彼ら彼女らは青春を謳歌する……? (えーく。)
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こうして彼ら彼女らの物語が始まるのか.............な?





『朝』

 

それは生きていれば誰にでも平等に来るものであり、来て欲しくなくても来てしまうものである。

 

 

???「お兄ちゃーん!朝だよー!起きてー!」

 

八幡「んあ……?わかってるわかってる……あと…五日…」

 

 

俺の事をお兄ちゃんと呼んでいるのは、俺のめちゃくちゃ可愛い妹、比企谷小町である。

 

 

小町 「何もわかってないじゃん!あと、そんなに寝てたらお兄ちゃんと喋れなくて悲しい……あ、今の小町的にポイント高い♪」

 

 

八幡「はぁ、最後のが無かったらな………おはよう」

 

 

小町「おはよー!早く着替えてリビングに来てね!朝ご飯出来てるから」

 

 

八幡「おう、サンキュ。いつも悪いねぇ」

 

 

小町「それは言わない約束でしょ?そういう時は『愛してる』でいいんだよお兄ちゃん」

 

 

八幡「そうか……愛してるぞ小町」

 

 

小町「小町はそうでも無いけどありがとうお兄ちゃん♪」

 

 

八幡「酷い…」

 

 

タッタッタッと小町はリビングへと向かった。

さぁてと、俺も着替えて愛しの小町の朝ごはんを頂きますか…

 

 

×××

 

 

着替えを終え顔を洗いリビングに着くと、

 

 

小町「おー、お兄ちゃん、新しい制服似合ってるね!」

 

 

八幡「そうか?でも、小町の制服も中々似合ってるぞ。あと、めちゃくちゃ可愛い」

 

 

 

そう、俺は今日から高校生、小町は中学生になるのだ。

なので、中学生とは違う若干違和感のある制服を着ているのだが小町的には似合ってるそうだ。

…お世辞じゃないよね?

まぁ、それは置いといて、小町を見てみる。

うん、やっぱり可愛い。流石は小町。

シスコンではない、ただ小町を愛してるだけ。

 

 

小町「おおおおおお、お兄ちゃん!?大丈夫!?熱でもあるの!?」

 

 

慌てふためく我が妹。

熱…?いや、ないけど出したい。

入学式絶対行きたくない。

 

 

八幡「ねーよ。そんなことより、ご飯食べるぞ」

 

 

小町「お兄ちゃんが急に褒めるからだよ!!どこでそんなスキル覚えてきたの!?」

 

 

座りながらも、「わたし、気になります」と

言わんばかりに顔を近づけてくる。

 

 

八幡「ばっかお前、妹専用特殊スキルだっつーの。俺はいつだって小町には正直に全力で褒めるぞ?…お、今の八幡的にポイント高い」

 

 

小町「うわぁー、小町のこと好きすぎでしょ。高校生になっても相変わらずシスコンだね」

 

 

引くわーと先程の興味津々の態度を無くす妹。失礼なヤツめ!

 

 

八幡「シスコンじゃねーっつーの。それより早く食べるぞ。」

 

 

八幡、小町「「いただきまーす」」

 

 

×××

 

 

 

美味しい美味しい小町の朝食を頂き、学校に行く準備も終わらせる。

小町の通う羽丘中学校は、俺より入学式の時間が早く、先に家を出ていた。

 

 

 

八幡「さてと、俺も出ますかね…」

 

 

そろそろいい時間なので、出ようかと靴を履こうとすると、

 

 

???「ニャァ」

 

 

後ろを見てみると我が家の愛猫、カマクラの登場である。

 

 

カマクラ「………」

 

 

八幡「もうこのまま、ずっとお前を撫でて入学式バックれてーな」

 

 

 

だけど、バックれたら小町や母さんに怒られてしまいそうなので仕方なく家を出る。

 

 

 

×××

 

 

高校生のいい所は自転車で通勤してもOKってところだよなー、と自転車で坂道を下りながら思う。

 

 

自転車を走らせる事数分後、大きい荷物を持って歩いてる女性がいた。

1人で持つにはかなりキツそうで、不安定な持ち方で数歩進んでは1度地面に下ろしてを繰り返し歩いている。

コレはチャンスでは?

俺はすぐ近くの公園に自転車を止めてお姉さんに声をかけることにした。

…………ナンパじゃないよ?

 

 

八幡「あ、あの〜?もし、良かったら手伝いましょうか?」

 

 

別に俺は善人だから助ける!なんてことは全く思っていなし、善人とは程遠い存在だ。

ただ、今日の入学式には行きたくない為に、遅れる理由を作らせて貰ったに過ぎない。

寧ろ感謝する方である。

 

俺の言葉を聞いて、1度荷物を降ろし、コチラを向く。

 

 

お姉さん「君は……?あ、その格好は花咲川高校の生徒だね?」

 

 

そう、俺は今日から花咲川高校の生徒なのである。

まぁ、ここからは20分程で着く距離なので、この人は花咲川高校を知っていたそうだ。

 

 

お姉さん「どうしたの?迷子?

1年生なら入学式今日だから遅刻しちゃうよ!」

 

 

今日が入学式ってことも知ってるのか…

まぁ、近くに住んでればそれとなくわかるか。

 

 

八幡「い、いえ、俺は高校2年生です。2年生は委員会の人以外は入学式出ないので今日は学校ないんです。」

 

 

お姉さん「あ、そうなんだね!

あれ?じゃあなんで君は制服着てるのかな?見た感じ制服も新品に見えるけど…」

 

 

くっ…!確かに辻褄が合ってない。

学校ないのに制服を着てて、2年生なのに制服新品じゃあ怪しまれても仕方ない。

ならば…

 

 

 

八幡「この格好なのは、さっきまで入学式の準備をやっていたんです。制服はサイズが合わなくなって今年から新調したんですよ。」

 

 

完璧すぎじゃないか俺。

少し罪悪感を覚えるがお互いのWin-Winの関係を築くには仕方あるまい。

 

 

 

お姉さん「そうなんだね!私誤解しちゃったよ!ごめんね!

じゃあ、私に声をかけたのはどうしてかな?」

 

 

 

いや、なんかすいません。

誤解じゃないんです。俺、高校1年生で入学式出なきゃ行けない人なんです。

でもサボれる理由として、手伝わせて貰います。

ほんとすいません。

 

 

八幡「え、えーとですね。その荷物とても重そうだったので手伝いますよ!」

 

 

お姉さん「ほ、ホント?それはすごく助かるけど〜、でも〜、うーん。」

 

 

見ず知らずの人に頼るのは申し訳ないと思ってるのだろうか、凄く悩んでいる。

気にしなくていいんですよ!てか、手伝わせて!

 

 

八幡「2人で持てばすぐ終わりますよ。俺が右側を持つので左側お願いします。」

 

 

無理やり言ってしまえばこっちのもんである。

 

 

お姉さん「あ、うん。ありがとね!凄く助かるよ!じゃあ行くよ、せーのっ!」

 

 

八幡(重っ!!何だこれ、こんなの1人じゃ持てないだろ!この人ムキムキになりたいの?筋トレしてたの?)

 

 

 

×××

 

 

会話もする余裕もなく、ただひたすらに重いという言葉が頭の中で響き渡ってる。

 

 

お姉さん「着いたよ〜、ココだよ!」

 

 

 

やっと着いたかぁー、疲れたぁー、もうダメだぁー。

それで………ここ?コレは……お店?結構デカくないか?

 

 

LIVE HOUSE

CiRCLE

 

……らいぶはうすさーくる?

と書かれていたお店に着いた。

まだ営業時間では無いのか、入り口の扉には

『CLOSE』と書かれている看板があった。

その隣にも売店?らしきカフェもある

 

八幡「あ、あのー?此処はライブハウスなんですか?」

 

 

お姉さん「そうだよ!CiRCLEっていうライブハウスなんだ!」

 

 

まぁ、英語で書いてあるからだいたい分かってたけど念の為聞いてしまった。

でかいな………

それにすげーな。入口前の地面を見たらギターらしきマークがある。

 

 

 

お姉さん「この荷物を中に入れたいから…後ちょっとだけよろしくね!」

 

 

八幡「わかりました。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

店内に入ってみると、結構……いや、かなり広い。

楽器、ポスター、テレビ、音楽に関する雑誌、椅子やテーブル、レジetc.....

 

俺は人生でライブハウスに入った記憶はない。

初めて見る景色に、目線がキョロキョロとあちらこちらを見ていた。

 

 

お姉さん「この荷物は楽器だから、スタジオに運ぶんだ。コッチだよ」

 

 

 

そして、スタジオに入りお姉さんが明かりをつけると、そこには広いスペースと、周りには楽器が沢山あった。

機材など色々あり初めて見てもここが、演奏の練習をする所なんだとわかるくらいだ。

 

 

お姉さん「ココでいいよ!本当にありがとう!凄く助かっちゃった」

 

 

八幡「よっ……と」

 

 

言われた通りに荷物を降ろす。あー、重かった。

まぁ、楽器ならこの重さにも納得出来る。

この人はこれを1人で運ぼうとしてたのか…

まぁ、無事に運べてよかった。

ぶつけて壊してたら、弁償物だったわ…

危ない危ない。

 

 

八幡「じゃあ、自分はこれで失礼しますね?」

 

 

お姉さん「待って待って!お礼させて!そのカフェで飲み物奢るよ!」

 

 

八幡「いや、自分が勝手に手伝っただけなので。お礼はいりませんよ」

 

 

お姉さん「そういう訳には行かないの!

ほら行こう」

 

 

そう言って俺の右手を引っ張るお姉さん。

柔らかい!じゃなくて、ちょっと自分の手汗が気になるので離して貰えません?

 

 

 

×××

 

 

八幡「すいません。ありがとうございます」

 

 

お姉さん「お礼を言うのは私の方だよ!本当に助かったからね!」

 

 

「甘いの大丈夫?」とお姉さんに聞かれたので「大丈夫ですよ」と答えたら、桜のラテを渡された。

桜シリーズは春季限定!と看板に描かれていた為、飲むなら今の季節ではないと飲めないらしい。

 

 

八幡「そう言えば聞きたかったんですけど、なんであんな大きい荷物を1人で運んでたんですか?」

 

 

明らかに女性1人じゃ無理だと思う。

男性でも限られた人じゃないとキツイだろう。

 

 

お姉さん「あー、それはね。送料代とかそういうお金があまり出せないらしくてね。

CiRCLEも出来てからそこまで経ってないから働いてる人も少なくてね。

今絶賛募集中なんだけど全然人が来なくてね。」

 

 

なるほど…

結構深い事情だったのか。

聞かない方がよかったのかもしれない。

 

 

八幡「そ、そうなんですね。大変だと思いますが頑張ってください。」

 

 

グイッと飲み物を全部飲み終え、そろそろ退出しようかと試みる。

すると…

 

 

お姉さん「あ!そうだ!!」

 

 

突然のお姉さんの大きな声によりビックリし、心臓が跳ねた感覚になる。

心臓跳ねた感覚とか知らないけど……

なんだよ。思った以上に冷静じゃねーかよ俺。

 

 

お姉さん「君はバイトやってる!!?やってないならココで働かない?お願いだよ〜」

 

 

閃いた内容はなんと俺への勧誘……てか最後お願いしちゃってるし。

……ふむ。バイトか。高校生に入ったら即やろうと思ってたので悪くない相談である。

俺のこの目じゃ面接受かるのに、数週間……あるいは数ヶ月バイトをひたすら応募して、下手な鉄砲かずうちゃ当たる作戦を実行しようと思ったくらいだ。

 

 

お姉さん「お願い!!面接だってしないし、CiRCLEが有名になって、売りあげが上がったら、給料だって上げて貰えるよう交渉するし、テスト期間とかはしっかりと休ませてあげるから!」

 

 

八幡「やります。是非やらせて頂きます。」

 

 

 

くっ。そんな事言われたらやるしかない!

セールとかお得とかそういう言葉に弱い俺!

この人策士だな。

 

 

 

お姉さん「ホントに!?わー!ありがとー!」

 

 

 

目の前で子供のようにはしゃぐお姉さん

どんだけ人足りてないんだよ。

わー、ブラックな気しかしない。やっぱりやめとけばよかったかな…

 

 

お姉さん「いつから働ける!?明日は!?

あ、そう言えば名前まだ言ってないよね!

私は月島まりな。

まりな、とかまりなさんって呼んでくれると嬉しいな。このライブハウスのスタッフをしてます!」

 

 

色々と忙しいな…

月島さんって呼んじゃダメなのだろうか。

 

 

 

八幡「俺は比企谷八幡です。花咲川高校の1年生です」

 

 

 

 

まりな「比企谷八幡君ね。………えっ!1年生!?」

 

 

 

あ、やっちまった。

そう言えば今日、1年生は入学式あるから、2年生と嘘を付いて手伝いをしたんだった。

 

 

 

八幡「あ、えーと、その……う、嘘を付いてた訳ではなくてですね!」

 

 

 

まりな「今日入学式だったんでしょ!?大丈夫なの!?いや、大丈夫じゃないよ!!

本当にごめんね!私のせいで行けなくなっちゃって………」

 

 

 

おっとー……めちゃくちゃ心が痛む。

言えない!入学式行きたくなかったからサボる理由作りのために手伝ったなんて!

ごめんなさい!

 

 

八幡「いや、もう全然気にしなくていいっすよ!!

そ、それよりっ!!あ、明日から行けますよ!持って行くものとかあれば教えてください」

 

 

少々無理矢理話を変えたがこの人なら行ける気がする。

 

 

まりな「え、明日からいいの!?凄く助かるよ〜。持って行くもの…………あ!顔写真はいらないから履歴書だけ書いてくれるかな?

一応オーナーにも手続きが必要だからね。

あと、学生証と通帳かな。」

 

 

うん。やっぱり人少ないのね。

食いつきすぎてさっきの話完璧に忘れちゃってるし……

 

 

 

八幡「わ、わかりました。じゃあ、明日行きますが時間は何時にした方がいいですかね」

 

 

 

まりな「うーんとねぇ……あ、明日は少し用事があるから………14時くらいでどう?」

 

 

八幡「分かりました。では14時頃にまた来ます。」

 

 

まりな「うん!今日は本当にありがとね〜!」

 

 

八幡「こちらこそありがとうございました。ご馳走様です。」

 

 

 

カフェで月島さんに挨拶をし、我が家へ帰る。

いやー、まさか高校生初日にバイト決まるなんてな。

入学式も行かなくて済んだし。素晴らしいな

 

 

 

八幡(ようやくバイトが出来るな…

コレである程度楽になればいいんだけどな)

 

 

 

 

×××

 

 

 

八幡「たでーま」

 

 

 

もう疲れた。早く布団にダイブしたい

靴を脱いで、目的地の布団に向かうと…

 

 

 

小町「お兄ちゃん!!」

 

 

八幡「!?」

 

 

ビックリしたー。

そうか、入学式もう終わってるよな…

もう午後だし、俺の事を心配してたのかな?

ったく、小町は可愛いな!

でも、そんなに大きな声出さなくても聞こえるぞ。

 

 

八幡「おぉ、小町、早かったな。そんなに慌ててどうした?」

 

 

 

小町「どうした?じゃないでしょ!!なんで入学式サボったの!!」

 

 

 

八幡「え?」

 

 

 

ななななななんで、バレてんの!?

俺、小町に言ったっけ!?

いや、確実に言ってない……はず。

ま、まさか、俺達の兄妹愛がテレパシーを引き起こして……

 

 

 

小町「なんかくだらない事考えてる顔してるから言うけど、さっきお母さんから連絡きてたんだよ。

[学校から『今日はお子さんの八幡君はお休みなんですか?』って連絡があったんだけど今、八幡はいる?]って」

 

 

 

…………やっちまった。

そりゃそうだよな…入学式早々休んだら連絡いくに決まってるって。

 

 

い、いや、待てよ!

サボった理由はちゃんとある!

バイトの事も説明すれば証拠にもなる!

勝ったな。

 

 

 

 

八幡「あー、話すと少し長くなるからお袋が帰ってきたら話すわ」

 

 

 

小町「言い訳するのはお兄ちゃんの勝手だけど小町的にはポイント低いよ?」

 

 

八幡「言い訳しないっつーの。」

 

 

まぁ、そう思われても仕方が無いのだが……

まぁいいか。

履歴書書こ。

 

 

 

小町「小町、お兄ちゃんが休んだ理由分かった!」

 

 

 

八幡「…………多分間違ってるだろうけど聞いてやろう妹よ。」

 

 

当てたら凄いとしか言い様がないんだけど。

 

 

小町「ズバリ!入学式でお兄ちゃんがやる、1年生代表の言葉をやりたくなかったから!」

 

 

 

あー、うーん。惜しい!てか、正解でもいいレベル!

でもそれだけだと俺が休んだ理由にはなってないな。

 

 

八幡「小町……………ハズレだ。」

 

 

 

小町「えーーー!うそだーーーー!あんなに家で「やりたくない!

やりたくない!生徒代表の言葉ってなんであんの?」とか言ってたじゃん!」

 

 

 

八幡「いや、確かに言ったけどそれが休んだ理由じゃないんだよ。」

 

 

『生徒代表の言葉で目立つのが嫌だから、入学式をサボるために月島さんを手伝った。』

コレが満点回答だが分かったら怖い。ストーカー説あり。

 

まぁ、これで無事に明日から学校に行けるな。

あー、気が楽になったぜ。

生徒代表の言葉って俺が休んだら他の奴がやるのだろか……?

まぁ、どうでもいいか。

 

 

 

×××

 

 

 

とある家では…………

 

 

 

???「あー、ホント最悪だー!!」

 

 

???「これも全部比企谷八幡ってやつのせいだ!!」

 

 

 

〜回想〜

 

 

 

今日は入学式。

他の生徒達はすごくはしゃいでる。

もう友達が出来たのか、中学が一緒の人なのか。

まぁ、私には関係ないんだけどな。

それにしてもうるせー、朝からなんでこんなに元気なんだ?と呆れるレベル。

 

 

 

先生「見つけた!市ヶ谷さんちょっといいかな!?」

 

 

下駄箱で上履きに履き替えていると後ろから先生が息を切らして私に聞いてくる。

………見つけた?私を捜してたってこと?なんで?

まぁ、断る理由もなく先生に着いていく。

 

 

 

先生「いやー、ごめんね?急に呼び出して」

 

 

有咲「いえ、大丈夫ですよ。それで私になんの御用でしょうか?」

 

 

純粋に気になる。

問題なんて起こしてねーし、入学試験だって総合で2位だったぞ??

ましてや、今日から登校なのに問題どうこうの話じゃない。

呼ばれる理由が見つからねーし。

すると先生は少し気まずそうな表情で口を開く。

 

 

先生「市ヶ谷さんにお願いがあってね。

今日の入学式で行われる生徒代表の言葉を市ヶ谷さんにやって欲しいの!!」

 

 

 

有咲「…………え?」

 

 

生徒代表の言葉ってアレだろ?入学試験1位の奴が行うアレ。

 

私は入学試験終わったあとに生徒代表の言葉があることを思い出して、復習したらほぼ満点に近い点数を取っていた。

だから私が生徒代表の言葉を言わなきゃいけないのかもと心配していたが、点数発表を見に行くと2位だったから安心はできた。

だけど、なんだかんだ自分が1位だと考えてたから少し恥ずかしかった………

 

って今はそんなことどうでもいいんだ!なんであたしが生徒代表の言葉を!?

 

 

 

有咲「えっと………私は総合点では2位だったのですが……」

 

 

先生「うん。本当は比企谷八幡君って子が生徒代表の言葉を言う予定だったんだけど………まだ来てないの。」

 

 

有咲「………え?

あと5分で入学式ですよね?」

 

 

先生「うん。だから市ヶ谷さん!代わりによろしくね!

生徒代表の言葉で市ヶ谷さんお願いしますって言うからそしたら前に来て!じゃあ、お願いねー!」

 

 

有咲「は!?え、ちょっと!?あの…………」

 

 

物凄いスピードで先生は行ってしまった。

 

 

 

…………私は、一体どうなるんだ?

 

 

 

 

 

〜回想終了〜

 

 

そして入学式で、本当に生徒代表の言葉で名前を呼ばれたので、

絶望しながら舞台に上がると「生徒代表の言葉」と書かれてある紙を見つけた。

【追記 急なお願いでごめんね!文章は先生たちが考えたから読むだけでいいからお願いします!】

 

この紙が無かったらやばかったな。

でも、それでいいのか花咲川…………

そして、無事に入学式も終わった。

 

 

有咲「私は目立たずに学校生活を送りたかったのに、早速目立ったじゃねーか!」

 

 

有咲「めちゃくちゃ恥ずかしかったし!

噛んだらどうしようとか思っちゃったし!」

 

 

もうほんと最悪だった。

全部比企谷八幡のせいだぁぁぁぁ!

 

 

 

 

 

 

 



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クラスに1人くらいは何かしら飛び抜けた奴がいるものである。

 

 

 

怒ってる人が目の前にいると、人はどのように思うだろうか?

まず、怒ってる人を確認するだろう。

そして見覚えがあったり知り合いなら、原因を探してみると思う。

ココで原因が分かれば、謝るなど対処をしていくと思う。

原因がわからない場合もあるだろう。

人は生きてるだけで他人に迷惑や怒りを買われることだってある。

そういう時はもう仕方なく謝るしかないのだ。

 

 

 

八幡「お帰りなさいませ母上様!そして今日はすいませんでした!」(土下座)

 

 

 

お袋が仕事から帰ってきて、第一声である。

最初から謝っておいて、後に仕方がないような理由を話しつつ、土下座も決め込めば向こう側も怒るに怒れないだろう。

 

 

 

母「ただいま。怪我とかじゃなくて安心したよ………

じゃあ、どんな理由があったか聞こうか」

 

 

 

こ、怖いよ怖い、あと怖い。

まぁ、入学式サボるのは問題児扱いされてもおかしくないからな。

心配してくれているのだろう。

 

 

 

八幡「そ、それはですね……」

 

 

 

今日の出来事を話した。

バイトを始めることも伝えると………

 

 

 

母「……はぁ。なるほどね…………

まぁ、バイトの件があるなら嘘をついてないということはわかったわ。

でも、あんたも実際ラッキーとか思ってたでしょ」

 

 

八幡「やだなー。そんなことあるわけないじゃないですかぁー」

 

 

ほんとほんと。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

まぁ、運は良かったのかもな。

入学式にも出ないで、バイト先が見つかるとはな。

でも、ブラックな匂いが………

 

 

 

母「………でもね、八幡。働いてくれるのはすごく助かるけど無理しちゃダメよ?高校生なのだから、友達もしっかりつくって楽しんで欲しいの。」

 

八幡「俺は1人でも充分に楽しめてるし、無理もしてないから問題ない。高校で出来る友達なんてのは、卒業したら大体の奴は連絡もしなくなり、会わなくなるだろうしな。」

 

 

無理に友達は作るものじゃない。

友達が多いのはステータスになるとは思うが、そんなステータスそもそも俺に必要ない。

 

 

母「…………小町?絶対にこういう人間にはなってはいけないわよ?確かに言ってることは否定出来ないけど、私だって数人は今でも連絡取ってる友達がいるのだから」

 

 

小町「だいじょーぶであります!!

小町はお兄ちゃんと違って友達沢山いるから!」

 

 

八幡「おいおい小町ちゃん?

ぼっちと友達の数比べて勝っても誇らしく思ってはいけないぞ?

勝って当たり前なのだからな!」

 

 

小町「なんで負けてるお兄ちゃんが誇ってんの…………」

 

 

お袋と小町に呆れられてる目で見られる。

あれ?いつから俺の事を虐める展開になってたの?家族の絆でテレパシーしたの?

俺がその絆に入ってないのは気の所為だよね?

 

 

 

八幡「つ、つまりだな。

………バイトで家に帰るのが遅くなっちまうが、大丈夫か小町?」

 

 

小町「小町の事心配してくれるのはポイント高いよ!

でも小町も、もう中学生なのです!

お家で勉強とかやることもあるし、寂しくなったりしたら友達の家とかで遅くまで遊ぶから心配しなくても大丈夫だよ」

 

 

………ホントにたくましいな。

俺と違ってコミュ力あって仲のいい友達も沢山いる。

家事も得意し、頭もかなり良く、それに可愛いときた。

………え、小町ってマジで最強なんじゃねーの?

小町=最強説は経った今証明されてしまったな。

 

 

母「本当に立派に育ったわね。お母さん嬉しいわ。

それで、八幡は明日から早速仕事なの?」

 

 

八幡「いやわからん。とりあえず履歴書だけ持ってきてって言われたから持ってく。」

 

母「そう。あ、ところで聞くの忘れてたけど何をするバイトなの?」

 

 

小町「小町もそれ気になってたー!」

 

 

そう言えば話してなかったな。

いや、でもなんかこう……言いづらいな。

 

 

 

八幡「あー、CiRCLEっていうライブハウスで働く事になった。」

 

 

母、小町「「……え」」

 

 

 

2人は驚いた顔をする。

仲良いっすね。

 

 

母「……………あんた……やっぱり……」

 

 

八幡「じゃあ俺、明日の準備と勉強とかしなきゃ行けねーから」

 

 

重たい空気を背に感じつつ、早々とリビングから出て明日の準備に取り掛かる。

明日から高校生活か……

まぁ、中学生でやった事と変わらんな。

場所と名前と人が変わっただけ。

バイトと自転車通学が出来るのなら有難い。

 

 

 

勉強とバイトの両立。

俺に出来るかね…………

 

 

 

×××

 

 

翌日の朝

俺は今学校に着き、自分のクラスに行きたいのだが………そもそもクラスがわからん。

入学式出なかったからどこが何の教室とかもわからん。

詳しい教室とかは今日教えてもらうだろうけど、流石に自分の教室分からないのは不味いな。

まぁ、職員室行けば分かるか。

 

 

 

 

職員室は行ったことがある為、すんなり辿り着けた。

ちょっと緊張するけど遅刻はしたくないし行くか。

自分に気合を入れ、扉をノックする。

 

 

八幡「し、失礼します。1年の比企谷八幡です。昨日の入学式に出れなかった為、自分のクラスを聞きに来たのですが……」

 

 

先生「あー、ちょっと待っててね。

えーっと、ひきがや、ひきがや……あ、あった。

比企谷八幡君…………君は1年C組だね。

はい、このプリントに教室の場所が載ってるから渡しておくね」

 

 

八幡「はい、ありがとうございました。それでは失礼します」

 

 

扉をゆっくりと閉める。

結構すんなりといって助かった。

1年C組か……静かなクラスだといいな。

 

 

×××

 

 

先生「皆さんおはようございます!!

今日からこのメンバーがクラスの人達です!

それでは!!

早速だけど自己紹介やろっか!」

 

 

 

来たな…………自己紹介。またの名を事故紹介。

このイベントでは、共通の趣味や、関わりやすい系の人間だとか色んなレッテルを貼られる。

 

 

人間は第一印象が大事とよく言われる。

まさにその通りだ。

話したり遊んだりすれば、「あ、この子普段はあまり喋らないけど好きなものとかはすごく喋るタイプなんだな」などと、印象が変わるかもしれないが、

話さない人や関わらない人からしたら、第一印象でしかその人を評価できない。

常に出来上がってしまった評価を変えることは凄く難しいことなのである。

人が人を評価するのは、加点方式でも減点方式でもない。

固定観念と印象でしかものを見ない。

 

 

つまり、俺がこの自己紹介でやることは1つ。

関わりにくい人をしっかりとアピールすることだ。

 

 

 

先生「それでは、奥沢美咲さんから自己紹介お願いします!」

 

 

 

美咲「……あ、はい。えーと、奥沢美咲と言います。

趣味は、裁縫ですかね。 妹がいるんですが、羊毛フェルトとか作ってあげたりしてます。

あと、その、運動が割と好きなので運動部に入ろうと思ってます。

1年間よろしくお願いしまーす」

 

 

 

先生「はい。奥沢さんよろしくね!それでは次………」

 

 

 

どんどん自己紹介が終わって行く。

おー、あまりウェイ勢は居ないらしいな。

非常に助かる。静かに授業受けたいからな。

中学の時はマジでうるさい奴らが沢山いたからな。

コレは少し期待出来るのではないだろうか?

 

 

 

先生「はい。ありがとうございます。

次は………弦巻こころさん!お願いします」

 

 

こころ「わかったわ!!それじゃあ………

みんな〜元気かしら!私はすっごく元気よ!」

 

 

突然、弦巻こころという女の子が席を勢いよく立ち、大声で発言する。

 

 

こころ「私の名前は弦巻こころよ!好きな食べ物はぜーんぶ!

特技は……そうね!走る事や、歌うこと、バク転も得意だわ!まだまだあるわよー!!

あ、それと好きなものは笑顔よ!あと、絵本も好きだわ!

それと……」

 

先生「つ、弦巻さんありがと!時間もあるから残りは授業が終わって放課後になったらみんなに話してね」

 

 

 

こころ「それもそうね!ん〜!!

放課後が楽しみね!」

 

 

おいおいなんだよ、あの弦巻こころとか言う奴………

早速俺の願いがぶち壊された気がする。

それにしても元気すぎるだろ。

アイツと関わったら絶対に面倒な事になりそうだな。

まぁ、俺と関わる事はないだろうがな。

授業中は静かにしてくれることを願おう。

 

 

先生「はい次は、比企谷八幡君」

 

 

俺が思考をねりねりしてた間に、もう俺の番か……

まぁ、名前言ってよろしくで終わりだ。

5秒もかからん。

 

 

 

八幡「比企谷八幡と言います。

よろしくお願いします」

 

 

ふー、終わったぁ。

少し緊張したが噛めずに言えた。

 

 

先生「え、えーとそれだけですか?」

 

 

八幡「え、あ、はい。他に話すこともありませんので。」

 

 

自己紹介なのだから、最低限名前さえ言えばいいと思うんですよ。

趣味とか話すのはその人の自由だし。

 

 

先生「え、えーと、じゃあ皆さんは比企谷君に聞きたいことありますか?」

 

 

ナンデソウナル?

くっ。この先生はきっと優しい人なのだろう。

だがその優しさのベクトルを変えて欲しかった………

 

 

こころ「はいはーい!私が質問したいわ!」

 

 

………うん、わかってた。きっとお前だろうって思ってた。

仕方ない。ほら質問しろよ。

俺しか答えられないもんな。

………なんか凄い人の気分になった感じだな。

ゴッド比企谷と言われるのも時間の問題だろこれ。

 

 

こころ「あなたの目はなんでそんなに腐ってるのかしら!私すっごく気になるわっ」

 

 

『『あはは、弦巻さんストレートすぎ笑』』

 

 

「「確かにそれは思ったけどさw」」

 

 

のっけからいいパンチ打ってくんなーコイツ…………

そんなに腐ってますかね?

てかお前の目はキラキラしすぎなんだけど?

光ってる目もいれば腐ってる目だっていてもおかしくないだろ。

 

 

八幡「えーと、コレはデフォr「趣味は何かしら!それと、好きな食べ物!」…ル……ト」

 

 

質問したのキミだよね?

なんなの。質問っていくつあんの。

てか、今答えようとしたよね?

聞く気ないなら質問しないで貰えますかね…………?

 

 

×××

 

 

先生「今日はここまで!来週からは授業が始まるので、ノートを買っておくことと、教科書などは忘れないようにね!」

 

 

「「「さよならー」」」

 

 

 

今日は自己紹介と、学校の教室紹介で終わり。

授業という授業はなく午前で帰れる素晴らしい日だ。

まぁ、来週から授業始まるんだけどな………

 

 

こころ「みんなー!来週また会いましょ!」

 

 

「ばいばーい」「弦巻さんまた来週ね」

 

 

弦巻は笑顔でクラスの奴らに手を振っている。

自己紹介の質問の時のアイツはヤバかった。

どれくらいヤバイかと言うと、もうめちゃくちゃヤバイ。

目が腐ってるから始まり、好きな食べ物やら色、動物に花。

あまりにも多い質問をされた。

結局時間が来てしまいアイツの質問には答えていない。

てか、そんなに聞くなよ。個人情報保護法って知らないの?

まぁ、もう喋ることはないだろうし良しとするか。

さぁて、CiRCLEに行くとするか……と廊下に出たその時だった。

 

 

こころ「八幡!放課後よ!さっきの質問に答えてくれるかしらっ、もっとお話しましょ!」

 

 

「ガラララララバンッ!」

 

 

 

…………ナンカイタ。

 

 

 

教室から出なきゃ行けないのに、自分を教室に残して閉めちゃったよ。

教室にいたのが俺だけでよかったわ。

てか何あれ。なんで居んの?さっきみんなにお別れして帰ったんじゃないの?

……え、じゃあ何?俺には別れの挨拶してなかった的な?

みんなに含まれてなかったのね俺。

あとなんで下の名前で呼んでんの?友達なの?

………気のせいかもしれないと意を決して扉を開けてみる。

 

 

こころ「急に扉を閉めるからビックリしたわ!何かいたのかしら?」

 

 

と自分の後ろをみる弦巻………

やっぱりいますよね。

てかお前の事だよ。後ろ見ないで鏡見て来い。

 

 

八幡「え、えーと、俺、これから予定あるから……」

 

 

勿論嘘ではないので、罪悪感などこれっぽちもなく弦巻に背を向けて歩き出せる。

まぁ、用事がなくても何かしら言って帰ってたけどな。

すると横から、俺を越すように走ってくる少女……。

くるりとこちらを向くと、

 

 

こころ「歩きながらでも構わないわっ!

あなたのこと知りたいの!」

 

 

そう言って笑顔を見せてくる。

ーーーー不覚にも見惚れてしまった。

端正な顔立ち。眩しい笑顔。クラスの有象無象の女子達と同じ制服を着ているはずなのに、まるで違って見えた。

 

 

こころ「それにあなたの目やっぱり気になるわ!よく見せて!」

 

 

……………うわぁ、今ので目が覚めたわ。

危うく見てくれに騙されて勘違いするとこだった。

あなたのこと知りたいって目の事ね。

てかコイツどんだけ目が気になってんの?

コレクターなの?集めて家に飾っちゃうの?

怖いから他を当たってくださいごめんなさい。

 

 

八幡「やべーわ、急がなきゃ行けねーわ!じゃあな!」

 

 

一目散に自分の靴がある下駄箱へとダッシュする。

きっとコイツはアレだ、話が通じないタイプ。

何を言ってもダメなら逃げるしかない。

逃げるが勝ち、逃げるは恥だが役に立つって言うだろ?

逃げるって素晴らしいなおい。

 

 

下駄箱に着き靴を履く。そして校庭を出た途端………

 

 

こころ「鬼ごっこかしらっ、負けないわよっ」

 

靴を履いていて、すぐそこまで来ていた。

なんでいるんだよ。追いかけてくんなよ。

 

 

八幡「てか、もう、ハァハァ、げん、ハァ、かい……」

 

 

こころ「ターッチ!!次は八幡が鬼よ!私を捕まえられるかしらっ!」

 

 

………とんでもない速さで学校から出て、見えなくなって行った。

バカで助かった。

 

 

×××

 

 

学校からCiRCLEは別段遠くなく、歩いて行ける距離である。

まぁ、俺は自転車だけども。

 

 

 

CiRCLEに着き、自動扉が音を出し開く。

 

 

八幡「こんにちはー」

 

 

まりな「……あ、来た来た。こんにちはー!

待ってたよ八幡君!」

 

 

手をぶんぶん振って迎えてくれる様子はまるで、大好きな飼い主の帰りを懸命に待つペットのようだ…………

まぁ、カマクラは俺が帰ってきても興味無さそうだがな。

 

 

まりな「じゃあ早速仕事教えるからね!

しっかりと覚えるように!」

 

 

わー、すっごいノリノリ。やはり人が足りてないから人員が増えるのが嬉しいのだろうか。

てか、それよりも………

 

 

 

八幡「え、えーと履歴書とか確認しなくていいんですか?」

 

 

まりな「え、あ、うん!そんなのは書いてもらえばOKだからね!見なくたって採用だし!嘘の情報とか書いてないでしょ?」

 

 

 

いや、確かに嘘の情報とかは書いてないけどそれでいいんですかね。

まぁ、見て欲しいわけでもないからいいんだけどさ。

 

 

 

まりな「じゃあまず、具体的な仕事内容から説明していくね。

CiRCLEでは、ライブが出来たり、音楽スタジオがあってバンド練習にも利用出来たりするんだ。それと………」

 

 

あー、コレはアレか。ど素人がやるのは不味いバイトだったかな。

経験者じゃないとキツそう。

てか、凄い大変そうなんだけど。

まぁ、ここまで来たらやるしかないよな……

 

 

 

×××

 

 

 

まりな「はい!お疲れ様ー。

今日はここまでね!じゃあ続きは明日だね!

あ、そうだ!シフトとか連絡取りたいから連絡先教えてくれるかな?」

 

 

 

あー、疲れたー。

まぁ、でも確かに大変だが肝心のお客さんがあまり居ないからそうでもないと分かったな。

これから混むのだろうか?

それにしても…………連絡先?誰の?俺の?

始めて人から欲しいって言われたわ。

感動するわー。

 

 

八幡「えーと、すいません。

俺、自分のケータイ持ってないんですよね」

 

 

まりな「え!?そうなの!?」

 

 

凄く驚かれた。てか、有り得ないような目で現在進行形で見られてる。

そんなに驚く事ですかね………

確かにケータイはあって損は無いし、むしろ素晴らしいものかも知れん。

だけど俺には必要なかった。それだけの話。

母さんは連絡するのに必要だから持ちなさいって言われたけど、自分が働いた時に給料で買う!と断固拒否したから持ってない。

 

 

八幡「あ、はい。すいません。用意した方がいいんですかね………」

 

 

正直今すぐ買えと言われたら厳しい。

せめて1ヶ月後の給料を貰ってからにして頂きたいのだが…

 

 

まりな「いや、なくても大丈夫だよ!ごめんね!ちょっとビックリしちゃって!今どきの高校生は皆持ってるのかなーって思っちゃったからさ」

 

 

まぁ、確かに持ってない方が少ないのは調べなくても分かるだろう。

それでもゼロではない。俺がいるからな!

……やだ。俺ってばちょっとカッコイイかも。

 

 

まりな「じゃあ、一応なにか急な予定があったりしたらお母さんの電話番号にかけるね」

 

 

俺の母さんの電話番号知ってる……だと…?

あ、履歴書見たのか。ビックリしたわ。

 

 

八幡「わかりました。よろしくお願いします。じゃあ俺はこれで失礼します。」

 

 

まりな「うん!今日はありがとね!ご苦労さま!明日からもよろしくねー」

 

 

俺の初バイトは何事もなく無事に終わったが、学校の方は少し面倒くさそうな奴に目をつけられた気がする……

はぁ。早く帰って勉強しようかな。

 

 

……………あ。今日買い物頼まれてたの忘れてた。

家の電球が切れかかってるから、ビーキューカメラで買って来いって言われたんだった。

 

 

 

×××

 

 

お目当ての電球も買えたし、帰ろうかと思っていると、

小さな女の子がクマの人形を抱えて1人でうろちょろしてる。

 

 

「ママ………?ママ!!ママー!」

 

 

 

……………あれはいわゆる迷子ってやつだよな。

周りには人が………俺とこの子と店員しかいない?

店員がいるなら充分だろ。俺じゃあ力になれなさそうだし。

 

 

 

……………泣いてる少女に人が来ない。

店員さんも忙しくて見てないのか、ただ女の子が泣いてるだけかと思ってる。

違いますよー。この子迷子ですよー。

 

 

 

「うわーーーん!!ママーーー!!」

 

 

 

俺が行くしか無さそうだな。

 

 

八幡「え、えーと、大丈夫か?

迷子になったんだろ?お兄ちゃんが一緒に探してやるから」

 

 

「ひっ………!うわーーーん!怖いよーー!」

 

 

 

八幡「え、ちょっと!?」

 

 

やばいやばい。このままだと俺がヤバいやつと思われるぞこれ!

 

どうしようかと悩んでいると俺の目にある物が入った。

 

 

 

八幡「……………」

 

 

椅子に座り、指を当てる。

久しぶりだなこの感覚。

 

 

八幡「〜〜〜♪〜〜〜〜♪」

 

 

「…………グスッ。あ…」

 

 

俺はピアノを弾いている。

この階にはピアノが沢山置いてあり、弾けるものもあった。

本当は弾きたくなかったのだが、警察のお世話になるのはもっと嫌だし。

 

 

八幡「〜♪〜〜♪」

 

 

「みゆコレしってる!よーちえんできいたー!」

 

 

 

まぁ、小さい子が分かりそうなの弾いてるからな。

 

 

「なんかピアノの音聴こえない?」

「うん。すごく上手だよね?」

 

「ぼくこの歌うたえるよ!ようちえんでやってるもん!」

 

「とても綺麗ね」

 

 

???「……………!!!!」

 

 

 

人が結構集まってきた。

コレでお母さんが見つかってくれればいいんだけど……

 

 

 

「っ!みゆ!みゆっ!」

「あっ!ママっ!ママーーー!!」

 

 

お、見つかったようだな。

良かった良かった。

じゃあ俺も帰りますかね……

 

 

×××

 

 

 

迷子の件も片付いて帰宅している。

結構時間かかっちまったな。

小町に怒られないといいんだけど……

 

 

………それにしても久しぶりに弾いたな。

意外と弾けた事に自分でもビックリした。

 

 

八幡「もう弾く事は無いと思ってたんだけどな……」

 

 

ピアノの感触が指から離れるのには少し時間がかかった。

 



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金髪お嬢様にご注意ください

 

学校の休み時間と言えば授業が終わり、次の授業が始まるまでの時間である。

この休み時間の主な理由は、トイレや水分補給、移動教室の準備、自習、友達との会話etc……

学校でのルールを破らなければ別段何をしても構わない時間である。

俺も他の人とは変わらず、しっかりと休み時間を充実させてる………はずだったのに、、、

 

 

こころ「休み時間よ!起きてーー!

さあ!!何して遊ぼうかしら!!!」

 

 

ナンデイルノコイツ……………

 

 

俺の身体や机を揺らしているのは、机に伏せてる状態からでも分かる……

まぁ、声でも何となくわかるけど。

 

 

【弦巻こころ】

 

入学式が終わってから数週間が経ち、今ではクラスのグループやらカーストやらが徐々に決まりつつある。

そして、弦巻こころには………異名?あだ名?的なのもある。

《花咲川の異空間》

……うん。凄い名前だな。

誰が付けたかは知らないが割と広まってるらしい。

話す人もいない俺ですら、情報が入ってくるレベルだからな。

なんでそんな有名な人が俺に関わって来るんですかね。

 

 

八幡「起きてる。起きてるから。

だから揺らすのやめてくれますかね……」

 

 

そろそろ酔いそうなので、迷惑なんだよオーラを全開で頼んでみる。

 

 

こころ「起きたわね!じゃあ何して遊ぼうかしら!」

 

 

ダメかー。

まぁ、そうだよな。こんなので撃退できるなら苦労してない。

てか、なんで遊ぶ前提なの?俺には拒否権ないの?

本当に疑問だ。

自己紹介の日は話しかけられたが、それ以降は挨拶程度しか交わしておらず、それから1週間ほど経ってからは、ずっとこの調子で声をかけられてる。

放課後はバイトがあるからと言うと、「ならまた明日ね!」と別れ、朝学校に来るとHRが始まるまでずっと俺の机に引っ付いている。

おかげで俺は朝のHRの1、2分前に席に着くことを心がけるようになった。

だけど、休み時間は無理だな。

寝たフリも効かない………というか関係ないしなコイツには。

 

 

八幡「いいか?休み時間ってのはその名の通り身体を休めるためにある時間なんだ。

移動教室の時とかは仕方がないが、通常は水分補給やお手洗いを済ませたらしっかりと休むのが休み時間だ。

遊ぶための時間ではないから遊びません。

はい。分かったら自分の席に座って身体を休めてろ」

 

 

こころ「思いついたわ!にらめっこなんてどうかしら!」

 

 

………………えっ?

あれ?俺いま口に出してなかったっけ?

え、嘘!?今の俺の独り言!?

マジかよ。確かに特技だけど、今のは確実に弦巻に言った気がするんだけど。

 

 

八幡「遊ばないっつーの。」

 

 

こころ「休み時間は身体を休めるためにあるのでしょ?

私は誰かと喋ったりすると凄く休まるわ!

それに遊んだりすると元気も出てくるし楽しいわ!」

 

 

 

 

あ、良かったー!ちゃんと言ってたわ俺。

それにちゃんと聞いてたのね。八幡感心……じゃねーな。

てか、超理論にしか聞こえないし、

遊びは結局休みにはならないじゃねぇかよ…………

でもコイツが言うと心の底から思ってるのだと感じてしまう。

それほどまでに、彼女の笑顔は輝いていた。

 

 

八幡「あ、もう分かった!分かったから!

やればいいんだろやれば。じゃ『キーンコーンカーンコーン』あ………」

 

 

こころ「あら時間ね!それじゃあまた後でやりましょ!」

 

 

誰がやるか…………

 

 

×××

 

 

放課後になり、今日はバイトがなく家に真っ直ぐ帰ろうと支度していると……

 

こころ「さぁ放課後よ!遊びましょ!まずはにらめっこからね!」

 

 

出たな俺の平穏を脅かす悪魔め!

だが、放課後は俺の勝ちが決まってることをコイツはまだ理解していないのか。

コレだから凡人の脳は困るんだ。

 

 

 

八幡「悪いな。今日もバイトがあるんだ。じゃあな」

 

 

少し罪悪感が無くもないが、嘘をつかせて貰ったぞ。

今日はゆっくりと休み、勉強するんだ。

誰にも俺を邪魔はさせん!

 

 

 

 

こころ「今日はバイトないのよね!」

 

 

 

……………ヴェ?

 

 

こころ「黒服の人達が言ってたわ!あなたは今日バイトがないのよね!なら遊びましょ!」

 

 

 

……………ドウナッテンノ?

 

 

え、なんでなんで!?

なんで知ってんの?黒服?

kurohuku?クロフク?

誰だよそれ!?

まさか…………月島さんと知り合い……なのか?

それだと合点がいくが……

ちっ。まさか月島さんと知り合いだったのか。

あの人俺の情報を漏らすなよ………

でも、あの人黒服着てたか…?

とぼけるしか無さそうだな。

 

 

 

八幡「あ、あれ?そ、そうだったかなー?

………あ、ほんとだ!今日バイトなかったわ。

日にち間違えて見てたわー!サンキューな助かった!

じゃあな!」

 

 

こころ「困ったときはお互い様よ!じゃあ行くわよ!」

 

 

八幡「ま、待て待て引っ張るなって!行くってどこにだよ!」

 

 

にらめっこじゃねーのかよ。

 

 

×××

 

 

こころ「ふっふ〜ん♪ふっふ〜ん♪

どんなことしようかしらっ」

 

 

上機嫌で俺の前を歩く弦巻。

俺は学校を出て無理矢理、帰る道とは違う道へ連れられてきた。

もうほんと誰かタスケテ。

 

 

こころ「あ!そこのあなたっ。

ねえ、なにがいいと思うっ?」

 

 

「えっ、えーと、きゅ、急になんですか?」

 

 

こころ「なにって決まってるじゃない!楽しいことよ!」

 

 

八幡「いや、決まってねーよ。主語入れろよ。てか、楽しいことってなんだよ。」

 

 

 

もうほんとすいませんね……

名前も知らない人に心の中で謝罪する。

 

 

「なにって、ええっ。楽しいこと?」

 

 

「あ。大丈夫大丈夫。弦巻さんはいつもこうだから。日頃の『楽しいこと探し』だよ」

 

 

 

え、それって大丈夫なの?

てかいつもこんなことやってんの?

そんなに楽しさに飢えてんのかコイツ。

 

 

こころ「残念。思いつかなかった見たいね。

でも大丈夫よ!他の人にも聞いてみるわっ。

どうもありがとう!!」

 

 

八幡「俺は思いついたぞ。楽しいこと探し」

 

 

こころ「本当かしら!じゃあ早速やるわよ!何をするのかしら!」

 

 

八幡「俺は家に帰れればとても楽しい。

むしろそれ以外楽しくなる方法が無いまである。」

 

 

こころ「そうだわ!

いーーこと思いついた!行くわよっ。

ダッシュ、ダーッシュ!!」

 

 

八幡「おいちょっと待て!急に走るなっての!」

 

 

コイツたまに無視するよな……

あと、コレは前々から思ってたけどあえて言わせてもらう。

過度なスキンシップは控えてください。

今だって、手を掴まれて『手汗大丈夫かな』とか、『手柔らか!』とか思っちゃうんだからさ!

 

 

 

 

「行っちゃった………ね。

…ホントビックリしちゃった…」

 

 

「そんなことよりもあの弦巻さんが放課後男子と2人!しかも手を繋いで帰宅だなんて!中々やりますな〜」

 

 

「………とてもそうには見えなかったけど……」

 

 

「ふふっ。これからが楽しみですな〜」

 

 

 

×××

場所は変わり駅前。

まだ夕方前だが人は意外にもいる。

まぁ、駅前は基本人がいそうだしな。

そんな場所でも関係なくコイツは語りかけてくる。

 

 

こころ「私!今とーっても歌が歌いたいわ!」

 

 

八幡「そうか、俺はとーっても家に帰りたいぞ」

 

 

こころ「らんたらったらーん♪ららら〜♪」

 

 

聞けよ。

なんで急に歌うのん?てか、ここ道だよ?人いるよ?

恥ずかしく………ないよな、コイツは。

でもね?俺は恥ずかしいからさ、もう帰るのは諦めるから手は離してくださいお願いします。

 

 

 

八幡「お、おい。もう帰るのは辞めるから、その、とりあえず手離してくれません?」

 

 

こころ「じゃあ一緒に歌いましょ!」

 

 

歌わないからね?

 

 

こころ「あなたも歌うのよ!1人じゃまだ楽しくないわ。歌だけじゃ足りないのかしら。

これじゃあ世界を笑顔に出来ないわ」

 

 

え、世界を笑顔に?楽しいこと探しはどこ行ったの?

誰かほんとに助けてくれ。

俺の頭はキャパオーバーなんだけど?

 

 

 

「あの子急に歌い出したけど、路上ミュージシャン………?

………って、えと、大丈夫?」

 

 

???「ご、ごめんなさい…………っ。

あ、あの!私っ……道に迷ってしまって………

こ、この近くに楽器屋さんがあると聞いたのですが……」

 

 

「あ、それなら………!?」

 

 

こころ「ふっふっふ···············八幡!!

いいもの見つけたわよーー!!」

 

 

八幡「は、え?なに?もの?

ー!?うわっ!?だから急に走んなっつーの!」

 

 

何度も言うけど手を掴むな!

 

 

 

???「え、えっ!?

あっ……えーと、その、制服…花咲川の…?」

 

 

おい、ものっていうか人じゃねーか。

肩より少し長めの水色の髪。

それと……この髪型はなんだろうか。

髪型には全然興味もなく知識もゼロに近い俺では全くわからないが、左側だけサイドテール?の髪型をしている。

それにバックを2つ持ってるけどなんだろうか?

まぁ、どうでもいいけど。

てか、このバカを止めなきゃな。

 

 

 

こころ「そうよ!あたしは花咲川学園1年、弦巻こころ!

あなたの名前は?その荷物って楽器でしょ?

今、楽器店について聞いていたわよね?」

 

 

八幡「待て待て待てStay。落ち着け。

困ってるから。ついでに言うと俺も困ってる。

あ、すみません。

えーと、コイツと同じ花咲川1年の比企谷八幡です。」

 

 

こころ「コイツじゃないわ!弦巻こころ!」

 

 

あー、うん、そーだね。

コイツはともかく、この人どうするか。

なんか道を他人に聞いてたし、急ぎの用事なら大変だしな。

てか、なんでこの人が楽器持ってるってわかるんだよ。

 

 

???「1年生…………あ…………っ。

ま、松原花音と、いいます。

た、たしかに、楽器……ですが……」

 

 

 

楽器なのかよ!なんでこいつわかるんだよ。

あ、でも、形で何となく分かるか。

コレは……スネアドラム?

 

 

 

こころ「やっぱり!!花音ね!ありがとう!

あたし達ね。今歌ってるの。

だから一緒に演奏してくれないかしら!」

 

 

と、弦巻は松原と言う女の子の手を掴む。

そうやってすぐ手を掴んで!

誰でも良かったのね!私じゃなくても良かったのね!もう知らないっ!

………うん、やめよう。

てか、私達ってなに?俺は歌ってないんだけど?

 

 

花音「え………え?

あっ、待って、離して、ください……っ。

それに、私は……このスネアドラムはもう、

売るつもりで…………」

 

 

こころ「売っちゃうの?何で!?

あたし達と一緒に演奏するんだから、

売るのなんてやめましょうよ!」

 

 

もうやだ。帰りたい。

ここ路上。人いっぱいいるよ。

なんならこの状況で目がアレな俺がいるから、よりカオスな空間になってることに気づいて欲しい。

 

 

花音「そ、そんな………めちゃくちゃな……っ

ご、ごめんね。私、もう、行くから……」

 

 

こころ「めちゃくちゃじゃないわ!

だってあなたも、世界を笑顔にしたいでしょ?」

 

 

わー、あそこに人だかりが凄いあるぞー。

紫色の髪をした………イケメン?

いや、でも、制服は女性物だ。

じゃああれは女かー。

はっはっはー。

 

 

花音「ふ、ふぇぇ……。

い、意味がわかりません…………っ。」

 

 

《比企谷八幡は弦巻こころとは数日程度の付き合いだが、

弦巻が思い通りに動く事など、有り得ないことを知っていた!》

 

 

ならばこその無!!

 

 

比企谷八幡「お空……綺麗」

 

 

 

すまんな。松原さん。

おれにも意味がわからない。

弦巻をコントロールする事なんて出来ないんだ。

こういう時は……美味しい食べ物でも考えるんですよ。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

こころ「らーらるらーらるとぅるりら

ららりらるーららっ♪

ほら花音、あなたのドラムで、もっともっと

盛り上げなきゃ!」

 

 

花音「ふぇぇ……もう許してください〜っ」

 

 

こころ「どうしたの花音。緊張してるの?

ここで今から演奏するのよ!」

 

 

花音「き、緊張……します……っ。

だ、だって、私っ、1人でも上手く叩けないのに………

こ、こんなに、大勢の人の前で演奏だなんて……」

 

 

こころ「?それはそうよ?

1人で演奏しても、上手く叩けないなんて当たり前よ」

 

 

こころ「だって、あなたが上手いかどうかを

どうしてあなたが決めるの?

人に聴いてもらわなきゃ、わからないわ!」

 

 

花音「え…………

そ、それは………

で、でも…………私…っ。

そんな勇気も………なかった………し……」

 

 

弦巻が言うことは最もだ。

自分1人じゃ上手いか下手かなんてのはわからない。

自分に甘いヤツなら上手いと思うかもしれないし、厳しいやつならまだまだと思うかもしれない。

だから自分ではない人に聴いてもらうのだ。

 

でも、人前だと緊張して普段通り出来ない人だっている。

周りから見られてる。どう思われてるのかわからない。

それが酷く怖い。失敗したら…とか考えてしまうものだ。

松原さんの事は全然知らないが、話を聞いていて何となく分かったことがある。

この人はきっと、積極的なタイプではないだろう。

内気で引っ込み思案な性格だと思う。

そんな彼女に無理矢理やらせるのは気が引けるな。

どうしようか……コイツ(弦巻)。

 

 

こころ「勇気なら私があげるわっ!」

 

 

花音、八幡「ーーーーーー!?」

 

 

こころ「あたしね!

今ここで歌うのが、とっても楽しいの!

あなたも一緒にドラムを叩いてくれたら、

もっともーっと、楽しくなるっ!」

 

 

松原さんの目をしっかりと見ながら話を続ける。

 

 

こころ「楽しくなったら、あなたも笑顔になる!

そうしたらね、上手いとか下手とか、

そんなことは、すぐにどうでもよくなっちゃうんだからっ!」

 

 

花音「楽しくなったら……下手とか……上手いとか……どうでも……いい…」

 

 

こころ「そうよ!上手くたって楽しくなきゃ意味無いわ!

音楽はね!音を楽しむ物なのよ!

だからね、花音、あなたが必要なのっ。

さあさあさあっ!始めるわよ!」

 

 

弦巻は言う。

上手い下手なんて、関係ない。

楽しければそれでいい。

こんなのプロの人や、本気でやってる人からしたら、失礼な事かもしれない。

けれど、俺は……その言葉を聞き入ってしまった。

音楽とは音を楽しむこと。

きっとプロの音楽家だって、上手い上で楽しんでいる。

上手い下手は関係あるが、楽しんでるのはプロも同じだと思う。

 

 

楽しければそれでいい。

楽しむために大勢の人の前で、恥ずかしがり屋の松原さんに頼んでいる。

俺なんて強制的だし。

なんとも子供の我儘だろうか………

……………それでも。

 

 

こころ「八幡!あなたもよ!!

さっきから全然喋ってないけど……あ!

あなたも勇気が足りないのかしらっ。

それならあなたにもあげるわ!」

 

 

 

少しだけ…………

 

 

花音「で、でもやっぱり、恥ずかしいですっ

ひ〜〜んっ」

 

 

こころ「わかったわ!ほら、あたしの勇気

もっともっと、花音に届け〜っ!

八幡にも届け〜っ!!」

 

 

 

少しだけ、一緒にやりたくなってきたなんて死んでも言わねぇ。

 



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儚いとは気絶。尊いは死...........?うん、多分違う。






 

 

こころ「さあ2人とも勇気はまんたんよ!!

花音はもっと自分に自信をもってもいいのよ!

せーのっ。らららら〜♪」

 

 

花音「はわ···············わ·····!」

 

 

さてさてさて、俺は何をしましょうかね。

帰る………のは、松原さんに悪いし。

弦巻に何されるか分からんからな。

どうしようかと悩んでいると……

 

 

「兄ちゃんもぬぼ〜っとしてないで、演奏しな!コレやるから」

 

ヒュッ

 

 

うわっ!?

いきなり物投げるんじゃねーよ!

おじさん怖いな。

てか、コレ………カスタネット……?

え、何でこんなの持ち歩いてんの?

それと……コレでやれってか……?

 

 

こころ「八幡?出遅れてるわよ?

花音はその調子よ!3人で合わせるわよ!

ほら、らーらら、いち、にっ」

 

 

花音「な、なんで、こんなことにぃ……」

 

 

八幡「本当なんかすいません。

俺も被害者なんで………

てか、めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」

 

 

元気よく歌う少女。

顔を真っ赤にしながらドラムを叩く女性。

目を腐らせながらカスタネット叩く不審者。

路上で演奏しているためか、人が割と集まっているので緊張とかやばい。

………てか不審者じゃねーよ。

 

 

 

こころ「う〜んっ!

ほらね、やっぱり、すっごくいい感じだわ!

まだまだ行くわよ、八幡!花音!らーらー♪らーらー♪」

 

「ははは、いいぞー!もっとやれー!」

 

「可愛いぞー!カスタネットのやつ以外」

 

 

おい。それ言う必要ないだろ。

まぁ、可愛くないのは深く同意するけどさ。

 

 

こころ「う〜んっ、ありがとう!!

すーーっごく、楽しいわーーーーーっ!!」

 

 

 

美咲 (………アレって同じクラスの弦巻さんと比企谷くん?あ、何となく察しちゃった。

比企谷くんとあの水色の髪の人は巻き込まれた側だ。

弦巻こころ。アイツはやっぱりヤバいな。

関わらないようにしないと)

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

こころ「とても楽しかったわ!

花音、八幡、あなた達のおかげよ!ありがとう!

特に花音のドラム、とても素晴らしかったわ!」

 

 

花音「あ··············私·····」

 

花音(こんなの無理って、思ってたのに········

ちょっと今、楽しい··········って思ってる·····)

 

 

八幡「おい、カスタネットも素晴らしかっただろーが。

まぁ、それは置いといて。

本当にコイツがすいませんでした。」

 

 

花音「う、ううん……っ。大丈夫……だよ。

だから、気にしないで…………っ」

 

 

天使かよ。

それにしてもよくドラムをやってくれたと思う。

まぁ、無理矢理だったけども。

 

 

こころ「じゃあ今から、あたし達3人でバンドを結成ね!!」

 

 

花音「ふぇっ!?」

八幡「はぁぁ!?」

 

 

 

こころ「バンドよ!バンド!

一緒に演奏するの!」

 

 

花音「私と………弦巻さん達………で、

バンド…………?」

 

 

こころ「弦巻さんじゃなくて、こころでいいわ!

あたしも花音って呼んでるでしょ?」

 

 

花音「う、うん。わかった………っ。

こ………こころ……ちゃん」

 

 

花音「あの………バ、バンドってことは、

他にもメンバーが、いるんですか?」

 

 

こころ「あたしと八幡と、あなただけよ!

他にいるとどうなるの?」

 

 

おい待てや。

誰もやるなんて言ってないんだけど。

カウントすんなよ。

あーあ、カスタネット返しちゃったからもう出来ないわー。

 

 

花音「どうって…………えっ?

わ、わたし…ひ、人見知りだから……

知らない人と……何かをするのは……

そ、それに、人前とかは………ちょっと…」

 

 

こころ「そうなのね。それなら安心して。

バンドのメンバーはあたし達3人だけだから!」

 

 

だから3人じゃねーって。

俺はやらん。

帰って勉強しなきゃならんし。

 

 

花音「………………え?」

 

 

こころ「うん。3人でがんばろうっ。」

 

 

花音「えっ!?…………でも、あのっ…

バンドって、ドラムとボーカル、カスタネット……?だけじゃ、出来ないですよ……っ?」

 

 

うん。それだけじゃ出来ないと思う。

ドラムとボーカルは必須レベルだけど、カスタネットって何?

いや、俺は好きだぞカスタネット。

でも3人の内、1人がカスタネットはムリだろ……

 

 

こころ「そうなの?それは誰かが決めたの?

どうしてもやりたい!って思っても、ダメ?」

 

 

花音「だっ!だめ……かも……と……思います

だ、だってバンドって、ギターとか、

ベースとか、ボーカル以外にも、メロディや

リズムがないと…………!」

 

 

 

弦巻のやつ、松原さんの言葉全てに首を傾げてやがる。

コイツ、全然バンドの事知らなかっただろ……

 

 

こころ「ギターと……ベース……メロディに

リズム………?

ーーあっ。本当ねっ。

あたしの歌に、色んな音が重なって…うん。

とっても楽しそう!」

 

 

こころ「なるほどありがとう!花音って

バンドについて、とっても詳しいのね!

それじゃさっそく、あたし、メンバーを集めてくる!」

 

 

花音「うん。それがいいと思います。

私には、ちょっと無理だから……ここで…」

 

 

八幡「お前ならきっと集められるって。

でも、あんまり無理矢理はやめとけよな。

じゃあ、俺もここで………」

 

 

松原さんナイス!

俺も乗らせて貰ったぞそのビッグウェーブに!

しかも応援しつつだからな。

不快にさせずに済ませるとか、俺って超優しい。

 

 

 

こころ「どうしたの2人とも?あなた達も行くのよ?

あたしのバンドメンバーだって言ったでしょ?」

 

 

 

花音「…………えっ!?ふぇぇっ!?」

 

 

 

………こんなことだろうと思ったわ。

コイツに目をつけられたら、ヤバい事が起きるのは経験済み。

 

 

こころ「ほらっ!2人とも行くわよーー!!」

 

 

花音「ま、待って………っ。離してーー!!」

 

 

右手で俺の手を、左手で松原さんの手を取り走り出す弦巻。

 

 

松原さん………さっきも言いましたが(声に出してない)

コイツをコントロールする事なんて出来ないんですよ。

こういう時はですね……

 

 

自分の好きなものを考えるんですよ……

 

 

 

 

そして1時間ほど付き合わされたが、新メンバーは1人も見つかっておらず、ヘトヘト状態で帰宅し、そのまま疲れて寝てしまった。

俺の勉強時間返せ……

 

 

×××

 

翌日

 

 

こころ「はーーーちーーーまーーーん!!」

 

 

八幡「がっ………」

 

 

授業の1時間目が終わったあと、英語の勉強をしていたら、俺の耳元でめちゃくちゃ叫ぶ金髪女。

今耳がずっと、きーーんってなってるよ!

 

昨日は結局人数が増えることも無く、

弦巻が「今日はここまでにして、明日また探しましょう!」といって解散になっていた。

そして、弦巻と松原さんが待ち合わせの話をしていると、松原さんが俺達の先輩……2年生ということがわかった。

それでも、弦巻は以前と態度を変えることは無かったがな。

 

 

こころ「今日もメンバーを集めるわよっ!

誰かいないかしら!」

 

 

八幡「昨日もずっと言ってて無視され続けたけどもう一度言うな。

俺はやらないからな。2人でメンバー集め頑張れよ」

 

 

そう。昨日結構言った。

だんだん松原さんが、「私を1人にしないで」

と目をうるうるしながら見ていたから、昨日は諦めたが、今はいないしハッキリと言ってやろう。

 

 

こころ「花音のクラスはなんだったかしら!」

 

 

八幡「おい聞けよ。……クラスはAって言ってたぞ」

 

 

こころ「じゃあ八幡!お昼は花音に会いに行くわよ!」

 

 

八幡「行きません。お昼は1人で食べたい派なんでね。」

 

こころ「八幡は本当にワガママさんね。

昨日から文句ばっかりよ。」

 

 

なんで俺が悪い見たいになってんの?

我儘はそっちだろーが。

 

 

 

美咲(うわぁー。昨日私も路上にいたから何となく話がわかるけど、比企谷君大変そうだなぁ。

弦巻さんに目を付けられたらヤバいって見たら丸わかりだからね………

頑張れー………私は応援してるよ比企谷君)

 

 

 

八幡「もう我儘でもなんでもいいわ。

とりあえず俺はや「キーンコーンカーンコーン」」

 

 

こころ「お昼が楽しみだわ!」

 

 

 

はぁ。

 

 

×××

 

 

 

こころ「かーーーのーーーーん!!!」

 

 

 

ガラガラガラバン!!

 

 

 

「「!!!!?」」

 

 

八幡「やめろバカ!………お、おいどうすんだよ。めちゃくちゃ見られてるぞ」

 

 

もうヤダ……

お昼時間になった途端、弦巻に腕掴まれて2年生の教室まで連れてこられた。

大声で松原さんの名前呼んで扉開けるしさ…

普通開けてから呼ぶよね……

 

 

花音「こ、こころちゃん!?え、えーと……どうしてここに?」

 

 

松原さん?俺もいるよ、俺もいるからね。

あ、これは帰っていい的なやつ?

なるほどな。俺じゃないと分からなかったぞ。

じゃあ先に失礼しまーす。

 

 

 

こころ「あ、いたわ!バンドについて話があるの!一緒にご飯を食べながら話しましょ!」

 

 

花音「え、えっ!?ちょ、ちょっと待ってこころちゃん!は、走らないで〜〜〜」

 

 

こころ「八幡も行く気まんまんなのね!それじゃあレッツゴー!!」

 

 

八幡「ち、ちが……!だから手を掴むなっての!!」

 

 

退散失敗した。

てか、どこに行くんだよ!

 

 

 

 

こころ「あたし昨日、バンドについての本を読んだの!

だから、バンドについてはばっちりよ!」

 

 

ほう。真面目にやろうとしてるのな。

バンドやるってのは口だけかと思っていたから少し驚きだな。

 

 

こころ「まずはギターね!

ギターと言えばバンドの華っ!!!

………って、昨日読んだ本に書いてあったわ。

だからあたし、すっごく目立つ人を入れたいの!」

 

 

花音「め、目立つ人………ですか」

 

 

目立つ人な〜

目立つって言っても色んな種類の目立つ人がいるからな。

難しいと思うが、、、

 

 

こころ「そう。目立って、すっごい注目されて、有名人で、バンドの顔!

になりそうな人、花音は知らない?」

 

 

ん?

目立って……注目されてて……有名人で……

………いるな。

条件に全て当てはまってる奴を知ってるぞ。

 

 

花音「有名人………え、えーと………」

 

 

八幡「俺は1人、その条件に当てはまってる奴を知ってるぞ」

 

 

こころ「それは本当かしらっ!八幡は知り合いとか全然いなさそうと思ってたから驚きだわ!」

 

 

おい……

まぁ、事実だからいいんだけどね?

だからってハッキリ言うことないじゃん?

 

 

花音「その人って誰なの…?」

 

 

八幡「弦巻、お前ならその条件当てはまってるだろ」

 

 

そう。

目立って、注目されて、有名人。

注目されてるかは分からんが、花咲川の異空間と言う異名を持ってるし、さっきの松原さんのクラスを見てた感じ、弦巻の事を知ってる人が多かったからな。

 

 

花音「た、確かに……

2年生の中でも、弦巻さんを知ってる人は多いよ…」

 

 

八幡「まぁ、弦巻はボーカルだろうけど、ギター&ボーカルは珍しくないからな。

少しギターやるか考えとけば?」

 

 

こころ「うーん……

あたしは、やらないわっ!」

 

 

八幡、花音「「え?」」

 

 

あ、今ハマりましたね。

………すいません。ハモってすいません。

だから顔を赤くして怒らないで!

 

 

 

こころ「あたしは歌を歌う!バク転もしたいし、自由に動き回りたいの!

ギターをやるのも悪くないと思うけど、あたしには向いてないわ!」

 

 

こころ「それに、あたしは条件に当てはまってるのかしら?

実感がないわ!

もっと、も〜っと、注目される有名人がいいわ!」

 

 

おいおい、実感ないんかい。

まぁ、お前にとっては普通に過ごしてるだけだからな。

確かに言ってることはわかる。

あいつが楽器を弾いてる姿よりも、歌いながら走り回ってる方が想像しやすい。

 

 

八幡「そうか。

まぁ、俺はあくまでも条件を満たしてると思ったから言ってみただけだ。

…………あ、コレは?」

 

 

花音「どうしたの………?

あ、コレは、羽丘学園とうちの合同演劇発表会のポスターだよ。」

 

 

「今日の放課後の演劇発表会行くでしょ?」

 

「勿論!羽丘の王子様、瀬田薫を見に行かなきゃ!」

 

「あ、この写真の人?凄いかっこいいね!」

 

「そうなんだよ!まぁ、女性だけどね!」

 

「え、ほんと!?男性に見えるくらいかっこいい」

 

 

こころ「瀬田…………薫………」

 

 

八幡「なんか、すっごい有名人らしいな。」

 

 

花音「さっき友達が言ってました……

今日の放課後にある、すごい人気のイベントだって………」

 

 

てか、この瀬田薫って人マジで女性なのか。

写真で見る限りめちゃくちゃイケメンじゃねーか。

あれ?でも、どこかで見たような気がする……

ん?弦巻のやつなんか考えてる。

あ、コレは何となくわかった。

まさか……

 

 

こころ「ーーうん。すごくいいっ。

すごくいいわ!

花音、八幡、あたし決めた!

あの瀬田薫を、あたし達のバンドのギターにする!」

 

 

 

やっぱりか……

てか、そんな有名な奴がバンドのギターの話を受けてくれるのだろうか。

 

 

 

花音「ふぇっ!?で、でも………

2人は会ったこと、あるんですか?」

 

 

こころ「これから会うのよ!花音も一緒に演奏した時すっごく楽しかったじゃない?

だから薫も、きっと入ってくれると思うの!」

 

 

八幡「え………そんな理由で?」

 

 

瀬田さんが演劇以外やらないつもりだったらどうするんだ……

まぁ、多分何を言っても無駄だけど………

 

 

こころ「ほかにどんに理由がいるの?

とりあえずこの、演劇発表会っていうのを

見に行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

薫「ああ………風よ、吹け。

頬を吹き破らんばかりに吹け!

吹き荒れるだけ、吹け!」

 

 

八幡「す、すげぇ………」

 

 

花音「う、うん………

ほ、本物の王子様にしか、見えない………」

 

 

いや確かに王子様っぷりもすごいけど、俺がすごいと言ったのは………

 

 

こころ「すごいわね!彼女が喋るだけで、

ばたばた人が倒れていくわっ。

これがカリスマよっ!決定だわっ!」

 

 

 

そう。

周りの瀬田薫ファン共がばたばた倒れていく光景に驚いている………

もう演劇の内容が頭に入ってこねーよ。

亀と猿とイケメンで海賊王になる話だっけ?

 

 

こころ「コレが終わったらさっそく、バンドの話をするわよ!

ん〜〜楽しみだわっ。」

 

 

花音「だ、大丈夫かな………」

 

 

八幡「なんで俺まで……」

 

 

 

×××

 

 

〜遡ること数分前〜

 

 

放課後

 

 

 

こころ「さあ!演劇発表会に行くわよっ!」

 

 

八幡「わりぃけど俺は行かねーぞ。バイトあるからな」

 

 

嘘である。

この男が働くCiRCLEは昨日と今日、そして明日は点検工事のためお休みなのである。

 

 

八幡 (このままだと本当にバンドに入れられそうになるらな。悪いが断らせて頂く)

 

 

 

こころ「ドーンよ八幡っ!!

あなた今日もバイト休みでしょ?ついでに明日も!!」

 

 

 

おいそのノリやめろ。

てか、なんでわかんだよっ!

え、なに?本当になんでわかんの?

 

 

八幡「なんで知ってんだよ。誰から聞いたんだ?」

 

 

こころ「黒服の人達よ!」

 

 

でたな黒服!!!

俺の敵!個人情報保護法守れや!

…………ん?人達?

月島さんじゃないのか………?

 

 

 

こころ「それじゃあ、行くわよ!

れ〜〜っつ、ごーー!!」

 

 

 

はぁ。

……なんか言ってはいけない気がしなくもないけどあえて言おう。

 

……………不幸だ。

 

 

×××

 

 

 

 

こころ「というわけで、やって来たわ!

花咲川学園の弦巻こころよっ。

演劇部の部室はどこかしら」

 

 

 

演劇発表会が終わり、羽丘学園の校内の中で演劇部の部室を探している。

もう、打ち上げとか行ったんじゃねーの?

ウェイ勢共はすぐに打ち上げするからな。

打ち上げたら財布からお金が落ちていくんだぞ。

 

 

 

花音「こ、こころちゃん、

まだ舞台が終わったばっかりだし

日を改めた方が……」

 

 

八幡「あ、あれじゃね……?」

 

 

紫髪をした高身長の後ろ姿、多分瀬田薫だ。

 

 

 

こころ「あんなところにいたのねっ!!

外に行っちゃいそうだわ!!

ちょっと!待ってーーーーっ!!」

 

 

花音「あぁ……」

 

 

八幡「はぁ……」

 

 

 

 

薫「………おや?

小さな挑戦者さん。この私に何か用かな?」

 

 

 

八幡(うわっ、近くで見るともっとスゲーな。

……でもやっぱりどこかで見たことある。)

 

 

 

こころ「あなたの舞台を見たの!すごいわね!ステージを降りても、本当に王子様みたいだわ!」

 

 

 

あんなに人がばたばた倒れる舞台は見たくないけどな。

みんなが幸せそうなのがまた驚きなんだよな。

 

 

薫「ふふ。ありがとう。

でも、『みたい』ではなく私は王子様だよ?

ーーこの世は舞台、人はみな役者」

 

 

こころ「ねえあなた、ギターの経験はあるかしらっ」

 

 

 

今のはシェイクスピアか?

てか、まだ喋ってる途中だった気がするんだけど……

 

 

 

薫「……昔、ギタリストの役を演じたことがある。

今も少しは弾けるだろう……

演戯の目的とは、自然に向かって腰を掛け」

 

 

こころ「じゃあ決まりね!!!

私達、バンドをやってるの!入って!」

 

 

コイツ完全に人の話を聞いてない……

こんなんじゃ断られるに決まってんだろバカ。

 

 

八幡「と、とりあえずっ!

話がしたいのでどこかゆっくり話す場所に移動しませんか?」

 

 

薫「………そうだね。外でゆっくり話そうか。

付いておいで」

 

 

ったく、このままだとさすがに印象悪すぎて終わってたぞ。

弦巻に言葉を遮られる度に少しショックな顔してたし。

俺が辞めやすくなるように、バンドメンバーを集めなきゃな。

 

 

 

 

 

薫「かのシェイクスピア曰く、

ーー行動は雄弁である……

私は今まで、幾多のスカウトを受けてきた。

けれど……ふふっ。君のような強引なお姫様は、はじめてだ」

 

 

 

そりゃあ、人の話を聞かずに強引に誘うお姫様が何人もいたら困る。

 

 

こころ「そう?バンドって、すっごく楽しいわよ!

音楽って色んな曲に合わせて、色んなことをするのよ。

演技と少し似てないかしら?」

 

 

こころ「バンドをやれば、きっと色んな役ができると思うの!

あなたがこのバンドで、どんな役をするのか考えてみて!

とってもワクワクしないっ?」

 

 

バンドをやらなくてもきっとこの人は色んな役者を今までも、そしてこれからもやるとは思う。

まぁ、今断られてもコイツは諦めないからな。

何度でも挑戦するだろ。

 

 

 

薫「……なるほど。

私が必要なのはそういうことか………」

 

 

ん?ボソッて言ってて聞こえなかった。

なんて言ったんだ?

でも多分断るだろうな………

 

 

薫「可憐な君たちを守る王子であり、

そして………この世界を彩る役者がほしいということか。

ーーーわかった、入ろう」

 

 

八幡「じゃあ今日のところはここで失礼s………え?入ろう?

……え?」

 

 

入るって言ったのこの人?

マジで?今の流れで何が納得出来たの?

どうなってんだってばよ………

 

 

 

こころ「ありがとう!!すごく嬉しいわ!」

 

 

薫「それではこの出会いを祝して、

私と世界についての詩を読むから、聞いてくれたまえ」

 

 

こころ「あたしはバンドで、これから何をするか考えるわね!」

 

 

花音「ふえぇ……ひ、比企谷くん、この2人の会話が成立してないのに、加入は成立してるんだけど………

この人たち……どうなってるの……?」

 

 

八幡「大丈夫ですよ松原さん。

俺にも全然分からないんで……

ただ一つ、多分瀬田さんは弦巻と同類かと……」

 

 

こころ「八幡と花音はなにがしたい?

バンド結成記念だもの、派手に行くわよっ」

 

 

バンド結成?

あれ?あと最低でもベースは必要じゃねーのか?

 

 

花音「ちょ、ちょっと待って、

まだ結成できてないですっ。

バンドにはあとベースが必要ですよ〜っ」

 

 

こころ「え、そうなの?」

薫「え、そうなのかい?」

 

 

バンドのこと勉強したんじゃないのかよ……

さてはコイツ、ギターの事しか調べてないな……

 

 

こころ「それじゃあ、明日はベース探しをやるわよっ!」

 

 

八幡「探すって言ったって何か方法でもあんのか?」

 

 

こころ「ふっふっふっ。もちろんよ!

楽しみにしててちょーだい!」

 

 

自信ありありなポーズに態度。

不安でいっぱいなのは何故でしょうか?

 

 

こころ「やっぱり今から始めましょう!!

明日には準備を終わらせなきゃいけないわ!」

 

 

………は?今から?

 

 

 

花音「……こ…こころちゃん?

準備って…………何の……?」

 

 

こころ「大丈夫よ!難しいことでは無いわ!

少し薫にお願いがあるだけよ!」

 

 

 

 

瀬田先輩に………?

 

 

 

薫「…………何をするかはわからないが私で良ければ力を貸すよ。

お姫様の道を切り開く剣となろう!」

 

 

……なんとなくわかった。

弦巻のやつ………瀬田先輩を出汁にする気だ………

 

 

 

 

 










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マスコットキャラクターは強し。

 

 

 

 

羽丘学園2年生、瀬田薫をメンバーにした弦巻達。

弦巻のやつはバンドの勉強していたはずが、ベースがいないと成り立たないと知り、ベーシストを探すために今行っていることは……

 

 

 

 

こころ「う〜んっ!いいわ!その調子よ!

最高ねっ!」

 

 

薫「ふふ。また私の儚い写真が出来上がってしまうね」

 

 

花音「こ、こころちゃん………っ。

コレで、いいかな……?」

 

 

こころ「……………うんっ!

とーっても素敵ね!ありがとうっ!」

 

 

 

薫「八幡。君の意見も聞きたい。どの私がいいと思うかい?」

 

 

八幡「どれでもいいと思いますよ、はい。」

 

 

こころ「コレで完成よっ!

バンドメンバー募集用・瀬田薫ポスター!」

 

 

 

はぁ。本当に何やってんだろ俺…………

 

このポスターは、弦巻が提案したもので、

最初は瀬田さんの写真が一面に貼られただけのポスターで、バンドの情報が無かったため、俺が「せめてバンドの事を書け!」と伝えると、弦巻が「あたしたちとバンドを楽しみましょーっ!ベース出来る人来たれ〜い!」とデカデカと書いてあり、その下に瀬田薫さん1人のアップ写真が貼られてあるポスター。

 

やっぱりそのアップ写真は辞めないのな…………

そして、これを作るのに昨日の放課後と、今日の昼、放課後までの時間を費やした。

 

 

 

こころ「今から学校に戻ってこのポスターを貼ってくるわよ!」

 

 

八幡「は?いや、無理だから。生徒会が黙ってないぞ」

 

 

こころ「そんなのやってみなくちゃわからないわ!

それに、生徒会の人に許可を取ればいいんでしょ?それじゃあ、あたしと八幡は先に生徒会室に行ってるわね!」

 

 

八幡「ちょ、俺も?なんで?

……おい!?急に走んないで!頼むから!」

 

 

花音、薫

「……………………」

 

 

花音「……い、行っちゃったね………」

 

 

薫「……儚いね」

 

 

 

×××

 

 

こころ「なんでダメだったのかしら?」

 

 

八幡「……去年の生徒が無理矢理学校で部活勧誘してて、問題になったらしいから、今年からそういうのは学校ではダメって言われたからだよな?」

 

 

いまさっき生徒会から聞いたよね?

生徒会の人たち、「なんで瀬田さん?」みたいな顔してたけど、俺にも分かりません。

 

 

こころ「あんまり聞いてなかったわ!それよりも学校がダメなら商店街で配ればいいのよ!」

 

 

聞いてなかったのかよ。

それでいいのかよお嬢様……

 

 

 

花音「……あ、こころちゃん。比企谷くん。

ど、どうだった?」

 

 

こころ「何故か学校ではダメと言われたわ。

だから商店街で配りましょ!」

 

 

こころ「それじゃあ、れ〜っつごー!」

 

 

 

×××

 

 

学校から商店街は以外と近く、あまり時間がかからずに着く。

ココでポスター配るの?なんで?

俺は関係な…………くはないか

でも、俺はバンドメンバーじゃないからやらなくてよくない?

 

 

………ん?………なんだアレ。

クマ?ピンク色の着ぐるみのクマが見える。

周りには子どもが沢山いる。

この商店街のマスコットか?

まぁ、どうでもいいや。

 

 

 

こころ「さぁ!来たれい〜〜っ、ベーシスト!!

あたし達と一緒に、楽しいことしよーっ」

 

 

薫「さあおいで。子猫ちゃん達。

万物はすべて、等しく愛おしい………」

 

 

 

「ままー、なにあのひとたちー」

 

「しっ、見ちゃいけませんっ。

ほら、あっちにクマさんがいるわよ!」

 

 

 

4人

「………………」

 

 

 

 

うわー、確実にあのお母さん、俺たちを変人認識しやがった。

いや、間違ってはないんだけどさ。

でも俺と松原さんは少なくとも常識人のはずだ。

 

 

 

花音「あ、集まらない……ですね……」

 

 

こころ「不思議ね。なにがいけないのかしら?」

 

 

薫「やはりそうか………

すまない……また………!

私の近寄りがた過ぎる美しさのせいで…」

 

 

八幡「多分違うから謝んなくていいっすよ。」

 

 

この人マジでナルシストだよな………

まぁ、割と事実だから否定出来ないけどさ。

 

 

こころ「うーん?だったら…………

…………近寄り………?」

 

 

花音「…………やすい……?」

 

 

 

×××

 

 

 

 

美咲side

 

 

お、重い…………

高時給の理由はコレか!!

暑いし、死にそう……

 

「わー、ミッシェル!!ねえ、握手して!」

 

「ぼくもぼくもー!」「わたしもー!」

 

 

このバイト、めちゃくちゃブラックだ。

抱きつかれると衝撃がぁー。

 

 

ん?あれ?あそこにいるのって……げ!?

弦巻こころ!?あと、比企谷くんもいる。

最近あの二人毎回一緒にいるなー。

他にも羽丘の制服来てる人と、もう1人は……わからないな。

 

てか、すごい見られてる気がするんだけど気の所為だよね…………?

 

 

ミッシェル「………………」

 

 

こころ「…………………」

 

 

ミッシェル「…………………!」

 

 

 

……まずい。まずいまずい、

弦巻こころにガン見されてる…………っ

に、逃げないと…………っ!?

 

 

 

こころ「ミッシェル!!

あなた、このポスターを配って!!」

 

 

 

え、何言ってんの!?

ポスター?なんの?

た、たすけてー!!

 

 

バイト担当者「え。ちょっと……

それはうちの商店街のマスコット………!?」

 

 

 

あ、このバイトの担当者の人!

た、たすかったー。

弦巻こころを止めて!!

 

 

side out

 

 

×××

 

 

なんかとんでもない事になってきてるぞ……

急に弦巻が走り出したと思ったらクマに突撃するし。

このクマは商店街のマスコットキャラ、ミッシェルというらしい。

ポスターに書いてあった。

 

 

 

こころ「ミッシェル!!

あなた、このポスターを配って!!」

 

 

ミッシェル「!!!???」

 

 

やばい。ミッシェル……というか、中の人がめちゃくちゃ困ってるような気がする。

オロオロしてるし、止めるか。

 

 

バイト担当者「え。ちょっと……

それはうちの商店街のマスコット………!?」

 

 

あ、ミッシェルの関係者的な人もいたのか。

たすかった。てか、あの人どこ見て驚いてんだ………!?

 

 

 

謎のスーツの軍団「ちょっと、よろしいですか。商店街の広告部の方ですね、」

 

 

おいおいおーい?何が起きてんの?

謎らしき3人が担当者らしき人と話をしてるんだけど……

てか、この人たち誰!?

サングラス掛けて、黒い服を来てるけど…

…………ん?黒い服……?

 

 

こころ「はいっ、これね!たくさん刷っちゃったの!あたし達も頑張るから、よろしくね!」

 

 

そう言って弦巻はミッシェルにバンド勧誘ポスターをどっさり渡した。

 

 

 

ミッシェル (いや、あたしバイト中だから…!!

……あれっ!担当者がいない!?)

 

 

 

八幡「おいやめろこのバカ。

………いや、本当にすいません。仕事中に邪魔しちゃって。」

 

 

美咲 (比企谷君と会話したことなかったけど、意外と優しい?)

 

 

「ミッシェルー!!なにそれーー!!」

「僕にもちょーだーい!!」

「私も私もー!!」

 

 

弦巻がミッシェルに渡したポスターが、子どもたちにどんどん渡されていく…

 

 

こころ「ほら八幡!大成功よっ!!!」

 

 

 

弦巻は俺に向けてVサインして、計画通りとドヤ顔を見せてくる。

殴りてぇー。

 

 

八幡「あの、本当すいません。

ポスターありがとうございました。

………おい弦巻、後でちょっと話がある」

 

 

 

ミッシェル、そして中の人にお礼をいい、弦巻を睨みつける。

 

 

 

 

???「あ〜〜!!

見つけた!サボり魔あかりっ!!

さっさと練習………って、クマ!!」

 

 

走ってきたオレンジ色のショートカットの髪の子が勢いよく止まり、ミッシェルの周りに集まっている1人の女の子に指をさし、声をかける。

ていうか、花咲川の制服来てるな。

 

 

あかり「げっ。はぐみキャプテン!!」

 

 

はぐみ「クマ!クマ!わーーいっ!

かわいいねこの子っ。

なんて言う名前っ?」

 

 

 

急にテンションMAXで喜ぶオレンジ少女。

あかりって子はいいのか………?

 

 

 

こころ「ミッシェルよ!

あたしたちと一緒に、

バンドのメンバーを探してるの!」

 

 

 

お前が答えるのかよ……

てか、探してるというか、無理矢理ポスター渡しただけだろうが……

 

 

 

美咲 (えっえっ、待った待った!

一緒じゃないっ。

あたしはただバイトの研修中で………!)

 

 

 

はぐみ「クマのいるバンドなんて珍しいね!」

 

 

美咲 (違うってだから!メンバーじゃない!)

 

 

八幡「あー、アレだ。ミッシェルはバンドメンバーじゃないぞ。

このバカが、無理矢理メンバー募集を手伝わせてただけだ。」

 

 

はぐみ「うわっ!ビックリしたっ!!

でも、そうなんだー!てっきりはぐみ、ミッシェルもバンドメンバーかと思ったよー!」

 

 

美咲 (うんうん。

良かったぁー、比企谷くんがいてくれて。

この中だと声もあんまり通らないし、担当者さんいなくなっちゃうし。

止めてくれなきゃ終わってたかも……)

 

 

 

こころ「あら?首をふってる………?

もしかして、メンバーになりたいの?

言ってくれればいいのにっ!

じゃあ、クマ枠で採用!」

 

 

 

 

八幡、美咲

「「えっ???」」

 

 

 

美咲 (や、やめろ〜〜っ!!

ていうかクマ枠ってなに!?)

 

 

 

八幡「おい、ミッシェルが首をふった意味は違うからな!

ていうかクマ枠ってなんだよ!」

 

 

こころ「八幡っ!コレで5人よ!

とーっても順調ねっ!」

 

 

俺の話聞けよ。

それと、4人な。………あ、ミッシェル入れてたわ。

まだ3人だろ。

 

 

薫「ふふふ。こんなにはしゃいで。

とても愛らしい。

君もそう思わないかい八幡。」

 

 

いちいち俺を挟まないでください。

ていうか、マジでどうするんだ……

弦巻を止めるのは無理だぞ……

 

 

 

美咲 (こ………この中じゃ声が伝わらない……)

 

 

 

はぐみ「あれ?ていうか………

えっと、C組のこころちゃんだよね?

A組の北沢はぐみだよっ、同じ学校だねっ」

 

 

こころ「んっ?

…………本当だわ、見たことあるっ。

花咲川の生徒だったのねっ。

なら話が早いわ!あなたバンドできない?」

 

 

呑気に話を始めやがったコイツら。

てか弦巻は、花咲川の生徒って今気づいたのかよ。

制服着てただろうが……

そして、勧誘が早い。

 

 

はぐみ「バンド……?うちの兄ちゃんがやってるよ!はぐみも最近、気になってたんだよね!

でもバンドって、どんなことするの?」

 

 

あかり「バンドだから………音楽じゃない?

キャプテンは、ソフトボールとかスポーツ以外なんにも知らないの?」

 

 

 

うわぁ……すごい攻撃的。

多分年下だよなこの子………

俺は、バンド知らない高校生は結構多いことを最近知ったからあまり驚きはないな。

 

 

 

はぐみ「そ、そんなことないもんっ。

う〜〜〜。

でもバンドのルールとか、戦い方とか、全然知らないなぁ。」

 

 

こころ「ルールはないし、戦わないわ!

だってとにかく、楽しいことをするから!!

それがなにかは、これから自由に決めるの」

 

 

はぐみ「ルールがない………戦わない……

…………自由な…………楽しい…こと……?」

 

 

こころ「ええっ!そうよっ!

とーっても楽しそうでしょ!!」

 

 

はぐみ「ーーじゃあやるっ!!はぐみも、メンバーになりたい!

あ、でも、もう募集してない…?

5人もいるんだよね……?

兄ちゃんのバンドは5人だったから…」

 

 

 

段々悲しそうに声を小さくしていく北沢。

安心しろって。俺がいるからな!

これはチャンスだ。

 

 

八幡「大丈夫だ。俺はメンバーじゃn「大丈夫よ!!」ない………」

 

 

こころ「言ったでしょ?

バンドにルールはないのよ!人数も決まりなんてないわっ!

みんなで楽しむのよ!」

 

 

 

わざとだよね?人の話は最後まで聞かなきゃダメって教わらなかった?

………人数増やすのは構わないけど、目的を忘れてないよな…?

 

 

はぐみ「うんっ!!わかった!!

じゃあ、改めてよろしくねっ!」

 

 

こころ「ありがとう!!」

 

 

花音「あ、あのっ。

はぐみ………さんはベースが弾けるんですか?

私達、ベースを募集してるんです………」

 

 

 

………松原さん。

その聞き方だと、弾けなきゃいらねぇって聞こえるのは俺だけですよね!そうですよね!

天使がそんなこと言うわけないですよね!

ちょっと疲れてるみたいなので帰っていいですかね?

 

 

 

はぐみ「え。はぐみ、ベースやるの?

たしか……………ギターより弦が少ないやつだよね?」

 

 

いや、確かにそうだけど、弦だけじゃないぞ?

 

 

はぐみ「ギターは兄ちゃんに教わったことあるから、弦少ないし行けると思うよ。

根性根性だねっ!!」

 

 

花音「げ、弦の数だけの問題じゃ……」

 

 

こころ「決まりね!!

入りたいって気持ちがあれば、何も要らないわ!」

 

 

 

なるほど。

じゃあ、入りたいって気持ちがない俺はどうすればいいんですかね?

おしえてー。

 

 

 

薫「首尾よくメンバーが6人揃った……

八幡、残ったポスターは、私のファンのために貰っても?」

 

 

 

八幡「あぁ。どうぞどうぞ。

はいこれ全部です。」

 

 

 

ファンに配るのか。

まぁ、用済みで捨てたら瀬田さんショックだろうしな。

 

 

花音「ほ、本当に、すごい速さで揃えちゃった……」

 

 

こころ「ふふん。それはそうよ!

あたしはいつも、楽しいことしかしてないもの!

楽しくなりたくない人なんて、いないでしょ?」

 

 

花音「そ、それは…………たしかに……?」

 

 

ダメだ!騙されるな松原さん!

コイツは楽しむためなら方法は問わないぞ!

俺がめちゃくちゃ疲れることを全く気にしないから!

………自覚ないだけだと思うけど。

 

 

 

美咲 (いや…………あたしはなりたくない…

弦巻こころと楽しくなんて、

なりたくないよ………!!)

 

 

 

×××

 

 

 

今日は人数が集まったからバンドのことは明日話しましょう!と弦巻がいったので、商店街で解散となった。

 

 

残念ながら俺は明日からバイトだ。

やっと、抜け出せそうだな。

 

 

 

「お兄ちゃんが思いっきり投げたから木の上に乗っちゃったじゃん!」

 

「わ、悪かったって!今から取るから!」

 

「でも、危ないよー!」

 

 

 

帰宅中に公園を通りかかり、男の子と女の子の話し声が聞こえる。

なるほどな。

木にボールが引っかかってるから困ってたのか。

…………見ちまったから取ってあげるか。

 

 

 

八幡「あ、えーと、危ないから俺が取ってやるぞ」

 

 

「あ、ありがとうござ…ヒッ!?」

 

「どうしたさな!?……うわっ!?目が…目が…」

 

「お、お兄ちゃん……!!」

 

「お、おい!さなになんの用だ!!

これ以上さなに近づいてみろ!許さないからな!」

 

 

 

…………Oh。

え、マジ?俺ってそんなに怖い?

もう泣きたくなってきた………

目が………目が………って…なんか聞いた事あるセリフだし。

そんなに酷いですかね。

もういいや。ボールだけ取って帰ろ。

 

 

 

落ちていたそれなりに長い木の棒を拾い、木に引っかかっていたボールを木の棒で押す。

すると、木に挟まっていたボールが押し出されそのまま地面に落ちる。

よし帰ろ。すぐ帰ろ。ここで泣いたら今度こそ通報されそう。

 

 

×××

 

 

ガチャ

 

 

???「あ、おかえりー。2人とも今日は楽しかった?怪我とかしてない?」

 

 

「……おねーちゃん、さなね。酷いことしちゃったの……」

 

 

???「え、どういうこと…?

何かあったの??」

 

 

「さなたちね、ボールで遊んでてね、そしたら木に引っかかってね、それをね、取ってくれた人にね、酷いことしちゃったの」

 

 

???「え、えーと、そ、そうだったんだね。じゃあ今度会ったら謝ろうね。

………純、後でちゃんと説明できる?」

 

 

「うん。おれも悪い人かと思って色々言っちゃった。」

 

 

 

???「じゃあ、まずはお風呂入っちゃいな。話はそれからね」

 

 

×××

 

 

 

???「え、そんなことがあったの??」

 

 

さな「うん……

だからね、さな、あのお兄ちゃんに謝りたいの!」

 

 

じゅん「お、おれも………

見た目で悪い人って決めつけちゃったから。」

 

 

???「そっか………よし、わかった。

じゃあ、お姉ちゃんはお客さん達にその人のこと聞いてみるね。」

 

 

 

さな「うん!!ありがと!!お姉ちゃん!!」

 

 

???「見つかるかは、わからないけどね。」

 

 

じゅん「あ……!」

 

 

???「純?どうしたの?」

 

 

じゅん「あの人、そう言えば姉ちゃんと同じ学校の制服着てた!」

 

 

 

???「ホント?なら一気に見つけやすくなったね。

その………目がちょっとアレなんだよね?」

 

 

さな「……う、うん。ちょっと……怖い。ちょっとだけだよ!」

 

 

じゅん「怖いっていうか、印象的というか……うん。」

 

 

???「そ、そっか。それなら何とかなるかもね。

でも、すぐ見つかるわけじゃないからね?

お姉ちゃんが時間ある時に探すからそれまで待っててね。」

 

 

さな、じゅん「「わかった!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 









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作戦会議は宮殿で.............?

 

 

そして翌日。

お昼休みに、俺はいま1人の女の子に捕まってしまった。

別に珍しいわけではない。

最近は弦巻に毎日のように捕まってるからな。

………けれどいまは、弦巻ではない。

はたまた、松原さんや北沢でもない。

その人物はというとーーー

 

 

美咲「え、えーと、比企谷くん。その急にごめんね?

昨日の事で少し話があって………」

 

 

………俺にもわからん。

あのー、………この子誰?

自習してたらいきなり話しかけられたんだけど。

………昨日のこと?何のこと?

人違いと思ったが、俺の名前知ってるしな。

 

 

 

美咲「あ、えーと、もしかすると、私の名前覚えてない?」

 

 

八幡「え、えーと、そ、そんなことないぞ?

待ってろ、今、思い出すから」

 

 

よく見たら顔は見たことある。

……………ていうか、クラス一緒だよな?

やべぇ。人の自己紹介とかほとんど聞いてないし、なんなら話したことある人なんて、弦巻くらいしかいないわ。

 

 

 

美咲「あ、あははー。いや、大丈夫だよ。

何となく顔を見たら覚えてないってわかったから」

 

 

 

バ、バレてる………

 

 

八幡「いや、その……すまん。おれ、クラスの人と接点ないから」

 

 

なんならクラスも関係なく学校の人とも接点がないレベル。

 

 

美咲「いや、弦巻さんにめちゃくちゃ絡まれてるじゃん。」

 

 

あ、そうでした。

 

 

美咲「じゃあその……改めて………

あ、あははー、な、なんかちょっと恥ずかしくなってきた//」

 

 

はにかみながら少し赤くなった顔に、手を近づけ、パタパタする。

こういうのなれてないんだな。

なんかごめんね、俺のせいで。

 

 

 

美咲「んんっ!!

え、えーと、同じクラスの奥沢美咲です。

よ、よろしく……?」

 

 

八幡「お、おう。」

 

 

 

………会話終了?

 

 

 

美咲「じゃあ、本題入るね。

昨日の件………バンドのことなんだけどさ」

 

 

 

………え?バンド?へー、奇遇だな。

俺もいま、バンドの件で困ってんだよ。

 

 

 

美咲「弦巻さんに、バンドは出来ないって言いたいんだけど…」

 

 

 

弦巻……さん…?き、奇遇だな。

おれも弦巻さんってヤバい奴がいて困ってんだよ…………

って!!

 

 

八幡「誰だお前!?」

 

 

美咲「え?だから、奥沢美咲ってさっきも言ったけど………」

 

 

八幡「いや、違う。そうじゃない。

なんで、バンドの件とか知ってんだ?」

 

 

だって昨日だろ?

昨日あの場にいたのは、

弦巻、松原さん、瀬田先輩、北沢、ミッシェルと…………ミッシェル!?

 

 

八幡「あ!まさか、お前ミッシェルか!?」

 

 

美咲「あれ?言わなかったっけ?ごめん。

それじゃあ、話が伝わらなかったですよね。

まぁ、はい。そうです。ミッシェルではないですけどミッシェルの中の人です。」

 

 

 

マジかよ。ミッシェル………じゃなくて中の人がまさかの同級生。てか、同じクラス。

なるほどな。

俺も昨日は、弦巻の態度でミッシェルの中の人が怒ったらどうしようとか思ってたからな。

 

 

八幡「なんでミッシェルの中に……?

バイトとか?」

 

 

美咲「うん、バイト。けど、辛かったからもう辞めたんだ……」

 

 

八幡「そうか。

それで、昨日の件で悩んでるのか……

なんか本当にすまんな………」

 

 

もうほんとにごめんね!

