愉快犯?イタズラっ子?が人造人間になりまして (五十鈴暮月)
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愉快犯?イタズラっ子?が人造人間になりまして

ノリと勢いで書きました。小説を書くのは初めてなので容赦なく指導して頂けると幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。

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少女Aは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の真理を除かねばならぬと決意した。少女Aには難しい事がわからぬ。少女Aは、イタズラ好きな学生である。安全性のある落とし穴を掘り、黒板消しのトラップを仕掛けて遊んでいた。だからと言うべきか、面白そうな事に対しては、人一倍に敏感であった。

 

…と、現実逃避をしてもこの状況は変わらないわけで。はじめまして読者の皆様、少女Aです。

 

放課後の校庭で落とし穴を掘ったついでにハガレンに出てくる人体錬成の錬成陣を描いていたらウッカリ転んで手をついてしまってあら大変。なんか白い空間で神やら真理やら名乗る奴に色々言われて、目が覚めたら…嫉妬のホムンクルス、エンヴィーになってました。

 

 

 

 

………なんッッッでだよ!!!!

 

いや嬉しいよ?ハガレン世界に来れた事は嬉しいよ?でもね、どうせなら村人Aとかにして欲しかったなぁぁぁあああ(切実)

 

だってエンヴィーだよ?!敵キャラ!!!しかも死亡フラグが!!多い!!

 

え、我少女Aぞ?人より少し運動神経と面白い事を起こすのが得意なただの人間ぞ?

 

もっと適任者いただろJK(常識的に考えて)!!!

 

 

閑話休題。

 

 

…ところで私、何処にいると思います?

 

 

せーいーかーいーは、

 

 

 

 

 

 

黒幕(お父様)+aの前でした。

 

初っ端から詰んでるわバカタレ!!!

 

「新しい兄妹ね。私はラスト、こっちはグリードよ。宜しくね。」

 

ウワアキレイナオネエサントヤンキーナオニイサンダナア(現実逃避)

 

どうしよう、こんな時どんな顔すればいいの教えてエロい人…。

 

 

 

 

 

ー笑えばいいと思うよー

 

って笑えるかバーロー!!!

 

決めた。私は!愉快に!生きる!!!全員とは行かないがなるたけ救済してやる!!原作崩壊?知るかそんなモン!!!私がエンヴィーである以上とっくに崩壊してるだろ!?というか…

 

 

こんな面白い事見逃したら一生後悔する!!!

 

この世界のエンヴィーは私だ!!(何故かエンヴィーが女体化してるし、多分私が女だからだろ。)

 

とりあえず挨拶?しとくか。

 

「私はエンヴィー。宜しく、ええと…姉さん、兄さん。」

 

因みに私は4番目らしい。マジか。あと兄妹二人が何故か悶絶してるんだけど何故?←姉さん、兄さん呼びされたからだよ。



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あれから大体100年後

「待ちなさいエンヴィー!!!」

 

「待てと言われて待つ奴が居るかよ!!しつこいぞ姉さん!!!」

 

どうもこんにちは、こんばんは。エンヴィーに転生した少女Aです。突然ですがクーイズ。私は今、とある事をして姉さん…ラストに追われています。何をしたでしょう。

 

1.落とし穴を仕掛けた

 

2.グラトニーにイタズラの証拠を飲み込ませた

 

3.ラストが落とし穴に落ちた

 

さぁ、どーれだ?

 

 

正解は…全部でした!!

 

一つ言い訳をするなら、落ちるのはプライド兄さんの予定だったんだ。真逆姉さんが落ちるとは思わなかったんだ。

 

「はぁ…はぁ…追いついたわよ、エンヴィー。」

 

「ヤバッ…ち、ちょっと待て、話せばわかるだから」

 

「問答無用!!!」

 

マズイマズイ姉さんの目が据わってる説教5時間の目だヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダや…

 

「エ・ン・ヴィー?」

 

あ、オワタ/(^o^)\

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「これに懲りたら、もう私にイタズラを仕掛けない事ね。」

 

「断る!」

 

「あなたのおかげでこの辺は罠だらけよ。これ以上地下を魔改造するならお父様だって黙っていないわ。」

 

だろうね。でも、そうなると予想して既に手は打ってあるんだ。

 

「大丈夫、お父様に地下改造の許可は取ってあるから。」

 

エンヴィーとして生まれてから10年位経った時、私は原作開始時に向けて色々な対策を立て始めた。その結果、地下がかなーりワケワラナン構造になったのは仕方ないとして…うん、姉さんが怒るのも当たり前だな。

 

だが、私は止めるつもりなどミジンコ程も無い。原作崩壊を誓った時は自暴自棄だったが、こうしてエンヴィーとして生きている内に兄妹達にも愛着が湧いてきたのだ。取り敢えず姉さんは絶対に助ける。

 

…前世?の家族仲は冷め切っていたからか、彼らを兄や姉と呼ぶ事に躊躇いは無いし、私がイタズラを仕掛けるようになったのもそれが原因…詰まる所、私は両親に構って欲しかったのだ。…私は、イタズラに依存している。コレをしないと構って貰えないのではないかと思ってしまう。…もう100年もの間人造人間として生きているのに、私は人であった頃を割り切れない。とても、臆病だ。

 

無論、人造人間となって変わった事もある。一番は人を殺しても何とも思わなくなった事だろう。…というか、殺す過程でよくイタズラを仕掛けるのが楽しいのだがこれは元人間としてかなりマズイのでは?ま、今更だけど。

 

「はぁ、全くあなたは…」

 

「楽しいモンは楽しいの。それよりグリード兄さんは?薬品の調達頼んだんだけど。」

 

薬品もやはりイタズラに使うヤツだが、毒や麻酔を作る時もある。人造人間だから私達はあまり使わないけど、備えあれば憂いなしっていうからね。で、丁度任務が入ったグリード兄さんに頼んだんだけど…帰ってくるのが遅い。

 

…ちょっと待て、確かグリードがここを出て行くのって原作開始時の100年前だったような…あっるぇえ?え、逃げた?嘘だろ兄さん…。嘘だよなぁ?

 

「姉、さん?兄さんは…裏切ったり、しないよね…?」

 

居なくなったり、しないよね?

 

私が震える声でそう訊くと、姉さんはそっと目を伏せた。…それが全ての答えだった。

 

「そっ、…か。」

 

正直、原作のエンヴィーとは違ってグリードとはかなり仲が良かったと思う。そう、思いたい。でも…私には一言も言わずに兄さんは出て行った。…勿論、私が兄さんの裏切りをお父様にチクる可能性や私も裏切り者扱いされる可能性も考慮しての事だろう。でも、感情が追いつかない。私をそんなにも信用出来なかったのかと、マイナスに考えてしまう。…私、そんなキャラじゃないのにな。でも、兄さん。私を、家族を裏切ったんだから、見つかったらそれなりの覚悟はして貰わないと、ね。そうだ、イイコト思いついた。

 

「エンヴィー、グリードは」

 

「…して…る…。」

 

フフッ、と思わず笑みが溢れる。

 

楽しみだなぁ、私の渾身のイタズラを見たら…兄さん、どんな顔をするんだろう。兄さんが実はホラー苦手だって、私知ってるんだからね?そうと決まれば地下にお化け屋敷を作らないと。これくらいの仕返しなら、笑って許してくれるよね?

 

どんなお化け屋敷を作ろうかな。やっぱり日本っぽいのがいいかな。夜の学校とかもいいしお城とかでもいいな。古風な感じでいかにもっていうヤツの方が恐怖を煽れるし、いっそのこと茅葺き屋根の…駄目だ。ススキとか生えてないじゃん。今から作るにしてもなぁ…、うーん…。諦めてお寺か神社にするかぁ。

 

 

勿論墓地付きで、ね。

 

 

 

 

 

ところで姉さんは何で真っ青な顔をしてたんだろう。←アンタの笑顔が怖かったからだよ。



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妹に優しい?

 

グリードが家出してから数年後、衝撃的な事実が発覚した。

 

 

 

なんと…私の体重が、異様に軽かったのだ。

 

 

あれれ〜?おッかしいぞぉぉおおお?いやなんでだよ!!!なんッッッでだよ!!!!

