遊戯王 ~クロスオーバーディメンションズ~ (鬼柳高原)
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プロローグ
武藤 遊戯


始まりました。
プロローグ第一弾”武藤 遊戯”です。

フィールド表記の①~⑤の番号はフィールドの位置です。
同じ番号は縦列でつながっています。

もしフィールドなどが見づらい、こうしたほうがいいなどあったら
お知らせください。

それでは遊戯王20周年&ヴレインズ完結&ワタクシ復帰記念リハビリ作品

遊戯王 ~Crossover Dimensions~

どうぞご覧ください。


きっかけは、何時だって”デュエルモンスターズ”。

都市が戦場になるのも、学園が異世界に飛ばされるのも、未来が破滅を迎えるのも。

きっかけは、何時だって”決闘者”。

記憶の欠片をばら撒いたのも、次元を分断したのも、文明を崩壊させようとしたのも。

 

引き起こしたのは”決闘者”、為そうとする力が”デュエルモンスターズ”――――

 

「ならばそれらは”闇”か?」

 

否、そうではない。そうではないはずなのだ。

なぜならそれらを防いだのも”決闘者”であり、”デュエルモンスターズ”なのだ。

 

「ならば”光”?」

 

否、そうではない――――ならばどちらなのか?

 

「……答えを出さなければならない」

 

私は”調整者”――――私は審判を下さなければならない。この”混沌”とした存在に。

 

「……知らなければならない」

 

私は知らなければならない。

”デュエルモンスターズ”を。”決闘者”を。審判を下すために――――

 

「……集え、最強の”決闘者”」

 

我が下に集え。そして示すのだ。己の存在を――――

 

 

 

 

 

 

 

       

 

 

 

 

 

 

 

「ふう……まさか、あんなことが起きるなんてなぁ」

 

 とあるビルの屋上、その一角で一人の少年が手すりに手を置き、夕暮れに染まる町を見下ろしていた。燃え立つような髪が風に揺れ、首に掛かる黄金の逆四角錐――――”千年パズル”が陽光をキラリと反射する。

 

「十代君と遊星君、無事に元の時代に帰れたのかな……」

 

 つい先ほどまで、目下の広場で世界の命運を掛けた”決闘”をしていた――――などと言っても誰も信じないだろう。それ程に静かで平和な時がこの町を包んでいる。

 少年――――”武藤 遊戯”は夕空の下で”戦友”達を想いながら佇んでいた。

 

「……そうだね、彼らなら大丈夫。ボク達も帰ろうか。爺ちゃんも突然いなくなったから心配してるだろうしね」

 

 ふと千年パズルに目を落とし呟いた後、遊戯は屋上の出口へと足を向けた――――その瞬間、頭の中に声が響く。

 

 

遊戯……武藤遊戯……

 

 

「え……誰!?」

 

 足を止めとっさに振り向くが、誰もいない。見渡してみてもこの屋上には自分以外の存在は見当たらない。気のせいかと思って再び歩き出そうとすると、再び声が聞こえる。

 

 

 

光と闇……魂の器……闇の番人……名もなきファラオ……決闘王――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

 

「ど、何処にいるんだ!? 誰なの!?」

 

 

 

集え、我が下に――――その”誇り高き魂”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

 

「えっ……うわぁぁぁ!?」

 

 その瞬間、辺りは光に包まれる。光が消えた時、そこに遊戯はおらず、夕暮れの中の静寂が残されているだけだった。

 

* * *

 

 

 

「う……うう……ここは……?」

 

 眩い光を遮っていた腕を下げると、遊戯は辺りをキョロキョロと見渡す。そこは先ほどまでいた屋上ではなく、石の壁に囲まれた広い空間。窓などはなく、遊戯から少し離れた位置に通路が伸びている。照明も篝火もないのに、空間の中は明るかった。

 それらを見て遊戯は最近プレイしているRPGを思い出した。

 

「(何だろうここ……まるで”ゲームのダンジョン”の広間みたいだ)」

 

 明らかに異常な事態だが、遊戯は冷静に広間の探索を始める。ゲームっ子故の好奇心からか、それとも今までの冒険と闘いでこういった事態に慣れてしまっているのか、まるで臆した様子を見せない。

 

「ここには何もないか……危険かもしれないけど、進むしかないよね。……大丈夫、”君”もいるんだから」

 

 通路の前で止まり一度千年パズルに触れた後、遊戯は通路の奥へと進んだ。

 しばらく進むと、再び広い空間へと出る。最初の広間よりずっと広く、天井も高い。ソリッドビジョンシステムを使った決闘も楽に行えるだろう。

 

「うん? あれは……」

 

 視線の先にはさらに奥へと続く通路、そして通路の前に立つ男の姿が見えた。

 

「待っていたぞ決闘者!」

 

 男の姿は奇妙なものだった。顔の上部を隠す仮面にフードを被り、ガタイの良い身体を白い装束が覆っている。男は遊戯に対して一歩踏み出すと、左腕を構えて威勢よく叫んだ。

 

「貴様の道は二つ! 一つはこのまま引き返すか、この私と決闘することだ!」

「ま、待って! 一体どういうことなんだ? 貴方は誰なんですか!?」

「私を知らないとは……私は”ハノイの騎士”! 最強の”決闘者”だ!」

「ハノイの騎士? 最強の決闘者……?」

 

 まったく聞き覚えの無い名前。”グールズ”や”カードプロフェッサー”のように個人ではなく組織やチーム名だろうと予想できるが、そんな名前のチームは聞いたこともない。名の知れたチームからは何度も挑戦を受けたが、あんな奇抜な恰好をした者は一人もいなかった。

 

「ならば教えてやろう……完璧な決闘というものを! 決闘だ!」

「(こんな訳の分からない状況で……でもやるしかないみたいだな……) ようし……!」

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 遊戯 LP:4000

 ハノイの騎士 LP:4000

 

 遊戯は決闘盤を展開させると、ある違和感に気づく。

 

「(あの人……決闘盤は?)」

 

 ハノイの騎士と名乗る男は決闘盤を装着していなかった。本来決闘盤があるはずの左腕にはブレスレットがつけられているのみである。そして何気なく自分の決闘盤に目をやると――――

 

「あ、あれ!? ボクの決闘盤が!?」

 

 そこにあるのはたしかに決闘盤。しかし微妙に形状が変わっている。モンスターゾーンとなるプレートの上部にプレートが増設され、モンスターゾーンが二つ増やされていたのである。

 

「(ど、どういう事なんだ? これは一体……)」

「おい! 貴様のターンからだぞ! 早くしろ!」

「あ……ボ、ボクのターン!」

 

 遊戯がデッキからドローしようとした瞬間、決闘盤から警告音が鳴り響く。

 

「え!?」

『先攻プレイヤーは1ターン目にドローすることはできません』

「な、なにそれぇ!?」

 

 遊戯が今まで行ってきた決闘では先攻プレイヤーも問題なくドローできていた。それが当たり前であり、何故決闘盤から警告を受けなければならないのか。謎の場所に送られてもさほど動揺しなかった遊戯が、豆鉄砲をくらったハトのように目を白黒させる。

 

「何をしている! そんなの常識だろう! 早く進めろ!」

「えぇ……し、仕方ないなぁ」

 

 遊戯はドローを諦め、手札を眺める。

 

「……ボクは魔法カード《融合》を発動! 手札の《幻獣王ガゼル》と《バフォメット》を融合!」

 

 遊戯の場に獣と悪魔が現れ、場の中心に現れた渦の中に飲み込まれる。

 

「融合召喚! 《有翼幻獣キマイラ》!」

 

 遊戯は2枚のカードを墓地スロットへと送り、融合デッキからキマイラのカードを取り出し、モンスターゾーンに――――置いた瞬間、警告音が鳴り響く。

 

「えぇ!? 今度は何!?」

EX(エクストラ)デッキから特殊召喚するモンスターはEXモンスターゾーンにおいてください』

「なにそれぇ!? え、EX?」

 

 聞き覚えの無いルールに、聞き覚えの無い用語。遊戯の混乱は頂点に達する。

 

「おいふざけているのか! 融合モンスターだろ? さっさとEXモンスターゾーンに置け!」

「だ、だからEXモンスターゾーンって……あ」

 

 ここで遊戯は察する。増設されたモンスターゾーン――――

 

「ここのことか! キマイラ!」

 

 モンスターゾーンからEXモンスターゾーンへカードを置き直すと、遊戯の場に現れていた渦の中から1体の獣が飛び出す。その獣は背中に翼を生やし、ガゼルとバフォメットの頭をもつ二首の獣であった。

 

 有翼幻獣キマイラ 風属性 獣族 レベル6 ATK:2100

 

「はぁ……一体何なんだろうこのルールは……カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 

遊戯

LP:4000

手札:1

EXモンスター

②:有翼幻獣キマイラ

④:

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「私のターン!」

 

 ハノイの騎士のターンになると、ハノイの騎士は左腕のブレスレットへと右手を近づける。するとブレスレットの上辺り、何もないところからカードが現れ、ハノイの騎士はそれをドローする。

 

 ハノイの騎士 手札:5→6

 

 ハノイの騎士はドローしたカードを手放すとカードが消え、目の前に6枚のカードのソリッドビジョンが現れてハノイの騎士の前に並ぶ。未知の技術を前に興味を惹かれた遊戯は感心した様子でそれを見ていた。

 

「(凄いな……どういう技術何だろう?)」

「……イマイチ」

 

 ハノイの騎士は不愉快そうに呟くと、表示されているカードの一枚をタッチする。

 

「魔法カード《手札抹殺》! お互いに手札を全て捨て、その分だけドローする!」

 

 今度は表示されているカード全てを押し退けるようにスライドさせて目の前から消すと、再びハノイの騎士の前に5枚のカードが表示される。

 

 ハノイの騎士 手札:5→0→5

 遊戯 手札:1→0→1

 

「クックック……!」

 

 新しくなった手札を確認したハノイの騎士は突然笑い出し、表示されているカードの内2枚をタッチし、手札から取り除く。

 

「完璧な手札だ! これなら最初から全力でいける! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地の《クラッキング・ドラゴン》を復活させる! 出でよ最強の僕! 《クラッキング・ドラゴン》!」

 

 ハノイの騎士の場に現れたのは、黒い鋼鉄の装甲に覆われた機械仕掛けの巨大龍。身体のいたるところに備えられた発光体がその恐ろしい姿を浮かび上がらせる。

 

 クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「ハッハッハッハッハ! このクラッキング・ドラゴンを従える私こそが最強決闘者だ!」

「(青眼(ブルーアイズ)と同じ攻撃力3000のドラゴン! それにあの自信、相当なモンスターなんだろうな……)」

 

 遊戯はクラッキング・ドラゴンに対して身構えると、ハノイの騎士は隠れていない口元に愉悦を浮かべて更なるカードを繰り出す。

 

「続いて魔法カード《悪夢再び》! 墓地から守備力0の闇属性モンスター2体を手札に! そして魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》! このターン私は2回通常召喚が可能! 手札に加えた《ジャック・ワイバーン》と《ハック・ワーム》を通常召喚!」

 

 続けて現れたのはクラッキング・ドラゴンによく似た機械仕掛けの小型ドラゴン2体。クラッキング・ドラゴンと同じように発光体を光らせて遊戯を威嚇する。

 

 ジャック・ワイバーン 闇属性 機械族 レベル4 ATK:1800

 ハック・ワーム 闇属性 機械族 レベル1 ATK:400

 

「まだまだ行くぞぉ! ジャック・ワイバーンの効果発動! 自分の場の機械族1体とこのカードを除外し、墓地の闇属性モンスター1体を特殊召喚する! 出でよ2体目の《クラッキング・ドラゴン》!」

 

  ジャック・ワイバーンとハック・ワームが姿を消すと、ハノイの騎士の場にクラッキング・ドラゴンがもう一体出現する。

 

 クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「また!?」

「魔法カード《アイアンドロー》! 自分の場のモンスターが機械族効果モンスター2体のみの場合、2枚ドローできる!」

 

 ハノイの騎士 手札:1→3

 

「フフフ……これで私の手札はさらに完璧となった! フィールド魔法《鋼鉄の襲撃者(ヘビーメタル・レイダース)》を発動! バトルだ! クラッキング・ドラゴンでキマイラを攻撃! 【トラフィック・ブラスト】!」

 

 指示を受けたクラッキング・ドラゴンの一体が飛び出し、キマイラに向かって青い炎のブレスを放つ。ブレスは一瞬にしてキマイラを飲み込み、余波が遊戯を襲う。

 

「うわぁ!? ……くっ、キマイラの効果発動! 破壊された時、墓地のバフォメットかガゼルを特殊召喚できる! 《バフォメット》を守備表示で特殊召喚!」

 

 遊戯 LP:4000→3100

 

 遊戯の場に翼を生やした獣のような悪魔”バフォメット”が姿を現す。

 

 バフォメット 闇属性 悪魔族 レベル5 DEF:1800

 

「ならば私もフィールド魔法《鋼鉄の襲撃者》の効果発動! 1ターンに1度、自分の場の元々の種族・属性が機械族・闇属性のモンスターが、戦闘または自身の効果で場のカードを破壊した場合、

手札から機械族・闇属性1体を特殊召喚する! 来い! 3体目の《クラッキング・ドラゴン》!」

 

 またもやハノイの騎士の場に現れるクラッキング・ドラゴン。3体並んで一斉に咆哮を上げる。

 

 クラッキング・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「そんな!? 3体目だなんて!?」

「バトルフェイズはまだ終わっていない! 2体目のクラッキング・ドラゴンでバフォメットを攻撃!」

 

 クラッキング・ドラゴンのブレスがバフォメットを襲い、焼き尽くす。

 

「3体目でダイレクトアタック!」

「ま、負けないぞ! 墓地の《クリアクリボー》を除外して効果発動! デッキから1枚ドローして、そのドローしたカードがモンスターだった場合、そのモンスターを特殊召喚! そして攻撃対象をボクからそのモンスターに移し替える! ドロー!」

 

 ドローカード

 聖戦士カオス・ソルジャー

 

「よし! 《聖戦士カオス・ソルジャー》を特殊召喚!」 

 

 遊戯の危機に駆け付けたのは、輝く白銀の鎧を身にまとった聖戦士。伝説の戦士の名を冠する聖戦士は臆することなく剣と盾を構え、3体のドラゴンへと駆け出す。

 

  聖戦士カオス・ソルジャー  光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

「(攻撃力は同じ3000! 相打ちになるけど、攻撃は止められる!) 行けカオス・ソルジャー!」

「バカめ! クラッキング・ドラゴン2体の効果発動! 相手がモンスター1体のみを召喚・特殊召喚した時、そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのレベル×200ダウンし、ダウンした数値分だけ相手にダメージを与える! カオス・ソルジャーのレベルは8! よって攻撃力を1600ダウン! それを2回だ! ⦅クラックフォール⦆!」

 

 向かってくるカオス・ソルジャーに向かって攻撃を終えていたクラッキング・ドラゴン2体が衝撃波を放ち、カオス・ソルジャーを遊戯の場へと吹き飛ばす。

 

  聖戦士カオス・ソルジャー ATK:3000→0

 

「カオス・ソルジャー!?」

「そして下がった攻撃力分のダメージを貴様に与える!」

 

 カオス・ソルジャーを押し戻した衝撃波がそのまま遊戯へと襲い掛かる。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 遊戯 LP:3100→100

 

「クックック……言っただろう? クラッキング・ドラゴンは最強の僕だと! クラッキング・ドラゴンの前ではどんな最上級モンスターでも弱者と化す! 終わりだ! 止めを刺せクラッキング・ドラゴン!」

 

 倒れた遊戯と攻撃力を奪われ膝をつくカオス・ソルジャーに向かってクラッキング・ドラゴンがブレスを放つ。それに遊戯が気が付くと立ち上がり、最後の手札を墓地スロットへと送る。

 

「手札の《クリボー》を捨てて効果発動! この戦闘での自分へのダメージを0にする!」

『クリリー!』

 

 遊戯の前に毛玉のような可愛らしい悪魔が飛び出し、体を膨らませてブレスを受ける。ブレスはカオス・ソルジャーとクリボーを焼き尽くしたが、遊戯に届くことはなかった。

 

「防いだだと!? ちっ……だがもう何もできまい! 次のターンで終わりよ! カードを伏せてターンエンド!」

 

 

ハノイの騎士

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

②クラッキング・ドラゴン

③クラッキング・ドラゴン

④クラッキング・ドラゴン

魔法・罠

③セット

フィールド魔法

鋼鉄の襲撃者

 

「(完璧な手札から作り上げた完璧な陣形! クラッキングとフィールド魔法のコンボ性、クラッキング3体の制圧力もさることながら、セットカードは《禁じられた聖槍》! これであらゆる魔法・罠からクラッキングを守ることができる……死角などないのだ! さあ早くターンを終えろ決闘者。私こそが”最強の決闘者”だ)」

 

 ほくそ笑むハノイの騎士。完全に追い詰められた遊戯は何とか身構え、デッキトップに指を掛ける。

 

「ボクのターン、ドロー!」

 

 遊戯 手札:0→1

 

 遊戯ほどのゲームタクティクスの持ち主ならば、ハノイの騎士程度の相手に後れを取ったりはしない。しかし異常な環境と異常なルール、そして未知なる決闘者とモンスターのプレッシャーによって本来の実力を出せず、ゲームコントロールを掴めずにいた。この困難を跳ね除けなければ遊戯に勝ち目は無い。

 

「(ボクの決闘、ボロボロだ……これで勝てるのだろうか?)」

『(”相棒”)』

 

 突然聞こえてくる声。それは先ほどのような頭に響くような声ではなく、心の奥底から伝わってくるような、力強く頼もしい声。遊戯は反射的に千年パズルに右手を置く。

 

「”もう一人のボク”……」

『(レベル8、攻撃力3000のドラゴンが3体、何だか懐かしい状況じゃないか。なあ相棒?)』

 

 その声は絶体絶命の状況に似合わない楽し気な調子で遊戯に語り掛ける。

 

「ホント、恐ろしい相手だよねドラゴンって……あっという間に追い詰められちゃったよ」

『(相棒、ここは俺に任せてくれないか? 相棒が繋いだゲーム、無駄にはしないぜ!)』

 

 さっきとは打って変わって迫力のある真剣な口調の声。遊戯は頷くと、両手を千年パズルにかざし、目を閉じる。その瞬間、千年パズルから眩い光が放たれた。

 

「な、何だ!?」

 

 ハノイの騎士は突然の事に驚くが、本当に驚いたのは光が収まった瞬間であった。光が収まり、その場に立っていたのは武藤遊戯。しかし明らかに雰囲気が違う。

 

「さあ……ゲームはここからだぜ!」

 

 鋭い眼差しに自信に満ち溢れた表情。先程まで気弱に見えた少年は不敵に笑ってカードを繰り出す。

 

「魔法カード《アースクエイク》! 場のモンスターを全て守備表示に変更するぜ!」

 

 魔法が発動すると、場全体に地響きが起こり、クラッキング・ドラゴン達は防御態勢を取る。

 

 クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0

 クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0

 クラッキング・ドラゴン ATK:3000→DEF:0

 

「クラッキング・ドラゴンを守備表示に!? ……なんてな、大方守備力0ならば楽に倒せると踏んだのだろうが、残念ながらクラッキング・ドラゴンはこいつ以下のレベルのモンスターとの戦闘では破壊されんのだ! 第一貴様の手札はそれで最後! 無駄なあがきとはこのことだ!」

「慌てるなよ、まだ俺のターンは始まったばかりだぜ? 罠カード《裁きの天秤》! 相手の場のカードが自分の手札・場のカードの合計数より多い場合、自分はその差の数だけデッキからドローする! お前の場は5枚、俺の手札と場のカードはこの裁きの天秤のみ! よって4枚ドローするぜ!」

 

 遊戯 手札:0→4

 

「さらに魔法カード《強欲で貪欲な壺》を発動! デッキの上からカードを10枚、裏のまま除外し、2枚ドロー!」

 

 遊戯 手札:3→5

 

「て、手札を0から5枚にしただと!?」

「魔法カード《融合回収(フュージョン・リカバリー)》! 墓地にある融合召喚に使用した《幻獣王ガゼル》と《融合》を手札に加える!」

 

 遊戯 手札:4→6

 

「融合召喚をする気か? 無駄だ無駄だ! クラッキング・ドラゴンの餌食に――――」

「魔法カード《儀式の下準備》! 儀式魔法1枚とそれに名が記されている儀式モンスター1体をデッキから手札に加えるぜ! 《カオス・ソルジャー》と《カオスの儀式》を手札に!」

 

 遊戯 手札:5→7

 

「融合ではなく儀式か? だから何だと言うのだ! どの道――――」

「うるさいぜ少し黙ってろ! 何時俺が融合や儀式で闘うなんて言った? 俺の目的はただ一つ……速攻魔法《リロード》! 手札を全てデッキに戻しシャッフル! 戻した枚数分だけドローする!」

 

 遊戯 手札:6→0→6

 

「(ば、バカな!? 大量の手札から融合や儀式を行うチャンスだったというのに、それをフイにする手札全交換だと!? 幾ら勝ち目がないといったって……自棄になったか?)」

 

 遊戯の意味不明な行動に仮面の上からでも動揺を隠せないハノイの騎士。そんなハノイの騎士には目もくれず、遊戯は新たな手札を手にする。

 

「フハハ!」

 

 新たに手にした6枚のカードを確認すると、遊戯は愉快そうに笑った後、手札をハノイの騎士に対して突きつける。

 

「完璧な手札だぜ! 俺はこれを待っていた。これで全力が出せるな」

「なっ!?」

「これで俺もお前も完璧な手札。完璧同士がぶつかったらどうなるかな?」

「ほざけ! 今更遅いんだよ! 私の場は完璧だ! 何度も言うがモンスターを出せばその場でクラッキング・ドラゴンの餌食! もうお前に勝ち目などない!」

「それじゃあ試してみようぜ。どちらの完璧が勝つか……永続魔法《王家の神殿》! このカードがある限り、俺は1ターンに一度だけ罠をセットしたターンに発動できる。罠をセットし、発動! 永続罠《永遠の魂》! その効果により、手札から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚するぜ!」

 

 遊戯が罠を発動させると場に魔法陣が現れ、その中心から黒い装束の魔術師が杖を振り回しながら飛び出す。

 

「我が”最強の僕”! 《ブラック・マジシャン》!」

 

 ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

「さ、最強の僕だと!? 何処までもこの私と張り合うつもりか!? ……いいだろう、思い知らせてやる! クラッキング・ドラゴン! 〈クラックフォール〉!」

 

  再びクラッキング・ドラゴンが体から衝撃波を放つ。衝撃波は狂いなくブラック・マジシャンに命中する――――が、ブラック・マジシャンは意に介さず、平然と腕を組んで場に佇んでいた。

 

「な、何故だ!? 何故攻撃力が下がらない!?」

「永続罠《永遠の魂》が存在する限り、ブラック・マジシャンは相手の効果を受けないぜ」

 

 無敵かと思われた能力をあっさりと突破して見せた遊戯。ハノイの騎士は悔しさを表すように歯ぎしりするが、それを何とか抑えて余裕の表情を取り戻す。所詮遊戯は”第一の壁”を突破したに過ぎないのだ。

 

「……予想外の事ではあったが、何てことはない! 我が僕の足元にも及ばぬ雑魚が生き残っただけだ! そんなものを残して何になる?」

「言ったはずだぜ? ブラック・マジシャンは”最強の僕”だと。……速攻魔法《非常食》! 俺の場の《王家の神殿》を墓地へ送り、LPを1000ポイント回復する!」

 

 遊戯 LP:100→1100

 

「そして装備魔法《黒の魔法槍(ブラック・スピア)》をブラック・マジシャンに装備!」

 

 遊戯が装備魔法を発動すると、ブラック・マジシャンの杖が槍へと変化する。

 

「(雀の涙程度の回復に、攻撃力も上がらない装備魔法、これは本当に自棄を起こしたな)」

 

 にやりと勝利を確信したハノイの騎士に、遊戯は同じくにやりと不敵な笑みを返す。

 

「これが最後の手札! LPを1000払い、ブラック・マジシャンを対象に魔法カード《拡散する波動》を発動!」

 

 遊戯 LP:1100→100

 

「拡散する……波動?」

「対象となったモンスターはこのターン、相手モンスター全てに攻撃を行う!」

「全て……全てのクラッキング・ドラゴンに攻撃するつもりか!」

 

 防御態勢のままのクラッキング・ドラゴン達に対し、ブラック・マジシャンは槍の先に魔力を集中させて構える。

 

「ハッハッハ! どうやらお前はとことん話を聞かない奴らしい! クラッキング・ドラゴンは自身以下のレベルのモンスターには戦闘破壊されない! そいつはレベル7! 無駄なんだよ! そして守備表示だからダメージもない! 無駄無駄無駄ァ! アーハッハッハ!」

「黒の魔法槍は装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が上回っていれば、その差分だけ相手に戦闘ダメージを与える」

「……は?」

「つまりブラック・マジシャンの攻撃はドラゴンを貫通し、全てお前へと届く! 行くぜ! ブラック・マジシャンで攻撃! 【超・魔・導・烈・貫・弾】!」

 

 ブラック・マジシャンが魔力のチャージを終えると、その場から飛び上がり、クラッキング・ドラゴン達に向かって高速で槍を突き出す。突き出された槍の先からは無数の魔法弾が放たれ、クラッキング・ドラゴンを貫き、全てハノイの騎士へと降り注いだ。

 

「バカなァァァーーーー!!? うわぁぁぁーーーー!!?」

 

 ハノイの騎士 LP:4000→1500→0

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 魔法弾を全て受けたハノイの騎士のLPは0となり、その場に崩れ落ちて座り込んだ。遊戯は決闘盤を収めてハノイの騎士へと歩み寄る。

 

「完璧……完璧だったはずだ……手札も場も……なのに何故……」

「何で負けたか、教えてやろうか?」

「何……?」

「それはお前が”完璧”にこだわり過ぎていたからだ」

「何だと……!?」

 

 ハノイの騎士がわなわなと唇を震わせて遊戯を見上げる。

 

「完璧なカード、完璧な戦術、お前はそれを”あのドラゴン”の中に求めて腕を磨いてきたんだろう。その一生懸命な思いは伝わってきた。だがな……本当は決闘に”完璧”なんてものはないんだぜ」

「完璧が……無いだと……?」

「正確に言えば……”完璧”なんて、常に変化している」

 

 決闘における可能性は無限大。決闘者とカードの数だけ存在していると言っていい。組み合わせまで考えると到底数え切れるものではない。そんな可能性の中にガチガチに凝り固まった一つの”完璧”を放り込んだらどうなるか――――飲み込まれて見えなくなってしまうに決まっている。

 

「俺はその変化を、”決闘の流れ”を読み取り、ドラゴンを攻略するための”完璧な手札”を引き出した……デッキを信じてな」

 

 強力な融合召喚や儀式召喚の選択肢を捨ててまで遊戯がドローを強行したのは、全てはクラッキング・ドラゴンを利用してハノイの騎士を確実に討ち取るため。相手が特定のカードに頼り切っているならば、それを制する手札さえ揃えばいいのである。ハノイの騎士が言う”完璧”を崩してしまえば後は何も残らないのだから。

 遊戯の言葉を聞いた後、ハノイの騎士は俯き考える様にじっとしていたが、突然飛び跳ねて遊戯との距離を取る。

 

「”武藤 遊戯”、お前の勝ちだ! 敗者である私はお前に一つ”ヒント”を与える義務がある!」

「ヒント……?」

「そうだ! ……ここはお前の知る世界であり、知らない世界。知っているが知らないのだ」

「どういう意味だ?」

「この世界の決闘はあらゆる世界の決闘を”超越”しているのだよ! ……私に勝ったからと言って調子に乗るなよ? この世界の決闘者はお前のあらゆる”常識”を覆す! せいぜい足元をすくわれんようにな……」

 

 そう言い残すと、ハノイの騎士の姿が一瞬の内に消滅する。彼は遊戯と同じ人間だったのか、それとも幻だったのか、残っているのは決闘をしたという事実のみである。

 

「……相棒、今は進むしかないみたいだぜ。この”一方的に仕掛けられたゲーム”の先に何が待っているか知らないが、必ず”黒幕”ってやつを見つけ出し、元の世界に戻らせてもらうぜ!」

 

 立ち止まってはいられない。遊戯は通路の先へと歩き出す。誰が何の為に仕組んだのかは知らないが、必ずこの”ゲーム”に勝利し帰るのだ。遊戯の帰りを待つ人達のために。光の中で完結するために――――




久しぶりの執筆でしたがいかがでしたでしょうか。

遊戯の相手はハノイの騎士。デッキテーマは”クラッキング・アルティメット・ドラゴン”です。クラッキング・ドラゴンを主軸のままにパワーアップさせた脳みそ筋肉デッキです。クラッキング・ドラゴンって単体だと微妙な感じですけど複数並べると中々恐ろしいですね。

LAL知ってる人なら思ったでしょうが、これ導入まんまLALですね。ここまで似るとは書いてるときは思っていませんでした。まあそれだけ好きなゲームなんです。まあ似てるのはこれとカオスな世界観くらいで、後はまあいつもの遊戯王なはずです。


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遊城 十代

プロローグ第二弾”遊城 十代”です


 

 

 

 

俺は、ただ走り続けるだけさ!

 

真っすぐ! 真っすぐ!! 真っすぐ前を見つめて!!!

 

ガッチャ!!!!!

 

 

 

 

 

 

「んあ~~~……」

 

 小鳥が鳴き、眩しい朝日が差し込むロンドンの街――――だった廃墟の真ん中、一人の青年が胡坐をかき、間抜けな声を上げて体の筋を伸ばす。

 

『十代君、何時までそうしてるつもりなのかにゃ~?』

『だらしないねぇ、まだまだやる事が山積みなんじゃなかったのかい?』

 

 青年――――”遊城 十代”の傍には男か女か見分けがつかない異形の悪魔と、ふよふよ浮かぶ光る玉、そして一匹の太った猫が寄り添っている。しかし、一般人が見れば十代と猫の姿しか見えないだろう。何せ悪魔は”精霊”と呼ばれる存在で、玉の方は”霊魂”なのだから。

 

「だってよ~あんなすげぇ決闘の後だぜ? 充電しなくちゃ動けねぇって」

『もう一晩たったじゃないか。僕にとっては知ったことじゃないけど、カードがヨハンやカイザーの元に戻ったか確認しに行くんじゃなかったのかい?』

『それにこの街もこのまま放って置くわけにもいかなのにゃ~! 早いところ万丈目君のお家に連絡して何とかしてもらったほうが――――あ』

 

 十代の周りをグルグル飛んでいた霊魂に向かって猫が飛びつき、そのまま加えこんだ後飲み込んでしまう。

 

「おお”ファラオ”ナイスジャンプ。流石猫だよな~”大徳寺先生”にゃ悪いけど」

『で、どうするんだい十代?』

「解ってる、解ってるって”ユベル”。あ~よっこらせっと!」

 

 十代は精霊”ユベル”に向かってブラブラと手を振りながらピョンと立ち上がる。豊かな茶髪を揺らし、燃えるような赤い制服――――改造したオシリス・レッドの制服についていた砂ぼこりを払い、決闘盤などの道具が入った袋を肩に掛けてフ―っと一息。頭をボリボリ。

 

「あー……どうすっかなー……街はーとりあえずこの国の人に任せてー……まずはヨハンのとこかなー……」

『(駄目だねこれは……まあ、一晩中”力”を使い続けて、その後にあれだけ激しい決闘をしたんだから、無理ないか……)』

 

 世界各地で起こっていた”謎の決闘者襲撃事件”を追い、数日間を追跡と闘いに費やし、とうとう黒幕を突き止めた十代。偉大なる先輩”武藤 遊戯”と未知なる後輩”不動 遊星”、二人の協力を得てようやく打倒し、事件を収束させた――――つい昨日の出来事である。

 

「あー……あー……決闘してぇなー」

『そんなフラフラして何言ってるんだい。決闘ゾンビみたいになってるよ。もう本当に二十代なんだからシャキッとしなよ』

「年齢の事は言うなよなー……」

 

 

十代……遊城十代……

 

 

 まどろむ頭に響く謎の声。それは十代の疲れ切った頭を強制的に覚醒させる。

 

「誰だっ!?」

『十代……?』

「ユベル! 今何か聞こえなかったか? それともお前か?」

『いや、違うけど……何かあった?』

 

 ユベルは十代からただならぬ様子を感じ取ると翼を広げ、臨戦態勢を取る。しばらく二人でキョロキョロと辺りを見回していた。

 

「(何だ今の……精霊かと思ったけど、違う……何だったんだ? 気のせいか――――)」

 

 

遊戯を継ぐ者……正しき闇の力を持つ者……精霊を身に宿す者……覇王――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

「(――――気のせいじゃない!!?) 誰だ!? どこにいるんだ! 出てこい!」

 

 

集え、我が下に――――その”取り戻した心”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「何!? うわぁぁぁーーーー!?」

 

 眩い光が廃墟を包み込む。近くにいたファラオはこれに驚き、飲み込んでいた大徳寺の霊魂を吐き出す。

 

『はぁ~いきなり跳びかかるのは反則だにゃ~……あれ?』

 

 大徳寺の霊魂は何かを探すかのようにふわふわと辺りを飛び回る。

 

『……十代君? 十代君!?』

 

 早朝の廃墟に霊魂の声が響く。霊感の無い一般人から見れば、そこは猫一匹だけが寝転ぶ静かな廃墟に過ぎなかった。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

「ううっ……何なんだ一体……」

 

  眩い光を遮っていた腕を下げると、十代は辺りをキョロキョロと見渡す。そこは自分たちがいた廃墟ではなく、きれいな建物や道路を有する巨大都市であった。

 

「な、何だここ? ロンドンじゃねぇ……日本みたいだけど……これは一体……」

 

 確かにここはロンドンではない。そこらを歩いている住民はほとんどが日本人であるし、近くの看板に掛かれている文字も日本語。だが明らかにおかしい事がある。十代の言葉で例えるならば――――

 

「……”摩天楼2‐ヒーローシティ”……みたいな街だなこりゃ。あり得るのか現実で?」

 

 ここは日本のようだが、明らかに日本ではない。正しくは”時代が現代日本”ではないのである。SF作品に出てきそうな奇抜な建物に乗り物、空中で縦横無尽に引かれている道路、まさに”未来都市”と呼ぶにふさわしい街並みなのである。

 

「(何処なんだここは……やたら人通りが多いな)」

 

 どうやらここは都市の中心部にある広場らしい。多くの人が行き交い、特に目の前にある大きな建物の出入りが激しい。気になった十代は建物の広い出入口付近へと近づき、出入り口上部に掛けられている看板を見上げた。

 

 

                     HEARTLAND STATION

 

 

「ハートランド……ステーション? 駅ってことか? ハートランド駅……ハートランドって何処だよ?」

 

 訳の分からない場所へと飛ばされ、十代は顔をしかめながら頭を掻く。

 

「ユベルー……おいユベル」

 

 精霊の名を呼ぶが、返事はない。無事なのは解る、ユベル自身に異常は起こっていない。かの精霊は自分の半身なのだ。再び呼ぶが返事はない。

 

「……無視ぶっこきやがって。まあいいや……」

『クリクリー』

「お、”相棒”! お前はちゃんと出てきてくれるんだな! よしよし」

 

 突然十代の横に羽の生えた可愛らしい毛玉のような天使が現れる。これでもユベルと同じ”精霊”だ。十代に撫でられてうれしそうに体を揺する。

 

「”ハネクリボー”、お前は何か感じたりしてないか?」

『クリー……』

「そうか……手掛かりナシ、っと……そういやなんか疲れが取れてんな? 体かりぃ」

 

 十代が体の調子を確かめるように軽く体を動かしていると、突然後ろから背中を小突かれる。

 

「うおっ!? 何だ?」

 

 十代が振り返ると、そこにはどこかの学校の学生服を着た少年二人が立っていた。中学生くらいだろうか、お世辞にもガラはよくなく、イキがった態度を丸だしにして十代をにらみつけている。

 

「(何だこのガキンチョ達……)」

「お前、”決闘者”だろ?」

 

 少年の一人が十代に向かって指を差しながら訪ねる。流石にムッとくるが、十代はもう大人だ。少年達を刺激しないようにかつ舐められないようにするため、感情を顔に出さないようにして少年達を上から見下ろす。

 

「だったら何だよ? 決闘してぇのか?」

「俺達じゃねぇよ。”シャークさん”が相手を探してる。ちょっと来い」

「お、おい!?」

 

 少年達は十代を二人掛かりで引っ張り出すと、広場の中心へと連れていく。

 

「シャークさん、見つかりました」

 

 広場の中心で待っていたのは、この二人と同じ制服を着た少年。ガラの悪いのは共通しているが、二人とは明らかにガラの悪さの”格”が違う。おそらくは不良少年達のリーダーと言ったところだろう。

 

「……決闘者か。待っていたぜ」

 

 ”シャーク”と呼ばれた少年は十代の前に立ち、鋭い視線で睨みつける。前の二人のようなイキがった態度ではなく、目の前の十代がどれ程のものなのかを静かに見定めている。

 

「(チューボーだろうけど、こいつきっと強いだろうな)」

「ちょっと遊びに付き合ってくれよ。決闘だ」

「おういいぜ! 決闘は大好きだ!」

「ただの決闘じゃねぇ、アンティルールだ。お互いのデッキを掛ける」

「はぁ!? 何言ってんだよお前……そんなことしてどうすんだよ?」

「決まってんだろ? この都市には身の程知らずが多すぎる。どいつもこいつ雑魚のクセに決闘者を名乗りやがって、イラっとするんだよ」

 

 シャークは不愉快そうに吐き捨てると、決闘の為に十代から距離を取った。十代の後ろには子分の少年二人が張り付く。十代が逃げ出さないようにするためだろう。

 

「だから思い知らせてやるんだよ。決闘で負かして、目の前でデッキを奪い取る。お前に決闘者を名乗る価値なんてねぇんだよってな」

 

 残虐な笑みを浮かべて答えるシャークを十代は静かに見つめていたが、少し考える様にして俯いた後、顔を上げる。

 

「分かった、やろうぜ。ただこっちからも条件を出させてもらえないか?」

「あ?」

「お前が勝ったら俺のデッキをやるよ。ただ俺が勝った場合だが、俺は何もいらない。何もいらない代わりに一つ約束してくれ」

「……何だ?」

 

 怪訝な表情を浮かべるシャークに、十代は真面目な顔を崩してにかっと笑う。

 

「楽しい決闘にしようぜ!」

「……笑えねぇ、テメェ……イラっとすんだよ!」

 

 シャークはそう叫ぶと、懐からD・パッドとD・ゲイザーを取り出し、パッドを決闘盤に、ゲイザーを左目に装着する。

 

「決闘だ! 叩き潰してやる!」

「おお! 来い!」

 

 十代も袋からオシリス・レッドモデルの決闘盤を取り出し、左腕に装着して展開させる。そして気付く。決闘盤の違和感に――――

 

「うん? わっ!? 決闘盤が何かおかしいぞ!?」

 

 いつの間にか増設されているEXモンスターゾーン。当然十代はこれが何なのか知るはずがない。

 

「(取り替えようにも予備なんてねぇし……このまま行くしかねぇ!)」

 

 

 

「「デュエル!!!」」

 

 

 十代 LP:4000

 シャーク LP:4000

 

「ようし、俺のターン! ドロー――――うおっ!?」

 

 十代が勢いよくカードをドローしようとすると、それに負けない勢いで決闘盤から警告音が放たれる。

 

『先攻プレイヤーは1ターン目にドローすることはできません』

「ええ!? 何でだよ!?」

「おい何やってる! せっかく先攻をくれてやったんだ! 早くしやがれ!」

「だ、だってよ……どうなってんだこりゃ? とりあえず俺のターン!」

 

 ドローできなかった十代は気を取り直し、手札を確認する。

 

「(何故かドローできなかったが……そんなのは関係ないぜ! まだ昨日の決闘が俺の中で燃えてんだ! 全力全開、出し惜しみは無しでいくぜ!) 魔法カード《融合》! 俺は手札の《E・HERO(エレメンタル・ヒーロー) クレイマン》と《E・HERO バーストレディ》を融合!」

 

 十代の場に岩の体を持つ大男と赤いヒーロースーツを身にまとった気の強そうな女性が現れ、中心に現れた渦の中に吸い込まれて混ざり合う。

 

「融合召喚! 《E・HERO ランパートガンナー》!」

 

 十代は素材となった2体を墓地スロットに送り、融合デッキから取り出したカードをモンスターゾーンに置き――――再び決闘盤から警告音を鳴らす。

 

「うわっ!? またか!」

『EXデッキから特殊召喚する場合はEXモンスターゾーンに置いてください』

「ええ? 俺が融合したのは融合デッキから……それにEXモンスターゾーンってなんだよ?」

「まさかこんなド素人だったとはな。お前の決闘盤にもあるだろう? 好きなほうに置け!」

 

 シャークが十代に向かって自身の決闘盤についているEXモンスターゾーンを指し示して見せる。

 

「ああ、この二つあるとこか! よーし、じゃあ右側に融合召喚!」

 

 十代がカードをEXモンスターゾーンに置くと、渦の中から巨躯を鋼鉄の鎧に包んだ女戦士が現れる。右腕にランチャー、左腕に盾を装備し、盾を構えながら相手の出方を伺う。

 

 E・HERO ランパートガンナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2500

 

「魔法カード《融合回収》! 融合に使用した《E・HERO バーストレディ》と《融合》を墓地から手札に加える!」

 

 十代 手札:1→3

 

「よっしゃ! 景気よくもう一発いくぜ! 魔法カード《融合》! 手札の《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バーストレディ》を融合! 融合召喚! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》――――うわぁ!?」

 

 十代がもう片方のEXモンスターゾーンにカードを置いた瞬間、再び警告音が鳴る。

 

「何でだよ! ちゃんとここに置いただろ!?」

「……まさかろくにルールも理解してないとはな。EXモンスターゾーンは各プレイヤーに一つずつだ。例外もあるがな……次同じようなことしたらデッキだけおいて失せろ! イラっとさせやがって!」

「(聞いたこともないぜそんなルール……にしても使えるのは一つだけって、それじゃあここでは融合モンスターは1体しか出せないってことかよ?) ……ターンエンド!」

 

 

十代

LP:4000

手札:3

EXモンスター

②:

④:E・HERO ランパートガンナー DEF:2500

メインモンスター

魔法・罠

 

 

「俺のターン!」

 

 シャーク 手札:5→6

 

「永続魔法《ウォーターハザード》を発動! 1ターンに1度、自分の場にモンスターが存在しない場合、手札からレベル4以下の水属性1体を特殊召喚できる! 来い、《ビッグ・ジョーズ》!」

 

 シャークの場に機械による強化改造を施された巨大な鮫が現れる。

 

 ビッグ・ジョーズ 水属性 魚族 レベル3 ATK:1800

 

「自分の場に魚族・海竜族・水族が召喚・特殊召喚された時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる! 《シャーク・サッカー》!」

 

 続けてシャークの場に大きなコバンザメが現れる。

 

 シャーク・サッカー 水属性 魚族 レベル3 ATK:200

 

「《マーメイド・シャーク》を通常召喚!」

 

 今度は人型の上半身を鼻先から生やした鮫が現れ、他の二匹の鮫と並ぶ。

 

 マーメイド・シャーク 水属性 魚族 レベル1 ATK:100

 

「マーメイド・シャークの効果発動! 召喚に成功した時、デッキからレベル3から5までの魚族1体を手札に加える! レベル4の《サイレント・アングラー》を手札に加え、特殊召喚!」

 

 マーメイド・シャークが鳴き声を上げると、それに呼応するかのように巨大なアンコウが現れる。

 

 サイレント・アングラー 水属性 魚族 レベル4 ATK:800

 

「サイレント・アングラーは自分の場に水属性が存在すれば手札から特殊召喚できる」

「おおすげぇ! 並べてきたな! 今度は何すんだ?」

 

 シャークのデュエルタクティクスに十代は興奮を隠さずウキウキと尋ねる。シャークは苛立ちを顔に浮かべ、EXデッキに手を伸ばした。

 

「教えてやるよ素人野郎。”EXモンスター”の使い方ってやつを! ……現れろ! 深海へと続くサーキット!」

 

 シャークが空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「な、何だ!?」

「アローヘッド確認! 召喚条件は”水属性2体”! 《マーメイド・シャーク》と《サイレント・アングラー》をリンクマーカーにセット!」

 

 シャークの場のマーメイド・シャークとサイレント・アングラーが風を纏い、アローヘッドの右下と左下のリンクマーカーへと飛び込んでリンクマーカーを点灯させる。

 

「(何だこれ!? 融合召喚でも遊星がやってた”シンクロ召喚”でもねぇ! 俺の知らない新しい召喚法!?)」

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-2《マスター・ボーイ》!」

 

 光り輝くアローヘッドから飛び出したのは、ダンディな髭を蓄えた巨大なヒトデ。くるくると回転しながらシャークの場へと降り立つ。

 

 マスター・ボーイ 水属性 水族 LINK-2 ATK:1400

 

「リンク召喚……ははっ、すげぇ! シンクロ召喚も凄かったけど、こんな召喚法もあるんだな!」

「……チッ! マスター・ボーイが存在する限り、場の水属性の攻守は500アップし、炎属性は400ダウンする!」

 

 マスター・ボーイ ATK:1400→1900

 

「何ヘラヘラしてやがんだ決闘中に!」

「え? そりゃこんだけ楽しいことが起きてんだから、しょうがねぇだろ?」

「むかつくぜテメェ……叩き潰してやる! レベル3の《ビッグ・ジョーズ》と《シャーク・サッカー》でオーバーレイ!」

 

 シャークの場の2体の鮫が青い光へと姿を変え、黄金の光の渦の中に吸い込まれる。

 

「(リンク召喚……かと思ったらまた違う召喚法かよ!?)」

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 渦の中心で黄金の閃光が放たれると中から不気味なオプジェが現れる。それは蛇が巻き付いた巨大な眼球の様にも見え、何度か鼓動した後変形を始める。

 

「エクシーズ召喚! 現れろ《No.(ナンバーズ)17 リバイス・ドラゴン》!」

 

 変形が終わると、それは1体の龍へと姿を変えた。2つの青い光―――”水のオーバーレイ・ユニット”が龍の周りに漂う。

 

 No.17 リバイス・ドラゴン 水属性 ドラゴン族 ランク3 ATK:2000→2500 ORU:2

 

 リバイス・ドラゴンと対峙する十代。十代は強敵との遭遇に胸を高鳴らせるが、それと同時に”No.”が持つ異様な力を本能的に感じ取っていた。

 

「(エクシーズ召喚……すげぇ、すげぇけど……何だこの感じ? これはまさか――――)」

『精霊ではないね』

「ユベル!?」

 

 ここに来てから一切姿を見せなかったユベルがようやく姿を現す。

 

『精霊ではないけど……十代、気をつけろ。あれはただのモンスターじゃない』

「エクシーズったっけ? どんな能力持ってんだろうな?」

『そういう意味じゃないよ。あれはデュエルモンスターズ以前に、異様な力を持っている……とにかく用心することだね』

 

 そう言うと再びユベルは姿を消す。

 

「用心ね……ん? いやちょっとまて! おいシャーク!」

「何だ?」

「おま、なんでそいつモンスターゾーンに出してんだ? 融合デッキ――――じゃなくて、こっちではEXデッキだったな! そっから出すときはEXモンスターゾーンに出さなきゃならねぇんだろ?」

 

 十代の一見もっともな言い分にシャークは鼻で笑って返す。

 

「これが”リンクモンスター”の力だ。EXデッキからモンスターを特殊召喚する場合、リンクモンスターが持つ”リンクマーカー”が指し示すメインモンスターゾーンにも置くことができるんだよ」

「あの矢印にはそんな意味があったのか……」

 

 シャークが使えるEXモンスターゾーンにはすでにマスター・ボーイが収まっているが、マスター・ボーイのリンクマーカーは右下と左下のモンスターゾーンを指し示している。

 

「ってことは……シャークはあの二ヶ所にEXデッキからのモンスターを呼び出せるってことか!? ズルいぞ~!」

「文句はリンクモンスターを手に入れてから言うんだな。ま、テメェは俺に負けてデッキを奪われるんだから関係ねぇよなぁ! リバイス・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、ORU(オーバーレイ・ユニット)を一つ取り除くことで攻撃力を500ポイントアップ! 〈アクア・オービタル・ゲイン〉!」

 

 リバイス・ドラゴンは周りを漂うORUの1つを食らうと、体から禍々しいオーラを放つ。

 

 No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2500→3000 ORU:2→1

 

「攻撃力3000か……!?」

「バトル! リバイス・ドラゴンでランパート・ガンナーを攻撃! 【バイス・ストリーム】!」

 

 リバイス・ドラゴンがランパート・ガンナーに向かってブレスを放つと、ランパート・ガンナーを盾ごと消し飛ばす。

 

「ランパート・ガンナー!?」

「マスター・ボーイでダイレクトアタック!」

 

 マスター・ボーイは高速回転し、手裏剣のように飛んで十代に命中する。

 

「ぐわっ!?」

 

 十代 LP:4000→2100

 

「これでターンエンドだ! テメェが俺に勝つなんてありえねぇんだよ。とっとと諦めちまいな!」

 

 

シャーク

LP:4000

手札:2

EXモンスター

②:マスター・ボーイ リンク先:No.17 リバイス・ドラゴン(左下) ATK:1900

④:

メインモンスター

①No.17 リバイス・ドラゴンATK:3000 ORU:1 

魔法・罠

③ウォーターハザード

 

 

「へへ、こんな楽しい決闘、諦めてたまるかよ! 俺のターン!」

 

 十代 手札:3→4

 

「(今ならフレイム・ウィングマンを呼べる。だけど、フレイム・ウィングマンじゃあのドラゴンは倒せない……よし、やってやるぜ!) 速攻魔法《手札断殺》! お互いに手札を2枚墓地へ送り、2枚ドローする!」

 

 十代 手札:3→1→3

 

 墓地に送ったカード

  E・HERO フェザーマン

 E・HERO バーストレディ

 

 シャーク 手札:2→0→2

 

 墓地に送ったカード

 ジョーズマン

 シャークラーケン

 

「よし、魔法カード《融合》! 手札の《E・HERO ネオス》と《ネクロ・ガードナー》を融合!」

 

 十代の場に銀色の輝く筋肉質な肉体を持つヒーローと鎧をまとった白い長髪の戦士が現れ、場の中心に現れた渦の中へと吸い込まれていく。

 

「融合召喚! 現れろ《E・HERO ネオス・ナイト》!」

 

 渦の中から飛び出したのは最強の戦士の姿を模したネオス。普段は己の肉体一つで闘うネオスだが、手に持った剣を慣れた様子で振るい、盾と共にシャークの場に向かって構える。

 

 E・HERO ネオス・ナイト 光属性 戦士族 レベル7 ATK:2500

 

「ネオス・ナイトの攻撃力は素材にしたネクロ・ガードナーの攻撃力の半分の数値分アップする!」

 

 E・HERO ネオス・ナイト ATK:2500→2800

 

「ハッ! その程度の強化じゃリバイス・ドラゴンの敵じゃねぇ!」

「それはどうかな? バトル! ネオス・ナイトでマスター・ボーイを攻撃! 【ラス・オブ・ネオススラッシュ】!」

 

 ネオス・ナイトが剣を構え、マスター・ボーイに向かって突進。マスター・ボーイは避ける暇もなくネオス・ナイトの剣によって両断された。

 

「ネオス・ナイトの攻撃で発生する相手へのダメージは0になるぜ」

「マスター・ボーイの効果発動! 戦闘・効果で破壊された場合、自分の墓地の水属性1体を手札に加える! 《シャーク・サッカー》を手札に加える!」

 

 シャーク 手札:2→3

 

「フン、狙いはマスター・ボーイだったか。これでリバイス・ドラゴンの攻撃力を下げようって魂胆だろうが――――」

 

 No.17 リバイス・ドラゴン ATK:3000→2500

 

「リバイス・ドラゴンはもう1度効果を使える! すぐにテメェのモンスターの攻撃力を超えてぶっ潰してやる!」

「ならその前に倒させてもらうぜ。ネオス・ナイトは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる! 行けネオス・ナイト!」

 

 ネオス・ナイトは再び剣を構え、リバイス・ドラゴンに向かって斬りかかる。リバイス・ドラゴンが噛み付こうとするのをかわし、ネオス・ナイトはその胴体に剣を突き刺す。

 

「よっしゃー!」

「フン、言い忘れてたぜ。”ナンバーズ”は――――」

 

 ネオス・ナイトが剣を引き抜こうとした瞬間、リバイス・ドラゴンがネオス・ナイトに食らいつき、剣ごと胴体から引きはがして放り投げる。剣によって付けられた傷は瞬く間にふさがってしまった。

 

「――――”ナンバーズ”でしか戦闘破壊できない。残念だったな!」

「まじかよ……決まったと思ったのに! ターンエンド!」

 

 

十代

LP:2100

手札:0

EXモンスター

②:

④:E・HERO ネオス・ナイト

メインモンスター

魔法・罠

 

 

「俺のターン!」

 

 シャーク 手札:3→4

 

「魔法カード《浮上》! 自分の墓地のレベル3以下の魚族・海竜族・水族モンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する! 浮上しろ《ビッグ・ジョーズ》! そして手札から《シャーク・サッカー》を特殊召喚!」

 

 シャークの場に再びビッグ・ジョーズとシャーク・サッカーが並ぶ。

 

 ビッグ・ジョーズ 水属性 魚族 レベル3 DEF:300

 シャーク・サッカー 水属性 魚族 レベル3 ATK:200

 

「《ドリル・バーニカル》を通常召喚!」

 

 続けてシャークの場にフジツボをくっつけた巨大な甲殻類のモンスターが現れる。

 

  ドリル・バーニカル 水属性 水族 レベル3 ATK:300

 

「レベル3の《ビッグ・ジョーズ》、《シャーク・サッカー》、《ドリル・バーニカル》でオーバーレイ!」

 

 シャークの場の3体の水属性が青い光となって飛び上がると、場に現れた赤い光の渦の中に吸い込まれる。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から赤い閃光が放たれると、渦の中から海竜の戦士が現れる。三つの刃が付いた大槍を軽々と振り回し、ネオス・ナイトへと構える。

 

「現れろ《トライエッジ・リヴァイア》!」

 

 トライエッジ・リヴァイア 水属性 海竜族 ランク3 ATK:1800 ORU:3

 

「トライエッジ・リヴァイアの効果発動! ORUを1つ使い、場のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで800ダウンし、効果を無効にする!」

 

 トライエッジ・リヴァイア ORU:3→2

 

  トライエッジ・リヴァイアが槍から波動を放つとネオス・ナイトに命中し、ネオス・ナイトはその場に膝をつく。

 

 E・HERO ネオス・ナイト ATK:2800→1700

 

「ネオス・ナイト!?」

「魔法カード《アクア・ジェット》! 海竜族のトライエッジ・リヴァイアの攻撃力を1000アップ! そしてリバイス・ドラゴンの効果発動!」

 

 トライエッジ・リヴァイアの背中にジェットエンジンを身に着け、リバイス・ドラゴンは最後のORUを食らって己の力を高める。目の前の獲物(十代)を仕留めるため、2体のドラゴンが動き出そうとしていた。

 

 トライエッジ・リヴァイア ATK:1800→2800

 No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2500→3000 ORU:1→0

 

「このターンで終わりだ! バトル! リバイス・ドラゴンでネオス・ナイトを攻撃!」

「墓地の《ネクロ・ガードナー》の効果発動! このカードを除外することで1度だけ相手の攻撃を無効にする!」

 

 リバイス・ドラゴンのブレスがネオス・ナイトに届く直前、ネクロ・ガードナーの影が間に割って入り、ブレスをかき消して消滅する。

 

「チィ! トライエッジ・リヴァイア! 【トライデントウォータースパウト】!」

 

  トライエッジ・リヴァイアが槍の一撃をネオス・ナイトに浴びせると、ネオス・ナイトの側の空間が歪み、中へ吸い込まれて消滅してしまう。

 

 十代 LP:2100→1000

 

「ネオス・ナイトー!?」

「トライエッジ・リヴァイアが破壊したモンスターは除外される! ターンエンド!」

 

シャーク

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:トライエッジ・リヴァイア ATK:2800 ORU:2

④:

メインモンスター

①No.17 リバイス・ドラゴン ATK:3000 ORU:0

魔法・罠

③ウォーターハザード

 

 

「へへっ、ピンチだ……だがエキサイティング! もっと楽しくなってきたぜ!」

「……いい加減にしやがれ!」

 

 シャークはもう我慢できないと言う様に怒鳴りだす。

 

「何が楽しくなってきただ! 場にも手札にもカードは無い、LPもたったの1000、俺のモンスターの一撃で消し飛ぶ! 強がってんじゃねぇ!」

「おいおい……何ムキになってんだよ? まだ決闘は終わってないんだぜ? 諦められるかよ……そんなに突っかかって何が言いたいんだ?」

「諦めろってことだ。テメェは俺に勝てねぇ! 諦めねぇとか抜かして無駄に足掻く奴を見るとイラっとすんだよ!」

 

 シャークが十代を威圧するように睨みつける。十代はここで初めてその視線をまっすぐ受け止める。受け止めた後、静かに言葉を返した。

 

「……なあお前、諦めちまったのか」

「ああ?」

「話してたらさ、そんな気がした。お前さ、決闘楽しめてないだろ? さっきからイライラするって言ってるけど、それは決闘を楽しめないからだ」

「な、何を……」

 

 十代の言葉が核心を突いたのか、シャークは顔に動揺を浮かべる。

 

「決闘を楽しめないのは、お前が決闘を諦めちまってるからだ。具体的に……って言われたら俺にも解らねぇけど……俺はそう感じたんだ」

「こ、この……!」

「お前はそれを悔しがってるけど、どうにもできない事だと思ってる。だから俺に諦めろってしつこく突っかかるんだ。……解って欲しいんだろ? その悔しさを」

「テメェ下らねぇことぬかしてんじゃねぇ! ふざけやがって!」

「……何でどうにもできないって思ってるのかは知らないけどさ、楽しんじまっていいんじゃねぇか? 好きなんだろ決闘? だから今も続けてんだろ? 好きなことに無我夢中になれるのは”子供の特権”だぜ」

「訳の解らねぇことを――――」

「解んなくてもいい。今は解らなくてもいいんだ」

 

 十代は自身の胸に手を置くと、瞳を黄色と緑のオッドアイに変化させる。

 

「誰だってな、何時かは”大人”になる日が来るんだ。沢山、沢山考えて、悩まなくちゃいけなくなる……だからさ、今だけは”大事な物(デュエル)”を諦めんなよ。何もかも振り払って、突っ走ってみるんだ」

 

 オッドアイを元に戻すと十代は決闘盤を構え直し、デッキトップに指を掛ける。

 

「それになシャーク、大人になってから解るんだ。子供の頃に突っ走れたのなら、大人になった時、それは”掛け替えのない宝物”になるってことを! 俺のターン!」

 

 十代 手札:0→1

 

「シャーク、俺はもう大人だ! やらなきゃいけないことはたくさんある! だけどな、俺は今も突っ走ってるぜ! ”宝物”がハートの中で燃え上がり、俺を突き動かしているからな! 魔法カード《ホープ・オブ・フィフス》! 自分の墓地の”E・HERO”を5枚選択し、デッキに加えてシャッフル! この時、自分の手札・場に他のカードが存在しなければカードを3枚ドローする!」

 

 十代 手札:0→3

 

 デッキに戻したカード

 E・HERO フェザーマン

 E・HERO バーストレディ

 E・HERO クレイマン

 E・HERO ランパート・ガンナー

 E・HERO ネオス

 

「魔法カード《コンバート・コンタクト》! 自分の場にモンスターが存在しない場合、手札及びデッキから(ネオスぺーシアン)を1枚ずつ墓地へ送り、デッキから2枚ドローする! 手札から《N・グラン・モール》、デッキからは《N・アクア・ドルフィン》を墓地へ送り、2枚ドロー!」

 

 十代 手札:2→1→3

 

「自分の場にカードが存在しない場合、このカードは手札から発動できる! 罠カード《NEXT(ネオスペースエクステンション)》を発動! 手札・墓地から”N”または”E・HERO ネオス”を表側守備表示、効果を無効にして好きな数だけ特殊召喚する! さっき墓地に送った2体と手札から《N・ブラック・パンサー》を特殊召喚!」

 

 十代の場にイルカ頭の筋肉質な戦士、ブレストアーマーを装備したモグラ、マントを身に着けた黒豹が現れ、それぞれ防御態勢をとる。

 

  N・アクア・ドルフィン 水属性 戦士族 レベル3 DEF:800

  N・グラン・モール 地属性 岩石族 レベル3 DEF:300

  N・ブラック・パンサー 闇属性 獣族 レベル3 DEF:500

 

「魔法カード《スペーシア・ギフト》! 自分の場の”N”1種類につき1枚ドローする! 俺の場にいるNは3種類! よって3枚ドロー!」

 

 十代 手札:0→3

 

「シャーク! 俺はお前に全てをぶつける! 俺の決闘でお前の”諦め”を吹っ飛ばしてやる! 魔法カード《ミラクル・コンタクト》! 自分の手札・場・墓地から融合素材をデッキに戻し”E・HERO ネオス”を融合素材とするE・HERO融合モンスター1体を召喚条件を無視してEXデッキから特殊召喚する! 場のN全てと手札の《E・HERO ネオス》をデッキに戻す!」

 

 ネオスが十代の場に現れると、3体のNを連れて遥かなる宇宙へと飛び立つ。

 

「限界を超えた”コンタクト融合”を見せてやる!」

「何だ……何をする気だ!?」

 

 シャークが飛び立ったヒーロー達を見上げていると、空から眩い光が放たれ、一つの流星が場へと目掛けて飛来する。

 

「クアドラプルコンタクト融合!」 

 

 流星は場に落ちる直前に姿を変え、新たなる”ネオス”となって場に降り立つ。ストーム、マグマ、カオス――――その姿はこれまでのネオスの姿を複合したものであり、ネオスというヒーローの”完成形の一つ”と言っても過言ではない。

 

「現れろ! 《E・HERO コスモ・ネオス》!」

 

 E・HERO コスモ・ネオス 光属性 戦士族 レベル11 ATK:3500

 

「な、なんだこれは……!?」

「コスモ・ネオスの効果発動! EXデッキからの特殊召喚に成功した場合、このターン相手は場で発動する効果を発動できない!」

「させねぇ! トライエッジ・リヴァイアの効果発動――――」

「そうはいかないぜ! この効果に対して相手は効果を発動させることはできない! 〈ネオスペース・ノヴァ〉!」

 

 トライエッジ・リヴァイアがコスモ・ネオスを抑えようと動き出した瞬間、コスモ・ネオスが決闘場全体に向かって波動を放つ。波動を受けたトライエッジ・リヴァイアとリバイス・ドラゴンは力を失い脱力してうなだれる。

 

「何だと!?」

「コスモ・ネオスでトライエッジ・リヴァイアを攻撃! 【ビッグバン・オブ・ネオス】!」

 

 コスモ・ネオスは左手にエネルギーを集中させると、小さい恒星を作り出す。作り出した小恒星はコスモ・ネオスの手から放たれトライエッジ・リヴァイアに命中、そのまま大爆発してシャークを巻き込む

 

「ぐあぁ!?」

 

 シャーク LP:4000→3300

 

「バトル終了! 《カードブロッカー》を召喚! こいつは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、守備表示になる!」

 

 十代の場に剣と盾を持った小さな戦士が現れ、盾を構えて身構える。

 

 カードブロッカー 地属性 戦士族 レベル3 ATK:400→DEF:400

 

「ターンエンド! この瞬間、コスモ・ネオスの効果発動! こいつをEXデッキに戻し、相手の場のカードを全て破壊する!」

 

 コスモ・ネオスが再び小さい恒星をリバイス・ドラゴンに放ち、炸裂させてから姿を消した。爆発はシャークの場全体を巻き込み、全てのカードを跡形もなく消し飛ばしてしまった。

 

「なんて野郎だ……No.ごと俺のカードを吹き飛ばしていきやがった!?」

「さあこいよシャーク! 全力で掛かってこい!」

 

十代

LP:1000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③カードブロッカー DEF:400

魔法・罠

 

「くそが……叩き潰してやる! 俺のターン!」

 

 シャーク 手札:0→1

 

「魔法カード《貪欲な壺》! 墓地からモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! 2枚ドロー!」

 

戻したカード

マスター・ボーイ

トライエッジ・リヴァイア

No.17 リバイス・ドラゴン

シャーク・サッカー

サイレント・アングラー

 

 シャーク 手札:0→2

 

「《スピア・シャーク》を召喚!」

 

 シャークの場に鼻が槍先のように尖っているサメが現れる。

 

 スピア・シャーク 水属性 魚族 レベル4 ATK:1600

 

「こいつは貫通能力を持っている! これでトドメだ! スピア・シャークでカードブロッカーを攻撃!」

「カードブロッカーの効果発動! 攻撃対象となった時、デッキの上からカードを3枚まで墓地に送る! 墓地に送ったカード1枚につき、このカードの守備力を500アップする! 俺が墓地に送るのは3枚! 守備力を1500アップ!」

 

墓地に送ったカード

E・HERO フェザーマン

E・HERO バーストレディ

シャッフル・リボーン

 

 カードブロッカー DEF:400→1900

 

 スピア・シャークが鋭い鼻先をカードブロッカーに向けて突っ込むと、カードブロッカーはそれを盾で受け止め弾き返す。

 

「チィィ! なんで届かねぇんだ!」

 

 シャーク LP:3300→3000

 

「落ち込んでる暇なんかないぜ! どうするよ?」

「黙れ! くそ……負けて堪るか! 《サイレント・アングラー》を特殊召喚!」

 

 シャークの場に再びサイレント・アングラーが現れる。

 

 サイレント・アングラー 水属性 魚族 レベル4 ATK:800

 

「レベル4の《スピア・シャーク》と《サイレント・アングラー》でオーバーレイ!」

 

 スピア・シャークとサイレント・アングラーが青い光となって飛び立ち、シャークの場に現れた赤い光の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から赤い閃光が放たれると、閃光の中からサメの特徴を有する海竜が現れ咆哮を上げる。

 

「吠えろ未知なる轟き! 深淵の闇より姿を現わせ! 《バハムート・シャーク》!!」

 

 バハムート・シャーク 水属性 海竜族 ランク4 ATK:2600 ORU:2

 

「おおカッケー! まだこんなとっておきがあるなんてな!」

「ターンエンド! これが俺とテメェの差だ! 偉そうに説教できる立場じゃないんだよお前は!」

 

シャーク

LP:3000

手札:0

EXモンスター

②:バハムート・シャーク ATK:2600 ORU:2

④:

メインモンスター

魔法・罠

 

「俺のターン!」

 

 十代 手札:0→1

 

「墓地の《シャッフル・リボーン》を除外して効果発動! 自分の場のカードをデッキに戻してシャッフル! その後に1枚ドローする! 《カードブロッカー》をデッキの戻して1枚ドロー!」

 

 十代の場のカードブロッカーが消滅すると、十代がデッキトップからカードを引き抜く。

 

 十代 手札:1→2

 

「来た来た来た来たぁ~! 行くぜ! 魔法カード《ミラクル・フュージョン》! 自分の場・墓地から融合素材を除外し、”E・HERO”を融合召喚する! 墓地の《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バーストレディ》を融合!」

 

 十代の場にバーストレディと白い翼を生やしたヒーローが現れると、場に現れた渦の中へと吸い込まれ混ざりあう。

 

「融合召喚! 現れろマイフェイバリットカード! 《E・HERO フレイム・ウィングマン》!」

 

 渦の中から飛び出したのは左右非対称の姿をした異形のヒーロー。緑の左半身には大きな白い翼。赤い右半身には竜の頭となった右腕。そして腰からは竜の尻尾が伸びているなど、とてもヒーローの姿には見えない。だが、この異形のヒーローこそが十代のお気に入りの1体。異形の姿に正義の心を宿したマイフェイバリットヒーロー、フレイム・ウィングマンである。

 

 E・HEROフレイム・ウィングマン 風属性 戦士族 レベル6 ATK:2100

 

「攻撃力2100? そんなザコはバハムート・シャークの敵じゃねぇ!」

「慌てるなよ、ヒーローにはヒーローに相応しい、闘う舞台ってもんがあるんだ! フィールド魔法《摩天楼 -スカイスクレイパー-》発動!」

 

 十代が決闘盤のフィールド魔法スロットにカードを収めると、場が夜の闇に包まれる。何事かとシャークが辺りを見回した瞬間、周りに無数の高層ビルが現れ場を囲む。

 

「な、何だ!?」

「スカイスクレイパーが存在する限り、”E・HERO”がその攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターへ攻撃した場合、ダメージ計算時のみ攻撃するE・HEROの攻撃力を1000アップする!」

「攻撃力を1000上げるだと!? ……ハッ!?」

 

 シャークが気づく。フレイム・ウィングマンの姿が何処にも見えない。ふと視線を上げて目に付いたのは、高層ビル群の中心にそびえ立つ巨大な摩天楼。目を凝らして摩天楼の頂点を見ると、そこには月を背に佇む異形のヒーローの姿があった。

 

「さあ舞台は整った! バトル! フレイム・ウィングマンでバハムート・シャークを攻撃! 【スカイスクレイパー・シュート】!」

 

 E・HERO フレイム・ウィングマン ATK:2100→3100

 

 フレイム・ウィングマンは炎を纏って摩天楼から飛び降り、ビルの間を縫う様にすり抜けバハムート・シャークへと突っ込む。バハムート・シャークは果敢にも燃え盛るフレイム・ウィングマンを受け止めるが、炎と突進に押し切られて破壊される。

 

「うおお……なっ!?」

 

 シャーク LP:3000→2500

 

 バハムート・シャークを倒したフレイム・ウィングマンはシャークの眼前に降り立ち、右腕

の竜頭――――”ドラゴンブラスト”をシャークに向けて構える。

 

「フレイム・ウィングマンの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! バハムート・シャークの攻撃力分、受けて貰うぜ!」

 

 ドラゴンブラストから炎が放たれ、炎がシャークを包む。

 

「ぐあぁぁぁ!!!」

 

 シャーク LP:2500→0

 

 ソリッドビジョンが消え、決闘終了のアラームが鳴り響く。

 十代は倒れたシャークに向き直り、右手の人差し指と中指を伸ばして揃え、シャークに向かって突きつける。”遊城 十代”の代名詞、勝利のポーズ。今日の熱い決闘と対戦相手に感謝して、一声――――

 

「ガッチャ! 楽しい決闘だったぜ!」

 

 その瞬間、シャークの決闘盤からリバイス・ドラゴンのカードが飛び出し、十代に向かってまっすぐ飛んでくる。

 

『十代!』

 

 ユベルの声に反応し、十代はとっさに瞳をオッドアイに変化させ、飛んでくるリバイス・ドラゴンのカードを掴み取った。

 

「ビックリした……何だ一体? ユベル、何で”力”を使う必要があったんだ?」

『危なかったね。”力”を使ってなかったら今頃君、このカードに意識を乗っ取られてたよ』

「マジかよ!? え、じゃあこれどうすんだ? シャークに返すか?」

『とりあえず僕が預からせて貰うよ。調べれば何か解るかもしれないしね』

 

 そう言ってユベルは十代からリバイス・ドラゴンを取り上げて姿を消す。

 

「おい……ったく、相変わらず自分勝手だな」

「おい、さっきから何一人でぶつぶつ言ってやがんだ」

 

 十代が声に振り向くと、立ち上がったシャークがこちらに近づいてきていた。

 

「ほらよ」

 

 シャークは懐からカードパックを取り出すと、それを十代に押し付ける。

 

「おお、なんだ? ……”リンクモンスターパック”?」

「アンティルールだ。テメェは俺のデッキをいらねぇっつったからな。代わりだ。……勝者は得て敗者は失う。それがこの世界でのルールだ。覚えておくんだな」

 

 そう言ってシャークは踵を返して立ち去ろうとする。それを見た十代は慌てて呼び止めた。

 

「おい待てよシャーク!」

「あ?」

「……”シャーク”ってあだ名だろ? 本名、何て言うんだ?」

「……”神代 凌牙”……遊城十代、一つ忠告してやる。今のお前のデッキじゃこの先生き残るのは不可能だ。決闘もテメェ自身も、”この世界”に適応出来なければ終わりだ。……精々突っ走るんだな」

 

 そう言うとシャーク――――神代 凌牙は去って行った。取り巻きの二人もいつの間にかいなくなっている。

 凌牙の背を見送った後、十代はふと違和感に気づく。

 

「そういや凌牙、俺の名前呼んでたな? 俺名乗ってなかった気がすんだけど……まぁいいか」

 

 細かいことは気にしない、それどころではないのだ。

 ここが何処なのか、何故自分はここへ連れてこられたのか。何故凌牙は自分の前に現れ、突然決闘を挑んできたのか――――考えることは山積みだ。

 

「(でも、一つだけハッキリしたことがある)」

 

 それはこの先に強い決闘者と楽しい決闘が待ち受けているということ。十代にとっては何よりも重要なことであった。

 

「それだけ分かればやる気マックス! エキサイティング! これは俺に与えられた試練なんだ!」

 

 最初の無気力はどこへやら、子供のような台詞を口走りながら十代は駆け出す。”遊城 十代”の新たな旅立ちがここに始まったのだった――――




第二弾は十代。相手はシャークこと凌牙でした。
デッキテーマは”アニメ初期と漫画版2作の合成”です。
前のハノイもシャークもこれから先の面子もそうですが、デッキ内容は原作に+αした内容になっています。


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不動 遊星

プロローグ第三弾”不動 遊星”です。


 

 

 

あいつ等が戻ってきた時、俺達の故郷は、”チーム5D's”が救った街は、こんなに素晴らしい場所だったんだって、そう誇れるネオ童実野シティにしていくのが、俺の役目さ――――

 

 

 

 

 

 

 眠れない、眠りたくない夜。そんな深夜の公園に佇む青年――――”不動 遊星”は”ネオ童実野シティ”の夜景を眺め続ける。何だかんだあって長い付き合いとなった”牛尾 哲”が立ち去った後も、変わらずに眺め続ける。”旅立ちの朝”を迎えるその瞬間まで、仲間達がいるこの街の空気を1秒でも長く感じていたかった。

 

「(遊戯さん、十代さん、俺達はやりました……そして、これからも繋いでいきます。皆で守り抜いたこの街で――――)」

 

 

 

遊星……不動 遊星……

 

 

 

「(何……!? 誰だ?)」

 

 他に誰もいないはずの深夜の公園で、聞こえるはずのない声が遊星の頭に響く。牛尾が戻ってきたのかと辺りを見渡すが誰もいない。そもそも牛尾の声ではない。

 遊星は素早く愛車のDホイール”遊星号”に駆け寄り、決闘盤を取り出して装着、辺りを警戒する。

 

 

 

赤き竜に選ばれし者……サテライトの英雄……竜頭の継承者……揺るがなき境地――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

 

「誰だ! 姿を現せ!」

 

 

 

集え、我が下に――――その”断ち切れぬ絆”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「!?」

 

 真夜中の公園が眩い光に包まれる。やがて光は消え、そして――――誰もいなくなった。

 

 

 

* * *

 

 

「……ここは?」

 

 気が付くと、遊星は見知らぬ建物の中に立っていた。見渡して判るのは、ここが何かしらの施設の廊下だということ。自分の決闘盤に付けた覚えのないプレートパーツが取り付けられていること。そして、自分の服装が仲間との集まりの為に着ていたカジュアルな服から何時もの服に変わっていたことだった。

 

「(何が起こっているんだ……)」

 

 動揺する遊星だが、これまでに幾度となく超常現象に遭遇してきただけありすぐに冷静さを取り戻す。辺りを警戒しながら慎重に廊下を進むと、壁が大きなガラスとなって中の様子が見える部屋にたどり着く。

 

「(これは……決闘の教育施設か?)」

 

 遊星は身を潜めつつガラス越しに中を覗くと、そこには少年少女達が大勢集まり、それぞれスペースを分け合って決闘を行っている姿が見えた。生徒達にあれこれ言いつけている大人の姿も見えるので、おそらく決闘を教わっているのだろう。

 

「(ならここは”デュエルアカデミア”か? だが前に来た時と内装が違い過ぎる。生徒達の中に見知った顔は一人もいない。それに……)」

 

 遊星の目を惹いたのは子供達が使っているカード。融合モンスターやシンクロモンスターは分かるが、EXデッキから取り出された黒いカードと青いカードは何なのか。

 

「(EXデッキから取り出されたということは儀式モンスターではない……俺の知らないカード)」

 

 決闘者故の好奇心。本来ならば抑えてこの状況の解明に努めるべき時なのだが、クールな遊星でもこれには抗えなかった。息を潜めつつ、遊星は未知なるデュエル・モンスターズの調査を始めた。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「(成程……俺の知らないルール。エクシーズ、ペンデュラム、そしてリンク召喚)」

 

 一通り施設を周り、遊星はこの世界の”決闘”を知った。未知なるルール、未知なる召喚法。自分の知らない”決闘”がここには溢れていた。

 ふと遊星の脳裏に尊敬すべき先人”武藤 遊戯”と”遊城 十代”の顔が過った。自分が行ったシンクロ召喚に驚き興奮した二人の顔――――

 

「(俺のシンクロ召喚を見た時、二人もこんな気持ちだったんだろうか……未来の召喚法に……未来? ここは未来の世界なのか? 未来の、アカデミア……)」

 

 そう思った瞬間、遊星の顔から優しい笑みがこぼれる。

 当然だ。自分たちが救った世界の未来には、こんなにも進化した決闘がある。そして、それを子供達が当たり前のように学んでいる――――こんなに嬉しいことはない。

 

「(ゾーン、アポリア、パラドックス……ブルーノ。お前達にも見えるか? 見て欲しかった。この未来を――――)」

「あら? 見学の方ですか?」

 

 声に反応して振り向くと、何時の間にか後ろに見知らぬ女性が立っていた。優しそうな雰囲気の女性である。おそらく教師の一人だろうと考え、遊星はペコリと軽く頭を下げた。

 

「すいません、迷い込んでしまって……」

「あらあら、うふふ! ”アカデミア”は広いですものね」

 

 可愛らしく笑う女性。胸元についているネームプレートには”鮎川”と書かれていた。そして彼女の言葉によりここが”デュエルアカデミア”であることが確定する。

 

「あ、もしかして貴方が”教頭先生”の言っていた決闘者かしら?」

「え?」

「ほらほらもう時間がないわよ! ”実演決闘”が始まっちゃうわ! 急ぎましょう!」

 

 鮎川先生は遊星の腕を掴むとぐいぐいと引っ張って速足で歩きだす。裏を感じられず、相手が女性だということもあって無理に振り払うことができない遊星。引かれるままに何処かへと連れていかれてしまった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「ここは……決闘場か」

 

 遊星が連れてこられて立たされたのは広い決闘場。巨大なドームの中に作られた決闘場であり、周りは大人数を収容できる観客席に囲まれ、席にはアカデミアの生徒達が隙間なく座り、決闘が始まるのを静かに待っていた。

 しばらくすると教師の一人が決闘場の中心へと進みでる。

 

「これより、外部から招いた決闘者と、実技担当最高責任者である”クロノス・デ・メディチ”教頭とのエキシビションデュエルを行う!」

 

 この瞬間、静かだった観客席がわっと沸き立つ。その歓声の中、宣言した教師と入れ替わって一人のイタリア人決闘者が決闘場へと上がる。一目見たら忘れられない強烈な個性の塊のような男で、大きな決闘盤をギターのように抱えて構えている。そして開いた口から出た声もまた強烈だった。

 

「ボンジョォォォルゥノッ! セニョール決闘者! ワタクシは”クロノス・デ・メディチ”! 学園では実技最高責任者にして教頭をやってルーノデス!」

「(やはりハイトマンではないか……しかし”クロノス”……どこかで聞いた覚えがある)」

 

 聞き覚えのある名前を探そうと記憶を探る遊星。それを遮るように個性的すぎる声が降りかかる。

 

「コラッ! ちゃんート挨拶返すノーネ! 社会人のジョーシキナノーネ!」

「あ、はい……不動 遊星です」

「お仕事ォーは? マサーカその年齢で”社会的ドロップアウトボーイ”ダナーンテ言わないデショー?」

「仕事は……”モーメント開発”の開発主任を。それと街の人に頼まれて機械修理をすることもあります」

「ホホォー! よく分からないけード、立派なお仕事してるみたいナノーネ! デモ……デュエルの実力はどうナノーネ?」

「誰にも負けません」

 

 遊星が即答すると、クロノスはホホホッ、と愉快そうに笑う。

 

「その意気やヨーシィ! デ~モ、”井の中の蛙”って事もあるノーネ! ゲロゲーロ!」

 

 クロノスが専用決闘盤”デュエル・コート”を構えると、遊星も決闘盤を展開させて構える。

 

「世界の広さを教えてあげマース!」

「(クロノス……思い出した!)」

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

「先攻は譲ってあげるノーネ!」

「俺のターン! 俺は魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札からモンスター1体を墓地へ送り、手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する! デッキから《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 墓地へ送ったカード

 チューニング・サポーター

 

 遊星の場に中華鍋を被った小さなロボットが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「(未知のルールに、俺のデッキは通用するか……勝負だ!)チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

 続けて現れたのはジャンクパーツを体に纏った小さな戦士。遊星をここまでずっと支えてきたチューナーモンスター、ジャンク・シンクロンである。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動! 墓地のレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する! 墓地に送ったもう1体の《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 ジャンク・シンクロンが隣に手をかざすと、そこに2体目のチューニング・サポーターが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 DEF:300

 

「チューニング・サポーターはS素材とする場合、レベル2として扱うことができる! レベル2、レベル1の《チューニング・サポーター》にレベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが背負ったエンジンを起動させると、自身を3つの光輪へと変える。そしてチューニング・サポーター達を光輪で囲み、3つの光、そして光の柱へと変化させる。

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れよ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、要塞のような姿をした鉄壁の戦士。両手の大盾を地面に打ち付け、クロノスに対して構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「素材となったチューニング・サポーター2体の効果により2枚ドロー!」

 

 遊星 手札:2→4

 

「カードを2枚セット! ターンエンド!」

 

遊星

LP:4000

手札:2

EXモンスター

②:ジャンク・ガードナー DEF:2600

④:

メインモンスター

魔法・罠

②セット

③セット

 

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:5→6

 

「フフン! カードを伏せ、フィールド魔法《歯車街(ギア・タウン)》! そしーテ永続魔法《古代の機械要塞(アンティーク・ギアフォートレス)》発動! ……魔法カード《古代の機械射出機(アンティークギア・ギアカタパルト)》発動! ワタクシの場にモンスターが存在しなーイ場合、自分の表側表示カード1枚を破壊し、デッキから”アンティーク・ギア”1体を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ! 《古代の機械要塞》をハカーイし、デッキから《古代の機械巨人(アンティーク・ギアゴーレム)》を特殊召喚!」

 

 クロノスの場が歯車で構成された街と機械仕掛けの要塞に変わると、要塞の中から1体の機械巨人が要塞を破壊しながら現れる。

 

 古代の機械巨人 地属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「これコーソガ、我が”暗黒の中世”デッキのエースモンスター”古代の機械巨人”ナノーネ! ……ンン?」

 

 クロノスが誇らしげに胸を反らせ、機械巨人が威圧的に見下ろすも、遊星は顔色一つ変えずに身構えている。それが面白くなかったのか、クロノスは不満げに鼻を鳴らした。

 

「フン! ちょっとは驚いたらどうナノーネ! 可愛くないノーネ! こうなったら”アンティーク・ギア”の力を思い知らせてやるノーネ!」

「(”古代の機械巨人”の力はよく知っている。そしてクロノス、アンタのこともな)」

 

 遊星は思い出す。あれはWRGP開催前、仲間である十六夜アキ、龍亜、龍可に誘われて行ったアカデミアの学園祭でのことだった――――

 

 

 * * *

 

 

「遊星ー! 早く早く! 面白い出し物がいっぱいあるんだよー!」

「龍亜! 走らないのー! 危ないでしょ!」

 

 はしゃぐ龍亜を龍可が叱りながら追いかけ、その後ろを遊星とアキが並んで歩く。

 

「龍亜ったら、遊星が遊びに来てくれたのがよっぽど嬉しかったのね。 ……遊星、よかったの? 忙しかったんじゃない?」

「たまには息抜きしてこいとゾラやクロウに言われてしまってな。ブルーノにも作業効率が落ちていることを指摘された。ちょうど良かったんだ。今日1日は楽しんでいくつもりさ」

「ふふ、よかった……ねえ遊星、こうして4人で歩いているとなんだか私達……”家族”みたいね」

 

 アキがわずかに顔を赤らめて遊星を見ると、遊星は反対方向の壁に掛けられている写真を見上げて立ち止まっていた。

 

「アキ、これはハイトマンの写真か? ハイトマン以外の写真も飾ってあるようだが……」

「……ハァ」

 

 落胆と不機嫌を隠さないアキのため息。まさかこの場にいない上にいけ好かないハイトマンに遊星の興味を奪われるとは思わなかった。

 ハイトマンとはデュエル・アカデミアネオ童実野校の教頭で、伝説のレアカードにして代々の教頭に受け継がれるビンテージ・モンスター”古代の機械巨人”の使い手。遊星は以前にこのハイトマンと決闘し、3体の古代の機械巨人に追い詰められたことがある。最後はアカデミア生の絆の力によって逆転し、ハイトマンの”外れかけた頭のネジ”を見事に締めなおした。

 

「……そうよ、ここは歴代の教頭先生の写真が飾ってあるの。一番新しいのがハイトマン先生のね」

「随分人数が多いように見える。ここの歴史はそんなに深くないと聞いていたが」

「ああ、ここは割と最近に本校から分かれてできた学園だから、大半は本校の教頭先生の写真らしいわ」

「もー遅いよ遊星!」

 

 遊星とアキが写真を見上げていると、先行していた龍亜と龍可がやってくる。二人が写真を見上げていることに気づくと、龍亜が笑いながら写真の1枚を指さす。飾られている写真の中でも古い1枚だった。

 

「教頭先生の写真? 俺はこの人が一番好きかな! 面白い顔ー!」

「龍亜! 失礼なこと言わないの!」

 

 龍亜の指差す写真を遊星も見上げる。そこには確かに面白い顔をした外国人男性の顔が写っており、下に”2代目教頭 クロノス・デ・メディチ”と書かれていた。

 

「クロノス・デ・メディチ。歴代教頭の中でも最も優秀な教頭先生だったらしいわ。ハイトマン教頭の”アンティーク・ギア”も、元々はこの人のカードらしいの」

「そうなのか?」

「って、ハイトマン教頭が特別授業で熱弁してたわ。ハイトマン教頭はこの人の教え子だったらしくて、凄く尊敬してるのが感じられたわね。生涯の目標とも言ってたわ」

 

 余程の熱量だったのか、アキは苦笑いを浮かべて肩をすくめる。

 

「あの自信家のハイトマンがそこまで……」

「ハイトマン教頭ほどではないけど、彼を尊敬している先生は多いらしいわ。教師の理想像みたいな人なんじゃないかしら。 ……ふふ、そんな先生なら、一度会って教えてもらいたいものね」

 

 

 * * *

 

 

「(――――目の前のこの男がその”クロノス”なら、間違いなく最強の”アンティーク・ギア”使い! 面白くなってきた! ……だが)」

 

 楽しみと同時に、一つの大きな謎が生まれてしまった。それは遊星の確信を崩す、大きな問題――――

 

「(クロノスは俺がいる世界の”過去の人間”……つまり、ここは過去ということになるが……それならこのルールとカードは一体?)」

「破壊シータ《古代の機械要塞》の効果発動! 手札・墓地から”アンティーク・ギア”1体を特殊召喚するノーネ! 手札から《古代の機械飛竜(アンティーク・ギアワイバーン)》を特殊召喚!」

 

 クロノスの場に機械仕掛けの飛竜が現れ、ジャンク・ガードナーに対して威嚇する。

 

 古代の機械飛竜 地属性 機械族 レベル4 ATK:1700

 

「古代の機械飛竜の効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから”アンティーク・ギア”カード1枚を手札に加えるーノ! デッキから《古代の機械巨人-アルティメット・パウンド》を手札ーニ!」

 

 クロノス 手札:1→2

 

「歯車街が存在する場合、”アンティーク・ギア”を生贄召喚する場合のリリースを1体少なくできるノーネ! 飛竜をリリース! レベル8の《古代の機械巨人-アルティメット・パウンド》を召喚!」

 

 古代の機械飛竜が光の中へと姿を消すと、その光の中から古代の機械巨人が姿を現す。先ほどの機械巨人と同じ姿だが、こちらの方が幾らか動きが機敏なように見える。

 

 古代の機械巨人-アルティメット・パウンド 地属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「速攻魔法《ダブル・サイクロン》発動! 自分と相手ーノ魔法・罠を1枚ずつ破壊するノーネ! 《歯車街》とセニョール遊星の伏せカードを破壊するノーネ! ヴーラヴラヴラヴラ!」

 

 場に二つの竜巻が吹き荒れ、歯車街と遊星の伏せカードを吹き飛ばす。

 

「歯車街が破壊され墓地に送られた時、手札・デッキ・墓地から”アンティーク・ギア”1体を特殊召喚するノーネ! デッキから《古代の機械熱核竜(アンティーク・ギア・リアクター・ドラゴン)》を特殊召喚!」

 

 竜巻により吹き飛ばされる歯車街。その残骸が集まって形となり、機械飛竜よりも遥かに巨大な1体の機械竜となる。 

 

 古代の機械熱核竜 地属性 機械族 レベル9 ATK:3000

 

「破壊されたカードは罠カード《リミッター・ブレイク》! このカードが墓地へ送られた場合、手札・デッキ・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する!」

 

 吹き荒れる風の中、一人の強化アーマーを纏った戦士が飛び交う残骸の間を駆け抜け、遊星の場に現れる。ジャンク・シンクロンと共に遊星を支えてきた戦士”スピード・ウォリアー”である。

 

 スピード・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル2 DEF:400

 

「オホホホホ! なんて可愛らしいモンスターデショウ! 残念ナガーラ、ワタクシのアンティーク・ギアで一捻りにしてあげるーノ! バトル!」

「この瞬間、ジャンク・ガードナーの効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体の表示形式を変更する! 《古代の機械熱核竜》を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーが両手の盾を構えながら機械熱核竜に衝撃破を放つと、それを受けた機械熱核竜はジャンク・ガードナーと同じように防御の体勢を取ってしまう。

 

 古代の機械熱核竜 ATK:3000→DEF:3000

 

「マンマミーアッ!?」

「悪いが得体の知れないモンスターは封じさせてもらう。機械巨人の方が相手にしやすいんでね」

「ヌウ~! 知ったような口を利くんじゃないノーネ! アンティーク・ギアの恐ろしさを特別授業してあげるーノ! 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドでジャンク・ガードナーを攻撃! その名のトーリ【アルティメット・パウンド】!」

 

 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドがジャンク・ガードナーに向かって拳を放つと、ジャンク・ガードナーはそれを盾で受け止める――――が、盾は無残にも変形し、ジャンク・ガードナーは弾き飛ばされて爆散する。

 

「機械巨人の十八番! 貫通ダメージを受けるノーネ!」

「ぐっ! ジャンク・ガードナーの効果発動! 場から墓地へ送られた場合、モンスター1体の表示形式を変更する! 《古代の機械巨人》を守備表示に変更!」

 

 遊星 LP:4000→3600

 

 ジャンク・ガードナーが消えた瞬間、控えていた機械巨人が突然膝を付き、防御体勢を取る。

 

 古代の機械巨人 ATK:3000→DEF:3000

 

「……最上級アンティーク・ギア3体の攻撃を最小限に抑えてしまうなんーテ、セニョール、只の決闘者ではアーリマセンーネ?」

「アンティーク・ギアは経験済みなんでね。ここまでは予測できていた。……だが、アンタの決闘はまだまだこんなものじゃないんだろう? 教頭先生」

 

 不敵に笑う遊星の挑発に、クロノスは嬉しそうに頷く。

 

「……よろしいデショウ! セニョールを”生徒”のつもりで相手をしていましたーガ、ここからは一人の”決闘者”として本気でお相手するノーネ! ターンエンド!」

 

 

クロノス

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

②古代の機械巨人-アルティメット・パウンド ATK:3000

③古代の機械巨人 DEF:3000

④古代の機械熱核竜 DEF:3000

魔法・罠

③セット

 

 

「俺のターン!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「罠カード《ロスト・スター・ディセント》! 自分の墓地のSモンスター1体の守備力を0にし、レベルを1つ下げ、効果を無効にして特殊召喚する! 《ジャンク・ガードナー》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に再びジャンク・ガードナーが現れるが、まるで抜け殻のように微動だにせず、固まったまま動かない。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6→5 DEF:2600→0

 

「チューナーモンスター《ニトロ・シンクロン》を召喚!」

 

 続けて遊星の場にガスボンベに手足が生えたような姿をしたロボットが現れる。

 

 ニトロ・シンクロン 炎属性 機械族 レベル2 ATK:300

 

「レベル5となった《ジャンク・ガードナー》にレベル2《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 

 ニトロ・シンクロンが頭部のメーターを振り切らせると、自身を2つの光輪へと変えジャンク・ガードナーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ《ニトロ・ウォリアー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、厳つい悪魔のような姿をした戦士。緑色の体を震わせ、雄叫びを上げる。

 

 ニトロ・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル7 ATK:2800

 

「ニトロ・シンクロンがニトロ・ウォリアーのS素材として墓地へ送られた場合、1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「戦士族のスピード・ウォリアーをリリースし、手札の《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 スピード・ウォリアーが光の中へと消えると、その光の中から人の形をした旋回砲塔が現れる。

 

 ターレット・ウォリアー 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1200→2100

 

「ターレット・ウォリアーの攻撃力は特殊召喚の為にリリースした戦士族の元々の攻撃力分アップする! 魔法カード《フォース》! 場のモンスター2体を選択し、1体の攻撃力を半分の数値に、もう1体の攻撃力をその数値分アップする! 《古代の機械巨人》の攻撃力を半分の数値にし、《ターレット・ウォリアー》の攻撃力をその数値分アップする!」

 

 古代の機械巨人 ATK:3000→1500

 ターレット・ウォリアー ATK:2100→3600

 

「なんでスート!?」

「クロノス教頭、俺は最初から本気だ! バトル! ニトロ・ウォリアーで古代の機械巨人-アルティメット・パウンドを攻撃! 自分のターンに自分が魔法カードを発動した場合、ニトロ・ウォリアーの攻撃力はそのターンのダメージ計算時のみ1度だけ1000ポイントアップする!」

 

 ニトロ・ウォリアー ATK:2800→3800

 

「砕け! 【ダイナマイト・ナックル】!」

 

 ニトロ・ウォリアーが両拳を突き出して機械巨人へと突進すると、拳からあふれ出たオーラが巨大な拳となり、機械巨人を殴り飛ばして粉砕する。

 

「ワ、ワタクシの古代の機械巨人ガッ!?」

 

 クロノス LP:4000→3200

 

「ニトロ・ウォリアーの効果発動! このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊したダメージ計算後、相手の表側守備表示モンスター1体を選択して攻撃表示にし、1度だけそのモンスターに続けて攻撃できる! 《古代の機械巨人》を攻撃表示にし、攻撃する!」

「何ですトォー!? くっ! 古代の機械巨人-アルティメット・パウンドの効果発動! 場のこのカードが戦闘・効果で破壊された場合、デッキから《融合》1枚を手札に加え、自分の墓地からこのカード以外の”アンティーク・ギア”モンスター1体を選んで手札に加えるノーネ! 墓地から《古代の機械飛竜》を手札ーニ!」

 

 クロノス  手札:0→2

 

「〈ダイナマイト・インパクト〉!」

 

 ニトロ・ウォリアーが古代の機械巨人に向かって光線を放つと、機械巨人はゆっくりと立ち上がって構える。

 

 古代の機械巨人 DEF:3000→ATK:1500

 

「【ダイナマイト・ナックル】!」

「【アルティメット・パウンド】!」

 

 ニトロ・ウォリアーと機械巨人が互いの拳を衝突させる。暫く押し合った後、機械巨人の拳に亀裂が入り、粉々に粉砕された。

 

「グ、グヌウ……!」

 

 クロノス LP:3200→1900

 

「ターレット・ウォリアーで古代の機械熱核竜を攻撃! 【リボルビング・ショット】!」

 

 ターレット・ウォリアーが機銃から弾丸を連射し、機械熱核竜を撃ち抜いて撃墜する。

 

「ア、アンティーク・ギアが全滅してしまったノーネ……」

「カードをセットし、ターンエンド!」

 

 

遊星

LP:3600

手札:0

EXモンスター

②:ニトロ・ウォリアー ATK:2800

④:

メインモンスター

③ターレット・ウォリアー ATK:3600→2100

魔法・罠

③セット

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:2→3

 

「魔法カード《古代の整備場(アンティーク・ギアガレージ)》発動! 墓地から”アンティーク・ギア”モンスター1体を手札に加えるノーネ! 《古代の機械巨人》を手札に戻すノーネ! 《古代の機械飛竜》を召喚! 効果でデッキから2体目の《古代の機械巨人》を手札ーニ!」

 

 クロノスの場に再び機械飛竜が現れる。

 

 古代の機械飛竜 地属性 機械族 レベル4 ATK:1700

 

 クロノス:2→3

 

「”アンティーク・ギア”がホコール、奥の手中の奥のーテ! 生徒相手には決して見せない切り札、お見せするノーネ! 魔法カード《融合》! 手札の《古代の機械巨人》2体と場の《古代の機械飛竜》を融合!」

 

 クロノスの場の空間が歪み渦が現れると、その中に3体のアンティーク・ギアが吸い込まれる。

 

「現れるノーネ! 《古代の機械超巨人(アンティーク・ギア・メガトン・ゴーレム)》!」

 

 渦の中から現れたのは、腕が6本、脚が4脚備わった古代の機械巨人。赤いアイセンサーを光らせ、体中から蒸気を噴出させる。

 

 古代の機械超巨人 地属性 機械族 レベル9 ATK:3300

 

「アンティーク・ギアの融合モンスター……!?」

「バトル! 古代の機械超巨人でニトロ・ウォリアーを攻撃ナノーネ!」

 

 機械超巨人が6つの拳を連続で繰り出すと、ニトロ・ウォリアーは防ぎ切ることができずに殴り飛ばされて破壊されてしまう。

 

「ニトロ・ウォリアー!?」

 

 遊星 LP:3600→3100

 

「古代の機械超巨人は融合素材とした”古代の機械巨人”モンスターが2体以上の場合、その数だけ攻撃できるノーネ!」

 

 ニトロ・ウォリアーを葬った後、今度はターレット・ウォリアーへと拳を繰り出し、これも殴り飛ばして破壊する。

 

「ぐうっ!? ターレット・ウォリアー……」

 

 遊星 LP:3100→1900

 

「ターンエンド! さあ、アナタにこのアンティーク・ギアを倒すことができるノーネ?」

 

クロノス

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:

④:古代の機械超巨人 ATK:3300

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「倒して見せるさ。今度は俺の番だ! 俺のターン!」

 

 遊星 手札:0→1

 

「永続罠《エンジェル・リフト》! 墓地からレベル2以下のモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する! 《チューニング・サポーター》を特殊召喚! そしてチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》を通常召喚!」

 

 遊星の場にチューニング・サポーターと、ジェットエンジンに手足と顔を付けたようなロボットが現れる。

 

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 ATK:500

 

「レベル1《チューニング・サポーター》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変え、チューニング・サポーターを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う。光差す道となれ!」

 

 光の柱の中から頭部と手足が付いたレーシングカーが飛び出す。これこそが遊星を新たなる境地へと導く”駆け抜ける閃光”――――

 

「希望の力、シンクロチューナー! 《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 

「ジェット・シンクロンの効果発動! S素材として墓地へ送られた場合、デッキから”ジャンク”モンスター1体を手札に加える! 《ジャンク・ジャイアント》を手札に! そしてフォーミュラ・シンクロンのシンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローできる! チューニング・サポーターと合わせて2枚ドロー!」

 

 遊星 手札:0→1→2→3

 

「ムフフン! 召喚権を使ってまでのドロー……いいカードは来たノーネ?」

 

 逆転しようと必死なのだろうと思い、クロノスは愉悦の笑みで尋ねる。遊星はそれに不敵の笑みで返した。

 

「……俺の決闘はここから加速する! 魔法カード《死者蘇生》! もう一度《チューニング・サポーター》を墓地から特殊召喚! そして速攻魔法《地獄の暴走召喚》! 相手の場に表側モンスターが存在し、自分が攻撃力1500以下のモンスター1体の特殊召喚に成功した時、デッキ・墓地から特殊召喚したモンスターの同名のモンスターを可能な限り攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 遊星の場にチューニング・サポーター3体が雪崩込み、わちゃわちゃと暴れだす。

 

 チューニング・サポーター×3 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「ウヌヌ……地獄の暴走召喚は相手にもモンスターの特殊召喚をさせるカードナノーネ……しかし」

 

 古代の機械超巨人は融合モンスター。デッキには存在せず、2体目以降はまだ特殊召喚されていない。よってクロノスは暴走召喚の恩恵を受けることができない。

 

「レベル1《チューニング・サポーター》2体とレベル2として扱う《チューニング・サポーター》に、レベル2《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 フォーミュラ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変えると、チューニング・サポーター達を囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「星空を焦がす聖槍よ、魂を放ち世界を醒ませ! シンクロ召喚! 《スターダスト・アサルト・ウォリアー》!」

 

 光の柱から現れたのは、両手にドライバーのような槍を装備した白い戦士。プラスとマイナスの双槍を打ち合わせ、勇ましく構える。

 

 スターダスト・アサルト・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル6 ATK:2100

 

「スターダスト・アサルト・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した時、自分の場に他のモンスターが存在しない場合、自分の墓地の”ジャンク”モンスター1体を特殊召喚する! 甦れ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 遊星の場に再びジャンク・ガードナーが現れ、防御の体勢で構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「S素材となったチューニング・サポーターの効果により3枚ドロー!」

 

 遊星 手札:1→2→3→4

 

「魔法カード《シンクロキャンセル》! スターダスト・アサルト・ウォリアーをEXデッキに戻し、素材一組を墓地から特殊召喚!」

 

 遊星の場からスターダスト・アサルト・ウォリアーが消滅すると、再びフォーミュラ・シンクロンとチューニング・サポーター達が現れる。

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 チューニング・サポーター×3 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「もう1度、同じ組み合わせでチューニング!」

 

 同じ組み合わせで、再び光の柱が現れる。しかし、中から現れたのはスターダスト・アサルト・ウォリアーではなかった。

 

「星雨を束ねし聖翼よ、魂を風に乗せ世界を巡れ! シンクロ召喚! 《スターダスト・チャージ・ウォリアー》!」

 

 現れたのは鋼鉄の翼を身に着けた戦士。スターダスト・アサルト・ウォリアーに似たその戦士は翼を展開し、機械超巨人に対して構える。

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー 風属性 戦士族 レベル6 ATK:2000

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した時、1枚ドローする! チューニング・サポーターと合わせて4枚ドロー!」

 

 遊星 手札:3→4→5→6→7

 

「な、何回ドローするつもりナノーネ! ずるいノーネ!」

「いや、これで十分だ! 相手の場にレベル5以上のモンスターが存在する場合、《ジャンク・ジャイアント》を手札から特殊召喚できる!」

 

 遊星の場に大きな球体に手足とドリルを付けたような姿をしたロボットが現れる。

 

 ジャンク・ジャイアント 地属性 機械族 レベル6 ATK:2000

 

「魔法カード《精神同調波》! 自分の場にSモンスターが存在する場合、相手モンスター1体を破壊する! 放てジャンク・ガードナー!」

 

 遊星が指示すると、ジャンク・ガードナーは体から波動を機械超巨人に向かって放つ。その波動を受けた機械超巨人はバラバラになって崩れ落ちる。

 

「言ったはずナノーネ、このカードは我がアンティーク・ギアの切り札! 破壊した位で乗り越えられる壁ではないノーネ! 古代の機械超巨人の効果発動! 融合召喚したこのカードが相手の効果で場から離れた場合、EXデッキから《古代の機械究極巨人》1体を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ! 出でよ真の切り札! 《古代の機械究極巨人》!」

 

 崩れ落ちた残骸の山を蹴散らし、新たなる機械巨人が姿を現す。その姿は半人半馬”ケンタウロス”を模していて、左手にはクローを装備し、右手には遊星も苦しめられてきた鉄拳が健在している。古代の機械超巨人はアンティーク・ギア融合モンスターの”先兵”であり、どうやら本命はこちらの巨人であるようだ。

 

 古代の機械究極巨人 地属性 機械族 レベル10 ATK:4400

 

「残念だったノーネ!」

「……いや、解っていたさ。アンタほどの決闘者なら、次の手を即座に繰り出してくることくらいはな」

「ンン?」

「俺はその上を行く! ジャンク・ガードナーの効果発動! 古代の機械究極巨人を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーが放った波動により究極巨人は強制的に防御の体勢を取らされる。

 

 古代の機械究極巨人 ATK:4400→3400

 

「守備表示? それでもセニョールのモンスターでは……」

「魔法カード《一騎加勢》! スターダスト・チャージ・ウォリアーの攻撃力をターン終了時まで1500アップする!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:2000→3500

 

「なんート!?」

「これで究極巨人を上回った! バトル! スターダスト・チャージ・ウォリアーで古代の機械究極巨人を攻撃! 【流星乱射(シューティング・クラッシャー)】!」

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアーが流星のような光弾を乱射し、究極巨人を撃ち貫く。全身を穴だらけにされた究極巨人はガラガラと崩れ落ち、機械超巨人と同様にジャンクの山を築く。

 

「グウゥ!? まだナノーネ! 古代の機械究極巨人の効果発動! 破壊された場合、自分の墓地の《古代の機械巨人》を召喚条件を無視して特殊召喚するノーネ!」

 

 ジャンクの山を掻き分け、今度は機械巨人が姿を現す。

 

 古代の機械巨人 地属性 機械族 レベル8 DEF:3000

 

「スターダスト・チャージ・ウォリアーは特殊召喚された相手のモンスター全てに攻撃ができる! 続けて攻撃!」

 

 星屑戦士の無慈悲な一撃。復活したばかりの機械巨人は先の2体と同じようにジャンクの山の一部となってしまった。

 

「マンマミーア……!?」

「トドメだ! ジャンク・ジャイアントでダイレクト・アタック!」

「ンイィ~!!! 罠カード《カウンター・ゲート》! 相手の直接攻撃宣言時、その攻撃を無効とし、1枚ドローするノーネ!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

 ジャンク・ジャイアントがクロノスを押しつぶそうと動き出すが、罠の発動により動きを止め、遊星の場とどまる。

 

「攻め切れなかったか……」

 

 悔し気に拳を握る遊星。遊星の猛攻を凌いだクロノスであったが、切り札を破られた今、精神的ダメージは大きい。

 

「(セニョール遊星……何というデュエルタクティクス!? 融合アンティーク・ギアの戦術を完璧に読み切り、ワタクシの喉元に手を伸ばしてくるトーハ……セニョール遊星の”試練”の相手、どうやらワタクシでは力不足だったノーネ……ならバ!)」

「カードを4枚セットし、ターンエンド!」

 

 

遊星

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:3500→2000

④:

メインモンスター

②ジャンク・ジャイアント ATK:2000

③ジャンク・ガードナー DEF:2600

魔法・罠

①セット

②セット

③セット

④セット

 

 

「……ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:1→2

 

「セニョール遊星! ちょっと失礼するノーネ!」

 

 そう言うとクロノスは懐からリモコンスイッチを取り出し、スイッチを押す。すると突然決闘場がせり上がり、天井へと向かう。

 

「何だ!? 何をするんだ!」

 

 驚いたのは遊星だけではなく、観客の生徒や教師達も何事かとざわめく。どうやらこれは完全にクロノス独断の行動らしい。やがて決闘場が天井に近づくと天井が開き、決闘の場は屋上へと移された。ここにいるのはクロノスと遊星だけである。

 

「申し訳アリマセーン。ここからの決闘を生徒に見せるわけにはいかないノーネ」

 

 クロノスの謝罪を聞きながら遊星は辺りを見渡す。屋上から見える景色は森に囲まれ、さらにその森を海が360度囲んでいる。どうやらアカデミアが存在するこの場所は絶海の孤島らしい。

 

「(ネオ童実野シティですらなかったのか……本当にここは何処なんだ?)」

「セニョール遊星、特別授業をしてあげマスーノ」

「何?」

「アナタにとって”機械族”モンスターとは、どのようなモンスターナノーネ?」

「俺にとって?」

「アナタなりの答えで構いませンーノ。機械族とはどんなカードナノーネ?」

 

 クロノスの問いの意味は理解できていないが、遊星は真剣に考える。自分が使っているカード達、今まで戦ってきたライバルや強敵達との決闘を思い出しながら答えを探す。

 

「……機械族は、爆発的なパワーを持ち、それでいて柔軟に戦うことができる。非常にバランスのいい種族。だが、それ故に弱点もはっきりしている」

「ホウ、それーハ?」

「強力である故に、決闘者の力量がハッキリと現れてしまうことだ。決闘者の力量が足りなければ、強力な力に振り回されるだけ。逆にカードを理解し、己の持てる力を十分に注いでやれば、これほど頼りになるカードはないだろう」 

「デハ、アナタは機械族は使い方を理解すれば誰でも扱える強いカード、と言いたいノーネ?」

「それは違う。 ……俺が今まで出会ってきた使い手達は皆、何かしらの強い”覚悟”を持っていた」

 

 妹を守るため戦い、シグナーにまでに覚醒した少年。

 故郷と家族の仇を撃つため、ダークシグナーにまで身を堕とした男。

 絶望の未来を変える為に自らを兵器と化した男達――――遊星が出会った機械族の使い手は皆、形は違えど自らが信じるものの為に戦っていた。その”信念と覚悟”がカードに現れていた。その姿は今でも遊星の心の奥底に刻み込まれている。

 

「”機械族”とは、人の”心”を強く反映する種族! ……俺はそう思う」

「……機械なのに”心”とは、恐れ入ったノーネ」

 

 クロノスは静かに笑った後、遊星に拍手を送る。

 

「ヨロシイ! 合格ナノーネ! 機械とは、人の叡智で創り出したモノ。そこには人の善意や悪意、あらゆる感情が宿っているノーネ! だからこそ機械は人の生活を助ける”パートナー”でもあれば、人からあらゆるものを無慈悲に奪い取る”悪魔”にもなりまスーノ!」

 

 クロノスの言葉が遊星の心に響き渡る。この言葉がありえたかもしれない”破滅の未来”そのものを現していたからだ。

 

「セニョール遊星は”サイバー流”をご存知ナノーネ?」  

「聞いたことはある。機械族の代表的な流派だと」

「そのトーリ。強大なパワーで迎撃し、対戦相手の力を最大限まで引き出してお互いを高め合う、リスペクト精神溢れる素晴らしき流派。我がアカデミア校長”マスター鮫島”が師範を務める機械族使いの最高峰ナノーネ! しかし――――」

 

 クロノスは表情を曇らせて俯く。

 

「そんな輝かしいサイバー流にも”裏”が存在するノーネ。ただひたすら勝利だけを求め、自分や相手が傷付くのも厭わない、”暴力”そのものが……そして、それはワタクシのアンティーク・ギアにも存在するノーネ!」

「何だって……!?」

「ワタクシのデッキを”暗黒の中世”と呼ぶのも、そのカードの存在があるからナノーネ。 ……鮫島校長もワタクシも、その”暴力”が悪意ある者に渡らぬように封印し、守ってきまシータ。しかし、ワタクシはそれではいけないと思うノーネ!」

 

 クロノスはカッと目を見開き拳を握る。少々不気味な表情となってしまっているが、昔志していたという”熱血教師”の片鱗が垣間見えた。

 

「決闘とは本来、青少年に”希望と光”を与えるモノでアーリ、決して”恐怖と闇”をもたらすモノではないノーネ!」

 

 その言葉に遊星は力強く頷く。ゼロ・リバースで家族を失い、サテライトでの貧しい生活を強いられて来た少年少女達。そんな子供達に”希望と光”を与えたのが”デュエル・モンスターズ”だったのだから。

 

「闇は決して光を凌駕できナイ! それを証明しなければならないノーネ! セニョール遊星、ワタクシの上を行くアナタならそれができるノーネ! それがアナタの”試練”ナノーネ!」

「俺の試練……」

「セニョール遊星、これから現れる”アンティーク・ギアの闇”に必ず打ち勝つこと。 ……ワタクシと約束してくだサーイ」

「……ああ、任せてくれ! 俺は必ず勝つ! アンタに”光”を示して見せる!」

「ヨロシイ! ……それでは行くノーネ! 魔法カード《オーバーロード・フュージョン》! 自分の場・墓地から機械族・闇属性の融合モンスターによって決められた融合素材を除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚するノーネ! 墓地の”アンティーク・ギア”4体を除外!」

 

 除外したカード

 古代の機械巨人

 古代の機械超巨人

 古代の機械究極巨人

 古代の機械熱核竜

 

「融合召喚! この世の全てを形なき混沌に帰す忌まわしき破壊神! 《古代の機械混沌巨人(アンティーク・ギア・カオス・ジャイアント)》!」

 

 クロノスの場に現れたのは、これまでのアンティーク・ギアが玩具に見えるほどの巨体をもった機械巨人。その黒い巨体から放たれる異質な雰囲気は、明らかに今までのアンティーク・ギアのものではなかった。

 

 古代の機械混沌巨人 闇属性 機械族 レベル10 ATK:4500

 

「これが……アンティーク・ギアの闇!?」

「バトル! 混沌巨人でスターダスト・チャージ・ウォリアーを攻撃! 【クラッシュ・オブ・ダークネス】!」

 

 遊星が混沌巨人の異様さに呆然としていると、混沌巨人がスターダスト・チャージ・ウォリアーに向かって獣の頭のような形をした手を伸ばす。

 

「ジャンク・ガードナーの効果で混沌巨人を守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ガードナーに向かって指示するが、ジャンク・ガードナーは恐怖のせいかまったく動けないでいた。

 

「ジャンク・ガードナー!?」

「混沌巨人が存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスター効果は発動できないノーネ!」

「くっ! ならば罠カード《重力解除》! 場の全てのモンスターの表示形式を変更する!」

 

 遊星が発動した罠により遊星のモンスター達は全て表示形式が変わるが、混沌巨人の動きは止まらない。混沌巨人の手がスターダスト・チャージ・ウォリアーを掴む。

 

 スターダスト・チャージ・ウォリアー ATK:2000→DEF:1300

 ジャンク・ガードナー DEF:2600→ATK:1400

 ジャンク・ジャイアント ATK:2000→DEF:2400

 

「混沌巨人は魔法・罠の効果を受けないノーネ! そして混沌巨人も貫通ダメージを与えることができるノーネ!」

「何っ!? ……罠カード《ガード・ブロック》! 戦闘ダメージを0にする!」

 

 混沌巨人はスターダスト・チャージ・ウォリアーを場外へと投げつけ、遥か下の地面へと叩きつけて破壊する。

 

「その後、デッキから1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:0→1

 

「まだ終わりじゃないノーネ! 混沌巨人は相手モンスター全てに1回ずつ攻撃が可能ナノーネ! ジャンク・ガードナーを攻撃!」

 

 混沌巨人はジャンク・ガードナーに向かって獣頭の手を向けると、獣の口にエネルギーを集中させる。

 

「罠カード《パワー・ウォール》! 相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるよう500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る! この戦闘で受けるダメージは3100! よって7枚のカードを墓地へ!」

 

 墓地へ送られたカード

 サルベージ・ウォリアー

 ロード・シンクロン

 マックス・ウォリアー

 スターダスト・ファントム

 スキル・サクセサー

 ターボ・シンクロン

 ネクロ・ディフェンダー

 

 遊星が罠を発動した瞬間、混沌巨人の手から光線が放たれジャンク・ガードナーを一撃で消し飛ばす。

 

「ジャンク・ジャイアントを攻撃!」

「罠カード《スピリット・フォース》! ダメージを0にし、墓地の守備力1500以下の戦士族チューナー1体を手札に加える! 《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

 

 遊星 手札:1→2

 

 混沌巨人が腕を突き出し、ジャンク・ジャイアントを押しつぶす。

 

「よくかわしたノーネ。ですーガ、何時までも凌げるほどこのカードは甘くないノーネ! カードを伏せてターンエンド!」

 

クロノス

LP:1900

手札:0

EXモンスター

②:

④:古代の機械混沌巨人 ATK:4500

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「(奇襲的に現れ、効果を受けず、全体攻撃を行い、攻撃力4500からの貫通能力……成程、クロノス教頭が”暴力”と呼ぶわけだ) 俺のターン!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》を召喚! 効果で墓地から《チューニング・サポーター》を特殊召喚!」

 

 遊星の場にジャンク・シンクロンとチューニング・サポーターが現れる。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 DEF:300

 

「自分の場に”ジャンク”モンスターが存在する場合、このカードを手札から特殊召喚できる! 来い《ジャンク・サーバント》!」

 

 続けて遊星の場にジャンクパーツのアーマーを纏った小柄な戦士が現れる。

 

 ジャンク・サーバント 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

「レベル4《ジャンク・サーバント》とレベル1《チューニング・サポーター》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変えると、2体のモンスターを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし闘志が、怒号の魔神を呼び覚ます! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 粉砕せよ《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

 光の柱の中から現れたのは、4つの腕を持つ黒鉄の魔神。混沌巨人にも怯まずに怒声を上げて構える。

 

 ジャンク・デストロイヤー 地属性 戦士族 レベル8 ATK:2600

 

「ジャンク・デストロイヤーの効果発動! S召喚に成功した時、このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの数まで場のカードを選択して破壊できる! 素材の数は2体、よって《古代の機械混沌巨人》とセットカードを破壊する! 〈タイダル・エナジー〉!」

 

 遊星が指示すると、ジャンク・デストロイヤーはエネルギー弾をクロノスの場に向かって2発放つ。

 

「バトルフェイズでなければモンスター効果が通る! くらえ!」

「甘いと言っているノーネ! 速攻魔法《禁じられた聖杯》発動! ターン終了時までジャンク・デストロイヤーの攻撃力を400アップし、効果を無効にするノーネ!」

 

 タイダル・エナジーが混沌巨人の目の前まで迫るが、クロノスが発動した魔法により直前で消滅してしまう。

 

 ジャンク・デストロイヤー ATK:2600→3000

 

「混沌巨人の唯一の隙と言っていいバトルフェイズ外のモンスター効果。そこを的確に突いてきたことは褒めてあげまショウ。 しかーし! それはワタクシも解り切っていることナノーネ! そんな浅い発想ではダメナノーネ! やり直ーシ!」

「くっ……これも駄目か……チューニング・サポーターの効果で1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:1→2

 

「墓地の《ネクロ・ディフェンダー》の効果発動! 墓地に存在するこのカードをゲームから除外し、

自分の場に存在するモンスター1体を選択! 次の相手のエンドフェイズ時まで選択したモンスターは戦闘で破壊されず、選択したモンスターの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる! 対象は《ジャンク・デストロイヤー》! これでターンエンド!」

 

遊星

LP:1900

手札:2

EXモンスター

②:ジャンク・デストロイヤー ATK:3000→2600

④:(古代の機械混沌巨人 ATK:4500)

メインモンスター

魔法・罠

 

 

「ワタクシのターン!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

「魔法カード《強欲で貪欲な壺》発動! デッキトップからカードを裏側のまま10枚除外し、2枚ドロー!」

 

 クロノス 手札:0→2

 

「《古代の機械砲台(アンティーク・ギアキャノン)》を召喚!」

 

 クロノスの場に機体から歯車を剥きだした砲台が現れる。

 

 古代の機械砲台 地属性 機械族 レベル2 ATK:500

 

「魔法カード《アイアンドロー》発動! 自分の場に機械族効果モンスターが2体のみの場合、カードを2枚ドローするノーネ! その代わり、このターンは特殊召喚をあと1回しか行えないノーネ」

 

 クロノス 手札:0→2

 

「魔法カード《機械複製術》発動! 自分の場の攻撃力500以下の機械族1体を対象に、デッキからその同名モンスターを2体まで特殊召喚するノーネ! デッキから《古代の機械砲台》2体を特殊召喚! 2体だけど、これは”1回”ナノーネ!」

 

 クロノスの場に機械砲台が2台追加され、3台が並ぶ。

 

 古代の機械砲台×2 地属性 機械族 レベル2 ATK:500

 

「古代の機械砲台の効果発動! リリースすることで相手に500ポイントのダメージを与えるノーネ! 3体全てリリース!」

 

 クロノスが号令を掛けると、機械砲台全てが遊星に向かって砲撃を放つ。放った後、砲台全てが消滅した。

 

「うわぁぁぁーーーー!?」

 

 遊星 LP:1900→400

 

「魔法カード《古代の機械整備場》! 《古代の機械砲台》を手札に加えるノーネ!」

 

 クロノス 手札:0→1

 

「ワタクシの攻撃を封じたつもりのようデスガ、こんなこともできるノーネ。これで次のターン、アナタにトドメを刺せるノーネ。 ……セニョール遊星、アナタの試練はこの混沌巨人を倒すことデスーガ、このワタクシも同時に相手していることを忘れてはならないノーネ! ターンエンド!」

 

 

クロノス

LP:1900

手札:1

EXモンスター

②:(ジャンク・デストロイヤー ATK:2600)

④:古代の機械混沌巨人 ATK:4500

メインモンスター

魔法・罠

 

「くっ……(追い詰められたか……俺の今の手札では混沌巨人も、クロノス教頭も倒すことはできない! 全てはこのドローに……俺はデッキを信じる!)」

 

 窮地など何度も超えてきた。その度にデッキを信じて打ち勝ってきた。今度も同じ、恐れは無い。勝つのだ。ここまで共に戦ってきてくれたモンスター達の為に。そして、敵ながら遊星を信じ、ここまで導いてくれたクロノスの為に――――

 

「俺の……ターン!!!」

 

 遊星 手札:2→3

 

 引いたカードが視界に入った途端、遊星の中で”光差す道”が駆け抜ける。道は遊星の手札、ドローカード、場のカード、墓地のカード、EXデッキのカードを次々と繋げ、最後のカードに辿り着き、閃光を放つ――――

 

 

「……魔法カード《死者転生》! 手札を1枚捨て、自分の墓地のモンスター1体を手札に加える! 《サルベージ・ウォリアー》を手札に!」

 

 捨てたカード

 くず鉄の像

 

「《くず鉄の像》の効果発動! このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地の”ジャンク”モンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 甦れ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 遊星の場に三度現れるジャンク・ガードナー。遊星の希望が伝わっているからなのか、恐怖に打ち勝ち、混沌巨人に対して構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「ジャンク・デストロイヤーをリリース! 《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚!」

 

 ジャンク・デストロイヤーが光の中へと消えると、その光の中からフック付きの鎖を持った青い巨漢が現れる。

 

 サルベージ・ウォリアー 水属性 戦士族 レベル5 ATK:1900

 

「サルベージ・ウォリアーの効果発動! アドバンス召喚に成功した時、手札・墓地のチューナー1体を特殊召喚できる! 墓地から《ジャンク・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 サルベージ・ウォリアーが空間の間に鎖を投げ入れすぐに引き上げる。すると鎖のフックにジャンク・シンクロンが引っかかっており、フックを外して場に降り立つ。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 

「レベル5《サルベージ・ウォリアー》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変え、サルベージ・ウォリアーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」

 

 光の柱の中から現れたのは、白銀に輝く白き竜。大きな翼を広げると星屑の光が風と共に舞う。これこそが不動遊星のエースにして絆の象徴――――

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「ホウ……美しいモンスターデスーネ! しかーし、それでは混沌巨人を倒せないノーネ」

「いや、これで俺の場は整った! ジャンク・ガードナーの効果発動! 混沌巨人を守備表示に変更する!」

 

 ジャンク・ガードナーが波動を放ち、混沌巨人を防御体勢へと変える。

 

 古代の機械混沌巨人 ATK:4500→DEF:3000

 

「それでもその攻撃力デーハ……」

「バトル! スターダスト・ドラゴンで混沌巨人を攻撃!」

 

 スターダスト・ドラゴンは上空へと飛翔し、混沌巨人の頭上を取った後、ブレス攻撃の構えを取る。

 

「墓地から罠カード《スキル・サクセサー》の効果発動! このカードを除外することで自分のモンスター1体の攻撃力を800ポイントアップする! 響け! 【シューティング・ソニック】!」

 

 スターダスト・ドラゴン ATK:2500→3300

 

 遊星の掛け声と同時に、スターダスト・ドラゴンが音波のブレスを放ち、古代の機械混沌巨人をバラバラに吹き飛ばす。

 

「オオ……忌まわしき混沌巨人ガ……!」

「クロノス教頭……これが俺の最後の答えだ! 速攻魔法《瞬間融合》! 俺の場の《スターダスト・ドラゴン》と《ジャンク・ガードナー》を融合!」

 

 遊星の場の空間が歪み渦となると、その中にスターダスト・ドラゴンとジャンク・ガードナーが吸い込まれる。

 

「融合召喚! 暗黒の中世を貫く光の矢! 《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!」

 

 渦の中から現れたのは大きなジャベリンを手にしたドラゴンの騎士。新たな脅威に立ち向かうため遊星が導き出した”進化への結論”の一つ。シンクロ同士の融合モンスター”波動竜騎士 ドラゴエクィテス”である。

 

 波動竜騎士 ドラゴエクィテス 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3200

 

「……よくできましタ、セニョール遊星。合格ナノーネ」

「ドラゴエクィテスでダイレクトアタック! 【スパイラル・ジャベリン】!」

 

 ドラゴエクィテスがクロノスに向かってジャベリンを投擲すると、ジャベリンはクロノスの足元に突き刺さり、その衝撃でクロノスは後方へと吹き飛ばされる。

 

「ヌオッ!? ゴルゴンゾーラチィィィーズ!!?」

 

 クロノス LP:1900→0

 

 思いのほか威力が強く、このままでは場外まで吹き飛ばされてしまいそうな勢いで飛ぶクロノス。幸い吹き飛ばされた方向にポールが立っていたため、それに引っかかって無事に屋上へと降り立つことができた。

 

「し、死ぬかと思ったノーネ……」

「大丈夫ですか!?」

 

 クロノスが一息つくと、決闘盤を収めた遊星が急いで駆け寄ってくる。

 

「ダイジョーブ、こんなの掠り傷ナノーネ。……それよりも、やってくれましたノーネ。よくぞ闇に打ち勝ちまシタ。これを受けとりなサイ」

 

 クロノスは懐からカードパックを取り出すと、それを遊星に差し出す。

 

「これは……リンクモンスターのパック!?」

「この”世界”のルールでは闘い辛いでショウ? それでデッキを強化し、戦術の幅を広げるノーネ。 ワタクシとの約束を守ったのと、”試練”を乗り越えたことへのご褒美ナノーネ!」

 

 遊星はクロノスからカードパックを受け取り、それを懐へと収める。

 

「有難く使わせてもらいます。 ……ところで、さっきから”試練”とは一体なんの事なんですか? どうやらここは俺がいた場所とは違う世界。俺は何のためにここへ呼ばれたのか……知ってることを教えてください」

「ノン。それをワタクシから伝えることはできないノーネ。デスガ、心配しなくてもアナタが止まらずに進み続けれーバ、おのずと答えは見えてくるデショウ!……さて、あれはアナタのモノナノーネ?」

 

 クロノスが指差した方へ向くと、そこには遊星のDホイール”遊星号”が置かれていた。

 

「俺のDホイール! 何故こんなところに……」

 

 遊星は遊星号に駆け寄り状態を調べる。ここに来る前と変化はない。何時でも走れる状態である。更に遊星号の前には屋上から地上、そして地上から海の果てまで伸びる1本の道が現れていた。

 

「さあ、行くノーネセニョール遊星! この道を行けば別のエリアへと辿り着きマス。そこでもきっとアナタのことを待っている者がいるはずナノーネ!」

「……分かりました。俺は行きます。 ……そうだ、クロノス教頭」

 

 遊星号に跨り、ヘルメットをかぶろうとした遊星はふと動きを止め、クロノスへと顔を向ける。

 

「学生である俺の仲間が言っていました。貴方から1度教えを受けてみたいと。俺もそう思いました」

「ウン?」

「俺にも”学生時代”なんてものがあったら、貴方に教わってみたかった」

「な、生意気言うんじゃないノーネ! おだててもこれ以上パックは出さないノーネ! ホレさっさと行くノーネ! シッシッ!」

「ハハハ! ……ありがとう!」

 

 遊星は爽やかにそう言うとヘルメットをかぶり、遊星号を走らせる。赤く輝くDホイールはあっという間に地上へと駆け下り、水平線の彼方へと消えていった。クロノスはそれを見送ると、静かに笑った。

 

「フフ……セニョール遊星、ガンバルノーネ」




遊星のお相手は皆大好きクロノス先生。

デッキテーマは”最新鋭アンティーク・ギア 暗黒の中世の意味”です。
アクファで悪者になったアンティーク・ギアを見て、私はすぐにクロノス先生のデッキ名を思い出しました。その後に思い出したのが裏サイバー流。そこから繋がってできた妄想が今回の話です。まあアニメでの意味はきっと邪神像で召喚したからなだけでしょうが。

遊戯、十代の相手が割と初期の性格なのに対し、今回のクロノス先生は原作終盤のキャラでした。そっちのほうが好きなので。


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九十九 遊馬

プロローグ第四弾”九十九 遊馬”です。


 

 

 

 

 

かっとビング!

