ドリーム☆アームズ!プリキュア (萊轟@前サルン )
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・序章
1.始動(スタート)変身(チェンジ)


私の名前は音鎧 叶(おとがい かなう)・13歳!新学期が始まる明日から転校先の夢見学園に通うんだ!

 

 

 

 

「新しい学校楽しみだなぁ!」

 

「あれ、お姉ちゃん前と違って学校に対してすごい前向きな感じじゃん!」

 

「妹よ、私はもう前の私ではないぞ…!!今の私は…」

 

「はいはい、わかったわかった。お姉ちゃんは進化しましたよーっと」

 

「なんか適当だな……」

 

 叶は妹に小声でそう言い返し、一階の居間から二階の自分の部屋へと戻っていく。そしてベッドに横になって眠りについた。

 

 

 翌朝、叶は通学カバンに必要な物を入れ、新しい学校へのワクワクが抑えきれないのか、朝食を済ませずに家の外へ出ていった。

 

「遂にきた!私の新生活!!今回は絶対に充実な学校生活を送ってやるぞー!!」

 

 と、叶が通学路を歩いていると、道端にウサギのぬいぐるみみたいな物が落ちていた。

 

「何これ、ウサギのぬいぐるみ…?でも、ぬいぐるみにしては妙に生きているような感じがするし…」

 

「ユ……ヨ…ロ…」

 

「え?」

 

「ユメの…ヨ…ロイ…!!」

 

「うわぁ!?ぬいぐるみが喋ったり動いたりしてる!?」

 

 ぬいぐるみらしき物は小声でそう呟きながらゆっくりと目を開けていく。そして叶の顔をじっと見つめる。

 

「あなたは?」

 

「いやいやいや、あなたこそ何!?ぬいぐるみが喋るなんてありえない…」

 

「失礼な、私はぬいぐるみじゃない!!ムドリン、音鎧 正吉おとがい しょうきちに作られた高性能小型AIロボット!」

 

「音鎧 正吉……って私の叔父さんだけど…」

 

「えっ?って事はまさかあなたが音鎧 正吉の姪の音鎧 叶!?」

 

「そう…だけど?」

 

 ムドリンは叶が自分を作ってくれた音鎧 正吉だと知り、凄く驚いていた。

 

「…っていうか、叔父さんを知ってるなら今、どこにいるのか教えてよ!」

 

「分からない…けど、作られた場所ならなんとなく覚えてる」

 

「どこなの?」

 

「紋章が壁に書かれている場所…」

 

「紋章…紋章はどんな感じだった?」

 

「確か…紋章の中央部に夢って漢字が書かれていた気がする」

 

 ムドリンは自分が作られた場所を微かに覚えており、叶に覚えている範囲の事を話した。

 

「なるほど……ってもうこんな時間!?早く学校に行かなきゃ!!」

 

「えっ…僕も連れてくの〜!?」

 

 叔父について話をしていた叶だったが、ふと自分の腕時計を見てみると時間は既に遅刻ギリギリだった。初日から遅刻するのはマズイと思った叶はムドリンを掴んだまま学校へと向かっていった。

 

 

学校…

 

 

 何とか遅刻数分前に学校の正門前へと辿り着いた叶は正門の壁に刻まれている校名を見る。

 

「夢…見…学園…かぁ!」

 

 そう、叶が新しく通う学校は夢見学園。ここ、夢見学園では禁じられた行為である"夢を持つ事"が許されているらしい。だが、"夢を持つ事"を許しているのは学校だけであり、国は許していないので夢見学園は国は勿論、ドリムポリスと呼ばれる警察達からも目を付けられている。

 

 

 その後、教室前まで来た叶は担任の"新しい仲間を紹介します"というセリフの後に1ーAの教室へ入っていく。

 

「じゃあ、紹介するわね。この子は音鎧 叶!」

 

「はじめまして、音鎧 叶です!」

 

ソワソワソワ.....

 

「(あれ、変な事言ったかな?私…)」

 

 入った時からだったが、皆、ずっと叶の方を見て隣の席同士でコソコソと何か話していて、叶は今、皆がコソコソ話していることに気付いた。

 

「あ〜!音鎧さん、名札反対よ!」

 

「えっ、そんなはずは…って本当だ!」

 

 皆がコソコソ話していたのはどうやら、叶の名札が反対で変だったからのようだ。叶は苦笑いしながら制服の名札を正常位置に直していく。そして先生に自分の座る席を聞く。

 

「先生、私はどこに座ればいいですか?」

 

「音鎧さんの席ねぇ…あ、丁度空野さんの隣が空いているわね!音鎧さん、空野さんの隣に座って!」

 

「分かりました!」

 

 叶は自分の席へ歩いていき、叶が入った時からずっと外を見ている隣の席の空野に声をかけてみた。

 

「これからよろしくね!」

 

 と、叶は元気よく空野に挨拶をした。空野はこちらを向き叶に"こちらこそよろしく!"とかいうよくある返事をすると思ったが、返事ではなく、何かを話し始める。

 

「あなたはまだ知らない…夢の力を持つ者がどれだけ肩身の狭い生活を送っているかを…」

 

「どういう事?」

 

「まぁ、いずれ知る事になるわ。だってあなたは"音鎧 正吉の姪"だから」

 

 空野はそう言い、席を立って廊下へと出て行ってしまった。叶は空野にまだ朝のホームルームの途中だよ!と言おうとしたが、いつの間にかチャイムが鳴り響いており、皆、休み時間に入っていた。

 

「叔父さんの名を知っていた…。あの子は一体…」

 

 叶は空野が自分の叔父の名前を知っている事を不思議に思いながら廊下へ出ていく。すると、廊下へ出た瞬間、制服のポケットの中からムドリンが出てきた。

 

「懐かしい感じだ…まさか、ここが…!」

 

「こら、勝手に出て来ちゃダメでしょ!」

 

 叶は勝手にポケットから出てきたムドリンを軽く叱り、再びポケットの中へとしまう。

 

 

 

 その頃、町外れにあるソニード・アルマと呼ばれる組織の施設では1人の男が施設内の柱に拘束されている男性の元へ歩いていた。

 

「夢の鎧の力を感じる…さぁ、君の出番だよ」

 

「俺を縛ってどうするつもりだ!!夢の鎧の力なんてどうでもいいだろう!」

 

「どうでもよくないんだよねぇ…」

 

 

 男はそう言いながら、柱に拘束されている男性の体内に恨という漢字一文字が表面に書かれたバッテリーみたいなものを差し込んでいく。

 

「うっ…ぐっ…うわぁぁ!!!」

 

 男性の姿は蜘蛛のような姿に変わっており、人間と言える要素は何一つ無くなっていた。

 

「いいじゃないか!んじゃ、頼んだよ。スパイダー・オミクロン」

 

 この怪物の種類名はオミクロンというらしい。スパイダー・オミクロンは男の声と共に夢見学園の方へと向かっていった。

 

 

 怪物が向かって来ているのを知らずに叶が廊下から外の景色を眺めていると、またポケットの中からムドリンが出て来た。

 

「ムドリン、出て来ちゃダメだって!」

 

「いや、分かったんだ。ここは私が作られた場所…でも、部屋はどこにあるか分からない」

 

「隠し部屋でもあるんじゃない?」

 

「隠し部屋か…そういえば、私の身体には私自身でも解けない暗号入力画面があったような」

 

 ムドリンは隠し部屋と聞いて暗号を連想させ、自分の身体に暗号入力画面がある事を思い出す。

 

「暗号入力画面!私が暗号打っていい?」

 

「いいけど、解けるわけが…」

 

 叶は015,045,111,012と暗号を打った。すると、どこかから扉が開く音が聞こえて来た。

 