 

閑話休題。(心を落ち着けています)

 

で、とりあえずエンヴィーの真の姿ってヤツになってみたわけさ。結果…

 

 

 

ツノと翼と尻尾が生えてめちゃくそかわええロリッ娘になった。プライド兄さんより小さい…多分5歳位の。何故だ解せぬ。

 

いや確かに七つの大罪で嫉妬に当たるレヴィアタンは悪魔だっていう説もあるけどね?私はエンヴィーであってレヴィアタンでは無いわけさ。なのに何故に悪魔?私がエンヴィーになっただけで原作崩壊し過ぎじゃねwww?って、笑えねーよ!!これっっっっぽっちも笑えねーよ!!!!

 

し・か・もなんかチート化してるし!?何で前世で見たアニメキャラとかにもなれるんですかねぇぇえええ?まあ?私は問題児ですし?この能力を発見して一番に思った事がイタズラの幅が広がる!!でしたから?

 

能力の無駄遣い?へっ。やりたい事をやって何が悪い。

 

とりあえず…

 

 

 

 

 

グリードが帰って来たらお化け屋敷に押し込めて丑の刻参りやってる所を見せて墓場に誘導してキメラで作った幽霊達をけしかけて厠に閉じ込めてトイレの花子さんとか色々やってテケテケさんに変身して追いかけたら気絶するだろうからそこを写真に撮って魂が消えるまで弄ってやる(ゲス顔)。

 

鋼のおチビさんがお父様を倒す為にはグリード二世の協力は絶対に必要だからなぁ…。スマン兄貴、一回死んでくれ。

 

いや、お父様は好きだけどさ、でも私の優先順位って

 

兄妹>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>(超えられない壁)>>>>>>>お父様

 

なんだよね。はっきり言って産んでから私達をほぼ放置しているお父様と家族として大切にしてくれている兄妹達の優先順位が同じなわけなかった。ホムンクルスが人間の家族だったらお父様、今頃ネグレクトで逮捕されてるよ。因みに兄妹の優先順位は

 

ラスト>>>>>グラトニー=プライド≧グリード>>>>>>>>>>スロウス

 

だったりする。スロウスはあまり関わった事無いし、仕方ないね。ラースはほら、未だ生まれてないから。プライド兄さんの株が高いのは影でよく遊んでくれるからだよ。あと50年位前に一緒にトラップ作ってグリード兄さんに仕掛けたり、ラスト姉さんを労る日と称して家事代行したり(私が料理、プライド兄さんが掃除をした)、結構接点あるんだよね。

 

あとプライド兄さん、無意識なのか故意なのかわからない(多分無意識)なんだろうけど私と姉さんに対しては結構甘いんだよ。多分妹だから。姉さんは私達の中でお母さんっていうポジだから優しくするのはわかる。でも私にまで優しいんだよ?これ、女…というか妹だからだとしか考えられないんだけど。

 

代わりに?グリード兄さんやグラトニーに対してはめちゃくちゃ厳しいです。グリード兄さんが家出する前の話なんだけどね…。 _______________________________________________________________

 

 

 

「何をしているんですか?」

 

「あ、プライド兄さん。これ作ってみたんだ、飲んでみてよ。」

 

そう言って私は特製野菜ジュース(臭いは無いし見た目も普通だがとても不味い)を差し出した。

 

「ありがとうございます。丁度喉が渇いていたんですよ。」

 

そう言ってプライド兄さんはそのクソ不味いジュースを…一気飲みした。

 

「どう、かな…。」

 

私が恐る恐る訊ねると兄さんは、

 

「とても美味しいですよ。ああそうだ、グリードが小腹がすいたと言っていたのでジュースと一緒にコレを渡してください。」

 

と言って私にマフィンを差し出した。私は直ぐに行ってジュースとマフィンをグリード兄さんに渡したのだが、グリード兄さんはマフィンに口をつけるや否や白目を剥いて倒れてしまった。あとで知った事だが、あのマフィンはプライド兄さんがありとあらゆる調味料をブッ込んで作った劇物だったらしい。

 

その後プライド兄さんがお使いのお礼と言ってくれたクッキーはとても美味しかった。途中、それを見たグラトニーが私のクッキーを一枚取ったが、口に入ることは無かった。プライド兄さんの影がグラトニーの手を切り捨てたからである。

 

尚、気絶していたグリード兄さんはプライド兄さんに無理矢理起こされ切れた調味料の買い出しをされられていた。理不尽。

_______________________________________________________________

 

…うん、やっぱりプライド兄さんは妹に甘い。私がグラトニーのおやつを取った時だってプライド兄さんはデコピンしかしなかったし。逆にグリード兄さんがジュースとマフィンの仕返しとしてビリビリジュースを私に渡してきた時はお説教(物理)してたし。

 

それとも弟に厳しいだけ?

 

「そこんとこどうなの兄さん。」

 

「ラストは家事等で負担を掛けてしまっていますし、エンヴィーは侵入者や情報漏洩対策の罠を私の代わりに仕掛けに行って貰っていますからね。」

 

結論:仕事をちゃんとする人には優しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、じゃあお父様は?」

 

「…ノーコメントで。」



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イシュヴァール戦の真実

 

 

ハロハロ、エンヴィーだよ。ただ今イシュヴァール戦真っ只中。鉛玉の雨の中、遠い目をして突っ立っている私はとても目立っている…ワケなかった。能力使ってドラ○もんに変身して透明マント被ってるからね、見つかるわけないよね。

 

でも一つ言いたい。

 

 

どうしてこうなった(いやマジで)。

 

 

 

そもそも事の発端はお父様からの一つの命令に有った。

 

「そろそろ本格的な準備を始めなくては。…エンヴィー、お前は東部だ。」

 

「…え、あ、はい。」(偵察かな?)

 

 

 

なんで偵察だと思ったんだ私のバカ!!!実行に決まってんだろアホンダラ!!!

 

でもワザとじゃないんだ。いやこの内乱の原因は私なんだけれども!!!でも!!全ては!!奇跡的な!!偶然です!!!私だけが悪いんじゃないもん。強いて言うなら早とちりした彼ら全員が悪い。

 

一体どこから説明したものか…。

 

 

 

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1時間前

 

 

 

「ふぅ…。イシュヴァール人の幼女になって潜入したはいいものの、ピリピリしてて何かを聞き出せる雰囲気じゃないし、かといって何もしないわけにもいかないし………ん?」

 

ふと路地裏を見ると、穏便派で有名な軍の将校が…私の方をジィーっと見ていた。よく観察すると鼻息が荒い。…はっきり言おう、めちゃくちゃキモかった。というか完全に興奮していた。どこがとは言わないが。エンヴィーになってからの経験則からこういう手の輩は山ほど相手をしてきたが(勿論潰す方向で)、未だに慣れない。というか軍に変態がいていいのか?身内が性犯罪とか笑えないぞ?まあ、だが…

 

「ロリコン死すべし慈悲は無い。」

 

これに尽きる。

 

私はそっとヤツに近付いた。

 

「ねぇねぇおじさん、さっきからリヴィの事じっと見てどうしたの?」

 

真逆バレていたとは思わなかったのだろうヤツは明らかに狼狽えてこう言った。

 

「娘が君によく似ていてね、つい見てしまったんだよ。」

 

はいダウトー。お前娘どころか結婚すらしてねーだろ個人情報は事前に調べてあるんだよ。ま、今は見た目はイイコな幼女だからな。適当にふーんって返事したけど。ロリコン確定ですお巡りさんコイツです。

 

あ、リヴィっていうのは私の偽名な。リヴァイア・レヴィアート。リヴァイアサンとレヴィアタンからもじっただけだが、あからさま過ぎて逆に怪しまれないんだ。それでいいのか。

 

とりあえず私はこのペド野郎を社会的にぶっ潰す事にした。いつまでもその鬱陶しい視線をこっちに向けんてんじゃねぇよ。

 

「ねぇおじさん、コレ、なーんだ?」

 

そう言って私の手の中にある物を見せると、ヤツは分かりやすく青ざめた。

 

「何故…それを…」

 

「何でかな?何でかな?」

 

私が見せたのは写真だった。コイツが幼児を誘拐した瞬間の写真。

 

「コレ、軍にバレたらどうなるんだろ。すっごく気になるなー。」

 

くすくすと笑ってヤツの不安を煽る。…正直、やり過ぎたかなとは思った。ここが人通りの少ない、しかもかなりややこしい路地裏だった事も影響したのだろう。…真逆あんな事になるとは。

 

「あ、あそこに誰かいるよ?制服だから軍人だねぇ。おーい!!」

 

…ただのハッタリだった。軍人どころか人一人居なかった。でもヤツは焦った。このままでは自分は終わりだと。だからヤツは…。

 