それは勇気を持って一歩踏み出すこと! 

それは、どんなピンチでも決して諦めないこと!

それはッ! あらゆる困難にチャレンジすることッ!

忘れねぇ……お前のこと……絶対に忘れねぇッ!!!

アストラル……アストラルーーーーー!!!

 

 

 

 

誰でも、良い心と悪い心が戦っている。

だが、そこから逃げ出さなければ、誰とでも解り合える。

遊馬、私は闘い続ける。

誰もが解り合える日が来るまで――――

これが私の、かっとビングだァーーーーー!!!

 

 

 

 

 

 

「さあ、取り戻しに行くんでしょ? ”一番大事なもの”を?」

「おう! 待ってろよアストラル! 行くぜ皆ー!」

 

 

かっとビングだァーーーーーーー!!!

 

 

 一日の終わりを告げる夕暮れ時。少年”九十九 遊馬”は仲間達と共にアストラル世界を目指して茜色の空を飛んでいた。

 傷付くことばかりであった。傷付いて、泣いて、何度も打ちのめされた。でも、遊馬はその度にまた立ち上がれた。立ち上がって、闘って、最後に取り戻した。掛け替えのない仲間を、日常を、笑顔を――――そしてまた闘いへと赴く。”一番大事なもの”の為に――――

 

「オレェーーーーーーーー!!!」

 

 

遊馬……九十九 遊馬……

 

 

「ん? 小鳥なんか言った?」

「え? 何も言ってないけど?」

 

 遊馬は隣で手を繋いでいる少女”観月 小鳥”に訊ねるが、小鳥は首を横に振る。

 

 

かっとビング……希望の創造者……カオスをもたらす者……救世主ZEXAL――――

幾多の闘いを越えし者……最強の”決闘者”

 

 

「や、やっぱり聞こえる!? 誰だ!? まさか……アストラル!?」

 

 

集え、我が下に――――その”折れない精神”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「うわぁ!?」

 

 突如視界を覆う眩い光。遊馬は驚きと混乱の中で、思わず叫ぶ――――

 

「ア、アストラルーーーー!!!」

 

 叫びが途絶えると同時に、光も収まる。遊馬の仲間達は何事かと戻った視界の中を見渡すが、そこに遊馬の姿はなかった。

 先ほどまでは確かにあった幼馴染の手の感触を逃がさぬように、小鳥は掌を合わせて握り締める。

 

「遊馬……どこ行っちゃったの……遊馬ぁーーーーーーー!!!」

 

 

 

 * * *

 

 

 

「う、ううん……アストラルゥ……はっ! ここは!?」

 

 気を失っていた遊馬。目覚めるとそこは何かの施設の中。薄暗い廊下の真ん中に寝ころんでいたようで、前にも後ろにも終着点の見えない薄暗い廊下が続いている。

 

「ど、何処だよここ!? 何か気味悪ぃ~……」

 

 遊馬は戸惑いながら、ゆっくりと廊下を進む。暫く進むと大きな空間に出る。薄暗いことには変わりないが、空間の中心に大きな舞台のようなものがあることが確認できる。

 

「何だぁここ……?」

「待っていたよ、”DEATH-T”の新しい挑戦者」

 

 この瞬間、空間がライトアップされる。舞台の正体は旧式の決闘リング。決闘リングとは決闘盤の前身であり、まだソリッド・ビジョン・システムが小型化される前に作られたものである。決闘リングの前には学生服を着た一人の少年が立っていた。

 

「え? 挑戦者? いや、オレは別にそんなんじゃ……」

「何だ? ここまで来て怖気ついたのかい? ま、仕方ないかな。この僕が作り上げたゲームだ」

「こ、怖くなんかねぇやい! それに挑戦からは絶対に逃げない! それがオレの”かっとビング”だ! ……それにしても、お前誰だよ?」 

 

 遊馬が小首をかしげて訊ねると、少年は遊馬を小馬鹿にするように笑う。

 

「何だ? 君、僕のこと知らないのか? とんだ素人が来たものだ。ハッハッハ!」

「な、何だと!? 誰が素人だ! オレはWDCって大会で優勝……」

 

 優勝したと言いそうになった瞬間、遊馬は口をつぐんだ。

 

「(……優勝できたのは、”あいつ”と一緒だったからだ)」

「何だって? そんな大会聞いたこともない。大方小さな町の町内決闘大会だろう?」

「ちげーよ! お前こそ、何かの大会に出たことあんのかよ?」

「フフフ……僕はね、デュエルモンスターズの全国大会で優勝する程の腕なのさ。ま、君とはレベルが違うっていうか……」

「な、何だよさっきから嫌味ばかり言いやがって! 本当にお前誰なんだよ!?」

 

 遊馬がそう言うと、少年はライトに照らされた位置へと進み出る。これによりその顔がハッキリと視認できるようになった。

 

「僕の名前は”海馬 瀬人”。|DMVRS《デュエルモンスターズ・バーチャル・リアリティ・システム》の開発者にして、デュエルモンスターズのエキスパートだ」

 

 海馬 瀬人――――整った顔立ちだが、その目は陰に覆われ、内面の”闇”が浮き出しているように見える。

 

「さあ、もう一度聞くぞ? 君は僕のゲーム”DEATH-T”の最終ステージを受けるか、受けないか?」

「(正直、こんなことしてる場合じゃねぇ。だけど、ここで引いたらオレの”かっとビング”が嘘になる!) 受けてやる! 勝負だ海馬!」

 

 遊馬はDパットを取り出し、腕に装着して展開させる。

 

「決闘盤、セット! ……って、あれ? こんな形だったっけ?」

 

 展開したDパッドのモンスターゾーンが明らかに多い。これに遊馬は首をかしげる。

 

「……まあいいか! Dゲイザー、セット!」

 

 ARビジョン視認システム”Dゲイザー”を左目に装着し、準備は完了。いよいよ決闘――――というところで、海馬が手を向けて遊馬を制止する。

 

「慌てるなよ。やるのはこの上でだ。このゲームのルールも説明しよう」

 

 

 

 * * *

 

 

「――――これが今回の決闘のルール”新マスタールール”だ。素人の君の為に解りやすく説明してやったけど、理解できたのかな?」

「お、おう! 結構親切じゃねぇか! ありがとよ! (結構ややこしいぞこれ~!? EXモンスターゾーンに、リンクモンスターにぃ~……先攻はドローできない~)」

 

 決闘リング上で、意外にも解りやすく丁寧にこの世界のルールを遊馬に説明してくれた海馬。遊馬は危なげにだがルールを把握したようだ。

 

「一々ルールミスでゲームを止められちゃ興覚めだからね。ま、期待はしてないけど。……僕はこの決闘リングを使って決闘をする。君はその腕に付けてる機械を使っていいよ。決闘システムをリンクできるようになってるからね」

「分かったぜ! 行くぞ!」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 

「先攻は僕からだ。このカードを攻撃表示! 《闇・道化師のサギー》!」

 

 海馬の場に胡坐をかいた体勢のまま宙に浮かぶ道化師が現れる。

 

 闇・道化師のサギー 闇属性 魔法使い族 レベル3 ATK:600

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

海馬

LP:4000

手札:2

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③ 闇・道化師のサギー ATK:600

魔法・罠

②セット

③セット

 

 

「よっしゃ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:5→6

 

「攻撃力600! これならエクシーズ召喚しなくても倒せる! 《ゴゴゴゴーレム》を召喚!」

 

 遊馬の場に現れたのは石の体を持つ巨人。ゴゴゴーッ、っと叫びながら頭部で光るモノアイを動かし、大きな腕を振るった後に構える。これぞ遊馬を支える”オノマトペ”の一派”ゴゴゴ”の先兵、ゴゴゴゴーレムである。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 ATK:1800

 

「何だそのふざけた名前のモンスターは? ハッハッハ!」

「そ、それはこっちの台詞だ! 攻撃力600なんて倒してくれって言ってるようなもんだぜ! ゴゴゴゴーレムで攻撃! 【ゴゴゴブロー】!」

 

 ゴゴゴゴーレムが拳を振りかぶり、サギーに向かって突き出す。

 

「馬鹿め! 罠カード《ジャスティブレイク》! 通常モンスター以外のモンスターを全て破壊する!」

 

 ゴゴゴゴーレムの拳がサギーに届く直前、雷がゴゴゴゴーレムに直撃。哀れゴゴゴゴーレムは一瞬で塵と化してしまった。

 

「ゴゴゴーッ!?」

「ふざけたゴーレム粉砕! ……こんな見え透いた罠に引っかかってくれるとは、素人の相手なんて楽なものさ。フハハハハ!」

 

 海馬の高笑いを受け、遊馬は言い返すこともなく膝に手を置き、俯く。

 

「何やってんだよオレ……あんな挑発に乗せられて、まんまと罠に掛かって……これじゃ”あいつ”に会う前のオレじゃねぇか……」

 

 愕然とした表情で腕を震わし、首にかけた”皇の鍵”を握り締める遊馬。ここでハッと気づいた様に顔を上げる。

 

「オレ……”あいつ”って言ってばっかりだ……」

 

 ”あいつ”と別れて戻った日常。遊馬は”あいつ”との日々を懐かしむ毎日を過ごしていた。かっとビングを忘れたわけではないが、それでも何かが抜け落ちたような、どうしようもない”喪失感”を抱きながらの毎日であった。仲間達から”あいつ”の世界の危機を知らされ一度は奮い立ったものの、それでも拭い切れるものではなかった。

 

「……寂しいさ、ああ寂しいさ! やっと逢えると思ったのに……! でも、こんなんじゃ合わせる顔なんてねぇーーー!!!」

 

 遊馬は決闘リングの決闘者用の足場から飛び出し、モンスター達が立つ決闘場の上に直に立つ。

 

「かっとビングだァーーーーオレーーーー!!!」

「おい何をしてるんだ!?」

「あんな狭いとこにいられるかよ! オレはここで決闘するぜ! カードをセットしてターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:4000

手札:4

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

 

「僕の決闘リングで勝手なことしやがって……僕のターン、カードドロー!」

 

 海馬 手札:2→3

 

「魔法カード《調和の宝札》! 手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーを捨て2枚ドロー!」

 

 海馬 手札:2→1→3

 

捨てたカード

伝説の白石

 

「捨てた《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》の効果発動! デッキから《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》1体を手札に加える」

 

 海馬 手札:3→4

 

「ブルーアイズ!? 伝説のモンスターじゃねぇか!? なんでこんなやつがブルーアイズなんて持ってんだよ!?」

「フフフ、僕はね、欲しいものは必ず手に入れる主義なんだよ」

 

 ブルーアイズについては遊馬もよく知っている。修行の場”決闘庵”で闘ったのは木像であったが、その時に見せられた”力と恐怖”は本物で、”大事な教え”と共に今でも遊馬の胸に焼き付いている。

 

「永続魔法《魔法吸収》! 魔法が発動する度に僕のLPが500回復する! 魔法カード《トレード・イン》! 手札のレベル8モンスター1体を捨て、2枚ドローする!」

 

 捨てたカード

 青眼の白龍

 

 海馬 手札:2→1→3 LP:4000→4500

 

「魔法カード《竜の霊廟》! デッキからドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る! この時送ったのが通常モンスターだった場合、さらにもう1体ドラゴンを墓地へ送れる!」

 

 墓地へ送ったカード

 青眼の白龍

 青眼の白龍

 

 海馬 LP:4500→5000

 

「クックック……前のターン、なぜ僕がサギーなんて弱小モンスターを守ったか、素人の君に解るかな?」

「知らねぇ! もう挑発には乗らねぇぞ!」

「つれないな……まあいいだろう、教えてやるよ。このためさ! 魔法カード《ドラゴン・復活の狂奏》! 自分の場に魔法使い族が存在する場合、ドラゴン族の通常モンスターを含む、自分の墓地のドラゴン族を2体まで特殊召喚する! 来い! 2体の《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》!」

 

 海馬の場に現れたのは、美しくも力強い白き龍。主たる者には”誇りと勝利”を、敵には”恐怖と敗北”をもたらす伝説の龍――――”青眼の白龍”が2体、遊馬を見下ろし咆哮を上げる。

 

 青眼の白龍×2 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 海馬 LP:5000→5500

 

「来るとは思ったけど、いきなり2体かよ!?」

「フフフ……まだ終わりじゃないさ! 魔法カード《死者蘇生》! 3体目の《青眼の白龍》!」

 

 2体のブルーアイズの間に、さらにもう1体のブルーアイズが現れ、3体同時に咆哮を上げる。デュエルモンスターズを知るものなら誰でも知っている”力の象徴”、”最強の陣形”――――”青眼の白龍3体召喚”が遊馬の前で現実となる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 海馬 LP:5500→6000

 

「ふはははー! すごいぞー! カッコいいぞー!!」

「ブ、ブルーアイズが3体も……!」

「さあひれ伏せ! ブルーアイズで一斉攻撃――――」

「くっ!?」

 

 遊馬はとっさに身構えて攻撃に備える――――が、攻撃は一向にやってこない。

 

「あ、あれ?」

「――――と、言いたいところだが、ドラゴン・復活の狂奏を発動したターンは相手にダメージを与えられないんだ。命拾いしたな」

 

 そう言って海馬がやれやれと手を振ると、遊馬は気が抜けたようにため息をつく。

 

「……な、何だよ……でも助かった」

「ま、これはゲームだからね。簡単に決着してはつまらない。挑戦者には攻略のチャンスを与える……それが”DEATH-T”のルールだ」

「? さっきから言ってる”ですてにー”って一体なんだ?」

「”デスティー”だ。……君、これがどんなゲームか知らないで挑戦しに来たのか?」

「だからちげーよ! 気づいたら廊下で寝てて、廊下を進んだらここに着いたんだ」

 

 海馬は遊馬の話を聞いて呆れた様な表情を浮かべ、少し考えるように顎を触る。

 

「運が良いのか悪いのか……理由は知らないが、君はこの”DAETH-T”の最終ステージに迷い込んだ素人って訳か……ま、いいだろう。ここに辿り着ける奴自体、中々いないからな。正直退屈だったんだ」

「だから素人じゃねー! 何だよ、そんなに難しいゲームなのかよ?」

「難しいさ、生きて帰ることさえな」

「は?」

「DAETH-Tとは死のテーマパーク。クリアすれば惜しみない報酬と称賛が与えられるが、ゲームオーバーとなれば死よりも苦しい罰ゲームが待っている……それはこの最終ステージも例外ではない」

「何だって!?」

「君はそれに耐えられるかな? サギーを守備表示に変更し、ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:6000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②青眼の白龍 ATK:3000

③ 闇・道化師のサギー DEF:1500

④青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

 

「冗談じゃねぇ、こんなところで死んで堪るかよ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:4→5

 

「《ゴブリンドバーグ》を召喚!」

 

 遊馬の場に小型飛行機に乗ったゴブリンが3体現れる。3機がかりで大きなコンテナを吊り上げ、それを遊馬の場に落とす。

 

 ゴブリンドバーグ 地属性 戦士族 ATK:1400

 

「ゴブリンドバーグの召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる! 《ガガガガードナー》を特殊召喚!」

 

 ゴブリンドバーグが落としたコンテナの中から、手に大盾を持ったガラの悪い戦士が飛び出す。

 

 ガガガガードナー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

「この効果を使った後、ゴブリンドバーグは守備表示になる!」

 

 ゴブリンドバーグ ATK:1400→DEF:0

 

「(こんなところで終わって堪るか! オレはもう一度”あいつ”と逢うんだ!) レベル4の《ゴブリンドバーグ》と《ガガガガードナー》でオーバーレイ!」

 

 ゴブリンドバーグとガガガガードナーが橙色の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた赤い光の渦へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から赤い閃光が放たれ、その中から一振りの大剣を持った赤い鎧の戦士が現れる。激戦を闘い抜き、”ノリ”を重視するライバルから授かった魂のカード――――

 

「光纏いて現れろ! 闇を斬り裂く眩き王者! 《H-C(ヒロイック チャンピオン) エクスカリバー》!」

 

 H-C エクスカリバー 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2000 ORU:2

 

「エクシーズ召喚か。だがブルーアイズの敵じゃないな」

「エクスカリバーの力はこんなもんじゃねぇ! 効果発動! 1ターンに1度、ORUを2つ取り除き、エクスカリバーの攻撃力を次の相手のターン終了時まで元々の攻撃力の倍にする!」

 

 エクスカリバーが自身のORU(オーバーレイユニット)を全て吸収すると、闘気を漲らせて大剣を構える。

 

  H-C エクスカリバー ATK:2000→4000 ORU:2→0

 

「何!? 攻撃力4000だと!?」

「これでブルーアイズを超えたぜ! バトル! エクスカリバーでブルーアイズを攻撃! 【一刀両断! 必殺真剣】!」

 

 エクスカリバーが大剣を振り上げ飛び上がり、ブルーアイズ1体の首を両断し破壊する。

 

「ぼ、僕のブルーアイズがっ!?」

 

 海馬 LP:6000→5000

 

「よっしゃー! まずは1体! ターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:4000

手札:3

EXモンスター

②:H-C エクスカリバー ATK:4000 ORU:0

④:

メインモンスター

魔法・罠

③セット

 

「1体倒したからって良い気になるなよ! 僕のターン!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「魔法カード《馬の骨の対価》! 自分の場の効果モンスター以外のモンスター1体を墓地へ送り2枚ドローする! サギーを墓地に送って2枚ドローだ!」

 

 海馬がデッキから2枚ドローすると、サギーは白骨化してボロボロと崩れ去る。

 

 海馬 手札:0→2 LP:5000→5500

 

「フフ、馬の骨ほども価値のないザコモンスターでも、使い道はあるということだな」

「さっきからサギーにひでぇことばっか言いやがって……サギーのおかげでブルーアイズ出したりドローできたんだから感謝くらいしてやれよ!」

 

 あまりにも無情な海馬を遊馬が非難すると、海馬は呆れと嘲笑を顔に浮かべる。

 

「馬鹿な。何でカードごとき、しかもザコモンスターに僕が感謝なんかしなければならないんだ? 弱者は強者の為に使われればいいんだよ。僕やこの”ブルーアイズ達”の為にな」

 

 そう言って海馬はドローしたカードのうちの1枚を取り出す。

 

「特別に見せてやるよ、僕のとっておきをね。チューナーモンスター《太古の白石(ホワイト・オブ・エンシェント)》を召喚!」

 

 海馬の場に白く輝く石が現れる。見ようによっては卵にも見えなくはない。

 

 太古の白石 光属性 ドラゴン族 レベル1 ATK:600

 

「レベル8《青眼の白龍》に、レベル1《太古の白石》をチューニング!」

 

 太古の白石が光輪へと変わると、ブルーアイズ1体を囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

「強靭・無敵・最強! 太古からの称号に、新たな伝説を刻むがいい!」

 

 光の柱の中から現れたのは、銀色に輝く蒼い眼の龍。ブルーアイズによく似たそのドラゴンは遊馬をその蒼い眼で見据え、咆哮を上げる。

 

「《蒼眼の銀龍》! シンクロ召喚!」 

 

 蒼眼の銀龍 光属性 ドラゴン族 レベル9 ATK:2500

 

「シ、シンクロ召喚!? 初めてみたぜ!」

 

 遊馬がいた世界でもシンクロ召喚は存在している。ただエクシーズ召喚が台頭していたこともあってか使い手が非常に少なく、遊馬は存在を聞いていただけで実物を見たのはこれが初めてであった。

 

「だけど、エクスカリバーの方が攻撃力は上だ! それじゃ倒せないぜ!」

「ククク……ブルーアイズの攻撃方法は1つではない! 魔法カード《滅びの爆裂疾風弾(バーストストリーム)》! このターンのブルーアイズの攻撃を放棄する代わりに相手のモンスター全てを破壊する! 消え去れエクスカリバー!」

 

 海馬 LP:5500→6000

 

 ブルーアイズが口に凄まじい量のエネルギーを集中させ、それを弾としてエクスカリバーへと放つ。

 

「させるかよ! 永続罠《ディメンション・ガーディアン》! オレの場の攻撃表示モンスター1体は戦闘・効果では破壊されない!」

 

 爆裂疾風弾はエクスカリバーに命中する前に異空間の壁に阻まれて消滅する。

 

「小賢しい真似を……! ターンエンド! ここで墓地の太古の白石の効果発動! 墓地に送られたターンのエンドフェイズ時、デッキから”ブルーアイズ”モンスター1体を特殊召喚する! 《白き霊龍》を特殊召喚!」

 

 海馬の場に青眼の白龍と同じ姿をしたドラゴンが現れる。だが青眼の白龍と比べるとどこか儚げで、今にも消えてしまいそうに見える。

 

 白き霊龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「このカードは”ブルーアイズ”として扱うことができる。そして効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、相手の魔法・罠1枚を除外する! 消え去れ《ディメンション・ガーディアン》!」

 

 今度は白き霊龍がエクスカリバーに向かってエネルギー弾を放つと、それを防ごうと異空間の壁が現れる。エネルギー弾は異空間の壁に当たると、そのまま壁と共に消滅した。

 

「オレの罠が!?」

「これでお前を守る壁は無くなった! そしてエクスカリバーの攻撃力は元に戻る」

 

 H-C エクスカリバー ATK:4000→2000

 

「攻撃を凌いだと思っているようだが、違うな! 追い詰められたんだよお前は!」

 

海馬

LP:6000

手札:0

EXモンスター

②:(H-C エクスカリバー ATK:2000)

④:蒼眼の銀龍 ATK:2500

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②白き霊龍 ATK:2500

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

 

 

「チクショウ、悔しいけどあいつの言う通りだ……」

 

遊馬の手札

ドドドウォリアー

ガガガマジシャン

ガガガガール

 

「今のオレの手札じゃブルーアイズは倒せねぇ……頼むぜオレのデッキ! オレのターン! ドロー!」

 

 遊馬 手札:3→4

 

ドローカード

ゴゴゴジャイアント

 

「(来た! ゴゴゴジャイアント! こいつを使えばランク4のモンスターエクシーズを出せる! そして――――)」

 

 遊馬は自分の場のエクスカリバーを一瞥してニッと笑う。

 

「(”未来皇ホープ(オレのナンバーズ)”で逆転だ!) オレは《ゴゴゴジャイアント》を召喚!」

 

 遊馬の場に岩石の体を持つ巨人が現れる。

 

 ゴゴゴジャイアント 地属性 岩石族 レベル4 ATK:2000

 

「ゴゴゴジャイアントの効果発動! 自分の墓地の”ゴゴゴ”1体を守備表示で特殊召喚できる! 《ゴゴゴゴーレム》を特殊召喚!」

 

 続けてゴゴゴゴーレムが現れる。ゴゴゴゴーレムは体色を茶色に変えると、両掌を相手に向けて壁を作るように構えた。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 DEF:1500

 

「この効果を使った後、ゴゴゴジャイアントは守備表示になる」

 

 ゴゴゴジャイアント ATK:2000→DEF:0

 

「行くぜ! レベル4の《ゴゴゴジャイアント》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!」

 

 この瞬間、遊馬の決闘盤から警告音が鳴り響く。

 

「うわっ!? 何だよ良いところで!」

『EXモンスターゾーンに空きがないため、X召喚を行えません』

「え? あっ!?」

 

 遊馬はようやく気付く。自身のEXモンスターゾーンにはすでにエクスカリバーが存在することに。

 

「そうだった……何時もとルールが違うんだった……」

「ワーッハッハッハ! 愚かな凡骨決闘者め! せっかくルールを説明してやったのにどうしようもない奴だな君は! アッハッハッハ!」

「わ、笑うなぁ! 笑うんじゃねぇ! チクショーチクショー! エクスカリバーを守備表示にしてターンエンド!」

 

遊馬

LP:4000

手札:3

EXモンスター

②:H-C エクスカリバー ATK:2000→DEF:2000 ORU:0

④:

メインモンスター

②ゴゴゴゴーレム DEF:1500

③ゴゴゴジャイアント DEF:0

魔法・罠

 

 

 やってしまった。己の不甲斐なさのあまり、羞恥と怒りで顔を真っ赤にする遊馬。何度も膝を叩きながら、自身を落ち着かせようと皇の鍵を握り締める。

 

「(どうしちまったんだよオレ……オレは結局、”あいつ”がいないと駄目だったってことなのか?)」

「もういい分かった。どうやら君にこの”DEATH-T”は早すぎたようだな。これ以上恥を掻く前に決着をつけてやろう。僕のターン! ドロー!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「スタンバイフェイズ! 蒼眼の銀龍の効果発動! 自分の墓地の通常モンスター1体を特殊召喚する! 甦れ《青眼の白龍》!」

 

 銀龍が凄まじい咆哮を上げる。轟砲と言えるそれは冥界で眠るブルーアイズを呼び覚ます。覚醒したブルーアイズは地の底から飛び出し、海馬の場へと舞い戻った。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「倒したブルーアイズが復活しちまった!?」

「強靭、無敵、最強、ブルーアイズを現す3語に、”不死身”を加える! これが蒼眼の銀龍だ! 墓地の《古代の白石》を除外し効果発動! 墓地の”ブルーアイズ”1体を手札に加える!」

 

 海馬 手札:1→2

 

「永続魔法《ピンポイント・ランディング》発動!」

 

 海馬 LP:6000→6500

 

「バトル! ブルーアイズでエクスカリバーを攻撃! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 青眼の白龍の1体がエネルギー弾を放ち、エクスカリバーを消し飛ばす。

 

「エクスカリバァー!?」

「2体目でゴゴゴジャイアントを攻撃!」

 

 2発目のバーストストリームがゴゴゴジャイアントを襲い、跡形もなく消滅する。

 

「ゴゴゴジャイアント……!」

「白き霊龍でゴゴゴゴーレムを攻撃!」

 

 白き霊龍による3発目のバーストストリームがゴゴゴゴーレムを襲うが、ゴゴゴゴーレムはこれを受け切る。

 

「ゴゴゴゴーレムは守備表示の時、1ターンに1度戦闘で破壊されない!」

「とことん小細工を弄するつもりか! だがブルーアイズはそれさえもひねり潰す! 白き霊龍の効果発動! 相手にモンスターが存在する場合、霊龍をリリースすることで手札の《青眼の白龍》を特殊召喚する!」

 

 攻撃を終えた白き霊龍が消滅すると、3体目のブルーアイズが姿を現す。これで再び青眼の白龍が3体揃う。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「また3体揃っちまった……!」

「永続魔法《ピンポイント・ランディング》の効果発動! 1ターンに1度、自分の場に手札からモンスター1体のみが特殊召喚された場合、1枚ドローする!」

 

 海馬 手札:0→1

 

「銀龍でゴゴゴゴーレムを攻撃! 【滅びの轟砲-バーストカノン】!」

 

 銀龍がエネルギー弾を放ち、バーストストリームを受けて消耗していたゴゴゴゴーレムを粉砕する。

 

「残るはお前だけだァー! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 3体目のブルーアイズのバーストストリームが遊馬に迫り、足元に着弾。遊馬を吹き飛ばし、決闘リングの足場を支える柱に叩きつける。

 

「うわぁぁぁーーーー!!? ぐわぁ!?」

 

 遊馬 LP:4000→1000

 

「粉砕! 玉砕! 大喝采! ワハハハハ!」

「うう……!」

 

 高笑いしながらブルーアイズのパワーに酔い痴れる海馬。柱に叩きつけられた遊馬は呻きながらなんとか立ち上がる。

 

「エクスカリバー、ゴゴゴ、すまねぇ……オレがドジやったせいで……」

「ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:6500

手札:1

EXモンスター

②:

④:蒼眼の銀龍 ATK:2500

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③セット

④ピンポイント・ランディング

 

 

「どうだブルーアイズの力、思い知ったか! お前のザコモンスターが束になっても勝てはしない! 弱いクズモンスターしか持たない無能な弱者には良い経験になっただろう? 運よく生きて帰れたら活かすことだな! ワハハハハ!」

「……オレのことは何と言おうが構わねぇ。だけど、オレのモンスターをザコ呼ばわりすんな!」

「あ?」

 

 愉悦に浸る海馬に対し、遊馬は怒りを浮かべて睨みつける。

 

「エクスカリバーはゴーシュから貰った魂のカードだ! ゴゴゴ達はずっとオレと一緒に闘ってきたんだ! オレの”心”に応えて闘ってきてくれた”仲間”なんだ!」

「馬鹿馬鹿しい。”心”だと? カードは”力”だ! 力あるレアカードを独占し、唯一無二のデッキを作り上げる! これが全てだ! 弱者の馴れ合いを決闘に持ち込むな。ザコカードと一緒に消えるがいい!」

 

 この瞬間、遊馬の中で何かが切り替わった。ここまでのミスも、それによる恥も、全てを押しのけ一つの感情が心を占める。”オレは絶対に、こいつに負けるわけにはいかない”――――

 

「……許さねぇ! オレはお前を許さねぇ!」

「許さなければ何だと言うんだ? ええ?」

「オレは絶対にお前に勝つ! 勝ってモンスターとの絆を、”心”の力をお前に教えてやる! そして、胸を張って”あいつ”に……”アストラル”に逢いに行ってやる! オレのターン!」

 

 遊馬は右手を握り締め振り上げると、右手が金色の光を放つ。

 

「最強決闘者の決闘は全て必然! ドローカードさえも決闘者が創造する!」

「な、何だ!? VRの誤作動か!?」

 

 光輝く手をデッキへと導き、デッキトップへと指をかける。不思議な現象に狼狽える海馬をまっすぐ見据え、遊馬は指先に力を籠める。

 

「シャイニング・ドロォーーーー!!!」

 

 遊馬 手札:3→4

 

 遊馬はドローしたカードと共に、手札を1枚取り出す。

 

「”ドドドウォリアー”、オレを導いてくれ! 魔法カード《ドドドドロー》! 手札、または場の”ドドド”1体を墓地へ送り、カードを2枚ドローする! 手札の《ドドドウォリアー》を墓地へ送り、2枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:3→2→4

 海馬 LP:6500→7000

 

「オレは諦めない! 《ガガガマジシャン》を召喚!」

 

 遊馬の場に現れたのは、シルバーチェーンなどで装飾された魔導着を纏う、ガラの悪い魔術師。これぞ遊馬を支えてきた”オノマトペ”の一派”ガガガ”の特攻隊長、ガガガマジシャンである。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1500

 

「魔法カード《ガガガウィンド》! 手札の”ガガガ”1体のレベルを4にして特殊召喚する! 来い! 《ガガガガール》!」

 

 海馬 LP:7000→7500

 

 続けて現れたのはガガガマジシャンのように派手な魔導着を着た不良少女。ガガガマジシャンの姿を見つけると嬉しそうに”先輩”と呼ぶ。

 

 ガガガガール 闇属性 魔法使い族 レベル3→4 ATK:1000

 

「ガガガマジシャンの効果発動! レベルを1から8の間の数値に変更する! レベル6に変更! そしてガガガガールはガガガマジシャンと同じレベルにできる!」

 

 ガガガマジシャン レベル4→6

 ガガガガール レベル4→6

 

「レベル6になった《ガガガマジシャン》と《ガガガガール》でオーバーレイ!」

『センパ~イ!』

『オウ!』

 

 ガガガマジシャンとガガガガールが紫色の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた赤い光の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれる。その中から現れたのは全身を赤い装甲で覆い、両手に巨大なクローガントレットを装備した戦士。大きな体で遊馬を守るようにしてドラゴン達と対峙する。

 

「熱き魂を引き絞り、狙いを付けろ! 《ガントレット・シューター》!」

 

 ガントレット・シューター 地属性 戦士族 ランク6 ATK:2400 ORU:2

 

「ガガガガールを含む”ガガガ”モンスターのみでX(エクシーズ)召喚に成功した場合、相手の特殊召喚したモンスター1体の攻撃力を0にする! ブルーアイズ1体の攻撃力を0に! 〈ゼロゼロコール〉!」

 

 ORUとなったガガガガールが元の姿に戻ると、手に持った携帯電話を操作し、それをブルーアイズの1体に向ける。すると携帯電話から音波が放たれ、ブルーアイズの力を奪い取る。

 

 青眼の白龍 ATK:3000→0

 

「何ィ!?」

「まだだ! ガントレット・シューターの効果発動! ORUを1つ使うことで相手のモンスター1体を破壊する! ORUを2つ使い、残り2体のブルーアイズを破壊する!」

 

 ガントレット・シューター ORU:2→0

 

 ガントレット・シューターがORUを2つ吸収すると、両手のガントレットを射出し、2体のブルーアイズを貫いて破壊する。

 

「グワァァァーーー!? 僕のブルーアイズがぁ!?」

「魔法カード《ガガガドロー》! 墓地の”ガガガ”3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

戻したカード

ガガガマジシャン

ガガガガール

ガガガガードナー

 

 遊馬 手札:0→2

 海馬 LP:7500→8000

 

「魔法カード《破天荒な風》! ガントレット・シューターの攻守を次のオレのスタンバイフェイズまで1000アップする!」

 

 ガントレット・シューターの周りを破天荒な風が吹き荒れる。

 

 ガントレット・シューター ATK:2400→3400

 海馬 LP:8000→8500

 

「バトル! ガントレット・シューターで蒼眼の銀龍を攻撃! 【爆圧鋼鉄籠手(ダイナミックプレスガン)】!」

 

 ガントレット・シューターは大きな体躯に似合わないスピードで銀龍との間合いを詰めると、クローを銀龍に突き刺し、そのままガントレットを射出して銀龍を貫く。

 

「ぎ、銀龍まで破壊するだと……!?」

 

 海馬 LP:8500→7600

 

「どうだ! カードはオレに応えてくれる! 例えパワーに差はあっても、皆で乗り越えられるんだ! ターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:1000

手札:1

EXモンスター

②:ガントレット・シューター ATK:3400 ORU:0

④:

メインモンスター

魔法・罠

 

「おのれ……おのれおのれおのれ! ザコの癖によくも!」

 

 最強と信じていたブルーアイズの布陣。それを1体が無力化、残りが全滅。LPは大量に残っているが、海馬にとっては最悪に近い結果である。海馬のどす黒いプライドは決してこの事実を許さないだろう。憎悪に満ちた視線で遊馬を貫く。

 

「僕のターン! ドロー!」

 

 海馬 手札:1→2

 

「罠カード《無謀な欲張り》! デッキから2枚ドローする!」

 

 海馬 手札:2→4

 

「魔法カード《強欲で貪欲な壺》! デッキトップからカードを裏側のまま10枚除外し、2枚ドローする!」

 

 海馬 手札:3→5 LP:7600→8100

 

「じ、自分から10枚も除外しちまうのか!?」

「ブルーアイズさえいれば他はいらない! 取るに足らんザコだ!」

「てめぇ! まだそんなこと言ってんのか!」

「黙れ! どんな手を使ってでもお前を叩き潰す!」

 

 遊馬のカード達の連携によって見せた逆転劇は海馬を改心させるどころか、憎悪を加速させる結果となってしまったようだ。今まで以上にブルーアイズに固執し、もはや戦術も何もない、遊馬をねじ伏せる”力”だけを求めている。

 

「魔法カード《モンスター・ゲート》! モンスター1体をリリース! 無様な姿を晒すぐらいなら消えろブルーアイズ!」

 

 海馬 LP:8100→8600

 

 海馬の場から最後のブルーアイズが消滅する。

 

「唯一信じてたブルーアイズまで……!? 何がしたいんだよお前は!」

「お前を完膚なきまで叩き潰す! モンスターゲートはデッキトップを通常召喚が可能なモンスターが出るまでめくり、出たモンスターを特殊召喚する! それ以外のめくったカードは全て墓地へ送る!」

 

めくったカード

青眼の亜白龍

Sin 青眼の白龍

青眼の混沌龍

青眼の光龍

ブルーアイズ・カオス・MAX・ドラゴン

 

「おいやめろ! それ以上めくったらデッキがなくなっちまうぞ!?」

 

 遊馬の声を無視し、狂気に満ちた顔で海馬はカードをめくり続ける。

 

めくったカード

青眼の亜白龍

高等儀式術

白き霊龍

 

「《白き霊龍》! 通常召喚可能だ! 特殊召喚!」

 

 海馬の場に2体目の白き霊龍が現れる。

 

 白き霊龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「魔法カード《闇の量産工場》! 墓地の通常モンスター2体を手札に加える! 《青眼の白龍》2体を手札に加える!」

 

 海馬 手札:3→5 LP:8600→9100

 

「白き霊龍をリリースし、手札の《青眼の白龍》を特殊召喚!」

 

 白き霊龍が消滅し、海馬の場に1体目の青眼の白龍が現れる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「《ピンポイント・ランディング》により1枚ドロー!」

 

 海馬 手札:4→5

 

 このドローにより、海馬のデッキが尽きる。決闘においてデッキからカードが無くなり、ドローができなくなった場合は敗北となる。だが海馬にはその事実が見えていないのか、不気味な笑みのまま決闘を進める。

 

「海馬のデッキが無くなっちまった……海馬はこのターンで決着を付けるつもりなのか?」

「魔法カード《古のルール》! 手札のレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚する! 2体目の《青眼の白龍》!」

 

 海馬 LP:9100→9600

 

 続けて2体目のブルーアイズが現れ、海馬の場に並ぶ。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「装備魔法《光の導き》! 自分の墓地に”ブルーアイズ”が3体以上存在する場合、その内の1体の効果を無効にして特殊召喚! そしてこのカードを装備する! 出でよ3体目の《青眼の白龍》!」

 

 海馬 LP:9600→10100

 

 3体目のブルーアイズが現れ、またしても”青眼の白龍3体”の布陣が出来上がる。

 

 青眼の白龍 光属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「もう驚かねぇぞ。ブルーアイズ3体……だけど、ガントレット・シューターの方が攻撃力は上だ!」

「クックックック……僕には誰も勝てはしない。見せてやる。僕の力を! 魔法カード《ユニオン・アタック》! バトルフェイズの間、3体目のブルーアイズに残り全てのブルーアイズの攻撃力を集中させる!」

 

 海馬 LP:10100→10600

 

 海馬が魔法を発動させると、どこからともなく長い鎖が現れ、3体のブルーアイズを絡めとって一つにつなぐ。

 

 青眼の白龍 ATK:3000→9000

 

「こ、攻撃力9000!?」

「ワーハッハッハ! これが僕の最大にして最強のコンボ! ”青眼の白龍3体連結”! ユニオン・アタックの対象となったブルーアイズは装備魔法《光の導き》の効果により、墓地の”ブルーアイズ”1体につき1回攻撃できる。その代わり他のモンスターは攻撃に参加できない! 僕の墓地の”ブルーアイズ”は8体! よってこのターン8回連続攻撃が可能!」

「は、8回も……!?」

「そしてユニオン・アタックの効果により、相手に与える戦闘ダメージは0となり、対象のブルーアイズ以外は攻撃に参加できない」

「へ? そ、それじゃあオレは倒せねぇじゃねぇか……?」

 

 攻撃力9000という圧倒的な数値なら、ガントレット・シューターは倒せるだろう。しかし与えるダメージが0になってしまっては幾ら攻撃しても遊馬のLPを削ることはできず、デッキからカードを引けない海馬は次のターンで敗北することとなってしまう。

 遊馬が困惑した表情をしていると、海馬はにやりと笑った。

 

「削る必要なんてないのさ、LPなんて」

「何だって?」

「君が受けたブルーアイズの攻撃、効いたろ? 吹っ飛んで柱にぶつかって? あれこそが我がVRが成せる”リアルな体験”ってやつさ」

「あ、ああ……あれは効いたけど、それが何だって言うんだよ?」

「あれは3000の1回攻撃。”3000の1回”の威力なのさ。じゃあ……”9000の8回”なんて受けたら、君はどうなってしまうんだろうな?」

「え?」

 

 遊馬は一瞬、海馬が言いたいことが理解できなかった。理解なんてしたくなかった。海馬が遊馬に対してしようとしていること、それはつまり――――

 

「”LP(ゲームの数値)”を削る必要なんてない! 君の”生命(LP)”を消せばそれで終わりなんだよ! ゲームを超えて相手を屠る、これがブルーアイズの……最強である僕の力! 相手の生命ですら思いのままなのさ! アッーハッハッハ!」

 

 海馬の言葉を聞き、遊馬は目を見開いて海馬を見つめ、崩れ落ちて膝を付く。

 

「お前……オレを殺すつもりなのか? 決闘で決着も着けないまま、オレを……」

「なぁに、罰ゲームが少し早まるだけだ。何の問題もないだろう?」

 

 決闘を汚すことにも、相手を殺すことにも何の躊躇も見せない海馬。遊馬は恐怖でも怒りでもなく、”悲しみ”で泣き叫びたい気分になった。泣き叫びたいのを必死に堪えて海馬を見つめていた。

 

「(決闘をすれば解り合える……決闘が終われば皆”仲間”なんだ……でも、あいつはオレを殺そうとしている……決闘が終わらないままオレを!)」

「消えろ! 【滅びのバーストストリーム8連弾】!」

 

 海馬が指示すると、1つとなったブルーアイズがそれぞれの口からエネルギー弾を連射する。ガントレット・シューターは遊馬を庇うように立ちふさがり、エネルギー弾を受けた。エネルギー弾が炸裂すると同時に遊馬の場が白煙に包まれる。

 

「ハハハ! さあ見せてみろ! 無様に転がった弱者の姿――――何!?」

 

 白煙が引き始めるその瞬間、白煙の中から一筋の虹が飛び出し、ブルーアイズ達に巻き付いて拘束する。白煙が完全になくなると、そこにはガントレット・シューターと遊馬が場に立っていた。

 

「相手の攻撃宣言時、手札から《虹クリボー》の効果発動! このカードを攻撃モンスターに装備する! 装備したモンスターは攻撃できねぇ!」

「ぐっ!? うう……がぁぁぁーーーー!!!」

 

 海馬の苛立ちが頂点に達した。ガシガシと頭を掻きむしり、血走った目で遊馬を睨みつける。

 

「バトル終了ォ!」

 

 海馬がバトルフェイズ終了を宣言すると同時に、3体のブルーアイズが鎖の拘束から解き放たれる。

 

 青眼の白龍 ATK:9000→3000

 

「魔法カード《スタンピング・クラッシュ》! 自分の場にドラゴン族が存在する場合、場の魔法・罠1枚を破壊し、そのコントローラーに500のダメージを与える! 《虹クリボー》を破壊だァーーーー!!!」

 

 海馬 LP:10600→11100

 

 3体のブルーアイズが地面を強く踏み鳴らすと、その衝撃で虹の拘束が解けてしまう。さらに衝撃は遊馬へと襲い掛かる。

 

「うわぁ!?」

 

 遊馬 LP:1000→500

 

「フーッ! フーッ! ……勝ったと思うな! 僕のデッキは0、これでお前がターンを終了すればデッキ切れで僕の負けとなるが、僕はこのターンに《無謀な欲張り》を発動している! このカードは2枚ドローできる代わりに自身のドローフェイズを2回スキップする! よって僕はデッキ切れで敗北することはない! ブルーアイズが3体残っているんだ! それで十分! 次で仕留めてやる! ターンエンド!」

 

 

海馬

LP:11100

手札:0

EXモンスター

②:(ガントレット・シューター ATK:3400 ORU:0)

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000(装備:光の導き)

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③光の導き

④ピンポイント・ランディング

 

 

「……そうだ、まだ決闘は終わってねぇんだ! 終わってねぇんだよ! オレのターン!」

 

 遊馬 手札:0→1

 

 この瞬間、ガントレット・シューターの周りで吹いていた破天荒な風が止む。

 

 ガントレット・シューター ATK:3400→2400

 

「魔法カード《命削りの宝札》! 手札が3枚になるようにドローする! その代わりオレはこのターン特殊召喚ができず、相手が受けるダメージは全て0になる! 3枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:0→3

 

 海馬 LP:11100→11600

 

「……海馬、お前――――」

「もうお前の戯言に付き合うつもりはない! さっさと決闘を続けろ!」

「(……オレは諦めない! お前にだってあるはずなんだ! 悪い心と戦う”良い心”が!)」

 

 幾ら敵意や殺意を向けられようとも、遊馬は目を背けなかった。拒絶されても海馬の中に決闘者としての”心”があると信じて、諦めず正面から向き合う。

 

「(例え無かったとしても、その”心”ができるまでオレは信じる! オレはお前から絶対に逃げない! それがオレのかっとビングだ!) ガントレット・シューターを守備表示に変更! モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

遊馬

LP:500

手札:0

EXモンスター

②:ガントレット・シューター ATK:2400→DEF:2800 ORU:0

④:

メインモンスター

③セット

魔法・罠

③セット

④セット

 

 

「僕のターン! ブルーアイズでガントレット・シューターを攻撃ィ!!! 第1弾!」

 

 ブルーアイズがエネルギー弾を放ち、ガントレット・シューターを破壊する。

 

「第2弾! セットモンスターを破壊しろ!」

 

 続けて2発目がセットモンスターに向かって放たれ、粉砕する。

 

「セットモンスターは《リトルトルーパー》! こいつは戦闘破壊された場合、デッキからレベル2以下の戦士族1体を裏側守備表示で特殊召喚する! こいつ自身レベル2以下の戦士族だ! 《リトルトルーパー》を特殊召喚!」

 

 リトルトルーパー 地属性 戦士族 レベル1 DEF:500

 

「悪足掻きを! 第3弾! 第4弾!」

 

 遊馬の場に再びセットモンスターが現れると、それをブルーアイズが粉砕し、効果によりまたリトルトルーパーが場に現れ、それも粉砕する。

 

「くそぉ! レベル1の戦士族《針剣士》を特殊召喚!」

 

 針剣士 風属性 戦士族 レベル1 DEF:600

 

「第5弾!」

 

 無慈悲な5発目によって姿を現せないまま針剣士も消し飛ばされてしまう。これで遊馬の場のモンスターは尽きた。

 

「第6弾!」

「墓地の《虹クリボー》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、墓地のこのカードを特殊召喚できる! 守備表示で特殊召喚!」

 

 6発目が遊馬に迫った瞬間、虹のマークを頭に付けた丸っこい悪魔が飛び出し遊馬を庇う。ダメージは全て受け流すことはできたが、その小さな体では衝撃を防ぎ切ることができず、遊馬と共に後方へと弾き飛ばされてしまった。

 

「うわぁぁぁ!? ……に、虹クリボー……虹クリボーの効果で特殊召喚されていた場合、場から離れたら除外される……ぐう……!」

 

 遊馬は7発目に備えて立ち上がろうとするが、中々立てない。それもそのはず、もう遊馬には攻撃を防ぐ手立てがないのだ。目の前ではブルーアイズがエネルギーを集中させている。迫りくる恐怖と絶望を押しのけようと遊馬は足にありったけの力を籠める。

 

「(立て! 立てよオレ! くそ……やっぱりオレだけじゃ――――)」

 

 

 

 

 

『立て、遊馬』

「え?」

『勝つぞ』

 

 遊馬が振り向くと、そこには青白く光る人型が浮かんでいた。その力強い意志を宿した瞳でブルーアイズを真っすぐ見据えた後、遊馬に向き直る。

 ずっと逢いたかった。想わぬ日などなかった。これは夢なのではないか――――様々な思いが遊馬の胸に去来する。目の前に突然現れた最愛の友にむかって、ようやく一言絞り出す。

 

「……遅ぇよ”アストラル”!!!」

『すまない、遅くなった』

 

 表情も変えずにさらりと返すアストラル。遊馬は先程までの苦し気な表情を一変、にかっと笑って勢いよく立ち上がる。その様子を見てようやくアストラルは表情を和らげた。

 

『……やはり、君にはその顔が一番だ』

「へへっ! ……でもアストラル、どうしてここに? アストラル世界は?」

『話は後だ。今はこの決闘に決着を付ける』

「ああ……でも、もうオレには手が――――」

『君の”希望”はここに』

 

 アストラルが遊馬のEXデッキを収納しているデッキケースを指さすと、デッキケースの中から金色の光があふれだす。遊馬はデッキケースを開け、中からその光源を取り出した。

 

「”希望(ホープ)”……ははっ!」

「これで終わりだァーーーー!!! 消え去れ!」

 

 ブルーアイズの口から7発目のエネルギー弾が放たれる。

 

『行け、遊馬!』

「おう! 罠カード《マスター・ピース》! 自分の墓地からモンスター2体を効果を無効にして特殊召喚し、その2体でX召喚を行う! 来い《ゴゴゴゴーレム》! 《ゴゴゴジャイアント》!」

 

 遊馬の場に2体のゴゴゴが現れると遊馬の前で壁となり、エネルギー弾を打ち消す。

 

「何ィ!? くそぉーーーー今度は何だ!?」

「『 レベル4の《ゴゴゴゴーレム》と《ゴゴゴジャイアント》でオーバーレイ! 』」

 

 ゴゴゴゴーレムとゴゴゴジャイアントが橙色の光となって飛び上がると、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「『 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! 』」

 

 渦の中から金色の閃光が放たれ、中から大きな白い剣が現れる。これはこのモンスターエクシーズの”ニュートラル体”であり、完全に姿を現すと変形を始める。

 

「『 我が闘いはここより始まる! 白き翼に望みを託せ! 』」

 

 変形した剣は人型へと姿を変え、翼を広げて己の名を叫ぶ。これこそが遊馬とアストラルの絆の象徴、進化の軌跡、”希望”の名を冠するNo.(ナンバーズ)の皇――――

 

「『 エクシーズ召喚! 現れよ《No.39 希望皇ホープ》! 』」

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

「くうぅ~! ホープ!!! またお前と一緒に決闘ができるなんて!」

『気を抜くな遊馬。来るぞ』

「何を出すかと思えばブルーアイズに及ばぬザコモンスター! 一緒に粉砕してくれる! 【滅びのバーストストリーム】!」

 

 ブルーアイズは先程よりもエネルギーを蓄え、ホープを砕く為の7発目、そして遊馬を葬る為の最後のエネルギー弾を続けて放つ。

 

「『 希望皇ホープの効果発動! ORUを1つ取り除くことで攻撃を無効にする! 残り2回の攻撃を全て無効にする! 〈ムーンバリア〉! 』」

 

 No.39 希望皇ホープ ORU:2→1→0

 

 ホープがORUを2つ吸収すると、背中の翼”ライトウィング・シールド”を前面に展開し、エネルギー弾2発を受け止める。

 

「何だとぉ!!?」

「どうだ! 8回連続攻撃、受け切ってやったぜ!」

「ウ、ギギ……! だがその効果はもう使えまい! 次でとどめを刺してやる! ターンエンド! 効果を使われなかったピンポイント・ランディングは墓地に送られる!」

 

海馬

LP:11600

手札:0

EXモンスター

②:(No.39 希望皇ホープ ATK:2500 ORU:0)

④:

メインモンスター

①青眼の白龍 ATK:3000(装備:光の導き)

②青眼の白龍 ATK:3000

③青眼の白龍 ATK:3000

魔法・罠

②魔法吸収

③光の導き

 

 

「ふうー! 何とか防ぎ切ったな! それじゃあ、逆転してやろうぜ!」

『君と私なら、できる』

「オウ! 行くぜアストラル! かっとビングだァーーーーオレーーーー!!!」

 

「オレと!」

『私で!』

「『 オーバーレイ!!! 』」

 

 遊馬は赤い光、アストラルは青い光となって飛び上がる。二人は縦横無尽に飛び回った後、上空で衝突、一つとなって場に舞い戻る。

 

「『 遠き2つの魂が交わるとき、語り継がれし力が現れる! 』」

 

 現れたのは黄金に輝く決闘者。Dゲイザーと一体となった赤いアーマーを身に纏い、決闘盤は盾のような形に変化している。その決闘者は場に降り立つと、遊馬とアストラル両者の物を分け合った力強い瞳で海馬を見据えた。これこそが二人の本来の姿にして最強の姿――――

 

「『 エクシーズ・チェンジ! ”ZEXAL(ゼアル)”! 』」

「どういう……ことだ……? 何が起こっているんだ!? こんなシステム僕のVRSには無い!?」

「『 オレのターン! ドローフェイズ時に罠カード《強欲な瓶》を発動! デッキから1枚ドローする! 行くぜ! 』」

 

 ZEXALの右手が先程の遊馬のように光輝く。

 

「『 全ての光よ、力よ! 我が右腕に宿り、再び希望の道筋を照らせ! ファイナル・シャイニング・ドロー!!! 』」

 

 遊馬 手札:0→1→2

 

「『 《No.39 希望皇ホープ》1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築! 』」

 

 ホープがニュートラル体へと変形し、ZEXALの場の現れた金色の渦の中へと沈む。

 

「『 カオス・エクシーズ・チェンジ! 』」

 

 渦の中から閃光が放たれ、その中から黒い剣が現れる。その剣は変形をはじめ、全身が黒く染まった異形のホープへと姿を変える。これこそがホープの進化系。混沌を制し、光を持って闇を切り裂く新たなる希望――――

 

「『 混沌を光に変える使者! 《CNo.(カオスナンバーズ)39 希望皇ホープレイ》! 』」

 

  CNo.39 希望皇ホープレイ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:1

 

「『 ホープレイの効果発動! LPが1000以下の時、ORUを使うことで攻撃力を500アップし、相手モンスターの攻撃力を1000下げる! 〈オーバーレイ・チャージ〉! 』」

 

 ホープレイがORUを1つ吸収すると、体から光を発し、全身を白く染め上げる。それと同時にブルーアイズ1体が光を前に怯んだ様子を見せる。

 

  CNo.39 希望皇ホープレイ ATK:2500→3000 ORU:1→0

 青眼の白龍 ATK:3000→2000

 

「何をしてくるかと思えば、それでは1体倒すのがやっとだな! 所詮ブルーアイズ達の敵じゃない!」

 

 嫌らしい笑みに安堵を含ませる海馬だが、それに対するZEXALは不敵に笑って手札の1枚を取り出す。

 

「『 勝利の方程式は全て揃った! 《RUM(ランクアップマジック)-アストラル・フォース》! 自分の場のランクが一番高いXモンスター1体を同じ種族・属性でランクが2つ高いモンスターへとランクアップさせる! 限界突破だ! ホープ!!! 』」

 

 海馬 LP:11600→12100

 

『ホォォォーーーープッ!!!』

 

 ZEXALの声に応えるようにホープレイが叫ぶと、ホープレイは金色の光となり、ZEXALの場の上空に現れた金色の渦へと飛び込む。飛び込んだ瞬間にホープレイは元のホープの姿へと戻った。

 

「『 ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!!! 』」

 

 遊馬とアストラルと共に歩みし者、始まりの”希望皇ホープ”。彼もまた多くの闘いを経て進化を重ねてきた。

 恐怖の闇を払い、絆の光を得た”希望皇ホープレイ”。

 光の中に心の闇を見た”希望皇ホープレイV”。

 心の闇に打ち勝ち、絆を深めた”希望皇ホープレイ・ヴィクトリー”。

 遊馬が示した進化の新たなる可能性”希望皇ホープ・ルーツ”。

 渦の中へと飛び込んだ”希望皇ホープ”を進化体の4体が囲み、希望皇ホープと共に愛剣”ホープ剣”を掲げる。

 

「『 人が希望を超え夢を抱く時、遥かなる彼方に新たな未来が現れる! 』」

 

 4体の進化体が光となってホープを包む。光は白き鎧となってホープに装着され、背中のライトウィング・シールドはより硬く機械的に変化する。これぞNo.39の進化の最終到達点。闇を斬り裂き光へ変える”希望皇”の最高位が閃光と共に渦から飛び出す。

 

「『 限界を超え、その手に掴め! 《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》!!! 』」

 

 No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 光属性 戦士族 ランク6 ATK:3000 ORU:1

 

「『 ビヨンド・ザ・ホープの効果発動! X召喚に成功した時、相手のモンスター全ての攻撃力を0にする! 〈ビヨンド・ホープ・フォース〉!!! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープが翼の上部に光を収束させると、その光をブルーアイズ達に向かって照射する。光を受けたブルーアイズ達は力を失い、がくりと項垂れた。

 

 青眼の白龍 ATK:2000→0

 青眼の白龍×2 ATK:3000→0

 

「何ィ!? 今度は全てのブルーアイズを無力化するだとぉ!?」

「『 ビヨンド・ザ・ホープは”希望皇ホープ”としても扱う! 手札から《ZW-阿修羅副腕(ゼアル・ウエポン アシュラ・ブロー)》の効果発動!  ”希望皇ホープ”に装備! 』」

 

 ZEXALの手札から赤い光が飛び出すとビヨンド・ザ・ホープを覆う。光を受けたビヨンド・ザ・ホープの翼が腕に変化し、4本の腕となる。合計6本となった腕を振るい、翼に付いていた刃を1本ずつ持って構える。

 

「『 阿修羅副椀を装備したホープは攻撃力が1000ポイントアップし、相手のモンスター全てに攻撃できる! 』」

 

  No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ ATK:3000→4000

 

「攻撃力4000のぜ、全体攻撃!?」

「『 天地神明にオレは誓う! 未来を掴む為に闘い抜くと! 輝け希望の光! 【ホープ剣・ビヨンド・アシュラ・スラッシュ】!!! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープが6本の手に持った刃をブルーアイズ達に向かって投擲する。刃は1体に2枚ずつ襲い掛かり、ブルーアイズの体を斬り裂いて破壊した。

 

「ぼ、僕の”青眼の白龍”がぁぁぁぁぁ……ぜ……ぜん……め……めつめつめつ……」

 

 海馬 LP:12100→100

 

「『 確かにブルーアイズはすげぇカードだ! だけど、カード1枚1枚が力を合わせることでもっとすげぇ力が、”無限の力”が生まれるんだ! お前だって解っているだろう! ブルーアイズ達が出てくるまでの間、サギーやチューナーモンスター、色んなカード達の力があったことを! 』」

「ぐ、ぐぐ……」

「『 オレのカード達には色んな奴の思いが込められている! 父ちゃん、ゴーシュ、六十郎じいちゃん、エリファス……そしてオレ達自身の全身全霊の思いが! それが勝利への希望を生む! 』」

 

 ZEXALは墓地から光輝く1枚のカードを取り出す。

 

「『 ビヨンド・ザ・ホープの更なる効果発動! ORUを1つ取り除き、自分のモンスターエクシーズ1体を除外することで、墓地から”希望皇ホープ”を特殊召喚する! 自身を除外し、甦れホープ! 』」

 

 ビヨンド・ザ・ホープがORUを吸収すると、白き鎧が砕け散り、中からホープが現れる。

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:0

 

「『 そしてLPを1250ポイント回復する! 』」

 

 現れたホープから光の粒子が放たれ、ZEXALを包み込む。ここまでのダメージを癒し、ZEXALは今一度体に力を籠める。

 

 ZEXAL LP:500→1750

 

「『 オレ達の勝ちだ、海馬! ホープでダイレクト・アタック! 【ホープ剣・スラッシュ】!!! 』」

 

 ホープは腰のホープ剣一振りを掴むと鞘が砕け散り、腰から引き抜いて構える。一呼吸の後にホープは飛び上がり、海馬に向かってホープ剣を振り下ろす。

 

「アアアアアーーーーーーー!!!?」

 

 海馬 LP:100→0

 

 決闘が終了し、ホープやカードのSVが消滅する。

 海馬は信じられないといった表情で場の台に手をついて項垂れた。

 

「そんな馬鹿な!? この僕が負けるなんて! こんなのありえない!」

「『 まだ解らねぇのか!? 』」

 

『遊馬』

 

 ZEXALの中でアストラルが遊馬に語り掛ける。

 

『どうやら彼の心は完全に”悪”に染まり切っているようだ。何を言っても無駄だろう』

「でも……それでもオレは諦めたくねぇ!」

『その通りだ。諦める必要などない。私達の”力”なら、彼の心を救える。行くぞ遊馬!』

「オウ!」

 

「『 熱き情熱が勝利を導く! エクシーズ・セカンド・チェンジ! ”ZEXAL”!! 』」

 

 ZEXALが赤く輝きを放つと、その姿が大きく変化する。Dゲイザーは完全に体と一体化し、アーマーは白く染まりより強固に。そして赤く燃えるような髪が背中まで伸びる。これこそ最強を超えし姿、”ZEXALⅡ(ゼアルセカンド)”である。ZEXALⅡは飛び上がって海馬との距離を詰めると、海馬に向かって右手をかざす。

 

「『 この世の全ては1枚のカードから創られた。ならば”人の心”もまた同じ! 善と悪を表裏とする”人の心”。黒く染まった海馬の”善の面”を描き換える! リ・コントラクト・ユニバース!!! 』」

「ぐわぁぁぁぁぁーーーー!!?」

 

 海馬の心の奥の底。深い深い場所に漂う1枚のカード。真っ黒に染まったカードの表面が白く染まる。それと同時に海馬の顔から陰が消え去った。

 

「あ、あ……」

 

 海馬はその場に崩れ落ちるように座り込み、ガクリと項垂れて気を失った。

 ZEXALⅡは飛び退いて最初に立っていた決闘リングの足場に着地すると、合体を解除して遊馬とアストラルに戻る。

 

「海馬、どうなっちまうんだ? LP12100を一気に削り取ったから、ダメージも心配だぜ……」

『ダメージに関しては問題ないだろう。この装置によるダメージは君にしか及んでいないようだ。おそらくは、そのように最初から仕組んでいたのだろう』

「マジかよ!?」

『ダメージ毎の彼の様子を見れば分かることだろう』

「ぐぐ……そういやそうだった……」

 

 苦虫を噛み潰したような遊馬に呆れながら、アストラルは再び海馬を見る。

 

『彼の心の表面に再び善が現れた。今、彼の中で善と悪が闘いを始めている。……彼が誇り高き決闘者となるか、再び堕ちるかは彼次第だ』

「そっか……負けんじゃねぇぞ海馬! オレは信じて待ってるからな!」

 

 遊馬が胸の前で拳を握り締めた瞬間、突然決闘リングからファンファーレが鳴り響く。

 

「おわぁ!? な、何だ!?」

{DEATH-Tクリア、オメデトウゴザイマス。ショウシャニハオシミナイショウサンヲ、ソシテホウシュウガアタエラレマス}

 

 機械音声がそう告げると、遊馬の足場の台にある場が開き、中からカードパックが出てくる。

 

「え? ”リンクモンスターパック”? 貰っていいのか?」

『貰っておけ遊馬。この世界のルールで闘うには、リンクモンスターが不可欠だ』

「……お前、いやに詳しいな? あ、そういやまだ聞かせて貰ってないぞ! なんでお前がここにいるんだ?」

『……君の声が聞こえたからだ』

 

 

 

* * *

 

 

 

 バリアン世界と融合を果たしたアストラル世界。カオスの力を受け入れて皆が生きる力を取り戻したが、それは新たなる闘いを生み出した。”敵”を迎え撃つため、アストラルは闘いへと赴いた。

 

『これが私の、かっとビングだァーーーーー!!!』

 

 ”敵”と相対し、決闘を始めようとした瞬間、別の方向からの叫びがアストラルの動きを止めた。

 

 

 

アストラルーーーーー!!!

 

 

 

『ッ!? 遊馬……?』

 

 アストラルは叫びが聞こえた方へ向く。しかしそちらには何もない。アストラル世界の雲海が広がっているだけである。

 

『(気のせいではない! 確かに聞こえた! 私の名を呼ぶ遊馬の声が!) どこだ遊馬!!?』

 

 必死に呼びかけるアストラル。しかし返事は返ってこない。来たのは”敵”からの攻撃であった。

 

『くっ!?』

 

 間一髪で避けるアストラル。”敵”は雲海の間から次々と現れる。これでは遊馬を探すどころではない。

 

『どうする……このままでは……』

 

 再び襲い掛かってくる”敵”の集団。アストラルが身構えた瞬間、巨大な黒い槍が”敵”を一気に刺し貫く。

 

「ボーっとしてるんじゃねぇ!」

『シャーク!? 何故ここに!?』

 

 突然アストラルの前に現れたのはシャークこと”神代 凌牙”とそのエースモンスター”ブラック・レイ・ランサー”。そして次々と増援が現れ、”敵”との闘いに参加していく。バリアン七皇、トロン一家、オービタル7――――そして最後に小鳥が現れ、ふらふらと飛ぶのに慣れない様子でアストラルに近づく。その顔は不安で今にも泣きそうであった。

 

「ア、アストラル……」

『小鳥まで!? どうしてここに!? 何があったのだ!?』

「アストラル世界の危機だって聞いて、遊馬と皆で助けに来たの……そしたら……遊馬が突然いなくなっちゃって……」

『遊馬が……!? やはりあれは気のせいではなかったか!』

 

 アストラルは再び叫びが聞こえた方を向く。

 

『助けに行かなければ……だが、ここを離れてしまっては……』

「行きなよアストラル。その為に僕らがいるんだ」

 

 迷うアストラルに、仮面を着けた少年――――トロン一家の父”トロン”が遊馬の下へ行くことを促す。

 

「ここは僕らが食い止める。その間に君は遊馬を連れて戻ってくるんだ。いいかい? 必ず連れて戻ってくるんだ。食い止めて見せるけど、僕らだけで倒すのは無理だからね」

「もう俺達はただの人間なんだ。バリアルフォーゼだってできねぇ。ナンバーズも無い。勝つには絶対にあのバカとお前の力が必要なんだよ」

 

 闘いながらバリアン七皇の長”ナッシュ”であったシャークがアストラルに振り向く。

 

「アストラルお願い! 遊馬を助けて!」

 

 最後に小鳥が涙を迸らせてアストラルに懇願する。アストラルは一度目を閉じ、決意を示すように目を見開く。その瞬間、アストラルを囲むように100枚のカードが現れた。

 

『ナンバーズ達よ! 遊馬への道を切り開け!』

 

 アストラルはナンバーズ達と共に遊馬の叫びが聞こえた方へと飛び出す。ある程度飛んだ後、ナンバーズ達が空間をこじ開けた。

 

『この先か! ナンバーズ、堪えてくれ!』

 

 ナンバーズ達が空間を開いている間、アストラルはその中へと飛び込んだ。

 

『よし、戻れナンバーズ――――!?』

 

 アストラルがナンバーズ達を回収しようとした瞬間、ナンバーズ達は力尽き、異空間の中へと飛び散ってしまう。アストラル自身もナンバーズを放出したことにより力を消耗してしまっており、飛び散ったナンバーズ達を回収することができなかった。

 

『しまった!? くっ……”皇の鍵の船”が無い今、ナンバーズ無しではこの空間を渡ることはできない!』

 

 バランスを崩し、アストラルも異空間の彼方へと流されようとしていた。

 

『(皆……遊馬……すまない……)』

 

 悔しさを噛みしめながらアストラルが目を閉じようとした瞬間、1枚のカードがアストラル目掛けて飛来し、実体化してアストラルを掴む。

 

『これは……お前は……!?』

『ムカエニイコウ……ワガヌシ、ワガトモ、ワガハンシン……』

『”ホープ”……』

『ソレガワタシノ”イシ”デアル』

 

 ホープは守るようにアストラルを胸に抱き、異空間を突き進む。

 

『……そうだったな。あの時だって、お前が”始まり”だった。行こうホープ。遊馬を迎えに――――』

 

 

 

* * *

 

 

 

「ナンバーズが飛び散ったって……アストラルお前”記憶”は大丈夫なのか!?」

『心配ない。ドン・サウザンドの時とは違うからな』

 

 アストラルから事の経緯を聞きながら、遊馬は施設内を再び探索していた。出口を探すためである。かれこれ数十分、階段やエレベーターを上ったり下ったり、施設内を歩き回ったりしたが外への出口は見つからない。

 

『ただ、問題は起きている』

 

 そう言ってアストラルは1枚のカードを遊馬に見せる。

 

 No.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース

 

「あ、ナンバーズ! お前一人で回収したのか?」

『ああ。そしてこのカードはこの世界の決闘者が所持していた。おそらく残りのナンバーズもこの世界に散らばったのだろう』

「……それってもしかして?」

『……ナンバーズがなければ”船”も動かせない。我々が元の世界に戻るため、また”ナンバーズ集め”だ』

「ぐわぁぁぁ~! またかよぉ~!? えーと、ホープとフォーカス・フォースだから……後98枚~!?」

『私がここまで回収したナンバーズはホープを含め6枚。後94枚だ』

「そんな変わんねぇ!?」

 

 そう叫んで遊馬はふと気づき、アストラルに向き直る。

 

「そういやお前、ルールとかリンクモンスターのこととか知ってたし、ナンバーズも回収してるんだよな? 何時からここにいるんだ?」

『この世界に来てから既に3日だ』

「げぇ!? どんだけ寝てたんだよオレ!?」

『ここは異世界だ。到着の時間にズレが起こっても不思議ではない……遊馬、ここまで話を聞いていたのなら、君でも流石にここが君のいた世界やアストラル世界とは違うことは解っているな?』

「わ、解ってらぁ! 馬鹿にすんなよ!」

『私達が知らないルール、カード……そして、異世界でなければ変身できない”ZEXAL”になれたのがその証拠だ』

「そういやそうだな。まったく意識してなかった……お?」

 

 歩いていた廊下を抜けると、施設のエントランスへと出る。つまり出口である。遊馬は駆け出して自動ドアをくぐると、太陽の光に目を細めた。

 

「くぅ~! やっと外に出られたぜ! それにしても……」

 

 遊馬が辺りを見渡すと、そこはビルと街路樹が並び、道路が伸びる”街中”であった。後ろを振り返ると、今までいた施設は大きなビルの中であったことがわかる。

 

「異世界って言うからゲームとかに出てくるもっとこうファンタジ~みたいなとこかと思ってたぜ。しかも妙に古臭い町だなぁ。歴史の教科書に載ってそうだ」

『この建物は”海馬コーポレーション”というらしい。さっき闘った相手と同じ名前だな』

「へぇー自分の名前がついたビル持ってるなんて、金持ちなんだな。……で、アストラルは3日前からここにいるんだから、この辺詳しいよな?」

『観察に抜かりはない。街並みは違うが、基本は君の世界と変わらない。皆が食事をし、仕事をし、学校へ行き、決闘をする』

「……そんだけ?」

『食事からの出す永久コンボもある。トイレに駆け込むのを見た。中は見ていないぞ。死なれたら困るからな』

「そうじゃねぇよ! もっとこう……どこ行ったら何があるとか、何か知ってるやつがいるとか、あるだろ?」

『すまないが、君が求める情報は無い』

「え~? 一体3日間何してたんだよ?」

『君を捜していた』

 

 あっと固まる遊馬。当然な話である。

 

「……ワリィ、ありがとよ」

『解ればいい。……とりあえずこの町を出よう。もうここにはナンバーズの気配もしない』

「そっか。……よっしゃ、行くぜアストラル! 分かんないことだらけでもかっとビングで突き進むだけだ! 皆も闘いながら待ってる! 急ごうぜ!」

『ああ!』

 

 見知らぬ世界に分からないことだらけ。ナンバーズも集めなければならない。前途多難な道だが、何も恐れることはない。腰には頼もしい仲間(カード)達、胸には熱いかっとビング、そして隣には最高の相棒がいるのだから――――




遊馬の相手は海馬瀬人(マイクラ前)でした。
デッキテーマは”初期を意識したバニラ型ブルーアイズ”。
”原作以上にブルーアイズに拘るやべー奴”な感じで書きました。
ラスト付近の無理のありすぎる戦術はどうしてもバンダイ版の”ブルーアイズ3体連結”を再現したかったからです。
8回連続攻撃は3体連結のモンスター効果でした。


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榊 遊矢

プロローグ第五弾”榊 遊矢”です。


 

 

 

 

信じてたよ、遊矢ならきっと、決闘で皆を笑顔にできるって

 

……お帰り、柚子!

 

ただいま、遊矢……!

 

 

 

 

これで終わりだと思ったら大間違いだ!

遊矢よ、お前の本当の闘いはテストに合格したこの瞬間から始まるんだ!

プロとして、闘い続ける覚悟はあるか?

 

もちろん!

オレはこれからも決闘で皆を笑顔にする!

そして必ず、父さんを超えるエンタメ決闘者になって見せる!

お楽しみは、これからだ!!!

 

 

 

 

 

 超満員の決闘スタジアムにて、強敵にして最大のライバル”赤馬 零児”を破って笑わせて見せた”榊 遊矢”。不愛想な社長も、笑わない赤子も、世界を滅ぼしかけた”悪魔”でさえも笑顔にするエンタメ決闘をやり抜き、見事プロテストに合格した。

 大切な人”柊 柚子”との再会も果たし、プロ決闘者として、そしてエンタメ決闘者として新たな一歩を踏み出した。その一歩目にして最大の壁、尊敬するエンターテイナーにして父親の”榊 遊勝”との決闘に挑む。

 

「行くよ父さん! 闘いの殿堂に集いし――――」

 

 

遊矢……榊 遊矢……

 

 

「え?」

 

 突然聞こえてきた声に思わず口上を止めて振り向く遊矢。後ろには涙が乾き切らない幼馴染とその父親、友人達、決闘の開始を今か今かと見つめるライバル達、そして未だに笑いが収まらず肩を揺らしている社長――――誰も自分を呼んだようには見えない。

 

「気のせいか……?」

 

 

ペンデュラムの創始者……笑顔の伝道師……モンスターの声を聞く者……悪魔――――

幾多の闘いを超えし者……最強の”決闘者”

 

 

「気のせいじゃない!? この声は……?」

 

 

集え、我が下に――――その”定まりし信念”をもって、我が試練を受けよ!

 

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 突然スタジアムが眩い光に包まれる。先程も同じような事が起こったせいか、スタジアムの人間の殆どが演出だと思って特に問題とはしなかった。

 

「……遊矢? 遊矢!?」

 

 だが問題は起こっていた。このステージの主役である遊矢の姿が消えていたのである。

 演出だと思っていた会場の人々も、流石に何時まで経っても遊矢が戻ってこないことに騒然とする。柚子は消えた遊矢の行方を案ずると同時に、言葉にできぬ胸騒ぎを覚えていた。

 

「遊矢……」

 

 

 

* * *

 

 

 

「うう……何だ一体……」

 

 あまりの眩さに顔を覆っていた腕を下げると、遊矢はスタジアムとは違う場所に立っていた。

 

「ここは……シンクロ次元?」

 

 そこはボロボロな建物が並ぶ廃墟のような街。遊矢はこの街に見覚えがある。

 

「コモンズの居住区みたいだけど……何だろうこの感じ?」

 

 自分の知っている街と同じだが、どこか違和感を感じる。近いようで遠いような――――言葉に表せないモヤモヤ感が遊矢を襲う。

 

「……決闘に夢中になりすぎて気にしてなかったけど、もう夜だったんだなぁ。早く戻らないと父さんはともかく、お客さんが帰っちゃうよ。……いや、下手したら父さんもどっか行くかも!? 急げ!」

 

 遊矢がRSV(リアル・ソリッド・ビジョン)搭載のローラーシューズを起動させようとした瞬間、薄暗い視界の端にあるものを見つける。

 

「あれ? これって……」

 

 遊矢が見つけたものは赤い1台のDホイール。それは遊矢がシンクロ次元で使っていたものだった。ヘルメットまで付いている。

 

「何でこんなところに……でもこれがあればもっと早く戻れるぞ」

 

 遊矢はDホイールに跨ると、ライディングスーツの代わりに肩に掛けていた学生服の上着を着こみ、ヘルメットをかぶろうとする。

 

「よいしょ……うわぁ!?」

「動くなよ? 決闘者」

 

 突然、前方から前照灯の光が遊矢を照らす。驚いた遊矢が光の方を見ると、1台のDホイールと一人の男のシルエットが浮かび上がっていた。

 

「おい、そのDホイールどこから盗んだ?」

「ぬ、盗んだって……違うよ! これは貸してもらったもので――――」

「ほーう、一生借りていくってやつか? 何にせよ盗みの言い訳の常套手段だな」

「ほ、本当に貸してくれたものなんだ! 評議会の人か治安維持局に確認してもらえば分かるよ!」

「俺はその”治安維持局”の人間だがな」

「え!?」

 

 男がゆっくりと遊矢の前に進み出る。見ると太い眉毛に浅黒い肌の体格の良い男で、遊矢も見覚えのある制服に身を包んでいた。

 

「俺は治安維持局直属公安組織”セキュリティ特殊追跡部隊デュエル・チェイサーズ”所属の”牛尾 哲”……ま、早い話が”お巡りさん”ってやつだ」

「デュエル・チェイサーズ!?」

 

 デュエル・チェイサーズ――――治安維持局と共に、シンクロ次元に渡った遊矢にとっては苦い思い出の象徴である。もう元凶である”長官”は存在しないものの、再び前に現れては流石の遊矢も顔が引きつる。

 

「だ、だったらすぐに確認して貰って――――」

「あーその必要はねぇ。実はそんなことどうでもいいんだよ。決闘者がいたら問答無用で拘束しろとの命令だ。決闘盤(それ)を腕に付けてる時点でアウトってわけだ」

「そ、そんな!?」

「逃げようなんざ思うなよ? お前の取るべき道は2つ! このままおとなしくお縄に就くか、俺と決闘することだ」

「決闘を?」

「そうさ、それがここでのルールだからな。ほら早くDホイールに乗って走りだせ! じゃないと腕づくで捕まえんぞ!」

「わわ!?」

 

 牛尾は自身のDホイールに駆け戻って跨り、エンジンを始動させる。遊矢も慌ててヘルメットを被ってDホイールに跨り、エンジンを始動させて走りだす。牛尾もそれを追いかけて走りだした。

 

「くそう! 何なんだ一体!」

『遊矢!』

 

 Dホイール上で遊矢がぼやいていると、3人の少年が姿を現す。全員が遊矢と同じ顔付きであり、遊矢のそばで浮いている。明らかに異常な光景だが、牛尾にはそれは見えていない。3人は遊矢の中に存在する意識だけの存在なのだ。

 

「”ユート”?」

『”ユーゴ”が何か言いたいことがあるそうだ』

 

 ユートと呼ばれた黒い衣装の少年が、ユーゴと呼んだ白いライディングスーツを着た少年を遊矢の前に出す。ユーゴは先程からキョロキョロと辺りを見渡しており、確信したように頷いてから遊矢と向き合う。

 

『遊矢! ここはシンクロ次元じゃねぇ!』

「何だって!? でもここはどう見ても――――」

コモンズ(俺達)の住処に似てるけど、違う! ずっと住んでたオレが言うんだ! それに……』

 

 ユーゴは後ろから追いかけてくる牛尾を一瞥する。

 

『あいつも見たことねぇんだ! セキュリティなら嫌になるほど見てきたけど、あんな奴セキュリティにはいねぇ!』

『キミ、あんなウジャウジャいる奴らの顔を見分けて覚えているのかい?』

 

 紫の衣装の少年”ユーリ”が胡散臭いものを見るような表情でユーゴにツッコむが、ユーゴは自信を漲らせた態度で牛尾を指さす。

 

『覚えてるわけねぇだろ、あんな皆同じような顔した奴ら! だからこそ分かる! あんな濃いオッサンが紛れてたらすぐに分かるぜ!』

『成程ね……オベリスク・フォースの中にバレットが紛れてたらすぐ分かるだろうね。それと同じか』

 

 ユーリが納得した様に頷くと、ユートが呆れた様にため息をついた。

 

『今はそんな話をしている場合じゃないだろう……やるのか遊矢?』

「あの人は本気でやる気だ。やるしかない!」

 

 遊矢は自信の決闘盤をDホイールにセットし、Dホイール付属のデッキホルダーを腕に装着する。

 

『せっかくプロになったって言うのに、またセキュリティに追っかけられるのかよ!』

 

 愚痴りながらもユーゴが楽しそうに笑う。遊矢はデッキホルダーにデッキを挿入し、オートシャッフルを行う。

 

『今更セキュリティに負けるキミじゃないだろう? 軽く捻ってあげなよ』

 

 ユーリも愉快そうに笑う。ゆったりと構えており、遊矢が負けるとは微塵も思ってはいないようだ。遊矢は2人に笑って応えると、決闘盤を起動させ、RSVで形成されたプレートを展開する。

 

『うん? 遊矢、この決闘盤何かおかしくないか?』

「え?」

 

 ユートに指摘されて遊矢が決闘盤を見ると、プレートが何時もより大きいように見える。

 

「何で大きく? まるでモンスターゾーンが二つあるみたいだ」

『……今考えても仕方ない! 来るぞ遊矢!』

「ああ!」

 

{フィールド魔法《クロス・オーバー・アクセル》セット}

 

 

 

「「 ライディング・デュエル! アクセラレーション!!! 」」

 

 

 

「オレの先攻だ!」

 

 廃墟のような市街地を舞台に始まったライディング・デュエル。先攻となった遊矢はDホイールのモニターで場の詳細を確認する。

 

「何だ!? P(ペンデュラム)ゾーンが魔法・罠ゾーンと統合されてる!? それにEX(エクストラ)モンスターゾーンって……」

『……ユーゴの言葉を信じるならば、ここは俺達の知っている次元とは異なる世界。そして、それは決闘の違いも意味しているのかもしれない』

「ユート?」

『気を引き締めろ遊矢! まだ何かあるかもしれない!』

「ああ! オレのターン! 永続魔法《補給部隊》を発動! そして――――」

 

 遊矢は手札から2枚のカードを取り出し、掲げる。

 

「オレはスケール6の《EM(エンタメイト)リザードロー》とスケール8の《EMオッドアイズ・ユニコーン》でPスケールをセッティング!」

 

 遊矢が魔法・罠ゾーンの両端にカードを2枚置くと、プレートに”PENDULUM”の文字が浮かび上がり、それと同時に遊矢の場の両側面に光の柱が立ち上がる。左の柱の中にはカードの襟巻、シルクハット、タキシードを着込んだトカゲの紳士が、右の柱の中には美しくも愛らしい二色の眼を持つユニコーンの子供がそれぞれのPスケールの数字と共に浮かび上がる。

 

「リザードローのP効果発動! もう片方のPゾーンにリザードロー以外の”EM”が存在する場合、このカードを破壊して1枚ドローする!」

 

 光の柱の中のリザードローが消滅すると、遊矢はデッキから1枚ドローする。

 

 遊矢 手札:2→3

 

「よし! Pゾーンにスケール2の《EMオオヤヤドカリ》をセッティング!」

 

 消滅したリザードローの代わりに左の柱の中に浮かび上がったのはその名の通り大きなヤドカリ。よく見るとヤドの中には小さな生物が住み着いているようだ。

 

「これでレベル3から7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

 左の柱には2の文字、右の柱には8の文字。そして二つの柱の間を巨大な振り子(ペンデュラム)が揺れ動く――――

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 振り子が何度も往復を繰り返すと、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスターたち!」

 

 遊矢の号令と共に穴から2つの光が飛び出し、遊矢の場へと降り立つ。

 

「EXデッキからレベル3《EMリザードロー》!」

 

 EMリザードロー 地属性 爬虫類族 ペンデュラム レベル3 DEF:600

 

「そして手札から現れろ! 雄々しくも美しく輝く二色の眼!」

 

 リザードローに続いて場に現れたのは、赤と緑のオッドアイを持つ赤いドラゴン。二色の眼を光らせ、雄々しく咆哮を上げる。これこそが遊矢のエースモンスターにして”四天の龍”の一体。そして始まりの”ペンデュラム”――――

 

「レベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 ペンデュラム レベル7 ATK:2500

 

「おおう、派手にやるじゃねぇか。そうこなくちゃな!」

 

 牛尾は遊矢を捕まえる立場であって本来は逮捕に集中しなければならないのだが、どこか呑気であり、遊矢との決闘を楽しむつもりであるのが見て取れる。

 ペンデュラム召喚を終えた後、遊矢は場を見て首を傾げた。

 

「あれ? リザードローがEXモンスターゾーンに置かれてる。もしかしてEXデッキから出したモンスターはあそこに置かれるのか? ……ということは、EXデッキからは2体しか出せないってこと!?」

 

 ペンデュラム召喚の最大の長所はEXデッキからの大量召喚であり、それを大きく制限されることは遊矢にとってはかなりの痛手である。

 

「Pゾーンの統合といい、何かオレに不利なルールだな……カードを伏せてターンエンド!」

 

遊矢

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:EMリザードロー DEF:600

④:

メインモンスター

③オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500

魔法・罠

①LS:EMオオヤヤドカリ スケール2

③補給部隊

④セット

⑤RS:EMオッドアイズ・ユニコーン スケール8

 

「だが派手にやればそれだけ目立つ。捕まえてくださいって言ってるようなもんだぜ! 俺のターン!」

 

 牛尾 手札:5→6

 

「だったら俺も派手にやらせて貰うぜぇ! オラオラオラァ!」

 

 牛尾は手札から3枚のカードを取り出すと、それを1枚ずつ豪快に墓地へと送る。

 

墓地に送ったカード

ゲリラカイト

魔神童

ライト・サーペント

 

「行くぞぉ! レベル4! レベル3! レベル3! 以上手札より3枚を墓地へ送って、《モンタージュ・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 牛尾の場に3色の光の壁が現れ、それが並ぶことによって1体の竜の姿を浮かび上がらせる。光の壁が弾け散ると、その中から三つ首の竜が現れ、大きな翼と腕を振るいながら咆哮を上げる。

 

 モンタージュ・ドラゴン 地属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:?→3000

 

「こいつの攻撃力はこのカードの効果で墓地へ送ったモンスターレベルの合計の、300倍だ!」

「300倍!? ……って、攻撃力3000か。高いけど、300倍って言われるともっと凄い数値を想像しちゃうな……」

「ここで墓地に送った《ライト・サーペント》と《魔神童》の効果発動! それぞれ表側と裏側で特殊召喚する!」

 

 モンタージュ・ドラゴンに続き、牛尾の場に光輝く蛇が現れ、その隣にモンスターがセットされる。

 

 ライト・サーペント 光属性 爬虫類族 レベル3 ATK:1200

 

「《魔神童》をリリース! 《手錠龍(ワッパー・ドラゴン)》をアドバンス召喚!」

 

 セットモンスターが光の中へと消えると、その光から嘴と尻尾が手錠のようになった龍が現れる。

 

 手錠龍 風属性 ドラゴン族 レベル5 ATK:1800

 

「バトル! モンタージュ・ドラゴンでオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを攻撃! 【パワー・コラージュ】!」

 

 モンタージュ・ドラゴンがオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンへ三つの頭を向けると、口に光を集中させる。

 

「そうはさせないぞ!」

 

 遊矢は辺りを見回すと、通路の先にカードが数枚落ちているのを見つける。遊矢はDホイールから身を乗り出し、その内の1枚を手にする。

 

A(アクション)マジック《回避》! 攻撃を無効にする!」

 

 遊矢が拾ったAカードを発動させると、牛尾も身を乗り出して遊矢がとらなかったカードの1枚を手にして発動する。

 

「Aマジック《ノーアクション》! Aマジックの発動を無効にする! 俺様の攻撃に水差すんじゃねぇや!」

 

 牛尾の発動したAマジックが遊矢のAマジックを掻き消した瞬間、モンタージュ・ドラゴンが光のブレスを放ち、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを吹き飛ばす。

 

「うわぁ!?」

 

 遊矢 LP:4000→3500

 

 遊矢は攻撃の衝撃でよろけるDホイールを立て直し、その隙を突いて追い抜いて行った牛尾を追いかける。

 

「EMリザードローと補給部隊の効果発動! リザードローはこのカード以外の自分の表側モンスターが破壊された場合、自分の場の”EM”の数だけドロー! そして補給部隊は1ターンに1度、自分のモンスターが破壊された場合、1枚ドローする! 合計2枚ドローだ!」

 

 遊矢 手札:0→1→2

 

「ちっ! そっち先に破壊すりゃよかったな。ライト・サーペントでリザードローを攻撃!」

 

 ライト・サーペントがリザードローに飛び掛かり、噛みついて破壊する。

 

「ここでEMオオヤヤドカリのP効果発動! 1ターンに1度、”EM”が戦闘で破壊された時、自分のPゾーンの”EM”か”オッドアイズ”を特殊召喚する! 《EMオオヤヤドカリ》を守備表示で特殊召喚!」

 

 光の柱からオオヤドカリが飛び出し、遊矢の場で防御体勢を取る。

 

 EMオオヤヤドカリ 水属性 水族 ペンデュラム レベル5 DEF:2500

 

「手錠龍の攻撃力より守備力が上じゃねぇか! くそっ! カードを伏せてターンエンド!」

 

牛尾

LP:4000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

②手錠龍 ATK:1800

③モンタージュ・ドラゴン ATK:3000

④ライト・サーペント ATK:1200

魔法・罠

③セット

 

「あの人、Aデュエルを知っている! この次元にも存在しているのか? ……オレのターン!」

 

 遊矢 手札:2→3

 

「Pゾーンにスケール1《EMスマイル・マジシャン》をセッティング!」

 

 オオヤドカリがいなくなった左の柱に”スマイル”カードを手に持った金髪の美青年が浮かび上がり、眩しいほどの笑顔を場に向ける。

 

「これでレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能!」

 

 左の柱には1の文字、右の柱には8の文字。そして二つの柱の間を巨大な振り子(ペンデュラム)が揺れ動く――――

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 振り子が何度も往復を繰り返すと、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスターたち!」

 

 遊矢の号令と共に穴から2つの光が飛び出し、遊矢の場へと降り立つ。

 

「手札からレベル7《EMスライハンド・マジシャン》!」

 

 最初に現れたのは、下半身が遊矢の持つペンデュラムに似たクリスタル、上半身が左手にステッキを持った道化師風のマジシャン。奇抜な姿をしたそれは空手だった右手に突然トランプを出現させる手品を披露しながら場に降り立つ。

 

 EMスライハンド・マジシャン 光属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

「EXデッキからレベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 ペンデュラム レベル7 ATK:2500

 

 続けてオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが現れるが、遊矢は不思議そうに首をかしげる。

 

「あ、あれ? オッドアイズだけ? リザードローも召喚したつもりだったんだけど……」

 

 遊矢はモニターを確認すると、リザードローはEXデッキに残ったままであった。

 

「おいおい兄ちゃん、もしかしてEXデッキからもう1体出すつもりだったのか?」

「そうだけど……」

「無理に決まってんだろ? EXモンスターゾーンは一人一つまで。EXデッキからもっと出したかったら”リンクモンスター”を出すこった。もう一つも使いたかったら”エクストラリンク”を狙うんだな」

「リンクモンスター? エクストラリンク? それがこの世界の”召喚法”なのか?」

「さあどうすんだ? 当てが外れてお手上げか?」

「そんなことないさ! 行くぞ! オオヤヤドカリの効果発動! 自分の場のPモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで”EM”の数の300倍アップする! オッドアイズの攻撃力を600アップだ!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500→3100

 

「あっ真似しやがって! だが……」

 

 牛尾は前方に向き直ると、上空に浮いたAカードを手を伸ばして掴む。

 

「Aマジック《ティンクル・コメット》! モンスター1体の攻撃力をエンドフェイズまで1000下げ、相手に500ポイントのダメージを与える!」

 

 牛尾が発動したAマジックから無数の流星が飛び出し、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと遊矢を襲う。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3100→2100

 遊矢 LP:3500→3000

 

「うわぁ!? ……くっ!」

 

 Aマジックの奇襲によって再びよろけた遊矢。体勢を立て直し、悔しそうに前方を走る牛尾を見る。

 

「(ライディング・デュエルじゃコース上にAカードが置かれるから、先を走られたらAカードをどんどん使われる。よーし……何としてでも前にでてやる!) オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでモンタージュ・ドラゴンを攻撃!」

「おいおい! モンタージュ・ドラゴンの攻撃力の方が上だぜ? ……ならやることは一つだな!」

 

 牛尾は身を乗り出し、Aカードを手に取る。道の先にはもうAカードは見えない。

 

「(俺が先を行く限り、お前にAカードが回る可能性は下がる! Aカードに頼った戦術じゃ俺には決して勝てないってことよ!)」

 

 遊矢はAマジックでオッドアイズを強化してモンタージュに挑みに来る――――そう考えた牛尾は先んじてAカードを取ったのだが、遊矢の視線はAカードには向けられていなかった。

 

「《EMオッドアイズ・ユニコーン》のP効果発動! このカードPゾーンに存在する限り1度だけ、”オッドアイズ”の攻撃宣言時、そのモンスター以外の”EM”1体の元々の攻撃力をバトルフェイズ終了時まで攻撃モンスターに加える! EMスライハンド・マジシャンの攻撃力をオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに加える!」

「何ィ!? Aマジックじゃねぇのか!?」

 

 スライハンド・マジシャンがステッキをオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンにかざすと、オッドアイズ・ユニコーンの嘶きと共にパワーが流れ込む。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2100→4600

 

「攻撃力4600だぁ!?」

「行け! 【螺旋のストライク・バースト】!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは飛び上がると、口から赤い閃光のブレスをモンタージュ・ドラゴンへと放つ。

 

「チィ! Aマジック《ハイダイブ》! 自分の場のモンスター1体の攻撃力を1000アップする!」

 

 モンタージュ・ドラゴン ATK:3000→4000

 

「これでダメージを抑えてやる!」

「オッドアイズの効果発動! 相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる! 〈リアクション・フォース〉!」

 

 ブレスがモンタージュ・ドラゴンに命中すると、モンタージュ・ドラゴンは爆散し、爆風が牛尾を襲う。

 

「うおお!? チクショウ!」

 

 牛尾 LP:4000→2800

 

「続けてスライハンド・マジシャン! 手錠龍を攻撃! 【ノーギミック・マジック】!」

 

 スライハンド・マジシャンがトランプを手裏剣の様に手錠龍へと投げつけると、手錠龍を切り裂き破壊する。

 

 牛尾 LP:2800→2100

 

「ぐうう!? 調子に乗るなよ、手錠龍の効果発動! 相手の攻撃によって破壊され墓地に送られた時、このカードを装備カード扱いとして攻撃モンスターに装備する!」

 

 破壊されたはずの手錠龍がスライハンド・マジシャンの目の前に現れ、嘴と尻尾で捕らえて拘束する。

 

「装備モンスターの攻撃力は1800ポイントダウンするぜ!」

 

 EMスライハンド・マジシャン ATK:2500→700

 

「スライハンド・マジシャン!? よーし……」

 

 遊矢は牛尾がダメージでよろけている隙をついて追い抜き、身を乗り出して再びAカードを手に取る。

 

 遊矢 手札:1→2

 

「スライハンド・マジシャンの効果発動! 1ターンに1度、手札を1枚捨てることで場の表側表示のカード1枚を破壊する! 抜け出して手錠龍を破壊しろ!」

 

捨てたカード

加速

 

 スライハンド・マジシャンは手錠龍からスルりと抜け出し、再びトランプで破壊する。

 

「ターンエンド!」

 

遊矢

LP:3000

手札:0

EXモンスター

②:オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:4600→2500

④:

メインモンスター

②EMスライハンド・マジシャン ATK:700→2500

③EMオオヤヤドカリ DEF:2500

魔法・罠

①LS:EMスマイル・マジシャン スケール1

②セット

③補給部隊

④セット

⑤RS:EMオッドアイズ・ユニコーン スケール8

 

「小僧だからって油断してたぜ! 俺のターン!」

 

 牛尾 手札:0→1

 

「それじゃここでお手本を見せてやろうか」

「お手本?」

「リンクモンスターを出して見せてやろうってんだよ。よーく覚えておきな」

「!? くるのか? この世界の召喚法!」

「《ダークロン》を召喚!」

 

 牛尾の場に手足とボサボサの金髪を生やした丸い悪魔が現れる。

 

 ダークロン 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:100

 

「ダークロンの召喚に成功した時、俺の場のモンスターは全て闇属性となり、レベルが1つ上がる!」

 

 ライト・サーペント 光属性→闇属性 レベル3→4

 ダークロン レベル1→2

 

「現れろ! 御上の威光が照らすサーキット!」

 

 牛尾が空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”モンスター2体”! 《ライト・サーペント》と《ダークロン》をリンクマーカーにセット!」

 

 牛尾の場のライト・サーペントとダークロンが風を纏い、アローヘッドの右下と左下のリンクマーカーへと飛び込んでリンクマーカーを点灯させる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-2! 《魔界の警邏課デスポリス》!」

 

 光り輝くアローヘッドから飛び出したのは、ドクロのアクセサリーを身に着けた婦人警官。腰に提げた手錠と警棒を揺らし、腰に手を当てビシッと敬礼する。

 

  魔界の警邏課デスポリス 闇属性 悪魔族 LINK-2 ATK:1000

 

