、それがやがて宝物となるのです!!)

この聖良の発言に、理亜、

(Saint Snowという輝き、そして、宝物・・・)

と、絶句していた。

 しかし、ここでも聖良はそんな理亜に対しここでも攻勢をかけた。

(理亜、そうです!!それこそ、理亜が失ったと思っていた、Saint Snowという輝き、なのです!!理亜は自分のなかにある闇んいよってSaint Snowという輝きというものを同時に失ってしまった、そう思ってしまいました。けれど、実際は違いました。理亜はその闇によってその輝きを失ったかのように思っていたのです。しかし、この場で、理亜は、その輝き、それが今での理亜のなかに存在していることに気付くことができました。なので、理亜、感じてください、自分のなかに、その輝き、その宝物がまだあることを・・・)

(た、たしかに私のなかにある・・・。私、姉さまとともに、これまでのこと、Saint Snowという想い出を思いだして気づいた・・・、私のなかにもSaint Snowという輝き、そして、宝物がある、って・・・)

と、ついに自分のなかに失ったと思っていたSaint Snowという輝き、そして、宝物、そのものがあることを・・・実感した・・・。

 そんな理亜に対し、聖良、あることを伝える。

(そして、理亜、その輝き、それがやがて宝物になるのですが、その宝物があるからこそ、ずっと、私と理亜、そして、あつこはずっとつながっていけるのです!!それは、たとえ離れ離れになったとしても、私と理亜あつこはその宝物があるからずっとつながっていけるのです!!)

この聖良の発言に、理亜、

(たしかに姉さまの言う通りかも・・・。だって、この宝物があるから、私、寂しくない、ずっと姉さまと一緒にいられる、そんな安心感が感じられる気がする・・・)

と、自分もこの想いを実感していた。人というのはこれまでみんなで築き上げてきた想い出、想い、キズナ、そんな輝き、それはやがて宝物へと変わるのだが、その宝物をもとにこれからもずっと頑張ることができる、そんな生き物である。それは人だからこそできることであり、その輝き、宝物というのは人に「楽しむこと」と同時に無限の力を与えてくれるものである。なぜなら、その宝物によって人はもっと成長することができる、もっと輝くことができる、そうなるように人はもっと努力する、もっと頑張ることができるから、それは輝き、宝物というこれまで仲間たちと一緒に築き上げてきたもの、想い出、想い、キズナ、それが土台となっているから、いや、とてもしっかりした土台をもとに人は日々成長し、新しい輝き、そして、それが新しい宝物として得ることができるから・・・。人はそういう無限大のパワーを持つ生き物である。そんなことを聖良は理亜に教えようとしていたのである。そして、理亜もその聖良の教えをついに実感したのである。

 そんな聖良の教えを感じた理亜に対し聖良はこうまとめた。

(理亜、その輝き、宝物、それを忘れないでください。その輝き、宝物があればきっと私がたとえいなくなったとしても、1人で、いや、仲間たちと一緒に前へ進むことができる、そう確信しております)

これには、理亜、

(はいっ、姉さま!!)

と、はっきりを言った。理亜のなかには深淵なる闇があった。けれど、聖良によってこれまで自分のなかで封印していた、聖良とあつことともに築き上げてきた、Saint Snowの想い出を思い返したことでSaint Snowという輝き、そして、宝物、それが自分のなかにある、それに気づいたのである。さらに、それによってずっと姉の聖良とずっとつながっていける、そう理亜は思えるようになったのだ。そんな理亜だからこそ自信をもって、はっきりと、元気よく答えることができたのかもしれない。

 そんな2人の様子を2人の横から見守っていたあつこ、

(聖良さんと理亜さんを見ていると、なんか、私、泣けてきます。なんかいい物語になっている気がします・・・)

と、感動の涙を流していた。

 だが、そんなあつこに対し、聖良、とんでもないことを言いだす。

(えっ、あつこ、気付かなかったのですか?私、今まで思いだしてきた、Saint Snowとしての想い出話、ですが、「私と理亜、そして、あつこ」、この3人をSaint Snowとして話してきたつもりなのですが・・・」

この聖良の突然のカミングアウト、これには、あつこ、

(えっ、私もSaint Snow!?ちょ、ちょっと、聖良さん、それって違うでしょ!!Saint Snowは聖良さんと理亜さんの2人だけですから!!)

と、聖良にツッコミを入れると理亜も、

(あつこの言う通りです、姉さま!!Saint Snowは、私と姉さまの2人だけ!!あつこはたたの私と姉さまのサポーターです!!)

と、これまた聖良に激しくツッコミを入れる。

だが、聖良にとってみればそれは本気(マジ)だったらしく、理亜とあつこに対し、聖良、

(でも、私としてはシンガー兼パフォーマーの私と聖良、そして、その2人を支えてくれるサポーターのあつこ、この3人がSaint Snowだっていう認識でした、いつも・・・)

と真面目に答えていた。これには、理亜、

(ね、姉さま・・・、それって、本気、ですか・・・)

と唖然となりつつも姉の聖良に尋ねると、聖良、

(はい、そうです)

と、なんの迷いもなく答えた。

 そんな聖良によってなぜかSaint Snowの一員にされてしまったあつこ、それを本気で言っている(のかあつこにはわからないが・・・)、そんな聖良に対し、

(あの・・・、理亜さんの言う通り、私はただ2人のサポーターとして2人を支えてきた身なのですが・・・)

と、聖良に意見すると、聖良、自分の意見の真意をあつこに伝えた。

(あつこ、これまであなたは私たち2人に対して強力なサポートをしてきました。Saint Snowの楽曲の制作、スケジュール管理、私たちのための練習プログラム作成などなど、Saint Snowの陰の部分のほとんどをあつこが担ってきました。だからこそ言えるのです、あつこ、あなたこそ、「Saint Snow第3のメンバー」、だって!!)

Saint Snow第3のメンバー、それは、聖良と理亜、スクールアイドルとして表舞台に立つ2人に対し、その2人に献身的に使える、いや、2人に対し強力なサポートをしてきたあつこに対しまわりのみんなからつけられた、あつこの二つ名、である。けれど、そんな二つ名を聖良から言われたあつこはと言うと・・・、

(聖良さん、それは言いかぶりすぎですよ~。私は、ただ、聖良さんと理亜さんがスクールアイドルとして頑張れるようにサポートしただけです!!ただ、それだけで、私が「Saint Snow第3のメンバー」だなんて、それって、まわりのみんながそう言っているだけですよ、聖良さん!!)

と、反論。もちろん、理亜も、

(あつこの言う通り!!Saint Snowは私と姉さまの2人だけ!!)

と、2度3度も同じことを言っては姉の聖良に対し反論してしまう。

 だが、そんな反論すら気にせずに、聖良、あつこと理亜に対し自分のその考えを述べた理由を語った。

(理亜にあつこ、私があつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」と言ったのはまわりのみんなの影響を受けたわけではありません。あつこが「Saint Snow第3のメンバー」として言った理由、それは、今、この場で、私と理亜、そして、あつこは、これまで、私たちのなかで紡いできたSaint Snowとしての想い出を思いだしていましたが、その想い出話のなかには必ずあつこも出てきているのからです!!私と理亜がスクールアイドルを目指すようになったときも、Saint Snowを始めるときも、夏季大会で8位になったときも、冬季大気予選で敗れ去ったときも、そして、あのクリスマスライブのときも、必ず、私と理亜の隣にはあつこがいたのです!!それに、あつこの熱心的なサポートのおかげで私と理亜はSaint Snowとしてこれまでやってくることができたのです。私と理亜がSaint Snowの表の顔ならあつこは裏の顔、だからこそ、私はあつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」として認めている、そうだと言えるのです!!)

そう、あつこはこれまで聖良と理亜を熱心的にサポートしてきた。それは、スクールアイドルとして、Saint Snowとして2人が活躍していたときもあつこはそれを続けてきた。そう考えると、聖良の言う通り、Saint Snowの表の顔が聖良と理亜なら裏の顔はあつこだといえる。そのため、3人のまわりにいる人たちからはあつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」と呼ぶようになったのである。ものには表もあれば裏もある。日の光が当たる表に対し裏にはその光すら当たらない。けれど、その裏であっても人は表のために一生懸命頑張っている、いや、裏の活躍があって初めて表は輝くことができるのである。よく表に立つ人たちを支える人たちのことを裏方と呼ぶことがある。その裏方が表の人たちのために一生懸命頑張っているからこそ表の人たちは活躍することができるのである。もし裏方がちゃんと動いていないとその土台となる部分がしっかりしていないぐらぐらの状態のなかで表の人たちは動き回らないといけない、そうなれば、たとえ表の人たちがかなり有能だとしてもまわりの人たちから見ればそれはただの凡人としか見ることができないだろう。裏方とはそれくらい重要な存在なのである。そんな考えが聖良にはあるからこそ聖良は(自分と理亜という表の存在を陰から支えてくれる裏方の)あつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」として認めていたのだ。

 で、この聖良の考えを聞いた理亜、

(た、たしかに、姉さまがそんな考えであつこのことを思っているなら、これ以上、私が言うことはない・・・。それよりも、あつこが姉さまと私の想い出、Saint Snowの想い出に必ず出てくるのならもう認めるしかない・・・。あつこ、あなたこそ、「Saint Snow第3のメンバー」、です・・・、私、そんなの、認めたくないけど・・・)

とあつこのことを「Saint Snow第3のメンバー」として認めてくれた。ただ、本心としては・・・、

(でも、本当なら、私、姉さまを、独占したいのに・・・)

みたいのなのですがぁ・・・。本当、理亜、かなりのツンデレ、なんだから・・・。

 そんな、聖良と理亜、2人から「Saint Snow第3のメンバー」として認めてくれたあつこ、ついに・・・、

(聖良さんに続いて理亜さんまで「Saint Snow第3のメンバー」として認めてくれるなんて・・・。私、これまでお二人に尽くしてきた、サポートしてきた甲斐がありました。それなら、私、蝶野あつこ、これからは、「Saint Snow第3のメンバー」として日々精進していきます!!)

というか、ようやく自分のことを「Saint Snow第3のメンバー」として認めたのであった(けど、そう認めるまで長かったような気がするのですが・・・)。

 そして、そんなあつこに対し聖良は理亜を含めるかたちでこんなことを言いだしてきた。

(そして、あつこ、あなたのなかにも私と理亜と同じ輝き、Saint Snowという輝き、そして、宝物が存在します・・・)

この聖良の突然の発言、これには、あつこ、

(えっ、たしかに私は「Saint Snow第3のメンバー」としては認めましたが、そんな輝き、宝物があるなんて信じられないのですが・・・)

と、聖良に意見する。

 すると、聖良、そんなあつこに対し、

(でも、理亜と同様に、あつこ、あなたのなかにも私たちとのSaint Snowとしての想い出が存在しています。それもかなり大きな存在です。あつこ、それがあるからこそ、今、この場で、私と理亜と一緒にその想い出を思い返すことができたのです)

と、自分の考えを述べると理亜も、

(たしかに姉さまの言う通り!!私は認めたくないけど、この場で思いだしたSaint Snowとしての想い出、(前にも言ってましたが)その想い出には必ずあつこが登場します。そう考えると、姉さまの言う通り、あつこ、あなたのなかにも私と姉さまと一緒に紡いできた想い出、想い、キズナ、それが存在している、そう言えるかも・・・)

と、聖良の発言を認めてしまった。

 そんな2人の言葉に、あつこ、もう1度自分を振り返ってみる。

(私のなかにあるもの・・・、それは・・・、これまで聖良さんと理亜さんと一緒に紡いできたSaint Snowの想い出・・・。私、2人のために一生懸命頑張ってきた・・・、2人を一生懸命サポートしてきた・・・、2人がSaint Snowとして大活躍できるように、2人が自分たちの夢を叶えることができるように・・・。そう考えると、私、私のなかにも、聖良さんと理亜さんの言う通り、Saint Snowとしての輝き、そして、宝物があるのかもしれない・・・)

そう、これまであつこは、聖良と理亜、この2人の夢を叶えるために一生懸命頑張ってきた、一生懸命2人をサポートしてきた。それは2人がSaint Snowとして活躍していたときも続いた。そんなあつこの手厚いサポートのおかげもあり、聖良と理亜はSaint Snowとして大活躍することができた。そんな2人を熱心的にサポートあつこだからこそ、あつこのなかにも聖良と理亜と同じもの、Saint Snowという想い出、想い、キズナ、すなわち、Saint Snowという輝き、そして、宝物が存在していたのだ。むろん、それはただ2人をサポートしていただけではない。聖良と理亜、2人と一緒に行動し、2人のために一生懸命頑張ってきたあつこだからこそいえるものだった。あつこはそのことに気づいたために自分のなかに聖良と理亜と同じSaint Snowという輝き、そして、宝物があると初めて自覚したのだった。

 そして、聖良はあつこに対しある重大なことを話す。

(あつこ、あなたは今まで理亜と同じ闇、「なにもかも失った、ゼロになってしまった」、その闇に苦しんできました。それはあなたの昔の栄光を取り戻すために、自分の体の成長によって失ったものを取り戻すために、限界を超えた練習をし続けてきたことで大会でミスをして大ケガし半引退状態になった、そんなフィギュアのことがあったからのものでした)

この聖良の発言に、あつこ、

(た、たしかにその通りです・・・)

と、図星をつかれたような気がしていた。あつこは小さいときからフィギュアスケート選手として大活躍をしていた。それは12歳のときにジュニアの大会で優勝するほどだった。だが、自分の体の成長によりこれまで培われてきたジャンプなどの感覚のズレが生じてしまう。あつこはそのズレを直すべく、いや、12歳のときの栄光を必死になって取り戻すべく、そして、そんなあつこの苦労すら知らずに、ただ、「もっと頑張れ」とか、「甘えるな!!」というまわりの人たちの心無い声により自分を追い込んでしまい、限界を超えた練習を続けた結果、中3の大会のときにミスをして大ケガをしてしまった、それにより半引退状態になったばかりかまわりの人たちから失望以上もの深刻なマイナスの言葉攻めにあったためか、このときのあつこの心のなかに、

 

「フィギュア選手としての想い出、想い、キズナ、なにもかも失ってしまった、ゼロになってしまった」

 

そんな深淵なる闇が生まれてしまったのだ。それを聖良にあつこに対し指摘してきたのだ。自分にとって1番の親友ともいうべき聖良からそう指摘されたことにより、あつこ、ついに自分のなかにある、理亜と同じ、深淵なる闇、それを認めてしまったのだ。

 しかし、その闇の存在について、聖良、あつこに対しこんなことを言いだしてきた。

(しかし、あつこ、その闇以上のものがあつこのなかにあると思います)

これには、あつこ、

(そ、それって・・・、聖良さん、もしかして・・・)

と言うと、聖良、

(そうです。あつこの、今、思っているものです)

とうなずきながら言った。

 そして、あつこは、今、自分が思っていることを口にした。

(それって、聖良さん、私のなかに存在しているもの、

 

Saint Snowという輝き、そして、宝物、

 

ですか・・・)

あつこがそう言った瞬間、あつこのなかになにか湧き上がるものがあった。それは・・・、

(あっ、そう思った瞬間、私、なんか、清々しいものを感じてしまいます・・・。これって、まさか、自分が、Saint Snowという輝き、宝物、それを認めているから!!いや、自分のなかにある闇が静まっていく感じがします・・・)

あつこが感じたもの、それは、Saint Snowという輝き、そして、宝物、それが自分の体を駆け巡っている、そんなものだった。あつこにとってその輝き、宝物はこれまで自分のなかで眠っていた、いや、その存在にあつこ自身気づいていなかったのだ。その代わり、あつこのなかにあったのは、これまで自分を支えてきたフィギュア、それによってできた穴、いや、深淵なる闇、だった。そのため、あつこはこれまでほかの人たちに対して当たり障りのないように暮らしてきた。それは、フィギュアでの自分の体の成長のために限界な練習をしてしまいミスをして大ケガをしてしまった、それに対してまわりからの深刻な言葉攻めにあい、すべてを失ってしまった、それによるものが大きかった。それがあつこのなかにある深淵なる闇の誕生、そして、成長へとつながった。だが、しかし、その闇に苦しむなか、あつこはそれとは別のもの、自分に理解を示す聖良とその妹である理亜とともに、Saint Snowという輝きを知らないうちに得ることができた。さらに、聖良と理亜とともに、その輝きをSaint Snowとして活動していくことで知らないうちに成長させることができたのである。そして、今、聖良によってそのすべてを知ることができた、いや、解放することができたのである。それはあつこにとって自分が持つ闇、自分の体の成長のせいで無謀な練習を続けてしまい、結果、フィギュアにおけるものすべてを失った、そんな過去さえ飲み込むくらいのものにもなった。それくらい、あつこにとってこのSaint Snowという輝き、そして、宝物、は大きな存在になっていたのだ。

 そんなあつこを見てか、理亜、

(まさか、あつこのなかにも私と同じものを持っていたなんて・・・。ちょっとしゃくだけど、あつこ、私と同じ仲間、私と同じ闇を持つとともに、私と同じ輝き、同じ宝物を持つ者同士です、私たちは・・・)

と、少し照れながら言うと、あつこ、

(理亜さんもそう言ってくれてありがとうございます。たしかに聖良さんの言う通り、私のなかにも聖良さんと理亜さんのと同じ、Saint Snowの活動を通じて私たち3人のSaint Snowとしての想い出、想い、キズナがあります!!私、今、それに気づきました!!そして、それが私のなかでSaint Snowという輝き、そして、宝物になっている・・・、それって・・・、私・・・、Saint Snow第3のメンバーとしては幸せ冥利に尽きます・・・)

とうれし涙を流しながら言った。

 そんなあつこを見てか、聖良、

(これであつこの件はなんとかなりましたが、理亜、あなたにはある現実を突きつけないといけません、これからのスクールアイドル活動のためにも・・・)

と、理亜に対しなにかを予告すると、理亜、

(えっ、姉さま、それっていったい・・・)

と、聖良を見つめ返してしまった。



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SNOW CRYSTAL 序章 第39話

 理亜も知らないある現実・・・、それについて、聖良、

(理亜、これを聞いたら理亜はきっと怒るかもしれませんが・・・)

と前置きしつつ、

(でも、私は理亜にこの受け入れざるをえない現実を理亜に伝えます・・・)

と言うと、理亜、

ゴクッ

とつばを飲み込んだ。理亜にとってそこまで真剣な表情で迫ってくる姉聖良の姿を見ることはめったにないことだった。いつもは妹LOVEの聖良なのでそこまで真剣な表情で迫ってくることなんてないのだが、今回はそうなっている、それすなわち、聖良が今から言おうとしていることはかなり真面目、いや、かなり重要な話といえた。

 そして、聖良はついに理亜に対しその現実を伝えた。それは・・・。

(理亜、これはもしもの話ですが、もし、私たちSaint Snowがラブライブ!決勝に進出してAqoursと対決をしたら、きっと、私たち、Saint Snowは・・・、

 

Aqoursに負けていた

 

と思います・・・」

 この聖良の突然の発言に、理亜、

(えっ、姉さま、なんてことを言うわけ?私と姉さまだったらルビィたちAqoursに負けるわけない!!)

と聖良にきつく言うも、聖良、

(でも、それは覆ることなんてない現実なのです・・・)

と真面目な表情で言った。そのためか、理亜、

(えっ、あの姉さまがそんなことを言うなんて・・・)

と絶句してしまった。ただ、それを横から見ていたあつこも、

(私も聖良さんの言うことはもっともだと思います。だって・・・)

と、聖良の言うことを認めつつもその理由を言おうとしていた。が、それを、聖良、

(あつこ、申し訳ないのだけど、それについては私から言わせてください)

と言うとあつこも、

(聖良さん・・・、わかりました・・・)

と口を閉ざしてしまった。

 そして、聖良は理亜に対し、衝撃的な現実、その理由を答えた。

(理亜、なぜ、私たちSaint SnowがAqoursに負けてしまうのか、それはですね・・・、

 

Aqoursというグループは日本で一番スクールアイドルを楽しもうとしているグループである

 

ということです・・・)

 だが、理亜にとってあまりにも唐突的な答え・・・だったのか、この聖良の答えに、理亜、

(姉さま、ふざけないでください!!楽しもうとしていることと私たちSaint Snowが負けることとはまったく関係ありません!!)

と怒りをぶつけるように聖良に言うも、聖良、ものおちせず、ただ、

(でも、それくらいAqoursというグループは私たちSaint Snowすら力が及ばない、それくらいすごい、いや、日本一のスクールアイドルだと言えます)

と言うと、さらにある事実を理亜に突きつける。

(それに、実際、Aqoursというグループは私たちSaint Snowが成し遂げることができなかったラブライブ!優勝を果たしております!!)

この事実を突きつけられた理亜、それにより、

(・・・)

と無言になってしまった・・・のだが、それでも、覆ることができない現実に抗おうとしているのか、理亜、聖良に反論をぶつける。

(で、でも、私たちだって、ラブライブ!優勝、という夢に向かって勝つことだけを考えてやってきた!!それなのに、私たちがAqoursに負けるなんて納得できない!!)

そう、理亜と聖良、そして、あつこ、は自分たちの夢、ラブライブ!優勝に向けて、勝つことだけ、ラブライブ!で勝ち続けることだけを考えてやってきた。むろん、そのなことをしてきたためか、理亜、

(それに、私が暴走していた、そのとき、私、ラブライブ!にて絶対に勝ち続ける、そんなユニットにしたい、だから、私、あつこたちユニットメンバーに過酷な練習をしてきた・・・)

と、自分の思いを吐き出した。そう、理亜が暴走した理由、それは、深淵なる闇「ゼロになってしまった、なにもかも失った、そこからくる姉聖良に対する後悔、というのもあるのだが、そのために理亜が目指していたもの、それは、自分たちの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えるために、ラブライブ!にて勝ち続けるためのユニットを作ることだった。そのため、理亜はスクールアイドルとしては駆け出しだったあつこたちユニットメンバーに対して過酷な練習を課していたのだ。いや、ユニットメンバーが抜けるごとにその度合いは強くなった。みなさん、お気づきだろうか、理亜の言動を・・・。実は、理亜、暴走し始めたとき、こう言っていた、「勝つための・・・」。これにより理亜は(あつこ発案だが)函館山の麓から1番目の観音様までのダッシュをユニットメンバーに課してきた。だが、それにより初めてユニットメンバーが抜けると、理亜は「勝つための・・・」から「絶対に勝つための」という文言に変わり、さらに2番目、3番目の観音様までのダッシュへと変わっていった。だが、暴走の度合いが極限に達すると、理亜、「絶対に勝つための」から「絶対に勝ち続けるための」に変わってしまったのだ。それくらい、理亜は暴走の度合い、いや、自分を追い込むごとに、「勝つこと」、それに対する執着の度合いも高まってしまった、というわけである。

 だが、そんな理亜の反論に、聖良、

(理亜、私たちは間違っていました。ただ、「勝つことがすべて」、ただそれだけではラブライブ!優勝なんて無理でした・・・)

とただたんに言うと、理亜、

(姉さま、なんでそんなに弱気なわけ!!)

と怒るように言うと、聖良、理亜にある事実を突きつけた。

(それでは、なぜ、私たちSaint Snowは冬季大会決勝に進出できなかったのですか?「勝つことがすべて」、それが間違いだとなぜ言えるのですか?それは・・・、理亜、あなたが北海道最終予選で、「勝利しないといけない」、そう思い込んでしまい、自分自身を追い込んでしまった、それからくるミス・・・、があったからです!!)

この言い逃れることができない事実に、理亜、

(えっ・・・)

と、言葉を失ってしまう。たしかに聖良の言う通りである。ラブライブ!冬季大会北海道最終予選、姉の聖良はAqoursリーダーの千歌との交流で「スクールアイドルを楽しもう」という心が少しずつではあるが芽生えていた。一方、理亜は極度の人見知り、ということものあり、自分のなかで「勝利しないと」という気持ちが日に日に強くなっていた。いや、それどころか、理亜のまわりにいる人たちから「今度こそ勝って!!」「勝ち続けろ!!」という「勝利せよ」という言葉が投げかけられてしまった。そのため、なにに対しても真面目である理亜はそれを真面目に受け止めてしまった。それにより、理亜は次第に自分で自分を追い込んでしまった、「勝利せよ」という思いによって・・・。そして、自分で自分を追い込んでしまったことで起きた最悪の事態、それがあの最終予選での理亜のミスだった。

 人は「勝利」という名のもと、それに向けて頑張ろうとする。けれど、その気持ちを保たせることは容易いことではない。なぜなら、それを保たせるためには体力的にも精神的にも苦痛を伴うものかもしれないから。だが、それによって自分で自分を追い込んでしまうとそこに待っているのは、「破滅」、である。理亜みたいにただのミスだけですめばいいかもしれない。ただ、それにより理亜のなかに深淵なる闇が生まれてしまった。ただのミス、けれど、理亜にとってみれば、「勝利こそすべて」、その思いにより自分で自分を追い込んだ末に起きた悲劇、なのかもしれない。いや、理亜以上に・・・

(作者、そこから先は私に言わせてください!!)(あつこ)

「えっ、あつこさん・・・」(作者)

(私も「勝利」という思いによって破滅した者ですから・・・)(あつこ)

「あつこさん、わかりました。ここから先はあつこさんにバトンを渡しましょう」(作者)

 そして、あつこは作者に代わり、理亜に対しあることを語った。

(理亜さん、理亜さんと同じ、「破滅」、を経験したのは理亜さんだけではありません。この私も理亜さんと同じ「破滅」を経験しました)

これには、理亜、

(えっ、あつこも・・・)

と、あつこに問い直すと、あつこ、自分が経験した「破滅」について語った。

(私、12歳のときにフィギュアのジュニアの大会で優勝しました。けれど、自分の体の成長によりこれまで感じていた感覚にズレが生じ、それによって成績もどんどん落ちてしまいました。そのため、昔の栄光に返り咲きたい、いや、昔みたいに、「勝ちたい」、そのために一生懸命練習をしました。むろん、まわりの人たちからも、理亜さんのときと同じく、「勝利せよ」「もっと練習しろ!!」「勝利を目指せ!!」みたいな言葉攻めにあい、自分もそれが当たり前という気持ちになってしまいました。けれど、それでも成績が伸びず、まわりの人たちの声もさらにきつくなるばかり。そのため、私は自分で自分を追い込んでしまった!!「勝利しないといけない!!」「絶対に勝たないといけない」、その気持ちゆえに限界を超えた練習をしてしまった・・・。結果、中3の大会のときに大きなミスをして大ケガ、それにより、フィギュアは半引退状態になってしまいました。でも、それって、私が、「勝利こそすべて」、昔の栄光を取り戻したい、昔みたいに「勝たないといけない」、その思いから起きた桧垣、なのかもしれませんね・・・)

あつこにとっての悲劇、それは中3の大会での大ケガであった。その裏には、あつこの、12歳のジュニアの大会での優勝、そんな過去の栄光を取り戻すために、昔みたいに「勝利する」ために、必死になって「勝利しよう」と頑張っている姿があった。自分の体の成長というどうすることもできない現実、それによりこれまでの感覚にズレが生じていく、それでもなおあつこは過去の栄光を取り戻すべく、いや、そのための「勝利」のために限界を超えた練習を次第にするようになってきたのだ。だが、そこで待っていたのはミスによる大ケガだった。これによりあつこはフィギュアというこれまであつこが大切にしてきたものを失ったばかりか深淵なる闇を自分のなかに生み出すことにもつながったのだ。いわば、あつこも理亜と同じだった、ということである。

 そして、聖良はそのことを踏まえ、理亜にあることを言った。

(理亜、勝利のみを追求する、「勝利こそすべて」、それを私たちSaint Snowは、これまで態勢にしてきました。けれど、それには限界があります。その限界を超えた先にあるもの、それは、「破滅」、です。それが理亜やあつこに起きてしまいました。その意味で私たちは愚かだったのかもしれません)

そんな聖良の言葉に、理亜、

(でも、それでも、私たちSaint SnowがAqoursに負けるとは思えない・・・)

と、聖良に対してこう言うと、聖良、

(まぁ、それだけでは私たちSaint SnowがAqoursに負けることに納得していないでしょう。ですが・・・)

と貯めるように言うと理亜に対しある問いを言った。

(ですが、もし、私たちSaint SnowにはなくてAqoursにはある、それによって私たちSaint SnowがAqoursに負けてしまう、と言ったらどうでしょうか?)

 これには、理亜、

(私たちになくてAqoursにはある、それって、まさか、ラブライブ!優勝を約束した仲間たちの思い?それとも、自分たちだけの輝きを追い求めてきたこと?)

と答える。たしかに千歌たちAqoursはある目的でラブライブ!に参加していた。それは、学校の存続。千歌たちAqoursメンバーが通う浦の星は生徒数減少により廃校の危機を迎えていた。それを回避する(そのために入学希望者を100人集める)ためラブライブ!に参加していた。だが、その期限となる日までに入学希望者100人を集めることができなかったため、ついに廃校が決まってしまった。が、その後、それにより途方にくれていたAqoursメンバーに対し浦の星の生徒たちから「ラブライブ!に優勝して消えていく浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻み込んで」という新しい目標を託してくれた。その新しい目標のもと、Aqoursメンバーはラブライブ!優勝を目指すこととなった。そして、Aqoursはついにラブライブ!優勝をしその目標を叶えることができた。聖良たちSaint Snowは自分たちの夢を叶えるために参加していたのに対しAqoursは自分たちのバックにいる浦の星の生徒たちという仲間たちの思いを叶えるために戦っていた。そんなAqoursが背負っている仲間たちの数はSaint Snowのものよりもはるかに多かった。さらに、千歌たちをはじめ、Aqoursメンバー全員が自分たちだけの輝きを追い求めていた。最初のころはμ'sの輝きを追い求めていたAqoursメンバーたち、だが、その途中でそれではいけないと思い、自分たちだけの輝きを追い求めようとした。ただ、これについてはラブライブ!に優勝してもわかることができなかった。しかし、最後の最後、閉校式後の浦の星からの最後の贈り物でようやく、自分たちだけの輝き、Aqoursメンバー9人で紡いできた想い出、想い、キズナ、いや、Aqoursに関わった人たちすべてとの想い出、想い、キズナ、それにAqoursメンバーたちは気づいたのだ。対して、聖良たちSaint Snowは、自分たちだけの輝き、なんて気にせずに、自分たちの夢を叶えるために「勝つこと」を信条に頑張ってきた。その意味でも、Aqoursは自分たちだけの輝きを追い求めようとしたが自分たちSaint Snowはそうしなかった、そのことを理亜は指摘したのだった。



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SNOW CRYSTAL 序章 第40話

 だが、この理亜の答えに対し、聖良、

(理亜、2つとも間違っています。2つとも私たちが負ける理由にはなっておりません!!)

と否定した。これには、理亜、

(姉さま、それって一体なに?)

と聖良に問う。

 が、聖良、そんな理亜に対しある質問をした。

(理亜、あなたはスクールアイドルは好きですか?)

これには、理亜、

(姉さま、私をバカにしないで!!そんなくだらないことなんて言わず・・・)

と反論するも、聖良、

(理亜、ちゃんと答えて!!)

と脅かすように言うと、理亜、

(あっ、それは・・・、あまり・・・考えて・・・いない・・・)

と言葉に窮してしまった。

 そんな理亜をみてか、聖良、理亜に対しまた別の質問をした。

(理亜、それでは、別の質問。理亜はこれまでスクールアイドルを楽しんできましたか?)

これには、理亜、真面目に自分の考えを聖良に伝えた。

(姉さま、スクールアイドルを楽しむって・・・、それ、真面目な質問?私たちは楽しむことよりも真面目に自分たちの夢を叶えるためだけにスクールアイドルをしてきた。それなのに、スクールアイドルを楽しむ、それって、スクールアイドルをお遊び感覚でしている、そんな気がする・・・)

 だが、そんな理亜の答えに対し、聖良、意外なことを言った。

(理亜、それこそ、私たちSaint SnowがAqoursに負ける理由なのです!!)

これには、理亜、

(えっ、姉さま、それって・・・)

と絶句する。

 すると、聖良、自分たちになくてAqoursにあるものの答えを言った。

(理亜、私たちSaint SnowになくてAqoursにはあるもの、それは・・・、

 

スクールアイドルを心の底から楽しもうとしていること、そして、心の底からスクールアイドルを好きであること、

 

なのです!!Aqoursはその2つがほかのグループよりも高かったためにラブライブ!で優勝したのです!!)

 この聖愛の答えに、理亜、

(ね、姉さま・・・、なぜ・・・、そういうわけ・・・)

と、聖良になにか問いたそうに言うと聖良は自分の答えに対する真実を言った。

(理亜にとっててみれば信じられないと思いますが、「楽しむこと」というのは「勝利すること」以上にすごいことなのです!!たしかにAqoursのみなさんはAqoursを支えてくれている人たちとの約束、それを果たすためにラブライブ!優勝を目指していました。しかし、それは、私たちSaint Snowをはじめ、全国にいるスクールアイドルからみれば同じことだと思います。だって、スクールアイドルをしている人たちの目標、それは、ずばり、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!優勝、ですから!!ラブライブ!優勝を目指さずに自分たちだけの道を進もうとしている人たちもいますが、その人たちを除けば、ほとんどのスクールアイドルたちはラブライブ!優勝を目指して今日も頑張っております。なので、その気持ちに差異はないと思います。なら、どこで力の差が生まれるのか?練習の量?目標に対する意思の強さ?いや、2つとも違います。では、なんなのか?それは、どれだけスクールアイドルを楽しんでいるのか、です!!いくら「勝利すること」を第一に考えたとしても理亜みたいに自分で自分を追い込んでしまいそれが本番になって悪影響を与える、いや、スクールアイドルとして必要不可欠な「笑顔」すらできなくなるかもしれません。それくらい「勝利すること」には限界があります。しかし、「楽しむこと」、それは、スクールアイドル、いや、その競技をしている者、いや、すべての人に無限のパワーを与えてくれます。スクールアイドルの場合、自分自身、スクールアイドルを楽しめばそれによってこれまで以上にスクールアイドルのことが好きになる、好きだからこそもっとスクールアイドルを楽しもうとする、それが無限に続く、それに、楽しいから史上最強の笑顔にもなれる、それこそ「楽しむこと」の無限のすごさというものなのです。そして、Aqoursのみなさんはそれが強かった!!千歌さんをはじめ、Aqoursのみなさんはこの9人で経験してきたことすべてにおいて心の底からスクールアイドルを楽しもう、スクールアイドルを好きになろう、この9人ですべてのことを精一杯楽しもう、そう思ってスクールアイドル活動をしてきたのです。そして、それがほかのグループよりも強かった。だから、Aqoursはラブライブ!で優勝できたのです!!鞠莉の言うところのパーフェクトナインなのです!!たしかにAqoursメンバー1人1人の力はそこまで強力ではありません。ですが、あの9人だからこそ、あの9人でスクールアイドルを楽しもうとしていた、だからこそ、ラブライブ!優勝できるくらいの無限のパワーを生み出すことができたのです!!むろん、最後の最後で自分たちだけの輝きさえも手に入れたのですがね・・・)

たしかに聖良の言う通りだった。Aqoursは自分たちを支えてくれる浦の星の生徒たちとの約束、「ラブライブ!で優勝して消えゆく浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻む」、その強い想いでもってラブライブ!決勝に臨んでいた。だが、その想いだけでは優勝することなんてできなかっただろう。では、なぜ、Aqoursは優勝できたのか。それは、「Aqoursメンバー全員が一緒になってスクールアイドルを楽しんだ、心の底からスクールアイドルを好きになり、心の底からスクールアイドルを楽しんだ」からである。千歌をはじめ、Aqoursメンバー全員、この1年、いろんなことを経験してきた。歴史的和解後、9人になって初めてのステージ、夏季大会予選敗退、必死の廃校阻止活動、廃校決定後に浦の星のみんなが打ち立ててくれた目標に向かって頑張ってきたこと、そのほか、そのすべてを、Aqoursメンバー9人全員、一緒になって経験してきたのだ。その経験を積み重ねていくなかで、Aqoursメンバー全員、一緒になって、「いつでも、どんなときでも、スクールアイドルそのものを楽しんでいた」、といえるのかもしれない。千歌たちは自分たちだけの輝きを追い求めて、一生懸命、9人一緒になってスクールアイドルを楽しんだ、そして、いろんな経験をしていくうちに、スクールアイドルのことが好きになり、さらにスクールアイドルを楽しむようになり、さらにさらに、スクールアイドルを好きになっていった、それが無限にループしていったのだ。静真の影の神である沼田は言った、「部活そのものを楽しむことでその部活のことが好きになっていく。そして、その「好き」によってさらに部活を楽しもうとする。そして、それによりもっと部活のことが好きになる。そんな無限ループこそ部活をする上でもっとも大事なことである」と(「Moon Cradle」参照)人というのは心の底からそのものを楽しむことでそのものが好きになる、そして、そのものに対して好きになったことでそれをもっと楽しもうとする、人はそれを繰り返すことでおのずとそれに対する実力を伸ばすことができるのである。それはまるで人だけが持てる永久機関とも言えた。で、Aqoursの場合、それを知らないうちに実践していたのである。そのため、Aqoursは日々進化を繰り返し、結果、ラブライブ!優勝を果たした、というわけである。

 また、それによりAqoursは思わぬ副産物を得ることができた。それは、「Aqoursという輝きであり、宝物」、であった。前述の通り、Aqoursメンバー9人がこの1年で紡いできた想い出、想い、キズナ、それがAqoursメンバーにとって自分たちだけの輝きとなり、それがやがて宝物へと変わっていった。千歌たちからすれば最後の最後でようやくその輝き(そして、宝物)の存在に、すでに自分たちはそれを持っていた、そんなことに気付くのであるが、逆を言うと、その輝き、宝物こそ千歌たちAqoursの原動力、ラブライブ!優勝に導いたもの、だったのかもしれない。

 ただ、それを聞いただけでは理亜は納得していなかった。理亜、そんな真実を話す聖良に対し反論する。

(「楽しむこと」、それって、ただの「遊び」じゃない!!

 

「楽しむ」=「遊び」

 

でしょ!!)

たしかに理亜の言うことも一理ある。普通にいえば、「楽しむ」=「遊び」というイメージが強かったりする。たとえば、ある有名な選手が「試合を楽しむことができた」と言えば、それを聞いた人から「試合中に「楽しむ」だなんて真剣に試合に取り組んでいない証拠だ!!」と批判を受けたりすることがある。それくらい、「楽しむ」=「遊び」というイメージが強かったりするのだ。

 だが、そんな理亜に対し、聖良、ある事実を伝えた。

(理亜、もっと視野を広げなさい!!たしかに、「楽しい」=「遊び」という考えもありますが、「楽しむこと」、それは私たちに無限のパワーを与えるとともに自分たちがやってきたことに対してどんどん好きになっていくことにもつながるのです。そして、その「好きである者同士が戦う、それは、これまでの自分たちが築き上げてきたもの、想い、想い出、キズナ、といった自分たちの輝き、それをお互いがリスペクトしつつ互いにそれを賭けて戦う、ということにもつながります。そのなかで、戦う者同士、それをどれくらい「好き」なのか、どれだけ「楽しむ」ことができるのか、それを真剣に競っているのです!!そう考えれば、戦う者がその戦いを楽しむ、ということはそれに対してどんどん好きになっていく、どんどん楽しんで相手よりもっと上を目指そう、もっと楽しもう、その高揚感、その想いにつながるといえます。いや、それ以上に、その戦いに関わるすべての人に戦う者同士の戦いを楽しむ想いが伝播していき、それが世界中の人々の心のなかに深く刻み込まれるくらいの想いへと変化していくのです!!

 

「楽しむ」こと、それはただの「お遊び」でもなんでもありません!!「楽しむ」ことこそ史上最強のスパイス、といえるのです!!)

 

たしかに聖良の言う通りかもしれない。たしかに、「楽しむこと」=「遊び」というイメージが強いかもしれない。けれど、実際には違っていたりする。人は、あること、Aqoursの場合、スクールアイドルなのだが、みんなと一緒にそれを楽しむことでそれが好きになりもっと楽しもうとする。この無限ループにより無限のパワーを得ることができる。

 で、あることをする者同士戦うことになった場合、「勝つこと」だけを目的にしたとき、相手をどう倒せばいいのか、そのことだけを考えるようになる。もしそうなるときっと殺伐した戦いになるかもしれない。たしかに勝利のための駆け引きがあるから戦いは面白くなるかもしれない。が、ときと場合によっては相手の弱いところ、ウィークポイントだけを狙うことで勝利を勝ち取ろうとしてしまう。もし、こうなってしまうと、ファインプレー、どころか面白みに欠ける戦いになってしまい、まわりからは大ブーイングが起きるかもしれない。

 対して、あることに対して、「楽しむ」⇔「好きになる」、この無限ループをしている者同士の戦いであればお互いとも仲間たちと一緒に紡いできた想い、想い出、キズナ、その輝き、いや、それどころか、それに伴った実力、熱意、などなど、自分たちが持つものすべてを賭けて、相手のことをリスペクトしつつも死力を尽くして戦おうとする。無限という最強のパワーを持つ者同士なのだからとても燃える戦いとなる。が、戦っている者はというと、その戦いを通じてそれに対しもっとそれを楽しもう、もっとそれを好きになろう、その無限ループを極限まで引き起こそうとする。それによってもっと熱くなれるのである。それは相手とて同じである。この無限ループをする者同士互いのすべてを賭けた戦い、それは戦っている者にとって手汗握るものになると同時にその戦いそのものが自分が持つ無限ループによって引き起こされた無限のパワーにより、自分と同じ無限のパワーを持つ相手との白熱した戦い、とても体中が熱くなる戦い、それに対する熱き想いとなって、「もっとこの戦いを楽しみたい、もっとこの楽しみが続いてほしい」、そう想えるように自分もなっていくのである。むろん、その戦いはその同じ熱き想いを持つ者同士がその戦いを通じて互いにヒートアップすることにより、そのまわりにいる者、その戦いを見に来ている観客たち、いや、この戦いに関わっている、この戦いを見守っている者全員がこの戦い、白熱した、この戦いをみんなで「楽しむ」、熱くなれるのである。それは無限のループにより発生した無限のパワーでもってその戦いを楽しんでいる、そんな戦う者たちのその戦いを「楽しむ」という熱き想いがぶつかり合うことで起きた「楽しむ」という無限大の想い、それがその戦いに関わる者、見守っている者全員に伝播しているのかもしれない。それくらい「楽しむ」ということはそれをしている者にとって無限のパワーを与えてくれるだけでなく、その者同士の戦いい関わっている者、見守っている者全員を熱くさせうことができる、そんな無限大のパワー、想いを与えてくれるのである。

 そんな聖良の力説を聞いたためか、理亜、

(じゃ、私があつこたちユニットメンバーに対してしていたこと、過酷な練習を課することでラブライブ!優勝という夢を目指すことができる、絶対に勝ち続けるためのユニットづくりは間違いだったわけ・・・)

と、肩を落としてしまった。理亜にとってみればSaint Snowとして自分と姉聖良との夢、ラブライブ!優勝を目指すために勝つことだけを考えてきた。そして、それを踏襲するがごとく理亜があつこたちユニットメンバーに過酷な練習を課することで、そんなSaint Snowと同じ、勝利することだけを追求するような、それによってラブライブ!優勝という姉聖良との夢を叶える、そんなユニットを目指していたのである、それをすることでSaint Snowと同じもの、同じ輝きを得ることができると信じて・・・。しかし、もし、聖良の言うことが正しければ理亜が自分のユニットに求めていたものが満たされてもラブライブ!優勝なんて無理、ともいえた。それを理亜はついに自覚したわけである。

 そんな理亜を見てか、聖良、

(たしかに、もし、理亜が「勝利すること」だけを追い求めていたら間違いだったかもしれませんね・・・)

と言うと、理亜、

(じゃ、私、一体どうすればいいわけ!!私、これまで、ルビィたちAqoursみたいに、「スクールアイドルを楽しむ」、そんな経験、したことがない・・・。私、ただ、「勝つこと」だけ、それをずっと考えていた・・・)

と、これまでのことを思いだしては後悔していた。理亜はこれまで「勝つこと」を信条にスクールアイドルをやってきた。姉の聖良と一緒にSaint Snowとして活動したきたときもそのことだけを考えていた。そして、自分のユニットについても結成してからラブライブ!決勝でAqoursを応援しに東京に行く日まではそれは影を潜めていたが、その日、Aqoursが自分たちが成し遂げることができなかった、姉聖良との夢、ラブライブ!優勝、その姿を見て、自分のなかにある闇が復活、その闇に飲み込まれたことで理亜は再びその考えを持つようになった。そして、その日からこの延長戦でそれを聖良によって指摘されるまで、理亜はその考えに縛られていたのである。そのためか、「スクールアイドルを楽しむ」という経験を思いだすことが今の理亜にとって難しかった。

 だが、そんな理亜に対し、聖良、

(理亜、そんなことはありません。理亜にもその経験があります。理亜、思いだしてください。先ほど、理亜もそれを思いだすことができたのですから・・・)

と優しく言うとあつこも、

(あっ、もしかして、それって、あのときのことですね、Aqoursのみなさんと一緒にやったときの・・・)

と、その経験を思いだしては理亜にヒントを送る。

 そんな聖良とあつこの言葉を受けてか、理亜、

(あっ、もしかして、それ、あのときの・・・、ルビィたちとの合同ライブ・・・)

と、そのことを思いだしたのか、その経験について言葉を発すると、聖良、こう言った。

(理亜、あたなが今思いだしたものが答えです。そう、私たちSaint Snowと千歌さんたちAqoursとの合同ライブ、あのクリスマスライブのことです!!)

そう、理亜はすでにそれを経験していた。それはあの奇跡のライブ、Saint SnowとAqoursの合同ユニット、Saint Aqours Snowとして行った、あのクリスマスライブである。

 そして、理亜はそのクリスマスライブで感じたことを口にしていた。

(私、ルビィたちと一緒に行動してわかった、スクールアイドルって「楽しむこと」がととても大切、って・・・)

クリスマスライブ、それはこれまで「勝つこと」だけを信条にしてきた理亜にとって新しい、そして、とても大事な感覚、「楽しむこと」、それを痛感させらえたものだった。理亜はそれを、今、ここで、再び思いだそうとしていた。あのとき、感じた、ルビィたちAqoursと、姉聖良と一緒にスクールアイドルを楽しんだ、そんな、「楽しい」という想い出、感覚、それを理亜は思いだした。理亜、そのためか、

(あっ、なんか、この感覚、私、とても大事なものだと、そう想える・・・。私、「楽しむこと」、そんなこと、これまで、考えていなかった・・・。これまで、「勝利こそすべて」、それが1番大事、そう思っていた・・・。けれど、今の私ならわかる、「勝利すること」、よりも、「楽しむこと」、とても大事、だと・・・。私、ルビィたちみたいに、「楽しむこと」、その無限ループ、してみたい、飛び込みたい!!飛び込んで、みんな一緒に、スクールアイドル、楽しみたい!!)

と、「楽しむこと」、その大事な想いを噛みしめながら感じていた。「楽しむ」こと、それは、これまで「勝利すること」だけを考えてきた理亜にとってこれから生きる上で、スクールアイドルとして活動していく上でとても重要となる想い、であった。「勝利こそすべて」、それには限界がある。その限界までいくが如く理亜は自分を、そして、あつこたちユニットメンバーを極限まで追い込もうとしていた。だが、今は違う。これからの理亜は、「楽しむこと」⇔「好きになること」、その無限ループのなかで無限のパワーを得たい、そう理亜は考えを改めたのかもしれない・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第41話

 そんなこれからのことについて考えていた理亜であったが、ふと、今のAqoursのことが気になったのか、聖良に対し、

(ところで、姉さま、ルビィたちは、Aqoursは、復活を果たしましたが、あのときの、ローマ・スペイン広場でのライブのときよりもAqoursは強くなった?)

ルビィたちAqoursはローマ・スペイン広場でのライブにより復活を、いや、今までのなかで1番のライブをすることができた。そんなAqoursではあるが、今、この延長戦において、そのときのライブよりも強くなっているのか、理亜、気になっていた。

 そんな理亜に対し、聖良、こう断言する。

(理亜、今のAqoursは史上最強のスクールアイドルといっても過言ではないでしょうか。「楽しむこと」「好きになること」、その無限ループにより、Aqoursは史上最強のスクールアイドルになりました。ついこの前までは理亜ほどではありませんが、自分たちだけで解決しないといけない、そんな思い、そして、ダイヤたち3年生3人がいないという喪失感からか、不安・心配という深い海・沼の底に沈み込んでしまいました。しかし、ダイヤたち3年生3人と再合流してからAqoursは一層進化しました。不安・心配という深い海・沼の底に沈んでいたときは、千歌さんたち(新生)Aqoursは、「楽しむこと」、それができないくらい落ち込んでいました。ですが、今のAqoursは違います。あの9人は「楽しむこと」の無限ループによりあのクリスマスライブのときの2倍、3倍、いや、無限大のパワーを得たのです。もう私たちの知るAqoursではありません。史上最強のスクールアイドルになったのです、Aqoursは・・・)

聖良と理亜が沼津に沼津を訪れたとき、千歌たち(新生)Aqoursは不安・心配という深い海・沼に沈んでいた。それはダイヤたち3年生3人がいない、という喪失感からのものだった。だが、今のAqoursは違う。聖良の進言通り、ダイヤたち3年生3人に会いにイタリアに言った千歌たちはそこでダイヤたち3年生3人と合流、再びパーフェクトナインになったことで今までのAqoursを、「楽しむこと」を前面に出した、「楽しむこと」の無限ループにより無限のパワーを得た、そんな今までのAqoursを取り戻していた。そして、その無限ループにより今のAqoursは無限大のパワーを持つ史上最強のスクールアイドルへと変貌を遂げていた。いや、今も、その無限ループにより力を増大している、とも言えた。

 そんな史上最強のスクールアイドル、Aqoursを前にして、理亜、珍しく弱音を吐く。

(でも、姉さま、そんなAqoursに私たちSaint Snowは勝てるのですか・・・。私は、先ほど、ようやく、「楽しむこと」の素晴らしさを知ることができました。けれど、ルビィたちは、Aqoursは、すでにその先を、もっと先を走っている、ような気がする・・・。そんな、「楽しいこと」に関しては、私とルビィたちAqours、天と地の差がある・・・。そんなAqoursに勝てる気がしない・・・)

たしかに理亜がそう心配するのはもっともである。Saint Snowの一員である理亜は、今さっき、ようやく、「楽しむこと」の素晴らしさを知ったばかりである。対して、Aqoursは知らなかったとはいえ、結成してから今まで、この1年、「楽しむこと」、それを極めてきたのである。その点でもAqoursは「楽しむこと」のスペシャリストともいえるかもしれない。そんな天と地の差をもつ者同士が戦えばスペシャリストの方が勝ってしまうことは目にみえていた。

 だが、そんな弱音を吐く理亜に対し、聖良、こう断言する。

(理亜、そうとも限りません!!この勝負、私たちSaint Snowだって勝つことができると思います!!いや、絶対に勝利できるでしょう!!)

この聖良の勝利宣言、これには、理亜、

(えっ、私たちSaint Snowがあの「楽しむこと」のスペシャリストであるAqoursに打ち勝つことができる?それって一体・・・、姉さま・・・)

と聖良に問い直す。

 すると、聖良・・・ではなくあつこが聖良の代わりに理亜に問うた。

(理亜さん、私たち、Saint Snowは、スクールアイドルを、どれくらいかけて、今までやってきましたか?)

これには、理亜、

(たしか、私たちSaint Snowの活動期間はたった1年・・・、でも、その準備期間を合わせると、数年・・・)

と答えると、あつこ、熱くこう答えた。

(そうです!!この数年間、私と聖良さん、そして、理亜さんは一緒になってSaint Snowを作り上げました!!そのなかで、私たちはSaint Snowという想い、想い出、キズナ、それを一緒になって紡いできたのです!!そして、今、それが、Saint Snowの輝き、そして、宝物になったのです!!対して、Aqoursはたった1年で、今の、Aqoursという輝き、宝物を作りあげました。たしかにAqoursは史上最強のスクールアイドルです。けれど、この1年で急成長した、そんな感じです。それに対し、私たちSaint Snowは長時間かけて私たちの輝きを熟成してきた。なので、輝き、宝物の度合いや密度としては私たちSaint Snowの方がAqoursより上、なのです!!輝き、宝物の度合いや密度、そして、期間の長さ、それこそ、私たちSaint Snowのアドバンテージとなるのです!!)

そう、Aqoursに負けない、そんなアドバンテージがSaint Snowにはあった。それは、スクールアイドルにかけた期間の長さである。たしかにAqoursは「楽しむこと」の無限ループにより史上最強のスクールアイドルになった。だが、パーフェクトナインになってたった1年で急成長しすぎたため、どこかほころびがあるかもしれなかった。対して、Saint Snowは、聖良に理亜、そして、あつこがあの聖なる雪の日の誓いをしてから今にわたるまでの数年ものあいだ、一緒になって紡いできた、そんな努力の結晶である。だからこそ、たった1年で積み上げてきたAqoursのなかにあるAqoursとしての輝き、宝物、以上のもの、Saint Snowという輝き、宝物が今の聖良や理亜、あつこにはあった。たった1年で急成長した輝き、宝物、対して、この数年間熟成させた輝き、宝物、それを比べた場合、長期間熟成されたものが良かったりする。それこそ、Saint Snowにとって(Aqoursに対しての)アドバンテージともいえた。

 だが、そんな聖良の熱い言葉・・・だったのだが、それでも理亜にはまだ弱気だった。なぜなら・・・、

(でも、姉さま、それがアドバンテージ、としても、「楽しむこと」、それで無限のパワーを得た、そんなルビィたち、Aqours、それに対し、私、「スクールアイドルを楽しむ」、そんなこと、してこなかった!!これじゃ、私たち、勝ち目ない・・・)

そう、理亜は心配していた、自分は「スクールアイドルを楽しむ」ことをしてこなかった、いわば、「楽しむこと」に関しては初心者である。対して、Aqoursは「楽しむこと」のスペシャリストである。勝負においてとても重要な「楽しむこと」に関しては、理亜、勝ち目はなかった。

 だが、それについては、シエラ、はっきりとした口調でこう答えた。

(理亜、それなら、今からスクールアイドルを楽しめばいいじゃありませんか)

この聖良の発言に、理亜、

(えっ、今から楽しむ・・・)

と唖然となるも、聖良、そんな理亜に対しこう答えた。

(理亜、昔も今も関係ありません!!これまでそれをしたことがなかったなら、今から楽しめばいいのです!!理亜ならきっとAqours以上にスクールアイドルを楽しむことができると思います。だって、今、理亜、私とあつこと一緒に、スクールアイドルを、この戦いを、楽しもうとしているではありませんか!!それに、私たち3人のなかにはAqours以上の輝き、宝物があります!!それを、今、解き放てば、きっと、Aqours以上に、楽しむことができます!!)

 そして、そんな聖良の熱き想いを受けてか、あつこ、理亜に対しエールを送った。

(理亜さん、たしかにこれまでは「楽しむこと」をそこまで自覚していなかったかもしれません。ですが、理亜さんは、一時期、私と自分たちのユニットを結成したときから暴走を始めるまでのあいだ、「楽しむこと」を前面に出したユニット運営をしてきたじゃありませんか!!それを思いだしてください!!)

 このあつこの言葉に、理亜、はっとすると自分の苦しい胸の内を語った。

(た、たしかにあつこの言う通り・・・。私、あのクリスマスライブで感じた「スクールアイドルを楽しむ」、その想いでもって、私のために集まってくれたメンバーとともに自分のユニットを立ち上げた・・・。そして、最初のころはその想いのもと、みんなと一緒にスクールアイドルを楽しんでいた。でも、あのとき、ルビィたちAqoursが私と姉さま、そして、あつこの夢だった、ラブライブ!優勝、したとき、私、「自分のミスのせいで姉さまを含めたすべて、なにもかも失ってしまった、ゼロになってしまった、そんな深淵なる闇が生まれてしまった・・・。そして、その闇のせいで、それと、「楽しむ」=「遊び」、そんな認識のせいで、初心者ばかりのユニットメンバーだと、私、ラブライブ!優勝できない、と思ってユニットメンバーに過酷な練習を強要してしまった・・・。私・・・、ずっと、「楽しむ」=「遊び」だと思っていた・・・。だから、私、その認識のせいで私のユニット、壊してしまった・・・)

そう、またもとに戻るが、理亜にとって、「楽しむ」=「遊び」、その認識がとても強かった。なぜなら、そう認識する方が多いから。理亜もその分類に入るかもしれない。また、理亜と言えばこのセリフが有名である。

 

「(スクールアイドルの甲子園である)ラブライブ!は遊びじゃない!!」

 

これは自分たちの夢のために、真剣に、真面目に、スクールアイドルに取り組んできた理亜だからこその名セリフ、といえるのだが、このセリフを言っているときの理亜のなかでは「勝利こそすべて」という考えが強かった。なので、当時の理亜的に言えば、「ラブライブ!は勝負の世界!!勝つことが大事!!お遊び感覚でスクールアイドルをするな!!」ともいえるのかもしれない。で、もし、「楽しむ」=「遊び」という認識がそれに加わってしまったら、「「楽しむ」という感覚でスクールアイドルをするな!!」となってしまうだろう。

 でも、それって本当にそうなのだろうか?いや、答えは「否」である。たしかに真面目にスクールアイドルに取り組むことも大事である。しかし、真面目過ぎると、いや、真面目に「勝利すること」のみに固執すると理亜みたいに自分で自分を追い込んでしまいどこかで取り返しのつかないミスをしてしまいかねない。理亜の場合、それがラブライブ!冬季大会北海道最終予選でのミスであった。いや、スクールアイドルだけじゃない。それ以外、たとえば、フィギュア、でも同じことがいえる。あつこの場合、過去の栄光、12歳のジュニアの大会での優勝、それが自分の体の成長により昔みたいな優秀な成績を残せなくなったため、絶対に勝利して昔みたいな優秀な成績を残そうと思ってしまい、あつこは限界を超えた練習を続けてしまった。結果、中3の大会のときの大ケガにつながってしまった。それは、「勝利こそすべて」という考えの弊害かもしれない。対して、「楽しむ」ということは無限のパワーを与えてくれる、それくらい、「楽しむ」ということは「勝利」以上のものを生み出してくれる。理亜はそれを今の今まで知らなかった。理亜の場合、Saint Snowとして活動しているときから、「勝利こそすべて」、「楽しむ」=「遊び」、という考えが理亜のなかにあった。また、理亜はかなり真面目な性格だったこともあり、真面目にスクールアイドルをしていないスクールアイドル、勝利を求めようとしないスクールアイドル、ただ「楽しむ」だけのスクールアイドルに対して見下すような発言を理亜はすることもあった。むろん、まだダイヤたち3年生が加入していない、まだ、千歌たち1・2年だけのAqoursと初めて邂逅したとき、あの、夏季大会前の東京のスクールアイドルイベントのときの理亜の発言もそれに当たる。が、あまりに勝利に固執してしまうあまり、理亜は(悪くいえば)それにより自分で自分を追い込んでしまい、冬季大会北海道最終予選のときに自滅、自分のなかに深淵なる闇を生み出してしまった。ただ、最終予選後のルビィの機転いよりクリスマスライブが行われ、理亜のなかにも「楽しむこと」の大切さを知ることができた。で、理亜は、当初、クリスマスライブ後に結成した自分のユニットにはそのライブのときに知った「楽しむこと」を前面的に出したユニット運営をしていった。だが、理亜のなかではまだその深淵なる闇と「楽しむ」=「遊び」という認識が残っていた。それがAqoursのラブライブ!優勝が機転となってその闇が復活、というか、活性化、それと、「楽しむ」=「遊び」という認識、その2つが合わさって、「このまま、「楽しむ」=「遊び」の状態では初心者ばかりの自分のユニットはこれから先、私と姉さまとの夢、ラブライブ!優勝なんて、いや、勝つことなんて絶対に無理!!」、そんな思いが理亜のなかで生まれてしまい、それが理亜の暴走につながってしまった。で、その暴走の結果、理亜のユニットは空中分解してしまった・・・、それを今になって理解した理亜、そのことを後悔してしまったわけである。

 そんな後悔の渦のなかにいる理亜に対し、あつこ、こう訴える。

(だからこそ、初心に、私たちと一緒に自分のユニットを作ったときみたいに戻りませんか、理亜さん!!あのときみたいに、あのクリスマスライブで感じた、「楽しむこと」、それを思いだしてください!!)

 そして、あつこは理亜に対し自分の想いを伝えた。

(理亜さん、私、最初、聖良さんから「理亜さんのことが心配で」と言われて理亜さんのユニットに入りました。けれど、入ってみたらとても楽しかった!!だって、理亜さん、みんなと一緒になってスクールアイドルを楽しんでいたから!!そのときの想いを思いだしてください!!思いだして、この戦いに挑んでください!!)

 あつこにとって最初は聖良のお願いから理亜のユニットに入った。だが、あつこがユニットに入った当初は理亜が「楽しむこと」を前面に押し出したユニット運営をしていたため、あつこは理亜やほかのユニットメンバーと一緒にスクールアイドルを楽しむことができた。そのときこそ理亜にとって「スクールアイドルを楽しんでいた」時間でもあった。あつこはそのときのことを、今、思いだしてほしいと理亜に言っているのだ。むろん、今、行われている戦い、ラブライブ!決勝延長戦の相手はラブライブ!覇者のAqoursである。そのAqoursの一番の武器はあのパーフェクトナインから繰り出させる、「スクールアイドルを楽しむ」、その無限のパワーである。対して、理亜たちSaint SnowがそんなAqoursに打ち勝つためにはどうすればいいのか。それは、こちらも、「スクールアイドルを、理亜、聖良、そして、あつこ、この3人で精一杯楽しむ!!」、ことである。では、その力の源はなにかあるのか。それは、ずばり、この数年間、この3人で紡いできた想い、想い出、キズナ、いわば、Saint Snowの輝きであり、宝物、であった。もう1度言うが、Aqoursの無限のパワーの源であるパーフェクトナインとしての輝き、宝物は約1年で急成長したものである。対して、Saint Snowの輝き、宝物は数年間にわたって熟成されたものである。急成長した輝きと数年間熟成された輝き、どちらがより輝いているかといえば、数年間という密度、度合いが高い輝きの方が上だといえるかもしれない。ならば、輝きの源となっている「楽しむ」という無限のパワー、AqoursとSaint Snow、どちらが強くなるのか、といえば、数年間という(たった1年間の)Aqoursより光り輝くことができるSaint Snowのほうに軍配はあがるだろう。だが、これまでSaint Snowは「楽しむ」ということをしてこなかった。だって、Saint Snowの3人はこれまで「勝利こそすべて」という考えのもとで行動していたから。だが、それが、今、Saint Snowの3人は、「スクールアイドルを楽しむ」、その心に目覚めた。その心に目覚めた、理亜がクリスマスライブで感じ自分のユニットを結成したときにはあった、「スクールアイドルを楽しむ」、その心に目覚めた、今、あのAqoursを凌駕する力をSaint Snowは手に入れた、ともいえた。そんなことをあつこは知ったうえで理亜にそのことを伝えたのである。

 そんなあつこの熱い想いが通じたのか、理亜、

(うん、あつこの言う通り・・・。私、あのときの想い、「スクールアイドルを楽しむ」、その想い、胸に、この戦い、めいいっぱい楽しむ!!めいいっぱい楽しんで、絶対、あのAqours、倒す!!)

と、これまでの自分、「勝利すること」、それをモットーにしてきた自分を、決別、したかのごとく、この戦いを、ラブライブ!決勝延長戦を、めいいっぱい楽しむことを宣伝した。それは理亜にとって新しい自分への第一歩ともいえた。

 そんな理亜に対し、聖良、あることを話す。

(理亜、そのためにも、自分のなかにある輝きを、Saint Snowという輝きを、宝物を、めいいっぱい輝かせなさい!!そして、その輝き、宝物が私とあつこ、そして、理亜をつないでいることを感じなさい!!)

これには、理亜、

(えっ!!私、姉さまとあつことつながっているわけ!?)

と驚いていると、聖良、自分の言葉の真意、いや、とても大事なことを言った。

(理亜、もうあなたなら気付いているはずです!!今、自分のなかにある輝き、宝物を通じて私とあつこと理亜は1つにつながっています!!そして、そのつながりはずっと、永遠に、続くのです!!それは、たとえ離れ離れになってもずっと私たち3人をつないでくれるのです!!)

ただ、この聖良の発言に、理亜、いまだに、

(えっ、姉さま、それって一体・・・)

とまだ理解できていないみたい。

 そんな理亜に対し、聖良、今起きていることを話す。

(理亜、今、私とあつこ、そして、理亜は私たちのなかにある輝き、宝物を通じて心でつながっています。そして、それによって私たちは心の声で会話をしています。それこそ、私たちのなかにあるSaint Snowという輝き、宝物でつながっている証拠なのです!!)

そう、みなさんはお気づきだろうか。「Believe Again」が始まってからここまで、聖良、理亜、あつこ、この3人は実際に声を出していたわけではなかった。実はこの3人の会話はすべて心のなかでの会話だったのだ。この心の会話は奇跡なのだろうか。いや、奇跡ではない。Saint Snowという輝き、宝物がこの3人のなかにあったからこそできた心の会話だったのだ。そして、今、聖良、理亜、あつこのあいだには輝き、宝物を通じてつながり、ある種のホットラインができていた、それが3人の心の会話につながった、ともいえた。さらにいえば、この心のホットラインは、これから先、ずっとつながっている。だって、たとえ、どんなことが起きても、この3人のなかからSaint Snowという輝き、宝物が消えることなんてないのだから。

 そんなことを理解しているのか、今度はあつこから理亜に熱い言葉が送られる。

(理亜さん、私たちが持つSaint Snowという輝き、宝物はなにがあってもずっと残ります。残るからこそ、私と聖良さん、そして、理亜さんはずっとその輝き、宝物によってずっとつながっています。だからこそ、理亜さんはもう1人ではない!!私と聖良さんと3人でずっとつながっていくのです!!)

そんなあつこの強い想いを受け取ったためか、理亜、一瞬、

(私、もう1人じゃない・・・、「孤独」じゃない・・・)

と、涙を流すくらいの想いに包まれた。自分が暴走した結果、自分のユニットは崩壊、たった1人、「孤独」、を理亜は感じていた。だが、そんな理亜にも大切なものが残っていた。それは、聖良とあつこのとの聖良とあつこのという輝き、宝物、それによって、今、そして、これから先もずっとつながっていける、そのことを理亜もようやく理解、いや、実感していたのだ。

 そして、聖愛はそんな2人を前にして自分の熱い想いを口にした。

(理亜、そして、あつこ、私たち3人はSaint Snowという無敵のトライアングルでつながっています!!Saint Snowという輝き、宝物によって形成された私たちのホットラインは、今、無敵のトライアングルになりました。さらに、そのトライアングルによって、「楽しむ」⇔「好きになる」、という無限ループはさらに強化、あのAqoursすら寄せ付けない無限のパワーを得ることができました!!それを、今、実感してください!!)

 その聖良の言葉により、理亜、前向きな言葉を表す。

(姉さまにそう言われると、私、なんだか負ける気がしない!!この3人でもっとスクールアイドルを楽しもう、この「楽しい」という強きパワーでAqoursに勝ってみせる、そんな想いでいっぱいです!!)

あの弱気をみせていた理亜、この聖良の言葉により、完全復活、いや、それ以上の力をみせていた。さらにはあつこも、

(私も理亜さんと同じ想い・・・、もっとこの3人でスクールアイドルを楽しみたい!!)

と、理亜と同じ想いを感じていた。

 そして、聖良は、理亜、あつこに対してこう宣言した。

(理亜、あつこ、私たちの無敵のトライアングルによって増幅された無限大の「楽しい」というパワーを千歌さんたちに、Aqoursに、ぶつけてあげましょう!!そして、あのAqoursから金星をあげるのです!!いや、それ以上に、この戦いを一生懸命楽しみ、あのAqours以上にこの戦いを楽しんで、私たちこそスクールアイドルの王者である、この戦いで堂々とそう宣言しましょう!!)

これには、理亜、

(そうです、姉さま!!私も、この戦い、一生懸命楽しんで、あのルビィたちよりも、楽しんで、私たち、Saint Snow、1番だって、言わせてやる!!)

と元気よく答えてくれた。

そして、あつこも、

(私も2人をばっちりと映します!!だって、私、Saint Snowの一員ですから!!2人と同じ輝き、宝物、それがあるだけで2人とずっとつながっていける、2人と一緒にスクールアイドルを楽しむことができる、そんな想いに、私、なってしまいます!!だから、私、2人のためにも、この戦い、2人と一緒にめいいぱい楽しんで、あのAqoursにギャフンと言わせてあげましょう!!)

と、元気いっぱいに言うと2人から、

(あつこ、その調子です!!あなたがいるおかげで私と理亜は100倍も200倍も力が出せるというものです!!だから、あつこ、私たちと一緒にせいいっぱい楽しんでAqoursに勝ちましょう!!)(聖良)

(あつこ、ちゃんと撮って!!あつこが私と姉さまとを撮ってくれるから、Saint Snowのステージ、100倍、200倍、いや、無限大に、素晴らしくみせること、できる!!だから、あつこ、ルビィたちをギャフンと言わせる、それくらいの映像、撮って!!)(理亜)

と、あつこに対する声援がとんでくる。これには、あつこ、

(はい、聖良さんに理亜さん、私、精一杯この戦いを楽しみます!!)

と元気いっぱい答えた。



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SNOW CRYSTAL 序章 第42話

 そんなわけで、この戦いを精一杯楽しむ、ということでまとまった3人。そんなとき、聖良は意外なことを言った。

(さぁ、戦いはまだ始まったばかりです!!)

この聖良の意外な言葉に、あつこ、

(あっ、たしかに、まだ1メロの途中だ・・・。3人でいっぱい話したから長時間経ったと

思ったのに、そこまで時間が経っていなかったんだ・・・)

とびっくりしてしまう。そう、まだ1メロの途中だった。3人はかなり長く話していたつもりであったが現実の時間というのはそんなに時間が経っていなかった。どうやら3人の心の会話のスピードは量子レベルまで加速していたようだ。

 それくらい驚いていたあつこを尻目に、聖良、2人を鼓舞するようにこう言った。

(理亜にあつこ、これがSaint Snowとしての本当のラストステージです!!悔いが残らないよう、このステージでSaint Snowのすべてを出し切ってください!!だって、私たちこそ、完全無欠のスクールアイドルユニット、Saint Snow、なのですから!!そして、あのAqoursを倒し、今度こそ、私たちの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えましょう!!)

この聖良の言葉に、理亜、あつこ、2人とも、

(はいっ、姉さま!!)(理亜)

(はいっ、聖良さん!!)(あつこ)

と、この戦いでSaint Snowのすべてを出し切ることを誓った。

 その後、理亜の表情は、この戦いを一生懸命楽しみたい、楽しんで楽しんで、ルビィたちAqoursを凌駕しては一撃で倒したい、そんな想いが前進を駆け巡ったためか、昔みたいに、いや、昔以上にいきいきした、いや、キリリと勇ましい、戦いを心の底から楽しむ、それが理亜の顔にあらわれるくらいの表情をしていた。また、あつこも聖良と理亜に負けじとこの戦いを楽しむがごとくカメラを駆使して躍動的に動く2人をしっかりと撮る、だけでなく、いろんな技術を駆使して聖良と理亜を追った。

 Saint Snow、それはスクールアイドルとしては本当の意味で、スペシャリスト3人が織りなすパーフェクトなユニットである。3人のまとめ役であり自分自身もパーフェクト超人、でも、妹の理亜のことがとてもとても好きで、そのせいでちょっぴり残念なSaint Snowのメインボーカルである、聖良、そんな姉のことが大好きで、とても真面目で、人見知り、そのせいで自分一人で暴走したり自分を追い込んでしまう、それくらい人間味あふれている、けれど、自分だけの武器である理亜RAPなどいろんな技術を駆使してSaint Snowの音楽を盛り上げてくれるテクニシャン、理亜、そして、その2人のサポーターとして2人を陰から支えつつ、自分もフィギュアの表舞台にメインとして立った経験のもとにSaint Snowにおける音楽全般、そして、このSaint Snowラストステージではカメラマンとして、聖良と理亜が活動しやすいよう裏で大活躍をみせていた、あつこ、この3人は3人とも本当のスペシャリストである。それは数年間という時間のなかで、「勝利こそすべて」という考えではあったものの、この3人は自分たちが立てた計画にそって一生懸命自分たちの夢に向かって頑張ってきた。こうして、長い年月をかけて3人が紡いでできたもの、それが、この3人しか持っていない、Saint Snowという聖なる雪の決勝によって磨かれた純度の高い輝きであり宝物、であった。それは誰から見てもスクールアイドルのスペシャリストといってもおかしくないだろう。それくらい史上最強の実力を持った、いや、そうなるくらい自分たちを高めあった、本当に(実力的には)史上最強のスクールアイドル、というべきものなのかもしれない。そんなスペシャリスト3人が組んだユニット、それが、Saint Snow、である。そんな(実力的には)史上最強のスクールアイドルに足りなかったもの、それは、「スクールアイドルを楽しむ」という想い、だった。だが、その想いを、理亜が、あつこが知った今、Saint Snowは本当に史上最強のスクールアイドルユニットとして変貌を遂げようとしていた、いや、最後の最後で真の意味でSaint Snowは、史上最強のスクールアイドル、になったのである。それはスクールアイドルのスペシャリスト3人による無敵のトラアングル、そのなかで、「楽しむ」⇔「好きになる」、この無限ループが3人のホットラインという名の線に沿って加速度的にどんどん早くなっていき、無限大の、いや、それ以上のパワーを生み出したことによるものだった。

 だが、それ以上に、3人の想いは、これ以上にないくらい、この戦いを無限大に楽しむ、それくらい高ぶっていた。だって・・・、

(私はこれでスクールアイドルを本当に卒業する。けれど、私たちが持つ、Saint Snowという無限大の輝き、宝物、は私たちにとって、いや、みんなにとってこれからも残っていく。この3人のスペシャリストが持つ無限大の輝き、宝物、それは、これからも私たちのなかで輝いてくれる、それを、千歌さんたちに、Aqoursに、見せつけてみせる!!)(聖良)

(このライブをもって姉さまはスクールアイドルを本当に卒業する。そして、私たち、Saint Snow、もこれで終わる。けれど、だからといって、Saint Snow、それが本当に消えるわけじゃない!!私たち3人が持つ、Saint Snowという輝き、宝物、それがあればずっと姉さまと、あつこと、ずっとつながっている!!もう1人だなんてならなくて済む!!私はもう「孤独」じゃない!!それに、「スクールアイドルを楽しむ」、その想いがあれば、きっと、私、もっと大きく羽ばたくことができる!!私たちは、今、無敵!!だから、ルビィ、見ていて!!姉さまと、あつこと、私で、史上最強のスクールアイドルとして、このラブライブ!決勝延長戦、めいいっぱい3人で楽しんで、ルビィたちに、Aqoursに勝ってみせる!!私たちの夢、ラブライブ!優勝、果たしてみせる!!)(理亜)

(私は2人みたいにパフォーマンスをしているわけじゃない。いわゆる、裏方・・・。でも、それでも、聖良さんと理亜さんは私のことをSaint Snowの一員として認めてくれた!!こんなうれしいこと、ないよ!!だからこそいえる、Saint Snowの真の実力の裏には私の存在があるんだって!!私がいるからSaint Snowは真の意味で史上最強のスクールアイドルになれたんだって!!だから、Aqoursのみなさん、それに、そのAqoursを支える裏方のみなさん、よく見ていてください、Saint Snow第3のメンバーであるこの私が織りなすSaint Snowラストステージ、その華麗で優雅で、それでいて誰から見ても史上最強のスクールアイドルとして相応しい、そのステージ、を!!)(あつこ)

こんな光り輝いている3人、それは、Saint Snowが真の意味で史上最強のスクールアイドルとなって光り輝いているからこそいえる想い、なのかもしれない・・・。

 こうして、スペシャリスト3人による史上最強のスクールアイドルユニット、Saint Snow、そのラストステージはその3人の熱き想いとともに史上最強のステージへと、いや、史上最強だからこそいえる、「史上最大級の楽しさ」でもって、スクールアイドルの、Saint Snowが自分たちのラストステージを繰り広げる、そんなステージへと昇華させていった。それは、理亜と同じく、「楽しむこと」、その大切さを探していた、Aqours側のカメラマン兼プロデューサーの少女こと月の心のなかにも深く突き刺さるものとなった・・・。

 

 だが、そんなステージも終わりの時はくる・・・。

ドゥドゥ ドゥドゥドゥ ドゥドゥードゥ ドゥ

「Believe Again」最後の音がなったとき、理亜、

(やった・・・、やった・・・。私、スクールアイドルを楽しむこと、できた・・・。姉さまとの、最後の、Saint Snowとしての、ラストステージ、やりきった・・・。ルビィ、見ていてくれた?私、このステージを、姉さまとあつこと一緒に、楽しみながら、それでいて、このステージを見たものをあっとさせる、史上最大級のステージ、やりきった・・・)

と、このステージを力いっぱいやりきったことを誇りに感じていた。

 そんな理亜に対し、聖良、ある言葉を送った。

「(理亜、)今のこの瞬間は決して消えません!!」

この聖良の突然の言葉に、理亜、

(はい、姉さま。私、そして、あつこ、2人とも、そう思っている・・・)

という想いとともに聖良の方を見つめる。

 そんな理亜に対し、聖良、理亜の手をとりながらこう言った。

「Saint Snowは、私と理亜(、そして、あつこ)のこの想いはずっと残っていく、ずっと心のなかに残っている!!どんなに変わってもずっと残っている!!だから、追いかける必要なんてない!!それが伝えたかったこと!!」

心の会話ですでに聖良の想いは理亜に伝えていた。けれど、直接口にすることでそれは言霊として、一生、その言霊に関係した者すべての心のなかに残るのである。そう考えると、この聖良の言葉は、聖良、理亜、そして、あつこの心のなかに一生言霊として残るものとなった。いや、Saint Snowという輝き、宝物、そのものが3人にとって一生消えることがない、それくらい大事なものとなった、ともいえた。そのことを自覚したのか、理亜、姉聖良に対しキラキラした自分の目を向けていた。

 また、それに食わせて、聖良、自分のなかにあるSaint Snowという輝き、宝物を通じて、理亜とあつこにあるメッセージを送った。

(理亜、そして、あつこ、私はこのステージでスクールアイドルを本当に卒業します。けれど、今日のステージを、Saint Snowラストステージを、忘れないでください。このステージで感じたこと、「スクールアイドルを一生懸命楽しむこと」、その想いがあれば、きっと、これからも2人でスクールアイドルを続けることができるはずです。だから、2人とも、忘れないでください、「楽しむこと」、それがいかに大事であることを、「楽しむこと」、それは私たちに無限のパワーを与えてくれることを・・・)

 この聖良のメッセージに、あつこ、

(はい、わかりました、聖良さん!!これまでありがとうございました・・・)

とお礼を言うと理亜も、

(姉さま、最後の最後まで、私に、大事なこと、教えてくれてありがとう。私、これからも、今日感じたこの想い、今日見つけることができた、私たちだけの輝き、せいんとqという輝き、宝物、それ、大事にする!!)

という姉聖良への感謝の気持ちをあらわすとともに、

(だから、姉さま、大好きです!!)

という想いとともに姉聖良を抱きしめた。むろん、聖良もそれを拒むことなく、逆に、

(理亜、私も理亜のことが大好きです・・・)

という強い想いとともに妹理亜を強く抱きしめた。

 そんな2人を見て、あつこ、

(本当に本当に素晴らしいです!!私も聖良損と理亜さんがいたからこそ、これまで、Saint Snowの一員として頑張ってこれました。そんあ2人のことが、私、大好きです!!)

という想いでいっぱいとなった。

 と、そんなときだった。あつこはふと理亜のそばになにかが見えたのか、

(あっ、1枚の紫の羽根!!)

と、心のなかで叫んだ。そう、理亜のそばからなぜか1枚の紫色の羽根が舞い上がったのだ。むろん、それは空へと舞い上がっていく、と、同時に、理亜も、

(あっ、紫色の羽根が空に飛んでいく!!)

と、その羽根の存在に気づいた。

 だが、このとき、理亜、そして、あつこはその羽根がなんなのかわかった。それは・・・、

(これは、私のなかにある輝き、そのもの・・・。私がその輝きの存在を知ったからあらわれたんだ・・・)(理亜)

(理亜さんの言う通りです。あれは理亜さんのなかにある輝き・・・。もしかすると、理亜さん、これで1人前のスクールアイドルとして神さまから認められた、のかもしれませんね・・・)(あつこ)

そう、それは理亜のなかにあるSaint Snowのいう輝き、であった。ラブライブ!では必ず1枚の羽根が出てくる。それはμ'sのときもしかり、Aqoursのときもしかり、である。そして、今、理亜は自分のなかにあるSaint Snowの輝きの存在を知ることができた。それにより、紫色の羽根が、輝きを示す羽根が、理亜のなかで誕生したのだった。羽根、それはラブライブ!においてとても意味のある存在、だからこそ、今、ここで、理亜のなかで生まれたのは理亜が1人前の、いや、1人のスクールアイドルとして生まれ変わることができた、それを指し示すものだったのかもしれない・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第43話

 だが、Aqoursも方もすごかった。理亜の持つ輝きという紫色の羽根は理亜のもとを離れ、ルビィたちのもとに、Aqoursのもとに降り注ぐ。そんな降り注ぐ羽根を囲むように円陣を組んでいるAqours、そこからAqoursのパフォーマンスが始まった。Aqoursの曲は「Brightest Melody」。こちらもラブライブ!決勝で、もし、Saint Snowと戦うことがあったのなら披露する曲だった。そう、Saint Snowが対Aqours戦用に「Believe Again」を用意していたのと同様に、Aqoursも対Saint Snow戦用に用意していた曲、それがこの「Brightest Melody」だった。

 その曲のもと、千歌、梨子、曜、ルビィ、花丸、ヨハネ、ダイヤ、果南、鞠莉は自分たちの持てる力をすべてだし、「私たちこそスクールアイドルを楽しむ天才なんだ!!」という想いを前面にだし、躍動感あふれるパフォーマンスをみせていた。

 そして、Aqoursの9人、パーフェクトナインから繰り出されるAqoursという輝きはまわりを巻き込むがごとく、とてつもない輝きを、いや、どんどん輝きを増していった。実はAqoursメンバーそれぞれが持つ輝きはSaint Snowのスペシャリスト3人の輝きと比べてそこまで大きくなかったかもしれない。なぜなら、実は、Aqoursメンバーそれぞれ、9人9葉、、性格も個性もバラバラだったからだ。みかん大好きで最初はμ'sに憧れていた普通かいじゅうの千歌、最初のころはスランプで自分の好きなピアノから離れていた、けれど、それを千歌たちと一緒に克服した(ついでに犬も・・・)Aqoursの作曲家の梨子、元気いっぱい、誰とでもすぐに仲良くなれる、けれど、本当は千歌と梨子のことがとても好きな元気っ娘の曜、これまでは姉のダイヤなしでは生きることができなかった、けれど、イタリア旅行により一人前のレディになったルビィ、中二病気質だけど、それでも、自分の進む道にブレがなかったヨハネ、ルビィ、ヨハネという2人の実質的な後見人でありながら本がとても好き、図書館の主だった花丸、体力ならAqoursのなかでナンバーワン、けれど、Aqoursのダンス担当でありながらお姉さん的存在だった果南、お嬢様気質でハーフ、だから、外国人みたいな話し方もする陽気で明るい鞠莉、そして、そのAqoursのまとめ役であり、ときには浦の星の生徒会長として頑張ってきた、なんだけど、ときどきポンコツになる、実はスクールアイドル好き(特にμ'sの絵里!!)なダイヤ、そんな性格も個性もバラバラだった9人。けれど、この1年を通じてこの9人でいろんなことを一緒にやってきたこともあり、9人のなかでは1つの大きな輝き、宝物が生まれた。それは、Aqoursという輝き、であり、それはのちに、宝物、なり、そして、1つの大きなギアでもあった。9人一緒になって行動したことで9人は鞠莉が最初のころに言っていた通り、パーフェクトナイン、となった、いや、リーダーの千歌が中心となって8つの歯を持つ1つの大きなギアとなったのだ。ただ、たった1つの大きなギアだけではなにもすることができない。ただ1つの大きなギアが回っただけでは聖良たち無敵のトライアングルを持つSaint Snowに勝つことはできないだろう。しかし、ただ1つのAqoursという大きなギアだけにあらず、その1つの大きなギアの周りには複数のいろんなギアがあった。それは、今、Aqoursのパフォーマンスを撮っているAqours側のプロデューサーの月、であったり、いつもAqoursのライブの準備をしてくれるAqoursの縁の下の力持ちことよいつむトリオ、そのバックにいる浦の星の生徒たち、ヨハネの前世を知る者(つまり、ヨハネの中学生の同級生)でありながらこのAqoursのラストステージを陰から支えているあげはたち、などなど、この9人の親や友達、その他大勢、複数に及ぶ、大小様々な無数のギアがAqoursという大きなギアのまわりに存在していた。そして、ひとたびAqoursが自分たちのギアを回せばそれに合わせて無薄のギアも回り始める。それはAqoursだけでなくその周りのギアが回りだすことでAqoursという輝き、宝物はどんどん輝きを増すことことを意味していた。それくらいAqoursという存在はまわりにいる者たちを巻き込みながらもそのたびごとに自分たちの輝きを増すことができる無限の可能性を秘めた存在だといえた。そして、今、その集大成として、千歌たちは、ルビィたちは、ダイヤたちは、Aqoursは、パーフェクトナインとしてこの1年で紡いできた、そんなAqoursという輝き、宝物をまわりにいる月やよいつむトリオなどを巻き込み、さらには、新しき無限の輝き、きらめきをもったお日さますら自分たちの輝き、宝物にしてしまった。このお日さまについてはAqours側のプロデューサーである月の名案なのだが、それすらAqoursは自分たちの輝き、宝物に変えてしまった。

 こうして、千歌たちAqoursは自分たちだけでなくまわりすら巻き込んではとても大きな、大きな、無限大のギアの集合体に、無限大の輝き、宝物をみせることとなった。それはこの数年によってが磨き抜かれた3人のスペシャリスト、その無敵のトライアングルから繰り出されるSaint Snowという輝き、宝物と呼べる無限大のパワーに匹敵するくらいのパワーともいえた。むろん、そこから繰り出されるAqoursの「スクールアイドルを楽しむ」、その想いもSaint Snowの3人、無敵のトライアングルから繰り出されるその想いと同等ともいえるものだった。むろん、これには聖良のスマホを通じてAqoursのステージを見ている聖良と理亜にしても、

(ま、まさか、あの千歌さんたちが、Aqoursが、こんな化け物になるくらい、そんな恐ろしい存在になるなんて、私、びっくりです!!私は不安・心配という深き海・沼の底に沈み込んだ千歌さんたちの肩をそっと押しただけでした。しかし、それによってAqoursはラブライブ!決勝のときよりも、いや、私たちと同じ、史上最強のスクールアイドル、になってしまいました。とても恐ろしいことです。けれど、そんなAqoursからみえてくるもの、それは、「スクールアイドルをめいいっぱい楽しむ、楽しむことで自分たちこそ史上最強のスクールアイドルだって証明してみせる!!」、その姿なのかもしれません。それくらい、アクアは、最後の最後まで、成長し続ける、そんなグループだといえるかもしれませんね)(聖良)

(ルビィ、すごい・・・、すごい!!私たちは、最初、東京のイベントで、ルビィたちと初めて会った。そのときは、まだ、ただのひよっこ、まだスクールアイドルをなめていた、そう感じた。けれど、今、私たちと同じ、立派なスクールアイドルに、なった・・・。これって、私たちからすれば、とても恐ろしいこと。だけど、私たちのライバル、なら、ようやく私たちと同じステージに立てた、そんな気がする。だって、私と姉さまとあつこ、この3人で自分たちを高めた、それによって史上最強のユニットになった。対して、ルビィたちは、まわりの人たちを巻き込みつつ、9人の力で、このステージに立つことができた。それ、とても、うれしい!!それに、私、「楽しむこと」に苦しんでいた、でも、ルビィたちは、それをあっさりとまわりにみせつけた。なんか、それって、私、やける!!けれど、そんなルビィたちだから、こう言える、ルビィ、そして、Aqoursのみんな、私、鹿角理亜、あなたたちのこと、史上最強の私たちのライバルに、認めてあげる!!)(理亜)

と、Aqoursのパフォーマンスに圧倒されていた。

 そして、あつこもこのAqoursのパフォーマンスを見てか、

(これがAqoursのパフォーマンスなんだ・・・。結成してからたった1年で圧倒的な、史上最強のパフォーマンスを、「スクールアイドルを楽しむ」、そのことを具現化したようなパフォーマンス、それでいて、自分たちを含めてこのステージを見ている者すべてがスクールアイドルをさらに好きになる、そんなパフォーマンスだ・・・。私たち3人はすべてスペシャリスト、だからこそ、Saint Snowのパフォーマンスは、「スクールアイドルとしての完璧な姿」を、より高みを目指したパフォーマンス、対して、Aqoursのパフォーマンスはまわりを巻き込んでしまう、それでいて、その巻き込んだ者すら自分たちの輝きへと変えてしまう、そんな、スクールアイドルとしては無限の可能性を秘めたパフォーマンス・・・。2つともスクールアイドルとしてあるべき姿かもしれません。そして、2つとも史上最強のスクールアイドルともいうべきパフォーマンスです・・・。この2つの史上最強のスクールアイドルが、今、戦っている・・・。それも、2つとも、「スクールアイドルを楽しむ」、その無限のパワー、輝き、宝物を全力でぶつけている・・・。なら、この戦いはスクールアイドルの歴史のなかでもなかなかな名勝負・・・、いや、それ以上のものになる、ともいえます・・・)

と、Saint SnowとAqours、2つの史上最強のスクールアイドル、それを比較しながらこの戦いのすごさに圧巻されていた。Saint Snowはスクールアイドルとしての無限大の高みを目指すもの、対し、Aqoursはスクールアイドルとしての無限大の可能性を目指すもの、2つのグループ・ユニットは目指すものは違うかもしれない。けれど、だからこそ、2つの史上最強のスクールアイドルは誕生した。その2つのグループ・ユニットは自分たちのすべてを賭けて戦っている、それはスクールアイドルの歴史において1つのターニングポイントになる、それくらいすごい戦いが目の前で起きていることにあつこは生で実感していたのだ。いや、それ以上い、過去のフィギュアにおいてジュニアとはいえ大きな大会で優勝した実績をもつ、それくらい、優勝するくらいの実力のある者のすごさを身をもって体験していたあつこが、名勝負、いや、それ以上の戦いというくらい、この2つの史上最強のスクールアイドル同士の対決は、私的とはいえ、史上最強の戦いになる、とあつこはそう想えてしまった・・・。

 そんな史上最強の戦いを前にして、あつこ、ふとあることを思いつく。それは・・・、

(こんな史上最強のスクールアイドルが相手のことをリスペクトしつつ自分たちのすべてを賭けて戦う、そんな史上最強の戦いのあとに残るもの、それは、未来への輝き、かもしれません・・・。互いが自分たちのすべてを賭けて死力を尽くして戦う、それにより、戦ったあとはお互いとも相手のことを褒め称えるでしょう。だって、自分たちをリスペクトしてくれた、自分たちを認めてくれた、そんな相手がいたからこそ、自分たちは史上最強の戦いを繰り広げることができたのだから。そんなお互いのことを認めているのだからこそ、戦ったあとはお互いがお互いを健闘するとともに未来へと一緒に進むことができるのだから・・・。それって、もしかして、「Over the Next Rainbow」、「次の輝きという虹を越えて」・・・、じゃないかな・・・)

お互いのことをリスペクトしつつ自分たちのすべてを戦う、そんな戦いのあとに残るもの、それは「ノーサイド」ではないだろうか。「ノーサイド」、それはラグビーにおける戦いのあとの精神のことである。ラグビーでは試合後、試合のなかで起きたことはすべて水に流し、敵味方関係なく互いを尊重する、それこそ、「ノーサイド」の精神である。それはスクールアイドルの世界にも通ずるものかもしれない。Saint SnowとAqours、史上最強のスクールアイドル同士の、自分たちのすべてを賭けた戦い、その戦いのあとに残るもの、それは、ラグビーと同じく、「ノーサイド」の精神、である。いや、それ以外にもこの「ノーサイド」の精神によりお互いのことを認め合っては一緒になってその先の未来、その先の輝きへと進んでいける、それがスクールアイドルとしてはとても大事な精神なのかもしれない。そして、だからこそ、あつこが、Saint Snowという想い、想い出、キズナ、それらを思い返していくうちに、この延長戦、この戦いの先に進む曲、その先の輝き、その先に虹へと進む曲として作り上げた曲、それがこの戦いにおいてとても重要なのかもしれない、そうあつこは想ったに違いない。

 そんな想いでいっぱいになったあつこだったが、突然、聖良から、

「あつこ、あつこ、もうAqoursのパフォーマンスは終わりました。しっかりしてください!!」

と、あつこをことを呼ぶ声が聞こえたことで、あつこ、

「えっ、もうAqoursのパフォーマンスが終わったのですか!?」

と驚きの表情をみせていた。と、同時に、自分のスマホから、

「わかった、私たちの新しいAqoursが!!」

という千歌の声が聞こえてきた。たしかにAqoursのパフォーマンスはすでに終わっていたようだ。ただ、あつこは、Saint SnowとAqours、史上最強同士の戦い、そのあとのことを想い続けていたためか、Aqoursのパフォーマンスが終わったことすら気づいていなかったようだ。そのためか、理亜から、

「あつこ、少しはしっかりして!!」

と、怒られるはめに・・・。とほほ・・・。

 

 そんなこんなでついにラブライブ!決勝延長戦もついに・・・、

「これでAqoursのパフォーマンスも終わりました。それでは、このラブライブ!決勝延長戦、その勝者を決め・・・」(ダイヤ)

ついに勝者を決めて終了・・・、

「ちょっと待ってください!!」(?)

と、突然の声に、ダイヤ、

「えっ、Saint Snowから物言い?」

とちょっと戸惑うことに・・・。この突然の声に、聖良、

「あつこ、どうしたのですか?突然声をあげるなんて・・・」

と、突然の声の主ことあつこに対し言うと、あつこ、Saint Snow、Aqours、両メンバーに対し、こんなことを言いだしてきた。

「聖良さんに理亜さん、そして、Aqoursのみなさん、お願いがあります。この戦いを後世に残すため、この戦いによって私たちがその先の未来へ、その先の、虹の先の輝きへ、進むために、私が作ったこの曲を歌ってくれませんか?」

 そして、あつこは聖良や理亜、そして、Aqoursのメンバーそれぞれのスマホ(ガラケーのメンバーを除く)にあの曲の楽譜とデータを送った。曲の題名は「Over the Next Rainbow」。この戦いが終わったからこそ歌うことができる、Saint SnowとAqours、それぞれのラストステージを終えた、だからこそ、その先の輝き、その先の虹へと進むための曲、だった。

 そして、それはこの曲のデータを再生して聞いた各メンバーから、

「これはとてもいい曲ですね!!私たちにピッタリな曲だと想います」

「It’s Beautiful!!この曲、とてもときめきました!!今のマリーたちにピッタリで~す!!」

と、かなり好印象だった。そのためか、Aqoursのリーダーの千歌から、

「聖良さん、この曲、一緒に歌いませんか?本当に最後の曲、Saint Snow、Aqours、その最後の曲、そして、奇跡のユニット、Saint Aqours Snow、その最後の曲として、一緒に、その先の未来へ、その先の輝きへと進むための!!」

と聖良に提案すると聖良も、

「千歌さん、奇遇ですね。私も千歌さんたちAqoursと一緒にこの曲を歌ってみたいと思っていました」

と、この曲を歌う気満々だった。

 そして、聖良はあつこに対しこうお願いした。

「あつこ、音量をいっぱいにしてこの曲を流してください!!私たちの、Saint Snowとしての、さらに、千歌さんたちの、Aqoursとしての、いや、奇跡のユニット、Saint Aqours Snowとしてのラストソング、あつこが心を込めて作ったこの曲、「Over the Next Rainbow」、それを、これから先へと進む、そんな私たちはせいいっぱい歌います!!」

この聖良の決意に、理亜、千歌、そして、そのほかのAqoursメンバーもすぐに同意する。これには、あつこ、

「聖良さん、理亜さん、そして、Aqoursのみなさん、本当にありがとうございます!!私としても、みなさんにしても、これが、Saint Aqours Snow、そのラストソングとして歌ってくれるなんて、作曲家冥利に尽きます!!本当にありがとうございます!!!」

と、深々と頭を下げながらお礼を言った。

 こうして、Saint Snow、Aqours、いや、Saint Aqours Snow、としてのラストソング、「Over the Next Rainbow」は11人の歌声とともにおごそかに、それでいて、前に向いて進もうとしている、そんな想いにあふれた、そんな心温まるものとなった。それはあつこを含めた12人の、これから先の未来へ、この先の輝きへ、虹の先のその先へ、進もうとしている、そんな姿からあらわれたものだった・・・。

(って、そう言っているけど、結局、この延長戦、どっちが勝利したのか、この時点ではあやふやになりました。大変申し訳ございません・・・、

「それなら、この私に、お任せで~す!!」

って、誰、この声?)



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SNOW CRYSTAL 序章 第44話

 そして、延長戦終了後・・・、

「ふ~、生き返る~。熱気あふれる延長戦だったけど、本当のところ、3月の早朝だもの、とても寒くて体が冷えたよ~。やっぱり、体が冷えたなら熱いお風呂に入るのが1番だね!!」

と、あつこは銭湯の大きな浴槽につかりながら冷えた自分の体を温めていた。ここはあつこの家の近くにある船見坂の銭湯、大正湯。下見板張りの名建築として有名であり、レトロな和洋折衷様式の建物としても有名であったりする。また、映画の舞台にもなった銭湯であり、外観はおろかなかの内装もかなりレトロな雰囲気を醸し出している、そんな100年以上の歴史をもつ銭湯であった。あっ、ちなみに、この銭湯のお湯は水道水なのであしからず、といってもかなり貴重です、雪国ですから、お湯を温めるための燃料代だってかなりかかっているのですから・・・。

 そんなわけで、冷えた体を温めるあつこ・・・であったが、時計の針はすでに午後3時を指していた。で、あつこは延長戦終了後、延長戦の後かたずけを聖良と理亜と一緒にしていた。たった1曲か2曲だけのステージであったが、Saint Snowラストステージだったため、スポットライトをはじめ、いろんな音響機器などを準備していた。そのため、その後かたずけにも時間がかかった、どころか、まわりへのお礼回りなどを聖良と理亜と一緒にして、それが終わったのがお昼の2時ごろ。また、大正湯の英長時間は午後3時ごろから、ということもあり、あつこは1番風呂と称してこの大正湯に来ては冷えた体を温めていたのだ。

 そんなわけで、

「ふ~、やっぱり1番風呂はすがすがしいものです!!誰もいないこの大きな浴槽に張った新しいお湯につかれる、そんな喜び、どんなことがあっても誰にも譲れないよ!!」

と、大きな声をあげていた・・・のもつかのま、

「うわ~、あつこ、なんか親父臭いこと、言っている!!これでも、フィギュアの有名な選手、だったわけ?」

と、ちょっと憎たらしい少女の声とともに、

「理亜、少しは言葉に慎みなさい!!あつこに失礼です!!」

と、その少女に注意する少女の声がした。これには、あつこ、

「あっ、聖良さんに理亜さん、いったいどうしたのですか?お二人の家から遠いにも関わらずこの銭湯に来るなんて?」

と声をあげる。なんと、この大正湯に今さっきまであつこと一緒にいた聖良と理亜が来ていたのだ。で、この2人、これまであつこが独占していた大きめの浴槽に入ってきたのだ。

 そして、あつこが入っている浴槽に入ってきた理亜、開口一番、あつこに対し、

「今日は私のためにラブライブ!決勝延長戦を開いてくれて本当にありがとう、あつこ」

と、今日行われた延長戦に対するお礼を言うとともに延長戦でのあつこに対する想いを語った。

「あつこが今日のためにいろいろと準備してきたこと、姉さまから聞いた。「Believe Again」、あつこが私と姉さまのために編曲してくれたって姉さまから聞いた。そして、最後にみんなと一緒に歌った曲、「Over the Next Rainbow」、あれ、私のなかで1番心に残った!!私と、姉さまと、ルビィと、みんなと、最後の最後で、みんなの心が1つになった。その先の未来へ、その先の虹という新しい輝きへ、みんな一緒に進もう、そんな気がした。どれもこれもあつこのおかげ。あつこ、改めて言う、本当にありがとう」

これには、あつこ、

「いや~、私は少しでも理亜さんを助けることができたらと思ってしたまでだよ!!そんなにかしこまらないで」

と、理亜に遠慮しつつもこう言った。

 だが、理亜、そんなあつこに対しあつこのある場所を見つめては・・・、

「それに、あつこ、あなたのスティグマ、知らなかった、とはいえ、無理な練習、強要して、ごめん・・・」

と謝罪をしてきたのだ。

 理亜からの突然の謝罪、これには、あつこ、

「理亜さん、そこまで顔を下げないでください!!」

と、理亜に対し顔をあげるように言うも、理亜、自分の謝罪に対する自分の想いを打ち明けた。

「あつこ、私、延長戦が始まるまで、あつこが中3の大会のときにケガをしたこと、知っていたけど、選手生命すら断たれるくらいの大ケガ、しているなんて、知らなかった・・・。そのときの傷跡、スティグマ、それによって、あつこ、苦しんでいた。でも、私、その存在を知らなかった、けど、あつこに対して、無理な、無謀な練習、強要してしまった・・・。もし、これで、あつこの傷跡、スティグマが、開いたら、私、私・・・」

この瞬間、理亜、涙を流そうとしていた。まったく知らなかったとはいえ、あつこの足の傷跡、スティグマ、それが開くのではないか、というくらいの無謀な練習を強要させてしまったこと、そのことを理亜はあつこに対し申し訳ない、そんな想いを、そのことに気づいた今、持っていたのだ。ただ、これについては、あつこ、

「理亜さん、理亜さんも自分の抱える深淵なる闇のせいで自分で自分を追い込んでしまったのが原因だったのです。それも、今日の延長戦で晴れることができました。私としてはそちらの方が喜ばしいことだと思います。同じ闇を抱えていた者同士、今はそのことだけを一緒に喜びましょう」

と優しく語りかけると、理亜、

「あつこ、ありがとう」

とあつこに対しお礼を言った。

 と、ここで、これまであつこと理亜のあいだに口をはさまなかった聖良から、

「ところで、理亜、あつこになにかお願いがあるのでしょ」

と、理亜に対しなにか催促すると、理亜、

「でも、今は・・・、ちょっと・・・」

と、ちょっと戸惑っている様子。そんな理亜の様子からか、あつこ、すぐに、

「理亜さん、私のことは心配しないで。言いたいこと、言って!!」

と言うと、理亜、意を決して自分のお願いをあつこに言った。

「あつこ、お願い、私と、私と再び、スクールアイドルユニットを、組んで!!いや、あつこと一緒に、スクールアイドル、やりたい!!一緒にやって、スクールアイドル、一緒に、楽しみたい!!」

理亜の願い、それは、あつこと再びスクールアイドルをやること。理亜が暴走する前までは聖良からのお願いがあったとはいえ理亜のユニットにあつこは参加しては理亜と一緒になってスクールアイドルを楽しんでいた。だが、理亜の暴走のせいであつこは理亜のユニットから抜けた。けれど、その暴走の原因となった闇が晴れた?今、理亜はあつこと再びスクールアイドルユニットを組みたい、とあつこにお願いをしたのである。ただ、その裏には理亜のある想い、

(あつこなあら私をちゃんと支えてくれる。だって、あつこには私と同じSaint Snowという宝物があるのだから)

それがあったからだった。同じ宝物を持っている、ただそれだけで理亜は安心感を得ることができたのである。

 だが、あつこ、そんな理亜に対し、

「う~ん、どうしようかな~」

とじらすように言うと、理亜、

「う~ん、やっぱり、ダメ・・・。それも仕方がない・・・。だって、私、あつこに、悪いこと、したから・・・」

と、しょんぼりしてしまう。これには、聖良、

「あつこ、理亜が頭を下げてこう言っているのです、どうにかもう1度考え直してください!!」

と、理亜に助け舟を出す。これには、あつこ、

(うわ~、聖良さんにも悪いことをしてしまったよ・・・。これじゃ、私、悪者になってしまう・・・)

と、バツを悪そうに思ってしまう。。必死にあつこに対しお願いをする理亜に対し少しじらしたのは、ちょっとしたイタズラ、だったのだそのせいで聖良にまで頭を下げられたら、ちょっとやりすぎてしまった・・・、と、思ってしまったあつこ、少し反省してしまった・・・と同時にあつこも、

(でも、たとえ理亜さんからのお願いがなくてももう私の心のなかではすでに決めていたけどね・・・)

と、どうやら自分の進む道をすでに決めていたようで、理亜と聖良に対し、元気よくこう宣言した。

「うん、いいよ、理亜さん!!私も理亜さんと一緒にスクールアイドルを楽しみたい!!」

このあつこの宣言に、理亜、あつこの手を取り、

「あつこ、ありがとう!!私、あつこと一緒に、スクールアイドル、頑張る!!」

とうれし涙を流していた。

 そして、理亜はあつこに対し高々にこう宣言した。

「それでは、さっそく、明日から、次のラブライブ!に向けて、練習、する!!」

だが、このとき、あつこ、自分のスティグマを見ては、

(あっ、もしかすると、前と同じ、理亜さん、無謀な練習をするのでは・・・。このままだと、私のスティグマ、また開いてしまうかも・・・)

と、つい弱気になってしまう。なんと、あつこ、前に行った無謀な練習をまた行う、とつい思ってしまったのだ。そうなるとまた自分のスティグマが開いてしまう、そんな不安があつこの頭のなかでよぎってしまった。

 そんなわけでして、あつこ、明日からの練習でウキウキ気分になっている理亜に対し申し訳なさそうに、

「理亜さん、大変申し訳ないのですが・・・」

と前置きしつつも少し弱気になりながらこう理亜に伝えた。

「私、理亜さんのユニットに入るけど、マネージャーとして頑張る。だって、私、ずっと、聖良さんと理亜さんのサポーターをしてきたじゃない。なら、私は理亜さんのサポーターとして頑張ったほうがいいんじゃないかな・・・」

このあつこの発言に、理亜、

「えっ、そんな・・・」

と、ちょっとがっかり。この理亜の様子に、あつこ、

(理亜さん、ごめん!!やっぱり、私、自分のスティグマを見ていたラ、理亜さんの練習、ついてこれない気がする・・・)

と、理亜に対し心のなかで謝罪する。

 が、それでも、理亜、気持ちを入れ替えたのか、あつこに対しこう言った。

「でも、それでも、あつこが私のユニットに入ってくれるのなら、私、うれしい!!あつこ、これからも、一緒に、頑張る!!」

このときの理亜の顔の表情は喜びいっぱいの笑顔だった。これには、あつこ、

「理亜さん、ありがとう!!」

と、お礼を言った。

 だが、このとき、延長戦が終わったとはいえ、今のあつこのなかには、これまで聖良と理亜と一緒に紡いできたSaint Snowという宝物と、過去のフィギュアでの大ケガによって生まれた深淵なる闇の2つが同居する事態に陥っていた。宝物の方は、このあと、理亜と一緒にスクールアイドル活動をすることで新たなる輝きを生み出すことになるのだが、一方、闇の方はなんかの拍子でいつ爆発してもおかしくなかった。なぜなら、理亜とは違い、あつこには目に見えるかたちでその闇が爆発するトリガーがあるのだから。そう、あつこの足に残る、大ケガしたときにできた傷跡、スティグマ、である。なので、今のあつこの状態はとても危ない・・・というか危うい状態ともいえた。とはいえ、その宝物と闇という相反するもの2つのせいであつこが、このあと、苦しむのだが、それについてはもっとあとの話となる・・・。

 と、ここで話をもとに戻そう。マネージャーとはいえ、あつこが理亜のユニットに参加することに喜んでいた理亜だったが、ここで思わぬことを理亜は言ってしまう。それは・・・、

「なら、あつこ、明日、三十三観音様シャトルラン、やる!!」

この理亜の発言に、あつこ、

「えっ、うそ!!三十三観音って、まさか、理亜さん、雪が残る函館山を全力で駆け上っては下るつもりですか!!それって無謀過ぎですよ!!」

と、びっくりしてしまう。函館山には33の観音様が設置されていることは前述した通りだが、実は、その33の観音様は函館山の麓から山頂、そして、麓へと、山の麓と頂上を往復する登山ルート(通称観音ルート)に沿うかたちで設置されているのだ(ただし、1つ目と2つ目の観音様は山頂へと続く車道のところに設置されています)。それを思いだしたあつこ、まだ3月とはいえ雪が残る函館山の麓と山頂を往復する、それも全力で、となると、まえに自分がやったものよりも無謀といえる練習になる、そう思っては理亜に対し注意をしたのだった。

 だが、そんなあつこの心配をよそに、理亜、変なことを言ってしまう。

「えっ、函館山での全力シャトルラン!?それ、あつこ、勘違い!!」

この理亜の発言に、あつこ、

「えっ、函館山での全力シャトルランっていう意味じゃないの?」

と、唖然となりつつも理亜に尋ねてみる。

 すると、理亜、自分の発言の真意を言った。

「あつこ、私、たしかに、三十三観音様でのシャトルラン、言った。けど、函館山の三十三観音様じゃない。湯の川温泉の、三十三観音様、そこでのシャトルラン!!」

これには、あつこ、

「えっ!!」

と拍子抜けしてしまう。実は函館山以外に三十三観音様がある場所があった。それは(前述の通り)函館の奥座敷である有名な温泉地、湯の川温泉、であった。江戸時代、西国に行かなくても観音霊場巡りができるようにと函館の廻船問屋の人が函館山の登山道に33の観音様を設置したのが函館山の三十三観音様巡りの発祥となるのだが、明治時代、旧日本軍が函館山を要塞化する際、函館山にあった33の観音様は一部を除いて函館山の麓におろされ、のちに湯の川温泉にあるお寺に移設されることとなったのである。ただ、戦後、函館山が解放され、改めて函館山に33の観音様を設置されたのだが、このとき、3つを除いて新しく観音様を作って設置したため、今、函館山にある観音様は3つを除いて、2代目、といえた。で、湯の川温泉のお寺にある観音様こそ、江戸時代に作られたオリジナル、ともいえた。で、理亜、そのことを知っていたため、わざと「三十三観音様でのシャトルラン」とだけ言ってあつこを困らせたのである。

 しかし、これには、あつこ、激怒。

「理亜さん、私の親切心、踏みじみりましたね!!理亜さん、ふざけないでください!!」

むろん、これには、理亜、

「騙される方が悪い!!」

と生意気な表情をしながらあつこを挑発。まぁ、これには、あつこ、

カチンッ

となったのか、理亜に言ってはいけないことを言ってしまう。

「理亜さん、やっぱり、そのぺちゃぱいな胸だからこそ、そんなことを言えるのです!!!」

って、それ、理亜が1番気にしていることでは・・・。だが、これには、理亜、すぐに反論。

「あつこの方だって、その大きな胸、ただの脂肪!!だから、よけいなこと、すぐに言う!!」

って、それ、あつこが1番気にしていること!!あつこの胸は、巨乳、とはいかないまでも誰から見ても大きな胸、といえた。ただ、それによっていつも肩がこっているのがあつこの悩みの種の1つなのですが、それを理亜はわざと指摘してきたのだ。なので、あつこも、

「私のは別にいいんです!!そんなことを言われる筋合いはないのです!!」

と理亜に反論すると、2人とも、

「「イーだ!!」」

と、拗ねてしまった。この2人の言い争いには、聖良、

「2人ともケンカをしないで!!」

と、少し困り顔になってしまった。いや、それ以上に、理亜、

「あつこ、この銭湯の水でそのスティグマを治したら!!」

と言えばあつこも、

「なら、理亜さんもこの銭湯のお湯でその汚い心を洗ったら!!」

と反撃。。あの~、ここの銭湯、大正湯、温泉じゃなくてただの水道水(でも、とても貴重)なんですけどね・・・。これじゃ収拾がつかないよ・・・。

 と、そんなときだった。突然、外から、

ドドドドド

という大きなヘリの音が聞こえてきた。これには3人とも、

「「「えっ、なに?」」」

と一瞬顔を見合わせてしまう。

 そして、3人ともすぐに着替えては外に出ると、そこには・・・、

「お~、そこにいるの~は、Saint Snowのみんさん、ですね~。私、鞠莉の母親、鞠莉‘sママで~す!!YOUたちを迎えにきま~した!!」

と、なんと、ピンク色のジェットヘリに乗って、鞠莉の母親、鞠莉‘sママがいたのだ!!これには、聖良、

「ぇつ、なんで私たちが・・・」

と言うも、すぐに鞠莉‘sママが乗ったジェットヘリからSPらしき男たちが数人降りてきては3人に縄らしきものを巻いては、

「「「うわ~」」」

と、3人が大声をあげるまもなく3人をヘリへと釣りあげてしまった。

 で、3人仲良く縛られたまま、鞠莉‘sママが乗るジェットヘリに到着!!すると、鞠莉‘sママ、3人に対して元気いっぱいの声でこう叫んだ。

「今日の延長戦、Very Excitingなものでし~た!!なので、私、そんなAqoursとSaint Snowのみなさんと一緒に、延長戦祝賀会、私のホテル、ホテル小原沼津淡島で、行いま~す!!そのために、Saint Snowの3人、拉致、しました!!」

これには3人とも、

「「「えっ、うそ・・・」」」

と唖然となってしまった。

 だが、そんなの官界なく、鞠莉‘sママ、

「それじゃ、行きま~す!!全速力で我が家で~す!!JHMOSP(ジェットヘリ・マリ・オハラ・スペシャル)、Go to Fly、で~す!!」

と言っては操縦かんをめいいっぱい引くとそのままジェットヘリは全速力で鞠莉‘sママの実家、ホテル小原沼津淡島まで一直線に飛んでいった。むろん、聖良たち3人とも、

「「「うへ~、酔う・・・」」」

と、ヘリに酔ってしまい、気分が悪くなったようだ・・・。ご愁傷様・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第45話

 こうして、鞠莉‘sママによって拉致されてから1時間半後・・・、

「う・・・、気持ち悪い・・・」

というあつこの声とともに無事?にホテル小原沼津淡島に到着した鞠莉‘sママと聖良、理亜、あつこ。で、聖良たち3人が鞠莉‘sママによって連れてこられた部屋には・・・、

「あっ、ルビィ!!」(理亜)「あっ、理亜ちゃん!!」(ルビィ)

なんと、そこには、ルビィたちAqoursメンバー9人の姿、プラス、今日の延長戦でAqours側のプロデューサーをしていた月をはじめとした裏方のみなさんの姿だった。

 で、鞠莉‘sママ、この部屋に集められた、聖良、理亜、あつこ、そして、Aqoursメンバーに対し変な要求をしてきた。

「Saint Snowのみなさ~ん、Aqoursのみなさ~ん、お願いで~す、今すぐ、この衣装に着替えてくださ~い!!」

で、12人の目の前に出されたのは・・・、

「えっ、これって、今日、延長戦で着ていた衣装!!」(千歌)

「私たちのは、「Believe Again」、今日の延長戦で私たちが着ていた衣装じゃないですか”?」(聖良)

そう、なんと、12人の目の前に出された衣装、おsれは、今日の延長戦で聖良たちSaint Snow、千歌たちAqoursが実際に着ていた衣装だった。

 だが、あつこ、ふと、不思議に思う。なぜなら、

「でも、「Believe Again」の衣装、なんで3着もあるの!!たしか、聖良さんと理亜さんだけだよね、「Believe Again」の衣装!?」

そう、なぜかSaint Snowの目の前に出された「Believe Again」の衣装、なんと、3着、もあったのだ。でも、実際に聖良たちが作った衣装は聖良と理亜の2着だけ。もう1着を作った記憶なんて聖良にも理亜にも、もちろん、あつこにもなかった。

 だが、鞠莉‘sママ、そんなことも気にせずに、ある事実をさらっと言ってしまう。

「「Believe Again」の衣装3着のうちの1着はこちらでmake(作って)してしまいま~した!!あつこさん、あなたにピッタリの衣装、とても気に入ると思いま~す!!」

この鞠莉‘sママの発言、これには、あつこ、

「えっ、私専用の衣装・・・、って、なんで私のパーソナルデータを知っているわけ?」

とびっくりするとともに鞠莉‘sママに抗議するも、鞠莉‘sママ、

「あつこさん、世界的財閥の情報網を甘くみないでくださ~い!!世界的財閥である小原財閥の力さえあえば一個人の情報なんて朝飯前で~す!!」

と悪びれることなく言ってしまう。鞠莉‘sママよ、そんな力があれば少しでも世界平和のためにその力を使ってくれよ・・・、まったく・・・。

 

 とはいえ、せっかくだからと、AqoursとSaint Snow(もちろん、あつこを含めて)、の12人は延長戦で着ていた(+あつこのために新しく作られた)衣装に着替え、そのまま祝賀会へと移った。その場で、ルビィは理亜に対し、

「今日の延長戦、理亜ちゃん、とてもすごかったよ!!ルビィ、とても感動したよ。これこそラブライブ!決勝(延長戦)の醍醐味だね!!」

と褒めていた。むろん、理亜も、

「ルビィたちAqoursもすごかった!!私、姉さまとあつこと、ルビィたちAqoursのおかげで立ち直ることができた。ルビィ、そして、みんな、ありがとう!!」

と、そこにいるみんなに対してお礼を言った。

 そんな微笑ましい光景を見た聖良、理亜に対し、

「もうこれで、私たちの夢、ラブライブ!優勝は叶いましたね、理亜。もう私は思い残すことはありません。これからも、理亜、私がいなくても、理亜のなかにある、Saint Snowという宝物、そして、あつことともにスクールアイドルを楽しみつつ続けてください」

とメッセージを送った。むろん、これには、理亜、

「はいっ、姉さま!!」

と力強くうなずいた。

 たえだ、ここで、理亜、ふとある疑問が浮かぶ。それは・・・、

「ところで、今日の延長戦、Saint SnowとAqours、どっちが勝ったわけ?」

そう、この念挑戦の勝敗である。延長戦の場ではあつこ発案の「Over the Next Rainbow」をみんなで歌ったことによりうやむやになってしまった。なので、この祝賀会の場でそれを白黒はっきりつけようとしていたのである、理亜は・・・。

 だが、ここで変なことが起きてしまった。それは・・・、

「今日の勝者は、Saint Snow、ですね。なぜなら、あれだけすごいパフォーマンスを見せつけたのですから!!」(ダイヤ)

「いやいや、やっぱりAqoursのみんさんですよ。ラブライブ!王者であるAqoursの足元には及びませんでした、私たちSaint Snowは・・・」(聖良)

なんと、お互いにお互いとも相手を勝者だと言い合い始めたのである。どちらとも洲場rたしいパフォーマンスをみせていた、そのためか、お互いはお互いとも、自分たちは負けた、と思ってしまったのである。まぁ、これも、相手のことをリスペクトした結果、とも言えなくもないのですがね・・・。

 と、ここで、鞠莉‘sママ、そんな2つのグループ・ユニットのあいだに乱入、

「なら、ここは、第三者、この私、鞠莉‘sママが、このDuel(戦い)のWINNER(勝者)を決めま~す!!」

と言ってきた・・・と、言っても、ここは第三者である鞠莉‘sママに決めてもらうのが1番、というわけで、誰からも異論がでず(というか、あまりもの鞠莉‘sママの迫力に誰も反論できなかっただけなのですがね・・・)、鞠莉‘sママがこの延長戦の勝者を決めてもらうこととした。

 そういうわけでして、鞠莉‘sママ、

「ドゴゴゴゴ・・・」

と、自らドラム音を言うと、そのまま、延長戦の勝者を発表した。

「今日のDuel、WINNERは・・・、Saint SnowとAqours、両者、で~す!!」

これには両方とも、

ガクーーーーーー!!

と大いにこけてしまった。そりゃそうだ。まさか、両者とも勝者だなんて、そんな結果、聞いたことがなかったからだ。いや、誰も、そんなこと、言わないだろう。まったく。

 でも、鞠莉‘sママは本気だった。なぜなら・・・、

「私は、Saint SnowとAqours、2組のパフォーマンスを見て思いま~した、両方とも、very wonderful(とても素晴らしい)なものでした~。なので、両方ともWINNERで~す!!ラブライブ!決勝延長戦、WINNERは、Saint SnowとAqours、両方で~す!!」

鞠莉‘sママにとって両方ともとても素晴らしいパフォーマンスだった。なので、優劣なんてつけることなんてできない、それくらい、鞠莉‘sママにとって両者の戦い、史上最強の戦いはとても素晴らしいものだった、とも言えた。

 でも、この鞠莉‘sママの理由には、両方とも、

「もう、ママったら、ここにきて、素晴らしいこと、言ってくれるじゃないですか!!マリー、とてもうれしいで~す!!」(鞠莉)

「まぁ、そう言われると仕方がありませんね。ここは両者とも勝者にしておきましょう」(聖良)

と、妙に納得してしまい、鞠莉‘sママが決めた結果を受け入れてしまった。

 そんななか、理亜はあることを思っていた。それは・・・、

(今日の延長戦、両者勝者、になった。私、その結果、とてもうれしい!!これで、姉さまとあつことの夢、叶った・・・、形式的には・・・。でも、この延長戦、私のため、深淵なる闇に苦しむ私のため、そのために行われた戦い。だから、私、今度は、私の実力で、その夢、叶えてみせる!!そう、

 

私と姉さま、そして、あつこの夢、ラブライブ!優勝、私の実力で、絶対に、叶えてみせる!!)

 

そう、理亜は知っていた、この延長戦が自分のために、深淵なる闇に苦しむ理亜のために行われたことを・・・。この延長戦自体、私的に行われたものだった、と理亜は理解していた。なので、理亜、今度は本当の実力で、自分の実力で絶対に聖良と自分とあつこの夢、ラブライブ!優勝、それを叶えてみせる、そう決意していたのである。

 だが、このとき、理亜のなかではあるものが理亜の知らないところでうごめいていた。それは・・・、

 

消えたと思っていた理亜のなかにある深淵なる闇

 

だった。この延長戦により理亜はその闇が完全に消えた、と思っていた。だが、実際には完全に闇が消えていなかった。理亜のなかにある闇はただ消えてようにみえて実際は残っていた、いや、隠れていたというのが正解だろう。そのため、理亜のなかにはまだ深淵なる闇は残っていた。そして、その闇がのちに理亜を新たなる苦しみを与えることになるとはこのときの理亜、そして、あつこも知る由もなかった。

 とはいえ、その闇のことなんて知らず、理亜、そして、あつこは聖良とルビィたちAqoursのみんなと一緒に、一日中、延長戦の祝賀会と称して盛大に一緒に楽しんでいた、スクールアイドルの素晴らしさ、楽しさを噛みしめながら・・・。



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SNOW CRYSTAL 序章 第46話

 そして、延長戦から2日経った日の早朝・・・。

「ふ~、寒い!!もう春だっていうのに函館の朝はとても寒いよ~!!」

と、あつこは冷えた手を自分の息で温めながら言った。延長戦の翌日、つまり、昨日は延長戦の疲れにより一日中OFFだった。で、その翌日、つまり、今日、あつこはいつも行っている朝練をしに自宅の外に出てはまずは軽くランニングをしようとしていた。

 が、そのときだった。突然、あつこに対しよく聞いた声がした。

「ねぇ、あつこ、ちょっとお願いがあるのだけど・・・」

この声に、あつこ、

「って、えっ、誰!?」

と驚いてしまう・・・もすぐに、

「って、理亜さんじゃないですか。びっくりしました・・・」

と、その声の主こと理亜だとわかるとほっとすると、あつこ、その理亜に対し、

「ところで、なんでここに理亜さんがいるのですか?」

と尋ねてみる。

 すると、理亜あつこに対しあるお願いをした。

「あつこ、お願い!!私と一緒に、朝練、しよう!!」

で、この理亜のお願いに対し、あつこ、

「あっ、でも、これまで、理亜さん、自分一人で、朝練、していませんでしたか?」

と逆に尋ねてしまう。これには、理亜、ちょっと照れくさそうにこう話した。

「だって、あつこの決めた練習メニュー、私より、効率的に、力つくから・・・。私が決めると、ただ走りこむだけ・・・」

まぁ、理亜らしい理由・・・なのだが、ここで、あつこ、

(あっ、理亜さん、とてもかわいい!!きゅんときちゃう!!)

と少しときめくもすぐに、

(でも、ここで理亜さんのお願いを聞いたらきっと暴走状態の理亜さんに戻ってしまう・・・。なら、ここは少しじらしてみよう!!)

と、悪だくみを始めるあつこ。

「さ~て、どうしようかな?私、理亜さんから過酷な練習を強要されていたからな~。もしかすると、理亜さん、私の決めた練習メニューを勝手に変更しそうだな・・・」

このあつこの言動、とうの理亜はというと、

「えっ、うそ・・・、あつこ。一昨日、私のユニットのマネージャーになるって言ったじゃない・・・」

と、ちょっと泣きそうな声をあげると、あつこ、さらにじらしにくる。

「どうしようかな、どうしようかな。理亜さんのお願い、断ろうかな~」

 だが、このあつこの言葉に理亜の心のなかであh

プツゥン

という音が聞こえてきた。むろん、理亜、

(あつこ、私が下手に出ていれば調子に乗るなんて、絶対に許せない!!)

と、ついにキレてしまった・・・。むろん、キレたわけですし、理亜、あつこに対し、

「って、あつこ、わざと、私、困らせよとしている!!あまり私をなめないで!!」

と怒りをぶつけてしまう。これには、あつこ、

「えっ、理亜さん、一体どうしたのですか?私、なにか気に触った?」

とびっくりしてしまう。

 でも、理亜の怒りはこれでは収まらなかった。あつこに対し、理亜、

「私が下手に出ればいい気味だと思って私をわざと困らせた!!」

と、これまたヒートアップしたのか文句を言ってしまう。ただ、これには、あつこ、

「へぇ~、それって理亜さんの単なるひがみではないですか~」

とあくまで白を切る。

 ただ、これが理亜のなかにある導火線に火をつけてしまった。理亜、あくまで白を切るあつこに対し、

「あつこ、私のこと、バカにしないで!!」

と、怒りMAXで激おこぷんぷん丸、そんな表情をしてきつく言うとついに言ってはいけないことをあつこに言ってしまう。

「まっ、あつこの胸には重い脂肪の塊がぶら下がっている!!ただ、それだけで肩がこる、肩がこるからイライラが溜まる!!なら、あつこの胸から脂肪の塊がなくなれば少しは落ち着く!!間違いない!!」

 むろん、この理亜の発言に、あつこ、ついに、

プチンッ

とキレてしまった・・・。なので、あつこ、理亜に反撃。

「へぇ~、そうですか。なら、理亜さんはその真っ平らな胸だからなにもかも受け止めることができないのですね。だからこそ、理亜さんはいろんなことから逃げているのですね」

むろん、これには、理亜、さらにヒートアップする・・・。

「う~、ただの戯言だと聞いていれば~、あつこ、そのむ〇な胸、なんとかして!!」

むろん、これには、あつこ、さらにヒートアップする・・・。

「そんなこと言うけど、理亜さんも、そのひ〇乳、なんとかしたら!!」

あああ、こうなってしまうと手に付けられないよ・・・。2人の口論がついに始まった・・・。

「このむ〇乳!!」(理亜)「このひ〇乳!!」(あつこ)

2人のののしりあい、これにて、この物語は永遠に・・・、

「って、私、こんなことを言っていたら、いろんなところで、フラグ、立っちゃうんじゃないかあ・・・」(あつこ)

「うん、私もそう思う。もしかすると、私より胸のない、本当にぺったんこな娘、出てくるかも・・・。ここは落ち着こう、あつこ・・・」(理亜)

と、なんかいろんなところで変なフラグが立つことを危惧したのか、2人は言い争うのをやめた・・・のですがね、お二人さん、もうすでにあなたたちのせいで、いろんなフラグ、すでに立っているのですがね・・・。

 とはいえ、ここは一時休戦、というわけでして、理亜、

「でも、あつこの決めた練習メニューで練習したいという気持ちは本当!!」

と素直に言うとあつこも、

「うん、そうだね。私も理亜さんと一緒に練習したい!!」

と、自分の気持ちを素直に話した・・・のだが、念には念を入れてか、あつこ、

「でも、今度は理亜さんが暴走しないように私がきちんと管理しないとね!!」

と釘を指すと理亜も、

「あつこ、それ、厳しすぎ!!」

と、少しおどけながら答えた。これには、あつこ、

ハハハ

とわらいころげてしまった。むろん、理亜もそれにつられて、

ハハハ

とつい笑ってしまった・・・。

 

 こうして、すぐに仲直りした2人は軽めのジョギングを始めた。そのジョギングの最中、あつこは理亜に対しあることを尋ねた。

「ところで、理亜さんのユニット名、決めたのですか?」

おす、まだ理亜のユニットには名前がなかった。理亜のユニットメンバーとのSNSのグルの名前は「聖女アイドル部」であったがこれが本当の理亜のユニット名ではなかった・・・というか、今までユニット名を決めていなかったのが正解だった。

 ただ、それについて、理亜、意外なことを言う。

「あっ、たしかに、私、まだ、自分のユニット名、つけてなかった・・・。これまで、自分のユニット運営のことだけ、考えていたから、名前、決めてなかった・・・」

そう、理亜、これまで自分のユニット運営のことだけしか考えていなかったため、自分のユニットの名前を考えてすらいなかったのだ。

 そんなわけで、あつこ、理亜のユニット名についていろいろと案を出しては理亜がそれを判断することに・・・。

「なら、これならどうですか、「Saint Snow2」!!」(あつこ)

「ダメ!!姉さまとあつこの想い出、薄くなっちゃう!!」(理亜)

「なら、「The SNOW」!!」(あつこ)

「それもダメ!!安直すぎる!!」(理亜)

「それなら、これだ!!「「聖女アイドル隊」!!」(あつこ)

「それ、ダサすぎ!!」(理亜)

 いくらあつこが案を出しても理亜は否定する。これでは埒が明かない、と思ってか、あつこ、こんなことを言いだしてきた。

 

「なら、これならどうだ、「SNOW CRYSTAL」!!」

 

 このあつこの言葉、それを聞いた瞬間、理亜、

「・・・」

と無言になってしまった。これには、あつこ、

「あれっ、理亜さん、もしかして、怒っている・・・」

とちょっと心配になる。

 だが、心配そうに理亜を見るあつこに対し、理亜、

「あつこ、ちょっと・・・」

と小声で言うと、あつこ、

「えっ、どうしたの、理亜さん・・・」

と恐る恐る理亜に近づくと、理亜、あつこに対しあることを尋ねる。

「あつこ、なんで、その名前、したわけ?」

 すると、あつこ、正直に、なぜ「SNOW CRYSTAL」と言ったのか、その理由を言った。

「だって、理亜さん、クリスマスライブのときに聖良さんにこう言っていたではありませんか、『だから、新しいグループ(ユニット)で違う「雪の結晶」をみつけて、姉さまにもみんなにも喜んでもらえる、(そんな)スクールアイドルを作る!!』って」

その言葉をあつこが言った瞬間、理亜の頭のなかにある言葉がよみがえった。

 

「姉さま、私、Saint Snowを続けない。だって、これは姉さまとの(大切な)想い出、だから。世界で1つしかない雪の結晶だから。だから、新しいグループ(ユニット)で違う「雪の結晶」をみつけて、姉さまにもみんなにも喜んでもらえる、(そんな)スクールアイドルを作る!!(だから、姉さま、)見てて!!」

 

そう、これは理亜が初めて「スクールアイドルを楽しむ」という経験をしたあのクリスマスライブ、そのあとに姉の聖良に誓った理亜の言葉だった。その光景を思いだしたのか、理亜、

(あっ、私、たしか、クリスマスライブが終わったあと、姉さまにそう誓ったんだそうだ、Saint Snowとは違う・・・、

 

雪の結晶、「SNOW CRYSTAL」・・・、

 

見つけるって、姉さまにもみんなにも喜んでもらえる、そんなユニットを作るんだって・・・)

と、クリスマスライブ後に姉聖良に誓った言葉を言い返すとあつこの対し力強くこう告げた。

「SNOW CRYSTAL」・・・、新しい雪の結晶・・・。決めた!!私、決めた!!

 

私たちの新しいユニット名・・・、「SNOW CRYSTAL」、

 

それに決めた!!」

 その瞬間、あつこ、

「「SNOW CRYSTAL」・・・、うん、いい!!私たちにぴったりな名前!!なら、私たちのユニット名は「SNOW CRYSTAL」に決定!!」

と大きく喜んだ。

「SNOW CRYSTAL」・・・、新しい雪の結晶・・・、それは理亜とあつこにとってぴったりの名前かもしれない。だって、これから先、2人は自分たちの手で新しい雪の結晶をみつけにいかないといけないから。むろん、それは平坦な道ではない、とても困難な道のりになるだろう。なぜなら、2人のなかにはまだ深淵なる闇があるのだから・・・。その闇によって2人はこれから先も苦しむことになるだろう。でも、はたしてそうなってしまうのだろうか。否、決してそうなるとは限らない。だって、たとえそうであったとしても乗り越えることができるかもしれない。なぜなら、2人はもう決めたのだから、2人は新しい雪の結晶、「SNOW CRYSTAL」を見つけるためにその困難な道のりを乗り越えることを。ただ、その先にある未来をここで語るのはやめにしよう。だって、この物語はたんなる序章でしかないから・・・。ここから先の物語は、次の物語にて、本編にて、語ることにしよう。

 

だが、今は、これだけは言えるかもしれない・・・、

 

2人は、理亜とあつこは、今、ようやくスタートラインに立つことができた。2人のなかにある深淵なる闇、それを乗り越えるために、夢破れし者たちが集い、出会いと別れ、そして、ライバルたちとの交流を通じ、再び、空へ、夢へと紡いでいく物語、そのスタートラインに、2人は、今、立っている・・・。

 

そんな2人の・・・、いや、3人の物語が、今、始まろうとしていた・・・



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SNOW CRYSTAL 序章 エピローグ

(序章 エピローグ)

 と、言ったものの、よく考えれば本編につながるプロローグ、序章だけで約2年かかるとは本当に思ってもいなかった・・・。それくらい、長い、長い、序章だった・・・。Aqoursのルビィの物語「Rubby’s Detemination(ルビィの決心)」、そのルビィの物語の裏で起きた月とその仲間たちの物語「Moon Cradle」、新生Aqoursお披露目ライブ前後の千歌たちAqoursの物語「NEXT SPRKING」、そして、Saint Snowの聖良、理亜、あつこの物語「SNOW CRYSTAL 序章」、この長い、長い、長~い、序章たちのおかげですべてが整った。ついに始まるメインストーリー、それはこの序章のなかでいろんな物語を紡いできた登場人物たちが新たなる物語を紡いでいくストーリー、夢破れし者は自分のなかにある闇に苦しみながら同じ夢を持つ者たちと一緒に、再び、空へ、夢へと紡いでいく、また、けなされし者は幻の者たちと一緒に人に認めらえたいためにもがき苦しんでいく、また、戦いし者たちは己の敵からの妨害を受けつつも輝かしい未来を目指して頑張っていく。人の生き方は人それぞれである。なので、人の進む道は無限にある。今から始まる物語はそのうちのいくつかの道を示すものである。はたして、どんな道、どんな物語が展開されるのだろうか。それはあとのお楽しみである。

 

 ・・・が、今から始まる物語、それは、「類は友を呼ぶ」、である。意味は、「似た物同士は自然と集まること」である。そう、今から始まる物語の主人公は自分の心のなかに深淵なる闇を抱えている者は序章にて同じ闇を持つ者を呼び寄せてしまった。ただ、その2人は闇とともに自分たちだけの宝物を得ることができた。だが、それにより、闇と宝物、2つの相反するものが同居してしまった、その2人は・・・。はたして、この先、どんな物語に突き進むのだろうか。いや、もしかすると・・・、いや、ぜったにまた同じ闇を持つ者を呼び寄せる・・・かもしれない。だって、「類は友を呼ぶ」、なのだから・・・。

 

「スクールアイドル部、今、募集中!!」

と、理亜が大きな声をだしてビラ配りをしていた。今日は入学式。理亜は2年に進学、今日もせっせとビラ配りをしていた。だが・・・、

「ごめん、私、きつい練習、いや!!」

「スポ根の部活なんて無理!!」

と、入学生たちから逃げられてしまう。それでも理亜はめげずに、

「スクールアイドル部、今、募集中!!」

と、極度の人見知りにも関わらず精一杯声をあげてビラ配りをしていた。。

 しかし、入学生たちは理亜を避けていた・・・というよりも逃げていた。これには、理亜、

(誰も私のビラを受け取ってくれない・・・。やっぱり、私のしたことが原因・・・)

と、肩を落としてしまった。

 と、そんな理亜にある少女が理亜の肩をたたいてこう言った。

「理亜さん、あまりがっかりしないでください。仕方がないことです・・・」

で、その少女の声に、理亜、

「あつこ、慰めてくれてありがとう」

と、その少女ことあつこに対しお礼を言うと続けて、

「でも、これが私の行った罪の報い・・・」

と、少しうなだれるように言った。これには、あつこ、

「そう考えないでください、理亜さん・・・」

と、少しでも元気になってもらえるように慰めた。

 とはいえ、このときの理亜の気持ちは暗いものだった。理亜の気持ち、それは・・・、

(もう、新1年生のあいだにも広がっていた・・・、私が暴走していたこと・・・)

そう、理亜が気にしていること、それは理亜が進級する前、有志が集まって自分だけのユニットを作ったものの、理亜のなかにある深淵なる闇によってほかのユニットメンバーに対し無謀といえる練習を課してしまったことだった。これにより、ほかのユニットメンバーは次々と離脱、最後は理亜1人になってしまったのだ。ただ、そのユニットメンバーの1人であったあつこは紆余曲折をえてマネージャーとして戻ってきたものの、その無謀といえる練習をほかのユニットメンバーに対し課してしまったことが聖女の生徒たち(新入生を含む)に広がってしまい、その練習を恐れて理亜のユニットに入ってくれる生徒が皆無、つまり、誰も理亜のスクールアイドル部に入部しようとは思わなかったのである。そのため、理亜が、始業式、そして、入学式、自分のユニット・・・というか聖女スクールアイドル部の部員募集のビラをあつこと一緒にいくら配ろうとしても誰も受け取ってもらえなかったのだ。

 ただ、たとえそうだとしても理亜はめげなかった。なぜなら・・・、

(たとえ、私とあつこ、たった2人だけだとしても、Saint Snowという宝物があれば寂しくない。だって、私は、いつも、姉さまと、あつこと、つながっている・・・)

そう、延長戦のとき、理亜が見つけることができた、姉聖良とあつことのSaint Snowという想い出、思い、キズナ、そんな輝き、そして、宝物、それがあればずっと聖良とあつことつながることができる、そのことを理亜は気付いているのだから・・・。なので、理亜はもう「孤独」を感じることはなかった。それは一時期「孤独」を味わっていた理亜にとって大きな進展ともいえた。

 そんな理亜にもついに幸せ・・・が来たかもしれない。それは理亜が自分のなかにある宝物の存在を再確認していたときに起きた。突然、理亜に対し、

「理亜さん!!」

という少女の声が聞こえてきた。この声に、理亜、

(えっ!!)

と少し驚いては後ろを振り向いた。

 すると、そこには1人の少女、というか、新入生が立っていた。その新入生は理亜に対してこう叫んだ。

「理亜さん、お・・・、花樹、理亜さんと一緒に、スクールアイドル、したいです!!」

この新入生の言葉に、理亜、

(この新入生、昔の私みたいにやる気のある娘。そう考えると、私、なんか懐かしく感じる・・・)

と、昔の自分に似ている新入生を見てちょっと微笑んでしまう。

 だが、このとき、理亜は気づいていなかった。この新入生がのちに理亜とあつこの物語に大きく関わることを、そして、類は友を呼んでしまったことを・・・。なぜなら、この新入生、実は理亜とあつこと同じ深淵なる闇を抱えていたから・・・、その夢を持つきっかけとなったものを失ったことによりその夢が弾けてしまった、そんな過去を抱えていたから・・・。

 だが、それでも、1つだけ、言える。それは・・・、

 

次のその新入生の言葉により、理亜、あつこ、そして、新入生の新たなる物語が始まった・・・

 

 自分のユニット、いや、部活に入りたい、スクールアイドルをした、その新入生の言葉に微笑み返す理亜。そんな理亜に対し、その新入生はこんなことを言ってしまった・・・。

 

「花樹、Saint Snowとして活躍した理亜さんと一緒にスクールアイドルをしたいです!!だって・・・、

 

理亜さん、ばかす・・・」

 

SNOW CRYSTAL 序章 fin

 

AND

 

LOVELIVE!SNOW CRYSTAL

 

Start!!

 

NEXT STORY is

 

KAZYU said 「BAKASU…」

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第1話(1)

「おばあちゃん、俺、絶対にアイドルになる!!」

その小さい子は隣にいるおばあちゃんにそう言うと続けて、

「そして、俺、アイドルになっておばあちゃんの前で歌ってやる!!」

と元気よく言った。

 そんなその子に対し、おばあちゃんが・・・、いや、突然、その子のそばにいたその子の父親から、

「おい、花樹、「俺」なんて言うな!!いつも言っているだろうが、「少しは女らしくしろ」って!!特に、言葉遣い!!「俺」、じゃなくて、「私」!!「歌ってやる」、じゃなくて、「歌いたいです!!」、だろ!!」

と注意を受ける。これには、その子、

「え~、俺は俺だぜ!!そんなの関係ねぇ!!」

と反抗すると父親から、

「その言葉遣いのことを言っているのだ!!」

とカンカンに怒れてしまうとともに小言で、

「我が家は代々続く男系家族だというのに・・・。少しぐらいは女らしくできないのかね、花樹は・・・。日本は昔から「男は男らしく、女は女らしく」と相場が決まっているのに・・・」

と言ってしまう。

 だが、そんな父親の小言に対し、おばあちゃん、

「こら、なんていうことを言っているのだね!!その考え方が古いんだよ!!今の世の中じゃその考え方が間違っているのじゃ!!その子の個性を認めておやり!!」

と力強い声で注意をするとその父親は、

「ですが・・・」

と言い訳を言いたそうにするもあとのことを考えて言うのを辞めた。

 そんな父親のことなんて露知らずその子はおばあちゃんに対しこう言った。

「でも、俺、本当にアイドルになる!!おばあちゃんの前で歌ってやる!!」

その子の言葉に、おばあちゃん、こう反応した。

「花樹、頑張れや!!おばあちゃん、応援してるきに・・・」

 

 だが、その後、おばあちゃんは病院に入院することとなった。どうやら大きな病気が見つかったみたいのようだ。そのため、家にはその子とその子の父母の3人しかいなくなってしまう。そのためだろうか、その子の父親はその子に対してあたりがきつくなるようになってしまった。

「俺、おばあちゃんのとこ、行きたい!!」

その子がこう言うと父親からは、

「おい、花樹、なんど言わせるきかね!!「俺」、じゃなくて、「私」!!それに、少しくらいは女らしく話せ!!」

それは日に日に強くなっていった。その子はいつも男言葉で話すと父親からはすぐに女言葉で話すように強要してくる。それが続いたためだろうか、次第に、その子の言葉遣いにある変化が現れてきてしまう。最初のころは、

「俺、アイドルになる!!」

と言っていたのものが大きくなるにつれて、

「オ・・・、花樹、アイドルになりたい、です・・・」

と女言葉で言うようになったのである。

 

 そして、その子は中3になった。その子はアイドルに・・・なっていなかった・・・。なぜなら・・・、

(オ・・・、花樹、もうアイドルになれない・・・。だって、アイドルになる子って歌がうまいしダンスも上手・・・。だから・・・、A〇B48や乃〇坂46のような(全国的な)アイドルなんてなれない・・・。それに、アイドルは(全国的な)そんなアイドルしかいないんだ・・・、いないはず・・・)

と諦めたような考えをもっていたからだった・・・。

 実は、その子、アイドルはA〇B48や乃〇坂46のような(全国的な)アイドルしかいない、と思っていたのだ。アイドルはたしかにA〇B48や乃〇坂46のような(全国的な)アイドルがいる。だが、その一方でその地域限定で活動するローカルアイドルもいたりする。そして・・・。そんなわけで、アイドルといっても多種多様といるのだ。だが、その子のリサーチ不足だからだろうか、それとも、だたそれしかいないといった固定概念にとらわれているのだろうか、その両方なのか、それはわからないが、その子は、もうアイドルになれない、アイドルになるなんて無理、と諦めてしまっていたのだ。

 そんなこともあり、その子は遠くにいるおばあちゃんに向かってこうつぶやいてしまった・・・。

「おばあちゃん、ごめん・・・なさい・・・。オ・・・、花樹、アイドルになるという夢、叶えることができない・・・できません・・・」

 

 こうして、その子はアイドルになるという諦めようとしていた・・・そんな矢先、その子は驚くような情報が飛び込んできた。それは中学を卒業しもうすぐ高校に進学するときのことだった。突然、その子の友達がその子のもとに近づいてはその子に対しこんなことを言いだしてきたのだ。

「花樹、この動画、見て!!」

 そして、その子はその友達からその動画を見せてもらいびっくりしてしまう。

「うそっ、このグループ、とても凄い・・・」

そう、その動画はその子にとって青天の霹靂であった。その動画はあるアイドルたちのライブ映像であった。統率のとれたダイナミックなダンス、力強い歌声、それでいて一生懸命頑張りつつも絶やさない笑顔、まさに高いレベルものパフォーマンスをみせるそのグループ、それには、その子、

(これがアイドルなの・・・。オ・・・花樹、この子たち、知らない・・・、知りませんでした・・・。それなのに・・・、A〇B48以上のライブをしている・・・、しています・・・。一体どんなグループなの・・・)

と、一瞬のうちにそのグループにときめいてしまった・・・。

 そして、その子はこの動画を見終えるとその友達に向かってこう言いだしてきた。

「ねぇ、このグループって誰・・・、誰なのでしょうか・・・。オ・・・、花樹の知らない子たちなのだけど・・・」

 するとその友達はそのグループについてこう語りだした。

「花樹、知らないの?このグループにはねぇ、Aqours 、っていうグループなの!!この前、東京であったスクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝した、そして、ここ、沼津が誇るスクールアイドルなの!!」

 だが、そこで、その子、その友達からその子にとって聞きなれない単語がでてきたのでそれについて尋ねてみる。

「スクールアイドル?それってどんなアイドル・・・なのでしょうか・・・」

 と、ここで、その友達、その子に向かってこう言ってしまう。

「スクールアイドル・・・、って、花樹、スクールアイドルのこと、知らないの?アイドルを目指していたのに?」

これには、その子、怒ってしまう。

「悪かったね、スクールアイドルのこと、知らなくて」

その子が怒っている、そんなこともあり、その友達、

「ごめん、ごめん、花樹」

と謝りつつもスクールアイドルについてその子に説明してくれた。

「花樹、スクールアイドルっていうのはねぇ、高校生なら誰でもなれるアイドルのことをいうのだよ!!」

 この友達の言葉を聞いた瞬間、その子はハッとする。

「スクールアイドル・・・、高校生なら誰でもなれるアイドル・・・、ってことは、オ・・・、花樹、アイドルになれるってこと・・・、なの・・・」

そう、その子は気づいた、アイドルになることができる、スクールアイドルという高校生なら誰でもなれるアイドルになれば、自分の夢、「アイドルになる」、その夢を叶えることができることを・・・。

 そんなその子の言葉を聞いてか、その友達はこう言った。

「まぁ、花樹の言う通りだね。だって、私たち、今度、高校に入学するでしょ!!そのときに花樹もスクールアイドル部に入れば、スクールアイドル、つまり、アイドルの仲間入り、だよ!!」

これには、その子、

「たしかにその通りだ・・・、ですね・・・。オ・・・、花樹もついにアイドルになれる・・・のね・・・」

と考え深く言うとその友達はさらにあることを言ってきた。

「それに、花樹、今度、静真に入学するんだよね。なら、花樹、そこのスクールアイドル部に入ればAqoursの仲間入りだよね!!」 

 この友達の言葉にその子は、一瞬、

「Aqours・・・、誰それ?」

と言ってしまう。これには、その友達、

ガクッ

とこけてしまうと動画を見せつつこう言ってきた。

「Aqours!!この動画に映っている子たちのことだよ!!」

これには、その子、こう言ってしまう。

「それって1番最初に映っていた2人組のユニットのこと?」

そう、その子が言っているのは、これまでその子とその友達が見ていた動画、2つのスクールアイドルグループ(ユニット)、そのライブ、というか、2つのグループ(ユニット)の戦い、そのうちの1つ、1番最初に映っていたユニットのことだった。これには、その子、

「そのユニット、Saint Snowという函館のスクールアイドルユニット!!」

とその子の間違いを訂正しつつも、

「Aqoursはねぇ、この動画の後半に映っていた9人組のグループだよ!!」

と力強く言った。

 そして、その友達はAqoursについてその子対し少し詳しい説明をした。

「Aqoursは、ここ、沼津(内浦)にある浦の星のスクールアイドルなの!!でも、その浦の星が、今度、静真と統合するわけ!!だから、Aqoursは、今度、静真のスクールアイドルになるの!!」

 この友達の説明を聞いて、その子、あることに気付く。

「静真って、今度、オ・・・、花樹が入学する高校・・・。そのスクールアイドルがAqours・・・」

その言葉を発した瞬間、その子、またハッとする。

(Aqours・・・、この動画、高いレベルのパフォーマンスをみせるスクールアイドルグループ・・・。オ・・・、花樹もそのAqoursに・・・、スクールアイドル部に入ればその一員になれる・・・なれますのね・・・)

そう、今度、その子は静真に入学する。そして、そのスクールアイドル部に入ればAqoursの一員になれる、いや、自分の夢であるアイドルになれる、のである。そんなことに気づいたのか、その子はこう言いだしてしまう。

「オ・・・、花樹、決めた、静真に入学したら絶対にスクールアイドル部に入る!!そして、(この動画で高レベルのパフォーマンスをみせていた)Aqoursの一員になる!!」

その子の言葉を聞いてその友達は、

「花樹の夢見るところ、久しぶりに見れたよ!!花樹、応援しているね!!」

 と、ここで、その子、その友達にこうお願いした。

「あっ、お願いだけど、その動画のURL、オ・・・、花樹に送ってくれないかな・・・、送ってくれませんか?」

すると、その友達はこう言ってきた。

「なら、この動画サイトでこう検索すればいいよ、「ラブライブ!延長戦」、そして、「Saint Snow vs Aqours」ってね!!」

 

 そして、その子はその動画を食い入るように何度も見ていた、こう思いながら・・・。

(このAqoursってグループ、何度見ても凄いパフォーマンスだよ!!歌、ダンス、パフォーマンス、どれ見ても高レベル!!それに、日の出とともに素早く行われた衣装チェンジ、凄い演出だよ!!」

その子にとってこの動画は本当に自分の心を撃ち抜く、いや、自分の考えそのものを180度転換するものだった。自分の知らなかったスクールアイドルグループ、Aqours、そのパフォーマンスや演出はこれまで諦めていたその子の「アイドルになる」という夢を再燃させるには十分なものだった。

 いや、それだけではなかった。その子はこの動画を最初に巻き戻すとAqoursの前にパフォーマンスを見せていたスクールアイドルユニットのパフォーマンスを見てこう思って島う。

(このユニットも凄いパフォーマンスだよ!!2人だけなのに迫力あるダンス!!それに、心に響くラップ!!たしかSaint Snowというユニットだったはず!!オ・・・、花樹、このユニットのパフォーマンスも好き!!Aqoursがいなかったら、オ・・・、花樹、このユニットみたいなスクールアイドルになりたかったかも・・・です・・・)

Saint Snow、函館聖泉女子高等学院、通称、聖女、のスクールアイドルユニットである。鹿角聖良(高3)、理亜(高1)の姉妹ユニットであり、今年度の夏のラブライブ!で全体の8位とう成績を残す実力派ユニット、そして、Aqoursのライバルである。そのユニットのパフォーマンスにもその子は魅了されていた。

 だが、その子はそのユニットのパフォーマンスを見てこう思った。

(でも、オ・・・、花樹、今度、静真に入学する、Aqoursの一員になる・・・。そして、一生懸命練習して、この動画のような高レベルのパフォーマンスをみせる・・・、みせます・・・。そして、おばあちゃんに、オ・・・、花樹の活躍しているところ、みせてやる・・・、みせてあげます・・・)

 

 その翌日、その子はおばあちゃんの病室にお見舞いに行くと、突然、おばあちゃんに対しこう言いだしてきた。

「おばあちゃん、オ・・・、花樹・・・」

これには、おばあちゃん、

「花樹、ここにはお父さんなんていません。今までの自分でいいのですよ」

と優しく語り書けるとその子は肩の荷が降りたのか、いつもの自分の言い方でこう言った。

「俺、アイドルになる、この動画のスクールアイドルのように!!」

そして、その子はおばあちゃんにその動画を、その子が魅了したあの動画をみせた。すると、そのおばあちゃんはその子に対して、

「この動画のグループって誰だい?」

と尋ねるとその子はこう言った。

「この動画はね、この前(リモートで)行われた、高校生なら誰でもなれるスクールアイドル、その甲子園ともいうべきラブライブ!で優勝した、Aqours、そして、そのライバルであるSaint Snowの戦い、「ラブライブ!延長戦」、の動画!!俺、(その動画の後半に出てくる)Aqoursに入って、俺の夢、「アイドルになる」、それを叶えてみせる!!」

 このその子の言葉に対し、おばあちゃん、こう言ってきた。

「Aqoursね・・・。そういえば、隣の部屋の友達が言っていたね、沼津にはラブライブ!といった大会に優勝したアイドル、Aqoursがいるって・・・。その子たちの踊りを見て、「なんか元気がもらえた・・・」、って、(おばあちゃんの友達が)言っていたね・・・」

これには、その子、元気よくこう言った。

「うん、俺、このAqoursに入っておばあちゃんに元気を与えてみせる!!」

 すると、おばあちゃん、その子に対して優しそうな声でこう言った。

「花樹、私もね、花樹の夢、「アイドルになる」、それが叶うだけでも嬉しいものだよ。花樹、お願い、私に花樹の活躍するところ、みせてね・・・」

 このおばあちゃんの言葉に、その子、その言葉を受けてか、おばあちゃんに対しこう熱く宣言した。

「うん、俺、絶対にAqoursに、スクールアイドルになっておばあちゃんに俺の活躍しているところ、みせてやる!!いや、それだけじゃダメ!!俺、決めた、「アイドルになる」という夢は絶対に叶う!!なら、その先を目指さないと!!俺、Aqoursとして、スクールアイドルとして活躍する!!そして、Aqoursが手に入れた栄光、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝して、おばあちゃんに、深紅の優勝旗、それをみせてやる!!」

これには、おばあちゃん、その子に優しくこう告げた。

「花樹、私はずっと花樹のことを応援してあげるね。そして、私に、その・・・、ラブライブ?、その優勝旗をみせてね・・・」

 このおばあちゃんの言葉を聞いたその子はそのおばあちゃんに対し、

「うん、わかった!!俺、おばあちゃんとの約束、絶対に守ってみせる!!」

と力強く言うとともに、

(俺、絶対に、その約束、守ってみせる!!おばあちゃんとの約束、Aqoursの一員として、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!、で大活躍して絶対に優勝してみせる!!そして、おばあちゃんにその優勝旗をみせてみせる!!)

と、おばあちゃんとの約束を絶対に守る、叶えてみせる、そう心のなかで誓うのであった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第1話(2)

(俺、絶対にAqoursに入ってスクールアイドルとして大成してやる!!そして、ラブライブ!で優勝してやる!!)

その子は心でそう決意を固めていた・・・そのときだった。突然、

ブルル

という電話の音が聞こえてきた。その電話にでる父親・・・。

「はい、私ですが・・・」

 だが、次の瞬間、その父親の表情はこわばってしまった、この声とともに・・・。

「えっ・・・」

そして、父親はこう告げてしまう・・・。

「お、おばあさまが・・・」

 

「おばあちゃん・・・」

煙突からでる煙を見ながらその子は泣いていた・・・。

そんなその子に対し父親はこう告げた。

「もうおばあさまはいなくなったのだ!!お前、その現実を受け入れなさい」

だが、その子は泣きながら、

「おばあちゃん・・・」

と言い続けていた・・・。

 

 それから数時間後・・・、その子の前にはそれまで人の形をしていたものの燃やされた人の白骨遺体があった。その遺体に対し、その子、

「おばあちゃん・・・」

と泣いていた。そんなその子に対し父親はこう告げた。

「いいか、確かにおまえはおばあちゃん子だった。だが、そのおばあさまはもういないのだ!!いいか、おばあさまのことなんて忘れろ!!そして、現実を受け入れろ!!」

 そんなときだった。その子はあることを思っていた。

(もうおばあちゃんはいない・・・。だけど、そのおばあちゃんのぬくもりを・・・、おばあちゃんと誓ったあの約束を・・・、俺の胸のなかで残すことはできる!!)

そのきらめく思いとともにその子はその部屋から飛び出してはあるものを持って戻ってきた。

 その子が持ってきたもの、それは、十字架の形をしたケース・・・、小さなペンダント、だった・・・。その子はそのペンダントの蓋を開けると自分の前にあった白骨遺体の一部をこなごなにして遺灰にするとそれをそのペンダントのなかに入れてしまった。

 そして、その子は近くにいたあるスタッフに対し、素のその子の言葉、男言葉でこう告げた、

「スタッフ、お願いだ!!この遺灰で・・・ダイヤを・・・作ってくれ!!」

 

 さらに数日後・・・、その子は静真の制服を掲げては心のなかでこう思った。

(おばあちゃん、俺、誓うから!!静真に入って、Aqoursに入って、スクールアイドルとして大成する!!だから、おばあちゃん、俺の胸のなかで見守ってくれ!!)

その思いとともにその子は自分の首に掲げていた十字状のペンダントを持って空を見上げていた・・・。

 だが、その誓いにも1人の男によって打ち砕かれてしまう。そう、その子の父親である。その子の父親はその子に対しその子に絶望を与えるような言葉を投げかけてきた。

「おい、おまえ、数日以内に引越す準備をしろ!!」

この父親の突然の発言に、その子、いつもはおばあちゃん以外には女言葉で話すものの、この時ばかりは素の言葉遣い、おばあちゃんが前のときだけ使う言葉遣い、男言葉、それでもってこう反論した。

「えっ、なぜ、引越すわけ!?引越す必要、ないじゃん!!」

 だが、その子の父親は大声をだしてその子に対しこう怒ってしまう。

「おい、わがままを言うな!!ここ沼津にいたのはおばあさまのお世話をしていたためだ!!そのおばあさまももうこの世にはいない!!だから、ここ沼津に私たちがいる必要なんてない!!では、これからは私たちはどうすればいいのか。それは簡単なことだ。私は新天地で新しいことを始めればいいのだ!!お前はこの私についていけばいいんだ!!」

この瞬間、その子の思いは崩れ散った、こんな風に・・・。

(俺、おばあちゃんとの約束、誓い、こんな形で終わりを迎えるのか・・・。俺とおばあちゃんとの誓いが・・・)

絶望に近いくらい落ち込んでしまうその子。だが、それに追い打ちをかけるようにその子の父親からこんな言葉がその子に浴びせられてしまう。

「そして、お前、これからは絶対に女らしくしろ!!これから先、私の前で・・・、いや、誰の前でも絶対に女らしくしろ!!男っぽい言葉遣いなんて絶対にするな!!もちろん、俺、なんて言葉も絶対に使うなよ!!」

 この父親からの言葉にその子は少しの反骨の思いとともにこう反抗してみせた。

「なぜ、俺、なんて言ったらいけないんだ!!これは俺のアイデンティティだ!!」

 だが、その子の父親は高圧的な態度でその子に対しこう言い放つ。

「おばあさまがいなくなった今、私がこの家族の長だ!!なので、お前は私の言うことを聞かないといけないのだ!!いいか、お前、いや、花樹、これからは私の言うことを聞け!!男言葉を、俺を、絶対に言うな!!もっと女らしくしろ!!」

 その父親からの言葉とともにその子の心のなかである音が鳴り響く・・・。

ガラガラ ガラガラ

それは・・・その子にあった・・・、その子自身・・・、その子の心・・・、形・・・、そのものだった・・・。

 そして、その子は、

(あっ・・・、オ・・・、花樹・・・の・・・なにもかもが・・・崩れていく・・・、おばあちゃんとの思い出も・・・、思いも・・・、キズナも・・・、なにもかも・・・、崩れていく・・・、なにもかも・・・、なくなっていく・・・)

と、最後までその子のなかにあった、これまでの自分を支えていたもの、それを完全に失った・・・、それを自覚したせいか、その子は・・・、その心の声とともに・・・、ある闇へと・・・、深淵なる闇のなかへと・・・、陥ってしまった・・・。

 その後、自分の父親に対しその子はこう告げてしまう・・・。

「オ・・・、花樹・・・、お父様の言う通りに・・・します・・・。オ・・・、花樹、お父様と一緒に・・・引越します・・・」

 

 それからさらに数日後・・・、その子は・・・、函館にいた・・・。その子は函館のある女子高の追加募集の試験に合格、今日はついにその女子高の入学式であった。だが、その女子高に向かうその子であったがその子はまだ上の空だった。なぜなら・・・、

(もう、オ・・・、花樹はなにもかも失った・・・。夢も、希望も、思いも、すべて、すべて、失った・・・。もう生きるすべなんてないんだ・・・)

その子は、このとき、絶望の淵に立っていた。あのとき、自分の父親からの一言で、その子はなにもかも失った、自分のアイデンティティも、夢も、おばあちゃんとの約束、誓い、なにもかもすべて失った・・・、そんな思いでその子のなかはいっぱいだった・・・、いや、深淵なる闇の中でもがき苦しんでいた。

 ただ、そのとき、あることがその子に起きてしまう。

(もう生きる意味もないんだ・・・)

そうその子が思った瞬間、

「うわっ!!」

とその子は悲鳴をあげると大きく転んでしまった。どうやら、その子、上の空だったためにもたついてしまい大きく転んだようだ。なので、道路にうつぶせになるようにその子は倒れこんでしまった。その倒れこんだ瞬間、

「痛!!」

と大声で悲鳴を上げてしまう。

 だが、そのとき、その子の目の前にあるものが見えた。それは、あの日以降、その子がいつも首からぶら下げているもの、そして、すべてを失った、そう思っているその子にとって唯一その子のもとに残ったもの、十字の形をした小さなペンダント、だった。そのペンダントを見た瞬間、その子、

「うぅ、おばあちゃん・・・」

と泣きながらそのペンダントを強く握りしめた・・・、そんなときだった。遠くから、その子にとって、希望に満ち溢れた、いや、もしかすると、その子にとってその闇から逃れるための、そのきっかけとなる、女性の声が聞こえてきた。

「スクールアイドル部、今、募集中!!」

その声に、その子、はっとする。

「スクールアイドル・・・。えっ、この高校にスクールアイドルがいるわけ・・・、いるのでしょうか」

そう、その女性の声は、その子の夢、スクールアイドル、その募集という名の勧誘の声だった。

 そして、その子は立ち上がると前を向いた。すると、見覚えのある女子生徒の顔がみえた。その子はその女子生徒の顔を見てその女子生徒の名を口にする。

「あ、あれは・・・、Saint Snowの・・・、理亜・・・、理亜さんだ・・・」

そう、その子の目の前に見えていたのは・・・、あの・・・、ラブライブ!延長戦・・・、Aqours vs Saint Snow・・・、その戦いで、Aqoursのライバル、Saint Snow、その一員として輝きをみせていた、鹿角理亜、理亜、だった・・・。

 その理亜の顔を見た瞬間、その子のなかである思いが駆け巡った。

(オ・・・、花樹、奇跡をみているような気がする・・・、気がします・・・。まさか、オ・・・、花樹の夢を叶える・・・、スクールアイドルになる・・・、大成する・・・、ラブライブ!に優勝する・・・、おばあちゃんとの約束・・・、誓い・・・、その形は違えど・・・、それを叶えることができる・・・、それができる・・・のですね・・・)

その思いはもしかするとその子の闇を照らす大きな光になるのだろうか。いや、そうではないかもしれなかった。もしかすると、それは、その子にとって実は自分の闇のなかで一瞬の安らぎを得ているのだけなのかもしれなかった。なぜなら・・・、その子は・・・、自分の闇によって・・・、自分の父親のある一言によって・・・、これまで自分を形作っていたもの・・・、自分のアイデンティティを・・・、失ってしまったのだから・・・。

 だが、その一瞬の思い、希望、いや、一筋の光にすがりたいのか、その子は・・・、猪波花樹は・・・、理亜のもとに行き、

「理亜さん!!」

という声とともに、大声で・・・、理亜に・・・、こう告げた・・・。

 

「理亜さん、オ・・・、花樹、理亜さんと一緒に、スクールアイドル、したいです!!」

 

【ラブライブ!SNOW CRYSTAL OP 「Re;STRAT to dream」】

 

Re;START to dream

 

僕たちは   一度夢を失った

(R:もう立てなくなるほどに)

大事なものを 失ってしまった

(R:失敗や成長でも失った)

もう二度と  立てないんだ

(R:不幸のどん底に落ちてしまい)

誰もが    そう思っていた

 

でも本当に  そうだろうか

人は何度でも よみがえる

倒れても   倒れても

何度だって  よみがえる

人というのは それくらい

力強く生きる 生き物なんだ!!

 

Re;STRAT to dream

僕たちは再び 立ち上がってく

Re;START to dream

夢に向かって 再び進んでく

もう諦めない 夢を叶える

 

※R:ラップで歌う

 

 こうして、1つの物語が幕を上げた。それは、花樹の・・・、理亜の・・・、あつこの・・・、深淵なる闇を持つ者同士の・・・、自分達の雪の結晶を・・・、SNOW CRYSTALを・・・、見つけるための・・・、出会いと別れ・・・、そして、ライバルたちとの交流により・・・紡がれる・・・、夢破れし者たちの・・・、再び空へ、夢へと紡がれていく、そんな物語・・・、なのかもしれない。

 

 そして、ついに花樹は理亜に対しある言葉を発した・・・。だが、それが、花樹、理亜、あつこ、にとって一波乱が起きるとも知らずに・・・。

 

「花樹、Saint Snowとして活躍した理亜さんと一緒にスクールアイドルをしたいです!!だって・・・、

 

理亜さん、ばかす・・・」

 

To be Continue

 

Next Story is

 

KAZYU said 「BAKASU・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第2話(1)

 その出会いは突然だった。聖女の入学式の日、スクールアイドル部部員募集のビラを配っていた理亜のに対し、

「理亜さん!!」

と理亜の名を呼ぶ声がする。それに、理亜、

(えっ!!)

と少し驚いては後ろを振り向いた。すると、そこには1人の少女、いや、新入生が立っていた。それに、理亜、気付く。

 そして、その新入生は理亜に対しこう叫んだ。

「理亜さん、オ・・・、花樹、理亜さんと一緒に、スクールアイドル、したいです!!」

花樹と言ったその少女はショートカットの髪をしていた。それでいてなにか体育系の部活をこれまでしていた、そんな風な体型だった。それでいて、「自分は理亜さんと一緒にスクールアイドルをやりたい!!」、そんな心意気を感じさせていた。だが、その一方で、その少女の心奥底にはなにかだれにも言えないような深淵なるやにを抱えている、そんな風にもみえてしまっていた。

 ただ、スクールアイドルをやりたい、そんなその少女の言葉を受けてか、理亜、

(この新入生、昔の私みたいなやる気のある娘みたい。そう考えると、私、なんか懐かしく感じてしまう・・・)

とつい思ってしまう。その少女は昔の自分、スクールアイドルを始めたばかりの理亜、ラブライブ!優勝という夢、(理亜の姉の)聖良、今、理亜と一緒に入部募集のビラを配っている(理亜と聖良の幼馴染の)あつことの夢、それを一生懸命追いかけていた、昨年の春のときの自分、そんな自分と重ね合したのだろうか、つい、理亜は微笑むような顔をしていた。

 だが、そんな状況も次のその少女の言葉によって一変した。その少女、花樹は理亜に対しこう言ってしまった・・・。

 

「花樹、Saint Snowとして活躍した理亜さんと一緒にスクールアイドルをしたいです!!だって・・・、

 

理亜さん、ばかす・・・」

 

(OP)

 

第2話 「KAZYU said 「BAKASU・・・」前編

 

「理亜さん、ばかす・・・」

 この瞬間、これまで微笑むような表情をしていた理亜であったが、一転、怒りの表情になるとともに花樹に対し怒鳴るようにこう言い放った。

「ばかにしないで!!」

このときの理亜の心のなかでは怒りで満ちあふれていた。

(私と初対面なのに、あの娘、「バカ」って言うなんて、信じられない!!この花樹って娘、私のころ、「バカ」にしているわけ!!あまりにも失礼!!)

そう、理亜は理亜にとって、この場が初対面であるその娘、花樹、から「バカ」と言われたことに腹を立てていたのだ。たしかに初対面の相手に対し「バカ」というまるでその人をバカにしているような言葉で言うのは失礼に当たってしまう。なので、理亜がそう腹を立てるのは仕方がないことだった。

 だが、そんな理亜の言葉に対し花樹はなにか言いたそうになる。

「理亜さん、別に理亜さんのこと、バカにしているわけじゃない・・・のです・・・。オ・・・、花樹、理亜さんのこと、ばかす・・・」

 だが、この花樹の言葉に理亜、さらに怒る!!

「あんたね、私のこと、また「バカ」にしているわけ!!失礼すぎるだろ!!私のこと、「バカ」にしないで!!」

 それでも花樹は理亜に対し弁解する。

「理亜さん、話を聞いて・・・ください!!オ・・・、花樹、理亜さんのことを別に「バカ」にしていない・・・いません!!理亜さんのこと、オ・・・、花樹、かなりリスペクトしています!!だから、理亜さんのこと、花樹、ばかす・・・」

 だが、その花樹の言葉についに理亜の堪忍袋の緒が切れた!!理亜、花樹に対しこう言い放った!!

「あなた、どこまで私のことを「バカ」にするわけ!!失礼にもほどがある!!私のことをリスペクトしているわりには何度も私に対して「バカ」にするわけ!!あなたね、あなたの言動、私のこと、リスペクトしている、って言わないの!!私のこと、「バカ」、している、そんな言動!!」

そんな理亜の怒りに満ちた言葉に、花樹、

「理亜さん、それは誤解です!!別に、理亜さんのこと、「バカ」にしているわけでもありません!!本当に、オ・・・、花樹、理亜さんのこと、リスペクト・・・」

と理亜に対して弁解しようにも、理亜、

「あぁ、あなたの言い訳、もう聞きたくない!!不愉快!!あなた、どっかに行って!!」

と花樹をまるで追い払うかのように言うも、花樹、そんな理亜に対し、

「理亜さん、話を聞いてください!!オ・・・、花樹、別に理亜さんのことを・・・」

といくら弁解しようにも、理亜、取り入ってもらえず。花樹、それでも理亜に食い下がる。

 ところが、そんな理亜と花樹のやり取りをみてか、理亜と花樹の周りには人だまりができていた・・・、こんなことを言いながら・・・。

「ねぇ、あれって、スクールアイドル部の理亜さんだよね・・・」

「でも、理亜さん、たしか・・・、あつこさんと一緒にスクールアイドル部の部員を集めているよね・・・」

「でも、あの理亜さんと新入生(花樹)のやり取りを見ていると、なんか、ケンカ、していない・・・」

「でも、それって仕方がないよ・・・。理亜さん、新しいグループを作ったのに(理亜さんの暴走による)きつい練習のせいで、グループ、空中分解したのよね・・・」

「まぁ、あの(理亜と花樹の)やり取りもその延長戦じゃないの・・・」

そう、理亜にはある罪があった。それは、聖良とのSaint Snowを終わりにしたあと、理亜はあつこを含めた有志数名で新しいスクールアイドルユニットを結成したのだが、理亜のなかにある、「(自分のせいで)Saint Snowを終わりにした。姉聖良に対し(聖良との夢であったラブライブ!優勝という夢を叶えることができず)申し訳ないことした」、そんな深淵なる闇のせいで理亜は暴走、失った(と思った)Saint Snowの輝きを取り戻すべく限界を超えたきつい練習をユニットメンバーに対して課してしまった、それによりそのユニットは空中分解をしてしまったのだ。まぁ、のちにあつこはマネージャーとして理亜のもとに戻ってきたが、そのせいで理亜のいるスクールアイドル部に入部しようとする生徒が皆無になってしまったのだ。(詳しくはこの物語の序章である「SNOW CRYSTAL 序章」をお読みください)もちろん、それは新入生の耳にも入っていたらしく、この入学式の場でもまわりからさけられていただけでなく、理亜と花樹のやり取りもその暴走の延長戦としかみられていなかったのである。

 と、ここで、理亜と同じくスクールアイドル部部員募集のビラを配っていたあつこも、

(あれっ、理亜さんのまわりに人だまりができています。一体どうしたのでしょうか)

と、その人だまりに気づいたらしく、その人だまりのところいいくと、そこで、あつこ、

(って、理亜さん、また揉め事を起こしているのですか!?)

と理亜とその目の前にいる少女(花樹)が言い争いになっていると思ったのか、理亜に対し、

「理亜さん、なにかあったのですか?」

と理亜のもとに駆け寄ると、理亜、あつこに対しこう言ってしまう。

「あつこ、私、あの娘に「バカ」にされた!!悔しい!!許せない!!」

 だが、花樹の方もあつこの方を向いてはこう弁解した。

「オ・・・、花樹、別に理亜さんのことを「バカ」にしていない・・・しているわけではないのです・・・」

それでも理亜は花樹に負けじとあつこに対しこうアピールしまくる。

「あつこ、この娘に何度も「バカ」と言われた!!もういや!!この娘、許せない!!」

 しかし、あつこは意外と冷静だった。あつこ、2人の言い分を聞いてこう判断した。

(このままいっても2人の話は平行線のまま。だったら、ここは理亜さんを連れてこっから離れるほうが得策!!そうすれば2人とも冷静になれるはず!!)

そう、このままではらちが明かない、いや、お互いともに話は平行線のままになってしまう、ならば、2人とも冷静になるためにもこの場から自分たちが離れることが得策、とあつこはそう考えたのだ。

 そんなわけでして、あつこ、理亜に対しこう言った。

「理亜さん、このままだとせっかくの新入生の晴れの舞台なのに水をさしかねません。それに、スクールアイドル部にとってみてもこのままだと傷がつきかねません。なので、理亜さん、この場から退散しましょう!!」

 だが、理亜はあつこに対し、

「でも、それだと私があの娘(花樹)から逃げるみたいに見えてしまうのでは・・・」

となにか言いたそうになるも、あつこ、そんな理亜に対し、

「理亜さん、新入生のみなさんに対し失礼になるでしょ」

ときつく言うと、理亜、

「でも・・・」

と言おうとするも、あつこ、そんな理亜に対し、

「理亜さん、このままだと新入生から・・・」

と理亜のまわりの様子をみなさいとばかりにこう言ってしまう。これには、理亜、恐る恐るまわりを見渡すと、自分たちのまわりには理亜と花樹のやり取りを見に集まってきた新入生でいっぱいだった。これには、理亜、

「う・・・、私の知らない人がいっぱい・・・」

と身を縮めてしまう。理亜はかなりの人見知りである。なので、自分んお知らない人でいっぱいになると理亜はその場から逃げ出そうとする。で、それが今の状況、なのである。

 そんなわけでして、理亜、あつこに対し、

「あつこ、すまないけど、この場から離れる!!ごめん!!」

と言ってその場から一目散に逃げてしまった・・・。これには、あつこ、

「もう、理亜さんたら・・・」

と言うと花樹に対し、

「ごめんね、理亜さん、かなりの人見知りだからここから一目散に逃げてしまったけど、理亜さんの言葉、あまり気にしないでね。それでは、失礼します」

と言って一礼すると逃げてしまった理亜のあとを追った。

 そして、花樹はその場で1人ぽつんと残ってしまった。だが、花樹はそんな逃げていく理亜を見てこう思ってしまう。

(オ・・・、花樹、別に、理亜さんのこと、「バカ」にしているわけじゃない・・・、ではないのに・・・。花樹、理亜さんのこと、褒め称えようとしていたのに・・・)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第2話(2)

だが、それでも花樹は諦めなかった。聖女の入学式から数日後・・・、

(でも、オ・・・、花樹は諦めない!!花樹、絶対に理亜さんに認められてSaint Snowに入るんだ!!)

と、花樹、まだ諦めていなかったのかこの日も理亜のもとに行こうとしていた。

 そして・・・、

「あっ、理亜さん!!」

と、廊下を歩く理亜を見つけたのか、花樹、理亜のもとに駆け寄る。すると、理亜、

(うわっ、あの娘!!また私を「バカ」呼ばわりするつもり!!)

と思ったのかすぐに逃げようとするも、時すでに遅く、花樹は理亜のもとにたどり着いてしまった。

 そして、開口一番、花樹、

「理亜さん、オ・・・、花樹、諦めていません!!オ・・・、花樹をスクールアイドル部に、理亜さんのユニットに・・・、入れてください!!」

と、

大声で言ってきたのだが、理亜、これを、

(あの言葉、絶対に言ってくるはず!!そんなの、私からしたら許せない!!)

といやらしそうに花樹の方を見る。

 すると、花樹、やっぱり・・・、

「だって、理亜さん、ばかす・・・」

やっぱり言ってしまった・・・。

 そんなわけでして、理亜、花樹に対し花樹の言葉を遮るようにこう怒鳴ってしまう。

「あなたね、この前(入学式)のときといい、私のこと、「バカ」扱いするなんて、身の程も知らないわけ!!私は「バカ」じゃない!!学校の成績だって上位の方!!それなのに、私のこと、「バカ」にするなんて、許せない!!」

 ただ、これには、花樹、

「理亜さん・・・、オ・・・、花樹、理亜さんのこと、別に「バカ」にしているわけでは・・・」

と言い訳そうに言うも、理亜、そんな花樹なんておかまいなしに・・・、

「あなたね、さっさとどっかに行って!!」

と怒鳴り散らすように言うも、花樹、それでも、

「理亜さん、オ・・・、花樹の言うことを聞いて・・・」

となにか言いたそうになる。

 すると、理亜、そんな花樹に対しこう叫んでしまう。

「あぁ、もういい!!ついてこないで!!」

この言葉のあと、理亜はその場から駆け足でどっかに行ってしまった。これには、花樹、

「り、理亜さん・・・」

と唖然とするしかなかった・・・。

 ただ、このときの花樹であったが、花樹の心のなかでは・・・、

(オ・・・、花樹、別に理亜さんのこと、「バカ」にする気なんてないのに・・・。逆に、花樹、理亜さんのこと、「すごい」と思っているのに・・・)

という、「バカ」とは程遠いものを持っていた・・・。

 

 

 とはいえ、これでめげる花樹ではなかった・・・。花樹、2度も失敗したのがこたえたのか、

(いつになったら、理亜さん、オ・・・、花樹を理亜さんのユニットに入れてくれるわけ・・・でしょうか・・・)

と少し涙目になりそうになるも、それが逆に花樹の闘志に火が付いてしまう。

(でも、きっと理亜さんなら、オ・・・、花樹の気落ちに気づいてくれるはず!!なら、オ・・・、花樹は何度でも理亜さんにトライするのみ・・・です・・・。そうすれば、きっと、理亜さんも、オ・・・、花樹のこと、認めてくれるはず・・・です!!)

 そんなわけでして・・・、

「理亜さん、オ・・・、花樹を理亜さんのユニットに入れてください!!」

と、女子トイレに入ろうとしている理亜に向かって花樹がとうせんぼする形で立ちはだかると、理亜、

「あなたね~、この場を去りなさい!!」

ときつく注意すると、花樹、そんな理亜の言葉なんて聞かずに、ただ、

「理亜さん、聞いてください!!オ・・・、花樹、別に、理亜さんのこと、「バカ」にしているわけでない・・・ありません!!花樹、理亜さんのこと、ばかす・・・」

と言ってしまう。

 まぁ、こうなるといつもの展開になるわけでして・・・、理亜、その言葉を発した花樹に対し、

「また、私のこと、「バカ」にしている!!なんて身の程知らず!!」

と大声で怒鳴るとともに、

「ど、どきなさい!!」

と花樹の体を無理やりどかしてトイレへと駆け込んでしまった・・・。これには、花樹、

「り、理亜さん・・・」

とただこういうしかなかった・・・。

 で、その日の放課後・・・、

「理亜さん、基坂ダッシュ、もう1本ね!!」(あつこ)

と聖女の校門前にある坂基坂であつことともに坂道ダッシュによる体力づくりをしている理亜・・・であったが、

「よ~い、スタート!!」

とあつこの掛け声とともに、理亜、ダッシュしようとした矢先、

「理亜さん、ちょっと待ってください!!」

という、理亜にとって今一番聞きたくない人の声が聞こえてくる。これには、理亜、

「うげっ!!」

と言っては派手に転んでしまうもすぐに立ち上がり、

「また、あんた!!」

と、突然理亜が転ぶきっかけを作ってしまったあなたこと花樹のことを叱りつける。むろん、これにはあつこも花樹に対し、

「すいませんが今からダッシュしようとしている人に向かって呼び止めてしまうとその人のケガのもとになります。なので、呼び止めること、してほしくないのですが・・・」

とちょっと優しく注意すると、花樹、そんな2人に対し、

「そ、それは・・・ごめん・・・なさい・・・」

と謝ってしまう・・・が、次の瞬間、一転して・・・、

「でも、オ・・・、花樹、それでも理亜さんに・・・」

といつもの同じことを言おうとしていた。なので、理亜あ、

(あの娘、またなの・・・。これで何度目・・・)(注:理亜さん、4回目です by 作者)

となぜか諦めの表情・・・。

 それでもそんなことなんて気にせずに、花樹、ずばり・・・、

「何度でも言います!!理亜さん、オ・・・、花樹、理亜さんのユニットに入れてください!!」

と言うと、ここで、あつこ、すぐに、

「う~ん、それは・・・、理亜さんのお気持ち次第では・・・」

と少し気難しく言うも、花樹、そんなことなんて気にせずに・・・、いつものを言ってしまう。

「だって、理亜さん、ばかす・・・」

 むろん、これには、いつものことながら、理亜、つかさず・・・、

「むきーーー!!また、私のこと、「バカ」って言った!!私は「バカ」じゃない!!いつも「バカ」者呼ばわり、しないで!!」

と花樹に向かってついにキレてしまった・・・。

 でもこれには、花樹、

「オ・・・、花樹、別に、理亜さんのこと、「バカ」なんて・・・」

とこれまた言い訳じみたことを言うも、この花樹、理亜、それぞれの対応に、あつこ、

(こ、このままだと、理亜さん、手が付けられなくなってしまいます・・・。ここは私がなんとかしないと・・・)

と思ったのか、キレている理亜に対し、あつこ、

「り、理亜さん、このままだと部活の練習メニューが進まなくなります!!基坂でのダッシュはもう辞めにして次は校舎裏で発声練習をしましょう!!」

と言ってはこの場から、花樹のもとから離れようとしていた。むろん、これには理亜も、

「癪に障るけど、たしかにあつこの言う通りかも・・・。まぁ、このままだと、私、キレたままになりそう。なら、仕方がない!!あつこ、今すぐ、校舎裏に行く!!いい!!」

と大声で言っては、理亜、花樹のそばからあつこを連れて校舎裏へ行ってしまった・・・。

 そして、またもや、花樹は1人になってしまった・・・。花樹としては4度目のトライ・・・、そのためか、花樹、ついこう思ってしまう。

(オ・・・、花樹、別に、理亜さんのこと、「バカ」にしているわけではないのに・・・。花樹は、ただ、理亜さんのこと、すごい、と思っているのに・・・。ただ、それを、理亜さんに、言おうとしている、だけ・・・なのに・・・。なのに、なぜ、なぜ、理亜さんは、花樹のこと、怒るわけ・・・。どうして・・・、どうして・・・)

そう、花樹は、ただ、理亜のことを「すごい」と言いたかったのだ。だが、理亜にとってみれば、自分のことを「バカ」にしている、そう感じているのである。一体、どこで、花樹と理亜、2人の気持ちのすれ違いが起きているのだろうか、それが花樹を苦しめる原因となっていた。

 だが、このときの花樹はそのすれ違いの原因がなんなのかまったくわかっていなかった。ただ、花樹は、このとき、空を見上げてこう嘆くしかなかった・・・。

「オ・・・、花樹、一体どうすればいいかわからない・・・、わかりません・・・。神様、おばあちゃん、助けてください・・・、オ・・・、花樹、一体どうすればいいわけ・・・、いいのですか・・・」

 

「ラブライブ!SNOW CRYSTAL」ED 「Remenber・・・」

 

苦しいときも  つらいときも

みんなと一緒に いれば大丈夫

強いキズナで  結ばれている

だから僕たちは 頑張れるんだ

 

だけどね   時がたてば

別れる日は  訪れる

それはやがて 想い出になるけど

それこそが  僕たちにとって

未来での   力となるんだ

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  落ち込まないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

Remenber・・・ それを忘れないで・・・

 

To be contuned

 

(ED)

 

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「KAZYU said 「BAKASU・・・」後編」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第3話(1)

第3話 「KAZYU said 「BAKASU・・・」後編

 

その日の夜・・・、

「ルビィ、そっちはどう?」

と理亜は(Saint SnowのライバルAqoursメンバーの1人で理亜と同じ2年の)ルビィに連絡をしていた、もちろんビデオ通話で・・・。ルビィは理亜からしたら同じスクールアイドルであり、また、理亜にとって(もちろんルビィにとっても)1番の盟友ともいうべき存在であった。また、理亜がどつぼに入ったときは・・・、昨年度ラブライブ!冬季大会最終予選で理亜・聖良のSaint Snowがまさかの予選敗退したときも、先月の理亜の暴走により理亜がまえに有志たちと結成した理亜のユニットが空中分解したときも、ルビィのおかげで理亜は再び立ち上がることができたのである。なので、理亜にとってルビィはかけがえのない盟友、ともいえた(もちろんルビィもね・・・)。

 で、理亜の質問にルビィはただ、

「まぁ、こちらはこちらでなんとかしているよ・・・」

と、ちょっとぼかすような言い方をする。そう、このとき、ルビィたちAqoursもある問題を抱えていた・・・というか、あの一件(詳しくは「Moon Cradle」を参照してください)があったものの、このとき、静真の浦の星分校は本校に統合することが決定しており、そのための準備で大忙しだった・・・のだが、その裏でなにかが起きている・・・、そのことをルビィは知っていた・・・という話は後ほどの話になるのだが、そんなことなんて知らず、理亜はただ、

「ルビィ、ほどほどに・・・」

と優しく語りかけるとルビィも、

「うん、ルビィ、がんばルビィ、するからね!!」

と元気よくこたえていた。

 こうして、その後、理亜とルビィは

「あつこ、実は・・・」(理亜)

「へぇ~、あのあつこさんがね・・・」(ルビィ)

とたわいのない話を繰り広げていた。しかし、理亜とルビィにとってその時間はとても楽しいものだった。だって、理亜は、ルビィは、お互いに1番の盟友として思っているから。ルビィは姉ダイヤが浦の星を卒業したあと一時期暗闇の中をさまよっていた。それは、不安心配という深き海・沼の底をルビィたち(新生)Aqoursは陥っていたといっても過言ではなかった。だが、そのなかで理亜との交流とその後のルビィたちの行動によりルビィたち(新生)Aqoursは無事に復活を果たしたのである。一方、理亜もルビィたちのおかげで自分のなかにある深淵なる闇から這い上がることができた(とこのときの理亜は思っていた)のである。なので、理亜、ルビィ、ともに互いに心を通わせることができる一番の盟友、という認識が2人とも強かった。そのおかげもあり、理亜、ルビィ、ともに素の自分をさらけ出すことができる仲間、親友、盟友、マブダチ、とも言えた。

 そんななか、理亜は自分が気になっているあの人物のことを語り始める。

「ルビィ、ところで、今、私にとって、とてもいやな人、いる・・・」

と理亜が卑しそうに話すと、ルビィ、

「へぇ~、それって誰なの~」

と理亜に聞いてくる。すると、理亜、

「実は・・・、その人、私のこと・・・、「バカ」って言ってくる・・・。とても・・いや・・・」

とこれまた嫌な表情で言うと、ルビィ、

(へぇ~、あの理亜ちゃんのこと、「バカ」にしているなんて・・・)

と思ったのか、

「それって嫌だね・・・」

と理亜に対し相槌を打つとすぐに、

「一体どうして、理亜ちゃんのこと、「バカ」にしているの?」

と逆に理亜に対し質問してみた。

 すると、理亜、あの人物のことをハッキリと言った。

「私に、いつも、「理亜さんのユニットに入れてください」って言ってくる、新入生、いる。その娘から、私、いつも、「バカ」呼ばわり、する・・・」

だが、この理亜の言葉に、ルビィ、少し疑問に感じてしまう。

(えっ!!自分から理亜ちゃんのユニットに入りたいと言っているのに、なんで、そんな理亜ちゃんのこと、「バカ」呼ばわりするわけ?)