「すまない…。」

 

パンっと音が響く。ヤツが撃った弾は正確に私の心臓を撃ち抜いていた。…普通の人間なら死んでいただろう。でも私は人造人間(ホムンクルス )だ。死ぬわけがない。だから私は

 

「(再生してる所見せるわけにもいかんし、死んだフリするしか無いかぁ。うわメンドー。)」

 

なんて呑気な事を考えられたのだ。だが私は忘れていた。私の今の姿がイシュヴァール人の子供だということを。私を撃ったのがアメストリス軍の将校だという事を。そして、イシュヴァール戦が始まるきっかけを。

 

「今の音は何だ!!?」

 

「こっちの方だったぞ!!」

 

「おい!子供が…」

 

「早く医者を呼べ!!!」

 

「アメストリス人だ!!!ヤツらやりやがった!!!」

 

あっという間に騒ぎは大きくなり、暴動は内乱へと発展した。それから私は頃合いを見てその場から無事脱出し、建物の影でドラ○もんに変身して透明マントを被ったというわけだ。

 

 

 

 

どうしてこうなった(二度目)。

 

あの時ヤツを煽らなければよかったのか?そもそも接触しなければ…。

 

「そもそも軍が変態を入れるのが悪い。うん、私は悪くない。私は被害者、私は被害者。」

 

人はそれを責任転嫁と言う。

 

「揶揄うだけのつもりだったのになぁ…。」

 

そんな私の嘆きは誰にも届かず、轟音に掻き消された。

 

 

まぁ、ヤツでひたすら遊んだら襲われた風を装って通報する予定だったけどね?よくある嫌われテンプレみたいな感じで。真逆撃たれるとはなぁ…。うん、本当に。

 

「どうしてこうなった(三度目)。」



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原作開始!

どうもどうも、エンヴィーでございます。さて、私は今、何処にいるでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

「あらリヴィちゃん、お使い?」

 

「うん、油が切れちゃったから。ロゼさんは教会に行くの?」

 

「そうよ。リヴィちゃんも行く?」

 

正解はですね、リオールの街中でロゼさんとお話ししていました!!今の姿は10歳くらいの少女です。因みに三年前から孤児院暮らしをしています。

 

「ううん、お使いの途中だから。でも、終わったら行くよ。」

 

何故か?そりゃあ…火種を蒔く為。あ、私が人間じゃないって事はコーネロも知らないよ。だって私、監視役だもん。

 

「じゃあね、ロゼさん。」

 

私はそう言って市場の方に向かう。あと買うものは…包帯と消毒液か。チビ達が外を走り回るから生傷は絶えないし。孤児院じゃあ私も年長の方だからなぁ。

 

「おじさーん、包帯と消毒液ちょうだい。また切れたの。」

 

「つい先週買って行ったばかりなのにかい?チビ達は本当に元気がいい。」

 

「あはは…。幾らかな?」

 

「ええと…、2500センズだね。」

 

「はい。さて、今度はいつ切れるかな。」

 

私がそう言うと、おじさんは苦笑した。

 

 

 

 

「ただ今帰りました。」

 

「リヴィちゃん。お使い、ありがとうね。余ったお金はお小遣いにさはていいから。」

 

私はやった、と無邪気に笑う。三年前からコツコツと貯めていた貯金は、元々の倹約癖も相まってかなりの金額となっていた。因みに私はここ三年、お金を使わないイタズラしかしていない。でも、それももうすぐで終わり。コーネロが失脚したらリオールに留まる意味は無いからね。多分鋼のおチビさんを見張る事になるんだろうし。とりあえず教会に行こう。

 

「日が暮れる前には帰ってくるのよー?」

 

「はぁい!!」

 

ごめんね、先生。…もう帰って来ないよ。

 

私は自分の財産を全て回収し、古着を縫って作ったカバンに必要な物を詰め込んだ。

 

「さようなら。」

 

行こう。私がここに留まる意味は、もう無いのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教会の裏口から忍び込み、彼らを探す。

 

「…上、か。」

________________________

 

「…とえ…そ…り…て?」

 

私はこっそりとコーネロの部屋に忍び込み、物陰から様子を伺う。…ここじゃはっきりと聞こえないな。…これ以上近付いたら彼らの前に姿を見せる事になるけど、まあいいか。

 

…あれ?何でロゼさんが?って…なんかヤバそうなんだけど。

 

「二人共ごめんなさい。それでも私にはこれしか…これにすがるしかないのよ。」

 

あー、そういう。

 

「ロゼさん。」

 

「リヴィ…ちゃん…?」

 

「「誰?」」

 

「子供…?」

 

あ、驚いてる驚いてる。

 

「お前、いつからそこに?」

 

「ちょっと前から。…ねぇ、あなたは最愛の人を取り戻す為に沢山の人を殺せる?一人や二人じゃない。もっとたくさんの人を、自分の手で殺せる?」

 

「何を…」

 

「答えて。」

 

私は、ロゼさんが好きだ。彼女はすごく人間らしいから。だから私は、彼女をどうしてもあの残酷な真実に近づけたくなかった。…絶対にありえないなんて、そんな根拠はどこにもないから。原作と違って、彼女が恋人を求める可能性はゼロでは無いから。だから。

 

「出来るわけ…ないじゃない…。」

 

「うん、あなたはそういう人だもんね。」

 

くすくす、と私の笑い声だけが響く。

 

「じゃあ、さ。私を殺せる?」

 

人造人間(ホムンクルス )である私を使って人体錬成をすれば、ロゼさんの恋人は必ず蘇る。賢者の石を使うから、失敗はほぼありえない。

 

「命には命を、だよ。…ねぇ、ロゼさん。…あなたが私を生贄にして人体錬成をすれば彼に会えるって言ったら、あなたはその可能性に縋るの?」

 

ロゼさんの顔が青ざめる。…やっぱり、あなたは優しいね。だから私は、あなたの心を折る。希望を壊す。…そうしないと、あなたは諦めないから。

 

「…鎧の人、中身が空っぽだよね?金髪の人も右腕と左足、機械鎧(オートメイル)でしょう。人体錬成の代償、やっぱり大きかったみたいだね。」

 

「なんで…」

 

「知っているから。人体錬成に失敗した人の末路を見た事があるから。」

 

軽く50年は前だけど。

 

「それで?あなたはどうするの?」

 

「私…私は…」

 

これで、いい。

 

「ねぇ教主さん。これで彼女があなたの思い通りに動く事は無くなったし、さっさと逃げた方が身の為だと思うよ?」

 

まぁ、無駄な忠告だと思うけどさ。案の定、ヤツはキメラを練成して私達を殺そうとしてきた。私?気配を殺して逃げたよ?当たり前じゃない。

 

コーネロはその後、鋼のおチビさんによって町の人達の信頼を失ったし。うーん、鋼のおチビさんってなんか違和感あるなぁ。まず私がチビだし。あ、そうだ。

 

「一件落着、か。」

 

「おい、お前。」

 

「…何かな、鋼のお兄さん。」

 

うん、これなら違和感ない。

 

「お前は…何者なんだ…?」

 

「私?私はリヴァイア・レヴィアート。…ただのバケモノ、だよ。」

 

疑ってくれていい。敵視されてもいい。それで兄妹が救えるなら、私はいくらでもあなたに情報を渡そう。

 

「またね、鋼のおチビさん。」

 

次はたっくさんイタズラさせてね。結構いい反応してくれそうだし。

 

「ふふっ…楽しみだなぁ。」

 

この後あのクズ教主に化けなきゃいけないのかと思うと反吐が出るけど。こうなったらクソ教主の性癖暴露してやる。ラストが生かしてくれればなー、色々楽しめたんだけど。

 

「やっぱり殺しちゃってるし。」

 

「エンヴィー、さっきのはどういうつもり?」

 

「…気に入った人間に手を出されそうになったもんだから、つい。私がやらなくても結果は変わらなかっただろうし、問題ないでしょ?」

 

どーせコーネロは遅かれ早かれ失脚してたよ。たまたま今日だったってだけ。

 

「それに、鋼のお兄さん。いいオモチャになりそうなんだ。」

 

そう言った私の目はさぞかし輝いていた事だろう。ラストが死んだ目をする程に。

 

「くれぐれも殺さないようにね。」

 

「殺さないよ。」

 

ラストは私を何だと思っているんだろう。



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天使は誰でしょう決定戦!!〜少しシリアス入ります〜

おっはー、エンヴィーさんだよ♪

 

 

 

 

…このテンションウザいな、やめよう。久しぶりだね読者様?もう私の事なんて忘れたかな。別にいいけど。今、ショウ・タッカーが死んだって連絡が入ったんだ。誰からかって?それは言えないなぁ。まぁ、兎に角原作通りに『君のような勘のいいガキは嫌いだよ』なオジサンが死んだ。救済しないのかって?おいおい、私は救世主でもメシアでもない、只の人造人間(ホムンクルス)だよ?なんで誰も彼も救わないといけないのさ。そもそも仕事してたのに助けになんて行けるわけ無いじゃん。

 

「姉さん、東部でイシュヴァール人が暴れてる見たいだからちょっと行ってくるね。プライド兄さんも鋼のお兄さんの見張りは私がした方がいいって言ってたし。」

 

それに、傷の男(スカー)は私の推しなんだ。初登場の場を奪う訳にはいかないだろう?