「(リンク召喚……そこから呼び出されるリンクモンスターか。一体どんな力を秘めているんだ?)」

「罠カード《裁きの天秤》! 相手の場のカードの合計が自分の手札・場のカードの合計よりも多い場合、その差分だけドローする! お前の場に8枚、俺の場には2枚、よって6枚ドロー!」

 

 牛尾 手札:0→6

 

「魔法カード《ワンタイム・パスコード》! 俺の場に《セキュリティー・トークン》1体を守備表示で特殊召喚!」

 

 牛尾の場に浮遊する監視カメラが1台現れる。

 

 セキュリティー・トークン 光属性 サイバース族 レベル4 DEF:2000

 

「魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》! このターン、もう一度通常召喚するぜ。チューナーモンスター《ヘル・セキュリティ》を召喚!」

 

 続けて牛尾の場に警棒とメガホンを持ち、頭にパトランプを乗せた小さな悪魔が現れる。

 

 ヘル・セキュリティ 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:100

 

「チューナー!? まさか……」

「そのまさかよぉ! レベル4《セキュリティー・トークン》に、レベル1《ヘル・セキュリティ》をチューニング!」

 

 ヘル・セキュリティが光輪へと姿を変え、セキュリティー・トークンを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「悪が蔓延るこの街を、守る男がここにあり! シンクロ召喚!」

 

 光の柱から現れたのは、バイクに跨る双頭の悪魔。爬虫類を思わせる二つの頭は奇声を上げ、大きな翼を広げながらバイクで走り出す。

 

「泣く子も黙る双子の野獣刑事! 《ヘル・ツイン・コップ》!」

 

 ヘル・ツイン・コップ 闇属性 悪魔族 レベル5 ATK:2200

 

「EXモンスターゾーンじゃなくてモンスターゾーンに……!」

「リンクモンスターのリンクマーカーが指し示すメインモンスターゾーンはEXモンスターゾーンと同じようにEXデッキのモンスターを呼び出せるのだ!」

「これがこの次元でのEXモンスターを展開する手段なのか! それにしてもS(シンクロ)モンスターまで使ってくるなんて!」

「装備魔法《デーモンの斧》を《ヘル・ツイン・コップ》に装備! 攻撃力を1000アップする! バトルだ!」

 

 ヘル・ツイン・コップ ATK:2200→3200

 

「攻撃力が!? ここは!」

 

 遊矢は前に向き直ると、攻撃を防ぐためのAカードへと手を伸ばす。

 

「オラァ!」

「うわっ!?」

 

 完全にAカードへ意識を向けていた遊矢は一気に間合いを詰めてきた牛尾に隙を突かれ、体当たりを受けてカードを手放してしまう。

 

「Aカードを止められるのがAカードだけだとでも思ったか? 俺から目を離してんじゃねぇ!」

「ひ、卑怯だぞ!」

「卑怯でもなんでもねぇ。これが”ライディング・デュエル”の世界よ! やるかやられるか! 教えてやるぜ! ヘル・ツイン・コップでスライハンド・マジシャンを攻撃!」

 

 ヘル・ツイン・コップが手に持った斧をコースに擦り付けながらスライハンド・マジシャンへと爆走し、斧で薙ぎ払って破壊する。

 

「スライハンド・マジシャン!?」

 

 遊矢 LP:3000→2300 手札:0→1

 

「ヘル・ツイン・コップのモンスター効果! 相手を戦闘破壊し墓地へ送った時、攻撃力をバトルフェイズ終了時まで800アップしてもう一度攻撃できるのだ! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに攻撃だぁ!」

 

 ヘル・ツイン・コップ ATK:3200→4000

 

 スライハンド・マジシャンを斬り捨てた勢いで前へ出ていたヘル・ツイン・コップがUターンし、今度はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを叩き斬る。

 

「うわぁ!? オッドアイズ!?」

 

 遊矢 LP:2300→800

 

「まあこんなもんだ! バトル終了!」

 

 ヘル・ツイン・コップ ATK:4000→3200

 

「ここでデスポリスの効果発動! モンスター1体をリリースし、場のカード1枚に警邏カウンターを1つ置く! デスポリス自身をリリースし、《ヘル・ツイン・コップ》にカウンターを乗せるぜ!」

 

 デスポリスはヘル・ツイン・コップに向かって敬礼し、そのまま消滅する。

 

 ヘル・ツイン・コップ 警邏カウンター:0→1

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

牛尾

LP:2100

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③ヘル・ツイン・コップ ATK:3200 警邏カウンター:1

魔法・罠

②セット

③デーモンの斧(装備:ヘル・ツイン・コップ)

④セット

 

「ふー、アドバンテージで圧倒したと思いきや、一気に切り込まれちゃったよ」

『だらしないねぇ、君が手こずる相手じゃないだろう?』

『そろそろ温まってきたころだろ? な!』

 

 ホッと一息つく遊矢に後ろから現れたユーリとユーゴが煽りを入れ、前に現れたユートが笑みを浮かべて腕を組んだ。

 

『そろそろ見せてやってもいいんじゃないか? ”お前の決闘”を』

「そうだな……お楽しみはこれからだ!」

 

 ニッと笑った遊矢は疾走するDホイールの上で立ち上がり、両腕を広げた。

 

「レディースエーンドジェントルメーン!!!」

「うおっ!? 何してんだあぶねぇ!?」

 

 唐突な遊矢の奇行に、前を走りながらチラリと後方を窺っていた牛尾はギョッとして振り返る。

 

「心配ご無用ミスター牛尾! これも私めの”エンタメ”でございます!」

「急にどうした!? まさかライディング・デュエルにビビッてどうかしちまったんじゃねぇだろうな!?」

「むしろワクワクしてきました! 私がプロ決闘者になってから初めてのエンタメデュエル! 存分にお魅せしましょう! 私のターン!」

 

 遊矢 手札:1→2

 

「罠カード《ディーラーズ・チョイス》! お互いのプレイヤーはデッキをシャッフルし、1枚ドロー! その後手札を1枚捨てる!」

 

 遊矢 手札:2→3→2 捨てたカード:EMスプリングース

 牛尾 手札:0→1→0 捨てたカード:ヘルウェイ・パトロール

 

「次はお馴染みP召喚! EXデッキから現れよ《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 最初に異空間の穴から飛び出したのはエースであるオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。3回目の召喚だが疲れもダメージも感じさせない雄々しい咆哮を上げる。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 ペンデュラム レベル7 ATK:2500

 

「またそいつかよ? いい加減見飽きたぜ」

「飽きさせなんてしませんよ! それではご覧いただきましょう! 二色の眼が魅せる大魔術の輝きを! 魔法カード《ペンデュラム・フュージョン》! 場とPゾーンのカードを使って融合召喚を行います!」

「Pゾーンのカードで融合召喚だぁ!?」

「EXモンスターゾーンの《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》とPゾーンの《EMスマイル・マジシャン》を融合!」

 

 遊矢の場に異空間の渦が現れると、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとスマイル・マジシャンが光となって渦に吸い込まれる。

 

「笑顔の伝道師よ、まばゆき光となりて龍の眼に今宿らん! 融合召喚!」

 

 遊矢が両掌を合わせた瞬間、渦の中から大きな金色の輪を背負ったペンデュラム・ドラゴンが現れる。頭部にも金色の輪を戴き、右目は義眼によって閉じられてしまっているがそれを補うかのように左目が輝く。

 

「出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「攻撃力3000? 何がくるかと思えば、まだ足りねぇじゃねぇか?」

「魔法カード《ペンデュラム・ホルト》! 自分のEXデッキに表側Pモンスターが3種類存在する場合、デッキから2枚ドローします!」

 

 遊矢 手札:0→2

 

 遊矢はドローしたカードを見て頷き笑う。そして明るい表情で牛尾へと振り返る。

 

「応援されれば勇気凛々! 《EMチア・モール》を通常召喚!」

 

 続けて飛び出したのはチアガールの恰好をした雌のモグラ。場に躍り出ると同時に応援の舞を披露する。

 

 EMチア・モール 地属性 獣族 ペンデュラム レベル2 ATK:600

 

「へんちくりんなモンスター出しやがって……それで足りたなんて言うのか?」

「そう、ミスター牛尾の言う通り足りません。何が足りないか、お解りですか?」

「そんなもん、攻撃力に決まってんじゃねぇか! 馬鹿に――――」

「今この場に足りないもの! それは”笑顔”です!」

「はぁ!? 何言ってんだお前?」

「エンタメとは、皆を”笑顔”にすること! それこそが私の目指す決闘です!お楽しみはこれからだ!」

 

 Dホイール上で立ち上がり、遊矢は1枚のカードを掲げる。遊矢にとっての”憧れ”の象徴にして”原点”。揺れる遊矢を何時だって奮い立たせてきた”魔法”のカード――――

 

「魔法カード《スマイル・ワールド》を発動します!」

 

 遊矢が発動したカードから”笑顔”が溢れ出す。それは場を縦横無尽に飛び回り、空間を埋め尽くすかのように浮かぶ。

 

「な、何だこりゃあ!?」

「スマイル・ワールドを発動したターン、場のモンスターの攻撃力は場のモンスターの数の100倍アップします!」

 

 空間に浮かぶ笑顔に感化され、EM達、ルーンアイズ、そしてヘル・ツイン・コップまで笑顔となる。

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3000→3400

 EMオオヤヤドカリ ATK:500→900

 EMチア・モール ATK:600→1000

 

 ヘル・ツイン・コップ ATK:3200→3600

 

「へ、ヘル・ツイン・コップ……なんつー顔してんだ。ブフッ!」

「ふふ! ミスター牛尾も楽しくなってきたところで、愛らしいチアガールの応援と行きましょう! EMチア・モールの効果発動! 元々の攻撃力よりも攻撃力が高いモンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップする! ルーンアイズを応援するんだ!」

 

 遊矢から指示を受けたチア・モールが可愛らしく踊ると、ルーンアイズは興奮したように咆哮を上げる。

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3400→4400

 

「ちぃ! そういうことかよ!」

「ここでオオヤヤドカリを攻撃表示に変更! 効果を使い、自身の攻撃力を600アップさせます!」

 

 EMオオヤヤドカリ DEF:2500→ATK:900→1500

 

「これで準備完了です! バトル! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでヘル・ツイン・コップを――――」

「甘いんだよ! 永続罠《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》! こいつがある限りレベル4以上のモンスターは攻撃できねぇ! ゴヨウだぁ~!」

 

 ルーンアイズが動き出そうとした瞬間、光の網が全体を覆い、ルーンアイズとオオヤヤドカリを捕らえる。チア・モールは網の隙間から抜け出し無事のようだ。

 

「ああ!? なんてことでしょう……ルーンアイズ達が捕まってしまいました!?」

「お巡りさんに楯突くからだ。このままゲームセットまでご同行願おうかね?」

「いやいやそうはいきませんよ? なんてったってルーンアイズはまだ融合召喚されたばかり、つまりまだ悪いことはしていないんですよ。これは冤罪、誤認逮捕です」

 

 遊矢がいやいやと首を振り腕でバッテンを作る。牛尾は付き合いきれないと言うかのように溜息をついた。

 

「ノってやっただけありがたいと思えよ。で、どうすんだ?」

「決まってます! これは冤罪なのですから、堂々と解放させてもらいますよ!」

「出来もしないことを……もう遊びは十分だろ? さっさと決闘を――――」

「さあ行きますよ! 奇跡の大脱出! 3、2、1――――」

 

 カウントダウンの最後に遊矢が指を鳴らすと、ルーンアイズから眩い閃光が放たれる。牛尾は思わず顔を背け、閃光が止んで再び向き直ると、網の中にはオオヤヤドカリのみが捕らえられていた。

 

「何だと!? ドラゴンは何処に――――」

 

 後方を見渡した後に前方を向くと、そこには疾走するルーンアイズと遊矢の姿があった。

 

「何ィ!? 何時の間に!?」

「ルーンアイズのモンスター効果! P召喚されたモンスターを素材に融合召喚したターン、このカードは相手のカード効果を受けないのです! さあバトル再開!」

 

 ルーンアイズが反転してヘル・ツイン・コップへと向き直ると、背中の輪の前に3つの光球を浮かべる。

 

「ルーンアイズでヘル・ツイン・コップを攻撃! 【シャイニーバースト】!」

 

 ルーンアイズが光球の一つから光線を放ち、ヘル・ツイン・コップへと命中させる。

 

「がぁぁ!? だがヘル・ツイン・コップには警邏カウンターがあるぜ! こいつはヘル・ツイン・コップの身代わりとなる!」

 

 牛尾 LP:2100→1300

 

「ならばもう一度! ルーンアイズの融合素材となった魔法使い族のレベルが5以上の場合、ルーンアイズはモンスターに3回まで攻撃できる! 【連撃のシャイニーバースト】!!」

 

 ルーンアイズが残り二つの光球に魔力を集中させ、一気に光線として撃ち出す。この一撃にはヘル・ツイン・コップも耐えられず、爆散してしまった。

 

「ぐわぁぁぁ!?」

 

 牛尾 LP:1300→500

 

「これで最後だ! チア・モールでダイレクト・アタック!」

「させるかよぉ! 罠カード《ピンポイント・ガード》! 相手の攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 墓地の《ヘルウェイ・パトロール》を特殊召喚!」

 

 チア・モールが牛尾に飛び掛かろうとした瞬間、バイクに乗った悪魔の警官が現れ、牛尾を庇う様に並走する。

 

 ヘルウェイ・パトロール 闇属性 悪魔族 レベル4 DEF:1200

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン破壊されねぇ! ルーンアイズの攻撃だって通さねぇぞ」

「くっ……バトル終了(削り切れなかった!)」

 

 後一歩のところまで牛尾を追い詰めた遊矢。しかし倒し切れず、LP800で低攻撃力のモンスター2体を晒すという大きな隙を見せてバトルを終えることになってしまった。

 

「(このままじゃ危ない! Aカードも……さっきから見ない。使い切ったのか)」

 

 Aデュエルを彩り支えるAカードも無限ではない。バラまかれた物を使い切ればそれまでである。便利ではあるが、それに頼り切っていては後々に響く事となるのだ。

 

「ここは……墓地の《EMスプリングース》の効果発動! 墓地のこのカードを除外することで自分のPゾーンの”魔術師”、”EM”、自分の場のPモンスターの中から2枚を手札に戻す! 場の《EMオオヤドカリ》と《EMチア・モール》を手札に!」

 

 遊矢が墓地からスプリングースのカードを取り除き、2枚のEMのカードを場から手札に戻すと、場の2体のEMが同時に消滅する。

 

 遊矢 手札:0→2

 

「そうだな、そうしねぇとお前自身がやられちまうかもしれねぇからな。賢いぜ坊主」

「くっ……これでターンエンド!」

 

遊矢

LP:800

手札:2

EXモンスター

②:ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:4400→4000

④:

メインモンスター

魔法・罠

③補給部隊

④セット

⑤RS:EMオッドアイズ・ユニコーン スケール8

 

「いや、面白れぇじゃねぇか坊主。仕事じゃなきゃもっと楽しみてぇところだが……俺も”決闘者”だ。容赦はしねぇぞ! 俺のターン!」

 

 牛尾 手札:0→1

 

「こういう時の引きってやつは残酷だぜぇ? 魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! 2枚ドロー!」

 

戻したカード

ヘル・セキュリティ

ライト・サーペント

魔神童

ヘル・ツイン・コップ

魔界の警邏課デスポリス

 

 牛尾 手札:0→2

 

「更に魔法カード《マジック・プランター》! 自分の場の永続罠を1枚墓地へ送り、2枚ドローする! 《グラヴィティ・バインド-超重力の網-》を墓地へ送り2枚ドロー!」

 

 牛尾 手札:1→3

 

 牛尾の場の超重力の網が消滅する。これで牛尾も高レベルモンスターでの戦闘が可能になった。

 

「(よかった。もし2体を戻していなかったら大変だったぞ……!)」

「助かった~なんて顔するんじゃねぇぞ? ここからだ! チューナーモンスター《ジュッテ・ナイト》を召喚!」

 

 牛尾の場に十手を持ち、提灯を背負った小さい岡っ引が現れる。

 

 ジュッテ・ナイト 地属性 戦士族 レベル2 ATK:800

 

「ジュッテ・ナイトのモンスター効果! 1ターンに1度だけ、相手の攻撃表示モンスターを守備表示に変更する!」

 

 ジュッテ・ナイトが十手から特殊な音波を放つと、それを受けたルーンアイズは勝手に防御体勢を取る。

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:4000→DEF:2000

 

「ルーンアイズが守備表示に!? そしてチューナーってことは……!」

「そのまさかよぉ! レベル4《ヘルウェイ・パトロール》にレベル2《ジュッテ・ナイト》をチューニング!」

 

 ジュッテ・ナイトが自身を2つの光輪へと変える。2つの光輪はヘルウェイ・パトロールを囲むと、4つの光、そして光の柱へと変化させる。

 

「ビリビリくるぜぇ……! シンクロ召喚!」

 

 光の柱の中から現れたのは歌舞伎役者のような姿をした大柄の岡っ引。縄の付いた十手を構え、ポーズを決める。

 

「出あえ! 《ゴヨウ・ガーディアン》!」

 

 ゴヨウ・ガーディアン 地属性 戦士族 レベル6 ATK:2800

 

「ここでSモンスター……しかもこのカードって!?」

 

 直接戦ったことはないが、シンクロ次元のセキュリティ隊員がこのモンスターを使用していたのを遊矢は見たことがあった。

 ゴヨウ・ガーディアン――――明らかに遊矢を苦しめた”ゴヨウ”シリーズの一体であり、厄介な能力を持っていることは疑いようもない。

 

「ここで墓地の《ヘルウェイ・パトロール》の効果発動! こいつを除外することで手札の攻撃力2000以下の悪魔族1体を特殊召喚できる! 2体目の《ヘルウェイ・パトロール》を特殊召喚!」

 

 続けて牛尾の場に先程のとは別のヘルウェイ・パトロールが現れる。

 

 ヘルウェイ・パトロール 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1600

 

「バトルだぁ! ゴヨウ・ガーディアンでルーンアイズを攻撃! 【ゴヨウ・ラリアット】!」

 

 ゴヨウ・ガーディアンが十手を先に付けた縄を放ると、十手がルーンアイズに命中し、粉々に粉砕してしまう。

 

 遊矢 手札:2→3

 

「ルーンアイズ!?」

「ここでゴヨウ・ガーディアンの効果発動! 戦闘で破壊し墓地へ送ったモンスターを俺様の場に守備表示で特殊召喚する! ウェルカムルーンアイズちゃぁん!」

 

 粉々になったルーンアイズが牛尾の場で再び形となり、縄で雁字搦めの状態で放置される。

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル8 DEF:2000

 

「ルーンアイズが……!?」

「これで終わりよぉ! ヘルウェイ・パトロールでダイレクトアタック!」

「くっ! 速攻魔法《スマイル・ユニバース》! EXデッキから表側Pモンスターを可能な限り特殊召喚する! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 迫りくるヘルウェイ・パトロールの前にオッドアイズが飛び出し、行く手を阻む。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 ペンデュラム レベル7 ATK:2500

 

「このカードで特殊召喚したモンスターの効果は無効となり、相手は特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力の合計分LPを回復する」

「ということは俺様のLPは2500回復するってか! ははぁはぁー! 甦る甦る!」

 

 牛尾 LP:500→3000

 

「――――が、これじゃヘルウェイ・パトロールの攻撃は通らねぇな。バトル終了! カードを伏せてターンエンド!」

 

牛尾

LP:3000

手札:0

EXモンスター

②:

④:ゴヨウ・ガーディアン ATK:2800

メインモンスター

②ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン DEF:2000

③ヘルウェイ・パトロール ATK:1600

魔法・罠

③セット

 

「強い……だけど、諦めるもんか! オレのターン!」

 

 遊矢 手札:3→4

 引いたカード:オッドアイズ・ドラゴン

 

「これって……そんな!? どうしてこのカードが!?」

 

 それはもう存在しないはずのカード。かつてのズァーク、そして遊矢の相棒であり、ズァークの力によって”ペンデュラム・ドラゴン”へと生まれ変わったはずの”オッドアイズ・ドラゴン”であった。

 

『おそらく……これは俺の推測だが』

 

 困惑する遊矢の前にユートが現れる。

 

『”悪魔”が俺達の中から離れたことが原因だと思う。”オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”は元々悪魔――――ズァークの力によって発現し、”オッドアイズ・ドラゴン”が変化したもの……だったな?』

「ああ」

『能力と”ペンデュラム”はお前の下に残されたが、大部分の影響は消え去ったんじゃないだろうか』

「どういうこと?」

『俺達は一つとなったが、”悪魔(ズァーク)”とは別れた。つまり、悪魔の力の顕現である”ペンデュラム・ドラゴン”とお前の象徴である”オッドアイズ・ドラゴン”も同じように引き離された……確証は無いが、そういうことじゃないか?』

「うーん、そう言われるとそうなのかな?」

 

 遊矢はカードに描かれた懐かしい相棒の姿を見つめる。

 

「ズァークにとっても、オレにとっても、全てはここから始まったんだよな……」

『そうだ! そして、またここから始まるんだ!』

「え?」

 

 今度はユーゴが姿を現す。

 

『色々あったけどよ、それはもう終わったんだ! リン――――柚子がいて、家族がいて、ライバル共がいる! もう引っ掻き回す野郎は何処にもいねぇ! 目指していいんだぜ! 最初からまた!』

「ユーゴ……」

『ここまで一緒にいて思ったけど、キミは本当に世話がやけるねぇ』

 

 今度はユーリが現れ、やれやれと首を振る。

 

『キミは僕で、僕はキミなんだから好きにやればいいのさ。迷う必要なんてない。敵なんていないんだから』

「ユーリ……オレはもう迷ったりなんかしないよ」

『そうかい? だったらさっさとあいつを倒すことだね』

「そう簡単にはいかないよ。あの人はただのセキュリティ隊員じゃない」

『ほらそれだ』

「え?」

 

 ユーリが下がると、ユートが入れ替わって遊矢の前に出る。

 

『遊矢、俺達はズァークという”一人の人間”だった……だがな、四人に分かれてからはその性質を分け合った”ズァークではない一人の人間”だったんだ。だからこそ分けられたものを独自に進化させ、モノにすることができた』

 

 3人はそれぞれ1枚のカードを取り出す。

 ユートの手には”ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン”。

 ユーゴの手には”クリスタルウイング・シンクロ・ドラゴン”。

 ユーリの手には”グリーディー・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン”。

 それぞれのエースの進化形態である。

 

『遊矢、ペンデュラムや覇王龍、お前が手にした力の大半はズァークによるものだ。ズァークの憎悪が潜んでいたのはお前の中であったから当然のことなのかもしれない……』

『だからと言って、僕を倒すほどのキミの中に”力”が無いなんてことは有り得ないよねぇ?』

『俺達は”一つ”だったんだからな! お前にだってあるんだ遊矢!』

「オレの”力”……」

 

 3人の言葉を受け遊矢は手元のオッドアイズ・ドラゴンへと視線を落とす。それは他の3枚と共鳴するかのように輝きを放ち始める。

 

『ユーゴでもユーリでも、俺でもズァークでもない。他の誰でもない”榊 遊矢”!』

『行きなよ。キミを止められる奴なんて何処にもいないんだから』

『進め進め! 駆け抜けろ! お前の決闘を見せてやれ!』

 

 輝きが最高潮に達すると、カードの絵とテキストが描き変わる。

 何時の日か、もうずっと昔のことの様に思える。舞網スタジアムでチャンピオンに追い詰められたあの時、同じようにカードが輝き変化した。”ペンデュラム”を手にした始まりの決闘――――

 

「そうか……また、始まるんだな……よぉぉしっ!」

 

 新たなる力を手にし、遊矢は駆け出す。

 

「《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》をリリース!」

「何ィ!? ここでアドバンス召喚か!?」

 

 牛尾が驚いて振り向く中、オッドアイズは光の中へと消える。

 

「このカードはレベル5以上のモンスター1体をリリースすることでアドバンス召喚できる!」

 

 光の中から飛び出したのはオッドアイズ・ドラゴンとそっくりな二色の眼を持つ赤き竜。違いは体が一回り大きいことと、大きな翼を持っていること。雄々しくも美しい咆哮と共に風を翼で巻き上げ、その”進化”を遂げた巨体を大地に下ろす。

 

「進化を促す二色の眼! その証たる大いなる翼を持って飛翔せよ! 《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》!!!」

 

 オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンの効果発動! アドバンス召喚に成功した場合、相手のモンスター1体を選んで破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える! 破壊するのは《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

「ルーンアイズの攻撃力は3000! そして俺の……やべぇ!?」

「行くぞオッドアイズ! ルーンアイズ、魔力を解き放て! 〈リアクション・ノヴァ〉!」

 

 オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンがルーンアイズに向かってブレスを放つと、それを受けたルーンアイズは反応したように魔力を解放させ、牛尾の場で大爆発を起こす。

 爆炎に包まれる牛尾の場に突っ込み、遊矢はオッドアイズと共に駆け抜けて煙の中から飛び出した。

 

「やったか……?」

 

 牛尾のLPは残り3000である。これが決まっていれば遊矢の勝ちであるが――――遊矢が振り向いた瞬間、牛尾も煙の中から飛び出してきた。

 

「永続罠《女神の加護》! LPを3000回復する! どうだまだ終わりじゃねぇぞ!」

 

 牛尾 LP:3000→6000→3000

 

 牛尾は凌いでいた。遊矢にとっては起死回生の一手が外れた形となったが、遊矢の表情は明るい。一点の曇りも無い”笑顔”であった。

 

「……変な野郎だ。逆転劇を止められたっていうのにヘラヘラしやがって」

「牛尾さん、オレは止まらないよ。家族と、仲間と、ライバル達と、オレのカード達……皆と一緒に進んでいく! 今もこれからも! だから……行くよ牛尾さん! バトル!」

「……面白れぇ! 来いや坊主! 突破できるもんならしてみろやぁ!」

 

 遊矢の宣言と同時にオッドアイズが飛び上がり、口に炎を蓄える。

 

「オッドアイズでゴヨウ・ガーディアンを攻撃! 【螺旋のストライク・フレイム】!」

 

 オッドアイズの口から放たれた螺旋状の炎がゴヨウ・ガーディアンを包み込み、焼き尽くす。

 

「うおぉ!? ……だが俺のLPはまだまだたっぷりとある! ヘルウェイ・パトロールを攻撃されても余裕だ! やはり突破なんて不可能なんだよ!」

 

 牛尾 LP:3000→2800

 

「オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンの効果発動! 戦闘でモンスターを破壊した時、手札・墓地からレベル5以上のモンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する! 墓地から《EMスライハンド・マジシャン》を特殊召喚!」

 

 オッドアイズが咆哮を上げると、その隣にスライハンド・マジシャンが現れ防御体勢をとる。

 

 EMスライハンド・マジシャン 光属性 魔法使い族 レベル8 DEF:2000

 

「そんな能力まであるのかよ!? だが守備表示、追撃はできねぇ! やはり突破は無理だ!」

「いいや牛尾さん。これでフィナーレだ!」

「何!?」

「バトルを終了し、スライハンド・マジシャンの効果発動! 手札を1枚捨てることで場の表側表示のカード1枚を破壊する!」

 

 遊矢 手札:2→1

 

「場の表側……あ!?」

「ミスター牛尾の”救いの女神”は、どうやら私にとっての”勝利の女神”だったようです! スライハンド・マジシャン!」

 

 ”女神の加護”は破格のLPをプレイヤーに与えてくれる。しかし場から離れた時、それと同等のLPをプレイヤーから奪い去ってしまう。スライハンド・マジシャンの投げたカードが女神の加護を切り裂き、爆発を起こす。

 

「ぐわぁぁぁーーーー!!?」

 

 牛尾 LP:2800→0

 

 決闘が終了し、RSVが消滅する。決闘の先を見据え、迷いなく駆け抜けた遊矢の勝利であった。

 牛尾のDホイールの強制停止装置が作動し、白煙を上げながら減速、コースの中心でエンジンが停止した。遊矢は反転し、牛尾の近くでDホイールを止める。二人は同時にヘルメットを脱ぎ、息を吐いた。

 

「かぁー! チクショウ! まさか負けちまうとはな」

「ありがとうございました。……オレ、逮捕されませんよね?」

 

 遊矢が不安そうに尋ねると、牛尾は豪快に笑って遊矢の背を叩いた。

 

「勝者を逮捕する権限なんざ俺にはねぇ! 勿論もう追いかけたりもしねぇよ。これも”決闘者の仁義”ってやつだ」

「よかった……」

「ただし! 犯罪を見つけたら容赦なく逮捕すっからな! 覚悟しておけよ!」

「ええ~!? しないよそんなこと!」

 

 二人で暫く笑い合った後、牛尾は改まって遊矢の前に立ち、懐から取り出した何かを遊矢に差し出す。

 

「こいつは俺に勝ったご褒美……まあお前のエンタメへのおひねりってやつだな。楽しかったぜ」

「これは?」

 

 見るとどうやらカードパックのようだ。表面には”リンクモンスターパック”と書かれている。

 

「それにはリンクモンスターが入ってる。これでちょっとはお前の”ペンデュラム”も動かしやすくなるんじゃねぇか?」

「リンクモンスター!? へぇー! これがオレのリンクモンスター……」

 

 遊矢はさっそくパックを開封し、未知なる世界のモンスターに対して目を輝かせる。

 

「……こうしてみると、本当にただの坊主にしか見えないんだがな? 何モンだ?」

「榊 遊矢! 今日プロ決闘者になったばかりの若輩者ですが、どうか応援をよろしくお願いいたします!」

 

 遊矢はカードを仕舞うと、紳士の様に牛尾へと礼をする。

 

「おう、お前の活躍楽しみにしてるぜ。……それじゃ、とっとと行くことだ。俺以外のセキュリティもうろうろしてっからな。また追いかけまわされるぞ」

「いい!? 解った! ありがとう牛尾さん!」

 

 そう言って遊矢はDホイールに跨り、廃墟の中を駆け抜けて消えていった。牛尾はそれを見送りながら無線機を取り出す。

 

「任務完了。これで役目を終える」

 

 そう言った瞬間、牛尾の姿は消えていた。

 再び始まった遊矢の旅。彼を待ち受けるは”人々の笑顔の世界”か、それとも”悪魔が笑う地獄”か――――




遊矢の相手は皆大好き牛尾さんでした。
デッキテーマは”牛尾さんオールスター+デスポリス”です。
といいながらズムウォルト忘れてた(汗)



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藤木 遊作/Playmaker

プロローグ第六弾”藤木 遊作/Playmaker”です。

一応タグにも付けときますが、ヴレインズにのみ原作改変があります。
IFルートと言った感じですが、ご注意ください。


 

 

 

Playmakey……これがお前の目指した決闘か――――

 

さらばだッ! 我が最強の宿敵”Playmakey”!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ草薙さん?」

 

 ネットワークシステムが発達した都市”デンシティ”。その中央広場にて営業しているホットドック屋”Café Nagi”の移動販売車内にて、高校生でありながら凄腕のハッカーである決闘者”藤木 遊作”がモニターを食い入るように見つめている青年の顔を覗き込む。

 

『あーダメダメ遊作! まだ高校生には早いって~! 草薙ちゃんもこんなところでぇ~……イヤン』

 

 遊作が左腕に装着している旧型決闘盤のモニター部からニュッと姿を現したのは謎の人型AIである”Ai”。”鴻上博士”が創り出した意思を持つAI”イグニス”の一人である闇のイグニスにして、複雑かつ深い因縁で結ばれた遊作のパートナーAIでもある。

 Aiがふざけた口調でからかうと青年――――”草薙 翔一”はようやくモニターから目を離し、ジロリとAiを睨む。

 

「誤解を招くことを言うな。ほらここAi、これを見てくれ」

 

 草薙が見ていたのは”サイバース世界”の跡地だった。

 光のイグニス”ライトニング”が仕掛けた人間とイグニスとの戦い、そしてイグニス同士の内乱でもある”イグニス戦争”。その戦いの果て、次世代型イグニスである強敵”ボーマン”を打倒した遊作達は戦いによって荒廃したネットワークの修復と安定に奔走していた。

 ライトニングによって滅ぼされたサイバース世界の復興は同族を失ったAiにとっての悲願であり、それを成しとげ発展させることが消滅したイグニス達への手向けであると信じている。それを助ける為に草薙はモニター上から崩壊したサイバース世界を探索し、状態を確認していたのだ。

 

『あん? これは……ゲートか? なんでこんなもんが? しかもこれなんて書いてあんの?』

 

 草薙が示した場所はサイバース世界都市部廃墟の中心。そこに大きな門がそびえ立ち、謎の文字が扉に書かれている。

 

「お前でも解らないということはイグニス言語でもないな。スキャンしても反応無し。……本当に心当たりないのか?」

『ないな~……でもここは”ライトニングのエリア”だからなんかあっても不思議じゃないと思うのはAiちゃんだけでしょ~か?』

「ライトニングの!? 何でそれをもっと早く言わない!?」

『AGNエリア001”光の都市”って渡したマップにも書いといたぜ? 解ってると思ってた~』

 

 とぼけるような態度のAiに苦笑する草薙は再び画面に向き直る。

 イグニス戦争どころか10年近く前から暗躍していたライトニング。Aiの言う通り何を隠していても不思議ではない。早急に対処する必要があるだろう。

 

「……遊作、どうする?」

「行こう」

『ワオ即答。もっと慎重にならなくていいのかよ?』

 

 Aiの言葉に草薙も頷き、遊作へと向き直る。

 

「遊作、いっそのことこのサイバース世界はこのまま封印、もしくは削除してしまっても問題は無い。時間は掛かるがAiが入ればまた1からサイバース世界は作れるだろう」

「理由は3つ。一つは得られるデータは少しでも集めておきたい。まだ調べ終わっていないエリアは多い。サイバース世界を1から構築するなら尚更だ。二つ目はあれがライトニング由来の物であるならば放っておくわけにはいかない。罠であろうが調べないわけにはいかない。3つ目……下手をすれば、あれは罠どころのものではないかもしれない」

『え? どゆこと?』

「ロボッピの中に残っていた映像を思い出せ」

 

  ロボッピ――――藤木宅の家電AIロボットの中に残された映像とは、ロボッピが巨大な扉を開いたことで中からAiの膨大なデータの奔流が飛び出すというもの。これはロボッピの中に隠されていたAiのバックアップデータが解放されたことを意味している。これによってAiはイグニス戦争最終決戦時にて九死に一生を得る事となった。

 

『あーあれね。あれは我ながら危ない――――ッ!?』

 

 Aiは何かに気づいた様に顔をしかめた。草薙も少し遅れてその意味に気づく。

 

「遊作! まさかお前、あれが”ライトニングのバックアップ”と考えているのか!?」

「……Aiが考え付く事だ。ライトニングが考えていたっておかしくはない」

『ちょっとどういう意味それ! ……でも、あれは結構な賭けだったんだぜ? あいつならまずそんな事態にならないように動くような……でも……うーん、あいつの考えって昔から解んねぇよ』

 

 Aiが頭を抱えて唸る中、遊作は遠くを見つめながら更なる考えを巡らせる。

 

「……ライトニング……ではない可能性もある」

『……”ボーマン”!? 草薙! 調べに行くしかねぇ!』

「……確かに、時限式……または削除行為自体がトリガーの可能性だってある。考え出したらキリがない。調べるしかないな……尊がいたら心強かったんだが」

 

 尊――――”穂村 尊”こと”Soulburner”は遊作と同じ”ロスト事件”の被害者であり、凄腕の決闘者。イグニス戦争を共に戦った頼もしい仲間であるのだが、現在は田舎に帰省していてデンシティには不在である。

 

「俺とAiで行く。草薙さんは何かあった時のバックアップを頼む」

「任せろ遊作、頼んだぞ! Ai、サイバース世界へ直接ログインできるようにリンクしてくれ」

『お~い了解!』

 

 遊作は車内の専用ログインスペースへと入り、決闘盤を構える。

 

「イントゥザヴレインズ!」

 

 ログインキーワードを唱えると遊作の精神はデータとなり、姿を変えて電脳世界へと飛び込んでいった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

『よぉし! 久々の電脳空間だな”Playmaker”! ”リンクヴレインズ”が閉鎖したから仕方ないとはいえ、鈍ってないよな? ん? ん?』

「黙れ、辺りを警戒しろ。怪しいものがないか探せ」

『へぇ~い……』

 

 Playmaker――――電脳空間での”仮の姿(アバター)”へと変わった遊作は電脳空間を自在に飛び回ることができる乗り物”Dボード”に乗り、Aiと共に荒廃したサイバース世界を見下ろした。

 

『……よくもまあここまでやってくれたもんだな。皆で頑張って創ったって言うのによ』

 

 サイバース世界はAiとライトニングを含めた6人のイグニス達で創り上げた世界である。Aiはお世辞にも頑張っていたとは言い難いが、サイバース世界によってAIの発展と安寧が創り出されることをイグニス達は信じていた。それがまさか、リーダーと頼り慕っていた者の”コンプレックス”によって崩壊させられるとは、誰も計算できなかっただろう。

 

「……あそこか」

『おう、近づいてくれ』

 

 PlaymakerはDボードを降下させ、地に降り立つ。目の前には巨大な扉。建物の入り口という訳ではなく、扉だけが廃墟の中心にそびえ立っている。

 

「どうだ?」

『……何だこりゃ? 何も感じねぇ……』

「何?」

『プログラムだとかデータならそれだって解るんだが、解らねぇんだ。そこに扉があるってのは視覚情報で解る。だけど目の前のこれはデータじゃねぇ。こんなのは初めてだ』

 

 困惑するAi。Playmakerは扉を凝視した後、近づいて扉に触れようと手を伸ばす。

 

『Playmaker! 気を付けろ――――うわっ!?』

 

 手で触れた瞬間、扉が開いて眩い光が溢れ出す。Playmakerが臨戦態勢を取った瞬間、扉の奥から声が響き渡った。

 

 

 

おお掛かった! お主決闘者か!?

 

 

 

「誰だ!?」

 

 

 

強いのか? 強い決闘者か?

 

 

 

「この扉は貴様が!? 何処にいる!」

 

 

 

この際なんでもええ! 今は一人でも決闘者が必要なんじゃ! こっち来い!

 

 

 

 

「くっ!? うおお……!」

 

 光がPlaymakerを包み込み、扉の中へと引きずり込む。完全に扉の中へと入った瞬間、扉は閉じられてしまった。

 突然の事態に呆気にとられていた草薙。我に返るとモニターの前で必死に呼びかける。

 

「遊作!? Ai!? 返事をしろ! 位置情報が消えている!? どうなっているんだ!?」

 

 

 

 * * *

 

 

 

遊作……藤木 遊作……

 

 

 

ロスト事件……アンノウン……復讐者……Playmaker――――

 

 

 

招かれざる者よ……我が試練にてその力を示せ!

 

 

 

 

 

 

『――――ker――――Play――――』

「う……」

『Playmaker! しっかりしろ!』

 

 Aiの呼びかけにより意識を取り戻すPlaymaker。立ち上がって辺りを見渡すと、そこは石造りの城の上であることが分かる。

 

「何だここは?」

『知らねぇ。気づいたらこんなとこに……ネットワークが遮断されてるな。ログアウトもできねぇ。どっかのサーバ内に閉じ込められたか? ……にしても本当に何だこりゃ? ファンタジーか?』

 

 城の上から見渡せるのは何処までも広がる木々の群れ。”森に囲まれた城”とはまさに中世を舞台にした”ファンタジーRPG”の世界である。

 

「待っていたぞ挑戦者!」

 

 突然聞こえてきた迫力のある声。声にPlaymakerが振り返ると城の中から一人の厳つい男が歩いてくる。

 

「何者だ?」

『うわ何だありゃ? ”Go鬼塚”の親戚か何か?』

 

 日の下に現れたのは体格に見合った凄まじい筋肉の持ち主。厳つい見た目を活かす派手なメイクと三本角のような紫色の髪型。まさに”怪物”のような姿の大男であった。左腕には見たことのない形をした決闘盤が装着されている。デッキが挿入されていることから旧式の決闘盤のようだ。

 

「俺の名は”ストロング石島”! このエリアを統べるチャンピオンだ!」

『うへぇ~名前といいチャンピオンといいマジでそっくりだな。もしかしてお兄さん? 名字違うからもしや叔父さん――――』

「黙れ。……お前があの扉をサイバース世界に置いたのか? 何故俺達をここへ連れてきた?」

「何を言っている? 俺の役目はこの世界に来たものをチャンピオンとして迎え撃つだけだ! さあ決闘盤を構えろ!」

 

 石島は構えを取ると決闘盤からRSVのプレートを展開させる。

 

『はぁ~問答無用で決闘ですかよっと。どうするよPlaymaker様?』

「俺は挑戦者ではない。何故ここに連れてこられたか知りたいだけだ」

「さっきからごちゃごちゃと! この世界の掟は一つ! 決闘の勝者が全てを得る! ……ここまで言ったからにはもう解るな? それともこの俺を前に臆したか!」

「……いいだろう、決闘だ。正し、3つの条件を呑んでもらう」

 

 いきり立つ石島に向かってPlaymakerは3本の指を掲げる。

 

「一つ、俺が勝ったらここについてお前が知っていることを喋ってもらう。二つ、ここと外を繋ぐ回線を開け。これも俺が勝ったらだ。三つ、時間を掛けたくない。決闘は”スピード・デュエル”で行う」

「随分と勝手な……だが俺はチャンピオン! どんな条件でも受けて立ってやる! 来い!」

 

 石島はどこからともなくDボードを呼び寄せると、それに飛び乗って空中へと飛び出す。 PlaymakerもDボードを呼び寄せて飛び乗り石島を追う。

 

「順番は譲ってやる! 好きな方を選べ!」

「ならば後攻をもらう!」

 

 Playmakerは石島を追いかける形のままDボードを安定させ、同時に決闘盤のプレートを展開する。

 

 

「「 デュエル!!! 」」

 

 

 Playmakerとストロング石島の決闘が始まった。

 AiはPlaymakerの決闘盤から身を乗り出し、チラリと石島を窺う。

 

『きっと”剛鬼”デッキだ! 厳つい戦士族が飛び出すぜ!』

「いい加減奴とGo鬼塚を重ねるのを止めろ」

「俺のターン! 魔法カード《手札抹殺》を発動! お互いに手札を全て捨て、捨てた枚数だけドローする!」

 

ストロング石島が捨てたカード

バーバリアン1号

バーバリアン2号

仁王立ち

 

Playmakerが捨てたカード

ドットスケーパー

レイテンシ

コード・ジェネレーター

サイバネット・フュージョン

 

「墓地に送られた《ドットスケーパー》の効果発動! このカードを特殊召喚する!」

 

 Playmakerの場に小さく細かい正方形のブロックで構成された電脳生物が現れる。

 

 ドットスケーパー 地属性 サイバース族 レベル1 DEF:2100

 

「永続魔法《冥界の宝札》を発動! そして通常魔法《蛮族の狂宴LV5》! 手札・墓地からレベル5の戦士族を2体まで効果を無効にして特殊召喚する! 墓地より《バーバリアン1号》、《バーバリアン2号》を特殊召喚!」

 

 石島の場にそれぞれ赤と黄色の体色を持った蛮族の兄弟戦士が現れる。

 

 バーバリアン1号 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1550

 バーバリアン2号 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1800

 

『でたー! 剛鬼――――って、随分と雰囲気変わったな? つーか時代違う? 叔父さんというよりもご先祖様だったのか』

「2体のバーバリアンをリリース! 密林の奥地から巨木をなぎ倒し、現れるがいい! 未開の王国に君臨する蛮族の王! 《バーバリアン・キング》!」

 

 バーバリアン兄弟が光となって消えると、城を囲っている森の中から巨大なバーバリアンが姿を現す。その全長はPlaymaker達が立っていた城に迫るほど。大きすぎるが故にDボードに追走するわけにはいかず、石島とPlaymakerはバーバリアン・キングを中心に周回する。

 

 バーバリアン・キング 地属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

『ゲェーーーー!? デカ過ぎだろ!? スケールだけなら子孫よりも上だ! どうするよPlay――――』

「黙れ」

『ハイ』

「永続魔法《冥界の宝札》の効果! 自分が2体以上のリリースによるアドバンス召喚に成功した場合、2枚ドローする!」

 

 ストロング石島 手札:0→2

 

「永続魔法《アドバンス・ゾーン》! そして通常魔法《招来の対価》発動! これで俺はターンを終了! ここで発動した2枚の魔法の効果が発揮される! アドバンス・ゾーンの効果により、2体以上のリリースによるアドバンス召喚に成功した俺はカードを1枚ドロー! そして招来の対価の効果により、2体以上のリリースを行った俺は墓地のモンスター2体を選んで手札に加える! バーバリアン2体を手札に!」

 

 ストロング石島 手札:0→1→3

 

ストロング石島

LP:4000

手札:3

EXモンスター

①:

③:

メインモンスター

①:

②:

③:バーバリアン・キング

魔法・罠

①:冥界の宝札

②:アドバンス・ゾーン

③:

 

「俺のターン!」

 

 Playmaker 手札:4→5

 

「カードを2枚セット! 《サイバース・ガジェット》を召喚!」

 

 Playmakerの場に決闘盤のような端末を左腕に装着したロボットが現れる。

 

 サイバース・ガジェット 光属性 サイバース族 レベル4 ATK:1400

 

「サイバース・ガジェットの効果発動! 墓地のレベル2以下のモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚する! 墓地のレベル1《レイテンシ》を特殊召喚!」

 

 続けて頭上にディスクを浮かべ、手に大きな砂時計を持った電脳世界の天使が現れる。

 

 レイテンシ 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 

「現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

 Playmakerが空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”効果モンスター2体以上”! 《ドットスケーパー》、《サイバース・ガジェット》、《レイテンシ》の3体をリンクマーカーにセット!」

 

 Playmakerの場の3体が光の風となって駆け抜け、アローヘッド内の”上・左下・右下”に位置する3つのリンクマーカーへと飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯したアローヘッドが異空間のゲートへと変わり、そのゲートの中から大剣を担ぎ青い鎧を纏った紫の剣士が飛び出す。これこそがPlaymakerのエースモンスターにして”始まりと終わり”を告げる闇剣士――――

 

「現れろLINK-3《デコード・トーカー》!」

 

 デコード・トーカー 闇属性 サイバース族 LINK-3(上、左下、右下) ATK:2300

 リンク先:バーバリアン・キング(上)

 

「場から墓地へ送られたサイバース・ガジェットの効果発動! 《ガジェット・トークン》1体を特殊召喚する!」

 

 デコード・トーカーに続いてサイバース・ガジェットの頭部が場に現れる。

 

 ガジェット・トークン 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 デコード・トーカーリンク先:バーバリアン・キング(上) ガジェット・トークン(左下)

 

「再び現れろ、未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル1モンスター1体”! レベル1の《ガジェット・トークン》をリンクマーカーにセット!」

 

 Playmakerの場に再びアローヘッドが現れると、ガジェット・トークンが光の風となってアローヘッド内の”下”に位置するリンクマーカーに飛び込みマーカーを点灯させる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-1《リンクリボー》!」

 

 アローヘッドがゲートとなり、中からカプセルのような物体が飛び出す。その物体にはアンテナと顔と足が付いており、可愛らしく鳴き声を上げる。

 

『クリクリンク~!』

『おっしゃ! 役に立てよリンクリボー!』

 

 リンクリボー 闇属性 サイバース族 LINK-1(下) ATK:300

 デコード・トーカーリンク先:バーバリアン・キング(上) リンクリボー(左下)

 

「リンク召喚か……だがその程度のモンスターではバーバリアン・キングの足元にも及ばん!」

『だったらジャンプして頭の上まで行けばいいだろ! ほれデコード・トーカー! Aiちゃんフラーイ!』

 

 Aiが決闘盤からジャンプしてPlaymakerの頭上まで飛び上がると、デコード・トーカーも真似をするかのように跳躍してバーバリアン・キングの頭上へと迫る。

 

「デコード・トーカーのモンスター効果! このカードの攻撃力はリンク先のモンスター1体につき500アップする! 〈パワーインテグレーション〉!」

『デコード・トーカーのリンク先にはバーバリアンとリンクリボー! ということは~?』

 

 デコード・トーカー ATK:2300→3300

 

「バーバリアン・キングを上回るだと!?」

「バトル! デコード・トーカーでバーバリアン・キングを攻撃! 【デコード・エンド】!」

 

 頭上へと到達したデコード・トーカーは大剣を振り上げ、真っ向からバーバリアン・キングを斬り付ける。頭上から足元まで一気に斬り下げられたバーバリアン・キングは断末魔を上げる間もなく真っ二つとなって消滅してしまった。

 

「ぬうう……!?」

 

 ストロング石島 LP:4000→3700

 

「リンクリボーでダイレクトアタック!」

『よしリンクリボー! お前はあいつを真っ二つにしてやれ!』

『クリクリンク~!!!』

 

 リンクリボーは臆することなく石島に向かって体当たりを放つが、岩のような筋肉の前では歯が立たず跳ね返されてしまった。

 

『クリ~!?』

『まあダメージを与えただけよしとするか……』

 

 ストロング石島 LP:3700→3400

 

「ターンエンド!」

 

Playmaker

LP:4000

手札:2

EXモンスター

①: 

③: デコード・トーカー リンク状態:リンクリボー(左下) ATK:3300→2800

メインモンスター

①:

②:リンクリボー ATK:300

③:

魔法・罠

①:セット

②:セット

③:

 

「バーバリアン・キングを倒すとは中々の腕の様だな。俺に挑む資格はあったということか。俺のターン!」

 

 ストロング石島 手札:3→4

 

「魔法カード《魔法石の採掘》! 手札を2枚捨て墓地の魔法カード1枚を手札に加える! 手札のバーバリアン2枚を捨て、《蛮族の狂宴LV5》を手札に! そして発動! 墓地に捨てたバーバリアン2体を特殊召喚! そしてリリース!」

 

 石島の場にバーバリアン兄弟が再び現れて光の中へと消えると、光からサソリの尻尾とコウモリの羽を生やした機械のライオンが飛び出す。

 

「アドバンス召喚! レベル8《モザイク・マンティコア》!」

 

 モザイク・マンティコア 地属性 獣族 レベル8 ATK:2800

 

「2体以上をリリースしたアドバンス召喚に成功したことにより冥界の宝札の効果を発動する!」

 

 ストロング石島 手札:0→2

 

『あ、今度はしっかりデコード・トーカーのリンク先から位置をずらしてやがる! リボルバーみたいなことしやがって!』

「魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》! このターン俺はもう一度通常召喚できる! 《レスキューラビット》を召喚!」

 

 石島の場に安全ヘルメットと保護ゴーグルを被り、首に無線機をぶら下げたウサギが現れる。

 

 レスキューラビット 地属性 獣族 レベル4 ATK:300

 

『あら可愛い。そんなモンスター持ってたのね。似合わないにも程が――――』

「レスキューラビットを除外し効果発動! デッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する! 《暗黒の狂犬》2体を特殊召喚!」

 

 レスキューラビットが消滅すると石島の場に狂暴な姿をした犬が2体現れる。

 

 暗黒の狂犬×2 闇属性 獣族 レベル4 ATK:1900

 

『ぎゃーーー!? 可愛いウサギちゃんが怖いワンちゃんに!? もしやここからさらに怖い最上級モンスターに……ってそりゃないわな。もう手札も召喚権も無いし』

「奴の狙いはそうじゃない」

『へ?』

「同じレベルのモンスターが2体……」

「レベル4の《暗黒の狂犬》2体でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!」

 

 暗黒の狂犬2体が紫の光となって飛び上がると、石島の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「エクシーズ召喚! ランク4《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》!」

 

 渦の中から現れたのは巨大なダイヤモンドの結晶体。これは”No.”のニュートラル体であり、ダイヤモンドの下部を砕いて本体が現れる。

 

『何だこりゃ……カニ?』

 

 Aiの言う通り姿を現したのは巨大な青い蟹。ニュートラル体であったダイヤモンドの結晶を背負い、左のハサミには自身のナンバーである”52”の数字が刻まれている。

 

  No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング 地属性 岩石族 ランク4 ATK:0 ORU:2

 

「やはりXモンスターか……」

『Playmaker! アイツヤバイぞ!』

「あのXモンスターの事か? 具体的に話せ」

『い、いや……具体的にって言われても……俺にもよく解らん……』

「何?」

『何か……めっちゃこっち見られてるような気がして……背筋がさみぃよ』

 

 Playmakerはダイヤモンド・クラブ・キングを見るが、Aiどころかこちらにすら視線を向けていない。辺りを見渡すが別に視線を感じて悪寒が走るということもない。

 

『俺は上手いことは言えねぇけど、俺の”本能”が言ってるんだ! アイツはヤバイ! 早く倒しちまった方がいい!』

 

 この二人は知る由もないが、”No.”は人の精神に干渉し暴走、またはコントロールする力を持つ特殊なカード。人間が創り出した高度な精神データ体である”イグニス”はその影響を強く受けてしまうようだ。AiはNo.から漏れ出している対戦相手には影響しない程度の力の余波を敏感に察知してしまっているのである。

 

「ククク……”拾い物”を使うのはどうかと思ったが、チャンピオンに相応しい強力なカードではないか! それに何故かフフッ……とても気分がいい!」

 

 興奮した様に呼吸を荒げる石島。その右腕に”52”の数字が浮かび上がる。

 

「行くぞ! ダイヤモンド・クラブ・キングの効果発動! ORUを1つ使い、ターン終了時まで守備力を0にし攻撃力を3000にする!」

 

 ダイヤモンド・クラブ・キングがORUを1つ食らうと興奮した様に体を揺らし、口からブクブクと泡を吹きだす。

 

  No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング ATK:0→3000 ORU:2→1

 

「バトル! まずはザコを蹴散らす! モザイク・マンティコアでリンクリボーを攻撃!」

「リンクリボーの効果発動! このカードをリリースすることで攻撃モンスターの攻撃力をターン終了時まで0にする!」

 

 動き出そうとしたモザイク・マンティコアに向かってリンクリボーが光線を放つと、モザイク・マンティコアは脱力して動かなくなり、リンクリボーはエネルギーを使い果たして消滅する。

 

 モザイク・マンティコア ATK:2800→0

 デコード・トーカー ATK:2800→2300

 

「小賢しい! ダイヤモンド・クラブ・キングでデコード・トーカーを攻撃!」

 

  ダイヤモンド・クラブ・キングが口から大量の泡を吹きだしてデコード・トーカーへと浴びせる。泡を浴びたデコード・トーカーの体は急激に溶け出し、跡形もなく消滅してしまった。

 

「くっ! 確かにパワーは凄まじいが、このターンだけだ」

 

 Playmaker LP:4000→3300

 

「フン! ”No.”に隙など無い! ダイヤモンド・クラブ・キングはバトルフェイズ終了後に守備表示となる!」

 

 敵が跡形もなく消え去ったのを確認すると、ダイヤモンド・クラブ・キングは体をニュートラル体へと変形させる。

 

  No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング ATK:3000→DEF:0

 

「ターンエンド! この瞬間永続魔法《アドバンス・ゾーン》の効果発動! 2体以上をアドバンス召喚のリリースに使用したため1枚ドロー! さらに相手の場のセットカード1枚を破壊できる! 右のセットカードを破壊だ!」

 

 ストロング石島 手札:0→1

 

破壊されたカード

リンク・リスタート

 

ストロング石島

LP:3400

手札:1

EXモンスター

①:No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング DEF:0→3000 ORU:1

③:

メインモンスター

①:

②:モザイク・マンティコア ATK:0→2800

③:

魔法・罠

①:冥界の宝札

②:アドバンス・ゾーン

③:

 

『くっそ守備力3000かよ!? 最上級モンスターもいるし、やべぇぞPlaymaker!』

「問題ない。あのXモンスターが脅威だというのも解った。反撃するぞ! 俺のターン!」

 

 Playmaker 手札:2→3

 

「《ドラコネット》を召喚!」

 

 Playmakerの場に小さな竜のような姿をした電脳生物が現れる。

 

 ドラコネット 闇属性 サイバース族 レベル3 ATK:1400

 

「ドラコネットの効果発動! 召喚に成功した時、手札・デッキからレベル2以下の通常モンスター1体を守備表示で特殊召喚する! デッキから《ビットロン》を特殊召喚!」

 

 続けてPlaymakerの場に小さな白い電脳生物が現れる。

 

 ビットロン 地属性 サイバース族 レベル2 DEF:2000

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”サイバース族2体”! 《ドラコネット》と《ビットロン》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”下、右下”に位置するリンクマーカーにサイバース達が光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-2《サイバース・ウィキッド》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのはローブを纏い杖を手に持った魔法使いのような姿をした少年。何か悪戯を企んでいるかのような笑みを浮かべ場に降り立つ。

 

 サイバース・ウィキッド 闇属性 サイバース族 LINK-2(下、右下) ATK:800

 

「自分の場にサイバース族が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる! 《バックアップ・セクレタリー》を特殊召喚!」

 

 続けて場に現れたのはゴーグルを装着した女性秘書。手に持った端末を構えサイバース・ウィキッドの背後に降り立つ。

 

 バックアップ・セクレタリー 光属性 サイバース族 レベル3 ATK:1200

 サイバース・ウィキッドリンク先:バックアップ・セクレタリー(下)

 

「サイバース・ウィキッドの効果発動! このカードのリンク先にモンスターが特殊召喚された場合、墓地のサイバース族1体を除外することでデッキからサイバース族チューナー1体を手札に加える! 墓地の《ドットスケーパー》を除外しデッキから《サイバース・シンクロン》を手札に!」

 

 Playmaker 手札:1→2

 

「除外した《ドットスケーパー》の効果発動! このカードを特殊召喚する!」

 

 Playmakerの場に再びドットスケーパーが舞い戻る。

 

 ドットスケーパー 地属性 サイバース族 レベル1 DEF:2100

 

「再び現れろ、未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”効果モンスター2体以上”! LINK-2の《サイバース・ウィキッド》と《バックアップ・セクレタリー》の2体をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上、下、右”に位置するリンクマーカーに分裂して2体となったサイバース・ウィキッドとバックアップ・セクレタリーが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から姿を現したのは橙色の鎧を身に纏ったサイバースの戦士。これこそが”変化と終わり”を告げる大地の銃士――――

 

「現れろLINK-3! 《トランスコード・トーカー》!」

 

 トランスコード・トーカー 地属性 サイバース族 LINK-3(上、右、下) ATK:2300

 

「トランスコード・トーカーの効果発動! 墓地のLINK-3以下のサイバース族リンクモンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚する! 戻れ《デコード・トーカー》!」

 

 トランスコード・トーカーの背後にデコード・トーカーが現れ、トランスコード・トーカーと共に気合に満ちた掛け声を上げる。

 

 デコード・トーカー 闇属性 サイバース族 LINK-3(上、左下、右下) ATK:2300→2800

 相互リンク:デコード・トーカー(上)↔トランスコード・トーカー(下)

 

「トランスコード・トーカーの更なる効果! このカードが相互リンク状態の場合、このカードと相互リンク先の攻撃力を500アップし、更に相手の効果対象にならない!」

 

 トランスコード・トーカー ATK:2300→2800

 デコード・トーカー ATK:2800→3300

 

『よっしゃー! これで攻撃力3300! 蟹野郎を上回ったぜ!』

「カードを伏せバトル! デコード・トーカーでダイヤモンド・クラブ・キングを攻撃! 【デコード・エンド】!」

 

 デコード・トーカーが大剣を振りかぶって跳躍し、ダイヤモンド・クラブ・キングに向かって振り下ろす――――が、大剣はダイヤモンドの甲羅によって受け止められてしまった。

 

「何!?」

『おい! こっちの攻撃力の方が守備力より上じゃねぇか! なんでだ!?』

「馬鹿め言ったはずだ! ”No.に隙など無い”と! No.はNo.でなければ戦闘破壊できないのだ!」

『何だって!? No.なんて俺達は持ってないし、それじゃ実質戦闘破壊できないのと同じだぜ!? ああ~どうすんだPlaymaker様~!』

「……トランスコード・トーカーでモザイク・マンティコアを――――」

 

 トランスコード・トーカーが背部のアーマーパーツを銃に変形させモザイク・マンティコアに狙いを付けた瞬間、ダイヤモンド・クラブ・キングがその照準の中に割り込む。

 

「そうはさせん! 墓地から罠カード《仁王立ち》を除外して効果発動! このターン、相手は俺が対象として選択したモンスター以外を攻撃できない! 選択するのは《No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング》!」

「……これでターンを終了する」

『ええ~!? 何とかできないのかよ!?』

 

Playmaker

LP:3300

手札:1

EXモンスター

①:(No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング DEF:3000)

③:トランスコード・トーカー リンク先:デコード・トーカー(下) ATK:2800

メインモンスター

①:

②:ドットスケーパー DEF:2100

③:デコード・トーカー リンク先:トランスコード・トーカー(上) ATK:3300

魔法・罠

①:セット

②:セット

③:

 

「手も足も出ないようだな! このまま踏みつぶしてくれる! 俺のターン!」

 

 ストロング石島 手札:1→2

 

「スタンバイフェイズ時にモザイク・マンティコアの効果発動! アドバンス召喚の素材となったモンスターを可能な限り特殊召喚する! ただし効果は無効となり、攻撃宣言できない! 素材となったバーバリアン2体を特殊召喚!」

 

 モザイク・マンティコアが咆哮を上げるとバーバリアン兄弟が現れ、モザイク・マンティコアを挟むように場へと降り立つ。

 

 バーバリアン1号 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1550

 バーバリアン2号 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1800

 トランスコード・トーカーリンク先:バーバリアン1号(上)

 

「バーバリアン2体とモザイク・マンティコアをリリース! アドバンス召喚! レベル8《神獣王バルバロス》!」

 

 石島の場の3体のモンスターが光の中へと消えると、その光から槍と盾を持った異形のモンスターが現れる。下半身は黒獅子の体。本来は頭があるべき場所から人の胴体が生え、胴体に付いている頭は金色の鬣を生やした獅子のものである。

 

 神獣王バルバロス 地属性 獣戦士族 ATK:3000

 

「2体以上のリリースでアドバンス召喚に成功したことにより2枚ドロー! そしてバルバロスの効果発動! 3体をリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、相手の場のカードを全て破壊する!」

 

 ストロング石島 手札:1→3

 

『そ、そんなことになったらおしめぇーだぁ~! Playmaker~!』

「速攻魔法《非常食》! 罠カード《リコーデッド・アライブ》! 自分の場か墓地のLINK-3サイバース族リンクモンスター1体を除外することでEXデッキから”コード・トーカー”モンスター1体を特殊召喚する! 場の《デコード・トーカー》を除外!」

 

 場にアローヘッドのゲートが現れるとデコード・トーカーがゲートの中へと飛び込み、入れ替わりでゲートの中から緑の鎧を纏ったサイバースの戦士が現れる。これこそ”存在と終わり”を告げる風の法術士――――

 

「現れろLINK-3《エクスコード・トーカー》!」

 

 エクスコード・トーカー 風属性 サイバース族 LINK-3(上、左、右) ATK:2300→2800

 相互リンク:エクスコード・トーカー(上)↔トランスコード・トーカー(下)

 エクスコード・トーカーリンク先:トランスコード・トーカー(上) ドットスケーパー(左)

 

「エクスコード・トーカーのモンスター効果! このカードのリンク先のモンスターは攻撃力が500アップし、効果で破壊されない! そして非常食の効果でリコーデッド・アライブを墓地へ送りLPを1000回復する!」

 

 Playmaker LP:3300→4300

 

 コード・トーカー同士の入れ替わりと魔法・罠の消費が完了した瞬間、バルバロスがPlaymakerの場に向かって衝撃波を放つ。それを察知したエクスコード・トーカーは風の障壁をトランスコード・トーカーとドットスケーパーの前に展開した。

 

破壊されたカード

エクスコード・トーカー

 

 2体を守り切ったエクスコード・トーカーは衝撃波によって吹き飛ばされ、風の中へと消えていった。

 

『うう……エクスコード・トーカー無茶しやがって……お前のことは忘れない……』

 

 トランスコード・トーカー ATK:2800→3300→2300

 

「おのれ……ダイヤモンド・クラブ・キングを攻撃表示に変更し効果発動! ORUを1つ使い攻撃力を3000にする!」

 

 ニュートラル体となっていたダイヤモンド・クラブ・キングが活動体へと変形し、ORUを食らって力を得る。

 

 No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング DEF:3000→ATK:0→3000 ORU:1→0

 

「バトル! バルバロスでトランスコード・トーカーを攻撃! 【トルネード・シェイパー】!」

 

 バルバロスは槍を構えてトランスコード・トーカーへと突撃する。

 

「手札を1枚捨て、速攻魔法《アクションマジック-ダブル・バンキング》を発動! このターン俺の場のモンスターは相手を戦闘破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃できる!」

 

捨てたカード

キング・オブ・ビースト

 

「墓地の《リンクリボー》の効果発動! レベル1モンスター1体をリリースして墓地から特殊召喚する! 《ドットスケーパー》をリリースして特殊召喚!」

 

 突撃するバルバロスの前にリンクリボーが現れる。バルバロスは動きを止め、石島の指示を待つ。

 

 リンクリボー 闇属性 サイバース族 LINK-1(下) ATK:300

 

「またそいつか……構わんバルバロスやれ!」

「リンクリボーの効果発動! 攻撃モンスターの攻撃力を0に!」

 

 リンクリボーが光線をバルバロスに放って消滅する。

 

 神獣王バルバロス ATK:3000→0

 

「ぬうぅ……下がれバルバロス! ならばNo.で! ダイヤモンド・クラブ・キングでトランスコード・トーカーを攻撃!」

 

 ダイヤモンド・クラブ・キングが泡を放ち、トランスコード・トーカーを溶かして破壊する。

 

「くっ……!」

 

 Playmaker LP:4300→3600

 

「ダブル・バンキングの効果によりもう一度攻撃! ダイレクトアタック!」

 

 ダイヤモンド・クラブ・キングがもう一度泡を放ってPlaymakerに浴びせる。

 

「うわぁぁぁ!?」

『Playmaker!?』

 

 Playmaker LP:3600→600

 

 大ダメージによって大きく体勢を崩すPlaymaker。何とか体勢を立て直して石島を追いかける。それと同時にダイヤモンド・クラブ・キングは再びニュートラル体へと変形する。

 

「これを凌ぐとは……ターンエンド! バトルフェイズ終了によりダイヤモンド・クラブ・キングは守備表示に! そしてアドバンス・ゾーンの効果発動! 3体以上をリリースしてアドバンス召喚に成功したことにより1枚ドローし、自分の墓地からモンスター1体を手札に加える! 《モザイク・マンティコア》を手札に!」

 

 ストロング石島 手札:1→2→3

 

ストロング石島

LP:3400

手札:3

EXモンスター

①:No.52 ダイヤモンド・クラブ・キング ATK:3000→DEF:0→3000 ORU:0

③:

メインモンスター

①:

②:神獣王バルバロス ATK:0→3000

③:

魔法・罠

①:冥界の宝札

②:アドバンス・ゾーン

③:

 

『大丈夫かPlaymaker!?』

「……あの男、豪胆に見えて恐ろしく冷静だ」

『え? どゆこと?』

「あの男のここまでの手を思い出してみろ。全てNo.以外のモンスターから攻撃している」

『え……そういやそうだな? でもそれがどうしたんだよ?』

「解らないか? 最初の口ぶりからして奴はあのNo.とかいうカードを初めて使ったようだ。だが、そのわりには弱点をよく理解している」

『弱点? そんなものあるのか? あいつが言ってるように隙なんかないように見えるけど……』

「隙の無いカードなど存在しない。それを埋めるのは決闘者の力量だ。奴はそれを見事にやってのけている」

『ええ……あ! そういうことか!』

 

 Aiは何かに気づいたかのように掌を握り拳でポンと叩く。

 

『あの蟹の隙……それは”攻撃”だ!』

 

 Aiの言葉にPlaymakerは小さく頷く。ダイヤモンド・クラブ・キングが守りの体勢に入るには攻撃を成功させることが必要であり、攻撃が出来なければ本来の皆無な攻撃力を相手に晒すこととなってしまう。表示形式の変更は基本的には1ターンに1度。1度攻撃態勢を取ってしまったら攻撃を成功させるほかないのである。

 

「奴はNo.の攻撃成功率を上げる為に他のモンスターを先行させている。見え見えな戦術で正直気休め程度にしかならないはずだが……」

『俺らにはドンピシャハマっちまってるってことか……偶然にもリンクリボーが避けられちまうんだ!』

「本来は相性のいいカードなのにな」

 

 一つの判断の間違いが敗北を決することもあれば、一つの閃きが勝利を呼び寄せることもある。どんな小さなことでも見逃さずに実践すること、それは時に1枚のカードを凌駕するアドバンテージを生み出すのかもしれない。

 

『人間のカンって奴か。ウィンディもそれが嫌だみたいなこと言ってたしなぁ』

「奴はそれだけではない。豪快な戦術だが常に戦線を維持するための備えを忘れない。強気でかつ冷静に決闘を進める……その点に関してはかつてのGo鬼塚と重ねたお前は正しい」

『だろぉ? いやーようやく解ってくれ――――』

「俺のターン!」

 

  Playmaker 手札:1→2

 

『……まあいいや。で、どうすんだ? 正直絶体絶命だと思うんだがな? こっからどう逆転するよ?』

「この差を埋めるのは決闘者の力量だ」

『力量ぉ? でも手札は2枚。幾ら力量があってもカードが無きゃどうしようもないって』

「無いなら引き出す。それも決闘者の力量だ! 《フレイム・バッファロー》を召喚!」

 

 Playmakerの場に青い炎の角と尻尾を持つバッファローのロボットが現れる。

 

 フレイム・バッファロー 炎属性 サイバース族 レベル3 ATK:1400

 

『(何? 珍しく熱くなってんじゃん?)』

 

 復讐の為に決闘の世界に戻ってきたPlaymakerこと遊作。幼少期に体験した地獄によって決闘は決して消えない心の傷となってしまった。決闘から、過去から逃げていては決してこの傷の痛みは消えない――――そう信じて遊作は戦い続けた。戦い続け、勝ち抜いて、遊作はようやく痛みを克服して己の人生を取り戻した。それは心の安寧だけではない。痛みが消えなかったように遊作の中から消えず、復讐の陰に隠れていた一つの思い――――

 

『(何だかんだ言って”決闘が好き”なんだよなこいつ。もう戦いなんて終わったんだからむっつりしてないではっちゃけちまえばいいのによ……俺様みたいに!)』

「墓地の《リコーデッド・アライブ》を除外して効果発動! 除外されている”コード・トーカー”モンスター1体を特殊召喚する! 現れろ《デコード・トーカー》!」

 

 続けてPlaymakerの場にデコード・トーカーが現れる。

 

 デコード・トーカー 闇属性 サイバース族 LINK-3(上、左下、右下) ATK:2300

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”サイバース族2体”! 《デコード・トーカー》と《フレイム・バッファロー》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”下、左下”に位置するリンクマーカーに2体のサイバースが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-2《サイバース・ウィッチ》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。その中から飛び出したのは一人の魔女。鎧を着込んだその上からローブを纏い、手には大きな杖が握られている。

 

 サイバース・ウィッチ 闇属性 サイバース族 LINK-2(下、左下) ATK:800

 

「場から離れたフレイム・バッファローの効果発動! 手札からサイバース族1体を捨て、2枚ドローする!」

 

捨てたカード

サイバース・シンクロン

 

 Playmaker 手札:1→0→2

 

「よし……永続魔法《サイバネット・オプティマイズ》を発動! 自分のメインフェイズに1度、サイバース族を召喚する! 《ROMクラウディア》を召喚!」

 

 続けてPlaymakerの場に黒い羊型のロボットが現れる。

 

 ROMクラウディア 闇属性 サイバース族 レベル4 ATK:1800

 

「ROMクラウディアの効果発動! 召喚に成功した時、自分の墓地のサイバース族1体を手札に加える! 《レイテンシ》を手札に加え効果発動! 効果で手札に加わった場合、特殊召喚できる!」

 

 ROMクラウディアが鳴き声を上げると、その隣にレイテンシが現れる。

 

 レイテンシ 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 サイバース・ウィッチリンク先:レイテンシ(下)

 

「サイバース・ウィッチの効果発動! リンク先にモンスターが特殊召喚された場合、墓地の魔法1枚を除外することでデッキからサイバース族儀式モンスターと《サイバネット・リチューアル》の2枚を手札に加える!」

 

除外したカード

非常食

 

 Playmaker 手札:0→2

 

「再び現れろ、未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル4以下のサイバース族1体”! 《レイテンシ》をリンクマーカーにセット!」

 

 レイテンシが光の風となってアローヘッドの”下”に位置するリンクマーカーへと飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-1《リンク・ディサイプル》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートの中から人型の電脳生物が飛び出しサイバース・ウィッチの背後に降り立つ。

 

 リンク・ディサイプル 光属性 サイバース族 LINK-1(下) ATK:500

 サイバース・ウィッチリンク先:リンク・ディサイプル(下)

 

「レイテンシの効果発動! 自身の効果で特殊召喚された後にリンク素材となった場合、デッキから1枚ドローする!」

 

 Playmaker 手札:2→3

 

「速攻魔法《バウンドリンク》! 自分の場・墓地のリンクモンスター1体をEXデッキに戻し、そのリンクマーカーの数だけデッキからドロー! その後ドローした枚数分、デッキボトムに好きな順番で戻す! EXデッキに戻すのはLINK-3《エクスコード・トーカー》! 3枚ドローし、デッキに3枚戻す!」

 

 Playmaker 手札:2→5→2

 

戻したカード

サイバネット・リチューアル

サイバース・マジシャン

サイバース・ウィザード

 

「魔法カード《死者蘇生》! 墓地の《サイバース・ウィキッド》を特殊召喚!」

 

 Playmakerの場に再びサイバース・ウィキッドが現れる。

 

 サイバース・ウィキッド 闇属性 サイバース族 LINK-2(下、右下) ATK:800

 サイバース・ウィッチリンク先:リンク・ディサイプル(下) サイバース・ウィキッド(左下)

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”サイバース族2体以上”! LINK-2の《サイバース・ウィキッド》と《リンク・ディサイプル》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上、下、左”のリンクマーカーに分裂したサイバース・ウィキッドとリンク・ディサイプルが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートの中から現れたのは水色の鎧を纏い翼を生やしたサイバースの戦士。これこそが”異常と終わり”を告げる水の弓術士――――

 

「現れろLINK-3《シューティングコード・トーカー》!」

 

  シューティングコード・トーカー 水属性 サイバース族 LINK-3(上、下、左) ATK:2300

 相互リンク:サイバース・ウィッチ(下)↔シューティングコード・トーカー(上)

 

『おーし新しいコード・トーカー! これで――――』

「まだだ!」

『え? まだ?』

「サイバース・ウィッチの効果発動! サーチ効果を発動したターン、墓地のレベル4以下のサイバース族1体を特殊召喚する! 《コード・ジェネレーター》を特殊召喚!」

 

 サイバース・ウィッチが杖を場に差し向けると、そこにトランスコード・トーカーによく似たサイバースの銃士が現れる。

 

 コード・ジェネレーター 地属性 サイバース族 レベル3 ATK:1300

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”サイバース族2体以上”! LINK-2の《サイバース・ウィッチ》と《コード・ジェネレーター》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上、下、右下”のリンクマーカーに分裂したサイバース・ウィッチとコード・ジェネレーターが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートの中から現れたのは青白い鎧を纏い盾を手に持ったサイバースの戦士。これこそが”秘密と終わり”を告げる光の騎士――――

 

「現れろLINK-3《エンコード・トーカー》!」

 

 エンコード・トーカー 光属性 サイバース族 LINK-3(上、下、右下) ATK:2300

 相互リンク:エンコード・トーカー(下)↔シューティングコード・トーカー(上)

 

『おおもう一体……これなら――――』

「まだだ!」

『ええまだ!?』

「場で”コード・トーカー”モンスターのリンク素材となったコード・ジェネレーターの効果発動! デッキから攻撃力1200以下のサイバース族1体を手札に加える! 《コード・エクスポーター》を手札に!」

 

 Playmaker 手札:1→2

 

「このカードは場のリンクモンスターのリンク先に特殊召喚できる! 来い《リンク・インフライヤー》!」

 

 シューティングコード・トーカーのリンク先に凧のような姿をした電脳生物が現れる。

 

 リンク・インフライヤー 風属性 サイバース族 レベル2 ATK:0

 シューティングコード・トーカーリンク先:エンコード・トーカー(上) リンク・インフライヤー(左)

 

「場のサイバース族で”コード・トーカー”モンスターをリンク召喚する場合、手札の《コード・エクスポーター》も素材にできる! 現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”モンスター3体”! 《ROMクラウディア》、《リンク・インフライヤー》、そして手札の《コード・エクスポーター》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”左、右、左下”のリンクマーカーに場のサイバースが光の風となって飛び込み、さらにPlaymakerの手札から飛び出した光の風もマーカーへと飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートの中から現れたのは赤い鎧を纏い左腕に手甲を付けたサイバースの戦士。これこそが”律動と終わり”を告げる炎の闘士――――

 

「現れろLINK-3《パワーコード・トーカー》!」

 

 パワーコード・トーカー 炎属性 サイバース族 LINK-3(左、右、左下) ATK:2300

 相互リンク:パワーコード・トーカー(右)↔シューティングコード・トーカー(左)

 

『すげぇ……コード・トーカーが3体も!?』

「だがどれも3000に届かない非力なモンスター! 何ができる!」

「手札から素材となった《コード・エクスポーター》の効果発動! 墓地のレベル4以下のサイバース族1体を手札に加える! 《サイバース・ガジェット》を手札に!」

 

 Playmaker 手札:0→1

 

「パワーコード・トーカーの効果発動! 1ターンに1度、場のモンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする! No.の効果を無効だ! 〈ワイヤー・リストラクション〉!」

 

 パワーコード・トーカーが左腕の手甲を右腕に付け替え変形させる。クワガタムシのハサミの様になった手甲はダイヤモンド・クラブ・キングに向かって射出されダイヤモンドの甲羅に突き刺さる。パワーコード・トーカーは手甲と繋がったワイヤーを引き、ダイヤモンド・クラブ・キングを引き倒す。

 

「何!?」

『よっしゃ! これで蟹野郎を破壊できるぜ!』

「バトル! ここでシューティングコード・トーカーの効果発動! このカードのリンク先のモンスターの数だけ通常攻撃に加えてモンスターに攻撃できる! リンク先のモンスターは2体、よってシューティングコード・トーカーは3回モンスターに攻撃できる!」

「それがどうした! その攻撃力では――――」

「シューティングコード・トーカーでバルバロスを攻撃! 【シューティング・コンプリート】!」

 

 シューティングコード・トーカーが左手の装甲を展開して弓へと変形させると、エネルギーで作り出した矢をバルバロスへと放つ。だがバルバロスはその矢を軽々と弾き飛ばしてしまった。

 

「ここでエンコード・トーカーの効果発動! この戦闘での破壊とダメージを無効に! そしてダメージ計算後にこのカードかリンク先のモンスターに戦闘を行った相手モンスターの攻撃力を加える! リンク先のシューティングコード・トーカーにバルバロスの攻撃力3000を加える!」

 

 シューティングコード・トーカー ATK:2300→5300

 

「馬鹿な!? 攻撃力5300だと!?」

「シューティングコード・トーカー2回目の攻撃! バルバロスを射抜け!」

 

 シューティングコード・トーカーが二の矢を放つと、今度はバルバロスを易々と貫き破壊する。

 

「バルバロス!?」

 

 ストロング石島 LP:3400→1100

 

「シューティングコード・トーカーは相手モンスターが1体のみの場合、ダメージ計算時のみ攻撃力が400ダウンする。ダイヤモンド・クラブ・キングに攻撃!」

 

 シューティングコード・トーカー ATK:5300→4900

 

 シューティングコード・トーカーが最後の矢を放ち、ダイヤモンド・クラブ・キングを貫き砕く。

 

「No.が……ぬうう!?」

「これでトドメだ! エンコード・トーカーでダイレクトアタック! 【ファイナルエンコード】!」

 

 エンコード・トーカーが盾に収納されていた剣を伸ばすと、石島に向かって飛び出す。

 

「やらせはせんぞぉ!!! 俺のスキル”蛮族の執念LV8”を発動!」

「ここでスキルだと!?」

 

 石島の体から湯気のようなオーラが立ち上る。

 スキルとは、スピードデュエルにおいて各プレイヤーが決闘中に1度だけ発動できる特殊効果であり、その効果は決闘者によって千差万別。それぞれの個性が現れており、ものによっては一発逆転や起死回生を為せるなどスピードデュエルにおける重要な要素である。

 Playmakerの場にはコード・トーカーの戦闘時に魔法・罠・モンスター効果の発動を封じる”サイバネット・オプティマイズ”が存在するが、スキルは”カード効果の発動”ではないので問題なく使用できる。

 

「このスキルは相手の直接攻撃によってLPが0になる場合のみ発動が可能! 墓地のレベル8の戦士族1体を特殊召喚する! この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターンの戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは0となる! 甦れ《バーバリアン・キング》!」

 

 再びバーバリアン・キングがその巨体をそびえ立たせ、エンコード・トーカーに向かって腕を振り回し牽制する。

 

 バーバリアン・キング 地属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

『ワァーーーーまた出たーーーー!? 何だよあとちょっとだったのに!』

「……エンコード・トーカーの攻撃を中止し、ターンエンド! この瞬間シューティングコード・トーカーの効果発動! このカードが戦闘破壊したモンスターの数だけドローする!」

 

 Playmaker 手札:1→3

 

Playmaker

LP:600

手札:3

EXモンスター

①:

③:エンコード・トーカー リンク先:シューティングコード・トーカー(下) ATK:2300

メインモンスター

①:

②:パワーコード・トーカー リンク先:シューティングコード・トーカー(右) ATK:2300

③:シューティングコード・トーカー ATK:4900→2300

  リンク先:E(エンコード)・トーカー(上) P(パワーコード)・トーカー(左)

魔法・罠

①:サイバネット・オプティマイズ

②:

③:

 

「俺のターン!」

 

 ストロング石島 手札:3→4

 

「魔法カード《トレード・イン》! 手札のレベル8モンスター1体を捨て2枚ドロー!」

 

 ストロング石島 手札:3→2→4

 

捨てたカード

モザイク・マンティコア

 

「ここまでの奮戦は見事。だがこの攻撃でお前のLPは0になる」

 

 コードトーカー達の攻撃力は2300であり、攻撃力3000のバーバリアン・キングの攻撃を受ければ700のダメージが通る。残りLP600のPlaymakerは敗北することとなるが、Playmakerは普段通りのポーカーフェイスで石島を見返した。

 

「……それはどうかな?」

「強がっても無駄だぞ。既にお前のデッキの特徴は見抜いた。このまま攻撃しても勝てるだろうが……俺は油断も手加減もせん! 徹底的に叩き潰してやる! 《アックス・レイダー》を召喚!」

 

 石島の場に黄金の兜と胴鎧を纏った戦士が現れる。手には黄金の斧を持ち、全身の筋肉を隆起させて雄叫びを上げる。

 

 アックス・レイダー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1700

 

「魔法カード《ソウルテイカー》! 相手の表側表示モンスター1体を破壊し、相手のLPを1000回復させる! 破壊するのは《シューティングコード・トーカー》!」

 

 石島が魔法を発動させると、シューティングコード・トーカーは胸を押さえて苦しみだし、悶えながら光の粒子とあって消滅してしまった。

 

 Playmaker LP:600→1600

 

『何するかと思えばこっちのLPを回復してくれるのかよ? へへ! これでこのターンは助かるぜ! 敵を助けるだなんてバッカでねぇの?』

「強がりは無駄だと言ったはずだ! 解っているのだろう? その”コード・トーカー”の強みがなんであるかを!」

『え? な、何のことでしょ~?』

 

 ”コード・トーカー”はリンクを繋ぐことで初めて力を発揮できるモンスターであり、個々単体の力はそれほどでもない。石島はここまでの決闘でそれを見抜いており、このままバーバリアンで攻撃を仕掛ければ必ずリンクによる連携で反撃してくると読んだのである。だからこそ相手のLPを回復させてまでリンクの中心であったシューティングコード・トーカーを破壊したのだ。

 

「リンクを断ってしまえば恐れるに足らず! そして知るがいい! バーバリアンの恐ろしさを! バーバリアン・キングのモンスター効果! 戦士族を任意の数だけリリースすることでこのターンのバトルフェイズでの攻撃回数をリリースしたモンスターの分だけ増やす! 《アックス・レイダー》をリリースし、バーバリアン・キングはこのターン2回攻撃できる!」

 

 バーバリアン・キングはアックス・レイダーを捕まえて握りつぶし、破壊されて粒子となったアックス・レイダーを吸収する。

 

「フィールド魔法《破邪の魔法壁》を発動! 自分のターンの間、俺の場のモンスターの攻撃力を300アップ!」

 

 バーバリアン・キング ATK:3000→3300

 

「ゲェーーーこれじゃPlaymakerのLPが無くなっちまう!?」

「この俺が何の手段も無しにLPを回復させてやったとでも思ってたのか愚か者め! これで終わりにしてやる! カードを伏せバトル! バーバリアン・キングでエンコード・トーカーを攻撃!」

 

 バーバリアン・キングが棍棒を振り回し、空を駆けるエンコード・トーカーを地面へと叩き落とす。

 

「くう……!?」

『あわわわわ!?』

 

 Playmaker LP:1600→600

 

「とどめだ! パワーコード・トーカーを攻撃!」

「手札から《レスキュー・インターレーサー》の効果発動! 自分のサイバース族が攻撃されたダメージ計算時にこのカードを手札から捨てることでダメージを0にする!」

 

 パワーコード・トーカーも同じように地面へと叩き落とされてしまったが、Playmakerへのダメージは光の障壁によって阻まれる。

 

「防いだだと!?」

「勝利を目前にまでその冷静さは見事だ。だが判断を誤ったな」

「ぐぬう……!」

 

 ソウルテイカーを使用せずにエンコード・トーカー、シューティングコード・トーカーを攻撃していればPlaymaker は攻撃を防ぎ切れず、石島の勝利であった。”コード・トーカー”の連携を警戒し過ぎた結果である。相手のLPを回復させてまででも相手の力を封じ込め、圧倒的なパワーでひねり潰す――――ここにきて石島の”豪胆かつ慎重”な戦術が裏目に出てしまったのだ。

 

「だがお前のモンスターは全滅させた! 次で終わりだ! ターンエンド!」

 

ストロング石島

LP:1100

手札:0

EXモンスター

①:

③:

メインモンスター

①:

②:バーバリアン・キング ATK:3300→3000

③:

魔法・罠

①:冥界の宝札

②:アドバンス・ゾーン

③:セット

フィールド魔法

破邪の魔法壁

 

『ふぃ~~~危なかったな……』

「エンドフェイズ時に墓地の《レスキュー・インターレーサー》の効果発動! 自身の効果で手札から墓地へ捨てられた場合、そのターンのエンドフェイズ時に墓地から特殊召喚する!」

 

 Playmaker の場に女性型のロボットが現れ、手の甲に付いたパトライトを光らせる。

 

 レスキュー・インターレーサー 光属性 サイバース族 レベル3 ATK:1000

 

「俺のターン!」

 

 Playmaker  手札:2→3

 

『さてPlaymaker ! 危機的状況だが、この手札じゃ融合もシンクロもエクシーズも無理だな?』

「儀式もだ」

『リンクモンスターで対抗しようにも、もうロクな奴いないよな?』

「さっき戻したエクスコード・トーカーと、今の状況では力を発揮できないクロック・スパルトイと”ダークフルード”のみだ」

『詰んでね? もう対抗できるカードねーじゃん』

「無いなら手に入れるまでだ!」

 

 Playmaker の言葉にAiはくしゃりと顔をゆがませる。人間とは顔のつくりが違うので分かりづらいが笑ったのだ。

 

『だよな! そう来ると思って準備してたぜ! データストーム解放!』

 

 Aiが広大な森が広がる空間に向かって手をかざすと、そこに凄まじい威力の風が吹き荒れる。風は森の中心で巻き上がり、巨大な竜巻となった。

 Playmaker は竜巻を確認すると、Dボードを向けて飛び立つ。

 

「何だこの風は!? 何をするつもりだ!?」

「スキル発動、”Neo Storm Access”! 自身のLPが1000以下の時、データストームの中からサイバース族1体をランダムでEXデッキに加える!」

 

 Playmakerはスキル発動の宣言を行いつつ、データストームの前に辿り着く。

 データストーム――――その名の通りデータの奔流のことで、スピードデュエルとは本来このデータストームの流れに乗って行われる決闘である。今ではDボードの性能が上がったことにより大した流れがなくともスピードデュエルを行うことができるようになっているが、まだスピードデュエル初期の頃はデータストームの気まぐれに翻弄される決闘者も多く、危険が大きかった。

 データと言うからには当然”中身”が存在する。大半は何のこともないただのごみデータであるが、強力なデータストームの中にはイグニス達が創り出した”サイバース族”が潜んでいる。どれだけ強いのか、どんな力を持っているのか、それはデータストームの規模によって決まる。巨大かつ強力であればあるほど、それに比例して中のサイバースも強力になっていくのだ。

 

『Playmaker! 対戦相手の影響か何かなのかは知らねぇが、今回のデータストームは相当ワイルドだぜ!』

「問題ない! 今の俺とこの新しいスキルなら! うおおおお!!!」

 

 雄叫びを上げてPlaymakerはデータストームの中へと光輝く右腕を突っ込む。データストームは決してPlaymakerの味方ではない。差し込まれた腕を容赦なく削り、吹き飛ばそうとする。

 

 

「ぐうう……!」

『頑張れPlaymaker! もう少しだ!』

 

 Playmakerが伸ばす腕の側を、幾つもの黒い影が通り抜ける。データストーム内に潜むサイバース達だ。通り抜けてはまた現れ、通り抜ける。Playmakerをからかっているのか、それとも力を貸すのに値する決闘者かどうか見極めているのか――――

 

「うう……うおおおーーーー!!!」

 

 渾身の力を込め、Playmakerはさらに腕を差し込む。その先には1枚のカードが輝きながら漂っていた。

 

『風を掴め! Playmaker!!!』

 

 Aiの言葉と同時にPlaymakerはカードを掴み取る。その瞬間、Playmakerの脳裏に”勇ましい獣の咆哮”が轟いた。

 Playmakerはすぐにデータストームから腕を引き抜き、手にしたカードをEXデッキへとしまう。

 

『よっしゃ! 新しいカード、行けるか?』

 

 データストームを消滅させながらAiが訊ねるとPlaymakerは軽く頷き、石島の元へと戻る。

 

「新しいカードだと!? くっ……決闘盤が警告を発せず正しく処理を行っている以上は……有効!」

『スキルの効果なんだから有効に決まってんだろ! 行けPlaymaker!』

「《サイバース・ガジェット》を召喚! 効果で墓地のレベル1《レイテンシ》を特殊召喚!」

 

  Playmakerの場にサイバース・ガジェットとレイテンシが再び現れる。

 

 サイバース・ガジェット 光属性 サイバース族 レベル4 ATK:1400

 レイテンシ 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”サイバース族2体以上”! 《レスキュー・インターレーサー》、《サイバース・ガジェット》、《レイテンシ》の3体をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上、左、右”のリンクマーカーに3体のサイバースが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートの中から現れたのは、仲間を庇って散りEXデッキへと戻っていたサイバースの法術士――――

 

「現れろLINK-3《エクスコード・トーカー》!」

 

 エクスコード・トーカー 風属性 サイバース族 LINK-3(上、左、右) ATK:2300

 

「サイバース・ガジェットの効果により《ガジェット・トークン》を特殊召喚! そしてサイバネット・オプティマイズの効果により《ライドロン》を通常召喚!」

 

 続けてPlaymakerの場にガジェット・トークンとライオンの姿をした電脳獣が現れる。

 

 ガジェット・トークン 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 ライドロン 地属性 サイバース族 レベル4 ATK:2000

 

「再び現れろ! 未来を導くサーキット!」

 

 Playmakerの場に現れるアローヘッド。おそらくこれが最後のリンク召喚になる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”トークン以外のモンスター2体以上”! LINK-3《エクスコード・トーカー》と《ライドロン》をリンクマーカーにセット!」

 

 アローヘッドの”上、下、左、右”のリンクマーカーに分裂して3体となったエクスコード・トーカーとライドロンが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から飛び出したのは1体の巨大な白い電脳獣。体には強化アーマーを身に着け、ライオンのようなタテガミを揺らしながら場に降り立ち咆哮を上げる――――

 

「現れろLINK-4《ラスタライガー》!」

 

 ラスタライガー 光属性 サイバース族 LINK-4(上、下、左、右) ATK:2000

 リンク先:ガジェット・トークン(下)

 

「LINK-4だと……だがその程度の攻撃力、バーバリアン・キングの敵ではないわ!」

「ラスタライガーの効果発動! 墓地のリンクモンスター1体の攻撃力をターン終了時までこのカードに加える! 《デコード・トーカー》の攻撃力2300をラスタライガーに加える! 〈パワー・ラスタライズ〉!」

 

 ラスタライガーが背部のアーマーを展開すると、中からカメラが現れる。ラスタライガーは目の前に現れたデコード・トーカーの巨大なカードを撮影し、そこから必要なデータだけを取り出して自分にインプットする。

 

 ラスタライガー ATK:2000→4300

 

「攻撃力4300!? バーバリアン・キングを上回るだと!?」

「ラスタライガーの更なる効果! リンク先の自分のモンスターを任意の数だけリリースし、リリースした数だけ場のカードを破壊する! リンク先のガジェット・トークンをリリースし、セットカードを破壊する! 〈ラスタライズ・ロアー〉!」

 

 ガジェット・トークンが消滅した瞬間、ラスタライガーが咆哮を上げる。それと同時に石島の場に伏せられていたカード1枚が粉々に砕け散った。

 

破壊したカード

バーバリアン・ハウリング

 

「ぬうう……!?」

「これで終わりだ! ラスタライガーでバーバリアン・キングを攻撃!」

 

 ラスタライガーがバーバリアン・キングに向かって飛び掛かり、喉元に噛みつく。バーバリアン・キングが堪らず悲鳴を上げてラスタライガーを振り払い、もがき苦しみ抜いた後爆散する。

 

「ぐわぁぁぁ!? み、見事……」

 

 ストロング石島 LP:1100→0

 

 バーバリアン・キングが起こした爆発を受けて石島はDボード上から吹き飛ばされる。石島はそのまま落下し、森の中へと消えていった。

 

『や、やべぇんじゃねぇのかあれ!?』

「くっ!?」

 

 決闘盤を収め、Playmakerは全速力で森へと消えた石島を追った。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「……アバターに大きな外傷は見えない。元の体に深刻なダメージが向かう程のフィードバックが起きれば強制的にログアウトされるはずだ」

『だけど気絶してるぜ? 気絶するくらいなら強制ログアウトしそうなもんだがな?』

 

 石島の元へ辿り着いたPlaymaker達。見たところ木の枝や藪がクッションとなったお蔭で大きなケガはしていないようだった。気を失って倒れているが、あの高さから落ちたことを考えれば気絶で済んだのは幸運だったとしか言いようがない。

 

「……いや、ここの空間はネットから遮断されているんだったな。強制ログアウトさせたくてもできなかったということか?」

『まあともかく……勝ったご褒美を貰わねぇとなァ!!!』

 

 Aiが急に決闘盤から飛び出し、異形の姿へと変わる。体は蛇の様に長く、側面から複数の触手を生やし、大きく開けた口の上にはギョロリと大きな目玉が剥きだしている。これはイグニス達の”捕食形態”であり、この姿になってイグニスは相手のデータを食らって自分のものにできる。

 

「Ai! 何をする気だ?」

『気絶しちまったらここについてきけねぇだろうが! だからちょいと記憶データを頂こうって訳よ! 安心しな、アバターの片腕をちょこーっと齧らせてもらうだけだからよ!』

 

 そう言ってAiは石島の腕に食らいつく。ガッツリと食らいつく――――が、Aiは表情を歪ませて石島から離れた。

 

「どうした?」

『……どうなってんだこりゃ? Playmaker! こいつアバターじゃねぇぞ! 生身の人間だ!』

「何だと!?」

 

 Playmakerは石島に近づいて体に触れるが、触ったぐらいではアバターか人間かは判断できない。

 

『食らいついた時、歯が通らなかった。硬いとかそういう問題じゃなくて、俺自身が干渉できなかった』

「プロテクトでもないということか?」

『ああ、触れてる感覚すらない。本当におかしいぜ? Playmakerはアバター(Playmaker)だし、俺だって自由にできる。データストームだって起こせる。ここは電脳空間……だよな?』

 

 自分がアバターであり、Aiが自由に動ける以上、ここは電脳空間である。目の前で倒れている男もアバター――――データであるはずなのだ。だが高性能なデータ体であるAiが石島はデータではないと言っている。

 

『うわ!?』

「今度はなんだ?」

『周りもデータじゃねぇ!? ちょっと弄ってやろうと思ったんだけど、何もできねぇんだ!』

 

 Playmakerは側にある葉っぱに触れる。指の間に挟んで擦り合わせる、ヒラヒラと扇いでみる、おもむろに千切ってみる――――リンクヴレインズはそれらの感触を出来る限りリアルに再現しているが、やはり現実とは微妙に違いがある。Playmakerはリアル過ぎる葉っぱの感触に眉をひそめた。

 

「一体どうなっているんだこの空間は……この男がこんな状態では情報の一つも聞きだせない」

『いや、まだ一つ手掛かりがあるぜぇ? 俺様的には一番気になる代物だ』

 

 Aiが触手で差したのは石島の決闘盤から零れ落ちた1枚のカード。怪しげな存在感を放つ”No.”のカードであった。

 

「あのカードか……この男のデッキの中では、明らかに異質な――――」

 

 Playmakerが目を向けた瞬間、”No.”のカードが浮き上がりPlaymaker目掛けて飛来する。

 

『おおっとぉ!?』

 

 Playmakerがカードを受け止めようとした瞬間、Aiが大口でカードを捕らえそのまま飲み込んでしまう。

 

「Ai!? 何をするつもりだ!?」

『カードならデータに変換できる! データにしちまえばこっちのもんだ! 根掘り葉掘り調べて――――う、ごごご……!?』

「どうした!?」

『こ、このやろ……逆に俺を取り込もうとしてきやがる! 何だてめぇ! ”意思”があるってんのか!?』

「危険だ! 吐き出せ!」

『勝ったのは俺達だぞ……大人しく言うこと聞けってんだ!!!』

 

 Aiはそう叫んでPlaymakerの決闘盤に飛び込む。目玉だけの状態となり、険しさを浮かべた後、ほっとしたように目尻を下げる。

 

『ふい~……最後は呆気なかったな。急に大人しくなりやがった』

「……どうなった? 異常は?」

『あーダイジョブダイジョブ、臭いものにはフタをしろ。あの気味わりぃ悪寒がしなくなるまでプロテクト掛けてやったから。それより収穫があったぜ』

 

 Aiは人型に戻って決闘盤から這い出る。手にはデータの破片が握られていた。

 

『どういう原理か知らねぇが、カードをデータに変換したら中に石島の記憶データが混ざってやがった。殆ど壊れちまってたけど、解析できたもんだけ抜き出してきたぜ』

 

 Aiは破片データをPlaymakerのアバターにインストールする。

 判明したことは3つ。一つ、この空間は決闘に支配された世界である。勝者が手に入れ敗者が失う弱肉強食の世界。二つ、Playmakerはこの世界の”セントラル”を目指さなければならない。三つ、石島はPlaymakerに課せられた”試練”であり、決闘とこれらの情報を伝えるために置かれた”番兵”に過ぎない。

 

『どうやらこの鬼塚もどきは下っ端みてぇだな。黒幕が誰か探ろうとしたが、それらしいもんはジャンクデータさえ無かった』

「……とにかく、やることは決まった」

『”セントラル”とやらを探すのか? どう考えても罠臭くね?』

「俺達に選択肢は無い。もし黒幕がその”セントラル”にいるのだとすれば、確かめなければならない。何故サイバース世界にあの扉を置いたのか。何故俺達を引きずりこんだのか」

 

 Playmakerは再びDボードへ飛び乗る。相手の狙いは分からない。だがジッとしている訳にはいかない。取り戻した人生を再び歩むため、Playmakerは再び闘いへと身を投じるのであった。

 




プレメこと遊作の相手は初戦の相手の中ではおそらく一番印象が薄いであろうストロング石島でした。こんなに濃い見た目なのに。
デッキテーマは”帰ってきた石島”です。修行してパワーアップした石島をイメージして書きました。
ここまで見てくださったかたなら、というか一発目で気づいたかたもいると思いますが初戦の相手はみな”主人公と第一話で決闘した攻撃力3000メンバー”です。(遊作は実質2話ですが、まあ決闘に入ったのは1話からなので)

遊作は原作終了後ではなく、”ボーマン戦後、Aiが人間に反旗を翻さなかった場合”というIFルートという設定です。
理由としてはこの話を書いている時はまだヴレインズが完結していなかったのと、AiをAIのまま遊作と一緒にいさせたかったからです。ぶっちゃけどんな理由があっても敵にまわってほしくなかった……まあ劇場版仕様ってことでお願いします。


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邂逅
神の領域 ~遊戯と遊作~


くっそ長くなりました。
やっぱタッグは長くなるなぁ。
決闘中でも分けたほうがいいのかな?