たしかにルビィが言うのも一理ある。その人物は理亜のユニットに入りたいと言っているのにそんな理亜のことを「バカ」呼ばわりするのは少しおかしい気がしてしまう。まぁ、その人物が高飛車な性格で理亜のことを見下しているのであれば話が別なのだが、普通の人が自ら理亜の仲間になりたいとお願いしているのにその理亜のことを見下すような発言をすること自体、話が矛盾している、ともいえた。

 と、いうわけで、ルビィ、理亜に対しある質問をした。

「理亜ちゃん、その娘がどう理亜ちゃんにお願いしているのか教えて!!」

このルビィの言葉に、理亜、

「ルビィ、わかった!!」

と同意するとすぐにその人物と理亜との会話を再現してみた。

「まず・・・、その娘から、「理亜さん、オ・・・、花樹、理亜さんのユニットに入れてください!!」、と言われた」

この理亜の言葉に、ルビィ、

「うんうん」

と相槌を打つとすぐに、

「理亜ちゃん、続けて・・・」

と理亜にその続きを言うように促すと、理亜、その人物の1番の問題となった発言を再現してみた。

「で・・・、「だって、理亜さん、ばかす・・・」って言われた。これ、私、「バカ」、と言われた、そう思って、その娘、怒った・・・」

この理亜のことばに、ルビィ、

(えっ、「ばかす」・・・)

となにか引っかかるものを感じたのかすぐにその娘の言葉を反芻する。すると、

(「ばかす」・・・、「ばかす」・・・、「ばかす」!!)

となにかに気づいたのか、ルビィ、すぐに理亜に対し、

「理亜ちゃん、ちょっと待ってて!!あと、あつこさんにも連絡して!!」

と理亜にそう言うと、理亜、

「えっ、ルビィ、どうしたの?」

となにかにおどろくようにルビィに応えると、ルビィ、理亜に対しあることを言った。

「理亜ちゃん、その娘、なにか言いたいのか、わかった気がする!!理亜ちゃん、ちょっと待っててね!!」

このルビィの言葉に、理亜、

「?」

と頭にハテナマークを浮かべてしまった・・・。

 

 10分後・・・。

「ルビィ・・・、あつこ、来てくれた・・・」

とあつこがルビィと理亜のビデオ通話に参加してくれたことを告げると、ルビィ、

「理亜ちゃん、こちらも専門家を連れてきたよ!!」

と言ってはルビィが呼んできた専門家+おまけもルビィと理亜のビデオ通話に参加したことを告げた。

 その専門家+おまけとは・・・、

「あっ、理亜ちゃん、久しぶりずら!!花丸ずら!!」

「って、ルビィ、私、配信の準備をしていたのに・・・。あっ、ふっ、悩み苦しんでいるリトルデーモン10号(理亜)よ、私の名はヨハネ!!」

そう、ルビィが呼んできた専門家とは・・・ルビィと同じくAqoursの一員で1年生の花丸とそのおまけのヨハネであった(「って、ヨハネはおまけ扱いなのかい!!」byヨハネ)

 この2人の登場に理亜はただ、

「ど、どうも・・・」

とただ返事するしかなかった・・・。

 まぁ、夜の時間帯ということもあり、ルビィ、さっそく理亜とあつこに対してこんなことを言いだしてきた。

「理亜ちゃん、その娘、別に、理亜ちゃんのこと、「バカ」にはしていないよ!!」

このルビィの言葉に、理亜、すぐに反論。

「ルビィ、あなたもあの娘の肩をもつわけ!!信じられない!!」

とルビィは幻滅したような言い方になるもすぐにある専門家である花丸はルビィの援護に入る。

「理亜ちゃん、ルビィちゃんの言っていることは本当のことずら!!」

この花丸の反応に、理亜、

「花丸までルビィの肩を、あの娘の肩をもつわけ・・・」

と肩をブルブル震わせながら言うとすぐさま、

「ルビィに花丸、見損なった!!」

とルビィと花丸に怒鳴るように言ってしまう・・・が、その横から、

「理亜さん、落ち着いて!!まずは花丸さんの意見を聞きましょう」

とあつこが理亜をなだめるように言った。これには、理亜、

「あ、あつこ、ごめん・・・」

とあつこに謝ってしまう。

 と、ここで、花丸、理亜の言っていたあの娘についてにある考察を発表した。

「理亜ちゃん、その娘、もしかして、沼津出身ではないずら!!」

この花丸の考察に、理亜、

「えっ、あの娘がルビィたちと同じ沼津出身・・・」

と驚いた表情をしてしまう。だって・・・、

(花丸が言っているあの娘の出身が沼津であることと私があの娘から「バカ」呼ばわりされるのとどういう間関係があるわけ・・・)

と、理亜、そう考えるだけで困惑してきた。まぁ、あの娘が沼津出身であることと「ばか」との関係性が理亜にはわからないのだから・・・。

 だが、そんな理亜の困惑をよそに花丸は話を続ける。

「もしかすると、その娘、理亜ちゃんのこと、「とてもすごいスクールアイドル」って言いたかったかもしれないずら!!」

ただ、その花丸の言葉で理亜はさらに困惑する。

(えっ、沼津出身と「バカ」と「とてもすごいスクールアイドル」?私、さらにわからなくなってきた・・・)(理亜)

まぁ、理亜がさらに困惑するのも無理ではなかった。沼津出身と「ばか」、2つの言葉の関連性がわからないばかりか、さらにここにきて「とてもすごいスクールアイドル」という3つ目の言葉が出てきたのだから。そのためなのか、理亜、

「え~と、沼津出身と・・・、「バカ」と・・・、「とてもすごいスクールアイドル」と・・・」

と花丸が言った言葉を反芻してしまう。これには、ヨハネ、

「理亜・・・、なんかおかしくなっていない・・・」

と理亜のことを心配してしまう。

 なので、ルビィ、花丸に対してあることを言った。

「花丸ちゃん、理亜ちゃんが困惑しているよ!!花丸ちゃん、あのことを言おうよ!!」

と花丸にあることを催促すると、花丸、ルビィの言葉に諭されてか、

「理亜ちゃん、困惑させてすまないずら!!おら、ある真実を言うずら!!」

と言うと理亜に対しあることを伝えた。

「理亜ちゃん、実は・・・、

 

「ばか」って沼津地方の方言で「とても」と言う意味があるずら!!」

 

そう、実は「ばか」という言葉は沼津地方の方言で「とても」という意味があるのだ。なので、あの娘、花樹は「ばかす・・・」と理亜に言っていたのだが、それはただたんに理亜に対して「バカ」と言っていたわけではなく沼津地方の方言で「とても○○」と言ったかったのである。

 そして、それに続けてばかりにルビィはあうことを話す。

「そして、理亜ちゃん、「ばかす・・・」って、その娘(花樹)は「とてもす○○」って言おうとしていたと思うの。でね、「す○○」に入る言葉を考えてみたの。そしてら、ルビィ、ある言葉が出てきたの!!それはね、「すごい」っていう言葉!!そして、理亜ちゃんはルビィたちからみても「すごいスクールアイドル」だと思うの!!だからこそ、その娘(花樹)は理亜ちゃんにこう言ったかったのと思うの、

 

「だって、理亜ちゃん、ばか(とても)すごい)スクールアイドル」だから!!」

 

ってね!!」

 このルビィの言葉に、理亜、

「うそ・・・。その娘、私のこと、「バカ」にしていたわけではなくて・・・、「とてもすごい」って褒めていたわけ・・・」

と言葉を失っていた。そりゃそうだ!!理亜はこれまでその娘(花樹)の言葉「ばか」をそのままの言葉の意味としてそれを鵜呑みにしてきたのだ。なので、「ばか」を理亜は「バカ」として受け止めてしまったのである。だが、本当はその娘(花樹)は理亜のことを「とてもすごいスクールアイドル」として褒めようとしていたのである。そのことをルビィの言葉でもって知ることとなった理亜は自分の勘違いに気づいたことでその娘(花樹)に失礼なことをしてしまった、そう思うようになったのである。

 そんなわけでして、理亜、心のなかでは・・・、

(私、あの娘(花樹)に失礼なことをしてしまった・・・。一体どうすれいいわけ・・・。このままだとあの娘(花樹)に顔向けできないじゃない・・・)

とあの娘(花樹)に対してどう接すればいいのかわからなくなってしまったのである。

 だが、そんな理亜に対し、あつこ、

(たしっかに今までは、理亜さん、あの娘(花樹)に失礼なことをしてきました。ですが、それを今から変えることはできるはずです!!理亜さんは自分が間違っていたことがわかればそれを修正することができるいい娘です!!だからこそ、自分の間違いをただしていけばきっとあの娘(花樹)も理亜さんのことを許してくれるはずです!!)

という思いをもつようになる。理亜はルビィたちの助けなどもあったものの自分の間違いをこれまでただしてきた。ラブライブ!冬季大会最終予選で理亜のせいで予選敗退したときも、理亜の暴走で理亜がまえに結成していたユニットが空中分解したときも、自分の間違いを認め・・・たかどうかは抜きにして、それでも理亜は自分の間違いを認め新しく生まれ変わることができたのである。そして、今回も理亜の勘違い・・・というか、「ばか」が沼津の方言で「とても」という意味であることを知らなかったばかりにその娘(花樹)に失礼なことをしていたのである。ならば、その間違いをただしてその娘(花樹)に接すればきっと今以上に理亜は生まれ変わることができる、そうあつこは理亜のことを信じていたのである。

 そして、あつこは理亜に対しこう発言した。

「理亜さん、たしかにこれまでその娘(花樹)の言っていたことを自分が「バカ」にされていると勘違いしてその娘(花樹)をむげにしてきました・・・」

おのあつこの言葉に、理亜、

「う~、なにも言えない・・・」

としょぼんとしてしまった・・・。

 だが、あつこはそんな理亜に対しこう励ました。

「ですが、理亜さん、あなたはたとえそうであったとしても自分の間違いを認め正しい方向へと進んできました。それこそ理亜さんのいいところです!!だからこそ、あの娘(花樹)に対してまずは謝りましょう。そして、あの娘(花樹)の本当の言葉を受け入れましょう」

このあつこの励ましに、理亜、

(あつこ、私のこと、励ましてくれて本当にありがとう!!私、あつこの言葉、身に染みた・・・)

とあつこに対して心のなかでお礼を言うと、あつこ、ルビィ、花丸、ヨハネの前でこう宣言した。

「あつこ、私への励まし、ありがとう。そして、ルビィ、花丸、善子、私の間違いをただしてくれてありがとう。私、あの娘に謝る!!謝って、その娘の言葉、最後まで聞いてみる!!そしたら、きっと、あの娘と手をつなぐこと、できると思う・・・」

この理亜の言葉に、ルビィ、

「理亜ちゃん・・・」

と涙を流すとともに理亜に対し、

「理亜ちゃん、ルビィ、その娘(花樹)と理亜ちゃんが手をつなぐことができるように応援しているね」

と励ましの言葉を送ると、花丸、ヨハネも、

「理亜ちゃん、頑張るずら!!応援しているずら!!」(花丸)

「ふっ、リトルデーモン10号(理亜)、その娘のもとに行きなさい!!そして、リトルデーモンの輪を広げなさい!!あと、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」

とそれぞれ理亜に対し励ましの言葉を送った。

 そして、最後に、あつこから、

「理亜さん、私が理亜さんについていきます!!だからこそ、勇気をもって!!あの娘(花樹)の手を私と一緒に掴み取りましょう!!」

という言葉を送る。

 そんなみんなからの励ましの言葉を送られて、理亜、みんなに対し、

「あつこ、ルビィ、花丸、ヨハネ、その言葉、私のなかに刻み込んだ!!だから、見ていて、私のあたらなる仲間を手に入れる、その瞬間を!!」

と自分の気持ちを、思いを、言葉にして発した・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第3話(2)

 翌朝・・・。

(もう、これ以上、理亜さんの迷惑にはなりたくない!!もし、これでダメだったらさっぱりとやめよう・・・。これが最後のトライだ・・・です・・・)

と花樹はその決意ともとに聖女の校門前へと向かっていた。花樹が何度も理亜にトライをするたびに理亜は「「バカ」にするな!!」と言っては怒られてきた。自分にとってただたんに理亜のことを「とてもすごい」と言いたい、ただそれだけなのに、理亜は逆に怒ってしまう、そんな矛盾に花樹は苦しんでいた。それが花樹にとって苦痛であった。ならば、今度のトライで同じことが怒れば、花樹は、自分の夢、理亜とともにスクールアイドルとして活躍する、そんな自分の夢を諦めよう、そう心に誓っていたのである。

 そして、花樹は聖女の校門に着いた。すると、そこには・・・、

「えっ、理亜さん・・・」(花樹)

そう、そこには、理亜、そして、あつこが立っていた。ただ、たまたまその近くにいた聖女の生徒たちからは、

「また同じ展開でしょう・・・、あの1年生が言って理亜さんが怒る、という展開に・・・」

と、いつものことが起こる、そう言ってしまった。実は花樹の理亜に対する行動の一連の流れは聖女の学生のみんなも知っていた。だって、その様子を実に4回も見ているから。そして、その生徒たちは昔の理亜と同様に花樹が言う「ばかす・・・」というのは、花樹が理亜のことを「バカ」としている、と、本当に意味を知らずに、「バカ」という言葉通りに受け入れてしまっていたのである。それで理亜は怒ってしまう、そんな展開に今回もなるだろう、ここにいる誰もがそう思っていた。

 だが、このときはいつもと違っていた。いつもなら花樹が理亜のいるところに突撃、「化かす・・・」と言って理亜を怒らせる、という一連の流れであったが、今日は、理亜、そして、

あつこが花樹のことを待っていたのである。これには、花樹、

「理亜さん、オ・・・、花樹のこと、待ってくれた・・・待ってて頂けたのですか・・・」

と理亜に尋ねると、理亜、すぐに、

「ふっ、別に、あなたのこと、待っていたわけじゃないのだから・・・」

とツンデレ風に言うとその横からあつこが、

「理亜さん、正直じゃないのだから・・・」

と理亜のことを茶化すと、理亜、

「あつこ!!」

とあつこに対し怒ってしまう。これには、あつこ、

「おおこわっ!!」

とふざけた風に言うとともに花樹に対し、

「ところで、あなた、理亜さんになにかを言いたいことがなかった?」

と花樹に催促する。

 すると、花樹、

「あっ、そうでした・・・」

と、理亜に対してなにか言おうとしていることをふと思いだすと襟をただして理亜に向かってこう叫んだ。

「理亜さん、お願いします、オ・・・、花樹を、理亜さんのユニットに・・・、Saint Snowに・・・、入れてください!!」

 すると、理亜、花樹に対しこう尋ねた。

「あなた、なぜ、私のユニットに入りたいわけ?その理由を聞かせて!!」

これには、花樹、いつもの通りこう発言してしまう。

「だって、理亜さん、ばかす・・・」

そう、いつもならここで理亜が花樹に対し怒るはず・・・、なので、花樹、

(う・・・)

とつい身構えてしまう・・・のだが、このときの理亜はただ、

「・・・」

とただ無言のまま。これには、花樹、

(えっ、理亜さん、花樹のこと、怒っていない・・・。一体、どうして・・・)

と逆に困惑してしまう、いや、困惑じみたものが表情として自分の顔に現れてしまった。

 と、ここで、あつこ、そんな表情の花樹に対し、

「あっ、べつに、理亜さんが怒っているわけじゃないのよ。ただ、理亜さんは人見知りだから、どう表現すればいいのかわからないの」

と言うと、花樹、

(あっ、そうなんだ・・・)

とほっとしてしまう。

 と、同時に、理亜、ついに口が開く。

「あなた、「ばかす・・・」と言っていたけど、その続きを言って!!「ばかす・・・」の続きってなに?」

これにあh、花樹、

(はっ、はい!!)

と一瞬びくっとなるもすぐに、

(でも、今だったら、理亜さんに、本当のこと、伝えられる気がする!!)

と思ったのか、「ばかす・・・」の続きを花樹は元気よく大声で言った!!

 

「だって、理亜さん、ばか(とても)すごいスクールアイドルだもん・・・、です!!だから、オ・・・、花樹、そんな理亜さんと一緒にスクールアイドルとして活躍したい・・・のです!!」

 

 この言葉を発した後、花樹は心のなかで、

(もう自分の本心を理亜さんに伝えることができた!!あとは、野となれ山となれ、だ!!)

と、「自分の思いを理亜にぶつけることができた、あとは理亜さん次第・・・。何とかなる!!」という思いが強くなってきた。

 そして、理亜のなかでもある思いが生まれてきた。それは・・・、

(この娘、自分のこと、花樹、って言っていたけど、なんか、昔の自分に・・・、お姉さま(聖良)とSaint Snowを初めて組んだときの私と同じ気がする・・・。でも、そんなまっすぐな気持ち、私、とても好き・・・)

そう、理亜は昔の自分に・・・、姉聖良と一緒にSaint Snowとして初めて活動したときの自分と・・・、ラブライブ!優勝という姉聖良との、そして、あつことの夢を叶えるためにがらむしゃに頑張っていたときの自分と同じものを今の花樹から感じていた。だが、それは、理亜にとって懐かしさを感じさせるとともに、花樹の、自分と一緒にスクールアイドルとして活躍したい、そんなまっすぐな気持ちを理亜は受け入れようと・・・、その気持ちがとても好きだと・・・理亜は感じていた。

 そして、理亜は事前と花樹に対してこう告げてしまう。

「あなた、私の歌、聞きなさい・・・」

 こうして、理亜は花樹の目の前で歌い始めてしまった・・・。

 

【第3話 挿入歌 「meets・・・」】

 

【R:

私はいつも待ってた あなたを待ってた

あなたという人は  ずっと待ってた

あなたこそ     私のパートナー

私のすべてを    認めてくれた

そんな素晴らしい  私のパートナー】

 

 

 だが、理亜の歌の途中、理亜は心のなかで花樹に対しこう告げてきた。

(あなた、私の仲間に・・・、私のユニットに入るなら、私の歌についてきて!!)

この理亜の心の声に花樹は驚く。

(えっ、理亜さん、それって・・・)

すると、理亜は花樹に対しこう告げた。

(私のユニットに入ること、それ、すなわち、私と一心同体になること!!ならば、私の歌についていく必要がある。だから、今、それを確かめてみる!!)

 この理亜の言葉に、花樹、ついに応えようとする。

(わかりました、理亜さん!!オ・・・、花樹、理亜さんの歌についていきます!!)

 そして、花樹も理亜につられるように歌い始めた。

 

 

私とあなたと   ついに出会った

奇跡ではなく   これは必然だ

だからこそいえる 私とあなたは

運命によって   出会ったんだ

 

 

そして、理亞と花樹は、ついに、ついに、言葉を、つい合わせた・・・

 

 

私とあなたは   最高のパートナー

すべてにおいて  最高のパートナー

どんなことでも  乗り越えらえる

最強で最高の   無敵のパートナー

だから(だから) だから(だから)

私と(私と)   あなたで(あなたで)

これからを    生きていこう

 

(R:ラップで歌う)

 

 

 この歌の最中、あつこ、

(理亜さんとあの娘(花樹)とのハーモニー、とても美しい・・・。私も参加してみたい・・・。でも、私はただのマネージャーだから・・・、ただの弱虫だから・・・、歌う資格なんてない・・・。私はただ2人のハーモニーを聞くことしかできない・・・)

と、自分のことを卑下しつつも2人のハーモニーにただただ楽しんでいた、自分には歌う資格なんてない、その思いとともに・・・。

 

 そして、2人はついに歌い終えた、それと同時に、花樹、理亜に対し、

「理亜さん、本当にごめんなさい、オ・・・、花樹、「ばかす・・・」といつも言っていたから。理亜さんのこと、「バカ」にしているものだと勘違いさせてちあかもしれない・・・です・・・」

とお詫びをしてきた。花樹にとって「ばか」は「とても」という沼津地方の方言の意味として使っていたのだが、それが沼津地方の方言だと知らない理亜にとってそれを「バカ」にしている、そう思われてしまった、そのことに花樹はようやく気づいたのである。なので、突然、花樹、理亜に対して謝ってきたのだ。

 だが、それに対して、理亜の方も突然花樹に対し謝ってしまう。

「あなた、私の方こそごめん・・・。私も、「ばか」の本当の意味、沼津にいる私の盟友(ルビィたち)から聞いてやっとわかった・・・。あなた、私のこと、「とてもすごい」といつも褒めていたって・・・。それなのに、私、あなたに対して、失礼なこと、言ってしまった・・・。本当にごめん・・・」

これには、花樹、

「理亜さん・・・」

と嬉しそうに言った。

 そして、花樹は理亜に対してこう尋ねてきた。

「ところで、理亜さん、花樹の願い、聞き入れてくれますか?花樹、理亜さんのユニット・・・、Saint Snowに入りたいです!!」

 すると、理亜は花樹に対しこう言ってきた。

「あなた、ごめんなさい・・・」

これには、花樹、

「やっぱりダメでしたか・・・。オ・・・、花樹、理亜さんに大変失礼なことを言ってしまったから・・・」

としょんぼりするも、理亜、そんな花樹に対し、

「あっ、別に、あなたを私のユニットに入れない、というわけではない・・・」

と少し困惑しながら言うと、花樹、そんな理亜に対し、

「それってどういう意味ですか?」

と逆に理亜に尋ねてしまう。

 で、これには、理亜、そんな理亜に対しこう告げた。

「Saint Snowはお姉さま(聖良)との・・・、あつことの・・・、大切な想い出だから、終わりにした。そのかわり、私だけのユニット・・・、いや、私とあつこ、そして、あなたとのユニットを・・・作ろうと思う・・・わけ」

これには、花樹、食らいついた!!

「もしかして、オ・・・、花樹、理亜さんのユニットに参加できるのですか!?」

もちろん、理亜も、

「それはあなた次第・・・」

と言うと、花樹、元気よく、

「オ・・・、花樹、理亜さんの新しいユニットに参加する・・・します!!」

と答えてくれた。

 

 その後、理亜は花樹に入部届を書かせていた。だが、このとき、花樹は理亜に対しることを尋ねてみた。

「ところで、理亜さん、新しいユニットの名前ってなに・・・なんでしょうか・・・」

 すると理亜は元気よく答えてくれた。

「それは・・・、「SNOW CRYSTAL」・・・、聖なる雪の日に私と姉さま(聖良)、あつこは一緒にスクールアイドルとしてラブライブ!に優勝することを誓った。だから、まえのユニットはSaint Snowという名前にしたわけ。それに対し、私は、これから、この3人で新しい雪の結晶をみつけたい、そう思っている・・・。だから、その新しい雪の結晶、「SNOW CRYSTAL」と名付けた・・・」

 すると、花樹、

「それってばかすごい理由だ・・・、ですね・・・」

と言うと、あつこ、

「また「ばか」って言っている!!」

と花樹のことを少しからかうも、花樹、すぐに反撃!!

「あつこさん、それ、誉め言葉です!!「ばか」は沼津地方の方言で「とても」という意味なのですから!!」

これには、理亜、花樹、あつこ、3人、ともに、

ハハハ

と大きく笑っていた・・・。

 そして、理亜は花樹に対してこう尋ねてきた。

「ところで、あなたの名前、なに?」

すると、花樹、元気よく応えてくれた。

「花樹・・・、猪波花樹!!今年の春に沼津から引越してきた新入生です!!」

 

To be contuned

 

(ED)

 

Next story is

 

「Red Sun said 「Aqours lose・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第4話(1)

「前回のラブライブ!SNOW CRYSTAL!!」

「オ・・・、花樹、花樹といいます。理亜さんのユニットに入るため、オ・・・、花樹、理亜さんの前で「理亜さんのユニットに入りたい!!」って言ったのですが・・・、花樹が「ばかす・・・」って言ってしまい、それによって花樹に「バカ」にされたと思った理亜さんが怒ってしまったのです。それで、オ・・・、花樹、何度も理亜さんに理亜さんのユニットに入りたいと言ったのですがそのたびに怒られてしまいました。ですが、花樹の言っている「ばか・・・」の意味が沼津地方の方言で「とても」だとしった理亜さんはまたまた「ばかす・・・」と言ってしまった花樹に謝罪をするとともに、オ・・・、花樹を理亜さんのユニットに入れてくれたのでした・・・」

 

「1,2,3,4、2,2,3,4」

とあつこの声があたり一面に響き渡る。ここは聖女の屋上・・・と言いたいのだが、聖女の校舎自体が歴史的建造物であるため、聖女には屋上なんてなかった・・・、というわけで、聖女の校舎裏ではあつこの掛け声とともに、花樹、理亜はダンスの練習をしていた。

 そして、

「1,2,3,4、2,2,3,4、やめ!!少し休憩!!」

というあつこの声ととおに花樹と理亜は体を休める。そこにあつこが花樹に向かって、

「それにしても、花樹さん、すごいですね!!スクールアイドルを始めたばかりなのにもうレベルの高いダンスすらこなすことができるなんて。花樹さん、本当にすごいです!!」

と褒めると、花樹、少し照れながら、

「だって、オ・・・、花樹、スクールアイドルとしてはやく大活躍して、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝したい・・・のです・・・。それならば、オ・・・、花樹、ばか(とても)練習して、ばか(とても)すごくなって、一人前のスクールアイドルに・・・なりたい・・・のです!!」

と大声で言うと、花樹の隣にいた理亜から、

「花樹、少しは落ち着いて!!あまりとばすと、昔の私みたいに、いつかは潰れてしまう・・・」

と花樹に注意する。理亜は、1年前、Saint Snowがラブライブ!夏季大会で全体の8位になったあと、「今度こそ姉聖良とあつことの夢、ラブライブ!優勝を」、という思いから自分を追い込むような心理状況に陥ってしまった、それにより、次のラブライブ!冬季大会最終予選で取り返しのつかないミスをするという辛い過去を持っていた。そのため、理亜は今の花樹にそのときの自分を照らし合わせて花樹にそれを注意したのだった。

 だが、このとき、花樹、

(理亜さんはああ言っているけど、オ・・・、花樹は絶対にラブライブ!優勝を成し遂げないといけないのだ・・・です・・・。だって、オ・・・、花樹にとって・・・、ラブライブ!優勝は・・・、おばあちゃんの・・・、おばあちゃんと花樹の・・・、約束なのだから・・・)

そう思ったのか、自分の首にかけている十字架の形をした、そして、中央に光り輝くダイヤをつけたネックレスを強く握っては空を見上げていた。これには、理亜、

(花樹・・・)

とただ花樹を見ることしかできなかった・・・。

 

 と、そんなときだった。突然、花樹、理亜、あつこのもとに1人の生徒が駆け寄ってきては3人に対しこう言った。

「理亜、大変!!スクールアイドル部に道場破りが来た!!なんか私が知らない制服を着た3人組が校門まえでこう叫んでいたよ、

 

「ここにいるスクールアイドル部に告ぐ!!今すぐ、私たちにひれ伏しなさい!!私たちは・・・、

 

あのAqoursを倒した、日本一、いや、世界一のスクールアイドルグループ、

 

「RED SUN」!!」

 

この瞬間、理亜は気が動転した。

(えっ、あのルビィたちが・・・、Aqoursが・・・、敗れた・・・)

 

(OP 1番のみ)

 

第4話 「RED SUN said 「Aqours lose・・・」

 

 だが、理亜以上に愕然としていたのが花樹だった。このとき、花樹、

「あのラブライブ!で優勝したAqoursが敗れた・・・。あの完璧なパフォーマンスをするAqoursが敗れた・・・。嘘だろう・・・、嘘だろう・・・)

と、花樹がこの前見たもの、ラブライブ!延長戦で完璧なパフォーマンスをみせた、あのAqoursがあるグループに負けてしまった・・・、その事実?に愕然としまったのだ。

 ただ、「Aqoursが負けた」と聞いただけで気が動転したり愕然とする理亜と花樹と違ってあつこは冷静だった。あつこ、そのことを聞いた瞬間、

(あのAqoursが敗れた・・・)

とちょっと戸惑うもすぐに、

(でも、あのAqoursほどの実力者が名の知らないグループに負けるなんて少しおかしいですね・・・)

と「Aqoursが負けた・・・」ことに少し疑問を感じていた。だって・・・、

(だって、Aqoursは、ダイヤさん、鞠莉さん、果南さんの3人が抜けたとはいえ、あの聖良さんと理亜さんの全力全開のSaint Snowでもってしても互角の勝負ができるかわからないくらい、日本一の実力を持つグループ・・・。それのなのに、そんな実力者を名も知らないグループがたった短期間で打ち破ることなんて少しおかしいですね・・・)(あつこ)

そう、今のAqoursは卒業生のダイヤ、鞠莉、果南が抜けた、千歌、梨子、曜、ルビィ、花丸、ヨハネのグループである。だが、その3人が抜けたとしても、理亜、聖良の全力全開のSaint Snowをもってしても太刀打ちができるかわからなくなるくらいの日本一の実力をAqoursは持っていた。だが、そんなAqoursが短期間で・・・、全力全開の・・・、聖良、理亜、あつこ、3人の・・・、Saint Snowと互角の勝負をした・・・、いや、それ以上の実力をみせようとしていた・・・、そんなAqoursが・・・、その戦いとなった、ラブライブ!延長戦から日があまりたっていないのに、そんなAqoursが負けるなんてなにかおかしい、とあつこは思ったのだ。それは、日本を代表するジュニアフィギュア選手だった、これまで数多くの実力者と戦ってきた、そんなあつこだからこそ思えた疑問だった。

 そんなあつこは、気が動転、もしくは、愕然、とする理亜と花樹に向かってこう叫んだ。

「理亜さん、花樹さん、そのグループがいる校門前に行きましょう!!そして、本当にそのグループがAqoursを倒したのか聞いてみましょう」

 このあつこの叫びに、理亜、

(あっ、たしかにあつこの言う通り・・・。本当にAqoursを倒したのか確認するのが先!!)

と言っては気を引き締めたのか、

「たしかにあつこの言う通り!!」

と言っては、あつこ、花樹に向かってこう叫んだ。

「あつこ、花樹、校門前に行く!!そして、真実、確かめる!!」

 だが、このとき、花樹は心のなかでこう思っていた。

(あのAqoursを倒したなんて・・・、俺、絶対に許せない!!)

 

 花樹、理亜、あつこはすぐに聖女の校門へと向かった。そして、そこには・・・、

「あなたね、あの弱者であるAqoursの仲間っていうのは!!」

と理亜に向かって大声で叫ぶ少女、そして・・・、

「桜花ちゃん、それ、ちょっと言い過ぎ・・・」

「まぁ、それが桜花さんなのですがね・・・」

と、その少女をはさむように2人の別の少女が立っていた。

 だが、この3人んを見た瞬間、理亜はあることに気づいた。

(あっ、この少女たちが着ている制服・・・、ルビィたちがいる静真の制服・・・)(理亜)

そう、この3人組が着ている制服、実はルビィたちAqoursが今年から通うことになった沼津の女子高、静真、の制服だったのだ。

 だが、そんな理亜のことなんて気にせずに真ん中にいる少女は理亜に対してさらに叫ぶ。

「あなたが、あの弱者、Aqoursの仲間、Saint Snowの鹿角理亜だね!!」

これには、理亜、

「たしかに私が鹿角理亜だけど・・・」

と応えるとその少女は理亜を指さしこう命令してきた。

「理亜という娘、この私にひれ伏しなさい!!あのAqoursは敗れたわ!!なら、あのAqoursに敗れたSaint SnowもAqoursと同じ敗者!!だからこそ、私にひれ伏す必要があるのです!!」

 だが、これには、理亜、

(「私にひれ伏しなさい」だって・・・、許せない!!それに、私と姉さま(聖良)のSaint SnowだけでなくルビィたちAqoursのことまで弱者呼ばわりするなんて、本当に許せない!!)

とカンカンに怒っていた。そりゃそうだ!!だって、理亜の大切な宝物であるSaint Snowだけでなくその宝物と密接に関係あるルビィたちAqoursのことを見下すなんて、さらに、だからこそ、自分にひれ伏すといった屈辱的なことをしろ、と言われたら誰だって怒るに違いない。理亜が怒っているのは当然と言えば当然だった。

 だが、このときでもあつこは冷静だった。あつこは怒る理亜とは対照的にいたって冷静だった。

(見た限り、あの娘たち、スクールアイドル初心者みたい・・・。あの体つき・・・、毎日ダンス練習をしている・・・、そんな体つきはしていない・・・。たしか、花樹さんもスクールアイドル初心者だけど、その花樹さんと見比べても花樹さんの方が上に見えてしまいます・・・)(あつこ)

そう、あつこはあの3人組と花樹を見比べて、3人と同じスクールアイドル初心者である花樹みたいなスクールアイドルの体つきをあの3人組はしていない、いや、あの3人はただのスクールアイドル初心者である、と感じていた。あつこはこれまでSaint Snowの一員・・・というか、サポーター的な立ち位置として理亜と聖良、Saint Snowを支えてきた。むろん、理亜と聖良、2人の練習メニューも、元ジュニアフィギュア選手という経験のもと、あつこが組んでいたん。なので、あつこは一瞬だけで、その娘がどれくらいスクールアイドルの練習をしているのか、どの程度の実力者であるのか、それを見抜くことができた。いあy、それ以上に、全国という戦場でジュニアフィギュア選手として戦ってきた、そこで培われた目でもってその人のことがわかる、それがあつこだった。

 ただ、そんなあつこをよそに理亜が、

「あなたたち、なにを言って・・・」

と怒りながら言おうとした瞬間、

「理亜さん、ちょっと待って!!」

とあつこが理亜を止めに入った!!これには、理亜、

「あつこ、あなた・・・」

とあつこに止めに入られたことが気にいらなかったのかあつこになにか言おうとするも、あつこ、そんな理亜に対し、

「理亜さん、まずはあの娘たちの話を聞きましょう」

と理亜を諭すように言うと、理亜、あつこの目を見る。すると、その目は理亜を鋭い目で制するようなものであった。これには、理亜、

(うぅ、この目で見られると、私、言いずらい・・・)

と一瞬たじろく。理亜にとってあつこは以前理亜が作ったものの空中分解した理亜のユニットのメンバーのなかで唯一戻ってきたメンバーであった。また、あつこと理亜は小さいときから姉聖良とともに一緒に遊んでいた幼馴染でもあった。理亜としてはそんなあつこに対し姉聖良がらみで文句をいうこともあったが、長いつきあいのなかで、理亜はあつこの性格を・・・、冷静に物事を分析する・・・、さらに、一瞬で物事を見抜く・・・、そして、なにか問題が起きてももの落ちせずという・・・、そんな性格をたまに見せることを知っていた。なので、あつこのこのときの目は理亜を黙らせるのには十分だった・・・。

 そんなこともあり、理亜はすぐに黙ってしまうとその代わりにあつこが、

「ところで、あなた方の名はなんでしょうか?まずはあなたたちが名前を名乗るのがマナーではないでしょうか」

と、少し鋭い目でもってその3人組をけん制しつつも自分たちの名前を尋ねると真ん中にいる少女が前に出てはこう言いだしてきた。

「まぁ、のちに語り継がれる名だと思いますが、一応、礼儀として私たちの名を名乗ることにしましょう」

 そして、3人は名乗り始めた。

 

「私はこのグループのリーダー、木松桜花(きまつ はる)!!」(真ん中の少女)

「・・・、紅梅歌(くれない うめか)・・・」(右側の少女)

「赤間松華(あかま しょうか)!!」(左側の少女)

 

 

 

「私たちの名は、静真高校スクールアイドル部、「Red Sun」!!」(桜花)

 

これを聞いた瞬間、理亜、びっくりする。

(えっ、静真高校のスクールアイドルって、ルビィたちAqoursのはず・・・)

まぁ、理亜の現時点での認識とすればこれが当たり前だった。ルビィたちAqoursは今日年度まで沼津内浦にあった女子高、浦の星のスクールアイドルであった。だが、その浦の星が、今年度、静真と統合したので、「Aqoursは静真のスクールアイドルである」、それが理亜の現時点での認識だった。だが、桜花と名乗る真ん中の少女は、自分たちのグループ、「Red Sun」が静真のスクールアイドルであると言ってきたのだ。これには理亜もびっくりするのも無理ではなかった。

 だが、そんあ理亜がびっくりするようなことでもあつこは冷静だった。あつこは桜花という少女が自分たちのグループが静真のスクールアイドルであると言ったことについて、

(あれっ、たしか、静真にはルビィさんたちAqoursがいるはず・・・)

と理亜と同じことに気付くもすぐに、

(ということは、静真にはAqoursとRedSunというふたつのスクールアイドルグループが存在するってことですね)

とその先のことすら考えていた。そう、今現在、(桜花の言うことを鵜呑みにすると、)静真には、ルビィたちAqours、桜花たちRedSun、2つのグループがある、そのことに気づいたのだ。

 そのことを踏まえた上であつこは桜花たちに向かってこう質問してきた。

「桜花さん、あなた方は静真のスクールアイドルといっておりますが、静真にはもう1つのスクールアイドルグループ、Aqoursがいるはずでは・・・?」

 そんなあつこの質問・・・というか、指摘、に対し桜花ははっきりとこう言った。

「あぁ、たしかにAqoursというスクールアイドルグループは静真にいたね。でも、私たちの実力からすれば、あんなもの、ただの烏合の衆ですわ!!この前、そんな烏合の衆に対して単なるお遊びと称して戦ったけど、私たちの実力からすれば雲泥の差だってね!!あんな烏合の衆、簡単に蹴散らしたよ!!」

 ただ、この桜花の発言に隣にいた梅歌からは、

「えっ、私たち、Aqoursと戦ったことなんて・・・」

とつい口を滑らせてしまうも、もう一人の少女、松華からは、

「梅歌、少しは桜花さんに話を合わせた方が・・・」

と梅歌に注意する。

 だが、そんな桜花の発言についに理亜がキレる。

「ルビィたちAqoursのことをバカにするな!!」

そう、今の理亜にとって自分の大切な盟友であるルビィたちAqoursのことを「烏合の衆」としてバカにされたことがとても許せなかったのだ。ルビィたちAqoursは理亜にとってあのラブライブ!延長戦で雌雄を決する戦いをした、それくらい、1番のライバルであって盟友でもあった。そんなAqoursのことを貶めるような発言をしたこと自体理亜からすれば許せずにいられなかった。

 だが、それでも、あつこは冷静だった。ルビィたちAqoursのことをバカにされて激高する理亜に対し、あつこ、

「理亜さんは黙っていてください!!」

と理亜に注意すると、理亜、あつこの目を再び見る。すると、あつこの目はさらに鋭くなっていた。そのため、理亜、

「あつこ、わかった・・・」

と言っては引っ込んでしまった・・・。

 そして、あつこはある事実を桜花たちに突きつける。

「桜花さんと言ったね。ところで、RedSunのみなさん、これまでフィギュアの世界で戦ってきた私から見れば、あなたたち、スクールアイドル初心者、にみえるのだけど、それなのに、理亜さんたちSaint Snowと互角の勝負をした、いや、日本一にもなった、そんなAqoursに勝つなんてね・・・。どんなことをすれば初心者であるあなたたちが実力者であるAqoursに勝てるのでしょうかね・・・」

 このあつこの指摘に、桜花、

「そ、それは・・・」

と、これまでの威勢はどこにいったのか、黙ってしまった。いや、それどころか、桜花に対して、

「やっぱり嘘だってバレているじゃない・・・」(梅歌)

「まぁ、そんなみえみえな嘘なんてすぐにバレてしまうもんだよ・・・」(松華)

と、隣にいる梅歌と松華からこんなことまで言われる始末・・・。

 だが、それでも桜花は自分を奮い立たせてはあつこに対し怒鳴り散らす。

「たとえそうだとしても、私たち、RedSun、はあのAqoursに勝ったんだ!!それは紛れもない事実だ!!」

 ただ、そんな脅し、これまでジュニアフィギュアの世界において数多くの実力者と戦ってきたあつこからすれば無力だった。あつこは怒鳴り散らす桜花に対し、

「へぇ~、その事実の証拠、私にみせてくれないかなぁ・・・」

と、まるで獲物を狙う蛇のような鋭い目で言うと、桜花、

「そ、それは・・・」

とついに黙ってしまった・・・そのときだった。桜花、ついに逆ギレしたのか、大声でまわりに対しこう怒鳴り散らしてしまう。

「私たち、RedSun、はあのAqoursに勝ったんだ!!私たちこそ、静真が誇るスクールアイドルグループ!!Aqoursだって目じゃない!!だって・・・、

 

Aqoursは・・・、とても弱弱しい、いや、お遊び感覚でスクールアイドルをやっている、部活に対する士気が低い、そんな弱者、なのだから!!」

 

 だが、こんな桜花の発言、いや、行動に、理亜、

(なんかあの桜花というものたちに腹が立った私がバカじゃない・・・。あの娘が言っていること、あつこの正論に論破されてなにも言えない、そんな犬の遠吠えにしか聞こえなくなってしまっている・・・。これじゃ、あんな弱虫の桜花に対して怒っていた私がバカにみえてしまう・・・)

と、これまでの自分の行動がバカバカしくみえてしまった。

 そんなこともあり、理亜、あつこに対し、

「あつこ、こんな嘘つきなんて気にせず、無視して、練習、戻る」

と言うとあつこも、

「まぁ、理亜さんがそう言うのでしたら・・・」

 

と、桜花たちのことを無視して校門から去ろうとしていた。

 だが、そのときだった。突然、ある少女が、大声で桜花に対し反抗してきた。

「Aqoursのことを・・・バカにしないで!!訂正して!!「Aqoursは弱虫じゃない。日本一のスクールアイドルだ!!」って言い直して!!」

この大声に、理亜、あつこ、ともにその声の主の方を見てこう思った。

((花樹(さん)・・・))

そう、桜花に反抗してきたのは花樹だった。花樹はAqoursのことを弱虫呼ばわりする桜花の発言によってこんな思いがあふれてきていた。

(オ・・・、花樹は、ラブライブ!で優勝した、オ・・・、花樹の夢を叶えてくれる・・・、そんなAqoursに・・・、憧れていた・・・。だけど、オ・・・、花・・・、俺は、Aqoursに入りたい、そう思っていた・・・。ただ、その夢は叶わなかったけれど・・・、俺は・・・、俺は・・・、その対となる(Saint Snowの)理亜さんのパートナーとして、今、頑張ろうとしている・・・・。でも、たとえ、そうだったとしても・・・、俺のなかでは今でもAqoursは憧れの存在なんだ!!そんなAqoursを弱者扱いするなんて・・・、絶対に許せない!!)

花樹にとってAqoursはラブライブ!延長戦の動画を見て以来、Aqoursは憧れの存在だった。そんなAqoursに入りたい、そう思っていた。だが、とある事情で花樹はAqoursに入ることができなかった。ところが、その花樹の願いはそのAqoursと対をなすユニット、Saint Snowの理亜の新たなるパートナーになることで叶いそうであった。とはいえ、花樹にとってAqoursは今でもスクールアイドルとしては憧れの的であった。そんなAqoursのことをバカにしている、弱者扱いしている、そんな桜花のことが花樹は許せなかったのだ。

 だが、この花樹の発言に桜花はにやりと笑ったかと思うと理亜たちに向かってこう言いだしてきた。

「ほ~、それって、あなたたちからの宣戦布告って思っていいのかなぁ。あのAqoursに勝ったRedSunに太刀打ちできるのかなぁ」

 この桜花の言葉に、花樹、はっとする。

(あっ、つい、怒りにまかせて、オ・・・、花樹、言ってしまった・・・)

そう、花樹の発言は桜花にとって売り言葉に買い言葉になったのだ。花樹はそのことに気づいたのだがそれは後の祭りであった。成り行きだったとはいえ、花樹は桜花にケンカを打った形になってしまったのだ。

 と、ここで、続けとばかりに桜花は理亜たちに対し挑発してきた。

「もし、ここで、逃げ出したたら、Saint Snowはただの弱虫、ということになりますね。それでもいいのかなぁ」

ただ、この桜花の挑発に、桜花の隣にいた、梅歌、松華、からは・・・、

「桜花ちゃん、あんまりケンカはしないでね・・・」(梅歌)

「なんか死亡フラグを立てたみたいですけどね・・・」(松華)

と挑発する桜花を抑えようとしていた。

 と、ここで、理亜、あつこに対し意思の疎通を図る。

(あつこ、私、ここで、あの娘たち(桜花たち)、倒して、実力の差、みせつけたい!!じゃないと、あの娘たち、私たち、だけでなく、ルビィたちAqoursのこと、いつもバカ呼ばわり、してしまいそう・・・)(理亜)

(まぁ、ここでお灸をすえることは私も賛成かなぁ)(あつこ)

実は理亜としてもあつこにしても自分達はおろかSaint SnowとはライバルであるAqoursのことすらこれ以上バカ呼ばわりしていることは気になっていた。だが、それでも大人の対応を理亜とあつこはしようとしていたのだが、成り行きとはいえ、桜花からケンカをふっかけてきた、そのケンカを買って実力の差をみせつけることであの桜花の鼻をへし折ろう、そう2人は考えたのである。

 そんなこともあり、理亜は桜花に対してこう言いだしてきた。

「RedSunのみなさん、わかりました。そのケンカ、買いましょう!!私たちの実力の差、見せつけて、あなたの鼻、へし折ってあげる!!」

これには、桜花、にやりと笑っては大声でこう宣言した。

「わかったわ!!それじゃ、1週間後、あの船の上で戦ってあげる!!」

 そして、桜花は港のある船に向かって指をさした。その船とは・・・、

 

かつて函館と本州青森を結んでいた青函連絡船、摩周丸、だった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第4話(2)

 その日の夜・・・。

「ルビィ、最近、花樹、よく頑張っている・・・」

と理亜は自分のスマホを介してルビィと話していた。ここは理亜の自室。ここで理亜は沼津にいる自分の盟友のルビィと通話アプリを介して会話をしていた。今は理亜が今のユニットの状況をルビィに話していた。

 そんななか、ついにあの話題を理亜はだしてきた。

「ところで、ルビィ、今日、ルビィたちが静真から、変な人、来た」

この理亜の言葉に、ルビィ、

「えっ、静真から、変な人?」

と理亜に尋ねると、理亜、その変な人のことを話した。

「なんか、その変な人、静真のスクールアイドル部、RedSun、って名乗っていた。なんか、リーダー格の娘が言うには、Aqoursのこと、烏合の衆、なんて言っていた。で、その娘、前、ルビィたちAqours、打ち倒した、って言っていた・・・」

これには、ルビィ、

「えっ、えっ、えっ!!」

と逆に理亜の言葉に驚いてしまった。

 だが、このとき、逆に、ルビィは理亜が驚くようなことを言ってしまう。

「たしかに、静真にはRedSunというスクールアイドルグループはいた・・・と思うよ。でも、ルビィたち(Aqours)はそのRedSunと戦ったことがない・・・、というか、そのグループを見たことすらないよ!!」

このルビィの言葉に、理亜、今さっきのルビィと同様に、

「えっ、えっ、えっ!!」

と口をあんぐりしながら驚いてしまった。そりゃそうだ!!だって、ルビィ自体、RedSun、その存在は知っているのに、戦ったことも、いや、見たことすらないというのだ。これには、理亜、驚くしかなった。RedSun、静真にいるルビィはそのグループの存在を知っているも見たことがない、そんなグループが理亜たちの目の前に現れた、それ自体、理亜からすれば、どうしてRedSunがそんな行動をとったのかわからなかったのだ。

 と、そんなときだった。

「理亜、ちょっといい?」

と理亜が1番好きな人の声が聞こえてきた・・・、いや、理亜とルビィの会話に乱入してきたのだ。これには、理亜、驚きつつもこう叫んだ。

「姉さま!!」

そう、突然、理亜とルビィの会話に乱入してきたのは、理亜の姉、聖良、だった。聖良は聖女を卒業したあと、聖女の近くにある聖女の系列の大学に進学していた。聖良はここでエンタメ業界に入るための勉強をしていた。実は北海道からは数多くの歌手、ミュージシャンを輩出してきた。演歌だと北島三郎、ポップだとGRAYにドリカムなど。そんなわけで、聖良はまだ世の中に知られていない北海道出身のアーティストのタマゴを探しそれを育てる、そんな夢を抱いていた。そのため、ここ函館の聖女の系列である大学のエンタメ学科に進学し、日々、そのための勉強をしていたのである。

 そんな聖良であるが、突然、聖良の乱入に、ルビィ、

「せ、聖良さん、どうしたの?」

と驚きつつも聖良にこう話すと、聖良、そんなルビィに対し、

「私っとしてもちょっと千歌さんたちのことで気になることがあるのです。そのため、2人の話に入る形になったのです」

と乱入してきた理由を話した。

 すると、理亜は姉聖良にその気になることを尋ねた。

「姉さま、ルビィたちのことで気になる話ってなに?」

 すると、聖良はその気になることを話した。

「実はですね、ルビィさんたちのグループ、Aqoursは、今、同好会として活動しているのです」

これには、理亜、

「同好会!?」

とびっくりするような声をあげると、ルビィ、

「うん、ルビィたち、Aqours、今、静真で、スクールアイドル同好会として活動しているの・・・」

と今のAqoursの現状を、聖良が言っていることを追認した。もちろん、これには、理亜、興奮気味に、

「ルビィ、なんで同好会として活動しているわけ?浦の星では部として活動していたのに、静真に入ってからなんで同好会として活動しているわけ?」

とルビィに詰め寄る。たしかにAqoursは浦の星ではスクールアイドル部として活動していた。だが、静真ではなぜか同好会として活動しているのか理亜が疑問になるもも仕方がなかった。

 だが、こんなとき、突然、聖良、

「理亜、それについてはルビィさんより詳しい人がいるから、その人から話を聞きなさい」

と言っては興奮する理亜を抑えるとともにルビィに対して、

「ルビィさん、あの娘を呼んできてくれませんか、今のAqoursのマネージャーを・・・」

とお願いをすると、ルビィ、

「あっ、あの娘だね!!うん、わかった!!」

と了解してはその娘を呼び出そうとしていた。

 そして、聖良はついにこう言いだしてきた。

「理亜、あつこも今のAqoursの状況を知る必要があります。そのための、私、理亜、あつこ、ルビィさん、善子さん、花丸さん、そして、今のAqoursの状況をしる娘、それらによるオンライン会議を行います。理亜、いいですね」

これには、理亜、

「ね、姉さま・・・」

と困惑層にしていた・・・。

 

「聖良さん、花丸ちゃんと善子ちゃんを呼んできたよ!!もちろん、あの娘もね!!」

と、ルビィ、聖良に3人を呼んできたことを伝えると、突然、

「一体なに?なにが起きるわけ?あと、善子じゃなくて、ヨ・ハ・ネ!!」

と、突然呼ばれたことに不満があるのか、ヨハネが文句を言っては登場するとその横から、

「なにかあるずら?おらたちに関係あることずら?」

と花丸の声も聞こえてきた。さらには・・・、

「私もなにか関係があるのでしょうか、聖良さん・・・」

となにか心配していそうなあつこの声も聞こえてきた。

 すると聖良が、

「はいっ、静かに!!」

と言ってはこの会議の参加者たちを静かにさせるとルビィに対し、

「ところで、ルビィさん、あの娘を紹介してくれませんか?」

とお願いをした。

 すると、ルビィ、その娘に対し、

「あげはちゃん、あとはお願い!!」

と言うとその娘は挨拶をした、ハイテンションで・・・。

「理亜ちゃん、聖良さん、あつこさん、こんばんわ!!私、Aqoursの今のマネージャーをしています、ルビィちゃんたちと同じ2年の、稲荷あげは、です!!」

稲荷あげは、「Moon Cradle」をお読みの方ならご存じだろう、ヨハネの前世を知る者(ヨハネの中学時代の同級生)であり、新学期前に沼津駅前で行われた新生Aqoursお披露目ライブを静真Aqours応援団の団長として、そして、裏方として大活躍、成功に導いてくれた娘である。で、今は生徒会活動で忙しい渡辺月生徒会長の代わりにルビィたちAqoursのマネージャーとして頑張っていた。ただ、そんなあげはのハイテンションな挨拶に理亜はただ、

「よ、善子、変わった友達、いるみたい・・・」

と唖然となりつつ言うと、ヨハネ、

「余計なこと!!」

と理亜にツッコミを入れてしまった・・・。

 とはいえ、このままだと話が進まない・・・、というわけで、さっそく本題に入る。まずはルビィが、今、静真で起きていることを話す。

「もう理亜ちゃんとあつこさんはご存じだと思うけど、静真には2つのスクールアイドルグループ、AqoursとRedSun、がいるの・・・」

このルビィの言葉に、理亜、

「でも、1つの学校に複数のスクールアイドルグループが存在していることはおかしくもない」

とルビィの言っていることが別段おかしくないことを言った。そう、実はA-RISEやiDといった、秋葉原にあるUTX学院、K9といった福岡博多の福博女子(iDやK9についてはかなり前の作品「ラブライブΩ」をご覧ください)には複数のスクールアイドルグループが存在していた。なので、理亜が言う通り、1つの学校に複数のスクールアイドルグループが存在してもおかしくなかった。

 だが、ここで、あげは、ある事実を話す。

「たしかに静真には2つのグループ、AqoursとRedSunが存在しています。ただ、その2つのグループの、待遇の差は歴然なのです!!」

このしずくの言葉に、理亜、あつこ、ともに、

「「えっ!!」」

と驚いてしまう。まさか2つのグループの待遇に歴然の差があるとは思っていなかったのだ。

 と、ここで、理亜、あることを考える。

(待遇の差こそ、あのRedSunのリーダー格の娘が言っていた「Aqoursに勝った」の根拠では・・・)

その瞬間、理亜、あげはに対しある質問を投げかけた。

「もしかして、その待遇の差とRedSunのリーダー格の娘が言っていた「Aqoursに勝った」、その2つ、関係ある?」

 この理亜の質問に、あげは、

「う~ん」

と少しうなるとすぐに、

「まぁ、少しは当たっているのかな?」

と言うとどんな差が起きているの話し始めた。

「まず、RedSunは静真高校スクールアイドル部として活動しているんだ。対して、Aqoursは静真高校の一同好会として活動している。これによって部の活動資金や部室の有無などといったところで影響がでてしまうんだ」

事実、静真において部と同好会の待遇には明確な差があった。部の場合、学校から部の活動資金として部費という名の名目である程度の部のお金が支給される。また、部専用の部室も与えらえるとともに(静真は県内有数の部活優秀校のため)学校に設置されているジムなどを使用することができるのである。対して、同好会はそれらの特典がまったくなかった。それくらい明確な差があったのだ。

 と、この説明をあげはから受けた理亜はルビィに対し(ちょっと怒り)口調でこう言った。

「と言うことは、ルビィたち、Aqours、部費なし、部室なし、となしなしだらけというわけ?」

これには、ルビィ、

「うん、理亜ちゃんの言う通り、今のルビィたち、部費も部室もなにもかもないの・・・」

と悲しそうに話すと、理亜、

(それ、不公平すぎる!!ルビィたちAqoursと小生意気なリーダーのいるRedSun、それに差をつけるなんて許せない!!)

と怒りをさらに覚えてしまう。

 と、ここで、理亜、あることを思いだす。

(でも、ルビィ、今さっき、RedSunのこと、戦ったことはおろか見たことなんてない、そう言っていたはず。それって・・・)

そう、理亜の言う通り、静真にいるルビィですらRedSunのメンバーを見たことがないのだ。そんなルビィたちですらどんなグループかわからない謎のグループ、それなのに、2つのグループにこんな差が生まれること自体、不自然、と思ってしまうのだ。

 そんなわけで、理亜、あげはに対し新たなる質問をした。

「あげは、ルビィが言うは、RedSun、ルビィもそのメンバーを見たことがない、と言っている。でも、それなのに、どういったグループすらわからない、そんなRedSunというグループ、ルビィたちAqoursより扱いが上、なぜ?」

 すると、あげは、ある人物の名をあげた。

「それもこれもすべてあの男のせい!!そう、ヨハネちゃんたちを苦しめた、あの男、木松悪斗のせいなんだ!!」

その言葉を聞いた瞬間、ルビィ、花丸、ヨハネは唇を噛みしめていた。木松悪斗、「Moon Cradle」を読んでいた方ならご存じだろう。Aqours、そして、静真の生徒会長の渡辺月の天敵である。さらに一大投資グループを率いていおり、その財力は日本有数であった。だらに、その財力をもと日本国内で権力をもっており、特に静岡においては絶大であった。また、木松悪斗は多大な資金を静真に寄付しており、そのおかげもあり、静真を、特に部活動に関してはその男の長女である旺夏とともに牛耳っていた。そして、静真の浦の星の統合の際、浦の星のメインスポンサーだった小原家が自部間に寄付をしなかったことに腹を立てた木松悪斗、自分勝手な考え、「浦の星の生徒は部活動に対する士気が低い」、それと、その考えによる統合反対を静真に通う生徒の保護者たちに自分の権力でもってひろげたあと、その考えや統合反対の旗印のもと、Aqoursや渡辺月率いる静真高校生徒会への妨害工作を行っていたのだ。そのため、ルビィたち(新生)Aqoursは、一時期、不安・心配という深い海・沼に陥ってしまったことがあった。だが、その後、イタリア旅行でのダイヤたち卒業生との行動を通じて完全復活を果たした完全復活を果たしたAqours、そのサポートをした静真高校生徒会や静真Aqours応援団の大活躍により木松悪斗は大ダメージを負ってしまうとともに静真と浦の星は無事に統合を果たしたのである(詳しくは「Moon Cradle」をお読みください)。そんなこともあり、ルビィ、花丸、ヨハネはそれを思いだしては悔しい気持ちになったのか唇を噛みしめてしまったのである。

 そんな木松悪斗の名が出てきたのか、理亜、ここである質問をあげはにする。

「その、木松悪斗、それと、ルビィたちAqoursとRedSunとの待遇の差、どんな関係性があるわけ?」

たしかに木松悪斗は静真の部活動において絶大な権力を持っている。それとAqoursとRedSunの待遇の差との関係性が見えてこない、それを理亜は指摘してきたのだ。

 だが、ここで、あげは、ある重大なことを話す。

「実は、このRedSun、ルビィちゃんたちAqoursを貶めようと木松悪斗が今月に入って作った新しいグループだという噂なのです」

あげはの説明によると、RedSun、苦汁な思いをさせられた木松悪斗がそれを行ったAqoursを貶めるために作ったグループだというのだ。これには、ルビィ、

「ルビィもね、その話を聞いて怒ったよ!!スクールアイドルをそんなもののために使うなんて!!木松悪斗という人、スクールアイドルを道具としか見ていないんだよ!!」

と珍しく怒っていた。ルビィにとってスクールアイドルというのは自分の命と姉ダイヤの次に大事にしていたもの、プラス、姉ダイヤとの大切な想い出がつまった宝物的なものだった。それを木松悪斗がAqoursを貶めるようなそんな道具としてスクールアイドルを作ってはそれを使おうとしている、それ自体、ルビィは怒りに満ちていたのである。むろん、理亜も、

(私も、スクールアイドルを、自分の道具に使うその男のこと、許せない!!スクールアイドルは道具じゃない!!)

と怒りに満ちていた。理亜もルビィと同じ思いであった。いや、ただ1人をの除いてはこの会議に参加している者たちの思いは同じだった。

 だが、ここで、1人だけ冷静だった聖良があげはにある質問をした。

「あげはさん、1つ質問なのですが、なぜ、そんな噂が流れているのですか?」

そう、あげはが言っていることはたんなる噂でしかなかった。その噂の根拠について聖良はあげはに聞いてきたのだ。

 が、あげははその噂の根拠について話し始める。

「その噂の根拠ですが・・・、実は・・・、木松悪斗の次女がそのRedSunのリーダーを務めているのです・・・」

 この瞬間、理亜、あることを思いだす。

(たしか、RedSunのリーダー格の娘の名前・・・、名前・・・、あっ!!)

そして、理亜はRedSunのリーダー格の娘の名を言った。

「たしか、RedSunと私たちが出会ったとき、リーダー格の娘が、名前、言っていた、木松桜花と・・・・」

 その瞬間、すべてが1つにつながった・・・、それがわかったのか、理亜、突然、怒りながらこう言った。

「えっ、ルビィたち、そのRedSunと木松悪斗のせいで、今、同好会でしかスクールアイドル活動できないわけ・・・。(ルビィたちの話をまとめると、)ルビィたちAqoursに苦しめられた木松悪斗、自分の子ども、(次女の)木松桜花を使い、ルビィたちとは違う別のスクールアイドルグループ、RedSun、作った、そして、そのRedSunを、静真高校スクールアイドル部唯一のグループとして認め、部としての特典を与えた、対して、ルビィたちAqours、それすら許されていない、そんな明確な差、明らかにおかしすぎる!!」

理亜の考え、それは、木松悪斗が苦汁を飲まされたAqoursに対し腹いせに自分の子ども(桜花)を使って新しいスクールアイドルグループを作ってはそれを部として認め部の特典を与えることでAqoursに対し徹底的な差別をしている、そのことだった。それは自分の自分勝手な私怨を部活動という高校での活動に持ち込んでしまった、いや、自分の権力を傘に学校の活動にも自分のわがままを押し通そうとする、そんな木松悪斗の身勝手すぎる行動に理亜が怒るのも無理ではなかった。

 そんな理亜であったが、ふと、あることを思いだす。

(でも、たしか、ルビィは「RedSunと戦っていない」と言っていた。それなのに、RedSunの桜花は「Aqoursに勝った」と言っていた。それって・・・、もしかして・・・)

そう、ルビィが言うには、まだAqoursは桜花たちRedSunとは戦ったことがない・・・というか、ルビィすらそのRedSunのメンバーを見たことがない、それなのに、RedSunの桜花は「Aqoursに勝った」と言っているのだ。ここで矛盾が生じるのだが、これまでの流れでその矛盾の正体がわかったのだ。

 そして、理亜はその矛盾の正体をみんなに語った。

「もしかして、RedSun、まだ作られたばかり・・・、もしくは・・・、作られてまもない・・・、活動実績がない・・・、だけど、木松悪斗によってRedSunは部としての地位を確率させ、逆に、ルビィたちAqoursは同好会止まり・・・、その差こそ、RedSunの桜花が言う、「Aqoursに勝った」、なのでは・・・」

そう、理亜の言った通りであった。実は、RedSun、まだ作られて間もなかった。そのため、活動実績がなかった。いや、活動しているところ自体、誰も見ていなかったのだ。だが、静真の部活動に多大な影響力を持つ木松悪斗によって創部して間もないのにRedSunはAqours以上の待遇を獲得、それを桜花が「Aqoursに勝った」と称しているのだ。むろん、これには、ヨハネ、

「それってただの桜花の妄想じゃない!!ヨハネたちはまだRedSunと戦っていないのに親の権力で「勝った」って言っているなんて、許せない!!」

と怒りの様子。ただ、聖良は冷静に、

「たしかにAqoursとRedSunは直接戦っていません。ですが、親の権力だったとしても策略的にはAqoursを苦しめているのあればそれを「勝ち」とみているのも無理ではありませんね」

と言った。

 だが、理亜にとってみれば自分の大事な盟友であるルビィを苦しめている、そんな、RedSun、そして、それに関する木松悪斗の暗躍に、

(あまりに身勝手すぎる!!単なるひがみ!!ただそれだけのためにルビィたちを苦しめんなんて、許せない!!)

と怒り深長の様子。そりゃそうだ。桜花の親である木松悪斗の権力を傘に自分の盟友であるルビィたちAqoursを苦しえること自体、理亜は許すことができなかったのだ。

 そして、理亜はルビィにある決意を話した。

「ルビィ、私、ルビィたちの敵をとる!!RedSunなんて私の手でひねりつぶしてみせる!!桜花の鼻をへし折ってやる!!だから、ルビィ、みていて!!」

そう、理亜は身勝手すぎる(と、理亜が判断した)RedSun、そして、そのリーダーでもともとの元凶である木松悪斗の娘、桜花を、今度の戦いで捻り倒す、そう宣言したのだった。

 むろん、これには、花丸、ヨハネ、ともに、

「おらたちのかたきをとるずら!!」(花丸)

「まぁ、別に負けたわけじゃないけど・・・、それでも、RedSunなんてやっつけろ!!」(ヨハネ)

と、理亜のことを応援していた。ただ、ルビィはというと、ルビィたちのために勝ちにいこうとしている理亜の姿にある種の不安を感じたためか、

(しまったかも!!ルビィ、珍しく怒ったから、理亜ちゃん、ルビィたちのために、昔の理亜ちゃんみたいに、RedSunに勝ちにいこうとしている、「勝つこと」を必死に目指そうとしている!!これじゃ、理亜ちゃん、昔の理亜ちゃんに戻ってしまうかも!!理亜ちゃん、スクールアイドルとして大事なこと、また忘れてしまうかも!!)

とつい思ってしまい、

「理亜ちゃん、それでも、スクールアイドルとして大切なこと、忘れないでね・・・」

となぜか理亜になにかを諭すような言葉を投げかけてしまった。そして、ルビィと同じくあつこも、

「スクールアイドルグループは戦いがすべてじゃないからね、理亜さん・・・」

と理亜がヒートアップしているのを抑えようとしていた。

 だが、このとき、聖良はあることにひっかかりを感じていた。それは・・・、

(でも、木松悪斗はスクールアイドルのことをかなり見下していたはずです。それなのに、Aqoursを倒すためにわざわざスクールアイドルグループを作るなんて・・・)

そう、木松悪斗はもとからスクールアイドルのことを見下していた。それなのに、今になって、そんな木松悪斗がわざわざAqours対策としてスクールアイドルグループを作るなんてちょっとおかしいことだと感じてしまっていたのだ、聖良は・・・。果たして、その真実はいかに・・・。

 

 一方、理亜たちの会議に参加していなかった花樹はというと・・・、自分の部屋で、

「RedSun、許すまじ!!Aqoursのことを「烏合の衆」なんて言うなんて・・・許せない!!絶対に打ち勝ってみせる!!」

とRedSunに対して恨みをもっているのかのごとく燃えていた・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第4話(3)

 その翌日・・・。

「花樹、あのRedSunをぼこぼこにする!!練習、きつくなる。それでもいい?」

と、機能のルビィたちとのオンライン会議でRedSunを倒そうと心に決めた理亜、そのためのきつい練習をすることを花樹に話すと、花樹、

(あのRedSunを倒してAqoursをバカにしたことを後悔させてやる!!)

と思ったのか、

「はい、理亜さん!!」

とこちらも闘志をメラメラ燃やしながらそれを承諾した。

 そんな2人を見つつもマネージャーであるあつこはあることを考えていた。それは・・・、

(たしかに今の理亜さんと花樹さんを見ていると、打倒、RedSun!!、のために燃えているのも、RedSunを打ち倒そうと頑張ってくれるのも感心できるものです。ただ、そんなことをしなくても今の理亜さんと花樹さんならRedSunを打ち倒すことができるでしょう。だって、RedSunはまだ作られたばかり、メンバー全員、まだスクールアイドル初心者なのですから・・・)

そう、あつこがみる限り、RedSunのメンバーは、全員、理亜みたいなスクールアイドルとしての体つきはしていなかった、つまり、あつこからすれば、スクールアイドル初心者、だとみていた。また、同じスクールアイドル初心者である花樹と見比べても、RedSunの3人より花樹の方が上、だとあつこはみていた。なので、なにかが起きない限り、理亜と花樹の方が勝つことが目にみえていた。さらに・・・、

(それに、RedSunの花樹さんはAqoursのことを「士気が低い、お遊び感覚でスクールアイドルをしている、弱者」と言っていましたが、Aqoursほどスクールアイドルに真摯に向き合っているグループは理亜さんたち以外にいないと思っています。それこそRedSunのウイークポイント(弱点)かもしれません・・・)

とあつこは思ってしまう。Aqoursはこれまで

 

「スクールアイドルを楽しむ⇔スクールアイドルのことが好きになる」

 

その無限のサイクルによって力をつけてきた。まぁ、楽しむことを「お遊び」とみてしまう方が多いかもしれないが、それはさておき、その無限のサイクルによりAqoursはラブライブ!で優勝するくらいの実力を持つまでになったのだ。いや、Aqoursは日本のどのスクールアイドルグループのなかでもスクールアイドルという部活の士気が一番高いともいえた。それなのに、自分の価値観だけでAqoursのことを弱者呼ばわりする桜花のその考えこそRedSunのウイークポイント(弱点)ではないかとあつこは考えたのだ。

 だが、理亜と花樹のユニットの優位性を認めたあつこであるがそんな2人にある心配をあつこはしていた。それは・・・、

(でも、理亜さんと花樹さん、スクールアイドルにとって一番大切なことを忘れている気がします、「スクールアイドルは楽しむことがすべて」であることを・・・)

そう、このとき、理亜と花樹は、Aqoursのことを見下していたRedSunの打倒、勝つことを優先していおり、スクールアイドルにとって一番大切なことを忘れていたのだ、「スクールアイドルは楽しむことがすべて」であることを・・・。

 

 とはいえ、この1週間、理亜と花樹はRedSun打倒のために一生懸命練習をした。まだ初心者である花樹ではあったが、自分が尊敬しているAqoursのことをRedSunの桜花が見下しているが嫌だったのだろう、積極的に理亜に合わせようとしていた。理亜もそんな花樹の頑張りに応えたのか、花樹と共に2人の息をぴったりと合わせようとしていた。今、2人は、Aqoursのことを見下したRedSun打倒、という共通の目的に向かって一緒に進む同士になっていた。その共通の目的に向かってがらむしゃに頑張る2人。それは鬼気迫るものを感じさせるものだった。

 だが、あつこの言う通り、スクールアイドルとしてとても大切なことを忘れている、そのものを感じさせるものでもあった・・・。

 

 そして、ついに、理亜・花樹のユニットとRedSunの戦いの日がきてしまった・・・。花樹は起きるなり、

(絶対にAqoursのことをバカにしたRedSunを倒してやる!!そして、俺と理亜さんの力をRedSunに見せつけてやる!!)

という思いでいっぱいのなか、出かける準備をしていた。

 そんな花樹にある男が話しかける。

「おい、花樹、今からどこに行くつもりだ!!」

この男の声に、花樹、

「あっ、今から部活!!にっくき相手を打ち倒しにいく!!」

となぜか男口調で話す。

 だが、その瞬間、その男は花樹に対し、

バチンッ

と平手打ちをかました。そのため、たじろく花樹。その花樹は、

「お、お父様、どうして・・・」

と、その男こと自分の父親に対し平手打ちされた理由を尋ねた。そう、花樹は自分の父親から平手打ちををくらったのである。

 そんな花樹の言葉に、花樹の父、怒りながらこう答えた。

「花樹、なんども言っているのにわからないのか!!男口調ではなく、女口調、で話せ!!いいか、お前は女なんだ!!少しは女らしくしていろ!!」

この父親の発言、まさに昭和以前の考え、ともいえた。だが、花樹の父親からすれば、それこそ当たり前、だったのかもしれない。今どきの考えなんて気にせずに自分の娘に向かって自分の考えを強要してきたというのだ。いや、今の父親の態度は「かみなり親父」なのかもしれない。

 ただ、今の父の怒りに、花樹、

(このままじゃ、お父様の機嫌がさらに悪くなるばかり・・・。ここは・・・)

と思ったのか、

「はい、すいません、お父様・・・」

としおらしくなっては自分の父親に従順になってしまう。むろん、これには、花樹の父親、

「ふんっ!!俺の言うことをさっさと聞いておけばいいのだ!!」

と花樹のことを見下すような発言をしてしまう。ただ、しおらしくなった花樹からすればここで反抗すれば父親の逆鱗に触れてしまうことを知っているのか、ここはただ黙るしかなかった・・・。

 そんな従順な花樹に対し、花樹の父親、こんなことを言ってしまう。

「ところで、花樹、少しは私の仕事の手伝いをしろ!!お前も、少し、あの方のために働け!!」

この父親の発言に、花樹、

「オ・・・、花樹は、今、部活に忙しい・・・のです、ごめんなさい・・・」

と自分の父親に謝ってしまう。

 だが、花樹の父親はそんな花樹に対しこんなことを言いだしてしまった。

「おい、お前、いいか、子どもは親の言うことを素直に聞くものなのだ。いいな!!」

今となっては完全なるパワハラのようにみえる。だが、花樹の父親からすればそれも当たり前、だったのかもしれない。自分の子どもである花樹に対し自分の父親の言うことを素直に従うように強要してきたのだ。

 ただ、これには、花樹、

「お父様の新しい仕事って・・・、たしか・・・、あるディスカウントショップの社長・・・でしたね・・・」

と自分の父親の新しい仕事のことを言う。そう、花樹の父親の新しい仕事先というのが函館にあるディスカウントショップの社長だったのである。そんな花樹の言葉に花樹の父親は、

「そうだ!!あの方のおかげで私は、新天地、ここ函館のディスカウントショップの社長になったのだ!!ここにその方のための新しい活動拠点を整備するためのな!!」

と声高々に話していた。花樹の父親からすれば、その方のために自分は新天地の函館に来た、そう言いたいようだ。

 だが、そんな父親を無視してか、花樹、その父親に対し、

「お父様、申し訳ございませんが、今日は負けられない戦いがあるのです・・・。なので、部活に行かさせていただきます・・・」

と言っては家から出て行ってしまった・・・。

 そんな花樹の対応に、花樹の父親、

「ふんっ、花樹、少しは私の言うことを第一に聞くべきなのだ!!それをいつかは覚えさせてやる!!」

と怒りながらもふんぞり返ってしまった・・・。

 ただ、今は花樹のことより新しい仕事・・・なのか、花樹の父親、

「まぁ、花樹のことは後回しにするか・・・」

と花樹のことを後回しにしては、

「それよりも、まずはディスカウントショップの経営を軌道にのせないとな・・・

と、まずは新しい仕事を優先しようとしていた。

 だが、このとき、つい、花樹の父親の本音というべき言葉が花樹の父親から出てしまった・・・。

「そして、ゆくゆくは、函館の・・・経済を・・・、あの方のものに・・・しないといけないからな・・・。そう、あの方のために・・・、木松悪斗様のために・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第4話(4)

 ついにこのときがきてしまった・・・。理亜・花樹組VS桜花たちRedSunの戦いのときが・・・。舞台は函館港に浮かぶ旧青函連絡船でありその記念船として函館の港の象徴として係留されている船、摩周丸、その航海甲板であった。この日は五月晴れということで、青天のなかで行われる戦いとなった。その航海甲板に設置された仮設ステージのまえには沢山の観客たちが来ていた。その観客たちの多くが、

「ねぇ、スクールアイドルのステージですてぇ~。なんか、楽しみ!!」

「久しぶりにスクールアイドルのステージが見られるから楽しみだよ~」

と、スクールアイドル見たさに集まってくれたようだ。函館は北国北海道の港町である。そのため、つい最近まで雪が降っていたので野外でアイドルなどのステージを見るのは本当に久しぶりだったのだ。そのため、多くの観客たちがここに集まった、というわけである。

 だが、そんな観客たちとは対照的に、このステージにあがるグループの1つ、理亜・花樹組は闘志を燃やしていた。

「理亜さん、もう我慢できません!!これ以上、AqoursのことをバカにできなくなるようにけちょんけちょんにRedSunを倒しましょう!!」

と花樹が言うと理亜も、

「あぁ、花樹の言う通り!!ルビィたちのこと、もうバカにはさせない!!絶対に、地の底まで、RedSunを、落としてやる!!」

と、「打倒、RedSun!!」ということで燃えていた。ただ、2人のマネージャーであるあつこはというと・・・、

「なんか2人ともスクールアイドルにとってとても大事なことを忘れている気がします。そのことを忘れないでくださいね・・・」

という声を理亜と花樹に言うも、2人とも、

「今は、RedSunを打ち倒す、それしかない!!」(花樹)

「Aqoursのことを見下す態度、絶対に許せない!!絶対に倒す!!」(理亜)

とあつこの言うことを聞いてくれなかった。そのためか、ちょうど理亜のスクールアイドルとしての再スタートの場となるこのステージを見に、理亜・花樹の楽屋を訪れていた聖良に対し、あつこ、

「聖良さん、このままだと、理亜さん、花樹さん、とても大切なこと、忘れてしまいます・・・。どうしたらいいでしょうか・・・」

と嘆きの声を出しては聖良に近寄ると、聖良、

「たしかにこのままだとあつこの言う通りになってしまうかもしれません・・・」

と心配しつつも、

「それでも理亜なら大丈夫でしょう」

と逆に理亜のことを信じきってしまっていた。むろん、これには、あつこ、

「聖良さん~~~」

と嘆きに近い声をあげてしまった・・・。

 

 そして・・・、

「それでは、今日歌を披露してくれる2組に出てもらいましょう!!まずは、ここ函館が誇るスクールアイドル、聖女スクールアイドル部、鹿角理亜・猪波花樹組!!」

ウォー

という観客たちからの声援に応えてか、

「みんな、声援、ありがとう!!」

と、初めてのステージにも関わらず堂々とした態度で観客たちからの声援に応える花樹、そして・・・、

「私、頑張る・・・、だから・・・、みんな・・・、応援して・・・」

と、人見知りながらも少しでも観客たちのために、Aqoursのために頑張ろうとしている理亜の姿があった。この2人の姿はまるでもうこの戦いの勝者であることをみんなに知らしめようとしている、そんな感じがしていた。そんな2人が思っていることはただ1つ、

((打倒、RedSun!!))

という、とにかく、ルビィたちAqoursのことを見下している、そんな桜花率いるRedSunを打ち倒す、そのことだけだった。

 そして、もう一組の紹介に入る。

「そして、もう一組は・・・、沼津から来ました、静真のスクールアイドルグループ、RedSun!!」

だが、ステージに出てきたRedSunの3人はというと・・・、

「こ、これが、ステージなの・・・。な、なんか逃げ出したい・・・」(梅歌)

「う、うん、梅歌の言う通り・・・」(松華)

とあまりの観客の多さにたじろいてしまう2人、さらには・・・、

「ふ、ふん・・・、だ・・・、大丈夫・・・。わ、私が・・・、登場した・・・から・・・、かっ、勝ったのも・・・同然・・・」

となぜか足をブルブル震わせながらも無理やり強がっている桜花の姿があった。

 この3人の姿を見て、あつこ、あることを悟った。

(あぁ、こりゃもう決まったね・・・、この勝負・・・)

 そして、あつこは理亜と花樹の2人を見てこう声援を心のなかから送った。

(でも、これが2人としての初めてのステージ!!だからこそ、今出せる全力のパフォーマンスをしてください!!初めてのステージ、2人ともはじけてください!!)

と、同時に、このこともあつこは心のなかで2人に念押しした。

(そして、忘れないでください、スクールアイドルにとってとても大事なことを・・・)

 

 そして、ついに戦いの火ぶたが切って落とされた。先行は静真スクールアイドル部、RedSun、なのだが・・・、

(あれっ、「Aqoursに勝った」「Aqoursは烏合の衆」、って言っていたはずなのに、オ・・・、花樹と同じく初めてステージに立つ、そんな感じがする・・・)

と花樹が思うくらい・・・、いや・・・、

「うぅ、あまり体が動かないよ・・・。いくら才能があっても肩の力を抜いて・・・なんてできないよ・・・」(梅歌)

「梅歌と同じく・・・、ほ、本当なら、こんなステージ、大丈夫・・・、なのに・・・、多くの人たちから見られると・・・、私・・・、足がすくんでしまう・・・」(松華)

とRedSunのメンバー2人から弱音ともとれる発言がでてしまう。それくらい、このステージにに立ってから梅歌と松華は緊張しっぱなしであった。

 一方、RedSunのリーダーである桜花はというと・・・、

「2人ともしっかりしなさい!!ここからRedSunの輝かしいみ・・・未来が・・・始まる・・・のです・・・。だからこそ・・・、しっ・・・、しっかりしな・・・しなさい・・・」

と空元気からなのか、それとも、あまりの緊張のせいなのか、桜花が発している言葉にキレがなかった。

 だが、時間は待ってはくれない。ついに曲が流れ始める・・・のだが、3人とも自分の決まったポジションにつけず・・・、

「え~と、ここじゃなくて・・・」(梅歌)

「そこっ、私のポジション!!」(松華)

「2人ともしっかりして!!」(桜花)

となにをやっているのかわからなくなってしまう。

 ただ、もう曲が始まっている・・・ということで、3人はこのままの状態で歌い始めるしかなかった・・・。

 

 

第4話挿入歌 「Red Sun」

 

太陽のように熱く燃え上がれ!!

 

熱く熱く  燃え上がっている

みんなを  照らしている

それくらい 熱いやつら

それが   俺たち

Red Sun Red Sun

 

俺たちの   心のなかは

いつもいつも 燃えている

だからだから 俺たち3人

どんどん   熱く厚く

たぎって   熱くしてやる!!

 

 

 だが、

(「Aqoursに(戦略的に)勝った」と大口を言った割にはスクールアイドルとしての基礎が出来ていない・・・。いや、むしろ、私と姉さま(聖良)がルビィたちと初めて会った(昨年度のラブライブ!夏季大会前に行われた東京のスクールアイドルイベントの)ときのルビィたちの方が上だと思う・・・。そう考えるとこの娘たちと張り合うこと自体無駄に感じてしまう・・・)

と理亜が頭を抱えるほどひどい・・・、いや、初心者マークをつけていてもおかしくない、そんなパフォーマンスをRedSunはみせていた。まぁ、たしかに、桜花たち3人はスクールアイドルの練習はしていた、そう思えるくらいのことは出来ていた。だが、それ以上のものがなかった・・・。ただ、「スクールアイドルの練習をしています」、といった感じのものだった。そのためだろう、3人を見ている観客たちからは雑談めいたものが次第に聞こえてきり、あくびをする者も出てきたりした。それらはRedSunの3人に対して関心が持てない、その証拠となってしまった・・・。

 だが、それでも、3人は、自分なりの頑張りでこの曲をやり遂げようとしていた・・・。

 

 

Red Sun  俺たちは

太陽の   化身だぜ!!

Red Sun   俺たちの

燃える炎  燃やし燃やして

ここにいる 全員

心のなか  あつくしてやる!!

 

俺たちが すべてをすべて 溶かしてやる!!

 

 

 そして、RedSunの曲が終わった・・・、その瞬間、

「ど・・・、どうよ!!私たちにひざまつけ!!」

と桜花がかっこよく決めるも観客たちからの拍手はまばら・・・。これには、梅歌、

「うぅ、やっぱりだよね・・・、私たちの子供じみたパフォーマンスじゃ・・・」

と泣きそうになるし、松華も、

「もう少し練習すべきでした・・・」

と反省の弁を言ってしまう。むろん、これには、桜花、

「2人ともしゃっきりしなさい!!私たちの圧倒的なパフォーマンスで・・・」

と力強く言うも、その桜花も・・・、

「だ、大丈夫・・・。あ、あちらも・・・、初めてのステージ・・・だと・・・思う・・・」

と覇気のない声を出してしまった・・・。

 

 そして、ついに、理亜・花樹組のステージが始まる。理亜はこのとき、

(RedSunのパフォーマンスは初心者じみたもの・・・。それでも、私たちは、絶対に、ものすごいパフォーマンスをする!!そして、ここに来ている人たちに、私たちのすごさ、知らしめてやる!!RedSunよ、Aqoursのこと、ルビィたちのことを、バカにしたこと、後悔させてやる!!)

と燃えていた。いや、理亜だけじゃない。花樹ですら、

(RedSun、Aqoursのことをバカにしているのにあまりの下手さ加減に、オ・・・、花樹、呆れてものがいえない・・・、いえません・・・。ならば、オ・・・、花樹と理亜さんの2人の力を十分にRedSunに見せてやる・・・あげます!!ぐうの音もでないくらいなものをみせてやる・・・みせてあげます!!)

と勢い込んでいた。

 そして、理亜と花樹はそれぞれのポジションに着くなり、

「花樹、初めてのステージだけど、全力で、行ける?」(理亜)

「理亜さん、はい、行けます!!花樹と理亜さんの全力のパフォーマンス、あのRedSunにみせつけてやる・・・、みせつけましょう!!」

と互いに声を掛け合いながらそれぞれの士気を高めあっていた。

 そして、曲が始まるなり・・・、

(これが、今、私の出せる全力!!姉さま、そして、あつこ、見ていてください、私の全力を・・・、そして、RedSun、後悔しなさい、ルビィたちAqoursのことをバカにしたことを・・・)(理亜)

(オ・・・、花樹にとってAqoursは尊いべき存在!!だからこそ、RedSun、そのAqoursを見下すような発言をしたこと、許せない!!同じ初心者でも力の差を見せつけてやる!!)(花樹)

と、2人とも最初から燃えに燃えていた。そのためか、2人は最初から圧倒的な力を観客たちに向かって、いや、それどころか、RedSunの3人に向かって見せつけていた。

 

 

第4話挿入歌 「START AGAIN・・・」

 

ここから始まる・・・再び・・・

 

一度はくじけた この想い

だけど僕らは  戻ってきた

もう一度同じ  スタートライン

そこから僕ら  走り始める

 

 

 曲の途中なのに最初から全力全開の2人。その迫力にRedSunの3人からは、

「こ、これが・・・、全力全開のスクールアイドル・・・。うぅ、そう考えると、私、自信を失ってしまいます・・・」(梅歌)

「梅歌、しっかりして・・・、って言いたいけど・・・、私もあの2人のパフォーマンスを見たら、私たち、素人じみたものだと感じて自信を失いそうです・・・」(松華)

「2人ともしっかりして!!こ、ここで音をあげるなんて・・・、お、お父様が許さない・・・のだから・・・、だ、だからこそ・・・、ここで・・・踏ん張らないと・・・」(桜花)

と少しでも空元気をふかせようとする桜花を含めてスクールアイドルとしての自信を失いかけようとしていた・・・。

 

 

(R:あのとき もう2度と)

戻ってこない そう思っていた

(R:だけど 僕らは)

僕らの意思で 戻ってきた

(R:どんなことが あっても)

もう諦めない 前に進む

(R:だからみんな 見てくれ!!)

僕たちの僕たちの これからの未来

 

 

 一方、ステージ袖にいたあつこと聖良からは・・・、

(最初から全力全開のステージをみせるなんて、理亜さん、花樹さん、らしいといったららしいですね・・・。でも、これって、心の底からスクールアイドルを楽しんでいる、といえるのでしょうか・・・。ただ、友のかたき、といった具合に相手への憎しみで歌っていないでしょうか・・・)(あつこ)

(2人として初めてのステージとしては完璧に近いもの・・・なのですが・・・、なんか、あの2人、スクールアイドルとしてとても大事なものを見失っている、そんな感じがしてきます・・・)(聖良)

と、今、パフォーマンスをうぃている理亜と花樹の2人を見て、2人らしいステージ、完璧なステージ、だと評するもスクールアイドルとしてとても大事なものを見失っている、そんなものを感じていた・・・。

 

 

僕らはふたたび   スタートする

一度は諦めた    夢に向かって

一度は失った    光をやどし

今度こそ叶える   そのために

僕たちはふたたび  前へと進むんだ

 

 

 そして、ついに2人のパフォーマンスが終わった・・・。

(もう立つことなんて無理・・・、それくらい全力でやり切った・・・、そんな感じがする・・・します・・・。もう・・・、オ・・・、花樹・・・、完全燃焼・・・)

と、花樹、ちょっと倒れこみそうになるも、

「花樹、しっかり!!」

と、理亜に体を支えてもらったのか、あと少しのところで花樹は踏みとどまることができた。これには、花樹、

「オ・・・、花樹、やり切ることができました・・・。もうばっちりです・・・よね・・・」

と理亜に言うと理亜も、

「あぁ、私たち、ルビィたちのかたきをついに打ち取った・・・と思う・・・」

とこの戦いの勝利を確信した・・・。

 

 そして、ついに結果発表・・・。

「勝者は・・・、聖女スクールアイドル部、理亜・花樹組!!」

圧倒的な差で理亜・花樹組が勝ってしまった・・・、というか、初心者じみたパフォーマンスを見せたRedSunに対して圧倒的なパフォーマンスを見せつけた理亜・花樹組・・・、こうなってしまうと理亜・花樹組が勝つのは目にみえていた・・・。

 そんな敗者であるRedSunのリーダー、桜花はというと・・・、

「噓でしょ・・・。なんで負けたんだ・・・。勝つ自信はあった・・・。だって・・・、私たちなりに練習してきた・・・、相手にも初心者はいた・・・。なのに・・・、なんで・・・、なんで・・・、なんで・・・、敗れたんだ・・・」

と悔し涙を流していた・・・。

 そんな桜花に理亜が近づくと、理亜は泣いている桜花に対しこんなことを言いだしてきた。

「木松桜花、あなたもスクールアイドルの練習をしてきたと思うけど、私は、いや、私たちは、いや、ルビィたちAqoursを含めて、あなたたち以上の練習をしてきた!!そのことすら知らずに、ただ、「自分こそ勝者なんだ」、と高をくくっていたなら、その考えは捨てるべき!!あなたが思っているくらいスクールアイドルは甘くはないのだから!!」

この理亜の言葉はこれまでスクールアイドルのことを甘く考えていた、ただ、策略によってルビィたちAqoursに勝った、そう思っていた桜花にとってとてもきついものだったのだろう、そのためか、桜花、理亜に対し、

「そんなもの、関係ない!!私は私なりに頑張ってきたんだ!!そんなことを知らずにこの私に文句を言うな!!」

と反抗するも理亜からは、

「桜花、それは単なる自己満足でしかない!!私も、ルビィも、みんな、あなた以上に頑張ってきたんだ!!それを知らずにただたんに「勝てる」なんて思わないで!!」

と桜花を一喝してしまった・・・。

 そして、とどめとばかりに、理亜、桜花に対し、怒りに満ちた言葉を言い放った。

「桜花、いくら、父親である木松悪斗のためにRedSunを作ったとはいえ、これ以上、ルビィたちを・・・、Aqoursのことを・・・、バカにしないで!!その言葉を今すぐ訂正しろ!!」

理亜にとって、桜花の、自分の第1の盟友であるルビィたちAqoursを侮辱した言葉、それは理亜の逆鱗に十分触れるものだった。そのため、その言葉を訂正しなければ理亜の怒りは収まらなかったのだ。

 だが、桜花は意外な言葉を言い放つ。

「別に親父のためにRedSunを作ったわけでもここに来たわけじゃない!!これは私が親父から認めてもらうためにRedSunを作って自分たちの手でここまでやってきたことなんだ!!それなのに・・・、それなのに・・・、私にいろいろと指図するな!!軽蔑するな!!」

 この桜花の言葉に、理亜、

(えっ、別に木松悪斗の差し金・・・じゃなくて、自分自身のためにここまでやってきたわけ・・・。うそ・・・)

と唖然となってしまった。桜花の場合、自分の父親である木松悪斗のためにRedSunを作っては動いていた・・・わけではなく、自分の父親に認められたいためにRedSunを作って動いていた・・・となれば、Aqoursを貶めたい木松悪斗の考えにそぐわなくなってしまう、いや、自分の娘の行動に木松悪斗がただのっかっている・・・、としか言えなくもなくなってしまう、そのこと理亜は一瞬のうちに悟ったのだろう、理亜の動きが一瞬止まってしまった。

 そんな理亜の一瞬の隙を桜花は見逃さなかった。すぐに、桜花、梅歌と松華に対し、

「梅歌、松華、今すぐ、この場から立ち去ります!!今一度、静真で力を蓄えることが一番です!!戦略的撤退です!!」

と言っては一目散にこの場から立ち去ってしまった・・・。もちろん、梅歌、松華、ともに、

「ちょっと・・・、桜花ちゃん~~~、待ってよ~~~!!」(梅歌)

「あぁ、もう~。それでは、理亜さん、花樹さん、2人ともさよならです。また、どこかでお会いしましょう。って、2人とも、待って~!!」(松華)

と逃げる桜花を追ってその場から走りさってしまった・・・。これには、理亜、

「・・・」

と無言になるもすぐに、

「あぁ、これでルビィたちAqoursのかたきを打つことができた!!あとはルビィたちの出番だと思うけど、それでも、久しぶりのステージ、花樹と一緒にできて本当によかった!!花樹、私を再びスクールアイドルのステージに立たせてくれて本当にありがとう!!」

と、このステージに一緒に立った花樹に対しお礼を言うと花樹も、

「オ・・・、花樹も・・・、理亜さんと一緒にスクールアイドルとして初めてのステージに立つことができたこと、そして、燃えるパフォーマンスをみんなの前で見せることができたこと、本当に嬉しい限りです!!理亜さん、本当にありがとうございました!!」

と理亜にお礼を言った。

 そして、花樹は自分の首にぶら下げている十字架の形をしたペンダントを持ってこう思った。

(おばあちゃん、オ・・・、花樹、初めての戦い、勝ったよ!!オ・・・、花樹、これからは理亜さんと一緒にスクールアイドルとしての戦い、勝ち続けるからね!!そして、その勢いのままに、ラブライブ!優勝、するからね!!だから、見ていて、おばあちゃん・・・)

このときの花樹は天を見上げながらそうつぶやいているようだった・・・。

 だが、このとき、あつこと聖良はあることを危惧していた。それは・・・、

(なんか今の花樹さんを見ていると・・・、昔の理亜さんと似ている気がします・・・。ただ勝つことだけを目指している・・・、そんな昔の理亜さんと似ているような気がします・・・。果たしてそれでいいのでしょうか・・・)(あつこ)

(このままいくと、理亜、花樹さんのコンビ、いつかは絶対にほころびが出てしまうと思ってしまいます、それは、理亜・・・ではなく、花樹さんに・・・。今の花樹さん、まるで1年前の理亜、「勝つことこそすべて」、その幻想に縛られた昔の理亜にそっくりです・・・。でも、私はスクールアイドルを卒業した身・・・。花樹さんにはなにも言えません・・・。理亜、お願いです、花樹さんをうまく導いてください・・・)(聖良)

そう、今の花樹は昔の理亜に・・・、「勝つことこそすべて」という幻想に縛られた、そんな1年前の理亜にそっくり、だというのだ。ただ、1年前の理亜は、その後、大きなミスにより自滅、心のなかに深淵なる闇を抱えることになった、そのことを知っている聖良とあつこからすれば、スクールアイドルを初めて間もない花樹がそうなってしまうのではないか、と、心配してしまったのである。

 

 とはいえ、理亜と花樹は静真でルビィたちAqoursを苦しめている桜花たちRedSunに対して大ダメージを与えることができた。ただ、それはこのあとに起こる大きな事件の前ぶれの1つでしかなかった・・・。果たして、このあと、理亜と花樹の身になにが起こるのだろうか。そして、この話のところどころに出てきた木松悪斗、それがこのあとの物語にどんな影響を与えることになるのだろうか、それについてはあとで語ることにしよう。

 

To be contuned

 

Next story is

 

Twins said 「We enjoy School Idol !!」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(1)

「私、理亜。花樹とマネージャーのあつこと一緒に改めてスクールアイドルとしてスタートした矢先、「ルビィたちAqoursを打ち倒した」というRedSunが突然来襲してきた。だが、あつこがいうにはRedSunの3人はスクールアイドル初心者だと言う。だけど、RedSunのリーダーである木松桜花(きまつ はな)は私たちに挑戦状をたたきつけてきた。その日の夜、私はルビィたちに連絡、そこでルビィたちAqoursが学校のスポンサーである木松悪斗から嫌がらせを受けていることを聞く。私、それを聞いてルビィたちのかたきをとることを決めた。一方、花樹もAqoursのかたきをとりたかったらしく、私と花樹は燃えて連数に励んだ。そして、1週間後、私たちとRedSunの対決の日、案の定、RedSunの3人は初心者じみたパフォーマンスをしてしまった。それに対し、私たちは完璧なパフォーマンスをみせた結果、RedSunに圧勝した。喜ぶ私たち。しかし、あつこだけは私たちのことを危惧していた・・・。

 

ピピピピ

朝5時、部屋に鳴り響く目覚ましの音。その音を聞いてある少女が起きた。

「うぅ、姉さま・・・」

と寝ぼけた状態で背伸びをするとその少女は練習着に着替えた。その少女の名は鹿角理亜。理亜は日課である早朝トレーニングをするために玄関へと向かう。その途中、

「あっ、理亜、今から早朝トレーニングですか?」

とある女性に声をかけられた。その声に、理亜、元気よく答える。

「あっ、姉さま、おはようございます。姉さまの言う通り、今から日課の早朝トレーニングにいくつもりです」

そう、理亜に声をかけてきたのは、理亜の姉、聖良、だった。前回伝えた通り、聖良は聖女の系列校である大学へと進学していた。その大学は聖女の隣にあるため、聖良は今も妹の理亜がいる実家から大学へと通っていた。そう、理亜と聖良は今でも一緒に暮らしていたのである。一方、理亜の盟友であるルビィの姉、ダイヤ、は東京の大学へと進学したため、今年の春からはルビィ・ダイヤ姉妹の実家がある沼津を出て東京で1人暮らしを始めた。理亜とルビィ、姉妹、という共通項があるのだが、理亜は今でも聖良と一緒に暮らしている、一方、ルビィはダイヤと離れて暮らしている、そんな違いがあったりする。でも、その違いによって、理亜とルビィ、2人の心境にはある変化が生まれていたかもしれない。まず、ルビィにおいては東京から沼津まで普通電車で2時間半で行けるとはいえ、東京と沼津、かなり?離れてて(ルビィ談)生活しているため、ルビィ、おいそれとダイヤを頼ることができない。そのため、ルビィはダイヤが東京に行ってからは出来る限り自分でなんとかしようと頑張っていた。まぁ、あのイタリア旅行でAqoursという輝き、宝物を通じてずっと姉のダイヤとつながっていることに気づいたのも一因なのですがね・・・。では、理亜はどうなのか。理亜もあのラブライブ!延長戦で姉の聖良とSaint Snowという輝き、宝物を通じてずっとつながっている(もちろん、あつこともね!!)、そのことに気づいたが、ルビィと違い、今も一緒に暮らしている、そんなこともあり、心の奥底では、理亜、

(姉さまが聖女を卒業して大学に進学したけど、今も姉さまと一緒に暮らしている。それを考えると、私、(なにかあればすぐに姉に頼ることができるから、)なんか安心できる・・・)

と、なにかあればすぐにでも姉さま(聖良)に頼ることができる、そんな安心感、いや、姉の聖良に依存している、そんなものが見え隠れしていた、理亜自身気づいていないのだが・・・。ただ、そんな安心感からなのか、今の理亜は心安らぐものがあった。

 そんな理亜に、聖良、

「あまり無理をしないでくださいね」

と言うと、理亜、

「姉さま、わかっている!!心配しないで!!」

と元気よく返事するとともに、

「それでは行ってきます」

と言っては早朝トレーニングをしに外へと出かけていった。

 そんな理亜を見つつ、聖良、あることをつぶやく。

「私がここ(実家)にいるせいか、理亜、心のどこかで、昔みたいに、私に依存したい、そう思っていませんでしょうか。私の取り越し苦労ならいいのですが・・・」

そう、このとき、今も自分が妹の理亜と一緒に暮らしていることで昔みたいに理亜が自分に依存してしまうのではないか、そんな一抹の不安を感じていた・・・。

 

そして・・・。

 

ピピピピ

部屋に鳴り響く目覚ましの音。その音を聞いてある少女が起きた。そして・・・、

ガシッ

という目覚ましを止める音とともに、

「う~ん、よく寝た~」

と背伸びをしながらその少女は声をあげた。その少女の名は猪波花樹。聖女の1年生である。その花樹は聖女の制服を取り出すと、

「うぅ、今日も最高の1日が始まる!!」

と大声を上げるとともに、

(今日もスクールアイドルの練習が始まる・・・のです・・・。あの日・・・、RedSunに勝ってAqoursのかたきをとった日、その日から、オ・・・、花樹は「ここから、オ・・・、花樹のビクトリーロードが始まる」、そう思って今日まで頑張った・・・、頑張ったのです。あの日の勢いのままに、ラブライブ!地方予選、最終予選、そして、決勝まで勝ち進み、おばあちゃんと約束した、ラブライブ!優勝、それを叶えてみせる・・・、ます・・・。さぁ、みんなに勝つためにも今日も頑張る・・・のです・・・)

と、自分の思いを自分の心のなかで爆発させていた・・・。あの日、1か月前・・・、GWのときに行われたRedSunとの戦い、そこで初心者じみたパフォーマンスをみせたRedSunに対し完璧なパフォーマンスをみせる理亜・花樹組。もちろん、理亜・花樹組の圧勝であった。花樹はそこで勝利の美酒を覚えたのか、「みんなに勝つこと」を目指して、いや、「絶対に勝つ」という思いとともに、この一か月、理亜と共にきつい練習に耐えていた。いや、自ら進んで行っていた。花樹にとって今は「勝つこと」にのみ執着しようとしていた。なぜなら、自分とおばあちゃんとの夢、「ラブライブ!優勝」を叶えるため、これから始まるラブライブ!夏季大会、地方予選、最終予選、そして、決勝、すべてにおいて勝ち続けないといけない、そう花樹が思っているから。「ラブライブ!で優勝する」、それは絶対に叶えないといけない夢だと花樹は認識していた。その夢のためにきつい練習、と思えば花樹にはその練習は苦でもなかった。いや、花樹の隣にはあのAqoursと互角の勝負を(ラブライブ!決勝戦で)したSaint Snowの理亜がいる、その理亜がいれば百人力、そう花樹は思っていた。

 だが、このときの花樹は知らなかった・・・。花樹のいる北海道にはあの双子がいることを・・・、そして・・・、聖女のなかでもある問題が起きていることも・・・。

 

(OP 1番のみ)

 

第5話 Twins said 「We enjoy School Idol!!」

 

「それでは言ってきま~す!!」

花樹は大声でそう言うと限界から外に出ようとしていた・・・、そのときだった。突然、

「花樹、ちょっと待ちなさい!!」

というドスがきいた声が聞こえてきた。これには、花樹、

「お・・・、お父様・・・」

と、先ほどの元気いっぱいの大声から一転、しおらしい声をあげてしまう。どうやら、花樹、自分の父親に呼び止められたみたいだ。

 と、ここで、花樹の父親、しおらしい声とともにまるでか弱い少女みたいにしおらしくなった花樹に対しある言葉を投げかける。

「花樹、お前、いくら言ったらわかるんだ!!少しは女らしくしろ!!大声を出すなんてはしたない!!お前は女なのだ!!女らしく慎ましくしていろ!!」

まるで前近代的な考え方・・・。今は男女平等の世の中であるが花樹の父親からすれば前近代的・・・、男尊女卑の考えが当たり前にみえるのかもしれない、それを花樹の父親は自分の娘である花樹に押し付けているのだ。ただ、花樹がいくら反抗しても花樹の家庭は父親の影響力が強いせいか、家長である父が一番上、ということもあり、父親から言い返されるのがオチ・・・、ということで、花樹、

「はい・・・、お父様・・・」

と従順そうな対応をとってしまった・・・。

 だが、そんな花樹に対し、花樹の父親、自分の考えを押し付ける。

「言っておくが、女というのはいつも男の言うことを聞くものだ!!私はお前をその通りに育てようとしたがおばあさまのせいでそれができなかった。だから、今、私はお前を私の考えに即した娘に育てようとしているのだ。花樹、いいか、私の言う通り、一人前の女として男の言うことを・・・、いや、まずは私の言うことを必ずしろ!!そして、どんなときでも男のために動くのだ!!女は男の所有物なのだ!!本当なら女に学というものを与えなくてもいいのだが、今は女も高校を出ないと世間体に悪から今はお前を高校に通わせているのだ!!いいか、花樹、お前は名門ある女子高に通っている、そこで女としての(男に尽くすための)価値を磨け!!そして、男を立派に立てるような女になれ!!」

これには、花樹、

「はい・・・、わかりました・・・」

と小さな声で返事をした。

 そして、花樹は自分の父親に対し、

「それでは、お父様・・・、オ・・・、花樹は学校に行ってきます・・・」

というしおらしい声とともに外へと出ていった・・・。そんな花樹に対し花樹の父親は、

「いいか、私の言うことを必ず聞くんだぞ!!」

と花樹を叱りつけるような声をあげていた・・・。

 

 その後、花樹の父親は玄関の外に出ると、

「うぅ、函館の風は冷たいの・・・」

という声とともにポストに入っている新聞を取り出した。花樹の家は戦前から受け継がれた函館らしい建物であった。それは・・・、上下和洋折衷住宅であった。上下和洋折衷住宅とは、1階が和風、2階が洋風、といった外観が特徴的な建築物・・・、住宅であり、昔から開かれた港町であった函館らしい建物であった。そんな住宅が函館市内に数多く残っており、花樹の家も花樹の父親が大金をはたいてつい最近買い取った住宅であった。

 そんな花樹の家の前でいつもの通り新聞を開く花樹の父親。その開いた新聞を読んで、花樹の父親、にやりと笑うとこんなことを言いだしてきた。

「ほう、ついにあの店も潰れたのか・・・」

その花樹の父親が読んでいた新聞の記事、それは・・・、

「函館で一番有名だった呉服店がついに閉店」

だった。

 そして、新聞を閉じるなり、花樹の父親、こんなことを言った。

「ふう、あの呉服店を潰すために(私が経営するディスカウントショップで)着物の大バーゲンセールをしたのが効いたようだな・・・。これもあの方がこの新天地である函館に降臨するための下準備の1つでしかない。だが、その下準備が終わればあの方がつい来る。そうすれば函館はあの方の天下だ!!そのためにも頑張らないとな・・・、あの方、木松悪斗様のためにもな・・・」

 

「おはようございます!!」

花樹は近くにいるクラスメイトに挨拶をするとそのクラスメイトが、

「おはよう、花樹」

と返事をすると続けて、

「花樹、スクールアイドルの練習はどう?」

と花樹に尋ねてきた。

 すると、花樹、すぐに、

「うん、今、すごく充実している!!」

と元気よく答えるとともに、

「もう、このままいけばラブライブ!優勝も目じゃないよ!!」

と断言すらしていた・・・。

 そんなときだった。突然泣き出す生徒が現れた。その生徒は泣きながらこんなことを言いだしてきた。

「うぇ~ん、私の両親が経営していた呉服店が潰れたよ~」

この生徒の発言により周りは騒然とする。

「えっ、彼女の両親が経営していた呉服店って函館でも名店だったはずだよね!!」

「たしか、アフターフォローもしっかりしていて地元から愛されていた店だよね・・・。私、七五三のときにお世話になったよ・・・」

 だが、その生徒は突然ショッキングなことを言いだしてきた。

「私、この聖女を辞めないといけないかも・・・。だって、私の家の呉服店が潰れたから。もう、この聖女の学費を払えなくなるもん・・・。なんで、なんで、私が不幸にならないといけないの・・・。それもこれもあのディスカウントショップのせい!!私の家の呉服店を潰すためにわざわざ原価割れするほどのセールを実施したんだよ~」

 この生徒の話に対し、花樹、はっとする。

(えっ、彼女の家の呉服店が潰れたのはディスカウントショップのせい・・・。まさか、オ・・・、花樹のお父様が・・・)

そう、花樹の父親はディスカウントショップの社長である、そして、その生徒(呉服店の娘)の両親が経営していた呉服店が潰れたのはディスカウントショップの異常なまでのセールのせい、この2つのことについて、花樹、

(ま、まさかね・・・。2つはたんなる偶然だよね・・・)

とこの2つがたんなる偶然であることを自分に言い聞かせようとしていた・・・。

 

 そして、お昼になった。花樹は教室で弁当を広げようとしていた、そのとき、

「花樹、いる?」

という花樹を呼ぶ声がした。すると、その声に気づいたのか、花樹とは別の生徒がすぐに、

「花樹、理恵先輩が呼んでいるよ!!」

と花樹に対し言うと、花樹、

「あっ、理亜さん!!」

と花樹を呼びに来た少女こと理亜に気付き理亜の名を言うと、理亜、そんな花樹に対し、

「花樹、今から今度のラブライブ!地方予選に向けた話し合い、する。ちょっと来て!!」

と言うと、花樹、

「はい、わかりました!!」

という元気な声とともに広げていた弁当をしまっては理亜のもとへと行っては理亜と一緒に廊下を歩いていく。そして、その途中で2人のマネージャーであるあつこと合流しては3人一緒にスクールアイドル部の部室へと向かっていった。

 だが、花樹、理亜、あつこが自分たちの部室へと向かおうとしたとき、この3人を遠くから見ていた生徒がいた。その生徒はこの3人を遠くから見るなり、憎しみを込めてこう言った。

「うぅ、猪鹿蝶めぇ~。私たちの苦労も知らずにのほほんと歩くなんて・・・、なんていう身分なんだ!!」

猪鹿蝶、この名前はここ聖女において、花樹、理亜、あつこ、スクールアイドル部の3人のことを指す別称だった。それは3人の名前の頭文字、

 

猪波 花樹

鹿角 理亜

蝶野 あつこ

 

から取られたものだった・・・が、ここ聖女では別の意味で隠語として使われていた・・・。

 と、ここで、理亜たち3人を遠くから見ていた生徒がこんなことを言いだしてきた。

「う~、あの3人のせいで(聖女の)部活のイメージが悪くなってしまった・・・。それに、そのせいで今年の新入部員の入りも悪くなった・・・。あれもこれも猪鹿蝶のせいだ・・・」

う~ん、聖女の部活のイメージ悪化と理亜たち3人の関係性は・・・ということはさておいて、事実、聖女の部活、今年の新入部員の入りは本当に悪かった。それは聖女の部活のイメージのせいだとその生徒は決めつけていた。いや、それいもこれも理亜たち3人のせい・・・とすら決めつけてた。

 そんな理亜たち3人を遠くから見ていたその生徒は理亜たち3人がその生徒の視界から消えるとすぐに小言でこう言ってしまった。

「猪鹿蝶・・・、特に・・・、鹿角理亜・・・、あいつこそこの元凶を作ってしまった主犯だ・・・。だって、あいつのせいで・・・、あいつのあの暴走のせいで・・・、聖女の部活のイメージが悪くなったんだ・・・」

 

 その後、理亜たち3人はスクールアイドル部の部室に一緒に入ろうとしていた、そのときだった。突然、3人の後ろから、

「あつこ・・・、ちょっと・・・」

とあつこを呼び止める声がした。これには、あつこ、

「は~い・・・」

とすぐに後ろを振り向くと、

「えっ、また・・・」

と、あつこ、唖然となった。なんと、そこには3年生の生徒が立っていた。

 その3年生の生徒は唖然となるあつこに対し、

「あつこ、お願い、フィギュアスケート部に入って!!」

とお願いをしてきた。どうやら、その3年生の生徒、聖女のフィギュアスケート部の部員のようだ。聖女は、函館、いや、北海道のなかで1番歴史のある女子高である。なので、函館のみならず北海道からいろんな人材が入学してくるのだ。そして、フィギュアスケートもその1つだった。聖女のフィギュアスケート部は北海道のなかでも指折りの実力を持っていた。

 そんなフィギュアスケート部の部員の話しを聞いて、あつこ、頭を抱える。

(うぅ、これで何度目かなぁ・・・。私、フィギュアスケートは半引退状態なのに・・・)

あつこ、実は、中3のころまでジュニアフィギュア選手として活躍していた。その実力は12歳のときにジュニアの全国大会で優勝するくらいのものだった。だが、そのときから周りから過剰ともとれるような期待を押し付けられていた。いや、周りからあつこの精神が崩壊するくらいの言葉攻め(例えば、「たんなる経験不足だ!!もっと練習しろ!!」「もっと根性をみせろ!!」など)にあっていた。そして、第二次性徴による体の変化(成長)によりこれまでのフィギュアでの感覚にズレがあつこのなかで生じていた。この2つのせいであつこは絶望といえるくらい苦しみ、結果、中3最後の大会で複雑骨折をするくらいの大ケガをし、周りからあつこ自身崩壊するような罵詈雑言を浴びたのである。また、そのときにできた足の大きな傷はのちにあつこにとってこのときのスティグマ(聖痕)として残ってしまった。(詳しくは「SNOW CRYSTAL 序章」をお読みください)しかし、フィギュアスケート部の部員はそんなあつこに対し何度もフィギュアスケート部の勧誘を続けていたのだ。これには、あつこ、頭を悩ませていた。

 そんなわけなのか、あつこ、このフィギュアスケート部の部員に対しハッキリとした態度でこう言ってやった。

「すみませんが、今、私、スクールアイドル部のマネージャーとして頑張っていますから、ご遠慮ください!!」

と、同時に自分の足を見ては、あつこ、ついこう思ってしまう。

(私、もうスティグマを発動させたくない!!私はこのスティグマがある限り、なにもできない!!フィギュアスケートも、スクールアイドルも!!もう嫌!!あのときみたいに・・・、中3最後の大会のときみたいに・・・、私自身崩壊するくらいのことが起こるなんて・・・、もう嫌!!)

あつこにとってこのスティグマは自分のなかにある深淵なる闇とつながっていた。もし、フィギュアスケートやスクールアイドルといった体を動かすことをすればきっとこのスティグマが発動してしまう、昔の大きな傷が開いてしまう、こうなってしまうとまた周りに迷惑をかけてしまう、いや、周りから罵詈雑言の言葉攻めにあってしまう、そして、今度こそ、あつこ自身、自殺するくらいの絶望に満ちたものになってしまう、あつこはそう思ってしまった。あつこにとって中3最後の大会での大ケガ、それによる周りからの罵詈雑言、それがあつこのなかにある深淵なる闇を作り出してしまったのと同時にそのときにできたあつこの足に残るスティグマはその闇を発動させるためのキーでもあった。なので、あつことしてはそのスティグマを発動させるくらいのスポーツなどはしたくなかったのだ・・・。

 だが、それでもフィギュアスケート部の部員は必死に食い下がる。

「過去のことは過去のこと!!あつこが競技に復帰しても誰も昔みたいに何も言わないから。ねぇ、お願い、あつこ、フィギュアスケート部に入って!!」

 しかし、それでもあつこの意思は固かった。

「もうやめて!!もうフィギュアなんてやらない!!私はフィギュアを辞めたんだ!!ほっといて!!」

この言葉のあと、あつこは部室のドアを締めて鍵をかけてしまった・・・。そんなあつこを見て、フィギュアスケート部の部員はこうつぶやいた・・・。

「あつこ・・・、自覚して・・・。あつこのあの傷は・・・、スティグマは・・・、もう完治しているんだよ・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(2)

 その後、理亜たち3人は部室で練習を・・・ではなく今後についての話し合いをしていた。まず、理亜から、

「あともう少しでラブライブ!夏季大会が始まるけど、それにむけてこれまでとは違った実戦形式の練習をしたい。なにか、意見、ある?」

時はすでに6月もなかばに差し掛かろうとしていた。そのため、梅雨空があたり一面・・・って、北海道には梅雨がないため、そんな空なんてなかった・・・のだが、今日はなぜか朝から大雨が降っていた。そんなわけで練習ができないために理亜たち3人は今後について話し合うこととなったのだが、その内容はあと数週間後に行われるラブライブ!夏季大会にむけてどんな練習をしていくか、であった。そこで、まずは部長である理亜から実戦形式・・・というか本番に向けての本格的な練習をしようと提案してきたのだ。これまではスクールアイドル初心者である花樹のためにスクールアイドルになるための基礎練習を中心にやってきた。まぁ、GW中に摩周丸で行われたRedSunとの対バンライブはあったのだが、その戦いのための練習を1週間ぐらい行ったことを除けばこれまで基礎練習だけ行ってきた、というの正解かもしれない。なお、それについては、花樹、

(オ・・・、花樹はスクールアイドル初心者・・・、だからこそ、基礎が大切・・・。今は黙々と基礎練習をこなしていたけど、それが、将来、実を結ぶことになる。いや、それだけじゃない。。理亜さんもAqoursもそのきつい基礎練習を毎日こなしていたからこそ、スクールアイドルとして大活躍できたんだ!!だからこそ、今は一生懸命練習に取り組む、おばあちゃんと約束した、ラブライブ!優勝、それに向けて!!)

と前向きに取り組んでいた。ただ、スクールアイドルはいつかはステージという名の本番に立つ身なのだから、ただ基礎練習をすればいい、というわけにはいかなかった。なので、理亜はそのステージ本番となるラブライブ!地区予選に向けて本番形式の練習をしようと花樹とあつこに提案してきたのである。

 この理亜の提案にあつこから、

「たしかに理亜さんの言うことも一理あります。私もこれから本番に向けた練習に軸足を向けた方がいいと思います」

という理亜の提案に賛成の言葉が出てくる。マネージャーのあつこにしてもラブライブ!本番まであと数週間を切ったのだから本番に向けての練習をしていかないといけない、そんな思いがあったのかもしれない。

 この2人の意見を聞いてか、花樹、こんなことを言ってしまう。

「本番に向けた練習・・・。うぅ、そう考えると、ついに、オ・・・、花樹、ついにラブライブ!というステージに立てる・・・、そんな気がしてきました!!」

花樹、ついにスクールアイドルとして、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!のステージに立てる、そのことでウキウキな気持ちになったかもしれない。いや、

(これまではスクールアイドルとしての大切な基礎練習をしてきました・・・。だけど、これからは、オ・・・、花樹が夢見ていた舞台、ラブライブ!のステージに立つ、その練習をするんだ・・・。ついにおばあちゃんとの夢への第一報を踏み出すことができるんだ・・・。そう考えただけで、オ・・・、花樹、嬉しい・・・です!!)

と、花樹、高ぶる気持ちでいっぱいだった。

 そんな花樹に対し、理亜、

「ラブライブ!のステージに立つのはまだ先・・・、花樹・・・」

と校風んする花樹を落ち着かせようとするも、花樹、

「いやいや、理亜さん、興奮せずにいられないです!!オ・・・、花樹にとってラブライブ!は憧れのステージ!!そこに立てる、そう考えるだけで興奮せずにいられません!!」

とさらに興奮してしまった・・・。

 そんな花樹を見てか、あつこ、理亜に対し、

「まぁ、スクールアイドルとしてラブライブ!のステージに立てることはスクールアイドルを目指す者は誰でも憧れるものです。花樹もその1人なのですから、ここは花樹の気持ちを受け取りましょう」

と花樹の気持ちを素直に受け取ることを言うと理亜、

「まぁ、花樹も乗り気、だから、明日から、本番に向けて、練習、する!!」

とあっさりとこれからの練習について決めてしまった・・・。

 そんなこともあり、花樹、こんなことを言いだした。

「ラブライブ!・・・、オ・・・、花樹にとって夢見ていた舞台!!オ・・・、花樹たちはあのAqoursを倒したRedSunに打ち勝ったんだ!!その勢いのままに勝ち進め・・・進みます!!」

このときの花樹、心のなかでは、

(オ・・・、花樹はあのRedSunに勝った!!この勢いのまま、ラブライブ!勝ち進めば、優勝だって目じゃない!!そのためにも、勝って勝って勝ち進んでやる!!だから、おばあちゃん、見てて、オ・・・、花樹、絶対に勝つからね!!」

と、RedSunとの戦いに勝ったことをいいことに。その勢いのまま、ラブライブ!でも勝ち進もうと勢い込んでいた。

 だが、この花樹の発言に、理亜、ある種の危険を感じた。

(花樹・・・、いつも思うけど・・・、「勝つこと」を意識しすぎてない・・・、1年前の私みたいに・・・)

そう、理亜は感じていた、花樹が「勝つこと」を意識しすぎていることを・・・。理亜は、1年前、「勝つことこそすべて」という思いとともに姉聖良とSaint Snowとして活動していた。それはラブライブ!優勝という姉聖良とあつことの夢を叶えるためであった。ただ、その思いもあって昨年度のラブライブ!夏季大会では全体の8位という優秀な成績を残した。だが、その後、その思い、そして、周りからの過剰なまでの期待もあり、理亜はその次の冬季大会で大きなミスを犯したために最終予選で敗退、それにより、理亜、聖良、あつこ、3人の夢を叶えることができなくなった。また、それが原因で、「自分のせいでSaint Snowという輝きを失った」、という深淵なる闇を理亜は抱えることとなった。その後、ルビィのおかげで一度はその闇を抑えたものの、自分の盟友というべきルビィのいるAqoursがラブライブ!優勝を果たしたことによりその闇が増大、結果、当時の理亜が作ったユニットのメンバーに理亜は過酷な練習を課したことによりその理亜のユニットは空中分解してしまった、という辛い過去が理亜にはあった。なお、今はそんな理亜のために姉聖良とルビィたちが行ったラブライブ!延長戦のおかげで理亜の闇は消失・・・というか影をひそめるようになったのだが、その辛い過去と今の「勝つことに意識しすぎている」花樹の姿を重ね合わせたのか、理亜は花樹のことを心配そうに見ていたのかもしれない。

 そんな理亜であったが、理亜自身もある悩みを抱えていた。

(でも、私、この前から考えていたけど、そんな花樹に対してどう接していけばいいのわからない・・・。私、これまで、姉さまに従っていただけ・・・、ただ、姉さまの後ろをついてきただけ・・・、そんな私なのに、それなのに、「勝つこと」を意識しすぎている花樹をどうやって導けばいいわけ・・・。私、どうすればいいわけ!!)

そう、理亜は「勝つこと」に意識しすぎている花樹をどう導けばいいのかわからなくなっていたのだ。これまで理亜は姉聖良の進む道を後ろからついていく、姉聖良に従っていただけだった。それくらい、姉聖良は、理亜、あつこを引っ張っていくリーダー的存在であった。だが、その姉聖良がいない今、今度は理亜がスクールアイドル初心者である花樹を引っ張っていかないといけないのだが、ただ、姉聖良の後ろをついてきただけの理亜にとってそれは初めての経験であった。いや、それどころか、「勝つこと」に意識しすぎている花樹、いや、一年前の自分と同じ姿の花樹という存在は普通の初心者とは一味も二味も違う存在に理亜は見えたのかもしれない。だって、理亜はあのクリスマスでのSaint Aqours Snowとしてのライブ、そして、ラブライブ!延長戦でスクールアイドルとしての大事なことを・・・、

 

「スクールアイドルは楽しむことがすべて」

「スクールアイドルは「楽しむこと」⇔「好きになること」の無限ループにより無限の力を出すことができる」

 

そのことを知ったから・・・。なので、今の理亜は「勝つこと」に意識しすぎている花樹という異質な存在をどうやってそのスクールアイドルにとって大事なことへと導いていくにはどうしたらいいか・・・、といったこれまで経験したことがない、いや、いつも姉聖良についていくだけの存在だった理亜にとって未知ともいえる、それどころか、非常に頭を悩ますものとなっていた。

 まぁ、そんなわけでして、理亜、「勝つこと」に意識しすぎている花樹を見てはさらに頭を悩ます。

(私、どう動けばいいわけ・・・。私、姉さまと約束した、Saint Snowに代わる新しい輝きを見つける、ルビィたちAqoursや姉さまとあつことのSaint Snowみたいな「スクールアイドルを楽しむ」「スクールアイドルを好きになる」、そんな無限のパワーを生み出せる、そんな自分だけの新しいユニットを作る、と・・・。それなのに、(「勝つこと」に意識しすぎている花樹をどう導けばいいのかわからに。自分がそんな輝きを見つけるなんて無理じゃない・・・。どうしたらいいの・・・)

理亜はSaint SnowとAqoursの奇跡のイベント、あの大きなミスによって深淵なる闇を抱えることとなった理亜が一時期だけ立ち直るきっかけとなったイベント、函館でのSaint Aqours Snowの合同クリスマスライブ、そこで理亜はSaint Snowに代わる新しい輝きをみつける、それを姉聖良に誓った。だが、その後の理亜の暴走により一度は作った理亜のユニットは空中分解したため、もう一度、ラブライブ!延長戦にて理亜はそれを再確認したのだが、今度は1年前の自分と同じ考えを持つ花樹をどう導けばいいのかわからない、そんな状態に理亜が陥っているなかでAqoursやSaint Snowみたいな輝き、「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、そんな無限のパワーを持つユニットをつくる・・・、新しい輝きをみつける・・・、そんなことなんてできない・・・、そう理亜は思えてきたのである。

 そして、ついに理亜はある思いに達する・・・。

(私は・・・、少しでも・・・、ラブライブ!優勝に近づきたい・・・。姉さまと叶えることができなかった夢・・・、ラブライブ!優勝をしたい・・・、だからこそ、ルビィたちAqoursみたいな・・・、「楽しむこと、好きになること」・・・、そんな輝きを・・・、新しい輝きを・・・、追い求めたい・・・。だけど・・・、今の私じゃ・・・、そんな輝きなんて・・・、自分たちだけの新しい輝きなんて・・・、みつけることができない・・・。姉さま・・・、どうすればいいのか・・・教えてください・・・。姉さま・・・、姉さま・・・)

理亜のなかにある深淵なる闇が動き出した・・・。理亜が持つ深淵なる闇、「自分のせいでSaint Snowという輝きを失った」、その闇には続きがあった。それは・・・、

 

「自分の大きなミスのせいでSaint Snowという輝きを失った、ラブライブ!優勝という姉さま(聖良)との夢も失った。自分のせいで姉さまはなにもか失った、ゼロになってしまった。

 

だから、今度は、私が、Saint Snowという輝きと同じものを作り、姉さまと叶えることができなかった夢、ラブライブ!優勝、を成し遂げてみせる!!」

 

であった。ただ、(先ほどの繰り返しとなるが、)それについてはクリスマスライブで「楽しむこと」の重要性を知ったことでその闇は抑えられたものの、自分の盟友ともいえるルビィたちAqoursがラブライブ!優勝したことでその闇は逆戻り、というか、「勝つことこそすべて」の考えに戻ってしまった理亜は暴走し、クリスマスライブ後に作った自分のユニットを空中分解、それを心配した姉聖良とあつこはルビィたちAqoursの助言もあり、理亜に「スクールアイドルとは楽しむこと、好きになることが大事」という考えを再確認させるため、姉聖良と理亜との夢、ラブライブ!優勝を叶えるためにラブライブ!延長戦を行ったのである。これにより理亜はその考えを再確認するとともに自分たちの夢を叶えた・・・かにみえたのだが、この延長戦自体まやかしであることを理亜は自覚していったので、「今度こそ、自分たちの夢、ラブライブ!優勝を叶えてみせる」、理亜はそう心の奥底で思っていたのである。ただ、ここ最近は初心者である花樹の練習に忙しく、その闇自体目立った活動をしていなかった。だが、初心者である花樹が成長するとともに1年前の自分と同じ「勝つこと」に意識しすぎている花樹の姿に、理亜、花樹をどう導けばいいのかわからない、そんな苦悩が理亜を支配してしまう。その苦悩、そして、スクールアイドルとして大事なことである「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それを体現したような輝きを追い求めたい、それらの思いが逆に理亜のなかに眠る闇を活性化したのかもしれない。だって、ルビィたちAqoursはスクールアイドルにとって大事なものを極限までに追い求めた結果、ラブライブ!で優勝できたのだから・・・。けれど、それなのに、1年前の自分と同じ花樹を導く方法がわからない、そんな現状ではそんなそんな新しい輝きなんて見つけることなんてできない、ラブライブ!優勝という夢なんて叶えることなんてできない、なにもできない、そう理亜は自分自身を卑下していたのだ。こうして、自分を卑下した理亜はもうここにいない姉聖良に助けを追い求めようとしていたのである。

 と、ここで、1つ、忘れてはならないことがある。あの延長戦で理亜が知ったもう一つの真実がある。それは・・・、

 

「理亜のなかには今でもSaint Snowという輝きが残っている。それは宝物となり、ずっと姉聖良とあつことつながっている」

 

ということである。理亜が自分の大きなミスで失ったと思ったSaint Snowという輝き、姉聖良とあつことのSaint Snowとしての想い、想い出、キズナは実はずっと理亜のなかに残っており、それは宝物としてずっと残る、その宝物を通じて姉聖良とあつことずっとつながっている、そのことを理亜は延長戦で知ることができた。だが、今、理亜がしようとしていること、それはなにもない状態のなか、花樹と共に新しい輝きをみつけないといけねい、けれど、これまで姉聖良のあとをついていくだけだった理亜にとってどう動けばいいのかわからない、新しい輝きをどうみつければいいのわからない、右往左往するしかない、そのことは理亜には地獄でしかなかったのかもしれない。追い求める理想と現実のギャップはそんな理亜を自分が抱える闇を活性化させるくらいとても苦しいものに、もうここにいない姉聖良にすがるぐらいとても苦しいものにしたのかもしれなかった・・・。

 

 そんなRedSun戦での勝利の勢いのままにラブライブ!でも「勝ち続ける」、それくらい「勝つこと」ばかりに意識しすぎている花樹とそんな花樹をどう導けばいいのか、自分たちだけの新しい輝きをどう見つければいいのか、それらと自分の抱える闇によって苦悩する理亜・・・であったが、無情にも2人はその状態のまま、時間だけが過ぎていった。

 とはいえ、たとえ、そんな状態でも2人は黙々とマネージャーであるあつこが決めた本番に向けての練習メニューを淡々とこなしていった。これには、花樹、

(この練習をこなして実力をつけてやる・・・つけてみせます!!そして、ラブライブ!で勝ち続けて、おばあちゃんと約束した、ラブライブ!優勝、叶えてみせる!!)

と勢い込んでいたこともあり着実に力をつけていった。

 そして・・・、

 

ここから始まる・・・ 再び・・・

 

と、ラブライブ!地区予選の日、理亜と花樹はついにそのステージに立つことになったのだ。このとき、花樹、理亜、共に、

(完璧なパフォーマンスをみせて圧倒的な差で勝ってやる・・・です!!オ・・・、花樹はそのためにこれまで頑張ってきた・・・のです。絶対に、絶対に、勝って、勝って、決勝までこの勢いのままに進んでやる!!)(花樹)

(私としては3度目のラブライブ!のステージ・・・。私、ずっと、どうすればいいか悩んでいた・・・。ずっと苦悩していた・・・。でも、今は・・・、目の前のステージに・・・、集中する!!私だってスクールアイドル!!目の前にいるみんなのまえで無様な姿なんてみせたくない!!みんなの前で、今の、私の実力、みせてやる!!)(理亜)

と、かなり前向きな花樹とちょっと不安が残るもののスクールアイドルとして精一杯頑張ろうとしている理亜、これにより、理亜・花樹組の2人のパフォーマンスは絶妙に噛みあい、この日のすべてのステージにおいて1番のパフォーマンスをみせることとなtった・・・。

 そして・・・、

「北海道函館地区予選、第1位は・・・、函館聖泉女子高等学院、スクールアイドル部、理亜・花樹組!!」

と、ほかのグループに圧倒的な差をつけて1位となった。これには、理亜、

「花樹、まずは地区予選突破!!やった!!」

と喜びながら言うも花樹はただ・・・、

「まだ・・・、これはたんなる一歩にすぎない・・・すぎません・・・。もっと頑張らないと・・・、もっと勝たないと・・・」

とぶつぶつとなにかを言っていた。これには、理亜、

「花樹・・・」

と花樹のことを心配そうにみていた。いや・・・、

(なんか花樹を見ていると・・・、本当に1年前の私に・・・、「勝つこと」ばかり考えている、そんな私に・・・みえてくる・・・。そう思えてくると・・・、この先にある未来・・・、絶望という未来・・・、私が経験した未来・・・、そんな未来が見えてしまう・・・。そ、そんなの、いや・・・)

と、1年前の自分と瓜二つの花樹、そんな自分が経験した絶望の未来、それを花樹は迎えてしまうのでは・・・、という恐ろしすぎる思いを感じてしまい理亜は絶句する、とともに、

(でも、そんな花樹を私はどう導けばいいわけ・・・。わからない・・・。どうすればいいわけ・・・)

と、そんな花樹に対しどう導けばいいのか未だにわからないことでまたもや理亜は苦悩し続けてしまった・・・。

 そんな理亜の苦悩を知らずか、花樹、ぶつぶつ言いつつも自分の首にぶら下げている十字架上のネックレスを握りしめながら、

(今日の勝利はたんなる第一歩にすぎない・・・のです・・・。オ・・・、花樹は・・・あの理亜さんと一緒に・・・この戦いを勝ち続けないといけない・・・のです・・・。勝ち続けて・・・、最終予選に・・・、決勝に・・・勝ち続けて・・・、おばあちゃんと約束した・・・、ラブライブ!優勝・・・、それを成し遂げてみせる・・・のです!!)

と、「勝つこと」にm執着しているのか、勝ち続けてラブライブ!優勝を叶えてやる、その思いを満たそうとしていた・・・。

 そんな2人であったが、

(理亜さん・・・、花樹さん・・・)

とステージ袖で2人を見ていた2人のマネージャーであるあつこは2人のことを心配していた・・・、いや、それ以上に・・・、

(地区予選は何事もなく終わりましたが・・・、「勝つこと」ばかり考えている花樹さんとその花樹さんのことで苦悩している理亜さん・・・、このままだといつかはどこかで2人は壊れてしまうかもしれません・・・。私、それがとても心配です・・・)

と2人のこれから先の未来について心配するとともに、

(そして、2人にとって一番の鬼門である最終予選・・・、それを無事に突破できるのでしょうか・・・、あの2人の今の状況のままで・・・。特に理亜さんにとって最終予選では苦い思い出があるのですが・・・)

と、この2人の今の状態のままで無事に(2人にとって)鬼門である最終予選を無事に突破できるのか、さらに心配になってしまった・・・。ラブライブ!最終予選・・・、理亜は前回の前年度冬季大会最終予選において大きなミスを犯したことにより予選敗退とそれにより深淵なる闇を自分のなかに抱えるようになったという辛い思い出があった。なので、あつこにしてみれば、理亜にとって次の最終予選はその意味でも鬼門ともいえた。また、花樹にとってもこれからが本番である、といってもか過言ではなかった。だって・・・、

(それに、今日行われた地区予選はたんなる前段階しかありません。だって、函館地区において理亜・花樹組が地区1番の実力を持っているから。だけど、最終予選は地区予選とは違います。最終予選は北海道各地から実力者が出てくるから。なので、花樹さんにとってみれば最終予選がラブライブ!における最初の難関になるでしょう)(あつこ)

そう、今日行われた地区予選はたんなる前段階でしかなかった。ここ函館地区において理亜・花樹組は地区1番ともいえる圧倒的な実力を持っていた。また、知名度においてもSaint Snowの理亜、ということもあり、どのグループよりも圧倒的に上、だった。だが、最終予選は違う。北海道各地から実力も知名度もある優れたグループが参戦してくる。たしかに、Saint Snowの理亜、という知名度は北海道でも抜群であった。だけど、実力的にはほかのグループも理亜・花樹組に負けていない。そんななかで、花樹はまだまだスクールアイドル初心者、また、理亜もその花樹をどのように導けばいいのか苦悩している、そのような状態のままで相当実力のあるグループと2人は戦わないといけない、そう考えると、2人は、最終予選、苦戦する、かもしれない、そうあつこは考えているのだ。特に、花樹にとって初めて実力者と戦うことになる。そこで圧倒的な実力を相手からみせつけられたら、「勝つこと」に執着している花樹は挫折を味わることになる、それにより花樹が立ち直れなくなったら・・・、そんな意味でも花樹にとって最終予選は最初の難関になるだろう、そうあつこは考えていた。

 と、ここで、あつこ、ほかの地区で行われた地区予選の結果を自分のスマホで確認した。すると、札幌地区の結果を見て、あつこ、はっとする。

(まっ、まさか、あの双子が出ているなんて・・・。それに、圧倒的な差で1位になっている・・・)

そう、あつこは気づいたのだ、あの双子が札幌地区の予選に参加していることを、それも、理亜・花樹組と同じく圧倒的な差で1位通過していることを・・・。

 そして、あつこは空を見上げてこう思ってしまった・・・。

(次の最終予選、理亜さんと花樹さんにとって分の悪い戦いになるかもしれません・・・。だって、今度戦う(札幌地区予選で1位通過した)あの双子はあのレジェンドスクールアイドルの妹であり、自分たちもレジェンドスクールアイドルグループの一員だった人たちですから・・・)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(3)

 そして、ついに理亜と花樹にとって鬼門というべき日、ラブライブ!最終予選の日を迎えてしまった・・・。この日に向けて、花樹、

(オ・・・、花樹は「勝ち続ける」ためにこれまで頑張ってきたんだ・・・のです。最終予選もこの勢いのままに絶対に1位になって決勝に進出してやる・・・のです・・・。おばあちゃん、オ・・・、花樹の雄姿、見ていてくれ・・・ください!!)

とこの日のために一生懸命頑張ってきたこと、それプラス、RedSun戦、地区予選と勝ち続けている、それらの勢いのまま、最終予選もトップの成績で通過してやる、そう勢い込んでいた。

 一方、理亜はというと・・・、

(今日も、花樹、「勝つこと」に意識しすぎている・・・。まぁ、たしかに、花樹、今日の最終予選のために一生懸命練習してきた、実力もあげてきた。もう、花樹、私のパートナーとして、ラブライブ!のステージに立てるくらいの実力、あると思う・・・)

と、花樹の「勝つこと」に意識しすぎていることを認めつつも同時に花樹の実力も認めていた。花樹は「勝つこと」に執着しているせいか、あつこが決めた練習メニューを着実にこなしていた、そのこともあり、花樹の実力は相当なものになっていた。また、理亜との本番に向けた全体練習のおかげもあり、理亜との息もピッタリと合うようになってきた。なので、RedSun戦のときよりも、いや、地区大会のときよりも花樹は実力を上がっていたのである。

 だが、その一方で、理亜は花樹に対しある不安を持っていた。それは・・・、

(だけど、私と姉さまみたいに最初から本格的なステージに立つことは花樹にはあまりしてこなかった・・・。花樹にとっての本格的なステージといえばRedSun戦と地区予選だけ。本番といえるステージにあまり立っていないなかで、花樹、本当の実力を出すことができるのか心配・・・)

そう、花樹は練習をこなしているために実力は相当つけてきたのだが、本格的なステージという本番としての経験を花樹にはつけさていなかった。理亜の場合、数年かけて姉聖良とあつことともにラブライブ!本番に向けた準備をしてきた。そのため、理亜が聖女に入学して姉聖良とともにSaint Snowとして活動し始めたときには理亜自身も相当な実力をすでに持っていたため、Saint Snowとして活動をし始めたときからすでに姉聖良と理亜は町の小さな祭りなどのステージに立っては観客のまででパフォーマンスをみせることができた。こうして、Saint Snowは着実に本格的なステージでの経験を積むことができた。こうして、Saint Snowは、実力、経験、知名度、ともに着実にあげていき、昨年度のラブライブ!夏季大会において初出場ながら全体の8位という優秀な成績を残すことができた。だが、花樹の場合、聖女に入学したころは本当にスクールアイドル初心者であったため、理亜とあつこはラブライブ!本番に向けて練習中心にすることで花樹の実力をのばしていく、そのことに重点を置いた。そのおかげもあり、花樹の実力はすでにどのスクールアイドル初心者以上の、いや、普通のスクールアイドル以上のものを身に着けていた。だが、本番のステージではこれまでの本格的なステージにおける経験がものをいうことがよくある。いくら練習して実力を伸ばしていたとしても本番のステージにおける緊張のせいかその実力を十分発揮することができず、満足ができるパフォーマンスをみせることができない、そのことも考えれた。

 だが、それ以上に、理亜、花樹のことで気になってしまう。もちろん、それは・・・、

(それに、花樹、まだ「勝つこと」ばかり意識しすぎている・・・。私だって、前回の最終予選のとき、「勝つこと」ばかり意識しすぎてしまい、大きなミスして、結果、予選敗退した・・・。そのことが花樹にも起きる可能性、ある・・・。私、それが心配・・・)

そう、花樹が「勝つこと」ばかり考えてしまっていることだった。前回の最終予選で理亜に起きたことが花樹にも起きるかもしれない、いや、そのときの理亜と同じ状況になっている花樹が理亜と同じ失敗をするのではないか、そう思えてきて、理亜、心配で心配でたまらなかったのである。と、同時に、

(それに、私自身、そんな花樹をどう導けばいいのか・・・、自分たちだけの輝きをどうみつければいいの・・・、「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、そんなユニットをどう作ればいいのか・・・、まだ、私、その答えがみつからない・・・。私、一体どうすればいいわけ・・・)

と、今の理亜を苦しめているそれらのことに関して答えを出すことができない、そんな苦悩で理亜は満ち溢れてしまった・・・。地区予選から最終予選のあいだ、理亜はそのことで悩み続けていた。これまで姉聖良の後ろをついていくだけの存在だった理亜、だが、今は自分が前にたって花樹を引っ張っていかないといけない、そんなこともあり、これらのことが理亜にとって絶対なる命題となっていた。いや、それに加えて、自分たちだけの輝きをみつけないといけない、そんなプレッシャーみたいなものが理亜の苦悩を助長させてしまった・・・。

 と、いった具合に、勝つ気満々で強い自信を持っている花樹と逆に苦悩し続けているために暗い表情の理亜、2人の表情は対照的だった。これには、あつこ、

(このままだと絶対に大変なことが起きるかも・・・)

とこちらもこちらで2人のことを心配していた・・・。

 そんなときだった。突然、あか抜けたような2人の声が聞こえてきた。

「きゃははは、今日は、ラブライブ!最終予選です!!こころ、今日もめいいっぱいスクールアイドルを楽しもう!!」

「そうです、ここあ。私たちはあのお姉さまたちからスクールアイドルを楽しむことを教えてもらって、今日、この日までそれを胸に頑張ってきたのです。そして、今日もここあと一緒にスクールアイドルを楽しむのです!!」

 この2人の声を聞いた瞬間、理亜、

(えっ、あの娘たちって・・・、まさか・・・)

とその2人の方を向く。すると、理亜はこう叫んでしまった・・・。

「えっ、なんで・・・、こころあが・・・、ここにいるわけ・・・」

こころあ、その言葉を理亜が口にした瞬間、その2人は理亜の方を向いては、

「あっ、理亜たんだ!!お久しぶり!!」

「理亜さん!!本当にお久しぶりです!!元気でしたか?」

と言って理亜に近づいてきてしまった。どうやら、この2人、理亜とは顔見知りのようだ。そのためか、理亜、

「こ、こころあ・・・、ここあ、こころ、お、お久しぶり・・・」

と言葉をつまらせながらも2人に挨拶する。

 そんな理亜とこの2人の光景を見てか、花樹、理亜に対しあることを尋ねる。

「理亜さん、この2人は一体何者なのですか?」

理亜にとってはこの2人は顔見知りでも花樹にとってみれば初めて会う2人であった。そのため、花樹はこの2人のことを理亜に尋ねたのである。

 まぁ、そんな花樹のために、理亜・・・ではなくあつこがこの2人のことを花樹に紹介した。

「花樹さん、この2人はこころあというグループ名で活動しているの。活発そうにみえる娘が矢澤ここあさん、おしとやかにしている娘が矢澤こころさん。2人は双子でありスクールアイドル界では知らない人はいないという有名人なの」

 すると、活発そうにみえる娘から、

「ここあは矢澤ここあ。今年で高3になるスクールアイドル!!」

と自己紹介すると続けておしとやかにしている娘も自己紹介する。

「私は矢澤こころと申します。ここあと同じ高3のスクールアイドルです」

 この2人の自己紹介に、花樹、

「ってことは、ここあさんとこころさん、スクールアイドルとして活動している最中ってことですね・・・」

と当たり前のことを言うとともに、

「でも、あつこさんが言う通り、ここあさんとこころさんがスクールアイドルとして有名であるってピンとこない・・・のですが・・・」

と2人が有名人であることに疑問を感じてしまう。

 そんな花樹に対し、ここあ、

「それ、聞き捨てならない!!ここあはこれでもレジェンドスクールアイドルであるお姉ちゃんの妹であって、ここあ、こころ自身もレジェンドスクールアイドルグループの一員だったんだよ!!」

と威張りながら言った。ただ、それでも、花樹、

「う~、2人がレジェンドスクールアイドルだなんて、オ・・・、花樹、知らない・・・のですが・・・。オ・・・、花樹、スクールアイドルってAqoursとSaint Snowしか知らなくて・・・」

とびっくりすることを言ってしまう。まぁ、たしかに花樹の言う通りであった。花樹の場合、スクールアイドルを始めたきっかけがあのAqours VS Saint Snowのラブライブ!延長戦の動画であった。そして、花樹はAqoursに入りたいと思うもある理由でそれを叶えることができなかったものの、家の都合で函館に引越してきてから、Saint Snowの理亜と一緒にスクールアイドルとして活躍したいと思い理亜に猛アタックを仕掛けて今にいたる・・・。そのため、花樹のなかではスクールアイドルといえば、Aqours、Saint Snow、そして、この前戦ったRedSunぐらいしか知らなかったのだ。これには、理亜、あつこ、ともに、

ガクッ

とこけてしまうもすぐに立ち直り、花樹に対して、あつこ、この2人、こころあ、の詳しい説明をした。

「花樹さん、ここあさん、こころさんは第2回ラブライブ!で優勝した、レジェンドスクールアイドル、μ'sのメンバーの1人、矢澤にこさんの妹さんであり、彼女たちも一昨年のラブライブ!夏季大会で優勝した、レジェンドスクールアイドル、オメガマックスの一員として活動したことがあるの。それくらい、彼女たち、こころあはスクールアイドルとしては超有名人であり、今も現役バリバリなわスクールアイドルなわけ・・・」

読者たちは知っているだろうか、この物語群の最初の物語、「ラブライブΩ」でのこころあの活躍を・・・。矢澤ここあ、矢澤こころ、通称「こころあ」はその物語においてμ'sの穂乃果の妹の雪穂、絵里の妹の亜里沙たちとともに音ノ木坂アイドル研究部オメガマックスとして活動し、ラブライブ!にて優勝を果たし、それに加えてある理由で再結成したμ'sをも撃破したのである。そのため、彼女たちの姉である矢澤にこのいるμ'sとともにレジェンドスクールアイドルとしてオメガマックスもスクールアイドルの歴史に刻みこまれているのである。そして、このとき、こころあは(スクールアイドル特待生制度により)当時14歳ながら飛び級でオメガマックスのメンバーがいた音ノ木坂に入学してオメガマックスとして活動したものの、穂乃果たちの願いとともにオメガマックスは解散、音ノ木坂にはスクールアイドルに関するものはなくなってしまったのだ。(詳しくは「ラブライブΩ」「Ω/UC the final story」をお読みください)ただ、こころあに関してはこのあともオメガマックスのメンバーだった京城みやことともに別の高校でスクールアイドル活動を続けていた。

 そんなあつこの説明に、ここあ、

「言っておくけど、ここあたち、これでもラブライブ!で2回も優勝したことがある実力者だもん!!えっへん!!」

とまたもや威張ってしまう。これには、花樹、

「えっ、2回も・・・」

とびっくりしてしまう。えっ、2回もラブライブ!で優勝した・・・、たしかに花樹も驚いても不思議ではなかった。では、いったい、いつ、2回もラブライブ!優勝を果たしたのか。

 と、ここで、理亜、こころあの代わりにそれについて説明してくれた。

「こころあがラブライブ!で2回目の優勝を果たしたのは・・・、私のいたSaint Snowが全体の8位の成績を残した・・・、前年度の夏季大会・・・」

この理亜の言葉に、こころ、ちょっと詳しく説明する。

「はいっ、理亜さんの言う通りです!!私たち、こころあはオメガマックス解散後、みやこさんと一緒に別の高校、大総大学付属関東高校に転校して3人でスクールアイドルグループとして活動、その年(前年度)の夏季大会で優勝したのです!!」

そう、理亜たちSaint Snowが全体の8位の成績を残したあの大会、前年度の夏季大会で優勝したのは・・・、みやことこころあが結成したグループだった。大総大学、大阪に一大キャンパスを持つ日本有数の総合大学である。もちろん、みやこやこころあがいた東京にも大総大学のキャンパス、そして、その系列校があった。みやことこころあはその大学の誘いもあり、その系列校の1つ、付属関東高校に転校、スクールアイドルとして一緒に活動していた。そして、その年の夏季大会、つまり、前年度の・・・、理亜たちSaint Snowが全体の8位という成績を残したあの大会でみやことこころあのグループが優勝したのである。このこころの説明に、花樹、

「すげ~」

と口をあんぐりしてしまう。花樹にとってラブライブ!を2度も優勝した実力者が目の前にいる、それに驚きを隠せずにいたのだ。

 と、ここで、理亜、こころあに対しあることを尋ねる。

「で、どうして、こころあが北海道にいるわけ?こころあ、たしか、東京の高校にいたはず。なのに、なんで、ここ、北海道にいるわけ?」

まぁ、たしかにその通りである。こころあが去年いた高校は大総大学付属関東高校、つまり、東京、関東の高校だった。それなのに、なぜ、今、北海道のラブライブ!最終予選の場にこの2人がいるのか、それが理亜にとって疑問だったのだ。

 と、これには、ここあ、あっさりと答えてしまう。

「それは簡単のこと!!だって、ここあたち、北海道にある高校に転校してきたんだもん!!」

これには、理亜、

「えっ!!」

と驚くと、こころ、こころが言った答えに関する追加情報を話してくれた。

「理亜さん、実は、ラブライブ!夏季大会で優勝した後、続く冬季大会で、私たち、準優勝したのです(そのときの優勝はもちろんAqours)。で、この大会をもって(こころあと一緒にグループを組んでいた)みやこさんがスクールアイドルを卒業したのです。それに合わせて高校側から「北海道で活動してみないか」と提案がありまして、私たち、北海道にある高校にまたまた転校したのです!!」

こころあは前年度の夏季大会で優勝したあと、つづく冬季大会でAqoursに続く準優勝という成績を残した・・・のだが、この大会をもって当時3年生(オメガマックス活動時は2年生)であったみやこはスクールアイドルを卒業、大学へと進学した。その一方、当時2年生であったこころあは来年度以降もスクールアイドルとして活動することを決めていた、そのとき、当時の高校から「北海道にある大総大学の系列校でスクールアイドル活動を続けてみないか」という提案がなされたため、こころあ、心機一転、北海道にある大総大学の系列校に転校してきたのである。

 そんなわけでして、ここあ、元気よく、

「そう、ここあたち、今は北海道の大総大学付属札幌高校のスクールアイドル、こころあ、として活動しているのだ!!えっへん!!」

と威張りながら言うと、あつこ、

「このレジェンドスクールアイドルの2人と戦うなんて・・・、うぅ・・・」

と頭を抱えながらうなってしまった。ラブライブ!優勝2回という実績を持つこころあとこの最終予選を戦うこと自体今の理亜・花樹組には酷である、そう思っているのかもしれない、あつこにとってみれば・・・。

 そんな威張っているここあと頭を抱えているあつこ、そんな2人をみてか、花樹、

「へぇ~、理亜さんやAqours以外にもかなり実力を持ったスクールアイドルがいるんだね~」

と平気な顔をしてこころあの方を見るとすぐに、

「でも、今の花樹たちだったらこんな実力者だって勝てる気がします!!だって、花樹たちは勝ち続けていますからね!!」

とこちらも自信満々に勝利宣言してしまう。これには、理亜、

(花樹、いくら「勝つこと」に執着しているとはいえ、こころあみたいなレジェンド級のスクールアイドルに大見えを切ってはいけないと思う・・・)

と、そんな花樹の態度に唖然となりつつも花樹に対して、

「花樹、それ、言い過ぎ・・・」

とやんわりと注意する。

 ところが、花樹、理亜の注意なんて気にせずに、

「花樹、たとえ、相手がどんなレジェンドであっても、「勝ちたい」という意思は誰にも負けないです!!だって・・・、「勝つこと」こそすべて、だから!!」

と、なにも考えずにそう答えてしまった。いや、花樹の心のなかでは、このとき、

(たとえ、相手がレジェンドであっても勝たないといけないんだ!!ラブライブ!優勝はおばあちゃんと約束した夢なんだ!!おばあちゃんのために・・・おばあちゃんのために・・・、花・・・、俺は・・・、ラブライブ!で勝ち続けないといけないんだ!!)

と、勝つことへの執念を燃やしていた。

 だが、そんな花樹の言葉に対し、こころ、的確なことを言ってしまう。

「花樹さん、あなた、「勝つこと」だけに執念を燃やしていますね。でも、花樹さん、そんな思いのままで、スクールアイドル、楽しんでいますか?スクールアイドル、好きですか?」

 こころからのズバリと言える指摘、これには、理亜、

(こころ、やっぱり、2年間もスクールアイドルとして先頭を走ってきたことだけある・・・。私が花樹に対して心配していることを、ズバリ、指摘している。優しそうにみえて言うことはズバリ言うとはやはりレジェンドスクールアイドルだ・・・)

と妙に感心してしまった。こころあは、2年もの間、レジェンドと言われるくらいトップレベルのスクールアイドルとして活動してきた。いや、あのμ'sの(スクールアイドルとしての意識の高さは誰にも負けない)矢澤にこに小さいときからスクールアイドルとしての英才教育を・・・、「スクールアイドルは楽しむこと、好きになることが大事」という考えを叩き込まれた、そんなこころあだからこそ言える言葉なのかもしれない。あっ、ちなみに、μ'sもオメガマックスもAqoursと同じく「スクールアイドルとは楽しむことがすべて」「スクールアイドルを好きになることも大事」という信念を強く、いや、日本で1番強く持っていたため(当時はにおいて・・・)、その信念をもとにラブライブ!優勝まで成し遂げてしまう、それくらいレジェンド級のスクールアイドルであった。

 だが、そんなこころの言葉をよそに、花樹、

(楽しむこと、好きになること、それって、スクールアイドルとして大切なことなの?オ・・・、花樹はおばあちゃんとの約束、ラブライブ!優勝を目指すために勝ち続けないといけないんだ!!「勝ち続けること」こそ自分にとって大事なんだ!!)

と十字架状のネックレスを強く握りしめながらそう思うとこころに対し失礼な言葉を放つ。

「楽しむこと?好きになること?それって大事?スクールアイドルといえ、戦いといえば、「勝つ」ことが大事!!そんなの当たり前じゃない!!」

これには、理亜、あつこ、

(花樹、あいつ、平気でそのことをこころあの前で言うわけ!!バカじゃないの、花樹・・・)(理亜)

(花樹さん、それって、ちょっと違う気がする・・・。勝つことだけを目指したら・・・、1年前の理亜さんと同じことが起きてしまいます・・・)(あつこ)

と、花樹の発言にメモ開けられないような、もしくは、なにかの場違いのような感じになってしまうも、言っている花樹本人はというと・・・、

エッヘン

と自分の言いたいことは言った、そんな自信満ち溢れた表情をしていた。

 そんな花樹の姿をみて、ここあ、あのことを話す。

「今の花樹っち、なんか、1年前の理亜たんに似ている気がする。理亜たん、あのとき、「勝利こそすべて」という考えでラブライブ!優勝を目指していたもんね!!」

これには、花樹、

「えっ、理亜さん、1年前、花樹と同じ考えだったですね!!うわぁ~、すごい!!」

となぜか喜んでしまうも、理亜、

(ここあ~、余計なことを言うな!!)

と、ここあに対してにらんでしまう。ただ、それについて、こころの方から、

「でも、今の理亜さん、そんな考えをすでに持っていない、そんな気がします。なんか、私たちみたいな感じがしてきます!!」

とつかさずフォローに入ると、花樹、

「なんだ~」

とちょっとがっかりしてしまう。まぁ、今の理亜はあのことで、前回の冬季大会最終予選とラブライブ!延長戦前の理亜の暴走のせいで「勝利することがすべて」の愚かさを身に染みるくらい覚えたのだから・・・。

 このため、理亜は花樹の方を見ては、

「あぁ、どうすれば花樹を導くことができるわけ・・・」

と苦悩に満ちた表情になってしまう。そんな理亜を見てか、こころ、あつこに対し、

「ところで、マネージャーさん、なんで、理亜さん、悩んでいるのですか?1年前の理亜さんと同じことを考えている花樹さんを見て悩んでいるようですが・・・」

と小言で尋ねてくると、あつこ、理亜には聞こえないような声で、

「まぁ、この1年間でいろんなことがあったのです。つい最近も、理亜さん、理亜さんと仲のいいAqoursのルビィさんからお叱りの言葉をもらってしまって自分を殴りたい気分になったことがあったみたいなのです・・・」

と言うと、つい最近、理亜の身に起きたことを話し始めた。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(4)

 それはRedSunとの戦いを圧倒的な差で勝利した日の夜のことだった。

(あのRedSunに勝った!!これでルビィたちのかたきをとった!!)

と意気揚々の理亜、そのためか、いつものルビィへの電話のときも電話をかける前にも関わらず、

(もうこれでルビィたちは苦しまなくてすむ!!ルビィ、このことを聞いて喜ぶかな?)

と、ルビィが喜ぶその姿を想像してはニヤニヤと笑っていた。このときの理亜は静真でルビィたちAqoursを苦しめている木松悪斗の次女、桜花(はな)率いるRedSunに勝った、これでルビィたちは苦しまなくてすむ、それくらい、RedSunに勝ったことに誇りを感じていた。いや、このときばかりは、理亜、昔の理亜、絶対に勝ちにいった、勝つことこそ正義、そんな心情だったのかもしれない。

 そして、理亜、ルビィに電話をするなり、開口一番、

「ルビィ、ついにやった!!ルビィたちを苦しめていたRedSunを打ち倒した!!もうこれでルビィたちは苦しまなくてすむ!!」

と意気揚々とルビィに話した。これには、ルビィ、

(へぇ~、理亜ちゃん、桜花ちゃんたちRedSunに勝ったんだ・・・)

と理亜の言葉を淡々と聞いていた。ルビィはこのとき、理亜・花樹組がRedSunと戦うことは知っていた。だが、それと同時に、

(でも、理亜ちゃん、なんか、昔の理亜ちゃんに戻った気がする。ルビィたちのためにRedSunに勝ったこと、それは嬉しいけど、それじゃ、理亜ちゃん、昔の理亜ちゃんに戻っちゃうよ!!)

と昔の理亜に戻ったことをすぐに悟ったのかのようにそう思うとすぐに、

(そんな理亜ちゃん、ルビィ、嫌だよ!!なら、ルビィがここで理亜ちゃんを戻してあげる!!)

と理亜のことを思ってか、きつい口調で理亜に対し、

「理亜ちゃん、めっ!!」

と理亜を叱りつける。これには、理亜、

(えっ、ルビィ、なんで怒っているわけ?)

と思ったのか、

「ルビィ・・・」

と唖然となってしまった。

 そんな唖然となる理亜に対し、ルビィ、

「理亜ちゃん、ルビィね、ルビィたちを苦しめている桜花ちゃんたちRedSunを倒してくれて嬉しいよ!!」

と言うと、理亜、

「それならルビィも嬉しいはずじゃ・・・」

と答えると、ルビィ、力強い口調でこう理亜に諭した。

「でもね、ルビィ、そんな理亜ちゃんを見て少し不安に思うの。理亜ちゃんがルビィたちのかたきをとるためにRedSunを打ち倒したい、RedSunに勝ちたい、そんな思いっで戦っているなら、ルビィ、そんなの悲しいよ!!だって、理亜ちゃん、昔の理亜ちゃんに、1年前の理亜ちゃんに、「勝つこと」だけを考えている、そんな理亜ちゃんに戻っちゃった、そう思えるもん!!そんなの、ルビィ、いや・・・。ルビィね、今までの理亜ちゃんに、お姉ちゃんの聖良さんとあつこさんと一緒にスクールアイドルをめいいっぱい楽しんだ、ラブライブ!延長戦のときから今までの理亜ちゃんに、戻ってほしいの!!」

このルビィの言葉を聞いた瞬間、理亜、自分の心にあることを問いかける。

(えっ、私、昔の自分みたいに・・・、「勝つことがすべて」、そんな考えに染まった昔の私みたいに戻っていたわけ・・・。どうして・・・、どうして・・・)

 すると、理亜、あることを思いだす。

(あっ、そういえば、私、ルビィたちからRedSunから苦しめられていることを聞いて、ルビィたちのかたきをとろうと思ってRedSunに絶対に勝とうとしていた・・・。そのせいで、私、昔の私みたいに・・・、「勝つこと」のみを考えて行動していた・・・)

そう、理亜はRedSunとの邂逅の日の夜、ルビィから今の静真でのルビィたちの現状を、RedSunに苦しめられていることを聞いた。そのため、理亜はそのルビィたちのかたきをとるためにRedSunに勝とうと思い、必死になってRedSunとの戦いに向けての練習を行っていた。そして、RedSunに勝った今、ルビィたちのかたきをとった、RedSunに打ち勝ったことに理亜は喜んでいたのだ。ルビィはそれを見て、理亜に対し、昔の理亜に、「勝つこと」のみを追求していた理亜に戻ったと思い、そこを指摘してきたのだ。

 そして、理亜は猛省する。

(うぅ、そう考えると、私、とても悲しいことをしたと思えてくる・・・。今の私は、「スクールアイドルを楽しむこと」「スクールアイドルを好きになること」、というスクールアイドルとして大事なことを実践しようと頑張ってきた。でも、RedSunと出会ってから、私、昔の私に、「勝つこと」のみを追求する私に、戻ってしまった・・・。そんなの・・・、ルビィを悲しめることなんて・・・、もういや!!今までの私に戻る・・・)

 その思いのもと、理亜、ルビィに対し、

「ルビィ、ごめん。私、間違っていた・・・。RedSunの話を聞いたとき、私、ルビィたちのかたきをとりたい、そう思って、RedSunに絶対勝とうと、勝つことだけを考えていた。でも、それ自体間違っていた・・・。スクールアイドルを楽しむこと、それこそ大事、って忘れていた・・・。本当に、ルビィ、ごめん・・・」

と泣きながら謝ってきた。これには、ルビィ、

「うん、理亜ちゃん、ルビィのほうこそごめんなさい。理亜ちゃんにRedSunの話をしちゃったから理亜ちゃんは変わったんだね。ルビィもそのことを理亜ちゃんに話さなければ理亜ちゃんは変わらなかったんだと思うんだ・・・」

と逆に理亜に謝ると、理亜、そんなルビィに対し、

「ううん、ルビィ、私、ルビィの言葉で気づいた・・・、私が間違っていたことを・・・。だから、言わせて、ルビィ、本当の私を思いださせてくれて、ありがとう」

とお礼を言うと、ルビィ、

「うん!!ルビィも、本当の理亜ちゃんに戻って、嬉しい!!」

と喜んでいた。

 このルビィとの電話のあと、理亜はあることを考える。

(私がRedSunに勝ちたい、そう思ってRedSun戦に向けて頑張っていた・・・。なら、花樹も私と同様にRedSunに勝ちたい、「勝つこと」を追求したい、そう思っていたのかもしれない。桜花たちRedSunとの会話のなかで、花樹、Aqoursのことをバカにされて怒っていたから・・・)

そう、理亜は花樹のことを考えていた。桜花たちRedSunと理亜、花樹との会話のなかでAqoursのことを桜花にバカにされて花樹は相当怒っていた。花樹にとってAqoursは憧れの存在では、と薄々感じていた理亜にとってそんなAqoursをバカにされて花樹自身相当怒っていた、そのため、花樹も理亜と同様にRedSunに勝ちたい、「勝つこと」のみを追求したい、そう思ったに違いない、そう理亜は考えたのである。

 そして、理亜は花樹に対しある心配とある決意をする。

(そして、もし、RedSun戦での勝利によってまだスクールアイドル初心者である花樹が勝利に対する欲求が強くなれば、きっと、昔の私みたいに、「勝つことこそすべて」、そう考えていた昔の私みたいに思うようになってしまう。それだけは阻止しないと・・・)

花樹はまだスクールアイドル初心者である。そんな花樹が今回の勝利により、「勝つこと」に重点を置くようになれば、きっと、昔の自分みたいに、「勝つこと」だけを追い求めてしまい自滅した自分みたいになってしまう、そう理亜は危惧したのだ。なので、スクールアイドルの先輩である理亜がそうならないように花樹を導かないといけない、そう理亜は決心したのだ。

 ただ、それが理亜の苦悩の始まりになるとはこのときの理亜は知る由もなかった・・・。

 

 そんな理亜の話を聞いて、こころ、あることを考える。

(ふ~ん、理亜さん、この新人さん(花樹)のことで苦しんでいるのですね。なら、ここは、この私たちがこの新人さんにお灸をすえようじゃありませんか)

こころ、なにか悪だくみを考えているようだ。実は、こころあ、別名、いたずらシスターズ、とも言われていた。よく自分たちのまわりに対しいたずらを仕掛けることがあるのだ、こころあが・・・。むろん、オメガマックスにこころあ2人が加入したのもいたずらがきっかけだった。そんな意味でもこころあの2人は危険人物だった。

 そして、こころ、ここあに対し、

「ここあ、ちょっとこっちに来てください」

と言ってはここあを呼び寄せるとここあの耳元で、

ごにょごにょ

と周りに聞こえないような小声で言うと、ここあ、

「うん、わかった!!」

と了解の様子。この2人の様子に、あつこ、

「う~ん、なんか、こころあの2人、悪いことを考えているような気がします・・・」

とこころあに対し不信感をもつ。

 ただ、そんなことなんて気にせず、ここあ、理亜に対してこう宣言してしまった。

「理亜たん、ここあ、決めたよ!!理亜たんのユニットに絶対勝つ!!ここあたちの真の実力、理亜たんとそこの花樹っちにみせてあげる!!めいいぱいスクールアイドルを楽しんで、めいいっぱいスクールアイドルを好きになって、本当のスクールアイドルの姿、みせつけてあげる!!」

これには、花樹、売り言葉に買い言葉なのか・・・、

「ふんっ!!そんなの関係ないね・・・です・・・。花樹たちは絶対に勝つ・・・のです・・・。あとで泣きべそをかくな・・・です・・・」

とここあに対し言い返してしまう。ただ、これには、理亜、

「花樹・・・」

と少し不安そうになるも花樹はやる気だった・・・、いや、自信満々であった。むろん、この花樹の対応に対し、こころ、

ニヤリ

と不敵な笑いを浮かべていた。

 こんなこころあと花樹のやり取りを近くでみていたあつこ、ついこう思ってしまった。

(なんか、この最終予選、荒れに荒れてしまいそうです・・・)

どうやら、あつこ、これから起こることに一抹の不安を感じたようだ・・・。

 

 そして、ついに最終予選本番を迎えた。理亜と花樹はマネージャーであるあつこをつれてステージ袖にてほかのスクールアイドルのステージを見ていた。

 そのなかで、理亜は花樹に対しあることを言った。

「花樹、ほかのスクールアイドルのスクールアイドル、よく見て。最終予選に出ているスクールアイドルは実力者ばかり。勉強になる。いいところは学びなさい」

この発言、1年前の理亜だったら言えない言葉だったのかもしれない。1年前の理亜は「勝つこと」だけを考えていた。いや、たとえそうでなくてもスクールアイドルに真面目に取り組んでいないグループがいればそのグループに対し厳しいことを言っていただろう。だが、今の理亜は1年前とは違った。Saint Snowを率いた姉聖良はもういない、3年生のあつこがいるがただのマネージャーである、多分・・・。なので、スクールアイドルを初めて数か月の花樹を引っ張っていくのは自分しかいない、そんな自覚が理亜のなかにあるのかもしれない。また、今の理亜にはスクールアイドルにとって1番大事なこと、「スクールアイドルを楽しむこと」「スクールアイドルを好きになること」、それを自覚している。なので、今の理亜は最終予選に出ているスクールアイドルたちの実力をみとめており、そのスクールアイドルたちのいいところを自分たちにも活かそうとしているのかもしれない。

 だが、1年前の理亜と似ている花樹にとってみれば今の理亜の発言は・・・、

(今は「勝つこと」が先決!!いや、理亜さん以上に強いスクールアイドルはAqoursしかいない!!)

と聞く耳持たずであった。

 ただ、それでもユニットリーダーである理亜の言うことなので、花樹、

(まぁ、盗めるものは盗めばいいんだし、一応見とく・・・見ます・・・)

と仕方なくほかのスクールアイドルのステージを見ることに・・・、なのだが、いろいろと見ていくうちに、花樹、ある結論に達する。

(どのスクールアイドルも理亜さんやAqoursよりうまくない!!盗めるところがない!!)

なんと、ほかのスクールアイドルのステージも(自分の評価で)うまくない、「いいところは学びなさい」と理亜に言われるもそんなところはない、と評してしまった。なぜなら、

(どれも、オ・・・、花樹がみたSaint Snow VS Aqoursのラブライブ!延長戦と比べてレベルが低すぎる!!ここにいるスクールアイドルのステージを見るより延長戦をずっと見たほうがいい!!)

なんと、花樹が過去に見たことがあるラブライブ!延長戦のSaint SnowとAqoursのステージと比べて最終予選に出ているスクールアイドルのレベルが低すぎる、というのだ。まぁ、たしかに、ラブライブ!延長戦での2組のステージ、パフォーマンスはスクールアイドル史上最高レベルのものであるのでここにいる最終予選に出ているスクールアイドルたちのステージやパフォーマンスはそれと比べて低いと言われても仕方がないのだが、それでも、スクールアイドルを初めて数か月の花樹と比べたら最終予選に出ているスクールアイドルたちのレベルはどのグループも非常に高い、と思うのですが・・・。それでも、今の花樹の認識からすれば、ラブライブ!延長戦での2組のレベルより低いスクールアイドルのステージを見るよりラブライブ!延長戦のステージを見る方がいい、そう花樹は判断したのかもしれない。ある意味、今の花樹は自分の考えに固執しすぎているのかもしれなかった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(5)

 そして、あともう少しで理亜・花樹組の出番となった。あと1組終われば自分たちのステージ、ということで、花樹、

「もうすぐ花樹たちの出番・・・です!!今日も圧倒的なパフォーマンスをして圧倒的な差で勝利してやる・・・です!!」

と「勝利すること」に意識しすぎているせいか、自信満々に答えた。

だが、そんな花樹に対し理亜はこう進言した。

「花樹、次はあの双子、こころあのステージ!!2人は今までのスクールアイドルとは違う、全国でもトップレベルの実力の持ち主。よく見て!!」

ただ、この理亜の言葉に、花樹、

(いくら全国でもトップクラスの実力をもってしても理亜さんにはかなわないはず!!今は「勝つこと」だけを考えるのが先!!はやくステージに立って圧倒的なパフォーマンスをみせてやる!!)

と、こころあのことはあまり意識せず。そんな態度をみせていた花樹に対し、理亜、

「花樹!!」

と強く注意すると、花樹、

(う~、理亜さんが怒っている・・・。このままだとあとでなにか言われるかわからないから見るしかないか・・・・ないです・・・)

と仕方なくこころあのステージを花樹は見ることにした。

 そんな花樹に強く注意した理亜は思わず、

ハ~

とため息をつくとともに、

(私もあのとき(去年度の夏季大会決勝)は花樹と同じく優勝したこころあたちのパフォーマンスを見ていなかった。でも、あの大会では「勝つこと」だけを目指していた私たち(Saint Snow)は8位、こころあたちは優勝。それくらい、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」の想いが強い、そんなこころあたちのパフォーマンスは「勝つこと」ばかり意識していた私たち(Saint Snow)のパフォーマンスよりも上だったと思う。そして、それは今でもそうかもしれない。対して、私は、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」に関してはまだ初心者だし花樹は「勝つこと」だけに意識しすぎている・・・。果たして、私たち(理亜・花樹組)のパフォーマンス、2人につうじるのか・・・)

とある種の不安を感じていた。1年前、理亜は今の花樹と同じく「勝つこと」のみに執着していた。そのため、このとき(去年度の夏季大会)のこころあたちのステージなんてあまり見ずに自分たち(Saint Snow)のステージに向けて集中していた。だが、その大会の結果は、「勝つこと」のみに執着していた、理亜、いや、姉聖良を含めた、「勝利こそすべて」という考えが支配的だったSaint Snowは全体の8位、対して、スクールアイドルとして大事なもの、「スクールアイドルを楽しむこと」「スクールアイドルが好きになること」、それを全力で実践してきたこころあたちが優勝、だった。それを、今、いや、こころあと同じ考えを持つようになった理亜がそれについて考えたとき、レジェンド級のスクールアイドルになるくらい「スクールアイドルを楽しむこと」「スクールアイドルを好きになること」のスペシャリストであるこころあに対し、実力的には負けていないものの「楽しむこと」「好きになること」に関してはそこまで長けていない理亜たちがつうじるのか不安だった。いや、それどころか、

(それに、「勝つこと」のみに執着しようとしている花樹を正しい方向へと導けないままだしまだ私たちの輝きを見つけていない。対して、あのこころあは・・・、すでに自分たちだけの輝きを持っている・・・。そんなこころあに、私たち、対抗できるのだろうか・・・)

とさらなる不安を募らせていた。理亜は今日まで「勝つこと」だけに執着している花樹を正しい方向へと、「勝つこと」ではなく、「楽しむこと」「好きになること」、を重視してほしい、その方向へとどう導けばいいのか悩んでいた。だが、今になっても納得がいく方法を理亜はみつけることができなった。さらに、そんな状態では自分たちだけの輝きさえみつけることができない、このままだと、この2年間ちょっとのあいだ、オメガマックス、みやことのグループ、そして、双子としての想い、想い出、キズナ、そんな複数の輝き・宝物を持ったこころあに自分たちは対抗できるのか、そんな不安を理亜はさらに重ねていたのである。

 そんな理亜と花樹に対しステージに上がろうとするこころあの2人。そんなこころあの2人は理亜と花樹を見るなりこう話しかけてきた。

「理亜さん、私たちも、この1年のあいだ、実力をつけてきました。それに加えて自分たちの輝きも磨いてきました。なんで、見ていてください、あのラブライブ!延長戦でみせた、あなたたちSaint Snow、そして、Aqours、に負けないくらいの、いや、それ以上の、私たちのパフォーマンスを!!」(こころ)

「花樹っち、ここあたちのパフォーマンス、見ていろ!!花樹っちが落ち込むくらいのもの、みせてやるぜ!!」(ここあ)

このこころあ2人の言葉に、理亜、花樹はというと・・・、

(こころあの2人、1年前、ラブライブ!夏季大会で優勝したころからさらに磨きをかけてきた・・・。そうなると、このこころあのステージ、百戦錬磨の私ですら圧倒されるくらいのステージになるはず・・・。果たして、私、このステージ、終わった後、立っていられるのだろうか・・・)(理亜)

(ふんっ!!そんなの関係ない!!勝つのは私と理亜さんの組!!オ・・・、花樹が落ち込むことなんてないはず!!)(花樹)

と、不安が募る理亜といまだに自信満々の花樹、対照的なものを感じさせていた。

 そんな2人をみてか、理亜と花樹の隣にいたあつこはこう思ってしまう。

(理亜さんに花樹さん、こころあのステージを見て大丈夫でしょうか。私もこころあの2人の先ほどの発言を聞いて、このこころあのステージ、きっとすごいものになる、そう感じました。そうなると、理亜さんと花樹さん、精神的にダメージを受けることは必須です。果たして理亜さんと花樹さんはそれに耐えきれるでしょうか・・・)

あつこは長年ものあいだ、Saint Snowのサポーターとして聖良と理亜を支えてきた。なので、スクールアイドルに関しては理亜並みにわかるつもりだった。なので、あのこころあ2人の発言から、こころあ自身、このステージに大きな自信を持っている、これまで以上のすごいステージをみせる、それくらいの気迫を感じていた。そんなステージを見て、理亜、花樹、ともにそれに耐えきれるのか、精神的にダメージをもらい自信喪失するのではないか、あつこはそう考えてしまったのである。

 だが、そんなあつこをよそに始まろうとしていた、こころあのステージが・・・。ついにこおろあの名前が呼ばれたのだ。

「さ~て、次は~、去年度のラブライブ!夏季大会では優勝、冬季大会では準優勝!!レジェンドを超えたレジェンド!!もう、スクールアイドルの申し子、と言っても間違いなし!!大総大学付属札幌高校、スクールアイドル部、こころあ!!」

 その瞬間、

「みんな、お待たせだぜ!!」(ここあ)

「せいっぱい頑張るからね!!だから、みんな、応援してください!!」(こころ)

とこころあのステージを見ている観客たちに対して大声で叫ぶとその観客たちから、

ウォ~

という大きな声援が聞こえてきた。これには、花樹、

(えっ、あの2人、なんで、観客たちを盛り上げているわけ・・・。なんで・・・)

と困惑気味になる。ただ「勝つこと」だけに執着している花樹にとってこころあがなぜ観客たちを盛り上げているのかわけがわからなかったようだ。

 一方、理亜はというと・・・、

(やっぱり、こころあの芸当、2年間ちょっとのスクールアイドルとしての経験と偉大なる姉(矢澤にこ)の姿を見てきたこと、そして、こころあが持つあの考えを全面に押し出してきたこと、それがあるからこそできたと私は思う。こんな巨人に、私たち、本当に太刀打ちできるわけ・・・)

と、こころあの凄さを実感しつつもそれに対して自分達は対抗できるのか不安を募らせていた。

 そして、こころあが自分たちのポジションについた、その瞬間、

「それでは始めます!!」

というこころの声が会場中にとどろくと共に、

「それでは、It’s Show Time!!」

のここあの声でもって2人のステージは幕を開けた・・・。

 

 

第5話 挿入歌 「We enjoy School Idol!!」

 

We Like School Idol!!

We Love School Idol!!

We enjoy School Idol!!

 

毎日 私たちは 一生懸命!!

(We Like School Idol!!)

みんなと一緒に 楽しんでいる!!

(We Love School Idol!!)

毎日 毎日 とても楽しい

(We enjoy School Idol!!)

だから みんな一緒に 合言葉 言おうぜ!!

 

We Like School Idol!!

We Love School Idol!!

We enjoy School Idol!!

 

 

 まだ曲の前半、というのに観客たちから

「We enjoy School Idol!!」

という合いの手が聞こえてきた。これには、花樹、

(な、なんなの、このステージは!!こころあのパフォーマンスとともに観客たちが合いの手をいれてくる・・・。まるで会場が一体になっているみたい・・・。なんなの・・・、もう・・・)

と観客たちと一体となってパフォーマンスをするこころあの姿に唖然となってしまう。

 一方、理亜はというと・・・、

(やっぱり、こころあ、レジェンド級のスクールアイドル・・・。会場の観客たちを巻き込むほどのパフォーマンス、してくる・・・。果たして、今の私たち、こころあみたいなこと、できるの・・・)

と、こころあの凄さを改めて実感するとともにそれが自分たちにできるのか自問自答していた・・・。

 

 

毎日毎日が   ジェットコースター

飽きるなんて  ナッシング!!

すべてがすべて 楽しんだ!!

だから みんな せ~ので言おうぜ!!

 

We Like School Idol!!

We Love School Idol!!

We enjoy School Idol!!

 

 

 ついにサビに入る、そのとき、こころあ、

(さぁ、みんな、いくぜ~!!ここあたちは、今、みんなと一緒に、スクールアイドルを・・・、楽しんでいる!!そして、より一層、スクールアイドルを好きになっている!!この無限のサイクルを、みんなと一緒に、楽しもうぜ!!)(ここあ)

(私たちはみんなと一緒にスクールアイドルを楽しんでいます!!だから、みんな、私たちと一緒にどんどん盛り上がっていきましょう!!そして、どんどん楽しんで、どんどんスクールアイドルを好きになってください、みんな!!)(こころ)

という心のなかでの呼びかけとともに、

「さぁ、みんな、いくです!!」(こころ)

「限界まで突っ走れ!!」(ここあ)

と大声でさけんだ。これには観客たちから、

ウォーーー!!

という会場を揺るがすような大声が飛んできた。これには、花樹、

「えっ、えっ、なに!!」

と体が飛び跳ねるような声をあげてしまう。

 一方、理亜はというと・・・、

(ついにこころあの本当の実力が・・・、会場すら一体化するくらいのこころあの凄さが発揮されようとしている・・・。果たして、花樹は・・・、いや、私は・・・、それに耐えられるだろうか・・・)

と、これから起きることに対してある種の恐ろしさを感じていた。

 なにはともあれ、こころあについにサビへと突入した・・・。

 

 

私たちはスクールアイドル大好き!!

みんなと一緒にスクールアイドル

楽しんで 楽しんで 楽しんで

めいいっぱい めいいっぱい めいいっぱい

スクールアイドルを スクールアイドルを

好きになって 好きになって 好きになって

すべてをレインボーに染めてやる!!

私たちこそ スクールアイドル!!

すべてをすべて 巻き込もうぜ!!

 

私たちはスクールアイドル!!

無敵のスクールアイドル!!

 

 

 そして、ついにこころあのステージが終わった。その瞬間・・・、

ウォーーー!!

という観客たちの声が会場中に響き渡る・・・と同時にステージ袖でずっとこころあのステージを見ていた花樹は、

(こ・・・これが・・・スクールアイドルのステージなの・・・。これまでの(最終予選に出ているスクールアイドルたちの)ステージとは別次元・・・、いや、レベルが違い過ぎる・・・。今までのステージがひよこクラスならこころあのステージはドラゴンクラス・・・。こ、この2人・・・、凄すぎる・・・)

という思いからか、

「・・・」

と絶句してしまった・・・。

 一方、理亜はこんな花樹の姿を見ては、

(花樹、これが全国トップレベルの実力・・・、いや、レジェンド級のレベルのパフォーマンス!!こころあの2人、会場にいる観客全員を巻き込みながら、みんなと一緒に、「スクールアイドルを楽しもう」、「スクールアイドルを好きになろう」、としていた・・・。それが、こころあ2人の、パフォーマンスの凄さ・・・)

と、(心のなかで)こころあの凄さを言葉で表そうとしていた。こころあは2年前からスクールアイドルとして「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を実践してきた、いや、それ以上に、こころあは会場中の観客たちを巻き込みながらもみんなと一緒にそれを実践してきたのだ。そのため、こおろあのステージはいつも会場にいるみんなと一体化しながら誰もが「スクールアイドルを一緒に楽しもう、好きになろう」としてしまう、そう思えるくらいの凄いパフォーマンスをしてくるのだ。それを理亜は今のこころあ2人のパフォーマンスで再確認していたのだ。

 そして、理亜は絶句する花樹を見てこう思った。

(花樹、このこころあ2人のパフォーマンスを見てどう思う?あまりにレベルが違い過ぎるステージ、いや、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それを最大限に実践してみせた2人のステージ、それをみて、花樹、自分の考えを変える気、あるの?)

これまでラブライブ!延長戦でのSaint SnowとAqoursのステージ以外のスクールアイドルの・・・本当の・・・、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」・・・、それを最大限に活かした・・・、そのステージを見たことがない、そんな花樹が、たった今、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それに一番長けている、レジェンド級のレベルを持つ、そんなこころあのステージを見てそれを実感、それによって花樹の考えが変わるのか、と、理亜は思ったのである。

 と、そこに、ステージを終えたばかりのこころあが花樹のところに近づいてきた、そのとき、ここあ、花樹に向かって、

「花樹っち、これがここあたちの本当の実力だぜ!!思い知ったか!!」

と花樹をおちょくるような発言をしてきた。これには、花樹、

(う~、いくらいいパフォーマンスをしたからといって、オ・・・、花樹たちをおちょくるのはおかしすぎる!!花樹と理亜さんのパフォーマンスだって絶対に負けていない!!それに、花樹は・・・、俺は・・・、おばあちゃんに「絶対に勝ってラブライブ!で優勝する!!」と誓ったんだ!!絶対にこころあに勝ってやる!!)

と、どうやら自分の意地のせいか、いや、絶対に勝ちたい、そんな「勝ち」にこだわるあまりなのか、「こころあに絶対に勝ってやる!!」、そんな強気な思いが出てしまった。そのため、花樹、ここあに向かって、

「ここあさん、花・・・、俺、絶対に、あなたたちに、勝つ!!」

とにらみながらこう宣言してしまった・・・。むろん、これには、理亜、

「花樹・・・」

と不安そうに花樹を見ていた。どうやら、理亜の願いむなしく、逆に花樹の闘志に火をつけてしまったようだ・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第5話(6)

 そして、ついに理亜・花樹組の出番となった。ステージ袖に立つ大会スタッフから、

「函館聖泉女子高等学院理亜・花樹組、準備をお願いします」

ともうすぐ出番であることを伝えられると花樹と理亜の隣にいたあつこから、

「理亜さん、花樹さん、もうすぐ出番です。頑張って・・・」

と声援が送られると、理亜、

(こころあのステージ、やっぱり凄い・・・。私と姉さまとのSaint Snowに負けないくらいの盛り上がり・・・。こころあ、やっぱり、スクールアイドルの申し子、と言われるだけのことはある。でも、私も負けない。こころあの2人以上に、スクールアイドルを楽しんで、スクールアイドルを好きになって、絶対に凄いパフォーマンスをみせる!!そして、1位通過を狙う!!)

と心のなかで誓う一方で・・・花樹の方を見ては、

(でも、今の花樹に対して、私・・・、このステージでスクールアイドルにおいて大事なこと、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を伝えることが・・・、教えることが・・・、できるだろうか。いや、それ以上に・・・、花樹、昔の私みたいに・・、「勝つこと」のみに固執してしまい焦りを感じて満足がいくパフォーマンスができない・・・、なんてことが起きないだろうか・・・)

と花樹に不安を感じていた。

 一方、花樹はというと・・・、

(俺は必ずこころあ以上のパフォーマンスをする!!そして、絶対に勝つ!!スクールアイドルにおいて「勝つこと」が1番なんだ!!そうじゃないとおばあちゃんとの約束を守れないのだから!!)

