DB勢 in ワンパンマン (ハゲたオッサン、かめはめ波)
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第1話 あれ、亀仙人って俺?

誤字あると思うが、よかったら読んでくれ。


 記憶が戻ったのはいつからだろう。

 俺は昔の記憶……昔と言ってもいいのかわからないが、今現在の生を受ける前、つまるところ前世の記憶を思い出した。

 今生きている世界も似たような所があるが、少し違っている。

 先ず、違うところは明らかに町の名前などがおかしい。

 記憶を思い出す前は何とも思わなかったが、A市とかB市って何だよ。

 適当に名前付けすぎだろ、と思ったほどだ。

 他には超能力的な力や、化け物? ていうか生前ではありえない怪人とかアニメに出て来そうな力があったりする。

 なんでも超能力を研究する機関があるとかないとか。

 そんか訳で俺は思いついた。

 

 ドラゴンボールの『気』とかあんじゃね? 、と。

 

 ものは試し、ありとあらゆる『気』に関する情報を集め、ドラゴンボールの知識を思い出す。

 この世界が漫画のような世界なら孫悟空やベジータまではいかなくとも、クリリン……最低でもヤムチャくらいにはなれるんじゃねーかと思いついた訳だ。

 出来ればサイヤ人とかに生まれたかった(願望)

 

 そして今、俺は修行を開始する。

 先ずは基礎、亀仙流を極める事である。

「よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む 人生を面白おかしく張り切って過ごせ」をモットーに頑張りましょう。

 よく覚えてたな俺。

 

 そんな訳でやってきました第一弾。

 畑を素手で耕そう!! の巻。

 

「本当にいいのかい? 無賃でやってくれるって……」

 

 農家のおじちゃんが心配そうに尋ねてくる。

 大丈夫ッ!! これも修行なのです! 

 

 一時間経過〜

 

 これはやばい、もう挫折しそうだ。

 新たな生を受けて、15年。

 初めて挫折しそうになる。いや、むしろ挫折してる。

 今すぐに辞めたい。働きたくない。

 爪の間から血が垂れ、手のひらと甲には擦り傷と紫色の痣ができている。

 泣きそうだ、だが、これは悟空やクリリンがやった修行。

 辞めるわけにはいかん。

 せっかく2度目の人生が巡ってきたのだ。今回は好き勝手に生きてやるんだ。

 

 修行開始一週間〜

 

 両腕の爪は全て剥がれ、包帯がグルグル巻になっている。

 死にそうだ。もうやめよう……いや、もうすこしだけ……。

 

 修行開始一ヶ月〜

 

 思った。よく動きは出来てるよな。

 けど遊んでねーし休んでねーし学んでねーし。

 ダメやん。

 帰ったら勉強と遊び、あと早く寝よ。

 

 修行開始半年〜

 

 畑を素手で耕すのは慣れてきた。

 もう爪も手も何も傷がつかなくなってきた。

 勉強も友達付き合いも、両立できている。

 悟空達ほど早いペースで修行出来てないが、これからステップアップしていこう。

 

 修行開始一年〜

 

 早朝に20キロの重りを背負い、牛乳配達……はなかったので新聞配達。(もちろん走りで無給)

 ハチの巣のすぐ側に近づき、ハチを怒らせて攻撃をかわす訓練(死にかけた)

 大岩を動かす(最近ちょっと動くようになった)を続けた。

 そして思った事がある。

 俺、武術できなくね? 

 そうだ、習いにいこう。

 

 修行開始一年半〜

 

 当分は亀仙流を続けながら武を学んだ。

 型を覚え、組手をする。

 体を一年亀仙流で鍛えていたおかげか、ど素人だった頃でも先輩達をボコボコに出来た。

 そんな天狗になっていた俺を見て、師範を名乗る男が勝負をしかけてきた。

 当然、余裕だと思った俺は挑戦を受けたが結果は惨敗。

 心も体も、そして『武』も、全てが上であり、この人のもとで学びたいと思った。

 

 

 修行開始五年〜

 

 心も体も相当な磨きをかけた。

 師範には感謝しかない。

 今では師範を超え、多くの門下生に稽古をつけている。

 その中になかなかの逸材がいた。

 バングとボンブという青年だ。

 兄弟なのがまたビックリ。彼らは強くなるだろう。

 

 修行開始十年〜

 