『――――というわけで、見事初代決闘王(デュエルキング)となったのでした! どうだ? 面白かっただろ?』

 

 謎の世界の上空、広大な森の上をDボードで滑空するPlaymakerに講釈を終えたAiは満足げに笑い掛ける。だがPlaymakerは表情も視線も前を向けたまま変えなかった。

 

『何だよ! もうちょっと面白そうにしたらどうなんだよ!』

「”武藤 遊戯”ならば知っている。有名なゲームクリエイターにして初代決闘王だ。決闘者にとっては常識だ。だが――――」

 

 ここでようやくAiへと視線を向けるPlaymaker。だがそれはうさん臭いものを見る猜疑の目であった。

 

「お前が途中で挟んだ”古代エジプトのファラオの魂”だの”神のカード”だの、あれは一体何なんだ?」

『お、ちゃんと話を聞いていたようで先生嬉しいぞ! それは遊戯に纏わる”伝説”だ。本当のことらしいぞ!』

「AIの癖にそんなオカルトを信じているのか」

『お前こそ人間の癖に冷め過ぎだぞ! 確かに作り話かもしれないけどな、こういう”伝説の人物”には”伝説なオカルト”が付き物なんだって! そっちの方が面白いじゃんかよ!』

 

 このプリプリと怒った様子もそうだが、この次世代型AIはどうにも人間臭い。Ai以外にも炎のイグニス”不霊夢”、光のイグニス”ライトニング”も人間や他のAIから”人間らしい”という評価を受けている。

 人間らしく振舞うAiと不霊夢、友情と愛情に動かされたアクアとアース、内外の”身勝手な憎悪”に翻弄されて身を滅ぼしたウィンディとライトニング――――”人間を導く後継者”として生み出された彼らだが、学習の末に辿り着いた先が”人間らしさ”であったことは創造主である”鴻上博士”も予想できなかっただろう。

 

『こんな森一色でつまらないフライトだから面白い決闘者の話をしてやってるのに! よーしならとっておきの話をしてやる! 遊戯のライバル”海馬 瀬人”の話だ! 今のリンクヴレインズや新型決闘盤のシステムの原型である”パワー・ビジョン・システム”の開発者でもあったんだぞ! その試作テストには遊戯も協力してたんだぜ!』

「学校で習った。SOL社以上の規模を誇っていた”海馬コーポレーション”の社長だろう。現実での決闘に使うSVSもその社長の開発だ」

『んもー! 面白い話を面白くない奴に話すとこうなるのね! ……ん?』

 

 ふとAiが下を見ると、森が開けて広い草原地帯に出る。だがそこには奇妙な集団があった。

 

『何だありゃ? モンスターか?』

 

 その集団は人型だが体色は緑色で、とがった耳と牙を持つ見れば明らかに人外だと分かる姿をしていた。集団の全員が兜と革の胴鎧を身に着け、手に持った金棒を振り回しながら何かを追っている。追われているのは人間の少年であった。

 

「わぁ~!? 何でこんなことに!?」

 

 少年は人間だと分かるが非常に派手な見た目である。燃え立つような髪に紺色の学生服。更には首に逆三角錐の形をした黄金のペンダントをぶら下げている。周囲の風景からは明らかに浮いており、Aiから見ても狙ってくださいと言っているようにしか思えなかった。

 Playmakerもそれに気付いたのか高度を下げ、少年の側へと近づく。

 

「おい大丈夫か!」

「ええ!? 今度は何!?」

「掴まれ!」

 

 Playmakerが手を伸ばして叫ぶと、少年も手を伸ばして手を掴む。Playmakerは少年を引っ張り上げてDボードに同乗させると、低空を滑空してモンスターの集団から離れた。

 

『これ一人用だから長くは飛べないぞ!』

「解っている! 森の中へ飛び込むぞ」

「た、助かった……」

 

 

 

* * *

 

 

 

 何とかモンスターから逃れ、森の中で落ち着いたPlaymaker達。Dボードから降りてPlaymaker達と向き合った少年を見てAiが素っ頓狂な声を上げた。

 

『ああ~!? こいつはッ!?』

「わぁ!? な、何これ?」

 

 イグニスを見たことがない少年は驚いた様子でAiを見る。Aiも驚いた様子で少年をジロジロと見回した後、Playmakerの耳元に近づいた。

 

『Playmaker! こいつだよ! こいつが”武藤 遊戯”! 俺のデータと99%一致する!』

「何?」

 

 Playmakerの目の前に立つ少年は、小柄で優し気だがどこか頼りない雰囲気を纏っていた。遊戯についてはPlaymakerも知っているが、偉業だけでその姿形を把握しているわけではない。伝説として伝えられる決闘者と目の前の気弱そうな少年がどうしても結びつかなかった。

 

「馬鹿なことを言うな」

『嘘じゃねぇって! 俺のデータベースの画像と比較しても一緒なんだよ! 決闘盤だって最初期モデル! 首に提げてるのだって噂の”千年パズル”だ!』

「あ、あの~……」

 

 謎の物体と会話しているPlaymakerに、遊戯はおずおずと話しかける。

 

「助けてくれてありがとう。ダンジョンを出たまでは良かったんだけど、すぐにあの”ゴブリン突撃部隊”に見つかって追いかけられちゃって……あ、僕の名前は”武藤 遊戯”。君と……そっちの人形みたいなのは? 喋ってるけど……」

『ほら見ろ本物の遊戯だ!』

「黙っていろ。……俺の名はPlaymaker、お前に聞きたいことがある」

『こら! こう見えても遊戯は高校3年生なんだぞ! お前より年上なんだから敬えよ!』

「黙っていろ。……こいつはただのおしゃべりなAIだ。気にしなくていい」

「あ、うん……あと僕は高校2年生だよ」

『ありゃ? 俺のデータベースだと最後の記録が高3の時だったような……ちょい調べてみよ』

 

 AiはPlaymakerの決闘盤の中へと飛び込み、頭を少しだけ外に出す。

 

『遊戯! こいつ高1だからな! 舐められんなよ!』

 

 そう言ってAiは決闘盤の中へと引っ込んだ。

 

「最近のAIプログラムって凄いなぁ……さっきのハノイの騎士といい、凄い技術だ」

「ハノイだと!?」

 

 まさかのキーワードにPlaymakerは遊戯に詰め寄る。

 

「ハノイの騎士がここにいるのか! 何処にいた! まさかこの空間はハノイが――――」

「お、落ち着いて!?」

 

 遊戯はPlaymakerを宥めると、ここまでの経緯を話し始める。Playmakerと戻ってきたAiも遊戯にここまでの経緯を話し、情報を交換し合った。

 

『なあ、話聞く限り、そいつって俺らが会った時にお前が倒した奴じゃね?』

「君達も彼と決闘したことがあるの?」

『おうよ。でも今はそいつ、俺の腹の中のはずなんだがなぁ?』

「ええ!?」

「黙っていろ。……そいつが俺達の知るハノイだとは限らない。(そしてこいつも……)」

 

 Aiの話に興味深そうに頷いている遊戯に疑いの目を向けるPlaymaker。自分達と同じように強制的にこの世界へと連れてこられたと言うが、それが本当という証拠はない。先程の石島のようにこの世界の”黒幕”が用意した刺客かもしれない。

 

「(Aiは信じて疑わないようだが、ありえない……武藤 遊戯は何十年も前の人間だ。歴史の教科書にのるレベルの……)」

 

 本物の遊戯ならば生きていたとしてもかなりの高齢者のはずであり、目の前にいる同年代の少年であることはありえないのである。アバターの可能性も考えたが、高齢者の体では現実世界の体へ伝わるダメージに耐え切れない。偽物が扮していると考えるのが自然である。

 

「……もう知っていることは話したな。行くぞ」

『あ、おい待てよ! 遊戯を置いていくつもりか?』

 

 Dボードを呼び寄せようとしたPlaymakerに飛びつくAi。余程遊戯を気に入ったのか必死になってPlaymakerを引き留めようとする。

 

「お前は奴を信用しすぎだ」

『いや、確かに怪しいとこもあるけどなんて言うかな~……俺の本能が信じてもいいって……』

「…………」

『いやそんなどうしようもない奴を見るような視線を向けるなよ! 何て言ったらいいのか……俺の闇が囁くのよ~……みたいな?』

「ね、ねえ二人とも……あれ」

 

 遊戯が森の奥を指さす。何やら光が木々の間から漏れており、光の先の上空にも光の柱が天に向かって伸びている。

 

『おわ!? 何だありゃ?』

「(あれが例の”セントラル”か? ……手がかりも無い今、行くしかない)」

 

 Playmakerは迷わず光へと歩き出す。遊戯もそれに続いて歩き出した。

 

 

 

 * * *

 

 

 

 光に向かって歩き続けると、森の中の開けた平地に出る。光源は1枚のカードから放たれており、それを手に持った美男子がカードをデッキに戻すと光が収まる。

 

「やはり来たな決闘者」

「ふっ……」

 

 そこにいたのは、色白で長い銀髪の美男子と知的な雰囲気を纏う眼鏡を掛けた赤毛の青年の二人組。美男子は品のある優雅な立ち振る舞いを見せる男で、Playmaker達を静かに見つめている。青年の方は知的に見えるがそれだけではなく、マントの下から覗ける腕は非常に筋肉質でたくましい。柔らかな笑みを向けているがどこか冷たくもあり、それが異様な不気味さを感じさせる。

 

『何だ何だ! お前ら石島の仲間か?』

「君達の道は一つ。ここで我々と決闘を行い、勝って進むか負けて消えるかだ」

「逃げようとしても無駄ですよ。ここは”神の領域”。既に君達は神の掌の上にいる」

 

 Aiの言葉を無視して二人は決闘盤を構える。

 

『おいこら無視すんな! せめて名を名乗れい!』

「私の名は”ハラルド”。”ルーンの瞳”に選ばれし者にして”神のカード”の継承者」

「神のカードだって!?」

 

 驚きの声を上げたのは遊戯。彼にとって神のカードとは所有している”三幻神”のカードの事であり、自分以外に持っているはずがない。

 

「僕は”アモン・ガラム”。彼のパートナーを務めさせてもらう。まあ、脇役に徹するつもりはないがね」

 

 アモンはふっと笑みを浮かべて眼鏡の位置を直す。

 

「俺の名はPlaymaker! この決闘受けて立つ! 俺が勝った時、貴様らが知っていることを全て話してもらうぞ。それがこの世界のルールと聞いた」

 

 Playmakerは決闘盤を展開し、決闘場へと立つ。遊戯もPlaymakerの横に並び、決闘盤を展開して構えた。

 

「Playmaker君! 僕も一緒に戦うよ! どうしても僕自身が確かめなきゃいけないんだ!」

「お前が……?」

『お、良いぞ! 初代決闘王がパートナーなんて心強いぜPlaymaker!』

 

 Aiがはしゃぐが、Playmakerはその言葉に頷きもしない。まだ遊戯の事を疑っているようだ。

 

「(神のカードってことはもしかしてコピーカード? そんなものを使ったら大変なことになる! 絶対に止めなきゃ!)」

『(相棒)』

 

 ここで遊戯の内から声が響く。

 

『(ここは最初から俺に行かせてくれないか? あの決闘者二人からとてつもない力を感じる)』

「(もう一人の僕……)」

『(これはただの決闘にはならない。ここは俺の領分だ。相棒、任せてくれ)』

「(うん! 頼んだよもう一人の僕!)」

 

 遊戯は千年パズルに手をかざすと、眩い光に包まれる。

 

「これは!?」

『うおお!? こりゃまさか!?』

 

 隣にいたPlaymakerもAiも驚いて遊戯に向き直る。

 やがて光が収まると、そこには気弱な少年の面影の無い、強気で大胆不敵な少年が立っていた。

 

「俺は”武藤 遊戯”! この決闘、受けて立つぜ!」

「な、何だ……!?」

 

 これにはクールなPlaymakerも驚きを隠せない。小柄で頼りなかった少年が突然変貌を遂げたのである。堂々とした立ち振る舞い。鋭く威圧するような眼光。これはまさに――――

 

『”名もなきファラオ”! 決闘王の降臨じゃぁ~~~~!!!』

「どういうことだ?」

『これが遊戯の正体なんだよ! 決闘の時はめちゃくちゃ決闘の強いファラオの魂をその身に宿し、幾多の強敵達を葬ってきた伝説の決闘者……それが”武藤 遊戯”だ! この説明2回目!』

「ファラオの魂……」

 

 Aiの話を思わず信じそうになったPlaymaker。この変わり様は明らかに別人であり、何かが乗り移ったとしか言いようがないのだ。

 

「Playmaker、今は俺を信じて共に戦ってくれ。相手が本当に”神の使い手”ならば、俺達の結束無しでは勝つことはできない!」

「あ、ああ……」

「準備は整ったな? それではルールを説明する」

 

 役者が揃ったとみたハラルドは前に出てルールの説明を行う。

 これから行うのは”タッグフォースルール”による二対二のタッグ決闘。LPは二人で共通の8000ポイント。場・墓地・除外ゾーンはパートナーで共有し、ターンの開始時に交代で決闘場に立って決闘を行う。順番は遊戯、アモン、Playmaker、ハラルドの順。

 

「ファーストターンに決闘場に立つのは遊戯と私だ。前へ」

 

 遊戯とハラルドは場に立ち、デッキから手札を引き抜く。

 

「行くぜハラルド!」

「来い!」

 

 

 

「「 デュエル!!! 」

 

 

 

『さ~て! 決闘王様はどんな決闘を見せてくれるのかね?』

「俺のターン! 魔法カード《手札抹殺》! お互いに手札を全て捨て、捨てた分だけドローする!」

 

 遊戯 手札:4→0→4

 

捨てたカード

ブラック・マジシャン

クリアクリボー

狂戦士の魂

バフォメット

 

 ハラルド 手札:5→0→5

 

捨てたカード

極星天ヴァルキュリア

極星の輝き

極星宝ドラウプニル

極星宝メギンギョルズ

極星霊ドヴェルグ

 

「カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

遊戯

LP:8000

手札:1

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

魔法・罠

②セット

③セット

④セット

 

『ええ!? 手札交換までしたのにモンスター出さないのかよ!? 手札事故?』

 

 Aiが心配そうな顔で遊戯を見るが、遊戯は不敵な表情のままハラルドと入れ替わるアモンを見ている。

 

「僕のターン」

 

 アモン 手札:5→6

 

「魔法カード《闇の誘惑》を発動。カードを2枚ドローし、手札から闇属性1体を除外する。手札から除外できる闇属性が存在しない場合、私は手札を全て墓地へ送る」

 

 アモン 手札:5→7

 

「手札から闇属性《マッド・リローダー》を除外」

 

 アモン 手札:7→6

 

「魔法カード《儀式の下準備》を発動。デッキから儀式魔法1枚と、デッキ・墓地からその儀式魔法に対応する儀式モンスター1体を手札に加える。儀式モンスター《ゼラ》と儀式魔法《ゼラの儀式》を手札に」

 

 アモン 手札:5→7

 

「魔法カード《打ち出の小槌》を発動。手札を任意の数だけデッキに戻してシャッフル。戻した枚数だけドローする」

 

 アモン 手札:6→3→6

 

『おいおい何回手札交換するんだよ? そんなに手札悪いのか?』

 

 Aiがいぶかし気にアモンを見る。Playmakerも探るような目つきでアモンを見ていた。相変わらず余裕な態度なのは遊戯であり、一人で手札を入れ替え続けるアモンを見て何かを察したかのように鼻を鳴らす。

 

「魔法カード《星の金貨》を発動。自分の手札2枚を相手に渡し、その後カードを2枚ドローする」

 

 アモンは魔法を発動させると決闘場を横断し、遊戯の目の前までやってくる。そして手札を2枚選び、遊戯に渡そうとした瞬間――――

 

「お前の狙いは解ってるぜ」

「ほう」

「罠カード《マインドクラッシュ》! 俺はカードを1枚宣言し、そのカードが相手の手札にある場合、それを全て捨てさせる! 俺が宣言するのは……《封印されしエクゾディア》!」

 

 遊戯が宣言すると、笑みを浮かべていたアモンの表情がわずかに動く。アモンだけでなく、PlaymakerやAiも表情を変えた。

 

「エクゾディアだと……!?」

『エクゾディアって……問答無用で勝っちまう滅茶苦茶なカードだろ! でもあれってもう存在しないはずじゃ……』

 

 封印されしエクゾディア――――それは5枚一組のモンスターカードであり、それらを手札に揃えた瞬間ゲームに勝利するという幻のレアカードである。だがそれぞれ単体では弱小モンスターに過ぎず、並みの決闘者では手札に揃えることができずに決闘が終わってしまう。

 

『遊戯はそのエクゾディアの所有者で、それを揃えて海馬を打ち破ったことがあるんだよな。でもデータによるとエクゾディアは海にバラまかれちまって、もう存在してないはずなんだが……遊戯がそれを一番解ってるはずなのになんでエクゾディアを宣言するんだ?』

 

 Aiが首を傾げている中、アモンは手に取った2枚のカードを手札に戻すと、手札から2枚とは別の1枚を取り出して遊戯に見せる。

 

 

 封印されしエクゾディア

 

 

『ゲェーーーー!? マジであった!?』

「やはりな。アモン、まだ決闘は始まったばかりだぜ? 焦るなよ」

「……失礼した。確かにまだ全員のターンも回っていない。これは無粋なことだ」

 

 アモンは封印されしエクゾディアのカードを墓地に捨て、再び手札からカードを2枚取り出して遊戯に渡す。

 

 アモン 手札:5→4→2

 遊戯 手札:1→3

 

渡されたカード

ディープ・ダイバー

エア・サーキュレーター

 

「デッキから2枚ドロー」

 

 アモン 手札:2→4

 

 これでカードの効果処理が完了し、アモンは元の立ち位置に戻ると思われたが、アモンはその場で手札から魔法を発動する。

 

「速攻魔法《手札断殺》を発動。お互いに手札を2枚墓地へ送り、2枚ドローする」

 

 アモンは手札を2枚墓地へ送って2枚ドローし、遊戯は受け取ったカードを突き返して2枚ドローする。アモンは遊戯からカードを受け取って墓地へ送ると、踵を返して自分の立ち位置へと戻っていった。

 

 遊戯 手札:3→1→3

 アモン 手札:3→1→3

 

アモンの墓地へ送ったカード

封印されし者の右腕

封印されし者の左足

 

『ゲェェ!? 他のパーツまで!? マジでこのターンで揃える気だったのか!? ……だがこれでエクゾディア1キルは出来なくなったぜ! ザマー見ろ!』

「僕は墓地のモンスター全てをデッキに戻し、手札から《究極封印神エクゾディオス》を特殊召喚!」

 

 アモンの場に現れたのは一体の黒い魔神。古代エジプトの神話に登場しそうなその魔神は腕の筋肉を激しく隆起させ、咆哮を上げる。

 

 究極封印神エクゾディオス 闇属性 魔法使い族 レベル10 ATK:0

 

『何だこいつ!? 俺のデータの中にこんなやつの情報なんてないぞ!』

「エクゾディオスだと……!? こんなカード爺ちゃんにも聞いたことがない!」

 

 Aiどころか遊戯さえも知らない謎のモンスター。自身が対峙しているわけではないが、Playmakerは気を引き締める思いでエクゾディオスを睨みつける。

 

「これが僕の従える神だよ。フィールド魔法《神縛りの塚》を発動。このカードが存在する限り、レベル10以上のモンスターは効果対象にならず、効果では破壊されない……バトル! エクゾディオスでダイレクトアタック!」

「ダイレクトアタック? そいつの攻撃力じゃ――――」

「エクゾディオスの効果発動! 攻撃宣言時、デッキ・手札からモンスター1体を墓地へ送る。デッキから《封印されし者の右腕》を墓地へ送る」

 

究極封印神エクゾディオス ATK:0→1000

 

「攻撃力が上がった!?」

「エクゾディオスは墓地の通常モンスター1体につき攻撃力を1000上げる。さあ食らうがいい! 【天上の雷火 エクゾード・ブラスト】!」

 

 エクゾディオスが燃え盛る拳を地面に叩きつけると、炎の衝撃波が地を走って遊戯へと向かう。

 

「墓地の《クリアクリボー》を除外して効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、デッキから1枚ドローし、それがモンスターだった場合、特殊召喚して攻撃対象をそのモンスターに変更する! ドロー!」

 

引いたカード

クリボー

 

「《クリボー》を守備表示で特殊召喚!」

 

 遊戯の場にクリボーが現れ、雷火の前に飛び出す。

 

 クリボー 闇属性 悪魔族 レベル1 DEF:200

 

『おお! リンクリボーのご先祖様だぜ! 何を隠そう、実はサイバース族を創るときに参考にしたのが遊戯デッキなんだ!』

「(成程、こいつの信頼感はここから出ていたのか)」

 

 サイバース族はイグニスが戦いの手段として生み出したモンスターであり、Aiはそれに相応しい原型として選んだのが遊戯のカードということになる。用心深く計算高いAiのこと、入念に調べ上げ信頼における強さのデッキとして選んだのであろう。

 クリボーは雷火を受け消滅するが、その衝撃は弱まることなく遊戯へと直撃する。

 

「ぐああ!? くっ! 何故ダメージが……!」

 

 遊戯 LP:8000→7000

 

「神縛りの塚が存在する限り、レベル10以上のモンスターが相手モンスターを戦闘破壊し墓地へ送った場合、破壊されたモンスターのコントローラーは1000ポイントのダメージを受ける。僕はカードを伏せてターンエンド」

 

アモン

LP:8000

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③究極封印神エクゾディオス ATK:1000

魔法・罠

③セット

フィールド魔法

神縛りの塚

 

 

 遊戯は立ち位置から下がり、Playmakerに場・墓地・除外ゾーンのカードを手渡す。

 

「厄介な奴を残してすまないな。俺のカードは遠慮なく使ってくれ。頼んだぜ」

「ああ……”遊戯さん”、俺に任せてくれ」

 

 Playmakerは受け取ったカードをそれぞれのゾーンに移すと、遊戯に代わって決闘場に立つ。

 

『お! ようやく遊戯と認めたな!』

「俺のターン!」

 

 Playmaker 手札:5→6

 

『さあPlaymaker! 神つっても攻撃力はたったの1000! それに上げられるタイミングも限られてると来た! さっさとぶっ倒してやろうぜ!』

「《クロック・ワイバーン》を召喚!」

 

 Playmakerの場に紫の水晶を体に埋め込んだ飛竜が現れる。

 

 クロック・ワイバーン 風属性 サイバース族 ATK:1800

 

「クロック・ワイバーンの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、攻撃力を半分にすることで《クロック・トークン》を1体特殊召喚する!」

 

 クロック・ワイバーンが咆哮を上げると、その隣に紫の水晶体が現れる。

 

 クロック・ワイバーン ATK:1800→900

 クロック・トークン 風属性 サイバース族 DEF:0

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル4以下のサイバース族1体”! クロック・ワイバーンをリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”下”に位置するリンクマーカーにクロック・ワイバーンが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-1《リンク・ディサイプル》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中からリンク・ディサイプルが現れPlaymakerの場に降り立つ。

 

 リンク・ディサイプル 光属性 サイバース族 LINK-1(下) ATK:500

 

「リンク召喚……シンクロ召喚とも違う。新たなる召喚法か」

『え? 今なんて言いました?』

 

 遊戯が漏らした言葉にAiが反応する。

 

「リンク召喚はお前達がいた所での召喚法なのか? 遊星の時代にシンクロ召喚があったように」

『(うえ~そうだった! この人決闘の歴史から見れば”原始人”だったんだわ! シンクロは知ってるみたいだけど、リンク召喚を知らないなんてヤバイぜ。あとユーセーって誰? マイフレンド?)』

 

 Aiは狼狽えた様子でPlaymakarの耳元に近づく。

 

『おい、俺不安になってきちゃったよ。あの人がパートナーで大丈夫かね?』

「例え過去の決闘者でも、強者は強者だ」

『ええ~……っていうか俺とPlaymakarの意見逆転してね?』

「再び現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル4以下のサイバース族1体”! クロック・トークンをリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上”に位置するリンクマーカーにクロック・ワイバーンが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-1《リンク・ディヴォーティー》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは複数のユニットが集まってできたロボット。リンク・ディサイプルを補助するように後ろへ降り立つ。

 

 リンク・ディヴォーティー 地属性 サイバース族 LINK-1(上) ATK:500

 相互リンク:リンク・ディヴォーティー(上)↔リンク・ディサイプル(下)

 

「リンク・ディサイプルの効果発動! リンク先のモンスターをリリースすることでデッキから1枚ドローする! リンク・ディヴォーティーをリリース!」

 

 リンク・ディヴォーティーが消滅すると同時にPlaymakarがカードをドローする。

 

 Playmakar 手札:5→6

 

「そして手札1枚をデッキボトムへ戻す!」

 

 Playmakar 手札:6→5

 

「リリースされたリンク・ディヴォーティーの効果発動! 《リンク・トークン》を2体特殊召喚!」

 

 ディヴォーティーが消えた後にディヴォーティーを構成していたユニットの二つが場に現れる。

 

 リンク・トークン×2 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 

「現れろ未来を導くサーキット! 召喚条件は”サイバース族2体”! リンク・ディサイプルとリンク・トークンをリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”下、右下”に位置するリンクマーカーに2体のサイバースが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-2《クロック・スパルトイ》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは水晶の鎧を纏ったサイバースの戦士。手に持った槍を振り回しながら場に降り立つ。

 

 クロック・スパルトイ 闇属性 サイバース族 LINK-2(下、右下) ATK:800

 

「クロック・スパルトイの効果発動! リンク召喚に成功した場合、デッキから《サイバネット・フュージョン》を手札に加える!」

 

 Playmakar 手札:5→6

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル1モンスター1体”! レベル1の《リンク・トークン》をリンクマーカーにセット!」

 

 Playmakerの場に再びアローヘッドが現れると、リンク・トークンが光の風となってアローヘッド内の”下”に位置するリンクマーカーに飛び込みマーカーを点灯させる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-1《リンクリボー》!」

 

 アローヘッドがゲートとなり、中からリンクリボーが飛び出す。

 

『クリクリンク~!』

『おっしゃ! ご先祖様の仇を討つぞリンクリボー!』

 

 リンクリボー 闇属性 サイバース族 LINK-1(下) ATK:300

 クロック・スパルトイリンク先:リンクリボー(下)

 

「クロック・スパルトイの効果発動! リンク先にモンスターが特殊召喚された場合、墓地からレベル4以下のサイバース族1体の効果を無効にして特殊召喚する! 戻れ《クロック・ワイバーン》!」

 

 再びPlaymakerの場にクロック・ワイバーンが現れる。

 

 クロック・ワイバーン 風属性 サイバース族 ATK:1800

 

「何という戦術だ……モンスターが波のように消えては現れる! これがリンク召喚か!」

『これが今時流行りのリンク召喚! だが驚くのはまだ早いぜ決闘王!』

「魔法カード《サイバネット・フュージョン》発動! 手札・場から素材を墓地へ送り、サイバース族1体を融合召喚する! 場の《クロック・ワイバーン》、《クロック・スパルトイ》、《リンクリボー》を融合!」

 

 Playmakerの場のサイバースが光の粒子となって混ざり合う。混ざり合った3色の粒子は形を成し、1体のドラゴンとなる。

 

「今、雄大なる翼のもとに集いし兵たちよ、新たなる伝説となれ! 融合召喚! 出でよ《サイバース・クロック・ドラゴン》!」

 

 現れたドラゴンの体には紫の水晶が埋め込まれており、そこから大量のエネルギーが放出される。これこそがPlaymakerの融合モンスターにして力の化身、”サイバース・クロック・ドラゴン”である。

 

  サイバース・クロック・ドラゴン 闇属性 サイバース族 レベル7 ATK:2500

 

「サイバース・クロック・ドラゴンの効果発動! 融合召喚に成功した場合、素材のリンクマーカーの合計分だけデッキトップからカードを墓地へ送る! 素材となったリンクモンスターのリンクマーカーの合計は3つ! よってデッキトップから3枚墓地へ送る!」

 

墓地へ送ったカード

フリック・クラウン

デュアル・アセンブルム

ビットロン

 

「そして墓地へ送った枚数分、攻撃力を1000アップする!」

 

 サイバース・クロック・ドラゴン ATK:2500→5500

 

「バトル! サイバース・クロック・ドラゴンでエクゾディオスを攻撃! 【パルスプレッシャー】!」

 

 Playmakerの号令に従い、サイバース・クロック・ドラゴンが水晶のエネルギーを集中させる。これが決まれば神は倒され、大ダメージを受けると言うのにアモンの表情は穏やかであった。

 

「罠カード《針虫の巣窟》を発動。自分のデッキトップからカードを5枚墓地へ送る」

『え、何でそんなこと……あ! 通常モンスターを墓地に送ってエクゾディオスを強化する気だな! やべぇぞ!』

「狼狽えるな。クロック・ドラゴンを上回るには5体の通常モンスターが必要だ」

『そ、そっか! 墓地に送るカード全部が通常モンスターじゃなきゃいけない! とんでもなく低い確率! 気休めだ!』

「ふふ……」

 

 罠の発動を大したことのない足掻きとみなしたPlaymaker達を鼻で笑うアモン。そこには確かな”嘲り”の色が見えた。

 

『何が可笑しいんだよ!』

「人が王となるのも、神を従えるのも、偶然が招くものではない。その者が生まれながらにして”王”であるから王となる」

『はぁ? なんだこいつ……』

 

 意味の解らぬ理屈に首を傾げるAi。アモンはデッキトップから5枚抜き取りカードを確認する。

 

「君達と僕では勝負にならないのだよ。この通りにな」

 

墓地へ送られたカード

封印されし者の右足

雲魔物-スモークボール

封印されし者の左腕

雲魔物-スモークボール

封印されし者の左足

 

  究極封印神エクゾディオス ATK:1000→6000

 

「馬鹿な!?」

『インチキだろ! こんなの、こんなの……!?』

「インチキでないことはAIである君が一番解っているのではないか?」

『くうっ!? ちくしょう……』

 

 決闘中おしゃべりばかりしていると見えるAiだが、実際は常に決闘盤のシステムにリンクしてカードやデータの動きを見張っている。だからアモンがシステムに干渉するようなイカサマをしていないことはAiにも解っていた。

 

「さて、それでは……消えろ虫けら!!!」

 

 サイバース・クロック・ドラゴンがブレスを放とうとした瞬間、エクゾディオスが凄まじいスピードで拳から雷火を放ち、サイバース・クロック・ドラゴンを消し飛ばす。

 

「うわぁぁぁ!?」

『サイバース・クロック・ドラゴンが……戦闘で押し負けたことなんてなかったのによ!』

 

 Playmaker LP:7000→6500→5500

 

 驚異的な戦闘能力を誇るサイバース・クロック・ドラゴンさえも凌駕する――――ここで初めてPlaymakerとAiは神の力を思い知る。

 

『こ、今度ばかりは本当にやべぇぞPlaymaker!』

「狼狽えるなと言っている! ……カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

Playmaker

LP:6500

手札:4

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

魔法・罠

①セット(Playmaker)

②セット(遊戯)

③セット(Playmaker)

④セット(遊戯)

 

 Playmakerがターンを終了させると、アモンが後ろに下がってカードをハラルドに渡す。

 

「大したことは無い。後は頼みましたよ」

「私は私で見極めることにしよう」

 

 カードを受け取ったハラルドは自分の決闘盤にカードを配置し、決闘場に立つ。

 

「”星界の三極神”、その力を見せてやろう! 私のターン!」

 

 ハラルド 手札:5→6

 

「チューナーモンスター《極星天ヴァナディース》を召喚!」

 

 ハラルドの場に鎌を腰に提げた女天使が現れる。

 

 極星天ヴァナディース 闇属性 天使族 レベル4 ATK:1200

 

「魔法カード《二重召喚(デュアルサモン)》! もう一度通常召喚を行う! 《極星霊リョースアールヴ》を召喚!」

 

 続けてハラルドの場に青い少年のような姿をした精霊が現れる。

 

 極星霊リョースアールヴ 光属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1400

 

「リョースアールヴの効果発動! 召喚に成功した時、自分の場のモンスター1体を選択する。そして選択したモンスターのレベル以下の”極星”モンスター1体を手札から特殊召喚する! 選択するのはレベル4の《極星天ヴァナディース》! 手札からレベル2の《極星天ミーミル》を特殊召喚!」

 

 今度は杖を持った老天使が現れる。

 

 極星天ミーミル 闇属性 天使族 レベル2 ATK:600

 

「レベル2《極星天ミーミル》とレベル4《極星霊リョースアールヴ》にレベル4《極星天ヴァナディース》をチューニング!」

 

 ヴァナディースが自身を4つの光輪へと変化させると極星2体を囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「北辰の空にありて全知全能を司る皇よ! 今こそ星界の神々を束ね、その威光を示せ! シンクロ召喚!」

 

 光の柱が消えると、ハラルド達の遥か後方に巨大な老人が現れ場を見下ろす。これこそが北欧に伝わる三神の一柱にして、それを統べる最高神――――

 

「天地神明を統べよ! 最高神《極神聖帝オーディン》!」

 

 最高神オーディンはマントを翻し、義眼ではない方の眼を薄く開け、手に持った槍を振り上げると同時に凄まじいプレッシャーで場を抑え付けた。

 

 極神聖帝オーディン 光属性 天使族 レベル10 ATK:4000

 

「こんなカードが存在するのか……!?」

『神のカード……神のカードだぁ……? そんなのな! 遊戯だって持ってんだよ! なあ遊戯!』

「確かにそうだが……俺の知っている神とは違うな。どんな力を持っているのか……」

『複数いるのか!? くそ! ……Playmaker! すまねぇが神のカードは徹底的な程の情報規制が布かれててな、詳しくは俺も調べられなかったんだ! そこらに転がってるのは眉唾の噂話ばっかだし……』

「俺の知っている神とは違うが、このプレッシャーは間違いなく本物の神だ。Playmaker、気を付けろ!」

「ああ!」

 

 Playmakerは神に対して臆さず、決闘盤を構えなおす。

 

「オーディンの効果発動! このカードはターン終了時まで魔法・罠の効果を受けない! 〈インフルエンス・オブ・ルーン〉!」

 

 オーディンが何かの呪文を唱えると、オーディンの体が魔力の膜に覆われる。

 

「バトルだ! オーディンでダイレクトアタック! 【ヘヴンズ・ジャッジメント】!」

 

 オーディンが手に持った槍を構えると、Playmakerに向かって槍先を振り下ろす。

 

『魔法・罠が効かないだぁ!? これじゃ伏せた罠で迎撃できないぞPlaymaker!』

 

 焦るAiに、Playmakerは既に防御の構えを見せている。神の一撃を受け切るつもりのようだ。

 

「神縛りの塚もある。もはや神に小細工は通用しない! 神罰を受けよ!」

 

 オーディンの槍先がPlaymakerの目の前の地面を抉る。その衝撃にPlaymakerは吹き飛ばされる。

 

「うわぁぁぁーーーー!?」

 

 Playmaker LP:5500→1500

 

『Playmakerーーーー!!!』

「Playmaker!!!」

 

 吹き飛ぶPlaymakerを遊戯が体を張って受ける。意外に筋肉質な体の遊戯だが体格に優れている訳ではない。支え切れずに共に後方へと倒れる。

 

「これで終わりか? 最後の瞬間まで、君達の力を見せてみろ! エクゾディオスで攻撃! 効果でデッキからモンスターを墓地へ送る!」

 

墓地へ送ったカード

デュナミス・ヴァルキリア(通常モンスター)

 

 究極封印神エクゾディオス ATK:6000→7000

 

『ウワァ!? さらに攻撃力が上がった!? Playmaker! 起きろ! 起きてくれ!』

 

 神の一撃はダメージ以上にPlaymakerへと響いた。先に立ち上がった遊戯に縋りついて何とか立ち上がろうと力を込める。

 

「頑張れPlaymaker!!! 君は神に負けやしない! 立つんだ! 立ってカードを取れ!」

 

 拳を振り上げるエクゾディオス。Playmakerは遊戯から手を放し、決闘盤に触れる。

 

「ト……罠カード《カウンター・ゲート》! 直接攻撃を無効にし、1枚ドロー!」

 

 Playmaker 手札:4→5

 

 Playmakerが罠を発動させると、エクゾディオスは動きを止めて沈黙する。神縛りの塚が防ぐのは効果対象と破壊のみ。オーディンの様に万能な耐性を持たないエクゾディオスの隙を突いてPlaymakerはこのターンを凌いで見せたのだ。

 

「引いたカードがモンスターだった場合、通常召喚できる……《サイバース・ガジェット》を召喚!」

 

 Playmakerの場にサイバース・ガジェットが現れる。

 

 サイバース・ガジェット 光属性 サイバース族 レベル4 ATK:1400

 

「サイバース・ガジェットの効果発動! 墓地からレベル2以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する! 来い《ビットロン》!」

 

 続けてPlaymakerの場にビットロンが現れる。

 

 ビットロン 地属性 サイバース族 レベル2 DEF:2000

 

「ほう……追い詰められても闘志を失わず、場を整えるか。面白い。永続魔法《強欲なカケラ》を発動。カードを伏せてターンエンド!」

 

ハラルド

LP:8000

手札:0

EXモンスター

②:極神聖帝オーディン ATK:4000

④:

メインモンスター

③究極封印神エクゾディオス ATK:7000

魔法・罠

③セット(ハラルド)

④強欲なカケラ

フィールド魔法

神縛りの塚

 

 Playmakerは痛む体を動かし、遊戯の前まで歩く。

 

『よく凌いだなPlaymaker!』

「すまない遊戯さん……神を倒すことができなかった……!」

 

 Aiの言葉に反応せず、悔しさを滲ませた表情でPlaymakerは遊戯にカードを差し出す。

 

「Playmaker、君が繋いでくれたこのチャンス、決して無駄にはしない! 俺に任せてくれ!」

 

 カードを受け取り、決闘盤に配置して遊戯は決闘場へと赴く。Aiはその背中を見送りながら緊張を解いたかのように息を付いた。

 

『この絶体絶命をチャンスと言いますか~……言うこと違うねぇ~』

「(遊戯さん……神を相手にどう出る気だ?)」

「俺のターン!」

 

 遊戯 手札:3→4

 

「魔法カード《デビルズ・サンクチュアリ》! 俺の場に《メタルデビル・トークン》1体を特殊召喚するぜ!」

 

 遊戯の場に液体金属の体を持つ悪魔が現れる。

 

 メタルデビル・トークン 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:0

 

「……Playmaker! モンスターを借りるぜ!」

「あ、ああ……だが何を――――!?」

 

 この瞬間、空気が震える。只ならぬ雰囲気とプレッシャー、これは先の神達が現れた時にもあったが、今回は少し違う。空間の感覚は同じ、だがそれと同等のプレッシャーが遊戯からも放たれているのである。

 

「(何だ? これは……遊戯さん?)」

『Playmaker! 遊戯が神を出すぞ!』

「何!?」

『詳しくは分かんなかったが、これだけは確かなんだ! 遊戯は”神のカード”を持っている!』

「神のカード……」

 

 やがて空が雲に覆われる。雷鳴が轟き、風が吹き荒れる。

 

「行くぜ! 《サイバース・ガジェット》! 《ビットロン》! 《メタルデビル・トークン》! 3体を生贄に捧げ、神を召喚する!」

 

 遊戯の場の3体のモンスターが光となって天に上り、雲を割って青い光が決闘場へと舞い降りる。

 

「現れよ! 《オベリスクの巨神兵》!!!」

 

 光の中から現れたのは禍々しく猛々しい青の巨神。それは全てを滅ぼす破壊の神。それは王国を守る守護の神。使役者次第で悪魔にも救世主にも変わる”力の権化”。これこそが古代エジプトに君臨する”三幻神”が一柱、”オベリスクの巨神兵”である。

 

 オベリスクの巨神兵 神属性 幻神獣族 レベル10 ATK:4000

 

『あ、あわわわ……これが遊戯の神か!? 一番おっかない顔してるぞ!』

「神のカード……ッ!? 遊戯さん! サイバース・ガジェットの効果を!」

 

 神の登場により気を取られていたPlaymakerは慌てて遊戯に自身のモンスターの能力を説明する。

 

「解ったぜ! サイバース・ガジェットの効果発動! 《ガジェット・トークン》1体を特殊召喚する!」

 

 遊戯の場にガジェット・トークンが現れるが、隣の神の存在感が凄まじく、今にも消し飛んでしまいそうに見えた。

 

 ガジェット・トークン 光属性 サイバース族 レベル2 DEF:0

 

「これがそちらの神か……だが攻撃力はオーディンと互角。こちらの神は2体。君が不利なのは変わりないと思うが?」

 

 ハラルドの言葉に遊戯は不敵に笑うのみ。

 オベリスクもレベル10モンスターであるので神縛りの塚の効果を受けられる。神同士での戦いで雌雄が決するには戦闘による破壊がもっとも近道であるのだが、ハラルドの場には攻撃力7000のエクゾディオスが存在する。破壊を得意とするオベリスクの能力を活かせぬ今の状況は、ハラルドの言う通り遊戯にとっては限りなく不利である。

 

「フン! 決闘の勝敗を決めるのは神じゃないぜ」

「何?」

「教えてやる、神との闘い方を! バトルだ! オベリスクでオーディンを攻撃! 【ゴッド・ハンド・クラッシャー】!!!」

 

 オベリスクは遠くにそびえ立つオーディンを討つため右拳を引く。オーディンはそれを制する為に槍をオベリスクに向かって突き出す。オベリスクは迫る槍に向かって拳を突き出し槍と撃ち合うと、槍に亀裂が走り、それはオーディンの体にまで達してオーディン本体を粉砕する。オベリスクは拳を下げた後、体中に亀裂が入りそのまま崩れ去ってしまった。

 

「オーディンと相打ちを狙ったか。だが残念ながらオーディンは不死身の神だ。このエンドフェイズ時に復活できる。君の神の負けだ」

「決闘をしているのは神じゃない。俺とお前だ! 俺の決闘が神を砕く! 行くぜ!」

 

 遊戯は伏せカードの一つを開く。

 

「罠カード《ファイナル・ギアス》! 元々のレベルが7以上のモンスターが自分と相手の場からそれぞれ1体以上墓地へ送られたターン、お互いの墓地のモンスターを全て除外する!」

「墓地のモンスター……しまった!? 墓地のオーディンが!?」

「墓地のモンスターを除外だと……!?」

 

 ハラルドとアモンは遊戯の逆転の一手に驚愕する。ハラルドは自らの神を除去されたことに驚くが、アモンは別の結果に驚いていた。

 

「墓地のモンスターがいなくなれば、エクゾディオスの攻撃力が……!?」

 

 究極封印神エクゾディオス ATK:7000→0

 

「ファイナル・ギアスの更なる効果! 除外したカードの中でレベルが一番高い魔法使い族を自分の場に特殊召喚する! 現れよ我が最強の僕! 《ブラック・マジシャン》!」

 

 神が激突した跡地に魔法陣が現れ、そこからブラック・マジシャンが飛び出す。

 

 ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

「今はまだバトルフェイズの最中! ブラック・マジシャンは攻撃が可能だ! エクゾディオスを攻撃! 【ブラック・マジック】!」

 

 ブラック・マジシャンが杖から黒い波動を放ち、エクゾディオスを粉砕する。

 

「ぐうう!? ……エクゾディオスは場から離れた場合、除外される」

 

 ハラルド LP:8000→5500

 

「ターンエンドだ!」

 

遊戯

LP:1500

手札:2

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

②ガジェット・トークン DEF:0

③ブラック・マジシャン ATK:2500

魔法・罠

②セット(遊戯)

③セット(Playmaker)

 

『すげぇ……逆転しちまいやがった』

「これが”決闘王”の実力か……」

 

 遊戯の見事な逆転劇に感嘆するPlaymaker達。ハラルドは後方に下がり、アモンにカードを渡す。

 

「まさか2体の神を同時に葬られるなどと、”ルーンの瞳”を持ってしても見通せなかった」

「こちらの方は甘く見ない方がいいのかもしれませんね。カードを使わせてもらいますよ」

 

 アモンはハラルドからカードを受け取り、配置して決闘場に立つ。

 

「僕のターン」

 

 アモン 手札:0→1

 

「強欲なカケラの効果発動。強欲カウンターを1つ乗せる」

 

 強欲なカケラ 強欲カウンター:0→1

 

「カードを伏せ、伏せてある魔法カード《命削りの宝札》を発動。このターン特殊召喚を行わない代わりに、手札が3枚になるようにドローする」

 

 アモン 手札:0→3

 

「《終焉の精霊(ジ・エンド・スピリッツ)》を召喚!」

 

 アモンの場に邪悪な気を放つ悪魔の精霊が現れる。

 

 終焉の精霊 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:?

 

「このカードの攻守は除外されている闇属性の数によって決まる。1体につき300ポイント加算される」

 

除外されている闇属性

バフォメット

マッド・リローダー

封印されし者の右腕

クリボー

クロック・スパルトイ

リンクリボー

フリック・クラウン

デュアル・アセンブルム

サイバース・クロック・ドラゴン

封印されし者の右足

封印されし者の左腕

封印されし者の左足

極星天ヴァナディース

極星天ミーミル

究極封印神エクゾディオス

 

計15体

 

 終焉の精霊 ATK:?→4500

 

「だが命削りの宝札を発動したターン、相手へのダメージは0となるぜ。幾ら攻撃力が高くても俺にダメージは与えらえれない」

「十分だよ。終焉の精霊に装備魔法《モルトシュラーク》を装備し、ブラック・マジシャンを攻撃!」

 

 終焉の精霊は体から黒い霧を噴出すると、ブラック・マジシャンを霧で包み込む。霧に包まれたブラック・マジシャンは苦しみだし、そのまま消滅してしまった。

 

「ブラック・マジシャン!?」

「退けたとはいえ、神の脅威は君達に焼き付いている。神レベルの攻撃力のモンスターが現れたことで受けるプレッシャーは相当なものだ。特に……後ろの彼はね」

 

 アモンが遊戯の後ろのPlaymakerを見やる。Playmakerは神の一撃を直接受けたばかりであり、痛みに対する恐怖は焼き付いているはず。だが、Playmakerは臆した様子は見せずにアモンを睨み返していた。

 

「Playmakerを侮るなよ。彼は決して恐怖に屈したりはしない!」

「フッ……カードを伏せてターンエンド」

 

アモン

LP:5500

手札:0

EXモンスター

②:

④:

メインモンスター

③終焉の精霊 ATK:4500

魔法・罠

②モルトシュラーク 装備:終焉の精霊

③セット(アモン)

④強欲なカケラ 強欲カウンター:1

⑤セット(アモン)

フィールド魔法

神縛りの塚

 

 遊戯は後方に下がり、Playmakerにカードを差し出す。

 

「神を倒されても、奴らの闘志は消えてないようだ。君もそうだな?」

「ああ!」

「よし! 任せたぜ!」

 

 Playmakerは遊戯からカードを受け取り、配置して前に出る。

 

『挽回と行こうぜPlaymaker!』

「俺のターン!」

 

 Playmaker 手札:4→5

 

「《リンク・ストリーマー》を召喚!」

 

 Playmakerの場に鳥のような姿をした人工衛星が現れる。

 

 リンク・ストリーマー 光属性 サイバース族 レベル4 ATK:1600

 

「永続魔法《サイバネット・オプティマイズ》発動! もう一度サイバース族を召喚する! 《フレイム・バッファロー》を召喚! 更にリンク・ストリーマーの効果発動! サイバース族の召喚・特殊召喚に成功した時、《データトークン》1体を特殊召喚する!」

 

 続けてフレイム・バッファローが現れる。この瞬間、リンク・ストリーマーが機体から小さなロボットを放出する。

 

 フレイム・バッファロー 炎属性 サイバース族 レベル3 ATK:1400

 データトークン 光属性 サイバース族 レベル1 DEF:0

 

「現れろ未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”モンスター3体”! 《ガジェット・トークン》、《データトークン》、《フレイム・バッファロー》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”右、左、左下”に位置するリンクマーカーにサイバース達が光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-3《パワーコード・トーカー》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのはサイバースの赤い闘士パワーコード・トーカー。雄叫びを上げ、拳を敵に向けて突き出す。

 

 パワーコード・トーカー 炎属性 サイバース族 LINK-3(右、左、左下) ATK:2300

 パワーコード・トーカーリンク先:リンク・ストリーマー(左下)

 

「フレイム・バッファローの効果発動! このカードが場から離れた場合、手札のサイバース族1体を捨て、2枚ドローする!」

 

 Playmaker 手札:2→1→3

 

「捨てたカードは《ドットスケーパー》! 墓地に送られた場合、特殊召喚できる!」

 

 続けてドットスケーパーが場に現れる。

 

 ドットスケーパー 地属性 サイバース族 レベル1 DEF:2100

 

「パワーコード・トーカーの効果発動! 終焉の精霊の効果を無効にする! 〈ワイヤー・リストラクション〉!」

「残念だがモルトシュラークを装備したモンスターは特殊召喚された相手モンスターが発動した効果を受けない」

 

 パワーコード・トーカーが左腕にアンカーを装着して終焉の精霊に向かって射出するが、終焉の精霊は姿を自在に変形させてアンカーを避けてしまう。

 

「終焉の精霊の効果を無効にすれば攻撃力は0となる。それで戦闘による破壊を狙ったのだろうが、甘かったな」

「ならば……再び現れよ、未来を導くサーキット! アローヘッド確認! 召喚条件は”効果モンスター2体以上”! 《パワーコード・トーカー》、《ドットスケーパー》、そして手札の《コード・エクスポーター》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”上、右、下”に位置するリンクマーカーに手札と場のサイバース達が光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 現れろLINK-3《トランスコード・トーカー》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのはサイバースの黄土の銃士トランスコード・トーカー。唸り声を上げ、敵に対して構える。

 

 トランスコード・トーカー 地属性 サイバース族 LINK-3(上、右、下) ATK:2300

 

「素材としたコード・エクスポーターはサイバース族のみで”コード・トーカー”をリンク召喚する場合、手札からこのカードを素材にできる。そして手札から素材となった場合、墓地のレベル4以下のサイバース族1体を手札に加える! 《フレイム・バッファロー》を手札に!」

 

 Playmaker 手札:2→3

 

「トランスコード・トーカーの効果発動! LINK-3以下のサイバース族リンクモンスター1体をこのカードのリンク先に特殊召喚する! 戻れ《パワーコード・トーカー》!」

 

 トランスコード・トーカーの背後にパワーコード・トーカーが現れ、再びアンカーを構える。

 

 パワーコード・トーカー 炎属性 サイバース族 LINK-3(右、左、左下) ATK:2300

 パワーコード・トーカーリンク先:リンク・ストリーマー(左)

 トランスコード・トーカーリンク先:パワーコード・トーカー(下)

 

「モンスターを増やしたか。だがそれでどうなると――――」

「バトルだ! パワーコード・トーカーで終焉の精霊を攻撃!」

「何!?」

 

 パワーコード・トーカーはアンカーを素早く引き戻すと、終焉の精霊に向かって突進する。

 

「効果の無効化に失敗したのに攻撃してくるのか!?」

「パワーコード・トーカーの更なる効果発動! リンク先のモンスター1体をリリースし、ダメージ計算時のみ攻撃力を元々の攻撃力の倍の数値にする! リンク先の《リンク・ストリーマー》をリリース!」

 

 リンク・ストリーマーが消滅すると、パワーコード・トーカーの拳が炎を纏う。

 

 パワーコード・トーカー ATK:2300→4600

 

「神の領域に踏み込んでくるか……!」

『そいつに効果つかわなけりゃいいんだろ! やれーパワーコード・トーカー!』

「罠カード――――何!?」

 

 アモンが伏せカードを発動させようとするが、開きかけたカードに電流が走り、再び場に伏せられてしまう。

 

「サイバネット・オプティマイズが場に存在する限り、”コード・トーカー”モンスターが戦闘を行うダメージステップ終了時までカード効果を発動できない! 【パワーターミネーションスマッシュ】!」

 

 パワーコード・トーカーは逃げようとする終焉の精霊を追い、右拳でその体を貫く。貫かれた終焉の精霊はそのまま爆発して消滅した。

 

「くっ……!」

 

 アモン LP:5500→5400

 

『終焉の精霊、爆殺! ってか? 唸る拳は神をも砕く! 覚えて置きやがれ!』

「トランスコード・トーカーでダイレクトアタック! 【トランスコード・フィニッシュ】!」

 

 トランスコード・トーカーが背中のパーツを変形させて銃へと変えると、アモンに向けて射撃する。

 

「ぐうっ!? ……今のは神ではないが、どうやら君達の評価を改めなければならないようだな。破壊され墓地へ送られた終焉の精霊の効果により、除外されている闇属性を全て墓地に戻す」

 

 アモン LP:5400→3100

 

「カードを伏せ、ターンエンド!」

 

Playmaker

LP:1500

手札:2

EXモンスター

②:

④:トランスコード・トーカー ATK:2300 リンク先:パワーコード・トーカー(下)

メインモンスター

④パワーコード・トーカー ATK:4600→2300 

魔法・罠

①セット(Playmaker)

②セット(遊戯)

③セット(Playmaker)

④サイバネット・オプティマイズ

 

 アモンは後方へと下がり、ハラルドにカードを手渡す。

 

「戦意を挫いてやろうと思ったが、逆に勢いづかせてしまった」

「心配ない。こちらにはまだ神がいるのだからな」

 

 ハラルドは受け取ったカードを配置すると、決闘場へと赴く。

 

「その闘志は見事、だが神の脅威は続くぞ! 私のターン!」

 

 ハラルド 手札:0→1

 

「強欲なカケラの効果により強欲カウンターを1つ乗せる。そして強欲カウンターが2つ乗ったこのカードを墓地へ送り、2枚ドローする」

 

 ハラルド 手札:1→3

 

「アモンが伏せた罠カード《強欲な瓶》を発動。カードを1枚ドローする」

 

 ハラルド 手札:3→4

 

「魔法カード《ハーピィの羽根帚》を発動! 相手の場の魔法・罠を全て破壊する!」

「ならばこちらも伏せカードを2枚発動! 速攻魔法《非常食》! そして罠カード《リコーデッド・アライブ》! リコーデッド・アライブの効果により場のLINK-3サイバース族リンクモンスター《パワーコード・トーカー》を除外し、EXデッキから《エンコード・トーカー》を特殊召喚!」

 

 Playmakerの場にアローヘッドのゲートが現れて開き、パワーコード・トーカーがその中へと飛び込む。そして入れ替わりでサイバースの白い騎士、エンコード・トーカーがゲートから飛び出す。

 

 エンコード・トーカー 光属性 サイバース族 LINK-3(上、下、右下) ATK:2300

 相互リンク:エンコード・トーカー(上)↔トランスコード・トーカー(下)

 

「そして非常食の効果により、俺の場のこのカードを除く全ての魔法・罠を墓地へ送り、1枚につき1000ポイントLPを回復する!」

 

墓地に送ったカード

サイバネット・オプティマイズ

リコーデッド・アライブ

マジシャンズ・ナビゲート

 

 Playmaker LP:1500→4500

 

 Playmaker側の処理が全て終了した瞬間、突風が吹き荒れ、非常食のカードを吹き飛ばす。

 

「トランスコード・トーカーのモンスター効果! 相互リンク状態の場合、このカードと相互リンク先のモンスターは攻撃力が500アップし、効果対象にならない!」

 

 エンコード・トーカー ATK:2300→2800

 トランスコード・トーカー ATK:2300→2800

 

「一瞬で場を固めるとはな……ならば《レスキューキャット》を召喚!」

 

 ハラルドの場に工事用ヘルメットを被った可愛らしい猫が現れる。

 

 レスキューキャット 地属性 獣族 レベル4 ATK:300

 

「レスキューキャットの効果発動! このカードを墓地へ送り、デッキからレベル3以下の獣族2体の効果を無効にして特殊召喚する! デッキからレベル3の《極星獣タングリスニ》、《極星獣タングニョースト》を特殊召喚!」

 

 レスキューキャットが消滅すると、ハラルドの場に二頭の山羊が現れる。白山羊がタングリスニ、黒山羊がタングニョーストである。

 

 極星獣タングリスニ 地属性 獣族 レベル3 ATK:1200

 極星獣タングニョースト 地属性 獣族 レベル3 ATK:800

 

「星界への扉よ、開け! アローヘッド確認! 召喚条件は”レベル5以下の極星1体”! 《極星獣タングリスニ》をリンクマーカーにセット!」

 

 現れたアローヘッドの”左下”に位置するリンクマーカーにタングリスニが光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! 星界より現れろLINK-1《極星天グルヴェイグ》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは槍を手に持った女天使。黄金の翼を広げ場に降り立つ。

 

 極星天グルヴェイグ 光属性 天使族 LINK-1(左下)ATK:800

 

「グルヴェイグの効果発動! リンク召喚に成功した場合、自分の手札・場からカードを3枚まで選んで除外し、その数だけデッキから”極星”モンスターを守備表示で特殊召喚する! 手札から《極星霊アルヴィース》を除外し、デッキから《極星霊スヴァルトアールヴ》を特殊召喚!」

 

 続けてハラルドの場に邪悪な笑みを浮かべる紫色の精霊が現れる。

 

 極星霊スヴァルトアールヴ 闇属性 魔法使い族 レベル2 DEF:500

 

「ここで除外した《極星霊アルヴィース》の効果発動! ”極星”リンクモンスターの効果でこのカードのみが除外された場合、レベル合計が10になるように”極星”モンスターを自分の場から1体、デッキから2体墓地へ送る! 場からレベル3《極星獣タングニョースト》を、デッキからレベル4《極星獣グルファクシ》とレベル3《極星獣タングリスニ》を墓地へ!」

 

 ハラルドの極星獣達が光となって後方の森の中へと飛び立つ。

 

「その後、EXデッキから三極神の1体を特殊召喚する! ……星界の扉が開くとき、古の戦神がその魔鎚を振り上げん! 大地を揺るがし轟く雷鳴とともに現れよ! 《極神皇トール》!」

 

 ハラルドの後方の森の大地が裂け、その中から巨大な戦神が雷を背に轟かせながら浮上する。猛々しい肉体にマントを羽織り、巨大な戦槌を軽々と掲げる。これこそが”星界の三極神”の一柱、極神皇トールである。

 

 極神皇トール 地属性 獣戦士族 レベル10 ATK:3500

 極星天グルヴェイグリンク先:極神皇トール(左下)

 

『ギャァーまた神かよ!? そんなホイホイ出てくるもんじゃねぇだろうが!』

「それを成すのが”ルーンの瞳”に選ばれし者だ! 魔法カード《貪欲な壺》! 墓地からモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! そして2枚ドローする!」

 

戻したカード

極星獣タングリスニ

極星獣タングリスニ

極星獣グルファクシ

極星獣タングニョースト

レスキューキャット

 

 ハラルド 手札:0→2

 

「極星霊スヴァルトアールヴをシンクロ素材とする場合、他の素材は手札の極星2体でなければならない! 手札のレベル4《極星獣ガルム》と、レベル4《極星將テュール》に、レベル2《極星霊スヴァルトアールヴ》をチューニング!」

 

 ハラルドの手札から赤い狼と隻腕の戦士が飛び出すと、スヴァルトアールヴが自身を2つの光輪へと変え、2体を囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

「星界より生まれし気まぐれなる神よ! 絶対の力を我らに示し世界を笑え! シンクロ召喚!」

 

 光の柱から現れたのは巨大な魔法使い。立派な黒ひげをいじりながら浮かべる笑みは非常に嫌らしく、空中に浮かびながら下界を見下ろす。これこそが”星界の三極神”の一柱――――

 

「光臨せよ! 《極神皇ロキ》!」

 

 極神皇ロキ 闇属性 魔法使い レベル10 ATK:3300

 トランスコード・トーカーリンク先:極神皇ロキ(上)

 

『……成すとかトマトだか抜かしてやがったから、もう驚いてやらねぇぞ! まとめて掛かってこいやぁ!』

 

 Aiは大口をたたいて挑発するが、強がりではない。Playmakerの布陣ならば神を防げるという確信があった。

 

『(攻撃するとしたら間違いなくトランスコード・トーカー! それならエンコード・トーカーで攻撃を1度防げる!)』

 

 トランスコード・トーカーは強化能力と蘇生能力を持つ。間違いなくハラルドは狙ってくるだろうというのがAiの読みである。そうなればエンコード・トーカーの能力で攻撃を1度防げ、被害を大幅に軽減できる。更にエンコード・トーカーの追加効果でトランスコード・トーカーを強化すれば、戦術の要であるトランスコード・トーカーを場に残せるのである。

 

『(神に備えたPlaymakerの布陣! 二体はちと予想外だが、トランスコード・トーカーとこれだけのLPを残せれば、後は遊戯が何とかしてくれるはずだ!)』

「極神皇トールの効果発動! 相手の場の表側表示モンスターの効果を無効にする! 〈エフェクトアブソーバー〉!」

 

 トールが雷の如き怒号を発すると、コード・トーカー達に雷が落下する。コード・トーカー達は地に膝を付き、立ち上がれないでいる。

 

 エンコード・トーカー ATK:2800→2300

 トランスコード・トーカー ATK:2800→2300

 

「何!?」

『本当に何でもありかよチクショウ!』

「バトル! 極神皇トールでトランスコード・トーカーを攻撃! 【サンダーパイル】!」

 

 トールが戦槌を振り下ろし、トランスコード・トーカーを叩き潰す。

 

「手札から《レスキュー・インターレーサー》の効果発動! サイバース族が攻撃されたダメージ計算時、このカードを手札から捨てることでダメージを0にする!」

「ならば神縛りの塚のダメージを受けるがいい!」

「うわぁぁぁ!?」

 

 Playmaker LP:4500→3500

 

「続いて極神皇ロキ! 【ヴァニティバレット】!」

 

 ロキが銃を構えるように右手の人差し指と親指を立てると、指先からダークエネルギーの銃弾を放ち、エンコード・トーカーを消し飛ばす。

 

「ぐうう!?」

『Playmaker!?』

 

 Playmaker LP:3500→2500→1500

 

 堪らず膝を付くPlaymaker。だが闘志は尽きておらず、神を見上げて睨みつける。

 

「神の前に半端な布陣は通用しない! グルヴェイグでダイレクトアタック!」

 

 最後にグルヴェイグが槍を投擲し、Playmakerを攻撃する。

 

「ううっ!?」

『あわわわわ……ここまでやられちまうなんて!?』

 

 Playmaker LP:1500→700

 

「ターンエンド!」

「くっ……エンドフェイズ時、自身の効果で墓地へ送られた《レスキュー・インターレーサー》を特殊召喚!」

 

 Playmakerの場にレスキュー・インターレーサーが現れ、Playmakerを守るように神々の前に立つ。

 

 レスキュー・インターレーサー 光属性 サイバース族 レベル3 ATK:1000

 

ハラルド

LP:3100

手札:0

EXモンスター

②:極星天グルヴェイグ ATK:800

④:

メインモンスター

①極神皇トール

④極神皇ロキ

魔法・罠

③セット(アモン)

フィールド魔法

神縛りの塚

 

 Playmakerは後方へと下がり、遊戯にカードを手渡す。

 

「俺では……神に勝つことが出来ないッ……!」

『Playmaker ……』

 

 遊戯はカードを受け取って決闘盤に配置すると悔し気に項垂れるPlaymakerの横を通り過ぎ、決闘場の前で立ち止まる。

 

「Playmaker、Ai、神は大きく、そして重いな」

『え? そりゃみりゃ解るけど……』

「偉そうにこっちを見下ろしているが、案外足元は見えてなかったりするんだ」

『え? どゆこと?』

「灯台下暗し……奴らが大袈裟に言う”神の威光”なんてそんなものだぜ?」

「遊戯さん、何を……?」

「まあ見てろよ。あいつ等の足元、すくってこかしてくるぜ!」

 

 遊戯は決闘場に立ち、デッキからカードを引き抜いた。

 

「俺のターン!」

 

 遊戯 手札:2→3

 

「デッキからレベル6以上の魔法使い族1体を墓地へ送り、手札の《マジシャンズ・ソウルズ》の効果発動! このカードを墓地に送り、墓地から《ブラック・マジシャン》を特殊召喚する!」

 

墓地へ送ったカード

ブラック・マジシャン・ガール

 

 遊戯の場にブラック・マジシャンが舞い戻り、神に対して杖を構える。

 

 ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

「魔法カード《終わりの始まり》を発動! 自分の墓地に闇属性が7体以上存在する場合、その内の5体を除外することでカードを3枚ドローする!」

 

除外したカード

バフォメット

クリボー

クロック・スパルトイ

マジシャンズ・ソウルズ

ブラック・マジシャン・ガール

 

 遊戯 手札:1→4

 

「……これでカードは揃った! ブラック・マジシャンが場に存在する時、墓地の《マジシャンズ・ナビゲート》の効果を発動できる! このカードを除外し、相手の場に表側表示で存在する魔法・罠カード1枚の効果をターン終了時まで無効にする! 《神縛りの塚》の効果を無効にする!」

 

 ブラック・マジシャンが杖でハラルドの場を指し示すと、神を守っていたフィールドの力が失われる。

 

「何!?」

「これで神を守る力は消えたぜ! カードを3枚伏せ、《疾風の暗黒騎士ガイア》を召喚!」

 

 遊戯の場に駿馬に跨った騎士が現れ、両手の馬上槍を構えて神と対峙する。

 

 疾風の暗黒騎士ガイア 闇属性 戦士族 レベル7 ATK:2300

 

「このカードは手札がこのカード1枚の場合、生贄……いや、この世界ではリリースだったな、リリース無しで召喚できる。そして――――」

 

 遊戯は疾風の暗黒騎士ガイアを召喚すると、1枚のカードを取り出す。PlaymakerやAiにとっては馴染み深い青いカード――――

 

「あれは……リンクモンスター!?」

『遊戯の奴、リンク召喚を知らないんじゃなかったのか!? なんでリンクモンスターを持ってんだ?』

「意味不明のカード……ハノイを倒した後にダンジョンの中で見つけた時、そう思った。だが今なら解る! Playmakerやハラルドの決闘が、俺の決闘を進化させた! 行くぜ!」

 

 遊戯が空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。アローヘッドの中心には古代エジプトに伝わる”ウジャト眼”のマークが浮かび上がっていた。

 

「闇の扉が開かれた! 召喚条件は”カード名の異なるモンスター3体”! 《ブラック・マジシャン》、《疾風の暗黒騎士ガイア》、《レスキュー・インターレーサー》の3体をリンクマーカーにセット!」

 

 ブラック・マジシャン黒い光、レスキュー・インターレーサーが白い光となって”左下、右下”のリンクマーカーに飛び込むと、アローヘッドのゲートが開き、その中にガイアが飛び込んでゲートの先の”混沌とした世界”へと駆け出す。

 

「一つの魂は光を誘い、一つの魂は闇を導く! やがて光と闇の魂は混沌の回路(カオス・サーキット)を創り出す! サーキット・コンバイン!」

 

 ガイアはひたすらサーキットを走り続ける。神を倒すため、力を得るため、限界を超えるため――――

 

「疾走れ暗黒騎士ガイア! カオス・サーキットを駆け抜けろ! そして超戦士の力を得よ!」

 

 吹き付ける光と闇の風の中、ガイアは姿を変える。ゲートの”上”に位置するリンクマーカーが点灯した瞬間、ガイアだったものが混沌の中から飛び出した。

 

「リンク召喚! 現れよLINK-3――――」

 

 アローヘッドのゲートが開き、中から一人の戦士が飛び出す。金の装飾が施された青い鎧を身に纏い、着地と同時に青く長い髪を舞わせ、剣と盾を構える。これこそが遊戯の新たなる力――――

 

「《混沌の戦士 カオス・ソルジャー》!!!」

 

 混沌の戦士 カオス・ソルジャー 地属性 戦士族 LINK-3(上、右下、左下) ATK:3000

 混沌の戦士 カオス・ソルジャーリンク先:極神皇ロキ(上)

 

「カオス・ソルジャー……伝説に名を遺す”神殺し”の戦士……!?」

「伏せた魔法カード《一騎加勢》を発動! モンスター1体の攻撃力を1500アップする! バトルだ!」

 

 混沌の戦士 カオス・ソルジャー ATK:3000→4500

 

「グルヴェイグは三極神とリンク状態の場合、攻撃対象にならない!」

「混沌の戦士でトールを攻撃! 【カオス・ブレード】!」

 

 混沌の戦士が剣を素早く、そして鋭く振り抜くと光の斬撃が剣から放たれる。斬撃はトールの体を空間ごと横一文字に切り裂き、真っ二つになって消滅する。

 

「ぐうう!? トールが……!」

 

 ハラルド LP:3100→2100

 

「混沌の戦士の効果発動! 戦闘で相手を破壊した時、場のカード1枚を除外できる! ロキを除外するぜ! 〈時空裂破・カオスディメンジョンゲート〉!」

 

 混沌の戦士が剣を掲げると、トールごと切り裂かれた空間が大きく開かれ、ロキを吸い込んで混沌の果てへと追放する。

 

「なんてことだ……神縛りの塚を封じたのはこのためか……!?」

 

 想像もしなかった結果に驚愕するハラルド。Aiも同様だが、同時に首も傾げていた。

 

『すげぇ……あれ? でもロキを攻撃してトールを除外した方がダメージ多くね?』

「あれでいい。最初のオーディンは蘇生能力があるとハラルドは言っていた。ならば同じ神に属するあの2体も同じ能力を持っていたとしても不思議ではない。ロキを除外するべきだ」

『いや、ならトールだって蘇生能力持ってるかもだろ? その点はロキと同じだろ?』

「トールには”召喚制限”が掛かっている」

『あ、そうか!』

 

 ロキはシンクロ召喚による”正規召喚”によって呼び出されているが、トールはカード効果でEXデッキから直接場へ呼び出されている。正規召喚されていない特殊召喚モンスターには召喚制限が掛かり、いかなる場合でも蘇生を行うことが出来なくなるのだ。

 

「神と言えど、デュエルモンスターズのルールから逃れることはできない。遊戯さんはそこまで計算して戦術を組み立てたんだ」

『ほへ~……』

 

 AIの癖にそこまで計算できていなかったAiは感心したように頷いた。

 再び神を打ち破られたハラルド。三極神を全て失い、既に目から闘争心が失われていた。

 

「三極神が敗れるとは……神同士の戦いならまだしも、君は神を使わずに神を打ち破って見せた。君は一体何者だ?」

「決闘者さ」

「馬鹿な。ただの決闘者にこんな芸当ができるわけがない」

「ハラルド、神は確かに強い。大きく、重く、決闘者を圧倒する存在だ。俺は何度も闘ってきたが、その度に圧し潰されそうになった。さっきのPlaymakerのように、膝を折ったこともある。だが――――」

 

 遊戯は一瞬だけPlaymakerを見やる。この言葉はハラルドだけでなく自分にも向けられている。そう悟ったPlaymakerは身構える。

 

「俺は諦めなかった! 諦めずに考えた! 神を破る方法を……俺のデッキを信じ、誇り(プライド)を掛けて闘い抜いた! そして今、俺はここにいる」

 

 遊戯は首の千年パズルに触れて目を閉じる。五首の竜神、三幻神、ドーマの邪神――――辛く厳しい戦いばかりであった。だからこそ確信できる。神は決して倒せぬ相手ではないと。

 

「覚えておきな! 神は強い。だが無敵のモンスターではない! カードを信じ、己の誇りを見失わない”熱き決闘者の魂”があれば打ち破ることができる! ターンエンドだ!」

 

遊戯

LP:700

手札:0

EXモンスター

②:(極星天グルヴェイグ ATK:800)

④:混沌の戦士 カオス・ソルジャー ATK:4500→3000

メインモンスター

魔法・罠

②セット(遊戯)

③セット(遊戯)

 

 ハラルドは後方へと下がり、アモンにカードを手渡す。

 

「三極神が敗れた今、私はここまでのようだ。奴らの力は本物だ。心して掛かれ」

「神を除外されて失う……同じ手に掛かり戦意を失うとは、貴方には失望しましたよ」

 

 ハラルドを冷たく突き放し、アモンはカードを決闘盤に配置する。

 

「僕は屈したりはしない……悪魔に魂を売ってでも、勝利を手にする! 僕のターン!」

 

 アモン 手札:0→1

 

「魔法カード《闇の量産工場》を発動。墓地から通常モンスター2体を手札に加える。《封印されし者の右腕》と《封印されし者の左腕》を手札に」

 

 アモン 手札:0→2

 

「罠カード《凡人の施し》を発動。2枚ドローし、手札から通常モンスター1体を除外する」

 

 アモン 手札:2→4→3

 

除外したカード

封印されし者の左腕

 

『あれ? あの罠カード、さっきあいつが俺達の攻撃の時に発動しようとしてたやつだぜ? なんで攻撃の時にあんな手札増強カードなんて発動しようとしたんだ?』

「おそらく、闇属性通常モンスターを引き当てて除外し、終焉の精霊の攻撃力を上げて迎撃しようとしたんだろう。……確実な方法とは言えないが、奴ならやりかねないな」

『確かに……』

 

「魔法カード《終わりの始まり》を発動。墓地に闇属性が7枚以上存在する場合、その内5体を除外し、3枚ドローする」

 

除外したカード

究極封印神エクゾディオス

終焉の精霊

極星霊スヴァルトアールヴ

極星天ヴァナディース

極星天ミーミル

 

 アモン 手札:2→5

 

「魔法カード《闇の誘惑》を発動。2枚ドローし、手札から闇属性《封印されし者の右腕》を除外する」

 

 アモン 手札:4→6→5

 

『くっそーまたドローしまくりやがって!』

「エクゾディアデッキならば当然だろう。……そのエクゾディアが揃うことはもうないだろうがな」

『自分で除外しちまってるからな。……じゃああいつは何を引こうとしてんだ?』

 

「魔法カード《カード・アドバンス》を発動。デッキトップを5枚まで確認し、好きな順番で元に戻す。このターン、僕は通常召喚に加えてアドバンス召喚を行える」

 

 アモンはデッキトップ5枚を確認すると、順番を入れ替えてデッキに戻す。

 

「魔法カード《モンスターゲート》を発動。モンスター1体をリリースし、通常召喚が可能なモンスターが出るまでデッキトップをめくる。そのモンスターをめくった時、場に特殊召喚する。《極星天グルヴェイグ》をリリース!」

 

 グルヴェイグが消滅すると、アモンはデッキトップのカードをめくり、そのカードを場に出す。

 

「《雲魔物(クラウディアン)-ニンバスマン》を特殊召喚!」

 

 アモンの場に大きな雲が現れると、人の形となって場に降り立つ。

 

 雲魔物-ニンバスマン 水属性 天使族 レベル5 ATK:1000

 

「モンスターをセット、カードを伏せ、魔法カード《太陽の書》を発動。セットモンスターを攻撃表示に変更する。セットモンスター《メタモルポット》を攻撃表示に、そしてリバース効果発動。お互いに手札を全て捨て、カードを5枚ドローする」

 

 メタモルポット 地属性 岩石族 レベル2 ATK:700

 

 アモン 手札:0→5

 遊戯 手札:0→5

 

「メタモルポットをリリース。2体目の《雲魔物-ニンバスマン》をアドバンス召喚」

 

 メタモルポットが光の中へと消えると、ニンバスマンが光の中から現れて場に並ぶ。

 

 雲魔物-ニンバスマン 水属性 天使族 レベル5 ATK:1000

 

「(何を出してくるかと思えば、攻撃力1000の上級モンスターが2体。大量のカードを消費してまで並べる必要があるカードとは思えない。レベルはどちらも5だが……何か意味があるのか?)」

『遊戯気を付けろ! ”エクシーズ召喚”が来るぞ!』

「エクシーズ召喚?」

「レベル5の《雲魔物-ニンバスマン》2体でオーバーレイ!」

 

 アモンの場に金色の渦が現れると、ニンバスマン2体が青い光となって飛び立ち、渦の中へと吸い込まれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から金色の閃光が放たれると、中から青と金色の鎧を纏った巨大な海神が現れる。腰の右裾に”73”の数字を浮かべ、翼のようなマントを広げ、手に持った鉾を地に突いて構える。

 

「カオスに落ちたる聖なる滴よ! その力を示し、混沌を浄化せよ! ランク5《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》!」

 

  No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ 水属性 戦士族 ランク5 ATK:2400 ORU:2

 

「エクシーズ召喚……俺の知らない召喚法は一体幾つあるんだ?」

『呑気なこと言ってる場合じゃねぇぞ! しかも”No.”だ! こいつも持ってたのか!?』

「まだ終わりではない! 《RUM-バリアンズ・フォース》! Xモンスターを1つ上のランクにランクアップさせ、カオス化する! 《No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ》でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」

 

 アビス・スプラッシュがアモンの場の上空に現れた混沌の渦へと吸い込まれると、渦の中で爆発が起こり、中から姿を変えた海神が飛び出す。

 

「カオス・エクシーズ・チェンジ! 渦巻く混沌の水流を突き破り、今、かの地へ浮上せよ! ランク6《CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ》!」

 

 その姿は全体的に禍々しく変わっており、青と金の鎧は紫と白に変色し、赤い結晶が体に張り付いている。ORUは結晶化しており、”CORU(カオスオーバーレイユニット)”として足元に並ぶ。

 

  CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ 水属性 戦士族 ランク6 ATK:3000 CORU:3

 

「カオス化だと……!?」

「光と闇を越え、神をも越える。貴方の専売特許ではないんですよ。バトル! アビス・スープラで混沌の戦士を攻撃!」

 

 アビス・スープラは鉾を構え、混沌の戦士に向かって突き出す。

 

「攻撃力は互角! 相打ちにする気か?」

「終わりにするつもりですよ……貴様を葬ってな! アビス・スープラの効果発動! CORUを1つ取り除くことで相手の攻撃力を自軍のモンスターに加える! これでアビス・スープラの攻撃力は混沌の戦士の倍となる!」

 

 CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ  CORU:3→2

 

 アビス・スープラは足元のCORUを一つ吸収すると、体から光を放つ。

 

「成程、それがお前の切り札ってわけだな。だが甘いぜ! カウンター罠《真剣勝負》! ダメージステップに発動したカード効果を無効にして破壊する!」

 

 遊戯の罠から放たれた光が、アビス・スープラの光を打ち消す。

 

「だがアビス・スープラはアビス・スプラッシュをCORUとしている場合、効果で破壊されない!」

「ならば混沌の戦士! 迎え撃て!」

 

 混沌の戦士が剣を引き、盾を構えてアビス・スープラへと突っ込むが、アビス・スープラは鉾で混沌の戦士を盾ごと打ち砕いて破壊する。

 

「何!? 混沌の戦士が!?」

「”No.”はNo.でなければ戦闘破壊できない……甘いのは貴様の方だったな。カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

アモン

LP:2100

手札:0

EXモンスター

②:CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ ATK:3000 CORU:2

④:

メインモンスター

魔法・罠

②セット(アモン)

③セット(アモン)

④セット(アモン)

フィールド魔法

神縛りの塚

 

 遊戯は後方に下がり、Playmakerにカードを手渡す。混沌の戦士を失ってしまったというのに顔には不敵な笑みを浮かべている。

 

「ここが正念場だPlaymaker! 頼んだぜ!」

『ま~たピンチだってのに楽しそうにしちゃってまあ……Playmaker?』

 

 Playmakerは差し出されたカードを見つめた後、受け取らずに遊戯を見返す。

 

「遊戯さん、3つ聞かせてくれ」

「多いな。何だ?」

 

 遊戯は笑いながらPlaymakerの問いを受ける。

 

「一つ、俺にあの神を倒せると思うか? 俺のEXデッキにNo.は入っていない」

「やれるさ。相手はデュエルモンスターだからな」

「二つ、俺の手札はフレイム・バッファローのみ、この手札から逆転できると?」

「まだドローもしてないじゃないか。不安なら俺のカードも使え。その為にカードを残してきたんだ」

「……三つ、何故俺をそこまで信頼できる? まだ会って間もない、決闘したことすらないのに」

「それは君が”闇を乗り越えてきた決闘者”だからさ」

 

 遊戯の言葉にPlaymakerは目を見開く。

 

「君の決闘する姿を見て思った。君の決闘には只ならぬ”迫力と緊張感”がある。それは”重い使命”であったり、”罪への意識”であったり、”辛い過去への恐怖”であったり……大きな”心の闇”を抱えた者の特徴だ」

「心の闇……」

 

 Playmakerは少し苦し気な表情で俯く。戦いの決着と共に克服したと思っていた。痛みは消えても、今でも存在が消えることなく残っているらしい。心の片隅に残る”ロスト事件”の記憶が、脳裏をよぎった。

 

「Playmaker、君は歴戦の決闘者だろう? 抱えた闇と共に、負けずに闘い抜いてきたんだろう? 闘いの中に希望は? その先に”光”はあったか?」

「……あった。確かに、あった」

 

 Playmaker――――遊作の沈んでいた記憶が浮き上がり、鮮明になる。

 最初は恐怖だけだった。背後から迫る心の闇から逃れたかった。恐ろしくて蹲る遊作だったが、その闇の中に小さな”光”を見出す。事件の最中に自分を励まし続けてくれた少年は未だにあそこで囚われたままなのか――――そう考えると、不思議と恐怖を忘れることが出来た。

 彼の為なら自分は闘うことが出来る。希望を見出した遊作は闇を抱えたまま闘いに身を投じた。闘うことで悲劇の真実を知ることができた。相棒や仲間、宿敵達の心を知ることができた。事件の被害者達を救うことができた。遊作は、強くなることができた――――”闇”と共に闘ってきたからこそ、掛け替えのない”光”を見ることが出来たのである。

 顔を上げたPlaymakerに、もう苦し気な表情はなかった。

 

「Playmaker、君は闇を力に変えることが出来る決闘者だ! 神の恐怖などに屈したりはしない! 俺は信じているぜ!」

 

 Playmakerは遊戯からカードを受け取り決闘盤に配置すると、決闘場に立つ。

 

『戦闘でも、効果でも破壊できない。さっき俺達を苦しめた”No.”と、今現在俺達を苦しめている”神”が合わさって最強に見えらぁ。で、倒せんの?』

「俺は勝つ!」

『おっしゃ! 気合い入れて行こうぜPlaymaker!』

「俺のターン!」

 

 Playmaker 手札:1→2

 

「墓地の《リコーデッド・アライブ》を除外し効果発動! EXモンスターゾーンに自分のモンスターが存在しない場合、除外されている”コード・トーカー”モンスター1体を特殊召喚する! 来い《パワーコード・トーカー》!」

 

 Playmakerの場に再びパワーコード・トーカーが現れ、勇ましく構える。

 

 パワーコード・トーカー 炎属性 サイバース族 LINK-3(右、左、左下) ATK:2300

 

『いいぞ! パワーコード・トーカーならNo.の効果を無効にできる! それに手札にはフレイム・バッファロー! これで攻撃力を上げればNo.を倒せる! やれーPlaymaker!』

「パワーコード・トーカーの効果発動! No.の効果を無効にする!」

「速攻魔法《禁じられた聖杯》! モンスター1体の攻撃力を400アップし、効果を無効にする!」

 

 パワーコード・トーカーがアンカーをアビス・スープラに向けるが、上空から降り注いだ水がパワーコード・トーカーに掛かり、水蒸気を上げながら沈黙してしまう。

 

 パワーコード・トーカー ATK:2300→2700

 

『ええ~!? そりゃねぇだろうよ~!』

「無駄な足掻きはよすんだな」

 

 落胆するAiをアモンは鼻で嗤うが、Playmakerの闘志は消えていない。

 

「無駄でないことを証明してやる!」

「そうか……ならば良いものを見せてやろう。罠カード《三位一択》。EXデッキのカード種類のうち、融合、シンクロ、エクシーズのどれか一種を選択する。お互いのEXデッキを確認し、選択した種類の枚数が多いプレイヤーのLPを3000回復する。選択するのは”エクシーズ”だ」

 

 アモンが宣言すると、場の中心に二人のEXデッキのカードが表示される。

 

PlaymakerのXモンスター

ファイアウォール・X・ドラゴン

 

アモンのXモンスター

No.53 偽骸神 Heart-eartH

No.71 リバリアン・シャーク

No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ

No.92 偽骸神龍 Heart-eartH Dragon

 

『げぇ!? No.が4体も!?』

「力無き者はNo.に取り込まれる。No.は使い手を選ぶカードだ。それを4枚持つ俺と持たないお前、差は歴然だ」

 

 アモン LP:2100→5100

 

「これでもまだ続ける気か?」

「遊戯さんが伏せた魔法カード《魔法石の採掘》を発動! 手札を2枚捨て、墓地から魔法カード1枚を手札に加える! 《終わりの始まり》を手札に!」

 

 Playmaker 手札:2→0→1

 

「話を聞かない愚か者め……」

「手札に加えた《終わりの始まり》を発動! 闇属性を5体除外し、3枚ドロー!」

 

除外したカード

デュアル・アセンブル

疾風の暗黒騎士ガイア

ブラック・マジシャン

リンクリボー

フリック・クラウン

 

 Playmaker 手札:0→3

 

「自分の場にサイバース族が存在する場合、《バックアップ・セクレタリー》を特殊召喚できる! さらにチューナーモンスター《サイバース・シンクロン》を召喚!」

 

 Playmakerの場にバックアップ・セクレタリーとビットロンによく似た円盤型の電脳生物が現れる。

 

 バックアップ・セクレタリー 光属性 サイバース族 レベル3 ATK:1200

 サイバース・シンクロン 闇属性 サイバース族 レベル1 ATK:100

 

「サイバース・シンクロンの効果発動! 自分の場のレベル4以下のモンスター1体のレベルを元々のレベル分だけ上げる! レベル3《バックアップ・セクレタリー》のレベルを3つ上げる!」

 

 バックアップ・セクレタリー レベル3→6

 

「レベル6《バックアップ・セクレタリー》に、レベル1《サイバース・シンクロン》をチューニング!」

 

 バックアップ・セクレタリーとサイバース・シンクロンが光の粒子となって舞い上がる。粒子は7つの光輪となり、連なって未知なる世界のゲートと化す。

 

「紫電一閃! 未知なる力が飛竜乗雲となる! シンクロ召喚!」

 

 ゲートの中から飛び出したのは、白銀の鎧に包まれた白いドラゴン。場を大きく旋回し、威嚇の咆哮を上げながら場に降り立つ。これこそがPlaymakerのシンクロモンスター――――

 

「降臨せよ! 《サイバース・クアンタム・ドラゴン》!」

 

 サイバース・クアンタム・ドラゴン 闇属性 サイバース族 レベル7 ATK:2500

 

『いよーっし! クアンタムなら破壊無効なんて関係ねぇ! 今度こそ――――』

「永続罠《アイスバーン》を発動! 自分の場に水属性が存在する場合、召喚・特殊召喚に成功した水属性以外のモンスターを守備表示にする!」

 

 アモンが罠を発動させると、サイバース・クアンタム・ドラゴンの足元が一瞬で凍り付き、動きを封じてしまう。

 

 サイバース・クアンタム・ドラゴン ATK:2500→DEF:2000

 

『ああ~!? 空気読めよ! 起死回生の切り札だぞ!』

「そのSモンスターはさっきのEXデッキ確認で把握済みだ。戦闘できなければただの虫けらだ」

 

 アモンは冷静を装っているようだが、目つきは明らかに変わっており、他者を見下す尊大な内面が先程よりも前に出てきている。石島程ではないが、アモンも確実にNo.の影響を受けているようだ。

 

「さっきの様に膝を折るがいい! 神と! 王たるこの俺の前に跪け!」

「俺はこの決闘に、神に必ず勝つ! 決闘者の誇りに掛けて! 《リンク・インフライヤー》をパワーコード・トーカーのリンク先に特殊召喚!」

 

 パワーコード・トーカーの側にリンク・インフライヤーが飛来する。

 

 リンク・インフライヤー 風属性 サイバース族 レベル2 ATK:0

 

「これが最後のリンク召喚だ! 現れろ未来を導くサーキット!」

 

 Playmakerの場にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”効果モンスター3体以上”! LINK-3《パワーコード・トーカー》、《サイバース・クアンタム・ドラゴン》、《リンク・インフライヤー》をリンクマーカーにセット!」

 

 パワーコード・トーカーが3体に分裂すると、他のサイバース達と共に光の風となって”上、右、左、右下、左下”に位置するリンクマーカーに飛び込み点灯させる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは、リング状のユニットを背負い、黒白の装甲を纏ったドラゴン。装甲外の体には緑色のラインが走り、ユニットの周りには6つの黒い結晶が翼の様に浮かぶ。

 これこそが人類(Playmaker)に託されたイグニスの力の結晶にして、最強のサイバース――――

 

「宇宙に満たる神秘の力! 奇跡の星に降り注ぎ、無限の命を紡ぎ出せ! 現れろ、LINK-5《ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード》!!!」

 

  ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード

 闇属性 サイバース族 LINK-5(上、右、左、右下、左下) ATK:3000

 

「ダークフルードは守備力を持たないリンクモンスター! アイスバーンによって守備表示にはならない!」

『お前の伏せカードも尽きた! これで引導を渡してやらぁ!』

「フッ……まさか召喚する余力があるとは思わなかったが、そのカードについても先程の確認で把握している」

 

 アモンは眼鏡の位置を直し、ダークフルードを見上げる。

 

「リンク召喚成功時に自身の墓地の融合、シンクロ、エクシーズ、儀式、これらサイバース族の特殊召喚カテゴリー1種につきカウンターを1つ乗せる。カウンター1つにつき攻撃力を2500上げ、カウンターを消費して相手のモンスター効果を無効にし、特定条件下ならば追加攻撃を行える……こんなところだろう?」

『ゲェェェネタバレェェェ!? 切り札に対してそりゃないでしょうが!?』

「神をも凌駕しかねない恐ろしいモンスターだな。だが君がここまで使用したリンク以外のカテゴリーは融合とシンクロの2種、それだけでも膨大な攻撃力を得られるが、俺を倒すには至らないな」

『え? そんなことはねぇだろうよ。えーと……』

 

 AiはAIお得意の計算を始める。2種類で得られる攻撃力は5000ポイント。これで攻撃力を8000にして攻撃。アモンはもちろんアビス・スープラの効果を使って迎撃するだろうからこれを無効にして攻撃力5500で戦闘、LP5100のアモンに2500のダメージを与えて――――

 

『――――この場合ダークフルードは追加攻撃ができるからしてぇ、アビスもまた効果を、んでまたダークフルードが無効にして攻撃力3000……ありゃ? 攻撃力同じになっちまった』

「クックック……ハッハッハッハッハ! 解ったか! お前達は神に! 王たる俺には勝てないのだ!」

「……ダークフルードの効果発動! 墓地の特定のカードの種類1つにつき、カウンターを1つこのカードに乗せる! 俺の墓地には――――」

 

 Playmakerは墓地からカードを取り出し、アモンに見せつける。

 

「融合モンスター《サイバース・クロック・ドラゴン》! シンクロモンスター《サイバース・クアンタム・ドラゴン》! そして……儀式モンスター《サイバース・マジシャン》! 合計3種類! よってカウンターを3つ乗せる!」

「……何だと?」

 

 ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード カウンター:0→3

 

「馬鹿な……儀式モンスターだと!? そんなもの――――」

 

 

 

遊戯さんが伏せた魔法カード《魔法石の採掘》を発動! 手札を2枚捨て、墓地から魔法カード1枚を手札に加える! 《終わりの始まり》を手札に!

 

 

 

「……あの時か!? フレイム・バッファローと共に墓地へ捨てたカード!」

『クックック……墓地を確認しない愚か者めがぁーーーー!!! AIの俺様が、百戦錬磨のPlaymakerがここまで計算してないとでも思ったか!』

「バトル! ダークフルードでNo.を攻撃! 【ネオテンペスト】!」

 

 ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード ATK:3000→10500

 

 ダークフルードが上空へと飛び上がると、黒い結晶からエネルギーで形成した翼を展開する。体のラインを赤く染め、エネルギーをユニットの頂点に集中させると、そこから暗黒エネルギーの砲弾をアビス・スープラへと放つ。

 

「アビス・スープラの効果発動! CORUを1つ取り除き、攻撃モンスターの攻撃力を自軍のモンスターに加える!」

「ダークフルードの効果発動! カウンターを1つ取り除き、相手モンスターの効果の発動を無効にする! 〈カルマ・ギア〉!」

 

 CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ  CORU:2→1

 ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード カウンター:3→2 ATK:10500→8000

 

 アビス・スープラは先程の様に力を奪う光を放とうとするが、光は暗黒の砲弾によって吸い込まれ、砲弾はそのままアビス・スープラに直撃して炸裂、アモンの場に暗黒の嵐を巻き起こす。

 

「ぐわぁぁぁーーーー!!?」

 

 アモン LP:5100→100

 

「攻撃宣言からダメージステップ終了時までにカルマ・ギアを成功させたダークフルードは、追加攻撃ができる!」

『神を越えろ! Playmaker!!!』

「【ネオテンペスト・エンド】!!!」

 

 ダークフルードが再びユニットへとエネルギーを集中させ、暗黒弾を放つ。

 

「アビス・スープラァァァーーーー!!!」

「〈カルマ・ギア〉!!!」

 

 CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ  CORU:1→0

 ファイアウォール・ドラゴン・ダークフルード カウンター:2→1 ATK:8000→5500

 

 二発目の暗黒弾もアビス・スープラに直撃し、アモンごと闇に飲み込んで消し飛ばした。

 

「ぐ……う……エコォォォーーーー!!!」

 

 アモン LP:100→0

 

 決闘が終了し、SVが消滅する。

 アモンは決闘の結末通り消え去ってしまい、彼が立っていた場所には彼が所有していたNo.のカードが全て落ちていた。

 

『おおおっしゃーーー!!! 大☆逆☆転!!!』

「やったな、Playmaker!」

「遊戯さん……」

 

 遊戯が差し出した手に、Playmakerは強く、そして固く握り返す。握手を交わす二人の間にこれ以上の言葉は無かったが、Playmakerが込めた手の力には言葉では言い表せない遊戯への感謝が表れていた。

 

『大人しくしろオラー! もう出てくんじゃねぇぞ!』

 

 Aiは決闘盤から飛び出し、No.のカードを1枚1枚食らってはデータ化して大人しくさせている。

 握手を解き遊戯にカードを返すと、Playmakerはアモンが立っていた場所を見やった。

 

「あの男は……」

「アモン……彼の事は気にするな」

 

 ハラルドが二人の前に歩み寄る。

 

「役目を終えれば我々は消える。彼はそれが早まっただけだ」

「ハラルド、約束通りお前の知っていることを喋ってもらう」

 

 Playmakerの言葉に、ハラルドは首を振る。

 

「私から話せることはない。だが道を示すことはできる。それが敗れた私の役目だ」

 

 ハラルドは懐から1枚にカードを取り出し、決闘盤の魔法・罠ゾーンスロットに差し込む。

 

「《虹の橋 ビフレスト》を発動!」

 

 その瞬間、森の中から巨大な虹の橋が現れ、森も平地も飛び越えて遥かな地平へと延びる。

 

「この虹の先に君達を待つ者がいる。信じるかどうかは君達次第だ」

 

 そう言ってハラルドは踵を返し、森の中へと消えていった。

 

『罠くせーどうするよ?』

 

 決闘盤に戻ってきたAiは訝しげに虹の橋を眺めている。Playmakerも警戒の色で見ていると、遊戯が肩を軽く叩いた。

 

「Playmaker。罠じゃないぜ」

「遊戯さん?」

「胡散臭いのは解るが、決闘自体は真っ当だった。あれなら嘘はついていないさ」

 

 遊戯は前に出て虹を見上げる。

 

「随分と距離がありそうだな……Playmaker、君はあのDボードとかいう乗り物を使ってこの先を行け」

「遊戯さんは?」

「俺が一緒じゃ時間が掛かる。俺はもう一度最初にいた遺跡に戻って調べる。まだ通っていない通路があったんでな。手分けしてこの世界からの脱出方法を探そう」

『手分けして探そうたってあーた、連絡手段とかどうするワケ?』

「お前達とは切っても切れない縁を感じる。俺がお前達を、お前達が俺を必要としたなら、また会えるさ」

『おいおい……んじゃこれ持ってけよ』

 

 Aiは手にプログラムを出現させると、遊戯の決闘盤の中にインストールする。

 

「何だ?」

『まあ発信機みたいなものさ。これで俺達側から遊戯の大まかな位置が分かるようになる。遊戯側も俺達が近づいたらアラームが鳴るようになってるからな。そしたらあまり動き回るなよ? 本当はもっと通信機とかはっきりした連絡手段にしたかったけど、おたくの決闘盤が旧式過ぎてこれが限界だったのよ』

「解ったぜ。アラームだな?」

『あとオマケでPlaymakerが昔使ってたお古のリンクモンスターも付けておいたからな。決闘盤のデッキホルダーの中でカード化してるはずだから後で確認しな。ガイアセイバーとか色々あるぜ』

「いいのか?」

 

 遊戯がPlaymakerを見ると、Playmakerは頷いて返す。

 

「サイバースデッキでは、そのカードを上手く使ってやることができない。遊戯さんなら、きっと上手く使ってくれると思う」

「ありがとう。有り難く使わせてもらうぜ!」

『それじゃ、お互い気を付けて行こうぜ!』

 

 AiがDボードを呼び寄せるとPlaymakerが飛び乗り、虹の先へと飛び立つ。

 

「Playmaker! 必ずまた会おう!」

 

 遊戯の言葉にPlaymakerは片腕を掲げて応える。虹の向こうへと消えていくPlaymakerを見送った遊戯は踵を返し、元のダンジョンへと引き返していくのだった。

 

 

 

次回予告

 

無事に試練を突破した遊戯とPlaymaker君!

一方、遊馬君は順調にNo.のカードを回収していたわ! でもそんな時、同じくNo.のカードを狙った決闘者達に鉢合わせ! 幾らアストラルが一緒とは言え、遊馬君一人で二人と闘うなんて無茶よ~!

そんな時、遊馬君を救うために崖の上から一人のヒーローが現れる!

 

 

次回〔ヒーロー見参!? ~十代と遊馬~〕!

 

 

デュエルスタンバイ!

 




あとがき忘れて投稿してしまった(汗)

三幻神は原作的にも重要なカードなので原作効果です。(本当はオベリスクのせいでガジェット・トークンが出せなくなるからだなんて言えない……)
でも三極神はOCG設定。見当はついてるかもですが、理由は後々解ります。

遊戯・遊作のお相手はゴッズのハラルドとGXのアモン。一応ハラルドは【極星】、アモンはかなりご都合的な闇水属性で組んだ【儀式エクゾ】です。シャークさんの出番が終わってしまってシャークさんのNo.が余ったのでアモンに使ってもらいました。


今日の最強カード

始まりの終わり

1決闘中にこれだけ乱発できるのもタッグフォースルールならではですね(笑)


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ヒーロー見参! ~十代と遊馬~

今回の決闘はタッグデュエルですが、所謂”ご都合ルール”が含まれます。できるだけ原作のタッグデュエルを参考にしていますが、苦手な方はご注意ください。

てゆーか原作のタッグデュエル自体がご都合(ry


「お、あったぜアストラル!」

『だが一枚だな。それだけではないはずなのだが……』

 

 異世界に散らばったNo.を捜し、遊馬とアストラルは街を飛び出し東へ西へ北へ南へ、No.が発する気配を頼りに駆けまわっていた。

 今いるのは崖と海に挟まれた海岸。その付近で多数のNo.の気配を感じたアストラルの指示の下、やってきた遊馬は崖の隙間に引っかかっているNo.のカードを見つける。

 ここまで集めたNo.はホープを含め10枚。遊馬の決闘者レベルも高くなった今としては、前回のNo.集めと比べれば非常に順調なペースで収集できている。

 

「しっかし変なとこにあるなぁ。そんなに高くないし、かっとビングで登って取ってくるか!」

『そんなことをしなくても、私の力で引き寄せればいい』

 

 飛び出そうとする遊馬を制止し、アストラルはNo.のカードへと手をかざす。力を使ってカードを引き寄せようとした瞬間、海の方から怒声が響いた。

 

「ちょっと待ったァーーーー!!! そいつは俺の獲物じゃーーーー!!!」

「うわっ!? 何だ!?」

『……決闘者か』

 

 怒鳴ったのは黒いボサボサ髪を後ろで縛り、浅黒い肌を晒した半裸の少年。その少年は海を泳いでいたのか全身ずぶ濡れであり、左腕には防水処理が施された旧式決闘盤が装着され、右手には銛を持っている。

 

「海の向こうから俺が先に目を付けてたんじゃ! 俺のだぜよ!」

「な、何言ってんだ! あれは元々俺らのだ! そもそもお前なんだよ!?」

「俺の名は”梶木 漁太”! この海で決闘者を探しだし、倒すのが俺の役目じゃ!」

「それがなんでNo.のカードを狙ってんだよ!」

「ちょっと前に指示がでたんじゃ! 役目のついでにNo.のカードを回収しろってな!」

『誰からの指示だ?』

 

 アストラルが訊ねるが、梶木は反応しない。どうやらアストラルの姿は見えていないようだ。

 

『遊馬』

「誰がそんなこと言ったんだ?」

「そんなの知らん!」

「知らんってお前!? 知らない奴の言うこと聞いてんのか!?」

「俺は役目を果たすだけじゃ。指示が誰からなんて興味ないぜよ」

「ええ~……」

『(手駒から黒幕を聞き出すのは無理か。……手強いな)』

 

 アストラルは少しの思案の後、遊馬に向き直る。

 

『遊馬、事態は謎に包まれたまま刻一刻と進んでいる。今までこの世界で闘った決闘者を覚えているな?』

「ああ……どいつもこいつも俺と決闘するのが役目だとか言ってたな? この梶木って奴もだよな?」

『そうだ。何者か……おそらくは君をこの世界へと引きずり込んだ者からの”刺客”と言っていいだろう。そして、その者はNo.のカードに目を付けた……遊馬、No.をこのまま渡してはいけない』

「おう!」

「回収したNo.は好きに使っていいそうだからな! No.でデッキを強化して、決闘者をぶっ倒す! あのNo.を回収したらお前の相手してやるから大人しく待ってるぜよ!」

「さ、させっかよ!」

 

 梶木がカードの元へ向かおうとすると、遊馬も慌てて崖へと振り返り、アストラルも再びカードへと手を向ける――――が、誰よりも早く崖のカードへと伸びている手があった。

 

「ぐぐ……もうちょい……!」

 

 見ると崖の上から身を乗り出し、隙間に挟まったカードを取り出そうとしている少年がいた。アストラルは急いでカードを引き寄せようとするが、それよりも早く少年はカードを掴む。

 

「あ!? 何だアイツ!?」

「俺のカードを!?」

 

 遊馬と梶木も少年の存在に気づく。アストラルは少年からカードを奪おうと力を行使するが、カードは少年の手から離れない。どうやらもう取り憑いてしまっているようだ。

 

「やったぜ! あ……」

 

 No.のカードを掴む為に身を乗り出していた少年。勢い余って空中へと飛び出し、崖から転落する。

 

「のわぁぁぁ~~~~!!? ぐぎゅ!?」

 

 少年は間抜けな悲鳴を上げながら砂浜の上に叩きつけられた。幸い崖はそれほどの高さでもなく、砂がクッションにもなったために大した怪我はなかったようで、少年は痛がりながらもすぐに立ち上がる。

 

「ててて……手に入れたぞ! これで8枚目! 俺カードに選ばれ過ぎィ!」

『手にしてしまったか……これでは決闘で取り返すしか手段はない』

「おいお前! そのカードをどうするつもりだよ!」

 

 カードを手にして悦に浸る少年の元へ駆け寄る遊馬。少年は遊馬に気づくとNo.のカードをEXデッキにしまい込み、キザッたらしいしぐさで迎える。

 

「何だお前? 俺様に何か用か?」

「それは俺達のカードなんだ! 返せよ!」

「ハァ? お前の? 馬鹿言うんじゃねぇよ。このNo.はお前みたいのじゃなくて、このレアの俺みたいな選ばれた決闘者が持つべきものなんだよ! そう! この”沢渡 シンゴ”様がな!」

 

 金色の前髪を跳ね上げながら少年――――沢渡は鼻を鳴らす。

 

「あー! お前ここのエリアの担当じゃないはずぜよ! 持ち場を離れるのはルール違反じゃ!」

 

 今度は梶木が駆け寄り、沢渡を問い詰める。だが、沢渡は悪びれた様子もなく答える。

 

「俺は役目と指示、両方を忠実にこなしてるだけだぜ? No.を回収し、決闘者と闘う!」

 

 ビシッと遊馬を指さす沢渡。だが梶木は納得していない様子。

 

「それは担当エリア内での話じゃ! 俺の縄張りに入り込んでNo.掻っ攫っていくなんて許せんぜよ!」

「ハァー! まったく……そんなにNo.が欲しいならよ、こいつを倒してNo.を奪えばいいじゃねぇか」

「何?」

「このエリアで決闘者を倒せば、そいつが持っているNo.はお前の物だ。役目も果たせて一石二鳥だと思うが?」

「おお、言われてみればそうぜよ! おいお前! 俺と決闘じゃ!」

 

 矛先を沢渡から遊馬へと変える梶木。決闘盤を展開して遊馬に迫る。

 

「ちょ、ちょっと待てよ! 何でそうなるんだ!」

「担当エリア外とは言え、俺も役目は果たさなければならない。新しいNo.も試してみてぇし、俺も参加するぜ」

 

 梶木に続いて沢渡も決闘盤を展開する。沢渡の決闘盤は梶木のような最初期の旧式タイプではなく、本体からRSVのプレートを展開する未来技術を搭載したモデルである。

 

「二対一かよ!? 卑怯だぞ!」

『遊馬、この場から感じるNo.の気配は我々の物を除いて10枚だ。そしてあの沢渡という決闘者はカードを手にして”これで8枚目”と言っていた』

「そ、それって……」

『おそらく、あの梶木という男もNo.を持っている。No.使いを同時に相手するのは得策ではない』

「マジかよ……でもやるしかないぜ!」

 

 遊馬はDパッドとDゲイザーを展開し、決闘盤を構築して構える。

 

「二人がなんだ! かっとビングで乗り越えてやるぜ! 絶対No.を取り返してやるからな!」

『遊馬……(だが、No.を多量に所持して使役するこの決闘者達は高いタクティクスを持っているはず。やはり我々だけでは……)』

 

 

「ちょぉーーーーと待ったァーーーー!!!!」

 

 

 身構える決闘者達の頭上から、勇ましい声が響き渡る。全員が声の方へと振り向くと、そこには燃えるように赤いジャケットを纏い、同じく赤い決闘盤を装着した青年が立っていた。派手な姿と登場を見せた青年に対し、沢渡が噛みつく。

 

「おいお前! 俺様より目立ちやがって! 何者だ!」

「決闘か? 面白そうじゃん! 俺も混ぜろよ!」

 

 青年は崖から飛び降り見事に着地。遊馬の隣まで歩いてくる。

 

「俺は”遊城 十代”、十代でいいぜ! 決闘するんだろ? 俺はこいつと組む。いいだろ?」

「え? あ、ああ……ありがたいけど」

 

 突然現れた見知らぬ助っ人を前に、呆気にとられる遊馬。そんな遊馬を横に、十代は遊馬の隣に顔を向ける。

 

「お、それお前の精霊か?」

「え!? あんたアストラルが見えるのか?」

 

 ハッキリとアストラルを視界に捉えて指さす十代。その瞬間、十代の後ろから一人の悪魔が姿を現す。

 

『十代、そいつは精霊じゃないね』

「え、そうなのかユベル?」

「うわぁ!? バ、バリアンか!?」

『いや、似ているがあの者はバリアンではない。そもそもバリアンの戦士はもう残っていない』

 

 突然現れたユベルを見て驚く遊馬。遊馬のいた世界では”精霊”の概念はなかったが、どうやら遊馬はユベルが見えるらしい。ユベルはアストラルの前に出る。

 

『へぇ、不思議だね。君は精霊ではないが、”僕と近い存在”らしい』

『どういうことだ? まさか本当にバリアンとでも言うのか?』

『バリアンってなんだい? 違うよ……例えば、君とその決闘者、一つの存在だね? 僕と十代のように』

『(私と遊馬の正体を見抜いただと!?)』

「何言ってんだこいつ?」

 

 真実を知らない遊馬は首を傾げているが、アストラルは戦慄していた。アストラルの胸の内にだけに秘められた秘密を、誰も見抜いたことが無かった真実を、この悪魔は見破ったのだ。

 

『先天的か、後天的かの違いはあるけどね。まあどうでもいいや。僕は君に聞きたいことがあるんだ』

『……何が知りたい?』

『このカード、さっきそこの坊やが”俺達のカード”だって言ってたね? 聞いてたよ』

 

 ユベルが掌から出現させたのは、シャークとの決闘で手に入れたNo.のカード。

 

「あ! リバイス・ドラゴン!」

『そのNo.を何処で?』

『質問してるのはこっちだよ。危うくこのカードに十代が取り込まれるところだったんだ。このカードについて知ってること、話して貰おうか』

 

 威圧的に迫るユベルだが、アストラルも引かずににらみ返す。

 

「おいおいお前ら! これから決闘だってのにパートナーと喧嘩すんなよ! えーと、お前名前は?」

「え、ああ……俺は遊馬! ”九十九 遊馬”だ!」

「おし遊馬、何か色々あるみたいだけど、今は俺とタッグだ! 楽しい決闘にしようぜ!」

「(何かマイペースな兄ちゃんだな……でも、何かいいかも!) おう! よろしくな!」

 

 決闘者としての内面に秘める熱い気持ち。自分に近いそれを十代から感じ取った遊馬はタッグの結成を快諾する。

 

「お前らも面倒な話は後な後! それにユベル、そんな喧嘩腰にならなくても、遊馬達と協力してここを切り抜ければちゃんとNo.について教えてくれるって!」

『まったく……決闘王と決闘した後の君は能天気でいけないね』

 

 そう言ってユベルは姿を消す。十代はニッと笑った後、腕のオシリスレッド使用の第二世代型決闘盤を展開する。

 

「話はついたぜ! 待たせて悪かったな!」

「まったくだ! 俺達を放ってくっちゃべりやがって! 今からルールを説明するからよーく聞いとけ!」

 

 沢渡が親切にも今回の決闘のルールを説明する。

 今回行う決闘は”タッグデュエルルール”による二対二のタッグ決闘。LPは個別で4000ポイント。墓地、除外ゾーンは共用する。

 通常の決闘との違いはお互いのメインモンスターゾーン、魔法罠ゾーンは各プレイヤー5ヶ所の計10ヶ所。EXモンスターゾーンは各チーム2ヶ所まで使用可の計4ヵ所。モンスター・魔法・罠ゾーンは自分、味方の場ならば自由にカードを置くことができる。l

 

「ってことはモンスターも魔法罠も10ヶ所自由にカードを置けるってことか! すげー!」

『だが遊馬、考えなしに使えばパートナーの動きを阻害する危険性もある。注意しなければ』

 

  攻撃は全員のファーストターンが終わるまで行えない。各プレイヤーのEXを含む6ヵ所のモンスターゾーンにモンスターがいない場合、がら空きとなったプレイヤーに直接攻撃を行うことができる。ただし、パートナーにモンスターが存在する場合、パートナーの意思で攻撃対象をモンスターに移す、つまり”庇う”ことができる。庇った際に発生した戦闘ダメージはモンスターのコントローラーが受ける。

 

「この辺は俺がいた所と変わらないな。”バトルシティルール”ってやつだ。懐かしいぜ、三沢がビデオ持っててな~」

 

 パートナーの場にモンスターを出しても、コントロールは召喚した者が有する。つまりパートナーのターンにパートナーがこちらの召喚したモンスターで攻撃をしたくても、パートナーはそのモンスターに攻撃や効果の発動を命じることはできない。また、そのモンスターの戦闘ダメージもコントローラーが受ける。

 

「ちなみに素材やコストにはできるぜ。パートナーのコントロール下でもな」

 

 魔法・罠は手札のもの以外なら、パートナーの物であってもパートナーの場にある物でも使用可能。永続カードの効果も影響し合う。ただし、発動の宣言は基本的に持ち主しか行えない。

 

「例えば、パートナーが装備魔法を伏せていたとする。それを自分のターンに自分のモンスターに装備させたい。だが装備させるには持ち主であるパートナーが正しい発動タイミングで発動と効果対象を宣言しなければならないということだ!」

「つまりパートナーのカードを使いたきゃパートナーに使ってもらえってことぜよ。他の魔法や罠も大体そんな感じじゃ。さっきの素材とコストの件もそうじゃが、パートナーに指示をするのはご法度ぜよ。相談も駄目、どれだけパートナーの意を汲めるかが鍵じゃ!」

 

 最後にパートナーのLPが尽きてしまった場合、場と墓地・除外ゾーンに残ったパートナーのカードはそのままに、パートナーの場のコントロールと順番を引き継ぎ決闘を続行する。

 

「大体以上だ。細かいとこは決闘中に確認しろ。ま、違反があったら決闘盤が警告するからな」

「おう、問題ないぜ! 早く決闘しようぜ!」

 

 説明を終えた沢渡が一息つき、十代が沢渡を急かす。

 配置につき、全員が決闘盤を構える。順番は決闘盤がランダムに決定し、沢渡、十代、梶木、遊馬の順となった。

 

「この俺様のエンタメ決闘を見せてやるぜ!」

「よーし、楽しい決闘にしようぜ!」

「待ちくたびれたぜよ! 早く始めるんじゃ!」

「行くぜ! かっとビングだ!」

『油断するな遊馬!』

 

 

 

「「「「 デュエル!!! 」」」」

 

 

 

「俺のターン! 沢渡劇場の始まりだぜ! 魔法カード《強欲で貪欲な壺》! デッキトップから10枚を裏側で除外し、2枚ドロー!」

 

 沢渡 手札:4→6

 

スケール0《魔界劇団-メロー・マドンナ》とスケール8《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》でPスケールをセッティング!」

 

 沢渡が1枚を自分の決闘盤の左端に、もう1枚を右端に置く。すると沢渡の場の左右に二本の光の柱が立ち、左の柱の中に妖しい雰囲気を纏った悪魔の女優が、右の柱の中にはサーカスの団長のような姿をした悪魔の演者が現れ、それぞれのスケール数の表示と共に浮かび上がる。

 

「これでレベル1から7のモンスターが同時に召喚可能! ペンデュラム召喚! 現れろ俺様の僕達!」

 

 柱の間に異空間の穴が開くと、中から3つの光が飛び出す。1体目は薄汚れた少年のような悪魔の演者――――

 

「手札からレベル4《魔界劇団-サッシー・ルーキー》!」

 

 魔界劇団-サッシー・ルーキー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1700

 

 続けて現れたのは、可愛らしい姿をした悪魔の演者――――

 

「レベル4《魔界劇団-プリティ・ヒロイン》!」

 

 魔界劇団-プリティ・ヒロイン 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1500

 

 最後に現れたのはガンマンの姿をした悪魔の演者――――

 

「レベル4《魔界劇団-ワイルド・ホープ》!」

 

 魔界劇団-ワイルド・ホープ 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1600

 

「お、P召喚だぜ。すげーよな! いっぺんにモンスターだせんだからよ!」

 

 十代はここまでの道中でP使いとの決闘を経験しているため、特に驚いたりはしない。

 

「す、すげぇ!? 本当にいっぺんに出てきやがった!?」

『だが、この世界のルールと噛み合っているとは言い難い。油断無く対処すれば負けはしない』

 

 遊馬は海馬やアストラルから詳細を聞いていたが、見るのはこれが初めてである。

 

「行くぜ! 俺様を導くサーキット!」

 

 キザったらしいポーズを取りながら沢渡が空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”モンスター3体”! 俺は3体の魔界劇団をリンクマーカーにセット!」

 

 アローヘッドの”左下、下、右下”に位置するリンクマーカーに、魔界劇団が光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-3《トラフィックゴースト》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは黒いフードを被り、大剣を手に持ったアンドロイド。背中からは4本の太いケーブルが伸びている。

 

 トラフィックゴースト 闇属性 サイバース族 LINK-3(左下、下、右下) ATK:1800

 

「あれ? ご自慢のNo.は出さないのか?」

 

 十代が首を傾げると、沢渡は小馬鹿にするように笑う。

 

「フン! 主役の登場にはそれにふさわしい舞台ってもんがあんだよ! 楽しみに待っとけ!」

「お、解るぜそれ! 舞台は大事だよな!」

「ほーう? 俺様のエンタメを理解できるのか? 気に入ったぜ、魔法カード《ペンデュラム・ホルト》! EXデッキに表側Pモンスターが3体以上存在する場合、2枚ドローする!」

 

 沢渡 手札:0→2

 

「ターンエンド!」

 

沢渡

LP:4000

手札:2

〔沢渡 EX〕

 ・トラフィックゴースト ATK:1800

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ スケール0

 RS:魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー スケール8

 

「さて、行くか!」

「えっと……十代! No.には気を付けろよ!」

「心配すんな! 1度やったことある! 俺の”HEROデッキ”の決闘を見せてやるぜ! 俺のターン!」

 

 十代 手札:5→6

 

「ヒーロー?」

『遊馬、ヒーローとは何だ? どういったカードだ? 何時発動する?』

「いやお前、随分懐かしいこと言いやがって! あれだよロビン! お前の好きなエスパーロビン! あーゆーのをヒーローっていうんだ」

『ロビン……では彼のデッキもロビンデッキなのか?』

「いや、それは知らねぇけど……見てりゃ解るって」

 

「行くぜ! 魔法カード《融合》! 手札の《E・HERO バブルマン》と《E・HERO クレイマン》を融合!」

 

 十代の場にバブルマンとクレイマンが現れると、空間の渦に飲み込まれる。

 

「融合召喚! 来い《E・HERO マッドボールマン》!」

 

 渦の中から現れたのは、巨大な泥団子に固まった泥の手足が生えたゴーレムのような戦士。体の中心にはバブルマンの顔が埋め込まれており、まるで泥になったクレイマンの中にバブルマンが取り込まれたように見える。

 

 E・HERO マッドボールマン 地属性 戦士族 レベル6 DEF:3000

 

「……え? ヒーロー? 怪人じゃなくて?」

「おい遊馬失礼なこと言うなよ! マッドボールマンは立派なHEROさ!」

「ええ~そんなこと言われても……あれじゃあなぁ」

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

十代

LP:4000

手札:1

〔十代 EX〕

 ・E・HERO マッドボールマン DEF:3000

〔十代 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

 

「おおし! 俺のターンじゃ!」

 

 梶木 手札:5→6

 

「(梶木 漁太……何でこんなところにって思ったけど、全日本3位……遊戯さん達と渡り合った実力、見せて貰うぜ!)」

「魔法カード《おろかな埋葬》発動! デッキからモンスター1体を墓地へ送るぜよ! デッキから《素早いアンコウ》を墓地へ! 素早いアンコウは手札・デッキから墓地へ送られた場合、デッキからレベル3以下の”素早い”モンスター2体を特殊召喚できる! 《素早いマンボウ》2体を特殊召喚じゃ!」

 

 梶木の場に見た目からは考えられないスピードで動くマンボウが2体現れる。

 

 素早いマンボウ×2 水属性 魚族 レベル2 ATK:1000

 

「行くぜよ! 深海へ続くサーキット! 開けぇ!」

 

 梶木が指し示した先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認じゃ! 召喚条件は”水属性2体”! 《素早いマンボウ》2体をリンクマーカーにセット!」

 

 アローヘッドの”左下、右下”に位置するリンクマーカーに素早いマンボウ達が光の風となって飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚じゃ! LINK-2《マスター・ボーイ》!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。中から現れたのは凌牙も使用していたリンクモンスター、マスター・ボーイ。くるくると回転しながら梶木の場へと飛ぶ。

 

 マスター・ボーイ 水属性 水族 LINK-2(左下、右下) ATK:1400

 

「マスター・ボーイが存在する限り、水属性の攻撃力を500アップじゃ!」

 

 マスター・ボーイ ATK:1400→1900

 

「フィールド魔法《海》を発動じゃ!」

 

 梶木がフィールド魔法を発動させると、砂浜だった足元に満潮時の様に波が押し寄せ、辺り一面を海上へと変えてしまう。

 

「海が存在する限り、特定の種族のステータスが変化するぜよ」

 

 マスター・ボーイ 水族 ATK:1900→2100

 

「うわ水が!? って、ARビジョンだよな? リアル過ぎてビビった~」

「これこれ! これがあると梶木漁太って感じするよな!」

 

 イマイチ緊張感に欠ける様子の遊馬と十代だが、この”海”を用いた戦術こそが梶木の真骨頂である。呑気な二人を見て梶木はほくそ笑みながらカードを手札から取り出した。

 

「モンスターをセット! カードを2枚伏せてターンエンドじゃ!」

 

梶木

LP:4000

手札:1

〔沢渡 EX〕

 ・トラフィックゴースト ATK:1800

〔梶木 EX〕

 ・マスター・ボーイ ATK:1900

〔梶木 メイン〕

 ・セット

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ スケール0

 RS:魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー スケール8

〔梶木 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

〔梶木 フィールド〕

 ・海

 

「やっと俺のターンだ! ドロー!」

 

 遊馬 手札:5→6

 

『遊馬、相手はリンクモンスターを繰り出してきた。つまり、次のターンで複数のNo.を展開してくるだろう。並みの布陣では押し切られてしまう。攻撃出来ないこのターンは守りを固めるべきだ』

「その通りだな! よーし……」

『……フフ』

 

 遊馬が頷いて手札のカードを選び始めると、アストラルは笑みを漏らす。

 

「ん? 何だよ?」

『出会ったばかりの頃のキミだったら、”指図するな”と突っぱねていたな』

「へへ、俺の”タクティクス”もそう言ってるからな」

『”タクティクス”か……フフ!』

「ハハハ!」

 

 お互いに笑い合うと、遊馬は手札からカードを取り出す。

 

『頼むぞ遊馬!』

「おう! 《ドドドドワーフ-GG(ゴゴゴグローブ)》を召喚!」

 

 遊馬の場に鎧を纏い、岩石で覆われた機械仕掛けの巨大なグローブをはめたドワーフが現れる。

 

 ドドドドワーフ-GG 地属性 岩石族 レベル4 ATK:0

 

「ドドドドワーフの効果発動! 手札から”ズババ”か”ガガガ”のモンスター1体を特殊召喚する!」

「ここで手札から《増殖するG》の効果発動! こいつを手札から墓地へ送ることで、相手が特殊召喚する度にデッキからドローしなければならない!」

「じゃ、じゃあ俺が特殊召喚するほど沢渡の手札が増えちまうって事か!?」

『遊馬、ここで手を止めては付け入る隙を与える。防御だけは固めるべきだ』

「そうだな、心配したってしかたねぇ! 来い《ガガガマジシャン》!」

 

 続けて遊馬の場にガガガマジシャンが現れ、ドワーフと並んで相手にメンチを切る。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1500

 沢渡 手札:1→2

 

「レベル4の《ドドドドワーフ-GG》と《ガガガマジシャン》でオーバーレイ!」

 

 ドワーフとガガガマジシャンがそれぞれ橙と紫の光となって飛び上がると、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦の中から閃光が放たれると、中から巨大な剣が現れ、変形して姿を変える。

 

「俺の闘いはここから始まる! 白き翼に望みを託せ! 現れろ《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 沢渡 手札:2→3

 

「すげぇ……お前もこんなすげぇNo.を持ってんだな!」

 

 隣の場に現れた”光の巨人”を前に、十代は興奮した様子でホープを見上げる。

 

「俺はカード3枚伏せてターンエンド!」

 

遊馬

LP:4000

手札:1

〔十代 EX〕

 ・E・HERO マッドボールマン DEF:3000→3500

〔遊馬 EX〕

 ・No.39 希望皇ホープ ATK2500

〔十代 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

〔遊馬 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

 ・セット

 

「俺のターン!」

 

 沢渡 手札:3→4

 

「さーて、それじゃあ見せてやる! 俺様のスペシャルなNo.を! セッティング済みのスケールでP召喚!」

 

 沢渡はP召喚を行い、先のターンでも並べた3体をEXデッキから呼び戻す。

 

 魔界劇団-サッシー・ルーキー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1700

 魔界劇団-プリティ・ヒロイン 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1500

 魔界劇団-ワイルド・ホープ 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1600

 トラフィックゴーストリンク先:上から順に左下、下、右下

 