とあくまで「勝つこと」に執念をみせていた、自分の首にぶら下げている十字架上のペンダントを強く握りしめながら・・・。

 そんな2人を隣で見ていたあつこは、このとき、ある種の不安を感じていた。

(見る限りでは、2人とも、そこまでこころあのステージにおけるダメージはなかったと思います。ですが、それ以上に、理亜さんと花樹さん、2人に徹底的な違いが、スクールアイドルにおけるスタンスの違いがはっきりと現れたかもしれません。理亜さんはあくまで「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を考えてパフォーマンスをすると思います。対して、花樹さんは1年前の理亜さんと同じ、「勝つこと」を重視してパフォーマンスをすると思います。もし、このままの状態で2人がパフォーマンスを続けていたら、きっと、どこかでほころびが出てしまいそうです・・・)

そう、このとき、花樹と理亜、2人にはスクールアイドルにおけるスタンスに違いがみられるようになったのだ。理亜は過去の経験からあくまで「スクールアイドルを楽しむ、すきになる」ことを重点にパフォーマンスする、対して、花樹は「勝つこと」のみ追求しようする、こうなると理亜と花樹の思いははまったく別々の方向に進んでしまう、結果、2人のあいだにすれ違いが起きてしまい2人のステージに悪影響が出てしまう、そうあつこは思ったのである。

 だが、それと同時にあつこにはある種の・・・、

(でも、私はなにもできません・・・。だって・・・、私は・・・、ただの2人のマネージャーだから・・・。私が弱虫のせいで・・・、私が2人みたいにステージでパフォーマンスできないばかりに・・・、私がなにもできないばかりに・・・、理亜さんと花樹さん、2人に迷惑をかけているのですから・・・)

ある種の諦めに満ちたものを感じていた、自分の足に残るスティグマを触りながら・・・。

 

 そして、理亜と花樹、2人がステージにあがるとそれに合わせていつものハイテーションな女子レポーター兼司会者が2人のことを紹介する。

「続きして~~~、前回のラブライブ!冬季大会ではおしくも最終予選敗退・・・。しかし、その後、ラブライブ!覇者Aqoursとの一騎打ちとなったラブライブ!延長戦ではAqoursと互角の勝負をした北の覇者!!今回は新しいユニットとしてついに参戦!!函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部、理亜・花樹組!!」

 この瞬間、観客席の方を見る理亜。すると・・・、

(あっ、私たちのことを応援しに来た学校の人たちが少ない・・・)

そう、理亜たちを応援しに来ていた学校の関係者や生徒があまりにも少なかったのだ。いや、そのなかには・・・、

「ねぇ、あの猪鹿蝶のステージって本当に凄いの・・・。信じられないのだけど・・・」

「まぁ、凄いんじゃない・・・、あんまり知らないのだけど・・・」

と、理亜たちの応援のために来ていた・・ようにみえない生徒たちもいた。これには、理亜、

(まぁ、今、最終予選が行われている場所が札幌だから仕方がないかも・・・)

と妙に納得してしまう。そう、前回の最終予選は函館アリーナで行われていたのだが、今回の最終予選は札幌にある札幌アリーナで行われていた。理亜たちが通う聖女は函館にある以上、ここ札幌に理亜たちを応援しに来る生徒たちが少なくても仕方がない、そう理亜は思っても仕方がなかった・・・。だが、それでも理亜たちを応援しに来る学校の人たちが少ないことはある種のなにかを感じさせてもおかしくなかった・・・。

 とはいえ、もう理亜と花樹のステージは始まろうとしていた。理亜、花樹に対して声掛けを行う。

「花樹、いく!!全力、出して!!全力で、パフォーマンス、して!!」

これに呼応してか、花樹、大きな声で、

「はい、わかりました、理亜さん!!オ・・・、花樹、勝利に向けて、全力で、頑張ります!!」

と返事をすると自分達のポジションにつき歌い始めた。

 

 

 

第5話 挿入歌 「Loser(敗れし者たち)」

 

なんで俺は負けたんだ!!

(この負けには価値がある!!)

 

俺はこの勝負に負けた!!

(私はこの勝負に負けた)

俺は勝つ気でいたんだ!!

(私も勝つ気でいた)

だから負ける気なんてなかった!!

(私も負ける気がなかった)

でも 負けてしまったんだ!!

(でも 負けてしまった)

 

 

 最初の方は上々、なにもほころびもなく、むしろ、完璧なパフォーマンスだった。ただ、このとき、2人のなかである種のすれ違いが起きていた。理亜、このとき、

(ここまでは順調。これならいける!!いや、この曲を通じて花樹にスクールアイドルにとって大事なものを伝えるチャンスかも!!)

と、今こそ花樹に大切なことを伝えるチャンスだと思い、花樹の心に対して、

(花樹、花樹、この曲を通じて一番大事なことを伝える!!)

と呼びかけを行うも、

(あれっ、花樹の心につながらない・・・。花樹・・・、花樹・・・)

と何度も何度も心のなかで呼びかけるも花樹の心にはつながらなかった。

 一方、花樹はというと・・・、

(ここまでは完璧!!ならば、もっと、心を燃やして、もっともっと、心を熱くして、今まで以上のパフォーマンスを、あの理亜さんに負けないくらいのパフォーマンスをして、こころあに、絶対に、勝ってやる!!こころあよ、桜・・・、俺の実力をみろ!!おばあちゃん、俺の姿、見ててくれ!!)

と自分の心をたぎらせては勝利の二文字目指して突き進もうとしていた。いや、理亜の呼びかけすら気付かずに勝利への執念だけをみせていた・・・。

 

 

なんで俺は負けたんだ!!

(負けても仕方がない)

負ける要素なんてなかった

(なにが負けた原因でもあったかも)

なのになんで負けたんだ!!

(負けても仕方がなかったかも)

勝つことこそ大事なのに!!

(でも この負けに価値があるんだ)

 

 

 ここまでは完璧・・・だったが、ここにきて、ついに2人のあいだにほころびがでてしまった。理亜は、

(いくら呼びかけても花樹の心につながらない・・・。いったいどうすればいいわけ・・・)

と少し焦りを感じつつも、

(それでも、私は、姉さまから、ルビィから、教えてもらった、「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、それを貫きたい!!「勝つこと」だけに執着していたら、きっと、また絶望を感じてしまう。それはもういや!!こころあ以上に、ルビィたちAqours以上に、スクールアイドルを楽しんで、スクールアイドルを好きになって、私たちが1番だって言わせたい!!そして、そのあかつきには・・・、ラブライブ!優勝・・・、姉さまとあつことの夢を叶えてみせる!!)

と、「姉聖良とあつことの夢、ラブライブ!優勝を叶えたい!!」、そんな理亜のなかにある深淵なる闇をみせつつも、昔の理亜みたいな「勝利こそすべて」の考えではなく、延長戦などを通じて知った「楽しむこと」「好きになること」、それを目指していく、そんな心意気であった・・・。むろん、

(それに、この思いを絶対に花樹に伝えたい!!)

という、それでも花樹にそのことを伝えることも忘れずに・・・。

 一方、花樹はというと・・・、

(まだまだ大丈夫!!どこもミスなんてしていない!!あともう少しで曲が終わる!!最後まで、俺、絶対に、「勝つ」ためにも、全力全開で、パフォーマンス、する!!「勝利こそすべて」、なんだ!!「勝利」、その二文字が大事なんだ!!)

と、ここにきてまで勝利に固執し続けていた。いや、それ以上に・・・、

(じゃないと・・・、おばあちゃんとの約束が・・・、誓いが・・・、果たせなくなる!!ラブライブ!優勝は絶対に叶えないといけないんだ!!そのためにも、俺、勝ち続けないといけないんだ!!絶対に・・・、絶対に・・・、おばあちゃんとのためにも・・・、勝たないといけないんだ!!)

と、首にぶら下げた十字架上のペンダントを見ながらそう心をたぎらせていた・・・。

 だが、そのときだった。あつこ、理亜と花樹を見て、はっとする。

(あれっ、今、一瞬、2人のパフォーマンスにズレが見れた!まさか・・・、私の心配していたことが・・・、起きたわけ・・・)

なんと、一瞬だが、理亜と花樹の2人のパフォーマンスにズレが生じたのだ。その瞬間、審査員席にいる1人の審査員の目が「ギラリッ」と光ったのがあつこには見えた。ただ、これには、あつこ、

(ま、まさか、この一瞬のズレを審査員が見逃さなかった、ということ・・・。ま、まさかね・・・)

とある意味ショックを受けていた。

 ただ、それでも理亜と花樹はそのことを知らずにそのままサビへと進んだ・・・。

 

 

この世は勝つことがすべて

(勝ち負けなんて関係ない)

勝たなければ意味がない!!

(負けても意味がある)

勝ち続けないといけないんだ!!

(いつかは負けることもある)

勝つことがすべてなんだ!!

(負けてもいいんだ)

 

 

 そして、曲が終わった・・・、そおn瞬間、会場中から、

パチパチパチパチ

という大きな拍手が湧き上がった。一瞬のズレがあったにせよ、こころあに負けないくらいのパフォーマンスをみせた理亜と花樹。これには、2人とも、

(ふ~、なんとかやりきった・・・。姉さま、ルビィたち、私、最後までやった。「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、その信念のもと、やりきった気がする・・・)(理亜)

(ふ~ん、これこそ俺が追い求める完璧なパフォーマンス!!これで絶対に勝った!!いや、「勝利」の二文字しかみえない!!)(花樹)

と、「自分たちはやった」、そんな達成感を感じていた、2人ともその思いは近いもの・・・。

 だが、あつこは違っていた。2人のステージを見て、

(2人とも凄いパフォーマンス!!あのこころあにも引けを取らないものだったはず!!)

と褒めつつもサビの前に一瞬みせた2人のズレに対し、

(でも、完璧じゃなかった・・・。あのズレがどう審査員に影響を与えるかわからない・・・。それに、会場の盛り上がりに関してはこころあの方が上。それも影響しなければいいのですが・・・)

と一抹の不安を感じていた。たしかにあつこの言うことも一理ある。たしかにあの一瞬のズレを除けば理亜と花樹は完璧なパフォーマンスをみせた。だが、ただそれだけだった。一方、こころあは会場を盛り上げていた。果たしてそれが審査にどう影響しているか未知数である。でも、あつこにとってみれば、その一瞬のズレも会場の盛り上がりもなにかしら審査に影響がある、そう思えてしまうものだった・・・。だって・・・、あつこは・・・、中3まで・・・フィギュアスケートの世界で・・・多くの審査員から・・・ジャッジを受けて・・・採点されていたのだから・・・。

 

 そして、あつこの心配は当たってしまった・・・。全部の演目が終わり、ついに結果発表・・・。

 

「今回のラブライブ!夏季大会北海道最終予選、結果は・・・、

 

3位 ○○高校○○

 

2位 函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部 理亜・花樹組!!

 

1位 大総大学付属札幌高校スクールアイドル部 こころあ!!」

 

 この瞬間、こころあの2人から、

「ここあ、やったのです!!またもや1位です!!」(こころ)

「どうだ!!ここあたちからすればこれが当たり前なのだ!!」(ここあ)

と大喜びの表情。対して、理亜、

「う~、悔しい!!まさか、あのこころあにまたもやまけるなんて・・・」

と悔しい表情をみせた。

 とはいえ、上位3位までがラブライブ!決勝に進出できるため、理亜はすぐに気持ちを入れ替えては、

「でも、前回の大会(前年度の冬季大会)とは違ってここで終わりにならなくてすんだ。決勝では絶対に、こころあに、そして、Aqoursに打ち勝つ!!そして、ラブライブ!優勝、してやる!!」

とこころあの方を向いてはこう宣言した。もちろん、これには、ここあ、

「おお、理亜たん、よく言ったぜ!!でも、ここあたちだって負けないでしゅ!!」

と少し嚙みながらも受けて立つつもりで言った。

 だが、そのときだった。花樹がいきなり大声でこう叫びだした。

「なぜこころあに負けたんだ!!オ・・・、花樹も、理亜さんも全力全開でパフォーマンスをした。それなのに、なんで、なんで負けたんだ!!」

これには、理亜、

「花樹・・・」

と心配そうに花樹の方を見る。

 すると、1人の審査員が花樹の前に出てきては、

「花樹さん、その質問にお答えしましょう」

と言ってはこころあと理亜・花樹組の差について説明と始めた。

「こころあ、理亜・花樹組、ともに完璧なパフォーマンス、ステージ、でした。ですが、2つだけ違ったところがありました。1つは理亜・花樹組の曲のとき、サビに入る直前に、一瞬、2人のパフォーマンスにズレが生じていました。完璧なパフォーマンスをしている場合、1つのちょっとしたズレでもかなり目立つものです。それを私は見逃しませんでした。そして、こころあは自分たちだけではなく会場にいる観客たちと一緒になってこのラブライブ!を盛り上げようとしました。その意味でも審査にプラスに働きました。その2点により二組に差が生まれたのです」

この審査員の答えに、あつこ、

(まさか、私が不安に感じていたことが現実に起きるなんて・・・。私、マネージャー、失格、なのかなぁ・・・。私、これまでマネージャーとして2人と一緒に頑張ってきた。ただ、それだけ・・・。私は2人になにもしていない・・・、いや、してこなかった・・・。2人のお世話をしているだけ・・・、2人の練習メニューを作ってそれをさせているだけ・・・。2人のサポートしか・・・、ただのお世話しか・・・、していないだけ・・・。積極的に2人に関与していない・・・。それでいいのかな・・・)

と自分のこれまでの行いを自問自答していた。あつこはこれまで積極的に2人に関与してこなかった。花樹のことは理亜にまかせっきりだった。ただの2人のサポーターでしかなかった。けれど、それでいいのか、あつこはそう自分を攻めていた。だが、このとき、

「痛っ!!」

とあつこの足に響くものをあつこは感じた。その痛みを感じたとたん、あつこ、はっとする。

(そうだ!!私にはスティグマがある・・・。このスティグマがある限り・・・、理亜さんと花樹さんには深く関与できない・・・。私が動けば、きっと、このスティグマが開く。そうなれば、私、どうすることもできなくなる・・・、絶望する・・・。だから・・・、私、2人んは深く関与できない・・・)

こうしてあつこは黙ってしまった・・・。

 一方、審査員の答えに、花樹、

「なんなの、その理由!!花・・・、俺は、「勝つ」ために一生懸命やっただけ!!理亜さんも一生懸命やった!!なのに、なんで、なんで、勝てないんだ!!なんで勝つことができないんだ!!」

と大声でこう叫ぶとここあから、

「花樹っち、スクールアイドルにとってとても大事なものを忘れているぜ!!」

と言われてしまう。これには、花樹、

「それは「勝つこと」だろ!!「勝つこと」こそ1番大事じゃないわけ!!」

と大声でここあに言い返すと、ここあ、すぐに言い返す。

「花樹っち、それは違うぜ!!それよりもっと大事なものが・・・」

 そう、ここあが言った瞬間のときだった。突然、ここあの言葉を遮るように、花樹、

「1番大事なことは「勝つこと」!!どんなことがあっても「勝利すること」が1番大事なんだ!!」

という大声で叫ぶとステージから走り去ってしまった・・・。

 そんな花樹の一連の流れを見ていた理亜、ついにあの思いに、達してしまう・・・。

(花樹は私が思っている以上に「勝つこと」に執着している・・・。こうなってしまうと、私、花樹をどう導けばいいのかさらにわからなくなってしまった・・・。いったいどうすればいいわけ・・・。このままだと、私たち、またも空中分解、してしまう・・・。いったいどうすればいいの・・・、姉さま・・・)

そして、理亜は、天を見上げてはここにいない姉聖良に助けを求めようとしていた・・・。

 こうして、波乱のラブライブ!夏季大会北海道最終予選はついに終わった・・・。だが、この最終予選を通じて、理亜、花樹、あつこのなかでうごめくそれぞれの闇は増大してしまった・・・。果たして、続くラブライブ!夏季大会決勝は一体どうなってしまうのだろうか・・・。ただ1つだけ言えること、それは、その決勝、ここにはいないルビィたちAqoursすら巻き込んだ大騒動が起きてしまう、そのことだった。

 と、いうわけで、次回、ラブライブ!夏季大会決勝、ぜひお楽しみに・・・。

 

To be continued

 

Next Story is

 

KAZYU said 「I’ll definitely win!!」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第6話(1)

ついに波乱に満ちたラブライブ!北海道最終予選がついに終わった・・・、そんな次の日、

「俺は勝たないといけなかったんだ!!じゃないとおばあちゃんに・・・」

と花樹は自分の部屋で泣き叫んでいた。ラブライブ!最終予選、「勝つこと」に執着をみせていた花樹、本番でも理亜と共に完璧なパフォーマンスをみせた、そう思っていた。だが、花樹のパートナーである理亜は花樹とは違い、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」という考えのもと、スクールアイドルを精一杯頑張ろうとしていた。そんな、お互いの、その思い、スタンスの違いからなのか、2人のパフォーマンスのなかで、ほんのちょっとしたすれ違い、ズレが生じる場面が1回だけあった。対して、理亜・花樹組と同じく、北海道最終予選に出場していた、レジェンドスクールアイドルの矢澤こころ・ここあ姉妹、通称、こころあ、は持ち前の実力、理亜以上に「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、その思いを最大限に発揮、会場にいた観客たち全員を巻き込むくらいのパフォーマンスをみせた。1位はその2組による争いに・・・。そのなかで、理亜と花樹のあいだで起きたたった1回のズレが花樹・理亜組にとって命取りとなった・・・。そのズレ、および、こころあの観客たちと一体となったパフォーマンスが決め手となりこころあが1位通過となった・・・。

 そんな最終予選であったが、「勝つことがすべて」、という考えに囚われている花樹はその最終予選での敗北に納得がいかないようだ。そのため、花樹は家に帰ってきてからずっと自室で泣いていた・・・、

「俺が勝たないといけなかったんだ!!じゃないとおばあちゃんに・・・」

という言葉を言い繰り返しながら・・・。

 そして、その言葉を花樹が自宅に帰ってきてから100回くらい言い返していた・・・そのときだった。突然、

「花樹、静かにしろ!!」

と、花樹の父親がそう言いながら花樹の部屋に乱入してきた。これには、花樹、

「お、お父様・・・」

と、突然の父親の乱入でびっくりすると、花樹の父親、花樹に対して怒りに満ちた声で花樹に対しこう言ってきた。

「花樹、少しは黙れ!!うるさい!!お前が泣くなんて目障りだ!!うるさくて新聞も読めないじゃないか!!」

これには、花樹、

「でも・・・、俺・・・、戦いに負けて・・・」

と言い訳層に言うと、花樹の父親、そんな花樹に対し、

パチンッ

と平手打ちをぶちかましてきた!!これには、花樹、

「・・・」

と無言になってしまう。

 そんな無言の花樹に対し花樹の父親は、

「お前、俺・・・、じゃなくて、私、と言えっていつも言っているだろうが!!」

という怒りに満ちた言葉とともに、

「それには、敗北というのは価値のないものがするもんだ!!「勝利こそすべて」なんだ!!蒼の方は言った、「世の中は、「勝利こそすべて」、なんだ!!敗北なんて許されない!!」と。「勝つこと正義」「勝利こそすべて」なんだ!!そうでないと弱肉強食の世の中では生きていけないんだ!!」

と力説する。これには、花樹、

「・・・」

とまた無言になる。いや、自分の父親の圧倒的な態度に委縮していた。

 そんな花樹に対し、花樹の父親、さらに畳みかける。

「花樹、いいか、お前は敗北した。それ、すなわち、生きる価値なんてないんだ!!人間の価値は「勝つこと」でのみ決まる。1度でも負けたらそこでゲームオーバー、いや、死、なんだ!!勝ち続けた者だけが生き残るものなんだ!!そして、1度でも敗れた者は、ゴミ、生きる価値なし、なんだ!!」

そんな父親の力説に花樹はただ聞くのみだった。いや、花樹、心のなかでは、

(やっぱり・・・、オ・・・、花樹、いらない娘、なんだ・・・。負けたから価値なんてないんだ・・・)

と自分自身を否定しようとしていた。

 だが、そんな花樹に対し花樹の父親はあることを話す。

「まぁ、そんなお前でも私にとってみれば大事な存在なのだがな・・・」

この父親の言葉に、花樹、

ニャ~

と少し喜ぶも、次の父親の言葉に、花樹、愕然となる。

「私に使える下っ端、いや、私とあの方に仕える奴隷としてな!!」

奴隷・・・、もう花樹の人権すら無視するような言葉だった・・・。そのため、花樹、

「ど、奴隷・・・」

と口をあんぐりさせるも、花樹の父親、そんな花樹を無視をしては自分の言葉を続ける。

「言っておくが、お前は女だ。男である私に一生仕えないといけないのだ。女なんて男の所有物なんだ!!古来より女は男に一生仕えると相場が決まっておる。私はそれにただ従っているだけなんだ!!いいか、花樹、お前は私の所有物でありあの方と私の奴隷なんだ!!」

この花樹の父親、前近代的な考え方、というか、絵にかいたような男尊女卑の考えの持ち主である。現代においてはそんなことを言えばすぐに叩かれるものであるが、ここ花樹の家では家長である花樹の父親が1番権力を持っていることもあり、父の理不尽な言葉ですらまかり通てしまうのである。なので、花樹、そんな自分の父親に対し、

「・・・」

と反抗することすらできなかった。だって、家の中で一番権力がある父親に逆らったら、これから先、生きることなんてできない、自分の父親に花樹の生殺与奪の権利を握られているのだから・・・。

 そんななにも反抗できない花樹に対し、花樹の地位親、さらに責める。

「お前が女である以上、男である私に、いや、あのお方、木松悪斗様に忠誠を誓わないと、いや、この私とあのお方である木松悪斗様のためにお前は働かないといけないんだ!!」

木松悪斗・・・、この物語に時々出てくる名前・・・。どうやら、花樹の父親と木松悪斗、どこかでつながっている、そんな気がするような発言であった。だが、それでも、花樹の父親は花樹に対し言い続ける。

「木松悪斗様は言った、「勝利こそすべて」、だと!!お前はすでに敗者だ!!そんなお前を私は女として、そして、奴隷として育てているんだ!!だから、私はお前にこう命ずる、「黙れ!!少しは静かにしろ!!それよりも、私とあの方のために血を吐いてまで働け!!」

この父親の言葉に花樹はただ、

「はい・・・」

とうなずくだけだった・・・。

 と、ここで黒い話はもう終わり・・・ではなかった。うなずいた花樹に対し、花樹の父親、さらにさらに責める。

「あと、おばあさまの名前を呼ぶな!!私がおばあさまからどんな仕打ちを受けてきたのかわかっているはずだ!!いいか、おばあさまの名前を言うな!!」

どうやら、花樹がおばあちゃんの名を口にしたのが気に食わなかったようだ、花樹の父親は・・・。ただ、このとき、花樹の心のなかでは・・・、

(オ・・・、花樹にとっておばあちゃんはとても大切な存在なんだ・・・。だって、おばあちゃんは花樹の夢を認めて応援してくれていたのだから・・・。最後の最後まで、おばあちゃん、花樹のことを応援してくれたのだから・・・。おばあちゃんは花樹にとって大事な存在なんだから・・・)

花樹にとっておばあちゃんは今でも大切な存在だった。最後の最後まで花樹の夢を認めて応援してくれたのだから・・・。花樹にとっておばあちゃんはかけがえのない存在だった。そのためか、花樹、近くに置いてあった十字上のペンダントを・・・、ダイヤが輝くペンダントを手にとってはぎゅっと握りしめた。

 そんな花樹に対し、花樹の父親、さらに花樹を責める。

「花樹、いいか、おばあさまは、女であるおぼあさまは、私にとって目の上のたんこぶ、だったんだ!!おばあさまは私がしたいことをいつも止めにきていたんだ!!私が男だから、なにをやっても許される、それを女であるおばあさまがいつも止めにきていたんだ!!だから、私は、あの方の組織で、木松悪斗様の組織で結果を出せずに出世できなかったんだ!!すべておばあさまのせいで私はなにも出来なかったんだ!!」

どうやら、花樹の父親、木松悪斗の組織に所属していたみたいのようだ。だが、花樹の父親、おばあさまのせいで目立った行動ができず、出世すらできなかったようだ。ちなみに、木松悪斗は日本有数の投資グループを率いている。それに、木松悪斗の考えは「勝利こそすべて」である。なので、その投資グループのなかでは生き残りをかけて日夜激しい競争を、いや、どんな手でも使う、狂気に満ちた、人を人とはみない、そんな、周りの不幸なんて気にしない、自分たちが良ければそれでよい、そんな金稼ぎをしていた。だが、花樹の父親はそんな金稼ぎをおばあさまから邪魔されていたようでそのために出世できなかったようだ。なので、花樹の父親にとっておばあさまは目の上のたんこぶ、だったようだ。

 ただそんな困惑も花樹の父親は叩き潰す。

「でも、それも過去の話だ!!私は、今、木松悪斗様のために働いている!!この私が、ここ函館にいる以上、あの方、木松悪斗様になにかあったとしてもここ新天地にて再起できるはず!!私は、今、函館にいる者たちに対して「勝ち続ける」ことで木松悪斗様のために頑張っているんだ!!」

花樹の父親は沼津から函館に来た理由、それは、その父親の主である木松悪斗のため、みたいのようだ。その木松悪斗のために働いている、それが花樹の父親にとってとても大事なことらしい。だが、それと木松悪斗がどう関係しているのかわからないことが多い。わかっていることは、花樹の父親は函館にあるディスカウントショップの社長をしていること、花樹の父親の話から、花樹の父親は自分の主である木松悪斗がなにかあったときのために働いていること、(第5話より、)ディスカウントショップの異常すぎる着物のバーゲンセールのせいで函館でも有数な呉服店が潰れたこと、だけだった。まだ情報が少なすぎる・・・。ここでなにかを決めつけるのは難しいかもしれない・・・。

 とはいえ、花樹の父親は花樹に対し怒り口調でこう言った。

「とはいえ、花樹、いいか、もう2度とおばあさまの名を口にするな!!あと、お前は私とあの方のために動くんだ!!いいな!!」

あまりに圧迫したような父親の口調、これにはさすがの花樹も逆らったらなにをされるかわからない、と思ったのか、

「はい・・・」

とまたうなずくしか・・・、いや、そのときだった。花樹の父親、あることを思いだす。

「あっ、そういえば、花樹、今度、ラブライブ!という大会の決勝に出るはずだったな!!」

そう、最終予選2位とはいえ、花樹は理亜とともにラブライブ!決勝に出場することが決まっていた。これには、花樹、

「は、はい・・・。そうですが・・・」

と弱弱しい声で言うと、花樹の父親、ある命令を花樹に下す。

「いいか、花樹、今度、その決勝でAqoursという小娘たちが出る。その小娘たちを完全に打ち倒せ!!完膚なきまで叩き潰せ!!そのためにもそのAqoursに絶対に勝て!!いいな!!」

Aqours、それは木松悪斗にとって天敵であった。静真・浦の星統合問題において、木松悪斗は、1度、AqoursとAqoursと同じく天敵である渡辺月静真高校生徒会会長を叩き潰すも、Aqoursと渡辺月はすぐに復活、その際にAqoursと渡辺月によって痛いしっぺ返しを食らった、いや、木松悪斗率いる投資グループの経済活動が大きく制限されるくらいの大敗北を木松悪斗は喫したのだ。なので、木松悪斗にしてはAqours(と渡辺月)は絶対に叩き潰したい相手であった。そんな木松悪斗とつながっているであろう花樹の父親は自分の子どもである、いや、奴隷である花樹に対し、そのAqoursを、ラブライブ!決勝でAqoursに完全勝利することで、そのAqoursを完全に叩き潰す、ことを命令してきたのだ。まぁ、それによって花樹の父親は木松悪斗に恩を売ることにつながる、のは誰の目であっても明らかであった。

 だが、そんな命令に対し、花樹、

(でも・・・、花樹にとってAqoursは憧れの存在・・・)

とあまり乗り気ではない様子。花樹にとってAqoursは憧れの存在であり1度はAqoursに入ろうと思っていた。そんなAqoursを父親の命令によって叩き潰すこと自体花樹は気に引けていた。そのため、花樹はただ、

「・・・」

とまた無言を貫こうとしていた・・・、というか、そうせざるを得なかった。これが自分の父親に対する花樹のささやかな、今とれる唯一の抵抗だったから・・・。

 だが、花樹の父親はそれすら許さなかった。無言を貫く花樹に対し、花樹の父親、

ドンッ

と花樹の部屋にあった机の上を叩いては花樹に対し、

バシッ

ともう1度平手打ちをかますと大声で、

「いいか、花樹、お前は私の所有物であり私とあの方の奴隷なんだぞ!!私の命令を聞け!!私の命令を聞かないと、こんなもの、捨ててやる!!」

と言うと花樹が握りしめていた十字上のペンダントを強引に奪い取ってはゴミ箱に捨てるような仕草をする。

 すると、花樹、泣きそうな声で、

「ペンダントを捨てないで・・・。これは花樹と・・・を結ぶもの・・・」

と言ってしまう。花樹にとって十字状のペンダントはとても大事なものなのかもしれない。だって、そのペンダントにはあの人の・・・、それに、そのペンダントにはめてあるダイアはあの人の・・・。それくらい、そのペンダントは花樹とその人を結ぶ大事なものだった・・・。

 そんな花樹を見ては、花樹の父親、花樹に対し強くこう言った。

「なら、花樹、私の言うことをききなさい!!絶対にAqoursを叩き潰せ!!Aqoursに絶対に勝て!!「勝つことこそ正義」なんだ!!その正義の鉄槌をAqoursに対し下せ!!いいな!!」

父親からの絶対ともいえる命令、花樹の家における父親の絶対的な権力、そして、花樹が一番大事にしているものを人質にとられている以上、花樹は自分の父親に従うしかなく、花樹、

「はい・・・」

と言うしかなかった・・・。

 そんな花樹に対し、花樹の父親、さらに念を押す。

「いいか、花樹、最後に言っておく。この世の中は「勝利こそすべて」なんだ!!負けることなんて絶対に許されない!!これは私がお前に対し小さいときから言ってきたことなんだ!!「勝利こそすべて」、それがこの世の中における絶対的な法則なんだ!!もうお前には「負け」なんて認められない。絶対にAqoursに打ち勝て!!そして、Aqoursを完膚なきまで徹底的に叩き潰すのだ!!」

花樹が持つ「勝利こそすべて」という考え、どうやら、小さいときから自分の父親に言われ続けてきたことかもしれない。子どもにとって親の思想などからの影響は計り知れない。だって、子どもにとって親はほかの誰よりも長く接するものだから。そんな親からの考えによりその子の考えも定まってしまうことも多い。花樹もその例に入るのかもしれない。そんなこともあり、花樹はただ、

「わかりました、お父様・・・。私、今度こそ勝ちます・・・」

と返事するとともに花樹の心のなかでは、

(もう花樹には負けなんて許されない・・・。負けてしまったら・・・、花樹・・・、生きていけない・・・。だからこそ・・・、負けなんて許されないんだ・・・。絶対に勝たないといけないんだ・・・)

と、負けることなんて許されない、負ければもう生きていけない・・・、絶対に勝たないといけない・・・、そんな思いでいっぱいだった・・・。

 そんな花樹を見てか、花樹の父親、

「いいか、絶対にAqoursに勝つんだぞ!!」

という言葉を残して花樹の部屋を後にする・・・のだが、そのドアを閉めたとたん、なぜかある小言を言ってしまう。

「今、木松悪斗様はピンチに陥っている・・・。そのためにもこの私がなんとかしなくては・・・」

あの木松悪斗がピンチ・・・?果たしてそれはどういうことなのだろうか。果たしてそれはどんなピンチなのだろうか。それについてはあとのお話しになる・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第6話(2)

「オ・・・、花樹は勝たないといけないんだ・・・。じゃないとおばあちゃんとのつながりが・・・」

そうぶつぶつ言う花樹。朝、自分の父親から言われたことを気にしてか、朝からずっとぶつぶつとその言葉だけ発していた。

 そんな花樹に対し、理亜、心配そうに、

「花樹、しっかりして!!」

と言うと、花樹、はっとしたのか、

「あっ、理亜さん・・・」

と理亜の方を向いてこう言うと、理亜、

「花樹、大丈夫?」

と心配そうに花樹に尋ねる。どうやら、理亜、ぶつぶつ言うだけの花樹のことを心配しているようだ。だって・・・、理亜、このとき、こう思っていたから・・・。

(花樹、昨日、こころあに負けたこと、かなりショックだったかもしれない・・・。花樹はこれまで「勝つこと」に執着していた。いや、「勝つ」気まんまんだった。だけど、こころあに負けたことでその反動が花樹にきたのかもしれない・・・)

そう、花樹はこれまで「勝つこと」に執着していた、その反動が昨日の敗北で出たのではないか、理亜はぶつぶつ言う花樹を見てそう思ってしまったのである。人間にはあるものに対して執着することがよくある。花樹の場合、それが「勝つこと」だったのだが、強く執着するほどそれに対しての思いも強くなる、それがそのものに対する行動の原動力となり、その思いが強くなるほどその原動力はさらに強くなるだ。だが、そのものに対してマイナスのことが起きるとその思いに対する反動が起きてしまう。それもそれに対する執着心が強いほどその反動も強くなってしまう。それにより人はそれに対する執着心を失くしてしまうことが多い。まぁ、その反動に耐えれるほどの精神の持ち主・・・というか、必ずリベンジする、そんな考えを強く持っている人にはあてはまらないのだが、花樹の場合、理亜からみれば、「勝つこと」に対しかなり強い執着心をみせていた、が、昨日のこころあによる敗北によりこれまで持っていた「勝利」へのかなり強い執着心の反動が、いや、かなり強い波動が出てしまった、「負けた」ことによるかなり強いショックを受けた・・・、と理亜は花樹をみてそう判断したのかもしれない。

 だが、そんあ理亜の心配をよそに、花樹、

「あっ、理亜さん、大丈夫ですから・・・。花樹、ピンピンしていますよ!!」

と元気があるようなアピールをしてくる。

 そんな花樹に対し、理亜、

「花樹、あまり、無理、しないで・・・」

と優しく?声をかけると、花樹、

「は~い」

とカラ元気な返事をしてしまう。

 ところが、そんなやり取りのあと、花樹、

「花樹は勝たないといけないんだ・・・、じゃないと、おばあちゃんとの・・・」

という小言をぶつぶつと言うだけの存在に戻ってしまった。

 そんな花樹のことを思ってか、ついに彼女が助け舟をだす。

(花樹さん、理亜さんが心配そうに声をかけてもなにも変わらずぶつぶつと言うだけ。このままだと、花樹さん、立ち直れないどころか、ラブライブ!決勝にも支障がでるかもしれません。ここは私がなとかしないとです!!)

そう思ったのか、花樹に対し、突然、

バシッ

と、花樹の肩を叩くとともに、

「花樹さん、昨日はこころあに負けましたが、私たちはラブライブ!決勝に進出しました。その負けた悔しさをバネに、ラブライブ!決勝で、今度こそ、こころあに勝ちましょう!!」

と元気づけした。これには、花樹、

「あつこさん・・・」

と花樹の肩を叩いては元気づけした彼女、こと、あつこ、を見てはそう返事する。そう、花樹を元気づけようと花樹の肩を叩いたのはあつこだった。あつこ、このままだと花樹が立ち直れない、いや、このままの状態だとせっかく進出できたラブライブ!決勝にも支障が出てしまう、と思ってか、花樹に対し元気づけようとしていたのだ。まぁ、あつこにしてみれば、

(まぁ、深く落ち込んでいるメンバーに対して元気づけるのもマネージャーの務めだからね!!)

と、マネージャーとしての仕事を全うしている、そんな感じがしていた。

 そんなあつこからの元気づけ、というか、励ましにより、花樹、

(あっ、たしかにあつこさんの言う通りかも・・・。ラブライブ!はまだ予選・・・。予選でこころあに負けたとはいえ、まだ決勝が残っている!!まだ、おばあちゃんとの夢、ラブライブ!優勝、それが潰えたわけではない!!それに、決勝であのこころあに勝てばいんだ!!そうすればおばあちゃんとのキズナも失わなくても済むし、おばあちゃんとの夢も叶う!!一石二鳥じゃない!!ここでくじけたらダメだ!!オ・・・、花樹、ラブライブ!決勝でこころあに勝って、おばあちゃんとの夢、ラブライブ!決勝を叶えてみせる!!)

と自分を鼓舞するようが如く、こころあにリベンジしてやる、そして、おばあちゃんとの夢であるラブライブ!優勝を叶えてやる、とやる気を取り戻しては立ち直った。

 そして、花樹は大きな声でこう宣言した。

「たしかにあつこさんの言う通りです。オ・・・、花樹、あのこころあに勝ちたい、リベンジしたい、そう思います。花樹、そのためにも、いっぱい、いっぱい、練習して・・・、こころあに勝てる、そんな実力を手に入れます!!」

これには、あつこ、

「花樹さん、その調子です!!私もそんな花樹さんのための練習メニュー、考案してみせます!!「目指せ、こころあ打倒」、です!!」

と言うと、花樹、そんなあつこの手をとっては、

「あつこさん、ぜひお願いします!!」

とあつこにお願いをした。

 だが、このとき、花樹はあることを考えていた。それは・・・、

(それに、よく考えたら、あのこころあに勝てなかったのは、オ・・・、花樹の「勝つこと」にたいする思いが足りなかった、に違いありません!!なら、花樹は、これから、鬼になる!!もっともっと練習して、もっともっと練習して、こころあに勝ってやる!!いや、それ以上に、「勝つこと」に対して貪欲になってやる!!それすれば、たとえきつい練習があったとしても耐えることができる!!そのためにもまずは練習あるのみです!!)

と、いつもの花樹に・・・、いや、今まで以上に「勝利」に対してより貪欲になってしまった・・・、花樹は・・・。

 とはいえ、花樹は元気を取り戻した・・・ということで、理亜、そんな花樹の姿をみては、

「いつもの花樹に戻った・・・。よかった・・・」

と一言言うとあつこに対し、

「あつこ、ありがとう。ぶっきらぼうな私だと、花樹、元気づけることができなかった・・・」

とお礼を言うと、あつこ、少し笑いながらも、

「理亜さん、あんまり落ち込まないでください。元気のないメンバーがいたら元気づけるのもマネージャーである私の役目ですから・・・」

と理亜のことを気に掛ける。これには、理亜、

「あつこ、いつも私も励ましてくれてありがとう」

とまたまたお礼を言った。

 ただ、理亜、それに続けて、あつこに対し花樹に聞こえないような小声でこう言った。

「あと、あつこ、このあと、校舎裏に来て。花樹について、相談、ある・・・」

これには、あつこ、こちらも花樹には聞こえないような小声でこう返事した。

「理亜さん、わかりました。花樹さんのことですね・・・)

 

 そんなわけで、この日は最終予選終わってすぐ、ということで、これでお開き・・・となったのだが、花樹が帰っていったあと、理亜とあつこは校舎裏に移動しては花樹について相談することに。まず、理亜が、

「さっそくだけど、花樹、やっぱり、「勝利こそすべて」、そんな考えに執着している」

と、花樹のスクールアイドルに対するスタンス、考えについて言うとあつこも続けて、

「それは間違いないと思います」

と理亜の言うことを認めたのと同時に、

「でも、それだと、花樹さん、1年前の理亜さんみたいに自滅するかもしれません」

と、1年前の理亜みたいに、「勝利こそすべて」、という考えに固執した理亜みたいに自滅する、そう指摘した。たしかに、このままだと花樹は1年前の理亜mちあいに自滅するのは目にみえていた。

 そんなあつこの指摘に、理亜、

「たしかにあつこの言う通り、あのままだと、花樹、そのうち、自滅する、と、私も思う」

と認めつつもある事実を話す。

「だから、最終予選本番、私、花樹の心のなか、アクセスしようとした」

これには、あつこ、

「えっ、それって本当なのですか?」

と驚いてしまうと、理亜、そんなあつこに対しこう話した。

「ラブライブ!延長戦、私、姉さま、あつこ、一緒に、「Believe Agein」のステージしていたとき、2人と心がつながった・・・。だから、それを、最終予選のとき、花樹に試した・・・」

そう、理亜はラブライブ!延長戦のとき、自分の心のなかにあるSaint Snowの輝き、宝物を通じて姉の聖良とあつこと心のなかでつながることができたのだが、その際、心のなかのでの会話を通じて理亜は姉聖良とあつこからスクールアイドルにとって大事なこと、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになることが大事」、そのことを伝えらえたのである。なので、理亜は、今、その大事なことを実践するようになったのである。で、理亜はその経験をもとに最終予選の場で花樹に対し、ラブライブ!延長戦で姉聖愛とあつこと一緒に行ったこと、心を通じてスクールアイドルにとって大事なことを伝えようとしていたのである。

 そんな理亜の言葉に、あつこ、

「それでどうなったのですか?」

と理亜に結果を尋ねると、理亜、首を横に振りながらこう答えた。

「ダメだった・・・。花樹に、私の思い、つながらなかった・・・」

そう、理亜の思いは花樹には伝わらなかった・・・。花樹は「勝つこと」だけに意識しすぎていたせいか、理亜の花樹に対する思いは通じなかった。普通なら1つの目標に対してそのグループメンバー全員が、心、思い、を1つにしてそれに目指していくものなのだが、このときの理亜も花樹も1つの目標に対して目指していたものの、2人それぞれの心、思いはバラバラだった。それにより、いくら理亜が心のなかで花樹に呼びかけようとしても応答なかったのはそれが原因だったのかもしれない。

 そんな理亜に対し、あつこ、

「それは仕方がないことなのでは・・・」

と理亜のことを気に掛けるも、理亜、涙目になりながら、

「でも、私、昔の私みたいに、花樹が自滅するの、いや・・・。私、どうしたらいいの・・・」

とあつこに言うと、あつこ、

「理亜さん・・・」

と理亜のことを心配する。理亜は昔の自分みたいに「勝つことこそすべて」という考えに固執している花樹が自滅するのがいやだった。そのため、ラブライブ!延長戦での理亜のときみたいに最終予選のときに理亜は花樹に対し心を通じてコンタクトをとろうとしたが失敗した。そのため、理亜は花樹を自滅の道から救いたいのだがもう自分にはどうすることもできない、いったいどうすればいいのかと悩んでいたのだ、必死に・・・。

 そして、理亜はついにあの言葉を口にする。

 

「私、いったいどうすればいいの・・・。姉さま、助けて・・・」

 

「姉さま、助けて・・・」、その言葉は理亜が姉の聖良に助けを求めたい、そんな気持ちから発するものだった。だが、姉聖良はもうここにはいないのだ。たとえSaint Snowという輝き、宝物を通じてずっとつながっているとしても、実際にはすぐに直接相談することなんてできない、そんな絶望的な思いに浸る理亜から発する言葉であった。

 そんな理亜を見てか、あつこ、

(理亜さん、聖良さんのあとをついていくだけの昔の理亜さんに、もしくは、いつも姉のダイヤさんのあとをついていくだけのルビィさんみたいになってしまったようですね・・・)

と思ってしまう。昔の理亜は姉の聖良のあとをついていくだけの存在だった。いや、今現時点での理亜は、あの昔のダイヤ・ルビィ姉妹みたいのように、ダイヤのあとをついていくだけの昔のルビィぐらいにまでになってしまった。自分一人ではなにをすることもできない、ただ、姉のあとをついていくだけ、そんな妹みたいに理亜はなってしまったのかもしれない。

 ただ、あつこ、そんな理亜を再び見ては、

(でも、これ以上理亜さんが苦悩したら今度は理亜さんが壊れてしまいます・・・。ならば・・・)

と思い、泣き続ける理亜に対しあることを話した。

「でも、聖良さんなら聖女の近くにある大学に通っていますからその気になれば気軽に相談できるのでは?」

そう、別に理亜と姉の聖良が離れ離れになった、というわけではなかった。姉の聖良は、今、聖女の系列である大学に通っている。その大学は実は聖女の近くにあり、姉聖良はいつも自分の実家から、理亜のいる実家から大学に通っているのだ。なので、夜になれば理亜は姉の聖良に気軽に会うことができるのだ。そのことをあつこは理亜に指摘したのだった。

 だが、そんなあつこの指摘に、理亜、

「たしかにそうだけど・・・、でも、姉さんはスクールアイドルを卒業した身・・・。気軽に相談なんて・・・」

としどろもどろになる。どうやら、理亜、姉の聖良に相談したい、だけど、それだと姉の聖良を困らせることにつながってしまう、と、二律背反の状態に陥っているようだ。

 そんな理亜を察してか、あつこ、理亜に対し、

「まぁ、理亜さんらしいと思うのですがね・・・」

と理亜のことをそう言うと、理亜、

「あつこ、なにがいいたいわけ!!」

と、顔をぷくっと膨らませては怒ってしまった。理亜、どうやら、あつこにからかわれたと思ったかもしれない・・・。

 ただ、あつこ、このとき、

(と、冗談はさておいて、このままだと理亜さんは苦悩したまま壊れてしまうのがオチです。なので、ここは私が聖良さんに代わって代案を言うことにしましょう)

と思い、理亜に対し、

「そんな理亜さんに私からある提案をしたいのですが・・・」

と言うと、理亜、

「あつこ、それってなに?」

と食い入るように聞いてきた。

 そして、あつこはその代案を発表した。

「理亜さん、このままの状態でいきましょう」

これには、理亜、

「えっ、それって本当に言っているわけ!?」

と、驚きの表情。だって、このままいくと花樹は確実に自滅してしまう。それなのにそのままの状態でいく、ということはそれを認めてしまうことにつながってしまうのだ。

 だが、そんな理亜の言葉をよそにあつこがその代案について説明する。

「だって、理亜さんがいくら(心のなかで)呼びかけても花樹さんは応答してくれなかったのはそれくらい花樹さんが「勝つこと」に固執しているからです。それを今になって「急に変えろ」と花樹さんに言ったとしても「はい、そうですか」とすぐに変えることなんて難しいと思います」

たしあkにあつこの言う通りである。人というのは自分の考えを急に変えろと他人から言われたとしてもすぐにそれを変えることは難しいものである。だって、その人の考えというのはその人の長年にわたる経験の積み重ねが合わさって、いや、編まれることによってできたものだから。また、その考えに執着している度合いが高いほどその考えを変えること自体難しくなってしまう。で、理亜の心の呼びかけに呼応しないほど花樹の「勝つこと」への執念はすさまじいものであった。なので、花樹に、その考えを変えろ、といくら言っても花樹がその考えを急に捨てる確率はゼロに久しいものであった。

 それを踏まえた上であつこは理亜に自分の代案の真の目的を明かした。

「ならば、それを逆手にとるのです。理亜さんは理亜さんで「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」ことを追い求めてください。対して、花樹さんは「勝つことこそすべて」を追い求めようとします。相反する2人の思いですが、2人が異なる思いを競い合うことで大きなパワーを生み出すことができる、私はそう思います」

あつこの作戦、それは、理亜と花樹、相反する思いをぶつけあいながら高めていく、というものだった。人は相反するものがあればそれに対して競い合うものである。それがペアの場合、それによってちぐはぐなものになってしまうかもしれない。だが、それを逆手にとって、自分の信念、思いのもと、お互いに競い合いあってはお互いにそれを高めあうことができればそれはそれで大きなパワーとして爆発することができる、というのである。このあつこの考えに、理亜、

「たしかにそうだけど・・・」

とちょっと納得していない様子。まぁ、理亜としてはあつこの考えはいいものだが一歩でも間違えればそれは、ペア解消、空中分解、につながってしまう、そんな危険性がある、そう理亜は心配していたのだ。

 だが、あつこは言った。

「まぁ、そのために、ラブライブ!決勝用の曲はそれにそう形にしようと思います。もちろん、パフォーマンスも同様です。そうすれば決勝本番でバラバラになることなんてないのですから・・・」

まぁ、たしかに、あつこの案に沿う形で作られた曲やパフォーマンスであれば決勝本番でバラバラになる心配はなくなる。だって、2人が競い合うこと前提でその曲のパフォーマンスが作られるから。

 さらに、あつこ、決定的なことを理亜に言った。

「それに、ラブライブ!決勝までそんなに火がありません。今は私の案がベストなのです!!」

それは的を得ていた。ラブライブ!決勝までそんなに日がない。なので、花樹に対し急に「自分の考えを変えろ」を言って花樹が自分の考えを改めようとしても逆に花樹が100%いいパフォーマンスができなくなってしまう可能性が高い。なので、現状維持にしつつも互いに自分の思いを高めあっていった方が得策ともいえた。

 そんなあつこの力説に理亜も、

「あつこの言うのも一理あるかも・・・。それに、それに代わる代案が思い浮かばない・・・」

としぶしぶ納得の様子。そのためか、あつこ、強引に、

「それでは、理亜さん、私の作戦でいくことにしましょう」

と言うと理亜もしぶしぶ、

「うん、わかった・・・」

とあつこの作戦を認めてしまった・・・。

 そんな理亜に対し、あつこ、また別のことを尋ねる。

「ところで、理亜さん、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」に関して、理亜さん自身、どう対応しているのですか?」

そう、あつこの作戦だと互いに自分の思いを高めあうことが必要となる。なので、理亜自身、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」に対してどう接していくのか、どう高めあうのか、というのが重要になってくるのだ。

 このあつこの質問に、理亜、

「う~ん、それについてはまだ思案中・・・」

と言うのみだった。理亜自身、Saint Aqours Snowとしてのクリスマスライブ、そして、ラブライブ!延長戦で、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それがスクールアイドルにとって1番大事であることを学んだ。だが、いくらそれを学んでも、その思い、考えをどう伸ばしていくのか、は別問題だった。そのため、理亜は、その思い、考えをどう伸ばしていくのか、その手段を考えている途中であった。この前の最終予選のときは、理亜、まずはその思い、その考えのもと、まずはそれを実践しよう、という段階であった。なので、理亜、あつこからそのことを指摘されると、

(う~、どうすればルビィたちみたいに「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、その思い、その考えを伸ばしていけるのか、増大させることができるわけ・・・。これまでは姉さまとあつこがいたからなんとかなった。だけど、今は私と花樹の2人だけ。そんな状態で、その思い、考え、どう伸ばしていけばいいわけ・・・)

と、自分の思い、考えを伸ばしていく手段が思いつかない、という新たなる悩みが生まれてしまったようだ。

 そんな理亜に対し、あつこ、あるアドバイスを送る。

「理亜さん、まずは今まで通り、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それを実践してみてください。そうしたらそれを伸ばす手段がみつかるかもしれません」

あつこが言うには、まずはその思い、考えを実践し続ければおのずとそれを伸ばす手段が見つかる、というものだった。今は、理亜、その考え、思いを持ち始めた、そんな初期段階であった。なので、まずは無理せずそれを実践していくことが1番、というのだ。

 そんなあつこからのアドバイスを聞いて、理亜、

「たしかにそうだけど・・・」

とちょっと不安になるも、つい、こんなことをつぶやいてしまう。

「でも、もし、姉さまだったらどうするだろうか・・・。姉さま、私にそれを伸ばす手段を教えてください・・・」

理亜、また、姉の聖良に頼ろうとする。これには、あつこ、

「・・・」

と無言になってしまった。いや、内心ではこう思っていたのである。

(理亜さん、姉の聖良さんにまた頼ろうとしています。まだ一緒に住んでいる、というのもあるのですが・・・。でも、理亜さん、もし、あのことを知ったら、相当落ち込むこと必須、ですね・・・)

 そして、あつこは聖良からあることを聞かされたときのことを思いだしていた・・・。

 

 それは最終予選の前の日のことだった。

「あの~、聖良さん、ようってなんでしょうか・・・」

とあつこは向かい側に座る聖良にそう尋ねた。ここはあつこと聖良の行きつけの喫茶店、「茶房旧茶屋亭」。あつこはせいらに大至急くるように言われここに来たのである。

 で、あつこから尋ねられたため、聖良、あつこの耳元に口を近づけては、

「実はですね・・・、あつこ、私、近いうちに・・・」

と小言でとても重要なことを話す。すると、あつこ、びっくりした表情になっては、

「えっ、それって、聖良さんの将来のためになると思うのですが・・・」

と言うと同時に困惑そうな表情になっては、

「でも、それだと、理亜さん、相当ショックを受けると思いますが・・・」

と言ってしまう。聖良があつこに話したこと、それは、聖良の将来のため、といえるのだが、理亜にとってみれば相当ショック、なものだったのかもしれない。なので、あつこは理亜のことが心配になってそんなことを言ったのである。

 だが、そんなあつこに対し、理亜、あるお願いをした。

「なので、あつこ、お願いです、私の代わりに理亜のフォローをお願いします。あつこだったら理亜の幼馴染として、そして、先輩として私の代わりにフォローをお願いします」

 そんな聖良からのお願いを聞いて、あつこ、さらに心配する。

「でも、私、聖良さんの代わりを務めることなんてできるでしょうか・・・」

だが、あつこの心配に対し、聖良、こんな言葉でもってあつこを元気づけた。

「あつこ、あなたなら大丈夫です。あなたと理亜はSaint Snowの輝き、宝物を持つ者同士なのです。なので、あつこなら理亜をフォローできると私は確信しております。あつこ、あなたならできるはずです。そう信じてください」

 この聖良の励ましに、あつこ、

「聖良さん、私への励まし、ありがとうございます」

とお礼を言った・・・ものの内心では、あつこ、

(でも、本当に私が聖良さんの代わりを務めることができるのでしょうか・・・)

とかなり不安になってしまった・・・。

 

 そんなことを思いだしたあつこ、ふたたび、理亜の方を向くとついあることを考えてしまう。

(ただでさえ花樹さんのことで理亜さんは苦悩していますが、それに聖良さんのことが重なると理亜さんはさらに苦悩してしまいます。そんな理亜さんを私が聖良さんの代わりとしてフォローできるのでしょうか・・・。私、心配です・・・)

ただでさえ花樹のことで苦しんでいる理亜、それに聖良のことが加わると理亜はさらに苦悩する、そんな理亜をあつこは聖良の代わりとして十分フォローできるのか、このときのあつこは心配で心配でたまらなかった。あつこはたしかに聖良と同じく、理亜とはこの数年間、Saint Snowとして一緒に活動してきた(あつこは理亜・聖良のサポーターとして活躍)。なので、あつこ、理亜、聖良はSaint Snowという想い、想い出、キズナ、そんな輝き、宝物によって結ばれている。だが、たとえ、それがあったとしてもあつこが理亜のことを十分フォローできるかは別問題であった。いくらあつこが理亜のために動いたとしてもそれを理亜が受け入れてくれるかどうか、といった問題がある。また、あつこが知らないところで理亜が別のところで苦しんでしまう、ってこともある。理亜の姉である聖良だったら理亜のことを十分熟しているのでつかさずフォローできるのだが、聖良ほど理亜のことを熟知していないあつこが聖良ほど理亜を十分フォローできるかどうか、あつこはそこを心配していたのだ。

 そして、あつこは理亜の方を見てこうつぶやいた。

「理亜さん、私、聖良さんの代わりを十分果たすことができるでしょうか・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第6話(3)

 とはいえ、ラブライブ!決勝に向けた方針は固まっていたため、その方針に沿ってあつこが練習メニューを作成、翌日からその練習メニューを理亜と花樹はこなすこととなった。

 その練習メニューを聞いた花樹、あつこに対しこんなことを言ってきた。

「あつこさん、これってまるで理亜さんと競争するような感じですね」

そう、あつこが考案した練習メニュー、それは、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」を追い求める理亜、そして、「勝つこと」を追い求める花樹、それぞれが互いに競い合ってその思いを互いに高めていく、その方針のもと、あつこが作詞作曲した曲、それを体現させるために作られたものだった。それぞれが自分の思いを高めあいながらお互いに競っていく、そのコンセプトのもとで作られた練習メニュー、それを花樹はそう表現したのだが、これには、あつこ、

「花樹さん、ラブライブ!決勝では、理亜さんと花樹さん、2人の思い、お互いに競い合いながらそれを高めていく、そんな曲でいこうと考えています。なので、練習メニューもそれに沿ったかたちにしました。花樹さん、いかがでしょうか?」

と花樹にこの練習メニューのコンセプトを説明しつつそれでどうかと尋ねてみた。

 すると、花樹、

(これは、オ・・・、花樹にとってベストな練習メニューだと思う・・・、思います。「勝利こそすべて」という思いをどんどん加速させること、それこそが今の花樹にとって必要なこと・・・です!!それを理亜さんと競い合いながら高めることができるのであれば花樹にとって本望・・・だと思います)

とかなり乗り気の様子。なので、花樹、あつこからの質問に対し、元気よく、

「あつこさん、オ・・・、花樹ならその練習メニューでいい・・・と思います」

と答えてくれた。

 一方、理亜はというと・・・、

(今以上に「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」にはいったいどうすればいいわけ・・・)

と、ただたんに「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、その思いをどう高めていけばいいのか悩んでいた。昨日の方針決定により花樹のことはいったん保留したとはいえ、新たに浮上した問題、それを理亜は悩んでいた。理亜は、このとき、こう思っていた。

(私はルビィたちAqoursやこころあほど「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」ことに長けていない・・・。いや、まだ、そのことを姉さまやあつこから学んだばかり・・・。「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」ことに関しては、私、まだひよっこ・・・。この前(最終予選)ではそれをとりあえず実践してみてなんとかなったけど、決勝ではこころあだけでなくルビィたちAqoursも出場する。そんな競合相手に、私、勤まるのだろうか・・・)

理亜はルビィたちAqoursやこころあみたいに「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、その思いが強くない、いあy、それを学んだばかり、ひよっこだと思っていた。ただ、この前の最終予選ではその思いのもとでパフォーマンスをした結果、その思いが強いこころあに負けたものの2位通過、無事に決勝へと進出できた。だが、決勝では最終予選のときとは違い強豪ばかり。あのこころあだけでなく、理亜の盟友であるルビィたちAqoursも出場するという。そう、ルビィたちAqoursもラブライブ!決勝に進出することになったのだ。どうやら、ルビィたちAqours、静岡県予選、東海最終予選を圧倒的な強さで1位通過を果たし、無事に決勝まで進出することができたらしい。ただ、そのAqoursについてだが、どうやら、ルビィ・花丸・ヨハネ・千歌・曜・梨子の6人組ではなく、新1年生を加えた9人組として出場していたらしく、これには、理亜、

「えっ、ルビィたち6人組ではなく、新1年生を加えた9人組で活動しているわけ?その新1年生って誰?」

とつい疑問に思ってしまうほどに・・・。ただ、それについて理亜がルビィに問いただしても、

「理亜ちゃん、ごめん。それ、まだ、理亜ちゃんには言えない・・・」

と拒絶されるだけだった。なので、それについて、理亜、

(う~ん、なぜ、それが秘密なわけ・・・)

とつい首をひねってしまったという。

 とはいえ、理亜、そのことは置いといて、今は「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」こと、その思いをどう高めればいいのかわからないためか、

「う~ん、う~ん」

と、その言葉ばかり考えては頭をひねっていた。

 そんな理亜に対し、あつこ、ある提案をする。

「理亜さん、「スクールアイドルを楽しむ、楽しむ」こと、その思い、それを高めるなら私の決めたこの練習メニューに理亜さんのその思いをぶつけてみればいいのではないでしょうか」

あつこが提案したこと、それはあつこが決めた練習メニューに理亜のその思いをぶつける、というものだった。あつこが決めた練習メニューは、理亜と花樹、それぞれの思いをぶつけて競い合うことでお互いにその思いを高めあうことを目的としていた。なので、理亜がその思いを高めるにはあつこが考案した練習メニューをこなすのが1番、というのだ。まぁ、ただその思いをぶつけるだけ、そんな単純なこと、なのですがね・・・。なので、これには、理亜、

「た、たしかにそれが1番・・・」

と納得の様子。まぁ、あつこからすれば理亜は・・・、

(まぁ、理亜さんは姉の聖良さんみたいに理詰めで考える傾向が強いですからね。だから、「スクールアイドルを楽しむこと、好きになること」、それをどんな方法で高めればいいのか、一番合理的に高める方法はないのか、ついそう考えてしまって悩んでしまうのかもしれませんね、理亜さんは・・・)

そう、理亜は姉の聖良と同じく理詰めで考える傾向が強かった。ある目標に対して1番合理的に進める方法を理亜はよく考えていた。まぁ、理亜が冬の時期に暴走していたのは自分ではこのとき失くしていたと思っていたSaint Snowの輝きと同じものを合理的に得るためにはまだスクールアイドル初心者だったユニットメンバーに対しきつい練習をさせて実力を伸ばしていくことが1番、と考えてしまったから、なのだが、それを今度はどんな方法をとれば合理的に「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」という思いを高めることができるのか、と理亜はつい考えてしまい袋小路に入った・・・というのがあつこの見方であった。なので、ただ単純にその思いをぶつける、その方法を理亜に提案したことで理亜のその悩みは少し解消されたようだ。

 まぁ、そういうわけでして、理亜と花樹はあつこが考案した練習メニューに沿って練習を始める。そのときの3人の思いはというと・・・、

(おばあちゃんとの夢を叶えるため、おばあちゃんとの結びつきを失わないため、オ・・・、花樹は、ラブライブ!決勝で、こころあに勝ってやる!!そのためにも、オ・・・、花樹、もっと頑張る!!もっと、「勝つことこそすべて」、その思いを貪欲なまでに高めてみせる!!)(花樹)

(まだ私は、あの思い、「スクールアイドルを楽しむ、好きになる」、それはまだルビィたちAqoursやこころあたちには程遠いくらいまだ弱い。でも、ラブライブ!決勝までには、その思い、強くしていきたい!!そして、今度こそ、私と姉さまとあつことの夢、ラブライブ!優勝を絶対に叶えてみせる!!)(理亜)

(理亜さんと花樹さん、それぞれが持つ違った思い、それをお互いとも競い合って伸ばそうとしています。私はただの2人のサポーターです。なので、2人にしてやれるのは2人のその思いを高めるための練習メニューを提供したりその練習メニューをサポートすることのみです。私はただの2人のサポーターです。これ以上私が2人に組すればきっと(私の足にある)スティグマが開いてしまいます。なので、私はここで2人を見守ろうと思います。2人とも頑張って・・・)(あつこ)

と、3人とも持つそれぞれの深淵なる闇を見せつつも、三者三様、それぞれの思いを持ちながらもラブライブ!決勝まで頑張ろうとしていた。

 その後、花樹と理亜はあつこの手厚いサポーターのもと、それぞれが持つ思いを高めあいながらあつこが決めたきつい練習メニューをこなしていくこととなった・・・。

 

 そして、ついにラブライブ!決勝の日を迎えた。場所はスクールアイドルの聖地、東京・秋葉原にそびえたつドーム、秋葉ドーム、そこに北海道第2代表の函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部として、花樹、理亜、マネージャーのあつこがついに降り立った・・・。

「ここがラブライブ!決勝の地、秋葉ドーム、なんですね!!とても広い!!」

とドームのなかに作られた特設ステージの近くまで理亜とあつこと共に来ていた花樹は感嘆の声をあげていた。スクールアイドルの甲子園、ということもあり、会場となる秋葉ドームのなかに設けられた特設ステージはとても有名なアイドルやアーティストのライブなみの巨大ステージであった。さらに、このステージから見える観客席も何万人も入れる、それくらい広いものだった。もちろん、それらはラブライブ!出場が初めての花樹にとって驚かずにいられなかったに違いない。 

 ただ、感嘆の声をあげる花樹に対し、理亜、冷静に忠告する。

「花樹、この巨大なステージ、何万人もの観客たち、それによって多くのスクールアイドルたちが緊張のあまり普段ならしないようなミスをする。注意して!!」

そう、通常なら多くても数千人、少なくて十数人の観客たちを相手にパフォーマンスをするスクールアイドル、それが、ここ、秋葉ドーム、それも、スクールアイドルの甲子園であるラブライブ!の決勝、ということもあり、いつも以上に広いステージ、いつもの10倍以上の観客たちの目の前でのパフォーマンス、それはスクールアイドルにとって普通とはかけ離れた別次元のプレッシャーをこの決勝に出場するスクールアイドルたちは受けてしまうのである。その結果、普段ならしないようなミスを連発する、なんてことが起きてしまう、そう理亜は言いたかったのだ。まぁ、理亜の場合、去年度の夏季大会でSaint Snowとして姉の聖良とともにこの決勝のステージに立っていたこともあり、そこでほかのスクールアイドルたちがそのような状態に陥っていく様子を近くでみていた、そのことを思いだしては決勝のステージに初めて立つ花樹に忠告したのかもしれない。ただ、それには、花樹、

「へぇ~、この強大なステージに何万人もの観客たち、それってとてもすごい光景になるんじゃない・・・でしょうか。オ・・・、花樹、それ、見てみたい・・・です!!」

とウキウキしながらも返事していた。そんな花樹の姿を見て、あつこ、

(理亜さんがいくら言っても花樹さんは平気な顔をしています。これなら貴重なんてしないかもしれませんね、花樹さんなら・・・)

とつい安心してしまった。

 と、そんあときだった。突然、

「あっ、花樹っちに理亜たん、おひさ~」

と聞きなれたような声が聞こえてきた。これには、花樹、

「あっ、矢澤ここあ!!」

と、その声がする方を指さしてはこう叫んだ。そう、理亜、花樹、あつこの前に現れたのは、矢澤ここあ、そして、

「花樹さん、理亜さん、こんにちは」

と、矢澤こころ、こころあの2人だった。

 この2人の登場に、理亜、

「こころあの2人、お久しぶり」

と、こちらもこころあに対し一礼するとともに、

「ところで、こころあ、ここで敵情視察?」

と尋ねると、ここあ、笑いながら、

「理亜たんの言う通り、敵情視察、になるのかなぁ?」

と逆に聞き返してしまう。これには、あつこ、

「そこでなんで聞き返すのですか?」

と、激しいツッコミをいれる。どうやら、ここあ、理亜の言うことをあまり理解していない様子・・・・。

 そんなここあに代わり、こころ、真面目に対応する。

「理亜さん、私たち、会場の様子を見に来ただけなのです」

そう、こころあも理亜たちと同じく会場の様子を見に来ていただけであった。こころあの場合、これまでに3回もラブライブ!の決勝に立ったことがある。だが、毎回同じステージ、ということはなかった。毎回どこか微妙に違っていたのである。そのことを知っているこころあだからこそこの会場の様子を見ては決勝本番でどうパフォーマンスをするか2人で相談して決めていたのである。

 そういうわけでして、こころ、ここあに対し、

「ここあ、この会場を見てどうパフォーマンスをすればお客さまたちを楽しませることができるか、アドバイス、してほしいです!!」

と言うとここあも、

「こころ、よし、わかったぜ!!ちょっとステージの上に立つぜ!!」

と言ってはステージの方へと向かおうとする、そんなときだった。突然、ここあに対し、花樹、

「こころあの2人、この決勝では、オ・・・、花樹たちが勝ってやるからな!!首を洗って待っとけ・・・、待ってて・・・」

と大声で叫びだした。これには、こころ、

「えっ、突然、なに!?]

と驚いてしまう。どうやら、花樹、こころあに対し宣戦布告したようだ。ただ、この花樹の言動に、理亜、

(花樹・・・、突然、それ、言う・・・)

と少し呆れてしまう。まぁ、理亜がそう思うのも無理ではなかった。あまりに突然すぎたからだ。ただ、これにも裏が・・・あるわけがなく、どうやら、花樹、こころあが登場したときから、

(こころあがここに来た!!なら、ここで、ずばり、こころあに、宣戦布告、してやる!!)

と思ってか、今か今かと言うタイミングを図っていたようだ。ただ、こころあの2人に会ってすぐにここらがその場を離れようとしたために言うタイミングを逃したようだ。

 とはいえ、そんな唐突的なことを言う花樹・・・に対し、ここあ、逆に、

「花樹っち、ここあ、逆に返り討ちにされるだけだと思うぜ!!」

となぜか言い返してしまう。これには、こころ、

「ここあ・・・、ここあも人のこと、言えないよ・・・」

とこちらも呆れてしまった・・・。さらに、こんな花樹とここあ、2人のやり取りを見て、なぜか、あつこ、

(これが俗にいう、龍VSトラ、いや、ハブVSマングース、いや、ハムスターVSハムスターの戦い、なのでしょうか・・・)

と、考えるごとにレベルが・・・、いや、かわいいもの対決に変わってしまう、そんなことを考えてしまっていた・・・。

 そんな、花樹VSここあ、かわいらしい?場外乱闘を見に来たのか、突然、あの声が聞こえてくる。

「ふふふ、魔都東京のシンボル、秋葉ドーム、そこでかわいいリトルデーモン同士の戦いが見られるとは、ヨハネ、嬉しいぞ!!」

と、この声に、花樹、すぐにそのその声を見てはっとする。

(まぁ、まさか・・・、憧れの・・・、憧れの・・・、ご本人、登場!!)

そう、そこにいたのは・・・、

「あっ、善子!!」(理亜)

「善子じゃない!!ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)

津島善子、いや、ヨハネ、ご本人だった・・・。

 さらに、そのヨハネの周りにヨハネの仲間たちが集まる。

「お~い、、理亜ちゃ~ん!!」(千歌)

「理亜ちゃん、久しぶり!!」(曜)

「理亜ちゃん、お久しぶり!!」(梨子)

「理亜ちゃん、久しぶりずら!!」(花丸)

そう、Aqoursのメンバーたちだった。

 そして、ついに、理亜の一番の盟友、現る。

「理亜ちゃん、久しぶりだね!!元気にしてた?」

この女性の声に、理亜、パッと明るくなってその少女の名を呼んだ。

「ルビィ」

そう、その少女こそ、理亜の1番の盟友、黒沢ルビィであった。久しぶりにルビィに会えたことで理亜も喜んでいるようだ。と、同時に、Aqoursメンバー6人全員集合である。

 と、ここで、Aqoursメンバー6人と直接会うのが初めてだった花樹、驚きを隠せずにいた。

(ま、まさか、オ・・・、花樹の目の前にAqoursがいる・・・。花樹にとって憧れの存在、Aqoursが・・・、目の前位にいる・・・)

花樹にとってAqoursとSaint Snowはスクールアイドルを始めるきっかけを作ってくれた存在であった。今は、花樹、Saint Snowの1人である理亜とユニットを組んでいるが、親の都合で沼津から函館に引越すことがなければ花樹は静真に入ってAqoursの一因になれる・・・はずだった。なので、花樹にとってAqoursは憧れの存在、であった。そんなAqoursが花樹の目の前にいる、それにより花樹は驚きを隠せずにいた・・・。

 そんな花樹のところにルビィが近づいてきた。これには、花樹、

(えっ!!)

とさらに心臓をバクバクさせると、ルビィ、花樹に対し語りかけてきた。

「花樹ちゃん、ルビィね、理亜ちゃんから花樹ちゃんのこと、よく聞いているよ、とても一生懸命な娘、だって!!」

そんなルビィの言葉に、花樹、

(えっ、ルビィさん、オ・・・、花樹に話してくれた・・・)

とさらに心臓をバクバクさせると、ルビィ、そんな花樹に対し、

「花樹ちゃん、このラブライブ!決勝、理亜ちゃんと一緒に、ガンバルビィ、してね!!」

と励ましの言葉を送った。もちろん、花樹、そんなルビィの励ましに、

「は・・・、はい・・・」

と顔を真っ赤にしながら返事をしてしまう。今の花樹は憧れの存在であるAqoursのメンバーからの励ましを受けた、それにより天にも上る気持ちになったのかもしれない。

 と、そんな花樹をよそに、理亜、地下に対しあることを尋ねる。

「ところで、千歌、Aqours、今回のラブライブ!は9人でエントリーしているけど、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、善子、以外に新メンバー、入れた?」

そう、今回のラブライブ!、Aqoursは9人でエントリーしていたのだ。ただ、理亜が知る限り、今年の4月時点においてAqoursのメンバーは、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ(善子)の6人だけだった。また、理亜がAqoursが9人でエントリーしたことを知ったときにルビィに問いただしても残り3人のメンバーについては教えてくれなかったのだ。なので、もう1度、今度は千歌に対し残り3人の新メンバーが誰なのか教えてもらおうとしていたのだ。

 と、ここで、千歌、

「う~ん、う~ん」

と少し考えてはこんなことを言いだしてきた。

「まぁ、もうすぐラブライブ!決勝だし・・・、ここでみんなに、新メンバー、解禁、しようかな?」

この千歌の言葉に、曜、梨子、すぐに反応。

「千歌ちゃん、新メンバーの準備、できているよ!!」(曜)

「さぁ、千歌ちゃん、新メンバーを理亜ちゃんに紹介しよう!!」(梨子)

 曜と梨子、千歌のお目付け役2人の了解も得られた、ということで、千歌、突然、

「ドロロロロ~」

となぜかドラム音をまねるとそのまま、

「ドン!!」

と大きな声をあげる。これには、理亜、

「まどろっこしいことはいいから、早く紹介して!!」

とツッコミをいれると、千歌、

「もう理亜ちゃんはせっかちなんだから・・・」

とつい余計なことを言うもすぐに、

「それじゃ、発表します!!Aqoursの新メンバー・・・というか千歌たちと一緒に組んでいる仲間はこの人たちで~す!!」

と言ってはその新メンバーのいる方を向いた。

 すると、そこに現れたのは・・・、

「えっ、Red Sun!!」(理亜)

そう、そこにいたのは・・・、

「みなさん、お久しぶり~。紅梅歌(うめか)だよ!!」(梅歌)

「梅歌、少しは落ち着いて言いなさい。あっ、お久しぶりです。赤間松華(しょうか)です」(松華)

そして・・・、

「う~、なんでここに私がいるわけ・・・」

という声と共に、花樹、彼女の名を言う。

「お前は、木松桜花(はる)!!」

そう、木松桜花、3人合わせてRedSun・・・であった・・・。

 だが、そんな3人に対し、花樹、こんなことを言いだす。

「RedSun、たしか、Aqoursを虐げていたはず・・・。なのに、なんで、なんで、Aqoursと一緒にいるんだ!!」

そう、桜花たちRedSunは2~3ヵ月前、静真においてAqoursを苦しめていたのだが、なのに、今、なぜかそのAqoursと一緒にいる、それが花樹にとって疑問・・・というか納得していないようだ。いや、花樹だけでなく、理亜、あつこも、

「ルビィ、これ、どういうこと!?説明して!!なんで、ルビィたちを苦しめていたRedSunがルビィたちと一緒にいるわけ?」(理亜)

「ま、まさか、呉越道中・・・ではないですよね・・・。AqoursとRedSun、一緒にいることに違和感を感じるのですが・・・」(あつこ)

と、AqoursとRedSun、本当だったら一緒にいることなんて考えられない、そんなことを言ってきたのだ。

 そんな、花樹、理亜、あつこに対し、ルビィ、

「理亜ちゃん、これには深いわけがあるの・・・」

と言うとある真実を・・・、AqoursとRedSunのあいだで起きたある事実を語り始める。

「理亜ちゃん、実はね・・・」

ルビィが語り始めた真実、それは、桜花をめぐる、とても悲しい物語であった・・・。

 

To be contuned

 

Next Story is

 

LOVE LIVE! Red Sun & Blue Planet



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL OP 「Re;START to dream」/ED「Remenber・・・」

「Re:START to dream」

 

※R:ラップで歌う

 

Re;START to dream

 

僕たちは   一度夢を失った

(R:もう立てなくなるほどに)

大事なものを 失ってしまった

(R:失敗や成長でも失った)

もう二度と  立てないんだ

(R:不幸のどん底に落ちてしまい)

誰もが    そう思っていた

 

でも本当に  そうだろうか

人は何度でも よみがえる

倒れても   倒れても

何度だって  よみがえる

人というのは それくらい

力強く生きる 生き物なんだ!!

 

Re;STRAT to dream

僕たちは再び 立ち上がってく

Re;START to dream

夢に向かって 再び進んでく

もう諦めない 夢を叶える

再び心の中で 誓ってやる!!

 

僕たちは    一度夢を諦めた

(R:もう叶わないとそう思った)

すべてのものを 失ってしまった

(R:なにもかも失ってしまった)

なにもない   やみのなかへ

(R:なにも見えない まっくらまっくら)

沈んだ     そう思っていた

 

でも本当に   そうだろうか

たとえ思ってる それこそが

幻実(げんじつ)と 知ってれば

何度だって   よみがえる

人というのは  それくらい

やり直しできる 生き物なんだ!!

 

Re;STRAT to dream

僕たちは炎を  燃え上がらせる

Re;START to dream

心中(こころなか)で 再び燃えている

もう諦めない  夢を叶える

再び心の中で  誓ってやる!!

 

【R:

これは僕たちの 復活のストーリー

一度は諦めた  深淵なる闇に

落ちてしまった そんな僕たち

だけどだけど  人はそれでも

再び立ち上がる どんなことがあっても

それこそ人間  前向きに生きる

僕たちは再び  力強く立ち上がる!!

 

Re;STRAT to dream

僕たちは再び 立ち上がってく

Re;START to dream

夢に向かって 再び進んでく

もう諦めない 夢を叶える

再び心の中で 誓ってやる!!

 

Re;START to dream

僕たちは再び 力強く立ち上がる

 

(R:Thank you・・・)

 

-------------------------------

「Remember・・・」

 

苦しいときも  つらいときも

みんなと一緒に いれば大丈夫

強いキズナで  結ばれている

だから僕たちは 頑張れるんだ

 

だけどね   時がたてば

別れる日は  訪れる

それはやがて 想い出になるけど

それこそが  僕たちにとって

未来での   力となるんだ

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  落ち込まないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

暗闇のなか   みえなくて

不安と悩みで  すべて嫌になる

深く傷つき   力尽きて

孤独なりすぎて いなくなりたい

 

だけどね  思いだして

僕たちとの 想い出を

キズナ想い 想い出に気付けば

それこそが 僕たちにとって

生きていく 糧になるんだ

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  諦めないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

落ち込む前に  思いだして

僕たちは進んだ その道は

ずっとずっと  つながっている

たとえ別れた  としても

僕たちのなかで 想いが

想い出が    キズナが

輝きとなって  宝物となって

つながっている ずっとずっと

永遠に     つながっている!!

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  落ち込まないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

Remenber・・・ それを忘れないで・・・

 

 



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ラブライブ!RSBP(Love Live! Red Sun Blue Planet)

(あのライブ、凄かった!!やっぱりAqourscだよ!!私、絶対にスクールアイドルになってAqoursと一緒に輝きたい!!)

少女はそう決意するとともに、あの場所へ、この前、いや、1週間前に沼津駅前にて行われた(新生)Aqoursお披露目ライブ、そのステージの中心で輝いていた千歌たち(新生)Aqours、そのAqoursが初めて練習を行った、そして、Aqoursの旧3年生、ダイヤ、鞠莉、果南が卒業して一時期練習をしていた、さらに、昨年度のラブライブ!冬季大会で優勝した際に授与された深紅の優勝旗が飾られている、そんなAqoursの聖地、沼津内浦の砂浜海岸へダッシュしていたその少女の名は紅梅歌(くれない うめか)、今度、静真に入学、いや、入学した新高校1年生である。優れた直感力と行動力を持ち、さらに、義理人情に厚く誠実な性格の持ち主、ということもあり、年齢問わず誰であっても受け入れてくれる、それ以上に周りから愛されやすいキャラである。ただ、のちに彼女が浦の星幻の99番目の新入生、といわれることになるのはこのときの彼女は知る由もなかった・・・のだが、それでも彼女はAqoursという神にも近い、それくらいぞっこんのスクールアイドルグループ、その聖地に早く行きたい、そんな想いが強いせいか、まわりのことなんて考えもせずに力いっぱいダッシュしていた。

 そんな彼女の力いっぱいのダッシュに対し、別の少女が梅歌に対し大声でツッコむ。

「梅歌、待って~。私のことをおいとかないで!!その場所なんてどこにも逃げないから~」

そんな梅歌にツッコミを入れる少女、彼女の名は赤間松華(あかま しょうか)、梅歌と同じく、今年の春、静真に入学した新高校1年生であり、梅歌の幼馴染であった。そんなあ彼女も梅歌と同じく義理人情に厚く、さらに誠実で面倒見もよくて勤勉、そんなこともあり、梅歌をはじめ、周りの人たちから信頼させていた。さらに、かなりの努力家・・・なのだが、いつも直感的に動く梅歌に振り回されることが多い苦労人だったりする。そんな彼女ものちに幻の浦の星100番目の新入生、といわれるのだが、今日も、

「あの場所に一緒に行こう!!」

というとっておしもない梅歌の一言によって梅歌に連れまわされることになった。ただ、この梅歌の行動によってのちにラブライブ!史上に残る大騒動の一因になってしまうのは・・・、いや、この行動のせいでのちに自分が100番目の新入生と言われるようになるとはこのときの松華は知る由もなかった。

 ただ、のちのことなんて関係なく、梅歌はできるだけはやくその場所に着きたい、そんな思いでいっぱいだったためか、手なんて抜かずにやみくもにダッシュしていた。梅歌がそんな思いになった理由、それは1週間前の(新生)Aqoursお披露目ライブを見て自分もスクールアイドルになって輝きたい、そうい直感的に思ったからだった。1週間前、梅歌は松華を伴って沼津駅前で行われた新生Aqoursお披露目ライブを見に行った。ただ、ライブ前の梅歌はというと、

(静真に入ったらなにをしようかな?できればみんなと一緒に輝ける部活がいいな)

と静真に入ってなにをしようか模索していた。梅歌は周りを巻き込みながらもみんなと一緒に輝きたい、そういつも考えていた。特に、今度、梅歌が入る静真は部活動がとても盛んであり、特にスポーツ関連においては県下一の実力を持つ部活が複数もある、そんな部活動優秀校であtった。まぁ、そのうらでは日本有数の投資グループを率いている木松悪斗が多額の寄付金を静真にしていることが大きいのだが、そのことはさておいて、梅歌はそんな部活に入ってみんなと一緒に輝きたい、そんな思いでいっぱいだった。ただ、このときは、梅歌、どんな部活に入るかまだ決めていなかった。

 そんなとき、地元でも有名な、あのスクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝した、そんな有名なスクールアイドルが無料でライブを行う、そんな情報が梅歌のもとにもたらされた、いや、それが梅歌にとって、運命の導き、だったのかもしれない。ただ、このときは、梅歌、

(えっ、有名なスクールアイドルが無料でライブをするの!?私、聞きに行きたい!!)

と直感的にそのライブに行くことを決めてしまった・・・。なんでもかんでも直感的に動く梅歌らしいといったららしいのだが、そんな梅歌の直感的な行動にいつも振り回されるのが梅歌の幼馴染である、いや、いつも梅歌の行くところにこの人あり、と言われ続けていた松華であった。このときも直感的にそのライブに行くことを決めた梅歌は松華に対し、突然、

「私、決めた!!今度の週末、沼津駅前に行われるスクールアイドルのライブに行く!!」

と言われたときには、松華、

(う~、まただよ~。梅歌、また直感的に動いたよ・・・)

と内心うんざりしていた。松華、実は梅歌のとってよしもない直感的な行動にはいつも悩んでいた。直感的にいつも行動する梅歌により自分はいつも振り回される、それは松華にとっていつも予測できないことであった。自分が予測できないこと、それはその人にとって不安を与えることが多い。それは松華にも当てはまっていた。梅歌の予測できない行動に松華はいつも不安を抱えることとなった。ただ、そんな梅歌の行動によって梅歌と松華は普段では味わえないような体験、さらに、いろんな人たちとの交流ができることもあり、松華は不安を抱える以上に、

(でも、もしかすると、その梅歌の行動によって新しい出会いや体験ができるからいいかな)

と、今度の梅歌の行動によって新しい経験ができる、そんなキラキラした気持ちにもなっていた。

 そして、ついにそのライブの日を迎えた。決めたら即行動、そんな梅歌はいの一番に家を出た。その梅歌の横では・・・、

「う~、眠い・・・。梅歌、ライブは逃げないから・・・」

と眠たそうな目をこすりながら松華が梅歌にそう離すも、梅歌、

「でも、1番いい席なんてすぐに失くなってしまうもん!!早起きはいい席の得、っていうもん!!」

と元気よくそう言い切ってしまう。ただ、これには、松華、

「それを言うなら「早起きは三文の得」・・・。うわ~、眠い・・・」

とまだ寝ぼけているのか、梅歌の間違いを指摘するもついあくびがでてしまった・・・。 そんな梅歌の行動のおかげか、沼津駅前で行われるライブ、その1番前の席を2人はゲットできたのですがねぇ・・・。

 そんなこともあり、ついに沼津駅前のライブが始まった。まずは赤い髪のメンバー、いや、自信たっぷりの表情の赤い髪をした少女がステージに立ちこう話し始めた。

「みなさん、こんにちは。ルビィたちは、浦の星・・・、あっ、元浦の星のスクールアイドル、Aqoursです!!これからこの南口特設ステージにてライブを行います!!今のルビィたちを、新生Aqoursを、ぜひ見てください!!よろしくお願いいたします!!」

赤い髪の少女、ルビィ、その少女の表情はこれからの自分たちの道を自信いっぱいに進んでいく、そんな決意がみられた。そんなルビィの表情に1番前の席から見ていた梅歌は、

(うわ~、あの娘(ルビィ)、とても輝いている!!とってもとっても輝いている!!)

とルビィの自信いっぱいの表情につい吸い込まれそうに、いや、とても輝いているルビィの虜になろうとしていた・・・。

 そして、そんなルビィの言葉を皮切りにルビィたちの、新生Aqoursのライブが始まった・・・。まず最初の曲は「NEXT SPRKING」。「次への輝き」ともいえるこの曲はルビィたちの、新生Aqoursの、観客席から見ている、ダイヤ、鞠莉、果南、の新たなる輝きへと進もうとしている、浦の星での、、Aqours9人の、新しい輝きへと進もうとしている、そんな想いがこもった曲であった。そのためか、梅歌、その想いを直感的に受け取ったのか、

(なんか、この曲、新しい輝きへと進もうとしている、そんな想いでいっぱいだ~)

と自分のなかにその想いがいっぱいになっていく、そう感じていた。

 だが、そんな想いでいっぱいになる梅歌とは裏腹に演目はどんどん進むこのライブ、新生Aqoursお披露目ライブ、とは名をうっているが、それは名だけ、いや、名以上に豪華ななものになってしまった。新生Aqours誕生を祝してか、沼津を拠点にしているスクールアイドルたちが終結、なかには、Aqoursを超えろ、とばかりに沼津にある男子校、なのか、男だらけのスクールアイドル?、までもが乱入する始末。いや、それどころか、Aqoursの公式ライバルであったSaint Snowの聖良と理亜からお祝いメッセージが披露される、そんな豪華な、いや、もしかすると、カオス、ともいうべきライブになってしまった・・・。だが、それでも、このライブのステージに出ているスクールアイドルたちは新生Aqoursと同様にとてもキラキラしていた、いや、ものすごく輝いていた。これには、梅歌、

(みんなとても輝いている!!私もみんなみたいに輝きたい!!)

とついつい自分の目の前にいる新生Aqoursをはじめとするスクールアイドルたちみたいに自分も輝きたい、そんな想いが芽生えようとしていた。

 一方、そんな梅歌をときどき見ていた松華はというと、

(なんか梅歌を見ていると、自分も目の前にいえる人たちみたいに輝きたい、そんな梅歌の想いがひしひしと感じます・・・)

と、目をキラキラしている梅歌を見てはついついそう思ってしまった。梅歌と松華は小さいときからいつも一緒に行動していた。そのほとんどが梅歌のとっておしもない直感的な行動であったが梅歌といつも行動していくうちに梅歌の表情を見てはすぐに梅歌が今感じていることが手をとるようにわかってしまうことがよくあった、松華にとってみれば・・・。なので、この目の前で繰り広げられる沼津のスクールアイドルたちのライブ、そのスクールアイドルたちの輝きに梅歌は目を奪われようとしている、そう松華はすぐにそのことを感じとったのだ。このためか、松華、思わず、

(こりゃ、私、絶対に巻き込まれるわ、、梅歌のとっておしもない行動に・・・)

となぜか諦めに満ちた表情になってしまった・・・。

 そして、そんな松華の不安?は的中してしまう。夜まで行われた新生Aqoursお披露目ライブ、最後は今日出演したスクールアイドル全員でのスクールアイドルのお祭りなら必ず歌われる曲、「SUNNY DAY SONG」でももってこのライブは終了した。

 その後、まわりにいる観客たちはそれぞれの家路につこうとしていた、そのとき、松華は梅歌に対しこう告げた。

「梅歌、ライブ、終わったよ。もう帰ろうよ・・・」

 だが、そんな松華の言葉すら聞こえていないのか、梅歌、目をキラキラさせながらその場を動こうとしなかった。いや、それどころか、

「梅歌、もう帰ろうよ・・・」

と言い続ける松華の言葉に、梅歌、

「私、ずっとここにいたい・・・、離れたくない!!」

とだだをこねてしまった。これには、松華、

「梅歌、ライブ、終わったんだよ!!ライブの片付けの邪魔になるだけだからもう行こうよ・・・」

と梅歌に注意するも、梅歌、そんな松華に対し、

「いや、離れたくない!!このライブの余韻に浸る!!」

とわがままを言ってしまう。なので、松華、そんな梅歌の言葉に、

「梅歌・・・」

と頭を抱えてしまった・・・。

 そんな梅歌であるが心のなかではある想いでいっぱいになっていた。梅歌、このとき、

(私もこのライブに出ているスクールアイドルたちみたいに、特に、このライブの中心にいたAqoursみたいに、輝きたい!!)

という想いでいっぱいになっていた。梅歌はみんなと一緒に輝ける、そんな高校生活を夢見ていた。そんな梅歌にとって自分の目の前で繰り広げられたスクールアイドルたちの・・・、これから自分がなろうとしている高校生たちの・・・、そんな、みんなが輝いている、そんなステージを見せつけられた、そのことにより、自分もスクールアイドルになってこのライブに出ていたスクールアイドルたちみたいに、特に、このライブの中心ともいうべき新生Aqoursのメンバーたちみたいにみんなと一緒に輝きたい、梅歌はそう思えるようになったのだ。いや、それどころか、そんなスクールアイドルたちの輝きの余韻にずっと浸りたい、そんな思いすら梅歌はしていたのかもしれない。なので、その場から離れようとしない梅歌を見ては、松華、

(う~、これではまわりの人たちに迷惑をかける・・・)

と梅歌の行動にさらに頭を抱える状況になってしまった・・・。

 そんなときだった。突然、赤い髪の少女が梅歌と松華のまえに立ってはこんなことを言いだしてきた。

「2人とも、今日のライブ、どうだった?楽しかった?」

この少女の声に、梅歌、目の前にいる少女を見ては元気よくこう言った。

「うん、楽しかった!!みんな輝いていた!!私もみんなと一緒に輝きたい!!」

自分の想いを熱をこめて言い放った梅歌。そんな想いを受け取ったのか、赤い髪の少女はそんな梅歌に対しこう告げた。

「ルビィね、こう思うんだ、ルビィたちみたいに、高校生であれば、ううん、誰だって必ず輝くことができる、そう思っているんだ。だからね、お願い、一生懸命ガンバルビィして、絶対に輝いて!!」

この赤い髪の少女の言葉に、梅歌、

(なんかいいこと、言われた!!いや、それ以上に、私、絶対に輝いてみせる!!みんなと一緒に輝いてみせる!!)

とみんなと一緒に絶対に輝いてみせる、そう思えるようになったのか、その赤い髪の少女に対し、

「うん、私、絶対に、みんなと一緒に輝いてみせる!!」

と、なにかを決意した、そんな表情をしながら力いっぱいに答えた。

 そんな梅歌であったが、つい、こんなことまでその赤い髪の少女に尋ねてしまう。

「ところで、スクールアイドルって、誰でもなれるものなの?」

そう、梅歌は、このとき、ある疑問を持っていた。それは、誰でもスクールアイドルになれるのか、ということである。梅歌はスクールアイドルみたいにみんなと一緒に輝きたい、そう思っていた。では、どうすれば手っ取り早くみんなと一緒に輝きるのか、それは、梅歌自身、スクールアイドルになればいい、というものだった。スクールアイドルになればきっとこのライブに出ていたスクールアイドルみたいにみんなと一緒に輝くことができる、そう梅歌は考えたのである。まぁ、ちょっと短絡的な考えかもしれないのですがね・・・。

 そんな梅歌の質問にその赤い髪の少女は元気よくこう答えた。

「うん!!スクールアイドルって誰でもなれる、高校生なら誰でもなれるんだ!!ルビィだって最初はただの女子高生、ただのスクールアイドル好きな少女だったんだよ!!でも、Aqoursに入って、お姉ちゃんたちと、千歌ちゃんたちと、みんなと一緒になって輝きたい、そう思ったから、ルビィたち、自分たちだけの輝きを見つけることができたんだよ!!だからね、忘れないで、スクールアイドルは高校生なら絶対になれる、自分たちだけの輝きを、とても大きな輝きを、宝物を、持つことができる、そんな無限大の可能性を秘めたもの、なんだよ!!」

その赤い髪の少女の言葉に、梅歌、つい感動してはあることを決意してしまうことに・・・。

(そうなんだ。スクールアイドルって高校生であれば絶対になれる、みんなと一緒に輝くことができる、そんな無限大の可能性を秘めているものなんだ!!なら、私、決めた、静真に入ったらスクールアイドルになる!!そして、このライブに出ていたスクールアイドルたちみたいにみんなと一緒に輝いてみせる!!)

そう思ったのか、梅歌、つい、この言葉を口走ってしまった・・・。

「私、決めた、高校生になったらスクールアイドルになる!!そして、絶対に、みんなと一緒に輝いてみせる!!」

その梅歌の言葉を受けてか、赤い髪の少女は梅歌に対しこう応援した。

「うん、ルビィ、応援しているね!!高校生になったらスクールアイドルになってみんなと一緒に輝いてね!!」

その赤い髪の少女の言葉に、梅歌、

「うん、私、絶対にそうなる!!」

と元気よく答えた・・・のと同時に梅歌はその赤い髪の少女にあることを尋ねた。

「ところで、あなたのお名前、なんていうの?」

その梅歌の言葉に、松華、

「えっ、梅歌、いい加減に・・・」

と注意するも、赤い髪の少女、すぐに、

「ううん、大丈夫だよ」

と松華に対しそう言うと自分の名前を言った。

「ルビィの名前は、黒澤ルビィ、元浦の星のスクールアイドルAqours、黒澤ルビィ、だよ!!」

その赤い髪の少女ことルビィ、その言葉に、梅歌、

「ルビィちゃん、ですね!!」

とルビィの名を言うと続けて、

「ルビィちゃん、ありがとうございました!!紅梅歌、これから進む道、ルビィちゃんの言葉で決めました!!」

とルビィに対しお礼を言うと松華に対し、

「松華、帰ろうよ!!帰ったらいろいろと準備、するからね!!さぁ、忙しくなるよ!!」

と元気よく言うとすぐにその場から走り去ってしまった。これには、松華、

「あっ、ルビィさん、本当にありがとうございました!!」

と一礼するとともに、

「梅歌、待ってよ~。いつも唐突に動くんだから~。少しはまわりのことを考えて行動して~」

と言っては梅歌の後を追った・・・。

 そんな2人を見ては、ルビィ、

「ルビィね、2人のこと、応援しているね!!絶対にスクールアイドルになってルビィたちみたいに自分たちだけの輝きを、宝物を、見つけてね。そして、みんなと一緒に輝いてね」

と梅歌と松華のことを応援するような言葉を発していた。



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ラブライブ!RSBP 第2話

 そして、このあとの梅歌の行動はとても早かった。まず、梅歌はAqoursのことについていろいろと調べた。なぜなら・・・、

(あのライブでとても輝いていたのはAqoursだった・・・。なら、あのAqoursのことを調べればどうやって輝くことができるようになったのか、わかるかも・・・)(梅歌)

そう、あのライブ、新生Aqoursお披露目ライブ、そのライブで1番輝いていたのはAqoursだった。なら、そのAqoursのことについて調べればそのAqoursみたいにいっぱい輝くことができるのかわかるかもしれない、そう梅歌は考えたからだった。

 Aqours、2~3年前、Aqoursの一員だった、ダイヤ、鞠莉、果南が1年のときに立ち上げたグループ。ただ、ダイヤたちが1年の夏休み前のときに一度休止状態になるも、2年後、つまり、昨年の4~5月ごろにAqoursメンバーの1人、千歌たち2年生が中心となって別の形でスクールアイドルグループを結成、そのとき、自分たちのグループ名について悩んでいた千歌がたまたま内浦の砂浜海岸で書かれていた「Aqours」という名前を気に入り、伊z分たちのグループ名を「Aqours」にした(ちなみに、その「Aqours」の名前を砂浜に書いたのはのちにAqours結成を導こうとしていたルビィの姉のダイヤであった・・・)。その後、ルビィたち1年生、ダイヤたち3年生が加入したことで、パーフェクトナイン、Aqours、となるとラブライブ!に参戦、夏季大会は東海最終予選で敗退するも9人一緒に行動していくうちに9人の結束にどんどん強くなっていき、冬季大会、ついに優勝することができた。いや、この1年間で9人で紡いだ想い、想い出、キズナ、そんな自分たちだけの、いや、日本で一番の輝きを見つけることができた、そんなスクールアイドルグループであった。

 そんなAqoursのことを知るうちに、梅歌、

(Aqoursについていろいろと調べていくうちにAqoursのことがもっと好きになっていく・・・。もっとAqoursのことが知りたい!!もっとAqoursに近づきたい!!)

とAqours愛がどんどん強くなってしまった・・・。

 そんな梅歌、次に調べたのは・・・Aqoursメンバーがいる高校についてであった。これには、梅歌、

(たしか、ライブのときに、赤い髪の女の子、「浦の星の・・・」って言っていたな!!)

とAqoursメンバーがいる高校が浦の星であることを思いだしていた。たしかに、赤い髪の女の子、ルビィが「浦の星の・・・」と言っていたのだ。なので、梅歌、浦の星について調べることに。

 だが、浦の星について梅歌が調べていくうちにあることがわかった・・・。

「えっ、浦の星、この前、廃校したばかりだ・・・」(梅歌)

そう、先月、Aqoursメンバーがいる浦の星は廃校となったのだ。さらに梅歌はその廃校についてちょっと調べるとAqoursは浦の星の廃校を阻止するために、浦の星の廃校が決まってからは浦の星の名をラブライブ!の歴史に刻み込むために頑張っていたことがわかった。これには、梅歌、

(Aqoursは浦の星を残すために、それがダメになっても浦の星にいる仲間たちのために、それくらい、みんなのために一生懸命頑張ってきたんだ・・・。だから、輝くことができたのかも・・・)

と思ってしまった。Aqoursは確かに浦の星の廃校を阻止するために動いていた。それがダメになっても浦の星のみんなのために頑張っていた。それがAqoursという日本で一番の輝きになった、というのだ。まぁ、確かに、ルビィたちAqoursは自分たちのまわりにいるみんなとともに一生懸命がんばってきた。Aqoursは、1つのギアである。千歌を中心とするそのギアはそのまわりにあるギア、Aqoursメンバーを支える浦の星や内浦のみんな、そんな大小複数の、いや、数多くのギアを力いっぱい回し続けた。そんなこともあり、アクアは自分たちのまわりにいる人たちを巻き込みながら、自分たちだけの想い、想い出、キズナ、いや、Aqoursに関わってきた数多くの人たちとの想い、想い出、キズナ、そんな日本一の輝き、宝物を手に入れることができたのかもしれない。

 そんなことを知ったためか、梅歌、こんなことをついこう思ってしまう。

(私、もっとAqoursのこと、好きになったのかも・・・。私も浦の星がまだあったら浦の星に入ってAqoursみたいなスクールアイドルになれたらきっとAqoursみたいに輝くことができる、そう思えてしまうんだよな・・・)

そう、梅歌は浦の星がまだ続いていれば浦の星に入ってAqoursみたいなスクールアイドルグループになれるのではないか、Aqoursのそばで自分もスクールアイドルになればAqoursみたいに輝くことができる、そう思うようになったのである。

 だが、その浦の星はすでに廃校でもう存在しない、そんなこともあり、梅歌、

(でも、その浦の星はもうないなら、Aqours、いや、新生Aqoursはどこにいくのだろうか・・・)

とつい疑問に思ってしまう。Aqoursのいた浦の星はもう存在しない。でも、Aqours、いや、新生Aqoursは今でも活動している。げんに、この前、沼津駅前でお披露目ライブをしたばかりである、新生Aqoursは・・・。そして、スクールアイドルは高校生であれば誰でもなれるアイドルである。なので、今もどこかの高校に新生Aqoursは属している、というのである。

 そこで、梅歌、浦の星はどの高校と統合したのか調べるように・・・なったわけではなく、あることを思いだしていた。

(たしか、この前の静真での部活動報告会のとき・・・、浦の星からAqoursというグループがライブをしたよね・・・)

そう、Aqours、厳密にいうと新生Aqours、は3月に行われた静真の部活動報告会のときに浦の星の部活動代表としてライブを行ったのだ。ただ、このときはダイヤたち3年生がいないという喪失感とある男のせいで、不安・心配という深い海・沼に陥ったせいか、満足がいくようなパフォーマンスをみせることができなかったのだが、この報告会に梅歌も松華を伴って見に来ていたのである。まぁ、このときは自分たちが持つ輝きを解き放つことができずに、ラブライブ!優勝のときを100とするならこのときのライブは、40、いや、30、くらいの輝きしかみせることができずにライブ失敗という烙印を押された、そんな印象だったのでこのときの梅歌はそこまでAqoursのことを気にしていなかった。だが、梅歌の頭のなかにはその報告会に新生Aqoursがライブを行った、その記憶だけは残っていたらしく、Aqoursのことを調べていくうちにその記憶を思いだすことができた・・・のかもしれない。

 だが、そのことに気づいたことにより、梅歌、はっとする。

(ということは・・・、もしかして・・・、浦の星の統合先は・・・静真・・・静真なんだ!!そして、私は、この春、静真に入学した・・・)

そう、梅歌は、この春、いや、今月(4月)に静真に松華と共に静真に入学していたのだ。そして、新生Aqoursのメンバーがいる浦の星は静真と統合した・・・、そのことが指し示すものとは・・・、

(そうだ!!新生Aqoursは静真に、この春、浦の星との統合によって静真の生徒になったんだ!!それって、つまり、私のいる静真に新生Aqoursは・・・いる!!)(梅歌)

そう、新生Aqoursは、今年の春、浦の星と静真との統合によって静真の一員となったのだ。そのことを知った瞬間、梅歌、思わず涙する・・・。だって・・・、

(ということは・・・、私、試製Aqoursのもとでスクールアイドルとして輝くことができる!!だって・・・、スクールアイドルとしては高校生なら誰でもなれるものだから!!)(梅歌)

そう、梅歌は気づいたのである、静真に新生Aqoursはいる、それは、つまり、静真の生徒である梅歌も新生Aqoursのもとでスクールアイドル活動ができる、新生Aqoursと一緒に自分も輝くことができる、そのことを・・・。

 そして、梅歌はあることを決意した。

「私、静真では絶対に(新生Aqoursのいる)スクールアイドル部に入る!!そして、新生Aqoursと一緒に・・・私もスクールアイドルとしてみんなと一緒に輝きたい!!」

 その決意のもと、梅歌はさっそく行動する。まずは・・・、梅歌にとって1番の親友である松華に対し、

「私、決めたの、静真にあるスクールアイドル部に入ってみんなと一緒に絶対に輝く!!だから、松華、お願い、私と一緒にスクールアイドル部に入って!!」

とお願いしてきたのである。

 ただ、これには、松華、

(あ~、いつものとっておしもない梅歌の行動だ・・・)

とちょっと哀れな表情をする。松華にとってみれば今の梅歌のお願いも、いつもと同じ、梅歌さんのとっておしのない行動だとみえていたのだ。なので、松華、そんな梅歌に対し、

「はいはい、わかりました。その話はあとでね・・・」

と簡単にあしらってしまった・・・。

 だが、1度は決めた以上、梅歌だって負けていない。その次の日以降、梅歌、松華に会ってはすぐに、

「松華、お願い、私と一緒にスクールアイドルになって!!」

とお願いしてくる、それも毎日・・・。なのd、梅歌の家に近い、そのためか、梅歌と会う頻度が高い松華からすれば毎日のようにくる梅歌のお願いに・・・、

(う~、頭が痛い・・・)

とうんざりすることに・・・。そのためか、松華、そんな梅歌に対し、

「う~、その話はまた今度・・・」

とすぐに梅歌のもとから立ち去ってしまうほどに・・・。

 そんなこともあり、梅歌、松華の一連の行動に、

(う~、このままだと松華に逃げれてばかり・・・。それって、つまり、松華がAqoursがどんなスクールアイドルグループなのかしらないからなのです!!ならば、私にいい考えがあるのです!!)

となぜか別方向に考えてしまう始末・・・。あの・・・、梅歌さん、松華さんは別にAqoursのことを知らないのではなくて梅歌さんの毎日のようなお願いにうんざりしているだけなのですがね・・・。

 まぁ、そんなわけでして、梅歌、松華へのアプローチを少し変えることに。梅歌、松華に電話をすると、開口一番、

「松華、お願い、今度の日曜、あの場所へ、一緒に行こう!!」

と言うと、松華、

「えっ!!」

とびっくりしてしまう。この梅歌の言葉に、松華、つい、こう思ったからだった・・・。

(突然の梅歌のお願いだけど絶対に裏があるかも・・・)

そう、松華にはこの梅歌のお願いには絶対に裏があると思ったのである。梅歌はこれまで松華に一緒にスクールアイドルになろうと何度もお願いをしてきたのだ。なので、今回もなにか裏がある、そう松華は思っていたのである。

 そのため、松華、そんな梅歌に対しあることを尋ねた。

「梅歌、それってなにか裏があるんじゃない?」

その松華の質問に梅歌はこう答えた。

「私ね、この前のライブ(新生Aqoursお披露目ライブ)を見てこう思ったの。私、スクールアイドル部に入ってみんなと一緒に輝きたい!だから、私、その場所に行って、これから先、どうすればみんなと一緒に輝くことができるのか確かめたいの!!」

この梅歌の言葉に、松華、

(ふ~、どうやら、私をスクールアイドルにするのを諦めたのかも。だって、梅歌の話に私の名前なんてでてこなかったから・・・)

と少し安心した様子。どうやら梅歌の先ほどの発言に自分の名がなかったのがよかったようだ。ただ、このときの松華はまだ気づいていなかった、梅歌の発言にあった「みんな」、このなかに松華も含まれていることを・・・。実は、松華は、梅歌のいう「みんな」というのは梅歌が入るスクールアイドル部のみんなである、とこのときは認識していたのだ。

 というわけで、松華、そんあ梅歌に対し、

(まぁ、これからの梅歌との仲を考えると少しは梅歌のお願いを聞かないとね・・・)

と思ったのか梅歌に対し、

「うん、わかった。今度の日曜、その場所に行こう」

と快諾することにした・・・。

 だが、それを気をよくしたのか、梅歌、ことあるごとに松華に対し、

「私、絶対にスクールアイドル部に入る!!そして、みんなと一緒に輝きたい!!」

と言うようになった。ただ、これに対しては、松華、毎度の如く、

「また始まった・・・、その話・・・」

と言うも、前とは違い、梅歌の楽しい表情に、松華、

(まぁ、いいか)

とそんな梅歌を微笑むように見ていた・・・。



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ラブライブ!RSBP 第3話

 そして、ついに日曜となった。梅歌は松華を連れて静真の制服の格好でその場所へと受かった。その場所に向かう途中、梅歌はその場所に行く理由として、

「私、ずっとその場所に行きたかったの!!だって、その場所って私が憧れている人たち、いや、スクールアイドルグループのゆかりある聖地なんだから!!その場所に行けば私がスクールアイドルとしてみんなと一緒に輝くことができる、その方法を知ることができると思えるんだ!!!」

と何度も何度も繰り返し繰り返し松華に言ってしまった・・・。これには、松華、

「それくらい梅歌にとってそのグループにぞっこんなんだね!!」

と相槌を打った。

 その後、2人はついにその場所へ、内浦の砂浜海岸、その近くにあるバス停に着いた。そのとたん、梅歌、なぜか洲は生海岸に向けてダッシュをする。これには、松華、

「梅歌、なんで突然走り出すの!?海水浴に来たわけじゃないのだから・・・」

と梅歌を追ってそう言うと、梅歌、すぐに、

「だって、その場所に、私、早く行きたいんだもん!!」

と颯爽と答えるとするとさらに走るスピードをあげる。これには、松華、

「追うっか、待って~!!私のことを置いていかないで!!その場所なんてどこにも逃げないのだから!!」

と梅歌に対しツッコミをいれる。それでも梅歌はスピードを緩めることはなかった・・・。

 そして、ついにその場所に、梅歌、到着!!そのためか、梅歌、開口一番、

「来た~~~!!」

と大声をあげると梅歌のあとを追ってきた松華が一瞬その場所、る地裏の砂浜海岸を見て、

「小さいころ、(よくこの場所に)海水浴によく来たなぁ」

と昔のこと思いだす。そう、この場所は梅歌と松華が小さいときに一緒によく行っていた海水浴場だったのだ。

 まぁ、そのことは置いといて、松華、あらためて、

「ってか、なんでここに来たの?」

と尋ねてみる。事前に、「あの場所に行く」、その場所と行く理由について松華は梅歌に尋ねていたのだが梅歌からはハッキリとしてことを聞くことができなかった。なので、松華からしたら今回は梅歌のあとをついてきただけ、ある意味、ミステリーツアー状態、だったのである。というわけで、松華、あらためて、この場所へ、内浦の砂浜海岸に来た、その本当の理由を梅歌に尋ねてみたのである。

 そんな松華の質問に、梅歌、元気よく答える。

「聖地だよ、せ・い・ち!!」

だが、その梅歌の答えに、松華、

「聖地?」

と逆に言い返す。松華、梅歌が言う聖地が誰の聖地のことなのかわからなかったのだ。

 そんな松華に対し、梅歌、こんなことを言いだす。

「え~、この前にあった、沼津のライブ、見てなかったの!?」

これには、松華、

(えっ、この前の沼津駅前のライブって・・・)

となにか思い当たる節があったのか、そのライブがなにのか見当がついたみたい・・・。

 そんな松華を見てか、梅歌、続けて、

「私、高校生になったらスクールアイドル部に入るんだ~」

と言うと、松華、

(あぁ、この前の沼津駅前のライブってこの前のスクールアイドルのライブのことね・・・)

とつい思いだした・・・というか、心のなかで、松華、

(って、私、そのライブ、梅歌に連れられて一緒に見に行ったのですがね・・・、それも最前列で・・・。それに、私たち、すでに高校生なのですが・・・)

と梅歌にツッコミを入れる。そう、松華の言う通り、梅歌の言うライブというのは、この雨、沼津駅前で行われたあのグループのお披露目ライブのことであった。さらに、「スクールアイドル部に入る」、との言葉は耳にタコができるくらいまで梅歌が言い聞かせたセリフであった。

 ですが、松華、聖地に来たことでウキウキ気分の梅歌のことを思ってか、梅歌に対し、

「また始まった(、その話)」

とこちらもウキウキ気分、な風に答えると、梅歌、

「みんなキラキラしていたな~」

とそのライブのことを思いだしてはそのライブのステージでキラキラしていたスクールアイドルたちをの姿を頭のなかで浮かべてみては、

「私も(みんなと一緒に)輝きたい!!」

そんな、自分の願望、というか、自分の夢、スクールアイドルになってみんなと一緒に輝きたい、その言葉を目をキラキラさせながら言った。

 そんな梅歌をみてか、松華、つい、梅歌の方をじっと見る。すると、梅歌の先にあるあるものを見つけた。それは大きな深紅の優勝旗だった。それを見ては、松華、ここが誰の聖地であるのかわかった・・・。

(もしかして、ここって、今、梅歌が夢中になっている・・・)

だが、それでも、松華、目をキラキラしている梅歌を見て、

(梅歌はそのグループが誰なのか言いたそうにしている・・・。なら、しゃあないか。そのグループが誰なのか聞いてあげる!!)

と大人の対応?をとることに。

 そんなわけでして、松華、梅歌に対し、

「それで、(そのお披露目ライブを行ったスクールアイドルグループって)なんていう名前なの?」

と尋ねてみる。すると、梅歌、

「うん、名前はね・・・」

と言っては砂浜に大きく、

 

Aqours

 

という文字を書いた。その言葉を見た瞬間、松華、

(やっぱりAqoursだったんだ・・・)

と自分が気づいたグループと同じく梅歌が言おうとしていたグループというのがAqoursであることに驚きを感じていなかった。

 だが、そんな松華に対し、梅歌、あることを考えていた。

(この聖地はAqoursの聖地、この場所にくれば松華もAqoursのことを好きになるかも!!だって、聖地というのは人々をそのグループの虜にする場所!!だから、松華もAqoursのことが好きになるはず!!)

そう、梅歌はこの場所に、Aqoursの聖地に松華を連れてくれば松華はきっとAqoursのことが好きになるそう期待していたのだ。ただ、たとえそこがAqoursの聖地だからといってそこを訪れたとしてもその人がAqoursのファンに絶対になってくれる・・・というわけではないのですがね・・・。ただ、梅歌にとってはそう信じているみたいでして・・・、そのためか、梅歌、つい皮算用を弾いてしまう。

(そして、松華は私と一緒にスクールアイドルになってくれるはず!!)

そう、梅歌が松華をここに連れてきた本当の理由、それは、ここにくればきっと松華も心変わりして自分と一緒にスクールアイドルになってくれる、そう思ったから・・・。いつも梅歌が「私と一緒にスクールアイドルになって」と言っても松華はいつも断っていた。なので、それならば、と、Aqoursの聖地、内浦の砂浜海岸、に行けば松華も考えを変えるだろう、本当にそう思って梅歌は松華をここに連れ出したのである。

 そんなこともあり、梅歌、松華に対し、あるお願いをした。

「松華、お願いがあるの。私と一緒に・・・」

 だが、そのときだった。梅歌と松華、2人で一緒に夢を確認しあっていた、そう見えていたのか、2人のもとにある少女が飛び込んできた。その少女は、梅歌、松華、ともに、

((えっ!!))

と驚くと、その少女、いきなり、こんなことを言いだしてきた。

 

「ねぇ、君たち、スクールアイドルにならない?私と一緒にスクールアイドルにならない?」

 

ただ、このあと、その少女は小声で、

 

「Aqoursを○○〇ためのね・・・」

 

と言うのだが、梅歌と松華は少女の小声が聞こえていなかったのか、

(えっ、私たち、静真の人にスクールアイドルのスカウトされたの・・・)(梅歌)

と驚きの表情でそう思ってしまった。だって、その少女も梅歌と松華と同じく静真の制服を着ていたのだから。なので、梅歌、静真の人からスクールアイドルのスカウトが来た、とそう錯覚したのだ。

 ただ、松華は少し冷静だった。その少女に対し、

「ところで、あなた、お名前はなんていうの?」

とその少女の名を尋ねた。

 すると、その少女はこう名乗った。

「私の名前は木松桜花(きまつ はな)。静真のスクールアイドル部の部長です」

その少女こと木松桜花は、このとき、こう思っていた。

(私にとってこれがお父様から認めてもらう最初で最後のチャンスなんだ!!あのAqoursを潰せば・・・お父様を苦しめたあのAqoursを潰せば・・・、絶対に、私のことを認めてくれるはず!!)

 



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ラブライブ!RSBP 第4話

 木松桜花、梅歌と松華と同じく静真の新高校1年生である。そんな彼女宇はある思いのもとにこの沼津内浦に来ていた。それは・・・、

(私にとってこれがお父様から認めてもらう最初で最後のチャンスなんだ!!あのAqoursを潰せば・・・お父様を苦しめたあのAqoursを潰せば・・・、絶対に、私のことを認めてくれるはず!!)

 Aqoursを潰す・・・、私のことを認めてくれるはず・・・、その言葉たちは桜花にとって、ある意味、自分の存在意義を、自分の父親から自分を認めてもらいたい、そんな必死さが伝わってくるとともに、Aqoursに対しある種の恨み、というか、絶対にそれを成し遂げないといけない、そんな別の意味での必死さが伝わってくるものだった。

 では、なぜ、桜花はそこまでAqoursを潰すことに必死になっているのか。それは彼女と彼女の父親との関係によるものだった。桜花の父、木松悪斗は桜花に対しいつもこの言葉を投げかけていた。

「このごく潰し、少しは旺夏みたいに私の役に立て!!お前はになにも私のためになってない。ただそこにいるだけ。それではなんの価値なんてない。いつも言っておるだろ、「勝利こそすべて」だと。私のために「勝つ」ことなんてしない。そんな無価値なお前ほどここに存在してはいけないのだ。いいか、お前は「役立たず」「無価値」なんだ!!それを自覚しろ!!もしそれがいやなら私のためになにかしろ!!勝つことを目指せ!!]

 桜花の父、木松悪斗は「勝つことがすべて」が口癖、いや、それを信条としている。木松悪斗はなにごとにおいても「勝つこと」を優先する。それは誰に対してでもある。仕事仲間にしても、プライベートにしても、「勝つこと」「勝ち続けること」をいつも求めてくる。むろん、それは自分の娘に対してでもある。木松悪斗には2人の娘がいる。長女の旺夏、そして、次女の桜花である。で、長女である王かは小さいときから女子サッカーの選手として活躍しており、そのレベルは同世代の日本代表に近い、と言われ続けてきた。それを指し示すものが、去年度、旺夏2年のときのインターハイであった。旺夏は静真高校女子サッカー部の主将としてインターハイにのぞみ、優勝、全国制覇を成し遂げたである。もちろん、それはほかの選手たちのレベルの高さもあるのだが、旺夏自身、

「これは、私、木松旺夏が「勝つこと」を目指して戦った結果であり、すべては私のおかげなです!!」

と豪語するくらい、自分の実力のおかげ、「勝つことこそすべて」、それを物語ろうとしている、それが、木松旺夏、旺夏の主張であった。

 ちなみい、木松悪斗、旺夏ともに自己中心的であり、自分よりレベルが低いと(木松悪斗、旺夏が)決めつけられた者、負け続けている者に対しては見下す傾向があった。それは、自分の娘、妹である桜花に対してでも同じことが言えた。桜花はこれまで父木松悪斗の役に立つこと、「勝ち続けること」をしてこなかった、いや、そんな実力なんてない、そう自分の父である木松悪斗、姉である旺夏から見られていたのである。そのため、桜花はいつも父と姉から見下されては「ごく潰し」「役立たず」と罵倒されてきたのである。

 では、なぜ、木松悪斗は自分の娘たちに対し「勝つこと」を強要するくらい「勝つこと」にこだわり続けているのか。それは、彼の生い立ちに秘密があった。木松悪斗は、約50年前、北海道の炭鉱夫の子どもとして生まれた。50年前、北海道をはじめ、全国各地には石炭を採掘する場所、炭鉱が数多く存在していた。特に北海道では夕張をはじめ、大小数多くの炭鉱があった。そのため、その炭鉱から出る石炭を港に運ぶための鉄道路線が北海道各地に張り巡らされていた。

 だが、木松悪斗が生まれたときにはすでにエネルギー革命、時代は(燃料の主役が)石炭から石油へと移り変わろうとしていた。そのため、このときにはすでに数多くの炭鉱が次々と閉山していったのである。

 そして、それは木松悪斗の父親が勤めている炭鉱でも起こった。木松悪斗が生まれて間もないころ、突然、炭鉱の掲示板に閉山を知らせる紙が貼られてしまう。これにより、木松悪斗の父親が勤めている炭鉱は閉山することとなった。そして、それは木松悪斗の家族にとって苦しみに満ちた旅の始まりでもあった。閉山、それはそこに勤めている者すべてが職を失う、そのことを意味していた。もちろん、再就職のあっせんもあるのだが、これまで石炭を掘ることを仕事にしてきた者にとってまだやったことがない他業種の仕事というのは慣れるまでとても苦労するものだった。それは木松悪斗の父親でもいえることだった。突然の閉山により職を失った木松悪斗の父親はほかの職種に再就職するもこれまでやったことがない仕事のため、あまり慣れずに苦労ばかりしていた、いや、それどころか、あまりなじめないあまり、仕事ができない、そうまわりから見られてしまい、木松悪斗の父親に対してまわりから罵詈雑言の言葉を浴びせられていた。これにより、木松悪斗の父親、短期間のうちに再就職先を辞めることとなってしまった・・・。

 その後、木松悪斗の家族は流浪の旅を始めた。北海道の各地を点々としては木松悪斗の父親は仕事を始めるもあまりに仕事になじめずにすぐに辞めては別の場所へと行く、それを繰り返していた。そんな父親に対し木松悪斗はいつも、

(なんでいつもすぐに仕事を辞めるんだよ、私の父親は・・・。もうひもじい生活はいやだよ・・・)

と、自分の父親に対して憎しみの目を向けるのと同時にいつまで続くかわからない、そんな極貧生活を嫌がってた。就職しようにもすぐに辞めてしまう、と、同時に、木松悪斗にとってみれば短期間で北海道の各地を転々とする生活により友達らしい友達を作ることができない、どころか、極貧生活のために学校に来ていく服すらない、いつも同じ服を来ている、ということもあり、まわりから、「貧乏人」、言われてはよくいじめられていた。そのため、木松悪斗にすればこの子ども時代の経験は、人から見下される、ことも相まってか、人のことなんて信じられない、人に頼ることなんてできない、自分でなんとかしないといけない、もう見下さることなんて絶対に嫌である、そんな木松悪斗の人格形成を作る要員ともなってしまった。

 そして、そんな極貧生活ということもあり、十分な教育を受けることが出来なかった木松悪斗は高校を卒業すると同時に就職しては家を飛び出し1人で生活していくことになる。とはいえ、木松悪斗が就職したときは、バブル時代、金があふれていた時代であった。なので、木松悪斗は仕事をすればするほど大型の契約を次々と結ぶことができたため、その分、給与もどんどん入っていくとともにどんどんお金が溜ってきたのである。これには、木松悪斗、

(あぁ、これこそ私が追い求めていたものだ!!仕事をすればするほどお金が入ってくる!!9

とこのときの生活に大満足していた・・・のだが、木松悪斗はそのお金がどんどん入ってくることだけに満足したため、べつに豪遊することはなかった。なので、入ってきたお金をすべて貯金していた。ただ、それが木松悪斗にとってこれからの人生に大いに役に立つことになる。

 しかし、この時代、木松悪斗のまわりにいる人たち、いや、日本に住んでいる人々がみなこのバブル景気が、黄金時代がずっと続く、そう思っていた・・・が、所詮はバブル、いつかは弾けるものである。数年後、ある政府の施策のためにバブルは一瞬のうちに弾けてしまった。それ以降、日本は「失われた30年」というくらいの不景気を味わうことになるのだが、それは木松悪斗も例外ではなかった。バブルが弾けたことにより木松悪斗は契約を獲ることができなくなった。いや、それ以上に、木松悪斗が勤めていた会社も1994年に倒産してしまった・・・。このときはぜったに潰れないと言われていた銀行すら倒産するくらい企業倒産が相次いでいた。それが木松悪斗にも及んでしまったのだ。このとき、木松悪斗は・・・、

(私が勤めていた会社が倒産した・・・。これからどうすればいいのだ・・・。まだ私にはお金があるがいつまでもそれが続くとは限らない。だからといってまわりに頼ることなんて絶対に嫌だ。自分でなんとかしないと・・・)

とまた子ども時代のときみたいな極貧生活をしないといけないのか、そんな不安を抱えていた。木松悪斗のまわりの人たちは、バブル時代、お金が余り過ぎていたため、普段はしないような豪遊をしてみたり、このとき、どんどん値上がりしていた株や土地に投資してはお金を増やそうとしていた。だが、その人たちはバブルが弾けたことによりすぐお金に困窮していった。でも、その人たちはこれまで投資していた株や土地があるのでは・・・と言いたいのが、バブルが弾けたことによりその株や土地がどんどん値下がりしていったため、その株や土地を売却としても購入したときよりもかなり低い金額でしか売却できない、そんな状況に陥ってしまった。対して、木松悪斗は入ってきたお金をすべて貯蓄に回していたため、仕事を辞めても豪遊させしなければ当分のあいだは生活することができた。それでも。この貯蓄が無限にあるわけではない、その先のことを木松悪斗は悩んでいたのである。

 だが、ここで1つの転機が木松悪斗に訪れた。それは木松悪斗が勤めていた会社が倒産した94年の次の年、95年に起きた。それは1つの商品、パソコンのソフト、というか、1つのパソコンOSが発売されたのだ。そのOSの名は「Windows95」。このOSが発売された日、木松悪斗はあるニュース番組を見ていた。そのとき、

「たった今、Windows95が発売されました!!」

というレポーターの声に、木松悪斗、つかさず、

(Windows95・・・、なんかすごいソフトが発売された・・・。それってどれくらいすごいのだろうか・・・)

とそのWindows95に興味をもつようになった。

 その後、木松悪斗、間を置かずにすぐにWindows95がインストールされたパソコンを1台購入、使ってみると、

(このソフト、これから先、この日本を、いや、世界を席巻する!!)

と直感した。そう、このWindows95、これまで事業用や学術用といった一部の人たちなどに使われていたパソコンを一般の家庭にまで普及させただけでなく、パソコンと同じく、これまでは事業者や研究者といった一部の人たちだけが使っていたインターネットを世界中の一般の人たちまで普及させることにつながったのである。それくらい革新的なソフト、OS、であった。それを木松悪斗は直感的に気づいたのである。

 そして、木松悪斗はこのWindows95を見てあることを決めた。

(これからの時代はコンピューター、インターネットの時代となる。ならば、その時代を見据えて、私自身、コンピューター、インターネットのことを勉強していかないといけない。そして、いつかはくる、コンピューター・インターネット時代に向けて自分自身でそれ関連の会社を立ち上げてその時代にのっていかないといけない、私はそう思う・・・)

そう、木松悪斗は、このとき、いつかはコンピューター・インターネットの時代を見据えてそのための先行投資を、自分自身、コンピューター、インターネットの勉強をして、自らの手でその関連の企業を立ち上げる、そのことを決めたのである。木松悪斗自身、まわりからいじめられた、その子ども時代の影響もあってか、ずっと人の下で働く、見下される、ことを嫌がっていた。では、そうならないようにするにはどうすればいいのか。それは、自ら会社を立ち上げ、社長としてその企業に君臨すればいい、そのことを木松悪斗はこのときにはすでに知っていたのかもしれない。ずっと企業のトップにいればまわりから見下されることなんてない、そのことを木松悪斗は自覚していた、のだろう。

 とはいえ、木松悪斗の行動は早かった。すぐにコンピューター、特にインターネットの関連の勉強を始めた。いや、寝る間を惜しんでその勉強に明け暮れた。そんなこともあり、木松悪斗のコンサートの知識はどんどん大きくなっていき、2年後には、木松悪斗自身、Windowsやインターネットを使ったシステムを構築するところまでに成長していった。

 そして、時は98年、この年にWindows95の後継である98が発売されると木松悪斗は1つのインターネット関連の企業を立ち上げた。もちろん、自分が持つ資産を一部残してその全額をこの会社につぎ込んだ。そのため、新しい会社、それも、その会社にいるのは、木松悪斗ただ一人、なのに活動資金はかなり潤沢、といった状況に・・・。と、同時に、時代は木松悪斗が予見した通り、このときから、新しいバブルの時代、コンピューター・インターネット、いや、ITバブルの時代へと突入していった。アメリカのシリコンバレーをはじめ、世界各地でIT関連の企業が次々と生まれていった。アメリカではグーグルやアマゾン、日本ではソフトバンクや楽天である。その1つに木松悪斗の会社もあった。特に木松悪斗が構築したシステムは革新的なものがあり、すぐのそのシステムを導入してくれる企業がどんどん現れたのである。

 そのおかげもあり、木松悪斗のIT企業はたった1年で急成長、

(新しく会社を立ち上げたのなら目指すは株式市場!!それでさらにお金をもっと集めて会社を大きくしてやる!!)

と木松悪斗が会社を設立したときに決めていた目標の1つ、株式上場、それをたった1年で、まぁ、東証ではないのですが、新興市場に自分の会社の株式を上場させることまでこぎつけたのである。でも、木松悪斗、この株式上場で得たお金をすべてシステム開発やそのための技術者を雇うための費用として使ったため、2000年、木松悪斗が経営するIT企業は、従業員数何百人、総売上数十億、にものぼる企業までになった。これには、木松悪斗、

「ふはは、私もこれで一国の主になったわ!!それもただの一国ではない。今や飛ぶ鳥を落とすくらいの大国の主となったのだ!!もうこれで誰も私のことなんて見下すことなんてできない!!私はそれくらいの地位にまで上りつめたのだ!!」

と社長室から見える下界を見ながら威張り散らしていた。

 だが、そう問屋はおろさなかった。木松悪斗が下界を見ながら威張り散らしてから数か月後、

「ふふふ・・・」

とにやにやしながらいつものごとくパソコンにプログラムを打込んでいた。社長である木松悪斗であるが自ら構築したシステムをよりいいものにいしようと思い、社長業の傍ら、システム開発にいそしんでいた。木松悪斗、いわゆる技術系、なのかもしれない。そんなシステム開発をしていた最中のことだった。突然、

バタンッ

と社長室のドアが大きく開くと社長秘書が社長である木松悪斗に向かってこう叫んでしまった。

「社長、大変です!!わが社が○○開発に乗っ取られました!!」

この秘書の言葉に、木松悪斗、

「えっ、なんだって!!」

と大声をあげてしまった。秘書が言うには市場に出していた木松悪斗の会社の株のほとんどを木松悪斗の会社より大きい大企業に買い占められたというのだ。実は、木松悪斗、自分の会社の株をあまり持っていなかった。木松悪斗の会社のような新興企業、つまり、ベンチャー企業ではその会社の総合者などは自分の会社の株のほとんどを持っていることが多かったりする。もし、その会社が急成長した場合、その会社の株は価値はその会社を創業したときよりも高まっていることが多い。そこで創業者はその株を売ることで多額の利益を得ることができるのである。また、ストップオプション(その会社の経営者や従業員が自社株を一定の行使価格で購入できる権利)を使うことでたとえその株が値上がりしても決められた安値で株を買うことでき、その株を売ったときに多額の利益を得ることができるのである。だが、木松悪斗はできるだけはやく自分の会社を大きくしたい、少しでもはやくシステム開発を進めたい、そんな理由でまわりの人の声なんて聞かず、自分が保有している自社株のほとんどを市場を介して売ったのである。さらに、木松悪斗、まわりの人の忠告を聞かずに会社の乗っ取りに対抗する対策なんてしてこなかった。この2点に気づいた大企業が木松悪斗の会社を乗っ取るために木松悪斗の会社の株のほとんどを買い占めたのである。

 あっ、ちなみに、大企業が木松悪斗の会社を乗っ取った理由、それは、木松悪斗の会社が持っているシステムの技術そのものを手に入れるためであった。木松悪斗が構築したシステムはこれまでとは違った革新的なものだった。それを大企業は手に入れたくて木松悪斗の会社を乗っ取ったのである。でも、これは木松悪斗の会社だけのことではなかった。形は違うもアメリカの会社ではときたまあることだった。たとえば、YouTube、である。YouTubeはもともと1つの企業として大きく成長していた。それをGoogleが目をつけ会社丸ごと買収したのである(なお、こちらに関しては会社乗っ取りではなくちゃんとした買収であった)。その後、YouTubeは伸びに伸び、ユーチューバー、という言葉すら出てくるほど、世界を席巻する、それくらいGoogleを支える大きな柱の1つとなった。だが、今回は社長である木松悪斗でさえ知らないところで起きた買収劇、今の言葉でいうところの、敵対的買収、であった。

 そんなわけで、木松悪斗、すぐに対策を・・・とることができなかった。それどころか、

(私は社長だ!!いくら私の会社を乗っ取ってもこの会社にいる従業員はみな私についてきてくれるはず!!だって、この会社のシステムは私が構築したものだからな!!)

と高をくくっていた。そう、木松悪斗の会社が構築したシステムは木松悪斗が開発したものであった。なので、そのシステムを一番熟知しているのは木松悪斗本人であり、木松悪斗がいなければこのシステムの根幹部分になにかがあったときには対処できなくなるのだ。そのことを気付いている木松悪斗は自分の会社の従業員はなにがあっても自分についていく、いや、ついていかずをえない、と高をくくっていたのである。

 だが、そんな木松悪斗の当ては外れた。大企業に自分の会社が乗っ取られた日から1週間後、木松悪斗は臨時取締役会で全会一致で社長などのすべての役職を解任されてしまったばかりか全従業員から総スカンをくらったのである。これには、木松悪斗、

「なんで私の会社なのこんな目にあわないといけないんだ!!ここは私の会社だぞ!!私を見下す者なんていないのに、なんで、なんで、私をハイジョしようと、いや、私のことを見下そうとしているのだ!!」

と自分の予想に反して自分にとって振りになってしまったこと、いや、一瞬でなにもかも失った、これまでトップだった自分から何もかも奪っては自分を見下そうとしている、そのことに関して怒りをぶつけていた。

 では、なぜこんな結果になったのか。それは、木松悪斗自身、まわりに対して高圧的だった、ワンマン経営であった、自己中心的であった、と上げるだけでもきりがないのだが、その根幹にあったのは、木松悪斗自身が自分のまわりにいる人たちに頼ることができなかった、まわりの人たちのことを信用していなかった、つまり、孤高であった、ということだった。木松悪斗は小さいときから極貧生活によってまわりからよくいじめられていた、見下されていたこともあり、昔から人のことを信用できないばかりかまわりと協調することが難しかった、いや、できなかった。また、それによって木松悪斗には自分の考えを無理でも押し通そうとする、という傾向もあり、まわりに対し高圧的な態度をとることが多かった。それにより木松悪斗とそのまわりとのあいだに大きな亀裂が生まれたばかりかまわりの人たちにはトップである木松悪斗に対する不平不満が生まれる結果となった。そして、それが、今回、一気に噴き出して噴き出してきたのである。また、会社の経営権というのはその会社の株を一番多くもっているところが握っていることが多く、一気に木松悪斗の会社の株のほとんどを買い占めた大企業のまえでは創業者とはいえあまり自社株を持っていない木松悪斗でさえ白旗をあげるしかなかったのだ。



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ラブライブ!RSBP 第5話

と、こんな具合に1日にしてすべてを失った・・・かのようにみえた木松悪斗であったが、社長を解任されたとはいえ、これまでの業績を称え、形式上では退任というかたちで多額の退職金?を受け取ったばかりか、木松悪斗が持っていたわずかな自社株もすべて自分の会社を乗っ取った大企業に売ったことで木松悪斗は1日のうちに億以上の大金を手に入れることができたのである。まぁ、すべての職を失ったというのに一夜にして大金持ちになるなんて皮肉なものである・・・。ただ、このときの木松悪斗はというと、

「うぅ、なんで、私はこんな目にあわないといけないんだ・・・。天は私を見放した・・・。いや、いつも私のことなんてけなそうとしているのでは・・・」

と自暴自棄になりかけた。

 そんなとき、1人の女性が木松悪斗に声をかけてきた。

「あなた、あまり悲観しないで・・・。あなたは絶対に復活できますから・・・」

この女性の声に、木松悪斗、こう言いだす。

「あぁ、お前か。すまん、私がふがいないばかりにこんな結果になるとは・・・。本当にすまない・・・」

 すると、その女性は木松悪斗に対し、

「あなたはなにもかも失ったわけではないのです。あなたにはまだあなたと結婚した私とあなたと私の子どもがいるのですよ・・・」

と優しく語りかけると同時に1歳になる赤ん坊を見せた。すると、木松悪斗、その女性と赤ん坊に対し、

「あぁ、そうだったな。すまん、もう弱気にならん!!」

とその女性と赤ん坊に対してそう誓ったのである。

 と、ここで、木松悪斗に対し優しく語りかけてきたこの女性の正体を明かそう。実は、この女性、木松悪斗の奥さん(沼津出身/静真高校出)であった。木松悪斗が自分の会社を立ち上げたあと、しばらくして木松悪斗の会社に入社してきたのがその奥さんであった。その女性の前ではまわりには高圧的だった木松悪斗もなぜか優しく接していた。どうやら、その女性にはあの木松悪斗ですら手なずける、オホンッ、あの木松悪斗ですら安心を得られる、そんな包容力の持ち主だったのだろう。そんなものこともあり、木松悪斗はその女性にだけは心を許していた、いや、それを追い求めてか、かなりアタックしていた。そんなこともあり、会社も軌道に乗り始めた99年中ごろには2人は結婚し、翌年2000年にはあの赤ん坊こと長女の旺夏が生まれたのである。が、それからしばらくたってからの解任劇である。たとえ多額のお金を持っていも、これから先、10年、20年、ちゃんとした生活を暮らしていけるのか、いや、昔の自分みたいに極貧生活に逆戻りになるのか、そんな不安が木松悪斗を襲っていたのだが、自分がもっとも信頼、いや、唯一信頼している奥さんと自分が守るべき子どものために、それも奥さんの一言で、再起することを決めたのである。

 その後、木松悪斗は今回の解任劇で1つのことを学んだ。それは・・・、

(これから先、時代は投資の時代になる!!すべてがすべて株などをたくさん持っている者がこの世の中を支配できる、いや、まわりから見下されることなんてない、それくらい持てる者がこの世の中を支配できる、そんな時代になるんだ!!これくらい投資というのはとても強力なんだ!!)

それは、これから先、投資の時代になる、ということだった。木松悪斗が解任された理由は木松悪斗が孤高だった、まわりに対して高圧的であった、というのもあるが、そのきっかけとなったのは木松悪斗の会社の株のほとんどを大企業によって買い占められたことだった。で、そのことは自分の会社をできるだけはやく大きくしよう、システム開発のお金をできる限りはやくえよう、そのために自分の会社の株のほとんどを手放した自分の落ち度があった、そう木松悪斗は解したのである。と、それと同時にターゲットとなった会社の株をできるだけ多く持つことでその会社を自分の手にすることができる、それはつまり、その会社が多くなるほど木松悪斗の世の中への影響力は、2倍、いや、何十倍以上も大きくなる、いや、この世のなんて支配できる、そう木松悪斗は思ったのである。

 そして、もう1つ、木松悪斗はあることを学んだ。それは・・・、

(そして、なにがあっても勝ち続けないといけないのだ!!今回、私は慢心していた。会社のシステムを自分が構築した、そんな自負があった。だから、従業員は私についていく、そう思っていた。だが、実際には違った。従業員たちは会社のシステムを構築した私よりも会社を乗っ取るほどの強い力を持つ大企業の方へと流れてしまった。それは、つまり、強い力を持つ者が優位になる、ということを証明している。そんな強い力を持つにはいついかなるときでも勝ちにこだわる、いや、どんな相手でも絶対に勝つ、勝ち続けることがひつようなのだ!!)

そう、木松悪斗はこのとき、「勝つことこそすべて」という思いに達したのである。今回の解任劇では自分がその会社の商品と言えるシステムを自分の手で造り上げた、そんな自負を持っていたため、従業員たちは自分の味方になる、と勝手に思っていた。だが、実際は違った。木松悪斗はその従業員たちから総スカンを食らったのである。で、その理由が木松悪斗亜がいつもまわりに対し高圧的に接したためなのだが、木松悪斗はそう解せずに、会社の株のほとんどを手に入れたことで(その会社のなかでは)強い力を手に入れた、つまり、自分より強い大企業の方へと流れてしまった、と解してのである。まぁ、日本人はどちらかというとより安定した方へと、つまり、それくらいのことができる強い方へと流れやすい、それくらい保守的なところが強かったりする。なので、木松悪斗が解したこともあながち間違いではないのだが、それ以上員、自分にも非がある、なんて木松悪斗はこれっぽちも思っていなかったのだ。なので、こんな考えに木松悪斗は達したのかもしれない。だって、木松悪斗は孤高なのだから・・・。で、これから先、今回みたいな解任劇を繰り返さないためにもいったいどうすればいいのか、それは強い力を手に入れること、そのためにも、いつどんなときでも勝ちにこだわる、絶対に勝つ、勝ち続けることが必要である、そう木松悪斗は悟ったのである。まぁ、強い力を手に入れるためには勝つことも大事なのだが、それ以上にまわりと協調することも大事だったりする。また、ときには妥協することも必要なのだが、孤高である木松悪斗からすればそんなことなんてしなくてもいい、いや、できないのかもしれない。ただ1つだけ言えること、それは、今回の解任劇のせいで木松悪斗が「勝つことがすべて」という考えを持ってしまった・・・ということである。

 そして、木松悪斗はすぐに行動にうつすことにした。1日にして手に入れた大金を強い権力を手に入れるためにまわりに賄賂を・・・送ることなく、投資の本場、アメリカへと家族を連れて渡ったのである。木松悪斗はその大金をもとに一からアメリカで投資の勉強を行い、少しでも投資の世界で生き抜こうと、いや、投資によって自分のお金を増やすとともに自ら投資グループを率いて、お金、いや、株などといった投資という強い力でどんな相手でも勝ち続けるとともに、日本、いや、世界に強い影響力を持とうとしていた。また、木松悪斗がアメリカに移り住んだもう一つの理由、それは、アメリカは実力主義の国であった、ということであった。日本の場合、実力以上にその人の人脈、コネ、その他もろもろといった実力以外のものによってすべてが決まることが多かった。だが、アメリカは実力主義の国、自分の実力が高ければ社長にだって州知事にだって、いや、アメリカ大統領にだってなれる・・・そんな国だったのかもしれない。なので、木松悪斗はその実力を、投資という世界で自分の実力でもってのし上がろうとしていたのである。

 そして、これが木松悪斗とその家族、それに、これまで木松悪斗がこれまで経営していた会社の運命を決することとなった。木松悪斗は投資の本場であるアメリカで有名な投資グループに入り投資に関する勉強を始めるとともにその勉強と自分が持つお金をもとに自分の実力を試していた。最初のころは失敗、負け、があったものの投資に関する勉強によって投資の知識をどんどん得るうちに少しずつ勝つようになって自分の資産をどんどん増やしていった。それと同時に2002年には次女の桜花(はな)が生まれ順風満帆であった。

 一夫、木松悪斗がこれまで運営していた会社だというと最初のころはうまくいったものの時がたつにつれてその会社が開発し発売していたシステムそのものにバグが次々と発生した。そのバグはそのシステムの根幹部分に原因があったのだが、それがあだとなった。なんと、その根幹部分を治せるのはそのシステムの根幹部分を構築した木松悪斗としかいなかったのだ。この会社のエンジニアはその根幹部分をもとにいろんなシステムを作り出していたのだが、その根幹部分についてはこの会社のエンジニア誰一人治すことができなかったのである。それくらいこの根幹部分はそれを開発した木松悪斗でしかわからないくらい複雑であった。そんなこともあり、この会社との契約を打ち切る会社が続出した。

 そして、ここにきて、この会社に逆風が吹き荒れることとなった。なんと、ITバブルが崩壊したのである。実はこのITバブルで起業した数多くのIT企業のなかには詐欺的な企業、というか、商業的可能性、技術的可能性があるか疑わしいものも含まれていた。それはアメリカでも日本でも起きたが、アメリカでは、連邦準備制度、つまり、アメリカの中央銀行みたいなところが米ドルを利上げしたこと、2001年のアメリカ同時多発テロなどが、日本ではそんな詐欺的な企業のある不正が契機となってITバブルが弾けたのである。むろん、木松悪斗が経営していた企業もその波にのまれてしまい、2002年、ついに倒産してしまった・・・。まさに木松悪斗と木松悪斗がかつて経営していた会社の運命が1つの解任劇によってそれぞれの運命にわかれてしまった、といってもいいだろう。

(あっ、ちなみに、このITバブル崩壊で生き残った企業のなかには、Google、アマゾンといった今や世界を席巻する大企業へと変貌を遂げた企業もある。また、日本においても、ソフトバンク、楽天といったプロ野球チームを有するくらい日本を代表する大企業へと成長した企業も多い。まさにITバブル崩壊はITバブルのなかで生まれた多くの企業のうち、これから先、大きく成長する企業とそうじゃない企業をわける要素になったのかもしれない)

 

 そして、月日が過ぎるのもあっというまであった。木松悪斗はアメリカで5年間、投資の勉強をしつつ、自らも投資グループを率いて活躍していた。さすがに5年ものあいだで世界を代表する大企業・・・までにはいかないまでも、州レベルでの大企業のM&A(合併&買収、つまり、企業・事業の合併や買収のこと)に携わるところまできた。ただ、そんな大型案件に携わるようになったこと、そして、自ら作った投資グループで多くの利益をあげていたこともあり、自分の家族まで犯罪者やギャングなどに狙われる可能性が高くなったこと、さらに、長女の旺夏がサッカーに興味を持つようになったこと、それらにより、木松悪斗を残して、木松悪斗の奥さん、旺夏、桜花は安全な日本へと帰国させていた、木松悪斗がアメリカに渡ってから2年後には・・・。

 とはいえ、こうして、アメリカで5年くらい暮らしていた木松悪斗は頃合いをみて自分の投資グループを超高額でほかの投資会社へと売却すると何百億もの大金と優秀な部下を数人、さらにあるものをもって日本へと帰ってきた。

 その後、木松悪斗はアメリカで増やした大金を持って日本で自分の投資グループを作るとすぐに活動を始めた。とはいっても木松悪斗自身はおろかその奥さんにも日本での人脈なんてない。たしかに木松悪斗の奥さん亜h沼津出身で沼津において歴史由緒ある静真の出身であったがそこまで名家ではなく普通の家庭の出身であった。で、日本において人脈がものをいうことがあるのだが、そんな木松悪斗の弱点を補ってくれるのが木松悪斗がアメリカから連れて帰ってきた部下たちであった。いや、木松悪斗にとって彼の右腕であり左腕であった。

 そんな彼の右腕であるが、ああるとき、木松悪斗はその右腕に対しこんなことを命令した。

「おい、裏美、あの会社の社長とのアポをとれ!!」

これには、彼の右腕こと裏美はすぐに、

「はい、わかりました、ご主人様」

と前に出たおなかを揺らしながら木松悪斗のもとから走り去っていった。裏美、彼は日本でも有数の名家の出であった。また、その裏美の奥さんも裏美と同じく日本有数の名家の出であったため、日本のあらゆるところで顔が利く、ようするに、日本においてかなり広い人脈を持っていた。その裏美が持つ人脈を使うことで木松悪斗は日本における投資の世界において幅を利かせることができた。また、その人脈によって普段では出てこないような裏情報を木松悪斗は入手することができた。むろん、そんな裏情報も木松悪斗が投資を成功させるための材料として使っていた。

 そして、木松悪斗の左腕・・・、というのが・・・。木松悪斗、その左腕に対しこう叫ぶ。

「おい、猪波、これについてどう思う?簡潔に答えろ!!」

これには、彼の左腕、猪波はこう答える。

「う~ん、今、私が手に入れている情報だとこの取引についてはやらない方がいいと思います。たとえ勝ったとしてもこちらが損するだけですから・・・」

この猪波の答えに、木松悪斗、

「う~ん、、たしかに裏美からの情報とあわせてもこの取引をすることでこちらとしてのメリットがない。よし、この取引はやめだ!!」

とすぐに決断した。

 この猪波、インターネットを駆使していろんな情報を集めては木松悪斗にアドバイスを送ることが多かった。また、猪波の実家は昔から猪波の出身である沼津において有名なお店を経営していたこともあり、経営の才があった。そのため、木松悪斗の投資グループが買収した企業の経営を任せられることが多かった。とはいえ、ほとんどの場合、猪波が行うことはその企業の無駄を省くこと、いわゆる、コストカッター、であった。まぁ、企業が続くことにおいて無駄を省くことは重要だったりする。その企業において無駄は余分な経費を使うことにつながるため、いくら売上がよくてもその余分な経費のために利益が低くなってしまう。そのためにコストカットはで無駄を省くことは企業にとって大事だったりする。だが、猪波が行うコストカットはその無駄なところだけでなく無駄にみえて実はとても大切なもの、たとえば、その企業のものを利用している住民たちにとって重要であるものまでカットしてしまうところがあった。たとえば、ある鉄道会社が発行している株の多くを木松悪斗によって買い占められたあと、木松悪斗は地元住民のことなんて考えもせずにただ赤字だからといった理由でその赤字路線を廃止にしろ、と直にその鉄道会社の社長、会長に迫ったことがあった。それは猪波の意見によるものだった。と、まぁ、こんな具合に、猪波は木松悪斗に意見すれば木松悪斗はそれを、自分の言葉、いや、命令として自分の投資先に要求する、そんな物言う株主、という木松悪斗の通り名がつけれれる原因を作る、それくらい、猪波の木松悪斗における影響力は半端ないものであった。

 ただ、そんな猪波にも弱点があった。それは・・・、

「おい、猪波、お前のあのにっくきばあさんから投資を止められたようだな、また・・・」(木松悪斗)

「はい、すいません、木松悪斗様・・・。あともう少しのところであの会社のM&Aができるところまででしたが、おばあさまのせいでそれが破談となりました・・・。木松悪斗様、本当に申し訳ございません・・・(猪波)

そう、実は猪波にも頭があがらない相手がいた。それは猪波の実の母親、おばあさま、であった。猪波の母親、つまり、おばあさまは猪波がやっている仕事、投資というお仕事を毛嫌いしていた。そのおばあさまは猪波の一族で沼津で続けていたとても有名なお店を経営していたことがある、そんなやり手であった。また、そんなお店を経営していたこともあり、世界的な大財閥で沼津にもゆかりがあるあの小原財閥(ちなみに、その財閥の総帥の一人娘があのAqoursの元メンバー、小原鞠莉である)や沼津にある歴史由緒ある女子高の静真の創立家の末裔でこちらも世界を代表する企業グループを率いている沼田にも影響力を持つくらい顔が利く存在であった。そんなおばあさまだからこそ、株式などという道具を使って相手を苦しめることなんて屁にも思わない、そんな(おばあさまにとってとても悪いイメージを持つ)投資というものに嫌悪感を持っていた、おばあさまは・・・。なので、猪波がいくら投資をしようとしてもすぐに自分が持つ人脈からその情報が猪波のおばあさまに伝わってしまいおばあさまはすぐに妨害、そのため、毎回破談になってしまうのである。ただ、そのことがあってか、猪波が行おうとしている投資はとても小さなものなので木松悪斗の投資グループにはそんなに影響がなかった・・・。

 という具合に、木松悪斗には優秀な部下、いや、側近が2人いるのだから安泰・・・だけでなく、ある秘密兵器を木松悪斗は持っていた。それは・・・、

「Actシステムから連絡がありました、木松悪斗様。どうやら、あの会社の株価が下落したそうです」(猪波)

「よしっ、あの会社の株をできるだけ多く買い占めろ!!」(木松悪斗)

Actシステム、それはもともとITシステムの会社を立ち上げたことがある、そんなプログラマーとしての一面もあった木松悪斗だからこそ造り上げることができた投資専用のシステムであった。Actシステムの役割は主に2つ。1つはインターネットを介した情報収集である。世界中のニュースサイトなどといった情報サイトから投資に仕えるものを自動的に収集、それを提示するものだった。これにより投資に仕える情報、材料をより効率的に集めることができるばかりか収取してすぐに提示できるため、誰よりもはやく投資を実行できるようになった。ただ、ときたまフェイクニュースを提示することもあり、主に猪波がActシステムが集めた情報を分析してそれを木松悪斗に渡していた。また、裏美が集めた情報と照合して動くこともあった。

 そして、Actシステム2つ目の役割が株式市場の菅氏であった。もし、急に値下がりした株があればすぐに木松悪斗の通報、それをもとに木松悪斗がすぐに動く、また、ちょっとした少額のものであればすぐにでも自動的に株取引を行う、そんな機能を有していた。その2つの機能のおかげで木松悪斗は誰よりもはやく動いては誰よりも早く株を買い占めることができたのである。あっ、ちなみに、ActシステムのActは木松悪斗の名前からとったものだった。

 そんな3つの矢、裏美、猪波、Actシステム、でもって木松悪斗は日本の投資業界において確固たる地位を築くことができたのである。あっ、ちなみに、木松悪斗と裏美、猪波の出会いであるが、裏美は木松悪斗がアメリカに住んでいた時、いじめられそうになっていた裏美を日本人といった理由で木松悪斗が助けたことがきっかけに一緒に行動するようになったため、猪波は同じ沼津出身の木松悪斗の奥さんの紹介によるものだった。また、木松悪斗、裏美、猪波の関係性は、木松悪斗はこの2人のことを信頼しつつも2人が自分に歯向かうことがあればそのときは徹底的に叩き潰す、それくらいドライな考え方をもっているのに対し、裏美、猪波はこんな自分を木松悪斗の投資グループに引き入れてくれた、その恩を感じてか、木松悪斗に対し忠誠心をみせていた。それくらいあまりに奇妙な関係性で3人はバランスをとっていた。



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ラブライブ!RSBP 第6話

 といった具合に木松悪斗は仕事面においてはかなりよかった。だが、その一方で家庭面においてはある種の不安を抱えていた。木松悪斗が日本に帰国して以降、木松悪斗以下はまた一緒に住むことになったのだが、自分たちの子どもの育て方に関して木松悪斗とその奥さんとのあいだでちょっとした意見の違いがみられるようになったのだ、特に次女の桜花に関しては・・・。

 まず、長女の旺夏についてであるがこちらは旺夏が帰国して以降すぐに女子サッカースクールに入ると父親譲りのハングリー精神によって実力がめきめきとあがり、サッカーを初めて2年ほどで日本のジュニア代表に呼ばれるほどになった。だが、自分の父親である木松悪斗が帰国して一緒に住むようになるとその父親の影響なのか父親の信条「勝つことこそすべて」その信条にだんだんと染まっていくようになった。その信条はただ相手に勝つため、勝利への執念は誰よりも高くそれにより多く点をとって自分のチームに勝利をもたらす分にはよかったもののその信条のせいで旺夏は格下の相手には見下すことが多くなった。また、勝つためには手段を選ばない(たとえば、相手の弱点を狙う、だけでなく、相手の選手を貶めることすらした)こともあり、旺夏、どちらかというとヒール的なところが目立つようになった。

 ただ、それだとこれから先、旺夏はまわりとあわせることができずに苦労してしまう、そう考えた木松悪斗の奥さんは木松悪斗に対し、

「あなた、このままだと旺夏は、これから先、必ず苦労してしまいます。あなたからもその考え方(「勝利こそすべて」)をあらためるように説得してください」

と意見するも、木松悪斗、自分の奥さんに対し、

「ふんっ、そんなの必要ない!!旺夏は今の考え方、「勝つことがすべて」、そのままでいいんだ!!」

と聞く耳持たず。いや、むしろ、

「言っておくが、サッカーの世界はおろか、スポーツ全般、いや、この世界において実力がものをいうのだ!!いや、「勝利」への貪欲さがものをいうのだ!!もし、「勝たなくてもいい」なんて言ってみろ、それすなわち、負け確定、いや、人生が終わった瞬間、になってしまうんだ!!そうなってしまうとこの世界では生きていけなくなる。ずっと底辺を這いずり回るしかなくなるのだ。だからこそ、旺夏はその考えのごとく生きていけばいいのだ、旺夏の名前、王のごとくな!!」

と、自分の奥さんを糾弾しようとしていた。旺夏の名前の由来、それは、当時自分が設立していたIT企業の社長だった木松悪斗が自分の娘に自分のようにいつも王のようにトップに君臨できるように、という思いで木松悪斗がつけた名前であった。で、旺夏は、今、日本女子サッカー界の王になるべく、投資の世界でばく進を続ける旺夏の父、木松悪斗と同じように「勝利」を追い求める、なにがなんでも勝ち続けることを是として「勝利」へとばく進する、そのことを木松悪斗はあらためて肯定したのである。木松悪斗にとって「勝つことこそすべて」、それこそ、木松悪斗の第1のテーゼ、命題であった。子ども時代、極貧だったためにまわりから見下されていた。自分の設立したIT会社はその会社のほとんどの株を買い占められた大企業の圧倒的な力とそれによる従業員たちの裏切り(と、いまだに木松悪斗はそう信じているのだが、本当は木松悪斗の高圧的な態度にいやけがさしたから)により社長の座をおろされたこと、それらによって木松悪斗は苦汁を飲まされてきたのである。なので、なので、なにがなんでも「勝ち続ける」ことで絶大なる力を得ることができる、それにより、自分が王として君臨することができる、そう木松悪斗は思っていた。また、自分のこれまでの人生を旺夏にも味あわせたくないためにも小さいときから、「勝つことこそすべて」、その信条を叩き込んでそれを地でいくような行動をとらせることでいつもトップとして君臨しては誰からも見下されることがない、そんな人生を手にいてほしい、そんな木松悪斗としての親心があったのかもしれない。

 というわけで、木松悪斗の奥さんはこれ以上木松悪斗に反論しようとしても聞く耳をもたない、そんな木松悪斗の態度を見てらちが明かないということで言うのをやめてしまった・・・わけではなく、ふと思っては木松悪斗に旺夏の教育方針について口論になることがたびたびあった。

 だが、旺夏以上に問題だったのが次女の桜花(はな)であった。ちょうど旺夏の考えについて口論になっていたころ、木松悪斗の奥さんに対し、木松悪斗、桜花のことについてこう言ってきた、桜花を前にして・・・。

「おい、あの落ちこぼれ、なんとかならないのか!!音楽?そんなもの、なんの役にも立たない!!この世の中において一番大事なものとは「勝つこと」なんだぞ!!特に、陸上の100メートルみたいに、誰から見ても1番である、すぐに勝者がわかる、そんな競技などがこの世の中でとても大切なんだ!!でもな、音楽みたいに他人の評価によって優劣が決まる、そんなものは他人の見方によって順位がころころと変わるもんだ。これだとはっきりと「勝った」なんて言えないしイライラする。それに、音楽?、そんなもの、ただのお遊びじゃないか!!文化すらない!!実にくだらないものだ!!それよりも、桜花、お前は落ちこぼれであり「役立たず」なんだ!!ならば、やることは1つ、少しでも私の役に立つことをしろ!!(日本女子サッカー界でジュニア代表になるくらいの)旺夏みたいにな!!」

桜花、木松悪斗がアメリカ在住中に生まれた子であるが木松悪斗を残して家族3人で日本に帰国してから木松悪斗が日本に帰国するまでの3年間、桜花は、

「これ、聞きたい・・・」

と小さい子どもながら、木松悪斗の奥さん、つまり、自分の母親に対していろんな音楽を聞かせてくれるよう家やレンタルショップにあったCDをみてはそれを自分の母親に渡してはそうお願いをしていた。もちろん、桜花の母親もそのことを知った上で桜花に対しいろんな音楽を聞かせてくれた。そのジャンルは童謡だけでなく、アニソン、J-POP、ロック、カントリーなどなど多岐にわたっていた。そんなこともあり、小さいときから音楽に対する才能はピカイチであった。だが、自分の父である木松悪斗が日本に帰国してから桜花の生活は一変した。木松悪斗、そんな桜花に対しなにもかも、特に音楽すべてを否定してきたのだ。実は、木松悪斗、「勝つことこそすべて」という考えのせいか、自分の実力だけですべてが決まる、「勝つ」か「負け」がすぐに、それもはっきりとわかるもの、たとえば、陸上の100メートル走みたいにタイムによってすぐに選手の優劣が、成績がわかるもの、またはサッカーや野球のみたいに獲得した点数によってすべてが決まる、そんな確実に成績が決まるものが好きだった。逆にフィギュアスケートなどみたいに他人の見方や判断によって優劣が決まるもの、成績に不確実性を伴うものに関しては嫌っていた。だって、他人の見方によって点数が決まるものは点数を決める者の思考などに影響を受けてしまうもの、だと木松悪斗は思っているから。特に音楽や絵画などといった芸術は時代によって人々の見方が変わってしまい、それがその時代における音楽や絵画などの芸術における評価につながってしまうものである。たとえば、ゴッホの場合、ゴッホが在命中のときはあまり評価されなかった、没後、再評価、いや、高評価をえることができた。それくらい時代によって人々のものの見方がどんどん変わっていく、そんな不確実性を木松悪斗は嫌がっていたのである。また、これは日本によくいえることなのだが、音楽(特にJ-POPのような現代音楽)をないがしろにする傾向が強かったりする。いや、1つの文化としてみない傾向がある。ドイツなどのヨーロッパの場合、音楽は1つの文化としてみられており、その音楽に対する保護がかなりあつかったりする。逆に、日本においては音楽(特に現代音楽)を1つの文化としてみることなくただのお遊びとしてみられたりすることがあったりする。また、音楽に対する保護もヨーロッパほどあつくなかったりする。そして、木松悪斗の場合、音楽(現代音楽)なんて文化じゃない、たたのお遊びだ、くだらないものだ、と見下していたのである。むしろ、勉強などして少しでも桜花の父、木松悪斗の役に立て、と木松悪斗は言ってきたのである。これにはまだ物心をつかないほど幼かった桜花からしてもかなりのショックだった。

 もちろん、桜花の母である木松悪斗の奥さんは木松悪斗に対し、

「少しは桜花のことも認めてやってください!!このままだと、桜花、立ち直れなくなります!!」

と桜花のことを思ってか反論するも、木松悪斗からすれば自分の考えが間違っていないとばかりに、

「桜花が役立たずになったのはお前のせいなんだ!!音楽というくだらないもののせいで桜花は役立たずになったのだ!!ならば、お前がとれる手段はただい1つ、桜花から音楽というくだらないものを取り上げて少しでも私の役に立てるように再教育しろ!!いいか!!」

と言い返す始末。これではらちが明かない。そんなこともあり、桜花の母親は桜花に対して桜花の音楽の才能を伸ばせるように秘密裏に音楽教室に通わせることにした。

 そして、桜花もその音各教室の時間をいつも楽しみにしていた。だって・・・、

「私、音楽、大好き!!だって、私、音楽をやっていくうちになんか成長している、もっと音楽のことが好きになっていく、そんな気になるんだもん!!」

そう、桜花は自分が持つ音楽の才能、それが伸びることに喜びを感じていたのだ。それに伴って音楽が好きになる、そんな「好き」という好循環に桜花は喜びを感じていたのである。

 だが、そんな生活も長くもたなかった。自分の思い通りに、「勝つことがすべて」、その考えのもと、ひたすら勝ち続けては日本女子サッカー界において未来の日本代表にまで言われるようになった長女の旺夏に対し、次女の桜花は父親からのプレッシャーからなのか、音楽以外の才能が伸びず、逆に落ちぶれてしまった(と木松悪斗が自分の基準で判断してそう評していた)。そんなこともあり、木松悪斗は勝ち続けている旺夏だけをかわいがり、逆に、落ちぶれてしまった桜花に対しては「役立たず」「ごく潰し」と貶めていた。さらに、旺夏は格下の相手を見下すことを平気でするにも関わらず「自分は未来の日本代表なんだ!!それくらいの実力があるんだ!!」と言っては威張り散らしていた。だが、旺夏、それを豪語するだけの実力や実績は伴っていたため、誰も反論できずにいた。一方、桜花はなんの才能もないダメダメな子、というレッテルを貼られ、さらに、唯一の才能であった音楽で結果を残してしまったらそれによって父木松悪斗から唯一の楽しみである音楽を取られてしまいかねないこと、また、木松悪斗が行っている投資においてあまりいい印象を持たれていない(だって、木松悪斗が行っている投資は自分達の利益を最優先しており、まわりのことなんてちっとも考えていなかったから)ということもあり、家のなかではいつも自分の父親から「役立たず」「ごく潰し」と言われ続けられては家の外ではまわりから「あのヒールな木松悪斗の子」として白い目で見られていた。そのため、桜花は次第に卑屈になっていった。

 そんな旺夏と桜花のことを心配しては2人の母親である木松悪斗の奥さんは自分の夫に対し2人への接し方を改めるように言うも逆に木松悪斗は自分の奥さんに対し激怒しながら、

「私のやり方は間違っていない!!むしろ、お前のほうが間違っている!!いいか、お前、少しでも私が納得がいく教育を桜花にしろ!!いいな!!」

と言ってくる始末。なので、次第にそのことを木松悪斗から言われ続けてきたせいか、木松悪斗の奥さんは次第に精神的にまいるようになってしまった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第7話

 ただ、そんなとき、09年に世界を揺るがす金融危機が起きた。それがリーマンショックだった。アメリカの巨大投資会社だったリーマンブラザーズが多額の負債を抱えて倒産、それにより、日本をはじめ、世界規模の金融危機が起きたのだ。これにより世界的な経済に冷え込みが起き、日本の株式市場も大暴露(たった1ヵ月で日経平均株価が1万2千台から6千円台へと急激に下落した)。

 ただ、木松悪斗はその前兆をActシステムと裏美からの情報で感知、大暴落する前に高値で持っている株を売り、大暴落した底のときにどさくさにまぎれて大量に株を買い占めた結果、リーマンショックの影響を受けることはなく逆に安値で自分が欲しかった企業の株を買い占めることに成功した。いわゆる、人の不幸は蜜の味、である。

 だが、そんななか、沼津では大変なことが起きていた。木松悪斗の奥さんの母校である静真が存続危機に陥った、というのである。木松悪斗の奥さんの母校、静真は沼津のなかでも歴史由緒ある女子高として、そして、名門校として有名だった。ただ、その静真のスポンサーをしている企業がリーマンショックによる経営不振により静真から撤退、これにより静真はたちまち存続危機に陥ったのである。これだと静真が閉校してしまう、そんな情報が沼津を駆け巡った。なお、静真の創立家の末裔であり世界的企業グループを率いていた沼田は、このとき、静真ではただの名誉職についていただけでであり、さらに、リーマンショックによる自分の企業グループへの影響を少しでも和らげることに注力しており、自分のことで精一杯、静真のことまで手が回せなかった。まさに静真は、このとき、風前の灯であった。

 もちろん、そのことについては木松悪斗・・・の奥さんの耳にも入っていたらしく、その奥さんは木松悪斗に対し、

「ねぇ、あなた、なんか、私の母校、沼津にある静真が閉校の危機みたい・・・。あの学校は沼津の中でも名門中の名門なのですが、この前の金融危機(リーマンショック)で静真のスポンサーが撤退したから存続危機が起きたみたい・・・。私、自分の母校がなくなるの、嫌なんです。なんとかなればいいのですが・・・」

とボソッと口にした。

 と、ここで、木松悪斗、奥さんからの言葉を聞いてあることを考えた。

(私の妻の母校が閉校の危機か・・・。うむ・・・、これって、もしかすると、私の投資グループにとってプラスになるような案件になるかもしれない・・・、特にイメージアップにはな・・・)

そう、沼津でも歴史由緒ある女子高の静真が閉校の危機、それを使えば木松悪斗とその投資グループにとって大きなプラスになるのではと木松悪斗は考えたのである。では、なぜ、それが大きなプラスになるのか。それは静真という学校ブランドそのものにあった。まず1つ目に、木松悪斗のその投資グループのイメージアップにつながる、ということだった。木松悪斗率いる投資グループは長期的な視野で投資をしているわけでなく、逆に短期的な利益を追い求める傾向が強かった。それは自分たちに有利な、そして、短期的利益を追い求めてきたからだった。さらに、その短期的利益といううまい蜜をすったあと、木松悪斗率いる投資グループは買収した企業から手を引く、なんてことがざらにあった。まぁ、無駄なコストを削りに削りスリムになったおかげで立ち直った企業もあるのはあるのだが、ほとんどの場合、手を引いてほどなくして企業そのものが倒産するという最悪の結末を迎えてしまった。そんなこともあり、木松悪斗とその投資グループの一般世間でのイメージはとても最悪であった。それはそのイメージのせいで次女の桜花がまわりからいじめられるほどであった。

 だが、そんな木松悪斗とその投資グループが静真に、それも長期的に投資をしたらどうだろうか。それはかなりのプラスになる、と木松悪斗はそう考えたのだ。学校に投資する、それはつまり、地域貢献につながる、それよりに今ある悪いイメージを払しょくさせるどころかよイメージをもたれる、というのである。それはなぜか。それは学校ほど地域に根付いたものがないからだった。学校はその学校ある地域に住んでいる子どもたちが通うことが多い。また、学校での活動を通じてその学校がある地域は盛り上がる、なんてことが多い、いや、それどころか、その学校がある、というだけで地域としてのイメージがあがったり地域の誇りになったりする。それくらい学校とその学校がある地域の結びつきは強いものである。そして、静真は特に静真がある沼津という地域の結びつきが強かった。静真は沼津にある学校のなかでも長い歴史をもつ由緒ある女子高である。なので、静真は沼津の学校のなかでも名門中の名門であった。また、静真での活動を通じて静真に通う生徒たちは沼津をもりあげてきたのだ。そんなこともあり、静真は沼津に住む人たちにとって地域の誇りという存在、いや、なくてはならない存在であった。それは静真と同じく沼津の郊外の内浦にある歴史由緒ある女子高浦の星にもいえるのかもしれない。

 それはさておき、これらにより、静真がなくなる、それは沼津の人たちからすれば大問題であった。だって、静真がなくなれば沼津に住む人たちにとって大きな痛手になるのだから。だけど、リーマンショックの影響で日本も不景気になっており、あおの世界的企業グループを率いている沼田ですらどうすることもできない、そんなときに木松悪斗がその静真に投資をして静真を救う、となれば、木松悪斗のその投資グループは、沼津という地域に貢献した、そんな(イメージ戦略としては)とてもプラスになることをした、そうほかの人たちから見られるようになる、そうなれば、木松悪斗とその投資グループの悪いイメージは払しょくされ、逆によいイメージを持つようになる、そう木松悪斗は考えたのである。もちろん、よいイメージをもたれる、ということは自分たちの投資活動にもプラスになる。たとえば、株主総会のとき、自分たちの要求が通りやすくなる、といった利点もある。株主総会では株主全員でその企業の物事・施策、しまいには会社幹部の人事すら決めることが多い。そんなとき、木松悪斗とその投資グループが企業側に対しある請求をしたとき、その採決にはある一定の株主の賛成票がないと否決される。もちろん、その企業の株のほどんとを持っていれば木松悪斗とその投資グループ単体で決めることができるのであるが、一般的にはその株の買い占めなんてできないのでほかの株主の賛同が必要となる。だが、自分たちにとって悪いイメージがあるとその賛同が得られず、逆に自分たちの請求に反対する、なんてことが起きてしまう。それを少しでも防ぎたい、そんなことも木松悪斗は考えていた。

 さらに、2つ目として優秀な人材確保であった。沼津のなかでも名門中の名門である静真はそれゆえにかなり優秀な人材が集まりやすい。その一例が静真の才女とも言われている生徒会長の渡辺月であった。なので、今のうちにその優秀な人材を確保したい、それを木松悪斗は狙っていたのである。まぁ、俗にいう、青田買い、である。

 さらにさらに、3つ目、それは木松悪斗の人脈形成、特に沼田との結びつき、だった。木松悪斗自身、これまでこれといった人脈を作ってこなかった。これまでは自分の側近の1人で名家の出身である裏美がもつ人材を使っていたが、これから先、自分の率いる投資グループを大きくしていくには自分も(表面上とはいえ)ある程度の人脈をもつ必要がでてくる、そう木松悪斗は考えていた。で、静真は名門中の名門であるため、ある程度の地位をもった親をもつ生徒たちが数多く通っていた。そんあ生徒の親たちとの交流を通じて木松悪斗自身も自分だけの人脈をつくろうとしていた。また、静真の創立家の末裔であり世界的企業グループを率いている、だけど、今は自分のところで精一杯で静真まで手を回せない、そんな沼田に対し、その沼田の代わりに自分が投資したおかげで静真の閉校の危機を救った、となれば沼田は木松悪斗に対し恩を切るかたちとなる、いや、それがきっかけとなり沼田と強いパイプをもつことができる、そうなれば、木松悪斗とその投資グループはより安泰になる、そう木松悪斗は考えたのである。

 そして、最後に、長女旺夏のためでもあった。旺夏はたしかに将来の日本代表と呼ばれるくらい女子サッカー界において優秀な選手であった。だが、「勝利こそすべて」という考えに固執するあまり、ほかの選手たちを見下したり悪口を言ったりとあまり協調性がなかった。そんな性格の悪さもあってかチーム内で孤立することが多かった。いや、高校に進学しても孤立するのは目に見えていた。そこで、木松悪斗はそんな旺夏のために静真という学校を用意したかったのである。静真に多額の投資をすることで静真を救ううとともに静真を実効的支配、そんななかで旺夏のためだけの女子サッカー部をつくれば旺夏は孤立しなくてすむ、と木松悪斗は考えたのである。事実、それはのちになって静真の女子サッカー部は旺夏のためのサッカー部として作り直されたが、そこで旺夏はわがままし放題だったものののびのびとプレーができ、これまで県大会優勝止まりだった女子サッカー部はインターハイを制覇するくらいにまで成長させることができた。そのことを含めると木松悪斗の長女旺夏に対する愛のいれようは半端ないものだった。

 この4つのことを鑑みて、木松悪斗、静真に投資することを決めた。ただし、ただの投資ではなく・・・、

「いいか、多額の寄付、それを部活動振興のために使え!!」(木松悪斗)

そう、そのほとんどを静真の部活動強化に当てたのである。それはなぜか。それは無限大の好循環を生むから。静真の部活動を強化すれば、その分、優秀な生徒たちが入ってくる、それにより、静真の部活動はかなり優秀な成績を残すくらい強くなる、そうなれば、静真に憧れて優秀な生徒たちが入ってきてはさらに強くなる・・・その好循環が無限に続く、というのである。そうなれば静真の全国での地位はどんどんあがるしそれによって木松悪斗とその投資グループのイメージもどんどんよくなる、と木松悪斗は考えたのである。また、それによって静真に入学する生徒も増えることで木松悪斗の投資なしでも学校経営が成り立つ、いや、それどころか、直接的間接的に自分たちにとって利益になる(イメージアップ、人脈形成など)とも木松悪斗は考えていた。さらに、静真の部活動が盛り上がれば沼津の地域貢献に役に立っている、そのことを大々的に言えるのでは、とも木松悪斗は考えていた。それはつまり木松悪斗にとってみればとてもプラスとなることだった。

 そんなわけでして、静真への投資は木松悪斗とその投資グループにとってローリスクハイリターンというとてもとてもおいしい案件、ともいえた。こんな好条件な案件、後にも先にもない、というわけで、木松悪斗、すぐに静真への投資について自分の投資グループにもちかけ、投資グループの理事全員の承諾を経てすぐに静真に投資という名の寄付を行ったのである。そして、それがはのちになって木松悪斗の思い通りに、木松悪斗とその投資グループのイメージアップ、優秀な人材の確保、人脈形成、沼田とのパイプの構築、旺夏の進学などなど、木松悪斗にとってプラスになることだらけのことが起きる、そんな風になった。また、多額の投資のおかげもあり、なにもできなかった(創立家で静真では名誉職についていた)沼田に代わり木松悪斗が静真のなかでの権力を手に入れることとなったのである。

 ただ、それが原因で静真のなかでは木松悪斗の考え、「勝利こそすべて」、その考えが次第にはびこるようになってしまい、それがのちに浦の星との統合の妨げに間接的な原因となってしまうのですがね・・・。



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ラブライブ!RSBP 第8話

 こうして、木松悪斗、仕事面においてはリーマンショックを乗り越えるどころか自分たちにとってとてもプラスに変えてしまうほど絶好調・・・であったが、プライベート麺においては最悪であった。それは木松悪斗とその奥さんとのあいだに深い溝ができた・・・、いや、それによってその奥さんの身に大変なことが起きたからであった。静真に投資することを決めてから1年後、木松悪斗は自分の奥さんを呼び出し激怒しながらこう言ってきたのだ。

「お前、なんで私に隠れてあのごく潰し(桜花)を音楽教室に通わせているんだ!!いいか、いつも言っているが、音楽というのはたんなるお遊びの1つでしかすぎないのだ!!そんなお遊びのために無駄なお金を使うなんてもったいないではないか!!そんな無駄なお金があるのならそれを私の役に立つようなことを、桜花にそのための教育をするために使え!!」

そう、ついに木松悪斗の奥さんが木松悪斗に黙ってやっていたこと、桜花が音楽教室に通わせていることがバレてしまったのである。桜花には音楽の才能がある、それを伸ばすために木松悪斗の奥さんは桜花を音楽教室へと通わせていた。だが、夫の木松悪斗は音楽そのものをただのお遊びだと認識しており、それをするくらいなら桜花に自分の役に立つような教育をするように迫ってくるほどだった。なので、その奥さんは夫に黙って自分のポケットマネーで桜花を音楽教室へと通わていたのだが、それがついに夫の木松悪斗にバレた・・・。

 だが、そのこと自体、木松悪斗は自分の奥さんの裏切り行為とみえていた。だって、自己中心的、自分しか信じていない、そんな木松悪斗が心を許した、そんな数少ない相手の1人である奥さんが自分に黙って自分の考えと反する行動をしていたのである。なので、木松悪斗、自分の奥さんに対し、続けて、

「それに、これは私に対する裏切り行為である。お前は私の考えに反した行動をした。よって、私はそれを私の裏切り行為とみなした!!いいか、お前、許されざることを長年に渡ってやってきたのだ。それ相応の覚悟はできているのか?」

とまるで圧迫面接をしているがごとく怒り狂うように言ってきた。

 だが、木松悪斗の奥さんも黙っていない。大事な娘、桜花のたmにも、とばかりに反論。

「あなた、旺夏にサッカーの才能があるように桜花には音楽の才能があるのです!!その才能をのばすことこそ、あの子にとって大事なことなのです!!それをわかってください!!」

 だが、そんな反論、木松悪斗、聞く耳持たず。いや、桜花のことなんて1ミリも考えず、逆に自分のことばかり考えては、

「そんなもの、関係ない!!あんな役立たず(桜花)のために役に立たないことをさせるなんてお金の無駄だ!!それよりも私の役に立つことをさせたほうがいい!!いいか、よく聞け、これは命令だ!!家長である私の命令だ!!いますぐあのごく潰し(桜花)がいく音楽教室に対し辞めるように伝えろ!!そして、これからは私の役に立つように教育しなおせ!!」

 むろん、これには、木松悪斗の奥さん、

「それは桜花がかわいそうです。考え直してください!!」

とまた反論しようにも、木松悪斗、聞く耳持たず。それでも、奥さん、

「あなた、お願いです・・・」

と言おうとした瞬間、その奥さんの身に大変なことが起きた。なんと、奥さん、それを言おうとすると、

プツン

という音がその奥さんのなかで響き渡ってしまい、それとともに、

バタンッ

と突然倒れてしまったのだ。これには、木松悪斗、

「おい、お前、大丈夫か?」

と自分の奥さんに声をかけるも返事せず、いや、意識すらなかった。

 こうして、木松悪斗の奥さんは病院に緊急搬送されすぐに入院となった。そして、意思から、

「あなたの奥さんですが、体に以上は見つかりませんでした。ですが、かなりのストレスがあったせいか、精神的に自分の意識すらシャットアウトしている状態です。このままだとあなたの奥さんはずっと寝たままの状態になってしまいます。奥さんが目を覚ますのはいつになるのか、それはこの私ですらわかりません・・・」

と言われてしまう。どうやら、木松悪斗の奥さん、夫である木松悪斗からかなりのストレスを受けていたのである(特に子どものことについて)。そのかなりのストレスのために奥さん自ら自分の意識をシャットアウトしたようだ。そのため、奥さんがいつ目を覚ますのか誰もわからない、そんな植物状態みたいなところまで奥さんの状態は悪化していたようだ。

 そんな植物状態に近い姿となった奥さんを見て、その奥さんの子どもである桜花は、

「お母さん、目を覚まして!!昔みたいに私と一緒に音楽教室に行って私と一緒に楽しんで!!」

と涙を流しながら寝ている母に向かってこう訴えてきたのである。桜花は音楽に触れていくうちに音楽のことが好きになっていた。そして、桜花は音楽の才能があった。なので、音楽が好きになっていけばいくほど音楽の才能を伸ばすことができ、さらに音楽のことが好きになる、そんな好循環を生んでいた。だが、それでも、自分の父親である木松悪斗は、桜花は自分にとって役に立たない、そんな「ごく潰し」「役立たず」、と評してはそう言い続けたのである。ただ、たとえそうであったとしても桜花がへこたれずに頑張ってこれたのは自分の母親が父に黙って桜花を音楽教室に通わせていたからであった。音楽教室の時間こそ桜花が唯一心休まる、いや、それどころか、自分の好きを言える、そんな時間だった。それが母親の昏睡によってその時間すら父から奪われる、そのことを桜花は自覚していたのだ。

 だが、そんな桜花の訴えむなしく桜花の母親こと木松悪斗の奥さんは目を覚ますことはなかった・・・。

 

 その後、桜花を含めた木松悪斗一家の生活は一変した。まず、木松悪斗は静真への投資と妻の入院を機に住処を東京から沼津へと移した。そうしたほうが旺夏が静真に入学したときに通いやすくするため、そして、沼津に全国有数の女子サッカージュニアチームがあり、そこに旺夏を加入させるためであった。

 また、これを機に自分の経歴において木松悪斗は沼津出身であると詐称することにしたのだ。木松悪斗にとって北海道での子ども時代は黒歴史、苦しみでしかなかった。そんあ黒歴史を封印すべく自分は沼津出身である、と詐称したのである。まぁ、自分の妻が沼津出身であること、これまで木松悪斗の経歴は誰にも話していなかった、なのだが、それだと自分より上の者と付き合う(特に財政界)ときの妨げになることもあり、ここで「自分は沼津出身である」と言っていればたとえ詐称としてもそこまで詮索されることはないだろう、という木松悪斗の判断によるものだった。

 さらに、まだ眠り続けている自分の妻を沼津郊外の自分の息がかかった病院へと転院させた。そうした方が木松悪斗本人のことを誰かに調べられたとしても自分のからのストレスにより植物状態になった妻のところまで手がのびることなんてない、と木松悪斗が考えたからだった。

 そして、特に変わったのが桜花の生活であった。これまでは母の後ろ盾もあり、自分の好きな音楽を(自分の父に黙って通っていた)音楽教室の場にてめいいっぱい楽しむことができていた。だが、その母親の後ろ盾を失った今、桜花にとってそれは地獄の始まりの金がなる瞬間でもあった。まず、木松悪斗は桜花から桜花が一番好きな音楽を取り上げた。木松悪斗にとって音楽はただの遊びとしか見ていないため、これ以上、桜花に音楽教室を通わせる義理なんてなかった。そのため、妻が昏睡状態に陥ってすぐに桜花は木松悪斗によって音楽教室を辞めさせられた。さらに、ここにきて、家族全員沼津に引越したものだから、桜花にとって周りにいる人たちはみな知らない人ばかり、音楽教室なんてどこにあるかわかならい、いや、自分の父親によって音楽そのものをさせてもらえなかったのだ。それも徹底的にである。なので、桜花は昔みたいに自分の一番好きな音楽を楽しむことなんてまったくできなかった。あったとしても学校の音楽の時間のみ。まさに桜花にとって毎日が、木松悪斗に監視させられている、それが地獄でしかなかった・・・。

 また、桜花に対して木松悪斗は無理なことを次々と要求していった。木松悪斗曰く、

「これまで桜花を甘やかしすぎた。これからは旺夏みたいに私の役に立てるように教育しなおす」とのこと。その言葉通り、木松悪斗は桜花に対し無茶な要求をした。たとえば、桜花に対し数学の勉強ばかりさせては東大入試並みに難しいテストをさせたり、全国模試1位を獲るようにと桜花に求めてきたり。なかには、木松悪斗の得意分野である投資やパソコンのプログラミング、それも普通の大人ですら難しいことを木松悪斗は桜花に求めてきたのだ。むろん、それらはすべて桜花にとって酷なことだった。それでも桜花は、

「自分もお姉さん(旺夏)みたいに父のために役に立たないとなにをされるかわからない・・・。そんなの、嫌!!」

という嫌々な気分となりながらも必死になって頑張った。だが、いくら頑張っても木松悪斗が求めるレベルには達することはできなかった。そのため、決められた期日までに木松悪斗が求めるレベルに達していないことがわかると、毎日、自分の父親である木松悪斗から、

「この「役立たず」が!!そんなことなんてできないのか!!少しは旺夏を見習え!!旺夏は私が求めるレベルに達しているんだぞ!!それに比べてお前はそのレベルにすら達していない!!それをなんていうかわかるか?それを、「役立たず」「ごく潰し」というのだ!!それを毎日言わせるつもりか!!いいか、わかったか、私が求めるレベルに達しない限り、お前は「役立たず」「ごく潰し」なんだ!!」

と言われ続けた。そのため、桜花、その父親からの言葉を聞くたびに、

(私は役立たず、なんだ・・・。私なんて生きる資格なんてないんだ・・・。父からは怒られてばかり、貶されているばかり・・・。それくらい、私は、「役立たず」「ごく潰し」、なんだ・・・」

とどんどん自分のことを卑下していく、いや、自分自身を否定続けては自分の存在意義すら否定するようになっていった・・・。そして、父からの言葉、そのものを桜花は次第に鵜呑みにするようになった・・・。

 

 こうして、桜花はこのあと地獄の日々を・・・、自分の好き、音楽、をさせてもらえないばかりか父木松悪斗から「役立たず」「ごく潰し」などといった桜花のことを軽蔑するような言葉攻め、いや、父からばかりか、

「自分は今や日本を代表する女子サッカー選手になったんだ!!お父様の役に立っているんだ!!」と将来の日本代表と言われるようになり「もう私は日本代表である」と高をくくっている、プラス、日本の女子サッカー界のトッププレイヤー(と旺夏は思っている)になったことで父親である木松悪斗の役に立った、そう思い込んでいた桜花の姉の旺夏からも、

「桜花、いや、この「役立たず」「ごく潰し」、お前なんて私の前からさっさと消えろ!!」

とただたんに桜花のことを軽蔑する言葉を言われるようになり、前以上に、いや、

「私はもう死にたい・・・、死んでどっかにいきたい・・・」

と桜花の状況は最悪の道、自殺、へと転がり込むようになっていった。

 

 一方、木松悪斗はというと、日本有数の投資グループとして日本市場を席巻、静真においても自分の投資によって静真の部活動が活発化、結果、多数の部活が全国大会に出場、いや、なかには旺夏率いる女子サッカー部がインターハイで全国制覇するくらいにまでになり、静真の名は全国にとどろくようになった。そして、部活動の活発化により静真のブランドイメージが上がったこともあり、木松悪斗は静真の部活動に所属している生徒の保護者の集まり、静真高校部活動保護者会の会長として、同じく、静真の部活動に所属している生徒たちの連合体、部活動連合会の旺夏とともに静真の部活動を完全に掌握・・・、いや、それ以上に、静真の大スポンサーであることをいいことに静真の理事会に自分の息のかかった部下たちを多数送り込んでは静真の理事会を完全支配、こうして、静真の創立家の末裔である沼田に代わり木松悪斗が静真における全権力を掌握することとなった。そのため、静真においては木松悪斗には逆らえない、いや、そればかりか、木松悪斗の信条、「勝つことこそすべて」、勝利絶対至上主義、が静真のなかで完全にはびこってしまう、そんな状況に陥ってしまった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第9話

 なので、木松悪斗はすべてが順調であった・・・とはいえなかった。たしかに最初のころは木松悪斗にとってすべてがうまくいっていたのだが、時代の流れとともに木松悪斗は次第に苦境に立たされることとなった。

 まず、木松悪斗のお仕事、投資面においてだが、最初、自分の投資グループを立ち上げたときは日本にはそこまで有名な投資グループが多くなく、さらに、木松悪斗が持つ力、(Windows95が発売されたときに先を見据えて自分の力でIT関連会社を立ち上げたぐらい)将来を見通す先見性、木松悪斗自ら構築したActシステムや木松悪斗の左腕である猪波などによる超高度な情報戦、レイコンマ数秒という素早い瞬時の判断力を木松悪斗、もしくは、Actシステムを持っていたことにより日本一の投資グループと言われるようになっていった。

 ところが、時代が経つにつれて次第に木松悪斗の投資グループのライバルともいえる存在が次々と現れた。たとえば、海外に本部を構えている海外資本の投資グループなど。その海外資本の投資グループには木松悪斗の投資グループ以上の資金を持っており、さらに、木松悪斗のActシステムに匹敵、いや、それ以上のシステムをもっていることもざらだった。また、投資のやり方についても木松悪斗の投資グループみたいに短期的な利益のみを、自分たちの利益のみを追求する、のではなく、長期的な視野でもって投資する、不審に陥っている企業を安値で買収、無駄を省いて市場が求めている、その企業が得意としている分野を伸ばしその企業の価値を高めていくことでその企業の株を高値で市場公開、もしくは、

売却できる、その安値と高値の差で自分たちの利益とする、そのことを念頭に投資をする、そんな投資のやり方が海外資本の投資グループが中心となって広がっていった。そのため、そのことを気にしてか、木松悪斗の投資グループよりそれ以外の投資グループに出資、もちくは、賛同する人が多くなっていった。

 さらに、木松悪斗の投資グループが使っているActシステムにも時代の波が押し寄せていた。たしかに木松悪斗が構築したActシステムはかなりの高性能である、いや、あった。だが、木松悪斗もシステムエンジニアを雇って時代に合わせてActシステムをバージョンアップさせてきたが、その根幹となるシステムは2000年代中ごろ、木松悪斗が自ら作ったもの、パソコンのOSでいうところのXPの時代、のものであったため、時代が経つにつれてActシステム(特にそのシステムの根幹部分)は次第に陳腐化してしていくようになった。また、それに合わせてほかの証券会社や海外資本の投資グループを中心にActシステム以上の能力をもった、システム的に、自動的にレイコンマ数秒という瞬時の株式売買を、投資を行ってしまう、それくらい超高性能なシステムが次々と導入されていった。

 といった理由により、木松悪斗の投資グループは時代が経つごとに自分たちの地位が脅かされるように、いや、苦境に立たされるようになっていった。たとえば、ある日の夜、木松悪斗のもとに1本の電話が入る。

「はい、木松悪斗だが・・・」

と返事をするとその電話口から焦ったような口調で木松悪斗の部下が、

「夜分遅くすいません」

と言うと続けて、

「木松悪斗様、大変なことが起きました!!」

というとその大変なことを部下は語り始めた、とても苦々しい口調で・・・。

「木松悪斗様が狙っていた大型案件ですが、先ほど連絡があり、(海外資本の)○○グループが買収することが決定しました!!」

 で、この部下からの報告を聞いて、木松悪斗、おもわず、

「えっ、なんだって!!」

と怒鳴ってしまった。どうやら、木松悪斗がかなり狙っていた大型案件、だったらしく、それをライバルグループに取られたことで怒りが頂点に達したようだった。

 そんな木松悪斗であったが、その部下に対し、

「こちらとしてもかなりの好条件だったはず。それなのになんで敗れるんだ!!」

と部下を追い詰めるとその部下は自分たちが敗れた理由をたんたんと答えた。

「どうやらこの案件で買収を決めた○○グループの方が私たちより買収する額が髙かったらしく、それに加えて、その投資グループの中心となっている企業の将来性を鑑みて、とのことです」

 この部下の言葉に、木松悪斗、さらに怒りが増して部下に対しこう怒鳴ってしまう。

「クソッ!!この世の中はすべて競争だ!!そんな将来のことなんて考えていてはいつかは負けてしまうんだ!!それもこれも、お前たち、無能な部下たちのせいだ!!」

とはいえ、決まったことは決まったこと、いくら木松悪斗とはいえそれを覆すことはできなかった・・・。

 だが、部下の報告はまだあった。怒り狂う木松悪斗に対しその部下は恐る恐るこんなことを言ってきた。

「あと・・・、最近の株売買の結果が芳しくありません・・・」

これには、木松悪斗、

「はっ?」

と驚いたように言うとその部下はこれもまたたんたんと詳しい内容を語りだした。

「最近の株売買ですが、最安値を更新したときに株を購入しようとしたところ、びつのところがその株の買占めを行ってしまい購入できない状況が続いております。原因としてはActシステムの自動株売買機能の対応スピードが遅いためだと思います・・・」

 この部下の報告を聞いた瞬間、木松悪斗、その部下に対し怒鳴り狂う。

「おい、私の考え、Actシステムは完璧なんだ!!それに、時代にあわせてActシステムをバージョンアップさせてきた!!!それなのに株売買の失敗が続くのはお前たちが弛んでいるのが原因だ!!」

この木松悪斗の怒鳴り声に、部下、ついこんなことを考えてしまう。

(う~、最近こればっかりだ・・・。なにかあれば、木松悪斗様、俺たちに対していつも怒鳴り散らしている・・・。それに、最近、(今いる)木松悪斗様の投資グループはライバルたちとの買収合戦に負けている・・・。だから、毎日のように、木松悪斗様、怒鳴っている・・・。もううんざりだよ・・・。いや、ノイローゼ気味になりそうだ・・・)

そう、木松悪斗、なにかあると決まって自分の部下たちに怒りをぶつけてくるのである。本来であればなにか失敗したことがあれば失敗した原因を探し出し、もう2度とこのようなことが起きないように対策するのがいいのだが、木松悪斗の場合、普通の人以上にプライドが高いせいか、それとも自己中からなのだろうか、その失敗に対していつも部下にどなってはその責任を部下に押し付けてしまった。さらに、ここ最近、ライバルグループとの競争に負け続けていたこともあり、その怒りを毎日のように部下たちに浴びせてきたのだった。なので、それが部下たちにとってかなりのストレスになっていたらしく、その部下たちの多くが木松悪斗の奥さんみたいにノイローゼ気味になっていた。

 といった具合に、自分たちのグループ以上の資金力があり、さらに、短期的な利益、自分たちの利益だけを狙う木松悪斗の投資グループより長期的視野でもって利益を追求する、そんなライバルグループたちとの競争に負け続けるようになったことで木松悪斗とその投資グループはどんどん苦境に立たされるようになった。

 また、静真においても木松悪斗の権力に陰りをみせようとしていた。それは沼田の復権である。リーマンショックによる不景気への対応のため、沼田は一時期静真から手を引き、自分が経営している(世界的規模の)企業グループの経営に注力していた。そのときに静真はリーマンショックによるスポンサー企業の撤退ということもあり閉校の危機がおとずれていた。その危機を救ったのが木松悪斗であるのだが、その危機を救うことで木松悪斗は静真における権力を手に入れただけでなく静真の危機に手を差し伸べたことでそれができなかった沼田に対し恩を売ることができたのである。

 だが、沼田が経営している企業グループの経営もひと段落したことで沼田は次第に静真に、いや、静真を含めた沼津、そして、静岡へと活動の軸を動かそうとしていた。まずは静岡の経済団体の要職に復職すると同時に静真においても創立家の末裔として徐々に関与するようになっていった。むろん、木松悪斗も沼田の動きは知っており、その沼田に対しては、「自分は静真の危機を救ったのだ!!」、ということを言い続けることでにらみをきかせていた。

 だが、私立である静真においては創立家の末裔という沼田のネームバリューは木松悪斗が考えていたものより大きかった。沼田が静真への関与を強めれば強めるほど沼田の静真における影響力は強くなっていった。また、沼田の影響力は静真以外にも及んでいた。実は、沼田、静岡の経済団体の要職を務めるくらい静岡経済への駅協力はとても強かった。それはなぜか。それは沼田率いる世界的規模の企業グループ、沼田グループは静岡が発祥の地、つまり、そのグループの中核企業の本社も、ここ静岡にあったりするのだ。そのため、沼田の一族は静岡の発展のために寄与し続けてきたのだ。これにより沼田と静岡にある企業や自治体などとの結びつきはとても強かった。

 ただ、木松悪斗も負けてはいない。「自分は静岡沼津出身である」、そう公言するようになってはそれを証明させるがごとく静岡にある企業などの株を買い占めたり静岡の自治体に対して自分の投資グループの資金力や買い占めた静岡の企業などの株をちらつかせてはいろんなことを要求してはそれを実現させてしまう、そんなことをすることで静岡経済における影響力を強めていき、結果、静岡、特に経済ににおける木松悪斗の影響力は絶大なものになった。

 しかし、いくら自分の財力でもって静岡における権力をものにした木松悪斗であったとしても代々静岡の発展に寄与し続けた、さらに、今なお世界的な大企業グループの中心地として代々頑張ってきた沼田のまえでは子犬も同然だった。静岡の発展のために代々頑張ってきた、そんな沼田のとの強い強い、鋼のような結びつきを持つ静岡の企業・自治体に対しいくら静岡の企業の株を買い占めることで静岡での絶大な権力を手に入れた木松悪斗がなにか命令しても沼田がNOと言えば静岡の企業・自治体は沼田側についていってしまうのだ。なので、静岡における木松悪斗の地位が王様であるなら沼田の地位はそれ以上、いや、神、ともいえた。

 また、それは静真における沼田の地位にも影響した。沼田は静真において創立家の末裔というネームバリューとともに、静岡、そのなかのひとつである沼津と結びつきが強い、ということもあり、沼田が静真への関与が強くなれば強くなるほど沼田の静真における影響力は強くなっていった。それについてはて静真において絶大なる権力を手に入れた木松悪斗ですら指をくわえて見ているしかできなかった。だって、あの沼田が自分の権力でもって葬ればそれは静真のまえりにいる人たちにケンカを売っているようなものになるのだから。いくら静真で木松悪斗の資金力でもって静真が成り立っているにしたもその静真のまわりにいる人たち、たとえば、静真のある沼津市など、との結びつきが切れたらきっと一瞬のうちに静真はなくなってしまうのだから・・・。その理由、それは、静真が私立だったとしても地域との結びつきはとても大事だから、だった。学校というのはその学校がある地域との結びつきがとても大事であり、同時にその結びつきがなければその学校は存続できないものである。

 そんなわけでして、沼田は静真での影響力を次第に取り戻すとともに静真高校PTA会長の役職を獲得、多忙な仕事の影響で、沼田自身、あまり静真に来ることができないものの、自分と静岡の企業、自治体との強い結びつきでもって静真のために動くようになった。こうして、沼田は静真での王様である木松悪斗のもっと上の地位、影の神、としての地位を取り戻すことができた。ただ、それでも、木松悪斗ほど静真に関わる時間がない、いや、ほとんどない、ということもあり、静真の運営などに口を出すことは学校統合のような超大型な案件以外あまりなく、そのため、木松悪斗の静真における天下はまだまだ続いていた・・・ものの、なにかあれば自分以上の権力を持つ沼田が動く、そのことを木松悪斗が危惧するくらい、静真、そして、静岡や沼津における木松悪斗の地位は揺れ動こうとしていた・・・。



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ラブライブ!RSBP 第10話

 そんな木松悪斗と地獄の日々を過ごす桜花に対し状況が一変する事態がついに起きてしまった。それが静真と沼津内浦にある女子高浦の星との統合、であった。浦の星は沼津の郊外、淡島などの観光地などが近くにある風光明媚な地域、内浦にある、それも静真と同じく歴史由緒ある女子高であった。そんな浦の星は、近年、生徒不足に悩んでいた。運営面については沼田と同じく世界的大企業、いや、世界的大財閥の小原家が代々スポンサーとして浦の星を支えてきたため、そこまで問題にはならなかったが、沼津市郊外という沼津の中心地から離れている土地にある、少子化、さらには、女子高、とうこともあり、年々入学者が減っている事態に直面していた(その証拠に、廃校当時、3年生3クラス、2年生2クラス、1年にいたっては1クラスしかなかった・・・)。そのため、学校存続の危機、に直面していた。そのために学校側と下はいろんな施策(入学説明会など)をとってきた。特に小原家総帥の一人娘、小原鞠莉を中心としたスクールアイドル活動、いや、浦の星女子高等学校スクールアイドル部Aqoursの働きは凄いものだった。浦の星の2年、千歌を中心に結成したAqoursは結成してまもないラブライブ!夏季大会で東海最終予選まで進出、冬季大会ではついに最終予選突破を果たすくらいのものすごい快進撃をみせ、それにあわせて浦の星への入学希望者も目標の100名に迫る98名まで集めることができた。だが、98名を集めたところでタイムアップを迎え、Aqoursの健闘むなしく浦の星は廃校、いや、統廃合を迎えることとなった。

 と、ここで、浦の星を統合してくれる学校はどこなのか、という問題が出てくるのだが、これについては浦の星の大スポンサーである小原家が、Aqoursが頑張っているかたわら、水面下で動いていた。小原家が沼津にある学校と交渉していくうちに、浦の星と同じく歴史由緒ある女子高であった静真と統廃合をすることが決まった。むろん、これには裏で小原家と沼田との働きかけが存在していた。実は、小原家、浦の星だけでなく淡島にあるホテル「ホテル小原沼津淡島」といったホテルを静岡各地に多数保有しているのにくわえて静岡にある多くの企業に出資・提携していたり自治体と提携していたりと沼田と同じくらい静岡にある企業・自治体との結びつきが強かった。また、その関係上、沼田と小原家も強い結びつきを持っていた。その結びつきのなかで小原家が静真の創立家の末裔である沼田に対し、「静真と浦の星を統合してほしい」とお願いし、Aqoursの健闘むなしく浦の星の統廃合が決定してからすぐに統廃合に向けた話し合いを開始、静真の大スポンサーである木松悪斗の承諾を経て無事に静真と浦の星は統廃合することが決まった。

 ただ、このときの木松悪斗はある皮算用があった。それは・・・、

(もし浦の星と統廃合すれば(世界的大財閥であり、浦の星の大スポンサーであった)小原家が静真に出資してくれるはず。そうなれば、静真の部活動はさらに強くなって私の地位もどんどんあがっていくはずだ!!)

