やはり俺がウルトラセブンなのはまちがっている。 (断空我)
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第一話:奉仕部へようこそ

ウルトラマン等をみていて、思いついた話。
短編で、感想が多ければ、続きをのせていくかも……。
とりあえず、この話を含めて、三話ほど、掲載して、判断する予定です。


 もし、運命というものがあるというのなら、あの日が俺の……いや、俺達の運命がはじまった日だろう。

 

 

 高校の入学式の日、俺達は運命というものに遭遇してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球は狙われている。

 

 

 

 かつて、地球防衛軍の参謀がテレビで告げた言葉だ。

 

 

 

 人類が宇宙開発を始めてから長い年月が過ぎた。

 

 

 

 その中で様々な問題が地球人類へ降りかかってきた。

 

 

 

 自然破壊による怪獣の出現。

 

 

 炭鉱に現れたゴメス、

 

 

 発電所を襲撃したネロンガ、

 

 

 古代人が封印した悪魔、バニラとアボラス。

 

 

 そういった怪獣の出現と同時に地球を侵略しようと外敵、宇宙からの侵略者が次々と空の彼方からやってくる。

 

 

 ガラモンを地球へ送り込んだセミ人間、

 

 

 子供を諭して地球を支配しようとしたメフィラス星人、

 

 

 自らを遊星からきた兄弟として信頼を得て裏から支配しようともくろんだザラブ星人、

 

 

 人を拉致監禁して降伏勧告をしたクール星人。

 

 

 そんな事態に地球防衛軍は撃退と迎撃を繰り返してきた。

 

 

 今思えば、平和から一番遠い選択を人類はとってきたのかもしれない。

 

 

 敵が強大な兵器を使えば、それを上回る兵器で撃退する。

 

 

 人類はマラソンを続けているのかもしれない。

 

 

 血を吐きながら続ける悲しいマラソン。

 

 

 そのマラソンのゴールは誰もが幸せの平和なのだろうか?それとも何もかもなくしてしまうのだろうか?

その結果は誰にもわからない

 

 

二年F組 比企谷八幡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷、これはなんだ?」

 

 日本の高校、総武高校の生徒指導室。

 

 そこで現国の担当教師で生徒指導も請け負っている平塚静はため息を吐きながら目の前の“メガネ”をかけた男子生徒、比企谷八幡へ問いかける。

 

「作文です」

 

「私の課題はなんだったかな?」

 

「平和です。ただ、途中で今朝みたニュースを思い出して気づけば、このような出来栄えに……反省はしていますが後悔はしていません」

 

 メガネを胸ポケットに入れて八幡は答える。

 

「お前という奴は」

 

 平塚は呆れながら目の前の相手を見る。

 

 総武高校の制服を纏って、胸元のポケットにはメガネが入っていた、何より特徴的なのは目。

 

 濁り切った目は見る者を委縮させるだろう。

 

 見慣れた平塚は気にしないが初対面の教師は必ず怯える。

 

「比企谷、お前に友達は……いなかったな」

 

「はい」

 

「まぁいい、部活などに……励んではいるな」

 

「まぁ」

 

「作文は書きなおせ、今日は部活へ行くように」

 

「その予定です」

 

 頷いた八幡は立ち上がって生徒指導室のドアを開ける。

 

「比企谷」

 

 出ていこうとした彼を平塚は呼び止める。

 

「今の世界は平和だとキミは思うか?」

 

「平和になろうとしている途中じゃないっすかね」

 

 短く答えながら八幡は生徒指導室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八幡は自販機でMAXコーヒーを購入して一口。

 

 千葉のソウルドリンクと呼ばれるものを含みながら青空をみあげる。

 

「空はどこまでも澄み切っているっていうのに」

 

 ぽつりと漏らしながら周りを見る。

 

 グラウンドでは生徒達が部活に励み、教室を見れば残った生徒達がだらだらしながら世間話に花を咲かせていた。

 

 そんな光景を見ていると誰もが平和と思うのだろう。

 