 

「変身するならせめて男になりなさい。私達の心の安寧の為にも。」

 

「今度はショタコンホイホイになるよ?」

 

えー、実はワタクシへの犯罪行為がここ15年で300を超えまして…。因みに誘拐49件、殺人5件、ストーカー122件、痴漢24件で未遂を含むと軽く1000以上。一言言っていいか?

 

 

 

シャレになんねーよ(マジレス)

 

 

 

殺人って…殺人って!!!何なの私の事そんなに殺したいの?

 

「殺人と誘拐は殆どがストーカー共と同一人物だものね。…強姦が無くて良かったわ、本当に。」

 

「ははっ。泣きてぇ…。」

 

そりゃああの変態共をぶちのめすのは楽しいよ?でもね、流石に多すぎ。ネタがもう切れてんだよ。何なのお前らGなの?黒く光るあのすばしっこい虫なの?ゴ○ブリなの?

 

「エンヴィーは、かわいいから(◞‸◟)」

 

「私の弟がこんなにも尊い(真顔)。」

 

グラトニーの何が尊いかってこの子本音しか言わないんだよ。嘘なんてつけないし純粋だし。何が言いたいかっていうと…グラトニーis my angel。

 

「( ° ~ °)?」

 

その顔もかわいいよぉぉぉおおおおおお!!!

 

「姉さん、グラトニーは私を萌え殺すつもりなのかなそれとも昇天させるつもりなのかなきっとこの子は天の使いなんだよじゃないとこんな尊いものが存在するわけないものそうだよきっとそう。」

 

「落ち着きなさい。というか天使はあなたもでしょう。」

 

そうだねグラトニーは天使………what?

 

 

 

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!???!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?だってイタズラが成功した時の満面の笑みとか叱られる時に涙目に上目遣いで恐る恐るこっちの顔色を伺う時とか時々見せる真剣な表情とか私が休憩を取らない時に見せる拗ねた顔とか誰に変身してもいいように図書館に篭りっきりで勉強して寝落ちした時の寝顔とか悪夢を見たのか寝言で『いかないで』って言って私の手を握った時の泣き顔とか猫や犬と話してる時とか給仕の練習とか言ってメイド服着て料理作っていた時とか」

 

「す、ストーーーーーーッッップ!!!!!」

 

え、なにそれなにそれなにそれ知らない知らない知らない。え?

 

「ね、姉さん、姉さんにとって私のって?」

 

頼むからマトモな答えをくれ!!…なんて私の思いは無残にも砕け散った。

 

「そうねぇ…何をするにも一生懸命で努力を惜しまない、自分勝手に見えて兄妹一自己犠牲が激しい、寂しがりやで素直になれない可愛い妹…かしら。」

 

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカじゃないの…。」

 

 

聞いた私がバカだった。姉さん、アレか。親バカというか重度のシスコンというか、それでもなんでそんな恥ずかしい事を平気で言えるかなぁ?

 

あー、どうしよう。多分今めちゃくちゃ顔赤い。嬉しいけど、恥ずかしすぎる。

 

「も、もう東部行くから。じゃあねっ!!」

 

とうとうその場にいる事すら耐えられなくなり、私は逃げ出した。だって、さぁ?嫉妬(エンヴィー)である私が嫉妬出来ない程の好意を向けられて素直に受け止められるわけないじゃん。それに私の石って殆ど子供で出来てるんだよ?子供は常に親の愛に飢えている。だから嫉妬心もそれに相当する。…そう、私は子供なんだ。愛されたいっていう思いで出来た子供。愛されたいから、愛されるように可愛い姿を得て。愛されたいから、イタズラで気を引いて。愛されたいから、愛されてる人間が羨ましくて。愛されたいから、愛されたいから、だから…私は。

 

 

 

「ズルイよ、姉さん。」

 

 

 

 

 

それでも、これだけ大きな愛を与えられても。私はまだ愛に飢えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やだ…母さん、父さん…。こっちを見てよ…。私を…私を忘れないで!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは前世の境遇故か、それとも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて、考えたって仕方ないのに。」

 

私が嫉妬の化身である以上、満たされる事は無い。でも…それでも私は…。

 

「愛が欲しくてたまらない、なんてね。」

 

人間にとって最も大切もの。心や魂の根源。

 

「全ての人間に嫉妬しているという点では私も(エンヴィー)と同じか。…ただ、対象が少し違うだけで。」

 

愛を与えられない人間にだって、希望は与えられるんだろう?私は愛も希望も、何も無かった。ただ、嫉妬しか…無かったんだ。

 

 

 

 

 

「ーーーーー。」

 

 

 

だって私は…誰にも見えないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時。

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14歳の誕生日に、首を吊った時から幽霊としてイタズラして、校庭に錬成陣を描いてここに来るまでずっと。



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私の過去

私は一般的な…強いて言えば少し泥沼化した家の長女として生まれた。泥沼と言っても別に大した事じゃない。ただ両親それぞれに愛人がいてその間に子供もいるというだけの事だ。離婚しないのは私がいるから。両親はそれぞれの仕事で成功していて、結婚したのも子供を作ったのも周りがうるさいからだ。彼らにとって私は邪魔者で、愛を捧ぐ存在ではない。それは幼い頃から気付いていた事だった。

 

 

だから私は彼らの都合のいい存在を演じた。

 

 

テストでは毎回学年一位を取り、運動会ではリレーのアンカーを務め、委員会にも入った。それでも、彼らは私に憎悪しか向けなかった。

 

「お前さえいなければよかった。」

 

「アンタの所為で私はあの人と…あの子と一緒に暮らせないのよ。」

 

何をしても罵倒され、嘲られる日々。…じゃあ何で産んだの?何で私だったの?私じゃ無くても良かったでしょ?

 

 

 

 

何で■してくれないの。

 

 

 

 

 

「○○ちゃんはすごいね!!」

 

「○○に任せれば安心だな。」

 

「○○さんは本当にいい子ね。」

 

 

うるさいな。

 

すごいのはそれと相応の努力をしているからだ。

 

任せれば安心?お前の仕事だろ。お前がやれよ。

 

いい子?ああそうだろうな。そういう風に振舞ってるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタのせいで母さんが苦しんでる。なのに何とも思わないの?」

 

私を産んだあの女のせいだろ。

 

 

 

 

「お前がいるから父さんはあの女と離婚出来ないんだ!!」

 

私を孤児院に預けるか殺すかすればいいだろ。

 

 

 

 

私のせいじゃない。私は悪くない。

 

 

「何で生きてんの。」

 

私が死んで困るのはアンタらだろうが。虐待の証拠も遺書も揃えてあるんだよ。

 

「困った事があったら何でも言ってね、力になるから。」

 

だったら今すぐ私を殺して下さいよ。

 

「○○さん、大丈夫?」

 

同情すんな。私をお前の自己満足に付き合わせるな。

 

「ねぇ○○は…」

 

「何でもかんでも私に聞かないで!!!」

 

 

 

 

 

初めて怒鳴った、初めて叫んだ言葉(本心)が…今まで我慢してきたモノが洪水のように流れ出したように止まらない。悲しい、苦しい、虚しい、そんな負のエネルギーが爆発したようだった。

 

 

結果、学校に居場所が無くなって…私は不登校になった。

 

学校に通わなくなってからは趣味に打ち込んだ。手品や発明、ハッキング。かなり高スペックになっていたと思う。イタズラをし始めたのもこの頃からだ。

 