そう、木松悪斗は世界的大財閥である小原家が静真に出資してくれる、そう期待していたのである。実は、このとき、静真は多数の部活が全国大会に出場、なかには、女子サッカー部のようにインターハイ優勝といった日本一になる部活も出てくるようになってきた。なのだが、それに伴って部活動全体の活動費も膨れ上がってしまったのだ。ところが、その部活の活動費のほとんどを出している木松悪斗のその投資グループは先述の理由の影響で苦境に立たされていた。なので、これ以上、静真に回すお金がない、というところまで追い込まれていた。そこに湧いて出たのが浦の星との統廃合であった。で、その浦の星と統合することで浦の星のバックにいる小原家にもそのお金を出してもらおう、と木松悪斗は考えていたのである。

 だが、木松悪斗の期待は裏切られた。たしかに浦の星と静真は統合する、しかし、浦の星の大スポンサーであった小原家は静真には出資しない、さらに、木松悪斗が小原家の出資のために用意してくれた静真高校理事の椅子を、小原家、いや、小原家総帥の一人娘で浦の星の理事長をしていた、また、Aqoursの一員である小原鞠莉(高3)がその理事の椅子を蹴ったのである。これでは木松悪斗の面目丸つぶれ、いや、捕らぬ狸の皮算用、である。いや、それどころではない、木松悪斗曰く、このことは「小原家は静真には出資をせずに浦の星の生徒だけを静真に押し付けた」、いや、「小原家が自分(の影響力をもっている静真に)に対して出資しないばかりかいらないもの(というべき浦の星の生徒たち)を押し付けてきた」、それくらい木松悪斗からすればマイナス面ばかりが目立つものとなってしまった。

 そんなわけで、木松悪斗、99%決まっていた静真と浦の星の統廃合を白紙に戻そうと画策する。なんと、統合2か月前になって、突然、木松悪斗とその仲間たちが統合白紙を言ってきたのである。さらに、自分の権力を使って静真に通う生徒たちに対して「(万年初戦敗退するくらい)部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が(全国大会に出場するくらいの部活を数多くもつぐらい)部活動に対する士気が高いそんな静真の部活動に参加すると、士気の低下、対立により静真の部活動に悪影響がでる」という偽の考えを広げていったのである。むろん、それはただの偽情報である。だが、静真に通う生徒の保護者たちの考えのほとんどが木松悪斗の信条、「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義、だったため、木松悪斗が作り出したこの考えはすぐに広がってしまった。

 だが、そんな木松悪斗に真っ向から反論する者たちが現れた。それがAqoursのメンバーの1人、渡辺曜の大事な幼馴染兼静真高校生徒会長の渡辺月であった。月は自分にとって大切な曜のいる浦の星の生徒たちのために自ら率いる生徒会の全力をもって静真・浦の星の統廃合実現のために動いたのである。最初は生徒会全力をもって静真の生徒全員に対する統合賛成の署名活動を展開、木松悪斗の信条、「勝利こそすべて」、という考えが強いものの、月に対する支持の強さ、自分と仲のいい浦の星の生徒たちのため、静真の生徒のほとんどが署名、結果、沼田のおかげもあり、静真・浦の星の統廃合は決定した。

 ところが、木松悪斗によって、木松悪斗の考えた偽の考え、を生徒の保護者たちのほとんどが信じてしまい、その偽の考え、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い静真の部活動に参加すると静真の部活動に悪影響がでる」、それが保護者の声になってしまった。その声の影響もあり、沼田は浦の星との統廃合決定の際にその声がなくなるまで浦の星の生徒は山の中にある沼田が用意してくれた分校に通うことを決めてしまった。なので、結局、統廃合問題は玉虫色の決着をこのときはみせてしまった・・・。

 だが、それでも、月と木松悪斗の構想は続いた。なんと、月、完全統合、つまり、浦の星の生徒も分校ではなく静真本校に通う、その実現のために曜たちAqoursを担ぎだしたのである。ただ、このときのAqoursは、ダイヤ、鞠莉、果南といった旧3年生が抜けた、たった6人の、ラブライブ!優勝のときを100とすると30~40くらいの実力しかだせない、そんなあまりに頼りないものだった。また、このとき、月の動きを察知した木松悪斗・旺夏親子が月によって担ぎだされたAqoursに対し妨害工作を行い、結果、月、木松悪斗の対決の場となった静真高校部活動報告会、ここで浦の星の代表として、Aqours、いや、新生Aqoursがライブを行ったが、そこでルビィが花丸、ヨハネを巻き込んだ大転倒を起こしてしまいライブは大失敗に終わった。これにより、月の静真における権威は失墜、生徒側にも保護者の声が、いや、木松悪斗の作った偽の考えが広がる結果となった。

 こうして、木松悪斗は静真において絶対的な地位を守ることに成功、さらに、月と月が率いる生徒会を中心とする統合実現派の力を削ぐことで自分を裏切った小原家、そして、浦の星に対してある程度の仕返しができた・・・のだが、統合の白紙を訴え始めてから部活動報告会までの1ヵ月半のあいだ、木松悪斗が静真に注力し過ぎたこともあり、本業である仕事、投資の仕事をおろそかにしてしまった。そのため、木松悪斗率いる投資グループはさらなる苦境に立たされてしまった。

 でも、なんで、木松悪斗の投資グループがさらなる苦境に立たされてしまったのか。それは木松悪斗率いる投資グループがいわゆるトップダウン式の組織だったからである。トップダウン、それは組織のリーダーの命令でもってその組織が動いていることを示している。木松悪斗率いる投資グループの場合、ある程度の案件については部下の裁量権がある程度認められていたが、それ以上の大型案件だとその組織のトップである木松悪斗がすべて決めることにしていた。ただ、木松悪斗には優秀な側近たち、木松悪斗の右腕である裏美と左腕である猪波がいるのだが、裏美はどっちかというと情報屋、木松悪斗の代わりに指示を出す、というよりも裏美とその奥さんが持つ人脈を使って情報を集める、もしくは、その人脈の先にいる重要人物とコンタクトをとる、そのことに特化していたし、猪波も木松悪斗の代わりに指示を出す、というよりも、木松悪斗が買収した企業の経営をしたりActシステムによって集められた情報の分析などを主にやっていた、いや、それ以上に、猪波が投資のために動けばいつも決まって猪波のおばあさまが邪魔をしにきては失敗に終わる、ということが起きてしまう。また、それ以外の部下も基本的んは木松悪斗の指示通りに動く、いや、勝手に動けば、成功、失敗、関係なく木松悪斗によって消されてしまう、そんなことを心配しており、木松悪斗に代わって指示を出すことはできなかった。それくらい、木松悪斗は自分本位でないと気がすまない、そんな自己中心的な男、なのですが、それが木松悪斗率いる投資グループがトップダウン式である理由であった。

 だが、そんな組織携帯が、今回、裏目に出てしまった。木松悪斗が静真に注力しすぎたあまり、本業である投資の仕事をおろそかにしすぎてしまった。なので、大型案件におけるライバルグループとの買収合戦の場において木松悪斗の指示を得ることができずにたたわずして負ける、そんなことが多発していたばかりではなく、せっかく買収した企業なのにいくら猪波がその企業の経営についてアドバイスをしても木松悪斗がその企業に関する裁定をしない、したとしても遅い、そのためにその企業はなにもできないまま倒産してしまう(猪波はたしかに買収した企業の経営をしているが、その企業にとって重要なことはトップの木松悪斗の裁定が必要だったりする)なんてことが起きたりしていた。

 そういうわけでして、木松悪斗、部活動報告会において月とその生徒会、さらに、小原家や浦の星、さらに月によって統合問題の場に引きずり込まれたAqoursを叩き潰すことができた、そう思ったのか、静真のことについては側近の裏美に任せ、自分は自分が率いている投資グループの立て直しに躍起になっていた。



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ラブライブ!RSBP 第11話

 だが、静真を裏美に任せたのが失敗だった。裏美は木松悪斗率いている投資グループでの地位をあげるため、月と月率いる静真高校生徒会、浦の星や小原家を徹底的に潰そうとした。裏美の戦略、それは、小原家総帥の妻である鞠莉‘sママを使って、月、Aqours、小原家を潰すことだった。まずは、浦井、小原家総帥の一人娘である鞠莉が鞠莉‘sママの束縛(鞠莉‘sママが勝手に決めた縁談)を嫌がってイタリアにダイヤ、果南を伴って逃げていったことをいいことに月と沼津に残っているAqoursメンバー、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネ、にその鞠莉たち3人を探させるよう鞠莉‘sママをそそのかしたのである。また、その費用を含めて、その鞠莉探索のための費用をすべて鞠莉‘sママもちに、いや、それ以上に、鞠莉‘sママに対して通常より高い値段でもってその散策のためのポスターなどの作成をする業者を紹介したことで自分の懐を温めた上、それによって膨れ上がった費用拠出(すべて鞠莉‘sママもち)によって小原家の財政を悪化させようとしていたのである、裏美は・・・。さらに、逃げ続ける鞠莉たちの居場所を鞠莉‘sママに伝えることで鞠莉を鞠莉‘sママが捕まえては鞠莉‘sママが決めた許嫁とまりが結婚することで小原家を失墜させようとしてんだ。まぁ、これについては鞠莉が鞠莉‘sママが決めた許嫁とむりやり結婚させることで鞠莉‘sママが古い考えの持ち主である、そう堂々と宣伝することができるとともに、「小原家は古臭い考えを持っている、前近代的な考えの持ち主である」、その認識を世の中に広げることにもつながってしまう、結局、小原家の信用はガタ落ちになり、小原家の地位は失墜する、そう裏美は考えたのである。

 ところが、このとき、裏美はある取り決めに反していた。それは月の静真における地位が堕ちた日に沼田によって取り決めららたルールだった。それは、あの部活動報告会のあとに行われた通常理事会のときの出来事だった。このとき、月たちの願いだった浦の星分校と静真本校の統合を果たすことができなかった。ところが、このとき、月たちは自分たちの退学ををかけてこの理事会に挑んでいた。そのことに心打たれた沼田によって2つのことが決まった。1つは次の新学期が始まるまでに、今、静真にはびこっている保護者の声の改善をしなければ浦の星の生徒たちの処遇が悪化すること、つまり、新学期までに保護者の声が改善されれば静真本校と浦の星分校の統合ができること、2つ目はそれに対する月たち生徒会、Aqoursを含めた浦の星のみんなの行動の邪魔を木松悪斗たちはしないこと、だった。その2つ目の取り決めに裏美は抵触したのだ。

 いや、それどころか、裏美の思惑通りにはならなかった。なんと、Aqoursはイタリア旅行により復活を果たしたのだ。さらに、その旅行の途中で鞠莉‘sママに対し鞠莉たちの想いを伝えるために行ったローマ・スペイン広場での運命のライブによって鞠莉と鞠莉‘sママが和解、鞠莉‘sママは鞠莉の自分への思いを受け取ったのか、鞠莉を束縛せずに自由に生きていくことを認めたのである。また、このことがきっかけになったのか、鞠莉‘sママは一連の裏美の行動を超さ、裏美が小原家を陥れるように仕向けていたことがわかると裏美を呼び出しては懲らしめたのである。いや、そればかりか、裏美の勝手な行動により木松悪斗はあの小原家を敵にまわしたのである。

 また、月とAqoursがイタリアに行っているあいだ、残された生徒会メンバーは静真の生徒のなかでAqoursのことを応援しているあげは率いる静真Aqours応援団、さらには、浦の星のよいつむトリオたちと一緒に保護者の声を一気に吹き飛ばすための施策、新生Aqoursお披露目ライブ、それに向けてひそかに頑張っていた。裏美はこの動きをすえてに察知、木松悪斗の名でもって静岡にある企業・自治体に対して生徒会メンバーたちの手助けをしないように圧力をかけてきたのである。ただ、この裏美の行動は沼田に筒抜けだったため、その裏美からの圧力に屈しないように、もし裏美(形式上では木松悪斗名義)になにかされそうになったら沼田が責任をもって対処することを静岡の企業・自治体などに対し通知したことで裏美の策略は頓挫、生徒会メンバーたちは新生Aqoursお披露目ライブの準備をちゃくちゃくと進めることができたのだ。

 その後、月とAqoursは日本に帰国、新生Aqoursお披露目ライブに向けて頑張ろうとした矢先、Aqoursの公式ライバルであるSaint Snowの理亜のことで問題が起こってしまう。理亜は、このとき、心のなかに深淵なる闇を抱えていた。そんな理亜に対し本当のことを、自分たちにAqoursという輝きがあるのと同様に理亜のなかにもSaint Snowというkが焼き、宝物がある、そのことを伝えるためのライブ、ラブライブ!延長戦を行うことを決める。そして、月もそれに賛同してそのための準備を行っていたのだが、木松悪斗、このとき、Aqoursが復活を果たしたこと、裏美が自分に黙って月たちの妨害をしていたことを知り、これ以上、月の思い通りにしてはいけないと思い、月に対する妨害を、延長戦で使うライブのステージ、沼津駅前にあるエンタメビル「ラグーン」、その屋上の使用承諾の妨害をすることにしたのだった。

 こうして、月と木松悪斗は三度対決、最終決戦をすることに。屋上使用承諾をめぐって2人は「部活動とはなにか」について論戦・・・、というか、一方的に木松悪斗が論じていたのだが、結果は、これまたその論戦の場に現れた沼田によって月の勝利に終わった・・・。その理由が「部活動として一番大事なのは部活動を楽しむこと。みんなと一緒に楽しむこと」、それを月が答えたからだった。実は、沼田、統合問題が発生した最初のころ、月に対しある質問を投げかけていた。それは、「部活動とはなにか」「部活動をする上で1番大事なものとはなにか」という問いであった。で、月は木松悪斗との最終決戦のときにその問いの答えを、「楽しむこと」「みんなと楽しむこと」と答えを言ったことが木松悪斗との戦いの勝利に結び付けたのである。

 ただ、この問いについては沼田なりの考えがあった。それは、木松悪斗が支配する静真のなかで木松悪斗の信条、「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義、それが静真の生徒たちばかりか、教師たち、生徒の保護者たちにまではびこっていた、そのことを沼田は常日頃から嘆いていたからであった。部活動に限らず学校活動において1番大事なこととはその行動を通じて学校生活を楽しむ、みんなと一緒になって楽しむことである、そう沼田は考えていた。だが、木松悪斗が支配する静真においてでは、学校生活活動において、「勝利こそすべて」、というまわりのことなんて考えない、そんな考えがはびこっていた。それは部活動でもいえることで、ただ「勝利」するために試合をする、どんなことをしてでも勝利しようとする、そのことが日常茶飯事だった。ただ、これだと人はいずれ破綻する、いや、そればかりか、自分以外の人を見下す、そんあことまで平気でする人になってしまう、そう沼田は危惧していた。そして、その例が木松悪斗が考えた偽の考え、もとい、保護者の声、「部活動に対する士気が低い浦の星の生徒が部活動に対する士気が高い浦の星の部活動に参加すれば静真の部活動に悪影響がでる」、というものだった。これは自分たちは全国大会に出場するくらい部活動に対する士気が高い、対して、浦の星の生徒たちはいつも初戦敗退、だから部活動に対する士気が低い、という勝手な思い込みによるものなのだが、別に浦の星の生徒たちが部活動に対する士気が低いわけではない。むしろ、静真の生徒以上に士気が高いのだ。なぜなら、浦の星の生徒たちが部活動をする上でなによりも「部活動を楽しむこと」「みんなと一緒に部活動を楽しむこと」を大事にしてきたから、だった。だが、生徒数が少ない、といった理由で複数の部活を掛け持ちする生徒が多いこともあり、十分といった練習ができない、そのために浦の星の部活は初戦敗退ばかりである、といった実情があったのだ。それなのに、初戦敗退ばかりだから、といった理由で静真の人たちは「浦の星の生徒たちは部活動に対する士気が低い」と勝手に思い込み、いや、浦の星の生徒たちのことを見下してしまい、それが木松悪斗が考え出した偽の考えに結びついたのである。そのことを知っていた沼田は月に対し「部活動とはなにか」という問いを提案し、その答えを自力で探し出すことで静真の生徒の代表(生徒会長)である月にその答え、「楽しむこと」をわからせようとしていたのである。

 そして、月の勝利によって静真はついに変わろうとしていた。月はラブライブ!延長戦の準備や延長戦本番などを通じて沼田の問いの答え、「楽しむこと」、この答えにたどりついただけでなく、その延長戦を通じて静真の生徒たち全員に対しその答えを広めようとしたのである。また、AqoursもSaint Snowもこの延長戦をめいいっぱいみんなと一緒に楽しんだ結果、理亜は自分のなかにある深淵なる闇、それに伴う暴走の原因となった考え、「勝利こそすべて」、そのしがらみから脱却するとともにその闇を少し抑えることに成功した(ただし、その闇の中核となっている「ラブライブ!優勝」についてはただ抑えているのみだった・・・)また、この延長戦の動画は沼田によって静真の生徒たち、保護者たちに沼田の問いの答え、いや、沼田の考え、「部活動とは楽しむことが大事」、それを記するようなメールとともに拡散、静真の生徒たち、保護者たちも、木松悪斗の信条、「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義、それからようやく脱却することができた、そんなこともあり、静真の生徒たちの多くが新生Aqoursお披露目ライブの準備に参加するようになり、そのライブに向けて、いや、このライブを通じて静真のみんなと一緒に楽しみたい、それくらい士気の高い浦の星のみんなと一緒にその準備へと邁進、結果的にはそのライブは大成功に終わった。それとともに、名実ともに浦の星の生徒たちの(部活動に対する)士気が高いことが証明されたことで浦の星分校と静真本校の統合を認めない原因となっていた保護者の声は消滅、めでたく静真本校と浦の星分校は統合を果たしたのである。

 逆に月との戦いに敗れた木松悪斗にはそれ相当の罰が、沼田、小原家、両方から下された。それは報告会のあとで行われた理事会にて沼田から決められたこと、静真本校、浦の星分校を目指す月たちの行動の邪魔をしないこと、それを木松悪斗自ら破ったことへの罰だった。その罰とは・・・、ずばり、「これから先、小原財閥、沼田グループのすべての取引を禁止すること」だった。ただそれだけ・・・と思うかとしれないが、木松悪斗にとってそれは死活問題だった。なぜなら、小原財閥、沼田グループ、ともに世界的大財閥・企業だったからである。それくらい大きな財閥・企業グループなので、木松悪斗率いる投資グループもその関連会社との大きな取引・案件をいくつも抱えていた。それをすべて失うことは木松悪斗とその投資グループはそれに伴う大損失を被ることを意味していた。もちろん、小原家、沼田、ともにそれに伴う損失を被ることになるのだが、その規模の大きさからすると軽微といえた。なので、それに対する被害を被るのは木松悪斗のその投資グループだけであった。また、それとは別に自分の権力を傘に、沼津、いや、静岡にある企業・自治体などへの圧力をかけることも禁止した。それは木松悪斗の静岡における権力を無効化されたことを意味していた。だって、木松悪斗の静岡での権力のみなもとは静岡にある企業の株式を大量に持っていたこと、その企業を自分に従わせることができるだけでなく、そのまわりに対しても圧力をかけることができた。だが、沼田・小原家からの罰によりその圧力をかけることを禁止されたことによりたとえ木松悪斗が静岡にある企業の大量の株を持っていたとしても自分に従わせることも圧力をかけることもできなくなる、自治体に対しても自分の資金力をもって従わせることも圧力をかけることもできなくなる、それすなわち、木松悪斗の静岡における権力がなくなったことを意味していた。

 

 こうして、木松悪斗とその投資グループはさらなる苦境に、いや、存亡の危機に立たされることとなった。ただでさえライバルたちとの買収合戦に負け続けており、さらに、せっかく買収した企業も自分たちの利益になるくらいのものを生み出さない、そんなことが起きた影響もあり、木松悪斗とその投資グループはついに赤字をだすことになってしまった。

 さらに、ここにきてからの世界的大財閥・大企業グループである小原財閥・沼田グループとの全面的取引禁止はそんな苦境状態の木松悪斗とその投資グループを存亡の危機へと誘う、それくらいの影響力をもっていた。先述の通り、小原財閥・沼田グループとの大きな取引・案件が一気に消えたことにより、木松悪斗とその投資グループは大損害を被った。いや、それどころか、これから先、経済活動をしていく上で小原財閥、沼田グループと関わることが多い、それくらい、小原財閥と沼田グループの影響力はとても強いのだが、二社との完全取引禁止が足枷になってしまえば、それすなわちこれからの経済活動はいばらの道になってしまう、と木松悪斗は危惧していた。だって、この二社を避けながら経済活動をしようにもいつかはどこかでこの二社とぶつかってしまう(それくらい二社の影響力は強い)ことが予想できたし、二社の絶大な影響力、その二社から完全取引禁止により木松悪斗とその投資グループの信用は地に堕ちてしまうのは目に見えていたから。だって、日本の経済は信用によって成り立っており、この二社とは完全に取引禁止されているのであれば、それすなわち、この二社は木松悪斗とその投資グループを信用していない、という見方をされてもおかしくない、のだから。なので、もし、木松悪斗とその投資グループが他者から出資金を募ったり、自分たちの資金をもとにある企業に対しある案件を提示したり契約を結ぶ、もしくは、その企業を買収しようとしても、この二社の信用がない、それすなわち、木松悪斗とその投資グループは信用がない、ということとなり、それによってそれらがことごとく失敗に終わる、というわけである。

 また、静岡にある企業・自治体などに対し圧力をかけることができないのであれば、それすなわち、木松悪斗とその投資グループが静岡にある企業に投資をしているだけ、といってもさしつかえなかった。その企業の株をたくさん持つということは株主としてその企業に対する影響力を持つ、ことを意味しており、その企業が発行している株全体に対する持っている株の比率でその影響力が変わってしまうので、その比率が高いほどその企業に対する影響力は絶大になっていく、いや、その企業を支配できるのである。だが、木松悪斗とその投資グループは沼田・小原家によってその影響力の行使を封じ込まれた、いや、その影響力を無効化されたのである。なので、木松悪斗とその投資グループが持つ静岡にある企業の株は株主としての権利が封じ込まれた、ただの投資をしていることを示す紙切れになってしまったのである。



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ラブライブ!RSBP 第12話

 そんな危機的状況に陥った木松悪斗とその投資グループであったが、そのトップである木松悪斗はその状況に対し3つの施策を行うことにした。

 まず1つ目に木松悪斗自ら先頭に立って投資グループを引っ張っていく、いや、今以上に投資グループに注力することにしたのである。この2か月間、木松悪斗は静真本校・浦の星分校統合問題において自分を裏切った(と木松悪斗が勝手に思っている)小原家、浦の星に復讐するため、一度決めた統合を白紙に戻そうとするとともに統合実現に向けて動いていた月たち静真高校生徒会、そして、Aqoursと対立していたので、月たちとの抗争にかける時間が多かった。それくらい、木松悪斗はこの2か月ものあいだ、本業である投資の仕事より静真に注力していたのだ。そのため、木松悪斗とその投資グループはさらなる苦境に立たされたのである。さらに、そこにきて月たちとの抗争に負けるとともに、小原家、沼田から罰という名の制裁を食らった。このままだといずれは潰れてしまう、そう思った木松悪斗は自ら先頭に立ってこの投資グループを切り盛りすることでこの危機的状況を打破しようと狙ったのである。

 そして、2つ目は無駄の削減であった。いくら木松悪斗が一生懸命切り盛りしたところで無駄があっては労力の無駄である。なので、木松悪斗は無駄なものを切り捨てることにした。まずは人員の削減。これまではたくさんの案件を処理するために人員を増やしてきた。だが、それが危機的状況を迎えた今、無駄な人員となってしまったのだ。そのため、木松悪斗は聖域なき人員削減を行った。それは猪波が行ってきた(買収した企業の)コストカットみたいなものだった。それもなんの理由をつけす、ただ、木松悪斗の逆鱗に触れた、などといった理不尽な理由での解雇がほとんどだった。むろん、これは労働基準法に違反してしまう。それでも木松悪斗はそんなもの無視してまで自分の投資グループに勤めていた人たちの多くを解雇したのである。ただ、そのなかにはActシステムのシステムエンジニアも入っており、これがのちに大変なことを引き起こすのですがね・・・。

 また、木松悪斗にとって紙くず同然となってしまった静岡にある企業の株を大量に売却した。木松悪斗にとってこの株は持っていても仕方がない、むしろ、それを大量に売却することで当面の資金を確保するとともにその企業の信用をなくすことで間接的に自分たちに制裁をくわえた沼田・小原家の信用をなくそうとした(その企業の信用をなくしたのは木松悪斗たちに制裁をくわえたせいであると暗に示そうとしていた)のである。だが、その木松悪斗の企みは沼田・小原家によって潰された。木松悪斗たちが大量に売却した株のほどんどを沼田・小原家が関連会社を通じて購入したのである、それも木松悪斗が提示した金額よりもちょっと少ない額で。これにより、静岡にある企業は混乱せずに済み、逆にその混乱を防いでくれた沼田・小原家を称賛しただけでなく、静岡における沼田・小原家の影響力が強くなったのである。逆に、木松悪斗は大量の株を売却したことで当面の資金んを確保したものの、思っていたほどの資金が集まらなかったばかりか静岡や沼津に置ける権力そのものを失う結果となってしまった。

 だが、このとき、人員整理、無駄の削減、という名のもと、この危機的状況を作った張本人、裏美を罰してしまう。この危機的状況を作った原因、それは裏美がご主人である木松悪斗に黙って沼田から禁止されていたこと、月たちやAqoursへの妨害を行っていたから、だった。むろん、最後は木松悪斗と

その娘の旺夏もグルになって裏美に加勢したのだが、その自分の行いすら無視し、月たちとの抗争に負けた全責任を裏美に押し付けたのである。これにより木松悪斗の右腕だった裏美は解雇・・・まではいかなくても投資グループにおける全ての職を外されただの一兵卒まで落とされてしまった。

 ただ、これには木松悪斗にとって、ある意味、誤算であった。まず、木松悪斗の重要な情報源の1つであった裏美とその奥さんの人脈を失った、ということである。名家の出である2人がもつ人脈は財政界においてかなり広がっていた。その人脈を使っての誰も知らないような裏情報はときによっては大企業の買収合戦に打ち勝つためのキーにもなっていた。だが、それを失ったことで木松悪斗はその裏情報を手に入れることができなくなり、大型案件の買収合戦に遅れをとるようになっていった。また、裏美はこれまで木松悪斗に忠義を感じていた、いや、木松悪斗を敬っていた。その木松悪斗から屈辱ともいえる仕打ちを受けたことにより、その高い忠誠心は恨みへと変貌した。これにより木松悪斗は取返しのつかないことをするのだが、それについてはまた今度・・・。

 そして、3つ目はもしかしたらの対処だった。それは延長戦が行われたとき、つまり、木松悪斗が沼田・小原家から制裁を受けた日の翌日のことだった。突然、猪波は木松悪斗に呼ばれては木松悪斗から直々にこうお願いされたのである。

「猪波、大変申し訳ないが大至急函館へと飛んでは私が買収したディスカウントショップの会社を経営してくれないか」

この木松悪斗の言葉に、猪波、

「えっ、もしかして、木松悪斗様、私を辞めさせるつもりですか・・・」

と絶望に満ちた表情をしながらそう答えると、木松悪斗、

「いや、裏美みたいに猪波を罰するつもりはない」

と答えると猪波はほっとするとともに木松悪斗に対し、

「では、なんでこの私にその命令をするのですか?」

と、木松悪斗に対しこの命令をした理由を尋ねてみた。すると、木松悪斗、

「猪波、実はな・・・」

とその理由を答えてくれた。木松悪斗曰く、「苦境に立たされている木松悪斗とその投資グループは沼田・小原家の制裁により組織存亡の危機に陥ってしまった。自分尾この危機的状況に対しあらゆる手段を用いてでもこの投資グループを存続させようと思っているが、もしかすると、この投資グループ自体破産、つまり、消滅してしまうかもしれない。でも、木松悪斗自身としてはたとえそうなったとしてもいつかは再起したいと思っている。そのため、自分の投資グループが買収した函館のディスカウントショップの会社を投資グループから切り離して独立させることにした。これにより、たとえ投資グループが潰れてもその会社は存続するのでもしものときが起きればその会社を用いて再起を果たす計画である。とはいえ、そのディスカウントショップの会社が潰れたらもともこうもない。そこで、この投資グループで随一の経営の能力を持つ猪波が社長としてその会社を経営することでもしかのときのために保険として機能し続けてほしい」とのことだった。

 この木松悪斗の言葉に、猪波、

「木松悪斗様、わかりました。この私、猪波、木松悪斗様のためにその会社に出向き、もしものために備えようと思います」

と木松悪斗に忠義を示した。

 だが、このとき、木松悪斗と猪波にはある問題を抱えていた。そう、猪波のおばあさまである。なにか猪波が行動を起こせば必ず猪波のおばあさまがいつも邪魔してくる。これにより、いつも猪波の行動は失敗に終わってしまうのだが、今回も木松悪斗と猪波の行動の邪魔をしてくることが予想された。

 ところが天は木松悪斗と猪波に味方した。木松悪斗が猪波に命令してから数日後、猪波のおばあさまが急死したのだ。その原因はわからなかったものの邪魔である猪波のおばあさまがいなくなったことで猪波は木松悪斗の命令、函館にあるディスカウントショップの会社の社長として経営するため、一家総出で函館へと移り住むことができた。こうして、猪波は木松悪斗のために、新天地函館、で一社長として頑張るのだが、その話についてはまたの機会に話すことにしよう。

 とはいえ、ここでも弊害がのちに起きてしまった。右腕である恨みを失ったことに続いて左腕だった猪波を失ったことで木松悪斗の投資グループの運営に支障をきざすこととなった。なぜなら、猪波ほどの能力のある者が木松悪斗率いる投資グループにはほかにいなかったのである。猪波は、通常、Actシステムが集めた情報を精査しながら正しい情報のみを集め、それを木松悪斗に渡していた。それにより、木松悪斗はより効率的にそれも自分たちにとって優位になるように投資を進めることができた。だが、それをする人を失ったことにより、木松悪斗のもとには真意がわからないような情報も来るようになってしまった。むろん、これではいくら木松悪斗がかなり有能だとしても今までみたいな効率的な投資をすることができないのは誰から見ても明らかであった。また、経営の才がある猪波を失ったことでこれまで買収した企業の経営が成り立たなくてしまったのである。これにより、自分たちの利益を生み出す前にその企業は倒産してしまう、そんなことがたくさん起きてしまった。こうなってしまうといくら木松悪斗がその企業を買収したとしてもすぐに潰れてしまう、その分、投資したお金がパーになってしまう、いや、その分、木松悪斗とその投資グループにとって大きな損失を出してしまったのだ。また、そのことをその企業は危惧してしまい木松悪斗の買収にNoを突きつけるところまで出てきてしまった。

 こうして、木松悪斗の行った立て直しは失敗の方向へと進もうとしていたのだが、その失敗を木松悪斗自身は認めることなく、逆に成功している、と断言してしまった。それにより、木松悪斗とその投資グループは少しずつ転落へと進もうとしていた・・・。

 

 ところで、月との抗争に敗れて以降、静真では、木松悪斗、なんか行動を起こそうしたのか。いや、なにもしなかった、というかできなかったのだ。なぜなら、AqoursとSaint Snowの本気の戦い、ラブライブ!延長戦、その戦いを映した映像は沼田によって「部活動とは楽しむことが大事」という沼田からの手紙とともに静真の全校生徒とその保護者たちに向けて一斉メール発信されたことでこれまでの(木松悪斗によって植え付けられていた)「勝利こそすべて」、ではなく、「部活とは楽しむことがすべて」「みんなと楽しむことが大事」、それこそ部活において大事である、そう静真の生徒とその保護者たちは考えるようになったのである。のと同時に、月と沼田によって木松悪斗が論破された、あの延長戦のステージを賭けた月と木松悪斗の最終決戦のときの映像も一緒にそのメールに添付されていたのだ。その映像に映る木松悪斗の真の姿を静真の生徒の保護者たちは見てしまったため、木松悪斗はその保護者たちの人望すら失ってしまった。そのため、保護者たちから木松悪斗の部活動保護者会会長解任の動議が出される事態にまで発展してしまう。ただ、木松悪斗はその動議に対して自分のが持ちうる権力全てを行使してなんとか阻止したものの、これにより静真における木松悪斗の権力も地に落ちようとしている、そのことを示すものとなってしまった。

 だが、ここにきて、木松悪斗に救世主が現れた。それは木松悪斗が誇る、木松悪斗と同じく静真の部活動において(部活動連合会の会長として)トップに君臨していた旺夏・・・ではなく、いつも失敗作として「役立たず」「ごく潰し」といつも父と姉から貶し続けられていた木松悪斗の次女、桜花であった。それはあのラブライブ!延長戦から数日後、突然、桜花が自分の父である木松悪斗に対してこうお願いしてきたのが始まりだった。

「お父様、私にあのにっくきAqoursを潰す大役を任せてもらえませんか」



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ラブライブ!RSBP 第13話

 では、なぜ、桜花はそんなことをいつも自分のことを貶している自分の父親に対してそう言ってきたのか。それはこの桜花の思いからだった。

(私が得意としている音楽でもってお父様の天敵であるAqoursを倒せばきっと私のことをお父様は認めてくれるはず・・・)

そう、桜花は自分の得意とする音楽でもって木松悪斗の天敵であるAqoursを倒すことで自分の父親である木松悪斗から認めてもらいたい、そんな桜花の思いからの行動だったのだ。桜花は音楽の才能があった。だが、それを桜花の父親、木松悪斗は認めてくれなかった。いや、完全に拒否したうえで長女の旺夏のように自分の役に立つように強要してきたのである。だが、桜花は音楽以外の才能を姉の旺夏ぐらいのところまで伸ばすことができなかった(と父の木松悪斗はそう判断した)。それによって父の木松悪斗は桜花のことを「無能」と決めつけては「役立たず」「ごく潰し」といつも桜花のことを貶し続けたのである。いや、自分の父親だけでなく姉の旺夏も父と同じことを妹の桜花に言っては貶し続けたのである。こうして桜花は自分のことを卑屈に考えるようになり、「私なんて生きる価値なんてない」「もう死にたい」と考えるようになったのだ。ただ、それでも桜花は自分の父親のことを考えては、

「いつかはお父様から認めてもらいたい・・・。そのためにもお父様の役に立たないと・・・」

と思うようになっていった。たとえ自分の父親からいつも貶されているとはいえ、これまで木松悪斗は桜花からみれば自分の父親である。なおんで、いつも貶されている状況が続いてもいつかは自分のことを父親から認めてもらえればきっとこの状況から脱却できる、そのためにも自分の父親の役に立たないといけない・・・、そんな絶望のなかにある一筋の光を必死に追い求めようとしていた・・・。

 だが、自分の父親や姉から貶され初めてから、長い間、1度もその機会が訪れることはなかった。むしろ、自分の父親と姉からいつも貶された、そのたびごとに桜花は心のなかで、

(やっぱり私は「役立たず」「ごく潰し」なんだ・・・。もう生きるの、やだよ・・・)

と自分のことを卑下するだけでなくこれ以上いきるのが嫌になってしまった・・・。

 そんな桜花にとって苦痛以上の日々を長い間暮らしていた矢先、ついに桜花が自分の父である木松悪斗のために役に立つ日が訪れた。それは桜花が父からの命令で姉の旺夏が通う静真に入学することが決まった3月の下旬のころだった。突然、桜花のもとにこんな情報がもたらされた。

「えっ、お父様(木松悪斗)が一女子高生に敗れた・・・」

それは桜花にとってあまりに衝撃的な情報であった。父の木松悪斗の信条は「勝利こそすべて」、その信条を守るがごとく木松悪斗はどんな手を使ってでも「勝利」を追い求めようとしていた。ところが、そんな木松悪斗がただの一女子高生に敗れた、というのだ。木松悪斗はこれでも日本有数の投資グループの代表を務めるぐらいすごい実力を有している。だが、そんな木松悪斗がただの女子高生に敗れるなんて前代未聞であった。

 そんなわけで、桜花、少し気になってその情報の詳しい内容を調べることにした。そして、2時間後・・・、

(お父様を打ち負かした相手・・・、それが渡辺月静真高校生徒会長とAqours・・・)(桜花)

と、桜花、ついに父木松悪斗を打ち負かせた相手が月とAqoursであることがわかった。また、父木松悪斗と月・Aqoursとの戦いの内容についてもわかった。なんと、父の木松悪斗は論戦で戦い、静真の影の神である沼田の裁量で負けた、というのだ。これには、桜花、さらにびっくりする。

(まさか、あのお父様が論戦で負けるなんて・・・)

まぁ、班がびっくりするのも無理ではなかった。木松悪斗はどんな手でも「勝利」を追い求める。むろん、それがたとえ論戦になったとしてもだ。なので、論戦になったとき、木松悪斗はどんな相手でも威圧的な態度で噛み殺そうとする目をする。さらに威圧的な口調で相手を攻める。こうすればどんな論戦でも木松悪斗は勝つことができる、いや、これこそ木松悪斗の勝ちパターンであった。だが、今回、その勝ちパターンで勝負した父の木松悪斗が月に負けたのであればそれは木松悪斗にとって自分のプライドがずたずたに切り裂かれた、いや、木松悪斗にとって由々しき事態が起きた、ということになる。

 そんな由々しき事態となった父木松悪斗のことを考えたのか桜花はこんなことを考えてしまう。

(お父様が負けるなんて・・・。もしかすると、お父様、かなりピンチではないだろうか・・・。でも、私はただの役立たず・・・。私がどう動いたとしても状況は変わらない・・・。やっぱり私は役立たずなんだ・・・)

そう、父の木松悪斗にとって、現在、かなりのピンチの状態である。なので、ここは自分が父のためになにかをしてあげたい、でも、自分が動いてもなにもできない、役立たず・・・、そんな卑下を桜花はいつもの通りにやってしまたのだ。

 だが、そんな父の木松悪斗を打ち負かした相手である月とAqoursのことが気になったのか、桜花、

(でも、そんなお父様を打ち負かした相手、渡辺月とAqoursのことがちょっと気になる・・・。それについて調べてみよう・・・)

と考えるようになり、月とAqoursについて調べることにした。

 そして、1時間後・・・、

(渡辺月についてはそこまで詳しい情報がなかった・・・)(桜花)

月についての情報はあまりなかった。月は確かに静真高校の生徒会長である。だが、社会全体で見た場合、たとえ月がそんな役職についていたとしてもただの日本にある高校の一生徒会長というだけである。そう考えれば月の情報が少なく、詳しい情報がないのも仕方のないことだった・・・。

 一方、Aqoursはというと・・・、

(それに対して、Aqoursの情報があまりに多すぎる・・・。どの情報をみればいいかわからない・・・)(桜花)

そう、Aqoursの情報は逆に多すぎてどの情報をみればいいのかわからなくなったのだ、桜花からすれば・・・。Aqoursの場合、ラブライブ!に優勝したことやローマ・スペイン広場での運命のライブを大成功に収めたこともあり、日本国内だけでなく世界中にもその名が知られていた。なので、Aqoursについての情報は桜花が混乱するほど膨大であった。

 そんなわけでして、桜花、Aqoursについてまとめサイトで調べてみることにした。

「え~、なんなに、Aqours・・・、スクールアイドルグループのひとつ・・・。ラブライブ!冬季大会で優勝・・・。へぇ~」

と相槌を打ちながらまとめサイトを読んでいく・・・のだが、ここである問題にぶち当たる。それは・・・、

「スクールアイドル?ラブライブ!?なにそれ?」

そう、桜花の知らない単語が出てきたのだ。というのも、桜花、父の木松悪斗によって音楽に関する情報を遮断されていたのだ。これも父である木松悪斗が桜花を自分の役に立つように育てるための処置だったのだが、それにより、音楽と関わりの深い「スクールアイドル」「ラブライブ!」という単語の意味を桜花は知らなかったのだ。

 そんなわけでして、桜花、スクールアイドルとラブライブ!について調べることに。すすと、

「へぇ~、スクールアイドルって高校生なら誰れもなれるアイドル、ってことか・・・。それって素人でもなれるってことだよね・・・。それに、ラブライブ!?そのスクールアイドルの甲子園、なんだ・・・。でも、素人ばかりが集まって戦うなんてレベルが低いんだ・・・」(桜花)

なんと、桜花、「スクールアイドル」の「誰でもなれる」というところを「素人もなれる」と勝手に解釈してしまったためか、「スクールアイドル」のことを「素人の集団」、「ラブライブ!]」のことを「そんな素人集団の戦い」と理解してしまった!!まぁ、たしかに、スクールアイドルは高校生なら誰でもなれるものだが、そのレベルについては素人レベルからプロレベルと幅が広い、いや、ほとんどのスクールアイドルはそのプロのレベルになるように、たとえば、理亜たちのSaint Snowみたいにプロも真っ青になるくらいのレベルになるように日々精進しているし、そんなスクールアイドルにとって1つの目標となるのが、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!での優勝である。ただ、桜花は、「誰でもなれる」、ただその一言でスクールアイドルは素人の集団という認識を持ってしまった・・・。

 とはいえ、桜花、スクールアイドルについてちょっと気になったらしく・・・、

(でも、スクールアイドルはアイドルを名乗っているのだから音楽に関係あるだろし、ちょっと気にある・・・)

と、「アイドル」という文言が気になるのか、それとも、アイドルつながりで自分の好きな音楽と関係あることが気になるのか、桜花、いつもなら父木松悪斗の命令で見ることが出来ない動画サイトを勝手に開いては「スクールアイドル」という単語でもって検索をかけてみることに。すると、数多くのスクールアイドルの動画がヒットした。その1つを桜花が再生してみると・・・、

「こ、これが、スクールアイドル・・・」

と桜花が驚くほど力強くパフォーマンスするスクールアイドルの姿があった・・・が、それと同時に、桜花、こんなことまで考えてしまう。

(でも、笑いながらダンスをして歌う、そんなもの、この私でもできる!!)

そう、桜花はスクールアイドルの動画を見て、「これなら自分にもできる」と思ってしまったのだ。まぁ、普通の人から見たら「笑いながらパフォーマンスをする」なんて誰でもできると思ってしまうものだが、1度でもスクールアイドルを志したことがある人からみたらそれができるまでにはかなりの労力を有するものだと自覚するものである。それくらい、「笑いながらパフォーマンスをする」という行為は並大抵の努力ではできない、いわゆる、スクールアイドルにとって究極のかたちの1つ、といえるのだが、これまで、スクールアイドル、いや、アイドルについて見ることも知ることも許されなかった桜花がスクールアイドルの動画を見て、「誰でもできる」、と高をくくっても仕方がないことかもしれなかった・・・。

 とはいえ、父の木松悪斗は月とスクールアイドルであるAqoursに負けた、という事実は変えようがないことだったので、桜花はこの負けの事実について改めてこう考えてしまう。

(でも、お父様は月という生徒会長とAqoursという素人ばかりのスクールアイドルの集団に負けた・・・ということは・・・、お父様、この月とAqoursに対して苦しい思いを持っているはず・・・。そして、いつかは月とAqoursに対して復讐したいと思っているはず・・・)

そう、木松悪斗は、「勝利することこそすべて」、それをいつも体現しないと気が済まないたちであった。なので、一度敗れた相手がいるのなら木松悪斗はその相手から勝利をもぎ取るまで何度でも戦う、いや、負けたことが気に食わないのか、その相手に対し復讐する、それが木松悪斗であった。で、今回はたかが一高校の生徒会長である月と素人のスクールアイドル集団であるAqours(二つともこのときの桜花の評)に負けたのだから、静真のトップ、いや、日本有数の投資グループを率いている木松悪斗からすれば「自分より格段に劣っている相手に負けたことでお父様(木松悪斗)のプライドはずたずたに引き裂かれたに違いない」、と思っているに違いない、なので、いつかは月とAqours、この木松悪斗より劣っている相手に復讐したい、と桜花は考えたのである。

 そして、桜花はついにこんなことまで考えるようになった。

(お父様は月とAqoursに復讐をする。それってもしかすると、私にとってお父様から認められるチャンスじゃないかしら。月についてはこの私では太刀打ちできない。だけど、Aqoursとなら、私、戦える気がする!!だって、Aqoursはスクールアイドルを名乗っている。そのスクールアイドルはアイドルの一種。さらに、アイドルは音楽にもつながっている・・・。音楽、それは私にとって唯一の才能だから・・・。それに、スクールアイドルっていうのは単なるアイドルみたいなことをするだけの素人集団。そんな素人集団となら、私、互角以上に戦えるかも!!いや、私、Aqoursに勝てるはず!!)

そう、月と戦うのは無理だけどAqoursとなら戦える、父の復讐のために戦える、そうすることでようやく父の木松悪斗から認められる、そんなチャンスが訪れた、そう桜花は考えたのである。桜花からすればAqoursはただの素人集団、ただのアイドルみたいなことをするだけの素人集団、なので、ピカイチの音楽の才能がある自分ならそんなAqoursと互角、いや、それ以上に戦える、Aqoursに勝つことができる、桜花はそう思ったのかもしれない。いや、これこそ自分にとって父親から認められる最大のチャンスであると自覚したのだろう、そう桜花は確信したのかもしれない。だが、このときの桜花は甘く見過ぎていた、スクールアイドルというのはただの素人集団ではない、むしろ、プロのアイドルですら脱帽するくらいのレベルの高いものであると、そして、スクールアイドルというのは木松悪斗の信条、「勝利こそすべて」、その対極にあるもの、「楽しむことがすべて」、その考えのもと、「楽しむ⇔好きになる」、その無限のサイクルによって無限のパワーを引き出すことができる存在であることを、その頂点に君臨しているのが桜花がただの素人集団と見下したAqoursであることを・・・。

 

 それから数日後、桜花は1つの動画を手に入れた。それは「ラブライブ!延長戦」というタイトルがつけれらた動画だった。桜花はその動画を手に入れるとその動画の説明文のところを読んでみる。

「え~と、なになに、「この動画は「ラブライブ!延長戦を映した動画です。ラブライブ!で優勝したAqoursとAqoursと同等の力をもつSaint Snowの戦いを描いております。ぜひとも見てください」と・・・」

そう、この動画はあのラブライブ!延長戦の動画であった。実はは、この動画、沼田が静真に通う生徒全員に送った動画、それを勝手に動画サイトにアップロードしたものだった。ただ、この動画、それは私的とはいえ、ラブライブ!で優勝したAqoursとそのAqoursと動との力をもつ北の雄、Saint Snowの全力全開の、本気中の本気のバトル、それはまさに、ライブイブ!延長戦、といっても差支えない、それくらい迫力に満ちた動画となっていた。で、この動画がもとで、Aqours、そして、Saint Snow、その高レベルの戦い、「ラブライブ!決勝延長戦」、それを世間一般に広めたものとなってしまった。しまいには、ラブライブ!運営委員会が、私的な戦い、とはい、この戦いは素晴らしいものである、と認めてしまうほどだった。

 ただ、桜花のAqoursに対する、いや、Aqoursを含めた「スクールアイドル」の認識は「アイドルみたいなことをする素人集団」だったので、この動画を見て、桜花、

「ふ~ん、やっぱり、スクールアイドル、いや、Aqoursってただの素人集団だね。これなら音楽の才能がある私なら一気に倒せえるね」

と、このラブライブ!延長戦の動画を見てもAqoursのことをただの素人集団としか見ていなかった、いや、見下していた。たしかに、この動画に映るAqoursのパフォーマンスは静真の生徒や保護者たちの考えががらりと変わるくらい、それくらい迫力のある、心打たれるものだった。だが、自分にはピカイチの音楽の才能がある、そんな自負のある桜花から見ればAqoursのパフォーマンスはただの素人のパフォーマンス、すごくよく映し出されているのは映像加工のせい、という認識だったのかもしれない。いや、それ以上に、

「それに、こんなパフォーマンスならこの私にもできる!!だって、笑いながらパフォーマンスするって誰でもできることだから!!」

と、このAqoursのパフォーマンスするなら自分でも簡単にできる、いや、誰でもできる、と高をくくっていた。何度も言うが、笑いながらパフォーマンスする、というのはとても簡単にできるものではない、いや、普通の人はおろか少しスクールアイドルをかじっただけではできない、いや、いくらきつい練習をして本番にそのパフォーマンスをしろと言われても本番のプレッシャーのあまりそのパフォーマンスなんてできない、それくらいとても高度なパフォーマンスなのだ。ただ、桜花からすれば、いや、、そのことをしたことがない桜花からすれば、ただ笑いながらパフォーマンスすればいい、ただそれだけのことをすればいい、そう簡単に考えたのかもしれない。なので、桜花はこんなことまで言いだしてしまう。

「誰でもできる、あのパフォーマンス、それに私の音楽の才能があれば、Aqoursみたいな素人集団、簡単にひとひねりだね!!私にだって簡単に勝てる!!簡単にAqoursに復讐を果たせる!!それに、Aqoursに勝つことでようやくお父様のお役に立つことができる!!いや、こんな私をお父様は認めてくれる!!まさに一石二鳥!!」

そう、自分の音楽の才能があればAqoursに簡単に勝てる、復讐を果たせる、それにより父の木松悪斗からようやく認めてもらえる、そう桜花は簡単に考えてしまったのだ・・・。

 

 そして、その日の夜、自宅に帰宅した木松悪斗は玄関に待っていた桜花に対し、

「この「ごく潰し」が、私になにか用があるのか?」

と怒鳴るように桜花に尋ねると、桜花、もの落ちせずに父木松悪斗に対しこうお願いしてきた。

「お父様、私にあのにっくきAqoursを潰す大役を任せてもらえませんか」

自分の娘である、それもいつも「失敗作」として「役立たず」「ごく潰し」と言ってきた、そんな桜花からの突然のお願い、これには、木松悪斗、

「Aqoursを倒すとはな・・・」

と桜花の言葉を反芻するとともに、

(あのAqoursか・・・。たしかにあのAqoursは私にとってにっくき相手だ。こちらが再起不能にしたのに復活を果たし私に歯向かった。結果、私は負けてこちら側が危機的状況に陥るくらいの罰を食らってしまった・・・。そう考えるだけではらわたが煮えくり返るわ!!私としてもあの月とAqoursの小童集団になんとか再起不能になるまで叩き潰したいものだ!!)

とAqoursのことを思いだしてはなんとか再起不能になるまで叩き潰したい、そんな思いを感じていた。木松悪斗にとって月とAqoursは今度こそ再起不能にまで叩き潰したい相手であった。月とAqoursは、一度、自分たちの手で叩き潰したもののものの見事に復活、さらに、木松悪斗側を危機的状況に陥るくらいの大ダメージを食らった、それくらいの敗北を木松悪斗は喫したのだ。なので、月とAqoursのことを木松悪斗はとてもにくく感じていた。今度こそ、再起不能にまで叩き潰すつもりでいた。

 ところが、ここにきて、自分の、いや、自分に対して一度も役に立ったことがない、それくらいごく潰しの娘である桜花から「そのAqoursを潰す」という言葉を聞いた瞬間、木松悪斗、

(とはいえ、この私にあの役立たずの桜花がこう言ってくるのであればなにか勝算があるかもしれないな)

と、桜花にそれ相応の勝算がある、と思ってか、桜花に対しあることを尋ねた。

「ところで、ごく潰し、なにかAqoursに勝つ勝算はあるのか?」

 これには、桜花、こんなことを自信満々に答えてしまう。

「勝算ならあります!!あのAqoursのパフォーマンスなんか誰にでもできます!!もちろん、この私にもです!!それに加えて、私の音楽の才能さえあればAqoursに勝つことなんてちょちょいのちょいです!!」

この自信満々の桜花の言葉に、木松悪斗、こう考えてしまう。

(ほう、Aqoursのパフォーマンスを素人レベル、誰でもできると豪語するとはな!!それに、桜花が持つ音楽の才能、この私からすればなんの役にも立たないと思っていたが、スクールアイドルと名乗っている、音楽関連に生きる、あのAqoursと戦うのであれば役に立つかもしれないな)

そう、Aqoursのパフォーマンスを素人レベルだと桜花は評している。そのパフォーマンスなら桜花にもできる、いや、それ以上に、これまで役に立たないと思っていた桜花の音楽の才能がここにきて対Aqoursとの戦いに立つのでは、そう木松悪斗は思ったのである。

 そして、ここにきて、木松悪斗、こんなことまで考えてしまう。

(それに、これから先、私は静真のところまで手がまわらないかもしれない。だが、自分としてはあの月とAqours、そして、沼田に小原家に復讐を果たしたい。なので、そのうちの1つ、Aqoursを桜花が倒してくれるのであれば私としては嬉しい限りだ)

木松悪斗からすれば自分を危機的状況に陥れた月とAqours、そして、沼田に小原家に復讐を果たしたい、だが、今は危機的状況に陥っている自分の投資グループの立て直しでせいいっぱい、静真のことまで手が回らない状況、なので、桜花の申し出は復讐したい相手の1つ、Aqours、それに対する復讐を果たすことができる、自分にとって嬉しい限りである、と考えたのだ。

 そんなわけでして、木松悪斗、桜花に対してこう命令した。

「このごくつぶし、いや、桜花、お前の願い、聞き入れよう。桜花、いいか、あのにっくきAqoursを再起不能にするまで叩き潰すのだ!!」

これには、桜花、

(これでお父様からようやく認められる。それに、久しぶりに、私のこと、桜花って呼んでくれた。嬉しい!!)

と、これでようやく父木松悪斗に認められる、いや、それどころか、いつも「役立たず」「ごく潰し」と言われ続けていたのに、久しぶりに自分の名前「桜花」と呼んでくれたことに嬉しさを感じていた。そのためか、桜花、うれしそうに、

「はい、わかりました。この桜花、お父様のためにもあのにっくきAqoursを叩き潰してやります!!」

と返事をした。



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ラブライブ!RSBP 第14話

(桜花)

「その後、私は私が集めた仲間たちとともにスクールアイドルグループを結成、圧倒的な強さでAqoursを叩き潰して勝利!!こうして、お父様に認められた私は仲間たちと一緒に花の女子高生ライフを謳歌するのであった。

 

めでたし めでたし

 

はい、エンディング!!

 

ED 「Red Sun」

 

「太陽のように熱く燃え上がれ!!・・・」

 

LOVE LIVE!Red Sun Blue Planet

 

完!!

 

・・・・・・

 

・・・」

 

ピピ ピピ ピピ

 

「う~、眠たい・・・」

そう桜花が言うと眠たい目をこすりながら起きてきた。そして、目覚ましを止めると、桜花、

「う~、せっかくあのにっくきAqoursを倒すところだったのに・・・」

と残念そうに言う。どうやら、この物語のラスト・・・ではなく、たんなる花の夢オチだたようだ。ただ、この夢オチに、桜花、

(でも、これって、正夢、だよね!!いや、これこそ、私にとって神が与えてくれた輝かしい運命への思し召しなんだよね!!)

となんだかうれしそうだった。これまでは父木松悪斗と姉旺夏から虐げられる毎日を暮らしてきた桜花、だったが、そんな生活からついに抜け出せる、父からようやく認めてもらえる、そんな夢を見たのだから、桜花からみたら、本当に正夢、そんな期待ができる、そう思っても仕方がなかった・・・。

 ただ、桜花が見た夢、それが本当に正夢になるのだろうか。もしかすると、逆夢、ではないか、なんてことにならないだろうか。だって、逆夢は大きく成功した夢を見るとその反対のことになりやすい、なんてことをよくいうから・・・。

 

 とはいえ、気分のいい夢を見た桜花は意気揚々とスクールアイドルになるための練習を・・・することができなかった。なぜなら・・・、

(ところで、スクールアイドルになってAqoursを叩き潰す、って豪語したけど、最初、どんなことをすればいいわけ?)

なんと、桜花、父に対して「Aqoursを倒す」と豪語していたのにまず最初からつまづいてしまったようだ。というのも、桜花、スクールアイドルの動画を見ては「音楽の才能がある私なら簡単にできる」と思っていたのだが、いざ、スクールアイドルを始める、となると、桜花、

(でも、どんな練習をすればいいの?まずは歌の練習?それとも、ダンス?)

と最初になにの練習をすればいいのかわからなくなってしまった。そりゃそうだろ!!スクールアイドルは1日にしてならず!!、である。桜花はそんなことを考えずにスクールアイドルになろう、としているのだろう。その点はちょっと浅はかだった、としかいいえないのかもしれない・・・。

 そんなわけで、桜花、お昼になってようやくスクールアイドルの練習についてネットで調べることに。でも・・・、

「う~、情報が多すぎてなにをやったらいいのかわからない・・・」

と、桜花、匙を投げてしまった・・・。というのも、ラブライブ!の出場チーム数が5千を超えるほどスクールアイドルになりたい高校生は拡大の一途をたどっていた。そんな女子高生のためにネットではスクールアイドルの練習について書かれている記事があるのだが、スクールアイドルが大人気、ということもあり、その練習についての記事を検索すると何百万もの検索結果が出てくるのだ。ただ、そのなかにはちゃんとしたものもあればちょっと怪しいものがあったりと、玉石混交、なので、桜花、どの記事を読めばいいのか、いや、あまりに多すぎてどの記事を選べばいいのかわからない状況に・・・。

 それならばと、桜花、今度は本屋にいってスクールアイドルの本を探すことに・・・。でも、

(う~ん、どの本がいいのかわからない・・・。う~、本。多すぎ・・・)

と、桜花、頭を悩ます。なんと、あまりのスクールアイドル人気でネットと同様に本もたくさんありすぎたのだ。なので、桜花、

(う~、スクールアイドルについて調べるだけで1日が経ってしまった・・・。でも、なにをすればいいのかわからなかった・・・)

と、スクールアイドルを調べるだけで1日が過ぎていくのになにもわからなかったことに桜花はがっかりしてしまった・・・。

 

 そんなわけでして、桜花はなにもできずに・・・、というわけではなく、桜花、その本屋でスクールアイドルの練習について書かれた本を一冊買い、それをもとに練習をすることにした・・・のだが、その本の最初のページに書いていたことについて、桜花、ついツッコんでしまう。

「えっ、「スクールアイドルは楽しむことがすべて」・・・、それって違う!!たとえスクールアイドルだとしても「勝つことがすべて」なんだ!!楽しむことは遊びと同じなんだ!!」

そう、何度言っているのかわからないが、桜花、木松悪斗の娘らしく、かなりの勝利絶対至上主義の持ち主であった。いや、親も親なら子も子である。桜花も父木松悪斗や姉旺夏と同じく「勝つことこそすべて」をモットーにしてきた。まぁ、子の育ちは親の教育の仕方が影響してくるものであり、「勝利こそすべて」という概念でできているとさしつかえない木松悪斗が娘たちに教育すればこの子たちも木松悪斗と同様に「勝利こそすべて」と普通に思ってしまうのもうなずけるものである。なので、自分のお子さんを育てるときは自分の育て方次第で子どものすべてが決まってしまうといっても過言ではない・・・のだが、それによってがちがちに考え過ぎたら今度は親のほうがダメになってしまう・・・ので、あまり考えずにのびのびと育てましょう・・・。

 という話は置いといて、桜花はその本についていつもツッコみつつもその本にそって練習を・・・したのだが、その本、どうやら、中級から上級、つまり、ラブライブ!予選突破レベルのスクールアイドル向けに作られた本だったらしく、スクールアイドル初心者である桜花はというと・・・、

「え~と、こうして、ああして、あれっ?ここってちょっとおかしくない?」

と困ってしまうほどその本に載っている練習方法について四苦八苦していた。じゃ、そんな初心者である桜花なら初心者向けの本を買えばいいではないか、なんていう声も聞こえてくると思うが、実は、桜花、父木松悪斗や姉旺夏と同じく、いっちょ前にプライドが高いのだ。なので、初心者向けの本、があったとしても、

(ふんっ、スクールアイドルは誰でもなれるんだ!!そんな初心者向けみたいな本、この私をバカにしているとしか思えない!!)(桜花)

と、桜花、初心者向けの本に向かってバカ呼ばわりしてあげく、初心者向けの本を無視してしまう、そんなことを桜花はしてしまったのである。なので、桜花があのとき買った本は中級~上級向けの本になった、ということになってしまったのである。そりゃ、初心者の桜花が四苦八苦するのもうなずける。

 それでも桜花は桜花なりに頑張っていた。いや、それ以上に、練習すればするほどに、

(よしっ!!あとはこうして、ああして、うん、できた!!)

と十分にさまになってきた。いや、スクールアイドルとしてのレベルが急上昇している、そう言い切れるほどに急成長していたのだ。実は、桜花、音楽以外の才能はない、というが、それは父の木松悪斗からみたら、というだけの話であり、実際のところは、音楽以外においても普通の人以上の才能をもっていたのである。

 では、そんな桜花が自分の父や姉から虐げられるほど音楽以外の才能がないと卑屈になっていたのか。それは、花の父である木松悪斗と姉の旺夏のレベルがあまりに高すぎて・・・、こほん・・・、父と姉から求められるレベルが高すぎた、より完璧なものを求められていたからであった。父木松悪斗は常に勝利のみを追い求めるよう桜花に強要した。それすなわち、どんな才能もより完璧であることを桜花に強要したのだ。なぜなら、常に勝利するためにはどんな相手であってもその相手を上回るものが必要、と父の木松悪斗がそう考えていたから。そのため、桜花はより完璧になろう、父から求められているレベルになってやろう、と必死になって頑張ってきたのであるが、そんな父から求められるレベルは常人のレベルよりはるかに上、プロ中のプロレベルのものだった。なので、桜花は必死に頑張っても普通の人以上の才能を桜花が持っているにしてもそれ以上のものを追い求めていた父からすれば、そんなもの、認められない、いや、(自分が追い求めていたプロ中のプロレベルに達していない)桜花なんてただのごみくず、としか認められなかったのだ。そのため、自分の求めていたレベルに達していない、そんな桜花のことを父の木松悪斗はただの「役立たず」「ごく潰し」と評しては貶していたのである。

 一方、姉の旺夏はサッカーという才能に秀でていた。いや、将来の日本代表とまで言われるくらい、(父の木松悪斗が言うところの)プロ中のプロのレベルにまでに達していたのである。なので、それ以外の才能がなくても父の木松悪斗は長女の旺夏を認めていた、いや、それ以上に、女子サッカーで勝ち続けている、そんな自分が追い求めている娘像、つねに勝ち続ける、それを体現している旺夏のことを木松悪斗は溺愛していたのである。

 でも、桜花にも音楽の才能がある、それを父の木松悪斗が認めてあげればいいのでは、とお思いの方もいると思うが、前述の通り、父の木松悪斗は音楽(特に現代音楽)のことをただのお遊びである、と常日頃からそう考えていたため、たとえ、桜花に音楽の才能があっても、その才能がプロ中のプロのレベルであったとしても、父の木松悪斗はそんな桜花なんて認めない、むしろ、音楽以外の才能を、プロ中のプロレベルにするように、常に勝ち続ける、それくらい、木松悪斗にとって理想といえる娘増、そうなるように娘の桜花に強要しているのである。なので、いくら桜花が音楽の才能があったとしても桜花のことを認めずにそれ以外の才能がない(と父の木松悪斗はそう思っている)ということで貶してくるのである。

 むろん、そんな父親から育てられた姉の旺夏もそんな桜花のことを父と同様に同じ理由で妹の桜花のことを貶し続けたのである。なので、いくら桜花が音楽以外の才能を普通の人以上だとしてもそれすら認めてくれない、そんな2人だからこそ、この2人は桜花のことをいつも貶し続けては、その都度、桜花は傷つき卑屈になっていくのである。

 ただ、今回はそんな父に対して初めてかもしれない、自分の持つ音楽の才能でもって父の木松悪斗の敵であるAqoursを倒したい、そうすることで父の役に立ちたい、認めてもらいたい、その思いで父に進言、それを父から認めてもらった、いや、自分の力だけで勝ちにいく、誰からもなにも言わず、自分の責任でもってやってやる、そんなこともあり、桜花としては初めて誰からもなにも言われずにのびのびと自分のペースでできる、それにより、今まで自分では気付かなかった桜花のほかの才能がようやく開花した、のかもしれない。

 そんなこともあり、桜花はその本にそってスクールアイドルの練習を続けることで、

(あっ、これもできた!!やっぱり、私って天才!!)

と、これまで感じることができなかった達成感を体いっぱいに感じていた・・・のだが、ここで、桜花、ある問題にぶつかってしまう。それは上級者向けの練習をしているときのことだった。その本を見て、桜花、ある疑問が浮かんだ。

(え~と、カノン?なにそれ?どういう意味?それってどうすればいいわけ?)

そう、桜花はその本に出てくる擁護について、なんの意味なのか、それってどうすればいいのか、わからなかったのだ。実は、桜花、初級どころか傷心者レベルの練習をせず、いきなり、中級、上級レベルの練習から始めたものだから基礎部分のところがあまり固まっていなかった。いや、その基礎部分が全然できていなかったのだ。ただ、それでも桜花がこれまで中級上級レベルの練習ができていたのは桜花が普通の人以上の才能をもっていたから、なのだが、それも通じないところまできてしまった・・・、桜花は壁にぶち当たった、というわけである。あっ、ちなみに、「カノン」とは、ダンス用語で「1つのステップを複数の人間で拍数をずらしながら踊る動作」のことである。

 でも、これでも、桜花、現代っ子である。すぐに「カノン」の意味を調べ、「カノン」の意味を知り、自分でもそれをやることにした・・・のだが、桜花、あることに気付いてしまう・・・。

(カノン・・・、これって複数人でするものだよね・・・。私、今、たった1人・・・。それに、それ以上に痛感した・・・、私・・・、基礎部分ができていない・・・。それってやばいことじゃないかな・・・)

そう、ようやく桜花は自分にとって足りないものが2つあることに気づいたのである。

 1つ目は基礎部分。前述の通り、これまではこれまで隠されていた桜花の才能によって中級・上級レベルの練習を続けることができた。だが、それすらつうじないところまできたのである。なので、スクールアイドルに限らず、どの分野においてでもとても大事な部分である基礎部分をどうにかしないといけない、そう桜花は痛感したのである。

 そして、もう一つは・・・、そう、仲間である。スクールアイドルは1人、つまり、ソロでもできる。だが、仲間がいれば表現の幅が広がる。そうすればソロよりもダイナミックなパフォーマンスができるのである。むろん、仲間がいれば、その分、カノンみたいな複数人が必要なダンス技術もできるし、なりより、Aqoursの「MIRACLE WAVE」で千歌以外がみせた「ドルフィン」といった高度なダンス技術を駆使してよりダイナミックにみせることができたりする。だが、今の桜花にはそんな仲間なんていない、たったひとりである。なので、1人でできることには限界がある、そのことに桜花は気づいたのである。もちろん、仲間がいれば、その分、その仲間たちとの息を合わせないと逆に悪いパフォーマンスになる、それはより高い技術を要求されるパフォーマンスになればなるほど失敗する確率も高くなる、といったハイリスクを抱えることにもつながってしまうのだが、そんなことなんて考えず、桜花、ついにこんなことまで考えてしまった・・・。

(私にも仲間が欲しい。いや、私に欠けている基礎部分を補いつつも仲間とともにより高いパフォーマンスをみせる、それくらい万全の態勢でもってAqoursに勝ちたい!!)

そう、桜花は、今、自分に足りないものを追い求めたい、そんな思いでいっぱいだったのである。



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ラブライブ!RSBP 第15話

 だが、桜花にとってその2つを補うことは並大抵のことではなかった。まずはスクールアイドルにとってとても重要となる基礎部分であるが、前述の通り、ネットにはいろんな情報が何百万件も流れている、それも玉石混交といったものである。そのなかで確実に桜花に足りない基礎部分をなんとかしてくれる、そんな情報を手に入れることは、スクールアイドルのことについてあまり知らない、それくらい、スクールアイドルのことを今でも甘くみている桜花からすればかなり難しいことだった。なので、ふたたびネットの世界でその情報を集めようとしても、桜花、

「う~ん、どのやり方をすればいいのかわからない・・・」

と、あまりの情報の多さにすぐにさじを投げてしまった・・・。

 また、仲間にしてもである。たしかに今の静真はラブライブ!延長戦でみせたSaint SnowとAqoursのものすごいパフォーマンスのおかげでスクールアイドル熱は絶大なるものになっていた。もちろん、そのなかには、「スクールアイドルになりたい」、そう言ってくる生徒もいるのかもしれない。だが、今の静真からするとそのほとんどの生徒がその延長戦でものすごいパフォーマンスをみせたAqoursのことがとても好き、と公言してくるだろう。それくらい、今の静真は、今度、静真のスクールアイドルになる(予定の)Aqoursのファンの生徒がほとんどであった。そこに桜花が「そのAqoursに打ち勝つための」スクールアイドルグループを作る、と言えばすぐにでも桜花は袋叩きにあってしまう、そんなことが容易に考えられた。なら、桜花と同じく、今度、延長戦の動画を見たことがない、そんな静真に入ってくる新入生にターゲットを絞ればいいのでは・・・、といいたいのだが、桜花はこれまで友達付き合いをする、なんてことはなかった。いや、それ以上に、あの悪玉、木松悪斗の娘、というだけで完全無視されたりいじめられたりされてきたため、桜花自身、人とのコミュニケーションが苦手、というか、人とのコミュニケーションをとること自体無理、であった。むろん、桜花、友達ともいえる友達がいないので、Aqoursの千歌・曜、みたいに幼馴染と一緒にスクールアイドルをする、なんてこともできなかった。そんなこともあり、桜花、

「仲間が欲しい。でも、これまでのこと(まわりから無視されたりいじめられてきたこと)もあって私には仲間ともいえる仲間なんていない、いや、できない・・・。いったいどうすれば・・・」

と途方に暮れるしかなかった・・・。

 

 でも、神は桜花のことを見捨てていなかった。桜花が叶えるには難しかったこの2点について叶えるチャンスを神は桜花に与えたのである。

 まず、神が桜花に叶えるチャンスを与えたのは・・・基礎部分についてであった。本に書かれていた中級上級の練習をこなしつつも依然として一番大事な基礎部分の練習について悩んでいた桜花であったが、そんな日々を過ごしていたある日、というか、新生Aqoursお披露目ライブが開催されてから2日後・・・、突然桜花のいる自室にある音が響き渡った。

ガチャン!!

 これには、桜花、

(あっ、お父様のお帰りだ!!)

とこの音が桜花の父である木松悪斗が家に帰ってきたことを知らせるものだとわかったのかsづぐに自室から飛び出し自室のある2階の階段の上から玄関をのぞいた。

 すると、木松悪斗は大声、いや、騒音レベルぐらいの叫び声をだしながらこう叫びまくっていた。

「くそっ!!なんで私が負けないといけないんだ!!なんで私の思い通りにならないんだ!!それもこれもあの古狸の沼田のせいだ!!いや、その沼田と一緒にグルになって私を追い落とそうとする小原家、それに、渡辺月生徒会長と浦の星、そして、Aqours、こいつらのせいだ!!もう許せない!!絶対に復讐してやる~!!」

実は、この日の前日、静真の生徒の保護者たちに対してあるアンケートが実施された。それは「静真本校と浦の星分校の統合について、賛成か反対か」というものだった。以前、同じようなアンケートを実施したことがあるのだが、このときは「部活に対する士気が低い浦の星の生徒が部活に対する士気が高い静真の部活に参加したら静真の部活動に悪影響がでる」という保護者の声(ただし、その声自体木松悪斗が流した偽の情報がもとになっていた)がとても強く、さらに、そこにきて、千歌たち新生Aqoursの部活動報告会でのライブ失敗、それが重なり、ほとんどの保護者たちが統合に反対していた。だが、今回は前回のアンケートとは状況ががらりと変わった。それはAqoursの完全復活によるものだった。前回のアンケート後、千歌たち新生Aqoursはイタリア旅行を介してダイヤたち3年生と合流、そこで鞠莉‘sママ(と鞠莉‘sママをそそのかした木松悪斗の側近の裏美)の横やりを経てAqoursとして完全復活、その復活によっていきおいを取り戻すと木松悪斗にとって最大の敵であった月とともにラブライブ!延長戦を実施、それが静真の生徒の保護者たちの考えを180度変えることへとつながった。

 だだ、そんな月とAqoursをアシストしたのが静真において陰の神であった沼田だった。沼田は、静真にはびこっていた考え、「勝利こそすべて」、という勝利絶対至上主義をなんとかしたいと考えていた。そこで沼田はこの延長戦を使ってその考えを吹き飛ばそうと考えたのである。ただ、いくら沼田がこう考えてもその延長戦をやる月やAqoursが本気なのかどうか心配になっていた。そこで、沼田はこの延長戦のステージとなる沼津駅絵にあるエンタメビルの「ラグーン」の屋上の使用承諾を求めて対立する月と木松悪斗に対して「部活動とはなにか」「部活動をする上で一番大事なこととは」という質問を投げかけたのである。この質問に対し、いつもの通り「勝利こそすべて」と答えた木松悪斗に対し月は「楽しむこと」と回答、結果、沼田が常日頃から「部活動とは楽しむことがすべて」ということを信条としていたため、この対決は月に軍配があがったのである。そして、このとき、沼田は月がこの延長戦に本気になっていることを確認、全力で月やAqoursのサポートをしたのである。

 いや、このとき、沼田は先の先まで考えていた。それは、この延長戦の先にある新生Aqoursお披露目ライブ、そして、静あm本校と浦の星分校の統合、であった。沼田は以前から新生Aqoursお披露目ライブの開催のためのフォローをしていkた。具体的にいうと、お披露目ライブ開催にむけて水面下で動いていた。月以外の静真高校生徒会メンバーやよいつむトリオら浦の星の生徒たちの手助けをしないようにと裏美がご主人様である木松悪斗の名をかたって沼津にあるお店、企業、自治体に対して圧力をかけていたのである。だが、それを沼田は除外(たとえ月たちの手助けをしたことで木松悪斗がそのお店・企業・自治体などをつぶそうとしても沼田が絶対に助けてやる)していたのだが、月が沼田が求めていた答えを言ったことで沼田のフォローはさらに加速していった。なんと、このお披露目ライブに参加しているお店・企業・自治体に対して最大限のバックアップを約束したのである。むろん、これには沼田なりの別の意図もあった。それは沼津全体の活性化である。ここ沼津はラブライブ!で優勝したAqoursがいる、それを使って沼津全体の活性化をしようというのである。事実、このお披露目ライブは月たち静真高校生徒会でさえ想像にもできないくらい沼津全体で盛り上がった、一大フェス、になってしまった。もちろん、それは静真高校の生徒たち、浦の星の生徒たちの頑張りもあったのだが、その陰には沼田なりのフォローがあった。それは延長戦に使う音響機材のレンタルなどでもみられた。この延長戦で使う音響機材は月やよいつむトリオが用意したものだが、その音響機材をすぐにレンタルできるように沼田が計らっていたのである。そのため、月とよいつむトリオは延長戦まで日がなかったのにも関わらずすぐに音響機材を用意できたのである。

 そして、延長戦終了後の沼田の行動は素早かった。なんと、沼田、この戦いの映像を添付した上で静真の生徒や保護者たちに対してメールを送ったのである。この延長戦でAqoursとSaint Snowはあの沼田が「世界最大級のすごい戦い」とあとで評するくらい、全力全開、自分たちのすべてを賭けての戦い、だけど、戦っている2組とも別に「勝利」のみを追い求めているわけではない、むしろ、この戦いを楽しんでいる、ここにいるみんなと一緒にこの延長戦をめいいっぱい楽しんでいる、そんな沼田の言葉、「部活動とは楽しむことがすべて」、それをものの見事に体現した、そんな戦いを繰り広げていた。そんな戦いだったからこそ、沼田は保護者宛のメールにこの戦いの映像を添付して静真の生徒や保護者たちに見てもらうことでこの戦いを通じて静真の保護者たちの考えを変えようとしたのだ。ただ、この延長戦の映像だけ保護者たちに見せても沼田が何をいいたいのかわからない、ということもあり、沼田はこの戦いの映像をこの戦いを撮っていた月から受け取り、保護者たちへの沼田からの「部活動というのは「勝利こそすべて」ではない。「楽しむことこそすべて」なのである」という書かれた手紙、そして、「勝利こそすべて」、その権化である木松悪斗が取返しがつかない失態をされしてしまった、あの月との最終決戦の時の・・・、いや、「勝利こそすべて」、その考えがどう間違っているのか、それをあの沼田が木松悪斗に対し説法している、その映像をおまけにつけて「沼田からのメール」として静真の全生徒に向けて沼田が発信したである、これによって静真の生徒や保護者たちが自分たちの間違いに気付いてもらうために・・・。

 そして、この「沼田のメール」は沼田の狙い通りとなった。延長戦の動画、沼田からの手紙により自分たちの間違いに気づいた静真の生徒とその保護者たち、そこに自分たちが信じていた考え、それを体現していた木松悪斗の失態ともいうべき姿を映した動画をみた保護者たちはそんな木松悪斗に幻滅、逆に、沼田のことを、楽しむことの素晴らしさを代わりに信じるようになったのである。いや、自分たちの間違いに気づいたことで、「(初戦敗退続きで)部活に対する士気が低い」と自分たちは評していた浦の星の生徒たちは「実は部活をみんなと一緒にめいいっぱい楽しんでいるくらい部活の士気が高い」、そう思えるようになったのか、いや、それどころか、そんな浦の星の生徒たちと一緒に楽しみたい、その気持ちが強くなったのか、静真の生徒たちは突き進んで浦の星の生徒たちと一緒に新生Aqoursお披露目ライブの準備をしたのである。こうして、この新生Aqoursお披露目ライブは大成功、沼津全体の地域活性化につながったばかりか静真と浦の星の生徒たちの統合のシンボルとして光り輝くようになったのである。

 むろん、これは沼田の狙い通りであった。新生Aqoursお披露目ライブの大成功により「沼田からのメール」でほとんどの保護者たちが木松悪斗が唱えた「保護者の声」から離脱したものの、それでも、その「保護者の声」に固執していた、いや、木松悪斗の考えに固執していた少数の保護者たちも「浦の星の生徒たちは静真の生徒たちと一緒に行動できるくらい部活に対する士気が高い」、そのことに気づいたのか、白旗をあげては「保護者の声」を、いや、木松悪斗が作ったまやかしからどんどんさめていったのである。

 そんな状況を予見していたのか、沼田、ついに最終段階へと突き進んだ。それが今日実施された保護者へのアンケートだったのである。これはあのお披露目ライブの日の夜にいきなり実施された。それも意図的にである。実は、沼田、「このライブは絶対に成功する。仕掛けるならこのライブが成功した直後だ」と考えていたのである。このお披露目ライブの大成功により浦の星の生徒たちの士気の高さ、実力の高さが実証されたのだが、それに加えて静真本校と浦の星分校の統合について認める、そんな思いがその保護者たちに広がっていたのである。いや、統合に対する熱が保護者たちのあいだで高まっていたのである。そのことを沼田はこのライブの大成功で感じていたのか、熱が冷めないうちに叩け、とばかりに保護者たち全員に、「静真本校と浦の星分校の統合について賛成か反対か」、そんな簡単な文章でアンケートを実施したのである。むろん、反対の票をいれたらそれは沼田に対し反抗したことになる、そんな同調圧力があったかもしれないが、それでも、そのほとんどの保護者が統合に賛成したのである。これ、すなわち、木松悪斗率いる統合反対派の原動力となっていた保護者の声が完全になくなったことを意味しており、静真・浦の星統合問題から起きた月と木松悪斗の抗争は木松悪斗の完全敗北でもって幕をおろしたのである。まぁ、木松悪斗側としても延長戦以降、月やAqours側の邪魔をすることができたかもしれないが、このとき、すでに木松悪斗が静岡にある企業・自治体などに対し権力を振りかざす、そんなこれまではできていたことを沼田・小原家によって無効化されたこと、さらに、沼田や小原家の監視により月やAqoursに対して妨害できないこともあったため、桜花以外妨害工作ができなくなってしまった・・・以上に木松悪斗率いる投資グループがこの抗争の完全敗北により危機的状況に陥っていたのでさすがの木松悪斗も月やAqoursの方まで手が伸ばせなかった・・・のである。

 とはいえ、話はもとに戻すが、怒りに満ちた表情で自宅に帰ってきた木松悪斗であるが、いきなりの沼田からの統合に関するアンケートの結果によりほぼ完全敗北が決定した、それによって木松悪斗は自宅に帰ってきてからもずっと荒れていた。この自分があの小娘たち、月やAqoursに負けた、そのことが木松悪斗高すぎるプライドをずたずたにした、そのことに木松悪斗は怒っていた、いや、自分のプライドをずたずたにした月とAqours、その裏にいる沼田と小原家に対して木松悪斗は恨み節をきかさていた。そのためか、木松悪斗、自宅に帰ってくるなり、冷蔵庫にあるお酒を浴びるように飲んでは、

「う~、私はまだ負けていないんだぞ・・・。絶対に勝ってやる・・・」

と大声で叫んでいた。

 そんな父親の姿に、桜花、

(お父様、この私が絶対にAqoursを打ち倒します。だから安心してください・・・)

と心のなかでそう自分の父親に対してこう言ったのである。

 だが、それでも、今、桜花が抱えてている2つの問題はまだ解決していなかった。もちろん、スクールアイドルとしての大事な基礎部分、そして、仲間のことである。そのことについて、桜花、

(でも、Aqoursを完全に叩き潰すにはこの2つの問題を解決しないといけない・・・。一体どうすれば・・・)

と悩みながら自室へと戻っていた・・・そんなときだった。突然、桜花のスマホから、

チクンッ

という音が聞こえてきた。これには、桜花、

「あっ、なんか(スクールアイドルに関する)動画がアップされたみたい・・・」

と言っては自分のスマホを取り出す。実は、桜花、自分に足りない基礎部分nの練習方法を探すため、ということで、動画サイトのリマインダーに「スクールアイドル 練習」という語句を登録していたのだ。そして、そのごく関連の動画がアップされては桜花はすぐにその動画をみることにしていた。ちなみに、桜花、今度静真に(父である木松悪斗の命令により)入学することになっていたことと友達といえる友達がいないこともあり、1人の時間が十分あった。なので、桜花が寝ている深夜帯を除いては、桜花、いつでもその動画がアップされたらその動画をすぐに見ることにしていたのである。でも、そのほとんどが(実際のところ)スクールアイドル初心者である桜花にとって難しいものだったり複数人でやることを前提にしているものであったため、桜花としては納得がいく動画がないのが現状だった。

 だが、今回アップされた動画は違った。桜花、すぐにサイトにアップされた動画を見てはっとする。

(この動画、わかりやすい!!それでいてかなり面白い!!)

そう、今さっきアップされた動画、中身としてはとてもわかりやすい、でも、見ていてとても面白い、桜花すらドツボにはまるくらいの練習動画だったのだ。ただ、この動画を見て、桜花、ふと疑問に思う。

(でも、なんで、この練習動画、いろんなところで脱線しているわけ・・・。それに、動画のなかで聞こえてくる、「シャイニー」や「ハグしよ~」って声、なんか意味があるのかな?)

そう、この練習動画、ちゃんとわかりやすく解説しているのに、そのところどころでなぜか脱線してしまう、いや、それどころか、動画のところどころで「シャイニー」や「ハグしよ~」というなんか読者たちにとって聞きなれた声が聞こえてくるのだ。それってもしかして・・・。

 そんな、これが本当に練習動画なの、とツッコミたくくらい笑える動画・・・であったが、この動画の長さである10分はすぐに過ぎてしまった。そんな面白過ぎる、でも、わかりやすい解説をしていてとてもためになる動画だったためか、桜花、つい、この動画に対してあるコメントを残す。

「初コメ、頂きました!!でも、この動画、とても面白くて笑える、でも、この私ですら「ふむふむ」と言ってしまうくらいわかりやすくてとてもためになる動画でした。本当に面白い!!」

そう、桜花はこの動画がかなり気に入ったのである。この動画を見ることで自分にとって足りなかった基礎部分の練習ができる、スクールアイドルにとって基礎といえる部分がわかってしまう、そう桜花は直感したのである。

 で、桜花、この動画のタイトルを見てみると・・・、

「え~と、「サルでもわかるスクールアイドル講座」・・・、なんかバカげているタイトル・・・」

そう、タイトル自体、動画の内容と一致しているものの、なにか誰かをバカにしているようなタイトル・・・、であったが、それでも、桜花、そんなタイトルなんて気にせずに、ただ、

(でも、この動画を見続ければきっと私が足りないところ、基礎部分もしっかりするはず!!)

と、この動画を見続けることで自分に足りなかった基礎部分をしっかりしようと決めたのである。

 こうして、その日の夜は、桜花、「サルでもわかるスクールアイドル講座」全10回、それがアップされるごとにすぐ見る、そして、動画のコメントに「初回&初コメ、頂きました」というコメントを残す、そんなことを繰り返していた。そのためか、桜花、とても寝不足になるも全10回を全部見てしまった・・・というか繰り返し見てしまったのである。

 そんなわけでして、「サルでもわかるスクールアイドル講座」という全10回の動画は桜花のコメントとともにすぐに拡散され、アップしてから1時間後には100万回再生されるくらいの超有名動画になった、いや、桜花をはじめとするスクールアイドルたちのバイブルとして後世にわたって語り継がれるほどの神動画になったのである・・・って、この動画、実は桜花にとって意外といえる、そんな人たちが作った動画なのですが、それがのちにその動画制作者が誰なのか桜花が知ったときには大パニックを起こすのですがね・・・。まぁ、それについてはあとあとのお話しです・・・。



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ラブライブ!RSBP 第16話

 そして、もう1つの問題、仲間についても桜花はようやく見つけることができた。それは静真の入学式を翌日に控えた、そして、あの新生Aqoursお披露目ライブが行われた日から1週間後のことだった。この日は、桜花、ある場所に向かっていた。そこは・・・、

(ここがAqoursが育った内浦なのか・・・。なんか沼津中心部より落ち着いている・・・。Aqoursはここでのびのびと育ったんだな・・・)(桜花)

そう、桜花はこの日、Aqoursの本拠地であった浦の星がある内浦に来ていたのだ。実は桜花、自分が倒すべき相手、Aqoursのことが知りたくて、Aqoursの故郷、内浦に来ていたのだ。桜花曰く、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」である。

 ただ、桜花、内浦を訪れた・・・ものの、別に観光に来たわけでもなく、だからといって、のどかである、ただそれだけしかわからなかった・・・ということもあり、ついこんなことまで考えてしまった。

(Aqoursのことを知るために内浦に来たけど、のどかすぎる以外わからなかった・・・。なんか、骨折り損のくたびれ儲け・・・だよね・・・)

内浦に来て後悔してしまった・・・、それが今の桜花の思いであった・・・。内浦に来たこと自体無駄であった、そう桜花は考えてしまった。なので、桜花、

(もうここにいても無駄だから帰ることにしましょう・・・)

と思い家に帰ろうとしていた。

 だが、そのときだった。このとき、桜花の運命を変える出来事が起きた。桜花が帰ろうとしたとき、突然、静真の制服を着た2人組が内浦の砂浜海岸に向かって走ってきたのである、この言葉を発しながら・・・。

「梅歌、なんで突然走り出すの!?海水浴に来たわけじゃないのだから・・・」

「だって、その場所に、私、早く行きたいんだもん!!」

「梅歌、待って~!!私のことを置いていかないで!!その場所なんてどこにも逃げないのだから!!」

その女子高生たちに、桜花、

(あっ、あの2人、青春を感じている、そんなことをしにきたのかしら・・・)

とつい思ってしまった。砂浜に向かって走り出す2人、それっていわゆる青春もの、そう桜花は思ってしまったのである。

 だが、砂浜へと走り出した女子高生2人は砂浜につくなりこんなことを言いだしてきた。

「来た~~~!!」

「小さいころ、(よくこの場所に)海水浴によく来たなぁ。ってか、なんでここに来たの?」

「聖地だよ、せ・い・ち!!」

聖地・・・、この言葉に、桜花、はっとする。

(聖地・・・、聖地って、まさか、あの2人・・・)

そう、桜花、あることに気づいた、この2人は、ここに、あるグループの聖地を訪れるためにここに来たことを・・・。そのグループとは・・・。

 とはさておき、2人の女子高生の話は続く。「聖地」と発した女子高生に対し、その相方はその女子高生に対し、

「聖地?」

と逆に聞き返すとその女子高生はこんなことを言いだしたきた。

「え~、この前あった沼津のライブ、見てなかったの~」

これには、桜花、この2人がここに来た目的をつい考えてしまう。

(やっぱり、あの2人、この聖地、Aqours、を感じるためにここに来たんだ・・・)

そう、桜花は確信した、あの2人は、Aqoursを感じるために、あの沼津駅前でライブを行った、そんなAqoursを感じるために、ここ、Aqoursの聖地、内浦の砂浜海岸に来たことを・・・。

 そして、2人のうち、「聖地だよ、せ・い・ち」と言った、まるでAqoursに憧れている、そんなふうにみえる女子高生はこんなことを言った、まるで桜花に聞こえるかのように・・・。

「私、高校生になったらスクールアイドル部に入るんだ~」

 その言葉を桜花が聞いた瞬間、桜花、あることを考える。

(この2人、スクールアイドルになりたい、そう思っているんだ。それって、もしかして、私にとってチャンスじゃないかしら・・・。だって、静真の制服を着ているし、絶対に静真の生徒だから・・・)

そう、今、砂浜にいる2人は「スクールアイドル部に入りたい」と言っているのだ。それ、すなわち、あの2人はスクールアイドルにになりたい、そう思っている、と桜花は確信したのだ。それに、あの2人は、今、静真の制服を着ている、なので、2人は自分みたいに、今度、静真に入学するか、すでに静真の生徒、であると確信できた。そのためか、桜花、帰ろうとする足を止めてその2人に千歌図工とした。だって・・・、

(このチャンス、もう後にも先にもない!!絶対に私はあの2人を仲間にしてやる!!絶対に・・・絶対にだ・・・)(桜花)

そう、桜花にとって自分の仲間ができる、そんなチャンスがめぐってきたのだ。桜花はこれまで人とコミュニケーションをとることができなかった。そのため、いざ、父の木松悪斗のために、Aqoursを打ち倒すために、スクールアイドルを始めたのだが、自分の仲間を得ることができなかった。

 だが、今、桜花の目の前には、きっと静真の生徒であり、スクールアイドルになりたい、そんな願望をもった少女たちがいる、それは桜花にとって仲間を得る最初で最後のチャンス、といえた。そのため、桜花はあの2人を自分の仲間にするべくあの2人に近づいていったのである、桜花のなかにあるわずかな勇気をもって・・・。

 ただ、2人に近づく桜花のことなんて気付かずに2人で話を続けていた。

「また始まった(、その話)」

「みんなキラキラしていたな~。私も(みんなと一緒に)輝きたい!!」

 だが、次の瞬間、2人のうちの相方の方がこんなことを聞いてしまう。

「それで、(そのお披露目ライブを行ったスクールアイドルグループって)なんていう名前なの?」

これにはAqoursに憧れているようにみえるその少女、

「うん、名前はね・・・」

と言っては砂浜にそのグループ名を・・・。、桜花にとって1番気にしている、そんな名前を・・・、書いてしまった・・・、

 

Aqours

 

と・・・。

 だが、これを桜花は見た瞬間、ついかっとなってしまう。

(Aqoursだと・・・。最初からわかっていたけど、Aqoursは私にとって、そして、お父様(木松悪斗)にとて倒さないといけない相手・・・。それを文字として見るだけで怒りたくなる!!)

そう、桜花は最初からこの2人はAqoursを感じるためにここに来た、いや、この2人はAqoursみたいなスクールアイドルになることを確認するためにここに来た、そうためにAqoursという文字を砂浜に書いた、そう思ったのである。ただ、このAqoursは自分にとって、そして、父である木松悪斗にとって倒さないといけない相手である、そんな認識が桜花にはあった。それを思いだしたことで桜花はAqoursに対し怒りが込み上げてきたのだった。

 そして、桜花はついにこんなことまで考えてしまう。

(Aqours・・・、私にとって絶対に倒さないといけない相手・・・。それに・・・、私にとって、音楽の才能しかない私にとって、これが、お父様から認められる最初で最後のチャンス・・・。だから、私、失敗は許されない・・・)

桜花にとって父である木松悪斗から認められる最初で最後のチャンス・・・。桜花の父である木松悪斗は音楽をただの遊び、なんの役にも立たない、そう評していた。そのため、木松悪斗からみたら音楽の才能しかない桜花はこれまで父木松悪斗から虐げられてきた、「役立たず」「ごく潰し」と言われながら・・・。だが、そんな木松悪斗が月やAqoursに敗れた、そのため、木松悪斗にとって、月とAqours、そして、その裏にいる沼田や小原家はにっくき相手、絶対に倒したい、完全に叩き潰したい相手であった。その相手のうち、Aqoursとなら桜花が、ピカイチの音楽の才能を持った自分なら倒せるだろう、いや、完全に叩き潰すことができる、そう桜花は考えていた。それと同時に桜花にとってそれこそが自分にとって、自分が持つ音楽の才能を認めてくれない、そんな父から認めてもらえる唯一のチャンス、最初で最後のチャンス、といえた。あのにっくきAqoursを打ち倒せばきっと地位は自分のことを認めてくれる、一人前の少女として認めてもらえる、そう桜花は心の奥底でそう願っていたのである。いや、このチャンスを絶対に見逃しくない、そのチャンスを活かして絶対に父から認めてもらいたい、そう桜花は切に願ったのである。そのためか、桜花、目の前にいえるその女子高生2人に向かって一心不乱に走っていく。

 そして、砂浜にAqoursの文字を書くくらいAqoursに憧れている少女がその相方に向かって、

「松華、お願いがあるの。私と一緒に・・・」

そう言いかけたときだった。突然、その2人の女子高生のあいだにある少女が、桜花が飛び込んできた。その飛び込んできた少女、桜花はその2人に向かってこう言いだしてきた。

 

「ねぇ、君たち、スクールアイドルにならない?私と一緒にスクールアイドルにならない?」

 

これは2人にとって突然のスカウト、桜花からのスクールアイドルのスカウト、であった。

 

 だが、このとき、その2人に聞こえないように、桜花、こんなことも言っていたのである。

 

「Aqoursをつぶすためのね・・・」

 

そう、この2人はAqoursに憧れを抱いていた。だからスクールアイドルになりたい、と桜花は思っていた。だが、桜花にはこの2人をスカウトした理由が・・・、父から認めてもらいたいためににっくきAqoursを倒す、そんな理由があった。それは彼女たちにとって、ある意味、一種の裏切り行為なのかもしれない。だけど、たとえ、そんなことがあとで発覚しても桜花がスカウトした時点でそう説明した、そんな言い訳がいえる、でも、本当はたしかにそう説明したけどこの2人には聞こえないような小声で言った、そんな姑息な手段ともいえることを桜花はしたのである。

 ただ、そうだとしても、桜花の目の前にいる2人・・・のうち、Aqoursに憧れを抱いている少女は思わず、

(えっ、私たち、静真の人に、スクールアイドルのスカウトをされたの?)

と舞い上がってしまっていた。というのも、実は、桜花、2人と同じく、静真の制服を着ていたのである。というのも、内浦にある浦の星はすでに廃校しており、これまで浦の星に通っていた女子高生のほとんどが今度静真に行くことになっていたのである。なので、桜花が静真の制服を着ていれば誰も木松悪斗の娘である桜花だとバレない、そう桜花が思ったから静真の制服を着ていた、というわけである。だが、Aqoursに憧れを抱いている少女は静真の制服を着ている桜花を見て、自分が桜花の人からスクールアイドルのスカウトをされた、そう錯覚したのかもしれない。だって、桜花は今度静真に入る予定だし、今、その少女をスクールアイドルとしてスカウトしているのだから・・・。

 だが、Aqoursに憧れている少女の・・・相方は意外と冷静だった。

「ところで、あなた、名前はなんていうのですか?」

そう、まずは、相方、桜花のことを探りにきたのである。

 ただ、これは桜花も想定内であった。相方の言葉に、桜花、はっきりと答える。

「私の名は木松桜花、静真のスクールアイドル部の部長です」

このとき、桜花はこんなことを思っていた。

(さぁ、私のことを信じて!!はやく私の仲間になって!!そうじゃないと、私、私、もうお父様に認めてもらえないから・・・。私にとってこれがお父様から認めてもらえる最初で最後のチャンス、なんだから!!あのAqoursを潰せば・・・、お父様を苦しめたあのAqoursを潰せば・・・、絶対に、お父様、私のことを認めてくれるはず!!だから、私のことを信じて!!はやく私の仲間になって!!)

そう、桜花にとって弱点の1つであった仲間を得る、そんなチャンス、いや、それを含めて、Aqoursを倒す、そして、父から認めてもらえる、そんなチャンスを不意にしたくない、そんな気持ちで桜花はいっぱいであった。

 だが、突然舞い込んできたチャンスだったため、桜花は、「仲間にする」、というチャンスのためのあるものを除いて準備はしてこなかった。なので、この桜花の言葉は、このチャンスを逃したくない、そんな桜花の唯一の武器、だったのかもしれない。

 だが、相方はかなり用心深かった。静真のスクールアイドル部の部長と言った桜花に対し、

(あれっ、静真にスクールアイドル部ってあったかな?)

とつい疑問に思ってしまった。実は、静真、これまで、スクールアイドル部、なんてなかった。それは静真を牛耳っている木松悪斗のせいであった。リーマンショックのあった09年以降、木松悪斗は静真の大スポンサーになった。いや、木松悪斗が静真を完全支配していた。その木松悪斗は自分の価値観として芸術の分野を軽んじていた。そのため、静真ん部活動は主にスポーツ系に重点をおいて力を入れた結果、文系の部活動はあまり盛んではなく、逆にスポーツ系の部活が盛んとなっており、そのスポーツ系の部活は全国大会出場の部活を数多く持つようになった、そんな状態が続いていた。そして、スクールアイドルについては木松悪斗が音楽を軽んじていたこと、また、スクールアイドルが隆盛を極めたのがラブライブ!が行われるようになった2013年以降であったこともあり、静真はこれまでスクールアイドル部が存在していなかった、というよりも、木松悪斗自身、静真においてスクールアイドルをすることを認めていなかった、ということもある。もちろん、今度、千歌たちAqoursが静真に編入することと木松悪斗の力が弱まっていることもあり、新しく静真高校スクールアイドル部ができると誰もが予想していた。だが、それでも、現時点において、静真に新しくスクールアイドル部ができた、そんな情報が入ってきていないため、そのことを知っているその相方は「自分はスクールアイドル部の部長である」と言った桜花のことを疑ったのである。

 そんあ相方からの疑いの目に、桜花、

(私の言葉を信じないのなら、もう奥の手を出すしかない・・・)

と思ったのか、突然、自分のカバンを探ると1枚の紙を取り出してはその相方に見せた。

「これこそ、私が静真のスクールアイドル部の部長である証です!!」

これにはその相方もおもわず、

「た、たしかに、あなた、静真のスクールアイドル部の部長・・・ですね・・・」

と口をあんぐりとしてしまった・・・。

 で、桜花が自分のカバンから取り出してその相方に見せた紙にはこう書かれていた。

 

「創部許可書

                木松桜花殿

 

 静真高校はスクールアイドル部創部を許可します。

 

                2018年4月〇日」

 

そう、この紙こそ、桜花にとっての伝家の宝刀、「創部許可書」、であった・・・。

 

 実は静真において部活の乱立を防ぐために部を創る、創部の際、この創部許可書を発行することになっていた。これによりこの創部許可書をある限り、そのグループは静真を代表する部となり、逆にその創部許可書を持たない限り、そのグループは静真の部とは認められず、ただの同好会としかみられないのである。そして、静真において同じ内容の部なんてなく、野球部といえば創部許可書を持っている野球グループのみが野球部を名乗ることを許されており、そのほかの野球のグループはたえだの同好会、なのである。むろん、それはほかの部でもいえることなのだが、もっとも気を付けてないといけないのだが、この創部許可書、なんと、先着順、なのである。なので、先に創部届を出したほうが静真の部として認める、なんてことがまかり通っていたのである。とはいえ、創部の際に、学校側、生徒会側、そして、静真の部活動に参加している生徒たちをまとめている部活動連合会の審査を受けるので先に創部を出したとしてもすぐに認めらえる、なんてことはなかった。むしろ、その審査で落とされることもざらだった。特に木松悪斗が静真を実効支配したときから木松悪斗の意見が尊重されるようになり、結果、多くの文化系のグループが創部届を出してもすぐに却下される、そんあケースが相次いでいた。

 ところが、桜花、その仕組みを悪用することでまずはAqoursに対し先制パンチをくらわす、いや、そのAqoursに対してまずは1勝を得ようとしてのである。それは沼田の突然のアンケートで静真と浦の星の統合に賛成する、その答えが圧倒的に多く、結果、事実上、静真と浦の星の統合が決まった、それにより、月と木松悪斗の戦いおいて木松悪斗の完全敗北が決まった、その次の日のことだった。木松悪斗はこの完全敗北でやけ酒を続けていた。そんな木松悪斗に対し、桜花、あることをお願いした。

「お父様、お願いです、この私に、スクールアイドル部を創部させてください!!」

これには、木松悪斗、酒の匂いを桜花に対し振りかけるとともに、

「お~、それはどういうことかね?スクールアイドル部を創部?お前、正気なのか?」

と桜花に問いかける、

 すると、桜花、自信満々にこう答えた。

「私がスクールアイドル部を創部することでAqoursは静真の部として活動することができなくなります、あの創部許可書のシステムを使えばね・・・」

 この桜花の言葉に、木松悪斗、はっとする。

「あっ、たしかにお前の言う通りだ!!お前が先にスクールアイドル部を創部すればあいつら(Aqours)は静真の部活として活動できなくなる・・・。そうなればあいつらはもう詰んだといっても過言ではないだろう」

そう、桜花が先にスクールアイドル部を創部すること、それはこれから静真に編入してくる千歌たち新生Aqoursにとって静真で浦の星のときと同じくスクールアイドル部を創部して静真の部活として活動する、そんなことができなくなることを意味していた。こうなってしまうと千歌たち新生Aqoursは部の特典である、専用の部室、学校から支給される活動費用、そんなものが支給されなくなる、ばかりでなく、静真の部活ではなくただの同好会として活動しないといけなくなる、そんな不利な状況に陥ってしまう。で、そのことを桜花は計算したうえで父であり静真において大いなる権力を有していた木松悪斗に進言したのである。そして、桜花の進言により、木松悪斗にとってあのにっくき相手の1つであるAqoursに対し罰を与えることができる、そのことに木松悪斗は気づいたのである。いや、この策略によりAqoursはもう詰んでしまった、と思ったのである、木松悪斗は・・・。

 こうして、木松悪斗、すぐに立ち上がっては桜花に対しこう言った。

「お前としてはいい作戦だ!!わかった、お前の作戦にのろう!!ちょっと私の信条に反するが、それもこれもあのにっくきAqoursを潰すためだ!!お前の作戦通り、お前のスクールアイドル部の創部、この私、木松悪斗が認めよう!!」

 このあと、木松悪斗の行動は素早かった。桜花はすぐに父木松悪斗に対し「スクールアイドル部創部届」を作成して渡すと、木松悪斗、すぐにその創部届の受理を学校側に申請した、いや、桜花の創部を早急に受理するように学校側を脅迫した。

 だが、そんな木松悪斗の脅迫に対し、一部の先生、そして、創部届の受理について審査する側の1つ、月たち生徒会がその受理に反対した。なぜなら、これから千歌たち新生Aqoursが静真に編入してくるため、その千歌たちにが静真に対しスクールアイドル部の創部届を届けてくるのは明白だったからだったからだ。

 それでも、木松悪斗は桜花の創部届を無理やり押し通そうとした。そんな木松悪斗の行動に対し、月たち生徒会は逆に静真への編入が決まっている千歌たちに代わり千歌を部長とするスクールアイドル部創部届を届け出た。これにより、桜花の創部届、千歌の創部届、2つのスクールアイドル部創部届の届け出がある、そんな状況に陥ってしまった。

 ただ、静真の部活において木松悪斗の権力はまだ健在だった。なんと、木松悪斗、自分の残っている権力をフルに使い、また、「先着順」という創部のシステムそのものを使って桜花の創部届を受理させることに成功したのだ。むろん、創部を審査する3つの組織のうちの1つ、学校側を自分の権力でもって黙らせた一方、3つのうちの1つ、部活動連合会側は木松悪斗の娘(長女)、旺夏が牛耳っていることもあり、あともう1つの生徒会はなにもできず、2対1で桜花の創部届が受理されたのである。

 ただし、今回の桜花の創部届受理について、木松悪斗はあくまでも、「この高海千歌のスクールアイドル部創部届申請を却下することを提案してきたのは私の娘である桜花である」としらを切る気であった。まぁ、半分木松悪斗の言う通りなのですがねぇ・・・。だって、、木松悪斗がその桜花の申し出を受諾したあと、桜花はこんなことを父である木松悪斗に言ってきたのだから。

「それと、お父様、もし、渡辺月のいる生徒会がAqoursに代わってスクールアイドル部創部届を出してきたらお父様の権力と静真のシステムをフルに使ってその申請を却下してください」

まさに、桜花、策士であった。静真の創部のシステムを完全に熟知しそれを逆手にとるとともに静真の木松悪斗が今持っている権力をフルに使って月たちのs院政を却下するように進言してきたのである。

 こうして、桜花の作戦通り、桜花のスクールアイドル部創部創部届は受理され、機能、ようやく、桜花のもとにスクールアイドル部の創部許可書が届いた、というわけである。ただし、木松悪斗に対してもこれに対するダメージは発生した。それは静真の生徒の保護者たちからの部活動保護者会の会長である木松悪斗に対する会長解任の動議であった。あの沼田からのメールに添付されていた木松悪斗の失態を晒したあの動画のせいで木松悪斗は多くの保護者たちからの人望を失ってしまった。さらに、今回のスクールアイドル部創部に関して木松悪斗が自分の権力をフルに使った、そのことで多くの保護者たちが木松悪斗に対し、横暴である、権力乱用である、と言ってきたのである。そのため、保護者たちの支持を完全に失った木松悪斗に対しNoを突きつけた、部活動保護者会の会長解任の動議を出してきたのである。ただ、この動議も木松悪斗は自分の持てる権力をフルに使いなんとか阻止したものの、これがもとで静真においてこれまでみたいに自分の権力を傘に自分の思い通りに動くことができなくなった、そのことが露見する結果となってしまった・・・。

 とはいえ、無事にスクールアイドル部創部許可書を受け取った桜花はもしものときのためにこの許可書を自分のかばんにいつも忍ばせてはすぐにでも出せるようにしていた・・・のだが、それがまさかこの許可書を受け取った翌日にこの許可書を使う場面に出くわすとは、桜花、まさにびっくりであった。だが、その分、この許可書の効力は絶大であり、「スクールアイドル部の部長である」と言ってきた桜花に対しその言葉に疑いをもったその相方もこの許可書を見ては、

「た、たしかに、あなた、スクールアイドル部の部長であることは間違いないね・・・」

としぶしぶ桜花の言うことを認めざるをえないことに・・・、いや、むしろ、その許可書を見て、Aqoursに憧れをもつ少女はすぐに、

「それじゃ、あなたに入部届を出せばはれてスクールアイドルの仲間入り、なんですね!!」

と言ってきたのだ。むろん、その少女の相方はその少女に対し、

「おい、梅歌、それ決めるの、早すぎ!!少しはこの部のことを調べないと・・・」

と止めるも、その少女はそんな相方の話なんて聞くことなく、すぐに、

「それじゃ、私、紅梅歌、静真のスクールアイドル部に入部します!!」

と、その場で桜花のスクールアイドル部に入部することを決めてしまった・・・ばかりか、

「そして、私の相方、赤間松華もスクールアイドル部に入部します!!」

と、なんと、その相方まで桜花のスクールアイドル部に入部させたのである。これには、その少女の相方、おもわず、

「う~、梅歌がこう言ってしまうとこの私もなにも言えなくなるよ・・・。う~、仕方がない。梅歌と同じくこの私もあなたのスクールアイドル部に入部してあげる」

と、その少女に続けて桜花のスクールアイドル部に入部することを決めた。これには、桜花、

「2人ともありがとう」

と2人が自分の仲間になったことが嬉しいあまり2人に抱きついては、

「私は静真高校スクールアイドル部の部長、木松桜花(きまつ はな)と言います。宜しくお願いします、ふたりとも・・・」

と2人に対し自己紹介すると、

「私は紅梅歌(くれいな うめか)!!今度、静真に入学する新1年生です!!Aqoursみたいなスクールアイドルになりたい、それが私の夢です!!」

とAqoursに憧れている少女こと梅歌と、

「私の名は赤間松華(あかま しょうか)。梅歌とは幼馴染で私も静真に入学する新1年生。梅歌は私がいないとダメになる、いわば、梅歌のおもり役です」

とその相方である松華が自己紹介をした。

 こうして、Aqoursに憧れている少女こと紅梅歌、その少女の相方こと赤間松華は桜花の仲間として、これ以降、桜花と行動を共にする・・・のだが、それがのちに、まさか、この3人があとあと腐れ縁としてずっとこの仲が続いていくとはこのときの3人は知る由もなかった・・・。

 ただ、このとき、3人の思いは三者三様だった。無事に自分の仲間を得た桜花は、

(これですべてが揃った!!あとはAqoursを倒すのみだ!!そうすれば、私、きっと、お父様から認められるはずだ!!)

と華々しい未来を夢見ていた。対して、梅歌はというと、

(これで私も輝くことができるはず!!絶対に私もあのAqoursみたいに輝きたい!!絶対に輝いてみせる!!)

とスクールアイドルになれたことで自分も輝けるものだと、いや、絶対に輝きたい、そう思っていた。だが、そんな梅歌に対し、松華、

(成り行きでスクールアイドル部に入ったけど、本当に大丈夫なのかな。ちょっと心配・・・)

とこれからのことを心配してしまった・・・。

 

 そして、翌日・・・、

「えっ、桜花ちゃん、私たちと同じ1年生だったの?知らなかった・・・」(梅歌)

静真では入学式が行われていたのだが、そこで、桜花、梅歌、松華、ともに恩地クラスになってしまった・・・。まぁ、ここから3人の腐れ縁が始まるのだが、それは置いといて・・・、昨日、「自分はスクールアイドル部の部長である」、そう言った桜花のことを梅歌は上級生と誤認していた。まぁ、部長と言った時点でだれもが桜花のことを上級生であると誤認してもおかしくないのだからそれについては仕方がない・・・としても、この誤認について、松華、

「桜花さん、あなた、本当にスクールアイドル部の部長なの?新入生が部長だなんて普通に考えてもおかしいことだと思うのだけど・・・」

と桜花に疑問をぶつけるも、桜花、昨日見せた創部許可書をふたたび松華に見せては、

「たとえ私が新入生であってもスクールアイドル部の部長であることはかわりないのです!!」

と反論する。まぁ、桜花がこの創部許可書を持っている限り、桜花がスクールアイドル部の部長であることにかわりないのでそのことを知っている松華は、

「た、たしかに桜花さんの言う通り、だけど・・・」

と、あまり納得していないもんの桜花の言うことを認めざるをえなかった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第17話

 しかし、松華が桜花のいうことに納得がいかないことが続いてしまった・・・。たとえば・・・、

「え~、静真のスクールアイドル部にAqoursがいないの!!」

と、梅歌、桜花のスクールアイドル部にAqoursが所属していないことを知ってものすごくがっかりするとその梅歌のがっかりする姿を見て、松華、

「桜花さん、あなた、うそをついていたのですか?普通なら浦の星でスクールアイドル部として活動していたAqoursが浦の星を統合した静真でもスクールアイドル部の一員として活動している、と思うはずです。でも、静真のスクールアイドル部にAqoursがいない、それって少し変ではないですか?」

と桜花にまた疑問を呈すると、桜花、はっきりとこう言ってしまう。

「たしかにこのスクールアイドル部にはAqoursはいません。ですが、私たちがいる、いや、ここにいる私たちがAqours以上になればいいのです!!」

 この桜花の言葉、であったが、それを聞いて、梅歌、

(私、Aqoursのみなさんと一緒にスクールアイドルとして輝けると思ったのに、ショック・・・)

と思ったのか、

「え~、やっぱり、Aqoursがいないんだ・・・。ショックだよ・・・、ぐすん・・・」

と言っては泣きだしそうになっていた。

 そんな梅歌の姿を見えか、松華、

「やっぱりAqoursはこのスクールアイドル部にはいないのですね!!それに私たち以外に部員がいない、それって、つまり、静真のスクールアイドル部の部員は私たちだけ、ということですね。これって少しおかしいですよね。いや、それによって梅歌を泣かしたのです。この落とし前をはっきりとすべきでは?」

と桜花を責める。梅歌と松華は幼馴染である。その梅歌は直感で動くため、今回も、「自分もAqoursみたいなスクールアイドルになって輝きたい」、という自分の願いを叶えるために花のスカウトを直感で受けたのだが、本来いるはずの、自分の憧れであるAqoursが桜花のスクールアイドル部にいない、それに対してショックを受けて泣きだしそうになっているのである。そんな梅歌の姿を見て松華はその梅歌の代わりに桜花を攻責めたのである。松華は昔から梅歌のことを大事にしてきた、いや、守ってきた。梅歌は直感で行動するため、そのために梅歌が失敗することも多かった。そんな梅歌のために松華は直感で動く梅歌を制したり、失敗して悲しむ梅歌を慰めたり、梅歌に理不尽なことをした人に対して今みたいに梅歌に代わり松華が責めたりすることも多かった。

 そんな松華の責めに対し、桜花、こう反論する。

「別におかしくない!!Aqoursがこの静真のスクールアイドル部にいない?そんなこと、おかしくない!!ここは私たちのスクールアイドル部です!!たとえAqoursがいなくても、部員が私たちだけでもおかしくない!!むしろ、そちらの方が好都合だ!!私たちがAqoursの代わりに静真のスクールアイドルとして大活躍すればいいだけの話だ!!」

 桜花の反論、これは、自分を責めている松華に対して自分なりに言い返している・・・つもりなのだが、その内容は支離滅裂にみえてしまう、そのためか、松華、桜花に対し反論する。

「なんか言っていることがめちゃくちゃなのですが、それ、本気で言っています?」

まるで桜花のことをバカにしているような言葉、だったなのか、桜花、ついにキレてこんなことを松華に言ってしまう。

「めちゃくちゃじゃない!!それに、私は、Aqoursに、勝ったんだ!!」

Aqoursに勝った・・・、その言葉を聞いて、泣きだしそうになっている梅歌、はっとして桜花に近づくと、

「えっ、桜花ちゃん、あのAqoursに勝ったの?」

と目をキラキラにさせながら桜花に聞いてくると、桜花、堂々とした姿で、

「あぁ、私はあのAqoursに勝ったのです!!」

と威張りちらしてしまう。ただ、これには、松華、

「う~ん、桜花さんがAqoursに勝った、という話は聞いたことがないのですがね・・・」

と桜花のことを疑ってしまうも、桜花、そんなことなんて気にせずに、

「そんなもの、関係ないね!!私はAqoursに勝ったんだ!!だから、ここに創部許可書があるんだ!!私はAqoursに勝ったのだからスクールアイドル部の創部が許されたんだ!!」

と創部許可書をひっぱりだしては松華の前で堂々とみせた上で自分の発言に間違いないkとを証明してみせた。まぁ、たしかに、桜花の言う通り、Aqoursには勝った・・・のは勝ったのだが、実際のところ、桜花とAqoursが直接戦ったわけではなく、スクールアイドル部の創部をめぐっての戦いに勝っただけであり、その勝った理由も父である木松悪斗とその娘で桜花の姉である旺夏の力によるものが強かった・・・というのが実情でして・・・。

 とはいえ、創部許可書という印籠をみせられてはさすがの松華もこれ以上桜花を責めることができず、ただ、

「はいはい、わかりましたよ!!」

としぶしぶ納得せざるをえなかった・・・。

 

 一方、創部対決に敗れ、同好会として静真での活動をスタートさせたAqoursはというと・・・、

「曜ちゃん、ごめん、ボクがもっとしっかりしないといけなかったのに、ボクのせいで、曜ちゃんたちAqoursのためのスクールアイドル部を創ることができなかったよ。曜ちゃん、本当にごめん・・・」

と、月、何度も自分のいとこで1番の親友、かつ、Aqoursのメンバーである曜に謝るも、曜、そんな月に対し、

「月ちゃん、そんなに何度も謝らなくてもいいよ。たとえ同好会だったとしてもAqoursとして千歌ちゃんたちと一緒にスクールアイドル部活動できるんだから。だから、あまり自分を責めないで・・・」

と月のことを慰める。月にとってスクールアイドル部創部をめぐって木松悪斗の戦った、だけど、それに敗れてしまった、結果、曜たちAqoursは同好会として活動せざるをえなかった、そのことを月は悔いていた、なので、何度も何度も曜たちAqoursに月は謝っているのだが、曜たちにとってみれば、たとえ同好会であってもAqoursとして活動できる、そのことに喜びを感じているのか、何度も謝ってくる月に対しいつも慰めていたのである。

 と、そこへ、千歌、月に対しあることを話し出す。

「でも、同好会だったら専用の部室とかないじゃん。でも、そのかわりにこんな広いところを千歌たちに貸してくれたんだからいいんじゃないかな、月ちゃん」

そう、部なら支給される専用の部室、それが同好会には支給されない、なので、本来なら同好会であるAqoursが練習に使う場所は自分たちの手で見つけないといけない・・・のだが、不幸中の幸いなのか、そんなAqoursに対しAqours専用の練習場を貸してくれたのである、月は・・・。

 ただ、それについて、月、ある真実を話す。

「まぁ、それもこれもすべて沼田のじっちゃんのおかげなんだけどね・・・」

そう、Aqoursに専用の練習場を課したのは・・・あの沼田であった。その沼田曰く、

「まぁ、静真と浦の星の生徒たちをまとめてくれたAqoursの功績に対するお礼だと思って受け取ってくれ。それに、そんな功労者に対し専用の部室なんてない、なんて末代の恥になってしまうし、それに、その土地のせっかく借りたのにこのまま塩漬けにするのはいやだしな・・・」

とのこと。創部対決に敗れたことでAqoursは専用の部室などを手に入れることができなかった。だが、沼田のとって今のAqoursは(お披露目ライブで)沼津全体を盛り上げてくれただけでなく、一方的に分断していた静真と浦の星の生徒たちを一緒にまとめあげた、そんな功労者であった。そんなAqoursに対し、沼田、それならばと広いAqours専用の練習場を貸したのである。

 と、ここで、ルビィ、そんな月と曜、千歌の話に割り込む形でこんなことを言ってきた。

「でも、ここって、元、浦の星分校、だよね。だから、ルビィ、ここがルビィたち専用の練習場だなんてピンとこないのだけど・・・」

えっ、Aqours専用の練習場が元浦の星分校の跡地?そう、沼田がAqoursのために貸したAqours専用の練習場、そこは元浦の星分校があった地、もともとは静真と浦の星の統合問題が起きたとき、沼田が浦の星の生徒たちのために用意した浦の星分校、あの山のなかにあった・・・木造校舎のある学校の跡地であった。というのも、沼田、統合問題が長引いくだろう、もしかすると、浦の星の生徒が全員卒業するまで分裂状態が続く、と最悪の事態を想定して山のなかにある学校の跡地を浦の星分校として私費で改修、そこに浦の星の生徒たちは通うことにしていたのである。だが、その統合問題は新学期が始まる前に解決したことで、実査に浦の星の生徒たちがこの分校に通ったのは統合の準備が終わるまでのたった1週間しかなかった。ところが、最悪の事態のことを考えてか、沼田、この学校の賃貸借契約の期間を浦の星の生徒全員が卒業するまでの2年間でもって契約を結んでいたため、統合したあとの使い道について悩んでしまった。山のなかにある、ということでこの学校のまわりには人はあまり済んでいなかったので、地元住民に開放、なんてことができなかったこともあり、沼田は大いに悩んだ。そこに「Aqoursが創部対決に敗れたことで専用の部室などが支給されない」という情報が沼田の耳に流れてきたのである。なので、それならばと、沼田、そのAqoursに無償でこの土地を練習場として貸したのである。

 まぁ、そんなわけでして、千歌、そんな沼田に対し、

「本当に沼田のじっちゃん様様だね!!沼田のじっちゃん、ありがとうね!!」

とお礼を言うとともにまわりにいるAqoursメンバーに対し、千歌、こう鼓舞した。

「たとえ同好会だったとしても千歌たちは千歌たちなりに頑張っていこう!!そうすれば、きっと、なんかいいことがあると思うよ。いや、絶対にあるよ!!」

この千歌の言葉、それは単なる鼓舞かもしれないが、Aqoursと月にとってみればそれはやる気を奮い立たせるものだけど、この鼓舞を聞いてるものからすれば、「きっと大丈夫」、そう思えるものに感じたかもしれない。そのためか、千歌以外のAqoursメンバーからは、

「絶対にそうずら」「ガンバルビィしないとね!!」

「くくく、私の力、増しているぞ!!」

「千歌ちゃんが言うなら大丈夫だよね」

「私、千歌ちゃんのために、いっぱい、曲をつくるね!!」

とやる気をみせる言葉が続いた。

 こんなAqoursの姿を見た月、こう思った。

(曜ちゃんたちは同好会だったとしても一生懸命頑張ろうとしている、それなら私も、過去のこと(創部対決)なんて気にせずに曜ちゃんたちと一緒に前に進んでいかないとね)

千歌の言葉にAqoursメンバーだけでなく月をも突き動かした、そう考えると千歌はみんなをやる気を与える「やる気スイッチ」の役目を担っている、のかもしれない・・・。

 

 一方、桜花たちはというと・・・、

「えっ、やっぱり、桜花さん、実際にAqoursと戦ったことがないのか・・・。だけど、桜花さんは「Aqoursに勝った」と言っているけど、それはスクールアイドル部創部に対する対決に親の力で勝っただけなのか。納得・・・」

と、松華、桜花が言っていたこと、「Aqoursに勝った」、その真実についてようやく知ったことで納得したようだ。桜花はたしかにAqoursに勝った、でも、実際に戦ってかったわけでなく、策略的に、それも親の力を使って勝っていた、そのことを松華が知ったことで、松華自身、桜花の言った「勝った」の本当の意味を知って納得したのである。

 だが、松華、それを受けてこう考えてしまう。

(でも、これって本当に勝ったことになるのでしょうか・・・)

そう、たしかに策略的には桜花はAqoursに勝った。現にAqoursは同好会というかたちで活動せざるをえなくなっている。だけど、一般的に考えてそれを「勝った」といえるのかどうか、松華はそれを疑問に思ったのである。策略的には「勝った」といえる、だけおd、実際のところ、桜花が直接戦ったわけではないのにそれを桜花は「Aqoursに勝った」といている、それって一般的にいっておかしいのでは、と松華は考えてしまったのだ。

 そんなわけでして、松華、ある結論に至る。

(桜花さんは嘘を言っている。実際にはAqoursとは、桜花さん、直接戦っていないのに桜花さんは「Aqoursに勝った」なんて言っている。それって「勝った」ことには当てはまらない。だからこそ言える、桜花さんは嘘を言っている、桜花さんは「Aqoursに(実際に戦って)勝った」なんて嘘を言っている・・・)

そう、松華、桜花は嘘を言っている、と断定したのである。

 ということでして、松華、すぐに梅歌のところに行き、梅歌に対して、

「梅歌、桜花さんは嘘をついている!!実際に桜花さんはAqoursさんはAqoursと直接戦っていない。それなのに桜花さんは「Aqoursに勝った」と言っている。その言葉自体嘘だったんだ!!」

と、松華が知ったこと、思ったことを梅歌に言うと、梅歌、そんな松華に対し、

「ふ~ん、それで」

と聞き返してしまう。これには、松華、

「梅歌、しっかりして!!梅歌さんは私たちに嘘をついているんだよ!!」

と必死に言うと、梅歌、ただたんに、

「へぇ~、そうなんだ」

とそっけない答えを返す。

 そんな梅歌に対して、松華、こんなことを突きつける。

「梅歌、正気になって!!私たちのスクールアイドル部にAqoursはいないんだよ!!それどころか、桜花さん、私たちに嘘をついてまで桜花さんの部に私たちをとどまらせるつもりだよ!!」

そう、今の状態が続けばAqoursは梅歌のいるスクールアイドル部には入ってこない、いや、桜花は嘘をついてまで梅歌と松華を桜花のスクールアイドル部にとどめるつもりなのだ。

 ところが、そんな松華の言葉に、梅歌、意外なことを言ってきた。

「でも、私はそれでいいと思っている。私、Aqoursに憧れていた。でも、今はこの部でAqoursみたいなスクールアイドルになって活躍していきたい、そう思っている」

そう、梅歌は梅歌なりに、

(私、私の直感を信じる!!私、この部で、桜花ちゃんの部で、Aqoursみたいなスクールアイドルになって輝いてみせる!!絶対に、絶対にね!!)

と、梅歌は梅歌なりにこの部でAqoursみたいなスクールアイドルになって活躍する、絶対に輝いてみせる、そう心に決めていたのである。実は、梅歌、ボーとしている、直感でのみ行動する、そんなふうにみえて本当は真がしっかりとした少女、であった。たとえ直感的に行動しても、その行動による責任はしっかりとる、自分の行動には必ず責任をもって対処する、そんな少女であった。そのことを、松華、思いだしたのか、

「たしかに梅歌の言う通りだね」

と梅歌の言うことを認めるとともに、

(そんな梅歌のこと、私は好きだよ!!なら、私も決めた。梅歌と一緒に行動する!!)

と思ったのか、

「なら、私の心も決まった!!私は梅歌とともに進む!!梅歌と一緒にAqoursみたいなスクールアイドルにして活躍してやる!!」

と梅歌とともに進むことを決意した。松華は梅歌の幼馴染である、いや、梅歌ファースト、であった。なので、梅歌の進む道には必ず松華の存在があった。そして、今回も梅歌は自分の責任でAqoursみたいなスクールアイドルになって活躍する、そう決意した、なら、松華もそんな梅歌とともに同じ道を進む、そのことを松華は決意したのだった。

 ただ、梅歌はこんなことも言った。

「でも、松華の言う通り、桜花ちゃん、嘘ついている。Aqoursと直接戦っていないのに「Aqoursに勝った」って言っているのにね・・・」

どうやら、梅歌も松華と同じく、桜花は嘘を言っている、と思っているようだ。これには、松華、

「梅歌・・・」

と桜花が梅歌に嘘を伝えた、そのことによりショックを受けているのでは、そう思ってか、梅歌のことを心配してしまった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第18話

「木松桜花は嘘をついている」

そんな疑いの目をもった梅歌と松華・・・であったが、たとえそうであったとしても、

「スクールアイドルにして活躍したい」

という思いは強かったそのためか、

「それじゃ、今日からスクールアイドルにアイドルの練習を始めます」

という部長の桜花の声に2人とも、

「「はいっ!!」」

と大きな声をだしては今から始まるスクールアイドルの練習に向けて気合を入れなおしていた。

 すると、桜花はそんな2人の前にタブレットを取り出しながら、

「さて、今から1つの動画を見せます。この動画はスクールアイドルとしての基礎を学ぶのにとても役に立つ動画です。これを見てスクールアイドルの基礎を学んでください」

と言って1つの動画を見せた。ただ、この動画を見始めた瞬間、梅歌と松華、

「ねぇ、松華、これってちまたで有名になっているあの動画だよね・・・」(梅歌)

「たしかに、ちまたで有名・・・じゃなくて、今や動画サイト急上昇ランキング1位のあの動画だよね・・・」(松華)

となにかひそひそ話をしてしまう。どうやら、2人ともよく知っている動画のようだった。

 そして、この動画の尺である10分が過ぎた。すると、梅歌、こんなことを言い始める。

「桜花ちゃん、これってあの動画だよね、「サルでもわかるスクールアイドル講座」・・・」

そう、梅歌と松華が見ていた動画は桜花もお世話になったあの動画、「サルでもわかるスクールアイドル講座」であった。これには、桜花、こう答える。

「まぁ、たしかに、梅歌の言った通り、最近人気になっている動画、「サルでもわかるスクールアイドル講座」です。この動画は私もお世話に・・・、こほん、見てとてもためになると思って2人にみせたわけです」

ただ、この桜花の言葉に、梅歌、

「(ねぇ、松華、桜花ちゃん、今さっき、「私もお世話に・・・」って言おうとしていなかった?)」

と、ボソッとツッコむと、松華、

「(まぁ、そのことはあまり追求しないでおきましょう。その方が桜花さんのプライドを傷つかなくて済みますから)」

とそれをあまり追求しないようにした。

 まぁ、そのことはおいといて、桜花は続けて、この動画、「サルでもわかる(略)」、全10回を一気にみせた。最近急上昇ランキング第1位に輝いている動画、ということもあり、梅歌、松華、ともに以前から見ていたのだが、全10回を一気に見たことはなかったためか、梅歌、松華、ともに、

(一気に見てみるとスクールアイドルとして大事な基礎部分が一通り知ることができた・・・。やっぱり、この動画、神!!)(梅歌)

(一気に見ましたが、とても面白くて、「これってギャグ動画?」、と思わせつつもポイントとなる部分はしっかりと収まっている、まさにどんな高校生でもスクールアイドルとしてやっていける、それを伝えてくれる動画です)(松華)

と、一気見することでこれまでわからなかったこの動画のよさを知ることができた。

 また、それに加えて、

「でも、ところどころに出てくるセリフ、「ハグしよ~」とか、「シャイニー」、「ガンバルビィ」に「未来ずら~」、「堕天使リリー」に「全力前進、ヨ~ソロ~」、あと、「ぶぶーですわ」、これってスクールアイドルに関係ある?」(桜花)

「え~と、それは・・・(ねぇ、松華、これってあのグループのメンバーの口癖だよね・・・。ということは、この動画って、私が憧れを抱いているあのグループが作ったもの、だと思うのだけど・・・)」(梅歌)

「(梅歌、そのグループの名前を桜花さんのまえでいうとこのあと荒れそうだからここでは黙っておこう。それに、そのグループのメンバーも、自分たちがこの動画を作ったこと、否定しているし・・・)」(松華)

「(うん、わかった)ははは・・・」(梅歌)

と、梅歌と松華、桜花にこの動画を作ったグループのことを思ったのか、笑いつつもなにかごまかそうとしていた・・・。

 

 それから10日間、梅歌と松華はこの動画、「サルでもわかる(略)」を見ながらスクールアイドルとしての基礎を学んだ。桜花もこの動画を2人と一緒に見通すことで基礎のところを再確認していた。

 と、ここで、桜花、梅歌と松華の方を見てはこんなことを言いだしてきた。

「私が見た感じ、2人は基礎がしっかりとついた気がします」

そう、梅歌と松華、かなり飲み込みが早かった・・・というわけではなく、2人はこの動画がアップされてから毎日のようにこの動画を見ては自分たちもその動画にそって練習をしていたのである。なので、2人からしてみれば、桜花と同じく再確認、であったのだ。

 ただ、そんなことなんて知らず、桜花、この動画のことを2人に語りだしてしまう。

「やっぱ、この動画をアップしてくれた人たち、すごい!!まぁ、本当のところ、この私がこの動画を流行らせた、といっても過言ではないのです!!だって、この動画の「初見+初コメ」したの、私ですから!!」

まぁ、これには、梅歌、

「(うわ~、桜花ちゃん、この動画をかなり気に入っているよ~)」

と小声で松華に離すと、松華、ただたんに、

「(でも、この動画を投稿したのがあの人たちだって知ったら卒倒してしまうよ・・・。いそれは言わないでおこう)」

と小声で言っては桜花のことを気にしてそっとしておこうとしていた。知らぬが仏、とはこのことをいう・・・のだろうか・・・。

 

 こうして、桜花としては梅歌と松華はスクールアイドルとしての基礎を十分固めた、ということもあり、この日以降、自分が使っていた中・上級向けの練習本をもとに桜花も入っての3人での練習をすることにした。最初のころは初めてのことなのでぎこちなかった梅歌と松華であったが、桜花に合わせていくことで次第に上手になっていった。これには、桜花、

(なかなかいいじゃないの。2人ともこれならいけるかも?」

と淡い期待をしていた・・・。

 また、梅歌も梅歌でどんどんうまくなっていくことに対し、

(毎日が充実しているよ!!練習すればするほどレベルがあがっていくのを感じている。やっぱりスクールアイドルをしてよかった!!私、毎日毎日が楽しい!!いや、私、今、輝いている、そう思えてくるよ!!)

と自分が追い求めていた輝き、それを実感している、そう感じていた。

 だが、その一方で、桜花は悩んでいた。それは・・・、

(でも、もっとレベルアップしたい。レベルアップしてあのAqoursを完璧に潰してやりたい!!)

そう、あのAqoursを完全に潰す、それ以上のレベルを目指そうとしていたのだ。

 

 そのため、翌日、桜花と自宅にて桜花は自分の父で静真で権力を持っていた木松悪斗にあるお願いをした。

「お父様、お願いがあります。私の(スクールアイドル)部に専用のコーチをつけてください。万全の態勢であのAqoursを完膚なきまで叩き潰したいのです」

そう、自分たちのレベルアップのために桜花は父に対し自分たち専用のコーチをつけてもらうようにお願いしたのである。

 専用のコーチ・・・、ラブライブ!を知るものならラブライブ!に優勝したμ'sやAqours

は自分たち専用のコーチなしで自力で優勝した、と思うかもしれないが、μ'sやAqoursの場合、自分たち専用のコーチがいなくてもその筋のプロといえる存在が実はいたのである。たとえば、μ'sの場合、小さいときからバレエを習っていた影響でダンスにおいて実力者であった絵里、同じく、小さいときからピアノなどを習っていて音楽関連なら右にでるものがいない真姫、スクールアイドルへの意識の高さなら誰にも負けない、それでいて過去に自らスクールアイドルをしていたにこ、など、実力者ともいえる存在がいたのである。また、Aqoursにしても旧3年生組である、ダイヤ、鞠莉、果南は1年のときに初代Aqoursとして将来はラブライブ!決勝まで進出できる、それくらいの実力をもつくらいにまでなっていた。また、果南やダイヤはダンスの、鞠莉は歌唱の実力は折り紙付きであった。なので、Aqoursにとって旧3年生組であるダイヤ、鞠莉、果南は後輩の千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネにとってスクールアイドルの先輩であり先生であった。あと、ラブライブ!を通じて知り合ったSaint Snowとは情報交換やラブライブ!優勝に向けての練習プログラムの作成などで互いに助け合っていた。まぁ、μ'sやAqoursがラブライブ!で優勝できたのは地道な練習の積み重ねや「学校を廃校から守りたい」「自分たちとみんなとの夢、ラブライブ!優勝を叶える」、そんなやる気がすごかったことも理由の1つになるのだが、μ's・Aqoursのメンバーのなかにプロ級のレベルをもった実力者がいたという偶然、いや、必然もあったにちがいないだろう。

 そして、そのことを考えると、桜花の言うことも一理あった。桜花、梅歌、松華はスクールアイドルとしては初心者であった。では、そのほかのことで実力があるのか、というと、それも皆無であった。つまり、この3人は本当にスクールアイドル初心者、なんの実力も経験もないただのひよっこ、なのだ。そのため、桜花としては自分が本を使い自分たちの力でレベルをあげていくとともに専用のコーチをつけることでそのレベル上げを加速させたい、と思っていたのである。いや、専用のコーチをつけることでμ'sやAqoursみたいなラブライブ!で優勝できる、それくらいのレベルを短期間であげてみたい、そう桜花h思ったのかもしれない。

 dが、父の答えは意外なものだった。桜花に向かって、木松悪斗、

「うんっ、くだらない!!専用のコーチをつける?そんなものに大金をはたくのがもったいないわ!!言っておくが、スクールアイドルもそうだが、音楽とは、所詮、ただのお遊びだ!!そんなもののために大金をはたくなら旺夏みたいな実績をだしているところにお金を使った方がましだ!!」

そう、桜花の父、木松悪斗は(前述の通り)音楽をただのお遊び、としかみていなかった。なので、より効率的にお金を使うなら桜花のいるただのお遊び(と木松悪斗が勝手に思っている)のスクールアイドルより長女の旺夏のいる、そして、インターハイ優勝という実績を残している(女子サッカー部のような)部活の方がまし、というのだ。これには、桜花、

「お父様、これはお父様にとってあのにっくきAqoursを倒すための投資です!!そのことを・・・」

と言おうとするも、木松悪斗、そんな桜花の話を遮っては桜花に対しこう言い返す。

「それに、お前、以前、こう言っていたよな、「Aqoursに勝つなんてちょちょいのちょいです」ってな!!この言葉に二言はなかったよな!!」

そう、以前、桜花はスクールアイドルを始める際、父である木松悪斗に対して「Aqoursに勝つなんてちょちょいのちょいです」と言っていたのである。Aqoursに勝つことなんて簡単、その言葉は、今、桜花に対して巨大ブーメランとして戻ってきたのである。なので、その父親からの言葉に、桜花、

「た、たしかにそうですけど・・・」

と、しぶしぶそれを認めると、父木松悪斗、そんな桜花に対し、

「いいか、そんな無駄なことをお願いするな!!それよりもはやくあのにっくきAqoursを完全に叩き潰せ!!いいな!!」

と桜花の願いを完全拒否するとともにさっさとAqoursを倒すように催促してきたのだ。これには、桜花、

「・・・」

と黙るしかなかった・・・。

 

 そんな木松悪斗であったが、内心、こんなことを考えていた。

(あの役立たず(桜花)のためにお金なんて使えるか!!今はな、そんなことで使うお金の余裕なんてないんだぞ!!ただでさえ(私が率いている)投資グループが危機的状況なんだ!!いや、組織存亡の危機なんだ!!お金なんてあまりないんだぞ!!それなのにそんな余興のためにお金を使ったらこちらが破産してしまうぞ!!)

そう、このとき、木松悪斗とその投資グループは危機的状況、いや、桜花のためにまわせるお金なんてない、それくらい赤信号がともるくらいに苦境に立たされていたのである。というのも、統合問題で月・Aqoursに完全敗北を喫した木松悪斗、その問題において、月・Aqoursのバックにいる沼田・小原家より木松悪斗の投資グループが危機的状況になるくらいの大きな罪を与えたことで本当に木松悪斗の投資グループは危機的状況に陥ったこと、それを乗り切るために木松悪斗が先頭に立って切り盛りするとともに3つの施策を実施したことはまえにも話したが、そのときよりも状況が悪化していたのである。

 まず、木松悪斗の元右腕で貴重な情報源であった裏美を失脚させたことで裏美の人脈からくる裏情報が入ってこなくなったのである。そのため、木松悪斗が情報を手に入れたときにはすでにその情報をもとにした取引が終わっていた、なんてことも起きてしまった。  

 また、木松悪斗の左腕であった猪波をもしものために函館に送って以降、自分たちが買収した企業の多くが経営に行き詰まり倒産する事態が多発したのである。猪波は経営の才とその経験があったので買収した企業の経営はこれまではよかたのだが、その猪波がいなくなったことで猪波と同等の経営の能力を持つスタッフがいないなかで買収した多数の企業の経営するのは無理があった。というわけで、木松悪斗の投資グループが買収した企業の多くが経営に行き詰まり倒産してしまった。また、猪波がいなくなったことで自慢のACTシステムが収集する情報に偽物、フェイクニュースが紛れ込む事態が多発、おsの偽の情報により取引した結果、大損する事態も起きてしまった。

 まぁ、そんなわけでして、これらを受けて木松悪斗の投資グループに出資している出資者たちがどんどん出資を取りやめる事態にまで進展してしまった。木松悪斗の投資グループの出資金のほとんどが木松悪斗個人のものであるがわずかだがほかの出資者から出資されたお金もあった。それを木松悪斗が企業の買収などに使いそこからでる利益の僅かをほかの出資者に分配していた。だが、その木松悪斗の投資グループが危機的状況に陥っている、それに対して木松悪斗が先頭に立って動いているにもかかわらず悪化している、いや、赤字を出すところまできている、さらに、買収した企業の多くが倒産している、などなど、木松悪斗にとって悪い情報ばかりだとさすがの出資者も出資を取りやめてもおかしくなかった。結果、多くの出資者がこのグループへの出資を取りやめてしまった。これにより木松悪斗の投資グループはお金が少ない、投資に使えるお金があまりない状況にも陥ってしまった。そのグループの出資金のほとんどが木松悪斗からのものだったが、それだけでは足りなかったのだ。また、そのグループがもっていた静香の企業などの株のほとんどを売却したことで投資に使うお金を工面したものの、そのお金もすぐに投資にまわしてなくなってしまった。なので、木松悪斗の投資グループは本当に存続そのものに赤信号がともっている、そんな状況に陥っていたのである。

 ただ、それでも木松悪斗はなんとかしようとしていた。木松悪斗がもつ資産、たとえば、自宅やお金、個人所有の株式、までには借金の抵当がつけられていなかったが、これ以上悪化すればそれすらしないといけなくなる。なので、木松悪斗は本業である投資のみにお金も時間も集中させようとしていたため、桜花にまわせるお金なんてもとからなかったのである。

 ただ、そんな木松悪斗もこんなことを考えていた。

(まぁ、静真については(自分の娘である)旺夏や私の息のかかった理事や先生たちがいるから大丈夫だろう)

と、静真の部活動に参加している生徒たちを束ねる組織、部活動連合会、その会長にしてその生徒たちを支配している自分の娘、旺夏、そして、たとえその生徒の保護者たちの人望をなくしたとはいえ、今だにその保護者たちを束ねている部活動保護者会、その会長に自分がなっていること、今なお、その保護者会、さらには、この静真の理事たちや先生の多くが木松悪斗の息がかかっていた、ということもあり、「そいつらがいれば静真の自分の天下も安泰」と簡単に、木松悪斗、考えていた・・・。

 

 だが、そんな静真においても木松悪斗の知らないところでちゃくちゃくと、月たち生徒会、沼田の反撃が進んでいた。

 まず、木松悪斗にバレないように静真の理事たちを次々と交代させていた。静真の理事たちは木松悪斗と裏美を含めて定員いっぱいの10名、うち、裏美は失脚したので現在は9名なのだが、木松悪斗を除いた理事8名に対し沼田はいろんんな理由をつけてその理事たちを辞めさせていったのだ。その理由とは、賄賂とか横領など、なかには静真への裏口入学なんてものもあった。それもこれも木松悪斗の権力を傘に実際に行われていたことだったが、それを沼田は自分の力を使って調べ上げ、理事たちに対して自ら辞めるか警察に逮捕されるか木松悪斗の知らないところで迫ってきたのである。こうして、理事たちの多くが木松悪斗に理事を辞めることを知らせずに辞めていった。その理事たちの代わりに沼田が連れてきた優秀な会社経営者や弁護士たちを静真の理事に就けたのである。

 また、木松悪斗の息がかかった先生たちに対しては、全員、教員免許はく奪・・・まではせず、優秀なベテラン教員を指導につけて、木松悪斗の考えよりも素晴らしい教育指導がある、と研修を続けて木松悪斗の洗脳から解き放つことに重点をおいた。悪いことを実際にしていた理事たちとは違い、先生たちはたとえ木松悪斗によって洗脳されていたとしても静真の生徒たちに対して、熱く、それでいて、その生徒のためになる指導をしてきたのだ。そのため、静真出身の人たちの多くがかなり優秀だった。それくらい静真の先生たちは優秀、といえたので、沼田はそんな先生たちを辞めさせずに、逆に、たとえ木松悪斗が先生たちになにかしてきたとしても先生としての仕事と生活、身分は保障する、そのことを確約しては研修を何度も行うことにより木松悪斗からの洗脳を解くことにしたのだった。また、静真の部活に入っている生徒たちのために雇われているコーチ陣たちも静真の生徒たちと同様にすることでこれまで通り働くことができた。とあひえ、幾人かは木松悪斗に熱く信奉していたこともあり、また、勝利絶対至上主義を熱く信じていた、こともあり、その人たちは静真から去っていってしまった。

 こうして、月たち生徒会、沼田による反撃作戦はちゃくちゃくと行われていたのだが、木松悪斗にバレずに静かに行ったとしてもかなり大がかりな作戦だったのでいつかはどこかで木松悪斗にバレてしまう、ものなのだが、たとえそんなっ情報があっても木松悪斗はそれすら無視・・・というかそれに対処する余裕がなかった。だって、それくらい自分の本業である投資グループの運営に赤信号がともっていたのだから。

 そんなわけでして、木松悪斗の静真における権力、影響力は徐々に知らないうちに削られていったのである。

 

 一方、木松悪斗が溺愛している自分の娘、旺夏にも変化が・・・、いや、状況を一変させることが起きていた。

 女子サッカー部の練習中、もとからいた(静真本校出身の)部員に対し、旺夏、浦の星出身の部員と仲良くしていることに対し、

「おい、あんな下っ端(浦の星出身の部員)とともに練習するな!!こちらの実力が落ちるだろ!!」

と文句を言ってきた。

 だが、旺夏が文句を言ったその部員はこんなことを言いだしてきた。

「旺夏さん、たとえ浦の星の出身だったとしても同じ部員だよ。それくらいのことで目くじらを立てないでよ」

 この部員の言葉であるがそれに対し、旺夏、さらに文句を言う。

「そんなもの、関係ない!!初戦敗退続きだった浦の星出身、それだけで下っ端なんだよ!!こちらの士気がおちるだろ!!」

まぁ、旺夏からそんなことを言われたからだろう、その部員は旺夏に対し、

「はいはい、わかりましたよ、キャプテン(旺夏)」

と言ってはどっかにいってしまった・・・のもつかの間、旺夏の忠告を無視するのがごとく、別の浦の星出身の部員のもとにいっては一緒に練習を始めてしまった。これには、旺夏、

「なんで、私の言うことをきかないんだよ!!私はここ(女子サッカー部)のエースでキャプテンなんだぞ!!そんな私の言うことをきくのが当たり前だろ!!」

とぶつぶつ文句を言ってしまう・・・。

 統合問題での木松悪斗の完全敗北の影響は旺夏のいる静真の部活動にも及んでいた。

「浦の星の生徒が静真の部活動に参加すれば悪影響がでる」、そんな声が吹き飛んだことにより、浦の星出身の生徒たちも静真の部活に参加することができるようになった。とはいえ、最初のころは浦の星出身の生徒たちはその声の影響により静真本校出身の生徒たちが自分たちになにか嫌がらせや差別されるのではないか、と心配していた。だが、それは杞憂に終わった。ラブライブ!延長戦後に配信された沼田からのメールによりこれまで信じてきた、「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義の間違いに気づいた静真の生徒たちは新生Aqoursのお披露目ライブにて浦の星の生徒たちと一緒に汗を流してそのライブの準備運営をしたこともあり、浦の星の生徒たちと意気投合、それが静真の部活動においても発揮されたのである。そのため、今は旺夏以外の部員たちは浦の星出身の部員たちと一緒になりながら部活を楽しんではその部活を好きになる、そして、さらに一緒に楽しむ、そんな無限のサイクルを自ら行っていたのである。

 一方、旺夏からすると、今なお、「勝利こそすべて」。勝利絶対至上主義のしがらみにまだ絡まっている、いや、その考えの殻のなかに籠っているため、女子サッカー部、部活動連合会、ともに孤立、いや、まだその考えに固執している生徒数人とともに孤立していた。それはまるで、旺夏自身、裸の女王様状態、に陥っている、といえた。

 とはいえ、女子サッカー部においては、実力、統率力、ともに旺夏が一番上、ということもあり、ほとんどの試合も昔みたいに旺夏を中心に戦術を組む、なんてことも多かった。だが、昔は「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義という考えに部員全員が染まっていたこともあり、たとえ旺夏中心の戦術をとったとしても旺夏の命令ですべてが動く、なんてことがほとんどだった。だが、今は旺夏以外その考えを捨てたこともあり、たとえ、旺夏の命令があったとしてもそれが間違いであれば旺夏に従わずに反論する、むしろ、旺夏以外がその命令を無視してより効率的な作戦を実行する、なんてことも起きていた。そのため、旺夏からすれば、

(なんで私の言うことをきかないの!!私の言うことが絶対であり、私の言うことを聞けば絶対に勝てるんだ!!)

と怒ってしまうのもしばしばあった。それってまさに、裸の女王様、といえた。

 そんな旺夏に対しある部員が話しかけてくる。

「あの~、旺夏キャプテン、私と一緒に練習しましょう」

旺夏に話しかけてきた部員の名は瑠璃、旺夏と同じく3年生であるのと同時に浦の星では女子サッカー部のエースであった。とはいえ、浦の星では女子サッカー部とは別に陸上部も掛け持ちしていたこともあり、サッカーの実力としては浦の星一、であったとしても静真のなかでは中の下、くらいであった。だが、そんな瑠璃だったが女子サッカー部での部活動中はこんなことを考えていた。

(たとえ実力がなくても私は大丈夫!!だって、私たちはみんなと一緒に部活を、女子サッカーを楽しんでいる!!一緒に好きになっていく!!あのAqoursみたいに、私たち、今、輝いている!!)

そう、旺夏の考えとは180度違った考え、「部活動とは楽しむこと、好きになることが一番」その考えのもとで、自分自身、部員たちと一緒に部活を楽しんで好きになろう、そして、みんなと一緒に輝こう、と考えていたのである。それは、自分たち、浦の星にとてtシンボルというべきAqoursと同じ、といえた。Aqoursほど、いや、Aqoursのいた浦の星の生徒たちほどその考えが強い者はいなかった。いや、その考えを、今、静真において発揮しようとしていた。こうすることで無限のサイクルが働き、自分たちは、静真は、もっと強くなれる、そう瑠璃は言いたいのだろう、旺夏に対し・・・。

 だが、そんな瑠璃の誘いに旺夏は・・・、

「ふんっ、浦の星ではエースだったお前だが、静真ではただの下っ端なんだ!!どっかに行ってくれ!!」

と、瑠璃のことを下っ端呼ばわりしてはどっかに行くように言ってきた。これには、瑠璃、

「旺夏キャプテン・・・」

と旺夏のことを見つつも、旺夏キャプテンの命令だから、という理由で旺夏のそばから離れることにした。それでも、瑠璃

(旺夏キャプテン、なんか寂しそう・・・)

と自分のことを下っ端呼ばわりする旺夏のことを心配そうに見つめていた・・・。

 だが、これが、旺夏と瑠璃、2人の運命をわけることになった。「勝利こそすべて」、勝利絶対至上主義に固執するあまり、部においても、連合会においても、さらに、静真においても孤立化する旺夏、対して、「みんなと一緒に部活動を楽しむ」、そんな考えのもとでみんなと一緒に頑張ろう、部活を楽しもう、好きになろう、としていた瑠璃、そんな2人の運命の歯車は2人にとって対照的なものとして動き始めようとしていた・・・。



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ラブライブ!RSBP 第19話

 そんなわけでして、父である木松悪斗、姉である旺夏の支援を得ることができない桜花にさらなる問題が降りかかった。それは桜花に対して静真の生徒たちから不平不満の声があがっていたのだ。それはまえの中学のときと同じく桜花の父親があの木松悪斗であることに加え、同じ学校(静真)にリトル木松悪斗といえる姉の旺夏がいること、さらに、自分の父と姉にとってにっくき相手、叩き潰したい相手であるAqoursに対し自分の父と姉のために桜花自らスクールアイドル部を創部したことでAqoursは同好会として活動せざるをえなくなったこと、そのことを桜花は「Aqoursに勝った」と言いふらしていること、それが原因だった。特にAqoursが同好会として活動していることについてかなり不評だったらしく、なかには「桜花がAqoursに対してそうしたのは自分の保身のため」「いや、父や姉に対して点数稼ぎをするためなのさ」とか事実無根のことまで尾ひれがつくかのごとく噂されるようになった。というのも、今や、静真の生徒のあいだではAqoursそのものが静真と浦の星の統合の象徴としてみられるようになっていたからだった。この静真を支配していた木松悪斗とその娘の旺夏によって1度は地獄に落とされたものの仲間たち(月など0)の助けをかりて不死鳥のごとく復活、あのラブライブ!延長戦で静真の生徒や保護者たちの目を覚まさせ、新生Aqoursお披露目ライブで静真と浦の星の生徒たちの心を1つにした、そんな劇的な物語に静真の生徒たちは心震わせた。もちろん、これは事実なのだが、この一連の流れを月は「Moon Cradle」という題名の物語として執筆しては静真の生徒たちに公開、その物語はAqoursを神聖化するくらい静真の生徒のあいだで盛り上がったのである。そこに今回の桜花によるAqoursの同好会の話が伝わったため、「自分たちにとって、いや、、静真にとって英雄であるAqoursに酷な仕打ちをするなんて許せない」といった声が生徒の大半を占める状態になってしまった。ただ、その声について、Aqoursのリーダーである千歌はというといつも、

「ううん、それは違うよ。彼女もね被害者なんだよ。だから、彼女のことを責めないでね」

と言っては桜花のことを擁護する発言を繰り返していた。

 というわけでして、桜花、静真のなかでも孤立支援の状態になろうとしていた。だが、それでも桜花は、

(う~、このままだと自分たちはレベルアップできない。私たちだtって練習などでレベルはあがってきている。だけど、それでも限界を迎えてしまう。やっぱりちゃんとしたコーチにお願いしないとこれ以上のレベルアップはできない。そのための資金をお父様から引き出さないとじり貧になってしまう・・・)

と、それでも父木松悪斗からの資金援助をなんとかしてでも引き出さないといけない、そう考えていた。それは桜花からいえば今の練習によって自分たちはレベルアップしている、だけど、3人ともまだスクールアイドル初心者、である今の状況ではいつかはじり貧になってしまう、そうならないためにも父木松悪斗から資金援助をしてもらい自分たち専用のコーチをつけてもらいたい、そんな思いからのものだった。だが、父木松悪斗は資金的にそんな余裕なんてなかった。だけど、桜花はそのことを知らずに逆に父木松悪斗からの資金援助に期待をしていたのである

 そんな桜花だからなのか、父木松悪斗からなにがなんでも資金援助を得るためになにか対策を考えた。

(う~ん、あのお父様が納得してくれる方法・・・、方法・・・)

 すると、桜花、ある妙案を思いついた。

(あっ、そうだ!!実績を造ればいいんだ!!Aqoursを打ち倒すだけの実力をもっている、そんな実績をつくればいいんだ!!)

そう、桜花が考え出した妙案とは実績作りであった。実績があれば自分たちはAqoursを倒すだけの実力がある、そうなれば、あの父木松悪斗から、スクールアイドルを含めた音楽をたたの遊びとしかみていない、あの木松悪斗から資金援助してくれる、そう桜花は思ったのである。

 そして、桜花はその実績作りのための犠牲者を誰にするか考えてみる。

(う~ん、私たちのために犠牲者になってくれる人物、Aqoursと張り合っていた相手・・・、相手・・・、あっ!!)

どうやら、桜花、自分たちの実績作りのために犠牲になってくれる人物を決めた曜だ。そのターゲットとは・・・、

(そうだ!!たしか、ラブライブ!延長戦でAqoursと戦った相手、Saint Snow、その1人、理亜をターゲットにしよう!!)

そう、桜花がターゲットに選んだのはSaint Snowの理亜だった。実は、桜花、SNSなどで調べて理亜の近況を知っていたのである。理亜はあの延長戦以降、姉の聖良がスクールアイドルを卒業したため、1人になってしまったが、ほどなくして新1年生が理亜の新しいパートナーとして迎え入れ、今は2人に新ユニットとして活動する予定、となっていた。そこで、桜花、こんなことを考えてしまう。

(たしか理亜はスクールアイドルとして活動していた。だけど、所詮はスクールアイドル、そこまで実力があるとは思えない。だって、あのAqoursとどっこいどっこいの勝負をしていたから。それに、新しく理亜のパートナーになった新1年生はまだ私たちと同じ初心者だ!!私たちの実績作りにはちょうどいい相手だ)

そう、桜花は理亜の実力はそこまでないと思っていた。桜花はあの延長戦の動画を見て、Aqours、そして、Saint Snowのレベルはそんなに高くない、誰でもできるレベルである、と評していた、それが今になってひょっこり現れたのである。また、新しく理亜のパートナーとなった新1年生は自分たちと同じく初心者、これなら自分たちは勝てる、と桜花はふんでいたのである。

 だが、桜花は、このとき、2つの間違いを犯していた。1つ目は理亜の実力である。理亜の実力はみなさんが知っている通り、あのラブライブ!で全体の8位、そのラブライブ!で優勝したAqoursと(ラブライブ!延長戦で)互角ともいえる戦いを繰り広げた、それくらい全国トップクラスの実力の持ち主であった。

 そして、2つ目はその理亜の新しいパートナーとなった新1年生はその理亜のによって実力を伸ばしていた、ということだった。Aqoursの千歌たちにとって旧3年生のダイヤたちがスクールアイドルの先輩であり先生であったのと同じよう理亜の新しいパートナーとなった新1年生にとって理亜はスクールアイドルの先輩であり先生であった。また、理亜たちは「Saint Snow第3のメンバー」といわれている強力なサポートメンバー、いや、マネージャーがついていた。そのマネージャーはもともと日本を代表するジュニアフィギュアスケート選手だったらしく、その経験をもとにした練習メニューを考案するくらい優秀なマネージャーであった。そんなこともあり、桜花自身、理亜たちの実力を過小評価、いや、とても低く評価していたのだ。だが、それがのちに桜花にとってある悲劇を生むことになる。

 とはいえ、そんな未来のことなんて露知らず、桜花は自分たちの実績作りのためにどう行動するか考えた。

(え~と、そうなれば、そのターゲットのいる函館に遠征することになる。そのための資金はあった。まぁ、これは私たちにとっていちかばちかの賭けになるのだけどね・・・)

えっ、桜花たちに函館遠征の資金がある!?そう、そのための資金は実はあった。それは、静真の部活なら必ず学校から支給されるお金、部活動費、だった。静真の場合、基本的な部の活動費として年に10万円、各部に支給される。その使い道は練習器具の購入や遠征費用のために使われることが多い。また、インターハイを制覇した女子サッカー部のような実績のある部にはそのための追加の資金援助もあった。ただ、年10万だと専用のコーチを雇うなんてできなかった。静真にいる部の専用コーチはその追加の資金援助からか木松悪斗の計らいで雇うことが多かった。ただ、その専用コーチを雇うにはかなりお金がかかるらしく、たった10万では1か月の給与すら出せなかった。そこで桜花はその専用のコーチを雇うための実績作りのためにいちかばちかの賭けを行うことにしたのだ。それが理亜たちを倒すための函館遠征であった。こうすることで桜花は

「函館遠征で理亜たちを倒す

Aqoursを倒すぐらいの実力があることを証明する

父である木松悪斗に対しそれを自分たちの実績として見せつけることで資金援助を確約させる

自分たち専用のコーチを雇う」

そんな皮算用をはじいたのである。ただ、逆にこの函館遠征が失敗に終わればその遠征費用はただの無駄金になる(それくらい、この函館遠征にはお金がかかっていた)、そんな意味でも桜花にとってこの函館遠征はいちかばちかの賭けであったのだ。

 そして、桜花は次にこの函館遠征のスケジュールについて考えた。

(そして、この遠征の期間だけど、今度のGWにしよう。それなら梅歌や松華もスケジュール敵に大丈夫そうだし、スクールアイドルとしての実力もこのころには様になっているはずだ!!)

GW、そのときに函館遠征することを桜花は決めた。桜花、もちろん、その期間に函館遠征する理由はちゃんとあった。スクールアイドルとしてのとはいえ桜花たちはまだ学生である。学生の本分は学業、ということもあり、桜花もその学業をおろそかにしてはいけない、そう常日頃から思っていた。また、桜花たちがやっている中級上級の練習もGWまでには形になっている、そう桜花はにらんでいた。スクールアイドル初心者であった梅歌、松華も桜花の指導もあり、だいぶ形になってきていた。なので、桜花からすれば、GW前までには自分を含めて様になっている、と思ったのである。その総仕上げこそこの函館遠征だったのだ。

 こうして、いちかばちかの函館遠征を決めたことで、桜花、こう夢見ていた。

(これでお父様も私たちの実力も絶対にみとめてくれるはず!!そのための犠牲者になってくれ、理亜!!)

絶対に理亜たちに勝つ、そんな妄想に桜花は顔をにやにさせていた・・・。いや、それ以上に、

(それに、Aqoursはまだ同好会のままだ。私たちみたいに活動するためのお金なんてないはずだ!!今頃苦しんでいるんだろうな・・・)

と、いまだに同好会扱いのために静真から活動資金がもらえない、そんなAqoursは資金不足に苦しんでいる、そう桜花は思って静かに笑っていた・・・。



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ラブライブ!RSBP 第20話

 そんなAqoursではあるが・・・、桜花たちがGWを使って函館遠征している最中、あの旧浦の星分校跡地で練習中、目の前にあるタブレットを見て、千歌、こう言いだす。

「あっ、○○高校のみんな、一緒に練習してくれてありがとう!!」

これには、タブレットの画面に映る○○高校のみんなから、

「いやいや、あのAqoursさんと一緒に練習できて本当にうれしいです!!またいつか一緒に合同練習をしましょう!!」

という声が聞こえてくるとルビィから、

「うん、絶対だよ!!それじゃ、さようなら!!」

と言っては通信を切った。そう、なんと、Aqours、ほかの高校のスクールアイドルとともにオンラインをつかった合同練習をしていたのである。で、「○○高校のみんな」というのが沼津にある静真以外の高校であった。Aqoursとはあのお披露目ライブのときに顔見知りになり一緒に合同練習をしようという話になったのだ。ただ、Aqoursの連数の場となる旧浦の星分校跡地は沼津郊外の山のなかにあるため、○○高校とは距離がある、ということで、オンラインを使った合同練習を行っていたのある。

 といった具合に、Aqoursは、今、オンラインを使っての合同練習をほかの高校のスクールアイドルと一緒に行っていた。この合同練習を行うことで自分たちでは見つけることができなかった弱点を見つけることができるし、なによりも、自分たちにとってみても刺激になる、という効果をもっていた。あっ、ちなみに、これを提案してきたのが新生Aqours、お披露目ライブにて静真の生徒側のまとめ役となった、静真Aqours応援団の団長、そして、今は忙しい月に代わりAqoursのマネージャーをしている(ヨハネの前世(中学時代)を知る者でルビィたちと同じ新2年生の)稲荷あげはであった。あげはがなにげなく、

「Aqoursと一緒に練習したい相手がいっぱいいるはずなのに気軽にAqoursの練習場(旧浦の星分校跡地)に行けない。なら、いっそうのこと、ネットを介して一緒に練習できればいいのに・・・)

と言ったことを千歌が偶然耳にしたらしく、

「だったら、インターネットを介して、それ、すればいいじゃん!!」

と気軽に言ったもんだから、もう大変、その千歌の言葉を真に受けた月はすぐに旧浦の星分校跡地に(沼田を介して)ネット環境を整備、光ファイバーなどを介して全国にいるスクールアイドルたちとネットをつなぐことができるようになった。こうして、毎日のようにAqoursはネットを介してオンラインで全国にいるスクールアイドルたちと一緒に合同練習を行っていたのである。

 そして、それ以外にもとんでもないことがAqoursには起きていた。それはこの○○高校とのオンライン合同練習が終わったあと、

「あっ、みんな、どうだった、○○高校のオンライン合同練習は?楽しかったかな?楽しかったら、ボク、うれしいよ!!」

と、Aqoursをねぎらいにきた静真高校生徒会長の渡辺月の次の言葉によるものだった。

「あっ、Aqoursの活動資金だけど、もう500万も集まったよ。目標の金額の50倍だよ、50倍!!」

えっ、500万?それも、これ、全部、Aqoursの活動資金!?この500万の正体とは・・・。それはこの月の言葉を受け手の曜の言葉でわかる。

「500万ってすごい金額だよ!!やっぱり、月ちゃん、頭いい!!今流行りのクラウドファンディングでAqoursの活動資金を集めよう、って月ちゃんが言ったときにはびっくりしたよ!!でも、まさか私たちのために500万という大金が集まるなんて、すごい!!」

クラウドファンディング!?そう、実は、月、クラウドファンディングを使ってAqoursの活動資金を集めようとしていたのである。Aqoursは静真では同好会扱いである。そんなAqoursのために、月、部に昇格させたいも学校の規定により桜花のスクールアイドル部がある限り部に昇格できない、なので、部ならもらえるはずの活動資金(部活動費)を学校から支給されない、自分たちのお金で活動しないといけない。でも、それだと十分に活動できない。ならばと月が考えたのがAqoursの活動資金をクラウドファンディングで集める、という手法であった。

 クラウドファンディング、ある目標を叶えるために資金をネットを使って不特定多数の方から集める手法である。最近だと、(小原鞠莉の中の人が主人公を務める)某アニメの第3期の制作費のために実施されたり、戦艦大和の46センチ主砲の内側を削りだす大型機械の移設保存のために実施されたりといろんなことに対して数多くのクラウドファンディングが活用されている。で、このクラウドファンディングには種類があり、金銭的リターンがない「寄付型」、金銭的リターンがある「投資型」、そのプロジェクトが提供するなにかの権利や物品を購入することで支援を行う「購入型」の3つがある。

 で、今回、月が使ったクラウドファンディングは「寄付型」であった。今回のクラウドファンディングではただのAqoursの活動資金を集めるだけ、なんのリターンもない、そんな条件で集めたのだが、たった1ヵ月で設定基金額だった10万をはるかに超える500万もの大金が集まったのである。それもこれもラブライブ!優勝という輝かしい実力をもちながら統合先である静真で同好会でしか活動できない、そんな不憫なAqoursに対する同情票、が多かったのだが、その同情票を集めるきっかけとなったのが、なにをかくそう、あの月が執筆した木松悪斗との戦いの物語、「Moon Cradle」(一般公開版)であった。この版では木松悪斗などの名前は伏せられているもの、静真の生徒やその保護者たちを介してAqoursを苦しめたのは木松悪斗であると断定され、そんな木松悪斗に苦しめられた、いや、今でも木松悪斗によって苦しめられているAqoursに対して同情票が集まったのである。そのため、そんなAqoursのために500万もの大金が集まったのある・・・のだが、このクラウドファンディングは匿名を条件に出資を募っていたのですが、実際のところ、500万のうち、各100万は沼田、小原家のポケットマネーから、15万は後輩たちが苦しんでいるということで、ダイヤ、鞠莉、果南が一緒になって出資したものだった。それでもAqoursのために500万もの大金が集まるとは、それだけAqoursを支えたい人が多いことを実感するものだった。 

 なお、同好会とはいえ、同好会の活動も学校での活動の一環として見られるため、クラウドファンディングによる資金集めも学校側の許可が必要なのだが、これまでだったらAqoursを敵視する静真の支配者である木松悪斗の反対により頓挫するものなのだが、今回はすんなりとOKがでた。なぜなら、月ら生徒会と沼田の後押しがあったこと、このクラウドファンディングについて論議しているとき、その論議に参加している8名の理事(定員10のうち、1は欠員、のこりの静真の理事の1人である木松悪斗は本業の立て直しのために欠席)のうちの半数が沼田の息がかかったものに交代していたこと、のこり半分の理事たちも「沼田一押し」の案件だったので反対できなかったこと、が大きかった。それくらい、静真における木松悪斗の権力はかなり落ちていた、それを物語るものであった。

 なお、このクラウドファンディングの説明文のなかで「このクラウドファンディングで集められたお金はAqours活動資金として、そして、ある親によって苦しんでいる少女のために使います」といった一文が書かれていた。「ある親によって苦しんでいる少女」、その言葉をいれたのはなにをかくそう、千歌、であった。月はもともと「Aqoursの活動資金」とだけ書くつもりだったのだが、千歌はその月に向かって、

「「Aqoursの活動資金」のあとに「ある親によって苦しんでいる少女のために」という分をつけて。お願い」

と言ったことで書かれた一文であった。その少女とは?そして、それと千歌との関係とは?

 とはいえ、まさか500万という大金を手にいれたことで、曜、

「これで当面の活動資金はなんとかなるね」

とこれで当面の活動資金には困らないことに喜んでいた。

 と、ここで、千歌、ある提案をみんなにした。

「ねぇ、この500万だけど、今度、静真で、Aqoursのライブ、してみない?」

これには、梨子、

「えっ、静真で私たちのライブを行うの?」

と驚くも、曜、すぐに、

「でも、それ、楽しそうじゃん!!私、賛成!!」

と千歌の案に賛成するとルビィたち新2年生からも、

「ルビィ、千歌ちゃんの案に賛成!!」「おらも賛成ずら!!」

「くくく、このミサ(ライブ)は私たちにとって宴になろうぞ!!」

と賛成の意をあらわす。最後に梨子も、

「みんあがそういうなら私も賛成かな?」

と言ったところで、Aqoursメンバー全員賛成、ということで、静真で自分たちのライブを行うことが決まった。

 ただ、このライブ開催が決まったことで逆に静真の生徒会長としての立場上、月、

「うわ~、このライブについてはボクも賛成だけど、このライブの準備、かなり大変かも・・・」

とAqoursという人気者ゆえにあの広い行動では人が入りきれず、それより大きな運動場を使わざるをえない、そこで大規模なライブ、その準備がかなり大がかりになってしまう、そう思うと生徒会長である月の苦労もかなりある・・・と思ってしまい月は苦笑いするしかなかった・・・。

 そんな大規模なライブを開催することが決まった、ということで千歌はヨハネにある提案をした。

「ところで、善子ちゃん、このライブに向けて、私たちのグッズ、作って?」

そう、このライブに向けてAqoursのグッズを作ろう、というのだ。というのも、クラウドファンディングで集めたお金だけでなく、自分たちのライブに来てくれたお客様のために自分たちのグッズを作って売ることで活動資金やこのライブの資金を集めよう、というのだ。実は、これ、普通のアーティストなどが行う資金集めの手法の1つだったりする。昨今、CDなどといった円盤の売上はネットの配信などに押され下降気味になっている。それに代わってライブを行ってそこで自分たちのグッズを売ることで活動資金を得る、そんな手法がとられるようになった。なので、アーティストの活動資金の集め方としてはCDなどの円盤の売上でなくライブによるグッズの販売にかなりのウェイトをおく、なんてことも起きていた。それをAqoursもまねようとしていた、ということである。

 で、そのグッズ制作についてはヨハネに一任していた。ヨハネは堕天使グッズを集めている関係上、そのグッズを作っている企業とは太いパイプを持っていた。また、ミサと称してネットで配信していることもありネットに強かった、そのためにグッズの制作・販売をヨハネに一任している、というわけである。

 というわけで、千歌、さっさとどんなグッズを作るのか、各メンバーにあったグッズをどう作るのか、その案をまとめたものを曜と梨子と一緒になって作成、それをヨハネに渡す。すると、ヨハネ、その紙に書かれていた内容にびっくりする。

「えっ、メンバー9人分!!って、ヨハネたち、たった6人しかいないのだけど・・・」

そう、その紙には9人分ものメンバーのグッズの案が書かれていたのである。でも、Aqoursはヨハネを含めて6人しかいない。なのに、メンバー9人分。なんか多すぎであった・・・。

 だが、ヨハネ、この9人分をこう理解した。

「あっ、元リトルデーモン(Aqoursの元メンバー)だった、ダイヤ、鞠莉、果南の分だ!!」

まぁ、そう考えるのが妥当、といえた。メンバー9人といえば、元メンバーあった、ダイヤ、鞠莉、果南、の分と考えれば納得がいく。

 ところが、その紙をルビィが見てはっとする、こう言いながら・・・。

「でも、ルビィたち以外のメンバーのグッズ、なんか、お姉ちゃん(ダイヤ)のとは違う!!」

そう、ルビィたち6人以外のメンバーのグッズの内容は、元メンバー、ダイヤ、鞠莉、果南のものとはものすごく離れているのである。たとえば、6人以外のメンバーのグッズのなかには桜を模したものもあった(もちろん、桜内梨子とは関係ないもの)。

 これには、千歌以外のメンバー5人、その場にいた月、全員とも、

「?」

を頭の上に浮かべていた。

 そんな6人に対し、千歌、あることを話す。

「実はね、あの娘たちの分も造ろうと思っているの」

これには、千歌以外の6人全員、

「!」

と頭の上にビックリマークをのせると、ヨハネ、そんな千歌に対しこう反論する。

「千歌、なんであの娘たちの分まで作るわけ?あの娘たちはヨハネたちにとって、敵、なの!!」

このヨハネの反論、ここにいる千歌以外の6人にとって納得いくものだった。この門語りを含めた物語群、「ラブライブ!SNOW CRYSTAL」、その最初を飾る物語、「NEXT SPRKING」をはじめとして、ギャグ要員(って、それ、失礼!! by ヨハネ)にみえるヨハネであるが、これでも、新2年生(ルビィ、花丸、ヨハネ)のなかでもかなりの常識人、だったりする。なので、このヨハネの反論はある意味当たっていた。

 だが、そんなヨハネの反論に対し、千歌、熱く諭す。

「でも、あの娘たちはあの人によってもてあそばれていると思うの。特に、あの娘たちのリーダーであるあの娘は、あの人、ううん、あの親によって小さい時から苦しんでいると、千歌、思うの。だから、千歌、決めたの、今度静真で行うライブ、その娘を含めてあの娘たちを救うためのライブにしたいの。みんな、それでいい」

そう、千歌はあの娘を救うための、特に、あの娘たちをもてあそぶ、あの人、いや、あの親によって小さい時から苦しんでいた、あの娘を救うためにライブをここ静真で行う、と言ったのだ。それはちょっとあわてんぼうの、普通怪獣、ではなく、Aqoursとしての、ううん、Aqoursを含めたみんなのために頑張ろうとしている、そんな純粋無垢な千歌という小さな、いや、大きなリーダーからによるものだった。

 ただ、これには、ヨハネ、

「でも、そうなるとは限らないんじゃ・・・」

と、反抗しようとするも、ルビィ、いち早く、

「うん、ルビィも千歌ちゃんの考えに賛成!!ルビィもあの娘たちを救いたい!!」

と千歌たちの考えに賛同すると、ヨハネ・・・、

「それじゃ、曜と梨子も賛成なの?」

と、Aqoursの常識人である2人に尋ねると2人とも、

「私も千歌ちゃんの考え位に賛成。私もあの娘たちを救いたい」(梨子)

「あぁ、私がいち早く賛成したかったにな・・・。でも、私も千歌ちゃんの考えに賛成!!」(曜)

と千歌の考えに賛同。そのためか、花丸、

「善子ちゃんの負けずら!!あっ、おらも千歌ちゃんの考えに賛成ずら!!」

とヨハネに向かって言うさすがのヨハネも、

「う~、こうなったらこのヨハネも賛成せざるをえない・・・」

と白旗を降ってしまう・・・。

 こうして、メンバー6人全員の一致、ということで・・・、

「これで、あの娘たちの救うためのライブ、ここ静真で行うことに決定!!」

と、千歌、大きな声をあげてはあおの娘たちを救うためのライブを行うことに決定した。これには、月、

「千歌ちゃんって思っている以上に大物になれる気がするよ・・・」

と、あまりにも意外過ぎる、それでも、だれかのために行うライブ、それを平気で提案して全会一致でその案を押し通す千歌のすごさに脱帽していた。

 そんな月を見てか、千歌、こんな言葉を送る。

「だって、あの娘たちも、千歌たちAqoursと同じスクールアイドルだもん!!そう、千歌たちと同じスクールアイドルだもん、あのRedSunも・・・」

 

 と、ここで時間は戻るが、GW前、桜花は梅歌と松華に対してあるものを聞かせていた。それは・・・、

「これって私たちの曲?」(梅歌)

「うん、そうかも・・・」(松華)

そう、梅歌が2人に聞かせていたのは、自分たち専用の曲、であった。

 で、この曲を聞かせた上で桜花、この曲について解説する。

「うん、2人の言う通り、これは私たち専用の曲、はじめての持ち歌、です。私があるサイトを使って作詞作曲を依頼、つい先日にできたばかりの曲です」

そう、この曲は桜花が1ヵ月前にあるサイトに作詞作曲を依頼してできた曲だった。その桜花が作詞作曲を依頼してきたこのサイトの名は、

 

「なぞの音楽屋さん」

 

だった。そう、この物語の同軸線上の物語、「ラブライブUC」ではお馴染みいサイトである。なぞの双子の姉妹が運営するこのサイトはどの曲でも作詞作曲できるという口コミでかなり有名だった。で、この姉妹、今度の春、あの日本橋女子大学に入学したのだが、そんな大学生活と合わせてこのサイトの運営も行っていた。そんなわけで、作詞作曲ができないスクールアイドルにとってこのサイトは、神、ともいえる存在だった。むろん、班もこのサイトの存在を知っていたため、ダメもとでこのサイトに作詞作曲を依頼したのだが、この依頼を受けた姉妹は、

「あっ、お姉ちゃん、この依頼、面白そう、「なんか熱い曲にしてほしいって」

「うん、面白そう、この依頼。まず、この曲、作ってみる・・・」

と、すぐに桜花の依頼を受けてもののみごとに作詞作曲、それを依頼元である桜花へと送ったのである。

 で、この曲を聞いた桜花、

「この曲、なんかすごいかも!!こんな私でも燃えたくなる、そんな感じがする!!」

と、この曲に太鼓判を押した。で、GW前に自分たちのパフォーマンスもある程度形になった、ということで桜花はようやくこの曲を2人のまえに聞かせた、というわけである。

 そんな曲を聞いた梅歌はついこんなことを考えてしまう。

(私たちだけの曲、なんかいいかも!!なんか私もギラギラしてきた!!う~ん、はやく歌いたい!!)