「そして手札からレベル4《魔界劇団カーテン・ライザー》!」

 

 最後に現れたのは大きな傘を被った悪魔の演者。傘の頂点から生えた2本の腕をぶらぶらと揺らしている。

 

  魔界劇団カーテン・ライザー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1100

 

「レベル4の《魔界劇団-サッシー・ルーキー》と《魔界劇団-ワイルド・ホープ》でオーバーレイ!」

 

 2体の魔界劇団が紫の光となって飛び上がると、場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦から閃光が放たれ、その中から巨大な黒い剣が現れる。

 

「現れろ俺様のNo.!」

 

 ??? 闇属性 戦士族 ランク4 ATK:2000 ORU:2

 

『遊馬!』

「おう! 罠カード《煉獄の落とし穴》! 相手が攻撃力2000以上のモンスターを特殊召喚した時、そいつの効果を無効にして破壊する!」

 

 沢渡が召喚したNo.がニュートラル体から変形しようとした瞬間、真下に魔法陣が現れ、No.を魔法陣の中へと取り込んで消滅させる。

 

「何!? 俺様のNo.が!?」

「こっちの対策はバッチリだぜ!」

 

 勝ち誇る遊馬に対し、沢渡は顔を片手で押さえ天を仰ぐポーズを取る。だが次の瞬間、沢渡は笑いで肩を揺らし始めた。

 

「くっくっく……罠に掛かったのはお前の方だ!」

「何?」

「墓地のNo.の効果発動! 墓地から守備表示で特殊召喚し、場の”希望皇ホープ”をORUとして取り込むぜ!」

 

 沢渡の墓地から黒い影が飛び出すと、遊馬の場のホープを包み込み、そのまま沢渡の場へと戻って姿を形成する。

 現れたのは黒いホープ。だがホープレイとは違い、禍々しくネガティブな雰囲気を纏った異質な”黒”を纏う戦士であった。右肩には”98”の数字が刻まれている。

 

「これが本当の姿だ! 《No.98 絶望皇ホープレス》!」

 

  No.98 絶望皇ホープレス 闇属性 戦士族 ランク4 DEF:2500 ORU:0→1

 

「ホ、ホープが……アストラル! 絶望皇ってなんだよ!」

『馬鹿な!? No.98はあの様なモンスターではない。ホープレスだと?』

 

 本来は存在しないNo.を見て動揺する遊馬とアストラル。アストラルは動揺を抑えて考えを巡らせる。

 

『(ホープへと姿を変えたNo.98……しかも能力はホープに絞ったメタカードとなっている)』

「アストラル?」

『大量のNo.を持ち、あのようなカードを操る沢渡という決闘者。彼は間違いなく”この世界の黒幕”からの刺客だ! 君と私を倒す為のな』

 

「まだ俺のターンは終わってないぜ! レベル4の《魔界劇団-プリティ・ヒロイン》と《魔界劇団カーテン・ライザー》でオーバーレイ!」

 

 残りの2体の魔界劇団が紫の光となって飛び上がると、場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦から閃光が放たれ、中から巨大な球体が現れる。よく見るとそれは糸が絡み合って出来た球であり、それが解けると中から巨大な蜘蛛が現れ場に降り立ち、腹部に”70”の数字を浮かび上がらせる。

 

「現れろ《No.70 デッドリー・シン》!」

 

 No.70 デッドリー・シン 闇属性 昆虫族 ランク4 ATK:2400 ORU:2

 トラフィックゴーストリンク先:No.70 デッドリー・シン(下)

 

「ORUを1つ取り除き、デッドリー・シンの効果発動! 相手モンスター1体を次の相手スタンバイフェイズ時まで除外する! 消えろ泥団子野郎!」

 

 No.70 デッドリー・シン ORU:2→1

 

 デッドリー・シンがORUの一つを食らうと、口から大量の子蜘蛛を吐き出す。子蜘蛛はマッドボールマンに群がりその巨体を覆いつくすと、マッドボールマンごと十代の場から姿を消してしまった。

 

「マッドボールマン!?」

「これでお前らを守る壁は無くなったってわけだ」

「攻撃力2000以上が2体。これでどっちかは始末できるんじゃ!」

「おいおい梶木、そんな普通の決闘は俺様の決闘じゃねぇ」

 

 そう言うと沢渡はEXデッキから1枚のカードを取り出す。姿を見ずとも解る異質な気配、No.のカードである。

 

「見せてやるぜ! 俺様のエンタメを! 最強のNo.を! ランク4の《No.98 絶望皇ホープレス》と《No.70 デッドリー・シン》でオーバーレイ!」

 

 ホープレスとデッドリー・シンが紫の光となって飛び上がり、場の上空に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

『モンスターエクシーズ同士でX召喚だと!?』

「これって”未来皇(俺のNo.)”と同じゃねぇか!?」

「”Xモンスター同士”じゃねぇ! ”No.同士”でだ! こいつは同じランク同士の”No.”2体以上でX召喚できる! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれ、中から巨大な剣が現れる。それはホープのニュートラル体よりも遥かに大きく、ゆっくりと地上へと下がり、地に刺さった瞬間に変形を始める。

 

「万界に散りし魂の祈りよ! 今こそこの手に集い、その姿を現せ!」

 

 姿を現したのはホープの二倍はある背丈を持つ巨人。巨大な機械仕掛けの翼に純白のマント、そして白銀の輝く鎧を纏い、凄まじい威圧感で遊馬達を見下ろす。左肩の鎧に刻まれた”93”の数字を持つこのNo.の名は――――

 

「現れろ! No.の真の皇!  《No.93 希望皇ホープ・カイザー》!!!」

 

  No.93 希望皇ホープ・カイザー 

  光属性 戦士族 ランク12 ATK:2500 ORU:2

 トラフィックゴーストリンク先:No.93 希望皇ホープ・カイザー(右下)

 

『ホープ・カイザー……また”存在しないはずのNo.”が!?』

「あれもアストラルが知らないNo.なのか!? しかも希望皇ホープって!?」

『(ホープのメタカードだけではなく、まさかホープそのものを創造してくるとは……この世界の黒幕とは……?)』

 

「アーハッハッハッハ!!! これこそがキング・オブ・キング! この沢渡シンゴ様に相応しい最強カードだ! 魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》! このカードはXモンスター1体のORUとなる!」

 

 No.93 希望皇ホープ・カイザー ORU:2→3

 

「さらに魔法カード《おろかな埋葬》! デッキからモンスター1体を墓地へ! 《エクシーズ・エージェント》を墓地へ送り、効果発動! 墓地のこのカードを”希望皇ホープ”のORUとする!」

 

 No.93 希望皇ホープ・カイザー ORU:3→4

 

ホープ・カイザーの効果発動! このカードのORUの種類の数までEXデッキから”No.”を特殊召喚する! ORUは4種類! さあ来い俺のNo.達!」

 

 ホープ・カイザーが天へと手を翳すと異空間の穴が開き、中から数字が刻まれたニュートラル体が4体現れ場に落ちる。そしてホープ・カイザーが号令をかけると、全てのニュートラル体が変形を始めた。

 

「ランク3! 《No.30 破滅のアシッド・ゴーレム》!」

 

 最初に姿を現したのは、体の穴から酸を垂れ流し、己と足元を溶かしている巨人。右足に”30”の数字を浮かび上がらせ、苦痛に満ちたうめき声をあげる。

 

  No.30 破滅のアシッド・ゴーレム 水属性 岩石族 ランク3 ATK:3000→3500 ORU:0

 

「ランク4! 《No.85 クレイジー・ボックス》!」

 

 正四角形の巨大な箱が表面に”85”の数字を浮かび上がらせると、箱の部分部分がスライドし穴が開く。その穴の中から怪物の目などの体のパーツが見え隠れし、巨大な目がぎょろりと遊馬の方を向く。

 

 No.85 クレイジー・ボックス 闇属性 悪魔族 ランク4 ATK:3000 ORU:0

 

「ランク7! 《No.89 電脳獣ディアブロシス》!」

 

 3体目は体をデータ片で構成した脚の無い半人半牛の怪物。データ片の体に纏われた鎧の一部に”89”の数字を刻み、右腕に装着された砲身を構え、ガントレットを装着した左手を握り締めながら遊馬達を睨みつける。

 

  No.89 電脳獣ディアブロシス 闇属性 サイキック族 ランク7 ATK:2800 ORU:0

 

「ランク8! 《No.46 神影龍ドラッグルーオン》!」

 

 最後に現れたのは遊馬も知っているNo.。長い尾と胴体、”46”の数字が刻まれた大きく美しい翼を持つ東方の白龍。元バリアン七皇が一人”ミザエル”の”記憶のNo.”である。

 

 No.46 神影龍ドラッグルーオン 光属性 ドラゴン族 ランク8 ATK:3000 ORU:0

 

 梶木の場まで巻き込んで作られたNo.の布陣。ホープ・カイザーを中心に4体のNo.が周りを固める。その姿は正に”皇とそれに従う護衛”そのものであった。

 

トラフィックゴーストリンク先

No.89 電脳獣ディアブロシス(左下)

No.30 破滅のアシッド・ゴーレム(下)

No.93 希望皇ホープ・カイザー(右下)

マスター・ボーイリンク先

No.85 クレイジー・ボックス(左下) 

No.46 神影龍ドラッグルーオン(右下)

 

「すげぇ……! No.がこんなに!」

 

 興奮する十代。

 

『一瞬でNo.を呼び出し、従わせる……正に”No.の皇”か!』

「へん! ホープ5体の方がおっかなかったぜ!」

「この効果発動後、ホープ・カイザーのORUを1つ取り除く。……俺No.に選ばれ過ぎィ!」

 

 No.93 希望皇ホープ・カイザー ORU:4→3

 

 驚愕するアストラルと気圧されながらも強がる遊馬。そして沢渡はしたり顔で再びキザなポーズを取る。

 

「見たか! これぞネオニュー沢渡スペシャルコンボPX! この効果で呼び出したNo.の効果は無効化され、このターンお前達が受ける全ての戦闘ダメージが半減するが、十分だ! この大軍勢で二人まとめて潰してやる! バトル! アシッド・ゴーレム!」

 

 沢渡の指示でアシッド・ゴーレムが動き出す。

 

「まずはNo.使いからだ!」

『遊馬、罠だ!』

「おう! 罠カード《獣湧き肉躍り》! 相手が直接攻撃してきて、相手モンスターの攻撃力の合計が8000以上の場合、元々のカード名が違うモンスター3体を手札・デッキ・墓地から1体ずつ選んで攻撃表示で特殊召喚する! まずは手札から《ガンバラナイト》を特殊召喚!」

 

 迫るアシッド・ゴーレムの前に、空から全身甲冑の騎士が落下して着地し、両腕の盾を構えて立ちふさがる。。

 

 ガンバラナイト 光属性 戦士族 レベル4 ATK:0

 

「続いてデッキから《ゴゴゴゴラム》! こいつは召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、表示形式を変更する!」

 

 続けて遊馬の場に金棒を手にした単眼の赤いゴーレムが現れ、防御体勢を取る。

 

 ゴゴゴゴラム 地属性 岩石族 レベル4 ATK:2300→DEF:0

 

「最後に墓地から《ガガガマジシャン》!」

 

 最後にガガガマジシャンが現れ、3体で遊馬を守るように立ちふさがる。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1500

 

「小賢しい真似を! ならそこの攻撃力0のザコを攻撃だ! 【アシッド・スプラッシュ】!」

「ガンバラナイトは攻撃対象になった時、守備表示になる!」

 

 ガンバラナイト ATK:0→DEF:1800

 

 アシッド・ゴーレムは右手の指先をガンバラナイトに向けると、指先に空いた穴から大量の酸を噴射する。ガンバラナイトは盾を構えて酸を受けるが、シュウシュウと音を立て、盾ごとどろどろに溶かされてしまった。

 

「ガンバラナイトォーーーー!?」

「チィ! トラフィックゴースト! ゴゴゴゴラムを攻撃!」

 

 続いてトラフィックゴーストが剣を振り下ろし、ゴゴゴゴラムを両断する。

 

「ゴゴゴゴラムの効果発動! 場で破壊されて墓地へ送られた時、デッキから”ゴゴゴ”1体を墓地へ送る! 《ゴゴゴゴーレム》を墓地へ!」

「クレイジー・ボックス! ガガガマジシャンを攻撃!」

 

 クレイジー・ボックスが穴から無数の腕を伸ばすと、ガガガマジシャンを捕らえ、箱の中へと引きずりこんでしまう。

 

「ガガガマジシャン……!」

 

 遊馬 LP:4000→3250

 

「これで今度こそ邪魔はいなくなったな! ディアブロシス!」

 

 ディアブロシスが砲身を構え、遊馬に向かってビームを放つ。

 

「うわぁぁぁ!?」

『遊馬!?』

「遊馬大丈夫か!? 次来るぞ!」

 

 遊馬 LP:3250→1850

 

「ドラッグルーオン! 【火炎神激】!」

 

 ドラッグルーオンが口から凄まじい火炎を放ち、火が遊馬を飲み込む。

 

「うわぁぁぁ!? や、やべぇ……」

 

 遊馬 LP:1850→350

 

「一人仕留めそこなったがまあいい! これでお前は終わりだ! ホープ・カイザー! 【ホープ拳スマッシュ】!」

 

 ホープ・カイザーが遊馬を仕留める為に飛び出す。

 遊馬は何とか立ち上がり、迫るホープ・カイザーと対峙する。

 

「くそ! もう手が!」

『ここまでか……』

 

 遊馬とアストラルが諦めかけた瞬間、隣の場から勇ましい声が響く。

 

「罠カード《ヒーロー見参》! 相手の攻撃宣言時、相手に自分の手札のカード1枚を選ばせて、それがモンスターだった場合、特殊召喚する! 俺の手札はこの1枚のみ!」

 

 声の主である十代は最後の手札を取り出し、モンスターゾーンに置く。

 

「《E・HERO ネオス》! 遊馬を守れ!」

 

 E・HERO ネオス 光属性 戦士族 レベル7 ATK:2500

 

 迫るホープ・カイザーと遊馬の間に颯爽と現れ、ホープ・カイザーの拳を受け止めるネオス。これ以上は押し切れぬと見たホープ・カイザーは沢渡の場へと戻るが、自身の数倍の体格を持つホープ・カイザーの一撃を受け止めたネオスはその場に倒れ、消滅してしまう。

 

「危なかったな遊馬!」

「あ、ありがとう十代……助かったぜ」

「いいってことよ! それがHEROの使命だからな!」

「(か、かっちょいい……! これがヒーローか!)」

 

「ぐぐぐぐぐ……! 二人どころか一人も仕留められなかっただとぉ! しかも俺様を差し置いてヒーロー気取りか! 屈辱だぜ! カードを伏せてターンエンド!」

 

沢渡

LP:4000

手札:0

〔沢渡 EX〕

 ・トラフィックゴースト ATK:1800

〔梶木 EX〕

 ・マスター・ボーイ ATK:1900

〔沢渡 メイン〕

 ・No.89 電脳獣ディアブロシス(トラフィックゴースト:左下) ATK:2800

 ・No.30 破滅のアシッド・ゴーレム(トラフィックゴースト:下) ATK:3500

 ・No.93 希望皇ホープ・カイザー(トラフィックゴースト:右下) ATK:2500

〔梶木 メイン〕

 ・セット

 ・No.85 クレイジー・ボックス(マスターボーイ:左下) ATK:3000

 ・No.46 神影龍ドラッグルーオン(マスターボーイ:右下) ATK:3000

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ スケール0

 ・セット

 RS:魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー スケール8

〔梶木 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

〔梶木 フィールド〕

 ・海

 

 誰もが怯む大軍勢。それを前に十代は目を輝かせ、伏せカード1枚を展開する。

 

「このエンドフェイズ時、罠カード《裁きの天秤》発動! 相手の場のカードが自分の手札・場のカードよりも多い場合、その差だけドローする! 今回はタッグだからチームでの差で決めるぜ! 俺の場には裁きの天秤1枚、遊馬にはセットカード1枚、そして手札はお互いに0、合計2枚。沢渡、梶木、お前らの場には?」

「ゲ、14枚……!?」

「ほぼ沢渡のカードぜよ……」

「よって俺は12枚ドロー!」

 

 十代 手札:0→12

 

「よっしゃ! 十代が一気に手札を増やしたぜ!」

『後は、彼にNo.を倒せるだけのタクティクスがあれば……』

 

「俺のターン!」

 

 十代 手札:12→13

 

「スタンバイフェイズ時、除外されたマッドボールマンが俺の場に戻ってくる!」

 

 十代の場に蜘蛛の糸で出来た球が現れ、中からマッドボールマンが糸を破って現れる。

 

 E・HERO マッドボールマン 地属性 戦士族 レベル6 DEF:3000→3500

 

「へへ、ワクワクするぜ! そのNo.の大群をどうやって倒してやろうかと思うと!」

「フン! やれるもんならやってみろ!」

「ああ! 魔法カード《HERO’S ボンド》! 場に”HERO”が存在する場合、手札からレベル4以下の”E・HERO”2体を特殊召喚する! 来い、《E・HERO フェザーマン》! 《E・HERO スパークマン》!」

 

 十代の場にフェザーマンと、稲妻をイメージした黄色と青のヘルメットとボディスーツを纏ったヒーローが現れる。

 

 E・HERO フェザーマン 風属性 戦士族 レベル3 ATK:1000

 E・HERO スパークマン 光属性 戦士族 レベル4 ATK:1600

 

「速攻魔法《融合解除》! マッドボールマンの融合を解除する!」

 

 十代の場のマッドボールマンが光に包まれると、それが二つに分かれ、クレイマンとバブルマンの姿に戻る。

 

E・HERO クレイマン 地属性 戦士族 レベル4 DEF:2000

E・HERO バブルマン 水属性 戦士族 レベル4 ATK:800→1300

 

「今度はこれだ! 魔法カード《R-ライトジャスティス》! 俺の場の”E・HERO”の数だけ魔法・罠を破壊する! 俺の場のE・HEROは4体! 梶木さんの場の1枚と《海》、沢渡の場の1枚とPカードの《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》、計4枚のカードを破壊する!」

 

 十代が発動した魔法からRの文字が浮かび上がると、HERO達が一斉の光を放ち、光が当たった相手の伏せカード、そして海とダンディ・バイプレイヤーを消滅させる。”海”が無くなった場から水が引き、元の砂浜へと戻った。

 

梶木が伏せていたカード

竜巻海流壁

 

「俺の海が!? ”シー・ステルス”がっ!?」

「やっぱり”シー・ステルス”が狙いだったな! 遊戯さんや城之内さんを苦しめたコンボ、封じさせてもらったぜ! そして沢渡、Pカードは片方だけじゃP召喚できないんだよな? 罠外しのついでに封じさせてもらうぜ!」

 

 コンボパーツを破壊されて歯を食いしばる梶木。しかし沢渡の方は不敵な笑みを浮かべる。

 

「いい気になってるみてぇだが、俺のセットカードは”罠外しへの罠”だ! 破壊されたカードは《魔界台本「オープニング・セレモニー」》! セットされたこいつが相手によって破壊された場合、俺は手札が5枚になるようにドローする!」

 

 沢渡 手札:0→5

 

「げっ!? 逆に助けちまったか!」

「こいつはEXデッキに表側のPモンスターがなきゃ発動できない。罠もP召喚も封じようとしたのが仇になったな」

「しくったな~……まあ俺は12枚引いたし、いいか! 気を取り直して行くぜ! HEROを新たな舞台へ!」

 

 十代が空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”HERO2体”! 《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO スパークマン》をリンクマーカーにセット!」

 

 フェザーマンとスパークマンが光の風となってアローヘッドの”上、下”に位置するリンクマーカーに飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 アローヘッドのゲートが開き、中から青いHEROが飛び出す。杖を手に持ち、ローブのようにはためく腰布。まるで魔術師のような姿をした戦士――――

 

「現れろLINK-2! 《X・HERO (エクストラヒーロー)ワンダー・ドライバー》!」

 

 X・HERO ワンダー・ドライバー 光属性 戦士族 LINK-2 ATK:1900

 

「魔法カード《O-オーバーソウル》! 墓地から”E・HERO”通常モンスター1体を特殊召喚する! 来い《E・HERO ネオス》!」

 

 続けてネオスが場に舞い戻り、ワンダー・ドライバーの背後に着地する。

 

 E・HERO ネオス 光属性 戦士族 レベル7 ATK:2500

 ワンダー・ドライバーリンク先:E・HERO ネオス(下)

 

「ワンダー・ドライバーの効果発動! このカードのリンク先にある自分のモンスターゾーンに”HERO”が召喚・特殊召喚された場合、自分の墓地の”融合”、”フュージョン”魔法カードまたは”チェンジ”速攻魔法1枚を自分の場にセットする! 俺は《融合》を場にセット! そして再びHEROを新たな舞台へ!」

 

 十代は再び空中を指さし、アローヘッドを出現させる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”HERO2体以上”! 俺は《X・HERO ワンダー・ドライバー》、《E・HERO クレイマン》、《E・HERO バブルマン》の3体をリンクマーカーにセット!」

 

 十代の場の3体のHEROが光の風となり、アローヘッドの”左下、下、右下”に位置するリンクマーカーに飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 リンクマーカーが点灯し、アローヘッドのゲートが開く。ゲートから飛び出したのは、大きなパイルバンカーを左腕に装着し、それとケーブルで繋がったバッテリーを腰に提げた赤黒いボディのHERO。パイルバンカーの先端の杭はバッテリーのエネルギーによって真っ赤に熱せられている。

 

「現れろLINK-3! 《X・HERO ドレッドバスター》!」

 

 X・HERO ドレッドバスター 闇属性 戦士族 LINK-3(左下・下・右下) ATK:2500

 リンク先:E・HERO ネオス(下)

 

「ははっ! 何かエドのHEROみたいだ! たまにはこんなダークヒーローもいいかもな!」

 

『何故だ?』

「どうしたアストラル?」

『遊馬、十代は召喚条件を”HERO2体以上”と言った』

「言ってたな」

『素材としたワンダー・ドライバーはLINK-2、2体分の素材にできたはずだ。だが彼は3体のHEROでリンク召喚を行っている』

「そういやそうだ。なんでだ?」

 

「こういうことさ! ドレッドバスターのモンスター効果! このカードとリンク先の”HERO”の攻撃力を俺の墓地の”HERO”1種類につき100ポイントアップする! 俺の墓地のHEROは5種類! よってこいつとリンク先のネオスの攻撃力を500アップだ!」

 

 X・HERO ドレッドバスター ATK:2500→3000

 E・HERO ネオス ATK:2500→3000

 

『成程、最上級HEROの攻撃力を上げる為にか。だが数も力もまだ及ばない。どうする気だ?』

「まだまだ行くぜ! 《N・ブラック・パンサー》を召喚!」

 

 続いて十代の場にNの黒豹、ブラック・パンサーが現れる。場に降り立ったブラック・パンサーは大きくそびえ立つホープ・カイザーを見上げる。

 

 N・ブラック・パンサー 闇属性 獣族 レベル3 ATK:1000

 

『十代、あのモンスターの能力は危険だ』

「解ってるぜブラック・パンサー、だからお前の力が必要なんだ! 頼んだぜ!」

『任せろ!』

「ネオスとブラック・パンサーでコンタクト融合!」

 

 十代が号令をかけると、ネオスとブラック・パンサーが宇宙の彼方へと飛び立つ。

 

「ネオスとNが場に揃っている場合、デッキに戻すことで”融合”のカード無しで融合モンスターを呼び出す”コンタクト融合”ができる! 来い! 《E・HERO ブラック・ネオス》!」

 

 宇宙の果てから光が放たれ、その中から黒いマントの様なコウモリの翼と手足に野獣の様に鋭い爪を生やした黒いネオスが現れる。

 

 E・HERO ブラック・ネオス 闇属性 戦士族 レベル7 ATK:2500→3000

 ドレッドバスターリンク先:E・HERO ブラック・ネオス(右下)

 

「コンタクト融合だぁ? 融合前の能力と全く変わってねぇじゃねぇか! とんだ見掛け倒しだ!」

「沢渡、No.にも負けないネオスペースの力、見せてやるぜ! ブラック・ネオスの効果発動! 場のモンスター1体の効果をブラック・ネオスが存在する限り無効にする! 対象は《No.93 希望皇ホープ・カイザー》!」

 

 ブラック・ネオスが掛け声と同時に波動を放つと、それを受けたホープ・カイザーは力が抜けたかのように片膝を付く。

 

「No.の効果を無効にしやがった!?」

「これでそいつをぶっ倒せるぜ。セットしておいた《融合》を発動! 手札の《E・HERO ワイルドマン》と《E・HERO エッジマン》を融合!」

 

 十代の場に密林奥地に住む原住民のような姿をしたHEROと角張った黄金の鎧を身に纏ったHEROが現れ、空間の渦の中へと飲み込まれる。

 

「融合召喚! 現れろ《E・HERO ワイルドジャギーマン》!」

 

 渦の中から飛び出したのは、大剣を背負い、立派な角が付いた金色の兜と、刃が付いた金色のアーマーを身に着けた筋骨隆々の大男。背中の大剣を抜き放ち、筋肉を隆起させながら雄叫びを上げる。

 

  E・HERO ワイルドジャギーマン 地属性 戦士族 レベル8 ATK:2600→3300

  ドレッドバスターリンク先

  E・HERO ブラック・ネオス(右下) ATK:3000→3200

  E・HERO ワイルドジャギーマン(左下)

 

 X・HERO ドレッドバスター ATK:3000→3200

 

「バトルだ! ワイルドジャギーマンで梶木のマスター・ボーイを攻撃! 【インフィニティ・エッジ・スライサー】!」

 

 ワイルドジャギーマンが大剣を振り上げ跳躍すると、マスター・ボーイに向かって急降下し、大剣を振り下ろして両断する。

 

「うおぉぉぉ!? ……ぐうっ! マスター・ボーイの効果発動じゃ! 破壊された場合、自分の墓地の水属性1体を手札に加える! 《素早いアンコウ》を手札に!」

 

 梶木 LP:4000→2600 手札:1→2

 No.30 破滅のアシッド・ゴーレム ATK:3500→3000

 

「ワイルドジャギーマンは相手の場のモンスター全てに1度ずつ攻撃できる! 今度は沢渡の場のトラフィックゴーストに攻撃!」

 

 ワイルドジャギーマンが梶木の場を飛び出し、その勢いで沢渡の場のトラフィックゴーストを斬り捨てる。

 

「うおお!? ば、場のモンスター全てだと!? まさか……」

 

 沢渡 LP:4000→2500

 

「おう、そのまさかさ! ワイルドジャギーマン! No.を一気にやっつけろ!」

 

 ワイルドジャギーマンが十代の場まで飛び退いて後退すると、大剣を放り投げ、ブーメランのように飛ばして場のNo.を一気に蹴散らす。

 ホープ・カイザーの効果で呼び出されたNo.達は戦闘破壊耐性を失っており、カイザー自身もブラック・ネオスによって無効化されているため、抵抗もできぬまま大剣に切り裂かれ消滅する。

 

「うわぁぁぁぁぁーーーー!!?」

 

 沢渡 LP:2500→2200→1900→1600→1100→300

 

「沢渡ィ!? しっかりするんじゃあ!」

 

 ワイルドジャギーマンの猛攻によって砂浜へと吹き飛ばされて倒れる沢渡。流石に格好つけている余裕は無いらしく、立ち上がると何もいなくなった己の場を前に呆然とする。

 

「逆転だ! ひっくり返しちまったぜ! ヒーローすげぇ!」

『HERO・・・…自在に姿を変え、劣勢すらも覆す。まったく先が読めない決闘だ……』

「何ぶつぶつ言ってんだよアストラル? これでセットモンスターを破壊して、ブラック・ネオスとドレッドバスターが攻撃すれば俺達の勝ちだぜ! って俺まだ何もしてねぇ!?」

 

 頭を抱える遊馬を他所に、ワイルドジャギーマンは次の標的へと動き出す。

 

「ワイルドジャギーマンでセットモンスターを攻撃!」

 

 ワイルドジャギーマンが迫ると、セットモンスターが姿を現す。

 現れたのはコミカルな姿をしたイルカ。高い戦闘能力を持っているわけではないらしく、ワイルドジャギーマンにあっさりと斬り伏せられて破壊される。

 

 イマイルカ 水属性 海竜族 レベル2 DEF:1000

 

「イマイルカの効果発動! 場のこいつが相手によって破壊され墓地へ送られた時、俺のデッキトップから1枚墓地へ送る!」

 

墓地へ送られたカード

超古深海王シーラカンス

 

「水属性が墓地へ送られた場合、1枚ドローじゃ!」

 

 梶木 手札:2→3

 

「だがこれでがら空き、決めるぜ! ブラック・ネオスで沢渡にダイレクトアタック! 【ラス・オブ・ブラック・ネオス】!」

「く、くそ……」

 

 ブラック・ネオスが沢渡に向かって飛び出す。何も対抗手段が無い沢渡は観念したように俯くが、それを弾けるように起き上がらせる怒声が隣から響く。

 

「調子にのんなやアホンダラァーーーー!!! 罠カード《波紋のバリア -ウェーブ・フォース-》! 相手の直接攻撃宣言時、相手の場の攻撃表示モンスター全てをデッキに戻す! 波にのまれて消えろォーーーー!!!」

 

 梶木が発動した罠から波紋が広がり、十代の場にいたHERO達全てを光と化して消滅させる。

 

「何だって!? くっ! 速攻魔法《コンタクト・アウト》! コンタクト融合体をEXデッキに戻し、コンタクト融合に使用した素材一組がデッキに揃っていれば、それを場に特殊召喚できる!」

 

 ブラック・ネオスだった光が再び形を形成し、ネオスとブラック・パンサーとなって場に現れ、守備体勢を取る。

 

 E・HERO ネオス 光属性 戦士族 レベル7 DEF:2000

 N・ブラック・パンサー 闇属性 獣族 レベル3 DEF:500

 

「チィ! 上手く逃げやがってぇ~!」

「あっぶねぇ~……ついてないぜ、まさかミラフォみたいなカード伏せてるなんて。そっち破壊しときゃよかったな。カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

十代

LP:4000

手札:0

〔十代 メイン〕

 ・E・HERO ネオス DEF:2000

 ・N・ブラック・パンサー DEF:500

〔十代 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

 ・セット

〔遊馬 魔法・罠〕

 ・セット

 

「正直助かったぜ……礼を言っとく」

「思ったより頼りないぜよNo.。まあ任せておけ! 俺のターン!」

 

 梶木 手札:3→4

 

「さて、もっかい形勢を取り返すには、まずは”宝探し”じゃ! 魔法カード《サルベージ》! 墓地の攻撃力1500以下の水属性2体を手札に加える! 《素早いマンボウ》2体を手札に!」

 

 梶木:3→5

 

「魔法カード《強欲なウツボ》! 手札の水属性2体をデッキに戻しシャッフル! その後3枚ドローじゃ!」

 

戻したカード

素早いマンボウ×2

 

 梶木 手札:4→2→5

 

「来た! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《超古深海王シーラカンス》を特殊召喚じゃ!」

 

 梶木の場に鋭い歯やトゲを持った巨大な古代魚が現れる。

 

 超古深海王シーラカンス 水属性 魚族 レベル7 ATK:2800

 

「シーラカンスの効果発動! 1ターンに一度、手札を1枚捨てることでデッキからレベル4以下の魚族を可能な限り特殊召喚できるんじゃ! 俺と沢渡の場の空いているモンスターゾーン全てに魚を呼び出すぜよ!」

 

 梶木 手札:4→3

 

捨てたカード

素早いアンコウ

 

 シーラカンスが地を震わせる程の勢いで体を揺らすと、梶木達の場に大量の魚族がなだれ込む。

 

 グレート・ホワイト×3 水属性 魚族 レベル4 ATK:1600

 魚雷魚×3 水属性 魚族 レベル3 ATK:1000

 素早いマンボウ×3 水属性 魚族 レベル2 ATK:1000

 

「うははは! 大漁大漁!」

「うお!? 場が魚で埋め尽くされちまった!? ……この展開、魚じゃないけど、エドと一緒にやったタッグ決闘思い出すぜ」

「呑気してる場合じゃないぜよ! ここからが俺の新戦術”大波奇襲(ウェーブ・アサルト・アタック)”の始まりじゃ! まずはアローヘッド確認! 《素早いマンボウ》2体で2体目の《マスター・ボーイ》をリンク召喚じゃ!」

 

 梶木の場に現れたアローヘッドのリンクマーカーにマンボウ2体が飛び込み、ゲートからマスター・ボーイが飛び出す。

 

 マスター・ボーイ 水属性 水族 LINK-2(左下・右下) ATK:1400→1900

 

「リンクモンスターとくれば、次はNo.じゃ! レベル4の《グレート・ホワイト》3体でオーバーレイ!」

 

 梶木の場の腕が生えたサメ3体が青い光となって飛び上がると、梶木の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から閃光が放たれると、その中からサメの様な形をしたオブジェが現れ、変形を開始する。

 

「最強最大の力を持つ、深海の帝王! その牙で全ての物を噛砕け!」

 

 オブジェから五体が伸びると、腕の様なヒレから鋭い爪が伸び、頭部にある大きな口を開いて鋭い牙を見せる。左胸に”32”の数字を持つ、遊馬にとっても因縁深いNo.の暴君――――

 

「現れろ《No.32 海咬龍シャーク・ドレイク》!」

 

 No.32 海咬龍シャーク・ドレイク 水属性 海竜族 ランク4 ATK:2800→3300 ORU:3

 マスター・ボーイリンク先:No.32 海咬龍シャーク・ドレイク(左下)

 

「シャークのNo.が!? 十代気を付けろ! そいつ強ぇぞ!」

「任せとけ! ここまできたら何でも来いだ!」

「後悔しても知らんぜよ。No.はこいつだけじゃないんじゃ! レベル3の《魚雷魚》2体でオーバーレイ!」

 

 その名の通り魚雷のような魚2体が青い光となって飛び上がると、梶木の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれ、その中から中心に”47”の数字が刻まれた球体が現れる。球体は開くように展開し、大きな翼と鎌の様なヒレを持つ1体のサメと化す。

 

「現れろ《No.47 ナイトメア・シャーク》!」

 

 No.47 ナイトメア・シャーク 水属性 海竜族 ランク3 ATK:2000→2500 ORU:2

 マスター・ボーイリンク先

 No.32 海咬龍シャーク・ドレイク(左下)

 No.47 ナイトメア・シャーク(右下)

 

「魔法カード《希望の記憶》! 自分の場の”No.”の種類の数だけドローする!」

 

 梶木 手札:2→4

 

「こいつは自分の場の水属性2体をリリースすることで手札・墓地から特殊召喚できる! 場の《素早いマンボウ》と《魚雷魚》をリリースし、《城塞クジラ》を特殊召喚!」

 

 梶木の場の魚2体が光に中へと消えると、その光の中から巨大な一角クジラが現れる。そのクジラは背中に巨大な砲塔や主砲を設置した城塞を背負っており、その砲身を十代達に向けながら場の上空に浮かぶ。

 

 城塞クジラ 水属性 魚族 レベル7 ATK:2350→2850

 

「城塞? 儀式モンスターの”要塞クジラ”ならビデオで見て知ってっけど……」

「城塞クジラの効果発動! 特殊召喚に成功した場合、デッキから永続罠《潜海奇襲(シー・ステルス・アタック)》を俺の場にセットする! バトルじゃ! No.2体でモンスターを蹴散らせ!」

 

 梶木の場のNo.2体が動き出す。シャーク・ドレイクはブラック・パンサーに向かってサメの形をしたブレスを放ち、ナイトメア・シャークはネオスに向かって鎌ヒレを振るい、それぞれ破壊する。

 

「くうっ! だが守備表示だ、ダメージは無いぜ」

「駄目だ十代! そいつは――――」

「甘いぜよ! シャーク・ドレイクの効果発動! ORUを1つ取り除くことで、戦闘破壊した相手モンスターの攻撃力を1000下げ、相手の場に攻撃表示で特殊召喚するぜよ!」

 

  No.32 海咬龍シャーク・ドレイク ORU:2→1

 

 シャーク・ドレイクがORUを1つ取り込むと、ブラック・パンサーがいた場所に向かって竜巻を放つ。やがて竜巻が消えると、その中からブラック・パンサーが現れ場に放り出される。

 

 N・ブラック・パンサー 闇属性 獣族 レベル3 ATK:1000→0

 

「ブラック・パンサー!?」

「さらにシャーク・ドレイクはこのバトルフェイズ中にもう1度バトルできるんじゃ! やれ! 【デプス・バイト】!」

 

 シャーク・ドレイクは先程と同じように鮫影のブレスを放ち、ブラック・パンサーを噛砕く。

 

「うわぁぁぁ!?」

「十代!?」

 

 十代 LP:4000→700

 

 堪らず倒れ、砂浜に体を預ける十代。遊馬が心配して駆け寄ろうとするが、十代はすぐに立ち上がって遊馬を制する。

 

「大丈夫だ! まだまだいけるぜ!」

「アホンダラ! 壁無しLP無し! そして俺の攻撃モンスターは後2体! 行けるどころか終わりじゃ! シーラカンスで十代、城塞クジラで遊馬にダイレクトアタック!」

 

 シーラカンスがブレス、城塞クジラが主砲を放とうと構えた瞬間、十代が素早く動く。

 

「速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》! デッキから《クリボー》か《ハネクリボー》のどちらかを手札に加える、または特殊召喚する! 頼むぜ相棒! 《ハネクリボー》を特殊召喚!」

 

 十代の場に羽根の生えたクリボーが現れ、攻撃に備えて蹲る。

 

 ハネクリボー 光属性 天使族 レベル1 DEF:200

 

「チィ! まだ壁張る元気があったか! 蹴散らせシーラカンス!」

 

 シーラカンスが水のブレスを放ち、ハネクリボーを蹴散らす。

 

「サンキュー相棒! 助かったぜ!」

「城塞クジラで遊馬にダイレクトアタック!」

 

 城塞クジラは主砲の砲身を遊馬に向けて構え、砲撃する。

 

「うわぁ!? ……あれ?」

 

 砲弾は発射されたが、遊馬に届くことなく消滅してしまった。

 

「な、何でじゃ!?」

「ハネクリボーが場で破壊されたターン、俺達への戦闘ダメージは0となる。残念だったな」

「な!? ぐうぅ! カードを3枚伏せてターンエンドじゃ!」

 

梶木

LP:2600

手札:0

〔梶木 EX〕

 ・マスター・ボーイ ATK:1900

〔梶木 メイン〕

 ・No.32 海咬龍シャーク・ドレイク ATK:3300 ORU:1 (リンク先:左下)

 ・No.47 ナイトメア・シャーク ATK:2500 ORU:2 (リンク先:右下)

 ・超古深海王シーラカンス ATK:2800→3300

 ・城塞クジラ ATK:2850

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ スケール0

〔梶木 魔法・罠〕

 ・セット(潜海奇襲)

 ・セット

 ・セット

 ・セット

 

『……凄まじい決闘だ。全員が戦局を一変させるタクティクスの持ち主。遊馬、君はどうする?』

「決まってる! 俺の全身全霊、全力を掛けて決闘する! 行くぜ! かっとビングだ!!!」

 

 遊馬 手札:0→1

 

 遊馬の言葉に十代が反応する。

 

「かっとビング? そういや最初も言ってたけど何だそれ?」

「かっとビング! それは挑戦し続けること! 絶対に諦めないこと! 十代が繋いでくれたこの決闘! 絶対に勝つ!」

「お、何かいいなそれ! おっしゃ遊馬! 気張れよ!」

 

「フン! その威勢、どこまでもつか! 永続罠《潜海奇襲》! 発動時の効果として手札・墓地から《海》を発動する! 発動するのはさっき破壊された《海》じゃ!」

 

 梶木が罠を発動させると、再び足元が海水で満たされる。さらに梶木の場のモンスター全てが海の中へと潜り、姿を消してしまう。

 

 マスター・ボーイ ATK:1900→2100

 城塞クジラ ATK:2850→3050

 No.32 海咬龍シャーク・ドレイク ATK:3300→3500

 超古深海王シーラカンス ATK:3300→3500

 No.47 ナイトメア・シャーク ATK:2500→2700

 

「な、何だ!? みんな海の中に潜っちまった!?」

『いや、まだ浅い……が、これ以上潜られれば攻撃が届かなくなる』

「その通りだぜアストラル。これが梶木さんの得意戦術さ」

 

 潜海奇襲――――遠くから除こうとすれば深海へと逃げられ、近づいて叩こうとするならば裏をかかれて迎撃される。かつて、決闘者達の王国やバトルシティで遊戯達を苦しめた戦術が再び展開された。

 

『(罠カードなら、こちらに合わせて奇襲することもできたはずだ。それをしなかったということは、この戦術は揺さぶり……モンスターを視覚から消し、気配だけを放ってこちらに精神的な負荷を掛ける気か)』

「くそ……落ち着かないぜ」

「(そうだ、焦れろ、焦れ。抑えが聞かなくなって飛び出したところを仕留めてやるぜよ!)」

 

 激しい攻めの後に、静かな待ちの決闘――――猛攻からの反撃を意気込んでいた遊馬は、不気味な静かさを前に出鼻を挫かれてしまっていた。

 

「……」

『遊馬、君らしくないな』

「そうだよな、俺らしくねぇ……よっしゃ! もう一回!」

 

 遊馬は突然飛び上がり、バク転を繰り返して後退。そして全速力で駆け出してジャンプ――――

 

「かっとビングだァーーーー!!! 俺ェーーーー!!!」

「やかましい! とっとと決闘を続けろ! 早く俺に回せ!」

 

 遊馬よりも先に焦れてきた沢渡が地団駄を踏む。一方、遊馬は非常にすっきりした表情で場に着地し、自分の立ち位置に戻った。

 

「行くぜ! 永続罠《闇の増産工場》! 手札・場からモンスター1体を墓地へ送り、1枚ドローする! 手札から墓地へ!」

 

 遊馬 手札:1→0→1

 

手札から墓地へ送ったカード

ゴゴゴゴースト

 

「魔法カード《マジック・プランター》! 自分の場の永続罠1枚を墓地へ送り、2枚ドローする! 《闇の増産工場》を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:0→2

 

「よし! 永続魔法《オノマト選択(ピック)》を発動! 発動時の効果として、デッキからこのカード以外の”オノマト”カード1枚を手札に加える! 魔法カード《オノマト連携(ペア)》を手札に加えて、発動! 手札を1枚墓地へ送り、デッキからカテゴリの違うオノマトモンスター2体を手札に加える! ”ゴゴゴ”から《ゴゴゴジャイアント》! ”ガガガ”から《ガガガヘッド》を手札に!」

 

 遊馬 手札:1→0→2

 

墓地へ送ったカード

ゴブリンのやりくり上手

 

「《ゴゴゴジャイアント》を召喚! その効果で墓地の《ゴゴゴゴースト》を守備表示で特殊召喚する!」

 

 遊馬の場にゴゴゴジャイアントが現れ、その横に武者鎧を纏った巨大な霊魂が現れる。

 

 ゴゴゴジャイアント 地属性 岩石族 レベル4 ATK:2000

 ゴゴゴゴースト 闇属性 アンデット族 レベル4 DEF:0

 

「ゴゴゴゴーストの効果発動! 特殊召喚に成功した場合、墓地の《ゴゴゴゴーレム》を守備表示で特殊召喚できる!」

 

 続けてゴゴゴゴーレムが場に現れ、防御体勢を取る。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 DEF:1500

 

「場に”ゴゴゴ”か”ドドド”が存在する場合、墓地の《ドドドドワーフ-GG》を特殊召喚できる! そして、ドドドドワーフの効果で手札から《ガガガヘッド》を特殊召喚!」

 

 更に遊馬の場にドドドドワーフと、ガガガマジシャンとよく似た青い装束の魔術師が現れる。

 

 ドドドドワーフ-GG 地属性 岩石族 レベル4 ATK:0

 ガガガヘッド 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK:2100

 

「行くぜ! レベル4の《ゴゴゴゴースト》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!」

 

 ゴゴゴゴーストとゴゴゴゴーレムがそれぞれ紫と橙の光となって飛び上がると、遊馬の場に現れた赤色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から赤い閃光が放たれると、その中から一人のガンマンがマントを翻して現れる。

 

「来い! ランク4《ガガガガンマン》!」

 

 ガガガガンマン 地属性 戦士族 ランク4 DEF:2400 ORU:2

 

「なんじゃ? 突っ込んでくると思ったら守備表示ぜよ? 案外度胸ないんじゃ」

「突っ込むばかりが決闘じゃねぇ。全力で考えられる手を尽くす! それがタクティクスだ! ガガガガンマンの効果発動! 1ターンに1度、ORUを1つ取り除き、相手に800ポイントのダメージを与える! 対象は沢渡だ! いけぇガガガガンマン!」

「へ?」

 

 完全に梶木と向かい合っていたガガガガンマンが突然沢渡へと向き直り、銃を抜いてORUを一つ銃の中へと入れる。

 

「ちょちょちょちょっと待て! 話せば解る! わぁ!?」

 

 残りLP300の沢渡がこの銃撃を受けてしまえばLP0、脱落である。銃を構えるガガガガンマンに対して後退っていると、銃から弾丸が放たれ、思わず顔を腕で覆う。

 

 ガガガガンマン ORU:2→1

 

「させんぜよ! カウンター罠《ダメージ・ポラリライザー》! ダメージを与える効果の発動と効果を無効にし、お互いカードを1枚ドローする! この場合は発動者の俺とダメージ効果使用者の遊馬でドローじゃ!」

 

 カウンター罠が開き、カードから放たれた光で弾丸が消滅する。恐る恐る腕を解いた沢渡は安堵して胸をなでおろした。

 

「くっそ~本当に頼むから、無事に俺のターン回ってきてくれ~」

「また梶木に防がれちまった!?」

「どんなもんじゃ! 小手先の戦術なんぞ通用せん!」

 

 遊馬 手札:0→1

 梶木 手札:0→1

 

「どうした? もう手は尽きたか? お前じゃこの”シー・ステルス”の中に踏み入ることすらできんのか?」

「(踏み入ってやりてぇけど、あの自信、絶対に罠だ。だけど――――)」

 

 遊馬は梶木の罠の効果によって引いたカードを見る。

 

「(このカードがあれば!) 永続魔法《オノマト選択》の効果発動! 俺の場のオノマトモンスター1体を選択! 俺の場のモンスターはこのターンの終了時まで選択したモンスターと同じレベルになる! 選択するのはレベル6の《ガガガヘッド》!」

 

 ガガガヘッド レベル6

 ゴゴゴジャイアント レベル4→6

 ドドドドワーフ-GG レベル4→6

 

「十代! EXモンスターゾーン使うぜ!」

「おう行け行け! 頼んだぜ!」

「レベル6《ガガガヘッド》と《ドドドドワーフ-GG》でオーバーレイ!」

 

 ガガガヘッドとドドドドワーフがそれぞれ紫と橙の光となって飛び立つと、場の遥か上空に現れた金色の渦に飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦から閃光が放たれると、その中から”06”の数字が刻まれたリングにはまる巨大な岩が現れる。

 

「人知を超えた神の遺産が希望の光宿す時、熱き絆の裁きが下される!」

 

 岩はゆっくりと降下し、場から離れた海面に近づくと変形を開始する。岩はみるみる五体を隆起させ、左肩に巨大な火山を担いだ人型の超大型No.となる。トロン一家三男にして遊馬の友、Ⅲこと”ミハエル・アークライト”の切り札――――

 

「現れろランク6! 《No.6 先史遺産(オーパーツ)アトランタル》!」

 

  No.6 先史遺産アトランタル 光属性 機械族 ランク6 ATK:2600 ORU:2

 

「すげぇ~!? オベリスクよりもでかいんじゃないか!? こんなでかいの初めてみたぜ!」

 

 やはり興奮した様子でアトランタルを眺める十代。

 

「でかけりゃいいってもんじゃねぇぞ! 目立ちやがってくそ!」

 

 気に入らない様子の沢渡。

 

「う、海が水たまりに見えるんじゃ……おのれ!」

 

 海を足元に立つアトランタルを、梶木は気に入らなそうに睨みつける。だがその後、何かに気づいて口の端を吊り上げた。

 

「出したはいいがそいつ、機械族じゃ~! 海は機械を錆びらせるぜよ! 攻撃力ダウンじゃ!」

 

  No.6 先史遺産アトランタル ATK:2600→2400

 

「(Ⅲはやったって聞いた……俺にだってきっとできる!) ガガガヘッドを素材にしたアトランタルの効果発動! カードを1枚ドローする!」

 

 遊馬 手札:1→2

 

 遊馬はドローしたカードと手札のカードを持ち替える。

 

「行くぞ梶木! 頼むぜアトランタル! 《RUM-ヌメロン・フォース》! No.1体のランクを1つ上げ、カオス化する! 《No.6 先史遺産アトランタル》1体でオーバーレイ!」

 

 アトランタルはニュートラル体へと戻り、上空に現れた金色の渦の中へと入っていく。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! カオス・エクシーズ・チェンジ!」

 

 金色の渦から金と黒が混ざった混沌の閃光が放たれ、その中から”06”の数字が刻まれたリングの中を通る超巨大な塔が現れる。

 

「有限なる時空を破り、今、その存在を天地に刻め!」

 

 塔の上部が隆起し、アトランタルに似た巨大な上半身が現れる。体中に溶岩が流れ、そこから噴き出した炎がまとまり、触手のようになって伸びる。

 

「現れろランク7! 《CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル》!」

 

 CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル 光属性 機械族 ランク7 ATK:3300 ORU:3

 

「カ、CNo.!? 話には聞いてたが……凄まじいプレッシャーじゃ!」

「ヌメロン・フォースの効果発動! このカードの効果で特殊召喚したモンスターエクシーズ以外の表側カードの効果を無効にする!」

 

 ヌメロン・フォースから眩い光が放たれると、カオス・アトランタル以外の場あった表側カード全てから色が失われる。そして、海をも貫く光に驚いた梶木の場のモンスター全てが海面下から飛び出す。

 

 マスター・ボーイ ATK:2100→1400

 城塞クジラ ATK:3050→2350

 No.32 海咬龍シャーク・ドレイク ATK:3500→2800

 超古深海王シーラカンス ATK:3500→2800

 No.47 ナイトメア・シャーク ATK:2700→2000

 

「お、俺の”潜海奇襲”が……シー・ステルスが無力化されたぜよ!?」

「まだまだ! ゴゴゴジャイアントをリリースし、手札から《ゴゴゴゴーレム-GF(ゴールデンフォーム)》を特殊召喚!」

 

 ゴゴゴジャイアントが光の中へと消えると、その中からゴゴゴゴーレムが現れ、黄金に輝いて変形を始める。変形が完了したその姿は、ずんぐりむっくりしていたゴゴゴゴーレムと比べてスマートな人型となり、唯一右腕だけは元のたくましさを残している。

 

 ゴゴゴゴーレム-GF 地属性 岩石族 レベル4 ATK:?

 

「GFの攻撃力はリリースした”ゴゴゴ”の元々の攻撃力を倍にした数値になる! ゴゴゴジャイアントの攻撃力は2000! よって攻撃力は4000になる!」

 

 ゴゴゴゴーレム-GF ATK:?→4000

 

「これでよし! アトランタルのでかい足で思いっきり踏み込んでやるぜ!」

『遊馬、カオス・アトランタルに足は無い』

「ゲ!? そうだった……まあいいや! バトル!」

『まて遊馬』

「何だよアストラル?」

『カオス・アトランタルで何を攻撃するつもりだ?』

「そりゃ勿論沢渡……っていいたいとこだけど、梶木は攻撃力の高い奴で庇いにくると思う。庇われてダメージを抑えられるくらいなら、最初から梶木を狙って梶木のLPを削り切る!」

 

 遊馬の考えを聞き、アストラルは頷いて微笑む。

 

『良い判断だ。頼むぞ』

「カオス・アトランタルでマスター・ボーイを攻撃! 【カオス・パニッシュメント】!」

 

 カオス・アトランタルが肩の火山から炎を噴き上げると、炎が一つに収束し、マスター・ボーイに向かって伸びる。

 

「(ちっ! 沢渡を狙ってくると思ったが……そこまで馬鹿じゃねぇか) 永続罠《竜巻海流壁(トルネードウォール)》! 《海》が存在する限り、俺達への戦闘ダメージは0じゃ!」

 

 炎がマスター・ボーイを直撃し燃やし尽くすが、飛び火は海を巻き上げた竜巻の壁によって阻まれ梶木までは届かなかった。

 

「マスター・ボーイの効果により、墓地から《素早いアンコウ》を手札に加えるぜよ!」

 

 梶木 手札:1→2

 

「くそ! 伏せてあったカードじゃヌメロン・フォースの効果が無ぇ!」

「効果を無効にされても”海は海”! 俺のフィールドじゃ!」

「なら今度はGFだ! シーラカンスに攻撃! 【グレートキャノン】!」

 

 GFが右拳を突き出すと、拳から光が放たれ、光を受けたシーラカンスは爆発して消滅する。

 

「フン! LPが無事なら問題ないぜよ!」

「なら、これでどうだ! カオス・アトランタルの効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体を装備する! シャーク・ドレイクを装備!」

 

 カオス・アトランタルが火山から火炎の触手を伸ばし、シャーク・ドレイクを捕らえる。するとカオス・アトランタルはシャーク・ドレイクを自分の体の表面に埋め込み、石化して体の一部としてしまった。

 

「何ィ!? 俺のNo.を装備カードに!?」

「まだだ! カオス・アトランタルの効果で装備したNo.とORU3つを取り除き、相手のLPを100にする! 狙いは梶木だ! 〈オリハルコン・カオス・ゲート〉!」

 

 CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル ORU:3→0

 

 カオス・アトランタルがORUと表面に埋まっていたシャーク・ドレイクを完全に取り込むと、胴体から巨大な熱光線を放ち、竜巻海流壁を突き破って梶木に直撃させる。

 

「ぐおわぁぁぁーーーー!!?」

 

 梶木 LP:2600→100

 

「梶木!? LPをいきなり100にするだと!? 無茶苦茶すぎるぜ! おい大丈夫か!」

「つつつ……大声出さなくても大丈夫ぜよ沢渡……これがNo.の真の力ってやつか」

「よし! これで全員LPが並んだぞ! ターンエンド!」

 

遊馬

LP:350

手札:0

〔遊馬 EX〕

 ・ガガガガンマン(効果無効化) DEF:2400 ORU:1

〔十代 EX〕

 ・CNo.6 先史遺産カオス・アトランタル ATK:3300

〔遊馬 メイン〕

 ・ゴゴゴゴーレム-GF ATK:4000

〔十代 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

〔遊馬 魔法・罠〕

 ・オノマト選択(無効化)

 

「さて沢渡、ここまでの貸し、きっちり返して貰うぜよ」

「ああ任せとけ。このネオニューPX沢渡劇場第二幕、始まりだぜ! 俺のターン!」

 

 沢渡 手札:5→6

 

「魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻しシャッフル! 2枚ドローする!」

 

戻したカード

魔界劇団-サッシー・ルーキー

魔界劇団-プリティ・ヒロイン

魔界劇団-ワイルド・ホープ

No.30 破滅のアシッド・ゴーレム

No.85 クレイジー・ボックス

 

 沢渡 手札:5→7

 

「くそ、もう一押し欲しいな……」

 

 沢渡の表情を読み取った梶木は自分の場の伏せカードを展開させる。

 

「速攻魔法《手札断殺》! お互いに手札を2枚墓地へ送り、2枚ドローする! 相手は沢渡じゃ!」

「え? 手札断殺はお互いに手札がないと発動できないだろう。俺も遊馬も手札無いぞ?」

「”相手”じゃなく条件を満たした”お互い”じゃ。敵かパートナーかなんて書いてないぜよ」

「ええ~……そんなのありかよ? まあ決闘盤が通してるし、そういうルールなんだな。覚えておくよ」

 

 梶木 手札:2→0→2

 沢渡 手札:7→5→7

 

 沢渡が墓地に送ったカード

 魔界台本「ロマンティック・テラー」×2

 

「こうなったらトコトン援護してやるんじゃ! 沢渡、頼むぜよ!」

「よし、よくやったぜ梶木! スケール9《魔界劇団-ティンクル・リトルスター》をPゾーンにセット!」

 

 破壊されたライトスケールの柱が再生し、その中に魔女の姿をした悪魔の演者が浮かび上がる。

 

「フィールド魔法《魔界劇場「ファンタスティックシアター」》発動!」

 

 沢渡がフィールド魔法を発動させると、海とは反対に切り立つ崖を背に魔界劇団の巨大なシアターが現れる。

 

「ファンタスティックシアターの効果発動! 1ターンに1度、手札の”魔界劇団”Pモンスター1体と”魔界台本”1枚を見せることで、見せた”魔界台本”以外の”魔界台本”1枚をデッキから手札に加える! 俺は手札の《魔界劇団-ビッグ・スター》と《魔界台本「オープニング・セレモニー」》を見せ、デッキから《魔界台本「魔界の宴咜女」》を手札に加える!」

 

 沢渡 手札:5→6

 

「カードを2枚セット! そしてP召喚! 現れろ俺様のモンスター達!」

 

 沢渡が号令をかけると、柱の間に異空間の穴が開く。そこから4つの光が飛び出し、沢渡の場に降り立った。

 

「手札からレベル4《魔界劇団-サッシー・ルーキー》!」

 

  魔界劇団-サッシー・ルーキー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1700

 

「レベル3《魔界劇団-コミック・リリーフ》!」

 

 続いて現れたのは、パーティハットに瓶底眼鏡、目玉で飾ったオーバーオールを着た白髭の魔界劇団員。

 

 魔界劇団-コミック・リリーフ 闇属性 悪魔族 レベル3 ATK:1000

 

「レベル7《魔界劇団-メロー・マドンナ》!」

 

 次に現れたのは二体目のメロー・マドンナ。

 

  魔界劇団-メロー・マドンナ 闇属性 悪魔族 レベル7 ATK:1800

 

「レベル7《魔界劇団-ビッグ・スター》!」

 

 最後に現れたのは身長が高く、スマートな体型と立ち振る舞いを見せる悪魔の演者。4体の劇団員はシアターの前に整列すると、遊馬達に向かって礼をする。それを見た十代は劇団員たちに向かって拍手を送った。

 

「ハハハ! 愉快な奴らだな」

「楽しんでもらえて何より。だが何時まで笑っていられるかな? メロー・マドンナは墓地の”魔界台本”1枚につき、攻撃力を100上げる!」

 

  魔界劇団-メロー・マドンナ ATK:1800→2100

 

「ビッグ・スターの効果発動! 1ターンに1度、デッキから”魔界台本”1枚を選んで自分の場にセットする!」

「そうはさせるか! GFの効果発動! 1ターンに1度、相手の場でモンスター効果が発動した時、攻撃力を1500ポイントダウンしてその効果を無効にする!」

「残念だが、ここは俺の”舞台”だ! ファンタスティック・シアターの効果発動! P召喚した”魔界劇団”が自分の場に存在する限り、1ターンに1度、相手が発動したモンスター効果は”相手の場にセットされた魔法・罠カード1枚を選んで破壊する”となる! さあ、俺の場の伏せカードは2枚! どちらかを破壊しろ!」

 

 ビッグ・スターを止めようと飛び出していたGFは行き先を変え、沢渡の場の伏せカードの前で立ち止まる。

 

「これ片方確か……」

『オープニング・セレモニー……手札を5枚になるようにドローできるカードだ。この状況でドローを許せば、更なる追撃を受ける』

「どっちがオープニング・セレモニーだ?」

『もう片方も”魔界台本”だ。おそらく、破壊されれば相手にとって有利な効果が働く』

「結局俺達が不利になるのかよ!?」

『何にせよ、君は選ばなくてはならない』

「ああ~もう! 俺から見て右だ!」

 

 遊馬の指示に従い、GFは右の伏せカードを破壊する。

 

「まずはビッグ・スターの効果により、デッキから《魔界台本「火竜の住処」》を場にセット! そして破壊されたのは《魔界台本「オープニング・セレモニー」》! 手札が5枚になるようにドローする!」

「くそ! やっちまった!」 

『悔やんでも仕方がない。十代の様に切り替えていけ』

「ここでメロー・マドンナの効果発動! ”魔界台本”の効果が発動した場合、デッキからレベル4以下の”魔界劇団”Pモンスター1体を特殊召喚する! デッキから《魔界劇団-ファンキー・コメディアン》を特殊召喚!」

 

 沢渡の場に4本腕の太った魔界劇団員が現れる。

 

 魔界劇団-ファンキー・コメディアン 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:300

 

 沢渡 手札:0→5

 

「ファンキー・コメディアンの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで自分の場の”魔界劇団”1体につき300アップする! 俺の場の”魔界劇団”の数は5体! よって1500ポイントアップ!」

 

 魔界劇団-ファンキー・コメディアン ATK:300→1800

 

「《レスキューラット》を通常召喚!」

 

 今度は現場ヘルメットを被り、安全帯を纏ったハムスターが現れる。

 

 レスキューラット 地属性 獣族 レベル4 ATK:300

 

「レスキューラットの効果発動! こいつをリリースすることで、EXデッキの表側のレベル5以下のPモンスター1体を選び、デッキからその同名モンスター2体を特殊召喚する! 《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》2体を特殊召喚!」

 

 レスキューラットが消滅すると、入れ替わりでダンディ・バイプレイヤーが2体現れる。

 

 魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー×2 闇属性 悪魔族 レベル2 ATK:700

 

「お楽しみはこれからだ! 場と手札の《魔界台本「火竜の住処」》と手札の《魔界台本「ファンタジー・マジック」》発動! 対象は全てビッグ・スター! そしてセットしていた永続魔法《魔界台本「魔界の宴咜女」》を発動! 俺様の場のサッシー・ルーキーをリリースし、墓地の”魔界台本”1枚を場にセットする! 《魔界台本「火竜の住処」》をセットし、ビッグ・スターを対象に発動!」

 

 サッシー・ルーキーが場から消滅すると、4冊の魔界台本が現れる。ビッグ・スターはそれを手に取ると、他の劇団員達にも持ってもらいながら4冊同時に読み始める。

 

「このターン、火竜の住処の効果を受けた”魔界劇団”が相手モンスターを破壊した場合、相手はEXデッキからカード3枚を選んで除外する! そしてこのターン、ファンタジー・マジックの効果を受けた”魔界劇団”と戦闘を行ったモンスターが破壊されなかった場合、そのモンスターを手札に戻す! さらにPゾーンのティンクル・リトルスターのP効果をビッグ・スターを対象に発動! 他のモンスターは攻撃出来ない代わりに、ビッグ・スターはこのターン、モンスターに3回攻撃できる!」

 

 沢渡が長々と喋っている内にビッグ・スターは台本を読み終える。

 

「準備いいかビッグ・スター? ファンキー・コメディアンの効果発動! このカードの攻撃力をターン終了時まで”魔界劇団”1体の攻撃力に加える! 対象はビッグ・スターだ!」

 

 魔界劇団-ファンキー・コメディアン ATK:1800

 魔界劇団-ビッグ・スター ATK:2500→4300

 

「バトル! ビッグ・スターでカオス・アトランタルを攻撃!」

 

 ビッグ・スターが動いた瞬間、十代が伏せカードを展開する。

 

「永続罠《リミット・リバース》! 攻撃力1000以下のモンスター1体を自分の墓地から攻撃表示で特殊召喚する! 来い《ハネクリボー》!」

 

 ハネクリボー 光属性 天使族 レベル1 ATK:300

 

「さらに速攻魔法《非常食》! リミット・リバースと遊馬のオノマト選択を墓地へ送り、俺達のLPを1000ポイントずつ回復する!」

 

 十代がカードを展開するとハネクリボーが現れ、十代と遊馬にLPを分け与えた後、発動した魔法・罠と共に消滅する。

 

 十代 LP:700→1700

 遊馬 LP:350→1350

 

『(成程、オノマト選択は遊馬がコントロールするカード。それをコストにすれば、その分の回復数値の対象は遊馬となる、ということか)』

「さらにリミット・リバースが場から離れたことにより、対象だったハネクリボーが破壊される! よってこのターンの俺達への戦闘ダメージは0だ!」

「フン! お前らのしぶとさは、ここまでで嫌という程思い知ったぜ! だからこの展開も読めてんだよ! ビッグ・スター攻撃続行!」

 

 ビッグ・スターは海に向かって炎を放つと、海から凄まじい水蒸気が発生し、決闘者達の視界を遮る。

 

「カオス・アトランタルはNo.! それ以外の戦闘では破壊されねぇ!」

「だがビッグ・スターに掛かったファンタジー・マジックの効果により、破壊されなかったモンスターは手札に戻ってもらうぜ! EXモンスターならEXデッキ送りだ!」

 

 水蒸気が収まると、海の向こうに浮かんでいたカオス・アトランタルの姿が無くなっていた。

 

「アトランタル!?」

「今度はゴゴゴゴーレムに攻撃!」

 

 ビッグ・スターは何処からともなくファンタジー物の剣を取り出すと、華麗な動きでGFを斬り裂く。

 

「火竜の住処の効果により、EXデッキからカードを除外してもらうぜ。ビッグ・スターに掛かった効果は3回分。よって遊馬! お前のEXデッキから9枚除外してもらう!」

「きゅ、9枚も!? くそ~!」

 

 遊馬はEXデッキを取り出し、9枚のカードをゲームから取り除く。

 

「今度はガガガガンマンを攻撃!」

 

 迫るビッグ・スターにガガガガンマンは銃撃で応戦するが、ビッグ・スターはそれを華麗に躱し、剣でガガガガンマンを斬り裂く。

 

「火竜の住処の効果により、EXデッキから9枚を除外!」

「俺のEXデッキは後3枚だ」

「おおっと! 火竜の住処は必ず3枚除外しなければならない。遊馬が条件を満たせない場合、タッグデュエルルールにより対象はパートナーとなる! 十代、お前が残り6枚を除外しろ!」

「俺のもか……」

 

 遊馬は残りの3枚、十代はEXデッキから6枚選び、除外する。

 

「これでバトルは終了……だが、俺様の演目はまだ続く! 魔法カード《共振装置》! 同じ属性・種族を持つ《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》と《魔界劇団-ファンキー・コメディアン》を選択! ファンキー・コメディアンのレベルをダンディ・バイプレイヤーと同じ2に変更する!」

 

 魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー レベル2

 魔界劇団-ファンキー・コメディアン レベル1→2

 

『レベル2のモンスターが3体……来るぞ遊馬!』

「ここで新しいNo.かよ!?」

「レベル2の闇属性《魔界劇団-ダンディ・バイプレイヤー》2体と《魔界劇団-ファンキー・コメディアン》でオーバーレイ!」

 

 3体の魔界劇団が紫の光となって飛び上がり、沢渡の場に現れた金色の渦に飛び込む。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦から閃光が放たれると、その中から上部に複数の角が生えたオブジェ――――No.のニュートラル体が現れる。

 

「現れろ! 死者の眠りを妨げる冒涜の化身! 《No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター》!」

 

 ニュートラル体が変形を始める。現れたのは胸に3本目の腕を持つ悪魔。腰には自身の番号である”43”の数字が妖しく輝き、3本の腕に生えた指をわきわきと動かす。

 

 No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター 闇属性 悪魔族 ランク2 DEF:0 ORU:3

 

「魔界劇団本日のスペシャルゲスト、No.の人形使いだ!  効果発動! ORUを1つ取り除き、墓地の”No.”1体を装備する!  《No.93 希望皇ホープ・カイザー》を装備!」

 

 No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ORU:3→2

 

 ソウル・マリオネッターがORUを1つ取り込むと、目の前に魔法陣を出現させ、そこに全ての腕の指から伸ばした糸を垂らす。そして糸が伸び切って張った瞬間、糸を引き上げる。そこには人形に変えられたホープ・カイザーが繋がれていた。

 

「No.を人形に変えて操る! それがソウル・マリオネッターだ! 永続魔法《魔界台本「魔界の宴咜女」》の効果発動! コミック・リリーフをリリースし、墓地の《魔界台本「オープニング・セレモニー」》をセットし、発動! 自分の場の”魔界劇団”1体につきLPを500回復する! 俺の場にはビッグ・スターとメロー・マドンナの2体、よって1000回復だ!」

 

 沢渡 LP:300→1300

 

「ここでソウル・マリオネッターの効果発動! 1ターンに1度、俺のLPが回復した時、その数値分こいつの攻撃力を上げ、相手に同じ数値のダメージを与える! 十代に〈リザルトコンバート〉!」

 

 No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ATK:0→1000

 

 ソウル・マリオネッターが十代に向けて衝撃波を放つ。

 

「ぐうっ!?」

 

 十代 LP:1700→700

 

「どうだ! 俺様と魔界劇団、そしてNo.にかかればこんな芸当もできる! もう逃げ場はねぇ! 次が沢渡劇場最終幕だ! カードを伏せてターンエンド!」

 

沢渡

LP:1300

手札:0

〔沢渡 EX〕

 ・No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター DEF:0 ORU:2

〔沢渡 メイン〕

 ・魔界劇団-ビッグ・スター ATK:4300→2500

 ・魔界劇団-メロー・マドンナ ATK:1900→2500

〔梶木 メイン〕

 ・城塞クジラ ATK:2850

 ・No.47 ナイトメア・シャーク ATK:2500 ORU:2

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ(無効化) スケール0

 ・魔界台本「魔界の宴咜女」

 ・No.93 希望皇ホープ・カイザー(ソウル・マリオネッター装備)

 ・セット

 RS:魔界劇団-ティンクル・リトルスター スケール9

〔沢渡 フィールド魔法〕

 ・魔界劇場「ファンタスティックシアター」

〔梶木 魔法・罠〕

 ・潜海奇襲(無効化)

 ・竜巻海流壁

〔梶木 フィールド魔法〕

 ・海(無効化)

 

『まずいぞ、ビッグ・スターとNo.43がいる限り、沢渡は魔界台本で何度でも回復を行い、こちらにダメージを与えることが出来る。P召喚の爆発力と、シー・ステルスとNo.の防御力も脅威だ。更にフィールド魔法によるこちらへの妨害もある……沢渡劇場、隙が無い』

「大丈夫さ、十代ならきっと!」

「おう、任せとけ! また逆転して見せるからな!」

 

 十代は遊馬達に向かってサムズアップしてみせてからデッキトップに指を掛ける。

 

『十代……次に引くカードが逆転のカードだと信じて疑っていない』

「アストラル、それって……」

『”最強決闘者は全てが必然”……彼もまた、我々とは違う形での”最強決闘者”なのかもしれない』

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 十代 手札:0→1

 

「……おっしゃあ! 速攻魔法《魔力の泉》! 相手の場の表側表示で存在する魔法・罠の数だけドローし、俺達の場の表側表示の魔法・罠の数だけ手札を捨てる! お前らの場には8枚、俺達の場にはこのカード1枚のみ! よって8枚ドローし、1枚捨てる!」

 

 十代 手札:0→8→7

 

捨てたカード

ゴブリンのやりくり上手

 

「ここでまた大量ドロー!? お前の引きはどうなってんだ!  選ばれ過ぎだぞ!」

「黄金の卵パン連続ドロー記録は伊達じゃないぜ! 《カードエクスクルーダー》を召喚!」

 

 十代の場に可愛らしい魔法使いの少女が現れ、手に持った杖を構えてポーズを決めるが、その拍子に被っていた魔導帽がずれてしまい、バランスを崩してよろけてしまう。

 

 カードエクスクルーダー 地属性 魔法使い族 レベル3 ATK:400

 

「カードエクスクルーダーの効果発動! 1ターンに1度、相手の墓地のカード1枚を除外する!」

「だがファンタスティックシアターの効果により、俺の場のセットされた魔法・罠を1枚破壊する効果に変わる! 俺の伏せカードは1枚のみ! さあ魔界台本を破壊しなおチビちゃん!」

 

 カードエクスクルーダーは張り切って杖を振るい、魔法弾を放って伏せカードを攻撃する――――が、魔法弾は伏せカードに弾き飛ばされて消滅してしまう。

 

「な、何で破壊されねぇんだ!? そんなに非力なのかそのチビは!」

「そうじゃないさ。魔力の泉を発動してから次の相手ターン終了時まで、相手の魔法・罠は破壊されず、効果も無効化されないのさ。本来なら俺にとってのデメリットだけど、お前にとってはどうかな?」

「ぐ、ぐぐ……!」

「予定通り……ん?」

 

 十代が手札より上に視線を上げると、カードエクスクルーダーが頬を膨らませて十代を睨んでいた。

 

「何だよどうした……え? この結果を解っていたのかって? そりゃそうだけど……え? そんなこと言うなよ。これだって必要なことだったんだ。何? N(ネオスペーシアン)達にまた笑われる? 何の話だよ?」

「十代、急にブツブツ言いだしてどうしたんだ? ブラック・パンサーが出た時も何か言ってたけど?」

 

 十代は精霊を視て、声を聴くことが出来る決闘者。だが、それが無い決闘者から見れば独り言をつぶやいているようにしか見えない。遊馬は”その類”の力はあるが精霊を見れるわけではないので、精霊として強力な力を持つユベルは視えても、通常の精霊を視ることはできなかった。

 

『(十代には、我々には視えないものが視えている。……遊馬と出会ったばかりの頃、小鳥達には遊馬と私があのように見えていたのだな)』

「気を取り直して……速攻魔法《異次元からの埋葬》! 除外されているモンスターを3体まで持ち主の墓地へ送る!」

 

墓地へ送ったカード

E・HERO フレイム・ウィングマン

E・HERO ワイルドジャギーマン

E・HERO マッドボールマン

 

「そいつらは火竜の住処で除外してやった融合モンスターじゃねぇか。召喚制限をクリアしてない融合モンスターを墓地に送ってどうすんだ?」

「そうさ、こいつらは場に駆けつけることが出来なくなっちまったHERO達だ。だが、その無念の気持ちが”奇跡”を起こす! 魔法カード《ミラクル・フュージョン》! 自分の場・墓地から素材を除外し、”E・HERO”を融合召喚する! 墓地の《E・HERO フレイム・ウィングマン》と《E・HERO スパークマン》を融合!」

 

 フレイム・ウィングマンとスパークマンが現れ、十代の場に現れた異空間の渦の中へと飛び込む。

 

「融合召喚! 現れろ! 《E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン》!」

 

 渦の中から現れたのは、白く輝く翼のHERO。白銀のアーマーを身に纏い、硬質化した翼を広げ、雄叫びを上げる。

 

  E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン 光属性 戦士族 レベル8 ATK:2500

 

「ぼ、墓地からの融合だとぉ!?」

「シャイニング・フレア・ウィングマンは墓地の”E・HERO”1体につき、攻撃力を300アップする!  俺の墓地の”E・HERO”は8体! よって攻撃力が2400アップする!」

 

  E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン ATK:2500→4900

 

「さらに装備魔法《フェイバリット・ヒーロー》を装備! バトルだ!」

「ハン! 幾ら攻撃力を上げたところで、海と竜巻海流壁がある限りダメージは通らん! 無駄じゃ!」

 

 梶木が自分の場の永続罠を得意気に指さすが、十代は涼しい顔で自分の場の装備魔法を指さす。

 

「戦闘ダメージはな。ここでフェイバリット・ヒーローの効果発動! 自分のデッキ・手札からフィールド魔法1枚を発動する!」

「な、何でこのタイミングでフィールド魔法なんて発動するんじゃ?」

「それはな……HEROにはHEROの闘う舞台ってもんがあるからさ! フィールド魔法《摩天楼2-ヒーローシティ》をデッキから発動!」

 

 十代がフィールドゾーンスロットにカードを置くと、崖の上に広がる森が一瞬で近未来の大都市へと変貌する。その中のビルの上にシャイニング・フレア・ウィングマンが立ち、場を見下ろす。

 

「フェイバリット・ヒーロー第二の効果! 自分のフィールドゾーンにカードが存在する場合、装備モンスターの元々の守備力分、攻撃力をアップ! さらに装備モンスターは相手の効果対象にならない!」

 

 E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン ATK:4900→7000

 

「城塞クジラを攻撃! 究極の輝きを放て! 【シャイニング・シュート】!」

 

  シャイニング・フレア・ウィングマンがビルから飛び降りると、そのまま場に向かって急降下。巨大な標的である城塞クジラに向かって光輝く拳を繰り出し、体ごと突き抜ける。

 

「幾ら攻撃力を上げてもダメージは――――」

「シャイニング・フレア・ウィングマンの効果発動! 戦闘で破壊し墓地へ送ったモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

 城塞クジラを突き抜け梶木の前に降り立ったシャイニング・フレア・ウィングマン。固まる梶木の前で強烈な光を放つ。

 

「ぐわぁぁぁーーーーー!!?」

 

 梶木 LP:100→0

 

「梶木!?」

「ガッチャ! 梶木さん、楽しい決闘だったぜ!」

 

 十代が決めポーズを取る中、沢渡が膝を付く梶木の元へと駆け寄る。

 

「……俺はここまでじゃ。恩を着せるわけじゃないが、俺に生かされた以上、必ず勝つぜよ! いいな?」

「任せておけ。沢渡劇場に許された結末は、ハッピーエンド大団円って決まってんだからよ!」

 

 沢渡は決闘場に戻り、沢渡と梶木が立っていた場所の中間に立つ。

 

「梶木が脱落したことにより、梶木のカードと場のコントロールを引き継いで決闘を再開する!」

「それを待っていたぜ! フェイバリット・ヒーローの最後の効果! 装備モンスターの攻撃で相手モンスターを破壊した時、このカードを墓地へ送ることで、装備モンスターはもう1度続けてバトルできる!」

 

 E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン ATK:7000→4900

 

「へっ! 残念だが魔界劇団はPモンスター! 墓地へは行かん! No.は戦闘破壊されない! よって俺にダメージは通らない! ハッハッハ!」

「いや、そこにいるじゃねぇか。効果が無くなって戦闘破壊できる奴が」

 

 十代は元梶木の場にいるナイトメア・シャークを指さす。

 

「……はっ!? しまった!? コントロールが俺に移ったからダメージを受けるのも俺だ!?」

「シャイニング・フレア・ウィングマンでナイトメア・シャークを攻撃!」

 

  シャイニング・フレア・ウィングマンが光輝き、ナイトメア・シャークへと迫る。

 

「(何かないか何かないか何かないか!? この窮地を凌ぐカード――――)」

 

 沢渡は決闘盤のタッチモニターを高速で叩きながらカード情報を捜す。すると墓地に発動可能なカードがあることを見つける。

 

「(これは……梶木が墓地に送ったカード! よくやった梶木!) 墓地から罠カード《仁王立ち》を除外して発動! 自分のモンスター1体を選択することで、相手はこのターン、選択したモンスターにしか攻撃出来ない! 選ぶのはソウル・マリオネッターだ!」

 

 シャイニング・フレア・ウィングマンがナイトメア・シャークに拳を叩きつけようとした瞬間、その間にソウル・マリオネッターが割って入る。シャイニング・フレア・ウィングマンは拳を止め、十代へと顔を向けた。

 

「マジかよ……戻ってこい、シャイニング・フレア・ウィングマン!」

 

 指示に従い、シャイニング・フレア・ウィングマンは十代の場へと戻る。

 

「はぁ……どうだ! 凌いでやったぜ!」

「バトル終了! ここでヒーローシティの効果発動! 1ターンに1度、戦闘破壊されて自分の墓地へ送られた”E・HERO”1体を墓地から特殊召喚する! 来い《E・HERO ネオス》!」

 

 十代が呼びかけると、ヒーローシティのビルの一つ、その屋上に立つネオスが飛び上がり、十代の場に降り立って防御体勢を取る。

 

 E・HERO ネオス 光属性 戦士族 レベル7 DEF:2000

 

「カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

十代

LP:700

手札:0

〔十代 EX〕

 ・E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン ATK:4900→4600

〔十代 メイン〕

 ・カードエクスクルーダー ATK:400

 ・E・HERO ネオス DEF:2000

〔十代 魔法・罠〕

 ・セット

 ・セット

 ・セット

〔十代 フィールド魔法〕

 ・摩天楼2-ヒーローシティ

 

 

「またまた逆転だ! やったぜ十代! シャイニング・フレア・ウィングマン、かっこよかったぜ!」

「サンキュー遊馬! だけど……多分、俺はここまでだ」

「え?」

 

「俺のターン!」

 

 沢渡 手札:0→1

 

「セッティング済みのスケールでP召喚!」

 

 柱の間に異空間の穴が現れ、そこから二つの光が飛び出す。

 

「EXデッキからレベル4《魔界劇団-サッシー・ルーキー》!」

 

 魔界劇団-サッシー・ルーキー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1700

 

「手札からレベル8《魔界劇団-デビル・ヒール》!」

 

 メロー・マドンナに続いて、胴体に顔と大きな口が付いた大柄な悪魔の演者が現れる。

 

 魔界劇団-デビル・ヒール 闇属性 悪魔族 レベル8 ATK:3000

 

「カウンター罠《神の宣告》! LPを半分払い、相手の特殊召喚を無効にし破壊する!」

 

 十代が発動した罠が光輝くと、その光を浴びたサッシー・ルーキーとデビル・ヒールは消滅してしまう。

 

 十代 LP:700→350

 

「くそ、邪魔しやがって! 十代、お前は邪魔だ! 先に消えてもらう! 伏せていた魔法カード《魔界台本-「オープニング・セレモニー」》発動! まずはメロー・マドンナの効果を発動し、デッキから《魔界劇団-エキストラ》を特殊召喚!」

 

 メロー・マドンナの隣に、3体の悪魔が一組となった魔界劇団員が現れる。

 

 魔界劇団-エキストラ 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:100

 

「そしてオープニング・セレモニーによって俺のLPを”魔界劇団”1体につき500ポイント回復する! よって俺は1500回復し、ソウル・マリオネッターの効果でお前に1500ダメージを与える!」

 

 沢渡 LP:1300→2800

 No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ATK:1000→2000

 

 ソウル・マリオネッターが十代に向けて衝撃波を放つ。十代はそれから視線をそらさず、真っすぐ見据えたまま受け止めた。倒れそうになるが、踏ん張って姿勢を保つ。

 

「ぐっ!? ……やっぱりここまでか」

 

 十代 LP:350→0

 

「十代!?」

 

 遊馬が十代の元へ駆け寄る。

 

「すまねぇ十代……俺が助けられてばっかりだったから」

「何言ってんだよ、俺だってお前の頑張りがなきゃここまでできなかったさ」

 

 十代は項垂れる遊馬の額を軽く指先で押し上げる。

 

「十代……」

「なーに、お前が勝てば俺達の勝ちなんだ! 俺のカードを預けるから頼んだぜ!」

 

 十代は遊馬に伏せカードと墓地のカードを確認させると、決闘場から下がる。

 

「ああ、絶対に勝つ! 見ててくれ十代!」

 

 遊馬はガッツポーズを取ると、沢渡と同じようにパートナーと自分の立ち位置の中間に立つ。

 

「十代の場とカードを引き継いで決闘を続けるぜ! 来い沢渡!」

「遠慮なく叩き潰してやる! ビッグ・スターの効果発動! デッキから《魔界台本「魔王の降臨」》をセットし、発動! 俺の場の攻撃表示の”魔界劇団”モンスターの種類の数だけ場の表側カードを破壊する! 俺の場の”魔界劇団”は3種類! よってお前の場のモンスターを全て破壊だ!」

 

 沢渡が発動した魔界台本から黒い竜巻が発生する。カードエクスクルーダーは真っ先に飛ばされそうになるが、隣にいたネオスが浮かび上がった彼女を掴んで抱き留め、庇う様に蹲った後、シャイニング・フレア・ウィングマン、カードエクスクルーダーと共に消滅する。

 

「ネオス……それでこそ十代のHEROだぜ」

「バトルだ! ビッグ・スターで――――」

「罠カード《和睦の使者》! このターン、俺のモンスターは戦闘で破壊されず、戦闘ダメージは0となる!」

 

 遊馬の場に結界が張られると、意味がないと判断した沢渡は何もしないでバトルフェイズを終了させる。

 

「魔界の宴咜女の効果を2回発動! エキストラとメロー・マドンナをリリースし、墓地から《魔界台本「オープニング・セレモニー」》と《魔界台本「ファンタジー・マジック」》をセット! 今度こそフィナーレにしてやる! ターンエンド!」

 

沢渡

LP:2800

手札:0

〔沢渡 EX〕

 ・No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター DEF:0 ORU:2

〔沢渡 メイン〕

 ・魔界劇団-ビッグ・スター ATK:2500

〔元梶木 メイン〕

 ・No.47 ナイトメア・シャーク ATK:2500 ORU:2

〔沢渡 魔法・罠〕

 LS:魔界劇団-メロー・マドンナ(無効化) スケール0

 ・魔界台本「魔界の宴咜女」

 ・No.93 希望皇ホープ・カイザー(ソウル・マリオネッター装備)

 ・セット(魔界台本「オープニング・セレモニー」)

 ・セット(魔界台本「ファンタジー・マジック」)

 RS:魔界劇団-ティンクル・リトルスター スケール9

〔沢渡 フィールド魔法〕

 ・魔界劇場「ファンタスティックシアター」

〔元梶木 魔法・罠〕

 ・潜海奇襲(無効化)

 ・竜巻海流壁

〔元梶木 フィールド魔法〕

 ・海(無効化)

 

「さあお前のターンだぜ? ま、EXデッキ0のお前に何ができるって話だがな」

「俺は絶対にNo.を取り戻して、仲間とアストラル世界を救いに行くんだ! 俺を助けてくれた十代の為にも、負けるわけにはいかねぇ! アストラル!」

『ああ!』

 

「俺と!」

『私で!』

 

「『オーバーレイ!!!』」

 

遊馬が赤い光、アストラルが青い光となって飛び上がる。二人は縦横無尽に飛び回った後、上空で衝突、一つとなって場に舞い戻る。

 

「『 遠き2つの魂が交わるとき、語り継がれし力が現れる! 』」

 

 勝利を掴むため、”希望”を胸に現れた最強決闘者――――

 

「『エクシーズ・チェンジ! ”ZEXAL”!』」

「な、ななななん……なんじゃこりゃあ!!?」

「うおお!? すげぇ!? どうなってんだこれ!?」

 

 沢渡も十代も度肝を抜かれた様子でZEXALを見る。

 

「遊馬! どうしたんだそれ! かっけー! ”超融合”か?」

「『今の俺はZEXAL。遊馬とアストラルが一つとなった姿さ。”ゼアルウラ”じゃないからな』」

「え? どういうことだ?」

「『詳しくは後! 行くぜ!』」

 

 ZEXALの右手が輝きを放つ。

 

「『最強決闘者の決闘は全てが必然! ドローカードさえも決闘者が創造する! シャイニング・ドロー!!!』」

 

 ZEXAL 手札:0→1

 

 ZEXALはドローしたカードを確認もせず、沢渡に向かって突き出す。

 

「『俺が引いたのは《シャイニング・ドロー》!』」

「な、何だ……引くカードを予想したってのか……だからって俺に見せる意味は――――」

 

 動揺する沢渡を他所に、ZEXALはドローカードを手札に加え、伏せカードを展開させる。

 

「『罠カード《ゴブリンのやりくり上手》! 墓地の同名カードの数と1枚、デッキからドローし、手札から1枚をデッキボトムに戻す! 墓地には俺と十代のやりくり上手が1枚ずつ! よって3枚ドローし、1枚をデッキボトムへ!』」

 

 遊馬 手札:1→4→3

 

「『速攻魔法《おろかな転生》! 相手の墓地のカード1枚をデッキへ戻す! 《No.98 絶望皇ホープレス》をEXデッキへ!』」

 

 沢渡の墓地からホープレスの影が飛び出し、沢渡のEXデッキへと戻っていく。

 

「(ホープレスをEXデッキにだと? ということは狙いはホープの蘇生か? 今更ホープを出したところで何になるってんだ?)」

「『魔法カード《エクシーズ・リベンジ》! 相手の場にORUを持ったモンスターエクシーズが存在する場合、自分の墓地に存在するモンスターエクシーズ1体を特殊召喚し、相手のORU1つを特殊召喚したモンスターエクシーズのORUとする! 甦れ《No.39 希望皇ホープ》!』」

 

 ZEXALの場にホープが現れると、沢渡の場のソウル・マリオネッターのORUの一つがホープへと移って周りを漂う。

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:0→1

 No.43 魂魄傀儡鬼ソウル・マリオネッター ORU:2→1

 

「『行くぞ沢渡! 魔法カード《シャイニング・ドロー》! デッキ・EXデッキから”ZW”を任意の数だけ”希望皇ホープ”に装備する! 《ZW-阿修羅副腕》!』」

 

 最初に現れたのは阿修羅副腕。ホープに装備され、2本の腕を追加する。

 

「『《ZW-一角獣皇槍(ユニコーン・キング・スピア)》!』」

 

 続いて大きな翼と鋭い角を持った金色のユニコーンが現れ、巨大な槍に変身してホープの副椀に装備される。

 

「『《ZW-不死鳥弩弓(フェニックス・ボウ)》!』」

 

 次に赤く輝く不死鳥が現れ、巨大な弩弓へと姿を変えてホープの前に置かれる。

 

「『《ZW-風神雲龍剣(トルネード・ブリンガー)》!』」

 

 今度は風を纏った龍が現れ、剣へと姿を変えてホープの右腕に装備される。

 

「『《ZW-雷神猛虎剣(ライトニング・ブレード)》!』」

 

 最後に雷の如き咆哮を上げる白虎が現れ、剣へと姿を変えてホープの左腕に装備される。

 計5体のZWを装備したホープが立ち塞がり、沢渡を威圧する。

 

「そ、それが何だってんだ! ゴテゴテくっつけやがって!」

「『バトル! ホープでソウル・マリオネッターを攻撃!』」

 

 ホープは不死鳥弩弓の弦を引き、一角獣皇槍を矢の代わりにセットし、ソウル・マリオネッターに向かって放つ。

 

「No.なら破壊できると思ったようだが、ソウル・マリオネッターはNo.を装備している限り、破壊されない! 残念だったな!」

「『一角獣皇槍の効果! 装備モンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、バトルフェイズの間だけそのモンスターの効果を無効にする!』」

「はぁ!?」

 

 ソウル・マリオネッターはホープ・カイザーの人形を盾にして攻撃を防ごうとするが、一角獣皇槍は人形ごとソウル・マリオネッターを貫き、破壊する。

 

「ぐ……だがソウル・マリオネッターは守備表示! 竜巻海流壁もある! ダメージは――――」

「『不死鳥弩弓の効果発動! 装備モンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手に1000ポイントのダメージを与える!』」

 

 沢渡が胸を撫で下ろした瞬間、沢渡の体が発火し、燃え上がる。

 

「ぐわぁぁぁ!?」

 

 沢渡 LP:2800→1800

 

「『阿修羅副腕の効果により、ホープは相手の場の全てのモンスターに1度ずつ攻撃できる! ナイトメア・シャークに攻撃!』」

 

 今度は雷神猛虎剣を不死鳥弩弓にセットし、ナイトメア・シャークに向かって放つ。ナイトメア・シャークは避けようとするが、雷神猛虎剣は白虎の姿に戻って食らいつき、ナイトメア・シャークを破壊する。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 沢渡 LP:1800→800

 

「『ホープが戦闘破壊される場合、風神雲龍剣が身代わりとなる! これでトドメだ! ビッグ・スターを攻撃!』」

 

 ホープは不死鳥弩弓に風神雲龍剣をセットしてビッグ・スターに放つ。ビッグ・スターは先の二体を見て避けられないことを悟ったのか、丁寧な終演の礼をし、そのまま貫かれ破壊された。

 

「うわぁぁぁーーーー!!?」

 

 沢渡 LP:800→0

 

 決闘が終了し、SVとARVが消滅する。

 ZEXALも合体を解いて元の遊馬とアストラルへと戻った。アストラルは相手チームに向かって手を翳し、沢渡の8枚、梶木の2枚、合計10枚のNo.を引き寄せ回収する。

 ショックで倒れた沢渡の元に、遠くから見ていた梶木が歩み寄る。

 

「負けちまったか。しょうがない。それも”役目”じゃ」

 

 梶木は沢渡を肩に担ぎ上げると、そのまま海の方へと向かう。

 

「俺達の役目は終わったぜよ。ただ俺達は”番人”じゃなくて”遊撃手”だから、特にやれるもんは無いぜよ。さらばじゃ」

 

 そしてそのまま海の中へと入り、消えてしまった。

 

「おい! ……相変わらずこの世界の人間ってどうなってんだろうなぁ……っと、遊馬!」

 

 十代は遊馬の下へ駆け寄り、嬉しそうに両手で遊馬の肩を叩いた。

 

「やったな遊馬!」

 

 そして少しだけ距離を開けると、何時もの決めポーズ――――

 

「ガッチャ! 楽しい決闘だったぜ遊馬! アストラル!」

「そう言えばさっきも言ってたけど”ガッチャ”ってなんだ?」

「へへ、ガッチャはガッチャさ!」

 

 

 * * *

 

 

「そうか、お前達がいた世界でも大変なことになってんだな」

「”破滅の光”……アストラル何か知らないのか?」

 

 決闘を終えて落ち着いた十代と遊馬達は、砂浜に座って情報交換を行う。

 お互いに突然、この世界へと飛ばされたこと、アストラル世界を守るために闘いに行く途中であったこと、仲間達が今も闘っているということ、No.がなければこの世界から出られないということ、デュエル・モンスターズの精霊のこと、破滅の光を追っていること――――

 

『聞いたことはないな』

『それはそうだろう。アストラル世界なんて、”十二世界”の中にもない。僕からしても全くの異世界だよ』

 

 今まで姿を消していたユベルが姿を現す。

 

『話は聞いていたよ。ほら、僕もこんなもの何時までも持っていたくはないからね』

 

 ユベルはNo.17のカードを出現させると、アストラルに向かって投げ渡す。

 

『それで、君達は本当にここから出られる手段を持っているのかい?』

『ああ、”皇の鍵の船”を起動させれば次元間を渡ることが出来る』

「かっとビング遊馬号だな!」

『……だが、船を動かすにはNo.のカードが必要だ。起動の”鍵”となる”No.66”もまだ見つかっていない』

「よっしゃ! ならとっとと探しに行こうぜ! 遊馬の仲間も待ってんだろ?」

 

 十代は身軽に立ち上がり、尻についた砂を払う。

 

「俺達もNo.集め手伝うからさ! ついでに俺達も元の世界に送ってくれたら助かるぜ!」

「ああ、約束する! 十代がいてくれたら心強いぜ! よろしくな十代……あ、十代さん!」

 

 落ち着いてきて、ようやく相手が年上だということを意識した遊馬。十代はカラカラと笑って手を振った。

 

「気にすんな気にすんな! 俺に敬語使う後輩なんてアカデミアじゃ殆どいなかったし、自由に呼べよ」

「そ、そうか? じゃあ今まで通りで呼ぶからな!」

 

 遊馬も立ち上がり、十代と共に砂浜を駆けだす。

 

「よっしゃー! かっとビングだァーーーー!!!」

「俺ェーーーー!!!」

 

「「 ハハハハハ!!! 」」

 

 楽しそうに笑い合う最強決闘者達。

 まだ謎だらけの異世界探検だが、心強い仲間を得た彼らに不安は無かった。

 

 

 

 




次回予告

「やったねアニキ! LPが0になった時はどうなっちゃうのかと思ったよ~!」
「おう! 遊馬が頑張ってくれたからな! だけど、大変だったのは俺達だけじゃなかったんだ」
「え、どういうことっすか? 遊戯さんのことっすかね?」
「寂れた街をバイクが駆け抜ける! エンジン音が木霊する!」
「え、ちょ、アニキ!? 決闘の話じゃないんすか!?」
「後輩を助けるのが先輩の務めだぜ? 頼んだぞ遊星!」
「ちょ、誰っすかそれ!?」


「次回! 《駆け抜けるエンターテイナー! ~遊星と遊矢~》!」


「お前の出番まだ先だからな! 俺は先に行ってるぜ!」
「ちょ、ちょっとアニキ! 何の話っすか!? 遊星ってだれっすかぁーーーー!?」


今日の最強カード
超古深海王シーラカンス

今回は色んなカードが爆発しましたが、その中でも爆発力と使いやすさ
が際立ってたシーラカンスをチョイス。1度に9体デッキから特殊召喚なんて
まず見れない光景ですよね。


まあ、今思えば色々問題回だったと思います。
特に手札断殺のとことか……まああれはミスをカバーする為だけに追加した苦渋の決断という名の妥協だったのですが(小声)
でも書いてる自分は楽しかったです。大量ドロー、大漁展開(誤字ではない)、ロマンですねぇ~

今回の決闘者はDMから梶木良太、デッキは【水属性】。ARC-Vから沢渡シンゴ、デッキはエクシーズ召喚特化の【魔界劇団】でした。

沢渡さんは何使わせてもうまく使ってくれるビジョンが浮かぶから好き。純粋な魔界劇団を期待してた人には申し訳ありませんでした。むしろ妖仙獣?