 道場をバングとボンブに任せ、俺は武者修行に出る。

 ここからだ、ここからが本当の修行。

 最初は俺TUEEEがしたいだけだった。いつからだろうか、武を愛し、感謝し、人と比べる事をしなくなったのは……。

 ただ、『極めたい』という、この一言に尽きる。

 自分よりも強い奴や弱い奴を見ても比べる気にすらならない。

 ただ先ほどまでの自分と今の自分で、どれだけ成長したのか。

 自分だけがライバルである。

 自分の成長だけが嬉しかった。

 

 修行開始から五十年〜

 

 漸く、漸くだ。

 手のひらに迸る光。

 始めの一歩を掴んだ。

 

 修行開始から八十年〜

 

 亀仙流、ここに極まれり。

 俺の夢は実現した。

 水辺に映る自分の姿は軽く老けていたが、誰が見ても95歳には見えない。

 これも『気』を会得したからなのだろうか……。

 鍛え上げられた肉体。

 刻み込まれた数多の傷が程よく調和している。

 

「この山にも大分世話になった。感謝を込めよう……」

 

 両立手首を合わせ、手のひらを開き、腰元へとゆっくりもっていく……

 

「か……め……」

 

 今まで積み上げ、極めてき気のコントロール。

 体内のエネルギーを手のひらに集中させていく。

 

「は……め……」

 

 そして、空へと気の溜まった掌を突き出すッッ!! 

 

「波ァ──────ッッ!!」

 

 掌からはとてつもない轟音と共に、淡い青色の光が放たれる。

 その光線は曇った空を文字どおり半分に切り裂き、地球の外へと消えていく。

 残ったのは綺麗な青空。

 そしてホロリと片目から涙を流す男の姿だけだった。




捏造ところどころあるから、気にしないでくれ。


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第2話 山を降りてみた

俺も山に篭ったらかめはめ波打てるかなー


 95歳にして亀仙流(独学)をマスターした俺は山を下った。

 体の身体機能……というか、健康状態は何故か今の方が良い。

 武を極めるという事はメリットしかないな、と我ながら思う。

 

 山を降りて向かった先はバングとボンブに任せた道場だ。

 てか、あの二人生きてんのかな? 

 

 

「あ、あれ─────ぇ?」

 

 

 道場がなくなっていた。

 そうだよな、あれから相当な年月が経ってるもんな。

 

 俺は少し寂しい気持ちを抑え、立ち去ろうとすると……。

 

「そこのお前さん」

「ん?」

 

 一人の老人が話しかけて来た。

 多分俺の方が年上だけど。

 

「最近、ワシの門下生たちが皆辞めてしまったんじゃ。()()()会ったのも何かの縁……どうじゃ? ウチの門下生にならんか?」

 

 流水岩砕拳知っとる? と、最後に付け加えて老人は構えを取る。

 その老人の構え……見覚えがある。

 一番手をかけてやった二人の弟子の片割れ、『バング』と一緒なのだ。

 

「こんな老人に『武』を教えるつもりか? それに門下生にボイコットされるなんて、師範失格だな」

「ムッ? 老人と言ったかい? そこのお前さん……どう見ても歳は30から40代くら───」

 

 老人が喋っている途中で、俺は腰を中段に落とし、右手を腰に左手を軽く曲げ、自身の顔より少し離れた位置に構える。

 最後に「久しぶりだな、バング……師匠の顔も忘れたか?」と、付け加え。

 

「───ッ!?」

 

 バングは目を見開いた。

 

(そんな、あの方は行方を眩ました筈……本物か? いや、それにしては若すぎる)

「イイから掛かってきんしゃい。見せてみなさいよ、俺に流水岩砕拳って奴を」

 

 

 

 

 

 

 バングは目の前の男に気が付けば飛び掛かっていた。

 流水岩砕拳とは相手の攻撃をまるで流水の如く翻弄し、繰り出される技の威力は岩をも砕く。それ程強力な『武』である。

 そんな流水岩砕拳を一般人に繰り出せば間違いなく死ぬ。

 だが、バングは自分から飛び掛かったのだ。目の前の男に。

 

 高く飛び上がったバングは男に対して空中から落下の速度を活かして手刀を繰り出す。

 しかし、その手刀が男に触れる、僅か数ミリで違和感を感じた。

 