そう、梅歌、この曲を聞いて早く歌いたい気分になってしまったのだ。むろん、そんな梅歌を見てか、松華も、

(梅歌がいつも以上にヒートアップしている!!これは本気かも・・・)

といつも以上に燃える梅歌に驚きを隠せずにいた。

 で、この曲を聞いた上で、桜花、梅歌と松華に対しある計画を話す。

「そして、この曲を引っ提げて、私たち、静真高校スクールアイドル部、GWに函館に遠征します。そこである人たちと対決することにします!!」

この桜花の言葉に、梅歌、松華、ともに、

「えっ、函館、ってことは、まさかあのSaint Snowと戦っちゃうの?」(梅歌)

「桜花さんの言葉から察するにそうかもしれません。でも、最初からかなりの実力者と戦うなんて、大丈夫でしょうか・・・」(松華)

と、「函館に遠征する=あのSaint Snowと戦う」という図式がすでにできていたのか喜びと不安が入り交じっていた。いや、それ以上に、

(ついに私たちもステージレビューするんだ・・・。それもSaint Snowと一緒!!今、私、キラキラしている!!輝いている!!いや、ステージに立てばもっと輝くことができる!!とてもうれしいことだよね、これって!!)(梅歌)

(本当にこれで大丈夫なのだろうか?Saint Snowってかなりの実力者だよね。それに戦いを挑むなんて無謀じゃ・・・)(松華)

と期待と不安が交差していた。

 というわけで、桜花たちはGWに函館遠征に行くことに・・・、

「ちょっと待って!!」

と、ここで、松華、いきなり話の流れを止めると桜花に対しある質問をした。

「ところで、私たちのグループ名、なんていうの?」

そう、桜花たち3人のグループ名がまだ決まっていなかったのだ。これまでは梅歌と松華の練習のために練習漬けの毎日であったが、今度、GW中に函館に遠征する、そのときに自分たちのグループ名を決めていないとただたんに「静真高校スクールアイドル部」というグループ名、というか、学校の名前、になってしまう。なので、ここで、自分たちのグループ名はないのか松華は桜花に聞いてみたのである。

 これには、桜花、

(えっ、グループ名!?それまでは・・・)

と突然のことだったのか

「そ、それは・・・」

とちょっとたじろくも、梅歌、自分たちのグループ名なんなのか、わくわくししていることもあり、

「ワクワクワクワク」

と桜花の答えに期待して待っていた。そのためか、桜花、

「え~と、え~と」

とグループ名のことまで考えていなかったのか、困惑していた。

 だが、そのときだった。一瞬、桜花、窓から注ぐ太陽の光に当たったのか、

「うっ!!」

と手でその光を遮ると、その瞬間、桜花の頭のなかにあの後継が浮かび上がる。

(あっ、これって、あのときの夢、Aqoursに勝った、そんな正夢の光景だ!!)

そう、桜花の頭のなかに浮かび上がった光景、それは、あのときの夢、「Aqoursに勝った」、そんな桜花にとって正夢といえる夢の光景であった。その夢をバックに流れていたEDの名は・・・、

(たしか、あの夢のなかで流れていたEDの曲って、たしか・・・、「RedSun」!!)

そう、「RedSun」であった。

 そして、桜花は自分の下のほうを見る。すると、そこには、今さっき梅歌と松華に聞かせた曲の楽譜があった。その楽譜に書かれていた曲の名を、つい、桜花は、小声で、読み上げた。

「(RedSun・・・)」」

なんたる偶然・・・、これには、桜花、

(「RedSun」・・・、これって私たちにとって運命の言葉、かも・・・。だって、夢で聞いたあのEDの曲の名前も「RedSun」、私たちにとって初めての曲も「RedSun」。これって運命の名かもしれないですね・・・)

と思ったのか、梅歌と松華に対あの言葉を口にした。

「私たちのグループ名は・・・、「RedSun」・・・、太陽のように熱く激しく燃え上がる・・・、だから・・・、「RedSun」・・・」

 その桜花の言葉に梅歌、松華、ともに

ポカ~ン

となるも、すぐに我に返り、こんなことを言いだしてきた。

「「RedSun」・・・、なんかいい響き!!とてもいいかも!!」(梅歌)

「太陽みたいに熱く激しく燃え上がるか・・・。なんか私たちみたいですね!!」(松華)

2人とも桜花の考えたグループ名、「RedSun」にかなり乗り気の様子。

 こうして、桜花、梅歌、松華、3人のグループ名は・・・、

「それでは、私たちのグループ名は「RedSun」に正式に決定!!」(桜花)

太陽のように熱く激しく燃え上がる、そんなグループになるように・・・

 

「RedSun」

 

と名付けられた。

 そして、これにより、桜花、

(自分たちの名前は決まった!!名前のように、理亜、あなたの雪を溶かしてあげるわ!!)

とメラメラと燃やしている一方、梅歌からは、

(自分たちだけの曲、自分たちだけの名前、どれもこれもすばらしい!!これならこんな私でもみんなとキラキラと、とても輝くことができる!!う~、函館遠征、まだかな・・・)

とこの曲とこの名前でもって自分はもっと輝くことができる、そんな嬉しさと期待を噛みしめていた。そんな梅歌を見たためか、松華、

(梅歌、とてもうれしそう。私もそんな梅歌を見られてうれしいけど、この遠征、なにかが起きるかもしれない。本当に大丈夫だろうか・・・)

とうれしさと心配がまだまだ交差していた・・・。



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ラブライブ!RSBP 第21話

 こうして、桜花たちRedSunは、GW中、Aqoursの仲間である理亜のユニットを倒すために函館へと遠征しにいくのだったが、この遠征は桜花にとって辛い現実を突きつけるものとなった。

 函館聖泉女子高等学院、理亜が通っている高校、そこに到着するなり、桜花、理亜に向かって、

(ここは一発ガツンと言わないと!!)

と思ったのか堂々と、

「ここにスクールアイドルに告ぐ!!今すぐ、私たちにひれ伏しなさい!!私たちは・・・、あのAqoursを倒した、日本一、いや、、世界一のスクールアイドルグループ、RedSun!!」

と大声で叫んだ。これには、梅歌、

(えっ、そんなうそ、堂々というわけ!!)

とあまりの出来事に驚くも、松華はただ、

(まぁ、これが木松桜花かもしれませんね、「うそも方便」、ともいいますしね・・・)

と、いたって冷静であった。

 そして、桜花の言葉に呼応してか、理亜、仲間2人を連れて激おこの状態で桜花たちの目の前に出てきた。そんな激おこ状態の理亜に対し、

(あれが理亜っていう弱虫ね!!開口一番、ぶちかましてあげる!!)

と、勢いつけたいのか続けて、桜花、これまた、

「あんたね、あの弱虫であるAqoursの仲間っていうのは!!」

と大声で言うと、梅歌、つい、

(これだと大変なことが起きるよ・・・)

と思ったのか、

「桜花ちゃん、それ、ちょっといいすぎ・・・」

と注意するも松華は松華で、

「まぁ、それが桜花さんなのですがね・・・」

になぜか妙に納得してしまう。

 だが、桜花の横暴は止まらない。桜花、

(ここから一気に畳みかけてみせる!!)

とさらに勢いつけたいのか、続けて、理亜に対し、

「理亜という娘、この私にひれ伏しなさい!!あのAqoursは敗れたわ!!あのAqoursに敗れたSaint SnowもAqoursと同じ敗者!!だからこそ、私にひれ伏す必要があるのです!!」

と理亜たちを挑発するようなことを言うと、梅歌、松華、ともに、

(えっ、理亜ちゃんたちを挑発してしまったよ、桜花ちゃん・・・)(梅歌)

(う~、これはさすがに言い過ぎ・・・)(松華)

と呆れてしまう。

 ただ、そんな場でも理亜たちの仲間のうちの1人、3年生の娘、あつこはいたって冷静だった。あつこ、激高する理亜に代わり、桜花に対し、

「静真にはもう1つのスクールアイドルグループ、Aqoursがいるはずでは・・・」

と冷静に尋ねると、桜花、

(まぁ、あのAqoursなんて・・・)

と思ったのか、堂々と、

「私たちの実力からすれば、あんなもの、ただの烏合の衆ですわ!!」

と言い切ってしまった。まぁ、これには、梅歌、

(えっ、それって本当にそうなの?)

と疑問に思ったのか、

「えっ、私たち、Aqoursと(実際に)戦ったことなんて・・・」

と、つい、キャラを忘れたのか桜花にツッコミをいれそうになるも、これには、松華、

(ここまでくるともうあとにはひけないかな・・・)

と思ったのか、ツッコむ梅歌に対し、

「梅歌、少しは桜花さんと話しをあわせた方が・・・」

と梅歌を止めようとする。

 まぁ、こんな桜花の挑発からなのか、理亜、

「ルビィたちAqoursのことをバカにするな!!」

と怒りの限界を超えてしまうも、あつこ、そんな理亜に対し、

「理亜さんは黙ってください!!」

と、理亜が暴走したとき以来なのか、珍しく理亜に怒っては理亜を止めるとともに桜花たちに対しある事実を突きつけた。

「あなたたち、スクールアイドルグループ初心者、に見えるのだけど、それなのに、理亜さんたちSaint Snowと互角の勝負をした、いや、日本一にになった、そんなAqoursに勝つなんてね・・・。どんなことをすれば初心者であるあなたたちが実力者であるAqoursに勝てるのでしょうかね・・・」

そう、あつこは桜花たちRedSunが初心者集団であることがバレていた。実は、あつこ、こうみえて中3のときまで日本を代表するジュニアフィギュア選手であった。今は中3の大会で大ケガしたため、半引退状態だが、それでも多くの選手たちの体つきを見てきたし、自分自身も体を鍛えていたこと、また、長年、理亜たちSaint Snowのサポーターとして活躍していたこともあり、そのスクールアイドルが実力者なのか、初心者なのか、すぐに判別することができた。そして、桜花たちRedSunはあつこから見れば、初心者、とみえたのだ。まぁ、実際に桜花たちは全員初心者であった。これまで動画や本を通じてスクールアイドルとしての基礎の技術は学んだ、つもりであったが、それ以外の基礎、体力などは短期間ではできるものではなかった。もちろん、そのことは桜花だってわかっている。なので、部の特権を使って静真のなかにあるジムなどで技術以外の基礎を鍛えるめの特訓をしてきた。だが、何度もいうが、体力などといった基礎は短期間では身につかない、なので、桜花たちの体つきは(たとえ基礎の技術を身につけたとしても、初心者、といえた。そして、それをあつこに見抜かれた、というのだ。

 むろん、これには、桜花、

(な、なぜ、そんなこと、一目見だけでわかってしまうわけ・・・)

と突然突きつけられた事実に気が動転したのか、

「そ、それ・・・」

と、言葉につまってしまうと、梅歌、松華、ともに、

「やっぱりうそだってバレているじゃない・・・」(梅歌)

「まぁ、そんなみえみえなうそなんてすぐにバレてしまうもんだよ・・・」(松華)

とあきれ顔になってしまう。

 だが、桜花、

(ふんっ!!それがなんだっていうの!!そういわれても、私がAqoursに勝った、その事実は間違いはないんだ!!)

と開き直ったのか、あつこに対し、

「たとえそうだったとしも、私たち、RedSun、はあのAqoursに勝ったんだ!!それは紛れもない事実だ!!」

と言い返すとともにこんな悪態をついてしまう。

「Aqoursは・・・、とても弱弱しい、いや、お遊び感覚でスクールアイドルをやっている、部活に対する士気が低い、そんな弱者、なのだ!!」

これには、梅歌、松華、ともに、

(桜花ちゃん、それ、Aqoursに失礼に当たるよ!!)(梅歌)

(う~、桜花さん、それはだいぶ言い過ぎです・・・)(松華)

と、Aqoursに対し、いや、それを含めて、理亜たちに対し、失礼、だと思ってか、さらに呆れてしまう。

 まぁ、そんな桜花の悪態を見てか、理亜、これ以上付き合う義理はない、と思ってか、さっさとここから立ち去ろうとする。

 だが、そんな理亜たちのなかで1人だけ桜花たちにたてつこうとするやつがいた。そのやつは、突然、桜花たちに対して怒りながらこう言ってきた。

「Aqoursのことを・・・、バカにしないで!!訂正して!!「Aqoursは弱虫じゃない!!日本一のスクールアイドルなんだ」って言い直して!!」

そのやつとは・・・、新しく理亜のパートナーとなった、桜花たちと同じ1年生の花樹だった。

 そんな花樹の言葉に、桜花、

(ふ~ん、あんな弱者のなかに私にたてつく者がいたんだ~。なら、ここで強者である私たちから逃げられなくしてあげる)

と狙ったものは逃がさない、そんな肉食獣のような目になりながらその花樹に対し、

「ほ~、それって、あなたたちからの宣戦布告って思っていいのかなぁ。あのAqoursに勝ったRedSunに太刀打ちできるのかなぁ」

と言うと、花樹、自分の言っていに対してはっとする。すると、桜花、

(ここが勝負所!!一気に畳みかけてやる!!)

と気によくしたのか、花樹たちに対して挑発してしまう。

「もし、ここで、逃げ出したら、Saint Snowはただの弱虫、ということになりますね。それでもいいのかなぁ」

この桜花の挑発に最初に反応したのは花樹・・・ではなく桜花の仲間である梅歌と松華だった。2人とも桜花の挑発に対し、

(えっ、それ、火に油を注ぐものだよな~)(梅歌)

(桜花さん、それ、自分からあのフラグを立てている気がするのですか・・・)(松華)

と、このままだといけない、と思ったのか、桜花に対し、

「桜花ちゃん、あまりケンカはしないでね・・・」(梅歌)

「なんか死亡フラグを立てたみたいですけどね・・・」(松華)

と言ってしまう。2人からすれば理亜たちとことを荒立ててほしくない、なんてことを気にしているようだ。

 だが、たとえ2人がそう考えていたとしても手遅れだった。桜花の挑発に、理亜、ついに決心する。挑発する桜花に対しお灸を据えるためにもついにあの言葉を桜花たちに突きつけた。

「RedSunのみんさん、わかりました。そのケンカ、買いましょう!!私たちの実力の差、見せつけて、あなたの鼻、へし折ってあげる!!」

そう、ついに理亜、桜花たちに対し宣戦布告をしてきたのだ。これには、桜花、

(ふんっ!!こちらこそ返り討ちにしてあげる!!)

と思ったのか、ある船を指して理亜たちに対しこう言い返してしまう。

「わかったわ!!それじゃ、1週間後、あの船の上で戦ってあげる!!」

むろん、これには、桜花、松華ともに、

(う~、なんか悪い雰囲気のまま、理亜ちゃんたちと戦うことになったよ・・・。私たち、本当にスクールアイドルとして輝くことができるのかな・・・)(梅歌)

(う~、まさに売り言葉に買い言葉とはこんなことをいうのですね・・・)(松華)

とあまりのことに言葉を失ったばかりか不安と心配しか残らなかった・・・。

 こうして、桜花が指を指した船、函館港のシンボル、旧青函連絡船「摩周丸」にて、1週間後、桜花たちRedSun、理亜たちは戦うことになってしまった・・・。

 

 そして、その日の夜・・・、

「桜花ちゃん、理亜ちゃんたちに啖呵を切ったけど、正気、あるの?」

と珍しく梅歌が桜花に詰め寄る。梅歌からすれば、

(松華の言う通り、売り言葉に買い言葉、だけど、本当に、私たち、理亜ちゃんたちに勝てるわけ?)

と理亜たちに勝てるのか心配になったのが原因なのだが、その桜花はというと、

(ふんっ!!あんなやつら(理亜たち)にどう言われたとしても、そんなもの、関係ない!!私たちはただ勝ちにいくだけ!!いや、「勝つことこそすべて」、なんだ!!ここで勝ちにいくんだ!!)

と考えていた。ただ理亜たちに勝ちにいくこと、それだけを考えているせいか、

「梅歌、そんなもの、関係ない!!私たちはあいつらに勝つにいけばいいわけ!!ただ勝てばいいんだ!!」

と梅歌に怒りながら言い返す。

 だが、梅歌、桜花が言っていることに対し、

(桜花ちゃんの言っていること、なんかおかしいよ!!なんでそこまでして勝ちにいくわけ?私たちはまだ初心者だよ!!なのに、なんで「勝つこと」にのみ執着しちゃうの?一緒に輝くことができないの?)

と納得していない、なんかおかしい、と思ってか、桜花に対し、

「桜花ちゃん、それ、ちょっとおかしいよ!!なんで「勝つこと」だけに意識しているわけ?一緒に仲良くできないの?」

と言い返す。

 むろん、この梅歌の言葉に、桜花、

(そんなの決まっているでしょ!!)

と思ったのか、怒鳴り口調で、

「おかしくない!!私たちは勝たないといけないんだ!!勝たないといけないんだ!!」

と言い返すとともに、

(だって・・・、スクールアイドルは・・・、スクールアイドルは・・・、私たちは・・・)

という思いが込み上げてきたのか、梅歌に対し大声てこう言った。

「だって・・・、スクールアイドルは・・・、私たちは・・・、「勝つことがすべて」なんだ!!」

これが桜花にとって本当の気持ち・・・なのかもしれない。ただ、この桜花の心からの叫びに、梅歌、

「えっ、スクールアイドルって「勝つことがすべて」なの・・・。輝くことではないの・・・」

と言葉に窮してしまう。だって・・・、

(えっ、スクールアイドルって「勝つことがすべて」なの・・・。これまで、私、「Aqoursみたいにスクールアイドルとして活躍したい、輝きたい」、という思いでスクールアイドルをやってきたけど、桜花ちゃんは「勝つことこそすべて」という思いでスクールアイドルをやってきたの・・・)(梅歌)

そう、梅歌はこれまで「Aqoursみたいにスクールアイドルとして活躍したい、そうすることで輝きたい」、そんな夢を抱いてスクールアイドルを頑張ってきた。が、桜花は逆に「勝つことこそすべて」という思いで、いや、あのAqoursに勝つ、そんな思いでスクールアイドルをやってきたのだ。それはまるで正反対、そんな2人の思い、だったのかもしれない。だが、お互いともそのことを知らずに一緒にスクールアイドルグループRedSunとして一緒に頑張ってきた、が、ここにきて2人の思いは異なっていた、そのことに梅歌は気づいたのである。そのためか、梅歌、

(桜花ちゃん、なんでそこまで「勝利」に固執しているの?なんでなんでなんで)

と少し困惑したのか、桜花に対しこんなことを尋ねてしまう。

「桜花ちゃん、なんでそこまで「勝利」することに固執しているの?スクールアイドルって「勝利」することがそんなに大事なの・・・?本当にそうなの・・・?」

 だが、そんな梅歌の言葉に、桜花、

(そんなの当たり前じゃない!!)

と思ってか、つい、

「そうです!!スクールアイドルは「勝つことがすべて」なんです!!勝ち続けないといけないわけ!!「勝つことがすべて」!!そここそがこの世界の規律なわけ!!」

この桜花の言葉に、梅歌、

(なんか桜花ちゃんの考えていること、わからないよ!!なんでそこまで「勝つこと」にのみ固執しているわけ?本当に勝つことが大事なの?)

と、桜花が思っていることがわからない、なんか違う、そう思たのか、桜花に対し、

「それって違うんじゃ・・・」

と反論しようとしていた・・・のだが、ここで、桜花、こんなことをぼそっと言ってしまう。

「絶対に勝たないといけないんだ・・・。じゃないと、私はお父様に・・・、それに、勝たないと、これ以上、私たちがスクールアイドルとして成長できなくなる・・・」

これは桜花にとってある意味の願望だったのかもしれない。いや、心からの叫び、だったのかもいれない。そんな桜花のつぶやきに、梅歌、

(えっ、これって桜花ちゃんの・・・心の叫び・・・なの・・・)

と、これが桜花の心からの叫びだと気づいたのか、

「桜花ちゃん・・・」

と言っては桜花の方を心配そうに見つめていた。

 そんな2人のやり取りを見てか、この場では傍観者であった松華はついこんなことを考えてしまう。

(「勝つことがすべて」の桜花さんに対し、梅歌は「Aqoursみたいに活躍したい、輝きたい」、そんな夢を叶えるためにスクールアイドルをやってきた。2人ともスクールアイドルに対する思いは相反している。まぁ、私の場合、どちらかというと「梅歌と一緒になにかをやってみたい」、そんな思いからスクールアイドルをやっているだけですけどね・・・)

そう、松華はスクールアイドルをっしている理由、それは幼馴染である梅歌と一緒になにかをやり遂げたい、そんな思いからだった。生まれたときからずっと今まで松華は梅歌と一緒に行動していた。それはμ'sの凛と花陽みたいな関係だったのかもしれない。そして、今も梅歌と一緒にスクールアイドルをやっている。それは自分本意ではない、自分にとって一番大事な存在である梅歌のためでもあった。いや、自分にとって一番大事な梅歌と一緒になにかをやり遂げたい、そんな松華の願望からなのかもしれない。自分ファーストではない、梅歌ファーストな自分からなのか、松華、こう自分を卑下してしまう。

(そう考えてしまうと私も人のことをいえないようですね。いや、自分の意地なんてない。そんな私は(自分の思いでスクールアイドルになった)2人にとって、下、なのかもしれませんね・・・)

 とはいえ、今の2人、いや、3人の思いはバラバラになっている、そのことに気づいたのか、松華、

(とはいえ、今言えること、それは、私たち、3人とも、スクールアイドルに対する思いはバラバラだということ。それなのに桜花さんはそれでも理亜さんに勝とうとしている。この勝負、どんな形になるのでしょうか。心配です・・・)

と、今の除隊のままで戦いへと進むことについて心配になってしまうもこのことだけははっきりと言い切ってしまった・・・。

(ですが、このことだけははっきりと言い切れます、この戦い、私たちが絶対に負けてしまう、と・・・)



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ラブライブ!RSBP 第22話

 そして、その松華の予想は現実のものになってしまった・・・。1週間後、五月晴れのなか、函館港に浮かぶ記念艦「摩周丸」の航海甲版に設置されたステージの前には多くの観客が集まっていた。そのためか、RedSunの3人とも、

(う~、初めてのステージだから緊張しっぱなしだよ~。ほ、本当に、だ、大丈夫、か、かしら・・・。うぅ、やっぱり逃げたいよ・・・)(梅歌)

(なんか梅歌を見ていると私も緊張してしまう・・。3人の思いはバラバラ・・・以上に・・・この緊張のなか・・・最後まで・・・ライブ・・・できるのかな・・・)(松華)

(ふ、ふん・・・、だ、大丈夫・・・。こ、こんなの・・・、た、たいしたことなんてない・・・。ぜ、絶対に・・・、か、勝てる・・・)(桜花)

とかなり緊張していた。とはいっても、3人にとってそれが当たり前のこと、だったのかもしれない。だって・・・、

 

3人とも、スクールアイドルとしては初めてのステージ

 

なのだから。これまで桜花たちRedSunは誰の手も借りずに自分たちだけで練習を必死になっておこなっていた・・・だけであった。そう、桜花たち3人はこれまでステージに立ったことがなかったのである。むろん、今日の本番に向けての練習はかなりしてきた。だが、それは観客たちなんていないものであった。そのため、桜花たち3人は、今日、たくさんの観客たちの目の前で、初めて、人の目の前で、ライブを行うのである。人の目の前での初めてのライブを行う、それは普通の人からすれば(これまで経験したことがないために)緊張してしまうものである。いや、桜花たち3人からしたらあまりの観客たちの多さにかなり緊張しているのだろう、ライブが始まる前であっても・・・。これではいくら練習したとしても本番で自分たちの実力を十分発揮できないものである。いや、桜花たち3人は緊張という名の悪魔に支配されていたのである。

 そのためか、理亜たち2人の次のステージに呼ばれていた桜花たち3人はステージに移動したものの、

「こ、これが、ステージなの・・・。な、なんか逃げ出したい・・・」(梅歌)

「う、うん、梅歌の言う通り・・・」(松華)

「ふ、ふん・・・、だ、大丈夫・・・。わ、私たちが・・・、登場した・・・から・・・、か、勝ったのも・・・同然・・・」(桜花)

と誰から見ても桜花たち3人はかなり緊張している、とわかるほどだった・・・。

 

 そして、桜花たちRedSun、初めてのステージ・・・だったのだが、桜花たち3人と同じく今日が初めてのステージ、だった、理亜の相方、花樹も、

(花樹と同じく初めてのステージに立つ、そんな感じがする・・・)

と思われるくらい・・・、いや・・・、

「こ、これが、ステージなの・・・、な、なんか逃げ出したい・・・」(梅歌)

「う、うん、梅歌の言う通り・・・」(松華)

「ふ、ふん・・・、だ・・・、大丈夫・・、わ、私たちが・・・、登場した・・・から・・・、かっ、勝ったのも・・・当然・・・」(桜花)

と誰から見ても桜花たち3人はかなり緊張している、とわかるほどだった・・・。

 

 そして、桜花たちRedSunの初めてのステージ・・・だったのだが、桜花たち3人と同じく今日が初めてのステージ、だった理亜の相方、花樹も、

(花樹と同じく初めてのステージに立つ、そんな感じがする・・・)

と思われるくらい・・・、いや・・・、

「うぅ、あまり体が動かないよ・・・。いくら才能があっても肩の力を抜いて・・・なんてできないよ・・・」(梅歌)

「梅歌と同じく・・・、ほ、本当なら、このステージ、大丈夫・・・、なのに・・・、多くの人たちから見られると・・・、私・・・、足がすくんでしまう・・・」(松華)

「2人ともしっかりしなさい!!ここからRedSunの輝かしいみ・・・未来が・・・始まる・・・のです・・・。だからこそ・・・、しっ・・・、しっかりしな・・・しなさい・・・」(桜花)

と、「Aqoursに勝った!!」と理亜たちに豪語していた桜花すら空元気のあまり言葉にキレがない、それくらいの緊張状態が続いていた・・・。

 だが、それでも時間は待ってくれない。桜花たちがステージ中央んいつくと同時に「RedSun」の曲が流れ始める・・・のだが、桜花たち3人からすれば、不意打ち、だったらしく、

(えっ、私のポジション、どこ!?)(梅歌)

(う、梅歌、そこは私の!!)(松華)

(えっ、曲、始まったの!!)(桜花)

と、自分の決まったポジションについてないあまり、さらに焦り始める。そのためか、

「え~と、、ここじゃなくて・・・」(梅歌)

「そこっ、私のポジション!!」(松華)

「2人ともしっかりして!!」(桜花)

と、なにをやっているのかわからなくなってしまうくらい右往左往していた・・・。

 むろん、このままの状態で歌い始めたのだが、そこは練習をしっかりしていたためか、それとも、もとから持っていた3人のポテンシャルの高さ(特に桜花)なのか、普通のスクールアイドルとしては立派なステージ、といえたが、それ依然に、

(私はAqoursみたいなスクールアイドルとして活躍して輝きたい!!そんな思いでこのステージを駆け抜ける・・・はず・・・)(梅歌)

(う~ん、なんか、梅歌、必死になってパフォーマンスしている感じ・・・。だからこそ、私もそんな梅歌のアシストを・・・できるのかな・・・)(松華)

(絶対に勝って・・・勝って・・・勝って・・・やる・・・)(桜花)

と、3人ともこのステージにかける思いは点々バラバラだった。そこに始まる以前からあった緊張による焦りも加わり、3人のパフォーマンスはその思いの違い以上にバラバラだった。もちろん、それはラブライブ!決勝出場経験がある理亜からしても、

(スクールアイドルとしての基礎ができていない・・・。いや、むしろ、私と姉さま(聖良)がルビィたちと初めて会ったときのルビィたちの方が(あの娘(桜花)たちよりも)上だと思う・・・)

と思えるくらい、「スクールアイドルの練習をしています」、それ以上のものは感じさせていなかった。そのためか、桜花たちRedSunのパフォーマンスを見ていた観客たちのなかには雑談を始めたりあくびをしてしまう者が続出してしまう・・・。それは「RedSunの3人に対して関心が持てない」、そんな観客たちの意思表示、だったのかもしれない。だが、それでも3人は最後まで、自分たちなりにの頑張りでこの曲をやり遂げようとしていた・・・。

 

 そして、曲がついに終わった・・・、その瞬間、

(ふんっ、最後までやり切ったわ!!これで、勝利、間違いなし!!)

と、桜花、なぜかかっこよく決めつつ理亜や観客たちに対し、

「ど・・・どうよ!!私たちにひざまづけ!!」

と発言するも観客たちからは拍手はまばら。これには、梅歌、

(や、やっぱり、私たちのパフォーマンス、ダメダメだったんだ・・・。これじゃ輝いたことにならないよ・・・)

と自分たちのパフォーマンスが観客たちから認められなかったことにがっかりしたのか、

「うぅ、やっぱりだよね・・・。私たちの子どもじみたパフォーマンスじゃ・・・」

と泣きだしそうになると、松華、

(うぅ、私、梅歌のサポートができませんでした・・・。なんか悔しいです・・・)

と梅歌の役に立てなかったことを悔やんでか、

「もう少し練習すべきでした・・・」

と反省の弁を言ってしまった・・・。

 だが、そんな2人に対し、桜花、

(大丈夫ったら大丈夫!!だって、私たちは・・・)

となぜか強気・・・、いや、自分のなかに残っていたわずかな自信をもって・・・、

「2人ともしゃっきりしなさい!!私たちの圧倒的なパフォーマンスで・・・」

と力強く言うも、このとき、桜花、

(えっ、観客のみんなは私たちに冷たい目線をなぜ送るの・・・)

と、観客たちからの目線に戸惑いを感じる。そう、桜花は、今、気づいた、観客たちから冷たい目線が送られていることに・・・。観客たちは、「あのAqoursを倒した」、と豪語していたRedSunの素晴らしいパフォーマンスを見にここまで来ていたのである(むろん、理亜たちのパフォーマンスもね!!)でも、蓋を明けてみるとRedSunのパフォーマンスは初心者レベル・・・、「練習してきた」、それくらいのパフォーマンス、だった。これでは期待外れである。そのためか、観客たち、そんな桜花たちRedSunに冷たい目線を送っていたのである。

 そんな観客たちからの冷たい目線に負けたのか、桜花、

「だ、大丈夫・・・。あ、あちらも・・・、初めてのステージ・・・だと、思う・・・」

と覇気のない声を出してしまった・・・。いや、このとき、桜花はある期待をしていた。それは・・・、

(だ、大丈夫・・・だよ・・・。だって、理亜の相方も私たちと同じ初心者・・・だから・・・)

そう、理亜の相方である花樹も桜花たちと同じくこのステージがスクールアイドルとしての初めての、いや、生まれて初めてのステージ、であった。そのため、今の自分たちと同じく緊張のあまりうまくパフォーマンスが出来ずライブは失敗する、そう、桜花は期待・・・、いや、わずかなの望みに期待していた・・・。

 

 だが、理亜・花樹組のパフォーマンスはいい意味で、桜花としては悪い意味で期待を裏切ってしまった・・・。2人のパフォーマンスを見て、梅歌、

(こ、これが本気のスクールアイドルのパフォーマンス・・・。それに比べて私たちのパフォーマンスは・・・)

と唖然となるとともに、

(あの2人のパフォーマンスを見て梅歌が白旗をあげた・・・。でも、その梅歌の気持ち、わかります。だって・・・)

と弱気になっては、

「梅歌、しっかりして・・・、って、言いたいけど・・・、私もあの2人のパフォーマンスを見たら、私たち(のパフォーマンス)、素人じみたものだと感じて自信を失いそうです・・・」

とこちらも白旗をあげてしまった。

 そう、理亜と桜花のパフォーマンスは桜花たちRedSunの何十倍、いや、これぞ本気のスクールアイドルのパフォーマンスともいえるくらいのパフォーマンスであった。いや、それくらい2人の息はピッタリだった。

 では、なぜ2人の息がピッタリだったのか。それには2つの理由があった。1つは桜花たち3人の思いがバラバラだったのに対し、理亜と花樹は一緒の思い、「打倒、RedSun」に燃えていたからだった。理亜はAqoursのルビィたちからRedSunからひどい仕打ちを受けている、そんことを聞いて、花樹は花樹にとって憧れの存在であるAqoursを桜花たちから貶された、それらにより、理亜と花樹はそんな桜花たちRedSunを倒してAqoursの敵をとる、2人の思いはそれでいっぱいだった。そんな同じ思いだからこそ、理亜と花樹の息がピッタリだったのである。だが、これがのちに理亜と花樹の思いがすれ違うもとになるのですがね・・・。

 そして、もう一つは、理亜というスクールアイドルの先生がいたことであった。理亜はラブライブ!決勝に進出するくらいの実力と経験をもっていた。なので、花樹はその実力と経験をもつ理亜からスクールアイドルとしてのいろんなものを短期間のうちに吸収したのである。そのため、たしかに花樹は桜花たちと同じくスクールアイドル初心者であるが実力としては桜花たちの何十倍も上、といえた。なので、梅歌と松華が白旗をあげるほどの圧倒的なパフォーマンスを理亜と花樹は繰り広げたのである。

 ただ、それでも、桜花、少しでも踏ん張ろうとしていたのか、

「2人ともしっかりして!!」

と空元気をだしては梅歌と松華に活を入れようとするも、

「こ、ここで音をあげたら・・・、お、お父様が許さない・・・のだから・・・」

とすぐにトーンダウン。それでも、

「だ、だからこそ・・・、ここで・・・、踏ん張らないと・・・」

と少しでも活を入れようとしていた・・・。

 だが、それでも、理亜と花樹の圧倒的なパフォーマンスをまえに、桜花、

(ぜ・・・、絶対に・・・、大丈夫・・・な・・・はず・・・だよね・・・)

と、わずかに残っていた自信すら喪失しそうになっていた・・・。

 

 そして、結果発表・・・。

「勝者は・・・聖女スクールアイドル部、理亜・花樹組!!」

圧倒的な大差で理亜たちが勝ってしまった。これには、桜花、

(なんで・・・、なんで・・・、私たちが負けるの・・・。スクールアイドルって・・・音楽の才能がある私なら簡単に勝てるはず・・・。なのに・・・なんで・・・負けてしまったの・・・)

と、負け、という辛い現実を突きつけられて困惑してしまう。いちかばちかのつもりで、勝つこと前提で部活動費全部を使ってわざわざ北海道函館に遠征に来た桜花たち、だったが、そこで待ち受けていたのは、大敗北、という「勝つことこそすべて」、父木松悪斗譲りの考えをもつ桜花にとってとても辛い現実であった。そのためか、桜花、

「うそでしょ・・・。なんで負けたんだ・・・。勝つ自信はあった・・・。だって・・・、私たちなりに練習してきた・・・。相手にも初心者はいた・・・。なのに・・・、なんで・・・、なんで・・・、なんで・・・、敗れたんだ・・・」

と悔し涙を流していた。それくらい桜花にとってみれば青天の霹靂だったのだ。

 だが、そんな桜花に対し追い打ちをかけるかのように理亜から冷たい言葉が投げかけれれた。

「木松桜花(はな)、あなたもスクールアイドルの練習をしてきたと思うけど、私は、いや、私たちは、いや、ルビィたちAqoursを含めて、あなたたち以上に練習をしてきた!!そのことすら知らずに、ただ、「自分こそ勝者なんだ」と高をくくっていたなら、その考えは捨てるべき!!あなたの思っているくらいスクールアイドルは甘くないのだから!!」

今の桜花にとってみれば傷口に塩をたくさん塗りつけるくらいの言葉、なのだろうか、桜花、思わず、

(いや、私には音楽の才能がある!!それに簡単に勝てると思っても練習を積み重ねてきたはず!!そんなこと、言われる筋合いはない!!)

と、ついかっとなったのか、理亜に対し、

「そんなもの、関係ない!!私は私なりに頑張ってきたんだ!!そんなことを知らずにこの私に文句を言うな!!」

と反論する。

 だが、弁尖の方も理亜が一枚上手だった。「自分は頑張った」、そう言い張る桜花に対し、

「桜花、それは単なる自己満足でしかない!!私も、ルビィも、みんな、あたな以上に頑張ってきたんだ!!それを知らずにただたんに「勝てる」なんて思わないで!!」

と桜花に一喝しては論破・・・するだけでなく、とどめをばかりに怒りに満ちた言葉を桜花に言い放った。

「桜花、いくら、父親である木松悪斗のためにRedSunを作ったとはいえ、これ以上、ルビィたちを・・・、Aqoursのことを・・・、バカにしないで!!その言葉を今すぐ訂正しろ!!」

 だが、この理亜の言葉に、桜花、ついにあることを思いだす。それは・・・、

(私の父のため、私がRedSunを作った・・・。それは違う・・・。私は・・・、私は・・・、桜花は・・・、父から認められるために・・・、父にとって天敵であるAqoursを倒して父から認められるために・・・、Redsunを・・・作ったんだ!!この函館遠征だってRedSunの実力を上げるためのコーチを雇ってほしい、そんな思いからしたこと・・・。なのに、なのに、なんで、なんで、父のため、いや、親父のため、なんてことをいうの!!)

これは理亜の言葉に対する桜花の怒りの思いであった。桜花からみれば、「勝利こそすべて」、そんな考えを持つ父、木松悪斗から姉の旺夏みたいに認めてもらいたい、そのためにRedSunを作ったのであり、この函館遠征もRedSun強化のための資金を父から捻出してもらいたいために行ったもの、であった。それを理亜は「父のために」という一言で片付けてしまったのである。なので、そのことを桜花は怒っているのである。

 そして、それは言葉として桜花から現れた。

「別に親父のためにRedSunを作ったわけでもここに来たわけじゃない!!これは私が親父から認めてもらうためにRedSunを作って自分たちの手でここまでやってきたことなんだ!!それなのに・・・、それなのに・・・、私にいろいろと指図するな!!軽蔑するな!!」

この桜花の言葉にさすがの理亜もたじたじになってしまった。自分が考えていたこととは違う思いを桜花は持っていた、それによって理亜は唖然となってしまったのだ。

 そんな理亜の姿に、桜花、ついにあることを決断した。

(う~、負けが確定した以上、ここにいては自分たちの傷口がさらに開いてしまうのは必然。ならば、ならば、この言葉は使いたくありませんが・・・仕方ありません。ここは・・・)

と思った桜花、すぐに梅歌と松華に対しこう命令した。

「梅歌、松華、今すぐ、この場から立ち去ります!!今一度、静真で力を蓄えるのが一番です!!戦略的撤退です!!」

戦略的撤退、桜花はあくまで「負け」を認めず、「戦略的撤退」という言葉でこの場から去ろうとしていた。それはどこかの旧日本軍が使っていたような言葉、であるが、意味としては「全体の戦況をみて最終的に勝利を収めるために極致的な戦場においていったん撤退すること」をいう。それを桜花は使ったのである。そのため、桜花はまるで逃げるかのように、いや、戦略的撤退するためにその場から去ってしまった・・・。むろん、これには。梅歌、松華、ともに、

「ちょっと~~、桜花ちゃん~~、待ってよ~~」(梅歌)

「あっ、もう~、それでは、理亜さん、花樹さん、2人ともさよならです。また、どこかでお会いしましょう。って、2人とも待って~」(松華)

と桜花を追うようにその場から去ってしまった。

 だが、このとき、梅歌、松華、ともに桜花の今の姿を見てこう思ってしまう。

(父親から認めてもらいた・・・。それくらい、桜花ちゃんは苦しんでいるわけ・・・。それってどういうわけ?)(梅歌)

(あの桜花さんが父親のことで苦しんでいる・・・。そのためにRedSunを作った・・・。私たちはそれに巻き込まれた・・・わけ?桜花さん、なにか隠しているのでは・・・)(松華)

そう、梅歌は梅歌で桜花のことを心配そうに、松華は松華で桜花のことで疑心暗鬼になっていたのだ・・・。



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ラブライブ!RSBP 第23話

 こうして、一発逆転を狙って行った函館遠征でまさかの・・・というか初心者なのだから負けて当然・・・なのだが、「(Aqoursと同じくらい弱い)理亜には絶対に勝てる」、そう高をくくっていた桜花にとってまさかの大敗北・・・ということで、桜花、沼津に帰ってきてからも、

(う~、まさか負けるとは・・・。これではお父様から・・・、いや、それどころか、お姉さまからも貶される!!いや、勘当させられる!!そんなの、私、いや~!!)

と絶望していた。桜花は父である木松悪斗に対し、「あのAqoursのパフォーマンスをなら誰でもできる」「Aqoursに勝つなんてちょちょいのちょいです!!」と豪語していたのだが、そのAqoursと同じくらい弱い(と桜花は思っている)Saint Snowの理亜に圧倒的な差で負けたのである。いや、それ以上に、「負けた」という事実を「勝利こそすべて」が信条の父木松悪斗が許すわけがないのだ。なので、桜花は父木松悪斗や姉旺夏から貶されてしまう、勘当される、家から追い出される、そんなことまで考えてしまい絶望を感じていたのである。

 そんな絶望に満ちた桜花の姿に、梅歌、

(なんか、桜花ちゃん、なにかに苦しんでいるみたい。これって桜花ちゃんのお父さんのせいなのかな?)

と桜花のことを心配そうに見るも、

(でも、なんで、自分の父親をそんなに恐れているの?どうして?)

と桜花がなぜ父親のせいで苦しんでいるのかいまだに考え込んでいた。。

 そんな梅歌とは逆に松華はというと・・・、

(桜花さんはなにかを隠している。私たちにはいえない秘密があるのかもしれない・・・)

と桜花はなにかを隠している、そのことへの疑問が膨れ上がっていた。

 

 そして、桜花にとって地獄ともいえる時間がついにきてしまった・・・。GWも終わった次の日、自分の家にいた桜花はある音を耳にする。

ゴトンッ

その音を聞いて桜花は自室のドアを明けて玄関のところをみるとはっとした。

(う~、お父様がかえってきた・・・。絶対になにか言われる・・・)

そう、桜花の父である木松悪斗が帰ってきたのである。木松悪斗はGW中も東京の投資グループ本部に缶詰となりニューヨーク市場などの海外市場を中心に株の売買をしていた。だが、木松悪斗、帰ってくるなり、

「ふんっ!!なんでうまくいかないんだ!!」

と家にあるものに手あたり次第怒りをぶつけていた。どうやら、GW中、本部で缶詰になりながら利益をだそうとしていたのだがあまりうまくいかなかったようだ。そのためか、桜花、

(う~、ここは静かにやり過ごそう・・・)

と物音を立てずにそっと自室のドアを閉めようとした。

 だが、そのときだった。突然、

キ~~~

という音が家の中に響き渡った。これには、桜花、

(えっ、なんで、こんなときにドアを閉める音が聞こえるの!!!)

と唖然となってしまう。どうやら、自室のドアを閉めるときに「キ~」という音が聞こえてしまったのだ。

 と、ここで、木松悪斗、その音を効いたのか、桜花のいる2階に向かって怒鳴り声で呼ぶ。

「おい、桜花、そこにいるのか!!ちょっと出てこい!!」

すると、桜花、

(う~、逃げきれない・・・。仕方がない・・・。お父様のところにいきましょう・・・)

と覚悟を決めたのか、階段を降りて自分の父親の目の前に立つ。

 すると、桜花の父である木松悪斗は娘の桜花に対しいきなり、

バシッ

と力強く平手打ちをかます。これには、桜花、

「うぅっ!!」

といううめき声とともに壁へとふきとんでしまった・・・。

 そして、倒れこんでしまった桜花に対し、木松悪斗、怒声でこう言ってきた。

「お前は巻けたそうだな!!あれだけ「勝てる」と豪語していたのに蓋を開けてみれば負け戦をするとはな!!そんなもの、この木松家からすれば、ただの負け犬、いや、役立たず、だ!!」

そう、木松悪斗、は桜花が理亜たちに負けた、ということをあらかじめ知っていた。というのも、理亜たちとの戦いは観客たちのSNSを通じて生中継するなど動画として拡散されていたのである。さらに、Aqoursの公式ライバルであるSaint Snowの理亜との戦い、ということもあり、この戦いの注目度はとても高いものだった。そのため、この戦いの動画を見た木松悪斗のまわりの人たちを通じて桜花が負けたという情報は木松悪斗の耳にはいっていたのだ。こうして、桜花が負けたことに対し「勝利こそすべて」、いや、「勝ち続けることがすべて」という信条の持ち主てある木松悪斗は負けて帰ってきてしまった桜花に対し「役立たず」とののしったのである。まぁ、音楽のことを「ただのお遊び」としかみていない木松悪斗なのでまわりの声を聞いただけで、お遊びの戦いに負けた、そんな桜花を許せなかったのだろう。だって、木松悪斗からはその過程なんてふっとばして結果でしか、勝敗でしか物事を判断しないのですからね・・・。

 そんなわけでして、父の逆鱗に・・・、いや、株取引の不調によるストレスのはけ口にされた桜花、すぐに反論・・・。

「でも、あともう少しで勝てたのです!!相手からすればあちら(函館)はホームであり、私たちからすれば、完全アウェイ、でありまして・・・」

 だが、そんな桜花の反論は木松悪斗からすれば言い訳でしか聞こえないのか、桜花の言葉を遮るように強い口調で、

「そんな言い訳、たくさんだ!!お前は負けたんだ!!負け犬なんだ!!お前には何度も言っているだろ、この世の中は「勝つことがすべて」なんだ!!一度でも敗れたらそれは生きる価値を失った、と言ってもいいんだぞ!!何度でも言う、お前は負けたんだ!!お前に生きる価値なんてないんだ!!いや、私にとってお前はただの「ごくつぶし」であり、「役立たず」なんだ!!いや、それ以下だと証明されたのだ!!」

と桜花のことを罵倒した。これには、桜花、

「・・・」

とただ黙り込むしかなかった・・・。

 ところが、それが木松悪斗の気に触ったのか、黙り込む桜花に対し、さらに、

バシッ

とまたもや平手打ちをかますとそのまま、

「なに黙っているんだ!!いいか、お前はもう生きる価値がないんだ!!負け犬のお前の顔なんて見たくない!!いや、この世の中から消えてしまえばいいんだ!!」

と、生きる価値なし、と言われてしまう。もちろん、これには、桜花、

(えっ、私に生きる価値なんてない・・・。もう死んだほうがまし・・・)

と愕然としてしまう。

 そんな桜花に対し、木松悪斗、こんなことを言ってくる。

「あっ、そうだ。お前が倒すべきと言っていた小童、たしか、Aqours、だったかな、その小童が、近々、静真の校庭でライブを行う、って言っていたな!!まぁ、負け犬のお前からすれば(戦略的に)勝ったはずの小童たちが虎視眈々と逆転を狙っている、そのことを聞いてどうしようかと慌てるかもしれんな!!でも、まぁ、小童たちにしても私からすればただの負け犬でしかない、と思っているのだがな!!わははは!!」

この木松悪斗の言葉を聞いた瞬間、桜花は頭が真っ白になる。

(えっ、あのAqoursが・・・、逆転のためのライブを静真で開く・・・、っていうことは・・・、

もし、このライブが成功したら私の立場がなくなる・・・。いや、もう私には本当に生きる意味がなくなる・・・じゃない・・・)

函館遠征の失敗に続いて一度は倒したと思っていたAqoursが復活する・・・、それは桜花にとってこれまで父木松悪斗のために、父に自分を認めてもらいたいために、このための行動が不意になる、いや、それらを含めて、桜花の人生が無駄になってしまう、そんな絶望に絶望を覆い重ねた、そんな苦痛を桜花に与えることになってしまった・・・。

 ただ、それでも木松悪斗の口は止まらない。頭が真っ白になった桜花に対しとどめの一撃を与える。

「まぁ、これまではお前の口車にのせられてきたのだが、よくよく考えてみれば、スクールアイドルというお遊びにお金をかけるなんてバカげていた・・・。それに、こんな負け犬、いや、「役立たず」「ごく潰し」にお金と時間を費やす、なんて、愚かなことだとようやく気づいたわ!!そんなわけで、お前たち、スクールアイドル部はさっさと潰れろ!!これ以上、私に恥をかかせるな!!貴重なお金や時間を返せ!!もう、私の目の前に現れるな!!いいな!]

突然の廃部勧告、これには、桜花、

(や、やっぱり、私はお父様にとってみればただの「役立たず」「ごく潰し」だったんだ・・・。いや、スクールアイドル部というお遊びをしていただけ・・・、これまでのお金と時間の無駄、だったんだ・・・。やっぱり私にとって人生は無駄だったんだ・・・)

と、まるで、今から死に行くような思いになってしまった。

 こうして、桜花は父親から罵倒の末、父親の元から去って自室に戻っても、

「もう私には生きる価値なんてないんだ・・・。私はずっと負け犬なんだ・・・。なにもかも無駄なんだ・・・」

とまるで死人のようにつぶやいてはただ泣くしかできなかった・・・。

 

 そして、翌日・・・、

「桜花ちゃん、なんで顔が腫れているの!!誰かに叩かれたの!?」

と顔に平手打ちされたあとがくっきりと残っている桜花の顔を見た梅歌はびっくりするように言うも桜花は逆に、

「いや・・・、なんでもない・・・、なんでもない・・・」

と否定していた。ただ、そのあと、桜花はぶつぶつと、

「私はもう生きる価値なんてないんだ・・・。もう死んだほうがいい・・・。ただの「役立たず」「ごく潰し」なんだ・・・」

と小声で言っていた。これには、松華、

(この前のことをいい、今といい、桜花さん、なにかに苦しんでいる・・・。それって、もしかして、桜花さんのお父さんのこと・・・。でも、いったい・・・、どうして・・・)

とますます困惑してしまった。だって、このときはまだ、松華はおろか、桜花のことを心配してくれる梅歌ですら桜花がおかれている最悪な現状を知っていなかったのだから・・・。

 

とはいえ、顔が腫れている、さらに、絶望といえる表情をしていた桜花の姿を見て、さらに心配になったのか、梅歌、松華に対し、心配そうに、

「松華ちゃ~ん、桜花ちゃん、なんかあったのかなぁ・・・。顔が腫れていたし、元気なかったし。なにかあったのかと思うけど、私、心配だよ・・・」

と言うと、松華、梅歌に対し、

「たしかに私もそれは心配だと思う。でも、私故人の意見だけど、桜花さん、私たちになにか隠していることがある、そう思えてしまう、特にお父さんとのことで・・・」

と、今、自分のなかにある疑問を言ってみると、梅歌、こんなことを言う。

「でも、桜花ちゃんのお父さんって・・・、誰だったかな?」

えっ、梅歌、桜花のお父さんのことを知らなかったの!!という衝撃の事実を言うと松華も、

「たしかに。たしか、桜花さんの上の名前、木松、という珍しい名前だけど桜花さんの父親のことまでは気にしてなかった・・・」

と、こちらも衝撃の告白をしてしまう。まぁ、桜花にとって仲間ともいえる2人からしたらこれまで桜花の父親が誰なのか知らなかったとしても仕方のないこと・・・なのかもしれない。というのも、2人は桜花のことを大事な仲間として認識していた。なので、桜花のことをもっと詮索を・・・ということはしなかった。たしかに桜花を含め3人は大事な仲間である。だが、どちらかというと、リーダー格の桜花が、梅歌、松華を引っ張っていく、そんな父親譲りのワンマンみたいな行動を桜花はしていた。そのため、桜花と梅歌、松華はあまり雑談などすることがなかった。まぁ、桜花を大事な仲間だと思っていた梅歌と松華が桜花のことを詮索したら失礼だし桜花にだって誰にも話したくないことがあると2人が思っていたのもあるのですがね。そんなわけでして、今の今まで梅歌と松華は桜花のことをあまり知らなかったのだ。

 ただ、このときは運悪く、ある静真の生徒に2人の声が聞こえていたらしく、その静真の生徒が2人に対しこんなちょっかいをかけてきた。

「えっ、スクールアイドル部の2人は知らないの!!木松桜花の父親はあの部活動保護者会の会長で、かつて、この静真を支配していた木松悪斗だよ!!」

 これを聞いた瞬間、2人とも、

「えっ、桜花ちゃん(さん)のお父さんって木松悪斗だったの!!?」

と驚いてしまう。だって・・・、

(木松悪斗ってこの静真にとって大物じゃない!!桜花ちゃん、すごい!!)(梅歌)

(うぅ、投資の天才だと言われていた木松悪斗の娘だったのね、桜花さんは・・・)(松華)

2人とも木松悪斗が大物であることは知っていたからのと、梅歌の場合、静真をかげから支配していたことを、松華の場合、最近では落ちぶれているとはいえ投資の世界で長年王者として君臨していた、そのことをそれぞれ知っていたため、2人ともその父の娘が桜花であることにびっくりしたから・・・。

 だが、その生徒は続けてこんなことを言ってきた。

「でも、木松悪斗は「勝つことがすべて」をこの静真に関わるすべての人に洗脳していたんだ。それって、ある意味、悪者だよね」

そう、これまで木松悪斗は静真を支配するとともにそこに関わるすべての人に対し、自分の信条、「勝つことがすべて」、を洗脳するくらいその考えを埋め込んでいたのである。ただ、それによって静真は全国大会に出場するくらいの実力を持った部活を数多く抱える、それくらい部活動優秀校になった・・・のだが、それに比例して敗者に対して辛く当たる、それくらい、勝利絶対至上主義、という考えがはびこってしまったのだ。だが、それも静真高校生徒会長の渡辺月、静真の創立家の末裔で静真の陰の神と言われた沼田、そして、浦の星という新しい風をまとったAqoursの活躍によりその考えは一掃された。そして、今、静真を支配しているのは、「部活動とは楽しむこと、好きになることがすべて」、浦の星という新しい風によって広まった、人を大事にする考え、そして、勝利絶対至上主義をいまだに引きづっている木松悪斗とその一味に対する恨み、であった。

 むろん、その恨みはときとして他人にも向けられるわけでして・・・、その生徒は2人に対しこんなことまで言ってきた。

「まぁ、あなたたちスクールアイドル部もその木松悪斗の一味に間違いないもんね!!それに、あのAqoursを倒そうとしていることだし、ここであなたたちを倒してもいいんだと思うけどね!!」

まさか、梅歌、松華、2人が木松悪斗という悪者の一味と決めつけられると・・・。というのも、実は、桜花たちスクールアイドル部は静真の生徒たちからしたら悪者である木松悪斗の一味、いや、忌み嫌われる存在としてほかの生徒から認識されていたのだ。今の静真の生徒、新しい風により「勝利こそすべて」という考えから「楽しむこと、好きになることがすべて」という考えに変わった、そんな生徒たちからすれば去年度までは静真の支配者として敬った木松悪斗とその一味が今や「勝利こそすべて」という悪しき考えを洗脳させた悪人として認識されるようになったのだ。なので、その木松悪斗の一味を排除しよう、差別しよう、という考えも広がってしまったのだ。そして、桜花たちスクールアイドル部はその一味の1つとしてほとんどの静真の生徒から認識されていた。その理由として、1つは木松悪斗の娘である桜花がスクールアイドルの部長をしていること、2つめに桜花の策略により静真に新しい風を吹き込んでくれた英雄であるAqoursを苦しめた(父木松悪斗の力によってAqoursは同好会として活動せざるをえなかったことなど)、があげられた。特に、「楽しむこと、好きになることがすべて」という新しい風を持ち込んでくれた、それくらいの偉業を達成したことで英雄視されたAqoursを苦しめたことが桜花たちスクールアイドル部を木松悪斗の一味として断罪する、そんあ風潮をはびこらせる原因の1つとなった。

 そんなわけでして、その生徒は、梅歌、松華に対し怒りの鉄拳を繰り出そうとしていた、「なにも恨まないでね!!」

と言いながら。

 だが、ここである人の声がした。

「やめて!!」

まるでどこかの小動物のようなかわいい声がまわりにこだますうる。これには、2人を殴ろうとする生徒もやむを得ず、

「る、ルビィちゃん・・・」

と言いながらこぶしをおろす。そう、2人を殴ろうとする生徒を止めたのは、Aqoursの2年生、黒澤ルビィ、だった・・・。

 で、その生徒を止めたルビィはすぐにその生徒に対し、

「殴ったってなにも変わらないよ!!それよりも、殴ったことであなたの人生がおかしくなるのって、ルビィ、とても悲しいよ!!」

このルビィの言葉にその生徒は、

「でも・・・、ここにいるスクールアイドルを部はあのにっくき木松悪斗の一味ですし・・・」

と言い訳をするも、ルビィ、その生徒に対しはっきりとこう言った。

「そんなの、関係ないよ!!たとえ、スクールアイドル部だとしても梅歌ちゃんも松華ちゃんもルビィたちと同じ静真の生徒だし同じスクールアイドルだよ!!それを忘れないで!!」

このルビィの言葉にその生徒はただ、

「でも・・・」

となにか言いたそうになる。

 と、ここで、ルビィ・・・の隣にいたAqoursのマネージャー役であるあげはがそんな生徒に対しこう言った。

「たしかにあなたにとってそうかもしれませんが、ルビィちゃんたちの言っていることが正しいのです。なので、これを機にその考えからも脱却したらどうでしょうか」

これには、その生徒、

「・・・」

と無言になるとダメ押しとばかりにあげはの幼馴染でルビィたちと一緒にいた、東子、シーナからも、

「もし、これ以上暴れるなら、私たちも上(生徒会)に報告しないといけません。いや、私の隣にいるシーナがレールガンをぶっ飛ばすことになりかねません」(東子)

「って、今、しれ~と、あのレールガン娘と一緒にしたよね!!キー、そればかりは許せない!!とはいえ、あんたがしたことはそれくらい野蛮なことだ!!そんなことなんて考えないほうがいいぜ!!」(シーナ)

と言われるとその生徒はしぶしぶ、

「はい・・・、わかりました・・・」

と言ってはとぼとぼと梅歌たちから離れていった。はなまtる

 

 そして、梅歌と松華は自分たちを殴ろうとした生徒が離れていったあと、梅歌と省はルビィたちに対し、

「ルビィさん、あげはさんたち、私たちを救ってくれてありがとうございます」

とお礼を言うも、ルビィ、そのこと・・・というよりもルビィの陰に隠れていたあの娘から、

「これで懺悔は終わったのです!!さぁ、すぐさま、私のリトルデーモンになりなさい!!」

と、なぜか、ヨハネ、2人を勧誘する。むろん、これには、2人とも、

「ははは・・・」

と唖然となるも、そのヨハネの陰からあの娘が・・・。

「善子ちゃん、やめるずら!!2人とも引いているずら!!」

とヨハネの頭を軽くチョップをかましてヨハネを止める花丸の姿があった。これには、ヨハネ、

「はい、すいません」

と梅歌と松華に謝ってしまう。

 そんな、まるでお笑い集団となろうとしているルビィたちに対し、梅歌、

「でも、私たちを助けてくれてありがとうございます」

と改めてお礼を言うと、ルビィ、梅歌に対して、

「いや、それほどでもないよ。それに同じ静真の生徒だし、同じスクールアイドルだしね!!」

と言われると、梅歌、思わず、

「私、そう言われるととてもうれしいです!!だって、ルビィちゃん、花丸ちゃん、ヨハネちゃんは私にとって憧れの存在であるAqoursの一員ですから!!」

と天にも昇る気持ちでそう言ってしまう。

 だが、ここで、ルビィ、本題とばかりに梅歌に対しあるものを渡してこう言った。

「ルビィもね、そのことを言われると嬉しいの。だけど、それを裏切るようなことをしてごめんね!!」

 そのルビィから渡されたもの、それを見て、梅歌、はっとする。

「これって・・・、挑戦状・・・」

そう、ルビィが梅歌に渡したもの、それは、挑戦状、であった。その挑戦状について、あげはが詳しく解説する。

「今月(5月)末、ルビィたちAqoursはここ静真の校庭で一大ライブを行います。そこで、AqoursとRedSun、どちらが静真のスクールアイドルとして相応しいのか、それを決める対決を行う予定です。梅歌さん、松華さん、桜花さん、ともにじっくり話し合って出場するかどうか決めてください」

そう、今月末、この静真の校庭でAqoursの一大ライブを行うことをAqoursは決めたのだ。そのライブの注目の1つとして静真の代表するスクールアイドルを決めるべくAqoursとRedSunの対決を計画していたのだ。

 ただ、これには、梅歌、

「え~、あのAqoursと戦う・・・。なんで・・・」

とまたまた愕然となるも、花丸、そんな梅歌に対して、

「これは強制ではないずら!!いやだったら出なくていいずら。出なかったとしてもおらたちはRedSunのことを、梅歌ちゃんたちのことを見下すことはしないずら!!だって、おらたち同じスクールアイドルだから、ずら!!」

と優しく言うと、梅歌、すぐに、

「うぅ・・・、たしかにそうだけど・・・」

と苦悩してしまう。たしかにこの対決は強制ではない。だけど、この対決に逃げれば「RedSunはAqoursの力に尻尾をまいて逃げた」として後ろ指を指されるのは必至であった。でも、対決したらきっとRedSunは負けてしまう、そのこともあって梅歌は苦悩していたのである。

 と、ここで、松華、梅歌に助け舟をだす。

「ルビィさん、わかりました。この挑戦状は受け取ります。ですが、出るか出ないかは私たち3人がじっくり話し合います。それでよろしいでしょうか」

松華は今後のことで悩む梅歌の代わりにその挑戦状は受け取るもその対決に出るか出ないかは3人でじっくり話す、そうすることでこの場から離れる口実を作ったのである。これには、梅歌、

(松華、ごめんね、優柔不断な私に代わってもらって・・・)

と心のなかでお礼を言うと、松華、

(いや、これが私のいつもの務めですから)

と返事をした。

 こうして、ルビィから挑戦状を受け取った梅歌、それに対し、ルビィ、

「答えは2週間後に聞くね。それじゃまたね」

とヨハネたち5人を連れてどこかに行ってしまった。これには、梅歌、

「なんかすごい展開になったね・・・」

と言うと松華も、

「たしかに・・・」

と相槌を打った。2人にとってまさかのAqoursからの挑戦状。これにはさすがの2人とも唖然とするしかなかった。

 だが、梅歌と松華のもとから去ったルビィは、このとき、こう思っていた。

(この対決、それはあの桜花ちゃんを救うためのものなんだよね。だからこそ、ルビィたち、絶対にRedSunに勝つからね!!)

この対決、桜花を救うためのもの、でも、AqoursとしてはRedSundに絶対に勝つ、ある種の矛盾を抱えてたようなルビィの思いであった。それって一体・・・?



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ラブライブ!RSBP 第24話

 翌日、梅歌と松華はスクールアイドル部の部室に行くことに。そこには・・・、

「お父様・・・、お父様・・・」

と「お父様」という単語を泣きながら叫んでいる桜花の姿があった。どうやら、桜花、自分の父から「役立たず」「ごく潰し」とふたたび言われ続けるようになったことにショックだったようで、そのショックからいまだに抜け切れていないようだ・・・。

 だが、そんなことなんて梅歌も松華も知らないのか、泣き叫ぶ桜花に対し、梅歌、

「桜花ちゃん、なんで泣いているの?まさか、理亜ちゃんとの勝負に負けたことのショックから抜け出せないの?」

と的外れな質問をしてしまう。だが、それには、桜花、

「あっ、梅歌に松華・・・」

と2人が来たことを知るとすぐに涙を拭いては、

「いや、なんでもない、なんでもない」

とまるでなにもなかったかのように強気に振舞いだした。でも、これには、松華、

「桜花さん、あまり気を落とさないでね・・・」

となぜか桜花を元気づけようとすると、桜花、

「あっ、あ・・・」

と、ただたんに声をあげるしかなかった・・・。

 

 その後、涙をふきとった桜花は梅歌に対し、

「ところで、その手に持っているものってなに?」

と尋ねてみる。そう、梅歌の手にはあるものを握っていた。それを梅歌はすぐに桜花へと、

「はい、桜花ちゃん、これ、手紙だよ!!」

と言っては渡す。

 すると、桜花、びっくりする。

「こ、これって、挑戦状!!」

そう、梅歌が握っていたのはあの挑戦状であった。これには、松華、

「まさか、あのグループから直接くるなんてね・・・」

とあおるように言うと、桜花、その挑戦状を広げた。

 すると、

「こ、これって・・・Aqoursからの挑戦状・・・」

と開いた口がふさがなかった。そう、挑戦状の主はAqours・・・、桜花からみればにっくき相手、であった。なので、桜花、

「あのAqoursが私たちをつぶそうとしている・・・」

と、がくがく体を震わせながら言うとともに、

「と、同時に、私にとって逆転できる最後のチャンスかも・・・」

と小声で言った。この小声こそ桜花の本心だったりする。だって・・・、

(Aqoursは私を完全に倒そうと私たちRedSunに挑戦状をたたきつけた。だけど、それは、逆に言えば、私に残された逆転の最後のチャンス・・・。だって、この戦いで私たちが(私が策略的に勝ったことで)弱体化しているAqoursを倒せば、私のことをふたたび「役立たず」「ごく潰し」と言ったお父様に顔向けできる、いや、私のことをついに認めてくれるはず!!)(桜花)

そう、たしかにAqoursと同等の力を持つ(ただし、桜花にとってAqoursみたいにレベルの低い)理亜たちに負けた。だけど、理亜たちに負けただけであってAqoursには負けていないのだ、桜花たちRedSunは。まぁ、直接Aqoursと戦ったわけではないのだが、父親の権力を使ってAqoursを同好会として活動せざるをえない(活動資金が少ない、静真の代表として大会に参加できないなど)策略的には勝った、これにより同好会としてのスクールアイドル活動に支障がでてしまった、これでは十分な活動ができない、なので、今のAqoursは弱体化している、そう桜花は考えていたのだ。

 だが、このとき、Aqoursは沼田の支援やクラウドファンディングの成功により活動資金も含めて十分活動できる状況であったことを知る由もなかったのだが、それでも、桜花は「Aqoursは自分の策略により弱体化している、叩くなら今のうちだ!!」と確信したのある。

 そういうわけでして、桜花、梅歌と松華に対しあることを言いだす。

「私、木松桜花、Aqoursと戦う・・・。この静真のスクールアイドルはRedSunであることを示す!!」

この桜花の言葉に、梅歌、

「えっ、あの理亜さんと同等の力を持つAqoursと戦うつもり・・・」

と困惑するも松華に至っては冷静であった。Aqoursと戦うことを決めた桜花に対し、

「この戦い、受けていいのですか。私たちはあの理亜さんに負けたのです。Aqoursはその理亜さん以上の力を持っているのです。それでも初心者ばかりの私たちはAqoursに戦うのですか?」

と尋ねてきた。たしかに松華の言うことももっともである。桜花たちRedSunはAqoursと同等の力を持つ理亜たちに負けた。それでも桜花は理亜たちと同じ、いや、それ以上の力を持つAqoursと戦う、それは負け戦になるのでは、と、松華は桜花に投げかけたのである。

 だが、それでも桜花は自分の道を・・・、

「それでも、私はAqoursと戦う。それが自分にとって最善の道だから・・・」

曲げることはなかった。だって・・・、

(あのAqoursは弱体化している。なら、叩くなら今のうち!!それに、これに勝たないと絶対にお父様から捨てられる・・・。私にとってこのAqoursとの戦いが私に残された最後のチャンス・・・。お父様に認めてもらう最後のチャンスなのだから・・・)(桜花)

もう最後のチャンス、父である木松悪斗からの認めてもらえる最後のチャンス、そう、桜花は思ったから・・・、この最後のチャンスにすべてを賭ける、このときの桜花はそう決意したのだ。

 と、ここで、梅歌、あることを尋ねる。

「わ、私としてはあのAqoursと戦って負ける確率の方が大きいと思うのだけど、なんか勝つ秘策なんてないの、桜花ちゃん?」

そう、あのAqoursにそのままの状態で戦ったら負けてしまう、ならば、そのAqoursに勝つ秘策はないのか、ということなのだ。

 と、ここで、桜花、その梅歌の問いにこう答えた。

「たしかに秘策はあります」

これには、松華、

「えっ、Aqoursに勝つ秘策があるというのですか?」

と桜花に尋ねてみる。まさか、アクアに勝つ秘策があるなんて思ってもいなかったからだ。

 と、ここで、梅歌、その秘策について桜花に尋ねてみる。

「ところで、桜花ちゃん、その秘策ってなに?」

 すると、桜花、2人を自分の近くへと手招きすると、

「それはですね・・・、ごりょごりょごりょ」

とその秘策について話す。すると、松華、

「あっ、たしかに、それは秘策中の秘策ですが、そこまでして勝ちたいのですか?」

と逆に尋ねてみる。どうやら、たしかに秘策ではあるがそこまでして勝ちたいのか疑問に思ったようだった。

 だが、それでも桜花ははっきりとこう断言した。

「あぁ、勝ちたい、勝ちたい、というよりも、勝たないといけないんだ!!」

この桜花の言葉に、松華、

「そこまでして勝ちたいとは・・・」

と唖然となってしまう。松華からすればそこまでして勝ちにいこうという桜花の思いに、

(桜花さんにとって「勝利」こそが一番大事なんだ)

と桜花の勝ちにいく姿勢に考えさせられてしまった・・・。

 とはいえ、部長である班が決めたこと・・・なのか、梅歌、突然、こんなことを言いだしてしまう。

「桜花ちゃん、わかった!!私、その秘策、やる!!」

これには、松華、

「えっ、梅歌、いいの!?相手は梅歌にとって憧れの存在であるAqoursだよ・・・。それでもいいの・・・」

と、梅歌に問い直す。梅歌にとってみれば戦う相手であるAqoursは梅歌にとって憧れの存在。それでも梅歌はAqoursと戦うのか、松華はそれが少し心配であったのだ。

 だが、それでも梅歌は曲げなかった。松華に対し、梅歌、

「たしかにAqoursは私にとって憧れだよ。でも、それでも、一度はAqoursと戦いたい。戦って、自分にとっていい経験になればいいと思っている。だから、私、桜花ちゃんと松華と一緒に戦う!!」

梅歌、こう見えて頑固なところがあった。一度決めたらこうしないといけない、その思いが梅歌の意思を強くした。いや、その思いがあるからこそなにがあっても梅歌は最後までやり遂げることができるのかもしれない。いや、そればかりか、

(それに、Aqoursと戦いを挑む、それって、私、桜花ちゃんと松華と一緒にスクールアイドルとして頑張る、それによって一緒に輝くことができる、そうなることだってできるよね!!)(梅歌)

なんと、ここにきてまで3人と一緒に輝く、そのことを考えていたのだ。梅歌にとっての願望は「スクールアイドルとして活躍し輝くこと」である。それが自分の憧れであるAqoursと戦うとしてもである。2人と一緒に戦うことで梅歌はスクールアイドルとして一緒に輝こうと考えたのである。梅歌はそれくらい自分の願望に忠実なのかもしれない、桜花と同じように。でも、桜花と違い、梅歌はみんなと一緒にその物事に進もうとしている、それくらい、梅歌は自分の欲望に忠実だった。でも、そのなかにあるもの、それは、自分だけでなく、「みんなと一緒に輝く」、そんな宝石みたいなものなのかもしれない。

 そんな梅歌の思いを感じたのか、松華、

「梅歌がこう言いだすと止まらないことは私がよく知っています。私も梅歌とともにAqoursに対して戦うことにしましょう」

と言っては梅歌と同調した。

 こうして、桜花たちRedSunはAqoursに勝つために戦うことを決めたのだが、桜花、自分の秘策について梅歌と松華にあるお願いをした。

「梅歌、そして、松華、お願いがあります。これから先、練習が厳しくなります。いや、この秘策をすることでこの私とてとても厳しい練習をこなさないといけないと思います。それについてきてください」

桜花はこの秘策にRedSunのすべてを賭けようとしていた。だが、それは自分はおろか、梅歌、松華にも厳しい練習を課することを意味していた。それについていくように桜花は2人にお願いをしたのである。もちろん、これには、梅歌、松華、ともに、

「「うん、わかった!!」」

と元気よく返事をした。2人とも桜花の覚悟を認め、自分たちもその覚悟を持つことにしたのである。

 

 その数日後・・・、

「ふんっ、私が本気ををだせば、こんなもの、朝飯前だ!!」

と木松悪斗はふんぞり返っていた、というより、かなり上機嫌であった。というのも、

(まさか久しぶりに大きな利益が舞い込むとはな・・・)

そう、木松悪斗にとって久しぶりに大きな利益を得るくらいの取引をしたからである。

 その取引について木松悪斗はこう思いだしていた。

(まさか、あのA社の株がこんなに値上がりするとはな!!というのも、事前にこのA社と外国資本と合併することを知ることができなのだからな!!わはは!!)

そう、実は、木松悪斗、事前にA社と外国資本が合併するという情報を仕入れていたのだ。

 それを、詳しく、時系列で話すと・・・、木松悪斗が理亜たちとの戦いに敗北した桜花を叱りつけた次の日、

「うぅ、あの役立たず(桜花)のことを考えるだけでむしゃくしゃする!!」

といまだに怒り心頭の木松悪斗であったが、突然、

「木松悪斗さま、ACTシステムから有益な情報が届きました!!」

と木松悪斗の部下がこう言いながら木松悪斗のところに駆け寄ってきた。どうやら、最近不調?続きのACTシステムから有益な情報が届いた、というのだ。これには、木松悪斗、

「な、なんだって!!それってどんな情報なんだ!!」

と食いついてきた。

 すると、その部下はその情報の詳しい内容を話し始めた。

「実は、この前、株を習得したA社がある外国資本と合併する、というものなのです!!」

A社、それは木松悪斗が数か月前に利益を得るたまにその会社の総株式の10%もの株を収得した会社であった。このA社は、ここ最近、着実に利益を伸ばしている会社であり、木松悪斗もその利益を自分も得たいがゆえにその会社の株を収得したのであるが、総株主の議決権を行使できる株の10%しか収得していないため、A社に対しては木松悪斗はたしかに影響力をもつもののそのA社を支配できるくらいにまでは至らなかった・・・。とはい、え、A社からみれば、木松悪斗は大株主の1人、といえるのだが、A社の決算期はまだ先であり、たしかにA社は利益を着実に伸ばしているとはいえA社の株価はそこまで値上がりしていない、ということで、今のところ、木松悪斗からしたらA社にはなにもできない、いわゆる、塩漬け状態、であった。

 だが、今度、A社と外国資本が合併する、ということはA社のぼ株価は急上昇するのは目にみえていた。と、いうのも、そのA社と合併する外国資本は、ここ最近、海外を中心に急成長している会社であり、それに目をつけたA社がその外国資本と合併することでさらに売上を伸ばそうとしていたのだ。で、そのことに気づいた木松悪斗は、

(ふふふ、ここでA社の株をさらに勝ってそれを売れば多額の利益がでる!!」

と直感で感じていたのだ。

 と、いうわけで、木松悪斗、すぐにその部下に対しこう命令する。

「よし!!お前、そのA社の株をできるだけ大量に買え!!i今すぐんな!!

ついに木松悪斗が本腰をいれた。A社の株を大量に買い、株価が上がったところで大量に売る、そして、多額の利益を得る、そう木松悪斗が決めたのである。

 だが、その部下は木松悪斗にこう忠告する。

「でも、この情報はまだどこも知らされていないものなのですが・・・」

そう、このA社と外国資本の合併話であるが、まだ、公表されていない、A社とその外国資本の関係者以外知る者がいない、そんな情報であった。なので、今のところ、A社の株価もそこまで急上昇しいていない、いや、落ち着いている状態であった。

 だが、それでも木松悪斗は力強くこう命令した。

「そんなもの、関係ない!!私の命令は絶対だ!!そのA社の株を大量に買え!!情報というのは先に得たものが得をするようにできている。いいな!!今すぐA社の株を大量に買え!!」

 で、このときの木松悪斗からすればこんな思いでいっぱいだった。

(ここで大きな利益を得ないと私とこの投資グループは破綻してしまう。それを防ぐためにもここは勝負にでるべきだ!!)

そう、それくらい、木松悪斗は焦っていた。ラブライブ!延長戦での沼田・小原家との戦いの敗北以降、自分たちの経済活動を制限されたことで、今や、木松悪斗とその投資グループは組織存亡の危機に瀕していた。木松悪斗自ら先頭に立ち、3つの施策などを用いて戦っているものの、あんまり芳しくない、それにより、いつ倒産してもおかしくない状況であった。だが、ここにきて大逆転ともいえるチャンスがやってきたのだ。そんなチャンスをみすみす見逃すなんてしない、それが今の木松悪斗をそれへと突き進む原動力となっていた。

 と、いうわけで、部下の忠告すら無視してA社の株を大量に買った木松悪斗、その株はA社の総株主の議決権を行使できる株の30%に達しようとしていた。そして、昨日、ついにA社と外国資本との対等合併が正式に発表された。すると、木松悪斗の予想通り、A社の株価は急上昇、それを、今日、木松悪斗はその株を大量に売ったのだ。これにより、A社の株価は急に下落(株を大量に売るとその会社の株価は下落する傾向が強い)・・・することはなく、ちょっとした急上昇に少し水を差すていどにしかならず、A社の株価はいまだに急上昇していた。 

 と、いうわけで、木松悪斗、A社の株を大量に売ったことで多額の利益を得ることができたことにより上機嫌になっていたのである。これで木松悪斗とその投資グループもしばらくのあいだは安泰・・・ということで、

(ふふふ、さて、ここあら大逆転の一歩を踏み出せる!!今にみていろ、沼田、そして、小原家!!お前たちに私の足をなめさせるくらいの苦痛を与えてやる!!)

と、これまでの危機的状況に陥る原因を作った沼田・小原家に仕返しをしてやる、そんな心意気になっていた。

 そんなときだった。木松悪斗のスマホから、

You Gut Mail

という音が聞こえてきた。これには、木松悪斗、

「おお、誰からかのメールか。どれどれ」

とメールの内容をみることに。

 すると、木松悪斗、大声をだした。

「なにっ、沼田からだと!!それに、このメールの内容はなんだ!!」

そう、木松悪斗に届いたメールとは敵である沼田からのメールだった。木松悪斗からすれば沼田から直接メールが届くとは思いもしなかったようだ。

 とはいえ、いつまでも驚いているわけにもいかない。そのメールの内容をよく読んでみる木松悪斗。

「え~と、なになに、「5月末にここに来たれし、少しいいものを見せてやろう」とはな。沼田め、この私に命令するな!!」

そう、沼田は、5月末、沼田が指定した場所に来るように、と木松悪斗に言ってきたのだ。まぁ、これだと、木松悪斗は沼田に命令された、と思ってもしかないことなのだが、その指定した場所と日時も木松悪斗にとってちょっと不愉快なものだった。というのも、

「そして、その沼田が指定した場所の日時、静真高校のPTA会長室、それに、5月末、たしか、この日は静真の校庭であのにっくきAqoursのライブが行われるはず・・・」

そう、5月末、この日は静真の校庭でAqoursの一大ライブが行われることになっていたのだ。それに合わせての日時と場所の指定、これには、木松悪斗、

(もしかして、この私にあのにっくきAqoursのライブを見せつけるつもりか!!くぅ~、沼田め~、私のことをバカにしているのか!!)

とまたもや怒り心頭になる。木松悪斗は、このとき、沼田は自分を静真に呼び、沼田と同じくにっくき相手であるAqoursのライブを自分に見せつけるつもありだ、と思っていたのだろう。まぁ、これだと木松悪斗が怒るのも無理ではないのですがね。

 とはいえ、もし、ここでこの沼田からの命令に背けばその沼田から後ろ指を指されるのは確実・・・、ということで、木松悪斗、仕方なく、

「ふ~、仕方がない。沼田の茶番に付き合うことにするか」

と沼田の命令に従うことにした。

 だが、木松悪斗はそれでも上機嫌で会った。ついにあの沼田・小原家に復讐ができる、それくらいのお金を得ることができたのだから・・・。

 

 だが、その一方で木松悪斗の投資グループでは不穏な動きがあった。ちょうど、木松悪斗が沼田からのメールを読んでいたとき、その投資グループの下っ端の1人がこんなことを言っていた。

「ほ~、私の思った通り、木松悪斗めぇ、A社の株を大量に売って多額の利益を得たな。これで木松悪斗は罠にはまったな!!あとは警察が動くのを待つのみだ!!これで木松悪斗の没落は目の前!!私の天下がついに来るんだな!!」

この下っ端の名前は裏美といった。どうやら、恨み、木松悪斗を貶めるためにあうrことをしたようだ。その内容とは・・・、

「ふんっ、この裏美様からすれば、こんなこと、朝飯前だ!!私のもつ情報網、見くびらないでほしいな!!まさか、A社のパートの人から「A社と外国資本の合併話がある」というどこにも公開していたい情報を仕入れることができたのだからな!!その情報をACTシステムに直接送り込んだのはこの私だが、そんな未公開情報をあの木松悪斗がなにも調べもせずにそれを使ったんだからな!!」

そう、「A社と外国資本が合併する」という未公開情報を木松悪斗に流したのは裏美であった。なんと、A社のパートからこの未公開情報を仕入れてACTシステム経由で木松悪斗に送った、というのだ。でも、そんあことをしたとしても木松悪斗からすれば利益を生むだけ、なのだが、裏美にとってみればそれこそねらい目だったようだ。

 こうして、裏美は上を見上げながらこうつぶやいた。

「これで木松悪斗はおしまいだ!!これで私の天下が決まったのも同然だ!!」

 

 そして、時を同じくして、木松悪斗の娘である旺夏にも月からこんなメールが届いていた。

「ふ~ん、月からこんなメールが届くなんてね。「5月末、お話ししたいことがあります。静真の会議室に来てください」だって。私にAqoursのライブをみせつけるつもりね。いい度胸しているじゃない!!」

月からのメール、それは、5月末、Aqoursのライブが静真の校庭で行われる日、静真の会議室に来て、とのことだった。旺夏はこれを「月がAqoursのライブを旺夏に見せつけようとしている」と捉えたのである。まぁ、その日は部活もお休み、ということで、まさか、月から自分のことを挑発(と旺夏はそう思っている)するようなことを言われた、ということで、旺夏、

「ふんっ、その月の挑発、受けて立ってやるじゃない!!みてなさい、月!!その日は月にギャフンと言わせてあげるから!!」

と強い思いで月の挑発にのることにしたのだった・・・。

 

 と、そんなことが表で起きていることなんて露知らず、静真のなかにある練習場(なぜか屋上・・・)で桜花は、

「痛い!!」

といくつものコブを作りながらも必至になってあることを練習していた。そんな桜花に対し、

「桜花ちゃん、あともう少しだよ!!あと少し高く飛べばきっとうまくいくよ!!」

という梅歌の声援が届くも、その横から松華が、

「梅歌、桜花さんに声援を送る前にやることがあるでしょ!!私たちとてこのダンス技術は必ず収得しないといけないのだから!!」

と通コムをいれると桜花からも、

「松華の言う通り!!たとえ私がこれを成功させたとしてもあなたたちが失敗すればすべてがおじゃんになるのだからね!!だから、本番では必ず成功できるように練習して!!」

と強い檄が飛ぶ。これには、梅歌、

「うん、わかった!!桜花ちゃんのためだもんね!!私だってやるときはやるよ!!」

と元気な声を出した。

 こうして、毎日毎日、桜花たちRedSunの3人は夜まで練習場での練習やジムでの体力づくりへと精を出していた。

 そして、Aqoursとの直接対決の前日・・・、

「とう、はぁ、とう!!」

と言う声とともに大技を桜花は完成させた。その横では、桜花、松華、ともに、

「えいっ」(梅歌)

「やぁっ!!」(松華)

とあのときのヨハネみたいに体中に湿布やばんそうこうを貼りながらもも声を出しながらも2人であるダンス技術を披露すると成功を収めた。

 これらの成功により、桜花、飛び上がりながらも、

「よしっ!!これで完成だ!!」

と大きく喜んだ。と、いうのも、これこそ桜花たちにとってAqours打倒のための秘策中の秘策だったのである。それがついに完成・・・というか成功したのだ。これには、梅歌、松華からも、

「これならAqoursに太刀打ちできますね!!」(梅歌)

「たしかにそうかも!!」(松華)

と喜んでいた。いや、梅歌に至っては、

(今、私、きらめいている、輝いている!!あのときのように、あの理亜さんのときみたいに、なにもできなかった、輝くことができなかった、そのときの悔しさを挽回できる、いや、勝つことだけしか意識していなかった桜花ちゃんと気持ちのすれ違いによりなにもできなかった、、それすら忘れさせるくらいに、今、私、輝いている!!)

と、思えるようになっていた。実は、梅歌、あのとき、理亜・花樹組と戦っている、そのときは、「桜花ちゃんとすれ違いが起きた、輝くことができなかった」ということを悔しんでいたのだ。理亜・花樹組と戦っているとき、桜花はただ勝つことだけを考えており、スクールアイドルとして輝きたい、そう思っていた梅歌とは気持ちのすれ違いが起きていた。それに加えて、初めてのステージ、ということもあり、梅歌自身、緊張と気持ちのすれ違いにより自らも輝くことができなかった、その悔しさがあったのだ。でも、今は違う。桜花、梅歌、松華は1つの目標、Aqoursと戦う、そのために必至になって練習してきた。その練習したものがついに完成した、それは梅歌にとって、自分たちが1つとなって輝いている、そんな理想がかたちになった、そのことに梅歌は喜んでいたのである。むろん、この梅歌の表情に松華も、

(梅歌、なんかうれしそう。もしかして、今、私たちは1つになった、輝いている、そう感じているのかもしれないですね)

と自分もうれしそうになっていた。

 だが、そんな2人に対し、桜花、檄を飛ばす。

「2人とも、明日が本番なんだからね!!」

そう、明日はついに本番なのである。そのことを桜花に言われると2人とも、

「たしかにそうかも!!」(梅歌)

「そのためにも気合をいれないとですね」(松華)

と気持ちを引き締めていた。

 こうして、3人はついに「打倒、Aqours!!」のための秘策中の秘策を完成させ、ついに本番を迎えることとなった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第25話

 そして、ついにこの日が、Aqours静真ライブの日が、静真のスクールアイドルを決めるべく、RedSun VS Aqours、その直接対決の日が来てしまった・・・。

「それでは、次の曲、MIRAI TICKET!!どんどん盛り上がってね!!」

とリーダー格の千歌が観客たちに言うと観客たちからも、

オー!!

という声援がとんでくる。この日は約2000人ものお客さんが来ていた。いや、満員御礼であった。それでもAqoursのライブがみたい、ということでライブ生配信も実施していた。ただ、ライブの観客たちは手に自分のスマホを持っていた。普通のライブなら、無断の録音・録画をさせないためにスマホの電源を切るかマナーモードにして自分のカバンなどにしまっておくのがルールであった。ところが、このライブに限ってそれをOKにしていた。というのも、このライブ自体無料であり、同好会、ということもあり、あの沼津駅前で行った新生Aqoursお披露目ライブ以降、ライブらしいライブをしてこなかったAqoursの健在ぶりを示すためのライブ、ということで、ライブの録画・録音はすべてOKだった。むろん、そのかげには沼田や小原家のバックアップがあるのも事実だが、とある理由でそれは伏せられていた。まぁ、観客たちはそんなことなんて露知らず、ただ、Aqoursのライブをスマホを持ちながら楽しんでいた。

 だが、観客たちはあることを知っていた。それは・・・、

「みんなのスマホはあとである企画のときに使うから今のうちに用意してください」

と、このライブが始まる前、Aqoursのルビィからこのようなアナウンスがあったから、たとえ、勝手に録音・録画していても観客たちがスマホを持っていることを・・・。

 そして、ライブは次々と進んでいく。過去に発表した曲たちを次々と披露していくAqours。これをステージのそばで見ていた桜花は、

(私達より下手なくせにすごいライブを行っているじゃない!!敵ながらあっぱれだ・・・)

とAqoursのすごさを今になってようやく感じていた。また、梅歌、松華に至っては、

「ねぇねぇ、松華、やっぱり、Aqoursってすごいでしょ!!」(梅歌)

「たしかに、梅歌の言う通りだね。この私にもAqoursのすごさがわかるよ!!」(松華)

と生でAqoursのライブを感じているせいか、あらためてAqoursのすごさを感じていた。ライブというのは生で感じることが一番である。昨今、配信などでライブを鑑賞して楽しむことが多くなったが、生でそこにいるみんなと一緒に一体になってライブを楽しむことこそ、そのアーティストのすごさを感じるには一番なのかもしれない。それを桜花たちRedSunは今になって感じていたのである。

 そして、どんどんライブは進んでいく。そのなかで、1つ違和感を感じるものがあった。それは・・・、

(あれっ、あの曲はしないの?千歌ちゃんのバク転、見たかったな・・・)(梅歌)

そう、あの曲はしなかった、というかわざとなのか飛ばしていたのである。あの曲とは、千歌がロングダートからのバク転が見ものの1つなのだが、その曲をやらずに「WATER BLUE NEW WORLD」を先にやったのである。これには、観客たちから、

「これって9人でやらないと見栄えしないから飛ばしたんじゃ・・・」

「いや、チアちゃんの負担が大きいからやらないんだよ・・・」

という話が聞こえてきた。むろん、これには、桜花、

(あれっ、観客たちが騒いでいる・・・。なんかあったのだろうか・・・)

と不思議がることに。

 とはいえ、この曲を飛ばしたこと自体桜花は知らなかった、って、桜花の場合、Aqoursのことなんてあまり知らなかった、というか、知ろうとしなかった。だって、桜花にとってAqoursは雑魚の存在としかみていなかったから・・・。普通なら、「敵を知っておのずを知れば百戦危うからず」、なのだが、このときまでは桜花に敵であるAqoursのことを知らずにしなかったのはある意味であっぱれ・・・なのかもしれない・・・。

 とはいえ、ライブは次々へと続く。そして・・・、

「ついに最後の曲!!「NEXT SPARKING!!」」

とAqoursの持ち歌をあの曲を残してすべて歌い終わってしまった・・・。これには、梅歌、

(この曲であの曲以外のAqoursの持ち歌を全部出し切ってしまった・・・。ということは・・・」

と心配になると松華も、

(ということは、この戦いって・・・)

と、こちら心配になる。

 だが、そんなことなんて知らない桜花はただ、

(よしっ、このあとだ、私たちRedSunがAqoursを打ち倒すときは・・・)

と、なぜか、このあとに起きるあれについて闘志を燃やしていた・・・。

 

 そして、ついにこのときがきた・・・。「NEXT SPRKING!!」を歌い終わったあと、千歌は観客たちに向かってこんなことを言ってきた。

「さぁ、これでライブも終わり・・・じゃないよ!!ここからは、特別企画!!ついにあのスクールアイドルが登場!!私と激しいバトルをするよ!!みんな、楽しみにね!!」

これには、観客たち、

ワー!!

と、大いに喜んでいた。この盛り上がりにステージ袖にスタンバイしていた桜花は、

(う・・・、あのとき(摩周丸での理亜たちとのライブ)以上に観客がいる・・・)

と緊張しながらそのときを待っていた。さらに、梅歌、松華にいたっては、

(う~、こんな大勢の人たちの前で歌うなんて初めてだよ・・・)(梅歌)

(梅歌を見ていると私も緊張してきた・・・、どうしよう・・・)(松華)

と緊張しっぱなしだった。

 だが、

「それでは対戦相手を紹介するよ!!ここ、静真のもう1つのスクールアイドルグループ、RedSun!!」

と千歌から呼ばれると、桜花、梅歌、松華、3人とも、

(((よしっ、これからは私たちのステージ!!やってやる!!)))

これまでやってきたきつい練習のせいか、あの摩周丸でのライブでは見なかったような貫禄がでていた。いや、あのときのRedSunではないきつい練習を経て身に着けた自信がRedSunを輝かせていた。

 そして、ついに桜花たちRedSunがAqoursのステージに立った!!その開口一番、桜花は観客たちに向かって大声でこう叫んだ。

「私たちこそRedSunだ!!きつい練習を経て生まれ変わったんだ!!いいか、見とけ!!この私たちがAqoursをぶっ潰す!!」

 すると、まわりから「ブーブー」というブーイング音が聞こえてくる。ここはAqoursのステージである。そのAqoursにたてつくRedSunにブーイングがくるのは当たり前だった。

 だが、ここで、桜花、そんなブーイングをみせる観客たちに対してこんな言葉を自信満々に放つ!!

「言っておくが、私亜地は、か・な・り、強い!!生ぬるい沼につかっていたAqoursなんて目じゃない!!絶対にみとけ、私たちの華麗なるパフォーマンスを!!」

あまりに自信満々に言い放ったためか、観客たち、黙ってしまう・・・。

 と、ここで、ルビィ、黙り込む観客たちにこう訴えた。

「ルビィたちAqoursもRedSunがこのステージのために一生懸命頑張っていることは知っているんだ。だから、RedSunのステージを楽しみにしてください!!」

これには、観客たち、

ウォー!!

という声とともにルビィを褒め称えた。ただ、これには、桜花、

「ふんっ、敵に塩を送ったつもりだけど、そのせいで寝首をとられないようにね!!」

とルビィに言うとルビィも、

「桜花ちゃん、優しいね!!」

と言われてしまう。あまりに唐突的なルビィの言葉なのか、桜花、

「・・・」

と黙ってしまった・・・。

 とはいえ、ついにRedSun VS Aqoursの直接対決が始まろうとしていた。このとき、桜花はある人の顔を見てしまう。

(えっ、まさか、あの人たちも見に来ていたの・・・、お父様・・・、お姉さま・・・、一体・・・、どうして・・・)

 

 ちょうど、このとき、観客席後ろの関係者席には・・・、

「お、お父様、どうしてここに・・・」

と、高3の少女が隣に自分の父親がいることを知ってその人に尋ねてみると、その大人の人も、

「お、お前こそ、どうしてここにいるんだ・・・」

という驚きの声が聞こえてきた。

 すると、高3の少女がこう言ってきた。

「私は渡辺月生徒会長に及ばれしてここにきたのです。お父様はどうしてここに?」

と、その大人の人に尋ねてみるとその大人の人も、

「私も沼田に呼ばれてここに来たんだ」

と言うと、その大人の人はついにあることに気付く。

「もしかして、私たちははめられたんじゃないか、渡辺月と沼田によって・・・」

そう、この2人は誰かによってはめられたのである。このことにようやく2人は気づいたのである。

 だが、このとき、この声が聞こえてきた。

「ここ静真のもう一つのスクールアイドルグループ、RedSun!!」

この声とともに2人は唖然となる。

「「えっ、なぜ、ステージに「ごく潰し」がいるわけ!?」

 

「それでは最初はRedSunからの先行です!!RedSunのみなさん、スタンバイをお願いします!!」

RedSunの名が呼ばれたあと、桜花たちは自分たちのポジションにつこうとする。ところが、観客たちからは

ブーブー

とブーイングはまた聞こえてきた。構図としたら、「悲劇のヒロイン、Aqoursを貶めた敵役、RedSun」ともいえるのだが、このブーイングには、

「まさに完全アウェイですね・・・」

と珍しく松華が先に言うと、桜花、

「そんなもの、関係ない!!私たちのパフォーマンスを見れば観客たちも考えを変えるはず!!だって、私たちはあのきつい練習を耐えたのだから!!」

と力強く梅歌と松華を力づける。桜花はある意味変わったのかもしれない。このステージに向けて体中を気づつけながらもきつい練習をしてきた。桜花たちRedSun、それは桜花にとってこれまでみせていたような確信のない自信、虚栄心から来る自信からちゃんとした実力からくる本当の自信へと変わってきたのだ。そんなちゃんとした自信からくる桜花の言葉を聞いて、梅歌、松華、ともに、

「桜花ちゃん、たしかにそうかも!!桜花ちゃんの言葉を聞いて自信がわいちゃった!!」(梅歌)

「たしかに桜花さんの言う通りです。私も桜花さんの言葉を聞いて安心してきました。ありがとうございます、桜花さん」(松華)

と桜花から元気をもらったようだ。

 こうして、3人とも今のステージに闘志を燃やす。

(私たちはきつい練習をしてきたんだ!!絶対にAqoursに勝ってやる!!)(桜花)

(桜花ちゃんのためにも、このステージ、頑張る!!)(梅歌)

(ここは私たちのステージ!!だからこそ、私は・・・、輝く!!そして、勝つ!!)(松華)

3人ともこのステージに賭ける思いは同じだった。それは、あのときの、摩周丸でのステージ、3人とも思いがバラバラなときとは違った。それはあのきつい練習を経たからかもしれない、もしくは、桜花の現状を知ったからかもしれない。とはいえ、3人の今の思いは一緒だ!!3人は一丸となってこのステージを向かう。

 そして、ついにこの曲が流れてきた。

ツツ ツツツ ツーツ ツツ  ツツ ツツツ ツーツ ツツ

この曲は!!まさか!!そう、観客たちが思ったのか、口々にこう声にした。

「これって、Aqoursの「MIRACLE WAVE」じゃ・・・」

そう、桜花の秘策中の秘策、それはAqoursの曲を使うこと、それも、ダンスの難易度が鷹い「MIRACLE WAVE」を披露することだった。これには、桜花、

(これを行うことはこの戦いにおいては反則かもしれない。でも、それでも、この戦いにかつため、お父様とお姉さまに認めてもらうため、この最後のチャンスに臨むため、私はどんな手を使ってでも勝ちにいきます!!)

と、この戦いにかける思いは半端ないものだった。たしかにこの戦いにおいては相手の、それも一番盛り上がる曲を使うのは反則かもしれない。ただ新曲を作ったり練習する時間なんてない、「RedSun」のようなあの理亜たちに負けるくらいのパフォーマンスではAqoursには勝てないかもしれない。いや、短期間であのAqoursに勝つには「MIRACLE WAVE」ほどの(ライブにおいて)迫力のあるものではないと勝てない、いや、むしろ、そのことを考えるとそれが妥当だったのかもしれない、なので、このステージのために、この曲のためにこれまであのきつい練習をしてきた、それくらいこの桜花の策はこの戦いにおいてはベストチョイスだったのかもしれない。

 ただ1つ、桜花・・・ではなく松華はある疑問があった。それは・・・、

(でも、Aqoursはこのライブにおいて「MIRACLE WAVE」をまだ披露していません。もしかして・・・)

そう、実は、Aqours、このライブにおいて「MIRACLE WAVE」をまだ披露していなかったのだ。このライブではAqoursがこれまで披露した曲をすべてパフォーマンスするような形式をとっていた。だが、この「MIRACLE WAVE」だけは、ライブとして一番盛り上がるはずの「MIRACLE WAVE」だけは、Aqoursは、このライブではまだ披露していなかったのだ。それについては観客たちも違和感を感じていた。ただ、松華はそのことについて・・・、

(もしかした、私たちのパフォーマンスのあとに本物としてこの曲を披露するのでは・・・)

と危機感を募らせていた。たしかに桜花たちRedSunもこのステージに向けてきつい練習をしてきた。だが、それはつけ刃にすぎないのかもしれない。逆にAqoursの「MIRACLR WAVE」のパフォーマンスは本物である。つけ刃のものと本物のもの、どちらが勝つといえば本物の方である、そのことを桜花は心配していたのだ。(では、桜花はというと・・・、Aqoursのことなんてまったく知らない桜花だったので、「MIRACLE WAVE」を知っていたとしてもそこまで違和感を感じていませんでした・・・)

 そして、ついにあのパフォーマンスをみせる。そう、「MIRACLE WAVE」ではお馴染みの、ロングダートからのバク転のパフォーマンスをである。これに入ろうとすつ前、桜花、

(よしっ!!ここまでは順調!!さぁ、やるぞ!!この曲、最大の見せ場!!)

とやる気をみせていた。ここまでのパフォーマンスは完璧だった。あのきつい練習のおかげもあり、これまでミスなんてない完璧なパフォーマンスを桜花たちRedSunはしていた。それは完コピだったのかもしれない。それでもミスのないパフォーマンスは最初にブーイングをしていた観客たちですら黙ってしまうものだった。

 そんななか、桜花はある人たちがまだ自分を見つめていることに気付く。

(よしっ!!って、えっ、なんでお父様とお姉さまがまだいるの・・・)

そう、桜花が見つけた相手、それはこのライブに来るはずのない、いや、Aqoursをはじめ、スクールアイドルを、音楽を、遊びとしか認識していない、そんな桜花の父の木松悪斗と姉の旺夏がこのライブに来ていたのだ。普通なら考えられないようなこと、そのためか、桜花、

(お父様とお姉さまがまだ私のことを見ている・・・、私、いったいどうすれば・・・)

と一瞬悩む。まさか、自分の父と姉の目の前でパフォーマンスをみせることになるとは思っていなかったのだ。

 だが、このときの桜花は違った。すぐに、、

(でも、このパフォーマンスをみれば、いや、Aqoursに勝てば、きっと、私のことを認めてくれるはず!!)

と自信満々にそう答える。そう、今の桜花はあのときの、虚栄心を張っていたときとは違がった。今はきつい練習をしたことで本物の自信をつけることができた。その本物の自信でもってパフォーマンスをする。その余裕が今の桜花にはあった。あので、今の桜花は自分の父と姉に向かって・・・、

(だから、みていてください、お父様、お姉さま!!私の雄姿を、Aqoursが巻ける様を、みていてください!!)

と心のなかで叫んだ。

 そして、ついに、このときがきた!!桜花、2人の前にいく。すると、2人はドルフィンをかます!!ドルフィン、「MIRACLE WAVE」ではバク転をするメンバー以外が行う高度なダンス技術である。イルカみたいに下へと潜るようなダンスを行うものなのだが、このドルフィンにはいくつもの種類(ダブルなど)がある。この「MIRACLE WAVE」では「スタンダード」とよばれる基本転機なものがつかわれているのだが、Aqoursがこのドルフィンをやろうと言いだしたのはヨハネだったりする。それでも、ロングダートからのバク転という見せ場に花を添えるものとしてはばっちしだった。

 なのだが、RedSunは桜花以外に2人しかない、ということもあり、梅歌と松華は少しでも桜花を目立たそうと必至に・・・、というか、Aqoursが行う「スタンダード」とは違った「ローリング」というドルフィンを使った。この「ローリング」は「スタンダード」とは違い、1回転しながらドルフィンを行うものであった。そのため、梅歌と松華はお互いにぶつからないように「ローリング」を行う。このとき、2人とも、

(Aqoursのものよりこちらのほうが高度!!だから、ここは真剣に行う!!そして、桜花ちゃんへとつなげてみせる!!)(梅歌)

(「ローリング」ってかなり大変だけど、これまでの練習と比べたら、今のほうがましです!!いや、桜花さんにつなげるためにも、私、頑張ります!!)(松華)

と、真面目に、それでも桜花につなげる、そんな心意気でこのドルフィンにすべてをかけていた。

 そして、2人のドルフィン(「ローリング」)がばっちりと決まる。あとは桜花のみ。このとき、桜花、

(ここは失敗が許されない!!絶対に成功させて、それでAqoursに勝って、お父様とお姉さまに今度こそ認めてもらう!!絶対に勝つ!!勝つことこそすべてなんだ!!)

と激しく燃えていた。「勝利こそすべて」、これまで自分を支えてきた、いや、それによって苦しんできた、桜花にとって、今こそ、その思い、考え、が一番燃える瞬間であったのかもしれない。それでも桜花は飛ぶ!!助走をつける桜花。そして・・・、

(ジャンプ!!)

という桜花の掛け声とともにジャンプ、このままロングダートへとはいる。ロングダート・・・、成功!!

さらに・・・、

(そして、ここからのバク転!!)

と、バク転へとそのままの勢いのままにジャンプ・・・、バク転・・・成功!!

この瞬間、

「ヤッター!!」

桜花の雄たけびとともに、梅歌、松華、ともに、

(梅歌ちゃん、やったね!!すごいよ!!輝いているよ!!)(梅歌)

(やっぱり桜花さんはやるときはやるのです!!)(松華)

という声が桜花のなかに聞こえてきた。これには、桜花、

(えっ、なんで2人の声が聞こえてきたわけ!?)

とびっくりするも、松華、冷静に、

(これって・・・いわゆる・・・3人の心がつながった証拠、でしょうか・・・)

と解説する。そう、3人は、今、心がつながった・・・、いや、ついに心がつながった、のである。それは1つの物事に対してみんなの心が1つになったんときに起きる秘密の現象の1つである。それは、(Moon Cradleでの)ラブライブ延長戦で月とAqoursがつながったときのように(SNOW CRYSTAL序章で)あつこが理亜と聖良とつながったときのように、今回も、この曲にかける3人の思いによって3人は心がつながったのかもしれない。

 とはいえ、桜花、梅歌と桜花に対して、

(これを成功させたのは2人がいてくれたからです。本当に一緒についてきてくれてありがとう)

と2人にお礼を言うと、梅歌、松華、ともに、

(それって、終了フラグ、立っていない?)(梅歌)

(梅歌、それ、洒落になっていない・・・)(松華)

と2人で漫才をしているかのように対応する。それでも、桜花、

(ありがとう、2人とも・・・)

とお礼を再び言った。

 そして、桜花は遠くから見ている父の木松悪斗と姉の旺夏に対し、

(私、やったよ!!これでAqoursに勝ったのも同然!!)

と高々に、少し早い勝利宣言をするとともに、

(さて、2人とも、まだ曲は終わっていません!!最後まで駆け抜けるよ!!)

と檄を飛ばすと、2人とも、

((はいっ!!)

と力強く返事をした。



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ラブライブ!RSBP 第26話

 こうして、この曲最大の見せ場を成功させたRedSunはその勢いのままにパフォーマンスを行い、ライブを成功させた。これには、最初、ブーイングをみせていた観客たちからも、

ウォー

という歓声とともに、

ぱちぱち

という多大なる拍手でもって桜花たちRedSunの栄光を称える。これには、桜花、

(ふんっ、私たちだってやればできる娘なんです!!)

と威張っていた・・・、いや、それくらい誇れるくらいのRedSunのパフォーマンスであった・・・。

 むろん、これには、梅歌、別の意味で感化していた。

(私は、いや、私たちは、今、輝いている・・・、スクールアイドルとして輝いている・・・。これって私が求めていた輝き、だよ!!)

そう、梅歌はこのステージで全力でやりきったことにより、自分が求めていたもの、スクールアイドルとしての輝きを得た、そう思っていたのだ。梅歌にとってスクールアイドルを始めた理由は桜花からスカウトされたからではない、新生Aqoursお披露目ライブでAqoursが輝いていた、その輝きを追い求めていたからだった。それが、今、このステージで、このライブで達成できた、そう感じたからこそ感化されていたのだ。

 そして、今、梅歌は桜花に対しこう言いたそうとしていた。

(桜花ちゃん、私たち、今、輝いているよ。桜花ちゃんも、今、それを感じてくれているのかな・・・)

 

 だが、時間は待ってくれない。RedSunのパフォーマンスのあと、ついに、あのグループが出陣する・・・。

「さて、続きましては、あのAqoursの登場だ!!あの華麗なるRedSunのパフォーマンスに対してAqoursはどう立ち向かうのか?」

まるでAqoursをあおるような司会の言葉に会場中がシーンとなる。

 すると、Aqoursが登場したのか、会場中、騒ぎだす。

「あれっ、あの衣装、見たことないぞ!!」

「あれってマーメイド・・・みたいな衣装・・・だよね。私、それ、見たことない・・・」

そう、今のAqoursの衣装、それはこれまで誰も見たことがない衣装であった。それもなぜかマーメイドみたいな衣装・・・。これには関係者席あkらAqoursのライブを見ていた、今のAqoursの総合プロデューサー的役割をもつ月は、

(これこそAqoursの秘策!!あちらが「MIRACLE WAVE」で場を盛り上げることはわかっていた!!なら、ここは私たちAqoursも秘策を用いるだけ!!)

と、なぜか燃えていた。

そして、騒ぐ観客たちに対して、千歌・・・ではなく曜がマイクを持つと、あることを、秘策のことを言い始める。

「今から披露する曲は・・・私たちにとって新曲になります!!」

これには、桜花・・・だけでなく、Aqoursのことをよく知っている梅歌・松華も、

(((えっ、新曲!?)))

とびっくりしてしまう。そう、Aqoursはここにきて新曲をぶつけてきたのだ。新曲であればこれまで「MIRACLE WAVE」で圧倒的なパフォーマンスを見せつけ戦いを有利に進めていた桜花たちの活躍がかすんでしまう。だって、こちらは完全なる完コピ、なのだから・・・。完コピとオリジナル、それも新曲となれば完コピの方がかすむのは目にみえている、なので、桜花、

(く~、これはこれでやばい・・・)

と焦ってしまった・・・ものの、よく考えてみれば、いきなり新曲、であってパフォーマンスが悪ければそれこそ杞憂で終わる、と思ってか、

(でも、十分なパフォーマンスができなければなんてことはない。大丈夫・・・、大丈夫・・・)

とわずかに残った安心感を使って自分を落ち着かせようとした。

 そして、ついにAqoursのターンが始まった!!

トゥトゥトゥートゥトゥ トゥトゥ トゥトゥトゥー トゥトゥトゥー トゥトゥトゥ

この曲が始まると6人のマーメイドたちが一斉に動き出す。曲の名は、「恋になりたいアクアリウム(6人ver)、物語を呼んでいる方からすれば(現実では)Aqours2ndシングル、なのだが、この物語におていはこれが初披露でった。そのためか、観客たちからは、

「まさかここでAqoursの新曲が聞けるなんて・・・」

という声が大きくなっていった。

 いや、それ以上に、

「えっ、センターって曜ちゃんなの?」

とセンターが曜であることにびっくりする。そう、これまでのAqoursの曲は一部を除いてセンターが千歌であることが多かったのである。WATER BLUE NEW WORLDもしかり、ブラメロもしかり(この曲のセンターはちかりこのダブル)、なので、曜の単独センターはかなり珍しいものであった。

 と、まさかの新曲&曜単独センターということもあり、観客たちはRedSun以上に盛り上がっていた。さらに、新曲とはいえ、6人のパフォーマンスも完璧・・・ということもあり、桜花、

(これってやばくないかな・・・)

と徐々に勝てるか心配になってきた。いや、それどころか、梅歌、松華、ともに、

(これがAqoursのすごさ、実力なの~)(梅歌)

(そうとしか言えません・・・)(松華)

と絶句するしかなかった・・・。

 

 こうしてAqoursのパフォーマンスが終わった、その瞬間、

「それでは、みなさんの手に持っているスマホでどちらかがよかったのか投票してください!!「MIRACLE WAVE」であの大技を成功させたRedSunか、それとも、まさかの新曲でみなさんを魅了したAqoursか、どっちだ!!」

この言葉にスマホに表示されたRedSunとAqoursのボタンを観客たちが見る。そう、観客たちが自分のスマホを持っていた理由、それは、RedSunとAqoursの戦い、その勝者を決めるためだった。その2つのボタンのどちらかを次々押していく観客たち。

 そして、ステージ上の巨大モニターにはその投票がどんどん集まってくる。演出上なのか、RedSunとAqoursの票は抜いては抜かれるかの繰り返しでそれでも一向に結果が表示されない。これには、桜花、

(勝って・・・、勝って・・・)

という熱い願いでもって勝利を望んでいた。

 そして、ついに結果が・・・モニターにはある驚きのものが映し出されていた。それは、どちらのグループともに差がわからないようなグラフ・・・モニターを見る限り、どちらも同票・・・ともいえた。これには、桜花、

(も、もしかして、同点・・・、引き分け・・・)

と一瞬安堵したような仕草をする。

 だが、そんな桜花の望みも司会は打ち砕いてしまった。なんと、あるタブレットをみてか、司会、衝撃な言葉を発する。

「この戦いの勝者は・・・、1025対985で・・・、Aqoursの勝利!!」

これには、桜花、

「そ、そんな・・・」

と絶望に満ちた顔になってしまう。まさかの敗北・・・、これには、「Aqoursを絶対に叩きのめす」と父の木松悪斗に豪語していた桜花にとってみれば絶望というべきことであった。

 ただ、この桜花の絶望に対し、梅歌、

「でも、本当に僅差だったよね。初心者の私たちからすれば立派だと思うよ」

と桜花を励ますと松華も、

「そうです。胸を張っていきましょう」

と桜花のことを励ました。

 いや、それどころか、敵であるAqoursからも、

「まさかおらたちが苦戦するとは思ってなかったずら」(花丸)

「ふっ、おぬしたち、誇っていいぞ。このAqoursに善戦したのだからな」(ヨハネ)

「って、善子ちゃん、自分の「善」と「善」をかけているのね!!」(梨子)

「って、善子って言うな!!ヨ・ハ・ネ!!」(ヨハネ)

と、まさかの善戦に桜花たちRedSunを褒め称えていた。

 そして、ルビィが桜花の前に出てきてはこんなことを言ってきた。

「桜花ちゃん、まさかルビィたちがこんなに苦戦するなんて思っていなかったよ。それくらい、桜花ちゃんたちが頑張ってきた証拠だよ!!胸を張ってね、桜花ちゃん。そして、これからもスクールアイドルとして頑張ってね!!」

このルビィの激励に、桜花、なんと・・・、

「あ、ありがとうございましゅ~」

と泣きながらルビィに答えていた。だって・・・、

(人からこんなに励ましを受けたことなんてなかった・・・。いや、私にとって初めてだった・・・」(桜花)

そう、桜花からすれば人から褒められたことがこれまでなかった、これが生まれて初めて・・・というか、かなり昔、自分の母親からされたこと以来、の経験だったのだ。いつもは父と姉から蔑まれてきた。また、まわりからは、悪名高い木松悪斗の娘、ということで忌み嫌われてきた。ところが、そんなことなんて関係なく、いや、「「役立たず」「ごく潰し」、なんて言われず、逆に父と姉から自分のことを認めてもらいたい」、そんな自分の願望を叶えるために自分の手で苦しめてきた敵、Aqours、そのメンバーからこんなありがたい言葉を頂けるなんて思っていなかったのだ。だからこそ、桜花は、このとき、ルビィに対し最大限のお礼を言ったのである。

 だが、それすら許さない者がいた。突然、

「ちょっと関係者以外入らないでください!!」

と司会の人が言うのも聞かずにある者とその娘がステージへとあがると桜花に対し、

「この「ごく潰し」が!!負けたとはなにか!?この私に泥を塗る気か!!」

と怒鳴るように言うとその娘からも、

「あぁ、来て損した。こんな「役立たず」の、それも負けの戦いを見られるなんて、本当に私たち家族からすればただの茶番、いや、たんなる恥だわ!!」

とまるで忌み嫌われるかのような言葉を言い放つ。これを見て、桜花、絶望に満ちた表情になってこう叫んでしまう。

「お父様・・・、お姉さま・・・」

そう、ステージに突然上がってきたのは桜花のことを貶す父娘は、桜花の父と姉、木松悪斗とその娘の旺夏だった・・・。

 そんな父親から桜花に対し次々と罵声が飛ぶ。

「いいか、お前は負けたのだ。負け、すなわち、役立たずなのだ!!私からすれば、こんな負け試合、たんなる茶番、いいや、見る価値のないものだった。そんな負け試合を演じたお前なんて、本当に「役立たず」、いや、勝利のみを追い求めている私たち家族からすれば、「ごく潰し」、としかいえないのだ!!」

 でも、こんなことを自分の父親から言われているにも関わらず、桜花はただ、

「・・・」

と無言になるしかなかった。いや、それ以前に・・・、

(私は負けたんだ。もう、お父様とお姉さま・・・、親父と姉上から認められることなんてない・・・、もう一生、私は「役立たず」「ごく潰し」なんだ・・・)

と、負け戦をした以上、もう父親と姉から認められない、そんな絶望感を味わっていた。人とはなにかに失敗したとき、それができなかったことに絶望を感じることがある。特に、常日頃からその人を否定することを言い続けられていれば、その絶望感は通常よりも大きく、さらに絶望しやすくなる。それは桜花にも言えた。スクールアイドルなる前は桜花は父と姉から、常日頃、「役立たず」「ごく潰し」と言われ続けていた。いや、それ以上に、父と姉は桜花の才能すら認めてもらえずにただたんに桜花のことを否定することを言ってはけなし続けてきたのだ。そのため、桜花は僅差とはいえ、負け戦を演じてしまったことに自分の父と姉に追求され、そこから桜花のことを否定するような言葉がきたものだから、いつも以上に絶望感を味わってしまったのだ。だが、これ以上に桜花のことを否定し続けたら・・・。

 そんなことなんてお構いなしに父と姉から桜花への罵倒は続く・・・。

「いいか、お前は本当に、「役立たず」「ごく潰し」、いや、生きる価値なんてないんだ!「勝利こそすべて」、これができないのであれば、人にあらず、いや、ごみ以下なんだ!!もう1度言う、お前はごみ以下なんだ!!こんなやつなんてこの場から去れ!!いや、さっさと死んでしまえ!!」

知々夫派からの残酷な言葉、これにより、桜花、

(やっぱり、私はごみ以下なんだ・・・。そんな私なんて生きる価値なんてないんだ・・・。もう死ぬしかないんだ・・・)

と、ついに士を決意する、そんな危機的状況におちていた。このためか、桜花、

「わ、私・・・、もう死ぬしかないんだ・・・、死ぬしかないんだ・・・」

と、顔をこわばせながら、それも泣きながら、ふさぎ込みながらぼそっと声を出していた。桜花からすればそれくらいの絶望を感じていたのである。

 ところが、そんな桜花に対し、ある人物が声をかけた。

「桜花ちゃん、私は桜花ちゃんのこと、「役立たず」、なんて思っていないよ!!」

「そうです!!私と梅歌、2人はいつもあなたの味方です!!」

その声を聞いて桜花は前を見る。すると、そこにいたのは・・・、

「梅歌・・・、松華・・・」

そう、桜花の仲間である梅歌と松華であった。

 その梅歌は桜花の父親である木松悪斗に向かう、こう言いながら・・・。

「桜花ちゃんのどこが「役立たず」なのですか?それって違いますよね!!桜花ちゃんはたしかに強情なところがあるよ。うそだって言うよ。でもね、桜花ちゃんは・・・、桜花ちゃんは・・・、かなりの努力家なの!!そんなの、あなたに言われたくありません!!」

 だが、そんな梅歌の言葉に、木松悪斗、反論。

「そんな努力、負けたからには無駄、というもの!!そんな無駄なものに費やしていたなんて、考えるだけでイライラするわ!!そんな努力、無駄にしかならん!!」

 と、ここで松華もついに参戦!!

「負けた、負けた、というけど、たった50票差の僅差でした。こちらは初心者ばかり、対して、Aqoursはラブライブ!優勝の実力者。そんな相手に私たちは善戦した、そのことは間違いないのです!!」

たしかにたった50票差の僅差での負け、それはかなりの実力差がありながらも善戦したといえる。

 さらに、梅歌、畳みかける!!

「それに、私たちは絶対に輝いていた!!あのAqoursに立ち向かうため、私たちは一緒になって立ち向かった!!それって、Aqoursみたいに輝いていた、なんていえるの!!私たちは、あのとき、心が1つになった!!それによって輝いていた!!それは間違えようのない事実なの!!」

 だが、それでも、木松悪斗はくじけなかった。まだまだ、木松悪斗、応戦。

「ふんっ!!輝いていた?そんなもの、関係ない!!いいか、負けたのだから負けなのだ!!それ以上でもそれ以下でもない!!善戦した?輝いていた?そのどこが善戦したというのだ!!輝いていたというのだ!!負けたという事実は事実なのだ!!負けたという結果のみが生きる、それがこの世の中なのだ!!いいか、負けたのだから、お前は、いや、お前たちはごみ以下、生きる価値なし、なんだ!!」

あまりにも屁理屈、いや、木松悪斗からしたらこれが正論、なのだが、まわりからみたらそれはただの屁理屈、なのかもしれない。いや、それどころか、今度は梅歌や松華すらごみ呼ばわりする始末。

 と、ここで、ついに木松悪斗の方にも援軍が・・・。そう、旺夏である。旺夏、桜花たち3人に対しこんなことを言いだしてきた。

「そうだ、私とお父様の権力を使ってスクールアイドル部を廃部にしましょう。いや、ここにいるAqours、スクールアイドル同好会すらも廃部にしてもう二度とスクールアイドルというくだらないお遊びなんて許さない、そんな学校にしましょう、お父様・・・」

この言葉に、梅歌、松華、はっとする。今、2人がたてついているのは落ちぶれたとはいえ、静真において権力を有する父娘、なので、スクールアイドル部どころか自分たちが憧れているAqoursにも害が及ぶ、このことに2人とも、

(しまったかも・・・。あまりにかっとなりすぎて権力のある2人にたてついちゃったよ・・・)(梅歌)

(うぅ、私たちだけでなくAqoursのみなさんにも害が及んでしまう・・・。どうしたらいいいわけ・・・)(松華)

と、しまったとばかりにしかめっ面になってしまう。

 そんな2人、さらには桜花に対し、木松悪斗、ついに鉄槌を下す。

「さてと、RedSun・・・だったかな、お前たち、覚悟はできているような・・・。お前たちは私の顔に泥を塗った、それは万死に値する。だからこそ、ここで、お前たちに鉄槌を下す。お前たちはゴミ以下なんだ。そんなゴミ以下にすることは1つ・・・、この場をもってこの学校から・・・」

 そんなときだった。いきなり、スポットライトが1人の少女に降り注ぐ。その少女は木松悪斗に対しこう叫ぶ。

「桜花ちゃんたちは・・・、RedSunは・・・、「役立たず」「ごく潰し」、なんかじゃない!!ちゃんとしたスクールアイドルだよ!!」

この言葉に、木松悪斗、叫ぶ!!

「お、お前はだれだ!!」

 すると、その少女は自分の名を叫んだ。

「私、私の名は・・・、Aqoursのリーダー、そして、スクールアイドル同好会の部長、高海千歌だ!!」

そう、桜花たちRedSunのために立ち上がった少女、その名は、Aqoursのリーダー、高海千歌だった・・・。

 



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ラブライブ!RSBP 第27話

 高海千歌、この名を聞いただけで、木松悪斗、こう叫ぶ。

「なんだって!!お前があのにっくき相手のAqoursのリーダーだと!!笑止千万!!どうみてもおちゃらけしたやつだ!!」

と、千歌のことをバカにする木松悪斗。これにはさすがに千歌も・・・、

「笑止千万?私、お笑いなの?」

ドテッ!!

いやいや、千歌さん、バカにされているのですよ・・・、って、四字熟語の意味を知らない千歌の代わりに、

「千歌ちゃん、実はね・・・」

と梨子に千歌に対し木松悪斗の四字熟語の意味を伝えるとようやく・・・なのか、

「なんで私のことをバカにするの!?」

と激おこになった・・・、そのためか、木松悪斗、

「う~、なんか調子を狂ってしまう・・・」

と千歌に言うことに対し嫌気がさしていた・・・。

 だが、ここからが千歌のターンだった。千歌、木松悪斗に対し激おこのまま、言いたいことを言う!!

「それはそれとして・・・、なんで桜花ちゃんのの頑張りを認めてくれないわけ!?桜花ちゃんは千歌たちに勝ちたいためにきつい練習をしたんだよ!!そのおかげで、千歌たち、Aqoursが負けるかも、と思えるくらいにまで急成長したんだよ!!千歌たちは新曲をぶつけてきたから勝てたけど、もし、そうじゃなかったら、もしかしたら、千歌たち、負けていたかもだよ!!その努力を認めないなんて、親、失格だよ!!」

 この千歌の言葉に、木松悪斗、応戦。

「それがどうしたっていうんだ!!負けたんだから価値がない、って言えるんだ!!それが私の価値観であって、同時に、世界のことわり、なんだぞ!!」

 それでも、千歌、負けない。千歌、ここぞとばかりに反論する。

「それって違うと思う!!だって、ただ勝つことだけを考えていたら、人間、おかしくなっちゃうよ!!勝つことだけを考えるとね、人として大切な心がダメになるんだよ!!それどころか、人として大切な情を捨てることになるんだよ!!木松悪斗がいう「勝つ」ってね、それを指し示しているんだよ!!」

確かに千歌の言う通りかもしれない。木松悪斗が言う勝利というの、完全勝利、相手からすべてを奪う勝利、ただ勝つことだけのことを言っている。それは人として大切な心すら無視した勝利、どんな手でも勝ちにいく勝利、そのものだった。そんな勝利から生まれるもの、それは、負・・・、なのかもしれない。なぜなら、そこには心というものがなく、逆に憎しみや悲しみ、といった負のものが生み出されるだけ、だからである。勝者は勝ったことで栄光を得るが、それに加えて敗者から恨みや憎しみをかうことにもなる。また、敗者は負けたことですべてえを失うことになり、それによって相手に対し恨みや憎しみを持つようになる。本当になにも生まず、逆に負だけが生まれる、それが、木松悪斗がいう勝利、相手からすべてを奪う、そんな勝利の弱点であった。それをまさに千歌がずばり指していたのである。

 それでも木松悪斗は負けない。なぜか立派なことを言う千歌に対しさらに反論!!

「私が求める勝利、完全勝利、こそこの世界のことわりなんだ!!情がなんだ!!心がなんだ!!経済、特に闘志においてはそれが一番重要なんだ!!取るか取られるか、0か1か、それしかないんだ!!」

 そして、木松悪斗は桜花の方を指さしながらこう言ってきた。

「そして、この「ごく潰し」(桜花0

は「Aqoursを叩き潰す」とごうごうしていたのだが、そのAqoursに負けたんだ!!それ、すなわち、敗者、いや、「役立たず」「ごく潰し」、なんだ!!お前なんてもう知らない!!さっさとこの場から、私のもとから、去れ!!はやく去れ!!」

これには、桜花、ふたたび自分の親から言われたためか、

「うぅ・・・、やっぱり、私、たんなる、「役立たず」「ごく潰し」、なんだ・・・。それって、私、もういらないんだ・・・」

と泣きながら下を向いてしまった、いや、さらに絶望してしまった・・・。

 ところが、ここで桜花のまわりになにかが起こった。それは・・・、

「って、なんでAqoursのみんさんが私たちのまわりを取り囲んでいるの?」(梅歌)

「Aqoursのみなさんはなにをするつもりでしょうか?」(松華)

と、絶望する桜花のそばにいる梅歌と松華が驚いてしまうのだが・・・、そう、桜花を守るようなかたちでAqoursのメンバー6人が桜花たち3人のまわりを取り囲んだのだった。

このAqoursメンバーに対し、桜花、こんなことを尋ねる。

「なんで・・・、なんで・・・、私みたいなごく潰しを守るの・・・。私は敗者・・・、役立たず・・・、ごく潰し・・・、なんだよ・・・」

 だが、それに対し、Aqoursメンバーがこう口にする。

「たしかに今さっきまでは戦っていたずら」(花丸)

「でもね、戦ってわかったことがあるわ。それは、あなたもスクールアイドル、いや、ヨハネのリトルデーモンってことよ!!」(ヨハネ)

「リトルデーモン・・・は置いといて(「置いとかないでよ!!」byヨハネ)、私たちに対し善戦した相手をここで失うわけにはいないわ!!」(梨子)

「そうそう、私たちに対して全力前進してきた相手だからこそ、私たち、Aqours、その相手である桜花ちゃんたちを助けたいんだ!!」(曜)

「なんか、にっくき悪者からお姫様を助けるみたいでかっこういいね、私たち!!でも、それくらい、木松悪斗というおっちゃんは悪者なんだ!!」(千歌)

 だが、ここにきて、木松悪斗からも応戦が・・・。

「ふんっ、弱い者同士、集まったからといってこの強者である、いや、絶対的勝者である私たちに勝てるわけないでしょうが!!」

と言ってきたのは木松悪斗のもう一人の娘、旺夏、だった。旺夏も静真の部活においては権力者、王者だった、そのことをここでも発揮しようとしていた。

 だが、そんな絶対的勝者である木松悪斗・旺夏親子はあることに気付いていなかった。それは・・・、

「お前たち、父娘なんて知ったことか!!この静真において恥でしかないわ!!」

「ここはAqoursのライブ、なのよ。そんなAqoursどころか、(スクールアイドル界において王者である)Aqoursに善戦したRedSunをバカにするなんて、許せない!!」

そう、ここはAqoursのライブ会場なのである。なので、木松悪斗・旺夏親子の味方なんて誰もいない、いや、Aqoursのライブに見に来ていた観客たちみんががAqoursだけでなく桜花たちRedSunの味方だったのだ。と、いうのも、最初のころは観客たちみんなからみたならRedSunはAqoursの敵、木間拓斗の手先、としかみられていなかったのだが、RedSunのパフォーマンスを見て、

「これってすごいスクールアイドルなのでは・・・」

「あのAqoursに勝とうとしている・・・、それくらい真剣なパフォーマンスをしている・・・」

とAqoursの完コピとはいえ圧倒的なRedSunのパフォーマンスに度肝を抜かれた上で、そんなAqoursに善戦したにも関わらず自分の親から「役立たず」「ごく潰し」と言われた桜花のことを、

「なんていう娘だったの・・・。まさか、彼女にそんな過去があるなんて・・・」

「そのことを聞いたら、なんか、あの娘、不憫に思うよ・・・」

と逆に桜花のことが哀れに思ったのか、その桜花を蔑んだ父娘に対し観客たちは牙を向いたのだ。

 こんな2千人以上の敵から敵視された木松悪斗・旺夏親子、そんな敵たちに対し大声を散らす。

「いいか、お前たち、私に歯向かうなら、この場で断罪してやる!!この圧倒的な王者である私からすればお前たちなんてたった一言で消し飛べるんだ!!その言葉を言おう、「お前たち、全員、地獄行きだ!!」まずはお前たちの仕事場などを調べ辞めさせるように私が動けば・・・」

 だが、ここである大男がステージに・・・、

ドーン!!

となぜか高いところから降り立つと木松悪斗に対しこう言い放つ。

「お前にその権限なんてない。いや、今のお前は絶対的勝者でない。ただの犯罪者だ!!」

この大声を聞いてか、木松悪斗、その大男の名を叫ぶ。

「沼田め!!」

そう、ステージに降り立った大男こそ、静真の陰の神であり世界的企業沼田グループを引っ張る、あの沼田であった・・・。

 その沼田は木松悪斗に対しこう言い放つ。

「お前にこの者たちの運命なんて決めることができるのか、いや、できない、反語!!」

そう、いまの木松悪斗にそんな権力なんて残っていなかった。沼田・小原家からの罰により静岡における権力を失くした木松悪斗は今やその権力の源だった静岡にある企業の株式のほとんどを売却しており、名実ともに静岡における権力を木松悪斗は本当に失っていた。いや、それどころか、あのA社における株売買以外利益らしい利益をだしていないため、木松悪斗が率いる闘志グループは赤字続き、木松悪斗以外の出資者もどんどん出資金を引き上げていく、お金もない、そんな状況のなか、そんな権力を振りかざすことなんてできなかった。また、静真においても沼田からのメールで醜態を晒した木松悪斗はそれによって、もしくは、浦の星という新しい風によって木松悪斗を支持する人たちはごく一部になっていた。

 でも、そんななかで旺夏だけは威勢を張っていた。だって・・・、

「でもね、私は、この静真の部活をする生徒たちを束ねる部活動連合会の会長です!!その家長にたてつくなんて・・・」

そう、旺夏は静真の部活をする生徒たちを束ねる部活動連合会の会長であった。その会長の権力を使えれば・・・。

 だが、ここで、沼田、ある人を召喚する。その人の名は・・・、

「さてと、おい、そこにいるだろう、渡辺月生徒会長!!」(沼田)

「はい、沼田のじっちゃんに呼ばれて参上!!」(月)

そう、静真の生徒たち全体を束ねる生徒会の会長、渡辺月であった。その月は旺夏に対し残酷なことを言う。

「旺夏、悪いのだけど、あなたの連合会会長の権限をすべてはく奪します。といっても、部活動連合会の会長をすでに失職しているのだけどね・・・」

これには、旺夏、納得せず、月にたてつく。

「なんで私が会長の職を失うわけ?そんなの、おかしいでしょ!!」

 だが、月は旺夏に残酷な現実を見せつける。

「ごめんけど、部活動連合会の役員の全会一致で決まったことだから・・・」

なんと、月、事前に部活動連合会の役員全員に対し会長解任を迫っていたのである。それは沼田のメールにより木松悪斗が進めてきた勝利絶対至上主義から浦の星の生徒たちが大事にしてきた「楽しむこと、好きなことがすべて」という考えに静真の生徒たちの考えが変わったことにより、部活動連合会のトップである旺夏をその役員たちは古い「勝利絶対至上主義」の考えのまま、その下のものたちはその新しい考えを信じる、そんなねじれが起きていた。ただ、これだと静真の部活に悪影響がでる、ということで月はその連合会の役員たちに対し、自分たちが辞めるか会長をかえるか、その二択を迫ったのである。で、ここは会長を守るために自分たちが辞める・・・わけでなく、自分の職を守ろうと会長を解任することを選んだ、というわけである。まぁ、旺夏自信も木松悪斗の権力にかげりをみせたときから生徒たちからの支持をなくしていたのですがねぇ。あと一応補足ですが、これで自分の職も安堵、と思っていた役員たちですが、新しい会長によってすぐに全員解任されたのですがね・・・。

 そんなわけで、旺夏も、

「う、うそ、だよね・・・。私の権力が・・・、権力が・・・」

とただ茫然となってしまう。旺夏にも冬がきたようだ・・・。

 と、ここで、木松悪斗、こう考えてしまう。

(このままではあの沼田に後ろ指を指されてしまう。それだけは、そんな屈辱なんて、私のプライドに傷がつく・・・、ならば、ここは去るのみ!!)

そう、木松悪斗にとってみればこれ以上負けという二文字を沼田に晒したくない、そんな思いが強かった。木松悪斗はそれくらい負けを許さないたちであった。経済において、特に投資の世界において負けは破滅を意味する、そう木松悪斗は考えていた。なので、巻けだけは避けたい、そう思った木松悪斗は娘の旺夏に対し、

「ここは分が悪いですね。旺夏、ここは戦術的撤退です!!」

と言っては旺夏を背負って逃げていった。

 

 こうして、木松悪斗・旺夏親子は逃げ出したこともあり、観客席から、

「Aqours万歳」「Aqours万歳」

という声・・・のほかにも、

「RedSun万歳」「桜花ちゃん、よかったね。、あの悪き親子から助かって・・・」

とRedSunを称える声、桜花のことで安心する、そんな声も出てきた。

 また、これにより、梅歌、松華、ともに

「もしかして、私たち、助かったの・・・」(梅歌)

「うん、そうみたい・・・」(松華)

と安心しきったのもつかの間、木松悪斗という後ろ盾を失ったことで、桜花、

「でも、そうしたら、RedSunは・・・、スクールアイドル部は・・・」

と心配そうな声をしていた。そう、木松悪斗という後ろ盾を失ったことでスクールアイドル部は存続できるのか、という問題が起きていたのだ。

 ただ、それについてはすぐに解決したようだ。だって、Aqoursの高海千歌がこんなことを言ってきたのだから。

「みんな、それに、桜花ちゃん、心配しないで!!千歌たち、スクールアイドル同好会は・・・、桜花ちゃんたちスクールアイドル部と合併します!!そして、新生スクールアイドル部、いや、Aqours withRedSunとして、9人組として活動していきます!!」

まさかの部と同好会の合併、これには観客たちから、

「うそでしょ!!Aqoursに善戦した急成長したRedSunと合併するなんて・・・」

という驚きの声とともに、

「でも、これでAqoursはRedSunという強力な仲間と得たんだ。それってすごいことだよね・・・」

という声が次々とでてくるようになった。

 そして、それに呼応してか、RedSunの梅歌と松華もまさか憧れのAqoursと一緒にスクールアイドル活動できることに喜びを感じているのか、

「松華、私、夢、叶っちゃったよ!!まさか、憧れのAqoursと一緒にスクールアイドルができるなんて、一緒に輝くことができるなんて、私、とても嬉しいよ!!」(梅歌)

「梅歌、やったね!!まさか夢が叶うなんて・・・」(松華)

 こうして、幻の浦の星99番目の新入生、100番目の新入生は名実ともにAqoursのなかまに、いや、浦の星の仲間になることができた・・・が、その一方で桜花はまだ落ち込んでいた。

「お父様に・・・、お姉さまに・・・、見捨てられた・・・。もう私は捨てられたんだ・・・」

なんと、桜花、自分は捨てられた、そう思い込んでいるようだ。実は桜花は自分の父と姉が逃げたことで「父・姉から捨てられた」と思い込んでしまったのだ。そのためか、沼田、月はそんな桜花のことをを思ってか、ただ、

「・・・」

と無言になるしかなかった・・・。

 とはいえ、そのことを知らない観客たちは会場になぜか売っていたRedSunのグッズを手に持ち、

ウォー

と盛り上がっていた(・・・って、千歌、それを見越してRedSunのグッズを作っていたのね・・・)

 

 その後、ライブは終了し、ステージだけとなった校庭に沼田と月の2人だけが立っていた。

「ところで、沼田のじっちゃん、今回の茶番、桜花ちゃんを救うためにやった、とはいえ、ちょっと大げさだったのではないのですかね」(月)

「まぁ、それくらいのことをしないと、あの親子(木松悪斗と旺夏)をだませなかったからな!!」(沼田)

そう、この茶番劇は2人が仕組んだものだった。実は桜花があの父姉から虐げられていたことを2人はもとから知っていた。もちろん、自分のことをあの父姉から認めてもらうためにRedSunを作ったことも・・・。もともとは知らなかったのだが、RedSunとして桜花が活動していくあたりから月と沼田はその裏を調べるようになり、桜花があの父姉から認めてもらうためにRedSunを作ったことをあの2人は知ったのである。

 そして、RedSunが理亜たちに負けた、というところから、「このままだと桜花がダメになる」と不憫に思った2人は桜花を救うために千歌と一緒になってこうなるように仕組んだのである。

 でも、1つだけ誤算があった。それは、あの桜花が実はかなりの才能の持ち主であり、さらに努力家であった、ということだった。そのため、桜花とその仲間たちはAqoursに勝つために必至になって練習をした、これによって実力を急成長させたRedSunはあのAqoursに善戦した、こらがあのAqours贔屓の観客たちを納得させるだけのものを生み出すとはさすがの2人も思っていなかったようだ。

 こうして、計画通り、月と沼田は桜花を救うことができた・・・のだが、2人にしてみれば今の桜花の状況は最悪ともいえた。だって・・・、

「でも、沼田のじっちゃん、桜花さん、「自分の父と姉に捨てられた」と思い続けているけど大丈夫でしょうか・・・」(月)

「それについてはAqoursのみんな次第だからな・・・」(沼田)

そう、2人が救い出すことができたものの、肝心の桜花はあの父姉から捨てられた、と思い込んでいるため、まだ絶望の淵に立たされていた。ただ、これについては、これ以上、この2人が関わることができないため、あとは桜花の新しい仲間となるAqoursのメンバーにゆだねるしかなかった。

 まぁ、そんなことを言いつつも、2人とも、

「ボクとしてはいつもの桜花ちゃんに戻ってくれたら嬉しいです・・・」(月)

「私もそうじゃ。いつもの桜花さんに戻ってくれることを祈ろう」(沼田)

と桜花がもとの桜花に戻ることを祈ることにした。

 そして、つい、こんなことを2人は言ってしまう。

「そして、いつまでも自分たちだけの考えに固執しているあの父姉にもなにか起きるかもしれませんね・・・」(月)

「たしかにそういえるかもな。「勝利こそすべて」、その考えに固執していたら、きっと、最悪の事態を迎えることになるだろう。だって、あの父姉、木松悪斗・旺夏父姉が追い求める勝利、それは心のない勝利、なにをしても許される勝利、だからな・・・」(沼田)

 

 その後、・・・、

「もう住む家なんてない・・・。家なき子になったんだ、私・・・」

と自分の父と姉に捨てられた、いわゆる勘当状態になっていた、そう思っている桜花はただ1人RedSunの楽屋にて泣いていた。自分の父姉が逃げた形とはいえ、自分の娘を捨てたことには変わらない、そう思い込んでいる桜花にとって住む家すら失ったと思い込んでいた。

 そんなときだった。突然、桜花に対し声が聞こえた。

「あっ、桜花ちゃん、どうしたの?」

それには、桜花、すぐに気づきその声の主に対して、

「えっ、誰?」

と問いかけるとその声の主は自分の名を言った。

「あっ、Aqoursのルビィだよ!!」

そう、泣いている桜花に声をかけてきたのはルビィだった。そのルビィは桜花に対しこう言ってきた。

「桜花ちゃん、泣かないで。もし家がないなら、ルビィの家、来る?網元の家だから部屋は余っているの。だからね、桜花ちゃん、ルビィの家に来て!!」

ルビィからのお誘い、これには、桜花、

(でも、私がルビィの家に行ってもお父様とお姉さまに捨てられた身。だから、私がいたって、「役立たず」「ごく潰し」になるだけなんだ・・・)

と未だに自分は「役立たず」「ごく潰し」だと思っているのか、素直に「うん」とも言えず・・・。

 そんななか、たまたま、RedSunの楽屋に梅歌と松華が戻ってきた。今まで千歌たちからこれからのことで相談していたからだった。その梅歌はルビィの姿をみて、

「あっ、ルビィさん、どうしたのですか?」

と尋ねるとルビィは今の状況を、泣いている桜花のことをいうと、梅歌、松華、ともに、ルビィにこうお願いする。

「このままだと、桜花ちゃん、「ここで野宿する」、って言ってしまいそうです!!はやく連れて行って!!」(梅歌)

「たしかに梅歌のいう通りかもです。ルビィ先輩、この娘を早く連れて行ってください!!」(松華)

これには、ルビィ、

「でも・・・」

と桜花の意思に関係なしに桜花を連れ出すことに躊躇してしまう。たとえルビィであっても本人意思を無視してまで行動することにはためらいもでてしまう・・・。

 だが、そのルビィの言葉に、梅歌、松華、ともに強く反応した。

「たしかに桜花ちゃんの意思を無視できないけど、今は緊急事態なんだよ!!ここは強引に連れていくべきでしょ!!」(梅歌)

「私も梅歌の意見に賛成です。このままだと桜花さんは野垂れ死んでしまいます。はやく、強引に連れて行ってください!!」(松華)

たしかに2人の言う通りかもしれない。このままいけば桜花は絶対にここで野垂れ死んでしまう。それくらい、今の桜花の心は危機的状況であった。それを防ぐためにも桜花を強引に連れていくことが得策だといえた。

 そういうわけでして、ルビィ、ついに決める。

「うん、わかった。ルビィ、桜花ちゃんを強引に連れていく!!」

そうルビィが言った瞬間、ルビィ、桜花に対し、

「桜花ちゃん、ごめん!!少し強引だけど、ルビィの家、連れていく!!」

と言うと強引に自分の家に連れ出した。昔のルビィだったらなにかあったら姉のダイヤにいちいち聞くくらいあまりに頼りない存在であった。だが、ルビィはイタリア旅行、そして、今の桜花がらみの件で強くたくましく育ったのである。それはAqoursをしょって立つ精神的支柱になった、ルビィなしではAqoursが成り立たない、それくらいにまでの存在へと変貌を遂げたことを指し示すものだったのかもしれない・・・。

 

 ただ、ルビィの強引さは鬼気迫るものだった。たとえば・・・、

「桜花ちゃん、一緒に、お風呂、はいろう!!」

「桜花ちゃん、一緒に寝よう!!」

それはまるで、ルビィの姉、ダイヤがこれまでルビィにしてきたくらい、いや、それ以上に過干渉であった。

 だが、それに対し、桜花はというと・・・、

「もう離して。私は「役立たず」「ごく潰し」なんだから・・・」

と、ルビィの申し出を断ることに。そう、今でも桜花の心はズタボロであった。それはあの戦いが終わってからも続いていた。それくらい、桜花にとってあの戦いのあとの自分の父と姉からの言葉攻めによるダメージは半端ないものであり、それが今でも響いていたのである。

 そんな桜花だからなのか、ルビィ、ここは強引に・・・、

「それじゃ、ルビィ、強引にでも桜花ちゃんをお風呂の連れていくね」

「それじゃ、ルビィ、桜花ちゃんのそばにいるね!!」

と強引すぎるほど桜花の意思に関係なくことを進めようとした。いや、それくらいのことをしないと桜花は生きていくことなんてできなかったのだ・・・。



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ラブライブ!RSBP 第28話

 後日・・・、

「ふぇ~、とてもきついよ~。これがAqoursの練習なんだ・・・。とてもきついよ~」(梅歌)

と泣きだしそうになりながら千歌たちに交じって弁天島神社の階段を梅歌は上っていった。そう、桜花たちRedSunはあらたなる仲間となったAqoursの練習に参加するようになったのだ。もちろん、これまでやってきた練習よりもきつかった。弁天島神社の階段ダッシュなんてまだスクールアイドルを始めたばかりの千歌たちですらすぐにへとへとになるくらいだった。それを、今、桜花たちも経験しているのだ。

 だが、そんな弱音を吐く梅歌に対し、松華、あることを尋ねる。

「でも、たとえきつくても憧れの存在だったAqoursのメンバーと一緒に練習して嬉しくない?」

すると、梅歌、ズバリ答える!!

「もちろん!!だって、合併したとはいえ、憧れの千歌ちゃんたちと一緒に活動ができるなんて、本当に嬉しいよ!!私、今、千歌ちゃんたちと一緒に輝いている、そう思えるよ!1」

どうやら、梅歌、きつさよりうれしさの方が優っているようだ。梅歌にとって憧れの存在であるAqoursと一緒に練習している、活動していることがとても嬉しかった、いや、Aqoursと一緒に輝いている、そんな夢が叶った、というわけである。それはうれしさが優るのは当たり前なのかもしれない。

 そんな梅歌をみてか、松華もこんなことを考えてしまう。

(梅歌、楽しそう・・・。そんなまんべんの笑みを見ているだけで、私、とても嬉しい!!)

松華からしたら今の梅歌の表情を見ただけで満足しているようだ。だって、松華の願いは梅歌には幸せを感じてもらいたい、その一言だから。松華と梅歌は幼馴染である。梅歌のそばにいつも松華がいた。そんな松華にとって梅歌はとても大切な存在であった。なにがあっても梅歌が一番、それが松華のモットーだった。なので、2人になにが起きても松華は梅歌のことを第1に考えて行動した。それは今になっても変わっていなかった。

 だが、それでも松華はあることに悩んでいた。それは・・・、

(それに対して、桜花さん、あまり元気がなさそうです。このままだといつかはダメになるかもしれません、桜花さんが・・・)

と、松華が心配していること、それはRedSunのリーダー、桜花のことだった。桜花、ルビィの強引さによってAqoursの練習に参加しているものの、

「ほら、桜花ちゃん、ちゃんと走って!!じゃないとケガをするよ!!」(ルビィ)

「・・・」(桜花)

といった具合にあまり覇気のない桜花。これではいつケガをしてもおかしくなかった。そのためか、リーダーである千歌から、

「桜花ちゃん、無理はしないでね!!無理したらケガするからね!!休んでてもいいんだよ!!」

と心配されるほどに・・・。

 だが、それでも、桜花はもとが真面目なのか、それとも命令だと思ってやっているのかわからないが、

「・・・」

と黙々と(ルビィに引っ張られているものの)階段を走り上っていった・・・。

 そんな桜花の姿にRedSunの梅歌と松華はただ、

(でも、本当に大丈夫かな?桜花ちゃん、なにか起きてしまいそうだよ・・・)(梅歌)

(私が見る限り、なにか起きそうな感じです・・・。このままでいいのでしょか・・・)(松華)

と心配そうになっていた。

 

 その後、梅歌と松華はAqoursのきつい練習をこなしつつ着実に力をつけていった。一方、桜花の方もやる気をなくし・・・、いや、生きる希望すらなくしているものの、Aqoursの練習ではルビィが強引に引っ張っているせいか、それとも、元から真面目なのか、Aqoursの練習には参加していた。だが、それで着実に力をつけているのか・・・どうかはわからなかった。だって・・・、

「1,2,3,4、2,2,3,4。桜花ちゃん、ワンテンポ、遅れているよ!!」(曜)

「はい・・・」(桜花)

と全体練習の際には桜花がいつも失敗しているのだから。これには、ヨハネ、

「ちゃんと真面目にしてよね!!」

と注意をするも桜花は、

「・・・はい」

と小声で返事するくらいだった。

 と、いった具合に未だに桜花はあのときのショックがをいまだに引きずっていた。いや、実の親と姉からそう言われたらそうなってしまうのは当たり前なのかもしれない。桜花からすれば常日頃から蔑まれてきたとはいえ、親は親、姉は姉、なのだから、桜花は最後まで自分の父と姉から認められるようにやってきたのだ。だが、その経過の努力すら自分の父である木松悪斗、姉の旺夏は否定しては桜花のことを「役立たず」「ごく潰し」として蔑んできたのである。そう考えると、桜花の受けたショックはとても重いものだったと言って過言ではなかった。なので、桜花はそのあまりにも大きなショックにいまだに引きずっていたのである。

 ただ、これに対し、Aqoursの今のマネージャーであるあげははこう心配していた。

(このままだとAqours with RedSun、予選敗退してしまうかもしれません。だって、今のAqours、本来持っている「スクールアイドルを楽しもう」としている姿が桜花さんの暗さによって薄まってしまっています。いや、なにか大事故が起きるかもしれません・・・)

そう、今のAqoursはちょっと危険な状態であった。Aqoursの本来の売りはスクールアイドルをめいいっぱい楽しもうとする姿勢であった。だが、桜花の表情が暗いと悪い意味で目立ってしまいその姿勢が薄まってしまう、そのことをあげはは危惧・・・、いや、それ以上に、このままいくとなにか大事故が起きてしまうのではないか、そうあげはは考えてしまっていたのである。

 そして、それはラブライブ!においてついに起きようとしていた。

 

 それはラブライブ!静岡県予選のときに起こった。この日はAqoursとRedSunが合体してAqours with RedSunとして初めてのステージであった・・・が、そのまえにヨハネが嘆いていた。

「本当に、ヨハネたち、大丈夫なの!!特に、桜花、あまり練習できていないじゃない!!」

そう、ヨハネから見たらヨハネたちAqoursが地方予選を無事に突破できるのか心配だっただ。、いや、あげはが心配していたことが現実に起きようとしていたのである。というのも、あれ以降、9人の息を合わせたダンスができなかったのだ。もちろん、その原因は桜花だった。桜花は練習中、こんなことを考えていた。

(私が役立たずだからお父様とお姉さまに捨てられたんだ・・・。なら、今、ここにいてもみんなの迷惑、みんなの足を引っ張る、そんな役立たずになってしまうんだ・・・)

そう、このときも自分の父と姉に捨てられたことに対するショックを引きずっていたのだ。いや、それ以上に、そんな自分がこの場にいてはみんなに迷惑をかえる、自分はここにいないほうがいい、とまで考えるようになっていたのだ。

 そのためか、いくら全体で練習をしても桜花だけワンテンポ遅れれたりしてはその都度、

(やっぱり私はここでも役立たずなんだ・・・)

と自分のことを卑下し続けていた。

 そんな桜花の姿に、梅歌と松華、

(桜花ちゃん、なんか苦しそう。まだ、あの時のショックが抜け出せないんだね・・・)(梅歌)

(やはり親から捨てられたショックが大きいのですね。でもそんな桜花さんに、私たち、なにをどうすればいいのでしょうか)(松華)

と桜花に同情するもどうすれば桜花を復活させることができるのか苦慮していたが答えが出せずにいた。

 そんなわけでこの状態がラブライブ!の地区予選のときまで続いていた。で、この日も梅歌と松華は、

「本当に大丈夫、桜花ちゃん?」(梅歌)

「あまり無理はしないでください」(松華)

と桜花のことを心配するも桜花はただ、

「はい・・・」

と小声で返事するくらいだった。いや、それ以上に、

(私がラブライブ!に出場するなんて場違いに間違いない・・・。だって・・・、私・・・、ラブライブ!に出場しているスクールアイドルのことをバカにしていたし・・・、私自身・・・、スクールアイドルみたいなことをして・・・、そして・・・、負けて・・・、そのせいでお父様とお姉さまに捨てられて・・・、うぅ)

と過去のことまで、スクールアイドルなんて簡単、なんてバカにしていたこと、そんな自分はその考えのもと、スクールアイドルをしたら自分の父と姉に捨てられたことをいまだに悩んでは悔いていた。

 ただ、そのことについてAqoursメンバーも心配しているのか、そんな桜花に対し、

「桜花ちゃん、あまり気を張らないでね」(梨子)

「そうずら、根気を詰めるといけないよ。明るくなるずら」(花丸)

と元気づけようと声をかけてきた。ただ、これには、桜花、

(Aqoursのみんなが声をかけてきている。でも、私はそれに応えることができない。だって、Aqoursのメンバーには私のせいで辛い思いをさせてきたのだから・・・)

とAqoursの対し自分の責を感じていた。これまで桜花はAqoursに対し部にはさせないなどといった嫌がらせに近いことをしてきた。これによりAqoursは目立つような活動ができなかった。それが今や自分がAqoursの世話になっている、このことを考えるだけで自分はそれに応えるができない、そう考えてしまうのであった・・・。

 そして、それは本番でも起きてしまった。

「31番、Aqours with RedSun」

そう呼ばれると桜花を含めたAqours with RedSunの9人はステージへと立った。たとえ前回のラブライブ!で優勝したチームとはいえシードなんてない・・・。まぁ、シードのあった時期もあったが、それだといけない、ということでシード制度は廃止になった・・・。というわけで、ラブライブ!で優勝したAqoursも普通のグループと同じく地区予選からの出場することになっていた。

 ただ、9人一緒にステージに上がるも桜花だけは、

「・・・」

と気難しい、いや、

(うぅ、どうすればいいの・・・。私・・・、また・・・、役立たず・・・、足を引っ張るだけ・・・なの・・・」

という桜花らしかなぬ、いや、自分を卑下している、そんあことを妙実に表しているような顔をしていた。これには、梅歌、松華、ともに、

(うぅ、桜花ちゃんを励ましたいけど、今は自分のことでせいいっぱいだよ・・・)(梅歌)

(このままだと、私たち、予選敗退、しかねない・・・。そのためにも桜花さんを・・・、と言いたいのですが、この私も目の前のことでせいいっぱいです。ここはどうすることもできないのです・・・)(松華)

と桜花に対してなにかしたい、だが、自分のことでせいいっぱい、といった状況に陥っていた。いや、2人だけではない。Aqoursメンバー全員、目の前のこと、ラブライブ!のステージに集中していた。本番は誰しもが緊張するものだ、例外を除いて・・・。Aqoursメンバーとてそれは同じだった。ラブライブ!は一発勝負、どれだけスクールアイドルを楽しんで、どれだけスクールアイドルを好きになるのか、それをする上でも本番前におけるこの一瞬は誰しもが緊張するものだった。ただ、それが桜花にとってみれば苦しみでしかなかった・・・。

 そして、曲が始まった・・・。

♪~

と華麗に優雅に、そして、元気よくパフォーマンスをするAqours with RedSun、の9人。桜花も、

(ここはこうして、あれはあれして・・・)

と桜花なりに頑張っていた。もともとの桜花のスペックからすると音楽以外の才能も普通の人以上のものを持っていた。これまではそれを発現できなかったのは父の木松悪斗と姉の旺夏からの「才能がない」と言われ続けていたため、でも、その父姉から捨てられた今、その桜花を邪魔する人がいない今、桜花の才能は花開いた・・・はずだった。いや、今は桜花の才能だけでパフォーマンスをしている、そんな感じだった。そんためか、9人のパフォーマンスは噛みあっていた。それくらい、桜花の才能は髙かったのである。でも、その裏には、桜花は今、

(今はなんとかなっている。でも、私は本当は役立たず・・・。本来ならここにいてはいけない人間、なんだ・・・)

と自分のことをまた卑下していた。

 そんな桜花からなのか、9人の思いはてんてんバラバラだった・・・。9人いればものすごいパフォーマンスができる。それこそダイヤたち卒業生がいた旧Aqoursではできたことだったが、今はそれが今のAqoursにとって足かせになっていた。ダイヤたちがいたときは9人の思いはいつも一緒だった。そのため、観客たちが度肝を抜かれるようなすごいパフォーマンスをすることができた。それこそ9人いるというほかのグループにとってアドバンテージとなっていた。が、それはある意味弱点ともいえた。9人いる、ということは9人とも呼吸を合わせる必要がある。つまり、9人の思いが一緒ではないといけない、ということである。それは少しでもズレた動きがあったらそれ自体目立ってしまう、いや、バラバラにパフォーマンスをしていると観客たちに見られてしまう、こうなってしまうとパフォーマンス自体悪くみらえてしまう、のである。

 そして、それが、今、起きようとしていた。サビに入ろうとした直前、

(え~と、え~と、え~と)

と桜花なりに頑張っていたのだが、ほんの一瞬、

(あっ・・・)

と、ワンテンポ、みんなより遅れてしまったのである。実は、この場所、サビに入る直前、そこはいつも桜花がミスする、ワンテンポ遅れる場所であった。むろん、いつもここを集中的に練習しているのだが、桜花の高い才能があったとしてもここだけは乗り切れることができなかった。いや、今の桜花には、自分のことを「役立たず」と思っている今の桜花からすれば乗り越えることが無理だったのかもしれない。

 そんな桜花をみてか、梅歌、松華、ともに、

(あっ、桜花ちゃん、また、ワンテンポ、遅れている!!なんとかしたいけど今の自分じゃ・・・)(梅歌)

(う~、桜花さんのこと、助けたい。けど、今は自分のことでせいいっぱいだ・・・)(松華)

と、今の状況、2人にとって初めてのラブライブ!のステージ、ということもあり、桜花のことを助けたいけど、今は自分のことでせいいぱぴ、そんな思いでいっぱいだった。

 だが、ここでも桜花の才能の高さがいかんなく発揮された。なんと、桜花、ここにきて、

(・・・、なんとかしないと・・・)

と思ったのか、ワンテンポ遅れた分をすぐに取り戻すとその勢いのままにあとのパフォーマンスを自分の才能だけでみんなと合わせてきたのである。これには、曜、

(わ~お、桜花ちゃん、すごい!!ワンテンポ遅れてた分を取り戻しただけでなく、強引に会わせてきた・・・)

と驚くほどだった。

 こうして、桜花がワンテンポ遅れたところを除いては完璧なパフォーマンスをみせたAqours with RedSun、そのおかげもあり、堂々の1位通過を果たした・・・のだが、予選終了後の反省会にて、ヨハネ、桜花に対し責めていた。

「桜花、あそこ、またミスしたでしょ!!」

これには、桜花、

「そ、そこは・・・」

と言っては口を閉ざしてしまった。ヨハネからすれば、

(桜花を除いては8人の思いは同じだった。でも、桜花は違った。今なお、あのときのショックを引きずっている。これじゃ、ヨハネたち、いいパフォーマンスができないじゃない・・・)

といかにも真面目なことを考えての発現であった。ヨハネはスクールアイドルを初めてから1年たつあいだ、1人前のスクールアイドルとして真面目にやらないといけない、といった責任感に目覚めていた。それはほかのAqoursメンバーとは違う考えかもしれない。もしくは、あの動画のお笑い版をサイトにアップしてしまった、という責からのものかもしれなかった。だが、今、そこにいるヨハネは1年前とは違う、いつも中二病気気質な自分、とは違った、真摯にスクールアイドルとしてやろうという真面目な姿、だったのかもしれない。いや、新しく入った桜花、梅歌、松華の新1年生の先輩としての威厳、だったのかもしれない。もしくはダイヤたちがいなくなったことでときんは厳しくすることができるメンバーがいなくなったからこうなった・・・わけないか。ただ、このヨハネの言葉に、梨子、

「善子ちゃん、桜花ちゃんにも悪気がなかったんだし、そこは穏便に・・・」

と言おうとすると、ヨハネ、

「リリィーよ、そんなに甘く考えてはいけません!!これから先、最終予選、決勝、そのときにおいて1人だけ違う思いであればそれによっていいパフォーマンスができなくなるわけ!!桜花には変わらないといけないと思う!!ヨハネたちと一緒にやること、同じ思いでいること、それが必要なんだ!!」

と熱く語る。これには、リリィー、いや、梨子、

「う・・・、善子ちゃんからは考えられないような正論・・・」

とたじたじとなってしまう。たしかにヨハネの意見も一理ある。桜花のなかにある思い、それは、あの日、自分の父と姉から捨てられたショック、それに伴う、「自分は役立たず」といった負の思いであった。その思いを断ち切らなければ絶対にAqours with RedSunは1つになれない、といえた。

 そんなヨハネの正論にとうの本人である桜花はあることを口にする。なんと、

「・・・じゃ、どうすればいいわかけ・・・」

と、ヨハネから今の思いを断ち切る必要がある、と言われ、その思いを断ち切る方法を桜花は尋ねてきたのだ。今の桜花はその思いでいっぱいであり、それを断ち切るすべを知らなかった。なら、どうすればいいのか、と桜花はみんなに尋ねてみた、というわけである。

 ところが、桜花の質問にAqoursメンバー全員、

「・・・」

と黙るしかなかった。桜花の抱える思いはすぐに断ち切れるものではない、それくらいあのときのショックが大きかったのだ。そのことを知っているAqoursメンバーからすればとても難しい問題だったのかもしれない。

 ただ、梅歌は別だった。いつも桜花のそばにいた、そのことにより、桜花がどれほど頑張っていたのかわかっていたからか、梅歌、こんな提案をしてきた。

「そらじゃ、桜花ちゃん、それを忘れるくらい、スクールアイドルの練習をすればいいんじゃないかな」

そのショックを忘れるくらいの練習をすればいい、それっていったい・・・と思ったのか、ルビィ、それについて、

「それってどういうことなの、梅歌ちゃん」

とその案の意図を梅歌に聞く。

 すると、梅歌、こう答えた。

「私たち、RedSunはAqoursとの戦いに向けてきつい練習をしてきました。そのときの桜花ちゃんはいきいきとしていました。なら、それくらい、練習に没頭すればきっと桜花ちゃんもその思いがふっきると思うの!!」

そう、練習ばかりすれば桜花もその思いをふっきることができる、というわけである。たしかに梅歌の理論も一理ある。たしかにAqoursとの戦いにむけて練習していたときは、桜花、必至になって練習をしていた。ただ、それは自分の父と姉に認められるために頑張っていたのであって、今はこのときとは事情が違うのだが、梅歌からすれば、そうすればきっと今の思いを吹き飛ばすことができる、そう考えたのかもしれない。まぁ、ほかにも、練習のことばかり考える、練習に集中することでほかのことを考えずにすむ、といったことも言えるのですがね・・・。

 そんな梅歌の言葉に職されたのか、桜花、こんなことを考えてしまう。

(たしかに梅歌の言う通りかも・・・。練習のことばかり考えればその思いなんて吹き飛ばし練習に集中すればそのことを考えずにすむ。それに、自分の力をつける意味もある。一石二鳥じゃない・・・かな・・・)

と少し明るくなる。自分の仲間である梅歌の言葉に桜花は救いを求めたのかもしれない。ほかのメンバーからのアドバイスがない今、梅歌の意見は桜花にとって蜘蛛の糸だった。

 だが、そんな桜花の姿を見て、松華、一抹の不安を感じた。

(梅歌の案はたしかにいいかもしれません。ですが、本当にそれでいいのでしょうか。これが逆に作用してしまうと感じたのは私だけでしょうか・・・)



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ラブライブ!RSBP 第29話

 そして、またもや松華の悪い予感が当たってしまった。ラブライブ!地方予選以降、

(もっと頑張らないと・・・、もっと頑張らないと・・・、じゃないと、あのショックから、あの思いから、抜け出せない・・・)

と桜花は練習に明け暮れていた。いつもの練習のほかに静真のなかにあるジムでのトレーニング、毎日、Aqoursメンバーや梅歌、松華の倍の走り込みなど、早朝から晩までやっていた。これには、今、一緒に住んでいるルビィから、

「桜花さん、あんまり自分を追い込まないでね」

と心配そうに言ってくるくらいにまでになっていた。ルビィからしたら今の桜花は、今、自分のなかに抱える自分の父や姉に捨てられた、それくらい「役立たず」「ごく潰し」である、という思い、それを振りほどこうと必至になって練習に明け暮れていた、そう感じたのだった。

 だが、そんなルビィの忠告なんて聞かずに桜花はただ、

(もっと練習しないと・・・、もっと練習しないと・・・)

と練習のことだけを考えようと必至になるも、すぐに、

(「お前は「役立たず」「ごく潰し」なんだ!!」

という父の木松悪斗の言葉がフラッシュバックしてくる。これには、桜花、

(私は・・・、私は・・・)

と困惑してしまう。このことが毎日のように、いや、保管しているあいだ、ずっとフラッシュバックのように蘇ってくるのだ。それくらい桜花の心には自分の父親から罵声が深く刻み込まれており、それによって桜花は練習をするほどその父親からの罵声が桜花のあた生のなかで蘇ってくるのだ。

 その言葉の連鎖により桜花の心は次第に、

(そうなんだ・・・、私はなにをしてもダメなんだ・・・。いくら練習しても・・・、ダメな人間・・・、本当に・・・、役立たず、ごく潰し、なんだ・・・)

と自分のことをもっと卑下するようになっていった。

 だが、それでも桜花は練習を必至になって頑張っていた。だって・・・、梅歌の言葉を信じているのか・・・、

「練習に没頭すればきっと桜花ちゃんもその思いをふっきることができると思うのです」

その言葉を信じているのか、練習に明け暮れていた。だが、その都度、頭のなかに鳴り響くのは、父親からの罵声。それで桜花はそれを忘れようと必至になって練習した。でも、そうすれば父親からの罵声が・・・。そんな負のサイクルにより桜花の心と体は次第にズタボロになっていった。

 

 そして、恐れていたことがついに起きてしまった。それは、7月上旬、この日は梅雨ということもあり、雨は降っていなかったものの天気はぐずついていた。そんななか、

「今日は休みにするよ!!このところ、練習ばかりだし、体を休めないとね!!

と、千歌、このところ、ラブライブ!最終予選にむけて練習が続いていたこともあり、今日はお休みにすることにしたのだ。これには、梅歌、

「あぁ、練習、きついよ~!!やっぱりラブライブ!で優勝するくらいはあるよ・・・」

と珍しく弱音を吐くも松華から、

「でも、今が一番楽しいんじゃない!!」

とからかられる。もちろん、梅歌、これにはすぐに、

「うん、とても充実しているし、なんか、私、輝いている!!」

と嬉しそうにうなずく。梅歌にとってRedSunのときよりもきつい練習かもしれなかった。だけど、梅歌にとって、あの春の松華との誓い、Aqoursみたいなスクールアイドルとして活躍し輝きたい、それを、今、叶えようとしているのである、それも、自分が憧れていたAqoursと一緒に・・・。いろいろとあったが結果的には自分の夢を早々と叶えようとしているのである。そのため、梅歌にとって、この時間が、Aqoursと一緒にスクールアイドルをしている、一緒に輝いている、その時間がとても好きだった。

 そんなときだった。突然、隣にいた桜花がこんなことを言いだしてきた。

「それじゃ・・・、私・・・、練習してくる・・・」

それはまるで練習するためだけに生み出されたゾンビのような感じだった。これには、梅歌、

「えっ、桜花ちゃん、今日は練習、お休みだよ!!」

と忠告する。

 だが、桜花、そんな梅歌の忠告なんて聞かず、ただ、

「それでも行く・・・」

とロボットのような言葉を残して部室から去っていった・・・。

 

 その後、桜花は・・・、弁天島神社に上る階段のところで走り込みをしていた。ただ、このときは、

「もっと練習しないと・・・、もっと練習しないと・・・」

と鬼気迫る表情をしていた・・・というのも、階段を上るごとに、

「お前は「役立たず」」「ごく潰し」なんだ!!)

という父木松悪斗の罵声が聞こえては、

(もっと練習してこの声を払しょくしたい・・・。そのためにも、もっと練習しないと・・・)

と必至になってその声を払しょくしようとしても、

「お前は「役立たず」「ごく潰し」・・・、お前は「役立たず」・・・)

という声が次々と聞こえてきたのだ。それは普通ならノイローゼになってもおかしくないものだった。いや、桜花は長いあいだ染みついた父からの怨念に苦しんでいる、そんな感じだった。

 そして、ついにそのときがきてしまった・・・。それは途中の踊り場まであともう少しのところだった。あともう少しで踊り場・・・というところで桜花の頭にある言葉がフラッシュバックしてきた。

「お前は「役立たず」「ごく潰し」なんだ!!だから、お前の母親は倒れたんだ!!)

それは父からの言葉だった。桜花の母親、それは桜花にとって大切な存在だった。父と姉から蔑まされてきたが母だけは桜花の才能を認めていただけでなく、その才能を伸ばそうとして音楽教室に通わせてくれた。それくらい、桜花にとって母は自分の唯一の理解者、と言えた。その母が自分のせいで倒れたとなれば桜花からすれば自分のせいで唯一の理解者である母を失ったことを意味していた。そのためか、桜花、

(お母さん、お母さん、お母さん~!!)

と心のなかで大声で叫んでしまった。いや、それどころか、桜花、天に向かって、

「お母さん~!!」

と実際に大声で叫ぶと手を天に伸ばして母に助けを求めようとしていた、そのときだった。突然、雨が、

ザーザー

と振り出してしまったのだ。そのせいか、桜花、踊り場に足をかけようとした、その瞬間、

ツルッ

と足を滑らせてしまった。その拍子に、桜花、

「あっ・・・」

という声をあげるも、そのまま桜花の体は階段に「ドシッ」とたたきつけれるとまるで大玉のように階段を転がり込んでしまった。これには、桜花、

(痛い、痛い)

という激痛を味わっていた。

 だが、問題はその先だった。このまま桜花が階段を転がりこめばその先は海・・・、なので、どこかで止まらないといけない、が、雨のため、まわりには人がいない・・・、ということで、転がり続けている桜花は、

(もう、私、死ぬんだ・・・。やっぱり、役立たず、の人生だったんだ・・・)

と絶望にちかい思いをしてしまった・・・そんなときだった。突然、

ガシッ

という音が聞こえてくるとともに、

「桜花ちゃん、大丈夫?」

という声がした。その声の主を桜花が見ると声をあげてしまう・・・。

「梅歌・・・、松華・・・」

そう、桜花を助けたのは桜花の仲間である梅歌と松華であった。実は桜花が帰ったあと、梅歌、

「なんか桜花ちゃんを見ていると浦東に大丈夫か心配になっちゃうよ!!」

と心配そうに言うと松華も、

「たしかにそれは言えるかもです」

と激しく同意した。今の桜花なら雨が降っても練習をするかもしれない、そう2人は思ったのである。

 そんなわけでして、梅歌と松華は千歌に対し、

「それじゃ、千歌さんたち、お疲れさまです!!」

という声とともに部室をあとにした、あわてつつも桜花を追いかけるから。ただ、この2人の挙動に、千歌、

「なんか不吉なことが起きるかも。みんな、行くよ!!」

と声をあげると曜たち5人を連れて部室をあとにした。これには、曜、

「もしかして、千歌ちゃんの第6感が働いたかも」

と言っては千歌が危機をサーチしたのではと思うほどだった。

 とはいえ、桜花のあとを追った梅歌と松華はすぐに桜花を見失うも、

「この時間なら弁天島神社の階段を使っての走り込みをする」

ということを知っていたことですぐに弁天島神社にむかったところ、転げ落ちてくる桜花を見つけてはすぐに転げ落ちてくる桜花を梅歌と松華は受け止めたのである。

 そんな梅歌と松華に受け止められた桜花はすぐに梅歌と松華に対し、

「う・・・、梅歌・・・、しょ・・・、松華・・・、助けてくれて・・・ありがとう・・・」

という声をかけると、梅歌は桜花に対し、

「たしかに、私、練習すればいいって言ったけど、それ、やりすぎだよ・・・」

と注意するも桜花はなにも応えることなく気を失ってしまった・・・。

 その後、桜花はすぐに梅歌、松華のあとを追ってようやく3人のもとについた千歌たちによって病院へと搬送されたがすぐにあのレジェンドの2人がいる東京にある大学病院へと転院することになった・・・。

 

 そして、それと同じようなことが桜花(はな)の姉、旺夏にも起きようとしていた。ちょうど、この日、旺夏はインターハイ県予選決勝を迎えてようとしていた。試合が始まろうとしたとき、旺夏は試合に出る選手たちに向かって檄を飛ばしていた。

「いい、ここで勝てばインターハイ本線へと出ることができる!!絶対に勝つからね!!いいね、わかった!!」

それはまるで勝利をみんなに強要しているようだった。というのも、Aqoursの静真ライブによって静真での部活動連合会会長の地位を失った旺夏は残された地位、女子サッカー部部長兼エースストライカーとして部のなかで威張り散らしていたのだ。だが、そのまわりの部員たちは浦の星という新しい風のなか、「勝利」することよりもみんなと一緒に楽しみながらサッカーを好きになる、そのようなことを考えるようになっていた。これでは旺夏とほかの部員たちのあいだで溝ができてしまう。。現に、いくら部長の旺夏が檄を飛ばしてもほかの部員はそんなこと関係なくチーム第一に旺夏以外の仲間とともに一緒に頑張ろうとしていた。

 ところが、実際のこのチームのいつもの戦術はほかの部員たちのやる気なんて関係なかった。この部で一番サッカーがうまいのは日本U-18代表に選ばれたことがある旺夏だった。なので、旺夏なしでは試合が成り立たない、いや、旺夏にボールが渡ればほかの部員なんて信じない、己の力のみを信じる旺夏がさっさと敵陣に殴り込みをかけ点をとる、そんな旺夏のワンマンチームと化していた。

 一方、相手のチームはこんなことが話し合われていた。

「いいか、静真は勝利のみを追い求めてインターハイで優勝した。なら、こちらも勝利に貪欲にならないといけない。あちらは木松旺夏のワンマンチームだ。なら、どうするか?やることは1つだけだ。ごりょごりょごりょ・・・」

と選手たちに秘策を与えていた。この相手はチーム創立して初めて予選決勝に進出したのだが、ここ最近、県外から有望な選手を青田買いし、きつい練習と敵チームの分析により力をつけてきたチームであった。だが、このチームの恐ろしいところ、それは、過去の静真と同じ、「勝利こそすべて」、経過なんて関係ない、勝てばそれでいい、そんな勝つこと優先のチームである、というところだった。

 そして、その選手たちの牙が静真の孤独なエースである旺夏に襲い掛かろうとしていた。旺夏がボールを拾った瞬間、

「くらえ!!」

という声が聞こえてきた。これには、旺夏、

「えっ!!」

ととっさに身をかわす。どうやら、相手の選手が旺夏に対して鋭いタックルをくらわしてきたようだ。ただ、旺夏はなんなくそれを交わすとその旺夏を襲ってきた選手は、

「ちっ」

と舌打ちをしてどっかにいってしまった。

 これにより、旺夏、相手の戦術に気づいた。

(もしかして、私を狙っているわけ・・・)

そう、相手の戦術、それは、徹底的に旺夏を潰すことだった。旺夏が潰されたらあとは軽く料理するのみ。だって、静真の女子サッカー部は旺夏のワンマンチームだから。ほかの部員たちは眼中になかったのだ。

 その戦術がわかった今、旺夏はすぐに主審に抗議した。

「あんなラフプレーは許されるはずないです!!」

だが、主審の答えは意外なものだった。

「木松旺夏選手がそんなことを言いますかね。これまで旺夏選手は同じようなことをしてきました。もちろん、相手の高校も同じことをしています。そう考えると喧嘩両成敗ではないのですかね」

主審の言い分はこうだ。これまで旺夏は勝利することだけを考えていた、そのため、ちょっとしたラフプレーをすることがよくあった。対して、相手も旺夏と同じくことをしている、なら、そんなことをしても別におかしくない、というのだ。でも、これだとけが人だけを生む最悪の試合になってしまう。それでもサッカーの試合においては主審を含めて審判には誰も逆らえない。それだけ審判の試合における地位は高いのである、と同時に、そんな考えがまかり通ってしまうのである。そんなわけでして、まさかの主審からの判定に旺夏は「グー」とうなるしかなかった。

 といった具合に反論を封じ込まれてしまった旺夏は次告ぐくる相手の鋭いタックルに、

「うっとおしい!!」

と怒りながらも次々とかわしていく。これこそ日本U-18代表になった旺夏の真の力だった。

 だが、それは同時に旺夏における人生最大にして最後の見せ場となってしまった・・・、というのも、後半開始語、突然、大雨が降ってきた。これには静真の女子サッカー部の監督はすぐにある選手に対し、

「おい、瑠璃、ウォーミングアップをしておけ!!もしかするともしかするぞ!!」

と言うと監督に瑠璃と呼ばれた選手はこう言った。

「わかりました!!」

 そして、その選手がウォーミングアップをし始めてから5分後のことだった。突然、雨が激しくなる。それはまわりが見えないほどだった。そのため、審判が大事をとり笛を鳴らそうとしたときだった。突然、

「痛い!!」

という旺夏の声が聞こえてきた。これには、主審、

「いったいどうした?」

と旺夏のもとに駆け寄ると、

「うぅ、痛い・・・」

というその場にうずくまる旺夏と、

「私はやっていない!!」「私も!!」

と言い訳を言う相手の選手2人がいた。これには、主審、なにか起きたのか確認するために試合を一時中断するとビデオ判定の係員に試合映像を確認させるとともに旺夏に駆け寄り、

「旺夏選手、いったいどうしたのかね?」

と、旺夏になぜこのようになったのか尋ねてきた。

 すると、旺夏は苦しみながらもこう言いだしてきた。

「うぅ・・・、この2人からタックルを・・・、くらい・・・、ました・・・、ボールを・・・、持っていないのに・・・」

 すると、腹心がタブレットを持ってきて主審にこのときの映像をみせると、

「うわ~、ひどい・・・」

という声を主審は漏らしてしまった。

 一体、どんなことが起きたのか。それは、旺夏がボールをもっていると錯覚した相手の選手2人が(ボールをもっていない)旺夏に対しタックルを仕掛けてきた、というものだった。ちょうど、旺夏の近くにいた静真の選手がドリブルをして旺夏に渡そうとしたのである。その様子を見て相手の選手たちは、

「ここだ!!旺夏選手を潰すぞ!!」

という声とともに旺夏めがけて鋭いタックルをくらわそうとしていたのだ。ただ、これには、ドリブルをしている静真の選手は、

(これだと相手にボールが渡ってしまう!!)

と思い、パスをやめ、ドリブルを再開したのである。これには、旺夏、

(おいっ、私に渡せ!!はやく!!)

と、その選手をにらむもその選手はそれに気付かずにドリブルを続けて敵陣に切り込もうとしていた。

 そして、この一瞬が旺夏にとって命取りになった。ボールをもっていないものの味方からのパスでボールがくるものだと思って止まっていた旺夏、その旺夏に対し2人の選手がタックルを旺夏のところにボールがくると思ってタックルをかけてきた。だが、パスしようとしていた静真の選手がパスをやめてドリブルを再開したところを見て、2人とも、

((えっ、旺夏のところにボールはこないの!!))

と旺夏にボールが来ないことを悟ってはすぐにタックルをやめようとしていた。ところが、このとき、突然、まわりが見えないくらいの大雨が降った。それにより、サッカー場の芝生は大いに濡れ、タックルを仕掛けた相手選手2人はタックルの姿勢をタックルを解除できないどころか芝生に滑るように、タックルの姿勢のまま、旺夏のところに滑ってきてしまった。

 そして・・・、

(えっ、なんで、ボールを持っていないのに、なんで、私に向かってタックルしてくるの!!それも、2人!!)