俺が全面的に悪いとは言わないけど、弦巻を止められなかったのは少なからず俺の責任でもあるからな……

 

 

 

美咲「いや、比企谷くんは悪くないでしょ。あの弦巻こころに目をつけられた被害者なんだし……」

 

 

 

まぁ、言われてみれば……

アイツを止めるとか割と無理な話だしな。

 

……………そもそも、なんで俺は目をつけられたのだろうか……?

バンド集めで色んな人を勧誘してたけど、俺はバンドの話が出てくる前から付き纏われてたぞ………

 

バンドの話になったのは松原さんと路上ライブ的なことをした時だ。

その前からバンドを計画してた……?

いや、弦巻がそんなこと考えてるとは思えないな。

ダメだ。全くわからん。

 

 

 

美咲「………くん、……き………や……くん!」

 

 

 

弦巻が話しかけてきたのは自己紹介の時だし、それから…………

 

 

 

美咲「比企谷くん!ねぇ、聞いてる!?」

 

 

 

八幡「えっ!?あっ、はい!」

 

 

 

美咲「ひ、比企谷くん………大丈夫?

声掛けても全然反応しないからビックリしたじゃん……」

 

 

八幡「あ、あぁ………すまん。

ちょっと考え事してた。」

 

 

 

今はそんなこと考えてもわからないし、あまりにも気になったら本人に直接聞いて見ればいいだけだ。

 

 

 

美咲「それで、ちゃんとバンドの事を断ろうと思ってるんだけど、弦巻さんと全然会話が出来なくて。

今日朝から休み時間になるたびに追いかけたけど、階段は5段飛ばしでかけおりたりするし、バク転したりで………まだ話せてないんです。」

 

 

 

あー、うん。

想像しか出来ない………

それにしても律儀な人だな、わざわざ断るなんて。

 

 

 

八幡「あー、じゃあ、今日放課後に一緒に弦巻に話してみるか?」

 

 

 

俺が加わったところで何かが変わるとは限らないけど、奥沢さんに対しては罪悪感があるからな。

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

えー、なんか黙っちゃったんだけどこの人。

そんなに俺と一緒が嫌だったのだろうか

………なんか帰りたくなってきた。

死にたいので帰ります。

 

 

 

美咲「あ、ごめん。ただ、ちょっと意外でして………」

 

 

八幡「意外………?何が………?」

 

 

美咲「いや、比企谷くんってなんか、関わりづらいというか、近寄ってくんなオーラが出てた気がしたから。

でも、弦巻さんとの会話を聞いてて結構優しい人だとは思ってたけど、改めて比企谷くんって優しいんだね」

 

 

 

八幡「へ…………?あ、いや、まぁそうだな。

俺は優しいぞ。今頃になって気づいたのか。ちょっと遅いぞ。みんな知ってることだと思ってたわ」

 

 

 

美咲 (これって………多分照れてるよね笑

比企谷くんって目はアレだけど意外と可愛い所あるんだね笑)

 

 

 

八幡「ん、んんっ!そ、それよりもだ。

俺が一緒でも、なんにも変わらないかもしれないことだけはわかってくれ。

アイツは本当に止められないからな…………

それと、この後バイトがあるから今日断るのは厳しいかもしれん………」

 

 

 

美咲「え、あー、うん。わかった。

そしたら他の作戦でも考えるよ」

 

 

 

八幡「じゃあ、放課後にな。」

 

 

 

×××

 

 

 

先生「はい!じゃあ、今日はここまで。

皆さんさようならー!」

 

 

 

放課後に突入したのはいいが、俺は今日バイトがある。

時間はまだあるが、長くなってしまっては終わり。

敵が弦巻ってだけでも辛いのに、時間制限もあるとか無理ゲー………

 

 

 

こころ「はーーちーーまーーんっ!!!」

 

 

八幡「っぐへ!!」

 

 

黄色い弾丸が俺に飛んできた。

痛い………

 

 

 

美咲 (うわぁ………比企谷くん大丈夫かな。

今から弦巻さんと話すけど心配だ……)

 

 

 

八幡「突っ込んで来るな。痛いから。

てか、ちょー痛い。マジで辞めて下さい」

 

 

こころ「もうすぐで、花音とはぐみが来るのっ!今日はバンドについて話し合うわよ!」

 

 

花音「こ、こころちゃん……はぐみさん、

連れてきたよ………?」

 

 

噂をすれば来たな。

どこで、奥沢さんを紹介しよう………

 

 

はぐみ「遅れてごめん!ソフトボールの会議で。はぐみ、キャプテンなんだっ。

〜〜で?ついに今からバンドをするの!?

 

 

こころ「いいえ。バンドを作ったからには、

まずは作戦会議がしたいのっ」

 

 

はぐみ「作戦?でも、戦わないんでしょ?」

 

 

こころ「戦わないけど、そう言った方がかっこいいでしょ?

みんなでどんな楽しいことをするか、

話し合いするのよっ」

 

 

 

八幡「ってことは、瀬田さんもいるんだろ?

どこで話し合うんだ?」

 

 

こころ「今からそこに向かうわよ!それじゃ、ついてきて!」

 

 

 

奥沢さんに、なんか移動することになったがどうする?と小声で言うと

 

 

 

美咲「ちょうどいいです。バンドのメンバー全員がいた方が会話が出来そうなので。

私は隠れて尾行するので、ついたら出てきます」

 

 

 

八幡「りょ、りょーかい。

………おい弦巻、その会議する場所ってどれくらいで着くんだ?」

 

 

こころ「うん……?そんなに遠くないわ!」

 

 

 

あ、そう。ならいいんだけど。

俺は数時間でバイトだから、奥沢さんの件だけでも終わらして帰りたい。

 

 

 

×××

 

 

弦巻について行くこと数分。

どこに向かってるんだ……?

しかもさっきからずっと長い堀沿いを歩いてるだけだし。

てか、この家めちゃくちゃでかいんだけど。

もはやこれは家………なのか?

城だよなコレ。

それと奥沢さんは隠れて尾行してるけど、怪しい人にしか見えん……

 

 

 

こころ「着いたわ!薫も来たわね!

それじゃあみんな、入って入って!」

 

 

 

は……………え……………は?

ココ?会議場所ここ?なんで?

………名前の表札には弦巻という文字。

つるまき……?弦巻こころ……

Oh…………コイツめちゃくちゃ金持ちだったのかよ……

 

 

 

美咲 (え…………?これ……家っていうか、

屋敷っていうか………宮殿……)

 

 

 

家の門が自動で開き、入口前にはメイドらしき人や、執事らしき人が数人…

 

 

「おかえりなさいませ、こころさま。

ご友人との会議用の部屋なら、奥に整えてございます。」

 

 

 

薫「こんなお城に住んでいるとは。

こころ、君は本当にお姫様だったんだね。」

 

 

はぐみ「すっごーーい!

遊園地みたいだよっ!プールもあるし、

テニスコート!噴水!!!」

 

 

花音「は、はわ、学校より……大きい……!」

 

 

 

黒服「こころさま。

ご所望のミッシェルさまですが、中の方が

アルバイトを辞退したそうで………」

 

 

こころ「えっ。

ミッシェル見つからなかったの!?」

 

 

八幡「つ、弦巻……

その黒服の人達って、一体……………」

 

 

めちゃくちゃ気になる。

弦巻が時々言う「黒服の人に聞いたの!」って多分この人たちの事だよな……

商店街でも見たし……

 

 

こころ「あ。えっとね、よくわからないけど、あたしができなくて困ったことをこの人たちに話すと、次の日には、だいたいできるようになってるの」

 

 

 

おいおいおーい?

神か?神様かなんかなの?

それで俺のバイトの情報を知ってたのかよ。

 

 

 

こころ「みんなも悩みごとがあったら、

話してみるといいかもしれないわ」

 

 

 

黒服軍団「ですがこころさま、そこにいる彼女が、キグルミの中の方かと………」

 

 

 

八幡、美咲

((隠れてるのバレてた!))

 

 

 

美咲「え、えーと、あの、あたし…」

 

 

八幡「黙ってて悪かった。この人は俺の知り合いだ。

黒服の人たちの言う通りこの人がミッシェルだ。厳密には中の人」

 

 

美咲「比企谷くんの言う通り、あたしがミッシェルだから!

ミッシェルの中の人!わかる?」

 

 

どうせ後でわかることだったからな。

今バレたのは都合が良かったかもしれないな。

 

 

 

こころ「…………?ミッシェルはクマよ。

あなたは女の子だわ。

あんまり…………似てないと思うけど?

八幡あなた、疲れてるのかしら?大丈夫?」

 

 

はぐみ「そうだよっ。ミッシェルはもっとピンクで、もっふもふで、いい匂いがしたよ!はちくん大丈夫?はぐみの家のコロッケ食べる?」

 

 

薫「君はか弱い女の子なのだから、クマだなんて、そんなに強がってはいけないよ……

八幡も男だからといって、無理してはいけないよ」

 

 

マジで心配するような目で俺を見てくる3人。

うぜぇ………マジで心配してくるのが余計に腹立つ。

 

 

 

花音「こ、こころちゃん!

ミッシェルはキグルミで、

たぶん、中にはこの人が……」

 

 

 

やっぱり松原さんしかいないな。

話が通じる人は。

 

 

 

こころ「………『キグルミ…………の人』……?

あなた、ミッシェルと関係がある人なの?」

 

 

 

八幡「………………………マジなのか?」

 

 

 

まさかコイツ………いや、コイツら………?

ミッシェルはクマで、中に人なんていないと思ってる!?

キグルミという存在を知らない!?

…………嘘………だろ………

 

え、詰んだ?これじゃあ何言ったって伝わらないぞ。

コイツらの夢をぶち壊すしか方法が……………

 

………うん。ほかの作戦を考えなきゃな。

別に、黒服の人たちに睨まれて、怖いとかそういうのはない。

サングラス越しでも分かるくらい睨みつけられてる気がするけど気の所為。

3人の言う通り俺は疲れてるだけ。

ただ、いつかぶち壊されるなら俺じゃなくてもいいなと思っただけ。ほんとほんと。

 

 

 

 

こころ「わかったわ。じゃあミッシェルのことは、この『キグルミの人』に聞きましょう。

さっそく、作戦会議を始めるわよっ!」

 

 

 

美咲「え、えぇーー!!?」

 

 

 

八幡「もう諦めた方が楽だぞ、キグルミの人」

 

 

美咲「っ……。ふー…………そうだ………ねっ!」

 

 

八幡「痛い、痛いって」

 

 

脛蹴られた………

 

 

 

 

×××

 

 

 

弦巻家の中に入り、歩くこと5分

 

………歩くこと5分ってなに?

家だよね?5分も歩かないとつかないの?

デカすぎるんだよなマジで。

………あといい加減に機嫌直してください奥沢さん。

 

 

こころ「ココよ!入って入って!」

 

 

 

弦巻が部屋の前で止まり、声をかける。

ココが先程言っていた会議室であろう。

そして、部屋の中に入ると………

 

 

花音「ひ、広い…………っ」

 

 

はぐみ「わぁーー!!すごーーい!

走り回れるねっ!!」

 

 

薫「儚い…………」

 

 

 

美咲「マジですか…………」

 

 

 

八幡 (小町、母ちゃん。初めて他人の家に入ったけどデカすぎるんだ。

会議室とか言ってるんだけど、俺たちの家より広いんだ………)

 

 

 

 

こころ「まず、今まで考えてきた楽しいことリストを紹介するわね!

これでバンドをやろうと思うの!」

 

 

 

弦巻がそう言いながらガラガラと大きいホワイトボードを持ってくる。

この家なんでもありそうだもんな。

その、ホワイトボードには弦巻が書いたと思われる文字が並んでる。

 

 

 

はぐみ「なになに?海の砂浜でお城を作る…

シロツメクサでかんむりをつくる……

流れ星を探しに山にのぼる……こ…………これって………」

 

 

薫「洗い立てのシーツの匂いを嗅ぐ………お腹いっぱいお菓子を食べる………ふふ…………これは……」

 

 

 

はぐみ、薫

「「すごくいい!!!!」」

 

 

 

八幡、美咲、花音

「「「……『バンド』全然関係ない……」」」

 

 

 

 

他にも、夏に特大の花火をする……冬では大人数で雪合戦!などもう色々と書かれている。

 

 

 

こころ「えへへ、そうでしょ?

これで毎日、みんなで楽しく暮らすのよっ」

 

 

 

花音「こ、こころちゃん………!どれもすごく楽しそうだけど、楽器を弾いて、歌を歌って、曲を演奏しないと音楽をしてることにはならないよ………?」

 

 

 

確信した。

やっぱり弦巻はバンドの事を理解してない。

真面目にギターのことしか調べてなかったな。

 

 

 

こころ「そうなの?

どうしても音楽をしなきゃいけないの?」

 

 

 

はぐみ「あ、そうだった。バンドって音楽するんだよ!

音楽………『おと』………『たのしい』?

う〜ん?なんかわかんなくなってきちゃった」

 

 

 

花音「ど、どうしてもっていうか、だって………!

…………えっと、だから…………

…………………うぅ………比企谷くん……」

 

 

 

ここで俺ですか………

まぁ、松原さんに呼ばれちゃ仕方ない。

やるしかないのか………

時間も残り少ないし…

 

………どうするかと悩んでいると、奥沢が近づいてきた。

 

 

美咲「………あの人、この調子でずっとあの3人に振り回されてきたんですか……?

気弱そうだし………比企谷くん早く助けてあげて」

 

 

俺だけに聞こえるように言う。

本人に気弱とか言うなよな。絶対凹むから。

助けてあげたいのは山々だがどうしたもんか……

 

 

 

 

八幡「バンドってのは音楽をするものなんだ。

この前も言ったけど、色んな音を合わせて1つにして演奏する。

だから、ベースやらギターを集めてたんだろ?」

 

 

 

こころ「〜〜はっ!それよ!!それだわ!!

バンドで、音を楽しむのよ!!

はぐみ、八幡!あなたたち、天才ねっ!」

 

 

 

はぐみ「えっ、本当?はぐみ、バンドの才能あるかな?

やったーーーー!」

 

 

薫「なるほど………では、みんなで

めくるめく音を楽しむ旅に出るとしよう…」

 

 

こころ「う〜んっ!!薫も最高!!

それじゃあせーので、みんなで音楽をするわよ!

せーーーーのっ、はいっ!!!!!!」

 

 

 

全員

「………………………」

 

 

 

 

もうカオスだ。

全員固まってんじゃん。

 

 

 

八幡「楽器持ってないから出来るものも出来ねーよ……

そこは考えればわかるだろーが………」

 

 

 

こころ「だって!あたしはとにかくバンドで楽しいことがしたいのよっ。

楽しいことをしなきゃ始まらないでしょ?」

 

 

美咲「じゃあその楽しいことを、考えればいいんじゃないですか?」

 

 

こころ「それが……毎日、いつでも考えているから、すぐには出てこないこともあるのよ。

楽しいことって、結構たいへんなんだから」

 

 

美咲「はぁ………

よくわかんないけど、結構たいへんなのになんでそんなに考えてるの………?」

 

 

 

お話してる所悪いがタイムアップだな。

 

 

 

八幡「話の途中に悪い。時間切れだ。

俺は今からバイトだから。じゃあな。」

 

 

 

松原さん、奥沢、すまない。

時間切れなのだ………

 

 

はぐみ「えぇーー!!はちくん今日バイトあったの!!?

話し合いができないよーー!!」

 

 

八幡「俺がいなくても出来るだろ…………」

 

 

こころ「そうね…………今日はバイトがあるらしいわ。

…………この会議はあたしたちに任せてっ!

明日を楽しみにしててちょーだい!」

 

 

薫「そうだよ。君は何も心配することはないさ。

私に………私たちに任せて行ってくれたまえ……」

 

 

 

なんだこの気遣い。

要らないよそんなの……

心配するよ。主に松原さんたちに…

 

 

 

×××

 

 

 

会議室を出ると、黒服の人が1人部屋の前で立っていた。

 

 

黒服「八幡様、バイト先のCiRCLEまで車でお送りします。こちらへどうぞ」

 

 

八幡「あ、え………はい。ありがとうございます……」

 

 

 

やっぱり俺のことは調べてるってか……

まぁ、そりゃそうだよな。

自分たちのお嬢様に、危ないやつが関わってたら危険だし、弦巻の周辺の人は少なからず調べられてあるだろう。

………個人情報保護法もうちょっと仕事して!

 

 

家を出ると黒いリムジンが1台止まっている。

黒色大好きかよ。

 

 

黒服「さぁ、どうぞ。」

 

 

扉を開けてくれる。

すごい。なんか、偉くなった気分。

 

 

車に乗り込むと、とりあえず広い。

当然リムジンに乗ったのも初めてだし、中がどうなってるのかなども知らないため、

少し………いや、かなり驚いている。

これが金持ちの車………

 

 

 

黒服「着きましたよ」

 

 

 

八幡「あ、わざわざありがとうございます。」

 

 

 

色々考えていたらあっという間に着いてしまった。

車なのでバイトの時間には余裕で間に合い、むしろ時間が余ってしまった。

 

 

 

八幡「適当に時間潰すか………」

 

 

 

黒服「八幡様………少しよろしいでしょうか?」

 

 

 

八幡「あ、はい。なんですか……?」

 

 

 

黒服「あなたはバンドに入る気はないのですか?」

 

 

八幡「まぁ…………そうっすね……

俺が入らなくても問題ないと思いますけど」

 

 

なんでこんな質問してきたのか分からないが、正直に言おう。

 

 

八幡「ある程度俺の事を調べてるのなら知ってると思いますけど、うちには父親がいません。

母が1人で遅くまで仕事して生活してます。

だから、俺も少しでも力になりたいからバイトをしてます。

バンドをしてる暇なんて俺にはないです。」

 

 

 

そう。俺には父親がいない。

俺が小学生の時に亡くなった。

だからバイトをして、少しでもかーちゃんを楽させてあげたい。

 

 

 

黒服「………………はい。

失礼ですが比企谷様の家庭事情は調べさせてもらっています。」

 

 

八幡「別に怒ってはないですよ。

そっちの家庭の事情的に調べなきゃ、お嬢様が危険ですからね。」

 

 

黒服「理解して頂き感謝します。」

 

 

八幡「……あ、自分からも1ついいですか?」

 

 

気になってたし、ちょうどよかった。

 

 

黒服「はい。なんでしょうか?」

 

 

八幡「なんで、弦巻………こころさんは、

俺なんかを誘うか知ってます…?

入学式の次の日の自己紹介の時に少し話した程度で、それから1週間が経ってからは毎日のように付きまとわれるようになったのですが俺には原因が分からなくて……」

 

 

今日奥沢と話していたら思ったのだ。

なんで俺は弦巻と絡んでいるのか。

原因はなんなのか。

考えても全然わからないから聞いてみることにした。

 

 

 

黒服「…………それはわたくしにもわかりません。それはこころ様しかわからないと思われます。」

 

 

 

八幡「…そう……ですか。」

 

 

 

まぁ、弦巻が全ての事をこの人たちに話してるとは限らないからな。

本人に聞けばわかる事だし。

 

 

 

黒服「力になれず申し訳ございません」

 

 

 

八幡「いや、俺もすいません。

今度アイツに聞いてみます」

 

 

 

黒服「それがいいと思います。

では、わたくしはこれで……」

 

 

 

八幡「あ、はい。送って頂きありがとうございました。」

 

 

黒服「失礼します。」

 

 

 

話をしていたら時間も丁度よくなり、すぐそこに見えてるCiRCLEに足を運ぶ。

さて、3日ぶりのバイトだ。

ミスしないように気をつけないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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メンバーは揃った.........................のだろうか?






 

 

 

昨日、俺はバイトがあったため、途中で弦巻たちのバンド作戦会議?を抜け出したのである。

話し合いは進んだのだろうか………

奥沢さんは辞めれたのかな………

まぁ、今日学校に着けば嫌でもわかるだろうなと、登校しながら考えてる俺。

 

 

なんだかんだで気になっちゃってんだよなー。

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい放課後。

 

 

 

もう大変だった。

教室着いたら、ハイテンション弦巻(いつも通り)が昨日のことをたくさん話してきた。

掛け声が決まったとか、コレからやることが決まったーとか。

 

 

 

 

 

そして、もう1人は…………うん。

明らかに元気ないというか、疲れてるというか………

その………お疲れ様です。

きっと脱退に失敗したんだろうな………

 

 

 

 

 

こころ「はちまん!今日も会議するわよ!

会議の次は楽器の練習よっ!

今からすごく楽しみだわ!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころん!はちくん!みーくん!

早くいこうよー!はぐみもう走りたい気分だよ!」

 

 

 

 

 

こころ「それはとてもいいアイデアだわ!

それじゃあたしの家まで競走よっ!」

 

 

 

 

 

こころ、はぐみ「「よーーい、ドンッ!!」

 

 

 

 

 

 

廊下で大きく叫び、走り出す2人。

風紀委員に捕まっても知らんからな。

………あ、いま「ふぇぇ」って聞こえたけど、松原さんがアイツらに捕まったか……

 

 

 

 

美咲「………比企谷くん。あの2人がやばいんですけど………」

 

 

 

 

八幡「それは今に始まった事じゃないな。

………結局昨日の事、あんまり知らないんだけど何が決まったんだ?」

 

 

 

 

 

 

弦巻は、掛け声が決まってハッピーラッキースマイルイェーイとか連呼してたけど、内容が全然わからん。

 

 

 

 

 

美咲「はぁ…………そうですね。

歩きながら話しますよ」

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

歩きながら奥沢から聞いたことは……………

 

・バンドで楽しいことがしたい。

・世界を笑顔にしたい。

・笑顔になりたくない人なんていないから笑顔にする。

・世界を笑顔にする。

・あたし達が集まったのには理由がある。

・世界をハッピーにする。

・相手に楽しくしてもらうにはまずは自分が楽しくなる。

・ワールドハッピー。

・ハッピー!ラッキー!スマイル!イェーイ!!

・楽器をそれぞれ手に入れた。

 

 

 

 

 

…………何コレ。

奥沢のやつ無意識か分からないけど、世界を笑顔にする的なこと4回言ってるぞ。

それほどカオスだったのか………

最後のやつ、ゲームのRPG見たいになっとりますよ?

 

 

 

 

 

 

世界を笑顔にする………ね。

弦巻が言いそうな言葉だ。

しかも本気なんだろうな。

何とも志が高いバンドだな。

 

 

 

 

 

 

学校を出て少し歩くと、弦巻と北沢、松原さん、瀬田先輩がいて近くに見覚えのある黒色のリムジンが止まっている。

あぁ、そういう事ね………

 

 

 

 

 

 

はぐみ「わぁー!!すーっごいよ!リムジンだよリムジン!はぐみ初めて乗るよっ!!」

 

 

 

 

 

花音「わ、わたしも……初めて。

さ、さすがこころちゃん…だね。」

 

 

 

 

 

美咲「いやいやいや!

そもそもリムジンに乗る高校生なんてほとんどいないからっ!

この状況が異常なだけです!」

 

 

 

 

 

 

薫「ふふっ。さすがお姫様だ。

あぁ、儚い。」

 

 

 

 

 

 

それぞれリムジンへの感想をこぼしている。

俺は昨日乗ったからな。全然余裕。

 

 

 

 

 

………嘘です。2回目だろうと驚くことには驚く。

なんでこんなに広いの?

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

こころ「さぁ、始めるわよっ!」

 

 

弦巻家に着き、またまた会議室で話し合いが始まった。

 

 

美咲「始めるって言ったって何話すの?」

 

 

こころ「ーーライブが決まらないわっ!」

 

 

 

八幡、花音、美咲

「「「へ?」」」

 

 

 

ライブ?はやくない?この前バンド結成したばっかりだよ?

 

 

薫「昨日解散した後に、

2人でこの辺りのライブハウスに行ったけど軒並み断られてしまってね。

私の美しさの………」

 

 

こころ「まだ演奏する曲がないって、

そんなに重要なことかしら」

 

 

 

おいおいマジかよ。行動するの早い。

あと、近くのライブハウスってCiRCLEですか?

それと、瀬田先輩まだ話の途中だったぞ………

 

 

こころ「バンドと言えばスタジオ練習!

そしてライブ!!

はぐみのくれた雑誌にそう書いてあったわ!

だからライブを決めたいのだけど、

まずはスタジオ練習からかしらっ!」

 

 

 

はぐみ「いいねスタジオ練習っ!

そしてその次はライブだね!!!」

 

 

 

花音「あ、あのねっ。ライブハウスって、

お客さんが来てくれないと困っちゃうんだよ。

だから、ある程度上手なバンドじゃないと…」

 

 

 

八幡「たった数回練習したって、ダメってことだ。まだ1曲も出来ないんだからしばらくライブなんて無理だ。」

 

 

 

こころ、薫、はぐみ

「「「???」」」

 

 

 

いや、ハテナを浮かべるなよ。

 

 

 

美咲「あ。

だったらあのスーツの人たちに、相談すればいいじゃん」

 

 

 

こころ「だめよっ。これはあたし達のバンドなのよっ。

バンドはライブの演出も、曲作りも、衣装も、全部自分たちでやってこそよ!」

 

 

はぐみ「こころんカッコイイ!よーし、はぐみも頑張るよっ!!」

 

 

薫「流石はこころだ。一生ついていこう」

 

 

こころ「ありがとう!!

それに人の力を借りたら、

オリジナリティがはばたいて、

アーティスト性がふやけて、

元に戻らなくなっちゃうのよ!」

 

 

オリジナリティははばたくのに、アーティスト性はふやけちゃうのか。

 

 

美咲「それ全部意味わかってないで言ってるね?

で?それも全部雑誌の受け売り?」

 

 

はぐみ「うん!

それでやっとバンドとして1人前なんだよ!」

 

 

こころ「早くなりたいわ、1人前に!

そしたらもっともっと、楽しくなるわよ、絶対!!」

 

 

 

薫「そうだね。自分たちの力で、1人前になろうじゃないか」

 

 

やる気に満ち溢れてる3人と、未だ心配だと思ってる3人。

……バランスって大事だよな(遠い目)

 

 

美咲「うーん。じゃあまーとりあえず、

マジメに練習して、最低でも4、5曲演奏出来るようになって、話はそれからなんじゃないですか?」

 

 

花音「うん。それなら大丈夫……だと、思います………」

 

 

 

はぐみ「わかった!!根性根性だね!!」

 

 

 

こころ「じゃあ早速楽器の練習をするわよー!!」

 

 

はぐみ「わー!待ってましたー!」

 

 

薫「私の実力をみせる時が来たようだね。」

 

 

 

美咲「ちょっと待って待って!誰が何するかも決めてないでしょ!」

 

 

 

こころ「そうね。はぐみと薫と花音は決まってるけど、ミッシェルと八幡がまだだったわね!

あたしは歌うわよっ!」

 

 

 

まぁ、ボーカルは弦巻だろうな。

 

 

 

八幡「あー、その事で話があるん「失礼します。八幡様、美咲様。少しよろしいでしょうか?」だが…………」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

黒服の人たちに呼ばれ、会議室を出て、隣の部屋に入る。

やはりどこの部屋も広いのな。

 

 

 

美咲「それで話ってなんですか?」

 

 

 

黒服「はい。まず美咲様にはコチラを。」

 

 

 

八幡、美咲

「「えっ!?」」

 

 

 

黒服の人たちが持ってきたのは、

 

 

 

美咲「こ、これって、あの商店街のマスコットキャラじゃ…………」

 

 

黒服「はい。『ミッシェル』でございます。

我々が買い取りました。

これでバンドとして見栄えするよう、私どものアレンジを加えることも可能です。」

 

 

ミッシェルでした。………買い取ったのか。

おい、弦巻お嬢様。

お前の知らないところでとんでもないことが起きてるぞ……

 

 

 

黒服「こころ様が『ミッシェル』と呼ばれた際は、私たちが、着替えるお手伝いをさせて頂きます。」

 

 

黒服「また、ライブについては、

日本一有名なロックフェスの出演権を交渉中です。

獲得した折には、ミッシェルとして、それをこころ様に」

 

 

八幡、美咲

「「っ……!!」」

 

 

 

弦巻たちはバンドのことなんてほとんどわかってないし、俺たちのことを振り回すし、めちゃくちゃだけど……

……それでもアイツらは本気でやろうとしてる。

【世界を笑顔に】なんて、めちゃくちゃ大変な目標を掲げてる。

 

………弦巻たちは言ってた。

自分たちの力で1人前になりたいって。

 

きっと黒服の人たちに頼めば何もかもが上手く行ったりするのかもしれない。

それでも…………それは……………違うと思う。

だから………

 

 

八幡「それは少し違うんじゃないんですか?

それにアイツらは、そんな日本一有名とか、どうでもいいと思いますよ?

………いいです。ライブは、俺たちで調べてみます。」

 

 

美咲「……あたしも調べてみますのでライブの件は大丈夫です。

ミッシェルだけお願いします。」

 

 

黒服「…………わ、わかりました。

それでは失礼します。」

 

 

 

ふと思う。

なんで俺はこんなにもムキになってるのだろうか。

 

 

 

美咲「………少し驚いちゃった。

比企谷くん、結構ムキになってたよね。

………まぁ、なんでかわからないけどあたしもだけどさ」

 

 

八幡「…………別にムキになってはねーよ。

ただ、少し………上手く言えねーけど、そういうのは違うと思っただけだ。」

 

 

美咲「………うん。そうだね。

あたしも、多分………同じ。」

 

 

 

 

………しかしさっきは、俺が弦巻たちに話してる途中で黒服の人たちが割って入ってきたけど、あれって………わざとか?

 

 

 

八幡「それ…………ミッシェル着て行くのか?」

 

 

 

美咲「あー……どうしよう。

ミッシェルの方がいいのかなー…」

 

 

 

八幡「とりあえず着ていけばいいんじゃねーの?

不備とかあったら直してもらえるんだし」

 

 

ミッシェルに慣れとかなきゃ危ないだろうしな。

 

 

美咲「あー………そうですね。

じゃあ着替えてから行くんで先に戻ってて」

 

 

 

八幡「へいへい。」

 

 

 

×××

 

 

 

 

こころ「あーー!やっと戻って来たわねー!

何してたのっ!?楽しいこと!?」

 

 

 

会議室に戻ってきたらすぐこれだ………

相変わらずテンションたけーな。

 

 

 

八幡「いや、ちょっと話し合いをしてただけで楽しいことではないな」

 

 

 

花音「比企谷くん………奥沢さんは……?」

 

 

 

八幡「あー、俺たちは呼ばれた後に別れたんで自分もわからないんですよね」

 

 

嘘です。すいません。

花音さんはミッシェルと奥沢のこと知ってるから嘘をつく必要なかったけどコイツらがいるし、話がややこしくなりそうだから知らないことにしました。すんません。

 

 

 

ガチャ

 

 

 

はぐみ「!!ミッシェルだ!!こころん、

ミッシェルが来たよ!」

 

 

 

こころ、薫、花音

「「「わぁっ!ミッシェル〜!!!」」

 

 

 

大人気だな。

 

 

 

こころ「これでメンバーが揃ったわね!

それじゃあ、改めて楽器を決めるわよっ!」

 

 

 

いや決めなくていいから。

俺はやらんし。

 

 

 

はぐみ「ミッシェルはクマだよ?

その手で楽器弾けるの?」

 

 

 

…………ちょっと待って。

コイツらミッシェルを本気でクマって思ってるんだよな?

えっ!?じゃあ何?全てのクマに言葉が通じるとも思ってんの?

それともミッシェルは別とか?

さっぱりわからん。

 

 

 

こころ「あっ!わかったわ!!DJよ!!

レコードをかけて、音楽を流す係!

パーティーで見たの。

あれならクマでもできるんじゃないかしら!」

 

 

ミッシェル「……………DJ?」

 

 

 

こころ「そう!ミッシェルはこのバンドのDJよ!

DJがいるバンドってかっこいいわよねっ。

う〜んっ。ワクワクしてきたわっ。」

 

 

 

八幡「おい。大丈夫なのか?」

 

 

 

ミッシェル「まぁ………CD流すだけなら、楽しそうだし………」

 

 

 

いや、流すだけじゃないと思うけどな。

めちゃくちゃ難しいって聞いたぞDJ。

 

 

 

 

花音「じゃあ後は、比企谷くんだけだね」

 

 

薫「あぁ!君はどんな儚い楽器を弾いてくれるのかな?」

 

 

 

はぁ。マジで困った。

もう初ライブだけでも出るか?

その後にバンドあるあるな、方向性の違いで辞めた方が楽な気がしてきた。

うん、そうしよう。

仕方ねぇな…………カスタネット八幡起動だな。

 

 

 

こころ「八幡はピアノよっ!

実は最初から決めていたのよっ!」

 

 

 

八幡「っ…………!!!!!」

 

 

花音「ピアノ………つまり、キーボード…?

比企谷くん……ピアノ弾けたの……?」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

 

 

ミッシェル「比企谷くん?松原さんが聞いて…………っ!?」

 

 

美咲 (……ひ、比企谷くんがすごい怖い顔してる………)

 

 

 

八幡「……………あーー。悪い。

ピアノは出来ないわ。

あと、これから用事があったの忘れてたわ。

すまんな。先に失礼するわ」

 

 

5人「……………………」

 

 

 

 

カバンを手に取り、会議室を出る。

前は見ずに斜め下を向いて早足で帰る。

 

 

 

黒服「八幡様。お送りしますよ」

 

 

 

黒服の人に声をかけられるが

 

 

 

八幡「大丈夫です。1人で帰ります。」

 

 

拒否してそのまま歩く。

 

 

数分歩き、弦巻家を出るとやっと落ち着いてきた。

それでも今は誰とも話したくない。

用事なんて本当はないし、このままどうするかと遠回りしながら帰る俺だった。

 

 

×××

 

 

小さい頃は友達も数人はいたが、外で遊ぶような事はあまりしなかった。

家にあった電子ピアノを弾いていたからだ。

毎日のように弾いていた。

小町やお母さん、お父さんも褒めてくれたからずっと続けられた。

 

 

お父さん「八幡、また上手くなったんじゃないか?」

 

 

お母さん「それにしても八幡は本当に楽しそうに演奏するわね。」

 

 

小町「おにーちゃん!もう1回今のやつ弾いてー!」

 

 

八幡「うん!」

 

 

 

この頃はずっとピアノを弾いていたいと思ってた。

………………………あの事故が起きるまでは。

 

 

 

 

 



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パン屋と仲良し5人組と過去話

 

 

八幡が会議室を出て、数分は誰も言葉を発しなかった。

明らかに全員が、八幡の行動に不自然さを感じていたのだ。

 

 

 

美咲side

 

比企谷くんが帰ってから誰も喋らない。

きっと何を喋っていいかわからないんだと思う………

 

すると、はぐみが意を決したように口を開いた。

 

 

 

はぐみ「は、はちくんどうしちゃったんだろうね?用事があるって言ってたけどはぐみ達なんにも聞いてなかったし。」

 

 

薫「そうだね。

先程の八幡は少し……いつもとは違う雰囲気だったね。」

 

 

 

そう。はぐみの言う通り、比企谷くんはいつもバイトや予定があったら言う人だと思う。

だからさっきの用事は十中八九嘘だと思う。

本当だったら謝るしかないけども。

 

それに雰囲気も確かに違かった。

違うというか一気に変わった。

原因がわからない。

なんで急にこんなことになったんだろう?

 

 

 

 

花音「比企谷くんの様子が変わったのは、ピアノの話をした時…………だよね?」

 

 

 

ミッシェル「確かに……そうですね。」

 

 

そうなのだ。ピアノの話をするまではこっち側……というか3バカを相手するツッコミ係というか。

……それにしてもあの弦巻こころが喋らない。

なにか悩んでるのかな?

 

 

こころ「あたしね。この前、いつもの楽しい事探しで色んな所を散歩していたら、八幡を見かけたの。」

 

美咲「……えっ?急になんの話?」

 

 

ゆっくりとその日を思い出すかのように話す。

でも少し、いつもの喋り方ではないからなのか、違和感がある。

 

 

こころ「八幡がピアノを弾いていたのよ!

傍には泣いてる小さな女の子がいたんだけど、八幡の演奏を聴いてるうちにその子は笑顔になったわ!

他の周りにいた人たちも笑顔になっていったのよ!」

 

 

とても嬉しそうに弦巻こころは語る。

話し方も戻ってるし。

 

 

はぐみ「はーくんすごいね!」

 

 

こころ「でもね?ピアノを弾いてる時少しだけ悲しそうな……苦しそうな顔をしていたの。」

 

 

こころ「原因はわからないわ!

でも、『どうしてそんなに苦しそうな顔をしてるの?』って思ったの。

八幡のおかげで周りのみんなは笑顔になったのに、八幡自身は笑顔じゃなかったのよ。」

 

 

こころ「あたしはね?

まずはクラスのみんなの笑顔が見たくて、入学式から色々な人に話を掛けて沢山の笑顔を見てきたわ」

 

 

こころ「そして八幡にも話を掛けたわ。

でも、未だに八幡の笑った顔を見たことがないのよ。」

 

 

 

「「「「………」」」」

 

 

 

薫「そう言えば………確かにそうだね。」

 

 

ミッシェル「あたしも……ないかも」

 

 

こころ「だからね!ピアノの……キーボードのことはもういいの!

この問題は八幡自身が解決しなきゃ行けないものだと思うのっ!」

 

 

こころ「だからね?まずは、あたしは八幡を笑顔にするわ!

『世界を笑顔に』これがあたし達の目標よ!

八幡を笑顔に出来なきゃ世界だって到底笑顔に出来ないわ!

だからあたし達のバンドは八幡を笑顔にしてからがスタートなのよっ!」

 

 

はぐみ「うん…………うん!そうだよっ!」

 

 

こころ「あたしは………笑ってる八幡の演奏を見て聴きたいのっ!

それなのにちーっとも、笑ってくれないから八幡には困っちゃうわ!

でも、八幡と出会って、それから花音と薫、はぐみにミッシェル、キグルミの人と出会えてバンドが組めたわ!」

 

 

ミッシェル「そう…………だね。」

 

 

 

こころ「だから今は待ちましょ!

その間にあたし達は、練習よ!

みんなで上手くなって八幡を驚かせるわよっ!」

 

 

 

 

はぐみ「こころん………

うんっ!そうだよね!よぉーし!根性根性だよっ!」

 

 

 

薫「何もしなかったら何も起こらない。

今は出来ることをやろうか!」

 

 

 

花音「…………うん。そう…………だね。

八幡くんならきっと大丈夫………だよねっ!

私も心配されないように練習しなきゃ…!」

 

 

ミッシェル「………はぁ。

無理矢理の勧誘は絶対に止めますからね。」

 

 

こころ「それじゃあ練習をはじめるわよ〜〜!」

 

 

 

3バカ「「「おー!!」

 

 

 

美咲、花音「「お、おー!」」

 

 

 

 

×××

 

 

 

ふらふらと目的もなく歩いていたら、見覚えのある場所に着いた。

たしかこの先を歩くとCiRCLEに着くはずだ。

まぁ、今日はバイトもないしどうでもいいんだけど。

空は夕方から夜に変わろうとしていて、道ではサラリーマンなどが帰宅をしている。

 

 

 

 

???「あ、あった!」

 

 

???「はや……」

 

 

???「やっぱりつぐは一番星見つけるの早いな!」

 

 

???「つぐってるからね〜」

 

 

???「う〜〜!私が1番先に見つけるつもりだったのにー!」

 

 

 

 

前には5人組?の女が歩いている。

楽器らしき物を背負ってるのでCiRCLEかどこかのライブハウスの練習終わりといった所か。

 

 

にしても歩くのが遅い。

遅いのは構わないのだが、広がって歩かないでもらいたい。

5人ほど横に並ばれてしまうと通る幅もない。

コレはこいつらの後ろを歩いてるしか無さそうだな。

………ストーカーとか言われないよね?

言われたら訴えてやる!…………負ける気しかしねーな。

 

歩きながら脳内裁判を始めてると前の奴らが急に騒がしくなる。

 

 

 

???「あ、沙綾じゃねーか!」

 

 

???「あ〜、ほんとだ〜」

 

 

???「巴にモカじゃん。こんな時間までバンド練?お疲れ様!」

 

 

???「そ〜なんだよ〜。モカちゃんもうおつかれ〜。

だからご褒美パンが欲しいな〜なんて。」

 

 

???「こらモカ!………モカがすいません!

モカはやまぶきベーカリーのパンが大好きなんですよ。」

 

 

???「あはははっ!ごめんねー!今は持ってないから今度オマケしとくね!

いつも沢山買ってくれるからね!」

 

 

???「それにしても沙綾。その子達は沙綾の弟と妹さんか?」

 

 

???「あ、そうだよ。ほーら、さな、じゅん?

このお姉さん達に挨拶して。」

 

 

 

???「…………こ、こんにちは」

 

 

???「ど、どうも………」

 

 

 

???「あはは……………ごめんねー、2人共恥ずかしがり屋で。」

 

 

 

???「ははっ!全然大丈夫だぞ!」

 

 

???「そうだよ〜。蘭だって似たようなもんだし〜」

 

 

???「ちょっ!モカっ!」

 

 

 

「「「あはははっ!」」」

 

 

 

 

わー、たのしそうだなー。

………だけどココでやるの辞めてもらってもよろしいですかね?

ほら、あの奥の方に公園見えます?

そこでなら何時間でも何年でも話していいからさ。

はぁー。もう1度来た道戻ってから違う道で帰った方が早いかもな…………

 

 

 

 

???「あ!」

 

 

1人の女の子が後ろを見て来たので目が合うと声を上げた。

あ、やっべぇ。今のため息が聞こえてたとか?

陰でヒソヒソとウザがられるのは構わないのだが、直接的に攻撃されたらどうしよう……

そして、ストーカー扱いされたら………

 

 

???「す、すみませんっ!

あたし達、話に夢中になってて!

本当にごめんなさい!!」

 

 

 

………なにこの子。めちゃくちゃ優しいじゃん。

ストーカー扱いとか言ってすいません。

 

 

???「あ、本当だ〜。すみませんでした〜。どうぞどうぞ〜」

 

 

???「ちょっとモカ!本当にすみません………」

 

 

 

八幡「いや、その、謝らなくても大丈夫……です。

じゃあ、その……失礼します。」

 

 

 

OK。ちょークール俺。

折角道を譲って貰ったので早足で通らせて貰う。

 

 

 

???「あ!この間のお兄ちゃん!」

 

 

 

「「「「「へ!?」」」」」

 

 

 

なんか小さな女の子に服を掴まれたんだけど、ナンデ………?

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

???「えっ!?じゃあこの人が、紗南と純が言ってたボール取ってくれた人?」

 

 

 

紗南「うん。このお兄ちゃんが取ってくれた!」

 

 

純「うん、俺もちゃんと覚えてる。目で」

 

 

 

ちょっとちょっと?

少女に捕まった後に近くの公園に拉致られたんだけどなんか色々とおかしくない?

俺の知らない所で話が進んでるんだけど。

 

 

……ん?ボール取ってくれた人?

あ、てかよく見たらこの前公園でボール遊びしてた小学生か。

なるほどな。それで知ってる人だから拉致ったと…………うん、さっぱり分からなかったわ。

 

 

 

紗南「あ、あの……!こ、この前はごめんなさい!

お兄ちゃんはボールを取ってくれたのに、さなは………」

 

 

純「お、おれも!ごめんなさい!

俺たちのためにやってくれたのにひどいことを………」

 

 

 

紗南、純「「ごめんなさい!」」

 

 

 

 

えーーーーーー。

え、マジで!?お、おおおおおおちつけ。

コレはダメだろ!?

今にも泣きそうな小学生が2人。

その子らが俺に謝ってる。

………うん。明らかに知らない人が見たら通報しちゃうレベル。

とにかくなんとかしなければ!

 

 

 

 

八幡「い、いや「私からも謝ります!弟と妹が失礼なことを言ってすみませんでした!」

 

 

 

???「い、いま、この人何か言おうとしてなかった?」

 

 

 

ナイス赤いメッシュがかかってる女!

 

 

 

八幡「いや、その、アレだ。そもそも俺は怒ってない。

だから謝る事もない…………です。

それにだ。突然声掛けた俺も悪いし………うん、俺が悪いんだ。………ほんとに。」

 

 

 

???「めちゃくちゃ下向きだ…………」

 

 

 

×××

 

 

 

???「本当にありがとうございました!ボールの事とか、紗南と純の事とか」

 

 

八幡「あー、はい。全然大丈夫です。

じゃあ自分はコレで。」

 

 

???「あ、ちょっと待ってください!

その制服って花咲川の生徒ですよね?」

 

 

八幡「え、はい。そうですけど……」

 

 

 

なに花咲川の制服着てるんだお前?とか言われる?

 

 

 

???「私も花咲川の生徒なんです!

1年の山吹沙綾です!

この2人は私の弟と妹で、紗南と純です!」

 

 

八幡「お、おう。

…………えーっと、俺は比企谷八幡です。1年です。」

 

 

沙綾「同級生なんだね!

じゃあタメ口で大丈夫だよ!」

 

 

結構グイグイ喋るなこの人。

コミュ力高すぎだろ。

あと、そこにいる5人がなんか気まずそうな顔してるのに気づいてあげて。

5人にチラッと視線を向けると銀髪の女の子と目が合った。

 

 

???「ん〜?もしかしてモカちゃんの名前も知りたいの〜?」

 

 

八幡「いや、別にいいです。じゃあ俺はコレで。」

 

 

そう言うと5人組の女の子たちが、銀髪の女の子に「モカ、振られてやんのー」等とからかっている。

 

 

沙綾「あー、ごめんごめん!みんなの紹介もしとくね!」

 

 

いや、だから別にいいって。

人の話を聞こう?ね?

 

 

沙綾「この5人は『Afterglow』っていうバンドを組んでて、みんな幼馴染なんだ。」

 

 

巴「じゃあまずは私から行くぜ!

羽丘学園の1年!宇田川巴だ!よろしくな!」

 

 

ひまり「私も羽丘の1年で上原ひまりです!

よろしくね!」

 

 

つぐみ「わ、私も羽丘の1年で羽沢つぐみって言います!

そ、そのっ!よろしくお願いします!」

 

 

モカ「羽丘1年〜、青葉モカちゃんで〜す。

よろしく〜」

 

 

蘭「………みんなと同じで羽丘1年。

美竹蘭。よろしく。」

 

 

八幡「お、おう。その、えーと、よろしく……?」

 

 

えー、なんでこんなことなってんだっけ?

よろしくと言われましても学校違うしもう会うこと無くない?

………いや待てよ。コイツらバンド組んでるって言ってたから、CiRCLEで会う可能性があるってことか。

 

 

 

モカ「さ〜や〜。モカちゃんはパンが食べたいんだけどお店もう閉まってるの〜?」

 

 

沙綾「あー、ごめんねー。今日はもう全部売り切れでキリが良かったからそのまま閉店にしちゃったんだ。

それで今、買い物の帰りだったんだー」

 

 

つぐみ「やっぱり、やまぶきべーかりー大人気ですね!

私も頑張らなくちゃ!」

 

 

蘭「つぐみがつぐってる…………」

 

 

沙綾「あ、比企谷君も是非やまぶきべーかりーに来てね!

サービスしちゃうよ?」

 

 

へー。こいつの家お店やってんのか。

まぁ、場所も知らんし行く気はないがな。

 

 

 

八幡「お、おう。いつか行ってみるわ」

 

 

 

巴「それは行かない奴のセリフだろ……」

 

 

 

即バレた。

いや、お金ないからな。あー、残念残念。

 

 

ひまり「モカはちょっと食べ過ぎだよ!

朝も沢山買ってたのに………」

 

 

モカ「チッチッチッ。甘いよひーちゃん。

パンは別腹なんですよ〜。

それにカロリーは全部ひーちゃんに送ってるからね〜」

 

 

ひまり「んなっ!?」

 

 

 

沙綾「あははっ。今後共やまぶきベーカリーをよろしくね!」

 

 

それから女子たちの話し合いが始まり、俺はお役御免しようとした時に、ある2人に服を捕まれデジャブを感じつつ振り向くと山吹の弟と妹が「お兄ちゃん遊ぼー」と言われたので30分ほど付き合った。

 

 

 

八幡「じゃあ、俺はここで。」

 

 

沙綾「あ、うん!純たちと遊んでくれてありがとね!

じゃあまた学校で!」

 

 

 

帰ろ帰ろ。

公園を出る寸前にまた服が掴まれた。

 

 

 

紗南「…………バイバイ。」

 

 

 

恥ずかしそうにボソッと言う少女。

それにしてもだ。

あんなこと気にしなくていいのに、謝ってくれるとは2人ともすごくいい子なのだろう。

俺はしゃがんで頭に手を乗せた。

 

 

八幡「じゃあな。」

 

 

 

頭をワシワシと撫でると、くすぐったいのかわからないが目を細めてる。

さぁ、そろそろ帰らないと変態扱いされそうなのでこの場を去りますか。

 

 

モカ「コレって110した方がいいのかな〜?」

 

 

八幡「おいちょっと待て。いや、待ってください。

そのケータイを今すぐしまえ。」

 

 

言った傍からへんたいふしんしゃ扱いしやがって、コレはつい小町で培ったお兄ちゃんスキルが発動されたにすぎない。

特に他意はない。

 

 

つぐみ「モ、モカちゃん!

す、すみません比企谷さんっ!

コレはその、モカちゃんのちょっとした冗談なので気にしないでくださいっ!」

 

 

モカ「そういうこと〜、さっすがつぐ〜。

モカちゃんの事をよくご存知で〜」

 

 

その冗談で俺は冷や汗かいたんだけど。

こいつはアレだ。俺の苦手なタイプだ。

別に得意タイプもなく苦手ばっかりなんだけどな………

それにしてもこの羽沢つぐみって子、めちゃくちゃ良い奴だ。

天使か。天使だな。

……いや、辞めよう。今度こそ通報されそうだ。

 

 

そしてやっと公園を出て帰宅に入る。

今日は疲れた。精神的にも肉体的にも。

早く帰って休もう。

 

 

………てか、あの山吹って女子が「また学校で」とか言ってた気がするけど、「また」って何?

 

 

×××

 

 

 

公園を出てからしばらく経ち、やっとのことで自宅へと着いた。

 

 

八幡「たでーま。」

 

 

小町「おかえりー!今日遅かったね?

バイトだったの?」

 

 

八幡「いや、バイトではなかったんだがな。

ちょっと用事があってな……」

 

 

 

そう言えば今日は、さっきの事件?的なことで忘れてたけど、弦巻の家の話し合いで勝手に帰ってた事忘れてた。

あー、明らかに俺の様子がおかしかったってバレてるよな……

奥沢と松原さんいるし。

 

でもまさか、弦巻が俺にキーボードをやれって言ったのは驚いた。

弾けると知っていたような口調だったのが気になる。

黒服の人達か………………?

まぁ、そんなことはどうでもいいか。

ただ今日は、早く寝たい気分になっていた。

 

 

×××

 

 

数年前の話である。

 

 

小学校4年生の冬頃に事故が起きた。

お父さんが車に轢かれた。

道路に飛び出した子供を助けた後に、自分は間に合わず轢かれたらしい。

病院に搬送されたが、助からずに息を引き取ったらしい。

あまりにも現実味がなく理解が出来なかったが、隣で泣いてるお母さんと小町を見て夢ではない事がわかった。

 

 

父親がいなくなったことにより、お母さんは仕事を増やしていた。

一緒に食べていたご飯も作り置きになり、俺と小町の分しかなく、お母さんとは一緒に食べることはほとんどなかった。

 

お母さんは言っていた。

「心配しなくていいのよ。大丈夫だから。」と。

お母さんは1人で俺たちを養わければならない。

朝から働いているのに、夜の仕事も増やていた。

夜遅くにお母さんが家から出る姿を何度も見た。

 

それからだ。俺がピアノを弾かなくなったのは。

小学5年生になる頃にはめちゃくちゃ勉強していた。

苦手だったが必死になってやった。

中学校では、成績上位者には学費免除が与えられる学校が近くにあったためそこに入学し、成績やテストでは1位を取り続けてた。

家の事も出来るだけやっていた。

少しでもお母さんの為になればと。

小町も同じ気持ちだったのか、2人で協力していた。

 

 

大好きだったピアノ。

毎日のように弾いていたピアノ。

何故弾かなくなったのか…………

自分だけ楽しくピアノを弾くなんて事が出来なかったから。

お父さんは死んで、お母さんは辛い思いをしてるのに、

1人………自分だけ楽しむなんて事は許せなかった。

そう。こんなのはただの自己満足だ。そんなのはわかってる。

わかっていた。

 

 

せめて、妹の小町には楽しく生きていて欲しいと思った。

だけど、小さいのに家事も出来るようになって、俺と違って友達も多いのに家の事を優先して………

小町は俺が思ってるよりもずっと強かったんだ。

 

 

こうして時は経ち、高校生になった。

俺が通う花咲川高校でも、特待生制度があったので入学した。

数年前は女子校だったらしいので運が良かった。

 

 

だが、俺にしては中々内容が濃い学校生活を送っていたな。

誰かさん達のせい………………いや、おかげなのだろうか。

だけどそれももう終わり。

悲しくないなんて言うつもりもない。

ただ、元に戻るだけ。何も無かった中学の頃のように。

それだけだ。

…………それだけなのに、、、

 

 

 

 

 

 

 







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それぞれの想い

 

 

今日も今日とて家を出て学校に向かう。

もうすぐ学校に着いてしまうのだが、昨日のこともあって少し行きたくない…………

 

なんで俺が気まずさを感じなければならんのだ。

あー、嫌だなー、帰りたくなって来たなー、帰っちゃおっかなー…

いや、帰るのはダメだな。

まず、どういう感じで話せばいいんだ?

 

 

 

沙綾「あ、比企谷君……?おっはよー。」

 

 

 

普段通りに話せばいいのか………?

てか、なんで俺は話す前提で話を進めてるんだ……

…………恥ずかしすぎるだろ。

昨日の件で俺に話し掛けるのを辞めた可能性だって……

 

 

沙綾「あ、あれ?比企谷君?おーい」

 

 

 

いや、弦巻こころに限ってそれは無いか………

多分。

関わりにくくなったのは間違いないはずなんだけどな。

だけど、もう無関係者とは言えない所まで首を突っ込んでるしな。

黒服の人にもライブの件はこっちでやるって言っちまったし。

奥沢だけに任せるのも気が引けるしな……

はぁ。これからどうしたもんかね……

 

 

沙綾「ひ、き、が、や、くーん!!」

 

 

八幡「ひゃい!!?」

 

 

沙綾「やっと気づいた………

声掛けてるのに全く反応しないからビックリしたよ。

…………ふふっ、ひゃいって笑」

 

 

耳が…………耳が………

コイツ、朝から人の耳を破壊する気か?

いや、朝じゃなくてもダメだけどさ。

てか、俺に話し掛けてたのか………

………何笑ってんだコイツ。

なんかボソッと言ってた気がするけど聞こえなかった。

 

 

 

八幡「わ、悪い。比企谷君とは聞こえてたけど俺の事呼んでるとは思わなかったわ。」

 

 

沙綾「………え、どういうこと?

名前って比企谷 八幡じゃないの??」

 

 

お、おぉ。

名前を覚えられてるだけで感動しそうになったの初めてだわ。

ヒキタニ君呼びが定着するレベルだもんな。

 

 

八幡「お、おう。合ってるぞ。

ただ、アレだ。小学生や中学生の時にヒキタニやら、ヒキガエルとか言われてたからな。

比企谷って言われる方が珍しいから慣れてないだけだ。」

 

 

ヒキタニ呼びだったら、気づいてた時点で少々ヤバイかもしれない。

しかもヒキガエル呼びは、最終的にヒキが消えてカエル呼びになってたし……………

 

 

 

沙綾「え、えー…………

そ、そんな悲しい出来事があったんだね……」

 

 

 

ごめんねと謝ってくる山吹。

同情するなら金をくれ。ホントマジで。

 

 

 

沙綾「で、でも、大丈夫!!

私は絶対そんな呼び方しないから!」

 

 

 

俺の手を握って「心配しないで!」と言ってくる。

だから急に手を握るな!心の準備というものがですね!!

あー、近いし柔らかいし、なんかいい匂い………パンの匂い?

とはいえ、流石は2人の下の子を持つ姉である。

姉スキルが高いな。

だが、俺を弟扱いするのは辞めてもらおうか……

俺は小町の兄だからな!

 

 

 

八幡「わ、わかったから!

と、とりあえず落ち着け、な?」

 

 

 

沙綾「あ、ご、ごめん!

でも、さっき言ったことは本当だからね!」

 

 

 

八幡「ど、どうも。

じゃあ俺はここ…………で……」

 

 

沙綾「???急にどうしたの?固まって…………!?」

 

 

美咲「比企谷くん随分と楽しそうだね。

あ、ごめんね?邪魔しちゃって。

じゃあ、私はコレで。」

 

 

すっごい笑顔なんだけど、目が全く笑ってない。

怖い。怖いよ怖い。怒ってんのか?

昨日、俺がいない間に何があったんだよ……

 

 

 

沙綾「さ、さっきの人は比企谷君の知り合い?」

 

 

 

その言い方だと、「比企谷君に知り合いなんていたの?」

みたいなニュアンスに聞こえるのは気の所為でしょうかそうですか。

 

 

 

八幡「まぁ、そんな感じだ。

もうすぐチャイム鳴るから行くわ。」

 

 

 

沙綾「あ、うん。またねー」

 

 

 

×××

 

 

こころ「はっちまーん!」

 

 

八幡「うおっ!?…………お前か。

どうしたんすかね。」

 

 

昨日の今日でよくいつも通りに話せるな。

それとも俺が明らかに変だったって事がバレてないとか?

………いや、それはないか。コイツだけならまだしも奥沢と松原さんがいるし。

まぁ、自分から昨日の話題に触れないようにしよう。

 

 

 

こころ「お前じゃないわ!!あたしは弦巻こころよ!」

 

 

八幡「あー、はいはい。すいませんね。

………そろそろ席に着いた方がいいぞ。

チャイム鳴るし。」

 

 

こころ「放課後に話があるの!!全員集合よ!!」

 

 

 

話って昨日の事か………

やっぱり気づいてたよな……

まぁ、丁度いいな。

俺も理由をハッキリと言わないといけないからな。

 

 

×××

 

 

 

放課後になり、俺たちは弦巻家に着いた。

会議室に着くと、中には既に瀬田先輩がいた。

 

 

 

薫「待っていたよ。子猫ちゃんたち。」

 

 

 

こころ「待たせたわね!それじゃあ、早速会議を始めるわ!!」

 

 

八幡「あー…………その事なんだが、ちょっといいか?」

 

 

もう昨日の件もあるし、ここでキッパリと言った方がお互いのためだろ。

 

 

 

花音「ど、どう……したの………?」

 

 

5人が俺を見る。

雰囲気で察したのか、心配そうな顔で見られたら言いにくくなるからやめてほしい。

 

 

 

でも…………コイツらは本気だ。

奥沢はまだどう思ってるかわからんが何かと面倒見が良くて優しいやつだからな。

近いうちにでも脱退することなんてやめて、一生懸命にバンドに取り組む事だろう。

 

 

それなのに俺は、まだ何も言ってない。

出来ない理由を伝えなければ行けない。

 

 

 

八幡「俺は……バンドは出来ない。

バンドはやらない。」

 

 

 

5人「………っ!!」

 

 

 

少しの沈黙が訪れる。

弦巻まで黙るとはな。

 

 

こころ「………理由を聞いてもいいかしら?」

 

 

八幡「……あぁ。

俺は………俺の家は母子家庭なんだ。

今は、妹と母さんとカマクラって猫と一緒に暮らしてる。」

 

 

 

八幡「母さんは俺たちのために、割と無理して働いててな。

それに、前の家のローンとかも払わなきゃいけないんだよ。

俺も少しでもいいから手助けがしたい。

だから、バイトをしなきゃ行けないんだ。」

 

 

 

八幡「だから、悪い。

俺はバンドに入らない。」

 

 

 

5人「……………」

 

 

 

最初から言ってればよかったな。

別に言いたくない理由はなかったんだけどな。

話すことでもないと思ってた。

だけど、散々引きずったせいか、それともコイツらの顔を見て思ったのかは分からないが、少しだけ…………寂しいと感じた。

 

別に会えなくなる訳じゃないし、

寂しいと言うのは少しおかしいのかもしれない。

この感情が何を意味してるかなんてどうでもいい事だ。

だが、ライブの件はちゃんとやりきろう。

CiRCLEでも探せるし、まりなさんに聞けばしっかりとした所が見つけられるかもしれないしな。

 

 

 

美咲「そう………だったんだね。

………あたし達、昨日比企谷くんが帰った後に話したんだ。

様子がおかしかったから何か事情があるんじゃないかって」

 

 

美咲「……1つ聞いてもいい?

なんでこころがキーボードを頼んだ時に、悲しそうな顔をしてたの?」

 

 

 

八幡「っ!?」

 

 

 

おいおい。そんな顔もしてたのかよ。

ポーカーフェイスさん仕事してくれよ。

まぁ、別に黙ってる事でもないけどな。

 

 

 

八幡「あー、それはアレだ。

……小学生の頃弾いてたんだ。

小学生の頃は外で遊ぶタイプでもなかったからな。

ずっとピアノを弾いてたんだよ。

でも、父さんが死んだ時から弾くことを辞めてな。

それからは勉強ばっかりしてた。

中学の奨学金目当てで、ピアノなんて忘れるくらいに。」

 

 

美咲「……そっか」

 

 

 

またもや沈黙。

間違いなく俺のせいだな。

だけど今日で終わるんだ………我慢しなきゃな。

 

 

こころ「………あたしね?八幡のピアノの演奏を聴いたことがあるの」

 

 

急に弦巻が口を開く。

 

 

八幡「………いや、俺は家族以外の前で弾いた覚えはないんだが、

一体いつ………あ」

 

 

八幡「あの迷子の女の子の時………お前まさかあの場に居たのか?」

 

 

こころ「そうよ!楽しいこと探ししてたらたまたま八幡がピアノを弾いているのを見かけたわ!

周りの人も笑顔にしてて、あたしもすーっごく楽しかったわ!」

 

 

こころ「……八幡、あたしはね?

あたし達のバンドは、みんなを、世界を笑顔にするバンドになるの。

あなたがいなくても、目標も、やるべき事も何も変わらないわ。」

 

 

八幡「……………」

 

 

こころ「でもね?

あたしは、あたし達はあなたと、八幡と一緒に、バンドをしたい。

一緒に音を合わせて、一緒に世界を笑顔にしたいわ。」

 

 

花音「こころちゃん………」

はぐみ「こころん………」

薫「こころ…………」

美咲「……………」

 

 

八幡「…………さっきも言ったが俺はバンドは」

 

 

こころ「えぇ。出来ないって言ってたわよね。」

 

 

八幡「……あ、あぁ。だから」

 

 

こころ「じゃあ、やりましょう!」

 

 

5人「……………え?」

 

 

おいおい。誰かコイツを止めてくれ。

 

 

こころ「………どうしたの??」

 

 

八幡「いやいや、話聞いてたのか……?」

 

 

美咲「そ、そうだよ。比企谷くんは出来ないって」

 

 

頭の中パニクってきた。

コイツは一体何を言ってんだ。

 

 

こころ「出来ないのなら出来るようにすればいいのよ!」

 

 

花音「え、えーと………こころちゃん?」

 

 

…………コイツが言おうとしてることがわかった気がする。

 

 

 

こころ「バンドが出来ない理由は、勉強とバイトがあるからよね?」

 

 

美咲「ま、まさか……お金を……??」

 

 

はぐみ、薫「「え………?」」

 

 

いや、それは無いな。

いくら常識がぶっ飛んでる弦巻でもそれは無いと言える……根拠はないが。

コイツが言おうとしてることは、多分………

 

 

 

こころ「違うわ。

勉強とバイト、バンドもやればいいのよ!」

 

 

何もかも無茶苦茶にしたり、言ったりするのが得意なコイツの事だ。

そう言うと思ったわ………

 

 

美咲「………滅茶苦茶だ。」

 

 

花音「あ、あははは………」

 

 

はぐみ「流石こころん!!根性だね!」

 

 

薫「ふむ。その発想は無かったよ。流石だこころ」

 

 

 

八幡「待て待て。俺はCiRCLEの他にもバイトをする気だし、勉強だって良い大学に行くために学年1位は余裕で取れなきゃ行けないんだけど?」

 

 

 

こころ「はちまんっ!あなたはピアノは好きかしら?」

 

 

 

八幡「………え?」

 

 

 

いきなり何を…………

 

 

 

こころ「小学生の頃は毎日弾いていたんでしょう?

それはピアノが好きだから出来た事だとおもうの!

じゃあ、弾かなくなった今はどうなのかしら?」

 

 

 

言って……………

 

 

 

 

こころ「………八幡、あなたは凄いわ!

きっと、八幡のやってきた事はとっても大変で辛い事だったと思うの。

自分の好きだった事をやめて、勉強するなんて簡単な事じゃないわ」

 

 

戸惑う俺に、優しい顔で問いかけてくる。

 

 

 

こころ「やっぱりさっきの質問を変えるわね!嫌いなわけないもの!

八幡は…………ピアノは『今でも』好き?」

 

 

八幡「………………俺は、、、」

 

………俺はきっと逃げていたんだ。

勉強を理由に………

 

 

 

 

こころ「…………八幡は前にあたしに言ったわよね?我儘だって」

 

 

 

弾く理由が無かった。

理由が欲しかったんだ………

 

 

 

八幡「…………あぁ。

めちゃくちゃ我儘なお姫様だよ、お前は。」

 

 

 

弾いてもいい理由。

俺がピアノを好きでいてもいい理由を………

 

 

 

 

こころ「じゃあ、今から我儘を言ってもいいかしら!」

 

 

 

八幡「………はぁ、なんで疑問系じゃないんですかね。」

 

 

 

だけど………………

 

 

 

こころ「あたし達と一緒にバンドをしましょ!!」

 

 

 

…………………コイツらが理由になってくれるらしい。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

八幡「たでーま。」

 

 

小町「おかえりー。バイトお疲れ様であります!

夜ご飯今から作るからちょっと……………ありゃ?」

 

 

 

八幡「え、何………?どうした?俺の顔を見て固まって。」

 

 

 

小町「いや…………まぁ、うん。

お兄ちゃん今日いい事でもあった………?」

 

 

 

八幡「……………は?」

 

 

 

小町「うーんとね、鏡見てくれば……?

なにがあったかは知らないけど、遠足前の小学生見たいな顔してるよ?」

 

 

 

八幡「………な、何を言ってござるんだ、い、いきなり」

 

 

 

小町「お兄ちゃんに言われたくないんだけど………

大丈夫……?熱でもあるの??」

 

 

 

八幡「………い、いや、熱は無い。

そ、それに俺はアレだから。

遠足前なんて絶望な顔しかしてなかったから。

当日なんて絶望通り越して無の状態だったから。」

 

 

 

小町「…………??

何を誤魔化してるのか小町にはさっぱりわからないけど、やっぱりお兄ちゃん変だよ?

いや、お兄ちゃんが変なのは今に始まった事じゃないんだけどさ。」

 

 

 

八幡「ちょっと?小町ちゃん?

急にお兄ちゃんディスるのやめようね?」

 

 

 

小町「ほらほらそんな事はいいから、小町に話してみそ?

聞いてあげるからさ!」

 

 

 

八幡「そんな事って…………

いや、お前は聞きたいだけだろ。」

 

 

 

小町「いいじゃーん!

お兄ちゃんいっつも、つまんなそうな顔してるじゃん!

なのに今日はその逆だよ?

気にならないわけないじゃん!!」

 

 

 

八幡「……………ドに……れた。」

 

 

 

小町「全然聞こえなーい!ほら!大きな声で!!」

 

 

 

八幡「………バンドに誘われた。」

 

 

 

小町「…………………」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

小町「………あ、もしもしお母さん?今日は赤飯炊くから何かお祝い的な食べ物買ってきてー」

 

 

八幡「……ん?ちょっと?小町!?」

 

 

 

小町「うん。いや、小町じゃなくてお兄ちゃんがね?

………そうそう。まぁ、帰ってきたら詳しく話すよー!

はい、じゃあ気をつけて帰ってきてねー」

 

 

 

八幡「………おい、何してんだ妹よ。」

 

 

小町「ん?何ってお兄ちゃんの為に夜ご飯をご馳走にしてあげるんだよ?

あ、今の小町的にポイント高い!」

 

 

八幡「いや、うん、それは八幡的にもポイント高いんだけどね?

まだ誘われたしか言ってないんだけど?」

 

 

小町「はぁ。お兄ちゃんは小町を舐めてるよ?

………いや、今回は小町じゃなくてもわかるよ、、、」

 

 

八幡「うぐっ……

…………お、俺ってそんなに顔に出てたか?」

 

 

小町「んー、、、まぁ、そこまででも無かったけど妹の小町には丸わかりって感じ!

他人が見たら気づかないかもしれない………かも?」

 

 

 

八幡「…………はぁ。

そうか。そんな顔してたんだな俺は。」

 

 

 

小町「うん!

お兄ちゃんのそんな顔見た事なかったから小町も嬉しいよ!

あ、今の小町的にちょーちょーポイント高い!」

 

 

八幡「あ、うん、高い高い。」

 

 

小町「わー、適当だー」

 

 

×××

 

 

時は経ち、3人で食卓を囲む。

 

 

 

お母さん「そんで??何がどうなったの?」

 

 

 

小町「ほらほら〜お兄ちゃん?言っちゃいなよ!」

 

 

 

八幡「おい、マジでそのノリ辞めろよ。

そこまで浮ついた話じゃなーからな」

 

 

 

お母さん「この流れだと一般的には彼女の話になるんだと思うけど、八幡に限ってそれはないと思ってるから大丈夫よ。」

 

 

 

流石母。略してさすはは。

俺の事をわかってらっしゃるー。

……だけどさ?なんか、こう、ちょっと酷くない?

合ってるよ?合ってるんだけどね?

傷つくというか、悲しいわ。うん。

 

 

 

八幡「まぁ、アレだ。

隠すことでもないから言うけど、バンドに誘われたんだ。

キーボードとして」

 

 

 

お母さん「ホントに!?」

 

 

 

勢いよく立ち上がり聞いてくる。

ビックリするから、いやもうビックリしてるから。

ほら、カマクラがなんか凄い顔してるよ?

 

 

 

八幡「お、おう。ホントに」

 

 

 

小町「やっぱりビックリするよね。」

 

 

 

お母さん「うん。だって……」

 

 

 

小町、お母さん「「八幡(お兄ちゃん)を誘ってくれるようなお友達がいたなんて!!」」

 

 

 

 

八幡「ご馳走様でした。お休みなさい」

 

 

 

小町「わー、待って待って!ごめんておにーちゃん!」

 

 

 

別に今から布団で泣くとかそういうのじゃない。

揃いも揃って俺をからかって楽しいのだろうか。

こっちは今、真面目に悩んで考えてるってのに……

 

 

 

お母さん「いやー、でも、そっか。

八幡、バンドに誘われたんだね。

………返事はしたの?」

 

 

 

八幡「…………まだ。」

 

 

 

小町「え!?そなの!?じゃあなんで嬉しそうな顔してたのさ!!」

 

 

 

八幡「いや、それは………

あの時は入ろうとしてた。ピアノが弾けると思うとワクワクもしてた。

だけど、やっぱり考えるんだ。それは俺の我儘じゃないのか。

全てを中途半端にしてしまうんじゃないか。とかな……」

 

 

 

小町「…………難しく考えすぎじゃない?」

 

 

 

八幡「………えっ?」

 

 

 

小町「……………小町はね?

小町は、お兄ちゃんに好きな事やって欲しいって思ってるよ。

もう一度ピアノを弾いてるお兄ちゃんに………

あの頃のお兄ちゃんを見たいな。」

 

 

 

お母さん「……………八幡。

カッコつけるのもいい加減にしときな。」

 

 

 

八幡「………な…」

 

 

 

お母さん「勉強頑張って、奨学金を取ってくれたのも嬉しい。

家の為にバイトをしてくれるのも凄く嬉しい。

ローンだって確かにあるけど、借金はないんだよ。

小町だって、家事もお買い物もしてくれて凄く助かってる。

2人にはいつも感謝してる。

2人とも小さい時からお父さんが亡くなっても強く生きてる。」

 

 

お母さん「でもね………?

自分のやりたい事を捨ててまでそんな事して欲しくない。

親が子どもを面倒見るのは当たり前の事なのよ?

どんなに疲れたって、辛くたってね?

あなた達が大好きだから頑張れるの。

あたしが1人だったらここまで頑張る理由はないの。」

 

 

 

お母さん「…………それなのに、

あたしのために……家のために、八幡が辛い思いをしていたら駄目だわ。

………八幡がピアノを弾かなくなった時、あたしは何も出来なかった。

弾かなくなった理由も知ってる。どんどん上がっていくテストの点数を見たり、あたしが夜遅くに帰ってくるのに、部屋の明かりがついてて勉強してる八幡を見ていたから。」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

お母さん「あんたが変な所で頑固なのは知ってる。

だから、私の正直な気持ちを言うわ。」

 

 

 

お母さん「勉強も今まで通りしなさい。

バイトも辞めずに続けること。

そして、バンド……………好きな事もやって欲しい。」

 

 

小町「小町も同じ気持ちなのです!

全部やっちゃえばいいんだよ!」

 

 

 

八幡「……………は?え?は??」

 

 

 

弦巻と言い、この2人もだが…………そんな簡単に言わないで!?

 

 

 

小町「大体なんで絞ろうとか、出来ないとか言ってるの?

全部やれば問題ないよ!」

 

 

 

八幡「小町ちゃん?それはめちゃく」

 

 

 

小町「小町はね……?

お兄ちゃんのピアノ好きなんだ。

小町たち家族をたくさん笑顔にしてきたお兄ちゃんのピアノ。」

 

 

 

八幡「……………小町。」

 

 

 

お母さん「………はい。あとは、1人で考える時間よ。

自分は何がしたいかを決めるの。

〇か✕なんて決めないで。正解なんてないんだから。

ただ、もう少し………自分に優しくしてもいいんじゃない?」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はっちまーん!!」

 

 

 

八幡「ぐべふっ」

 

 

 

教室に向かう途中に突然背後からタックルされる。

ダメージもあるけど心臓にも悪いから辞めていただきたい。

足音は聞こえてたけど、やっぱりコイツだったのか………

 

 

 

こころ「おはようっ!」

 

 

 

八幡「いい加減、挨拶くらい静かにやってもらってもいいですかね。

………うす。」

 

 

 

こころ「挨拶はしっかり返すものよ?

うすじゃなくておはようだわ!」

 

 

 

八幡「あー、次から気をつけるわ。

………ちょっと?ここ俺の席。お前の席はあっち。OK?」

 

 

 

こころ「お前じゃないわ!!つる「だぁー、わかったわかった。」

 

 

 

八幡「弦巻……おはよう。」

 

 

なんかめちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

クラスの奴らの生暖かい目もあるし………

 

 

こころ「おはようっ!はちまん!!

それと、今日も会議室に集合よ!」

 

 

八幡「……へいへい、わかってますよ。」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

学校が終わり、校門を出て少し歩くと黒いリムジンが止まってる。

そして、それに乗り込む俺たち。

 

 

 

花音「な、なんかこのリムジンに乗ることに抵抗が無くなって来ちゃった………」

 

 

美咲「あたしもですよ…………

こんなの絶対おかしいのに。」

 

 

八幡「3バカは普通の車に乗る感覚だろうからな。

………俺なんてリムジンは空想の話だと思ってたぞ。」

 

 

はぐみ「あ、薫くん!もう乗ってたんだね!!」

 

 

薫「あぁ。私はいつでも君たちのそばにいるよ。」

 

 

何それ怖い。

 

 

こころ「それじゃあ、出発よ!!」

 

 

 

×××

 

 

会議室に着き、全員席に座る。

 

 

 

こころ「美咲!今日もミッシェルはいないのかしら?」

 

 

美咲「あー、うん。いるんだけどね、、、ボソッ

みんなで話を進めといてって言ってたよ」

 

 

 

こころ「あらそうなの?わかったわ!!

じゃあ、会議をしましょう!」

 

 

 

花音「あ、その前に………いいかな?

えーっと………昨日の件なんだけどね?」

 

 

美咲「………うん。比企谷くんは結局…………」

 

 

 

はぐみ「あ、はぐみも気になってた!昨日はち君は、考えてくるって言ってたけど……………」

 

 

 

薫「……………答えは決まったのかい?」

 

 

 

昨日は結局、あの後何も言わずにバイトに行ったのだ。

あの時に答えてしまったら、間違いなく色々な感情に流された決断をしてしまうかもしれないと思ったからだ。

 

 

 

こころ「八幡はもう答えを持ってるのよね?」

 

 

 

八幡「……………あぁ。」

 

 

 

こころ「…………聞かせて頂戴?八幡の答えを。」

 

 

 

 

八幡「……………俺は、、、

俺はやっぱりキツイだろうって考えた。」

 

 

 

5人「………………」

 

 

 

5人は静かに俺の言葉に耳を傾けてる。

きっと、俺がどんな答えを出しても受け入れてくれるのだろうと、らしくもなく思ってしまう。

 

 

八幡「勉強は今まで通りだとして、バイトもある。

それに、俺はピアノをやってたけどキーボードは初心者だ。

軽くは弾けるかも知れないが、演奏となると全然だ。」

 

 

 

八幡「色々考えた。

バンドに入らなかった自分とバンドに入った自分。」

 

 

 

これはもう自分だけの問題ではないのだ。

入ったら当然、メンバーに迷惑をかけることになるかもしれない。

………いいや、きっとかけるだろう。

それなら入らない方がずっと楽でいい。

そう思ってた。

 

 

 

八幡「だけど………」

 

 

 

 

俺は妹の…………家族のためならたいていのことはしてしまう素晴らしい兄なのである。

それは2人が俺にくれた1つの理由だ。

そして、この5人も俺に理由をくれた。

 

どこかでずっと…………理由を探していた俺に。

 

 

 

八幡「決めたよ。」

 

 

 

理由はもうある。あとは、俺が決めるだけ。

コレは俺の意思で決めなくちゃ行けない。

………正解なんてないと言われた。

今までは答えがある問題を解くために勉強をしてきた。

こういう時には全く役に立たねぇな、勉強さん。

それでも俺は……………例え正解じゃなくても、

『コッチ』を選んで良かったって言えるくらいにはなりたい。

 

 

 

八幡「花咲川高校1年、比企谷八幡。

担当はキーボード、これから……その、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

5人「!!!!!」

 

 

 

こころ「ん〜〜っ!勿論よ!!」

 

 

はぐみ「わーい!!はぐみっ、すっごく嬉しいよ!!」

 

 

 

美咲「…………良かった。」ボソッ

 

 

 

花音「えへへ、あたしも凄く嬉しいよ!」

 

 

 

薫「あぁ、なんて儚いんだ!」

 

 

ワイワイと盛り上がってる光景を見ると少し安心する……

この人たちは人がいいからな……

 

 

 

こころ「じゃあ、早速パーティーよ!!」

 

 

八幡「…………パーティー?」

 

 

突然弦巻が言い出した。

周りの奴らも、あははーと苦笑いしてるのは何故?

 

 

 

美咲「じ、実はですね…………

昨日、比企谷くんが帰ったあとに…………」

 

 

 

花音「こころちゃんが………………ね?」

 

 

 

こころ「こっちの部屋よ!!ほら早くっ!」

 

 

 

俺の手を掴みダッシュで廊下を走る。

ホントに何度も言うけど辞めて貰えます?

 

 

 

×××

 

 

走る事数十秒………………

 

 

こころ「着いたわ!!ココよ!さぁ、はちまんっ!!入って!!」

 

 

またもやでかい扉の前に立たされる。

この家にある部屋は全て会議室位の大きさなのだろうか………

学校よりでかい事は見ればわかるけど、半端ないなマジで。

 

 

扉を開けるとそこには────

 

 

八幡「…………なんもないぞ?」

 

 

別に普通の…………普通?ではないが、物置部屋みたいな感じだ。

 

 

こころ「ここは物置部屋よ!」

 

 

八幡「だ、だよな………?

ここになんの用が………?」

 

 

こころ「ここには特に用はないわ!

目的の部屋はもう通り過ぎたものっ!」

 

 

通り過ぎたものっ!じゃねーだろ。

走ってこっちは疲れたわ。

 

 

こころ「………八幡。あたしはね。

みんなが笑顔になってる所を見たいの。」

 

 

突然に、弦巻は言い出す。

…………こんな事を真面目に言えるなんて流石としか言えないな。

 

 

 

こころ「難しい事なのはわかってるわ!

………でも、笑顔になりたくない人はやっぱりいないと思うの。」

 

 

 

八幡「……それは……まぁ…そうだな。」

 

 

 

 

こころ「あたしはみんなを笑顔にしたいけど、あたしの力じゃなくてもいいの!

誰かが誰かを笑顔に!

とにかくみんなが笑顔で楽しかったらそれでいいの!」

 

 

 

弦巻自身の力じゃなくても、みんなが笑顔になれたらそれでいい。

別にそんな事改めて言われても、何も変には感じやしない。

コイツは別に、皆のヒーローになりたいわけじゃないんだ。

弦巻はただ、みんなの笑顔を望んでるだけ。

 

 

 

こころ「…………でもね。

自分で…………笑顔にさせたい人が出来たの。

初めてかも知れないわっ。」

 

 

八幡「…………え?」

 

 

 

 

 

こころ「………ふふっ。

やっぱりなんでもないわっ!

………さぁ、こっちよ!!みんなが待ってるわ!!」

 

 

 

 

 

…………悪戯な顔で笑う弦巻はいつもの子どものような笑顔ではなく、ちょっぴり小悪魔のような揶揄う笑顔に見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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お嬢様は底が知れない.............いや、ないのかも。

 

 

 

先程来た道を戻り、弦巻が扉の前で止まる。

どうやらここのようだ。

物置部屋の時の弦巻はいつもより少し変に感じたが、気の所為だったのだろうか?

今はすっかりスーパースマイル人の如く通常状態だ。

コレが通常状態とかヤバいな。

 

 

…………そういや、弦巻が怒ったらどうなるんだ?

…………いや、辞めとこう。

たった今、脳内で黒服の人たちに殺されたのは何かの間違いだ。

 

 

こころ「………八幡?どうかしたの?」

 

 

八幡「い、いやなんでもないぞ?

ちょっと頭の中で串刺しにされただけだから気にすんな。」

 

 

弦巻を怒らせてはいけないと言うことだけわかった。

てか、そもそもコイツ怒るって感情あるか心配なレベル。

 

 

こころ「………八幡って時々何を言ってるかわからないわ!」

 

 

八幡「………うっせ。お互い様だっつーの。」

 

 

多分お前にだけは言われたくない。

 

 

こころ「ほら!!早く開けてちょーだい!」

 

 

八幡「へいへい。わかりましたよ。」

 

 

 

一体何があるってんだ…………

 

ガチャ

 

 

「「「パンっ!!」」」

 

 

 

八幡「ヒッ!?」

 

 

 

 

「「八幡(はち君)(比企谷君)おかえりー!!」」

 

 

 

こころ「やったわ!!どう??はちまんっ!

驚いたでしょ!?」

 

 

はぐみ「こころん、やっぱり天才だよー!はぐみ、もう1回クラッカー鳴らしたい!」

 

 

薫「ふふっ。今日という日は凄く儚いね。」

 

 

花音「そう……だね。

でも…………本当に、良かった。」

 

 

美咲「そうですね………

でも、昨日の時点で良くこんな用意を……」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

花音「え、えーっと…………比企谷君大丈夫??」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

美咲「あー…………完全に固まってますね。笑

ヒッ!とか言ってましたし(笑)」

 

 

 

八幡「……………はっ!?」

 

 

 

ここ……は……?

あれ………なんで俺は生きてるんだ?

確か………銃声が聴こえて………それで、、、

 

 

 

八幡「…………………なるほどな。」

 

 

花音「あ、あははは…………

ご、ごめんね?そこまで脅かすつもりはなくて………」

 

 

おっとー。

松原さんが申し訳なさそうに謝っているぞ。

謝らないでください。俺が思考停止したのがいけないんです……

 

 

いや、でもさ?

至近距離でクラッカーされたらそりゃこうなりますよ。

耳からやられました、はい。

 

 

八幡「い、いや大丈夫です。少し驚いただけです。

それで………コレは?」

 

 

辺りを見渡すと、食べ物やらケーキ等とテーブルの上に置いてある。

え、なに?パーティー会場??

 

 

 

こころ「今日は改めてバンドの結成のお祝いだわ!!

みんな盛り上がって行くわよーー!!」

 

 

はぐみ、薫「「おーー!」」

 

 

花音「お、おーー……!」

 

 

美咲「花音さん……無理にしなくてもいいんですよ。」

 

 

八幡「…………マジか。」

 

 

凄い豪華な食べ物が沢山………

ご、ごくり。

 

 

はぐみ「それにしてもこころんは流石だね!!

昨日から準備してて良かったね!」

 

 

美咲「…………確かに。

いや、でもこころは楽観的だからあんまり深くは考えてないと思うけど………」

 

 

八幡「…………何の話だ?」

 

 

花音「あ、えっとね?

昨日比企谷君が帰った後に、こころちゃんがね?」

 

 

美咲「今から早速パーティーの準備をするわよ〜って急に……

いきなり何?ってなりましたよ。」

 

 

薫「こころはいつも突然だからね。

それもお嬢様らしくて、こころらしいよ。」

 

 

はぐみ「こころんは、はち君がバンドするってわかってたの?」

 

 

こころ「………いいえ、少し違うわ!

八幡は元々バンドのメンバーだったでしょ?」

 

 

八幡「………え?」

 

 

こころ「八幡はずっと、「俺はやらねぇ」って言っていたけど、

あたしはずっとバンドメンバーだと思っていたわ!

だって花音に出会った時も、薫にはぐみ、美咲とミッシェルの時だって一緒にいたわ!

八幡はもう既にあたし達の仲間よ!!」

 

 

…………コイツはこういう事を平然と、、、

 

八幡「…………松原さんの時はまだバンドの話はなかったぞ。」

 

 

少し恥ずかしかったので会話を濁す。

まぁ、あの後からバンドの話が始まったんだけどな………

 

 

 

こころ「そうね!あの時は3人だったけど楽しかったわ!」

 

 

花音「ふふっ。比企谷君は、カスタネットだったよね。」

 

 

八幡「そう………でしたね。」

 

 

今でも思い出せる。バラバラな演奏。

弦巻がオリジナルの歌を歌うから、俺と松原さんが大変だったな。

 

 

 

こころ「でもあの時にバンドを組みたいって思ったのよ?

あたしの歌に色々な音色が乗るの。

周りの人達も集まってくれて、とても楽しかったの!

それに、とーっても笑顔が溢れてたわ!!」

 

 

 

こころ「あたし達が出会ったのはきっと偶然なんかじゃないわ。

ここにいるみんなが出会えたのはきっと意味があると思うの!」

 

 

偶然じゃない…………か。

 

 

 

こころ「だから八幡がどんなに悩もうとも帰ってくる事を、信じてたわ!」

 

 

薫「……ふふっ。だから『お帰り』なんだね。」

 

 

こころ「えぇ!そうよ!

帰ってきたら『お帰り』って言うのは当然でしょ?

また、改めて言うわ!はちまんっ!!おかえりー!!!」

 

 

八幡「バッ………恥ずかしいからやめろっての。」

 

 

コイツは本当に…………

 

 

はぐみ「はち君おかえりー!!」

 

 

薫「八幡、おかえり。」

 

 

花音「比企谷君、おかえりなさい。」

 

 

美咲「比企谷くんおかえり。」

 

 

いや……『コイツら』だったな。

 

おかえりと言われたら答えてやるのが世の情け。

………そういや、おかえりなんて家族以外に言われた事ないから変な感じだ。

まぁ、普段こんな事言う機会もないもんな。

だけど今は…………しっかりと伝えよう。

 

 

八幡「………………たでーま。

それと………………」

 

 

5人「???」

 

 

八幡「………いや、やっぱりなんでもねぇわ。」

 

 

 

………………サンキューな。

 

 

×××

 

 

 

こころ「それじゃあ、せーのっ!」

 

 

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 

 

はぐみ「わっ、何コレ!すっごく美味しいよ!!」

 

 

花音「はわわ………み、見たことの無い料理ばっかり……」

 

 

美咲「うっわ………めちゃくちゃ美味しい。」

 

 

薫「確かにコレは………凄い料理だね。」

 

 

八幡「なんだ………コレ……」

 

 

とりあえず1口……………へ、へぇ。

ま、まぁ、確かに美味いけど?

食べた瞬間に口に広がる肉汁っつーの?

でも、ちょっと広がりすぎて口説いかな。

食べ過ぎには注意だな、うん。

 

……………ふぅ。

 

小町が作った料理には勝てないかな、うん。

 

 

 

黒服「食後にはデザートも用意してあるのでお声かけください。」

 

 

はぐみ「で、デザートもあるの!?ど、どうしよう!!

お腹いっぱい食べたいけど、それだとデザートが………」

 

 

 

花音「ほ、本当に美味しいから悩んじゃうね……」

 

 

 

八幡「あ、あのー………ちょっといいですか?」ボソッ

 

 

黒服「はい、なんでございましょう?」

 

 

八幡「いや、その、この料理余ったら持って帰ってもいいですかね?

妹とお母さんにも食べて欲しいな、と。」

 

 

コレを持って帰れたら小町たちも喜ぶだろうな。

今回の件も無関係者とは言えないし、世話にもなったからな。

 

 

 

黒服「もちろんです。直ぐにお持ち帰り用の用意をします。」

 

 

八幡「………え?いや、この残ってるのでいいんですけど?」

 

 

タッパとか、入れ物をくれればそれに入れて持って帰るんですけど……

 

 

黒服「いえいえ、ご安心ください。出来立てを運べるように、帰る時にお持ちしますよ。」

 

 

マジですか、そうですか。

……………ご安心しちゃっていいんですかね?

 

 

 

 

花音「比企谷君は優しいね。家族の人にも食べさせたいなんて」

 

 

後ろから声を掛けられる。

………見られてたんかい。

恥ずかしいからバレたくなかったんだけど………

 

 

八幡「いや、そんなことないっすよ。

家でも俺が食べたいと思っただけっす。」

 

 

本当に食べちゃいそうで怖い。

 

 

花音「…………ふふっ。そっか。」

 

 

わー、凄い笑顔で見てくる。

私はわかってるよ。みたいな顔……

 

 

花音「………そう言えば妹がいるって言ってたよね?

妹さんはお幾つなの?」

 

 

………ほう。

小町に興味を持ちましたね?

いいでしょう。俺が知ってる情報なら全て教えて差し上げますよ。

 

 

美咲「あ、それはあたしも気になったかな。

同じ妹がいる身として」

 

 

 

奥沢も乱入。

いつから聞いてたんだよ……

 

 

八幡「まぁ、いいですけど……

妹は小町って言うんですけど、中学1年生ですね」

 

 

花音「……中学生なんだね。」

 

 

美咲「意外と近い?ですね。

うちはまだ全然小さいので。

妹さんとは仲良いの?」

 

 

八幡「ばっかお前。良いに決まってんだろうが。

もうとにかく可愛いんだ。目に入れても痛くないレベル。」

 

 

美咲「うわっ…………比企谷くん………シスコン?」

 

声が低いぞ。

素で引くな、おい。

 

 

八幡「ばっ、ちげーよ。ただ妹が好きなだけだ」

 

 

花音「そ……それ、シスコンの意味そのまま………」

 

 

あ、あれ?じゃあ、俺ってシスコン?

 

 

こころ「何の話をしてるのっ?

目に入れても痛くないって、コンタクトレンズの話かしら?」

 

 

八幡「誰がコンタクトレンズだ」

 

 

なぞなぞじゃねーんだよ。

今は、小町が可愛いって話だろうが。

 

 

美咲「あ、そうだ。

急に話が変わるけどコレからどうする?」

 

 

はぐみ「コレから?」

 

 

 

美咲「そ、バンドの事。

メンバーが集まったんだから色々決めてく事あるんじゃないの?

曲作りとかさ」

 

 

こころ「そうよっ!ライブをしましょう!」

 

 

美咲「だーかーらー!

そのために曲を作ったり、演奏合わせたりするんでしょ!」

 

 

薫「あぁ、もうすぐ私たちのステージが始まろうとしているんだね」

 

 

八幡「確かに………な。俺もキーボードの練習しなきゃだな。」

 

 

大変だな。………そういやキーボードどうしよう?

お金はあんまりないけど、安すぎるもの買ってもなぁ……

CiRCLEでバイト終わりとかに無料で貸してくれないだろうか………

月島さんに相談してみよ。

 

 

美咲「あ、そう言えば比企谷くんは、バンドやることになったけどバイトとかどうするの?

まだバイト続けてるんでしょ?」

 

 

八幡「あー、それはだな。

無理矢理両立することに決めた。

勉強もバイトもキーボードも全部やる。」

 

 

 

花音「………えっ!?」

 

 

 

はぐみ「はーくん、凄い根性だね!!」

 

 

 

八幡「小町や母さんにも言われてな。

『全部やればいいじゃん』ってな。

最初は無茶苦茶言うなよ。って思ったけど、その通りだった。

俺が頑張れば全部出来るって事にな。」

 

 

 

美咲「え、えー。

それっていいの……?だ、だって……」

 

 

みんな不安そうな顔してるな。

まぁ、そりゃそうだ。させたのは紛れもなく俺だ。

 

 

八幡「大丈夫だっての………

そんなに心配すんな。キツイ時は言うし、体調もしっかり管理する。

でも、お前達には迷惑を………かける、ことになる…かも知れん。」

 

 

こころ「迷惑だなんて思わないわ!

だから、たーっくさんあたし達に頼るのよっ!」

 

 

薫「そうだよ、八幡。困った時はお互い様さ。」

 

 

花音「こ、こんなあたしじゃ………た、頼りにならないと………思いますけど……た、頼ってね?」

 

 

八幡「…………ありがとう………ございます。」

 

 

 

こころ「あ、そう言えば八幡にプレゼントしたい物があるわ!

コッチに来て!!」

 

 

俺の手を掴み、部屋を出て廊下を走る。

 

 

八幡「ちょま、お、おい!」

 

 

家の中で走るなって、大体はその場をグルグル走り回ったりする子どもに言うセリフだと思うけど、この家では違うな。

もう規模が違う。何メートルそう出来んの?この廊下。

 

 

 

こころ「ここよ!」

 

 

八幡「ココって………

楽器が沢山……あるんだけど……」

 

 

マジかよ。ここの家に無いものはない気がする。

仮にあったとしても買えるだろうし……

 

 

 

はぐみ「追いついたー!急に走るからビックリしたよ!!」

 

 

美咲「本当にこの家広すぎ……」

 

 

 

こころ「コレはね?あたし達の楽器よ!

そしてコレが…………はいっ!八幡のキーボードよ!」

 

 

八幡「………え、あ、え?」

 

 

弦巻がキーボードにかかっていた布を剥がす。

………え、俺の?

 

 

 

花音「む、無理もないよね……

あたし達もこの前、楽器貰ったから……」

 

 

もう本当に流石としか言えない……

いや、めちゃくちゃ有難いんだけど、いいのだろうか?

 

 

 

美咲「………あれ?キーボードでいいの?

ピアノとキーボードってなんか微妙に違うんじゃないの?」

 

 

八幡「あー、まぁな。

家にあったのは電子ピアノだったから、ピアノの方がやりやすいんだが、ブランク長すぎてどっちやってもあんまり大差ないと思うぞ。」

 

 

こころ「もし、ピアノが良かったら変えるわよ?

ピアノもうちにあるから安心して欲しいわっ!」

 

 

 

八幡「いや、コレで大丈夫です。

ありがとうございます。」

 

 

この家では余裕でグランドピアノとか渡されそうで怖い!

もうコイツなんでもありだ。

 

 

 

こころ「それじゃあ、今日から本格的にバンドの練習するわよ!」

 

 

はぐみ「わー!!はぐみ、ワクワクが止まらないよ!」

 

 

八幡「練習も大事だが曲はどうするんだ?

決まってた方が練習しやすいんだけど………」

 

 

曲担当は、俺と奥沢になりそうな予感。

………消極的にそうなるわ、コレ。

 

 

 

こころ「はい!はーい!

あたし、曲を作ってきたの!!」

 

 

弦巻が手を挙げながら主張する。

…………え、マジですか?

 

 

美咲「…………え、マジですか?」

 

 

お、おぉ。

そりゃそういう感想になるのもしゃーない。

でも、全く同じ反応とは…………

 

 

 

こころ「コレよ!コレにあたしの声が入ってるみたいなのっ!」

 

 

花音「コレは…………ボイスレコーダー……?」

 

 

本当だ、初めて見た。

ボイスレコーダーなんて一般の人が…………一般じゃねーや。

一般からは遠くかけ離れた存在だったわ。

 

ん?……………あたしの声が入ってる?

作曲なのに……………声?

 

 

美咲「それじゃあ、流しますよ」

 

 

奥沢がボイスレコーダーを再生する。

 

 

5人「「…………………」」

 

 

 

 

そして数分のボイスレコーダーを聴き終えた俺たち。

 

 

 

薫「こ、コレは…………!」

 

 

はぐみ「うん……………!」

 

 

薫、はぐみ「「すっごくいい!!」」

 

 

八幡、美咲、花音「「「鼻歌!!?」」」

 

 

そう…………

作曲と聞いていたのに思いっきり鼻歌だった。

いや、鼻歌は別にいいし、全然構わないぞ?

でも…………鼻歌から進んでないのか。

いや、まぁ……………何となくこうなるとは思ってた。

 

 

こころ「どうかしら?パッと思いついたけど中々いいでしょう?

歌詞も描いてきたから早速作りましょ!!」

 

 

 

八幡「……………歌詞か。

み、見せて貰ってもいいか?」

 

 

嫌な予感が凄いする。

頼む。外れててくれ。

 

 

こころ「もちろんよ!……はいっ!コレよ!!」

 

 

 

5人「「……………」」

 

 

 

薫「こ、コレも…………!」

 

 

はぐみ「う、うん…………!」

 

 

薫、はぐみ「「すっごくいい!!!」」

 

 

八幡、美咲、花音「「「歌詞じゃない!!!」」」

 

 

嫌な予感当たってるぅー。

こういうの当てないで宝くじ当てて!

 

 

八幡「お、おい………

コレは歌詞じゃなくて……………弦巻の気持ち?感想?」

 

 

 

美咲「ときめきたくさん。みんなで始める。」

 

 

花音「ス、スマイルキラキラ。リ、リズムはピカピカ」

 

 

八幡「みんなで手を繋いで輪っかになる!世界はニコニコで1つ。」

 

 

こころ「どう?とーっても笑顔になれそうでしょ?」

 

 

ホントだわ。すげーや。笑顔になれたわ。

主に苦笑いだけど…………

 

 

八幡「…………と、とりあえず作曲は俺がやります。」

 

 

美咲「あ、うん。

あたしも手伝うけどほとんど比企谷くん頼りかも………」

 

 

申し訳なさそうに言うが、鼻歌までは出来てるんだ。

そこまで苦ではない、と思われる。

それより問題なのは………………

 

 

八幡「歌詞………どうするか。」

 

 

美咲「どうしましょう………ね。」

 

 

八幡「この弦巻語を解読しなきゃいけないんだろ?」

 

 

美咲「………うん。コレは凄く………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「「大変だ。」」

 

 

 

 

 

 

 

 



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デリカシーのないものはクマにもやられる






あれから1週間の日が経っていた。

この1週間は凄く大変だった。

 

学校終わり→バイト→曲作り&勉強。

これを繰り返し。

バイトがない日は、最低限弦巻と奥沢と集まって曲作り。

松原さん達は自主練をしていると言っていた。

 

このように意外にも、真面目にバンド活動をしていた。

 

 

そして今はと言うと…………

 

 

こころ「あ、八幡!美咲!

あたし、この最後の所はやっぱり「わーー!」って楽しい感じで終わりたいわ!!」

 

 

八幡「最後の所?…………ふぅ。

……ココか。」

 

 

美咲「こころ!!コレがラストだからね!!

もう何回歌詞変えてるのかわかってるの!?」

 

 

………そう。

俺と奥沢は弦巻の家にいて、歌詞の最終確認をしているのだが………

コイツめちゃくちゃ歌詞を変えてくる。

奥沢の言う通りもう何回変更してるか数えるのを諦めたレベル。

 

 

美咲「………最初は「グワーッ」て感じがいいとか言ってたけど、

「わーー!」と違いあるの?」

 

 

八幡「知るか。コイツが言ってるんだから違いがあるんだろ。

…………でもまぁ。コレだけやればな……」

 

 

美咲「………うん。凄く大変だったけど……」

 

 

 

八幡、美咲「弦巻(こころ)語は大体わかってきた。」

 

 

 

美咲「ココはこっちの歌詞の方がいいかな?」

 

 

八幡「ん…………そうだな。それでいいと思うぞ。

……この最後のところは、コレでいいよな?」

 

 

 

美咲「うん、それでいいと思うよ。

……………ってことはようやく、」

 

 

八幡「あ、あぁ。」

 

 

 

八幡、美咲み「やっと終わった………」」

 

 

こころ「あたしにも見せてちょーだい!!」

 

 

 

…………疲れた。

作曲の遥か倍は疲れた。

まぁ、作曲は鼻歌があったから思ったより楽だったんだけども。

 

 

 

こころ「うんうん……………と〜ってもいい!!