「(自分達だけの世界が平和っていうことだけどな)」

 

 飲み干してもう一つ、購入。

 

 こういう甘いものを飲んでいる時だけ、色々と忘れられるというものだ。

 

 一年前の交通事故、あれからすべてが狂って――。

 

「さて、行きますかね」

 

 首を振りながら自販機のあるスペースから部室棟へ入る。

 

 誰も使用していない空き教室のドアを開けた。

 

「うーっす」

 

「遅刻よ」

 

 中に入ったところで咎める声が響く。

 

 教室内には二人の少女がいる。

 

 一人は文庫本を手に持ち、流れるような黒髪、総武高校の制服に身を包んだ少女。

 

 もう一人は片方の髪を団子にして、制服を着崩して胸元を大きく開けている少女。

 

「由比ヶ浜に遅れる旨の連絡はしていたが」

 

 ちらりと八幡は咎めた雪ノ下雪乃へ説明をする。

 

 長い髪を揺らしながら首を振った。

 

「他人任せにするからいけないのよ。ちゃんと私へ連絡しない貴方のミスね、遅刻谷君」

 

「……オーケー、次からはそうするよ」

 

 雪ノ下の隣にいる由比ヶ浜はふぅーと息を吐いた。

 

「言伝を受け取っているならちゃんと伝えないといけないのではないかしら?由比ヶ浜さん」

 

「うえぇ!」

 

 話の矛先が自分へ向けられたことに気付いて由比ヶ浜結衣は声を上げる。

 

 わたわたして慌てている由比ヶ浜を横目にみながら八幡は二人の少女から少し離れた場所に腰かけた。

 

 これが彼らの距離感。

 

 入学式当日に数奇な運命で出会い、その間に濃密な時間を過ごした三人。

 

 紅茶を飲みながら文庫本を読む雪ノ下。

 

 由比ヶ浜はそんな雪ノ下へその日起こった話を伝える。

 

 二人の話を聞きながら新聞や図書館で借りた本を読みながらMAXコーヒーを飲む八幡。

 

 これが三人の今の日常。

 

 大事なひと時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。

 

 一色いろはは夜道を歩いていた。

 

 自分へ話しかけてくる男子達をいなしながら帰路へ向かっている。

 

 いつものように自分へアプローチをしてくる男子達、心の中で辟易としながらもそんな感情は決して見せない。

 

 

――ヒタ、ヒタ。

 

 

「……っ!」

 

 後ろから聞こえる足音のようなもの。

 

 暗闇で一色いろはしかいないこの空間でその足音は不気味なくらいに響く。

 

 いろはは鞄を抱きかかえるようにして足早に夜の自然公園を歩く。

 

 家へ帰るための近道がこの自然公園を抜ける事だった。

 

 しかし、ここのところ、この道を通ると決まって不気味な足音が聞こえてくる。

 

 最初は気のせいだと思っていたが日が過ぎるごとに足音が大きくなり、段々と近づいてきている気がした。

 

 目の前の出口に向けていろは足早に駆け抜ける。

 

 少し歩けば人が行き交う通路へでられる。

 

 そうすれば。

 

 ふと、目の前に人の気配を感じていろは顔を上げた。

 

 そこには――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷、いるか!」

 

 放課後、いつものように三人だけの空間にいたところでノックもなしに平塚先生がやってくる。

 

「平塚先生、ノックをしてください」

 

 雪ノ下が文庫本を閉じて顔を上げる。

 

 鋭い眼光に平塚はものとせずに話し出す。

 

「奉仕部に相談したい生徒がいるという事で連れてきた、入ってくれ」

 

「失礼しまぁす」

 

 間延びした声で入って来るのは女子生徒。

 

 一年生でまぁ、可愛い部類に入るだろう。

 

 だろうというのは俺の傍にいるこの二人がとにかく美少女過ぎるので感覚がマヒしているのである。そもそも、宇宙一美しい存在をみたこともあるから可愛い程度で今更、揺れる八幡ではないのだよ。