「正解みたいだね!」

 

「何で分かったの!?」

 

「音鎧一族にだけ言えば伝わる共通の暗号があってね…」

 

「凄い…」

 

「んじゃ、扉が開く音がした方へ行こうか!」

 

 叶はムドリンに暗号がなぜ解けたかを説明し、ムドリンをポケットにしまってから音がした方へ向かっていく。

 

「こんなところに扉があったんだ…!」

 

「叶、とりあえず中に入ってみようか」

 

 普段は上がるのが禁止されている屋上の階段上に来た叶とムドリンは壁の食い込んだ所に中へと繋がる場所があるのを見つけた。どうやら、叶に開けられる前まで隠し部屋の扉は普通の壁に隠されていたようだ。叶とムドリンは部屋の中へ入っていく。

 

「ここだ…私が生まれた場所!!」

 

「ここが叔父さんの部屋…」

 

 叶は部屋を見渡していく。そして部屋の大体を見終わり、近くにある机の上に目をやるとそこにはバッテリーのようなものと腕に装着するであろうブレスレット型の銃があった。

 

「ねぇムドリン、これは何?」

 

「それは……まさか、ドリームチェンジャー!?」

 

「ドリーム…チェンジャー?」

 

「そう、それはドリームチェンジャー。夢の力を持つ者だけが使える代物だよ!」

 

「へぇ〜!私は使えるかな?」

 

「分からない。だけど、叶が夢の力を持っていれば必ず使える!まず、左腕にドリームチェンジャーを当ててみてくれ!装着出来れば叶は夢の力を持っている事になる!」

 

 叶はムドリンに言われた通り、ドリームシューターを左腕に当てる。すると、叶の左腕にドリームシューターが巻かれていき、装着完了した。

 

「うぉぉ!!装着出来たよ!!」

 

「流石は音鎧 正吉の姪…!彼女ならこの国を変えれるかも!」

 

 ムドリンはドリームチェンジャーを装着出来て喜んでいる叶を見ながら小声でそう言う。と、叶とムドリンが暫くの間、部屋に留まっていると学校の外から崩壊音が聞こえてくる。

 

「この音は何!?」

 

「現れたか…叶、学校の外へ行くよ!」

 

「えっ。あ、うん、分かった!」

 

 崩壊音を聞いた叶とムドリンは学校の外に出る。学校の外に出るとそこには蜘蛛の姿をした怪物がいた。

 

「あれは!?」

 

「オミクロンだ。恐らく、ソニード・アルマの奴らが作ったんだろう…」

 

「オミクロンやソニード何ちゃらとかよく分からないけど、倒さなきゃ!…ってどうすればいいんだっけ」

 

「叶、まずはドリームチェンジャーの中央の装填部にこれを装填して!」

 

「こう…かな?」

 

 叶はムドリンに言われた通り、ドリームチェンジャーの中央の装填部に先程、ドリームチェンジャーと一緒に置かれていたバッテリーみたいなものを装填する。

 

「そしてドリームシューターの左サイドにあるトリガーを引いて変身して!」

 

「これか!よし、行くよ!変身!!」

 

 叶はドリームチェンジャーの左サイドにあるトリガーを引いてプリキュアへと変身していく。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

 

「うわぁ!変身しちゃったよ、私…!」

 

 叶はキュアアームド マイナーへと変身した。叶は自分がプリキュアに変身出来て大喜びのようだ。

 

「叶、プリキュアの力で敵を倒して!!」

 

「了解!」

 

 叶はスパイダー・オミクロンへ向かっていき、十分に近付いた所でドリームチェンジャーのトリガーを何回も引き、スパイダー・オミクロンに向けて光弾を数発放つ。

 

「凄い!これが私の夢力!」

 

「ユメチカラって何?」

 

「私を前へと導いてくれる魔法のワードだよ!」

 

「な、なるほど…んじゃ、その夢力で必殺技を決めてみて!」

 

「了解!…私のフル夢力受けてみろ!」

 

 叶はそう言いながら、ドリームチェンジャーの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。

 

 

「プリキュア・マイナー・ブレイク!!」

 

 叶は必殺技を発動させた後、必殺技を放つ準備が完了したドリームチェンジャーのトリガーを引いてスパイダー・オミクロンに向けて長い光弾を放つ。

 

「決まった!!」

 

「ぐわぁぁぁ!!!」

 

 スパイダー・オミクロンは浄化されて普通の男性へと戻っていった。叶は元に戻った男性をを近くのベンチに座らせ、校内へと戻っていく。

 

 叶が校内へ戻ると、そこには空野がいた。空野は叶に何かを話したいのか叶の方へ歩み寄っていく。

 

「音鎧 正吉の姪であり、プリキュアになったあなたはこの国を変える最後の希望(ラスト・ホープ)だわ」

 

「ラスト・ホープ?」

 

「とりあえずあなたはドリムポリスと夢零学園の精鋭に気をつけなさい」

 

 空野は叶にそう言い、どこかへと行ってしまった。叶は空野の話をあまり理解できなかったが、自分が何かに狙われる事になるというのは分かった。

 

「ドリムポリス、夢零学園ねぇ…まぁとりあえず、いつ敵が来てもいいように身構えるとするか…」

 

 

 

 怪物が現れた影響で学校が早く終わった為、叶はムドリンと共に自分の家へ帰り、いつ敵が来てもいいように身構える事にするのだった。

 

 

to be continued.......




NEXT「(ドリーム)悪夢(ナイトメア)!?」


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・第一章 それぞれの思惑〜ドリムポリス編〜
2.(ドリーム)悪夢(ナイトメア)!?


叶「前回、私はドリームチェンジャーでキュアアームドに変身し、怪物を浄化したのだった!」

ムドリン「その力、大事にしてね…」

叶「大事にしてねって…簡単に失っちゃうものじゃないんだから大丈夫だよ!」

ムドリン「だといいんだけど…」


 夢見学園への登校2日目、叶が校内へ入り、下駄箱で靴から上履きへ変えていると、相変わらず無表情な空野がやって来た。

 

「昼休みの時に体育館裏へ来て。話したい事がある」

 

「話したい事?今でもいいんじゃ…」

 

「こんな賑やかな場所ではダメ、しかも今は話す時間がないわ」

 

 空野は昼休みに体育館裏へ来て欲しいと叶に言った。叶は体育館裏へ呼び出されるのはとてもやばい事が起こる前兆だと認識しており、あまり行く気はなかったが、これは空野と仲良くなるチャンスだと事をポジティブに考え、昼休みに体育館裏へ行く事にした。

 

 

 そして昼休み、叶は空野に言われた通り体育館の裏へと来た。そこには勿論、空野がいた。

 

「空野さん、私に話したい事って…何?」

 

「ドリムポリスについてよ。あなたは気付いていないかもしれないけど今日、ドリムポリスから調査で何人かやって来ているの」

 

「そうなの!?そんな人達いたんだ…」

 

「まぁ、分からないのも無理はないわ。ドリムポリスの人間は全員私達と同じくらいの年齢だから」

 

「えぇー!?」

 

 空野はドリムポリスの人間が全員、叶達くらいの年齢だと言う。それを聞いた叶は自分の想像していた年齢とは違いすぎて驚いていた。と、空野と話していると何処からか少し小柄な女の子がやって来た。

 

「あら、お二人さんはここで何をしていたのかしら?」

 

「矢波……」

 

「空野さん、久しぶりね。どうしたの?そんな険しい顔して…」

 

 空野は以前、矢波に何かされたのかずっと矢波に対して険しい顔を向けている。

 

「…あ、あの〜あなたは空野さんのお友達?」

 

「うん、お友達!」

 