と〜っても素敵よ!!2人とも凄いわ!!ありがとうっ!」

 

 

美咲「あたし達も改めて見よっか………」

 

 

八幡「………それもそうだな」

 

 

正直色んな歌詞を書いたから何が使われてたか、ごちゃごちゃになってる。

 

 

八幡「……………コレ、俺たちが書いたのか………?」

 

 

 

美咲「あ、あははは…………

自分で言うのもなんですけど凄い歌詞。」

 

 

わっわっわーい!とか、ここボーカル以外の俺たちのパートだよな?

ちょっと………いや、かなり恥ずかしいぞコレは?

いや、女の子が歌う分には構わないと思うけど、俺は…………口パクでいいや。

 

 

こころ「口パクはダメだわ!折角一緒に作ったのよ?

八幡も歌うのよっ!」

 

 

美咲「…………??」

 

 

八幡「おい、なんで口パクの事知ってんだよ。

声に出してなかったぞ。」

 

 

怖いよ怖い。

え、脳内覗けるの?思考読めちゃうの?

 

 

こころ「それじゃあ早速、みんなを呼んでスタジオ練習しましょう!!」

 

 

×××

 

 

 

曲が完成してから5日経つ。

あれから俺は、放課後弦巻たちとは会っていない。

他のみんなも自主練などで頻繁には集まっていないらしい。

 

 

そして今俺が何をしているかと言うと…………

 

 

 

八幡「いらっしゃいませー」(棒)

 

 

CiRCLEで絶賛バイト中。だけども暇だ。

お客さんは割と来るけど、忙しい程ではない。

 

この間にもキーボードの練習をしたいものだ。

バイト終わりにも少しだけ、月島さんに頼んでスタジオをタダで借りて練習する時もある。

 

「八幡君、キーボード弾くの!?え、なんで!!もしかしてバンドやってる!?」

と質問のマシンガンを食らったので正直に話した。

 

バイト終わって暇な時はタダでスタジオ貸してあげるからね。と言われた時は泣くかと思えた程だ。

ただし条件は、ライブする時はココ(CiRCLE)でじゃんじゃんやってね!

と言われたくらい。願ったり叶ったりだ。

そして、俺たちの初ライブ場所はココに決まったしな。

 

 

 

【ウィーン】

 

 

蘭「モカ、着いたよ。結局食べ終わらなかったじゃん。

やっぱりパン買いすぎ。」

 

 

ひまり「そーだよ!!食べ終わってないじゃん!」

 

 

モカ「味わって食べてるからね〜」

 

 

つぐみ「ふふっ。

モカちゃんはやまぶきべーかりーのパン大好きだもんね!」

 

 

巴「確かに美味しいけど、モカの場合は好き………というか、あのパンがないと生きていけない位のレベルだと思うぞ………」

 

 

 

それにしても、ライブまでに全員で合わせて確認取らなきゃいけないけど、アイツらは大丈夫だろうか……?

いや、俺も人の心配をしてる場合ではないのだが。

いくら、昔にピアノ歴があったとしても習ってた訳でもないし、キーボードとピアノは似てても似つかないからな。

 

松原さん以外音楽は初心者だし…………いや、瀬田先輩は演劇で軽くギターやってたって言ってたけどそれだけだろうしな。

 

 

巴「今日もスタジオ予約してたんだよな?」

 

 

ひまり「うん!バッチリだよ!

すみませ〜んっ!17時から予約してた上原ですっ!

…………ってあれ?」

 

 

モカ「あー、この人アレじゃない?

えーと………あの時の……」

 

 

蘭「この前公園であった人………」

 

 

つぐみ「あ、本当だ!

比企谷さん……だよね?」

 

 

 

そもそも弦巻が突然すぎるんだよな。

バンド結成してから数週間でライブやろうって、無茶苦茶すぎる。

全員が経験者ならまだしも、ほとんど素人だぞ。

コレで失敗でもしたらこの先良くないんじゃないの?

…………めちゃくちゃ不安になってきた。俺が心配しすぎなだけ?

 

 

蘭「あの、すいません。」

 

 

つぐみ「あ、あれ………?」

 

 

巴「私たちに気づいてないぞ………」

 

 

モカ「どーする?クレームでも入れちゃうー?」

 

 

ひまり「いや、流石にそこまでじゃ………」

 

 

蘭「……………あのっ!!すいません!!」

 

 

【バン!!】

 

 

八幡「うおっ!?」

 

 

え、何!?

急に机叩かれたんだけどもしかしてヤクザ?

………あ、バイト中だわ。考えに没頭し過ぎてて忘れてた……

 

 

八幡「す、すいませんでした。

えっと…………ご要件は?」

 

 

絶対さっきご要件言ったと思うけど、聞くしかない!

嫌だなー、顔見れないなー、怖い人だったらどうしよう。

 

 

巴「蘭…………いくら知ってる人だからってやりすぎじゃないか?」

 

 

モカ「いやいや〜、蘭。今の最高だったよー」

 

 

蘭「べ、別にそんなつもりじゃっ!」

 

 

…………なんか盛り上がってらっしゃる。

要件ないなら帰ってもらってもいいですかね?

恐る恐る顔を上げると5人の女子がいた。

………はて?どこかで見たような気もするが、気の所為だな。

 

 

 

ひまり「えっと、17時に予約してた上原です!」

 

 

つぐみ「あ、あと…………

あのー、比企谷さんですよね?」

 

 

 

 

あ、17時に予約してたんですね。それはすみません………

えーと、うえはら………あ、あった。コレだな。

 

それと比企谷?2つも予約してんのか……?

てか、比企谷って俺と同じ苗字だな。

俺と同じくひきたにとか呼ばれたりするのだろうか……

少し気になるところだ。

 

 

八幡「ご予約の上原様。

確認が取れましたので、あちらのスタジオでお願いします。

それと、比企谷という名前の人は予約にはありませんでしたけど……」

 

 

つぐみ「………えっ!?あ、ち、違います!!

予約じゃなくて、あなたの名前です!」

 

 

あなたの名前?

………ってことは俺の名前?

いや、確かに比企谷だけど………なんで知ってんの?

名札は付けてないんだけど?

 

 

 

巴「よっ!久しぶり。

比企谷はココで働いてたんだな」

 

 

蘭「そ、そのっ!さっきは机叩いてごめん………

ただ、ちょっと、無視されたから………」

 

 

モカ「おー!蘭が謝ってらっしゃる〜。

まぁ、正直言っちゃうと蘭はあまり悪くないんだけどね〜」

 

 

えっ!?何!?知り合いなの?

会話がナチュラルに進んでるからもうビックリ。

…………あ。思い出した…………

 

 

八幡「…………お前らか」

 

 

この前のやまぶき事件の時に一緒にいた5人組だ。

そう言えばあの時、自己紹介してたな。

記憶力には自信があるが、すっかり記憶の片隅にあったわ。

てか、そもそも顔をあんまり見てなかった。

 

 

巴「お前ら?おいおい、あたし達はお客さんだぞ?

そんなこと言っていいのか?」ニヤニヤ

 

 

ひまり「と、巴がSモード的なのに入った………」

 

 

め、めんどくせー。

さっさとスタジオに行きやがれ………

 

 

八幡「すいませんでした。あちらへどうぞお客様」

 

 

 

モカ「なんか暇そうだね〜。相手してあげよっか〜?蘭が〜」

 

 

蘭「ちょっ!?モカ!!」

 

 

八幡「いや、結構です。」

 

 

モカ「あー、残念。蘭振られちゃったね。」

 

 

蘭「はぁ!?別に振られてないしっ!

…………ちょっとモカ、こっちに来て。話があるから。」

 

 

モカ「え、えと、蘭〜?

ちょっと顔が怖いよ…………?」

 

 

巴「今のはモカが悪いな。」

 

 

つぐみ「あ、あははは」

 

 

モカ「そんな〜、モカちゃんは無実だ〜。」

 

 

 

なんなんだコイツら。

仲良しなのは伝わったからさっさとスタジオに行けばいいんじゃない?

しかもあの時赤メッシュに少し睨まれたし…………

 

 

ひまり「比企谷さんはココで働いてたんですね。」

 

 

八幡「お、おう。少し前からな……」

 

 

え、何?スタジオ行かないの……?

赤メッシュが銀髪をシバくまでいるの?

赤ロングは傍で笑いながら見てるだけだし。

髪の特徴がすげーや。

 

つぐみ「そうなんですね!

あたし達も結構来てるんですけど全然知らなかったです!」

 

 

まぁ、そりゃあ会わなかったからな……

 

 

八幡「そ、それよりもアレはあのままでいいのか………?」

 

 

本当にこんな所で何をしているのだろうか……

 

 

ひまり「大丈夫………です。

けど、他の人の邪魔になるようだったら直ぐに辞めますので!」

 

 

つぐみ「うん!コレも『いつも通り』だよね!」

 

 

『いつも通り』のフレーズの部分が若干嬉しそうだったのを見逃さなかったぞ。

 

………にしてもコレがいつも通りって、それはそれでどうかと思うんですが。

 

 

蘭「………お待たせ。じゃあ行こ」

 

 

巴「よっしゃー!早くドラムしたいぜっ!」

 

 

ひまり「今日は何からやろっか……!」

 

 

つぐみ「モ、モカちゃん………大丈夫?」

 

 

モカ「モカちゃんの心配をしてくれるのはつぐだけだよ〜。

蘭に怒られたよ〜」

 

 

 

八幡「……………」

 

 

…………変な奴らだな。

てか、バイト先で知り合いに会うのってなんかちょっと。

 

でも何かは分からないけどコレからも出会うような…………

ほんと、なんだかなぁって感じだ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

今日は土曜日。

今日のバイトは午前中で終わりなので俺はもう家に帰宅している。

 

 

午後からは久しぶりに弦巻たちと一緒にライブに向けての練習だ。

今の時刻は14時30分。

15時にCiRCLE集合なので家を出るとしようか。

 

 

 

八幡「じゃあ、ちょっと出かけてくるわ」

 

 

 

小町「あ、また出かけるの?もしかしてキーボード練習?」

 

 

 

八幡「まぁ、そんな感じだ。

もうすぐライブだからな。」

 

 

 

小町「そっか!

小町が言うのもなんだけどあんまり無理はしないでね!」

 

 

小町に心配をさせる訳には行かないな。

まぁ、無茶をしろって言ったのコイツなんだけど……

でも可愛いから許しちゃう!やだ。俺ってば甘い。

 

 

八幡「へいへい。夜には帰ってくるからな。

じゃあ、行ってくる」

 

 

小町「行ってらっしゃーい!」

 

 

 

×××

 

 

この角を左に曲がったら…………

 

 

 

こころ「あー!八幡やっと来たわねっ!」

 

 

目的地のCiRCLE。

そして、もう既に弦巻たちはいた。

…………時刻は14時48分。

まぁ、遅刻じゃねーよな。

 

 

八幡「いや、やっとって言われてもまだ時間前なんだけど?

そんなに前にいたのか?」

 

 

はぐみ「こころんと薫くんとはぐみは14時には着いてたよ!!」

 

 

薫「子猫ちゃんを待つのも私の役目だからね。」

 

 

 

14時!?え、なんで!?

1時間前からいるの?

 

はえーよ。

いや、待ち合わせの時間より早く来るのは全然悪いことではないけどさ。

1時間前行動はやりすぎでは?

………まさか、コッチの2人も?

 

 

美咲「…………勘違いして欲しくないから一応言うけど、あたしと花音さんは今来たばっかりだからね。」

 

 

花音「あ、あははは。

私たちも15分前はちょっと早いのかな?って思ってたんだけどね。」

 

 

ちょっと?奥沢さん?

まだ何も言ってないよ?

視線で気づいたんだよね?そうだよね。

 

 

こころ「それじゃあ、早速スタジオへ行くわよ!!」

 

 

 

×××

 

CiRCLE店内にて

 

まりなさん「あ、来た来た。待ってたよ!!!

午前はお疲れ様、八幡君!」

 

 

八幡「……うす。どうも。」

 

 

はぐみ「あ、まりなさん!!

今日もよろしくおねがいしまーす!!」

 

 

 

 

ロビーには月島さんがスタンバってた。

暇だったのか………

 

 

まりなさん「うんうん!今日もすっごく元気いいねー!

それじゃあ、ここのスタジオになるよ!

練習頑張ってね!!」

 

 

こころ「早くスタジオで歌いたいわ!!

いぇーい!!1番乗りー!!」

 

 

はぐみ「あ、こころん待ってよー!!」

 

 

美咲「ちょ!?危ないから走らないで!!」

 

 

八幡「……………小学生か。」

 

 

 

少なくとも高校生には見えないわな。

 

あ、そう言えば………

 

 

八幡「おい、奥沢。

ミッシェルはどうすんの…………?」

 

 

そう。DJをするのは奥沢ではなくミッシェル。

…………いや、奥沢なんだけどさ。

奥沢=ミッシェルという公式が成り立たない奴らがいるせいで、色々とこんがらがるな。

 

 

奥沢「あー、それはですね…………」

 

 

 

黒服「奥沢様。

準備が整いましたのでどうぞこちらへ。」

 

 

…………急な黒服の登場に少し驚く。

でも、そういう事か……

 

 

美咲「と、言うわけなんです………

黒服の人が持ってきてくれるんですよ。」

 

 

 

流石黒服だな。

 

…………すっごい今更だけどミッシェル着てライブ出来んの??

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

花音「な、なんか練習………なのに、緊張してきちゃった……」

 

 

薫「緊張する事など何もないよ、花音。

練習は何度ミスしてもいいんだよ。」

 

 

おー、瀬田先輩気が利くな。

松原さんは恥ずかしがり屋だからな。(個人的な意見だが)

まぁ、俺も緊張してないとは言わないんだけどさ………

 

 

 

はぐみ「………あれ?そう言えばみーくんは?

みーくーん!!おーーい!」

 

 

こころ「あら、本当だわ。

どこに行ったのかしら?」

 

 

あー、そう言えば言ってなかったわ。

…………てか、なんて言えばいいの?

帰ったって言えばいいの?

ミッシェルがいる間、奥沢が来ることは無いぞ?

もう適当でいいや。

 

 

 

八幡「あー、アレだ。

奥沢はトイレだってよ。長くなるらしいぞ。

とりあえずミッシェルは呼んだから心配しないでって言ってたぞ。」

 

 

花音「は、八幡君!?」

 

 

はぐみ「お腹でも壊したのかな?」

 

 

薫「そういう事なら私たちで頑張ろうか。」

 

 

【ガチャ】

 

 

扉が開く音がした。

扉を開けた人物は…………人物じゃねーか。

 

 

ミッシェル「やっほー。ミッシェルだよー。」

 

 

ピンクの巨大クマが現れた。

………その棒読みどうにかならないのか奥沢。

 

 

 

3バカ「ミッシェルー!!!」

 

 

 

ミッシェル「や、やぁ。みんな元気だな〜」

 

 

 

こころ「と〜っても、元気だわ!!」

 

 

はぐみ「みーくんが少し調子良くないみたいだけど…………」

 

 

ミッシェル「……………ん?どういうことかなー?」

 

 

八幡「…………げっ。」

 

 

 

薫「美咲は今トイレにいるのさ。

少し長くなるらしいよ。」

 

 

ミッシェル「へ、へー。そうなんだぁ〜。

……………比企谷くん、後で……………ね?」

 

 

その、表情が変わらない着ぐるみで怖い事言うなよ!

めちゃくちゃ怖いから!

………いや、だって、トイレって理由が1番帰ってきやすいだろ!

 

 

 

八幡「お、おー。ミッシェル…………

久しぶりだな!

奥沢は…………トイr」

 

 

【バン!!】

 

 

 

花音「美咲ちゃん!?」

 

 

はぐみ「わぁぁー!!ミッシェルがはちくんをっ!!」

 

 

薫「八幡!しっかりするんだ!!」

 

 

こころ「はちまん!!大丈夫!!?」

 

 

ミッシェル「わー、ごめーん。

………背中に虫がいたからさ。」

 

 

こっわ!!ミッシェルこっわ!!

背中に虫っていうか、俺自体を害虫扱いしただろコイツ。

 

 

にしても痛い。

着ぐるみ越しのフワフワした手なのに、痛かった。

アイツは怒らしちゃダメだ。

 

 

 

八幡「ぜ、全然大丈夫だ。

さ、サンキューなミッシェル……………」

 

 

 

奥沢に悪かったと、目で言ってみる。

「ぷいっ」と顔を逸らすミッシェル。

 

 

機嫌を損ねたクマって鮭でもあげなきゃ許してくれねぇのかな……

 

 

 

 



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あいさつ・えがお・せかい

 

 

はぐみ「…………よしっ!

みんな準備はできたー??」

 

 

 

薫「いつでも大丈夫だよ」

 

 

 

花音「う、うん………っ」

 

 

ミッシェル「準備完了」

 

 

 

八幡「はいよ。」

 

 

キーボードに触れる手が少し震えてるのが分かる。

練習でコレなら本番どうなっちゃうの?と心配になるな。

 

 

 

こころ「さぁ!!アレから2週間よ!!

それじゃあみんな、自主練の成果を見せてちょうだい!

せーのっ!!」

 

 

 

\ ♪♪ /

 

 

 

ミッシェル「えっ。なんだ、結構…………」

 

 

 

こころ「いえーーいっ♪︎」

 

 

 

はぐみ「えいっ。そいやっ!」

 

 

 

薫「言葉は宙に舞い、思いは地に残る………

………儚い……」

 

 

花音 (が、がんばらなきゃっ………!)

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

ミッシェル「信じられないけど………

割とちゃんとバンドしてる………」

 

 

 

 

ミッシェル (はぐみは本当に、かなりベース練習してきてる。

根性だよって言うだけある……)

 

 

 

ミッシェル (薫……さんはまだそこまで安定してないけど、

とにかく華があるし)

 

 

 

ミッシェル (でも、なにより………

花音さん、全然叩けてるじゃん)

 

 

 

こころ「やっほーーーーーーっ♪︎

ミッシェルも盛り上がってるっ?

るんるんいえーーいっ!」

 

 

 

 

ミッシェル (うん。こころはいつも通り。

スタジオでバク転ね)

 

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

 

ミッシェル (それにしても………ふふっ。

比企谷くんは…………)

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

~♩♩

 

 

演奏が終わりスタジオには一瞬の静寂が訪れる。

 

 

 

こころ「すごいわみんな!

コレでライブ本番も完璧ね!」

 

 

 

はぐみ「すごいよ!このバンドって、最強だよ!」

 

 

 

薫「音楽とはなんと美しいのか。

素晴らしき新世界…………!」

 

 

 

ミッシェル「………って、まだ1曲しかできるようになってないから」

 

 

 

こころ「1曲できたってことは、何曲だってできるってことよ!!」

 

 

 

ミッシェル「………本当、スーパーボジティブ。

まぁでも、結構よかったかもね」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

割と俺はキーボードの練習をしていた………つもりだ。

だけど、今日演奏を合わせて気づいた。

コイツらも…………かなりの………

 

 

 

こころ「どう??はちまんっ!!

あたし達は、少し前からはちまんを驚かせようと練習してたのよ!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!そうだよ!!

はちくんのおかえりパーティーの前から、楽器の練習だけはしてたんだよ!!」

 

 

 

薫「あぁ!陰の努力とはなんて儚いものなんだ!!」

 

 

 

ミッシェル「あたしは、DJの使い方から調べてましたよ………」

 

 

 

八幡「………はぁ。

正直言ってめちゃくちゃ驚いたわ。

ミスも全然あったけど…………演奏になってて結構いいと思った。」

 

 

 

花音「比企谷君、本当っ?

わ、私、ちゃんと叩けてた?」

 

 

 

八幡「松原さんは、もっと自分に自信を持った方がいいと思いますよ。

みんなの演奏を、しっかりと支えてましたよ。

まぁ、俺個人の意見ですけど……………」

 

 

 

松原さんはやっぱり上手い。

経験者だからってのもあるかもしれないけど、一生懸命さがすごく感じられる。

 

 

 

八幡「……………松原さん、ドラムすごく良かったです。」

 

 

 

花音「はわ…………!?///

う、うん…………っ」

 

 

 

松原さんはドラムを辞めようとしてて、ドラムを売りに行く途中に弦巻に出会った。

一応俺もいたけど…………

 

 

そこで、弦巻は勇気を与えた。

あたしの勇気をあげる!なんて言って。

 

 

辞めようとしていたのに、その日から始まってしまった。

最初は松原さんも戸惑っていたけど、今じゃ立派なドラマーになっていってる。

だから俺は「ドラムを辞めなくて良かったですね。」とは言わない。

 

 

きっと弦巻なら、

「花音はドラムを辞めようとしてないわ!ドラムを持ってあたし達に会いに来てくれたんでしょ?」なんて、本心で言いそうだな。

 

 

 

はぐみ「よーしっ!!この調子で、

このバンドでライブハウスを盛り上げちゃうぞーっ

………って、このバンド??」

 

 

 

こころ「バンドがどうかしたの、はぐみ?」

 

 

 

はぐみ「………ねぇ、こころん。

このバンドの名前ってなーに?

まだ決めてなくない?」

 

 

 

花音「そ、そう言えば…………?」

 

 

 

薫「そうだったね……」

 

 

 

 

ミッシェル「ふー。あっつ。

キグルミって蒸すわーやっぱり」

 

 

 

ミッシェル「あ。ようやくお気づきのみなさん。

あたしと比企谷くんが気を利かせて、バンド名は未定で出演申請してますから、どうぞご心配なく。」

 

 

 

…………弦巻のやつ、まだバンド名を言ってなかったのか?

 

 

 

こころ「バンド名ならもう決まってるわっ!

ねっ!はちまんっ!!」

 

 

 

ミッシェル「決まってるなら言おうよ!

…………え、比企谷くん?」

 

 

 

はぐみ「………はーくんは知ってたの?」

 

 

 

おっとー。なんかすっごい見られてるー。

ミッシェルだけは本当に怖い。

 

 

八幡「え、えっと、まぁ、一応………?」

 

 

 

ミッシェル「なんで、黙ってたのかなー?」

 

 

 

圧が!!

口調と勢いが違うっ!!

 

 

 

八幡「い、いや、既に弦巻が伝えてたと思ったんですよ。はい。」

 

 

 

こころ「あたしはまだ、誰にも言ってないわよ?」

 

 

 

首を傾げるな。

決まった日から即言いなさい。

 

 

花音「………えっ?

じゃあなんで、比企谷君は………?」

 

 

 

こころ「それは、あたしとはちまんで考えたからよっ!!」

 

 

 

八幡「おい!嘘をつくな嘘を!

決めたのはお前1人……………です。」

 

 

 

ミッシェル「へー、それで?バンド名は?」

 

 

 

黙ってて悪かったって。

俺だけ知っててごめんなさい!

 

 

 

こころ「『ハロー、ハッピーワールド!』

世界を笑顔に!って意味よ」

 

 

 

はぐみ、ミッシェル「「ハロー………………」」

 

 

花音、薫「「ハッピーワールド…………」」

 

 

 

こころ「誰かを笑顔にするには、

まずは自分から笑顔になって、話しかけないとってこと。

『ハロー!』ってね!」

 

 

八幡「そうそう。

俺は弦巻が言った言葉を英語にしただけだから一緒に考えてない。」

 

 

 

はぐみ、薫「「うん、すごく………!!」」

 

 

 

花音「こころちゃんらしいし、私も好き、かな………」

 

 

 

ミッシェル「うん、いいんじゃない?

なんかそのままって感じだけどね。

あっつ。

ちょっとあたし、コーヒー飲むから、これ、脱ぐわ」

 

 

 

奥沢がミッシェルの首に手をかける。

まぁ、やっぱり着ぐるみは暑そうだしな。

でも、ライブ中はやっぱり脱ぐことは出来ないと思うから大変そうだ。

…………待てよ?

3バカって奥沢=ミッシェルって公式を知ってるっけ?

一一!?今それ脱いだら!!

 

 

 

八幡「お、おい!ちょっまっ」

 

 

 

 

美咲「ぷはっ…………………ん?」

 

 

 

3バカ「う……………

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

遅かった…………

だけど、奥沢の姿を見れば分かるんじゃないか……?

 

 

はぐみ「ミ、ミッシェルの頭が女の子になっちゃった!!

ミッシェルって頭は女の子で身体はクマだったの!?」

 

 

 

こころ「違うわ、中に女の子が入ってる!!

いつの間にかミッシェルと入れ替わったんだわ!!」

 

 

 

薫「じゃあ本物のミッシェルはどこだ?

これは魔法か!?」

 

 

…………ダメかー。

ここまでくると、もう感動するわ。

天然にも程があるだろ。

いや、コレはもうただのアホか…………

 

…………というか、お、女の子って………

 

 

 

こころ「大変だわ!

本物のミッシェルを見つけないと…………

……………ん?」

 

 

 

美咲「…………お。ようやく理解して…………」

 

 

 

弦巻が奥沢をガン見している。

コレで気付けば後々のミッシェルについての話し合いも楽にはなるんだけど………

嫌な予感。

 

 

こころ「そう言えばあなた、誰だったかしら?

どこかで見たことあるのに、思い出せないわ?」

 

 

 

美咲「いやこの前一緒に作戦会議したし、

同じクラスで毎日会ってるよ!?」

 

 

俺の想像を遥かに超える酷さだった…………

誰かしら?は鬼畜すぎないか……?

中学生の頃言われたことあるけど、意外とグサッとやられたよ?

 

 

 

花音「こ、こころちゃん達、

ミッシェルは美咲ちゃんで…………!」

 

 

 

美咲「いや、花音さん、もういい………」

 

 

 

こころ「ミッシェルに何かあったら大変だわ!

すぐに本物を探しに行きましょう!!」

 

 

 

3バカ「ミッシェルを助けよう!おー!」

 

 

 

美咲「………この3バカに何を言っても無駄だ」

 

 

 

スタジオを飛び出す3バカ。

状況が混沌としすぎて固まる松原さん。

何かを諦めるような表情をした奥沢。

 

 

 

八幡「……………『ミッシェルの中の人』の次は、女の子か。

ランクダウンした?」

 

 

美咲「花音さん。比企谷くん抑えといて。

いまやるから」

 

 

 

花音「え……………えぇっ!?」

 

 

 

そ、そんな馬鹿な!?

この空気を変えるために言った、ちょっとしたジョークですよ!

てか、やるってなに!?

殺る方のやるだとしたら即逃げなくちゃ行けないんだけど!?

 

 

 

美咲「よし、脱げた。

比企谷くん覚悟してください。」

 

 

 

八幡「い、いや、ジョークだから!冗談ですって!

だから少し落ち……………!?!」

 

 

 

美咲「なに、急に顔を背けてるの。

後ろめたいことがあるから」

 

 

 

花音「み、美咲ちゃんっ!!

服っ!服見て………っ」

 

 

 

美咲「服………?あ…………///」

 

 

そう。ミッシェルの中は暑い。

キグルミの中は蒸してしまうものだ。

なので、当然中に入る人は薄着じゃないと辛い。

冬はわからんけど。

 

まぁ、つまり奥沢も薄着を着てたんだ。

白いタンクトップを。

………だが、汗をかいていたため、白のタンクトップは当然透けてしまうわけで………

 

 

美咲「こ、この変態っ!!」

 

 

『バチンっ!!」」

 

 

 

と、このように顔をビンタされるまでが確定演出である。

…………結局やられなきゃ行けないんだな。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「訴えれば勝てるぞコレ」

 

 

 

奥沢に叩かれた左頬を、抑えながら呟く。

松原さん曰く、俺の左頬は真っ赤だそうだ。

まぁ、100%俺が悪くないとは言わないけども………

 

 

美咲「う…………それは…………ごめん」

 

 

 

あれから奥沢も落ち着いたらしく、今はパーカーを着ている。

反省もしてるようなのでこれ以上掘り返すのはよくないな。

 

 

 

花音「え、えっと…………こ、こころちゃん達帰ってこないね!」

 

 

 

さすが松原さんだ。わかってらっしゃる。

さっきの事は忘れた方がお互いのためなのだ。

 

 

 

八幡「まぁ、アイツらは絶対に見つけられない本物のミッシェルを探しに行きましたからね。そのうち帰ってくるんじゃないんすかね」

 

 

 

入れ替わったミッシェルなんていないのだから見つけられるわけがない。

てか、アイツらはどこまで探しに行ってるんだ?

 

 

 

美咲「…………そろそろスタジオも終了時間なので、外で話しますか。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

美咲「それで、これからどうします?

帰ります?」

 

 

スタジオを出る時に黒服がミッシェルを持っていったので、今日はもう本物のミッシェルが出ることは多分ない。

 

3バカもいないし、解散でいいと思う。

 

 

 

花音「う、うん……………

でも、こころちゃん達大丈夫かな………?」

 

 

 

八幡「黒服の人たちがきっと何とかすると思いますよ。」

 

 

多分だけど、弦巻の服かどこかしらに発信機付けてると思うし。

まぁ付けてないとしても、絶対に追跡はしてる。

 

 

 

美咲「じゃあ、今日はもう解散しちゃいましょう。」

 

 

 

花音「そう………だね。」

 

 

 

八幡「じゃあ、俺はこっちなんで。

お疲れ様でした。」

 

 

 

自転車で来ていたので、止めた場所に足を運ぶ。

鍵を挿してロックを外し、自転車に乗ると………………

 

 

八幡「……………えっと??」

 

 

 

美咲「女の子2人を置いて、先に自転車で帰るんだ?」

 

 

花音「あ、あはは…………

た、たまには一緒に帰ら……ない?」

 

 

 

松原さんと奥沢に話しかけられた。

てか、奥沢のやつは何が言いたいんだ…………

「はい。そうです」とか言えばいいのだろうか。

 

 

松原さんは…………うん。

一緒に帰りましょう。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

トコトコ歩いて数十分。

基本は松原さんと奥沢の2人が話してて、話題を振られたら俺も答えてる。

…………俺いらなくない?

 

 

 

花音「じゃあ、比企谷くんは首席で入学試験合格したんだね………っ!」

 

 

 

八幡「え、えぇ、まぁ。」

 

 

 

自転車があるというのに、今は降りて、前を歩く2人の後ろについて行く。

自転車の価値が……………

 

 

 

美咲「………ん?でも、入学式の時に生徒代表の言葉で出た人って女の子じゃなかった?」

 

 

あー、そうらしいな。

その女の子がどんな奴かは知らんが、悪いことをしたと反省してなくもない。

 

 

 

八幡「あ、まぁ、それはアレだ。

色々あったんだよ。色々」

 

 

 

美咲「色々………?」

 

 

 

いや、話すと長くなるからめんどいんだけど…………

 

 

 

 

八幡「そうそう。色々だ。

まぁ、簡潔的にいうと入学式を休んだから出れなかった訳だ。」

 

 

…………最初からこう言えば良かったじゃねーか。

 

 

 

 

美咲「ふーん………

まぁ、どうでもいいんですけどね。」

 

 

 

奥沢さん?

俺に対してちょっと遠慮なくなってない?

最初の方敬語だったよね?

距離の縮め方が大胆すぎません?

 

 

 

決して口には出さない。

決して怖いから言わないのではない。

決して…………

 

 

 

などと考えていると、前を歩く2人が突然止まる。

 

 

 

花音「あ…………私の家、あそこだから……

2人とも………送ってくれてありがとう………っ。

比企谷くん………美咲ちゃんも、家までちゃんと送るんだよ……?」

 

 

松原さんの家に着いたのか。

結構CiRCLEから近いんだな。

 

奥沢は嫌がるだろうから送らなくてもよろしいでしょうか?

 

 

 

 

美咲「じゃあ花音さんお疲れ様でした。」

 

 

花音「うん…………っ。

2人ともお疲れ様。………バイバイ」

 

 

八幡「お疲れ様でした。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

松原さんと別れを告げ、今は奥沢と2人で歩いているのだが…………

 

 

 

美咲「……………………」

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

5分くらい無言を貫いてる。

何か話した方がいいのか?と思ってた時期もあったけど、考えるのをやめた。

なんか考え事してるみたいだし。

 

 

 

美咲「あたし…………少しおかしいのかな?」

 

 

 

八幡「………は?」

 

 

 

突然の事で、まだなんも話は聞いてないけど、少しおかしいと思ったぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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慣れは怖いし、ビンタは痛い







 

 

美咲「あたし…………少しおかしいのかな?」

 

 

 

八幡「…………は?」

 

 

 

突然何を言い出したかと思ったら、意味がわからないことを言ってきた。

 

 

 

美咲「いや、よく考えてみたらさ。

さっきの3バカのあの態度…………普通なら怒らない?」

 

 

 

八幡「…………あのミッシェルの話の時か。」

 

 

 

まぁ、弦巻は少し…………いや、かなり凄かったな。

誰だったかしら?は、さすがにな…………

 

 

 

美咲「でも………なんか全然ムカつくとかなくて、慣れたのかもしれないけど、あたしはコレでいいやーって思えたんだよね。」

 

 

 

 

八幡「………………どうしてだ?」

 

 

 

ひょっとして、奥沢は傷つき過ぎて諦めたのではないだろうかと思ってしまった。

そうなるとバンドどうこうの問題じゃない。

あの3バカは無意識…………というか、

悪意は無いだろうけど、それで奥沢が傷ついてるなら話し合いが必要になってくる。

 

 

 

美咲「!!

い、いや、そんな暗い話じゃないよ?

ほら、私って元々このバンドに入ったのもクマの着ぐるみ………

ミッシェルを着てたからだし」

 

 

 

美咲「だから、どっちかって言うと…………

こっちの方が本体的な?」

 

 

 

美咲「それに、

着てるうちに愛着が不思議と湧いてきたっていうか………?

可愛いですし、コイツ。

……だから、比企谷くんが思ってるような事じゃないよ。」

 

 

 

美咲「…………でも、心配してくれてありがと。」

 

 

 

 

八幡「…………い、いや、心配なんてしてないけど?

………まぁ、お前がいいならいいんじゃねぇの?」

 

 

なんで、バレてんだよ。

それにしてもコイツ…………なんか、大人だな。

 

 

八幡「それと、少し………いや、かなりおかしいぞお前。」

 

 

 

美咲「なっ………!?

比企谷くんに言われたくないんだけど。」

 

 

いや、最初に「あたし、少しおかしいのかな?」って聞いたじゃん。

 

 

 

 

八幡「俺はおかしくねぇ…………いや、どうだかな。

少しおかしいくらいじゃないと、あのバンドでやっていけないかもな。」

 

 

 

美咲「…………ふふっ。そうだね。

常識が通じないですから。」

 

 

 

あー、それある。

主に弦巻とか弦巻とか弦巻。

 

 

八幡「………にしても、ずっと黙っててそんなことを考えてたんだな。

俺はすっかり、さっきのことを怒ってると思って…………あ。」

 

 

や、やばい。

さっき自分であの事はお互い忘れた方が身のためって言ったのに……

 

 

 

 

美咲「…………さっきのこと??……………あ」///

 

 

 

美咲「このっ!変態っ!忘れてって言ったじゃんっ!」///

 

 

 

八幡「痛っ!おいっ!やめろって!

忘れてるから!マジで忘れたって!!

な、なんなら見てないっ!見えなかったんだ!!」

 

 

 

叩くな、蹴るな、殴るな。

や、やばい。苦しい言い訳を重ねてしまった…………

てか、この言い方だと見たかったって思われる気がする。

 

 

美咲「えっ!?///

………………はぁ、はぁ、、、、本当に見てない?」

 

 

 

八幡「いてて………本当だっての。

だから落ち着け…………な?」

 

 

もうこの話やめたい。

今すぐ帰りたい。

 

 

 

美咲「絶対見たし、覚えてるでしょ!!

あの時、あたしのピンクの下着見たじゃん!」

 

 

 

八幡「……は?おいおい、嘘つくなよ。

お前が着けてたのは、ピンクじゃなくて黄緑だ。

俺の記憶力を舐めて…………………あ。」

 

 

 

ま、待って、話を……………話だけでも、、、

 

 

 

美咲「……………!!!カァァ///

やっぱり覚えてるじゃん!!!」

 

 

『バチンッ』

 

 

八幡「ぐへっ!!」

 

 

 

……………忘れたくてもそう簡単には忘れられねぇだろ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

それから機嫌の悪い奥沢を家に送り届け、興味本位で帰り道は遠回りをしている。

帰り道は遠回りをしたくなる時がある。

 

 

そして、商店街方面を通って帰宅している。

…………そういやこの辺って北沢の家があるらしいな。

しかもお肉屋さんをやってるとか。

北沢精肉店って、言ってた気がする。

 

 

 

 

沙綾「……………あ、あのアホ毛は、比企谷くん?

おーい!比企谷くーん!」

 

 

 

???「沙綾の知り合い!?!」

 

 

 

???「………うわ、めちゃくちゃ猫背だなアイツ。

……………ん?比企谷?どっかで………」

 

 

 

???「猫より兎の方があたしは好き。」

 

 

 

???「おたえちゃん……?

そういう話じゃないと思うよ…………?」

 

 

 

 

今日はスタジオで初めての音合わせをしたが、割と悪くなかった。

ライブまで1週間切ってるから、あと数回は音を合わせることになりそうだな。

 

 

 

 

沙綾「あー、まただ……………」

 

 

 

???「…………沙綾ちゃん、またって……?」

 

 

 

沙綾「…………いや、前も学校で話しかけたらあんな感じで気づいて

貰えなかったんだ。

まぁ、無視してるわけじゃないとは知ってるけど……」

 

 

 

???「………あん?無視じゃなきゃ、なんでアイツは今返事をしないんだ?

流石にあの距離なら沙綾の声は聴こえてただろ。」

 

 

 

沙綾「……………この前は、『比企谷って聴こえてたが、俺に話をかけてると思わなかったわ。」みたいな感じで言われたよ」

 

 

???「あの人比企谷って言うんじゃないの?」

 

 

沙綾「…………うん。そうなんだけどね…………

本人曰く、比企谷って呼ばれる事がそんな無いから馴れてないらしいよ。」

 

 

???「名前に馴れとかねぇだろ!!

…………いや、でも、確かに苗字呼びの方が多くて………いきなり名前で呼ばれるとビックリするって言うか…………

『あたし………だよな?』って思う時はあるけど…………」

 

 

 

???「有咲可愛い!

有咲は有咲だよ〜!!」

 

 

 

???「や、やめろって!抱きつくなぁー!」

 

 

 

沙綾「少し待ってて。……ちょっと驚かしてこようかな」

 

 

 

???「おー、悪沙綾だ。」

 

 

 

×××

 

 

 

明日は弦巻の家に集合らしい。

なんでも、「ライブ衣装を選ぶわよっ!」とか、言ってたけど…………沢山あるって事だよな?

弦巻家パワーだよコレ。

選ぶって言っちゃってるし…………

 

 

 

沙綾「……………わっ!!」

 

 

 

八幡「………………!?」ビクッ

 

 

 

沙綾「あははっ!

ビクッて……………驚いてる………笑」

 

 

後ろから急に大きな声で、声をかけられたのでビックリしていると笑われた。

………しかも、この声聞いた事あるな………

 

 

 

八幡「………………なんの用ですかね。」

 

 

笑われたのが少しウザかったし、なによりビックリして心臓が一瞬止まるかと思ったから、不機嫌ですオーラを出し、目つきを悪くして反撃してみる。

 

 

 

沙綾「…………あ、えっと、ご、ごめんね………?

そんな、怒らせる気はなくて…………」

 

 

 

すごく申し訳なさそうな顔で謝ってくる山吹。

俺の反撃の威力が高すぎて、俺まで罪悪感が来てるぞ。

 

 

 

八幡「い、いや、別に怒ってないから。

ただ、ちょっとムカついたから…………」

 

 

 

沙綾「…………ふふっ。

なーんてねっ!冗談だよ!!

どう??ビックリした?」

 

 

 

八幡「じゃあな。」

 

 

 

沙綾「わー!ごめんごめん!!

冗談だから許してよー」

 

 

 

この女………………

少し悪いことをしたと思った俺が馬鹿みたいじゃねーか。

 

 

 

???「わー!沙綾がすごく楽しそう!!」

 

 

???「な、仲がいいんだね…………っ」

 

 

???「ひょっとして彼氏さん?」

 

 

???「え、コイツが?マジかよ」

 

 

 

 

なんか他にも女子が4人来たんだけど…………

彼氏じゃないし、最後のヤツなんて失礼過ぎない?

初対面だよね?

 

 

 

沙綾「かれっ!?………………んん!

ち、違うよ、この人は比企谷八幡くん。

あたし達と同じ花咲川の1年生だよ。」

 

 

 

???「へー、同級生なんだー。」

 

 

 

???「沙綾と仲良いですねっ!

あ、私!戸山香澄って言います!!

好きなこと」

 

 

 

???「か、香澄ちゃん!

お、落ち着いて………!」

 

 

 

あの頭に角が生えてるやつヤバイ。

弦巻と同じタイプな気がする。

相性が悪すぎるから撤退したいんだけど…………

 

 

それに、凄い金髪?っぽいツインテのやつに見られてるんだけど……

失礼な事言ってくるし、訳が分からん。

 

 

 

沙綾「そうだ!

まずは自己紹介しちゃおっか!

それじゃあまずは…………って、有咲?どうかしたの?」

 

 

 

有咲と言われる女は、何かすっごい考え事をしている顔してる。

まぁ、目つぶって唸ってるだけなんだけど。

 

そう思いながら見てると、女が目を開いて突然叫び出す。

 

 

 

 

???「あーーー!!!

思い出した!!比企谷八幡ってあの!!」

 

 

 

香澄「わーー!

有咲が急に叫んだ!」

 

 

沙綾「ちょ、ちょっと有咲、どうしたの?」

 

 

 

有咲「コイツっ!!コイツのせいだ!!

コイツのせいであたしはあの時!!」

 

 

 

ちょっと待て!

何がどうなってるんだよ。

突然叫んだと思ったら俺に指をさして怒鳴りつけて来たんだけど?

 

 

 

 

沙綾「あ、有咲、落ち着いて!

…………ほら、深呼吸して。

はい、ゆっくり最初から理由を話してみて」

 

 

 

山吹は暴走ツインテ女を落ち着かせる。

コイツはまるでお母さんのようだな。

 

 

 

???「流石沙綾お母さん………」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

被った…………

 

 

 

有咲「…………ふー。

おい、お前。入学式サボったよな?」

 

 

 

八幡「…………へ?」

 

 

 

有咲「だーーかーーらーー!!

入学式サボったんだろ!!」

 

 

 

八幡「さ、サボってはない…………です。

や、休んだだけ…………です。」

 

 

怖いこの人!

本能的に勝てないと思い、「です。」まで付けちまった………

 

 

 

有咲「一緒だ、そんなもん!!

お前、入試のテスト1位で合格したんだろ?

首席だったんだよな!?」

 

 

 

香澄「えーー!!

有咲じゃなくてこの人だったの!?」

 

 

 

沙綾「う、うそ…………

比企谷くんが??」

 

 

 

有咲「あたしは2位だった。

1位はコイツだ。」

 

 

 

……………もうなんとなく話がわかった。

お前だったのか…………

俺の代わりに…………

 

 

 

有咲「お前がサボったせいであたしに生徒代表の言葉をやれって言われたんだぞっ!!」

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「えー……………その説は大変申し訳ございませんでした。」

 

 

 

???「うわ、謝ってる。この人いい人なんじゃない?」

 

 

 

有咲「謝るのは当たり前だ!

それに、いい人なら入学式サボったりしないんだよ!」

 

 

 

香澄「………え、でも、別に生徒代表の言葉くらいで怒ること」

 

 

 

有咲「お前は大丈夫だろうな!!

目立つ事大好きだし!友達めちゃくちゃいるし!!

まぁ、香澄が生徒代表の言葉に選ばれるなんて事ないだろうけど!」

 

 

香澄「沙綾〜、有咲が突然褒めたと思ったらバカにされた〜」

 

 

 

沙綾「あー、よしよし。

…………でも、あたしもそんなに怒ることでもないと思うんだけど。」

 

 

 

有咲「あたしは、目立ちたくないんだよっ!!

人付き合いもめんどくせーし」

 

 

 

八幡「…………そうだ。今回は俺が悪い。

コイツの言ってることはよーく分かる。

目立ちたくない。人付き合いめんどい。」

 

 

 

???「そ、そっちをフォローしちゃうんだ…………」

 

 

 

???「……………変人だ。」

 

 

 

 

八幡「その…………すまなかった。

俺が1位だったのに、2位のお前にやらせて。」

 

 

 

有咲「………………」

 

 

 

八幡「やっぱり1位の俺が言うべきだったよな。

2位のやつが生徒代表の言葉なんておかしいし」

 

 

 

沙綾「………比企谷くん、そろそろやめよ?

悪気もなく、優しさで言ってると思うんだけどね?

言い方がちょっと」

 

 

 

八幡「………いや、止めるな山吹。

俺もコイツの立場だったらめちゃくちゃイラつくからな。

どんな理由があったって2位のコイツがアバシッ」

 

 

 

 

香澄「あ、ありさがカバンで殴った!!」

 

 

 

???「あー、アレは変人さんでも痛そう。」

 

 

 

 

有咲「2位、2位、2位うるせー!!!

あーーー!!本当にムカつくな!!!

もう帰るぞ!!」

 

 

 

顔面にキレイに入ったカバン攻撃は俺の左頬を腫れさせただけでは済まず、口の中を噛んでしまったことにより、口内炎まで出来てしまった。

 

 

 

 

 

沙綾「うん。今のは比企谷くんが悪いと思う。

まぁ、でも、お大事にね!じゃあまたねー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1つ言いたい。

 

 

 

 

八幡「お前が俺に話かけてこなかったら、こんなことにはなってない。」

 

 

 

 

俺の呟きは春の風に吹かれどこか飛んでった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

今現在八幡と知り合ってる人に、「比企谷八幡くんについてどう思う?」と聞いてみた。

 

 

《ハロー、ハッピーワールド!》

 

 

 

 

はぐみ「え、はちくん?

はちくんはね!とーっても頼りになるんだよ!!!

 

この間はぐみがこころんと一緒に学校からダッシュでこころんの家に向かったんだけど、着いた時にカバンがないことに気づいたんだ。

 

こころんも忘れてたみたいで、一緒に学校に戻ろうとしたらはちくんがはぐみ達のカバンを持って来たんだ。

はちくんはバイトがあるのにわざわざ持ってきてくれて、息切れしてたからきっと走って来てくれたんだなーって思ったんだ!

 

だからね!はちくんはとってもいい人なんだ!!」

 

 

 

「それはいい話ですね。ありがとうございました。」

 

 

 

頼れるお兄ちゃんと言った所でしょうか。

今後も楽しみです。

 

 

 

 

 

花音「比企谷君?

比企谷君はとっても優しいし、凄いよね。

 

バイトもあるし、勉強もしなきゃ行けないのに、キーボードも頑張ってる…………

 

曲作りやライブ場所も、美咲ちゃんと一緒に考えてくれてるし、本当に凄いと思います。

あたしもいつか、八幡君の助けに慣りたいなって思います!」

 

 

 

「八幡君………?比企谷君って呼んでいませんでしたか?」

 

 

 

花音「あっ!!

い、いや、それは…………ひ、比企谷君だけ下の名前で呼んでないから…………比企谷君も呼びたくて…………」

 

 

 

 

 

「本人に言ってみては?」

 

 

 

 

花音「男の人とあんまり喋ったことないから…………少し怖くて。

で、でも…………っ!

こ、今度……………呼び…………ます。」

 

 

 

 

「なるほど、頑張ってください。

それではありがとうございました。」

 

 

 

とても可愛らしいお方ですね。

暖かい目で見守りましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問をしていたのは黒服の人です。

 

 

 

 



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みんなが指揮者







 

 

はぐみ「すっごく楽しみだね!!」

 

 

 

こころ「そうね!!

あたしもまだ見てないからワクワクするわっ!!」

 

 

 

 

 

俺たちは今、弦巻の家に向かっている。

ライブまであと少しだから衣装を決めるためだ。

 

 

 

 

薫「私たちの儚いライブ。

儚い衣装じゃないとね。」

 

 

 

美咲「いや、儚い衣装ってなんですか。」

 

 

 

花音「羽衣…………とか?」

 

 

 

何それ見たい。

 

 

 

 

八幡「どうせ何着ても儚いって言うから大丈夫だろ。」

 

 

 

美咲「確かに…………」

 

 

 

 

花音「こころちゃんは、どんなのにするか考えてはいるの?」

 

 

 

こころ「いいえ!まだ考えてないわ!

黒服の人たちがたーくさん用意したと言っていたからすっごく楽しみなの!!」

 

 

 

八幡「たくさん…………………」

 

 

 

 

美咲「弦巻家のたくさんって………………たくさんですよね。」

 

 

 

たくさんだな。

多分俺たちの想像を超えるくらいの…………

 

 

×××

 

 

 

 

黒服「お待ちしておりました。

衣装の方は用意しておりますのでこちらにどうそ。」

 

 

 

 

弦巻家の中に入ると、黒服が既にスタンバってた。

そして、黒服の案内で部屋に向かっている。

 

 

 

美咲「あたし達のバンドはDJがいるから、モードっぽい衣装がいい気がするんだけど…………」

 

 

 

 

 

 

こころ「明るくて目立つような衣装がいいわっ!!」

 

 

 

はぐみ「かっこよくて動きやすい衣装もいいよねっ!!」

 

 

 

薫「やはりここは儚い衣装だね。」

 

 

 

見事に3人だけの世界にトリップしてる。

まぁ、うん。ここはアレだな。

 

いつも通りだね。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

蘭「…………っ!!」

 

 

 

モカ「らん〜?どうしたのさ急に〜?」

 

 

 

蘭「いや……………なんでもない。」

 

 

蘭(今の感覚はなんだろ。

分からないけどとてつもなく比企谷さんを殴りたい。)

 

 

 

モカ「変ならん〜。あ、元からか〜」

 

 

 

蘭「モカ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

なんかいま、凄い寒気に襲われた。

なんなのだろうか…………

 

 

 

こころ「じゃあ、全部が入った衣装を探しましょう!!」

 

 

 

はぐみ「さんせーい!!」

 

 

 

薫「ふふっ。流石こころだ。」

 

 

 

美咲「あーうん。聞いてないよね。

知ってた。知ってました。」

 

 

 

花音「だ、大丈夫だよ美咲ちゃん。

私と比企谷君が聞いてたから………っ!」

 

 

 

さすが松原さんは優しいな。

だけど現実はそう甘くないんですよ。

 

 

 

八幡「まぁ、俺たちが聞いても決定権はあっちの3人が持ってるんだけどな…………」

 

 

 

大体全部が入った衣装って何?

そんなのあるわけ…………………黒服さん。

 

 

最近分かったことがあるんだけど、黒服の人たちって弦巻の無茶ぶりに対して喜んでるんだよな…………

普通は、そういうわがままなことってめんどくさいとか、大変だなーとか思うはずなんだけどな。

なんであんなに嬉しそうにするの?

弦巻は一体何をしたの?

頭がこころんになったんだな。

 

 

 

 

黒服「この部屋でございます。」

 

 

 

どうやら着いたようだ。

うん。やっぱりでかい部屋。

まぁ、小さい部屋何てものはないな。

 

 

 

こころ「さぁ!!!入るわよっ!!」

 

 

 

弦巻が扉を開くとそこには………………

 

 

 

 

花音「ふぇえええ。バ、バンド衣装がこ、こんなにいっぱい!」

 

 

 

はぐみ「うわー!!すっごいたくさんあるよ!!」

 

 

 

 

薫「あぁ!!私たちの幕開けに相応しい衣装がこの中に!!」

 

 

 

 

美咲「嘘でしょ………………服屋さんなのココ?」

 

 

 

 

八幡「………………マジか。」

 

 

 

こころ「もうすぐ勝負どころのライブだもの!

いい衣装を選んで、ぜったいに笑顔を引き出すわよっ!!」

 

 

 

黒服「こころ様。

サイズは全てメンバーの皆様分調整していますのですぐに着ていただけます。」

 

 

 

こころ「そうなのね!

なんだか便利なことになってるわね!」

 

 

 

八幡、美咲「「『なってるわね!』じゃねぇ(ない)!!」」

 

 

 

美咲「え、なんで!?いつ!?いつ測ったの!?」

 

 

 

八幡「もう怖ーよ。やだよ。黒服さんやることおかしいって」

 

 

 

はぐみ「すぐ着れるなら試着いっぱい出来るね!!」

 

 

 

薫「どれも素晴らしくて迷ってしまうよ。」

 

 

 

コイツらはなんの心配もしてない。

いや、これが正しいのかもしれない。

考えるのを放棄すれば色々と楽だ……………

 

 

 

 

花音「この部屋中にある衣装が、全部特注ってこと……………ふぅ」

 

 

 

こころ「花音、どうしたの天井を見たりして」

 

 

 

 

花音「う、ううん。規模の大きさに私ってば毎回なれなくて…………

ワールドワイドだね。こころちゃんの家……………というか

ハロー、ハッピーワールド!って」

 

 

 

こころ「世界中を笑顔にするんですもの、ワイドどころかワイルドくらい行かないと大変よ!」

 

 

 

八幡「色々とキャパオーバーしすぎだけどな。

高校生バンドとしては失格レベルになりそうだし。」

 

 

 

美咲「それにしてもすごいですよ………

靴なんかの小物も揃ってて、アイドルみたいな可愛い衣装、

安全ピンや破れたTシャツ…………」

 

 

 

花音「お嬢様みたいなドレス、ちょっとセクシーなミニスカート。

うーん……………これだけあると迷………」

 

 

 

こころ「あたしはこれがいいわっ!!」

 

 

 

八幡「早いな。全く迷わねーし。」

 

 

 

こころ「この赤とか帽子とか、あたし、すごく好き」

 

 

 

八幡「鼓笛隊…………マーチングバンド?の衣装だな。」

 

 

 

こころ「それよ!!あたしもそう思ったの。

みんなで行進して、世界中を笑顔にして行くのよっ」

 

 

 

こころ「ハロー、ハッピーワールド!の衣装はこれしかないわ!!」

 

 

 

美咲「これだけ衣装があるのに言い切るんだね。

まぁ、こころらしいけど。」

 

 

 

はぐみ「すごくいいよっ!!

これでこころんが指揮棒を持って先頭に立って行進したらすごくそれっぽいね!」

 

 

 

はぐみ「こころんは指揮者って感じがする!!」

 

 

 

まぁ、ボーカルだけどな。

 

 

 

こころ「あたしが指揮者なの?」

 

 

 

はぐみ「え、違うかな?」

 

 

 

こころ「間違ってはないと思うけど、正解でもないと思うわ」

 

 

 

こころ「あたしね。

ヨーロッパやアメリカでたくさんのマーチングバンドを見てきたの」

 

 

 

こころ「よくわからないんだけど、うちのジェットで空港について、

街に出ると、大体の人たちが旗を振って、大きなマーチングバンドが歓迎のセレモニーをしてくれるのよね」

 

 

 

八幡「へぇ。……………ん?ジェット?は?」

 

 

 

あ、こいつの家ってなんでもあるんだったわ。(適当)

今更ジェットで驚くことはないのか。

 

 

 

 

黒服「気になるようでしたらご覧になられますか?

わが社の専用ジェットを」

 

 

 

八幡「い、いや、遠慮しときます」

 

 

 

少し見てみたいと思ってしまった。

…………だってジェットだよ?生きてるうちに生で見れることってあんの?

 

 

 

こころ「ライブに行く時に使うのもいいかもしれないわね!」

 

 

 

黒服「では市街地にこころ様方を降ろせるよう、少し手を加えさせていただきます。」

 

 

 

 

美咲「ちょっと待てい!いいわけないでしょ!

そんな登場の仕方、高校生バンドとしてぜったいにダメだから!

なんなら大人でもダメ!

……………比企谷くん、なんでちょっとしょんぼりしてんの。

ダメなものはダメだから。

てか、少し手を加えるって何する気なの…………」

 

 

 

 

別にしょんぼりなんてしてないし…………

ショックなんてうけてないし……………

 

 

…………ジェットは、男の、ロマンだ。

 

 

 

 

こころ「まぁ、とにかくそのセレモニーで出てくるマーチングバンドは、どれもみんなとっても大勢いるの。

ラグビーコートから離れるくらいよ」

 

 

 

 

花音「す、すごいね」

 

 

 

 

こころ「そうなの。すごい大きさだから、

演奏者が常に見える位置に、ドラムメジャーの誰かがいるようになっているのよ。」

 

 

 

はぐみ「ドラムメジャー?」

 

 

 

八幡「指揮者のことをそういうらしいぞ」

 

 

 

こころ「そう。だから指揮者はひとりじゃないの。」

 

 

 

こころ「それに、世界を笑顔にするのに指揮者がたった1人じゃ足りないじゃない!」

 

 

 

5人「「ーーーーー!!」」

 

 

 

薫「…………ふふっ。」

 

 

 

こころ「指揮者はハロー、ハッピーワールド!の全員よ!!」

 

 

 

こころ「そして指揮者のバトンはあたし達が、

笑顔になった人に渡して、その人も指揮者になって次の人に…………

そうやって、どんどん世界中に増えていくの」

 

 

 

こころ「指揮棒はいつだって!!誰だって!!

好きな時に振っていいの!!

だからみんなも、今、誰かを笑顔にするって思ったら、

すぐに指揮棒をあげるのよ!」

 

 

 

はぐみ「うん………!そうだね!!

誰かの出した合図を見つけて、会いに行って、

みんなでどんどん笑顔を増やして行くんだねっ!!」

 

 

 

薫「世界中に指揮者を増やして……………」

 

 

 

 

こころ「どう?と〜っても楽しそうでしょ?」

 

 

 

 

弦巻の何の根拠もない言葉なのに、今俺が…………いや、きっと、「俺たち」が感じてる感覚は何なのだろう。

 

1番楽しそうに話してる弦巻を見ていたら、実現させたくなってしまったのだろうか。

出来る気がすると思ったのだろうか。

 

……………多分答えは出ない。

 

 

1つわかる事があるとすれば、弦巻に着いていけばきっと…………

 

 

 

こんなふうに笑顔になれるんじゃないかと思ってしまうことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………だいぶ早く衣装が決まったな。」

 

 

 

 

美咲「…………だね。

もう少し意見が別れると思ったけどね。」

 

 

 

花音「でも、早かったけど…………すごくいいものが決まったね。」

 

 

 

はぐみ「早く着たいねっ!!」

 

 

 

薫「すごく儚いよ。」

 

 

 

こころ「じゃあ決まりねっ!

う〜んっ!!早く着てライブしたいわ!!」

 

 

 

薫「私たちの晴れ舞台を飾る素敵なステージにしなくてはいけないね。」

 

 

 

花音「でも、これだけ用意して貰ったのになんだか申し訳ない気持ちがあるね………」

 

 

 

美咲「まぁ、そうですね。

でも、黒服の人たちなら他の物に活用出来そうな気もしますど………」

 

 

 

こころ「別に気にすることでもないじゃない!」

 

 

 

花音、美咲「「えっ?」」

 

 

……………なんて事言ってんだコイツ。

その言い方だと性格悪いやつと思われるぞ。

 

 

 

八幡「その言い方だと誤解を生むぞ。

もう少し言葉を選べっつーの。」

 

 

美咲、花音「「………誤解?」」

 

 

 

 

こころ「???

八幡の言ってる意味は分からないけど、気にすることでもないわよ!!」

 

 

 

こころ「ハロー、ハッピーワールド!の主な衣装はコレになるけど、ここにある衣装も使ってライブとかすればいいわ!!

色んな衣装を使って演奏なんて楽しそうじゃない!」

 

 

 

美咲「あー、そういうことね。

こころに限って悪い意味じゃないとは思ってたけど、少しビックリした。」

 

 

 

花音「あ、あたしも…………

でも、こころちゃんらしいね。」

 

 

はぐみ、薫「「???」」

 

 

北沢と瀬田先輩はよく意味が分かってないみたいだけど説明するのもめんどくさいし、気になるようなタイプでもないだろ。

 

 

 

美咲「でも、比企谷くんはすぐに分かってたね。

あたしと花音さんは分からなかったのに。」

 

 

 

八幡「………そうか?」

 

 

 

美咲「『衣装が勿体ない』に対して、『気にすることない』なんて言ったら誰でもビックリすると思うけど。」

 

 

 

八幡「…………いや、弦巻がそんな事言うわけないと思ってたし。

どうせ色んな衣装着てライブしたいとかって思ってたからな。」

 

 

別に不思議な事はないと思うけど。

 

 

 

花音「…………………」

 

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

 

八幡「………………いや、なんだよ。」

 

 

 

花音「………………比企谷君はこころちゃんのこと信頼してるんだね。」

 

 

 

八幡「いや、ちょっと待てください。

なんでそうなるんですか。」

 

 

 

美咲「信頼してないとこころの思考回路なんて理解出来ないでしょ」

 

 

 

八幡「いや、コイツの思考回路なんて全然わかんねーよ!

コイツの頭の中は、お花畑でポップコーンとか作ってるぞ絶対。」

 

 

 

 

はぐみ「はちくんすごいね!!」

 

 

 

八幡「すごくないから。」

 

 

 

薫「八幡………………」

 

 

 

 

八幡「はいはい。また儚いですよね。」

 

 

 

 

薫「………………つまりそういうことさ」

 

 

 

八幡「いやどういうこと!?

しかも儚いじゃねーのかよ。」

 

 

 

こころ「あっ!!!

はちまん!みさき!あたしいま、曲が思いついたの!

聴いて欲しいわ!」

 

 

 

八幡「は?いま?」

 

 

 

美咲「…………嘘でしょ。」

 

 

 

 

こころ「ほらっ!行くわよ!

ラララ〜…………」

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今現在八幡と知り合ってる人に、「比企谷八幡くんについてどう思う?」と聞いてみた。

 

 

第2回《ハロー、ハッピーワールド!》

 

 

 

 

 

薫「八幡かい?

そうだね…………彼はとっても儚いよ。

 

………ん?儚いは禁止でお願いします?

それならば…………彼はとても努力家だね。

 

私はバンド練習がある時は、いつも先に個人練をするんだ。

演劇でも一緒だね。

やはりみんなで合わせるんだからより素晴らしい演奏や演劇にしたいと思ってるからね。

 

だから先にCiRCLEに行くのだけど、既に八幡はスタジオ借りて練習していたんだ。

私と同じで個人練をしていたんだろうね。

バイトがない日は大体いつも借りてると、まりなさんからも聞いたよ。

 

私は演劇の仲間たちからは、努力家とよく言われるけど、自分ではそう思わなかったんだ。

ただ素晴らしい演劇にしたいからやるだけであって深い意味などなかったんだよ。

 

でも、八幡を見ていたら努力家と呼ぶ気持ちがわかったよ。

自分もこう見られてると思うと少し恥ずかしいけどね。

色んなことを頑張ってる人は、すごく輝いててとても儚いね。」

 

 

「儚いと言ってしまいましたね。」

 

 

 

薫「…………まぁ、つまりそういうことさ」

 

 

 

 

 

 

「はい。それではありがとうございました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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比企谷八幡の災難

いま、俺の目の前には3人の女性がいる。

…………なぞなぞとかそういうのじゃない。

かと言って、ハロハピのメンバーでもない。

 

 

 

 

 

???「よ、よしっ。今日こそ!!

友希那さん、あのっ………………」

 

 

 

???「帰って」

 

 

 

???「はぐっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あ、あこはぜったいに諦めませんから!!」

 

 

 

???「………行ってしまいましたね。

それにしても何度来るのでしょうか。」

 

 

 

???「何度来たって変わらないわ。」

 

 

 

 

……………え、こわ。

てか、紫髪のツインテールの女の子、一瞬で断られたじゃん。

何を断られたのか知らないけど………

 

 

 

 

まりなさん「はちまんくーん!

もう時間でしょ?上がって上がってー!」

 

 

 

八幡「もうそんな時間か………

わかりました。おつかれさまです。」

 

 

 

まりなさん「はーい!またよろしくね!」

 

 

 

 

 

バイトが終わって家に向かう。

自転車なのでそう時間はかからない。

今日のバイトは3時間上がりで、まだ時刻は18時。

部活帰りの学生や、仕事帰りの大人たちがちらほら見えてる。

 

 

 

早く帰ってやるべき事をやらなければならない。

バンド練習もやっているが、勉強も毎日欠かさずしている。

最初は大変だったがだんだんと慣れてきた。

人間は適応力が高い動物らしいのだが、何となく実感出来た。

 

 

 

 

自転車を走らせること数分。

もう空は暗くなり始めている。

ここら辺は街灯が多いから意外に明るいが。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ、あそこにいるのってはっちーじゃない?」

 

 

有咲「げ…………アイツがいんのか?」

 

 

りみ「あ、有咲ちゃん………」

 

 

たえ「あー、香澄とは違う変態さんだ」

 

 

沙綾「比企谷くん?

………それにしても香澄は目がいいねー」

 

 

 

香澄「えっへへー、沙綾に褒められちゃったー!

おーい!はっちー!!」

 

 

 

有咲「お、おい!

何も呼ぶことないだろ!」

 

 

 

なんか前にいるやつが手を振ってるな。

……………すっごい見たことあるわ。

えーと……パン屋と愉快な仲間たちか。

 

俺は自転車だからもうすぐアイツらのことに追いつきそうだな。

まぁ、スピードは落とさずにこのままのペースで走れば数十分で家に着くな。

 

 

沙綾「比企谷くんって前にもこの時間帯にここの道通ってたよねー!

何か用事ー?」

 

 

 

少しいつもよりは大きい声で聞いてくる。

俺の方が若干後ろにいるからだろう。

 

 

 

八幡「あぁ、まぁ、用事だな。じゃあ。」

 

 

勉強も用事の1つだよな。

嘘はついてない、うん。

 

 

 

 

 

沙綾「え?」

 

 

 

 

5人「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「い、行っちゃったね…………」

 

 

 

たえ「急いでたのかな?」

 

 

 

香澄「あたしも久しぶりに自転車乗りたくなってきたー!」

 

 

 

有咲「…………沙綾。私がおかしいのか?

話しかけられたりしたら普通止まって話さないか?

いま、アイツは一切のスピードを落とさずに、すれ違い様に「用事だ、じゃあ。」って言って行っちまったぞ?」

 

 

沙綾「あ、あははー…………

比企谷くんは若干ズレてるところがあるって最近思ってるから……

まぁでも、本人は一問一答というか、これから会話が始まるとは思ってないから、私の質問だけ答えて帰ったんだと思う…………」

 

 

 

有咲「いや、それはもう若干というか大分ズレてるだろ………

わざとじゃない辺りが逆にウザイだろ!」

 

 

 

香澄「きっと急ぎだったんだよ!」

 

 

 

りみ「用事だから仕方ないんじゃないかな……?」

 

 

 

有咲「いや、私にはわかる。アイツに用事なんてないな!

でも、なんかに誘われたり面倒くさそうなことを察すると『用事あるからとか、行けたら行く』とかいうタイプだぞアレは。」

 

 

 

沙綾「へー。有咲、やけに具体的だね?」

 

 

 

有咲「い、いや、わ、私は違うぞ?

本当に用事があったというか、盆栽の手入れとかもあったし、嘘はついてない………うん。」

 

 

 

 

沙綾「へー。そうなんだー。」

 

 

 

有咲「くっ…………」

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「…………あ。」

 

 

 

有咲「おい、おたえ。急に止まるなよ、危ないだろ。」

 

 

 

りみ「おたえちゃんどうかしたの?」

 

 

 

たえ「アレ、はっちんじゃない?」

 

 

 

香澄「あー!!本当だー!おーい!!!はっちー!!!!!」

 

 

 

沙綾、有咲、りみ「「「………………え?」」」

 

 

 

×××

 

 

 

 

紗南「鬼さん鬼さんこっちだよー!」

 

 

 

純「捕まえてみろー!!」

 

 

 

 

八幡「いや、もう暗いから帰ろうぜ?な?」

 

 

 

 

帰宅途中に、公園を通りかかったらこの2人に捕まった。

正確には、またボールが引っかかったらしく、目撃してしまったので取ってあげたらコレだ。

とりあえず俺は、2人を捕まえなきゃ行けないらしい。

鬼さんって呼ばれてたから鬼ごっこってやつか?

 

 

…………鬼ごっこって複数人捕まえるルールだったっけ?

まぁ、いいか。

 

 

 

八幡「……………はぁ。

俺が2人を捕まえたら終わりだからな。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「アレは紗南と純…………?

比企谷君が遊んであげてる?」

 

 

 

りみ「沙綾ちゃんの弟さんと妹さんだね。

比企谷君が言ってた用事ってこのことだったのかな?」

 

 

 

有咲「はぁ!?いや、絶対違うだろ!

てか、だとしたら色々と問題があるぞ!?」

 

 

香澄「私たちも混ぜてもらおうよー!!」

 

 

 

たえ「オー!!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

八幡「マテー。」

 

 

さすがにマジで捕まえに行ったら泣かれそうなので徐々に追い詰めるか。

足の速さというか、1歩が違いすぎるしな。

先に兄の方を捕まえて、妹でいいか。

 

 

 

 

八幡「…………はい、タッチ。

兄の方はタッチしたけど…………あれ、鬼ごっこってタッチしたらどうなるんだっけ?」

 

 

 

確か、鬼が交代するんだよな?

でも2人捕まえてって言われたし…………。

まあ2人ともタッチすればいいか。

 

 

純「くっそー!!さな!逃げろー!」

 

 

 

 

ドラマとか映画のシーンかよコレは。

 

 

 

 

紗南「お兄ちゃん!

今助けるから待っててね!」

 

 

 

八幡「…………助ける?

え、いや、え?どういうことだ?」

 

 

 

てか、そもそもこのゲーム何?

お兄ちゃんは2人を捕まえたら勝ちって聞いただけで他のルールは知らないんだが………

 

 

 

 

 

香澄「じゅんじゅん、タァーッチ!!

よし!逃げるよ!」

 

 

 

純「……え。

よ、よっしゃー!ありがと!!」

 

 

 

八幡「……………おい。何してんだよ。なんで逃げるんだよ。

そして、なんでいるんだよ…………」

 

 

 

先程すれ違った5人が、そこにいた。

しかもそのうちの1人はケータイを耳に当てて喋ってる。

 

 

有咲「………はい。○○公園で、女の子を追いかけてる目の腐った高校生が………」

 

 

八幡「ちょっと待ておい。

………いや、待ってください。お願いします。」

 

 

 

紗南「お姉ちゃん!!」

 

 

 

沙綾「さな、大丈夫だった?

よしよし、怖かったね。」

 

 

 

八幡「それだと俺が本当にヤバいことしてた奴だと思われるからやめようか。」

 

 

 

たえ「はっちんはやくー」

 

 

香澄「捕まえてみろー!」

 

 

純「こっちだよー!」

 

 

 

八幡「おい、何ちゃっかりお前らまで参戦してんの?

てか、何助けちゃってんの?おかしくない?」

 

 

 

紗南「おかしくないよ!コレは、ドロケイだもん!」

 

 

 

八幡「…………ドロケイ?」

 

 

 

香澄「私の方では、ケイドロだったー!」

 

 

 

沙綾「まぁ、場所とか地域で言い方は別れてるよね。

でも、具体的なことは何も変わらないからね。」

 

 

 

有咲「………沙綾、ドロケイ?ケイドロ?ってなんなんだ?」

 

 

 

たえ「え、有咲知らないの?」

 

 

 

有咲「なんで聞こえてんだよ!

いま、沙綾の耳元で聞いたんだぞ!」

 

 

 

八幡「いや、俺も知らん。

てか、鬼ごっこじゃないのかよ。」

 

 

 

沙綾「まぁ、簡単に説明するとドロボウとケイサツの戦いかな。

だから、ドロケイ、もしくはケイドロ。」

 

 

 

りみ「ケイサツがドロボウをタッチすると、ドロボウは決められた場所、牢屋に連れていかれるんだけど、違う仲間のドロボウが、牢屋にいる人をタッチすると脱獄出来るゲーム…………だったよね?」

 

 

沙綾「そうだね。

ドロケイの人数割合は、ケイサツが3〜4でドロボウが6〜7くらいだったかな。

ドロボウの方が多くなるんだよね」

 

 

 

 

 

香澄「その通りー!

だから、じゅんじゅん、をタッチして一緒に逃げてるんだよ!」

 

 

 

沙綾「比企谷くんは分かってたけど、まさか、有咲も知らないなんて………」

 

 

 

有咲「は、はぁ!?べ、別に今までやる相手がいなかったとかそういう事じゃねーし!

そもそもあたしは、外で遊ぶのが好きじゃないから知らなかっただけだし!」

 

 

 

八幡「なんで俺は理解されてんだよ。失礼だからね?

………まぁいい。ルールは分かった。

俺がケイサツ側だろ?で、他に仲間は?」

 

 

 

香澄「私とおたえとじゅんじゅんと、さーなんがドロボウの方だから、さーやとりみりんと有咲がケイサツ?」

 

 

 

有咲「いやいや、あたしはやらねぇし。

ケイサツの方は、比企谷1人でいいだろ」

 

 

八幡「おい、それは無理ゲーだろ。

牢屋ってものが存在してるのに、見張り役居なきゃ捕まえてもずっと脱獄されるだろ。」

 

 

 

八幡「てか、そもそもこのゲームはおかしな点がある。

ケイサツVSドロボウなら、ケイサツの方が多いに決まってんだろ。」

 

 

 

有咲「それはあたしも思った。

ドロボウ数人に対して、ケイサツは100人でも1000人でも人数が多いものだしな」

 

 

 

沙綾「う、うわぁー。」

 

 

 

たえ「有咲、はっちん…………これ、遊びだよ?」

 

 

 

何だろう。こいつにアホを見る目をされるのは凄い腹立つな。

 

 

 

有咲「おたえにバカにされた…………。」

 

 

 

あ、口に出さなくてよかったわ。

コイツもだいたい同じこと考えてたか。

 

 

沙綾「そうだよ、2人とも。

そんな正論を遊びに言ったって、キリないでしょ。

ジャンケンの定義から議論が始まっちゃうでしょ?」

 

 

八幡「ま、まぁ…………」

 

 

 

有咲「確かに………」

 

 

 

香澄「有咲とはっちーって、仲良いんだね!」

 

 

 

八幡、有咲「「いや、それは絶対にない。」」

 

 

 

りみ「考え方が近いって言った方が正しい……かもね?」

 

 

 

沙綾「ふふっ。似たもの同士かもね!

…………さなー、じゅん。

そろそろ暗くなってきたから一緒に帰るよ」

 

 

紗南、純「「はーい!」」

 

 

 

ふぅ。

最初はどうなるかと思ったが、何とか乗り越えたな。

山吹姉が来なかったらこの2人を家まで送ることになってたし。

嫌ではないが、周りの目が怖いし、怪しまれたら即アウトな気がするから遠慮したかったしな。

 

 

 

八幡「じゃあ、俺はコッチだからじゃあな。」

 

 

 

紗南「えー!お兄ちゃんも一緒に帰ろうよ!」

 

 

 

八幡「いや、えっと、その…………」

 

 

これはまずいな。

山吹姉に目で訴えかけてみる。

 

 

 

八幡(おい、何とかしろ山吹。)

 

 

 

伝われ。…………お、気づいたぞ。

笑顔でOKマークを出す山吹。

ナイスだ。

 

 

沙綾「やったね2人とも!

お兄ちゃんが、夜は危ないから一緒に家まで送ってくれるって」

 

 

八幡「は?」

 

 

 

紗南「やったー!お兄ちゃん帰ろ!」

 

 

 

純「八兄帰ろ!」

 

 

 

 

俺の目の前には、ピュアっピュアな目をしてる2人の子ども。

そして、ペロッと舌を出す悪魔。嫌そうな顔をしてる金髪。

苦笑いしてる静かな子と、ハイテンションなアホが2人。

 

 

 

沙綾「じゃあ、みんなの家までよろしくね!

おにーさん!笑」

 

 

 

お前マジで覚えてろよ…………

 

 

 

こうして、全員の家まで送らされた俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

「おはよー」

 

「おっはー!」

 

 

 

今日も今日とて、学校。

周りの奴らは元気がいいな。

 

昨日は帰るのが遅く、小町に注意され、ヘトヘトで勉強も全然出来なかった。

あのパン屋の姉は許さん。

 

 

 

ダッダッダッダッダッダッ

 

 

 

 

今日は珍しく何にも予定がないので、ゆっくりと自分の時間を………

 

 

 

こころ「はっちまーん!!」

 

 

 

八幡「毎回何度も同じ手を食うか!………!?」

 

 

 

八幡「ぐおっ!!」

 

 

 

 

「あいつら白昼堂々と!」

 

「えー、あの二人がー?」

 

 

「いや、でも弦巻さんと………誰?」

 

 

「弦巻さんすごいもんね………」

 

 

「あー、こころちゃんだ!あの後輩ちゃんはちょー可愛いんだよ!」

 

 

周りでガヤガヤしているが、明らかに俺たちの事だ。

特に弦巻さん人気過ぎません?知名度すげーな。

 

 

 

さぁ、今の状況を説明しようじゃねーか。

 

弦巻選手が後ろからダッシュ。

それを察知した比企谷選手が避けようとする。

ところがどっこい弦巻選手、Fly away。

足は地面を離れ、飛びついてくる。

避けることも出来たが、避けたら弦巻ダウン。

黒服に抹殺される未来確定。

正面から抱き合う形でキャッチ。←ちなみに今ここ。

 

 

 

 

 

こころ「ナイスキャッチよ!はちまん!!」

 

 

ナイスキャッチよ!じゃねーんだよ。

危ねーよ、主に、俺が!

 

 

 

八幡「いや、もう本当に勘弁してくれ。

色々と心臓に悪い。」

 

 

 

こころ「心臓が痛いの!?それは大変だわ!!

どれどれ…………」

 

 

「おおっ!!」

 

「わー!!大胆!!」

 

「誰だかわからんけどあの男けしからん。」

 

「コレは風紀の乱れだろ。今すぐ風紀委員に………」

 

 

弦巻はそのまま俺の左胸、心臓に耳を当てた。

さすがにコレは色々とまずいし恥ずかしい。

 

 

八幡「おい、ばっか。マジでやめろ」

 

 

こころ「ちゃんと動いてるわ!!それに結構心音が早いわよ?」

 

 

八幡「うっせ、気のせいだっつーの。

てか、俺はもう行くぞ………」

 

 

なんなんだよマジで。

今の出来事だけでめちゃくちゃ目立っちまった。

しかも良くない方向な気がする…………

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

朝のホームルームが終わる。

はぁ、なんか色々と疲れた。

早く帰りたい。

 

 

 

美咲「おはよー………って、なんかお疲れだね。」

 

 

八幡「…………奥沢か。うっす。まぁ、お疲れだな。」

 

 

美咲「見てはいなかったけど、友達から聞いたよ。

こころとラブラブしてたって」

 

 

八幡「おい、ちょっと待て。なんだその情報。

まさか色んなやつらがそう広めてんのかよ………」

 

 

美咲「いや、それは分からないけど傍から見たらそういう関係だって思われる事をしてたんでしょ?」

 

 

………なんか攻撃的に聞こえるのは気のせいでしょうか。

こっちだってしたくてやった訳じゃないんだが。

言ってしまえば俺は被害者だ。

 

 

 

八幡「相手が弦巻って時点でお前は察する事が出来るだろーが。

他の奴らも弦巻が普通じゃないことくらい分かってるはず。」

 

 

つまりこの噂は数日で消え去るだろうな。

 

 

 

 

美咲「まぁ、こころは噂になってることさえ知らないだろうけどね。」

 

 

八幡「だろうな。」

 

 

 

仮に知っていたとしてもあいつの性格上、気にするわけがない。

しばらく俺が変な視線の数々を耐えればいいだけ。

…………何だろう。俺だけ損してるこの感じ…………

 

 

 

美咲「あ、そう言えば今日こころが、みんな集まるわよって言ってたよ。」

 

 

八幡「え、何それ初耳。」

 

 

美咲「まぁ、さっき言ってきたからね。

『今日はみんな用事がないらしいから一緒に演奏するわよ』だってさ。」

 

 

八幡「………当たり前のように予定を把握されてんの本当に怖いな。」

 

 

 

というか、俺だけかと思っていたが他の奴らも把握されてんのか。

 

 

美咲「把握されてんのは多分比企谷君だけだけどね………

あたしたちは元々予定がないって話してたから」

 

 

 

八幡「あぁ、そう…………」

 

 

なんか脳内を覗かれた気がするが気のせいだよな。

それにしても今朝は本当に、弦巻を無視せずにキャッチして良かった。

弦巻に怪我をさせたらどうなるのだろうか俺は…………

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、今は昼ごはんand昼休みタイムに突入。

 

 

さてと、ベストプレイスに行くか。

この学校は敷地が割と大きいからすぐに見つけれた。

まぁ、結構行けないこと多いけど。

理由は語るまでもなく…………

 

 

こころ「はちまん!!お昼よ!!

はぐみと花音も呼んで一緒に食べましょう!!」

 

 

はい来た。ほら来た。コイツだ。

別に一緒に食べるのが嫌という訳では無いのだが、ご飯は静かに食べたい派なのだ。

というか、そのメンバーで瀬田先輩がいないのは分かる。

学校違うし。

 

あのー、そのー……………………奥沢は?

 

 

 

 

八幡「はいはい、分かったよ。

俺は奥沢を呼んでくるから先に食べててくれ。」

 

 

今日もベストプレイスで食べれなさそうだな。

まぁ、ライブ近いし仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そういや奥沢は先生に呼ばれてた気がする。

職員室の方に向かうか。

少し面倒だが、奥沢がいない方がめんどくさいのは明確。

迎えに行ってやるか。

 

 

 

昼時間の廊下は騒がしいな。

走り回ってるヤツらや、音楽を流してるヤツ。

少々通りにくいので自重して欲しい。

 

 

香澄「あ、はっちーだ!」

 

 

ほら、噂をすれば騒がしい奴が来たよ。

しかも相当戦闘力高い奴だし。

 

 

八幡「………どうも。」

 

 

香澄「はっちーは今からどこ行くの?」

 

 

八幡「いやちょっと、職員室にな。」

 

 

香澄「はっちーも職員室行くの?!」

 

 

八幡「お、おう。」

 

急に大声出すなよ。

…………ん?はっちーも?

 

 

香澄「いやー、私も先生に呼ばれて職員室に行くんだー。

それにしてもはっちーって頭良かったよね?はっちーも先生に呼び出しされるんだね。」

 

八幡「…………おい待て。

お前は今盛大な勘違いをしてるぞ。」

 

 

香澄「???」

 

 

コイツは先生に呼び出される=怒られる、もしくは注意されると勘違いしてないか?

いや、多分してる。こいつは結構な頻度で体験してそうだし。

言っちゃ悪いがお前は注意されそうな気しかしない。

 

 

 

八幡「俺は別に怒られたり注意されるとかじゃないぞ。

職員室に用があるだけだ。お前と一緒にすんな。」

 

 

香澄「えー!違うのー!

わ、私だって授業中寝てて………ちょ、ちょっとだけだよ!

それで先生に呼び出されてて………」

 

 

八幡「原因が明らかじゃねーか。」

 

 

先生によると思うが寝てたら基本はアウトだろ。

注意されなくても、成績の関心意欲態度にダメージ入るし。

 

 

 

 

香澄「でも、職員室に用があるなら一緒に行こー!」

 

 

八幡「いや、いいよ。

じゃあ、俺はこっちなんで。」

 

 

香澄「私もそっちに向かってるからね?!」

 

 

 

×××

 

 

 

 

香澄「…………でねー。そこで有咲がー…………」

 

 

凄い。色々と凄い。

コレがマシンガントークってやつなのか。

止まらねぇよ。会話が止まらねぇ。

俺ほとんど喋ってないから会話って言っていいか分からないけども。

 

 

香澄「あ、そうだ!はっちー!

さーやが少し変なの!!」

 

 

急に友達ディスリ始めたけど大丈夫かこの子。

 

 

 

 



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やはり保護者は大変

 

 

香澄「さーやが少し変なの!」

 

 

八幡「そ、そうか。」

 

 

そんなはっきりと変なの!って言われてもなぁ………

というか、この始まり方はなんかデジャブを感じるぞ………

 

 

 

香澄「変……というか、元気がないっていうか、

いつものさーやじゃないっていうか………」

 

 

いや、それを俺に話されても困るって言うか、

どうにも出来そうにないというか…………

 

 

香澄「少し前からなんだけどね。

いつもは普通なのに、バンドの話をすると様子が変わるっていうか………」

 

 

八幡「バンド………?」

 

 

バンドってあのバンド?

…………いや、でもこの前コイツがギターケース背負ってんの見た事ある気がする。

 

 

 

香澄「そう!バンド!!

あたし達バンドをやるの!」

 

 

八幡「そ、そうか………

…………ん?やるって事はまだバンド出来たわけじゃないのか」

 

 

『達』とはいつも一緒にいるアイツらのことだろうか。

 

 

 

 

香澄「………今は4人なんだ。

私と有咲とおたえとりみりん!

でもね……さーやも、さーやとも一緒にバンドしたいの!」

 

 

八幡「…………誘ってはみたんだろ?

それで断られた。それでも無理に一緒にやらせるのか?」

 

 

 

香澄「………うん。お店が忙しいからって。

でも、それが理由ならあたし達だって手伝う!」

 

 

八幡「いや、それを俺に言われてもだな…………」

 

 

お店が原因か。

まぁ、アイツの家はパン屋らしいし。

それに、小さい下の子も2人いるしな。

 

 

香澄「それにさーやは…………!」

 

 

沙綾「なになに?なんの話?」

 

 

香澄「さ、さーや!?」

 

 

沙綾「あれ?なんかお取り込み中だった??

ごめんごめん!なんかあたしの名前が聞こえた気がしたからさ」

 

 

香澄「い、いやぁ………なんでもないよ?

あははー………」

 

 

おい、嘘下手すぎだろこいつ。

………タイミングいいんだか悪いんだか、いやいいのか。

コイツが来なかったら延々と話を聞かされる所だったし。

 

 

沙綾「比企谷君はなんでここに?

香澄は職員室に呼ばれてたもんね」

 

 

香澄「そ、そうだった〜!!

じゃあ、あたし急ぐね!!」

 

 

おい…………

 

 

八幡「じゃあ、俺もここで」

 

 

乗るしかない、このビックウェーブに。

 

 

沙綾「弦巻さんの彼氏さんはどうしたの?」

 

 

八幡「………………」

 

 

って言っても、俺もアイツと行く場所一緒なんだよな………

ていうかもうすぐ職員室着くし。

それにしても奥沢はいるのかと不安になってきた。

いたとしても他の人と昼の約束あったら終わりだし。

なんで弦巻は最初から奥沢のこと誘わないんだよ………

 

 

沙綾「ご、ごめんごめんって!!冗談冗談!!

だから無視はしないでよー」

 

 

コイツ、人をからかうの好きなの?からかい上手なの?

いや、上手いと言うよりうざいけど。

 

 

八幡「……………で、なんか用か?

用がないなら俺も行くけど」

 

 

遅くなると、奥沢が職員室からいなくなってそうだし。

 

 

 

沙綾「いや、用は特にないんだけど………あっははー。」

 

 

八幡「ないのかよ。からかっただけか。

まぁ、いいんだけど。」

 

 

沙綾「比企谷君からかうと面白いからね!」

 

 

八幡「じゃあな。」

 

 

沙綾「弦巻さんとお幸せにー……………っ」

 

 

八幡「………お前なぁ。

一応言っておくがあの噂は事実じゃねーから。

弦巻はああいう奴なんだよ…………本当に勘弁して欲しいレベルでな。」

 

 

弦巻はもう少し男女との仲、というか一般常識と言うか色々と学んだ方がいいのでは?

黒服さん、貴方たちは弦巻を甘やかしすぎ!

おかげでモンスターが生まれてるのに気づいて!

おっと…………これ以上は俺が二度と陽の光を浴びれなくなってしまうからやめとこう。

俺の周りには頭の中を読んでくるやつとかいるし。

 

 

沙綾「………そっか。」

 

 

 

八幡「あ?なんか言ったか?」

 

 

 

沙綾「ふふっ…………なんでもないよ!

そうだよね!比企谷君だもんね!」

 

 

八幡「なんで若干嬉しそうなんだよお前………

ていうか、めちゃくちゃ失礼だからね?」

 

 

ホントこいつ、いい性格してる。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「失礼しましたー。」

 

 

八幡「間に合ったか。」

 

 

美咲「うわっ!…………なんだ、比企谷くんか。」

 

 

八幡「わるい、脅かすつもりはなかった。」

 

 

 

俺も今着いたばっかりで正直間に合わないと思ってた。

主に2つの角生えた騒がしいやつと、からかいパン屋のせいで。

 

 

 

 

美咲「いや、別に大丈夫だけど………

それで?間に合ったって何が?」

 

 

八幡「あー、そうだった。

昼休憩、誰かと約束とかあるか?ないなら一緒に食べるぞ。」

 

 

美咲「あぁ、そういう………………ん?

ええっ!?」

 

 

八幡「いや、なんだよ。何を驚いてんだよ。」

 

 

急に大きな声出すからビックリしたわ。

 

 

 

美咲「い、いや、だって………え、そのためにわざわざ職員室まで来たの?」

 

 

八幡「……?まぁ、そうだな。

正直間に合わないかと思ったからよかった。」

 

 

美咲「え、あ、そ、そう…………。

な、なんかごめん」

 

 

美咲 (え?!あの比企谷くんが!?昼の誘い!?

え、なんで?あたし?)

 

 

八幡「いや別に、俺が勝手に来ただけだしな。

事前に言ってもなかったし」

 

 

美咲「そ、そっか…………

まぁ、特に約束とかなかったからいいけど。」

 

 

美咲 (あたしを誘ったってことはライブの相談とか?

でも、2人でご飯食べるのは初めてだっけ?)

 

 

八幡「よし、なら行くぞ。

アイツらのところに」

 

 

美咲「う、うん、わかった。

……………ん、アイツら?」

 

 

八幡「おう。松原先輩達のところ。」

 

 

美咲「あー…………うん。そうだね。

早く行こうか」

 

 

八幡「あ、あぁ……?」

 

 

何かとてつもなく早口になって棒読みになったんだけど、スルーした方がいいな。

ツッコミ入れたら行けないオーラが出てる気がするし。

 

 

美咲「待ってるんでしょ?早く行こう。」

 

 

八幡「お、おう。中庭にいるって言ってたぞ」

 

 

 

 

美咲 (あー、もうホント最悪!恥ずかしいにも程がある!

早とちりしたあたしが悪いけど、私も女子高生だし。

そういうのには少し敏感というか…………

いや、そもそも比企谷くんは友達だし!!

そういう感情はない!!

でもあたしは男の子が昔から苦手だったから、ちゃんと話す男の人は比企谷くんしかいないし………

てかそもそも最初からみんなでって言ってくれればこんな早とちりをすることは無かったし……

比企谷くんのせいだ、うん。)

 

 

美咲「うん。切り替えていこ。冷静に考えればわかる事だったし」

 

 

 

八幡「………お前大丈夫か?

顔赤くしたと思ったら、目をつぶって唸りそうになってるし。

と思ったら自分の顔叩いて独り言呟くし。」

 

 

美咲「いや、ちょっとね………

何でもないから気にしないで。」

 

 

八幡「そ、そうか。」

 

 

あれを、「何でもないから」で済ますのが凄いな。

まぁ、本人が言うなら大丈夫ってことにしとくか。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

美咲「はい、お待たせしましたー」

 

 

はぐみ「あー!来た来たー!

みーくんとはーくんが来たよー!」

 

 

花音「美咲ちゃんごめんね?急に呼んじゃって……」

 

 

美咲「いや、花音さんが謝る事じゃないですって。

比企谷くんから聞きましたし。こころがあたしだけ誘ってなかったって」

 

 

こころ「うう〜、ほっぺが痛いわ」

 

 

美咲「あんたが悪いんでしょ」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

あの時の奥沢は速かった。

こいつらと合流した時に、弦巻が「あら!ミッシェルの中の人も来てくれたのね!」と言った途端に奥沢が弦巻の左右のほっぺたを掴んでた。

 

 

 

美咲「それで?何か急用なの?

今日の放課後も集まるのに昼に集まったのって」

 

 

 

こころ「別に用なんてないわ!みんなで食べたいからよ!」

 

 

 

八幡「うん。もう薄々気づいてたわ。」

 

 

 

断ったら面倒だから諦めた。

だから奥沢も巻き添え…………じゃなくて、暴走したら止めてくれる人員だからな。

 

 

 

花音「ふふっ、こころちゃんらしいね」

 

 

はぐみ「みんなで食べると美味しいからね!」

 

 

 

美咲「結構騒がしいですけどね」

 

 

 

八幡「静かすぎても逆に怖いけどな」

 

 

 

こころ「楽しいわね!

あ、はちまんの玉子焼き美味しそうね!………パクっ。

う〜んっ!!とっても甘くて美味しいわ!!」

 

 

 

八幡「おい、てめぇ……何してんだコラ。

小町の玉子焼きを食っていいのは俺だけなんだよ。」

 

 

 

はぐみ「は、はちくんが怒ってる!」

 

 

 

美咲「え、いやちょっと!?これ結構ガチっぽくない?」

 

 

 

花音「ひ、比企谷君は妹さんを大切に思ってるから……」

 

 

 

許さん。弦巻許さん。

こちとら毎日弁当じゃないんだぞ。

小町の手料理を食える素敵な日だったのに…………

 

 

 

こころ「こっちよこっちー!捕まらないわよっ!」

 

 

 

美咲「比企谷くん、ドンマイ」

 

 

 

八幡「待てコラ」

 

 

 

×××

 

 

 

お昼休みも終え、午後の授業に入っており、今はLHR。

ロングホームルームの時間だ。

そこで黒板に書かれている不可思議な内容に驚きを隠せなかった。

 

 

 

八幡「え……………いやいや、え?」

 

 

 

美咲「いやいやいや無理でしょ。」

 

 

 

 

こころ「じっこういいん?

よく分からないけど、文化祭を盛り上げればいいのよねっ!」

 

 

 

1年C組文化祭実行委員

男子

女子 弦巻こころ

 

 

 

弦巻。お前じゃ無理だ。

勿論悪い意味ではないのだ。いい意味でもないけど。

だって……………

 

 

 

八幡、美咲 ((絶対黒服の人たちがなんかしちゃうじゃん!))

 

 

 

文化祭じゃないレベルの事をしてくる可能性だってあるんだぞ?

弦巻は多分、無茶苦茶なことを言うだろ?

そしたら黒服が全力で何とかしてくるやつじゃん。

お嬢様大好き集団だし。

文化祭がテーマパークになってもいいの?

 

 

学級委員「え、えーと、じゃあ女子は弦巻さんで決まりね!

他、男子は??」

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

 

え、何こいつ。めちゃくちゃ見てくるじゃん。

やれよって目で見てやがる。

ふざけんなよ、嫌だよ、絶対。

そんなことしたら面倒な事に………………いや、待てよ。

弦巻と同じ委員になった奴が、弦巻のことをあんまり知らなかったら……………

 

 

 

八幡「…………………はぁ。」

 

 

 

とんでもない未来が見えた。

困り果てた先生や生徒の顔が目に浮かぶ。

弦巻を止めれる男子は俺しかいなさそうだな……………

いや、止めれないけどね。

 

 

こころ「決まらないのならあたしが決めるわっ!

はちまんっ!一緒に委員会やるわよっ!」

 

 

 

八幡「はい?」

 

 

 

「おー!いいねー!」

 

「またコイツらはイチャイチャを……」

 

「やっぱり愛じゃない?!!」

 

「適任だな!」

 

「てぇてぇ」

 

 

 

学級委員「え、えーと、比企谷君どうかな?」

 

 

 

えー、何この展開。

めんど………いや、本当にめんどくせぇ。

確かにやろうと思ってたけど………はぁ。もういいや。

 

 

 

八幡「あー、はい。じゃあやります。」

 

 

 

「おおー!」

 

「イチャイチャも程々になー!」

 

「てぇてぇ」

 

 

 

何ですかね。このノリは………

この前の事があったから暫くはこうなるのか………

 

 

 

委員長「じゃあ決まりね!2人ともお願いね!

文化祭まで約2週間だから、今日の放課後に委員会の集まりがあるからよろしくね!」

 

 

 

残り2週間しかないのに、今日文化祭委員決めるとかのんびりだな。

まぁ、ほとんどのクラスは何をやるかは既に決まってるらしいので大丈夫か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ〜!!はっちーだー!!」

 

 

沙綾「あ、本当だ。なんか……すごく意外だね」

 

 

 

今日の授業は全て終わり、放課後になったので文実委員の集合場所に来てみたらこれだ。

何でお前らがいるんだよ…………

 

 

 

 

こころ「あら?はちまんのお友達かしら?」

 

 

八幡「友達じゃないからスルーしていいぞ。」

 

 

香澄「えー!!友達だよー!はっちーってば酷い!」

 

 

沙綾「あはは………。

弦巻さんも文実委員なの??」

 

 

 

こころ「えぇ!そうよ!!

ところで…………会ったことあるかしら?」

 

 

 

沙綾「あー、ごめんね!

弦巻さんは有名だから私が一方的に知ってただけだよ。

私は山吹沙綾、それと……」

 

 

 

香澄「はい!戸山香澄です!!

好きな食べ物は白いご飯!あとは………」

 

 

 

沙綾「かすみー。ストップストップ。落ち着いて………ね?

………そんなわけだからよろしくねー、弦巻さん!」

 

 

 

こころ「こちらこそよろしくだわっ!」

 

 

 

弦巻と戸山が出会った。

混ぜるな危険ってこの事だろ………

嫌な予感がするな………

 

 

 

 

沙綾「それにしても比企谷君がこういうのやるの意外でびっくりしたよ」

 

 

 

ち、近い、離れろ、耳元で喋るな。

 

 

 

八幡「…………別にやりたくてやってるわけじゃない。

お前も同じような理由じゃねーの?」

 

 

 

沙綾「あー…………うん。

いや、やったらきっと楽しいと思うんだけどね!

最初の理由は…………その………」

 

 

 

八幡「弦巻の保護者」

沙綾「香澄の保護者」

 

 

 

 

沙綾「クラスのみんなから、「香澄の保護者はさーや!」って言われててね。まぁ、やろっかなーって感じで」

 

 

 

八幡「俺なんてほぼ強制的だったぞ。

拒否権もきっとなかった。」

 

 

 

沙綾「…………お互い頑張ろっか。」

 

 

八幡「まぁ、そうだな。」

 

 

 

 

こころ「はちまん!なんの話しをしてるのかしら?」

香澄「さーや!なんの話し、なんの話しー?」

 

 

 

お前ら(2人)の事だよ!

とは言えない2人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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衣装とトラウマ

 

 

 

 

こころ「みんな待たせたわね!それじゃあ行きましょう!」

 

 

美咲「文実の集まり、意外と終わるの早かったね」

 

 

 

八幡「まぁ、今日は挨拶とか委員長とか、簡単なものしか決めなかったからな。

また、集まりがちょくちょくあるらしいが。」

 

 

 

文化祭実行委員の集まりがあるにも関わらず、松原さん達は待っててくれたらしい。

………てか、瀬田先輩もいるし。

 

 

 

 

八幡「んで?今日はどっちでやるんだ?」

 

 

 

今日は集まるとしか聞いてないからな。

ちなみにどっちとは、弦巻の家か、CiRCLE。

CiRCLEの場合は当然バンド練習なのだが、弦巻の家でも出来るんだよなぁ、、、、

弦巻の家にある部屋は全て防音らしいし、この前黒服の人がバンド練習のためのスタジオ………というか、部屋を作ったらしいのだ。

いや別にいいんですよ?自分の家だし、誰にも迷惑かけてないし。

でもさ…………いや、もういいや。

 

 

 

美咲「もうライブは来週だからCiRCLEでいいんじゃない?」

 

 

花音「そ、そっか……もう、来週の土曜日………っ」

 

 

美咲「それにしても文化祭の前日にライブなんてミスったよね。」

 

 

八幡「全くだ。

文化祭なんて興味無さすぎて忘れてた。」

 

 

そう。俺たちは文化祭の前日にライブをする。

文化祭は日曜日と月曜日の計2日。

俺たちは土曜日にライブをする。

普通、土日の2日じゃないのか?と思うが、月曜日は祝日のため休みで、仕事休みの人が多い休日2つで行われることになった。

 

 

 

はぐみ「楽しみだね!」

 

 

 

八幡「楽しめるほどの余裕がないんだが。」

 

 

 

こころ「あたしたちは笑顔を届けるのよ!