 相手は動いてもいない。なのに何故か()()()()

 まるで高密度の見えない壁を叩いたかのような感触。そして反発する力……。

 

「バング……いつも言っていただろ? 武とは自分から仕掛けるモノでは無く、相手の攻撃をいなす技だと」

 

 男は言葉を続ける。

 

「しかし良い手刀だった! 当時の俺なら肩が粉砕してたなぁ……過去の自分よりも成長が実感できて嬉しかったぜ?」

 

 そんなあっけらかんした言葉は何故かバングの心に深く刻まれる。

 その過去の自分よりも成長が実感できて嬉しかったぜ? と言う言葉。

 かつてのバング師がよく口にしていた言葉。

 人と比べるな。比べるなら自分自身を過去の自分と比較しろ。

 それが人を『武』を育てるのだ。

 大して年の変わらぬ師匠であったが、何故か年季の入った言葉を口にし、かと思えば年相応のヤンチャさや、子供らしさも見せる。

 そんな師匠の姿が目の前の男と被った。

 いや、彼こそが、本人だと、何故か思ってしまう。

 

「ただいまだ。バング」

 

 男は笑って言った。

 

「随分老けたなバング? てか、バングだよな? 間違ってたら俺死ぬレベルで恥ずいんだけど?」

 

 思わずバングは笑ってしまった。

 そして、両手のひらを合わせてバングは深くお辞儀をする。

 

「お帰りなさいませ。お師匠様」

「おう」

 

 そう言ってバングの師は両手のひらを合わせた。

 

 

 ◇

 

 

「そっかー、道場は怪人って奴に昔壊されたのかぁー」

「ええ、あの時はワシも兄ちゃんもそりゃ憤慨してめちゃんこ怪人を嬲りました」

「あはは……その怪人かわいそーに」

 

 積もる話をしながら、俺はバングの道場へと向かっていた。

 当分は住まいを提供してくれるらしい。

 

「時代は変わるもんだなー、お前もオッサンぽい口調になってんし、ヒーローなんて職業もあってマジでアニメの世界だな」

「師匠が変わらな過ぎるだけじゃとワシは思うが……所で『気』って奴は会得出来たのか?」

「そりゃもーばっちしよ! さっき見せたろ? バーンって弾く奴……他にも色々出来ちゃうぜ?」

「ほー、そりゃ凄い。で、具体的にはどんな事が出来るんじゃ?」

「やってみなくちゃ分かんねーけど、月くらいなら簡単に壊せると思うぞ?」

 

「……は?」

 

 この後メチャクチャ質問責めにあった。

 

 

 ◇

 

 

「おい、じーさん遅ーぞ」

「先生を待たせるとは、下らん理由ならタダではすまんぞジジイ」

 

 長い階段を登り、バングの道場に着いたら中になんかいた。

 白の空手着を着ているオレンジの髪をした青年は門下生だって分かるんだけど、このハゲたマント君とどう見ても人間じゃないサイボーグは誰だ。

 

「おおう、すまんすまん。ちと、感動的な再会があってな?」

 

 バングがそう言うと、視線を俺に向け、少し自慢気に言った。

 

「こちら紹介する。これ、ワシの師匠」

 

 少しの沈黙そして、

 

「えっ!? あの伝説の武闘家のッ!? バング師匠の唯一尊敬するあのッ!?」

「いや、誰だよ」

「フン、俺の先生の方が上だな」

 

 一人はメチャクチャ驚いてるけど、もう二人は反応薄いな。

 てか、伝説って何? 

 

「貴様らッ! あのS級ヒーローシルバーファングの師匠であるこのお方の伝説を知らんのかッ?」

「知らねーよ。ジェノス知ってるか?」

「いえ、俺も知りません。ですが、シルバーファングはS級三位の実力者……その師匠となれば、かなり腕の立つ人物かと」

 

 だから伝説って何? 

 

「知らないなら俺が教えてやる。この方は武術を始め、1日で当時の師範と肩を並べ、半年後には師範になり、数多の武術家を育て、道場破りに来た千人ものゴロツキ共を返り討ちにし、更生させ、その実力は武術界の『神』と言われる程。そして武天神師(むてんじんし)と呼ばれるお方だぞ!」

 

 何それ初耳なんだけどッッ!! 

 武天神師ってなに? 武天老師じゃなくて? 