「な訳ないだろ!コイツは矢波 奈那。ドリムポリスの人間よ」

 

「ドリムポリス!?」

 

 叶は小柄で自分より下の子供に見える矢波がドリムポリスの人だと聞いて驚く。

 

「フフッ、矢波ちゃんは体型といい、顔といい小学生みたいで可愛いね!」

 

「小学生じゃないわ!!!ってか私を子供扱いするな!!」

 

「いや、まだ子供でしょ。20歳超えてないんだから」

 

「そっ、そうだけど……」

 

「(矢波が少し困惑してる…中々見れないレアケースだ。音鎧 叶、あなたは一体何者なの?)」

 

 空野は普段は見れない奈那の困惑顔を見て、奈那を困惑させた叶は一体何者なんだ?と深く考えていた。

 

「この子といると何だかキラキラしてしまうからこの辺で失礼するわ」

 

「奈那ちゃん、待ってよ!」

 

「音鎧 叶。また会いましょう」

 

「えっ、なんで私の名前を…」

 

 奈那はまた会いましょうと叶に言い、校内のどこかへ行ってしまった。叶は奈那が既に自分の名前を知っている事を不思議に思ったが、どうせ、名簿でも見たのだろうと考える事にした。

 

「さて、話も終わった事だし、私は教室に戻るわ」

 

「えっ…ちょっ、空野さん!!」

 

 叶に話をし終えた空野は私を置いて1人早々と教室へ戻っていく。叶も空野を追いかけるように走って教室へ戻っていった。

 

「空野さ……ん!?」

 

 叶が教室へ戻るとそこには互いに睨み合う空野と奈那がいた。叶は何故、この教室に奈那がいるのか理解出来なかった。

 

「私の後ろばっかり付いてこないでくれるかしら?」

 

「付いてきたつもりはないわ!行く場所、行く場所にあなたがいるだけよ」

 

「…外に来なさい」

 

「なんのつもり?」

 

「来てからのお楽しみよ」

 

 空野は奈那を校舎の外に誘い、2人きりの状態で何かするようだ。先程の2人の関係から察するにあまり良くないことが起こりそうだな…と感じていた叶は2人の後を追って校舎の外へ出ていく。

 

「ドリムポリスの精鋭よ…ここで決着をつけようじゃないの」

 

「フフッ、いいよ〜♪まぁ、勝つのは私だけどね」

 

 2人は戦うようだ。空野はドリームチェンジャー、奈那はドリームチェンジャーに似たものを取り出し、左腕に装着する。そして空野はドリームバッテリー1本、奈那は2本のドリームバッテリーをチェンジャーに装填し、空野と奈那はチェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアファンタジー・マイナー!!〉

 

 

 

【プロトドリームーブ!】

 

〈Lock on the enemy!キュアガード・ホークアイ…!!」

 

 変身した2人は戦いを始めた。2人が変身して戦い始めてから2人を止めなきゃ!と思った叶は自分も変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

「2人とも!戦いはやめて!!」

 

 叶は戦う2人の仲裁に入ろうとしたが、2人の元へ向かおうとした時、どこからか鹿のような怪物が叶の前に現れた。

 

「あーもう、タイミング悪いなぁ!!」

 

 叶はタイミング悪く現れた怪物に憤りを覚えた。怪物が自分の方に向かって来たのを見た叶は殴りかかろうとするが、鹿のような怪物の二本角による攻撃を受けてしまい、少し吹っ飛ばされてしまう。

 

「叶、これを使って!!」

 

「ムドリン!?今までどこにいたの?」

 

「話は後、早く使って!」

 

 叶は突然、現れたムドリンに剣みたいなものを渡された。ムドリンは早く使って!と叶に言う。叶は早速、右手に剣を持ち、鹿のような怪物に向かっていく。

 

「くらえっ!私の夢力!!」

 

 叶はそう言いながら鹿のような怪物を斬り刻んでいき、剣の棟の部分にあるドリームバッテリー装填部にマイナードリームバッテリーを装填し、必殺技を発動させる。

 

〈マイナー・ムーブメントスラッシュ!〉

 

 叶は必殺技の音声が鳴るとともに怪物へ向かっていき、ピンク色のオーラを纏った剣で怪物を斬り裂く。斬られた怪物は人間と怪物で分離し、怪物の方だけが爆発して消え去っていった。

 

 怪物との戦いが終わった叶は再び空野と奈那の元へ向かうが、既に戦いは終わっており、奈那もいなくなっていた。

 

「空野さん!大丈夫?」

 

「大丈夫よ」

 

「良かった…っていうか空野さんって何で奈那ちゃんと仲悪いの?」

 

「……"夢"の見方が違うからかな」

 

「夢の見方?」

 

「えぇ。あの子は5年前に起きたドリームインベーションという夢の力が悪夢の力に反転してしまうという大事故の被害者。彼女はその事故で家族を失っているの…家族を失って以来、彼女は事故の原因となった"夢"を嫌い、ドリムポリスに入った後も夢を見ずに日々を過ごしている」

 

「でも、夢を嫌っていてもプリキュアには変身できてたし、自分の嫌いな夢の力だって躊躇する事なく使ってたじゃん」

 

「あの子は偉い位の人間の命令に従う為だけに夢の力を使っている。……でも、夢を嫌う彼女が何故、プリキュアに変身出来たのだろう…」

 

キーンコーンカーンコーン!

 

 と、2人が何故、夢を嫌う奈那がプリキュアに変身出来たのかを話していると昼休み終わりのチャイムが鳴り響く。2人は話をやめて教室へ戻っていった。叶が教室近くの水道で手洗いをしていると、奈那が近寄ってきて叶にこう言う。

 

「夢は悪夢を生む根源よ。悪い事は言わない、夢を見るのはやめなさい」

 

「…やだよ。私は夢を見続ける!だって夢は私を未来へと導いてくれる可能性の塊だから!」

 

「…なるほどね。なら、いずれ知るであろう"夢"の真実も受け止められそうね〜」

 

 奈那は夢に対する皮肉の意味を込めて叶にあなたなら"夢"の真実を受け止められそうね〜と言い、またどこかへ去って行ってしまうのだった。

 

「夢の真実…か。まっ、今はそんな深く考えなくてもいいや!」

 

 叶はそう言いながら、授業の始まりを告げるチャイムが鳴る3分前くらいに席に座って、その後授業を受けていくのだった…

 

 

 

 

to be continued......




NEXT「律動(リズム)音楽(ミュージック)!」


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3.律動(リズム)音楽(ミュージック)

 今日は土曜日で学校が休みの叶は夢見町の音楽ホールで行われる音楽会へ行く為に自分の部屋で身支度をしていた。

 

「今日は楽しみだな〜!」

 

「楽しみって…何が?」

 

「音楽会だよ!音楽会には私の好きな歌手の間宮さんが来るの!」

 

「私にはよく分からないけど、カシュとは有名人か何か?」

 

「うんうん、有名人!」

 

 叶はムドリンと話している間に自分の身支度が済ませてムドリンを自分のカバンの中に入れてから家の外へと出る。そして叶が音楽ホールに向けて歩いていると、夢見駅のバス停近くで路上ライブをしている人がいた。路上ライブの観客は誰1人いなかった。勿論、チップもゼロだ。と、叶が少し離れたところから様子を見ていると40代くらいの大柄な男が路上ライブをしている人の前にドカドカと歩いてきた。

 

「てめぇ、毎朝うるせぇんだよ!!大体、歌手になる事が出来るのは上級の国民だけだ!お前みたいな一般国民がなれるわけがねぇ!帰れ!!」

 

 男はそう言うと、路上ライブをしている人を突き飛ばした。それを見た叶は男の元へ行き、一喝する。

 