全力で楽しむに決まってるわ!」

 

 

 

美咲「程々にしてよね。」

 

 

 

こころ「放課後も頑張るわよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「いいっ!ものすごくいいわ!!」

 

 

はぐみ「うん!!みんなの息ピッタリだったよ!!」

 

 

薫「あぁ!なんて儚いんだ。」

 

 

 

花音「うん…………

はぐみちゃんの言う通りみんな揃ってたね………っ!」

 

 

 

ミッシェル「ライブもこの調子で行こー」

 

 

美咲 (割とマジでビックリなんだけど。

みんなしっかり練習してるじゃん。)

 

 

 

八幡「まぁ、確かにほとんど出来てたな。

でも何個か目立つミスがあったぞ。今の一応撮ってあるから観るぞ」

 

 

 

学校が終わり、俺たちはCiRCLEにいる。

最後にみんなで合わせたのが1週間以上前だったので少し新鮮だ。

まぁ、主に俺のせいで揃わないのだが。

俺以外の5人は割と集まってるらしい。

 

 

 

こころ「はちまん!笑顔じゃないわよ!

もっと笑って!」

 

 

八幡「ぐっ…………

あ、おい。お前ココ走りがちだ。もう少し周りの音を聞け。」

 

 

花音「あ…………私、ここの出だし遅れてるなぁ。」

 

 

はぐみ「かのちゃん先輩だけじゃないよ!

はぐみも何回か間違えてるし!」

 

 

ミッシェル「か、薫さん………少しポーズ決めすぎじゃない?

………あ、今のところは弾かなきゃ行けないのに、格好で誤魔化してるじゃないですか」

 

 

薫「こ、これはあれさ。

険しい丘に登るためには、最初にゆっくり歩くことが必要である。」

 

 

 

ミッシェル「はいはいシェイクスピアね。

でも、使うところ間違ってると思いますよ。

………にしても、私もここ走り気味だ………」

 

 

八幡「まぁ、見ての通り改善する場所はまだある。

確かに上手くは行ったが満足はすんなよ。」

 

 

まぁ、でも想像よりは全然出来てる。

ほとんど素人の集りだからな。

 

 

こころ「あ!そうだわ!!」

 

 

八幡「却下」

 

 

花音「ま、まだ、こころちゃん何も言ってないよ?」

 

 

 

美咲「こころは言わせたら終わりですから。」

 

 

 

はぐみ「こころん、どーしたの?」

 

 

 

いや、聞くなよ。

 

 

 

 

こころ「せっかくだからバンド衣装で練習しましょう!

本番気分を味わえるでしょ?」

 

 

薫「さすがはこころだ。あの儚い衣装を来たら私たちがより儚くなってしまうね」

 

 

 

はぐみ「わーい!さんせーい!!

………あれ?はちくんは?」

 

 

美咲「まさか…………」

 

 

 

花音「あはは…………そのまさか、かも………?」

 

 

 

こころ「はちまん?どこ行くのー?」

 

 

 

八幡「着ない、帰る。」

 

 

 

美咲「………え、いやいやいや!まだ言ってたの!?

もう諦めなって!男の子でしょ!!」

 

 

嫌だ!無理だ!

俺は絶対に着ない!!

性別なんて関係ないし、男だから着ないんだよ!!

 

 

 

 

そう。逃げ出すのには理由があった。

 

 

×××

 

 

〜遡ること数日前〜

 

 

 

こころ「衣装も決まったことだし、早速着るわよ!」

 

 

八幡「俺たちに新曲作りさせて、なに勝手に………っ!?」

 

 

美咲「ちょっ!!ちょっと待ってこころ!!

比企谷くんがいるから!!」

 

 

 

こころ「??

はちまんがいると何か問題でもあるのかしら?」

 

 

 

美咲「あるの!!そこから教えなきゃダメ!?

あーもう!!少し待って!!」

 

 

 

八幡「そ、外に出てるわ。」

 

 

 

花音「う、うん。ご、ごめんね?」

 

 

 

八幡「いやいや、謝ることじゃないですって。

それじゃあ。」

 

 

 

 

 

あー、びっくりした。

弦巻の常識度が恐ろしく低いことを知った。

体育の授業の時は着替える時に、特にこれといった問題になってはいなかったんだけどな……?

まぁ、さすがに周りの女子が止めてくれると思うが。

 

 

 

黒服「八幡様。こちらでお着替えください。」

 

 

 

八幡「!?

………あ、ありがとうございます。」

 

 

 

急に出てくるのやめてください。忍者かよ。

 

 

 

黒服「いえ、黒服です。」

 

 

 

八幡「脳内と会話するのやめてもらってもいいですか?」

 

 

 

忍者じゃなかった。エスパーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こ、これは…………

いや、ファッションに興味無い系男子代表の俺にもわかる。

 

 

八幡「似合って無さすぎじゃね?」

 

 

まぁ、色的に似合ってないのもあると思うが、

この腰あたりのヒラヒラいる?

女子ならまだしも、俺は男なんだけど?

肩も地味に出てるのは何故?

俺がファッションを知らなすぎてるだけ?

女子っぽいのは気の所為?

 

てか、なんかすごく恥ずかしくなってきたんだが。

衣装選びの時は不覚にもワクワクしたし、愛着も湧いたよ?

でもこれは…………いや、考えすぎか?

 

考えても見ろ比企谷八幡。

流行のファッションって見ても何がいいのか全くわからない俺だぞ?

俺の意見一つで考えるのはナンセンスすぎる。

アイツらの意見も聞いた上で判断するべきだな。

 

 

 

美咲「比企谷くーん?

もう私たちは着替えたから大丈夫ですよー。

まぁ、私は着替えてないですけど。」

 

 

 

お、ちょうどいい所に奥沢が来た。

俺たちの中では1番ファッションを知ってそうだし。

こいつの意見を聞けば変かどうか…………

 

 

美咲「!?

ひ、比企谷くん………ソレ………………ぷふっ」

 

 

 

おーけー。

意見聞くまでもなかった。

目の前で腹抱えて笑いを堪えてる奴を見たら流石にわかる。

まぁ、わかってた。うん。わかってたから。

 

 

 

八幡「もう絶対着ない。」バタン

 

 

美咲「ふふっ………え、いや、ちょっと?

比企谷くん!?ご、ごめんって!!

笑ったことは謝るからー!!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

美咲「ってことがあったから比企谷くんが逃げました。」

 

 

 

花音「うん………

あの時も大変だったもんね。

比企谷君、頑なに部屋から出なかったし………」

 

 

 

美咲「…………あ、戻ってきた。

流石、こころとはぐみ。」

 

 

 

八幡「は、な、せ!!

俺はファッションなんて興味無かったし、着れればいいやってタイプの人間だが、ステージに上がるのなら話が変わる!

しかも、奥沢のあの笑い。めちゃくちゃガチだったし……」

 

 

 

美咲、花音 (あの時の事、すごい根に持ってた!!)

 

 

 

美咲「いや、本当にごめんって。

正直あれは比企谷くんは悪くないんだよね。

衣装が良くなかった………というか、

………正確に言えば良くなかったっていうか、意地悪されたって言うか……」

 

 

 

薫「どういうことだい?」

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

美咲「いや、もう正直に言いますけど………

比企谷くんは着てみて何か違和感無かった?」

 

 

 

八幡「………腰あたりのヒラヒラとか、肩が露出されてる所とか」

 

 

 

美咲「うん。それですね。

他にも何個かあるみたいでしたけど………」

 

 

 

花音「え、それって…………でも、なんのために……?」

 

 

 

美咲「それで黒服の人に聞いてみたんですよ。

そしたら、『つい出来心、遊び心が働いてしまい……』だってさ。」

 

 

 

 

八幡「…………え?は?

…………はぁ………マジか。」

 

 

 

 

つい、じゃねーよ。

黒服さんは俺に対して遠慮無さすぎじゃない?

何が出来心、遊び心だよ。

人にトラウマ作を作った罪は大きいぞ?

 

 

 

美咲「それで……………あ、あった。

はい。コレが本来の衣装だって。

ちゃんと男性用に作られてあるけど、おかしな点がありましたら御要望くださいだってさ。」

 

 

 

八幡「…………はぁ。おい、弦巻。

衣装作った奴に、『お前はクビだ』って言っといてくれ。」

 

 

こころ「??

よく分からないけどわかったわ!」

 

 

 

八幡「いや、待って。嘘だよ嘘。

冗談だから、絶対に言うなよ?」

 

わかれ、伝われ。

冗談が通じないんだったコイツ。

 

意味がわかってない弦巻なら笑顔で言いそうだし。

あんな笑顔で『お前クビ』って言われたら、弦巻大好き黒服は昇天すると思う。

 

 

美咲「ってことでまぁ、ソレに着替えてみてよ。

多分大丈夫………だと思う」ボソ

 

 

 

八幡「おい、今聞こえてたからね?

不安でしかないんだけど?」

 

 

こころ「あたしも着替えるわ!!」

 

 

美咲「だーーかーーらーー!!

比企谷くんいるんだからダメだってば!

比企谷くんもちょっとどっかで着替えて来て!」

 

 

 

八幡「お、おう。」

 

 

どっかってどこだよ……

扱い雑すぎだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「あれ?比企谷君また出てきたけどどうしたの?

さっきはこころちゃんとはぐみちゃんに捕まってたけど……」

 

 

八幡「いや、ちょっとトラウマがありまして………」

 

 

ちょっと所ではないくらいのトラウマになりかけたが……。

 

 

 

八幡「もう大丈夫だと思うんで気にしないでください。

衣装に着替えるので更衣室に行ってきます」

 

 

まりな「衣装!!

八幡くんのハロハピの衣装すっごく楽しみだよ!!」

 

 

 

俺はすっごく怖いです。

今は衣装が新品のまま畳んであるから分からないけど、この前みたいにふざけてたらどうしてくれようか。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

こころ「すっごく動きやすいわ!」

 

 

 

はぐみ「うん!!それにみんなお揃いなのがすごくいい!」

 

 

 

 

花音「そうだね。

でも、なんか緊張してきた…………」

 

 

 

ミッシェル「花音さん早いです。

確かにライブまで近いですけど、まだですよ。」

 

 

 

薫「あぁ!なんて儚いんだ!!

見たまえ!私を!!」

 

 

美咲「もう衣装関係ないですよねそれ。

すごく似合ってますけど。」

 

 

こころ「今すぐにでもライブを始めたいわ!

はちまんはまだかしらっ!!」

 

 

ミッシェル「いやいやいや、比企谷くんが来ても出来ないよー。

そ・れ・に!

まだ出来てないところもあるんだから練習しないとだよー。」

 

 

 

花音「ま、また、比企谷君の衣装がアレだったら………」

 

 

ミッシェル「い、いや、さすがにそれは無いと思います。

黒服さんも後で謝りますって反省?してたと思うので」

 

 

 

こころ「あ、足音がしたわ!」

 

 

ミッシェル、花音「「え?」」

 

 

 

こころ「もうみんな待ってるわよ!!」ガチャ

 

 

八幡「………!?

な、なんで俺がいることわかったんだよ。」

 

 

 

はぐみ「ほんとだー!はちくんだー!」

 

 

 

花音「ほ、ほんとに足音が聞こえたの………?

ここ、防音室だから外の音もあまり聞こえないのに……………」

 

 

薫「八幡!君も見たまえ!

私を!!

………おや?八幡も衣装を着てるじゃないか!」

 

 

 

八幡「はいはい、すごく似合ってますよ。

………自分ではファッションなんて全く分からないんですが、大丈夫かコレ?」

 

 

一応鏡では見たが、変では無いと思う。

似合ってるかは別なのだが。

あと、サイズがピッタリなのがほんとに怖い。

 

 

 

花音「うん………っ!

どこも変じゃないよ。

だから………自信もって!」

 

 

 

八幡「それはよかったんですけど、励ましてもらってる感すごい。」

 

 

 

美咲「うん。やっぱり比企谷くんだね。

漫画やアニメとかなら、こういう時『めちゃくちゃ似合っててカッコイイ!!』ってなりそうな展開だけど、さすが比企谷くん。」

 

 

 

八幡「現実味があると言え。

てかお前それ褒めてるつもりなの?

下手すぎだからね?」

 

 

ミッシェル着てるけどミッシェル感ゼロ。

あのミッシェル口調はどうした。

まぁ、ほとんど語尾を伸ばしてて妙なトーンで喋るだけだが。

 

 

 

はぐみ「はぐみは、はちくんの衣装すっごい似合ってると思うよ!!」

 

 

 

八幡「お、おう。サンキュー。

な、なんだ、その、お前もいい感じだ。」

 

 

はぐみ「えっへへ!ほんと?

やったー!褒められたー!」

 

 

 

奥沢に遠回しにいじめられた俺を元気づけてくれたんだろうな。

お世辞でも嬉しくないことはないな。

………いや、でもコイツ嘘が下手そうだしお世辞を言いそうなタイプじゃないか。

 

 

こころ「はちまん!!私はどうかしら!!」

 

 

 

八幡「いや、どうって言われてもな………

似合ってるとしか………」

 

 

 

在り来り過ぎたか?

いや、でも他に言葉が見つからないというか。

一番最初に思ったことが口から零れた。

 

 

 

こころ「とっても嬉しいわ!

そんなこと言って貰えると大好きな衣装がもっともっと大好きになっちゃうわ!」

 

 

おお、良かった、失敗じゃなかった。

てか、衣装大好きになるの早いな。

 

 

 

美咲「よく見ると、比企谷くんのだけ作りが違うね。

まぁ、私たちってのが女子用なんだろうけど。」

 

 

 

俺と話す時だけ、ミッシェル感全くないのな。

………そもそもミッシェルって女?いや、メス?

 

 

 

美咲「結構黒色が使われてるね。

コッチは赤色がベースだけど、そっちは赤黒って感じだね」

 

 

 

確かに色合いが違うな。

まぁ、変じゃなければなんでもいいが。

 

 

八幡「まぁ、衣装感想もここら辺にしてやるか。」

 

 

こころ「ええ、そうね!!

それじゃあ、まだまだ練習やっていくわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ありがとうございましたー」」」」」

 

 

 

まりな「はーい!

それじゃあまた次の予約日でねー!

八幡くんもバイトよろしくねー」

 

 

八幡「うっす。」ペコリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それにしても楽しかったわ!!

衣装に着替えるだけでこんなにも変わるのね!!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!!

はぐみなんて、気合いすっごく入ったもん!」

 

 

 

花音「確かに緊張だけじゃなくて、元気も貰えた気がする……かな?」

 

 

 

薫「ふふっ。それは気のせいなんかじゃないよ。

衣装1つで人も世界も変わるものさ。」

 

 

 

お、これは多分シェイクスピアじゃないな。

 

 

 

 

八幡「あ、そうだ。

コレ、お前らにもやる。」

 

 

 

美咲「………?

えーと、なになに………

あ、ライブのチケット」

 

 

 

八幡「さっき月島さんに渡されてな。

『先にチケット渡しとくからライブに来て欲しい人に渡して』だとよ。」

 

 

 

はぐみ「なんかそういう特別感あるのいいね!

誰を呼ぼうか迷っちゃうね!」

 

 

薫「そうだね。

私の可愛い子猫ちゃん達はチケットを買って見ると言っていたから、誰に渡そうか悩ましいものだ。」

 

 

花音「2枚だから、2人。

お母さんは行きたいって言ってたから…………」

 

 

 

八幡「まぁ、別に渡す相手がいなかったら使わなくてもいいからそこまで気にしなくて大丈夫だ。」

 

 

小町に1枚として、もう1枚は余るな。

なんなら小町の友達に使ってもらってもいいから問題ないな。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初衣装練習から数日が経ち、時間も放課後へ突入。

今日は金曜日なので、もう土日の休みが待ってる。

 

 

 

 

今日もバイトはないのだが、アイツらは各自用事があるため今日は自主練という形になった。

正直今日の予定は決まってない。

まぁ、家帰って決めるか。

 

 

 

香澄「あー!!はっちー見つけた!!」

 

 

八幡「げっ………戸山。」

 

 

なんかやばい。もうやばい。

 

 

 

たえ「さすが私。やっぱりここだと思った。」

 

 

 

有咲「何がさすがだ!!

帰りのホームルーム終わって急いで教室に来ただけだろーが!

ハァハァ………私の事引っ張って走るし………ハァ」

 

 

お前も被害者なのか。

すっごい息切れしてるし。

 

 

香澄「あのね!

私たちクライブやるんだけど、はっちーも来て!!」

 

 

八幡「はい??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








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イベント前は静かに決意が湧き上がる

明けましておめでとうございます!
この作品を読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
今年もよろしくお願いします……………?


えー、いきなりですが1つ言って無いことがありましたー
みんな大好き山吹沙綾ちゃんのことです。

沙綾はアニメ(ストーリー)では、文化祭を通してポピパのメンバーを有咲、りみりん、おたえ、等と呼び捨てで名前を呼ぶんですよ。(確か。)


ですが、この作品では既に名前呼びなんですよね。
忘れていたとかではなく、単純にこっちの方が他人感がなくて好きだからです!
(忘れていたとかじゃないですから、うん。)



後書きに、少し皆さんにお願いしたいことがありますので出来れば読んでください!




 

八幡「いきなりなんだよ。

それにクライブって何?」

 

 

クライブ…………くらいぶ…………kuraibu?

くら、ライブ…………蔵ライブ?

いや、そんなまさか、

 

 

有咲「おい、ばかすみ!!

そんなん通じるのはお前らだけだっつーの!!

…………クライブは蔵でライブって意味。」

 

 

 

八幡「え!?

…………あ、いや、なんでもない。

なるほど、それでクライブな」

 

 

当たってるんだけど。

マジかよ。

まさかの戸山と思考回路が一緒…………だと…………?

 

 

 

八幡「で、いきなりそのクライブの話なんだが、なんで俺?」

 

 

なんか急いで来た見たいだから、たまたま誘ったって訳じゃないだろ。

何か理由がありそうなんだが……

 

 

たえ「さーやのため!」

 

 

 

八幡「…………は?」

 

 

 

たえ「だから、さーやのため!」

 

 

 

八幡「…………えーと、だ『さーやのため!』か…………ら……」

 

 

 

やだこの子。

全く話を聞かないどころか、めちゃくちゃゴリ押してくるんだけど。

 

 

 

香澄「え、えーと、クライブやるのは初めてじゃなくてね!

最初のクライブはさーやも来てくれたんだけど、あ、その時はおたえドキドキ作戦って言って…………」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

帰ろうかな。

俺が誘われてる理由を聞きたいだけなのに、こんなに時間かかるのかよ。

さーやのためって言うけど俺関係なくない?

てか、そもそもおたえドキドキ作戦って何?

 

 

 

有咲「もうお前ら黙れー!

私が説明するから!!」

 

 

 

助かる。

まぁ、最初からそうして欲しかったんだがな。

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

有咲「ーーーってわけだ。」

 

 

 

八幡「…………えー。

なんでそうなるんだよ。」

 

 

 

市ヶ谷の説明をまとめると、

 

・山吹をバンドに誘うことを諦めたくない。

・私達(戸山含め4人)の演奏をもう一度聞けば一緒にやりたくなるかも。

 

 

まぁ、これだけなら俺が誘われる理由がどこにもないのだが、

 

 

沙綾「わかった。香澄たちのライブ…………クライブ行くよ。

その代わり1つ条件を出すよ。」

 

 

 

香澄「じょ、条件って?」

 

 

沙綾「比企谷君を連れてくること、かな。」

 

 

 

らしい。

 

 

…………うん。なんでそうなった?

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

とりあえず先程の戸山達の誘いは保留にした。

俺は今からある奴に聞かなくてはならない事が出来たからな。

 

 

今日の授業は全て終わり、既に放課後。

 

俺は1年A組の教室へと向かう。

先に帰られると色々とめんどくさいため、早足で歩く。

自分の教室を出る時に、弦巻がなんか言ってた気がするが知らない。

聞こえない、聴きたくない、危機しか想像できない。

 

 

 

C組(俺の教室)からA組までは遠くはないのですぐに着く。

幸い俺のクラスよりHRが遅かったため、今終わったらしいな。

少し離れた廊下で待ってるか。

 

 

少し待っていたら俺が待っていたヤツが教室から出てきた………

 

 

 

 

沙綾「あれ?比企谷君?」

 

 

 

そう、コイツだ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

沙綾「こんな所でどうしたの?

え、まさかA組の誰かに用事??」

 

 

 

え、何コイツ。いきなり先制攻撃されたんだけど?

まさかってなんだよ、まさかって。

 

 

 

八幡「その聞き方だとA組に知り合いなんていたの?って聞こえるのは気のせいだよね?」

 

 

 

沙綾「ふふっ。冗談だよ冗談。

それで?香澄達?

それとも、もしかして私?笑」

 

 

 

 

八幡「お前だよお前。

てか、本当に俺がなんで来たのかわからないのか?」

 

 

 

沙綾「……え、ほんとに私?

うーん…………あっ」

 

 

八幡「昼に戸山集団に会って、クライブとか言うのに誘われたんだが?」

 

 

 

沙綾「あ、あはは…………。

…………今日はそのまま帰る?」

 

 

 

八幡「??

……まぁ、そのまま帰る予定だが」

 

 

 

なんで急に?

 

 

 

 

沙綾「じゃあ、帰りながら話そっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、普通に嫌なんですけど?」

 

 

 

おれ、自転車だし。

 

 

 

沙綾「…………帰ろっか。」

 

 

 

八幡「いや、だから」

 

 

 

沙綾「帰ろっか。」

 

 

 

八幡「あ、はい。」

 

 

 

それって笑顔だよね?

笑顔大好き弦巻に鑑定してきてもらってもいいですか?

 

 

 

×××

 

 

 

 

あの後、少し職員室に用事があった山吹を待ってる間帰ろうかと悩んでいたのだが、

 

 

沙綾「今から少し職員室によるけど、先に帰らないでね?」

 

 

 

と言われたので待ってます。

俺偉い。

 

 

 

沙綾「お待たせー。じゃあ、行こっか。」

 

 

八幡「へいへい。」

 

 

 

沙綾「……あ、今のちょっとデートっぽくなかった?」

 

 

 

八幡「アー、ハイハイ、ソウッスネ。

で、だ。

納得出来るような理由なんだろうな?」

 

 

 

俺が言葉を発した後、数秒の沈黙と共に山吹が口を開く。

 

 

 

 

沙綾「………あたしね。

香澄達と話したり、一緒にご飯食べたり、些細なことをするのがすっごい楽しいんだ。」

 

 

 

学校の帰り道、職員室に寄っていたせいか帰宅部の人達は見当たらず、帰宅路には俺たちしかいない。

山吹は遠い景色を見ながら語りだした。

 

 

 

沙綾「バンドの話とかしょっちゅうで、みんな凄く楽しそうで、

香澄に『さーやもバンドやろ!』って何度も言われたんだ。」

 

 

 

沙綾「今までは、家の手伝いがあるからごめんねって言ってたんだけどね。

この前、香澄達にあんな真面目な表情でお願いされたら断れなくて……」

 

 

 

八幡「……クライブの件の事か?」

 

 

 

沙綾「うん。

さーやのために頑張って演奏するって……ね。

 

あたしにはそんな資格もないのに………」

 

 

 

八幡「………悪い。

最後の方、声が小さくて聴こえなかったんだが。」

 

 

沙綾「……………んーん。なんでもないよ。

……ふふ。ちょっとシリアスっぽい空気になっちゃったけど、端的に言うとね。

バンドに入れない私に、せっかくライブまでしてくれてそのあと断っちゃったら香澄達を傷つけるかもしれないでしょ?

それなら条件付きでライブ自体を行けなくすればいいかなーって。

酷いことしてるってのはわかってるけど、でも………」

 

 

 

八幡「………それで条件を俺にしたのか?

もっとマシな理由がたくさんあっただろうが。」

 

 

沙綾「だ、だってその時は突然で何も思いつかなかったから……」

 

 

 

だからって俺を使うなよ。

結構軽い話じゃないってのが困るんだけど?

 

 

学校から商店街はそこまで遠くもないので、着いてしまった。

山吹が住んでる家は商店街の中だし、ここで退散するか。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「今日は金曜日か。

それで、クライブは日曜日だっけ?」

 

 

沙綾「え?あ、うん。

そうだよ……?」

 

 

 

八幡「時間は15時とか言ってたから……

日曜日、14時30分頃にお前の家の前にいるわ。

アイツら(戸山達)にも連絡しといてくれ。それじゃあな。」

 

 

 

沙綾「え…………えっ?!

比企谷君行くのっ!?」

 

 

 

八幡「仕方ねーけど行ってやるよ。

俺を理由にした罰だ。

現地集合でも良かったが、俺は蔵の場所が分からねーからな。」

 

 

沙綾「え、ちょっ、ほんとに!?」

 

 

 

後ろで少し大袈裟に反応してる山吹を無視して家に向かう。

山吹の家、やまぶきベーカリーの正確な位置はわかってないのだけど大丈夫だろうか…………

まぁ、何とかなるか。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

そして土曜日、天気は晴れており、ハロハピでのライブが残り1週間を切ってしまった。

 

 

練習は順調…………と言えば順調であり、目立つようなミスは確実に減ってきている。

ただ、本番ではやはり練習と違ってお客さんがいること。

すなわち、緊張してしまう事だ。

こればっかりはどうしようもない。

 

練習ではバッチリでも本番で失敗することなんて多々ある。

その逆もあると言えるが、大体は前者の方が多いだろう。

 

その場の本番のプレッシャーなんてものは、何十回、何百回と数をこなしてもなれないものだと思う。

ただ、緊張は悪いことだけではないというのも確かだ。

 

まぁ、緊張するかしないか、緊張した方がいいのか、しない方がいいのかは結局人それぞれだ。

 

 

 

 

小町「あ、お兄ちゃんおはよー。

何起きたばっかで難しい顔してるの?

変だよ?

あ、今の小町的にポイント高い!」

 

 

八幡「ねぇ小町ちゃん?どのへんがポイント高いの?

俺は罵られて喜ぶ特殊な性癖じゃないからね?

はぁ………おはよ。」

 

 

 

コイツのポイント基準どうなってんだよ。

 

 

小町「大丈夫。

小町はお兄ちゃんがどんなに特殊な性癖を持っていても、お兄ちゃんの味方だからね!」

 

 

八幡「それだと俺が本当に特殊な性癖を持ってるみたいな話になるからやめようね?」

 

 

俺は至ってノーマルだ。

………ノーマルだ。

 

 

小町「そう言えば、ライブまであと一週間だね!

緊張してる?」

 

 

八幡「聞けよ。

……いや、まだ流石に緊張はしてないな。」

 

 

本番当日にめちゃくちゃ緊張するタイプだからな、多分。

 

 

小町「他のバンドメンバーさんに迷惑かけちゃダメだよ?

あ!メンバーさん達と小町会いたい!」

 

 

八幡「いや、迷惑かけてるっていうか、かけられまくってるって言った方が正しいかもしれんけどな。

……まぁ、いつか紹介するわ。」

 

 

小町「それ絶対紹介しないやつじゃん。」

 

 

八幡「いや、本当にするって。

ただ早くてもライブが終わった後とかだな。」

 

 

小町「約束ね!

あ、文化祭の日とかいいかも!」

 

 

八幡「まぁ、そこら辺の話はまた今度な。

今日もバンドの練習あるからそろそろ準備するわ。」

 

 

小町「うん!頑張ってね!」

 

 

小町に応援されたら頑張るしかないな。

今日は少し早めに出て、やまぶきベーカリーの場所を知っておくか。

 

 

 

商店街に着き、歩くこと数分。

割とあっさりとやまぶきベーカリーを見つけた。

 

別に疑っていた訳では無いが本当にあいつの家、パン屋さんしてるんだな。

まぁ、場所もわかったところでCiRCLEに向かうとしよう。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

ミッシェル「はーい。1回休憩しようねー!」

 

 

あれから全員集合し、スタジオでライブの練習に取り組んでいる。

結構弾いてから時間が経つので、休憩助かる。

まぁ、奥沢本人が限界だろうな。着ぐるみだし。

むしろなんであれで出来るの?

 

 

はぐみ「わーい!はぐみ、すっごく喉が渇いたよー!」

 

 

危ないから走るな。

 

 

 

花音「やっぱりまだここが微妙な気がするな…………」

 

 

松原さんは優れない顔で反省してる。

ライブまで残り1週間なので、出来るだけミスは減らしたいのだろう。

まぁ、あと1週間はあるんだがな。

 

 

薫「私が儚い汗をかいてしまったようだ。

子猫ちゃんがみたらどうなることやら。」

 

 

儚い汗って何?涙の比喩表現?

 

 

八幡「俺も水分補給しとくか。」

 

 

俺は水筒をカバンから出して水を飲む。

仕事終わりの疲れた時のビールは美味いと大人はよく言うが、大体なんでも美味しく感じてしまうものだと思う。

 

体育終わりに飲む水道水は、コーラくらい美味い!と言ってるやつクラスにいたし。

もう普通にコーラ飲めよ。

 

つまり何が言いたいかと言うと、水うま。

 

 

こころ「私も喉が渇いたわ!はちまん!」

 

 

八幡「………喉が渇いたのなら何か飲めばよろしいかと。」

 

 

俺に聞かんでも勝手に飲めよ。

黒服さんとかが用意してんじゃねーの?知らんけど。

 

 

 

こころ「わかったわ!じゃあ貰うわね!」

 

 

八幡「は………?お、おい、ちょっ、と…………待って…………」

 

 

 

こころ「ゴクッ……んっ……ぷはー!!

とっても美味しいわね!」

 

 

八幡「…………………」

 

 

とっても美味しいわね!じゃねーよ?!

水だからね?いや、水美味しいけども。

何してんの?何してくれてんの?

貴重な俺の水………じゃなくて、これじゃあ俗に言うあの都市伝説的な………いや、考えるのはやめよう。

コイツは絶対気にしてないし、幸いな事に俺と弦巻以外の奴らは向こうで話してる。

誰も見ていない。つまり問題ない。

気にしたら行けない。気にしたらダメ。

 

 

…………この水筒にはさっき弦巻が…………ゴクリ。

…………ゴクリじゃねーよ。変態か俺は………

これはアレだ。疲れてるな俺。

まぁ、そりゃそうだよな。

色々なことを最近やってはいるが、多分1番疲れるのは…………

 

 

 

こころ「はちまんっ!!私もピアノを弾きたいわ!

こんな感じかしらー!!」

 

 

はぐみ「はぐみも弾きたーい!!

それじゃあ、はぐみは左側引くから、こころんは右側弾いて!」

 

 

こころ「任せてちょーだい!

うりゃりゃりゃぁーー!」

 

 

 

はぐみ「いぇーーい!!」

 

 

 

コイツらの相手をするのが1番疲れる。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

花音「みんなお疲れ様……!

ごめんね、何度も間違えちゃって…………」

 

 

 

八幡「いやいやいや。

松原さんだけじゃないですって!

俺だって結構間違えましたし。」

 

 

 

美咲「そ、そうですよ!

それにまだ1週間ありますから!

文化祭の準備とかもあって少し大変ですけど……」

 

 

それなんだよなぁ。

弦巻のせいで実行委員にされるし。

ライブの件とかを進めてるの俺と奥沢ってことを理解して頂きたいです。

 

今日の練習は割と順調?に終わり、今は帰宅の真っ最中。

太陽が沈む頃なので、空はオレンジ色に照らされている。

 

 

美咲「あ、そう言えば比企谷くんさ。」

 

 

八幡「…………ん?………どうした?」

 

 

 

美咲「………なんで今離れたの。」

 

 

八幡「いや、お前が近づいてきたからだろ。」

 

 

俺のところに寄ってきたため数歩横にずれたのが気に入らなかったらしい。

 

 

美咲「いや、他の人には聞かれたくないだろうからっていう優しさなんだけどなー」

 

 

 

八幡「………は?

聞かれたくないこと………?」

 

 

 

え、なに。こわいこわい。

コイツが何を言おうとしてるのかが全くわからん。

 

 

 

 

 

美咲「………こころと間接キス出来て」

 

 

八幡「おまっ!?ちょ、ちょっと待て!!

な、何でそれを!?」

 

 

 

花音「ふ、2人とも……??

どうか…したの?」

 

 

 

八幡「い、いえ!

な、なんでもないっすよ!気にしないでください」

 

 

 

こころ「何か面白いことが思いついたのかと思ったけど……まぁいいわ!」

 

 

はぐみ「それははぐみ達で考えればいいんだよっ、こころん!」

 

 

薫「ふふっ、そうだね。

私達で儚い事を考えようじゃないか!」

 

 

 

 

美咲「………ね?聞かれたくない事でしょ?」

 

 

 

「私の言った通りじゃん」という目でこちらを見てくる。

確かにそうなのだが、見たなら言わずにそっとしておいて欲しかった。

俺はさっきまで誰も知らないことだと思ってたし。

 

 

八幡「…………お前、見てたのかよ。」

 

 

 

美咲「たまたまだけどね。

なんか、比企谷くんが大きい声出してたから。」

 

 

 

ぐっ。驚いてた時か………

 

弦巻がやった事であり俺は悪くは無いとはいえ、内容が内容だ。

他の人に見られてたとなると、恥ずかしいしなんか俺が悪い感が凄い。

 

 

八幡「あれは不可抗力だったんだよ。

それに、あの後俺は水筒の水飲んでないし。」

 

 

 

 

美咲「うん、知ってるよ。

でも、比企谷くんって意外と紳士だね。

男の子ならそういう事勝手にやると思ってた。

誰も見てなかったって思ってたんでしょ?

それにこころは、中身はともかく見た目はすごく可愛いし。」

 

 

 

八幡「………お前が男にどんな思想を掲げてるかは知らないけど、全員が全員同じってわけじゃないからな。

それに、紳士でもなんでもないっつーの。

喉が乾かなかっただけだし、アイツのことはそういう目で見てねーしな。」

 

 

 

 

美咲「………ふーん。ちょっと意外。

なんだかんだで、こころの面倒事にも付き合ってあげてるから好きまでは行かなくてもかなり好印象なのかと思ってた。」

 

 

 

八幡「いや、確かにめんどいけど、断るともっとめんどい事になりそうだしな。」

 

 

美咲「あはは。確かに………」

 

 

 

こころ「2人ともー!!歩くのが遅いわよ!!

ほら!はやくはやくー」

 

 

 

 

八幡「まぁ、あれだ。

本番まで残り6日、お前が1番キツイだろうがやり切るぞ。」

 

 

奥沢は着ぐるみを被ってDJをするとかいう、今まで史上バンドの中でも1番キツイ役回りではないだろうか。

バンドの事はあまり知らんが、奥沢以上がいたら凄すぎるわ。

 

 

 

美咲「うん、そうだね。

私だってやるからには、しっかりやりたいから。

比企谷くんだって、文実とかバイトとかもあるんだから身体壊さないでよ?」

 

 

 

八幡「善処しとくわ。」

 

 

 

美咲「…………それ、しない人が言うセリフじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハロハピのライブまであと1週間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 










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からかい好きはかなり面倒

アンケートに付き合って頂きありがとうございます!


今のところ結果は、「名前あり」が多かったです!


なので、名前ありのこのままで行きたいと思いますが、アンケートは消さずに置いておきます。
これでもしも、読んでくうちに「やっぱり名前要らないな」と意見が変わる人が出てくるかもしれないので「名前なし」が投票で上回ったらまた連絡させてもらいます!



アンケートに投票してくれた方、この作品を読んでくださってる方、
本当にありがとうございます!





今日のバンド練習が終わり、本日のやることは全部終わらせたので今は布団で寝っ転がっている。

あと数時間で日曜日。

ライブの日に近づいているのもあるが、明日は1つだるい用事がある。

クライブとかいう洒落たようなものを見に行かなきゃならない。

まぁ、ただのライブなんだけども。

面倒なので本当は断ろうとも考えてたが内容も内容だしな。

 

 

 

まぁ、明日はそこまで早い時間ではなく14時30分に山吹の家の前にいればいい。

場所も今日わかったし、歩いて20分程で着くので14時頃に家を出とけば全然間に合う。

山吹め、今度お店のパンをサービスして貰わないと割に合わんな。

 

 

はぁーー。

今日は割と疲れたし、もう寝るか。

 

 

 

 

×××

 

 

 

沙綾「ふぅー、疲れたー。」

 

 

お風呂から上がって、自分の部屋にあるドライヤーで髪を乾かしたあと、布団に倒れ込むようにダイブする。

ご飯なども食べ終わって、もうやることは寝る事くらいだ。

 

今日は土曜日でお店ではメロンパンがかなり売れた。

春は客層が変わる季節でもある。

引っ越して来た人や、忙しくなった人が朝や昼にパンで済ませる人、等と理由がある。

 

 

まぁ今日は天候も晴れていて土曜日なせいか、子供連れの親御さんが多かった。

桜を見にピクニックをする家族が多いのかなーと思う。

 

他の地域ではもう桜は枯れてたりするらしいのだが、ここらに咲いている桜は全く枯れておらず、すごく綺麗。

別段、桜で有名とかはなかったと思うんだけどな………

 

 

 

今日はもう疲れたので寝ようかなと考える。

明日はお店は休みで特に予定が無いはずだったのだけれど、香澄達がやる………クライブに行く事になっている。

正直ビックリだ。

金曜日の帰宅途中に、比企谷君がクライブに行こうと言ったのが驚きすぎた。

まぁ彼も、見に行きたい!って感じではないんだけど………

私が変な条件を香澄達に提案したのが原因だ。

 

 

思うと比企谷君には悪い事しちゃったなと思う。

今度お店のパンをサービスしてあげよう。

パンが好きだといいけど………

 

 

でも、正直明日は、出来れば行きたくなかったかな………

香澄達がライブをしてくれたって、あたしは………

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

〈コンコン〉

 

小町「お兄ちゃーん?

大変で疲れてるのは分かってるけどそんなに寝てたら生活リズム崩れちゃうよー?」

 

 

 

八幡「……………うん?

………あー、もう起きるー………起きます…………うん。」

 

 

 

小町「まぁ、別に今日何も無いなら小町はいいんだけどね。

念の為で起こしただけだからね。

何もないなら思う存分休んでねー!

それじゃあおやすみー!」

 

 

 

八幡「……………騒がしいな。

ふぁぁー。………ん、とりあえず時間を……………?」

 

 

 

八幡「1時20分……?

あぁ、なんだよ………夜中か……………ってそんなわけなくね?

………え、マジ?」

 

 

 

 

 

あ、あぶねー。

今日14時30分には山吹の家に着いてないといけないんだった。

マジで大天使コマチエルだわ。

可愛い上に天使とかマジ天使。

 

 

それにしてもこんなに寝たの久しぶりじゃないか?

寝たのが0時頃だからおよそ13時間爆睡。

ヤバいな。

自分が思ってたよりも疲れてるのか。

 

 

 

…………うん、でもなんか起きた時に午前を通り越してるのは凄い勿体ない気がして嫌だな。

約束の時間までもう少しだし。

風呂入って飯食ったらすぐだろうな。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

小町「……おろ?お兄ちゃんおはよー。

お兄ちゃんにしては珍しくかなりの爆睡だったね。」

 

 

 

八幡「あ、あぁ。

お兄ちゃんもビックリしてるほど寝てたわ。

………本当にサンキューな小町。」

 

 

 

小町の頭に手を置き、わしゃわしゃと雑に撫でる。

 

 

 

小町「わーー。

………それにしても感謝してるって事はこの後用事でもあるの?」

 

 

八幡「嫌だなー、小町ちゃん?

俺はいつだって小町には感謝してるんだぞ」

 

 

 

そりゃあもう本当に。

 

 

 

 

小町「おーー!

それが本当なら小町的にポイント高い!」

 

 

 

八幡「俺は本当とか疑われてる時点で八幡的にはポイント低いぞ。」

 

 

 

小町「それで今日は何時から用事かあるの?」

 

 

 

八幡「やだこの子、話聞いてない。

まぁ、そうだな。家出るのは大体14時頃だな。」

 

 

 

小町「えっ!?

じゃあ小町が起こしてなかったらヤバかったじゃん!」

 

 

 

八幡「おう。ヤバかったぞ。かなりな。」

 

 

 

山吹には、俺から誘ったみたいになってるからさすがにまずかった。

煽り散らかしてくる山吹まで想像出来た。

 

 

 

 

小町「いや、そんなボケーッと言われても…………

はぁ…………お兄ちゃん?

女の子との待ち合わせは遅れては行けないんだよ?

勿論相手が男の人でも遅れては行けないけどね。

でもね?女の子は準備とかに時間がかかるの。

少なくともお兄ちゃんは準備なんてほとんどないんだから、待ち合わせ場所で先に待ってるのが小町的にはポイント高いんだよ?」

 

 

 

八幡「お、おう。小町的なのな。

…………てか、何当たり前のように俺が女子と待ち合わせてるって思ってんだよ。」

 

 

 

小町「だってバンドの人たちじゃないの……?

え、まさかお兄ちゃん………バンドメンバーじゃない女の子と!?」

 

 

 

やだ、するどいなこの子。

じゃなくて………いや、まぁ、合ってるんだけど、なんか面倒くさそうだし、言わないでおくか。

 

 

 

八幡「いや、まぁ、バンドメンバーだけど、今日はバンドの用じゃないってだけだよ。」

 

 

 

小町「え!?それってデート!?

大丈夫なの!?ほかのメンバー達と泥沼展開とか!?」

 

 

 

八幡「ライブの準備とかだよ。

第一、俺は構わないけど今度メンバー達に会ってからそういう事言うのはやめろよな。

アイツら一生懸命にやってんだか………………あ、や、やっぱり今のナシで。」

 

 

 

うっわ、いくら小町が相手だからって恥ずかしいこと言った気がする。

い。いやでも、普通………だよな。

一生懸命やってるのは事実だし………いや、でも、正直に言うのはちょっとやっぱり恥ずかしいこと…………だな。

 

 

 

小町「…………………」

 

 

 

八幡「………こ、小町ちゃん?

そこで黙られても困るんだけど。」

 

 

 

小町「………いや、ちょっと意外だなーって。

メンバーさんとは結構上手く行ってるんだね。」

 

 

 

八幡「いや、なんだよそれ………

まぁ、割と上手く行ってるのか…………?

個性豊かな奴がいて中々凄いけどな。」

 

 

小町「ますます会うのが楽しみになったよー!

文化祭の日にはちゃんと紹介してよね!」

 

 

 

八幡「わかってるって。

………じゃあ俺はシャワー浴びてくるから。」

 

 

 

小町「あいさー。

じゃあ小町は朝ごはん………いや、昼ごはん?

とりあえず作るねー。あ、もしかしていらない?」

 

 

 

八幡「いや、作ってくれると助かる。」

 

 

何時に帰れるかわからないしな。

 

 

小町「じゃあお兄ちゃんのために作ってあげようかな。」

 

 

 

八幡「さすが小町、愛してるぞ。」

 

 

 

小町「小町はそうでもないけどありがとう!!

ほら、早く入ってきなよ!」

 

 

 

八幡「ひどい。」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

あれからシャワーから上がり、小町の美味しい美味しいご飯を食べたあと、時間も時間なので家を出ていた。

まぁ、正直今から行けば10分ほどは待つことになるのだがな。

 

 

商店街の方へ歩いていると、こちらへ向かってくる人物をみかける。

凄い見た事あるやつなんだよな。

 

まぁ、俺から話すことはまず無い。

向こうから話してきても挨拶交わして終わり。

 

人違いって可能性もあるのだが、

 

 

 

モカ「あ、はっちーだ。」

 

 

 

八幡「……………ども。」

 

 

 

全然人違いでもないし、俺の知ってる人物で割と面倒くさい部類に入ってる奴なので無意識にも、俺の歩くスピードが徐々に上がっていく。

 

これは本能が察知してるんだな。マジ無意識。

よし、このペースで目的地へ向かうとしよう。

 

 

 

モカ「いやいやいや〜、

ちょっと待ってよ〜、はっちー」

 

 

 

八幡「俺は急ぎの用事があるんでな。

悪いが話してる時間はない。」

 

 

 

目的に着いたとしても、待ち合わせの時間まではまだあるのだが、コイツと話すのはごめんだ。

 

コイツは幼馴染5人で組んだAfterglowの内の1人で、

何度かCiRCLEでちょっかいを出された。

 

AfterglowはCiRCLEの常連客になる為、結構出会う事が多い。

 

 

 

モカ「…………CiRCLEは反対方面だよー?」

 

 

 

八幡「俺の用事=CiRCLEのバイトって決めつけてんの辞めてくれますかね?」

 

 

 

ったく、失礼なヤツだ。

 

 

 

そう言えばコイツは俺がバンドをやってるって事は知らないのか。

いや、まぁ、ほとんどの人が知らないと思うのだが。

 

 

 

モカ「モカちゃんはこれからCiRCLEに向かうけど、はっちーは違うみたいだね〜。」

 

 

 

八幡「まぁな。今日俺はバイト休みだし。

そうか、お前らは今日も練習か。」

 

 

モカ「まあね〜。

文化祭でライブすることになったから、蘭が練習しないとーってね〜。」

 

 

八幡「なるほどな。

………ん?そう言えばお前ら来る時は毎回一緒じゃなかったか?」

 

 

 

ふと思ったので聞いてみたのだが、かなりどうでもいい事を聞いてしまった。

学校が休みの日も来る時は毎回一緒だったから、少し気になってしまった。

幼馴染で家も近いとか言ってたし。

まぁ、寝坊とかそんな感じか?

コイツは寝坊しても焦らなそうだしな、見るからにマイペースだし。

 

 

 

モカ「さっきまではみんなと一緒にいたんだけどね〜。

でも、モカちゃんは途中でやまぶきベーカリーのパンが食べたくなって

みんなと別れたのだ〜。」

 

 

 

八幡「あぁ、そう………」

 

 

 

 

そういやコイツ、山吹の家のパン大好きフリスキーなのか。

宇田川曰く、あのパンがないと生きていけないレベルで食べてるらしいし。

……………ん、でも待てよ?

今日って、やまぶきベーカリーって休みだったよな?

山吹本人がそう言ってたし

 

モカ「そうだったんだけどね〜…………

モカちゃんすっかりやまぶきベーカリーが休みって忘れててさー。

絶大なダメージを負っていたんだよ〜」

 

 

 

八幡「…………そ、それは残念だったな。」

 

 

全力で落ち込んでるな…………

どんだけやまぶきの家のパンは美味しいんだよ………

 

 

 

モカ「あー、もうすぐ練習の時間だ〜。急がなきゃ〜。

それじゃあはっちー、悪いけどモカちゃんはもう行くね〜。」

 

 

 

 

八幡「お、おう…………」

 

 

 

急いでる割には歩くのな………………

 

 

 

あ……………

やばいっ!こんなことしてる場合じゃない!

青葉のせいで本来の目的を忘れてた!

ま、待ち合わせの時間までは…………っ!

いや、走れば間に合うか!?

 

 

 

遅れたら小町との約束を破ることになるし、何よりも…………

 

 

アイツ(山吹)は、からかうのが好きだろうから遅れたりすると絶対にめんどくせぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「…………………」

 

 

 

 

八幡「……………はぁ、はぁ、はぁ」

 

 

 

 

 

沙綾「…………………」

 

 

 

 

八幡「ふぅ…………大丈夫だ。

待ってないぞ、今来たところだ」

 

 

 

沙綾「本当に今来たところじゃん…………」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いだ結果、待ち合わせの時間にはギリギリ間に合ったのだが、家の前にはもう山吹がいたのだ。

そうして、今俺たちはステージ会場?である、市ヶ谷家の蔵に向かって歩いているのだが………

 

 

沙綾「ふふっ、それにしても何さっきの。

あのセリフって本当は早く来て待ってた人が優しさで言うセリフじゃないの?」

 

 

 

八幡「それじゃあ嘘になるだろうが。

本当に今来たところだったから言っただけだ。」

 

 

 

 

沙綾「いやいや、わかってないなー。

あのセリフはね?

デートの約束時間に早く来ちゃった彼氏が待ってて、後から来た彼女に『ごめん待った?』って聞かれた時の回答だよ。

まぁ、彼氏彼女逆のパターンもあると思うけど。」

 

 

 

いや、どこで習うんだよそれ。

 

 

 

 

八幡「それが暗黙の了解なら、『今来たところ』って言った時点で『大分待ってました』って自白してるのと一緒ってことか。」

 

 

 

沙綾「うわぁ…………考え方がひねくれてるなぁ…………」

 

 

 

若干引き気味の山吹。

その「うわぁ」の顔、腹立つから今すぐ辞めて頂きたい。

 

俺たちは隣同士で歩いているが、2人分程の間がある。

まぁ、ここら辺は住宅街だから車が通らない限りは結構広めに歩けるのだ。

 

 

 

沙綾「あ、そうだ……………」

 

 

 

突然そう言うと、山吹は俺の耳元に近づいてくる。

 

 

 

 

沙綾「………走ってきてくれたのは結構嬉しかったよ?」

 

 

 

八幡「…………っ!」///

 

 

 

 

 

 

沙綾「なーんて!どう?

…………あはは、比企谷君の顔赤くなってるー!」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

沙綾「…………比企谷君?」

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

沙綾「ご、ごめんって!

私が悪かったから無視…………いじけないでよー」

 

 

 

 

………はぁ。

コイツといると色々と疲れる………

弦巻タイプではないにしろ、コイツもコイツでやばいな。

 

しかも今顔が赤くなったのは、山吹のセリフでなったのではなく、

なんというか、顔が近かったというか、耳は弱いというか………

 

 

つまり山吹は面倒くさいわけだな。

からかい大好き山吹さん。

…………うん、コレジャナイ感が凄いな。

 

 

 

 

八幡「……………はぁ。うぜぇ。」

 

 

 

沙綾「聞こえてるんだけど………」

 

 

 

聞こえるように言ったからな。

 

 

 

 

沙綾「あそこに見えるのが有咲の家だよ」

 

 

 

八幡「……………マジかよ。」

 

 

 

でかいな。

いや、まぁ、蔵があるって聞いた時点で家や庭は、結構大きいだろうなと思っていたけど…………

 

 

 

沙綾「………アレ?でも、比企谷君って有咲の家知らなかったの?

この前、うちの弟と妹と遊んだ帰り道にみんなを送ったでしょ?」

 

 

 

ありましたねそんなこと。

あの、ドロケイ?ケイドロ?の時ね。

 

てか、送ることになったのもお前のせいなんだけどな?

 

 

 

沙綾「それで有咲も送ったんでしょ?」

 

 

 

八幡「いや、俺には家を知られたくないらしくて途中で中断された。」

 

 

 

まぁ、俺も送りたくて送ったわけじゃないからいいんだけど。

でも理由が申し訳ないとかじゃなくて、俺だから嫌だってのがな……

 

俺から送るなんて言ってないのに…………

 

 

 

沙綾「あー………なるほどね。

確かに有咲は、比企谷君を嫌ってたからね。

まぁ、それも全部比企谷君が悪いんだけど………」

 

 

 

うぐっ。

……………嫌われたのはまぁ、俺が悪いな。

入学式の事件と、その後の2位連呼事件。

なんだよ2位連呼事件って。

こんな名前の事件起こしたの世界中探しても俺しかいないだろ。

まぁ、こればっかりは嫌われても仕方の無いことだ。

 

まぁ正直嫌われるのは一向に構わないのだが、市ヶ谷は悪くなく、俺だけが悪いとなると少し心にくるものがある。

罪悪感というのだろうか………

 

 

 

 

八幡「蔵に入れて貰えなかったら帰るか。」

 

 

 

山吹がクライブ見れたらミッション完了だしな。

 

 

 

沙綾「いや、さすがにそんなことは言わないと思うけど……」

 

 

 

話してるうちに市ヶ谷家に着いた。

………なんか少し緊張してきたんだが。

 

 

 

八幡「……………え、なに?

どうすんの?」

 

 

 

 

 

沙綾「私にそれを聞いちゃうの?

………じゃあケータイに電話掛けてみるね」

 

 

 

メールとかだと気づかないかもしれないから、と言って山吹は電話を掛けた。

 

 

 

俺は待ってる間、市ヶ谷家の庭を見ていた。

 

 

蔵でやるって言ってたけど…………

その例の蔵というものをずっと見てるのだが、見た感じ人影も見えないし、音とか聞こえねーし本当にいるのか?

………となると、地下か?

蔵ってのは食べ物や貴重品とかを保管するから、地下にあるなんて珍しくもなんともないしな。

まぁ、単純にまだ来てないって可能性もあるかもだが、もうなんでもいいか。

 

 

そう言えば戸山が山吹は1度クライブに来たことあるとか言ってたような………

 

 

って事はまぁ、大丈夫か。

なんか俺が考えてる間に山吹は誰かと電話できたみたいだし。

 

 

 

沙綾「香澄達が入ってきてー、だって」

 

 

 

八幡「…………それは俺も含まれてるのか?

入った瞬間通報とか言ったらシャレにならないぞ?」

 

 

 

沙綾「大丈夫だって!

有咲にも一応聞いておいたよ。

今回はコッチが誘ったからOKらしいよ。」

 

 

 

八幡「あぁ、そう。」

 

 

 

………そうだよな。

俺は被害者というか招待されたのだから、よく考えたらもてなされてもおかしくないんだよな。

なんだよ、くるしゅうないじゃん。

 

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

 

八幡「………?おい、山吹?

お前が行かないとわからないんだけど………」

 

 

 

急に下を向いて黙るので声をかけるが、なんか見てて落ち着かねぇな。

 

 

 

沙綾「じゃ、じゃあ行こっか!

クライブのする場所だけど凄いんだよ!

地下にあるんだよ!」

 

 

 

八幡「…………あぁ、そう。

じゃあ早く入るぞ」

 

 

 

沙綾「あれ?あんまり驚かない?」

 

 

 

八幡「ん?あー、すごいと思うぞ?

蔵がある家なんて、かなり珍しいしな。」

 

 

 

いや、お前から聞く前に地下にあるかもって予想してたからあんまり驚く事が出来なくなったんだよ。

俺のリアクションが見せれなくてマジ残念だわ、ほんと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………それにしてもあれだな。

1つ思った事がある。

 

 

クライブの事は弦巻には言わないでおこう。

朝ごはん作る感覚で、蔵と地下を作りそうだし…………

 

 

まぁ、なんだかんだで弦巻の家にはありそうなんだけどな。

 

 

 



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クライブと彼女達の想い



今回は少し短めです。
クライブの話を終わらせただけなので!







 

 

 

 

香澄「あー!!!

さーやー!!はっちー!!」

 

 

 

りみ「2人とも、こんにちは」

 

 

 

 

有咲「………どうも」

 

 

 

たえ「あ、本当に来た」

 

 

 

 

 

地下に繋がってる階段を降りてる最中に、色々と挨拶される。

てか、花園。

今お前は俺を見て言ったよな?目が合ったもんな。

大体お前らが頼んだんだろうが………

あんまり期待されてなかったやつね。

市ヶ谷もやっぱり機嫌が悪そうだ。

 

 

………えー、これ帰っていい?

俺はもう用済みだろ?

 

 

沙綾「みんな、おつかれさまー。

もう比企谷君が遅れたりして大変だったよー」

 

 

 

 

八幡「お前何言ってんの?」

 

 

 

 

断じて遅れてない。

 

 

 

 

有咲「………はぁ。

相変わらず仲良しな事で。」

 

 

 

コイツは仲良しって意味を知らないらしいな。

 

怖いから声には出さないけども。

 

 

 

香澄「はっちー。

さーやを連れてきてくれてありがとう!」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

沙綾「…………………」

 

 

 

 

 

八幡「………お、おう。」

 

 

 

 

………急だし、素直にお礼を言われると何だかむず痒いな。

 

 

 

沙綾「…………うん。

比企谷君にはお礼しないとね。

それと、みんなにも。

………私のためにありがとね」

 

 

 

たえ「お礼を言うのはまだ早いよ、さあや。

私たちの演奏、聞いて欲しい。」

 

 

 

沙綾「………おたえ。」

 

 

 

りみ「わ、わたしたち………っ!

毎日コツコツ練習して頑張ったから!」

 

 

 

 

有咲「前のクライブの時よりかは上達したのは、たしかだな。」

 

 

 

 

 

沙綾「………うん。楽しみ。」

 

 

 

香澄「何度も誘ってごめん!

さーやが忙しいことは知ってるけど、どうしても一緒にバンドしたくて………」

 

 

 

 

沙綾「………大丈夫だよ。」

 

 

 

 

悪気があって少し落ち込んでる戸山の頭を山吹は優しく撫でる。

 

 

 

 

香澄「ありがどぉぉー。」

 

 

 

 

沙綾「……………でも、私は」

 

 

 

有咲「あー、待った。

沙綾がどんな気持ちで今日来たかは私たちには分からん。

それでも私たちは全力で演奏する気だ。

だから、沙綾も演奏を聞いてしっかり考えて欲しい。」

 

 

 

りみ「有咲ちゃん…………」

 

 

 

たえ「………………」

 

 

 

 

香澄「有咲…………」

 

 

 

 

有咲「…………だぁぁぁ!!

なんだよその目は!!

言っておくけど私だって言った後に凄い恥ずかしい事言ってるのは気づいてたからな!!」

 

 

 

香澄「そ、そうじゃないよ!」

 

 

 

りみ「う、うん。

有咲ちゃんがカッコイイと思っただけで」

 

 

 

たえ「うん。私も今こう…………グッときたよ。」

 

 

 

有咲「…………っ///

う、うるせー!早く準備するぞ!!」

 

 

 

うわ、顔真っ赤だ。

 

 

 

有咲「お前は見てんじゃねぇ!!

つーかもう帰れ!」

 

 

 

目の前で起きたことを見てんじゃねぇって…………

はー、辛い。帰りたいな。

あれ?でも今帰っていいって…………

 

 

 

 

よし、帰ろう。

早々と準備をして、蔵の出口へと向かう。

 

 

 

 

有咲「本当に帰ろうとするなぁ!!

早く座って待ってろー!!」

 

 

 

八幡「えー…………」

 

 

 

いや、マジでなんなのこの子。

面倒いし、口悪いし、怖い。

 

 

 

香澄「はっちーもよかったら聴いてよ。

上手じゃないかもだけど……」

 

 

 

苦笑いをしながら俺にそう言ってくる。

 

 

 

 

………確かに上手い下手は大事な事だ。

上手い方がいいに決まってる。

 

だけどバンドは………少なくとも俺が思うバンドって言うものは、上手くなくたって、記憶に残る、何かを伝えることが出来るものだって思っていたい。

 

 

 

コイツらも誰も上手いだなんて思ってない。

むしろめちゃくちゃ下手と思ってるかもしれない。

 

当然だ。初めて数ヶ月。それにドラム担当がいないらしい。

ドラムはバンドにとって重要すぎる楽器だ。

俺たちもバンド練習の時に、松原さんがバイトでいなかった時の練習は悲惨そのものだった。

リズムが取りにくいのだ。ドラムはリズム隊の要だ。

ドラムがいないバンドなんて少なくとも俺は知らない。

 

 

それでもコイツらは…………山吹に伝えたい何かがあるから、きっと演奏するのだろう。

 

 

俺はコイツらの演奏を聴いた事はないが、山吹は数回あるのだ。

それでも山吹は、自分のために演奏されるのは初めての事だろう。

 

 

 

香澄「じゃあ、始めるよ!」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「今日はありがとね。」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

帰宅路、唐突に山吹からお礼をされる。

 

 

 

沙綾「正直行きたくはなかったけど、今なら行ってよかったって思えるかな。

比企谷君を理由にしたおかげかな。」

 

 

 

 

八幡「…………次、またあんな感じで理由にしてめんどくさいことになったらお店にクレーム出すからな。」

 

 

 

沙綾「え、それは酷すぎるよ。

言っておくけどうちのパンはすっごく美味しいからね!」

 

 

 

八幡「…………自分で言っちゃうのか。」

 

 

 

沙綾「それぐらい美味しいからね。」

 

 

 

まぁ、青葉は山吹パン中毒者らしいしな。

 

 

 

 

八幡「それにしてもアイツら……色々と凄かったな」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

演奏が始まり俺は彼女達の演奏に目を奪われていた。

 

 

別段上手すぎてとかでは無い。

むしろドラムがいないせいか、バンドとしての歴が低いのか、お世辞にも上手いとは言える程でもなかった。

 

 

それでも見てしまっていたのはきっと…………

 

 

 

 

 

沙綾「…………本当に楽しそうに演奏するなぁ。」

 

 

 

本人は無意識に口に出てた言葉を俺は聞こえていた。

 

 

そう、なんでか知らんがめちゃくちゃ楽しそうなのだ。

演奏するのが猛烈に嬉しくて楽しんでるふうに見えた。

 

 

 

八幡 (どっかのバンドメンバーといい勝負だな)

 

 

まぁ、世界を笑顔にするらしいからな。

当然といえば当然なのだが。

 

 

 

しばらく聴いていると音が止み、少しの静寂が訪れる。

 

 

俺と山吹は拍手を送り、少し照れる4人。

そして戸山が口を開く。

 

 

 

香澄「今日は演奏するだけだから!さーやの返事は聞かないっ!

それとね!やっぱり沙綾と一緒に演奏したいから諦めない!

何年経ったとしても!!」

 

 

 

 

沙綾「っ!!」

 

 

 

戸山は真剣な表情で山吹に言う。

…………すげーな。

 

 

演奏も終わったし、今日は返事を聞かないのなら長くいても気まずいだけだ。

それに戸山も何となくわかっているのだろう。

このままだと、山吹をもっと傷つけてしまうことだって。

 

 

 

 

 

八幡「………じゃあ、俺たちは帰るとするわ。」

 

 

 

沙綾「比企谷………君……」

 

 

 

有咲「………あぁ、そうだな。

今日は………その…………〜〜〜っ!!

や、やっぱりやめだっ!さっさと帰れ!」

 

 

 

りみ「あ、有咲ちゃんっ!?

きょ、今日はありがとね〜」

 

 

 

たえ「………楽しかった。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

沙綾「あはは………まぁ、そうだね。

香澄たちも、どんどん上手くなってて、凄いなぁ。」

 

 

 

山吹は先程の彼女達の演奏を思い出してるのか、目をつぶって空を見上げていた。

 

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

 

沙綾「……………比企谷君はさ。

私がバンドやらない理由を深く聞かないよね。」

 

 

 

八幡「………何?聞いて欲しいの?」

 

 

 

人が頑なに隠してることなんて、聞いたっていいことない。

そういうのは大抵地雷だらけの、他人じゃどうしようも無いことばかりなのだから。

 

 

戸山たちだって聞きたいのだろう。

山吹がバンドを断る理由が、パン屋で忙しいからだけでは無いという事を。

 

 

 

沙綾「そういう訳じゃないけど…………さ。

うーん………でも、聞いて欲しいのかな?」

 

 

 

山吹は、顎に手を当て首を傾げる。

『?』マークが頭に浮かびそうな表情だ。

 

 

 

八幡「いや、俺が知るかよ。

…………アイツらだったら聞いてくれるんじゃねぇの?」

 

 

まぁ、お前のことを気にして聞くに聞けないみたいな感じだったけど。

 

 

 

沙綾「………比企谷君は聞いてくれないの?」

 

 

 

八幡「………は?俺?

俺はごめんだな。これ以上お前らの話に入るのは疲れるし」

 

 

 

問題事は弦巻たちで足りてる。

 

 

 

沙綾「まぁ、そうだね………

それに話したところで何かが変わる訳でもないんだよ……

私のした事は何も変わらないから。」

 

 

 

悲痛のような叫びを殺して、悲しそうに呟く山吹は拳を握りながら何かを悔やんでいた。

 

俺はそれに対し「そうか。」と返し、その後はお互い一言も喋らずに家へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ただいま。」

 

 

 

小町「あれ?お兄ちゃん?」

 

 

 

家に着くと、小町がてってと音を立ててお迎えしてくれる。

うん、お兄ちゃん想いで嬉しいな。

 

 

 

小町「なんか変な事考えてない?

いや、それよりも帰ってくるの早くない?

家出てから2時間くらいしか経ってないよ?」

 

 

 

八幡「まぁ、それほどの用事だったって事だよ。」

 

 

 

待ち合わせ場所行って、蔵に行って、ライブ聴いて、帰っただけだからな。

 

 

 

小町「もしかして喧嘩でもしたの?」

 

 

 

八幡「おいおい小町ちゃん?

俺が喧嘩するほど深く関わってるやつなんて小町しかいないぞ?

お、今の八幡的にポイント高いな。」

 

 

 

俺の知ってる喧嘩なんてのは、兄弟喧嘩だけだしな。

大抵いつも、トラップカードで母親が出てきて俺が負けるのだが。

それでも夕飯になったら仲良く食卓を囲んで、兄弟喧嘩は終結するのだ。

 

 

 

小町「うーん。

コレは喧嘩ではないっぽい……?

小町のお兄ちゃん嘘レーダーには引っかからないし………」

 

 

 

八幡「ねぇ?何そのレーダー?

俺もそれ欲しいんだけど?どこで売ってんの?

カプセルコーポレーション?」

 

 

 

ほら、女の嘘って凄い分からないじゃん。

二十面相とか聞くしさ。

 

 

 

小町「のんのんだよお兄ちゃん。

コレは愛がなせる技だからね!

あ、今の小町的にポイントたっかーい!」

 

 

人差し指をチッチと振り、はにかむ笑顔で言う。

我が妹ながら、あざと可愛い。

あざとさも感じられないくらいの可愛いさ。

それもうただの可愛いだけど、仕方ない。うん。

 

 

 

八幡「…………お前そういうのクラスの男子にしてないだろうな?」

 

 

 

心配になってきた。

こんなのされたら一溜りもないと思うんだけど。

兄の俺でさえ、危う…………くないな。危うかったら色々とやばい。

だがこれでは、勘違い男子が湧くのも仕方ないし、コレはもう小町が可愛すぎるのが悪いとか言っても過言ではないレベル。

 

 

 

その後、小町は考える素振りを見せ、パッと何かを思いついた表情を浮かべ俺に近づいてくる。

 

 

 

八幡「?」

 

 

 

小町「こんなことするのはお兄ちゃんだけだよ。」ボソ

 

 

 

耳元で囁く小町。

 

 

 

 

八幡「………っ!?」

 

 

 

小町「………うっそでしたー!

どう?小町的にポイント高い?」

 

 

 

ペロッと舌を出してウインクする小町は、小悪魔にしか見えず、

コレはもう兄である俺が責任をもってこれからも一緒に末永く暮らさなくては、という考えがしばらく残るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




本作品のヒロインは小町です。と、真顔で言える作品を目指して行きたいと思っておりま(殴


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一難去ってまた一難.........去ってまた一難 

 

 

 

月曜日。

それは人類の大半が好きではないと言う。

それは何故か…………?それは様々な理由があるだろう。

だが、おおよそ予想は出来る。

 

学校の始まり、仕事の始まり、休日明けの早起き、1週間という長い曜日でしかも最初なのにいきなり絶望レベル。

アイドルに恋をし、土日のライブ明けの月曜日に憂鬱する人……

 

 

とかだろう。

 

 

 

ちょっと最後のはピンポイント過ぎただろうか?

……………ファンサいいよな。

 

 

まぁ、これはあくまで悪いところを考えてしまってるから、悪く思えてしまう。

 

 

 

逆にだ。

月曜日のいい所を考えてみればいい。

 

 

……………休日になる時が多い、以外なくね?

 

まぁ、コレはもう個人次第だな。

月曜日の授業の時間割が好きな人だっているだろうし、The青春してますって奴は学校楽しくてたまらないとか、考えたらキリがない。

 

 

 

と、月曜日の事だけを考えてみたが別の視点から考えよう。

 

 

 

そもそも月曜日が悪いんじゃない。

日曜日が良すぎるんだ。

 

 

 

朝の原理と一緒だ。

「俺、朝に弱いんだよね。」とか言うやついるけど、そうじゃない。

朝が強すぎるだけなんだ。

 

 

つまり日曜日がほとんどの人は休みで、心も身体も休まってる時に月曜日を迎えると地獄に感じるって事だ。

 

月曜日が悪いのではなくて日曜日が良すぎるのがいけないと考えたほうが正しいのではないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日曜日と月曜日について長々と考えていたのは理由があるのだが、その原因となっていたのが………

 

 

 

 

 

 

小町「……………いや、うん。

なんか転入してきた子に軽い質問したら深くて重い地雷を踏み抜いた感覚だよ。」

 

 

小町がジト目でやれやれと首を傾げる。

 

 

 

 

八幡「いやそもそもコレはお前が、『月曜日って本当に面倒くさいよね。お兄ちゃんみたい。学生ならみんな嫌ってそう。』とか言ったのが事の始まりだろうが。」

 

 

 

てか、俺の例えを月曜日にするとか凄すぎない?

あと、めちゃくちゃ悪口言ってたけど気のせいだよね?

みんな嫌ってそうって何?何したらそこまでなれんの?

病気?ウイルス?比企谷菌?

 

 

 

…………今思うと比企谷菌って凄いんだよな。

小町も同じ比企谷なのに、小町にはなかったらしい。

コレは俺のオリジナルフェイバリットだったのか。

 

 

…………いや待てよ。

小町が実は比企谷では無い説はどうだろうか………?

そうなると俺たちは実は血が繋がっていなく……………え、それヤバくない?

すごいドキドキしてきたんだけどコレがまさか恋!!?

 

 

 

 

小町「今通報したら、情状酌量の余地もなくお兄ちゃんを逮捕できそうだよ…………

射殺もやむなしレベルだよ。」

 

 

 

八幡「俺はどんな顔してんだよ……………

自分でも不安になるレベルで心配になってきたんだけど。」

 

 

 

俺がふざけてる間に顔には出てたのか。

…………アレ?それってまんざらでもないってこと?

いくら小町が可愛いからってそれはダメだろ俺。

 

 

小町「…………お兄ちゃん大丈夫?なんか体調悪い?

さっきのよく分からない戯言は…………いつも通りだし……

んー、じゃあよく見ると目が腐って…………あれ?コレもいつも通りだ。

お兄ちゃんひょっとして健康?」

 

 

 

八幡「健康の確信の仕方おかしくない?

健康だけど傷ついたよ?健康が害されたよ?」

 

 

 

しかも戯言ってなんだよ、戯言って。

妹が徐々に口が悪くなっている…………

 

 

 

八幡「…………あ、そうだ。

小町にコレやる。」

 

 

 

渡そうと思ってたけど忘れてた。

 

 

 

小町「なにこれー?チケット?」

 

 

 

八幡「ライブのチケットだよ。

見に来るんだろ?だから、それやる。

………あと1枚あるんだが、友達とか一緒に来るのか?」

 

 

 

1人分しかないから、数人いたら取り合いになっちゃいそうだしな。

小町は友達が多いからな。

まぁ、知らないけど絶対多い。可愛いし、コミュ力高いし、可愛いし。

 

 

 

 

小町「うーん…………

今回は小町1人で行くかなー。

本当はお母さんと一緒に行きたかったけど仕事だもんねー。

誘えば友達は来るかもだけど、今回はいいや!」

 

 

 

小町は友達が多いが、単独行動を好む部分もある次世代型ハイブリッドぼっちなのだ。

もう本当にすげーわ。

 

 

 

1枚チケットは余ったが、まぁいいだろう。

他に渡すような相手もいないしな。

 

 

 

八幡「…………っと、話してたらもうそろそろ家出る時間だな。」

 

 

 

小町「はぁーー、がんばろー。」

 

 

 

俺たちは学校に行くために、家を出るのであった。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

美咲「あ、比企谷君おはよ。」

 

 

 

八幡「…………おう。」

 

 

 

教室で奥沢と挨拶を交わす。

…………おうって挨拶だっけ?

 

 

美咲「もうライブまで1週間切っちゃったねー。

あ、そうだ…………あった。コレ、ライブのセトリどうする?」

 

 

八幡「あー…………セトリか………。」

 

 

 

セットリストなー。

正直適当に決めれないからなアレ。

1曲目に演奏する曲はノリがいい曲にした方がいいとかな。

CiRCLEで色んなバンドの見てきたから知識は割とあるから俺がやるか。

 

 

 

八幡「あー、じゃあ俺が書いとくわ。

月島さんにも相談しながらやっとく。」

 

 

 

月島さんに聞いて書けば少しは安心だろう。

 

 

 

美咲「それは助かるかな。

正直私はサイトとかで調べようかなーとか考えてたから。

こころ達に話すと無茶苦茶にされそうだし…………」

 

 

 

苦笑いしながらまだ来てない弦巻のテーブルを見る。

まぁ、共感しか出来ないわな。

 

 

 

 

美咲「あ、そういえば今日は文実の集まりがあるんだっけ?」

 

 

 

 

八幡「あぁ、放課後にな。

うちのクラスは今まで前例になかった内容だから期待されてるらしいぞ…………」

 

 

 

俺らのクラスは、弦巻の案が………………あれ通ったって言うか?

通らしたというか、無理やり感強かったからな。

 

 

 

美咲「あー、アレね………

こころだからしょうがないで納得するしかないよ。」

 

 

 

まぁ、自由元気我儘少女だからな…………。

そして、アレとは数日前の話である…………。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

先生「じゃあ今日は、文化祭のクラスの出し物について話し合うぞ。

それじゃあ文化祭実行委員の2人、前に出てきて進行してくれ。

先生は…………ちょっと机に伏せてる。」

 

 

 

 

え、まじで?

別に先生が進めればよくない?

おい。寝るな。先生寝るな。

 

 

 

こころ「わかったわ!

ほら!八幡行くわよ!」

 

 

弦巻は俺の席にわざわざ来て、俺の腕を引っ張り上げる。

 

 

八幡「わかったから引っ張んなって!」

 

 

 

恥ずい恥ずい恥ずい!

 

 

 

 

美咲 (相変わらずだなー、2人とも。

まぁ、比企谷君は被害者なんだけど…………)

 

 

 

 

こころ「それじゃあ始めるわっ!

じゃあ意見をちょーだい!」

 

 

八幡「……………」

 

 

手を上げる奴はいない。

まぁ、悩んでるのか。話し合ってるやつも沢山いるし。

 

弦巻が話を進めてるので、俺は黒板に記録する役だ。

相方が陽キャラだと、こういうふうにハッキリと仕事が別れるから楽なものだ。

 

 

 

こころ「はい!じゃあそこの貴方!」

 

 

 

生徒1「え、俺っ!?

手挙げてないんだけど!?」

 

 

 

は?挙げてないからなんだお前。

俺だってな、文実やるなんて言ってないのに強制的だったんだぞ?

 

 

 

こころ「誰も手を挙げてくれないんだもの…………

じゃあ私が意見を出すわね!」

 

 

 

八幡「いいのかそれで。」

 

 

 

…………なんだろう。

嫌な予感がする。

 

 

こころ「じゃあまず色んな動物を学校『あ、あれです!!まだこれは意見の段階なので提案したものが実際にやるとは限らないので、適当でもいいので意見を出した方が色々考えれると思います。』

 

 

 

危ねぇー!

何?コイツは今何言おうとしてたの!?

途中でさえぎってマジで良かった。

色んな動物?コイツ動物園でも開くの?文化祭で?

 

 

 

美咲 (ナイス比企谷君!

比企谷君には悪いけど、文実になってくれてよかったよ。)

 

 

 

 

こころ「それじゃあ私が案を出すわっ!

まず校庭に観覧『観覧出来る物………展覧会的なのもありますよね!絵だったり、粘土、などなどの色んな作品を創るのもありですかね!ほ、ほかの意見は………』

 

 

 

もうお前黙れ…………喋るんじゃない。

何なの?楽しいのか?人が焦る所を見て楽しんでるのか?

そして何?何て言おうとしたの?

まさかとは思うけど、校庭に観覧車建てるじゃないよな?

もうわかったから。お前の家が凄いことわかってるから。

頼むからこれ以上は自重してくれ………

 

 

 

美咲 (……………比企谷君焦りすぎて、口調が変なの気づいてなさそう。後半声裏返ってたし。

いやまー、こころが原因なんだけど。)

 

 

 

 

こころ「それじゃあみんなで映画を『お、奥沢っ…………さんは!な、何か意見とかないですか……?』………むぅ。聞いてるかしら?はちまん?」

 

 

 

聞いてない、聞きたくない、聞かなくてもわかる自分が怖い!

どうせ映画観ようじゃなくて創ろうでしょ?怖い!怖い!

むくれてもダメ!奥沢、助けろ、マジで!!

 

 

 

美咲「え、わ、私っ!?

そ、そうだなー…………食べ物系とかもいいんじゃないかなー、なんて……」

 

 

美咲 (ちょっ、急に言わないでよ!

辛いのは分かるけど、指名しなくても!)

 

 

 

生徒2「……………うん、それいいよね!

あたしクレープとかやりたい!」

 

 

 

生徒3「お化け屋敷もいいんじゃね!?」

 

 

生徒4「それ食べ物じゃないじゃん!笑

でも、そういうのもいいよね!」

 

 

 

ガヤガヤワイワイとクラスが騒ぎ出した。

いや、最初っからこうしろよ。

ともかく奥沢ナイス。褒めて遣わ…………いや、すいません。

悪かったからコッチ睨まないで!

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

話し合いも進み、色々な意見が挙がっていた。

 

 

クレープ、フランクフルト、チュロス、うどん、ドーナッツ、パンケーキ等。

 

 

 

いや、食べ物多いな。

まあ他にも在りきたりなお化け屋敷、演劇、カフェ等もあった。

 

 

一応弦巻のマジック?手品?の意見も入れた。

 

……………なんかちょっと弦巻の様子がおかしかったが、冷静に考えなくても常に普通ではない為あまり気にしなかった。

 

 

 

さぁ、ここから1つに絞る訳だが………無難に多数決か?

食べ物系も火を通すものならいいらしいし、この中には特に出来ないものはない。

 

 

 

先生「ふぁーあー。ん?おー、結構意見あるな。

よし。それじゃあこの中から決めようか。

多数決で決めるからみんな机にふせて手を挙げるシステムで行こう。」

 

 

 

あ、起きた。

 

 

 

 

生徒5「お前らマジで顔上げんなよ!!」

 

 

 

生徒6「いやいや、お前が1番上げそうじゃん」

 

 

 

 

 

…………俺はどうするか。

特にやりたいものないしな。

それよりも1番楽なものを選ばなくてはならない。

バンド練習があるからな。演劇とかお化け屋敷は却下だな。

用意や覚える物などで時間かかる。

無難に食べ物系が楽そうか?

まあ多数決なんだけどな…………

 

 

 

先生「それじゃあ始めるぞー。」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

【手品】【パンケーキ】【カフェ】

 

 

 

先生「すごい事になったな。

まさかの3つ共同票だ。」

 

 

 

まさかの多数決で3つが同票とは……………

…………手品は最初は、ん?と思ったが、手を挙げていた奴らが男子ばっかりで、その後も「手品出来たら女子にモテそう」等の声が挙がっていた。

俺は挙げていた手をカウントしていたのだ。

なので、机には伏せてないが、弦巻は「楽しそうだからあたしも伏せるわ!」とか言って伏せてた。何が楽しいの?

………ちなみにコイツは全部に手を挙げていたので、一番最初の手品にカウントした。

…………全部に手を挙げるんじゃありません。

 

 

 

 

全ての意見に1票以上はあるのが驚きだ。

まぁ、これも机にふせたから出来たことなのかもしれないが。

周りの意見に流されずやりたい事に票を入れるのは当然なんだがな。

 

 

 

先生「どーするか………

比企谷。今日の放課後までにはやる内容を紙に書いて提出だろ?」

 

 

 

八幡「はい、そうですね。

なので、絞らないと『選ぶ必要なんてないわっ!』…………はい?」

 

 

 

弦巻は突然俺に被せてそう言った。

…………さっきのこと根に持った?

俺は正直、日頃の仕返し気分で楽しんでたぜ。

 

 

 

先生「どういう事だ?弦巻。」

 

 

 

 

こころ「多数決したけど必要なかったのよ!!

やれる物ぜーんぶやればいいだけの話じゃない?」

 

 

 

先生「………ん?」

 

 

 

 

生徒「「「「………………え?」」」」

 

 

 

 

八幡、美咲「「……………まさか」」

 

 

 

 

こころ「出来るもの全部組み合わせればいいわっ!

カフェしながら手品もして、食べ物も売るのよ!!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

八幡「そしてなんやかんやあって、うちのクラスは『食べ物色々手品演劇カフェ』となったんだよな…………」

 

 

 

美咲「適当だね。」

 

 

 

八幡「いやもう、思い出したら疲れた。

その後もクラスの奴ら弦巻の案に大賛成だし、先生は面白いからOKとか言ってるし………」

 

 

もう本当に何なの?

女子はともかく男子って文化祭面倒くさがる物じゃないの?

パリピ陽キャしかいないの?

全員それぞれの役割できっちり仕事割り振られたし。

放課後大変なんだけど?

 

 

美咲「クラスの皆はともかく、よくそれが校長先生とかの許可がすんなり出たね。」

 

 

 

八幡「………………ねぇよ。」ボソッ

 

 

 

美咲「………………え?ごめん、なんて?

聞こえなかったんだけど…………」

 

 

 

八幡「…………すんなりじゃねぇよ。」

 

 

 

美咲「え?…………どういうこと?」

 

 

 

勘が鋭い方はもうお気づきかもしれないがわからないのなら教えてやる。

 

 

 

 

八幡「…………俺たちがクラスの案を先生に提出したら、次の日に呼ばれてな。

『ちょっとこれはキツイんじゃないかい?』………と。

そんなの俺も思ってたし、まあ無理だよなとか思ってた。

その時だったんだ…………急に背後から黒服を纏った謎『あーーー!もういい!わかった!その謎解けちゃったから!!』」

 

 

 

八幡「……………まだ続きあるけど。」

 

 

 

美咲「いや……………もう本当に大丈夫だから。

何これ………本当にあった怖い話でも聞かされてる気分だよ。」

 

 

 

八幡「いや、本当にあった怖い話だからコレ。

実体験してっから。」

 

 

 

奥沢も謎が解けたか。

名探偵になれるかもな。

 

てかなんで学校内にいんの?

セキュリティ管理大丈夫ですかー!

あ、無理だ。あの人たち脳内に入れるくらいだし。

 

 

 

 

美咲「大変だろうけど、もうやるしかないよね………」

 

 

 

そう言いつつも、表情は暗くガッカリしている。

 

 

 

八幡「そういえばお前、弦巻と一緒の手品が主な担当だったな。」

 

 

 

美咲「うん。

……………はぁ。先が思いやられるよ……」

 

 

 

奥沢ドンマイ。健闘を祈る。

手品は既に投票した男子数名が担当になってる為、俺は手品担当になることはなかった。

手品担当だけ増えても人数オーバーになり、他が疎かになるからな。

逆に女子は、弦巻以外いなかったので奥沢が弦巻の面倒を見るべく立候補していた。

 

 

かくいう俺は、弦巻の代わりの分まで実行委員の仕事をやらなくてはならないので、クラスの方ではあまり重要な役割はなく、看板や折り紙などの物作り担当だ。

そして、文化祭当日も実行委員としての仕事があるため、クラスの方の仕事はない。

正直これは嬉しいというか、実行委員で良かったとも思える。

劇とか手品、店員、キッチンとか出来ればやりたくなかったからな。

 

 

 

 

 

こころ「あら!!2人ともおはようっ!!

とーってもいいてんきね!!何を話してたのかしら!

何か楽しいこと!?あたしも一緒に考えるわよっ!」

 

 

 

朝っぱらから目をキラキラと輝かせ楽しそうに喋りかけてくる。

 

 

俺と奥沢は苦笑いしながら、『お前(こころ)の事だよ。』とも言えず、他愛のない会話を弾ませていた。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

先生「それじゃあ今日はここまで。

弦巻と比企谷はこの後、文実の集まりがあるからなー。

それと教室はこのまま空けとくから、文化祭の準備をするなり話し合ってくれー。

じゃあ、一応さようなら。」

 

 

 

 

通常の授業は終わり、放課後になった。

だが、帰る人はそこまで居ないだろう。

文化祭まで1週間を切っているため、放課後を使って準備を万端に進めるのだ。

特にうちのクラスはやる事多いからな………………

 

 

 

 

こころ「それじゃあレッツゴー!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

香澄「あー、来たよ!さーや!

はっちーとこころん!」

 

 

 

沙綾「香澄慌てすぎだって…………

今日も一緒に頑張ろーね!」

 

 

 

こころ「あら!!

かすみ!それにさあやじゃない!

今日も楽しみましょうっ!」

 

 

 

 

文実が集まる教室には既に戸山と山吹がいた。

相変わらずお元気な事で……………

 

 

それにしても戸山達と山吹の関係って凄いな。

なんつーか…………気まずくならないのかと考えてしまう。

 

 

バンドの誘いを何度も断り続ける山吹も、不思議と思ってるかもしれないが。

まあ戸山みたいな奴が気にする事はないのか?

コイツ山吹大好きだからな。

気まずいよりも先に、一緒にいたい気持ちが強いのだろうか。

 

 

………そんなこと考えたって意味などないのだが。

 

 

 

八幡「ぎゅむ!?」

 

 

 

香澄「あ、やっと気づいたー!」

 

 

 

突然左頬に衝撃が来た。

戸山に人差し指で押されたようだ。

…………ぎゅむってなんだよ、可愛いかよ、ふざけんなよ。

 

 

 

沙綾「………ふふっ………ぎゅむって………」

 

 

 

顔を背けて小刻みに震えながら笑ってやがる。

もう無視しよう。コイツは無視だ。

 

 

 

香澄「えへへー、ごめんごめんっ!

声をかけても反応しなかったからビックリしたんだよ!」

 

 

いや、俺もめちゃくちゃビックリしたから。

 

 

沙綾「C組は文化祭で何やるのかなーって。

弦巻さんには聞いたんだけどね…………」

 

 

 

こころ「…………??

さっき言った通りよ?

マジックしたり、カフェしたり色々するのよっ!」

 

 

沙綾「………と、まぁ、こんなふうに……」

 

 

 

………なるほどな。

え、何コレ、めちゃくちゃ面白いじゃん。

 

コイツらは俺たちのクラスで何をやりたいのか知りたい訳ね。

そして、弦巻が一生懸命伝えるも、通じてないと…………

 

 

 

………弦巻が初めて可哀想だと感じてしまった。

ドンマイとしか言えねぇよ。

 

 

 

八幡「いやいや弦巻。もっと具体的に言ってやらねぇと。

手品、カフェ、小芝居劇、パンケーキ、フランクフルトの4つだろ?」

 

 

 

そう。食べ物はスイーツ系1種類だった。

まぁ、多数決の結果パンケーキになっていたのだが。

…………フランクフルトは正直、カフェで食べるか?と感じたが、食べ歩きが出来る食べ物枠で採用されていた。

劇もそこまで大きい事は出来ない。

時間がないのもあるが、カフェ自体を教室でやるため、そこまで場所を取らない物に変更された。

 

 

…………だったらやらんでよくない?

まあクラスの奴らは、今まで誰もやった事ないような事をしてるって知ってるからな。

無理にでも種目増やしたいんだろうな。

食べ物系も減らすってなった時ブーイング酷かったし。

 

 

それでクオリティ下がったら本末転倒だと思うのだがまぁいいや。

 

 

 

 

 

香澄「えっ!?本当なの!!

こころんごめーん!!脅かそうとしてるのかと思ってたよぉー」

 

 

 

沙綾「…………私の友達もそんなこと言ってた気がする。

本当だったんだ…………」

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

思ってた反応と違う……………。ここはアレだろ?

『またまたー!』とか、『ハイハイ嘘乙』とかじゃないの?

信じちゃうの?それだとコイツらは少しだが俺の事を信………いや、違うな。勘違いだ。勘違いするな。

 

 

コレは人の性格の違いだ。

チャラチャラな巫山戯た陽キャが言ったら嘘っぽく聞こえちゃうし、クソ真面目ガリ勉くんが言ったら本当っぽく聞こえるのと一緒の原理だ。

 

弦巻はほら………………コイツって何??

今まで会ってきた奴の中にも、似た奴がいなかった人種なんだけど?

人との関わりは多い方ではないと自覚はしてるが、こんな奴いないな。

 

 

チャラチャラって感じでもないし、パリピ………とも少し違う気がする。

コミュ力は化け物。

言動、共に行動も化け物。

黒服とかいう化け……………淑女もいますし!!

 

あ、アレですよ?弦巻の化け物ってのは、人間じゃ到底勝てない化け物クラスってことです。クラスです。はい。

 

 

沙綾「…………なんか汗凄いけど大丈夫?」

 

 

 

八幡「………大丈夫じゃないな。

精神と戦ってたというか、ウイルス…………じゃなくて、自分自身と戦ってたわ。」

 

 

 

沙綾「え、あぁ、そうなんだ………」

 

 

 

引き気味ですねー。

まぁそうですよね。当然の反応だと思う。

だけどな?脳内に入れる黒服を纏った淑女が来るんだよ。

しかも3人以上はいる。怖い。

 

 

 

先生「全員集まったな。

今日は文化祭の主なルールを話すぞ。

一応プリントにもして出してあるが、読んでないやつもいそうだからな。

それじゃあまず………」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

先生「じゃあ今日はここまで。

画用紙欲しい人は先生に着いてこい。

それじゃあ解散!」

 

 

 

文実の会議も終わり、俺たちは自分たちの教室へ向かっていた。

 

 

 

こころ「それじゃあ香澄のクラスは沙綾の家のパンを出すのね!」

 

 

香澄「うん!!

もうね!さーやの家のパンはとびきり美味しいんだよ〜!

笑顔になれちゃう!」

 

 

 

沙綾「あははー。

やまぶきベーカリーをよろしくね!」

 

 

 

アイツらのクラスは山吹の家のパンが出るのか。

あ、それってアリなのか。

 

 

俺らのクラスは色々とやるものがあり、準備など大変だが、弦巻家が手を貸してくれる。

完成したものを貰うのもいいが、作る過程も文化祭の一環らしく、主に素材だけを用意してもらっている。

 

 

これも弦巻が同じクラスにいるからであり、ほかのクラスの人達には申し訳ないと思わなくもなかったが、山吹達の話を聞いて罪悪感が消えた。

 

 

弦巻が違うクラスだったら、批判を集中砲火のように浴びせていたが許してやろう。

批判も何も文化祭あんまり興味ないんだけどな。

 

 

 

香澄「それじゃあお互い頑張ろうね!

………みんな〜!あたしが来たよ〜!!」

 

 

 

沙綾「あっははは!

香澄ったらめちゃくちゃ元気。

それじゃあ私もここで。

色々大変だろうけど頑張ろうね!!」

 

 

 

戸山は自分のクラスまで走っていった。

それを追いかけるように山吹も走っていった。

 

 

 

 

こころ「ええ、もちろんよ!

はちまん!あたし達も行くわよ〜!」

 

 

 

八幡「待て待て落ち着け。

走るような距離じゃなうおっ!!」

 

 

 

【バァァン!】

 

 

痛ったぁぁ!

背中打った!背中剥がれた!これ血でてるって!!

もう帰らなきゃダメだこれ!帰ります!

 

 

???「わ、だ、大丈夫!?」

 

 

 

こころ「……あら?

はちまん?人にぶつかったのなら謝らなきゃダメよ?

そこのあなた!大丈夫だったかしら!」

 

 

 

どうしよう。コイツ殴ってもいいかな。

お前のせいだよ?お前のせいだからな?

A組からC組の教室まで走る距離でもないのに手を引っ張って走るし、挙句の果てにその間にあるB組の教室から出てきた人に当たりそうになって、俺は咄嗟に避けようとしたら勢いを殺せず背中から壁にぶつかって今に至るんだけど?

 

 

 

???「い、いや、あたしは大丈夫だよ!

ぶつかりそうになったけど、彼が避けてくれたみたいだし。

壁に思いっきり当たってたけど大丈夫??」

 

 

 

八幡「あ、あぁ。

悪かったな驚かして。

でもアレだ。俺は悪くない。

全部このバカが悪いから、怒るならこいつに怒ってくれ。」

 

 

 

こころ「バカじゃないわ!!

あたしは弦巻こころよ!」

 

 

 

 

八幡「そうじゃねぇよ…………

いや、もういい。疲れた、痛い、はぁ。」

 

 

もうヘトヘトだ。

 

 

 

???「あははは…………………アレ?

君……確か……沙綾と………」

 

 

 

八幡「……………?

あ、あの?す、すいませんでした………。」

 

 

え、何!?

急にじーっと見られてるんだけど?!

アレか?コイツだったら慰謝料請求出来るとか思ってる!?

落ち着けって。まず俺が弦巻から慰謝料ふんだくるから、その後ならな?

 

 

 

???「君、名前は?」

 

 

 

八幡「………え?

あ、ええと、な、名乗るものでもないので………」

 

 

 

なんだよその映画みたいなセリフ…………じゃないな。

確信したよコレ。俺から慰謝料ふんだくる気だ。

じゃなきゃぶつかりそうになった相手の名前聞かねぇよな………

 

 

………お、落ちちゅけ。

俺はぶつかりそうになっただけで、ぶつかってはいない。

つまり大丈夫、俺は無罪だ。ここは一旦引いて相手の状況を………

 

 

 

こころ「はちまん?名前聞かれてるわよ?

名前は比企谷八幡よ!」

 

 

八幡「お、おい……だ、誰だよそれ。お、俺の名前は材木座義輝。

夢は…………あ、アレだ。

海賊王になることだわ。」

 

 

誰だよ材木座義輝って。

太ってて眼鏡かけてて、厨二病だけど憎めないような名前しやがって。

 

 

???「ええ………と?

ざ、材木座………八幡君??

と、とりあえずこの後話があるからー!

じゃあまた後でー!」

 

 

 

八幡「………………はい?」

 

 

 

こころ「行っちゃったわね!」

 

 

 

 

俺に名前を聞いてきた奴はそのまま走っていった。

…………どうなってんだってばよ。

それと材木座八幡って誰だよ、混ざっちゃってるよ。

…………とてつもなく気分が悪いんだけど。

 

 

 

 

こころ「はっ!!

あたし達もこうしちゃいられないわ!

早く手伝いに行くわよ〜!」

 

 

 

弦巻はクラスへと駆け込んで行った。

お前が原因作ってるって事を自覚して頂きたいな。

 

 

 

八幡「……………ん?なんだこれ。

…………チラシ?」

 

 

 

 

あぁ。俺が壁にぶつかった時に、剥がれたのか。

剥がれたのは背中じゃなくて、チラシだったのか。

………………ふむ。小町がいたらきっと笑ってくれたに違いないな。

 

 

 

八幡「………………コレって。」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

先生「お前らー。今日はこの辺で終わりだ。

17時30分には完全下校だからなー。」

 

 

 

美咲「あ、本当だ。

もうこんな時間なんだ…………」

 

 

 

先生が教室に声をかけてくるまでに結構仕事が進んでたと思う。

明日辺りで制作物とかの準備は終わるだろうな。

そこからはそれぞれ担当の内容を覚えて、前日辺りに食材や活動場所に準備をする流れになる。

 

 

つまり俺の文化祭は明日と前日で大体終わりだな。

当日は委員会の仕事があるが、たいしたことしないしな。

 

 

 

美咲「こころー。

今日はこの後どうするの?練習するの?」

 

 

 

こころ「当然よっ!

文化祭もそうだけど、ライブもあるんだものっ!

みんなを笑顔にするためにも練習するわよ!!」

 

 

 

美咲「あ、そう。りょーかい。

じゃああたしはこの後、はぐみと花音さん、薫さんにも連絡しとくよ。

比企谷君は今日バイト?」

 

 

 

八幡「いや、今日はないな。

てか、今週全然ない。月島さんが気を使って休みにしてくれたからな。」

 

 

 

俺たちは歩きながら話を進める。

学校はもうすぐ完全下校時刻になるため、結構な人集りが出来ていた。

 

 

 

はぐみ「こころーん!おーい!

………………はぁはぁ、、、人すごいね!

みーくんから話は聞いたよ!

はぐみは全然OKだよ!」

 

 

 

手を振りながら全速力で走ってくる北沢。

危ないから走るなよな。

 

 

 

美咲「あ、花音さんが見えた。

おー………い……うん。

人の波があってコッチまで来れそうにないから少し待とうか。」

 

 

 

八幡「てか、わざわざ学校で待ち合わせる必要あったか?

現地でも………………いや、なんだよその目。」

 

 

 

美咲「いや、同じ学校なのにわざわざバラバラで行くのもでしょ。」

 

 

 

バカなの?という目で見てくる奥沢。

なんだろう、少しイラッと来た。

 

 

 

 

 

花音「お、お待たせ〜………っ。

私も練習大丈夫だよっ。

文化祭もそうだけど、ライブもあと少しだもんね………!」

 

 

 

こころ「良い気合いだわ!花音っ!

それじゃあ薫と合流してからCiRCLEに行くわよ!」

 

 

 

はぐみ「オー!」

 

 

よくもまぁ、文化祭の準備してこんな時間なのに元気でいられるよな。

元気じゃないコイツらを想像したら怖くなるけどさ。

 

 

 

八幡「あー、俺は自転車取りに行くから先に行っててくれ。

どうせ追いつくし。」

 

 

美咲「うん…………ほら、じゃあ行くよ。」

 

 

 

奥沢達は校門の方へと向かっていった。

…………遠目からアイツらを見てると、弦巻と北沢が小さい子で奥沢がお姉ちゃん。松原さんはお母さんって感じがするな。

 

まぁ、それはさておきと自分の自転車に鍵を刺し、ロックを外す。

アイツらの所へ向かおうと、校門を出ようとしたら…………

 

 

 

 

???「………あ!

おーい!こっちこっちー!!」

 

 

 

 

八幡「……………は?」

 

 

 

 

目の前に慰謝料ふんだくりそうな野生の女子が飛び出してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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過去の想いを今に託して








待て待て待て。何この状況?

いまいち状況がわかってないぞ。

と、とりあえず落ち着こう。

こういう時は冷静にバトルコマンドを開くんだ。

 

 

たたかう ←

カバン

逃げる

自転車から降りて話を聞く

 

 

 

なんか1つだけめちゃくちゃ具体的なのあるんだけど気にしない。

 

 

 

こんなの平和的に逃げるだな。

 

 

逃げる ←

 

 

 

『小町のことば…………

お兄ちゃん!逃げたら小町的にポイント低いよ?』

 

 

 

 

は?小町?いや、待て待て。どこの博士だお前は………

てか、逃げれないの?ポイント低いの?!

お兄ちゃん無事でありつつ小町の元に帰りたいだけなのに。

 

 

こうなったらカバンだ。何かあるはずだろ。

 

 

カバン ←

 

 

 

『……………しかしMPが足りない。』

 

 

おいー!別ゲーじゃねーか!

ふざけんなよマジで…………カバンってそんなMP使う?

MP回復するためにバッグ開いたりするんじゃないの?

回復するために消費するとかやってらんねぇよ。

 

 

 

こうなったら戦うしかない。

 

 

 

たたかう ←

 

 

 

『…………本当に?』

 

 

……………何で聞きかえして来るんだよ。

YES、たたかう!

 

 

 

『…………じゃあ具体的にどうするの?』

 

 

 

 

え……………そりゃどうするって……………攻撃技みたいな……

 

 

 

『えー、でも相手女の子だよ?本当にいいの?』

 

 

 

 

なっ……………。

た、確かに…………でも………

 

 

 

『とりあえず話だけでも聞いてみない?』

 

 

 

そう………だよなあ……。

聞いてから考えるのもありかもしれない…………。

 

 

 

 

『うん。いい子だね。

ほら、自転車から降りて話を聞いてみるといい。』

 

 

 

自転車から降りて話を聞く ←

 

 

 

 

 

八幡「……って。

最初から選択肢1つじゃねーか…………」

 

 

 

あとお前誰だよ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

???「ええと……………大丈夫?」

 

 

 

………それは『頭が』、ですかね?

いや、思われても仕方ないんだけどな。

急に独り言呟かれたら、俺だったら即逃げてる。

 

 

 

 

八幡「いや、少し取り乱したというか……取り乱されたというか…」

 

 

本当にさっきのなんだったんだ………

大体冷静にバトルコマンドを開くってなんだよ。

何を冷静にしたらそうなるんだよ。

うわぁ、はっずいわー。

絶対材木座とかいう名前だしたのが原因だわ。

 

 

 

 

???「あ、あははー。

ご、ごめんね?あたしも急に出てきちゃったし!」

 

 

 

コイツもしかして良い奴か?良い奴なのか?

めちゃくちゃフォローしてくれてんだけど。

 

でも、何でここで待ってたかが疑問だ。

本当に脅されんの俺?

 

 

 

 

八幡「あ………あの、よ、要件の方は………」

 

 

 

???「あぁ、ごめんごめん!そういえば話してなかったね!

あ、まず自己紹介するね!私の名前は海野夏希。

よろしくね!」

 

 

 

海野………夏希………?

うん、知らんな。

まぁ、当然か。向こうも俺の事知らないみたいだし。

改めて目を向けるとする。

 

髪型はおでこを出していて、髪の長さはショート?

肩までだしショートだろ、うん。それで髪の色は………茶色?

クリーム色?うん、わからん………

そういえば、市ヶ谷と髪の色似てるな。

…………じゃあ市ヶ谷色で。

 

 

 

身長は別に高いわけでも低い訳でもないのだろう……………か?