小学校ではそれなりにいい成績を修めていたから、受験にはあまり支障はなかった。不登校になっていたのだって一年程だし、趣味に走った事で精神的に余裕も出来た。学校としても私の存在は惜しいらしく、何度も復学するよう担任が訪問して来た。その度に私は

 

「内申を上げてくれるなら。」

 

と答えてきた。卒業式には参加したし、嘘ではない。

 

中学はそれなりにいい女子校。偏差値もそれなりに高いがそんなに真面目なわけでもなく、ノリもいい。私がイタズラしても褒められるくらいには。

 

部活は強制だったが、苦ではなかった。部員は10人いるかいないかだったけど成績がいいので廃部の心配は無い。上下関係も先輩に対して呼び捨て+タメ口が当たり前で、かなり居心地が良かった。

 

ただ困った事に、類は友を呼ぶを体現したように問題児しか集まらない。部長は生徒会書記で何故か先生方(理事長含む)の黒歴史や秘密を知っているし、会計さん(風紀委員長)は事あるごとにイベントを企画して勝手に開催してしまう(バレても部長のお陰でお咎めは無い)、書記ちゃん(保健委員長)は数々の論文を発表している天才だけど本性はただのマッドサイエンティストで、私自身何度実験台にされかけたかわからない。かくいう私も入学式で校長のヅラをついうっかり落とし、全クラスの黒板にそれぞれの担任のプロフィールを事細かに書いて反省文を書くはめになった問題児である。多分ブラックリスト載ってる…。

 

ハガレンを知ったのも部長から無理やり押し付けられた単行本が原因だった(ついでにオカルトにもハマった)。

 

「私の推しがラストの姉御なんだがね、○○にはエンヴィーがおススメじゃのう。」

 

「部長、その口調と顔のせいで全体的におっさんみたいなんだけど?」

 

ちなみ部長はウヘヘっな感じの顔をしていた。まるでエロ本を読む時のオヤジのように。

 

 

 

 

 

結果…秒でハマった。部長の予言通り、エンヴィーに。

 

それは、なんとなく自分と似ていたからかも知れない。もし私がハガレン世界で生きていたならこうなっていたかも、なんて妄想するくらいに私と彼は似ていた。ただ、私なら人間を憎悪してもただ殺すだけでは済まさないだろうな、と思う。多分たくさんイタズラして、自分のオモチャにして、用済みになったら捨てるんだろう。事実、その通りになったしね。

 

朝起きて、学校に行って、帰ってハガレンを読んで宿題をやって寝る。そんな私にとって平和な日々は呆気なく終わりを告げた。

 

理由は簡単。義妹がよりにもよって私と同じ中学に入学して来たからだ。ちなみに血は繋がっていない。彼女は私を産んだ女の愛人の男の子供だからね。義妹というのも変だと思うが、…どうなんだ?

 

それは兎も角、彼女は凄かった。何がというと、私への嫌がらせが。しかも要領が良い上、成績は学年三位(私は一位だがなm9(^Д^))、性格も先生にウケがいい典型的な優等生(だが生徒達からは嫌われる系)の猫を被っているから評価はうなぎ登りだ。大人ってチョロいな〜(嘲笑)。

 

で、そんな彼女がある日突然私に突き飛ばされたと言ってきた。ご丁寧に青アザ作って。当然、私に事情を聴く事になるわけだが…私、アリバイ無いんだよね。調理室で人間の目玉(チーズ)作ってたから。マズイな〜と思ってたら…部長がキレた。

 

「あのさ、○○を嵌めたいならもっとまともな嘘ついたら?無理だろうけど。これで風紀委員、保健委員は確実に敵に回ったし。生徒会には私が話すから今後君に何があっても嘘だと思われて相手にされない。…うちの部に手ェ出してタダで済むと思った?ご愁傷様、てめーの学校生活はここで終了したんだよ。明日から五体満足で居られると思ったら大間違いだ。」

 

「えっと部長、私のアリバイ無いんですけど…」

 

思わずツッコミをいれた私に部長は衝撃の事実を告白した。

 

「ごめん、発信機つけてたから○○が何処にいたかわかるんだ。最近○○の事嗅ぎ回ってるヤツがいたからさ、ちょーっと用心しとこうかなーって。」

 

「………何やってんだアンタアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

思わず叫んだ私は悪くない。

 

その言葉に校長はマヌケ面をさらし、教頭は顔面蒼白、義妹の担任は

 

「さすが映画研究部…。」

 

と呟いていた。そうそう、私が所属しているのは映画研究部…略して映研…ってちがぁう!!!私は発信機仕掛けたりしてないし!!ただイタズラしてただけだから!!!

 

「部長!!そういう時は事前に連絡してっていつも言ってるじゃん!!何勝手につけてんの!?ねえ!!!」

 

「え?だって○○が嵌められそうだから証拠用意しといて信じた連中にプギャーしようと」

 

「性格悪いな!!!」

 

いやうちの部で性格いいやつなんていないか。イイ性格のヤツならいるけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、義妹は部長達の働きにより自主退学を余儀なくされたらしい。そして私は次の日から…母(と呼びたく無いが仕方ない)とその愛人から暴力を受けていた。学校に行けば母()に買収された教師から何かと難癖をつけられ、中間テストではやってもいないカンニングをしたと言われて別室でテストを受け直す羽目になった。

 

唯一部活だけが、心の支えだった。心を許せる友達なんていなかったし、信頼出来るのは部の仲間だけで…彼女達にも迷惑は掛けたくなかった。でも、私の限界はとうに超えていて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春休み。気がついたら学校の校庭で満開になった桜の木を見上げていた。

 

「死んじゃおうかなぁ…。」

 

不意に、口から漏れた。

 

頭に霧がかかったような感覚で、何も考えられなかった。守衛さんに春休み中にイタズラを仕掛ける許可は貰っていたから体育館倉庫の鍵を借りてロープを取り、脚立を使って桜の木に結んで首に掛ける。…私が死んだら、きっと家も捜査の手が入るだろう。そうすれば両親も、その愛人も全員…。

 

 

 

 

 

 

「ざまぁみやがれ、ってな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を最期に、私は足場になっていた脚立を蹴飛ばした。



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設定…と、私と彼らのその後1

少女A

 

身長…146cm

 

体重…34.7kg

 

誕生日…3月28日

 

得意科目…理科、数学

 

苦手科目…古文

 

趣味、特技…イタズラ、人を驚かす事、ポイズンクッキング

 

将来の夢(生前)…スタントマン

 

死因…縊死

 

 

 

 

 

 

映画研究部

 

様々な映画がどのように作られているのかを研究する部活…だが、活動内容は運動部よりもハード。一年生は一月でパルクールを習得できなければ退部を命じられるという噂も。その為新入部員が極端に少ない。

 

部長(鳴沢 李音(なるさわ りね))

実は警視総監の娘。生徒会長に推薦されたが辞退し、書記として活躍している。少女Aや部員など、自分の身内に売られた喧嘩は高く買って利息付きで返す人。

 

会計(天丘 嵐(あまおか らん))

部長の親友で何かとイベントをやりたがる。少女Aとは全校集会を全校生徒で逃○中というイベントにして乗っ取った仲。

 

書記(嘉苗 紫苑(かなえ しおん))

少女Aの信者。見た目はおっとりとした大和撫子だが本性はただのマッドサイエンティスト。実は同じ小学校に通っていたが少女Aは気づいていなかった。無自覚ストーカー。多分部内で一番やべー奴。

_____________________________________________

 

 

気がついたら幽霊だった、なんてどんな三文小説だよ…。

 

「はぁ…何でこんな事に…。」

 

ふよふよと宙に浮いた足を見下ろして呟く。そもそも私は死んだ筈だ。目の前にある桜の木で首を吊って…。

 

「まて、今って何月何日だ?!」

 

見上げると、私が死んだ日に満開だった桜はすっかり散ってしまっていた。

 

そして根元には…

 

「これ…私への…?」

 

紫、白、赤…。沢山の花やお菓子、写真が供えられていた。

 

「…。触れない、か。」

 

伸ばした手はホログラムを通るみたいに、花や地面を突き抜けた。そして、私が本当に死んでいるのだという事を実感させた。

 

「色々試してみればいいか。」

 

どうせ誰にも見られないんだし、と一人頷いて校舎に近づく。窓をすり抜け、授業中の教室に侵入しても…彼らは私に気づかなかった。見覚えのあるクラスメイト達は、…私の机が無くなった教室で平然としている。

 

「こいつらは、何とも思わないんだ。」

 

薄々感じてはいたが、実際目にすると悔しくて涙が出てくる。ねぇ、いいよね。少し仕返ししたって。ほんのすこしだけ。ただイタズラするだけなら許されるよね…?