梶木にはフィッシャーマンシリーズを使わせようと思ってたんですが、書くために原作を見直してて、そこで城之内にフィッシャーマンを渡すシーン見たら、使わせるのは梶木に対して失礼じゃないかなと思ってしまいして、それでフィッシャーマンは見送りました。今思えば二世や三世はよかったかなと思い始めていますけど。見たい人がいたら大漁旗君の登場を願っててください(笑)

次回は遊星と遊矢。出てくる決闘者がここまで野郎ばっかりなので次回は女の人が出てきます。次回もお楽しみに。



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駆け抜けるエンターテイナー ~遊星と遊矢~

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

ちょっとミスって辻褄が会わなくなっていたので、遊矢のプロローグに一部修正を加えました。大きな設定や展開に関わるものではなく、見返さなければならないほどの修正ではありませんが、ご了承ください。


「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでダイヤモンド・ドラゴンを攻撃! オッドアイズの効果により戦闘ダメージは倍だ! 【螺旋のストライク・バースト】!」

 

 遊矢が駆るDホイールに並走する二色の眼を持つ龍。それが後方へと振り返り、後ろから追ってくるDホイールの上空を飛ぶダイヤモンドの鱗に覆われたドラゴンに向かってブレスを放つ。

 

「俺のレアが!? ぐわぁぁぁ!?」

 

 名蜘蛛 LP:800→0

 

「ターンエンド!」

 

 LPが0になると相手のDホイールが急停止して転倒し、決闘者ごと遥か後方へと消える。

 勝利したと言うのに遊矢の顔から緊張が抜けない。何故なら相手が後”3人”もいるからである。

 

「俺のターン! よくも名蜘蛛をやりやがったな! 凍氷帝メビウスで攻撃!」

 

 追手の一人”氷丸”が従える凍氷帝メビウスがオッドアイズに向かって飛び掛かる。

 

「イッツ・ショータイム! 罠カード《万能地雷グレイモヤ》! 凍氷帝メビウスを破壊する! 1・2・3! イグニッション!」

 

 オッドアイズに迫るメビウスの足元が爆発し、メビウスは空に打ち上げられ、爆散して色取り取りの花火となる。

 

「如何でした? きれいな花火――――」

「テメェよくもやりやがったな! ターンエンド!」

「うわー! せめて楽しんでやろうよ~! こっちは何人も相手してるのに~!」

 

 自慢のエンタメも通じず、逃げるようにアクセルを掛けて距離を離す遊矢。牛尾との決闘の後、夜が明けたものの、空は気が滅入りそうな曇り空。その曇り空の下で行く当てもなく街を探索していた遊矢は、ガラの悪い決闘者達に目を付けられて追いかけまわされていた。最初こそは遊矢のエンタメに気を取られていた不良達も、今や仲間を倒した遊矢憎しで追ってきている為、エンタメに見向きもしない。

 

「俺のターン! さっきはよくも弟を! ここからタダで帰れると思うな! ジュラック・スピノスで攻撃!」

 

 弟を遊矢に倒された事への報復に来た兄”陸王”が炎の背びれを持つスピノ・サウルスをオッドアイズにけしかける。

 遊矢は道路の先にAカードを見つけると、それを手に取って発動する。

 

「Aマジック《ナナナ》! このターン、オッドアイズの攻撃力を700アップする!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500→3200

 ジュラック・スピノス ATK:2600

 

 迫るスピノスに対し、オッドアイズは尻尾による強烈な薙ぎ払いを頭部に浴びせ、スピノスをノックダウンして破壊する。

 

「ぐわぁ!? おのれ……ターンエンド!」

 

 陸王 LP:2000→800

 

「よし行けリュウ!」

「うん兄ちゃん! ドロー! 闇より出でし絶望で攻撃!」

 

 Dホイールを運転する学ランを着た兄”虎太郎”と、サイドカーに乗って決闘を行う眼鏡を掛けた小男の弟”龍二郎”、”水沼兄弟”の二人が巨大な影の化け物に命じ、オッドアイズを攻撃させる。最上級モンスターの三連撃には流石の遊矢も手が回らず、オッドアイズは化け物が振るった爪の一撃で破壊されてしまう。

 

「うわぁ!?」

 

 遊矢 LP:1000→700

 

「おおリュウ! 流石は俺の弟だぜ!」

「へへ! ターンエンド!」

 

「一人一人は大したことないけど、流石にこの人数は……」

 

 最初は6人いた不良決闘者達。氷丸の相棒”雷丸”、陸王の弟”海王”、そして名蜘蛛コージは倒すことはできたが、幾ら遊矢でも6対1は厳しい。手札は0、LPは僅か、Pスケールも氷丸のメビウスに崩されてしまった。

 

「Aカードも見えない……どうする……!」

 

 突破口探る遊矢。そんな時、後ろの3台とは違うエンジン音が決闘コースに響き始める。

 

「に、兄ちゃん皆! 何か来る!」

 

 音に気付いた龍二郎が後ろを振り返ると、凄まじいスピードで接近してくる赤いDホイールがあった。そのDホイールには青いジャケットの青年が跨り、ヘルメット越しからでも解る鋭い眼光を前の3台に向けていた。

 

「また新手か!?」

 

 遊矢が緊張した面持ちで赤いDホイールの乱入者へと振り返る。遊矢が振り返った瞬間、乱入者は左腕に装着したデッキホルダーからカードを引く。

 

「俺のターン!」

 

 ??? 手札:5→6

 

〔乱入ペナルティ! 2000ポイント!〕

 

 ??? LP:4000→2000

 

「ぐっ!? ……相手の場のみモンスターが存在する場合、《レベル・ウォリアー》をレベル4として特殊召喚できる!」

 

 乱入者の場に4つの星のマークがついたヒーローが現れ、4つの星全てが点灯する。

 

 レベル・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル3→4 ATK:300

 

「手札のレベル1モンスター1体を墓地に送ることで、手札の《ビッグ・ワン・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

墓地へ送ったカード

ジェット・シンクロン

 

 続けて頭部に大きな”1”の数字が書かれた全身スーツの戦士が飛び出す。

 

 ビッグ・ワン・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル1 ATK:100

 

「相手の場にレベル5以上のモンスターが存在する場合、手札から《ジャンク・ジャイアント》を特殊召喚できる!」

 

 更にジャンク・ジャイアントが現れ、大きな巨体を揺らしながら場に降り立つ。

 

 ジャンク・ジャイアント 地属性 機械族 レベル6 ATK:2000

 

「戦士族のビッグ・ワン・ウォリアーをリリースし、《ターレット・ウォリアー》を特殊召喚!」

 

 ビッグ・ワン・ウォリアーが光の中へと消えると、その光からターレット・ウォリアーが現れる。

 

 ターレット・ウォリアー 地属性 戦士族 レベル5 ATK:1200→1300

 

「墓地のチューナーモンスター《ジェット・シンクロン》の効果発動! 手札を1枚墓地へ送り、このカードを特殊召喚する! そして墓地へ送った《ボルト・ヘッジホッグ》は俺の場にチューナーモンスターが存在する場合、墓地から特殊召喚できる!」

 

 最後にジェット・シンクロンと、背中に沢山のボルトが突き刺さったネズミが現れる。

 

 ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 ATK:500

 ボルト・ヘッジホッグ 地属性 機械族 レベル2 ATK:800

 

「随分と並べてきたが、どいつもこいつもザコばかりじゃねぇか! リュウのモンスターの足元にも及ばないぜ!」

「に、兄ちゃん! たくさんモンスターを出してきたってことは――――」

「レベル4《レベル・ウォリアー》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変えると、レベル・ウォリアーを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは音速の翼となる!」

 

 光の柱から飛び出したのは、ジェット機をモチーフとした機械の戦士。胴体のジェット機から五体が伸び、エンジンを点火させて飛び上がる。

 

「シンクロ召喚! 舞い上がれ! 《ジェット・ウォリアー》!」

 

 ジェット・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル5 ATK:2100

 

「ジェット・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した場合、相手の場のカード1枚を手札に戻す! 《闇より出でし絶望》を手札に!」

 

 ジェット・ウォリアーが手を翳し、そこから衝撃波を放つ。それを受けた化け物は霧散して消滅する。

 

「ひぇぇぇ!? モンスターが!?」

「バトル! ターレット・ウォリアーでドレッドの男を攻撃! 【リボルビング・ショット】!」

 

 ターレット・ウォリアーが砲塔を旋回させ、陸王に向かって機関砲を乱射する。

 

「ぐわぁぁぁ!?」

 

 陸王 LP:800→0

 

 陸王のDホイールは強制停止し、転倒して後方へと消える。

 

「ジャンク・ジャイアント! 黒いジャンパーの男を攻撃!」

 

 ジャンク・ジャイアントが突進し、その巨体を氷丸にぶつける。

 

「だぁぁぁぁ!?」

 

 氷丸 LP:2000→0

 

 その攻撃方法に驚いた氷丸は強制停止の前に転倒し、陸王と同じように遥か後方へと消える。

 

「残った対象はお前だ! ジェット・ウォリアーで攻撃!」

「ワァァァ!? 暴力反対暴力反対!」

 

 ジェット・ウォリアーが飛び出し、音速のスピードで龍二郎に拳を食らわせ、駆け抜ける。

 

「ギャー!?」

 

 水沼兄弟 LP:2900→800

 

「リュウーーーー!?」

 

 まだLPが残っているというのに、小心者の龍二郎は気絶してしまった。

 

「ボルト・ヘッジホッグ!」

 

 最後にボルト・ヘッジホッグが丸まり、気絶した龍二郎の代わりに虎太郎へと体当たりを食らわせる。

 

「ぐはぁ!?」

 

 水沼兄弟 LP:800→0

 

 水沼兄弟のDホイールが強制停止し、後方へと消える。

 今度は自分かと身構える遊矢を前に、乱入者は決闘を終了させた。

 

「大丈夫か? 大人数に襲われているように見えたが」

「え? あ、ああ……」

 

 Dホイールの通信機から聞こえてくる落ち着いた声。遊矢は不思議とその声に安心感を抱き、緊張を解いた。

 

「俺はお前の敵じゃない。話をしたいんだが、構わないか?」

「え、あ、はい……えっと、貴方は?」

「俺の名は”不動 遊星”」

「俺は遊矢、”榊 遊矢”っていいます」

「遊矢、表通りにいるとまたさっきの連中に絡まれる。ここから少し離れた人気のない場所へ移ろう」

 

 そう言うと遊星は先導してDホイールを走らせる。

 

「(話が通じる……今まで会った人は誰でもまず決闘しろだったのに)」

『遊矢』

 

 遊矢が遊星の後ろについた瞬間、ユーゴが姿を現す。

 

『あいつ今”不動 遊星”って言ったか?』

「言ってたけど、ユーゴ知ってるの?」

『俺どころか、S次元で遊星を知らない決闘者はいないと思うぜ』

「え? じゃああの人はS次元の人なのか?」

『人っつーか……うーん、本当に実在したかは分からない、言わば”都市伝説”なんだ』

 

 ユーゴ曰く、”不動 遊星”はコモンズの人々が創り出した”架空の英雄”であるとのこと。

 

『例えば遊矢、お前はライディング・デュエルのルーツは知ってるか?』

「ああ、コモンズ達が最初にやりだしたって聞いてるけど」

『その最初のDホイーラーが遊星だって言われてる』

 

 続けてユーゴは遊星に関する伝説を語り始める。

 遊星はトップス出身であり、トップス、コモンズどちらにも分け隔てなく接する人だった。機械に強く、何時もコモンズの生活を助けていたり、鬱憤を募らせるコモンズの為にライディング・デュエルを考案したり。更にかの決闘王”ジャック・アトラス”のライバルだったとも言われており、彼のエースモンスター”レッドデーモンズ・ドラゴン・スカーライト”の傷は遊星との決闘で付けられたものであると言われる。

 

「ええ~? S次元でそんな話聞いたことなかったけどなぁ? ジャックも特にそんな話してなかったし……」

『だからあくまで”都市伝説”だっつーの! そんな奴本当にいたらシティの歴史変わってるって』

「で、その都市伝説が今、目の前にいると……」

『何なんだろうな~?』

 

 

 * * * 

 

 

 遊星に連れられてやってきたのは、表通りから離れた廃墟の前だった。

 

「ここでいいだろう。これくらいなら崩れる心配もない」

 

 遊星はDホイールから降りると、ヘルメットを脱いで遊矢へと向き合う。鋭角で特徴的な髪型に、整った顔立ち。そしてその顔に走るラインのようなマーカー――――

 

『やっぱり遊星だ。昔リンに読んでもらった都市伝説の本に載ってたイラストそっくりだ!』

 

 少し興奮した様子のユーゴを横に、遊矢もDホイールから降りて着込んでいた学生服を肩に掛け、ゴーグルを上げる。すると遊星の無表情だった顔に少しだけ驚きが浮かぶ。

 

「……まだ中学生ぐらいか? その歳であれだけのレベルのDホイーラーなのは凄いな」

「え、や、まあ……色々あって」

 

 照れながら笑う遊矢を連れて遊星は廃墟内に入ると、中で見つけた二つの椅子の内の一つを遊矢に勧め、自分ももう一つに座る。

 

「……聞きたいことがあるんだが、いいか?」

「は、はいどうぞ!」

 

 ユーゴの話を聞いてから、目の前の人物が大物であると感じた遊矢は少し緊張した様子で頷く。

 

「まず一つ、君はここの人間か?」

「違います。気づいたらここにいて……」

「……」

 

 少し考えるように視線を落とした後、遊星は再び顔を上げる。

 

「俺もそうだ。気づけばこの世界にいた。決闘が支配するこの世界に」

「決闘が?」

「会う人間は必ず決闘を挑んでくる。こちらが話をしようとしても、聞かないかはぐらかされてしまう。ようやく話が通じたのが君だった」

「そ、そうなんだ! 皆問答無用で……」

「この世界のある決闘者は、それを俺への”試練”だと言っていた」

「試練……試練って一体何なんですか?」

「俺にも分からない。分かるのはそれが俺と……君に課せられているということだけだ」

 

 遊星の言葉に目をパチクリとさせ、遊矢は自身を指さす。

 

「俺も!?」

「俺と同じようにここへと連れてこられたのなら、そうだろう」

「俺への試練って……」

 

 少し前に赤馬 零児から課せられた”試験”を突破したばかりだと言うのに、また試されるのか――――その理由に心当たりの無い遊矢は難しい顔をして首をひねる。

 

「とにかく、今はどうやって元の世界へと戻るか、その手掛かりを共に探そう。君と俺ならば、さっきの連中が来ても対処できるだろう」

「(こんな状況で、随分と落ち着いた人だなぁ)」

 

「ならいい情報があるわよ?」

 

 突然、建物の出入り口から聞こえてきた声に、遊星と遊矢は立ち上がりながら声の方へと向き直り、身構える。出入口には一人、ライダースーツを身に纏った女性が立っていた。

 

「何者だ?」

「やだ、そんな怖い顔しないでよ。折角出向いてきたって言うのに」

 

 女性は先でまとめた長い後ろ髪を揺らし、渦巻くように跳ねた前髪を弄りながら遊星に笑い掛ける。スタイルの良い美人であった。

 

「私は”ゴーストガール”。このエリアの”番人”よ」

「ゴースト……」

「あら? 何か引っかかったかしら?」

 

 渋い顔の遊星に首を傾げるゴーストガール。確かに遊星にとって”ゴースト”の名は縁起の良いものではない。

 

「もしかして”ガール”なんて歳じゃないだろっていいたいわけ? 失礼しちゃう」

「いや違う……だが、君もDホイーラーだろう?」

「そうね、できるわよ?」

「なら、”ゴースト”は止めておいた方がいい。もっと……相応しい名乗りがあるはずだ」

 

 遊星の世界での出来事は、彼女には関係の無い話だろう。しかし、遊星にとって”ゴースト”と言う名前は繰り返してはいけない、繰り返させてはならないキーワードなのである。

 

「何かよく解んないけど……ま、本名でいいか! ここで気にすることじゃないし」

 

 ゴーストガールは髪をかき上げ、改めて遊星へと向き合う。

 

「私は”別所 エマ”。このエリアの番人よ。私を倒さなければ貴方たちはこのエリアから出られない。でも私を倒せたら良い事教えてあげる」

「これも試練か?」

「そう言う人達もいるわね。まあ私もそう言われてきてるんだけど、私にとっては単なるお仕事。決闘者が来たら決闘する。勝ったら報酬、負ければメッセンジャー、それだけね」

「指示したのは何者だ?」

「それを言うのはお仕事じゃないわ」

「……分かった、決闘しよう」

 

 遊星は頷いた後、遊矢へと向き直る。

 

「遊矢――――」

 

 遊星が遊矢へ呼びかけようとした瞬間、遊矢の後ろの壁が突然爆発し、遊矢が遊星の元へと吹き飛んでくる。

 

「うわぁぁぁーーーー!?」

「遊矢!?」

 

 遊星は遊矢を受け止めて状態を確認する。凄い吹き飛び方だったが、遊矢に大きな外傷は見られず、遊矢は痛がりながらも一人で立ち上がる。

 

「いてて……何だ一体?」

「大丈夫か遊矢!?」

「はい、何とか……」

 

「オラァァ! 見つけたぜ決闘者! こんな所に隠れてやがったのか!」

 

 爆煙の中から聞こえてくる乱暴な言葉遣い。さっきの不良達が報復に来たのかと身構える遊矢だったが、ふと違和感を覚える。

 

「(何だ? 凄い乱暴な言葉だけど……女の子?)」

 

 とても荒くれ共の姿を想像できない黄色い声が、廃墟内に響く。煙が晴れると、そこには背丈と同じ位大きなランチャーを担いだ少女が立っていた。気の強そうな顔はキリリと勇ましく、しかしランチャーや服装、髪色は少女らしくピンク色中心。遊矢よりも年下に見えるが、出るとこは出た体型など、相反する要素を幾つも兼ね備えている少女であった。

 少女はDゲイザー越しの目を手前に立っている遊矢に向け、ランチャーを構える。

 

「お前か! ゴロツキどもが話してた決闘者は?」

「いきなりなんだよ君は!? それ本物の大砲!? それで壁を俺ごと吹っ飛ばしたの!?」

「ゴチャゴチャうるせぇ! 決闘者かどうか聞いてんだから答えやがれ!」

「(何てめちゃくちゃ娘だ!? 柚子よりも気が強いぞ!? いや、もう気が強いとかいう問題じゃ……)」

「あら”アンナちゃん”じゃない? 相変わらず賑やかな娘ねぇ」

 

 突然の乱入者に対して身構えている遊星の後ろから、エマがひょっこりと顔を出す。それに気付いた少女――――”神月 アンナ”は構えたランチャーを下げる。

 

「あれ? エマ姉ちゃんじゃん。番人がこんなとこで何してんだよ?」

「お仕事。このエリアにいる決闘者が固まって集まってたから、こっちから出向いたのよ。遊撃手達が頑張ってるから、何時こっちにくるか分かったもんじゃないし」

「悪いがこいつは俺の獲物だからな! 譲らねぇぞ!」

「取らないわよ。私のお相手はこっちのお兄さんだもの。……そうだ!」

 

 エマはポンと掌を叩くと、遊星の後ろからアンナの側へと歩み寄る。

 

「どうせならタッグデュエルにしない? 私とアンナちゃん、お兄さんと……遊矢君だったわね? そのチームで」

「えー!? いいよそんなの! 俺が二人ともやっつけてやる!」

「アンナちゃん、アンナちゃんと私の関係は?」

「うっ……エリアリーダーは番人、俺は遊撃手……」

「そ、アンナちゃんは私の言うことを聞く義務がある。これを破ったら怒られるじゃすまないわねぇ」

「わ、分かったよ! タッグやればいいんだろやれば!」

「はいお利口様。……こっちは話し付いたけど、お兄さん達はどう?」

 

 エマに問われると、遊星も遊矢の側に立つ。

 

「遊矢、行けるか?」

「はい! 大砲撃ちあえって言われてもできないけど、決闘ならできます!」

「よし……その決闘、受けて立つ!」

 

 

 

 * * *

 

 

 

「それじゃ、ルールを説明するわね」

 

 表通りに出た4人はDホイールを横一列に並べる。エマのDホイールは、通常のバイクにRSVプレートを発生させる装置を取り付けて改造した物のようだ。

 

「今回のルールは”ライディング・タッグフォース・ルール”よ。簡単に言えばライディング決闘をタッグフォース形式で行う決闘ね」

 

 LPはチームで8000ポイント。一つの場・墓地・除外ゾーンをチームで共有。決闘場には一人が入り、相手のターン終了時にパートナーと入れ替わる。

 

「ここまでは通常のタッグフォースだけど、違いはここから。お兄さんの所のライディング決闘と、遊矢君の所のライディング決闘の違いは解ってるかしら?」

「え? 違うんですか?」

 

 学生服を着こんで準備する遊矢が遊星へと振り向く。

 

「俺の知っているライディング決闘は《スピード・ワールド2》というフィールド魔法の中で、デッキに”Sp(スピードスペル)”という専用魔法を投入し、”SPC(スピードカウンター)”と共に駆使して行う決闘だ。だが、この世界で発動されるフィールド魔法は《クロスオーバー・アクセル》。Dホイーラー達は通常の魔法カードを投入して使って来た」

「そして遊矢君が参加すると、コース上に”Aカード”がバラまかれる”アクション・ライディング決闘”が始まるのよね?」

「アクション……?」

(アクション)決闘っていうのは――――」

 

 遊矢が遊星にA決闘を説明する。エンタメ感満載で。

 

「――――というわけで、決闘の最終進化系、それがA決闘なのです!」

「……成程、理解した。ライディング決闘以上に、決闘者の身体能力が求められるようだな」

「(遊星さん、せめて顔色くらいは変えて欲しかったな……)」

 

 理解はしてもらえたものの、遊星は無表情のまま真面目に返答する。遊矢としては遊星に楽しんでもらいたいという考えがあったので、この反応は少し寂しい。

 

「(いや、俺がまだ未熟なんだ! 必ず遊星さんを笑顔にしてみせるぞ!)」

「違いは解った。だが、それが今回のルールにどう関係する?」

「これを見て」

 

 エマが決闘盤からSVのモニターを出現させ、カードリストを映し出す。

 

《ASp-回避》

①:自分のSPCが4つ以上存在する場合、SPCを2つ取り除いて発動できる。相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

 

《ASp-奇跡》

①:自分のSPCを全て取り除き、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘ダメージは半分になる。

 

《ASp-加速》

①:自分にダメージを与える効果が発動した場合に発動できる。自分のSPCを4つ増やし、その効果で自分が受けるダメージを0にする。

②:このカードを発動したターン終了時、自分のSPCを1にする。

 

「あ、これってAカード?」

「そ、遊矢君は見慣れてるわよね? じゃあ違いは分かる?」

「えっと……あれ? アクション・スピードスペル?」

「デッキには通常の魔法カードを投入してもらうけど、今回の決闘にはSPCが存在するわ」

 

 SPCは2ターン目以降のお互いのスタンバイフェイズ時に1つずつプレイヤー自身に追加されるカウンターである。本来ならばフィールド魔法の効果やSpを発動するための条件やコストだったりするのだが、今回のルールでは扱いに違いがある。

 

「本来のA決闘ではAカードは拾った瞬間から使えたけど、今回の決闘では発動条件や効果にSPCが絡んでくるわ」

「本当だ。テキストにSPCって書いてある」

「以上のルールを展開するフィールド魔法は《クロスオーバー・アクセル2》! スタンバイフェイズ時のSPCのチャージは先攻1ターン目から。スピード・ワールド2にあったSPCを消費する起動効果は無くなってるから注意ね。それと、ASpは出番のプレイヤーしか拾えないわ。後は何時ものタッグフォースルールと一緒、以上! 何か質問ある?」

 

 エマが3人を見渡すと、遊矢がおずおずと手を上げる。その視線はアンナへと向けられていた。

 

「あの、ルールについては大丈夫なんだけど……アンナはそれでライディング決闘するつもりなの?」

「ああ!? 何か文句でもあんのかよ!」

「いや文句も何も……Dホイールじゃないじゃん!?」

 

 アンナが横に置いているのはDホイールではなく、先程担いでいたランチャー。ランチャーは飛行機に変形できるらしく、変形して現れた翼に垂直離陸の為のプロペラファンが付いている。

 

「この娘、”フライング・ランチャー”にしか乗れないのよ、決闘自体は決闘盤があるからできるし、見逃してあげて」

「まあ、決闘ができるならいいのかな……? (決闘中に撃ったりしないよな?)」

「もういいだろ! とっとと始めようぜ!」

 

 全員がDホイールとフライング・ランチャーに跨り、エンジンと決闘盤を起動させる。Dホイールは唸り、フライング・ランチャーはふわりと宙に浮く。アンナはバランスを崩して落ちかけるが、何とか堪えた。

 

「先攻・後攻はこの先の十字路の左……決闘コースの第一コーナーを制した決闘者のチームからでいいかしら?」

 

 全員が頷き、いよいよスタートが迫る。

 

 

〔フィールド魔法《クロスオーバー・アクセル2》、セット〕

 

 

「「「「 ライディングデュエル! アクセラレーション!!! 」」」」

 

 

 

 決闘スタートと同時にASpがコース上にバラまかれ、4人が一斉にスタートする。真っ先に飛び出たのは遊星、続けてエマ、遊矢の順。WRGPを制したマシンである”遊星号”の性能はダントツであり、遊星の腕と経験も合わさって他の追随を許さない勢いで先行する。元々が通常のバイクであるエマのマシンと、初心者用のオートパイロット設定の補助がついている遊矢のマシンではとても追いつけない。このまま遊星が第一コーナーを制するかに見えたが――――

 

「……簡単にはいかないようだな」

「うわ!? なんだこの道!?」

「遊矢、俺に続け!」

 

 第一コーナーまでの直線コースのコンディションは最悪の一言。道路の所々が抉れていたり、ゴミや瓦礫の障害物が点々と置かれていて思う様に進めない。遊星は難なく躱し、遊矢はそれに倣って続く。エマはこのことを知っていたのか、障害が少ないルートをスイスイ進んでいく。そして最後の一人は――――

 

「よーし、貰ったぜ!」

 

 穴も障害物も飛び越え、一直線に第一コーナーへと向かうのはフライング・ランチャー。トップの遊星すら飛び越し、難なく第一コーナーを制する。

 

「さ、流石にそれはずるいぞ!」

「飛んじゃいけないなんてルールは無かったぜぇ! 俺達の先攻だ!」

 

 アンナが通った後、障害物の影響で並んだ3人がほぼ同時にコーナーを通過する。

 

「アンナちゃんが1番だったから、パートナーである私は自動的に3番手ね。元々の相手で考えるなら、2番手は遊矢君かしら?」

「俺は構わない。遊矢はどうだ?」

「遊星さんがいいなら、行かせて貰うよ!」

 

 アンナ、遊矢、エマ、遊星の順となり、決闘が始まる。

 

「俺のターン!」

 

 アンナ SPC:0→1

 遊星 SPC:0→1

 

「《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を召喚!」

 

 アンナの場に白いボディの列車が現れる。その列車の上には巨大な騎士の上半身が繋がっており、上半身は剣と盾を構える。

 

 深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト 地属性 機械族 レベル10 ATK:3000→0

 

「最上級モンスターをリリース無しで召喚か……」

「その代わり元々の攻撃力が0になるけどな。俺の場のモンスターが地属性・機械族のみの場合、こいつを手札から特殊召喚できる! 《弾丸特急バレット・ライナー》!」

 

 続けてアンナの場に、まるで弾丸のような凄まじいスピードで駆け付ける列車が現れる。

 

 弾丸特急バレット・ライナー 地属性 機械族 レベル10 ATK:3000

 

「行くぜ! レベル10の《弾丸特急バレット・ライナー》と《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》でオーバーレイ!」

 

 アンナの場の2体の列車が橙の光となって飛び上がると、アンナの場に現れた赤い渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から赤い閃光が放たれると、その中から正方形のブロック体を乗せた車両が現れる。

 

「鉄路の彼方より、地響きと共にただいま到着! 現れろ《超弩級砲塔列車グスタフ・マックス》!」

 

  超弩級砲塔列車グスタフ・マックス 地属性 機械族 ランク10 ATK:3000 ORU:2

 

「どうだ! 俺のエースモンスターで、Dホイールなんかペシャンコにしてやる!」

「(X召喚……話には聞いていたが、S召喚とは違った可能性を感じる)」

 

 自分の知らない決闘の世界がここにある。そう思った瞬間、体中の血が沸き立つような感覚を得た遊星。自分のS召喚を見た時、先人二人はこんな気持ちだったのか――――そう思った遊星は、フッと笑みを漏らした。

 

「てめー何笑ってんだ! もう怒ったぞ! グスタフ・マックスの効果発動! ORUを1つ取り除き、相手に2000ポイントのダメージを与える!」

 

  超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ORU:2→1

 

 グスタフ・マックスがORU1つを取り込むと、ブロック体が開き、中から長砲身の大砲が伸びる。

 

「発射オーライ! 〈ビッグ・キャノン〉!」

 

 大砲が遊星へと向けられると、轟音と共に砲弾が放たれる。遊星はそれを躱すが、コースに着弾した弾が凄まじい爆発を起こし、爆炎が遊星と近くにいた遊矢を飲み込む。

 

「うわぁぁぁ!?」

「ぐうっ……本人も決闘も規格外というわけか……!」

 

 遊星 LP:8000→6000

 

「どうだどうだ! 俺はカードを伏せてターンエンド!」

 

アンナ

LP:8000

SPC:0

手札:2

〔EXモンスターゾーン〕

・超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK:3000 ORU:1

〔魔法・罠〕

・セット

 

「(凄いな、とにかくデカくてド派手な決闘……これも”エンタメ決闘”と言えるかも)」

 

 遊矢は遊星と代わって前に出る。

 

「(アンナ、さっき遊星さんが笑ってたって言ってたな……これは負けてられないぞ!) 俺のターン!」

 

 遊矢 手札:5→6 SPC:1→2

 アンナ SPC:1→2

 

「レディースエーンジェントルメーン!」

 

 遊矢はDホイール上で立ち上がり、両腕を広げる。

 

「な、何だぁ!? 何やってんだお前!?」

 

 流石に困惑したアンナ。エマも遊星もそれぞれのパートナーの後ろで目を丸くしている。

 

「エンタメ決闘なら私も負けません! 私のエンタメもド派手に行きましょう! 魔法カード《螺旋のストライクバースト》!」

 

 遊矢が魔法を発動させると、遥か上空に赤い輝きが現れる。それはどんどん大きさを増し、よく見ればそれはアンナ目掛けて一直線に飛ぶ赤い光線であった。

 

「仕返しのつもりか!? くそ!」

 

 アンナは慌てて躱そうとするが、慌てていたせいかうまくフライング・ランチャーをコントロールすることができず、光線はアンナに命中する。

 

「うわぁ!? ……あれ?」

 

 しかし、アンナにダメージが通るどころか衝撃すらない。困惑してキョロキョロしているアンナに、遊矢が笑いながらデッキから1枚のカードを取り出し、アンナを見せる。

 

「残念ながら螺旋のストライクバーストは相手にダメージを与えるカードではなく、デッキからレベル7の”オッドアイズ”を1体手札に加えるカードなのです」

 

 遊矢 手札:5→6

 

手札に加えたカード

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 

「……テメェーーー!!! 紛らわしいことしてんじゃねぇぞーーーー!!!」

 

 完璧に騙され顔を真っ赤にするアンナ。からかった遊矢は愉快そうに笑い、見せたカードを手札に加えた。アンナの後ろを走るエマは笑いを堪えながら遊矢へと顔を向ける。

 

「(遊矢君、上手いわねぇ。先制して優位に立ってたアンナちゃんを自分のペースに引き込んだわ。アンナちゃん、やり込められなければいいけど)」

 

「スケール1の《星読みの魔術師》と、スケール8の《時読みの魔術師》でPスケールをセッティング!」

 

 遊矢が魔法・罠ゾーンの両端にカードを2枚置くと、プレートに”PENDULUM”の文字が浮かび上がり、それと同時に遊矢の場の両側面に光の柱が立ち上がる。左の柱には白い装束の魔術師が、右の柱に黒い装束の魔術師が、それぞれのスケールの数字と共に浮かび上がる。2つのスケールが揃ったことにより、柱の間に巨大な振り子が現れて揺れ動く。

 

「これでレベル2から7のモンスターが同時に召喚可能! 行くぞ! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 二人の魔術師の間を振り子が何度も往復すると、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター達!」

 

 遊矢の号令と共に、異空間の穴から3つの光が飛び出す。

 

「手札からレベル4《EMオッドアイズ・ミノタウロス》!」

 

 最初に現れたのは二色の眼を持つ、蝶ネクタイを締めた半人半牛の怪物。だが見た目は恐ろしい怪物ではなく、漫画に出てきそうなコミカルなキャラクターであった。

 

  EMオッドアイズ・ミノタウロス 闇属性 獣戦士族 レベル4 ATK:1200

 

「レベル4《EM小判竜(ドラゴ・リモーラ)》!」

 

 続いて現れたのは、額に小判を張り付けた竜。EMらしく蝶ネクタイを締め、小判には星型のマークが描かれている。

 

 EM小判竜 水属性 ドラゴン族 レベル4 ATK:1700

 

「レベル7! 雄々しくも美しく輝く二色の眼! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 最後は遊矢のエースモンスター”オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”が現れ、遊矢のDホイールと共に並んで走りだす。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル7 ATK:2500

 

「EM小判竜が存在する限り、このカード以外のドラゴン族の攻撃力は500上がり、効果では破壊されない!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500→3000

 

「グスタフ・マックスと並べてきやがったか!」

「バトル! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでグスタフ・マックスを攻撃!」

 

 その瞬間、アンナはコース上で浮かぶASpを掴み、目を通してから発動する。

 

「同士討ちなんかさせねぇ! 《ASp-フレイム・チェーン》! SPCを1つ取り除き、相手モンスターの攻撃力を400ダウンする!」

「天空を見定める”星読みの魔術師”よ! その深遠なる力で仇成す敵を封じよ! 〈ホロスコープディビネイション〉!」

 

 Pゾーンの星読みの魔術師がホロスコープの杖を構えると、アンナの決闘盤から警告音が鳴り、発動した魔法を手札に戻すように警告する。

 

 アンナ 手札:2→3

 

「発動しない!? なんでだ?」

「Pゾーンに星読みの魔術師が存在する限り、相手はPモンスターとの戦闘時、ダメージステップ終了時まで魔法を発動できない!」

「チィ! なら罠カード――――」

「時空を見定める”時読みの魔術師”よ! その精緻なる力で守護せよ! 〈インバース・ギアウィス〉!」

 

 Pゾーンの時読みの魔術師が弧を描く右腕のプレートを伸ばし、自身を中心に一周させる。その瞬間、開きかけていたアンナの罠カードがピタリと止まり、まるで時が止まったかのように動かなくなる。

 

「またかよ!?」

「星読みが魔法なら、時読みは罠さ! 行けオッドアイズ・P・ドラゴン! 正真正銘の攻撃技! 【螺旋のストライクバースト】!」

 

 オッドアイズ・P・ドラゴンが赤い渦巻くブレスをグスタフ・マックスに向かって放つ。

 

「オッドアイズ・ミノタウロスの効果発動! 自分のPモンスターが相手モンスターに攻撃するダメージ計算時、その相手モンスターの攻撃力をそのダメージ計算時のみ、俺の場の”EM”及び”オッドアイズ”カードの数だけ100ポイントダウンする! 俺の場の条件を満たすカードは3枚! よってグスタフ・マックスの攻撃力を300ダウンだ!」

 

 オッドアイズ・ミノタウロスが手に持った片手戦斧を山なりに放り投げると、グスタフ・マックスのボディに落ちてきた斧の刃が食い込む。

 

  超弩級砲塔列車グスタフ・マックス ATK:3000→2700

 

「オッドアイズ・P・ドラゴンの効果発動! 相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍となる! 〈リアクション・フォース〉!」

 

 ブレスがグスタフ・マックスに命中し、機体を爆散させる。

 

「うわぁ!?」

 

 アンナ LP:8000→7400

 

「オッドアイズ・ミノタウロス! 小判竜!」

 

 2体のEMも続いて飛び出し、斧や尻尾の一撃をアンナに浴びせる。

 

「ぐううっ!?」

 

 アンナ LP:7400→6200→4500

 

「これでターンエンド!」

「このエンドに墓地へ送られたバレット・ライナーの効果発動! 墓地の機械族1体を手札に加える! 《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を手札に!」

 

 アンナ 手札:3→4

 

遊矢

LP:6000

手札:1

SPC:2

〔メインモンスター〕

 ・EMオッドアイズ・ミノタウロス ATK:1200

 ・EM小判竜 ATK:1700

 ・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:2500

〔魔法・罠〕

 ・LS:星読みの魔術師 スケール1

 ・RS:時読みの魔術師 スケール8

 

「くっそー! 見てろよ俺の――――」

「はいストップ! 次は私のターン!」

 

 エマ 手札:5→6 SPC:2→3

 遊矢 SPC:2→3

 

 エマのカードはハノイの騎士と同じようにデータ化されており、デッキホルダーから突然現れたカードを引き、空中に浮かぶ手札のリストの中にドローしたカードを加え、使用するカードを指先でタッチする。

 

「(遊矢君は意外にできるみたいね。アンナちゃんはまだまだ突っ込んでくれると思うし、とりあえず私は場を固めるかな) 《オルターガイスト・マリオネッター》を召喚!」

 

 エマの場に機械の花の中心から、不気味で機械的な上半身を生やしたモンスターが現れる。

 

 オルターガイスト・マリオネッター 光属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1600

 

「マリオネッターの効果発動! 召喚に成功した時、デッキから”オルターガイスト”罠カード1枚を自分の場にセットする! 永続罠《オルターガイスト・ホーンデッドロック》をセット! このカードは”オルターガイスト”の効果でセットされた場合、セットしたターンに発動できる! 手札から”オルターガイスト”1体を墓地へ送るわ!」

 

墓地へ送ったカード

オルターガイスト・フィフィネラグ

 

「罠カードを発動したことにより、手札の《オルターガイスト・マルチフェイカー》を特殊召喚!」

 

 続けてエマの場に、蜘蛛の胴体から人型の上半身が生えた怪物が現れる。

 

 オルターガイスト・マルチフェイカー 闇属性 魔法使い族 レベル3 ATK:1200

 

「このカードの特殊召喚に成功した場合、デッキから”オルターガイスト”1体を守備表示で特殊召喚! 来なさい《オルターガイスト・フィジアラート》!」

 

 今度は魚のような胴体に4本の脚を生やし、頭に当たる部分から人型の上半身を生やした怪物が現れる。

 

 オルターガイスト・フィジアラート 水属性 魔法使い族 レベル4 DEF:1200

 

「マリオネッターの効果発動! 自分の場の”オルターガイスト”カード1枚を墓地へ送り、墓地から”オルターガイスト”1体を特殊召喚する! オルターガイスト・ホーンデッドロックを墓地へ送り、墓地の《オルターガイスト・フィフィネラグ》を特殊召喚!」

 

 エマの永続罠が消滅すると、入れ替わりで場に脚の無い竜に似た怪物が現れる。

 

 オルターガイスト・フィフィネラグ 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:0

 

 「さあ、私の前に開きなさい! 未知なる異世界へ繋がるサーキットよ!」

 

 エマが宣言すると、エマのDホイールの下に巨大なアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”オルターガイスト”2体! 《オルターガイスト・マリオネッター》と《オルターガイスト・マルチフェイカー》をリンクマーカーにセット!」

 

 エマの場のオルターガイスト2体が光の風となって”下・右”に位置するリンクマーカーへと飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 アローヘッドのゲートが開き、中から現れたのは炎を纏った異形の怪物。龍の様な胴体に六本の腕が生え、それを脚のように場について動き回る。そして龍の首に当たる部分に頭は無く、代わりに人型の上半身が生えていた。

 

「現れなさいLINK-2《オルターガイスト・へクスティア》!」

 

 オルターガイスト・へクスティア 炎属性 魔法使い族 LINK-2(下・右) ATK:1500

 

「まだまだ行くわよ! レベル4の《オルターガイスト・フィジアラート》に、レベル2の《オルターガイスト・フィフィネラグ》をチューニング!」

 

 エマがシンクロプログラムを起動し、2体のオルターガイストに青い炎を浴びせる。すると2体は粒子となり、混ざり合って6つの光輪を形成し、輪を連なってゲートを創る。

 

「伝説の悪しき聖霊よ! 悠久の時を超え、今ここに姿を現せ!」

 

 ゲートが輝き、中から4本腕のドラゴンの様な怪物が現れる。手の一つには杖を持ち、登場と共に唸り声を上げる。

 

「シンクロ召喚! 現れろレベル6《オルターガイスト・ドラッグウィリオン》!」

 

 オルターガイスト・ドラッグウィリオン 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK:2200

 へクスティアリンク先:オルターガイスト・ドラッグウィリオン(下)

 

L(リンク)召喚だけじゃなくてS召喚まで!?」

「遊矢君、アンナちゃんだけじゃなく私もやるもんでしょ? バトル! へクスティアの攻撃力はリンク先のオルターガイストの元々の攻撃力分アップするわ!」

 

 オルターガイスト・へクスティア ATK:1500→3700

 

「ドラッグウィリオンで小判竜を攻撃!」

「くっ!」

 

 遊矢はDホイールから身を乗り出し、コースに漂うASpを手にする。

 

手にしたカード

ASp-回避

 

 遊矢 手札:1→2

 

「(回避! だけど……)」

 

 遊矢はDホイールのモニターに映るSPCの残量を確認する。

 

「(俺のSPCは3つ、回避を発動するには4つ必要、これじゃ発動できない!)」

 

 ドラッグウィリオンは3本の尾を伸ばし、小判竜を打ち据えて破壊する。

 

「ううっ!? 小判竜……」

 

 遊矢 LP:6000→5500

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3000→2500

 

「ASpは外れだったのかしら? それともSPC不足? どちらにせよついてないわね。へクスティアでオッドアイズ・P・ドラゴンを攻撃!」

 

 へクスティアが掌から火球を放つと、それはオッドアイズ・P・ドラゴンに命中し、爆発して破壊する。

 

「オッドアイズ!? うわぁ!?」

 

 遊矢 LP:5500→4300

 

「1体残っちゃったけど、攻めは私の役割じゃないからいいわね? カードを伏せてターンエンド!」

 

エマ

LP:4500

SPC:3

手札:2

〔EXモンスター〕

 ・オルターガイスト・へクスティア ATK:3700 リンク先:O・ドラッグウィリオン(下)

〔メインモンスター〕

 ・オルターガイスト・ドラッグウィリオン ATK:2200

〔魔法・罠〕

 ・セット(アンナ)

 ・セット(エマ)

 

「くそ……カードはあるのに発動できないなんて格好悪い……次はもっとちゃんとエンタメしないと……」

「大丈夫か?」

「遊星さん……」

「俺に任せてくれ」

 

『さーて、都市伝説の実力、見せて貰うぜ!』

 

 遊矢の後ろでユーゴは期待の眼差しを送っていた。その視線を受けながら、遊星は遊矢と入れ替わり、場に乗り出す。

 

「(X召喚、P召喚、L召喚……俺の時代、世界には無かった新しい召喚法)」

 

 遊星は左手で強くグリップを握り、右手の指をデッキトップに掛ける。

 

「(俺の想像の先を行く新時代の決闘! だが、置いて行かれるつもりはない!)」

 

 遊星は静かに闘志を燃やし、気合いを込めてカードを引き抜く。

 

「(誰よりも早く辿り着いて見せる! 新時代の先へ! 俺の決闘で!)  俺のターン!」

 

 遊星 手札:5→6 SPC:3→4

 エマ SPC:3→4

 

 遊星はドローカードを素早く手札に加え、コース上のASpを手に取る。

 

 遊星 手札:6→7

 

「遊矢がセットしたPスケールでP召喚を行う!」

 

 遊星の宣言により、柱の間の振り子が大きく揺れ始める。

 

「集いし絆が、星の(はざま)に揺れ動く……光差す道となれ!」

 

 柱の間に異空間の穴が開くと、そこから4つの光が飛び出す。

 

「ペンデュラム召喚! 出でよ俺のモンスター達! 手札からレベル2チューナーモンスター《サテライト・シンクロン》!」

 

 最初に現れたのは、人工衛星型のロボット。

 

 サテライト・シンクロン 闇属性 機械族 レベル2 ATK:700

 

「レベル2《クリア・エフェクター》!」

 

 続けて現れたのは長く美しい黒髪と煌びやかな衣装を纏った巫女。

 

 クリア・エフェクター 光属性 魔法使い族 レベル2 ATK:0

 

「レベル3チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》!」

 

 次は3つのドリルを装着した丸いロボット。

 

 ドリル・シンクロン 地属性 機械族 レベル3 ATK:800

 

「レベル4《ジャスティス・ブリンガー》!」

 

 最後に大剣を持った戦士が青いマントを翻して現れる。

 

 ジャスティス・ブリンガー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1700

 

「あら、一気に出してきたわね? そこからどうするのかしら?」

「永続魔法《シンクロ・チェイス》を発動!」

「それってキーカード? ならへクスティアの効果発動! 魔法・罠が発動した時、リンク先のオルターガイスト1体をリリースすることでその発動を無効にして破壊する!」

 

 へクスティアがドラッグウィリオンに命令すると、遊星が発動した永続魔法にむかってドラッグウィリオンが飛び掛かる。

 

「ジャスティス・ブリンガーの効果発動! 相手の場の特殊召喚されたモンスターの効果の発動を無効にする!」

「なら永続罠《オルターガイスト・プロトコル》発動! 自分の場の”オルターガイスト”カードの効果の発動及び、その発動した効果は無効化されない!」

「速攻魔法《コズミック・サイクロン》! LPを1000払い、場の魔法・罠1枚を除外する! オルターガイスト・プロトコルを除外!」

 

 遊星 LP:4300→3300

 

 遊星の場から発生した輝く竜巻が、エマの場の永続罠を消し去る。それと同時にジャスティス・ブリンガーが突っ込んでくるドラッグウィリオンを迎え撃ち、大剣で斬り捨てる。

 

「嘘!? 競り負けた!? ……リリースされて墓地へ送られたドラッグウィリオンの効果発動! 場に特殊召喚するわ!」

 

 再びドラッグウィリオンが場に現れ、へクスティアの後ろに控える。

 

 オルターガイスト・ドラッグウィリオン 闇属性 魔法使い族 レベル6 ATK:2200

 へクスティアリンク先:オルターガイスト・ドラッグウィリオン(下)

 

「(凄い……今のチェーン合戦中に、遊星さんから凄い闘志を感じられた。何時もは不愛想な程クールなのに)」

「お兄さん、思ったより熱いじゃない? 決闘の方はおしゃべりなのかしら?」

「……”お前は一見クールに見えて、すぐ熱くなる”……俺の友が昔そう言っていた」

「嫌いじゃないわよそういうの? で、熱くなった貴方はここからどうするのかしら?」

「臆さず攻める! 光差す道よ、開け!」

 

 遊星が空中を指さすと、そこにアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”チューナーを含む戦士族・機械族効果モンスター2体”! チューナーの機械族《ドリル・シンクロン》と、戦士族《ジャスティス・ブリンガー》をリンクマーカーにセット!」

 

 2体のモンスターが光の風となって飛び上がり、”左下・右下”に位置するリンクマーカーに飛び込む。

 

「集いし未来が、鋼の軌跡に絆を繋ぐ! 光差す道から出でよ!」

 

 アローヘッドのゲートが開き、中から全身鋼のアーマーで覆われ、太腿にロケットブースターを付けた戦士が現れる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-2《ジャンク・コネクター》!」

 

 ジャンク・コネクター 闇属性 戦士族 LINK-2(左下・右下) ATK:1700

 

「遊矢、モンスターを使う! レベル2《クリア・エフェクター》とレベル4《EMオッドアイズ・ミノタウロス》に、レベル2《サテライト・シンクロン》をチューニング!」

 

 サテライト・シンクロンが自身を2つの光輪へ変えると、2体のモンスターを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から飛び出したのは、星屑が輝く遊星のエースモンスター――――

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 ジャンク・コネクターリンク先:スターダスト・ドラゴン(左下)

 

「S素材となったクリア・エフェクターの効果により、デッキから1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:1→2

 

「そして永続魔法《シンクロ・チェイス》の効果発動! 1ターンに1度、”ウォリアー、シンクロン、スターダスト”のS召喚に成功した場合、その素材の1体を墓地から守備表示で特殊召喚する! 《サテライト・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に再びサテライト・シンクロンが現れる。

 

 サテライト・シンクロン 闇属性 機械族 レベル2 DEF:100

ジャンク・コネクターリンク先

 スターダスト・ドラゴン(左下)

 サテライト・シンクロン(右下)

 

「バトル! スターダスト・ドラゴンでドラッグウィリオンを攻撃! 【シューティング・ソニック】!」

 

 スターダスト・ドラゴンがドラッグウィリオン目掛けて音波のブレスを放つ。

 

「ドラッグウィリオンの効果発動! 特殊召喚された相手モンスターの攻撃宣言時、自分の場のオルターガイスト1体を手札に戻すことで、攻撃を無効にする! へクスティアをEXデッキに戻し、攻撃を無効!」

 

 今度はドラッグウィリオンがへクスティアに命じると、へクスティアはドラッグウィリオンを庇ってブレスを受け、消滅する。

 

「(残ったのが攻撃力2200のドラッグウィリオンなら、ジャンク・コネクターで追撃できない。ダメージも受けないし、これが今の最善策でしょ?)」

「ジャンク・コネクターの効果発動! バトルフェイズ時にこのカードのリンク先のモンスターのみでS召喚を行う! レベル8《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2《サテライト・シンクロン》をチューニング!」

 

 サテライト・シンクロンが自身を2つの光輪へと変え、スターダスト・ドラゴンを囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

宇宙(そら)への使者に鋼の願いが集う時、その願いが無限の世界を照らし出す! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から現れたのは、巨大な金色のロケット。それが人型へと変形し、背中の太陽光パネルをX字に展開する。

 

「シンクロ召喚! 到達せよ《サテライト・ウォリアー》!」

 

 サテライト・ウォリアー 闇属性 戦士族 レベル10 ATK:2500

 ジャンク・コネクターリンク先:サテライト・ウォリアー(左下)

 

「バトル中にS召喚!? ちょっとちょっと、予想外のことしないでよ!」

「サテライト・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した場合、自分の墓地のSモンスターの数だけ相手の場のカードを破壊する! 俺の墓地にはスターダスト・ドラゴンが1体! よってドラッグウィリオンを破壊する! 〈サテライト・バスターキャノン〉!」

 

 サテライト・ウォリアーが背中からキャノン砲を取り出すと、曇り空の間から太陽光が漏れ、サテライト・ウォリアーの太陽光パネルへと降り注ぐ。充電が完了したサテライト・ウォリアーはエマの場へと狙いを定め、砲身からビームを放ってドラッグウィリオンを撃ち抜いた。

 

「この効果で破壊したカード1枚につき、攻撃力を1000アップする!」

 

 サテライト・ウォリアー ATK:2500→3500

 

「バトルフェイズ時での特殊召喚により、サテライト・ウォリアーは攻撃できる!」

「アンナちゃんが伏せた罠カード《あまのじゃくの呪い》を発動! このターンの終了時まで攻守の変動を逆転させるわ! よってサテライト・ウォリアーの攻撃力は2000ダウンする!」

 

 サテライト・ウォリアー ATK:3500→1500

 

 サテライト・ウォリアーは機雷を体から射出し、エマに向かって投下する。機雷はエマの側で爆発し、エマのDホイールを激しく揺さぶる。

 

「くうう!?」

 

 エマ LP:4500→3000

 

「ジャンク・コネクターでダイレクトアタック!」

「そう何度もやらせない……っての!」

 

 エマはコース上のASpを手に取り、発動する。

 

「《ASp-ダメージ・バニッシュ》! 相手の戦闘モンスターの攻撃力1000ポイントにつき、SPCを1つ取り除いて発動!」

 

 ジャンク・コネクター ATK:1700

 エマ SPC:4→3

 

「戦闘ダメージを0にする!」

 

 ジャンク・コネクターがジェット噴射でエマに向かって突っ込むが、ASpによって張られたバリアによって弾き返される。

 

「押しきれなかったか……魔法カード《一時休戦》! お互いにカードを1枚ドローし、次の相手のターン終了時までお互いが受ける全てのダメージは0となる!」

 

 遊星 手札:1→2

 エマ 手札:2→3

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星

LP:3300

手札:0

SPC:4

〔EXモンスター〕

 ・ジャンク・コネクター ATK:1700 リンク先:サテライト・ウォリアー(左下)

〔メインモンスター〕

 ・サテライト・ウォリアー ATK:1500→3500

〔魔法・罠〕

 ・LS:星読みの魔術師 スケール1

 ・シンクロ・チェイス

 ・セット

 ・セット(ASp)

 ・RS:時読みの魔術師 スケール8

 

「(用意周到……火力持ちのアンナちゃんを警戒してダメージ対策を立てるなんて)」

 

 エマは後方へ下がり、アンナに近づく。

 

「ごめんねアンナちゃん。もっといい状態で回してあげたかったんだけど」

「気にすんなよ! 俺に任せとけ! 俺のターン!」

 

 アンナ 手札:4→5 SPC:3→4

 遊星 SPC:4→5

 

「速攻魔法《緊急ダイヤ》! 相手の場のモンスターが自分の場のモンスターより数が多い場合、デッキから地属性・機械族のレベル4以下のモンスター1体と、レベル5以上のモンスター1体を効果を無効にして守備表示で特殊召喚する! レベル4の《無頼特急バトレイン》とレベル10の《重機貨列車デリックレーン》を特殊召喚!」

 

 アンナの場に、燃えるように赤い特急列車と、大型クレーンが付いた貨車を牽引する機関車が現れる。

 

  無頼特急バトレイン 地属性 機械族 レベル4 DEF:1000

  重機貨列車デリックレーン 地属性 機械族 レベル10 DEF:2000

 

「《爆走軌道フライング・ペガサス》を召喚! こいつは召喚・特殊召喚に成功した場合、墓地から地属性・機械族1体を守備表示で特殊召喚できる! 効果は無効になるけどな! 《弾丸特急バレット・ライナー》を特殊召喚!」

 

 続けてアンナの場に、機械のペガサスと一体になった機械の騎士がバレット・ライナーを牽引して現れる。

 

 爆走軌道フライング・ペガサス 地属性 機械族 レベル4 ATK:1800

 弾丸特急バレット・ライナー 地属性 機械族 レベル10 DEF:0

 

「現れろ! どこまでも続く未来軌道!」

 

 アンナが空中を指さすと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”機械族2体”! 《無頼特急バトレイン》と《爆走軌道フライング・ペガサス》をリンクマーカーにセット!」

 

 2体の列車が光の風となって飛び上がると、アローヘッドの”下・右”に位置するリンクマーカーに飛び込む。

 

「リンク召喚! LINK-2《機関重連アンガー・ナックル》!」

 

 アローヘッドのゲートから、二本のアームを腕の様に伸ばした機関車が現れる。

 

  機関重連アンガー・ナックル 地属性 機械族 LINK-2(下・右) ATK:1500

 

「レベル10の《重機貨列車デリックレーン》と《弾丸特急バレット・ライナー》でオーバーレイ!」

 

 今度は2体の列車が橙の光となって飛び上がる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 光がアンナの場の上空に現れた金色の渦の中へと飛び込むと、渦の中から閃光が放たれる。

 

「拾ったばかりのカードでよく解んねぇけど、今は十分だ! エクシーズ召喚!」

 

 閃光の中から現れたのは、左右に二両ずつ列車を引き連れた大きな列車。他よりも2倍近くはあるその列車は変形を始め、頭部に巨大な主砲を取り付けた上半身だけの人型ロボットへと姿を変える。右肩に自身の数字である”81”を刻み、左右の一番外側にある車両に副砲を取り付ける。

 

「いでよ! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》!」

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ

 地属性 機械族 ランク10 ATK:3200 ORU:2

 アンガー・ナックルリンク先:No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ(下)

 

「ぐっ!?」

 

 No.が現れた瞬間、遊星の”シグナーの痣”が疼き出す。

 

「(何だ? あのモンスターに何かあるのか?)」

「アンナちゃん、ちゃんと指示を守って”No.”を集めてたのね? 偉いじゃない」

「つっても効果が守り一辺倒だし、イマイチピンとこないんだよなぁ……だから、俺好みに変えてやるぜ! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》1体でオーバーレイ!」

 

 スペリオル・ドーラが橙の光となって飛び上がると、アンナの場の上空に現れた赤い渦の中に飛び込む。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

 

 渦から赤い閃光が放たれ、中からスペリオル・ドーラより巨大な列車が現れる。それは4両の列車を横に繋げ、その上に巨大な陸上戦艦が築かれ、その頂点に巨大な主砲がそびえる。あまりの大きさにDホイーラー達と共に走ることは適わず、遠くの街中に鎮座する。

 

「ランク11《超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ》!」

 

 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ 

 地属性 機械族 ランク11 ATK:4000 ORU:3

 アンガー・ナックルリンク先:超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ(下)

 

「バトルだ! ジャガーノート・リーベはORUの数だけモンスターへの攻撃回数を増やせる! ダメージは与えられないが、お前のモンスターを全滅させてやるぞ! サテライト・ウォリアーに攻撃!」

 

 ジャガーノート・リーベは主砲をサテライト・ウォリアーへと向け砲撃する。砲弾はサテライト・ウォリアーに直撃し、爆発して撃墜する。

 

「サテライト・ウォリアー……破壊されたサテライト・ウォリアーの効果発動! 墓地のレベル8以下の”ウォリアー・シンクロン・スターダスト”のSモンスターを3種類まで特殊召喚できる! 《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 遊星の場に再びスターダスト・ドラゴンが舞い上がる。

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「ならそいつも破壊だ!」

 

 二撃目の砲撃が放たれ、スターダスト・ドラゴンを撃ち落として破壊する。

 

「次はジャンク・コネクター!」

 

 三撃目がジャンク・コネクターを吹き飛ばす。

 

「リンク召喚したジャンク・コネクターが戦闘、または相手の効果によって破壊され墓地へ送られた場合、EXデッキから”ジャンク”SモンスターをS召喚扱いで特殊召喚する!」

 

 遊星が宣言すると、ジャンク・コネクターがいた場所に光の柱が立ち上がる。

 

「疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れよ《ジャンク・ガードナー》!」

 

 柱の中から現れたのはジャンク・ガードナー。ジャガーノート・リーベの方へと向き、両手の盾を合わせて構える。

 

 ジャンク・ガードナー 地属性 戦士族 レベル6 DEF:2600

 

「へん! まだ攻撃は残ってんだ! ジャンク・ガードナーを――――」

「ジャンク・ガードナーの効果発動! 相手モンスター1体の表示形式を変更する!」

 

 ジャガーノート・リーベが主砲の照準をジャンク・ガードナーに合わせた瞬間、突然主砲を下げ、沈黙する。

 

 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ ATK:4000→DEF:4000

 

「あ!? このやろ……バトル終了だ」

「罠カード《星屑の残光(スターダストフラッシュ)》! 墓地の”スターダスト”1体を特殊召喚する! 甦れ《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 沈黙を破るようにスターダスト・ドラゴンが舞い戻る。

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「くっそー……見てろよ! ジャガーノート・リーベの効果発動! ORUを1つ取り除くことで、攻守を2000アップする!」

 

 ジャガーノート・リーベがORUを1つ取り込むと、主砲の照準を遊星の場へと向ける。

 

 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:4000→6000 ORU:3→2

 

「ORUのデリッククレーンを効果発動の為に取り除いて墓地へ送った場合、相手のカード1枚を破壊する! ジャンク・ガードナーを破壊だ!」

 

 ジャガーノート・リーベの主砲から取り込んだORUが発射され、ジャンク・ガードナーに迫る。

 

「スターダスト・ドラゴンの効果発動! このカードをリリースし、場のカードを破壊する効果を無効にして破壊する! 〈ヴィクティム・サンクチュアリ〉!」

 

 スターダスト・ドラゴンが光の粒子となって消えると、ジャンク・ガードナーの目の前でORUの弾丸が消滅する。

 

「このぉ……カードを2枚伏せてターンエンド! このエンドフェイズ時に墓地へ送られたバトレインの効果発動! デッキから地属性・機械族・レベル10のモンスター1体を手札に加える! 《除雪機関車ハッスル・ラッセル》を手札に!」

 

 アンナ 手札:1→2

 

「ターン終了時、自身の効果でリリースした《スターダスト・ドラゴン》を墓地から特殊召喚する!」

 

 散らばった粒子が集まり、再びスターダスト・ドラゴンの姿へと戻る。

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

アンナ

LP:3000

SPC:4

手札:2

〔EXモンスター〕

 ・機関重連アンガー・ナックル ATK:1500 

  リンク先: 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ (下)

〔メインモンスター〕

 ・超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000 ORU:2

〔魔法・罠〕

 ・セット(ASp)

 ・セット

 

「よし、遊矢――――」

「まかせて! 俺のターン!」

 

 遊星が後ろに下がるよりも先に前に出る遊矢。食い気味にカードをドローする。

 

 遊矢 手札:2→3 SPC:5→6

 アンナ SPC:4→5

 

「(どうした遊矢?)」

「よし、チューナーモンスター《EMオッドアイズ・シンクロン》を召喚!」

 

 遊矢の場に二色の眼を持つシルクハットを被った魔術師ロボットが現れる。

 

 EMオッドアイズ・シンクロン 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:200

 

「まずはジャンク・ガードナーの効果でジャガーノート・リーベを攻撃表示へ変更!」

 

 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000→ATK:6000

 

「レベル6《ジャンク・ガードナー》に、レベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」

 

 オッドアイズ・シンクロンが2つの光輪へと姿を変えると、ジャンク・ガードナーを囲み、6つの光、そして光の柱へと変える。

 

「剛毅の光を放つ勇者の剣! 今ここに閃光と共に目覚めよ!」

 

 柱の中から現れたのは、白い衣装を身に纏った魔導剣士。双剣を振りかざし、勇ましく構える。

 

「シンクロ召喚! レベル8《覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)》!」

 

 覚醒の魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル8 ATK:2500

 

「魔法カード《フォース》! ターン終了時までモンスター1体の攻撃力を半分にし、別のモンスター1体の攻撃力をその数値分アップする! ジャガーノート・リーベの攻撃力半分を覚醒の魔導剣士に加える!」

 

 遊矢が発動させた魔法から光が放たれ、ジャガーノート・リーベへと光が伸びる。

 

「(これで覚醒の魔導剣士の攻撃力が大逆転! ド派手な効果ダメージでフィニッシュだ!)」

「カウンター罠《マジック・ジャマー》! 手札を1枚捨てて魔法の発動を無効にする!」

「え!?」

 

 遊矢の魔法はアンナが発動した罠によって掻き消されてしまう。

 

捨てたカード

除雪機関車ハッスル・ラッセル

 

「(しまった……これじゃ逆転できない……!?)」

「おらどうしたんだよ! まさか魔法1枚無効にされただけで打つ手が無くなっちまったのか?」

「そ、そんなことはない! バトル――――」

「おっとその前に! アンガー・ナックルの効果発動! 手札・場のモンスター1体を墓地へ送り、自分の墓地の機械族・レベル10モンスター1体を効果無効・守備表示で特殊召喚する! アンガー・ナックル自身を墓地へ送り、さっき墓地へ送った《除雪機関車ハッスル・ラッセル》を特殊召喚!」

 

 アンガー・ナックルが消滅すると、入れ替わりでピンクの車体の除雪機関車が現れる。

 

 除雪機関車ハッスル・ラッセル 地属性 機械族 レベル10 DEF:3000

 

「守備力3000!? 覚醒の魔導剣士じゃ太刀打ちできない!?」

「へっ、いいとこねぇなぁ! どうせもう打つ手ねぇんだろ? ターンエンドしちまえよ」

「くっ……ターンエンド」

 

遊矢

LP:3300

手札:1

SPC:6

〔EXモンスター〕

 ・覚醒の魔導剣士 ATK:2500

〔メインモンスター〕

 ・スターダスト・ドラゴン DEF:2000

〔魔法・罠〕

 ・LS:星読みの魔術師 スケール1

 ・シンクロ・チェイス

 ・セット(ASp)

 ・RS:時読みの魔術師 スケール8

 

「(逆転どころか何もできなかった! 早く何とかしないと……)」

『遊矢!』

 

 俯く遊矢の前にユーゴが姿を現す。納得がいかず、責めるような表情で遊矢に詰め寄った。

 

『何で”クリスタルウィング”を出さなかったんだ!?』

「え?」

『クリスタルウィングだって十分フィニッシャーになりえたはずだろ! 少なくともこんな最悪な結果にはならなかったはずだ!』

「あ……」

 

 オッドアイズ・シンクロンとジャンク・ガードナーの組み合わせでS召喚できた《クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン》ならば、フォースで強化された戦闘ダメージだけでもLPを削り切れた上、相手のモンスター効果を無効にできた。フォースを無効にされても最低限の仕事をこなすことができたのである。遊矢が覚醒の魔導剣士を召喚したのは単にアンナの火力への対抗心からであり、その必要性は殆ど無いと言ってよかった。

 

「(そうだ……クリスタルウィング……見落としてた……俺、アンナへの対抗心で全然見えてなかった……)」

 

 

 * * *

 

 

だからお前は”独り善がり”だというのだ!!!

 

 

 * * *

 

 

「(――――”ジャック”……)」

 

 もう何度言われたか分からない、S次元で出会った強敵からの厳しい言葉が甦る。興奮するユーゴを抑えるように、ユートも姿を現した。

 

『落ち着け遊矢。お前の戦術が間違っていたわけじゃない。ちゃんと勝ち筋は見えていたんだからな。だがこれはタッグ決闘だ。決着が着かない可能性がある以上、パートナーへの負担は減らしてやるように考えるべきだった。だからこその”クリスタルウィング”なんだ』

「うん……ありがとうユーゴ、ユート。俺、見えてなかったよ」

『よし、切り替えろ。相手がくるぞ!』

 

「私のターン!」

 

 エマ 手札:3→4 SPC:5→6

 遊矢 SPC:6→7

 

「やっと流れがこっちに来たわね! 遠慮なく乗るわよ! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地の《オルターガイスト・へクスティア》を特殊召喚!」

 

 エマの場に再びへクスティアが現れる。

 

 オルターガイスト・へクスティア 炎属性 魔法使い族 LINK-2(下・右) ATK:1500

 

「《オルターガイスト・ピクシール》を通常召喚!」

 

 続けてエマの場に妖精を模した機械の人形が現れる。

 

 オルターガイスト・ピクシール 風属性 魔法使い族 レベル1 ATK:100

 

「開きなさい! 未知なる異世界へ繋がるサーキットよ!」

 

 エマが宣言すると、エマのDホイールの下に巨大なアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”オルターガイスト2体以上”! LINK-2《オルターガイスト・へクスティア》と《オルターガイスト・ピクシール》、そして手札の《オルターガイスト・プークエリ》はオルターガイストをリンク召喚する際、手札から素材にできるわ! この3体をリンクマーカーにセット!」

 

 エマの場のへクスティアが2体に分裂し、ほかのオルターガイスト2体と共に光の風となって”左・左下・右下・右”に位置するリンクマーカーへと飛び込む。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚!」

 

 アローヘッドのゲートから現れたのは、悪魔の様な翼と大鎌を持ったオルターガイストの女神。大鎌を振り回し、その鋭い切っ先を遊矢へ向ける。

 

「殺戮の女神よ、悪夢の淵より顕現せよ! LINK-4《オルターガイスト・メモリーガント》!」

 

 オルターガイスト・メモリーガント

 闇属性 魔法使い族 LINK-4(左・左下・右下・右) ATK:2800

 

「ハッスル・ラッセルを攻撃表示に変更!」

 

 除雪機関車ハッスル・ラッセル DEF:3000→ATK:2500

 

「バトル! ジャガーノート・リーベのORUは2つ、よってモンスターへ3回攻撃ができるわ! 覚醒の魔導剣士へ攻撃!」

「SPCが4つ以上存在し、その中から2つ取り除くことで《ASp-回避》を発動! 攻撃を無効にする!」

 

 遊矢 SPC:7→5

 

 ジャガーノート・リーベが覚醒の魔導剣士に向かって砲撃するが、魔導剣士はこれを躱す。

 

「ならもう一度!」

 

 ジャガーノート・リーベが再び砲撃へと移ろうとした瞬間、遊矢は身を乗り出してASpを手にする。

 

「《ASp-クイックガード》! SPCを1つ取り除き、モンスター1体を守備表示に変更する! ジャガーノート・リーベを守備表示に!」

 

 遊矢 SPC:5→4

 超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ ATK:6000→DEF:6000

 

「ならメモリーガントでスターダスト・ドラゴンを攻撃! 【エターナル・ナイトメア】!」

 

 メモリーガントが大鎌を振り下ろし、スターダストを切り裂く。

 

「メモリーガントの効果発動! モンスターを戦闘破壊した時、相手モンスター1体を破壊する!」

 

 メモリーガントは素早く覚醒の魔導剣士との間合いを詰め、大鎌で切り裂いて破壊する。

 

「スターダスト!? 覚醒の魔導剣士!?」

「この効果で破壊した場合、メモリーガントはもう一度だけ続けて攻撃できるわ! ダイレクトアタック!」

 

 2体のSモンスターを仕留めたメモリーガントが遊矢へと迫る。

 

「遊星さんが伏せた《ASp-魔回避》を発動! SPCを4つ取り除き、《魔回避トークン》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 遊矢の場に悪魔のトークンが現れ、メモリーガントの注意を引く。

 

 遊矢 SPC:4→0

 魔回避トークン 闇属性 悪魔族 レベル1 ATK:0

 

「魔回避トークンは攻撃対象となった時、その攻撃を1度だけ無効にする!」

 

 メモリーガントはトークンを仕留めようと大鎌を振り回すが、トークンはそれをのらりくらりと躱す。

 

「ならハッスル・ラッセル! 踏みつぶしちゃいなさい!」

 

 ハッスル・ラッセルが隙を突いて突撃し、魔回避トークンを轢きつぶす。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 遊矢 LP:3300→800

 

「(仕留め切れなかったのは痛いかも……遊星はどう来るかしらね?) カードを伏せてターンエンド!」

 

エマ

LP:3000

SPC:6

手札:0

〔EXモンスター〕

 ・オルターガイスト・メモリーガント ATK:2800 

〔メインモンスター〕

 ・超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ DEF:6000 ORU:2

 ・除雪機関車ハッスル・ラッセル ATK:2500

〔魔法・罠〕

 ・セット(ASp)

 ・セット

 

 エマがターンを終えると、遊矢は遊星の元まで下がる。

 

「遊星さん……すいません」

「遊矢、今のお前は自分勝手すぎる」

 

 項垂れる頭に浴びせられるきつい一言。遊星の言葉で、再び脳裏にジャックの姿が浮かぶ。

 

「ッ……すいませんでした。勝手にモンスターも使っちゃって……」

「そうじゃない」

「え?」

 

 顔を上げて遊星を見ると、その眼には怒りも呆れも宿ってはいなかった。遊星の透き通った青い瞳が、遊矢を真っすぐ、そして力強く射抜いていた。

 

「お前は置いて行ってしまっている。お前自身を」

「俺自身を……?」

「最初……ごろつき共に追われていた時、お前はあの状況で楽しそうに決闘をしていたな」

「見てたんですか?」

「遠目でな。そしてこの決闘の序盤でも、お前は楽しそうだった。それがお前の本来の決闘だな?」

 

 その通りである。”皆を笑顔に”――――それが遊矢の目指すエンタメ決闘であったはずだ。

 

「(俺は遊星さんやアンナの決闘を見て焦った……置いていかれるんじゃないかと思ったんだ。プロ決闘者としての俺のエンタメが通じるかどうか……どこか不安だったのかもしれない)」

「遊矢、昔、俺の友がこんなことを言っていた」

 

 

 * * *

 

決闘とは、モンスターだけでは勝てない。罠だけでも、魔法だけでも勝てはしない。全てが一体となってこそ意味をなす。そして、その勝利を築きあげる為に最も大切な物は……ここにある。

 

 * * *

 

 

 言い終わると、遊星は右拳で自身の胸を叩く。

 

「そいつはそれが何なのかは言わなかった。だが俺には解る」

「それは……?」

「全てのカードを信じる、”決闘者の魂”だ!」

 

 そう言って遊星はアクセルを回し、前へ出る。

 

「遊矢! モンスターがあっても、魔法・罠があっても、”お前自身”がいなければカードは応えてくれない!」

「俺自身……」

 

 

 

 * * *

 

借り物の言葉で語るな! 俺と話したければ、お前自身の言葉で、決闘で語れ!

 

その言葉で叫んでみろ! お前自身の決闘を!

 

 * * *

 

 

 

「何があろうと、臆するな遊矢! 自分自身に、決闘に! 今から俺が友の言葉を証明して見せる! それで思い出せ遊矢! お前の決闘を! 俺のターン!」

 

 遊星 手札:0→1 SPC:0→1

 エマ SPC:6→7

 

「魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! その後2枚ドローする!」

 

戻したカード

サテライト・ウォリアー

ジャンク・ガードナー

ジャンク・コネクター

サテライト・シンクロン

ドリル・シンクロン

 

 遊星 手札:0→2

 

「相手の場のみモンスターが存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる! チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》を特殊召喚! そして《チューニング・サポーター》を召喚!」

 

 遊星の場に目玉のような機械とチューニング・サポーターが現れる。

 

 アンノウン・シンクロン 闇属性 機械族 レベル1 ATK:0

 チューニング・サポーター 光属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「レベル1《チューニング・サポーター》に、レベル1《アンノウン・シンクロン》をチューニング!」

 

 アンノウン・シンクロンが自身を光輪へと変えると、チューニング・サポーターを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う! 光さす道となれ! シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 光の柱の中からフォーミュラ・シンクロンが現れ、遊星のDホイールの前を走る。

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 

「フォーミュラ・シンクロン、チューニング・サポーターの効果により1枚ずつドロー!」

 

 遊星 手札:0→1→2

 

「魔法カード《星屑のきらめき》! 自分の墓地のドラゴン族Sモンスター1体のレベルと同じ数値のレベル合計になるように墓地からモンスターを除外することで、そのドラゴン族Sモンスターを特殊召喚する! 墓地からレベル4の《ジャスティス・ブリンガー》、レベル2の《クリア・エフェクター》、レベル1の《アンノウン・シンクロン》、《チューニング・サポーター》、合計レベル8になるように除外し、レベル8の《スターダスト・ドラゴン》を特殊召喚する!」

 

 遊星の場に星屑が集まり、形を成してスターダスト・ドラゴンとなる。

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「確かにそのドラゴンは厄介だけど、この布陣を突破するのは無理じゃないかしら?」

「突破して見せる! 俺は限界を超える!」

 

 遊星はフォーミュラ・シンクロンを先頭に、スターダスト・ドラゴンを後方に置き、決闘場の先頭へと躍り出る。

 

「(前へ出た? ASpかしら?)」

「……クリア・マインドッ!!! レベル8Sモンスター《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2Sチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 フォーミュラ・シンクロンが二つの光輪となってスターダスト・ドラゴンを囲むと、スターダスト・ドラゴン、そして遊星が眩い光の風に包まれる。

 

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く! 光差す道となれ!」

 

 加速する遊星とスターダスト・ドラゴン。それに比例して光はどんどん強くなり、もはや彼らの姿が見えている者はいない。

 

「アクセルシンクロォォォォォーーーー!!!」

 

 遊星が手に持ったカードを掲げた瞬間、遊星と遊星号、そしてスターダスト・ドラゴンの姿が光と共に消える。

 

「消えた!? え? 何処!?」

 

 正面を走っていたはずの遊星が消えた――――エマは慌てて振り返ると、そこには同じ様に遊星を見失って慌てるアンナと遊矢の姿が見える。そして3人よりも遥か後方より、遊星が見知らぬSモンスターと共に姿を現す。

 

「生来せよ! 《シューティング・スター・ドラゴン》!!!」

 

 その青白く輝く、スターダスト・ドラゴンの面影を残したドラゴンは両手足をコンパクトに畳むとジェット機の様に飛び上がり、曇天を吹き飛ばしながら空を行く。これこそが遊星が辿り着いた進化の境地”クリア・マインド”。その境地に辿り着いた者だけが使いこなせるアクセルシンクロモンスター”シューティング・スター・ドラゴン”である。

 

 シューティング・スター・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3300

 

「何これ……色々嘘でしょ?」

「装備魔法《月鏡の盾》をシューティング・スター・ドラゴンに装備! 装備モンスターの攻守はダメージ計算時のみ、相手モンスターの攻守の高い方の数値に100足した数値となる!」

 

 遊星が発動した装備魔法の光を受けてパワーアップするシューティング・スター・ドラゴン。上空から下降し、遊星の側まで戻ってくる。

 

「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! デッキトップを5枚めくり、その中のチューナーの数だけ、このターン攻撃できる!」

「……大層なドラゴンが出てきたと思ったら、随分運任せな効果ね。チューナーなんて数入るカードじゃないし、期待は薄いんじゃない?」

「確かに確立は低い。だがシューティング・スターは、俺のデッキは必ず応えてくれる! まず1枚目!」

 

 遊星は勢いよくデッキトップを引き抜き、めくる。

 

「チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》! 2枚目――――」

 

 2枚目を引き抜き、エマに向かって掲げる。

 

「チューナーモンスター《ドリル・シンクロン》! 3枚目――――」

 

 3枚目を引き抜き、迷いなくめくる。

 

「チューナーモンスター《サテライト・シンクロン》! 4枚目――――」

「3枚連続チューナー!? どうなってんの!? これだけでも相当な確率――――」

 

 エマは決闘盤で確認するが、不正は無い。遊星は本当にチューナーを連続でめくり当てている。

 

「チューナーモンスター《エフェクト・ヴェーラー》! これが最後――――」

 

 遊星は最後のカードに指を掛け、引き抜く。そしてこの場の全員に見えるようにカードを高く掲げた。

 

「5枚目! チューナーモンスター《デブリ・ドラゴン》! チューナーの数は5体! よって5回連続攻撃を行う! 〈スターダスト・ミラージュ〉!」

 

 遊星が宣言すると、シューティング・スター・ドラゴンが5体に分裂し、それぞれ5色の光を纏って空を飛ぶ。

 

「バトル! シューティング・スター・ドラゴンでジャガーノート・リーベを攻撃!」

 

 シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→6100

 

 分身の1体が遥か遠くに鎮座するジャガーノート・リーベに向かって流れ星の如く飛来し、激突して爆散させる。

 

「ハッスル・ラッセルを攻撃!」

 

 シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→3100

 

 続いて2体目の分身がハッスル・ラッセルを真横からなぎ倒し、破壊する。

 

「うう……!」

 

 エマ LP:3000→2400

 

「メモリーガントを攻撃!」

 

 シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→2900

 

「メモリーガントは1ターンに1度、墓地のモンスター1体を除外することで破壊を無効にできる!」

 

除外したカード

オルターガイスト・フィフィネラグ

 

 3体目の分身がメモリーガントに突撃するが、メモリーガントは紙一重でこれを躱す。

 

 エマ LP:2400→2300

 

「ならばもう一度メモリーガントを攻撃!」

 

 間髪入れずに4体目の分身がメモリーガントへと突撃し、破壊する。

 

「くうう!? 誰が想像できたのよこの状況を!」

 

 エマ LP:2300→2200

 

「トドメだ! ダイレクトアタック!」

「永続罠《オルターガイスト・エミュレルフ》! このカードは発動後モンスターとなり、場に特殊召喚される! 守備表示で特殊召喚!」

 

 エマの場に金色に輝く人型のオルターガイストが現れ、エマを庇ってシューティング・スター・ドラゴンに破壊される。

 

 オルターガイスト・エミュレルフ 光属性 魔法使い族 レベル4 DEF:1800

 

「(ありがとう、シューティング・スター、俺のデッキ。きっと、遊矢にも伝わったはずだ) ターンエンド!」

 

遊星

LP:800

手札:0

SPC:1

〔EXモンスター〕

 ・シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300

〔魔法・罠〕

 ・LS:星読みの魔術師 スケール1

 ・シンクロ・チェイス

 ・月鏡の盾(装備:シューティング・スター・ドラゴン)

 ・RS:時読みの魔術師 スケール8

 

「(私の不幸は、この不動 遊星を迎撃する立ち位置に立ったことかしらね。とにかく、チャンスは凌ぎ切った今しかない!) アンナちゃん頼んだわよ!」

「今度こそやっつけてやる! 俺のターン!」

 

 アンナ 手札:1→2 SPC:7→8

 遊星 SPC:1→2

 

「《深夜急行列車ナイト・エクスプレス・ナイト》をリリース無しで召喚! そして魔法カード《アドバンスドロー》! 自分の場のレベル8以上のモンスター1体をリリースし、2枚ドロー!」

 

 現れたナイト・エクスプレス・ナイトが消滅すると、アンナはデッキから2枚ドローする。

 

 アンナ 手札:0→2

 

「よし来た! 魔法カード《グローリアス・ナンバーズ》! 俺の墓地のNo.1体を特殊召喚する! 《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》を特殊召喚!」

 

 アンナの場に再びスペリオル・ドーラが現れる。

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ 地属性 機械族 ランク10 ATK:3200

 

「さらにデッキから1枚ドロー! ここで墓地のこいつを除外して更なる効果発動だぜ! 手札1枚をNo.のORUにする!」

 

 アンナの手札1枚がORUへと変わり、スペリオル・ドーラの周りを漂う。

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:0→1

 

「ここで墓地のアンガー・ナックルの効果発動! 手札・場のカード1枚を墓地へ送り、特殊召喚する! 場の《ASp-フレイム・チェーン》を墓地へ送り、特殊召喚!」

 

 アンナの場に再びアンガー・ナックルが現れる。

 

 機関重連アンガー・ナックル 地属性 機械族 LINK-2(下・右) ATK:1500

 

「スペリオル・ドーラの効果発動! ORUを1つ取り除き、モンスター1体を選択、選択されたモンスターはターン終了時まで自身以外のカード効果を受けない! 対象はシューティング・スター・ドラゴンだ!」

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:1→0

 

 スペリオル・ドーラはORUを一つ取り込むと、主砲からシューティング・スター・ドラゴンに向かって弾丸を発射。弾丸はシューティング・スター・ドラゴンの目の前で弾け、何かの粒子を散布する。

 

「へっへーん! 何でそっちのモンスターに耐性を付けたか解るか?」

「……”月鏡の盾”を無力化するためか」

 

 他のカードの効果を受けないということは、装備カードの強化も受けられないということ。常に相手の上を取ることが出来る月鏡の盾はスペリオル・ドーラによって無力化されてしまったのである。

 

「力一辺倒かと思えば、こんな裏技を持っているなんてな」

「俺様に掛かればこんなもんだ! そして!」

 

 アンナはコース上のASpを手に取る。

 

「よしよし! 《ASp-立体交差》! SPCを7つ取り除くことで、このターンに戦闘を行うモンスターの攻撃力をバトルフェイズ終了時まで入れ替える! これでスペリオル・ドーラの方が攻撃力が上になる! バトルだ!」

 

 アンナ SPC:8→1

 

「スペリオル・ドーラでシューティング・スター・ドラゴンに攻撃!」

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ATK:3200→3300

 シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→3200

 

「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! 相手の攻撃宣言時、このカードを除外してその攻撃を無効にする!」

 

 スペリオル・ドーラが放った砲撃がシューティング・スター・ドラゴンへと飛ぶが、シューティング・スター・ドラゴンは自身の姿を消してそれを躱す。

 

「だがこれでがら空きだぜ! トドメだアンガー・ナックル!」

 

 アンガー・ナックルが大きなアームで遊星に殴り掛かる。遊星は慌てずそれに対峙し、いつの間にか拾っていたASpを発動させる。

 

「《ASp-奇跡の選択》! SPCを全て取り除くことで、戦闘ダメージを半分にする!」

 

 遊星 SCP:2→0

 

 アンガー・ナックルのアームが遊星号を小突き、大きく揺さぶる。

 

「ぐうう!?」

 

 遊星 LP:800→50

 

「くっそーあとちょっとだったのに! イライラするぜ! 魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》! このカードをモンスターエクシーズのORUにするぜ!」

 

 No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:0→1

 

「これでスペリオル・ドーラはもう1度あの効果が使える! No.はNo.でしか戦闘破壊できないから、この効果が合わされば無敵だぜ!」

「何だと!?」

「(あらら、アンナちゃんいらないことを……)」

 

 アンナの言葉を聞き逃さなかった遊星。No.から感じ取った異常性のこともあり、遊星は改めてNo.へと目を向ける。

 

「(やはりただのカードではないのか?)」

「俺はこれでターンエンドだ!」

「このエンド時、除外した《シューティング・スター・ドラゴン》を場に特殊召喚する!」

 

 姿を消していたシューティング・スター・ドラゴンが再び現れ、場に舞い戻る。

 

 シューティング・スター・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル10 ATK:3300

 

アンナ

LP:2200

SPC:1

手札:0

〔メインモンスター〕

 ・No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ ORU:1 ATK:3300→3200 

 ・機関重連アンガー・ナックル ATK:1500

 

「遊矢」

 

 遊星は後方へと下がり、遊矢の側に着く。

 

「行けるか?」

「はい! もう大丈夫です! 俺の決闘を見せます!」

「よし、頼んだぞ!」

 

 遊矢は迷いの無い態度で頷き、前へと出る。

 

「(凄い決闘だった……俺もやるんだ! 俺の言葉で! 俺の決闘で!) 俺のターン!」

 

 遊矢 手札:0→1 SPC:0→1

 アンナ SPC:1→2

 

「魔法カード《ペンデュラム・ホルト》! 自分のEXデッキに表側表示のPモンスターが3体以上存在する場合、2枚ドローする!」

 

EXデッキに存在する表側Pモンスター

EM小判竜

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

EMオッドアイズ・シンクロン

 

 遊矢 手札:0→2

 

「(カード達、俺のエンタメに、俺の”魂”に応えてくれ!) セッティング済みのスケールでP召喚を行う! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 二人の魔術師の間を振り子が何度も往復すると、遊矢の場の上空に異空間の穴が開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター!」

 

 遊矢の号令と共に、異空間の穴から1つの光が飛び出す。

 

「EXデッキからレベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》!」

 

 EMオッドアイズ・シンクロン 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:200

 

「魔法カード《エンタメ・バンド・ハリケーン》! 自分の場の”EM”モンスターの数だけ相手の場のカードを手札に戻す! 俺の場のEMは1体! スペリオル・ドーラをEXデッキに!」

「させねぇ! スペリオル・ドーラの効果発動! ORUを1つ取り除き、スペリオル・ドーラ自身に効果耐性を付けるぞ!」

 

 遊矢の場から賑やかな竜巻が発生し、スペリオル・ドーラに迫る。しかし、スペリオル・ドーラはORUを一つ取り込むと、自身の真上に弾丸を放ち、炸裂させて粒子を周りに散布する。粒子に触れた竜巻は消滅してしまい、スペリオル・ドーラへと届くことは無かった。

 

「無駄無駄! そんな魔法じゃスペリオル・ドーラは倒せないぜ!」

「解ってるさ! 魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《覚醒の魔導剣士》を特殊召喚!」

 

 続けて遊矢の場に覚醒の魔導剣士が再び現れる。

 

 覚醒の魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル8 ATK:2500

 

「(無駄にして堪るもんか……S次元での決闘は、今でもこの胸の中で生きている! エンタメ決闘者”榊 遊矢”! もう一度このモンスターで魂に刻む! 俺の決闘を!) レベル8《覚醒の魔導剣士》に、レベル2《EMオッドアイズ・シンクロン》をチューニング!」

 

 オッドアイズ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変えると、覚醒の魔導剣士を囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

「平穏なる時の彼方から、あまねく世界に光を放ち、蘇れ!」

 

 光の柱から飛び出したのは、清浄なる静かな気を纏った魔導剣士。一振りの大剣を手に取り、後光を背に静かに佇む。これこそがS次元で悩み抜き、闘い抜いてきた榊 遊矢が出した答え――――

 

「シンクロ召喚! 現れろレベル10《涅槃の超魔導剣士(ニルヴァーナ・ハイ・パラディン)》!」

 

 涅槃の超魔導剣士 闇属性 魔法使い族 レベル10 ATK:3300

 

「涅槃の超魔導剣士の効果発動! P召喚したPモンスターをチューナーとしてS召喚に成功した場合、自分の墓地のカード1枚を手札に加える! 俺が加えるのは《月鏡の盾》!」

 

 遊矢 手札:0→1

 

「(これで揃った! 後は実行あるのみ!)」

 

 遊矢はDホイール上で立ち上がり、両腕を広げる。

 

「レディースエーンジェントルメーン!」

「またかよ!? 今度は何するつもりだ!」

 

 先程おちょくられたアンナは遊矢のエンタメに噛みつくが、遊矢は気にせずにエンタメを続ける。

 

「パワーとパワーのぶつかり合い! テクニックとテクニックの応酬! 凄まじき決闘者達が集まるこのタッグ決闘も、いよいよフィナーレを迎えます! 私、榊 遊矢。パートナーは涅槃の超魔導剣士! そして私のタッグパートナーにしてスペシャルゲスト! ミスター遊星!」

 

 遊矢に手を向けられると、遊星は呆気にとられた表情の後、少しだけ笑う。

 

「パートナーは儚くも美しく輝く流星の如きドラゴン”シューティング・スター・ドラゴン”! この四人で送るパフォーマンスにて、閉幕と行きましょう!」

「さっきから何言ってやがる! さっさと決闘を進めやがれ!」

「慌てないでミスアンナ! それでは参ります! 装備魔法《月鏡の盾》をシューティング・スター・ドラゴンに装備! そして効果を発動します!」

 

 シューティング・スター・ドラゴンが遊星の頭上から遊矢の元へと移動する。

 

「デッキトップを5枚めくり、その中のチューナーの数だけこのターン攻撃を行うことができます!」

「お前のデッキ、そんなにチューナー入ってんのか?」

「んーオッドアイズ・シンクロン含めて3枚程でしょうか?」

「ぶっ!? そ、それで本当にやる気かよ!? 下手したら攻撃出来ないんだぜ!?」

「心配ご無用! 何故なら……私の”決闘者の魂”がめくれと囁いているからです!」

「はぁ!? 何だこいつ……敵ながら大丈夫かよ?」

「大丈夫! きっとカードは応えてくれる! さあ1枚目!」

 

 遊矢は迷いなくデッキトップを引き抜く。

 

「1枚目はチューナーモンスター《貴竜の魔術師》! これで攻撃出来ない結果は免れました!」

「ひ、引きやがった!? だけどあと1枚だろ! めくれるか!」

「2枚目!」

 

めくったカード

EMディスカバー・ヒッポ

 

「ああっと! 外してしまいました! でも引いたのはディスカバー・ヒッポ、探し物の達人です! これは次に期待ができるかも! 3枚目!」

 

めくったカード

カバー・カーニバル

 

「ああっとこれも外れ! でも引いたのはヒッポとは切っても切れないカバー・カーニバル! ある意味運命を感じます! では4枚目!」

 

めくったカード

EMトランプ・ウィッチ

 

「ああ~トランプ・ウィッチ! これはチューナーではなく融合召喚に関係するカードです! 惜しくもなんともない!」

「ほら見ろ! そうそう当たるか!」

「では最後の1枚です。5枚目――――」

 

 焦る様子もなく、穏やかな表情でデッキトップに指を掛け引き抜く遊矢。ゆっくりとカードを反転させる。

 

「最後の1枚、めくったのは……チューナーモンスター《調律の魔術師》!」

「めくりやがった!? 最後の最後で!?」

「よってシューティング・スター・ドラゴンはこのターン、2回攻撃が可能となります!」

「だったら何だってんだ! お前らのモンスターじゃスペリオル・ドーラは倒せねぇ!」

「”倒せるか倒せないか”ではありません! ”辿り着ける”かどうかです! バトル! 涅槃の超魔導剣士でアンガー・ナックルを攻撃!」

 

 涅槃の超魔導剣士は大剣を手に取り、飛び上がる。

 

「そっち狙いか! だが甘いぜ! バトルフェイズの前にアンガー・ナックルの効果発動! 自身を墓地へ送り、墓地から守備力3000の《深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト》を守備表示で特殊召喚!」

 

 アンガー・ナックルが消滅すると、入れ替わりでナイト・エクスプレス・ナイトが現れ、涅槃の超魔導剣士の行く手を遮る。

 

  深夜急行騎士ナイト・エクスプレス・ナイト 地属性 機械族 レベル10 DEF:3000

 

「どうだ! これでダメージは通らないぜ!」

「ですがその手で止められるのは覚醒の魔導剣士までです! 涅槃の超魔導剣士を止めることはできません! バトル! ナイト・エクスプレス・ナイトを攻撃! 【トゥルース・スカーヴァティ】!」

 

 涅槃の超魔導剣士は大剣を掲げ、格納されていた刃を展開させる。そして全魔力を剣に集中させると、魔力で巨大化した大剣を振り下ろし、ナイト・エクスプレス・ナイトを一撃で消し飛ばす。

 

「涅槃の超魔導剣士の効果発動! 戦闘で相手モンスターを破壊した時、相手のLPを半分にする!」

 

 大剣の一撃はナイト・エクスプレス・ナイトを消し飛ばすだけでは足りず、余波がアンナへと襲い掛かった。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 アンナ LP:2200→1100

 

 アンナのフライングランチャーが空中で回転しながら吹き飛び、アンナも危うく落ちそうになるが持ち直し、平常飛行へと戻る。

 

「あ、あぶねぇ……これが狙いだったのかよ。だが月鏡の盾を装備したシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力はスペリオル・ドーラより100高い数値。それっぽっちのダメージじゃ俺は倒れないぜ!」

「いやいやミスアンナ、嘘はダメですよ」

「あ?」

「私はちゃんと決闘盤で確認しているのです。スペリオル・ドーラの守備力を」

「スペリオル・ドーラの……守備力?」

「そう、月鏡の盾で得る能力値は相手の攻撃力か守備力、どちらか”高い方”の数値プラス100です。スペリオル・ドーラの守備力は攻撃力よりも高い4000。よってシューティング・スター・ドラゴンの攻撃力は――――」

 

 シューティング・スター・ドラゴン ATK:3300→4100

 

「あ、あ~~~~!!?」

「さあフィニッシュと行きましょう――――お?」

 

 遊矢が攻撃に移ろうとした瞬間、遊矢の隣に遊星がDホイールを並べる。

 

「遊星さん!」

「俺はスペシャルゲストなんだろう? 混ぜてくれよ。俺も少し遊びたくなった!」

 

 サムズアップと共に光る笑顔。不動 遊星、本日一番の笑顔を浮かべてエンタメ決闘への参加を希望する。

 

「はははッ! もちろん! それじゃ一緒に―――――」

「ああ!」

 

「「 スターダスト・ミラージュ!!! 」」

 

 本来、2回攻撃の場合は2体に分裂するのが普通である。しかし、エンタメ決闘に感化されたシューティング・スター・ドラゴンは何と7体に分裂し、虹の7色となって大空を行く。7色は曇空を吹き飛ばしながら縦横無尽に飛び回り、晴天を創り出す。雲一つない青空を一つとなった虹色の流星が飛び、その流星は二つに分かれてスペリオル・ドーラへと直撃。大爆発を巻き起こし、爆煙が場を包む。

 

「あ、ああ……すげぇ……」

 

 アンナ LP:1100→200→0

 

 やがて爆煙は急激に巻き上げられ、それを吹き飛ばして中からシューティング・スター・ドラゴンが現れる。何時の間にか、その背には涅槃の超魔導剣士が乗っていた。

 アンナは停止したフライングランチャーの上で呆然とドラゴン達を見上げ、エマも停止したDホイールから降りてヴィクトリー・ロードを走る遊矢達を見つめていた。

 

「……ふう、完敗。お見事決闘者」

 

 

 * * *

 

 

 決闘が終了し、RSVが消滅する。

 遊矢と遊星はDホイールを止め、降りてヘルメットを脱いだ。

 

「はぁ! ……勝った」

「素晴らしい決闘だったな、遊矢」

「遊星さん!」

 

 ヘルメットを脱いでゴーグルを上げる遊矢に、ヘルメットを脇に抱えた遊星が歩み寄る。

 

「お前の決闘、確かに見せてもらった。ああいう決闘もあるんだな」

「遊星さん、遊星さんのおかげで、大事なことを忘れずに済みました。楽しい決闘をありがとう!」

 

 遊矢が差し出した手を、遊星は固く握り返す。ここにまた一つ、決闘によって生まれた”絆”が結ばれた。

 

「俺、プロ決闘者になってからずっと不安だったんです。今までとは違うステージ。そこで俺は胸を張ってエンタメ出来る決闘者なのか、って……今回の遊星さんやアンナ達の高いレベルの決闘を見たら、もっとしっかりしなきゃ、って思いこんじゃって。焦っちゃって……でも、そうじゃなかったんだ」

 

 遊矢は遊星の手を放し、握っていた掌を見つめる。

 

「昔、とある決闘者のチャンピオンが俺に言ったんです――――」

 

 

 * * *

 

デュエルで証明してみろ! これこそ、榊遊矢が信じるデュエルであると! 何かを成し遂げたいと、思っているのなら、怯むな!

 

 * * *

 

 

「――――怯まないこと。どんなステージだろうと、自分の信じる決闘を伝えていくしかない。この言葉が、遊星さんが言った言葉と繋がって、俺の中でしっくり来たんです」

 

 遊矢は掌を握り締め、遊星を見返す。

 

「俺は何度も迷ってきた。今回だってそう。だけど、何度だって思い出すことができる! 今回の決闘が、それを教えてくれました!」

「ああ、そうだ。それでいい遊矢」

 

 遊星は決闘中と同じように拳を自分の胸に当てる。

 

「迷っても、ここまで繋いできた絆が導いてくれる。絆は決して断ち切れはしない。俺の友も言っていた――――」

 

 

 * * *

 

俺は孤独じゃない。興味も無かったが、気がつけば五月蠅い連中の只中にいる!

 

どんなに否定しようと、絆と言う物から逃れることは出来無いらしい!

 

人はそう簡単に孤独にはなれんのだ!

 

 * * *

 

 

「――――だから、これからも大事にしていってくれ。自分の信じる決闘を。それを形作ってくれた周りとの絆を……」

「……ふふっ!」

「遊矢?」

「いや、遊星さんの友達のこと聞いてると、何だか他人の様な気がしなくって。不思議ですね」

「ふふ……案外、知り合いなのかもしれないな」

「まさか。ハハハ!」

 

 そんな会話をしていると、後方から1台のDホイールがやってくる。先程まで決闘をしていた別所エマであった。

 

「お二人さん、お疲れ様。いい決闘だったわ」

「エマさん! アンナは?」

「拗ねてどっか行っちゃったわ。まあお役目も終わった事だし、好きにさせてあげるわよ」

「別所エマ、約束通りこの世界の情報を教えてくれ」

「勿論、その為に追ってきたんですもの。私から伝えられる情報……それは貴方たちの”人数”よ」

 

 エマから伝えられた言葉を上手く呑み込めずに目をパチクリさせる遊矢。もっと具体的な脱出方法を期待していただけに呆然としてしまう。大体”人数”とは何なのだ。

 

「人数とは、もしや俺達以外にもここへ連れてこられた決闘者がいるということか?」

「あら鋭い。その通り、貴方たちの人数は合計6人。その内の一人がこの世界からの脱出の”鍵”を握っているわ。文字通り”鍵”をね……」

「その決闘者達の名は? 今は何処に?」

「残念だけどそこまでは教えられないわ。でもそうね……まずは脱出云々よりも、先に残りの4人との合流を目指してみたらいいんじゃないかしら? はい、私からの情報はここまで。参考になった?」

「……成程、情報感謝する。とりあえず指針は出来た」

 

 遊星は一人納得したように頷いた。

 自分と遊星以外にも、同じ境遇の決闘者がいる――――とりあえず遊矢が思うことは一つであった。

 

「(残り4人も、エンタメ決闘が好きな人だといいなぁ)」

 

 案外呑気なことを考えていた遊矢。エマは実体のカードを1枚取り出し、遊星に手渡す。

 

「このカードが、きっと貴方達を他のメンバーの下へ導いてくれるわ」

「これは……アンナが持っていたNo.とかいうカードか」

 

 遊星が受け取った瞬間、凄まじい悪寒が遊星の腕から全身へと伝わる。

 

「うっ!?」

 

 一瞬、手放しそうになるが、何故か手放してはならないような気がする。遊星はNo.のカードを力強く掴むと、遊星の”シグナーの痣”が輝いた。

 

「(悪寒が消えた……シグナーの痣が俺を守ってくれたか)」

「ヤな感じしたでしょ? 使うのはお勧めできないわね。それでも皆使うのだろうけど」

「このカードは一体……?」

「多分、他のメンバーが知ってるだろうから会って聞きなさいな。……サービスしすぎちゃったわね。それじゃ退散しますか。二人とも、バーイ!」

 

 そう言ってエマはヘルメットを被り、Dホイールに跨ってその場から走りだす。遊星がNo.のカードを仕舞う頃には既に見えなくなっていた。

 

「……とりあえず遊星さん。何処へ向かいましょうか? 他の4人が何処にいるかも教えてくれなったし……」

「その前に、客のようだ」

「え?」

 

 遊星が後方へ振り向きながら言う。それに合わせて遊矢も振り向くと、そこにはガラの悪いDホイーラーが群れを成して迫って来ているところであった。

 

「どうやらさっきの連中の仲間が報復に来たらしいな。タッグ決闘の音やSVを頼りに場所を特定したのだろう」

「お、俺が派手にやり過ぎたせいで……ごめん遊星さん」

「……昔、俺の友がこんなことを言っていた」

「え?」

 

 

 

 * * *

 

俺に合った仕事が無い以上、仕方あるまい!

 

凡人には俺の価値が分からんのだ!

 

伏せカードが入れ替わってないか確認しただけだ!

 

その件に関してはノーコメントだ!

 

 * * *

 

 

 

「――――時には開き直るのも大事かもしれない」

「ええ!?」

「どの道、このエリアから出ようとすれば闘いは避けられなかっただろう。なら、ここでまとめて倒してしまおう。そう、考えよう」

「(ていうか、遊星さんの友達は一体何を言ってるんだ……?)」

「それに……お前となら切り抜けられないことじゃない。そうだろう?」

「!? ……はい!」

 

 遊星と遊矢は再びヘルメットを被り、Dホイールに跨って決闘者の群れへと走りだす。

 苦難の道が続こうとも、絆と信念があれば乗り越えて行ける――――まだ見ぬ仲間を想像しながら、遊星と遊矢は再び闘いへと身を投じるのであった。

 

 

 

 




次回予告

無事に廃墟を突破した俺と遊矢。
辿り着いたのは遺跡が立ち並ぶ深い森の中。
そこで俺達は思いがけない”出会いと再会”を果たす。

「やっぱりいると思ったぜ! 遊星!」

次回、遊戯王~クロスオーバーディメンションズ~
「出会いと再会 ~十代と遊星~」

ライディング・デュエル、アクセラレーション!

今日の最強カード
超弩級砲塔列車ジャガーノート・リーベ

実用的ロマン。ジャガーノート・リーベです。
今回は全員が環境入り経験のあるガチデッキということでハイレベルな決闘が期待されていたのですが……残念ながら作者が動かしたことがあるデッキがジャンドと列車のみという体たらくであり、特にオルターガイストなんか全然解らん状態な上まったく使いこなすことができなかったので特に残念なことになっていました。御免エマさん……

今回の相手は二人とも女子。ゼアルの超ド級ボディ……もとい、超弩級火力ヒロイン”神月アンナ”。デッキは勿論【列車】。そしてヴレインズ影のヒロインことエマおば……もとい、”別所エマ/ゴーストガール”、使用デッキは勿論【オルターガイスト】。
華やかで楽しかったけど、ちょっとキャラづくり自信なかったな~。特にエマさんってあれでよかったっけ? ちょっとおばさん臭かった?

次回は団体行動組2チームの合流です。よろしかったら見てやってください。


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出会いと再会 ~十代と遊星~

やはり1話が長すぎると感じたので、今後は導入パートと決闘パートで分けたいと思います。確認もしやすくなりますしね。

なので今回はお話だけで決闘はありません。


「うわ……突然森の中に」

「どうやらこの世界はエリア毎に空間が違うらしい。俺も大海原に伸びる道を通ってきたが、突然世界が廃墟の街へと変わった」

 

 荒くれ者達を退け、廃墟のエリアから脱出した遊星と遊矢。辿り着いたのは古い遺跡が点々とする森の中。幸い整備された道があり、Dホイールでも進むことが出来る。

 遺跡はボロボロで、どれも地下へと続く洞窟の様な入口が見える。

 

「一体何の遺跡何だろう――――うわ!?」

 

 遊矢が遺跡を眺めながらDホイールを走らせていると、突然遊矢のDホイールが煙を上げ、音を立てながら急停止してしまう。

 

「どうした!?」

「でぃ、Dホイールから煙が……」

 

 遊星は遊星号を遊矢の側で停止させ、降りて遊矢のDホイールの状態を確認する。

 

「……大分無理をさせていたようだな」

「ごろつきから逃げるため、ずっと走らせてたから……」

「診てみよう。やれるだけのことはやってみる」

 

 遊星は遊矢と共に開けた場所まで移動し、Dホイールを停めた。

 遊星号に積んであった非常時用の工具を取り出し、遊矢のDホイールの修理に取り掛かる。

 

「遊矢、せっかくだからここで休憩していこう。俺はここでDホイールを直す。お前は何か食糧になるものを探してきてくれ。幸いここは森の中だ。何かしらはあるだろう」

「うん、任せてよ!」

「何かあった時はその決闘盤で連絡してくれ。俺のはそこまで高性能ではないが、会話くらいはできる」

 

 遊星の決闘盤は初期モデルを改造したスタンディング・ライディング両用のハイブリットタイプ。しかも決闘以外の機能も満載の特別仕様だ。何故か通話システムも搭載しており、元々携帯端末としての機能を備えている遊矢の決闘盤ともリンクして通話が可能なのだ。

 

「よし、行くぞ!」

 

 遊矢は学生服を肩に掛けた何時ものスタイルに戻り、森の中へ探索に出る。

 

「食べられるもの、食べられるもの……そう言えば、サバイバルの事なんて何も知らないぞ? 大丈夫かな……ん?」

 

 森を当てもなく歩いていると、何やら奥から賑やかな音が聞こえてくる。それは人の叫び声であったり、人ならざる者の声であったり、爆発や打撃音であったり――――そこから導き出される答えは一つ。

 

 

「決闘だ! 誰か決闘してる!」

 

 遊矢は駆け出し、音を頼りに決闘の場へと向かった。

 

 

 

 * * *

 

 

 

「あそこか……」

 

 遊矢は茂みから顔をのぞかせる。丁度、遊矢達が休憩地とした場所の様に開けた場所で4人の男が決闘を行っていた。2対2のタッグ決闘で、赤い服を来た青年と少年のチーム。そしてその相手はチャラチャラしたダンサーと全身青の鎧で身を固めた大男という奇怪なチームであった。

 

「行けネオス! 【ラス・オブ・ネオス】!」

 

 E・HEROネオス ATK:3000

 森の番人グリーン・バブーン DEF:1800

 

 赤い服チームの青年が攻撃指示を出すと、場にいた銀色の戦士が飛び上がり、大男が従えていた大柄の猿人を手刀で叩き切る。

 

「H-ヒートハートの効果により、貫通ダメージだ!」

 

 手刀を受けた猿人は炎に包まれ爆散し、大男とダンサーをまとめて吹き飛ばす。

 

「うわー!? やられたーーーー!!?」

「ぐわぁぁぁ!?」

 

 LP:1200→0

 

 決闘が終了し、SVとARVが消滅する。

 青年は赤い決闘盤を収納し、少年はDゲイザーを外して決闘盤をD・パットへと分離させる。

 二人は倒れて気絶している男達へと近づいた。

 

「ガッチャ! 楽しい決闘だったぜ!」

「それにしてもブレイヴ・マックスとステップ・ジョニー、全然大したことなかったな。名前は強そうなのに」

『やはり、この二人は持っていないか。この辺りに反応があるからもしやと思ったが……無駄骨か』

 

 青年は倒れている相手に決めポーズ。少年は拍子抜けしたように男達の顔を覗き込む。そして少年の側で浮かぶ”青い人型”は何なのか。

 

「(決闘してたってことは、勝った方か負けた方、どっちかが俺達と同じ決闘者ってことだよな? どっちだ?)」

『遊矢』

 

 遊矢が見定めていると、ユーリが隣に現れる。

 

「ユーリか。どうしたの?」

『僕はあっちの赤い大きい方を知ってるよ』

「え!? 本当に? 誰なの?」

「うん、”遊城 十代”だねぇ」

「遊城 十代?」

『融合次元の、アカデミアの一員さ』

 

 ユーリの話によると、十代はアカデミアの一員であり、所属は最低クラスの”レッド”。だが実力はエリート部隊である”オベリスク・フォース”を上回るほどの決闘者であるらしい。

 

『超が付くほどの問題児だったらしくてさ。講義はさぼる。教官の命令は聞かない。しかも虚言吐きだったって言うんだから手に負えないよね』

「虚言吐き?」

『何でも”俺はデュエルモンスターズの精霊が見える、声が聞こえる”なんて言いふらしてたんだってさ。あれかな、”ズァーク”みたいな能力が、彼にもあったのかもね』

「モンスターの声が……」

 

 ”自分”以外にも同じ能力を持った決闘者がいる――――そう思った遊矢は十代に対して親近感を覚えたが、隣のユーリは少しだけ憐れむような視線を十代へと向ける。

 

『だからこそ、プロフェッサーに目を付けられたんだろうね』

「え?」

『僕に指令が来たんだよ。十代を消せって』

「ええ!?」

『だから僕が直接出向いて、カードにしてやったんだよ。いやー楽しかったねぇ。本当にレッドの癖して強くてさ。ちょっと手こずったよ。僕が使ってた《超融合》、彼からの戦利品なんだ』

 

 懐かしそうに語るユーリの横で、遊矢は冷や汗を流しながら十代を見ていた。

 

「(それが本当だとしたら……どうしよう!? めちゃくちゃ会い辛いぞ! ユーリと俺は同じ顔だ。カードにした張本人が出てったら、気まずいなんてもんじゃない! 一触即発もあり得るぞ……)」

 

 狼狽する遊矢を他所に、十代を見ていたユーリは目を細め首を傾げた。

 

『でも……んん?』

「どうしたんだよ……」

『僕が知っている十代よりも随分大人びているように見えるなぁ。背も高い気がするし、人違いだったかな?』

「人違いであってよ……」

 

 ユーリが首を傾げながら消えると、今度は同じ位置にユートが現れる。

 

『遊矢、俺はあっちの奴を知っているぞ』

「え? ユートの知り合いもいるのか」

『ああ、遊馬だ。”九十九 遊馬”。俺がいたハートランド・デュエル・スクール”スペード校”の後輩だ』

 

 ユートによると、遊馬はユートの一つ下の学年であり、決闘が大好きでいつも強い相手を探して学園中を走り回っていたという。だが決闘の腕はからっきしであり、何時も強敵に挑んでは返り討ちにあうのが日常茶飯事であった。

 

『でも、好感の持てる奴だったよ。絶対に諦めないあの姿勢は見習うべきところだ。何時も口癖のように叫んでいた言葉があったが……何だったかな?』

「その……”戦い”の時、彼は?」

『……”融合”が攻めてきた後、彼とは会っていない。安否も届いてはいなかったが……こんなところで会うとはな』

「本当に本人かな?」

『……顔は間違いなく本人だ。あの奇抜な髪型も、服装も着ているのを見たことがある。だが……あの決闘盤は見たことが無い。X次元では俺やお前と同じモデルを使用していた。あと、あの金色のペンダントも見覚えはないな』

「じゃあ……あの隣で浮いてるのは?」

 

 遊矢が少年の隣で浮いている青い人型を指さす。

 

『解らない。RSVじゃないのか?』

「うーん……」

 

 思いがけずに目の前の決闘者達の事を知った遊矢。だが非常に会い辛い相手であることも分かってしまった。彼らが自分と同じようにこの世界へ連れてこられた決闘者であることは間違いなさそうだが、このまま出て行ってもいいものか。

 

「(とりあえず遊星さんに連絡を――――!?)」

「ん?」

「地震だ!?」

 

 突然、この場にいる3人に振動が襲い掛かる。それが地鳴りだと気づいた瞬間、広場の地面が砕け、大穴が現れた。

 

「うわぁ!?」

「遊馬!?」

『遊馬!?』

 

 十代は一歩分外れていて助かったが、穴の範囲内にいた遊馬は地面の破片と倒した決闘者達と共に穴の底へと落下していく。

 

「遊馬――――うわ!?」

 

 届かないと解っていても手を伸ばす十代。その瞬間、十代の前を一人の少年が凄まじいスピードで駆け抜け、穴へと飛び出していた。

 

「つかまって!」

「おわっ!?」

 

 RSV式のローラーシューズを起動させて穴へと飛び込んだ遊矢が遊馬の腰を掴み抱え、穴の斜面を駆けのぼろうと試みる。

 穴は垂直ではなく蟻地獄の様に斜面となっており、漏斗のように中心の細い穴に獲物を落とす構造になっていた。既に粉々の破片と倒した決闘者達は穴の中へと消えている。

 

「く……二人はきついか」

「だ、大丈夫か!? 頑張れ! 上ってこれるか!?」

 

 上から十代が声を掛けるが、遊矢は悔し気に首を振った。

 斜面は急勾配であり、しかも取っ掛かりの無いつるつるな斜面であった。これでは手足で上るのは不可能である。RSVのローラーは面に合わせて性質を変えられるため、どんな斜面でも駆け上ることができるが、二人分の体重を押し上げる馬力がなかった。

 

「”遊城 十代”さんですよねッ?」

「え? 俺のこと知ってんのか?」

「俺は”榊 遊矢”っていいますッ! ユーリじゃありませんッ! 登れないから下に降りますッ!」

「出来るのか!?」

「分かりませんッ! でもやってみます! 俺、側に遺跡がある森道の方から来たんですッ! そこに遊星って人がッ……!」

「遊星!? 遊星もここに来てるのか!?」

 

 その問いに遊矢が応える前に、遊矢の体が穴の方へとずり下がる。

 

「その人にこのことを伝えて……限界ッ! 君、しっかりつかまっててッ!」

「え!? 何を――――おわぁぁぁ!?」

 

 遊矢は急に方向転換すると、螺旋を描くように斜面を駆け下りる。まるで渦潮に飲まれて中心へと沈んでいくように、遊矢は遊馬と共に穴の底へと飛び込む。アストラルもその後を追って穴へと飛び込んだ。

 

「遊馬ーーーー!!! っと、遊矢ーーーー!!! 無事かぁーーーー!!?」

 

 十代が身を乗り出して穴へと叫ぶ。少しすると穴の中からアストラルが姿を現した。

 

『十代、遊馬は無事だ。あの決闘者……遊矢はよくやってくれた』

「本当か!? 遊矢は!?」

『彼も無事だ。……だが、あそこからここへ上るのは不可能だろう』

「出られないのか?」

『いや、幸い先がある。遊馬達はその先に進むことに決めた』

「そっか……よし、俺は遊星と合流する。アストラルは二人を頼む! 必ずまた会おうぜ!」

『その遊星という決闘者を知っているのか?』

「この上無い最強の仲間だぜ! いや、もしかしたら……まあいいや! それじゃあな!」

 

 十代は期待感を隠し切れない様子で飛び出し、森道へと向かう。アストラルはそれを見送った後、穴の中へと戻っていった。

 十代は段差を飛び越え茂みを突っ切り爆走する。

 

「へへ……やっぱりいると思ったぜ! 遊星!」

 

 

* * *

 

 

「……ひとまず、こんなものか」

 

 額の汗を拭い、遊星は一息つく。遊矢のDホイールの応急処置を済ませた遊星は立ち上がって辺りを見渡すが、遊矢の姿は無い。

 

「(まだ戻っていないのか。連絡も無い……何かあったのか?)」

 

 遊星は決闘盤から遊矢の決闘盤へとコールするが繋がらない。この場合は通信の届かない場所にいるか、決闘盤が壊れているかのどちらかである。

 

「(やはり何かあったのか? 捜しに行かなければ――――!?)」

 

 遊星が自身のDホイールへと駆け寄ろうとした瞬間、突風が襲い掛かる。突風が止み遊星が振り返ると、そこにはサングラスと赤いスカーフのマスク、そして紫のコートに覆われた怪しげな青年がRSV搭載型の決闘盤を構えて立っていた。その後ろにはRSVによって実体化した機械のような怪鳥が浮かんでいる。

 

「お前も決闘者か?」

「こんな時に……何者だ!?」

 

 遊星が叫んだ瞬間、青年の後ろに浮かぶ怪鳥が羽ばたき風の刃を遊星に向かって飛ばす。

 

「ううっ!?」

 

 風は遊星の服の一部を切り裂き、その後ろに生えていた木を切り倒す。当たっていたらただでは済まなかっただろう。

 

「(これは……サイコ決闘者の力!? いや違う、この感覚は別の何かか?)」

「聞いているのは俺だ。お前も決闘者か?」

「……その通りだ! 今度はこちらの問いに答えろ! 何者だ!」

 

 遊星の問いに答えるように、青年はマスクとサングラスを外す。

 

「俺の名は”黒咲 隼”。このエリアに侵入してきた決闘者を始末しに来た。先程、赤い服を来た決闘者を見つけ追ってきたが……ここにも決闘者がいたとはな」

「赤い服……白いジャケットの少年ではなく?」

「そんな奴は知らん。俺が追ってきたのは大人の男だ」

「(遊矢ではない……俺達以外の決闘者がここに?)」

「俺と決闘しろ。貴様らを始末し、役目を果たす!」

「断る! 俺は仲間を捜さなくては――――」

 

 遊星の言葉が終わる前に、風の刃が遊星の頬を掠める。

 

「くっ!?」

「お前に拒否権は無い。受けぬのならその気にさせるまでだ!」

 

 黒咲は再び怪鳥に命じ、風の刃を放たせる。今度は遊星に命中するように放たれていた。遊星は焦りを浮かべた表情で決闘盤を構える。

 

「やるしかないのかっ!」

 

 

 * * *

 

 

「あーくそ! 何処だよ遊星!」

 

 一方、十代は知らぬまま黒咲の追跡を振り切り、変わらず森の中を爆走していた。森道という分かりやすい標があったにも関わらず、己の勘のみを頼りに道なき道を行き、髪や服に木の葉をくっつけながら走った結果、完全に遭難してしまっていた。

 

「何かアカデミアでも同じことがあったような……もしかして俺って方向音痴?」

「いえいえ、貴方は辿り着きましたよ?」

 

 突然、十代に向かって掛けられた声。十代は声の方に振り向くと、そこにはシルクハットを被った燕尾服――――”奇術師”のイメージそのままの姿をした男が立っていた。顔は仮面で隠されている。

 十代はその男の事を知っていた。会ったことは無いが、十代の時代では”武藤 遊戯”の足跡を追えば容易く知ることができる。

 

「奇術師”パンドラ”……!」

「おや? 私のことをご存知でしたか。如何にも、”ブラック・マジシャン使い”の奇術師、パンドラとは私のこと」

 

 ブラック・マジシャンのカードを十代に示しながら、男――――パンドラは恭しく礼をする。

 

「知ってるぜ! バトルシティで遊戯さんに倒されたグールズの一員だろ! こんなとこで何してやがんだ!」

「? 何をおっしゃってるかは知りませんが、貴方は無事に辿り着きました。私のショーの舞台にね!」

「何だよ? 決闘か? なら受けて立ってやるぜ!」

 

 十代は決闘盤を構えて展開させるが、パンドラは指を立てて振る。

 

「慌てないでください。せっかくのショーです。私達二人だけでは勿体ない。そこで……」

 

 パンドラが指を鳴らすと、突然地面の下から箱が現れ、パンドラを覆い隠す。更に十代の下からも箱が現れ、同じように覆って閉じ込めてしまった。

 

「うわっ!? 何だ!?」

 

 

 * * *

 

 

 風の刃が迫り、遊星はそれを決闘盤で受け止めようとする。その瞬間、遊星と風の間に大きな箱が現れた。風の刃は箱にぶつかって消え去る。

 

「何!?」

 

 その箱はマジックに使用するような黒く大きな長方形。その箱の扉が開くと、遊星の目の前に赤い服と決闘盤を身に着けた青年が飛び出す。

 

「うわっ!? 何なんだよ一体……!」

「十代さん!?」

「ん? あっ!? やっと見つけたぞ遊星!」

「十代さんもここに連れてこられていたのか!?」

「おうよ! っと、再会を喜ぶのは後な!」

 

 十代は振り返り、黒咲側に立っている男へと向き合う。如何にも奇術師な恰好をした男――――パンドラは決闘盤を腕に装着し、奇術師らしい余裕綽々な笑みを浮かべる。

 

「ちょうど近くに別の決闘者がいたものですから、合流させて頂きました。タッグフォースルールで決闘を行いましょう」

「貴様、勝手なことを! 俺の邪魔をするな!」

 

 勝手に取り仕切るパンドラに黒咲が掴みかかろうとするが、パンドラはそれをスルリと躱す。

 

「勝手ではありませんよ? 我々の使命は彼らと決闘することだけではありません。彼らの力を引き出すこと……シングルは既に試されている今、タッグをするのは当然でしょう?」

「知った事か! 俺は俺のやり方でやる!」

「ええどうぞ、タッグフォースの中で好きなようにするといいでしょう」

「誰が貴様などとタッグを……!」

「自信がありませんか? 私は誰がタッグパートナーでも最高のショーにする自信がありますがねぇ?」

「ちっ……上等だ、やってやる!」

 

 パンドラの挑発に乗り、黒咲は前に出てパンドラの隣に並ぶ。

 

「へっ、向こうやる気だぜ?」

「十代さん、すまないが決闘をしている場合じゃないんだ」

「遊矢のことか?」

「遊矢を知っているんですか!?」

「話は聞いてる。あいつは今、俺の仲間と一緒だ。離れ離れにはなっちまったけど、無事だぜ」

「そうですか……」

「積もる話はあるが、そいつは後だ。俺のパートナー、頼んだぜ!」

「遊矢が無事なら話は別です。この決闘、受けて立つ!」

 

 遊星も決闘盤を展開させ、十代の隣へと立つ。十代が胸の高鳴りを抑えきれないように、遊星も高揚隠し切れていない。自他共に認める、真の決闘者同士のタッグなのだから。

 

「行くぜ遊星!」

「はい!」

「俺の邪魔はするな!」

「フフフ……最高のショーをお見せしましょう!」

 

 

 

「「「「 デュエル!!! 」」」」

 

 

 

 

 



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出会いと再会 ~十代と遊星~ Duel part

長らくお待たせしました!
デュエル編スタートです!