と自分に向かってタックルを仕掛ける選手2人を見つけた旺夏はこのままではぶつかると思い、ジャンプしてよけようとしていた。普通ならほかの場所によけるところなのだが、旺夏がとっさにジャンプしないといけないと判断するくらいその選手2人は旺夏に近づいていためにとった動作だった。

 こうして、旺夏はジャンプして2人のタックルをよけようとしたとき・・・、ついに起きてしまった、恐れていたことが・・・。旺夏は、まず、利き足である右足を上に上げると軸足となる左足をあげようとした、そのとき、その軸足に選手二人のタックルが旺夏の軸足をはさむかのように同時に決まったのである。さらに悪いことに、芝生が濡れていたため、タックルの勢いが半端ないものになっていた。そのため、旺夏はまるで動くことができないくらいの激痛に襲われていた。いや、誰から見ても痛みが激しいものであるとわかるくらい旺夏は痛み苦しんだのである。

 そのため、旺夏はすぐにタンカーでサッカー場の外へと運び込まれたあと、すぐに呼ばれた救急車に乗って病院に運び込まれた。このとき、旺夏、

「ここで私の戦いは終わってしまうわけ・・・、なんで・・・、なんで・・・、なんで・・・」

と悔し涙を流していった、このあとの運命を呪うかのように・・・。

 こうして、旺夏はすぐに近くの病院に運ばれたのだがその病院では対応できない、ということなのですぐに東京の大学病院へと転院していった。。

 その後、危険なタックルをした、ということで相手の旺夏にタックルをかけた選手2人は一発レッドカードで退場するも、静真側も攻撃の要だった旺夏を失うという大ダメージをもらった。だが、監督はそうとは考えていなかった。監督はウォーミングアップをしていた選手に対しこう命令した。

「それじゃ、瑠璃、いってこい!!ここがお前のスタートラインになるんだ!!」

そう、ウォーミングアップをさせていた選手とは、浦の星でエースストライカーだった瑠璃だった。瑠璃はこれまで浦の星出身の生徒としては唯一の補欠選手としてチームに帯同していた。そして、今、ここに、瑠璃は、静真の選手として初めて試合に立つことができたのである。

 その監督の言葉に、瑠璃、こう答えた。

「わかりました!!浦の星のみんな、私、ここから大空に羽ばたくからね!!」

その言葉通り、瑠璃は旺夏の代わりに大空に羽ばたくかのように次々とゴールを決めていった。実は旺夏以外の選手たちは旺夏のワンマンぶりには困っていた。浦の星という新しい風が吹いて以降、静真の女子サッカー部の部員たちも「勝利こそすべて」という考えから「楽しむこと、好きになることがすべて」という考えへと変わっていった。だが、旺夏だけは「勝利こそすべて」という考えに固執していた。また、旺夏が部長兼エースストライカーだったこともあり、旺夏のわがままにほかの部員たちは頭を抱えるほどだった。ところが、その旺夏がいなくなった今、部員たちは腫れものがとれたかのようにのびのびとフィールドを駆け上っていった。と、同時に、監督の采配も的中、瑠璃を中心としたいろんな戦術、それに加えて、たった9人しかいない相手も、これ以上レッドカードをもらいたくない、ということで防戦一方になったこと、それもあり、瑠璃は次々とゴールを決めていったのである。それはまるで静真の女子サッカー部が生まれ変わった瞬間のようだった。

 こうして、静真高校女子サッカー部は相手に大差をつけて勝利、無事にインターハイ本線へと駒を進めることができた。また、瑠璃は新生として注目を浴びるようになった。この瑠璃の座右の銘は「ボールは友達」という某有名サッカー漫画の主人公の言葉であるが、その言葉通り、瑠璃はインターハイ本線でも大活躍をみせ、静真の女子サッカー部は2年連続の優勝を果たす。また、瑠璃はこの大活躍を認められ、日本代表入りを果たす。その後、瑠璃は世界を相手に大活躍をみせ、日本を2度目のW杯優勝へと導くのはのちの話である・・・。



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ラブライブ!RSBP 第30話

 と、いった具合に、まさか、同じ日に姉妹同時に大ケガをするとは思ってもいなかったが、旺夏、桜花(はな)、ともに東京にある大学病院に転院することになったのだが、その大学病院とは・・・。

 と、それはあとにして、

「うぅ、ここは・・・」

と、昏睡状態から起きた桜花はまわりを見渡す。すると、

「えっ、なぜお姉さまが!!」

と隣のベッドに姉の旺夏がいることにびっくりすと同時にその声に触発されたのか、

「うぅ、ここは・・・」

と旺夏の方も昏睡状態から目覚める。

 すると、旺夏、隣にいる桜花に対し、

「えっ、なぜここの「ごく潰し」がいるわけ?」

と声をあげた。そう旺夏・桜花(はな)姉妹は、今、同じ病室にいるのである。

 その2人の声を聞いてかある女性が2人に声をかけてきた。

「あっ、お目覚めですね」

その声に葉案はその女性の名を尋ねる。

「あの~、あなたは誰ですか?」

 すると、この女性は自分の名を言った。

「私は東都大学医学部1年の代々木はるかです。よろしく」

代々木はるか・・・この物語を含めた物語群をよく知っているものなら誰かわかるだろうが、それはおいといて・・・、はるかは2人に対しこんなことを逆に尋ねてきた。

「ところで、2人とも、姉妹ということでこの一室にまとめたけど、どうかな?」

 すると、桜花は、

「私はこの姉から捨てられた身なので・・・」

とうつむきながら言うと旺夏も、

「ふんっ、この「ごく潰し」なんて捨てられてもおかしくないね!!」

とこちらは威張るように言う。この2人の反応に、はるか、

「ふ~ん、だからこうなったのね」

となにかを知っているかのような素振りをみせる。

 そんなはるかに対し旺夏は怒鳴るようにこう尋ねてきた、まるで脅迫しているかのように。

「ところで、私、サッカーに復帰できるのでしょうね!!復帰できなきゃ藪医者だって言いふらしてやるのだから」

 ただ、そんな脅し、はるかには効かなかった。逆にはるかは2人に対しこう尋ねてきた。

「ところで、あなたたち、部活って、いや、この世の中で一番大事なものってなにかな?」

どっかで聞いたような質問。これには、旺夏、すぐに答える。

「「勝利こそすべて」に決まっているだろ!!」

 すると、はるか、軽くこう答えた。

「ありゃりゃ、これじゃ、どんなことをしても治らないね・・・」

これには、旺夏、はるかに対し罵声を浴びさせる。

「治らないってどういうわけ?私に対してケンカを売っているわけ?」

 ただ、その脅しなんてはるかには効かない。いや、それどころか、

「ふ~ん、それじゃ、現実を聞いたら絶望するね。それでもいい?」

と言うと、旺夏、すぐに、

「ふんっ、そんあの関係ないね!!私は私でリハビリしてふたたび活躍するんだからね!!」

と威張るように言うと、はるか、

(こりゃ、現実をみせつけないといけないかな)

と思ったのか、ついに衝撃な現実を旺夏に突きつけてしまった。

「旺夏さん、あなたは軸足となる左足を複雑骨折、さらに、筋肉の筋が何本も切れています。それどころか、鋭いタックルを両サイドから受けた影響でほかのところにも悪い影響を受けています。それは、つまり・・・」

そのはるかの言葉に、旺夏、

「つまり・・・」

とつられて言うと、はるか、残酷な言葉を旺夏に伝えた。

「旺夏さん、あなた・・・、

 

もうサッカーはできません。最悪、一生、車いす生活になるかもしれません」

 

 このはるかの残酷な言葉に、旺夏、

「えっ、一生、サッカーができない・・・」

とあまりの残酷な現実に泣きながらはるかに尋ねると、はるか、ただたんに、

「はい、一生、サッカーはできません・・・」

と言う。

 そんなあまりに残酷な現実を再確認した旺夏、ようやくことの重大さに気づいたのか、

「うぅ~、うわぁ~ん!!」

という大きな声をだして泣きだしてしまった。一生サッカーができない、それは旺夏にとって、サッカー第一に考えていた旺夏にとって死刑になるのと同じくらいの意味をもっていた。

 そんな旺夏の姿をみてか、桜花(はな)、はるかに対しあることを尋ねた。

「となると、私も一生車いすが必要になるのでしょうか?だって、私、お姉さま以上に大がしているから・・・」

そう、このとき、桜花は気づいていた、姉以上にケガをしていることを。実は、桜花、体をたたきつけられるかのように階段を転げまわったあと、体のいたるところに傷ができていた、・・・だけでなく、いたるところで骨折をしていたのである。これだと姉と同じく一生車いすが必要な生活になるのでは、と思っていたのだ。

 だが、それに対して、はるか、安心したようにこう答えてくれた。

「桜花さん、あなたは大丈夫ですよ。だって、友達が体をはってあなたを受け止めてくれて助けたのですから」

 そして、はるかは桜花のベッドの下の方を見る。すると、

「すやすや」「グー」

と寝ている梅歌と松華の姿があった。そう、たしかに桜花は急な階段を転げ落ちた。それにより体のいたるところに傷ができただけでなく何か所か骨折をしていた。だけど、あのとき、梅歌と松華が体をはって転げ落ちてきた桜花を受け止めてくれたため、そこまで大きなケガや骨折をすまずにすんだのだ。

 で、このことを聞いた桜花、寝ている2人に対して、

「ありがとう、梅歌、松華・・・」

とお礼を、いや、生まれて初めてお礼を言ったのである。

 そんな桜花に対し、はるか、こう尋ねてくる。

「ところで、桜花さん、あなたにも質問です。部活で、この世の中で、1番大切なものってなに?」

 すると、桜花、小声でこう答えた。

「それって・・・、勝つこと・・・、でしょうか」

そう、桜花もこれまで「勝利こそすべて」という考えをもっていた。だが、それによりAqoursに敗れてしまい自分の父と姉から「役立たず」「ごく潰し」なんて言われては捨てられた、のである。そのため、桜花にとってみればそれは自信をもって言えるものではなかった。

 そんな桜花に対しはるかは、

「それじゃ、そのまま車いすにのっていこうか!!」

と特別製の車いす(はるか作)に桜花を乗せてその病室から連れ出してしまった・・・。

 

「到着!!」

はるかは桜花を連れ出して連れてきた場所、それは・・・、

「ユニドル部!?」(桜花)

そう、ここはユニドル部の部室だった。ユニドル、それはスクールアイドルと同じく、ユニバースアイドル、つまり、スクールアイドルの大学生版として、近年、盛んになっているアイドルのことである。

 そして、その部室にはもう1人・・・、

「桜花さん、こんにちは。僕は神宮ハヤテ。ここにいるはるかの幼馴染でありユニドル部の部員の1人です。よろしく!!」

と声をかけたハヤテ、これには、桜花、

「よ、よろしく・・・」

とおどおどしつつも返事をした。

 すると、起きてきたのか、桜花と同じくはるかによって一緒に連れてこられた(ベッドで・・・)梅歌がはるかとハヤテを見てびっくりして大声をあげてしまう。

「あ、あなたたちって・・・、あのレジェンドスクールアイドル・・・、オメガマックスの代々木はるかちゃんと神宮ハヤテちゃん・・・、H&Hの2人じゃありませんか!!」

これには、桜花、

「レジェンドスクールアイドル、オメガマックス・・・」

と口をあんぐりしてしまう。レジェンドスクールアイドル音ノ木坂アイドル研究部オメガマックス・・・、一昨年、こころあ、そして、先輩のみやこ、(μ'sのほのかの妹の)雪穂、(μ'sの絵里の妹の)亜里沙、そして、はるか、ハヤテ、2人の幼馴染の秋葉愛、8人のスクールアイドルグループである。当時、スクールアイドル界は勝利至上主義がはびこっていた。それを打破したと同時に、一昨年度のラブライブ!で優勝した、それによりレジェンドスクールアイドルとして名をはせたのである(詳しくはラブライブΩをご覧ください)。さらに、2人は日本の最高学府かつ最高スポーツ校である東都大学に入学、ここでH&Hというユニドルとして活躍していたのである(詳しくはラブライブUCのH&H編をご覧ください)。

 で、神宮ハヤテはというと・・・、松華も起きてきたのか、梅歌と同じく口をあんぐりさせながらこう答えた。

「あ、あなたは・・・、昨年、インターハイで高校新をだした神宮ハヤテさん・・・」

そう、神宮ハヤテはラブライブ!で優勝したあとにスクールアイドルを引退、陸上部に戻り、そこで短距離において高校新をたたき出した有名な陸上選手でもあった。

 そんな2人をまえに、桜花、

「そんな2人が私になにかようでしょうか・・・」

と尋ねてみると2人はこう言いだしてきた。

「桜花さん、あなたにお願いがあります。ここでケガを治すとともに私たちH&Hの活動のお手伝いをしてくれませんか?」(はるか)

「実は、今、ゲリラライブのステージを手伝ってくれるスタッフが足りません。僕たちの手伝いをしてくれたらうれしいんだけどね・・・」(ハヤテ)

そう、実はH&H、東都大学のユニドルとして活動しているのだが、活動を始めたばかり、ということもあり、そこまで認知されていなかった。そのため、ときどき大学構内でゲリラライブを行っているのだが、そのスタッフが足りない、というのだ。また、大学付近にある地元の夏祭りのゲストとして飛び込み参加することも決まっており、そのスタッフも足りていなかっただ。

 ただ、これには、桜花、

「でも、ここでケガを治すってどれくらい時間とお金がかかるのですか・・・。それにスタッフって・・・」

と心配になってしまう。たしかにここでケガを治すっといってもその治療費なんて親の木松悪斗がだしてくれるはずがない、それどころか、お金もない、そんな状況で高額な治療費なんてだせない、と心配していたのだ、桜花は・・・。また、スタッフについてもケガで動けない以上手伝うことなんてできない、というものもあった。

 だが、その点についてははるかが簡単に説明してくれた。

「あっ、それについては心配しないでください。というのも、ケガの治療費については自分が作ったケガ治療促進用の器具を使いますので「テスターとして参加している」ということで大学側からお金がでますので無料です。また、それ以外の費用についてもこちら側のスタッフとして活動するのでその給与と相殺する形をとります。あと、スタッフの活動ですが、この車いすにいる以上、どこに移動も可能ですし、MCをしてもらえたらうれしいです」

 この春かの答えに、桜花、

(治療費についてはいいけど、スタッフになるメリットってなにかあるの?)

とはるかのことを疑ってしまう。たしかにそうかもしれない。たしかにスタッフになれば治療費などの費用を賄えるといったメリットがある。でも、それ以外にこちら側になにかメリットがあるのか考えてしまうのであった。

 だが、ここにきてあの人がしゃしゃりでてしまった。それは・・・、

「それって私たちにもできますか?」

これには、桜花、

「えっ、梅歌、なんてことをいうわけ?」

と梅歌にツッコむ。そう、スタッフとして手をあげてきたのは梅歌だった。

 その梅歌ははるかに対しこうお願いする。

「レジェンドスクールアイドルだったはるかちゃん、ハヤテちゃんの近くでアイドルとはなにかを知りたいのです!!お願いします、私たちをスタッフにしてください!!」

そう、梅歌は張り切っていた。まさかレジェンドスクールアイドルであるはるか、ハヤテの2人からスタッフのお誘いを受けたのである。それはAqoursみたいなスクールアイドルになって輝きたい、そう夢見る梅歌にとってうれしいお誘いであった。そのためか、梅歌、

「はるかちゃんとハヤテちゃんのお手伝い、お手伝い」

とウキウキしていた。もちろん、これには松華から激しいツッコミが・・・、

「まぁ、梅歌がそう言うんだったら私もOKだよ!!」

って、おい、梅歌の考えに同意しっちゃったよ・・・。まぁ、松華はいつも「梅歌ファースト」だからそうなっても仕方がないのですがね・・・。

 と、ここにきて、桜花、こう考えてしまう。

(たしかに治療費のことを考えると背に腹は代えられない・・・)

そう、高額な治療費をなんとかしないといけない、という現実問題があった。そんなこともあり、

「ふんっ、仕方ないですね。この桜花、お二人のお手伝いをします!!」

とはるかのお誘いを受けることにした。これには、はるか、

「ありがとう。それじゃ明日からお願いね!!」

と、伊達メガネを動かしながらうれしそうにそう答えてくれた。

 

 その後、桜花の治療が本格化する。たとえば・・・、

「これって温浴の機械・・・ですね・・・」

となんか温かいものを足などに巻いていると、はるか、こう答える。

「そう、温浴みたいに巻くことで血行を促進させるものだよ」

と嬉しそうに答えてくれた。

 といった具合に最初の2週間は治療に専念した。2週間後、桜花、

「あれっ、なんか、骨折したところがよくなっている・・・」

と体中が痛くなくなっていることに驚いていた。体中にあったあざや着ずは綺麗にもとに戻っていた。どうやら、それもこれもはるかがマンツーマンの教授の講義のあいだで桜花のためにいろんな治療法を効率的に取り入れた結果によるものだった。これには、桜花、

「ふんっ、ありがとうね、はるかさん・・・」

とお礼を(ツンデレ風に)言ったりもしていた。

 

 また、そのあいだを含めて万能車いすに乗って桜花はH&Hのゲリラライブの手伝いをしていた。

「え~、もうすぐH&Hのライブが始まります。興味のある方はお集まりください」

こう桜花がアナウンスすると梅歌と松華が集まってくれた人たちは、

「どうぞ、これで盛り上がってください」(梅歌)

「これもどうぞ!!」(松華)

と集まってくれた人たちにH&Hのうちわや冷たいタオルを配っていた。

 ただ、この前、桜花たちはH&H結成当初のことを聞いていた。

「実は、6月に行ったファーストライブ、たった数人しか集まってくれなかったんだ。自分たちの知名度を活かしてなにも宣伝してなかったのがいけなかったのかな」(はるか)

そう、実は、H&H、6月に行ったファーストライブはたった数人しか集まってくれなかった、という。これには、梅歌、

「えっ、あの日本でも有名なレジェンドスクールアイドルであっても・・・」

と絶句していた。そりゃそうだ。はるかとハヤテはあのレジェンドスクールアイドルの1人、日本中に名を轟かせたスクールアイドルだった。それが2人としての初めてのライブではたった数人という現実はどう考えてみてもおかしいと梅歌には思えたのである。だが、それが現実だった。この大学では最高学府ということもありアイドルとは無縁のところである。そのなかでアイドルとして活動したとしてなんの宣伝もせずに初めてのライブに集まるのがほんのわずかというのも納得のいくものだった。そのため、H&H、はるかとハヤテは自分たちの知名度をあげるべく学内においてゲリラライブを行っていたのである。これには、梅歌、

「それってスクールアイドルにも通じるものがあるかもしれないね。もしかすると、渡井たち、千歌さんたちAqoursと一緒になれたのもたんなる偶然だったのかもしれないかも・・・」

と思うほどだった。スクールアイドルの世界はとても厳しいところである。たとえ実力があったとしても知名度がなければ全国的な知名度になるためには(μ'sやAqoursだとPVが知名度を全国クラスにまで押し上げるきっかけとなるくら)なみなみならぬ努力と運が必要である、そう梅歌が考えるとともに自分たちはただたんに運がよかった、あのとき、桜花が自分たちを誘わなければ、RedSunとしてAqoursと対決しなければ、静真に入らなければ、そう考えると運が本当によかった、と思えてきてしまったのである。

 そんなことを思う梅歌であったがライブが始まるとライブに集まってくれた人たちから、

「頑張れ!!」「ハイハイハイ」

という声が聞こえてきた。いや、みんな笑っていた。これには、桜花、

(なんか、みんなを見ていると、ユニドルとスクールアイドル、大学生か高校生かの違いだけで中身は似ているのですね・・・)

とユニドルもスクールアイドルも本質的には一緒であることを理解し始めていた。

 その一方で、桜花、この笑いあふれる光景に、

(でも、いったいどうしてこのライブだけでみんなが喜ぶのだろうか・・・、いったい、どうして・・・)

と戸惑いも感じていた。これまで梅歌は勝つことだけを考えていたため、みんなを笑顔にさせることなんて考えてこなかった。それはスクールアイドルになったとしてもである。でも、今、起きていることは、その逆、みんなを、いや、はるか、ハヤテ、含めてみんなが笑顔になっている、そのことが桜花にとって不思議に感じるものとなっていた。そのためか、桜花、

「いったいどうして・・・、どうして・・・」

となにがなんだかわからず困惑するばかりであった。・・・。

 

 そんなゲリラライブをどんどん手伝っていくうちに桜花はさらに困惑していく。だって・・・、

(ゲリラライブを続けていくうちにお客さんの数が増えてきている・・・。それもいつも、みんな、笑っている・・・。なんで・・・)

そう、H&Hのゲリラライブのお客さんの数が回を重ねるごとに増えていっているのである。まぁ、それには理由があって、大学がH&Hを全面的に推しているからだった。というのも、最高学府かつ最高スポーツ校である東都大学であるが、それゆえに「頭がかたい」という大学のイメージがついてまわっていたのである。これではこの大学に入学する生徒の数が減ってしまう、という危機感を大学はもっていた。そのため、「最高の知力」を有するはるかと「最高の走り」を有するハヤテをユニドルにして大学の一押しとして2人をH&Hとして売り込もうとしていたのである。なので、大学内で発行している新聞にH&Hの特集が組まれていたり、大学構内のいたるところにH&Hのポスターが貼られていたのである。そこでH&Hを知った人たちがそれならばとH&Hのゲリラライブに来る、といった好循環を生み出していたのである。

 だが、それ以上に、桜花を困惑させていたのがどのゲリラライブでもお客さん全員が笑っていることであった。どのお客さんも、みな、H&Hのパフォーマンスを見て笑っているのである。別にH&Hがお笑いをしているわけではない。また、H&Hはコミックバンドではない。だが、それでも、みんなが笑っている、のである。これには、桜花、

(でも、1つだけいえることがある。それは、みんな、H&Hをみて笑っている、こと。H&Hがなにかうらでしているのだろうか・・・)

とH&Hが裏でなにかをしているのではないかと考えてしまった。

 だが、このあと、桜花ははるかとハヤテに直接そのことについて尋ねてみたのだが、2人とも、

「別になにもしていないけど・・・」(はるか)

「僕はただこのステージを走り抜けるだけだけど・・・」(ハヤテ)

とまともな答えなんてだしてくれなかった。そのため、桜花、

(それじゃ、なんで、みんな、笑っているの・・・)

とますます困惑してしまった・・・。



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ラブライブ!RSBP 第31話

 ところが、その笑いの秘訣はあるところで発覚した。それは、大学が夏休み中に行われた夏祭りでの出来事だった。桜花は、この日、汗をかきつつもH&HのMCを行っていた、そのときだった。突然、ある子どもがMCである桜花に対してこんなことを言ってきた。

「ねぇねぇ、お姉ちゃん、なんで笑っていないの?」

そう、桜花、実はどんなときでも笑っていなかったのである。というか、「笑う」ということを長い間してこなかったのだ。というのも、桜花は父の木松悪斗から音楽教室という大切なものを奪われたあと、父と姉から蔑まされてきたため、「笑う」という行為をすることができなくなった、いや、「笑う」という行為自体忘れてしまったのだ。そのため、桜花はこれまで笑ったことがなかったのだ。いや、それ以外にも、桜花自身、これまで「勝つことがすべて」が1番大事、だと思ってきた。いつも勝利を追い求める、それは「笑い」なんて不要である、そう思っていたのかもしれない。それは「あるものを失っていた」ともいえた。そんな笑う行為自体忘れていた桜花は小さな子からの突然の質問に、ただ、

「そ、それは・・・」

と言葉がつまってしまった・・・。

 でも、小さな子からしたらそんなことなんて関係なかった。いや、それ以上に、純真無垢なその小さな子は桜花に対し決定的な一打となる質問をした。

「お姉ちゃん、このステージ、楽しくないの?みんな、お姉ちゃんたち(H&H)の歌を聞いてとても楽しんでいるよ。でも、お姉ちゃん(桜花)は楽しんでいない感じがする。なんで?」

この小さな子の質問、というか指摘に、桜花、さすがに・・・、

「えっ、え~と・・・」

と黙りこくしかなかった。いや、それ以上に、

(えっ、このステージを楽しんでいる?なんで?楽しむことが大切・・・なの?)

と、頭のなかがパニックになってしまった。ステージを楽しむ?みんなは歌を聞いて楽しんでいる?それなのに自分は楽しんでいない?いや、「楽しむ」こと自体なんで?と言いたそうになる、いや、困惑している桜花であった・・・。

 

「これにてH&Hのステージを終わります・・・」

とMCである桜花の一言で夏祭りのステージが終わった。だが、このときも桜花の頭のなかでは、

(楽しむことが大事なの?私が笑っていないのは楽しんでいないせい?どういうこと?)

と頭を抱えていた。

 そんななか、頭を抱えていた桜花を見てか、はるかが桜花に尋ねてきた。

「桜花さん、いったいなにを悩んでいるのですか?」

これには、桜花、

「そ、それは・・・」

と言葉がまたつまってしまう。

 そんな桜花に対し、はるかの隣にいたハヤテがズバリ当ててみせる。

「ズバリ、あの小さな子からの指摘、「笑っていない」、そのことだろうね」

このハヤテの指摘に桜花はわかりやすいのかあたふたさせながらも、

「そ、そうことでは・・・」

と言葉を濁してしまった。

 そんな桜花に対しはるかはあることを指摘した。

「桜花さん、一言いいかな。桜花さんって、私たちのライブ、楽しんでいる?なんか桜花ちゃんを見ていると私たちのライブを楽しんでいない気がするんだよね

このはるかの指摘に、桜花、

(えっ、ライブを楽しんでいる?なんで?)

と思ったのか、はるかに対しこう言ってしまう。

「ライブを楽しむ?それって必要なのですか?」

 だが、そんなこと、わかっていたのか、ハヤテ、こんなことを言ってきた。

「桜花さん、ライブに限らず、ユニドルであってもスクールアイドルであっても、

 

「楽しむこと」がとても大切

 

なんだ!!」

 ところが、桜花はハヤテにこんなことを聞いてしまう。

「なんで「楽しむことがとても大切なの?ユニドルだってスクールアイドルだって「勝つことがすべて」じゃないの?」

 この桜花のk賭場にハヤテはある大事なことを言いだしいてきた。

「たしかにユニドルだってスクールアイドルだって大会がある以上戦いはある。でも、1番大切なのは「楽しむこと」!!自分たちが楽しめばその楽しさが伝播していってお客さんはみなこのライブを楽しく感じてもらえる、いや、笑顔になるんだよ!!」

このハヤテの言葉はそれをハヤテは実際に体験しているからこそいえる言葉であった。実はハヤテは高校のときにスクールアイドルグループ「オメガマックス」として、当時、スクールアイドル界の女王かつスクールアイドル勝利至上主義という考えの権化だった福博女子大付属高K9を打ち破った(詳しくはラブライブΩをご覧下さい)のだが、そのとき、ハヤテ、はるかたちが目指したもの、それは

 

「スクールアイドルを楽しむこと」

 

だった。この考えがあったこそ、オメガマックスは会場中の人たちを楽しませては笑顔にさせていき、その勢いのままに、K9、そして、なぜかμ'sをも打ち破ったのである。

 だが、それでも桜花は納得してなかったらしく、

「でも、大会がある以上、楽しむことなんて・・・」

と言い訳を言う・・・のだが、ここに、今さっき桜花に質問してきた小さな子が、

「あっ、今さっきのお姉ちゃん!!」

と言っては現れてきた。これには、桜花、

「あっ・・・」

と小さな子からの質問の答えがまだだったらしく、

「あっ・・・」

と三度言葉に窮するも、その小さな子は桜花に対しあることを話した。

「お姉ちゃん(桜花)、私、このステージを見て思ったの、なんか、ステージををしているお姉ちゃんたち(H&H)、なんか楽しそうにしている、って。そしたら、私もなんか楽しい気分になっちゃった!!それも、みんなで!!!だから、お願い、お姉ちゃん(桜花)も笑って!!みんなと楽しんで!!)

この小さな子の言葉が桜花のなかでぐさりと刺さった。

(私がライブを楽しむ・・・、みんなと一緒にライブを楽しむ・・・、それってなんか忘れていた記憶が蘇ってきそうだ・・。そう、小さなときの・・・音楽教室のことを・・・)

このとき、桜花が思いだしたこと、それは・・・、小さなときに母が父に黙って通わせていた音楽教室のときのことだった。このときは自分に許された唯一の「笑う」ことができた時間、だった。この時間だけは自分の思いを爆発させる、心の底から楽しむことができる時間、だった。だが、それすら父によって取り上げられてしまい、それ以降は、桜花自身、楽しむことができなかった、のである。そんな懐かしい思い出が浮かび上がったのか、桜花の目に・・・、

ポツリ・・・

と涙が出てくるとともに、

(なんか忘れていた感覚が・・・、自分が楽しんでいたときの思い出が・・・蘇ってくる・・・)

と、楽しんでいたときの、笑うことができたそのときの感情が蘇ってきた。

 そんな桜花を見てか、梅歌、松華、あることに気づいたのか、桜花にあることを言ってくる。

「桜花ちゃん、笑った!!」(梅歌)

「へぇ、笑うとそんな顔人なるのですね」(松華)

それには、桜花、

「笑った?」

と聞き返すとはるかは手鏡をもって桜花に見せてはこう言った。

「うん、笑っている!!」

そう、桜花はついに笑ったのである。

 そんな笑った素顔を手鏡を通して知った桜花は、

「これが「笑う」ということなんだ・・・」

と言葉を口にした。

 ただ、このときの桜花はまだ困惑していた。それは・・・、

(でも、たしかに笑ったけど・・・、実際は・・・、楽しむことって・・・ただの遊びじゃないの・・・。この世の中はすべてが勝負なんだ・・・。今はただの祭りだけど・・・、本当なら・・・勝負の世界なら・・・勝つことこそ大事じゃないの・・・)

そう、桜花は今なおある考えに囚われていた。それは、もちろん、「勝利こそすべて」。今、自分はこのライブを楽しんでいる、だが、桜花のなかには、今は夏祭りという特殊な環境だからいえることであって、通常なら勝負の世界、なのだから勝つことがすべてではないか、勝負の世界のなかでは楽しむことは遊びの領域のままではないか、と思っていたのだ、桜花は・・・。

 そして、それが桜花に対し元の桜花に、「役立たず」「ごく潰し」と父と姉に蔑まられていたあの桜花に戻ることを意味していた。

(そうだったら・・・、Aqoursとの勝負に・・・負けた・・・私は・・・みんなにとって・・・、「役立たず」・・・、「ごく潰し」・・・、なんだ・・・。だから・・・、私は・・・、お父様とお姉さまに・・・捨てられたんだ・・・」

さっきのハヤテの言葉によって新しい桜花になろうとしていた。だが、桜花のもつ「勝利こそすべて」という考えによりもとに戻ってしまった・・・。「勝利こそすべて」、それは桜花をすべてを縛り付けるあの父木松悪斗が施したチェーンなのかもしれない・・・。

 ところが、ここにきて、桜花に巻きつかれたチェーンがさらにきつくなる事態が起きた。それは桜花がもとの桜花に戻ったときに起きた。なんと、桜花の隣にいた梅歌のスマホが鳴ったのだ。これには、梅歌、

「はい、梅歌です」

と電話をとると少ししてからこんなことを言いだしたのだ。

「えっ、圧倒的な大差で東海最終予選突破した!!やったー!!」

実は、この日、千歌たちはラブライブ!夏季大会最終予選に参加していたのだ。この東海最終予選では、RedSunの桜花、梅歌、松華は桜花のリハビリのため、不参加、だったため、のこりの6人、千歌、曜、梨子、ルビィ、ヨハネ、花丸、の6人で出場していた。その予選ではAqours本来のパフォーマンスをみせ、ほかのグループに圧倒的な大差をつけてトップで予選通過したのである。

 そんなことを聞いた桜花はすぐに自分のスマホを見る。すると、たしかにトップニュースでAqoursが東海最終予選を通過したことが書かれていた・・・が、ここで、桜花は愕然とした。と、いうのも・・・、

「えっ、「あの3人がいなかったから圧倒的な大差で勝てた」「やっぱりこの前(地区予選)、パフォーマンスに失敗した娘(桜花)なんてAqoursにいらないんじゃ・・・」って・・・」

なんと、桜花、そのニュースのコメントのところに書かれていた罵詈雑言を見てしまったのだ。むろん、これには、桜花、

(やっぱり・・・、私は・・・いらない娘・・・、「役立たず」・・・、「ごく潰し」・・・、なんだ・・・)

とさらに落ち込んでしまった、いや、生きる意味を見失おうとしていた。

 ただ、これに気づいたのか、松華、すぐに桜花のスマホを取っては、

「あんまり気にしないでいいのです!!桜花さんは桜花さんなりの頑張りがあるのですから気にしなくてもいいのです!!」

と元気づけしようとしていた。

 だが、罵詈雑言の言葉を見た桜花はただ、

「・・・」

と無言に、いや、心のなかでは、

(やっぱり、まわりから見ても、「役立たず」、「ごく潰し」、なんだ・・・。やっぱり、私、この世の中にはいらない娘なんだ・・・)

と桜花を取り巻くチェーンはきつく締め付けられては生きる意味をなくそうとしていた・・・。

 

「桜花ちゃん、もっとしっかり動いて!!」

と曜の檄が飛ぶ。東海最終予選が終わって以降、次の決勝に向けて千歌たちが練習を続けていた。そこでは・・・、

「梅歌ちゃん、松華ちゃん、すごい!!すごく合っているじゃない!!」

とようやくほかのみんなと合わせることができるようになった梅歌と松華を褒める曜。対して、

「桜花ちゃん、いったいどうしたの?なんか元気がないのかな?なにか悩み事?」

とみんなにあわせることができない桜花のことを曜は心配するもリハビリも終えて復帰した桜花はすぐに、

「な、なんいもない・・・です・・・」

としどろもどろに言うも下を向いてしまう。これには、曜、

「桜花ちゃん、大丈夫・・・?」

と何度も聞くも桜花はそのたびに、

「私は・・・大丈夫・・・です・・・」

と答えるだけ。最後には、曜、

「なら、いいんだけど・・・」

とこれ以上いうのを辞めてしまった・・・。

 だが、桜花の心のなかにはある種の諦めに近いものが渦巻いていた。

(もう私はいらない娘なんだ・・・。私はただの「役立たず」で「ごく潰し」・・・。もう誰も私のことなんて必要だと思っていない・・・、もういらない娘なんだ・・・。なら・・・、もう消えたい・・・)

桜花のなかに渦巻いているもの、それは、自分の存在なんていらない、自分を否定するものだった。本当は父と姉から認められたい、そう思って桜花は頑張ってきた。だけど、父と姉からは認められず、逆に、「役立たず」「ごく潰し」と言われてしまったこと、それは桜花のなかで修復不可能な傷をつけただけでなく、今、桜花のまわりにいるみんな、Aqoursや梅歌、松華にすら見捨てられた、そのことまで考えるようになってしまったのである。それは桜花を取り巻くチェーンが桜花の心の奥底まで食い込んでしまったことを意味していた。



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ラブライブ!RSBP 第32話

 こうして、桜花とそれ以外の8人はラブライブ!夏季大会決勝前日までパフォーマンスを合わせることができなかった。それは桜花自ら「役立たず」「ごく潰し」と卑下していること、「もう誰も自分のことを必要としていない」、そう桜花は思い込んでいることが原因なのだが、人というのはマイナスに物事を考えるとそこから抜け出せなくだけでなく、それが自分の行動にも悪影響がでるものである。そのため、桜花はずっと絶望したままだけでなくほかのメンバーとあわせることができなかったのだ。

 むろん、この桜花の姿にはまわりの人たちからも、

「このままじゃ、Aqours、決勝すら戦えなくなるんじゃないかな?」

と心配の声が聞こえ始めたきた。

 だが、それについては、ルビィ、自ら、

「きっと大丈夫だよ!!桜花ちゃんはきっと立ち直れるはずだよ!!」

とそれを打ち消すようなことを言ってくれていた。

 

 そして、ついにラブライブ!夏季大会決勝の日を迎えた。朝、ルビィの家に寝泊まりしている桜花は起きるなり、

「もう、ラブライブ!決勝・・・。私・・・、消えたほうがいいのかな・・・」

と自分のことを卑下すると、その隣に寝ていたルビィも起きては、

「あっ、桜花ちゃん、おはよう!!よく眠れた?」

と桜花を心配そうに見ると桜花はただ、

「・・・」

と無言になってしまった・・・。

 

 その後、沼津駅でほかのメンバーとの待ち合わせをしたあと、会場となる秋葉ドームで全員で行くことに。ただ、そのときも桜花は下を向くなり、

「・・・」

と無言を貫いていた。もう誰も自分のことを「役立たず」「ごく潰し」と思っている、そのマイナスの感情が桜花を押しつぶそうとしていた。

 そして・・・、

「スクールアイドルの聖地、秋葉ドームに到着!!ここから私の伝説が始まるんだぜ!!」(梅歌)

「私の、じゃなくて、私たちの、でしょ!!」(松華)

と梅歌と松華ははしゃいでいたが桜花はただ黙っているままだった。

 そんなときだった。桜花は見てしまった。

(えっ、なんで、函館で私たちを追い込んだ人がいるの・・・、花樹・・・)(桜花)

そう、桜花は見つけてしまった、函館で自分たちRedSunを打ち破った相手、理亜・花樹組の1年生、花樹の姿を・・・。ただ、花樹の方もAqoursの姿を見つけたらしく、理亜・花樹組にAqours組は近づいてはルビィたち2年生と(相手方の)理亜は楽しい?会話を繰り広げていた。

 ところが、突然、

「それじゃ、発表します!!Aqoursの新メンバー・・・というか、千歌たちと一緒に組んでいる仲間はこの人たちです!!」

と千歌の声とともに理亜はびっくりする。

「えっ、RedSun!!」(理亜)

これには、梅歌、松華、ともに、

「みんさん、お久しぶり~。紅梅歌だよ!!」(梅歌)

「梅歌、少しは落ち着きなさい。あっ、お久しぶりです。赤間松華です」(松華)

と元気よく挨拶したあと、まわりのみんなが一斉に桜花の方を見る。

 すると、桜花、突然、パニックになったのか、

(う~、あんまり見ないで!!私は・・・、私は・・・、ここにいてはいけない・・・、本当の「役立たず」「ごく潰し」なのに・・・)

と思ってか恥ずかしい表情になってしまう。ただ、これには、千歌、桜花のところに来ては、

「ねぇ、桜花ちゃん、ちゃんとここに来ているんだからさ・・・」

と小声で言ってくると、桜花、それに反応したのか、

「う~、なんでここに私がいるわけ・・・」

とつい本音を言ってしまう。桜花にとしてはこの場にいたとしても仕方がない、いるだけ無駄、だと思っての言葉だったが、花樹から言わせたら、

「お前は、木松桜花!!」

と驚くとともに、

「RedSun、たしか、Aqoursを虐げていたはず・・・」

とおどおどしいものになってしまった。

 そんな花樹と理亜に対し、ルビィはこれまでのいきさつを・・・、この物語を語り始めた。そんなルビィに対し桜花はただ、

(そんな物語なんて悲しいだけ、いや、私という「役立たず」「ごく潰し」を証明するだけのものなんだ。そんな物語、聞かさないで・・・。もう、自分なんていやだよ・・・)

と自分の物語を聞くのを嫌がっていた。いや、もう、自分自身を失くしたい、そんな思いになっていた。

 

 とはいえ、はたして、桜花の思いはどうなってしまうのだろうか。そのまま朽ち果てるのだろうか。それとも・・・。そして、梅歌と松華は桜花に対しどう接していくのだろうか。

 

それについては・・・、

 

RED SUN BLUE PLANET Last Song

 

 

SNOW CRYSTAL 第7話

 

にて話すことにしよう・・・

 

 

 そして、このとき、時空の狭間が沼津の郊外のある地で起きようとしていた、ある男の出現とともに・・・。

「う~、ここはどこだ・・・。どこか前にいた場所と似ている気がするな・・・」

その男はそう言うと線路を・・・、御殿場線の線路を見てみる。すると・・・、

「ほう~、この国の鉄道は○○ではないんだ・・・。JRだと・・・。ほう、けったいな名前だな・・・」

そう男はそう言うと自分の名札を確認してみる。その名札には○○〇〇と書かれた会社、いや、昔の日本の鉄道の名前によく似た会社名が書かれていた。

 その後、その男は近くを歩くとあるものが目についたのか、こんなことを言った。

「ほう、ここが病院とはな・・・」

その男は病院を見つけたようだ。その男はこの病院について、

「へぇ、この病院、木松悪斗記念病院って名前なんだ。でも、なんか、事件の香りがする・・・」

と言うとその病院へとずかずかと入っていった。

 そして、その男はその病院のなかである婦人を見つけると、

「ほう、この婦人、ある男によって眠りについているようだな。なら、この私がなんとかしないと・・・」

と言ってはその婦人に対しなにかしようとしていた・・・。

 

To be contuned・・・

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第7話(1)(&ラブライブ!RSBP LAST SONG)

「お前は木松桜花(きまつはな)!!」

花樹は桜花がこの場にいることに驚いていた。そう、ラブライブ!決勝、その会場にいたのは理亜たちのライバルである千歌たちAqours、そして、そのAqoursと敵対していた桜花たちRedSun、だった・・・。

 

ラブライブ!SNOW CRYSTAL &ラブライブ!Red Sun Blue Planet Last Song

「We are School Idoll!!」

 

 ところが、RedSunの、桜花のこれまでの物語(RSBP)を聞いた途端、あつこ、泣きだしてしまった。

「うぅ、なんと、桜花さんにそんな過酷な物語があったなんて・・・」

これには、桜花、

「わ、私の物語っていってもそんなんじゃ・・・」

と弱気に発現するもルビィからは、

「それでもそんな桜花ちゃんだからルビィたちAqoursも桜花ちゃんに手を差し伸べたんだよ!!」

と強気に発言した。

 だが、花樹は違った。花樹は弱気になっている桜花に対しこう叫ぶ。

「でも、そんな弱気なやつがいるAqoursなんて花樹たちの力なら簡単にひねりつぶせるね!!」

このあまりもの花樹の暴言に、理亜、花樹に叱る。

「花樹、その発言、はやく取り消しなさい!!あまりにも、ひどい、発言!!」

 ところが、花樹、暴言が止まらない。

「いや、まだ言えます。お前なんてこのラブライブ!決勝に相応しくない!!はやくどっかに行け!!」

 すると、桜花、花樹の暴言に負けたのか、

「そうだよね・・・。私なんてこの決勝の舞台なんて相応しくないね・・・。そうだよね・・・」

とさらに弱気になってしまった。

 こうなると、理亜、もうほっとくことなんてできない。理亜、暴言を吐く花樹に対し、

「花樹、いいかげんに・・・」

と叱ろうとした瞬間、花樹、自分の首にぶら下げている十字架上のペンダントを握りしめながら顔をこわばせるようにしては小声でこう言ってしまう。

「じゃないと・・・、花樹たちが勝たないと・・・、花樹の大切なものが・・・、おばあちゃんとの思い出、キズナが・・・」

これには、理亜、

「花樹・・・」

と戸惑いを感じていた。

 とはいえ、このままではらちが明かない、ということで、千歌はこうきりだした。

「まぁ、もうすぐ(決勝の)開会式だし、まずは楽屋に行こう」

この千歌の一言がきっかけでその場にいた花樹と理亜、あつこ、Aqours、RedSun、こころあはそれぞれの楽屋に移動した・・・。

 

 その理亜・花樹組の楽屋では理亜が花樹に今さっきのことで責めていた。

「花樹、なんで、暴言、吐いたわけ?今さっきの、暴言、許せない!!」

ただ、この理亜の言葉に花樹はこう反論する。

「そんなの関係ない!!花樹たちは勝たないといけないんだ!!勝たないといけないんだ!!」

むろん、これには、理亜、言い返す。

「花樹、なんで勝つことだけを意識しているわけ?勝つことだけを意識していては大事なことさえ見えなくなる!!」

あまりにも迫力に満ちた理亜の言葉、これには、花樹、

「だって・・・、だって・・・」

と強気から一転、弱気になってしまう・・・が、その弱気のなかでこんな発言をしてしまう。

「勝たないといけないんだ・・・。勝たないと・・・、花樹の大切なものが・・・、おばあちゃんとの大事な思い出、キズナが・・・」

これには、あつこ、

「花樹さん、なんか苦しそう・・・」

と花樹のことが心配になる。そのためか、理亜も、

(うぅ、これ以上言えない・・・)

とこれ以上叱ることができなくなってしまった・・・。

 

 一方、そのころ、Aqours with RedSunの楽屋では、

「私がいないほうがいいんだ・・・」

と桜花は楽屋の隅に座り込んでは泣きそうになりながら発言していた。

 ただ、これには、梅歌、松華、ともに桜花を励ます。

「私たちは一緒なんだよ!!今の私たちならきっと大丈夫だよ!!」(梅歌)

「梅歌の言う通りです!!私たちはあのAqoursと一緒にやっているのです!!自信をもってください!!」(松華)

 だが、これには、桜花、

「でも・・・、私なんていたら・・・、絶対に負ける・・・、勝てない・・・」

とさらに弱気になってしまった。

 そんな桜花に対し、ヨハネ、

「桜花、それでもスクールアイドルって言えるわけ?スクールアイドルがそんなにしょげてはダメでしょ!!」

と桜花を責める。ヨハネはこれまでスクールアイドルである、いや、自他ともに認める中二病気質な、堕天使系スクールアイドルである。ときたまコメディーリリーフ的なときもあるけど、このラブライブ!決勝という大きなステージに立つ以上、一スクールアイドルとして弱気になっている桜花に対し檄を飛ばしている・・・つもりだった。

 それでも桜花は弱気でいた。

「私なんて・・・、私なんて・・・」

そんな弱気な桜花を見ては、花丸、ヨハネを責める?

「あぁ、善子ちゃん、え~と、おうかちゃん、泣かせたずら!!」

これには、ヨハネ、こう言い返す。

「ずら丸、ヨハネは別に桜花(はな)を責めていない・・・」

 と、ここで、ヨハネ、重大なことに気付く。

「って、ずら丸、桜花の名前は、おうか、ではなく、はな、でしょ!!」

そう、花丸、なのと、桜花の名前を、「はな」、ではなく、「おうか」、と言ってしまっていたのである。これには、曜、

「花丸ちゃん、人の名前を間違えちゃダメでしょ!!」

と注意すると、花丸、

「桜花(はな)ちゃん、名前、間違ってごめん・・・」

と謝ると、桜花、こう言い返す。

「そんなこと、別に気にしていません。昔から「おうか」と「はな」とよく間違えられていましたから・・・」

そう、桜花の名前の読み方はよく昔から間違えられてきたのだ。桜花は普通なら「おうか」と呼ぶのだが、こちらの桜花の名前の読み方は「はな」であった。それは桜花の父、木松悪斗でさえもよく間違えていた。

 と、ここで、ルビィ、あることに気付く。

「って、あれっ、「おうか」って、桜花(はな)ちゃんのお姉ちゃんの名前って、「旺夏(おうか)」、じゃなかったかな?」

そう、たしかに桜花(はな)の姉の名前は「旺夏(おうか)」であった。それに対し、梨子、不思議に思う。

「たしかにそれって単なる偶然、なのかなぁ・・・」

 そんなときだった。突然、Aqoursの楽屋にあったタブレットから、

ギリリ ギリリ

という音が鳴りだしたのであった。これには、千歌、

「あれっ、なんだろう・・・」

となにも疑いもなくそのタブレットをとっては通信を始まてしまう。ときどき、

「うん、うん、わかった」

と千歌が言っているものの、曜、そんな千歌を見ては、

「いったいどうしたのだろう?」

と不思議に思っていたが、すぐに千歌がタブレットの通信を切るとすぐにこう言いだしてきた。

「みんな、まずはステージに行こう!!もうすぐ開会式が始まるよ!!」

これには、梨子、驚いた。

「うそ!!千歌ちゃんがまともなことを言っている!!」

えっ、あの千歌がまともなことを言った・・・。普段、千歌はそこまでまともなことを言わない(「失礼だよ!!」by千歌)。これは別に千歌が普段からルーズである・・・というわけではなく、普段からそういう風にしか見えていなかったからだった。その意味でも今の千歌はおかしかったのである。

 まぁ、これについては、千歌、

「そんなの、今は関係ないでしょ!!今はステージが先、でしょ!!」

と怒りながら言うとすぐに、

「決勝進出者はすぐにステージに集まってきてください!!」

というアナウンスが流れてきた。これには、曜、

「まぁ、千歌ちゃんが言ったことはたしかなことだし、まずは、みんな、ステージに行くよ!!」

と言って率先してステージにへと誘導していった、楽屋の隅で泣いている桜花すらもルビィが引っ張っていくほどに・・・。

 

「今からラブライブ!夏季大会、決勝を行います!!」

ステージ上では決勝進出グループがずらりと並んでいた。ちなみに、プログラム順は理亜・花樹組は最後から3番目、こころあは最後から2番目、トリはAqours with RedSunとなっていた。

 

 そんななか、花樹は練習場で、

「1,2,3,4、2,2,3,4」

と最後のリハーサルを行っていた。

 そして・・・、

「2,2,3,4、終了!!」

と理亜の一言でリハーサルは終わった。

 そのとたん、花樹は理亜に対し、

「これであのAqoursに勝てますよね!!」

と言ってきた。このとき、花樹はやる気だった。だって・・・、

(花樹は勝たないといけないんだ!!勝たないと花樹の大切なものが・・・、お父様に・・・、おばあちゃんとの大事なものを・・・)

と、あのときの、父の言葉、が反芻しているのか、花樹にとって大事なもの、今も自分の首にぶら下げているあのペンダントを・・・失いたくない、そのために必死になっていたのだ。

 だが、これには、理亜、花樹の抱えるものなんて知らず、こう応えてしまう。

「果たしてそれはどうかわからない。だって、Aqoursは、Aqoursの力は、すごいのだから・・・」

それは理亜だからこそ言える言葉だった。Aqoursはどんなに落ちても一気にトップへと駆け上ることができるスクールアイドルグループである。理亜と聖良、Saint Snowと初めて会ったとき、「0」という数字を食らってしまう。だが、ダイヤたち旧3年生を仲間にしたことでラブライブ!東海最終予選まで進出することができた。また、目標の100までに届かずに浦の星の廃校が決まったときも浦の星の生徒たちの力によってAqoursは新しい目標を与えられ、結果、前回大会でAqoursは優勝を果たしたのである。さらに、あの静真での報告会のライブ失敗によりどん底に落とされたときでも自分たちの力で短期間のあいだに沼津駅前のお披露目ライブを大成功に導くところまで急成長していった。そんなこともあり、Aqoursとしての底力は計り知れなかった。それをライバルとして直接みてきた理亜にとってAqoursのその底力は半端ないものだと確信していてた。

 だが、花樹はそのことを知らない。そのため、

(絶対に勝つんだ・・・。勝たないといけないんだ・・・)

と思ってかこんなことまで花樹は言ってしまう。

「花樹はAqoursに勝たないといけないんだ・・・。「勝つことこそすべて」なんだ・・・」

その花樹の言葉にあつこが反応する。

「花樹さん、「勝つことがすべて」と言っていますけどね・・・」

今の花樹からすればそれは、自分の信条以外にも、「勝たないと自分にとって大事なものを失ってしまう」、という危機感からくるものなのだが、そのことを知らない理亜とあつこからすれば花樹の信条である「勝つことこそすべて」からくるものだと思っていた。そのため、あつこはそれを諫めようとしていたのだ。

 だが、花樹の「勝利への執念」は鬼気迫るものだった。

「花樹たちは勝たないといけないんだ・・・。勝たないと・・・、勝たないと・・・」

これにはさすがのあつこも、

「・・・」

と黙るしかなかった・・・。

 

 一方、Aqoursも別の練習場で最後のリハーサルをやっていた。

「1,2,3,4、桜花ちゃん、遅れている!!」

用の言葉に桜花はつかさず・・・、いや、

「・・・」

と無言になってしまう。桜花はこのときでも、

(私がいない方がましなんだ・・・。「役立たず」「ごく潰し」、この場の私にはぴったりだ・・・)

と卑屈になっていた。そのため、桜花はまわりとあわすことができていなかった。

 そんな桜花に対しルビィつかさずフォローする。

「桜花ちゃん、大丈夫だから。本当ならちゃんとできるはずだよ!!」

 だが、桜花はただ、

「・・・」

と無言になったままだった。これにはさすがの梅歌、松華でさえも、

(う~ん、桜花ちゃん、本当に大丈夫かな・・・)(梅歌)

(このままでは本番に影響しますね)(松華)

と心配するほどだった・・・。

 

 そして、本番直前となった。ステージ袖では理亜とあつこ、こころあ、Aqours with RedSunがスタンバイしていた。そんななか、理亜は緊張していた。

(1年ぶりの決勝のステージ、私は帰ってきた!!そして、お姉さまと果たせなかった戦い、Aqoursとの決勝での戦い。今度こそ私の全力を千歌たちAqoursの目の前でみせてやる!!)

理亜には夢があった。それはラブライブ!決勝でAqoursと戦うこと、そして、ラブライブ!で優勝すること。それが理亜が持つ深淵なる闇でもあった。前回の冬季大会、理亜は「勝つことこそすべて」という信条からのくる焦りにより最終予選で転倒、敗北してしまった。これにより自分たちの夢を叶えることができず、それが理亜にとって深淵ある闇となってしまった。この闇を晴らすため、理亜の姉の聖良、そして、アクアのルビィたちが中心となってその夢の戦いの代替えとなるラブライブ!決勝延長戦を行った。だが、それでも、理亜はその闇を晴らすことができなかった。そして、今日、それを叶えるところまで自分の力でもってやってきたのだ。そのため、自分たちの夢を叶える、いや、自分が持つ闇からなのか、理亜としては珍しく緊張していたのだ。

 そんな理亜に対し花樹の信条は複雑だった。

(ついに決勝・・・。ここで勝てば、オレ・・・、花樹はおばあちゃんとの夢を叶えることができる。だけど、負ければ・・・、おばあちゃんとの大切なものを失う・・・。それだけはいや!!決勝で勝ってやる・・・)

ラブライブ!優勝、それは花樹にとって亡くなったおばあちゃんとの夢だった。スクールアイドルになってラブライブ!で優勝する、それがおばあちゃんとの夢だった。だが、父との約束でラブライブ!で、いや、Aqoursに勝たなければおばあちゃんとの大切なものを失ってしまう、そんな脅迫めいたものがあkジュのなかでうずまいていた。そのため、課y図は自分の首にぶら下げている十字架上のペンダントを握りしめながらステージの方をみていった。

 そんな花樹に対しこころあがちょっかいを出す。

「あっ、花樹っち、珍しく緊張している!!やっぱり、花樹っちも貴重するんだ!!」(ここあ)

「こころ、少しは落ち着きなさい!!決勝のステージは誰もが緊張するものです!!」(こころ)

この2人のやり取りをみて花樹はこう思ってしまう。

(こんなときまで花樹のことをバカにして・・・、ぜったに仕返ししてやる!!)

そのためか、花樹、こころあに対しはっきりとこう言う。

「そんなに花樹のこと、邪魔したいの?花樹は今度こそ勝ってやる!!その口をへし折ってやる!!」

この言葉にこころあは困惑してしまう。

「こ、こころは緊張する花樹っちのことを思って・・・」(ここあ)

「ここあ、ちょっとやりすぎたのです・・・。花樹さん、ごめんなさい・・・」(こころ)

こころあとはあの北海道最終予選で戦った中である。花樹にとってみれば同郷同士?ということでこころあなりに花樹の緊張をほぐそうとしていたのである。だが、今の花樹にとってみればそれは、たんなる嫌がらせ、だったのかもしれない。それくらい花樹はピリピリとしていた。

 一方、その隣にいたAqours with RedSunの方では桜花がぶつぶつとこう言っていた。

「(やっぱり私はこの場には・・・、ラブライブ!決勝には相応しくないんだ・・・。だって、私は「役立たず」「ごく潰し」なのだから・・・)」

このときも桜花は卑屈になっていた。いや、もうすぐ本番、ということもあり、その卑屈さに磨きがかかっていた。これまで自分の父と姉から音楽の才能を認めてもらえず、ただ、「役立たず」「ごく潰し」としか言われてこなかった。そのため、それが染みついてしまっていたのである。さらに、ラブライブ!決勝という場ということもあり、その思いが加速していたのである。

 そんな桜花とは対照的に梅歌と松華は張り切っていた。

「まさか、たった4カ月で、スクールアイドルとしては夢の舞台、ラブライブ!決勝に進めるなんて夢みたいだよ!!松華、みんなと一緒に輝こうね!!」(梅歌)

「梅歌、そうだね!!私たちのステージ、みんなと一緒に輝きにいこう!!」(松華)

梅歌の夢、それはスクールアイドルとしてみんなと一緒に輝きたい、であった。その夢は、この場で、それも自分に夢を与えてくれたAqoursと一緒に叶おうとしている、そう考えるだけで、梅歌、ワクワクが止まらない、のである。そんな梅歌を大事にしている松華にしても、梅歌の夢が叶えう、そのことは松華自身にとって満足いくものであった。それを考えたとしても松華にとってみれば、松華も、自分の夢、梅歌のためにめいいいっぱい頑張る、その夢を叶える、そのところまで来ることができた、そういえるのかもしれない。

 そんななか、突然の来訪者が来た。メガネをかけた大学生たちが梅歌たちに声をかけてきたのだ。

「ヤッホー、桜花、梅歌、松華。調子はどう?」

その声に、ルビィ、驚く。

「えっ、まさか、レジェンドスクールアイドルの代々木はるかちゃんと神宮ハヤテちゃん!!」

そう、梅歌たちのところにやってきたのは桜花を治療したレジェンドスクールアイドルグループオメガマックスのメンバーで今はH&Hというユニドルとして活躍している代々木はるか(メガネをかけている方)と神宮ハヤテであった。

 そのハヤテは桜花を見るなりこう話した。

「桜花さん、まだ閉じこもっているみたいだね。このままで大丈夫?」

ハヤテはいまだ弱気になっている桜花のことを心配していた。一時期は少し持ち直したものの、Aqours6人で最終予選をトップ通過したことでさらに弱気になってしまった。なので、ハヤテとしても心配になっていたのだ。むろん、はるかも、

「このままだと大丈夫じゃないみたい。なんか起爆剤みたいなものはないのかな」

と心配そうになるほどだった。

 そんなH&Hの2人に対し千歌はタブレットをもってこう応えた。

「それについては大丈夫!!だって、もうすぐ、桜花ちゃん、元気になるもん!!」

この言葉に、みんな、

「えっ!!」

となってしまう。だって、あれほどいろんな手を尽くして桜花をなんとかしようとしてもそれができなかったからだ。桜花のなかにある「役立たず」「ごく潰し」という苦しみは、長年、自分の父と姉によって積み重ねたものである。それを一気に吹き飛ばし、元の桜花に、元気いっぱいの桜花に戻るには並大抵ではなかった。それができると千歌は豪語したのである。そりゃ、みんな、驚くのも無理ではなかった。

 だが、千歌は自信満々であった、1つを除いては・・・。

「でも、それは少し時間がかかるんだけどね・・・」(千歌)

そう、それをするためには少し時間がかかるのだ。それはなぜなのか。それについては別の機会に話すこととして、そのために少しでも時間が欲しかった。

 とはいえ、桜花復活の兆しがみえたのか、少しほっとするみんな。

 だが、そんなときだった。

「理亜・花樹組のみなさん、ステージの準備をしてください」

そのスタッフの言葉のあと、花樹は桜花に近づきこう言ってきた。

「桜花、私の本気、みてなさい!!もう立ち上がれないようにしてあげるから!!」

このときの花樹はこんな思いだった。

(私の大切なものを守るためには手段なんて選ばない!!Aqoursのなかで1番のウィークポイントである桜花を責めてやる!!)

花樹の大切なもの、おばあちゃんとの大切なもの、それを守るために、父からそれを捨てられないためにも花樹は必死だった。勝つためには手段を選べない、そんな思いだった。そんため、少しでも勝率をあげるために桜花にそんなことを言ってきたのである。

 ただ、これにあ、梅歌、花樹に対しこう反抗する。

「花樹ちゃん、それ、言い過ぎ!!桜花ちゃんを責めないで!!」

それでも花樹は言い倒す。

「そんなの、関係ない!!スクールアイドルは「勝利こそすべて」!!勝たないと意味がないんだ!!」

この花樹の言葉に、桜花、はっとする。

(やっぱり、スクールアイドルは「勝利こそすべて」なんだ・・・。いや、すべての万仏は「勝利こそすべて」なんだ・・・)

と思ったのか桜花はさらに卑下してしまう。

(やっぱり「勝利こそすべて」なんだ・・・。私みたいな敗者には意味がないんだ・・・)

桜花は、一度、花樹に負けている。それにより「自分は敗者」というレッテルを桜花自ら貼ってしまった。その桜花のスクールアイドルとしての信条も花樹と同じく「勝利こそすべて」。そのために花樹の言葉は桜花にどしりとのしかかってきたのある。

 ただ、これにより、H&Hのはるかとハヤテ、ともに花樹を哀れみる。

(このままだと、彼女、どん底に陥るかもしれませんね・・・)(はるか)

(それってとても悲しいことだと思えるのですが・・・)(ハヤテ)

彼女たちはかつて「スクールアイドル勝利至上主義」と戦いそれを打破した。そのため、勝利至上主義、「勝つことこそすべて」、その愚かさをもっとも知っていた。そして、それにより身を破滅させていく人たちのこともみてきた。その典型が桜花だった。桜花h自分の信条によってスクールアイドルをやってきた、勝つつもりでいた。だが、花樹に負けたことでやる気を失った。だが、一度はAqoursと戦うことでやる気を取り戻したがAqoursに負けたことでさらに、いや、すべてを失った、そらが今の桜花だった。桜花は、いわゆる、勝利絶対至上主義の犠牲者、なのかもしれない。

 とはいえ、はるかとハヤテの心配をよそに花樹はステージへとあがる、こう言いながら。

「桜花、みとけ!!この花樹のすごさを、絶対にみせつけてやる!!」

 

 一方、理亜には突然の来訪者がいた。桜花にちょっかいをだそうとしている花樹に対し、

「花樹、少しは・・・」

と言いかけたとき、突然の来訪者が理亜に声をかけてきた。

「あっ、理亜、元気ですか?」

その声に理亜はびっくりする。

「って、姉さま、なぜここに?」

そう、突然の来訪者とは理亜の姉、聖良、だった。その聖良は理亜に対しこう激励した。

「理亜、あなたは1年前の理亜じゃありません。あなたは立派な1人前のスクールアイドルです。めいいっぱい楽しんできなさい」

理亜は1年前も同じステージに立ったことがある。このときのSaint Snowは「勝利こそすべて」、その考え一辺倒だった。そのおかげもあり、初出場ながら全体の8位の好成績を残した。だが、その考えによりSaint Snowは自滅した。次の大会でまさかの予選敗退、結果、理亜のなかに深淵なる闇が生まれてしまった。そして、今日、理亜は同じステージに立っている。ただし、1年前とは違った。闇をまだ抱えているとはいえ、理亜は「楽しむことがすべて」という考えのもと、少しでも自分の夢に、いや、自分の闇に従順しようとしていた。そして、今日、その夢をその闇を叶えるためのステージの直前まできていたのである。

 そんな理亜に対し聖良はこう言おうとしていた。

「あと・・・」

そんなときだった。突円、

「理亜・花樹組のみなさん、ステージの準備をしてください」

という理亜たちを呼ぶ声が聞こえてきた。これには、理亜、

「あっ、姉さま、ついに本番です。私たちの雄姿をみていってください」

と言うとともにステージへと向かっていった。そんな理亜の姿をみて、聖良、

「理亜・・・」

となにか言いたそうにしていた。

 その聖良をみてか、あつこは聖良にあることを話す。

「聖良さん、あのことを理亜さんに言わなくてもいいのですか?」

そう、聖良は理亜にあることを話そうとしていた。だが、それを聖愛は今だに言えずにいた。

 そんなあつこの心配に対し聖良はこう言いだしたきた。

「今はラブライブ!決勝です。理亜にはそのステージに集中してもらいましょう。言うのはあとでも大丈夫です」

そう言うと聖良はステージにあがる理亜の方を見た、それはなにかを心配しているかのように・・・。

 

 一方、客席ではこんなことが起きていた。

「お~、久しぶりですね~。元気でしたか?」

金髪の少女はそう言うと黒髪ロングの少女は興奮しつつもこう言った。

「元気です。それよりも、ルビィの晴れ舞台です。見ないわけにはいかないでしょう」

興奮する黒髪ロングの少女に対し青い髪のポニーテールの少女は、

「どうどう、少しは落ち着いて!!」

と黒髪ロングの少女の高ぶる思いを抑え込もうとしていた。

 そんな3人組であるが、今日はある目的のために来ているようだ。その目的とは・・・。

「でも、今日はあの男をネックカットするために来たので~す!!」(金髪の少女)

「それを言うなら「印籠を渡す」でしょ!!誰が「首切り」ですか!!」(黒髪ロングの少女)

「ははは・・・」(青い髪のポニーテールの少女)

まるで漫才トリオ・・・なのだが、どうやら、ある男に印籠を渡す、のが目的のようだ。そのためか、金髪の少女はこう言い切った。

「さてと、木松悪斗~、あともう少しでお縄で~す!!」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第7話 (2)(&ラブライブ!RSBP LAST SONG)

 そんなことなんて露知らず、理亜と花樹はステージの上に立っていた、こう思いながら・・・。

(私は、今、一年前と同じステージに立っている。だけど、隣には姉さまはいない。しかし、それでも大丈夫、今の私なら。だって、私には、姉さまとはいつもつながっている。楽しむこと、それを教えてくれた姉さまとつながっている。だから、大丈夫!!私、理亜、このステージへと飛び立つ!!)(理亜)

(花樹は勝たないといけない、大事なものを守るため、おばあちゃんとの大事なもの、キズナを守るために。勝たないとすべてを失ってしまう。「処理こそすべて」なんだ!!勝たないと意味がないんだ!!)(花樹)

 あの延長戦を通じて「スクールアイドルとは楽しむことがすべて」、そして、これまでの想い、想い出、キズナ、その宝物によって姉の聖良とつながっている、そのことを知った理亜、そのためか、ここ1番の大舞台にも関わらず落ち着きをもっている、いや、このステージへと飛び立とうとしている、そんな理亜に対し花樹は「なにがなんでも勝ちにいく」、そのことにこり固まってしまった。2人の相反するこの想いはこのステージであっても変わっていなかった。果たしてそれがどうパフォーマンスに影響するのか・・・。

 そして、ついに始まった、2人のステージが・・・。司会のリポーターがついにこう言った。

「それでは、北海道代表、聖泉女子高等学院スクールアイドル部、理亜・花樹組、お願いします!!」

このリポーターの声とともについに2人のステージが始まった。そのとたん、花樹、ステージ袖を向きこう思ってはにらんでいた。

(このオ・・・、花樹のパフォーマンス、しっかり見れ、桜花!!そして、尻籠りしろ!!)

そのにらみの先にいたのは・・・、今さっき花樹がにらみをきかせた・・・桜花だった・・・。

 

 

 

第7話 理亜・花樹組挿入歌 Judgment!!

 

光と(闇が)戦うその日まで

 

①目立つ太陽    この身で受けて

(闇なる心    この身で受けて)

光さす場所に   進んでいく

(闇なる場所に  進んでいく)

すべての光が   集まる場所に

(闇なる咆哮   指し示す場所に)

 

 

 

 完璧に近いパフォーマンスをする花樹と理亜。

(絶対に勝ってやる!!そして、Aqoursに勝って…大事なものを守ってやる!!)

と必死になりながらもパフォーマンスをする花樹に対し、

(なんか、花樹の必死さがこちらにも伝わってくる・・・。でも、私は、このステージを、めいいっぱい、楽しむ!!考えが異なる花樹と戦いながらもこのステージを花樹と一緒に盛り上げていく!!)

と、理亜、あつこと決めたステージ上でのスタイル、「勝つことがすべて」を信条とする花樹と対立しつつも自分も、自分の信条、「楽しむことがすべて」、それをせいいっぱいやり遂げる、そのスタイルをやり切ろうとしていた。

 相反する2人、だが、それが1つのステージでもって昇華しようとしている、これには観客たちから、

オー

という声が次々と噴出した。どうやら、2人の魂がぶつかり合うステージ、それは観客たちから見たらド迫力ものだったのかもしれない。

 そして、花樹はときおりステージ袖にいる桜花の方をにらんでは旺夏にメッセージを送る。

(どうだ、桜花!!はやくおののけ!!はやく逃げろ!!これこそ本当のスクールアイドルのステージだ!!)

このにらみに、桜花、こう思いながら尻込みする。

(やっぱり、私はなにもできないんだ・・・。あんな圧倒的な(花樹の)パフォーマンスなんてできない・・・。そんな私なんてみんなに迷惑をかけるだけ。そんな、「役立たず」「ごく潰し」な私は消えたほうがいいんだ・・・)

その桜花の様子はまるで猫に襲われて隅に逃げ込むネズミのようだった・・・。

 

 

 

明るく熱く    身を焦がしながら

(暗く冷たい)  身を凍らせながら)

来るべき日に   待ち浴びながら

(来るべき日を) 待ち浴びながら)

 

 

 

 あまりにも圧倒的なパフォーマンス、それはまったく考え方が異なる2人ではあるが戦いがまるで繰り広げられているようなステージであった。

 そして、ことあるごとに花樹は桜花をにらむ。

(さぁ、早く逃げてどっかに行け!!桜花がボロボロになれば、その分、Aqoursのパフォーマンスが落ちる!!そうすれば勝てる!!大事なものを守れる!!)

と思いながら花樹は、父からの命令、Aqoursを倒すこと、それを必死になって行おうとしていた。もちろん、それがどんな方法であってもだ。それほど花樹は自分にとって大事なもの、おばあちゃんとの大事なもの、キズナを守ろうとしていた。だって、勝たなければ自分の父によってその大事なものが捨てられるのだから・・・。

 その必死さが桜花に対してプレッシャーとしてのしかかる。桜花、このとき、

(もう逃げ出したい!!もうこんなところにいたくない!!私みたいな「役立たず」「ごく潰し」なんてここにいたって意味がないんだ!!)

そう思ったのか、桜花、この場に逃げ出したいのか、

「あれっ、桜花ちゃん、どうしたの?」

と梅歌が言おうとしてまもなく、

「ごめん・・・」

と、桜花、逃げ出してしまった。これには、松華、

「桜花さん、ちょっと待ってください!!」

と桜花を追いかけようとする。もちろん、Aqoursのみんなも、

「こら、逃げるな!!」(ヨハネ)

「桜花ちゃん、待ってずら!!」(花丸)

と桜花を追いかける展開に・・・。

 そんなときだった、突然、千歌がこう言いだしてきた。

「よしっ!!これで桜花ちゃんを救うことができるよ!!」

その千歌の手にはタブレットが握りしめられていた。そのタブレットの画面からは、

「千歌よ、こちらはいつでもOKだ!!」

という初老の人とある婦人が映っていた。これには、ルビィ、すぐに反応する。

「このご婦人ってもしかして・・・」

これには、千歌、こう応える。

「そうだよ。このご婦人こそ、桜花ちゃん復活の切り札、だよ!!」

 

 一方、そのころ、また別の客席ではこの2人組(父娘)がばたりと会っていた。

「おい、なぜここに旺夏がいるんだ?」

「いや、私はここに呼ばれただけですが・・・。それにしても、なぜここにお父様がいらっしゃるのですか?」

「私も沼田のやつにここに呼ばれただけだ。なんか大事なことを伝える、と言われてな」

「それって、もしかして騙されただけでは・・・」

「前回のこともあるしな・・・」

こう言いつつも2人は客席に座るなり父の方がこう言いだしてきた。

「ふん、あのときもそうだが、スクールアイドルというお遊びなんて見たとしてもなんの役にも立たんわ!!あの「役立たず」「ごく潰し」みたいにな!!」

そのことばにまわりの人たちからは怒りに満ち溢れていた・・・。

 

 

 

Judgement!! 永遠(とわ)なるファイト

Judgement!! 混ざりあう2つ

光と闇の     華麗なるダンスに

すべてのものが  酔いしれる

すべてがすべて  混ざりあう世界

それがこの世の  ことわりなのだから

 

ずっと続く    光と闇の戦い

永遠なる     終わりなき戦い

 

 

 

そして、ついに理亜・花樹組のステージが終わった・・・。その瞬間、

ヒューヒュー

というスタンディングオベーションが起こった。これには、理亜、花樹、ともに、

(これこそ、私たちのパフォーマンス!!2つの考えの違いはあるけど、それすら昇華できた!!私はやり切りましたよ、姉さま!!)(理亜)

(これで優勝間違いなしだ!!(私の憧れである)Aqoursには申し訳ないけど、こうでもしないと花樹の大事なものを失ってしまう!!でも、これで優勝間違いなしだ!!)(花樹)

とやる気と達成感、そして、安堵の表情をみせていた。

 

 一方、告ぐの登場となるこころあはピリリとしていた。

「このままだと、理亜・花樹組に負けるです!!こちらもせいいっぱいに楽しむのです!!」(こころ)

「たしかにこころの言う通り!!花樹っちは「勝利こそすべて」の考えの持ち主、ここでこおろあが負けたらそれを認めたことになっちゃう!!なら、ここあもせいいっぱい楽しんでやる!!)(ここあ)

2人とも燃え上がっていた。自分たちはあのレジェンドスクールアイドルオメガマックスの一員だった。これまで「楽しむことがすべて」の考えのもと、会場のみんなと一緒にスクールアイドルを楽しんでいた。その自負があるからこそ、せいっぱい楽しんでやる、そんなやる気で満ち溢れていた。

 そして、2人はステージへとあがった、こう言いながら・・・。

「ここで私たちの底力をみせるのです!!」(こころ)

「そうだ、そうだ!!こころあの真の実力、みせるときだぜ!!」(ここあ)

 

 

 

第7話 こころあ 挿入歌 「We are School Idoll!!」

 

We are the School Idoll!!

We love Love Live!!

 

私たちがいる   この世界には

とても素晴らしい ものがいる!!

それこそ私たち  スクールアイドル!!

すべてがすべて  楽しんだ!!

 

 

 

「桜花ちゃん、待って!!なんで逃げ出すの?」

と梅歌は桜花を追いかけてはこう言いだす。ここは大道具部屋。ここで桜花は逃げきれずにその場に立ち止まってしまった。そこに追いついた桜花と松華は桜花に対し逃げた理由を問いただした。

 すると、桜花、梅歌に対しこう言いだす。

「私は「役立たず」「ごく潰し」だから・・・。私は私の父と姉に認めてもらいたかった。でも、父も姉も私のことを認めてもらえなかった。だから、私は「役立たず」「ごく潰し」なんだ・・・」

桜花は自分の父、木松悪斗と姉の旺夏から認めてもらいたかった。だが、父と姉からしたら桜花の持つ音楽の才能なんて認めずに自分の価値観だけで桜花のことを「役立たず」「ごく潰し」と称したのである。いや、それどころか、「勝利こそすべて」という考えのもと、2度も負けた桜花に対し家族として勘当をする始末。そのため、それが桜花の心のなかに大きな傷として残ったのである。その代名詞的なものが「役立たず」「ごく潰し」であった。

 そんな桜花に対し梅歌はこう訴える。

「私、別に桜花ちゃんのこと、「役立たず」「ごく潰し」だなんて思っていないよ!!むしろ、桜花ちゃんのおかげでスクールアイドルになれたし、Aqoursの一員としてこの場に立つことができたんだよ!!私にとって桜花ちゃんは夢を叶えてくれた恩人だよ!!だから、桜花ちゃん、自分のことを責めないで!!」

そう、桜花のおかげで梅歌はスクールアイドルに、Aqoursに巡り合えたのだ。桜花の策略とはいえ、梅歌は、今、スクールアイドルとして、Aqoursの一員としてこのステージに立つことができた。その意味でも梅歌は桜花に感謝していたのだ。

 その梅歌の後追いとして松華も桜花に対しこう訴えた。

「私だって梅歌と一緒にスクールアイドルをやっていること、いや、桜花さんと一緒にスクールアイドルをやっていること、とてもうれしいです!!それもこれも桜花さんのおかげ。あの砂浜で桜花さんに出会えなければこんな夢の時間なんてなかった。桜花さんには感謝している。だから、桜花さん、自信を持って!!」

松華の場合、いつも梅歌ファーストである。そのため、梅歌と一緒にいればなんでもよかった。だが、あの砂浜で、桜花が2人を誘わなければこんな刺激的な毎日を、梅歌、桜花と一緒にスクールアイドルとして活躍できなかった、その意味でも松華は桜花に対しお礼を言ったのである。

 だが、それでも桜花は弱気になっていた。なぜなら・・・、

「2人にそう言われても私はどうすることもできない・・・。だって、私のわがままに巻き込まれた2人だもの・・・。私のせいで2人は苦労を重ねてしまった。それくらい、私にとってみればそれは罪なんだ・・・」

たしかにその通りである。2人はあの砂浜で桜花の策略に巻き込まれたのである。それ以降、2人はAqoursに救われるまで桜花とともに苦労を重ねてきたのである。そのことについて桜花は2人に申し訳ないと罪悪感を感じていたのである。

 桜花のその言葉により梅歌と松華の2人はなにも言えなくなってしまった・・・そのときだった。突然、千歌が3人のなかに入り込みながらこんなことを言ってきた。

「桜花ちゃん、自分を責めないで!!それはこのご婦人の願いでもあるの!!」

 そして、千歌は自分の持っているタブレットを桜花の方に見せた。すると、桜花、はっとする。

「お、お母さま・・・」

 

 

 

アイドルじゃない スクールアイドル!

どんな人でも   誰でもなれる!!

誰もがすべて   スクールアイドル!!

だからみんなで  あの言葉を叫ぼう!!

 

 

 

「お母さま・・・」

そのタブレットに映っていたのは・・・昏睡状態であるはずの桜花の母親であった。ただ、桜花は自分の母にこう言ってくる。

「でも、お母さまはたしかずっと昏睡状態であったはず・・・。なぜ・・・」

確かにその通りであった。この数年、桜花の母親はずっと昏睡状態であった。だが、突然、今、桜花の母親は目を覚ましたのである。それについて桜花は疑問に思ったのである。

 そこで、桜花の母親がその理由を教えてくれた。

「桜花、それですが、私がある気付け薬を飲んだからです、この型にね・・・」

すると、タブレットにはある初老の男性が映りこう言いだしてきた。

「うむ、私がこの気付け薬でこのご婦人を起こしたまでだよ・・・」

この初老の男性に、桜花、ツッコむ。

「って、あなたは誰ですか?」

 その言葉にその初老の男性はこう応えた。

「私の名前は・・・、うむ・・・、矢立・アラン・スミシーといっておこう。まぁ、アランと呼んでくれ」

アラン・・・、なんか不気味な名前・・・。それに、アラン・スミシーってアメリカの映画では・・・とツッコみたくなるものの、桜花の母親、桜花に対しこう言いだしてきた。

「桜花、大きくなったね。お母さんね、うれしいよ・・・」

その母親の言葉に、桜花、突然泣き出した、こう言いながら・・・。

「お母さま、会いたかったです・・・」

桜花の母、それは桜花の家族のなかで唯一桜花の音楽の才能を認めてくれた者だった。そのため、桜花にとってみれば一番会いたかった相手であった。

 そんな桜花に対し桜花の母親はこう言ってきた。

「私も桜花に会いたかったです。元気でしたか?」

この母親の言葉に桜花はこう応えた。

「私は父と姉に見捨てられました。誰も私のことを認めてくれないのです。やっぱり私は「役立たず」「ごく潰し」です・・・」

今の桜花に残っているのは「役立たず」「ごく潰し」の二文字であった。父と姉から切り捨てられなにも残っていない、そのなかでこの二文字が桜花を苦しめてきたのである。

 ところが、桜花の母親、こんなことを言いだしてきた

「自分の父と姉(の旺夏)に見捨てられた。誰も認めてもらえない。それって本当なのですか?」

これには、桜花、

「はい・・・」

とうなずくと、桜花の母親、意外なことを言いだしてきた。

「果たしてそれは本当なのでしょうか?」

これには、桜花、

「はい?」

と驚くと桜花の母親はこんなことを言ってしまう。

「あなたのまわりには誰がいますか?梅歌さんに松華さん、それに、千歌さんやルビィさんたちがいます。その方たちもあなたのことを認めていないのですか?」

この母親の言葉に、桜花、

(えっ!!)

とびっくりしたのかまわりを見る。すると、梅歌と松華がまずこう答えた。

「桜花ちゃん、私はずっと前から桜花ちゃんのことを認めていたよ。だって、Aqoursとの対決のとき、必死になってバク転を覚えようとしていたでしょ。それくらい、桜花ちゃんは頑張り屋さんなんだよ」(梅歌)

「私も梅歌と同じく、桜花さん、あなたのことを認めています。あなたがいなかったら私と梅歌は単なる高校生でした。ですが、あなたがいるおかげでとても素晴らしい高校生ライフを、いや、スクールアイドルライフを梅歌と一緒に楽しむことができます。その点でも私は桜花さんのことを認めているのですよ」(松華)

 さらに、千歌たちからも桜花のことを褒めまくる。

「うむ、私のリトルデーモンになれるくらいの実力はあるぞ!!」(ヨハネ)

「それくらい桜花ちゃんには実力があるっていう証拠ずら!!」(花丸)

「善子ちゃんが言いたいことはわからないけれど、私に負けないくらいの音楽の才能があることは認めているよ!!」(梨子)

「才能がない、って言うけど、私たちとの対決のときにみせたバク転、それを短期間でできるようnあんるなんて、才能を飛び越えて、天才、だと思うよ!!」(曜)

 そして、最後にルビィと千歌が桜花に対し激励した。

「桜花ちゃん、自信をもって!!桜花ちゃんならきっとAqoursでも大丈夫だよ!!それくらい桜花ちゃんは才能も実力もあるんだよ!!」(ルビィ)

そう、ルビィちゃんの言う通り!!みんな、桜花ちゃんのこと、認めているんだよ!!それを忘れないで!!」(千歌)

 このみんなからの言葉に、桜花、ついにある考えに達した。

(お父様とお姉さまは私のことを認めてくれなかった。でも、その代わりにみんなが私のことを認めてくれた・・・。私のことを「役立たず」「ごく潰し」ではなくちゃんと私のことを評価してくれた・・・。そう考えるだけで、私、嬉しくなっっちゃうよ・・・)

その思いからか、桜花、みんなにこう応えた。

「みんな、ありがとう。そうだね。たとえ父と姉に認めてもらわなくても、ほかのみんなから認めてもらえればいいんだよ・・・。私、うれしいよ・・・」

桜花はこれまで自分の父と姉に認めてもらわないといけない、そう思い込んでいた。だが、その父と姉からは認めてもらえれないどころか逆に桜花のことを「役立たず」「ごく潰し」と称していた。そのため、桜花は傷つき自分の殻に閉じこもってしまった。だが、桜花の母親の言葉によろい、父と姉以外に自分を認めてくれる人がいる、そのことに桜花は気づいたのだ。そのため、桜花はその嬉しさのあまり泣き出しそうになっていた。

 そんな桜花に対し桜花の母親はあることを話してくれた。

「桜花、あなたの名前、実は読み方にある秘密があるの」

これには、桜花、びっくりする。

「えっ、私の名前の読み方にどんな秘密が・・・」

 すると、桜花の母親は桜花の名前に関する秘密を話してくれた。

「実はね、最初、お父様は(姉の)旺夏と同じ「おう」という読み方をつけようとしていたの。だけど、それだと旺夏と似た名前になってしまうでしょ。だから、それを防ぐために、桜花、って名前をつけたの、私が・・・。音読みで「おうか」と読むけど、本当の名前は桜の花みたいに美しく、桜のように立派な人になってもらうように、「桜花」と書いて「はな」って読むようにしたの」

桜花、それは母から送られた最初のプレゼントであった。桜花は、普通、「おうか」、と読む。これにより父木松悪斗の希望通りになった。ただ、ここにいる桜花は「はな」と読む。それは桜花の母親が桜のように美しく立派になるように名づけらえた名であった。それを聞いた桜花は自分の母親に対しこう告げた。

「お母さま、ありがとう。私、なんかやる気がでてきたみたい・・・」

 そして、桜花はきっぱりとこうみんなに告げた。

「みんな、心配してくれてありがとう。私、木松桜花、みんなに謝りたい。私のせいで心配をかけてしまってごめんなさい。私のせいで迷惑をかけてしまってごめんなさい。すべてすべてごめんさい」

それは桜花なりのケジメであった。桜花は自分を父と姉に認めてもらいたいばかりにまわりを巻き込んでしまったのだ。そのため、まわりに対し失礼をした、そんな思いからの謝罪であった。

 だが、それに対し、梅歌、こう口にした。

「そんなこと、1つも気にしていないよ!!それよりも、いつものあの余裕の表情、見せてよ!!」

このときの梅歌はこうい思っていた。

(そんなことなんて関係ないよ!!それよりも、いつもの桜花ちゃんになってくれたらうれしいな!!)

梅歌にとって今までの桜花の苦労と比べては、そんなもの、迷惑でもなかった、むしろ、桜花のおかげでスクールアイドルに、Aqoursの一員に、なれることができたのだから・・・。その意味でも梅歌は桜花に感謝しかなかった。それよりも梅歌はいつもの桜花の方がいいと思っていたのだ。その方が桜花としてしっくりくるのからかもしれない。

 そんなときだった。ステージの方からこころあの2人が雄たけびをあげた。

「「みんな、いくよ!!We are School Idoll!!」」

そのこころあの声に会場中がこの言葉で埋め尽くされる

 

「We are the School Idoll!!We love Love Live!!」

 

その声に、桜花、ついにあることを決める。

「さてと、みんなに迷惑をかけた分、私、木松桜花、頑張ります!!私は、いや、私たちはスクールアイドル!!みんな、私についてきなさい!!」

桜花、ついにフルスロットルになった。これまで落ち込んでいたのが、一転、いつもの桜花に、自信たっぷりの桜花になったのだ。

 そして、桜花はあることをした。それは・・・。

「千歌、私のパートをみせてくれない。速攻で覚えるから!!」

 

 

すべての声が   交じりあえば

大きな大きな   光の柱になるさ

だからみんな   スクールアイドル

こおにいれば   誰もがみな

スクールアイドル だからみな言おう

We are School Idoll!!

 

 

 

 一方、こころあのステージはラストを迎えようとしていた。

「どんどんいくです!!ハイハイハイハイ!!」(ここあ)

それに合わせてか、会場中、盛り上がる。

ハイハイハイハイ

これには、花樹、驚いてしまう。

(うそでしょ!!花樹たちが圧倒的なパフォーマンスをしたのに・・・。このままじゃ負ける・・・)

このとき、花樹にはある危機感が募っていた。前回もこころあの盛り上げにより敗北したのだ。だが、それを止めるすべは花樹にはなかった。そのため、花樹は指をくわえて見るしかなかった・・・。

 

 

 

We are School Idoll!!

私たちの想いはみんなと一緒だから・・・

 

 

 

 そして、ついにこころあのステージが終わった。その瞬間、

「こころあ~、すごかったよ~」

という観客たちからの声援が聞こえてきた。これには、ここあ、

「みんな、ありがとうでしゅ!!」

とわざと噛みつつもみんなの声援に答えていた。

 

 と、同時に大道具部屋でははながこんなことを言いだした。

「千歌、ありがとう。すべて覚えました。あとはみんなに合わせればばっちりです!!」

この言葉に、ルビィ、びっくりする。

「えっ、こんな短時間ですべてを覚えたの?」

これには、桜花、

「え~と、こうして、ああして・・・」

と、ワンフレーズ、パフォーマンスする。すると、梅歌、驚く。

「うそ・・・、ばっちりだよ・・・」

なんと、一寸一秒、間違いがなかった。いや、パーフェクトだった。これにはさすがの用も、

「こりゃ、天才、現る、だね!!」

とびっくりするほどだった。

 そんな驚くみんなを尻目に桜花はこう言いだしてきた。

「さてと、もうすぐ、私たちの、いや、Aqours with RedSunのステージ!!完璧にこなしてあげる!!」

 だが、このとき、千歌が意外なことを言いだした。

「桜花ちゃん、それ、違うよ。千歌たちのグループ名はAqours with RedSunじゃないよ。千歌たちのグループ名は・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第7話 (3)(&ラブライブ!RSBP LAST SONG)

 そして、ステージは大トリのAqoursの名が呼ばれた。

「さてと、ついに最後のスクールアイドルになりました。あのキング、王者をお呼びいたしましょう!!静真高校スクールアイドル部、Aqours with RedSun!!」

そのレポーターの言葉に対し、千歌、こう叫んだ。

「チアkたちはAqoursではない!!」

これには、レポーター、会場中、

エ~~~

と驚く。

 すると、千歌はこんなことを言いだした。

「千歌たちは改名します。地球のようなAqours、太陽のようなRedSun、それを束ねた名前・・・、

 

Aqours Sun Galaxy!!」

 

 この言葉にリポーター、さらに驚く。

「まさか、ここにきて、Aqours、改名しました!!Aqours Sun Galaxy!!なんていうグループ名だ!!」

ここにきての改名、それは桜花の覚悟を見た千歌が決めたことだった。AqoursとRedSunの名前を引き継ぐとともに銀河をまとめる名前、それがAqours Sun Galaxy!!であった。

 そのチアkの言葉とともに千歌たち9にっはこう叫んだ。

「「「「「「「「「みんな~、私たちの声をきいてくれ!!

 

私たちは静真高校スクールアイドル部、Aqours Sun Galaxy

 

 

      SPACE VOYAGER!!」」」」」」」」」

 

 

 

Aqours Sun Galaxy 第7話挿入歌 「SPACE VOYAGER!!」

 

青空へ(宇宙へ)Junping my Heart!!

 

大好きって   言っても大丈夫!!

だって僕らは  大事な仲間

夢だって    夜空に照らしている

それくらい   すごい仲間

 

 

 

 あまりに銀河規模のパフォーマンス、それはあの桜花ですら1つの惑星がごとくパーフェクトなパフォーマンスをみせていた。千歌を中心とした9人の圧倒的な、いや、銀河的なパフォーマンス、これには、花樹、

(えっ、これがAqoursのパフォーマンスなの・・・。あれだけ桜花に脅しをかけたはずなのに・・・、いったいどうして・・・)

とあっけにとられるくらいのものだった。

 一方、理亜も千歌たちのパフォーマンスには脱帽していた。

(私たちは一生懸命パフォーマンスをした。だけど、千歌たちは、ルビィたちは、Aqoursは、その一歩先をいく・・・。私にとってそれは厳しい現実なのかもしれない・・・)

それでもAqours Sun Galaxy!!の銀河的なパフォーマンスは続いていた。

 

 

 

僕らはまだ   未熟なDremer

だけど1つだけ  いえることがある

それは想いを  1つにして

先へと進める  Dreamerなのさ

 

 

 

 このAqours Sun Galaxy!!の勢いは会場中に伝播していく。遠くの客席から見ていたあの2人はこんなことを言いだしてきた。

「うそでしょ!!あの桜花が大きくパフォーマンスをしているなんて・・・。あいつはただの「役立たず」「ごく潰し」でしょ!!なのに、なんでいきいきとパフォーマンスできるわけ?」

「あいつ(桜花)はただの「役立たず」「ごく潰し」じゃなかったのか・・・。それなのに、圧倒的なパフォーマンスをするなんて信じられない・・・」

この2人にとっていきいきとパフォーマンスをする自分の娘、妹の桜花には驚きを隠せずにいた。

 その一方で、桜花、パフォーマンスをしていくなかでこんな思いになっていた。

(私は、最初、「勝利こそすべて」が大事だと思っていた。だけど、今は違う!!みんなが私のことを認めてくれる、みんなと一緒にこのステージでパフォーマンスをしている、それってとても楽しく感じられちゃう!!この想い、忘れたくない!!)

このときの桜花はとても幸せだった。いや、これまで自分が信じていたもの、「勝利こそすべて」、それを超える存在、「楽しむこと」、それを自分を認めてくれたAqours Sun Galaxy!!のみんなと一緒にやっていること、そのことに感動を覚えた、この想いを忘れたくない、そう思えるようになったのである。

 そのときだった、桜花の心のなかにある声が聞こえてきた。

(桜花ちゃん、ついに大切なこと、気づいたんだね!!)

その声に、桜花、びっくりする。

(えっ、なんで梅歌の声が聞こえてくるの?)

これには、梅歌・・・ではなく、千歌が答える。

(それはね、桜花ちゃんが大切なこと、「楽しむこと」、それに気づいた、いや、そう想えるようになったから、千歌たちの心が1つになったことを意味しているんだよ)

そう、千歌の言う通り、今、千歌たちの心は1つになったのだ。それは桜花がとても大切なこと、「楽しむこと」、それに気づいたからだった。そう想えるようになったから桜花はそのことに気づいたいたほかの8人と心でつながったのである。

 その桜花であるが、さすが、桜花、すぐに順応する。

(たしかにその通りかも。じゃないと、こんな不思議な現象なんて起きないもん!!)

そんな桜花に対しほかのみんなからこんな言葉がでてくる。

(さぁ、ヨハネたちの宴はいまからだぞ!!)(ヨハネ)

(そうずら、そうずら)(花丸)

(たしかにその通りですね)(松華)

(さぁ、桜花ちゃんの音楽の才能、どんどん開放していって、私みたいに!!)(梨子)

(どんどん楽しんでいくよ!!)(曜)

 そして、最後に、ルビィと千歌が桜花を誘う。

(ルビィたちのこの想いはどんどん加速するよ!!桜花ちゃんもついてきてね!!)(ルビィ)

(そうだよ!!桜花ちゃん、千歌がどんどん押していくからついてきてね!!)(千歌)

その2人の言葉に、桜花、ついに決心する。

(わかったわ!!この桜花、全力でもってパーフェクトに楽しんであげる!!みんなついてきてね!!)

 

 そして、ついに歌は佳境を迎えた.・・・。

 

 

 

僕らはついに  手に入れたよ

MIRAIへの    TICKET

あの青い水の  新しい世界へと

進んでいく   夢のTICKET

僕らはきっと  先へと進む

仲間と一緒に  進んでいく

 

これからどんなストーリーであっても

僕らは大丈夫  

だってみんながいるから

帆をあげて宇宙を進んでいく!!

 

 

 

 そして、ついに終わった、Aqours Sun Galaxyが・・・。その瞬間、

ヒューヒュー

という花樹・理亜組の時以上のスタンディングオベーションが湧いていた。これには、桜花、

(なんて気持ちのいい声援なんだ・・・。これがめいいっぱい楽しんだ者に対する声援なんだ・・・)

と楽しむことに全力を注いだことによる褒美であると自覚していた。

 一方、そんなパフォーマンスをみせられた花樹は、

(まさか・・・、まさか・・・、ないよね・・・、そんなこと・・・)

と唖然となっていた。これが「勝つことこそすべて」と「楽しむことがすべて」の差なのだろうか・・・。

 

 そして、すべてが終わった・・・。会場中が静まり返る。その時間はたった数分であったが観客たちには、いや、決勝進出者たちには数時間にも思えるものになっていた。

 すると、ついにリポーターがついに声をあげた。

「さてと、結果がついに出たよ!!今回の優勝は・・・、

 

 静真高校スクールアイドル部、Aqours Sun Galaxy!!]

 

これを聞いた瞬間、千歌たちはみな、

「「「「「「「「「ヤッター!!」」」」」」」」

と声をあげた。Aqours、冬夏連覇、それはあのμ'sdすら成し遂げることなんてできなかった偉業であった。

 と、同時に理亜と花樹は肩を落とした。

(う~、まさかAqoursに負けるなんて・・・。私だってあれほどスクールアイドルを楽しんで圧倒的なパフォーマンスをしていたけど、ルビィたちはそれよりも上をいっていた・・・。ルビィたちAqoursって化け物なの?)(理亜)

理亜の場合、あつこ、花樹と3人で今度こそラブライブ!優勝を目指していた。花樹とはスクールアイドルにとしての考え方に違いがあったものの、それを活かして戦いに望んだ。自分自身も千歌たちと同様にスクールアイドルをめいいっぱい楽しんだ。だが、その上をルビィたちAqoursはやっていた。そのことに脱帽せざるをえなかった。むろん、これで自分の夢も、お預け、自分の抱える闇を拭い去ることもできなかった。

 そして・・・、

(う~、Aqoursに、負けてしまった・・・。それも、あのとき(摩周丸での戦い)にて勝ったはずの桜花に負けた・・・。なんで、なんで、なんでだよ!!)(花樹)

花樹にとってそれを考えることはできないものだった。花樹の父親から「Aqoursに勝つこと」と厳命されていた。それも今日はさの摩周丸の戦いでコテンパンにやっつけたハズの桜花たちに負けた・・・、そのことが花樹にとってかなりのショックだった。

 だが、それも必然なのかもしれない。というのも、桜花は、このステージ中、「勝利こそすべて」という考えから「楽しむことがすべて」という考えに途中からシフトしていった。それに対して、花樹は「勝利こそすべて」という考えに固執してしまった。それが勝敗を分けたのかもしれない・・・」

 

 だが、そんなときだった。突然、ある男がステージに勝手にあがる。

「いやいや、桜花、君の素晴らしいことをしてくれたね。まさか、静真のために、いや、私のために頑張ってくれたのだからね・・・」

その男の声に、桜花、ざわめく・・・。

「お父様・・・」

そう、ステージに勝手に上がってきた男は、桜花の父、木松悪斗、であった。自分の娘がまさかラブライブ!で静真の名を有名にしてくれた、いや、その静真を牛耳っていた自分のために役に立ってくれたことがよかった、そう木松悪斗は思った・・・わけではなかった。それは次の木松悪斗の言葉でわかった。

「これで木松悪斗という名が知れ渡ったはずだ!!私はあの静真の大スポンサーである。これまでは運動部系で有名になった。が、今回の優勝で文化系も名をあげてくれたになる。それすなわち、私の援助のおかげ!!私の名も売れた、というわけです!!」

木松悪斗、まさしく自分中心に考えていた。すべて自分のおかげ、運動系の部活を有名にした、今度はスクールアイドル部がラブライブ!で優勝したから文化系の部活も有名になった、それはすべて自分のおかげ、というのだ。あまりにも身勝手極まれないものだった。

 ただ、それをおだてる少女もいた。そう、木松悪斗の長女、旺夏、だった。旺夏も車いすに乗ってこの秋葉ドームまで来ていたのである。その旺夏は父に対しこう叫ぶ。

「木松悪斗様がいたから、お父様がいたから、Aqoursは連覇できたのです!!そう、お父様を敬いなさい!!」

これには、さすがの桜花も、

「お父様、お姉さま、騒ぎすぎ・・・」

と唖然となってしまった。

 だが、そのときだった。突然、ステージにある大男があがってきた。それに、木松悪斗、驚く。

「えっ、なぜ、ここに沼田が・・・」

そう、ステージにあがってきた大男こそ、あの静真のかげの神、沼田であった・・・。

 

 その沼田は木松悪斗に対しあることを言った。

「木松悪斗、お前には逮捕状がでている」

これには、木松悪斗、こう断言する。

「私が逮捕?そんなことなんて起きるはずがない!!」

そのときだった。突然、少女3人組が、

「待てい待てい、ポリスのお通りだ!!」(金髪の少女)

「ポリス、じゃなく、警察、でしょうが!!」(黒髪ロングの少女)

「って、どっちも同じ意味じゃない!!」(ポニーテールの少女)

ステージにあがってくる。これには、リポーター、はっとする。

「あなたたちは・・・、元祖Aqours!!」

そう、その3人組こそ、鞠莉、ダイヤ、果南、元祖Aqoursの3人だった。その鞠莉がこんなことを言ってきた。

「木松悪斗のおじさん、あなた、インサイダー取引、していたでしょ!!」」

これには、木松悪斗、

「いやいや、していないぞ!!」

と、本当になんのことなのかわからず否定する。

 それに対しダイヤは決定的な証拠を木松悪斗に提示した。

「木松悪斗、あなた、前にA社の株を買っては売っていたでしょ!!」

すると、木松悪斗、それを思いだす。

(あっ、たしかに・・・)

そう、木松悪斗は、数か月前、A社が外国資本と合併することを知りながらA社の株を買い占め、合併発表後、値上がりしたときに大量にその株を売ったのである。

 さらに、果南がダメ押しを図る。

「私には難しいことはわからないけど、これを聞いたらわかるかも。たしか、木松悪斗、あなた、A社の株を買ったときにはすでに、A社の株、総株主の議決権の10%以上を持っていたでしょ!!」

それを聞いた途端、木松悪斗ははっとした。

(これってもしかして誰かにはめられたのか・・・)

そう、木松悪斗ははめられたのである。その会社における総株主の議決権の3%以上の株を保有している株主が合併などのその会社の重要案件を知りながらその案件の公示前にその会社の株を売買することをすればそれがインサイダー取引として認められるのである。ただ、木松悪斗の場合、その情報はActシステムからのものだった。木松悪斗はただその情報を知ったことで利益をあげるためにA社の株を買い占めたのである。つまり、木松悪斗にその情報を与えてその取引をさせるために誰かがActシステムにその情報を流したのである。

 そんなとき、

ピロンピロン

木松悪斗のスマホから音が聞こえてきた。これには、木松悪斗、出る。すると、聞きなれた声が聞こえてきた。

「どうですか、ご主人様、私の仕掛けたトラップにはまりましたね!!」

この声に木松悪斗ははっとしたのか、声を高々にあげた・・・。

「お前は裏美・・・。どうしてお前が・・・」

そう、木松悪斗をはめたのは裏美であった。その裏美は木松悪斗に対しこう言いだしてきた。

「俺はな、木松悪斗、貴様のせいでこの組織での地位を失ったんだ!!なら、やることは1つ、お前に仕返しを、今の俺みたいになってほしかったんだ!!どうだ、悔しいだろう!!」

ラブライブ!延長戦後、木松悪斗は月やAqoursに敗北したそのときの責任を取らせる形で裏美を失脚させた。そのときの恨みを晴らすために裏美は木松悪斗を貶めたのだ。それがこのインサイダー取引であった。

 ところが、木松悪斗、平気な顔をする。なぜなら、

「裏美、お前は知らないと思うが、私は逮捕されても私が私の投資グループを率いている限り、復活は何度でもできるんだぞ!!わかっているのか?」

そう、木松悪斗は自ら自分の投資グループを率いている。なので、逮捕されてもその投資グループが残っている限り何度でも復活できるのである。

 だが、それについて、裏美、

「ハハハ」

と笑うと木松悪斗に現実をみせつけた。

「いいか、お前の投資グループはすでに俺の手に落ちた。いや~、お金の力は偉大だよな。猪波以外、俺のお金でこっち側に寝返ってくれたわ。こっけいこっけい」

そう、このとき、すでに木松悪斗の投資グループは裏美の手に落ちていた。木松悪斗の左腕だった猪波を除くグループ幹部全員、裏美のお金によって裏美側に寝返ったのである。これには、木松悪斗、

「裏美~」

と裏美を恨み返していた。

 と、同時に、沼田も木松悪斗に対し厳しい現実をみせつけた。

「あと、静真高校だが、もうお前の帰る場所なんてないぞ!!学内から木松悪斗一派は完全に排除された。あと、逮捕されるから、お前の「部活動保護者会会長」の職も失う。The endだ、木松悪斗」

そう、静真高校にはすでに木松悪斗の居場所なんてなかった。4カ月かかったが、沼田は木松悪斗一派とみられる者をすべて排除していた。また、木松悪斗の静真での職も逮捕されることですべて失った、というのだ。

 だが、木松悪斗はその沼田に対し言い返す。

「でも、そうなってしまったら静真はどうなりますかね?私というスポンサーを失ったら静真の部活動はどうなるのでしょうかね・・・」

たしかにその通りであった。静真の資金は大スポンサーである木松悪斗がそのほとんどを出資していた。それを失うことは、それすなわち、静真の資金が枯渇する、というのである。

 だが、そんな木松悪斗に対し、沼田、はっきりと言い返す。

「それなら大丈夫だ!!このわし、沼田と小原家が出資する!!わしはあの世界的大企業グループ、沼田グループの総裁だ!!それに、小原家の一人娘がそこにいるではないか!!」

 すると、小原家の代表として鞠莉が一歩前に出てはこう言った。

「小原家は浦の星のスチューデントが通う静真に出資しま~す!!そして、その理事として、ここにいるダイヤが理事になりま~す!!」

これには、ダイヤ、寝耳に水、だったらしく、

「えっ、なぜ私が静真の理事にならないといけないのですか!?」

と鞠莉に反論するも、鞠莉、もっともらしいことを言う。

「だって、マリーは、一度、静真の理事の職をキック(蹴った)したので~す!!それに、ダイヤだったら網元の娘として、そして、大学で経営学を学んでいるので~す。さらに、浦の星の生徒会長としての実績もありま~す!!だから、ダイヤがふさわしいので~す!!」

たしかにダイヤほど理事の職にうってつけの人物はいなかった。まず、鞠莉は過去に静真の理事の職を蹴ったことがある。それは木松悪斗の策略の一部だったのだが、たとえそうだったとしても鞠莉が理事の職を蹴ったことはたしかであった。また、ダイヤは、今、東京の方で経営学を学んでいる。さらに、網元の娘、ということで、地元沼津にもゆかりがある。あと、浦の星の生徒会長としての実績もある、その点からもダイヤには理事に職はうってつけといえた。(あと、鞠莉は、今、イタリアの大学に通っているのに対し、ダイヤは東京の大学、という点も考慮した結果でもあった)

 こうして、木松悪斗の前でいろいろと決まっていくことにより木松悪斗は愕然となった。

(私は裏美に、そして、沼田と小原家にはめられた・・・。「勝利こそすべて」、その信条のもと、私はやってきた。それでもみんなから裏切られた・・・。どうしてだ・・・。ただ1つ、これだけはいえる。なにもかもおしまいだ・・・)

ついに木松悪斗はノックアウトした・・・、真っ白になった・・・。

ただ、これだけでは終わらなかった。千歌はなぜかタブレットを持っていた。その千歌は真っ白になった木松悪斗に対しこう言った。

「あと、奥さんからなにか言いたそうにしているよ・・・」

その千歌が持っていたタブレットには木松悪斗の奥さん、桜花の母親が映っていた。その奥さんはこう言いだしてきた。

「あなたとは離婚です!!物事を自分の利益でしか見ない、そんなあなたなんてもう知りません!!旺夏と桜花は私がみます!!」

そのことは父としての木松悪斗すらも失うことを意味していた。いや、自分の考え、「勝利こそすべて」、それによって木松悪斗はすべてを失ったのかもしれない・・・。

 

 こうして、すべてを失った木松悪斗は沼田が連れてきた警察によってドナドナされた。ただ、そんな父の姿に旺夏はただ一人泣いていた。

「お父様・・・、お父様・・・」

旺夏も「勝利こそすべて」という考えによる犠牲者だった。旺夏は父木松悪斗の考え、「勝利こそすべて」、それに感化されて、その考えのもと、自分のサッカーの才能でもってすべてを成し遂げてきた。だが、その考えによりチーム内で孤立、その考えを持つ他者によって足はズタボロにされ、一生サッカーをすることができなくなった。そして、尊敬する父すらも失った・・・。それは「勝利こそすべて」、その考えによって生まれた犠牲者、なのかもしれない。いや、世界中にその考えが広まったら、きっと戦争が起きてしまう、それくらい恐ろしいもの、なのかもしれない。力でもってすべては解決できない、勝利ばかり追い求めているときっと破滅してしまう、そう思えてしまうものである。(って、沼田はそうまとめたとさ・・・)

 ただ、そんな木松悪斗・旺夏親子をステージ袖にて見ていたH&Hのはるかとハヤテはこう思ってしまった・・・。

(勝利至上主義、いつみても悲しい結末が待っている気がします。だからこそ、「楽しむことがすべて」、その考えが世界中に広がれば、こんなギスギスした世の中が改善できるかもしれませんね)(はるか)

(あの父娘だけを見ていたらどう見ても悲劇だと感じてしまう・・・、なのかもしれない。だけど、これが「勝利こそすべて」の代償かもしれない。僕たちはこの悲劇を繰り返さないためにも「楽しむことがすべて」という考えを広げていきたい。そのためのユニドルなのだから・・・)(ハヤテ)

 

 一方、裏美はというと・・・、

「これで木松悪斗は終わりだ!!あとはこの俺がこの投資グループを率いてやる!!」

自分のお金で木松悪斗の組織そのものを乗っ取った裏美であったが裏美には投資の才能がなかった。そのため、ことごとく投資に失敗、それを繰り返していた。これにより裏美の投資グループの運営は立ち行かなくなり、3か月後、ポツンと誰にも知れずに消えてしまった・・・。こうして、10数年にわたる木松悪斗の投資グループの歴史は終わりを迎えるのであった・・・、あの猪波の会社を残しては・・・。

 

「まぁ、いろんなことがありましたが、ここで優勝旗の授与!!」

と、リポーター、いろんなことがあったものの、仕切り直しとばかりに優勝旗の授与へと移る。

 そのときだった。突然、千歌が桜花に対しあることを話した。

「桜花ちゃん、スクールアイドル部部長としての役目、頑張ってね!!」

これには、桜花、びっくりする。

「えっ、スクールアイドル部の部長って千歌じゃ・・・」

桜花の認識、それは、部と同好会が合併したとき、部長は千歌になっている、だった。

 だが、千歌は桜花に対しこんなことを言ってきた。

「実はね、部と同好会の合併のとき、部長を桜花ちゃんにしたの!!」

えっ、なんと、(旧)スクールアイドル部と同好会が合併したとき、部長を桜花にしていたのだ。これには、桜花、

「うそ・・・」

と開いた口が防げなかった。

 ただ、千歌はぼそっとこんなことも言っていた。

「(でも、本当は・・・、部長の欄、書こうとしたとき、(旧スクールアイドル)部の部長をそのままコピペしちゃったのもあるし、あの「創部許可書」の件もあるしね・・・)」

って、おい、これって、一部、千歌の仕業ではじゃないですか・・・。なんと、千歌、合併のとき、部長の欄を桜花の名前を書いてしまったのだ。それは桜花にとって申し訳がないのかもしれない・・・。でも、「創部許可書」って・・・。そう、桜花が旧スクールアイドル部を創部したとき、父の権力を使って創部許可書を手に入れたのですが、それが今でも有効になっているのです。そのため、その創部をした桜花が部長としての地位が約束されていた・・・なんてことになっているのです。これには、桜花、びっくりするかもしれません、まさか、自分の行いが今でも続いていることに・・・。

 とはいえ、しゅくしゅくと時間は進みます。

(この私がスクールアイドル部の部長なんて・・・)

と思ったのか、桜花、緊張しながらも前に進みます。

 そして、優勝旗の前に立つとリポーターから、

「おめでとう!!」

という言葉とともに、

「やったよ~!!」

という桜花の雄たけび声があがった。こうして、ラブライブ!夏季大会はAqoursの連覇で幕はおりた・・・。

 その後、桜花はこのときのことをこう振り返っている

(私のせいで梅歌や松華に、Aqoursに、みんなに迷惑をかけてしまった。でも、そのおかげで私は大切なことに気づいた、私を認めてくれる人は必ずいると・・・、そして、その人とは心でつながっているんだと・・・。私には梅歌が、松華が、Aqoursがいる。だから、これだけは言える、私は「役立たず」「ごく潰し」じゃない、私のことを認めてくれる人がいる、その人たちのために私は役に立っていきたい!!)

これまで自分のことを「役立たず」「ごく潰し」として卑下してきた桜花、だが、今は自分には大切な人たちがいる、自分を認めてくれた人たちがいる、その人たちのために生きていこう、そう桜花は思えるようになったのである。

 人には必ず認めてくれる人がいる、その人たちと心のつながりを大切にしたい、それこそ今の殺伐した世の中にとって大切なことではないだろうか。そう肝を命じるとともにこの物語、MoonCradleから続く月、桜花、そして、Aqoursの物語を終えることにしよう。

 

MoonCradle・ラブライブ!RedSun BluePlanet 完・・・?

 

 

(でも、SNOW CRYSTAL自体が終わるわけじゃないからその点は注意してね)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第7話 (4)

 これでこの話は終わり・・・ではなかった・・・。

 決勝終了後、

「負けた・・・、ルビィたちにまた負けた・・・」

と理亜は楽屋で泣いていた。

 その理亜に対し聖良はこう励ます。

「理亜は一生懸命やりました。ですが、Aqoursの方が一枚も上手でした。ただそれだけのことです・・・」

 だが、理亜は聖良に対しこう言ってしまう。

「私だって一生懸命スクールアイドルを楽しみました。ですが、負けました・・・。なぜなんでしょうか・・・」

理亜は延長戦のときに聖良とあつこからスクールアイドルとは「楽しむことがすべて」のことを学んだ。それを今回は実践した。だが、それであっても負けてしまった。その理由を理亜は知りたがっていた。

 そんな理亜に対し聖良は、

「それだったら、私が知っている方にその答えを聞くといいでしょう」

と言っては1枚のチケットを渡した。そのチケットを見て、理亜、はっとする。

「北九州市・・・」

そう、そのチケットは北九州市に行くためのチケットだった。そのチケットを見て聖良は理亜にこう語った。

「理亜、そこであのレジェンドスクールアイドルに会いなさい。そこで、「勝つことこそすべて」「楽しむことがすべて」、その真実を知りなさい」

これには、理亜、

「はい、わかりました、姉さま・・・」

とうなずいた。

 そのときだった。あつこが聖良にあることを話す。

「あと、理亜さんにつたえないといけないことがあるのでは・・・」

これには、聖良、覚悟を決めたように、

「わかった・・・」

と言うと理亜に対しあることを伝えた。

「理亜、よく聞いて。私はアメリカにプロモーションの勉強のために留学します。なので、近いうちに理亜のもとから去る予定です・・・」

この聖良の言葉に理亜は絶句した。

「えっ、姉さまが私のもとからいなくなる・・・」

理亜にとって姉の聖良は心の支えだった。たとえ延長戦で心のなかにある宝物によっていつもつながっていることを知ったとはいえ、現実的にはいつも2人は一緒だった。それが現実でも離れ離れになることは理亜にとってショックだった。

 そのためか、理亜、聖良にこう訴えた。

「私、とても悲しい。宝物でいつもつなかっている、とはいえ、実際に離れ離れになること、とても悲しい・・・」

その言葉を受けてかあつこがこう答える。

「私が聖良さんの分まで頑張ります。だから、聖良さん、アメリカでも頑張ってください」

これには、理亜、聖良にこう訴えた。

「姉さまがいなくなること、本当に悲しいです。でも、本当にあつこが姉さまの代わりを務めることができるのでしょうか?」

 これには、聖良、こう答えた。

「あつこなら大丈夫です。絶対に私の代わりを務めてくれるでしょう。なので、理亜、安心してください」

この聖良の言葉に、あつこ、

ゴクッ

とつばを飲み込んだ。

(私が聖良さんの代わりになる。果たして大丈夫なのでしょうか・・・)(あつこ)

あつこは理亜のまえで 「聖良の代わりになる」と宣言した。だが、内心ではまだ不安を抱えていた。自分に聖良の代わりを務めることができるのか、理亜は聖良に頼って生きてきた、その聖良がいなくなる、それは理亜にとって柱を失うことを意味していた。その柱の代わりに自分がなれるのか、あつこは不安だった。

 そして、それは理亜とて同じだった。

(あつこが姉さまの代わりができるわけない・・・。本当に大丈夫なの、私・・・)

聖良の代わりをあつこがする、そのこと自体できるのか、理亜は不安に感じていた、いや、できないと決めつけていた。そのため、自分自身、本当に大丈夫なのか心配になってしまった。

 

 一方、そのころ、別の場所では・・・、

「桜花に、Aqoursに負けた・・・。いや、それどころか・・・、こころあにまた負けた・・・。このままじゃ・・・」

と花樹は絶望していた。今回、理亜・花樹組は全体の3位だった。だが、自分の父親が定めた「Aqoursに勝つこと」、それを達成できなかった。いや、一度勝ったはずの桜花に負けたのである。さらにこころあにも負けた。これでは父に顔向け出来ないのである。

 さらに、あのことも恐れていた。

「それに、お父様から捨てられる・・・、オ・・・花樹の大事なものが・・・、おばあちゃんとの大事なもの、キズナが・・・」

自分の父親からの指令を達成できなかった、これにより自分の父親から花樹が大切なものを捨てられることが決まろうとしていた。

 そのためか、花樹は嘆いていた。

「失いたくないよ・・・、花樹の大切なもの・・・、おばあちゃんとのキズナを・・・」

 

 姉の聖良がいなくなるということで動揺する理亜、その聖良の代わりになれるのか、心配しているあつこ、そして、自分の大切なものを失うのではと絶望する花樹、果たして3人はどうなるのか?

 そのヒントは北九州にあり!!果たしてどんな人たちが3人を導くのか。それは次回のお楽しみである・・・。

 

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NEXT STORY IS

 

? Said 「Do you enjoy School Idoll?」

 

(おまけ)

「どうだ、私の実力さえあれば、こんなもの、ちょちょいのちょいだ!!」

と桜花は威張っていた。ここは秋葉原のファミレス。ここでAqoursの祝賀会が行われていた。

 そんななか、梅歌がこんなことを言いだしてきた。

「あっ、千歌ちゃんたちにお礼を言わないとね!!千歌ちゃんたちの動画のおかげでスクールアイドルの基礎を学ぶことができました!!ありがとうございます!!」

この梅歌の言葉に、桜花、はっとしては梅歌にこう尋ねる。

「えっ、あの基礎の動画って、「サルでもわかるスクールアイドル講座」、だよね。それってAqoursが作ったの?」

すると、梅歌、元気よくこう答えた。

「うん、そうだよ!!」

これには、桜花、ガクッと肩を落とす、こう言いながら・・・。

「じゃ、私ってAqoursの手のひらで踊らされていたわけ・・・」

これには、一緒に祝っていたダイヤがこう言ってきた。

「あなたも千歌さんの餌食になったのですね・・・」

まさしく桜花はピエロだったのか・・・。

(って、千歌はそんなこと、考えていないよ!!濡れ衣だよ!!by千歌)

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第8話(1)

第8話 Ai Said 「Do you enjoy School Idoll?」

 

「理亜さん、あともう少しで北九州ですね。どんなものが見られるのか、とてもワクワクですね!!」

そうあつこが言うも理亜はただ、

「・・・」

と無言となっていた。ここは北九州空港に向かう飛行機のなか。そこで、理亜、あつこ、花樹は傷心旅行と称して北九州市に旅行しに行くことになった、理亜の姉、聖良からもらった飛行機のチケットを持って・・

 そんな飛行機のなかであつこの声にも答えずただ沈黙している理亜、その理亜は、このとき、こう思っていた。

(姉さまは北九州で「レジェンドスクールアイドルに会いなさい」と言った。そこで「「勝つことがすべて」「楽しむことがすべて」の真意を知れ」、と言った。それはどういうこと?」

そう、理亜はラブライブ!決勝終了後に聖良に言われたことを考えていた。北九州市にあるレジェンドスクールアイドルに会い真意を知れ、それはAqoursに負けた理亜にとってどんな意味があるのか、と理亜はずっと考えていたのだ。

 そんな理亜を見てかあつこもこう考えてしまう。

(私が聖良さんの代わりになる・・・、それって可能なのでしょうか。先ほどから声を書けているのに、理亜さん、全然反応してくれません。これで本当に聖良さんの代わりを務めることができるのでしょうか)

あつこもあつこで悩んでいた。あつこの場合、理亜と同じく聖良から「私の代わりに理亜をお願い」と言われたのだ。そのため、あつこは事あるごとに理亜に優しく接するもいつも今と同じように理亜は無言で突っぱねてしまうのだ。それではさすがのあつこもどうすることもできない、お手上げになってしまう、のであった・・・。

 そんな2人に対して・・・というか、もう一人の主人公、花樹も理亜と同様に無言だった。というのも花樹も花樹でいろいろと悩んでいたのである。

(どうして負けたんだ・・・。負ける要素なんてなかった・・・。だけど、桜花に、Aqoursに負けてしまった・・・。どうして負けたのだ・・・。

 花樹の場合、ラブライブ!決勝でAqoursに負けたことが、いや、あの桜花に負けたことがかなりショックらしく、そのショックに未だに抜けられずにいた。とはいえ、Aqoursはラブライブ!を連覇するくらいの強者である。そのAqoursに負けた、としてもスクールアイドル歴がまだ4カ月しかない花樹にとってそれは仕方がないこと、だったのかもしれない。だが、花樹の場合、あの桜花に、1度は勝ったkとおがある桜花に負けたことがAqoursに負けたこと以上にショックだったのである。桜花は1度粥に負けている。それは、GW中、RedSunとして花樹たちを桜花たちが襲撃したときのことだった。このときの桜花h桜花と同じくスクールアイドル初心者であった梅歌・松華たちRedSunを組んで花樹たちを襲撃してきたのである。だが、冠者たちはその初心者相手に圧倒的な差で打ち破ったのである。しかし、ラブライブ!決勝では違った。自分を取り戻した桜花が本来の実力を発揮、また、あのときは初心者だった梅歌・松華もAqoursとの練習で実力をつけていきAqoursのギアの1つとしてその実力を発揮した。これにより桜花・梅歌・松華はAqoursは1つの大きなギアとして花樹たちに圧倒的に、いや、「楽しむことがすべて」、そこから生まれる迫力あるステージを見せつけたことによりAqoursとしてラブライブ!優勝を果たしたのである。

 だが、花樹たちには桜花たちに対して勝算があった。それはあのときまで桜花はAqoursにとってアキレス腱であったことである。そう、あのときまで桜花はAqoursに入る前、自分の父木松悪斗から「役立たず」「ごく潰し」と言われ続けていたことで自分のことを卑下していた。そのため、桜花はAqoursにとってアキレス腱であった。それに気づいた花樹は自分たちのステージが始まるまで桜花に口撃をし続けて自分たちの圧倒的なパフォーマンスを見せつけることで桜花を再起不能にまでにしたのである。だが、桜花は復活した。花樹たちの圧倒的なパフォーマンを見て逃げ出した桜花であったが自分のことを認めていた母親からの言葉により、梅歌、松華を含めたAqoursメンバーから認めてもらっている、そのことに気づいたことにより復活を果たしたのだ。これにより桜花はAqoursの一員として、いや、部長として深紅の優勝旗を手に入れることが出来たのである。。ただ、そのことを知らない花樹からすれば、まさか、Aqoursのアキレス腱であった桜花が大活躍してAqoursの勝利に貢献したことに、いや、あの桜花に負けたことにかなりショックを受けていたのである。

 そんな花樹であったが桜花を含めたAqoursに負けたくない、絶対に勝つ、そう思っていたのにも理由があった。1つは花樹が信条としている「勝利こそすべて」、そして、もう一つは・・・、

(オ・・・、花樹はAqoursに負けた・・・。それにより、花樹にとって大事なものを失う、おばあちゃんとの大事なもの、キズナを捨てられる、お父様から捨てられる・・・、そんなの嫌だった・・・)

と花樹は自分の首にぶら下がっている十字架上のペンダントを握りしめながらこう思った。なんと、花樹は自分の父親からあることを厳命されていた。それは、Aqoursに勝つこと、だった。そして、Aqoursに勝たなければ花樹がとても大切にしているもの、おばあちゃんとの大事なもの、キズナ、それを父親から捨てられる、失うところだった。

 だが、花樹は・・・、それを失っていなかった。花樹は自分にとって大事なもの、十字架上のペンダントを握りしめながらこう思っていた。

(でも、お父様はなにもしてこなかった・・・。ただの脅しだったのだろうか・・・)(花樹)

いったい、どうして・・・。それはラブライブ!決勝の翌日のことだった。

「Aqoursに負けた・・・。桜花に負けた・・・。花樹はなにもかも失ってしまうの・・・)花樹はラブライブ!決勝が終わったものの、負けた時のショックをいまだに引きづっていた。そのため、自分にとって大切なものを失う、捨てられる、そのことに絶望を感じていた。そんな思いで花樹は自宅へと、和洋折衷住宅へと帰っていた。

 そして、自宅の扉を開いた花樹、ただたんに、

「ただいま・・・」

と小声でぼそっと言うとそれに気づいたのか、花樹の母親から、

「おかえり、花樹」

と声を花樹にかけてきた。ただ、花樹は自分の父親をこのときは探していた。父に見つかれば自分の大切にしているものを捨てられる、そう思ったからだった。

 すると、花樹、忙しそうにしている父親を見つける。いや、父親からなにか鬼気迫るものを花樹は感じていた。その父親はこう言いながらいろんなところに電話をしていた。

「木松悪斗様が逮捕された・・・。これは組織にとって一大事だ!!こちらとしてもなにか手を打たないと・・・」

 

なんと、花樹の父親は自分が仕える長が逮捕されたことによりなにかをしないといけない、としていろんなところに手をまわそうとしていたのである。

 そんな父親に対し、花樹、

(このまま黙って・・・、なんてできない・・・。お父様にご報告しないと・・・)

と律義なのか、ちゃんと言わないといけない、と思ったのか、花樹は父のそばにいっては、

「お父様、今、帰りました。大変申し訳ございませんが、Aqoursに・・・」

と大会の報告をしようとしたものの、とうの父親はというと・・・、

「花樹、お前の相手なんてする暇なんてない!!どうこかに行け!!しっしっ!!」

と花樹のことを邪見に扱ってしまう。それくらい、今の花樹の父親は切羽詰まっていたのである。

 そんなこともあり、花樹、さっさと自分の部屋に行ってはこう思ってしまった。

(お父様、花樹のことなんて考えることができないほど切羽詰まっていた。花樹からすればそれはそれで助かったけど、いったいどうしたの、お父様・・・)

花樹からすれば大事なものを失わくてすむ、それはそれでよかった・・・のだが、そのかわりにあの父が切羽詰まっているとは思いもよらなかったのである。

 その後、父からなにも言われることがなかった。そtのあめ、花樹は自分が大切にしているもの、おばあちゃんとの大切な思い出、キズナ、などを失わずにすんでいた。ただ、父親からはひたすら、

「花樹、いいか、「勝つことこそすべて」、なんだ!!負けるなて許されないんだ!!」

ときつく言われていた。ただ、その言葉のあと、花樹の父親は、

「あの木松悪斗様が沼田・小原家に負けたから木松悪斗様は最悪の状態に陥ったんだ・・・。だからこそ、勝ち続けないといけないんだ・・・。いや、私がなんとかして木松悪斗様のために動かないといけないんだ・・・」

と小声でこう言ってしまったのである。

 そんな自分の父親からの言葉を受けてか、花樹は今なおこんなことを考えしまっていた。

(たしかに花樹にとって大事なものは守れた。でも、あのAqoursに、いや、桜花に負けてしまった・・・。今度こそ桜花に絶対に勝つ!!絶対に勝たないといけないんだ!!)

と、「絶対に勝つ」、そう思い込んでしまった。何度もいうが花樹の信条は「勝利こそすべて」である。そのため、勝つことのみを追求してしまう、そのことを花樹は考えるようになってしまったのだ。

 そして、花樹はついにこのことを考えてしまった。

(勝ち続けるためにすること、それは限界の限界を超える練習をすること!!練習をすれば必ず勝ち続けるこおとができるはず!!あの理亜さんも限界を超えた練習をしたからこそラブライブ!決勝に進出できた。なら、花樹もその通りにすれば、おばあちゃんとの夢、ラブライブ!優勝、できるはず!!)

なんと、限界の限界を超えた練習をすべき、だと花樹は考えるようになったのだ。むろん、それはあの理亜もしようとしていた。だが、それにより理亜が最初結成したスクールアイドルユニットが空中分解してしまうことまで起きてしまう、それくらい愚かな考えといえるのだが、「勝利こそすべて」を信条とする花樹からすればそんなことなんてお構いなし、むしろ、いっぱい練習をして限界の限界を超えた練習をすれば必ず実力がつく、それでもって勝ち続けないといけない、そんな思いが花樹にはまとわりついていた。そのため、今の花樹はどんなきつい練習でも苦じゃない、いや、限界の限界を超えた練習をしないといけない、そんな義務感、使命感を花樹はもっていた・・・。

 そして、この北九州旅行についてもこう考えてしまう。

(理亜さんにとってこれは1つの息抜きかもしれない。でも、オ・・・花樹は1分1秒も無駄にできない。勝つためにとことん練習しないといけないんだ!!)

と旅先でも練習しないといけない、そのことだけを考えてしまっていた。

 こうして、理亜、あつこ、花樹の3人はそれぞれの悩みを抱えたまま、北九州の地へと降り立つのであった・・・。

 

「ここが門司港レトロ地区・・・。なんか函館に似ている気がする・・・」

と理亜は周りをみるなりこう叫んでしまう。ここは来ちゃ九州でも人気のある地区、門司港レトロ地区。ここには明治期以降に造られた洋館などが立ち並んでいた。一方、函館でも明治期に貿易港として栄えていたこともあり、煉瓦でできた建物などが数多く残っていた。むろん、その影響もあり、花樹が住んでいる和洋折衷住宅なども函館には数多く残っていた。そんなこともあり、理亜は門司港レトロ地区と函館が似ていると思ったのである。

 その門司港にあるホテルに泊まることになった、花樹、理亜、あつこの3人はホテルの客室に荷物を置くなり、

「それでは、この門司港を散策しましょう」(あつこ)

とこの門司港おw散策することにした・・・のだが、ここにきて、花樹、反発?してしまう。

「ご、ごめんなさい、理亜さん。オ・・・、花樹、ちょっと用事があります。なので、これにて・・・、ごめん!!」

と、花樹、こう言ってはジャージ姿の状態でどっかにいってしまった。ただ、これには、あつこ、

(あれはきっと練習だね。走り込みするのかもしれないね)

と最初から花樹の行動がわかっていた。というのも、以前にこれと似たようなことがあつこのまわりで起きていたから。その行動をした人とは・・・、もちろん、理亜、である。理亜は以前にAqoursがラブライブ!で優勝したことがきっかけで限界を超えた練習を当時理亜が組んでいたユニットメンバー、そして、自分に課そうとしていたのである。そのユニットメンバーだったあつこはそれに反発、限界を超えた練習とあつこの反発によりそのユニットは空中分かいを起こしたのである。その経験があるからこそ、あつこは花樹の行動がすぐにわかったのである。

 そんなあつこは花樹を見てこう思ってしまう。

(理亜さんはAqours優勝によって「自分の失った「Saint Snowの輝き」のかわりになるものを」という思いが強くなり、Saint Snowそのものになろうときつい練習をするようになった。対して、花樹さんは「Aqoursに、桜花に負けた」、そのことにより「勝たないといけない」、その思いからきつい練習をしようとしている。2人ともそのときの思いは違えど、やることは1つだけ、「きつい練習をする」、それによって(理亜さんは)Saint Snowと同じ実力を、(花樹さんは)今以上の実力をつけようとしている・・・。なんか2人とも似ている気がします・・・。果たして、花樹さん、大丈夫でしょうか・・・)

そう、目的は違えど、理亜と花樹、進もうとしている道は似ていたりするのだ。理亜は失ったものの代わりになるものを得たいために、花樹は勝つために、という別々の目的があるもののその実力をつけるために、きつい、いや、限界を超えた練習をしようとしているのである。だが、その先にあるものとは・・・、そのことにあつこは花樹のことを心配していたのである。ただ、そんなあつこも花樹をただ見ることしかできなかった・・・。

 

 そんなわけで、理亜とあつこは2人で門司港レトロ地区を散策することになった。そんななか、

「いろんな建物があってとても美しい。ここが日本とはみえない・・・」

と、港町門司港を理亜は堪能していた。函館にもそのような地区がある。しかし、それでも、いや、そんな街に育ったからだろう、理亜からすればその港町に対するシンパシーを感じ取ったからかもしれない・・・。

 そんな理亜、突然、

(なんかあの曲を歌いたい気がする・・・)

その思いからなのか、

「♪~」

と歌い始めた。その曲はSaint Snowの名曲、Believe Again、だった。それは理亜にとって自分と姉の聖良、あつこを結ぶものだった。それと同時に理亜と函館、自分と港町という結びつき、それを自覚したからなのか、わからない、ただ1つ言えること、それは、理亜にとってその曲はなにかの結びつきを示す曲なのかもしれない。

 そんな理亜に対しある人が声をかける。

「ね~、あなたたち、スクールアイドルでしょ」

その声に気づいたのか、理亜、後ろを振り向くとある男が立っていた、理亜はこう思いながら。

(えっ、法被!!)

そう、その男は法被を着ていたのである。それもただの法被ではない。後ろにはアイドルのイラストが書かれていた。

 で、その男は理亜に対し親しげそうにこう話し始めた。

「見る限り、Saint Snowの鹿角理亜さんだね」

これには、理亜、びっくりする。

「えっ、あなたっていったい・・・」

その理亜の言葉を受けてか、その男は自分のことをこう話した。

「お~、俺の名はハッピーさんだ!!これでも九龍島という島に住んでいるのだが、アイドルの法被を作り続くて十数年という法被界の重鎮だ!!!」

これには、理亜、

「す、すごい人だ・・・」

と唖然となると隣にいたあつこはこう切り出した。

「ハッピーさん・・・、たしかにすごいです。ハッピーさんのつくる法被は全国中にファンが多いのです・・・」

そう、ハッピーさんは全国にいるアイドルの法被をつくることを生業をしていた。その法被は全国にファンがいるほどだった。その重鎮にあつこはただ、

「そんな人がここにいるなんて、いったい・・・」

とびっくりしていたのである。

 そんなハッピーさんはこんなことを言いだしてきた。

「まぁ、お礼は今、この北九州に観光に来ているのだけど、あともう1つだけ、目的があってな・・・」

その言葉に、理亜、あつこ、ともに、

「ごく・・・」

とつばを飲み込むとハッピーさんはこんなことを言いだしてきた。

「実は、今度つくる法被に載せるアイドル、いや、ユニドルを見に来たんだけどな・・・」

そう、ハッピーさんが島から飛び出して北九州に来た理由、それは、今度つくる法被に載せるユニドルを見に来た、というのである。

 そんなハッピーさんの言葉にあつこはハッピーさんが今着ている法被を見てはこう言ってきた。

「それって、(ハッピーさんが今着ている)法被に関係している人ですか?」

すると、ハッピーさん、あつこに対し、

「おお、たしかにその通り!!」

と言っては自分が今着ている法被を見せびらかせるがごとく仁王立ちになる。

 すると、その法被を見て、理亜、はっとする。

「FKO50!!」

FKO50、それは博多を中心に活躍している全国的にも有名なアイドルグループだった。そのFKO50についてハッピーさんはこう語りだした。

「実はそのFKO50の元センターで、今、ユニドルとして活躍している人がこの近くにいるんだ」

これには、理亜、あつこ、共に、

「えっ、本当ですか!!」

と驚くように言うとハッピーさんはこう答えた。

「そのユニドルに会いにいくけど、どうかな?」

このハッピーさんの誘いに、理亜、あつこ、共に、

(うそ~、あの人気ユニドルと会えるとは・・・。私としてはとてもうれしい!!)(理亜)

(私もその元センターに会いたい!!どんなんだろう!!)(あつこ)

と乗り気の様子。そのためか、2人もとも、

「「ぜひとも!!」」

とハッピーさんの誘いにのることになった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第8話(2)

 そして、ハッピーさん、理亜、あつこが訪れたのは・・・、

「うわぁ、これが門司港駅なのですね~」(あつこ)

そう、門司港のシンボル、門司港駅であった。ネオ・ルネッサンス様式の左右対称の駅舎は門司港のシンボルとして長年この地にそびえ立っていた。

 その駅舎の前に少女たちが5人ほど立っていては、

「2人は出会い愛し合う~」

とライブをしていた。これを見て、理亜、はっとする。

「この人たちって・・・」

その理亜の言葉にハッピーさんはこう答えた。

「そう、この少女たちこそ、只今、人気急上昇中のユニドル、「博多小娘(はかたおとめ)」だよ!!」

この言葉にあつこは驚く。

「まさか、あの人気のユニドル、博多小娘がここで・・・」

 だが、このユニドルグループ博多小娘が繰り出す歌声に、理亜、

「でもこのユニドル、とても、歌声、いい、癒される~」

と心安らぐ感じになる。その歌声はまるで天使の歌声だと錯覚してしまう。音なんてない、伴奏すらない、だけど、アカペラで癒されるほどの実力を持っている、そう感じられるものだった。これにはあつこも、

「この実力になるまでかなり練習したのかもしれませんね」

と博多小娘の実力に脱帽してしまった・・・。

 

 そして、ライブ終了後、ハッピーさんは博多小娘に対し挨拶をする。

「私は法被を作っているハッピーさんといいます。よろしく」

これにはリーダーらしき少女から、

「あっ、あなたがハッピーさんですね。宜しくお願いいたします」

と挨拶をするとハッピーさんは博多小娘メンバー5人を立たせては、

「それでは写真を1枚撮ります!!」

といっては集合写真を撮ると共にメンバーそれぞれからユニドルにかける熱意を聞いてまわる。この集合写真をもとに法被をつくるのだという。ハッピーさんはそれくらい法被づくりに命を燃やしていた。もし、あまり知らないアイドルがいればそのアイドルのもとに行き本人たちに会うとともに写真を撮ってはいろんなことを聞く。それを法被に落とし込むのである。それくらいハッピーさんの法被づくりに賭ける熱意は半端ないものだった。だからこそ、ハッピーさんのつくる法被には全国にファンがいるのである。

 そんなハッピーさんの仕事にあつこは、

「とてもすごい・・・。これがプロなんだ・・・。なのに、私はサポーターとして本当にできているのだろうか・・・」

と自分のことを卑下する。ハッピーさんの法被に賭ける熱意はすごいものである。ただの法被1つにしても、本人たちのところに行く、その心意気は潔いものである。対して、自分は理亜と花樹のサポーターとしていろいろやってきた。だが、その2人のスクールアイドルへの思いはバラバラ、そんな2人に対しあつこはサポーターとして頑張ってきたのだが、十分納得のいくものではなかった。いや、2人のバラバラな思いにただついていくだけであった。これでは2人のサポーターとして十分にやっているのか自身が持てなかったのである、あつこは・・・。

 そんななか、ハッピーさんが理亜とあつこのもとに戻ってくるとこんなことを言いだしてきた。

「理亜ちゃん、あつこちゃん、2人とも、博多小娘のリーダー、愛さんが呼んでいるよ」

この言葉に、理亜、びっくりする。

「愛・・・、って、あの愛!!」

どうやら、理亜、博多小娘のリーダー、愛、のことを知っているようだ。そのため、ドキドキする理亜。

 とはいえ、呼ばれていることには間違いない。ということで、理亜とあつこはそのまま帰るハッピーさんとお別れをしては博多小娘のところまで行くこととなった。

 

「わ、私は・・・、スクールアイドルの鹿角理亜です!!宜しくお願いします!!」

博多小娘の前で動揺する理亜。これには、リーダーらしき少女から、

「あなたが理亜さんですね。ラブライブ!延長戦で活躍したグループの1人としてとても会いたかったです」

と言われると理亜も、

「は、はい・・・」

と動揺を隠せずにいた。むろん、あつこも、

「ま、まさか、あのFKO50の元センターに会えるなんて・・・」

とこちらも動揺してしまうも、そのリーダーの隣にいた少女から、

「たしかに私はFKO50の元センターですが、今はこの博多小娘のセンターなのです!!それを知っといて!!」

と高飛車のように言ってきた。

 そして、博多小娘のリーダーが自己紹介してきた。

「私の名前は秋葉愛、この博多小娘のリーダー兼プロヂューサーです。以後お見知りおきを・・・」

さらにとなりには元FKO50の元センターが自己紹介した。

「私の名前は中州天!!この博多小町のセンターであり、ラブライブ!で優勝したことがあるK9の元リーダーでもある!!」

その2人のことで、理亜、はっとする。

(秋葉愛・・・、こころあとH&H(はるかとハヤテ)らとともにスクールアイドルグループ、オメガマックスを結成、ラブライブ!優勝を果たすとともにスクールアイドル勝利至上主義を打ち破ったレジェンドの1人。そのスクールアイドル勝利至上主義を引っ張っていたのがK9・・・、そのリーダーが中州天・・・)

オメガマックス・・・、もうこの話を読んでいる者ならしているだろうが、ここでおさらいを。数年前、スクールアイドル界にはスクールアイドル勝利至上主義がはびこっていた。それは格上の相手が格下を見下す、「勝利こそすべて」の世界であった。それを打破したのがこころあやはるかにハヤテ、そして、愛などの8人組のスクールアイドルグループ、オメガマックス、であった。そのメンバーの1人が博多小娘のリーダー兼プロヂューサーのをしている秋葉愛であった。で、ここで初登場のなのがK9である。K9、それは福岡県博多にある高校、福博女子付属高校のスクールアイドルグループ・・・なのだが、そのスクールアイドル勝利至上主義をけん引してきたのがK9であった。その実力はなかなかのものであり、あのラブライブ!にて連覇を果たしたこともあった。そのK9を打ち破ったのがオメガマックスなのである。

 そんなレジェンド級の2人が目の前にいる、それには理亜もあつこも動揺を隠せずにいたのは仕方がないことだった。ただ、愛と天、理亜とあつこの表情をみては、

「そんなに動揺しなくても大丈夫だから。リラックス、リラックス」(愛)

「そのドキドキはあとのためにとっておきなさい!!」(天)

と2人の心を落ち着かせようとしていた。

 

 そんなかいもあってかすぐに理亜とあつこは心を落ち着かせると愛にこんなことを言いだしてきた。

「理亜さんのお姉さん、聖良さんから聞いています。「勝つことがすべて」「楽しむことがすべて」、その本質を知りたいのですね」

これには、理亜、

「あ、あの、姉さまと認識が・・・」

と驚きの声をあげる。どうやら、愛と理亜の姉の聖良とは認識がある・・・、

「いや、別に認識があったわけではありません。この前、メールで「自分の妹に「勝利こそすべて」「楽しむことがすべて」の本質を教えてください」とお願いされたのです」

どうやら、姉聖良、大事な妹のために先に愛たちにお願いをしていたようだ。これには、理亜、

(姉さま、ありがとうございます)

と姉の聖良に対し心のなかでお礼を言っていた。

 そんな理亜を受けてか、愛はついにその本質について語り始めた。

「ところで、理亜さんにとって「楽しむこと」ってどう思っている?」

すると、理亜、

「それはそれに対して楽しもうとしていること、です・・・」

とただたんにそう答えると愛はこんなことを言いだしてきた。

「たしかにそれに対して楽しむことだけど、本当にそれだけ?」

すると、理亜はこう答えた。

「好きになること・・・」

その答えを待っていたかのように愛はこう応えだした。

「そう、好きになること!!人はそれを楽しむことでそれが好きになる、好きになるからこそもっと楽しもうとする、その無限ループによって無限のパワーが引き出せるのです!!」

ただ、それについては、あのとき、ラブライブ!延長戦との姉聖良とあつことの心の会話にて聞いていたので理亜も知っていた。そのためか、理亜、

「たしかに言っている通りですけど・・・」

と言うも、愛、あることを理亜に尋ねてくる。

「でも、本当に理亜さんはそれをしていたのですか?」

この言葉に、理亜、ちょっと気がさわったのか、

「私はスクールアイドルが大好き!!だから、スクールアイドルを楽しんできた!!なのに、あのAqoursに負けた!!Aqoursにあって私にないものってなに?」

と愛に文句を言ってしまう。理亜の場合、Aqoursと同じくスクールアイドルを楽しんだ、それなのに、その「楽しむ」という思いがAqoursに負けた、というのだ。

 ただ、これには、愛、理亜にある指摘をする。

「理亜さん、本当にスクールアイドルを楽しみましたか?それが「手段」になっていませんか?」

その愛の言葉に理亜は、

「えっ・・・」

と驚く。そう、これまで理亜は「手段」として「スクールアイドルを楽しむ」ことをしてきたのである。「手段」、それは心の底ではなく、「○○だからこうした」というようなものだった。理亜はこれまで心の底から「スクールアイドルを楽しむ」ことをしてこなかった。「楽しむことが大事だから「スクールアイドルを楽しもう」という手段をとろう」としてきたのである、理亜は・・・。

 そんな愛の指摘に理亜ははっとする。

(たしかに、私、心の底から楽しもうとしてこなかった・・・。ただ、姉さまとの夢、ラブライブ!優勝しようと「スクールアイドルを楽しもう」としてきた。それって目的と手段があべこべになっている、ということにつながるね・・・)

そう、理亜の行動が「手段」になっていた原因、それは目的にあった。理亜の場合、深淵ある闇からなのか、「ラブライブ!に優勝する」という目的があった。その手段として「楽しむこと」をしてきたのである。対し、Aqoursはたしかにラブライブ!優勝という目的はあったが、それ以前に、「スクールアイドルを楽しもう」という目的ともいえる目的を自然としてきたのである。そこが理亜とAqoursとの違いであったのだ。「楽しむこと」の本質、それは、「心の底からそれを楽しもう」とするそのものだったのかもしれない。

 そして、愛はこんなことまで言ってしまう。

「「心の底から楽しもうとする」、その想い、それは無限です。無限だからこそ無限のループが生まれ、無限のパワーを生み出すことができるのです」

そう、心の底から楽しもうとするその想いは無限である。なぜなら、「楽しむ」という想いは人に無限の活力を与えるとともにどんどんそれに対して好きになっていく、そのためにそれをもっと楽しもうとする、その想いに上限がないからである。無限だからこそ人はそれに対して心の底から好きになりもっと楽しもうとするのである。そんな愛の力説に理亜も、

(私、そのことをあまり認識していなかった・・・。目から鱗、なのかもしれない・・・)

と納得の表情をみせる。理亜はたしかに「スクールアイドルを楽しもう」としてきた。それはその想い自体に無限のパワーをもつからだった。だが、深淵なる闇のせいか、それは手段でしかなかった。「ラブライブ!優勝」という目的、いや、深淵なる闇のせいかい、理亜は「楽しむことがすべて」、それを形だけしかしてこなかったのだ。それに対してAqoursは心の底からスクールアイドルを楽しもうとしていた。そこから繰り出される無限のパワーは形だけの理亜に対し圧倒的な強さをみせつけるには十分だった。それくらいAqoursは偉大、といえた。

 そんな目が点になる理亜に対し今度は点がしゃべり始めた。

「そして、「勝つことこそすべて」、それには限界がある。それがなにかわかりますか、調野あつこさん、元フィギュアスケートジュニア日本代表に近かった選手・・・」

この言葉に、あつこ、驚く。

「天さん、なぜ、それを・・・」

たしかにあつこは元フィギュアスケートジュニア日本代表に近かった。あつこは理亜と花樹のサポートを、いや、それ以前に、理亜と聖良の、Saint Snowのサポーターをする前はフィギュアスケートをしていた。それもただのフィギュアスケーターではない。ジュニア日本代表に近かったのである。中1のとき、あつこはフィギュアスケートの日本のジュニア大会で優勝したことがある。このとき日本代表にもっとも近かったのである。だが、そこがあつこの頂点であった。そこから先は・・・。

 そんなあつこに対し点はこう答えた。

「なぜあつこさんのことを知っているのか、それは、私もFKO50でセンターを務めていたからです。FKO50でセンターを務めていたとき、あつこさんのことを新聞で見ました。そこっであつこさんのことを知ったのです。頂点に立とうとしているもの同士、ひかれあうものなのです!!」

とでーんと言ってしまう。天は、昔、FKO50でセンターを務めていた。対して、あつこはジュニア日本代表になろうとしていた。2人とも頂点を極めようとしていたのである。そんな天にあつこもただ、

「ははは・・・」

と苦笑いするしかなかった。

 そんな天であったが、

「このことはいいのですが・・・」

と話をもとに戻すと自分の経験を踏まえてこんなことを言いだしてきた。

「私はずっと「勝利こそすべて」だと考えていました。ですが、それによりいろんなものを失ったような気がします。たとえば、人としての思いやりとか・・・」

そう、「勝利こそすべて」、それは人として大切なものなどを失うことにもつながってしまうのである。たとえば、人としての思いやり・・・。人は相手に対して思いやりをもつことができる。だが、「勝利こそすべて」を信奉すればまわりはすべて敵、とみてしまうことが多く、いや、無駄なもの、としかみられなくなり、人に対して思いやりをすることができなくなる。それ以外にも、人として、人格として大切なものをすべて失ってしまうことにもつながってしまうのである。

 そして、天は、「勝利こそすべて」、そのものにとって致命的なものを言ってしまう。

「そして、「勝利こそすべて」、それにより自分たちの体そのものを壊してしまうことにもつながってしまいます、あつこさんのように・・・」

そう、「勝利こそすべて」、その考えは勝利のためならなんでも許される、そのことを示しているのかもしれない。勝利のために人は一生懸命それに対する練習をする。それはある一定の範囲内であれば効率的に成長できるものである。だが、その範囲を超えたら、人の限界を超えたら、それは毒でしかない。たとえばドーピングである。人は勝利のためにある一定の限界まで体を鍛えたらそれ以上成長できないことが多い。その限界を超えるためにドーピングをするのである。だが、そのドーピングは表裏一体である。ドーピングの効果は絶大だがその副作用も大きい。その副作用によりドーピングをした者は体が次第にボロボロになってしまう。それは小学生にしてもしかり、プロの選手にしてもしかりである。また、ドーピングをしなくても限界を超えた練習をすればその人は体が壊れても仕方がなかった。それはあつこにも当てはまった。体の成長という誰にでも起きることによりあつこはフィギュアスケートにおいていつもとは違う感覚に戸惑いを感じていた。それにより成績が下がってしまったあつこは「このままでは勝てない」と思ったのか、それをカバーするかのごとく一生懸命練習をした。いや、限界を超えた練習をした。結果、中3のときに大ケガをして足にスティグマをもつくらい深淵なる闇を抱えたまま半引退生活を余儀なくされたのである。そrはあつこにとってとてもつらい経験だった。それもこれも「勝利こそすべて」の弊害だったのかもしれない。

 そんな天の言葉にあつこは、

「た、たしかにそうかもしれない・・・」

と認めてしまった・・・。

 そんなあつこに対し天は自分の経験を語った。

「私はFKO50でセンターをしたあと、私の母のスカウトを経てスクールアイドルグループK9のリーダーとして、いや、「勝利こそすべて」の権現としてスクールアイドル界において君臨しました。ですが、これによりまわりに対して人としての人格を否定することすらしていました。ですが、愛さんによって、オメガマックスによってそれが間違いであることを知ったことで私は目覚めました、「楽しむことがすべて」という考えに。そして、今、その愛さんとともに博多小娘として一生懸命ユニドルを心の底から頑張っています、楽しんでいます。だから、理亜さん、あつこさん、もきっと心の底からスクールアイドルを楽しむことができると思います。そのことを自覚してください」

そう、天も「勝利こそすべて」によって人生が狂合わせた1人であった。天にとってなにもかもが競争であった。アイドルのグループ内においてはセンターになるための競争が起きてしまう。さらに、その後のスクールアイドルという競争に打ち勝たないといけない、それらにより天は「勝利こそすべて」の考えに到達したのかもしれない。その考えのもと、激しい競争に打ち勝ってきた天はFKO50ではセンターを、K9ではリーダーとしてスクールアイドル界の頂点として君臨できたのである。だが、愛たちオメガマックスに敗れたことでその考えの愚かさを知った天はその考えを捨て、今は愛とともに「楽しむことがすべて」の考えのもと、ユニドルとして活躍しようとしていたのである。これには、あつこ、

「たしかに天さんの言う通りであすね・・・」

と納得していた。

 そして、2人の話を聞いたことで理亜はこう考えた。

(私はこれまでただ楽しむことだけを考えてkちあ。だかど、本当はそれは形だけしかなかった。なら、これからは心の底からスクールアイドルを楽しむことにする。楽しむことであのAqoursにも負けない無限のパワーを得る!!)

ついに真の理亜が目覚めたようだ。これまでは自分の深淵なる闇によって理亜は形だけ楽しもうとしていた。だが、それでは真の実力を発揮できない。そのため、これからは心の底からスクールアイドルを楽しむことをすればきっと無限のパワーを得ることができる、そう理亜は思うようになったのである。

 そんな理亜に対しあつこはこう考えた。

(理亜さんがついに目覚めましたね。なら、私もそんな理亜さんを助けるべく完璧なサポートをしないといけませんね!!)

あつこはこれまで理亜のことをサポートしてきた。それはSaint Snow第3のメンバーとして、そして、理亜・花樹組のサポーターとして理亜のことをしっかり支えてきたのである。そして、それはこれからも同じ・・・、いや、完全に目覚めた理亜がしっかり動けるように十分サポートしよう、と心のなかで決めたのである。

 そんな2人に対し愛はこう声援を送った。

「理亜さんにあつこさん、私たちと一緒に、スクールアイドルを、ユニドルを、一生懸命楽しみましょう!!そして、無限のパワーを手に入れてくださいね!!」

この愛の言葉に理亜とあつこは、

「はい!!」

と元気よくうなづいたのである。ただ、そんな2人を見ていた天からすれば、

「でも、あつこさんは・・・」

と首をひねってしまった。

 そんなときだった。突然、1人の少女が理亜のところにやってきては倒れてしまった、とても疲れたようにしながら・・・。

「って、花樹!!」(理亜)

そう、理亜たちの目の前で倒れこんできたのはランニングをしていた花樹だった。その花樹は理亜の前に倒れこむなりこんなことを言いだしてきた。

「あ、足が・・・痛い・・・」

その姿を見て愛はこんなことを言ってきた。

「もしかして、肉離れじゃ・・・」

そう、花樹、もっと練習しないといけない、と思い、一生懸命、いや、限界を超えてまでランニングをしてきたのである。そのため、花樹の体は悲鳴をあげ肉離れを起こしてしまったのである。

 そんな花樹に対し理亜はすぐに、

「花樹、しっかりしなさい!!さぁ、病院にいく!!」

と花樹を抱えると病院へと連れていくことにした。

 だが、花樹が病院に連れていく際、こんなことを花樹は言っていた。

「もっと練習をしないと・・・、もっと練習をしないと・・・、Aqoursに勝てない・・・、桜花に勝てない・・・、勝たないといけないんだ・・・」

この言葉に、あつこ、はっとする。

(えっ、まさか、花樹さん、「勝つことがすべて」という思いのせいで限界まで練習しようとしていたんだ・・・、昔の私のように・・・」

そう、あつこは気づいたのである、昔の自分みたいに、「勝つことがすべて」、その思いのために限界以上の練習を花樹はしていることを・・・。

 そんな昔の自分と重ね合わせたあつこはこう考えてしまう。

(昔の私みたいな花樹さんにしたくない。でも、私はただのサポーター。なにもできない・・・)

昔の自分みたいに、「勝つことがすべて」、その多いのせいで限界を超える練習をしてしまい大ケガをしてしまった自分と今の花樹を重ね合わせたあつこ、そのあつこであるが、自分は、ただのサポーター、だと思っていた、ラブライブ!延長戦前のあつこが戻ってきたかのように・・・。自分にはなにもできない、ただのサポーターだから、今のあつこはそう思っては悔しさに満ち溢れちた。

 そんなときだった。一瞬、あつこの手に水みたいなものが降りかかってきた。それには、あつこ、

(えっ、私、涙を流しているの・・・)

と自分の顔を鏡で見る。すると、そこには涙が・・・、一筋に涙が流れていた。どうやら、あつこ、どうすることもできない、その悔し涙を流していたようだ。

 そんなあつこに対し天はこう言ってきた。

「あつこさん、あなたならその涙を越えることができるかもしれません。あなたが持つスティグマさえ越えることができれば、昔のフィギュアをしていたときみたいに輝くことができれば、きっと、もう1度輝くことができると思います。だから、あつこさん、そのスティグマを越えてください」

その天の言葉はあつこのすべてを知っている、いや、あつこが持つスティグマを、深淵なる闇を知っているかのような素振りであった。これには、あつこ、

「えっ!!」

と驚いてしまった・・・。

 ただ、そんなことを言った天はあつこに対し、

「それじゃ、あつこさん、花樹さんと理亜さんのところに行ってくださいね」

と言ってはあつこを花樹と理亜のところへと送ってしまったのである。

 ただ、あつこは、このとき、天の言葉に戸惑いを感じていた。

(スティグマを越える・・・、それって、私、できることなの・・・。このスティグマがある限り、なにもできないのに・・・)

 

 こうして、「楽しむことがすべて」の本質を知ることで一皮むけた理亜、天の言葉に動揺を隠せないあつこ、自分の信条のせいでケガをおってしまった花樹、この3人はこのあとどうなってしまうのだろうか。そして、ついに秋へと突入する。急展開を迎える第9話、お楽しみに。

 

To be connted

 

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ATUKO said 「Are you RREDY?」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第9話 (1)

「これは肉離れですね」

北九州からもどってから数日後、あつこと理亜は花樹を連れて整形外科から診断を受けていた。その医師からは花樹の足の様子について「肉離れ」と診断したようだ。実は、花樹、ラブライブ!決勝でAqoursに、桜花に負けたというショックからか、「勝つことがすべて」、その信条のせいか、いや、それ以上に、「Aqoursに、桜花に勝つには今以上に練習しないといけない」という思いが強くなってしまい、北九州の旅行中はたった1人で走り込みをしていたのだ。だが、運悪く、その走り込みの、いや、限界を越えての走り込みをしたせいか、足に激痛が走ったのである。理亜とあつこはこの花樹の痛がる姿を見て肉離れと判断、函館に戻り次第、花樹を整形外科へと連れていったのである。

 ただ、花樹はその医者の判断を聞きつつも小言でこうつぶやいていた。

「もっと練習をしないと・・・、もっと練習をしないと・・・」

そのつぶやきは理亜とあつこのもとにも届いていたのだが、理亜は花樹に対しこう訴えた。

「花樹、今は治すことが先決!!練習、しないように」

 だが、これには、花樹、こう反論する。

「オ・・・、花樹は練習しないといけないのです!!じゃないと勝つことができない・・・」

そんな花樹に対し理亜も反論。

「練習するより休め!!」

この2人、まるで、龍と虎、そんな感じになっていた。

 そんな2人を見つつ、あつこは花樹の足をみるとこうつぶやいた。

「花樹さんの足、肉離れ・・・。でも、それだけで済んでよかったよ・・・。私みたいに永遠に残るスティグマ(聖痕)があったら、花樹さん、泣いてしまうよ・・・」

 そして、あつこは自分の足を見る。そこには大きな傷跡が残っていた。それはあつこにとって大きなスティグマ、深淵なる闇であった。そんなスティグマを見ながらあつこはこんなことを考えてしまう。

(このスティグマがある以上、私はなにもできない。フィギュアスケートも、スクールアイドルも・・・)

そんなあつこであったが、そんなとき、理亜が少し困ったような表情をしていた、こう言いながら・・・。

「う~、こんな花樹の様子だとあれに間に合わないじゃない・・・」

これには、あつこ、

(えっ、理亜さん、なにか困っている・・・)

と思ってか理亜に対し、

「理亜さん、どうしたのですか?」

と尋ねてみる。すると、理亜、こう答えた、困ったような素振りをみせながら・・・。

「聖泉祭まであと1ヵ月!!これじゃ、私1人でのステージに鳴るじゃない・・・」

これには、あつこ、

「あっ!!」

と唖然となってしまった・・・。

 

 聖泉女子高等学園「聖泉祭」、いわゆる学園祭である。毎年9月の下旬ごろに行わわれる学園祭であるが聖女の文化系の部活にとってこの学園祭は自分たちの活動の発表の場であった。むろん、体育系の部活にとってみても部費を稼ぐ絶交の場であるがそれ以上に文化系の部活からすればこの学園祭はビッグイベントであった。

 そんんあ聖泉祭に対し理亜は悩んでいた。それは・・・、

「私1人でステージにでるなんて・・・。うぅ、どうすれば・・・」

そう、理亜たちスクールアイドル部もこの聖泉祭に参加することになっていた。スクールアイドル部、実は文化系の部活であった。また、ラブライブ!決勝で全体の3位という実績もあった。そのため、聖泉祭、メインステージ、それもメインイベントとしてライブが開催されることになっていた。

 だが、今の花樹の状況だと練習などの子とも考えると理亜1人でライブをしないといけなかった。そのため、理亜は困惑していたのだ、これまで理亜1人でライブをしたことがなかったから・・・。これまでは理亜の隣には聖良が、花樹がいた。しかし、その花樹が肉離れでライブに参加できない、そのため、理亜1人でライブができるのか心配でしかなかったのだ。

 そんな理亜に対しあつこはこんな提案をしてきた。

「それだったら、千歌さんたちAqoursにゲストとして参加してもらったら・・・」

たしかにAqoursをゲストに呼ぶことは妙案だった。

 だが、理亜はあつこに対し現実を伝える。

「私もそのことを考えた。でも、今のルビィたち、とても忙しいから、呼べない・・・」

そう、実は、今、Aqoursはとても忙しかった。というのも、一連の木松悪斗関連の揉め事で悲劇のヒロインとなった桜花とともに、一躍、時の人になっていたのである。あのラブライブ!での出来事により全国的に人気が大爆発、それはあのμ's以上のものになっていた。そのため、Aqoursを呼ぼうにも呼べなかったのだ。

 そんなことを知っている理亜はあつこにあることを伝える。

「それに、今、ダイヤたち(卒業生3人)を含めたAqoursオリジンとして新曲をだす予定。たしか、「Happy Party Trein」・・・、そのPVのためにルビィと曜が九州に行く予定・・・」

そう、今のAqoursは、桜花、梅歌、松華の3人を含めたAqours Sun Galaxyなのだが、今度、昔のAqours、ダイヤ、鞠莉、果南たちの卒業組、千歌たち3年生、ルビィたち2年生のAqoursオリジンとして新曲をだすことになっていたのだ。その曲の名は「Happy Party Train」、そのPVの下見としてルビィと曜は視察旅行をすることになっていたのだ。

 ただ、理亜はそれに加えて変なことを言ってしまう。

「でも・・・、ルビィたち、今度の視察旅行は「○○を使う」って言っていたはず・・・。でも、今の鉄道ってJRじゃなかったかな・・・」

 とはいえ、今の状況だと理亜1人だけのライブになってしまう、これにはあつこも困ったらしく、

「理亜さん1人だけのライブ・・・、一体どうすればいいのでしょうか・・・」

と悩んでしまった。

 そんああつこと理亜に対しこれまで黙っていた花樹はこんな提案をしてきた。

「それだったら、オ・・・花樹がパッと治して・・・」

むろん、これには、理亜、

「それは却下!!花樹は安静にいるように!!」

と注意すると、花樹、

「う~」

とふてくされてしまった・・・かと思ったら次にこんな提案をしてきた。

「それじゃ、花樹の代わりにあつこさんがでればいいんじゃないかな」

この花樹の提案に、あつこ、

「そ、それは・・・」

と戸惑いをするも、花樹、おいそれとばかりにこんなことを言ってしまう。

「それに、あつこさんは、昔、フィギュアの選手だったんでしょ!!なら、スクールアイドルのライブもできるんじゃないかな?」

そう、あつこは、昔、フィギュアスケートの選手だった。それもただの選手ではない。中1のときに日本のジュニア大会で優勝したことがある実力者であった。そのことを最近知った花樹があつこに対し簡単に言ってしまったのである。

 だが、さつこはそんな花樹の提案に、

「・・・」

と無言になってしまった。いや、自分の足をさする。そのさすっているところはあつこのいうスティグマ、深淵なる闇、であった。そのスティグマに触りながらあつこはこう思ってしまう。

(私はこのスティグマがある以上、なにもできない・・・。スクールアイドルなんてできない・・・)

そんな困惑するあつこに対し花樹はまだ言い続けた。

「あつこさん、やってみてくださいよ・・・」

 そんな花樹に対し理亜はこう注意する。

「花樹、あつこはとある理由でできない!!少しは黙ってって!!」

これには、花樹、

「はい・・・」

となぜか下向きになりながらそう答えてしまった・・・。

 そんな花樹を見てか、あつこ、こう思ってしまう。

(私はこのスティグマがある限りなにもできない・・・、フィギュアスケートも、スクールアイドルも・・・。でも、このままだと聖泉祭のステージは理亜さん、たった1人・・・。一体どうすればいいわけ・・・)

 

 とはいえ、聖泉祭のライブのことについてはなにも決まらずにこの日の会合はお開きになってしまった・・・。その後、あつこは夕日のあたる廊下を歩いていた。そのとき、1人の女子生徒があつこの前に飛び出してはこうあつこに言ってきた。

「あつこ、お願い、考え直して!!フィギュアスケート部に入って!!」

 これには、あつこ、頭を抱えてこう思ってしまった。

(う~、まただ・・・。なんで諦めないわけ・・・、フィギュアスケート部の部長・・・)

そう、あつこに声をかけてきたのは第5話で登場したフィギュアスケート部の部長であった。

 その部長はあつこに対しこう言ってきた。

「あつこ、あなたのスティグマはすでに治っているのよ!!あなたなら昔みたいに活躍できるはず!!だから、フィギュアスケート部に入って!!」

この部長の言葉にあつこはこう反論する。

「言っておくけど、私のスティグマは治っていない!!だから、私はフィギュアスケートはできないの!!」

あつこのスティグマ、それは(再びになるが)過去に起きた出来事によってできた古傷であり、あつこにとってそれが深淵なる闇であった。あつこは中1のときの日本ジュニアの大会で優勝したのだが、その日を境に成績が落ちてしまったのだ。というのも、このときのあつこの体に第二次性徴が起きていたからである。これにより、あつこの体は成長しこれまで感じていた感覚にズレが生じてしまったのである。この結果、成績は落ちていくばかり。まわりからは罵詈雑言の嵐をあつこは味わった。そのため、あつこは「勝たないといけない」と焦るようになり、、限界を越える練習をしてしまう。結果、あつこは中3の大会でのジャンプの際に態勢が崩れてしまい転倒、壁に激突したのである。このとき、あつこの足に深い傷が残ってしまった。これをあつこはスティグマと呼び、このスティグマを見てはなにもできない、フィギュアスケートも、スクールアイドルもできない、ただ人をサポートすることしかできない、そう考えるようになっていたのである。

 だが、それでもフィギュアスケート部の部長はあつこに対しこう言ってきた。

「でも、あつこ、早朝のときにトレーニングをしてるでしょ!!」

これには、あつこ、こう反論する。

「そ、それは・・・、理亜さんのトレーニングのお手伝いをするために・・・」

それでもフィギュアスケート部の部長はあつこに対しこう責めてくる。

「それでも体が動いていたでしょ!!なら、昔みたいに、フィギュアスケート、できるのではないの?」

この部長の言葉に、あつこ、こう言ってしまう。

「フィギュアスケートはもう無理!!」

 すると、フィギュアスケート部の部長、すぐにあつこにこう訴える。

「あなたはすでにスティグマを完治している!!それなのに、スティグマが治っていない、というのはただの逃げでしかない!!あつこ、そのスティグマを乗り越えて!!」

このフィギュアスケート部の部長の言葉を聞いた瞬間、あつこは、一瞬、ある人の言葉が頭のなかをよぎった。

「そのスティグマを乗り越えてください!!」

その言葉は北九州の旅行のときに出会った(レジェンドスクールアイドルオメガマックスの)愛の言葉だった。愛はあつこのスティグマのことについて知っているがごとくあつこに対し「スティグマを乗り越えてください」と言ってきたのだ。このとき、あつこは

(私はただのサポーター。なにもできない。どうすることもできない。1人で「勝つこと」だけを追い求めようとしている花樹さんやたった一人で悩んでいる理亜さんに対してどうすることもできない・・・)

その言葉を思いだしたあつこは涙を流した。いや、そのことを思いだしたのか、その涙を見せまいとしてか、そのフィギュアスケート部の部長に対し、

「もうなにも言わないで!!」

と言ってはその場から立ち去ってしまった。

 そんなあつこをみてか、そのフィギュアスケート部の部長は、

「あつこ・・・」

と言ってはただそこで立つことしかできなかった。

 そんなとき、物陰からある少女があつこたちのやり取りを見ていた。その少女はあつこが走っていくなりこうつぶやいてしまった。

「花樹・・・、あつこさんの秘密、知ったかもしれない・・・。でも、これはこれで使えるかも・・・」

 

 一方、理亜はというと・・・、

「そのいちご、10個ください」

と買い物をしていた。理亜の実家は茶房を営んでいた。その買い出しを理亜はしていたのである。いつもなら聖良の仕事なのだが、その聖良が留学しているため、今は理亜の仕事となっていた。

 そんな理亜に対し果物店のおばさんは理亜にこう話す。

「あら、理亜ちゃん、今日も中島廉売で買い物かい。遠くから来ているのにえらいね」

これには、理亜、

「それなら、おまけ、して」

と言ってくる。

 と、ここで、今、理亜が買い出しをしているところについて解説しよう。理亜が買い出しをしている場所は函館の路面電車、堀川橋電停近くの中島廉売である。函館には3つの市場がある。2つは函館ではお馴染みの函館駅近くの函館朝市、2つ目は新川町電停近くのはこだて自由市場、3つ目はこの中島廉売である。うち、函館朝市はどちらかというと観光客向けであり、函館市民は主に自由市場と中島廉売にて買い物をするようにしていた。ただ、理亜の家からだと少し遠いのだが、それでも新鮮な果物を安く仕入れることができるため、わざわざ理亜は遠くの中島廉売にきては果物を安く仕入れていたのである。

 そんななか、理亜はあることに気付く。

「それにしても、お客さんの数、前より少なくなっている気がする・・・」

そう、いつもならにぎわっているはずのお客さんの数が少なく感じてしまっていたのである。

 それについては果物屋のおばさんが内情を話してくれた。

「ほら、ここ最近、あるディスカウントショップがこのあたりにも進出して原価以下の値段で販売しているのよ。だから、お客はすべてそっちに流れているわけ・・・」

これには、理亜、

「えっ。ここで売っているものって質も値段も保証付きなのに・・・。なぜ・・・、そんなに安いの・・・」

と驚くとともにおばさんに言うとその安さのからくりをおばさんは教えてくれた。

「どうやら、農家さんたちなどにとって不利になるような条件で専売契約を結んでいるようだよ」

これには、理亜、

「それっていけないことじゃ・・・」

と言うも、おばさんは正直な気持ちを理亜に伝えた。

「それくらいそのディスカウントショップが力をもっているのよ。その力をもってすれば私の店なんて一ころだよ・・・。まったく・・・」

これには、理亜、

「そんなこと、私、いや・・・」

と少し怒りつつも困惑したような表情をしていた・・・。

 

 一方、そのころ、花樹の家では・・・、

「よしよし、函館のまわりに農家との独占契約はほとんどがとれた。あとはどれだけ搾取すればいいのかのとどれだけ市場を独占できるかだ・・・」

と花樹の父親は不敵な笑みをこぼしていた。というのも、花樹の父親が経営しているディスカウントショップの経営がうまくいっているのだ。函館のまわりにある農家の多くとの独占契約を力でもって結ぶことができたのである。そして、その産物を自分のディスカウントショップに販売しているのだが、かなり安く販売しているためか、函館市における農産物販売の市場を独占しようとしているのだ。それがあまりにも順調だったためか花樹の父親はかなり上機嫌であった。いや、それ以上に、

「このままいけば木松悪斗様を迎え入れる準備が整う。いや、木松悪斗様はここ函館で復活するのだ!!はは!!」

と笑い転げていた。って、木松悪斗は、今、堀のなか、なのだが、花樹の父親はその木松悪斗に対しどんなことをしようとしているのだろうか・・・。それについてはあとで話すことにして、

「ただいま・・・」

と花樹が家に帰ってきたようだ。そんな花樹に対し花樹の父親はこんなことを言いだしてきた。

「おお、この負け犬がどうした?」

この父親の言葉に花樹はただ、

「・・・」

と黙るしかなかった。花樹の父親の力は絶大だった。それに、花樹はラブライブ!夏季大会北海道最終予選、決勝と負け続けている。そのため、父から負け犬といわれても言い返すことができなかった。

 そんな花樹に対し花樹の父親はこんなこと言いだしてきた。

「いいか、花樹、この世の中は勝者のみが生き残るものなのだ。だから、お前みたいな負け犬なんて存在価値がないんだ!!「勝利こそすべて」なんだ!!いいか、わかったか、この負け犬よ!!」

この父親の言葉に、花樹、

(私はただの負け犬なんだ・・・。勝たないと意味がないんだ・・・)

と自分のことを貶してしまった。そのためか、花樹、ちょっと苦しそうな表情をみせると花樹の父親はそんな花樹に対し、

「いいか、もう負けは許されないんだ!!負けたら、わかっているよな」

と脅しをかけてきた。これには、花樹、

ごくっ

とつばを飲み込むことしかできなかった・・・。

 そんなときだった。突然、花樹に助け舟をだす人が現れた。花樹を脅す父に対し、突然、

「お父さん、それくらいにして。ごはんにしますよ」

これには、花樹の父親、

「ふんっ!!花樹、いいか、今度こそ勝てよ!!」

と捨て台詞をはいて食卓へと消えていった。そのためか、花樹、

(う~、今度こそ勝たないといけないんんだ・・・)

と父親の言ったことを反芻していた。

 そんな花樹に対し花樹に助け舟を出したその人は花樹に対しこう告げてきた。

「花樹、それより着替えてきなさい」

この人の言葉に花樹はただこう応えた。

「うん、わかった・・・、お母さん・・・」

そう、花樹に対して助け舟をだしてきたのは花樹の母親だった。この母親、父と違って花樹に対して優しく接していた。それはまるで昭和のお母さん、といった感じであった。そんな母親の言葉により自室へと行った花樹であったが、心のなかではこれから先の戦いについてどう勝っていけばいいのかシミュレーションをしては、

(はやく肉離れを治してもっと練習しないと・・・。でも、それだけじゃ足りない気がする・・・。あと1つ、あと1つだけ、なにか起爆剤になるもの欲しい)

自分の実力UPもそうであるが、なにか自分たちにとって起爆剤といえるものが欲しい、花樹はそう思たのである。そうすれば勝利をぐっと引き寄せることができる、そう花樹は思ったからであった。

 そんな起爆剤について花樹はこう考えてしまう。

(起爆剤・・・、起爆剤・・・。あっ、あつこさん!!あつこさんが起爆剤になるかも!!)

その思いは花樹にとって、いや、あつこ、理亜にとって新たな方向へと進むものになることはこのときの花樹は思っていなかった・・・。

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第9話(2)

 とはいえ、花樹の行動は早かった。翌朝、

「あ~、眠い・・・。でも、あつこさんを仲間にするためにも頑張らないと・・・」

と花樹はあつこの家の前であつこがでてくるのを待っていた。あつこの住む家は、昔、ロシアの領事館だったところを改装したものだった。洋館の姿はとても美しいものであったがあつこにとってみればそれが自慢でもあった。

 そんななか、

「まだ出てこないのかな・・・」

と花樹が待っている、そのとき、

「花樹、そこで、なにやっているわけ?」

と声をかけてくる少女がいた。これには、花樹、

「えっ、理亜さん!!」

と突然のことで驚いてしまう。そう、花樹に声をかけてきた少女とは理亜だった。

 その理亜は花樹に対しこう告げる。

「花樹、あつこの家の前でなにをやっているわけ。あつこが出てくるのを待っているわけ?」

あまりにも図星。これには、花樹、

「そ、それは・・・」

とあまりに動揺する。むろん、これには、理亜、

「ものすごくわかりすぎ・・・」

と唖然となってしまった。

 そんな理亜だったが、花樹に対し、

「でも、なんであつこが出てくるのを待っているわけ?なにかしたいわけ?」

とその理由を問う。これには、花樹、

「そ、それは・・・」

と動揺しつつも口を閉ざしてしまう。それでも理亜は、

「花樹、あつこに対してなにかさせたいわけ?」

と責めてきた。

 そんなときだった。突然、花樹は理亜に対して、

「あっ、理亜さん、隠れて!!」

と理亜と一緒に花樹は物陰に隠れてしまう。これには、理亜、

「なんで、私まで隠れないといけないわけ?」

と花樹に文句を言うも、花樹はただあつこの家を見るのみだった。

 そして、あつこの家に動きがあった、

ガチャ

という音とともにあつこが外に出てきたのだ。あつこは、この時間、理亜と一緒に朝練するのが日課だった。なので、今日も理亜と一緒に朝練する予定だった。

 ただ、その理亜が今日はまったく来ていない、ということであつこは理亜のことが心配になったのか、

「理亜さん、遅れてくるなんておかしいですね。なにかあったのでしょうか・・・」

と心配そうな声をあげていた。これには、ちかくでみていた理亜から、

「はやくいかないと・・・」

と行こうとするも花樹は痛いながらも足で踏ん張り、

「理亜さん、あまり出ないで!!」

と理亜を抑えていた。

 そんな理亜がまったくこない、というわけか、あつこ、

「理亜さんがこないですね・・・。ちょっとおかしいですね・・・」

と来ないことにさらに心配になってしまった。

 ただ、このまま待っていても仕方なない・・・と思ったのか、あつこ、まわりを見渡しては、

(う~ん、理亜さんがまだ来ないし、まわりには誰もいない・・・。なら、あれをやってもいいよね・・・)

と思ったのか、突然、

「えいっ!!」

とその場でジャンプをしてしまう・・・。ただ、そおジャンプはただのジャンプではなかった。一回転、二回転、三回転・・・。フィギュアスケートでいうところのトリプルジャンプであった。いや、そのジャンプを連続して飛ぶ。それはまるでフィギュアスケートの演技を見ているようだった。

 そして、その演技が終わったあと、あつこは少し息を整えると、

「ふ~、私のスティグマも発動しなくてよかった・・・」

と安心した・・・ところ、突然、

「あつこさん、すごい!!」

とそこの物陰から花樹と理亜が出てくる。これには、あつこ、

「えっ、一体、どうして・・・」

と驚きの表情になってしまった。花樹はこのときこう思ってしまう。

(これだけすごいジャンプを見せていたのだからスクールアイドルとしてもやっていけるじゃん!!なら、今度、「勝つ」ためにもあつこさんをスクールアイドルに・・・)

そう、花樹は思った通り、あつこはスクールアイドルとしてやれるくらい回復していたのである。

 そのためか、花樹、あつこに対しこう言いながら詰め寄った。

「あつこさん、とてもすごいジャンプではありませんか!!これならスクールアイドルとして活動できるじゃないですか!!」

これには、あつこ、

「そ、それは・・・」

と言葉につまってしまう。だって・・・、

(たしかに飛んだのは飛んだよ。でも、私のスティグマはいつ発動するのかわからないもの・・・)

とあつこは自分のスティグマがいつ発動するのか恐れていたから・・・。

 ただ、それをしらない花樹はさらにあつこに詰め寄る、こうお願いしながら・・・。

「あつこさん、スクールアイドルとして頑張ってみませんか?あつこさんなら立派なスクールアイドルとしてになれるはずです!!」

 むろん、これには、理亜、

「数は、あまり無理をさせないように・・・」

と花樹に注意する。スティグマについてなにも知らない花樹に対し理亜はあつこのスティグマを知っている。そのため、花樹は温子に対し無理をさせないように注意したのである。

 だが、それでも花樹は、

「あつこさん、スクールアイドルになってください!!」

と必死になってあつこに食い下がった。

 と、ここで、

「ちょっと待った~」

と物陰から1人の少女が出てきてはこう声をあげた。これには、あつこ、

「えっ、なんでここにいるの、フィギュアスケート部の部長!!」

とこれまた驚きの声をあげる。走、物陰から出てきたののあhフィギュアスケート部の部長であった。

 その部長はあつこに対しこう叫ぶ。

「私も、あつこのジャンプ、見ていたよ!!これならフィギュアスケート復帰もできるはずだよね!!」

そう、この部長もあつこの今さっきのジャンプを見ていたのだ。そのため、フィギュアスケート部の勧誘をしに飛び出してきたのである。

 そのためか、花樹とフィギュアスケート部の部長のあいだで口論となる。

「スクールアイドルになるべきなんだ!!」(花樹)

「いや、フィギュアスケートに復帰してもらう!!」(フィギュアスケート部の部長)

この言い争いに、あつこ、

(私はスクールアイドルにもフィギュアスケートにもどっちもならない!!だって・・・)

となにか言いたそうになったのか、2人に対しこう反論してしまった。

「私はどっちにもならない!!だって・・・、だって・・・、私、スティグマがあるから!!スティグマが開いたら絶対に迷惑をかけてしまうから!!」

その言葉とともにあつこは家に戻ってしまった・・・。これには、花樹、

「あつこさん・・・。まさかあのあつこさんにスティグマ(聖痕)があるなんて・・・」

と声をあげてしまった。このとき、花樹は知った、あつこにスティグマがあることを。これには、理亜、

「花樹、だから無理やりあつこを責めるのは・・・」

と花樹に注意をしようとしていた。

 だが、そのとき、フィギュアスケート部の部長がこんなことを言いだしてきた。

「でも、あつこのスティグマ、もう治っているのだよ・・・」

この部長の言葉に花樹ははっとする。

「あつこさんのスティグマ、すでに治っているわけ・・・」

 このとき、花樹のなかである考えが浮かび上がった。

(あつこさんのスティグマはもう治っている。なら、それが本当かどうかその主治医に確認したらいいかも!!だってその主治医は花樹の・・・)

 

 そして、花樹が訪れたのは・・・、

「教えてください、あつこさんのスティグマは治っているのですか?」

そう、ここは花樹が通っている病院であった。そこの主治医にあつこの容体について聞いていたのであった。と、いうのも、

「先生、あつこさんの主治医と私の主治医が同じ人だってわかっています。なので、教えてください、先生、あつこさんのスティグマは治っているのですか?」

そう、あつこの主治医と花樹の主治医は同じ人だったのだ。というのも、花樹に主治医を紹介したのがあつこだったのだ。なので、花樹とあつこの主治医は同一人物であった。

 だが、やっぱりではあるが、主治医、首を縦に振らず、逆に、

「それは患者の守秘義務のため、言えません」

ときっぱりと断ってしまった。ただ、それでも、花樹、負けじと、

「教えてください、先生!!」

と主治医に食い下がる。

 そんな花樹をとめる少女、

「花樹、これ以上はやめなさい。先生が困っているでしょ!!」

 だが、それすら花樹は効かなかった。だって・・・、

「理亜さん、止めないでください!!あつこさんのことを聞きたいのです!!」

と一緒にきていた少女、理亜の言葉にすら聞かずに花樹はただ、

「先生、教えてください!!」

の一点張り。これにはさすがの理亜も、

「は~」

とため息をつくだけだった。

 そんなときだった。突然、

ガラガラ

と診察室のドアが開くと主治医に向かって、

「あの~、あつこさんのことで相談が・・・」

という女性の姿があった。これには、理亜、はっとしたのか、

「あ、あなたは・・・、あつこのお母さん・・・」

と声をあげる。そう、ここに来たのはあつこの母親だった。

 そんなあつこの母親を見たのか、花樹、

(これはチャンス!!)

と思ったのか、あつこの母親に、花樹、猛アタックする。

「あつこさんのお母さん、ちょっと聞きたいのですが、あつこさんのスティグマ、治っているのですか?」

むろん、これには、理亜、

「花樹、それ、失礼・・・」

と言おうとしたのですが、花樹、それでも、

「お願いです、教えてください」

とあつこの母親に食い下がる。

 すると、あつこの母親は酷なことを言いだしてきた。

「花樹さんって言いましてね。同じスクールアイドル部ということで正直に話しましょう。たしかに、あつこのケガ、つまり、スティグマはもう治っております」

このあつこの母親の言葉に、花樹、すぐに反応する。

「やっぱりあつおさんのスティグマは治っているんだね!!」

 ところが、あつこのは保谷は驚愕の事実を花樹たちに伝えた。

「ですが、精神的に、「もうみんなに迷惑をかけたくない」、その一心であつこ自身はまだスティグマが治っていない、いや、もし、なにかあれば自分のスティグマが開いてしまう、発動してしまう、と思っているのです・・・」

そう、あつこが自分のスティグマのことを心配する原因、いや、深淵なる闇の正体、それは「まわりの人たちに迷惑をかけたくない」、そのことだった。あつこのスティグマはすでに完治していた。だが、あつこ自身はそのスティグマは完治していないと思い込もうとしていたのである、もし、なにかをすればそのスティグマが発動、つまり、また開いてみんなに迷惑をかけてしまうから・・・。これは中3の大会で大ケガしたとき、まわりの人たちから罵詈雑言の嵐を受けたから。大ケガしたとき、あつこに期待していた、いや、あつこに対し「単なる甘えだ!!」とか「もっともっと練習しろ!!」などあつこのことなんて考えずにいろいろと言ってきた人たちがこぞって「期待外れ」「本当に根性が足りないからだ」と罵詈雑言をかけてきたのである。これもあつこのことなんて考えておらず、逆に自分たちの期待を裏切った、そんな恨みに満ちたものだった。それをあつこはその人たちの罵詈雑言を真に受けてしまったのだ。それをあつこは今でも引きずっていた。あつこは他人のことを第一に考えるくらい優しい子である。そのため、サポーターとして、理亜、聖良、花樹のサポートをしてきた。ところが、その優しい性格が故に、みんなに迷惑をかけたくない、その一心で自分のなかに深淵なる闇を、スティグマを、作り出したのかもしれない・・・。

 そんなことを聞いたのか、理亜も花樹に対し口を開いた。

「私も、あつこのスティグマ、知っていた。だけど、自分もそのスティグマのことを知って、あつこには無理をさせたくない、そう思って、なにも言わなかった・・・」

そう、理亜もあつこのスティグマについて知っていた。というのも、花樹は理亜の部に加入するまえ、奇跡のSaint Aqours Snowとしてのクリスマスライブ以降、理亜はあつこを含めたユニットを結成していたのだが、理亜の深淵なる闇からくる暴走のせいでそのユニットは空中分解してしまったのだ。むろん、あつこも自分のスティグマが開いてしまうことを恐れて理亜のユニットから離れてしまった。その後、紆余曲折を経てあのラブライブ!延長戦により理亜とあつこはよりを戻したもののまたもや自分のスティグマのことを気にしたためか、あつこは理亜のユニット入りを断ったことがあったのだ。(詳しくはSNOW CRYSTAL 序章をお読みください)

 だが、花樹は違った。

「そんなの、関係ない!!あつこさんがそんなスティグマを持っていたも関係ない!!あつこさんはそのスティグマを乗り越えないといけないんだ!!」

花樹はあつこの母親や理亜の言うことを聞いても自分の意思を曲げなかった。というのも、

(勝利のためにはあつこさんの力が必要!!どんな手を使ってでもあつこさんを仲間にいれてやる!!)

と、「勝利こそすべて」、その考えのもと、あつこを仲間に入れて勝つこと、Aqoursに、桜花に勝つことをしたい、そう思っていたから。そのためにも花樹はあつこを仲間に入れようとしていたのだ。

 そんな花樹に対しあつこの母親はこんなことを言いだしてきた。

「私としてもあつこが再び舞い上がることを期待しております。そのためにも、花樹さん、理亜さん、どうか、あの子のことを宜しくお願いします」

あつこの母親の願い、それはあつこが再び立ち上がることだった。このままだとあつこはずっと陰のまま、サポーターのままでいることになる。だけど、このままではなく、フィギュアスケートをしていたときのように輝いているあつこを見てみたい、そんな思いだった。

 そんなあつこの母親の言葉を受けてか、理亜、こう考えてしまう。

(たしかにあつこのお母さんはそう言うけど、あつこ自身、どう思っているわけ?無理やりではちょっと・・・)

理亜にとってあつこの母親のいうことも一理あるものの、あつこの意思はどうなるのか、それが心配だった。

 ところが、それすら打ち破る者がいた。むろん、花樹だった。花樹はあつこの母親の言葉を真に受けてしまったのか、あつこの母親に向けてこう宣言してしまう。

「わかりました、お母さま。花樹、絶対にあつこさんを仲間にしてみせます!!」

花樹にとってみればあつこの意思なんて二の次であった。むしろ、あつこの母親という強い力をバックにつけたのである。その力があればあつこを仲間にすることができる、そう強く思えたのである。

 そんな花樹の姿を見て、理亜、こう考えてしまう。

(私としてもあつこが私のユニットに入ってくれるなら嬉しい。だって、私とあつこはSaint Snowという宝物で結ばれているから。でも、そんなあつこは深淵なる闇がある、スティグマがある。それを花樹はどうするわけ?)

あつこと理亜はSaint Snowという宝物で結ばれている。ところが、それと同じようにあつこには理亜と同じくらいの深淵案る闇が残っていた。いや、それどころか、目に見える形であつこのなかにスティグマとして残っている。それを花樹はどう対処するのか心配になったのである。

 そんなとき、花樹は理亜にあるお願いをした。

「理亜さん、お願いです、理亜さんが暴走したときのことを教えてくれませんか?」

 

 翌日・・・、

「あつこさん、お願いがあります、私と理亜さんのユニットに・・・入ってください!!」

花樹はあつこに会うなり、開口一番、こんなことを言ってきたのである。むろん、これには、あつこ、

「何度も言っているけど、それは・・・」

と断ろうとする。もちろん、花樹の隣にいた理亜すら、

「花樹、これ以上は・・・」

とあつこのことを考えては花樹に注意する。

 そのときだった。花樹、

(それだったら、奥の手、出す!!)

と思ってかこんなことを言いだしてきた。

「あつこさん、思いだしてください、理亜さんが暴走していたときのことを。あつこさんは、このとき、理亜さんのために頑張ってきたんでしょ。そのときはスティグマのことなんて考えていなかったでしょ!!」

たしかにその通りかもしれない。理亜が暴走していたときはあつこはスティグマのことについて考えていたものの、ラブライブ!延長戦のときはスティグマのことなんて気にせずに理亜のために尽くしていたのである。そのときのことを花樹はあつこに突きつけたのである。

 そんな花樹からの責めに、あつこ、

「そ、それは・・・」

と言葉に窮してしまう。あまりに図星のことを言われたからだった。

 そんなあつこに対し花樹はあるお願いをした。

「花樹、そんなあつこさんと一緒にスクールアイドルをしたい!!あつこさんなら立派なスクールアイドルになれると思います。だから、あつこさん、一緒にスクールアイドルをしましょう!!」

それは花樹からの精一杯の思い?であった。いや、目をウルウルさせ、花樹、精一杯、そう訴えてきたのである。むろん、これは花樹の芝居なのだが、

(あの桜花に勝つためにはあつこさんの存在が不可欠。だからこそ、花樹、ここはあつこさんを攻め落とす!!)