 

「ふふふっ…!」

 

力の使い方はなんとなくわかった。人を殺すと怨霊になる事も、幽霊の私が出来る事も、それをしようとした瞬間に頭に流れ込んできた。

 

頭の中でやりたいことをイメージし、思い切り腕を振る。

 

ガッシャーーーン!!!

 

「せ、先生!!」

 

「ちょっと誰よ、タライなんて仕掛けたやつ。」

 

「ねぇ、あれって〇〇の…」

 

 

 

 

 

 

「くすくすくす、あっははははははは!!!」

 

教室に響く笑い声と教壇の上に現れた私の遺影、それに先生(買収されたクソ教師)の上に落ちてきたタライ。うん、我ながらナイスイタズラ。あともう少し脅かしとこうかな?

 

「それっ!!」

 

ビリビリビリッ!!!ガララララッッ!!!

 

カーテンが真っ二つに引き裂かれ、勢いよく窓が開く。ついでに蛍光灯をボンッと爆発させれば…あらあら、教室が大変!!

 

「見事な惨状だな…。片付けヨロ〜。」

 

私の事、思い出してくれた?だったら嬉しいな。ああ、そうだ。

 

「わ す れ な い で ね ?」

 

まぁ、させないけどさ。

 

___________________________________________________

 

こんにちは。映画研究部書記の…そうですね、佐倉とお呼び下さい。〇〇さんが首を吊った桜の木から取った名です。本名?教える必要が有ります?…そうですか、ならば答えましょう。私の名は嘉苗 紫苑(かなえ しおん)。〇〇さんからは書記ちゃん、しーちゃんと呼ばれておりました。ふふっ、可愛らしい方でしょう?ええ、本当に愛らしい人でした。太陽のように明るく、月のように凛とした…正に高嶺の花。ええ、とても美しい人です。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が誰よりも似合う…それでいて茶目っ気があり、天使のように愛らしく、小悪魔のようにあざとい。いえ、あの方はおそらく無自覚なのでしょう。しかしアレは心臓に悪いのです、ええ本当に。

 

そんな神のようなあの方を貶め、あまつさえその心を傷つけ、死に追いやる?…許される筈がありません。神が罰を与えないのならば、私が罰を与えましょう。あの方と同じ痛みを。あの方と同じ苦しみを。…一生かけて味わって下さいまし?ああ、罰を与えなくてはならない愚か者は此処にもいましたね。ええ、私自身です。あの方の苦しみに気付いておきながら、あの方の側にいたいが為にあの者達の所業を見過ごした。…許されぬ事です、許されてはいけない事です。私の罰はあの方の居ない世界で一生を過ごす事、死へ逃げ、あの方に逢おうなどと思う事すら厚かましい。ああ、罰を下さなくては。まずはあの方が産まれた時から虐げてきたあの二人、そしてその愛する者を。…発信機と盗聴器を複数仕掛けておいて正解でした、これで彼らの居場所がわかる。

 

 

ええ、任せて下さいまし。失敗など有り得ませんもの。

 

あなたはきっと、やめろと言うのでしょう。…それでも、例えあなたの頼みであっても、…彼らがあなたの生を奪った事が許せないのです。

 

 

私はそう言って桜の木の根元に紫色の花を置いた。

 

___________________________________________________

 

〇〇が死んだ。悪友のアイツが死んだ。

 

「君、元風紀委員長なのに全然真面目じゃなかったよね。見た目はいかにもってカンジなのに中身はただの愉快犯だし。」

 

「お前も体育活動委員なのに熱血ってカンジじゃないだろ。それと愉快犯はブーメランだ。」

 

「そうだね、私はどっちかっていうと策士タイプだから。」

 

でも、流石に疲れたかな。

 

そう呟いたアイツの目は虚ろで…でも、私は何も出来なかった。アイツが嫌がらせに負けるとは思えなかったし、何よりいつも愉しげに笑っていたから。…それは、周りを安心させる為の仮面だったのに。

 

「私があの時声をかけていれば、何か変わったのか…?」

 

…いや、アイツの事だからきっと誤魔化して何も答えなかっただろう。だとしても考えずにはいられない。

 

どんなに苦しかったことだろう。それでもアイツは耐えていた。どんなに怖かったことだろう。それでもアイツはそれを隠してきた。

 

「ねぇ嵐、私は君と友達になれて本当に良かったって思ってるよ。」

 

「珍しいな、お前がそんな事言うの。」

 

これが最後の会話だった。アイツは、ただ微笑んでいた。なぁ、本当にこれで良かったのか?まだお前とやりたいイタズラがたくさん有ったんだ。なぁ、〇〇…。

 

「一人じゃ、楽しめないだろ…。」

 

そう言って、私は桜の木の根元に白い花を置いた。




紫の花…紫苑

花言葉

追悼、遠方にある人を思う、君を忘れない


白い花…シロバナヤブラン

花言葉

忍耐、隠された心、謙遜、無邪気な






次は部長編と少女A転生編です。




書記ちゃんのストーカー設定を上手く活かせてなかったような…。


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私と彼らのその後2

私はどうするべきだったんだろう。

 

 

ヒュウ、と少し肌寒い風が通り過ぎる。

 

「…確かに、アンタの復讐は果たせたよ。あの家の連中は一人残らず逮捕されたさ。でも…アンタが死んだら意味ないじゃん…。」

 

アイツが死んだのは、アイツの誕生日だった。十日前に卒業式が終わって、部活は任せたからなって…嘉苗とアイツに言って…。もうすぐ誕生日だって聞いたから、家に帰ってすぐ何をプレゼントしようか考えて…。選んだのは結局、簡易的な防犯、護身具詰め合わせセットだった。

 

盗聴器や発信機、スタンガンにカラーボール、ペン型ビデオカメラ、小さい防護盾、センサーライト、手錠、盗聴器と隠しカメラ発見器、逆探知機器、トンファー、催涙スプレー、グレネード、ガスマスク、レザービリー、フラッシュライト、エアガン、麻酔銃、スチール製の特殊警棒、クボタン、タクティカルペン、メリケンサック、居合刀、サイ、鉄扇、十手、鎖鎌、棍棒…他にも色々。

 

全部、部活でアイツが使っていたものだ。

 

私達映画研究部員は映画を作ったりはしない代わりに、使う映画を完璧に再現しなければならない。セリフや舞台セットは勿論、それぞれのキャラクターの性格もアクションも全て。アイツは天才だった。一度見た映画のキャラクターはどんなモブであろうと完璧に再現し、本物かそれ以上のリアルさを感じさせた。でもそれは、アイツがただ望まれた自分を演じているに過ぎなかっただけで…その事に気付いたのはアイツが入部して半年が経った時だった。

 

 

 

 

バタン、と突然アイツが倒れた。顔は赤い上に息は荒く、身体は明らかに不調を訴えているのに、アイツは謝って練習に戻ろうとしていた。

 

「何やってんの!!!早く保健室行かないと…そ、そうだ嘉苗ちゃん、保健委員だよね、早く○○を」

 

「大、丈夫…です…。すぐ、れんしゅ…戻ります、ね…。」

 

「何言ってんの!!明らかに熱あんじゃん!!!」

 

結局キレた当時の部長が手刀落として保健室にぶち込んだんだけど…アレは凄かった。イケメン過ぎて惚れたわ〜。

 

で、後で○○について調べたら出るわ出るわ虐待の証拠がたんまりと。ああこれはほっとけねーって事で人目も憚らず全力で甘やかしてたら嵐もそれに乗っかってあっと言う間に愉悦コンビ結成。なんでこうなった。あと嘉苗ちゃんからめちゃくちゃ睨まれた。呼び出されて遠回しに○○にあんまり変な事教えてんじゃねーよ的な事言われたりもしたっけ。あの時は帰ってすぐ信者コワイってgkbrしてたな。今ではいい共犯者だけど。

 

知ってるか?○○の戸籍上両親となってる奴らを捕まえたの、嘉苗なんだぜ?嘘のハガキで呼び出して主に精神的にズタボロにして証拠も添えて自白させてその様子を隠しカメラで録画して警察に突き出して無事豚箱行き。いやー、恐ろしい程手際が良かったよ。私や嵐も微力ながら協力させていただきました。

 