の前に、ほんとはもう少し後の予定だったのですが執筆が遅れたため、この決闘から新ルールを導入します。よろしくお願いします。


 

「――――と、言いたいところですが、一つルール変更があったのを忘れていました」

「何だよ!? これからいよいよ決闘だっていうのに!?」

 

 とぼけた様子のパンドラに、十代がずっこけながら突っ込みを入れる。もう決闘がしたくてしょうがないといった様子の十代に、パンドラは落ち着かせるように指を振った。

 

「まあまあ、貴方たちにとっても悪い話ではないですよ?」

 

 パンドラが十代達に新たなルールを説明する。

 大きなルール変更は”EXデッキから融合・シンクロ・エクシーズモンスターを特殊召喚する場合はEXモンスターゾーンだけではなくメインモンスターゾーンにも置けるようになった”ということ。

 

「お、じゃあ今度からはL召喚に頼らずに自由にヒーローを出せるってことか! そいつはいいな!」

「(何故今更そんなルール変更を? L召喚に慣れていない俺達にとっては利が大きすぎる……今までのルールは”L召喚を俺達に理解させる”ためだけのものだった?)」

 

 遊星は訝しむものの、パンドラは気にせず幾つかの細かいルール変更を伝え、説明を終える。

 

「失礼しました。それでは決闘を始めましょう」

「俺のターンからだ! 《RR(レイド・ラプターズ)-バニシング・レイニアス》を召喚!」

 

 黒咲がパンドラを押しのけて決闘場に立ちモンスターを召喚すると、場に緑の機体を持つ、機械仕掛けの大きなモズが現れる。

 

 RR-バニシング・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:1300

 

「このカードを召喚・特殊召喚に成功したターンのメインフェイズ時に1度だけ、手札からレベル4以下の”RR”1体を特殊召喚できる! 2体目の《RR-バニシング・レイニアス》を特殊召喚! 永続魔法《RR-ネスト》を発動! 俺の場に”RR”が2体以上存在する場合、デッキ・墓地から”RR”1体を手札に加える! デッキから《RR-トリビュート・レイニアス》を手札に加え、2体目の効果で特殊召喚! 反逆の翼よ、開け!」

 

 バニシング・レイニアスが甲高い鳴き声を上げると、2体目のバニシング・レイニアスと、バニシングレイニアスとは違う青い機体のモズが場に現れ、黒咲が指し示す先に現れたアローヘッドへバニシング・レイニアス2体が向かう。

 

 RR-バニシング・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:1300

 RR-トリビュート・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:1800

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”鳥獣族・闇属性2体”! 《RR-バニシング・レイニアス》2体をリンクマーカーにセット!」

 

 2体のRRが光の風となってアローヘッドの”左下・右下”に位置するリンクマーカーへと飛び込み、点灯させる。

 

「サーキット・コンバイン! リンク召喚!」

 

 アローヘッドのゲートが開くと、中から機械仕掛けの大きな梟が飛び出す。

 

「猛禽の賢者よ、叡智携えし眼で真実を見定め、鋭き鉤爪で音無き闇を裂け! 飛来せよLINK-2《RR-ワイズ・ストリクス》!」

 

 RR-ワイズ・ストリクス 闇属性 鳥獣族 LINK-2(左下・右下) ATK:1400

 

「ワイズ・ストリクスの効果発動! リンク召喚に成功した場合、デッキから”鳥獣族・闇属性・レベル4”1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚できる! 《RR-ラダー・ストリクス》を特殊召喚!」

 

 ワイズ・ストリクスが鳴き声を上げると、黒咲の場に飛行船の様な姿をした機械の梟が現れる。

 

 RR-ラダー・ストリクス 闇属性 鳥獣族 レベル4 DEF:1600

 

「特殊召喚したトリビュート・レイニアスの効果発動! デッキから”RR”カード1枚を墓地へ送る! 《RR-ミミクリー・レイニアス》を墓地へ送り、効果発動! 墓地へ送られたミミクリー・レイニアスを除外し、デッキからミミクリー・レイニアス以外の”RR”カード1枚を手札に加える! 《RR-ファジー・レイニアス》を手札に加え、特殊召喚!」

 

 今度は紫の機体を持つモズが現れ、ラダー・ストリクスの横に並ぶ。

 

 RR-ファジー・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:500

 

「このカードはファジー・レイニアス以外の”RR”が自分の場に存在する場合、手札から特殊召喚できる!」

 

「おいおい、何体出す気なんだ? ワクワクしてくるじゃねぇか!」

「同じレベルのモンスターが複数体……恐らくは――――」

 

 十代と遊星が身構える中、黒咲は動き出す。

 

「レベル4の《RR-ラダー・ストリクス》と《RR-ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!」

 

 黒咲の場にいる飛行船型の梟と紫のモズが紫の光となって飛び上がる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 2つの光が黒咲の場に現れた光の渦の中へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実をあばき、鋭き鉤爪で栄光をもぎ取れ! エクシーズ召喚! 飛来せよランク4! 《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 閃光の中から飛び出したのはワイズ・ストリクスとは違う大きな青い機体を持つ梟。ワイズ・ストリクスの斜め後ろに並び、鋭い眼光を十代達に向ける。

 

 RR-フォース・ストリクス 闇属性 鳥獣族 ランク4 DEF:2000 ORU:2

 ワイズ・ストリクスリンク先:左下

 

「フォース・ストリクスの効果発動! ORUを1つ取り除き、デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4を1体手札に加える! 《RR-シンギング・レイニアス》を手札に!」

 

 フォース・ストリクスがORUを1つ体に取り込むと同時に、黒咲がデッキからカードを1枚取り出す。

 

 RR-フォース・ストリクス ORU:2→1

 黒咲 手札:2→3

 

「墓地に送られたファジー・レイニアスの効果発動! デッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に!」

 

 黒咲 手札:3→4

 

「自分の場にXモンスターが存在する場合、手札から《RR-シンギング・レイニアス》を特殊召喚できる!」

 

 黒咲の場に黄色く丸い機体を持つモズが現れる。

 

 RR-シンギング・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:100

 

「レベル4の《RR-トリビュート・レイニアス》と《RR-シンギング・レイニアス》でオーバーレイ!」

 

 黒咲の場にいる2体のモズが紫の光となって飛び上がる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 2つの光が黒咲の場に現れた光の渦の中へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「エクシーズ召喚! 飛来せよランク4! 2体目の《RR-フォース・ストリクス》!」

 

 閃光の中から飛び出したのはまたもやフォース・ストリクス。最初の1体とは逆側の位置に並び、同じように十代達を睨みつける。

 

 RR-フォース・ストリクス 闇属性 鳥獣族 ランク4 DEF:2000 ORU:2

 ワイズ・ストリクスリンク先:右下

 

「2体目の効果を発動! ORUを取り除き、デッキから《RR-ブースター・ストリクス》を手札に!」

 

 RR-フォース・ストリクス ORU:2→1

 黒咲 手札:3→4

 

「ワイズ・ストリクスの効果発動! 1ターンに1度、”RR”Xモンスターの効果が発動した場合、デッキから”RUM”1枚を自分の場にセットする! デッキから《RUM-ラプターズ・フォース》をセット!」

 

 ワイズ・ストリクスが再び鳴き声を上げると、それに合わせて黒咲がデッキからカード1枚を取り出し、場にセットする。

 

「フォース・ストリクスは自分の場の、自分以外の鳥獣族の数だけ攻守を500ポイントアップする!」

 

 RR-フォース・ストリクス×2 DEF:2000→3000

 

「魔法カード《エクシーズ・ギフト》! 自分の場にXモンスターが2体以上存在する場合、ORUを2つ取り除くことで2枚ドローする!」

 

 黒咲 手札:3→5

 RR-フォース・ストリクス×2 ORU:1→0

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

黒咲

LP:8000

手札:3

〔EXモンスター〕

・RR-ワイズ・ストリクス ATK:1300

〔メインモンスター〕

・RR-フォース・ストリクス DEF:3000 ORU:0

・RR-フォース・ストリクス DEF:3000 ORU:0

〔魔法・罠〕

・RR-ネスト

・セット

・セット

・セット

 

「すげぇなあいつ。本気の本気だぜ?」

「十代さん、俺が行きます」

「おう行ってこい! 頼んだぜ」

「俺のターン!」

 

 遊星 手札:5→6

 

「手札からモンスター1体を墓地へ送り、チューナーモンスター《クイック・シンクロン》を特殊召喚! 更に、チューナーモンスターが自身の場に存在することにより、墓地へ送った《ボルト・ヘッジホッグ》を特殊召喚!」

 

 遊星の場にカウボーイ・ガンマンの様な姿をしたロボットと、ボルト・ヘッジホッグが現れる。

 

 クイック・シンクロン 風属性 機械族 レベル5 ATK:700

 ボルト・ヘッジホッグ 地属性 機械族 レベル2 ATK:800

 

「自分の墓地からモンスターを特殊召喚した時、手札の《ドッペル・ウォリアー》を特殊召喚できる!」

 

 続けて遊星の場に銃を持った黒づくめの兵士が現れる。

 

 ドッペル・ウォリアー 闇属性 戦士族 レベル2 ATK:800

 

「光差す(サーキット)、開け!」

 

 遊星が空中を指さすと、そこにアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”チューナーを含む戦士族・機械族効果モンスター2体”! チューナーの機械族《クイック・シンクロン》と、機械族《ボルト・ヘッジホッグ》をリンクマーカーにセット!」

 

 2体のモンスターが光の風となって飛び上がり、”左下・右下”に位置するリンクマーカーに飛び込む。

 

「集いし未来が、鋼の軌跡に絆を繋ぐ! 光差す道から出でよ!」

 

 アローヘッドのゲートが開き、中から全身鋼のアーマーで覆われ、太腿にロケットブースターを付けた戦士が現れる。

 

「サーキットコンバイン! リンク召喚! LINK-2《ジャンク・コネクター》!」

 

 ジャンク・コネクター 闇属性 戦士族 LINK-2(左下・右下) ATK:1700

 

「お、遊星もリンクモンスターを手に入れてたんだな! いいぞ!」

「バトル! ジャンク・コネクターでワイズ・ストリクスを攻撃!」

 

 ジャンク・コネクターはブースターを点火し、ワイズ・ストリクスへと突進する。

 効果によって強固な壁となっているフォース・ストリクスを突破するのは難しいが、低い攻撃力を晒して無防備になっているワイズ・ストリクスを狙えば簡単に布陣を崩せる――――それに気づかない黒咲ではなかった。

 

「手札から《RR-ブースター・ストリクス》を除外して効果発動! 攻撃モンスターを破壊する!」

 

 黒咲の場にブースターを装備した機械の梟が現れると、ジャンク・コネクターを迎え撃ち、激突して互いに爆散する。

 

「甘く見るな。これほどまでに見え透いた隙を俺が放置しているとでも思ったか?」

「甘く見てなどいない。初手の動きを見ればお前が強敵だということは解る」

「何?」

「読めていた、ここまではやってくると! ジャンク・コネクターの効果発動! リンク召喚したジャンク・コネクターが戦闘、または相手の効果によって破壊され墓地へ送られた場合、EXデッキから”ジャンク”SモンスターをS召喚扱いで特殊召喚する!」

 

 遊星が宣言すると、ジャンク・コネクターがいた場所に光の柱が立ち上がる。

 

「集いし覚悟が、新たな力を解き放つ! 光差す道となれ!」

 

 光の柱の中から飛び出したのは、強化アーマーを纏ったガラクタの戦士。遊星が愛用するモンスター達の面影を残すその戦士は凄まじいスピードで場を駆けまわり、首に巻いたスカーフをなびかせながら遊星の場で止まる。

 

「シンクロ召喚! 疾走(はし)れ《ジャンク・スピーダー》!」

 

 ジャンク・スピーダー 風属性 戦士族 レベル5 ATK:1800

 

「素材も無しに、しかも相手のターンでS召喚だと……!?」

「ジャンク・スピーダーの効果発動! S召喚に成功した場合、デッキからレベルが違う”シンクロン”チューナーを可能な限り守備表示で特殊召喚する! 来いシンクロン達!」

 

 ジャンク・スピーダーが再び場を駆けまわると、遊星の場に竜巻が発生し、その中から次々とシンクロン達が飛び出してくる。

 

「レベル1《ジェット・シンクロン》!」

 

 ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 DEF:0

 

「レベル2《ニトロ・シンクロン》!」

 

 ニトロ・シンクロン 炎属性 機械族 レベル2 DEF:100

 

「レベル3《ジャンク・シンクロン》!」

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 DEF:500

 

「レベル4《ロード・シンクロン》!」

 

 最後に現れたのは足がローラーとなった金色のロボット。先に現れた3体と共に遊星の場に着地し、防御体勢を取る。

 

 ロード・シンクロン 光属性 機械族 レベル4 DEF:800

 

「行けジャンク・スピーダー! ワイズ・ストリクスを攻撃! このターンにS召喚したジャンク・スピーダーがモンスターと戦闘する攻撃宣言時、攻撃力はターン終了時まで倍になる!」

 

 ジャンク・スピーダー ATK:1800→3600

 

 ジャンク・スピーダーはワイズ・ストリクスよりも高く飛び上がり、急降下して凄まじい飛び蹴りを食らわせる。ワイズ・ストリクスはそのまま地面に叩きつけられ、爆散してしまった。

 

「おのれ……!」

 

 黒咲 LP:8000→5800

 

「バトル終了! レベル5《ジャンク・スピーダー》にレベル2《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 

 ニトロ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変えると、ジャンク・スピーダーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし思いが、ここに新たな力となる! 光差す道となれ! シンクロ召喚!」

 

 光の柱から飛び出したのは、怪物の様な姿をした炎の戦士――――

 

「燃え上がれ《ニトロ・ウォリアー》!」

 

 ニトロ・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル7 ATK:2800

 

「ニトロ・シンクロンを素材にした事により、カードを1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:3→4

 

「よし、《クリア・エフェクター》を通常召喚!」

 

 続けてクリア・エフェクターが巫女らしく舞いを踊りながら場へと降り立つ。

 

 クリア・エフェクター 光属性 魔法使い族 レベル2 ATK:0

 

「レベル2《ドッペル・ウォリアー》と、レベル2《クリア・エフェクター》に、レベル4《ロード・シンクロン》をチューニング!」

 

 ロード・シンクロンが自身を4つの光輪へと変えると、2体のモンスターを囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし希望が、新たな地平へ誘う! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から現れたのは、金色の鎧に身を包んだ誇り高き”王道”の戦士――――

 

「シンクロ召喚! 駆け抜けろ《ロード・ウォリアー》!」

 

 ロード・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

「S召喚の素材となった2体の効果発動! クリア・エフェクターの効果により、1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:3→4

 

「そしてドッペル・ウォリアーの効果により、場に《ドッペル・トークン》2体を特殊召喚!」

 

 遊星の場に、ドッペル・ウォリアーの半分ほどの大きさにデフォルメされた兵士が2体現れる。

 

 ドッペル・トークン×2 闇属性 戦士族 レベル1 ATK:400

 

「レベル1《ドッペル・トークン》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変え、ドッペル・トークンを囲み、1つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たな速度の地平へ誘う! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から現れたのは、五体を備えたレーシングカーのロボット――――

 

「シンクロ召喚! 希望の力、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 

「フォーミュラ・シンクロンのS召喚に成功した時、1枚ドローする!」

 

 遊星 手札:4→5

 

「魔法カード《武闘円舞(バトルワルツ)》! 自分の場のSモンスター1体と同じ種族・属性・レベル・攻守を持つ《ワルツトークン》1体を特殊召喚する! 対象は《フォーミュラ・シンクロン》だ!」

 

 遊星の場にフォーミュラ・シンクロンの白いシルエットが現れる。

 

 ワルツトークン 光属性 機械族 レベル2 ATK:200

 

「レベル2《ワルツトークン》に、レベル2《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 フォーミュラ・シンクロンが自身を2つの光輪へと変え、ワルツトークンを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし心が、更なる響きを轟かす! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から飛び出したのは、機械仕掛けの巨大な腕。それは巨大なガントレットであり、遊星のモンスター達の強力な武器でもある。

 

「シンクロ召喚! 《アームズ・エイド》!」

 

 アームズ・エイド 光属性 機械族 レベル4 ATK:1800

 

「すげぇ! 連続S召喚だ! 遊星も負けてねぇぞ!」

『でも、既にバトルフェイズを終えているからねぇ。ただ強力なモンスターを並べるだけじゃ芸が無いよ』

 

 冷めた目線のユベルに対し、十代は自信ありげに振り向いてウインクをして見せる。

 

「心配すんな、一度でも一緒に決闘すれば解る。遊星はここからだぜ?」

「行くぞ! レベル4《アームズ・エイド》と、レベル1《ドッペル・トークン》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変え、2体のモンスターを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし闘志が、怒号の魔神を呼び覚ます! 光差す道となれ! シンクロ召喚! 粉砕せよ《ジャンク・デストロイヤー》!」

 

 光の柱の中から現れたのはジャンク・デストロイヤー。兵器の鳥獣達に対し、怒声を上げて構える。 

 

 ジャンク・デストロイヤー 地属性 戦士族 レベル8 ATK:2600

 

「ジャンク・デストロイヤーの効果発動! S召喚に成功した時、このカードのS素材としたチューナー以外のモンスターの数まで場のカードを選択して破壊できる! 素材の数は2体、よって《フォース・ストリクス》2体を破壊する! 〈タイダル・エナジー〉!」

 

 遊星が指示すると、ジャンク・デストロイヤーはエネルギー弾を黒咲の場に向かって2発放つ。エネルギー弾は2体の梟に命中し、爆散させる。

 モンスターを全滅させられた黒咲だが、顔色を変えずに遊星を睨みつけている。

 

「(闘志が揺るがない……ここで止まっては駄目だ!) ロード・ウォリアーの効果発動! 1ターンに1度、デッキからレベル2以下の戦士族、または機械族1体を特殊召喚できる! チューナーモンスター《サテライト・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 ロード・ウォリアーが背中のマントの様なパーツを取り外すと、それを砲身の様に構え、先から光線を放つ。その光線の中からサテライト・シンクロンが飛び出し、遊星の場に舞い降りた。

 

 サテライト・シンクロン 闇属性 機械族 レベル2 ATK:700

 

「レベル8シンクロモンスター《ジャンク・デストロイヤー》に、レベル2《サテライト・シンクロン》をチューニング!」

 

 サテライト・シンクロンが自身を2つの光輪へと変え、ジャンク・デストロイヤーを囲み、8つの光、そして光の柱へと変える。

 

宇宙(そら)への使者に鋼の願いが集う時、その願いが無限の世界を照らし出す! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から現れたのは、遊星が有する超弩級Sモンスター――――

 

「シンクロ召喚! 到達せよ《サテライト・ウォリアー》!」

 

 サテライト・ウォリアー 闇属性 戦士族 レベル10 ATK:2500

 

「サテライト・ウォリアーの効果発動! S召喚に成功した場合、自分の墓地のSモンスターの数まで相手の場のカードを破壊する! 俺の墓地にはSモンスターが4体! よってお前の場に残るカード全てを破壊する! 〈サテライト・バスターキャノン〉!」

 

 サテライト・ウォリアーが背中からキャノン砲を取り出すと、太陽光によってエネルギーを充電。充電が完了したサテライト・ウォリアーは黒咲の場へと狙いを定める。

 

「……甘く見るなと言ったはずだ! 速攻魔法《RUM-ラプターズ・フォース》2枚を発動! 自分の場の”RR”Xモンスターが破壊され墓地へ送られたターン、自分の墓地の”RR”Xモンスター1体を特殊召喚し、その”RR”よりランクが一つ高い”RR”へとランクアップさせる!」

「ランクアップ……アンナもやっていたXモンスターの進化か。それも2枚……!」

「まずは1体目の《RR-フォース・ストリクス》を蘇らせ、オーバーレイ!」

 

 黒咲の場にフォース・ストリクスが現れると、紫の光となり、黒咲の場の上空に現れた雷鳴轟く黒雲の渦へと飛び込む。

 

「獰猛なるハヤブサよ! 激戦を切り抜けしその翼翻し、寄せ来る敵を打ち破れ!」

 

 黒雲を吹き飛ばして現れたのは、炎の様に赤い機体を持った大きな隼。怒りを現すかのような高い鳴き声で大気を震わせ、場に舞い降りる。

 

「ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろランク5《RR-ブレイズ・ファルコン》!」

 

  RR-ブレイズ・ファルコン 闇属性 鳥獣族 ランク5 ATK:1000 ORU:1

 

「続けて2体目の《RR-フォース・ストリクス》でオーバーレイ!」

 

 2体目のフォース・ストリクスが場に現れ、光となって黒雲の渦へと飛び込む。

 

「まだ見ぬ勇猛なハヤブサよ! 猛き翼に秘めし未知なる力、今ここに知らしめよ!」

 

 黒雲を吹き飛ばして現れたのは、紫の機体を持つ大きな隼。機体中にエネルギーを迸らせ、鳴き声を上げて場に舞い降りる。

 

「ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろランク5《RR-エトランゼ・ファルコン》!」

 

 RR-エトランゼ・ファルコン 闇属性 鳥獣族 ランク5 ATK:2000 ORU:1

 

 2体の隼が現れた瞬間、サテライト・ウォリアーが砲撃を放ち、黒咲の場の魔法・罠を吹き飛ばす。

 

破壊されたカード

RR-ネスト

RUM-ラプターズ・フォース×2

RUM-ソウル・シェイブ・フォース

 

「合計4枚のカードを破壊したことにより、サテライト・ウォリアーの攻撃力は4000ポイントアップする」

 

 サテライト・ウォリアー ATK:2500→6500

 

「(やはりこの男、手強い。俺が出来る手を全て尽くし、十代さんに渡さなければ) 墓地の《ジェット・シンクロン》の効果発動! 手札を1枚墓地へ送り、特殊召喚する!」

 

墓地へ送ったカード

くず鉄の像

 

「墓地に送られた《くず鉄の像》の効果により、墓地から”ジャンク”1体を守備表示で特殊召喚する! 《ジャンク・デストロイヤー》を特殊召喚!」

 

 遊星の場にジェット・シンクロンとジャンク・デストロイヤーが再び現れ、防御体勢を取る。

 

 ジェット・シンクロン 炎属性 機械族 レベル1 DEF:0

 ジャンク・デストロイヤー 地属性 戦士族 レベル8 DEF:2500

 

「レベル7《ニトロ・ウォリアー》に、レベル1《ジェット・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジェット・シンクロンが自身を光輪へと変え、ニトロ・ウォリアーを囲み、7つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光差す道となれ!」

 

 光の柱から飛び出したのは、星屑が輝く遊星のエースモンスター――――

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ《スターダスト・ドラゴン》!」

 

 スターダスト・ドラゴン 風属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2500

 

「(パワーは落ちるが、スターダストの能力は助けになるはずだ)カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

遊星

LP:8000

手札:1

〔EXモンスター〕

・スターダスト・ドラゴン ATK:2500

〔メインモンスター〕

・ロード・ウォリアー ATK:3000

・サテライト・ウォリアー ATK:6500

・ジャンク・デストロイヤー DEF:2500

〔魔法・罠〕

・セット

・セット

 

 黒咲が後ろに下がり、パンドラにカードを渡す。

 

「俺の邪魔をするな」

「勿論、この奇術師パンドラにお任せを……」

 

 カードを受け取ったパンドラは決闘盤に配置し、決闘場へと立つ。

 

「奇術師パンドラの世紀の大決闘ショーをお見せしましょう! 私のターン!」

 

 パンドラ 手札:5→6

 

「永続魔法《魔法吸収》を発動! そして《魔道化リジョン》を召喚!」

 

 パンドラの場に人形の様にも見える道化師が現れる。

 

 魔道化リジョン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1300

 

「魔法カード《イリュージョン・マジック》を発動! 魔法を発動したこの瞬間、魔法吸収の効果により私はLPを500回復します」

 

 パンドラ LP:5800→6300

 

「自分の場の魔法使い族1体をリリースすることで、自分のデッキ・墓地から《ブラック・マジシャン》を2体まで手札に加えます! 魔道化リジョンをリリースし、デッキから2体を手札に!」

 

 リジョンが消えると同時に、パンドラはデッキからカードを2枚取り出して手札に加える。

 

 パンドラ 手札:3→5

 

「魔道化リジョンが場から墓地へ送られた場合、デッキ・墓地から魔法使い族通常モンスター1体を手札に加えることができます! デッキから3体目の《ブラック・マジシャン》を手札に!」

 

 パンドラ 手札:5→6

 

「魔法カード《魔法石の採掘》! 手札を2枚捨て、墓地の魔法1枚を手札に加えます。《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》を手札に!」

 

 パンドラ LP:6300→6800 手札:5→3→4

 

捨てたカード

ブラック・マジシャン×2

 

「RUMを手札に……またランクアップさせるつもりか?」

「慌てないでください。まだショーは始まったばかりですよ。魔法カード《七星の宝刀》! 手札のレベル7モンスター1体を除外し、2枚ドロー!」

 

除外したカード

ブラック・マジシャン

 

 パンドラ LP:6800→7300 手札:3→2→4

 

「魔法カード《思い出のブランコ》! さらに《黙する死者》! 墓地から《ブラック・マジシャン》2体を特殊召喚!」

 

 パンドラの場に二体のブラック・マジシャンが現れる。だが遊戯が使用していたものとは違い、赤い衣装を纏った浅黒い肌の魔術師であり、邪悪な笑みを浮かべている。

 

 ブラック・マジシャン×2 闇属性 魔法使い族 レベル7 DEF:2000

 パンドラ LP:7300→7800→8300

 

「これこそが私の象徴にして最強の僕! それが2体です!」

「多けりゃいいってもんじゃない。たった1体でも、その力を最大限……いや、それ以上に引き出す決闘者を俺達は知っている」

「フフフフフ……重要なのは力を引き出すことじゃあない。勝利することです。奇術師の勝利こそが最高のエンターテイメントなのです! 勝てない者は全てを失う無様な”敗北者”。あらゆる手段・犠牲を用いて勝利を演出する者こそが勝利者であり、輝かしい”エンターテイナー”なのです!」

「違う! 決闘におけるエンタメとは、カードと決闘者の絆が、決闘者同士の魂のぶつかり合いが生み出すもの! 犠牲の上から敗者を見下す……そんなものを”エンターテイメント”などと、俺は認めない!」

 

 長い時を共に過ごした幼馴染にしてライバル、出会ったばかりの若き少年――――”エンターテイナー”と密接に関わってきた遊星は歪んだエンタメを論ずるパンドラを真っ向から否定する。

 

「貴方に認めてもらわなくても結構ですよ。貴方は思い知ることになる。その女々しい仲良しこよしの思想こそが敗北の原因だということをねぇ! レベル7の《ブラック・マジシャン》2体でオーバーレイ!」

 

 パンドラのブラック・マジシャン2体が紫の光となって飛び上がり、パンドラの場に現れた金色の渦の中に飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 金色の渦から現れたのはニュートラル体である一つの目玉。そこから視神経らしきものが伸びて絡み合い、大きな塊となった瞬間に目玉が増殖して回りを覆い、”11”の数字が刻まれた一つの白い逆円錐を作り上げる。

 

「現れろ! 幻惑の瞳を持つ支配者! 《No.11 ビッグ・アイ》!」

 

 パンドラの場に浮かぶ逆円錐の上部の面に、巨大な瞳がギョロリと開き、遊星達を見下ろす。

 

 No.11 ビッグ・アイ 闇属性 魔法使い族 ランク7 ATK:2600 ORU:2

 

「ナンバーズだと!? お前もそのカードを持っているのか!?」

「くくく……ビッグ・アイの効果発動! ORUを一つ取り除くことで、相手モンスター1体のコントロールを得ます! 《スターダスト・ドラゴン》をこちらへ! 〈テンプテーション・グランス〉!」

 

 No.11 ビッグ・アイ ORU:2→1

 

 ビッグ・アイが自身のORUを一つ体に取り込むと、目から波動を放つ。それを受けたスターダスト・ドラゴンが遊星の場を離れ、パンドラの側へと付く。

 

「スターダスト!? (コントロール奪取の能力!? しかも狙いがスターダストだと?)」

「フフフ……貴方の考えていることが手に取る様に解りますよ。何故破格の攻撃力を誇るサテライト・ウォリアーではなく、スターダスト・ドラゴンを奪うのか?」

「……スターダストを知っているのか?」

 

 今のサテライト・ウォリアーは勿論の事、攻撃力3000を誇るロード・ウォリアーも戦闘破壊するのは厳しい。ならば取る方法といえば、カード効果による除去であろう。それを行うには”スターダスト・ドラゴン”は障壁となる。パンドラはそれを知っていたのだ。

 

「貴方はここへきてから何度決闘したのでしょうねぇ? それなりに情報は入ってきているのですよ。特にエースモンスターに関してはね」

「(……やはり、俺達は決闘を通して力を測られている。ルール緩和も俺達の力を引き出す為か?)」

「さあ、これで思う存分攻められる! ブレイズ・ファルコンの効果発動! ORUを1つ取り除くことで、相手の場の特殊召喚されたモンスター全てを破壊します!」

 

 RR-ブレイズ・ファルコン ORU:1→0

 

 ブレイズ・ファルコンがORUを一つ取り込むと、機体から羽根の形をしたビットユニットを複数射出する。ビットユニットは撹乱するように縦横無尽に飛び回ると、それぞれがビームを放ち、遊星の場のモンスターを次々と撃ち抜いて破壊していく。その中でロード・ウォリアーだけがビームを弾き返していた。

 

「クリア・エフェクターを素材にS召喚されたロード・ウォリアーは効果破壊されない――――うわぁ!?」

「この時、破壊したモンスター1体につき、500のダメージを受けて貰いますよ」

 

 遊星 LP:8000→7000

 

「……サテライト・ウォリアーの効果発動! S召喚されたこのカードが破壊された場合、墓地からレベル8以下の”ウォリアー シンクロン スターダスト”のSモンスターを3体まで選んで特殊召喚する! 《ニトロ・ウォリアー》と《フォーミュラ・シンクロン》を特殊召喚!」

 

 サテライト・ウォリアーの残骸からニトロ・ウォリアーとフォーミュラ・シンクロンが飛び出し、遊星の場で並ぶ。

 

 ニトロ・ウォリアー 炎属性 戦士族 レベル7 ATK:2800

 フォーミュラ・シンクロン 光属性 機械族 レベル2 DEF:1500

 

「あまーい! そんなもので私の攻撃を防げるとでもお思いですか! 寧ろ自身の首を絞めたこととなった! エトランゼ・ファルコンの効果発動! ORUを1つ取り除き、相手の場のモンスター1体を破壊! そしてその元々の攻撃力分のダメージを与えます! 対象は《ニトロ・ウォリアー》!」 

 

 エトランゼ・ファルコンは機体中にエネルギーを迸らせると、紫のエネルギー弾を放つ。それを受けたニトロ・ウォリアーは爆散し、爆風が遊星に襲い掛かる。

 

「うわぁぁぁーーーー!!?」

「遊星!? 黒咲の奴、とんでもねぇ置き土産してきやがったな!」

 

 遊星 LP:7000→4200

 

「まだまだ終わりませんよぉ? 《RUM-ソウル・シェイブ・フォース》! LPを半分払うことで、墓地から”RR”Xモンスターを特殊召喚し、ランクアップさせる! 《RR-フォース・ストリクス》を特殊召喚し、オーバーレイ!」

 

 パンドラ LP:8300→8800→4400

 

 パンドラの場にフォース・ストリクスが現れると、紫の光となって飛び上がる。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!」

 

 光は場に現れた金色の渦の中へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! 現れろランク6!」

 

 閃光の中から現れたのは巨大な棺。ニュートラル体である棺が徐々に開くと、中から金色の長い鬣と血の様に赤い翼、そして左胸に”24”の数字を持った黒い竜が現れる。恐ろしくも美しいその姿はヴァンパイアを思わせ、血よりも赤い眼で遊星を見据える。

 

「《No.24 竜血鬼ドラギュラス》!」

 

  No.24 竜血鬼ドラギュラス 闇属性 幻竜族 ランク6 ATK:2400 ORU:1

 

「2体目のナンバーズだと……!?」

「ドラギュラスの効果発動! ORUを1つ取り除き、EXデッキから特殊召喚されたモンスター1体を裏側守備表示に変更します! 対象はロード・ウォリアー!」

 

 ドラギュラスがORUを1つ取り込むと、赤い眼光をロード・ウォリアーへと向ける。それを見たロード・ウォリアーは膝まづいて姿を消し、その場には守備表示の裏側カードのSVが残った。

 

「ロード・ウォリアー!?」

「ロード・ウォリアーの守備力はたったの1500です。もはや敵ではありません! バトル! エトランゼ・ファルコンでフォーミュラ・シンクロンを攻撃!」

 

 エトランゼ・ファルコンが再びエネルギーを迸らせ、強大なビームを放つ。フォーミュラ・シンクロンは抗うこともできぬまま消し飛ばされてしまった。

 

「ドラギュラスでセットされたロード・ウォリアーを攻撃!」

 

 ドラギュラスが血のように赤いブレスを放つ。姿を現したロード・ウォリアーはそれを防ごうとするが間に合わず、ブレスを受けて破壊される。

 

「さあ、お次は裏切りの僕によるダイレクト・アタックですよ~ヒーヒッヒッヒッヒ! スターダスト・ドラゴンでダイレクト・アタック!」

「罠カード《奇跡の残照》! このターンに戦闘破壊されて自分の墓地へ送られたモンスター1体を復活させる! 甦れ《ロード・ウォリアー》!」

 

 主人を撃ち抜こうとしているスターダスト・ドラゴンの前に光が差すと、その光の中からロード・ウォリアーが現れ立ち塞がる。

 

 ロード・ウォリアー 光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

「チィ……! 攻撃を中止! 残念ながらロード・ウォリアーに適うモンスターはいませんねぇ……ブレイズ・ファルコンを守備表示に変更し、カードを伏せてターンエンド!」

 

パンドラ

LP:4400

手札:0

〔EXモンスター〕

・No.11 ビッグ・アイ ATK:2600 ORU:1

〔メインモンスター〕

・RR-ブレイズ・ファルコン ATK:1000→DEF:2000 ORU:0

・RR-エトランゼ・ファルコン ATK:2000 ORU:0

・スターダスト・ドラゴン ATK:2500

・No.24 竜血鬼ドラギュラス ATK:2400 ORU:0

〔魔法・罠〕

・魔法吸収

・セット

 

 パンドラがターンを終了させると、遊星は後ろに下がり、十代にカードを手渡す。

 

「すまない十代さん……戦況を覆されてしまった」

「なーに言ってんだよ! だから決闘は面白いんだろ? 逆転してやるから心配すんな!」

「(十代さん……あれから2年以上経つが、変わってないな)」

 

 表情を緩めて遊星が前へ出る十代を見送っていると、十代がクルリと遊星へ向き直る。

 

「遊戯さんみたくには行かないけどよ、スターダスト、必ず取り返してきてやるぜ!」

「十代さん……!」

「ま、先輩に任せておけよ! わぁーはっはっは!」

 

 十代は決闘場に立ち、決闘盤を構えてデッキトップへと指を掛ける。

 

「待ちくたびれたぜ! 俺のターン!」

 

 十代 手札:5→6

 

「フフフフフ……」

 

 ドローしたカードを確認している十代を見ながらほくそ笑むパンドラ。情報が出回っているのは遊星だけではないのである。

 

「(十代……お前の情報もしっかりと入っているぞ! エースは《E・HEROネオス》! 生意気にもブラック・マジシャンと同等の力を持つ最上級モンスター! そこから繰り出される融合戦術が厄介ともな!)」

「よし! 《E・HERO エアーマン》を召喚!」

 

 十代の場にプロペラが付いた翼を持つヒーローが現れる。

 

  E・HERO エアーマン 風属性 戦士族 レベル4 ATK:1800

 

「エアーマンの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから”HERO”1体を手札に加える! 《E・HEROネオス》を手札に!」

 

 十代 手札:5→6

 

「(やはりネオス! そんな単純な決闘ではこの私を――――)」

「手札を1枚捨て、速攻魔法《超融合》発動!」

 

 十代 手札:5→4

 パンドラ LP:4400→4900

 

 捨てたカード

 E・HEROネオス

 

「ちょ、超融合!?」

「超融合は自分・相手の場から融合素材を選択して融合できる! 俺は《E・HERO エアーマン》とお前の場にいる風属性《スターダスト・ドラゴン》を融合!」

 

 十代の頭上に大きな混沌の渦が現れると、エアーマンとスターダスト・ドラゴンを引き寄せ吸い込もうとする。

 

「ええい、させませんよ! 速攻魔法――――」

 

 パンドラが魔法カードを発動しようとするが、決闘盤は反応せずに沈黙している。

 

「超融合の発動に対してカードを発動することはできない!」

「何ィ!?」

「融合召喚! 来い、絆のニューヒーロー! 《E・HERO Great TORNADO》!」

 

 混沌の渦の中から現れたのは、乱気流の中心に浮かぶ緑のヒーロー。肩に掛けたマントを靡かせながら、パンドラ達に対して構える。

 

  E・HERO Great TORNADO 風属性 戦士族 レベル8 ATK:2800

 

「(な、何と言う滅茶苦茶なカード!? こ、こんなの、し、し、し、知らねーーーー!???)」

「TORNADOの効果発動! 融合召喚に成功した場合、相手の場のモンスター全ての攻守を半分にする! 〈タウン・バースト〉!」

 

  十代が宣言すると、Great TORNADOが凄まじい強風を起こし、パンドラの場を縦横無尽に引っ掻き回す。町一つは吹き飛ばしてしまうのではと思える強風に晒されたパンドラのモンスター達は飛ばされぬように必死に耐え、風が止んだころにはすっかり弱ってしまっていた。

 

No.11 ビッグ・アイ ATK:2600→1300

RR-ブレイズ・ファルコン DEF:2000→1000

RR-エトランゼ・ファルコン ATK:2000→1000

No.24 竜血鬼ドラギュラス ATK:2400→1200

 

「わ、私のモンスター達が!?」

「どうだ! これが俺と遊星の”絆の力”で生まれたヒーローだ! No.だろうが何だろうが、奪い取れはしないんだよ!」

「十代さん……!」

 

 十代は遊星に向かってサムズアップした後、更にカードを取り出す。

 

「魔法カード《O-オーバーソウル》! 墓地の《E・HEROネオス》を特殊召喚!」

 

 パンドラ LP:4900→5400

 

 十代の場にエースモンスターネオスが現れ、勇ましい掛け声と共に構える。

 

 E・HEROネオス 光属性 戦士族 レベル7 ATK:2500

 

「遊星、カード使わせてもらうぜ! ロード・ウォリアーの効果発動! デッキからレベル2以下の戦士族・機械族を特殊召喚する! 《クロス・ポーター》を特殊召喚!」

 

 ロード・ウォリアーが光の道を創り出すと、その中から赤いアーマーを纏った戦士が現れる。

 

 クロス・ポーター 闇属性 戦士族 レベル2 ATK:400

 

「クロス・ポーターの効果発動! 自分の場のモンスター1体を墓地へ送り、手札から”N”1体を特殊召喚する! 《クロス・ポーター》自身を墓地へ送り、手札から《N・グラン・モール》を特殊召喚!」

 

 クロス・ポーターが消えると、十代の場にグラン・モールが現れる。

 

 N・グラン・モール 地属性 岩石族 レベル3 ATK:900

 

「更にクロス・ポーターが墓地へ送られたことにより、デッキから”N”1体を手札に加える! 《N・ブラック・パンサー》を手札に!」

 

 十代 手札:2→3

 

「永続魔法《魂の共有-コモンソウル》! 場のモンスター1体を選択し、手札の”N”1体を選択したモンスターのコントローラーの場に特殊召喚する! 俺は《E・HERO Great TORNADO》を選択し、俺の場に《N・ブラック・パンサー》を特殊召喚!」

 

 十代の場にブラック・パンサーが現れ、 Great TORNADOの隣に並んでオーラを浴びせる。

 

  N・ブラック・パンサー 闇属性 獣族 レベル3 ATK:1000

 パンドラ LP:5400→5900

 

「コモンソウルの効果により、選択されたTORNADOの攻撃力はブラック・パンサーの攻撃力分アップする!」

 

  E・HERO Great TORNADO ATK:2800→3800

 

「行くぜ! ネオス、グラン・モール、ブラック・パンサーをデッキに戻す!」

 

 ネオスとN達が宇宙の彼方へと飛び立つ。

 

「3つの力が1つとなった時、はるか大宇宙の彼方から、最強の戦士を呼び覚ます! トリプルコンタクト融合!」

 

 宇宙の果てから光が放たれ、その中からアーマーを纏ったブラック・ネオスが現れる。鋭い爪を生やした左手には魔力を漲らせ、右手には二つのドリルが付いたガントレットを装備し、背中には4枚の羽が付いたジェットブースターを背負っている。科学と魔術が一体となって身についたヒーローは場に降り立ち、雄叫びと共に構える。

 

「銀河の渦の中より現れよ! 《E・HERO ネビュラ・ネオス》!」

 

  E・HERO ネビュラ・ネオス 地属性 戦士族 レベル9 ATK:3000

 

「ネビュラ・ネオスの効果発動! EXデッキからの特殊召喚に成功した場合、相手の場のカードの数だけドローする! 相手の場のカードは6枚! よって6枚ドローする!」

 

 十代 手札:1→7

 

「そして場の表側表示カード1枚の効果をターン終了時まで無効にする! 《No.11 ビッグ・アイ》の効果を無効にする! 〈ネビュラスドレイン〉!」

 

 ネビュラ・ネオスが左手の魔力をビッグ・アイに向かって放つ。それを受けたビッグ・アイは力を失い、目を閉じて沈黙する。

 

「な、No.の効果を無効にするだとぉ!?」

「これでそいつはぶっ倒せるぜ! 後は……魔法カード《R-ライトジャスティス》! 自分の場の”E・HERO”の数だけ魔法・罠を破壊する! 俺の場の”E・HERO”は2体! よって《魔法吸収》とお前の伏せカードを破壊する!」

「チィィ! 除去されるくらいなら! 速攻魔法《神秘の中華なべ》! ビッグ・アイをリリースし、その攻撃力分私のLPを回復する! 現在のビッグ・アイの攻撃力は1300! よって1300回復する!」

 

 ビッグ・アイが穴に吸い込まれる直前にビッグ・アイが光の粒子となり、パンドラへと吸収される。その後、十代の魔法から放たれた光がパンドラの魔法2枚を消滅させる。

 

 パンドラ LP:5900→6400→7700

 

「随分回復されたなぁ? ならその分だけ削ってやるぜ! 魔法カード《融合》! 手札の《E・HERO スパークマン》と《E・HERO エッジマン》を融合!」

 

 十代の場にスパークマンとエッジマンが現れると、その後ろに現れた空間の渦の中へと吸い込まれる。

 

「融合召喚! 《E・HERO プラズマヴァイスマン》!」

 

 渦の中から現れたのは、黄金のアーマーを纏った青いヒーロー。体中に電気を迸らせ、巨大なガントレットを装着した両腕を振り上げて雄叫びを上げる。

 

  E・HERO プラズマヴァイスマン 地属性 戦士族 レベル8 ATK:2600

 

「プラズマヴァイスマンの効果発動! 手札を1枚捨てることで、相手の場の攻撃表示モンスター1体を破壊する! 《No.11 竜血鬼ドラギュラス》を破壊!」

 

 十代 手札:3→2

 

 プラズマヴァイスマンは両腕を掲げると、手の中に電気を集中させ、腕を振り下ろしながら電撃をドラギュラスに向かって放つ。電撃を受けたドラギュラスは悲鳴を上げて消滅してしまった。

 

「よし! No.を倒した――――!?」

「フフフ……貴方達は私のNo.の恐ろしさを知らない! ドラギュラスの効果発動!」

 

 ドラギュラスがいた場所に空間の穴が開くと、その中からドラギュラスのニュートラル体である棺桶が現れ、場に鎮座する。

 

「表側表示のこのカードが相手の効果によって場を離れた場合、裏側守備表示で再び特殊召喚されるのですよ!」

「何だって!? 効果で除去できないなら、No.の無い俺達は……」

「その通り! ”No.はNo.でしか倒せない”……本当の意味でそれを体現するドラギュラスこそ、真のNo.なのですよ!」

「……ならよ、その棺桶の中で寝てる間に倒しちまえばいいんじゃないか?」

「出来るならばどうぞ? 今が絶好のチャンスですよ?」

 

 パンドラに挑発された十代は手札に視線を落とす。裏側守備表示のモンスターは効果を発揮できない。なので裏側の内ならば除去が成立するのだ。だが十代の手札ではそれを成せない。攻撃してもその瞬間にドラギュラスはリバースし、No.特有の戦闘破壊耐性が発揮されてしまう。倒すには効果を無効にして戦闘破壊するか、裏側のまま効果除去をするしかない。

 

「(ドラギュラスは無理か。チクショウ! ビッグ・アイじゃなくこっちを無効にすりゃよかったぜ!)」

 

 ネビュラ・ネオスの効果対象を選ぶ際、十代はORUを持っているビッグ・アイを警戒してしまった。ドラギュラスの残された能力に気づいていさえすれば――――なんて後悔をする十代ではない。

 

「まあいいや! フィールド魔法《ネオスペース》発動!」

 

 十代がフィールド魔法を発動すると、辺りの景色が大宇宙の遥か彼方に存在する”ネオスペース”へと変わる。

 

「ネオスペースが存在する限り、《E・HEROネオス》とその融合体の攻撃力が500アップする!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:3000→3500

 

「バトルだ! ネビュラ・ネオスでエトランゼ・ファルコンを攻撃! 《ネビュラ・テンペスト》!」

 

  ネビュラ・ネオスがアーマーからミサイル、ガントレットからドリル、左手から無数の魔力弾を一斉に放ち、エトランゼ・ファルコンを撃墜する。その際に散らばったエトランゼ・ファルコンの残骸がパンドラ目掛けて降り注ぐ。

 

「がぁぁぁ!?」

 

 パンドラ LP:7700→5200

 

「プラズマヴァイスマンでブレイズ・ファルコンを攻撃! 【プラズマ・パルサーション】!」

 

 プラズマヴァイスマンがジャンプしてブレイズ・ファルコンに取りつくと、掌から電撃を放ち墜落させる。墜落地点はパンドラの真横であり、地面に激突して散った機体の部品がパンドラに襲い掛かる。

 

「プラズマヴァイスマンは貫通ダメージを与えるぜ!」

「ぎゃあああ!?」

 

 パンドラ LP:5200→3600

 

「バトル終了だ」

「フフフフフ……ドラギュラスがやられていたら、私達の負けでしたねぇ。危ない危ない」

「カードを伏せてターンエンド! ネオスペースが存在する限り、コンタクト融合体は自身の効果でEXデッキには戻らないぜ」

 

十代

LP:4200

手札:0

〔EXモンスター〕

・E・HERO Great TORNADO ATK:2800

〔メインモンスター〕

・ロード・ウォリアー ATK:3000

・E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:3500

・E・HERO プラズマヴァイスマン ATK:2600

〔魔法・罠〕

・セット

・魂の共有-コモンソウル(対象:E・HERO Great TORNADO)

・セット

〔フィールド〕

・ネオスペース

 

「(危なかったッ……! くそっ! 可能な限り情報を集めたつもりだったが……決闘者共はどれだけ力を隠し持っているというのだっ!)」

 

 内心冷や汗をかきながらパンドラは後方へと下がり、黒咲へカードを手渡す。

 

「フン、俺のカードに散々頼っておきながらこのザマか」

「ッ……!?」

「当然だ。貴様の決闘には鉄の意志も、鋼の強さも感じられない」

「まだショーは終わっていない。貴方こそ、気を付けることだ!」

 

 黒咲はパンドラの言葉に表情を変えず、決闘場へと立つ。

 

「俺のターン!」

 

 黒咲 手札:2→3

 

「へへ、お前も俺達の事知ってたりすんのか?」

「知らん。俺は俺の力を持って貴様らを殲滅する! 魔法カード《終わりの始まり》! 墓地に闇属性が7体以上存在する場合、その内の5体を除外し、3枚ドローする!」

 

除外したカード

RR-ラダー・ストリクス

RR-ファジー・レイニアス

RR-シンギング・レイニアス

RR-フォース・ストリクス

RR-ワイズ・ストリクス

 

 黒咲 手札:2→5

 

「魔法カード《ダーク・バースト》! 墓地から攻撃力1500以下の闇属性1体を手札に加える! 《RR-バニシング・レイニアス》を手札に加え、召喚!」

 

 黒咲の場にバニシング・レイニアスが現れ、増援を求める鳴き声を上げる。

 

  RR-バニシング・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:1300

 

「バニシング・レイニアスの効果発動! 手札から3体目の《RR-バニシング・レイニアス》を特殊召喚! 更にその効果により、手札の《RR-ファジー・レイニアス》を特殊召喚!」

 

 続けて黒咲の場に最後のバニシング・レイニアスとファジー・レイニアスが現れる。

 

 RR-バニシング・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:1300

 RR-ファジー・レイニアス 闇属性 鳥獣族 レベル4 ATK:500

 

「レベル4の《RR-バニシング・レイニアス》2体と《RR-ファジー・レイニアス》でオーバーレイ!」

 

 黒咲の場のRR達が紫の光となって飛び上がり、混沌の渦の中へと飛び込む。

 

「雌伏のハヤブサよ! 逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ! エクシーズ召喚!」

 

 混沌の渦の中から現れたのは、先の2体とは違う新たな隼。紫の機体を揺らし、翼と足を広げて威嚇する。

 

「現れろ! ランク4《RR-ライズ・ファルコン》!」

 

  RR-ライズ・ファルコン 闇属性 鳥獣族 ランク4 ATK:100 ORU:3

 

「来たな新しいXモンスター! 攻撃力が100だからって油断しねぇぞ!」

「ライズ・ファルコンの効果発動! ORUを1つ取り除くことで、相手の特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力をライズ・ファルコンに加える! ネビュラ・ネオスの攻撃力をライズ・ファルコンへ!」

 

 ライズ・ファルコンが鳴き声を上げると、ネビュラ・ネオスから光が放たれ、その光がライズ・ファルコンへと吸収される。

 

  RR-ライズ・ファルコン ATK:100→3600 ORU:3→2

 

「攻撃力が一瞬で俺の場のモンスターを上回っちまった!? すげぇ!」

「墓地へ送られたファジー・レイニアスの効果により、デッキから《RR-ファジー・レイニアス》を手札に!」

 

 黒咲 手札:2→3

 

「魔法カード《闇の誘惑》! カードを2枚ドローし、手札から闇属性1体を除外する!」

 

 黒咲 手札:2→4→3

 

 除外したカード

 RR-ファジー・レイニアス

 

「ライズ・ファルコンは特殊召喚されたモンスター全てに1度ずつ攻撃できる! バトルだ! プラズマ・ヴァイスマンを攻撃! 【ブレイブクローレボリューション】!」

 

 ライズ・ファルコンは炎を纏って飛び上がると、プラズマヴァイスマンに向かって一直線。すれ違いざまに爪の一撃を与え、破壊する。

 

「プラズマヴァイスマン!? うわぁ!?」

 

 十代 LP:4200→3200

 

「Great TORNADOを攻撃!」

 

 プラズマヴァイスマンを葬ったライズ・ファルコンは大きく旋回し、TORNADOへと突撃。TORNADOが巻き起こす乱気流を突き破ってTORNADO本体を切り裂く。

 

「ぐうぅ!? (落ち着け! チャンスを待つんだ!)」

 

 十代 LP:3200→2400

 

「ロード・ウォリアーを攻撃!」

 

 ライズ・ファルコンは迎撃しようとするロード・ウォリアーの懐に飛び込み、そのまま体当たりで弾き飛ばして破壊する。

 

「(まだだ……!)」

 

 十代 LP:2400→1800

 

「ネビュラ・ネオスを攻撃!」

「今だ! 遊星が伏せた罠カード《スキル・サクセサー》! 自分のモンスター1体の攻撃力をターン終了時まで400アップする! 一か八かのカウンター! いけぇ!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:3500→3900

 

 ライズ・ファルコンがネビュラ・ネオスへと突撃。ネビュラ・ネオスはライズ・ファルコンをぎりぎりまで引付け、アッパーの要領で腹に右手のドリルを突き刺す。アッパーの一撃と回転する二つのドリルによって腹を抉られたライズ・ファルコンは悲鳴を上げ、爆散した。

 

「おっしゃー! 決まったぜ!」

「……」

 

 黒咲 LP:3600→3300

 

 バラバラに吹き飛んだライズ・ファルコンを見上げる黒咲。だがその表情には動揺は見えず、闘志を宿した鋭い眼光を十代へと向ける。

 

「……俺は今、絶体絶命の崖っぷちに追い込まれている」

「ん?」

「だが、必ずそこから立ち上がる! そして最後には敵を圧倒し、殲滅する!」

 

 黒咲は手札からカードを取り出し、発動する。

 

「速攻魔法《RUM-デス・ダブル・フォース》! このターンに戦闘破壊され墓地に送られた”RR”Xモンスター1体を特殊召喚し、倍のランクのXモンスターへとランクアップさせる! 《RR-ライズ・ファルコン》を特殊召喚し、オーバーレイ!」

 

 黒咲の場にライズ・ファルコンが復活し、紫の光となって飛び上がり、上空に現れた混沌の渦へと飛び込む。

 

「勇猛果敢なるハヤブサよ! 怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

 

 渦の中から現れたのは、白い機体の隼。機体に備えた複数の砲身を揺らし、甲高い鳴き声を上げる。

 

「飛翔しろ! ランク8《RR-サテライト・キャノン・ファルコン》!」

 

 RR-サテライト・キャノン・ファルコン 

 闇属性 鳥獣族 ランク8 ATK:3000 ORU:1

 

「マジかよ! お前、本当にすげぇな! だけどネビュラ・ネオスの方が攻撃力は上だぜ!」

「サテライト・キャノン・ファルコンの効果発動! ”RR”を素材としてX召喚に成功した場合、相手の場の魔法・罠を全て破壊する!」

「何だって!? なら罠――――」

「この効果に対して相手はカード効果を発動できない!」

「げぇ!? 超融合と同じ効果!? やり返されちまった!?」

 

 サテライト・キャノン・ファルコンが翼を広げ、機体中の砲身を一斉に正面へと向けると、十代の場の魔法・罠へ向かってビームを斉射する。

 

破壊されたカード

魂の共有-コモンソウル

ネオスペース

リビングデッドの呼び声

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:3900→3400

 

「くそ、ネオスペースが……!」

「まだ終わりではない! サテライト・キャノン・ファルコンのもう一つの効果! ORUを1つ取り除き、相手モンスター1体の攻撃力を墓地の”RR”1体につき800ポイント下げる! 行け、サテライト・キャノン・ファルコン!」

 

 RR-サテライト・キャノン・ファルコン ORU:1→0

 

 サテライト・キャノン・ファルコンは再び砲身を動かし、今度はネビュラ・ネオスへと狙いを定める。

 

「狩られし者の達の怒りの数だけ、その炎で焼き尽くせ! イッタイメェー!!! フォース・ストリクス!」

 

  RRの影がサテライト・キャノン・ファルコンに吸収されると、砲撃の斉射がネビュラ・ネオスへ次々と襲い掛かる。

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:3400→2600

 

「ニタイメェー!!! ブレイズ・ファルコン!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:2600→1800

 

「サンタイメェー!!! エトランゼ・ファルコン!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:1800→1000

 

「ヨンタイメェー!!! バニシング・レイニアス!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:1000→200

 

「ゴタイメェー!!! ライズ・ファルコン!」

 

 E・HERO ネビュラ・ネオス ATK:200→0

 

 砲撃が止むと、ネビュラ・ネオスは満身創痍の姿で地に膝を付いていた。アーマーは砕け、ドリルも破損して使い物にならない。もはや魔力を練る力さえも残っていなかった。

 

「ネビュラ・ネオス!? それにしても、なんかどっかで見たぞこれ!?」

「トドメだ! 飛翔せよサテライト・キャノン・ファルコン! ネビュラ・ネオスを攻撃!」

 

 サテライト・キャノン・ファルコンは空に向かって飛び上がると、そのまま彼方を目指して飛び続ける。あの雲を突き抜け、青空さえも追い抜き、広大な宇宙へと飛び出すと、地上を見下ろして制止する。やがて太陽光がサテライト・キャノン・ファルコンを照らすと、それをエネルギーに変換。RRのエンブレムを模した巨大なエネルギーパネルを展開し、地上に向けて砲身を構える。

 

「その身に受けて砕け散れ! 【エターナル・アベンジ】!」

 

 サテライト・キャノン・ファルコンから放たれたのは、全てのビームを収束して放たれた巨大な光線。サテライト・キャノン・ファルコンの道筋を全て貫き、地上にいるネビュラ・ネオスへと向かい――――突き刺さる。

 

「十代さん!!?」

 

 光線が地上へ激突すると、ネビュラ・ネオスと十代が光線の中へと飲まれる。遊星はあまりの眩しさに腕で顔を覆い、身構えて爆風をやり過ごす。

 

「くっ……どうなった?」

 

 遊星が腕を解き、視界を開く。そこには――――

 

「……ふぅー! あっぶねぇ……」

 

 膝を付いたままのネビュラ・ネオスと、決闘場に立つ十代の姿があった。

 

「十代さん!」

「何だと!?」

 

 これには流石の黒咲も動揺を隠せない。完全に決着がついたと確信していたのだ。

 

「墓地の《ネクロ・ガードナー》を除外して効果を発動していたのさ。一度だけ相手の攻撃を無効にできる」

「ネクロ・ガードナーだと……? そんなもの何時墓地へ――――」

 

 

***

 

「プラズマヴァイスマンの効果発動! 手札を1枚捨てることで、相手の場の攻撃表示モンスター1体を破壊する! 《No.11 竜血鬼ドラギュラス》を破壊!」

 

***

 

 

「あの時か……!」

「取っといてよかったよ。さあ耐え抜いてやったぜ! どうするよ?」

「くっ、だがそいつは逃がさん! 魔法カード《サンダー・ボルト》! 相手の場のモンスターを全て破壊する!」

 

 黒咲が発動した魔法により、ネビュラ・ネオスに雷が直撃。弱っていたネビュラ・ネオスでは耐え切れず、消滅してしまう。

 

「ネビュラ・ネオス!?」

「魔法カード《オーバーレイ・リジェネレート》! このカードをサテライト・キャノン・ファルコンのORUとする!」

 

 RR-サテライト・キャノン・ファルコン ORU:0→1

 

「ターンエンド!」

 

黒咲

LP:3300

手札:0

〔EXモンスター〕

・RR-サテライト・キャノン・ファルコン ATK:3000 ORU:1

〔メインモンスター〕

・セット(No.24 竜血鬼ドラギュラス)

〔魔法・罠〕

・無し

 

「(黒咲! 何故ドラギュラスをリバースしなかった!? カード効果を確認していないなどあるはずがない! ドラギュラスを使っていれば今頃……!)」

 

 ドラギュラスはリバースした時、場のカードを墓地へ送る強力な効果を持つ。それを使い、ドラギュラス自身も攻撃に参加していればこのターンで黒咲の勝利であったかもしれないのだ。

 

「(タッグパートナーも、ナンバーズも必要ない! 俺は俺自身の力で奴らを殲滅する!)」

 

 最初から一人で決闘するつもりであった黒咲はパンドラの恨めしそうな視線を無視してターンを終える。それを見届けた十代は後方に下がって遊星にカードを手渡す。

 

「いやー凌いだぜ! 凌いだけど絶体絶命のピンチってやつだ! どうする遊星?」

 

 十代が軽いノリで問いかけると、遊星も軽い笑みを浮かべる。

 

「俺から言えることはただ一つです。十代さん、最後まで決闘を楽しみましょう!」

「それな! よっしゃ行ってこい!」

 

 十代に送り出された遊星はカードを決闘盤に配置し決闘場へと立つ。

 

「最上級ランクのXモンスターに、ナンバーズ……臆したりするものか! 必ず打ち破って見せる! 俺のターン!」

 

 遊星 手札:1→2

 

「魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! 2枚ドロー!」

 

戻したカード

フォーミュラ・シンクロン

サテライト・ウォリアー

ニトロ・ウォリアー

ジャンク・コネクター

ジャンク・シンクロン

 

 遊星 手札:1→3

 

「魔法カード《調律》を発動! デッキから”シンクロン”1体を手札に加え、デッキトップからカード1枚を墓地へ送る! 《ジャンク・シンクロン》を手札に加え、召喚!」

 

 遊星の場にジャンク・シンクロンが現れ、隣に手を翳す。

 

 ジャンク・シンクロン 闇属性 戦士族 レベル3 ATK:1300

 

「ジャンク・シンクロンの効果発動! 召喚に成功した時、墓地のレベル2以下のモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる! 《クリア・エフェクター》を特殊召喚!」

 

 ジャンク・シンクロンが手を翳した先にクリア・エフェクターが現れる。

 

 クリア・エフェクター 光属性 魔法使い族 レベル2 DEF:900

 

「レベル2《クリア・エフェクター》に、レベル3《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

 ジャンク・シンクロンが自身を3つの光輪へと変えると、クリア・エフェクターを囲み、2つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光差す道となれ!」

 

 柱の中から現れたのは、紫色の機械的な体を持ったガラクタの戦士。エースモンスター”スターダスト・ドラゴン”よりも長く、そして常に遊星と共にあり続け、共に戦い支えてきた相棒――――

 

「シンクロ召喚! 切り拓け《ジャンク・ウォリアー》!」

 

 ジャンク・ウォリアー 闇属性 戦士族 レベル5 ATK:2300

 

「素材となったクリア・エフェクターの効果により、1枚ドロー!」

 

 遊星 手札:2→3

 

「魔法カード《二重召喚》! このターン、俺はもう一度通常召喚を行う! チューナーモンスター《ジャンク・アンカー》を召喚!」

 

 遊星の場に廃材で組み上げられたロボットの様な姿をした紅白の戦士が現れる。

 

 ジャンク・アンカー 地属性 戦士族 レベル2 ATK:0

 

「手札を1枚捨て、ジャンク・アンカーの効果発動! 墓地の”ジャンク”1体を特殊召喚し、このカードとでS召喚を行う! 墓地の《ジャンク・スピーダー》を特殊召喚!」

 

 遊星 手札:1→0

 

 捨てたカード

 ADチェンジャー

 

 遊星の場にジャンク・スピーダーが現れると、ジャンク・アンカーと共に飛び上がる。

 

「レベル5《ジャンク・スピーダー》に、レベル2《ジャンク・アンカー》をチューニング!」

 

 ジャンク・アンカーが頭部のバイザー部に”ジャンク・シンクロン”の姿を映し出すと、自身を2つの光輪へと変え、ジャンク・スピーダーを囲み、5つの光、そして光の柱へと変える。

 

「集いし怒りが、忘我の戦士に鬼神を宿す! 光差す道となれ!」

 

 柱の中から現れたのは、自身よりも巨大な戦斧を担いだ鬼のような戦士。その鎧は怒りを表したかのように赤く、顔は正に鬼そのもの。場に降り立つと悪魔の様な翼を広げ、恐ろしい雄叫びを上げる。

 

「シンクロ召喚! 吠えろ《ジャンク・バーサーカー》!」

 

 ジャンク・バーサーカー 風属性 戦士族 レベル7 ATK:2700

 

「ジャンク・バーサーカーの効果発動! 自分の墓地に存在する”ジャンク”を除外することで、相手モンスター1体の攻撃力を除外した”ジャンク”の攻撃力分だけ下げる! 墓地の攻撃力2600の《ジャンク・デストロイヤー》と攻撃力1300の《ジャンク・シンクロン》を除外し、サテライト・キャノン・ファルコンの攻撃力を3900ポイントダウンさせる!」

「何だと!?」

 

 ジャンク・バーサーカーの眼が妖しく光ると、サテライト・キャノン・ファルコンが急に脱力したように項垂れる。

 

 RR-サテライト・キャノン・ファルコン ATK:3000→0

 

「バトル! ジャンク・ウォリアーでサテライト・キャノン・ファルコンを攻撃!」

「ならばサテライト・キャノン・ファルコンの効果発動! ORUを取り除き、3度の砲撃でジャンク・ウォリアーの攻撃力を0にする!」

 

  RR-サテライト・キャノン・ファルコン ORU:1→0

 

 拳を引いて飛び掛かるジャンク・ウォリアーに対して、サテライト・キャノン・ファルコンは3連続のビーム斉射で迎え撃つ。ビームを全て受け止めたジャンク・ウォリアーは流石に勢いが削がれ、空中で制止する。

 

 ジャンク・ウォリアー ATK:2300→0

 

「攻撃力0同士では戦闘ダメージが発生せず、同士討ちも起こらない」

「それはどうかな? 墓地から罠カード《スキル・サクセサー》を除外して効果発動! ジャンク・ウォリアーの攻撃力を800アップする!」

 

 遊星が罠を発動した瞬間、制止していたジャンク・ウォリアーの眼が光り、再びサテライト・キャノン・ファルコンへと飛び掛かる。

 

 ジャンク・ウォリアー ATK:0→800

 

「何!?」

「【スクラップ・フィスト】!」

 

 ジャンク・ウォリアーが大きな右腕を突き出すと、拳からオーラが放たれ、拳の形となったオーラがサテライト・キャノン・ファルコンを殴り飛ばし撃墜する。

 

「ぐうぅ!?」

 

 黒咲 LP:3300→2500

 

「ジャンク・バーサーカーでセット状態のドラギュラスを攻撃!」

 

 ジャンク・バーサーカーが戦斧を振り上げ、乾坤一擲の一撃で棺桶を両断する。中にいたドラギュラスは悲鳴を上げる暇すらなく、真っ二つとなって破壊された。

 

「ドラギュラス!? 馬鹿な!? 戦闘においては無敵のNo.が何故!?」

 

 後方から狼狽えた声を上げるパンドラに向かって、遊星は落ち着けと言うように人差し指を立てる。

 

「これは戦闘破壊じゃない。ジャンク・バーサーカーは守備表示モンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わずに破壊できる。ダメージ計算を行わないから裏のまま破壊できるわけだ。よってこの破壊でドラギュラスが復活することはない。他にどんな能力を持っていたかは知らないが、お前のNo.は完全に封じさせてもらった」

「ぐ、ぐぎぎ……!?」

「バトル終了! 墓地の《ADチェンジャー》を除外して効果発動! 場のモンスター1体の表示形式を変更する! ジャンク・ウォリアーを守備表示に変更!」

 

 ジャンク・ウォリアー ATK:800→DEF:1300

 

「ターンエンド!」

 

遊星

LP:1800

手札:0

〔EXモンスター〕

・ジャンク・ウォリアー DEF:1300

〔メインモンスター〕

・ジャンク・バーサーカー ATK:2700

〔魔法・罠〕

・無し

 

 遊星がターンを終了させると、黒咲は後方へと下がってパンドラにカードを手渡す。

 

「フン! つまらないプライドなどに拘るからこの様な状況に陥るのです!」

「俺は負けん。何度だって覆せる。 ……お前はどうかな」

「なッ……こ、このッ……!」

 

 挑発に乗りそうな自分を押さえ、パンドラはカードを配置して決闘場へと立つ。

 

「私のターン!」

 

 パンドラ 手札:0→1

 

「魔法カード《終わりの始まり》! 墓地から闇属性5体を除外し、3枚ドロー!」

 

除外したカード

RR-フォース・ストリクス

RR-ブレイズ・ファルコン

RR-エトランゼ・ファルコン

RR-ライズ・ファルコン

RR-サテライト・キャノン・ファルコン

 

 パンドラ 手札:0→3

 

 先程の腹いせなのか、黒咲のカードばかりを除外してカードをドローするパンドラ。ドローカードを確認して戦術を考える。

 

「(黒咲のガキめ、希少なRUMの使い手であるからパートナーに選んだと言うのに、足を引っ張りやがって……No.もNo.だ! 所詮は耐性のあるだけの木偶の坊だ……!)」

 

 内心で悪態をつきながら、パンドラは墓地へと目を向ける。

 

「(やはり、私が頼るべき僕は……まずは手札を揃えなければ!) 魔法カード《強欲で貪欲な壺》! デッキトップからカードを10枚除外し、2枚ドロー!」

 

 パンドラ 手札:2→4

 

「魔法カード《アームズ・ホール》! デッキトップからカードを1枚墓地へ送ることで、デッキ・墓地から装備魔法1枚を手札に加える! デッキから《魔術の呪文書》を手札に!」

 

 パンドラ 手札:3→4

 

「この時、墓地へ送られた《魔術師の再演》の効果発動! デッキから”魔術師”永続魔法を1枚を手札に加える! 《魔術師の右手》を手札に!」

 

 パンドラ 手札:4→5

 

「魔法カード《魔法再生》! 手札の魔法2枚を墓地へ送り、墓地から魔法1枚を手札に加える! 私が加えるのは《終わりの始まり》! そして発動! 闇属性5体を除外し、3枚ドロー!」

 

 パンドラ 手札:4→2→3→2→5

 

墓地へ送ったカード

魔術師の右手

魔術師の左手

 

除外したカード

RR-バニシング・レイニアス×2

RR-ファジー・レイニアス

RR-トリビュート・レイニアス

No.11 ビッグ・アイ

 

「さっきからカードを除外しているが、それでは共に戦うカードが無くなってしまうぞ!」

「いいんですよォ! 私の役に立つカードだけが残ればいい! 役に立たないカードなど除外してしまえばいいのです! 勝利を得るためなら安いものです!」

「存在する以上、どんなカードにも必要とされる力がある! それを理解しないアンタに勝利など無い!」

「ならば見るがいい! 私を勝利へと導く最強の僕を! 魔法カード《死者蘇生》! 現れよ《ブラック・マジシャン》!」

 

 パンドラの場に赤い衣装のブラック・マジシャンが再び現れる。

 

 ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

「装備魔法《魔術の呪文書》を2枚発動! ブラック・マジシャンの攻撃力を700アップする装備魔法、それが2枚です!」

 

 ブラック・マジシャン ATK:2500→3900

 

「バトル! ブラック・マジシャンでジャンク・バーサーカーを攻撃! 【ブラック・マジック】!」

 

 ブラック・マジシャンが杖の先から魔導弾を放つと、ジャンク・バーサーカーに命中させ、跡形もなく消滅させてしまう。

 

「ううッ!? ジャンク・バーサーカー……」

 

 遊星 LP:1800→600

 

「フフフフフ……攻撃が終わり助かった。そんなことを考えているのではないのですか?」

「何?」

「永続魔法《エクトプラズマー》を発動!」

 

 パンドラが永続魔法を発動させると、辺りに異様な気配が漂い始める。後方にいる十代はこれを経験しており、更に伝記で聞いているパンドラとこの魔法についても思い出していた。

 

「そうだ! 遊戯さんを苦しめた戦術、パンドラにはこれがあったんだ! ……遊星、気張れよ!」

 

「何だ、あの魔法は……?」

「フフフ……エクトプラズマーは”相手を死に誘う魔法カード”! このカードはエンドフェイズ時、選択した自分のモンスターの攻撃力をエクトプラズマーに変換……今で言えばリリースし、元々の攻撃力の半分のダメージを相手に与えるカード!」

「何だと!?」

「カードを伏せ、エンドフェイズ! さあ、私の僕の魂に身を切りきざまれるがいい! 《エクトプラズマー》発動! ブラック・マジシャンをリリースし、その元々の攻撃力の半分、1250のダメージを受けるがいい!」

 

 突然、ブラック・マジシャンが苦しみだすと、体から質量を持った霊体が飛び出し、遊星目掛けて飛来する。遊星のLPは600、これを受ければ敗北である。

 

「勝った!」

「墓地の《ダメージ・イーター》の効果発動! 相手がダメージを与えるカード効果を発動した時、墓地のこのカードを除外することでダメージを回復へと変換する!」

 

 迫りくる霊体の前に黄色いお化けのようなモンスターが現れると、モンスターが大口を開けて霊体を丸飲みにしてしまう。

 

「よって俺のLPを1250回復する!」

 

 遊星 LP:600→1850

 

「な、な、な、何ィ~~~~!!?」

 

 勝利を確信していたパンドラは吃驚仰天、必殺の一撃を遊星に躱されてしまったのである。

 

「そ、そ、そんなカード何時――――」

 

 

***

 

「魔法カード《調律》を発動! デッキから”シンクロン”1体を手札に加え、デッキトップからカード1枚を墓地へ送る! 《ジャンク・シンクロン》を手札に加え、召喚!」

 

***

 

「あの時……またしてもがぁ~~~~!!!」

 

 目を血走らせて唸るパンドラ。何とか気を落ち着かせ、決闘へと戻る。

 

「(まずいまずいまずい! これで私の場はがら空き! 何とかしなくては!) 場から墓地へ送られた《魔術の呪文書》の効果により、1枚につき1000ポイントLPを回復する!」

 

 パンドラ LP:2500→4500

 

「ターンエンド!」

 

パンドラ

LP:4500

手札:0

〔EXモンスター〕

・無し

〔メインモンスター〕

・無し

〔魔法・罠〕

・エクトプラズマー

・セット

 

 遊星は後方へと下がり、十代にカードを手渡す。

 

「十代さん、後は頼みます」

「おう! ばっちし決めてくるぜ!」

 

 十代はカードを配置すると、決闘場へ立つ。

 

「パンドラ、見てて解ったぜ。やっぱりお前はブラック・マジシャンの使い方が下手くそだ!」

「な、何ィ……!?」

「遊戯さんの足元にも及ばない! 神楽坂の方がまだ上手かったぜ!」

「何訳の分からないことを……!」

「解んないなら教えてやるぜ! ブラック・マジシャンと2度もやりあった俺の一撃、見せてやる! 俺のターン!」

 

 十代 手札:0→1

 

「(見え透いた挑発だ! 奇術師は笑いながらも常に冷静なのだ!)」

 

 パンドラは完全に落ち着き、状況の分析を始める。

 

「(奴の手札は1枚、たったそれだけのカードでは私のLPは削り切れない! 敗北は無い! もし何かの間違えで戦力を整え、私のエクトプラズマーを利用しようとして来ても、私の伏せカード《非常食》でエクトプラズマーを処分した上でLPをさらに増やせる! 問題ない、凌ぎ切れる!)」

「行くぜ! 魔法カード《ネオス・フュージョン》! デッキ・手札・場から”E・HEROネオス”を含む融合素材2体を墓地へ送ることで、その組み合わせで特殊召喚できる融合モンスターの召喚条件を無視してEXデッキから特殊召喚できる! 俺はネオスと《N・エア・ハミングバード》をデッキから墓地へ送り、《E・HERO エアー・ネオス》を特殊召喚!」

 

 十代の場にネオスとエア・ハミングバードが現れ、宇宙の彼方へと飛び立つ。その先で眩い光が瞬くと、その光の中から白い翼を生やした赤いネオスが飛び出す。

 

  E・HERO エアー・ネオス 風属性 戦士族 レベル7 ATK:2500

 

「エアー・ネオスのモンスター効果! 自分のLPが相手よりも低い場合、その差分だけエアー・ネオスの攻撃力をアップする!」

 

 十代 LP:1850

 パンドラ LP:4500

 

 E・HERO エアー・ネオス ATK:2500→5150

 

「こ、ここ、攻撃力5150!?」

「さあ、覚悟はいいか?」

「いいいィ~~~!? らららLPを増やさなければ!? 《非常食》! エクトプラズマーを墓地に送って回復ゥ!」

 

 パンドラ LP:4500→5500

 

「どうだぁ! これでLPを0にはできまい!」

「おいおい! LPを増やしたら――――」

 

 E・HERO エアー・ネオス ATK:5150→6150

 

「――――こうなるだろ?」

「ギィヤァーーーー!!?」

 

 予想外が多すぎ、もはやパニック状態に陥っているパンドラ。十代は呆気にとられながらも、フェイズをバトルへと進める。

 

「さあ観念しろ! バトル! エアー・ネオスでダイレクト・アタック! 【スカイリップ・ウィング】!」

 

 エアー・ネオスが翼を羽ばたかせると、無数の羽がパンドラへと飛び、パンドラを切り裂く。

 

「もうおしまいだァーーーーー!!? 身をきざまれるのは私の方だったァーーーーー!!?」

 

 パンドラ LP:5500→0

 

 決闘が終了し、SVが消滅する。

 無数の羽に襲われたパンドラは気絶して決闘場の上で伸びていた。十代はパンドラと後方の黒咲に向かって指を突き出し、決めポーズ――――

 

「ガッチャ! 楽しい決闘だったぜ!」

「十代さん!」

 

 後方の遊星が走り寄ってくる。十代が振り返って右拳を突き出すと、遊星も右拳を突き出して拳を軽く小突き、その後互いに固く手を握りあった。

 

「やったぜ遊星!」

「十代さん、ありがとうございました!」

「……思った通り、あの男では貴様らには勝てんか」

 

 十代達が声に振り向くと、黒咲が決闘場で自身のカードを拾い集めていた。どうやらパンドラは消えてしまったらしく、黒咲のカードだけが残されていたようだ。

 

「よお、お前も強かったな! またやろうぜ!」

「次など無い。無念だが、これで俺の役目は終わりだ」

「お前達の役目とは何だ? 試練だと言うが、俺達と決闘して何を為そうとしている?」

 

 遊星が問い詰めるが、黒咲は無視して森の奥へと消えて行ってしまった。

 

「何だぁあいつ? まあいいや……遊星! 改めてだが、また会ったな!」

「はい、十代さんも変わりなく。……ここまでの事、遊矢の事、聞かせてください」

 

 

 * * *

 

 

「……では、今遊矢と共にいる遊馬という少年が、このNo.とここからの脱出の鍵を握っている、そういうことですね?」

 

 黒咲が拾わずに置いて行ったNo.のカード2枚を手に取りながら、遊星が十代に確認する。

 

「ああ。……それにしても、俺達みたいな決闘者があと二人か。……遊星」

「十代さん、俺も同じ考えです」

 

 二人の脳裏に映るのは、偉大なる先輩、尊敬すべき初代決闘王の姿が浮かんでいた。自分達が選ばれたのなら、必ず彼も選ばれているはず――――

 

「ははっ! 結局、あの時の3人がまた勢揃いか! 随分と早い再会だったな!」

「? ……早い?」

「そりゃそうだろう? だって何日か前の話だぜ? あの時の次の日、俺はここへ来たんだからよ」

「……待ってください。俺が十代さん達と共に戦ったのはもう2年以上前の話です」

「はぁ!? い、いやそんなことねぇだろ? だって……え?」

 

 混乱する十代を前に、遊星は今まで集めた情報を元にこの状況を考察する。

 

「俺達がいた世界とは明らかに違う、異質な世界。そして俺達が知らない発展したデュエルを行う遊矢や遊馬という新世代の決闘者……おそらくは世界だけではなく、時間軸もあの時以上にねじ曲がり、一つとなっているのでは? 俺と十代さんの時間のズレはそういうことではないかと」

「んーそういうもんなのかもな。じゃあ遊戯さんとかどうなってんだ? 爺さんになってなきゃいいけど」

 

 二人そろって噴き出し笑い合うと、今度は今後について話し合う。

 

「遊矢達との合流、これを第一の目的にしましょう」

「そうだな、遊馬達が心配だし、No.も渡してやらなきゃだしな。遊戯さんがいるとしたら、まあ心配はないだろうぜ。あと一人は……会えたらでいいな?」

「はい。……十代さん、Dホイール……バイクは乗れますか?」

「おう任せとけ! 乗ったことあるぞ! 無免許だけどな!」

「では遊矢のDホイールがあるのでそれに。この森のエリアには多くの遺跡があります。その中にはきっと地下への入り口がある遺跡があると思うんです。そこから遊矢達との合流を目指しましょう」

「それを探すってわけか! 面白そうだな!」

「はい、では休憩地点まで案内します」

「おう!」

 

 とうとう再会を果たしたキングオブデュエリストの二人。元の世界へ帰る為、仲間達との合流を急ぐ。この時、二人は上空を滑空する”板”の存在に気づいてはいなかった――――




次回予告

「ぶったまげたぜ、まさか落とし穴だなんてよ」
『榊 遊矢に感謝するんだな』
「遊矢か。決闘、強いのか?」
『それを知る機会はすぐそこだ』
「うお!? アクション・デュエル!? 何だそれすっげー面白そうじゃん!」
『君の為にあるような決闘だな。興味深い』

次回、遊戯王~クロスオーバー・ディメンションズ~
「童心全開! エンタメ決闘だオレェーーーー!!! ~遊馬と遊矢~」

「かっとビングだ、オレ!!!」



今日の最強カード
E・HEROネビュラ・ネオス

相手依存ですが、大量ドローはやっぱり魅力ですよね。
残りの効果もインフレ渦巻く環境にあってると思いますし、おすすめです。


今回のお相手はDMより奇術師パンドラ。デッキは原作よりの魔法中心【ブラック・マジシャン】。ARC‐Vより黒咲隼。デッキは勿論【RR】。みんな大好き(ネタ方面で)な二人組ですね。ミスマッチに見えますがお互いに闇属性デッキなので意外にも決闘が組み立てやすかったです。

ペースが落ちてきて申し訳ありません。
まだまだ頑張って書いていくのでよろしくお願いします。


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童心全開! エンタメだオレェー!!! ~遊馬と遊矢~

また間が空いてしまいましたね……でも悪い事ばかりでもないのです。


「うわぁぁぁ~~~~!!? どわぁ!?」

 

 知らない少年に抱えられ、穴の中へと落ちる遊馬。何処までも続いていそうな深く暗い穴だと思いきや、案外深くはなかった。細い出口を通った瞬間、すぐに砂山の上に落ちたのである。

 

「うわ~おえっ! 砂まみれだっ……!」

「助かった……」

 

 腰を掴まれて抱えられた状態だったため、真正面から砂山に落ちた遊馬。口に入った砂を吐き出しながら立ち上がり、足から落ちた遊矢は砂に埋まった下半身を這い出しながら安堵の息を付く。

 遊馬達が落ちた砂山は相当広い空間に高く盛られていた。周りには上の地面の破片が幾つか刺さっており、遊馬達が倒した決闘者達の姿は見えない。遊馬がキョロキョロと辺りを見渡すと、上からアストラルが下りてくるのが見えた。

 

『遊馬! 無事か!?』

「アストラル! 俺は大丈夫だ! こいつが……えっと?」

「遊矢だよ、無事でよかった」

「そうだ遊矢! 遊矢が助けてくれた! お蔭で何ともないぜ!」

『そうか……』

 

 アストラルは安堵して表情を緩めると、遊矢へと向き直る。

 

『榊 遊矢と言っていたな。遊馬をよく助けてくれた。ありがとう、礼を言う』

「いやあ……」

 

 遊矢が照れたように頭を掻くと、上から声が響く。

 

「遊馬ーーーー!!! っと、遊矢ーーーー!!! 無事かぁーーーー!!?」

「十代だ! わりぃアストラル、十代に無事を伝えてきてくれ!」

 

 アストラルは遊馬達の後方を一瞥すると、頷いて上へと上がる。

 

「……いや、本当に助かったぜ。遊矢はここの決闘者なのか?」

「違うよ、多分君達と一緒さ。気づいたらこの世界にいたんだ」

「お前もなのか。一体どうなってんだろうなぁ?」

「……遊馬、俺の顔に見覚えはないか?」

「へ? ……どっかであったか? 同じ学校か?」

「うん、まあ……そうだね、一個上なんだけど」

「ええ~~……一個上なんてシャークかイモウトシャークぐらいしか知らねぇけどな~?」

 

 遊馬の反応を見て、ユートが姿を現す。ユート達は意識だけの存在なため、遊馬でも視ることはできない。

 

『俺と遊馬ははっきりと面識がある。この反応から察するに、彼は俺が知っている”遊馬”ではないのだろう』

「(そっか……)」

 

 ユートが姿を消すと、アストラルが再び下りてきた。

 

『遊馬、遊矢、十代は遊星という決闘者の元へ向かった。どうやら仲間であるらしい』

 

 それを聞いて、遊矢は一つの答えを得る。融合次元の決闘者である十代がシンクロ次元の都市伝説である遊星と顔見知りであるのは考え辛い。遊馬の件を考えると、十代もユーリが知っている決闘者とは別人の可能性がある。

 

「(だったらいいんだけどな……じゃあ遊星さんも、ユーゴが言っていた人とは違うのかも)」

「ええ!? じゃあ俺達はどうやってここから出るんだよ!?」

『遊馬、君の後ろに横穴がある。その先へ進む。十代にはそう伝えてきた』

「うおっ本当だ!?」

 

 遊馬と遊矢は砂山から滑り降り、トンネルの様になった横穴に近づく。穴は広く、二人が並んで歩いても余裕で通れるほど大きい。そんな穴がずっと続いていた。

 

「真っ暗だ……危なくないかな?」

 

 遊矢がアストラルへ振り向くと、アストラルは真剣な表情で穴の先を見据える。

 

『危なくても、行かなければならない。この先からNo.の気配がする』

「本当かアストラル!」

 

 遊馬は驚きながら穴の先を覗く。

 

「No.? No.って……アンナが使ってた」

「アンナ? アンナって、あのアンナか?」

「あのアンナって……アンナを知ってるのか?」

「知ってるぜ、アンナだろ? アンナ強烈な奴忘れねぇって。アンナはNo.を使ったことは無かったと思うけどなぁ? どうだったっけアンナ――――じゃなかったアストラル?」

『遊馬、今問題にすべきはそこではない』

 

 アストラルは遊矢の正面に移動する。

 

『遊矢、君は遊馬を助けてくれた。君を信じよう。君がこの世界で見て聞いてきたことを教えてくれ。我々も話そう』

 

 

 * * *

 

 

 遊矢の決闘盤に備わっているライト機能の光を頼りに横穴を進む一行。その道中でこれまでの事を話し合う。

 

「え!? 沢渡にあったって!?」

「ああ、決闘したぜ。梶木ってやつともな。知り合いなのか?」

「梶木って人は知らないけど……多分、人違いだ。俺が知ってる沢渡と、君が会った沢渡は似てるけど別人なんじゃないかな?」

「え? 何でそんなこと分かるんだ?」

「(君がそうだから、何て言えないよな……) やっぱり、この世界は元いた世界とは違うからね。きっと”同じ人”ではないんだと思う」

「そういうもんなのか? 難しくて解んねぇや」

「そう言えば、エマさんが言っていた鍵っていうのは君の事だったんだな。この世界から脱出するにはNo.が必要なのか」

「そうなんだ! No.があれば”かっとビング遊馬号”っていう船を動かせるようになる! 俺と遊矢、十代とさっき話に出てた遊星って奴、そして残り二人だったな? 合流して皆で元いた世界に戻るんだ!」

『遊馬、遊矢、灯りだ』

 

 長い横穴を歩いていると、先に光が見える。どうやら灯りの付いた空間があるようだった。

 遊馬と遊矢は駆け出し、明るい空間へと飛び出す。そこは篝火が備えられた広めの部屋ではあったが、決闘をするには少し狭く感じる。部屋の奥には高い壁に挟まれた通路があり、部屋の中心には黒い帽子とコートを纏い、顔を仮面で隠した大柄の男が立っていた。

 

「ようこそ”地下決闘迷宮”へ。歓迎しよう決闘者諸君」

「何だお前? 怪しすぎだろ!」

「(確かに怪しい……)」

 

 いきなり失礼をかます遊馬だが、遊矢が頷いたように、そう言いたくなる気持ちは解る。黒ずくめの恰好に顔には仮面、更にはウジャト眼が彫られた金色の三角錐を逆向きにぶら下げて手に持っているのである。この上無く怪しい。

 

「我が名は闇の決闘者”タイタン”。この迷宮の支配者である。君達には”闇のゲーム”に付き合ってもらう」

「闇のゲーム?」

 

 遊矢が警戒しながら訊ねると、タイタンは説明を始める。

 

「君達にはゴールを目指し、迷宮を進んでもらう。道中にはこちらが用意した決闘者が待ち構えているだろう。それらを倒し、生き残ってゴールすることが君達の勝利条件である」

「決闘者が? 一体何人いるんだ?」

 

 遊馬の質問にタイタンは指を振りながら答える。

 

「それは君達次第だ。何回も決闘を行うことになるかもしれないし、誰とも会わずにゴールするかもしれない……何せここは”迷宮”なのだからなぁ? それと、ここでは新しいルールに従ってもらう」

 

 タイタンは十代と遊星も聞いた新しいルールについて二人に説明する。

 

「お! 前みたいにモンスターXを出せるんだな! これでやりやすくなったぜ!」

「な、何でP召喚は今まで通りなの!?」

 

 遊矢が抗議すると、タイタンは顎に手を当てて遊矢に向き合う。

 

「あれは強すぎる……そう判断したのだろう」

『誰がだ? 遊馬』

「え? あ……誰がそんなルール決めたんだよ!」

 

 アストラルが遊馬を通して質問をタイタンに仕掛ける。タイタンはアストラルを一瞥するが、質問には答えない。どうやらアストラルが見えているようだ。

 

「私からは以上だ。それでは健闘を祈る」

 

 タイタンが手に持った逆三角錐を掲げると、ウジャト眼のマークから眩い光が放たれる。遊馬達があまりの眩しさに目を閉じ、光が止んで目を開けるとそこにはもうタイタンの姿はなかった。

 

『二人とも、進もう。あの男か、迷宮内にいる決闘者がNo.を持っているはずだ』

「それしかねぇよな! 遊矢行こうぜ!」

「あ、待ってよ!」

 

 遊馬が駆け出し、先にある迷宮の通路へと入る。遊矢とアストラルはそれを追いかける。

 

「遊馬って何時もあんな感じなの?」

『ああ。それが彼の”かっとビング”だ』

「かっとビング?」

 

 遊矢が首を傾げると、遊馬が走りながら振り向く。

 

「かっとビング! それは勇気を持って一歩踏み出すこと! どんなピンチでも決して諦めないこと! あらゆる困難にチャレンジすること! 俺は何時もそうやって乗り越えてきたんだ!」

「かっとビング……」

『かっとビング……その言葉を胸に、遊馬はあらゆる”絶望”を跳ね除け、最後には勝利の”希望”を、決闘への”喜び”を掴んできた。遊矢、君にも覚えは無いか?』

 

 

 

 

 怖がって縮こまっていては、何も出来ない。勝ちたいのなら、勇気を持って前に出ろ。その勇気の分だけ、喜びも戻ってくる。

 

 

 

 

「……ふふ、そうだね! 俺にも、解るよ!」

 

 幼い日に父から聞いた言葉を思い出しながら、遊矢は笑った。

 

 

 * * *

 

 

「シャッキーン! まだかなまだかなー!」

「んもーそんなにはしゃいだら危ないっすよー」

 

 遊馬達3人は迷宮の通路を暫く彷徨った後、広い空間に出る。そこは決闘をしろと言わんばかりの大広間であり、それを裏付けるように決闘者二人が待ち構えていた。

 

「何だ? 子供がいる」

「本当だ。小学生くらいかな? 決闘者なのか?」

 

 一人は緑の髪を後頭部にまとめた小さい少年。遊矢の見立て通り小学生くらいの子供で、オーダーメイド・カスタムモデルの子供用決闘盤を付けた腕をブンブン振り回していている。もう一人は小さい眼鏡を掛けた気弱そうな少年。こちらは落ち着いていて、先の少年よりかは年上だろう。困ったように水色の髪を弄り、左腕に付けた旧式の第二世代型決闘盤を揺らす。着ている赤い派手なジャケットとは正反対に大人しいオーラを纏った少年であった。

 

「あ、来たよ来たよ! 待ってたよ決闘者!」

「ああ、来たっすね……うう、やるしかないかぁ」

 

 少年二人は遊馬達に気づくと、決闘に丁度良い距離まで近づいて並ぶ。

 

「俺は”龍亞(るあ)”! 決闘する為に待ってたんだ! 決闘しようよ!」

「僕は”丸藤 翔(まるふじ しょう)”っす。ここを通るなら、僕達を倒すしかないっすよ」

「何だ? ガキンチョばっかじゃねぇか?」

『遊馬、君と大差ないように見えるが?』

「いや、俺は中学生だぞ! あっちは小学生のコンビじゃねぇか!」

「失敬な! 僕は高校生だぞ! 君達より年上だ!」

 

 遊馬の言葉に、大人しかった翔が声を荒げていきり立つ。案外気性が激しいのかもしれない。

 

「んもー怒ったぞ! 龍亞君、絶対に勝つぞ!」

「おおやる気だね翔! よーし、俺も気合出すぞー!」

「……さっきも言ったけど、僕は君より倍近く年上なんだから呼び捨ては……」

 

 二人が決闘盤を展開して構えると、遊馬と遊矢も決闘盤を展開して構える。

 

「よっしゃー! やってやるぜ!」

「いや待った遊馬! ……4人だけど、ルールはどうするんだ?」

 

 遊矢が問いかけると、翔がハッとして落ち着きを取り戻す。

 

「いけない、忘れてたっす。ルールはタッグフォースルール! そっちのゴーグル君がいるから、アクション決闘になるっす」

「アクション決闘?」

 

 首を傾げる遊馬に遊矢が説明する。

 

「うおお! 面白そうじゃねぇか! やろうぜアクション決闘!」

「理解できたっすね? それじゃあ行くっすよ――――」

「待って待って!」

 

 翔が始めようとすると、龍亞が飛び出して制止する。

 

「アクション決闘って言ったら”アレ”でしょ? やろーよ!」

「あー、うんじゃあ龍亞君に任せるよ……ちょっと恥ずかしいし」

「アレってなんだ遊矢?」

「アクション決闘のお約束さ。まあ見ててよ」

 

 

フィールド魔法《クロスオーバー》

 

 

 龍亞と遊矢が前に出る。その瞬間、遊矢の決闘盤からRSVで創られたAカードが決闘場に散らばり、RSVの浮き足場が複数創造される。

 

「いっくよー! 戦いの殿堂に集いし決闘者達が!」

「モンスター達と共に地を蹴り宙を舞い!」

 

「「 フィールド内を駆け巡る!!! 」」

 

「見よ! これぞ決闘の最強進化系!」

「アクション――――」

 

 

「「「 デュエル!!! 」」」

「うおっ、あ、デュエル!!!」

 

 




最近はアニメカテゴリの新規が多いので、時間がたてば経つほど使えるカードが増える!
……なんて言っても、使うカードを迷ったりリミットの更新もあるからやっぱり早く投稿したほうがいいですね


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童心全開! エンタメだオレェー!!! ~遊馬と遊矢~ Duel part

 掛け声を終えると、遊矢に促された遊馬と龍亞が場に躍り出る。ターン順は龍亞、遊矢、翔、遊馬の順。

 アクション・タッグフォース決闘では一人ずつ場に出てアクション決闘を行い、プレイヤーチェンジのタイミングで入れ替わる。Aカードを拾えるのは場に出ているプレイヤーのみである。

 

「って俺前に出ちまったけど、どうすりゃいいんだ?」

『最初のターンだ。様子を見るぞ』

「俺のターン! シャッキーン! 魔法カード《ワン・フォー・ワン》! 手札からモンスター1体墓地に送って、デッキから《D(ディフォーマー)・モバホン》を特殊召喚!」

 

墓地へ送ったカード

ガジェット・トレーラー

 

 龍亞の場に巨大な折り畳み式の携帯電話が現れると、人型のロボットへと変形する。

 

 D・モバホン 地属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「モバホンの効果発動! 1~6の数字がランダムで選ばれるよ! 選ばれた数字の枚数だけデッキトップをめくって、その中にレベル4以下の”D”1体を選んで、召喚条件を無視して特殊召喚できるんだ! 〈ダイヤル~オーン〉!」

 

 モバホンの胸の9つの数字がランダムに点灯と消灯を繰り返し、やがて一つの数字だけが点灯する。

 

「出た数字は4! 4枚めくるぞ~!」

 

めくったカード

D・マグネンU

D・スピードユニット

百機夜工

D・マグネンI

 

「よし! 《D・マグネンU》を特殊召喚! 守備表示だ! ガッキーン!」

 

 龍亞の場に巨大なU字磁石が現れる。

 

 D・マグネンU 地属性 雷族 レベル3 DEF:800

 

「これならあの”コンボ”が使えるぞ! 永続魔法《つまづき》と《補給部隊》発動! つまづきがある限り召喚・特殊召喚・反転召喚したモンスターは守備表示になるんだ! 2体目の《D・マグネンU》を召喚!」

 

 龍亞の場にU字磁石がもう一つ現れると人型のロボットへと変形するが、ポーズを決めた瞬間に転んでしまい、その衝撃で元の磁石へと戻ってしまう。

 

 D・マグネンU 地属性 雷族 レベル3 DEF:800

 

 二つのU字磁石は磁極を互いの方へと向き合わせると、その間にプラズマの壁を作り出す。

 

「何だ!?」

「へっへーん! マグネンUが守備表示で場にいる限り、相手は他のモンスターに攻撃できないんだ! そのマグネンが2体! ということは~?」

「ということは?」

『相手のどのモンスターにも攻撃できない。我々は攻撃を封じられたわけだ』

「何だって!?」

「名付けて”マグネロック”! これが俺の”D”の自慢のコンボさ!」

 

 驚く遊馬に向かって得意げに胸を張る龍亞。後ろに控える遊矢はプラズマ壁を張る磁石を見ながら、何か引っかかるものを感じていた。

 

「(何だ? どっかで見た覚えがーーーー)」

 

 

 

《超重武者ジシャーQ》を召喚!

 

 

 

「(ーーーーそうだ、”権現坂”と同じコンボだ! 使ってるモンスターも似てる!)」

「俺はこれでターンエンド! 《つまづき》もあるから絶対に攻撃なんてできないぞ!」

 

龍亞

LP:8000

手札:0

モンスター

・D・モバホン ATK:100

・D・マグネンU DEF:800

・D・マグネンU DEF:800

魔法・罠

・つまづき

・補給部隊

 

「遊馬、交代!」

「お、そうだった。遊矢、あれ突破できるか?」

 

 後ろへと下がってきた遊馬がすれ違いざまに訊ねると、遊矢はそれに笑って応える。

 

「さあ、エンターテイナーの腕の見せ所だぞ! 俺のターン!」

 

 遊矢 手札:5→6

 

「スケール3《相克の魔術師》と、スケール7《EMモモンカーペット》でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

 遊矢の場の左右に光の柱が立つと、その中に剣盾を持った男の魔術師と、カーペットの様な模様を背に描かれたモモンガが浮かび上がり、柱に3と7の数字が表示される。

 

「これにより、俺はレベル4から6までのモンスターを同時に召喚が可能! 行くぞ! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 二柱の間を巨大な振り子が揺れ動き、場の中心に異空間の穴を開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター達!」

 

 異空間の穴から二つの光が飛び出し、遊矢の場へと降り立つ。

 

「手札からレベル4《EMセカンドンキー》!」

 

 最初に現れたのはシルクハットと蝶ネクタイを身に着けたロバ。

 

 EMセカンドンキー 地属性 獣族 レベル4 DEF:2000

 

「レベル4《EMロングフォーン・ブル》!」

 

 続けて現れたのは、角が電話の受話器になった二足歩行をする牛。2体のEMは躓く前に蹲り、防御体勢を取る。

 

 EMロングフォーン・ブル 地属性 獣族 レベル4 DEF:1200

 

「セカンドンキーの効果発動! 召喚・特殊召喚に成功した時、自分のPゾーンにカードが2枚存在する場合、デッキからセカンドンキー以外の”EM”1体を手札に加える! さらにロングフォーン・ブルは特殊召喚に成功した場合、デッキからP以外の”EM”1体を手札に加える! 《EMインコーラス》と《EMハンマー・マンモ》を手札に!」

 

 遊矢 手札:2→3→4

 

「《EMインコーラス》を召喚!」

 

 遊矢の場に3羽のインコが現れ、高らかに鳴き声を上げる。

 

 EMインコーラス 風属性 鳥獣族 レベル3 ATK:500→DEF:500

 

「天空に描け光のサーキット!」

 

 遊矢が空中を指差すと、その先にアローヘッドが現れる。

 

「アローヘッド確認! 召喚条件は”効果モンスター2体”! 《EMセカンドンキー》と《EMロングフォーン・ブル》をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」

 

 2体のEMが光の風となって飛び上がると、アローヘッドに記された”左下・右上”のマーカーに飛び込んで点灯させる。

 

「リンク召喚! 現れろLINK-2《転晶のコーディネラル》!」

 

 アローヘッドの扉が開くと、中から七色に煌めくドレスを纏った貴婦人が現れる。周りには虹色の鉱石が浮かび、貴婦人を守るように周りを旋回する。

 

 転晶のコーディネラル 地属性 岩石族 LINK-2(左下・右上) ATK:1200

 

「へへーん! 特殊召喚したってつまづきで……あれ?」

「Lモンスターは守備力がないからね。守備表示にはならないよ」

「あ、そっか……でもマグネロックは突破出来ないぞ!」

「それはどうでしょう? コーディネラルのすり抜けマジック、イッツショータイム!」

 

 遊矢が指を鳴らすと、コーディネラルが眩い光を放ち、場を光で包み込む。

 

「うわわ眩しい!? ……って、あれ!? マグネン!?」

 

 龍亞が眼を明けると、目の前にはインコーラス。そして遊矢の場にマグネンの1体が移っていた。

 

「コーディネラルはリンク先に存在するモンスター2体のコントロールを入れ替えることが出来るのです! 右下の位置にいたインコーラスを貴方の場へ、そして左上の位置にいたマグネンを私の場へと移したのです!」

 

 マグネンのロックは自分の場に2体揃うことが条件。龍亞の場を離れたことにより、マグネロックのコンボは崩れ去った。

 

「さあ行きますよ! マグネンを攻撃表示へと変更!」

 

 D・マグネンU DEF:800→ATK:800

 

「バトル! コーディネラルでマグネンを攻撃!」

 

 コーディネラルが周りの鉱石を飛ばし、龍亞の場のマグネンを破壊する。

 

「ああマグネン!?  ……補給部隊の効果発動! 1ターンに1度、俺のモンスターが破壊された場合、デッキから1枚ドローする!」

 

 龍亞 手札:0→1

 

「続けてマグネンでインコーラスを攻撃!」

 

 遊矢の場のマグネンが電磁波を飛ばし、インコーラスを破壊する。

 

「ごめんよインコーラス。でも、お前達の歌が頼もしい仲間を呼ぶよ! 戦闘破壊したインコーラスの効果発動! デッキからPモンスター以外の”EM”を1体特殊召喚する! 《EMヘイタイガー》を特殊召喚!」

 

 遊矢の場に兵隊の恰好をした人型の虎が現れる。

 

 EMヘイタイガー 地属性 獣戦士族 レベル4 DEF:500

 

「さて、遊馬にAカードの使い方を見せて上げなきゃね!」

 

 遊矢は少し離れた位置に落ちていたAカードに飛びついて拾い、確認した後に発動する。

 

「よし! Aマジック《フォローウィング》! 自分の場のモンスターを攻撃表示へ変更し、攻撃力を500アップする! ヘイタイガーを攻撃表示に変更して攻撃!」

 

 EMヘイタイガー DEF:500→ATK:1700→2200

 

 遊矢がAマジックを発動させると、防御体勢を取っていたヘイタイガーが立ち上がり、モバホンに向かって飛び掛かる。

 

「うわわ!? えーとえーと……あった!」

 

 龍亞は足元に偶然落ちていたAカードを拾い上げて発動する。

 

「Aマジック《ダメージ・バニッシュ》! ダメージを0にするぞ!」

 

 ヘイタイガーがモバホンを破壊するが、龍亞への衝撃はバリアによって防がれる。

 

「でもモバホンは破壊されちゃった……」

「ヘイタイガーの効果発動! 相手を戦闘破壊して墓地へ送った時、デッキから”EM”Pモンスター1体を手札に加える! 《EMドクロバット・ジョーカー》を手札に!」

 

 遊矢 手札:3→4

 

「バトル終了! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊矢

LP:8000

手札:2

EXモンスター

・転晶のコーディネラル ATK:1200

モンスター

・D・マグネンU ATK:800

・EMヘイタイガー ATK:2100

魔法・罠

・相克の魔術師 スケール3

・セット

・セット

・EMモモンカーペット スケール7

 

「すげーな遊矢! よく突破できたな!」

「よく知ってるコンボだったからね!」

 

「うう、俺のディフォーマー達が……」

「元気だしてよ、まだ決闘は始まったばかりじゃない」

「うん、頼んだよ翔!」

「期待され過ぎても困るけど……ここは一つ、年長者の決闘を見せてやるっすよ! 僕のターン!」

 

 翔 手札:5→6

 

 龍亞と入れ替わり、翔が場に出てカードをドローすると、既に目を付けていたのか足元のAカードを拾う。

 

 翔 手札:6→7

 

「遊矢君、Aカードっていざという時……ってわけじゃないと思うんすよね。こうして頻繁に拾っとけば相手のチャンスも減らせるっす」

「でも、Aカードを手札に入れておけるのは1枚まで。全部が何時でも使えるカードってわけじゃない。いざ、って時に必要なカードを入れられなくなっちゃうよお兄さん?」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

『だそうだ。遊馬、よく覚えておけ。我々のターンまでにAデュエルを把握するぞ』

「お、おう!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 翔はAカードを手札にしまうと、別のカードを取り出す。

 

「フィールド魔法《メガロイド都市》を発動!」

 

 翔がフィールド魔法を発動させると、周りの景色が巨大な駅や収納庫を擁した都市へと様変わりする。

 

「メガロイド都市の効果発動! このカード以外の自分の場のカード1枚を破壊することで、デッキから”ロイド”カード1枚を手札に加える! 《つまづき》を破壊して、デッキから《トラックロイド》を手札に!」

 

 翔 手札:6→7

 

「《トラックロイド》を召喚!」

 

 翔の場に目が付いたコミカルなトラックが現れる。

 

 トラックロイド 地属性 機械族 レベル4 ATK:1000

 

「魔法カード《融合》! 手札の《レスキューロイド》と《キューキューロイド》を融合!」

 

 翔の場に異空間の渦が現れると、コミカルなレスキュー車と救急車が現れ、中に吸い込まれる。

 

「融合召喚! 《レスキューキューロイド》!」

 

 渦の中から大型のレスキュー車が現れ、翔の場に降り立つ。トラックロイドと同様にコミカルな姿であり、まるで絵本か漫画から飛び出してきたかのようなモンスターである。

 

 レスキューキューロイド 炎属性 機械族 レベル6 ATK:2300

 

「バトル! レスキューキューロイドでヘイタイガーを攻撃!」

 

 レスキューキューロイドがヘイタイガーに向かって突進する。遊矢はAカードを探すが間に合わず、ヘイタイガーは跳ね飛ばされて破壊される。

 

「ヘイタイガー!? これがレスキュー車のすることなのか!?」

「決闘なんだから仕方ないっす!」

「仕方ないっちゃ仕方ないけど……Pゾーンにモモンカーペットが存在する限り、俺への戦闘ダメージは半分になる!」

 

 遊矢 LP:8000→7900

 

「トラックロイドでコーディネラルを攻撃!」

「!? 攻撃力が下のモンスターで……Aマジックか!?」

 

 遊矢はそう予想したが、翔は手札に手を伸ばさない。

 

「メガロイド都市の効果発動! ”ロイド”が戦闘するダメージ計算時、デッキから”ロイド”1体を墓地へ送ることで、ダメージ計算時のみ自分のモンスターの元々の攻撃力と守備力を入れ替える!」

 

墓地へ送ったカード

ステルスロイド

 

 トラックロイド ATK:1000→2000

 

トラックロイドはコーディネラルを跳ね飛ばすと、連結しているコンテナの中に落として収納してしまう。

 

「コーディネラル!?」

 

 遊矢 LP:7900→7500

 

「トラックロイドは戦闘破壊して墓地に送ったモンスターを装備して、その攻撃力分自分の攻撃力を上げることが出来るっす!」

「実質、攻撃力は3000以上か……厄介だな」

 

 トラックロイド ATK:1000→2200

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

LP:8000

手札:1

EXモンスター

・レスキューキューロイド ATK:2300

モンスター

・トラックロイド ATK:2200

魔法・罠

・補給部隊

・転晶のコーディネラル(装備:トラックロイド)

・セット

・セット(Aカード)

フィールド

・メガロイド都市

 

「あの二人、侮れないよ」

「任せとけ!」

 

 遊矢が後方へと下がると、遊馬が場に躍り出る。

 

「おっしゃーA決闘デビュー戦だ! 行くぜ! 俺のターン!」

 

 遊馬 手札:5→6

 

『遊馬、沢渡との決闘を覚えているな』

「ああ勿論だぜ。ペンデュラム召喚、強かったな」

『そのペンデュラム召喚は今、我々の味方だ。使わない手はない』

「ようし、遊矢! ペンデュラムカード借りるぜ!」

 

 遊馬が手札からカードを取り出すと、柱の間に振り子が揺れ動く。

 

「セット済みのスケールでペンデュラム召喚するぞ! かっとビングだァーモンスター達!」

 

 柱の間に異空間の穴が現れると、中から3つの光が飛び出す。

 

「レベル4《ガガガマジシャン》!」

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1500

 

 

「レベル4《ガガガガードナー》!」

 

 

 ガガガガードナー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

 

「レベル4《ゴゴゴゴーレム》!」

 

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 ATK:1800

 

 

 遊馬の場にオノマトペのメンバーが並び立つ。遊馬はそれを見回し、満足そうに頷いた。

 

「3体一度に呼べ出せちまった! すげぇ!」

『ここで満足しても仕方がないぞ。どうするつもりだ?』

「そりゃあ勿論、最初はこいつさ! レベル4の《ガガガガードナー》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!」

 

 ガガガガードナーとゴゴゴゴーレムが橙の光となって飛び立つ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 光が遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「俺の戦いはここから始まる! 白き翼に望みを託せ! エクシーズ召喚!」

 

 閃光の中から白い巨大な剣が現れ、遊馬のエースモンスターへと姿を変える。

 

「現れろ《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「これが遊馬のナンバーズ!? ……上手く言えないけど、俺が遊星さんと一緒に見たのとは何か違う」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「まだまだ行くぜ! ガガガマジシャンの効果発動! レベルを1~8の中の好きな数に変更できる! レベルを3に変更!」

 

 ガガガマジシャン レベル4→3

 

「レベル3の《ガガガマジシャン》と《D・マグネンU》でオーバーレイ!」

 

 ガガガマジシャンが紫、マグネンが橙の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から閃光が放たれると、中から龍が巻き付いた巨大な眼球が現れ、変形して本来の姿を表す。

 

「現れろ《No.17 リバイス・ドラゴン》!」

 

 No.17 リバイス・ドラゴン 

 水属性 ドラゴン族 ランク3 ATK:2000 ORU:2

 

「魔法カード《エクシーズ・ギフト》! 自分の場のORU2つを使って2枚ドローするぜ! ホープとリバイス・ドラゴンから1つずつ使って2枚ドローだ!」

 

 No.39 希望皇ホープ ORU:2→1

 No.17 リバイス・ドラゴン ORU:2→1

 

 遊馬 手札:2→4

 

『遊馬、このフィールドは厄介だ』

「解ってる! ここは”新しい仲間”の出番だぜ! 《ガガガシスター》を通常召喚!」

 

 遊馬の場に魔術師の姿をした、何処となくガガガガールに似た小さい少女が現れる。

 

 ガガガシスター 闇属性 魔法使い族 レベル2 ATK:200

 

「ガガガシスターの効果発動! 召喚に成功した場合、デッキから”ガガガ”と名の付く魔法・罠カード1枚を手札に加える! 《ガガガボルト》を手札に!」

 

 遊馬 手札:3→4

 

「魔法カード《ガガガボルト》! 自分の場に”ガガガ”モンスターが存在する場合、場のカード1枚を破壊する! 《メガロイド都市》を破壊しろ!」

「させないっすよぉ! Aマジック《ヒートアップ・サウンド》! 魔法を破壊する効果を無効にする!」

 

 ガガガシスターが手に持った杖から電撃を放つが、翔が伏せていたAマジックから凄まじい音波が放たれ、電撃を掻き消す。

 

「残念だったね。僕はそう簡単にはやられないよ」

「俺だってそう簡単には諦めないぜ! 場に”ガガガ”モンスターが存在する場合、《ガガガクラーク》を特殊召喚できる!」

 

 遊馬の場にガガガクラークが降り立ち、シスターと並んで身構える。

 

 ガガガクラーク 地属性 戦士族 レベル2 ATK:400

 

「レベル2の《ガガガシスター》と《ガガガクラーク》でオーバーレイ!」

 

 シスターが紫、クラークが橙の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれると、中から一冊の本が現れる。本が開くと中から光の粒子が飛び出し、半人半馬の姿をした機械の老人を形作る。老人は本を手に取り、遊馬の場に佇む。

 

「滅亡だろうが何だろうが、どんとこい! かっとビングで乗り切ってやる! 現れろ《No.45 滅亡の予言者 クランブル・ロゴス》!」

 

 No.45 滅亡の予言者 クランブル・ロゴス

 地属性 アンデット族 ランク2 ATK:2200 ORU:2

 

「グランブル・ロゴスの効果発動! 1ターンに1度、ORU1つを取り除き、こいつ以外のカードを1枚選択する! こいつが存在する限り、選択されたカードの効果を無効にする! 《メガロイド都市》を無効にしろ!」

 

 No.45 滅亡の予言者 クランブル・ロゴス ORU:2→1

 

 グランブル・ロゴスがORUを一つ本の中に取り込むと、本を見ながら予言を告げる。現代の言葉ではないそれを言い終えると、メガロイド都市から色が失せ、静寂が包み込んだ。

 

「ええ~!? うそぉ!?」

「リバイス・ドラゴンの効果発動! ORUを1つ取り除き、攻撃力を500アップする! 〈アクア・オービタル・ゲイン〉!」

 

 リバイス・ドラゴンがORUを食らい、体のオーラを増幅させる。

 

 No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2000→2500 ORU:1→0

 

「まだ行けるか? 魔法カード《希望の記憶》! 俺の場の”No.”の数だけドローする!俺の場のNo.は3体! よって3枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:1→4

 

「バトルだ! リバイス・ドラゴンでトラックロイドを攻撃! 【バイス・ストリーム】!」

 

 リバイス・ドラゴンが青いブレスをトラックロイドに向かって放つ。

 

「罠カード《スーパーチャージ》! 僕の場が機械族の”ロイド”のみの場合、相手の攻撃宣言時に発動できる! デッキから2枚ドロー!」

 

 翔 手札:1→3

 

「あれ? 攻撃を防ぐわけじゃないのか?」

「攻撃はこれから!」

 

 翔は近くのAマジックに飛びつき、咄嗟に発動させる。

 

「Aマジック――――あれ? 《エナジーメイト》!? LPを500回復する……こ、これ攻撃を防げるカードじゃないよ~!?」

 

 翔 LP:8000→8500

 

 ブレスはトラックロイドに命中し、爆散させてしまう。

 

「うわぁ!?」

 

 翔 LP:8500→8200

 

『都合の良いカードばかりが出るとは限らない、か』

 

 アストラルが納得して頷く中、爆風で倒れた翔は何とか立ち上がる。

 

「くそぉ……補給部隊の効果で1枚ドロー! そしてレスキューキューロイドの効果発動! 自分の場のモンスターが戦闘破壊されて墓地へ送られた時、そのモンスターを守備表示で特殊召喚する!」

 

 翔 手札:3→4

 

 レスキューキューロイドが後ろのコンテナを広くと、中からトラックロイドが飛び出し翔の場で防御体勢を取る。

 

 トラックロイド 地属性 機械族 レベル4 DEF:2000

 

「だったらホープだ! レスキューキューロイドを攻撃! 【ホープ剣・スラッシュ】!」

 

 ホープが腰の剣を引き抜き、レスキューキューロイドを一刀両断する。

 

「うう……!」

 

 翔 LP:8200→8000

 

「グランブル・ロゴスでトラックロイドを攻撃!」

 

 グランブル・ロゴスがトラックロイドへと飛び掛かり、前足で踏みつぶして破壊する。

 

「くそ、結局ダメージは与えられなかったか!」

『だが、流れを再びこちらへ向かせることが出来た。No,3体はそうそう破れるものではない。確実に迎え撃つぞ』

「おう! ターンエンド!」

 

遊馬

LP:7500

手札:4

EXモンスター

・No.39 希望皇ホープ ATK:2500 ORU:1

モンスター

・No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2500

・No.45 滅亡の予言者 クランブル・ロゴス ATK:2200 ORU:1

魔法・罠

・相克の魔術師 スケール3

・セット

・セット

・EMモモンカーペット スケール7

 

「はぁ……調子にのってくるとこれっすねぇ」

「翔交代交代! まっかせてー!」

 

 翔が後ろに下がると、龍亞が場に飛び出す。

 

「兄ちゃん達凄いね! 俺も負けてられないぞ~! 俺のターン! ジャジャーン!」

 

 龍亞 手札:1→2

 

「魔法カード《ジャンクBOX》! 自分の墓地からレベル4以下の”D”1体を特殊召喚するぞ! 《D・モバホン》を特殊召喚!」

 

 龍亞の場に再びモバホンが現れる。

 

 D・モバホン 地属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「行くぞ~〈ダイヤル~オーン〉!」

 

 モバホンの胸の9つの数字がランダムに点灯と消灯を繰り返し、やがて一つの数字だけが点灯する。

 

「出た数字は2! 2枚めくるぞ~!」

 

めくったカード

D・リモコン

D・ボードン

 

「来た! チューナーモンスター《D・リモコン》を特殊召喚!」

 

 龍亞の場に大きなリモコンが現れ、人型に変形して場に立つ。

 

 D・リモコン 地属性 機械族 レベル3 ATK:300

 

「ここで魔法カード《アイアン・ドロー》を発動! 自分の場のモンスターが機械族効果モンスター2体のみの場合、2枚ドローする!」

 

 龍亞 手札:0→2

 

「リモコンの効果発動! 1ターンに1度、墓地の”D”1体を除外することで、同じレベルの”D”1体をデッキから手札に加えられるんだ! 墓地のレベル3《D・マグネンU》を除外して、デッキから《D・ボードン》を手札に、そして召喚!」

 

 続けて龍亞の場に大きなスケートボードが現れ、変形して人型となる。

 

 D・ボードン 地属性 機械族 レベル3 ATK:500

 

「いっくぞー! レベル1《D・モバホン》と、レベル3《D・ボードン》に、レベル3《D・リモコン》をチューニング!」

 

 リモコンが自身を3つの光輪へと変えると、D達を囲み、4つの光、そして光の柱へと変える。

 

「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚!」

 

 光の柱から現れたのは、黄色いボディが煌めく機械仕掛けのドラゴン。赤い目を光らせ、右腕のパワーショベルと左腕のドライバーを打ち付けながら咆哮を上げる。

 

「愛と正義の使者! 《パワー・ツール・ドラゴン》!」

 

 パワー・ツール・ドラゴン 地属性 機械族 レベル7 ATK:2300

 

「Sモンスターか!?」

『冗談のような見た目だが……気を付けろ遊馬。このドラゴンには何か”裏”がある』

「ウラ? 徳之助みたいなこと言いやがって、何があるってんだよ?」

『解らない。私の決闘者としての”勘”というべきか……何にせよ、No.相手に出してきたモンスターだ。そのポテンシャルは大きいはず』

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、デッキから装備魔法をランダムに1枚、手札に加えられるんだ! 〈パワー・サーチ〉!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンの目が再び光ると、龍亞のデッキからランダムに1枚カードが排出される。龍亞はそれを手に取る。

 

 龍亞 手札:2→3

 

「よし! 装備魔法《ダブルツールD&C》、《ブレイク・ドロー》、《エアークラック・ストーム》をぜーんぶパワー・ツール・ドラゴンに装備!」

 

 龍亞が装備魔法を一気に発動すると、パワー・ツール・ドラゴンの両腕の工具がドリルとカッターに変わり、二つのオーラが機体を包み込んだ。

 

「ダブルツールD&Cはターンによって効果が変わるんだ! 俺のターンの間は装備モンスターの攻撃力を1000アップさせるぞ!」

 

 パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→3300

 

「更にエアークラック・ストームの効果発動! 装備モンスターしか攻撃出来なくなるけど、その変わり相手を戦闘破壊できればもう一度攻撃できるんだ! バトル! ホープに攻撃! 【クラフティ・ブレイク】!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンが突進し、左腕のドリルをホープへと突き出す。

 

「させるかよぉ! ホープの効果発動! 〈ムーンバリア〉!」

 

 ホープがORUを取り込み、背中のライトウィングシールドを展開するが、ドリルはそれを簡単に貫き、ホープも貫いて破壊する。

 

「ホープーーー!? うわぁ!?」

『馬鹿な……ムーンバリアを貫いただけでなく、No.以外に戦闘破壊されないホープを破壊しただと!?』

 

 遊馬 LP:7500→7100

 

「ダブルツールD&Cにはまだ効果があってね、バトルフェイズの間、攻撃する相手モンスターの効果を無効に出来るんだ! ここでブレイク・ドローの効果発動! 装備モンスターが相手モンスターを戦闘破壊して墓地へ送った時、デッキから1枚ドローできる!」

 

 龍亞 手札:0→1

 

「さあ2回目の攻撃! グランブル・ロゴスを攻撃だー!」

「させっかよー! おりゃー!」

 

 遊馬は多少オーバーアクション気味に横っ飛ぶと、その先に落ちていたAカードを手に取る。

 

「さーて、記念すべき1枚目のAカードは――――」

 

 

Aトラップ《ブレイクショット》

 

 

「え? トラップ?」

 

 遊馬が目を丸くしていると、上空に巨大なビリヤード球が現れ、凄まじい勢いで遊馬の場にいるリバイス・ドラゴンに命中する。思わぬ不意打ちを受けたリバイス・ドラゴンは目を回し、ふらふらと頭を揺らす。

 

 No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2500→1600

 

「ああ!? リバイス・ドラゴン!? 何だよこれ!?」

『成程、文字通りの”罠”か。頼りすぎるのも危険というわけだ』

 

 そんなことをしている間に再び動き出すパワー・ツール・ドラゴン。今度は右腕のカッターを横に一閃させ、グランブル・ロゴスを両断する。グランブル・ロゴスが消えたことにより、メガロイド都市が色と喧噪を取り戻す。

 

「うわぁ!?」

 

 遊馬 LP:7100→6550

 龍亞 手札:1→2

 

「へへっ、残念だったね! バトル終了! 魔法カード《D・スピードユニット》! 手札の”D”1体をデッキに戻してシャッフル! そして場のカード1枚を破壊するよ! Pカード《EMモモンカーペット》を破壊だ!」

 

 戻したカード

 D・ビデオン

 

 龍亞が魔法を発動させると、遊馬達の場に立っていた右の光の柱が崩れ去る。

 

「そして1枚ドロー! P召喚はさせないぞ! ターンエンド!」

 

 

龍亞

LP:8000

手札:1

EXモンスター

・パワー・ツール・ドラゴン ATK:3300→2300

魔法・罠

・補給部隊

・ダブルツールD&C

・ブレイク・ドロー

・エアークラック・ストーム

フィールド

・メガロイド都市

 

「くっそー……罠に掛かるし、Pカードも破壊されちまった……はは! でも面白れぇな! A決闘!」

「だろ? ここからもっと面白くなるさ!」

 

 遊馬が下がる為、遊矢が前へ出る為にすれ違った瞬間、遊馬の”皇の鍵”と遊矢の”ペンデュラム”がふれあい、一瞬だけ光を放った。

 

『!? ……遊馬、今の光は?』

「ん? どうしたアストラル?」

 

「俺のターン!」

 

 遊矢 手札:2→3

 

 この瞬間、遊矢の脳裏に閃光が過る。閃光の中に見えた、金色に輝く魔術師の姿――――

 

「(……何だ今の? 確か、昔も同じような事があった……今の魔術師を呼び出せってことか?)」

 

 遊矢は暫くデッキを見つめた後、意を決した様に顔を上げる。その顔は笑顔。

 

「レディースエーンドジェントルメーン!」

「うわぁ!? どうしたの!?」

 

 龍亞が驚いていると、遊矢は高い足場へと移動し、両手を広げる。

 

「ここはまったく! 少年達の夢の世界です! 勇ましい戦士や怪獣! ロボットにコミカルな車達! 私、胸が高鳴ってまいりました! ここでステージは新たなる展開を向かえるでしょう!」

 

 深々とお辞儀をしてから、1枚のカードを取り出す。

 

「速攻魔法《魔力の泉》! 相手の場の表側表示で存在する魔法・罠カードの数だけドローし、私の場の表側表示の魔法・罠の数だけ手札を捨てる! そっちの場には5枚、私の場には2枚、よって5枚ドローし、2枚捨てます!」

 

 遊矢 手札:2→7→5

 

 捨てたカード

 EMハンマー・マンモ

 オッドアイズ・セイバー・ドラゴン

 

「よし、《EMドクロバット・ジョーカー》を召喚!」

 

 遊矢の場に黒いコウモリをイメージした衣装に身を包んだ道化師が現れる。

 

 EMドクロバット・ジョーカー 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果発動! 召喚に成功した時、デッキからこのカード以外の”EM・魔術師・オッドアイズ”モンスターの内の1体を手札に加えます! 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を手札に!」

 

 遊矢 手札:4→5

 

「罠カード《戦線復帰》! 自分の墓地のモンスター1体を守備表示で特殊召喚します! 今ターンのスペシャルゲスト! 遊馬の《No.39 希望皇ホープ》を特殊召喚!」

 

 遊矢の場にホープが現れ、防御体勢を取る。

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 DEF:2000

 

「ホープ? 何でホープ何だ?」

「遊馬、今の俺の”エンタメ決闘”には、君とこのホープの力が必要なんだ」

「エンタメ?」

「皆を笑顔にできる。それがエンタメ決闘なんだ!」

「皆を……?」

『遊馬、私には彼の言うことが解るぞ』

「え?」

『笑顔とは、”受け入れた証”だ。心を開き、向き合うことを望む意思。彼はそれを求めて決闘をしている……君も同じではないか?』

「! ……そうか! それなら俺も協力するぜ! かっとビングだ遊矢!」

 

 遊矢は頷くと、左の柱へと手を掲げる。

 

「相克の魔術師のP効果発動! X召喚を行う場合、Xモンスター1体のランクをレベルとして扱い、X召喚の素材にすることができる! レベル4の《EMドクロバット・ジョーカー》とレベル4となった《No.39 希望皇ホープ》でオーバーレイ!」

 

 ドクロバット・ジョーカーが紫の光、ホープが金色の光となって飛び上がり、遊矢の場に現れた光の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦から閃光が放たれ、中から白いローブとホープの様な鎧を纏った魔術師が現れる。ホープの様な金色の装飾を輝かせながら、手に持った双剣を勇ましく構える。

 

「彼の者の戦いは、今ここに紡がれる! 白き衣に望みを託せ! ランク4! 光の継承者《希望の魔術師》!」

 

 希望の魔術師 光属性 魔法使い族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

「希望の魔術師……きっとこの魔術師が、俺達の決闘を導く! 効果発動! ORUを1つ取り除くことで、手札からレベル7以下のPモンスター1体の効果を無効にし、守備表示で特殊召喚できる! 手札から《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 希望の魔術師がORUを1つ取り込むと、体から眩い光を放つ。やがて光が止み全員が目を開けると、魔術師が立っていた場所にオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが現れ、魔術師は遊矢の場の後方、Pゾーンの光の柱の中に浮かんで場を見下ろしていた。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 

 闇属性 ドラゴン族 レベル7 DEF:2000

 

「特殊召喚の後、希望の魔術師をPゾーンに置くことができる! 希望の魔術師のスケールは8! これでまたP召喚ができる!」

 

 新たに揃った2柱の間を、巨大な振り子が揺れる。

 

「揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク! ペンデュラム召喚! 現れよ私のモンスター達!」

 

 柱の間に異空間の穴が開くと、そこから2つの光が飛び出す。光は場に降り立ち、一つは小判を頭に張り付けた竜、もう一つは水しぶきを鼻から上げるマンモスとなる。

 

「手札からレベル4《EM小判竜》!」

 

 EM小判竜 水属性 ドラゴン族 レベル4 ATK:1700

 

「レベル6《EMマンモスプラッシュ》!」

 

 EMマンモスプラッシュ 水属性 獣族 レベル6 ATK:1800

 

「立ち塞がりしは文明が創りし機械の竜! ならば私は”野生”溢れる竜で迎え撃ちます! マンモスプラッシュの効果により、《融合》のカード無しで《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《EMマンモスプラッシュ》を融合!」

 

 遊矢の場に異空間の渦が現れると、その中にオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとマンモスプラッシュが吸い込まれる。

 

「二色の眼を持つ龍よ! 巨獣のしぶきをその身に浴びて、新たなる力を生み出さん!」

 

 遊矢が両掌を合わせた瞬間、渦の中から骨の様な外殻に覆われた獰猛な龍が現れる。その龍は鋭い眼光を放ちながら、凄まじい咆哮を上げる。

 

「融合召喚! 野獣の眼光りし獰猛なる龍! レベル8《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

 地属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「バトル! ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 【ヘルダイブバースト】!」

 

 ビーストアイズがパワー・ツール・ドラゴンへと突撃し、至近距離でブレスを放つ。

 

「攻撃力はパワー・ツールの方が低いけど、パワー・ツールは装備魔法を身代わりにして破壊を無効に出来るんだ! そしてこれが奥の手! ダブルツールD&Cの効果でダメージステップ終了時に相手モンスターを破壊出来る! ブレイク・ドローを身代わりにして、ビーストアイズを返り討ちだー!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンがブレスを受け切ると、右腕のカッターでビーストアイズを斬り付ける――――が、カッターの一撃はビーストアイズの牙によって受け止められてしまった。

 

「あれ!? 何で!?」

「小判竜の効果で、私の場のドラゴン族は効果破壊されません! さらに攻撃力が500ポイントアップしているのです!」

 

 ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3000→3500

 No.17リバイス・ドラゴン ATK:1600→2100

 

「そんなぁ!?」

 

 龍亞 LP:8000→6800

 

「ここで引き当てたならご喝采! 私に追撃の一手を!」

 

 遊矢はAカードを探し当てると、拾って確認する。

 

「よし! リバイス・ドラゴンで攻撃! ここでAマジック《ティンクル・コメット》を発動! 相手モンスター1体の攻撃力を1000ダウンし、相手に500ダメージを与えます!」

 

パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→1300

 

 

 小判竜によって幾らか調子を取り戻したリバイス・ドラゴンがパワー・ツール・ドラゴンに向かってブレスを放ち、降り注ぐ流星群と共に龍亞とパワー・ツール・ドラゴンを襲う。

 

「うわわわわ!? エアークラック・ストームを墓地へ送るよ!」

 

 龍亞 LP:6800→6300→5500

 

「小判竜で攻撃!」

 

 最後に小判竜もブレスを放ち、パワー・ツール・ドラゴンの装備を破壊する。

 

「うわぁ!? ……うう、ダブルツールD&Cを墓地に送るよ」

 

 龍亞 LP:5500→5100

 

「これにて、私のターンは閉幕となります! 決闘はまだまだ続きますのでどうぞお楽しみに!」

 

遊矢

LP:6550

手札:2

EXモンスター

・ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3500

モンスター

・No.17 リバイス・ドラゴン ATK:2100

・EM小判竜 ATK:1700

魔法・罠

・相克の魔術師 スケール3

・セット

・希望の魔術師 スケール8

 

「あー丸裸にされちゃったっすね……まあ気を落とさずに――――」

「翔、頼んだよ! また逆転してね!」

「あれ? 今度は元気?」

「元気だよ! こんな楽しい決闘なのに、落ち込んでなんかいられないや!」

「はー……エンタメっていうのは伊達じゃないんだなぁ。よーし、僕もいっちょやるか!」

 

 カードの受け渡しを終え、龍亞が後ろに下がり、翔が前に出る。

 

「僕のターン!」

 

 翔 手札:4→5

 

「うーん、魔法カード《手札抹殺》を発動! お互いに手札を全て捨て、その枚数分ドローする!」

 

 翔 手札:4→0→4

 遊矢 手札:2→0→2

 

 翔が捨てたカード

 ブレイクスルー・スキル

 置換融合

 フュージョン・ウェポン

 ???