 まあいいや。

 

「どうも、武天神師って呼ばれてるバングの師匠です。あ、亀仙人って呼んでくれてもいいよ?」

「へぇー、強いんだなアンタ」

「先生の方が凄いです。武術など、所詮は護身術……俺が求めるのは先生のような圧倒的な強さです」

「貴様ァッ! 流水岩砕拳とその開祖たる武天神師を愚弄するか! 流水岩砕拳一番弟子チャランコ参るッ!」

 

 チャランコと名乗った青年はサイボーグ男に飛び掛かったが、あっさり首を掴まれ、降参してしまった。

 全く、バングは何を教えてきたのか。

 

 

 

 

 

「オイ、貴様の門下生は凄腕揃いだ、とぉっ!?」

 

 チャランコを締め上げていたジェノスは気付けば視界がグルグルと回っていた。

 何が起きた? 理解不能? まさかこの門下生が? 

 受け身をとり、直ぐに体勢を立て直すジェノス。

 

「バング? お前、この子に何を教えたんだ? 技量や肉体以前に心構えがなってない。先に手を出す所を見ると、お前の悪い癖を真似ているようにも見えるんだが?」

「いやー、そう言われると痛いの。チャランコはまだまだ修行中でな? 腕の立つ門下生達はさっき話した通り辞めちまったんじゃよ」

「ガロウって奴の責任にするな。バング、お前の責任だ。道場を任せ、信頼した俺の立場にもなれよ。俺が言いたいのは───」

 

 その時、武天神師の頬を拳が掠める。

 

「危ないな、サイボーグ君。避けなかったら大変な事になっていたぞ?」

「貴様、今何をした?」

 

 鋭い目つきでジェノスは武天神師を見据える。

 そんなジェノスに武天老師は怪訝な顔を浮かべ、言った。

 

「君の腕を掴んで、吹き飛ばない程度で空中で振り回しただけだよ? 受け身が丁度取れるように回したから怪我なかったでしょ? 大体、人の顔目掛けてグーパンて、危ないだろ? って言ってんだよ?」

「貴様ならアレくらい避けれると思ったから殴った。それにさっきの俺は油断していた。毎回学習しない俺も悪いが、先生の前で無様な姿を晒すわけにはいかない」

 

 何故か臨戦態勢に入っているジェノスに対してサイタマは呟くように、いつもボロボロになってるけどな、と呟いている。

 

「じゃあこうしよう、君と俺が握手をする。その手を離さず、地面に膝を付けた方の勝ち。もちろん握手している手を離しても負けだ。それ以外なら何をしてもいい。殴ろうが、蹴ろうが、ね」

「いいだろう」

 

 そう言って武天神師とジェノスは握手をした。

 すると、武天神師は悪戯な笑みを浮かべ。

 

「はい、王手だぜ? ロボットちゃん♡」

 

 刹那、ジェノスの全身に凄まじい重力が掛かった。

 否、掛かったような気がした。

 なんだ、これは……。

 

 ジェノスは全身の力が入らず、そのまま地面に押し付けられる。

 

「ぐぉっ、つッ!?」

「サイボーグ君や、お前が言ってた護身術ってのはどんな力がある奴でも押さえこめるんだぜ? 舐めちゃあかんよ───まっ、力も俺ちゃんの方が上だけどね?」

 

 そんな武天神師を見てバングは思う。

 コイツ七十年経っても何にも変わってねーな、それに人と比べてんじゃん、と。

 




どうしてこうなった。
誤字あったら報告よろ。


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第3話 王様とチビロリババアと武天神師(笑)

武天神師とか名前うけない?w
本名は俺も知らん。勝手に考えてコメント欄で呼び合ってくれw
休みの日ってやる事ないからついつい書いちまったよw


「とまあ、こんな感じ」

 

サイボーグの青年はぐたりとその場に倒れこんだまま動かない。

アレ、俺壊しちゃった? でもそんな強くやってないんだけど……。

 

「御見逸れしました」

 

ふと聞こえた声に振り返ると、サイボーグの青年は立ち上がり、こちらへ向かって深々とお辞儀をしている。

 

「まさか、こんな世界があったなんて……」

 

拳を握り、ふとサイボーグ青年はハゲたマント君の方を向いた。

 

「サイタマ先生ッ! 大変申し上げにくいのですが、彼の元でも週に一度武術を習ってもよろしいでしょうか?」

「ジェノスがそうしたいならいいんじゃね?」

 