女性の平均身長とか知らんし、どうでもいいな。

 

それと気になっていたのは、彼女がずっと右肩にかけているもの。

バックもそうだが、右肩にはギターケースと思われる物を彼女は背負っていた。

 

 

 

 

夏希「………ん?…あー、これ??

あたし、バンドやってるんだ!

それでコレがあたしのギターだよ。」

 

 

 

八幡「あぁ、そうか。バンド練習頑張れよっ!

じゃあな!」

 

 

 

夏希「あ、ありがとっ!

…………じゃなくて!!ちょっと待って!!」

 

 

 

ちっ。ダメだったか。

 

 

にしてもコイツもか………

最近バンド関係で色々と問題あったからなぁ。

 

 

嫌な予感がしなくもない。

 

 

 

 

夏希「ちょっと頼み事したいんだけどいいかな?

 

 

 

 

材木座君!!」

 

 

 

 

はい帰ります。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

それから俺たちは完全下校時刻となった学校からは離れ、みんな大好きな公園に向かっていた。

俺は自転車なのだが、海野は歩きなので俺も自然と自転車を押して歩いている。

自転車を押しながら歩くのってめんどいんだよな。

一緒に歩いてる人が居たらそいつのペースに合わせつつ、ぶつからないように気をつけなければならない。

 

 

全く………うちの小町を見習って欲しいものだ。

アイツだったら秒で2人乗りをせがんで来るんだぞ?

 

 

…………いや、それダメじゃね?

2人乗り禁止だし。

 

 

 

 

 

夏希「あ、そうだった!

ちょっとここのお店だけ寄らせて!」

 

 

 

1つのお店の前を通りかかり、海野が急に声をあげる。

 

 

…………江戸川楽器店?

あー、楽器店ね。ギター持ってるしなこいつ。

 

でも俺もこの後練習があるんだけど?

早く要件終わらせてくれませんか?

 

 

 

夏希「ご、ごめんね!

今日中に買わなきゃいけない物があってさ。

そっこーで行ってくる!」

 

 

 

八幡「お、おう………」

 

 

行ってしまった………

買うもの決まってるのなら速いだろうか。

それにしても楽器店か。

俺も興味無いわけでは無いしな………………

 

 

八幡「俺も入るか。

得に買うものはないが、こうやって見てみると色んな種類が………」

 

 

有咲「………………」

 

 

 

八幡「………………」クルリ

 

 

 

さぁてと、お店は充分見れたし帰るか。

入口近くの物しか見れなかったけど充実充実。

 

 

海野が来るまでお店から少し離れた所で待ってるかー。

 

 

 

 

有咲「ちょっとまてぇーー〜!!」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お前ふざっけんなよ!

人の顔見るなり逃げようとして!」

 

 

 

何故か今僕は、楽器店まで来て叱られています。

楽器店ってそういうお店だっけ?

 

 

 

八幡「いや、ほら、アレだって。

あ………そう。アレがアレでアレだから」

 

 

 

有咲「どれなんだよっ!

ふんっ!学年1位の語彙力も対したこと…………いや、それもう小学生の言い訳レベルじゃね………」

 

 

お前はその小学生レベルより学力が…………とか言ったらぶっ飛ばされそうだな。

 

てか、海野と戸山たちが一緒にいるのはなぜ?

あともう1人コッチを凄い見てる奴がいるんだけど誰?

 

 

夏希「お、おぉー。

私の市ヶ谷さんのイメージが凄い崩れていく………」

 

 

 

有咲「なっ!?」

 

 

 

 

 

香澄「え〜〜?

有咲はいつも通り…………いや、いつもよりいい調子だよ?」

 

 

 

りみ「あ、あはは……………」

 

 

 

たえ「うん、楽しそう。」

 

 

 

 

有咲「お前らァァ〜!!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

夏希「市ヶ谷さんもバンドやってるんだね。

他の3人はA組の人だよね?私、B組の海野夏希。

私もバンドやってるんだ。」

 

 

 

 

ななんと、海野と戸山たちは友達でもなんでもなかったらしい。

初対面なのに、一緒に話してたの?てか、話しかけるの?

 

ねぇ?さっきから笑顔で一言も喋らない女の子いるんだけどアレ何?

見えてるの俺だけ?ねぇ!ひょっとして俺だけ!?

 

 

 

香澄「そうなんだ!

じゃあ、はっちーとあそこでずっと見てるあの子もメンバーさんなの?」

 

 

 

海野「はっちー?………あぁ、違う違う。

私のバンドはみんな女の子だよ。

それと、この人はメンバーじゃなくて先輩だよ。」

 

 

ひなこ「…………………」

 

 

 

あ、よかったー。見えてるのね。

見えたうえでの今までの対応だったのね。

この人先輩だったのか。

でも、なんか見たことあるような…………

 

 

りみ「あ、ひなちゃん」

 

 

 

香澄「りみりん知ってるの?

でも先輩、どこかで見たことあるような…………?」

 

 

 

有咲「えっ、香澄も?

私もどっかで見たことある気が……………」

 

 

 

お前らもなの?

なに?あの人もしかして凄い人?

記憶に刻まれる用な何かをしちゃってんの?

 

 

 

たえ「グリグリのドラムのひなこさんだよ〜」

 

 

 

香澄、有咲、八幡「「「あーっ!?」」」

 

 

 

 

有咲「は……?」

 

 

八幡「…………すみません。」

 

 

 

「「………………」」

 

 

 

八幡「いや、本当にすみません。

黙るんで、はい。」

 

 

 

何コレきっつ。

ちょっとハモっただけじゃん。

そんな目で見る?市ヶ谷さん。

 

 

花園の言葉を聞いて俺も思い出した。

CiRCLEでのバイト中に、見たことあるわ。

グリグリってなんかめちゃくちゃ有名なバンドだったし。

ライブも客の人数が凄い多かったのを覚えてる。

 

練習も結構来るのに忘れてた。

 

 

 

香澄「そうだ!そうだった!

おつかれさまですっ、先輩っ!」

 

 

 

あれ、でもそういえばこの人ってこんな穏やかな感じだったか?

メンバーだけの時とか見たことあるけど、毎回メンバーの1人に抑えられてた気が………

 

 

 

ひなこ「ふふ………………

集え少女よ!大志を抱け!

フゥーーーーーッ!!!!!」

 

 

 

香澄「え?え? フーッ!抱けー!」

 

 

 

ひなこ「声が小さいー!」

 

 

 

香澄「抱けーーーーっ!!」

 

 

 

ひなこ「お店に迷惑だーーーっ!!!」

 

 

 

香澄「ええーーーーっ!!!?」

 

 

 

ヤバイ、コイツヤバイ。

この人が何で抑えられてたか理由もわかった。

怖い、あのノリに乗れる戸山も怖い。

 

 

 

有咲「やべぇ。りみ、やべぇよ、この人」

 

 

 

ほら!コレが普通の感想だって!

お巡りさーん!コッチです!!

 

 

 

りみ「いい人だよ」

 

 

 

夏希「バンドの相談とか乗ってくれるし」

 

 

 

そのいい人って、俗に言う都合の………………俺、口に出してないんだけどなぁ………。

何で睨まれんのかなー。

 

 

 

ひなこ「えーと、きらきら星の香澄ちゃん!

花園ミステリアスたえちゃん!

蔵弁慶の有咲ちゃん!

そして!!マイシスターりみちゃん!!」

 

 

 

りみ「違うよ〜」

 

 

うわ、止まらねぇよこの人。

………ん?何でこっち見てんだよ。

 

 

 

ひなこ「えーっと、CiRCLEに居た………そう!田中くん!」

 

 

 

 

八幡「誰だよ田中くん。」

 

 

 

本当に誰だよ。返事してやれよ田中くん。

 

 

 

有咲「ぷっ………」

 

 

 

てめぇ、何笑ってんだコノヤロー。

田中くん舐めんなよ、誰のことかわからないけど舐めんなよ。

 

 

 

夏希「ひなこ先輩違いますよ。彼は材木座君。

材木座八幡君ですよ。」

 

 

 

有咲「ぷっは!!」

 

 

 

材木座でもねぇーよ…………

 

 

 

あとお前は笑いすぎ。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

有咲「それで?………ふふっ、田中、いや、材木座だっけ?笑

何でここにいるんだよ。」

 

 

 

 

八幡「笑いながら言っちゃってるじゃん。

てかあの2人はまだしも、お前は俺の名前知ってんだろ。

………あ、そうか!仕方ないかー、学年2位のいでっ!」

 

 

 

夏希「い、市ヶ谷さん!?」

 

 

有咲「ちょっと足が滑っただけですよ。

おほほ………」

 

 

 

いや、無理があるから。

なんかお前、お淑やかな人のイメージあるみたいけど、もう誤魔化せねーから。

思いっきり足踏んでるから。グリグリまでしてっから。

 

 

 

 

りみ「あ、あはは…………

この人は比企谷八幡さんだよ。

田中さんでも材木座さんでもないよ」

 

 

 

ひなこ「あ、そうだったそうだったー!

間違えちゃったー」

 

 

あんたは完全に俺の事は顔しか知らなかっただろ。

 

 

 

 

夏希「え、でも本人が材木座君って………」

 

 

 

八幡「いや、あの時は………うん。

ちょっと………な?

事情があったんだよ。」

 

 

 

 

そもそも名前も立派なプライバシーなのだ。

それを平然と自己紹介とか言って教えるのはいけないと思うんだよな。

 

それともアレか?お前らは名前教えないと誰からも呼ばれない弱者なのか?

 

 

俺なんて、『君』とか、『アイツ』『お前』とか名前知ってるはずのヤツらにすらこう呼ばれてんだぞ?

もう名前関係ないじゃん。関係してるといえば比企谷菌だけじゃん。

 

 

 

 

 

有咲「そ、それにしても先輩は何で私の事知ってるんですか?

話したの初めてですよね…………?」

 

 

 

 

ひなこ「この間、蔵でライブしたってゆりりんに聞いたからー!

かわいい少女達は全部ひなちゃんワールドにご招待!」

 

 

 

有咲「こ、こえぇ………!」

 

 

 

それは不味い、小町が危ない。

 

 

 

たえ「ライブ中は喋らないから、静かな人だと思ってた。」

 

 

 

りみ「止められてるんだよね?」

 

 

 

ひなこ「んー!

なんかねー、イメージ崩れるから黙っとけって!

なんでだろうねー?なんでかなー?

あっ、有咲ちゃん、ツインテかわいいー!」

 

 

 

有咲「ぎゃー!

助けてー、りみー!」

 

 

 

理由が明確なんだけど………………

完全に弦巻タイプじゃん。

タイプと言ってもヤバい奴くらいしかあってないけど。

 

 

だが黙れと言って黙ってくれるのならば、弦巻よりは充分利口だ。

アイツは絶対に無理。

 

 

 

香澄「…………あっ!そうだ、先輩!

先輩にやってもらおうよ、ドラム!」

 

 

 

ドラム?

あー、コイツらそういえばドラム担当がいなかったな。

まさかの募集中だったのね。

 

 

 

香澄「先輩!文化祭でドラムやってください!」

 

 

 

有咲「おまっ、いきなり……………」

 

 

 

ひなこ「ハイっ!喜んでー!!」

 

 

 

有咲「即決!?」

 

 

 

即決しちゃったよ。

 

 

 

ひなこ「んー、でも〜

君達の近くにはひなこちゃんよりバッチリな子いるぜ?

ね、なっちゃん!」

 

 

 

ほう。心当たりがあるのか。

それなら…………いや、でもコイツら文化祭でライブするんだよね?

間に合うの?

 

 

……………そういえば今気づいたけど、普通に考えてバンドのメンバーを集めるのって大変なことなんだよな。

仲良し組とか幼馴染でバンド組むならまだ人数的には揃ってるかもしれないが、うちなんて年上が2人もいるし、クマだっている。

 

 

だけど、ハロハピはメンバー集まるの早すぎたしな…………

弦巻が無理やり引き入れたのがあるからだけど、普通は時間がかかるものなんだよな。

 

 

夏希「……………沙綾のことですか?」

 

 

俺がバンド集めの大変さを考えていると、聞き覚えのある名前が挙がっていた。

さあや?………………山吹のこと?

 

 

 

香澄「え、なんでさーや??」

 

 

 

夏希「…………中学の時に沙綾とバンド組んでたんだ。

私がギターボーカルで、沙綾がドラム」

 

 

 

香澄「さーやがドラム??」

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

夏希「やっぱり戸山さん達には話してなかったんだね。」

 

 

 

りみ「う、うん、聞いた事ないよね。

沙綾ちゃん、バンドやってたんだ…………」

 

 

 

たえ「中学の頃から……………すごいね。」

 

 

 

夏希「結局、一緒にライブは出来なかったけどね。」

 

 

 

香澄「どうして?」

 

 

 

夏希「理由は色々あると思うけど……………

沙綾、言ってくれないから。

ひとりで悩んで、全部ひとりで決めちゃって………

何も言ってくれなくて………」

 

 

 

八幡「………………………」

 

 

 

 

夏希「だから戸山さん達の文化祭のチラシを見て、嬉しかったんだ。

また沙綾がバンドやる気になったのかなって……………」

 

 

 

………そういえばそうだったな。俺も今日そのチラシを見つけた。

海野とぶつかりそうになった時に見つけた。

 

 

バンド名は『Poppin’Party』

メンバーは戸山たちの他に山吹の名前も書いてあった。

 

 

 

 

香澄「なっちゃん………………

私、さーやに会ってくる!」

 

 

 

有咲「は?今から!?」

 

 

 

弦巻と言い戸山といい、行動力の化身かよ。

 

 

 

 

香澄「今からだよ!

何話していいかとか何も考えてはいないけど、さーやと話がしたい!」

 

 

 

有咲「……………はぁ。

止めても無駄なんだろ?………じゃあ行くぞ。」

 

 

 

かっこよ。

 

 

 

たえ「沙綾の家まで競走!」

 

 

 

香澄「負けないよー!」

 

 

 

そう言うと、花園と戸山はもう走り出していた。

 

 

 

 

りみ「え、えぇーっ!

じゃ、私達も失礼します。

…………ま、待って〜!」

 

 

 

有咲「何も走る意味はないだろーっ!」

 

 

 

 

「「「…………………」」」

 

 

 

 

 

ひなこ「およー。行っちゃったねー。」

 

 

夏希「……そうですね。」

 

 

 

俺ももうCiRCLE向かわなきゃなんだけど。

てか、間に合うコレ?アイツらがスタジオ取れた時間にもよるけど、ひょっとしたら終わってるパターンなんだけど。

 

 

 

八幡「…………それで?海野の俺に話したいことってどうなったんだよ。」

 

 

 

ひなこ「あれ?あれれ?

ひなちゃんもしかして邪魔だったりする?」

 

 

 

いや、あんたはうるさいですね。

 

 

 

夏希「なっ…………そ、そういうのではないですっ!!

私は比企谷君が沙綾と仲良く話してる所を見た事があったから、沙綾を助けてくれるかなーと思って、私が知ってる沙綾の過去を話そうとしてたんだけど」

 

 

 

八幡「アイツらとばったり遭遇したって事か。」

 

 

 

夏希「元々戸山さん達にも話す予定だったから丁度よかったよ。

ごめんね?手間を取らせちゃって。」

 

 

 

それはまた凄い偶然なことで。

 

 

 

八幡「なるほどな。

じゃあ要件は聞いたし俺ももう行くわ。

………それとお前は勘違いしてるぞ。

俺と山吹は全く仲良くねーからな。」

 

 

 

俺で遊んでるような奴と仲良くなれるかっての。

 

 

それに…………助ける役はもう足りてんだろ。

 

 

 

 

 

 

ひなこ「………彼も行っちゃったね。

香澄ちゃん達大丈夫かねー。」

 

 

夏希「…………わからないです。

けど、私……………私たちのようには、なってほしくないんですよ。

私は踏み出せなかったから。踏み出したつもりでいただけなんです。

それでも、戸山さん達には出来る………と信じていたいな。」

 

 

ひなこ「………うん。そっか、そうなるといいね。

あー、夏希ちゃん可愛すぎるからひなちゃんワールドにご招待しちゃうね!」

 

 

 

夏希「ちょっ、えっ!?

お断りしまs…………いやぁぁぁー!」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

ミッシェル「あ、来た。」

 

 

 

こころ「遅いじゃない八幡!もう始まってるわよー!!」

 

 

 

花音「大丈夫?体調不良とかじゃないよね?」

 

 

 

はぐみ「さぁ!練習練習!!」

 

 

 

薫「やぁ。八幡も私に会える喜びが爆発してしまったのかい?」

 

 

 

 

CiRCLEに着いてから、ロビー周辺を探しても見当たらない。

時刻を見ると18時37分。

部屋交代したばっかりの時間帯なので、予約名簿を見るとハロハピの文字が。

俺は急いで弦巻たちが予約したスタジオに入った。

 

 

幸い18時30分からだったので、今始まったばかりだ。

早速声をかけられたのだが、松原さんは天使。

瀬田先輩は………なんだろ。男だったら殴ってたな。

 

 

 

文化祭もそうだが、俺たちはその前にライブがある。

最近…………主に山吹関連で色々と問題が起きてるからな。

今はバンド練習に集中しなくちゃいけないな。

よし、やるか……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブまで残り約4日。

 

 

 



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黒服たちは突然に

今日は水曜日の放課後。

ライブまで残り3日を切り、文化祭までは4日を切った。

 

 

 

 

こころ「はちまーん!!

美咲が凄いのよっ!!マジックできるの!!」

 

 

美咲「ちょっ、こころ!

『できるの!!』じゃないでしょ!

あんたも出来るようにならなきゃいけないんでしょ!」

 

 

 

 

花咲川学園の文化祭、通称『咲祭』

本番まで残り数日のため、放課後は学校中が忙しそうに音を立てている。

 

 

 

こころ「はちまーん!見てみてー!」

 

 

 

俺たちのクラスはやることが多いため、準備もそれなりにギリギリまでやるかと思いきや、クラスの奴らが優秀…………というか、文化祭テンションで物凄いスピードで取り組んでいた。

 

 

こころ「ほら!!美咲のマジック何回やっても成功するのよ!」

 

 

 

………工作系の準備は既に終わってしまった為、俺のやることは基本的に無くなっていた。

残りはそれぞれの仕事担当の取り組みになるので、当日に仕事のない俺は覚えることが無いため、暇を持て余していた。

 

帰っていいかな?委員会も今日無いし。

まぁ、これで帰ったらクラスの奴らには白い目で見られ、次の日には黒板にありったけの悪口と共に俺の椅子と机は無くなっているのだろう。

 

 

こころ「はちまんが全然美咲のマジック見てくれないわね?

こんなにも凄いのに!」

 

 

まぁ、この学校にはきっといじめはないのだろうから?

その心配はいらないよな。うん。

そーっと帰ればバレないだろ。バレると思って行動出来ないのは自意識過剰だ。

大丈夫、お前はバレない。誰も気にしてない。お前が消えても変わらない。

 

…………うん、やめよ。自分で言ってて悲しくなってきた。

今日の晩御飯でも考えてよう。

でも、小町が作ってくれれば何でも美味いからなー。

あ、これ八幡的にポイント

 

 

八幡「たかぁいいだっ!」

 

 

美咲「比企谷君忙しそうだね。

でも急に声を上げるとビックリするからやめて欲しいな。」

 

 

今の状況を説明すると、教室の4つの机をそれぞれ2つずつ向かい合わせにくっ付けて座っている。

グループで取り組む授業する時とかに机をくっつけるアレだ。

 

弦巻と奥沢が向かい合わせ、俺が弦巻の隣に座っているのだが………

奥沢に机の下から足を踏まれた。結構強く。 

今も奥沢は喋っているが、目が笑ってない笑顔で凄く怖い。

 

 

 

美咲「………はぁ。

さっきからこころがずっと私のマジックを、目をキラキラさせながら見てくるの!

途中からむず痒くなってきたというか、恥ずかしくなってきたというか………。

こころが比企谷くんに見せるまで永遠とやらされてるんだから早く見て!」

 

 

 

八幡「待て待て。

弦巻が目をキラキラさせてんのはいつもの事だろ。」

 

 

美咲「そこっ!?

いや、そうだけど……………てか、何誤魔化そうとしてるのかな?

早く見ろ。」

 

 

 

怖っ。

マジックを自分から見ろって許容してくるとかどこのパリピだよ。

まあ弦巻の反応が、小さな子どもと同等のピュアっピュアなものだから、相当恥ずかしくなっているのだろう。

本番も小さな子ども結構来ると思うし、練習と思えばいいのでは?

 

 

 

美咲「えー、じゃあ始めます………

まずはこのスペードのエースを…………」

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

こころ「…………………」わくわく

 

 

 

美咲「……………あ、待って。無理、無理ですコレ。

めちゃくちゃ恥ずかしいじゃんコレ。

まじまじに見られるとやってられないよコレ。」

 

 

 

八幡「は?お前が見ろって言っだぁ!!」

 

 

 

美咲「ん?何かな?」

 

 

 

八幡「いや、だから…『ん?何?』ヒ、ヒェ……なんでもないです。」

 

 

 

こっわ。

てか、理不尽極まりないだろコイツ。

気持ちは分からなくもないがな。

 

 

美咲「ダメだ………。

小さい子なら大丈夫だけど、同級生の前でやるのは凄い恥ずかしくなる…………」

 

 

八幡「おい、弦巻弦巻。

弦巻忘れてっから。アイツあれでも一応同級生だから。」

 

 

 

でもそうか…………

奥沢が言ってるのは見た目ではなく精神的年齢という意味なのだろうな。

それなら納得。むしろ正解すぎる。

 

 

先生「弦巻〜。弦巻はいるかー!」

 

 

先生?

そして、なんで弦巻呼んでんの?

 

 

こころ「呼んだかしら!」

 

 

 

先生「お前がさっき言ってた、2階の広い階段の踊り場は文化祭の時使っていいか聞いただろ?

普通の階段の踊り場は狭いし危ないからダメだが、あの広い踊り場なら別に問題無いみたいだが何をするんだ?」

 

 

 

こころ「それは当日のお楽しみよっ!」

 

 

 

八幡「いいのかそれで。」

 

 

 

美咲「ていうか、こころが事前に許可を貰ってる事に驚いてるんだけど。」

 

 

 

八幡「たしかにそれは驚きだな。

おじいちゃん嬉しいぞ。」

 

 

 

美咲「………ん?」

 

 

 

さっきからかるーく、俺たちで弦巻の事煽ってる気がするんだけど気のせいだよな。

いやでも煽ってるというか、事実を言ってるだけだしな。

 

 

美咲「………………え」

 

 

奥沢と俺は被害者というか、迷惑かけられてるからな。

まあ最近は迷惑とも思わなくなくもないが、直接言うと恥ずかしいから絶対に言わないけど。

 

 

美咲「…………ひ、ひきがやくん。」

 

 

 

八幡「………どうした?」

 

 

 

なんか心無しか奥沢がケータイ持って震えてる………というか、顔色が悪い気がするんだけど?

何?ケータイの画面割れた?

 

 

美咲「こ、これ………」

 

 

 

八幡「は?なんだ………よ………っ!?」

 

 

 

俺たちが見たのは、奥沢宛に送られてきたメールの相手が黒服だったって事だ。

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

薫「やぁ、子猫ちゃんたち。

今日も私の出迎えをしてくれるなんて、嬉しいよ。」

 

 

 

完全下校の時間が過ぎたので、俺たちはこのままライブ練習のため、CiRCLEへ向かう途中に瀬田先輩がいる羽丘学園に寄っていた。

 

てか、瀬田先輩大きい紙袋持ってるけどあれ何?

 

 

美咲「まあCiRCLE行くまでに通りかかりますからね。」

 

 

 

おいそう言ってやるなよ。

瀬田先輩以外は花咲川で一緒なんだから寂し…………くはないか。

何よりこの人には、たくさんのファンがいるし。

 

 

花音「薫さんは、劇をするんだったよね。

ギターの練習もあって、大変だったりしない?」

 

 

 

薫「もちろん大変ではあるけど、どちらとも私1人でやることではないからね。

私は私の出来ることをするだけだよ。焦ったって仕方ないからね。

かのシェイクスピア曰く、『賢明に、そしてゆっくりと。速く走るやつは転ぶ』と言うからね。」

 

 

 

花音「………うんっ!

私も薫さんのように頑張るねっ!」

 

 

 

松原さん感激じゃないですか。まあ今のは、かっこよかったな。

瀬田先輩は普段ポンコツ………いや、普段はカッコイイ?

というか、何で女子であんなにカッコイイんだよ。

俺にそのカッコ良さ分けて!少しでいいから!

 

 

 

はぐみ「こころん!

CiRCLEまで競走だよっ!」

 

 

 

こころ「負けないわよっ!!」

 

 

 

美咲、八幡「「……………」」

 

 

 

花音「あ、あれ?2人共……止めなくていいの?」

 

 

 

八幡「え?あぁ、まぁ、別にたまにはいいんじゃないんですかね?

室内で走ったら止めますけど、今はほら………外ですし?」

 

 

 

美咲「そ、それに、止まれって言って止まる2人じゃないじゃないですかー。」

 

 

 

美咲、八幡「「はははっ」」

 

 

 

花音「………??」

 

 

 

松原さんは知らなくていいんです。

ただ1つ言えることは弦巻、もしくは弦巻の近くの何かに盗聴器らしき物が仕掛けられてあることは確かで、それを聴いてるのが黒服ってことも確かってことです。

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「CiRCLEの予約が埋まってる?」

 

 

 

はぐみ「うん。はぐみたちが来た時にはもう全部埋まってたよ!」

 

 

 

まりな「あー、みんなごめんねー!

もう今日は予約全部埋まっちゃってるんだ。

せっかく来てくれたのに申し訳ないよー」

 

 

 

美咲「いや、まりなさんが謝ることは無いですよ。

それは仕方のないことですし。」

 

 

 

花音「じゃ、じゃあ今日はどうする………?

ライブはもうすぐだし、このままだと………」

 

 

 

こころ「大丈夫よ!

私の家でやればいいわっ!」

 

 

 

美咲「まぁ、そうなるね……

こころがいいのなら遠慮なくやらせてもらおっかー。」

 

 

 

まりな「えっ?弦巻さんの家?

あー、有咲ちゃんみたいな蔵とかかな?」

 

 

八幡「あー、はい。まぁ、そんな感じですね。

どちらかと言うと蔵ではなく、城ですけど。」

 

 

口で説明しても信じ難いことだし、見たところで思考停止はすると思うから適当に流そう。

 

 

 

こころ「そうと決まれば早速行くわよっ!」

 

 

 

美咲「あー、じゃあ私1回帰ってもいい?

荷物とか置きたいし、着替えたいから。」

 

 

 

薫「私も今日文化祭の練習中に、子猫ちゃん達から貰った沢山の差し入れがあるから置いてから向かうとするよ。」

 

 

 

あー、その大きい紙袋に入ってるのって差し入れだったのか。

流石だ。

 

 

 

こころ「わかったわ!

それじゃあみんな、準備が出来たらいつでも来てちょーだい!」

 

 

 

八幡「じゃあ俺は少しCiRCLEに残って、月島さんにセトリチェック貰ってくる。」

 

 

 

美咲「あー、じゃああたしも」

 

 

 

八幡「いやいい、俺自転車だし。」

 

 

 

美咲「そう?じゃあお言葉に甘えさせて貰おうかな。」

 

 

 

花音「ご、ごめんね……?

2人にそういうこと任せちゃって………」

 

 

おっと…………松原さんが申し訳なさそうな顔をしている。

本当に優しいなー、天使だなー。

 

 

八幡「いやいいんですって。

好きでやって………はないな。流れ……というか、適材適所です。」

 

 

美咲「そうですよ。

それに比企谷くんはああ言ってますけど、意外と私たちこういうの嫌いじゃないので。」

 

 

 

八幡「おい。」

 

 

勝手に決めんなよ。

当然好きでやってはない………うん、そのはずだ。

じゃあ嫌いか?と言われたら、即答で嫌いではないと答えられるな。

 

……………嫌いじゃないじゃん。

 

 

 

美咲「それじゃあ後でね。」

 

 

 

はぐみ「ばいばーい!」

 

 

 

 

八幡「おーう。」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

奥沢たちと別れ、月島さんにセトリの相談を受けたが特に注意されることも無く、当日もこれで大丈夫と言われた。

思った以上に早く終わった。

俺は自転車なので普通に早く行けるのでは?

 

まぁ、集合時間も決められてないし、1度俺も家に帰るかな。

 

 

 

 

 

 

八幡「なんて思ってた時期もありました。」

 

 

 

紗南「お兄ちゃん、誰に向かって言ってるの??」

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

CiRCLEの帰り道、公園を通りかかったところで、見覚えのある子たちから声をかけられた。

 

これが同級生とかだったら完全に気付かないふりして帰ってたのに。

俺ってば年下に甘いとか優しいなー。

 

 

そして、成り行きで家まで同行することに。

 

 

 

純「送ってくれてありがとうございます…………」

 

 

 

少し照れくさそうに言う山吹家の長男(多分)。

今思えばコイツらの最初の出会いは感動的だったな。

 

 

…………何も感動出来ないけどね。

泣けるのは俺1人なんだけどね。

めちゃくちゃ怖がられてたし。

 

 

 

紗南「お兄ちゃんは文化祭何やるの?」

 

 

 

む、さすがはあの、からかう面倒なお姉さんの妹だ。

まだ小さいというのにコミュ力高い。ただの興味本位で聞いてきたとしてもコミュ力高い。

 

 

 

 

八幡「俺は………まぁ、色々だ。色々ありすぎてやることないって感じの人だ。」

 

 

 

紗南「…………??

サボり?」

 

 

あらヤダ。俺サボりと思われてんのかしら?

……ビックリしすぎてオカマ口調になっちまったよ。

 

 

 

山吹父「純?紗南?

それに君は…………」

 

 

もう既に俺たちは商店街の中にいて、山吹家まで着いていたようだ。

山吹のお父さんらしき人がこちらへ近づいてくる。

 

 

 

純、紗南「「パパー」」

 

 

ちょっと?そんな走っていくと危ないよ?

転ぶとかそういう意味じゃなくて、俺が危ないよ?

まるで俺から走って逃げた的な解釈になったらどうしてくれるの?

 

 

 

山吹父「2人ともおかえり。

………ところで彼は?」

 

 

 

お、割と冷静だぞこのお父さん。

殴りかかってきたらどうしようかと思ったわ。

このまま去るのもいいけど、一応近所までとは行かないが、地元が一緒だからまた会う可能性を考えると、自己紹介はしといた方が良さそう………あ。

 

 

八幡「………………」

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

八幡「……………よ、よう。」

 

 

 

 

沙綾「お父さん、私たちあの人知らないよ。」

 

 

 

 

八幡「や、山吹さん?

そ、そういう冗談は良くないんじゃないかなーって………」

 

 

 

沙綾「知らないよね〜、さーな?」

 

 

 

紗南「うんっ!知らなーい!」

 

 

 

天使が悪魔に堕ちた……………

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

山吹父「そうかそうか、沙綾の同級生か。

2人を送ってくれた事、感謝するよ。」

 

 

 

山吹の父さん優しくて良かったー。

話が通じない人だったら殴られてた気がするわ。

 

てか、山吹の奴マジで人をからかうのにも限度があると知っておいた方が良さそうだな。

妹が天使で無くなってしまう前に…………

 

 

 

山吹父「良かったらコレ、うちのパンを貰ってはくれないかな?」

 

 

 

そう言って紙袋を差し出してきた。

結構沢山入ってるんだけど!?袋から飛び出てる量があるんだけど…………

 

 

 

八幡「いや、でも自分お金がないので……………」

 

 

 

山吹父「お代は当然いらないよ。

お店で残った余り物だからね。」

 

 

沙綾「あ!

余り物だからって美味しくないわけじゃないからね。」

 

 

いや、それはそうだろうな。

にしてもコイツ、自分の家のパン大好きだな。

 

まあ俺も?

小町が作る料理は大好きだしそんな感じだろうな、うん。

 

 

八幡「いやでも自分が勝手に送っただけなので大丈夫です。」

 

 

 

あのまま「じゃあな!」なんて言える度胸がなかっただけなんだけど…………

姉に知られてたら学校でまたいじられるし。

 

それよりも弦巻の家に行かなきゃな。

遅すぎたら何言われるかわからんし。

 

 

沙綾「ほら、この前のお礼も兼ねてだよ。

それに比企谷君が貰ってくれなきゃ結局捨てちゃうし。」

 

 

八幡「は?………………んんっ!

…………捨てるくらないなら俺が貰う。」

 

 

*貧乏性

 

 

 

沙綾「はいっ、どーぞっ!

当然捨てるのは嘘だけど、もう比企谷君が触れたから返却不可って事で!」

 

 

 

八幡「……………はぁ。

……………どうも。」

 

 

 

返却不可ってなに…………。

俺が触れたからとか言わなくてもいいじゃん。

まあ今回はパン貰ってるから許してやるけどな、お父さんに免じて。

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「う〜〜んっ!今のはすっごく良かったわ!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!!

いけるよ! !はぐみ達なら本番も大丈夫だよっ!!」

 

 

 

弦巻の家で2時間ほど練習をした。

今日ラストの合わせだったが、2人の言う通り中々上手くいった…………と思う。

 

まぁ、ライブもすぐだし、上手くいかなきゃ行けないのは当たり前なんだけどな。

それでもやはり嬉しいものがあるのだろう。

 

 

 

花音「みんなお疲れ様。

美………ミッシェルは大丈夫………?」

 

 

 

ミッシェル「いやちょっと休憩したいかなー。

喉乾いた。比企谷くんなんか飲み物。」

 

 

 

八幡「ナチュラルにパシんなよ。まあいいけど。」

 

 

 

コイツが1番大変なのは見ずとも分かるからな。

でも飲み物飲むなら一旦部屋から出るか、なんかしなきゃ行けなくない?

3バカいるし。

 

 

 

薫「あぁ、本番がとても楽しみだよ!

子猫ちゃん達もきっと私たちを待っているよ。」

 

 

 

こころ「当然よ!

世界を笑顔にする第1歩だものっ!」

 

 

 

美咲「ふー…………にしても、あんたたちは気楽でいいね。

あたしは結構緊張してきたよ………」

 

 

 

八幡「いやお前、ミッシェルだから顔も出さないしそこまでって言ってたじゃねーか。」

 

 

この前言ってたからな。

顔隠れるのはちょっと羨ましいと思ったが、着ぐるみ着てやるのは辛いから勘弁。

 

 

 

美咲「いや、どちらかと言うと失敗しないか不安で緊張って感じかな。

なんせ、ライブ中こころが暴れそうだし。」

 

 

 

花音「あー…………うん………。

暴れそうだね…………」

 

 

八幡「暴れるな、間違いなく。」

 

 

練習で暴れてる時点でもう察し。

本番の熱とノリではしゃぎまくる未来見えた。

 

 

 

こころ「早くライブがしたいわーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

〈山吹家から帰宅した比企谷家にて〉

 

 

 

八幡「たでーま。」

 

 

 

テトテト

 

 

小町「おかえりー!

………およ?お兄ちゃん何それ、パン?」

 

 

 

なんだお前可愛いなおい。

テトテトっておい、しかもエプロンっておい。

 

 

 

小町「お兄ちゃん?

…………あー、うん。

どうしたの、ごみいちゃん?」

 

 

 

八幡「いや、ちょっと待って。

『あー、うん。』で何を悟ったの?

そして、ごみいちゃんは酷いと思わない?」

 

 

 

小町「いや、お兄ちゃんが変なこと考えてるんじゃないかなーって。

それと、小町に蔑んで欲しいのかなーって」

 

 

八幡「前者はまあ惜しいが、後者はかすりもしてないね。

お兄ちゃんノーマルだから。

むしろ属性無さすぎて逆に強いかもしれないとか思ってるから」

 

 

 

小町が可愛いと思うことが変だと言うのなら、変なことは考えていたけど、蔑まれたくはないな。

 

 

 

小町「はいはい。

それでそのパンは?」

 

 

あら冷たい。

 

 

八幡「あー、コレな。

捨てられそうだったから拾った。」

 

 

 

小町「え、捨て犬なの?!

ダンボールから拾っちゃったの?!」

 

 

八幡「いやまあ貰いもんだ。

美味いらしいぞ。めちゃくちゃ自慢してくるほどには。」

 

 

 

小町「へー。

……………あ、本当だ。すっごい美味しい。」

 

 

 

ほう。

小町の笑顔が見れたので完全に今日の山吹のからかいは無かったことにしてやろう。

 

 

 

小町「あれ、中に封筒?

なになに……………んん??」

 

 

八幡「どした小町ー。」

 

 

 

小町「おに………おに…………」

 

 

 

おに?………鬼?

 

 

 

小町「お兄ちゃんに彼女さんがいたーーー!!!」

 

 

 

八幡「………………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君へ

 

今日はありがとね!

前話してたパン、本当に美味しいから食べてね!

それとうちの店のクーポンも入れといたから来てね!!

 

 

 

 

 

 

 

比企谷君の彼女より

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………っ!」ビリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




美咲と八幡が見たメール。


奥沢 美咲様へ


文化祭やライブ等、こころお嬢様が毎日お世話になっております。
今後とも困ったことがあったりしましたら、私たち黒服を頼ってください。
私たちは常に、こころ様に付き添っています。
姿は見えずとも、こころ様に呼ばれましたら直ぐに駆けつけることも出来ます。
こころ様の周りで起きてることは、把握済みなのです。

いきなりおかしな話をして変でしたね。
今後ともこころお嬢様をよろしくお願いしますね。


あ、隣にいる比企谷様にもコレを見せるようにお願い致します。



黒服より。


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幕開け






 

 

『ありがとうございました〜!』

 

 

 

 

店内の涼しい空間から急に外に出ると、例え春と言えど暑く感じてしまう。

今日は久しぶりに、母上様と一緒に買い物をしていた。

買い物自体は別に久しぶりという訳では無い。

なんなら小町とよく行ってるまである。

まあ大体はショッピング!ってよりは、晩御飯とかの食材系だからスーパーなんだけど。

 

 

 

 

 

 

小町「本当に小町も買ってよかったの?」

 

 

 

八幡「いや、当たり前だろ。

むしろなんで俺のまで買ってんの?」

 

 

 

比企谷母「俺のまでって言うけど、高校生はみんな持ってるものじゃないの?」

 

 

 

八幡「ふっ、俺を舐めるなよ。

みんなという枠の中に入れてない俺にとって恐れるものは、権力と金と集団と人間」

 

 

 

 

小町「結構あるじゃん…………

しかも似たようなのあったし、最後は酷い。」

 

 

 

 

2人からは引いたような目で見られる。うん、しっかりと通常運転だ。

………なにそれ悲しい。

 

 

 

 

比企谷母「それでもバンドの友達がいるじゃない。

今まで不便だったでしょ?」

 

 

 

うーん、弦巻大好き集団さんがいたからな………………

正直無くても困らないレベルで過ごせてました。

 

 

 

八幡「まぁ俺よりも、小町は必須レベルだ。

むしろ俺が小町の分も買ってあげるレベル。」

 

 

 

比企谷母「小町の分はいいの。

あんたは自分の分だけ払ってくれるだけでも助かるわ。」

 

 

 

小町「小町的には凄くポイント高くて嬉しいけど、お兄ちゃんはいいの?

お兄ちゃんは自分のお金で買ってるのに、小町は…………」

 

 

 

…………はぁ、本当に可愛いやつだ。

小町はいつもは、俺をからかったりたまに辛辣な時があるが、根は凄く優しく、家族のことを凄く大切に想ってくれている。

 

もう本当に出来た妹だ。

小町は末永く俺といつまでも暮らすがよろし。

 

 

 

小町「お兄ちゃん??」

 

 

 

 

八幡「あ、あぁ、すまん、ちょっとトリップしてた。

別に何も気にする事はないぞ?

そもそも小町は年齢的に働けないしな。

それに俺は欲しいとも思ってなかったし、あったところで感が強かったからな。周りの奴らは持ってる奴が多かったけど、対して興味が無かったし。」

 

 

 

小町「いや、少しくらい興味持とうよ。

でも……………その、ありがと。」ボソッ

 

 

 

比企谷母「あら、小町ちゃん可愛い。」

 

 

 

八幡「小町が可愛いのは当たり前」

 

 

 

小町「も、もう!お兄ちゃん達知らない!」///

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「よし……………はい!大体の設定は終わり!

お兄ちゃん落とさないように気をつけてよね?」

 

 

八幡「はいはい。」

 

 

 

映画の予告とかで見たことあるもんな。

個人情報の塊だから、悪人の手に渡ったらとてつもなくやばいってやつ。

 

 

まあなんだかんだありまして、

 

 

 

八幡「スマホを買いました。」

 

 

 

小町「へ?どしたの急に………」

 

 

 

まぁ、そりゃ驚くよな。

俺も驚いてる。

 

 

八幡「いや、なんでもない。

俺もなんで言ったか自分でもわかってないから」

 

 

 

小町「……………??

お兄ちゃん疲れてる?

今日は練習あるんだから休めないけど、帰ってきたらマッサージする?」

 

 

 

え、したい!

…………はっ。危ねぇー。

でもこの小町はマジで心配モード入ってるな。

 

 

八幡「いや、本当に大丈夫だ。

小町が家で温かいご飯を作って待っててくれたら、お兄ちゃんはもうちょー元気になる。」

 

 

あー、コレはポイント高すぎたかな。

小町の照れ顔が頭に浮かぶわ。

 

 

 

小町「いや………うん、その気だけど口に出して言うとなんか新婚さんっぽいというか、なんか凄い嫌。

それとお兄ちゃんちょっと狙いすぎ。恥ずかしくないの?」

 

 

八幡「え、待って待って。

思ってた反応と違うし、だいぶ恥ずかしい。」

 

 

小町「ほら、早く行った行った!

もう時間でしょ?じゃあねー、行ってらっしゃーい!」

 

 

 

八幡「え、あ……………はい。

行ってきます…………」

 

 

 

小町が………小町が…………可愛い小町が…………

 

 

 

これが反抗期って奴なのか?

いや、反抗期に入っても可愛いは変わらないんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷母「小町?

なんで顔赤くなってんのよ。熱?」

 

 

 

小町「へ!?い、いや、なってないよ?

お母さん変なこと言わないでよ!!」

 

 

 

比企谷母「無理があるでしょ………

まあ八幡は小町にはベタベタで優しいからね。

……………あ、小町も、だっけ?」

 

 

 

小町「ち、違うよっ!!!」///

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は金曜日で、学校はお休み。

正確には今日と明日の土曜日が休みだ。

 

 

日曜日と月曜日が文化祭だから、準備期間で休みって感じだな。

実際そんなにかからないから助かる。

 

 

 

ライブは明日が本番なので今日は、CiRCLEでリハーサルも兼ねた練習日だ。

もう本当に何してんだろ。文化祭の1日前にライブはマジで予定ミスった。

 

 

 

 

花音「あ、比企谷君………っ!」

 

 

 

美咲「…………本当だ。」

 

 

 

 

前の方で手をひらひらと振る松原さんが見える。

あと奥沢も。

 

 

うん、これは悩むなー。

止まって合流するか、挨拶だけ交して先に行くか。

 

コレが知り合いレベルだったら悩む間もなくしっかりと挨拶をして、突っ切るんだけどな。

相手は知り合い以上であり、しかも結局待ち合わせもしてるからなー。

 

でも、止まって交流したら、『は?何で一緒に来んの?社交辞令なんだけど?』みたいなこと思われてたら、死の呪文を唱えることになるし………

 

 

いや、待て待て。相手はあの松原さんだぞ?

天使属性の松原さんだが、そんなこと思わないとは言いきれないけど……………いや思わないわ。だって天使だし。

 

 

奥沢は知らんな。アイツ最近容赦ないし。

 

 

 

美咲「比企谷くんストップ。止まって。」

 

 

 

花音「み、美咲ちゃん………っ?」

 

 

 

美咲「いや、なんか今不快なこと思われた気がするので。

はい比企谷くん、荷物持って?」

 

 

 

八幡「いやお前それ、勘違いだったら被害妄想激しすぎだからね?」

 

 

 

なんでわかるんだよ………口に出してないよな?

てか、そんな酷いことは言ってない。

 

 

美咲「勘違いだったらってことは、当たってるってことだよね?」

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

花音「……………………」

 

 

 

美咲「……………………」

 

 

 

 

 

八幡「自分のカゴが空いてるので、良かったら荷物を入れてください。」

 

 

 

美咲「わー、ありがとー。

ほら、花音さんも遠慮しないで」

 

 

 

花音「え、わ、私も………っ?

そ、それじゃあ…………ごめんね?比企谷君」

 

 

いや全然いいんですよ。

あー、松原さんマジ天使。

それに比べて奥沢は…………この鬼!いや、クマ!ミッシェル!!

 

 

 

…………ミッシェル!!

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「わぁーい!」

 

 

 

こころ「そぉーれっ!!」

 

 

 

 

薫「この位置が1番目立つ…………いや、こっちもいいね。」

 

 

 

 

まりな「あ、あはは……………」

 

 

 

 

八幡「おい、これリハーサルだから。

テーマパークじゃないから。」

 

 

 

確かに誰もいないステージはちょっとテンション上がる。

俺もバイトで初めて入った時はなんか、こう………ね?

しっかりテンション上がってました。

 

 

美咲「音量調整は………うん、これでいいかな。

次は……………」

 

 

 

奥沢を見習え、奥沢を。めちゃくちゃ真剣だぞ。

真剣すぎて俺がふざけてたら切られるレベルまでには真剣だ。

 

 

 

花音「み、みさきちゃん、私も手伝えることないかな?」

 

 

 

美咲「あー、じゃあここをですね……………」

 

 

 

 

明日も当然、当日リハーサルもするが今日は順リハ、順番でリハーサルをするのがメインになる。

 

ライブ当日は基本、順リハではなく逆リハをする。

その名の通り順番にするのではなく、順番の逆からリハーサルをしていくのだ。

当日に逆リハをするのは大きい理由がある。

 

 

 

そもそも明日ライブをするのは俺たちだけではない。

他のバンドも複数参加するライブだ。

 

まあ今回開催のライブのスタンスは、今年新しく出来たバンドの為のライブらしいしな。

 

 

つまり、俺たち以外のバンドも演奏するにあたって本番のリハーサルはあまり時間がとれないのだ。

 

 

 

そのためにも逆リハは効率がいい。

順リハと逆リハの違いは至ってシンプルだ。

 

 

 

順リハが、1バンド目→2バンド目→3バンド目………と最初からスタートするのなら、逆リハは4→3→2→1と、終わりからリハーサルをしていく。

 

 

 

逆リハをすることによって、最後にはトップバッターのバンドでリハーサルを終わることができるので、セッティングをし直さなくて済むからだ。

 

ただ月島さん曰く逆リハは1バンドの拘束時間が長引くから、順リハを採用してる場所もあるとかないとか。

 

 

 

 

美咲「次のバンドの人も控えてるんだから早くやるよー」

 

 

 

こころ、はぐみ、薫『はーい!!』「了解したよ」

 

 

 

オカンだわ。奥沢さんオカン属性だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

まりな「はい、それじゃあハロハピはOKだね。

お疲れ様ー。それじゃあ、明日はよろしくね!」

 

 

 

「「ありがとうございましたー」」

 

 

 

 

前日リハが無事に終了した。

 

 

音響担当のPAスタッフに失礼な態度を取らないか心配だったが、オカン奥沢が無事に要望を伝えていた。

 

 

まあPAスタッフはCiRCLEの人だから、俺のバイト先輩なんだけど。

なんかあの人弦巻ファンだし。年上の女性は弦巻に堕とされるのか?

黒服の人とか黒服の人とか黒服の人とか。

月島さんは大丈夫みたいだけどな。

 

 

 

こころ「それじゃあこのまま私の家に向かうわよっ!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!レッツゴーだね!」

 

 

 

元気のいいことで。

 

 

…………それにしてもだ。

人の家でバンド練習出来るのは凄い助かるな。

いや、人の家だっけあれ?人は人でもお姫様の家か。

だが、明日が本番でCiRCLEも使えない状態なので弦巻の家にはすごい助かっている。

CiRCLEからは、歩いたら大体20分ほどで着く距離だが、いつもの黒服さんが車を…………

 

 

 

八幡「あ」

 

 

 

 

薫「………どうしたんだい?」

 

 

 

美咲「え、なに?どうかした?」

 

 

 

花音「比企谷君?」

 

 

 

こころ、はぐみ「「???」」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、いや、なんでもない………です」

 

 

 

5人「「???」」

 

 

 

 

 

今思ったけど、コレって俺のせいで今歩いてる…………よな。

いつもは時間がある時なら歩いて向かうけど、急いでる時とかは車だったもんな。

理由は単純明快で、俺が自転車に乗ってるから………か。

俺に気にせず乗れよって言っても無駄だろうし……………

…………そう思ったら少し申し訳ないと感じなくもない。

 

 

 

 

八幡「……………あ、アレです。

荷物良かったらカゴに入れてください。」

 

 

 

 

今度からCiRCLEから弦巻の家に向かうとわかる時は、歩いていこうと決めた瞬間であった。

 

決して車がいいとかそういう訳では無い。

リムジンに乗りたいとかそういう訳じゃ無い。

 

 

 

 

 

……………瀬田先輩、ギターはちょっと自分で持ってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「当然自転車も運ぶ事が出来ますが…………

本日はこころ様が歩きたいと仰っていましたので。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………?」キョロキョロ

 

 

 

 

美咲「……………比企谷くん何やってんの?」

 

 

 

 

八幡「いや、脳内独り言に返事した人がいた気がして。」

 

 

 

 

美咲「…………?」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《〜〜〜〜〜〜♬》

 

 

 

 

 

 

演奏が終わった直後、俺たちはお互いの顔を見て深く頷きあった。

 

 

 

6人「「………………………」」

 

 

 

 

こころ「ん〜〜〜っ!!

今のす〜っごい、良かったわね!!!」

 

 

 

はぐみ「うんっ!!はぐみ、もう1回今のやりたいよっ!!」

 

 

 

薫「今までで1番良かった事は間違いなさそうだね。」

 

 

 

花音「うん…………っ!!

わ、わたし…………1回もミスが無かった………っ!」

 

 

 

 

ミッシェル「はぁはぁ……………

はぁ…………まあ、今日だけでも結構練習したからね。」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

うわ、達成感すごいなコレ。

正直弦巻がライブをやろうと言うまでが早すぎたため、1回目のライブは微妙な感じで終わりそうだと思っていたけど、何とかなるくね?

 

もちろん他のバンドと比べてしまったらって所はあるかもしれないけど、たった数曲ならそれなりの演奏は出来ることがわかった。

 

 

こころ「はちまん?

どうかしたの?ぼーっとしちゃって!」

 

 

 

あ、え?

いつの間に俺が注目されてんだけど?

にやけてた?さすがにそれは無いよね?

 

 

八幡「いや、ほら、アレだ。

明日のライブで今の出来たら良かったじゃねーかと思ってな。」

 

 

うん、それっぽいこと言えたわ。

まあ実際問題、本番はやはり緊張して今みたいなベストな演奏はキツイのかもしれない。

 

 

 

こころ「今出来たんだもの!!

きっと明日も出来るわ!!」

 

 

 

はぐみ「うんうん!

本番は人が多いかもだけど、根性だよっ!!」

 

 

 

 

薫「本番で成功するために練習があるものだよ。

練習で成功したのなら、本番でも出来るさ。」

 

 

 

美咲「うわ………出たよ。ボジティブ3人。

まあ頼りには………………な、、る、、うん。多分。」

 

 

 

今お前の中で何が起きたんだよ………

急に自信なくす辺り、きっと色々とフラッシュバックしたんだろうな。

コイツら基本ぶっ飛んでるからな。

 

 

 

花音「で、でも、私…………少しだけ、ほ、本当に少し……

自信がつき、、、ました。」

 

 

 

美咲「花音さん……………」

 

 

 

松原さんがめちゃくちゃ精神共に成長している。

いい事だ。

 

 

こころ「それじゃあまだまだやるわよ〜〜!!」

 

 

 

 

ミッシェル「えっ、ちょちょ、えっ!?」

 

 

 

 

八幡「いや流石に休憩挟むぞ。

てか休憩しなきゃキツい、だるい、しんどい。」

 

 

 

結構ガッツリ練習してたからな。

本番が明日だからといって根詰めるのもいいが、それで体調崩したら本末転倒だ。

 

 

 

八幡「てことで、20分くらい休憩。

俺はちょっと御手洗を借りるな。」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

弦巻の家の御手洗、まあトイレはでかい。

でかいというか、トイレそもそもの部屋が大きい。

てか、全てにおいて規模がでかい。

 

 

なんだろ………

トイレって狭いからこそいいものだと実感出来た。

別に広いのが嫌だとかそういう訳ではないんだけど、違和感というか、落ち着かない。

 

 

それと当然だが、初見だと弦巻の家は絶対と言ってもいいくらい迷子になる。

規模はもう簡単に説明すると学校。

まあ学校より大きいのは確かだけど……………

イメージはそんなもん。

 

 

こんな広い家にトイレの部屋って幾つあるのだろうか。

いや、すごーくどうでもいい疑問なんだけどね。

トイレも今まで入ってきた部屋も綺麗だから、どれくらいの人で1日掃除をしているのかも気になってくる。

…………この家、いや弦巻家?、黒服とか謎が多いから気になってしまうのも仕方ないのかもしれない。

 

 

 

美咲「あ、比企谷くん。」

 

 

 

八幡「………あぁ、奥沢か。」

 

 

 

一瞬ビックリして変な声をあげそうになったのを抑えた俺はよくやった。

 

 

 

美咲「はぁ、、、

さっきの演奏は良かったよね。」

 

 

 

八幡「…………まあそうだな。

今までで1番良かった気はするレベルの演奏だったと思う。」

 

 

 

美咲「正直うちは、初心者が多いからね。

私もそうだし、はぐみと薫さんも。」

 

 

 

八幡「初心者って忘れるくらい上達が早いと思うけどな。」

 

 

 

美咲「そう言って貰えるとありがたいね。

比企谷くんと花音さんは最初から出来てたからあたし達は割と焦ってたからね。」

 

 

 

頑張ってる事など言われなくてもわかるレベルで上達している。

理由が俺と松原さんだったのは今知ったけど。

 

 

 

美咲「こころも何の経験もないだろうに。

それなのにしっかりと歌上手いしね…………」

 

 

 

乾いた笑いで言う奥沢。

確かにな、アイツは歌上手い。

ただ演奏してる時は少し走りがちというか、みんなに合わせるよりかは「私についてきて!」のスタイルの方が向いてるっぽいしな。

 

 

八幡「というか、俺も結構ギリギリだけどな。

経験者って言っても、数年も前の話だったしな。」

 

 

 

小学生の頃だし、ブランクってかもう実質未経験者。

 

 

 

 

美咲「それでもあたし達よりは充分弾けるじゃん。

私なんて生きてく中でDJに触れるなんて思いもしなかったからね…………」

 

 

 

八幡「あぁ、忘れてたわ。

1番すげーのお前だったな。」

 

 

まじで奥沢はヤバい。

ミッシェル……………着ぐるみの中に入って演奏出来るのが凄すぎる。

いやね?プロでもいるかもしれないけど、それはプロだし。

練習とか何年、何十年とかやってて出来るって感じだろう。

 

 

奥沢は高校生。てか、同級生。

そして、バンドどころかDJ初心者。

それを着ぐるみ着てやるとかどんなハンデだよ。

 

 

しかもDJだけじゃなく、ライブの会場をとったりとか、バンドの外側の事もこなすとか、まじやばい。

語彙力飛ぶくらいにはヤバい。

 

 

 

美咲「……………っ。

ま、まあ私もなんでこんなことしてるんだろうってたまに思うけどね。

ミッシェルの中、黒服の人達が改良して凄く快適にしてくれてはいるけど、動いたりするとやっぱり暑いし、色々と不便だし。」

 

 

 

八幡「あー、多分今の聞かれてたな。

姿は見えないけど絶対聞かれてた。」

 

 

 

こうして、ミッシェルはグレードアップを重ねて行くのだろう。

 

…………いつか空でも飛ぶんじゃねーの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

美咲「それじゃあお疲れ〜」

 

 

 

花音「お疲れ様………。

明日、、、みんな、、、頑張ろ…………うね。」

 

 

 

はぐみ「かのちゃん先輩緊張し過ぎだよ!

もっとリラックスリラックス〜!」

 

 

薫「大丈夫、本番は明日さ。

今日はゆっくり寝るといいよ。」

 

 

こころ「明日は世界を笑顔にする第1歩にするわよ!」

 

 

 

「「「おー!!!」」」 「「……お、おー!」」

 

 

 

 

 

と、気合十分な弦巻たち。

 

明日はライブ本番。

やれることはやってきたし、もう待ったなし。

今日はゆっくり寝れるのか、それだけを心配して帰路に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員と別れ自転車に乗り、家に向かう。

辺りはもう真っ暗で、春の涼しい風を身体に受ける。

時刻は21時を過ぎており、結構長く練習していたと今思う。

小町には遅くなるって連絡したし、まあ大丈夫だろう。

 

この時間で急に声をかけられたら、なかなか危ない事件に巻き込まれるか、怖い人の可能性が高いため、お座りモードから立ち漕ぎモードに変更して、ギアを上げ、それいけ「あ、ハッチーだ!!」…………。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

おたえ「何かと会うよねー。」

 

 

 

香澄「うんっ!!

大体ハッチーがこっちに向かって来るよね!」

 

 

八幡「まるで俺が会いに来てるって言い方やめて貰えません?」

 

 

俺が向かってきてるってのは、家に向かってるからだし、声を掛けてくるのはお前らからなんだよなぁ。

 

 

 

 

有咲「…………………」

 

 

 

 

あとコイツ、市ヶ谷………。

俺の事かなり嫌いだろうし、こいつらと話すことないので即撤収しなくては。

 

 

 

有咲「おい、なんで今あたしの顔見て帰ろうとしたぁ!」

 

 

 

うわ、めんど!!

お前のためでもある俺の行動を、お前が止めるんかい。

 

 

 

 

八幡「いや、そういう訳では無い。たまたまです、マジで。

じゃあ俺この後用事あるから……………それでは」

 

 

 

 

はい完璧。

 

「本当はないのに、あるとよく言われるものな〜んだ?」

 

 

 

 

答え【用事】

 

つまり世の人間は、何もなくても用事はあるという事だ。

暇という用事がな。

 

 

 

香澄「あ、そういえばね!

文化祭であたし達バンド演奏するから、はっちーも見てね!」

 

 

 

たえ「Poppin’Party!!」

 

 

 

八幡「暇だったらな」

 

 

 

 

そういや文化祭でライブやるのか。

まあでも俺、文化祭実行委員ですし。

弦巻が自動的に何もしない幽霊委員になるので、仕事増えますし。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

帰宅し、風呂も入りご飯も食べ終えあとは寝るだけという状況を作り出した。

 

明日はライブ本番だし、午前中も練習があるので、早く寝ることに越したことはない。

 

 

のだが………………

 

 

 

 

 

 

小町「とうとう明日ですなぁー。

お兄ちゃん緊張してるー?」

 

 

 

八幡「こまち……………。んー、まあなー。

初ライブだし、流石に緊張はしてる。」

 

 

 

小町「そもそもお兄ちゃんがバンドに入る事になった時点で、小町は驚きだけどねー」

 

 

 

八幡「安心しろ。俺の方が驚いてるから。」

 

 

 

弦巻に無理やり誘われたとはいえ、今は自分の出来ることをやってる時点で、俺は…………

 

 

 

小町「でも、バンドに入って良かったでしょ?」

 

 

 

ニヤニヤと笑いながら聞いてくる小町。

図星でしょ?みたいな顔が可愛くもあり、憎たらしさもある。

 

 

 

八幡「まあ、おかげで毎日が忙しいけどな。」

 

 

 

バンドとバイトは中々大変。

何より勉強もあるからな…………

 

 

 

小町「えっ?お兄ちゃん毎日が充実してるの!?

やったね!お兄ちゃんリア充じゃん!」

 

 

 

 

そうか、俺はリア充だったのか。

彼女、彼氏いる=リア充と勘違いしてる奴が多いらしいので、俺も実質彼女持ちってことだな。

 

 

 

 

小町「…………お兄ちゃん、演奏中とかにもしも上手く行っても、そのドヤ顔はやめてよね」

 

 

 

八幡「…………ご忠告どうも。

意味までは聞かないでおいてやるよ。」

 

 

 

俺が傷つきそうだからな。

 

 

 

 

八幡「明日も早いしもう寝るわ。」

 

 

 

 

小町「うん、そうだね。

…………あ、そういえばお兄ちゃん。

ライブの優先チケットもう1枚ある?」

 

 

 

 

八幡「2枚貰ったから1枚あるけど、一緒に行く人見つけたのか?」

 

 

 

 

小町「…………その聞き方だと、小町に友達居ないみたいになるじゃん。」

 

 

 

 

八幡「いや、そうは思ってない。」

 

 

 

小町に友達が多いことは100も承知だ。

可愛いくてコミュ力も高く、気が利くとなれば友達どころか、異性にも好かれるだろう。

 

 

 

前に話していたが、チケットが2枚しかなくそのうち1枚は小町が使うので、友達1人を連れてくのは何かとアレらしい。

 

 

アレが何かは俺にはわからんが、友達に自分の兄の初演奏は見せられないという理由じゃないことだけを祈るのみ。

 

 

 

小町「ありがと!

友達ではないけど、お知り合いになれたらいいなーと思ってる人を誘うよ」

 

 

 

八幡「おい。まさか……………男なのか?」

 

 

 

ぐうむ………………小町はもう中学生。

気になる人が出来ても…………。

結構ショックだが、小町が好きになったのなら…………

 

 

 

小町「勘違いしてる所悪いんだけど、女の子だよ。

…………多分」

 

 

 

八幡「女か。

それは良………え、多分?」

 

 

 

 

小町「小町も会ったことないからね!

でも、女の子で間違いはないと思うから大丈夫!」

 

 

 

八幡「いや、全然大丈夫じゃないそれ。

会ったこともない人に、知らない人の兄の初ライブ観てもらうとかどんな拷問なんだよ。」

 

 

そんなんで人って仲良くなれんの?

小町ちゃん友達作りのハードル上げてない?大丈夫?

 

 

 

小町「へーきへーき。

お互い知らないけど、お兄ちゃんは知ってる人だから。」

 

 

 

 

八幡「………………は?」

 

 

 

俺が知ってるやつ?

 

 

 

小町「はい、明日早いんでしょ!

おつかれ、おやすみ!!」

 

 

 

 

八幡「………………訳が分からん」

 

 

 

 

え、モヤモヤを残されたまま寝なきゃならんの?

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんなー!今日はやっとの本番よ!

私たちの演奏で、世界を笑顔にするわよ!!」

 

 

 

 

はぐみ、薫「「おーーー!」」

 

 

 

 

八幡、美咲、花音「「「お、おーー!」」

 

 

 

 

俺たちが今日やるライブは、18時から始まる。

全10バンドで行われ、1バンド3曲の演奏となる。

 

今回の主催内容が、バンド結成1年未満のバンドとなっており、緊張バリバリとかではなく、思いっきりミスして経験してこい!って内容らしい。

 

 

 

花音「い、いよいよなんだね……………。

わ、わたし、みんなの足を引っ張りそうで………」

 

 

 

美咲「花音さんはもっと自分に自信を持っていいと思うけどね。

たしかに緊張で練習通りに行かないかもしれませんけど、それでも大丈夫ですよ。」

 

 

奥沢は俺たちを一人一人見る。

そして、松原さんも俺たちを見た。

 

 

 

花音「…………うん。そうだよね。

ひ、1人じゃない。みんなと演奏するんだもんね!」

 

 

 

はぐみ「そうだよ!!

かのちゃん先輩のドラムを聴くとはぐみ、バーンってテンション上がるんだよ!」

 

 

 

薫「ふふっ。それはここにいるみんな同じ気持ちだよ。

それに、本番でもし失敗をしても最後まで演奏することが大事なのさ。」

 

 

 

 

瀬田先輩最近カッコイイよな。

ポンコツTheアホモードは演技なんかね?(無意識)

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

奥沢も瀬田先輩を見て固まってる。

多分俺と似たようなこと考えてるだろうな。

 

 

 

こころ「それじゃあ練習を始めるわよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ本番前。俺たちはいまCiRCLEにいる。

時刻は17時で、リハーサルも無事に終わり待合室で待機中。

 

 

 

ライブ開始が18時からなのでまだ時間があるのだが、お客さんが会場に入ってきたらしく、ざわざわと大きい音が聞こえてくる。

 

 

 

 

こころ「早くライブがしたいわね!!まだかしら!!」

 

 

 

美咲「あんた緊張って言葉ないの?

私いま、心臓バックバクなんだけど。」

 

 

 

 

花音「ふ、ふぇぇ………。

わ、私もすごい………やばい………」

 

 

 

 

…………おいおい、松原さん限界近くない?やばいって………

目が死にかけてるんだよな。

 

 

 

 

美咲、花音「「帰りたい………」」

 

 

 

 

……………確実に死んだ。

 

 

 

 

はぐみ「はぐみはワクワクドキドキしてるよ!

ソフトボールの試合前と一緒だ!!」

 

 

 

北沢はソフトボールやってるんだった。

………そういや、弦巻よりも足速いって聞いたけどマジですか??

 

 

 

美咲「薫さんはこういう事、慣れてそうですよね。」

 

 

 

薫「何度も劇をやらせて貰っているからね。

それでも多少は私も緊張するものさ。」

 

 

 

 

八幡「そもそも緊張が悪いこととは限らないからな。

良い言い方をすれば慎重になる。冷静とは別かもしれんがな。

そもそもプロの人でも緊張する人はするんだ。

初ライブの俺たちが緊張せずにやるのなんておこがましいだろ。

………………弦巻、お前は別だからな。」

 

 

 

チラッ………………。

 

 

 

弦巻「……………??」キョトン 

 

 

 

首を傾げる弦巻。

さすが弦巻、効果はないようだ。

 

 

 

 

花音「比企谷くん……………。

うん、私頑張る………っ。」

 

 

 

 

美咲「はぁーー。

まあここまで来たらやるしかないしね。

じゃあ私はそろそろ、ミッシェルに着替…………じゃなくて、ミッシェル呼んでくるね。」

 

 

 

いってらー。

あいつほんと大変だな。

 

 

 

 

こころ「さあみんな!

世界を笑顔にさせましょー!!」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「えーと……………確かこの辺に…………あ、あった!

 

 

 

すみませーん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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始まりの音

 

 

 

 

こころ「それーっ!!」

 

 

 

はぐみ「はぐみもーーっ!」

 

 

 

 

薫「ふふっ、賑やかだね」

 

 

 

 

 

八幡、美咲「「賑やかすぎるっ!!」」

 

 

 

 

花音「あ、あははは…………」

 

 

 

 

 

何なのこいつらマジで。

緊張って言葉を知らないのかよ……………

 

 

 

 

 

こころ「はちまんが作ってくれた紙ヒコーキ、すっごい飛ぶわ!」

 

 

 

はぐみ「はぐみのは、みーくん号だからねっ!」

 

 

 

緊張をほぐすためにと、松原さんが持ってきた折り紙で俺と奥沢は紙飛行機を作ってた。

…………てか、みーくん号って笑

 

 

 

美咲「…………………」

 

 

 

 

八幡「…………………」プイ

 

 

 

 

なんで俺奥沢に見られてんの?

みーくん号ですか?

 

 

 

美咲「はぁ…………

あんた達見てたら緊張してる私がアホらしくなってきた。」

 

 

 

 

八幡「ほんとだわ。空気ぶち壊してくれてどうも。」

 

 

 

 

 

花音「ひ、比企谷君は緊張してるようには見えないのに………」

 

 

 

 

八幡「いや、流石に緊張しますって。」

 

 

 

かなり緊張してますとも、ええ。

 

 

 

 

 

こころ「そういえばミッシェルはどこかしら?」

 

 

 

 

はぐみ「そ、そうだよ!あと1時間切ってるよ!

ミッシェル迷子かな?」

 

 

 

 

薫「リハーサルまではいたのだけどね。

分かるかい美咲?」

 

 

 

 

 

美咲「ここにいるんだけどなー………

…………えっと、もうすぐ着くらしいよ?

はぁ。迎えに行ってくるよ。」

 

 

 

花音「い、行ってらっしゃい……」

 

 

 

八幡「大変だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司会「本日のライブはバンド結成1年未満の人達で行われるよ!

皆さん暖かい目で見守ってね!

中には金の卵も居たり?

それではお楽しみに!!」

 

 

 

 

「「うぉおーー!!」」

 

 

 

「「ヒューヒュー」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「失礼しまーす、やっほー!みんな大丈夫?

八幡くん、今日はファイト!」

 

 

 

 

八幡「月島さん………。

今日はよろしくお願いします。」

 

 

 

まりな「うんうん。

ハロハピは今までも見たことの無いタイプのバンドだから、私たちスタッフは凄い注目してるよ!

それじゃあ出番が来たら呼びに来るから、頑張ってね〜!」

 

 

 

 

「「「ありがとうございました〜」」」

 

 

 

 

 

美咲「あーあー、とうとう始まっちゃったよ」

 

 

 

 

八幡「始まったな………………はぁ。」

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「「帰りたい」」

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「わー、凄い歓声ですね!小町こういう所初めてなので緊張してきました!」

 

 

 

 

???「あはは、確かに凄い歓声だね。

私もちょっと緊張してきたよ」

 

 

 

 

 

小町「改めまして、今日は突然の誘いなのに来て頂きありがとうございます!」

 

 

 

???「大丈夫だって!私も少し興味あったしね。

…………まさかバンドやってるなんて思っても無かったし。」

 

 

 

 

小町「そう言って貰えるとありがたいです!

今日は楽しみましょーです!」

 

 

 

???「………ふふ。お兄ちゃんとビックリするくらい似てないよね。

その、性格とか雰囲気とか。」

 

 

 

 

小町「あー、よく言われますね笑

お兄ちゃんは人と接するのが苦手ですからね…………。

小町的には勉強が出来るところも似て欲しかったですけどね。

まぁ、こればっかりは努力なんですけども………」

 

 

 

???「入試の時、首席合格だったもんね。

話してても全然バンドやってるなんて言ってなかったから驚きだよ。」

 

 

 

小町「お兄ちゃんは必要以上に会話しないタイプですからね。

どうせ「いや、聞かれてないし」とか言ってくると思いますよ」

 

 

 

???「ふふっ。お兄ちゃんの事よく分かってるんだね。

小町ちゃんはお兄ちゃんの事好きなんだね。」

 

 

 

小町「へっ? ち、違いますよ///

妹だからそれくらい知ってて当たり前なだけですって!」

 

 

 

???「あはははっ。うそうそ。

小町ちゃん可愛いから、からかいたくなっちゃったよ」

 

 

 

 

小町「もうっ!やめてくださいよー!」

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「小町可愛い」

 

 

 

花音「えっ?」

 

 

 

ミッシェル「何1人で呟いてるの?」

 

 

 

 

八幡「はっ!い、いや、なんでもない。

ちょっと緊張しててな。」

 

 

 

アレ?今確かに小町が可愛いかったのだが……………

いや、小町は何時でも年中無休で可愛いのだけれど。

危うく俺がシスコンって思われる所だった。

 

てか、ミッシェルならミッシェル口調で喋って貰ってもいいですか?

素の奥沢さん出てるんで。

 

 

 

こころ「みんな素敵な演奏ね!

私たちももうすぐ出番よっ!!

う〜〜んっ、早く歌いたいわ〜!」

 

 

 

はぐみ「みんな全力だもんねっ!はぐみも頑張るぞ〜っ!」

 

 

 

薫「ふふっ。

私の可愛い子猫ちゃんたちも来てくれてるから、期待には答えないとね」

 

 

 

 

うわー、やる気満々ですね。

少なからず緊張はしてるだろうけど、それ以上に楽しみって感じだな。

 

 

 

まあ、ここまで来たらなるようになれだな。

 

 

 

 

ミッシェル「あ、演奏終わった。次は私たちの番………」

 

 

 

「ハロー、ハッピーワールド!の皆さーん!

準備お願いしまーす!!」

 

 

スタッフさんから声がかかる。

 

 

 

花音「ふ、ふえぇ…………っ。

き、緊張が……………」

 

 

 

こころ「大丈夫よ花音っ!!」

 

 

 

 

花音「えっ……………?」

 

 

 

 

こころ「私たち、ずっと練習して来たんだものっ!

それに花音は私たちと一緒で笑顔にする側よ?

ハロハピは皆を、世界を笑顔にするんだから!!

大丈夫!!花音も笑って!」

 

 

 

 

ミッシェル「………はぁ。」

 

 

 

八幡「本当…………ブレねーな。」

 

 

 

薫「流石はこころだね」

 

 

 

はぐみ「よーーし!!

みんなでエンジン組もうよっ!」

 

 

 

 

八幡「……………へ?」

 

 

 

こころ「いいわねっ!!

私、エンジン組んで見たかったのよ!!」

 

 

 

花音「うんっ!わ、私も組みたい!」

 

 

 

八幡「俺は………見てるだけで大丈夫っす」

 

 

 

さすがに俺以外女性の人たちと円陣はなぁ。

訴えられたら勝てないし。

 

 

 

ミッシェル「はいはい。いいからやるよ」

 

 

 

八幡「うぉ………おいっ!

やめ、て…………」

 

 

 

 

はぐみ「掛け声は前に決めたアレで行くよ!」

 

 

 

薫「ふふっ、了解」

 

 

 

こころ「それじゃあ行くわよっ!」

 

 

 

こころ、はぐみ「「ハッピー!」」

 

 

八幡「ら、ラッキー」

 

 

 

薫、花音、ミッシェル「「「スマイル!」」」

 

 

 

 

「「「「「「イェーイ!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

司会「それでは次はー!!!

バンド結成してまだ数ヶ月、このライブが初ライブらしいです!

「世界を笑顔に!」を目標に掲げている、「ハロー、ハッピーワールド!」の皆さんです!」

 

 

 

 

「わーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

こころ「いえーーい!!

みんなーー!!元気ーー?

笑顔になる準備は出来たかしらー!?」

 

 

 

 

「おーーー!!!」

 

 

 

「何あの金髪の子、凄い可愛い」

 

 

 

「なんか、ピンクのクマいない?」

 

 

 

「えっ、あの人ってもしかして、羽丘の薫様!?」

 

 

 

「あの水色の髪の子めちゃくちゃタイプ!!」

 

 

 

 

「はぐみちゃんもいるわね!」

 

 

 

 

 

小町「あ、お兄ちゃんたちだ。

わー、メンバーの人みんなめちゃくちゃ美人さん!」

 

 

 

???「比企谷君がバンドやってるって聞いてから、薄々予想はしてたけど、やっぱり弦巻さん………。

それに、はぐみもいる…………ふぅー、今日は驚いてばっかりだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ早速行くわよっ!

『笑顔のオーケストラ』」

 

 

 

 

こころ「……………………」

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

 

弦巻が俺たち1人1人を見る。

笑顔で行くわよと訴えかけるように。

 

 

言葉はいらない……………目を見れば伝わるから。

 

 

 

 

 

 

 

「トキメキ!メキ!はずませて

始めよう!オーケストラっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まった、俺たちの最初のライブ。

 

 

 

緊張で今にも爆発しそうだ。

 

 

 

普段は周りを見る余裕くらいはあるが、今はキーボードを弾いてる指しか見れない。

 

 

 

それでも………………

 

 

 

 

 

 

「つないだ手を(ハイ!ハイ!)

つないでこー!(ハイ!ハイ!)

大きな輪になって(わっわっわーい)」

 

 

 

 

コイツらの…………弦巻の笑顔を見てたら、それすらも忘れそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きいと思ってた演奏の音でさえ、消えてしまいそうな歓声と熱気。

初めてのステージは俺達には早すぎたのかと錯覚してしまいそうになる。

だけど、それでも……………俺たちの音は前へと突き進む。

 

 

 

 

「ココロ合わせ(ジャン!ジャン!)

踊り出そっ!(ジャン!ジャン!)

みんなを巻き込んで(どどん!どーん!)

 

 

 

 

曲の2番から観客の人達、合いの手慣れるの早すぎて笑えてすらくる。

この曲今日が初公開なのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このステージの熱に、俺は呑まれないように必死に指を動かす。

それでもちゃんと演奏出来てるか分からなかったけど、一つだけ分かることがある。

 

 

 

 

 

 

八幡(俺は)

 

 

 

 

こころ、花音、美咲、はぐみ、薫

 

(私たちは)

 

 

 

 

 

 

 

 

『この世界(ステージ)を笑顔に』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんないい笑顔よ!

私たちも笑って………!!?」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………………フッ」

 

 

 

 

 

はちまんが笑ってるわ!

 

 

 

 

 

こころ「はちまん…………ふふっ。

まだまだ行くわよ〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

 

『ワァァァァァァァ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「お兄ちゃん…………………っ」

 

 

 

 

 

???「すごい……………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、演奏ありがとうございました〜!

ハロー、ハッピーワールド!の皆さんでしたー!」

 

 

 

 

 

「うぉーー!!すごく良かったぞー!」

 

 

 

 

「俺、ファンになったからー!!」

 

 

 

 

「みんなすっごく可愛いー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「み、みんな……………私………」

 

 

 

松原さんは、今にも泣きそうな顔で笑っている。

 

 

 

 

薫「花音、君はとっても良かったよ。

ほら、この歓声が何よりの証拠さ」

 

 

 

 

花音「うんっ……………!」

 

 

 

 

はぐみ「楽しかったーー!

みんなもありがとー!!」

 

 

 

 

ミッシェル「ヤバイ、まだ膝が震えてる。

ていうか、達成感すご……」

 

 

 

奥沢も今の状態じゃ、ミッシェル出来そうに無さそうだな。

素が出てる。

 

 

 

 

こころ「みんな〜!!ありがとーー!!

それと!!」

 

 

 

弦巻はお得意の笑顔で…………

 

 

 

 

 

こころ「笑顔には慣れたかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

「ワァァァァァァァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「すっげ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ん〜っ、すっごく楽しかったわ!!」

 

 

 

 

はぐみ「だねっ!!はぐみ、もう1回ライブしたいよ!」

 

 

 

 

薫「あぁ、楽しい時間は何故こうも過ぎるのが早いのだろうか。」

 

 

 

 

俺らはライブが終わり、待合室にて腰を下ろしていた。

 

 

 

 

花音「す、すごいね……………みんなは。

私はまだ心臓バクバクです…………っ」

 

 

 

 

ミッシェル「みんなってか、あの3バカが異常なだけですから。」

 

 

お前、アイツら(3バカ)に聞こえてないからって、今ミッシェルってこと忘れてませんか?

 

 

 

 

 

八幡「初めてのライブの感想とは思えない発言ばかりだな。」

 

 

 

 

 

それでも初のライブは成功と言っていい出来だったと思う。

個人の小さなミスはそれぞれあるかもしれないが。

 

観客の反応も良かった……………てか、観客のノリが良すぎてほんとビビる。

ファンとかだったらまだしも、初舞台の騒ぎではなかった………。

 

月島さんが言ってたな。

ライブとかに来る人達って本当ノリよくていい人ばっかりと。

 

 

 

 

美咲「はぁ〜、つっかれたー」

 

 

 

ミッシェルからチェンジして帰ってきたのか。

おつかれさんす。

 

 

 

はぐみ「あ〜!!みーくん!!はぐみ達のライブどうだった!?」

 

 

 

こころ「私たちのライブ観てくれたのよねっ!!」

 

 

 

 

薫「君も私からしたら1人の子猫ちゃんだよ。」

 

 

 

 

 

美咲「あ〜、うん。そーですよね〜………………はぁ。

……すごく良かったんじゃないかな?」

 

 

 

「やったー!」「いぇーい!」「ふふっ!」

 

 

 

 

美咲「はぁ。」

 

 

 

 

 

本日も色々とお疲れ様っす!

肉体的にも精神的にも疲労してんのヤベーな。

今度なにか買ってやるか。

 

 

 

 

花音「………………………」

 

 

 

 

うん、松原さんは感傷に浸ってるのか、ボーッと上の空状態。

天使だな。もしかしたら天界の天使と会話してるのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして本日のライブは全て終了し、今後のバンド時代にまた歩み始めたもの達が増えた。

 

 

 

こうして、ハロー、ハッピーワールド!の初ライブは良い形で終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「はちまーーんっ!」ダキッ

 

 

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

 

小町「えへっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「えーーーー!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

ライブも無事に終わり、帰宅途中で小町に抱きつかれました。

 

 

 

周りの奴らの視線がなんか痛いし、突然の出来事で頭も痛い。

 

 

 

はぐみ「は、は、はちくんが抱きつかれてる!!?」

 

 

 

花音「は、はわわわ………」

 

 

 

 

薫「ふむ、これは………」

 

 

 

美咲「えっ、どういう……………」

 

 

 

こころ「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「色々と言いたいことがあるぞ………………小町」

 

 

 

 

小町「えー?あ、お疲れ様!」

 

 

 

 

 

八幡「おう、サンキュ。

………じゃなくて、何で抱きついてんだよ。」

 

 

 

 

小町「そっちの方が小町的にポイント高いかなーって」

 

 

 

 

八幡「いや、高いけどさ。

それでも人の前ですると誤解生むよ?

ほら、周りにいるコイツらも………………あれ?なんか、怖い」

 

 

 

 

なんか視線痛いし。

 

 

 

 

 

美咲「えっと、11………」

 

 

 

 

八幡「お、おい待て、落ち着け!!

110番にかけようとするな!!」

 

 

 

 

てか、抱きつかれてる側なのに何で俺が悪いみたいになってるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「いやー、いい反応見させて貰ったので小町はもう満足であります!」

 

 

 

 

小町はそう言って俺から離れた。

 

 

 

 

 

???「はぁはぁ、やっと追いついた………」

 

 

 

 

小町「はっ!すみませんっ!

こまちが先に行ったばっかりに」

 

 

 

 

 

またもや俺たちの前に現れたのは……………

 

 

 

 

八幡「おい、色々と聞きたい事あるって言ったが

まずは……………………何で山吹と一緒なのか説明してもらおうか。」

 

 

 

 

何故か小町と山吹が一緒にいた。

 

 

 

 

小町「さあやさんは、小町の先輩だよ?」

 

 

 

八幡「え、なんの?

てか知り合いだったの?」

 

 

 

 

小町「今日知り合ったけど、大事なのは期間ではなく気持ちだと思うんだよね。」

 

 

 

なんかドヤ顔で言ってるけど、誤魔化したいのだろうか。

しかも今日知り合った?

 

 

八幡「はぁ……………。帰ってから聞くか。

それじゃあ俺らはここで……………ってアレ?」

 

 

 

 

「じーーーっ………………」

 

 

 

 

何やら視線が凄い。

不満があります見たいな顔で見るのやめて。

 

 

 

 

 

八幡「…………紹介が遅れたな。

コイツは比企谷小町。俺の妹だ。」

 

 

 

小町「どうも〜!小町です!

皆さんも小町って呼んでくださいねっ!

よろしくお願いしまーす!!」

 

 

 

 

「…………え〜〜ーーーー!!」

 

 

 

 

 

花音「こ、この子が比企谷君の妹さん…………。」

 

 

 

 

美咲「ちょくちょく話には聞いてたけど」

 

 

 

 

 

「「に、似てない」」

 

 

 

 

八幡「そうなんだよ。俺に似てなくて本当に良かった。

可愛いし、コミュ力高いし、更には家事スキルもある。

完璧な妹なんだよ」

 

 

 

 

小町の頭を撫でながら、皆に小町の素晴らしさを伝える。

 

 

 

 

美咲「シスコン……………」

 

 

 

 

小町「お兄ちゃん…………

普通に恥ずかしいから、そういうのは家で2人きりの時とかにしてほしいかな。」

 

 

 

 

沙綾「あ、あはは。

2人きりの時ならいいんだ。」

 

 

 

 

小町「こう言った方が小町的にポイント高いので!」

 

 

 

 

くっ、一瞬小町ルートに入ったと思ったがダメだったか。

 

 

 

 

小町「お兄ちゃん!

こまち、皆さんの事知りたいなー。」

 

 

 

 

八幡「あ、そうだな。

それじゃあーーーー」

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

それから小町はハロハピ組と、山吹の連絡先まで交換し、解散した。

今日はもう帰ってゆっくりしたい。

明日は文化祭だし………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「皆さんいい人だった!

演奏もすっごく良かったよ!!」

 

 

 

 

八幡「アイツらに伝えておく。

喜ぶだろうな。」

 

 

 

 

小町「……………お兄ちゃんの演奏、もう一度聞けてよかった。」

 

 

 

八幡「…っ!

そうだな。俺も演奏出来て嬉しかった…………かもな。」

 

 

 

小町「うんっ!

楽しそうだったよ。みんなキラキラしてた。

小町も笑顔を貰ったからね!」

 

 

 

そう言って小町は笑顔を見せる。

 

 

愛する妹にここまで言われると、頑張った甲斐があったというもの。

 

 

 

 

小町「それじゃあ、こまちにハーゲンアイスだね!」

 

 

 

 

八幡「え、なんで?

普通は俺へのご褒美でくれるんじゃないの?」

 

 

 

しかもハーゲンアイス高いし。

せめてスーカーパップにしろよ。

 

 

…………いや、そうじゃないな。

 

 

 

 

 

小町「冗談だよ、冗談!

じゃあ今日はお兄ちゃんが好きな食べたい物作ってあげるよ」

 

 

 

 

八幡「俺は小町が作るものなら何でも好きだからな。

お、今の八幡的にポイント高い!」

 

 

 

ドヤ顔で小町に言う。

 

 

 

 

小町「へー。じゃあトマト料理を振る舞うね。

こまちが作るんだから好きだし、食べれるよね?」

 

 

 

 

うわー、悪い顔してんなぁー。

小町ちゃんが小悪魔になってる。

 

 

 

 

八幡「すいません、ちょっと調子乗りました。

トマト尽くしは勘弁してください。」

 

 

 

 

 

 

小町とのたわいもない会話の中でも、今日のライブを思い出す。

 

 

初めてのライブは、俺が小さい頃初めてピアノを弾いた時の感覚に近い気がした。

実力こそ違うが、緊張と胸の高鳴りはあの時の感じと似ていた。

 

 

 

あの初めての音は、俺の中では忘れることはなく、今も尚記憶に刻まれている。

そして今日のハロハピでのライブが俺は「始まり」だと思ってたが、違ったようだ。

 

 

 

「始まりの音」は既にあの時……………初めて会った時には、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻こころが鳴らしてくれていたのだと、今じゃそう思ってしまうのは毒され過ぎてるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、誤字報告、読んでくれてる皆様、本当にありがとうございます!


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鼓動、騒動、フェスティバル

 

 

 

 

 

初ライブが終わり翌日、俺は家でゴロゴロ休日満喫……………とは行かず、学校へ向かっていた。

 

 

今日はなんと!!!

待ちに待ってない文化祭

 

昨日のライブ自体は、肉体的に疲れてないけど精神的な疲れはある。

ライブが終わって家に着いた時は、布団に倒れ込んだレベル。

 

 

 

まあ、ライブが無事に終わって何よりなんだけどな。

小町もハロハピのファンになったって喜んでくれたし。

 

 

 

 

他のメンバーは大丈夫だろうか。

もちろん心配してるのは、奥沢と松原さん。

 

 

奥沢は正直1番疲れてるはず…………特に肉体的に。

そして松原さんはきっと、精神的に疲労してるはずだ。

ライブでも、めちゃくちゃ緊張してる松原さん見てたら、逆にこっちが冷静に慣れたからな。

 

 

他の3人は心配など微塵もない。

北沢は終わった後も元気いっぱいに走り回ってたし、瀬田先輩はファンサする余裕もあったし、弦巻は…………………

 

 

 

 

「はちまーーん!!」

 

 

 

 

このバカに疲れるって感情は持ち合わせてないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

こころ「今日の文化祭とっても楽しみね!」

 

 

 

八幡「いや別に。」

 

 

 

文化祭なんて誰しもが楽しみにしているものでは無いのだ。

 

別に陽キャだけが楽しめる行事とまでは言わない。

文化祭を好きな奴がいるように、嫌いな奴もいるってだけの話だ。

 

 

学校によって文化祭で出来る事もそれぞれらしい。

食べ物はダメだとか、危なそうなことは出来ないとかな。

招待制で、家族は含めず友人2人までとかもあるらしく、厳しいところは厳しい。

 

うちは特にそういうのはなく、一般の方も自由だし、食べ物なども制限はない、多分。

 

 

 

 

こころ「色んな人の笑顔が見れるのよ!

素敵と思わない??」

 

 

 

キラキラした目で俺に訴えかけてくる。

 

 

 

 

八幡「………素敵といえば素敵かもな。

まあ、俺はあまりこういうイベントが好きじゃないってだけだ。」

 

 

 

こころ「大丈夫よ!

はちまんは今日、きっと誰かを笑顔にするわ!!」

 

 

 

八幡「は?」

 

 

 

弦巻は突然俺にそう言う。

意味がわからん。

こいつに意味を求めるのもどうかと最近思ってきているのだが。

 

 

 

こころ「誰かを笑顔にしたら、「今日はいい日だった」って思えるでしょ?

そしてはちまんも笑顔になるのっ!

笑顔はそうやって増えていくのよ!!」

 

 

 

…………こういうことを恥ずかしげもなく、普通に言える人はこの世に何人いるのだろうか。

少なくとも俺は弦巻しか知らないし、これ以上いても困るかもしれない。

 

 

なんの根拠もないのに、明るい笑顔で言い放つ弦巻に、真面目に返答するのも馬鹿らしくなった。

 

 

 

 

 

八幡「…………まるで病気だな。」

 

 

 

こころ「そうよ!笑顔は世界で1番いい病気なの!

そして、笑顔を広めていくのが私たちハロハピよ!!

だから…………八幡、貴方ならきっと誰かを笑顔にするわ。」

 

 

 

優しく微笑みかけてくる少女に見惚れかけ、恥ずかしさを紛らわすように顔を明後日の方向へ向いた。

 

 

 

 

 

八幡「俺は今日は文化祭実行委員の仕事で、記録係兼見回りだから、笑顔にするってよりは、笑顔になった人を見かける方なんだよなぁ。」

 

 

 

 

こころ「もうみんな集まってるわ!

ほら早く行くわよー!」

 

 

 

八幡「おいっ!聞いてんのか………………きゅ、急に走んなって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

香澄「さーや来ないなぁ…………」

 

 

 

 

八幡「……………なんで俺に言うんだよ。」

 

 

 

 

たえ「香澄、家行ったんだよね?」

 

 

 

香澄「うん、ちょっとだけ…………」

 

 

 

文実の集まりも終わり、一般生徒もぼちぼちと通学して来た頃、戸山達が話しかけてきた。

 

 

 

 

 

香澄「はっちーは、さーや見た?」

 

 

 

八幡「いや、見てないけど………。

え、なに、ひょっとしてあいつサボり?」

 

 

 

香澄「さーやはサボらないよ!!」

 

 

 

八幡「お、おう……………」

 

 

 

何で俺がキレられなきゃならんのだ。

てか、コイツらのクラスって山吹の家のパン使うんだろ?

じゃあそれの手伝いだろ、知らんけど。

 

 

 

 

 

 

「あ、いたいた!

山吹さん家のパンが届いたよー!

運ぶの手伝って!」

 

 

 

香澄「あ、うん!今行くー!」

 

 

 

たえ「ほら、はっちんもはやく!」

 

 

 

八幡「……………は?俺?なんで?

そもそもクラス違うんだけど」

 

 

 

香澄「レッツゴー!!」

 

 

弦巻といい戸山といい…………

頼むから腕を掴まないでください!

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「おはようございます!」

 

 

 

山吹父「おはよう、香澄ちゃん、それにおたえちゃんも。

…………比企谷君も一緒なんだね。

あ、それとパンの受け取りのサインを貰ってもいいかな?」

 

 

 

 

八幡「ど、どうも。」

 

 

 

覚えられてた………。

この前の山吹弟と妹を家に送った時の1回しか会ってないのに。

 

 

 

 

香澄「はい!……………あの、さーやは?」

 

 

 

そう、山吹が先程から見当たらないのだ。

 

 

 

 

山吹父「…………それが、今朝妻が倒れてね。」

 

 

 

 

香澄、たえ「「ええっ!?」」

 

 

八幡「……!?」

 

 

山吹父「ああ、大きな病気という訳じゃないよ。

妻は昔から貧血気味で、よくあることなんだ。」

 

 

 

そういえば前に、山吹とバンド仲間だった海野が言ってたな。

 

 

 

山吹父「ただ、沙綾が心配して、病院に連れて行くと聞かなくて。

今日は文化祭には出ずに、妻の付き添いをするそうだ。」

 

 

 

香澄「そう…………なんですか………」

 

 

 

山吹父「前に妻が倒れた時のことをあの子は気にしていてね。

自分がそばにいなくて、弟と妹に怖い思いをさせてしまったから」

 

 

 

たえ「そんな…………」

 

 

 

山吹父「家のことは気にせず、好きなことをしてほしいんだが…………

ああ、でも最近はよく香澄ちゃん、おたえちゃん、りみちゃん、有咲ちゃんの話をしているよ…………比企谷君もね。」

 

 

 

 

香澄「え?」

 

 

 

山吹父「君達といるのが楽しみみたいだよ。

放っておくと家の事ばかり気にしてしまう子だから、

これからもあの子を気にかけてもらえるかい?」

 

 

 

 

香澄「はい!もちろんです!

あの、さーやにもこっちは大丈夫だって、伝えてください!」

 

 

 

山吹父「ああ、伝えておくよ。

ありがとう、本当に。

それと、うちの娘からも伝言があるよ。」

 

 

 

 

沙綾『文化祭成功しますように。

ライブ成功しますように。』

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「……………おたえ!沙綾の分まで頑張ろ!!

みんなも、がんばろー!」

 

 

 

「おーー!!」

 

 

 

すごい盛り上がってんなぁー。

俺だけ別のクラスメイトで浮いてるわ。

 

まあ、自分のクラスメイトでも浮いてんだけどな。

 

 

 

今ならバレずにこのまま撤退できるのでは?

俺はそもそもパンを運ぶ手伝いをする義理もないのだ。

てかもう残り少ないじゃん、俺は用済みだな、うん。

 

 

それでは俺はこれで失礼しまー「比企谷君」

 

 

 

 

八幡「ひゃい!?」

 

 

 

そーっと逃げようとしたところ、急に自分の名前を呼ばれたので驚きのあまり、変な声が出てしまった。

 

 

 

山吹父「あぁ、驚かせて悪かったね。」

 

 

 

八幡「い、いえ、大丈夫っす」

 

 

 

山吹のお父さんだったのか。

でも、何で俺は声を掛けられたんだ?

不思議そうに思っていると…

 

 

 

山吹父「私の妻と沙綾は、〇〇病院にいるんだ。」

 

 

 

 

八幡「…………………はい?」

 

 

 

 

山吹父「今は紗南と純も一緒だ。

〇〇〇号室にいるよ。」

 

 

 

 

八幡「え、えっと……………」

 

 

 

 

話が見えない。

何を言ってるんだこの人は?

 

 

 

今は戸山含めたA組は、山吹の家のパンを教室へと運び切ろうとしていたので、今ここにいるのは俺と山吹のお父さんの2人だけ。

 

 

 

山吹父「……………君は紗南と純にすごく好かれている。

君とあった日は必ず楽しそうに話してくるからね。」

 

 

 

八幡「………………………」

 

 

 

 

山吹父「その2人からの願いでもあり、妻と、そして私からのお願いを聞いて貰えないだろうか?

沙綾を、うちの娘を……………助けて欲しいんだ」

 

 

 

八幡「……………助けるって、、、それになんで」

 

 

 

 

山吹父「沙綾はとても優しい子なんだ、本当に。

でも、優しすぎるが故に自分より他人の事を優先してしまう」

 

 

 

そう言った山吹のお父さんも、優しく笑いながら俺に目を向けた。

 

 

 

山吹父「母さんも自分のせいで沙綾がバンドを辞めたと思っていてね。

嫌々パン屋の仕事を手伝っていたらすぐに止めようと思っていたんだけどね。

それでも沙綾はすごく楽しそうだったんだ。

まあ、無理して振舞っていたとしたら本当に不甲斐ないばかりなんだけどね。」

 

 

 

…………そんなはずはないだろう。

俺が知る山吹沙綾はすぐにからかってくるが、人のことを想いやれる優しい女の子でもあると思う。あとお姉ちゃん気質。

それに、隙あらば自分のお店のパンを語ってくる「やまぶきベーカリー大好き女」だ。

 

 

そんな彼女が嫌々で自分のパン屋をやっているとは到底思えない。

 

 

 

山吹父「私達も強く言えなかった。

沙綾が手伝ってくれて実際に助かってるから。

だからあの子がもう一度自分の意思で何かをやりたいと言うまでは、沙綾の優しさに甘えることにしたんだ。」

 

 

 

山吹父「でも、あの子は自分の意思だけじゃもう踏み出してこない。

周りには優しくて、自分には厳しいから。」

 

 

 

悔しそうに力なく話す姿は、嘆きにも聞こえた。

 

 

 

山吹父「私は父親失格なんだ。

ここまで自分の娘のことを分かっていても、何も出来ない。」

 

 

 

山吹父「無責任で親らしくもない頼みだが、比企谷君。

娘の背中を押して貰えないだろうか。

香澄ちゃん達が引っ張ってくれた手を、あと一押しさえあればきっと踏み出してくれる気がするから。」

 

 

 

父親失格……………それは違う。

こんなに自分の娘のことで悩んで、ましてやまだ2回しか会ってない俺にこんな頼みをする人が失格な訳が無い。

 

それにこの人はきっと、山吹沙綾を完全に理解してはいない。

当然だ。俺も全くわからんし、わかりたくもないがこれだけは言える。

 

アイツは、家族も戸山達も大好きなだけだ。

バンドに入ると、また迷惑かけるから…………大好きなのに邪魔をしてしまうのが許せないから入らないのだ。

 

でもそれはパン屋のせいにしてる訳ではなくて、パン屋も大好きだから…………アイツは1つを大切に選び、苦しみながらも幸せと感じているのだ。

 

 

 

コレは俺の勝手な考え、思い込みだし、知ったかぶってるだけだ。

山吹のお父さんが、なぜ俺に頼んだかもあまり分かってない。

弟と妹に多少好かれてるだけで、頼まれる内容では無いだろうに………

 

もう分からないことだらけだ。

 

 

でも俺はアイツにずっと言いたいことがあったんだ。

クライブの時から…………いや、それよりも前だったかもしれない。

 

 

 

 

 

そして、ハロハピの初ライブが終わった帰り道、小町に言われた。

 

 

 

 

小町『沙綾さんね。お兄ちゃん達がライブしてた時、悲しそうな羨ましそうな…………いろんな感情がごちゃごちゃ混ざってる表情をしてたんだ。

ハロハピに入る前のお兄ちゃんみたいな。

だからね?小町は沙綾さんが何に困ってるか分からないけど、もし困ってたらお兄ちゃんが助けてあげて欲しい。』

 

 

 

八幡『………なんでだ?』

 

 

 

小町『お兄ちゃんならきっと出来ると思うし、この前食べたパンがすっごく美味しかったんだ!

あ、あと、沙綾さんが大好きになったから!

今の小町的にポイント高いっ!!」

 

 

 

八幡『パン目当てですか、そうですか。

でも、アイツはもう適任者がいるからな。

俺の出る幕はないだろうけど、まあやれることはやってみるわ。

可愛い小町の頼みだし。

あ、今の八幡的にポイント高い。』

 

 

 

小町『お兄ちゃんちょろすぎでしょ。

でも約束ね!』

 

 

 

 

 

 

 

純と紗南、小町の頼みと聞いたら、動かない訳には行かない。

下の子の望みは出来るだけ叶える、それがお兄ちゃんだから。

 

 

 

 

八幡「山吹沙綾さんは俺が背中を押さなくても、戸山達が蹴りあげてくれると思います。

なので俺は何も出来ない…………というか、何もすることがないと思います。

でも、純君と紗南ちゃんに頼まれたからには出来るだけ手は尽くしてみます」

 

 

 

山吹父「いつかでいいんだ。娘がその気になってくれるまで見守っていてくれるかい?」

 

 

 

八幡「…………もしかしたら案外早いかもしれないですよ。

その時はパンのサービス、期待してます」

 

 

 

山吹父「…………!

ふふっ、焼きたても期待しておくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

文化祭が始まり、それぞれのクラスが活動を始めた。

お客さんもかなりの人数が来ており、ワイワイガヤガヤと賑やかに盛り上がっていた。

 

 

 

そして俺は文実の仕事であちこちを歩き回っていた。

トラブルとかがあったら、対処又は近くの先生に連絡とか言われたけど平和だ。

このまま何も起きないことを願う。

 

 

 

それよりも俺は、クラスの仕事がないとはいえ、どんな状況か気になるな。

内容だけ見れば豪華というか、種類はあるからお客さんは来てるはず。

 

 

 

 

小町「ありゃ?お兄ちゃん??」

 

 

 

八幡「小町?!