でも、さ。アンタが死なない未来だってあったんじゃないの?勿論、限界だったっんだろうとは思う。でなかったらアンタは死んだりしないだろうからね。でも…

 

「はぁ、たらればなんて考えても仕方ないっつーに。私はアンタが死ぬのを止められなかった。それだけだ。」

 

悔しい、虚しい。後悔と共にそんな想いが込み上げてくる。口ではそう言っても、感情との折り合いが付かない。何をすればよかったか、なんて。

 

「くそっ…。」

 

口の中に鉄の味が広がる。

 

なぁ○○、何であの時…また高校でなんて言ったんだよ…。

 

「あんな事言われるくらいなら!!いっそ別れの言葉の方が良かったッ…!!」

 

感情のまま、思い切り桜の木を殴る。持って来た赤い花の茎は…私の手の中で折れていた。

 

 

 

 

_____________________________________________

 

「ふーむ、部長達がこんなに悩んでいたとは…。」

 

悪い事しちゃったなぁ、なんて苦笑いしながら私は桜の木から手を離した。

 

新しく分かった事。

 

私は、桜の木を通して私の死後何があったかを知る事が出来る。…と言っても、それが出来るのは私が幽霊になる前の1ヶ月に起きた事だけなんだけど。

 

というか、しーちゃん怖すぎ。嵐はまぁ、…うん。部長は抱え込み過ぎだよ。私が死んだのは誰のせいでもないのに。

 

「あーあ、何で死んじゃったんだろ。」

 

もっとやりたい事はあった筈なのに…誰にも相談せずに首吊ってバカみたいだ。

 

一言、助けてって言えばそれで済んだのに。

 

 

 

でもね、それだけじゃないんだ。私が死んだの、イジメとか虐待とかじゃなくて…ああ、もう何て言ったらいいのかわかんないけど…。

 

それは、私が死ぬ前日の話。

 

______________________________________________________________________

 

 

 

その日は私の(戸籍上での)両親が珍しく二人で一緒にランチを食べに行っていた。私は二人がどんな話をするのか気になって、つい盗聴器を仕掛けてしまったんだ。犯罪だとは解ってたけれど部活でよく使ってたし…感覚が麻痺していたんだろうね。特に罪悪感も湧かなかった。

 

もしかしたら心の何処かで期待していたのかも知れない。三人で一緒に暮らせる未来…なんて、今から思い返すとバカバカしいにも程があるけど、どうしても諦めきれなかった。

 

結論から言うと、私は邪魔だから事故に見せかけて殺そうって話だった。孤児院に入れたら世間から何と言われるか分からないし、家から追い出したりなんてしたら報復が怖い。だから殺す事にしよう、と。

 

「報復、ね…。そういう事をされる覚えがあるんだ。」

 

自分でも驚くほど冷たい声が出た。というか、殺した方が後が怖いって思わないの?そう考えたらなんだかおかしくて、私は数十分間狂ったように笑い続けた。

 

「ああ、そうだ。どうせなら盛大にバラしてやろう。ふふっ…私を殺そうとしたんだから…自業自得だよ。」

 

その時はまだ、死ぬつもりなんて無かった。私を殺すように命じられるのはクソ教師だろうから、そいつらの秘密を暴露しようとしただけで。

 

……でも次の日校庭で見た満開とまではいかないけれど蕾と花が混ざり合っている桜がとても幻想的で…ここでなら、死んでもいいって思ってしまったんだ。

 

遺書や虐待の証拠はトラップだらけの私の部屋の中。部活仲間以外に突破されるなんて事は億が一にもあり得ない。だから、安心して逝ける。

 

不運なのかはわからないけれど、私が部活で身につけた経験と自分自身の才能が自殺の後押しをしたのは確かだ。私が死ぬ事で悲しむ人がいるなんて、その時はこれっぽっちも思わなかった。…自分勝手だったと思う。私は結局友達を…紫苑を、嵐を、李音さんを信じられなかった。その結果がコレだ。

 

 

愛されたかった。母に、父に一度でいいから褒めて欲しかった。ただそれだけだったのに……。

 

 

私は忘れられる。ここで何をしたのかも、記録からも記憶からも消されてしまう。そうなったら、私は………。

 

 

 

「やだ…そんなの、やだよ…。」

 

出られないのにガンガンと校門を叩く。その度に結界のようなものに弾かれるとわかっていても。

 

「出して…。出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出して出してええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

悲しくて、ただただ泣いた。忘れられたくない。嫌われても、憎まれても…忘れられるのだけは……。

 

「やだ…母さん、父さん…。こっちを見てよ…。私を…私を忘れないで!!!!」

 

それは紛れもない、幼い頃の私の叫びだった。ずっと目を逸らし続けていた、私の…。

 

 

ふと、赤い花の側にある紙袋が目に入った。

 

「!!アルバムに…防犯、護身用グッズ…?」

 

パラパラとアルバムのページをめくると一枚の紙がひらりと落ちた。それにはただ一言だけ。

 

『また会おう』と書いてあった。

 

「…忘れないで、くれるんですか…?」

 

その一言がとても嬉しくて、私はまた泣いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからおよそ五年の月日が流れた。

 

私はまだ学校から出られず、ずっとイタズラをしている。そのせいで学校はお祓いをする事になったので、私は思い切りハデにおもてなししようと思い、ハガレンに出てくる人体錬成の錬成陣を校庭に描いていた。

 

そして。

 

なぜか触る事も出来ない筈のただの石に躓き、いつもは貫通するだけの地面に手をつき、…私は光に飲み込まれた。

 

 

「よう。」

 

「え…どゆこと?何でハガレンの真理的なヤツが目の前にいんの?」

 

「いや、それ本人に言うか?」

 

私の頭、ついにおかしくなったか?白い変なヤツが見える、とその時はとても混乱した。まあ現実だったんだけれども!!!

 

「えー…と、つまりアンタは世界で宇宙で神で真理で全で一で私自身って事?」

 

「ああ。」

 

正直認めたくなかった。でも本能が告げているんだ、これは紛れも無い現実だって。だから…

 

「で、私は何を持っていかれるの?」

 

潔く諦める事にした。納得はしてないけど。納得はしてないからな!!!

 

「話が早くて助かる。お前から貰うものはお前自身だ、朝霧 時雨(あさぎり しぐれ)。」

 

「そ。まぁ、こっちは既に死んでる身だし。別に何でもいいけどね。」

 

その言葉を言ったすぐ後、私は真理の扉に吸い込まれたんだ。

 

 

そして。

 

 

私は嫉妬(エンヴィー)になった。

 




赤い花…ネリネ(赤)

花言葉

また会う日を楽しみに、幸せな思い出、輝き、華やか、忍耐、箱入り娘


真理のお前自身を貰うというのは転生させるという意味です。名前も思い出せなくなるし、自分が自分だと証明できるのは前世の記憶だけです。それも本物かどうかわからないのに正気を保っている時点で少女Aは普通の人間ではありません。


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マルコーさん、めんご★

もしもし、私エンヴィーさん。今リゼンブール行きの列車に乗ってるの。

 

 

……メリーさんいいな、今度のイタズラで使お。まあそれはそうと、マルコーさんとラスト姉さんのエンカウントを奪った私はなんとか賢者の石をお父様(諸悪の根源)から奪おうと画策していた。上手くいけば弱体化に繋がるし。マルコーさんから貰ってもいいけど、どうやって貰えばいいのかわかんないし…素直に頼む?残虐だと思われてる私が?信じてもらえる訳が無い。…でも、もし彼の力が借りられたら?

 

兄弟を助けられる可能性が格段に増す…?

 

「よし、やろう。」

 

リスクは少ない方がいい。マルコーさんを信頼できるとは思わないけど、それはお互い様だ。必要なのは彼が持つ賢者の石。…ラスト姉さんが殺されるのはヒューズ中佐が死んだすぐ後。あまり時間が無い。ま、ヒューズ中佐を生かす事は決定してるし、その為の仕掛けは完璧。大佐に話してもいいけどそれがお父様にバレたら割とガチでヤバいからなぁ…。いや、主人公組に入ってもいいんだけれども!!死亡!!フラグが!!多い!!!