あ、ハゲマント君がサイタマ君でサイボーグ青年はジェノスって言うんだ。

 

「という事で、週に一度ですが、指導のほど、よろしくお願いします!」

「だそうだ、バング」

「あいわかった」

 

すると、その声に反応し、ジェノス君が俺に鬼気迫る顔で言ってきた。

 

「何故このジジイなのですか!? 俺はあなたにッ」

 

「喝ァ───ツッ!!」

 

俺の怒声にジェノスは後ろへ後ずさった。

 

「聞き捨てならんな、お前、今なんて言った?」

「俺はあなたに指導を……」

「ちげーよその前だ」

「……何故、このジジイに、ですか?」

「そうだ」

 

俺は腕を組みジェノスを見据える。

 

「俺の門下に入るなら先輩には敬語、そして敬意を払え。そして基礎は先輩から学べ」

「……はい」

 

渋々了承するジェノスに俺は言葉を続ける。

 

「それに聞きたい事がある」

「何でしょうか?」

「お前は何で強くなりたい?」

 

ジェノスはその問いに深々と目を閉じ、そして口を開く。

 

「それは復しゅ……」

「おい、復讐なんてつまらん事を俺の前で口にしてみろ。お前を本気で平手打ちしなくちゃならん」

「っ!?」

 

ジェノスは固まり、口を閉じてしまった。

 

 

 

 

 

ジェノスは背筋が凍った感覚に襲われた。

それは、かつてサイタマと手合わせし、拳を寸止めされた感覚。

 

『死』

 

と、いう字が似合うものだった。

 

「いいか? よく動き よく学び よく遊び よく食べて よく休む 人生を面白おかしく張り切って過ごせ。これがウチの掲げてた心構えだ」

 

「はぁ……」

 

なんだ、そのふざけた心構えは、とジェノスは思った。

 

「これを忠実に守り、俺は強くなった。君にはわからないだろう。けどな、君の近くには似たような事をした人がいるんじゃないのか?」

 

武天神師は目線をサイタマへと向ける。

サイタマは、え? 俺? と、話がまるで理解できていない様子だ。

 

そんな時、ジェノス頭にはかつてサイタマが話してくれた嘘のような強さの秘訣が流れた。

 

『どんなに辛かろと、俺はこのトレーニングを血反吐をブチまけながら続けた』

 

そう、続けたのだ。怪人と戦い、生死を彷徨うギリギリの状態でも。

 

「しかし、君の師匠は凄いな。とてつもない「気」の持ち主だ。その若さでそれだけの力を持っているなんてな」

 

ジェノスは俯いたまま喋らない。

 

「俺はサイボーグになった君でも強くなれると思っているよ。人に限界なんてない。それは機械も一緒。生きているなら一緒だ」

 

そして武天神師は笑顔で言った。

 

「限界なんてクソ喰らえだ」

 

そう言ってジェノスの頭をポンポンと叩く。

 

(まあ、DBでも人造人間強くなってたし、なんとかなるだろ)

 

そんな時だ、武天神師はある異変に気付く。

 

(なんだ? この禍々しい気……行ってみるか)

 

そのまま、武天神師は道場を後にした。

無言で出て行った武天神師を誰も追うことはしなかった。

 

「えーと、話終わった? 俺暇だから帰りたいんだけど?」

 

サイタマだけは平常運転だった。

 

 

 

 

 

 

そこは氷で覆われた世界。

そして、そこに封印されたが如く、眠っている生物がいた。

 

 

───『古代王』

 

姿は白亜紀に生息していた恐竜に近く、顎と背中には無数に生える角。

そして何より恐竜と違うのはそのサイズ。

まるで大きな山を連想させるサイズだ。

何せ、自称恐竜達の王なのだから、そのくらいのサイズが丁度いいのかも知れない。

その、『古代王』が今、復活を遂げる。

 

「ようやくだ。待ちわびたぞこの日を───ん?」

 

その復活を望まぬ者もいる。

それは人間だ。

何故復活を望まないか、理由は簡単。ただ人間を殺しにくるからである。

まあ、殺しにくるだろう。なんせ、自分だけの世界が欲しいのだから。共存なんてサイズ的に無理だろう。

 