 

 遊矢が捨てたカード

 シャッフル・リボーン

 EMスプリング―ス

 

「墓地に送った《置換融合》を除外して効果発動! 墓地の融合モンスター1体をEXデッキに戻し、デッキから1枚ドロー!」

 

 戻したカード

 レスキューキューロイド

 

 翔 手札:4→5

 

「……Aカード、少なくなってきたっすね。土壇場で慌てて拾うのも、罠を引くのも怖いし、今の内、今の内」

 

 翔 手札:5→6

 

「それじゃ、僕も使わせてもらうっす! パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 〈パワー・サーチ〉!」

 

 翔 手札:6→7

 

「メガロイド都市の効果発動! 補給部隊を破壊し、デッキから《エクスプレスロイド》を手札に!」

 

 翔 手札:7→8

 

「《エクスプレスロイド》を召喚!」

 

 翔の場にコミカルな新幹線が現れる。

 

 エクスプレスロイド 地属性 機械族 レベル4 ATK:400

 

「エクスプレスロイドの効果発動! 召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、墓地からエクスプレスロイド以外の”ロイド”2体を手札に加える! 《トラックロイド》と《ステルスロイド》を手札に!」

 

 翔 手札:7→9

 

「魔法カード《融合回収》! 融合召喚に使った墓地の《レスキューロイド》と《融合》を手札に!」

 

 翔 手札:8→10

「融合……また融合召喚か!」

「その通りっす! 魔法カード《融合》! 場の《エクスプレスロイド》と手札の《トラックロイド》、《ドリルロイド》、《ステルスロイド》を融合!」

 

 翔の場にトラック、ドリル戦車、ステルス戦闘機が現れ、エクスプレスロイドと共に変形を始める。変形してパーツとなった4体は合体し、1体の巨大なスーパーロボットとなった。

 

「融合召喚! 《スーパービークロイド-ステルス・ユニオン》完成!」

 

 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン

 地属性 機械族 レベル9 ATK:3600

 

「4体のモンスターで融合だって!?」

「ふっふっふ! 4体融合は伊達じゃないっすよ! ステルス・ユニオンの効果発動! 機械族以外のモンスター1体を装備する! 《No.17 リバイス・ドラゴン》を装備! 〈スーパービークロイド-リバイス・ユニオン〉!」

「何だって!?」

 

 ステルス・ユニオンが胸から光線を放つと、光線を通してリバイス・ドラゴンを吸収する。吸収し切った瞬間、ステルス・ユニオンの胸にリバイス・ドラゴンの顔を模したパーツが装着された。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「リバイス・ドラゴンが!?」

『No.が防げるのは戦闘破壊、小判竜が防ぐのは効果破壊のみ。装備カードにされてはどうしようもないということか。……あの翔という少年、気弱そうに見えて抜け目ないな』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「No.については聞いてるよ! 僕らは持ってないけど、対策はバッチリだ! 魔法カード《貪欲な壺》! 墓地のモンスター5体をデッキに戻してシャッフル! 2枚ドロー!」

 

デッキに戻したカード

D・リモコン

キューキューロイド

ドリルロイド

ステルスロイド

エクスプレスロイド

 

 翔 手札:5→7

 

「魔法カード《簡易融合》! LPを1000払い、EXデッキからレベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いで特殊召喚する! 《ペアサイクロイド》を融合召喚!」

 

 翔 LP:5100→4100

 

 翔の場に異空間の渦が現れると、中からコミカルな二人乗り自転車が現れる。

 

 ペアサイクロイド 地属性 機械族 レベル5 ATK:1600

 

「魔法カード《ビークロイド・コネクション・ゾーン》! このカードは”ロイド”専用の融合カード! 手札の《レスキューロイド》と場の《ペアサイクロイド》を融合!」

 

 翔の場にレスキューロイドが現れると、ペアサイクロイドと共に異空間の渦に吸い込まれる。すると、決闘場の背景にあるメガロイド都市が変形し、ステルス・ユニオンを越える巨大なスーパーロボットとなって翔の場に降り立った。

 

「融合召喚!《スーパービークロイド-モビルベース》!」 

 

 スーパービークロイドーモビルベース 地属性 機械族 レベル10 DEF:5000

 

「フィ、フィールド魔法が変形した!?」

「まあSVの演出なだけで、カードは別々っすけどね。モビルベースの効果発動! 1ターンに1度、相手モンスター1体の攻撃力以下の攻撃力を持つ”ロイド”をデッキ・EXデッキから特殊召喚する! 選択するのは攻撃力3500の《ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》! EXデッキから攻撃力3000の《スーパービークロイドージャンボドリル》を特殊召喚!」

 

 翔の場の地面から巨大なドリル戦車が現れる。

 

 スーパービークロイドージャンボドリル 地属性 機械族 レベル8 ATK:3000

 

「これで僕の”スーパービークロイド”が揃い踏み! 装備魔法《7カード》をパワー・ツール・ドラゴンに装備! 攻撃力を700アップ!」

 

 パワー・ツール・ドラゴン ATK:2300→3000

 

「さあこれで決めるっすよ~! バトル! リバイス・ユニオンで小判竜を攻撃! 【ブロウクン・マグナム】!」

 

 リバイス・ユニオンが小判竜に狙いを定めると、右拳を引いて構える。

 

「このビークロイドは攻撃時に元々の攻撃力が半分になる!」

 

 スーパービークロイド-リバイス・ユニオン ATK:3600→1800

 

 リバイス・ユニオンが拳を突き出すと、腕がジェット噴射の力によって射出され、そのまま小判竜に激突して破壊する。

 

「ド、小判竜!?」

 

 遊矢 LP:6550→6450

 ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン ATK:3500→3000

 

「更に効果でモンスターを装備している場合、相手の場の全てのモンスターに1度ずつ攻撃できる! ビーストアイズに攻撃! 【ドリルニー】!」

「攻撃力が半分になるのに攻撃してくるのか!?」

 

 スーパービークロイド-リバイス・ユニオン ATK:3600→1800

 

「そこでフィールド魔法っす! デッキから”ロイド”を墓地へ送り、メガロイド都市の効果発動! 元々の攻守を入れ替える!」

 

墓地へ送ったカード

ミキサーロイド

 

スーパービークロイド-リバイス・ユニオン ATK:1800→3000

 

 リバイス・ユニオンがビーストアイズに向かってドリルが付いた膝で跳び膝蹴りを放つ。

 

「!? ……まだAカードはある!」

 

 迫りくるリバイス・ユニオンを前に、遊矢は残っていたAカードへと飛びつき、発動する。

 

「Aマジック《奇跡》! ビーストアイズの戦闘破壊を無効にする!」

 

跳んできたリバイス・ユニオンに対し、ビーストアイズはブレスで応戦する。

 

「ならこっちもAマジック《悪夢の道連れ》! 自分のモンスターが戦闘破壊された場合、戦闘を行った相手モンスターを破壊し、相手に700のダメージを与える!」

 

 

ビーストアイズのブレスがリバイスユニオンに直撃するも勢いを殺せず、ドリルで貫かれて破壊される。だがブレスを受けたリバイス・ユニオンも無事では済まず、その場で崩れ落ちてしまった。

 

「ううっ……結局相打ちか……」

 

 遊矢 LP:6450→5750

 

「相打ちでも、このまま押し切れば僕らの勝ちっす! パワー・ツールでダイレクトアタック!」

 

 パワー・ツール・ドラゴンが左腕のドライバーを遊矢に突き出す。遊矢はそれから逃げながらAカードを探すが、間に合わずに突かれてしまう。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 遊矢 LP:5750→2750

 

「トドメだ! ドリルジャンボでダイレクトアタック!」

 

 ジャンボドリルが自慢のドリルを回転させ、遊矢に迫る。

 

「Pゾーンの《希望の魔術師》のP効果発動! モンスター1体の攻撃を無効にし、このカードを破壊する!」

 

 光の柱の中にいた希望の魔術師が場に飛び出し、羽織ったローブを翻してドリルジャンボを撹乱して動きを止める。ドリルジャンボの攻撃が止まった事を見届けた後、希望の魔術師は消滅する。

 

「んがっ!? まさか止められるなんて……カードを2枚伏せてターンエンド」

 

LP:4100

手札:0

EXモンスター

・パワー・ツール・ドラゴン ATK:3000

モンスター

・スーパービークロイドーモビルベース DEF:5000

・スーパービークロイドージャンボドリル ATK:3000

魔法・罠

・7カード(パワー・ツール・ドラゴン)

・セット

・セット

フィールド

・メガロイド都市

 

「(まあ、この布陣なら大丈夫っすかね。ビークロイド・コネクション・ゾーンで融合したモビルベースは効果破壊されないし、パワー・ツールは破壊耐性あるし、何より全員が3000越えの数値! こりゃ貰ったっすね!)」

 

「遊馬、すまない。俺のカードは遠慮なく使ってくれ!」

「おう! 行くぜ俺のターン!」

 

 遊馬 手札:4→5

 

「遊矢が伏せた罠カード《貪欲な瓶》発動! 墓地のカード5枚をデッキに戻してシャッフル! 1枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:5→6

 

デッキに戻したカード

No.39 希望皇ホープ

ガガガボルト

No.17 リバイス・ドラゴン

ガガガシスター

No.45 滅亡の予言者 クランブル・ロゴス

 

「よし、ホープをデッキに戻せたぞ。ここからどうするか……」

『遊馬、あれを見ろ』

 

 アストラルが指差す方を見ると、そこにはAカードが1枚落ちていた。

 

『翔が言うように、前もって入手しておけば相手のチャンスを減らし、こちらの手を増やすことに繋がる』

「そうだな! よし!」

 

 遊馬は翔に気付かれる前に飛び出し、Aカードを拾う。

 

 

 Aトラップ《大凶》

 

 

「どわぁぁぁ!?」

 

 遊馬 LP:2750→1950

 

 遊馬に突然雷が落ち、LPを800ポイント奪い去っていった。体から焦げ臭い煙を上げながら項垂れる遊馬を、何時もと変わらない仏頂面でアストラルが見下ろす。

 

『ふむ、やはり君は期待を裏切らない』

「俺を芸人みたいに言うんじゃねぇ! ちくしょー! 何で俺ばっかり……」

『これで逆転の方程式が完成した。手札を見ろ』

「え? ……そうか! よし、永続魔法《エクシーズ・チェンジ・タクティクス》発動! そして魔法カード《死者蘇生》! 墓地から《ガガガマジシャン》を特殊召喚!」

 

 遊馬の場にガガガマジシャンが再び現れる。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1600

 

「俺の場に”ズババ”か”ガガガ”が存在する場合、手札から《ズバババンチョーーGC(ガガガコート)》を特殊召喚できる!」

 

 続けて遊馬の場に学ランを羽織り、大剣を肩に担いだ戦士が現れる。

 

 ズバババンチョーーGC 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1800

 

「ズバババンチョーの効果発動! 墓地の”ゴゴゴ”か”ドドド”1体を特殊召喚できる! 《ゴゴゴゴーレム》を特殊召喚!」

 

 続けてゴゴゴゴーレムが現れ、遊馬の場に並ぶ。

 

 ゴゴゴゴーレム 地属性 岩石族 レベル4 ATK:1800

 

「行くぜ! レベル4《ズバババンチョーーGC》と《ゴゴゴゴーレム》でオーバーレイ!」

 

ズバババンチョーとゴゴゴゴーレムが橙の光となって飛び立つ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 光が遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「俺の戦いはここから始まる! 白き翼に望みを託せ! エクシーズ召喚!」

 

 閃光の中から白い巨大な剣が現れ、再び遊馬のエースモンスターへと姿を変える。

 

「光の使者! 現れろ《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

「ここでエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果発動! ”希望皇ホープ”のX召喚に成功した時、LPを500払うことでデッキから1枚ドローする!」

 

 遊馬 LP:1950→1450 手札:3→4

 

「まだまだ! ホープ1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!」

 

 ホープがニュートラル体へと戻り、遊馬の場に現れた金色の渦へと入っていく。

 

「カオス・エクシーズ・チェンジ!」

 

 渦の中から閃光が放たれ、その中から黒い剣が現れる。その剣は変形をはじめ、全身が黒く染まった異形のホープへと姿を変える。 

 

「混沌を光に変える使者! 《CNo.39 希望皇ホープレイ》!」

 

 CNo.39 希望皇ホープレイ

 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:3

 

「ホープをX召喚したことにより、LPを500払って1枚ドロー!」

 

 遊馬 LP:1450→950 手札:4→5

 

「あ、あんなことがあったばかりなのに、LPをそんなに減らすの?」

「減らさなきゃ勝てないんだ! 《アステル・ドローン》を召喚!」

 

 遊馬の場に可愛らしいステッキを持った小さい魔法使いが現れる。

 

 アステル・ドローン 地属性 魔法使い族 レベル4 ATK:1600

 

「ガガガマジシャンのレベルを5に変更! そしてアステル・ドローンはレベル5として扱える! 行くぜ! レベル5の《ガガガマジシャン》と《アステル・ドローン》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

 ガガガマジシャンとアステル・ドローンがそれぞれ紫、橙の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「エクシーズ召喚! 《No.19 フリーザードン》!」

 

 渦から閃光が放たれ、中から巨大な氷の結晶が現れる。それが場に降り展開すると、一見悪鬼にも見える氷の恐竜へと姿を変えた。右胸に刻まれた”19”の数字を光らせ、低い唸り声を上げる。

 

 No.19 フリーザードン 水属性 恐竜族 ランク5 ATK:2000 ORU:2

 

「素材となったアステル・ドローンの効果発動! X召喚に成功した場合、1枚ドローする!」

 

 遊馬 手札:4→5

 

「行くぜ! ホープレイの効果発動! ORUを1つ取り除くことで攻撃力をターン終了時まで500アップし、相手モンスター1体の攻撃力を1000ダウンさせる! そしてフリーザードンは1ターンに1度、他のモンスターエクシーズが効果でORUを使う場合、代わりにフリーザードンのORU1つを使うことが出来る! フリーザードンのを合わせてORUを4つ取り除き、攻撃力を2000アップ! パワー・ツール・ドラゴンを3000、ジャンボドリルを1000ダウンさせる! 〈オーバーレイ・チャージ〉!」

 

 ホープレイが背中の副椀を展開すると、背負った大剣を引き抜き掲げる。その大剣に自身の3つとフリーザードンの1つ、合計4つのORUを取り込むと全身を白く発光させ、パワー・ツール・ドラゴンとジャンボドリルを照らす。

 

 CNo.39 希望皇ホープレイ ORU:3→0 ATK:2500→4500

 No.19 フリーザードン ORU:2→1

 パワー・ツール・ドラゴン ATK:3000→0

 スーパービークロイドージャンボドリル ATK:3000→2000

 

「えええ!? こんなのありィ!?」

「更にダメ押し! 装備魔法《竜魂の力(ドラゴニック・フォース)》をホープレイに装備! 種族をドラゴン族に変更し、攻守を500アップする!」

 

 CNo.39 希望皇ホープレイ ATK:4500→5000

 

「逆転返しだ! バトル! ホープレイでパワー・ツール・ドラゴンを攻撃! 【ホープ剣・カオススラッシュ】!」

 

 ホープレイは腰の二振りのホープ剣を抜き、副椀の大剣を構えてパワー・ツール・ドラゴンに飛び掛かる。翔のLPは4100、これが決まれば遊馬達の勝ちである。圧倒的劣勢からの逆転勝利の一撃、WDCにて”エクシーズ1ターンキル”と称された遊馬の本領発揮だが、翔は引かずに迎え撃つ。

 

「これには流石に驚いたけど、僕の方が一歩上手だ! 罠カード《カオス・バースト》! 僕のモンスター1体をリリースすることで、攻撃モンスターを破壊し、その後1000ダメージを相手に与える! 逆転の逆転だ! パワー・ツールをリリース!」

 

 迫りくるホープレイに観念したのか、パワー・ツール・ドラゴンは自爆し、遊馬とホープレイを爆炎に包む。

 

『遊馬、速攻魔法だ!』

「おう! 速攻魔法《禁じられた聖衣》! このターン対象モンスターの攻撃力を600下げる代わりに、効果破壊を防ぐ! これでホープレイは破壊されず、効果ダメージも発生しねぇぞ!」

 

 CNo.39 希望皇ホープレイ ATK:5000→4400

 

 聖なる光がホープレイを包むと、ホープレイは大剣で爆炎を振り払い、遊馬を守る。

 

「ええええ~~~~!!? 絶対決まったと思ったのに!?」

「攻撃続行だ! ジャンボドリルを攻撃!」

 

 ホープレイが方向転換し、ジャンボドリルに斬りかかる。ジャンボドリルは抵抗する間もなくバラバラに分解されてしまった。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 翔 LP:4100→1700

 

「ちくしょう、あの自爆さえなかったら倒せたのにな! カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊馬

LP:950

手札:1

モンスター

・CNo.39 希望皇ホープレイ ATK:4400→3000

・No.19 フリーザードン ATK:2000 ORU:1

魔法・罠

・相克の魔術師 スケール3

・エクシーズ・チェンジ・タクティクス

・竜魂の力(装備:CNo.39 希望皇ホープレイ)

・セット

・セット

 

「逆転合戦に破れてしまった……龍亞君頼むっすよ~!」

「まっかせてー! 俺のターン、デスティニードロー! ピッキーン!」

 

 龍亞 手札:1→2

 

「やったぁ! 魔法カード《強欲で金満な壺》! EXデッキからカードを6枚裏側のまま除外して、2枚ドロー!」

 

 龍亞 手札:1→3

 

「よしよーし! 魔法カード《死者蘇生》! 《パワー・ツール・ドラゴン》を復活!」

 

 龍亞の場に再びパワー・ツール・ドラゴンが現れる。

 

 パワー・ツール・ドラゴン 地属性 機械族 レベル7 ATK:2300

 

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 〈パワー・サーチ〉!」

 

 龍亞 手札:2→3

 

「墓地の《D・マグネンU》を除外して、チューナーモンスター《D・スマホン》を特殊召喚!」

 

 龍亞の場に巨大なスマートフォンが現れ、人型のロボットへと変形する。

 

 D・スマホン 地属性 機械族 レベル1 ATK:100

 

「スマホンの効果発動! モバホンと同じように《ダイヤル~オーン》!」

 

 スマホンの胴体の液晶画面に6つの数字パネルが表示されると、モバホンと同じようにランダムで点滅を始める。やがて点滅が止まり、”1”の数字パネルが点灯する。

 

「1かぁ……出るかな? デッキをめくるよ」

 

 めくったカード

 D・チャッカン

 

「出たー! ここまではモバホンと同じだけど、スマホンはめくった”D”カード1枚を手札に加えるんだ! 加えた《D・チャッカン》を召喚!」

 

 龍亞の場に巨大なジッポライターが現れ、人型ロボットへと変形する。

 

 D・チャッカン 炎属性 炎族 レベル3 ATK:1200

 

「チャッカンの効果発動! 自分の場のモンスター1体をリリースすることで、相手に600ポイントのダメージを与える! チャッカン自身をリリース!」

 

 チャッカンが頭部に火を着火させると、そのまま遊馬へ自爆特攻を仕掛ける。

 

「どわぁ!? な、なりふり構わずきやがったな!」

 

 遊馬 LP:950→350

 

「本番はここからさ! レベル7《パワー・ツール・ドラゴン》に、レベル1《D・スマホン》をチューニング!」

 

 スマホが自身を光輪へと変えると、パワー・ツール・ドラゴンを囲み、7つの光、そして光の柱へと変える。

 

「世界の未来を守るため、勇気と力がレボリューション! シンクロ召喚! 進化せよ《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

 

 光の柱からパワー・ツール・ドラゴンが飛び出すと、装甲が弾け跳び、中から黄土色のドラゴンが飛び出す。左腕のドライバーはダガーに、パワーショベルは爪へと変わり、命の鼓動を感じさせるように全身の筋肉を隆起させ、咆哮を上げる。

 

 ライフ・ストリーム・ドラゴン 地属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:2900

 

「ほ、本物のドラゴンになっちまった!?」

『やはり、これこそがあの機械竜の真の姿か!』

「これが俺のとっておき! 最強カードさ! ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果発動! S召喚に成功した時、自分のLPを4000にできる!」

 

 ライフ・ストリーム・ドラゴンが龍亞に向かって光の粒子をバラまくと、龍亞の体が光に包まれる。

 

 龍亞 LP:1700→4000

 

「LPを一気に回復しやがった!?」

「へへっ! 俺達はまだまだ闘えるよ! でもそっちはどうかな? 装備魔法《メテオ・ストライク》をライフ・ストリーム・ドラゴンに装備! バトル! ライフ・ストリームでフリーザードンを攻撃! 【ライフ・イズ・ビューティーホール】!」

 

 ライフ・ストリーム・ドラゴンがフリーザードンに向かって光のブレスを放つ。ホープレイ渾身の一撃の為に大きくLPを削ってしまった今、この攻撃を受けてしまえば遊馬達の敗北である。

 

「そうはいかねぇ! 罠カード《聖なる鎧 -ミラーメール-》! 俺のモンスターの攻撃力を攻撃モンスターと同じにする! フリーザードンはNo.、戦闘では破壊されねぇ! 返り討ちだ!」

 

 No.19 フリーザードン ATK:2000→2900

 

「そうは行かないんだなぁ! 墓地から翔の罠カード《ブレイクスルー・スキル》を除外して効果発動! 相手モンスターの効果をターン終了時まで無効に出来るんだ! 更にライフ・ストリーム・ドラゴンが破壊される場合、かわりに俺の墓地の装備魔法を除外できるんだ! 《ブレイク・ドロー》を除外! だから破壊されるのはそっちさ!」

 

 光のブレスがフリーザードンに直撃する。フリーザードンは反撃を試みるが、突然虹色の光が体を覆い、動けなくなってしまう。動けずにブレスを受け続けたフリーザードンの体に亀裂が入り、粉々に砕けちってしまった。

 

「フリーザードン!?」

「これであの厄介な効果は使えない! まだまだ決闘は続くよ! カードを伏せてターンエンド!」

 

龍亞

LP:4000

手札:0

EXモンスター

・ライフ・ストリーム・ドラゴン ATK:2900

モンスター

・スーパービークロイドーモビルベース DEF:5000

魔法・罠

・メテオ・ストライク(ライフ・ストリーム・ドラゴン)

・セット

・セット

フィールド

・メガロイド都市

 

「遊矢! 向こうのかっとビングは凄いぜ!」

「ああ、燃えてきたよ! お楽しみはこれからだ! 俺のターン!」

 

 遊矢 手札:2→3

 

「言っておくけど、メテオ・ストライクの効果でライフ・ストリームは貫通能力が付いてるからね! 守備モンスターじゃ凌げないぞ!」

「心配ご無用! ”かっとビング”の精神で、俺も行くぞ! セット済みのスケール3《相克の魔術師》とスケール8《相生の魔術師》でPスケールを再セッティング!」

 

 遊矢の場の右側に光の柱が立ち、その中に弓矢を持った女性の魔術師が浮かび上がり、柱に”8”の数字が刻まれる。

 

「これでレベル4から7のモンスターが同時に召喚可能! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け光のアーク!」

 

 二柱の間を巨大な振り子が揺れ動き、場の中心に異空間の穴を開く。

 

「ペンデュラム召喚! 現れろ俺のモンスター!」

 

 異空間の穴から光が飛び出し、遊矢の場へと降り立つ。

 

「EXデッキからレベル7《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 

 闇属性 ドラゴン族 レベル7 ATK:3000

 

「魔法カード《波動共鳴》! モンスター1体のレベルを4にする! モビルベースのレベルを4に!」

 

 スーパービークロイドーモビルベース レベル10→4

 

「え? 何でモビルベースのレベルを? 意味あんの?」

「あるのさこれが! 相生の魔術師のP効果発動! 自分の場のXモンスター1体のランクを、自分の場のレベル5以上のモンスター1体のレベルの数と同じにする! ホープレイのランクをオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのレベルと同じ7にする!」

 

 CNo.39 希望皇ホープレイ ランク4→7

 

「そして相克の魔術師のP効果でホープレイのランクをレベルとして扱う! 遊馬……そしてユート、力を貸してくれ!」

『ああ! 行くぞ遊矢!』

 

「『 レベル7の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と、レベル7ドラゴン族となった《CNo.39 希望皇ホープレイ》でオーバーレイ! 』」

 

 遊矢の場に光の渦が現れると、オッドアイズとホープレイが紫と金色の光となって飛び込む。

 

「『 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! 』」

 

 2体が飛び込んだ渦の中から閃光が放たれる。

 

「『 二色の眼の龍よ! その黒き逆鱗を震わせ、刃向かう敵を殲滅せよ! エクシーズ召喚!』」

 

 閃光の中から現れたのは、二色の眼を輝かせ、漆黒の体に凄まじいエネルギーを纏わせた巨竜。鋭い牙を振り上げ、凄まじい咆哮を上げる。本来は忌むべき”憎悪の怒り”によって生まれた悲しきモンスター、だが今では遊矢と共にエンタメの道を切り拓く頼もしき相棒の一体――――

 

「『 ランク7! 怒りの眼輝けし竜! 《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》! 』」

 

 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン

 闇属性 ドラゴン族 ランク7 ATK:3000 ORU:2

 

「うわわわわ!? とんでもないのが出てきちゃったぞ!?」

「強面だけど、根は良い奴だよ! オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンの効果発動! Xモンスターを素材にしてX召喚に成功した場合、相手の場のレベル7以下のモンスター全てを破壊し、破壊したモンスター1体に付き1000ポイントのダメージを与える! 〈オーバーロード・ハウリング〉!」

 

 リベリオン・ドラゴンが咆哮にエネルギーを乗せ、広範囲に拡散させる。これを受けたモビルベースは堪らず体を変形させ、元のフィールド魔法へと戻ってしまった。

 

「モビルベースが!? その為にレベル4にしたのかー!?」

 

 龍亞が驚いていると、龍亞へもエネルギー波が迫る。

 

「破壊したモンスターは1体! よって1000ダメージを与える!」

「させないぞ! ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果発動! 自分が受ける効果ダメージを0にする! 〈ダメージ・シャッター〉!」

 

 龍亞に迫るエネルギー波を、ライフ・ストリーム・ドラゴンがバリアを張って防ぐ。

 

「そんな能力を持っていたのか!? (これじゃ追撃が……)」

 

 リベリオン・ドラゴンには破壊と効果ダメージを与えた後、3回攻撃を行えるという超攻撃的な能力を持っている。しかしダメージを防がれてしまっては攻撃は1回しか行えない。

 

「(せめて、やれることはやる!) 墓地の《EMスプリング―ス》を除外して効果発動! 自分のPゾーンにある”EMまたは魔術師及び場のPモンスター”の中から2枚選択し、手札に戻す! Pゾーンの《相克の魔術師》と《相生の魔術師》を手札に!」

 

 遊矢 手札:1→3

 

「《相生の魔術師》を通常召喚!」

 

 遊矢の場に相生の魔術師が現れ、弓を構える。

 

 相生の魔術師 光属性 魔法使い族 レベル4 ATK:500

 

「相生の魔術師の効果発動! 自身の攻撃力をターン終了時まで自分の場のモンスター1体の攻撃力と同じ数値にする! オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンと同じ攻撃力3000に!」

 

 相生の魔術師 ATK:500→3000

 

「スケール3《相克の魔術師》とスケール5《EMチアモール》でPスケールをセッティング!」

 

 遊矢の場の左右に光の柱が立ち、その中に相克の魔術師とモグラのチアガールが浮かび上がり、柱に”3”と”5”の数字が刻まれる。

 

「チアモールのP効果! 自分の場のPモンスターの攻撃力を300アップする! オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンはXモンスターでも、Pモンスターでもある!」

 

 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン ATK:3000→3300

 相生の魔術師 ATK:3000→3300

 

「バトル! オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃! 【反旗の逆鱗 ストライク・ディスオベイ】!」

 

 リベリオン・ドラゴンが背中の翼を広げエネルギーを溜めると、そのエネルギーを牙に集中させ、ライフ・ストリーム・ドラゴンに突撃する。ライフ・ストリーム・ドラゴンはダガーで牙を受け流す。

 

「墓地の装備魔法《7カード》を除外して破壊を無効にするよ!」

 

 龍亞 LP:4000→3600

 

「相生の魔術師で攻撃! 相生の魔術師の戦闘によって発生する相手へのダメージは0となる!」

 

 相生の魔術師が矢を放って援護するが、ライフ・ストリーム・ドラゴンはそれを右腕で防ぐ。

 

「装備魔法《フュージョン・ウェポン》を除外して破壊を無効!」

「モビルベースは破壊出来たけど、決定打にはできなかったか……」

『遊矢、待て。まだバトルを終えるな』

 

 遊矢が意気消沈してバトルフェイズを終えようとすると、ユートが現れて制止する。

 

「ユート?」

『遊矢のペンデュラムと、遊馬のペンダントが触れ合った時、あの”希望の魔術師”が生まれたな?』

「ああ、突然力が湧いてきて……」

『俺も同じだ。奥底から湧いてくる力を感じる』

「それって……」

『生まれたのは希望の魔術師だけじゃない! まだ俺達は闘える! 遊矢!』

 

 ユートの言葉と共に、リベリオン・ドラゴンのカードと遊矢のEXデッキが同時に光を放つ。

 

「そうか……よし! 遊馬が伏せた罠カード《ワンダー・エクシーズ》を発動! バトルフェイズ中にX召喚を行う! 俺は《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン》1体でオーバーレイ!」

 

 遊矢の場に現れた光の渦に、リベリオン・ドラゴンが光となって飛び込む。

 

「『 1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築! エクシーズ・チェンジ! 』」

 

 渦の中から閃光が放たれ、中から再びリベリオン・ドラゴンが飛び出す。だが先程とは違って既に翼が展開され、エネルギーの充填も完了している。

 

「『 ランク7! 限界を越えし逆鱗! かっとビングだ! 《覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンーオーバーロード》! 』」

 

 覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンーオーバーロード

 闇属性 ドラゴン族 ランク7 ATK:3000→3300 ORU:3

 

「ま、また出てきたぁ!? しかもさっきより怖いんだけど……?」

「バトルフェイズ中に特殊召喚したことにより、オーバーロードは攻撃を行うことが出来る! 更にオーバーロードはランク7のXモンスターを素材にしている場合、1度のバトルフェイズ中に3回攻撃ができる!」

「さ、3回もぉ!?」

「さあエンタメショー第2幕! ドラゴン同士の華麗な剣舞をお見せしましょう! オーバーロードでライフ・ストリーム・ドラゴンを攻撃!」

 

 オーバーロードが牙にエネルギーを集中させ、ライフ・ストリームに突撃。ライフ・ストリームは圧されながらもダガーで受け流す。

 

「装備魔法《エアークラック・ストーム》を除外して破壊を無効!」

 

 龍亞 LP:3600→3200

 

「お見事! 次はどうかな? 2回目の攻撃!」

 

受け流されたオーバーロードは反転し、再び突撃。そのまま突っ込むと思いきや、急停止してライフ・ストリームの目の前で牙を振り上げる。完全に虚を突かれたライフ・ストリームは咄嗟にダガーを構えて受けるも受け方が悪く、ダガーを折られてしまう。

 

「装備魔法《ダブルツールD&C》を除外して破壊を無効!」

 

 龍亞 LP:3200→2800

 

「さあ次こそ決まるか3回目! 攻撃!」

「装備魔法――――あーーーー!? もう墓地に装備魔法が無い!?」

 

 既に肉薄していたオーバーロードは牙のエネルギーを口に移し、ブレスとして撃ち出す。ブレスを受けたライフ・ストリーム・ドラゴンは防ぎ切れず、そのまま塵となって消えた。

 

「ああっ!? ライフ・ストリーム・ドラゴン!?」

 

 龍亞 LP:2800→2400

 

「これにてターンエンド! 最終幕にてお会いしましょう!」

 

遊矢

LP:350

手札:0

モンスター

・覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンーオーバーロード 

 ATK:3300 ORU3

・相生の魔術師 ATK:3300→800

魔法・罠

・相克の魔術師 スケール3

・エクシーズ・チェンジ・タクティクス

・EMチアモール スケール5

 

「ううっ……永続罠《破滅へのクイック・ドロー》を発動するよ……」

「あーあー今度は本気で落ち込んじゃって。大丈夫っすよ、僕が何とかしてみせるよ。僕のターン!」

 

 翔 手札:0→1

 

「《破滅へのクイック・ドロー》の効果発動! お互いのプレイヤーはドローフェイズ開始時に手札が0枚だった場合、通常ドローに加えて1枚ドローする!」

 

 翔 手札:1→2

 

「(とはいえ、あのドラゴンはまずいっすね……僕の”とっておき”、あれなら!) 罠カード《ディーラーズ・チョイス》! お互いに1枚ドローし、その後手札1枚を選んで捨てる!」

 

 翔 手札:2→3→2

 

「俺は手札0だから引いたカードを捨てるしかないな……」

 

 遊矢 手札:0→1→0

 

「揃ったぞ! 魔法カード《サイバーダーク・インパクト!》! 手札・場・墓地から《サイバーダーク・ホーン》、《サイバーダーク・エッジ》、《サイバーダーク・キール》の3体をデッキに戻し、融合召喚を行う! 手札のホーン、手札抹殺とディーラーズ・チョイスの時に墓地へ送ったエッジとキールをデッキに戻して融合!」

 

 翔の場に黒い機械竜3体が現れ、合体して1体の機械竜となる。その機械竜は禍々しいフォルムの機体を揺らし、胴体の長い鉤爪を蠢かせながら咆哮を上げる。

 

「融合召喚! 《鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン》!」

 

 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン 闇属性 機械族 レベル8 ATK:1000

 

「パワー・ツールとは違う機械の竜!? しかも何なんだこの形は?」

「その秘密はこれっす! サイバー・ダーク・ドラゴンの効果発動! 特殊召喚に成功した場合、墓地のドラゴン族1体を装備し、その攻撃力分、自分の攻撃力をアップする! 墓地の《ライフ・ストリーム・ドラゴン》を装備!」

 

 翔の場にライフ・ストリーム・ドラゴンが現れると、サイバー・ダーク・ドラゴンは鉤爪でライフ・ストリーム・ドラゴンをホールドして捕らえる。

 

 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン ATK:1000→3900

 

「攻撃力が大幅に!?」

「これだけじゃないっすよ~! 自分の墓地のモンスター1体につき100ポイント攻撃力が上がる! 墓地のモンスターは12体! よって1200アップ!」

 

 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン ATK:3900→5100

 

「さぁこれが僕と龍亞君コンビの集大成っすよ! バトル! オッドアイズ・リベリオン・ドラゴンを攻撃! 【フル・ダークネス・バースト】!」

 

 サイバー・ダクネス・ドラゴンがライフ・ストリーム・ドラゴンからエネルギーを吸収すると、それを口からブレスとして放つ。ブレスはオーバーロードを貫き、遊矢に迫る。

 

「墓地の《EMユニ》と《EMヘイタイガー》を除外してユニの効果発動! このターンの戦闘ダメージを1度だけ0にする!」

 

 遊矢の前に擬人化したユニコーンの女性が現れ、バリアを張ってブレスを防ぐ。

 

「あ、可愛い~……じゃない! そんなカード何時墓地に……次は決めるよ、ターンエンド! エンドフェイズ時にクイック・ドローのコスト、LP700を失うっす」

 

LP:2400→1700

手札:0

EXモンスター

・鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン ATK:5100

魔法・罠

・破滅へのクイック・ドロー

・ライフ・ストリーム・ドラゴン

フィールド

・メガロイド都市

 

「遊馬! 最終幕、任せてもいいか?」

「おう! バッチリ決めてやるぜ!」

「俺のカードの中にきっと役に立つカードがある! 頼んだよ!」

「ああ! 俺のターン!」

 

 遊馬 手札:1→2

 

「墓地にある遊矢の魔法カード《シャッフル・リボーン》を除外して効果発動! 自分の場のカード1枚をデッキに戻してシャッフル! その後1枚ドローする! 《エクシーズ・チェンジ・タクティクス》をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

 遊馬 手札:2→3

 

「魔法カード《ドドドドロー》! 手札の”ドドド”1体を墓地へ送り、2枚ドロー!」

 

 墓地へ送ったカード

 ドドドドワーフーGG

 

 遊馬 手札:2→1→3

 

「へへ……どいつもこいつもすげぇドラゴン持ってんだな!」

『そんなドラゴン達に、君はどう挑む?』

「そんなん決まってらぁ! ドラゴンを退治するのは”勇者”だ! 行くぜ! ペンデュラム召喚! かっとビングだァーモンスター達!」

 

 遊馬が宣言すると、柱の間に異空間の穴が開き、中から古代式戦車が飛び出す。

 

「手札からレベル4《ドドドドライバー》!」

 

 最初に現れたのは古代の戦車を引くドドドの戦士。猛牛を思わせる立派な角を付けた兜を被り、息を荒げながら場に到着する。

 

 ドドドドライバー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1800

 

「レベル4《ドドドウィッチ》!」

 

 そして、ドドドドライバーが引く戦車に乗っていたのは物々しい装束を纏った華奢な女性。名前にウィッチと付く事とマントや杖を身に着けていることから魔法使いに見えるが、立派なドドドの戦士である。

 

 ドドドウィッチ 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1200

 

「更に墓地の《ドドドドワーフーGG》の効果発動! 俺の場に”ゴゴゴ”か”ドドド”が存在する場合、墓地から特殊召喚できる!」

 

 続けてドドドドワーフが現れ、他のドドド達と並び立つ。

 

 ドドドドワーフーGG 地属性 岩石族 レベル4 ATK:0

 

「行くぜ! レベル4の《ドドドドライバー》と《ドドドウィッチ》でオーバーレイ!」

 

 2体のドドドが橙の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた赤い光の渦へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 赤い渦から閃光が放たれ、中から一振りの大剣を担いだ”勇者”が現れる。

 

「光纏いて現れろ! 闇を切り裂くまばゆき”勇者”! 《H-C エクスカリバー》!」

 

 H-C エクスカリバー 地属性 戦士族 ランク4 ATK:2000 ORU:2

 

「エクスカリバーの効果発動! ORUを2つ取り除き、攻撃力を2倍にする!」

 

 H-C エクスカリバー ATK:2000→4000 ORU:2→0

 

「それでもサイバー・ダーク・ドラゴンには届かないよ!」

「まだ終わりじゃないぜ! レベル4の《相生の魔術師》と《ドドドドワーフーGG》でオーバーレイ!」

 

 今度は相生の魔術師とドドドドワーフがそれぞれ金色と橙の光となって飛び上がり、遊馬の場に現れた金色の渦の中へと飛び込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から閃光が放たれる。そこからロケットの様にも見えるオブジェが現れ、人型の悪魔へと変形する。機械的な体だが非常に逞しいフォルムであり、王者を思わせる赤いマントを靡かせ、襟部分に”80”の数字を浮かび上がらせる。かつてはドン・サウザンドの邪悪なる意思に侵された呪いのカード。今は遊馬とアストラルに浄化された守護の鎧ーーーー

 

「猛りし魂に取り憑く呪縛の鎧! 現れろ《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》!」

 

 

 No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク

 闇属性 悪魔族 ランク4 ATK:0 ORU:2

 

「こ、攻撃力0のNo.? 怪しさ満点……」

「ラプソディ・イン・バーサークの効果発動! 1ターンに2度まで、ORUを1つ取り除き、相手の墓地のカード1枚を除外する! ORUを2つ取り除き、お前の墓地の《スーパービークロイドーモビルベース》と《パワー・ツール・ドラゴン》を除外する!」

 

 No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク ORU:2→0

 

 ラプソディ・イン・バーサークがORUを2つ取り込むと、地面を殴りつけて地割れを起こす。割れた地面から2枚のカードが飛び出し、ラプソディ・イン・バーサークはそれを両の拳で殴りつけ、ゲーム外へと弾き出す。

 

「あっ!? 墓地のモンスターが減ったことでサイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃力が落ちるけど……まだまだこっちのほうが上だ!」

 

 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン ATK:5100→4900

 

「そうさ! まだまだこんなもんじゃねぇ! ラプソディ・イン・バーサークのもう一つの効果! モンスターXの装備カードになり、装備モンスターの攻撃力を1200アップする! エクスカリバーに装備!」

 

 ラプソディ・イン・バーサークが光となってエクスカリバーに纏わりつくと、鎧となってエクスカリバーに装備される。最強の剣と鎧を得たエクスカリバーは大剣を構え、勇ましくサイバー・ダーク・ドラゴンに対峙する。

 

 H-C エクスカリバー ATK:4000→5200

 

「と、とうとう上回られた!?」

「装備魔法《アサルト・アーマー》をエクスカリバーに装備! 装備されたこのカードを墓地へ送ることで、装備していたエクスカリバーはこのターン2回攻撃できる! バトルだ!」

 

 エクスカリバーが大剣を構え、サイバー・ダーク・ドラゴンに飛び掛かる。

 

「エンタメ決闘最終幕! 最後は豪快にドラゴン退治だ! エクスカリバーでサイバー・ダーク・ドラゴンを攻撃! 【一刀両断! 必殺真剣】!」

「サイバー・ダーク・ドラゴンが戦闘破壊される場合、自身の効果で装備したモンスターを身代わりにできる!」

 

 エクスカリバーが大剣を振り下ろすと、サイバー・ダーク・ドラゴンは取り付いていたライフ・ストリーム・ドラゴンを盾にして防ぐ。斬られたライフ・ストリーム・ドラゴンは爆散し、爆風が翔を襲う。

 

「うわぁぁぁ!? ……装備していたドラゴンが外れたことにより、サイバー・ダーク・ドラゴンの攻撃力が下がる……」

 

 翔 LP:1700→1400

 鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン ATK:4900→2000

 

「これでトドメだ! 【必殺の霹靂】!」

 

 エクスカリバーの返す刃が一閃し、サイバー・ダーク・ドラゴンの首を落とす。頭を失った胴体は制御を失い、その場で爆散する。

 

「うわぁぁぁぁーーーー!?」

 

 翔 LP:1400→0

 

 翔が爆風で吹っ飛ばされて倒れる。

 RSVが消え決闘が終了すると、龍亞が慌てて翔に駆け寄る。

 

「大丈夫翔!?」

「あいたたた……いやぁ、かっこ悪いところ見せちゃったね」

「そんなことないよ! 俺、すっごく楽しかった! 翔とタッグ組めてよかったよ!」

 

 龍亞が翔を助け起こすと同時に、遊馬と遊矢も二人の元へ駆け寄る。

 

「大丈夫か!? お前ら強かったぜ!」

「良い決闘をありがとう!」

 

「ふう……とりあえずおめでとうっす。僕らに勝ったから、この先に進んでいいよ」

「まだまだ迷宮は続くから頑張ってね!」

 

 翔と龍亞は先へ続く道を指差す。遊馬達は頷いてその先へ進もうとした瞬間、遊馬がその場で膝を地面に付いた。

 

「ど、どうしたんだ遊馬!?」

 

 遊矢が心配して遊馬の顔を覗くと、遊馬は腹を押さえながら情けない顔を晒していた。

 

「……腹減った~~~~~!!! そういやこっちきてから何も食ってねぇ~~~~!!!」

「そう言えば俺も……丸一日どころか、昨日から何も食べてない!? うわぁ……腹ペコ過ぎて力が出ない……そういえば俺、食料を探してる最中だった……」

 

 遊矢も腹を押さえ、その場で蹲ってしまう。異世界に迷い込み、決闘の連続でまったく気が付かなかった空腹が今になって二人に襲い掛かる。成長期の二人にとってこれは辛い。

 そんな二人の前に翔と龍亞が来て、龍亞が遊矢の顔を覗き込む。

 

「お腹減ったの? それならごはんちょうだいって頼めばいいよ!」

「……誰に?」

「あれあれ!」

 

 龍亞が上を指差す。指先が示すのは広間の天井に大きく開いた穴。どこまでも伸びる穴の先は真っ暗で見えない。

 

「あそこに向かってごはんちょうだいって叫べばきっとごはんくれるよ!」

「ええ~……?」

「僕らだって鬼じゃないっすよ。決闘でならともかく、行き倒れでリタイアなんて誰も望んでないから」

 

 困惑している遊矢を他所に、遊馬は穴の下に向かって駆け出す。

 

「あ、遊馬!?」

「俺と遊矢にメシをくれ~~~~~!!!」

 

 遊馬の叫びが木霊の矢となり空を裂く。穴の奥へと吸い込まれていった叫びが止んだ瞬間、穴から何かを包んだ風呂敷が二つ落ちてきた。

 

「メシだ! 遊矢メシだぜ!」

「ええ!? 本当に出てきた!? いや、本当に食料なのか?」

 

 困惑したまま走り寄る遊矢を置いて、遊馬は風呂敷を解いて中身を取り出す。そこには遊馬の拳よりも大きいボール状のおにぎりが二つ入っていた。

 

「こ、これは……ばあちゃん特製の”デュエル飯”! よっしゃー!」

 

 目の前のおにぎりを必死に貪る遊馬。それを見た遊矢は困惑を食欲で吹き飛ばし、もう一つの風呂敷の中身を取り出す。そこには大きなパンケーキが入っており、よく見ると2枚のパンケーキで何かを挟んである。

 

「こ、これは……何時の日か母さんが作ってくれた”ミルフィーユとんかつのパンケーキサンド”!? いっただっきまーす!」

 

 もはや警戒も忘れてパンケーキに齧りつく遊矢。その様子を離れから眺める翔と龍亞。

 

「いいなぁ~俺もお腹空いてきちゃった。帰ったら龍可がカレー作っててくれないかなぁ」

「早く進んでくれなきゃ僕らの”役目”も終わらないんだけどなぁ……仕方ないか」

 

 思わぬところで束の間の休息を得た遊馬と遊矢。二人が楽しく美味しく食事をしている頃、迷宮に新たなる”挑戦者”が現れていたーーーー

 

 




次回予告

「決闘には勝ったけど、迷宮はまだまだ続くんだよな……」
『何弱気になってんだよ! 迷宮なんかぶっちぎってやれ!』
「ユーゴ……」
『君は僕なんだから、何も心配ないさ』
「ユーリ……」
『だが遊矢、気を付けろ。この先で待つのは”最強の決闘者”だ!』
「最強の決闘者!? ユート、それって一体!?」

次回 遊戯王~クロスオーバー・デメンションズ~
 
「遊馬と遊矢 ~彼の者の名は……~」

「お楽しみはこれからだ!」


今回の最強カード
メガロイド都市

正にビークロイドの拠点。
サーチにコストがコストにならない攻守逆転効果。
新ルールで融合が使いやすくなったのも大きいですね。

パワー・ツールのサーチ効果はアニメ方式です。
ぶっちゃけその方が描写が楽なので(笑)

今回の相手は遊戯王界における少年代表コンビ、翔と龍亞です。
翔は見た目は1年生ですがデッキは終盤の【サイバーダーク・ビークロイド】、龍亞は【ディフォーマー】、どっちもほぼ原作通りですね。
この二人、機械族使いで後半はほぼ主役決闘無しという共通点がありますね。ゼアルなら鉄男かな。まあこれらのシリーズは主人公が積極的に決闘するから仕方ないところありますよね。
逆に終盤、主人公が殆ど決闘しなかったヴレインズは異色ですね。


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遊馬と遊矢 ~彼の者の名は……~

「希望の魔術師で戦士ダイ・グレファーを攻撃!」

 

 希望の魔術師が双剣を振るい、筋骨隆々な戦士を斬り倒す。

 

「ぐわぁぁぁ!?」

 

 グリモ LP:700→0

 

 遊矢の希望の魔術師が放った斬撃の余波を受け、怪しいローブの決闘者”グリモ”が倒れる。それが合図かのようにRSVが消え、決闘が終了した。

 

「ま、まさかエリートである僕が負けるなんて……チクショウ! さっさと先に行け!」

 

 三白眼とまつ毛が特徴的な青いコートの少年”五階堂 宝山”はパートナーであるグリモを一瞥した後、悔しそうに道の先を指さす。

 

「おう! お前らの戦士族コンビも凄かったぜ! じゃあな!」

 

 そう言って遊馬は道の先へ駆け出し、遊矢もそれに続く。

 

「これで何戦目だ? 一体何時になったら出口に着くんだよ!」

「本当に迷宮なんだな。闇雲に進んでもーーーーん? 何だ?」

 

 二人が次のフロアへと着くと、そこはとても広い空間。今までのフロアは最低限1組の決闘ができるだけの広さだったのに対し、ここは決闘スタジアムと見紛うばかりの広さ。だからといって装飾などはなく、あるのは茶色い壁と地面、天井だけである。やはりここも明かりが無いのだが、電灯で照らされているかのように明るく見える。

 

「うお!? めちゃくちゃ広いぞ! ここがゴールなんじゃねぇか?」

「いや待って! 何かおかしい!」

 

 二人がフロアへ立ち入った瞬間、フロア内に霧が立ち込め視界を狭める。遊馬はキョロキョロと辺りを見回すが、見えるのは隣で同じように辺りを見回している遊矢のみである。

 

『罠か……二人とも構えろ。前方から何かくる!』

 

 アストラルが指差す方から一人の人間がヌッと霧の中から現れる。

 

「ようこそ”霧の間”へ。歓迎するぜ坊や達」

 

 現れたのは長髪に顎鬚を生やしたガラの悪い男。左頬には前科持ちの証であるマーカーが刻まれている。その外見に一瞬だけ怯むが、遊馬は一歩踏み出して相対する。

 

「お前が次の相手か!」

「その通り、ま、俺だけじゃないがな」

「タッグ決闘だろ? パートナーはどこだよ?」

「俺の名は”ニコラス”。ここでの決闘はタッグ決闘じゃねぇ。”バトルロイヤル”だ」

「バトルロイヤル?」

「そう、この広大な霧の間には俺以外にも決闘者が潜んでいる。俺とそいつらを全員倒せばお前らはこの先に進めるってわけだ」

 

 ニコラスのその言葉に、今度は遊矢が反応する。

 

「どうしてバトルロイヤルなんだ? 普通に順番に決闘するか、タッグじゃ駄目なの?」

「それはこの決闘場が関係していてな。この決闘場には特殊なフィールド魔法が張られている。決闘盤を見てみな」

 

 遊矢達はそれぞれの決闘盤のモニターを確認すると、5人の決闘者の決闘盤が通信接続されていると表示されていた。しかし、本来は決闘盤の持ち主の名前が表示されているはずなのだが、名前部分はプレイヤーとしか表示されず、顔のアイコンも真っ白になっていて誰が誰だか解らない状態だった。解るのは遊馬が”プレイヤー1”、遊矢が”プレイヤー2”であることだけである。

 

「このフィールド内にいる限り、決闘盤を使って相手プレイヤーの盤面情報を知ることが出来なくなる。直接SVを確認するしかねぇのさ」

「直接って……この霧じゃ見えない! 決闘なんて無理だ!」

「無理じゃねぇさ。俺達の距離……10mってとこか? そこまで近づきゃぎりぎり見えるぜ。このバトルロイヤルは相手を探し出し、近づいて倒す。それが基本だ。攻撃も魔法・罠も、きっちり対象を宣言するんだぜ? 決闘盤で使える機能は誰のターンか、どんな行動をしたか、残りのLPは幾つか、そんなもんだ」

「ええっと……つまりどういうことだ?」

 

 遊馬がアストラルへと向き直る。

 

『この霧の中を移動し、隠れている決闘者を見つけて攻撃する。立ち回り次第では霧を利用しながら奇襲することも可能だが、逆に思わぬ不意打ちを受けるかもしれない。……この決闘、危険だ』

「こっちが先に見つけて叩けばいいんだろ! やってやるぜ!」

『そんな簡単な話ではない。ここは奴らのテリトリー、確実に罠を張っているだろう』

「それでもやるしか先に進めない! その決闘、受けてやる!」

 

 遊馬が宣言すると、ニコラスは嫌らしい笑みを浮かべる。

 

「それじゃあ決闘スタートだ。LPは4000。バトルロイヤルルールにより、全プレイヤーは最初のターンに攻撃はできない。順番は番号が若い順だ。それじゃ健闘を祈るぜ、ククク……」

 

 そう言ってニコラスは後退し、霧の中へと消える。

 遊馬と遊矢は決闘盤を展開し、デッキから手札を引き抜いた。最初はプレイヤー1である遊馬からのターンである。

 

「くそ、本当に決闘盤に情報が表示されねぇ。5人決闘してるってことくらいしか解んねぇぞ!」

『遊馬、ここは相手のテリトリー、慎重にいけ』

「おう! 俺のターン! 《ズババナイト》を召喚!」

 

 遊馬の場に鋸の様な双剣を逆手に持った金色の騎士が現れる。これこそが遊馬を支える”オノマト”の一派”ズババ”の騎士、ズババナイトである。

 

 ズババナイト 地属性 戦士族 レベル3 ATK:1600

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊馬

LP:4000

手札:2

モンスター

・ズババナイト ATK:1600

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

 遊矢 手札:5→6

 

「最初は皆攻撃ができないんだ。なら守りを固める! 《EMアメンボート》を召喚!」

 

 遊矢の場に小型のボートを背負った巨大なアメンボが現れる。

 

 EMアメンボート 水属性 昆虫族 レベル4 ATK:500

 

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

遊矢

LP:4000

手札:3

モンスター

・EMアメンボート ATK:500

魔法・罠

・セット

・セット

 

 遊矢がターンを終了させると、二人の決闘盤のモニターが動く。

 

プレイヤー3

ドローフェイズ

スタンバイフェイズ

メインフェイズ

モンスターを召喚

カードをセット

ターンエンド

 

プレイヤー4

ドローフェイズ

スタンバイフェイズ

メインフェイズ

モンスターを召喚

ターンエンド

 

プレイヤー5

ドローフェイズ

スタンバイフェイズ

メインフェイズ

モンスターを召喚

 

「くそ! 何を召喚したんだ! アストラル、遊矢、捜しに行こうぜ!」

『落ち着け遊馬! 相手の出方を見るんだ! ルール通りなら相手もこちらの手は見えない。近づいてくるはずだ。そこを見極めて叩くぞ』

「えーでもよ……」

「遊馬、俺もそれがいいと思う。下手に動いて遊馬とはぐれる方が怖い」

「遊矢までそういうなら……もどかしいぜ!」

 

プレイヤー5

ターンエンド

 

 プレイヤー5がターンを終了した瞬間、決闘盤のアラームが短く鳴る。

 

 

{プレイヤー6が乱入しました。乱入ペナルティー2000ポイント}

 

 

 プレイヤー6 LP:4000→2000

 

プレイヤー6

ドローフェイズ

 

「何だ? 新手か!?」

『遊馬、何度も言っているが、ここは敵のテリトリーだ。増員して我々を消耗させようとしているのか……厄介だな』

 

プレイヤー6

スタンバイフェイズ

メインフェイズ

永続魔法を発動

モンスターをセット

カードセット

ターンエンド

 

「俺のターン!」

 

遊馬 手札:2→3

 

「くそ! 見えないから攻撃できねぇ! 《ガンバラナイト》を召喚!」

 

 遊馬の場にガンバラナイトが現れる。

 

 ガンバラナイト 地属性 戦士族 レベル4 ATK:0

 

「早くこっち来やがれってんだ! ターンエンド!」

 

遊馬

LP4000

手札:2

モンスター

・ズババナイト ATK:1600

・ガンバラナイト ATK:0

魔法・罠

・セット

・セット

 

「俺のターン!」

 

 遊矢 手札:3→4

 

「よし! 《EMディスカバー・ヒッポ》を召喚!」

 

 遊矢の場にシルクハットを被ったピンクのカバが現れる。遊矢のエンタメショーにおける1番のパートナー、ディスカバー・ヒッポの登場である。

 

 EMディスカバー・ヒッポ 地属性 獣族 レベル3 ATK:800

 

「カバ?」

「遊馬、アストラル、ヒッポはその名の通り”発見の達人”なんだ! ヒッポに相手決闘者を捜してもらおう! はぐれない様に付いてきてくれ」

『相手を見つけ出せるなら話は別だ。行こう遊馬』

「カバなのにそんなこと出来るのか! 頼んだぜ!」

 

 遊矢はヒッポの背に乗り、遊馬達を引き連れて移動を始める。

 

「どうだヒッポ、この辺にいそうか?」

『ヒポポ……』

「まだ分からないか……おっと」

 

 遊矢の決闘盤からターンのタイムリミットが迫っている事を告げるアラームが鳴る。

 

「俺のターンの間に見つけたかったけど、仕方ないか。一回止まって相手の出方を見よう! ターンエンド!」

 

遊矢

LP:4000

手札:3

モンスター

・EMアメンボート ATK:500

・EMディスカバー・ヒッポ ATK:800

魔法・罠

・セット

・セット

 

プレイヤー3

ドローフェイズ

スタンバイフェイズ

メインフェイズ

魔法カードを発動

モンスターを特殊召喚

モンスターを召喚

バトルフェイズ

 

「バトル? え!?」

 

ガンバラナイトが対象に選択されました。

バトルを行います。

 

 遊馬達が動揺していると、霧の中から両手がフック状になった悪魔が飛び出し、ガンバラナイトへと迫る。

 

 ヒドゥンナイトーフックー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1600

 

「ガ、ガンバラナイトの効果発動! 攻撃対象になった時、守備表示にする!」

 

 飛び出した悪魔に対し、ガンバラナイトは咄嗟に両手の盾を構え、悪魔のフックによる切り裂き攻撃を防ぐ。

 

 ガンバラナイト ATK:0→DEF:1800

 プレイヤー3 LP:4000→3800

 

「防げた……いや攻撃ってことは、どこだ決闘者!?」

 

 3人が辺りを見回していると、モニターに新たな表示が浮かぶ。

 

 ズババナイトが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 デーモン・ソルジャー 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1900

 

 霧の中から別の悪魔が飛び出し、手に持った剣でズババナイトを切り倒す。

 

「ズババー!? くそ! どこから攻撃してきてんだ!?」

 

 遊馬 LP:4000→3700

 

 罠を発動

 ガンバラナイトが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 マッド・デーモン 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1800→2500

 

 更に霧の中から動物の骨を組み合わせて人型に作られた悪魔が飛び出してくる。その悪魔は胴体が大きな顎となっており、顎の中に収められたドクロを粉々に噛砕くと、破片をガンバラナイトに向かって飛ばす。破片はガンバラナイトをマシンガンの弾丸の様に貫き、破壊してしまう。

 

「うわぁぁぁ!?」

 

 遊馬 LP:3700→3000

 

「遊馬!? 大丈夫か!?」

「ああ……どうなってんだ!? こっちから見えないんじゃ相手も見えないんじゃないのか!?」

『やはりこれは罠だ。恐らくは相手の決闘盤にはこのルールが適用されていない、もしくは別の手段で我々の位置や盤面を把握しているのだろう』

「汚ぇぞ! 正々堂々決闘しろ!」

 

 プレイヤー3

 ターンエンド

 

 プレイヤー4

 ドローフェイズ

 スタンバイフェイズ

 メインフェイズ

 モンスターを召喚

 魔法を発動

 モンスターを召喚

 バトルフェイズ

 EMアメンボートが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 ジャイアント・オーク 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:2200

 

 霧の中から棍棒を持った大柄のオークが現れ、アメンボートに襲い掛かる。

 

「アメンボートの効果発動! 攻撃対象に選択された時、守備表示にして攻撃を無効にする!」

 

 アメンボートが防御体勢を取った瞬間、オークは急に立ち止まり、霧の中へと戻っていった。

 

 EMアメンボート ATK:500→DEF:1600

 

 EMアメンボートが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 遅すぎたオーク 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:2200

 

 霧の中から可愛らしい怪獣のリュックサックを背負ったオークが現れ、慌てた様子でアメンボートに向かって飛び掛かる。アメンボートは成すすべもなく巨体によって潰されてしまった。

 

 EMディスカバー・ヒッポが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 ゴブリンエリート部隊 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:2200

 

 霧の中から鎧を着たゴブリンの集団が現れ、ヒッポを袋叩きにして破壊してしまう。上に乗っていた遊矢は襲われる前に慌てて飛び退いた。

 

「ヒッポ!? ごめんよ……」

 

 遊矢 LP:4000→2600

 

 プレイヤー4

 ターンエンド

 

 プレイヤー5

 ドローフェイズ

 スタンバイフェイズ

 メインフェイズ

 モンスターを召喚

 魔法発動

 モンスターを召喚

 魔法発動

 モンスターを特殊召喚

 バトルフェイズ

 

 プレイヤー2が攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 モリンフェン 闇属性 悪魔族 レベル5 ATK:1550

 

 霧の中から長い腕とかぎづめが特徴の奇妙な姿をした悪魔が現れ、遊矢へと迫る。

 

「速攻魔法《超カバーカーニバル》! デッキ・手札・墓地から《EMディスカバー・ヒッポ》を特殊召喚する!」

 

 遊矢の場に再びヒッポが現れ、モリンフェンとの戦闘を始めるーーーーかと思いきや、ヒッポは後ろ脚で立ち上がり、一礼する。

 

 EMディスカバー・ヒッポ 地属性 獣族 レベル3 DEF:800

 

「更に《カバートークン》を可能な限り特殊召喚!」

 

 遊矢の場に雌のカバのカーニバルダンサー4体が現れ、ヒッポと共に踊り出す。

 

 カバートークン×4 地属性 獣族 レベル1 DEF:0

 

「どんより霧天気でも、踊って憂鬱を吹き飛ばす! このターン、相手はカバートークン以外のモンスターを攻撃対象にはできないぞ!」

 

 モリンフェンは遊矢の前に現れたトークンに向かって飛び掛かり、かぎづめで切り裂く。

 

 プレイヤー1が攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 魔人デスサタン 闇属性 悪魔族 レベル4 ATK:1400

 

 霧の中から闇にとけ込む黒のタキシードに身をつつんだ悪魔が現れ、遊馬に襲い掛かる。

 

「手札から《ガガガガードナー》の効果発動! 相手の直接攻撃宣言時、攻撃表示で特殊召喚できる!」

 

 遊馬の前にガガガガードナーが現れ、デスサタンを睨みつけて威圧する。

 

 ガガガガードナー 地属性 戦士族 レベル4 ATK:1500

 

 デスサタンはこれに怯み、攻撃対象をカバートークンに変更して破壊する。

 

 カバートークンが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 死神ブーメラン 炎属性 悪魔族 レベル3 ATK:1000

 

 霧の中から高速で回転し飛ぶ刃が飛び出し、カーバートークン1体を切り裂いて破壊する。

 

 カバートークンが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 ガーゴイル 闇属性 悪魔族 レベル3 ATK:1000

 

 霧の中から翼、角、長い耳、鋭い爪ーーーー悪魔をイメージする風貌そのもの、正に悪魔という見た目の悪魔が現れ、カバートークンを爪で切り裂いて破壊する。

 

 プレイヤー5

 ターンエンド

 

「ちくしょう! このままじゃやられっぱなしだぜ!」

「落ち着いて遊馬、とりあえず攻撃が来た方向をーーーー何だ?」

 

 遊矢が霧の先に目を向けると、何か光輝いているのが見える。

 

「(何だ? 何が光っているんだ?)」

 

 プレイヤー6

 ドローフェイズ

 スタンバイフェイズ

 メインフェイズ

 モンスターをアドバンス召喚

 罠カードを発動

 魔法カードを発動

 モンスターを融合召喚

 モンスター効果を発動

 魔法カードを発動

 モンスターを儀式召喚

 モンスターを特殊召喚

 永続魔法を発動

 装備魔法を発動

 装備魔法の効果を発動

 

 光の方向から波動が広がると、遊馬のガガガガードナーと遊矢のヒッポが脱力してしまう。

 

  ガガガガードナー ATK:1500→250

  EMディスカバー・ヒッポ ATK:800→0

 

「ヒッポ!?」

「ガガガガードナー!? な、何が起こってんだ!?」

 

 プレイヤー6 

 バトルフェイズ

 

 ガーゴイルが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 モンスター効果を発動

 

 モリンフェンが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 プレイヤー5のLPが0になりました。

 

「え? やられた? 何で? 仲間じゃないのか?」

 

 遊矢が混乱していると、光の位置が動いて止まる。

 

 プレイヤー6

 

 ジャイアント・オークが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 モンスター効果を発動。

 

 遅すぎたオークが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 

 プレイヤー4のLPが0になりました。

 

「ま、また倒されたぞ!? 1ターンで2人も!? どうなってんだ!?」

 

 遊馬も驚いて決闘盤の通知を見る。

 

 プレイヤー6

 

 マッド・デーモンが攻撃対象に選択されました。

 バトルを行います。

 モンスター効果を発動

 

「ぐわぁぁぁーーーー!?」

 

 ニコラス LP:3800→1200

 

 決闘盤の通知と同時に、霧の中から先程会ったニコラスが弾き飛ばされて遊馬達の前で倒れる。付き従うは脱力した様子の悪魔達ーーーー

 

 ヒドゥンナイトーフックー ATK:1600→350

 デーモン・ソルジャー ATK:1900→650

 

「あ、お前!」

「へ、ヘルマン! ハンス! ほ、本当にやられちまったのか!?」

 

 ニコラスは決闘盤とは違う端末に向かって必死に叫ぶ。暫くすると、ニコラスが飛ばされてきた方向から光が近づいてくる。その正体は黄金に輝く逆三角錐の物体。その形を認識できる位置まで近づくと、光が止んでしまった。光が止んでしまったせいで分かり辛いが、どうやらそれはペンダントの様なもので、何者かが首から下げているようだ。ギリギリ距離が足りないからなのか、その人物の顔は霧のせいでよく見えない。

 

「永続魔法《螺旋槍殺(スパイラル・シェイバー)》の効果により、2枚ドローして1枚手札を捨てるぜ」

 

 ??? 手札:4→6→5

 

 遊矢は謎の決闘者の胸元で揺れる三角錐に気付き、指差す。

 

「遊馬、あのペンダントを見てくれ!」

「ありゃタイタンって奴が持ってた! 何であいつが倒してんだ? 仲間じゃねぇのか?」

「あんな若々しい声だったかな? 体格も違うけど……」

 

「《デーモンの杖》と《呪われし竜ーカース・オブ・ドラゴン》の効果により、お前のモンスターは闘う力を失った。伏せカードも手札も無い。ゲームオーバーだな」

「な、な、何者なんだてめぇは!? どうして俺達の位置と盤面が分かった!?」

「霧も闇も同じだ。俺の”眼”は誤魔化せないぜ」

 

 そう言った瞬間、その人物の額に妖しく輝く”眼”が浮かび上がる。相変わらず表情は見えないが鋭い眼光を放つ両目だけが霧の上に浮かび上がり、3つの”眼”が静かにニコラスを睨んでいた。

 

「く、くそ! 闇のカードが機能さえしていれば!」

「闇のカードか……お前には過ぎた”オモチャ”だったな」

 

 謎の決闘者が手を挙げて合図すると、背後の霧の中から恐ろしい姿の上級悪魔が現れる。白く固い外殻に覆われ、その顔は憤怒で歪み、全身に雷の様な魔力を迸らせている。

 

 デーモンの召喚 闇属性 悪魔族 レベル6 ATK:2500

 

「デーモンの召喚でヒドゥンナイトーフックーを攻撃! 【魔光雷】!」

 

 デーモンの召喚が全身から電撃を放ち、ヒドゥンナイトーフックーを一瞬で焼き払う。

 

「ぐわぁぁぁーーーー!?」

 

 ニコラス LP:1200→0

 

 ニコラスは衝撃で吹き飛ばされ、霧の彼方へと消えた。

 謎の決闘者はそれを見届けると、今度は遊馬達へと向き直る。

 

「さて……あと二人か」

「!? く、来るか! 負けねぇぞ!」

「慌てるなよ、このターン俺に出来るのはここまでだ。カードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

 この瞬間、霧に隠れて見えていなかった決闘者の場のモンスター達が前に進み出ることで、その全容が明らかになる。

 

???

LP:2000

手札:2

EXモンスター

・天翔の竜騎士ガイア ATK:2600

モンスター

・デーモンの召喚 ATK:2500

・カオス・ソルジャー ATK:3000

・カオス・ソルジャーー開闢の使者ー ATK:3000

魔法・罠

・守護神の宝札

・デーモンの杖(装備:デーモンの召喚)

・螺旋槍殺

・セット

・セット

 

 デーモンの頭上を飛ぶのは、禍々しい飛竜に跨った騎士。両手にランスを持ち、何時でも突撃できると言わんばかりに構える。

 

 天翔の竜騎士ガイア 風属性 ドラゴン族 レベル7 ATK:2600

 

 両脇を固めるのは、青い鎧を纏い、片手剣と盾を持った騎士二人。人間の様に見えるが、二体とも人間とは思えない様な凄まじい威圧感を放っている。

 

 カオス・ソルジャー 地属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 カオス・ソルジャーー開闢の使者ー 光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

「な、何て場だ。たった2ターンでここまで揃えたって言うのか!?」

 

 驚く遊矢と、決闘者とモンスター達に対して構える遊馬を見比べながら、決闘者は一歩前へ踏み出す。これによってようやくその顔が見えるようになった。その顔を見た瞬間、遊馬と遊矢は何か引っかかるものを感じた。

 

「(あれ? 何かどっかで見たような気がする、ような……)」

「(誰だ? 塾のどこかで見たような……)」

 

「子供か……悪いが、ゲームなら俺は子供相手でも容赦はしないぜ。来な、二人とも相手にしてやる」

「舐めやがって! 見てろよ!」

『遊馬! 待て!』

 

 遊馬が勇んでカードを引こうとすると、アストラルがそれを制止する。

 

「何だよアストラル!」

『あの決闘者……!』

「何だそいつは? SVかと思ったが……もしや”精霊”か?」

 

 決闘者がアストラルの方を見る。

 

「あいつ、アストラルが見えてんのか?」

『今、それは問題ではない!』

「じゃあ何だよ!?」

『遊馬、気を付けろ。私の決闘者としての勘が告げている……この男は、今までこの世界で闘ってきたどの決闘者よりも強い!』

「何だって!?」

『間違いなくあの者は”最強の決闘者”! 遊馬、本気で掛かれ! でなければ次に霧の彼方へと消えるのは我々だ!』

「マジかよ!? 俺のターン!」

 

 遊馬 手札:2→3

 

『遊馬! ホープだ!』

「解ってらぁ! 《ガガガマジシャン》を召喚!」

 

 遊馬の場にガガガマジシャンが現れる。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族族 レベル4 ATK:1500

 

「レベル4の《ガガガガードナー》と《ガガガマジシャン》をオーバーレイ!」

 

 ガガガガードナーとガガガマジシャンが橙と紫の光となって飛び上がる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 二つの光が遊馬の場に現れた金色の渦へと飛び込み、閃光を放つ。

 

「俺の闘いはここから始まる! 白き翼に望みを託せ! 現れろ光の使者! 《No.39 希望皇ホープ》!」

 

 閃光の中からニュートラル体である剣が現れ、ホープへと変形する。

 

 No.39 希望皇ホープ 光属性 戦士族 ランク4 ATK:2500 ORU:2

 

「No.……またそのカードか。一体何枚あるんだ?」

「No.のこと知ってるみたいだな! 俺達が勝ったら喋って貰うからな! バトル! ホープでカオス・ソルジャーを攻撃!」

「攻撃力3000のカオス・ソルジャーに攻撃だと!?」

 

 決闘者が訝しむ中、遊馬は手札からカードを取り出す。

 

「ホープの効果発動! ORUを1つ使って攻撃を無効にする! ホープ自身の攻撃を無効にし、速攻魔法《ダブル・アップ・チャンス》を発動! 攻撃が無効になった場合、そのモンスターの攻撃力を倍にしてもう一度バトルできる!」

 

 No.39 希望皇ホープ ATK:2500→5000 ORU:2→1

 

「へぇ、そんな戦い方があるのか」

「これでホープの攻撃力は5000! カオス・ソルジャーは3000! これで終わりだ! 【ホープ剣・ダブルスラッシュ】!」

 

 ホープが腰のホープ剣二振りを抜き、カオス・ソルジャーへと斬りかかる。

 

「俺は手札の《クリボー》を捨て、戦闘ダメージを0にする!」

 

 ホープの二撃はカオス・ソルジャーを葬るが、その衝撃はクリボーによって受け止められ、決闘者には届かない。

 

「惜しかったな。それで終わりか?」

「くそ! ダメージが届かなかった!」

『悔やんでも仕方がない。守りを固めろ』

「おう! 罠カード《戦線復帰》、永続罠《強化蘇生》! 戦線復帰の効果で墓地の《ガガガマジシャン》を守備表示で特殊召喚! そして強化蘇生は墓地のレベル4以下のモンスター1体のレベルを1、攻守を100上げて特殊召喚できる! 《ガンバラナイト》を特殊召喚!」

 

 遊馬の場に再びガガガマジシャンが、そしてガンバラナイトが並び立つ。

 

 ガガガマジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル4 DEF:1000

 ガンバラナイト 地属性 戦士族 レベル4→5 DEF:1800→1900

 

「ガガガマジシャンの効果発動! レベルを1から8までの間の数値に変更できる! レベルを5にする!」

 

 ガガガマジシャン レベル4→5

 

「レベル5《ガガガマジシャン》と《ガンバラナイト》でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 2体のモンスターが光となって金色の渦に飛び込み、渦から閃光が放たれる。

 

「現れろ《No.19 フリーザードン》!」

 

 閃光の中からニュートラル体である氷の結晶が現れると、展開してフリーザードンとなる。

 

 No.19 フリーザードン 水属性 恐竜族 ランク5 DEF:2500 ORU:2

 

『よし、フリーザードンがいればホープの能力の使用回数が増える。No.の耐性と守備力も合わさり、守りの面は申し分ない。考えたな』

「任せておけって! カードを伏せてターンエンド!」

 

遊馬

LP3000

手札:0

モンスター

・No.39 希望皇ホープ ATK:2500 ORU:1

・No.19 フリーザードン DEF:2500 ORU:2

魔法・罠

・強化蘇生

・セット

 

「俺のターン!」

 

 遊矢 手札:3→4

 

「魔法カード《EMキャスト・チェンジ》! 手札の”EM”を任意の数だけ見せることで、それをデッキに戻してシャッフル! 戻した枚数分と、更に1枚ドローする! 俺は手札のEM3枚全てをデッキに戻し、4枚ドロー!」

 

デッキに戻したカード

EMハンマー・マンモ

EMボットアイズ・リザード

EMスライハンド・マジシャン

 

 遊矢 手札:3→0→4

 

『ヒポポ!』

「ヒッポ、調子が戻ったのか! よし、《EMソード・フィッシュ》を召喚!」

 

 遊矢の場に剣の様に鋭い魚が現れ、分身して決闘者の場に突撃する。

 

 EMソード・フィッシュ 水属性 魚族 レベル2 ATK:600

 

「何だ?」

「私のエンタメ決闘をご覧あれ! ソード・フィッシュは召喚・特殊召喚に成功した場合、相手のモンスター全ての攻守を600ダウンさせます!」

 

 無数のソード・フィッシュが決闘者の場のモンスターに突き刺さり、力を奪う。

 

 天翔の竜騎士ガイア ATK:2600→2000

 デーモンの召喚 ATK:2500→1900

 カオス・ソルジャーー開闢の使者ー ATK:3000→2400

 

「ここでヒッポの効果! ヒッポが場に存在する限り、私は通常の召喚に加えて、このターン、アドバンス召喚を行うことができるのです! ヒッポとソード・フィッシュをリリース!」

 

 ヒッポとソード・フィッシュが光の中へと消えると、その光の中から二色の眼と大きな翼を持つ巨竜が現れる。

 

「進化を促す二色の眼! その証たる大いなる翼を持って飛翔せよ! アドバンス召喚! 《オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン》!」

 

 オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル8 ATK:3000

 

「オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンの効果発動! アドバンス召喚に成功した場合、相手モンスター1体を破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与える! 対象は開闢の使者! 劣勢を覆す魂の一撃! 決まりましたらご喝采! 〈リアクション・ノヴァ〉!」

 

 アドバンス・ドラゴンがブレスを放ち、開闢の使者を吹き飛ばす。

 遊矢達が警戒した様子で窺っていると、爆炎が止み、煙の中から決闘者が姿を現す。

 

「……やるじゃないか。今のは効いたぜ」

 

 ??? LP:2000→5000→2000

 

「LPが減っていない!? どうして……」

「速攻魔法《非常食》! 俺の場にセットしていた《守護霊のお守り》、《デーモンの杖》、《螺旋槍殺》を墓地へ送り、LPを3000回復したのさ。更に発動させていた罠カード《守護霊のお守り》の効果により、ガイアの攻撃力をターン終了時まで俺の墓地のモンスター1体に付き100アップする! 俺の墓地のモンスターは10体。よって1000ポイントアップ!」

 

 天翔の竜騎士ガイア ATK:2000→3000

 

「……まだまだ! 私のショーは続いています! アドバンス・ドラゴンでデーモンの召喚を攻撃! 【螺旋のストライク・フレイム】!」

 

 アドバンス・ドラゴンがブレスを放ち、デーモンの召喚を焼き尽くす。

 

「くっ……俺のLPはまだ尽きてないぜ? まだショーは続くな?」

 

 ??? LP:2000→900

 

「アドバンス・ドラゴンの効果発動! モンスターを戦闘破壊した時、自分の手札・墓地からレベル5以上のモンスター1体を守備表示で特殊召喚できる! 手札の《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を特殊召喚!」

 

 遊矢の場にオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが現れ、防御体勢を取る。

 

 オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 

 闇属性 ドラゴン族 レベル7 DEF:2000

 

「(凄い、効果ダメージを防ぐ流れで、戦闘の対策まで……って、エンタメしてる俺が感心しちゃってるよ)」

 

 そう思って、遊矢は気付く。

 

「(……物凄い展開からの3人抜き、そして今の攻防……この人の決闘は華があるって言うか……自然なままで”エンタメ決闘”なんじゃないか?) カードを伏せてターンエンド!」

 

遊矢

LP:2600

手札:0

モンスター

・オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ATK:3000

・オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン DEF:2500

魔法・罠

・セット

・セット

・セット

 

「……この1ターンだけで解るぜ。お前達、相当手練れの決闘者だな? それだけじゃない、決闘への熱い魂を感じる……その魂に、俺は全力で応える!」

 

 この瞬間、決闘者のペンダントが金色の輝きを放つ。そして、遊馬の”皇の鍵”と遊矢の”ペンデュラム”がそれに共鳴するかのように輝きだした。

 

「な、何だ!? 鍵が!?」

『これは……!?』

 

「ペンデュラムに一体何が!?」

 

 3つの輝きは増し、遊馬、アストラル、遊矢を記憶の彼方へと導くーーーー

 

 

 * * *

 

 

 ここは遊馬とアストラルの記憶の中。在りし日の日常。その中で遊馬は大量の食料を背負い、長い階段を登り、古ぼけた建物の中に入る。

 

「じいちゃーん、”六十郎”じいちゃーん! メシ持ってきたぞー!」

 

 ここは由緒正しき決闘者の修業場”決闘庵”。かつて遊馬もここで教えを受け、決闘における大切な心を学んだ。今日は祖母からのお使いでここの主”六十郎”に食料を届けに来ていた。

 

「あれ? 留守かな? 折角持ってきてやったのに」

 

 遊馬は荷物を置き、庵の奥へと入る。そこには伝説のデュエル・モンスター達を象った木像が並べられており、遊馬はここに来るたびにこの木像達を眺めていくのだ。

 

「へへ! やっぱりかっけーなぁ! 特にーーーー」

 

 遊馬は一体の木像の前に立つ。それは伝説の魔法使いを象った木像。

 

「”ブラック・マジシャン”! 初めてここに来た時の事もあってか、やっぱり俺はこいつが一番のお気に入りだな!」

「そのブラック・マジシャンが、何故伝説に語られるモンスターになったか知っているか?」

 

 いつの間にか遊馬の背後に立っていた小さな老人。この老人こそが遊馬の師匠である”六十郎”である。

 

「うおっ!? じいちゃん何時の間に……って、えーと、何かの番組で聞いたことあったような……」

「これじゃよ、これ」

 

 六十郎が遊馬に一冊の雑誌を差し出す。相当昔に発行されたものらしく、しかも何度も読み返していたようでページはボロボロ。しかし大切に保管していたからなのか、読むには十分なだけの原型は止めている。

 

「何だこりゃ? 昔の雑誌?」

「ワシがお前さんくらいの歳に出た雑誌じゃよ。その表紙をみてみぃ」

 

 遊馬が雑誌の表紙を見ると、そこには気弱そうで優し気な雰囲気の少年が照れたような表情でトロフィーを抱えている写真が掲載されていた。

 

「こいつがどうかしたのか?」

「その写真の人こそ、初代決闘王”武藤 遊戯”じゃよ」

「決闘王!? 最初の!? え、こんな弱そうな奴が!?」

 

 決闘王ーーーー遊馬も夢の目標に挙げている程の、決闘者達の憧れの称号である。

 

「ところがどっこい、武藤 遊戯は決闘の時には豹変し、とんでもない強さを見せるんじゃ。一説には”二重人格者”だった、なんて都市伝説も残っておる。このページじゃ」

 

 六十郎が雑誌のページをめくると、遊戯が決闘を行っている時の写真が乗ったページを開く。その写真に写った遊戯は正に別人。気弱そうな雰囲気が一変して自信に満ち溢れた、強気な表情でカードを手にしていた。

 

「そして彼が愛用したエースモンスターが、ブラック・マジシャンだったのじゃ」

「へぇ~……通りで有名なモンスターなはずだぜ!」

「遊戯も有名なはずなんじゃが……まあ無理も無いか、生きていたとしても、ワシ以上の爺様なはずじゃからなぁ」

「そんな昔の決闘者なのか。六十郎じいちゃんは決闘したことはあるのか?」

 

 遊馬の問いに、六十郎は懐かしそうに目を細める。

 

「ワシがお前さん位の歳の頃、遊戯は決闘王になった。デュエル・モンスターズが創成期を抜けたばかりの頃、遊戯の登場に決闘界は大きく沸き立ったものじゃ」

 

 六十郎は遊馬に武藤 遊戯の武勇伝を語り始める。表舞台に突然現れた遊戯は、実力者の”海馬 瀬人”、創造主である”ペガサス・J・クロフォード”を打倒し、ついには町一つを舞台とした世界規模の大会”バトルシティ”を制し、決闘王の座と神のカードを手にした。

 

「それからというもの、遊戯を倒そうと世界中の猛者達が遊戯に挑んだ。勿論、遊戯を倒せる者などいなかったがな」

「じいちゃんは? じいちゃんは挑戦しなかったのか?」

 

 六十郎は少し寂しげな表情をした後、遠くを見つめる。

 

「ワシも必死になって決闘の腕を磨き、自慢のデッキを作り上げ、彼の住む童実野町へと向かった。決闘王に挑戦するためにな」

「そ、それでどうなったんだ!?」

「……残念ながら、彼は決闘王の位を返上し、世界へ旅だった後じゃった。彼にも、夢があったらしいからの」

「……そっか、じいちゃん、悔しかったろうな」

「はっはっは! なーに、寧ろ燃え上がったよ! 何時か名を上げて、武藤 遊戯のような決闘者になってやる! そう決心したもんじゃ。何を隠そう、ワシの使うカードは武藤 遊戯が使っていたカードでもあるんじゃ」

「じいちゃんが使ってたカードっていやぁ……アルカナ ナイトジョーカーとか、カオス・ソルジャーとかか? すげぇカードだと思ってたけど、決闘王のカードだったのか」

「ふふふ……武藤 遊戯の伝説は、ワシの青春の思い出の中で今も輝き続けておる」

 

 六十郎は雑誌の写真を見つめ、フッと笑う。

 

「もし、もし一度だけあの頃に戻れるとするならば、ワシはこう願うだろうよーーーー」

 

 

 

 

 伝説の決闘王”武藤 遊戯”と決闘がしたい、とーーーーー

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 ここは遊矢の記憶。いつも通り学校へ通い、いつも通り決闘塾へ向かう。

 遊矢は幼馴染の”柊 柚子”と、年下の小学生トリオ”タツヤ”、”アユ”、”フトシ”と共に視聴覚室へと入り、塾長である”柊 修造”の講義を受けていた。

 

「さぁー今日は決闘の歴史を学んで行くぞ!」

「えー……いいよ歴史なんて。それより俺Pカードの練習がしたいんだけど」

「ばかもーん!!!」

 

 暑苦しい塾長に対して冷めた返答をする遊矢。案の定、熱血の大音声によって椅子ごと転がされる。

 

「いてて……」

「決闘の歴史は人の歴史! 先人達はそのまた先人達から学び、今の決闘界を創り上げて来たのだ! それを遊矢お前は~!」

「お父さん! 時間無くなるから早く進めて。遊矢もちゃんと授業受けるの! 本当にPカードの練習時間無くなっちゃうよ?」

 

 柚子に諫められ、修造は落ち着きを取り戻し、遊矢は大人しく席に付く。

 

「……今日のテーマはこの人! 伝説の初代決闘王”武藤 遊戯”についてだ!」

 

 視聴覚室の灯りを落とし、投影機がホワイトボードに映像を映す。そこには自信に満ち溢れた強気な表情でカードを手に持つ少年が映し出されていた。

 

「初代決闘王ってことは、一番最初にチャンピオンになった人ってことですよね?」

 

 タツヤが手を挙げて訊ねると、修造は力強く頷く。

 

「その通り! ストロング石島や遊勝先輩よりもずっと昔に、決闘者の頂点に立っていた人物だ!」

「(父さんと同じ、チャンピオンか……)」

 

 尊敬する父の名を聞いて少し興味が湧いた様子の遊矢。それを感じ取った修造は笑みを浮かべて講義を続ける。

 

「長い歴史の中で、まだデュエル・モンスターズが出来たばかりの頃に活躍した人物だ!」

「凄い髪型……しびれるぅ~!」

「でもちょっと顔怖いな……」

 

 横でクネクネしているフトシを他所に、女の子であるアユは遊戯の風貌に少し怯んだ様子。

 

「そんなことはないぞアユ! これを見ろ! こっちが普段の武藤 遊戯だ!」

 

 場面が切り替わり、今度は優勝トロフィーを手にはにかんでいる優しそうな少年が映った。

 

「へぇ~! 優しそうなお兄さんだね。こっちの方がアユは好きだな!」

「ていうか……もはや別人じゃない? お父さん、場面間違えてないの?」

「別人じゃないぞ柚子! これは正真正銘の同一人物! これも彼を伝説に足らしめている要素の一つだ! 武藤 遊戯、オカルトな伝説が多いのも彼の特徴だな!」

「何か急に胡散臭くなってきたな……それで、この人はどんなカードを使うの?」

 

 遊矢の問いに待ってましたと言いたげにウインクし、修造は画面を切り替える。

 そこには遊戯の側に控える一人の魔法使いがいた。

 

「彼の使うカードは沢山あるが、やはり有名なのはこれだろう! ”ブラック・マジシャン”! 闇属性・魔法使い族・レベル7の通常モンスター! ステータスはATK2500のDEF2000! 登場から長い年月が経った今でも、魔法使い族の中では上位クラスのステータスだな! 彼のエースにして切り札だ!」

「え~! 伝説の決闘者の切り札なのに、通常モンスターなんだ……」

「ばかもーーーーん!!!」

 

 再び大音声によって転がされる遊矢。

 

「いてて、また……」

「遊矢! 俺は悲しいぞ! お前がそんなことを言うなんて!」

「そんなことって……何も効果がないんでしょ?」

「何もないならそれを補ってやる! それが決闘だろう! まだカードが充実してない最初期の時代に、武藤 遊戯はそれをやってのけているのだ!」

「それはそうだろうけど……」

 

 遊矢が納得できていないような表情をしていると、柚子は逆に納得したように頷く。

 

「うん、凄いかも。それに、そうまでして使うってことはカードに愛着があるって証だし、他にある強いカードよりもこのモンスターを選んでチャンピオンになっちゃったんでしょ?」

「うん、まあ……凄いな」

「ねぇこのブラック・マジシャンってカード、遊矢兄ちゃんの”オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン”と同じステータスじゃない?」

「え?」

 

 アユに指摘されて、遊矢はオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのカードを取り出す。確かに、種族と効果以外はまったく一緒であった。

 

「本当だ。遊矢兄ちゃんのオッドアイズには効果があるのに、ブラック・マジシャンには無い」

 

 タツヤがフトシの方を向いて呟く。

 

「なのに武藤 遊戯はチャンピオンで、遊矢兄ちゃんはジュニアユースの中の下くらい……」

 

 フトシがそう呟いてアユの方へと向く。

 

「遊矢兄ちゃんの方が有利っぽいのに、大分差を付けられてるね」

「こ、これからだろ!?」

 

 アユの憐れむような言葉に、遊矢は思わず立ち上がる。

 

「小学生相手に何力んでんの? はいステイ」

 

 柚子の窘められて、遊矢は大人しく着席する。

 

「それにな遊矢、遊勝先輩も、尊敬する決闘者として彼の名を挙げているんだぞ?」

「父さんが!?」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「チャンピオンになった今、決闘したい決闘者は誰か……それは勿論、”武藤 遊戯”だ」

 

「何故かって? 映像でしか見たことはないが、彼の決闘には強さでは表せない”魅力”があるからさ」

 

「武藤 遊戯は存在だけで観客を、そして決闘者を沸き立たせる。彼と共に決闘ができれば、きっと会場は想像もつかない程の盛り上がりを見せることだろう。同じ時代に生まれなかったことが、残念でならない」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「以上、先輩がチャンピオンになって始めてのインタビューでのコメントだ」

「父さんにそこまで言わせるなんて……」

「そう、先輩も先人から多くを学んでいるのだ! だから遊矢もきっちり歴史の講義を受けて、自分の決闘に活かすんだぞ!」

「(……と言っても、やっぱり実際に会って決闘してみないと解んないよな)」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 光が止み、3人は記憶の彼方から戻ってくる。

 遊馬と遊矢は目の前の決闘者に対して目を見開き、アストラルは納得した様に頷いてから構える。

 

『そうか……間違いない、彼の者の名はーーーー』

 

 

 

「「 武藤 遊戯!!? 」」

 

 

 

「俺の事を知っているのか? まあ、今はいいさ……行くぜ! 俺のターン!」

 

 遊戯 手札:1→2

 

「永続魔法《守護神の宝札》の効果により、もう一枚ドローする!」

 

 遊戯 手札:2→3

 

「墓地の罠カード《転生の超戦士》を除外して発動! 墓地の《カオス・ソルジャーー開闢の使者ー》を手札に加える!」

 

 遊戯 手札:3→4

 

「墓地の光属性《ワタポン》と闇属性《クリボー》を除外し、《カオス・ソルジャーー開闢の使者ー》を特殊召喚!」

 

 遊戯の場に再び開闢の使者が現れる。

 

 カオス・ソルジャーー開闢の使者ー 光属性 戦士族 レベル8 ATK:3000

 

「開闢の使者の効果発動! 場のモンスター1体を除外する! 《No.39 希望皇ホープ》を次元の彼方へ追放しろ! 〈時空突刃・開闢次元斬〉!」

 

 開闢の使者が剣を振るうと、目の前の空間が開き、次元の裂け目を作り出す。裂け目はホープを吸い込み、裂け目の彼方へとホープを追放して消滅する。

 

「ホープ!?」

「悪いがNo.の厄介さは身をもって知ってるんでな。開闢の使者をリリースし、《ブラック・マジシャン・ガール》を召喚!」

 

 開闢の使者が光の中へと消えると、その光の中から可憐な女魔導士が飛び出す。これこそが最強の魔術師の一番弟子、ブラック・マジシャン・ガールである。この時、偶然目があった遊馬にウィンクする。

 

 ブラック・マジシャン魔法使い族 レベル6 ATK:2000

 

「ブ、ブラマジ・ガール!? 木像じゃない、本物か!?」

「魔法カード《賢者の宝石》! 場に《ブラック・マジシャン・ガール》が存在する場合、手札・デッキから《ブラック・マジシャン》を特殊召喚する! 来い、我が最強の僕! 《ブラック・マジシャン》!」

 

 遊戯の場にブラック・マジシャンが現れ、ガールと共に並ぶ。

 

 ブラック・マジシャン 闇属性 魔法使い族 レベル7 ATK:2500

 

『来たか……武藤 遊戯の切り札!』

「すげぇ……何か、木像とは全然違う!」

「墓地から速攻魔法《魂のしもべ》を除外して効果発動! 俺の場にブラック・マジシャンとガールの2体がいることにより、2枚ドローする!」

 

 遊戯 手札:1→3

 

「速攻魔法《黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)》! 俺の場にブラック・マジシャン、ブラック・マジシャン・ガールの2体が存在する場合、相手の場のカードを全て破壊する! くらえ!」

 

 ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが共に杖を合わせて振ると、凄まじい魔法の波動が放たれる。

 

「全て破壊だって!? くっ!」

「罠発動! 《逆さ眼鏡》! 場のモンスターの攻撃力をエンドフェイズ時まで半分にする!」

「遊馬、良いタイミング! 速攻魔法《禁じられた聖槍》! アドバンス・ドラゴンの攻撃力を800下げて、このカード以外の効果を受け付けなくする!」

 

 オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン ATK:3000→2200

 

 波動が遊馬達の場を襲い、フリーザードン、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、そして魔法・罠を全て吹き飛ばす。

 

破壊された伏せカード

EMピンチ・ヘルパー

EMコール

 

天翔の竜騎士ガイア ATK:2000→1000

ブラック・マジシャン ATK:2500→1250

ブラック・マジシャン・ガール ATK:2000→1000

 

「アドバンス・ドラゴンは聖槍の効果で逆さ眼鏡の効果を受けない! 俺達は負けない!」

「そうだ、最後まで諦めずに来い! 魔法カード《黒・魔・導・連・弾(ブラック・ツイン・バースト)》! ブラック・マジシャンに場と墓地のブラック・マジシャン・ガールの攻撃力の合計を加算する! バトルだ!」

 

 ブラック・マジシャン ATK:1250→2250

 

「ブラック・マジシャンでオッドアイズ・アドバンス・ドラゴンを攻撃! 【ブラック・ツイン・バースト】!」

 

 ブラック・マジシャンが再びブラック・マジシャン・ガールと杖を合わせ、凄まじい魔導波を放つ。アドバンス・ドラゴンはブレスで応戦するが、僅かに及ばず魔導波によって吹き飛ばされる。

 

「アドバンス・ドラゴン!?」

 

 遊矢 LP:2600→2550

 

「ブラック・マジシャン・ガールで遊馬を、天翔の竜騎士ガイアで遊矢を攻撃!」

 

 ガールが魔法弾を遊馬に、ガイアは騎乗しているドラゴンに火炎弾を吐かせて遊矢を攻撃する。

 

「「うわぁぁぁーーーー!?」」

 

 遊馬 LP:3000→2000

 遊矢 LP:2550→1550

 

 二人は吹き飛ばされて倒れる。遊馬は起き上がろうとした瞬間、首筋に何かが当てられた。遊馬が見上げると、そこには馬に乗った騎士がランスを自分の首筋に当てている。

 

「え!? こいつ、何時の間に!?」

 

 疾風の暗黒騎士ガイア 闇属性 戦士族 レベル7 ATK:2300

 

 遊馬は横眼で遊矢を見ると、立ち上がろうとしていた遊矢の頭上で禍々しい飛竜が羽ばたいていた。

 

 呪われし竜ーカース・オブ・ドラゴン 闇属性 ドラゴン族 レベル5 ATK:2000

 

「速攻魔法《融合解除》! 天翔の竜騎士ガイアの融合を解除した。……俺の勝ちだな」

 

 遊戯はまだトドメを刺さず、決闘を続行したまま二人の元に歩み寄る。

 

「お前達……遊馬と遊矢と言ったな。教えてくれ、お前達は何処から来た? どうも、お前達はここの世界の決闘者とは違う様に思える」

「え? それって……」

「そうか! そういうことか!」

 

 遊矢は何か合点がいったのか、跳び起きて遊馬を助け起こす。

 

「どういう事だよ遊矢?」

「武藤 遊戯……遊戯さんは俺達の仲間なんだ! 6人の内の1人なんだ!」

「マジかよ!? すげぇ!」

「盛り上がってるところ悪いが、俺の質問に答えてくれ」

 

 3人は決闘を終了させると、情報交換を始める。

 

「そうか……十代と遊星もこの世界に。そしてお前達とPlaymaker、俺の6人がこの世界に呼ばれた決闘者、ということか」

「遊戯さんは最後の一人と会ってるんですね。……それにしても、まさかこんな大昔の人に会えるなんて吃驚だ」

「なあ遊戯さん! 俺と決闘しようぜ! 六十郎じいちゃんに自慢してやるぜ!」

『遊馬、後にしろ。……遊戯、話した通り、この世界から脱出するのはNo.の力が必要だ。アナタの力を借りたい』

「アストラル、だったな? 解ったぜ。俺も協力しよう。まずはここを脱出し、Playmakerと合流、十代と遊星を捜そう」

 

 遊戯が快く頷くと、遊馬が興奮して飛び上がる。

 

「おっしゃー! 遊戯さんがいれば百人力だぜ! それじゃ先へーーーー」

 

{おめでとう、君達は辿り着いた。}

 

 突然、フロアに声が響き渡る。その声が聞こえた後、フロアの霧が消える。

 

「あ、遊馬! アストラル! 遊戯さん! あそこ!」

 

 遊矢が指差す方を見ると、そこ大きな扉がそびえ立っていた。それが徐々に開き、最後のフロアへの道を現す。

 

「どうやらゴールみたいだな。お前達が話していた、タイタンとか言ったな? ”千年パズル”を持った偽物野郎の面を拝みにいこうじゃないか」

「仮面してたから面は見えねぇけどな。でも気合い入れて行こうぜ! な、遊矢!」

「ああ、行こう!」

 

 3人とアストラルは迷宮の終着点へと踏み込む。

 この先に待ち受ける相手とはーーーー

 




次回予告

決闘者を惑わす迷宮にも、終わりはある。
終わりの先に待つのは、鬼か悪魔か。
生き付いた決闘者達を迎えたのは、怨念の闇と狂気の哄笑だった。

「何が待ち構えようとも、遊戯さんは負けやしない」

次回、遊戯王~クロスオーバー・ディメンションズ~


「遊戯と遊馬 ~デーモンの狂宴~」


「イントゥザ・ヴレインズ!」



今日の最強カード
モリンフェン




ではなく、





ブラック・マジシャン


モリンフェンもある意味最強カードですが、まじめにこちらを。
ブラック・マジシャンそのものというより、サポートカードが異常に強いですよね。
流石は主人公カード。

最初のかませ役はゴッズでもかませだったチーム・カタストロフ。
全員デッキは【悪魔族】で、ニコラスは【ヒドゥンナイト+デーモン】
ヘルマンは【パワー重視のゴブリンオーク】
ハンスは完全にネタ枠の【懐かしいバニラ悪魔】です。
バニラのそれぞれの選出理由は

モリンフェン→ある意味最強だから
デスサタン→アニメで割と出番があったから
死神ブーメラン→アニメでカード手裏剣役として印象的だったから
ガーゴイル
→じつはアニメDM本編のSVで初めて表示されたモンスターにして初めて戦闘破壊されたという記念すべきモンスター、ホギャァァァ!

霧の中で遊戯がやっていたプレイング、一応手順は考えていました。気が向いたら遊戯視点として書こうかな。
まあモニターの情報だけで大体解っちゃう決闘者も結構いそうな気もしますが。

ちょっと遊戯を神格化し過ぎじゃないかって言われるかもですが、自分はこれくらいでいいと思います。だって、リアルじゃ大人の事情でほとんど出番が無くなっちゃってたり、中身が遊星になってたりしますからね。この作品ではできるだけ優遇してあげたいです。


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