 

エンヴィーも大概だけど、エルリック兄弟は…何で生きてるのかが奇跡ってレベルだから…ハッ、これが主人公属性ってヤツか(違…わない)。

 

まぁ、いいや。敵対しようが何しようが、兄弟である事に変わりは無いし、私が彼等を助けたいというこの想いは本物だ。誰が何と言おうと、兄弟に殺され掛けようと、それだけは否定させない。そうと決まれば、早くマルコーを勧誘しないと。

 

その時だった。

 

「ドクター・マルコー!!」

 

その名が聞こえたのは。

 

「…よし。」

 

大丈夫、なるようになる。

 

そんな思いを胸に、私は列車を降りた。

 

_____________________________________________________

 

 

鋼のお兄さんとアームストロング少佐がマルコーさんの家から出、マルコーさんが二人を追いかけて出ていったのを確認した私は一応ノックをしてドアを開けた。田舎だからなのか、鍵どころか鍵穴さえ無い扉を閉じ、机上にある資料に目を通す。

 

「…仮死薬…?」

 

これは、思いもよらない収穫かも知れない。幸いな事に私の無駄にハイスペックな頭脳は計算だらけのゴチャゴチャした資料を正確に読み取った。その直後にマルコーさんが帰って来たのは…まぁ、お決まりかな。

 

「久しぶり、ドクター。それともはじめまして?」

 

「君、は……。」

 

まぁ、今の私は14歳くらいの少年だし、わからないのも無理は無い。

 

「鋼のお兄さんを見張ってたら思わぬ収穫でびっくりしちゃった。あ、安心してよ、別に連れ戻しに来たんじゃあ無いし。ドクターが居なくても後を継いだ人がよくやってくれてるからさ。」

 

いきなりお願い…っていうのもキャラじゃないし、まず私悪役だからね、仕方ないね。

 

「まさか…まだあんな物を作り続けているのか!?」

 

うん、そう。なんて言えるわけ無いね!ってか知らねーよ!!私の管轄じゃないし!!?

 

「あのさぁ、アレを造る方法を教えたのは私達だよ?人一人と資料が消えた所で止まるワケ無いじゃん。あとドクターが持ち出した研究資料、別に見られてもいいけどまだ時期じゃないっていうか…まぁ、別に?私としてはさっさと見て真相に気付けってカンジなんだけどね?むしろ好都合だし…。」

 

「どういう、事だ…?あの子をどうしようと」

 

「どうもしない。私は、ただ兄弟を死なせたくないだけだ。」

 

そう、私はただ兄弟と一緒にいたいだけ。ただ、当たり前のように平凡で平穏な日々を過ごしたいだけ。

 

「それとも、人間じゃない私達にはそれすら許されないの…?」

 

私は、私達は、エンヴィーは子供だ。愛を、幸福を、平穏を奪われた子供達の魂の集合体。それが私。

 

私がエンヴィーになって真っ先に試したのは子供達の魂(私達)との会話。それをした結果、子供達(彼ら)は私と文字通り一心同体の存在になった。

 

私は私達に。

 

…もしかしたら原作の()は、子供達(彼ら)の声に真摯になり過ぎたのかも知れない。アレは…耐えようと思って耐えられるような、生易しいものじゃない。私だって何度か流されかけたんだ、()は尚更だろう。

 

ふと、そんな考えが頭をよぎる。そして、それはきっと…、いや、やめておこう。私は私だ、彼じゃない。でも、それで堕ちてしまった彼はきっと…とても優しかったんだろう。だからこそ…。

 

ふっ、と笑いが零れる。

 

「私は兄弟が大好きだよ。」

 

きっと彼もそうだった。

 

「私は兄弟を失いたくない。」

 

きっと彼も同じだった。

 

「その為なら何だってできる。」

 

きっと彼も必死だった。

 

「私は、私達は…アイツを倒したい。でも出来ないんだ、私達はアイツから造られたから。だから、だからね…あの兄弟を利用するの。私達の従兄弟とも言えるあの二人を、利用する。…勿論、手助けはするけど。」

 

「いと…こ…?エルリック兄弟と、お前達が…?」

 

うん、と私は肯く。ヴァン・ホーエンハイムはお父様の分身みたいなモンだし、間違ってはいない…筈。多分。きっと。

 

「ドクター・マルコー、お願いします。私の共犯者になってください。…そうすれば、この村の事もあなたの事もお父様には報告しない。何なら契約書を書いてもいい。」

 

こういう時はやはり土下座が効果的だ。こちらの誠意が伝わるからね。

 

「……。本当に、この村に何もしないんだな?」

 

顔を伏せたままニヤリと笑う。ここまでくれば、あともう一押し。

 

「ええ、勿論。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと成功。マルコーさんは無事私の共犯者になった。いやチョロ過ぎない?まぁとにかく…

 

 

 

ドクター・マルコー、ゲットだぜ!!

 

______________________________________________

 

 

「ここは…」

 

中央(セントラル)の地下がこんなに改造されてたなんて思いもしなかったでしょ。生活に必要な物は揃ってるし、不自由ではないと思うよ。」

 

えー、鋼のお兄さんの監視を切り上げて勝手にマルコーさんをお化け屋敷(仮)に匿った私はコントロールルームでお化け達や罠の動かし方を説明していた。

 

「これがエリア8のコントロールバーね。下に下げればお化けが大量放出されるから。隣の赤いボタンを押したら終わらない廊下のトラップが発動、階段に登ろうとすればセンサーが感知して平らになるし扉は開かなくなる。隠し扉を見つけないと天井が落ちてきてペシャンコになっちゃうよ。」

 

「ここまで徹底する必要があるのか?」

 

いや、ない。というか、コレは私の趣味で作ったモノで(あとグリード兄さんのオシオキ用)需要が全くと言っていい程無い。それに私が作ったカラクリ屋敷って一つじゃないし…。ザ・神社っていうここよりも古びた洋館の方がマルコーさんも過ごしやすいんだろうけれども、あっちは時々プライド兄さん達が遊びに来るから…。他は近未来の研究所風とか学校とか昭和レトロな邸宅とかだし…。因みにぜんふ私の趣味だよ!

 

まぁ、そう言うわけにもいかないからね、適当に誤魔化すしか無いよね。

 

「別に徹底はしてないよ。罠とかは思いついたのを適当にセットしただけだし、隠し通路とかも本気で隠してるわけじゃない。これはね、ゲームなんだ。彼らがこの迷宮をクリアして君を仲間に加えるのが先か、死ぬのが先か。…命を賭けたデスゲームなんだよ。ま、私は鋼のお兄さんならクリアできると信じてるけどね。もしかしたら意外な人がここに辿り着くかも知れないし。」

 

実際、彼をここから逃したのはスカーだった。

 

「兄弟の事はどうやって助けるつもりだ?」

 

「落とし穴を使う。そこの、緊急用ってボタン。それを押したら兄弟の中にある石を感知して、床が抜ける仕組みになってるんだ。落ちてきた兄弟は隣の部屋にある巨大クッションに受け止められる。チャンスは一瞬。ドクターが緊急ボタンを押すのが一秒でも遅れたらアウトだ。合図は私が出す。」

 

確実なのは盗聴器をつけてタイミングを図るのだけど、その為には主人公勢の誰かと接触しなくちゃいけない。一番マシなのはアルフォンスか。中尉と大佐はどちらかに気付かれればアウトだし。

 

「あと、ヒューズ中佐が危ないから助けたいんだよね。」

 

「そいつもお前らの仲間か?」

 

いや、ただ彼はいい人だから助けたい。あと彼が死んでいなければ私の死亡フラグが減る。炎で何回も殺されるのは勘弁だからね。それに…

 

「恩があるんだ。」

 

そう、ヒューズ中佐には恩がある。ペドのストーカーを逮捕してくれたという恩が!!

 

「だから、絶対に助けたい。」

 

もうね、軍にロリショタコンが多すぎて軍人見るとイライラがやばかったんだ。ラースが話しかけてきた時に反射で急所狙ってしまう程やばかったんだ。そんな時にペドのストーカー!!ストレスで死ぬかと思った。いやマジで。そんな時にメシアのごとく奴をしょっ引いたヒューズ中佐。推すしかないでしょ!!?かっこよすぎかよ!!!まあその後ラスト姉さんが迎えに来てくれてヒューズ中佐とまさかのエンカウント。私と姉さんの間でヒューズ中佐はお父様に命令されても殺さない事が決定した。だからこの件に関しては姉さんも共犯になってもらうんだ。まぁ死体準備してもらうだけだけど。

 

「マルコーさんには検死時に何処を見るか教えてほしいんだ。」

 

こういうのは専門家に聞くのが一番だし、と続ける。

 

 

 

 

 

あとは、私の力量次第か。



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