来てんなら連絡くれれば良かったのに」

 

 

 

文実の仕事を放棄し、小町の案内役として仕事を全うしていた所だった。

 

 

 

 

小町「お兄ちゃんをビックリさせたくって!

あ、今の小町的にポイント……………高い?」

 

 

 

八幡「小町的のポイントなのに、高いかを俺に聞くのかよ」

 

 

 

小町「てへっ☆」

 

 

 

コイツ……………自分が可愛いって分かってやってるだろ。

タチ悪いな、本当に可愛いが故に。

 

 

小町の同級生の男子共が何人落とされているのやら。

まあ、小町に手を出したら弦巻の黒服部隊を出動させるけどな。

 

 

 

小町「それで、お兄ちゃんは何やってるの?サボり?」

 

 

 

八幡「1つ目の可能性でサボりを出してくる所にお兄ちゃんはショックを受けてるぞ。」

 

 

 

小町「うん、そういうのいいからいいから。

あっ、、、もしかしてハブられてる……?

………ごめんねお兄ちゃん、言いづらい事を聞いちゃって」

 

 

 

八幡「おい、その顔やめろ。

可哀想な物を見る目、違う、違うから!」

 

 

兄のことをなんだと思ってるんだこの妹は………

 

 

 

小町「それで?お兄ちゃんの実行委員の仕事の内容は?」

 

 

 

八幡「あぁ、だよね?家で実行委員って話したもんね?」

 

 

 

良かったー。

俺の話全く聞いてなかったのかと思ったわ。

 

 

 

八幡「まあ、パトロール的な役割と記録係だ。

このカメラでなんかいい感じの風景を撮ってくれと。」

 

 

 

マジで説明が適当だった。

俺以外にも数人の人たちもカメラを持っていて、後に学校紹介の時に使うパンフレットの素材にするかも?とは言ってたけど………

 

 

 

 

小町「へー、どれどれ………………………お兄ちゃん。

何も撮ってないじゃん。」

 

 

 

八幡「まあ、いい感じの風景とやらに出会えてないからな。」

 

 

 

第一、俺以外にもカメラ担当いるんだしその人達に任せようと思ってた。

 

 

 

小町「今から1年C組に行こうと思ってたんだけど……………。

アレ?そういえばお兄ちゃんって1年C組だよね?」

 

 

 

八幡「そうだけど……………なんで?」

 

 

 

小町「いま1年C組凄いらしいよ??

めちゃくちゃ混んでるとか。」

 

 

 

八幡「は?マジ??」

 

 

 

何それどこ情報?

小町ちゃんはとうとう千里眼でも身に付けたのでしょうか?

 

 

 

小町「SNSで載ってるからね。

「1年C組のクラスやべぇー!」とか、「マジックカフェって新しいな!」とか、「金髪の笑顔教徒がいる!!」とかね」

 

 

 

それはやばいな。

特に最後のヤツはかなり危ない。

 

 

 

小町「これ、こころお義姉……………ちゃんだよね!?

こまち、また皆さんに会いたいなー!」

 

 

 

八幡「いや、そうだと思うけど…………てか、絶対そうなんだけど。」

 

 

 

この子、弦巻の事を姉ちゃんって………しかもなんか若干違うニュアンスだったきがするのだが。

いや例え誰であろうと、小町の唯一の兄は俺であり、姉すらも誰にも名乗らせん。

 

 

小町「…………なんか変な事を考えてる顔してるなぁ。」

 

 

 

 

「1年C組いこーよ!」

 

 

「まだ行ってなかったのか?めちゃくちゃ混んでるからパス」

 

 

 

 

俺たちの横を通り過ぎるのは、知らない制服を着た学生の声が耳に入る。

 

 

 

え、そんなヤバいの……………?

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「何コレ…………………」

 

 

 

俺のクラスは廊下にまで行列ができており、クラスのやつらは忙しそうにしている。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、ひ、比企谷君っ………」

 

 

 

こころ「はちまんやったわ!こんなにもお客さんが来てくれたわ!」

 

 

 

八幡「なんか凄い事になってるけど、何で…………?」

 

 

 

 

『食べ物色々手品演劇カフェ』がここまで一般的に受けるものだとは思わなかった。

しかも色々って言っても食べ物は、フランクフルトとパンケーキしかないし。

飲み物は多少あるけど………………。

 

 

 

 

美咲「こころがとんでもない手品をしたからね。

そこからずっとこんな感じ……………」

 

 

 

八幡「とんでもない?

…………………っ、まさか!?」

 

 

 

美咲「うん、多分それであってる。

黒服の人たちが用意した「OK、みなまで言わなくていい。」

まあそういうことですよ。」

 

 

 

 

コイツ……………前日までは全然よくあるようなトランプマジックやってた癖に。

 

なんか黒いハット帽みたいなのあるし…………え、あれって鳩?

白い鳩がいるんだが?これ、帽子の中から鳩が出て来るやつじゃね?

 

 

他にもそれらしきグッズがある…………。

 

 

 

まあ、これはセーフ……………なのか?

黒服さんパワーのアウトラインが微妙なんだよなぁ。

大体がグレーゾーンだからな…………。

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

そして花咲川学園の文化祭、通称咲祭は午後へと突入していた。

 

 

なんと俺たちのクラスは午前中で商品が全て売れてしまい、閉店という形で閉じたのだが、数十分おきに弦巻がこの前先生から許可を貰った階段の踊り場で手品を披露するらしい。

 

 

 

あの時先生に許可を取ってたのはこのためだったのか………。

え、なに………予想してたの??ビックリだわ。

 

 

 

 

午後の内容も午前とは別段変わりはない。

ただ、文化祭のフィナーレを飾るのは、戸山達のバンド………Poppin’Partyのライブだ。

時間はまだあるが、準備はそろそろ始めないと行けない頃だろう………。

 

 

 

 

 

八幡「………それで?

お前達がなんでこんな所にいんの?」

 

 

 

キョロキョロと何かを探しているようにも見えるが、なんか………怪しい感じだな。

 

 

 

 

有咲「…………比企谷か。」

 

 

 

ねぇ、少しでいいから嫌そうな顔やめてくれる?

 

 

 

りみ「うん。さあやちゃん探してるの」

 

 

 

八幡「山吹?」

 

 

 

アイツ学校来てるのか。

病院にいるのかと思ってた。

 

 

 

 

香澄「電話してるけど繋がらないし…………」

 

 

 

たえ「ライブ…………参加できなくても観て欲しい」

 

 

 

 

なるほどな、だから探してんのか。

電話が繋がらないってことは、まだ病院にいる可能性が高そうだな。

まあ、お母さんが朝に倒れてるもんな。

やはり心配なのだろう。

 

 

 

香澄「今日歌う曲の中に、さあやと………みんなで作った歌があるから!

一緒に弾けなくても、それでも…………」

 

 

 

 

「……………なるほど!

あまり状況はわかってないですが、わかりましたよ!

つまり!沙綾さんを探して、皆さんのところに連れてくればいいんですね?」

 

 

 

 

突然聞き覚えのある声が俺たちの注目を集める。

 

 

 

 

 

………聞き覚えどころか、見覚えすらある。

なんなら毎日見てる。

 

 

 

有咲「だ、誰だお前は!!」

 

 

 

市ヶ谷が急な登場役にテンプレのような言葉を投げかける。

 

 

 

小町「いや〜、どーもどーも!

そこにいるぬボーっとした男の妹、比企谷小町と申します!」

 

 

 

 

りみ「えっ!?

…………ひき、、がやさんの?」

 

 

たえ「おー。全然似てなーーーい」

 

 

 

香澄「はーくんの…………?」

 

 

 

有咲「い…………い………い」

 

 

 

 

「「いもうと〜〜〜っ!?」」

 

 

 

 

 

なんか凄いデジャブ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「全然似てねぇ……………。

え、兄の方はコミユニケーション能力取られたのか?

兄なのに?」

 

 

 

八幡「おい、俺と小町の似てないところはコミュ力だけじゃないだろ!

小町は顔が可愛いし、家事、料理全般、勉強もできるし、友達も多い。

似てるのは頭についてるアホ毛だけだ!」

 

 

 

小町「お兄ちゃんバカ!!

人前では恥ずかしいから辞めてって言ってるじゃん!」

 

 

 

有咲「え、なんでアイツはキレ気味で自分の妹を褒めてんの?

シスコン………?

妹も満更でもない様子だし…………」

 

 

 

その言い方だと家とかでは言ってもいいって事になるぞ、小町。

 

 

 

りみ「あははは………………」

 

 

 

香澄「小町ちゃん可愛い〜っ!

中学生?文化祭遊びに来たんだねー!」

 

 

 

たえ「うさぎ好き?うちの子達見る?」

 

 

 

場がカオス状態になった……………。

流石は小町だ。

小町の可愛さは世界を動かす力を持っているに違いないな。

 

 

 

 

有咲「そ、それで?

比企谷妹が言ってた沙綾を探すって…………いる場所知ってんの?」

 

 

 

 

香澄「た、確かに……………」

 

 

 

 

じーっと、小町をみんなが見つめる。

確かに小町はさっき、解決策を提示してきた。

それはつまり山吹の場所を知ってる……………もしくは、呼び出せるということになる。

 

 

 

 

 

小町「はい!

あっ、でも、こまちは知りませんよ?」

 

 

 

 

有咲「はぁー!??」

 

 

 

りみ「あ、有咲ちゃん………」

 

 

 

 

小町の思いがけない返答に怒鳴る市ヶ谷。

ほんとこえーな。

手を挙げたら許さんぞ、怖いけど。

 

 

小町「お、お兄ちゃん…………。

こまちあの人少し怖いよ〜。

お兄ちゃんの友達じゃないの?」

 

 

 

 

八幡「いや友達では無いな。

なんだろな。まあ、知り合い………………だと思う。」

 

 

 

知り合いにも満たしてないとか言われたら少し凹むかもしれんが、友達では無いのでまあこの表現が無難だろう。

 

 

 

小町「えー!

こまちのお義姉ちゃ…………、んんっ、でも困ってるんでしょ?

お兄ちゃんの出番だよ」

 

 

 

 

八幡「はい?」

 

 

 

俺の出番?

 

 

 

 

 

小町「えー、ここにいる比企谷八幡。

お兄ちゃんが、沙綾さんを見つけますので心配なさらず〜!」

 

 

 

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

 

 

 

 

八幡「………………はい??」

 

 

 

 

 

 

 



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Poppin’Party

 

 

 

 

 

 

沙綾「……………………」

 

 

 

 

1人窓越しから外を見つめる。

文化祭はどうだろうか。

自分のお店のパンが使われるのは少しばかり緊張していた。

きっと香澄達は元気にやっているだろう。

私がいなくてもきっと何も変わらない……………。

私がいなくても…………

 

 

 

 

 

紗南「お姉ちゃん………………」

 

 

純「姉ちゃん…………………」

 

 

 

 

沙綾「っ、、平気だよ?

お母さんは大丈夫だから。」

 

 

この2人には心配させたくない。

まだ小さいから私がついてないといけない。

私は…………大丈夫だから。

 

 

 

 

沙綾母「沙綾の言う通り大丈夫よ。

だからあなたも…………文化祭行ってらっしゃい。」

 

 

 

沙綾「っ…………。

きょ、今日は休みって連絡してるし、ここに居るって!

ほら!じゅん、さな、こっちで遊ぼ!!」

 

 

笑って言った。上手く笑えてるかは分からないけど。

誰にも心配させたくない、誰にも迷惑かけたくないから。

 

 

 

沙綾母「さあや。

でもそれじゃあ貴方が…………!!

ふふっ……でもね沙綾?

 

王子が迎えに来たわよ?」

 

 

私とお母さんは向かい合っている。

私の後ろのに誰かがいるのだろう、お母さんは一瞬目を凝らしていた。

 

 

 

沙綾「お、王子?どういう………………っ!?」

 

 

 

振り向いてみるとそこには………………

 

 

 

目の腐った…………

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、腐ってないから。

ちょっとアレなだけだから」

 

 

 

 

 

王子というには少し……いや、かなり似合ってない猫背の青年がいた。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

病院にいるのは、朝に山吹父が言ってたから分かってたが後で小町に文句を言わなきゃ気が済まない。

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君………………どうしてここに……………」

 

 

 

 

 

八幡「残念ながら王子ではないですね。

……………強いて言うなら、毒林檎をあげる魔女とかそっち系です。

おじゃま虫的な感じっすね。」

 

 

 

まあ、そいつらが物語にいるおかげで素晴らしい作品となるのだがな。

困難に立ち向かい、乗り越える所が見所になるのだ。

俺なんて小学生から村人Gとか、木や草役などにしかして貰えなかったがな。

 

 

 

 

にしても病院にいてくれてよかった。

先に念の為、山吹家に行ったが誰も出なかったし、コッチ来る時にすれ違ってたら面倒なことになってた。

 

 

 

八幡「てかお前、ケータイ持ってないの?」

 

 

 

沙綾「え…………あ、家に置いてきちゃった。」

 

 

 

八幡「通りで……………」

 

 

 

 

戸山達が連絡しても一向に出ないからそんな気はしてた。

自分の母親が倒れたのだ。

それだけ慌てていてもおかしくはない。

 

 

 

 

紗南「お兄ちゃんだ!文化祭はどうしたのー?」

 

 

 

純「ほんとだお兄さんだ!でも、なんで………?

あっ、もしかして…………」

 

 

 

 

紗南、純「「サボり??」」

 

 

 

 

八幡「ばっ、、ちげーよ。ここにいるのも仕事の一環だ。

それに、サボりは俺じゃなくてお前らの姉ちゃんだよ。

文実のくせにいい度胸してるよな。」

 

 

 

沙綾「なっ!?サボりなんかじゃない!!

お母さんが…………」

 

 

 

八幡「あぁ、確かにな。

でも……もう行けるだろ?」

 

 

 

沙綾「………っ。

そ、それでもお母さんや純、紗南が心配で……『自分のやりたいことを』

 

 

 

八幡「自分の好きなことが出来ないのを、大切な家族のせいにするなよ。」

 

 

 

沙綾「…………っ!!」

 

 

 

心配?そりゃそうだ。

コイツは………山吹沙綾は、立派で優しいお姉ちゃんなのだ。

上の子が下の子を心配するのに理由なんていらない。

 

ウチは小町が立派だからな。

環境のせいもあるが、そこらの同年代の奴らより小町は精神的に大人だろう。

でも、小町が純やさーちゃんくらい小さかったら、俺だってめちゃくちゃ心配する。

 

 

 

でもな……………

 

 

 

 

八幡「違うんだよ、お前は。

今のお前は、心配『する』側じゃないんだよ。

心配『されてる』側だ。」

 

 

 

沙綾「っ………!!!」

 

 

 

 

 

八幡「……………コレを聴け」

 

 

 

俺は自分のケータイから、ボイスメモを開く。

そこには1件の録音ボイスがあった。

 

 

 

沙綾「……………何………コレ………」

 

 

 

 

 

 

たえ『マイクチェック、マイクチェック!

聞こえてたら返事してー!』

 

 

 

有咲『ボイスメモなんだから返事が帰ってくるわけねーだろ!!』

 

 

 

沙綾「!?」

 

 

 

 

りみ『と、とりあえず、沙綾ちゃんに伝えたいこと話そう?』

 

 

 

 

 

沙綾「みんな……………なんで…………」

 

 

 

 

 

 

香澄『さあや?かすみです!

 

お母さんどう?さーなん泣いてない?

じゅんじゅん元気?

 

さあや……………大丈夫?

 

カフェはね、大成功!

みんな凄いの!

お客さんパン美味しいって!

お持ち帰りする人もたくさん!

 

コッチは大丈夫!すごく楽しい!

すごく、すごく、すっごく。

だから、ライブ頑張るね!

さあやに届くぐらい頑張るからっ!

 

 

それから歌詞、見てね。

はっちーが持ってるから!

 

さあやとみんなで作った歌、良かったら読んでね!』

 

 

 

ケータイの画面には繰り返し再生ボタンが表示されてる。

彼女たちのボイスメモが終わった。

山吹がケータイを持っていなかった為、言葉を届けるためにはコレが手っ取り早かった。

アイツらはライブがあるから、ここには来れないしな。

 

 

 

 

 

沙綾「………っ………かすみ…………みんな………」

 

 

 

 

山吹は俺のケータイを、ぎゅっと抱きしめたまま泣いていた。

その姿はいつもの山吹ではなく、弱々しい小さい子どもが泣いているかのように。

 

 

 

山吹母「………さあや、行って?」

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

山吹母「さあやは優しいね。

お母さんにも、みんなにも、すごく優しい。

………その優しさをもっと自分に向けて?」

 

 

 

沙綾「…………出来ないよ」

 

 

 

弱々しく首を振る。

 

 

 

 

山吹母「さあやなら出来るわ。1人じゃないんだから。」

 

 

 

 

紗南「さーながいるから大丈夫!」

 

 

 

純「俺も!」

 

 

 

山吹母「ね?」

 

 

 

 

沙綾「さーな…………じゅん…………」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………そういや、俺もお前に言いたい事1つあったわ。

ずっと言いたかった、ずっと前から思ってたから」

 

 

全員が山吹に伝えたいことを伝えた。

俺も伝えるべきだろう。

 

 

 

 

沙綾「…………………え?」

 

 

 

 

八幡「【バンドやらない】とか、言うのは勝手だけどな。

それだったら…………毎回毎回やりたそうな顔してんじゃねぇよ。

 

クライブの時だって、悲しそうに私もやりたい!!

みたいな顔でずっと見てたし。

戸山達との会話中ですら、下手な笑顔で取り繕ってやがる。」

 

 

 

沙綾「……………………っ」

 

 

 

笑顔鑑定1級以上を持つ、弦巻が見たらなんて言うやら。

 

まあ俺も多分、小町の前とかではそんな感じの顔してたんだろうけどな。

ピアノを辞めた時だって、机を弾く癖は消えないし、音を聴くだけで悲しいような羨ましいような感情があった。

 

俺も弦巻たち、ハロハピがいたから乗り越えれた。

もちろん小町も。

理由がなきゃ動けないから、理由を作ってくれた。

 

 

山吹は自分を許す事が出来ないのだ。

自分だけ楽しむことが行けないのだと。

自分は傷ついてもいいけど、他の人は傷ついてはいけないと。

 

 

だがそんなに世の中は甘くない。

自分は良かれとやった事でも、相手からしたら良いことになるかは別なのだ。

相手側の受け取り方で変わってしまう。

善意だろうと悪意だろうと。

 

 

 

 

八幡「もうハッキリ言って迷惑だし、手遅れだ。

お前は既に迷惑も心配も沢山の人にかけてんだよ。

振り回される俺にも気を使え!

…………ったく、ほら、コレ。」

 

 

俺は山吹にある物を渡す。

 

 

 

 

沙綾「………手紙、とコレは…………?」

 

 

 

八幡「ボイスレコーダー。そこには戸山達が聞いて欲しい曲があるらしいぞ。

あとはお前が勝手に決めろ。

俺はそれを渡す事と、ボイスメモを聞かせるのが仕事だったからな」

 

 

 

これで任務は達成。

それでも行かないって言ったらもう俺は何も言わない。

まさか曲作りに使う、弦巻の鼻歌ボイスレコーダーが役立つとはな。

 

 

 

 

沙綾「…………比企谷君………」

 

 

 

山吹母「さあや…………行って?

そして、思いっきり楽しんできて。

それが私の、母さんからの願いよ」

 

 

 

紗南「さーな、もう泣かないから!」

 

 

 

純「俺も泣かない!だから、ねーちゃん………」

 

 

 

 

沙綾「………………はぁ。

なんか私、全然ダメだね。」

 

 

 

山吹を見つめる3人は、優しい笑顔で……

 

 

 

「「「行ってらっしゃい」」」

 

 

 

沙綾「…………行ってきます。」

 

 

 

 

 

…………やっとか。

はあ、ここまで長かったな…………うん、本当に長かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

今から行けば間に合う…………だろう。

ここに来る前にCHISPAのメンバーの海野が、

『一応Poppin’Partyの出番が遅れるように、時間は稼ぐから!』

って言ってたし。

文化祭のバンドイベントは、Poppin’Party以外にも多数あるらしいからな。

 

 

 

 

沙綾「比企谷君」

 

 

 

 

八幡「んあ?

…………え、なに、その手。」

 

 

 

右手を俺に突き出して、手の平を上に向けている。

 

 

 

沙綾「自転車の鍵だよ。

ほら、貸して?」

 

 

 

八幡「は?なんで??」

 

 

 

沙綾「歩いたら間に合わないかもでしょ?

自転車で行った方が速いから」

 

 

 

…………正気かコイツ。

 

 

 

沙綾「今日までは、私のわがままと迷惑を許して欲しいな。」

 

 

 

 

八幡「………………もう好きにしろよ」

 

 

 

いつも結構迷惑というか、からかいを受けてるんですが?

 

 

 

 

沙綾「ありがと。

…………本当にありがとね。」

 

 

 

 

八幡「へいへい。」

 

 

 

彼女の後ろ姿を見るに、もう大丈夫だろうと心から思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山吹が病院を出てから、少しの静寂もなく山吹母が話しかけてきた。

 

 

 

 

 

山吹母「比企谷君、本当にありがとね。

それと…………迷惑かけてごめんなさいね。」

 

 

 

そう言って頭を下げた。

 

 

 

 

 

八幡「い、いや、あれはあの言葉の綾というかその……………」

 

 

 

 

散々迷惑かけられてるって言ったの不味かったかな?

大丈夫かな?俺この後ボコボコにされたりしない?

 

 

 

 

山吹母「ふふっ、冗談よ。

…………それにしても沙綾は幸せものね。

こんなにもいいお友達が沢山いるなんてね」

 

 

 

心臓に悪い冗談は控えて頂きたいですね。

 

 

 

八幡「まあそうっすね。

幸せもんだと思いますよ」

 

 

 

 

 

Poppin’Partyのメンバーもそうだが、山吹本人はPoppin’Partyに入る事は、前にいたバンド「CHISPA」を裏切るって考えていたと思うが、海野は微塵もそんなこと考えて無かったし、なんなら山吹がバンドに復帰する事を応援してたくらいだ。

 

 

 

 

 

山吹母「…………あなたは違うの?」

 

 

 

 

八幡「…………え?あ、はい。

僕は友達じゃないっすね。」

 

 

 

 

アイツは友達ではないだろう。

そもそも友達と言う定義を是非とも分かりやすく…………

 

 

 

 

 

山吹母「えーと、それじゃあ…………彼氏さん?」

 

 

 

 

 

八幡「そういう冗談は本人がいる時に絶対に言わないでくださいね?

後で色々言われるのは僕なんですから。」

 

 

 

 

山吹母「あら、どうかしら?

案外満更でもないかも知れないわよ?」

 

 

 

八幡「いや、傷つくのは僕だけなんで遠慮しときます。」

 

 

 

 

流石は山吹沙綾の母親。

人を揶揄うスタンスは母親譲りだったか……

 

 

 

 

 

紗南「お兄ちゃんはこの後どうするのー?」

 

 

 

純「自転車は姉ちゃんが乗って行っちゃったし……。」

 

 

 

 

まあここから歩いて学校に向かうとしたら、30分かからないくらいか。

なんか左右から「行っちゃうの?」みたいな小さい視線を感じるのは気のせい………ではないな。

 

そりゃそうだ。

自分の姉を送り出すための強がりとはいえ、まだ小学生なのだ。

そんなの不安に決まっている。

 

 

 

 

紗南「あっ!!パパ!!」

 

 

純「!?ほ、本当だ!!」

 

 

 

病室の扉が開き、そこには山吹父がいた。

文化祭の仕事がようやく片付いたのだろう。

 

 

 

 

 

山吹父「ただいま。2人とも本当に良い子だな。

母さんもすまんな、任せっきりで。」

 

 

 

仕事を終えたであろう山吹父は、子ども達2人の頭を撫でながら優しい笑顔をしている。

 

 

 

山吹母「それはお互い様でしょ?私も心配をかけてごめんなさい。

それと沙綾は……」

 

 

 

山吹父「大丈夫、わかってるよ。

比企谷君本当にありがとうね。」

 

 

 

 

八幡「いや、お礼は僕ではなくもっとふさわしい奴らがいますよ。

それに小さなお兄ちゃんとお姉ちゃんも。」

 

 

 

うん、なんかちょっとかっこつけ過ぎてる気がするけど気にしたら負け。

帰って枕に顔を埋めてからでも遅くはない。

それにもう一個だけ仕事残ってるし……

 

 

 

 

山吹父「それでもだよ。今度しっかりお礼をさせてもらうよ。

それと学校へ行くんだろ?私が送ってあげるから乗って行きなさい。」

 

 

 

八幡「あー、それなんですけどね………実は」

 

 

 

 

山吹夫婦「「……?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

香澄「…………」

 

 

 

りみ「かすみちゃん……」

 

 

 

有咲「かすみ!!もうすぐ時間だぞ?!

沙綾の事は一旦忘れろ!」

 

 

 

たえ「そうだよ香澄。

さあやも大事だけど、ライブも大事。

それにはっちんがいるから大丈夫。」

 

 

 

香澄「……うんっ!そうだよね!

さーやが来なかったとしても私たちがライブを成功させなきゃ!!」

 

 

 

 

【わーー!!】【ヒューー!】

 

 

 

 

有咲「うぅ、にしてもなんかすごい歓声だな……。

体育館埋まるくらいに人がいるじゃねーか。」

 

 

 

りみ「う、うん。めっちゃ緊張してきた……」

 

 

 

 

たえ「今演奏してるCHiSPAってバンド凄いね。

しかもなんか見た事ある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏希 (比企谷君は沙綾を連れてこれたのかな?

頑張って予定の時間より伸ばしたけど、もう限界……いや、沙綾を信じよう。

私はまた、沙綾が元気にドラムを叩いてる姿が見たいから)

 

 

 

 

 

そして、体育館で鳴るメロディが止まった。

 

 

 

 

香澄「あ、終わっちゃった」

 

 

 

夏希「ありがとー!!次のバンドも楽しんでってー!!」

 

 

 

 

【Fuーーーー!!】【いいぞーー!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは次のバンド、

Poppin’Partyさん!!お願いします!!』

 

 

 

 

夏希(頑張ってね。Poppin’Party)

 

 

 

 

 

 

 

小町「あっ、Poppin’Partyの出番来ちゃった……。

お兄ちゃんと沙綾さん大丈夫かな……」

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

自転車に乗ったのなんていつぶりだろうか。

そんな呑気なことを考えてる自分に少し笑みをこぼす。

 

 

 

 

 

沙綾「間に合う………かな。

香澄…………みんな……。」

 

 

 

 

学校が見えてきた、やはり自転車は徒歩より速い。

比企谷君には改めてお礼をしなきゃ。

 

他の人にも沢山迷惑かけたよね。

…………ゆっくり恩を返そう、私が出来ることならば。

 

 

だけど今は、今だけは………

私のわがままを、私の気持ちを、優先させてもらうね。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

たえ「私たちの番だね…………」

 

 

 

香澄「…………!」

 

 

 

有咲「だぁぁぁぁ!集中しろ!!」

 

 

 

香澄「あ、ありさ…………」

 

 

 

有咲「確かに心配はするけど、今はライブだろ?

それに!!そもそも沙綾はポピパに入るなんて一言も言ってないんだ。

沙綾だってパン屋があるし、色々大変なんだよ!」

 

 

 

りみ「か、香澄ちゃん。

まずはライブのこと考えよ?」

 

 

 

たえ「うん。私たちはやれることをやる。」

 

 

 

香澄「みんな…………」

 

 

 

有咲「そういうことだ。もう始まるんだから切り替えろよな!

もう今はボーカルの香澄だろ?」

 

 

 

 

香澄「…………うん。みんなありがと!

…………ふぅ、全力でキラキラドキドキしよう!!」

 

 

 

 

 

「それではお願いしまーす!!!」

 

 

 

 

 

「「「「はい!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

会場は静寂とは言わずとも、期待と緊張で覆われていた。

 

 

 

司会「それではっ!!

次はPoppin’Partyの皆さんです!」

 

 

 

 

香澄「………行こう、みんな!」

 

 

 

 

有咲、たえ、りみ「「「オー!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

香澄「こんにちはー!ぽっぴん『待て待て!!いきなり自己紹介だっけ!?』あ、あれ?!」

 

 

 

香澄「あ、そうだ!

ぶ、文化祭盛り上がってますかー!?」

 

 

 

「イェーイ!!」

 

 

 

香澄「………ふぅ。

それでは1曲目聞いてください!!私の心はチョココロネ」

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

体育館外、CHiSPAが演奏を終え感傷に浸っていた。

 

 

 

 

夏希 「文化祭の演奏、ちょー緊張したし!」

 

まゆ 「いつ慣れんだよ〜あんたはー」

 

夏希 「だってー」

 

 

 

ふみか 「あ………………、さあや」

 

 

 

 

 

沙綾 「はぁはぁはぁ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なつ、ふみか、まゆ、わ、わたしっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏希 「楽しかったよ。さあやとのバンド楽しかった。」

 

 

 

沙綾「っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏希「さあやは?」

 

 

 

沙綾「っ、楽しかった!!楽しくて………大好きだったよ」

 

 

 

夏希「……うん、、、そんだけ!

みんな待ってるよ」

 

 

沙綾「……うん。ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あの……。コレ」

 

 

 

 

 

まゆ「うちの新メンバーのさとちゃん!」

 

 

 

 

 

ふみか「恥ずかしがりだけど演奏は派手」

 

 

 

 

 

 

 

さとちゃん「そ、そうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ありがと、借りるね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

渡されたドラムスティックを強く握りしめる。

その目にはもう…………

 

 

夏希「うん、いつもの…………あの沙綾だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「……………行ってきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHiSPA「「行ってらっしゃい!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてPoppin’Partyの演奏は観客の雰囲気を盛り上げていた。

 

 

 

 

香澄「ありがとうございましたー!

 

………………次は、今日のために作った曲です。みんなで作った曲。

今日は1人いないけど、いつか一緒に歌おうって約束しました。

いつかはまだだけど、信じてる。

一緒に歌うこと…………できるって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「えっと、、そんな気持ちを込めて歌います。

聞いてくだ…………えっ!!」

 

 

 

 

 

香澄「さあや!!!」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「えーっと、ドラム久しぶりだなぁ」

 

 

 

有咲「え、もう出来んの?!」

 

 

 

沙綾「どうだろ……。数回聴いただけだし、ボロボロ!」

 

 

 

たえ「そこは気持ちで」

 

 

 

りみ「一緒に頑張ろ!」

 

 

 

 

扉が開く音が聴こえたと思ったらそこには沙綾がいた。

香澄達は笑顔で迎え、他の生徒達はやや混乱していたが、エモい展開だと徐々に悟る人達がちらほら出てきていた。

 

沙綾がドラムチェックで音を出し始める。

その瞬間だけは沙綾の空間だった。

 

 

 

 

沙綾「よし、いつでも!」

 

 

 

 

香澄「うん、じゃあ行くよ?」

 

 

 

有咲「おう」

 

 

 

たえ「おっけー」

 

 

 

りみ「が、がんばろ!」

 

 

 

 

 

香澄「お待たせしました!聴いてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

【STAR BEAT !〜ホシノコドウ〜】

 

 

 

 

 

 

『ラララ〜』

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山吹母「比企谷君、本当に何とお礼を言ったら…………」

 

 

 

山吹母は目に涙を浮かべる。

 

 

 

紗南「お姉ちゃん達……!」

 

 

純「…………かっこいい」

 

 

 

 

山吹父「ははは、サービスが過ぎるんじゃないか?

本当に沙綾のこと好きじゃないのかい??」

 

 

 

 

 

八幡「自分も少し観たかったのと、一応文化祭実行委員なので文化祭を楽しんでもらう仕事をしたのでこれでサボりにはならないって事ですよ。」

 

 

 

 

 

まあ、確かにちょっと…………カッコつけ過ぎた気もするけど今日は文化祭だし、ちょっとくらい許して欲しい。

 

 

 

 

………あと山吹父。

娘想いというか、あそこで好きって言ったら僕はパンにされてたんですかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡が山吹母の病院に行く数分前のこと、、、

 

 

 

 

 

こころ「それ〜っ!!」

 

 

 

 

 

美咲「わ、ちょっとこころ!?

この鳩どうするの!?」

 

 

 

 

 

 

人集りのある所へ向かうとやはり、こころのマジック?で、お客さんも満席で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

 

八幡「いたいた…………え…」

 

 

 

 

てか何コレすごっ!?

観客いっぱいるし鳩もいるし、なんか凄そうな物も沢山置いてある。

さっき見た時より豪華になってない??

 

 

 

 

こころ「あら、はちまんじゃない!!

はちまんも一緒にやりましょ!!」

 

 

 

八幡「いや普通に色んな意味で無理」

 

 

 

美咲「比企谷くん…………。

なんか探してた感じするけど、こころに用事?」

 

 

 

さすが奥沢だ、空気読むのが得意で気も使える。

お前はきっといいお嫁さんになるな、うん。

 

 

 

八幡「あぁ。

弦巻、ちょっと黒服さん達に用があるんだけど呼ん「どうされましたか?」」

 

 

 

 

 

黒服「……………………」

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

美咲「……………………」

 

 

 

黒服「……………………」

 

 

 

 

こころ「黒服がどうしたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、うん…………もう大丈夫みたいだ。

大丈夫じゃないかもだけど多分……平気なはず」

 

 

 

 

怖いよ怖い、あと怖い。

どうされましたか?じゃねーよ、どうしたんだよ本当に。

黒服って忍者なの??

 

 

 

 

八幡「じゃあちょっと黒服さんと話があるから、お前ら頑張れよ」

 

 

 

 

こころ「当然よ!みんな笑顔にしてみせるわ!

だから、八幡も頑張るのよ!!」

 

 

 

 

美咲「うん、比企谷君も頑張ってね」

 

 

 

 

八幡「………………どうも。」

 

 

 

 

 

何も言ってないんだけどな、分かるもんなのかね。

まあ俺は頑張ることないけどな。

 

 

 

奥沢も本当に頑張れよ。

お前に花咲学園の治安がかかってるかもしれないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「あの八幡様、それで話というのは?」

 

 

 

八幡「あー、ちょっと頼み事聞いて貰ってもいいですか?」

 

 

 

 

 

恐る恐ると黒服さんにお願いしてみる。

 

 

 

 

 

 

黒服「我々にですか?」

 

 

 

 

 

 

八幡「はい。ちょっと面倒な事かもしれないですけど………」

 

 

 

 

 

 

 

黒服「…………少し驚きました。

八幡様が私たちに頼み事をするとは…………

分かりました。

私たちに出来ることであれば力になります。」

 

 

 

 

 

八幡「えっ…………そんな簡単に了承していいんですか?

自分で言うのもなんですけど…………」

 

 

 

 

 

弦巻の頼み事なら一瞬で聞くどころか、頼み事言う前に叶えてくれてるまでありそうだが。

 

 

 

 

の〇太くんがドラ〇もんに助けを呼ぶ前に、ジャ〇アンぶっ飛ばしてくるぐらいには叶えてくれそう。

 

 

 

 

 

 

黒服「こころ様にも皆さんが困っていたら助けてあげてと申されておりましたので。

こころ様は寛大な心の持ち主であり、とても優しいお方なのでございます。」

 

 

 

 

そういえば初めて弦巻の家に行った時にそんな感じの事言ってたな。

 

 

 

 

てか後半………………黒服の人自慢げに語るじゃん。

表情は相変わらず無表情だが、なんかもうわかる。

言葉に好き好きオーラだだ漏れだったし。

 

 

 

 

 

 

 

黒服「それで八幡様。

要件というのは………?」

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、それはですねーーーーー。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「なるほど、つまりPoppin'Party様のライブ状況を配信すれば良いのですね?」

 

 

 

 

 

 

八幡「はい。

お願いしてもいいですか?」

 

 

 

 

 

黒服「………………八幡様はお優しいですね。

山吹様の為にそこまで」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………別にそんなんじゃないっすよ。

ただ、1番見たがってた人かも知れない人が見れないのは…………

寂しいじゃないですか。」

 

 

 

 

 

 

山吹のお母さんも、アイツ自身の優しさに沢山救われていると言っていた。

 

 

 

 

 

1度は娘が自分のせいでバンドを辞めるきっかけを作ってしまったこと。

だが、身体が弱い事を誰が責めれるだろうか。好きで弱い身体になってる訳なんてない。

 

 

 

山吹のお母さんと話した時に、

「あの子は優しすぎるの。でもその優しさを自分にも向けて欲しい」と言っていた。

 

 

 

 

アイツはまた自分のせいで1つのバンドに亀裂を入れたくはないのだろう。

それ故に戸山達の誘いを断り続けている。

 

 

 

 

そんな彼女の晴れ舞台を、

誰よりも観たいのはきっと…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山吹母「ふふっ、沙綾ったら楽しそうね。

それに、香澄ちゃん達も」

 

 

 

 

山吹父「あぁ、こんなに楽しそうな沙綾を見たのは久しぶりかもしれないな」

 

 

 

 

紗南「おねーちゃんがNew-Tubeに出てる!」

 

 

 

純「ねーちゃん達、New-Tuberになったってこと!?」

 

 

 

 

そう。

今俺たちは、世界中で人気のNew-TubeというアプリでPoppin’Partyのライブを見ている。

 

 

 

八幡「あー、New-Tuberにはなってないな。

ただ、花咲学園の紹介として文化祭の様子…………ライブを配信してるんだよ。」

 

 

 

バンドは今、日本でめちゃくちゃ人気だからな。

世界的にもなのか?そこら辺は分からんけども。

 

 

花咲学園の紹介としてってのは全くの嘘だけど。

 

 

今これは限定配信だから、黒服さんのアカウントをフォローしてる人しか見れない状態だからね。

つまり動画で観れてるのは俺達だけ、正確には俺のケータイでしか観れない。

 

 

後で5人に許可取ったら宣伝として動画上げてもいいけどな。

 

 

これバレたら怒られるのかな?

なんかうちの学校の風紀委員怖いって聞くけど…………怖い。

花咲の宣伝より自分の学校生活を優先すべきだよな、うん。

 

 

 

ここから状況説明とか、文実の事とか、クラスの事とか色々あるのめんどくせぇな…………………………

 

 

 

 

 

八幡「俺の状況も知らずに……」

 

 

 

 

 

 

 

『走りだす いつか走りだす』

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ひどい演奏だな。

涙流して、テンポもズレてて、演奏とは言い難いようなライブ。

でも…………………… 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面の向こうでキラキラ輝いてる5人が幸せそうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 














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祭りはまだまだフェスティバル?

 

 

 

 

 

 

Poppin’Partyのライブも無事に終了し、文化祭1日目は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は動画でライブの終わりを確認すると、山吹家に別れを告げて学校へ戻っていた。

山吹父に車を出すと言われたが、なんかもうこれ以上は気まずいので歩いていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

学校に着くと一般のお客さんは帰宅しており、それぞれ片付けが始まっていた。

 

 

 

 

 

時間はもう夕方16時30分を回っており、病院からここまで来るのに約20分かかったので少し焦っている。

 

 

 

 

 

クラスの奴らが怒ってる可能性があるが、言い訳はここに来るまでに考えておいた。

 

 

 

 

 

ぶっちゃけ、考えたも何も俺は文実なので『文実の仕事をしていたので遅くなった』

 

 

 

これで全てが解決。文句は誰も言えないのだ。

 

 

 

…………どうしよう、もうちょいサボろうかな。

 

 

 

なんて思ってみるも、やはり怖いので教室へ向かってみる。

 

 

 

 

 

八幡「同じ文実とか知り合いには会いたくないもんだな。

特に奥沢とかは。」

 

 

 

 

 

アイツ、やたらと鋭いしサボってんのバレたら面倒だしな。

結局弦巻の世話も任せたし、怒られても仕方ないというか

 

美咲「で?

誰に特に会いたくないって?」

 

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

 

 

美咲「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「oh………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずい。

聞かれたくないことを聞かれてしまった。

 

 

 

 

 

 

美咲「で?

そんなに私に会いたくなかった?」

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いやぁ、あの…………ですね?

それは言葉の綾というか、その、アレがあれ」

 

 

 

 

 

 

美咲「………………はぁ。ま、別にいいけどね。

そっちも割と大変そうだったけど、一件落着めでたしめでたしって感じで良かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

…………意外とあっさり?

でも本当そうなんだよな。

大変だったけど、一件落着で……

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あれ?お前らに話してたっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

Poppin’Partyのことはコイツら(ハロハピ)には、話してなかった気がするんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「いや、比企谷くんから直接聞いてはないよ。

ただ戸山さんとかたまに来てたし、なんなら「はっちー少し借りるね!」とか言ってたからね。」

 

 

 

 

 

 

あ、そうなんですね。まあ別に隠してる訳でもないから良いんだけどね。

ただ俺が言うのはおかしいと思ってたから黙ってたけども。

 

 

てか借りるってなんだよ。俺は物か。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「でも本当に良かったね。

Poppin’Party、みんな凄く楽しそうだった。」

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ、そうだな。

これで俺も自由になれたわけだし、めでたしだな。

結構疲れたけど」

 

 

 

 

 

 

主にメンタル面の方が…………

 

 

 

 

 

 

 

美咲「こころに振り回されまくったから、私も今日はクタクタだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだった。奥沢は弦巻と一緒だったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「本当にお疲れ様じゃん。ガチでドンマイ」

 

 

 

 

 

 

美咲「うん、どうも。…………まあ私で良かったかな。

他の人だったらヤバかったかもだし、私は多少慣れてるし」

 

 

 

 

 

 

 

「それでも突発的過ぎて困るけど。」

 

などと、苦笑いで言う奥沢に俺は驚きと関心していた。

 

 

 

 

 

 

 

マジ優しいやん。

オカンだわコレ。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、そうだ。

比企谷くんに伝えること会ったんだ。」

 

 

 

 

 

 

八幡「え、なに急に。告白?」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「えっ、は!??///

ち、違うって!!//」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、冗談だから。」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「っ…………」

 

 

 

 

 

 

 

告白だって文化祭のイベントの1つって聞いたけど全然違うらしい。

ま、知ってたけどね!!悲しくなんてないから!!

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ。

…………こころが比企谷くんのこと探してたの。

その調子だと会ってないみたいだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

は、弦巻が?なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、見てねーな。

ちなみになんで探してたかわかるか?」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「それがさ、Poppin’Partyのライブが終わってからソワソワしてて、

片付け終わったらすぐに『はちまん探してくるわ!』って走って行っちゃった。」

 

 

 

 

 

 

なるほどわからん。ソワソワしてるのが少し怖いけど。

でも、片付け終わらせてから行くのは偉いな………………ん?

 

 

 

 

 

 

八幡「片付け終わったのか?」

 

 

 

 

 

 

美咲「あー、うん。

私たちマジックで使った場所も教室も終わったよ。

まあ、明日もあるからね。片付けって言うほどのものでもないけど」

 

 

 

 

 

 

 

あ、そうか!

明日もあるからそこまで時間かからないのか。

良かったー、先程の心配も杞憂で済んだな。

 

 

 

 

 

八幡「じゃあもう帰宅でいいのか?」

 

 

 

 

 

美咲「うん。

片付け終わった時に先生が解散って言ってたから多分大丈夫だと思うよ」

 

 

 

 

 

 

それなら帰ろう。

でもこのカメラどうしよう…………

文化祭実行委員で渡されたものだから返さなきゃ行けないのか?

でも明日も文化祭あるし明日でいいか、めんどくさいし。

 

 

 

 

 

 

八幡「そうか、色々とサンキュー。

てことなら俺は帰る。

弦巻には明日『ごっめーん、帰ってたわ』って言えば大丈夫だろ。」

 

 

 

 

 

 

美咲「大丈夫なのかな……?

まあじゃあ、一緒に帰ろうよ。

私ももう帰るし」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、俺自転車なんだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

自転車と一緒に帰るって事は走って着いてくる覚悟があるってことか?

それなら全然いいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はいはい、いいから行くよ。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「俺が良くな「何?」いこともないな、うん。」

 

 

 

 

 

 

 

怖いよ怖い、あと怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一応念のために職員室に行ってみたが、文実で借りたカメラは一旦回収するらしく、一台無いとちょっとした騒ぎになってたらしい。

悪気はなかったんです、はい。

 

 

 

 

 

 

そして今俺と奥沢は、自転車置き場に向かっているのだが1つ大事なことを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「自転車の鍵が無い」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「え、は……?

無くしちゃったの?」

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿なの?みたいな顔をする奥沢に少々怒りを覚える。

 

 

 

 

 

 

八幡「無くしてはない。」

 

 

 

 

 

 

美咲「何その訳ありみたいな返事。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ実際に訳ありだからな。」

 

 

 

 

 

 

 

忘れてた。

自転車の鍵は多分山吹が持ってるな。

自転車貸してから会ってないし。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「???

じゃあどうするの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ、とりあえず自転車取りに行ってみるか。」

 

 

 

 

 

 

 

鍵差しっぱなしっていう可能性がまだあるからな。

無かったら明日返して貰えばいいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、自転車置き場が見えてきた頃。

 

 

 

 

 

 

美咲「誰かいない?しかも複数人で」

 

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、いるな。

しかも俺の自転車がある場所ピンポイントで。」

 

 

 

 

 

 

美咲「アレは………」

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あー!!!アレはっちーだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「え、なに、なんか叫んで無い?

てか走ってきてない?」

 

 

 

 

 

大声で何かを叫んでからこっちに走ってくる姿は、たとえ誰であっても怖い。

 

 

 

 

 

 

美咲「と、戸山さんだ。

ていうかPoppin’Partyの人達じゃない?!」

 

 

 

 

 

香澄「はっち〜〜!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ちょ、まっ、ぐえっ!!?」

 

 

 

 

 

 

戸山ダイブが直撃。効果は抜群だ!

そのまま地面に倒れ、戦闘不能。コンクリートが痛いです。

 

 

 

 

 

 

 

たえ「おぉー。いいの入ったね。

生きてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「生きてるから早くコイツを何とかしてくれ!」

 

 

 

 

 

 

未だに戸山は俺の身体に覆いかぶさってるままで顔を埋めている。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「うわぁ〜ん、ありがど〜。

はっちーのおかげでさあやがぁーー」

 

 

 

 

 

 

八幡「は!?ちょ、泣かれても困るんだけど…」

 

 

 

 

 

 

 

りみ「香澄ちゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「香澄……」

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷と牛込さんは若干息を切らしながら俺らの方を見る。

 

 

そしてその2人の後ろにいる山吹と目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………えっと、そ、そのっ!」

 

 

 

 

 

 

 

明らかに山吹は焦っていて、顔を赤くしては視線を右、左へと動かす。

おい、やめろ。俺まで緊張するじゃねーか!

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おう…………あの、だな……」

 

 

 

 

 

((なんか病院の時のこと思い出したら恥ずかしくなって来た!!))

 

 

 

 

 

 

え、なに、『お疲れさん』とか言えばいいの?!!

病院での出来事は俺の中で新たな黒歴史となったと言いますか……

 

 

 

 

 

沙綾(うぅ……

あの時泣いちゃってたし、なんか凄く子どもっぽかった所を見られてたし……)

 

 

 

 

 

 

 

八幡、沙綾「「えーっと………」」

 

 

 

 

 

 

 

美咲、有咲 (付き合いたてのカップルかな?かよ!)

 

 

 

 

 

 

 

八幡「と、とりあえず戸山は離れろって!!」

 

 

 

 

 

 

 

この絵面は普通に不味い。

泣いてる戸山が俺に抱きついてるので、あらぬ誤解を生みそうだ。

 

 

 

 

 

 

八幡「……それにだ。

最終的に決めたのは山吹だし、5人でPoppin’Partyは作ったんだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お前………」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「うん…………でも、それでもだよ。

比企谷くんが居なきゃ私はPoppin’Partyにいなかったかもしれないから。

本当にありがとね。

それと、みんなも心配かけてごめん…………本当にありがとう」

 

 

 

 

 

 

香澄「ざあやぁぁぁぁーー!」

 

 

 

 

 

 

泣きながら山吹に抱きつく戸山。

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あー、もうよしよし。

………………もう、泣かれると私も泣いちゃうじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「もうキリねぇなお前らぁぁ!!」

 

 

 

 

 

 

りみ「ふふっ……でも、嬉しいよね?」

 

 

 

 

 

 

有咲「それはまぁ…………そうだけど」

 

 

 

 

 

 

たえ「ありさー、私たちもー」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「はっ!?お、おい!やめろって!

離せー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、あはははは。

私たち空気になっちゃったね」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「だな。

騒がしいし、先帰りたいんだけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

あのー、百合百合しててもいいんですけど自転車の鍵だけ返してくれませんか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あ、あはは…………ごめんねー、色々と。

それと、はいコレ。自転車ありがとね」

 

 

 

 

 

 

そう言って山吹に自転車の鍵を渡される。

 

 

 

 

 

 

八幡「ん、どーも。

じゃあ俺は帰るから」

 

 

 

 

 

 

自転車のロックを外し、カゴに自分の荷物を置き、サドルに座りハンドルを手に取る。

そして素早くペダルを漕ぐ。

このスマートな動きを誰も止めることは出来ない。

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、ちょ………!!」

 

 

 

 

 

 

甘いな奥沢。

勝負は一瞬で決まるものだ。

自転車の人と一緒に帰るってことはこういうことなのだ!

こっちが合わせるのでは無く、そっちが合わせてもらわないと困るね!!

 

 

 

 

えー、一緒に帰ろうよー!?なんて戸山の声も後ろから聴こえるが、聞かなかったことにしよう。

時にはそういうことも大事になってくる。

女子6人と一緒に帰ったって話すことなど無いし、場に浮くし、うるさそうだしでちょっと勘弁してください。

 

 

 

 

 

 

駐輪場から校門へと向かう間に妙なテンションになっていた俺は、校門の前にいる生物に気が付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あら?はちまんじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

校門の前で大きく手を振る金髪少女。

 

弦巻……!?何でコイツがここに…………!

突っ切るか?行けんのか?

 

 

 

 

 

『辞めた方がよろしいかと。』

 

 

 

 

 

 

八幡「!!?」

 

 

 

 

脳内に直接語りかけられ、俺は思わず急ブレーキをかけて弦巻の前で止まった。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「今のとっても楽しそうだわっ!」

 

 

 

 

 

八幡「楽しくないです。怖いです。ごめんなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

俺の心境など微塵も分かってない弦巻が目を光らせているが、既に隣にいた黒服のことしか頭になかった。

脳内に語りかけてくるなよ!

 

 

 

 

 

黒服「比企谷様、例の件は上手くいったのですね。良かったです。」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………あ、はい、お陰様で。

色々手伝ってもらって助かりました」

 

 

 

 

 

良かったと思ってるならもう少し笑顔で言ってくれませんかね……。

真顔すぎて怖いって!

それともあれか?さっき弦巻を無視して突っ切ろうとしてたの気にしてるのん?

 

 

 

 

 

 

…………まあ?弦巻の安全のためなら害になりそうな人間を1人や2人、東京湾に沈めててもおかしくは

 

 

 

 

 

 

黒服「……………………」

 

 

 

 

なくないな、うん。そんなことする訳ないんだから。

黒服集団は、安心安全笑顔満開弦巻大好き信者なだけで大体の事は何でも出来て、人の心が読めて脳内に介入できるくらい普通なんだから。

 

 

 

…………普通って何だっけ。

 

 

 

 

 

美咲「それで?

何そこでフリーズしてるのかな?」

 

 

 

 

 

 

八幡「すみませんでした。」

 

 

 

 

 

 

こっちの問題もあった。

もうやだ、敵多すぎ。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「えー!!!!

こころん達もバンドやってるの!???

しかと、はっちーも一緒に!????」

 

 

 

 

 

 

 

たえ「わーお」

 

 

 

 

 

 

 

りみ「うん、ちょっと驚きだね?」

 

 

 

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「意外すぎるだろ」

 

 

 

 

 

 

 

弦巻の一言で、あの場にいた全員で帰ることになった俺ら。

 

 

8人中7人は女子、そして俺と自転車くん。

黒服は知らない。最早知りたくもない。

 

 

 

しかも大人数の女子達の中では、肩身が狭い所の話ではなく、一番後ろで自転車を押しながら歩く俺は、いてもいなくても良いのではないかと思うくらいの女子トークで会話が弾んでいた。

 

 

 

 

ぼーっとしながら歩いてると、いつの間にかハロハピの話になっていてPoppin’Partyのメンツが一斉にこちらを向いた。

 

 

 

 

 

それぞれ反応するが、

山吹は俺の事をジト目で見ていたが無視。

大方、何でバンドに入ってること黙ってたの?って感じだろうが、聞かれてもないのに答える必要は無いからである。

 

 

 

 

 

それと市ヶ谷、お前に意外って言われたくないわ。

 

 

 

 

 

 

香澄「はっちーは何するの!?

ギター!?ベース!?それともボーカル!!??」

 

 

 

 

 

八幡「ちょ、待て!落ち着け。

近いしうるさい、危ないし手を握るな」

 

 

 

 

勢いよく俺の手を握り、弦巻に負けないくらい目を輝かせる戸山。

何その技、どこで習うの?

あと自転車押してるからマジで危ない。

 

 

 

それにあんまり男子高校生の手を気安く握らないで頂きたい。

こっちが逆に手を握ると警察沙汰になるというのに…………………

 

 

 

 

りみ「男性の方はドラムとか多いよね」

 

 

 

 

 

有咲「ドラムもアレだけど、ボーカルだったらマジで面白いな」

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷さんはとても楽しそうに笑ってる。

てかアレってなんだよ、舐めてんの?やんの??

 

 

 

 

 

こころ「キーボードよ!」

 

 

 

 

 

 

有咲「私と一緒か!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あはははっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「一緒で悪かったな」

 

 

 

 

 

 

 

どんだけ嫌なんだよ、嫌われすぎだろ俺。

もう泣きたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「美咲ちゃんもメンバーなの?」

 

 

 

 

 

 

美咲「あー、うん、一応DJでやってるね」

 

 

 

 

 

 

 

「「「DJ!??」」」

 

 

 

 

 

 

香澄「すごいね!!」

 

 

 

こころ「???

DJはミッシェルよ?おっきいクマのミッシェルがDJをやってるわ!

………あ!もしかして美咲もDJもやってるの!?

すごいわっ!今度ミッシェルと一緒にやるといいわ!」

 

 

 

 

 

八幡、美咲「…………」

 

 

 

 

 

Poppin’Party「……………………?」

 

 

 

 

 

 

りみ「え、えーと……美咲ちゃんじゃなくて、ミッシェルなんだよね!」

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、あぁ、そうなんだよね!

私はハロハピの補佐、マネージャーみたいな感じ、うん。」

 

 

 

牛込さんのフォローがなければまずかったな。

あと奥沢がまじで可哀想…………

今後の奥沢の多少の行いは許してやるか。

だから強く生きろよな。

 

 

 

 

牛込さん以外の4人はポカーンとしていたが、知らなくていいこともあるのだ。

だけど、弦巻さんは知らないことが多すぎると思います!

 

 

 

 

 

 

有咲「ミッシェル……?熊……?」

 

 

 

 

 

 

 

ほら困惑してる人出てきてるって。

まあ、教えてやらないけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局その後は色々話してそれぞれ帰路に着いた。

帰った後に気づいたのだが、弦巻が俺を探してた理由を聞くの忘れた。

 

 

 

 

 

まあ、本人から何も言われないし大した事ではないんだろうな。

アイツの話なんて大抵規格外な事しか言わないし………

 

 

 

 

 

 

明日で花咲川の咲祭も終わりだ。

2日と短いようにも感じるが、準備期間とかもあって俺は割と長く感じたんだけど。

それに黒歴史も作ったし、精神的に疲れたわ。

暫くでいいから普通の生活がしてーな……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と思っていた時期がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薫「やぁ子猫ちゃん達、待たせたかな?」

 

 

 

 

 

こころ「薫、全然大丈夫よ!

準備はいいかしら!」

 

 

 

 

 

 

花音「ふぇぇ、緊張してきた…………」

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「かのちゃん先輩、リラックスだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ、やりますか…………。

それじゃあミッシェルになっ………じゃなかった。

ミッシェル呼んできますねー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ちょっと待て」

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん?どうしたのかしら?」

 

 

 

 

はぐみ「はちくんトイレ?」

 

 

 

 

 

薫「そうなのかい?我慢は良くないよ」

 

 

 

 

美咲、花音「「……………?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんで今俺たちは体育館のステージ裏にいる?

そして、何で瀬田さんが花咲川にいる?」

 

 

 

 

 

 

こころ「変なことを聞くのね?

もちろんそれは、これからライブだからよ!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「変なことじゃねーよ!初耳なんだけど!!てかライブ!?

いや、お前ら楽器持ってるし何となく分かってたけど!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ、薫「………?」

 

 

 

 

 

 

 

美咲、花音「えっ!?」

 

 

 

 

 

 

こころ「…………???」

 

 

 

 

 

 

美咲「こころ〜〜!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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イベント事が終わる。つまり、また新たなイベントが始まる?

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった………

さっきまで普通に文化祭を過ごしていたのに…………

 

 

 

 

 

 

 

文化祭2日目も無事に開催しており、クラスの奴らも順調そうだ。

そして俺も委員会の仕事をそつなくこなしていた。

 

 

 

 

 

自由時間は戸山達や弦巻達に誘われたが、なんかアレがアレでアレだから。と雑に断ってた。

 

 

 

 

 

 

松原さんがいたなら考えてたけどな。

残念ながらお友達と一緒に回るらしい。

アイツらといるとすごく疲…………目立つし、それにだる…………男1人だから肩身が狭いからうん。

 

 

 

 

しかも、ワンチャン背後から刺される。

 

 

 

 

 

 

 

クラスではお店の商品が全部売れたらしく、評判よく終わっていた。

普通に凄いわ。弦巻達マジックも一番客を集めたというデータも残ってる。

 

 

 

 

 

 

まあ普通に文化祭でやる規模じゃないからな。

本物の鳩とか脱出マジックとかやってたし……

もう諦めて先生達が無視してたのも事実。

 

 

 

 

 

 

 

そして文化祭も終わりに差し掛かってたころ、突然弦巻に腕を引かれ体育館のステージ裏に連れられると何故か他校の瀬田先輩がいるし、なんならハロハピ全員いるし、楽器持ってるし、ステージのカーテンが下がってるから見えてないけど、多分ステージ前には沢山の花咲学生いるし。

 

 

 

 

 

 

もう急すぎて話について行けそうにないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「話聞いてないって……こころ?!

比企谷くんに何も言ってないの?!」

 

 

 

 

 

 

こころ「あら………?そうだったかしら?

まあいいわ!はちまん!

これからライブよ!みんなを笑顔にしましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ良くねぇよ!

本当に何も聞かされてなかったんだけど?

え、一応メンバーですよ…………ね?

俺もうやめようかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「ふぇぇ、お、落ち着いてっ!

ほ、ほら、こころちゃんはこれがいつも通りだから………ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「急な発言で、花音さんのフォローがかなり雑になってる」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「弦巻は実際雑だし、本当に突然でバカやるし。

何も間違ってなっ、いてっ…

 

黒服「比企谷様、キーボードは既にお待ちしています。

こちらに置いておきますね」

 

 

 

 

 

 

Oh…………

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、はい、すみません。ありがとうございます。

それとごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「何故謝るのですか?

ライブ頑張ってくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや怖ぇーーーーよ!!

キーボードを置く時、俺の足の上に乗っけたのはわざとだよね?!

バカとかは奥沢も言うけど奥沢はセーフなのでしょうか??!

 

 

 

 

 

 

例え弦巻が悪くても黒服たちの法律は、『こころ様正義』を掲げて権力使ってくるんだろうな………

 

 

 

 

 

 

 

そろそろ黒服達に、危ないリストとして俺が入ってそうですごく怖い。

常日頃からスナイパーとかで狙われてるんじゃないかなって思ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「てか、先生には言ってあんの?

勝手にやって良いわけはないだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それはバッチリよ!!

先生には許可を貰ったわ!

それと、薫の事もよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………奥沢、まさか。」

 

 

 

 

 

黒服が脅し……

 

 

 

 

 

美咲「………大丈夫。黒服達じゃないよ。

私とこころで先生に聞いたから」

 

 

 

 

 

ほっ。

 

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、そう。

それなら良かっ…………たのか?」

 

 

 

 

 

 

普通にこれから恥ずかしい想いをするんだけど。

普通にライブする分にはまだ良く…………はないけど、クラスの奴らに見られるとなると緊張と恥ずかしさで消えたくなる。

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ミッシェルがまだ来てないよ!」

 

 

 

 

 

 

 

薫「確かにね………迷子かな?

ふふっ、ミッシェルも迷える子羊なんだね。」

 

 

 

 

いや熊だろ。

 

 

 

 

八幡「というか、瀬田先輩その格好……。」

 

 

 

 

 

さっき見た時に気づいていたのだが、聞く暇がなかった。

目の前にいる瀬田先輩は執事?のコスプレをしてる。

 

 

 

 

 

まあそうだよな、羽丘も文化祭なんだしそれが終わってそのまま来たってことはそうなるか。

 

 

 

 

 

 

薫「この姿を見てたくさんの子猫ちゃん達が喜ぶからね。

私としても嬉しい限りだよ」

 

 

 

 

 

 

 

花音「うん、すごく似合ってるよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

流石のカリスマ性だ。

そりゃ男より女にモテるわけだ。

俺だったらそもそも恥ずかしくて着れないし。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ステージ衣装を用意して貰ったのだけど、今日はみんな違う方が文化祭らしくていいわねっ!

このままで行くわよっ!!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「うんっ!

よーーーし、頑張っちゃうよ!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「まじで急過ぎて、逆に緊張する暇がないな。

てか、実感が無いって言った方が正しいか。」

 

 

 

 

 

 

花音「うん、そうだね。

でも急なのがこころちゃんらしいよね。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………確かにそうっすね。」

 

 

 

 

 

これくらいの出来事は慣れないといけないのかもな。

 

 

 

 

 

 

ミッシェル「みんな〜お待たせ〜」

 

 

 

 

 

こころ「ミッシェル!!来たわね!

みんな準備はいいかしら?

今日は花咲川のみんなを笑顔にするわよっ!」

 

 

 

 

「「「「「おー!!!!!」」」」」

 

 

 

おー、と心の中で言っておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは最後にある子達からの乱入があります!

昨日に引き続きバンド演奏です!

ハロー、ハッピーワールドの皆さんお願いします!』

 

 

 

 

文化祭実行委員長の声と共に、ステージに立つ俺ら。

乱入って…………。

 

 

 

当然緊張はしてる。こんなの絶対に慣れないし。

3バカは別だ、あれはそう言う生物。

 

 

 

 

香澄「はっちー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

なんか客席の方から聞こえたが…………うん、気のせいか人違いだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「さあや!あれ!

キーボード弾いてるのってはっちーだよね!?」

 

 

 

 

 

 

沙綾「うん……間違いないと思う」

 

 

 

 

 

 

有咲「嘘だろ………冗談じゃ無かったのか」

 

 

 

 

たえ「上手だね」

 

 

 

 

 

 

りみ「あれがミッシェル…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「すごいよ!ハロー、ハッピーワールド!

みんなキラキラしてて…………すっごい笑顔!!!」

 

 

 

 

 

りみ「うん……見てるだけで笑顔になれる……」

 

 

 

 

 

たえ「はっちー笑ってはない……………でも楽しそう」

 

 

 

 

 

 

沙綾「………………すごい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「どんどん行くわよ〜っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ここに立っている6人、、、と1匹か。

全員が全員ではないが学年も違ければ学校も違う。

同じクラスじゃなければ服装だって違う。

俺は文実だったから制服だし。

 

 

 

 

 

観客にいる人たちもそうだ。

制服に着替えてる人もいれば、それぞれのクラスでの衣装を着てる。

学年も1年から3年生までいて、先生達だっている。

俺たち6人も含めてみんなバラバラに見えるこのステージ。

 

 

 

 

 

音だけはバラバラになることはなく、ステージを揺らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん!」

 

 

 

 

 

 

八幡「……なんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「とっても楽しいわね?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………今聞くかそれ?

まだ終わってないし、なんなら間奏中だからね?

バチバチにキーボード弾いてるからね俺」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまんの音でみんなを楽しませてるのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………俺の音じゃないだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「みんなだよね!」

 

 

 

 

 

 

 

薫「この儚い音は、1人じゃ奏でられないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「うんっ!私たちの!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「ま、そういう事になりますかね」

 

 

 

 

 

なんでそんな恥ずかしいことを言えるのだろうか………

 

 

 

 

 

 

八幡「………まだ終わってないんだから集中してもらって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッシェル「比企谷くん恥ずかしいのー?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「黙れミッシェル」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花咲川の文化祭、咲祭は盛り上がりを残したまま無事に終了した。

ライブも成功と言えるくらいの内容だったと思う。

 

 

 

 

 

 

昨日、今日の出来事でPoppin’Partyとハロハピは学校内で一躍有名となった。

最初は派閥とか何とか言っていたが、代表2人の弦巻と戸山はそんなこと微塵も気にしない2人だろうし、2人が仲良しなのでそこまで話が捻れることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「さて、帰るか。」

 

 

 

 

 

 

 

文実だったので、他の一般生徒が帰る中でも労働をしていた俺。

辛いし面倒だがよしとしよう。

 

 

 

 

 

文化祭実行委員は内容こそ大変だが、文化祭が終わってしまえばもう2年生まで委員会の仕事が来ることは無いのだ。

体育祭実行委員とかそういうのもだが、イベントが終わってしまえばもうちょろい。

 

 

 

 

 

居残り仕事も言うて30分程度のもの。

書記や委員長などの重要な役割じゃなければそこまで大変ではない。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「良し、来年も文化祭実行委員やるか。」

 

 

 

 

 

 

弦巻の分までやらされたが、まあもう慣れたし文化祭は頑張ってたからな。

許してやらん事もなくも無い。

 

 

 

 

今年の文化祭売り上げや人気ランキングはうちのクラスが学校内1位だった。

色んなものを売ってた事もあるが、1番は恐らく弦巻家無双マジックだろう。

 

 

 

 

 

正直アウト寄りのセーフ???だったが、相手が悪かった。

弦巻こころがルールになるからな。

ワンチャン、法律と戦う時が来るかも知れない。

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷くーん!」

 

 

 

 

 

 

 

おいヒキガヤ君呼ばれてるぞ。

でも俺も比企谷君なんだけど、俺じゃない比企谷君だった場合恥ずかしくない?

学校に俺以外の比企谷君くらい1人や2人いてもおかしくないだろ。

 

 

 

 

 

 

後ろから声聴こえるからこっちを向いてるかも分からない。

つまり俺は返事しなくていいし、後ろを振り向かなくても良い。

QED証明終了。

 

 

 

 

 

ただ1つ気になるのは、

とんでもない速度で近づいてくる足音と、最初の「比企谷くん」って声がどこかのパン屋の声がしたことくら「はっちーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あっぶ……走って突撃して来んな!」

 

 

 

 

 

 

香澄「え、えへへ〜、ごめんごめん!」

 

 

 

 

 

 

あの激突をごめんで済むなら、肩と肩がぶつかったくらいじゃ喧嘩にはならねぇんだよ。

 

 

 

 

保護者さん?しっかりリードつけて歩かせて貰えますか?

 

 

 

 

 

 

沙綾「はぁ、追いついた……。

せっかくなんだし一緒に帰ろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「何がせっかくなんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「同じ文実だし、同じバンドをする者同士でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ!!!そうだよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「お前っ、耳元でうる」

 

 

 

 

 

香澄「今日の演奏すっごく良かった!!

キーボードとっても上手だね!!!!!!

こころんもすっごく歌が上手くて!!!!!

あっ、そうだ!!!!!!!!!!!!!!!

今度一緒に合同ライブとか!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「うん、香澄?

言いたいことは分かるけど1回落ち着こうね。

比企谷くん困ってるから」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………北沢とか弦巻やお前といい、なんでお前らそんなに喋れるの?

口にタボチャでも付いてんの?常時持ってるタイプなの?パッシブなの?」

 

 

 

 

 

 

香澄「タボ…………なに??」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、何でもない。気にしないでくれ。

よくそんなに舌が回るなってことだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

香澄「えへへ〜、褒められた!」

 

 

 

 

 

 

褒めてねーよ。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「かすみ、褒められてはないと思うよ……」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前らも文化祭お疲れ様。

気をつけて帰れよ、じゃあな。」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「うん、比企谷くんもお疲れ様。

じゃあ帰ろっか」

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲達も校門で待ってるって!」

 

 

 

 

 

 

ナチュラルに別れようとしたのに、ナチュラルに阻止られたんだが。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「俺は自転車だからな、悪いけど先に帰るぞ」

 

 

 

 

 

 

 

香澄「えー!!

じゃあ私も後ろに乗る!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「2人乗りはOUTだからな。

それに後ろに乗せるのは、小町しか許してない」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「シスコン……」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや?てかお前に言われたくはない。」

 

 

 

 

 

 

 

ブラコン&シスコンですよねあなた?

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん、遅かったわね?

みんなもう待ってるわよ?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

 

 

 

美咲「だからこころ、文化祭実行委員最後の仕事があったんだって。

てか本来ならアンタも行かなきゃ行けないんだって」

 

 

 

 

 

こころ「あら、そうだったの?お疲れ様ね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁぁぁぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ため息は幸せが逃げちゃうよ、はちくん!」

 

 

 

 

 

 

もう呆れて声も出ないわ。

しかも校門で待ってるのかよ、聞いてないし。

だったら実行委員の仕事やれよ。

 

 

 

 

 

 

たえ「すごく仲良し。」

 

 

 

 

 

 

 

りみ「うん、楽しそうだね」

 

 

 

 

 

これ見て楽しそうってどんだけハッピーなんだよ。

 

 

 

 

 

有咲 (コレは流石に比企谷に同情しちまった。

香澄でも委員会行ってるのに……………口には出さねぇけど)

 

 

 

 

 

 

美咲 (市ヶ谷さん、こころのやばさに気づいたかな?

市ヶ谷さんも私たちと同じ境遇にいそうだから仲良くなれる気がするんだけどな)

 

 

 

 

 

八幡(なんか奥沢が市ヶ谷の方をじっと見てるけど何?

奥沢も市ヶ谷に噛み付かれた?

俺めちゃくちゃ嫌われてるから苦手なんだけど仲間いた?)

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「さっきのみんなの演奏すごかったよ!!

わたしずっとキラキラドキドキしてた!!」

 

 

 

 

 

 

こころ「キラキラドキドキ?

でも笑顔になれたのなら嬉しいわ!

ポピパも昨日の演奏とーっても良かったわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

え、いま戸山笑顔になったって言ったか?

笑顔パワハラになるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「うんうん!!

学校でライブするのすっごい楽しかったね!!」

 

 

 

 

 

 

文化祭帰り、Poppin’Partyとハロハピの11人とかいう大人数で帰っている。

サッカー出来るじゃんか。

しかも自転車で先に帰ろうとしたら、数人から自転車のカゴにバックをぶち込まれた。

 

 

 

 

 

 

俺の扱い雑すぎませんか?

バック全部捨ててやってもいいが、怖すぎるしやめとこう。

 

 

 

 

 

 

たえ「でもはっちーがあんなにキーボード上手いと思わなかった。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「うぉ!?!急に出て来るなよ!」

 

 

 

 

 

 

 

顔近い近い近い近い!!

距離感バグってんのか?真顔で俺の顔の前ににゅっと表れたら誰だってビビるじゃん。

 

 

 

 

 

 

たえ「え、そんな怖い?」

 

 

 

 

 

 

 

首を横に傾げはてなマークを頭にうかべてそうな顔をする花園。

この天然っぷりには、他の男子共が堕とされてそうで少し同情する。

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「それ私も思った!比企谷くんキーボードめちゃくちゃ上手だよね」

 

 

 

 

 

 

八幡「………………どうも。

まあ、小さい頃にちょっとな」

 

 

 

 

 

 

 

それを言ったらお宅の市ヶ谷さん上手いと思うけどな。

本人には言わんけども。

 

 

 

 

 

 

 

りみ「………………」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「おい、りみ?どうかしたのか?

さっきからボーッとしてるけどもしかして体調悪いのか?」

 

 

 

 

 

 

りみ「えっ!うち!?

あっ、それは、その、あの…………」

 

 

 

 

 

 

 

薫「ん?どうしたんだい子猫ちゃん。

私の顔に何か付いてるかな?」

 

 

 

 

 

 

そう言って牛込さんにジリジリと近づく瀬田先輩。

 

 

 

 

 

 

 

りみ「い、いえ!!そういう訳ではなくて!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ〜、そういえばりみは薫さんのファンだったっけ?」

 

 

 

 

 

 

さすが有名人。人気者は違うなぁ。

 

 

 

 

 

 

りみ「そ、それは…………み、美咲ちゃん!///」

 

 

 

 

 

 

美咲「あ〜、りみは癒しだねぇ」

 

 

 

 

おっさんかよ。

 

 

 

 

 

てか、この2人は元から知り合いだったのか。

まあ俺が大体初見ってだけで、中学から一緒とかいるのか。

 

 

 

 

 

 

にしても、牛込さん、松原さん、この2人は癒しか。

1グループに1人は欲しい…………いや、1人以上は欲しい人材だよなぁ。

もう全員癒しでもいいけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「香澄!はぐみ!

さあ、誰があの公園に先に着くか競走よ!!」

 

 

 

 

 

香澄「ふっふっふ、負けないよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「じゃあ、よーいドン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲、有咲「「やめんかー!!」」

 

 

 

 

 

 

 

…………………オカン系もいなくちゃ行けないかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁーー。」

 

 

 

 

 

 

小町「およ?お兄ちゃんが疲れた人の声と顔してる。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「うん、まあ疲れたからな実際。」

 

 

 

 

 

 

 

結局あの後、公園に寄りたい組がうるさくて30分くらい居座ってた。

まあ、30分で済んだことに喜んでおくべきか。

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「ライブと文化祭続けてだもんね、それは疲れるよね〜。

お兄ちゃん頑張ったね!偉い!

あ、これ小町的にポイント高い!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はいはい、たかいたかーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

正確に言うとライブ→文化祭→ライブだったんだけど、わざわざ言う必要ないか。

 

 

 

それとそのポイント、本当に同級生とかにも使ってるのか気になって夜しか寝れない。

何度でも言うが勘違い男子が小町に変なことしないかマジで心配なんだけどお兄ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「うわぁ、お兄ちゃんが変な顔してる。

こまち怖いからもう寝るね!お兄ちゃんもお休みー!」

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、怖いってなんだよって……………ってもういないし。

俺も寝るか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高校生活最初のイベントの文化祭も終わり、ハロハピのライブも達成と。

Poppin’Partyもなんか無事に結成されたみたいだし、めでたしめでたしって感じだな。

そんなに日にちが経ってないのに色々なことが起きて疲れが溜まり続ける。

 

 

 

 

今後も何があるか分からないけど、どうか穏やかに過ごして行きたいと心の中で願おう………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文化祭終わりのハロハピの演奏を聴いて様々な決意や興味、色々な感情を持った女の子達がいたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「今日の文化祭の演奏凄かったなぁ〜!

あんなに笑顔で歌いながら動けるなんて……………

私も頑張らなきゃ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「まん丸お山に彩りを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜ちゃーん!この楽器のメンテも頼めるかな?」

 

 

 

 

???「はい!自分に任せて欲しいッス!!」

 

 

 

 

「ごめんね!最近正式にドラマーになっ…………ふふっ、違うわね。

アイドルだもんね?」

 

 

 

 

 

 

???「か、からかわないでホシイっすよ!!

ジブンなんでまだまだ全然で……。

ドラマーとして精一杯頑張って行くのでよろしくお願いしまっす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「はー、今日は文化祭面白かったな〜!

最後の演奏でルンってくる子も見つけちゃったし!!

あ、そうだ!今度みんなに頼んでみよ!学校で演奏したいなぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「おねーちゃんも一緒に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「今日は文化祭も面白かったですし、最後のライブも素晴らしかったです!

私も元気も一生懸命鍛錬に励みます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ブシドー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ふふっ、やっと見つけたわ。

まさかこんな所で出会えるなんて…………

7年振り………………かしら??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ね?ハチくん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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天使がいれば当然悪魔もいる

過去一タイトルが最速で決まった話です、対戦よろしくお願いします


 

 

 

 

 

 

 

今日は月曜日。

社会人から学生、様々な人間が嫌いだと思われる曜日。

ただ、好きと言う人もいるとは思うのであまり大きく否定は出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

…うん、前にも似たような事言ったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

時計を見ると既に12時を回っており、本日の午前の世界では俺は生きられなかったらしい。

休みの日に午後に起きると少し勿体なく感じるこの気持ちになんて名前を付ければいいのだろう……。

今日は先週の文化祭で振り返り休日になった。

平日に休むって少し背徳感があるけどやはりいいよな。

 

 

 

 

 

 

 

スクールカーストトップ陽キャはこういう日を使ってなんとかランドとか、遊園地、水族館など、休日に混むような場所に行ったりするのだろうか。

……………考えるだけ無駄だな。

 

 

 

 

今日はCiRCLEでバイトがあるため、だらだらタイムはここらで終了ということになる。

 

 

 

はぁ。

やだなぁ、行きたくないなぁ、家から出たくないなぁ、もう1回寝たいなぁ。

などと頭の中で考えるもその願いは叶わず、嫌々でも行くしかないのだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「中学までは接客業なんて絶対やらないとか思ってたのにな。」

 

 

 

 

 

 

中学校であった職業体験とかいうイベント。

なんでわざわざ無償で働かなきゃ行けないんだ。

しかもあの体験、結構詐欺だぞ。

自分がやってみたいとか興味ある職業を選べるならまだしも、第1希望から第3希望までアンケート取って、倍率が高かったら抽選…………

第1希望通りに行けた生徒は何人いるのだろうか。

 

 

 

 

 

第1希望 本屋

第2希望 映画館スタッフ

第3希望 動物園

 

 

 

 

何でこっからショッピングモールのお菓子屋さんの店員になるの?

1から3まで希望通りにならないことあるの??

 

 

 

 

 

あの時一生分の接客はしたつもりだったのにな。

まだ裏の倉庫とか品出しとかが正直楽だったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「イラッシャイマセー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガヤガヤと話し声が聞こえながら歩いてくる団体。

髪の色で7割分かってしまったというか、やはりというか……

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「あ、はっちーだ。」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「こんにちは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「よっ!相変わらず元気ないな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「…………どうも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「比企谷さん、こんにちは」

 

 

 

 

 

 

 

 

幼なじみバンド、Afterglow。

彼女達の演奏はロック寄りの力強い演奏が特徴的………と聞く。

実際ライブなんて観に行ったことないし。

CiRCLEを利用してる時に演奏が聞こえるくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「うっす……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなAfterglowは、CiRCLEの常連の中の常連。

今のところ俺が入ってからの数ヶ月の中では1番見かけるバンドでもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最近は挨拶だけでは無く、バンド内の出来事や世間話的な会話もするようになった。

同じ高校1年生だから話しやすいのだろうか。

まあ何度も顔合わせる仲だし、良いことなのは分かるんだけど………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「ヒッキー!

私たちの次の時間って空きある?

無かったらまた追加で延長したいなって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………………あぁ、うん。

そっちが終わる10分前まで受付が無かったらな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「てか、やっぱり嫌そうじゃん。ひまりのヒッキー呼び」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「あぁ、結構顔に出てたな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「あ、あはは…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「え〜!可愛くない?ヒッキーって!

モカはどう思うー?!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「んー、ひーちゃんらしいな〜って思うよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「そ、それってどういう………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「確かに。

ちょっとひまりっぽいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっちーはどうなーん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで俺に来るのマジですか。そうですか。

…………青葉てめぇ、楽しんでるだろこの状況。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「い、嫌だったら変えるけど…………」

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いや、別に嫌ではないぞ!?

なんならヒキガヤ菌って呼ばれてた過去があるから!

初めて呼ばれるあだ名だから、ヒッキー=俺って分かるのに時間がかかるんだよ。

個性的でいいと思う、うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「比企谷がこんなに喋ってるの初めて見たな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっちー、必死じゃーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰のせいだと思ってんだ???

若干泣きそうな声で言われたら誰だって必死なフォロー入れるだろ。

なんか余計な事まで喋っちゃったし……

 

 

 

 

 

蘭「てか、ヒキガヤ菌って……」

 

 

 

 

つぐみ「わ、私たちはそんな酷いあだ名はでは呼びませんから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、うん、ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天使かな?

天使じゃないよ?

天使だよ?

 

 

 

 

 

 

あー、コレ天使です。

Afterglow天使枠素晴らしいっすね。

やっぱり1バンド1人は必須か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「ねぇ、そういえばさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天使って表現はやっぱりちょっとキモイから言い方変えよ。

癒し属性だな、うん、あんまり変わらないな。

 

 

でもPoppin’Partyは牛込さんだろ?

うちは松原さんいるし、やっぱりQED証明終了だな。

前にもこんな感じの話した気がしなくもないけど、大事な事だから2億回は言っても怒られないな、うん。

 

 

 

 

 

 

ただ天使1人じゃ足りないくらいの悪魔的な奴がいるからな。

市ヶ谷とか山吹とか青葉とか3バカとか…………

 

 

 

 

 

 

 

蘭「ちょっと………聞いてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「えっ、あ、ごめん、俺か。

いや本当にごめんなさい。」

 

 

 

 

 

怖っ!

声色もそうだし、真顔だし!

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「お〜、何かデジャブ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「おい蘭、そんなに怒るなってー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニヤニヤしながら言う宇田川。

ほんとだ、コレはデジャブってる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「な……だから怒ってないって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「まあ私たちは分かるけど、蘭の声のトーン怒ってる人っぽいからね。

ヒッキーにはそう感じるかも………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、今の怒ってないの?

怒ったらどうなんの?初手殴り決めてくるの??」

 

 

 

 

 

 

 

声のトーンもそうかもだが、真顔で睨まれてたって。

この前は机を叩かれて怖かったが、今回はただ普通に怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「な、殴んないって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっち〜気をつけてね〜。モカちゃんはもう慣れたからさ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「モカ後で…………」

 

 

 

 

 

 

 

途中で止めるのもこわ。

青葉は多分もう………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっち〜、ひーちゃん助けて〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「自業自得過ぎるだろお前」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「もう、モカってばー……」

 

 

 

 

 

 

 

やれやれと言った感じの上原さん。

いつものことなのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「それで?

蘭は比企谷に何て言おうとしてたんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「あぁ、うん。

文化祭の日にさ、花咲川でもバンドライブがあったらしくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「あ、わたしも知ってる!Poppin’Partyや、いくつかのバンド、先輩の瀬田さんも出てたって聞いたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ほう。

俺も聞いた事あるなその人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「それで、そのバンドメンバーの1人だけが男の人だったらしいんだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てことは他は女性ってことか。

いや待てよ……おかまって説もまだあるか。

 

 

 

 

 

 

 

蘭「その男の特徴が、猫背で黒髪、アホ毛があるって。」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「ほほーう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「それはそれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5人から視線を感じる。

これは別に気の所為とかではない、マジで見られてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いやいや待てよ。

その特徴って別に珍しくなくない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒髪なんて言わずもがな、猫背だって沢山いるし……………

アホ毛くらいだろ、珍しいの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「あともう1つ、目がアレだったって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「……………………」

 

 

巴「………………………」

 

 

 

つぐみ「…………………」

 

 

 

ひまり「…………………」

 

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「5人で予約のAfterglow様。

時間ですので2番のスタジオにお入りくださーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「うん、いつも通りでいい感じじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「きゅ〜け〜い」

 

 

 

 

 

 

 

巴「だな!

私も喉カラッカラだぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「うん!

みんなすごく良かったし、私ももっと頑張らないと……」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「つぐだってすっごく良かったよ!!

だから今は休憩しなきゃダメだよ!」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「う、うん!そうするね!!

ありがとう、ひまりちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「それで〜?

さっきの話だけど、はっち〜は結局どっちなんだろうね〜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……………どうだろうね。

実は最後に言った目に関しては嘘だから。」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっち〜は自分の目を気にしてるけど、別にそんな酷くはないよね〜?」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「カマかけたってことか??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「でもあの感じ、図星みたいな反応だったけど…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「でもそれなら私たちと一緒に合同ライブとかも出来るかもしれないよね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「モカちゃん的にはマネージャーにして無限に山吹ベーカリーのパンを買わせた買ったんだけどね〜。

なんかさ〜やと仲良さそうだし〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「マネージャーって私たちAfterglowの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「ん〜、それもいいけどモカちゃん専門でも良きで〜す」

 

 

 

 

 

 

 

巴「いや、それって…………。

もしかしてモカは比企谷の事好きなのか?」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり、つぐみ「「えっ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「え〜??

全然好きとかそういうのじゃないよ〜?

ただ反応とか面白いし~、面倒見とか何だかんだ良さそうって思うんですよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「まあ…………」

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「確かに……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「比企谷とは関わってる時間はそんなに多くないけど、まあ想像は出来るな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「でも私たち、マネージャーがいるって程ではなくない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「うん、全然問題はないね〜。

ただ面白そうだな〜って」

 

 

 

 

 

 

ひまり「まあまあ。今のままで良いんだよ!

『いつも通り』でいいじゃん!

ね?みんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………………」

 

 

 

 

 

 

巴「………………」

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「……………」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「えー!!?何でー!?

その流れって、『えいえいおー!』の時だけじゃ無かったの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「こっちの方がいつも通りでしょ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「ですな〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「だな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ひ、ひまりちゃん、ごめんね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「そんな〜!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「って事があったんだけど!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、知らねぇよ。俺に言うなよ。」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「じゃあ誰に言えばいいのー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Afterglowがスタジオに入ってから1時間半、練習が終わったのか、5人がロビーに帰ってきた。

そして突然、上原ひまりが俺に愚痴を零す。

相変わらず仲が良さそうなことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「とりあえず青葉が全部悪い気がするから、アイツに怒れ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっち〜酷いね〜。モカちゃんが何をしたって言うのさ〜」

 

 

 

 

 

 

八幡「自覚無しかよ。」

 

 

 

 

 

 

モカ「ふっふっふ〜。

こんなに天使なモカちゃんがそんな酷いことするわけないじゃ〜ん」

 

 

 

 

 

 

椅子に座ってる青葉はダラダラしながら言う。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前が天使なわけねーだろ、この悪魔が。

大体天使ってのはそこにいる羽沢さんみたいな……………

 

 

 

 

あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ええっ!///」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「あっはっはっは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「えー!!ヒッキーってつぐのこと!?」

 

 

 

 

 

 

八幡「待て待て待て!!違うから!!

そういうのじゃねーって!!」

 

 

 

 

 

 

モカ「お〜、コレはコレは。

はっち〜ってば、つぐのことね〜。」

 

 

 

 

 

 

 

だぁぁぁぁぁ!

めちゃくちゃ面倒くさい事になったぞコレ!!

 

 

 

 

 

八幡「そうじゃなくてだな。

天使みたいな癒し………………

 

 

ちょっとタンマで。」

 

 

 

 

 

 

 

何か深く説明しようとすればするほど自分の首を絞めてる気がするのは、何故!!?

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「っ!///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「え、えーっと、モカはヒッキーのことゴニョゴニョ。

で、でも、ヒッキーはつぐのこと好きで??」

 

 

 

 

 

八幡「だからそういうのじゃねえって…………。」

モカ「ひーちゃん?」

 

 

 

 

 

 

この脳内ピンクが!

天使って言っただけで好きだと思われるんだったら、牛込さんも松原さんも好きになるって。

てか1番やばいのは多分小町。

妹だからセーフ?ふざけんな、天使は天使だろーが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「蘭、私たち暇だな。」ニヤニヤ

 

 

 

 

 

 

蘭「つぐみ、顔真っ赤……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「う、うぅ……み、見ないで//

あ、あんまり男の人に褒められたことないから………」

 

 

 

 

 

 

褒めたって言っていいの……か?

まあ天使って褒め言葉ではあるのか……

てか、羽沢さんちょっと純粋過ぎませんか?

そんな反応されるとね?

…………かわわって思っちゃうでしょ??

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、だからアレだ。

俺が知ってるバンドという物は、1人は天使枠というか癒し枠?空気清浄機みたいな人がいるんだなって思ってただけなんだよ。

それがAfterglowでは羽沢さんだなって思っただけだ。

それ以上の他意はない。」

 

 

 

 

 

 

 

巴「ほーん、天使ねぇ?

つぐみがそういうアレで、言いたいことは分かるけどなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「いっつもツグってるからね〜」

 

 

 

 

 

 

ひまり「うん。

つぐは可愛いしとっても良い子だけど………」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………なんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

何故だろうか。

羽沢さん以外の4人から変な目で見られてる………

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「いや、ハッキリ天使とかそういうのちょっとキモイ……」

 

 

 

 

 

 

八幡「なっ!?」

 

 

 

 

 

 

巴「蘭………うん、そうなんだけどな。

ちょっとストレート過ぎる」

 

 

 

 

 

 

モカ「わ〜恥ずかし〜」

 

 

 

 

 

 

ひまり「ま、まぁ、第三者視点から聞いてるとね」

 

 

 

 

 

 

いや、まあ、ごもっともなんだけどね……。

俺も少し自覚はしてたけど、他人から言われるとすっごく来るものがあるというか、もうしにたい。

 

 

 

 

 

つぐみ「わ、わたしはそのっ!

う、嬉しかったので大丈夫です……よ?」

 

 

 

 

 

 

八幡「…お、おう。その、悪いな。

変なことに巻き込んで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「お~、コレはコレはつぐ殿やりますな~。

はっち~を堕としたじゃ~ん」

 

 

 

 

つぐみ「モ、モカちゃんっ!!」

 

 

 

 

 

巴「あっはっはっはっはっ!」

 

 

 

 

 

蘭「ともえ、笑いすぎ。」

 

 

 

 

 

ひまり「モカ〜、からかうのはダメだよ!」

 

 

 

 

 

八幡「もう終わったなら帰れよ……。」

 

 

 

 

 

月島さんに頼んでAfterglowを出禁にしてもらうぞ?

あまり店員を怒らせるなよ……とはいえ、からかい上手が増えてしまった。

向こうが気にしてなければいいのだが、毎回会う度に言われたら羽沢さんに申し訳ないんですけど……。

まあ、羽沢さんの気分が悪くなるならアイツらも言うのは辞めると思うんだけどな……。

 

 

 

 

 

香澄「こんにちはー!

あ、はっちー!それにAfterglowのみんなも〜!」

 

 

 

 

 

たえ「部屋空いてる?すぐ入れる?」

 

 

 

 

 

八幡「ちょっと待て、近い近い」

 

 

 

 

 

 

りみ「2人とも早いよ~」

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君こんにちは。

Afterglowのみんなも元気そうだね!」

 

 

 

 

 

有咲「はぁはぁ、待てお前ら……急に走るなって……」

 

 

 

 

 

突然現れたPoppin’Party。

何でコイツらがここに…………あ、ここライブハウスじゃん。

そりゃ来るわな。

 

 

 

 

モカ「おー、これはこれはPoppin’Partyの皆さんじゃないですか~。

さあや〜、パンちょーだーい」

 

 

 

 

 

ひまり「ちょっとモカ!

いきなりそんなこと言ってもあるわけないでしょ!」

 

 

 

 

 

沙綾「あはは、大丈夫だよひまり。

はいコレ、あげる」

 

 

 

 

 

モカ「さっすが~」

 

 

 

 

 

巴「いや、なんであるんだよ……」

 

 

 

 

 

沙綾「パン屋の娘ですから!」

 

 

 

 

 

有咲「今の発言で世界のパン屋の子どものハードルが上がったぞ……」

 

 

 

 

 

 

うん、なんというか…………仲良いね君たち。

お店の外でやってもらってもいいかな?

他のお客さんにも迷惑…………かからないね、誰もいないね君たち以外。

 

 

 

世はまさに大バンド時代じゃなかったの?

普段はもう少し忙しいよ?なんで今日に限って暇なんだよ。

 

 

 

 

 

香澄「蘭ちゃん達もこれから?」

 

 

 

 

 

蘭「私たちはさっき終わった」

 

 

 

 

 

香澄「そーなんだ!じゃあこれから帰るところ?」

 

 

 

 

 

モカ「そーだね〜、帰るのもありだけどー、

今ははっち~がつぐに告ってたから~」

 

 

 

 

 

 

「「「「えっ!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁぁ!?お前何言ってんの!?」

 

 

 

 

 

沙綾「モカ、どういうこと?」

 

 

 

 

有咲「さ、さあや?落ち着け、な?」

 

 

 

 

 

香澄「はっちーってつぐのこと好きだったんだ〜!

つぐは可愛いもんね!」

 

 

 

 

 

つぐみ「あ、あわわわわ//」

 

 

 

 

 

八幡「おい恋愛脳ども。

人の話を聞け、頭ちぇるってんのか」

 

 

 

 

 

 

青葉は絶対に許さない。

 

 

 

 

 

 

巴「あ、じゃあさ!

Poppin’Partyでの比企谷の天使は誰なんだ?

比企谷曰く1バンドに1人いるらしいからな。やっぱりりみか?」

 

 

 

 

りみ「ふぇっ!?」

 

 

 

 

 

沙綾「…………」

 

 

 

 

 

たえ「……?」

 

 

 

 

 

香澄「りみりんは可愛いよね!」

 

 

 

 

 

有咲「キモ」

 

 

 

 

 

 

八幡「誰が止めてくれるのこの流れ?

もう帰れよ……いや、もう俺が帰りたい……」

 

 

 

 

 

宇田川も絶対に許さない。

1バンドに2人も悪魔がいるAfterglowは今後出禁でお願いします。

いや、青葉と宇田川の2人だけでいいか。

 

 

 

 

 

モカ「お〜、ってことは〜?

はっち〜はつぐの他にも女の子が〜?」

 

 

 

 

 

蘭「最低」

 

 

 

 

 

つぐみ「ら、蘭ちゃん!」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、本当にちょっと待ってくれない?!

1人じゃ処理しきれない誤解がここら一帯を飛び交ってるんだけど?!」

 

 

 

 

 

 

超めんどくさいことになってるんだけど??

美竹が顔を背け、顔を隠しているが笑っているのがわかる。

アイツ……しれっとこの状況を楽しんでやがる……

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ふーん………比企谷君ってそういう子がタイプなんだね」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「キモ」

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「りみりんは渡さないよ!」

 

 

 

 

 

オワッター。

月島さんには悪いが、CIRCLEは辞めさせてもらうか!

もうこんなヤツらと会いたくない。

でも学校一緒じゃん……………………

 

 

 

 

 

ひまり「ヒッキー。」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

何かを心配してる表情だ…………

まさかお前だけは俺の味方でいてくれるのか?

本当の天使はずっとすぐ近くに…………

 

 

 

 

 

ひまり「ヒッキーが、つぐやモカやりみちゃん、誰を選ぶかわからないけど、ちゃんとみんなと真剣に向き合って答えを出してね」

 

 

 

 

 

 

八幡「この脳内お花畑共がっ!

お前ら全員出禁だ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




結局みんな可愛いから天使ってことなんですよね

感想や誤字脱字指摘等ありがとうございます。


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やはり第一印象は大事

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

 

 

放課後のチャイムでクラスの雰囲気が明るくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん、みさき!

はぐみと花音と合流して薫を迎えに行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「速い、待って。

今学校終わったばっかりじゃん、それにまだ他のクラスが帰りの会終わってるとは限らな………………って聞いてないし。」

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻はダッシュで教室から走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そもそも俺日直で、先生の荷物沢山あるから職員室まで運ばなきゃ行けないから先に行ってくれ。

何度も言ってるけど俺自転車だしな」

 

 

 

 

 

 

暴走列車のように教室を出ていった弦巻に伝えてくれと奥沢に告げる。

多分アイツは北沢が居るA組に行ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「んー、多分校門の前とかにいると思うけどわかった。

こころ達には伝えとくよ」

 

 

 

 

 

 

八幡「助かる」

 

 

 

 

 

 

 

奥沢はやれやれと言いながらも弦巻の後を追って行った。

さてと、俺も荷物運んでやりますか。

 

 

 

 

 

 

 

先生「日直の2人に悪いけど、職員室まで頼むな」

 

 

 

 

 

 

『はい』

 

 

 

 

 

 

とは言われても2人で持つにはそこまでの量はない。

プリントとファイルだけだから1人でも出来る仕事量。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、えーっと、コレは俺が運ぶからもう帰ってもいいぞ?

とは言っても部活があるのか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の日直は俺ともう1人、小野寺さんという女の子。

黒板の右下に、本日の日直の所に俺の名前の隣に小野寺って書いてあるからきっとそうだろう。

この自信の無さから分かるように当然彼女とは喋ったことは無い。

というか奥沢と弦巻以外とは義務的な会話しかしてないなうん。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな全然知らない小野寺さんだが、バスケットボールカバー的な物を持っているのできっと部活をやっているのだろう。

俺は帰宅部だし全然居残れるのだ、まあ、帰り遅くなるのは嫌だけどね。

どうせこの後弦巻の家でバンド練習だし、そもそも運ぶだけだからそんなに時間かからないとは思うんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

そして、何より一番の理由は2人で荷物を運んだとして、気まずさが絶対に勝つ未来しか見えないためだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

小野寺「え!いや、悪いよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

手と首を横に振りながら申し訳なさそうな顔をする小野寺さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、本当に気にしないでくれ。

俺は帰宅部だからな、なんの問題もないんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

やばい、小野寺さん凄い良い人かもしれない。

俺だったら喜んで任せるのに、律儀な人だ。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「しかも2人で持つにはちょっと少ないしな。

俺はこの後予定も何も無いし、気にすんな」

 

 

 

 

 

 

小野寺「う、うん………わかった。

比企谷君ありがとね!また明日!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おう。また……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小野寺さんは後ろにいる俺に手を振りながら駆け足で教室を出る。

それにしても不思議な感じだ、何かがこう……まあ、どうでもいいか。

職員室行かなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良し、比企谷ありがとな。

じゃあもう大丈夫だから気をつけて帰るんだよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「うっす。失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミッションコンプリート。

小野寺さんと別れてから3分以内で終わってしまった。

こんな楽な仕事でちょっと恩着せがましい事をしてしまったのでは無いかと背徳感に襲われるが、まあ別に何もないだろう。

アイツらも待ってるかもだし、さっさと帰るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、比企谷君」

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから急に声をかけられる。

いつもなら、『比企谷』なんて俺以外にもいるかもしれないから、人違いだろうと思ってスルーするのだが今回はしっかりと声の方に振り向く。

…………スルーすr(殴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「比企谷君こんにちは、職員室に用事があるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、我らがドラマー松原さんである。

このマイナスイオンも一緒に出してそうな声を忘れるわけが無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「こんにちは。

用事は済んだので今から帰るところです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「そうなんだ……!

それじゃあ一緒にこころちゃん達の所まで行こう……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し不安そうな顔で聞いてくる松原さん。

俺が拒否るとでも思っているのだろうか。

そんなわけがない、松原さんと行けるのなら俺は半裸で校庭1周できる。

いや誰得だよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「一緒に行きましょうか。

弦巻達は多分校門で待ってるらしいので……」

 

 

 

 

 

 

 

松原さんもてっきり弦巻と一緒にいると思っていたがそうではなかったらしい。

職員室に用事でもあったのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ふふっ、2人は仲がいいのね」

 

 

 

 

 

 

花音「あ、千聖ちゃん……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

ちさとちゃん……?と呼ばれる人が職員室の扉から出てきた。

松原さんとは知り合いらしく、会話が進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

???「花音が男の子と楽しそうに話してるの久しぶりに見た気がするわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「そ、そんなことないよ!

た、多分…………」

 

 

 

 

 

 

 

焦る松原さんも良いな……じゃなくて、この状況は少し気まずい。

俺は先に外で持っていた方がいいのだろうか?

こういう時の対処法を学校では教えてくれないんですか!?

テストでいい点とれたって、こういう時何も出来なきゃ社会には溶け込めないのではないのでしょうか!

 

 

 

 

 

 

 

 

???「……あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。

私は、花音と同じクラスの白鷺千聖です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

丁寧な自己紹介をしてくれた白鷺さんと名乗る女性。

松原さんと同じクラスってことは2年生、すなわち俺の先輩にあたるな。

白鷺……千聖?なんか聞いたことあるようなないような……

 

 

 

 

 

 

 

八幡「比企谷です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

ともあれ名乗られてしまったので名乗り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「比企谷……くん……。へぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

白鷺さんは一瞬だけ考えるような間を取り、俺の爪先からてっぺんまでざっと流し見た。

その刹那ぞっとするほどの寒気が襲いかかってくる。

 

 

 

 

 

 

 

千聖「比企谷くん……。うん、よろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

が、白鷺さんがにっこりと笑うと寒気やらの空気も解ける。

なんだったんだ今の……。

あれか、美人に見つめられて緊張したせいだな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

それでもまだ何か釈然としない違和感が俺の背筋を撫でていた。

この違和感の正体は一体…………

俺が訝しげな視線を白鷺さんに向けていると、白鷺さんは一瞬だけ俺と目を合わせてすぐにその視線を松原さんに移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「それじゃあ花音。

私もそろそろ行くわね、花音も頑張ってちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「うんっ!