とある意味必死になっていた。

 まぁ、そんな花樹の訴えにあつこはちょっと心揺さぶられようとしていた。

(私とスクールアイドルをやりたい・・・。それって・・・)

花樹からの目の訴えは他人に対しては優しいあつこからすれば心揺さぶられるものがあった。自分のスティグマについてあまり気にしていないときがあったことを花樹から指摘され動揺しつつもその花樹から一緒にスクールアイドルをやろうと目をウルウルさせながら訴えているところ、それはあつこにとって弱いところを花樹はついてきた、といえるのかもしれない。そのため、あつこはそうなりそうになりつつなっていた。

 だが、ここで思わぬ敵が現れてしまった。

「あつこ、あなたにとってフィギュアスケートが青春だったはずだよ!!」

これには、花樹、その人に向かてこう叫ぶ。

「あっ、フィギュアスケート部の部長!!なんでここにいるわけ?」

そう、花樹の邪魔をしてきたのはあつこのフィギュアスケート復帰を願う、フィギュアスケート部の部長だった。

 その部長はあつこに対しこう訴える。

「あなたはフィギュアスケート一筋だったでしょ!!なら、フィギュアスケートに復帰するのが筋ってもんじゃない!!」

フィギュアスケート部の部長からすればあつこがフィギュアスケートに復帰したほうがいい、といえた。あつこは小さいときからフィギュアスケートをしてきたのである。いわば、あつこからすればフィギュアスケートは青春そのものであった。そのあつこがフィギュアスケートをしない、というのであれば青春そのものを不意にすることにもつながる、そんなことをさせない、それがフィギュアスケート部の部長の思いであった。まぁ、これについては、花樹、

「フィギュアスケート部の部長、どっかに行って!!しっ、しっ!!」

とフィギュアスケート部の部長を排除しようとしていた。

 そんな2人の様子を見て、あつこ、あることに気付く。

(2人とも、もしかして、私のスティグマのことなんてあまり関係ない、と思っているのでは・・・)

そう、2人とも、あつこのスティグマのことについてあまり気にしていなかった。たしかに、2人とも、あつこのスティグマを軽視していた。特に花樹にいたってはラブライブ!延長戦であつこが自分のスティグマについてあつこがあまり気にしていなかったことを口にしていた。それがあつこの中で少し引っかかっているようだった。

 だが、そんな花樹から思いがけない言葉がでてくる。

「花樹、こう思うの、

 

スティグマ、あるなし、関係ない!!もし、あつこさんがやりたいことをしないのなら悔いが残ってしまうよ!!それなら、なにも考えずに悔いが残らないようにするべきだよ!!」

 

この花樹の言葉にあつこははっとする。

(私のスティグマ関係なし・・・。自分の悔いが残ることがないことをする・・・。それって・・・、私になにかを期待しているわけ・・・。花樹さん、もしかして・・・、私がなにかをしたい、と思っているのかな・・・)

あつこにとって花樹の今さっきの言葉は意外なものだった。自分のスティグマのことなんて考えずに自分の悔いが残らないようにやりたいことをすればいい・・・、その言葉は今のあつこにとって大事なことなのかもしれなかった・・・。

 だが、ここにきて、花樹の様子がおかしかった。それは・・・、

(って、お・・・、花樹、なにを言いたかったわけ?なにを言ったのかな・・・。頭が破裂しそうだよ・・・)(花樹)

そう、花樹は字bんが言った言葉を理解できずにいたのである。実は、自分が発した言葉、それは花樹が意図せずにただたんに言った言葉だったのだ。それは誰かに体が乗っ取られて言った、そんな感じであった。なので、花樹自身、自分の発した言葉についてはなにも理解できずに頭のなかがパンクしそうになっていた。

 そんためか、花樹、あつこに対し言い訳する。

「え~と、え~と、オ・・・、花樹はね・・・、なにを・・・、言いたいのか・・・というと・・・、え~と、え~と、それはね・・・」

 とはいえ、これであつこも変わる・・・わけでもなく、すぐに自分のことについて考えてしまうあつこ。

(でも、私にはスティグマがある・・・。たとえ治っていてもいつ開くかわからない・・・)

自分のスティグマについてつい考えてしまうあつこ。これでは堂々巡りである。いや、それどころか、あつこ、花樹とフィギュアスケート部の部長に対しこんなことを言ってしまう。

「私はなにもできないんだ・・・。私のスティグマはいつ開いてもおかしくないんだ・・・。だから、私は・・・」

その言葉のあと、あつこ、

「もう私のことはほっといて・・・」

と言ってはどっかに行ってしまった。これには、理亜、

「花樹、だからいったのに・・・。なぜ、あつこのことを・・・」

と花樹に対して言おうとするも花樹はこう言い切ってしまう。

「でも、あつこさん、きっと、戻ってきますよ・・・」

それと同時に花樹はこう思っていた。

(だって、桜花に勝つためにはあつこさんの力が必要なのだから・・・)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第9話(3)

 結局、あつこは、その日、保健室で1日を過ごし家へと帰っていった。そのとき、自分の母親からこんなことを言われてしまう。

「お母さんね、あなたのやりたいこと、全面的に応援するからね。だから、あまり自分を責めないでね・・・」

まるでなにかを言いたかったような感じ。これには、あつこ、

(私だって、いろんなこと、やりたいよ・・・。でも、そうしたら、私のスティグマ、開いちゃうんだよ!!だから、なにもできあい・・・。みんなに迷惑をかけるから・・・)

と自分のスティグマが開くとみんなに迷惑をかける、そのことにあつこは苦しんでいた。自分のスティグマが開いてしまう、それは自分がなにもできなくなる、つまり、みんなに迷惑をかけてしまう、そのことにつながる、これがあつこにとっての深淵なる闇であった。

 そんな母親の言葉と花樹の言葉によりあつこはさらにこう考えてしまった。

(私がスティグマを持っている限り、どんなことすら、自分がやりたいことすらできなくなっちゃう・・・。でも、悔いが残らないようになにかをする、それってどうすればいいわけ・・・)

あつこのなかにスティグマがある限りどうすることもできない、それを防ぐ方法を知りたい、そんな思いがあつこのなかで現れたのかもしれない。

 そんなとき、

プルル

とあつこのスマホが鳴りだした。これには、あつこ、

「あっ、電話だ!!」

と言ってはその電話をとった。

 すると、

「あっ、あつこ、元気でしたか?」

と女性の声が聞こえてきた。この声を聞いて、あつこ、少し困惑したような声で、

「あっ、聖良さん・・・」

と電話の主に声をかける。そう、あつこに電話をしてきたのは聖良だった。

 その聖良、困惑したようなあつこの声を聞いたのか、すぐに、

「あつこ、なにか困っていることがあるのですか?」

と尋ねてきた。

 すると、あつこ、こう思ってしまう。

(ここはごまかしてもすぐにバレる。なら、ちゃんと正直に言わないと・・・)

聖良はこれでも人の心を読むことに長けていた。あのAqoursでさえも聖良のまえではどんなことでも見透けられてしまう、そんなこともあり、ごますことなんてできなかった。いや、聖良は第三者の視点で物事が見れるため、聖良の評価は絶対、といえた。その聖良があつこの声を聞いてなにかに悩んでいる、ということは百も承知だったのだ。

 そんなわけで、あつこ、正直に今悩んでいることを聖良に話した。

「実は、聖良さん、花樹さんから「なにも考えずに悔いが残らないようにやるべきだ」と言われたのです。でも、私、このスティグマがある限り、なにもできかに。みんなに迷惑をかけるから。どんなこともできない。そう思ってしまうのです。でも、私、いろんなことをやりたい!!どうすればいいわけ?私、聖良さんの代わりなんてできない・・・」

 このあつこの言葉のあと、聖良、

「それなら、私たちのグループチャットに招待します。そこで自分の悩みを打ち明けるべきかもしれません」

そう言うとSNSアプリのグループチャットに招待するためのQRコードをあつこのスマホに送ってくれた。あつこ、そのQRコードを自分のスマホに呼び込むとSNSアプリのグループチャットが立ち上がった。

 すると、そこには、

(鞠莉)「あっ、ニューカマー(新入り)の登場ですねぇ~」

(ダイヤ)「あつこあsん、こんにちは。黒澤ダイヤです」

(果南)「って、2人とも、ぶれていないわね・・・」

と、Aqours卒業組3人が現れた。そう、このグループチャットは聖良と鞠莉、ダイヤ、果南のグループチャットであった。

 そのグループチャットにおいて聖良がこんなことを言いだしてきた。

(聖良)「それでは、今からビデオチャットで話すことにしましょう」

その言葉のあと、5人はビデオチャット画面に切り替えた。そこには、(あつこのスマホには)聖良、鞠莉、ダイヤ、果南の姿が表示されていた。

 すると、ダイヤはこんなことを言いだしてきた。

「あつこさん、私たち先輩があつこさんの悩みを聞いて差し上げます。なので、あつこさん、ここは正直に話してください」

これには、あつこ、

「わ、わかりました・・・」

と、今さっき、聖良が話したことを、自分の悩みをダイヤたち3人にも話した。

 すると、ダイヤ、こんなことを言いだしてきた。

「それだとまるで鞠莉さんと同じ気がします」

さらに果南も、

「これって私と鞠莉のことだよね・・・。ちょっと恥ずかしいけど・・・」

と言うと、あつこ、

「それってどういうこと?」

と鞠莉に東都、鞠莉、昔話を始めた。

「実はですね・・・」

それはあmだAqoursが、鞠莉、果南、ダイヤ、の3人しかいない、いや、鞠莉、ダイヤ、果南がまだ1年生のときに元祖Aqoursだったときのことだった。それを鞠莉は話し始める。

「実は私たちがまだ1年のとき、果南、ダイヤとスクールアイドルをやっていたときのことで~す。マリーは親から留学の話があったので~す。しかし、マリーは果南、ダイヤとスクールアイドルをしたい、その思いで一生懸命やっていたので~す。でも、マリー、足をInjury(ケガ)をしてしまったので~す。でも、そのケガをおして東京のスクールアイドルのイベントに出場しようとしましたが、果南とダイヤはマリーのことを思って棄権したので~す。そのため、マリーとダイヤ、果南とは仲たがいが起きてしまい、元祖Aqoursは自然消滅したので~す。それについてマリーは悔いが残りました」

そう、詳しいことは鞠莉が話したが、鞠莉の将来のこともあり、ダイヤ、果南は鞠莉のことを思ってきつい練習のせいでケガをしたもののイベントに強行出場した鞠莉の思いとは反してスクールアイドルのイベントを棄権したのである。これにより鞠莉はそれに対する悔いが残ってしまったのである。

 さらに鞠莉の話は続く。

「でも、その悔いを晴らすため、マリーは浦の星に戻ってきたので~す。そして、千歌っちたちのおかげでまた3人でスクールアイドルをすることができたので~す。こうしてその悔いはなくなりました~」

そう、その悔いを晴らすために鞠莉は3年生のときに浦の星にもどってきた。そして、千歌たちのおかげでその悔いを晴らすことができたのである。

 それを踏まえたうえで、鞠莉はあつこに対し力強く金言を与えた。

「あつこ、あなたにとってその悔いが残っては昔のマリーみたいになるので~す!!なら、その悔いを残すべきではあ~りませ~ん!!フルスロットルにやるべきで~す!!」

そう、鞠莉をはじめとする聖良たち4人の答え、それは、昔の鞠莉みたいに悔いが残らないように全力でやることだった。人というのは悔いが残れば一生それについて悔いてしまいがちである。なら、その悔いが残らないように全力でその物事をやるべき、なのかもしれない。

 ただ、それについて、あつこ、こう言い返す。

「でも、私のなかにスティグマが・・・」

そう、あつこを苦しめる元凶、それはあつこのなかにあるスティグマ、だった。そのスティグマがある限り、あつこはどうすることもできないのである。

 だが、そんなもの、鞠莉はかんたんい吹っ飛ばしてしまう。それは次の鞠莉の言葉によるものだった。

「そんなもの、関係ないで~す!!だって、もうあつこのスティグマは治っているので~す!!なら、もう大丈夫で~す!!スティグマなんてあつこの思い過ごしで~す!!」

そう、鞠莉の言う通りであった。あつこのスティグマはすでに治っていた。ある意味、あつこの思い過ごしであった。なので、どんなことをしてもそのスティグマは開くことはないのである。

 だが、それでもあつこはこう訴えた。

「でも、このスティグマが開けば、きっと、みんなに迷惑をかけるかもしれない・・・」

そう、あつこが恐れていること、それは、このスティグマが開けばきっとみんなに迷惑をかけることになる、ということだった。みんなに迷惑をかけたくない、そお思いがある限り、あつこはどうすることもできないのである。

 だが、それでも鞠莉は反論する。

「そんなの関係ないので~す!!そのときはそのときなので~す!!むしろ、あつこ自身、「スティグマが開いてほしくない」とわがままをいっている気がするので~す!!そんなのナンセンスで~す!!」

この鞠莉の言葉に、あつこ、

「・・・」

と無言になってしまう。いや、図星を突かれたのである。あつこ自身はみんなに迷惑をかける、そう主張しているのだが、裏を返すと、あつこ自身、そのスティグマを開いて欲しくない、というわがままを言っている、そう言われてもおかしくなかった。

 そんなあつこに対し聖良がこう助言する。

「あつこ、あのときのことを思いだしてください。ラブライブ!延長戦であつこは理亜のために働いてくれたことを・・・」

そう、このときは自分のスティグマのことなんて考えずに自分の意思で理亜のために動いていたのである。たとえば、理亜に「Believe Agein」の振付を覚えさせるためにあつこが振付をしたDVDを作成したことなど・・・。

 そして、聖良はあつこに対しこう力強く訴えた。

「あつこ、あなたのスティグマは単なるまやかしです!!あつこなら絶対に大丈夫です!!悔いが残らないようにあつこのしたいことをしてください!!それがあつこにとって新しい自分へと変わるために必要なことです!!あつこ、自分がやりたいことをしてください!!」

 その聖良の言葉に、あつこ、自分のなかでなにかが変わっていくものを感じた。

(あっ、なんか、私のなかでなにかが変わろうとしている・・・。なにか不安に満ちたものが消えていく・・・。私、なにかしたい、と思えるようになっていってる・・・)

そんな温子の思いを手助けするがごとく、ダイヤ、果南、鞠莉からもあつこに声援が送られる。

「あつこ、やってやるので~す!!チャンスは無限大で~す!!」(鞠莉)

「でも、スティグマが開いても大丈夫ですからね!!](果南)

「私がとてもいい医者を紹介してあげますから。まぁ、あの桜花さんを治した天才なのですがね・・・」(ダイヤ)

って、ダイア、しれっと大事なことを話していたような気が・・・。まぁ、正直にいうと、あの桜花のケガを治すように手配してくれたのはダイヤたちであった。千歌たちから桜花がケガをしたことを聞きつけたダイヤたちがすぐにスクールアイドルのネットワークを駆使して東都大学のはるかに連絡したのがもとの始まりだった。

 とはいえ、そんなダイヤたちの声援を受け、あつこ、

(私、決めたよ。私、これからは・・・)

とついに決心したかのように聖良たちに対しこう宣言した。

「私、悔いが残らないようにいろんなことをやってみる!!自分のスティグマが開いてもいい!!どんなことだってやってやる!!」

 その瞬間、

(あっ、なんか、私のなかにあった闇が消えていく感じがする・・・)

と、あつこのなかにあった深淵なる闇、スティグマのせいでなにもできない、そんな闇が消えていくのをあつこは感じていた。そうあつこはついに自分のなかにある深淵なる闇に打ち勝つことができたのである。

 そんなあつこに対し聖良はこんなことを口にした。

「これであつこのなかにある闇は消えたのですね。なら、あつこ、これからなにをするつもりなのですか?」

 すると、あつこはこう口にした。

「私は・・・」

 

 翌日、あつこは花樹と理亜、フィギュアスケート部の部長を呼んでこう宣言した。

「私、蝶野あつこ、これからは自分のスティグマに関係なくいろんなことにチャレンジしたいと思っております。これまで迷惑をおかけして申し訳ございません」

これには、理亜、

「あつこ、やっぱりあつこはあつこだ。あつこなら絶対に乗り切れると思った」

とあつこのことを褒めると、花樹、フィギュアスケート部の部長、ともに、

「ちなみに、これからはスクールアイドルをしていくはず!!」(花樹)

「いや、やっぱりフィギュアスケートでしょ!!だって、あつkならこれまでの経験があるフィギュアスケートをやるべきなのだから!!」(フィギュアスケート部の部長)

とあつこに迫るも、あつこ、そんな2人に対し、

「2人ともちょっと待って!!」

と言っては2人をけん制するとともに2人に向かってこう話始めた。

「私、蝶野あつこはこれから・・・」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第9話(4)

 そして、ついに聖泉祭のときがきた。理亜・花樹組のライブはメインステージの麺イベントだった。そのライブがついに始まろうとしていた。それは司会の掛け声で始まった。

「それでは、ラブライブ!夏季大会で全体の3位になったスクールアイドル部理亜・花樹組です!!」

そのまわりからは、

「あの猪鹿蝶のうちの猪鹿だよね。本当に大丈夫なの?」

「ただの3位、だよね・・・。それってすごいことなのかな・・・」

という声がまわりから聞こえてきた。ただ、そのことなんてきにせずに司会は、

「それではどうぞ!!」

とステージの緞帳をあげた。

 すると、観客たちははっとした。

「えっ、3人いる!!たしか2人組だったはず・・・」

そう、ステージには3人いたのだ。いや、すぐにそれが誰なのか観客たちはわかった。

「えっ、あつこ先輩がステージに立っている!!」

そう、ステージに立っていたのは、理亜、花樹、そして、これまでマネージャー兼サポーターとして活躍していたあつこだった。

 そのあつこはステージの上でこう思っていた。

(私はスクールアイドルとして頑張ってみせる!!理亜さん、そして、花樹さんのためにも!!)

 

 あつこが、理亜、花樹、フィギュアスケート部の部長を集めた日、3人に向かってこう話し始めた。

「私、蝶野あつこはこれからスクールアイドルとして頑張っていく。フィギュアスケートは引退かな?」

このあつこの言葉にフィギュアスケート部の部長はあつこにこう訴えた。

「ちょっと待って、あつこ。あなたならフィギュアスケート選手として得た技術を活かせば絶対に復活できるはずだよ。なのに、なんでスクールアイドルを選んだの?」

フィギュアスケート部の部長からすればあつこの答えに納得していないのかもしれない。たしかにあつこはフィギュアスケートのジュニア代表になれるくらいの技術などを得ていた。だけど、あつこはそれらを捨て去りスクールアイドルという分野に進むことにフィギュアスケートの部長は納得していなかったのだ。

 だが、あつこはフィギュアスケート部の部長に対してこう反論した。

「私がスクールアイドルを選んだ理由は2つ、1つはスクールアイドルのサポーターとしてこの1~2年、やってきたから!!」

たしかにその通りであった。蝶野あつこ、別名、Saint Snow第3のメンバー、そういわれるくらいこの1~2年は、スクールアイドルの、理亜、聖良、花樹のサポーターとしてやってきたのである。対してフィギュアスケートからはかなり離れていた。その点が重要視されたのかもしれない。

 だが、あつこからの答えは続いた。あつこ、2つ目の理由を答えた。

「そして、2つ目の理由は、私のまわりには、理亜さん、花樹さん、そして、聖良さんやAqoursのみんなといった沢山の仲間がいるから。私はこの仲間たちと一緒にスクールアイドルを楽しむ!!」

そう、仲間たちの存在であった。あつこの場合、フィギュアスケートはまわりがライバルだらけ、ということもあり、仲間といえる仲間がいなかった。対して、スクールアイドルなら、理亜に花樹、聖良にAqoursといった仲間たちがいた。それこそがあつこにとって励みになったのである。そして、その仲間たちと一緒にスクールアイドルを楽しむ、そうあつこは決めたのである。

 そんなあつこの思いにフィギュアスケート部の部長は白旗をあげた。

「わかった、わかった。私の負けだよ。私はあつこから手を引くよ」

これには、理亜、花樹、ともに、

「「ヤッター」」

と喜んでいた。あつおがついにスクールアイドルとして2人とともにやることを決めたからだった。

 そして、フィギュアスケート部の部長はあつこに対しこう声援を送った。

「あつこ、あなたがそういうならスクールアイドルをめいいっぱい楽しみなさい!!これは部長命令だからね!!」

 その言葉のあと、フィギュアスケート部の部長はその場を去っていった。その後ろ姿を見てあつこはこう思った。

(部長、迷惑をおかけして申し訳ございません。ですが、私はスクールアイドルをめいいっぱい楽しみます)

その思いを胸にあつこは聖泉祭のステージに立っていたのである。

 

「私たちはこのステージに立っています。ここで私たちの全力をみせたいと思います。どうですか、理亜さん、花樹さん」

このあつこの言葉、理亜と花樹、2人にしか聞こえていなかった。だが、それでも2人からすれば、

「あつこ、私、あつこと一緒にスクールアイドルができてうれしい。だから、あつこ、私たちの力、存分にだしていく!!」(理亜)

「え、え~、あつこさん、頑張りましょう・・・」(花樹)

(ちょっと花樹の言葉が少しこわばったが・・・)それでもあつこの声に呼応していた。

 そして、3人の息を合わせると司会はついにライブの始まりの声をあげた。

「それでは、まず、最初の曲はこの聖泉祭のために書き下ろした新曲、「Triangle」です!!どうぞ!!」

 その司会の声とともにあつこがついに声をかける。

「理亜さん、花樹さん、Are you redy?」

この声とともに2人はこう叫ぶ。

「OK!!」

 そして、ついに3人のライブが始まった・・・。

 

第9話 挿入歌 「Triangle」

 

すべての線がまじわるとき、

無敵のトライアングルが生まれる

 

(R:

生きている私たち  すべてがまじわる)

そのとき生まれる  新しいハーモニー

(R:

パーフェクトな   トライアングル)

それこそ私たちの  新しいかたち

 

 

(あつこ、あつこ!!)

と、理亜さんは心のなかであつこのことを呼ぶとあつこも、

(はい、理亜さん、私です。あつこです)

と心のなかで語りかける。そう、このときには、あつこ、理亜、ともに心でつながっていたのである。それもこれも2人がSaint Snowという宝物があるからにほかなかった。その宝物を通じて2人は心のなかで会話をしていたのである。

 そんな2人であったが、理亜、あつこに対してこう尋ねてくる。

(ところで、あつこ、スティグマ、大丈夫?)

すると、あつこはこう答える。

(えぇ、スティグマは大丈夫!!開いていないよ!!)

そのあつこの言葉に、理亜、

(それなら大丈夫!!)

と喜んでいた。

 そんな喜ぶ理亜の姿にあつこは、

(でも、理亜さん、これまで心配をおかけして申し訳ございません)

とお詫びをするも、理亜、そのことなんて気にせず、逆に、

(特にそのことは気にしていない。むしろ、あつこがスクールアイドルになってくれたことがとてもうれしい!!)

とうれしい言葉を投げくれてくれた。これには、あつこ、

(理亜さんにそのことを言われるととてもうれしいです!!)

と喜んでいた。

 そして、話題は別の方へ・・・。

(ところで、花樹さんはどうでしょうか?)

とあつこが言うと理亜も、

(花樹もこのライブで気付いてくれるはず)

と花樹の方を見る。

 すると、花樹亜h必死になっていた、こんな風に考えながら・・・。

(オ・・・、花樹だってやるんだから!!)

 

 

すべてを構成する  ものにはすべて

トライアングルが  つくられている

だからこそ私たち  パーフェクトな

トライアングル   すべてがすべて

私たちの力が    およんでいる

 

 

 花樹は少し苦しんでいた。というのも、ライブ開始前、肉離れが完治して以降必死になってライブの練習をしていた花樹にあつこはこんなことを言っていたからだった。

「花樹さん、お願いがあります。今日は勝負のことなんて考えずに楽しむことだけを考えてください」

 これには、花樹、

(えっ、「勝利こそすべて」の考えのもと、あつこさんを仲間にしたのにどうして勝負のことなんて考えちゃいけないわけ・・・)

となにか言いたそうになるも、あつこは自分の発言の本意を語ってくれた。

「今日はなんの勝負をするわけではありません。つまり、「勝つこと」なんて考えなくていいのです。今日くらいは勝つことなんて考えず、このライブを楽しみましょう!!」

 ただ、これにより、花樹、

(たしかに今日は勝負する相手なんていないけど、「勝つことこそすべて」が花樹の信条だよ!!たとえこのときでも・・・)

とまたもやなにか言いたそうになるも、あつこから、

「ちゃんと楽しみなさい」

と釘を刺されてしまい、さすがの花樹も、

「は、はい・・・」

とうなづくしかなかった。

 その花樹であったが、「勝つこと」という概念が消えているのか、変な思いを感じていた。

(ただパフォーマンスをしているだけ・・・。なのに、なんか、ワクワクしている・・・。理亜さんとあつこさんと一緒にもっとやりたい!!)

それはスクールアイドルとしての地が花樹のなかで騒いでいるためかもしれない。ただ、それを知らない花樹にとってみればこれまで感じたことがない、そんな感覚だった。

 だが、

(でも、この感覚、なんかいやじゃない・・・)

とその感覚になれたのか、ついに花樹はこのような思いに達しようとしていた。

(それどこか、この感覚、新鮮な気がする・・・。体が勝手に動く・・・。もっと踊りたい・・・、一緒にやりたい・・・、そんな気がする・・・。これって・・・、理亜さんが言う・・・、楽しむこと・・・なのかな・・・)

花樹のなかにもようやく「楽しむ」という気持ちが現れてきたようだ。

 なのだが、その奥底である闇が・・・、花樹のなかにある深淵なる闇が動き回っていた。「楽しむこと」、それを実感している花樹であったが、それでもあの思いはまだ健在であった。

(でも、これは戦いじゃない・・・。戦いのときは勝つことがすべて・・・。勝たないといけないんだ・・・。勝たないと・・・)

 とはいえ、「勝つこと」以外の思いを感じた花樹はこんなことを考えるようになった・・・。

(まぁ、戦いのとき以外には楽しむこともあるもんだね・・・)

 

 

トライアングル   すべてをつくりだす

トライアングル   パーフェクトな形

トライアングル   どんなことでも

トライアングル   成し遂げられる

できないことはない それくらい無敵

トライアングルこそ 無敵のしるし

 

トライアングル   パーフェクトなかたち

だからこそ私たち  強く生きていく!!

 

 

 そして、曲が終わった。その瞬間、

ワー!!

という声が響き渡った。はじめての3人でのパフォーマンス、それはあの観客たちですら感動するものになっていた。

 でも、まだライブは続いていた。そのためか、理亜、

「続きまして・・・」

と言っては次の曲へと続いていった。

 こうして、Saint Snow時代の曲を含めた数曲ものライブは大成功を収めるとともに、理亜・花樹組はあつこを加えた理亜・花樹・あつこ組として再出発することとなった・・・。

 ただ、理亜のある思いは別のところにあった・・・。

「理亜さん、あのときに決めたグループ名はまだつけないのでしょうか?」(あつこ)

「あつこ、それについてはごめん。まだあの名前を名乗ることができたいと私は思う。3人の思いがいつも一緒じゃないとね・・・」(理亜)

理亜が決めていた3人のグループ名、それは延長戦の次の日、2人が決めたあのグループ名であった。それをあmだ名乗れない、それは今の理亜にとって、まだ、そのときではない、そのことを指し示すものだったのかもしれない。

 とはいえ、3人での再出発を果たすことができた。理亜、花樹、あつこ、果たしてこれから先、どうなっていくのあろうか・・・。それは次の文章でわかるかもしれない。

 

 そして、1か月後・・・。

「ルビィたちはさらなる高みへと上っていった!!私たちも頑張らないと!!」

と理亜はネット記事を見ながらそう発言していた。というのも、ルビィたちAqoursオリジンがリリースした「Happy Party Train」、通称「ハピトレ」はリリースしてからすぐにミリオンセラーを記録、Aqoursの名は日本中に知られ渡ったのである。

 そんな理亜の言葉に花樹はこう反応する。

「理亜さん、頑張るもいいですけど、そんなに固くならないでください。(戦うとき以外では)スクールアイドルに楽しむことが大事なのです!!」

というとあつこからも、

「そうですよ、理亜さん。私たちは私たちのペースでいきましょう!!」

と声をかけてきた。

 ただ、このとき、花樹はこう考えていた。

(Aqoursが、桜花が先に進んでいく・・・。このままでは追いつくことができない。オ・・・、花樹は「勝つこと」だけを考えるべきなのだろう、勝負においてでは・・・、ラブライブ!においてでは・・・。なんとかしないと・・・)

自分よりも先へと行くAqoursと桜花、それに焦りを感じていた・・・。ただ、そんなことは今の理亜とあつこは知らなかった。とはいえ、このあと、「勝つこと」と「楽しむこと」、それにより花樹があの者によって苦しめられるとはこのときの花樹は知らなかった・・・。

 

 一方、そのころ、花樹の父親はある計画の最終段階へと向かおうとしていた。

「さて、あともう少しで函館支配計画は完成する・・・。あとは・・・、函館のシンボル、あのデパートを・・・、打ち倒すのみだ!!」

あることを考えていた。それは函館のデパートを・・・するものだった。それは彼が崇拝するあの男、木松悪斗のある計画によるものだった。それは果たして・・・。

 

 そいうわけでして、ついに3人組となった理亜たち。あつこはついに自分のなかにある深淵なる闇、そして、スティグマを克服した。だが、それにより物語はついに新しい典型へと進むこととなった。果たして、花樹の父親の悪だくみとはなんなのだろうか。そして、理亜、花樹、あつこ、3人の運命はいかに。それは、次回、話すことにしよう。

 

 そんななか、花樹の母親はおばあちゃんの遺品整理をしていた。

「ふ~、やっぱり本家の遺品の数は膨大だね・・・」

と言いつつ遺品の入った箱を整理する花樹の母親。その最中、

ひらり

と、1枚の紙、いや、なにかが印刷された透明なフィルムが出てきた。

これには、花樹の母親、

「あらっ、なにかしら?」

とそのフィルムを拾うとそのフィルムを見て不思議そうになる、こう言いながら・・・。

「あらっ、これってなにかのQRコード?」

そう、そのフィルムにはQRコードが印刷されていた。ただ、それについては花樹の母親はなにもわからなかった。

 ただ1ついえること、それは、このフィルムがのちにこの物語において重大なものをもたらすことになることだけだった・・・。

 

To be contuned

 

NEXT Story is

 

KAZYU said 「Let’s Start New US!!」,RIA said 「We are ・・・」

 

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第10話 (1)

 少女は冬のある日、夢をみた。その少女はおばあちゃんに対し自分の夢を語った。

「俺、絶対にアイドルになる!!」

 そして、月日は流れ、高校に入学する前、少女はスクールアイドルに、Aqoursに出会った・・・。そして、スクールアイドルは高校生なら誰でもなれるアイドルであることを知るとその少女はおばあちゃんに自分の夢を語った。

「Aqoursとして、スクールアイドルとして活躍する!!」

「スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝して、おばあちゃんに、深紅の優勝旗、それをみせてやる!!」

そのゆめはおばあちゃんとの約束となった。

 だが、その約束は、夢は、もろくも崩れ去った。

「おばあちゃん・・・」

少女のおばあちゃんは亡くなってしまった・・・。死因は不明・・・。突然のことだったので誰からも看取られることがなかった・・・。いや、殺された・・・、とも言われていた・・・。だが、その死因は不明である・・・。とはいえ、その少女は心の支えを失った・・・。

 さらに、この日を境にその少女の運命は大きく変わった・・・。おばあちゃんがいなくなったことでその少女の父親からきつい締め付けをされてしまう。

「いいか、お前、いや、花樹、これからは私の言うことを聞け!!男言葉を、俺を、絶対に言うな!!もっと女らしくしろ!!」

これによりその少女のアイデンティティは、心が崩れ去った・・・。

 ただ、その少女にはおばあちゃんに代わる、心の支え、をこのころから持つようになる。それはその少女の心が崩れる少し前、おばあちゃんとのお別れの日・・・、おばあちゃんと言われた白骨遺体の目の前の出来事だった。

(もうおばあちゃんはいない・・・。だけど、そのおばあちゃんとのぬくもりを・・・、おばあちゃんと誓ったあの約束を・・・、俺の胸の中で残すことができる!!)

その想いのもと、少女亜hあるものを持ってきた。それは十字架の形をした小さなペンダントだった・・・。

 そのペンダントであるが・・・、それはその少女がラブライブ!優勝という夢をおばあちゃんに語ったあと、

「そんな花樹にプレゼントさ」(おばあちゃん)

「えっ、プレゼント?」(少女)

「そう、もし、私になにかがあったときはこのペンダントを私の代わりにするんだよ」(おばあちゃん)

「うん、わかった・・・」(少女)

とおばあちゃんがその少女に渡したものだった。

 そして、その少女のペンダントの蓋をその少女は開けると目の前にある白骨遺体の一部を粉々にしてそのペンダントのなかにいれてしまった・・・、そのなかになにかがあるとも知らずに・・・。さらに、その少女は近くのスタッフに対しこう告げた。

「スタッフ!!お願いだ!!この遺灰で・・・、ダイヤを・・・作ってくれ!!」

 そして、その少女の小さな願いは成就された。おばあちゃんの遺灰は小さなダイヤモンドとしてその少女の十字架上のペンダント中央に光っていた。その少女は、毎日、その十字架上のペンダントに向かって・・・、

「オ・・・、花樹、おばあちゃんとの約束を、夢を、叶えてみせるね・・・」

その少女のおばあちゃんnとの夢は、約束は、その少女を支えるものとなった・・・と、同時にそれ自身がその少女の深淵なる闇となり、その闇がその少女を苦しめるようになってしまった・・・。

 いや、それ陣が闇になったわけじゃない。その闇はその少女の父親によってさらに進化しようとしていた。

「いいか、私の言うことをききなさい!!」

「勝つことがすべてなんだ!!」

その父親の言葉によりその少女の夢は、いや、闇がその少女の心を苦しめるようになる。

「(父親の言う通り)スクールアイドルは・・・、勝つことがすべて・・・なんだ・・・」

その少女の心は次第に、父親の考え、「勝利こそすべて」、それに犯されるようになってしまった・・・。

 こうして、その少女の夢は、いや、闇は次第にこう変貌してしまった・・・。

「おばあちゃんとの夢、ラブライブ!!優勝、そのためにも勝ち続けないといけないんだ・・・」

その夢、闇により、その少女はスクールアイドルになっても、アイドルになるという当初の夢を叶えたとしてもすべてにおいて苦しむことになる。桜花に勝ったときでも、ラブライブ!夏季大会で、こころあに、桜花を含めた(当初その少女が入ろうとしていた)Aqoursに敗れたときでも、その少女はその闇により自分の心を、身を、苦しめてしまう・・・。

 ただ、それでも、その少女に少し光がさしてきた・・・。聖泉祭のとき、半分あつこの脅しにより闇のもとになる考え、「勝つことがすべて」、それを忘れることにしたその少女は、理亜、あつことのライブにより「勝つことがすべて」の反対の存在、「楽しむことがすべて」、その一部に触れたことにより、その少女はその考えから、その闇の呪縛から少し解き放たれた、と思われた。

 だが、それでもその少女はその闇の呪縛に囚われたままだった。だって・・・、

(勝つことだけを考えるべきなのだろう、勝負においてでは・・・、ラブライブ!においてでは・・・)

そう思う自分がいるのだから・・・。

 

 キリリ・・・

「う~、うるさい・・・、って、朝か・・・」

と、その少女、花樹は目覚ましの音と共に起きた。今日みた夢からか、花樹、

「は~、なんかいやな夢をみたような気が・・・」

と、いやなことを言っては窓の外を見る。今は12月。冬がはやい北海道函館ではすでに雪が振っていた。そのため、外は一面雪景色になっていた。そのためか、

「う~、寒い・・・」

と花樹は体を縮みこませていた・・・。

 そして、今日も十字架状のペンダントを掲げてはいつものようにこう誓った。

「おばあちゃん、オ・・・、花樹、今度こそラブライブ!で勝ち続けて優勝するからね!!」

その誓いの言葉は花樹にとって今の自分の思いなのかもしれなかった。

 だが、この日、花樹には大きな天気が訪れようとしていた。それは花樹の父のある一言によって・・・。

 

第10話 KAZYU said 「Let’s Start New US!!」

     RIA said 「We are・・・」

 

「おはようございます・・・」

と学校に登校するなりクラスメイトに挨拶をする花樹。だが、その日はクラスの雰囲気が異様だった。いつもならクラスメイトから元気な挨拶が返されるのだが、なぜかお通夜モードだった。というのも、1人の生徒が泣いていたからだった。それに、花樹、気がついたのか、泣いている生徒に声をかける。

「どうしたの、日野さん?」

 すると、泣いている少女こと日野がこんなことを言ってきたのだ。

「(私の父が経営している)棒一屋が潰れたよ・・・」

この棒一屋の名前にクラスのみんながこんなことを言いだしてきた。

「あの棒一屋が倒産したのの・・・」

「あの函館を代表するデパートが・・・」

棒一屋、実は函館を代表するでぱーろであった。棒一屋で買い物することは函館市民にとって1つのステータスとなっていた。それくらい、格式の高い、いや、函館を代表する地元資本のデパートであった。ただ、ここ最近は郊外にショッピングセンターなどが進出していたため、会社自体の売上が低迷していた。だが、それでも棒一屋は函館市民にとって憧れの存在であった。

 その棒一屋が潰れてしまった・・・、これには函館市民である生徒たちからも、

「なんで棒一屋が潰れたわけ?」

「あれってそう簡単に潰れないよね・・・」

と不安の声が上がっていた。

 ただ、それについて知らない、というか、函館に引っ越ししてまだ10カ月の花樹はその空気を読むことができずにこんなことを言ってしまう。

「たかが1つのデパートが潰れただけでそんなにがっかりしなくても・・・。函館にはもう1つのデパートがあるじゃない」

そう、函館にはもう1つ、デパートがあった。ただ、それについてはほかの生徒が花樹にこう説明する。

「でも、そのデパートって函館資本以外の会社が経営しているの・・・」

そう、函館にはもう1つ、デパートがある。だが、そこは函館資本以外の資本・・・というか、札幌資本の会社、いや、日本を代表するデパートの会社が経営していた。対して、棒一屋は函館資本の会社が経営しており、さらに、江戸時代末期からの歴史をもつ由緒あるデパートだったのだ。その意味でも函館市民が誇ることができたデパートだった、棒一屋は。

(といっても、もう1つのデパートも歴史由緒あるデパートなんですがね・・・)

 そんななか、日野は花樹に前に立つなり、花樹に対し、

パチッ

と平手打ちをかましてしまう。これには、花樹、

「えっ、いったい、どうして・・・」

と日野に問いかけるとほかのクラスメイトからも、

「日野さん、落ち着いて!!」

「それ、やりすぎだよ!!」

と日野を抑え込むも日野は花樹に対してこう言いだしてきた。

「私の、いや、私たちのデパートを潰したのは猪波(花樹)の父親なんだよ!!」

これには、花樹、

「えっ!!」

と驚いてしまう。いや、まわりの生徒たちからも、

「えっ、それって本当?」

「猪波さんのお父さんが・・・」

とびっくりの表情がでてくる。

 そんな生徒たちに日野はデパート倒産に至った理由を話し始めた。

「実は・・・」

ちょっと長かったので要約すると、花樹の父親が経営しているディスカウントショップの店が棒一屋の近くにオープンして以降、そのディスカウントショップはっまるで棒一屋を潰そうとしているような勢いで超激安セールを連発、それにより棒一屋の売上が激減し、大赤字、さらに、まだ期限内の債権の取り立てが急に始まり、結果、二度の不渡りを出して倒産した、というのだ。

 ただ、それに関して、花樹、失礼なことを言う。

「でも、それって社会の競争に負けたからじゃないの・・・」

たしかにその通りかもしれない、社会の競争においては・・・。でも、このデパート倒産に関してはそれ以外の要素もはいっているかもしれない。そのことも考えると、ほかの生徒からも、

「それは・・・」

と言葉を濁す感じになってしまった・・・。

 とはいえ、日野、そんな花樹に対し、

パチンッ

と2度目の平手打ちをくらわす。これには、花樹、

「なんで2度もぶったわけ?どうして?」

と日野にくってかかる。

 だが、日野はそんな花樹に対し怒りながらこう叫んだ。

「絶対に意図的に猪波の父親がそう仕向けたんだ!!それは間違いない!!」

むろん、これには、花樹、

「えっ、なんでそう言い切れるわけ?」

と日野に問いかける。

 すると、日野、その証拠となることを言ってしまった。

「猪波(花樹)が函館に引越してから函館にあるいろんな店が閉店に追い込まれているんだよ。それも猪波の父親が経営しているディスカウントショップが経営拡大してからだ!!」

 そして、日野は1つの記事をみんなにみせつけた。そこには、

「スクープ!!ディスカウントショップのせいで函館の名店が潰れ続けている・・・」

という見出しがでーんと書かれていた。その記事には最初にディスカウントショップの着物の激安セールにより函館でも有名な呉服店が潰れたこと、生鮮食品などの原価割れセールにより函館市民の台所となっている中島廉売やはこだて自由市場の客足が遠のいていることなどが書かれていた。これにはまわりの生徒たちからも、

「えっ、それって花樹の父親が原因だったの・・・」

「そういえば、私のところの店の売上も悪くなっているよ・・・」

とこそこそ話をし始めてしまった・・・。

 ただ、その空気すら読めないのか、花樹、こんなことを言いだしてしまった。

「でも、でも、それって花樹のせいじゃ・・・」

 だが、いくらそれを花樹が言ったとしてもだれも聞いてくれない、いや、それどころか、

「ということは・・・、花樹さんって函館にとって疫病神?」

「やっぱり猪鹿蝶の1人だね。あまりに外道すぎるよ・・・」

と花樹に対し白い目を見られるようになってしまった・・・。

 もうこうなってしまうとさすがの花樹もこの雰囲気にようやく気づいたのか、

「でもでも、花樹には関係ないもん・・・」

と言い訳じみたことを言おうにもみんなからの白い目には辛いものがあったためか、

「か・・・、花樹は関係ないもん・・・」

と言ってはその場から走り去ってしまった・・・。

 こうして、花樹はその場の雰囲気がいやなのか、1日中保健室・・・、と、言いたいところだが、日野の言葉が学校中に広がっていたのか、理亜とあつこを除く先生や生徒のみんんなからの白い目を向けられるようになり、たった1人、スクールアイドル部の部室に立てこもるかのように1日を暮らしていた・・・。

 

 ただ、放課後となればその部室に理亜やあつこが来るわけでして・・・、

「花樹、一体どうしたわけ?今日、一日中、部室にいた。なぜ?」

と理亜から花樹に問いかけられるも、花樹、

「オ・・・花樹、なにか悪いことをしたわけ?」

とただたんに小さくなってしまった・・・。

 そんななか、あつこが登場、そのあつこは突然こんなことを言いだしてきた。

「理亜さん、花樹さん、今度、ライブを行います!!あの棒一屋から今度のイベントでライブを行ってほしいとのことです!!」

これには、理亜、

「あの棒一屋からライブの依頼!?」

と驚いてしまった。実は、棒一屋、倒産により閉店が決まったのだが、これまでの函館市民に対するお礼を兼ねて盛大に閉店イベントを実施することが決まったのだ。そのステージに理亜たちのスクールアイドル部がライブを行うことが決まったのである。これは理亜たちからしたら名誉あることだった。なので、一函館市民として棒一屋の閉店を悲しんでいたあつこにとって唯一心安らぐ、いや、あの棒一屋に恩返しができるチャンスだとみていたのだ。むろん、これには理亜も、

「あの棒一屋からの依頼・・・」

とやる気をみせていた。

 ところが、こんなとき、

バタンッ

と部室のドアが開いた。そこにいたのは・・・、

「えっ、日野さん・・・」(花樹)

そう、あの日野であった。その日野が花樹を見るなりこう言いだしてきた。

「なんで、なんで、お前が、私の父のデパートの閉店イベントにdるわけ?」

そう、日野は自分の父が経営しているデパートの閉店イベントに花樹が出ることを嫌がっていた。ただ、これには、花樹、

(そ、それって、花樹に関係ないじゃん・・・。日野さんの父親が決めたことだよ・・・。本当に関係ないじゃん・・・)

となにか言いたそうにしていた。

 だが、これが日野の逆鱗に触れてしまった。日野、花樹に対し、

「そんな目で私をみるな!!」

と花樹の胸ぐらを掴むと花樹が付けていたタイを必死になって外す。むろん、花樹がしている制服のタイはその勢いのままに外れてしまった、そんなときだった。

(えっ、私のペンダントが・・・)

と、花樹が首にかけている十字架状のペンダントがはずれ、外に飛び出してしまった。どうやら日野が花樹のタイを引っ張った拍子に花樹のペンダントが外れたようだった。

 そのペンダントだが運悪く日野の目の前の落ちてしまう。すると、そのペンダントを見て日野はこんなことを言ってきた。

「へぇ~、猪波(花樹)はこんなペンダントをしていたんだ」

これには、花樹、

「それ、花樹の一番大事なペンダント・・・」

と悲しそうに言うと日野はニヤリと笑ったのか、

「へぇ~、それなら、これすればいいわけね!!」

と言ってはそのペンダントを持っては、

バシッ

とペンダントを床にたたきつけてしまった。どうやら、日野、花樹の父親が自分の父にした腹いせに花樹が大切にしているペンダントを壊そうとしているようだった。

 むろん、ペンダントもただではすまなかった。たたきつけた瞬間、十字架状のペンダントは2つに割れた・・・わけでなく、パカッとペンダントの蓋が開いてしまった・・・。と、その瞬間、ふわ~、と灰みたいなものが舞い上がった。これには、花樹、

「お、おばあちゃん!!」

と舞い上がった灰を必死になって集めようとしていた。これには、日野、

「どう、私の父が味わった苦しみは!!」

と花樹に対して見下したように言うとその十字架状のペンダントに光る1粒のダイヤモンドを見ては、さらに、

「もっと苦しみを与えてやる!!」

ともう1度ペンダントを床にたたきつけてしまった。すると、

ポロリ

とそのダイヤがペンダントから外れてしまった。いや、外れた拍子にどっかにいってしまった。むろん、これには、花樹、

「お、おばあちゃん・・・」

と絶望に満ちた表情になってしまった・・・。

 ただ、これを見ていた理亜はそんな日野に対しこう言いながら怒る。

「日野、これ、やりすぎ!!いじめレベル!!」

さらにあつこも日野に意見する。

「このダイヤは花樹さんにとって大切なものかもしれないのですよ!!」

そのあつこの手には花樹のペンダントにはめてあったダイヤがあった。どうやら、あつこ、そのダイヤが外れた拍子に手でしっかりとキャッチをしたようだった。

 そんな2人から責めに日野はこんなことを言いながら部室を去ってしまった。

「猪波(花樹)、どうやら、あんたの父親、私たちのデパートの閉店イベントを潰しにくるみたいだね。どこかのスクールアイドル部を雇ってね!!たしか、こころあ、という子たちを使ってあなたたちのライブを潰しにくるみたいだね」

この言葉に花樹ははっとした。

(花樹のお父様が花樹たちのライブを潰そうとしている・・・、このイベント、こころあとの勝負になる・・・、戦いになる・・・。勝たないと・・・、勝たないと・・・。でも・・・)

と思ったのか、自分の心がただ漏れになってしまう、泣きながら・・・。

「勝たないと・・・。勝たないと・・・。でも、おばあちゃんとの大切なものが・・・、おばあちゃんとのキズナが・・・」

 そんな花樹に対し理亜は床に置きっぱなしのペンダントを拾っては花樹に対しこう言った。

「花樹、そのペンダントならここに・・・」

でも、花樹は泣き止むことはなかった・・・。

 そんななか、あつこはあるものを見つけた。

「あれっ、これってなにかな?」

それはなにか丸まった透明なフィルムであった。それをあつこは広げる。すると・・・、

「あれっ、これってなにかのQRコード?」

そう、そのフィルムにはQRコードが描かれていた。どうやら花樹のペンダントの中になかに入っていたようだった。

 ただ、そのQRコードがなんなのかはあつこは知らない、ということで、あつこは理亜に対し、

「理亜さん、このフィルムを花樹さんのペンダントのなかに入れてくれませんか?」

とお願いをした。むろん、理亜も、

「それなら入れておく」

と言ってはそのフィルムをペンダントのなかに入れては花樹に対し、

「ほう、ペンダント、返すから、泣くの、やめて」

とぶっきらぼうに言った。理亜からすればこれがせいっぱいの愛情表現であった。ただ、これには、花樹、ペンダントを受け取るも、

「でも、オ・・・花樹にとって大切なものが・・・」

と泣き止むことがなかった。

 これではどう対処すればわからない理亜とあつこ、そんなときだった。あつこ、

(もしかすると、花樹さんがこうなってしまったのも、日頃から勝つことだけを信条にしてきたのも、花樹の父親のせいかもです・・・)

と思ったのか、理亜さんに対してこんなことを言いだしてきた。

「理亜さん、今の花樹さんの現状を打破するためにもここは理亜さんの家族に聞く必要があるのはありませんか?」

このあつこの意見に理亜も、

「ああ、その通りかも。ここは花樹がこうなった理由を聞くしかない」

と同意。こうして、理亜とあつこは泣いている花樹をひきつれて花樹の家に行くこととなった、花樹がこうなった理由を聞くために。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第10話 (2)

「おばあちゃん・・・、おばあちゃん・・・」

と泣いたままの花樹を引っ張っていく理亜とあつこ。そして、花樹の家につくなり、

「誰かいませんでしょうか・・・」

とあつこが誰かいないか呼んでみると、

「はい!!」

と若々しい声が聞こえてきた。これには、あつこ、

「あっ、こんにちは」

と挨拶をすると「スタスタ」という音とともに、

「あっ、こんにちは」

と若々しい女性が現れるとその女性は自分のことを話し始めた。

「あっ、お友達ね!!あっ、私は花樹の母です。以後、お見知りおきを」

そう、理亜とあつこの前にあらわらたのは花樹の母親であった。

 そして、花樹の母親は花樹をみるなりこんなことを言いだしてしまう。

「あっ、花樹、大丈夫!?」

そう、花樹はまだ泣いていたのだ、それもこう言いながら・・・。

「勝たないと・・・、こころあに勝たないと・・・。でも、おばあちゃんとの大切なものが・・・、大事なキズナが・・・」

そんな花樹の姿にその母親はすぐに、

「それじゃ、自分の部屋に行きましょうね!!」

と言っては花樹を自室へと連れて行った。

 一方、理亜とあつこは花樹の母親に連れらえて応接間へと入ると、開口一番、理亜・・・ではなく花樹の母親が言った。

「理亜さんとあつこさんですね。あの花樹の様子からなにかがあったのかわかりました。花樹が大切にしているおばあちゃんのペンダントを壊されたのでしょう・・・。あと、勝負事に巻き込まれた、のですね」

これには、理亜、

(えっ、花樹のお母さん、エスパー!?)

と驚くほどだった。

 なのですが・・・、あつこはそのことを気にせずに壊れた花樹のペンダントを花樹の母親の目の前においてあることを尋ねた。

「花樹のお母さん、このペンダントですが、花樹さんにとって大切なものだと察します。そして、花樹さんはいつも勝負事になるとこのペンダントを握りしめては「勝たないと・・・」と言葉にします。なぜ、花樹さんはこうなったのですか?このペンダントにはなにか隠された秘密があるのでしょうか?」

このあつこの言葉に花樹の母親はついにあることを話始めた。

「そのことを話すのであれば、まず、猪波家のことを話す必要があるでしょう。少し長くなりますがよろしいでしょうか?」

この母親の言葉に、理亜、あつこ、ともに、

「「わかりました」」

と言うと花樹の母親は猪波家のことについて話し始めた。

「猪波家はね・・・」

 

 猪波家、それは、小原家、沼田家と並ぶくらい歴史由緒ある名家であった。猪波家は古くから店を営んでおり、地域全体の発展に寄与していた。そのため、猪波家の家訓は「よりよい社会を創るためにまわりの人のために働く」であった。

 だが、花樹の父親はそんな猪波家の家訓が嫌だった。花樹の父親は昔から、

(他人のことより自分のことを優先すべき。力こそすべて、勝つことこそすべてなんだ)

という考えをもっていた。というのも、その家訓のせいで他人のことを優先するあまり自分のことを犠牲にする、というまわりの姿に花樹の父親は、

(なんで他人のせいで自分のことを犠牲にするなんてナンセンスだ!!)

と次第に考えるようになったからだった。そのため、猪波家の当主であった花樹のおばさちゃんとは昔から折り合いが悪かった。

 そして、2000年ごろ、ついに当主であるおばあちゃんと花樹の父親はついに別れることとなった。というのも、花樹の父親は、

(これからは投資の時代だ!!私の能力さえあえば投資の世界でも十分渡りあっていける!!)

と投資に目覚めたのである。大学では経営学を専攻していたのだがそこで経営のノウハウ、そして、金融工学を学んでいたのである。さらに才能があったためか、花樹の父親はその分野で才能を発揮したのである。そこで、花樹の父親は自分の実力をもって投資の世界に入ろうとしていたのである。

 だが、そこで待ったをかけたのが猪波家の当主、花樹のおばあちゃんであった。おばあちゃんは投資のことについて、

(他人を蹴落とす、他人のことなんて考えないもの)

と考えていた。というのも、この時代、ITバブルのときに偽の投資話によりそれに投資した人たちが大損する、いや、詐欺的なものがあったからだった。また、それは猪波家の家訓に反するものだった、とおばあちゃんは考えていたからだった。そのため、おばあちゃんと花樹の父親はそれについてケンカしてしまう。

「いいですか。これからは投資の時代でです。私はそれ一本でやっていきたいのです」(花樹の父親)

「いいや、あんな詐欺みたいなもの、すべきじゃない!!」(おばあちゃん)

話し合いは平行線のままだった。結局、それに業を煮やした花樹の父親は家から出ていくがごとく自分の才能を伸ばすため、投資の世界に投じるため、投資の本場であるアメリカへと渡ったのである。

 その後、花樹の父親はアメリカで自分の才能を開花せた。天才的な経営の手腕と金融工学によりアメリカにおいて一定の地位を獲得することになる。

 そして、ついに花樹の父親は運命の出会いを2度することになる。1つ目は・・・、

「その才能、私のところで存分にふるまってくれないだろうか」(木松悪斗)

「木松悪斗様、わかりました」(花樹の父親)

そう、1つ目は木松悪斗との出会いであった。木松悪斗はこのとき、アメリカの投資の世界において花樹の父親以上の力を手に入れては大活躍していた。それに花樹の父親は魅了されたのである。そのため、花樹の父親は同じ日本出身であること、自分の力をそこで発揮したい、と木松悪斗に売り込みをかけていたのである。で、木松悪斗も花樹の父親のことを知っていたので自分の陣営に引き入れたのである。

 そして・・・、

「あなた・・・」

そう、もうひとつの出会いとは、花樹の母親のことである。ちょうど花樹の母親もアメリカに留学していたのである。そこで偶然花樹の父親と出会いなぜか意気投合、1年後には結婚したのである。さらに、

「オギャー!!」

とそこで生まれたのが花樹であった。まぁ、同じころに木松悪斗の妻も桜花を出産しているのですがね。

 その後、数年間は木松悪斗とともに投資の世界において活躍した花樹の父親であったが木松悪斗活動の場を日本に移す、ということで、花樹の父親もその木松悪斗とともに日本へと帰国することになる。

 だが、これが花樹の父親にとって地獄の始まりであった。花樹の父親は日本において木松悪斗率いる投資グループにて木松悪斗の左腕として木松悪斗が造り上げた投資専用プログラムActシステムで集められた情報を精査して木松悪斗に渡したり買収した企業を経営するなど自分の才能をフル活用していた。

 ところが、肝心の投資については失敗の連続であった。というのも、

「なんでいつもいつも失敗するんだ!!それもこれもあのおばあさまが邪魔してくるからだ!!」(花樹の父親)

そう、花樹の父親が投資をするものならいつも花樹のおばあちゃんが邪魔をしてくるからだった。まぁ、これには裏があって、沼津家の名家であった猪波家は同じく沼津の名家であった沼田家や親交があった小原家から投資の情報が花樹のおばあちゃんのところに流れており、特に木松悪斗の、そのなかの花樹の父親の情報があればおばあちゃん自らその投資を失敗に終わらせようと動いていたのである。こうして、花樹の父親が行う投資はことごとく失敗に終わっていたのである。また、このことを知っていた木松悪斗も次第に鹿角父親に投資をするのを控えるようになったのである。

 こうして、花樹の父親はおばあちゃんがいるときはおばあちゃんに逆らうことができなかった。そのためか自分の娘である花樹に対して厳しく接するようになっていく。特に猪波家がもともと男系家族だったこともあり、ことあるごとに花樹に対し女言葉を使うように強制してきたりしていた。

 そんな花樹であったが自分の父親が厳しく接してきているのに対しおばあちゃんはその逆でいつもおばあちゃんは花樹のことを大切に扱ってきたのである。その一例が次の通りである。

 

「おばあちゃん、俺、絶対にアイドルになる!!俺、アイドルになっておばあちゃんの前で歌ってやる!!」(花樹)

「おい、花樹、「俺」なんて言うな!!いつも言っているだろうが。「少しは女らしくしろ!!」って!!」(花樹の父親)

「こら、なんていうことを言っているのだね!!」(花樹のおばあちゃん)

 

この言葉からわかるように、花樹は小さいときから「俺」とか男言葉を使っていた。それに対し花樹の父親はそれを女らしく言うように強制するもいつもおばあちゃんに止められる、そんなことが日常茶飯事であった。ただ、これはおばあちゃんがいるときのみである、いないときは花樹の父親はいつも花樹に対し、

「少しは女らしく話せ!!」

と脅しを言うようになり、花樹は次第に女言葉を使うようになっていったのである。

 さらに、花樹の父親は花樹に対しあることを強制しようとしていた。それが、

「いいか、花樹、「勝利こそすべて」なんだ!!いいか、わかったか!!」(花樹の父親)

そう、「勝利こそすべて」の考えであった。猪波家の家訓は「他人のために働く」であったがそれに花樹の父親は反対していた。そのため、おばあちゃんがいないときは花樹に対し前述の言葉を花樹に対して言っていたのである。そのため、花樹の考えも少しずつ、

「やっぱり勝たないといけないんだ。勝つことがすべてなんだ:

と、「勝利こそすべて」の考え、その考えに染まろうとしていた。

 そんな花樹の夢、それは「アイドルになること」であった。そのため、花樹はおばあちゃんに対しては

「俺、アイドルになりたい!!」

と言ってはおばあちゃんから、

「花樹、頑張りや。おばあちゃん、応援してるきに・・・」

と応援することもしばしばだった・・・。

 

 そして、花樹はスクールアイドルに出会った。それはラブライブ!延長戦の動画を見たときのことだった。その延長戦をスクールアイドルのライブを見て花樹の父親は、

「うそっ、このグループ、とても凄い・・・」

と青天の霹靂のごとく驚いたのである。

 そんな花樹にある夢ができた。それは・・・、

「(今度入る)静真に入学したら絶対にスクールアイドル部に入る!!そして、(延長戦の動画で高レベルのパフォーマンスをしていた)Aqoursの一員になる!!」、

「おばあちゃんに自分が活躍しているところをAqoursの一員としてスクールアイドルとして活躍しているところをみせること」、

そして、

「俺、(勝ち続けて)Aqoursが手に入れた栄光、スクールアイドルの甲子園、ラブライブ!で優勝しておばあちゃんに、深紅の優勝旗、それをみせてやる!!」

とおばあちゃんに誓ったのである。

 だが、このとき、おばあちゃんは病気をわずらっていた。そのため、おあばあちゃんは病院に入院していたのである。その誓いの言葉はおばあちゃんの入院先の病院であった「木松悪斗記念病院」で行われていたのだが、このとき、おばあちゃんから花樹にあるものをプレゼントされた。それが花樹がいつも身につけていた十字架状のペンダントであった。

 ところが、その翌日、自体は急変する。

「おばあちゃん・・・、なんで亡くなったんだよ・・・」(花樹)

そう、おばあちゃんが急に亡くなったのである。死因は不明。たしかに病気をわずらっていたのだがそこまで急変するようなものではなかった。それが急に亡くなるなんて誰も想像できなかったのだ。ただ1ついえること、それは花樹が、

「おばあちゃん・・・」(花樹)

と悲しみにくれていたことだった。

 ところが、それが花樹にある衝動へと走らせることになった。それは・・・、

(もうおばあちゃんはいない・・・。だけど、そのおばあちゃんのぬくもりを・・・、おばあちゃんと誓ったあの約束を・・・、俺の胸のなかに残すことができる!!)

という花樹の思いと共に目の前にあったおばあちゃんの(火葬したあとの)白骨死体の一部を粉々にして十字架状のペンダントに入れたのである。さらに、こんなお願いを花樹はしてきたのである。

「スタッフ、お願いだ!!この遺灰で・・・、ダイヤを・・・、作ってくれ!!」

 

「えっ、花樹がしているペンダント、花樹のおばあちゃんのものだったわけ?」

そう理亜は絶句した。まさか、花樹がしているペンダントに想像を絶するようなものが隠されていたとは知らなかったからだった。

 そんな理亜に対し花樹の母親はこのことについて語りだす。

「私が思うのですが、花樹にとって十字架状のペンダントはおばあちゃんそのものなのかもしれません。花樹はそのペンダントでおばあちゃんとの想い出を、想いを、キズナを火事ていたのかもしれません」

そう、花樹の母親の言う通りであった。花樹はことあるごとに十字架状のペンダントを掴んではおばあちゃんとの想い出、想い、キズナを感じていた。それくらい花樹にとってそのペンダントはおばあちゃんそのものだったのだ。

 そんな花樹の母親の言葉にあつこは、

「だから、花樹さんは、今日、クラスメイトと口論したとき、ペンダントを壊されてしまい意気消沈したのですね」

とこれまた絶句していた。

 そんなこととは対照的に気を取り戻した理亜は、

「ということは・・・、ペンダントからまった灰はおばあちゃんの遺灰、このダイヤは残った遺灰で作ったダイヤ、ということ・・・」

そう言っては理亜は壊れたペンダントを花樹の母親にみせた。そこにあったのは蓋を締めた遺灰のないペンダントとそのペンダントから外れたダイヤだった。これには、あつこ、

「それくらい花樹さんにとってこのペンダントへの、おばあちゃんとの想いが強かった、ということですね・・・」

という言葉を口にした。そう、何度もいうが、花樹にとってこのペンダントは

 

ペンダント=おばあちゃん

 

であった。理亜とあつこの心のなかにSaint Snowという聖良を含めた3人の想い、想い出、キズナという宝物があるのと同様に花樹にもおばあちゃんとの宝物があった。だが、花樹にとってその宝物としての存在がこのペンダントであった。そのペンダントが壊されたため、花樹は再起不能に陥ったのである。

 そのことに気づいた理亜とあつこに対し花樹の母親はこう話した。

「花樹にとってこのペンダントはおばあちゃんとの宝物です。これを直しても花樹がもとに戻るかわかりませんが直してみましょうか?」

この花樹の母親の申し出に理亜はすぐ、

「お願いします」

と言うと花樹の母親は外れたダイヤをペンダントに直し始める、こう言いながら。

「でも、今までの話には続きがあります。それをお話ししましょう」

こうして、花樹の母親は猪波家の話の続きを語り始めた。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第10話 (3)

「それはあの子(花樹)のなかに深淵なる闇が造られるきっかけになったものでした・・・」(花樹の母親)

おばあちゃんの葬式から数日後、花樹はおばあちゃんからもらった十字架状のペンダントをもってこう思っていた。

(おばあちゃん、俺、誓うから!!静真に入って、Aqoursに入って、スクールアイドルとして大成するする!!だから、おばあちゃん、俺の胸のなかで見守ってくれ!!)

そんな花樹に1人の男が、花樹の父親が花樹が絶望するようの一言を言ってしまう。

「おい、お前、数日以内の引越す準備をしろ!!」

実は、このとき、花樹の父親がいた木松悪斗の投資グループは、Aqours、渡辺月、沼田家、小原家との戦いに負けたことで危機的状況に陥っていた。そのため、木松悪斗はもしものために、もし、自分になにかあったときのために自分の左腕ともいえる花樹の父親を自分が買収した函館のディスカウントショップに派遣、独立させることにしたのである、もし、木松悪斗が沼田たちとの競争に負けても、なにもかも失ったとしても、そのディスカウントショップで再起できるようにと・・・。これについては花樹の父親もご主人の一大事ということですぐに了承、邪魔な花樹のおばあちゃんがいなくなり、猪波家の実験を手に入れたことにより沼津の地を捨て新天地函館に行くことにしたのである。

 むろん、花樹にとってみれば寝耳に水のこと。すぐに花樹は父に反論した。

「えっ、なぜ引越すわけ!?引っ越しする必要ないじゃん!!」

だが、猪波家の家長になったことをいいことに花樹の父親は花樹に対しこう命令する。

「おい、わがままをいうな!!ここ沼津にいたのはおばあちゃんの世話をしているためだ!!そのおばあちゃんはいない!!だから、ここ沼津に私たちがいる必要なんてない!!では、私たちはどうすればいいのか。それは簡単なことだ。私は新天地で新しいことを始めればいいんだ!!お前はこの私についていけばいいんだ!!」

その言葉は花樹にとって父親の命令をきかないと花樹にとって嫌なことが起きる、そう思わせるものだった。そのため、花樹のなかにあるある思いが崩れていった。

(俺、おばあちゃんとの約束、誓い、こんな形で終わりを迎えるのか・・・。俺とおばあちゃんとの誓いが・・・)

そう、おばあちゃんと誓った約束、静真でAqoursに入ってスクールアイドルとして大成する、そして、ラブライブ!で優勝する、その夢自体が崩れようとしていたのだ。

 だが、そんな花樹に追い打ちをかけるように花樹の父親はこんな言葉を花樹に浴びせる。

「そして、お前、これからは絶対に女らしくしろ!!これから先、私の前で・・・、いや、誰のまえでも絶対に女らしくしろ!!男っぽい言葉遣いなんて絶対にするな!!もちろん、「俺」なんて言葉も絶対に使うなよ!!」

そう、ついに課y図の父親は花樹のアイデンティティすらも奪おうとしていた。むろん、これには、花樹、

「なぜ、俺、なんて言ったらいけないんだ!!これは俺のアイデンティティだ!!」

と反論するも花樹の父親は高圧的にこう言い返した。

「おばあさまがいなくなった今、私がこ家族の長だ!!なので、お前は私の言うことを聞かないといけないんだ!!いいか、お前、いや、花樹、これからは私の言うことをきけ!!男言葉を、俺を、絶対に言うな!!もっと女らしくしろ!!」

この言葉攻めにより花樹のなかにあった花樹の心そのものが崩れ去った・・・。

(あっ・・・、オ・・・花樹・・・の・・・なにもかもが・・・崩れていく・・・。おばあちゃんとの想い出も・・・、想いも・・・、キズナも・・・、なにもかも・・・、崩れていく・・・、なにもかも・・・なくなっていく・・・」

 

 この話を聞いて理亜はあることを悟った。

「それが花樹の深淵なる闇・・・」

そう、それこそが花樹の深淵なる闇であった。自分の父親によって花樹はなにもかも失った、おばあたんとの約束を・・・、夢を・・・、想いも・・・、想い出も・・・、キズナも・・・。「Aqoursとしてスクールアイドルとして大成する。そして、勝ち続けてラブライブ!で優勝する」、それこそが花樹にとって叶わない夢、深淵鳴る闇だったのだ。

 だが、花樹の母親は理亜とあつこの方をみてにこやかにしながらこう言ってくる。

「でも、理亜さん、そして、あつこさんがいたからこそ、心が壊れた花樹が今でもスクールアイドルをやることができたのです」

そのことばに理亜は花樹の母親に対しあることを尋ねた。

「それって花樹とどんな関係があるの?」

この理亜の言葉に花樹の花親はこう話した。

「それはですね、理亜さんとあつこさんが、あの延長戦でAqoursと戦ったSaint Snowであった、ということです。あなたたちだったこそ花樹は再び自分の夢を目指すことが出来たのです」

そう、これは花樹にとって運命だったのかもしれない。心が折れた花樹であったが函館に引越ししてまず会った人物が・・・、理亜だったこそ・・・、Aqoursと対となすスクールアイドルユニットSaint Snowの理亜だったからこそ花樹はここまでスクールアイドルとして活躍できたのである。花樹はたしかに自分の父親のせいでおばあちゃんとの夢を、約束を、なにもかも失った、深淵なる闇に花樹は飲み込まれた。だが、その代わりに、理亜と、Saint Snowの理亜と出会ったことで、おばあちゃんとの約束であるスクールアイドルとして大成、そして、ラブライブ!優勝を目指すことができるようになったのである。

 そんな母親からの言葉に理亜は少しむっとする。

「でも、それって、Aqoursの代わりにSaint Snowになっただけじゃない・・・」

まぁ、理亜の言うことも一理ある。「Aqoursの~」が「Saint Snowの~」という言葉に変わった、というってもおかしくなかった・・・。ただ、これには、あつこ、

「まぁ、それによって花樹さんが立ち直ったのですからそれはよしにしましょう」

と理亜に対しこう言うと理亜も、

「ま~、それはおいとく・・・」

とちょっとふてくされるも納得した?

 だが、ここで花樹の母親はあることを話始めた。

「でも、その過程のなかで花樹にとって父親の影響力は強いものになっていきました。「かつことがすべて」、その考えが花樹のなかでそのウエイトをしめるようになったのです」

そう、花樹の信条、「勝利こそすべて」、それは花樹の父親が長年にわたりしみこませるものだった。いや、それがこの半年のあいだに強くなってきたのである。当初、花樹の父親は花樹に対し「もう少し女らしくしろ!!」と言ってきたのだが(第5話(1)参照)、ラブライブ!夏季大会最終予選でこころあに負けたことで花樹は自分の父親から「女は男の所有物」「私の奴隷」と言った上で、「絶対にAqoursを叩き潰せ!!」「勝つことこそ正義なんだ!!」「この世のなかは「勝利こそすべて」」と脅迫、高圧的に花樹は受けたのである。そのため、花樹に対する「勝利こそすべて」の考えはさらに深みに陥ったのである(第6話(1)参照)。

 そして、花樹の母親は決定的なことを言った。

「そして、一番花樹のなかでこじらせているもの、それは、深淵なる闇と花樹の信条が結びついていることのなのです。

これには、理亜、

「たしかに、そのようにみえるとき、ある・・・」

と絶句していた。たしかに理亜がそう思えるのも無理ではなかった。花樹はこれまでスクールアイドルとして大成しラブライブ!優勝を目指していた。ただ、これには言葉足らずのところがあり、本当の花樹の思いは以下の通りであった。

 

「(Aqoursではなく)Saint Snowの理亜と一緒に、「勝利こそすべて」という考えのもと、勝ち続けることでおばあちゃんとの夢、約束であったラブライブ!優勝を目指す、いや、成し遂げないといけない・・・」

 

その言葉の通り、花樹は、「勝ち続ける」「勝利こそすべて」、その自分の信条のもと、おばあちゃんとの夢、約束だったラブライブ!優勝を目指していた。いや、ラブライブ!優勝を成し遂げないといけない、そう花樹は思い込んでいたのである。そのため、ことあるごとに花樹はおばあちゃんの代わりである十字架状のペンダントを強く握りしめていたのである、それこそがおばあちゃんの約束、夢であり深淵なる闇であるかのように・・・。

 さらに、その思い、闇を加速させたのがまたもや花樹の父親であった。それは、ラブライブ!夏季大会決勝の前のことだった。「勝利こそすべて」、そう言い切った花樹の父親は花樹のおばあちゃんの代わりである十字架状のペンダントを取り上げては今日と同じようにそのペンダントを壊そうとしたのだ、こう言いながら、「Aqoursを叩き潰せ!!」と。これにより花樹はもとから憧れの対象だったAqoursを憎い相手として(花樹の父親から強制的に)思うようになり、自分が大切にしている十字架状のペンダントを守るために、「勝利こそすべて」、その思いを強めていったのである・・・、が、結果は惨敗・・・。これにより、花樹はより「勝利こそすべて」、それにのめりこんでしまったのである。ただし、聖泉祭以降、あつこの圧力もあり、「楽しむことがすべて」という思いも花樹は持つようになったのですがね・・・。

 

 とはいえ、こうして花樹の深淵ある闇がわかった・・・のだが、理亜、それについて鋳物の自分の思いをは話す。

「たしかに、花樹、自分のことで相当苦しんでいる。でも、今の私たちではどうすることもできない・・・」

そう、いくら花樹の深淵なる闇がわかったところで自分たちはどうすることもできないのである。その深淵なる闇を打ち破るには花樹自身が変わるしかないからだった。ならば、その手助けをすべきなのだがそのやり方すら理亜とあつこにはわからなかったのだ。

 そんな理亜とあつこが今できること、それは・・・、

「dめお、今の花樹のお母さまが直してくれた(十字架状の)ペンダントを花樹さんに渡すのが先決です」(あつこ)

そう、花樹が大切にしているペンダントを数に渡すことだった。壊された十字架状のペンダントであるがダイヤが外れただけだったらしく、それを花樹の母親の手によって直すことができた、と、いうより、ダイヤをペンダントに付けただけであったなのだが、これにより形だけだがペンダントを直すことができたのである。そんな大切なペンダントを花樹に渡すだけでも少しは花樹のためになれる、そうあつこは考えたのである。

 そんなわけでして、理亜は直った十字架状のペンダントを花樹の部屋のドア前に持っていくと花樹に対し、

「花樹、ペンダント、直した。これで、少し、気分、晴れる?」

すると、花樹、自室のドアを開けては理亜に対し、

「理亜さん、ペンダント、直してくれてありがとうございます」

とお礼を言うとともに、

(理亜さんは花樹のためにペンダントを直してくれたんだ。これはおばあちゃんとの想い、想い出、キズナが籠ったもの・・・。花樹にとって大切なもの・・・。ならば、なんとかがんばらないと・・・)

というこれまで消えていた闘志が少し戻ってきたのか、理亜に対し、

「理亜さん、迷惑をかけてすみませんでした。明日からはちゃんと練習に出ますから宜しくお願いします」

と弱弱しい声で理亜に謝ってきた。これには、理亜、

「う、うん・・・」

と、ただ返事するしかできなかったものの、この花樹の対応に、理亜、

(花樹はそう言っているけど、本当に大丈夫か、心配・・・)

と花樹のことを心配そうにみていた。

 一方、あつこはというと花樹の母親にあることを話していた。

「ところで、花樹さんのお母さん、ペンダントのなかからなにかQRコードみたいなものが見つかったのですが、なにか知りませんでしょうか?」

 これには、花樹の母親、

「あっ、そういえば、以前、こんなものが見つかりました」

とあることを思いだしては戸棚の奥からあるものを出してはあつこに渡した、こう言いながら。

「これはおばあさまの遺品を整理中に見つけたものです。なにかQRコードみたいなものがついているのですが・・・」

 そう、花樹の母親が持ってきたものとはおばあちゃんの遺品の整理中に見つけたあのQRコード入りのフィルムであった。これには、あつこ、

「これってもしかして・・・」

と自分のスマホでそのフィルムに載ってあるQRコードを呼び込もうとした。だが・・・、

「ぜんぜん反応しない・・・」(あつこ)

とうまく読み取ることができなかった。これには花樹の母親も、

「なにか足りないものがあるのでしょうか・・・」

と心配そうになるもこのときのあつこにはなにもわからなかったのか、

「それはどうでしょうか・・・」

と口を濁すしかできなかった・・・。

 とはいえ、花樹も少しは気を取り戻した、ということもあり、明日からまえと同じように練習を再開することができた。だが、理亜とあつこは花樹に対しある心配をしてします。

(花樹、自分のなかにある深淵なる闇、それに取り込まれそうになっている。本当に大丈夫だろうか・・・)(理亜)

(花樹のお母さんから渡されたQRコードだけど、今のままだと花樹さんは自滅してしまいます。なんかできないのでしょうか・・・)(あつこ)

そう、今の花樹はボロボロの状態であった。自分の心の支えであり深淵なる闇でもあった十字架状のペンダントは壊れてしまった。いや、その中にあったおばあちゃんの遺灰はなくなってしまった。そのペンダントは直すことができたがなかに入っていた遺灰はもう元には戻らない。そのため、花樹は意気消沈、いや、自分の闇に取り込まれそうになっていた。もう昔みたいなやる気に満ちた姿ではなかった。それなのに、これから先、ラブライブ!冬季大会、そして、棒一屋の閉店イベントに立ち向かうことができるのだろうか、それが心配であった。だが、今はそんなことを言ってもどうすることができない。花樹に対して申し訳ないのだが、少しでもやる気を出してもるしかない、そう理亜とあつこはそう考えるしかできなかった・・・。

 

 そして、翌日・・・、

「さぁ、理亜さんにあつこさん、練習をしましょう!!ラブライブ!に閉店イベント、花樹たちは勝たないといけませんからね!!」

と花樹は元気そうな姿で理亜とあつこを練習に誘おうとしていた。これには、理亜、

「花樹・・・」

とほっとした表情をみせていた。これで花樹は元に戻った、そう理亜は判断したのである。

 だが、このとき、あつこはあることに気付く。

(でも、花樹さん、なんか寂しそうにしている・・・。もしかして・・・)

そう、あつこは花樹の表情をみて暗いものを感じていたのである。花樹の今の表情は・・・なんか寂しそうな表情をしていた。それはなにかを失った、とても寂しい、でも、今はやる気を出さないといけない、そんな表情であった。

 そんな花樹であったが一通りの練習はこなしていた。全体練習においても元気を出しながらこなしていた。ただ、その花樹にはなにか寂しそうな表情も雲隠れしていた。

 

そんな状況が続いたのだが、それでもやるときはやるものでして・・・、ラブライブ!冬季大会地方所詮・・・、

「トライアングル!!」

と余裕をもって理亜たちはトップ通過を果たした。ただ、そのときの審査員からは花樹のほう見ては、

「なにかを失った、そんな感じがします・・・)

と痛いところをつかれてしまう。これには、あつこ、

(見ている人は見ている・・・。このままだと最終予選は厳しいものになってしまう・・・)

と心配そうに花樹を見ながらそう考えてしまった・・・。

 そんな花樹であったが、内心、こんなふうに考えていた。

(ラブライブ!、そして、閉店イベントはこころあとの勝負になる・・・。オ・・・、花樹たちは勝たないといけないんだ・・・、勝つことがすべてなんだ・・・。じゃないとおばあちゃんに申し訳ない・・・。だって、大事にしていたペンダントを壊してしまったのだから・・・。勝たないとおばあちゃんとの想い、想い出、キズナが消えてしまう・・・)

そう、花樹は自分が持つ深淵なる闇に吸い込まれそうになっていたのである。たしかに花樹は聖泉祭のときには「楽しむこと」の素晴らしさを知ったのだが、本質はいまだに自分の父親からの教えである「勝利こそすべて」という考えに染まっていた。そして、おばあちゃんとの宝物であるペンダントを壊されたことでおばあちゃんへの罪悪感からか、おばあちゃんとの誓い、夢、いや、勝利というものを含めた深淵なる闇に吸い込まれそうになっていたのである。それはラブライブ!も、閉店イベントも、勝負事、ということも加味されたのかもしれかった。それくらい花樹は、今、危ない状況に陥っていた・・・。

 

 果たして花樹はこのまま自滅していくのだろうか。それともなにかあるのだろうか。そして、理亜とあつこの運命とは・・・。それについては次回の後編で話すことにしよう。

 

To be contued

 

Next Story is KAZYU said 「Let’s start Nex us!!」

      Ria said 「We are ・・・」(後編)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第11話 (1)

「ようこそ、こころあの2人、さぁ、さぁ、お茶をどうぞ」

ここは函館の花樹の父親が経営しているディスカウントショップの本社。ここで花樹の父親はこころあを迎え入れていた。今度行われる函館のデパート方一夜の閉店イベントを邪魔するため、こころあを召集したのだ。ちなみに、その閉店イベントにゲストとして登場するのがこの物語の主人公である理亜・花樹・あつこ組であった。この組とは、こころあ、ラブライブ!夏季大会の最終予選と決勝、2階とも勝利していたため、花樹の父親、

(ふんっ、これで棒一屋の閉店イベントを台無しにすれば、私の、いや、木松悪斗様の計画は達成できる!!あとは木松悪斗様が無罪になればここ函館は木松悪斗様のものになるのだ!!)

と威張りながらそう考えていた。

 これまで花樹の父親はある計画のために、いや、木松悪斗になにかがあったときのために函館の地にて函館支配計画を進めていた。それは函館の経済を牛耳ることで木松悪斗が函館の経済を乗っ取ろう、いや、ここに木松悪斗帝国を裏で造ろうとしていたのである。まず、最初に狙ったのが呉服店であった。これについては花樹の父親が試しに仕掛けたものだったのだが、花樹の父親は県外の呉服商に無理やり原価割れの発注を行いそれで仕入れた着物でもって着物の激安セールを仕掛けたのである。むろん、これをできたのも木松悪斗の力によるものだったのだが、この激安セールにより函館にあった歴史由緒ある呉服店を閉店に追いやるまでになった。

 それに味をしめたのか、花樹の父親はディスカウントショップの店舗を拡大させる。函館の各地にディスカウントショップを次々とオープンさせ、数の力でもって原価割れの発注を繰り返すことでディスカウントショップのまわりにある店に大ダメージを与えるような激安セールを繰り広げたのである。むろん、それは生鮮食品にもいえたことで、函館近郊の農家に無理やり専売契約を結ばせては原価割れするような取引を無理やりさせられていたのである。これにより中島廉売など函館市民の台所のお客さんの数も減少するといったことも起きてしまった。

 そして、花樹の父親はついに函館市民の誇りともいえるデパート棒一屋に狙いを定めた。まず、デパート近くに店をオープンさせ、棒一屋を狙ったような激安セールを連続して行ったのである。それにより棒一屋の売上は激減、もとから郊外のショッピングモールとの競争により売上が低迷していたところにダメージを与える結果となり倒産、閉店することになったのである。こうして、花樹の父親、いや、木松悪斗の函館支配計画は最終段階へと向かうこととなったのである。

 そんなとき、その棒一屋がこれまで棒一屋を愛してくれた函館市民のために閉店イベントを計画しているという情報が入ってくる。それについて、花樹の父親は、

(ふんっ、それなら私のディスカウントショップの力をみせつけるいい機会かもしれないな!!)

とこのイベントを邪魔して自分の力をみせつけることにしたのだった。その後、このイベントのゲストが花樹たちであることを知った花樹の父親は花樹たちに勝ったことがあるこころあを召集したのである。でも、こころあの信条は「楽しむことがすべて」なのに「勝利こそすべて」が信条の花樹の父親に手を貸すなんて信じられないことなのですがね・・・。

 それでも花樹の父親はこころあに対しこんなことを言ってきた。

「さてと、今回の目的であるがあるイベントを潰してきてもらいたいのだ。こころあの実力なら簡単だろう」

これには、ここあ、

「まぁ、本当はあまりしたくないけどやるっしゅ!!」

と言うとこころも、

「まぁ、私たちの実力なら大丈夫でしょ!!」

と力強く言った。これには、花樹の父親、

「これで木松悪斗様も安泰だ!!」

と喜びながら言った。

 

 その後、

「今日はここで作戦会議をするぜ!!こころあだけにしてほしいぜ!!」

とここあは、今日、ここで作戦会議をすることを花樹の父親に伝えると花樹の父親は、

「私がいてはいけないのか?」

と尋ねた。これには、こころ、

「私たちだけの秘密会議です。素晴らしいパフォーマンスをするために必要です」

と言うと花樹の父親は、

「なら、仕方がないか・・・」

ととぼとぼと部屋をあとにした・・・。

 

 そして、会社にはこころあしかいなくなった。すると・・・、

「さてと、あらさがしをするぜ!!」

とここあが言うとこころも、

「さてと、このあたりにある資料を見ていくです」

と言ってはこの部屋にある資料を棚から出しては見て回った。

 そんなときだった。突然、こころのスマホから、

プルル

という音が聞こえてきた。すると、こころがそれにでる。

「はい、こころです」

すると、こころのスマホから少女の声が聞こえてきた。

「こころちゃん、なにか見つかりましたか?」

これには、こころ、こんなことを言いだしてきた。

「はい、あまりにすごいものでした・・・」

どうやら、こころあ、なにかを調べていく最中のようだ。

 すると、今度はここあのスマホからも、

プルル

という音が聞こえてきた。これには、ここあ、

「はいだぜ!!」

と電話に出ると、そこには・・・、

「え~、今、沼津郊外にある病院にきています」

とこれまた少女の声が聞こえてきた。どうやら沼津郊外にある病院で誰かがあるものを探しているようだ。

 そんななか、ここあがあることを叫んだ。

「ここはビデオ通話で話すべきだぜ!!」

そのここあの言葉とともに、こころ、ここあ、共にビデオ通話に切り替えた。

 すると、こころのスマホにはガテン系の少女が、ここあのスマホにはメガネをかけた少女、そして・・・、

「あと、アランも宜しく!!」

と久しぶりに登場のアランが出てきた。このアラン、第7話で桜花の母親を気付け薬で起こしたことにより木松悪斗逮捕へと結び付けた人物であった。そのアランが出ている・・・ということは・・・、

「そうです。私、アラン・スミシー、ちゃんとあるものを見つけました」

と言っては1枚のSDカードを取り出した。なんか、アラン、凄いものを見つけたようだ。

 さらには、メガネをかけた少女からは、

「さきほどSDカードの映像を見ましたが、あまりにも衝撃的でした。これが人がすることなのでしょうか・・・」

と唖然となるようなことを言いだしてきた。

 といった具合にこころあはなにかを探すがごとく自分たちがいる部屋のあらさがしをしてはいろんなものを見つけてはそれを写真にとっていった。むろん、メガネをかけた少女とアランも病院のいろんなところにいってはあらさがしを行っていた。どうやらこころあとメガネをかけた少女とアランはなにかを調べているようだ。果たしてそれはなんなのだろうか・・・。

 

第11話 KAZYU said 「Let’s start New us!!」

     RIA said 「We are ・・・」(後編)

 

 棒一屋の閉店イベントの数日前・・・、

「1,2,3,4,2,2,3,4」

と校庭にてあつこの掛け声とともにダンス練習をしている理亜と花樹。そのなかで、花樹、

「あっ!!」

ど叫んでは止まってしまう。どうやらテンポが少し遅れたみたいだった。これには、理亜、

「花樹、少しはしっかりして!!本番まであともう少しだから」

と花樹に叱るもあつこは、

「まぁまぁ」

と理亜をなだめると花樹に対し、

「花樹さん、しっかり!!」

と励まそうとしていた。ただ、とうの花樹は、

「うぅ、花樹は・・・、花樹は・・・」

となにか言いたそうだった。

 そんなときだった。

「猪鹿蝶、お前たちは疫病神だ!!」

とある生徒に言われてしまう。これには、理亜、

「どこが疫病神なの!!」

と反論するもその生徒はこんなことを言ってきた。

「だって、猪波(花樹)って子、ここ函館が誇るデパート(棒一屋)を閉店させた人の子なんでしょ!!なら、ここ函館にとって疫病神じゃない!!」

これには、あつこ、

「それは言い過ぎだと思います!!」

とこちらも反論するもその生徒は言い続ける。それに、あなたたちだってその仲間じゃない!!猪鹿蝶、あなたたちだって函館において裏切り者だよ!!」

その生徒の言葉に、花樹、

「花樹は裏切り者・・・」

と愕然となってしまうとともに首からさげていた十字架状のペンダントを持っては、

「おばあちゃん・・・、おばあちゃん・・・」

ともうここにはいないおばあちゃんに助けをこうた。

 そんな花樹を見てはその生徒はこんなことを言ってしまう。

「はぁ~、おばあちゃん、おばあちゃんってなにかの宗教?笑っちゃうね!!」

あまりのもの暴言、これにはさすがの理亜も、

「あなた、あまりにも度が過ぎている!!」

と言い返すとその生徒は、

「まぁ、猪鹿蝶には今のがお似合いだね!!」

と言ってはどこかにいってしまった・・・。

 そんな生徒の姿を見てあつこはこう考えてしまった。

(まるで猪鹿蝶が1つの悪者として認識されています。このままだと私たち自体悪いものとして認識されてしまいます・・・)

あつこが危惧していること、それは、自分たち、猪鹿蝶、それ自体がまわりのみんなから悪者としてのけ者にされてしまう、そのことだった。こうなってしまうと・・・、

(このままだと閉店イベント自体失敗に終わってしまいます。そうなってしまえば相手の思うつぼです・・・)(あつこ)

そう、このままいけば自分たちをゲストに呼んでいる棒一屋の閉店イベントが失敗に終わる、こうなってしまうと、相手、花樹の父親の思うつぼになってしまう、のである。だって、悪者として認識されている自分たちが出ているという険悪な雰囲気の状態で(地域のみなさんのお礼を兼ねての)閉店イベントをやったらそのイベント自体荒れてしまうのは目に見えているから・・・。あつこはそのことを危惧していたのである。

 とはいえ、自分たちにも危険な要素はあった。花樹である。花樹は、このとき、こう思っていた。

(おばあちゃん・・・、おばあちゃん・・・、オ・・・花樹を助けて・・・。(閉店イベントで)こころあに勝たないといけないのに・・・、花樹、もうどうすることもできないよ・・・。おばあちゃん、助けて・・・)

花樹は焦りを感じていた。あと数日でイベント本番、そこでこころあに勝たないといけない、だけど、今の状態だと負けてしまう、そんな焦りを感じていたのだ。だが、今の花樹の状態だとおばあちゃんに助けをこう、そんな状態だと絶対に失敗する、そんな感じであった、花樹は・・・。

 

 このままの自分だと絶対に負けてしまう、そう思った花樹は最後の頼みとして、その日の夜、自分の父親に直談判した。

「お父様、お願いです。閉店イベントを邪魔するのはやめてください!!」

そうすることで花樹は少しでも自分を保とうとしていた。

 だが、それを父親は、

「ふんっ、そんなもの、ダメに決まっておるだろうが!!あともう少しでこの函館は木松悪斗様の手に落ちるんだ!!そこで函館市民が絶望を感じる様が見れるんだ!!とてもいい余興だろうが!!」

と聞く耳持たず。いや、サディスティックになっていた。いや、それどころか、花樹の父親、花樹に向かってこう命令してくる。

「さてと、お前に命令する。閉店イベントを潰せ!!いいか、潰せ!!絶対にな!!」

あまりにも傍若無人な態度、それでも自分の父親の命令に花樹は、

(この勝負、負けるなんて・・・。でも、負けないといけない・・・。でも、花樹、理亜さんやあつこさんのことを考えると負けるなんて・・・、負けるなんて・・・)

と自分の頭のなかで葛藤してしまう。自分の父親からの命令でこの戦いに負けるよう命令されている、でも、自分としては理亜とあつこのためにも勝たないといけない・・・、そんな葛藤が花樹の頭のなかで起きていた・・・。

 だが、花樹は苦悩していた。

(でも、今の花樹の状態では・・・、ダメダメな状態では・・・、ダメ・・・。なにもかもダメ・・・。でも、勝たないと・・・、いや・・・、負けないと・・・)

いくら練習してもいつも失敗する、そのことは花樹もわかっていた。それでもこころあに勝たないといけない、そん焦りがあった。ところが、ここにきて父から「負ける」と命令された。これにより花樹はさらに苦悩してしまった。

 そして、花樹は天をあおぎこう思ってしまった。

(おばあちゃん、助けて・・・。どうすればこころあに勝てるの。いや、負けないといけないの・・・。おばあちゃん、助けて・・・)

 

 そして、ついに閉店イベント当日を迎えた。棒一屋の道路前に設営された会場では函館が誇る海鮮品を使った屋台などが並んでいた。また、その屋台の前に造られた舞台では、老若男女、心の残ったステージを繰り広げていた。それを多くのお客さまが屋台の品を食べながら楽しんでいた。それくらい棒一屋は函館市民に慕われたのである。

 そんななか、花樹と理亜、あつこは本番まで棒一屋の裏手で最後の練習をしていた。

「1,2,3,4,2,2,3,4。はい、終わり!!」

あつこの掛け声とともに練習を終えると、理亜、花樹に対し注意をする。

「花樹、ちょっとぎこちなすぎ!!もうすぐ本番!!ちゃんとして!!」

 だが、その理亜の声も花樹には届いていなかった。だって・・・、

(こころあに勝たないといけない・・・。なのに、負けないといけない・・・。どうすればいいの・・・、おばあちゃん・・・)

といまだに苦悩していたのだから。自分の父親からの「負けろ」という命令、そして、その父親から叩き込まれた「勝利こそすべて」という信条、それにより2つの狭間で花樹は苦しんでいた。ただ、それについては理亜とあつこは知らない。そのため、理亜は苦悩する花樹に対して真面目にするように言ってきたのである。

 そんな理亜に対してあつこはこう制する。

「なんか花樹さんの苦しんでいるようにみえます。理亜さん、これ以上は・・・」

これには、理亜、あつこの言葉を受けてか、

「花樹、本当にしっかりしなさい!!」

と軽く注意しては舞台へと移動していった、こう思いながら・・・。

(花樹が苦しんでいる・・・。それってなにが原因なわけ?こころあ?それとも別のなに?)

理亜はなぜ花樹が苦しんでいるのかわからない。ただ1ついえること、それは、本番が近いこと、なにに対しても真面目な理亜にとって少しの不安要素はとりたい、そう思っていたのである。

 一方、あつこはというと、苦悩する花樹を見てはあることを考えていた。

(花樹さんが苦しんでいる理由・・・、それってなにかがあるごとに「おばあちゃん」と言っている・・・、それってなにか関係があるのでしょうか・・・)

そう、あつこは花樹が苦しんでいる理由を考えていたのだ。数字前にある生徒から「疫病神」と言われたとき、花樹は「おばあちゃん」と言っていた。それと今苦しんでいる理由、それに共通しているのではないかと考えたのである。

 そして、あつこはQRコード入りのフィルムを見た。これは花樹の母親から託されたものだった。このフィルムを見て、あつこ、

(このフィルム、おばあちゃんの遺品、そして、あの花樹さんは苦しんでいる。それはおばあちゃんと関係している・・・)

と考えるようになった。このフィルムとおばあちゃんと花樹が苦しんでいること、それにはある共通したものがあるのかもしれない、そうあつこは考えるようになったのである。

そして、あつこはもう1度あることを振り返った。

(花樹さんにはある闇があった。それは「スクールアイドルとして大成し、「勝利こそすべて」という考えのもと、おばあちゃんとの夢、約束であるラブライブ!で優勝すること)

花樹の深淵なる闇について思いだすあつこ。さらにこんなことまであつこは考えた。

(そして、このステージではこころあの襲撃が起きるかもしれない。そうなると勝負ごとになる。やっぱり、「勝たないといけない」、そのことで花樹さんは苦しんでいるわけ!?)

そう、このステージでは花樹の父親が棒一屋の閉店イベントを潰すためにこころあの襲撃を予告していたのである。こうなると花樹たちはこころあと争わないといけない、、そうあつこは考えたのである。

 そんなあつこは花樹の方をもう1度見ては花樹のしているペンダントのことを考えてしまう。

(そして、このおばあちゃんの化身たるペンダントは壊されてしまった。これによりおばあちゃんに頼ることができなくなっている。それにより花樹さんは苦しんでいるのかもしれない・・・)

ある意味、あつこはそう考えても仕方がなかった。まさか実の父親から今日負けるように言われているなんてあつこと理亜は知らないのだから。ただ、それでも、今のあつこからすれば今出せる答えとしてはかなりよかったのかもしれない。

 しかし、これについてはあつこはどうすることもできなかった。だって・・・、

(でも、私たちは花樹さんにどうすることもできない。だって、私たちはおばあちゃんの代わりになれないのだから・・・)

花樹は自分の深淵なる闇によりおばあちゃんに依存していた。だけど、そのおばあちゃんは今はいないしその化身であるペンダントも壊れてしまった。それにより、花樹は心のよりどころだったおばあちゃんを失ったのである。それの代わりにあつこと理亜が務めるかというとちょっと難しいことであった、今は・・・。そのため、あつこは花樹の苦悩を解消できないもどかしたを感じていた。

 そんああつこであったが1つ気がかりのことがあった。それは・・・、

(そのおばあちゃんの化身であるペンダントのなかにはもう1つのQRコード入りのフィルムがあった。それとあの(花樹の母親から託された)フィルムとどう関係あるのだろうか・・・)

そう、花樹のペンダントのなかにはもう1つのQRコード入りのフィルムが1枚入っていたのである。それと花樹の母親から託されたフィルム、その2枚にはどんな関係性があるのか、あつこはそのことが気になっていたのである。

 ただ、今は直前のステージのことを考えないといけない。そのことをあつこは考えてしまう。

(とはいえ、今は私たちのステージを無事にやり遂げないと・・・)

そう、今は閉店イベントのステージを無事にやり遂げることが先決だった。なので、あつこは花樹のことはあとにして目の前のことに集中することにした・・・。

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第11話 (2)

 そして、ついに本番を迎えた。

「それでは、ついにメインイベント、聖女スクールアイドル部、理亜・花樹・あつこ組による・・・」

そのときだった、突然、

「ふんっ、こんな茶番、さっさとやめろ!!」

という男の声が聞こえてきた。これには、イベントの司会者、

「いったいなにごとです!?」

と声がする方を見るとそこには・・・、

「ふんっ、このイベ、私が壊してやる!!」

とある男1人と少女2人がいた。

 すると、花樹はその男を見てはっとする。

「お、お父様・・・」

そう、そこにいたのは、花樹の父親、猪波と・・・、

「私たちもいるです!!」

「ここあの出番だぜ!!」

そう、こころあがいたのだ。これには、理亜、

「こころあ、「楽しむことがすべて」を体現しているあなたたちなのに「勝利こそすべて」を体現している花樹の父親につくなんて・・・」

とこころあに文句を言おうにも、こころあ、それに反論!!

「ここあたちはステージがあれば行くんだぜ!!」(ここあ)

「まぁ、今はそうしておくのです!!」(こころ)

そのこころあの言葉に、理亜、怒る。

「こころあ、どこまで落ちぶれではいいわけ?」

この理亜の言葉に、こころあ、大人の対応をする。

「なにを言っても関係ないぜ!!」(ここあ)

「私たちは私たちのためにいくのです!!」(こころ)

このこころあの2人の姿はまるで、どこ吹く風、といったようなものだった。

 そして、猪波はこころあに対し命令した。

「さぁ、こころあ、私の、木松悪斗様の実力をみせつけるのです!!そして、絶望に満ちた、いや、絶望を与えるくらいのステージをみせつけるのです!!」

そう、ついに猪波はこのイベを潰して函館市民に恐怖を与える、そんなことを(こころあをつかって)しようとしていたのである。

 すると、すでにこころあが、

「さてと、準備はできたぜ!!」(ここあ)

「みんな聞くのです、私たちの歌を!!」(こころ)

「「Ww enjoy School Idoll!!」」(2人)

この2人が言った曲名を聞いて、花樹、はっとする。

(これって花樹がこころあに初めて負けた曲・・・)

そう、こころあ、なんと、花樹たちを初めて勝った曲をチョイスしてきたのである。これには、理亜、

(これって花樹への当てつけ)

とびっくりするとともにあつこも、

(私たちの弱点である花樹さんを潰すための曲なんて、こころあ、えげつない・・・)

とこころあの曲のチョイスに唖然となってしまった。まぁ、こころあとしてら、

(この曲ならまわりのみんなもこころあたちにメロメロになってくれるはずだぜ!!)(ここあ)

と別に花樹を狙い売りにするためにこの曲をチョイスしたわけではないのですがね・・・。

 ただ、この後、こころあの予想に反することが起きてしまった。こころあが、

「Ww enjoy School Idoll!!」

と元気よく歌っては合いの手を入れてもらおうとしているにも関わらず、

「Ww enjoy School Idoll!!」

とステージ前方にいるお客さんだけが盛り上がっては合いの手をいれるだけ、ほかのお客さんは、

シーン

となにげに盛り上がっていなかったばかりか白けていた。

 これに唖然となったのがこころあとこころあを召集した猪波だった。こころあの圧倒的な実力でもってここにいる函館市民を絶望に陥れる作戦だったのだが、まさか、逆に白けてしまうなんて予想外だったのだ。そのためか、猪波、珍しく慌ててしまう。

(うそだろ!!この私の計画ではここにいる函館市民は絶望するはずだった。なのに、ただ白けてしまうなんて・・・。ここに来た意味がないじゃないか!!)

あまりにも予想外・・・、でも、猪波はどうすることもできなかった。というのも、このデパートを潰せばあとは猪波の、いや、木松悪斗の思いのまま、ということでディスカウントショップの激安セールの準備をしていなかったのだ。セールをする前には必ずセールの対象となる商品を大量に用意しないとすぐに品切りを起こしてしまう。そうなるとディスカウントショップの信用問題にもつながってしまう。そのため、すぐに激安セールをしようにも、その準備、つまり、大量の在庫を用意していない、ということで、猪波お得意の激安セールができない、というのだ。猪波、最後の最後で大きなミスを犯したのかもしれない。

 ただし、こころあはこの結果を予想?していたようだ。というのも、

(ここあは勢い込んでいましたが、お客さまたちが白けるのも無理はないのです)

と、こころ、このことは予想済みのようだった。というのも、こころあのステージというのはスクールアイドルファンあってのものだった。こころあの場合、どちらかというと自分たちを応援してくれているファン向けの曲が多く、ラブライブ!などといったスクールアイドル好きが集まるところでは大いに盛り上がるのである。対して、それ以外となるとこころあの曲を聞いてもどこで盛り上がればいいかわからず、盛り上がろうとしてもズレてしまう、そんなことが起きてしまう。いや、それどころか、スクールアイドルなんて興味ない、そんな人たちだといくらこころあの曲を聞いても無視してしまう、そういうものだった。それが、今、こころあのステージ前で起きてしまったのである。そう考えると、Aqoursの曲もSaint Snowの曲も、しいてはμ'sの曲もスクールアイドル好き以外の人からも好かれる、それくらい名曲、といえるのかもしれない。

 そんなわけでして、会場中白けたまま、

「無敵のスクールアイドル!!」

という曲が終了しても、

ぱちぱち

という拍手もまばら。これには、ここあ、

「あぁ、このステージ、失敗でしゅ!!」

とこのステージ自体失敗に終わったことを認めてしまった・・・。

 すると、猪波、すぐにこころあを責める。

「えっ、あなたたちはラブライブ!で準優勝した実力をもっているのだろ!!なのに、なんで、なんで、ここにいるみんなは絶望していないんだ!!お前たちの実力はそんなものなのか!?」

 すると、こころは猪波に対しある言葉を送った。

「猪波のおじさん、私たちは私たちのあったステージがあるのです。今回はそれじゃなかったというだけなのです」

このこころの言葉に、猪波、

(あともう少し、あともう少しなんだ。なのに、ここでしくじるなんて・・・)

と愕然となる。あともう少しで函館は猪波の、いや、木松悪斗の手に落ちる、今回はそれを知らしめるための場、だったのだが、結局はそれが失敗に終わった、というのが信じられなかったのだ。

 そんなわけでして、猪波、こころあに対し文句を言う。

「なんでみんなが白けるようなライブをしたんだ!!こちらの計画が台無しじゃないか!!」

ところが、こころあ、そんな猪波に対し反論。

「え~、これでもここあたちは一生懸命やったんだぜ!!」(ここあ)

「それに、私たちはあなたがライブをしてくださいとお願いされたからしただです~」(こころ)

たしかにその通りだった。実は、猪波、閉店イベントに花樹たちが出ることを聞きつけたため、急遽、そのイベントを潰す目的で実力のある芸能人やアイドルなどを花樹たちにぶつけるつもりだったのだが、汚いことをしている猪波のディスカウントショップには手を貸したくない、ということで、どこも猪波の依頼を断ってきたのある。そのため、仕方なく花樹たちを倒した実績のあり猪波に依頼に断りをしなかったこここあを呼んだ、というのだ。ただ、そんな猪波にこころあが手を貸した理由は猪波の知らないのですがね・・・。

 と、ここで猪波、ある名案が出た。

(あっ、そうだ。私の娘にこのステージを潰すように命令すればいいんだ)

それは悪魔の名案だった。猪波の娘は花樹である。その花樹に命令すればこのステージは、いや、このイベント自体潰れてしまう、そう猪波は考えたのである。父である猪波からの命令は絶対、だから・・・。そのため、猪波は実の娘である花樹に命令を言い放つ。

「おい、花樹、いや、お前、今から行われるステージ、失敗しろ!!そして、負けろ!!」

これに対し花樹は困惑する。

(花樹としたらこころあに勝てる絶好の機会!!だけど、お父様からは失敗城、負けろと言われている・・・。いったいどうすればいいの・・・)

今の花樹の信条は「勝利こそすべて」である。そして、今回のこころあとの対決、こころあ側はステージを失敗した、あのこころあに勝てるチャンスであった。だが、絶対なる存在であった実の父からはステージに失敗しろ、負けろ、と言われている、それによって花樹は苦しんでいたのである。

しや、それどころではない、忘れていないだろうか。花樹の「勝利こそすべて」という信条は花樹の父親である猪波から植え付けられたものだった。そのこともあってか、花樹、さらに困惑する。

(勝ちたい、これはお父様から言われ続けてきたこと。だから、この勝負、勝ちたい。でも、そのお父様から負けろと言われている・・・。花樹、どっちを選べばいいわけ?花樹、どっちも選ぶことなんてできない・・・。どうしたらいいの・・・)

自分としてはこころあに勝ちたい、それはこれまで父親から言われ続けてきたこと、「勝利こそすべて」、だけど、その父親からこれまで言われてきたことを反すること、負ける、敗北、それを命令されたのである。これにはさすがの花樹も困惑するしかなかった。

 だが、そんな花樹に対し花樹の父親である猪波はこう言ってきた。

「はやく私の命令を聞け!!お前は負ければいいのだ!!ステージなんて失敗すればいいんだ!!それに女は男の言うことを聞くもんだ!!男の言うことは絶対!!父親の言うことも絶対なんだ!!」

ここにきて、猪波、本性をさらけ出してきた。猪波は男尊女卑の考えの持ち主でもある。男の言うことは絶対、むろん、父である自分の言うことも絶対、というのである。それに、猪波としてはしびれを切らしたのかもしれない。そのために猪波はこれまで隠していた本性すらさらけしたのである。

 この父親の迫力に負けたのか、それとも、父親からの支配からなのか、花樹、怯えながらこう言ってしまう。

「花樹、このステージ、辞退・・・」

 そんなときだった。突然、棒一屋の経営者の娘である日野がこんなことを言いだしてきた。

「やっぱり猪波(花樹)は函館において裏切り者だったんだ!!自分の父の言うことを聞いてこのイベントを壊そうとしている。やっぱり猪鹿蝶だね!!この函館において裏切り者だったんだ!!」

猪鹿蝶、それは聖女において浮いた存在、いや、こいつらのせいで聖女のイメージは悪くなった、と思われていた。あつこはともかく、理亜は冬に起きた暴走(SNOW CRYSTAL 序章)により聖女の部活のイメージが悪くなり部活の新入部員の入りが悪くなったこと、花樹は函館を混乱に陥れた猪波の実の娘として忌み嫌われた、それがここにきて日野の手にyよって噴出してきたのだった。

 その日野はさらに花樹を責める。

「猪波(花樹)、お前なんていなくなっちゃえ!!お前なんていたら函館がダメになる!!」

この言葉に花樹はついに壊れようとしていた。

(花樹は・・・、花樹は・・・、もういなくなればいいの・・・おばあちゃん、ごめん・・・)

花樹にとって大きな存在であるおばあちゃんに謝るくらい花樹が壊れてしまう、そのせいか、

(このままじゃ花樹さんが壊れてしまう。どうすればいいの・・・)

とあつこは花樹のことが心配になってしまった・・・。

 だが、ここで声をあげる少女がいた。

「あつこ、花樹がしているペンダントからあれを出して!!」

この少女の声に、あつこ、びっくりする。

「理亜さん、どうして?」

そう、あつこに声をかけてきたのはこれまで黙っていた理亜だった。理亜は実の父親からの命令で困惑している花樹を見てこう思ってしまう。

(これまで勝つことだけを大事にしてきた花樹、そんな花樹は実の父親から「負けろ」と言われている。こうなってしまうと花樹が困惑する。いったいどうすれば花樹を救えるわけ・・・。いったいどうすれば・・・)

そんなときだった。理亜はあることを思いだす。

(あっ、そうだ!!たしか、花樹の母親からQRコード付きのフィルムをもらっていたはず!!それっておばあちゃんの遺品からみつかったものだったはず・・・)

そう、花樹の母親から預かっていたQRコード入りのフィルム、それは花樹の遺品から見つかったものだった。

 さらに、理亜はあることを思いだす。

(それに、花樹のしているペンダント、あのなかにもQRコード入りのフィルムがあった・・・。そして、そのペンダントは花樹が花樹のおばあちゃんからもらったもののはず・・・)

そう、花樹がしているペンダント、そのなかにもQRコード入りのフィルムが入っていた。そのペンダントは花樹が花樹のおばあちゃんからもらったものだった。

 そして・・・、

(そして、花樹はおばあちゃんのことを大事にしている、花樹が待つ深淵なる闇にも影響するくらい・・・)

そう、花樹のおばあちゃんに対する依存度はとても強かった。それは、おばあちゃんからもらったペンダント、それにおばあちゃんの遺灰でできたダイヤモンドをはめてはそれをおばあちゃんの代わりにしているくらいだった・・・。それくらい花樹はおばあちゃんに

対しる思いは強いものだった。

 そう考えていくうちに理亜はあることに気付く。

(2つのフィルムはともにおばあちゃんがらみのもの・・・。2つともQRコード入り・・・。QRコード・・・、QRコード・・・、あっ、もしかして、2つのフィルムを使って花樹のおばあちゃんは・・・)

 その考えとともに理亜はあつこに対しある命令を下した。

「あつこ、花樹が首にかけてあるペンダントから、あれ、出して!!」

これには、あつこ、

(あっ、もしかして、理亜さん、なにかに気づいたのかも?)

と思ったのか花樹に詰め寄り、

「花樹さん、ごめん!!」

と花樹に謝っては花樹がしているペンダントに触ると、花樹、

「えっ、あつこさん、なにを・・・」

と一瞬戸惑ってしまうと、あつこ、その機を逃さず花樹のペンダントの蓋を開けては、

「理亜さん、これを・・・」

となかにあったフィルムを取り出しては理亜に渡した。

 と、ここで、理亜、すぐに花樹の母親から受け取ったフィルムとペンダントのなかにあったフィルムを重ね合わせた。すると、1つのちゃんとしたQRコードが現れたじゃないか!!これには、あつこ、

「これって、理亜さん、もしかして・・・」

と理亜に言うと、理亜、にやりと笑っては、

「もしかすると、これがおばあちゃんが花樹のために残してくれた最後のメッセージ、かも・・・」

と言うと会場のスタッフにお願いして自分のスマホに大型モニター付きのOA機器へとつなぐケーブルをつなげるとそのQRコードを自分のスマホで読み取った。

 すると、

「花樹や、元気にしていたか?」

1人の高齢の女性が大型モニターに映し出された。これには、花樹、

「お、おばあちゃん・・・」

と声をあげた。そう、大型モニターに映し出されたのは花樹のおばあちゃんであった。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第11話 (3)

 と、ここで、理亜、すぐに花樹の母親から受け取ったフィルムとペンダントのなかにあったフィルムを重ね合わせた。すると、1つのちゃんとしたQRコードが現れたじゃないか!!これには、あつこ、

「これって、理亜さん、もしかして・・・」

と理亜に言うと、理亜、にやりと笑っては、

「もしかすると、これがおばあちゃんが花樹のために残してくれた最後のメッセージ、かも・・・」

と言うと会場のスタッフにお願いして自分のスマホに大型モニター付きのOA機器へとつなぐケーブルをつなげるとそのQRコードを自分のスマホで読み取った。

 すると、

「花樹や、元気にしていたか?」

1人の高齢の女性が大型モニターに映し出された。これには、花樹、

「お、おばあちゃん・・・」

と声をあげた。そう、大型モニターに映し出されたのは花樹のおばあちゃんであった。むろん、これには、猪波、

「すぐに消せ!!」

というも誰も取り合ってもらえなかった。

 そんな大型モニターに映し出された花樹のおばあちゃんは、

「もうこれが映し出されているのであれば私はもう死んでいるだろうが・・・」

と前置きすると花樹に優しく語りかけるように話し始めた。

「花樹や、花樹は今頃父親の言葉に苦しんでいるかもしれないけれど、おばあちゃんはね、あまり「勝利」にこだわらなくてもいいと思っているよ」

このおばあちゃんの言葉に、花樹、すぐに反応する。

「えっ、それって・・・」

すると、花樹のおばあちゃん、花樹に対しこう尋ねてきた。

「花樹や、父親の言葉、「勝利こそすべて」、それにより花樹はかなり苦しんでいるんじゃないかな?」

これには、花樹、はっとする。

(たしかに、花樹、「勝利」ばかり追い求めていた。それにより、花樹、苦しんでいた気がする・・・)

このとき、花樹に頭のなかで走馬灯のごとくあることを思いだしていた。それは・・・、「勝利こそすべて」、それにより自暴自棄になってしまった、そのことだった。こころあに負けたことで勝つことばかり追い求めようとしたこと、さらに、一度は勝った桜花に負けたことで自暴自棄となりケガするまで自分を追い込んでしまった、そのことだった。でも、これまでは「勝利こそすべて」という自分の信条により苦しんでいること自体蓋をしていたものの、花樹にとって一番の存在であるおばあちゃんから指摘され、今、ようやく、自分は苦しんでいることに気づいたのである。

 それを踏まえたのか、花樹のおばあちゃん、花樹に対しこう伝える。

「「勝利こそすべて」、それは自分の身を破滅させる言葉なんだよ」

このおばあちゃんの言葉、これには、花樹、さらにはっとする。

(花樹、これまでお父様からずっと「勝利こそすべて」と言われていてそれが当たり前と思っていた。でも、おばあちゃんからそれを言われて、「勝利こそすべて」、それに苦しんでいる自分を知って、おばあちゃんの言葉が言おうとしていること、わかる気がする・・・)

おばあちゃんの言葉、それは今の花樹にとって的を得ていた。「勝利こそすべて」、その信条、それは自分の父親から洗脳といえるくらい言われ続けていた。そのため、花樹にとってそれが当たり前だと思っていた。だが、前述の通り、その信条により花樹は自暴自棄になるくらい自分を破滅に追い込もうとしていた。花樹はそれを、今、知ったことによりおばあちゃんが言おうとしたこともわかったのである。

 そんな花樹に対し花樹のおばあさんはこんなことを言ってきた。

「でもね、実は、「勝利こそすべて」、それ以上に大切なことがあるんだよ」

これには、花樹、

「それって・・・」

とおばあちゃんに尋ねると花樹のおばあちゃんはそれを受けてか、大切なことを語り始めた。

「それはね、「楽しむこと」「みんなと一緒に楽しむこと」、だよ。「勝利こそすべて」というのはそれによって自分の身を滅ぼすどころか、まわりに対しても悪影響を与えるものなんだよ。それよりも、「楽しむこと」「好きになること」、それは無限のエンジンとなって相手と切磋琢磨できるものなんだよ!!だから、花樹、これからは「楽しむこと」を大事にしてね、Aqoursみたいに・・・」

そう、何度も言っているが、「勝利こそすべて」、それ自体、自分の身はおろかまわりに対して悪影響を与えることが多い。対して、「楽しむこと」は「楽しむこと」「好きになること」の無限のサイクルによって無限に相手とともに成長することができるものである。

 そのおばあちゃんの言葉は花樹にとって身に染みるものがあった。というのも、

(たしかに、あつこさんと理亜さんと3人でやったことはとても楽しかった・・・。とても気持ちがよかった。だから、ずっと続いてほしいと思っていた。でも、それこそがとても大切なものだったんだね・・・。今、花樹はそれを知ったかもしれないよ・・・。)

これまで花樹は「勝利こそすべて」を追い求めてきた。そのため、自分の身を破滅させるくらいにまで自分のことを責めていた。だが、そのなかで唯一違ったのが聖泉祭での、あつこ、理亜、3人でのステージだった。このときはあつこの圧によってしぶしぶ「勝利こそすべて」のことを忘れては「楽しむこと」をした。このとき、花樹のなかには不思議な感覚があった。それは、「楽しむことによって生まれる気持ちよさ」、であった。それを花樹は思いだしていたのだ。

 そして、花樹はおばあちゃんの導きによりある答えに達する。

(おばあちゃん、花樹、わかった気がするよ。「勝利」よりも「楽しむこと」が大切なんだね・・・)

そう、このとき、花樹は、

 

花樹は、今、「楽しむこと」の素晴らしさを知った

 

のである。

 そんな想いとともに花樹は理亜とあつこに対してついにこの言葉を発した。

「オ・・・、花樹、これまで「勝利こそすべて」、が大事だと思っていた。でも、それ以上に、「楽しむことが大事」であると気づきました、理亜さん、あつこさん・・・」

この花樹の想いを聞いて、理亜、あつこ、ともに、

「花樹・・・」(理亜)

「花樹さん・・・」(あつこ)

となにか安心したかのように花樹の方を見ていた。いや、それ以上に、

(なにか花樹のなかから悩みが消えたような気がする・・・)

と理亜は花樹の姿を見てなにかを悟ったような気がした。というのも、このとき、花樹のなかである変化が生まれていた。それは・・・、

(なんか、「楽しむことがすべて」、そう考えるだけでこれまで困惑していたものが消えた、そんな感じがします・・・)(花樹)

と、花樹自身、これまで悩んでいたことがすっきり消えた、そんなふうに感じていたのである。というのもえ、花樹はこれまで、「勝利こそすべて」、勝利のみを追求してきたことで自暴自棄になるくらいその言葉に苦しんでいたのである。そこに自分の父親から「負けろ」という相反することを命令してきたため、花樹は「勝利」と「敗北」の狭間で困惑してしまったのである。しかし、花樹にとって1番大切な存在であるおばあちゃんのおかげで、「勝利」でも「敗北」でもない、「楽しむこと」、という第3の答えが提示され、花樹もその大切さに気づいたことにより花樹は「勝利」「敗北」の狭間で苦しまなくてすんだのである。

 と、ここで、理亜、あることに気付くと花樹に対し問うた。

「ところで、花樹、ときどき、「オ・・・、花樹と言っているけど、どうして?」

これには、花樹、

「そ、それは・・・」

と言葉に窮してしまった。

 そんなときだった。大きなモニターに映る花樹のおばあさんが花樹に対しこんなことを言ってきた。

「それとね、花樹、もう偽の自分を出すのはやめなさい。もっと素の自分をだしなさい。これ以上、父親から縛られなくてもいいんだよ。おばあちゃん、素の花樹のほうがとてもいいと思うよ。だからね、花樹、もう我慢しなくてもいいんだよ」

このおばあちゃんの言葉に、花樹、はっとする。

(おばあちゃん、それって、もう偽りの自分をしなくてもいい、ってことだよね。もう我慢しなくてもいいんだね)

そう、花樹はこれまで偽りの自分を演じていた。それは自分の父親の圧力によるものだった。だが、おばあちゃんによって、偽りの自分を演じなくてもよい、我慢しなくてもよい、その言葉を聞いたことにより、花樹、ついに偽りの自分を脱する決心をする、おばあちゃんの次の言葉によって・・・。

 

「それじゃ、花樹、リミッター解除!!」

 

この瞬間、花樹、ついに自分のリミッターを解除した。

 すると、花樹、自分の父親に対してこう叫んでしまった。

 

「オ・・・、花樹・・・、いや、俺、もう親父のいうことなんてききたくない!!俺は俺でいく!!」

 

この花樹の言葉遣い、これには、理亜、あつこ、ともに唖然となる。

「か、花樹が壊れた・・・」(理亜)

「花樹さん、その言葉遣いは・・・」(あつこ)

そう、理亜とあつこは知らなかった、花樹の本当の姿を・・・。そのため、花樹の代わりように唖然となってしまったのだ。

 そんな2人に対し、花樹、

「理亜、そして、あつこ、これが本当の素の自分だ!!」

と力強く言うと、自分の父親、猪波に対して唖然とした態度でこう宣言した。

「これまでは親父の言うことを聞いてきたが、おばあちゃんのあの言葉を聞いて俺は生まれ変わった!!これからは俺は俺でいく!!もう我慢しない!!俺の力を親父に目に見せつけてやる!!」

 だが、この花樹の発言に、猪波、ついにこう命令してくる。

「花樹、この私に逆らうな!!さっさと男言葉をなおせ!!私の命令をきけ!!いいな!!」

 だが、この猪波からの命令に対し反論した。

「もう親父の呪縛は受けない!俺は俺の道を行く!!親父は黙っていろ!!」

この花樹の反論に対し猪波は、

「ぐぬぬ・・・」

と苦虫をつぶすことしかできなかった・・・。

 ただ、おばあちゃんの映像はまだ続いていた。おばあちゃんはある人たちに向けてこう話し始めた。

「そして、花樹のために頑張っているあなたたち、花樹のことを見守ってくれてありがとうございます。そして、これからも花樹のことを大事にしてください」

この花樹のおばあちゃんの言葉に、理亜、あつこ、ともに、

「なんか、私たちのこと、見透かされている・・・」(理亜)

「たしかに・・・」(あつこ)

と苦笑い。でも、2人とも、

(でも、花樹のおばあちゃん、私、花樹のことを大切にする・・・)(理亜)

(花樹のおばあちゃん、安心してください。花樹さんは絶対に大丈夫ですから。だって、私たちがいるのですから・・・)(あつこ)

とおばあちゃんにそう誓ったのである。

 そして、おばあちゃんは最後に花樹に対しメッセージを残してくれた。

「花樹、あなたはあなたの進む道を進みなさい。おばあちゃんが天国からあなたのことを見守っていますから。それでは、さようなら・・・」

この言葉を最後に映像は終わった。そのおばあちゃんの言葉に花樹はおばあちゃんに対しこう誓った。

「おばあちゃん、俺、今日教えてもらったこと、大事にしていく。だから、天国から見守ってくれ、おばあちゃん・・・」

 そして、花樹は自分の父である猪波に対してこう言いながらどなった。

「親父、いいか、ここからは俺たちのターンだ!!俺たちの力、見せつけてやる!!」

これには、猪波、

「花樹、お前は私のいうことを・・・」

と反論しようにも、花樹、それを無視して理亜とあつこに対して言った。

「理亜、あつこ、俺たちのパフォーマンス、みんなにみせつけてやろうぜ!!」

この花樹の言葉に、理亜、あつこ、ともに、

「あぁ、花樹、わかった!!私たちの力、花樹の父親とこころあにみせつけてやる!!」(理亜)

「そのための曲です!!やってやるつもりです!!」(あつこ)

と3人の誓いとともにステージに駆け上るとまわりにいる観客たちに向かって、花樹、こう訴えた。

「これから歌う曲はここ函館を思って歌う曲。きっとお前らの気持ちをわしづかみすること、間違いなしだぜ!!いいか、聞いてくれ。そして、感じてくれ。俺らはもう迷わない。ここ函館を代表するスクールアイドルだ!!俺らは、そして、この場をもって、俺らは・・・、新しい俺らが・・・、始まるぜ!!」

新しい俺ら・・・、この言葉に理亜は、

(新しい俺らか・・・。なら、あのグループ名、出してもいいかも!!)

と思うとあつこに対し理亜はこう告げた。

「花樹のいう通り!!私たちは1つ!!なら、あのグループ名、出す!!」

これには、あつこ、

「ついにあのグループ名を出すのですね!!わかりました。私は賛成です!!」

と賛成の意を表す。

 そんななか、司会者が花樹たちの名をあげる。

「それでは、理亜・花樹・あつこ組で・・・」

そんなときだった。理亜、

「ちょっと待って!!私たち、改名する!!」

と司会者の声をさえぎるとついにあの名前を出した。

「私たちは改名する。理亜・花樹・あつこ組、改め、私たちの名は・・・、

 

SNOW CRYSTAL

 

新しい雪の結晶、それが新しい私たちの名前!!」

SNOW CRYSTAL、それはラブライブ!延長戦が終わったとき、理亜が今度結成する自分たちだけのユニットの名前として考えていたものだった。ただ、これまでは、理亜、花樹、そして、あつこ、ともに心がバラバラだったため、理亜がその名前をつけるのをためらっていた。だが、ここにきて3人の心は1つになろうとしている、この名前をつけるのは今しかない、そう思った理亜がこの場をもって、改名、いや、この名を自分たちのユニット名にしたのである。で、この名を聞いた花樹はというと、

「SNOW CRYSTAL・・・、なんていい響きなんだ!!俺たちにふさわしいなだ!!」

と強く感動していた。

 そして、花樹はまわりにいるみんなに対してこう強く訴えた。

「俺たちの名はSNOW CRYSTAL!!これから歌う曲を聞いて感動してくれ!!SNOW CRYSTALで、「POLA=STAR」!!」

この言葉をもって3人の白熱のステージの幕が上がった!!

 

 

 

第11話 SNOW CRYSTAL 挿入歌「POLA=STAR」

 

POLA=STAR  POLA=STAR

 

光り輝く街        それが函館

夜になれば        街中が輝く

街中に広がる       無数の光

光集いて         無数の星座なる

 

 

 

(どんどん熱くなっていく!!どんどん楽しくなっていく!!どんどんスクールアイドルのことが好きになっていく!!これが「楽しむこと」の素晴らしさなんだ!!俺、非常に感動している!!もっともっと楽しくなれ!!もっともっと熱くなれ!!)

花樹はとても感動していた。これまで味わったないようなこの思い、それは花樹にとって新しい感覚であった。でも、戸惑いなんてない、それこそが花樹が追い求めていたものだった。

 そんなときだった。突然花樹にさらなる新しい感覚が襲ってきた。

(なんか、花樹がどんどん熱くなっているのを感じてしまう・・・)(理亜)

(それくらい花樹さんは燃えているのですよ)(あつこ)

なんと、花樹の熱い思いが理亜とあつこにも伝わっていたのである。これには、花樹、

(えっ、なんで2人の思いが俺にも伝わっているんだ!!)

とびっくりしてしまう。すると、理亜、花樹に対しこう告げた。

(ついに花樹にも私たちの思いがつながった。花樹、人というの1つの目標に向かって一緒に進もうと思いを一つにしたとき、みんなと心同士でつながることができる。今、私たちは思いを一つにした。だから心でつながっている)

この理亜の言葉に、花樹、とても感動する。

(思いを一つにしたおtき、俺たちは心でつながっているか・・・。なんかうれしいことを言っているな!!)

 すると、あつこも花樹に対してこう告げる。

(花樹さん、今、私たちの思いは1つです。今はこのステージを成功させる、それが今の私たちの思いですね)

そのあつこの言葉に花樹ははっきりとこう答えた。

(もちろん!!このステージの成功させて俺たちの思いを、ここ函館を盛り上げてやる、その思いをみんなに知らしめてやる!!)

この花樹の言葉を受け、理亜はこう叫ぶ。

(花樹、あつこ、私たちはこのステージを絶対に成功させる!!そして、私たちの思いをみんなに伝えてやる!!)

これには、花樹、あつことともに、

((OK!!))

と熱く返事をした。

 

 

 

そんな光たちを      先導している星

それが北極星       POLA=STAR

どんなことがあっても   ゆるぎない星

私たちを照らしている   目指すべき星

 

 

 

 3人の熱い思い、それにより・・・、

「なんか、あいつら、勝負どうこう、というより、「函館を盛り上げたい、このステージを成功させたい、その思いが強くなっている気がする・・・」

と日野の言葉を表すかのように観客たちの3人に対する思いが徐々に変わろうとしていた。

 そのためか、次第に、

「SNOW CRYSTAL、頑張れ!!」

という声がどんどん広がっていく。

 そんななか、日野の心境にも変化が起きていた。

「私の心もどんどん熱くなっている・・・。あれほど猪波(花樹)のことを恨んでいたのにどんどんあいつのことを応援したくなっていく・・・。いや、それ以上に、あいつがここ函館を盛り上げようとしているのがひしひしと伝わってくる・・・。もう我慢できない・・・。この恨み、それ以上のものをみせたい・・・」

そう、日野も花樹の熱い思いに突き動かされそうに花樹に対する印象も変わろうとしている、いや、それ以上に、

「猪波、いや、花樹、頑張れ!!猪鹿蝶、頑張れ!!」

と、花樹のこと、花樹たち猪鹿蝶のこと、を応援しようとしていた。

 そんな日野の行動に食されたのか、ついには花樹たちのことを猪鹿蝶としてさげすんでいた高校のみんなからも、

「猪鹿蝶、頑張れ!!」

という声が次々と聞こえてきた。猪鹿蝶、それは花樹たちのことをさげすむ言葉だった。だが、今、花樹たちSNOW CRYSTALの熱い思いは猪鹿蝶という言葉を熱いものへと昇華させたのである。

 そして、ついに、花樹たちは、猪鹿蝶は、いや、SNOW CRYSTALはついに函館を代表するスクールアイドルへと変貌していったのである。そんな花樹たちの姿にこころあも、

「なんか一皮むけた気がするぜ!!」(ここあ)

「それくらい熱いのです!!」(こころ)

と敵ながら熱く答えたのである。

 そして、ついに曲は佳境へと進んでいく。

 

 

 

POLA=STAR        1番輝いている

POLA=STAR     ゆるぎない星

函館の星のように     いつも輝いている

それこそ私たちが     目指すべき星

POLA=STAR       今も輝いている

 

POLA=STAR  POLA=STAR

 

 

 

 そして、曲は終わった。その瞬間、

「SNOW CRYSTAL、とてもよかったよ!!」

「もう疫病神とは言わない!!お前たちこそ函館を代表するスクールアイドルだ!!」

と盛り上がりをみせていた。これには、3人とも、

「どうだ、俺たちの歌は!!参っただろ!!」(花樹)

「みんな、ありがとう」(理亜)

「でも、そう言われると、私、泣いてしまいます」(あつこ)

と感動の声をあげていた。

 そして、理亜はみんなに向かってこう言った。

「これで私たちのステージは終わります。みんな、聞いてくれて・・・」

そのときだって。理亜の言葉をさえぎるかのようにある男がこんなことを言ってきたのである。

「おいおい、それはないだろ!!いいか、この私がここ函館を支配しているんだぞ!!いいか、お前ら、これから絶望をあじあわせてやる!!」

この言葉に、花樹、こう言ってしまう。

「親父!!」

そう、理亜の言葉をさえぎったのは、花樹の父、猪波だった・・・。その猪波はまずこんなことを言い出してきた。

「まずは函館市民の台所、中島廉売とはこだて自由市場を潰してやる!!」

なんと、猪波、函館市民の台所、中島廉売とはこだて自由市場を潰そうとしてきたのだ。ただ、今のディスカウントショップの力ならすぐにでもできそうなことだったため、

「ぐぬぬ・・・」

と観客たちは歯を食いしばることしかできなかった。

 そして、猪波はまわりにいる観客たちに向かってこう言ってきた。

「悔しがれ!!でもな、この私には誰も逆らえない・・・」

そんなときだった。突然、

「ちょっと待った~!!」

という声が会場中に響き渡る。これには、猪波、

「いったい誰だ!?」

と周りを見渡す。

 すると、こころあたちがこんなことを言い出してきた。

「観念するのはお前だぜ!!」(ここあ)

「もう調べはついているのです!!」(こころ)

そう、「ちょっと待った」コールをしてきたのはこころあだった。

 そのこころあは猪波に対してこんなことを言ってきた。

「私たちはいろいろと調べました。すると、でるわでるわ、不正の嵐!!粉飾決算に詐欺みたいな取引、すべて真っ黒です!!」(こころ)

「真っ黒、真っ黒」(ここあ)

そう、猪波はいろいろと不正をしていた。数えるだけで数えきれない、粉飾決算、詐欺みたいな取引、それに、下請けに対する強要、などなど。ただ、それに対して猪波はこう言い訳する。

「そんなこと、知らないぞ!!」

猪波はここまできて白を切るつもりだった。

 だが、大型モニターには、

「おい、あれって粉飾決算の証拠だろ・・・」

と猪波がこれまで行ってきた不正の証拠の数々が映し出されていた。これには、猪波、

「うわ~、なんでこんなものが映し出されているんだ!!」

と絶望に満ちた声をあげていた。

 そんな猪波に対しこころあが暴露した。

「これらは私たちが調べた証拠です!!私たちは最初からあなたの不正を調べるためにわざと手を組んだのです!!」(こころ)

そう、こころあはいわゆるスパイであった。猪波が不正をしている、それを調べるためにこころあはわざと猪波と手を組んだのである。これには、猪波、

「こころあ、お前ら!!」

とこころあに怒りの矛先を向けようとしていた。

 すると、大型モニターにはガテン系の少女が映し出されるとその少女はこう言い出してきた。

「猪波さん、スクールアイドルを悪の手先として使おうとしたこと、万死に値します!!いいですか、あなたは罪を犯したのです!!償ってください!!」

これには、猪波、

「ここにきていったい誰だ?」

というとその少女に対し、こころあ、言葉を口にした。

「あっ、みやこさん!!」(こころ)

「みやこっち!!」(ここあ)

そのこころあの言葉とともにその少女は自分の名を口にした。

「私は大総大学1年、京城みやこ!!親父の命を受けてあなたの悪事を暴くものです!!」

京城みやこ、彼女は、はるか、ハヤテ、愛と同じくレジェンドスクールアイドルグループ「オメガマックス」のメンバーであり、こころあとともにラブライブ!で優勝したことがある(ガテン系の)少女であった。今は大総大学でユニドル、ビーストを結成しているものの、自分の父である刑事の依頼を受けて猪波を追いかけていたのである。

 そんなみやこに対し、猪波、こう訴える。

「私の邪魔なんてするな!!あともう少しで函館を木松悪斗様の地にすることができたのに!!もう許せない!!」

 すると、猪波、こころあに対し迫ろうとする。これには、花樹、

「こころあに触れるな!!」

と自分の父である猪波の邪魔に入ろうとする。でも、花樹は女性、

「どっかにいけ、花樹!!」

と花樹をどかそうとする。

 そんなときだった。突然、大型モニターにある病室が映し出されると初老のおじさんが出てきてはこんなことを言い出してきた。

「猪波、お前、人を殺したな、毒を使って・・・」

これには、猪波、

「なにを言いがかりをつけているんだ!!」

とその初老のおじさんに向けてこう叫ぶとその初老のおじさんはこう言い出してきた。

「あなたたちはもみ消したと思っていると思いますが、実は、ここに殺した人の死亡診断書が残っているのですよ」

なんと、初老のおじさんの手には1枚のカルテが残っていた。そこには「死亡診断書」という文字と「毒殺」という言葉が並んでいた。これには、猪波、

「そんこと、嘘に決まっているじゃないか!!」

と反論するも、

「これはふぐ毒とトリカブトの毒を使った殺人ですね」

とメガネをかけた少女が画面に現れた。それには、こころあ、こう反応する。

「あっ、はるかっちだ!!」(ここあ)

「はるかさん、ついに解明したのですね」(こころ)

そう、画面に現れたのはみやこと同じくオメガマックスのメンバーであり、東都大学の医学部に通っているはるかだった。

 そのはるかは猪波に対しこう告げた。

「この初老のおじさんが見つけてくれた殺された方の病室の防犯カメラの映像、そして、関係者からの聞き取り調査、それと亡くなった時間を確認した結果、猪波、あなたがふぐ毒とトリカブトの毒を使って人を殺しているのがわかったのです」

これには、猪波、はるかに対し尋ねてきた。

「いったい、私が誰を殺したというのですかね」

これには、はるか、すぐに答える。

 

「それは、猪波の母、花樹さんのおばあちゃんです!!」

 

これには、猪波、すぐに反論する。

「おばあさまだと!!嘘をつくな!!言っておくがおばあさまが亡くなった日、私は花樹と一緒にいた。ちゃんとしたアリバイがあるんだぞ!!」

そう、猪波はアリバイがあった。それは第1話(2)を確認してほしい。花樹のおばあちゃんが亡くなったとき、猪波は自分の娘である花樹と一緒に自分の家でちゃんといたのである。ちゃんとしたアリバイがあったのだ。

 だが、これについて、はるか、こう論破した。

「それこそトリカブトの毒とふぐの毒の真骨頂なのです。まず、ふぐ毒とトリカブトの毒をある割合で配合させることで互いの毒の効果を弱めることができます。ですが、ふぐ毒の効果時間は短いため、ふぐ毒の効力が弱まったらトリカブトの毒が効いてくるのです。それを猪波は使ったのです!!」

実は30数年前、それと同じような事件が起きていた。トリカブト保険金殺人事件、保険金目的で自分の奥さんを毒でもって殺した事件なのだが、今回も同じことが起きていたのである。これには、はるか、

「まさか昔起きた事件のやり方を使うなんて許せないよ!1」

と怒っていた。

 さらに、初老のおじさんはあることを言い出した。

「そして、この殺人に加担した病院の医師は私の手で警察に逮捕されている。言い逃れはできないぞ!!」

そう、おばあちゃんの殺人に加担した物はすべて警察に捕まったのである。これでは言い逃れできない、そう思ったのか、猪波、

「あぁ、この私がおばあさまの殺人を指揮したんだ、とても邪魔だったからな!!」

この猪波の言葉に、花樹、絶句する。

「親父がおばあちゃんが殺された・・・。うそでしょ・・・」

 だが、猪波はそんな花樹を無視してこころあに強襲しようとしていた。

 そんなときだった。ある少女が突然現れては猪波を、

「ぐはっ!!」

と完全に蹴り飛ばしてしまった。これには、こころあ、

「みやこ、遅すぎ!!」(ここあ)

「みやこさん、ナイスです!!」(こころ)

と突然の登場に喜んでいた。そう、突然現れたのはこれまで大型モニターに映っていたみやこだった。実は、みやこ、遠くにいると見せかけてずっと近くに隠れていたのである。そのため、これまでのことは全部知っていたのである。

 そんなみやこであるがすぐに警察に通報すると警察はすぐにかけつけてはのびたままの猪波をそのままパトカーでドナドナしていった。

 こうして、木松悪斗唯一の希望も潰えたことにより木松悪斗の一連の事件は幕をおろしたのであった。

 

 その後、みやこは大型モニターに映る初老のおじさんに対してお礼を言った。

「アランさん、いろいろと動いてくれてありがとうございます。これで一連の事件に終止符が打てました」

そう、初老のおじさんとは「RSBP」において桜花の母親を開放してくれたあのアランだったのである。そのアランはみやこに対し、

「まぁ、これが私の仕事だからな。またなにかあったら私のところに来なさい」

と言うと画面から消えてしまった。アランとはいったい何者なのだろうか。

 それについてはまたいつか話すことにしよう・・・、できないかもしれないが・・・。そんななか、花樹はこころあに対してこんなことを言ってきた。

「こころあ、俺の親父が悪いことをした。お詫びする」

すると、こころあはそんな花樹に対してこう言ってきた。

「そんなの関係ないです」(こころ)

「それよりも花樹っちが生まれ変わったから驚いているぜ!!」(ここあ)

これには理亜も、

「本当に私も驚いた。人ってこんなに変わるものなんて・・・」

と驚きの表情をするも花樹はこんなことを言う。

「でも、これはすべておばあちゃんのおかげ。俺はもともとこれが素だから。だけど、親父のせいで素の自分をさらけ出すことができなかった。でも、おばあちゃんの一言でそうしなくてよくなった。それもこれもおばあちゃんのおかげ!!」

そう、すべてはおばあちゃんが残したものが花樹を変えたのである。花樹はこれまで自分の親父のせいで素の自分を押し殺していた。だが、それを見越した上でおばあちゃんは魔法の言葉で花樹が素の自分を出せるようにしたのである。まさに「死せる孔明生ける仲達を走らす」である。これには、あつこ、

「それくらい、おばあちゃんは偉大だった、ということですね」

とうれしそうに言った。

 

 そんななか、花樹のところに日野が近づいてきてはこんなことを言った。

「猪波、いや、花樹、これまできついことを言ってごめん。私、自分の父のデパートを潰されたせいで花樹にひどいことをしてきた。でも、花樹は花樹だった。閉店イベントのステージを見て、私、わかった、花樹もこのイベントのステージで熱くなることでこのイベントを、函館を、盛り上げようとしていることに・・・」

この日野の言葉に、花樹、照れながらこう弁明した。

「俺は俺でこのステージを熱くやっていきたいと思ってやっただけ。それよりも、俺の親父のせいで日野に多大な迷惑をかけてしまった。本当にごめん」

これには、日野、花樹に対し、

「花樹、そんなに謙遜しないで。私にとってこれからはどうなるかわからないけど花樹と一緒に頑張っていけたらうれしい」

と言っては花樹の手をとり仲直りしようとしていた。これには、花樹、

「うん、わかった。俺も日野と一緒に頑張っていきたい」

と言っては日野の手を握った。こうして、花樹と日野は仲直りしたのであった。

 

 こうして、すべてが終わったかのようにみえたがこの後のことについては花樹は忘れていなかった。花樹、札幌に帰るこころあに対してこう言った。

「こころあ、今度はラブライブ!最終予選!!そこでめいいっぱい楽しんでこころあを倒すからな!!」

それにはこころあも、

「返り討ちにするぜ!!」(ここあ)

「そうです!!そうです!!」(こころ)

と元気よく反撃していた。そう、ついにラブライブ!冬季大会最終予選が始まろうとしていた。

 そんななか、理亜とあつこはある種の不安を感じていた。それは・・・、

(このステージで花樹は変わった。でも、花樹のなかにある深淵なる闇はどうなったのだろうか・・・)



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第11話 (4)

 そして、ついにラブライブ!冬季大会北海道最終予選の日を迎えた。ステージ上ではSNOW CRYSTALとこころあがお互いに立っていた。

「ここは俺たちのステージだ!!今度こそこころあに勝ってやる!!」

と花樹がこころあに言うとこころあも、

「そうはならないぜ!!」(ここあ)

「私たちが返り討ちにするです!!」(こころ)

と言い返していた。これには、理亜、

「花樹、もとに戻ったわけ・・・」

と心配そうに言うも花樹はそんな理亜に対し、

「たしかに勝つのも大事だけど、まずは楽しむことを大切にする、おばあちゃんのためにも!!」

と十字架状のペンダントを握りしめては言った。ただ、これには、あつこ、

(もしかして、花樹さんの深淵なる闇はどうなっているのでしょうか・・・)

と心配そうに見ていた。花樹の深淵なる闇は、

「(勝ち続けることで)おばあちゃんとの約束、誓い、ラブライブ!優勝をする」

ことだった。それがまだ花樹のなかに残っているのかわからない、とあつこはそう思ったからだった。

 そのためか、あつこ、意を決して花樹に対しそのことについて尋ねてみた。

「花樹さん、花樹さんのなかにある闇、どうなっているのでしょうか?」

これには、花樹、こう答える。

「あつこ、それについてはステージの最中にわかると思う。だから、待て」

その花樹の言葉、答えがあやふやであったが自信に満ちた言葉であった。そんためか、あつこ、

「花樹さん、わかったわ。それでは待っているからね

 

と優しく答えていた。

 

 と、そうこうしていくうちに最終予選は進んでいた。ついにこころあと花樹たちを残すのみとなった。今回は前回の逆、こころあ、花樹たちの順に進んでいく。こころあがステージに上がる際、こころあは花樹たちに対して声をかけてきた。

「ここあたちの雄姿をみろよな!!」(ここあ)

「圧倒的な差をみせつけてやるです!!」(こころ)

この言葉に花樹は言い返す。

「その言葉、ちゃんと実行できたか、見てやる!!」

あまりにも自信に満ちた言葉だった。それだけ花樹は変わった感じがした。いつもならここで相手を貶めるような発言をするのだが、相手の言葉を受け止める、それくらい、花樹は進化したのかもしれない。これには、理亜、

(なんか、花樹が大人になった感じがする・・・)

と感動すら覚えていた。

 そんななか、ついにこころあのステージが始まった!!

「みんな、いくです!!」(こころ)

「ここあたちのステージ、一緒に楽しもうぜ!!」(ここあ)

2人の言葉がシンクロする。前回の閉店イベントとは違い、ここはこころあのホームグランドである。それくらいこころあも自信に満ちていたのである。

 そして、2人は一緒に自分たちの曲の名を言った!!

「「それでは聞いてください、「?」!!」」

 

 

 

第11話 こころあ 挿入歌 「?(ハテナ)」

 

ハテナ ハテナ ハテナ

 ハテナ ハテナ ハテナ

 

みんなで考えよう    ハテナに入る言葉を

ハテナハテナハテナ   ハテナハテナハテナ

なにか素晴らしい    言葉がはいる

そんな気がして     とてもうれしいな!!

 

ならばみんなで     ハテナを埋めてみよう

にんじん嫌い      そんなのはいらない

もちろんハテナに    はいる言葉はこれだ!!

スクールアイドル大好き ラブライブ!大好き

 

 

 

 

(なんか花樹さん、今までとは違った感じがします)

とこころがここあに対し心のなかでそう語りかけるとここあも、

(あの一件で変わったんだぜ!!こうなってしまうと真面目にやらないとこちらがやられるぜ!!)

と一筋ではいかないことを伝えた。

 そして、2人の心は一致した。

(それでは、「楽しむこと」「好きになること」、そのギアを一段階あげるのであります!!)(こころ)

(OKだぜ!!)(ここあ)

すると、こころあのパフォーマンスが一段階上がる。これまでとはとても違ったすごいパフォーマンス。これには、ステージ袖で見ていた花樹も、

(ふ~ん、これはこちらとしてもうかうかできないな!!)

と気を引き締めようとしていた。

 

 

 

ハテナは無限大の    可能性がある

どんなことだって    できてしまうんだ

どんな言葉でも     はいってしまう

だからみんなで     いろいろいえる

みんなでいろいろ    言ってみよう

ハテナハテナ      ハテナハテナ

 

ハテナ ハテナ ハテナ

 ハテナ ハテナ ハテナ

 

 

 

 こうして、こころあのステージは終わった。その瞬間、

ウォー

というスタンディングオベーションが起きた。これまでで最高のパフォーマンス、これにはこころあも、

(やりきったぜ!!もうこれなら1位も決まりだぜ!!)(ここあ)

(はい、そうです!!)(こころ)

と満足した、そう感じていた。

 その圧倒的なパフォーマンスを見て花樹はこう思ってしまう。

(こんなパフォーマンスを見せられたらこちらも本気を出さないといけないようだな。なら、今出せる最高のパフォーマンスをしてやるぜ!!)

そう、花樹は燃えていた。いつもなら勝つことだけを考えてしまい焦りをみせるのだが、今は違う、力強いオーラを身にまとっていた。これには、理亜、

(花樹、なんかいつもとは違う。なんか、やる気、出ている。私も、やる気、出さないと!!)とこちらもやる気に満ち溢れていた。

 と、そうこうしていくうちについに花樹たちの出番となった。花樹はステージにあがるなり、観客たちに向かって、

「俺たちは生まれかわった!!1年前の理亜みたいな、前回の俺みたいな、そんな俺たちとは違う!!俺は誓う、これから最高のパフォーマンスをみせてやる!!お前たちが感動するくらいのな!!」

そんな花樹に呼応したのか珍しく理亜が叫ぶ。

「この曲は私たちのグループ名、SNOW CRYSTALと同じ名前、それくらい、私たち、燃えている。精一杯楽しんで、精一杯好きになって、精一杯頑張る!!だから、見ていてくれ、私たちを!!」

さらにはあつこも叫んだ。

「この曲は私がこのときのために作詞作曲した曲、力のこもった曲です。どんなことがあってもこの曲とともに頑張っていく、いや、みなさんとともにこの場を盛り上げたい、その思い、感じてください!!」

3人ともこのステージにかける思いは半端ないものだった。理亜たちにとってこの最終予選は鬼門だった。1年前は理亜の焦りから失敗した。前回は花樹の「勝利こそすべて」による気持ちのすれ違いにより失敗した。だが、今は違う。3人とも同じ思いを抱いていた。そう考えるだけで大きな一歩を3人は踏み出した、といえるのかもしれない。

 そんな思いが伝わったのだろうか、観客たちから、

「SNOW CRYSTAL、頑張れ!!」

という声が聞こえてきた。これには、花樹、

(俺、頑張る!!ここからは俺たちのターンだ!!一生懸命頑張ってやる!!)

と俄然やる気を出していた。

 そして、花樹、理亜、あつこはこう叫んだ。

「「「それでは聞いてください、「SNOW CRYSTAL」!!」」」

 

 

 

第11話 SNOW CRYSTAL 挿入歌 「SNOW CRYSTAL」

 

SNOW CRYSTAL SNOW FLOWER

 

(R:雪降る街の中   雪の花が咲き乱れる)

私たちは今一つに   なりて咲き乱れる

これまではいろいろと 分かれていたけど

今こそひとつに    なったんだよ

 

 

(で、先ほどの質問なのですが、花樹さん、花樹さんのなかにある闇はどうなったのでしょうか?)

このあつこの問いに花樹はこう答えた。

(たしかに俺の中に闇はまだある)

これには、理亜、

(えっ、それってまだ「勝利」にこだわっているわけ?)

と聞き直すと花樹はきっぱりとこう答えた。

(たしかにまだ俺のなかに闇は残っている。いや、その闇は変貌した、「勝利」ではない、「一生懸命楽しむこと」にな!!)

そう、花樹は変わった。おばあちゃんの映像により花樹は変わった。これにより花樹のなかにある闇も変貌した。それは・・・、

 

「(勝ち続けることで)おばあちゃんとの約束、誓い、ラブライブ!優勝をする」

「(一生懸命みんなと楽しんで)おばあちゃんとの約束、千秋、ラブライブ!優勝をする」

 

だった。いや、もう闇ではない。それは・・・、

(俺は変わった。だから、もう「深淵なる闇」ではない!!希望へと変わったんだ!!)(花樹)

そう、花樹のなかにあった「深淵なる闇」は変貌を遂げ、「希望」へと変わったのだ。「希望」、それは「闇」とは違い、それに対して頑張る道しるべである。花樹はそれを自分のなかで自分の力で変貌させてしまったのである。それもこれもおばあちゃんのおかげなのかもしれない。

 だが、まだパフォーマンスの最中である。花樹は理亜とあつこに対しこう叫んだ。

(さてと、まだやることはいっぱいだ!!理亜、あつこ、精一杯楽しんで、精一杯好きになって、最後まで突っ走るぜ!!)

 

 

 

いつもとは違う    まわりの風景

でもこれが私たち   これからの日常

心をひとつにして   先へと進む

SNOW CRYSTAL    それが私たちの名

 

 

 

 とても自信にあふれる花樹たちのパフォーマンス、それに観客たちは感動を覚えていた。

「とてもすごい感じがする!!こころあ以上だ!!」

「圧巻のパフォーマンスだね!!」

それはこころあ以上のものだった。そのためか、花樹対に対して

パチパチパチパチ

と合いの手を入れてくる始末。それくらい会場中が一体となっていた。

 これにはさすがのこころあも、

「なんかすごいことになっているぜ!!」(ここあ)

「これこそが花樹さんたちの実力なのでしょうか・・・」(こころ)

と驚くものだった。

 だが、それでも花樹たちの思いは加速していく。

(理亜、あつこ、もっともっと楽しもうぜ!!)

と花樹が理亜とあつこをけしかけると2人とも、

(あぁ、そうだ!!もっと楽しんでいく!!)(理亜)

(本当に楽しいですね。でも、もっと楽しむことができるなんて感動ものです!!)(あつこ)

と花樹に合わせるようにこのステージを楽しんでいた。

 

 

  

SNOW CRYSTAL 新しい雪の花

SNOW CRYSTAL 私たちの名

白く咲き乱れる    私たちの花は

とてもきれいで    うつくしい

白くつつみこむ    優しい雪

SNOW CRYSTAL    光さす方へ

 

SNOW CRYSTAL    うつくしい花は

みんなの想いを    受け止めて

新しい花として    咲き乱れる・・・

 

 

 

 そして、曲が終わった。すると、会場中から、

ヒューヒュー パチパチ

とこころあ以上のスタンディングオベーション+声援がきこえてきた。これには、花樹、

「う~、やり切ったって感じ!!とてもすがすがしいぜ!!」

と、これまでになかった達成感を感じていた。むろん、理亜、あつこも、

「これこそスクールアイドルの醍醐味!!私、とてもうれしい!!」(理亜)

「自分が作った曲をみんなと一緒に楽しむことができてとてもうれしいです」(あつこ)

と感動に満ち溢れていた。

 一方、こころあも理亜たちのステージを見て、

「これはこころあ以上だな!!」(ここあ)

「今回ばかりは脱帽です」(こころ)

とあまりのすごさに脱帽してしまった。

 

 そして、結果発表・・・。

「今回は出番が少なかったけどここばかりはちゃんと決めるよ!!」

と、レポーター、あまりの出番の少なさに嘆きつつも結果を発表した。

「今回の1位は・・・、聖泉女子高等学院スクールアイドル部、

 

SNOW CRYSTAL!!」

 

この言葉に花樹たちは、

「「「やったー!!」」」

と大きく喜んでいた。そんな3人に対しこころあは、

「おめでとうだぜ!!でも、決勝では負けないからな!!」(ここあ)

「もっともっとスクールアイドルを楽しむでしゅ!!」(こころ)

と決勝の地でリベンジすることを理亜たちの前で誓っていた。ちなみに、こころあは2位であった。

 そして、花樹は天を見ては天国にいるおばあちゃんに向かってこう誓っていた。

(おばあちゃん、見ているか。俺、精一杯楽しんで、精一杯好きになってこころあを超えることができたぜ!!そして、理亜とあつこと一緒におばあちゃんとの夢、ラブライブ!優勝を目指してやるぜ!!)

花樹は自分の力で自分のなかにある闇を希望へと変えた。それは花樹のなかにある思いを、スクールアイドルに対する思いを変えたばかりか、理亜とあつことともに精一杯楽しみ、精一杯スクールアイドルのことを好きになって精一杯パフォーマンスをする、それを体現できるようになったのである。

 そんな花樹を見てか、理亜、こう思うようになった。

(花樹は自分の力で闇を希望へと変えた。では、闇ってなんなの?闇というのは私にとって害なの、それとも別のものなの?)

闇、それは人にとって害なのかもしれない。でも、別の見方をすればどうなのだろうか。それはとても気になるものである。その闇のことについて理亜は考えたのである。

 そんな理亜を見て、あつこは、

「理亜さん・・・」

と心配になるのであった・・・。

 

 こうして、ラブライブ!冬季大会最終予選は幕を下ろすことになった。ただ、理亜のなかでは闇の存在について考えてしまうことがあった。果たして闇とはどういうものなのだろうか。それについては、次回、最終回にて語られるかもしれない・・・。

 

To be contued

 

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RIA said 「It's my dream!!」

 



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第12話 (1)

 夢、それは儚いものである。夢はまるでシャボン玉のごとし。シャボン玉のように浮かんではすぐにはじける。それくらい夢は儚いものである。

 では、その夢がはじけたあとはどうなるのあろうか。それは人それぞれ。夢見たことを一つの思い出として先に進もうとする者、もう1度その夢を目指そうとする者、人それぞれ。でも、なかには夢がはじけたために闇にと陥る者もいる。その者はその夢を自分の闇として抱え込んでしまう。その闇の内容も人それぞれ。ある者は自分の犯した過ちのせいで、ある者は自分の成長によって、ある者はその夢を持つきっかけとなったものを失ったため。三者三様である。とはいえ、闇を持つことでその者は永遠なる悔いへの懺悔をしていくことになる。それ自体その者にとって重たい十字架を永遠に背負っていくことが決まっているがごとく・・・。

 しかし、闇とは永遠なるものなのだろうか。自分の成長によって夢を失った者はその闇に代わるものを手に入れたためにその闇を払いのけた。夢をもつきっかけとなったものを失った者はその闇を書き換えたことで闇を希望へと変貌させた。闇、それは永遠なるものではない。闇は思い次第によって代わるものなのかもしれない。 

 では、闇とはなんなのだろうか。闇の正体とはなんなのだろうか。闇と夢の関係とはなんなのだろうか。

 

その答えはある少女の思いによってわかるかもしれない・・・。

 

ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第12話 「It’s my dream!!」

 

(闇ってなんなの?闇というのは私にとって害なの?それとも別のものなの?)

ラブライブ!冬季大会北海道最終予選終了後から理亜の頭のなかにはこの思いが駆け巡っていた。というのも、自分と同じく闇を抱えていた花樹がおばあちゃんの動画でもって自分の闇を希望へと変貌させたからだった。花樹は自分の闇についてこう語っていた。

「俺は変わった。だから、もう「深淵なる闇」ではない!!「希望」へと変わったんだ!!」

その言葉は「花樹」から「俺」へと一人称を変えるくらい自分の殻を脱ぎ捨て自分の夢を目指すようになった花樹だからこそ言える言葉であった。そんな花樹の姿を見てか、理亜のなかにある「闇とはなにか」、そのことについて自問自答を理亜は繰り返していたのである。

 そんな理亜はふと自分の闇について考える。

(私の闇、それはラブライブ!で優勝すること、

 

私と姉さま、あつこの夢、ラブライブ!優勝、私の実力で、絶対に、叶えること・・・)

 

そう、理亜のなかにある闇、それは自分の実力でもってラブライブ!優勝すること、だった。

 だが、その闇を考えたとき、ふと、理亜はあることを思い出す。

(この闇が生まれたきっかけ、それは、1年前、姉さまとSaint Snowを組んでいたとき、私のミスで最終予選で敗退したことで姉さまとの夢を叶えることができなかったこと・・・)

そう、理亜の闇は、1年前の最終予選、理亜が「勝つことがすべて」という考えによって焦るあまりミスをしてしまったために予選敗退、姉聖良との夢、ラブライブ!優勝を叶えることができなかったために起きたものだった。

 そんな理亜は姉聖良のことを思ってかこんなことを悔いていた。

(姉さまの前で深紅の優勝旗を見せたかった・・・。1年前は私のミスで、前回はあともう少しのところで花樹との思いが合わなくなった・・・。姉さまの前でラブライブ!優勝をしたかった・・・。姉さま・・・、姉さま・・・)

この1年で理亜の闇は理亜の知らないところで成長していた。姉聖良とは理亜の心のなかにある想い、想い出、キズナ、そんな宝物によりずっとつながっていた。だが、理亜はそれでも姉聖良の前でラブライブ!優勝という深紅の優勝旗をみせたかったのである。いや、そうじゃない。理亜は姉聖良と一緒にラブライブ!優勝という感動を分かち合いたい、そう思っていたのである。聖良の妹である理亜は姉である聖良のことを命の次に大事にしてきた。その2人の夢、いや、その陰にいたあつこを含めた3人の夢、それが、ラブライブ!優勝、であった。ただ、理亜はその夢を叶えるチャンスを2回ふいにしてきた。1回目は1年前の最終予選のとき、2回目は前回のラブライブ!決勝のとき。2回とも理亜のせい(1回目は自分のミスにより、2回目はパートナーである花樹との思いの不一致により)であると理亜は思っていたのである。それくらい理亜にとって姉聖良の存在は大きいもの、いや、それだけ、姉聖良に依存していたのである(まぁ、前回のラブライブ!以降、そんなそぶりを

理亜はみせていなかったのは同じユニットメンバーであるあつこと花樹のことで精一杯だったからなのですがね・・・)

 その理亜であるが今の現状について振り返る。

(でも、姉さまはもうここにはいない・・・。今、姉さまはアメリカにいる・・・。あまりにも遠い・・・。姉さま・・・、姉さま・・・)

そう、今、姉聖良はアメリカは留学中であった。理亜は3度目の正直がごとくラブライブ!決勝に進出することができた。理亜にとってもう1度夢を叶えるチャンス得たのだが、自分にとって大事な存在である姉聖良はここにはいないのだ。そのため、たとえ、ラブライブ!優勝したとしても姉聖良と優勝を分かち合うことができないのだ。そのためか、今の理亜は苦しでいたのである。

 こうして、理亜のなかに新たなる闇が生まれようとしていた。

 

私と姉さま、あつことの夢、ラブライブ!優勝、私の実力で絶対に叶えてみせる

    ↓

私と姉さま、あつこと一緒にラブライブ!優勝、私の実力で、絶対に、叶えてみせる

 

それはまさに昔に戻った・・・のかもしれない。だって、理亜がスクールアイドルを始めたきっかけ、それは、μ'sやA-RISEみたいにラブライブ!優勝という頂から見える景色を見たい、そんな夢から生まれた、姉聖良とあつことともにラブライブ!優勝を叶える、そんなSaint Snowの誓い、なのだから・・・。

 そんな理亜は姉聖良のことを心のなかでこう叫び続けていた。

(姉さま・・・、姉さま・・・)

 

「理亜、早く起きて!!もうすぐ東京だぜ!!」

と花樹は理亜に対しそう言っては起こそうとしていた。そんな理亜であるが、

「姉さま・・・、姉さま・・・」

と寝言を言っていた。そう、理亜は寝ていたのである。実は、理亜、夢の中で自分の闇によって苦しんでいたため、それがつい寝言になってしまったというわけである。これには、あつこ、

(まさか、理亜さん、まだ、聖良さんのことを・・・)

と理亜の夢のなかで起きていることを察しているのか心配そうに見るも、

(とはいえ、このままだと理亜さんが苦しんでしまいます。なんとかしないと・・・)

と思ったのか、理亜に対し、

「理亜さん、早く起きてください!!起きないと、ワシワシの刑ですよ!!」

と大きな声で理亜を起こそうとする。ワシワシの刑、それはμ'sの希の得意技で・・・、と言っているそばから、理亜、その「ワシワシの刑」が効いたのか、

「うわ~、あつこ、やめて!!ワシワシの刑はしないで!!」

と自分の胸を守りながらようやく起きてきた。

 そんな理亜に対し、あつこ、一言。

「理亜さん、まさか、聖良さんのことを・・・」

これには、理亜、こう答える。

「あつこには関係ない!!これは私の問題・・・」

そう言っては、理亜、黙ってしまった。

 ただ、そのあとも理亜はこんなことを言っていた。

「闇ってなに?闇って消えないの?それに・・・、姉さまに・・・、姉さまに・・・」

 そんな理亜を見てか、花樹、

(姉さま、姉さまって理亜の姉のこと?)

と不思議そうになるもすぐにこう考えてしまう。

(理亜は自分の闇に苦しんでいる・・・。それに、「姉さま・・・、姉さま・・・」と叫んでいる。これってなんとかしないといけない案件なのか?もし、そうであるなら、この俺がなんとかしないといけないな!!)

 

「闇とはなにか?」「姉さま・・・、姉さま・・・」

あつこの、花樹の、闇は消えた。次の自分の番・・・なのか、理亜はずっとそのことについて考えていた。そんななか、

(闇っていったいなんなの?それよりも・・・、姉さまはいない・・・。それでいて自分の夢は叶うわけ?いや、闇自体消えないかもしれない。そうなると、私は・・・)

といまだに負のスパイラルに陥っている理亜。それに対し、

「理亜ちゃん、大丈夫?なにか悩んでいない?」

とルビィが心配そうに覗いてきた。そう、今、理亜はルビィと一緒に東京の街を観光しに来ていたのだ。ルビィたちAqoursも圧倒的な実力でもって、地方予選、最終予選を勝ち抜くことができた。ちなみに、Aqoursは前回のラブライブ!で二連覇を達成して以降、Aqoursの名は日本中に轟いていた。そのため、ダイヤたち卒業生とともに出した「Happy Party Train」はミリオンセラーを記録するほどの超有名グループとなっていた。それでもルビィたちは「ハピトレ」のMVをめぐるある人たちとの事件簿という経験を含めて大きく成長していた。歌、ダンス、パフォーマンス、すべてにおいて前回の倍以上の実力をもつまでになっていた。ただ、それでもルビィにとってみれば理亜はとても大切な仲間でありライバルでもあった。そのライバルがうわの空になっているそのことをルビィは気にしていたのである。

 ただ、そんなライバルに弱みを見せたくない、そのためか、理亜、

「いや、なんでもない・・・」

とルビィに心配をかけないように言うも、ルビィはそんな理亜に対し、

(いや、絶対になにかをかくしている!!)

という思いがあったのか、理亜に対しビシッと言う。

「理亜ちゃん、困っていることがあればお互いさまだよ!!ルビィに相談して!!」

あまりにも迫力のあるルビィの言葉。これにはさすがの理亜も、

「う~」

とうなるもすぐに、

「ルビィには関係ないこと!!ほっといて!!」

とルビィに対し拒絶反応をみせる。これには、ルビィ、

「理亜ちゃん・・・」

と戸惑いを感じるも、理亜、すぐにこんなことを言ってしまう。

「闇ってなに?闇って消えなの?それに・・・、姉さまに・・・、姉さまに・・・」

その言葉にルビィはあることを考えてしまう。

(理亜ちゃん、相当苦しんでいる。ルビィ、なんとかしたい。でも、どうすればいいの・・・。どうすれば理亜ちゃんはもとに戻るの・・・)

 

 そして、決勝前日、理亜はいまだに悩んでいた。

(闇ってなんなの?闇って消えないの?それに・・・、姉さまに・・・、姉さまに・・・)

理亜の頭のなかではこの言葉たちがぐるぐると駆け巡っていた。理亜のなかにある闇は理亜のなかで大きくなろうとしていた。これまで理亜は、あつこのこと、花樹のことで精一杯だったため、自分の闇と対峙する時間はなかった。だが、この2人のことが終わった瞬間、自分の闇と対峙するとそれまで隠れていた闇が一挙に噴き出してしまったのだ。こうして、理亜のなかにある闇はここにきて理亜自身でどうすることもできないところまで大きくなってしまった・・・。

 そんな理亜の姿に花樹はあつこに相談する。

「あつこ、このままだと、理亜、絶対におかしくなってしまう。どうすればいいわけ?」

この花樹の言葉に、あつこ、

(たしかにこのままだと理亜さんは壊れてしまいます。なんとかしないと・・・)

と思ってか、こんなことを言い出してきた。

「たしかにこのままだと理亜さんは壊れてしまいます。でも、私たちでは・・・」

そう、あつこ自身も理亜をなんとかしないとと心配していた、のと同時に、自分たちではどうすることもできない、そのことを認識していたのだ。そのため、あつこもどうすればいいのかわからなくなっていたのだ。

 そんなとき、花樹はあることをひらめく。

(理亜さんは自分の闇によって苦しんでいる。それは昔の俺たちと同じ。俺やあつこも闇を持っていた。でも、おれはおばあちゃんとのあつこは卒業生のダイヤたちとの会話で自分の闇を払いのけることができた。なら、理亜も同じことをすればいいのではないだろうか。そうすれば理亜のなかにある闇を取り除くことができるのでは)

そう、花樹は自分たちと同じことをすれば理亜のなかにある闇を払いのけることができるのではないかと考えたのである。

 そこで、花樹、その考えのもと、あつこはある提案をした。

「あつこ、俺たちみたいに理亜もほかの人と相談すればいいのではないか?」

この花樹の提案に、あつこ、はっとしては納得する。

「たしかにその通りですね!!」

自分たちと同じことをする、それはあつこにしても花樹としても理に叶っていることだったようだ。というのも、あつこは、自分の夢、自分の成長により感覚のズレが生じ、フィギュアスケートにおいて昔みたいにいい成績を残せなくなった、それによりまわりからの声が冷たくなりそれによって限界を超えた練習をした結果、大会で大ケガをしてしまった、その闇をスクールアイドル卒業生のダイヤ、鞠莉、果南、聖良と相談したことによりその闇に代わる新しい夢、スクールアイドルになって大成する、それを手に入れたことで自分の闇を払拭できたのである。そして、花樹も「勝ち続けることでラブライブ!優勝を叶える」、その闇をおばあちゃんの動画、おばあちゃんとの対話を通じて「楽しむことでラブライブ!優勝を目指す」という目標へと闇を変えていったのである。こうしてみてみると、2人とも他人との会話を通じて自分の闇を払拭できたのである。なら、理亜も他人と相談する、会話することで自分の闇を払拭できるのでは、と花樹は考え、あつこもその花樹の提案に納得したのである。

 でも、ここで一つの問題が生じる。それはあつこのある言葉によるものだった。

「でも、その相談する相手はどうするのですか?ルビィさん?それとも別の人?」

そう、相談する相手である。理亜の闇を払拭するためにはどのような相手がいいのか、とあつこは悩んでいたのである。

 そんなあつこの心配を聞いてか、花樹、あつこの言葉に出てきた少女の名をあげる。

「ルビィ、たしかにルビィとなら仲間だから相談できるかも・・・」

 だが、ここで、花樹、理亜の言葉にあることを思い出す。

(たしか、理亜さん、こんなことを言っていた・・・、「姉さまに・・・、姉さまに・・・」と・・・)

 すると、花樹、あることをひらめいてしまう。

「あっ、そうだ!!ルビィ以上に適任の人がいる!!あつこ、この人なら・・・(ごりょごりょ)」

とあつこに言ってはあつこの耳元でその人の名を言うとあつこも、

「たしかに、その人なら適任かもしれませんね!!」

と納得の表情。

 すると、あつこ、急げとばかりにすぐにその人のところに連絡をいれてくれた。

「あっ、・・・さん、お願いがあります。実は・・・」

 

 一方、ルビィの方も理亜のことで悩んでいた。

「理亜ちゃん、なんとかしないと壊れてしまっちゃうよ・・・」

 すると、桜花がこんなことを言ってきた。

「ルビィ、相手のことを心配していいのかしら。こちらだって明日はラブライブ!決勝です。そんなに相手のことを心配していいのですか?」

そう、Aqoursも忙しい中、スケジュールが空いている時間を使って練習してきたのだ、ラブライブ!決勝に向けて。でも、数少ない時間のなかで練習していたため、決勝に向けて大丈夫なのか桜花的には心配していたのである。

 そんな桜花に対し桜花の仲間である梅歌と松華がこう指摘する。

「たしかに桜花ちゃんのいうことも一理あるけど友達だったら心配しておかしくないよ」(梅歌)

「桜花ちゃんのことで私と梅歌が心配するのと同様にルビィさんが理亜さんのことを心配するのは当たり前だと思います」(松華)

この2人の言葉に桜花は反省の様子・・・。

「う~、たしかに2人の言う通りかも・・・」

そんな3人をよそに洋画ルビィにこんなことを言ってきた。

「ルビィちゃん、ルビィちゃんなら理亜ちゃんも心を開くんじゃないかな?」

曜が言うには理亜にとって一番の親友であるルビィとなら心を開くことができる、そう睨んでいたのである。

 だが、ルビィは曜に対しこの前のことを話してしまう。

「陽ちゃん、たしかにルビィは理亜ちゃんにとって一番の親友だけど、この前、理亜ちゃんに聞いても教えてくれなかったんだ・・・」

この言葉に梨子も、

「えっ、あの理亜ちゃんがルビィちゃんに心を開いてくれなかったの!!」

とびっくりしてしまう。たしかに、理亜にとって一番の親友であるルビィに心を開いてくれなかったのだから梨子がびっくりしてもおかしくなかった。

 

 そんなときだった。突然、

「あっ、そうだ!!」

と千歌が大きな声を出した。これには、ルビィ、

「えっ、なに、千歌ちゃん?」

と千歌に声をかけると千歌はとんでもないことを言い出してきた。

「そうだ、・・・さんにお願いすればいいんだよ!!・・・さんは理亜ちゃんにとって一番大切な存在なんだもん!!なら、・・・さんに、理亜ちゃんのこと、お願いすればいいんだよ!!」

この千歌の提案に、ルビィ、

「たしかにそれがいいかも!!」

と賛成の意を表明する。千歌の提案はルビィにとって渡りに船だったのだ。

 と、ここでヨハネがこんなことを言い出してきた。

「でも、そうしたら敵に塩を送ることにつながらないかしら」

そう、Aqoursにとって理亜たちSNOW CRYSTALはライバルであり敵である。その理亜に対して手助けをする、そのことは敵に塩を送ることにもつながるのである。

 でも、ここで花丸がヨハネに対しこんなことを言ってきた。

「でも、善子ちゃんはたとえそうであっても千歌ちゃんの言うことをするのが仲間として当然と考えているずら」

この花丸の言葉に、ヨハネ、

「ずら丸、よけいなことを言わなくていいの!!それに、善子じゃなくて、ヨハネ!!」

と怒るもその表情には、花丸の言う通りである、と顔に書かれていた。

 そして、ルビィは自分以外のの8人を見る。すると、

「千歌ちゃんの案に賛成!!」(曜)

「私も!!」(梨子)

「まぁ、千歌の言うことだからいいか」(ヨハネ)

「オラも賛成ずら!!」(花丸)

「ご勝手にどうぞ」(桜花)

「そんなこと言って、桜花ちゃんも賛成でしょ!!」(梅歌)

「右に同じ!!」(松華)

「そんなわけないでしょ!!でも、千歌がそうすると言えばそうすればいいじゃない」(桜花)

「ルビィちゃん、9人の思いは一緒だよ!!」(千歌)

と8人とも賛成の意を示してくれた。

 そんなわけでして、ルビィ、ついに腹を決めたのか大声を出してこう言った。

「みんな、ありがとう。ルビィ、あの人にお願いする!!」

 

トゥルルル トゥルルル

「あれ、だからでしょうか?あっ、ルビィさんからですね!!」

その少女は電話をとるとそのスピーカーからルビィがこんなことを言ってきた。

「・・・さん、こんにちは。早速ですがお願いがあります。理亜ちゃんは、今、自分の闇に苦しんでいます。だから、理亜ちゃんを助けてください。お願いします!!」

このルビィのお願いにその少女はこう答えてくれた。

「まさか、同じことを2度言われるなんてね。それほど理亜が苦しんでいるのですね」

この言葉にルビィはびっくりする。

「えっ、ルビィ以外に同じことを言った人がいるの?」

 すると、その少女はルビィと同じお願いをしてきた人を(電話で)呼びかけた。

「理亜と同じユニットのあつこに花樹さん!!」

この言葉ともに別のスピーカーから男言葉の少女の声が聞こえてきた。

「・・・、お願いだ!!理亜を、あなたの妹を、助けてやってくれ!!・・・だけが頼りなんだ!!」

この声を聞いてルビィの隣にいた桜花が反応する。

「こ、この声は花樹!!って、なんか、花樹、これまでとは違った言い方だな!!」

そう、その少女を呼びかけた、突然お願いをしてきた人とは花樹だった。花樹とあつこもその少女に理亜を助けてほしいとお願いをしてきたのである。

 その花樹は突然の桜花の言葉に、

「って、この声は桜花!!って、これが俺の本当の口調なんだ!!」

と桜花に言うと、桜花、花樹に対し、突然、

「花樹、申し訳ない!!私の父のせいで花樹に辛い思いをさせてしまった。本当に申し訳ない!!」

とお詫びをしてきた。というのも、桜花の父は木松悪斗である。その木松悪斗の左腕が花樹の父である猪波だったのだ。そして、この物語の一連の問題はすべて桜花の父である木松悪斗が仕掛けたものだったからである。そういうわけですべての責任は、桜花の父、木松悪斗にある、その娘である桜花は花樹に対し花樹の父親を巻き込んだお詫びをしてきたのである。ただ、これについては、花樹、桜花に対し励ましの言葉を送る。

「そんな心配をしていないぜ!!俺が生まれる前からのことだし、そこまで気にしていないぜ!!それよりもこの俺が生まれたことで今がある!!これまでのことは水に流して今からやればきっとスクールアイドルとして一緒に頑張れる気がするぜ!!」

この言葉に、桜花、泣きつつも、

「うん、ありがとう、花樹」

とお礼の言葉を言った・・・のだが、そのそばから梅歌と松華が、

「でも、なんでここで、桜花ちゃん、ホホを赤く染めているのですかね?」(梅歌)

「これこそ、禁断の恋、というものなのです」(松華)

桜花に対しおちょくる。これには、桜花、

「梅歌、松華、少しは黙って!!」

と2人を叱ると、花樹、

「ハハハ・・・」

と苦笑いするしかなかった。

 とはいえ、花樹とあつこ、ルビィたち、二組から自分の闇に苦しんでいる理亜を救ってもらうようにお願いされたその少女は二組に対しこんな質問をしてきた。

「でも、この私が妹の理亜に言ったところで理亜地震が変わらないと意味がないのです。そのことも考えてのことでしょうか?」

そう、いくらその少女が理亜に対しいろいろと言ったところで理亜が変わるとは限らないのである。それでもその少女は理亜を救うことができるのか心配だったのである。

 ただ、この質問に対しまず花樹はこう答えた。

「代わると思います。だって、俺もあつこも大切な人たちの言葉によって救われました。なら、理亜もあなたの言葉で代わると思います」

そう、あつこはダイヤたちから、花樹は自分のおばあちゃんからの言葉で自分の闇を払拭できたのである。なら、理亜も自分たちと同じことをすればきっと自分の闇を取り除くことができる、花樹とあつこはそう思ったのである。

 さらに、あつこがこんなことを言ってきた。

「それに、私と花樹さん、理亜さんは、この1年間、一緒にスクールアイドル活動をしてきました。そのなかであるものを手に入れました。そのあるもの、それは、私たちの想い、想い出、キズナ、そのものを、いや、・・・さんとの想い、想い出、キズナ、そのもの2つを理亜さんは持っているのです。そのものを、・・・さん、伝えてもらったら理亜さんは代われると思います」

そのあつこの言葉に続けとばかりにルビィもあることを口にした。

「そんなことを言うのであれば、ルビィたちの想い、想い出、キズナ、そのものも理亜ちゃんにはあるはず!!だって、理亜ちゃん、ルビィたちと一緒に仲間としてやってきたんだよ!!ときにはライバルだけど、理亜ちゃんとルビィは一番の親友だよ!!だからこそ、理亜ちゃんには強く言いたい、ルビィたちのことも忘れないでね、ってね!!」

たしかにルビィの言う通りだった。理亜とルビィは一番の親友である。そんなルビィたちとの想い、想い出、キズナ、そのものは理亜にとって大切なあるものへと変わっていったのである。そのことを考えても理亜のなかにはその大切なものがあると言えるのである。

 そんな二組の言葉を受けてその少女はついに決断する。

「わかりました。明日、理亜に連絡をとりましょう。私の言葉であれば理亜はきっと自分の闇を振り払うことができると思います。だって、あつこに花樹さん、ルビィさんたち、二組の想いをこの私が背負っているのですから・・・」

 

 そして、ついにラブライブ!決勝の日を迎えた。ただ、理亜は決勝の開会式が終わっても、

「闇ってなんなの?闇って消えないの?それに、姉さま・・・、姉さま・・・」

とまだ自分の闇にとらわれていた。

 そんなときだった。花樹は理亜に対し、

「理亜、まだ自分の闇にとらわれているわけ?」

と言ってきた。花樹からすれば今の理亜は、

(なんか、今の理亜、昔の自分に似ている・・・)(花樹)

と、昔の自分に、「勝つことがすべて」、それにとらわれていた自分に似ている、と思っていたのだ。花樹も昔は父親から刷り込まれた考え、「勝つことがすべて」、それにとらわれていた。そのため、その考えに、その闇に花樹は苦しんでいた。だが、今の花樹は違った。おばあちゃんとの会話を通じてその闇を払いのけることができた、いや、闇を希望へと変えることができたのである。そのため、花樹は自分の闇にとらわえれている理亜に対し、

(理亜、今の俺みたいにあの人との会話を経て自分の闇を振り払ってくれ!!)

という想いとともに、理亜に対し、

「そんな理亜に対し、俺からの餞別!!どうぞ見ていてくれ!!」

と1つのタブレット(こころあより)を理亜に渡した。これには、理亜、

「って、花樹、これって一体どういうわけ?」

と花樹に対しなぜ自分にタブレットを渡したのかその理由を尋ねてしまう。

 そんな理亜に対し花樹はただ一言だけ言う。

「これはここにいる全員の意見です」

その花樹の一言だったが、その一言とともに理亜のもとにぞくぞくと人が集まる。

「理亜さん、私のことを、あつこのことを思い出してください!!」(あつこ)

まず集まったのは理亜と同じユニットに入っているあつこ、それに、

「理亜ちゃん、ルビィのことを思いだして!!」(ルビィ)

理亜にとって1番の親友であるルビィだった。そのあつこのルビィのまわりには、

「ふっ、このヨハネとことを忘れたとはいわせないぞ、リトルデーモン10号!!」(ヨハネ)

「そうだよ!!理亜ちゃんは私たちにとって大切な仲間なんだよ!!」(曜)

「これまで苦労をかけてしまった。それでも大切な仲間というのはたしかだ!!」(桜花)

とAqoursの面々も集まってきた。これには、理亜、

「ルビィにあつこ、それに、みんな・・・」

と涙を流すもすぐに、

「でも、私の闇はみんなが集まっても・・・」

とすぐに暗くなってしまった。

 だが、ここで理亜の持つタブレットが明るくなるとある少女が映り理亜に呼びかけてきた。

「理亜、私の大切な理亜!!」

これには、理亜、驚いてしまう。

「ね、姉さま・・・」

そう、タブレットに映し出された少女とは、理亜の姉、聖良だった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第12話 (2)

 タブレットに映る姉聖良の姿に理亜はただ、

「姉さま・・・、姉さま・・・」

と泣き出してしまった。理亜にとって姉聖良は一番大切な存在だった。半年前まで理亜は姉聖良と行動をともにしていた。それは半年前に聖良がアメリカに留学するまで続いた。もちろん、2人はあの旧函館公会堂の庭で行ったSaint Snowの誓いのもと、Saint Snowとしてスクールアイドルとして一緒に活動していた。それくらい理亜にとって姉聖良は大切な存在だったのだ。ただ、聖良がアメリカに留学して以降、理亜はあつこや花樹のことでいっぱいいっぱいで姉聖良のことについては考える余裕がなかったため、そこまで姉聖良を追い求めようとしなかった。だが、そのすべてが解決して以降、理亜は姉聖良の存在を強く追い求めてしまった。そのために理亜は自分の闇に飲み込まれたのである。

 そんな理亜に対し聖良はこんな言葉を投げかけてくれた。

「理亜、私がいないにも関わらずこれまで頑張ってきましたね」

この姉聖良のねぎらいの言葉に、理亜、

「姉さま、ありがとうございます、私をねぎらってくれて・・・」

と涙目になりながら応えてくれた。姉崔らがアメリカに留学して以降、理亜はあつこと花樹が自分の闇によって苦しんでいたときでも2人のことを信じて自分のユニットの柱として頑張っていた。そのため、今、理亜のユニット、SNOW CRYSTALが存在しているのもひとえに理亜のおかげだったのだ。それくらい理亜は自分の闇のことを忘れるくらい頑張っていたのだ。そのためか、聖良、理亜のことをこう褒めた。

「これまで理亜の苦労はあつこと花樹さんから聞きました。理亜がいたからこそここまでやってこれたのです。それは誇るべきことです」

これには理亜も、

「姉さま、ありがとうございます」

と喜んでいた。

 だが、ここで聖良は理亜に対しあることを尋ねた。

「でも、今は理亜が自分の闇に飲み込まれようとしています。それはなぜですか?」

これには、理亜、正直に答える。

「私は姉さまに深紅の優勝旗を見せたかった。私の実力で見せたかった。でも、その姉さまはもうここにはいない。姉さまの想い、想い出、キズナ、その宝物で結ばれていても直接深紅の優勝旗を見せることができない、そのもどかしさに私は幻滅した・・・」

そう、理亜の闇、それは、姉聖良とともにラブライブ!優勝すること、それがもとになっていた。だが、ラブライブ!延長戦で理亜のなかにあるその宝物によってずっと姉聖良とあつことつながっている、そのことを知ったことで姉聖良とあつことの宝物、Saint Snowという輝き、宝物があることを知ったことでその闇は消えたのだが、その延長戦が自分のために行われたものであるとわかってしまったため、消えたはずの闇が「姉とともに」から「自分の実力でラブライブ!優勝を叶えてみせる、姉聖良とあつことの夢を叶えるために」という形となって復活してしまったのである。そして、今、その闇はまた「姉聖良とともに」に書き換えられたのである。

 ただ、それについては聖良が理亜に対しこう訴えた。

「理亜、あなたには、私、あつことのSaint Snowの宝物以外にも2つの輝き、宝物があるはずですよ!!」

その聖良の言葉に、理亜、聖良に尋ねてみる。

「それってなにですか?」

 すると、聖良は理亜にあることを尋ねた。

「理亜、あなたは、今、誰といますか?」

これには、理亜、こう答える。

「あつこに花樹、そして、ルビィたち・・・」

その理亜の答えを聞いて聖良はこう応えた。

「そうです。それこそ理亜が持つ2つの輝き、宝物なのです!!」

これには、理亜、はっとする。

「えっ、あつこと花樹、ルビィたちが私の宝物?」

この理亜の言葉に聖良はふたたび理亜に尋ねた。

「ところで、理亜、私のいう宝物の定義とはなにですか?」

この聖良の問いに理亜はこう答えた。

「それは・・・、その人と一緒に築いてきた想い、想い出、キズナ・・・」

これには、理亜、はっとする。

「って、これって、つまり・・・、私とあつこ、花樹、それに、私とルビィたちやこころあとの・・・宝物!?」

ここにきて、理亜、ようやく聖良の言いたいことがわかったようだ。そう、理亜のなかには2つの輝き、宝物が存在していたのである。それは、理亜とあつこ、花樹とのSNOW CRYSTALとしての輝き、宝物、そして、ルビィたちAqoursやこころあとの輝き、宝物だったのである。この1年間、理亜はあつこと花樹と一緒にSNOW CRYSTALとして一緒に活動してきた。そのなかで紡がれた3人の想い、想い出、キズナが、今、理亜のなかにSNOW CRYSTALとしての輝き、宝物として存在していたのである。さらに、この2年ものあいだ、理亜はルビィたちAqoursやこころあとも関係をもった。理亜が苦しんでいるとき、いつもルビィが理亜のことを心配してはいつも話しかけてきた。いや、ルビィ以外にも千歌をはじめとするAqoursの面々と理亜は付き添ってきたのである。また、ことあるごとにこころあとも競いあってきたのである。そのなかで培われてきたルビィたちAqoursやこころあとの想い、想い出、キズナという輝き、宝物も理亜のなかにあったのである。

 そのことを気づいたのか、理亜、聖良にこんなことを言う。

「私、姉さまの分を合わせて3つの宝物を持っていたんだ・・・」

そう、理亜のなかにはすでに姉聖良とあつことのSaint Snowという宝物を持っていた。それと合わせて理亜には3つの宝物をすでに持っていたのである。

 そのことを踏まえた上で聖良は理亜にこう諭す。

「理亜、あなたはすでに3つの宝物を持っています。だから、今は私のことよりもみんなとの宝物を大切にしなさい。理亜の今の実力なら、理亜とあつこ、花樹さんとの宝物、そして、ルビィさんたちやこころあとの宝物を大切にしていれば理亜はきっとラブライブ!で優勝できるはずです」

 この聖良の言葉に理亜は、

「はい、わかりました、姉さま!!」

と力強く返事した。妹理亜にとって姉聖良は憧れの存在でもありSaint Snowという宝物で結ばれた唯一無二の存在だった。その聖良の言葉に理亜は元気をもらったのである。

 いや、それだけじゃなかった。2つの宝物の存在を知ったことで理亜はこんなことを言い出してきたのだ。

「私、3つの宝物があるなんて、欲張り。でも、その宝物を存在を知ったことでなんかyる気が満ち溢れてきた気がする・・・」

そう、理亜はついに自分のなかにある3つの宝物の存在によって強くなったのである。理亜のうしろには姉聖良だけでなく、あつこに花樹、そして、ルビィたちAqoursやこころあがいるのである。その人たちとのなかで理亜がこれまでに得てきた想い、想い出、キズナ、3つの宝物、それが理亜のなかにある知られざる自分の力を引き出したのである。それに加えて姉聖良から「今の実力ならラブライブ!で優勝できる」と太鼓判を押したことで理亜は力強くなれた要因の1つとなった。

 だが、ふと、理亜はあることを考えてしまう。それは・・・、

(でも、闇ってもともとなに?私の闇って消えるの?)

そう、闇とはなんなのか、ということと理亜の闇自体消すことができるのか、ということだった。たしかに闇とはなんなのだろうか?人は闇を消すことができるのだろうか?