「ちょっと!!この人の夢道(ゆめみち)を邪魔するのは良くないんじゃない?」

 

「なんだてめぇ?見た限りでは一般国民っぽいな」

 

「一般国民って何…?皆、普通の国民だよ!?普通の国民に地位なんてない!!」

 

「…ったく、面倒くさいなぁ…お嬢ちゃん、この国には上級国民と一般国民の2種類がいる。職も同じで上級職と一般職の2種類がある。上級国民の職業は上級職から選ばれるが、一般国民は一般職からしか選ばれない。従って、コイツは上級職である歌手にはなれないんだ」

 

「そんなぁ…」

 

「分かったら俺と一緒にコイツを止めてくれ…法律違反がバレて捕まってからじゃ可哀想だろ?」

 

 男にそう言われた叶は一度、路上ライブをしている人の方を見る。路上ライブをしている人は男に突き飛ばされた時に顔にできた痛々しい傷から出てくる血をポケットティッシュで拭きながらはぁ…と深いため息をついた。その悲しげな顔を見た叶は路上ライブをしている人を止めるのではなく応援する事にした。

 

「あなたならなれる!歌手に!!」

 

「えっ…」

 

「だから、強い心と自信を持って!!国に負けるな!」

 

「あなた…」

 

 叶の言葉を聞いた男は呆れたのかどこかへ去っていってしまった。路上ライブをしている人はほっ…と一安心。

 

「ところで、お姉さんの名前は?」

 

「私は美影 奏(みかげ かなで)。歌手を目指してるの!」

 

「いいね!あ、私は音鎧 叶!!」

 

「叶ちゃん、よろしくね!」

 

 と、叶と美影が楽しく話しているとドリムポリスの矢波 奈那が叶と美影の元へとやって来る。

 

「音鎧 叶…ここで何をしているのかしら?」

 

「あっ、矢波ちゃん!まだ小さいのに1人で行動して大丈夫なの?」

 

「私、小学生じゃないから!!!それはさておき、あなた達、夢に関する事を話してなかった?」

 

「話してたけど?何か悪い?」

 

「悪いさ…法律違反だもの」

 

 奈那はそう言いながら、プロトドリームチェンジャーを取り出し、左腕に装着する。そしてホークアイパトロール・ドリームバッテリー、チェンジ・ドリームバッテリーの二本をチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【プロトドリームーブ!】

 

〈Lock on the enemy!キュアガード・ホークアイ…!!」

 

「ちょ、ちょっと!変身する必要ある!?」

 

「重罪はこうやって取り締まるのがルールなの」

 

「なら、私だって…!」

 

 叶はドリームチェンジャーを取り出し、左腕に装着する。マイナー・ドリームバッテリーをチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

「私の夢力(ゆめちから)、見せてあげる!」

 

「夢に関するものは全て不要…今の私がやる事はただ一つ、夢を殲滅する事だ!!」

 

 奈那は叶の言葉にそう返してから、ホークアイパトロールの力で叶の弱点を見つけて狙っていく。対する叶はドリームーブレードを右手に持ちながら、奈那の様子を伺う。

 

「はぁぁ!」

 

 奈那は足払いをし、叶を転ばせてから左腕を掴み、空中へ投げ飛ばす。そして背中に生えている羽を使って叶のいる場所まで飛んでいき、叶を地面に向けて叩き付ける。

 

「ぐはぁ…!」

 

 地面に叩きつけられた叶は大ダメージを負い、動けなくなっていた。そこへ奈那が降りてきて叶の腹部を何発も殴る。

 

「うぐっ…!?」

 

「ふふっ、この程度かしら?」

 

 奈那に殴られた箇所の服は破けており、露出した叶のお腹には痣ができていた。意識は朦朧としていて叶は絶体絶命の危機を迎えていた。

 

「弱い者いじめか?情けないな、矢波」

 

「空野…随分と言ってくれるじゃないの。いいわ、あなたの相手をしてあげる!」

 

 叶、絶体絶命の危機の時に空野がやって来た。空野は矢波を軽く煽り、奈那の相手を叶から自分に変える。奈那が空野の相手をしている隙に美影は叶を背負って自分の家に連れていった。

 

 

 美影に背負われた頃から気を失ってしまった叶は美影の家に連れて来てもらってから数十分ぐらい経っても目を覚まさない。

 

「目…覚まさないかな」

 

「目をさましたいのか?なら、これで!」

 

 ムドリンはそう言いながら、叶の腹部にある痣を強く刺激する。すると、叶はすごく痛がりながら目を覚ました。

 

「痛いよぉぉ!!!もう、ムドリン!!」

 

「ほらね」

 

「あははは……」

 

 傷を刺激して無理矢理叶を起こしたムドリンを見た美影は苦笑していた。叶は起きた後、美影の部屋を見る。部屋には色々な楽器が置かれていた。

 

「凄い数の楽器…!」

 

「私、色々な楽器に挑戦してるの!だけど、どれも上手くいかなくて気付いた時には楽器が溜まってて…」

 

「自分に自信持たなきゃ!夢を持つあなたの夢力はちっぽけなものじゃない!!」

 

「叶ちゃん…!」

 

 

 

 一方、美影を注意していた男は自分の家へ向かって歩いていた。その道の途中、ソニード・アルマの男が男の目の前に現れた。

 

「君、いいオーラ出してるね!」

 

「アンタは何者だ!?」

 

「僕は歩合 善也(ふあい ぜんや)!って事で頼んだよ!」

 

「なっ…何をする!?うわぁぁぁ!!!」

 

 歩合は男に自分の名を教えた後、すぐに恨という漢字一文字が表面に書かれたドリームバッテリーのようなものを男の身体に装填していく。男はみるみるうちに姿が蠍のような怪物に変わっていった。

 

「サソリ・オミクロン!行ってこーい!!」

 

 歩合はサソリ・オミクロンに街へ向かうよう指示を出すのだった。指示を受けたサソリ・オミクロンは街へと向かっていった。

 

 

 その頃、夢見駅周辺では空野と奈那が戦っていた。両者互角の勝負でどちらが勝つか分からなかった。

 

「なかなかやるじゃない…」

 

「アンタと違って純粋な夢の力を持ってるからね」

 

「空野ぉぉ!!」

 

「矢波ぃぃ!!」

 

 と、2人が激しくぶつかり合おうとした時、2人の背中に毒針が刺さった。

 

「なっ、なんだこれは!?力が…抜けていく…!」

 

「くっ…矢波との決着はお預けみたい…ね」

 

 2人は毒に身体を侵されてしまい、強制的に変身が解けてその場に倒れこんでしまう。

 

 

 

 美影の家にいた叶はテレビで突如、蠍のような怪物が現れたというニュースを見て、いつまでも休んでるわけにはいかない!と美影の家を飛び出して再び夢見駅へと向かっていった。

 

「美影さん、ごめん!私、行かなきゃ!」

 

「あっ、叶ちゃん!!」

 

 美影は飛び出していった叶を追いかけて自分も夢見駅へと向かうのだった。

 

 駅に着くと、辺りには多くの人が倒れていた。そして近くにはサソリ・オミクロンがいた。叶は早速、ドリームチェンジャーを取り出し、左腕に装着する。マイナー・ドリームバッテリーをチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

 変身した叶はドリームーブレードを右手に持ち、サソリ・オミクロンに向かっていくが、サソリ・オミクロンの毒針攻撃のせいで思うように近づけない。そんな叶達の近くに歩合が現れ、美影にこんな事を言う。

 

「君が思う夢って"努力"から成り立つものかもしれない…だけど、実際はそうじゃない。夢ってのは"権利から成り立つものなんだよ!つまり、君の努力はただの時間の無駄に等しいんだ!」