いつ仕掛けられたのか、数多の山々から次々と古代王に目掛けてミサイルが発射される。

 

「小癪な、鬱陶しい……」

 

そんな攻撃をものともせず、古代王は人間が住む都へと進んでいく、が、

 

「オッス! デケェ邪悪な『気』を感じたから来てみたんだけど、アンタスゲェデケェな?」

「何者だ……貴様」

 

古代王の瞳に映るのは亀の甲羅が描かれたアロハシャツを羽織り、白髪の髪を逆立て、サングラスを掛けた中年のオヤジ?がそこには立っていた。

 

「何者って言われてもなー、身分証明出来るもん持ってねーし。そもそも戸籍すら残ってんか分からん。あっ、でも武天神師って呼ばれる! 結構気に入ってんだけど、どうおもう?」

「ふざけているのか? そう言った事を聞いているのではない。我は『古代王』であるぞ! 恐竜達の王にして、太古の昔にこの世界を治めていた生態系の頂点ッ!!」

 

高らかに宣言する古代王。

喋り方も王様らしく、なんだかちょっとカッコイイと思ってしまう武天神師。

そんな会話に横槍を入れるかのように、可愛らしいロリツンボイスが響き渡る。

 

「ちょっと! 何でこんな所に一般人がいんのよ! アホなの? バカなの? 死にたいの?」

 

綺麗な緑の髪が特徴的な少女が宙に浮いている。

黒い服はボディラインに密着するようにくっついており、明らかに足元の露出が多く、とても少女が着る歳相応の服ではない。

だが、武天神師はそんなことを気にしなかった。否、気にする余裕が無かった。

少女は宙に浮いている、武天神師は地面にいる。

そしてある一点を凝視し、視線を外してその場に膝をついた。

 

「ぐふぅッ!」

「ちょっ! アンタッ! 何倒れてんのよ! コイツに何かされたわけ!?」

 

そうではない。

武天神師はそんなことでは倒れない。

 

「いや、無自覚な天然美少女のパンツを故意的に覗いてしまった俺自身が許せないんだ……」

「「………」」

 

古代王、少女、少しの沈黙。

そして、その沈黙を破ったのは……

 

「は、はぁぁぁぁあ!? ば、バッカじゃないの!? なに、アンタ見たわけ? 最低ね! 人のパンツ見て、な、な、『おい』何顔赤くしてんのよ! 変態! 『我を無視して』白髪! 亀じじい!いいわ! アンタからぶっ潰して、けちょんけちょんにした後に『我は古代……』そこの変なの『変なのだと!?』うっさいわねッ! アンタ人が会話してんの聞こえないの?」

 

武天神師は完全に敵認定、そして古代王は無視である。

 

「まあいいわ! じゃあそこのデカイの! アンタから相手してあげる」

 

少女が古代王の方を向くと、そこには巨大な顎があった。

 

「何? 威嚇のつもり? 全然怖くないわよ?」

「そう意気がるのも今のうち───」

 

古代王は大きな尻尾を振り、上から下へと少女目掛けて尻尾を振り下ろす。

 

「───だッ!!」

 

しかし少女は平然とした顔で攻撃を避けていた。

 

「ほう、中々出来る『あぁっ! さっきの変態はッ!?』今度はなんだ!?」

 

少女は直ぐに急降下し、砂煙が舞っている地面へと近づくと……

 

「俺は悪くない、見てない、ロリコンじゃない、童貞じゃない、亀仙人だ、武術の神様だ、武天神師だ……etc」

 

なんかブツブツ言っている変態がいた。

 

「何よ、元気そうじゃない」

 

何処をどう見たら元気そうになるのか。

 

その時だった、

 

「しまっ!?」

 

少女目掛けて古代王が口からとてつもない破壊光線を放ったのだ。

この至近距離では避けれない。否、避けれないのだ。

避ければそこでブツブツ言っている変態が死ぬ。

それはS級ヒーロー2位の戦慄のタツマキにとって、守らなければならないもの。

そう、例え、相手が変態でも。

 

「ぐっ、うぅぅっ!」

 

超能力でタツマキは強力なバリアを作り、何とか耐える。しかし光線自体かなり強力なのか、少しでも気を抜けば崩壊しそうだ。

一人なら、こんなに苦戦する敵ではないのだが、

 

「ガハハハハハッ! 終わりだチビッ!」

「誰がチビよ! 今に見てなさぃ……くっ!」

 