千聖ちゃんも頑張ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「それじゃあ、比企谷君。

私はこれで失礼するわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、はい、どうも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凄いなこの人。

ずっとニコニコしてるんだけど……

なに?俺の顔が面白いの?

それとも弦巻の従兄弟とか??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「あなたとはきっとまた会う気がするわ。

だからこれからよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意味のわからないことを言われ、スっと手を出される。

これは陽キャ特有のよろしくの握手。

こんな美少女と手を握れるならきっと世の男子は泣いて喜ぶのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ここで俺は自分が無意識にしてしまった行動に気がついた。

この人の少しの違和感を抱いてた俺は咄嗟に足を1歩引いて、『自分警戒してます』といった行動をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

千聖「……私、今嫌がられる事をしてしまったかしら?

それだったら謝るのだけれど……」

 

 

 

 

 

白鷺さんには意外な反応だったのか、申し訳なさそうに謝罪する姿に罪悪感が襲ってきた。

そりゃそうだ、握手を求めた相手がいきなり引いてしまったら俺なら引きこもり絶対ジャスティスになってる自信がある。

 

 

 

な、何か言い訳しないと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、いや別にそんなんじゃ、ほら、その、普段こんな綺麗な人と出会う機会が無くてですね、緊張しちゃってて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くっ、恥ずかしい!

でも瀬田先輩はカッコイイタイプの先輩だし、松原さんはカワイイ系だからノーカンで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「ふーん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し怪しむように見られるが、動揺したら負けだ。

もう帰りたい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「あれ、ひょっとして比企谷君……千聖ちゃんのこと知らない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、さっき自己紹介したばかりなのでさすがに名前は忘れてない。

じゃあどこかで既に会ってたり……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「千聖ちゃんは女優でもありアイドルなんだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………はい??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

松原さんが嘘をつくとは到底思わないがいきなり何を言ってるんだ?

ジョユウ?アイドル?

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「その反応からして本当に知らなかったみたいね……。

なんだか知られてる前提でいた自分が少し恥ずかしいわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちから視線を外し、少し頬を染めながら白鷺さんは恥ずかしそうに話す。

全然分からないけどごめんなさいと心の中で謝るくらいには、庇護欲をそそる姿だった。

 

 

 

白鷺…………千聖……ねぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そういえば!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『誰を選ぶの!??』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぜ、全員じゃダメかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『『『はぁぁぁぁ???』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………小町。

何このドラマ、男が複数の女性に囲まれてるけど、もしかして全員ヒロインなの??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リビングでテレビを見てる小町に問いかける。

にしても多くない?ハーレムじゃんって思ったけど空気感がどうも怪しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「あ、お兄ちゃんおはよう。

そうだよ、だけど今ねちょっとカオス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「空気重そうだな。

というかこんなはっきりとしたハーレムのドラマは初めて見た」

 

 

 

 

 

 

 

 

アニメや漫画、小説なら本屋とか行けばよく見かけるんだがな。

ハーレムドラマはあんまり見たことがない。

 

あ、でもそもそもドラマを観ないじゃん俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「今いる女の子達全員に告白されて、男の子の答えは全員と付き合いたいって言ってる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わーお。

漫画や小説などでは、勝手に彼女が増えたりするが、意外とヒロイン同士も仲良くなるハーレム系も多いと聞くが、この作品はしっかりヒロイン全員バチバチなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「一葉、二奈、三莉、四織、五鈴、六花、七美、計7人のヒロインが主人公の八夜君を取り合ってるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前すご…………全員運命的な名前してるわな。

というか大丈夫コレ?似たような作品を知ってる気がするんだけど?

何等分かにする花嫁じゃ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「お兄ちゃんそれ以上は行けないよ。

完全オリジナル作品だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全オリジナルって言葉がもう9割語ってんだよなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「てか、俺の名前も八ついてるじゃん。

てことは実質俺もモテモテ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「お兄ちゃん…………いや、ごみぃちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町の冷たい目。

新たな性癖に目覚めそうになるが、これ以上小町に幻滅されたら俺はこの命を断たなければならないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「……………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、ごめん冗談だって。

そんなに不快だったか今の。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町が思い詰めた顔で黙ってる。

そんなに俺の言った事引いてんの?

だって名前に八が入ってるの事実だし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町 (お兄ちゃんは最近ハロハピさんたち、女性陣の友達が出来た。

そして、沙綾お義姉ちゃんたちPoppin’Partyさんとも。

もしかしたら…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「本当にどうしたんだ小町。

急にニヤケたりちょっと悲しそうだったり、コロコロ表情変えて。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体調不良では無さそうだしな、純粋に妹を心配するのは仕方の無いことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「な、何でもないよ!

それと悲しくもないしニヤケてもない!

お兄ちゃんキモい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町に言われたくない言葉ランキング第5位に入るレベルの言葉を言われた………。

アレ?キモいって意外と高頻度で言われてない?

気のせいか。

 

 

2位は、『小町の彼氏、紹介するね』

こんなこと言われた日には、彼氏くんに何するか分からん。

全力で〇しにいく覚悟はある。

 

 

 

 

 

 

1位は『小町、結婚するね』

彼氏紹介された時点でこの未来も想像は出来ていたが、ここまでだな。

その時は彼氏くん〇して死体撃ちして、俺もこの世界からBANされよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「まあ、いつかはお兄ちゃんにもそんな人が隣にいる未来がある可能性が0.000001%もあるかも知れないね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「0.000001%『も』!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無いってそれは。

四捨五入して切り捨てていい数字だよそれ。

もう小町いればいいんじゃないかな?

QED.証明完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町 (お兄ちゃんのせいでお義姉ちゃん達に迷惑かけるかもしれないからね。

こまちがお兄ちゃんを見ててあげないと。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お互いがお互いを大事に思ってる比企谷兄妹だった(???)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「って言うか、一葉ちゃんも知らないの?

一葉ちゃん役は、あの最近大活躍してる白鷺千聖さんだよ!!

最近はアイドルにもなってて、Pastel*Paletteって名前の!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「しら……なんて?

有名って言われても、テレビあんまり見ないからなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニュースとかそういうのはケータイでも見れるらしいが、あまり興味が無い。

バンド、バイト、勉強で時間が無いって事にしとくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「…………あった、ほらコレ!

あのドラマ、『7人の姫』のPV映像でめちゃくちゃバズってたシーン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7人の姫っていうのか。

にしても小町テンション高いな、そんなにその白なんとかさん好きなのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一葉『ふふっ、やっと見つけたわ。

まさかこんな所で出会えるなんて…………

7年振り………………かしら??

 

 

 

ね?ハチくん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………いかにもヤンデレって感じのセリフだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺も北沢とかにハチくんって呼ばれてるから、ちょっとドキッとしたとか言ったらまた小町にキモがられるだろうか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町「一葉ちゃんはすっごいヤンデレだからね!

千聖さんもヤンデレだったりして!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「キャラがヤンデレだからって、それを演じてる人がそういう性格なわけあるか。

まあイメージがつくのは分かるけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ別に、しらなんとかさんがヤンデレだろうがそうじゃなかろうが、会うことなんて無いしどうでもいいんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、白鷺千聖さん?

…………え??白鷺千聖さん???」

 

 

 

 

 

小町との記憶を頼りに遡っていたらなんと!

めちゃくちゃ有名な人だって思い出した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「ふふっ、そうよ?

白鷺千聖。小さい頃から本名で芸能活動してるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マジで本人かよ!

え、俺今ひょっとして有名人と喋ってる!?

周りに人は……!?

大丈夫!?ファンに〇されない?

一応まだ、しにたくはないんだけど?

 

 

 

 

 

 

 

花音「うんっ、千聖ちゃんって凄いんだよ!

比企谷くんは今ちょうどドラマでやってる『7人の姫』観てる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いえ、自分は観てないですけど妹が観てます」

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「面白いから時間があったら観てみて……っ!

千聖ちゃんも他の子もすっごい可愛いから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自信満々に笑顔で言う松原さん。

いつもよりテンションが高く、可愛い。

 

 

 

 

 

 

 

千聖「か、花音ったらも、もう//」

 

 

 

 

 

 

 

満更でもない反応、百合ってるって奴かコレ。

てえてえなー。

てか松原さんの事好きすぎでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「!

あ、ごめんね、千聖ちゃん!

時間大丈夫だった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「ええ、大丈夫よ。

それじゃあ花音、また明日。

比企谷君もまた……ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またがあるのか。

いや別にいいんだけどね、まだやっぱりちょっとどこか怖いと思ってる自分がいるんだよなぁ。

白鷺さんには申し訳ないんだけども……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい、それではまた」

千聖「花音を泣かしたら許さないわよ」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「???????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とすれ違う瞬間耳元で、何やら鳥肌が立つセリフが聴こえた。

え?いやいやいやいや??

俺のただの幻聴でしょ、はぁ、疲れてんのかなー……

 

 

 

でも今のは間違いなく松原さんには聞こえていないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

千聖「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間的に振り向くと白鷺さんと目が合う。

 

 

 

 

 

うわぁ、すっごい笑顔。

でも目が笑ってないのは気のせいでしょうか?そうですか。

 

 

 

 

 

どうやらお互い第一印象は良くなかったらしい。

松原さん大好きなことと、笑顔ってやっぱり複数あるんだなってことだけはわかった。

 

 

よーし、あの人には近づかないようにしよう、うんそうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千聖「比企谷……八幡。ふふっ、面白そうな後輩が出来たわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……っ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花音「比企谷くん……どうかした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いえ、何やら一瞬寒気が………」

 

 

 

 

 

 

 

いや、あの人と会ってからちょっと恐怖という名の寒気が襲いかかって来てたからな。

こっからバンド練習もあると思うと少し憂鬱になるが、乗り越えよう……

今日は帰ったらお風呂で温まろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

 

 

 

 

 

 

 

やはり放課後のチャイムしか勝たん。

部活にも所属してない俺は安らぎの音にしか聞こえないのだ。

しかも今日は午前授業のため、いつもより終わる時間が早くて気分がいい。

嬉しさのあまり疲れがどっと出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁー、終わった」

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くん今日はなんかすっごい疲れてるね」

 

 

 

 

 

 

スクバを背負った奥沢が俺の左後ろから声をかける。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、逆に聞くけどなんでそんなに疲れてないの?

昨日のバンド練習は割とハードだったよね?

ミッシェル着てたのになんでそんなに普通のテンションなの?」

 

 

 

 

 

 

本当にコイツはたまに化け物なんじゃないかと思ってしまう。

ミッシェルは日々黒服のに人達が改良してるとは聞いているが着ぐるみは着ぐるみだろ?

 

 

 

 

 

美咲「あー、うん、まあ慣れた……かな?

というか、比企谷くんが体力無さすぎなだけじゃない?」

 

 

 

 

 

 

八幡「そこに関しては否定出来ないのが悲しいな。」

 

 

 

 

 

 

三バカは言わずもがな、奥沢も大丈夫なのか。

だが甘いな。松原さんは昨日帰り際に言っていたぞ!

 

 

 

 

 

花音「今日はもう疲れちゃったから、帰ったらお風呂入ってすぐに寝ちゃいそうだよ〜……」

 

 

 

 

 

 

 

なんて可愛いのだろうか!

ともあれこれでお前らがおかしく、俺と松原さんが普通ということが………

……いや、待てよ、、、

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「花音さんドラムじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「うん、そうだよ。流石にドラムは疲れるよ。

しかも女の子だよ?花音さんと比べるのは間違ってるよ」

 

 

 

 

 

 

八幡「ぐっ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺も体力付けるか………?

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、奥沢とは別れ俺は1人下校ムーブをかます。

いつもよりテンションは高く、鼻歌でも歌いながらスキップをしてしまいそうだ。

普通に絵面だけ見たら警察沙汰かもしれないがそれには理由がある。

 

 

1つ、今日はバンド練習が休み。

 

 

奥沢と瀬田先輩が部活なのと、弦巻、北沢は弦巻家で、バッティングセンターで遊ぶらしい。

そう弦巻家で。

全然言い間違いじゃないのが本当に怖い。

 

 

 

松原さんもお友達とお出かけ、あのヤンd……白鷺さんだろうか、うん、噂をすると出てくるらしいしやめとくか。

 

 

そして2つ目、今日は午前授業。

 

言わずもがな最高である。

 

 

たった2つ、それだけで人は幸福になれるのだ。

CiRCLEのバイトがあるとはいえ、それでも3、4時間は余裕がある。

帰ったら軽い昼寝もいいし、勉強も出来るし、何もしない時間でもいいな!

最近一人の時間が全くと言っていいほどないので、想像するだけでニヤニヤが止まらない。

まだ学校なので気を引き締めて行かないと警察or生徒会沙汰になりかねないので気合を入れて行こうか。

 

 

 

 

じゃあなあばよ学校!

校門までは自転車を押して歩いていたが門を過ぎれば俺を縛る物なんてない!

スタートダッシュは完璧!

このスピードに乗ったまま漕ぎ始めれば俺はきっと風になれる!そんな気がする!今のテンションなら俺は行けr「あ、ちょっと待って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

???「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

何かわからない人に自転車の後部座席の部分を掴まれたが、関係ない!

俺は風に……!

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」キィィ

 

 

 

 

 

 

???「…グッ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡 (え、なんなの?てか本当に何???

人の自転車の後部座席掴んだまま笑顔なんだけどもしかして妖怪?

っ、、この人ちから、どうなって……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「あたしは氷川日菜だよ!

よろしくね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔で挨拶する人を見て、ひと目でわかってしまった。

 

─────あ、この人絶対苦手なタイプだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字指摘、感想、ご愛読ありがとうございます!


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ルン♪っと注意報

 

 

 

 

日菜「あたしは氷川日菜だよ!

よろしくね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、全然無理です。

ていうか手、離してもらっていいすか??」

 

 

 

 

 

 

この全然訳が分からない状況で困惑しているが、今すぐこの人から離れた方がいいと思った。だってこんな出会いから自己紹介してニコニコしてる人が普通なわけが無い!!

 

 

 

 

 

 

 

日菜「比企谷八幡って君だよね~??」

 

 

 

 

 

 

氷川日菜と名乗るこの人はどうやら俺の事を知ってるらしい。

…………氷川?てか、この髪色…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────いやいやいやいや、ないないないない!

 

 

 

 

流石に失礼よね、うん、失礼だ。

心の中で謝っておこう、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「おーい、聞いてんのー?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、い、いえ、僕は材木座って言うんで人違いですね!

比企谷さんならまだ学校にいると思いますよ、それではっ!」

 

 

 

 

 

 

何故俺の名前を知っているのかとか聞きたいけど、撤退の方が大事!

再び材木座を名乗るとは思っていなかったが、自然と名前を出せたので嘘だとは気づかれにくいはず!

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「ちょちょちょ!なんで嘘つくの~!」

 

 

 

 

 

 

はい、もう嘘ってバレましたけど?なんで嘘ってわかんだよ。

今度は俺の腕を掴み、そして揺らしてくる。

ちょいちょいちょい!やめろください!

 

 

 

 

 

 

 

日菜「だってきみ、文化祭でキーボードやってたでしょー!

おねーちゃんを見に花咲川に来たけど偶然君が演奏してる所を見たんだー!

そしたら聴いてるうちにルンっ♪て来てさ!

あ!!おねーちゃんっていうのは氷川紗夜って言って、ちょっとコワイけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………うるっっっっさ。

え、めちゃくちゃ喋るじゃんこの人。

マシンガントークが鳴り止まないんですが?

 

てかやっぱり嫌な予感は当たってたんだ!

明らかに弦巻や北沢タイプの人の話効かない人って出会って5秒でわかったわ!

 

 

 

ん?

というか最後になんて言ったこの人…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「ねぇってば!聞いてるのー?」

 

 

 

 

 

 

 

全然聞いてないんで帰っていいですか?

………うん、無理だ。

その証拠に自転車がピクリともしない。

 

 

 

 

 

イヴ「ヒキガヤさんこんにちは!」

 

 

 

 

 

 

八幡「うおっ!

あ、え、こんにちは」

 

 

 

 

 

背後から急に話しかけられると流石にビビるよね。

…………若宮さんか。

以前お花見で知り合ってから廊下とかで会うと挨拶してくれる、もうね、普通に良い人。

第一印象はちょっと良くなかったけど人は見た目じゃないんだなって思ったね、うん………第一印象はヤバかったけど。

 

 

 

 

 

日菜「あれ?イヴちゃんじゃーん!

偶然だね~!」

 

 

 

 

 

 

え、知り合い?

というか偶然じゃねーよ、ここ学校の前ですけど??

結構必然ですけど???

 

 

 

 

 

イヴ「ヒナさん?!

ヒキガヤさんとお知りあいでしたか!」

 

 

 

 

 

 

え、違います。

まだ知り合ってはないです、ギリギリセーフです。

 

 

 

 

 

日菜「うん、友達なんだー!」

 

 

 

 

 

え、違うよ?

 

 

 

 

 

イヴ「ヒキガヤさんは流石です!

女性とのお知り合いが多いのですね!

 

 

 

 

 

八幡「おい待って、待ってください!

そういう言い方はちょっとやめようか、ね?」

 

 

 

 

悪口とかにはなってないんだけどね、他の人とかが聞くと「ん?」ってなるから!

 

 

 

 

日菜「よーし、それじゃあイヴちゃんも一緒に帰ろうよ!

この後事務所でしょ?」

 

 

 

 

イヴちゃんも?ってなに?

自意識過剰だったら本当に恥ずかしいし、申し訳ないんですけど俺は1人で帰りますよ?

………ん?事務所?

 

 

 

イヴ「はい!ご一緒させていただきます!」

 

 

 

 

 

あ、はいそれじゃあ失礼しまーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「なるほどねー。

じゃあそのお花見でイヴちゃんたちは知り合ったんだー」

 

 

 

 

イヴ「はい!とーっても楽しかったです!

皆様には感謝してもしたりません!」

 

 

 

 

 

日菜「えー、いいなー!

あたしも行きたかったなー」

 

 

 

 

 

イヴ「それでは来年はご一緒にやりましょう!

パスパレの皆さんも連れて!」

 

 

 

 

 

 

春が過ぎ、今は6月で夏の匂いが強くなってきた。

日が長くなってきた分、袖が短くなり、快適に過ごすにはクーラーが必要になってきている頃、お花見の約束をしている俺より少し前で歩いてるお2人。

あの後1人で帰ろうとしたが、水色髪のショートカット先輩に止められた。

なんでやねーん、俺いらんやーん。

 

 

それにしても、約1年先のスケジュールを埋めるなんてアイドルかなにかですか?

花の女子高生は忙しそうで大変そうですね!

 

 

 

 

 

イヴ「そういえば、ヒナさんはヒキガヤさんとどうして一緒に?」

 

 

 

 

突然こめかみに指を当てながらこちらを振り向き、「私考えています」みたいなポーズで話をかけられる。

何ともあざとい仕草、しかし俺は騙されないぞ!と、言いたいところだがこの若宮イヴという人はマジのまじ。

本気と書いてマジと読むくらいには天然的で打算の無い女の子なのだ。

 

 

 

いや、対して知り合って間もない関係だし、

俺の勝手な思い込みかもしれないが、これは信じてたい!

これが計算的なら俺はもう人間を信じれなくなる!!

 

 

 

 

日菜「えー、んー、なんでだろ?」

 

 

 

 

 

八幡「いや、俺に聞かないでくださいよ。」

 

 

 

 

 

日菜「会いたかったから?」

 

 

 

 

 

八幡「……っ」

 

 

 

 

 

 

いや落ち着け俺。

この人が言うとロマンチックには聞こえないはずだ。

弦巻と一緒だ。

アイツに「会いたかったわ!」とか言われても最初に嫌な予感しかしないし、当然キュンもない。

QED、証明完了だな。

 

 

 

 

 

八幡「よし。」

 

 

 

 

 

日菜「???

まあでも理由っていう理由は特に無いかなー。

あたし、気になったりしたらすぐに行動しちゃうから!」

 

 

 

 

 

イヴ「ヒナさんは流石です!

私もブシドー精神をつらぬいていきたいです」

 

 

 

 

 

いや、尊敬する相手絶対間違ってると思うんですけどね。

 

 

 

 

日菜「それにしても、はっちんのキーボードなんか良いよね〜!

前からやってたの??」

 

 

 

 

 

はっちん?

ネーミングセンス大丈夫か?花園と一緒だぞ。

というかなんか良いよねってなんだよ……

 

 

 

 

 

 

八幡「褒め言葉として受け取っ…………ん…??

………何コレ、紙飛行機?」

 

 

 

 

 

突然目の前を過ぎった物体がひらひらと力なく地面に落ちていく。

どうやら紙飛行機が俺の目の前に着陸してきたらしい。

どうすんのよ目に入ってたら!危ないでしょ!

ブチ切れてやろうかな、絶対にそんな事出来ないけども。

 

 

 

 

 

たえ「それ、私のだから」

 

 

 

 

八幡「!!?」

 

 

 

 

たえ「…どうしたの?驚いたような顔して」

 

 

 

 

 

八幡「……驚いたような、じゃなくて驚いてんだよ。

てか、このやり取り前にもした事あるな、おい」

 

 

 

 

 

何なのこいつ、毎回毎回人を驚かせるプロなの?

気配無さすぎるだろ、忍者?幽霊?

 

 

 

 

イヴ「タエさんこんにちは、すごいです!

まるで気配を感じなかったです!」

 

 

 

 

日菜「おたえちゃんじゃーん、やっほー」

 

 

 

 

たえ「あ、イヴに日菜さんも、こんにちは」

 

 

 

 

 

あ、君たちも知り合いなのね、すごいね。

世界ひょっとして狭い?

……っていうか、コイツがここにいるってことは───

 

 

 

 

 

 

香澄「おたえーー!だいじょーーーーあっ!!

はっちー!それに日菜さん!!イヴちゃんも!!!」

 

 

 

 

 

 

うん、まあですよね。

お前らいっつもずっと一緒にいるもんな。

Afterglowかよ。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「おいなんだ、とりあえず紙飛行機勝負は私の勝……」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

有咲「………」

 

 

 

 

 

 

八幡「あのー、先に帰ってもよろしいでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

有咲「む、無視すんなぁ!」

 

 

 

 

 

八幡「え、無視も何も会話してなかっただろ」

 

 

 

 

 

有咲「目が合ったんだから挨拶くらいしろ!!」

 

 

 

 

 

八幡「えー……」

 

 

 

 

 

 

だってお前、俺の事嫌いじゃん……

話すとなんやかんやでキレられるから話しかけなかったのに、話しかけなくてもキレられるとかどうすればいいんだよ…….

 

 

 

 

 

沙綾「日菜さんがこうやって帰宅してくるなんて珍しいですね。

イヴと比企谷君も一緒にいますし」

 

 

 

 

 

香澄「確かにー!

紗夜さんと一緒じゃないんですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

日菜「ん〜、確かにそうかも??

おねーちゃんには会いにちょくちょく花咲川の方に来てたけど、今日ははっちんに会いたくて来たんだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「…………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………ははは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、いや、なにこの空気。領域展開した?

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ってかそんなことより、お前らはなにやってんの?

紙飛行機持ってるけど…………え、まさかお前ら」

 

 

 

 

 

有咲「は、はぁ?べ、別にお前には関係な」

 

 

 

 

 

たえ「紙飛行機対決してた。誰が1番遠くに飛ばせるか」

 

 

 

 

 

有咲「おたえお前なー!!」

 

 

 

 

 

 

いや、分かってたけどね。

何ならさっきお前が勝ったとか言ってたじゃん。

ま、何よりこれで話題が逸れたな。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲が1番だったね!次は負けないよ!

あ、日菜さん達も一緒にどうですか!?」

 

 

 

 

 

 

りみ「うん!大人数の方が面白いよね」

 

 

 

 

 

 

日菜「えっ!面白そう!やりたーい!」

 

 

 

 

 

イヴ「ブシとして挑まれたからには、全力でお相手します!」

 

 

 

 

 

 

良し、なんかよくわからんけど俺は全くやりたくないから帰ろっと。

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君」

 

 

 

 

 

八幡「うおっ!……あっ、えっとですね?

俺は別に紙飛行機対決に興味無いからちょっとあの」

 

 

 

 

 

 

いや、待て……なんで俺は焦っているんだ。

別に帰っても問題ないだろう。

俺この後バイトありますし?まあ言うて3、4時間は余裕あるけど勉強とかダラダラタイム入れたら全然足りないな、うん。

 

 

止められたら正論を吐いて論破してやる。

人間、正論には弱いし勝てないってことを教えてやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君は日菜さんと前から知り合いだったの?」

 

 

 

 

 

 

八幡「………はい?」

 

 

 

 

 

沙綾「と、特に深い意味はないけどどうだったのかなーって!」

 

 

 

 

 

思ってたのと違うこと言われたから変な声出ちまったじゃねーか。

というか何その質問、深い意味がないなら聞かなくて良くない?

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、全然初めまして。

さっきもさっき、急に自己紹介されて無理矢理一緒に帰らされてた関係です」

 

 

 

 

 

いやー、正直者だから思ってたこと全部言ってしまった。

 

 

 

 

 

沙綾「え、じゃあなんで日菜さんは比企谷君を知ってたの?」

 

 

 

 

 

八幡「いや、まあそれは……」

 

 

 

 

 

沙綾「…………それは?」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………知らん。」

 

 

 

 

 

 

沙綾「絶対知ってるじゃんそれ……」

 

 

 

 

 

 

 

いやだって文化祭のライブで興味持たれたって自分から言うのは違くない?

本人曰く、るん?っと来たらしいけどマジで何言ってんのこの人。ってなったわけだし。

 

 

 

 

 

八幡「じゃあそういう訳だから帰るわ」

 

 

 

 

 

沙綾「え、あ、うん…………またね」

 

 

 

 

 

 

 

山吹に背を向けて右手でじゃあなと軽く手を振る。

次また氷川日菜……さんに出会ったら何か言われるかもしれないがその時はその時だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────それにしても見た目はともかく、性格は似て無さすぎだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は飛んでバイトのお時間。

あの後すぐに帰宅してお昼ご飯食べてだらだらしながら勉強をした。

最近は本当に休まる時間が少ない。

 

 

基本的にお客さんがいない時は、スタジオの掃除とか点検をやるのだが、それすらも終わった場合はゲームとかそういうの以外ならやっていいと言われていたので宿題やら勉強、作詞、作曲とかやってたんだけどな。

最近は何かと話をかけられたりしてそういう事もしていない。

まあ、良い事なんだろうけどさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「八幡くーん!…………ってアレ?

お客さん来てないの?」

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、月島さん。

そうっすね、さっきまで何組かいましたけど今は1組もいませんね。

……それで?俺に用件とかありました?」

 

 

 

 

 

 

そう、絶賛暇中なのである。

今日はそもそも学校が午前授業、当然勉強道具とかそういうのは家に置いてきた。

暇だとわかっていれば持ってきてたのに……

 

 

 

 

 

 

まりな「あ、あぁ、うん!

あの倉庫に届いたドラムなんだけど……」

 

 

 

 

 

八幡「あぁ、それならさっきスタジオに入れました。」

 

 

 

 

 

 

まりな「え、ホント?!

あと、それと………」

 

 

 

 

 

八幡「音がちゃんと出るかもチェック済みっすね」

 

 

 

 

 

 

ついでに周り含めた楽器やフロアも全て綺麗にしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

まりな「そ、そっか……。

う〜ん、今日はずっと暇かもね……」

 

 

 

 

 

 

八幡「かもしれないッスね」

 

 

 

 

 

 

月島さんは申し訳なさそうに言ってくるが、全然構わない。

むしろありがとうございますとお礼を言いたくなるレベルではある。

ただ、暇つぶし道具を持ってくれば良かったなとは思ったが無いものは仕方がない。

お客さんが居なくても仕事は仕事だしな。

 

 

 

 

 

 

まりな「うーん………八幡君は色々とバンドや学業でも忙しそうだからちょっと速いけど先に上がってもいいかなー。」

 

 

 

 

 

八幡「……え、マジすか?」

 

 

 

 

 

ヤバい、嬉しい提案をされて顔がニヤケそうになってしまうが大丈夫だろうか?

いやでも、せっかくバイトに来たからには最後までやってお金もちゃんと欲しい気持ちがあるから迷う。

最近はスマホも買ったし、バンド関係でも割とお金がかかるからな。

 

 

 

 

 

 

 

まりな「あ、もちろんタイムカードには終わりまでやったことにするからそこは大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

 

八幡「ありがとうございます!!!」

 

 

 

 

 

 

神だ。ここに神はいた。いや、女神か。

この際何でもいい、今は目の前でニコニコしてるGODを崇め奉るのが今の自分に出来る最大の礼儀というものである。

 

 

 

 

 

まりな「うん!じゃあほら、明日も入ってるんだから今日はゆっくりお休みして【ウィーン】

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「………」

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

今は事務室にルンルンで向かおうとしているため、入り口には背を向けている状態。

そして今自動ドアが開く音がした。

そう、これはお客さんが来たという可能性が大の大の大。

 

 

何故このタイミングなのだろうか?

もうちょい後に来いよ……

でも1組なら案内してすぐに帰宅も許されるのでは?等と色々な思考が頭の中を巡っていた。

 

 

 

 

 

 

???「こんにちはー!

……お、はちまんもいるじゃーん!!やっほ〜!」

 

 

 

 

 

 

???「こんにちは。

スタジオを借りたいのですが、すぐに借りれますか?」

 

 

 

 

 

なんか俺のことを呼んでる気がするけど気のせいだよな。

声とか全然知らないし、振り返ったら負けだ!

よし、帰ろう。1度許可もらってますし??

誰も文句は言えな……っ!?

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………あ、あの、月島さん?」

 

 

 

 

不意に月島さんの手が俺の肩を叩く。

俺は首を動かしたくないので、月島さんの表情は分からないのだが何だか冷や汗が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「んー、、、普通の一般客だったら私が対応してたんだけどねー……。

お客さん達は八幡君をご希望のようだから………頑張ってね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………Oh」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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こわい、うるさい、こわい、シスコン、いい

まだ見てくれてる人がいる喜び、感謝です。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「やっほ〜!

まりなさーん、はちまーん!」

 

 

 

 

 

 

うへぇ、相変わらずうる……間違えた。

騒がしいというかコミュ力お化けというか……

 

 

 

 

 

 

 

???「………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………!」

 

 

 

 

 

 

たった今、俺のテンションをどん底に落としてきた集団のお客さん1人に距離を詰められる。

 

 

 

 

 

 

???「文化祭の貴方の演奏聴いたわ。

少し……いや、かなり貴方のイメージとは違うバンドで驚いたわ」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、何で聴いてるんですか?

まあ、それには深く同意しますけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

ていうか、花咲川と羽丘って文化祭同日だよね??

今日の宇宙……るんさんと言い、この人も何で花咲川の聞きに来てんだよ、バックれなの?不良なの?

 

 

 

 

 

 

???「確かにあれは笑ったよねー!

でも、これでもめちゃくちゃ褒めてたんだよ?」

 

 

 

 

 

 

???「………記憶に無いわ」

 

 

 

 

 

 

褒める?誰が??誰を???

この人、誰かを褒めるとかいう感情持ち合わせてたの?

 

 

 

 

 

 

???「何かしら?」

 

 

 

 

 

 

八幡「いえ、何でも……」

 

 

 

 

 

怖いから早く手続きして、スタジオに入ってもらおう。

 

 

 

 

 

 

???「今日はかなり空いてるようですね、周りに誰もいませんし」

 

 

 

 

 

 

八幡「そうですね」

 

 

 

 

 

 

だからもうちょっとで早上がり出来たんですけど、誰かさん達のおかげ様でギリギリ無理でした。

とか口が滑っても言えない。

 

 

 

 

 

 

八幡「………はい、それでは5名様1番のスタジオへどうぞ」

 

 

 

 

 

 

???「Roseliaよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

友希那「…………」

 

 

 

 

 

八幡「…………はい。

Roselia様、どうぞ1番のスタジオへ」

 

 

 

 

 

 

リサ「あはは♪」

 

 

 

 

 

 

紗夜「行きますよ」

 

 

 

 

 

 

 

あこ「比企谷さんでも、友希那さんには勝てないんだ!」

 

 

 

 

 

燐子「……ふふ、そう……だね……っ」

 

 

 

 

 

 

いや、俺は別に強くないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『Roselia』

 

 

 

俺たちと同じく、今年から出来た最近のバンドチームである。

だけど実力は初心者のそれらではなく、歌唱力から演奏レベルまで圧倒的高火力な注目バンドである………らしい。

月島さんが言ってた。

 

 

 

 

 

 

CiRCLEで働いていると様々なバンドに出会う。

それが仕事なのだから当然なんだけど……

当然Roseliaもその1つである。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「ちょっと先に行っててちょうだい」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡 (……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「ん?

……あー、わかった!先行ってるね〜♪」

 

 

 

 

 

 

 

そう言うと今井さんは俺に向かってウインクをしてスタジオへ向かった。

え、なに?アイドル?

ていうか忘れ物してますよ?湊さん忘れてるって。

 

 

 

 

 

友希那「比企谷君」

 

 

 

 

 

 

八幡「……」

 

 

 

 

 

 

 

友希那「貴方が私の誘いを断って時間が経ったわね」

 

 

 

 

 

 

八幡「………そうです…かね。」

 

 

 

 

 

 

友希那「私からお願いしてのも初めてだし、断られたのは初めてだったわ」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あの日も今みたいに、私たちとあなた以外はいなかったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………えー、そんな日もありましたね。

期間としては数ヶ月ちょっと前くらいだと思うが、最近1日1日が濃くてもっと前の話だと思ってしまった。

 

 

……ていうか絶対根に持ってるじゃんこの人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかも俺が断ったと言うが、どうせ入ってもすぐに切られると思ってたしな。

それに、あの時はもう俺の中では答えは決まってたから──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Roseliaになる前のメンバー、まだ友希那と紗夜の2人。

それに、八幡がハロハピに入る少し前の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「…………」

 

 

 

 

 

 

紗夜「………今回もダメでしたね」

 

 

 

 

 

 

友希那「ええ、そうね。」

 

 

 

 

 

 

紗夜「まあ、妥協してメンバーを集めても仕方が無いですからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、やっと終わった?

あの2人、さっきまでロビーでもう1人いた女の子とバンド面接的なことしてたけど、あの調子だと″また″クビにしたみたいだな。

コレで何回目だよ、怖いよ、倍率高すぎるだろ。

 

 

 

 

 

かれこれこんな感じの出来事をもう5回以上は見ている。

メンバーは未だにあの2人っぽいしな。

でもちょくちょく、中学生?位の子があの、白よりの紫?髪の人にアタックしてる現場も見たことがあるな。

 

 

 

 

 

 

湊友希那、だっけか。

月島さんいわく、彼女は高校生バンドの世界では有名人らしい。

圧倒的な歌唱力、魅了するパフォーマンスでプロの人達からも注目されてるとか。

 

 

 

まあそのレベルまで行ってるなら、メンバー決めを辛口でやってても仕方ないとは思う。

しかもそんな人と組めているもう1人の水色の髪の人もとてつもない実力者ってこと。

彼女はギターで、名前までは知らないけど演奏は聞いたことがある。

正確なリズム、音色で正直怖かったと思うほど綺麗だったという記憶。

 

 

 

 

 

 

あとこれは最近気づいたんだけど、この2人がロビーにいると暇な時が多いってこと。

なんかしらのオーラや覇気を放っているのかもしれない。

もしかして営業妨害ですか?もっとやってください!!

 

 

 

 

 

 

まりな「八幡君?」

 

 

 

 

 

 

八幡「うおっ!

な、何ですか?」

 

 

 

 

 

 

まりな「今よからぬことを考えてる気がしたから」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そ、そ、そんなわけないじゃないですかー⤴︎」

 

 

 

 

 

 

え、何でわかるの?見聞色?もしかして月島さんも覇気使い?

ここの空間が怖くなってきたんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「月島さん、こんにちは。」

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「こんにちは〜!

……今日もダメだったみたいだね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「すみません。

せっかく月島さんが勧めてくれた人だったのに。」

 

 

 

 

 

 

まりな「え、いいのいいの!

逆に申し訳ないよ、彼女にも今度謝らなきゃね。

でも、あの子はかなり上手い部類だと思うけどそれでもダメだったみたいだね」

 

 

 

 

 

 

紗夜「えぇ、演奏は正直今までの人の中で1番良かったと思います」

 

 

 

 

 

 

友希那「……確かに、演奏は良かったわ。

でも、強い意志や今後も一緒にやってるビジョンを感じれなかったの。」

 

 

 

 

 

 

まりな「……そっか。」

 

 

 

 

 

 

 

おいおいこの審査思ったより鬼畜じゃありません?

実力あってもダメなのかよ。

完全にローカルルールで私情を挟んでるよコレ!

 

 

 

 

 

 

まりな「……………あ!

実は今日はもう1人ね、友希那ちゃん達に紹介したい人がいるんだ!」

 

 

 

 

 

 

友希那「………?」

 

 

 

 

 

 

紗夜「もう1人……ですか?」

 

 

 

 

 

 

まりな「そう!

男の子でもいいんだよね?」

 

 

 

 

 

友希那「……ええ、別に性別は問わないわ。」

 

 

 

 

 

まりな「それなら良かった!」

 

 

 

 

 

そう言って手を叩き笑顔になる月島さん。

しかし、まだもう1人いるとは、、、

なかなかの無理ゲーだと思うけど健闘を祈ろう。

 

 

 

 

 

 

まりな「それじゃあ比企谷君」

 

 

 

 

八幡「はい?……!」

 

 

 

 

 

 

突然月島さんに肩を叩かれる。

笑顔の月島さんに肩を叩かれた意味が全然分からないまま続きの言葉を待った。

ひきがやくん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「頑張って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「貴方が……?」

 

 

 

 

 

友希那「………」

 

 

 

 

 

 

八幡「………はい???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「それでは、今日は突然だからこちらからのお題的なものは無いわ。

自分の得意な曲を弾いて頂戴。」

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

えー、普通にやりたくないんですけど?

何でこんなことに……

必死の抵抗で月島さんを睨む、

こんなのパワハラだ!訴えるぞ!

 

 

俺の思いが届いたのか、月島さんが俺に近づいてきた。

 

 

 

ま、まずい!見聞色か!

だけどこればっかりは俺は悪くない、抵抗するで拳で!!

 

 

 

 

俺の意思を無視するかのように耳元まで近づき、俺に言った。

 

 

 

 

 

 

まりな「ごめんね、比企谷君。

でもきっと必要な事だと思ったの。

比企谷君にも友希那ちゃん達にも。」

 

 

 

 

 

 

八幡「……」

 

 

 

 

 

 

 

まりな「別に合格しても入らなければいいんだよ。

比企谷君にはもう、一緒にいたい場所が決まってるんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

………この人は俺が何かに悩んでることを知っている。

詳しく知らないのは俺が詳しく話してないから。

俺の態度でバレていたのだろうか、バイト先まで私情を持ち込むのはよくないことか。

月島さんは俺の助けになりたいと言っていたことがある……それが今ここでやることに意味があるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……はぁ、分かりましたよ。

月島さんの言ってることはほとんど意味がわからないですけど、どうせ無理だと思いますけどとりあえずやります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「………」

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「やる気がないのなら最初からやらなくても『待って』……!

………湊さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あなたに興味を持ったわ。演奏して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紗夜 (湊さんが……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「じゃあ……まあ、はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「………」

 

 

 

 

 

紗夜「………」

 

 

 

 

 

友希那「………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

緊張……はしてる。たかが3人の前で演奏するだけ。

それでも空気が、雰囲気が、視線が、未知への期待が、信頼が、俺の身体を縛り付ける。

息がしずらい、頭の中が真っ白になりそう、本当に弾けるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあでも……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでもいいよな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「……………!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かのためだとか、何のためとか、理由とか、何かを伝えたいだとか、そんなのないな。

理由も意味もきっといらない。

 

月島さんに言われたから、弦巻たちに誘われたから、湊さんたちに試されてるから、そんなのもので今俺は、キーボードを弾くんじゃない。

 

 

 

 

 

 

小さい頃からピアノを弾くのが好きだった。

理由は小町が、母が、聞いてる人達が楽しそうだったから。

だけど今はもう分からない。

 

 

 

 

だから今は自分のために弾こう。

誰も聞かなくたっていい、間違ったっていい、弾きたいように弾こう。

あの頃の自分を嫌いにならないように。

あの頃の楽しかった気持ちに嘘はつきたくないから。

 

 

 

この場を勝手に利用させてもらおう。

コレが終わって、楽しかったら、また弾きたいと思ったなら、その時は、

弦巻に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あなたは自分の居場所を見つけれたのね」

 

 

 

 

 

八幡「………まぁ、おかげさまで。

きっかけはどうであれ、あの日決心したようなものなので」

 

 

 

 

 

 

友希那「私たちを踏み台にするなんていい度胸してるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひぇ!?

ゴゴゴゴとか言う擬音と共に後ろからオーラが出てるように見える。

この人、あの出来事以来会う度に「後悔するわよ?」とか「今なら許してあげるわ」とかネチネチ言われてたし。

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「1つ言っておくわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「私たちは今いる、紗夜、リサ、あこ、燐子

そして私、この5人でRoselia。」

 

 

 

 

 

 

八幡「………そうですね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あなたが入ってたら、この先どうなっていたかは分からないけど……

今は私の、私たちのバンドがRoseliaなの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ええ、わかってます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あなたには感謝してるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「感謝……ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

え、会う度にグチグチ言われるし睨まれるしで、てっきりめちゃくちゃ嫌ってんのかと思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

友希那「あの日のあなたの演奏を聞いて確かに、私の中で何かが変わったわ。

上手く言葉には出来ないのだけれど。」

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日は俺も何かに夢中であんまり自分の演奏を覚えてはいないが、そんなに良いものでもなかった気がする……

いや、ろくに数年も弾いてなかったわけだし当たり前の話だけど。

 

 

 

 

 

 

 

友希那「不思議そうにしてるわね。

……もちろん、実力だけで言えば下の下よ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そ、そうすか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、知ってたけどね。

別に悲しくなんてないし、知ってたから!!

 

でももちろんってなんだよ。

下手な自覚はありましたけど、そんな言わなくたっていいじゃん。

 

 

 

 

 

 

友希那「そんなに落ち込まないでちょうだい、今のは冗談よ。

でも、私たちのところに入って居たら死ぬ1歩手前まで練習させてたわ。」

 

 

 

 

 

 

八幡「入らなくて良かったです」

 

 

 

 

 

 

 

はー、良かった。

ブラックの香りがぷんぷんするぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「実力、覚悟、コレが私の判断材料だったわ。

でも、あなたの演奏を、表情を、見て感じてそれが変わった。

 

 

今のRoseliaがあるのは少なくともあなたのおかげではあるの」

 

 

 

 

 

いやいや、そんなの買い被りすぎだ。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、俺がいなくても5人揃ってましたよ。

俺は別に湊さんの何かを変えるために、あの時弾いたわけじゃない。

自分の何かを変えるために、1歩を踏み出すために、勝手に利用させてもらったのでお礼を言うなら俺の方です」

 

 

 

 

 

 

友希那「……そう。

それならこの話はお互いさまということで終わりにしましょうか。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「助かります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「…そう。それなら私は行くわ」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「また誘われるのかと身構えてました。」

 

 

 

 

 

 

 

これは嘘だ。だってこの問いの答えは知ってるから。

 

 

 

 

 

 

友希那「………残念だけど、うちにはもうみんながいるから。

Roseliaに必要なのはあなたじゃないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……それを聞けて安心しました。」

 

 

 

 

 

 

 

友希那「……強がり?」

 

 

 

 

 

 

八幡「もうそれでいいっすよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まりな「比企谷君、おつかれー!

Roseliaのおかげで暇じゃなくなって良かったね!」

 

 

 

 

 

八幡「いや、全然暇でよかったんですけどね。

まあ、お疲れ様でしたそれではまた。」

 

 

 

 

 

 

そういやそうだった。

今日は早く帰れるはずだったのに阻止されたんだった。 

 

時計を見ると22時を少し過ぎ、外に出るともうすぐ夏ということでほんのり暖かく、着込まなくても快適に過ごせそうな涼しさである。

 

 

 

 

 

 

 

リサ「あ、はちまん!来た来た!」

 

 

 

 

八幡「え?」

 

 

 

 

 

あこ「ふっふっふっ。

我が漆黒の前ではそなたの………えーと、、りんりん!!」

 

 

 

 

 

燐子「え、えーと、隠しきれないオーラが見えてるぞ。かな?

こ、こんばんは、比企谷君。お、お仕事お疲れ様…っ!」

 

 

 

 

 

 

紗夜「お疲れ様です。」

 

 

 

 

 

 

友希那「さあ、帰るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……?」

 

 

 

 

 

 

え、なんで?

どうしてRoseliaが店の前にいるの??

この人達お店出てから、俺は片付けとか仕事してたから30分以上は過ぎてるよ?

 

 

 

 

どうやら俺を待っててくれたようなので、さすがに今自転車に乗って「じゃ、失礼します」とか言って帰ったら次会う時が怖すぎるからやめとくか。

 

 

 

 

 

 

八幡「あー、えーっと、お疲れ様です。」

 

 

 

 

 

 

なんて言えばいいか分からず、とりあえず無難な言葉をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「うんっ、おつかれ!

そっか、はちまんは自転車だったよね。

悪いねー、歩かせちゃって」

 

 

 

 

 

 

ゴメンと手を合わせてウインクする今井さん。

くっ、そんなことされたら攻めるに攻めれない。

しかも慣れてるあたりこれは常習犯か!

 

 

 

 

 

 

あこ「比企谷さん!あこたちの演奏聴いてくれましたか!?」

 

 

 

 

 

 

八幡「え?いや、一応スタジオ防音室ではあるし、他のことしてたから聴いてはないな。」

 

 

 

 

 

 

 

あこ「そんなー!あこ、あれからまた上手くなったんですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おぉ、そうか。

まあ練習もちゃんとしてるみたいだし、まだまだ上手くなるだろ」

 

 

 

 

 

あこ「えへへっ♪

おねーちゃんにはまだまだ敵わないけど、あこ頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

宇田川あこ。

何故かわからんが懐かれてる気はする。

厨二病特有の同じ香りがしたのだろうか……

 

 

こいつがたまに言う「おねーちゃん」とやらもドラムらしいのだが自分よりも上手い人らしい。

最初は、湊さんや氷川さんの前でおねーちゃんの話は禁句みたいな反応だったのにもう許されたのだろうか。

 

 

 

 

友希那『おねーさんの方が上手い?

それは困るわ、Roseliaのドラムは貴方なのだから一番上手くなってちょうだい。』

 

 

 

 

 

紗夜『…………』

 

 

 

 

 

 

 

あの時の湊さん怖すぎだし、氷川さんは何か思い詰めるような表情だったし……

 

 

 

Roseliaの印象は今井さんと宇田川がムードメーカー。

あの2人は……まあ怖い。

そして、白金さんとはあまり話したことがない。

 

 

 

 

そもそも俺も白金さんも自分から話すタイプではないからな。

2人きりになったら終始無言になる可能性が高い。

 

 

 

 

 

 

リサ「うんうん。

あこはどんどん上手くなってるよ!

アタシも頑張らなきゃなー!」

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「ライブも近いですからね。

明日からはもう少し練度を高めましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

友希那「そうね。

紗夜の言う通り、明日から少し厳しく行くわ。」

 

 

 

 

 

 

あこ「えっ!まだ厳しくなるんですか!!?」

 

 

 

 

 

 

 

燐子「あ、あこちゃんっ、頑張ろう………ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

意識高い系は凄いな。

ハロハピのコーチを湊さんと氷川さんでやったらどうなるのだろうか。

 

 

…………いや、今想像したら弦巻率いる3バカが勝ったわ。

まず話し合いできるかも怪しいし、先に2人が折れるだろうな。

 

 

 

まあやり方も合う合わないがあるからな。

それ含めてバンドって感じで、方向性の違いで解散するバンドもやはり少なくは無いのだろう。

 

 

 

 

 

リサ「いやー、それにしても文化祭の時のはちまん、すっごく良かったよ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「………どうも。」

 

  

 

 

 

 

 

さっきも聞いたし、面と向かって言われると普通に恥ずかしいんだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あこ「あこも観たかったー!!!」

 

 

 

 

 

 

燐子「つ、次のハロハピがライブの時……一緒に観に行こう……ね?」

 

 

 

 

 

あこ「うん!絶対行く!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、本当に来なくていいっす。

勘弁してください」

 

 

 

 

 

 

知り合いに見られるのはやはり恥ずかしい。

そういう心配は知り合い自体が少ない俺の心配することではないと思っていたのに……

 

 

 

 

 

 

紗夜「それなら比企谷さんを観に行くわけではないので。

同じ学校のバンドでもあり、同じくバンドをしてる者として、得るものがあるかも知れないので観に行きますね」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、それずるくないですか?

それ言われて俺が何か言うと、自意識過剰になるのでもう何も言わないっす……」

 

 

 

 

 

 

紗夜「ふふっ……」

 

 

 

 

 

 

 

氷川紗夜さん。

花咲川の2年、そして多分風紀委員の人……

弦巻とバンドのことで学校に許可を得るために話し合った時、確かにいたはず。

 

 

あとにわかには信じ難いが、先日出会った氷川日菜さん。

苗字、髪色、花咲川にお姉さんがいる情報。

このことからこの2人は双子なのでは?と。

性格は真逆だから違うとはならないのが、俺と小町で証明されているからなんとも言えないな。

まあ聞く気もあんまりないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友希那「でも本当に意外ね。

あなたがあのジャンルのバンドに入るなんて」

 

 

 

 

 

 

紗夜「……確かにそうですね。」

 

 

 

 

 

 

凛子「………た、確かに……」

 

 

 

 

 

 

リサ「あー、でもハロハピのボーカル、弦巻さんだよね?

あの子は他校の私でも知ってるレベルの有名人で、結構はちゃめちゃで自由奔放、花咲川の異端児って聞いてるけど、それにはちまんも巻き込まれた……とか?」

 

 

 

 

 

 

八幡「え、名探偵ですか?」

 

 

噂の高校生探偵、なに藤なに一もビックリする名推理。

 

 

 

 

 

 

リサ「当たってるんだ……」

 

 

 

 

八幡「まあきっかけはどうであれ、最終的に決めたのは俺ですからね。」

 

 

 

 

 

 

そう、決めたのは俺だ。

人生において人間には色んな選択が求められる。

でも決めるのはどうやっても大体は自分なのだ。

 

 

 

それなら俺は出来るだけ後悔しない選択をしていたい。

例え間違っていても自分が納得出来ればいいと思ってる。

 

 

 

 

 

友希那「そうね。

私達の誘いを断ったのもあなた自身の判断」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい!やっぱりめちゃくちゃ根に持ってるじゃねーか!!」

 

 

 

 

 

 

 

紗夜「私たちは断ったことはあれど、断られたことはありませんでしたからね」

 

 

 

 

 

リサ「はちまんをからかえるネタみたいなものだからね!

友希那達もさすがに今は何も思ってないよ!」

 

 

 

 

さっきそれ聞いて安心してたのに、今言われたんですけど。

てか、からかうのは最近の流行なの?

からかい上手の高木さんが面白いから?

 

 

 

 

 

 

あこ「はちまんさんはそんなにピアノが上手いんですか?

もしかしてりんりんよりも!?」

 

 

 

 

燐子「あ、あこちゃんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そんなわけない。」

 

 

 

 

 

友希那「ないわね。」

 

 

 

 

 

紗夜「ないですね。」

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リサ「あはははっ☆」

 

 

 

 

 

いや、別にいいんだけどね?

本当のことだし?

でも自分で言うのと他人に言われるのは違うっていうめんどくさい現象がこの世にはあるじゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「ひ、比企谷さんは……すごく…上手だよ? 

タッチが……滑らかで……その………えっと…」

 

 

 

 

 

 

八幡「ありがとうございます。もう一生尊敬します。

Roseliaは白金さん推しで行きます」

 

 

 

 

 

 

リサ「………!」

 

 

 

友希那「………」

 

 

 

 

紗夜「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燐子「……え、、ええっ……!?

そ、それはちょっと………嬉しいけど……うぅ」

 

 

 

 

 

 

真っ赤にした顔を手で隠す姿は、

例えるならペットショップのお店のガラスショーケースから見える子猫や子犬達が戯れたり仲良く眠っていたりご飯を食べてたりと、そんな姿を見た人たちが揃って言う言葉はそうきまっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 











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テストとお昼とアイドルと…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『テスト返すぞー』

 

 

 

 

『『えーーー!』』

 

 

 

 

 

 

 

先生の一言でクラス中が賑やかになった。

周りを見ると、自信がないのか頭を抱えてるものや、逆に自信がありありの奴、真顔の人、ソワソワしてる人、眠そうな着ぐるみオフモードさん、目をキラキラさせてワクワクしてる異端人。

いろんな人が俺のクラスにはいるようです。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………」

 

 

 

 

 

何か視線を感じるが真顔で前を向くのが無難だろう。

そう言えば周りの人たちではテレパシー的なサイコ能力を使ってくる人たちも一定数いるんだった、危ない危ない。

 

 

 

 

 

こころ「はちまん!テスト返しよ!

とーってもワクワクするわね!」

 

 

 

 

 

 

八幡「いやしないから。

ていうかお前余裕あるのな。」

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くんは頭いいんだから自信あるでしょ?

あたしは自信のある科目しか点数良くないからなぁ」

 

 

 

 

 

八幡「……まあないことはないけど、バンド練とかバイトとかでやっぱり勉強時間が減ったからな。

前と比べると自信はないな」

 

 

 

 

 

 

というか自然と俺の席に集まってきてるけどいいの?

…………あ、周り見てもわちゃちゃしてるし自由に席から動いていいんだ、そうですか。

 

 

 

 

 

こころ「みんなも楽しみなのね!私もよ!」

 

 

 

 

 

八幡「え、話聞いてた?」

 

 

 

 

 

 

 

『おくさわー』

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、呼ばれた」

 

 

 

 

 

そう言えばハロハピの学力はどうなっているのだろうか。

そういう面で話をしたことがないからわからないな。

 

 

 

松原さんは……頭良さそう。まあ少しドジでも全然良い、むしろ良い。

 

瀬田先輩は…………歴史好きそう。でもあの人は基本的に何でもできそうではあるな、かなりの努力家だろうから。

 

奥沢は、良い意味で平均そう。良い意味で。得意科目だけちょっと点数高そう。

 

北沢は、まあ……うん、勉強できたらかなりのギャップではあるな。

 

そして、弦巻。

正直言って絶対にバカ………って言いたい所なんだけど嫌な予感というか俺の第六感がもしかして、もしかしすると?なんて囁いてくるけどないね。

こーれバカです。

……黒服?知らん、表現の自由は主張されるべきなんだ。

 

 

 

 

 

 

『ひきがやー』

 

 

 

どうやら俺の番らしい。

メンバーについて考えてたらいつの間に。

てか弦巻ももう呼ばれてたのか、俺のよりアイツの方が気になるまである。

 

 

 

 

『首席合格はさすがだな〜、学年1位だぞ』

 

 

 

 

『えっ!?』『首席!?』『アイツが!?』

 

 

 

 

 

ちょっとやめてください。

プライバシーの侵害で訴えるぞマジで。

でも学年1位は普通に嬉しいです、心の中でガッツポーズだけしとくか。

いやー、勉強した甲斐があったわー。

 

よし、安心したところで弦巻だ。

アイツの点数がめちゃくちゃ気になる。

 

 

 

 

 

こころ「はちまんはすごいのね!

そんなに頭がいいなんて知らなかったわ!」

 

 

 

 

八幡「そいつはどうも。お前の点数も見せ………奥沢が持ってるのか。

 

 

 

 

……おい奥沢、俺にも見せろ。

 

てか何で固まってるん……は??」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷君………これ……こころの……」

 

 

 

 

 

 

こころ「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………は???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はーぐーみー!!

一緒に帰りましょ〜!」

 

 

 

 

 

 

美咲「待って待って待って、廊下は走っちゃダメだって」

 

 

 

 

 

 

八幡「………おい弦巻、お前は風紀委員に睨まれてるからな。

気をつけないと水色の髪の怖い人に怒られるぞ」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころん!それにみーくんにはちくんも!!」

 

 

 

 

 

香澄「あー!美咲ちゃんにハッチー!」

 

 

 

 

 

沙綾「はぐみを迎えに来たんだね」

 

 

 

 

 

りみ「仲良しだよねっ」

 

 

 

 

 

 

たえ「私たちも負けてない」

 

 

 

 

 

 

 

A組は北沢の他にポピパ4人組がいるので、北沢を迎えに行くと毎度盛大に歓迎してくれるのでまあまあめんど………賑やかましいな。

ハブられた何ヶ谷さんはドンマイすぎる。

 

 

 

 

 

こころ「さあ!今日もこれからライブの練習よ!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あー、ええと、そ、それなんだけどね……!」

 

 

 

 

 

八幡「………北沢、お前やっぱり」

 

 

 

 

 

はぐみ「今日返されたテストで赤点が3つ以上あったから補修で居残りになっちゃった〜」

 

 

 

 

 

 

八幡「やっぱりか……」

 

 

 

 

 

 

 

まあ、何となく予想は出来てたけど。

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころんたちは赤点無かったの!?」

 

 

 

 

 

 

美咲「無いね」

 

 

 

 

 

 

八幡「1つならまだしも3つ取るのは中々ヤバいぞ……」

 

 

 

 

 

 

こころ「あたしも無かったわ!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ、香澄、沙綾、りみ「「えっ!?」」

 

 

 

 

 

 

こころ「……どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あっ、いや!!

そういうわけじゃなくて、えっと、なんかちょっと意外だったというか、その……」

 

 

 

 

 

 

りみ「こ、こころちゃんは運動とかそっち系がすごい出来るイメージだったから、勉強面は少し苦手かなって思ってたけど………ごめんなさい!」

 

 

 

 

 

こころ「……?

何で謝るのかしら?」

 

 

 

 

 

 

八幡「あー、弦巻はそういうの何とも思わないタイプだし気にするだけ無駄だから気にすんな。」

 

 

 

 

 

 

こころ「何かわからないけど謝らないでほしいわ!

どうせなら笑っておいた方が楽しいわ!!」

 

 

 

 

 

 

スーパー笑顔人は言うことが違うな、さすがだ。

 

 

 

 

 

 

香澄「こころんたちすごいね〜!

私も今日居残りなんだー!」

 

 

 

 

 

八幡「やっぱりお前もかよ…」

 

 

 

 

 

 

イメージ通りすぎて逆にびっくり。

弦巻を見習えよ、想像を超えてきたぞマジで。

 

 

 

 

 

 

 

たえ「私も居残り」

 

 

 

 

 

 

八幡「………そうか。」

 

 

 

 

 

 

正直コイツは想像だと2択だった。

めちゃくちゃバカか、めちゃくちゃ天才か。

前者だったか。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「げ、比企谷…!」

 

 

 

 

 

後ろから声がしたので反射的に振り向くとそこには見知った顔が……

 

 

 

 

 

香澄「あーりーさー!

どうしよー!居残りになっちゃったよー!」

 

 

 

 

 

有咲「だぁー、うるせー!

それは自業自得だろうが!!」

 

 

 

 

 

どこぞの何ヶ谷さんが到着して早々に戸山とイチャイチャ。

……てかコイツいま人の名前呼んで『げ』って言ってなかった?

 

 

 

 

香澄「うわーん、有咲ごめんね!!

勉強も頑張るから〜!!」

 

 

 

 

 

たえ「わたしも。」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お、おいっ、やめっ……!///

わかった!わかったから!!」

 

 

 

 

 

 

え、何この状況……

ダメダメな彼氏が別れたくないって言ってるみたいな感じだけどもしかして?

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あー、これはね……

1回香澄が家庭科の課題を終わらせないままずっとバンドのことを考えてた時があって、それで毎回放課後学校に居残りさせられててその時に有咲のお叱りの声が。」

 

 

 

 

 

美咲「お母さん…?」

 

 

 

 

 

有咲「ち、ちげーから!!」

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、ごめん、思ったことがそのまま口に出ちゃった」

 

 

 

 

 

 

りみ「有咲ちゃんは頭が凄くいいから授業とかで分からないところも教えてくれるんだよ?」

 

 

 

 

 

 

沙綾「ねー、すごい助かるよね」

 

 

 

 

 

 

有咲「お、お前ら、今日はなんなんだよ!!///」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ!!

それならはちくん、はぐみにも教えてー!」

 

 

 

 

 

 

「「………!!」」

 

 

 

 

 

 

八幡「………え?」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「確かにね、教えられるでしょ学年1位さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なっ!?

お前なぁ……」

 

 

 

 

 

有咲「……っ!」

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷の前では言わないでほしかった………

過去の事件がフラッシュバックするし、なんなら今睨まれてる気がするのは気のせい気のせい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………本当に頭良かったんだね」

 

 

 

 

 

 

嘘だと思ってたってこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ!!

それならさ、テスト前はみんなで勉強会しようよ!」

 

 

 

 

 

 

たえ「いいね」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「かすみ!とーってもいいアイデアだわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「か、勝手に決めるなよ!

わたしはいいなんて一言も言ってないからな」

 

 

 

 

 

 

香澄「ありさお願い!!」

 

 

 

 

 

たえ「このとーり」

 

 

 

 

 

 

りみ「み、みんなで勉強…!

楽しそう!」

 

 

 

 

 

有咲「うん、テスト前くらいなら良いんじゃない?」

 

 

 

 

 

 

有咲「し、しょうがねーな!!

その代わりやるからには真面目に「やったー!!ありさ大好き〜!」

 

 

 

 

 

話の途中な市ヶ谷に抱きつく戸山。

やめろーとかいいながらも顔は満更でもない表情浮かべている。

百合百合してて良いっすね。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ポピパのみんなと勉強会楽しみだね!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「じゃあ市ヶ谷さんと比企谷くんにはお世話になろうかな。」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、俺はパスで。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「えっ?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、だから俺はパス。

市ヶ谷がいるから大丈夫だろ」

 

 

 

 

 

 

有咲「はぁ!?

私1人でコイツらの面倒見れるかー!」

 

 

 

 

 

 

 

俺やるなんて言ってないし、引き受けたのお前じゃねーか………

 

 

 

 

 

 

 

香澄「なんでー!

みんなで勉強楽しいよ!!?」

 

 

 

 

 

 

八幡「それなら俺抜きで楽しんでくれ…」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「え、えーと、私たちと勉強するのは比企谷君には迷惑…?」

 

 

 

 

 

 

「「………」」

 

 

 

 

 

 

 

や、やめて!

そんな目で見ないで!!

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いや、迷惑って言うか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前ら絶対真面目に勉強しないじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄、たえ、はぐみ「「「ギクッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「ま、そう思うよね〜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そんなことないわ!」

 

 

 

 

 

はぐみ「こ、こころん!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前のその自信はどこから来るんだよ……」

 

 

 

 

 

 

と言うかお前も絶対元凶になる1人だぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「まだやっても無いのに色々と決めつけるのは良くないわ!

1度やってみてから決めましょう!」

 

 

 

 

 

 

八幡「確かにそうだな。

それなら一旦俺抜きでやってもらって、それでちゃんと勉強してるなら「比企谷くん?」

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くんだけ逃げるのは許さないよ?」

 

 

 

 

 

 

八幡「ヒェ…」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「やるならお前も強制参加だ。

異論反論抗議質問口答えは受け付けねー!」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………ブラックだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもつい先週にテスト終わったから、テスト前まで数ヶ月以上あるんだからこの話まだまだ先じゃない?

普段も一緒に勉強とか絶対に嫌だからな俺は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ところでさ。

比企谷君と有咲の次に点数良かった人って誰なの?

やっぱり、りみりんか奥沢さん?」

 

 

 

 

 

 

りみ「えっ!?

うーん、みんなの知らないから何とも言えない……かな?」

 

 

 

 

 

 

美咲「いや、私ではないよ……。

りみ、ちょっと点数見せて…………

 

 

 

 

 

 

あ、うん、多分りみは4番目だね。」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「え?じゃあそれなら3番目は………」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「「弦巻(こころ)だな(ね)」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……!!?」」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「………?

どうかしたのかしら?」

 

 

 

 

 

沙綾「こ、こころ、ちょっとテスト見せてもらってもいい?」

 

 

 

 

 

 

こころ「全然良いわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ、沙綾、有咲「…………!」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「全部80点以上……」

 

 

 

 

 

 

美咲「この中って話じゃなくて学年でもトップ入れそうな点数……」

 

 

 

 

 

 

みんな、弦巻の点数を見て唖然としている。

それはそうだ、日頃の弦巻を見ていたら頭が良いとはとてもじゃないが思えないはず。

 

運動神経抜群、スーパー笑顔人、コミュニケーション能力カンスト、容姿端麗、超器用、歌も上手い、財力においては世界トップ、黒服怖い。

 

 

 

など様々な特性持ちなのに頭も良いとか、神は一体何物与えれば気が済むのだろうか。

それでも不思議と弦巻には、不信感というか嫌味ったらしい感情は特にないな。

権力を振り回すことはあれど、純粋な気持ち100%で生きているからだろうか。

 

 

 

それもまた一つの才能なのだろうと、笑う弦巻の顔を見ながら思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

『昼休み』

それは主に昼食の時間である。

うちの学校では1時間のお昼休憩で、この間にご飯食べたり遊んだり話したりを全てする貴重な1時間である。

 

 

 

 

弦巻達と食べる時が多いが、アイツらもアイツらのコミュニティが存在するため毎日一緒というわけではない。

1人で食べる時は外の離れ校舎の裏にある場所で食べており、ここを通る人など今のところは滅多にいない。

 

 

 

渡り廊下や教室からは死角となっており、さらにと言えば割と広いスペースも存在するためヤンキーとかが集まって悪いことしてもバレにくい場所ではある。

まあこの学校にそれっぽい人は見たことないのだけれど。

 

 

 

つまり、この場所はあまり知られてないというか一般生徒が近づかない静かな場所になっているため、俺は結構お気に入りなのだ。

 

 

 

 

 

だけどそんなお気に入りの場所もお別れの時が近づいているのかもしれない。

最近俺以外の1人の生徒がお昼休みにこの場所を使っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

???「ここでターンして、ポーズをとって、可愛く決める!!

……うー、難しいよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

そう、なんかいるのだ。

 

 

 

 

 

死角の広い場所は正確に言うと俺が座って食べている場所ではない。

俺の右後ろの曲がり道にあるため、今俺と女性?の人はお互い顔は見れていない。

 

でも向こうから何かシュワシュワしてる曲と自分のダンスの感想的なのが聴こえてくるため、なんとなく状況を察している。

そして俺の事は気づかれているのか気づかれていないのかすごく気になることでもある。

 

 

 

 

まあ知らなくても良い事はこの世の中には沢山あるらしいので、俺もバレるまでは自分からバラす事はしない。

お互い知らないふりをしてるのも決して悪いことではないからな。

この空間を捨てるのは惜しいため、邪魔とか拒否されない限りはゆっくりと昼休み時間を優雅に過ごそ『プルルルルルルル』

 

 

 

 

 

八幡「!?」

 

 

 

 

???「へっ!??」

 

 

 

 

突然鳴り出した俺のケータイ。

アラームなんてかけた覚えは無いし、音から察するに着信だろう。

それはそうと何で俺はマナーモードにしてないの?

普段からずっとマナーモードじゃん。

 

 

 

 

???「わ、私のケータイじゃない…!

え!つまりそこに誰か……」

 

 

 

 

 

 

やばいマズイやばいマズイやばいマズイ!!

 

 

『プルルルルルルル』

 

 

 

よ、よし、一旦出るか!

そこからこの状況の打開策を考えるんだ。

と言うか誰だよ、こんな時に電話しやがって!

 

 

 

 

 

 

『弦巻』

 

 

 

やっぱりコイツか!!

ええ、何となくわかっていましたとも!

 

 

 

 

 

 

八幡『もしもし。』

 

 

 

 

 

こころ『はちまん!

あなたはどこにいるのかしら!

色んな教室を探したけど見つけられなかったわ!

コレは昼休みを使ったかくれんぼって事よね!

今からはぐみ達も呼んで探すからそのまま隠れて『ピッ』

 

 

 

 

 

 

 

よし。

なんかよくわからないから切っちまったけど大丈夫だよな。

新ての詐欺だな、かくれんぼ詐欺。

見つかったら大金を請求されるからコレは切ってもいい通話だ。

あー、怖かった。

 

 

 

 

ふぅ、俺もそろそろ自分の教室に戻ろうか

???「あ、あのー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

話しかけてくるタイプか───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

???「えっ!?

それじゃあ、結構前からずっと見てたってこと!?」

 

 

 

 

 

八幡「待て待て待て、解釈がおかしい!

耳には入ってたけど目には入ってない!」

 

 

 

 

 

 

???「あ、ご、ごめんなさい!

わ、私、人がいるとは思わずに……」

 

 

 

 

 

八幡「え、あ、いや、別に謝る事はないだろ。

俺もずっと黙ってたわけだし……」

 

 

 

 

 

え、なにこの状況。

あんな申し訳なさそうに謝られたら俺が悪い事してたみたいな感じになるじゃん……

急に罪悪感が出てきたと言うか、もしかして俺が悪い??

 

 

 

 

 

 

???「わたしね、ダンスとか歌とか覚えるのが遅いから、他の人よりも何倍も練習とかしなきゃいけなくて……

だからちょうど人気も少なそうなこの離れた塔の場所で練習しようと思ってて…

 

 

でもずっとここでご飯食べてた人がいるとは思わなかったから、その、ごめんなさい!

もうここで踊ったりはしないから安心して!」

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いや、何でそうなるんすか……

 

別にここでダンスの練習しようが貴方の自由でしょ。

ここは俺の場所ではないですし、学校の敷地内だから生徒全員が使える場所だ。

それで貴方がここから離れるなら俺が悪い人みたいになるじゃないっすか。」

 

 

 

 

 

???「えっ!!そ、それは違くて…!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ、俺がいる事で恥ずかしくて練習に集中出来ないとか、

邪魔になるようだったら自分がいなくなるんで全然大丈夫っす」

 

 

 

 

 

 

 

???「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、なに??

なんかこの人すごい慌てたと思ったら次は固まったんだけど?大丈夫??

 

 

 

いや、そもそも邪魔とかそう言う事は言いづらい言葉だから言えるわけないか。

ここは俺から引き下がるべきだろう。

実際、目で見てたわけじゃないが真面目に練習してたことくらいは耳だけでも感じ取れてたわけだし。

 

 

 

 

 

 

八幡「明日から自分は教室で食べるので気にしない『ま、待ってください!』……へ?」

 

 

 

 

 

???「あ、その!!

君が嫌じゃなければいつも通りここで食べて大丈夫ですから!!」

 

 

 

 

八幡「え、でも……」

 

 

 

 

 

………優しい人だな。

ここは基本静かだし、落ち着く場所だからそう言ってもらえると助かるっちゃ助かるんだがな……。

向こうが明日から来ないとか言ってきたらかなりの罪悪感があるが、それは向こうもきっと同じなのだろう……

 

 

 

 

 

 

???「そ、それと、1つお願いがあるんだけど……いいかな?」

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

 

 

 

前言撤回か?

出会って5秒でお願い聞かせるとか、どこの7つ集めて出てくる龍だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────それから次の日、昼休み。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゅわしゅわ!

どり☆どり〜みん!yeah!」

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「い、今のどうだった!?良かったよね!?

あ、でももうちょっと全体的に早くしたほうが良いかな?

比企谷君はどう思う??」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、はい。

良いんじゃないすか、なんかしゅわってて」

 

 

 

 

 

 

俺の目の前で踊る1人の女性。

……何か言い方良くないなぁ。

 

 

 

彼女の名前は、『丸山 彩』さんというらしい。

身長は大きくもなく小さくもなく、髪はピンクと派手派手の色をしていて、なおかつツインテール。

もうあざとい化身というか、まるでアイドルかな?と思うレベル。

 

しかもこの人2年生らしく、つまりは俺の先輩になる。

 

 

 

丸山さんには

『えっ!1年生なの!?落ち着いてるし大人っぽいから3年生かと思ってたよ!』

 

などのやり取りがあったが俺も先輩だとは思ってなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「しゅ、しゅわってる?!

……う〜ん、ちょっとよくわからないけど今みたいな感じでダンスのキレとかも練習していけば良いのかな!」

 

 

 

 

 

昨日丸山さんからお願いされた事はダンスや歌を見たり聞いたりして、感想を言ってほしいとのこと。

恥ずかしい気持ちもあるらしいが、2週間ほど俺に聞かれてたことを知ると吹っ切れたらしく、『お客さん目線の感想も大事だよね。』などと1人でぶつぶつ言っていた。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あの、昨日も言ったと思うんですけどダンスとかそういう経験0に等しいので何の役にも立たないと思うんですけど……」

 

 

 

 

 

 

彩「えっ!?全然そんな事ないよ!

見てくれてるだけでもありがたいことだよ!

人前で緊張して踊らなかったらアイドル失格だから!

 

 

 

……うぅ、でもやっぱりちょっと恥ずかしいよ〜///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見てくれてるだけ…やっぱり俺の感想は役に立ってないですよねそうですよねごめんなさい。

あ?…てか今なんて言った?アイドル?え、マジ??

 

 

 

 

 

 

丸山彩。

あとで調べてみるか?

いや、でも本名かはわからないし……

何より調べられたら嫌な気持ちになるとかあるのか…?

それか認知されたほうが嬉しいのだろうか…?

 

この問題は人によるとしか言えないな、やめとこ。

 

 

 

 

 

頭の中で色んなハテナを浮かべながら、目の前で一生懸命に踊る1人の姿を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彩「ふぅ、比企谷君、今日はありがとね!!

突然私から頼んだ事だけど、迷惑じゃないかな?

そうじゃなかったらまた明日からも是非お願いしたいかなーって…」

 

 

 

八幡「え?いやいや、逆に俺で良いんですか?

もっと適任な人いると思いますけどね……。

 

まあでも、あそこに色んな人が来て騒がしくなっても嫌なので、見るだけでいいなら大丈夫ですよ。」

 

 

 

うーん、本当は断ろうかな?とか思っていたのだが、感情を表に出してくるタイプはやはり苦手だな。

『お願い』って表情からだんだん不安そうな顔にされると断るに断れないって……。

まあこの場所が騒がしくなるのが嫌なのは本音だし、見てるだけで良いのなら正直構わない。

ただ、たまに困るのが……

 

 

 

 

 

 

彩「これが私の挨拶なんだけど、一度やってみるね!

 

 

 

 

 

 

まんまるお山に彩りを!」

 

 

 

 

キャピルン♪と効果音がでできそうなポーズで俺を見てくる。

 

 

 

 

 

 

八幡「………」

 

 

 

 

彩「え、えっと、どうかな……?」

 

 

 

 

八幡「あざとい、やり直し」

 

 

 

 

 

彩「えっ!?そ、そんな〜〜!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

高校生になってくるとそういうポーズとかは、少し抵抗があると言いますが、

こっちも恥ずかしくなってくるからそこが少し大変だな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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幼馴染@1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばさ〜、はっち〜は結局バンドやってるの〜?」

 

 

 

 

 

「「……!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……まぁ、うん。

一応やってはいるな。」

 

 

 

 

 

「「「……!!!??」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モカ「お〜、やっぱりやってたんだ〜」

 

 

 

 

 

ひまり「えぇー!そうだったのー!?

なんで今まで黙ってたの!?」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ほ、本当だったんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「ははっ!おいマジかよ!

何やってるんだ?!ドラムか!?」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……意外すぎる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も今日とて、みんな大好きCIRCLEのロビー。

そして全然代わり映えのしないいつもの常連、幼なじみ5人組バンド。

 

そのうちの一人、やまぶきベーカリー中毒者の青葉モカから言われた一言。

 

 

 

 

 

それまでしてた会話での脈絡もないし、完全な不意打ちではあった。

青葉が放った一言で空気は一変し、ほか4人の目線も俺に集中した。

これはきっと自意識過剰とかでは無いと思う…………とか思いたい。

 

 

 

 

嘘をついても良かったが、いつかはバレるだろうし。

そもそも隠す理由も特には無い。

この前は美竹にカマをかけられたけど、アレはアレ、ソレはソレ。

 

 

 

 

 

モカ「ギタ〜?」

 

 

 

 

巴「ドラム!?」

 

 

 

 

ひまり「ベース!!」

 

 

 

 

 

つぐみ「キ、キーボード…?」

 

 

 

 

 

 

おいおいなんでこんなに興味深々なんだよコイツら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……え、ボーカル???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の沈黙がどれもハズレだと思ったのか、美竹の一言でよりいっそう場が盛り上がる。

 

 

 

 

 

 

モカ「え、ないな〜い。

かいしゃくふいっちで〜す」

 

 

 

 

 

 

巴「比企谷がボーカル……ぷっ、いいなそれ!」

 

 

 

 

 

 

ひまり「うーん、確かにボーカルは想像出来ないかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「わ、わたしはすごい良いと思いますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかボロクソに言われてるが、相変わらず天s……間違えた。

羽沢さんは本当に良い人だ。

ただ、そんな優しい人に気を遣わせてるのが申し訳ないな。

俺、全然悪くないけど。

 

 

 

 

 

 

 

蘭「それで、答えは?」

 

 

 

 

 

 

八幡「……キーボード。」

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「……!!」

 

 

 

 

 

 

モカ「え〜、

絶対ベースかギターかと思ってたからモカちゃんビックリ〜」

 

 

 

 

 

 

棒読みじゃねーか、本当にビックリしてるのかコイツ…?

ていうかなんかちょっと恥ずかしくなってきたって。

すっごい意外そうな顔で見られてるし………

 

 

 

 

 

 

巴「同い年のバンドとか割と見てきたけど、男でキーボードは見たことなかったから、なんか新鮮だな!」

 

 

 

 

 

ひまり「ライブとかやるの?!

今度する時教えてね!絶対に行くから!!」

 

 

 

 

 

 

八幡「絶対に言わないし、来るな。」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……アタシらのことは知ってるのに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、それでも演奏とかは聴いたことほとんどないし。

ライブも行った事ねーよ」

 

 

 

 

 

 

当然このバイトしてるだけあって情報は知ってるが、実際聞いたことあるかと言われたらそんなにない。

スタジオは防音室だし………完全に音は切れないとはいえバイト中にそんなに耳に入ることはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………それはそれでイラつくんだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

どうしろと???

 

 

 

 

 

 

 

モカ「じゃあ今度モカちゃん達のライブ観にきてね〜

だからはっち〜のライブも〜「大丈夫です」え〜〜」

 

 

 

 

 

 

巴「なんだ〜?恥ずかしいのか〜?

恥ずかしくないなら別に私たちに観られても「恥ずかしいからやだ。」……」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「そ、それなら合同練習とかは!?

同じバンド視点での感想を言い合ったり「それは色んな意味でやばいかもしれないからやめとこう」…え、どういうこと!?」

 

 

 

 

 

いや、うちのメンバーまじでやばいぞ?

どれくらいヤバいかって言うとめちゃヤバ。

 

 

どうせすぐにバレる気がするからそれまでは抵抗してみよう。

いくら客と店員の仲とは言え、やっぱり知り合いに観られるのは恥ずかしいからな。

 

 

 

 

 

 

 

巴「比企谷のやつ、私たちへの対応が冷たくなってないか?」

 

 

 

 

 

ひまり「そ、そんな事……」

 

 

 

 

 

モカ「え〜?こんなもんじゃな〜い?」

 

 

 

 

 

 

蘭「うん。いつもこんな感じ」

 

 

 

 

 

 

そこは「いつも通り」じゃないのか。

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………」

 

 

 

 

 

 

八幡「ヒェ…

ま、まあ、近いうちどこかで会ったりするだろ」

 

 

 

 

 

怖すぎて変な声出たって。

口に出してないはずなのに……

 

 

対応が冷たくなったとか言われてるけどそんなことは無い。

されてる対応をそのまま返しているだけである。

特に宇田川と青葉にはもう気を使う必要はない。

こいつらいつもからかってくるし……

 

美竹も最近は遠慮が無くなってきてる気がするし、

上原はまぁ、うん、仕方ない。

 

 

 

 

 

 

つぐみ「あ、あのっ!!」

 

 

 

 

 

八幡「……!!

お、おう……どうした…?」

 

 

 

 

 

 

大きい声で言われたから驚いたってのもあるが、なんか近いし、恥ずかしいのか少し顔に赤みがかかってる羽沢さん。

こいつら5人の中でも1番まともというか、俺の数少ない知り合いの中だがトップレベルでまともな人。

それゆえ距離感が掴みづらいというか、お互い自分から話すタイプではないので会話量とかは5人の中でも1番少ない。

マジで優しくて良い子ってことはわかっているが、いくら羽沢さんでもアイツらと同じで演奏とかしてくれと言われたって流石に断る。

 

 

 

 

 

 

つぐみ「わ、わたしは、そのっ、比企谷さんが時間ある時でいいから、キーボード教えてほしい…かな!

その、迷惑じゃなければ……」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「全然迷惑じゃないし、いつでもいいぞ?

まあ俺が教えられることがあるのかどうか分からないけどな」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ほ、ほんとに……?

わたしもっと上手くなりたいから同じキーボードの人からアドバイスとか聞きたいなって!」

 

 

 

 

 

 

八幡「確かにそれはそうだな。

それなら俺からもお願いするわ」

 

 

 

 

なんて努力家なのだろうか……

俺も見習って行かなきゃな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「なんか明らかに私たちと対応違くない!?」

 

 

 

 

 

 

モカ「はっちーさー……。」

 

 

 

 

 

 

 

巴「つぐみに弱すぎるだろ…」

 

 

 

 

 

 

蘭「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

おっと、何やら冷たい視線がするが気のせいだろう。

ていうか羽沢さんに甘いとか言ってるけど、こんな優しくて努力家でつぐってる子に優しくしない訳ないだろ何言ってんだコイツら……。

 

 

 

 

つぐみ「そ、そんな事ないですよね!」

 

 

 

 

 

八幡「そんな事ないぞ」

 

 

 

 

 

巴「そんな事しかないだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖いね〜この若さ〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同い年だったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ていうかお前ら時間大丈夫なの?

時間的にもうスタジオには入れないし、あと15分でロビーも閉まるけど?」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「え……うそっ!

もうこんな時間!?」

 

 

 

 

 

モカ「ちょっとだけ休憩するつもりだったのにね〜」

 

 

 

 

 

八幡「ほら、そういうことなら早く帰った帰った。

お前らしかお客さんがいないから、お前らが早く帰れば少し早く店を閉じれるんだよ」

 

 

 

 

 

 

今日は結構暇だったし、コイツらと話してる間にも閉めの作業をしていたのでこれは過去最速で早く終わらせて帰れるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……へー。」

 

 

 

 

 

巴「それはいいこと聞いたなー」

 

 

 

 

 

モカ「あと15分ゆったりしますか〜」

 

 

 

 

 

 

八幡「お前らなぁ……」

 

 

 

 

 

 

ひまり「ひっきー……

 

 

 

 

 

 

八幡「あ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そりゃ悪手じゃよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか険しい顔で変なこと言ってる上原は無視する。

 

 

 

 

こいつら(4人)絶対許さん。

 

 

 

 

そして「あはは……」と苦笑いをしてる羽沢さんと目が合うと、ごめんなさいと表情、ポーズをする羽沢さんはやはり天使なのは間違っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてあいつらは結局閉店3分前までいやがった。

 

 

 

モカ「3分も早く上がれるじゃ〜ん、いやーよかったねー」

 

 

 

八幡「いや、お前らが帰った瞬間帰れる訳じゃねーから。

もうほとんどいつもと変わんねーよ!」

 

 

 

 

去り際に青葉に言われたけど、本当にいい顔してた。

同姓だったら殴ってたいい顔。

 

 

 

ドアを開ける音が聞こえる。

たまに大人気ないことをしてくる月島さんではないか。

 

 

 

まりな「あ、八幡君!

私はこのあと少し残ってやることがあるから、もう終わって大丈夫だよ!

お疲れさまー」

 

 

 

 

訂正、GOD MOON ISLAND (神の月島さん)

 

 

 

 

 

 

 

八幡「それでは俺はこれで失礼します。

お疲れ様でした。」

 

 

 

 

 

 

外に出ると当然暗く、夏に近いのか服一枚でも寒さを感じずに過ごせるくらいの気温になっている。

さて今日は帰ったら何をしようかと考えながら、駐輪場に停めていた自転車を取りに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう、にいちゃん。ここに何のようだい?」

 

 

 

「サドル高いね〜、下げてもいい?」

 

 

 

 

 

八幡「もしもし警察ですか?

自転車が不良(笑)に盗まれそうなんですが。」

 

 

 

 

 

 

ひまり「わー!冗談だよじょうだーん!」

 

 

 

 

 

蘭「いやひまり、あっちも冗談だから。」

 

 

 

 

 

つぐみ「モ、モカちゃんっ、本当にサドルを下げないで!」

 

 

 

 

 

 

お前は本気なのかよ……

 

 

 

 

 

 

八幡「………?

まぁ、別にお前らがここで何してても問題さえ起こさなければいいんだけど、夜も遅いんだしそんなに重要な用事じゃなきゃ帰った方がいいぞ。

それじゃあ。」

 

 

 

 

 

 

青葉が俺の自転車に座っていたので、降りろよと素振りを見せ、鍵を外してこの場を去ろうとするのだが……

何とも言えない空気というか、そんな空気を作り出してる奴らが冷ややかな目で見てくる。

 

 

 

 

 

 

 

巴「おいおい、待ってたのに1人で帰るなんてひどいだろ」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……え?待ってた?

誰が?誰を?」

 

 

 

 

 

ひまり「早く上がれるって聞いたからさ、ヒッキーのこと待つって話になってて。

でも自転車だから私たちと合わせることになるけど……それくらいいいよね?」

 

 

 

 

 

八幡「……なるほどな。

別に帰るのは構わないが、お前らが俺に合わせろ。」

 

 

 

 

 

 

ひまり「鬼!?」

 

 

 

 

 

 

蘭「はぁ……つぐみ。」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「え!?

あ、ええと、その……比企谷さんが迷惑じゃなければいいかな?」

 

 

 

 

 

 

八幡「よし、一緒に帰ろうそうしよう!

おい、お前らなにしてんだ、早く行くぞ」

 

 

 

 

 

 

ひまり「つぐに甘過ぎ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「はっちー、後ろ乗せて〜。

さあ、しゅっぱ〜つ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おい!やめろ、っていうか2人乗りはダメだろ。

ここは小町専用だ。」

 

 

 

 

 

 

モカ「こまち?だれー?お米?」

 

 

 

 

 

八幡「お米じゃねえよ……。

俺の妹だ。」

 

 

 

 

 

巴「八幡も妹いるのか!

私にも妹がいるんだけど可愛くてな!

Afterglowの中でも私しか妹がいないからなんか嬉しいよ」

 

 

 

 

 

 

 

コ、コイツ!

妹の話になった途端、聞いてもないことベラベラと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「さてはシスコンだなおめぇ?」

 

 

 

 

 

 

巴「いや、シスコンではないって!」

 

 

 

 

 

 

「「「いや、割とシスコンだと思うよ?」」」

 

 

 

 

 

 

 

巴「み、みんなまでか!?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあシスコンって別に悪い言葉じゃないだろ

妹想いの姉ってことでいいだろ」

 

 

 

 

 

 

巴「ぐっ、まあそうだけどさ。

比企谷は妹さんのこと好きじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

八幡「は?

 

 

 

 

……はぁ、いいか?小町はな、可愛いんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「……え、あ、うん??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふっ、仕方ない。

そんなに小町を知りたいのなら答えてあげるのが世の情け。

世界の破壊を防ぐため、世界の平和を守るため、愛と正義の悪を貫いてやるか。

 

 

 

 

 

 

八幡「そんで可愛いだろ?

さらに才色兼備、成績優秀、可愛い、性格めちゃくちゃいい、家事料理全般得意、可愛い、コミュニケーション能力がすごく高い、そして俺に似ず可愛い」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うわぁ……」」

 

 

 

 

巴「可愛い何回言ってんだよコイツ………」

 

 

 

 

 

 

羽沢さん含めて全員ドン引きな反応を見てふと我に返る。

まあ全然後悔はしてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「も、もしかしてヒッキーもシスコン?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「は?俺は全然シスコンじゃない。

妹を愛してるだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「それもっとやばい方!!?」

 

 

 

 

 

 

モカ「まさか、はっち〜がシスコンだったとはね〜」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「あ、あははは……妹想いなんですね」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「いや、そんな可愛いらしいもんじゃないでしょ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ま、そういうことだから俺の後ろに乗るな。

ていうか今降りて押して歩いてるんだからそもそも出来ねーよ」

 

 

 

 

 

モカ「え、乗って押してればいいだけだから出来るよ〜?

ていうかー、そんなに言うなら妹のこまちちゃん?に会って見たいね〜」

 

 

 

 

 

つぐみ「うんっ!仲良くしたいね!」

 

 

 

 

 

 

 

巴「その時はうちのあこも連れて行きたいな!」

 

 

 

 

 

 

 

あこ……?

はて、、、どこかで聞いたことある気がするな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あこの演奏聞いてくれましたか!?」

 

「おねーちゃんは、もっーと凄いんだよ!」

 

 

「りんりーーーん!

あこね!この難しいところ出来た時、紗夜さんに褒められたんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「おい宇田川。

俺は別に白金さんより全然すごくないからね?

てかそもそも比べないで?

俺がすごく可哀想」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇田川 あこ

 

 

 

宇田川 巴

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつかー!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「ん?どうしたんだ?」

 

 

 

 

 

蘭「ちょっと、急に止まったかと思えば急に動くし……

大丈夫なの?」

 

 

 

 

 

 

苗字は一緒だったけど、見た目は似てないからそこまで疑わなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇田川を疑わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇田川を

巴「ひきがや」

八幡「何も言ってません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあでも俺も小町と似てないからな、否定する材料には全くならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「ふふっ、でも良いよね兄弟とか姉妹って。

すっごく楽しそう!」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「うん!

私は妹はいないけど、お姉ちゃんがいるからすっごく甘えさせてくれる!」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「つぐ〜、モカちゃんと蘭がここにいるからねー。

今日から私たちは三姉妹だ〜」

 

 

 

 

 

 

蘭「ちょ、ちょっとモカ!!やめてってば」

 

 

 

 

 

 

 

巴「おいおい、あたしも仲間に入れてくれよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「わ、私も〜っ!!!」

 

 

 

 

 

 

宇田川姉妹を特定していたら、いつの間にか5人で仲良くゆりゆりしていた。

 

 

 

 

 

モカ「ん〜?はっちーも入りたい〜??」

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、全然全く。」

 

 

 

 

 

 

巴「うーん、八幡は弟も違うし兄とも違うなぁ……。」

 

 

 

 

 

え、なに?

それならペット?

 

 

 

 

 

 

巴「双子で兄側とか?」

 

 

 

 

 

八幡「発想が独特だな……ていうか一応兄じゃねーか」

 

 

 

 

 

仮の兄弟姉妹の話で、双子とか出てくるやつ何人いるんだろうか。

絶対数少ない逸材だぞ。

 

 

 

 

 

 

蘭「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「ら、らん…?

まあ私もヒッキーは兄って感じかなー。

下の子も欲しいと思ったことは何回もあるけど、結局甘えちゃいそう!」

 

 

 

 

 

八幡「だから入んないって言ってんだろうが。

ていうか俺の妹は世界で小町ただ一人だ!」

 

 

 

 

 

 

モカ「ハッチーはねー、モカちゃん的には弟かな〜」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、だから聞けよ。」

 

 

 

 

 

お前が姉とか想像するだけで嫌なんだけど。

姉だからとか言ってやりたい放題してくる未来見えたって。

 

 

 

 

 

 

つぐみ「え、そ、そうかな?

私は、その、お兄ちゃんかなーって///」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「??????????」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おっふ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ままま、待て待て!

これくらいで揺らいでどうする?

いくら羽沢さんだからって妹はないだろう。

 

 

落ち着け、深呼吸だ。

………ふぅ、落ち着いてきた。

 

 

うちの小町は言うなれば、小悪魔的天使。

あざと可愛いってのが似合うし、イタズラされても全然許しちゃう可愛さ。

溢れ出る妹オーラは、世界的に見てもみんなの妹になっちゃう。

いや、誰にも渡さんけど。

 

 

 

 

そんな小町とは違う羽沢つぐみさんは、

言うなれば100%の可愛さを発揮してくる天使of天使。

小町と2人姉妹になってしまえば、必然的に姉が羽沢さんになる。

 

 

そうなると大天使ツグミエルと妹の小悪魔天使コマチエルの2人が誕生???

ヴェ?何これ?他に何もいらないじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

小町以外兄弟も姉妹もいらないと思っていたが、なるほど…………

考えてみれば意外と良いのかもしれない。

この2人がいれば俺は何だってやってあげちゃうし、日本兄代表とかも名乗り出るレベル。

小町だけでも充分すぎるのになんてことだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「あちゃー……

つぐが破壊力のある一言言うからヒッキーがトリップしちゃった。」

 

 

 

 

 

 

 

つぐみ「え、ええっ!私のせい!?

ど、どうしよう!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「もうほっといていいでしょ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巴「…………それで?蘭は結局どうなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……?

どうって、何が?」

 

 

 

 

 

 

 

モカ「ずばりはっちーが兄弟だったら~」

 

 

 

 

 

 

ひまり「あ、私も気になる〜!」

 

 

 

 

 

 

つぐみ「わ、私も……」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………別にいいでしょ、そんなもしもの話」

 

 

 

 

 

 

モカ「もしもの話だからこそいいじゃ~ん。

想像出来なかったのー?」

 

 

 

 

 

 

巴「そうそう。気軽に出来るもしもの話だよ。

いま、比企谷もいないし」

 

 

 

 

 

 

 

蘭「………1番最初に自然に思ったのは巴と一緒で双子の兄かな。」

 

 

 

 

 

ひまり「おぉ〜!」

 

 

 

 

 

つぐみ「やっぱり兄が多いんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……でも」

 

 

 

 

 

 

 

「「「「……でも??」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭「……やっぱりなんでもない///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひまり「えー!なんでよー!!」

 

 

 

 

 

巴「おいおい、そりゃあないぜらーん」

 

 

 

 

 

モカ「あれ〜?蘭顔真っ赤だよ~??」

 

 

 

 

 

つぐみ「た、確かに気になる感じだったね……」

 

 

 

 

 

 

蘭「ほら、もうすぐチャイムなるよ。

みんなも教室戻らないと」

 

 

 

 

 

 

モカ「後で絶対教えてねー!」

 

 

 

 

 

 

蘭「イヤだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





小町「はっ!?こまち、妹の座が奪われそうな予感!?
でも姉が出来そうな予感も!?」


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番外編
誕生日 こころ&八幡  『これからもきっと。』


去年の8月8日、2人の誕生日の時に投稿した作品でしたが、
消してしまったので再投稿しました!




 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………………朝か。」

 

 

 

 

 

 

目が覚めると、部屋には日差しが入り込んでいた。

眠い目を擦りながらスマホを見てみる。

 

 

 

 

【10時45分】

 

 

 

 

 

 

…………ふむ。

いつも通りの日々だったら遅刻だと焦るのだが、今は夏休み。

そう。素敵な夏休み。

学生が好きな学校行事ランキングで修学旅行と引けを取らないほどの強さを誇っている夏休みさん。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………なんか、通知が来てるな。」

 

 

 

 

 

 

 

スマホを持ってたらアイツらに「LINKやろう」などと言われ、気づいたら1つのアプリが入っていた。

 

…………らいん?ちょっと何を言ってるか分からないが、LINKと言うらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「通知は………………88件!?」

 

 

 

 

 

 

は?こわっ。

一体誰がこんなイタズラを……………

 

 

「弦巻」という文字がズラーッと並んでる。

 

 

 

 

 

………………まぁ、だよな。

だいたい分かってたけどゲシュタルト崩壊するかと思ったわ。

 

 

 

 

 

 

てか、通知オフになってたのな。

音ゲーやる時通知邪魔だから切ってたの忘れてた。

およそ1時間前から来てるし。

どうしよう………………

 

 

 

 

 

 

八幡「よし。寝るか。」

 

 

 

 

 

 

 

ケータイの電源を切り、見なかったことにしよう。

この前ライブも終わったばっかりだし、夏休みの宿題も昨日終わらせたし、バイトも無い。

今日くらいは寝てても大丈夫だろう。

まだ、通知の内容を見てないけどまぁ、多分大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「それじゃあ…………おや………すみ……zz」

 

 

 

 

【ピンポーン!】

 

 

 

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

【ピンポーンピンポーンピンポーン】

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

【ピンポーン…………】

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………………ふぅ。家に誰も居ないのか?」

 

 

 

 

 

 

【ガチャ!】

 

 

 

 

 

 

八幡「…………………ガチャ?」

 

 

 

 

 

 

 

ただでさえ夏は暑くて、寝るまでに少し時間かかるのにピンポン連打はふざけてる。

しまいには鍵が開く音が聴こえたんだけど…………小町?

 

 

寝室をでて玄関に向かうと…………

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あー!やっと起きたわねー!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………………嘘だろ。」

 

 

 

 

 

 

 

ナンカイタ。

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「色々と言いたいことがあるが、どうやって家に入った?」

 

 

 

 

 

 

こころ「どうって………鍵よ?」

 

 

 

 

 

 

首を傾げる弦巻。

くそっ、なんか上手く言えないがイラッとくるな。

 

 

 

 

 

 

八幡「なんで、俺の家の鍵を持ってるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「小町から借りたわ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………小町から?」

 

 

 

 

 

 

 

えー、なんでー?

でも、弦巻が嘘をつくとは思わんし…………

 

 

 

 

 

 

八幡「……………ん?コレは?」

 

 

 

 

 

 

 

''お兄ちゃんへ''

小町とお母さんは、こころさんから有名な所の温泉・エステ・マッサージ無料チケットを貰ったので2人でエンジョイして来ます!

夜には帰って来ると思いますです!

お兄ちゃんも楽しんでねー!

''可愛い小町より''

 

 

 

P.S

念のためにこころさんに家の鍵を渡したから、よろしくっ!

 

 

 

 

 

 

八幡「……………」

 

 

 

 

 

 

お兄ちゃん何を楽しめばいいの?

ていうか、念のためって何?

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………お前が鍵を持ってる理由は分かった。

てか、なんで小町たちにそんなチケット渡してんの?」

 

 

 

 

 

 

こころ「チケット…………?

アレは、黒服の人たちに「八幡のお母さんに渡してください」と頼まれたから渡しただけよ?

中身とかは知らないわっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

おい黒服!!

まぁ、無料だから怒るに怒れないし、あの2人も嬉しそうだから許すけども。

 

 

 

 

 

 

八幡「…………で?なんで、俺の家に来たんだ?」

 

 

 

 

 

 

そう。まだ本題に入っていなかった。

 

 

 

 

 

 

こころ「八幡が電話しても出てくれないからよっ!!

どうして出てくれなかったのかしら!!」

 

 

 

 

 

あ……………なるほど。

通知見ればわかる感じだったのか………

 

 

 

 

八幡「あ、で、電話?

ちょいとまってろ…………

あ、あー、本当だわ。電話来てたわー。

電源切ってたから知らなかったわ!」

 

 

 

 

 

 

コレなら怒るに怒れないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それならしょうがないわ!

じゃあ、早く行きましょう!!

みんなも待ってるらしいわ!!」

 

 

 

 

 

 

そう言って俺の手を掴んでくる。

なんかデジャブ……………!

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、ちょっと待てって!

行くってどこへ!?てか、みんなって誰だよ!!」

 

 

 

 

 

寝巻きのまま外に出され、弦巻に引っ張られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「八幡様、コチラをどうぞ。」

 

 

 

 

 

 

俺は今リムジンの中にいる。

あの後、弦巻に連れてこられたのだ。

そして、黒服の人からは服を渡された。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「コレ…………え、なんで服?

ていうか、この状況を説明してもらってもいいですかね?

この後、何かあるんですか?」

 

 

 

 

 

 

こころ「ハロハピのメンバー全員集合よ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………今日集まる話してたっけ?」

 

 

 

 

 

そんな話、記憶にないんだが…………

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ミッシェルに頼まれたの!

はちまんを連れてきてって!」

 

 

 

 

 

 

八幡「奥沢が………?なんで?」

 

 

 

 

 

 

こころ「…………奥沢?………美咲のこと?

なんで、美咲が出てくるのかしら?ミッシェルに頼まれたのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………お、おう。そ、そうだったな。

間違えたわ」

 

 

 

 

 

 

こんなマジな返しされたらもう何も言えない。

奥沢…………頑張れ。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………なるほどな。

じゃあ、この服は?」

 

 

 

 

 

 

 

黒服「いま、八幡様は寝巻きですので。

そちらの服、八幡様にプレゼントしますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

いや、寝巻きで連れて来るからじゃない?