 

「そ、そんな…」

 

 歩合にネガティブな事を言われた美影の身体からピンク色のオーラが出てくる。どうやら、夢の力がなくなっていっているらしい。

 

「私の努力が…"無駄"…!?」

 

「そう、無駄!!」

 

「………」

 

 歩合に何度もネガテイブな事を言われた美影の夢の力はほぼなくなっていた。叶ら夢に希望を見出せなくなりそうになっている美影に怪物と戦いながら声をかける。

 

「あなたの積んできた努力は決して無駄なんかじゃない!!歌手になるのは権力がある人じゃない!沢山の努力を積んだ人だ!!」

 

「…!!」

 

 叶の言葉を聞いた美影はハッとなり、歌手になりたいという自分の夢を再び目指そうという気持ちになる。

 

「美影 奏からさっき以上の膨大な夢の力が出始めた!今なら行ける!」

 

 ムドリンはそう言いながら、美影 奏から出ている膨大な夢の力の一部を空のドリームバッテリーに注ぎ込む。空だったドリームバッテリーは夢の力を得たおかげでちゃんとしたドリームバッテリーへと変化した。

 

「叶、これを使って!!」

 

「ムドリン、これは?」

 

「それは"リズミカルビート・ドリームバッテリー"!!音楽の夢の力を宿すドリームバッテリーだ!リズミカルに戦えば毒針を避けられるはずだ!」

 

「分かった、使ってみるよ!」

 

 ムドリンからリズミカルビート・ドリームバッテリーを受け取った叶はチェンジャーからマイナー・ドリームバッテリーを抜き、リズミカルビート・ドリームバッテリーを装填し、チェンジャーのトリガーを引いてフォームチェンジする。

 

【ドリームーブ!】

 

〈コミカル、ケミカル、リズミカル♪リズミカルビート!!〉

 

 叶はキュアアームド リズミカルビートへとフォームチェンジした。フォームチェンジ後、自分の周りに音符を空中や地面にばら撒いて足場を作る。そして作った足場を使ってサソリ・オミクロンとの距離を詰めていく。

 

「いいね♪これならいける気がする!」

 

「ヴヴォォ!!」

 

 サソリ・オミクロンは自身の毒針を叶に刺そうとするがリズミカルビートの力でリズミカルに動いている叶には擦りもしなかった。そしてサソリ・オミクロンとの距離を充分に詰めた叶はドリームーブレードでサソリ・オミクロンを何回か斬った後、チェンジャーの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。

 

「私のフル夢リズム受けてみろ!」

 

 

「プリキュア・リズミカル・ブレイク!!」

 

 叶は必殺技を発動させた後、サソリ・オミクロンの真上に無数の音符の流星群を降らせる。必殺技を受けたサソリ・オミクロンは浄化されて怪物と人間に分離する。そしてその後、怪物の方だけ爆発と共に消え去っていった。叶は変身を解かないまま美影の元へいく。

 

「美影さん、その夢力…大切にね!」

 

 叶は美影にそう言い、倒れている空野と奈那を連れて自分の家へと帰るのだった。

 

 

 そして家に帰って来てから数時間後、空野と奈那はようやく目を覚ました。奈那は近くに自分が敵対?している2人がいるのに驚いていた。

 

「なっ、何であなた達がここに!?」

 

「何でって…ここ私の家だもん!」

 

「はぁ?私の家?…………えぇー!!!」

 

「どうする?泊まってく?」

 

「結構よ。んじゃ帰るわ」

 

 叶に泊まってくか問われた奈那は結構よと言い、足早に家の外へと出ていくのだった。

 

「あの…助けてくれてありがとう」

 

「あんな所に2人を置いてけないからね!…ってあれ?これは何?」

 

 叶は空野と話している途中、奈那が横になっていた場所にドリームバッテリーの様なものが落ちている事に気づく。

 

「リベラティオ…ブレイブ?どういう能力持ってるのか分からないけど、これ空野さんに渡しておくよ!」

 

「えっ…!私は別に欲しくないし…」

 

「まぁそういう事言わずに受け取ってよ!」

 

 叶はそう言いながら空野にリベラティオブレイブ・ドリームバッテリーを渡す。

 

「…ありがとう。じゃあ、私そろそろ帰る」

 

「わかった!んじゃまた明日、学校で!」

 

 叶は空野を敷地の外まで見送り、姿が見えなくなるまで手を振り続けた。空野も叶に向けて小さく手を振り返していた。

 

「…明日はどんな夢力が見れるんだろうなぁ…!」

 

 叶は紅い空に浮かぶ夕日に顔を向けながら小声でそう呟くのだった……

 

 

 

to be continued.......




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4.推理(すいり)探偵(たんてい)

 某平日の朝8時、叶は目を覚ました。学校には8時半までに行かないとならないが、8時に起きてしまった為、叶が今から支度や食事を済ませてから行くとすると遅刻寸前の時間に学校へ着いてしまう。

 

「うわぁぁ!もうこんな時間!?急がなきゃ!」

 

 叶は支度を数分以内、食事を食パン一枚で済ませて夢見学園へと向かっていく。そしてそれから約20分後、叶は学校へ着いた。

 

「はぁはぁ…ギリギリセーフだ…!…ってあれ、隣のクラスの二木君、何やってるんだろう?」

 

 叶が校内への入り口の左横に目をやるとそこには綺麗な花が並んだ花壇をジーっと見ている隣のクラスの二木がいた。

 

「あの…二木君?もう朝礼始まっちゃうよ〜?」

 

「僕はこの花を枯らした犯人が知りたいんだ!今は犯人ねや手がかりを掴む為に花を調べてるんだ!だから僕に構わず教室へ行ってくれ!」

 

「あ、えっ…うん」

 

 二木の言葉を聞いた叶は困惑しながらも二木を置いて教室の中へと入っていく。叶の席は教室の窓際の方なので教室の窓からは二木がいた花壇が見える。教室に入り、席に着いた叶が花壇を見てみると二木が教師2人に捕まえられて校内へと連れていかれていた。

 

「はぁ…二木君、もったないな〜あんな事で遅刻扱いされちゃうなんて…」

 

 と、叶が1人で呟いていると隣の席の空野が二木について話し始める。

 

「二木の夢は探偵なの。だから、探偵になる為の一環としてあんな事をしてるの」

 

「なるほど…ってか空野さん二木君の事について詳しいんだね」

 

「別に詳しくはないわ。夢は隣のクラスの廊下に貼られた自己紹介カードを見て知っただけ」

 

「そっか」

 

 叶と空野が二木について話していると、担任が教室内へ来て朝のSHRが始まった。朝のSHR後、叶はクラスの男子に二木が本当に探偵になりたがっているのかを聞く。

 

「ねぇ、二木君って本当に探偵になりたがってるの?」

 

「なりたいらしいぜ…全く、"夢を持つ事を禁止する"が校則にないとはいえ、変な夢を持つよな〜」

 

「夢に変なものはないと思うんだけどなぁ…」

 

「まぁ音鎧は夢の事には人一倍敏感だからそう思うんだろうな…」

 

 叶は二木の"探偵という夢"に対して偏見的なイメージを持つクラスの男子に夢に変なものはないと言った。クラスの男子は"音鎧は夢の事には敏感"だから夢に変なものがないと思うんだろうと叶に言い、教室を出ていく。

 

「男子って何で人の夢をすぐに変なもの扱いするのかな〜」

 

 叶はそう呟きながら先程のクラスの男子と同じ様に廊下へと出ていく。廊下には窓越しに外を眺めている空野がいた。

 

「空野さん、どうしたの?」

 