こんな変態見捨てれば、守らなければ、でもヒーローなら守らなくてはいけない。

かつて守ってくれた、あのヒーローのように。

例え、変態でも。

 

例え、それが武天神師と呼ばれる男であっても。

 

「すまん、取り乱したわ」

 

突如、武天神師が立ち上がり、破壊光線に手で触れようとする。

 

「バカッ! 何やってんのよ! 早く下がりなさいッ!ジャマなのよアンタッ!」

 

何ムキになって心配しているのか。

すごくムカつく。

ああ、彼の手が光線に触れる、ああ、こんな頑張らなければよかった。

周りなんて気にせず、ドカンとやっちゃえば……。

まあ、この男は死ぬ、

 

 

 

 

 

 

「「───へ?」」

死ななかった。

 

武天神師が光線に触れた瞬間、光線は軌道をずらし、空へと一直線飛んでいく。

 

「あー、俺にそーいう『気』の塊は大小関係なく効かないから。相手が俺と同じくらい気をコントロールできたり俺以上の『気功』使いなら話は別だけどね」

古代王とタツマキは呆気にとられる。

 

「まあ、見て分かる通り、王様じゃ俺には勝てない。それに単純な戦闘力で勝ってても、そこの嬢ちゃんには勝てないと思うぜ? だから辞めとけよ。戦わなくても分かる。大人しく帰って、ここら辺の山々で大人しく暮らしてろよ? 俺は生き物を食う以外で殺したくないんだ」

 

突如の乱入、そして全てを台無しにした男に古代王が、キレる……のではなく、

 

「アンタどういうつもりよ! アタシ一人でも平気だったんだから邪魔すんじゃないわよ!」

 

タツマキが何故かキレた。

 

「大体、何カッコつけて逃がそうとしてんのよ? こんな変なのほっといたら絶対に何かやらかすわよ!? 無責任な事すんじゃないわよ」

「また暴れんならそん時は俺が責任持って止めてやるよ? 当たり前だろ」

「はぁ? 何それ? ヒーロー気取ってるつもり? アンタみたいなのをギ・ゼ・ン・シャっていうのよ! この偽善者ッ!」

「俺は別にヒーローじゃねーし、そんな事にこだわるつもりは無い。けど、昔の教え子達は皆そうやって悪い事したら止めて、だんだんと更生していったんだ」

 

タツマキは青筋を浮かべ、超能力を全開に解放する。

 

「あそ、でもコイツは怪人……ここで殺すわ」

「貴様ら我を更生させるだ、ましてや殺すだと? 我を殺したいなら隕石でも持ってこい!! 」

「じゃっ、そうするわ」

 

古代王はその言葉を聞き、鼻で笑ったが、ふと異変に気がつく。

なんだ、この音は? と。

 

空を見上げれば、そこには……

 

「な、なんだとッ!?」

「ご所望の隕石よ」

 

隕石が古代王に直撃する刹那、

 

「波ァ───アッ!!」

 

青い光が世界を覆う。

それは巨大な光の光線。

先ほど古代王が放ったモノのは比べ物にならない程の。

放たれたソレは、まるで氷をお湯に入れたかのように、隕石を焼き切った。

 

「なっ、!?」

「なあ、古代王よ。これが最後だ。大人しくけぇれ。次は無い、俺はもう助けてやらないからな」

 

古代王は顔色を変え、逃げるように雪山へと戻って行った。

すみませんでした。と、書かれた看板を残して。

 

「よし、一件らくちゃく! 帰ーんべ」

 

武天神師が帰ろうとする、がそうはいかない。

 

「アンタ何してんのよ……」

 

ゴゴゴゴ……と、地面が唸る。

タツマキ大激怒である。

 

「え? 王様はいないし、もう良く無い?」

「そうね、変なのはもう居ないし、手柄を取られた事も見逃してあげる」

「そうか、なら───」

「でもッ!」

「!?」

 

「アンタが私のパンツ見たことは許さないから」

 

そう言ってタツマキはニコリと年相応の笑みを浮かべ、

 

「特別に本気見せてあげる」

 

次の瞬間、大地がヒックリかえった。




なんか俺が考えてたのと違う。
おれが何言ってるかわからねーと思うが、安心しろ。
俺自身が何言ってるかわかんねーよ。


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