 そんな理亜の考え込む姿をみてか聖良がこんなことを言い出してきた。

「理亜、闇について考えているみたいですね」

この聖良の言葉に、理亜、はっとする。

「えっ、姉さまってエスパーなのですか?」

どうやら、聖良の言葉はあたりだったようだ。

 そんなびっくりする理亜を尻目に聖良は闇について語り始めた。

「闇ですか・・・。人間の闇ってなんなのでしょうか。私が思うに人のヤイはいろいろありますが一概にいって人の負の部分といえるかもしれません」

たしかにその通りかもしれない。人の抱える闇はいろいろあって一概には言えないのだが、だいたい言えることは人にとって負の部分、マイナスの部分が闇と呼ばれる部分なのかもしれない。人には必ず負の部分がある。その負の部分と陽の部分、それがバランスを取り合って人は生きている。だが、失敗などが原因で負の部分が増大したとき、その人の闇の部分が膨れ上がってしまう。こうなってしまうと人は生きるのをためらう、自殺するといった人にとってマイナスになるようなことをしてしまうのかもしれない。たとえそうでなくても増大した闇によって人は暗くなってしまうものなのである。(それに対し陽の部分が増大すれば千歌みたいに前向きに考えられるようになるものである。人というのは陽の部分を強くするか陽と負のバランスをとることが大切なのかもしれない)

 そして、その闇について聖良は詳しく語る。

「その闇ですが、理亜やあつこ花樹さんが抱えていた闇はその闇の一部、いや、夢のなれの果てなのかもしれません。そういうことを考えると夢と闇は裏表の関係なのかもしれません」

たしかに聖良のいう通りかもしれない。というのも、いろんな闇のなかでも理亜やあつこ、花樹が抱えていた闇、それは夢と表裏一体となっていたのかもしれないのである。あつこの場合、まわりからの声のもと、自分の成長によって失った成績を取り戻すために限界を超えた練習をした結果、大会で大怪我をした。ようはあつこは昔の成績を、ジュニアの大会で優勝するくらいの成績を目指していた。それ自体夢であり目標だった。理亜や花樹の場合は理亜は姉聖良と一緒に、花樹は「勝つことこそすべて」という考えのもとでラブライブ!優勝を目指していた。それ自体夢であり目標であった。だが、夢はときとして自分たちに牙をむくことがある。あつこの場合、まわりからの声のもと、失った成績を取り戻すために限界を超えた練習をしてしまい、結果、大怪我をしてしまい、それが闇となってしまった。理亜の場合、自分のせいで姉聖良と一緒にラブライブ!優勝ができなかった、そのことが重圧になって闇になってしまった。花樹の場合、「勝利こそすべて」という考えが重圧になって夢自体が闇になってしまった。三者三様であるが、夢が叶わなかった、また、夢自体が重圧になった、それにより闇が生まれた、増大したのかもしれない。そう考えると夢と闇は表裏一体の関係なのかもしれない。

 そんな聖良からの言葉を聞いて理亜ははっとした。

「姉さまがそう考えると花樹が「闇から希望に変わった」というのもわかる気がする」

そんな言葉を言うと花樹は元気よくこんなことを口にした。

「俺の場合、それこそが「楽しむこと」の力の凄さなのかもしれないぜ!!」

夢と闇は表裏一体の関係にある、そう考えると花樹の言葉に納得いくかもしれない。というのも、花樹はこれまで「勝利こそすべて」という考えのもとラブライブ!優勝を目指していた。ただ、「勝利こそすべて」という考えは勝利のみを追及することを意味する。しかし、ずっと勝利し続けることなんて難しいものである。勝利があれば絶対に敗れる者もいる。そのことを考えると「勝利こそすべて」、それ自体人にとってものすごく重圧になってもおかしくないものである。そして、その重圧こそ人にとって「闇」になるのかもしれない。少なくとも夢破れし者がそのことを闇として一生抱えて生きていくことだって考えらえるかもしれない、あつこみたいに。それに対し「楽しむこと」は「勝利こそすべて」というマイナスの考えに対してプラスの考えともいえる。「楽しむこと」をもって物事をやっていけばたとえ敗れたとしてもそれをバネにしてもっと楽しもうと思えてくるのである。いや、お互いに認めつつも「楽しむこと」を競い合うのであればそれは白熱を生む戦いとなり、たとえどんな結果であったとしてもお互いにライバルとして認めつつも切磋琢磨する関係になれるというものなのである。それこそAqoursとSaint Snow、μ'sとA-RISE、Liella!とSunny Passionの関係なのではないだろうか。花樹はそのことを肌で感じ取ったのかもしれない。

 こうして闇について知った理亜、

「そう言われと、私、闇そのものを恐れることなんてない気がする。私、今、自分の目標に向けて頑張れる気がする!!」

と力強い言葉とともにガッツポーズをした。理亜は昔の理亜とは違った。1年前の理亜は「勝利こそすべて」、その考えにとらわれていた。そのため、自分のなかに闇ともいえる存在が生まれてしまった。だが、今は違う。今はあの延長戦以降、理亜は「楽しむことがすべて」、その考えのもと、自分の闇、いや、希望といえるラブライブ!優勝にむけて頑張ってきたのである。ただ、これまでは昔の理亜と瓜二つの花樹によって相反する思いによってその目標に進むことができなかった。それが花樹が生まれ変わったことでその希望へと進むことができるようになったのである。

 そんな理亜に対し聖良はこんな声援を送った。

「理亜、あなたには自分の闇から脱却した力、いや、3つの宝物という凄い力を持っています。その3つの宝物は理亜をパーフェクトトライアングルを持つ理亜へと変えてくれるでしょう。理亜、遠くの地からあなたのことを見守っています」

そう、理亜の心のなかには3つの宝物があるのだ。それこそ理亜の力の源であり、その3つがお互いに影響しあいパーフェクトトライアングルへと進化したのである。そのため、理亜は自分の闇から脱することができたのかもしれない。

 そんな聖良からの声援を聞いた理亜は姉聖良に対し、

「姉さま、声援ありがとうございます。理亜、姉さまの想いを胸にこのラブライブ!決勝を頑張りたいと思います」

とお礼を言っては、この決勝を頑張る、そう誓ったのである。

 と、ここで、理亜、聖良にあることを尋ねる。

「でも、姉さま、なんで、私のためにわざわざ連絡してきたのですけ?」

この問いに聖良はその答えを言う。

「それは花樹さんやあつこ、ルビィさんたちに言われたのです、「理亜を助けてほしい」と。「闇を抱えた人を救うにはほかの人に頼るのが1番だから」みたいですね」

そう、人が闇から脱するにはほかの人から手助けをしてもらうことが1番なのである。人が闇に捕らわれたとき、自殺なとといった自分の人生を終わらせる方向へと動くことがある。それを防ぐためにもその闇から脱する必要があったりする。その闇を乗り越えるきっかけは人によっていろいろある。あるものに触れたり、生きがいを見つけたり。そのなかでほかの人たちとの交流もその闇を乗り越えるきっかけになることが多い。むろん、ほかの人との交流によって逆に闇に捕らわれてしまうこともある。だけど、それでも他人との交流は自分の闇を解き放つきっかけになることもある。その意味でもほかの人との交流を恐れないことが自分の闇を乗り越える意味でも大切なのかもしれない。ただし、理亜の場合、花樹やあつこ、ルビィたちやこころあといった信頼のおける人たちがいたから自分の闇を乗り越えることができたのかもしれない。対して、自分が持つ闇を染めることしかしない人がいると逆に自分の闇に乗り込まれることになる。そのことはとても注意が必要なのかもしれない。

 そんな聖良の言葉を受けて理亜はまわりを見渡す。そこには花樹やあつこ、ルビィたちAqoursがいた。そのみんなに対し理亜はお礼を言った。

「みんな、ありがとう。私のためにみんなが動いてくれたから、私、自分の闇を乗り越えることができた。本当にありがとう」

この理亜の言葉に花樹はこう答える。

「私は理亜と同じユニットメンバーだ!!理亜が困っているなら俺は動く!!それが俺なりの流儀だ!!」

花樹は自分の闇に取り込まれたとき、理とあつこが動いてくれた。そのため、花樹は自分の闇を乗り越えることが、素の自分を出すことができた。ある意味、花樹は理亜とあつこに恩義をもっていた。なので、理亜が困っていることがあれば自分から動くことが当たり前、花樹はそう思っていたのである。だからこそ、数は理亜のために動いたのである。

 対s知恵、ルビィも理亜に対してこう答える。

「理亜ちゃんにとってルビィは一番の親友だよ!!理亜ちゃんのために動くのは親友として当たり前だもん!!」

理亜にとってルビィは一番の親友だである。いや、ルビィを含めてAqoursは理亜にとってライバルであり仲間である。そのため、たとえ敵だからとしても自分の闇に苦しんでいる理亜のために動きたい、それがAqoursである。その意味でもAqoursは敵である理亜に塩を送ったのかもしれない。

 そして、理亜は聖良に対しこう宣言した。

「私、自分の夢に向かって頑張る!!私には3つの宝物が、パーフェクトトライアングルがある。そして、花樹、あつこがいる。だからこそ、私、頑張る!!夢に向かって頑張る!!」

この理亜の言葉を聞いたのか、聖良、

「その言葉を聞いて、私、安心しました。理亜、頑張りなさい。では、さようなら」

と言って通信を切った。これには、理亜、

(姉さま、ありがとうございます。私、姉さまのおかげで自分の闇から脱することができました。私、絶対に「楽しんで」ラブライブ!優勝を目指します)

と心から誓ったのである。

 

 そんな理亜のところに突然の来訪者が・・・。

「こら、理亜っち、あともう少しでこころあの出番だぜ!!」(ここあ)

そう、こころあであった。こころあも理亜の姿を見て心配そうに見ていた仲間の一人でもあった。そのため、こころは理亜と聖良を結ぶためのタブレットを用意するなど陰ながら応援していたのである。そのため、理亜はこころあに対し、

「こころあも陰ながら私のことを気をつかってくれてありがとう!!」

とお礼を言うとこころから、

「私たちはライバルであり仲間です。当たり前のことをしただけですよ」

と照れながら答えてくれた。

 とはいえ、ついに本番を迎えようとしていた。。こころあ、Aqours、SNOW CRYSTAL、3組はステージ袖へと向かう。そこに待っていたのはラブライブ!決勝を陰ながら支えるスタッフたち。そのスタッフたちから、

「頑張ってください」「びっしといっとけ!!」

と応援の言葉が投げかけてくる。これには、理亜、

「みんな、ありがとう。私、頑張る!!」

と声援を返していた。

 そして、ついに3組の、頂点をかけた戦いが始まった・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第12話 (3)

 まず最初のステージはこころあ。

「さぁ、いくでしゅ!!」(ここあ)

「頑張ってくるです!!」(こころ)

少し噛みつつもこころあはステージへと上がる。その横から、

「こころあ、頑張って!!」(ルビィ)

「こっこで情けない姿を見せるんじゃないぜ!!」(花樹)

「私たちのお膳立てをよろしくね!!」(桜花)

とこころあに対しAqours・SNOW CRYSTALメンバーが声援を送る。AqoursとSNOW CRYSTAL、これまでみたことがない光景だった。今は敵同士、それでもお互いに声援を送る、それ自体、お互いともにライバルであり仲間でもある、それを体現しているようなものだった。

 そして、こころあがステージに上がるとこころあは観客たちに向かってこう捲し上げる。

「こころあにとってこれがラブライブ!最後のステージだぜ!!」(ここあ)

「みんな、燃え尽きるまで声を出すのです!!」(こころ)

この言葉たちとともにこころあ、ラブライブ!最後のステージの幕が上がった。

 

 

第12話 こころあ 挿入歌 「Precious time!!」

 

Precious time time time time

Precious time time time ttime

 

いつも楽しい     時間が続く

とてもプレシャスな  時間だOK

だからこそ      やめられない

私たちこそ      スクールアイドル

 

なにもかもが     とても楽しい

仲間とともに     やることが

だからみんな     プレシャスな時間を

一緒に楽しんで    踊りまくるよ!!

 

 

 

(こころ、この3年間、スクールアイドルとして活躍したけど、今の1年間、とても楽しかったかもな!!)(ここあ)

(はいっ、そうです!!私たちだけの力でここまでやってきたのです。そして、私たちみたいな「楽しむことがすべて」を力いっぱい体現してくれるライバルたちと戦うことができてうれしいです!!)(こころ)

(だからこそ、ここでこころあの実力のすべてを出し切るんだぜ!!)(ここあ)

(はいそうです!!さぁ、ここからサビです!!私たちの本気、みせるのです!!)(こころ)

(はいでしゅ!!!)(ここあ)

 

 

 

Precious time time time

Precious time time time

みんなで踊れば    怖いものなし

それよりも楽しくて  すべてがOKになる

Precious time time time

Precious time time time

みんなで歌えば    すべてが好きになる

やっぱり私たち    スクールアイドルを

やめることができない Precious time

 

このプレシャスでスペシャルな時間よ

もっともっと続いてほしい

 

Precious time time time time

Special time time time tiem

Precious time time time time

Special time time time tiem

 

 

 

 そして、ついに終わった。その瞬間、

わー!!パチパチ

とスタンディングオベーションが1分間続いた。これには、こころ、

「やったです!!」

と元気よく声をあげるとここあも、

「これで優勝確定だぜ!!」

と声高々にあげていた。

 その後、ステージを降りるこころあ、そこには、

「ふっ、よくやったと認めるぞ!!」(ヨハネ)

「今までのなかで最高のステージだったと思います」(あつこ)

「すごかったよ!!」(曜)

とSNOW CRYSTALとAqoursメンバーが喜びに満ちた声をあげていた。これにはこころあも、

「みんなありがとうです!!」(こころ)

「やってやったぜ!!」(ここあ)

とお礼を返していた。

 そして、ついにAqoursの出番となった。Aqoursの9人がステージへと上がる。その途中、横から、

「ルビィの雄姿、見ているから」(理亜)

「こころあの次に頑張れ!!」(ここあ)

「桜花、梅歌、松華、お前たちの骨は拾ってやるからな!!精一杯燃えてこい!!」(花樹)

とこころあのときと同じようにこころあ・SNOW CRYSTALメンバーが声援を送る。これには、Aqoursからも、

「理亜ちゃん、ありがとう。ルビィ、頑張るね!!」(ルビィ)

「花樹、一言多い!!でも、頑張ってくるからな!!私たちの雄姿、目に焼き付けろ!!」(桜花)

「千歌たちはやってやる!!ラブライブ!三連覇!!みんなの声援、力に変えてみせる!!」(千歌)

という力強い声が聞こえてきた。

 そして、ステージに上がるAqours。客席からは、

「Aqours、待ってました!!」「三連覇、して~」

という声が聞こえてきた。これには、Aqours、

「私たちは私たちの力でこの地に戻ってきた!!だから、みんなみていて、私たちの本気のステージを!!」(千歌)

という力強い声をあげるとともに曲が始まった。

 

 

 

第12話 Aqours 挿入歌 「Brand New World」

 

新しい世界へ 突き進め!!

 

①世界は争いに    疲れている

(Brand New World)

そんな世界なんて  いやいやだよ

(Brand New World)

だから私たちは   楽しい世界を

みんなと一緒に   つくっていきたい

 

だけどそんなこと  難しいかも

むりむりだって   言われるかも

でも私たちには   仲間がいる

世界中にたくさんの 仲間がいる

だから大丈夫    心配しないで

私たちと一緒なら  絶対できるよ

 

 

 

(もうこれで千歌ちゃんたちとラブライブ!でパフォーマンスをするのが最後なんだね)(梅歌)

(でも、これが最後とは思えない!!)(松華)

(たしかにそうずら!!)(花丸)

(これからもずっと続いていく、そう思えるよ!!)(曜)

(私が作った曲たちをもっとやっている、そう感じられる!!)(梨子)

(これこそヨハネの力なり!!)(ヨハネ)

(それ、まったく違うから・・・)(桜花)

(そこ、否定しないで!!)(ヨハネ)

(でも、善子ちゃんの言う通り、これからもずっと続いていく、そんな不思議な力が働いていると思えてくる!!こんな時間、ずっと続いていたらいいなぁ)(ルビィ)

(だからこそ、ここはバシッといきましょう!!これは部長権限です!!)(桜花)

(桜花ちゃんの言う通り!!千歌たちは今出せる力を最後までめいいっぱい出し切るからね!!)(千歌)

((((((((うんっ!!))))))))(8人)

 

 

 

Brand New World

私たちは築く    新しい世界は

すべてが楽しい   そんな夢の世界は

Brand New World

だからこそ私たちを 信じてくれよ

あなたとなら    きっとできるよ

新しい世界     楽しい世界

素晴らしい世界   つくっていこう

 

Brand New World

新しい世界     新しい時代

私たちの手で    つくりあげよう

 

 

 

 そして、ついにAqoursのステージが終わった。その瞬間、

ワー!!ぱちぱち!!

とこころあのときと同じくらいのスタンディングオベーションが起こった。これには、Aqoursから

「これこそ私たちの力です!!」(桜花)

「ルビィたち、頑張った!!」(ルビィ)

「みんな、ありがとう」(千歌)

と元気よく声をあげていた。

 その後、Aqoursがステージを降りるとその横からこころあとSNOW CRYSTALのメンバーから、

「ルビィ、すごいステージだった!!とても素晴らしかった!!」(理亜)

「こころあの方がよかったぜ!!でも、その次によくできたと思うぜ!!」(ここあ)

「桜花、お前たちの雄姿、ちゃんと見ていたぜ!!とてもすごかったぜ!!」(花樹)

と喜びの声が聞こえてきた。これにはAqoursからも、

「ふふふ、これこそヨハネの実力なり!!」(ヨハネ)

「善子ちゃんの言葉はともかく、私たち、今出せるすべての力、出し切ったよ!!」(梅歌)

「うん、それは言えるかも!!」(曜)

と自分たちのパフォーマンスに十分満足していた。

 そして、ついに大トリのSNOW CRYSTALの番となった。ステージにあがるSNOW CRYSTALの3人、その3人に対し、Aqoursとこころあから、

「理亜ちゃん、ルビィ、ステージのそばからちゃんと見ているからね、理亜ちゃんの雄姿を!!」(ルビィ)

「花樹、ちゃんとやりなさいね!!失敗したら笑ってあげるから!!」(桜花)

「こころあからも、SNOW CRYSTAL、頑張れと言うのです!!」(こころ)

と声援が送られるとSNOW CRYSTALの3人からも、

「ルビィ、ちゃんと見てて、私たちの雄姿!!」(理亜)

「笑うことがないくらい完璧なパフォーマンスをしてやるぜ!!」(花樹)

「こころあの2人、声援、ありがとう。私たちは頑張るからね!!」(あつこ)

と言い返していた。

 その後、ステージに上がる3人。その姿を見て3人はこう思った。

(パーフェクトトライアングルを持つ私たち、だからこそ、言える、この3人なら全力を出し切ることができる!!)(理亜)

(おばあちゃん、俺、ついにこのラブライブ!決勝の地に立てたぜ!!だから、見ていてくれ、おばあちゃん、俺たちの雄姿を!!)(花樹)

(まさか、私がこのラブライブ!決勝の地に立てるなんて・・・。でもこれは最初で最後の大舞台!!私の、いや、私たちの全力を出し切るからね!!)(あつこ)

3人ともやる気に満ち溢れていた。とくに花樹はおばあちゃんの形見である十字架状のペンダントを握って天に誓うような感じをみせていた。

 そんな3人の姿に観客たちから、

「SNOW CRYSTAL、雪のように舞い踊れ!!」

「頑張って、函館のスクールアイドルとして!!」

と声援が送られた。その声援を送った方を理亜たちが見ているとそこにいたのは日野を含めた函館の人々だった。SNOW CRYSTAL、、それは函館のスクールアイドルとして頑張ってきた証拠なのかもしれない。そんな日野たちの姿に理亜はこう思った。

(スクールアイドルをやっていてよかった・・・)

理亜にとってスクールアイドルとは青春の一部である。これまでいろんなことが起きていた。花樹との出会い、桜花たち、こころあとの戦い、Aqoursとの優勝をかけた戦い、そして、あつこのメンバー入り、花樹の覚醒などなど。Saint Snowのときよりも波乱に満ちた1年だった。それでも理亜はスクールアイドルとして頑張ってきた、それを理亜は感じていたのである。

 さらに、花樹も自分の夢について考えていた。

(俺は俺の力でここまでやってきた。その力を函館のみんなにみせてやる!!)

花樹の場合、自分の父親によって振り回されてきた。おばあちゃんの死、沼津から函館への転校、そこでの理亜との出会い、桜花たちとの戦いとこころあの戦いのなかで「勝利こそすべて」という父親からの教えによりそれを追い求めようとしていたこと、そのなかで、理亜とあつこ、そして、おばあちゃんによって「楽しみことがすべて」という大切な想いが覚醒したこと、本当の自分を取り戻したこと、その意味でも函館の地は花樹にとって第2の故郷ともいえた。なので、花樹は函館のみんなに自分の力をみせてやる、そんな想いでいっぱいだった。

 そして、あつこもそれは同じだったかもしれない。

(私はずっとサポーターだった。でも、自分の闇を乗り越えたことでもう一度花を咲かせることができた。だからこそ、この最初で最後のチャンス、頑張ってみる!!)

あつこの場合、ずっと、聖良と理亜、花樹のサポーターだった。だが、聖泉祭のことがきっかけになり自分の闇を乗り越えることができたことでもう一度花を咲かせることができたのである。それもこれもダイヤたち卒業生、そして、函館のみんなのおかげであった。だからこそ、その最初で最後の機会、一生懸命頑張ろうとあつこは心に誓ったのである。

 そして、3人は決意した。

(((絶対に後悔のない素晴らしいステージにする!!)))

その決意とともに3人は踊り始めた。

 

 

 

第12話 SNOW CRYSTAL 挿入歌 「Go to the TOP!!」

 

(R:Go to the TOP!!

     上へ上へ駆け上がれ!!)

 

(Go to the TOP!!)

上へ上へと    のぼる世界

(Go to the TOP!!)

すべてがすべて  駆け上がっている

(Go to the TOP!!)

勝利だけを    追い求めている

(Go to the TOP!!)

 

でも俺たちは   そんなの嫌だ!!

勝利だけど    追い求めても

あとに残るのは  傷ついた心だけ

そんなものなんて いらない!!

 

 

 

(俺、なんかハイな気分になっているぜ!!これこそスクールアイドルの醍醐味だぜ!!)(花樹)

(花樹さん、少しは落ち着いて・・・と言いたいけど、私も同じ気分。スクールアイドルをやっている、これこそラブライブ!のすごさなんだと思えてきます)(あつこ)

(たしかに。私、なんかこの3人でやっていてよかった、そう思えてくる)(理亜)

(この3人だからこそこの決勝にて最高のパフォーマンスをみせることができる、そう思えてくるのです)(あつこ)

(それはいえている!!)(花樹)

(私たちはこれまで自分の闇に捕らわれていた。だけど、私たちはそれを乗り越えることができた。それは私たち3人がいたから、Aqoursやこころあがいたから。だからこそ言える、私たちは最高のスクールアイドルユニットだと。それはとても誇れることだと思う)(理亜)

(たしかにそうかもね)(あつこ)

(なら、やることは1つ、めいいっぱい楽しんでめいいっぱいスクールアイドルを好きになってAqoursやこころあ以上になってやる!!)(理亜)

(理亜さん、その通りです!!)(あつこ)

(そうと決まれば、俺、最後の最後までめいいっぱい楽しんでやるからな!!いいか、理亜、あつこ、最後の最後まで突っ走ろうぜ!!)(花樹)

((はいっ!!))(理亜・あつこ)

 

 

 

俺たちは俺たちの 自分たちの道を行く

みんなと一緒に  上へとのぼる

勝つだけじゃない ほかのものも大事

そのものを手に  入れていけば

きっと頂へと   進んでいく

だから俺たちは  忘れない!!

勝つだけじゃ   いけないんだと!!

 

強き想い 強き想い出 強きキズナ

それらを結び合わせて

俺たちはTOPへとTOPへと

TOPと駆け上る!!

 

 

 

 そして、ついにSNOW CRYSTALのステージが終わった。その瞬間、

ヒューヒュー パフパフ パチパチ

 

とスタンディングオベーションが2分以上続いた。この光景に3人とも、

「この光景、私はとてもうれしく感じる。だって、最高のパフォーマンスに感動したことを示しているのだから・・・」(理亜)

「おばあちゃん、見ているか。俺、この光景にとても感動しているぜ。それくらいお客さんを感動させたのだからな!!」(花樹)

「こんなの、初めて!!やっぱりスクールアイドルをやっててよかった!!」(あつこ)

とこの光景に感動を覚えていた。

 そして、ステージ袖に戻ってくるなり、

「とてもすごいパフォーマンスだったぜ!!ここあ、とても感動したぜ!!」(ここあ)

「理亜ちゃん、すごかったよ!!なんか、ルビィもね、理亜ちゃんがこんなに成長するなんて思えないくらい感動したよ!!」(ルビィ)

「なんか、私たちのパフォーマンス以上のものをみせつけられてちょっと悔しいですわ。でも、花樹、それくらいすごいステージでしたわ」(桜花)

と理亜たちのことを褒めたたえていた。これには、3人とも、

「ルビィ、みんな、ありがとう。その気持ちだけでとてもうれしい」(理亜)

「桜花、最高の誉め言葉、ありがとう。俺、スクールアイドルをやっててよかった」(花樹)

「みんなを感動させることができてとてもうれしいです」(あつこ)

と感動を覚えていた。

 このようにお互いを称えた光景はのちにラブライブ!史上最高のひと時として言われ続けるようになっていった。それはこの3組だからこそできた最高のひと時だったのかもしれない・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第12話 (4)

 とはいえ、戦いである以上、結果が出されるのは必至。なので、こころあ、Aqours、SNOW CRYSTALの14人はお互いに手を取り合いながら結果発表を待っていた。ちなみにみんなに手をつなごうと言ってきたのは・・・、

「最後の最後だ!!どんな結果だって恨みっこなし!!なら、ここにいる全員で手を取り合って結果を聞いてみんなで祝おう!!」(花樹)

なんと花樹だった。花樹はそれくらい大きく成長していたのである。最初のころは、「勝つことがすべて」、それに支配されていたため、相手のことなんて考えることができなかった。だが、今は違う、まわりのことも気がまわるくらいの立派な少女に変わったのである。

 とはいえ、司会役のリポーターからついに結果が発表される。

「まず、第3位は・・・、大総大学付属札幌高校スクールアイドル部、

 

こころあ!!」

 

この結果にここあが泣き出しそうになる。

「う~、こころあでラブライブ!優勝できなかったよ・・・」

そんなここあに対し、こころ、

「でも、立派な成績です~」

とここあを癒しつつも涙を流していた。

 そんなこころあに対し、花樹、

「でも、前回2位で今回は3位、立派な成績だぜ!!」

と褒めたたえると、こころ、

「仲間からそう言われるとうれしいです・・・」

とうれし涙を流していた。

 そして、2位の発表へと続く。

「そして、2位は・・・、ついに王座陥落、三連覇ならず。静真高校スクールアイドル部、

 

Aqours!!」

 

この瞬間、桜花、泣き出す。

「ごめん、ごめん。私が部長としてちゃんとやってこなかったばかりに・・・」

その言葉に、梅歌、松華は、

「そこまで自分を追い込まないで、桜花ちゃん」(梅歌)

「桜花さんはちゃんとやったと思います」(松華)

と梅歌をあやす。

 そんな3人に対し花樹は、

「Aqoursはとてもすごいよ!!三連覇はできなかったけど、それに近いことをやったんだ。俺にとってAqoursは憧れの存在。そのAqoursをやっていくだけの実力を桜花たちは持っている。それを今回は示すことができたと思える」

と言うと桜花から、

「花樹、ありがとう」

とお礼を言った。

 そんな桜花たちの姿に、ルビィ、

「なんかほほえましい光景だね。でも、千歌ちゃん、最後の最後でこんな結果になったけどいいのかな?」

と千歌に言うと千歌も、

「別にいいんじゃない。千歌たちは千歌たちなりにスクールアイドルを楽しんだもん。どんな結果でも大丈夫だよ」

とうれしそうに答えてくれた。

 そして、ついに優勝の発表となる。リポーター、

「それでは、栄えあるラブライブ!冬季大会、優勝は・・・」

と言うと会場中に鳴り響くドラム音。これには、理亜、花樹、あつこ、ともに、

バシッ

と手を握る。その手は、こころあ、Aqoursにもつながれ、14人、手をぎっしり握りしめあいながら結果を待っていた。

 そんな14人を見てか、リポーターはついに優勝チームをコールした。

「函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部

 

SNOW CRYSTAL!!念願の初優勝!!」

 

その名を呼ばれた瞬間、理亜、花樹、あつこ、ともに、

「「「やったー!!」」」

という声が響きわたった。これには、Aqours、こころあからも、

「理亜ちゃん、やったね!!」(ルビィ)

「負けてしまったけど、それくらいすごいことをしたということです。誇ってください」(桜花)

「やっぱし負けたか。でお、悔いはないぜ!!それよりも今はここあのことだとうれしく思えるぜ!!」(ここあ)

とお祝いの言葉がSNOW CRYSTALの3人に送られた。これには3人とも、

「ルビィ、ありがとう。私、とてもうれしい。ついにルビィと同じ場所に立つことができたんだ。だから、とてもうれしい!!」(理亜)

「桜花、たまにはいいことを言ってくれるじゃない。でも、その言葉、とてもうれしいぜ!!」(花樹)

「ここあさんがそう思えるなら私としてもうれしいよ。本当にありがとう」(あつこ)

と笑いながらお礼を言っていた。

 だが、ここでラブライブ!優勝のあれが始まろうとしていた。観客たちから、

「SNOW CRYSTAL」「アンコール、アンコール」

の声が鳴り響く。これには、理亜、

「まさか、私たちがこれをするなんて、なんかうれしい気がする!!」

とうれし涙を流すとあつこも、

「えぇ、もう最高のシチュエーションですね」

と喜んでいた。

 そんなとき、花樹がある提案をしてきた。

「なんか3人でやるのはもったいない。なら、Aqoursもこころあもみんなと一緒にこのアンコールに応えたらどうだろうか?」

SNOW CRYSTAL、Aqours、こころあの3組でこのアンコールに応える、その提案に会場中から、

「ぜひやってくれ!!」「とても素晴らしい提案!!」

という声が聞こえてきた。むろん、リポーターからも、

「素晴らしい提案ですね!!」

とかなりののりき。いや、それ以上に、Aqours、こころあ、

「それ、いいアイデア!!私、それにのった!!」(千歌)

「たしかに面白そうですね。私ものったです!!」(こころ)

とお客さん以上にのりきの様子。

 その言葉を受けて理亜はついに決めた!!

「わかった。それだったら、3組合同のアンコール、やってやる!!」

この理亜のセリフに、リポーター、ついにタガを外した。

「なのと、上位3組による合同アンコール、きた~」

あまりのことに観客たちからも、

「ウォー!!」

と言っては全員立ち上がった。

 そして、リポーターはついに口火を切った。

「それでは、3組合同のアンコール、やってみよう!!

 

SNOW CRYSTAL、Aqours、そして、こころあで、

 

「Re:STRAT to dream」!!」

 

ラブライブ!SNOW CRYSTAL グランドエンディング

「Re:STRAT to dream」

 

Re;START to dream

 

僕たちは   一度夢を失った

(R:もう立てなくなるほどに)

大事なものを 失ってしまった

(R:失敗や成長でも失った)

もう二度と  立てないんだ

(R:不幸のどん底に落ちてしまい)

誰もが    そう思っていた

 

でも本当に  そうだろうか

人は何度でも よみがえる

倒れても   倒れても

何度だって  よみがえる

人というのは それくらい

力強く生きる 生き物なんだ!!

 

Re;STRAT to dream

僕たちは再び 立ち上がってく

Re;START to dream

夢に向かって 再び進んでく

もう諦めない 夢を叶える

再び心の中で 誓ってやる!!

 

Re;START to dream

僕たちは再び 力強く立ち上がる

 

(R:Thank you・・・)

 

 アンコールも終わり、ついに優勝旗の授与が行われることに。

「それでは、SNOW CRYSTALに優勝旗の授与をします。授与者はレジェンドスクールアイドルグループオメガマックスのメンバーの一人、綾瀬亜里沙(μ'sの綾瀬絵里の妹)であった。これには、ここあ、

「あっ、亜里沙っち、お久しぶり!!」

と言うと亜里沙も、

「こころちゃんにここあちゃん、お久しぶり」

と軽く挨拶した。

 そして、ついに理亜に優勝旗の授与が行われることに。亜里沙、理亜に対し、

「ラブライブ!優勝、おめでとう」

と言うと理亜は優勝旗をもらいつつも、

「ありがとうございます」

とお礼を言った、そのときだった。突然、ステージ袖から、

「理亜!!」

という声が聞こえてきた。それに、理亜、その声の主の名を叫ぶ。

「姉さま!!」

そう、ステージ袖に現れたのは理亜の姉、聖良、だった。

 聖良はそのままステージに上がると理亜に抱きついては、

「理亜、ラブライブ!優勝、おめでとう」

とお祝いの言葉を言った。これには、理亜、

「姉さま、ありがとう」

と喜びながらお礼を言うとともに、

「でも、どうして姉さまがここに?」

となぜここに姉聖良が来たのか、その理由を聖良に尋ねると、聖良、元気よくこう答えた。

「日野さんをはじめとする函館のみんなの招待を受けたからです」

そう、ここに聖良がいる理由、それは理亜たちの応援に来ていた函館の人たちが理亜たちへのサプライズとして聖良を呼んでいたからだった。実は、聖良、ここに到着するのが遅れていたため、今の登場になったのだが、ずっとネットを通じて理亜たちのパフォーマンスを見ていたのである。そして、理亜とタブレットを介してやり取りしていたのもここに来るタクシーのなかでやっていたのである。

 そんな聖良に対し、理亜、

「来るなら来るって連絡してくれたらいいのに・・・」

と泣きながら言うとあつこも、

「それはそうです。そうしたらなにか準備していたのに・・・」

と言うも聖良はすぐに、

「サプライズだからそんなことはできません」

とはにかみながら答えていた。

 そして、理亜は渡された優勝旗を聖良にみせると、

「どうです、この優勝旗、ずしりときます」

と笑いながら言うと聖良はそんな理亜に対し、

「これで理亜の夢も叶いましたね」

とうれしそうに応えていた。そう、理亜の夢、それは、姉聖良とあつことともに自分の実力でラブライブ!優勝を叶える、そのことだった。これには、あつこ、

「たしかに理亜さんの夢が叶いました!!私、そう考えるだけでとてもうれしいです!!」

とうれし涙を流しながら言った。あつこの今の夢も理亜と同じく理亜と花樹と3人でスクールアイドルを楽しむ、ラブライブ!で優勝する、ことだった。これには、聖良、

「あつこ、頑張りましたね。あつこがいたからこそ優勝できたのかもしれませんね」

と優しく語りかけると、あつこ、

「はい、ありがとうございます」

と涙を流しながらお礼を言った。

 そんななか、聖良は理亜にあることを尋ねてみた。

「ところで、優勝という頂に上って見える景色はどんなものですか?」

そう、聖良と理亜がスクールアイドルを始めた理由、それは、μ'sやA-RISEみたいにラブライブ!優勝をしたとき、その頂からなにが見えるのか知りたいからだった。

 これには、理亜、うれしそうにこう答えた。

「それは、簡単、仲間たちの姿!!だって、私がこの頂にのぼることができたのはあつこや花樹、ルビィたちAqours、こころあがいたから。この仲間たちがいなかったら、私、スクールアイドルを続けていなかった。ラブライブ!優勝なんてできなかった。でも、仲間たちがいたから、この頂に上ることができた。だから、今だからいえる、ルビィたち、こころあ、そして、あつこに花樹、本当にありがとう」

そう、理亜にとって仲間たちの存在がとても大切だったのだ。姉聖良から始まり、あつこ、花樹、ルビィたちAqours、こころあ、どれ1つ欠けてもラブライブ!優勝という結果を残すことができなかったのかもしれない。だからこそ、理亜が頂から見える景色、それは仲間たちの存在、なのかもしれない。

 で、この理亜の言葉を受けてか、

「それじゃ、理亜ちゃんたちを胴上げしよ!!」(ルビィ)

と言った拍子で、花樹、あつこ、理亜、を胴上げする仲間たち。これには、3人とも、

「いえ~い!!」(花樹)

「あ、ありがとうございます!!」(理亜)

「う、うわ~」(あつこ)

と三者三様の様子。理亜からすれば自分の夢を叶えることができて頂から見える景色が見れて本当にうれしいのかもしれない。だが、それ以上に、Aqours、こころあ、花樹、あつこという仲間たちに巡り合えたことに理亜は喜びを感じていたのかもしれなかった・・・。

 とはいえ、こうして理亜たちの闇をめぐる物語はついに終わりを迎える。これから先、闇を感じたのならまわりをみてほしい。きっとその闇を振り払う人たちがいると思えるかもしれない。たとえいなくてもきっと大丈夫だろう。。その人を支えてくれる人たちときっと巡り合うことができると思うから。だから、諦めないでほしい。闇の先にはきっと光が、夢がきっとみえてくるから。そのことを願ってこの物語を終えることにしよう・・・。

 

「ちょっと待って・・・。俺にはまだ夢があったはず・・・。Aqoursに入ってスクールアイドルになる、という夢が・・・。俺は、今、SNOW CRYSTALだけど、その夢はきっと叶う、よな。どうなのかな・・・」

 

To be contued

 

Next Story is 「Dream Come True!!」



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第13話(最終章) (1)

 夢、それは儚いもの。夢はほんの一瞬ではじけてしまう。でも、人は夢をみてそれに向けて一生懸命頑張っている。それでも夢ははじけてしまうことが多い。では、はじけたらどうなってしまうのだろうか。その夢に向けて再び一生懸命頑張る者、その夢をバネに他方面へと頑張る者、その夢のせいで闇に堕ちる者、多種多様である。では、闇に堕ちた場合はどうなるのか。その闇のせいで自暴自棄になる者もいればその闇を引きずり続ける者もいる。だが、しかし、その闇に逆らうことで夢として再構築する者もいる。その者の意志は強い。意志が強いからこそ、その夢に向けてほかの者以上の力を持つ。その力があればきっと夢は叶う・・・なのかもしれない。

 でも、夢を再構築した場合、最初のころの夢はどうなるのか。最初のころの夢と同じ夢をみる者もいれば夢実現のために夢の内容を少し変更する者もいる。もし、夢の内容を変更したらその者の夢は実現のために近づくかもしれない。でも、そうすることでその者は納得することができるのだろうか。それはわからない。とらえ方は人それぞれだから。でも、これだけはいえる、どちらにしても人はその夢に向けて頑張ることができる生き物なのだから。

 さて、この物語もついに最終章である。この物語の主たちは自分の闇を払いのけ、自分の夢を叶えることができた。では、その夢の先にあるものとはなんだろうか。自分たちの夢に悔いはなかったのだろうか。やり残したことはないのだろうか。その夢の先にあるものをみていてほしい。

 

「蛍の光、窓の雪・・・」

 2月下旬、函館にある函館聖泉女子高等学院では卒業式が行われた。その日、3年生であるあつこはこの学び舎から巣立つことになっていた。そのあつこだが、

「答辞、蝶野あつこ」(司会)

「はい!!」(あつこ)

と、卒業生代表として答辞を言うくらいになるまで立派になっていた。というのも、ラブライブ!優勝という立派な成績を残したということで、3年生の先生、生徒全員の一致であつこは卒業生代表に選ばれたのである。これには、あつこ、

「この私でよろしいのでしょうか」

と謙遜するも、まわりからの後押しもあり快く引き受けたのである。

 そんなあつこに対し送る側の在校生からは、

「まさかあの猪鹿蝶がこの学校を代表するまでになるとはね・・・」

と舌を巻いていた。ほんの数か月前までは猪鹿蝶といえば、(猪波)花樹、(鹿角)理亜、(蝶野)あつこという3人を忌み嫌う代名詞となっていた。だが、聖泉祭(学園祭)やデパート棒一屋閉店騒動、そして、ラブライブ!優勝を通じて3人は、函館のために、聖女のために頑張る姿をまわりが見たことで印象ががわりと変わったのである。こうして、今や猪鹿蝶はこの学校を代表するスクールアイドルユニットとなったのである。ただ、この日をもってあつこが卒業するため、まわりの生徒たちにとってこの卒業式があつこの聖女での最後の舞台となっていた。

 そんなあつこを見てか、在校生席に座っていた理亜はあつこに対しお礼を言っていた。

(あつこ、あなたのおかげで私は夢を叶えることができた。これからは自分のために飛び立ちなさい・・・)

あつこと理亜は昔からの腐れ縁だった。姉聖良とともに昔から一緒に遊んでいた理亜とあつこ、そのため、Saint Snowの雪での誓いのときも一緒にその誓いをしていた。その後、Saint Snowでは叶うことができなかったその誓いを花樹を含めた3人で、自分たちが作ったユニット、SNOW CRYSTAL、でもって誓いを叶えることができた、それにより、理亜は自分の闇を、いや、夢を叶えることができたのである。その立役者の一人であるあつこに理亜はあらためてお礼をいったのである。

 一方、花樹の方も在校生席からあつこにお礼を言っていた。

(あつこ、お前のおかげで俺はおばあちゃんとの誓いを、夢を叶えることができた。ありがとう)

花樹も自分の夢を叶えることができた。自分の父親のせいで花樹がもっとも大切にしていたおばあちゃんと素の自分、いや、自分そのものを奪われた花樹であったがその父親を理亜とあつことともに倒しただけでなく自分そのものを取り戻すことができたこと、そして、おばあちゃんとの誓い、花樹の夢であったラブライブ!優勝を叶えることができたこと、それに対して花樹はあつこにお礼を言ったのである。

 

 そんな花樹であったが、ふとあることがよみがえった。それは・・・、

(俺の夢、「スクールアイドルとしてラブライブ!優勝すること・・・」、それが叶った・・・はず。でも、なんか忘れているような気が・・・・。たしか・・・、たしか・・・、あっ、俺、たしか、SNOW CRYSTALとして理亜とあつこのユニットに入った・・・。でも、最初は・・・、たしか・・・、Aqoursとして千歌たちのグループに入るつもりじゃ・・・)

そう、花樹は、当初、Aqoursとして活躍するつもりだった。花樹は聖女に入る前は沼津に住んでいてAqoursのいる静真に入る予定だった。猪波家は沼津では命かとして有名であり、名店と呼ばれる店をだしていた。だが、おばあちゃんが(息子である花樹の父親によって)亡くなったことにより状況が一変、自分の父が(木松悪斗の指示で)函館に移住することとなり、花樹は静真に入学できずに函館にある聖女に入学することになったである。そのため、花樹は自分の夢、いや、自分の闇の内容を「Aqoursとして活躍する」から「理亜のユニットとして活躍する」に帰らざるえなかったのである。

 そんなあkジュはそのことを思い出していたのか、つい、こんなことを言い出してしまった。

「あ~、もし、Aqoursに入っていたら、俺、どうなっていたのだろうか・・・。そう考えると、俺、Aqoursとして活躍してみたかったな・・・)

 

 卒業式後、スクールアイドル部の部室にて、

「あつこの卒業を祝して乾杯!!」

と理亜が音頭をとって3人で乾杯していた。実は、卒業式後、理亜、花樹、あつこはあつこの卒業を祝してスクールアイドル部の部室にてお別れ会を行っていたのである。そのなかであつこが理亜と花樹に対し、

「ありがとう、理亜さん、花樹さん」

とお礼を言っていた。

 そんななか、理亜は花樹の様子を見ては花樹に話しかけてみた。

「花樹、なんか元気がないみたい・・・」

 すると、花樹、ふと、

「あっ」

というと元気のあるようなそぶりをみせる。

「あっ、理亜、なんでもないぜ。元気だぞ!!」

 ただ、そんな理亜は花樹の姿のみてはふと思ってしまう。

(なんか、花樹、なにかを隠している気がする・・・。それなら、あの人に聞いてみることにしよう・・・)

 

「函館駅前~、函館駅前~」

ピッ

「ありがとうね」(乗務員)

理亜はMIMOCAをかざすと、市電、路面電車から降りてきた。MIMOCA、函館市電をはじめとする函館市交通局で使える交通系ICカードである。なお、ここではイカすMIMOCAといわれているのだが、そのMIMOCAの事業外車は九州福岡の・・・、ということはさておき、理亜はあつこを連れてある場所へと向かっていた。その場所とは・・・、

「あっ、理亜さんにあつこさん、お久しぶりです。花樹の母でございます」

なんと、花樹の母がいるオフィスであった。そこであつこが花樹の母親に対しこんなことを言ってきた。

「今、各方面への補償で大変のなか、会っていただいてありがとうございます」

これには、花樹の母親、

「私の元夫の不始末の対処をするのがこの私の役割ですから。まぁ、もとの(ディスカウントショップの)会社は日野さんのお父さんにあげたのを皮切りにいろんな方面に損害賠償をしていかないといけませんからね」

と微笑んでいた。実は花樹の母親は花樹の父、猪波によって損害を受けた各方面の人たちに賠償を行っていたのである。猪波(花樹の父)が逮捕、失脚したあと、花樹の母親はすぐに猪波が経営していたディスカウントショップの社長に就任、すぐにディスカウントショップの経営権を新しく作った会社に移転、その会社の社長に棒一屋を経営していた日野の父親に無償譲渡したのである。日野の父親は函館を代表するデパート棒一屋を経営していたし函館のことを第一に考えていた。ただ、猪波率いるディスカウントショップの猛攻に耐えられなくなり経営していた棒一屋を閉店せざるをなかったのである。そんな日野の父親に対し花樹の母親はお詫びとばかりにそのディスカウントショップの経営権を渡したのである。これには、日野の父親、

「ありがとうございます」

とお礼を言った程だった。じゃないと日野一家は路頭に迷うことになっていただろう・・・。

 また、猪波の力によって無謀な契約を結ばされていた函館近郊の農家などに対してもその契約による損失を補填するなど、残っている資産などを使って猪波によって損害を受けた各方面の人々に対して補償を花樹の母親一人で行っていたのである。

 そんな花樹の母親に対しあつこはあることを聞いた。

「花樹のお母さん、ちょっと聞きたいのですが、花樹さん、最近、おかしくないでしょうか?」

これには、花樹の母親、こう答えた。

「たしかにおかしいですね」

これには、理亜、

「花樹のお母さん、なにか知りませんか?」

と尋ねると、花樹の母親、

「う~ん、あっ」

となにかを思い出したのかこんなことを言ってきた、

「もしかすると、花樹、今、Aqoursに入りたいのかもしれませんね」

これには、理亜、

「それって、この前、話していた・・・」

と言ってはあることを思い出した。そう、詳しくは第10話(2)(3)を呼んでもらいたいのだが、前述の通り、当初は花樹は静真に入りAqoursに入ろうとしていたこと、自分の父のせいでそれが叶わず、函館に移住、理亜、あつこがいる聖女に入ったことを以前花樹の母親から聞いており、理亜とあつこはそれを思い出したのである。

 そんな理亜はあつこに対しあることを話す。

「そうなると、花樹、今になってAqoursに入ろうと思っているわけ・・・」

これには、あつこ、

「でも、たしか、花樹さんの闇って、函館移転を機に、「Aqoursとしてスクールアイドルで活躍しラブライブ!優勝を叶える」が、「理亜のユニットとしてスクールアイドルで活躍し、ラブライブ!優勝を叶える」に変わったはずでは・・・」

と指摘する。そう、それも前述の通りだが、花樹の闇は函館移転を機にそう変わったのである。

 ただ、それに対し花樹の母親はこんなことを言い出してきた。

「その闇、いや、花樹の夢において、「ラブライブ!優勝を叶える」という部分はこの前の優勝をもって叶いましたが、「○○としてスクールアイドルで活躍」の部分が花樹のなかでうやむやな気分になっているのかもしれません。その意味でも花樹がAqoursに入りたい、そう思っていてもおかしくないかもしれません」

そう、花樹は自分の闇、いや、夢において、「○○としてスクールアイドルで活躍」の部分が未練を残していたのである。たしかに花樹は理亜とのユニット「SNOW CRYSTAL」としてスクールアイドルで活躍することができた。だが、花樹は当初Aqoursとして活躍したいと思っていたのである。そのAqoursに未練がいまだに残っているのである、花樹は・・・。そのため、花樹はAqoursに入りたい、そう思っているのである。

 だが、それに対して理亜はつい言葉にする。

「でも、花樹は今なお、私たち、SNOW CRYSTAL、のメンバーの一人・・・」

そう、花樹は理亜のユニット、SNOW CRYSTAL、のメンバーの一人、いや、聖女の生徒なのである。スクールアイドルは1つの学校のなかでグループを作ることが多い、そのため、花樹は静真に転校しない限りAqoursに入ることはできなかった。それを受けてか、あつこ、花樹の母親に対しこう話す。

「それに、静真に転校しない限り、花樹さんはAqoursに入ることができません・・・」

 そんなあつこの言葉に花樹の母親はこんな反応をみせた。

「それなのですが、実は、花樹に対してある提案が・・・」

 

「えっ、俺が猪波家の次期当主になって沼津に戻る!?」

翌日、花樹の母親のいるオフィスにて、花樹の母親が花樹にその提案を言ってきたのである。というのも、

「実は分家との話し合いで決まりました。(花樹の)おばあさまと(逮捕された花樹の)父親がいない今、猪波家本家の血筋を受け継いでいるのは花樹ただ一人なのです。なので、その花樹が猪波家の本家を継いで沼津に戻って猪波家を再興させるのです」(花樹の母親)

なんと、花樹、猪波家の当主として沼津に戻るように言われたのである。というのも、(前述の通り、)猪波家は沼津では名家であったが、その本家の血筋も花樹一人になったのである。なぜなら、すでに本家の血筋である花樹のおじいちゃんとおばあちゃんはすでに故人であり、その息子である花樹の父親はおばあちゃんへの殺人容疑や経済犯罪(脅迫など)により堀のなか、その娘である花樹は一人っ子、だからである。また、猪波家は代々女系家族だったことも花樹を次期当主にする要因の一つとなった。そんなわけで、花樹は猪波家次期当主にして、猪波家の地元、沼津にて猪波家の再興するように決まったのである。

 でも、花樹からすれば寝耳に水だったらしく、

「そうしたら、俺一人、沼津に行かないといけなくなる・・・」

と少しためらってしまった。というのも、せっかく函館の暮らしになれたというのにたった一年で沼津に戻ることになるのと、花樹の母親は父のやったあとの後始末(補償)をするために当面のあいだは函館に居残り、結果、自分一人で沼図に住むことになる、それが花樹にとって心配事項だった。

 ただ、それを見越した上で花樹の母親は花樹に対しこう話す。

「ちなみに、高校だけど静真に通うことになるから。そこでAqoursとして活動すれば花樹の夢も叶うでしょ!!」

これには、花樹、

「えっ!!」

とびっくりする。どうやら、花樹の母親、すでにすべてお見通しだったのである。そのため、花樹はただただ驚くことしかできなかったのである。

 その後、花樹はそのオフィスから離れるなりこう考えてしまっていた。

(沼津に戻ればAqoursに入ることができる。でも、そうなると理亜とは・・・)

 

一方、そのころ、花樹の母親は花樹と別れるなり、さっさと会社のオフィスを閉め、函館を管轄している拘置所の面会室へと向かった。そこには花樹の父親がガラス越しに座っていた、こう言いながら・・・。

「なんで俺が捕まらないといけないんだ!!俺は、直接、おばあさまには手を下していない。それに、私は私なりに経済活動をしていたのだ。それなのに気に食わないだけでこんな仕打ちをするなんてどうにかしている!!」

花樹の父親は自分の母(おばあさま、花樹からみれば花樹のおばあちゃん)を殺した主犯であり、さらに脅迫などといった経済犯罪を犯している罪状で逮捕され、警察の留置を経て拘置所に拘置されていた。

 そんな花樹の父親は、自分の妻、というか、すでに離婚していたため、元妻である花樹の母親に無罪であることを訴えたが、その訴えすら花樹の母親は、

「そんなことをいつも言っているけど、あなたがやってきたことは犯罪です!!少しは反省しなさい!!」

と一蹴する。久しぶりに花樹の父親に会ったのだが、そこでも自分の無罪を主張すること自体、花樹の母親にとって信じられなかったのである。

 その花樹の母親はその元夫である花樹の父親に対しこんなことを言ってしまう。

「少しは自分の罪を認めなさい!!そして、少しは反省するのです!!その姿勢をみせない限り、あなたとはよりを戻しません!!いや、それができない限り決別します!!」

それはまさに自分の元夫に対する決別宣言だった。これまで花樹の父親がやってきたことはまわりの人々を不幸にすることだった。自分のエゴのために自分の親を手にかけ、さらに、自分のエゴのために函館のみんなを苦しめた、そのことについて、当の本人はやったことへの罪を認めなかったのである。そうであるなら、花樹の母親は元夫である花樹の父親と決別してもおかしくなかった。

 ただ、そうと言われても花樹の父親は、

「なんどだって言う、私は無実だ!!お前たちの物差しで私を図るのが間違いなのだ!!自分は自分のやり方でやってきたのだ!!1「勝利こそすべて」なんだ!!勝利のためならなんでもやってもいいんだ!!だからこそ、私は無実なのだ!!」

と自分の主張を曲げなかった。これには、花樹の母親、

「もう知りませんからね!!」

と言って面会室をあとにしてしまった。ただ、それでも花樹の父親は、

「なんどだって言う。私は無実なんだ!!」

と大声で張り上げていた・・・。

 その後、自分の罪を認めなかった花樹の父親、猪波であるが、それでも自分の無実を訴え続けた。その源にあっとのは花樹の父親のある思いであった。

(私は無実を言い続ける。なぜなら、そうすることで、あの方、木松悪斗様が助けてくれるはずだからだ!!私が無実であることを叫び続ければ、いつの日か(刑務所から開放された)木松悪斗様が見つけてくれるはずだ!!そして、はれて私も解放される!!だって、今までやってきたことは木松悪斗様のため!!すべて木松悪斗様の信じる、そして、私も信じている、「勝利こそすべて」、その一言に尽きる!!)

そう、自分の主である木松悪斗が自分を救ってくれる、そう信じていたから・・・、「勝利こそすべて」・・・、それを信じながら・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第13話(最終章) (2)

 一方、東京での拘置所ではある父娘が再会していた。

「お父様・・・」(桜花)

「あぁ、ごくつぶしか・・・」(木松悪斗)

そう、木松悪斗、桜花父娘である。木松悪斗は元側近(裏美)の仕業でインサイダー取引をした罪で警察に捕まったのだが、今度は同じく元側近の猪波(花樹の父親)による猪波の母(花樹のおばあちゃん)の殺人に加担した、ということで再逮捕されてしまったのである。そんななか、自分の娘(次女)である桜花がその父に会いにきたのである。

 だが、開口一番、木松悪斗は自分の娘の桜花に向かって大声で怒鳴った。

「ふんっ、いくらごくつぶしとはいえ、私を笑いにきたのだろう、この落ちぶれた父を見にな!!いや、元父だったな!!」

木松悪斗は猪波とは違い自分の罪を認めていた。仕組まれたとはいえ、インサイダー取引をしたことには間違いがなかったため、それについては投資のプロとしてやっていはいけないことだったと木松悪斗は認めていたのである。そして、そのせいで自分の投資グループを裏美に奪われてたことで自分は落ちぶれてしまったと自覚していたのである。ただ、それでも自分の信念は曲げておらず、

(しかし、「勝利こそすべて」、それは間違いではなかった。私が裏美に負けたから私はすべてを失ったのだ!!だから、それ自体間違いではなかった・・・)

と、自分の信念を使って自分の罪を認めてしまったのである。

 そんな父に対し桜花は、

「私からすればお父様は落ちぶれいません!!」

と鼓舞しながら言うと、木松悪斗、そんな桜花に対し、

「どうして私が落ちぶれていないと言えるのかね。お前の友達である娘(花樹)のおばあさんを殺すのを手伝ったのだぞ。それでも落ちぶれていないとはいえるのか?」

と聞き返す。実は、木松悪斗、猪波(花樹の父親)が花樹のおばあちゃんを殺すのを手伝っていた。詳しくいうと、殺人に使ったフグ毒とトリカブト毒の調達、殺人現場となった病院の提供など、殺人のお膳立てを行ったのである。ただ、そのことについては木松悪斗は認めていた。そのため、いつ釈放されるのかわからない、だからこそ自分はもう落ちぶれてしまった、と木松悪斗はそう思ったのである。

 だが、そんな元気のない木松悪斗、自分の父親に対し桜花は元気よくこう答える。

「だって、私の父は木松悪斗自身その人だからです!!いくら殺人を手伝ったとしても、インサイダー取引をしたとしても、自分の父親なのは変わりないのです!!そんな父だからこそ、私を認めてほしいのです!!」

それは桜花の切ない願いであった。これまでは桜花は自分の父親である木松悪斗に自分を認めてもらおうとしていた。それは今や仲間である梅歌や松華をだましたとしてもである。結局、桜花は自分の父親ではなく、梅歌、松華を含めたAqoursメンバーから認めてもらうことで、そして、昏睡状態から脱した自分の母親のおかげで自分自身を解放したのである。だが、それでも桜花には心残りがあった。それは、実の父、木松悪斗から認めてもらうことだった。たとえ、ほかの人から認めてもらったとしても自分の父親から認めてもらっていない、そのことが桜花にとって心残りであったのだ。

 そんあ桜花は、自分の父、木松悪斗に対しさらに詰め寄る。

「お父様、私はたしかにお姉さま(旺夏)よりも優れていないと思います。ですが、私の力でラブライブ!に優勝することができました!!今回の冬季大会は力及ばず2位でしたが、それでも頑張ってきたのです。さすがに父が言ってきた、「勝利こそすべて」という考え方ではなく、「楽しむことがすべて」、その考えでやってきましたが、それでも父に誇れる成績を残すことができたのです。だからこそ、私を認めてください、お父様!!」

桜花は桜花なりに頑張ってきた。さすがに「勝利こそすべて」という考え方ではなく、「楽しむことがすべて」、その考え方でもってやってきたのだが、それでも、前回は優勝、今回は2位というラブライブ!にてかなり優秀な成績を残したのはまぎれもない事実だった。

 だが、そんなは桜花に対し木松悪斗はこう反論した。

「ふんっ、所詮、音楽はただのお遊びだ!!スクールアイドルというのもアイドルの真似事じゃないか!!そんな大会に勝ったところでなんの意味もない!!無意味なんだ!!」

木松悪斗は音楽をただのお遊びとしかみていなかった。なので、スクールアイドルもただのアイドルの真似事である、という認識だった。もちろん、そのスクールアイドルの甲子園であるラブライブ!すらも木松悪斗にとってみればただの遊びの大会としか見ていなかったのである。

 そんな木松悪斗に対し桜花はこう訴える。

「たとえそうだとしても私はAqoursを、みんなを信じて自分の力を出し切ったのです!!そのことを認めてください!!そして、私のことを認めてください!!」

桜花からすればたしかに自分の力でもってラブライブ!に優勝、もしくは2位になったのである。だが、それ以上に、梅歌、松華を含めたAqoursの力も絶大だったのである。さらに、桜花がAqoursのみんなを信じたからこそこの成績を残した、ともいえた。ただ、それすら父は認めてくれない、桜花はそう思っては、自分の父、木松悪斗にモノ申したのである。

 その桜花の言葉、であるが、木松悪斗、

(ふんっ、それは単なる戯言だ!!)

と一瞬思ったのも束の間、木松悪斗は自分の敗因についてつい考えてしまった。

(とはいえ、私には圧倒的な力を持っていた。それなのにAqoursはそんな私に戦いを挑んできた。そのAqoursは桜花がAqoursを頼ったように相手を信じて集団で攻めてきた。そのため、私は負けたのだ。それくらい、人を信じる、というのはときに強大な敵すら倒すくらいの力をもつものなんだろうな・・・)

そう考えたのか、桜花に対し、木松悪斗、こんな言葉を送った。

「とはいえ、ほんの少しだがお前のことは少し認めてやろう。まぁ、この私を倒したのだからな」

この木松悪斗の言葉に、桜花、

「あ、ありがとうございます!!」

とお礼を言うとともにその場を去ろうとした、そのときだった。木松悪斗、その桜花に対しこの言葉を送った。

「まぁ、頑張れな、桜花・・・、私の分までな・・・」

なんと、木松悪斗、いつもの「ごくつぶし」「役立たず」と言っていた桜花のことを初めて下の名前で呼んでくれたのだ。これには、桜花、一瞬うれしくなって、

「はいっ、お父様!!」

とご機嫌な返事をしてしまう。自分のことをちょっぴり認めてもらっただけでなく自分の名前を初めて呼んでもらった、その嬉しさでいっぱいだったのだ。それは桜花にとって自分のことをついに認めてもらった、そのことを示すものとなった。

 だが、このとき、桜花には引っかかるものがあった。それは・・・、

(でも、最後の「私の分まで」と言っていたけど、一体どうして・・・)

そう、最後の言葉、「私の分まで・・・」と言ったことだった。これには、桜花、ある心配をする。

(まさか、お父様・・・)

そのためか、桜花の気持ちは、うれしさ半分、心配半分というちょっと複雑な思いになってしまった・・・。

 その桜花は複雑な気持ちのなかで帰っていくと木松悪斗はあることを考えてしまった。

(仲間として信じるか。これまでなかった考えだな・・・)

そう、これまで木松悪斗は仲間を信じる、そのことをしてこなかったのである。ITバブルのとき、自分の力でもってIT会社を作ったもののより大きな会社にのっとられた、そのこともあり、人を仲間として信じることができなかった・・・というか、これまで自分一人でやってきたのである。そのため、人を仲間として信じることを木松悪斗はしてこなかったのである。とはいえ、少なからず自分の投資グループにおいて裏美と猪波という信頼していた側近もいたが、裏切ったら徹底的につぶす、そんなドライな考えをしていたため、仲間とはいえなかった。そのため、仲間として信じる、そのことを木松悪斗はこれまでやってこなかったといえばそうともいえた。

 そして、木松悪斗はその考えに基づいてか、こんな風に考えるようになった。

(それに、なんか、「勝利こそすべて」という考えに疲れてしまった・・・。あまりに勝利を追及するあまりすべてを失ってしまった・・・。それはあの沼田が言っていた通りになったな・・・)

そう、木松悪斗は勝利のみを追及するのに疲れてしまったのである。さらに、勝利のみを追及するあまりすべてを失った、そう考えるようになったのである。そのことはあの沼田がラブライブ!延長戦前に行われたAqours側に立つ月生徒会長との最後の勝負のときに沼田に言われたことだった。それが、今、現実になったのである。その意味でも木松悪斗は勝利を追及することに疲れたとも言えた。

 そして、木松悪斗はこう考えるようになってしまった。

(そう考えると、これから先、生きる意味がない気がしてきた・・・。私はすべてにおいて負けてしまったのだ。人生を諦めるしかないのかもしれない・・・)

木松悪斗自身生きる意味を見失ってしまった。木松悪斗はこれまで「勝利こそすべて」の信念のもと、多くのものと戦ってきた。だが、Aqoursという小さな敵に負けたことで木松悪斗はすべてを失ったのである。それに、仲間という存在も今はいない、のに加えて、戦いの連続がゆえに人生に疲れてしまったのである。その意味でも木松悪斗はこれから先の人生を諦めようとしていたのである。

 そんな木松悪斗に、後日、1枚の手紙が送られてきた。その手紙の差出人は桜花だった。その手紙には桜花からの「絶対に来てください」という文言とともに1枚のチケットが入っていた。そのチケットとは・・・、「Aqours卒業生さよならライブ」・・・、だった・・・。

 

 一方、そのころ、裏美はというと・・・、

「なんでこの私が逃げまわらないといけないんだ!!」

と隠れながらも文句を言っていた。というのも、裏美、木松悪斗から投資グループを乗っ取ったものの、ものの3か月でその投資グループを潰してしまったのだ。そのとき、多くの借金をしてしまったのである。そのため、その借金取りから逃げるために各地を転々とし逃げまわっていたのである。

 そんななか、裏美、ついに借金取りに見つかってしまった。その際、

「私はあの投資グループの代表だぞ!!どっかいけ!!」

とにらみつけたものの、その借金取りから、

「そのグループの借金をしたのはお前だろ!!早く返しやがれ!!」

と逆に怒られる始末。そして、裏美はどっかに連れ去られてしまった。

 その後、裏美の姿を見るものはいなかった。ベーリング海でカニ漁、もしくはマグロ漁などいろんな噂が流れがどれすら確証はもてなかった。ただ、借金は返しているらしく、どこかで生きているのはたしかだった・・・。

 

 そして、桜花はある人の見舞いにも行くことになった。その人とは・・・、

「お姉さま!!」(桜花)

そう、桜花(はな)の姉、旺夏だった。自分のことを下に見ていたとはいえ、桜花からすれば旺夏は姉そのものだった。そのため、桜花はときどき旺夏の見舞いに行くことにしていたのである。その旺夏であるがいまだに東都大学病院で入院していた。インターハイ女子サッカー県大会決勝で受けたダブルタックル(それも左右両サイドから挟んでのタックル)により左足靭帯を破壊されてしまい一生車椅子生活になるのでは、とも医師から言われていたのである。そのため、姉の旺夏自身、

「もう生きる意味なんてないんだ・・・」

と生きることすら絶望するくらい落ち込んでいた。

 そんな旺夏に対し桜花はいつもこんな元気づけをしていた。

「お姉さま、諦めないでください!!きっとなんとかなるはずです!!」

桜花にとって旺夏は唯一の姉である。その姉が絶望している、だからこそ元気をだしてほしい、そう思っていつも元気づけようとしていたのである。

 だが、そんな桜花に対し旺夏はいつも、

「ほっといて!!どっかにいって!!」

と突き放そうとしていた。というのも、旺夏、いつも元気づけようとする桜花に対し、

(もうどっかにいって!!私はもうなにもできない、どうすることもできない、そんな人なのだから・・・)

といつも絶望を感じては、ほっといてほしい、もう関わらないでほしい、そう思っていたのだから・・・。

 だが、今回の桜花はいつもとは違っていた。今回も桜花のことをあしらおうとする姉旺夏に対し、

(いつも絶望を感じて生きているお姉さま、そのお姉さまのために今日は来たのだから・・・)

と思ったのか1枚のチケットを桜花は旺夏に差し出してはこう言い出してきた。

「お姉さま、絶対に来てください!!今度、お姉さまの思いを変えるためにも、いつも絶望に満ちたお姉さまを変えるためにも絶対に来てください」

これには、旺夏、

「そんなに私に関わらないで!!」

と言い返すと、桜花、そんな言葉すら無視して、

「それならはるかさんとハヤテさんにお願いするだけですから!!」

といたずらそうに言い返す。これには、旺夏、

「えっ、あの2人は・・・」

と気がひいてしまう。というのも、いつも絶望している旺夏に対し、はるか、ハヤテ、ともに、

「ほら、元気をだして!!」(はるか)

「少しは体を動かしたほうがいい!!」(ハヤテ)

といつも元気づけようと病室に来るのである。なので、旺夏にとってこの2人はとても苦手にしていたのである。

 その2人の名前を桜花は出してきた、ということで、旺夏は仕方なく、

「はいはいわかりました。でも、もしくだらなかったらその場から去るからね!!」

と嫌々になりながらも行くことを了承してしまった・・・。

 その後、桜花はうれしそうに病院をあとにすると旺夏は残されたチケットを見た。そこにはこう書かれていた、「Aqours卒業生さよならライブ」と・・・。

 

 数日後、桜花は静真のスクールアイドル部の部室にいた。その部室にはホワイトボードに「さよならライブまであと〇日」というカウントダウンの紙が貼っていた。Aqours卒業生さよならライブ、それは今度卒業する3年生、千歌、梨子、曜のためのライブであり、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネが3月上旬に行った九州への卒業旅行で決まったものだった。ただ、この旅行はなんか奇妙な事件に巻き込まれたような気がなくもないのだが・・・。

 それはともかくとして、そのさよならライブの開催の地は沼津駅前であった。そう、そこは1年前に新生Aqoursお披露目ライブが行われた場所であった。そのお披露目ライブでは、千歌、曜、梨子、ルビィ、花丸、ヨハネが、当時、新生Aqoursと呼ばれていた6人での初めてのライブであった。そして、今回のさよならライブはそのお披露目ライブと対となすライブとして、千歌、曜、梨子の卒業を記念するライブであった。ちなみに、総合プロデューサーは今度卒業する(曜のいとこの)月から全権を委託され生徒会長になった(ヨハネと同じ中学に通っていた同級生の)あげはであった。あげははAqoursのマネージャーをしつつ生徒会長をして親友の東子とシーナとともに静真を盛り上げていた。そのあげはも千歌たちのさよならライブ開催の提案にこれまで静真のために活躍してくれたAqoursの千歌たち3年生の卒業を祝うために賛成、静真の生徒総出でこのライブの準備をしていた。もちろん、このライブの準備のためにAqoursも夜遅くまで練習をしていた。

 とはいえ、「部長だから」といちはやくスクールアイドル部の部室に来ていた外のグランドをみてこう思っていた。

(今頃お父様のところにもあの手紙が届いているだろう。これで賽は投げられた。お父様とお姉さまは、今、生きる意味を見失っている。ならば、この私が2人に生きる意味を見出さないといけない!!このさよならライブはそのためのライブでもあるのだから!!)

そう、桜花は自分の父親である木松悪斗と姉旺夏に生きる意味を見出そうとしていたのである。2人は、今、生きる意味を見失っていた。このままだと2人は生きることすら諦めてしまうかもしれない、そんな2人のためにも桜花はこのさよならライブを通じて生きる意味を再び見出してほしい考えていたのである。果たして、その方法とは・・・。

 と言いつつ、桜花、すぐに行動に移る。このあと、千歌たちが集まり9人でライブに向けての話し合いをしていた。その最中、突然、桜花はみんなにあるお願いをした。

「みんな、お願い、この9人で歌う最後の曲は私に作曲させてほしい!!」

これには、ヨハネ、

「えっ、梨子じゃダメなの!?」

とびっくりすると松華からも、

「9人最後の曲だからこそ梨子さんにお願いするべきでは・・・」

と異論がでてしまう。

 ただ、それでも桜花は頑として、

「一生のお願い!!私に9人最後の曲を作曲させて!!」

と言い続けていた。

 そんな桜花をみてか、千歌、

「なんか桜花ちゃんにも理由があるんだよ」

と言っては桜花に対しこう尋ねてみた。

「桜花ちゃん、その理由を教えて?」

 この千歌の問いに桜花は包み隠さず話した。

「この曲は生きる意味を見失った人たちに対する応援歌にしたい。そして、この2年間におけるAqours、浦の星、静真の集大成にしたい!!千歌、梨子、曜、ルビィ、花丸、善子、梅歌、松華、そして、卒業してしまった、ダイヤ、鞠莉、果南、それに私たちにかかわった人たち、みんなの曲にしたい!!」

そのことを聞いて、みんな、はっとする。。生きる意味を見失った人たち、それはあの人たちのことを指しているとわかったからだ。その人たちは、「勝利こそすべて」という悪夢によりすべてを失い生きる意味を見失った、いや、その人たちを含めて、このご時世により生きる意味を見失った世界中のみんなに対して送る曲であると千歌たちはわかったのである。それは、この2年間、Aqoursとして活動してきた12人(卒業生のダイヤたちを含めて)、いや、その12人に関わった、浦の星、静真、その人たちに関わったすべての時間の集大成の曲にしたい、そんな桜花の純粋な想いからのものでもあった。

 そんな桜花の言葉に千歌をはじめとする8人は深くうなずく。8人とも同じ意見だったようだ。そして、千歌はこう宣言した。

「それじゃ、9人最後の曲は桜花ちゃんに作曲をお願いするよ!!」

これには、桜花、

「みんな、ありがとう!!」

とお礼を言うととおに梨子に対しあるお願いをする。

「あと、梨子にお願いがあるのだけど、新曲を作ってほしいの、14人で歌う曲を!!」

これには、梨子、

「うん、わかった!!作ってみるね!!」

と深くうなずきながら言った。

 こうして、さよならライブに向けて桜花と梨子は新曲を作ることになった。それはこのさよならライブがみんなに送るAqoursからの最高のプレゼントになることを意味していたのかもしれない・・・。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第13話(最終章) (3)

 一方、そのころ、花樹は理亜との練習中に、

(う~、一体どうすればいいんだ・・・、この話を受ければAqoursに入れるかもしれない・・・。だけど、それだと理亜は一人にに・・・)

と当主就任の話を受けるかどうか考えてしまっていたためか、

「1,2,3、うわっ!!」

とバランスを崩すことたびたび起きてしまった。これには、理亜、

「花樹、余計なことは考えないで!!」

とたびたび注意するも花樹はそのことだけを考えてしまってしまう。

 ただ、これには理亜も少し考えてしまった。

(花樹はAqoursに入りたいと思っている。だけど、それを私が言っていいのだろうか・・・)

実は理亜も花樹の当主就任の話は聞いていたのである。というのも、理亜とあつこが花樹の母親にこの前会っていたとき、

「実は花樹に対してある提案があるのです。花樹を猪波家の次期当主にしようという話があるのです」

と話を切り出しては花樹が猪波家の次期当主として沼津に行くことを花樹の母親は理亜とあつこに話していたのである。だが、それを花樹に話すとなると花樹が沼津に行ってしまう、そうなると理亜は一人になってしまう、そのことを理亜は心配していたのである。

 そんなもどかしい2人であったが、理亜は公私を混同しないせいか、ときどきバランスを崩す花樹に対しては、

「花樹、ちゃんとやって!!」

となども注意すると花樹も、

「す、すまない・・・」

と何度もあやまってしまった。

 そんななか、突然、

「お~い、理亜さんに花樹さん」

と言ってはあつこが2人の前に現れた。これには、理亜、

「どうしての、あつこ?」

とあつこのことを呼ぶとあつこがこんなことを言い出してきた。

「理亜さんに花樹さん、私たち、呼ばれた、Aqoursに!!」

これには、花樹、

「えっ、Aqoursに!!」

と驚くとあつこは詳しい内容を伝えてきた。

「実は、今月末、沼津の駅前で「Aqours卒業生さよならライブ」を行うみたいなのです。そのなかでゲストとして、私たちSNOW CRYSTAL、それにこころあが呼ばれたのです!!」

これには、理亜、

「あっ、たしか、千歌、梨子、曜が卒業するはず!!そのさよならライブを行うなんて、Aqours、どこまで規模の大きなことをするわけ・・・」

とあきれてしまう。Aqoursといえば浦の星での学園祭に閉校祭、新生Aqoursお披露目ライブに静真でのAqoursライブ、と大きなことをやってしまうもそのほとんどが大成功に終わる、という化け物級のイベント開催能力を持つ。むろん、これにはAqoursの力だけではんく、そのバックにいる旧浦の星の生徒たち、Aqours静真応援団や静真高校生徒会などの静真の生徒たちの協力などもあるのだが、それくらいAqoursは大きなことをやることに関してはとてつもない力をもっていた。そして、今回もお披露目ライブと同等のライブを行う、という信じられないことをしようとしていたのである。

 で、そのゲストに、理亜たちSNOW CRYSTAL、も呼ばれたのであるが、これには、理亜、

(別に断る理由もないし、Aqoursには恩義があるから・・・)

と出るのに前向きだった。というのも、第12話において、理亜は自分の闇に苦しんでいたとき、理亜を助けてくれたのがAqoursとこころあだった。また、月末までこれといったスケジュールがあるわけもなく断る理由もなかった。

 ということで、理亜、

「それなら私としては賛成だけど、花樹はどう?」

と賛成の意を表すも花樹にもどうするか尋ねてみた。

 すると、花樹、ふとあることを考える。

(今度はAqoursと戦うのではなく一緒のイベントを楽しむ・・・、なんか楽しそうな気がする・・・)

どうやら、花樹も乗り気だったようだ。これまではAqoursとこころあとは戦いあっていた。ところが、今度は同じスクールアイドル仲間としてイベントを盛り上げる、それ自体、楽しいのでは、と花樹は思えるようになってきたのである。

 というわけで、花樹、

「俺はそれでいいけどな」

と賛成の意を表明したことで理亜たちSNOW CRYSTALのさよならライブ参戦が決定した。

 

 その後、花樹と理亜はあつこを交えてさよならライブに向けての練習を開始した。ただ、そのあいだも花樹は、

(俺はSNOW CRYSTALのメンバーだ!!でも、お母さんの提案通り、猪波家の次期当主となれば沼津でAqoursの一員になれる。でも、それをすれば・・・)

といまだに悩んでいた。自分は理亜と同じくSNOW CRYSTALのメンバーであるという自負があった。が、自分の夢であるAqoursに入る、その夢を叶えるには猪波家の次期当主として沼津に行く、それが一番である、だが、しかし・・・、と堂々巡りを繰り返していた。花樹からすればSNOW CRYSTALの一員でいたい、のと同時に、Aqoursに入りたい、その二つの選択肢があった。だが、どっちとも選ぶことができなかった。それくらい花樹からすれば運命の選択であったのだ。

 そんな花樹をみてか理亜は悩んでいた。

(私としては花樹の夢を応援したい。でも、そうなると私一人になってしまう。どうすれば・・・)

理亜としては花樹の夢を応援したい、そんな思いが日々強くなっていった。だが、それと同時に花樹が抜けると自分一人に戻ってしまう、そんな不安も日々強くなっていったのである。理亜にとってたった一人というのはとても寂しいものである。花樹が聖女に入学する前、理亜は自分の闇によって暴走し、当時、理亜が作っていたユニットが空中分解したとき、たった一人しかいないという現実を突きつけられていた。このとき、暴走によってたった一人しかいないという絶望感を味わった。そのため、たった一人という苦しみは理亜にとって嫌な経験となっていた。今回はそれを思い起こさせるものだった、理亜にとっては・・・。

 そんな理亜を見てあつこはこう思ってしまう。

(このままだと理亜さんが倒れてしまいます。ここは私がなんとかしないとですね)

あつこにとって理亜は同じユニットメンバーであると同時に幼馴染という側面もあった。なので、理亜が困っているなら自分がなんとかしないといけない、そんな思いでいっぱいだった。

 そして、あつこはあることを決意した。

(それならば善は急げです。このあと、理亜さんと話し合いましょう、花樹さんのことについて・・・)

 

 数日後・・・、

「あつこ、呼び出しておいて、なに?」

と、理亜があつこに呼び出した理由を尋ねた。あつこ、実は理亜にあることを話に部室へと呼び出していたのだ。で、その理亜に対してあつこはすぐにこんなことを言い出してきた。

「実は花樹さんのことなのですが・・・」

 この瞬間、理亜、

「そ、それは花樹の決めること!!私が口出しすることじゃない!!」

と釘を刺してしまう。理亜も薄々感じていたことかもしれない、花樹のAqours加入について。実は、理亜、3人での練習のあと、こんなことを考えていた。

(私としては花樹のことを応援したいが私一人になってしまう・・・。でも、それは花樹が決めること。私がどうこういえる立場じゃない!!)

たしかに理亜は「花樹のことを応援」「自分一人になってしまう」、2つのことで悩んでいた。だが、自分がどうこう言ったとしても最終的に決めるのは花樹本人であり外野である自分がいうのはお門違い、そう理亜は考えたのである。

 そんな理亜に対しあつこは反論する。

「たしかにその通りだけど、もし花樹さんがそれで悩んでいた場合、どっちがいいか、私たちに聞いてくるじゃないですか。そのときに私たちがどういった行動をとるべきか決めておく必要があります」

たしかにその通りかもしれなかった。げんに花樹はSNOW CRYSTALに残るか、次期当主になってAqoursのいる沼津に行きAqoursに入るのか、どちらか悩んでいた。そのため、花樹は理亜たちにどちらにすべきか聞いてくるかもしれない、そのことを踏まえた上であつこは自分たちなりの意見をまとめようとしていたのである。このあつこの意思に、理亜、

「た、たしかにそうだけど、花樹が決めたことに関して、私たちがいろいろと言うのは・・・」

と悩んでしまう。もし、花樹がどちらかを決めたとしても自分がそれに対していろいろと言うのはお門違いであろう、と心配しているのである。

 そんな理亜に対し、あつこ、ついに力説してしまう。

「そんなの、関係ないでしょ!!もし、花樹さんが決めたときは決めたときです!!花樹さんが決めたことで私たちが認めてしまえばいいのです!!そんなことまで心配しなくてもいいのです!!」

たしかにその通りであった。今話しているのは花樹が決められないときに理亜たちに尋ねてきたら、というもしもの話をしていたのである。もし、花樹が決めたことがあるならそれを後押しすればいいだけの話だったのである。

 このあつこの言葉に理亜も、

「た、たしかにそうかも・・・」

としぶしぶ認めてしまった・・・。

 とはいえ、理亜はあつこにある相談をした。

「あつこ、私、花樹のことを応援したい。でも、花樹がいなくなると私一人になってしまう。そんなの、いや!!日地理になってしまうと、私、不安を感じてしまう・・・」

それは理亜にとって魂の叫びでもあった。夢を応援したい、だけど、そうなると自分は一人になる、それは理亜にとって相反する思いで苦しんでいる証拠ともいえた。

 ただ、それに関してあつこからすれば簡単なことだった。それは・・・、

「理亜さん、忘れたのですか?理亜さんは一人ではありません!!あなたには3つの宝物、Saint Snow、SNOW CRYSTAL、Aqoursやこころあ、それがあるのです!!その3つの宝物がある限り、ずっとみんなとつながっているのです!!」

そう、理亜はもう一人ではなかった。理亜には3つの宝物がある。Saint Snow、SNOW CRYSTAL、Aqoursやこころあ、その3つの宝物によってずっと心のなかでつながっているのである。

 そのあつこの言葉に、理亜、

「あっ!!」

とようやく気づいたのである、もう自分は一人じゃない、そのことに。そのため、理亜、元気になる。

「たしかに、私、忘れていた、私はもう一人じゃない!!宝物を通じて誰かとつながっている!!それならもう不安に感じる必要なない!!」

これで理亜の心配事はなくなった。理亜の不安を取り除くことができたのである。

 そして、理亜はあつこにこんなことを言った。

「あつこ、私、花樹の夢を応援したい!!花樹がAqoursに入りたいなら、私、それを応援したい!!」

それこそ理亜の本心であった。理亜からすれば花樹を失うのはとても痛いことだった。だって、花樹がいたからこそラブライブ!で優勝することができたのだから。それくらい花樹は理亜たちSNOW CRYSTALにとって戦力であった。だが、花樹の夢であるAqours加入ができるのであればそれを応援したい、それこそ理亜の思いであった。

 その理亜の思いにあつこは同意する。

「私も花樹さんの夢を後押ししたいです。だって、花樹さんの夢が叶うのなら私にとってみても本望ですから!!」

あつことしても同じユニットメンバーである花樹の夢を後押ししたい、そんな思いでいっぱいだった。あつこからしても花樹は立派なメンバーである。そのユニットメンバーの夢を叶えてあげたい、それこそが今のあつこの夢でもあった。

 そういうわけでして、理亜、あつこはあることを決意した。

「もし花樹がAqours加入を願うならその後押しをしよう」(理亜)

「たしかにその通りですね」(あつこ)

2人は花樹がAqours加入を叶えたいのであればそれを叶えてあげようと決めたのである。

 ただ、このとき理亜はこうも考えていた。

(でも、花樹は私にとってとても大切なパートナー・・・。そのパートナーを失ったら、私・・・)

 

 ただ、これで話は終わなかった。その日の夜、

「ルビィ、私、ルビィたちのさよならライブに参加する」

と理亜がルビィに電話で話すとルビィも、

「うん、ルビィもね、理亜ちゃんと一緒に歌うの、楽しみにしている!!だって、桜花ちゃんと梨子ちゃん、みんなの歌を作るんだって張り切って作曲しているんだもん!!」

と元気よく答えていた。ルビィも、千歌、梨子、曜との最後のライブに向けて練習を頑張っていた。だって、3人とのライブはこれが最後なのだから。これから先はルビィたちが先頭にたってAqoursを支えないといけない、その意味でも節目のライブ、だったのだ。だからこそ、ルビィたちはこれまで以上に、いや、ここ一番の強い意思でのライブに向けて練習に明け暮れていたのである。

 そんなルビィと理亜の電話でのやり取りのなかでふと理亜がこうつぶやいてしまう。

「それにしても、私のところの花樹、なんかAqoursに入りたい、そんなことを言っていた気がする。今度、花樹が沼津に戻るみたい。そのなかで静真に入学することを(花樹の母親が)言っていた。それに、花樹のもとの夢は、「Aqoursに入ってスクールアイドルとして活躍しラブライブ!優勝する」だったはず・・・」

 この理亜のつぶやきに、ルビィ、すぐに反応。

「えっ、花樹ちゃん、Aqoursに入りたいの?」

これには、理亜、

「それは私がそう感じているだけ。本当のところはわからない」

と断りつつも、

「でも、花樹はAqoursに入りたいという夢があったのは本当」

とある部分だけは認めていた。

 すると、ルビィ、

「あっ、そうだ!!」

とあることを思いついたようだ。それとは・・・、

「花樹ちゃんの思いとは別に花樹ちゃんの夢は叶えてみたらどうかな?」

これには、理亜、

「えっ、花樹の夢を叶える?」

とルビィに聞き返す。

 すると、ルビィは理亜に対し、

「それはね・・・(ごりょごりょ)」

と思いついたことを理亜に話すと理亜も、

「ルビィ、それはいいアイデア!!お願い、ルビィ、花樹の夢を叶えて!!」

と納得するとともにルビィにお願いをした。。これには、ルビィ、

「うん、任せて!!」

と胸を叩いて自信ありげにそう答えた。

 

 その次の日、

「梨子ちゃん、桜花ちゃん、お願いがあるの。もう一曲だけ作ってほしい!!」

とルビィは梨子と桜花にお願いをしてきた。今度のさよならライブで歌う曲をもう1曲作ってほしいというのだ。これには、梨子、

「それはいいけど、桜花ちゃんの方はどうかな?」

と言うと、桜花、

「理由によりけりだと思います」

と尋ねてきた。

 この桜花の問いかけに、ルビィ、自信満々にこう答えた、途中、小声で言いながら・・・。

「実はね、(ごりょごりょ)」

その瞬間、桜花、

「ふ~ん、あいつのためとはね・・・」

とちょっといじけつつも、

「でも、それ、なんか面白そう!!」

と了承しただけでなく、

「それだったら、梨子と私、あと、SNOW CRYSTALのあつことの合同作曲にするのはどうかな?そうすれば○○に対するプレゼントになるはずだから」

ととっておしのないことを言い出してきた。ただ、これに関しては、梨子、

「それ、面白そうね!!みんなとの合作!!とてもいい!!」

となぜかかなり乗り気の様子。

 こうして、梨子、桜花、あつこ、3人による合作の曲が作られることとなった・・・。

 

 その後、梨子を中心に、桜花、あつこは、

「ここはこうした方がいい!!」(桜花)

「う~ん、それはちょっとね・・・」(梨子)

「私としてはこうしたらいいと思うよ」(あつこ)

「「うんっ、それでいい!!」」(桜花、梨子)

といろいろ言いながらも楽しみながら合作を作り上げていた。

 そして、2日後・・・、

「ついに完成!!」(桜花)

と3人合作の曲ができた。すぐに千歌と理亜が作詞をし、ついに渾身の1曲が完成した。これには、理亜、

「これこそ、○○のための曲!!」

と元気よく声をあげた、「Good-bye & Hello」と言いながら・・・。

 

 そんななか、花樹はまだ悩んでいた。

「どうすればいいわけ・・・。俺はSNOW CRYSTALの一員。だけど、俺にはAqoursに入りたいという夢がある。一体どうすれば・・・」

こう花樹が言うとその横から、

「そんなの、気にしないほうがいいぜ!!」

とここあが言うとこころも、

「なんとかなるです!!」

と気にしないように言ってきた。この日、練習はお休み、ということでこころあと花樹は一緒に遊んでいた。というよりも、こころあが函館に遊びに来た、ということで、花樹が仕方なく函館の案内をしていたのですが、なぜか、こころあとの相談会になってしまったのである。

 そんなこころあからの言葉に、花樹、

「でも、どっちも選べない・・・。どっちを選んでも悔いだけが残る。いったいどうすれば・・・」

と言葉に詰まる。

 そんな花樹に対しこころあがあることを言い出した。

「それだったら大丈夫だと思うぜ!!だって・・・」

となにか言いたそうにするとその横からこころが、

「ここあ、それは秘密です!!」

と言葉を遮ってしまう。どうやら、2人ともなにかを知っているようだった。というのも、こころあもさよならライブにゲストとして呼ばれていたのである。そのため、あることに関しては理亜から聞かされていたのである。

 そんなこころあをみてか、花樹、

「あれ、なにか隠しているわけ?」

とこころあを問い詰めようとするも、

「そんなの、関係ないでしゅ!!」(ここあ)

「そうです!!」(こころ)

と秘密を押し通してしまった・・・。

 

 そんななか、桜花はついにAqours9人としての最後の曲を作り上げた。その曲をAqoursメンバーが聞いた瞬間、

「なんかとてもいい!!」(千歌)

「私もいいと思う!!」(梨子)

と評判は上々。

 と、ここで、梨子、あることに気づく。

「あっ、でも、この曲、なんかを始めようとする、そんな想いでいっぱいだね!!」

これには、ルビィ、

「これってもしかして・・・」

となにかに気づいた様子。

 これには、桜花、こう答える。

「みんな、ごめん!!私としてはみんなを巻き込みたくないのだけど、私たち家族を含めて、この1年間ちょっとはいろんな意味で激動だった。だけど、そのためにいろんな人たちが人生を諦めそうになっていったと思う。だからこそ、その人たちを含めてみんなと一緒に新しい明日に向かってなにかを始めよう、そんな想いで作ってみたわけ」

これには、梅歌、松華からも、

「たしかに、これから先、私たちを含めて新しい生活が始まろうとしている、そう考えるととてもピッタリな曲だと思うよ!!」(梅歌)

「たしかに桜花さんや梅歌の言う通りかも。私もこの曲でいいと思う!!」(松華)

と賛同の声を響き渡らせる。これには、ほかのみんなからも、

「たしかに梅歌の言う通りだね!!」(ヨハネ)

「右に同じずら」(花丸)

「私たちにもピッタリな曲かもね!!」(曜)

「うん、そうかも!!」(ルビィ)

と賛同の声が続く。

 こうして、桜花が作ったこの曲ははれてさよならライブにてAqours9人最後の曲として歌われることが決まった。

 そんな8人をみて桜花はこう思っていた。

(この曲をお父様とお姉さまが聞いたらきっと再び立ち上がろうとするはず・・・)

 

 こうして、きつい、けど、楽しい、そんな練習の日々が続いた。Aqours、SNOW CRYSTAL、そして、こころあ、ともにさよならライブにむけて練習にいそしんでいた。

 そして、さよならライブ数日前には、SNOW CRYSTAL、こころあを含めてAqoursの山の中にある練習場(旧浦の星分校跡地)で合同合宿を行った。そこはとても充実した日々となった。14人ともとても記憶に残る数日間となった。

 だが、ここで花樹はふと思った。

(あれっ、なんでこの曲だけ秘密なの?)

そう、全プログラムのうち、たった1曲だけシークレット、秘密になっていたのである。そは誰も練習しない、そんなことが起きていた。これには、花樹、理亜に向かって、

「この曲ってどうして練習をしないわけ?」

と尋ねるも理亜はただ、

「それは秘密!!」

となにも教えてくれなかった。むろん、これには、花樹、

(なんで誰も教えてくれないわけ?」

と不思議になるのも無理ではなかった・・・。

 こうして、ついにさよならライブ当日を迎えることになったのである。



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL 第13話(最終章) (4)

 この日は朝から沼津駅前は賑わっていた。日本的大スターであるAqours、その千歌、曜、梨子、そして、それをラブライブ!で破ったSNOW CRYSTALのあつこ、そして、こころあ、最後のライブ、ということでこのライブを見に来る人がとても多かった。その後、ライブ前にはまるでアメリカの大統領就任式みたいに沼津駅前には人がたくさん押し押せていた。

 

 そんななか、一人の男性がこのライブの特別席に来ていた。

「ふんっ、どうして私がこんなところに来ないといけないんだ!!」

その男こそ木松悪斗だった。木松悪斗は警察監視のもと、このライブに来ていたのである。そのため、このライブ会場の至る所で警察の目があり逃げ切ることができない、いや、この特別席に行くことしかできない状況だった。

 そんななか、木松悪斗が特別席に行くとそこにはなぜか車椅子の少女がいた。これには、木松悪斗、

「おい、旺夏、なぜここにいる?」

そう、そこにいたのは木松悪斗の娘(長女)の旺夏だった。旺夏はすぐに、

「あっ、お父様、どうしたのですか?」

と尋ねてみると木松悪斗はすぐに、

「それはここに呼ばれたからだ!!」

と答えてくれた。すると、旺夏もすぐに、

「私もここに来るように言われたのです」

と答えると、木松悪斗、はっとする。

「こ、これは沼田にはめられたのか!?」

これには、以前、同じようなことが起きたことが起因だった。以前、静真でのAqoursライブのとき、木松悪斗と旺夏は沼田と月生徒会長の策略によりAqoursのライブに呼ばれたことがあったのだ。その際、当時対立していた桜花たちと千歌たちとの戦いが行われ、桜花たちは敗れてしまった。このとき、木松悪斗が自分の娘である桜花を見限ったことがきっかけとなり桜花たちは千歌たちAqours入りをしたのである。その苦しみを木松悪斗は感じていたのである。

 だが、それとは違った要素が入ってきたのである。2人のもとにある女性が現れた。

「あれっ、あなた、どうしてここにいるのですか?」

これには、木松悪斗、旺夏、すぐに反応する。

「うっ、なんでお前がいるんだ!!」(木松悪斗)

「えっ、お母さま!!」(旺夏)

そう、そこにいたのは木松悪斗の元妻、旺夏、桜花(はな)の実の母であった。木松悪斗と元妻とは離婚時の面談以来のことであり、ひさしぶりの再会であったのである。

 と、ここで、沼田が3人のもとに現れると、開口一番、こんなことを言い出してきた。

「これはこれは3人ともよくいらっしゃいました」

これには、木松悪斗、沼田に対しこう言い出す。

「沼田、お前、私に罰を与えるためにこんなくだらないことをしにきたのかね!!」

木松悪斗にとって静真でのAqoursライブのときみたいに自分のことを陥れるために今日もそうしたのではないかと言ってきたのである。

 だが、ここで、沼田、意外なことを言い出す。

「たしかに、お前(木松悪斗)をここに連れ出すように検察を動かしたのは私だが、今回は私の策略ではない。桜花さんにお願いされてやったことだぞ」

これには、木松悪斗、信じられないのか、

「そんなの、口からでまかせにすぎない!!」

と言い返す。

 ところが、ここにきて、まさかのキャラが登場してきた。

「そんなこと、あ~りません!!この鞠莉‘sママが保証します!!」

なんと、ここにきて、鞠莉‘sママの登場だった。鞠莉‘sママのまさかの登場に、木松悪斗、

「えっ、いったいどういうことなんだ!?」

と混乱してしまう。まさかの鞠莉‘sママの登場にびっくりしたようである。

 と、その横から、

「ママ、あまりに驚いて木松悪斗がオーバーヒートしてしまったので~す!!」(鞠莉)

「まぁ、驚くのも無理ではありませんね」(ダイヤ)

「ははは・・・」(果南)

と、ダイヤ、鞠莉、果南、卒業生3人が現れるとともにある少女たちも登場してきた、こう言いながら。

「このライブはAqours現体制の最後のライブとともにある家族に対するあるメンバーの願いがこもったライブになっているのです」(ナギ)

「だからこそ、木松悪斗、旺夏、ちゃんと聞いてあげてください。僕もあなたたちが再起するのを願っているのですから」(月)

なんと、元生徒会の会長の月、副会長のナギも現れた。これには、木松悪斗、

「私たちの再起?いったいどういうことだ?」

と唖然となると沼田がこんなことを言ってしまった。

「お前と旺夏は挫折してから生きる意味を見失っている。だからこそ、このライブで生きる意味をもう一度考えてみろ!!」

これには、木松悪斗、

「そ、それは・・・」

となにか言いたそうになるもすぐに、

「さぁ、ついに始まります、Aqours卒業生さよならライブ!!」

という声が聞こえてきた。ついにさよならライブが始まろうとしていた。これには、木松悪斗、

「ふんっ!!くだらないものだったら許さないからな!!」

と言ってはついに黙ってしまった。その木松悪斗のこのときの心うちはこんなものだった。

(私はこれから先、なにもすることもできない。そんななかでどう再起しろとは、もう一度、生きる意味を考えろとはどういうことなのか?)

木松悪斗は今なお生きる意味を見失っていた。なにもかも失った結果、「勝利こそすべて」、それによってすべてを失った結果、生きる意味すらも見失っていたのである。それは旺夏も同じことだった。なのに、このさよならライブでもう一度生きる意味を見つけるとはどういうことなのか、それを木松悪斗は考えてしまうのであった・・・。

 

 とはいえ、さよならライブは始まった。トップバッターはこころあ!!

「みんな、元気でいるかな~?」(ここあ)

オー!!

「まずは私たちがこの場を温めていくのです!!」(こころ)

「ここあたちにとってこれが最後のライブだぜ!!」(ここあ)

オー!!

「それでもトップバッターを任せられるとはやっぱり盛り上げ役は私たちしかいないということです!!」(こころ)

「さて、まずは一発目!!新曲だぜ!!」(ここあ)

オー!!

「この曲は私たちこころあがみんなに送る最後の歌です!!」(こころ)

「そうだぜ!!こころあ、この3年間の集大成の曲だぜ!!」(ここあ)

オー!!

「この曲を聞いてみんなの心のなかにこころあのことを強く刻みこむのです!!」(こころ)

「それでは、聞いてください!!LAST DANCE!!」(こころ)

 

 

こころあ 挿入歌 「LAST DANCE!!」

 

 

最後の最後まで飛ばしていくよ!!

 

これが本当の   ラストダンス

あともう少しで  終わってしまう

だからこそすべて やりきてしまおう

なにもかもすべて 出しつくしましょう

 

あれもやった   これもやった

やれることは   すべてやった

だけど1つ    忘れてない

それはもちろん  最高の想い出作り!!

 

 

(ついに最後のステージだぜ!!とても楽しいぜ!!)(ここあ)

(まさかこの私たちがこのステージに立てるなんてうれしいです!!)(こころ)

(たしかにその通りだぜ!!)(ここあ)

(それならば、最後の最後まで歌いきるのです!!)(こころ)

(わかっているぜ!!こころも燃え尽きるまで歌いきるぜ!!)(ここあ)

(はい、そうです!!)(こころ)

 

 

みんなといたから ここまでこれた

青春の1ページ  塗りつぶした

私たちの想い出  すべてがバラ色

だからこそ    スクールアイドル

続けていて    本当によかった!!

 

みんなと出会えてよかった

みんなと踊れてよかった

だって私たちはみんなは

スクールアイドル!!

 

 

 そして、ついにこころあの曲が終わった。この瞬間、

ウォー!!

という観客たちの声が聞こえてきた。観客たちはこころあの曲によってヒートアップしてきたのだ。トップバッターとしてのステージ、いや、会場中を温めることにこころあは成功したといえる。

 それでもこころあのステージは続く。

「それでは次の曲にいくのです!!」(こころ)

「次の曲は「We enjoy School Idoll!!」だぜ!!)(ここあ)

こころあは立て続けに曲を歌い続けた。観客たちをさらにヒートアップさせるつもりでいた。それでもこころあはステージを駆け巡る。そのたびごとに観客たちはさらにヒートアップしていった。こころあの策略は見事にはまったといえた。

 

 そんななか、木松悪斗と旺夏もまわりがヒートアップするこの状況に最初のうちは、

(な、なんなんだ!!これは私にとって関係ないものだ!!どっかにいけ!!)(木松悪斗)

(もうやめてくれ!!私には、こんなもの、関係ないんだ!!)(旺夏)

と感じていたのか、それとも、なにもかも見失ったためか、

(うっ、なぜか、まわりの熱に犯されようとしている!!な、なんとかしてくれ!!)(木松悪斗)

(なにもかもないところにどんどん熱気が充満してきている!!な、なんとかして!!)(旺夏)

と次第にまわりの熱気に飲み込まれようとしていた。

 

 こうしていくうちにこころあのパートが終わった。そして、ステージ袖に移動するころろあ。すると、

「場を温めてきたぜ!!」(ここあ)

「これで思う存分歌うことができるはずです!!」(こころ)

とスタンバイしているAqoursメンバーに対しこう叫ぶと、

「こころあちゃん、ありがとう!!」(ルビィ)

「これで思う存分歌うことができるずら!!」(花丸)

「さぁ、ここからは私たちのターンです!!」(桜花)

とAqoursメンバーがこころあのことを褒めると同時に、

「さぁ、いくよ!!みんな!!」

と千歌の合図とともに名乗りをあげた。

「1」「2」「3」「4」「5」「6」「7」「8」「9」

「Aqours、サンシャイン!!」

この声とともにAqoursのステージが始まった!!

 

 その後、Aqoursとして発表した曲をどんどん披露していく。そのなかで観客たちは、

ハイハイハイハイ

と熱きハートを燃やそうとしていた。

 そして、すべての曲を歌い終わったあと、桜花がステージの前に出てきてはこう話してきた。

「これでAqoursのパートは終わりです」

これには観客たちから、

え~!!

という声が聞こえてくるのと同時に桜花があることを語り始めた。

「実は私とその家族はこの1年でいろんなことが起きました。そのなかで、私の父と姉は生きる意味を見失ったのです」

これには、木松悪斗、旺夏、ともに、

((これって私たちのことでは・・・))

と思う節があった。「勝利こそすべて」というものによってすべてを失った2人、そのことを言っていると2人は思っていたのだ。

 そんな2人に対し桜花はこう叫ぶ。

「そんな2人に対しこの歌をAqours9人最後の曲として送ります」

その言葉とともに桜花はこう叫んだ。

「聞いてください、Try Again!!」

 そして、この2人に送るAqours9人最後の曲が始まった。

 

Aqours9人Ver. 挿入歌 「Try Again!!」

 

 

もう一度立ち上がれ Try Again!!

 

挫折をしても別に   いいじゃない

(Try Try Again!!)

人生はこれっきり   でもないんだ

(Try Try Again!!)

私たちだって     挫折をしている

でもそのたびに    立ち上がっている!!

 

 

(私たちの想い、あの2人に伝わっているのでしょうか?)(桜花)

(それなら大丈夫だよ!!きっと伝わっていると思うよ)(梅歌)

(そうです。これは桜花さんが2人のために作った曲です。大丈夫です)(松華)

(歌というのはその人にずばり伝わるものなのです)(梨子)

(リリーからしたらまともなことを言うじゃない)(ヨハネ)

(桜花ちゃん、梨子ちゃんの言う通りだよ!!歌は人をつなぐんだよ!!)(ルビィ)

(たしかにそうずら!!だから安心するずら)(花丸)

(だから、桜花ちゃん、もっと自信をもって歌えばいいんだよ)(曜)

(うん、わかった!!)(桜花)

(そうとなれば、どんどん楽しんで元気をだしていくよ!!)(千歌)

((((((((オー!!))))))))(8人)

この心の言葉とともに9人の想いはどんどん加速していった。

 

 

挫折をするたび    私たちの心は

強くなっていくから  より実りになっていく

だからこそ私たちの  人生はすべては

よりよいものへと   変わっていくはずさ!!

 

 

 そして、その想いは2人を変えようとしていた。最初、聞き始めたときには、

(ふんっ、そんな曲なんて私たちには関係ないんだ!!)

と木松悪斗がすねていたものの、聞き始めてから、

(うっ、なんだ、この曲は!?これまでに聞いたことがない曲だぞ!!)(木松悪斗)

(なんか、私、この曲によって心が揺さぶられている気がする!!)(旺夏)

とこの曲に関する印象が変わろうとしていた。

 さらに、サビに入るときには、

(うぅ、なんか、自分のなかでなにかが変わろうとしている!!)(木松悪斗)

(な、なんか、心のなかに生きる力が湧き出てくる気がする!!)(旺夏)

と力強いなにかを感じる、いや、生きる意味を見出そうとしていた。

 2人はこれまで、「勝利こそすべて」、その名のもと、生きてきた。だが、その結果、すべてを失うといったところまできてしまった。だが、桜花たちAqoursの歌によってそれとは別の生きる意味を見出そうとしていた。

 そんな2人を見てか、桜花はついに決意する。

(2人がなにかを見出そうとしている!!なら、ここで決める、あの2人に絶対に生きたい、そう思わせるように!!)

 

 

だからこそ諦めないで 生きることを

(Try Again Try Again)

私たちの未来は    これから決まっていく

(Try Again Try Again)

挫折だけが      人生ではない

これからの人生    私たちと一緒に

楽しんでいこう    だからね

輝かしい未来へと   一緒に進もう!!

 

人生を諦めないで

だって私たちは

明るい明日へと進める

そんな想いを持っているから

 

 

 そして、曲が終わった。その瞬間、

ワオー!!いいぞぉ!!

という声が観客席から聞こえてきた。

 一方、特別席からも、

「う~、とても感動したのです!!」(ナギ)

「陽ちゃん、素晴らしかったよ!!」(月)

「ブラボーでしたわ~。これこそAqoursで~す!!」(鞠莉‘sママ)

と感動する声が聞こえてきた。

 そんななか、木松悪斗と旺夏は、

(なんか、桜花(はな)からいろいろと教わった気がする、「楽しむことのすべて」、そして、そんななかで生きる意味を見出そうとしていることを・・・)(木松悪斗)

(こんな私でも生きることができるんだね!!それを、まさか、ごくつぶし、いや、あの妹から教わるなんてね。これじゃ、姉失格じゃない・・・)(旺夏)

とこれまで見失っていた生きる意味を見出すことができていた。

 そんな2人に対し、木松悪斗の元妻は、

(なんかここまでいきいきとした2人を見たのは久しぶりかもしれません。過去にいろんことがありましたがこの負2人を見ているだけでこれから先も、この2人と、いや、桜花を含めたこの4人で暮らしていきたい、そんな気がします・・・)

と生き生きとしている2人を見てはそう思うのであった。

 そのためか、木松悪斗の元妻は、突然、

ガシッ

と木松悪斗と旺夏を抱きしめると、

「2人ともお帰り!!生きる意味をようやく見出したのですね。それだったら一緒に暮らしても安心できます」

と言っては2人をぎゅっと抱きしめてしまった。これには、旺夏、

「ちょっと苦しいです、お母さま」

と言うと木松悪斗の元妻はハグを解くとともに、

「あっ、ごめんなさい!!」

と謝ってしまうと木松悪斗も元妻と旺夏に対し、

「どうやら、私はこれまで間違ったことをしてしまったようだ」

と反省の弁を言うとともに、

「これからは人のために生きていこうと思う、私の能力をすべての人のために・・・」

とこれからのことについて語ってくれた。

 そして、木松悪斗は桜花の方を見ては、

「それをまさかあの桜花に教わるとは・・・、恐れ入った・・・」

と桜花のことを褒めていた。そんな父の言葉に旺夏も、

「うん、それは言えている。あの桜花にすべてを教わった気がする」

と涙目になりながら言うと木松悪斗の元妻も、

「この1年でもっとも成長したのは桜花だったのかもしれませんね」

と2人を抱きしめながらうれしそうに言った。

 

 そんな3人の様子を遠くから見ていた桜花、

(私の想いがようやく伝わったんだね。なんかうれしい)

と自分が言いたいことすべてが伝わった、そのことがわかったのか、涙目になりつつもうれしそうに3人を眺めていた。

 そんな桜花に対し、

「これで桜花もすっきりしたんじゃないか!!」

と花樹が飛び出してきては桜花にこそっと言うと桜花も、

「うん、そうかも」

とうれしそうに笑った。

 そんな2人に対し、ルビィはそっと言う。

「桜花ちゃん、今はSNOW CRYSTALのステージだよ!!」

そう、Aqours9人のステージは終わりを告げ、次はSNOW CRYSTALのステージであった。これには、桜花、

「あっ、ごめんなさい」

と謝るとともに、

「それじゃ、花樹、近いうちに同じステージで!!」

と意味ありげな声をあげる。これには、花樹、

「えっ!?」

と驚くもすぐに、

「ほら、花樹、今から私たちのステージ!!ちゃんとする!!」

と理亜が注意すると、花樹、

「あっ、たしかにそうだ!!」

と慌てつつもステージの前に立つ。

 そして、理亜はこう叫んだ。

「Aqoursのライバル、そして、函館を代表するスクールアイドルユニット、SNOW CRYSTAL、ここに参上!!」

その言葉とともにあつこはこう叫んだ。

「私たちにとってこれが最後のステージ!!だから、精一杯歌います!!」

さらに、最後に花樹がこう叫んだ。

「それで、俺たちの歌、聞いてもらうぜ!!」

この言葉のあと、3人は自分たちの歌、

「meet・・・」「START AGAIN」「Loser」「judgement」「Triangle」「POLA=STAR」、そして、「SNOW CRYSTAL」に「Go to the TOP!!」

をメドレー形式で歌った。

 そして、ついにSNOW CRYSTAL最後の曲となった。理亜は観客たちに高らかにこう叫んだ。

「この曲が私たちSNOW CRYSTAL現3人体制での最後の曲となりました。この曲を聞いてこれから先も私たちのことを思い出してください!!」

そう、この曲はこれまでの自分たちをこれから先も思い出してもらいたい、そのような曲であった。さらに、この曲はあつこだけでなく、理亜、そして、花樹も作詞に参加している、いわば、みんなに対するお礼の曲でもあった。

 すると、あつこはこんなことを言い出してきた。

「それに、このライブの映像を見ている函館のみんな、私たちの雄姿をしっかり目に焼き付けてください!!」

と遠くにいる函館のみんなにも声をかけてきた。そう、このライブは全世界へ向けてネットで発信されていたのである。そのためか、函館にいるみんなからも、日野をはじめとしていろんなコメントが投稿されていた。

「函館のために頑張って!!」(日野)

「花樹、頑張ってね!!お母さん、応援しているから!!」(花樹の母親)

「あつこ、頑張れ!!あつこの最後の雄姿、見とくからな!!」(フィギュアスケート部の部長)

そのコメントはステージの巨大モニター映し出されていた。これには、3人とも、

「函館のみんな、ありがとう。私、頑張る!!」(理亜)

「フィギュアスケート部の部長、私、頑張るから応援してね!!」(あつこ)

「お母さん、ありがとう。俺、最後まで燃えるからな!!」(花樹)

とやる気に満ち溢れていた。

 そして、ついにSNOW CRYSTAL最後の曲が始まった。最初、理亜、

「いくよ!!あつこ、花樹!!」

と叫ぶと、あつこ、花樹、ともに、

「わかりました。いきましょう!!」(あつこ)

「よし、全力全開だ!!」(花樹)

と受けるとともに曲が始まった。

 

 

SNOW CRYSTAL 挿入歌 「thank you」

 

 

これまで本当に   ありがとう

(R:一緒にやってきたね、ずっと)

あなたがいたから  これまでやってこれた

(R:私も同じ気持ち!!)

だからこれだけは  言わせてもらおう

一緒にいてくれて  ありがとう

(R:私だってthank youだよ!!)

 

あなたと一緒に   パートナーになれて

すべての夢が    叶ったよ!!

同じ想いだからこそ 一緒になれて

本当にうれしかった だからありがとう

 

 

(これが私たちとって最後の曲!!)(理亜)

(たしかにそうですけどまだまだ頑張れる気がする!!)(あつこ)

(それでもこれが最後の曲、すべてを出し切るべし!!)(花樹)

(たしかにそうかも。なら、私たちの残るパワー、ここに出し切るべき!!)(理亜)

(理亜さん、花樹さん、たしかにそうですね。それだったらここですべてを出し切りましょう!)(あつこ)

(そうと決まれば、理亜、あつこ、このサビに俺たちのすべてを出し切ってやる!!)(花樹)

((オー!!))(理亜、あつこ)

 

 

私たちは史上    最強のパートナー

(R:私だってそう思っている)

あなたがいなければ 私はきっと

悲しい想いを    していたよ

だから本当に    ありがとう

私と一緒になって  ありがとう

 

ありがとうの気持ちは

世界万国の想い

だからこそ 私はあなたに言うね

出会ってくれて

 

thank you!!

 

 

 そして、ついに終わった。その瞬間、

ウォー!!

とAqoursのときと同じくらいの歓声が観客たちから聞こえてきた。いや、それだけじゃない。ステージ上の巨大スクリーンにはコメントの弾幕がいっぱい流れてきた。

「すごかった」「いよっ、日本一!!」「函館のかがみだ!!」

その他いろいろ。それは理亜たちにとってとてもうれしいものだった。

 

 こうして、すべての曲が終わった・・・のも束の間、理亜はマイクを強く握ると、一瞬、涙を流してはこう言い出してきた。

「私からご報告があります。ここにいる猪波花樹はAqoursに入りたいという夢がありました。なので、ここで、花樹の夢を叶えたいと思います。

これには、花樹、

「えっ、これってどういうこと?」

と驚くもあつこがものの真相を花樹に話してくれた。

「実は花樹の「Aqoursに入る」という夢の話は花樹のお母さんから聞いていたのです。でも、花樹さんは私たちのことを、理亜さんのことを思って残ろうとしていた、自分の夢を犠牲にしてまで。だから、そのくびきを切り、花樹さんを自由にしたいと思ったのです」

これには、花樹、

「俺の夢のためにそんなことまで考えていたなんて、うぅ、うれしい・・・」

と2人の想いに感動していた。

 そして、理亜とあつこは花樹の手を取り、ステージの奥にいたAqoursに花樹を受け渡すと桜花は花樹に対しこう言い出してきた。

「ようこそ、101人目の幻の浦の星の入学生さん」

これには、花樹、

「えっ、101人目の幻の浦の星の入学生!?」

と驚いてしまう。なんと、花樹、どうんなことなのか不思議に思ったのだ。

 と、ここで、梅歌と松華がこんなことを言い出す。

「実は浦の星の入学希望者は98人で目標の100人に達成できずに廃校がきまったの」(梅歌)

「でも、その浦の星に入学したい、Aqoursになりたい、そんな学生がそのあとに登場したわけ」(松華)

これには、花樹、

「それって?」

と梅歌と松華に尋ねると2人は元気よく答えてくれた。

「それが私たち、梅歌と松華!!」(梅歌)

「私たちはあのAqoursお披露目ライブでAqoursを見て、Aqoursに入りたい、廃校していなければ浦の星に入りたい、そう思ったわけ」(松華)

「だから、私が98人目の幻の入学生で・・・」(梅歌)

「私が100人目の幻の入学生なわけ」(松華)

そう、梅歌と松華はAqoursお披露目ライブを見て、Aqoursに入りたい、廃校していなければ浦の星に入りたい、そう思っていたのである。ただ、そこに桜花が2人を対Aqours戦用に2人のことをスカウトしたもんだからいろいろとあったのである。ただ、紆余曲折を経て2人はAqoursの仲間入りをしたのだから結果往来・・・なのかなぁ・・・。

 そして、桜花が花樹に対しこんな言葉を送った。

「そして、花樹もあの新生Aqoursお披露目ライブを見て、Aqoursに入りたい、そう思ったのだから、梅歌と松華と同じと言えるんじゃないかな。だから、花樹は101人目の幻の入学生、といえるわけ」

この桜花の言葉に、花樹、

「俺が101人目の幻の入学生なんだ・・・。なんかうれしい・・・」

と笑顔で答えてくれた。

 こうして、Aqoursは花樹を入れて10人となった。その瞬間、花樹は観客たちに向けてこう話してくれた。

「オ、俺、とても感動しています。まさか、Aqoursの一員になれるなんてうれしいです!!」

 すると、桜花がこんなことを言い出してきた。

「花樹、今から歌う曲は、私、梨子、あつこ、この3人が花樹のために作った曲なの。だから、心のなかで私たち3人の想いを、いや、みんなの想いを嚙み締めなさい」

これには、花樹、

「桜花、それにみんな、ありがとう。みんなのおかげで自分の夢を叶えることができそうだ!!」

と言うと静かにステージの前に立っては自分を紹介した。

「新しくAqoursの一員となった猪波花樹です。よろしくお願いします!!」

 そして、その声とともに花樹は元気よく次の曲の名を言った。

「これは別れと初めての曲、「Good bye & Hallo!!」」

 

 

Aqours 10人ver. 挿入歌 「Good bye & Hallo!!」

 

 

Good bye & Hallo!!

Good bye & Hallo!!

 

いつの日か必ず     別れがくるけど

そのあとは必ず     新しい出会いがある

だからこそ私たちは   どんなときでも

寂しくなんてない    だって誰かと一緒だから

 

あなたと別れるときは  とても悲しい

だってとても楽しい   時間だったから

だけど忘れないで    あなたには

新しく仲間となる    相手がみつかるから

 

 

(どう、花樹ちゃん、Aqoursになれた気分は?)(千歌)

(まさか自分がAqoursの一員になれるなんて、とても感動しているぜ!!)(花樹)

(それならとてもうれしいよ!!)(曜)

(このAqoursはヨハネがいるのだから当たり前だ!!)(ヨハネ)

(そう言っているけど、花樹ちゃんがいるからうれしいずら!!)(花丸)

(ずら丸、それは言わないで!!)(ヨハネ)

(なんか、これがAqoursなんだって、とてもうれしく感じるぜ!!)(花樹)

(まぁ、これがAqoursらしさと言ったらそうなのかも・・・)(桜花)

(特に桜花ちゃんはそれにまったりとつかっているけどね)(梅歌)

(たしかにそうかも!!)(松華)

(梅歌に松華、2人とも黙って!!)(桜花)

(でも、梨子に桜花、俺のために曲を作ってくれてありがとう)(花樹)

(私はただ手伝っただけだよ)(梨子)

(まぁ、そのほとんどは私の考えたものだけどね)(桜花)

(うぅ、たしかにそうなのか疑問だけ感じる・・・)(花樹)

(花樹!!)(桜花)

(( ̄∇ ̄;)ハッハッハ)(みんな)

(でも、あとはサビを残すのみだね!!ラストスパートだよ!!)(ルビィ)

(たしかにそうかも。なら、ここですべての力を出し切るぜ!!)(花樹)

(((((((((オー!!)))))))))(9人)

 

 

あなたの新しい     門出に乾杯!!

すべての人との     出会いは必ずある

だからこそ悲しまないで 私たちとは宝物で

ずっとつながっている  それを忘れないで

あなたとの一緒の想い出 ずっと感じている

 

今度会ったときが楽しみだね

だってあなたと私たちは

かけがいのないものを持っているから・・・

 

 

 そして、ついに終わったその瞬間、花樹、

(俺、今、とても感動している!!俺の夢がついに叶った!!Aqoursに入ることができたぞ、おばあちゃん!!)

と、自分が首からかけているおばあちゃんの形見である十字架状のペンダントを握りしめながら言うと会場中から、

パチパチパチ

という拍手の音が聞こえてきた。夢を叶えることができたスクールアイドル、それこそがみんなに感動が伝わった証拠なのかもしれない。

 そして、花樹はまわりを見渡す、すると、そのまわりにはルビィや桜花をはじめとするAqoursのみんな、さらに、理亜やあつこ、こころあが勢ぞろいしていた。そのなかで千歌が観客席に向けてこう話始めた。

「とても大切な時間はついに終わりを迎えようとしています。だからこそ、ここにいる14人のことを忘れないでほしい!!だから、この曲を送ります」

この言葉とともに花樹はこう叫んだ。

「それでは聞いてください。俺たち14人、最後の曲、みんなとの架け橋となる曲、「Remenber・・・」」

 そして、ついに最後の曲が始まってしまった・・・。

 

最終章 グランドエンディング 「Remenber・・・」

 

苦しいときも  つらいときも

みんなと一緒に いれば大丈夫

強いキズナで  結ばれている

だから僕たちは 頑張れるんだ

 

だけどね   時がたてば

別れる日は  訪れる

それはやがて 想い出になるけど

それこそが  僕たちにとって

未来での   力となるんだ

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  落ち込まないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

 

(みんなといるだけでとても楽しいぜ!!)(花樹)

(それこそスクールアイドルの醍醐味なのです!!)(こころ)

(まったくその通りだぜ!!)(ここあ)

(私もスクールアイドルをして初めて知りました、楽しむことの素晴らしさを!!)(あつこ)

(楽しいからこそスクールアイドルのことが好きになるんだ!!)(曜)

(そして、好きになるからもっとスクールアイドルを楽しもうと、好きになろうとするんだ!!)(桜花)

(私も桜花ちゃんがスクールアイドルに誘わなかったらこんな素晴らしさを知らなかったよ!!)(梅歌)

(たしかにその通りかも!!)(松華)

(桜花ちゃんもそうだけど、そう考えるだけでいろんな曲が作れる気がする!!)(梨子)

(私もそう考えただけで梨子と同じ想いになる!!)(桜花)

(それくらいスクールアイドルって素晴らしいことなの!!)(ルビィ)

(ルビィちゃんと同じずら!!)(花丸)

(リトルデーモンとしてはいいことを言うじゃない!!)(ヨハネ)

(結論!!スクールアイドルは楽しくて好きになるくらい素晴らしいこと!!)(千歌)

(花樹、私たちの想いはいつも一緒!!だから先に進もう!!)(理亜)

(はい、理亜!!)(花樹)

 

(さぁ、みんな行くぜ!!虹の先に進もう!!)(花樹)

 

(私たちはスクールアイドルという同じ宝物でつながっている。だから・・・

 

 

虹の先へ、そして、未来へ、一緒に進もう!!)(14人)

 

 

Remenber    僕たちのなかで

キズナが想いが 想い出がすべて

輝きとなって  宝物になって

ずっとずっと  残っていく!!

だから絶対に  諦めないで

僕たちはずっと つながっている

Remenber     それを忘れないで

 

Remenber・・・ それを忘れないで・・・

 

 

SNOW CRYSTAL グランドフィナーレへ・・・



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ラブライブ!SNOW CRYSTAL グランドフィナーレ

 さよならライブはついに感動のフィナーレを迎えた。ステージから降りてくる、Aqours、SNOW CRYSTAL、こころあの14人、

「ああ、楽しかった!!」「もっとスクールアイドルをやりたい!!」

「まだまだいけるぞ!!」

と14人はいろんなことをいいながらステージの余韻を楽しんでいた。

 そんなときだった。

「桜花!!」

と桜花を呼ぶ声が聞こえてきた。これには、桜花、すぐに反応。

「お母さん!!」

そう、桜花に声をかけてきたのは桜花の母親だった。

 そんな桜花は自分の母親のまわりを見る。すると、そこには・・・、

「桜花・・・、すごかったよ・・・」(旺夏)

「まさか、この私が心を打たれるとは・・・」(木松悪斗)

そう、絶望していたはずの桜花(はな)の父、木松悪斗と姉の旺夏だった。これには、桜花、

「お父様、お姉さま!!」」

と言うと2人に抱きついてしまった。これには、旺夏、

「ちょっと苦しい・・・」

と苦しそうに言うと、桜花、

「あっ、ごめん・・・」

とすぐに抱きつくのをやめにした。ただ、旺夏は、

「まぁ、うれしかったけど・・・」

ととても照れてしまった・・・。

 そんな桜花に対し、父木松悪斗、

「桜花、ごめん・・・」

と突然謝ってしまう。これには、桜花、

「お父様、お顔をあげてください」

と慌てて言うと、木松悪斗、顔をあげてはお詫びとお礼を言った。

「私はこれまで音楽やスクールアイドルのことをただのお遊びとしか思っていなかった。だが、すべてを失って初めて音楽やスクールアイドルが素晴らしいものだと知った。いや、音楽やスクールアイドル、そして、桜花のおかげで人生には意味があることを知った。桜花、ありがとう」

これには、桜花、

「私、そこまでえらくないよ・・・」

と謙遜するも今度は旺夏からもお礼がきた。

「私もすべてを失って人生がいやになった。なにもかもがいやになった。でも、桜花のおかげで人生をやり直そうと思うようになった。桜花、ありがとう」

ただ、これにも、桜花、

「本当に私はなにも・・・」

とさらに謙遜するも桜花の母親はそんな桜花のことを褒めた。

「桜花、あなたは生きる意味をなくした父と姉に生きる意味を与えたのです。そして、家族のキズナすらもつなぎ合わせたのです。桜花、そこは誇ってください」

これには、桜花、褒められたのがよかったのか、

「はい、お母さん・・・」

とうれしそうになっていた。

 そんな桜花を見てか、横から花樹が横やりをしてきた。

「あれ、桜花、顔が赤くなっているぞ!!」

これには、桜花、

「そ、それは関係ないことです!!横やりしてこないで!!」

とちょっといやそうに言うも顔自体はなんかうれしそうになっていた。桜花にとってそれくらい花樹と普通のやり取りができるようになったことがうれしかったのだろう。

 そんなやり取りをしている花樹に対し、木松悪斗、突然言ってくる。

「あなた、猪波猪波さんですね」

これには、花樹、

「はい、そうですが・・・」

と警戒しながら返事をすると、木松悪斗、そんな花樹に対し突然謝ってしまう。

「猪波(花樹の父)の件については迷惑をおかけしまった。大変申し訳ない」

これには、花樹、突然のことだったようで、

「えっ、え~と・・・」

と一瞬戸惑うも、木松悪斗、そんな花樹に対し謝罪してしまう。

「君のお父さんをあんな風にしたのは私の責任だ。私が「勝利こそすべて」という考えをまい進したばかりに君のお父さんはまわりを攻撃するような性格になってしまった。本当に申し訳ない・・・」

ただ、これには、花樹、

「俺の父はもとからあの性格だ。木松悪斗がそうしたわけじゃない。その点は謝らないでほしい」

と言うと木松悪斗は花樹に対しあることを尋ねてきた。

「やっぱり君の父との和解は・・・」

これには、花樹、

「あの性格がなおらない限り難しい・・・」

と言うと、木松悪斗、

「それもそうか・・・」

とちょっとがっかりするもすぐにこんなことを言い出してきた。

「君の父の性格をゆがませたのは私の責任だ。この私が君のお父さんのくびきを解き放とう。それで君のお父さんの性格も丸くなるかもしれない・・・」

これには、花樹、

「それであればいいのですが・・・」

とあまり納得いく感じではなかった・・・。

 

 そんな花樹であったがすぐに理亜のもとに行く。すると、理亜はこんなことを言い出してきた。

「花樹、これまでありがとう。私、花樹のおかげで自分の夢を叶えることができた。それだけでなく多くのスクールアイドルと共に楽しくやることができた。本当にありがとう」

まさかの理亜からのお礼、これには、花樹、

「なんか別れの感じになっているじゃないか・・・」

とわざとらしく言うも、あつこ、本気なのか、

「花樹さん、本当に本当の気持ちです。私もこれでさよならなんてなんか悲しい感じです」

と悲しく言うと花樹も、

「うぅ、なんかこちらも悲しい気持ちになってしまう・・・」

といまにも泣きそうな感じになってしまった。

 そんな花樹に対し理亜は花樹を抱きしめながらこう言った。

「花樹、これまでSNOW CRYSTALとして活動したけど、今度はAqoursの一員として頑張りなさい。それが私が言える最後の言葉・・・」

さらにあつこも、

「そうですね。これからはルビィさんたちと一緒に頑張ってください」

と泣きながら花樹に抱きつくと、花樹、

「え~と、なぜ、こんなことに・・・」

と困惑してしまうもすぐに理亜に対しあることを尋ねた。

「でも、なんでこんなことに・・・」

 これにあh、理亜、すぐにこう答えた。

「だって、花樹にとってAqoursの一員になることが夢ではなかったのですか?花樹は猪波家の次期当主になって沼津に戻れば花樹ははれてAqoursの一員になれる。なので、私は・・・、私は・・・」

これには、花樹、

「たしかにそうですが・・・」

と言葉に窮してしまうも、あつこ、すぐに、

「私は花樹のお母さまからそのことを聞かされていたのす。私たちは花樹さんの未来のことを考え、花樹さんを送ろうと決めたのです」

とその思いに至った理由を語った。

 これには、花樹、

「理亜、あつこ、俺のことを思って・・・」

と泣き出しそうになると理亜とあつこも、

「花樹、頑張って・・・」(理亜)

「花樹さん、むこうにいっても頑張ってください」(あつこ)

と泣きそうになりながらもエールを送っていた。

 そんな2人を見ては花樹はこう思っていた。

(理亜とあつこが俺の未来について考えている。でも、それって2人の本心なのだろうか・・・)

 

 そうこうしているうちに・・・、

「ありがとうございました」

と言う声とともに解散となってしまった。

 その日の夜・・・、

「理亜さん、これでいいのですよね・・・」

とあつこは少し寂しそうに理亜に言ってきた。ここは理亜たちが泊っているルビィの家(黒澤家)。その縁側では理亜とあつこ、そして、ルビィの姿があった。

 そんなあつこの一言に理亜はこう答える。

「それはそう。だって、あの花樹の夢を叶えることができるのだから・・・」

ただ、理亜の表情はその言葉とは違っていた。どちらかというと寂しそうな表情になっていた。これには、ルビィ、

「でも、本当にそれが理亜ちゃんの本心なの?」

と理亜に尋ねてしまう。だって、ルビィ、こんな思いだったから。

(そう言っているけど、理亜ちゃんの顔の表情とは矛盾しているよ!!それってなんか隠しているよ!!)

 そんなルビィの言葉に理亜はこう答えた。

「そうだよ。そのほうが花樹にとっていいのだから・・・」

そんな理亜の言葉とは裏腹に、

ぽつり ぽつり

となにか理亜の膝に水みたいなものが堕ちてきた。これには、ルビィ、こう指摘する。

「理亜ちゃん、泣いているよ!!」

そう、理亜は泣いていたのだ。これには、理亜、

「泣いていないもん!!」

と反論するも、ルビィ、すぐに反論する。

「理亜ちゃん、本当は悲しいのでしょ。だって、花樹さんとは1年ものあいだ、一緒にやってきた仲間だもんね!!そんな花樹ちゃんを失ったことは理亜ちゃんにとって聖良さんを失うくらい悲しいことでしょ!!」

そう、理亜のなかには花樹を失ったときの悲しみがあったのだ。1年間も一緒に活動してきた花樹との別れ、それは姉聖良との別れに匹敵するものだった。ただ、たとえそうであっても心のなかにある宝物によっていつもつながっている、その想いからか花樹がAqoursに入りたいならその後押しをしようと考えていたのだ。しかし、理亜のなかではそれに対する踏ん切りがついていっなかったようである。

 このルビィの指摘に、理亜、ルビィの胸のなかに飛び込み自分の心をさらけ出した。

「花樹は私が認めたパートナー!!このパートナーが私から飛び立つというのならそれを認めてあげるのが先輩である私の勤め!!私だって花樹とは離れたくない!!でも、私はそんな思いすら封印してでも花樹の夢を叶えさせたい!!」

これには、あつこ、

「理亜さん・・・」

と理亜の思いに共感していた。あつこも理亜と同じだった。たった1年間とはいえ、花樹と理亜、あつこは一緒のユニットとして活動していた。そのユニットのメンバーが自分たちから巣立つことはとても悲しいものだった。それでもそれを喜ぶのが自分たちの勤めである、そうあつこは思っていたのである。

 そんな理亜とあつこを見てか、ルビィ、こんなことを言い出してきた。

「理亜ちゃん、あつこさん、ルビィ、こう思うんだ。花樹ちゃん、きっとよく考えて答えをだすと思うよ。だから、その答えを尊重しよう、理亜ちゃん、あつこさん・・・」

このルビィの言葉に、理亜、

「ルビィ、ありがとう・・・」

とお礼を言うとルビィも理亜に対し、

「よしよし」

と理亜の頭をなでていた。

 そんなときだった。

ガタッ

という音が聞こえてきた。これには、ルビィ、

(あれっ、だれかルビィたちの会話を聞いていたのかも・・・)

と反応するも、

(まぁ、いいか)

とほっとくことにした。

 その音をした方にいた少女はこんなことを考えていた。

(理亜とあつこ、俺のことをそう考えていたのか・・・)

 

 そして、新学期が訪れていた。こころあはついに大学生になった。

「ついにここあたちも大学生です!!みやこが待っているぜ!!」

とここあが言うとこころも、

「そうです!!ユニドルが私たちを待っているでしゅ!!」

とはしゃぎながら言っていた。そう、こころあは北海道から大阪に引っ越し、みやこの待つ大総大学へと進学することになったのだ。

 そんな2人は心のなかでこう思っていた。

(ここあたちはこれから新しい物語を書き始めたばかりだぜ!!)(ここあ)

(そうです!!私たちの物語は始まったばかりなのです!!)(こころ)

そう、こころあの物語は、UCの物語は始まったばかりである・・・。

 

 一方、静真では・・・、

「ほら、そこ、ステージがダメになっているじゃない!!」

とAqoursのマネージャー兼生徒会長のあげはが檄を飛ばすと、

「ほらほら、真面目にやりなさい。そうじゃないとシーナがレールガンを・・・」

と東子が変なことを言い出してしまった。もちろん、これには、シーナ、

「私はビリビリ娘じゃない!!もうやめて、その設定!!」

と反論していた。

 実はあげは率いる静真Aqours応援団は新歓記念Aqoursライブのためのステージ作りをしていた。Aqours人気により静真の入学希望者は過去最高を記録した。そのため、その新入生のためのAqoursライブが行われる予定なのである。

 そんな様子を見てか、校舎からAqoursの最上級生になった3人がこんなことを言っていた。

「くくく、これでリトルデーモンがさらに増えるぞ!!」(ヨハネ)

「という善子ちゃんの妄想ずら」(花丸)

「妄想というな!!それに、善子、じゃなく、ヨハネ!!」(ヨハネ)

「もう、こんなときまで漫才をしないで!!」(ルビィ)

ルビィ、ヨハネ、花丸、この3人はどこにいても変わらずであった。

 そんな3人い向かって2年生になった2人が3年生3人を迎えにきた。

「ほら、先輩たち、新歓ライブに向けて練習をしましょう!!」(梅歌)

「練習、練習」(松華)

この2人もマイペースである。ただ、2人ともこれから先輩となるのか、その自覚が芽生えていたのかもしれない。

 そんな2人はここにいないもう一人のことを思っていた。

(桜花ちゃん、今頃、北海道かぁ~。家族そろっての旅行、頑張ってね)(梅歌)

(北海道のお土産、いや、家族話、楽しみだな・・・)(松華)

 

 そんなルビィたちを見ている人たちもいた。ここは静真高校の理事長室。ここにはあの人たちが終結していた。

「ルビィも立派になりました。私、とてもうれしいです」(ダイヤ)

「それもこれも、この私、マリーの力によるものなのです!!」(鞠莉)

「うーん、それってどちらかというと(静真の理事である)ダイヤのおかげじゃないかな・・・」(果南)

そう、ダイヤ、鞠莉、果南、それに・・・、

「私、もっと、スクールアイドル、やりたかった!!」(千歌)

「もう卒業したでしょ!!今度はユニドルを目指しましょう」(梨子)

「3人そろってのユニドルかぁ。なんか楽しそう!!」(曜)

と卒業したばかりの新大学生、千歌、梨子、曜がいた。

 そんな6人に対しまさかのこの人がダメ出し!!

「シャラップ!!この鞠莉‘sママがいる限り、ちゃんと会議をするので~す!!」

そう、鞠莉‘sママである。鞠莉‘sママは出資している静真のあることについて話し合いのためにここ静真に来ていたのである。というか、まとめ役としてここにいるのですがねぇ。

 そんな7人を見てか、月、ちょっと心配そうになる。

「う~ん、この会議、どうなるのかなぁ。これがいわゆる「会議は踊る」なのかなぁ・・・」

これには月の補佐であるナギも、

「たしかにそうかも・・・」

と相槌を打ってしまった。

 そんなみんなを見てか、沼田、こう思った。

(まぁ、これが私の夢見た静真の姿なのかもしれないな。「楽しむことがすべて」、それを体現したような様子。それもこれも月君とAqoursのみんなのおかげなのかもしれないな)

これまで木松悪斗によって「勝利こそすべて」という考えがはびこっていた静真、だが、それを月とAqoursによって払拭したばかりかあの木松悪斗を改心させることができるとは思っていなかったのだ。それもこれも月とAqoursのおかげともいえた。

 そんな沼田は遠くを見てこんなことを考えていた。

(さて、木松悪斗、あなたは北海道でどんな思いになっているのだろうか)

 

 一方、ここは北海道のある拘置所。ここには花樹の父、猪波が拘置されていた。その猪波に対し面会に来ていたのは・・・、

「あっ、木松悪斗様、どうしてここに!!」

そう、木松悪斗であった。その木松悪斗は、開口一番、こんなことを言ってきた。

「猪波、ごめん!!私のせいで辛い思いをさせてしまった」

これには、猪波、

「木松悪斗様、顔をあげてください。昔みたいに木松悪斗様の力で・・・」

と言うも、木松悪斗、

「私はもう変わった。「勝利」だけを追い求めるではなく自分の想いで人生を豊かに・・・」

と自分は変わったことをアピールしていた。

 だが、猪波はそんな木松悪斗に対しこんなことを言い出してきた。

「昔の木松悪斗様はどうしたのですか?私は昔の木松悪斗様みたいにこれからも、「勝利こそすべて」、それを地でいく戦いをしたいのですが・・・」

 ただ、これに関して木松悪斗はこう言い出す。

「猪波、それほど昔の私を欲しておるのか。ならば、仕方がない。猪波、お前の役職だが、この木松悪斗の名をもってすべて任を解く。これで私のくびきから解き放つことができただろう」

 しかし、ここで、猪波、がくっと肩を落としてこう言ってきた。

「うそ・・・、私、猪波、すべてを失ったっていうことなのか・・・」

先ほどの木松悪斗の言葉に猪波はショックを受けていた。これまで猪波は木松悪斗にすべてを捧げる思いで頑張ってきたのだ。それなのにこの仕打ちとはかなりのショックともいえた。

 そんな猪波に対し木松悪斗はこう告げては別れた。

「猪波よ、これからは自分の意思で頑張るんだ。きっとどこかでわかるはずだ。それじゃさらばだ、猪波よ・・・」

そんな木松悪斗の言葉に猪波は、

「木松悪斗様・・・」

とただうねるしかなかった。いや、それ以上に、

(私は木松悪斗様に捨てられた・・・。それならば、この私がなんとかしないといけないんだ・・・、「勝利こそすべて」、それが正しいものだということを・・・、この猪波悪鬼がな・・・)

不敵な笑いをする猪波・・・。はたして猪波はいったいどうなるのであろうか・・・。それはのちの話になるかもしれない・・・。

 

 その後、木松悪斗はある場所に向かっていた。そこでは・・・、

「うわ~、すごい!!」(旺夏)

と旺夏が喚起するくらい激しい車椅子スポーツが行われていた、

ガシャンガシャン

という音とともに・・・。

 すると、そのスポーツのコーチが車椅子の旺夏に対してこんなことを言ってきた。

「どうですか、車椅子ラグビーは?」

車椅子ラグビー、それは車椅子の格闘技とも言われるくらい激しいぶつかり合いの車椅子スポーツであった。この競技は男女関係なく出場できるスポーツであり、あのパラリンピックでも採用されている協議でもあった。

 そんな車椅子ラグビーに魅了されていた旺夏に対し、桜花(はな)、

「なんかお姉さまにピッタリな競技だね!!特に必至になる姿は・・・」

と言うと、旺夏、

「それ、ちょっと言い過ぎじゃない、桜花!!」

と怒ってしまった。

 ただ、これには、木松悪斗、

「だが、負けず嫌いなところは私譲りだからな。桜花の言っていることは当たっているかもな!!」

とふざけつつ言うと、旺夏、

「お父様まで!!」

とぷんすかになってしまった・・・。

 そんな3人をみてか、桜花の母、

「ほら、ケンカをしないで!!」

と言うと、桜花、旺夏、ともに、

「「はーい!!」」

と答えていた。

 そんな旺夏であったが、内心、こう思っていた。

(この競技、本当に面白そう!!私、やってみたい!!)

この想いはのちに旺夏を世界最強の車椅子ラグビー選手として昇華させたのはのちの話である。

 とはいえ、桜花はこのときこう思っていた。

(こんな家族団らんの時間がもっと続いてほしい。そして、花樹が恋したAqoursをもっと盛り上げていきたい、花樹のぶんまで!!)

その桜花の想いはこれからもずっとつづいていく、そう思える感じであった・・・。

 

 一方、そのころ、アメリカでは・・・、

「聖良、なんか日本でスクールアイドルが流行っているみたいだね」

と大学の親友からこんなことを言われると、聖良、はっきりとこう言う。

「私もスクールアイドルでしたよ。だって、スクールアイドルって楽しいものですから」

これには、大学の親友、こう聞き返す。

「でも、それってどれくらいの人気なの?」

これには、聖良、こう言ってのける。

「う~ん、高校のチアぐらい人気じゃないかな」

アメリカの高校でのチアであるがチア選手になることは名誉であるとも言われいた。そのため、アメリカの高校生はチア選手になるのに憧れていた。それくらい日本のスクールアイドルは日本で人気でありみんなの憧れでもあった。そのためか、大学の親友、こんなことを言い出してきた。

「あぁ、聖良がうらやましいよ!!」

そんな大学の親友の言葉に聖良はこう考えていた。

(スクールアイドル、私にとって青春の1ページだった。そんなスクールアイドルを理亜は続けている。私はたった1年だけだったけど、理亜はもっと続けている!!そんな理亜がうらやましい)

聖良にとってスクールアイドルは青春そのものだった。それは理亜とあつことともにスクールアイドルを、Saint Snowを1年間やり続けていたこと、それ自体、宝物となっていた。その理亜はスクールアイドルを続けている。その理亜を聖良はうらやましく思っていたのである。

 そして、聖良は遠くにある日本の方を見ながら理亜に対しこう願っていた。

(理亜、今の仲間を、花樹さんを大事にしなさい。理亜にとって花樹さんは立派なパートナーであります。だからこそ、理亜、花樹さんと一緒にこれから先もいろんな想い出を作りキズナを深めていきなさい。それが、私、聖良のお願いなのですから・・・)

 

 そして、花樹は・・・、

「おばあちゃん、来たぞ」

とおばあちゃんのお墓の前に立っていた。そこには猪波家代々の当主が眠っていた。その墓の前で花樹はこれまでのことを報告していた。

「俺、おばあちゃんとの約束、誓い、それを叶えてきた。ラブライブ!で優勝したしAqoursにもなれた。それもこれもおばあちゃんのおかげ。俺、夢が叶ってうれしかった。おばあちゃん、ありがとう」

そう、これまで花樹がスクールアイドルとして活躍できていたのはは花樹が首にかけていた十字架状のペンダント、おばあちゃんのおかげであった。おばあちゃんは1年間に花樹の父によって殺されてしまった。だが、荼毘にふされたあと、その遺体の一部を花樹は粉々にしておばあちゃんから渡されていた十字架状のペンダントに入れ、遺体の残りをダイヤにするようにお願いしていたのである。こうして、おばあちゃんは花樹のしているペンダントと同化し、たびたび花樹のことを助けてくれた、いや、花樹の精神的な支えとなったのである。

 そんな花樹であったが、その後、

「では、よいしょっと・・・」

と墓の下にある骨壺をいれる納骨室を開けるとおばあちゃんの骨壺を持ち出してはその蓋を開けた。すると、

「おばあちゃん、俺、おばあちゃんから卒業する。だから、ここでゆっくり眠ってくれ」

と言っては自分がしていたペンダントを外してはこの骨壺の中に入れてしまった。

 このとき、花樹はこう思っていた。

(俺、もうおばあちゃんがいなくても大丈夫。これからは俺一人でやっていける。だから、ここでゆっくり眠ってくれ)

それは花樹にとって重い決断であった。これまではおばあちゃんがそばにいてくれたから、十字架状のペンダントというおばあちゃんそのものがいたからこそやってこれたのである。だが、いつまでもおばあちゃんに頼ってはいけない、そう思った花樹はおばあちゃんからの卒業を、巣立ちを決めたのである。それこそがおばあちゃんそのものだったペンダントを外すことだった。ただ、その花樹の目からは涙が流れていた。

 そんあときだった。花樹にそっとおばあちゃんの声が聞こえてきた。

「いままでありがとう、花樹」

その声を聞いた瞬間、花樹、

「おばあちゃん・・・、おばあちゃん・・・」

と大きく泣き出してしまった。それくらい、花樹にとっておばあちゃんとの別れがとても悲しかったのである。

 ただ、ずっと泣くわけにもいかない。花樹はすぐに泣き止むとおばあちゃんの骨壺を納骨室に直しもとに戻すとおばあちゃんに向かって、

「おばあちゃん、さようなら」

と言ってはその場から立ち去ってしまった・・・。

 

 そして、聖女にもふたたび入学式の日がきた。そこでは・・・、

「スクールアイドル部、入部者募集・・・」

と理亜が一生懸命ビラを配っていた。理亜は人になった・・・はずだったのだが、その横では、

「スクールアイドル部入部者募集中です!!」

となぜか、

「ってか、なんで、あつこ、ここにいるの!?もう卒業したはずでしょ!!」(理亜)

そう、あつこがいた。あつこは聖女を卒業したはず・・・なのだが、理亜と一緒にビラを配っていたのである。

 ただ、これには、あつこ、こう言い返す。

「別にいいんじゃないかな。だって、名誉部員ってものがあってもいいと思うよ」

まぁ、あつこの場合、聖女の隣にある聖女系統の大学に進学したことものあり、いつでも理亜のお手伝いができる、だからこそ、ここにいる、というわけである。いや、それどころか、あつこ、たとえスクールアイドルを卒業しても理亜の仲間であることには変わりない、というの言いたそうになのですがねぇ・・・。

 と言いつつも、理亜、さっさとビラを配る。

「スクールアイドル部入部者募集中・・・」

理亜の内気な性格はそのままだがそのビラをとってくれる入部者は皆無だった。というのも、ラブライブ!優勝をしたことでハードルが高すぎる、そんな思いが入学者にはあった。前回のとき(理亜の暴走)とは状況が違っているがそれはそれで困りものであった。

 だが、ここである人物が理亜に声をかけてきた。

「ビラ1枚ください!!だって、理亜、ばかす・・・」

この言葉に、理亜、

「何度言えばわかるの、私は馬鹿じゃな・・・」

と怒って振り向く。すると・・・、

「花樹・・・」(理亜)

そう、転校したはずの花樹がそこにいたのだ。

 そんな花樹に対し、理亜、

「でも、どうしてここに戻ってきた?花樹、Aqoursに入ったはずじゃ・・・」

と花樹に問いかけると、花樹、はっきりとこう答えた。

「だって、俺、すべての夢が叶いましたから。スクールアイドルとしてラブライブ!に優勝する、Aqoursに入る、それすべて叶いましたから・・・」

そう、花樹はすべての夢を叶えた。SNOW CRYSTALとしてラブライブ!優勝を果たしたし、さよならライブのときにAqours入りを果たしたのである。これにより花樹のすべての夢は叶った、そう花樹は思ったのである。

 そして、花樹は理亜に対しあることを語った。

「でも、俺、また夢ができました。理亜さんと一緒にスクールアイドルをもっと楽しみたい、理亜と一緒にね!!」

そう、花樹には新たなる夢ができたのである。それは、理亜と一緒にもっとスクールアイドルを楽しみたい、そんな夢だった。

 ただ、その裏で花樹亜hこんなことを考えていた。

(まぁ、あのとき、俺は決めたんだ、俺のパートナーは理亜しかいないんだって!!)

そう、あのとき、さよならライブのあと、ルビィの家で花樹のこれから先のことで理亜が泣いていたとき、花樹はこそっとその様子を遠くから見ていたのである。この様子を見て花樹はあることを考えていた。

(俺、このさよならライブをもってすべての夢が叶った気がする。ラブライブ!で優勝できたしAqoursにも入れた。すべてが叶った。なら、これから先、どうしようか・・・)

そして、ついにあることを花樹は決めたのだ。

(そうだ!!これから先も理亜と一緒にスクールアイドルを楽しみたい!!楽しんで楽しんでもっとスクールアイドルを好きになりたい!!)

それは花樹にとって強い決意であった。自分は猪波家の次期当主としてではなく一人のスクールアイドルとしてやっていく、それも理亜のパートナーとして・・・、その決意がおばあちゃんの墓での儀式だったのである。まぁ、そんな花樹だからなのだろうか、理亜、

「花樹・・・」

と泣き出しそうになっていた。

 そんな理亜に対し花樹はあの言葉を送った。

「それに、理亜はばか(とても)すごいスクールアイドルなんだから!!」

ばかすごい、これこそこの物語が始まるときに花樹が言おうとしたセリフであった。それくらい花樹にとって理亜は最高のスクールアイドル、いや、パートナーだったのである。そんな花樹に対し理亜は、

「またこのセリフ・・・」

と笑うのであった。

 そんな花樹と理亜を姿とみてか、あつこ、こんなことを言い出す。

「花樹さん・・・。でも、帰ってきてくれて本当によかった・・・」

と涙目になりながらうれしそうに言うと花樹も、

「あつこ、これからもよろしく!!」

と元気よく返事をした。

 

 こうして、もとに戻ったSNOW CRYSTAL。だが、彼女たちの物語、第2章はまだ始まったばかりであった。それもこれは3人だけの物語ではなかった。3人のまわりにいる人たち、そして、みんなの物語でもあった・・・。

 

 と、言っているあいだに物語の新たなる登場人物、ある少女が現れた。その少女は、

(私も理亜さんや花樹さんみたいなスクールアイドルになりたい!!)

と強い想いをもって理亜と花樹のところに駆け寄っては2人に対しこう言い出してきた。

「理亜さん、花樹さん、私、スクールアイドルになりたいです!!」

 その少女に対し、理亜、花樹、あつこは元気よくこう言った。

 

「ようこそ、SNOW CRYSTALへ。私(俺)たちと一緒にスクールアイドルを楽しんで好きになっていこう!!」

 

ラブライブ!SNOW CRYSTAL FIN

 



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LAST DANCE!!/Try Again!!

「LAST DANCE!!」

 

最後の最後まで飛ばしていくよ!!

 

これが本当の   ラストダンス

あともう少しで  終わってしまう

だからこそすべて やりきてしまおう

なにもかもすべて 出しつくしましょう

 

あれもやった   これもやった

やれることは   すべてやった

だけど1つ    忘れてない

それはもちろん  最高の想い出作り!!

 

みんなといたから ここまでこれた

青春の1ページ  塗りつぶした

私たちの想い出  すべてがバラ色

だからこそ    スクールアイドル

続けていて    本当によかった!!

 

これが本当の   ラストダンス

あともう少しで  終わってしまう

だからこそ全部  吐き出してしまおう

自分のものすべて 出しつくしましょう

 

私やった     みんなやった

出せるものは   すべて出した

だけど1つ    忘れないで

それはもちろん  最高の仲間の想い!!

 

仲間といたから  すべてができた

仲間との1ページ 塗りつぶした

私たちのキズナは 強くて固いさ

だからこそ    スクールアイドル

続けていて    本当によかった!!

 

ここで終わるのはとても寂しい

だってみんなと一緒にやれたこと

それができなくなるのだから

だけど忘れないで

私たちはずっとつながっている

宝物によってつながっている

だからこそ私たちは、いや、みんなで

この言葉を言おう

 

We enjoy School Idoll!!

We love School Idoll!!

 

みんなといたから ここまでこれた

青春の1ページ  塗りつぶした

私たちの想い出  すべてがバラ色

だからこそ    スクールアイドル

続けていて    本当によかった!!

 

みんなと出会えてよかった

みんなと踊れてよかった

だって私たちはみんなは

スクールアイドル!!

 

 

 

「Try Again!!」

 

もう一度立ち上がれ Try Again!!

 

挫折をしても別に   いいじゃない

(Try Try Again!!)

人生はこれっきり   でもないんだ

(Try Try Again!!)

私たちだって     挫折をしている

でもそのたびに    立ち上がっている!!

 

挫折をするたび    私たちの心は

強くなっていくから  より実りになっていく

だからこそ私たちの  人生はすべては

よりよいものへと   変わっていくはずさ!!

 

だからこそ諦めないで 生きることを

(Try Again Try Again)

私たちの未来は    これから決まっていく

(Try Again Try Again)

挫折だけが      人生ではない

これからの人生    私たちと一緒に

楽しんでいこう    だからね

輝かしい未来へと   一緒に進もう!!

 

失敗しても別に    いいじゃない

(Try Try Again!!)

生き方はこればかり  じゃないんだ

(Try Try Again!!)

私たちだって     失敗している

強くなっていくから  よりキズナが深くなる

だからこそ私たちの  想いのすべてが

より強きものへと   変わっていくはずさ!!

 

だからこそ考えよう  生きることを

(Try Again Try Again)

私たちの想いは    これからも進んでいく

(Try Again Try Again)

自分だけの      人生ではない

これからの人生    私たちと一緒に

楽しんでいこう    だからね

煌めいている未来へと 一緒に進もう!!

 

人の人生 挫折ばかり

人はいつも 失敗をしている

だけど大切なことは1つだけ

その挫折と失敗をどう乗り越えるのか

それによって人生が決まる

でも諦めないで

私たちはきっと明るい明日がある

だって私たちにはあるんだ

明るい未来へと進める

「楽しむこと」という鍵がある

だから忘れないで

私たちと一緒に人生を楽しもう!!

 

だからこそ諦めないで 生きることを

(Try Again Try Again)

私たちの未来は    これから決まっていく

(Try Again Try Again)

挫折だけが      人生ではない

これからの人生    私たちと一緒に

楽しんでいこう    だからね

輝かしい未来へと   一緒に進もう!!

 

人生を諦めないで

だって私たちは

明るい明日へと進める

そんな想いを持っているから



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thank you/Good bye & Hallo!!

「thank you」

 

これまで本当に   ありがとう

(R:一緒にやってきたね、ずっと)

あなたがいたから  これまでやってこれた

(R:私も同じ気持ち!!)

だからこれだけは  言わせてもらおう

一緒にいてくれて  ありがとう

(R:私だってthank youだよ!!)

 

あなたと一緒に   パートナーになれて

すべての夢が    叶ったよ!!

同じ想いだからこそ 一緒になれて

本当にうれしかった だからありがとう

 

私たちは史上    最強のパートナー

(R:私だってそう思っている)

あなたがいなければ 私はきっと

悲しい想いを    していたよ

だから本当に    ありがとう

私と一緒になって  ありがとう

 

これまで本当に   ありがとう

(R:一緒にやってきたね、ずっと)

あなたがいるから  すべてをやってこれて

(R:私も同じ気持ち!!)

だからこれからを  言わせてもらおう

これから先ずっと  一緒だよ!!

(R:私だってtogetherだよ!!)

 

あなたとずっと   パートナーであれば

すべての夢が    叶うはず!!

同じ夢を持ってれば これから先も

絶対に仲間として  頑張っていこう

 

私たちは史上    最強のパートナー

(R:私だってそう思っている)

あなたといるだけで 私はきっと

強気な想いを    もてたんだ

だから本当に    ありがとう

私と一緒になって  ありがとう

 

(R:

私たちの出会いは運命なのかな

すべてが運命 なにがあっても運命

でもこれだけはいえる

私たちの出会いは運命じゃない

必然だっていえるんだ

だってあなたと出会えなければ

きっと私はダメになっていた

だからこそ 私は言える

あなたにありがとう 私にありがとう

出会ってくれてthank you!!

 

私たちは史上    最強のパートナー

(R:私だってそう思っている)

あなたがいなければ 私はきっと

悲しい想いを    していたよ

だから本当に    ありがとう

私と一緒になって  ありがとう

 

ありがとうの気持ちは

世界万国の想い

だからこそ 私はあなたに言うね

出会ってくれて

 

thank you!!

 

 

 

「Good bye & Hallo!!」

 

Good bye & Hallo!!

Good bye & Hallo!!

 

いつの日か必ず     別れがくるけど

そのあとは必ず     新しい出会いがある

だからこそ私たちは   どんなときでも

寂しくなんてない    だって誰かと一緒だから

 

あなたと別れるときは  とても悲しい

だってとても楽しい   時間だったから

だけど忘れないで    あなたには

新しく仲間となる    相手がみつかるから

 

あなたの新しい     門出に乾杯!!

すべての人との     出会いは必ずある

だからこそ悲しまないで 私たちとは宝物で

ずっとつながっている  それを忘れないで

あなたとの一緒の想い出 ずっと感じている

 

いつの日かとても    悲しい日あれば

そのあとは必ず     素晴らしい時間がくる

だからこそ私たちは   どんなときでも

悲しくなんてない    だって誰かと一緒だから

 

あなたといられたことは とても楽しい

とてもとても楽しい   時間だったから

あなたと別れても    あなたとの

楽しい想い出ずっと   残っていくのだから!!

 

あなたの新しい     門出に乾杯!!

すべての人との     キズナが必ずある

だからこそ悲しまないで 私たちとはキズナで

ずっと結ばれている   それを忘れないで

あなたとの一緒のキズナ ずっと感じている

 

人とは出会いと別れの繰り返し

どんなときだってそれは起きてしまう

だけどとても悲しまないで

別れがあっても私たちとの

想い出、想い、キズナは

消えることなんてない!!

それ以上に新しい仲間との出会いによって

あなたは強くなっていく

強くなるから輝いてみえる

あなたの宝物はきっと何倍もの

輝きをみせてくれる!!

 

あなたの新しい     門出に乾杯!!

すべての人との     出会いは必ずある

だからこそ悲しまないで 私たちとは宝物で

ずっとつながっている  それを忘れないで

あなたとの一緒の想い出 ずっと感じている

 

今度会ったときが楽しみだね

だってあなたと私たちは

かけがいのないものを持っているから・・・

 



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人物設定

※序章3部作を含む「SNOW CRYSTAL」の人物設定です。今回は序章3部作と「RSVBP」の一部での活躍も特別に載せています。どうぞお楽しみください。


ラブライブ!SC名鑑

 

函館聖泉女子高等学院(聖女)

 

猪波花樹

函館聖泉女子高等学院の1年。今年の春、家族とともに沼津から函館に引っ越してきた。もともとは男勝りの性格をしており、一人称も「俺」である。また、おばあちゃん子であり、沼津に住んでいたころはおばあちゃんにべたりであった。もともとアイドル志望であったため、アイドルになりたいという思いは強かったものの中3の時までなにもしてこなかった。だが、静真に入学しようとしたときにAqoursに出会いスクールアイドルというのを知ってからスクールアイドルを目指そうとする。ところが花樹の父親の陰謀によりおばあちゃんが亡くなり、さらに、函館へと急遽引越すことになる。さらにさらにその父親から花樹の性格を全否定されたことでおとなしめの性格に、いや、父親に反抗できない小動物のような性格になってしまう。ただ、熱中したときには素に戻ることもある。そんななかで急な転校のため、スクールアイドルに、Aqoursになれない、そんな失望に陥るも、函館の転校先(聖女)でSaint Snowの鹿角理亜と出会ったことで花樹は元気を取り戻し、理亜とあつことともにスクールアイドルとして活躍していくことになる。そんな花樹のトレンドマークは自分の首にしている十字架状のペンダント。そのペンダントにはおばあちゃんの遺灰とその遺灰で作ったダイヤモンドがあり、そのペンダントは花樹の心のよりどころであった。なお、花樹の信条は「勝利こそすべて」であった。それは花樹の父親の影響によるものが大きい。また、非凡な才能の持ち主であり、スクールアイドルとしての才能を十分に持ち合わせているため、一度やったことはなんでもこなすことができるし初めてのことでも進んでやる。

 

鹿角理亜

函館聖泉女子高等学院の2年。不愛想でつっけんどん。でも、本当は恥ずかしがり屋で内向的な性格の持ち主。小さいときにμ'sやA-RISEのステージを見てスクールアイドルに魅了され旧函館公会堂の庭で、雪降る中、Saint Snowの誓い(スクールアイドルとしてラブライブ!で優勝する)をする。その誓いをもとにそれに向けての練習を姉聖良とともに行う。その結果、聖女1年のときにSaint Snowとして大活躍し、ラブライブ!夏季大会、初出場ながら8位という優秀な成績を残す。だが、「勝利こそすべて」という思いが強いあまり、その思いに理亜は苦しんでしまう。結果、冬季大会北海道最終予選のときに転倒し、予選敗退、姉聖良との夢を叶えることができなくなってしまい自分を責めるようになる。だが、姉聖良とルビィたちAqours1年のおかげで立ち直ることができ、「楽しむことがすべて」という思いに目覚める。そして、自分だけのユニットを作りスクールアイドルを楽しもうと決める。ところが、有志を集めて自分のユニットを作ったものの、一緒に練習していくうちに「ラブライブ!優勝を目指す」という深淵なる闇により次第にユニットメンバーにきつい練習を課すようになり、結果、ユニット自体空中分解してしまう。それでも理亜は心と体をボロボロにしながら頑張るもそれを見ていた姉聖良、そして、Aqours、さらにあつこのおかげもあり、ラブライブ!延長戦のときに「Saint Snowという宝物」の存在を知ったことでその闇から解放された(ようにみえた)。これにより、理亜はあつことともに新しいユニットをつくることになる。だが、新しくメンバーになった花樹により振り回されることになる。そんな理亜であるが純粋に真面目であり運動神経はとても高い、強い信念を持つ、などもあってか、コツコツと堅実に努力することができる。また、スクールアイドルの練習に関してはどんな練習でもへこたれない、そんな強い精神力を持つ。ただし、それ以外に関してはもともと姉聖良にいつも依存していたこともあり、少しのことでもなにかあれば弱気になってしまうことが多かったりする。その意味でもSCは理亜の成長の物語ともいえる。

 

蝶野あつこ

函館聖泉女子高等学院の3年。聖良・理亜姉妹の幼馴染。真面目で強い精神力の持ち主であり人心を鋭く読み取る感性を持っている。音楽のダンスセンスは抜群ということもあり幼いときからフィギュアスケートをしていた。その実力は折り紙付きで選手として大活躍していた。そのためか、12歳のときに日本有数のジュニアの大会で優勝するほどだった。だが、そのあとに起きた第二次性徴による体の急成長によりこれまであった感覚にズレが生じるようになり成績が悪くなっていた。そのため、まわりからもっと頑張るように言われるようになり、あつこも少しでも成績を取り戻そうと練習量を増やす。だが、それでも成績は悪くなる一方となり、それに比例するがごとくまわりからの声が強くなるようになり、あつこもそれに比例して限界を越えた練習をするようになる。結果、中3の大会の時に大怪我をしてしまい、あつこはスティグマとそれによる深淵なる闇を抱えるようになった。だが、それをみていた聖良はSaint Snowのサポーターという役割をあつこに与えることであつこはフィギュアスケートの代わりに聖良と理亜のサポートを献身的に行うようになった。そのため、まわりからは「Saint Snow第3のメンバー」と言われるようになる。その後もSaint Snowのサポーターとして獅子奮迅の働きをみせる。なお、実は、理亜、花樹、あつこのなかでは1番運動神経がよく、バク転、側転、どころか、後方ひねり宙返りも(スティグマを気にしなければ)できる。

 

鹿角聖良

函館聖泉女子高等学院の卒業生。理亜の姉であるとともにあつこの幼馴染。μ's、A-RISEのライブを見て、自分もスクールアイドルとしてラブライブ!に優勝したい、その二組が見た頂上の景色を見たい、その夢を叶えるために妹理亜とあつことともにSaint Snowの誓いをたてる。その後、その夢に向かってその準備を妹理亜と一緒に行うとその途中からあつこも加わりまい進していく。結果、初出場したラブライブ!夏季大会で8位という優秀な成績を残す。だが、Aqours、特に千歌との交流をしていくうちに「勝利こそすべて」の考えに疑問を感じるようになるも続く冬季大会でまさかの最終予選敗退。これにより、聖良の夢は潰えてしまう。これが理亜にとって深淵なる闇を作り出すきっかけになってしまった。そんな理亜のことを心配してしまう。それくらい聖良は妹理亜のことを溺愛している、のと同時に自分はおろか他人に対してもストイックになってしまうことがある。それでもまわりをまとめては突き進んでいく力はもっている。

 

まあたん、yoppi、しのっち、まみ

ラブライブ!冬季大会終了後、理亜のもとに集まった1年の有志。最初はわきあいあいとやっていたのだが、理亜が突然限界を越えた練習をするようになってため、次々とユニットを離脱してしまった。

 

フィギュアスケート部部長

聖女のフィギュアスケート部の部長。あつこに対して競技に復帰してほしいといつも行ってくる。むろん、あつこのスティグマのこともなにか考えがあるらしく・・・。

 

日野

函館にある2つのデパートのうちの1つ、棒一屋を経営している一族の娘。ある男により棒一屋は大変なことになり、その男の娘である花樹に恨みを持つようになる。

 

猪波家

 

花樹のおばあちゃん

猪波家前当主。代々続く沼津の名家の当主として長い間猪波家を牛耳っていた。花樹の父親も頭が上がらず、それどころか、おばあちゃんは花樹の父親のやることをいつも邪魔していた。だが、花樹が中学を卒業したとき、突然、おばあちゃんは亡くなってしまう。そのため、猪波家の当主の座は花樹の父親の手に渡ってしまった。なお、花樹のおばあちゃんは花樹のことを認めており、花樹のやりたいようにさせていた。

 

花樹の父親(猪波悪鬼)

猪波家当主。花樹のおばあちゃんの子だが、かなりのあくどいことをしていたため、花樹のおばあちゃんとは昔から折り合いが悪く、2000年代前半に突然渡米、そこで木松悪斗と出会う。そこで木松悪斗と仲間として活躍、その後、日本に木松悪斗と共に戻ってくると花樹のおばあちゃんの妨害にあいながらも情報に精通する能力と会社経営の手腕を振るい木松悪斗の左腕として活躍、木松悪斗投資グループの拡大に貢献した。だが、静真に置いて生徒会長の月とAqoursとの抗争に木松悪斗が敗れたことで木松悪斗投資グループは存亡の危機を迎えてしまう。そのため、木松悪斗の命令により函館に移住、函館の木松悪斗の投資先であったディスカウントショップの会社の社長として木松悪斗になにかがあったときのために、いや、函館を木松悪斗の勢力下にするために函館の経済にて暗躍する。なお、このとき、偶然にも自分の母親(花樹のおばあちゃん)が突然亡くなってしまったため、その裏でなにかあったのではないかと噂されている。

 

花樹の母親

花樹のお母さん。花樹のことをしっかりとみつつも花樹の成長を見守っている。ただ、花樹が突然性格が変わったことを心配している。

 

RedSun

 

木松桜花(はな)

木松悪斗の次女。静真高校の1年。性格的には少々偏屈で強情、自分の思い通りにならないと気が済まず自分がこう思ったらそれに向かって突っ走る、ややワンマンみたいなところがあるがそれは自己中である父の木松悪斗と姉の旺夏の影響が大きい。小さいときから出来のいい姉旺夏と見比べて父木松悪斗から「役立たず」「ごくつぶし」と言われていたが、もともとは音楽の才能に秀でていた。それでもそれを父木松悪斗は認めず、姉旺夏からも貶されてしまう。そのため、卑屈な性格になってしまった。それでも自分の母親のおかげで音楽教室に通うことができたものの、母親が急に倒れて昏睡状態になったこっとでそれすらできなくなったことでさらに性格が卑屈になる、いや、自分自身、「役立たず」「ごくつぶし」と思うようになった。だが、父木松悪斗が月・Aqoursとの抗争に敗れたことにより、父に認めてもらいたいチャンスと思い、一念発起、Aqoursに対抗する形でRedSunを立ち上げた。ちなみに、本来の性格はかなりの努力家であり、夢に向かってコツコツと努力を重ねることを苦にしない。また、鋭い観察眼の持ち主でもあり、梅歌や松華といった優れた人材を発掘した。また、責任感も強い。

 

紅梅歌

静真高校の1年生。Aqoursのライブを見てAqoursに入りたいと思っている。そのため、Aqoursの聖地である内浦の砂浜海岸に行ったときに桜花からスカウトされRedSunの一員になる。なお、梅歌は強烈な個性の持ち主であり、優れた直観力と行動力、体も丈夫かつ人情熱い性格をしていた。そのため、年齢問わず人に受け入れやすい愛されキャラである。さらに、人の心をつかむのが上手な上に人望もあるため、まわりからは頼りにされることが多い。

 

赤間松華(しょうか)

静真高校の1年。梅歌とは幼馴染であり、いつも梅歌と一緒に行動している。そのため、梅歌と一緒に内浦の砂浜海岸を訪れたときに桜花に梅歌と一緒にスカウトされた。そのこと自体松華は不思議に思っていたのだが、桜花からみると松華も優秀な人材とみられている。それもそのはず、松華自身、人情味熱く誠実な面があり、勤勉でもあるため、まわりから信頼を得ているかなりの才能を持つ努力家である。それもいつもチャレンジ精神を失わず堅実に努力を重ねているくらいである。

 

Aqours

 

黒澤ルビィ

浦の星の1年(進級して静真の2年)。最初のころは姉ダイヤに頼りっきりであったがダイヤたち3年が卒業していなくなったことによる虚無感の影響、さらに、統合先の静真を牛耳っていた木松悪斗と旺夏の策略により静真の部活動報告会のライブが失敗したことで不安・心配という深い沼・海の底に陥ってしまう。特にルビィは姉ダイヤがいないことでさらなる深みにははまってしまう。そんななか、ダイヤたち3年が行方不明ということで訪れたイタリアにて月の荒療治により復活、ルビィは1人前のレディとして成長を遂げることになった。その後、ルビィの提案により理亜のためにラブライブ!延長戦を実施、理亜の心を取り戻すことにもつながった。その後、静真の2年となりAqoursの精神的支柱として・・・。

 

高見千歌

Aqoursのリーダーかつ浦の星の2年(進級して静真の3年)。みんなを引っ張っていこうとしている。だが、統合先の静真での部活動報告会のライブ失敗によりほかのメンバーと同様に不安・心配の深い沼・海の底に陥るもイタリア旅行でのダイヤたちとの再会、そして、ローマ・スペイン広場での運命のライブにより自信を取り戻した。その後、ラブライブ!延長戦を経て静真の3年として進級するも今もAqoursのリーダーとしてみんなを引っ張っている!!

 

渡辺曜

Aqoursのメンバーの1人で千歌とは幼馴染。浦の星の2年(進級して静真の3年)。月とはいとこ同士であり「Moon Cradle」では物語の重要人物である。月との想い出が月にとって物語における重要なキーになっている。とはいえ、曜からすればそれはあまり気にしていないみたいである。けれど、誰にでも仲良くなれる性格でもあるため、月からみたら精神的支柱なのかもしれない。ただ、静真の部活動報告会のライブ失敗は心に応えたらしく、一時期、不安・心配に陥ってしまった。だが、月とのやり取りやスペイン広場での運命のライブ、ラブライブ!延長戦を経て自信を取り戻した。そして、今、静真に進級してからも千歌の幼馴染として、月の精神的支柱として頑張っている!!

 

桜内梨子

Aqoursの作曲担当。浦の星の2年(進級して静真の3年)。ほかのメンバーと同様に静真の部活動報告会のライブ失敗により不安・心配の深い沼・海の底に陥ってしまうもイタリア旅行でのダイヤたちとの再会、ルビィの覚醒とそれよる言葉により復活、作曲を通じてスペイン広場でのライブ成功へと導いた。その後、ラブライブ!延長戦では「ブラメロ」を完成させて延長戦を戦った。その後、静真の3年に進級、Aqoursの作曲担当として活躍をみせている。

 

国木田花丸

Aqoursのメンバーであり、ルビィの中学のときからの親友かつヨハネの幼馴染。浦の星の1年(進級して静真の2年)。ルビィを内外とも支える親友ともいえる存在。なのだが、静真での部活動報告会のライブ失敗により不安・心配という深い海・沼に陥ってしまう。だが、ルビィが覚醒するとともに花丸も自信を取り戻すとともにスペイン広場でのライブ成功へと導く。そして、ラブライブ!延長戦を経て静真の2年に進級するとともにルビィたち2年生組のリーダーとしてやっている・・・つもり・・・。

 

津島善子(ヨハネ)

Aqoursメンバーであり花丸とは幼馴染。浦の星の1年(進級して静真の2年)。中二病気質の少女。そのためか、中学のときの同級生だったあげは・東子・シーナのことを当初は「前世を知る者」としてさけようとしていた。ところが、その静真での部活動報告会のライブ失敗により不安・心配という深き海・沼に陥ってしまいそれどころではなくなる。だが、イタリア旅行でのダイヤたちの再会、スペイン広場での運命のライブを経て自信を取り戻す。さらに、あげは・東子・シーナとの再会において、過去の自分が避けようとしていた「前世を知る者」、そのものを払拭することに成功する(梨子と花丸の裏切りにより・・・)。その後、ルビィ、花丸、あげは、東子、シーナと一緒に行動することが多くなった。

 

小原鞠莉

Aqoursの元メンバーで浦の星の理事長兼卒業生。今はイタリアの大学に進学している。自由奔放な少女。浦の星と静真の統合決定時、木松悪斗から静真の理事を打診されていたが鞠莉はそれを蹴ってしまう。それが一因となり木松悪斗の暴走が起きることになったそんななか、自由奔放なせいか、鞠莉‘sママから結婚を迫られてしまい、Aqoursメンバーで幼馴染のダイヤ、果南を連れてイタリアへ愛の逃避行?をしてしまうも結局は鞠莉‘sママに見つかってしまい運命のライブをすることになる。ただ、ルビィの覚醒もあったことで運命のライブは成功しただけでなく鞠莉‘sママと和解することに成功、自由の生活を得た。その後、ラブライブ!延長戦を経てイタリアへと旅立った。

 

黒澤ダイヤ

Aqoursの元メンバーで浦の星の生徒会長かつ卒業生。今は東京の大学に進学している。みんなをまとめる役のためか苦労が絶えない。鞠莉‘sママにより鞠莉のイタリアへの愛の逃避行?にも同伴、そのときもかなりの苦労をしたらしい。ただ、ルビィたちとの再会後、ルビィたちAqoursのまとめ役として対外交渉などを担当、スペイン広場での運命のライブ成功へと導く。その後、ラブライブ!延長戦でもAqours側のまとめ役となり活躍したあと、東京へと旅立った。

 

松浦果南

Aqoursの元メンバーで浦の星の卒業生。今はアメリカのダイビングスクールに通っている。無尽蔵の体力とダンスセンスのよさからAqoursのみんなを引っ張っている。鞠莉‘sママによりイタリアへの愛の逃避行?に鞠莉とダイヤと同伴、そのなかで千歌へと送ったメールがルビィたちAqours1・2年にとって鞠莉たち捜索の唯一の手がかりとなった。そんななか、ルビィたちと再会sるうも鞠莉‘sママに見つかってしまう。それでもみんなを精神的に支え続け、スペイン広場での運命のライブ成功へと導いてくれた。その後、ラブライブ!延長戦を経てアメリカへと旅立っていった。

 

静真高校

 

稲荷あげは

静真高校の1年(進級して2年)。ヨハネとは中学のときの同級生かつ東子・シーナとは幼馴染。どんなことでも前に進もうとする元気な子。木松悪斗が暴走を始めたとき、月が静真と浦の星の統合を求める署名活動の際にその活動を推進させるきっかけをつくった。その後、統合反対の声が大きくなるもヨハネのためにと一念発起、「静真Aqours応援団」を立ち上げるとスペイン広場でのAqoursのライブを広めることで多くの同志を得ることに成功する。そして、ヨハネとの感動の再会を果たし、ヨハネのためにラブライブ!延長戦、新生Aqoursお披露目ライブにおいて裏方として活躍、成功へと導いた。その後、月のあとを引継ぎAqoursのマネージャー的存在となった。

 

東町東子

静真高校の1年(進級して2年)。ヨハネとは中学のときの同級生かつあげは、シーナとは幼馴染。あげはたち3人のリーダー的存在かつ真面目。あげはと行動をともにしており、「静真Aqours応援団」の立ち上げにも携わる。その後、ヨハネとは感動の再会を経て、ラブライブ!延長戦、新生Aqoursお披露目ライブでは裏方として活躍、2年に進級してからはあげはの補佐役として活躍している。

 

浜方椎名(シーナ)

静真高校の1年(進級して2年)。ヨハネとは中学の時の同級生かつあげは、東子とは幼馴染。ヨハネと同じく中二病気質・・・ではなく、苗字がある小説の登場人物の名に似ている、ということもあり、あげは、東子からからかわれては全力で否定する・・・そんな悲しい子。「静真Aqours応援団」の立ち上げにも参加、活躍する。その後、ヨハネとの感動の再会を経て、ラブライブ!延長戦、新生Aqoursお披露目ライブに裏方として活躍、2年に進級してからはあげはのいじられ役・・・、もとい、補佐役をしている。ちなみに、シーナの右手はあらゆる魔術を無効化する・・・なんてことはできないのであしからず・・・。

 

渡辺月

静真高校の2年(進級して3年)。静真の生徒会長。曜とはいとこの・・・、いや、1番の親友ともいえた。静真の才女ともいわれている。生徒会長としての能力もぴか一であり多くの生徒たちから慕われている。静真と浦の星の統合推進派の長。静真と浦の星の統合のとき、静真を牛耳っていた木松悪斗と旺夏が突然反対してきたため統合賛成の署名を集める。その結果、統合は決定するも静真の部活動における保護者の声がなくならない限り浦の星分校を作っては続けることになってしまったほか、沼田から「部活動とはなにか」という質問を受けてしまう。ただ、月はそれを無視し保護者の声をなくすためにAqoursを持ち出すも木松悪斗と旺夏の策略、Aqours自身の問題により木松悪斗に負けてしまう。だが、Aqours1・2年と一緒にイタリア旅行をしていくなかで月と曜の昔の想い出からルビィを導くことでルビィは覚醒、これがAqoursの復活、スペイン広場でのライブ成功へとつながった。その後、ラブライブ!延長戦のライブ会場を巡って木松悪斗と再び対立するも「部活動とはなにか」という沼田の質問に「楽しむことがすべて」という答えを月が導いたことで木松悪斗に勝利する。そして、ラブライブ!延長戦、新生Aqoursお披露目ライブをプロデューサーとして成功へと導くとともにAqoursの総監督として3年に進級してからも活躍している。

 

ナギ

静真高校の2年(進級して3年)。月の右腕として生徒会副会長の名において手腕を発揮する。静真での部活動報告会のAqoursのライブ失敗により力を失った月に代わり静真高校生徒会を盛り上げるとともに新生Aqoursお披露目ライブの準備をあげはたち「静真Aqours応援団」とともに進めていく。それが下地になったことで新生Aqoursお披露目ライブは成功した。

 

沼田

静真における影の神。静真高校の創立家の末裔で静真高校PTA会会長。さらに、世界に誇る沼他グループの会長。創立家の末裔として静真における最終決定権を持っている。最初、月と木松悪斗の戦いにおいて署名活動をした月のことを認めるも木松悪斗の作り出した保護者の声もあり、その声がなくなるまで浦星分校を設けることを決める。その後、月に「部活動とはなにか」という問いを月に送る。だが、沼田自身、木松悪斗が唱える「勝利こそすべて」という考えに疑問をもっており、陰ながらあげはやナギたちのサポートをした。そして、月と木松悪斗の最終対決のときに「部活動とはなにか」に対する答えを導いた月を勝者として認め、木松悪斗に「勝利こそすべて」の愚かさを説いた。

 

浦の星

 

よしみ、いつき、むつ(よいつむトリオ)

千歌、曜の幼馴染。Aqoursの活動を陰から支える。千歌たちがイタリアに旅立っているあいだ、ナギたち静真高校生徒会、あげはたち「静真Aqours応援団」とともに新生Aqoursお披露目ライブの準備を行っていた。さらに、ラブライブ!延長戦では裏方として活躍、両方を大成功におさめた。

 

小原家

 

鞠莉‘sママ

小原鞠莉の母親で世界的大財閥の総帥の妻。やることなすことが大げさすぎることも。それでも小原財閥の総帥の妻ということもあり、ビジネスにはシビアに対応する。自由奔放すぎる鞠莉に業を煮やしたのか勝手に鞠莉の結婚を進めようとした。だが、鞠莉がそれが嫌になりイタリアに逃亡、それをよしとしなかった鞠莉‘sママは木松悪斗の部下である裏美の口車にのり千歌たちを鞠莉捜索のためにイタリアに派遣するも鞠莉は捕まらず。それでも鞠莉‘sママは鞠莉を探し続けると裏美の通報により鞠莉を発見、鞠莉を追い詰める。しかし、そこにいたダイヤや千歌たちAqoursの犯行にあい鞠莉‘sママのまえでライブを行うことを認める。そして、Aqoursはローマ・スペイン広場で運命のライブを行ったことで鞠莉‘sママは鞠莉の思いを知ることができ鞠莉を認めた。その後、鞠莉‘sママは裏で自分を操っていた裏美を一刀両断、日本に戻ってからも鞠莉とAqoursを応援するためにラブライブ!延長戦を見学、そのとき、延長戦を妨害しようとしてきた木松悪斗たちを懲らしめた。

 

小原家総帥

小原鞠莉の父親で小原財閥の総帥。浦の星の実質的なスポンサー。浦の星と静真の統合を沼田にお願いしたのが月・AqoursVS木松悪斗の一連の抗争のことの始まりであった。ただ、統合の静真に投資をしなかったため、木松悪斗から恨みをかうこととなるも鞠莉や月、Aqoursの活躍もあり木松悪斗は敗北、自分の妻である鞠莉‘sママと沼田と一緒に木松悪斗に罰を与えてしまった。

 

木松悪斗関連

 

木松悪斗

静真の実質的なスポンサーであり静真における表向きな権力者。静真高校部活動保護者会会長。静真に多額の出資(特に部活動)をしており、静真の生徒の保護者、先生たち、理事たちに大きな影響力を持っている。「勝利こそすべて」が信条。沼津の出身と言っている(本当は北海道)。炭鉱夫の子どもとして生まれたが閉山ラッシュで父親が職を失ったことにより辛い少年期を過ごす。その後、ITの時代がくることを見抜きIT企業を起業、成功をおさめるも裏切りにあい社長職をおろされるも次は投資の時代がくると思い投資の本場のアメリカに渡る。そこで妻と出会い結婚、旺夏と桜花をもうける。仕事のほうもが裏美と

猪波を従わせては大成功をおさめる。その後、日本に戻り自分の投資グループを主宰、日本でも有数の投資グループとなる。そんななか、つぶれかけの静真のスポンサーになったことで静真の表向きな権力者となる。そして、静真と浦の星の統合話が持ち上がると浦の星のスポンサーだった小原財閥のお金をあてに賛成するも、その小原財閥から投資がない、浦の星の理事長だった鞠莉が木松悪斗が用意した静真の理事の職を蹴った、そのことがあり、急に反対にまわったことで月率いる統合賛成派との抗争に入ってしまう。当初は自分の権力を傘に保護者たちに部活動に関する保護者の声を植え付けるくらい優位にことをすすめ、月たち統合賛成派を奈落の底に落とすも、部下である裏美の失態、月やAqoursの復活などにより敗北、沼田から小原家から投資グループにとって死に値するようなきつい罰を与えられてしまう。

 

木松旺夏

木松悪斗の長女で桜花(はな)の姉。かなりの自己中である。静真の部活動に参加している生徒たちの連合会、静真高校部活動連合会の会長であり静真の生徒たちに影響力をもっている。また、女子サッカー部の部長でもある。小さいときからサッカーをしており実力は日本代表レベル。だが、性格的に難があるため、ほとんどの場合、旺夏が所属しているサッカーチームはワンマンチームになることが多かった。そのため、チームのなかで孤立することがあるがほかの人に対して力でねじ伏せようとしてしまう。そのことがもとで旺夏の父である木松悪斗は旺夏のためのチームとして静真に旺夏のためのチームを作ってしまう。また、月・Aqoursとの抗争の際、部活動報告会のときに策略を巡らせてAqoursのライブ失敗に貢献するもローマ・スペイン広場でのライブやラブライブ!延長戦によって旺夏の静真での地位は悪くなってしまった。その結果、旺夏の影響力もどんどん小さくなってしまった。

 

木松悪斗の妻

木松悪斗の妻であり旺夏や桜花の母親。旺夏の音楽の才能をはやくから認めており、音楽嫌いの夫の木松悪斗の目を盗んでは桜花を音楽教室に通わせていた。だが、それが木松悪斗にばれてしまうとそれによって夫婦喧嘩が勃発、木松悪斗に抗議するも聞き入れられず、逆に強く叱責されてしまう。それが原因なのか、それとも、長年のストレスが原因なのかわからないが、このとき、意識を失ってしまう。それ以来、長い間目を覚ますことがない長い入院生活を送っている。

 

木松桜花

RedSunの項目を参照

 

裏美

木松悪斗の右腕。おなかがでているほど太っている。名家の出であり同じく名家出身の妻と一緒に幅広い人脈を使っての情報収集を行っている。アメリカにいるときにいじめられているところを木松悪斗に助けてもらったのが縁で木松悪斗のことを「ご主人様」と呼ぶくらい木松悪斗のために働いている。そのため、鞠莉のイタリア逃避行のときに鞠莉‘sママをそそのかして千歌たちをイタリアへと向かわせたり鞠莉捜索のために鞠莉‘sママに多額の資金を使わせるなど、(木松悪斗と月・Aqoursとの抗争のときに)小原家没落のために陰で動く。だが、それが原因で小原家はおろか、(月・Aqoursの邪魔をしないという沼田との決まりを破ったことで)沼田までもが木松悪斗を見限る、いや、木松悪斗敗北の原因をつくってしまった。これにより、ご主人である木松悪斗から見限られてしまった。dが、それが原因で裏美は木松悪斗の恨みをもつようになり・・・。

 

猪波

猪波家の項目を参照

 

Ω・UCからの登場

 

こころあ(矢澤こころ・矢澤ここあ)

大総大学付属札幌高校の3年。μ'sの矢澤にこの双子の妹。これで16歳である。1年のときに音ノ木坂学院スクールアイドルオメガマックスとして、そして、2年のときにオメガマックスの京城みやことともにラブライブ!で優勝している実力者。だが、子どもっぽいところが残っておりわがままのように見えてしまう。さらにいたずら好きでもある。ただし、それは寂しさや偉大なる姉であるにこの妹ということで期待されているなどの重圧によるものでもあったりする。なお、妹のここあはやんちゃものであり、それを姉であるこころがいさめている・・・真面目なところがある・・・もののやっぱりいたずら好きなのは間違いない・・・。

 

代々木はるか・神宮ハヤテ

日本の最高学府かつ最高スポーツ大学である東都大学の1年。大学生のアイドル、ユニドル「H&H」としてユニドル活動をしている。はるかは医学部で、ハヤテはスポーツ学部で勉強をしている。特にはるかは学年主席ということもあり特別な待遇であることが多い。そんな「H&H」だが、まだ結成したばかり、そこまで認知度がない。だが、大学の看板をしょっていることもあり大学総出で「H&H」の認知度を上げようとしている。

 

綾瀬亜里沙

北海外国語大学の2年。今年、祖国であるロシアから戻って来たばかり。同じスクールアイドルだったナンシー、ナターシャとともにユニドル「iD+」を結成している。μ'sの絢瀬絵里という偉大なる姉を持っているものの、間違った日本感をもっていることも・・・。それでもけなげに頑張っています・・・。

 

京城みやこ

大総大学の1年。ガテン系の体つきをしているがダンスセンスなどはピカ一。また、果南ばりの体力をもっているため、なにをしてもへこたれない。ソロユニドル「ビースト」をしている。こころあにとって戦友であり姉的存在である。

 

秋葉愛

福博女子大学の2年。ユニドル「博多小町」でプロデューサー兼作曲担当をしている。音ノ木坂学院3年のときにラブライブ!で優勝しており、そのときの出来事がもとで、アイドルの名門、福博女子大学に入学した。これでもかなりの自信家であり、それに見合うだけの有言実行能力がある。

 

???

今回登場していない人物。だが、それは新作のための伏せ石でもある。詳しくは、新作「スターピース」、をみてください・・・。



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