「……ここから見えるドリームインベーションの傷痕を眺めていると、ドリームインベーションに巻き込まれて行方が分からなくなった友達の事を思い出すの」

 

「友達が…」

 

「…で、その子の名前は美羅井 明日奈(みらい あすな)って言うの」

 

「美羅井……明日奈!?ここに転校してくる前に私が通ってた学校にそんな名前の子いた気がする!!」

 

 叶は前、通っていた学校に美羅井 明日奈という人物がいたような気がする!と空野に言う。それを聞いた空野は叶に急接近し、両手で叶の両肩を掴み、叶に前、通っていた学校の事を聞く。

 

「あなた!前の学校の名前は何??」

 

無零(むれい)学園だよ!」

 

「無零学園!?あそこはドリームインベーションで消えたはずじゃ…?」

 

「えっ、無零学園も被害にあったの?私、知らないな〜」

 

「(おかしい…あんな膨大な被害を受けた無零学園が5年で建て直されているわけない…!無零学園の裏には何かありそうだな…)」

 

「空野さん?急に考え込んじゃって…何か悩み事?」

 

「いや、何でもない…とにかく、私は無零学園に行ってくるわ!」

 

「えっ…ちょっ、今いくの!?」

 

「あなたはまた怪物が現れないかどうかここに残って見ていて!」

 

「わっ、わかった…」

 

 空野は叶にそう言うと、駆け足で無零学園の方向へと走っていくのだった。1人残された叶が教室に戻ろうとした時、駆け足で玄関の方へ向かっていく二木の姿が見えた。叶は五分休憩なのに外へ出たら次の授業に間に合わなくなるよと注意するべく、二木を追いかけていく。

 

「はぁ…はぁ…やっと追いついた!二木君、花が気になるのも分かるけど、次の授業間に遅れちゃうよ?」

 

「いいんだ…僕は授業よりもこの花だけが枯れた理由が知りたい…!だって僕の夢はたんていだもん!」

 

「二木君…!でも、夢を叶えるにはある程度段階を踏む必要がある…授業も踏む必要のある段階の一つだよ?」

 

「…なら、出るよ。次の授業だけ」

 

「よし、それでこそ探偵を目指す人だ!んじゃ、私と一緒に学校の中に行こうか!」

 

 

 その頃、二木の夢に偏見を持っていた男子達のうちの1人がトイレから出ようとするとトイレの3番目の個室から歩合 善也が出てきてその男子に声をかける。

 

「ねぇ、君の他人の夢を否定する力…活かしてみない?」

 

「だっ…誰なんだよ!?アンタは…!」

 

「そんなことはどうでもいい…さぁ、楽しい時間の始まりだ…!」

 

 歩合はそう言いながら、盗という漢字一文字が表面に書かれたドリームバッテリーのようなものを男子の身体に装填していく。男子はみるみるうちに怪盗のような姿に変わっていった。

 

「カイトウ・オミクロン!行ってこーい!!」

 

 そして叶と二木がそれぞれの教室へ入ろうとした時、校庭から崩壊音が聞こえてきた。

 

「なっ何事だ!?」

 

「また怪物が…!二木君、教室にいて!」

 

「アンタはどうするの!?」

 

「外の様子を見てくる!」

 

 叶は二木にそう言い、近くのトイレの個室に入り、制服の内側に隠していたドリームチェンジャーを取り出し、左腕に装着する。そしてマイナー・ドリームバッテリーをチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

「そういえばこの剣、名前つけてなかったな…よし、アームドスラッシャーに決定!!」

 

 変身した叶は持っている剣に命名してから外にいるであろう怪物の元へと向かっていく。

 

 そして校庭に行くと、そこには怪盗の姿を怪物がいた。皆は教室の窓から怪物を見ている。

 

「このままじゃ皆が危ない…!早く終わらせなきゃ!」

 

 叶は怪物に気付かれないうちにアームドスラッシャーにリズミカルビート・ドリームバッテリーを装填し、必殺技を放つ。

 

〈リズミカル・ムーブメントスラッシュ!〉

 

 必殺技を放った瞬間、アームドスラッシャーから無数の音符が出て、怪物へと向かっていく。だが、左足に当たった一発以外は全て弾かれてしまい、必殺技は決まらなかった。

 

「何っ!?」

 

「ヴォォォォ!!!」

 

 必殺技を耐えたカイトウ・オミクロンは叶に二枚のカードを投げつける。叶はカードをキャッチし、そのカードの絵を見る。

 

「エクスプロージョン…?…まさか!!」

 

 カードには爆破を表す絵が描いており、その横にはエクスプロージョンという文字が入っていた。文字を見た叶はカードを手放そうとしたが、時すでに遅く、カードは爆発し、叶は爆発に巻き込まれてしまった。

 

「リズミカルビートが通用しないなんて…!」

 

「叶、二木から夢の力を借りてくる!彼から夢の力を借りればきっと新しいドリームバッテリーが出来上がるはず!」

 

「分かった、それまで粘ってるよ!」

 

 ムドリンは叶にそう言い、二木の元へと向かっていく。叶はムドリンが新しいドリームバッテリーを作るまでカイトウ・オミクロンの攻撃を避けて続けていた。

 

「君、力を貸してくれ!」

 

「えっ…何!?」

 

「君の夢の力が必要なんだ!さぁ、自分の頭の中に夢を思い浮かべて!!」

 

「よく分からないけど…やってみるよ」

 

 ムドリンの言葉を聞いた二木は頭の中に自分の夢である探偵を思い浮かべる。その瞬間、二木の身体から膨大な夢の力が溢れ出す。

 

「よし、これならいける!」

 

 ムドリンはそう言いながら、二木から出ている膨大な夢の力の一部を空のドリームバッテリーに注ぎ込む。空だったドリームバッテリーは夢の力を得て正式なドリームバッテリーへと変化した。

 

「叶、新しいドリームバッテリー出来たぞ!」

 

「早くちょうだい!!」

 

「分かった!」

 

 ムドリンは出来上がったクイックディテクティブ・ドリームバッテリーを叶に渡す。ムドリンから新たなドリームバッテリーを受け取った叶はドリームチェンジャーからリズミカルビートを抜いた後、クイックディテクティブ・ドリームバッテリーをドリームチェンジャーのバッテリー装填口に装填する。そしてチェンジャーのトリガーを引いてフォームチェンジする。

 

【ドリームーブ!】

 

〈reasoning but fast!クィックディテクティブ!!〉

 

 叶はキュアアームド クィックディテクティブへとフォームチェンジした。フォームチェンジ後、戦い始めた時からの敵のデータが叶の目の前に表示され、敵の弱点やどういう攻撃をすればより多くのダメージが与えられるかなど書かれていた。

 

「弱点は左足かぁ…確かに、さっきの攻撃で左足だけダメージが入った気がするな…よし、左足狙いでいこう!!」

 

 叶はデータを元に敵の弱点である左足へ向かっていく。カイトウ・オミクロンは自分に向かってくる叶にカードを数枚投げつけるが、叶は向かっている間にも戦い始めてからのデータを元にカードが飛んでくる場所を予測し、華麗に避けながらカイトウ・オミクロンとの距離を詰めていく。

 

「よし、距離は充分に詰めた!さぁ、あなたに私のフル夢サーチ見せてあげる!」

 

 叶はカイトウ・オミクロンにそう言いながら、チェンジャーの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。

 

「プリキュア・クィックサーチ・ブレイク!!」

 

 叶が必殺技を発動させると、カイトウ・オミクロンの左足の周りに無数の照準が現れ、叶が必殺技名を言うとともにその照準から浄化能力を持ったビームが放たれる。弱点である左足に必殺技を受けたカイトウ・オミクロンは浄化されて怪物と人間に分離する。そしてその後、怪物の方だけ爆発と共に消え去っていった。