着替える時間くらいくれよ。

 

 

 

 

 

 

八幡「じゃあ、有難く貰いますけど…………」

 

 

 

 

 

 

私服もそんなに沢山持ってるわけじゃないからな。

貰えるなら貰っておこう。

でも待ってこれ、ちょっと高そうというかオシャレじゃね?

 

 

 

 

 

 

八幡「……………ココで着替えなきゃダメですか?」

 

 

 

 

 

 

黒服「まぁ、そうですね。

車で移動してるうちに着替えた方が…」

 

 

 

 

 

こころ「そうよ!早く着替えればいいじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………………」

 

 

 

黒服「…………………」

 

 

 

こころ「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

えっ!言いづら!!

車の中で着替えるのは別にいいんだけど、めちゃくちゃ見てくるじゃん!

弦巻さんどうにかしろよ。

なんで、男の俺が気にしてんの?

…………かなり恥ずかしいが俺から言わなきゃダメらしいな。

 

 

 

 

 

八幡「……………お、おい。

着替えるからあっち向いてろよ。」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「……………??

別にあたしは気にしないわ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「俺が気にするんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺を男として見てないことがよーく分かった。

…………そういえばコイツ、ライブの衣装着る時も平気で俺の前で着替えてたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「…………もういいかしらー?」

 

 

 

 

 

 

八幡「……………おう。もういいぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あ!今のやり取りかくれんぼ見たいねっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………………はぁ。

なんかもう色々疲れた。」

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「着きました、こころ様。八幡様。」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「どうもありがとっ!

さぁ!はちまんっ!!行くわよー!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「着いたって……………ココ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そうよっ!ココにみんなが待ってるらしいわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、メンバー集合って言ったら大体弦巻の家だったけど今日は違うのな。

看板にカラオケって書いてあるし。」

 

 

 

 

 

 

そう、カラオケ屋だ。

歌でも歌うのか?

あ、俺なんにも持ってきてないんだけど?

ケータイも財布も家だぞ?

 

 

 

 

 

 

 

こころ「確かにそうね!!

あたし、カラオケなんて初めてだわっ!コッチよ!着いてきて!」

 

 

 

 

 

 

 

俺も初めてなんだが、弦巻と俺じゃあ、意味が違うな。

俺は行くお金が無いというか、お金払ってまで歌う気にはなれない系だが、弦巻の場合は……………絶対家にあるじゃん。

なくても作れるし。

 

 

 

 

 

こころ「ミッシェルって名前で予約されてると思うのっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

店員さん「えっ?……………あ、ミッシェル様。

確認が取れました。それじゃあ、8号室へどうぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「えぇ!ありがとう!!

行くわよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、もうわかってるから引っ張るな」

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまんを連れてきたわっ!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あっ!こころん!はちくん!」

 

 

 

 

 

 

薫「ふふっ。待っていたよ。」

 

 

 

 

 

 

 

花音「あ、おはよう比企谷君。」

 

 

 

 

 

 

美咲「…………あー、やっと来た。」

 

 

 

 

 

 

本当に全員いた。

…………いや、別に疑ってはなかったけど。

てか、何やってんだコイツら?

なんかパーティー会場みたいに、壁に折り紙で作った輪っかとか星とか貼りついてるけど………

 

 

 

 

 

 

 

八幡「どうも。

…………それで、一体何やってるんすか?」

 

 

 

 

 

カラオケって歌を歌う所じゃなかったっけ?

 

 

 

 

 

 

花音「あ、あはは………

小町ちゃんの言ってた通りだね………」

 

 

 

 

 

 

美咲「コレを見たらわかると思ったんですけど…………

自分に興味無さすぎじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

薫「ふふっ。聞かなくてもこれからわかることさ。」

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「よーしっ!みんな行くよー!せーのっ!」

 

 

 

 

【パンッ!!】

 

 

 

 

4人「「「「お誕生日おめでと〜!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

室内全体に響き渡るクラッカーの音。

俺と弦巻に向かって放たれたクラッカーのカラーテープが頭にかかる。

 

 

 

あっ!?今日って、まさか!!

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころん!はちくん!誕生日おめでとっ!!」

 

 

 

 

 

薫「今日は2人の誕生日。本当におめでとう!

今日はとても儚い日だね。」

 

 

 

 

 

 

 

花音「こころちゃん、比企谷君……!

お誕生日おめでとうっ!」

 

 

 

 

 

 

美咲「こころ。比企谷くん。誕生日おめでと。」

 

 

 

 

 

 

8月8日。俺の誕生日か…………

 

 

 

 

 

 

 

こころ「う〜〜んっ!とーっても嬉しいわ!!

ありがとっ!みんな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………あ、その………サンキュー………です。

正直言うと、今の今まで忘れてたと言うか…………」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「自分の誕生日忘れるってどういう事なのさ…………」

 

 

 

 

 

 

 

花音「あたし達は小町ちゃんから聞いたんだ………っ。

多分本人は気づかないと思いますけどって言ってたけど、本当だったんだね…………」

 

 

 

 

 

 

まぁ、毎年小町と母さんが祝ってくれるけど、すっかり忘れてた。

…………でも、やっぱり………祝ってもらえるのは嬉しいもんだな。

 

 

 

薫「どうせ、本人が気づいてないならドッキリでお祝いすることになってね。」

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「4人で少し前から話し合ってたんだ!!」

 

 

 

 

 

 

こころ「本当にありがとうっ!

でも不思議ね!あたし、みんなに誕生日教えたかしら?」

 

 

 

 

 

美咲「あー、それは…………」

 

 

 

 

花音「黒服の人たちがね……………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい待て。

俺も弦巻の誕生日教えて貰ったが、8月の10日って教えて貰ったぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

薫「あー、それはそうだね。

黒服の人には嘘をついてもらったからね。」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「理由を話すと、2人の誕生日を8月8日と言っちゃうと2人ともお互いの誕生日を知ってしまってサプライズ出来なくなっちゃうからなんです。

だからこころにも、比企谷くんの誕生日は8月12日って嘘をつきましたし」

 

 

 

 

 

 

こころ「嘘をつくなんてひどいわっ!!

でも、そういう嘘なら大歓迎よっ!

楽しくなるものね!」

 

 

 

 

 

 

美咲「…………普通の人なら自分の誕生日の日に、どこか誘われたりすると、『お祝いしてくれるのかな?』とわかると思うんですけどね。」

 

 

 

 

 

 

美咲「こころは毎日が誕生日みたいなものですから、今日が8月8日のことなんて知らなかったのと、比企谷くんは自分の誕生日を覚えてないくらいの悲しい高校生なので、サプライズが出来ましたよ。

それにしても凄いよ。2人とも自分の誕生日を忘れてるって。

…………言っておくけど、こんな作戦はあなた達2人以外にはほとんど通用しないと思うよ?」

 

 

 

 

 

 

なんか、盛大にディスられてる気がする。

誕生した時なんて覚えてないんだから、誕生日も覚えてなくて当たり前だろ……………うん、それは違うな。

てか、悲しい高校生って何?

やっぱり奥沢さん辛辣になってません?

 

 

 

 

 

花音「ま、まぁ、2人ともサプライズ出来たから良かったね……っ!

本当におめでとう………っ!」

 

 

 

 

 

八幡「松原さん………………」

 

 

 

 

 

 

あー、天使がいる。

穏やかな気持ちになれるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまんもあたしと同じ誕生日が8月8日なのね!

すっごいわ!!コレは運命よっ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「ばっ…………!

…………運命とか気安く言わない方がいいぞ。

大体確率なんて365分の1だろ。

そこまですごい事じゃねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

美咲「うわ…………出た、ひねくれ。

誕生日くらい素直になればいいのに…………」

 

 

 

 

 

 

八幡「……………うっせ。

……………いいんだよコレで。」ボソッ

 

 

 

 

 

 

はぐみ「いま、はちくん何か言った??」

 

 

 

 

 

八幡「なんでもないから気にすんな。」

 

 

 

 

 

 

 

誰かさん達の言葉を借りるなら『いつも通り』。

誕生日だからって態度や何かを変える必要はない。

いつもの自分でいいんだ。

 

 

 

 

だって………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あたしいま、とーっても嬉しいわ!!

今までの誕生日で1番笑顔になれたわ!!」

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ほんと!?!

やったー!!!はぐみもすっごく嬉しいよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

薫「こころ、はちまん。

君たちが生まれて来てくれたことに感謝するよ!」

 

 

 

 

 

花音「やっぱり賑やかでいいね………っ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「いや、賑やかすぎですって!!

こころ、はぐみ!!危ないから走らないで!!

…………ほら!比企谷くんも止めるの手伝ってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなにも笑顔で溢れてるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまんっ!」

 

 

 

 

 

八幡「……………なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「言いたいことがあるわ!」

 

 

 

 

 

 

八幡「…………奇遇だな。

俺もまだ言ってなかったからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ、八幡「「誕生日おめでとう」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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桜舞い散る木の下でⅠ

お久しぶりです……。


今回は番外編で季節外れのお花見です、ありがとうございます。



 

 

 

 

 

 

高校生最初のイベント、文化祭も無事に終わり学校もまたいつもの景色に戻ってきた。

いつもの景色と言ってもまだ高校生になって数ヶ月。

言うほどいつも感はないな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

学校が終わり放課後、ルンルン気分で校門を出る。

今日はバイトもなく、早く家に帰って勉強とかプライベートな時間を取りたいのだが、自転車を押しながら歩いてる時点で早く帰るのは無理そうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隣には奥沢、少し前を歩いている弦巻と北沢。

松原さんはお友達と一緒に帰ってるらしく、瀬田先輩は演劇部をやっているだろう。

最近一緒に帰ることが多くなってきたので、もう自転車辞めようかなと思ってきた。

家から歩いて行ける距離だしね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えながら歩くが、ふと学校の周りを見渡すと、まだ綺麗な桜が咲いており『学校×桜×制服』ってだけで青春をイメージしてしまうのはきっと俺だけじゃないはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

それとは別に、思った事がある…………

 

 

 

 

 

 

 

 

この学校、入学して1ヶ月ほどで文化祭やるって結構やばくない?

どこの学校もそんなもんなの?

いやでも、近くの羽丘も同日にやってたな…………

文化祭って割とクラスとしても色々な人と話して知り、仲良い友達とかと回ったりするもんじゃないの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、もしかしてアレか?

日が浅いからこそ、文化祭というイベントをきっかけに話しをして、クラスとのコミュニティを増やして協力したりで、早く仲良くしてもらおう的な方針?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えても答えは出ないが、納得出来そうな答えは出たな。

しかし、陽キャやコミュ力高い人達がいる前提なのが少し否めないが綺麗に咲いている桜を見ると気持ちも和らぐ気はする。

 

 

 

 

 

 

 

 

でもうちのクラスは弦巻がいたのもあるかもしれないが、結構団結してやってたな。

強いて言えば俺が実行委員だからという理由で出来るだけクラスの仕事を減らし、楽しようと思ってたくらいか。

協調性についてはテストにも出ないし勉強してないな。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てか、今思うと中学校よりも桜の木多いな。

やはり高校生が一番の青春ってイメージはあるし、奮発してるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺は高校生になって、バイトしたりバンドしたりと日は浅いはずなのに結構内容の濃い毎日を過ごしている気がする…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くん何考えてんの?

なんか顔が、疲れた人の顔してるけど。」

 

 

 

 

 

 

 

隣りを歩く奥沢に、心配なのかそうではないのか………いや、心配じゃねーなコレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いやまあ、なんつーか、そんなにない過去を頭の中で振り返ったりしてたんだけど、どうにもちょくちょく頭に突っかかるというかさ。

………5月も中盤じゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ?まあ、そう……だね?

それになんの繋がりが?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いやさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんでまだ桜咲いてんの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。さっきから脳内にちょくちょく桜の感想が頭を巡らせていたが、これって少しおかしい話だった。

5月なのに、まだ桜が綺麗なんだよなぁ。

いや、いい事だけどね?

でも桜って長くても4月後半には既に散ってたりするって聞くけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「え、確かに……!

なんか高校生になってからやること増えたりして忙しくなってたから、そんな事にも気づかなかった………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかる。忙しくなったよな。

共通点は弦巻だよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………ていうか、さっきからずっと前の方で桜の花びら投げ合ってる2人組がいるんだけど、比企谷くんずっと無視してない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いやいや何?なんか見えんの??怖いわー。

俺には何も見えないから無視するにも出来ないな」

 

 

 

 

 

 

霊媒師とかに祓って貰った方がいいなそれは。

笑顔と元気の霊が見えてるのかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くん、保護者でしょ?

もうそろそろ見てて恥ずかしいし、知り合いだと思われるから早く止めて来て」

 

 

 

 

 

 

 

いや保護者じゃないけど?

てかそれを言うならオカン属性アリの奥沢だろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前言ってる事えげつないぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それとさっきから弦巻達の先に、桜の前で木刀振り回してる女の子が見える気がするんだけど気のせいだよね?

あれも霊かもしれないから祓って貰わないと。

……どちらにせよマジで近づいてはいけない人かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はぐみ!お花見って本当に楽しいわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころんには絶対に負けないからね〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言いながら、地面に積もった桜の花びらをお互いに投げ合っている。

春だと、ああいうヤバいやつが現れるんだよな。

冬眠終わったのかな〜、関わらない方が身のためだろ。

 

 

 

 

 

 

こころ「ふぅ、本当にいい汗かいたわ!

お花見ってこんなにエキサイティングなものだったなんて、あたし全然知らなかったわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころん!まだお花見は終わってないよ!

こころんのリードはまだ1点!はぐみ、絶対に逆転するから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、お前ら。

花見に、勝ち負けも逆転ってワードも無いから。

そもそも落ちてる花びらを相手の身体に当てて、花びらがついたら1点……って競技じゃないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつからそんなシュールな競技にランクダウンしてたんだよ。

ボケのレベルが高すぎて無意識に近づいてしまった、俺の負けか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そうなの!?

それじゃあ、どうやって勝敗を分けてるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「だから勝ち負けがそもそも無いって言ってるだろーが。」

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ学校の近くなんだから他に知ってる生徒とか来たらどうするんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ!かーくんじゃん!

かーくん達も、ひょっとしてお花見してたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

かーくん?うちの猫のかまくらのこと??

小町しかかーくんって呼んでないけど正真正銘かーくんだぞ。

北沢が向いてる方向を見てみるとそこには見知った顔が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はぐー!それに、こころんや美咲ちゃん!

はっちーも!!

今みんなで一緒に帰ってたら、たまたまイヴちゃんと会ったんだー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「私は、ここでブシの特訓をしてました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸山さんである。相変わらず元気ですね……

後ろには他のポピパメンバーもいる。

…………てか、隣にいるのってさっき桜の花びら切ってた白髪の子だよな?

ブシの特訓?え、マジ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あれ?

もしかして、CiRCLEじゃないところで花咲の1年生メンバーが揃うの、はじめてじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「うんっ!

みんなつい最近1年生で結成されたバンドメンバーだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

へー、そうなのか。

ってことはこの白髪のヤバい子もどこかのバンドメンバーだったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「本当ですね!

改めて、よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そうね、よろしく!」

 

 

 

 

 

 

 

 

こうやって見ると花咲1年メンバーヤバいやつ多いな。

なんなら俺と牛込さん以外ヤバく見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「何か今失礼なこと考えなかった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「い、いや、認識の再確認をだな………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりこいつもちゃんとおかしい。

女性の勘は当たるとか聞いた事あるけど、奥沢の正確さは以上だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「な、なぁ香澄…………そろそろ帰ろうって。

いつまでもこんな変わったやつらと一緒にいたら、私まで変な目で見られるだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞こえてる、聞こえてるから。

そういうのはもっと静かに言えよ。

喧嘩売ってる?やんの?日和ってるやついるぅ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「ねぇねぇ、見てコレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「っ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「え、そんな驚く?もしかして私のこと嫌い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

首を傾げながら言う花園。

いやね?そんなヌルッと現れたら誰だって怖いでしょ。

あとね、前もそうだったけど顔近いんだ。

日和ってるよ俺いま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「今のはおたえが悪いでしょ……。

比企谷君は女の子慣れしてないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………いっつも誰かしらの女の子といるのにね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か分からないけどすごい怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「………あ!そうだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだ?戸山のこのひらめきトーン……

超絶嫌な予感がするんだけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい保護者!市ヶ谷さん!!

戸山を早く止め………………何か市ヶ谷も『ヤバい何言うんだコイツ』って顔してる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ねぇねぇ、みんな!

せっかくここで会えたのも何かの縁だし、みんなでお花見しようよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (うわ、出たーーー!)

八幡 (うわ、出たーーー!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「次の日曜日って、みんな予定空いてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「わわ!さすがかーくん!!ナイスアイディア!!!

はぐみはその日大丈夫だよ!

こころんもみーくんも平気だよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あたしと美咲はもちろん参加よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「勝手に決めてるし………まあ、大丈夫だけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

結局来てくれる奥沢さん、これがツンデレか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「私もみなさんと一緒にお花見やってみたいです!

日本に来る前から、お花見ってずっと憧れてましたから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本に来る前から?

ってことは日本人ではない??

あー、それで日本の武士に憧れたタイプの女の子か。

納得した、純粋でちょっとどこかぬけてるだけか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「りみりん達もオーケー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「うん!こんな機会中々ないもんね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「だね。おたえも行くでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「私、たけのこご飯持ってくね。楽しみ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、料理できるの?意外!

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それじゃあ全員参加ってことで………ハイ、決まりっ!

じゃあ、集合場所とか決めなきゃねだよねー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員参加?

あー、今聞いてたやつらね。

俺には関係ない話だった、誘われてないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「その前にチーム分けしましょう!

事前にチームを決めておけば、作戦だって練れるわ!

はちまんっ!一緒のチームになりましょ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………だからお花見にチームとかそういう競技性は無いんだっつーの。

個人戦でも無いし、まず戦わないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐ戦いたがるじゃん。

これだから、ハッピーサイヤ人は…………

 

 

 

 

 

 

 

りみ「お花見は、満開に咲き誇る桜の木の下で、桜を見ながらみんなでご飯を食べたり、おしゃべりしたりするんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あははは、こころはお花見やったことないんだね。

勝ち負けは無いけど凄く楽しいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「桜を見ておしゃべりするだけ?

あたしには、あまりイメージが湧かないわ。

はちまんはイメージ浮かぶのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、逆にそれ以外のイメージが湧かないんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそも弦巻が花見をしてこなかったのが意外だ。

この世のイベント事全て楽しめるスペックはあるのにな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (やっぱりダメだ………こんな奇想天外なやつらとお花見なんて……

絶対に出来ない………つーか、したくないっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あ、あの、香澄。

さっき私、まだ返事してなかったんだけど………

参加するか、しないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

お、市ヶ谷は行かないのか。

まあ多分こいつらの話を聴いたうえでの判断だろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「え、有咲はお花見来られないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「つ、つーかさ、ちょっとこっち来いって」

 

 

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷が戸山の方に寄せて、2人で秘密の会話。

ちょっとー、そういうのは誰もいない時とかにしなよー。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「……なんでいま比企谷くん、市ヶ谷さんに睨まれてるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「さあな……。

アイツ、俺の事嫌いなんだよ。」

 

 

 

 

 

 

なに、どこで判断してんの?

表情?視線?

お前らのその能力、勘って1文字で片付けるにはちょっと無理があるって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「香澄。

本当にあんなわけわかんないメンバーで、お花見する気か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「うん、楽しそうだよね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「いやいやいやっ。

アイツら言ってる事メチャクチャだぞ?

桜の花びらを切ろうとしている奴もいれば、お花見をなんかの競技と間違ってるやつもいて………

何よりあそこに危険そうな男もいる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、なんか今失礼なこと言われた気がするぞ。

コレか?奥沢たちが感じていた勘の上の領域に辿り着いたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あんな奇妙なやつらと仲よくできる気がしねー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「だからこそのお花見じゃん!

花を見ながらみんなでおしゃべりしてれば、自然と仲よくなれるって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「め、めんどくせーなー。

あ、ああ!そういえばお花見は、日曜日って言ったっけ?

ああー、そうかー、日曜日かー。日曜日なー」

 

 

 

 

 

 

 

急に声が聞こえると思ったらとんでもない棒読みで回避しようとしてるな。

ガンバレー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん、あたしお花見のイメージは出来なかったけどみんなとご飯食べたり喋ったりするのはとーっても楽しそうだわ!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「そうかい、良かったな。

楽しんで来いよ、あまり迷惑かけないようにな」

 

 

 

 

 

さりげなく俺は行かないぞと伝えることで相手は誘いづらくなるし、これ以上は何も言ってこないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「何言ってるの?

比企谷くんも来るんだよ?」

 

 

 

 

八幡「何言ってるの??

比企谷くんは行かないよ??」

 

 

 

 

沙綾「何言ってるの???

比企谷君は強制だよ???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強制なの!?

俺だけ予定聞かれなかったのはそういうこと?

ていうか、この2人凄い息ぴったりというか俺をいじめるのひょっとして好き?

 

 

 

 

 

 

いや、俺は諦めないぞ。

こんな奴らに日和るなんて…………日和ってるやついるぅ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「こころも絶対来させると思うよ」

 

 

(私だけでこころ達を捌けるわけがない!

比企谷くんも道連れに……っ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「だ、だからなんだよ……

俺、日曜日は用事が『黒服』

 

…と思ったけど予定なんて無かったわー!

ついうっかりしててたわ!日曜日楽しみだな!!

てるてる坊主沢山作って全部逆さまに吊るすわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「雨降らそうとしてるじゃん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

くそっ!

黒服召喚はルール違反だ!!

禁止カードだぞ、公式ルールで戦えよ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲は日曜日予定でもあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「いや、予定と言うか?何というか?」

 

 

 

 

 

 

 

くそっ!

あいつ1人でこの状況から逃げる気か!

そんなこと許されると思ってんの??

 

 

 

 

 

 

 

 

とはいえ俺が市ヶ谷個人を止めると色々不味い事になる気がする…………

 

 

 

 

 

 

何かいい方法は……………お花見だろ……?

あっ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、こころっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「!!!

何かしらっ、はちまん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「!!!?」

沙綾「!!!?」

 

 

 

 

 

 

 

((………いま、下の名前で呼んでた?))

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、いや、ちょっとな……」

 

 

 

 

 

 

何でそんなに笑顔なの?

ニコパーしちゃってるけど………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「花見の話なんだけど、弦巻の家の庭でやるってのはどうだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ桜咲いてるし、席だって確実に最前線真下。

これ以上にいい場はないとも思うが、それでも弦巻の家だ。

嫌とか事情があって無理とかなら、その時また考えるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

え、日本語通じてない?

そんなに首を傾げられてポカーンって顔されても困るんだが………

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲 (いや…………)

沙綾 (コレは………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「……まあいいわ!それはいい閃きよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ど、どうしたの、こころん!?

こころんが良い閃きと言ったらとてつもなくすごいことだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

北沢の弦巻への信頼がとてつもなくすごいよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ハイ!みんな聞いてー!こころんにちゅうもーく!

……はい、どうぞ、こころん!」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「桜の木なら、あたしの家に生えてるわ!

よかったらウチで、お花見したらどうかしら?

招待するわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「す、すごいよ、こころん………

ナイスアイディアすぎるよ〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっごい弦巻を持ち上げてるように聞こえるけど、これが北沢なんだよなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「家に誘ったくらいで大げさすぎると思ったけど、

アンタの家はマジで規格外だからね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ポピパや白髪夢見る武士道さんの反応が楽しみではあるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「縁側に座りながら、お庭の1本の桜をみんなで眺める………。

うん、風流でいいかもね♪」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ふっ……」

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君に笑われた!?」

 

 

 

 

 

 

 

いかんいかん。つい笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「ノンノンノンだよ、さーや。

もう、それは完全にノンノンノンだよ」

 

 

 

 

 

 

 

それは完全にノンノンノンだよな。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………ノンノンノン??ど、どういうこと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころんのおウチって、も〜ひっくり返るほどすごいから!

桜だって沢山咲いてるし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「桜が、沢山咲いてる、って………??」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「それは実際に見てからのお楽しみだよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

北沢お前、ひょっとして人煽るの得意?

気にさせる言い回しが多いのも狙ってやってたら結構な策士だけど、北沢だから純粋な気持ちで出た言葉しかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「わぁ〜楽しみ!

それじゃあ日曜日は、みんなでこころんのおウチでお花見だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあこれだけ言われたら気になって仕方ないよな?

さっきから私以外おかしい雰囲気出してたけど、お前もそのうちの1人だぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「……あ。有咲は、日曜日どうする?

私たちはみんな、こころんのおウチに行くけど………

お花見したいし、こころんのおウチの事も気になるしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「こころのおウチの何がすごいんだろうね。

有咲は気にならない?」

 

 

 

 

 

 

 

たえ「楽しみ」

 

 

 

 

 

 

お、おん……にしては真顔っすね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「け、けど、有咲ちゃんは日曜日予定があるんだよね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「……いや、大丈夫。

よく考えたら、日曜日じゃなかった。

だから、私も、その………行くよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝った。

結局人間は興味というものには抗えないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ほんと!?やった〜!

それじゃあ、ここにいる全員参加ってことだね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで俺まで………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (き、気にならないわけねーだろ?

家に桜が沢山咲いてる?なんだそれ?どういうこと??

 

そ、それによく考えたら、

みんな行くってことは、私1人だけ………ってことだし。)

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あはは!

今からとっても楽しみになって来ちゃった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あたしもよ!

日曜日、楽しみにしているわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんやかんやで花見をすることになった1年メンバー。

場所は桜が沢山咲いてる?と言われてる弦巻こころの家。

 

 

日曜日の花見は一体どうなるのか!?

俺は当日バックれるけどお楽しみに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「比企谷くん?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………すみません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。
…………お久しぶりでした。


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桜舞い散る木の下で Ⅱ

 

 

 

 

 

 

『お花見』

 

 

 

 

 

 

それは、花が見える所で家族や友人とわいわいするってのが多いイメージだと思う。

元は貴族が花を見ながらご飯食べてたとか、

冬が終わり、春に来る田の神様をおもてなしするための行事とか、色々な説がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昔、興味があって調べたけど結局何が正解かわからなかったというか、全てが正解だったと言うかで興味の方は消えたのを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つい先日の戸山の提案で、俺、弦巻、奥沢、北沢、ポピパ、白髪夢見る武士道さん………イヴさんだっけな?達と花見をすることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男1人、女9人とかいう聞けば天国のように思えるが当然そんなことは無い。

なぜなら大半はヤバい奴らだからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

牛込さんくらいだな、ちゃんとしてそうなのは。

いや、でもポピパだからなぁ。

俺が知らないだけで実は……………みたいなパターンもある。

こんなの本人たちに知られたら生きていられるか分からないが、知る術もないのでなんの問題もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして本日は日曜日、お花見当日。

バックれようと思ったのだが、奥沢と山吹、弦巻と黒服が怖いので行くことにした。

怖い人ばっかりいるじゃん…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そもそもお花見はやったことが無い。

どうせ行くなら小町も誘おうと思ってたけど、今日は友達と用事があって行けないらしい。

朝早く家出てたし、割と遠いところに行くとか。

男じゃないよね?それだけがお兄ちゃん心配です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は弦巻の家集合ではなく、駅前に弦巻以外が集まって全員で家に向かうらしい。

理由としては、ポピパと白髪夢見る武士道さんが弦巻の家を知らないから待ち合わせて、一緒に行こうとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それなら奥沢か北沢がいれば良くない?

みんないるなら俺は現地集合でも大丈夫じゃん。

 

 

 

 

 

 

良し、決めた。

待ち合わせ時間近くになったら『ごっめーん!今起きたから、先に行っといてー!』的な感じで連絡すればきっと許されるはず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花見自体行かないのは流石にリスクが高すぎるが、待ち合わせなら大丈夫だろ。

別に行ってもいいけどさ?

行かなくてもあまり問題ないじゃないですかぁー?

正直面倒なのもあるし、何より女子8人と男子1人で待ち合わせる光景が怖すぎる………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その点、弦巻の家の庭なら誰かに見られる心配はないからな。

やはりこの作戦は間違っていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせ時間まではあと45分。

5〜10分前くらいに着く時間を考えると、もうそろ家を出なきゃ行けない時間だが、ここはstayだ。

背徳感が無いと言ったら嘘にはなるが、世界の均衡を保つためにも俺は…………俺は!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ほーらかまくらー、お手。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かまくら「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、猫だし流石にやらないか。

それにしても家でだらだら最高だなー。

花見も行く気失せてきたなぁ。

寝ちゃおっかなぁー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ピンポーン】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………インターホン?配達か?

いや、配達来るって話しも聞いてないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、小町か!

そういえば昨日の夜に言ってたな。

『昼には帰ってくるから鍵空けといて』って。

朝早く家を出て、昼頃には帰ってくるってどこに行ってるんだ……?

しかも、鍵持ってけば良いんじゃないの?とは思ったがまあもう何でもいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「今開けるからちょっと待って……るぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「どうも。

 

 

 

 

沙綾「こんにちは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………人違いでした」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアを開けると、そこには小町ではなく全然知らない人が2人も立っていたので全力でドアを閉める…………が!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「今出ないと間に合わないよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「一緒に行こうよ比企谷君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?ピクリともドアが動かない。

俺一応男だけど??

女子2人がかりだから動かないだけだよね???

笑顔なんだけど目が笑ってないし、すっごい怖いんだけど気のせいですよね????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい。今出ます…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間諦めが肝心とは言うが、こういう時に使うのか。

てか何でこいつら俺の家に来てるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………ん?誰かから連絡が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服『お待ちしておりますよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

い、いや………弦巻の家には行こうと思いましたよ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ、やっぱりね………。

絶対駅の待ち合わせ来ないと思ってたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「私も思ってた。

だから比企谷君の家に行こうと思ったら、ちょうど家の前で奥沢さんと出会ったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に俺のムーブがバレてる。その通りなんだけどさ?

マジで怖かったよ??

ストーカーとかヤンデレの類いかと思ったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「マジすいません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こればっかりは俺が悪いので何にも言えない…………のか!?

 

 

 

 

 

 

 

いやだってねぇ?

俺が行かなくても、奥沢か北沢がいれば目的地は着くわけだし、問題ないよね?

これで怒られるのは違うんじゃないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………大体比企谷くんの言いたいことは分かるよ。

私か、はぐみがいれば問題ないとか思ってるんでしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「は、はぁ?

全然そんなこと考えてないけど??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘です、考えてました。

なんで分かるんですか?やっぱり能力者なんですよね??

てかわかってるなら、そのままスルーしてくれよ。

何で邪魔してくれるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「こういうのはみんなで待ち合わせして、行くから楽しいんだよ。

こころには家で待ってもらってるけどさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へー、そこら辺経験が浅すぎて俺にはその気持ちは分からんね。

というか、小町だと思って確認しなかった俺も悪いけど、タイミング最悪だな。

小町ちゃん?兄のことはめたよね?帰ったら説教しなきゃな……

 

 

 

 

 

…………ん?にしても奥沢が俺の家を知っているのはまあ分かる。

でも、山吹は??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい山吹。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ん?どうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「なんでお前は俺の家知ってんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………あー、小町ちゃんから聞いたよ。

それに、今日家行くこと伝えたら『任せてください!小町が絶対にお兄ちゃんを家から出すので!』って。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こまちぃーーーーー!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、そうだったんだ………。

家行って居留守されたらどうしようとか思ってたけど、山吹さんいてくれて助かったかも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町を利用するのは禁止行為だぞ。

この2人、禁止行為を普通にしてくるヤバい奴らだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「まぁ、そういうことだから今後こういうことがあっても」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「居留守とかはできると思わない方がいいかもね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

えー、コレはもう脅しです。警察沙汰です。

裁判でお会いしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「もしかして、早く着きすぎた?

…………っていっても待ち合わせ時間まで10分切ってるし。

これじゃあまるで、私が1番楽しみにしてたみてーじゃん。

はぁ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「あ、有咲ちゃんおはよー!

あ、あれ!?私、待ち合わせの時間間違えてたっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「いや、間違ってないよ。

………私達が早すぎただけ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「そっか、良かった〜。

おたえちゃんや、香澄ちゃんももうすぐ着くって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「りょーかい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「おはようございます!

いい天気になってよかったですね!

 

……アリサさん、眉間にシワが寄っています!!

大丈夫ですか?

もしかして、気分が悪いとか………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あ、いえ………別に、そういうわけでは…………

お気遣いありがとうございます……おほほ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「それならよかったです!

それにしても、アリサさんはとてもお淑やかですし、

大和撫子を絵に描いたような方ですよね〜。

桜が似合います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「う、うん………そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あれ、3人とも早いね!

私たち少し寄るところあってさ。

はぐみもちょうどそこで一緒になったんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「みんな〜、お待たせー!じゃーん!!

みーくんとはっちーも一緒でーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「おはようございます。

私は特に『じゃーん』と出るテンションではないので普通に登場しました」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「斜め右前に同じく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと来てないのは………戸山と花園か。

まだ待ち合わせ時間ではないからセーフだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「有咲早いね。

もしかして楽しみで早く来ちゃってたとか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「はぁ!?べ、別にそんなんじゃねーし!

待ち合わせの時間よりも早めに着いとくなんかジョーシキだろ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「……………?

アリサさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえば市ヶ谷って猫かぶりだったか。

いいのかそんな口調で。

奥沢たちや白髪夢見る武士道さんにバレるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

いずれバレるだろうに…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ご、ごめーーーーーーん!

遅れちゃったーーーーーーーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

声でかいって。ここ駅前だぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「か、香澄!お、おまえっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「お、おまえ?

アリサ、さん………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「!?

………おまっ………おま………おま、んじゅう……

持ってきてくれた………かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、無理だろそれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………ゴホンゴホン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「がっ………てめぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで殴られたかのようなリアクションを取る事によって、凄い酷いことをされてる感を出す。

この人、平気で暴力をする人です!

猫も被ってます!!

 

 

………本当は足を踏まれただけだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「おまんじゅう!?そ、そんな約束したっけ?

おまんじゅうはないけどお菓子は沢山持ってきたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戸山お前………やはりバカか。

人を疑うって事を知らなさそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「そ、そうでしたか。

ありがとうございます。おほほほ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おほほほ?笑

誰目指してんだよお前は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲、なんか変だね?………ま、いっか。

全員そろったし、こころんのおウチにレッツゴー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「周りの桜綺麗だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「うんっ!私、もうここでお花見した〜い!

今すぐにでも始めたいよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ、弦巻は省くって意味で読み取ってもよろしいか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「いやいや、かーくん。

こころんのおウチは、こんなもんじゃないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ここよりすごいって………そんなこと、有り得るの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「まあまあ、楽しみにしててよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぐみ、すっごい楽しそうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ、あの規模は自分のじゃなくても自慢したくなるだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぐみはそういうの考えてなさそうだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに。

自分の好きとか、面白いみたいな感情を他の人にも共有したいって感じなんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「それじゃあレッツゴー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「……ねぇ、はぐー?こころんのおウチってまだなの?

さっきからずっとなが〜い塀沿いを歩いてるだけで…………

だんだん私、眠くなって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待ち合わせだった駅前から30分ほど歩いた。

俺はこの塀が何なのか分かってるので精神的苦痛は来てないがやっぱりこの塀おかしいくらいに長い。

これを家って言うのがもうね?最初は理解に苦しんだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「もうすぐ着くから頑張れよ。

………もう着いてるようなもんだけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………比企谷君今何か言った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや?本当にもう少しだぞって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「お腹すいた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頑張れよポピパ族。

もう目の前に玄関見えるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………あ、着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はいっ!みなさん、お待ちかね!

やっと到着しましたー!

ここが、こころんのおウチでーす!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「ここが?あはは、冗談はやめてくださいよ〜。

ここ、このあたりで1番大きいって有名な豪邸じゃないですか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あれ、ちょっと待って。

そういえば、こころの苗字って、弦巻じゃ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「表札………『弦巻』って書いてある………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「じゃ、じゃあ、ここが本当に弦巻さんの家…………。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「まあ、これが普通の反応だよね。

わたし、未だにここ入るの慣れてないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや、俺だってそうだわ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これに慣れるのはもう住んでないと無理だろ。

それか常識、世間知らず。

 

2つを兼ね備えたお嬢様がちゃんといるからな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「大きいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………いや、『大きいね』で済むのかコレ……

てか、これが家とか嘘だろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意味がわかると怖い話します。

 

実はこの家、学校より大きい。~完~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「だから〜、さっきからそう言ってるじゃん!

ここが、こころん家だよー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「まさか、こころが弦巻家の一員だったなんて………

驚きだよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺も最初はマジで理解出来なかったからな。

さっきから戸山はずっと黙ってるし、白髪夢見る武士道さんもキョロキョロと首を動かしている。

それぞれの反応を伺っていると、玄関の方から弦巻が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんな、よく来てくれたわね!

どうぞ、入ってちょうだい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、奥沢、北沢以外は、ポカーンとしていた。

…………花園は真顔か?

でも良かった、前の自分の反応は普通じゃないのかと思ってたけどやっぱりこれが普通みたいだ。

目に見える光景が脳内で処理しきれない感覚に陥るからなココは。

それなんて領域展開?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「………こ、これって……夢?

ひょっとして私、眠過ぎて夢、見てるのかな?

目の前が………全部ピンクなんだけど………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢だと勘違いしてる戸山を横目に俺は『ふっ』と笑う。

今の俺はどこから見てもCOOL。

最近は弦巻の家にバンド関連で来ることが多くなった。

何回も見てるからか、そこまで動揺なんてするわけめちゃくちゃ桜綺麗!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「………おたえ、私のほっぺたを引っ張ってくれない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「いいよ。

じゃあ沙綾は私のほっぺお願い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「え、これ続くの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「痛っ!

やっぱり……夢じゃ、ないよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんな、どうぞ自由にして!

走り回るもよし、寝転がるもよし、バク転するもよし!

ここでは全て自由よ!

あっちのテニスコートでは、あとでバドミントン大会を開催するわ!

楽しみにしててね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それならテニスじゃないのか。と思ったけど、奥沢が無双するかもしれないのか……

でもバドミントンでもあんまり変わらなくない?

やっぱり全然違ったりするんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「あ、向こうに噴水がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「すごい………!こんなに大きい家は、

フィンランドでもめったにないですよ………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、フィンランド人なんですね。

世界と比べても弦巻の家ってヤバいんだな、まあわかってたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「つーか、ここどこだよっ!?

ありえねーだろ!?普通、ありえねーって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (………!?

ま、まずい!あまりにもスケールがデカすぎて、

思いっきりツッコんじゃったよ!もし誰かに聞かれてたら………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (………ふぅ。良かった………みんなこのスケールに圧倒されて、

誰にも聞かれてなかったみたいだな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲 (((ねぇ、比企谷くん………

市ヶ谷さんって大和撫子というか、すごい清楚的な印象だったんだけどさ。

比企谷くんへの態度とか見てて思ったんだけどもしかして……………

コッチ側??)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コッチ側って言い方すごいな。

耳元で奥沢が若干嬉しそうな声で聞いてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷のことなんて全然知らないけど、俺が言えることは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「アイツはただの、猫かぶりで短気なポピパのツッコミ担当だぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとツンデレって聞いたことがある。

実際俺に対してはツンしかないんですけどね。

いつデレ来んの?いや、来てもちょっと困るけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「そうなんだ。

やっぱりそんな気はしてたんだよね…………苦労してそうというか。

同じ匂いがするなーって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嬉しそうです。奥沢さん嬉しそうです。

良い性格してるな、こいつ。

 

 

 

まぁ、お互い頑張ろうって人がいる事を安心してるんだろうけど………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ、みんな!

用意をお願いするわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻がそう言うと、屋敷から黒服が出てきた。

そして、テキパキと花見の準備をしてくれてる。

 

 

 

 

 

 

 

最初は本当に怖かったけど、今はマジでやばい人たちってランクアップしたからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「な、何?あの人たちは………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「スゴいです!時代劇で見たことあります!

黒い服を着た女性の集団がクナイを持って将軍に仕える…

 

八幡「いやそれは、くのいちですかね?

でも似たようなもんです。

時代が違うだけで、ほとんど同じです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武士とかそういうの大好きだなこの人。

間違った文化を教えるわけにはいかないよな。

でもこの人たち、弦巻のためならなんでもやります。

文字通りなんでもやると思う…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「よくわからないけど、あたしがお願いすると、

大体なんでもやってくれる人たちよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

せめて、お前はよくわかってろよ………。

俺の中で黒服はヤバくて、こころさま大好き狂信者だからな。

口に出したらどうなるかわからないし、頭で考えてるだけでもすごく怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんなも何かお願いがあったら、

遠慮なく話してみるといいわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみ達もけっこう助けてもらってるんだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そんなこと言ったって普通は意味がわからない。

その説明でわかるやつは余程の天才かとんでもないバカかの2択。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「へぇ、そうなんだ!

それじゃ私も何かあったら、お願いしてみよーっと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OK、とんでもないバカ入りまーす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「…………こころちゃんって…………なんかすごいね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「う、うん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あはは、なんかすみませんね。

あの子結構ぶっ飛んでるし、バカなので…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

保護者じゃん。

マジで弦巻の事任せたぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お、おい。比企谷、ちょっと来い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後ろから肩を叩かれて振り向くと、市ヶ谷が小さい声で手招きしてる。

…………何のつもりだ?

猫かぶりの最終形態は自分がなっちゃうの?

まねきねこに??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………やっぱりやめとくか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前マジで少しくらい遠慮しろよ。俺にも猫かぶれよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目と目があったら残念そうにしやがった。

市ヶ谷の俺への敵対心どうなってんの?

嫌われたのってあの例の事件の時だよね?

他に何かしたっけ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………あのお嬢様が凄いことはわかった。

いや、理解なんて全く出来ないけど100歩譲って受け入れた。

……あ、あの黒服のやつらは大丈夫なんだよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……………………………………………………おう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お、おい、なんだよその間は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、だって……ねぇ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「弦巻に危害を加えなければ大丈夫だ。それは保証できる。

ただ、もしも……その、な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あ、あぁ…………わかった……。

…………今のを聞いて改めて聞きたいことがある。

 

 

これ、夢じゃないよな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「行き着く場所、戸山と一緒かよ。」

 

 

 

 

 

 

 

ほっぺずっとつねってれば?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「準備もできたようだし、それじゃあお花見を開始するわよっ!

みんな掛け声は大丈夫よね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………は?」

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「掛け声……ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「掛け声なんて決めてたっけ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻が意味のわからない事を言う。

いつも意味わからないことばっかり言ってるけど、慣れなんてくるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「別に決めなくていいのよ!

みんな心に浮かんだ、思い思いの言葉を叫ぶの!

このたくさんの桜の木と、大空に向かって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲、有咲 ((何言ってるか、全然わからない…………))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぁ…………何でもいいって、それだも全員バラバラで叫んで何言ってるかわからなくなるだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それじゃ、いくわよ!

せーのっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ、はぐみ 「「レーッツ、お花見スペシャール、イエーイ!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (す、すげー!

あのふたりは打ち合わせしてないのに同じ言葉を…………!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりあいつら狂ってやがる。

1文字も間違わずにセリフが合うわけねーだろ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「私も!

レーッツ、お花見スペシャール、イエーイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (…………か、香澄も加わったか……

たしかに…………波長が合うよ、お前ら3人は……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「みんな、とてもよかったわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「「お前ら(あんたら)しか言ってない!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あはは、突然過ぎて声が出なかったよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (…………ハロハピのツッコミ枠はちゃんといるんだな。

これなら他の人にバレずに今日過ごせるかもしれない……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ、お花見を開始しましょう!

さあ、料理をたくさん用意してあるわ!

みんなで食べましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちが弦巻の家や桜を鑑賞してる間に黒服さんたちがシートやら料理やら全部並べてくれてた。

…………この人たち気配もマジでないから、忍者とかの家系かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「料理がなくなったら遠慮なく言ってね!

あの人達がいくらでも持ってきてくれるから!」

 

 

 

 

 

 

言葉通りいくらでも、なんだろうな……

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「見て!なんかすごいお肉があるよ!

こんなの私、食べたことないかも!」

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「これは間違いなくA5ランクの和牛だね!

こんないい肉、なかなか出回らないんだよ〜!

すっごいな〜!!」

 

 

 

 

 

 

…………それは弦巻家が原因なのでは……??

いや、これ以上は行けない気がする……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「これがA5ランクの…………とても美味しそうです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「お肉、詳しいんだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぐみの家はお肉屋さんだもんね。

でも見て分かるのはすごいよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「へへーん!まあね〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (驚くとこはそこじゃねーだろ!

肉に驚け、肉にっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………市ヶ谷のやつ、口には出してないけどもう顔でツッコミ入れてんのよなぁ。

表情に全部出てるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「な、なんかこんなにすごい料理が並ぶと…………

作って来た手料理が出しにくいね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「や、やっぱりりみりんも思った?

私も出していいのか悩んじゃって…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………別に出せばいいんじゃねーの?

出しにくい気持ちは分からんでもないが、庶民の味が好きなやつとかもいるだろ。

何より俺は豪華過ぎて緊張して逆に食いづらいまであるからな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美味しいのは分かるんだが、こんなに食べていいのか?とか、普通の生活に戻れなくなりそうとか心配する面が増える。

だからやっぱり小町の手料理が1番好きと言えるし、何よりも落ち着く。

 

 

 

まあ、ここの料理めちゃくちゃ美味しいんだけどね!

1週間に3回は食べたいとか思い始めてきてるからそろそろヤバい。

 

 

 

 

 

 

 

たえ「じゃあこれ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………え、俺?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「たけのこご飯」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ、はい。あざます…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見たら分かるんだけどね。

花園は余計な言葉というか、主語しかないから分からないって。

 

 

 

 

 

 

 

せっかく貰ったので頂くとする。

 

 

 

そういえばこの前作る的なこと言ってた気がする。

花園自信が作ったか、はたまた親とか買ってきたとかは分からないが………美味い。

普通に美味い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………普通に美味いって結構使う言葉だが、相手からするとあまり褒めてないように聞こえるのだろうか。

だったら『美味しい』だけでいいって小町に言われたことあるから多分余計な言葉なのだろう。

俺が良い意味と思って言っても相手からしたらそうは聞こえないらしい。

日本語って難しいね!

 

 

 

 

 

 

 

 

…………と、俺がたけのこご飯を食べながら日本語について考えていると花園や周りからの視線があるのを感じる。

感想を言えってこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………あー、美味い………です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「そっか。

良かったね、りみ。美味しいって。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「あ、ありがとう……///

良かったぁ、上手く出来て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………え、あ、はい……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前(花園)が作ったんじゃねーのかよ!!

 

てか、なんか恥ずいわ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「じゃあ、私も……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あら……?その袋の中に入ってるのってパンじゃない?

ひとついただくわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勢いよく弦巻が山吹のパンを食べる。

この世は弦巻がルールであり、絶対である。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あ、うん。

うちはパン屋やってるから、おみやげに持って来て………

口に合うかどうかわからないけど、よかったら食べてみて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻はもう頬張ってるけどな。

まあ俺たちも食べてとのことだろう。

 

 

それにしても、あんなに自信のある山吹家のパンだが、今回は流石に自信を失ってるな。

こんなに立派な豪邸、豪華な料理などを見せられたら流石にな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………でもまあ、大丈夫だろ。

弦巻は良い意味でも悪い意味でも正直だ。

当然美味しいパンを食べれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「美味しい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ほ、ほんと…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ええ!このパン、とても美味しいわ!

普通のパンってなんだか退屈な味でしょ!?

けど、これはとってもいいわ!笑顔になれるパンね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだよ普通のパンって。

ここで出てくるものに普通なものは無いだろうが。

A5ランクの肉も普通と思って食べてたのか…………はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そう!

きっと、これは………笑顔パンだわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あ、ありがと………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名前は山吹家につける権利があると思うが、お嬢様はお気に召したようですね、めでたしめでたし。

てか、笑顔パンて(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「はい、比企谷君も。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おう、どうも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って俺にパンを渡してくる。

いや、弦巻が名付けた笑顔パンか。

 

 

山吹ベーカリーのパンは以前貰った事がある。

あのイタズラ手紙のせいで食べる気失せたがお店のパンに罪はない。

 

パンはコンビニのしかあまり食べたことがないので、やっぱりパン屋のパンはレベルが違うのだと知った。

端的に言うと今まで食べたパンの中では1番美味かったとも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「どう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え?……いや、美味い……ぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ふふ、そっか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ嬉しそうにするじゃん。

お店のパン大好きかよ、褒められて超ご機嫌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみもおみやげ持ってきたよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「素晴らしいわね、はぐみ!

目には目を!おみやげにはおみやげを!の精神ね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おみやげってそんな感情で持ってくるものなの?

なんで対抗してんだよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「じゃーん!

ほっぺたも転げ落ちる、特性コロッケでーす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (転げ落ちるってなんだ!?

ほっぺたは転げ落ちねーだろ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うずうずしてる市ヶ谷を見てる奥沢、を見てる俺ガイル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (…………な、何?たしか…………奥沢さん……だったっけ?

私の顔、さっきからじっと見てるけど……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、奥沢のやつ行く気だ。

絶対とぼけると思うけどな、面白そうだから見てるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (…………ん!?なんか近づいてきたぞ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「どうも、奥沢です。

市ヶ谷さんとは話してみたいなと思いまして。

 

……それで市ヶ谷さん、さっきからめちゃくちゃうずうずしてない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あなたには………………あたしと同じものを、感じます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、なに?変な宗教の勧誘?

口下手なの?緊張してるの?

なんか思ってたのと違う絡み方してるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あたしはけっこう慣れてきたけど…………

そりゃあ普通ツッコミたくなりますよね、わかります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「え?な、なんのこと?

ツッコミなんて、全然したくねー…………ないけど?

おほ、おほほほほほ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………もう隠す気ないじゃん。

バレてないのは奇跡だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………………………………なら、いいんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ので奥沢も確信出来たと思うんだけど………………なんか近づいてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「………………比企谷君。

市ヶ谷さん、可愛いね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………………良かったな。仲間が増えて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ、俺は仲間どころか真逆の存在なんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「私はジンジャークッキーを持ってきました!

フィンランドのお菓子です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「わ!すっごい美味しそう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィンランドか。

俺のイメージはオーロラが有名な国……………………だな、うん。

あと、サンタクロース村とか?

 

 

これはフィンランドに魅力が無いとかではなく、全然知らないだけなんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「クッキー美味しい〜!!

……あれ?おたえは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たしかに。

花園だけ近くにいないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「さっきぷら〜っと、噴水の方に歩いて行ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あいつ本当に何考えてるか分からないもんな。

よくこんな訳分からん家で自由に動けるのは素直にすごいと思う。

冒険したい気持ちは凄くわかるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「そっか。それじゃあおたえの分色々取って置かなきゃね。

……それにしても色とりどり、いろんな料理が揃ったね!

これぞお花見って感じ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

状況はともかく場所がヤバいけどな。

人の家の庭。しかも満開の桜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「…………あ、こうなったらもう1回叫んじゃおうかな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナンデ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あら?それじゃあ一緒に叫ぶわよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみもー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダカラナンデ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄、こころ、はぐみ

「「「レーッツ、お花見スペシャール、イエーイ!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「イエーイ、です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あはは、楽しいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「うん、すごくにぎやかだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲、有咲

「「「はぁ……………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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桜舞い散る木の下で Ⅲ

話を切るタイミングが難しすぎて、1万字を超えてしまいました……


読むのが疲れるかも知れませんがそれでもよろしければ!


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから戸山は、弦巻、北沢と属性が一緒なだけあり、相性が良くしっかり意気投合していた。

人ってこんな早く仲良くなれるんだな、都市伝説かと思ってたわ。

 

 

 

 

 

弦巻家のインパクトに最初はみんな(数人は除いて)夢中になっていたが、花見が目的だったと思いだし、それぞれ箸を持ち食事を始めた。

 

 

 

 

 

 

俺も何か食べるとするか…………

相変わらず美味しそうなものがたくさんある。

そして野菜は花の形にカットされてるし、飾り方も花だ。

黒服さん、流石です。お花見スペシャルっすね。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お、おい、比企谷。」

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、背後から声が聞こえた。

………比企谷ってことは俺のことか。

俺以外いないな?大丈夫だよな?

 

 

 

 

 

 

八幡「………どうかしたか?」

 

 

 

 

 

一応市ヶ谷が相手なので、優しく問いかけてみる。

こいつを刺激すると大変面倒だし、何より俺が傷つく。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………い、一応なんだが、ここにある食べ物とか最終的に請求されたりとかないよな?大丈夫だよな??」

 

 

 

 

 

 

八幡「うん、それは大丈夫。」

 

 

 

 

 

 

有咲「そ、そうだよな!さすがにそんな事あるわけないよな!」

 

 

 

 

 

 

すごく嬉しそうな市ヶ谷さん。

心配だったんだな、わかるぞ。

俺も最初はそうだったから。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あ、それとさ……………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………?」

 

 

 

 

 

 

何かモジモジしてるな。

……トイレか?

弦巻の家見るからに広いから、迷って帰れなくなりそうだよな。

いや、そうだとしても俺から言ったらまずい気がする…………

 

 

 

 

 

 

 

八幡「何モジモジしてんの?

トイレなら屋敷入って右の方にあるぞ。

分かりやすく看板みたいなやつが上にあるから」

 

 

 

 

 

有咲「なっ!お前本当にデリカシーないな!!?

キモすぎんだよ、〇ね!!

このキモガヤ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うん、間違いなくこうなる。

言うの辞めとくか。

これ以上嫌われても減るものは無いけど、面倒くなりそうだし…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「で?何か言おうとしてなかったか?」

 

 

 

 

 

 

 

有咲「わ、私の自意識過剰じゃなければなんだけど、その、奥沢さんがすごく見てくる気がするんだけど…………」

 

 

 

 

 

八幡「あ、うん、それは気のせいじゃないわ。」

 

 

 

 

 

 

 

よかったぁー、トイレじゃなかったー。

ワンチャンセクハラになりかけたー。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「え……なんで………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「まあ、あんだけツッコミを我慢してたらバレるものもバレるだろ。

うずうずしてたし、顔が『は?』ってなってたし。」

 

 

 

 

 

 

有咲「…………な、何で比企谷も私の顔見てんだよ!

この変態!!

 

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おい待て!!

色々と誤解される言い方!

というかそこだけ主張して言ったら俺がまるで…………っ!」

 

 

 

 

 

 

結局変態って言われる運命なのかよ。

そして視線を感じたので周りのヤツらに顔を向けると……

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷くーん?

……有咲に何したの?」

 

 

 

 

 

 

怖っ!!

目に光失ってるよ?

しかも俺が何かをした前提で話してるのポイント低いし、周りの桜の景色がもう逆に怖さ倍増してる!!

 

 

 

 

 

美咲「……比企谷くんはそんな事する人じゃないと思ってたんだけどね。」

 

 

 

 

 

そんな事する人じゃないと思ってんなら諦めんなよ!

無罪なんだけど?

 

 

 

 

 

 

イヴ「…ヒキガヤさん……?」

 

 

 

 

 

……そんな悲しそうな目で見ないでください。

悪いことしちゃったと思うじゃん、そもそもしてないんだって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「…………………」

 

 

 

 

OK。ゲームオーバー。GG。

こころ様に害のある虫を駆除するように消される。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「……っ!

い、いやぁ、いま比企谷さんがお友達の話されてて、本当に面白い方ですけどちょっと変態ですねって…………おほほほほ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

終わったかと思った。

市ヶ谷に助けられるとは…………。

いや、そもそもコイツのせいなんだけど。

 

 

 

 

 

 

有咲「…………貸し1」

 

 

 

 

 

 

ボソッと俺にだけ聞こえるように言ってくる。

 

 

 

 

 

 

八幡「マッチポンプじゃねーか……」

 

 

 

 

 

 

声低いし怖い。

っていうか見てるだけで変態になるのん?

…………いや、絶対ならないとは言えないけど同級生で、同じ花見をしてるメンバーなら目に入るに決まってるだろ。

この条件なら見たって問題は………ない!はず!!

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

若干顔を赤くしてそっぽを向く市ヶ谷。

なんだよ、俺が怒りたいわ。

もうお前俺の事嫌いでいいよ……

俺もお前のこと嫌いになりそうだよ……

 

 

 

 

 

 

もう今は桜を見て落ち着こう。

この綺麗な景色見てれば少しはマシになるだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

山吹がコチラをじーっと見てる。

なに?仲間になりたいの?

残念、俺のパーティーは1人が限界だから。

……うん、パーティーじゃないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「比企谷君が友達の話?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、なんだ?喧嘩か?」

 

 

 

 

 

 

 

やったるぞマジで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ、かーくん、ほっぺたにご飯粒付いてるよ!

はぐみが取ってあげる!」

 

 

 

 

 

 

香澄「ありがとうはぐ〜!」

 

 

 

 

 

 

俺らの会話など聞いてなかったかのような空気を作る2人。

北沢が天使に見えてきた。癒されそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………戸山さんとはぐみ、なんか仲良いよね。

この前も帰る時ずっと一緒に話してたし。」

 

 

 

 

 

 

確かに。

……というか、この2人はあだ名らしき名称で呼びあってた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「私たち小さい頃よく遊んでたんだー!」

 

 

 

 

 

はぐみ「同じクラスになるなんてすごい偶然だよねー!」

 

 

 

 

 

 

『いぇーい!』とハイタッチをする2人。

……え?というか、この前ハロハピとポピパメンバーで会話した時初めまして感無かった?

気のせいでしたっけ??

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「でもこの前まで気付かなかったんだー!

最初のクラスの自己紹介でもわからなかったしー!」

 

 

 

 

 

 

八幡、有咲、美咲

「「「……?」」」

 

 

 

 

 

 

はい?

 

 

 

 

 

 

 

有咲「いやいや、名前とかで分かんだろ」

 

 

 

 

 

…………ツッコミならもうちょい大きな声で言ったれよ。

多分俺にしか聞こえてないぞ。

てか、いつまで隣にいるんですかね?

 

 

 

 

 

 

はぐみ「前はそんな耳みたいなの生えてなかったし、気づくわけないよ!」

 

 

 

 

 

 

あー、あの戸山の猫耳ね。本人曰く、星らしいんだけど。

 

 

 

 

 

 

香澄「はぐってば、隠して見せるまで私だって分からなかったんだよね!」

 

 

 

 

 

 

美咲「いや、人が耳とかいきなり生えないからね。

しかもそこだけで分からなくなるのもおかしいじゃん」

 

 

 

 

 

 

奥沢が冷静に言う。

良かった、ボケ同士の2人で会話が成立してたから頭がバグりかけてた。

 

 

 

 

 

 

 

有咲「いやいや!

人間いきなり耳とか生えねーから!

そもそもそれくらいの差で認識できなくなるのもおかしーだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「だからさ、声量考えようね。

そのツッコミ俺にしか聞こえてないって。」

 

 

 

 

 

奥沢がツッコミをしてくれているのだが、俺の隣ではもう意味わかんねぇ!と叫びたがってる市ヶ谷がいる。

囁き声でキレてる感じ、もう怖い。

お前さっきまで無言だったじゃん。

 

 

市ヶ谷は本当に周りのヤツらにこういうツッコミキャラとバレていないのだろうか?

隠そうとする忍耐力足りてなくない?

 

 

 

 

 

 

こころ「2人で何話してるのかしら?

とーっても楽しそうね?」

 

 

 

 

 

八幡、有咲「「!?」」

 

 

 

 

 

 

急に後ろから声をかけられビックリする俺と市ヶ谷。

振り向くと弦巻が立っている。

その顔は笑顔…………うん、笑顔だな一応。

 

 

 

 

 

 

八幡「これみてどこが楽しそうなんだよ……。」

 

 

 

 

弦巻のやつ……楽しい、面白い、嬉しい以外の感情持ち合わせてるの?

 

 

 

 

 

 

 

有咲「わ、私だって楽しくないから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、そこは猫被って『そんな事ないですよ。楽しいですよおほほほ』だろうが」

 

 

 

 

市ヶ谷だけに聞こえるように小さな声で言う。

 

 

 

 

 

 

有咲「は?」

 

 

 

 

 

こっわ。女の子が出しちゃいけないような低い声で言われたって…

なに?猫被るのも無理くらい無理ってこと?OK、泣きそう。

 

 

 

 

 

沙綾「なになにー?

2人だけじゃなくてせっかくこうやって集まったんだからみんなで話そうよ」

 

 

 

 

 

 

香澄「うん!そうだね!凄い楽しそう!!」

 

 

 

 

 

 

 

これが陽キャってやつか。

空気を一瞬で変えて更には作った。

領域展開してるなコレ。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「そういえばさ、みんなバンドやってるのは知ってるけど、

それ以外のことって、お互いあんまり知らないよね!

 

みんな、普段何してるの!?

 

 

ちなみに私は……

今はバンド一筋って感じかな!」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「とてもいいわ!一筋ってところが気に入ったわ!

香澄とは、今後とてもいい友達になれそうな気がするの!

だって、あたしも一筋だもの!」

 

 

 

 

 

え、何これ。高校生の会話?

ふわふわとふわふわでサンドイッチしてるじゃん。

 

 

 

 

隣の市ヶ谷も口少し開いてポカーンってしてるし。

相当マヌケ顔してるけど言わない方が吉。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「こころは学校で有名人だよね。

好奇心が制服を着て、バク転してるような人ってね」

 

 

 

 

こころ「あら、そうなの?

それははじめて知ったわね」

 

 

 

 

りみ「こころちゃんは好奇心が旺盛で、いろんなことにチャレンジするイメージがあったけど…………

今は何に一筋なの?」

 

 

 

 

 

 

 

こころ「確かにあたしはいろんなことをやるけど……

それは世界中の人を笑顔にするため!

笑顔一筋ってとこかしら!

 

ね?はちまんっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、ここで俺に飛んでくるの?

北沢でいいじゃん、奥沢は…………どんまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「世界中を笑顔にするために、あたし達ハロー、ハッピーワールド!は、音楽をしたり歌を歌ったり、演奏したりしているのよ!」

 

 

 

 

 

 

音楽したり歌ったり、演奏したりって意味ほとんど一緒なんだよなぁ……

つまりバンドってことじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ〜、なるほど!なら、私と一緒だね!」

 

 

 

 

 

納得しちゃったよ、ツッコめよ、ボケだぞこれ。

ほら、俺の隣のヤツが多分お手本見してくれるぞ。

しっかりと耳に刻み込め。

 

 

 

 

 

 

有咲「音楽をしたり歌を歌ったり、演奏したりって……

ほとんど全部一緒だろうが!つまりバンドだろ!?

ていうか、香澄も納得するなし!」

 

 

 

 

 

八幡「良し、素晴らしいツッコミだ。

じゃあそれをアイツらにも聞こえるように言おう?な?」

 

 

 

 

 

ええ加減にせえよ!

言いたいことがあるなら相手の目を見てハッキリと言いなさい。

俺は相手の目を見るのは無理なので無理です、ごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみは、バンド以外だとソフトボールやってるよ!

昨日も試合だったんだー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言えばそうだったな、俺も最近知ったけど。

ソフトボールが好きなのは知ってたが趣味的なノリでやってるだけだと思ってたがバチバチにチーム入ってた。

運動神経良いわけだな、足の速さなら弦巻より速いらしいし。

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あ、そうだわ、はぐみ!

はぐみに知らせようと思ってたことがあったの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「え!?なになに!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ほら、この間、

ソフトボール専用のバッティングセンターがないことを嘆いていたじゃない?」

 

 

 

 

 

 

……いやまさかね。

バンド終わりに確かに言ってたな、ソフトボールのバッティングセンターは中々なくて悲しいなーって。

…………いやいやまさかね。

 

 

 

 

 

こころ「それをあの人たちに言ったら、早速作ってくれたわよ!

裏庭の方にあるから、あとで一緒に行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

チートじゃん。黒服チートじゃん。

絶対喜んで作ってたじゃん。狂気じゃん。

 

 

 

 

 

有咲「はぁっ!?バッティングセンターを作った!?

なんだそれ!?ありえねーだろ、普通!?」

 

 

 

 

 

 

八幡「痛い、叩くな。

残念だったな、こいつの前では常識が常識じゃなくなるんだよ。」

 

 

 

 

法に触れなければ基本なんでもやるぞあの人たち。

もうワンチャン、法律すら変えてきそう。

 

 

 

 

 

 

はぐみ「こころん、ありがとー!

ホントこころんに相談して良かったよー!

やっぱり持つべきものは友達だね!?」

 

 

 

 

 

 

確信犯ですか?

弦巻に相談したら出来るかも!って思ってたの?

北沢恐ろしい子……

 

 

 

 

 

有咲「おい、てか何で誰もツッコまねーの!?

というか、沙綾くらいはツッコめよ…………!」

 

 

 

 

 

ハロハピのツッコミ担当は主に奥沢です。

あいつは今、多分楽しんでる。

時々市ヶ谷の方見て苦笑いしてるのが証拠。

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あ、あはは……こころん家はなんだか規模が普通じゃないね……」

 

 

 

 

 

山吹のやつは諦めて引いてるじゃん。

良かったな市ヶ谷。

ここで負けずにツッコミが出来るお前がナンバーワンだ。

 

 

 

 

てか俺の正面に座ってる……ええと、イヴ?白髪侍さんは凄い静かに聞いてるな。

日本語が通じない訳ではなさそうだし、意味は分かってるんだろうけど……

まあ第一印象からして、少し天然な子なんだろう。

 

あ、目が合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「……?………ニコッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……っ」

 

 

 

 

 

おーけー、天然じゃなくて天使だったみたい。

天属性ってことか、うんマジで可愛い。

俺と目が合うとハテナを浮かべていたが、首を傾げて微笑んでくれた。

 

 

 

 

しかもあざとくないのがすごい。

これは嘘でも可愛くないとは言えない。

小町がやってもあざといと思った後にしっかりと可愛いと言ってしまうのに…

結局言っちゃうのかよ、ほんと小町可愛いな。

 

 

 

 

 

 

沙綾「……デレデレじゃん」

 

 

 

 

 

 

八幡「デレてないです。」

 

 

 

 

 

天使に可愛いと言って何か問題があるのだろうか。

正直な感想を言っただけなのでデレてるとかではないです。

つまりただの感想です。

だから危ない人を見るかのような目はやめなさい。

 

 

 

 

 

香澄「それじゃあ次は、さーや!」

 

 

 

 

 

ほら呼ばれてんぞ。

 

 

 

 

 

 

沙綾「え、私?」

 

 

 

 

 

こころ「さっきは笑顔パンをありがとうね!

あの笑顔パンは、あなたが作ったの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あー、その笑顔パンなんだけど……」

 

 

 

 

 

有咲 (沙綾!お前が『笑顔パン』って言い出したら、

それはもはやオフィシャルだぞ!?いいのか、それで!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「実は私が焼いたんだ……

 

 

いつもはお店の手伝いだけで、

パンを焼いたりはしないんだけど……

 

 

今日はお花見だから頑張って焼いてみたんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

少し気恥ずかしそうに笑いながら喋る山吹。

 

 

そりゃまあパン屋の長女なら作り方とかは何度も見てきているんだろうけど、お店に出すパンは作ってないのか。

 

ってことは前回貰ったパンはお店のパンで、さっき食べたのは山吹家長女の手作りパンということか……。

いや何か言い方キモイな。

 

 

……あぁ、それでか。

さっきパンを食べた時の心配そうな表情は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「さーやはいつもやまぶきベーカリーのお手伝いをしてるんだよね!」

 

 

 

 

こころ「そうなのね!お手伝いは、一体どんなことをしているのかしら?」

 

 

 

 

沙綾「んー、店番したり、開店準備、閉店準備……。

パンを焼く釜の掃除をしたり………色々かなあ」

 

 

 

 

 

美咲「聞いてるだけでヘトヘトになってきた。

山吹さんはすごいね。あたしならそんなにいろいろ出来ないよ」

 

 

 

 

 

確かに、パン屋、バンド、学業、これらの両立は大変だろうな……。

でもバイト、部活、学校の3つをやってる人が決して珍しくないのも事実。

 

 

 

 

 

 

沙綾「あはは。ありがと。大変なことは多いけど、

案外慣れると平気なもんだよ」

 

 

 

 

こころ「いいえ、毎日手伝いをするなんてとってもすごいことよ!

もしよかったら、手伝いにあの人たちを派遣するわよ!」

 

 

 

 

 

なんかとんでもないことを言い出したぞこの子。

 

 

 

 

沙綾「え!それはいいよ!

私はお店のお手伝い、結構好きだから。

 

 

それに……

 

 

 

例えパンを私が作ってなくても、やまぶきベーカリーのパンを褒められると自分のことのように嬉しいんだ。

でもやっぱり自分で作ったパンを褒められると、いつもより……

 

 

いつもより、ほんの少しだけ嬉しいね」

 

 

 

 

と嬉しそうに笑う山吹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑顔パン、、、ね。

食べた人を笑顔にするからと弦巻が名付けたが、作った本人が1番笑顔ならそれはもう………

 

桜が宙を舞う、笑い声が響く中、

俺はパンを片手に楽しそうにする彼女達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~完~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それじゃあ次はりみりん、いってみよー!」

 

 

 

 

 

 

まあそうですよね、終わらないですよね。

いい感じの話だったから終わる雰囲気出てたけど全く意味なかったな。

 

 

 

 

 

りみ「……あ、わ、私は……こないだまで関西にいて……

そ、それで、こっちに来たばかりだから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなに慌ててたら戸山達が尋問してる風に見えるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「関西にいたの!?それじゃあ、引っ越して来たのね!?

すごいわ!引っ越しって、あたし一回してみたいの!

憧れるわよね、引っ越しって!羨ましいわ!」

 

 

 

 

 

 

 

この豪邸をもって引っ越しを憧れるのは、多分環境どうこうとかの話じゃなくて、『引っ越しをする』って行動が羨ましいのだろうな弦巻は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷「………」

 

 

 

美咲「………」

 

 

 

 

市ヶ谷「……!!」

 

 

 

 

 

あの2人は無言で何か探りあってるし。

市ヶ谷はツッコミの時顔がうるさいから、奥沢に見られているんだろう。

奥沢は苦労仲間が増えて純粋に嬉しいのだろうが何故かバレたくない市ヶ谷。

 

 

 

 

 

 

 

たえ「私がバンド以外にやってることは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「え、大丈夫?

びっくりしたような顔して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……びっくりしたようなじゃなくてびっくりしてるんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然横から言われたら誰だってビビるっての、てかこいつ気配無さすぎじゃない?忍者なの?

弦巻の敷地を探検してたらしいんだけどいつから聞いてたのコイツ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「……ギター」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「なんだよ、お前のその独特な間は!?

そんで結局、ギターって!

ギターはバンドの一環じゃないのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「でも楽器は1人でも出来るからバンドの一環とは言えないだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「なんでおたえの発言を真面目に考えてるんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前のツッコミに問題があったからとは言えないし、傍から見たら俺たちは明らかにわかるレベルの小声で喋りあってるので、内容までは周りに聞こえてないとしてもこのやり取りは見られてる。

その証拠に時々視線が痛い気がするし……

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あ、あたしはバンドをやってるって言うか、

とても複雑な状況なので、あまり多くを語りません。

そのこと以外は、至って普通ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何その自己紹介、『そのこと』についてめちゃくちゃ気になるだろ。

まあ俺はミッシェルって知ってるからいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ありがと!

あとは……イヴちゃんと有咲だね!

それじゃあ、イヴちゃん、おねがーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「えっと、私は日本に来てまだそこまで時間が経ってないのですが、こういう日本のお花見にすごく憧れていました!」

 

 

 

 

 

 

 

この規模のお花見は日本でも滅多にないんだよなぁ。

日本のお花見のハードルが上がってそうだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「このお花見は、かなり特殊だけどね。

なので、これを日本のスタンダードなお花見と思わないほうがいいよ。

 

 

 

 

 

市ヶ谷さんもそう思うよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥沢……。

どうしても市ヶ谷にツッコミさせたいのか?俺の横で無限ツッコミ編入ってるよ?席変わる?てか変わって!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「えっ!?あ、あはは〜。確かにこんな広いお庭でお花見するなんて、なかなかできることじゃないですよね〜!

す、すごいなぁ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「……な、なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前本当にバレてないと思ってる?

鶴巻とか北沢はともかく、奥沢には全然バレてるからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ俺が奥沢に言ったのだけどバレるのも時間の問題だし、ノーカンだノーカン。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「なっ!?///」

 

 

 

 

 

 

 

美咲 (市ヶ谷さん可愛い…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「それと、Pastel*Paletteでキーボードを担当してます!

以後お見知りおきを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パステルパレット……はて?

聞いた事あるような無いような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「すごいね。

この場にキーボード担当が3人もいるじゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「はい!

有咲さんと比企谷さんの演奏は聴きました!

とてもお上手で感激してました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「へ?//

あ、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

顔真っ赤でデレデレじゃん。

まあ真面目に褒められるとむず痒いのは分かるけどな、ましてや若宮さんみたいに顔面凶器(いい意味)&純粋な人には。

 

 

 

 

 

 

 

美咲「……………」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………なんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「いや?別に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

別にって言われても貴方が俺を変な目で見てた事実は消せないんですけどね、そんなに顔に出てたかね、さっき褒められた時か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「あとはブシドーですね!私、ブシドーに憧れています!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「武士道?

そういえば、たしかウチに、なんだかって人が使ってたなんたらって刀があった気がするわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、今のところ俺たちに入ってきた情報が刀だけなんだが。

しかも刀すらも気がする程度かよ、ワクワク返せよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあコイツの家ならそういうのが10個や20個出てきても驚きも何もないんだけどな。

市ヶ谷がなんかよく言ったみたいな表情してるんだけど気の所為だよね、どんだけツッコミに飢えてんだよ、もう怖いよ、ツッコミってそれなりの覚悟を持ってツッコミしてるんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「よかったら、その刀を見せてもらうことはできないでしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ食い付いてるな、無理もない、道端に咲いてる桜の花びらを切るレベルまでいってる武士に憧れた純粋な子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「名前を覚えにくい刀を見ても、あまりおもしろくないわ!

それより、あたしとチャンバラしない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (な、なんなんだ……こいつらの会話は……?

全然噛み合ってない……。

こんなツッコミどころ満載の会話……なかなかねーだろ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それじゃあ、次は有咲!

有咲の番だよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「え、ええと、わたしは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「そういえば、有咲って今日ほとんどしゃべってないよね?

どうしたの?具合でも悪い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?そうかな?

めちゃくちゃ喋ってたよ?隣ですっごい喋ってたよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「……い、いえ、大丈夫です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「顔色もちょっと悪いね……。

疲れてるみたいに見えるけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (つーか実際、ヘトヘトだから!

私がどれだけ心の中でツッコミ倒したと思ってんだっ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ホント?大丈夫ならよかった!

それじゃあ、有咲!ガツーンとひと言お願い!

有咲って、ホントに面白いんだよ〜。みんな期待しててね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁ、天然って怖。

何その地獄のプレゼンテーター。

ハードル上がりすぎて棒高跳びレベルになってんじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (香澄!!

……ま、しかたねーから、ここは当たり障りなくいくか。

みんながあんまり興味なさそうなこと言っとけば、

自然と次の流れていくだろ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「あ……私がバンド以外でやっていることは……盆栽です。

……以上」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「えっ!?盆栽をしていらっしゃるんですか!?すごいです!

私も盆栽を始めてみようと思ってたんですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (く、食いつくなーっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「さすがアリサさんですね!

盆栽をやっているなんて、とても素晴らしい趣味だと思います!」

 

 

 

 

 

 

 

 

おぉ……

若宮さんが市ヶ谷に尊敬の眼差しを……

あれか、猫かぶってる市ヶ谷を大和撫子だと思ってるのかね、さっきからちょくちょく市ヶ谷に敬意を示してる気がするしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「上品で、にこやかで、それでいて口数が少なくて……

大和撫子っていうのは、アリサさんのためにある言葉ですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………上品で?にこやかで?口数が少なくて……???」

 

 

 

 

 

 

 

 

え、誰の話してんの?アリサさん??

あーね、桜の木にアリサって名前をつけたのか。

上品だし、花咲いてるからにこやかと言えばフィーリングで感じるし、口数は少ないどころか無いもんな。

なーんだ、ビックリした、てっきり市ヶ谷の事を言ってるのかと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ヒェッ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの目は完全に何人かは殺ってる目だ。

俺もやられるんだ、助けてー!こころもーん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そういえばうちにも盆栽があったわ!

たしか樹齢400年の松、とか言ってたわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「じ、樹齢400年!?

私、是非見たいです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「そうね、あれはどこにやったかしら…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「樹齢400年って言ったら江戸時代初期ですよ!

つまり、サムライと過ごした松ということです!

すごい!すごいですよ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻家は伝統なものから最先端なものもある宝物庫であるから、若宮さんが興味津々になるのも仕方ない。

ひとつなぎの大秘宝もひょっとしたらここに?

……でもこれで話題がそれたな、だけど市ヶ谷には近づかないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (……ふぅ。

とりあえず話が逸れてくれてよかった…………。

けど樹齢400年の松って………たしかに気になる……

そして比企谷、アイツは後で……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あ、思い出したわ!たしか鉢が狭そうで可哀想だったから、

その辺に植え直してあげたわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「バッ…………!?そんなことしたら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (……はっ!?危うく口出ししそうになった……

ヤバイ……もう、限界かもしれない……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………ふふふふ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ど、どうしたの、美咲ちゃん?なんか面白いことあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「……いや、べつに。

市ヶ谷さんって本当にこう、慎ましいなと思って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑いを隠しきれてないぞ奥沢。

市ヶ谷が凄い恥ずかしそうにしてるからそこら辺でやめてあげなよ……いや、違うな、もっとやれ!恥ずか死ぬ1歩手前くらいやってしまえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「ううん!いつもはもっと面白いよね!?

ホントはすっごい毒舌なの!ねっ、有咲?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ねっ、有咲?って……。

毒舌って決していい意味では無いということを戸山は知っているのだろうか?

無意識にやってるとしたら俺はもうアイツが怖いよ……意図的にやってても怖いことに変わりはないんだけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「ど、毒舌なんてそんなことないわよ〜!

もう、香澄ってば〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (香澄、あとで覚えてろよ〜〜!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ないわよって……。

市ヶ谷もおかしくなってきてるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「そうだ!有咲の家も、けっこうすごいんだよ!

さすがにこころんのお家ほどではないけどね、蔵があるの!蔵!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確かに蔵がありましたね。

市ヶ谷の家は1度しか行った事がないが、弦巻の西洋の宮殿の様な家とは逆に古風を感じれる家だったな。

西洋の宮殿の様な家ってなんだよな、人が住んでるだけで家じゃないぞこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「蔵?すごいわ!あたしの家には蔵なんてないもの!

すっごく気になるわ!ぜひ見てみたいわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「い、いえ。そんな人様にお見せするようなものじゃ……

うちはただ昔から質屋みたいなことをやってるだけで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「アリサさんのお家、質屋さんをやっているのですか……!?

そ、それじゃあ骨董品とかも、たくさんありますよね!?

私もぜひ見て見たいです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「たしかその蔵で、かーくん達練習してるんだよね!?

はぐみも、1回行ってみたーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「え、うん…………まあ、蔵は広くて音も漏れにくいから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大人気市ヶ谷さん。

まあ蔵なんてそうそうあるものじゃないからな、興味津々になるのもうなずける。

ただ、蔵のことを弦巻が知ったということは今後弦巻家のどこかに蔵なんてものが出来てるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「アリサさんのこと、もっと教えてください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「わ、私の、こと……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲って、はっちーと一緒ですっごい成績優秀なんだよね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「そんなこと言わなくていいから。

は、恥ずかしいから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それに私が今、バンドやってるのも有咲のおかげなんだ!

有咲が、ギターを譲ってくれたから、バンドできたんだもん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「わっ、なにそれ!すっごいいい話じゃ〜ん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「そ、それは、香澄が勝手に家に上がり込んで、

ウチのお祖母ちゃんと仲良くなっちゃったりして……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「もともと有咲の家に行ったのも、

道に星の形したシールが貼ってあって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「戸山のやつ、市ヶ谷のことめちゃくちゃアピールしてるけどすごいな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

純粋に市ヶ谷の事を周りの人に知って欲しい戸山。

市ヶ谷はそういうの恥ずかしくて苦手なタイプだとは思うが、悪意がないしそもそも悪いことをしてる訳でも無いからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「……うん。

でも、有咲の本当の魅力をうちらだけのものにしておくのも勿体ないからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「…………お前ら市ヶ谷の事好きすぎるだろ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その『うちら』に俺は入ってないですよね、そうですよね、大丈夫です、全然本当に大丈夫です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「…………ってことがあったよね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「素晴らしいわ!

香澄達のバンドは、星のシールによって導かれたバンドよ!

それはきっと運命だわ!!

あたし達のバンドが、笑顔によって導かれたバンドだとしたら、

香澄達のバンドは、星のシールによって導かれたバンドよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、ハロハピって笑顔によって導かれたっけ?

お前の奇行によって半強制的に出来上がったバンド…………ではなくて、

奇跡的に笑顔が導いてくれた運命のバンドよね?

本当に神様に感謝だぜ、ハロハピ最高 !」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「………………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲 (……比企谷くん、黒服さんの存在に気づいたんだ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (比企谷のやつは急におかしくなったし、なんか無理やり変な感じにまとめられたし……。

笑顔とシールを同じ土俵に乗せるなっ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「はちまん!あたし達も負けてられないわ!

蔵よ!まずは蔵を建てましょう!

あたし達も蔵で練習したらいいと思うの!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「いいねこころん!

なんならはぐみも言おうと思ってたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい待て待て待て!

そんな、ゲーム感覚で蔵作るとかいうな!

黒服たち作っちゃうから!マジで作っちゃうから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、弦巻の私有地で作るし迷惑とかは無いからいいんだけどね?

でも既に弦巻の家にバンド練習出来る部屋もあるし、作る理由も無いってことだけはわかる。

あと黒服さん?弦巻の事好きなのはわかったけど甘やかし過ぎでは?

常識が仕事してないよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (なんでそういう結論になるんだ……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はぁ。

あたし、なんで今の話の流れで、それが結論になるんだ?

…………って、思っちゃったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「え、えっと!?

どうして私にそんなこと言うの?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「いや、だって絶対今、同じこと思ってたでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………い、いや………」

 

 

 

 

 

 

 

(もうヤダ、こんなお花見……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はい!それじゃあ最後にはっちー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……あー、比企谷八幡です。

ハロハピのキーボードやってます。以上」

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

え?時止まった??

 






読んで頂きありがとうございます。


また、感想や誤字報告ありがとうございます!


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桜舞い散る木の下で IV

何度もタイトル変更してしまい申し訳ございません。


似たようなタイトルがあると知って、何回か変えてました。



桜舞い散る木の下では4話で完結です!
次回からはまた、本編が始まります!



 

 

 

 

 

 

 

 

前回のラブラ…………

 

 

 

 

 

 

 

俺がヘブンなんとかタイムを覚えたのか、

はたまたザ、なんとかワールドを覚えたのか分からないが時が止まった!!

だがそれをいとも容易く打ち破る奴がいた!

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はい質問!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい却下。

そもそも質問は受け付けてない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抗議質問口答えは受け付けていませんのでご了承ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「はっちんは何年ピアノ?キーボード?やってたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ねえ、今のはっちんの言葉聞いてた?

質問は受け付けてないんだけど?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「ダメよはちまん!

お互いのことを知るためにも自己紹介は大切なことよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「うんうんっ!

というかはぐみも、はちくんのこと知らないこといっぱいあるし、色々聞きたいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「そうそう。

比企谷君は自分のことを全く話そうとしないから、今回は話してもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、こんなに嫌がってるのに話さなきゃいけない?

自己紹介ってそんなに怖いイベントだっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「嫌……なのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「えっ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「私もヒキガヤさんのことをもっと知りたいです!

もちろん嫌なら大丈夫ですが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って少し悲しそうな顔をする見習い侍若宮さん。

えー、罪悪感やばぁ。

いや別にいいんだけど恥ずかしいというか?

そんなに自分のことを語るのってちょっと抵抗あるじゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「若宮さんちょっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんか奥沢が若宮の耳元で何か伝えてる……。

やっぱり俺以外みんな仲良いのね、非常に良いことですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「ハチマンさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「っ!?え、ひゃい……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「ダメ…………ですか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なっ!?

 

 

 

 

 

この小悪魔タイプのあざとい女子がやってきそうな技は……奥沢の仕業か!

まだ知り合って短いが、若宮さんこんなことしてくるタイプだとは到底思えない。

 

 

 

 

 

 

だが甘いな。

確かに美少女にやられたら断れない男子は9割以上を占めるだろうが俺には効かない。

何故なら俺には耐性が付いている。

小町という可愛いさの化身にいつもされているのだ。

相手が悪かったとしか言いようがないな、俺はまたいつでも相手してやるからまたかかってくるといい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「ダメじゃないです。もう何でも来いです。

ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「っ!!はいっ!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うわぁー眩しい笑顔!

パーフェクトコミュニケーション!!

よし、楽しく話せたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「うわぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「キモ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

山吹、奥沢は若干引いた表情で俺を見る。

女には分からんよ。

だってあんなに顔整っててキラキラした目で純粋に言われたら無理よ?

何あれ、アイドルとかモデルとかやってるんじゃないの?(既にやってます)

いやもうすぐにでもモデルやるべきだろ(だからやってます)

 

 

 

 

 

それと市ヶ谷、普通に傷つくよそれ。

ゴミを見るような目で言ったって俺はそういう性癖はないので微塵も喜べないのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「それでは参ります!

ヒキガヤさんはアクダイカンなのですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクダイカンってあの悪代官?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え、えーと、なんでそう思ったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺そんなに悪いやつに見えるのか……。

いや、遠回しにおじさんって伝えてる?

どちらにせよ良い意味ではないってことよね、一発目から重たいの貰ったなコレは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「はっちんが悲しそう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「い、いえ!悪そうとかではないんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よかったー、全力で否定してくれる若山さんを見てたら本当に違うのだろうと伝わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「こんなにも大勢の女性に囲まれてるので、そうなのではないかと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、なるほどね。時代劇とかでもそういうシーンあるもんな。

それでそう思ったわけか……

いや、まあ確かに、高校生になってから女性と話す機会が極端に増えたって言うかね……なんと言いますか…

でも今日のだって俺は断ろうとしたんですけどね?

あと、若宮さん……それを言うとあなたもその大勢の女性の1人では?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「時代劇で観た悪代官は悪い人でしたけど、ヒキガヤさんは悪い人には見えませんので!

それどころか皆さんに飲み物や食べ物を分けていたりしてて、とっても優しい人です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あんまりそういうの言わないでくれ。

下っ端の癖が染み付いてるだけなんすよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下げてから急に上げるなんてめちゃくちゃ策士!

でもこの人めちゃくちゃ純粋だしなぁ………若干恥ずかしくなるわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はちくんはすっごく優しいよ!!

はぐみ達が困ったらすぐに助けてくれるんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優しいのハードル低くなってない?

いや、ありがたいんだけどね??

褒めてくれてるのは分かってるけど人が沢山いるところとか、俺がいる時はやめて欲しいかなって思ったり思わなかったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「おい、そこまでにしとけって。

花見の話のネタが俺なの、桜が可哀想だろうが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「すっごい桜好きなのか、それともめちゃくちゃ卑屈か……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「後者でしょうね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ、なんだろう…………目から涙が……

ちょっと?市ヶ谷さん??

無言で頷いてんじゃねーぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「そんな事言わないでください!

ヒキガヤさんはまだ知り合って間もないですがとても良い人だとわかりました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って俺の手を取り、真面目な表情で見つめられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「うひゃい!

……あ、えっと、その、あれっすね……

本当にありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っべー、っべーわ。

若宮さんマジでパネーですわ。

なんかもう色んな感情ごちゃ混ざってお礼言っちゃったもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「デレデレだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「うん、デレッデレ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、そんな目で人を見るんじゃない。

これは仕方ないんですよ。

あんな顔面凶器(美人)に近づかれたらああなるだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「イヴのファンが見たら、比企谷君ボコボコにされそうだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「あ?ファン??そんなのあるの?

 

まあ確かにこんなに綺麗な人ならファンクラブとかあってもおかしくないのか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

学校でファンクラブって都市伝説かと思ってたけどやっぱりあるもんなのか。

ああ、そういえば1人いましたね。

高校は違うけどファンクラブがめちゃくちゃいる瀬田先輩がいたわ。

それならまあ若宮さんにいても驚きはないな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「そ、そうですか……っ!

ありがとうございます!恐縮です!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっれ〜?

周りに桜が咲いてて暖かいはずなのにすっごく寒くなったぞー?

その目やめてね?本当に怖いから、てか俺何も悪いことしてないだろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え、黒服さんもしかして若宮さんのファンクラブ会員?

俺消されるの??

この人たち基本ボーッと立ってるようにしか見えないけど、今は俺の事を見てる、絶対に見てるねこれ。だってさっきからサングラスからの圧が凄いし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それから尋問……じゃなかった。

需要がない俺への質問タイムがあったが、ようやく終わりそうだ。

好きな食べ物、好きな教科、色、飲み物、季節、etc…

知らなくても割とどうでもいいようなのばっかりな気がするんだけど気のせいだよね、きっとこういう何気ないのが大事なんだよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お、おい。俺だけ長くない?

もう終わりだ終わり、ほら、なんかこのあとやるんだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それじゃあ、みんなの話も聞けたし!

これから思いっきり騒ぎまくろー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ、はぐみ「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ、沙綾「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ、イヴ「おー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲、有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弦巻や戸山たちはラケットやボールなどを持ってテニスコートへと向かった。

………庭にあるんですけどね、すぐそこにあるんだよね、マジで怖い。

俺はぜんぜん乗り気じゃないし、スポーツなんてものは得意ではない。

 

 

なので、美味しいものたくさんあるし見学でもよろしいですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾、美咲「だめだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺たちは、バドミントン、ドッジボール、フリースロー等、数々のスポーツや遊びをしていた。

基本的に弦巻、北沢は無双していた。

この2人運動神経良すぎるのはもう明確だったが、俺が意外だと感じたのは奥沢だ。

さすがテニス部というところか、最初は嫌々していたが後半は割とノリノリでやっていたのではないかと思う。

しかも奥沢もスポーツ上手い、俺より上手い、俺と比べられるのは可哀想だけどね!

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間にも及ぶ運動で一部を除く奴ら以外は、もうヘトヘトだった。

そして空を見ると陽は傾いており、お開きするにはちょうどいい時間になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はぁ〜、本当に楽しかったね〜!今日のお花見!

 

 

実は私、お花見って初めてだったんだけど、

こんなに楽しいって思わなかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

毎年やってそうだけど初めてだったのか、意外すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみもー、お腹いっぱ〜い!

もうなんにも入らないよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「あたしはまだお花見したいわ!

まだまだこれからじゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだまだこれからって、今までのアップなの?準備運動なん?

暗くなって来たし、そろそろ帰りたいよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「ごめんね、こころ。私達もまだまだいたいんだけど、

明日学校だしそろそろ帰らなきゃいけないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイスだ山吹。

俺が言ったって無視されるのが見えてるからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それなら、明日学校でお花見の続きをやりましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「さんせーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「賛成すんな、お花見の概念どこいった。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっ、しまった!

こんな軽いボケにツッコミを入れてしまった。

こういうのは市ヶ谷担当なのに………てか、さっきから市ヶ谷が静かだな。

まあ、1番体力がないのかさっきのスポーツでめちゃくちゃ息切れしてたしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (もはや、これくらいの軽いボケには

ツッコむ気力さえ失ったな、というかもう疲れた、帰りてー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「けど、本当に今日は楽しかったです!

ありがとうございました!

 

 

ずっと憧れていたお花見が出来て本当に感謝しています!

桜の下にいると、不思議と素直な気持ちになって、

いつも以上にたくさんおしゃべりしてしまいました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー、マジで良い子。

その笑顔100円じゃ足りないっすわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「だよねー!みんなと話せてホント最っ高だった!

このメンバーで、また来月もお花見しよーよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲(来月って……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「ええ〜、来月じゃもう、桜散ってるよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お、奥沢が市ヶ谷に向けて言ってる。

あいつまだ諦めてないのかよ。

大丈夫?本性出そうと意地悪してるようにしか見えないんだけど??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「……そ、そうですよね、おほほほ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「けどさ、それぞれバンドは違っても、音楽をやっている仲間が同じ学校にこんなにいてホントに嬉しいんだ、私!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「これからも切磋琢磨していけるといいね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「………たけのこご飯、美味しかったなぁ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (今か!?まとまりかけた時に言う感想か、それ!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たけのこご飯に取り憑かれてるなアレ。

もう毎日作ってもらえばいいんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「……それじゃあ、行こうか?

な、なんか帰るの名残り惜しいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「それじゃあ、まだまだやればいいじゃない!

お花見延長線突入よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲 (………結局おまえは、戦うことしか頭にねーな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「わかった!それじゃあ、こうしない!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不味い、弦巻と同じ閃きトーン。

超絶嫌な予感が……

市ヶ谷の表情も曇ってるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「次は、また今度、別の場所で集まろうよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「うん、いいね!どこ?どこにするの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「例えば……花咲川の土手、とか?

あそこも桜、キレイだったし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「あ、CiRCLEのカフェは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あそこだと、あんまり騒いだら迷惑になっちゃわないかな?

どう、比企谷君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「え?あぁ、うん、めちゃくちゃ迷惑だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかもう話が進んでてボーッと聞いてたわ。

何となくCiRCLEの前でやるのはやめて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「うん、今度まりなさんに聞いてみよっか。

それでも他の場所も考えとかなきゃね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おい、俺に聞いた意味ねーじゃねえか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「あ!そういえばさっき、あーちゃん家の蔵は音が漏れにくいって

言ってたよね!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「げっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「いいわね!ちょうど蔵にも行ってみたかったし、

一石二鳥じゃない!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「それいいじゃん!有咲の家にしようよ!

私、さんせーい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の家なのに、違う人が賛成とか出来んの?

え、怖すぎでしょ、反対!とか言ったら関係性にヒビ入らない?大丈夫そ??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷は黙ってるし、いつもならツッコミを入れる奥沢が静かだ。

おいコイツら止まらんぞ?いいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「蔵にある骨董品、見てみたいです♪

もしかして有名なサムライの鎧とか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「あ、それじゃあ有咲の家でお宝探しするのはどうっ!?

ぜったいたのしーよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こころ「素晴らしいアイディアね!

さすが香澄だわ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これふざけて言ってないのがもう凄いよな。

花見の話はもう忘れたんだろうな、蔵じゃ桜見えないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみも絶対行くー!で、いつにするの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お前ら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、市ヶ谷のやつ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「勝手に決めんなっつーの!!!

蔵で宝探し!?ただでさえ騒がしいヤツらが来るのに、宝探し!?

桜はどこにいったんだよ!蔵じゃ桜見えねーだろ!!

 

 

つか、誰かその案にツッコんだりしろよ!?

おかしーだろどう考えても!?

ああ、もう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲、沙綾「…………」

 

 

 

 

 

たえ、イヴ、りみ「…………」

 

 

 

 

 

香澄、こころ、はぐみ「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あーらら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「……あ、アリサ…………さん…………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「………………あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲、やっと調子が出たね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「…………あの、うちに来るのは…………イヤです…………わ。

お、おほほほほ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや無理無理無理、絶対に無理。

お前は悪くないよ、ボケが強すぎただけだ。

今後も関わって行くならどうせ遅かれ早かれバレるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「…………市ヶ谷さん、もう諦めよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「ち、ちくしょーっ!!

も、もうこうなったら、何も隠すことは無い!

言わせてもらうぞっ!こっちはずっとこらえてたんだっ!

 

 

まず香澄!なんだ、お花見開始のときの掛け声!

何、疑問を持たずに受け入れてるんだ!

少しは疑問に思えー!

そんで他にも…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市ヶ谷の堪忍袋の緒が切れ、ツッコミの嵐が始まった。

けれどもPoppin’Partyのメンバーはどこか嬉しそうにしており、

若宮さん、弦巻、北沢はポカーンとしてて、

奥沢もキレのあるツッコミを聞いて深く頷きながら共感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「ってことも疑問に思わねーのか!?

こっちはツッコミたくてうずうずしてたわっ!!

それから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「ど、どうしたんですか!?

アリサさんに、悪魔でも取り憑いてしまったんじゃっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「…………ううん。あれが本当の有咲ちゃんなんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「ってことは………今までのアリサさんは、世を忍ぶ仮の姿だったというわけですねっ!

アリサさんが本当の姿を見せてしまうくらい、桜が素敵だった、ということですよねっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはちょっと純粋すぎません?

てかそれも市ヶ谷にとってはボケ対象………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「おまえら、本当にボケすぎだ!

ふざけんなーーーーっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「はぁー、楽しかった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「何が、『はぁー、楽しかった』だ!

こっちはお前らのせいでヘトヘトだっつーの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たえ「たけのこご飯美味しかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「へへ、ありがと、おたえちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「お前、そればっかりだな。」

 

 

 

 

 

 

 

たえ「沙綾のパンも美味しかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「本当に?良かったー、結構緊張してたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「皆さん今日は本当にありがとうございました!

皆さんのおかげでこんなにも楽しい日々を過ごせました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「そんな、お礼なんて……

私達、別になんにもしてないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「こころん家には感謝だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「私をお花見に誘ってくれたじゃないですか!

ずっとお花見は憧れでしたから…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

りみ「本当にキレイだったよね…………みんなで見た桜」

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「はい!

あの景色は、ずっと忘れません。」

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「あと、みんなでワイワイ楽しんだこともね!」

 

 

 

 

 

 

 

イヴ「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「私はどっと疲れたけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

香澄「有咲〜、勉強だけじゃなくて運動もしなきゃだよー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「うるせー!

お前はもう少し勉強しろー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はぐみも勉強は苦手だけど、運動は得意だよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

お花見は無事?に終了し、弦巻家からおさらばしてから歩く帰宅路。

もう既に空は暗くなっているのにも関わらず、

こいつらの話を聞いていると、まだ昼間に見た桜を思い浮かべてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「これからはまた一段と騒がしくなりそうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……そうだな。

三バカで結構足りてたんだけどな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「あたしは今日同業者を見つけれたから満足かな。

ちょっと思ってたより色々と強かったけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前結構えげつないことするよな。

トップカーストがカースト底辺の子に意地悪してるようにしか見えなかったぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「うん、今思うともうちょっと違うやり方があったなって。

でも、市ヶ谷さんが可愛いかったからつい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛いは正義にもなり罪にもなるって凄いよな。

小町は正義だけどな、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「はぁ。 それにしても最悪だ。

こんな形でバレるなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「俺はお前がここまでバレていなかったのが奇跡だと思うんだけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「元はお前が弦巻さんや北沢さんを止めてればこんなことにはならなかったんだぞ!

ハロハピのツッコミ担当は何やってんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡、美咲「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いや待て、俺は違うぞ。

というかあんなやつらを止める?

そんなの無理に決まってんだろ、お前もアレ見てれば分かるだろ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「う、うるせー!

いいか!ツッコミを入れることが重要なんだよ!

止めれないかもしれないけど、誰もツッコミを入れないと私がおかしいのか?って不安になるだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「はぁ?そんなツッコミガチ勢の意見なんぞ知るか!

てかお前ずっと俺の隣でブツブツとツッコミいれてたじゃねーか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「んなっ!///

わ、私はそんなことしてない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙綾「……み、美咲、あの2人なにやってるの?

花咲川の学力学年1位、2位の会話になってる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「……バカと天才は紙一重らしいですよ。

もうカップルのやり取りじゃん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有咲「カッ……///

ふ、ふ、ふざけんなーーー!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「いっでーな!?

なんで俺が殴られなきゃ行けな、いだっ、え、ちょっ、痛い痛いタンマタンマ!

…………や、山吹?奥沢?今お前らもしれっと叩かなかった?

ちょっ、おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めての花見。

きっと帰ったら小町に感想を求められるだろう。

桜は綺麗だったし、食べ物は美味しかった。

色々とうるさかったし疲れたけど、不満はなかったのではないだろうか。

 

今度は小町も一緒に行けたらいいなとは思えたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「どうかした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「……いや、別に。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小町『も』一緒に………か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぐみ「はちくん!みーくん!

ほら!早く早く!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美咲「はいはーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「………ったく、なんで走るんだよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうすぐ桜は散る。

時が経てば今日の記憶は忘れていくのだろう。

だけど、また桜が咲く季節にはきっと……嫌でも思い出すのだろう。

 

 

桜舞い散る木の下で、笑っている彼女たちを────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜舞い散る木の下で ~完~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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