 

 カイトウ・オミクロンとの戦いが終わった後、叶は変身を解かないまま二木の元へと向かった。

 

「二木君、その夢力…大切にね!」

 

 叶は二木にそう言った後、皆に気付かれないように教室へ戻る。教室内は先ほどの戦士と怪物の話をしている人で溢れているのだった…

 

 

 そして夢見学園のすぐ近くには奈那がいて、夢見学園が禁じられている行為である"夢を持つ事"をしているのを見てこう言う。

 

「これは国で禁じられている"夢を持つ事"から生まれる夢力……」

 

「主犯は音鎧 叶。彼女を捕まえれば夢力が湧き出すこともなくなる」

 

「音鎧 叶は私が捕まえる……って派生(はせ)!?いつからいたの?」

 

「うーん…ちょっと前から!」

 

「……で、アンタは何をしにここへ?」

 

「ドリーム・インベーションの事を探りに来たの!でも、この様子だと音鎧 叶を取り締まるのが先そうね」

 

「うん、私は必ず音鎧 叶を捕まえる…!!」

 

 奈那は派生にそう言い、ドリムポリスの方へと歩いていってしまった。派生は少し遅れて奈那についていくのだった…




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5.夢零(ドリームレス)狂戦士(バーサーカー)

 叶がカイトウ・オミクロンと戦っている時、空野は叶が元いた中学校である無零(むれい)学園に来ていた。無零(むれい)学園の外観は本当にドリーム・インベーションの被害に遭ったのか?と疑うくらい綺麗だった。

 

「まさか、本当にあったとはな…しかも、被害を受けたとは思えない程、綺麗だ…」

 

 空野がそう言いながら、正門近くをウロウロしていると2人の少女が正門の向こう側から閉まっている正門を飛び越え、空野の元へ来た。

 

「アンタ…何者だ?」

 

「私は空野 想花。未羅井 明日奈を探しに来たんだけどあなた達、何か知らない?」

 

「フン、未羅井 明日奈の友人という事はアンタも夢を持つ者か…悪いけど、上からの指示で夢を持つ者は排除しろと言われてるんだ…」

 

 そう言いながら少女2人はナイトメアシューターというドリームチェンジャーの色違いの物を取り出し、1人はアウトレイジ・ドリームレスバッテリーを、もう1人はグロル・ドリームレスバッテリーをシューターに装填し、シューターの左サイドにあるトリガーを引いて変身する。

 

【ディスペアームーブ】

 

〈悪・逆・無・道!アウトレイジ…!〉

 

 

【ディスペアームーブ】

 

〈咬・牙・切・歯!グロル…!〉

 

 2人はシャドウムーマ アウトレイジとヘルメイト グロルというプリキュアに似た存在に変身した。

 

「何っ!?」

 

「私達はこの世界から夢というものを無くす為にソリード・アルマから雇われたシャドウムーマ、隣はヘルメイトだ」

 

「夢は無くならない…!いや、無くさせない!!」

 

 空野はそう言いながら、シャドウムーマとヘルメイトへ向かっていく。シャドウムーマとヘルメイトは常に黒いオーラを放っており、その黒いオーラには精神的にくる何かが仕込まれていた。

 

「ぐっ…なんだこのオーラは…!?」

 

「これは夢の力を奪うドリームレス・エネルギー…ソリード・アルマ産だ」

 

「…だったら、新しい力で!」

 

 空野はそう言いながら、叶から貰ったリベラティオブレイブ・ドリームバッテリーをマイナー・ドリームバッテリーと入れ替えでドリームチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いてリベラティオブレイブにフォームチェンジする。

 

【ドリームーブ!】

 

〈Release power brave! リベラティオブレイブ!!〉

 

 リベラティオブレイブにフォームチェンジした空野は炎と水のエレメントを両拳に宿して球体にする。そしてシャドウムーマとヘルメイトに球体となった炎と水のエレメントを投げつけていく。

 

「ムーマ、シールドを展開して」

 

「ok!はい、展開!!」

 

 シャドウムーマはヘルシャドウシールドという専用の盾を取り出して空野の攻撃を防ぐ。

 

「何っ!?」

 

「これで終わりだ、キュアブレイブ…」

 

 ヘルメイトはそう言いながら、ナイトメアシューターの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。

 

「ナイトメア・レンゲキブレイク…!」

 

「このままではまずいわね…だったらこれで!」

 

 空野はリベラティオブレイブに搭載されているワープの力で必殺技を受ける寸前で戦いから離脱した。そしてワープの力で無零学園の中に入っていく。

 

「明日奈!どこにいるの?」

 

「ここだよ〜」

 

 空野が校内で明日奈の名を呼ぶと近くから明日奈の小さい声が聞こえてきた。

 

「想花こっちに来て、早く!」

 

 早く!と急かされた空野は音を立てないくらいの早歩きで明日奈のいる場所へ行く。

 

「明日奈、無事だったのね!」

 

「えぇ、何とか!ってか想花、無零のヤツらに喧嘩売った?」

 

「売った?…のかな」

 

「それはまずいわ…早くここから出なければ…!」

 

「なら、今の私の力でどこかへワープ(ルーラ)しよう!」

 

「ワープなんてあるのね…よし、ワープ頼むわ!」

 

 明日奈にそう言われた空野はリベラティオブレイブのワープを使い、一気に無零学園の外までワープする。

 

「ふぅ…出れたわね。あっ、そうだ!これ、無零学園から私を出してくれたお礼!」

 

「これは…?」

 

「これは"バーニングトリガー"!!短期決戦型で夢力を短時間で多く使えるの!」

 

「何故、今これを?」

 

「いや…ドリムポリスが夢見学園に強行手段を取ろうとしてるし…少しでも力になればなぁ…と思って」

 

「強行手段!?いきなり強行手段で来るの?」

 

「いや、ドリムポリスは今までに何回も政府の指示に従わないとの噂のある夢見学園を捜査しようとしていた…けれど、夢見学園側がドリムポリスの捜査を拒み続けてきた。そこで今回、ドリムポリスは強行手段を取るって訳」

 

「まずい…早く叶のところに行かなきゃ!明日奈も一緒に来て!」

 

「え、えっ…あ、、うん!」

 

 空野は夢見学園に危機が迫っている事を明日奈から聞いた瞬間、目の色を変え、少し焦りながらも明日奈と共に夢見学園を目指すのだった。




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6. 夢見(ユメミ)夢警察(ドリムポリス)

叶がカイトウ・オミクロンとの戦いを終えて一息つこうとした時、夢見学園の正門から銃声が聞こえてきた。

 

「黙秘を続けてはや2週間。夢見学園が真相を言うのを待つ必要はない…行けっ、あんた達!夢見学園強行突入よ!」

 

 奈那は武装部隊にそう言い、正門を壊して夢見学園の敷地内へと突入させていく。

 

「叶、ドリムポリスの奴らが学園内にまで侵攻してきてる!」

 

「嘘でしょ!?」

 

「いや、本当だ。とにかく、早くドリムポリスの奴らがいる場所まで行こう!」

 

「うん!」

 

 叶が学園の玄関から一歩出ると、そこには多くのドリムポリスの兵がいた。そしてその集団の中心には奈那と派生がいた。

 

「音鎧 叶…今回はこの学園に隠された真相を暴くと共に夢を持つお前を捕まえに来た!!」

 

「待ってよ、何で夢を見るのがダメなの?」

 

「そんなことは知らない」

 

「何で!?」

 

「夢を見るのがダメな理由を知ってしまえば夢の意味を追求し、やがて夢を見てしまうからだ!」

 

「そんな"こじ付け"だけで夢を見る事を禁じるな!!」

 

「こじ付け……か。そう思うならそう思えば良い…私は、いや私たちは国の指示を受けて動くドリムポリス!国に逆らう輩は全てこの手で捕まえる」

 

 奈那はそう言いながら、プロトドリームチェンジャーを取り出して左腕に装着する。そしてホークアイパトロール・ドリームバッテリー、チェンジ・ドリームバッテリーの二本をチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【プロトドリームーブ!】

 

〈Lock on the enemy!キュアガード・ホークアイ…!!」

 

 

「どうやら戦うしかないみたいだね…」

 

 言葉では奈那に伝わりそうにないと感じた叶はドリームチェンジャーを取り出して左腕に装着する。マイナー・ドリームバッテリーをチェンジャーに装填し、チェンジャーのトリガーを引いて変身する。

 

【ドリームーブ!】

 

〈夢、掴ムーブ!キュアアームド・マイナー!!〉

 

 

「奈那、私も加勢するわよ?」

 

「派生、お前は先に進め!先に進んで夢見学園の秘密を手に入れろ!」

 

「……分かった」

 

 奈那は派生を加勢させずに先に校内へと進ませる。叶は校内へと歩みを進める派生を止めようとするが、目の前にいる戦闘態勢に入った奈那を放って逃げるのはこの学園の被害の拡大に繋がると思い、奈那の相手をする事にした。

 

「来なさい、音鎧 叶!!」

 

「うぉぉ!!」

 

 

 叶は奈那が言葉を言うのと共にシューターのトリガーを何回も何回も引いて多くの光弾を奈那へ放つ。

 

「フン、最強の防御を誇る私の前ではあなたの放つ球は全て無駄弾…」

 

 奈那は叶が放った光弾を全て叶へ向けて弾き返す。叶は弾き返された後段に当たってしまい、大ダメージを受ける。

 

「ぐっ……」

 

「これが私の力。あなたは私に勝てない」

 

「なら、これで!」

 

 叶はそう言いながら、マイナー・ドリームバッテリーを抜き、リズミカルビート・ドリームバッテリーを装填し、チェンジャーのトリガーを引いてフォームチェンジする。

 

【ドリームーブ!】

 

〈コミカル、ケミカル、リズミカル♪リズミカルビート!!〉

 

 リズミカルビートにフォームチェンジした叶は奈那の周囲に音符をばら撒き、その音符を足場にしながら奈那の隙を伺う。

 

「くらえっ!私のフル夢リズム!!」

 

 叶は奈那の僅かな隙を見つけ、チェンジャーの右サイドにあるボタンを押して必殺技を発動させる。

 

「プリキュア・リズミカル・ブレイク!!」

 

 叶は奈那の真上に無数の音符の流星群を降らせる。その後、足場にしていた音符全てを右手の拳に込め、奈那に向けて放つ。

 

「いっけぇぇ!!」

 

「攻撃が甘い…甘いんだよぉ!!!」

 

 奈那はそう言いながら、叶の放った音符を右手のひらでかき消す。当然、ダメージは少しも受けていない。

 

「嘘でしょ!?私の攻撃が全く効いていない…」

 

「次はこっちの番だ!」

 

 奈那は夢見学園の校舎の壁を使い、あちこちを素早く動き回って叶を翻弄し、隙を生ませる。

 

「これが下らない"夢"とかいうものに浸らない者の動きよ。見えないでしょ?」

 

「(全く見えない…これじゃまともに攻める事が出来ない)」

 

「隙だらけだ!」

 

 叶がどう動けば良いのか分からずにその場で身動き取れずにいると、素早く動き回っていたはずの奈那がいきなり自分の背後に現れた。叶は素早く守りの構えをとろうとしたが、奈那の攻撃が早すぎて守りの構えをとることが出来なかった。

 

「ぐわぁ…!!」

 

「フン、楽すぎるわ。貴方、そんなんで本当に夢を守るつもり?」

 

「守るさ!守って想いや期待、繋がりを未来へ継ぐ!!」

 

「想い、期待、繋がり…夢にそんなものがあるからあの事件は起きた!!」

 

「えっ…?」

 

「ドリーム・インベーション……人の想いや期待、繋がりみたいな夢に関する力が溜まりすぎたせいで起きた!」

 

「そんな事があるわけ……」

 

「あったのよ…ソリード・アルマからの報告書を見た。報告書には夢に関する力が溜まりすぎた影響で大規模な爆発が起きたと書いてあった」

 

「でも、夢の力を溜める建物なんかないよ?」

 

「あるわ…いや、正確にはあったと言った方がいいかもしれない。貴方は知らないと思うけど、旧・ドリムポリスと呼ばれる守衛学園の少し奥に夢の力を溜める巨大なタンクがあったの」

 

 叶は旧・ドリムポリスと聞いた瞬間に奈那の大切な人や物を失ったという事を完全に察した。

 

「……でも、全てを知らないのに悪いのは"夢"っていう決めつけは良くないよ?」

 

「決めつけなんかじゃない……全て夢の力のせいなんだァァ!!」

 

 奈那は止めていた手を急に動かして叶の左肩を殴ったり、右足に強烈な蹴りを入れたりする。奈那の攻撃を受けた部位の装甲は砕けてしまい、そこから小さく青紫に染まった斑点の目立つ肌が露出する。

 

「駄目だ…またやられちゃう。何か打開策はないのかな?」

 

「これで終いよ、音鎧 叶!!」

 

 と、奈那が叶にトドメを刺そうとした瞬間、誰かが奈那の右脇腹を思い切り蹴り、近くの鉄製のフェンスまで奈那を吹っ飛ばしていく。

 

「空野さん…!と……明日奈!?」

 

「叶、久しぶり!…あれ、どうしたの?その痣…」

 

「たった今、受けた攻撃で出来たの。すごく痛い……」

 

「そうなのか…あ、そうだ。はいこれ!」

 

 明日奈と叶は久しぶりの再会をした。再会早々、叶の痣を見た明日奈は戦いの優劣の状況を察して叶にバーニングトリガーを渡す。

 

「これは?」

 

「これはバーニングトリガー!短時間でいつもの倍くらいの夢力を使えるの!ただ、変身解除した後の負荷もいつもより多くなるけど……」

 

「使うよ。私はこの学園を守る、そして夢の自由を取り戻す為の一歩を踏み出す!!」

 

 叶はバーニングトリガーの副作用を聞くも迷わずバーニングトリガーを使うことを決意する。それほど叶の夢に対する想いは強いのだろう。

 

Burning Dream!!!

 

 叶は早速、バーニングトリガーを起動させてドリームチェンジャーのもう一つの空きスロットに装填する。

 

「私の夢力よ…炎のように燃え上がれ!!!」

 

 叶はそう言いながら、チェンジャーのトリガーを引いてバーニングマイナーへとフォームチェンジする。

 

〈夢、絶対!掴ムーブ!キュアアームド・バーニングマイナー!!〉

 

 

「姿が変わっただと!?」

 

「叶に宿る夢の力が多いからこそ変身できる姿……叶、那奈の相手は私に任せてあなたは学園内にいるドリムポリスの相手を頼むわ!」

 

 空野からの指示を受けた叶は学園内へと入っていき、さっきまで那奈と一緒にいた派生を探していく。

 

 

「さてと、始めましょうか。私とあなたの戦いを…」

 

「前回邪魔が入ったせいでドローになった分、暴れさせてもらうわ」

 

 

 学園内に侵入した派生を追う叶、そして那奈と戦いを始めようとしている空野。2人は夢見学園を守り切れるのか…!?




NEXT「夢→キミの炎」


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