 

 何より仕草がいちいちあざとく感じる。

 

 おそらく自分がどうすれば男を魅了させられるかわかっているのだろう。

 

「あざとい」

 

「へ?」

 

「ちょっと、ヒッキー!」

 

 横にいた由比ヶ浜が慌てて口をふさいでくる。

 

 ヤベッ、声に出していたか。

 

「それで、一色いろはさんだったわね。貴方の相談事というのは何かしら?」

 

「はい、その、帰り道なんですけど、誰かが後から追いかけてくるような気がするんですぅ」

 

「え、それって、ストーカー!?」

 

「そうかもしれないんですぅ、いつも決まった場所で足音がして一定の距離でついてくるようでぇ、もぉ、怖くて、怖くてぇ」

 

 ちらりとこちらを見るんじゃない。

 

 俺は興味ないという風に雪ノ下へ続きを促すように求めた。

 

「警察に相談はしたのかしら?」

 

「しましたよ!でも、この話に続きがありましてぇ」

 

「早く話してもらえるかしら」

 

 段々と雪ノ下がイライラしているのがわかる。

 

 あざとい話し方に我慢ができないのだろう。表情に変化はないが付き合いの長さからわかった。

 

「これなんです」

 

「何、これ?」

 

 画面を覗き込んだ由比ヶ浜がぽつりと漏らす。

 

 一色の携帯端末の画面にブレているが白と黒の魚眼のような何かの画像が映っていた。

 

「宇宙人です!」

 

 断言する一色に俺と雪ノ下は呆れたような表情を浮かべていることだろう。

 

「お前、それ、警察に言ったのか?」

 

「はい!」

 

 俺はそこで沈黙している平塚先生を見る。

 

「もしかして、ここへ連れてきたのは」

 

「警察が頼りにならない!そこで最低限の自衛としてしばらく集団で帰宅したらということでキミ達を選んだ」

 

「……勝手過ぎます。そもそも、依頼を引き受けるという事も」

 

「いいんじゃないかな?ゆきのん」

 

 反論しようとした雪ノ下をやんわりと由比ヶ浜が待ったをかけた。

 

「だってぇ、同じ女として嫌だよ。ストーカーなんて、それがもっと変態なら尚のこと、助けてあげたいなぁって思わない?」

 

「……由比ヶ浜さんの気持ちもわかるわ。そうね、一色さん」

 

「はい!」

 

「私達がしばらくの間、貴方の帰宅の付き添いをするわ。勿論、しばらくは部活などの類も控えてHRが終わり次第、すぐに帰ることを条件だけどね」

 

「え、でも、私ぃ」

 

「それが嫌なら私達では手に負えないわ……それに、自分で最低限なんとかしようという気持ちが貴方から感じられない。ここは最低限の手助けをして自力で問題解決を促すという方針で活動している部なの。それがないなら、私達ができることはないわ」

 

 提案ならぬ最終通告のような雪ノ下の言葉に一色は戸惑い、目をさ迷わせながら俺を見る。

 

 おれなら助けてもらえると期待しているのだろう。

 

 甘い。

 

「俺も雪ノ下の意見に同意だ。諦めろ、あざとい後輩」

 

「だ、誰があざといですか!いいですよ!お願いします!」

 

 よくわからんが負けず嫌いではあるらしい。

 

 了承したことを確認して俺達は平塚先生へ話を通してもらうことにした。

 

 一色は平塚先生と一緒に出ていく。

 

 残されたのは俺達のみ。

 

「さっきの写真、比企谷君はどう思うかしら?」

 

「画像が荒れすぎてなんともいえないがおそらく宇宙人だろうな」

 

 画像を解析してみないことにはわからないだろうけれど、あれはおそらく宇宙人だ。

 

 経験と直感のようなもので俺は断言できた。

 

 この世界は昔から宇宙人やら怪獣らが猛威を振るってきた。その度に人類の手で撃退してきた。近年は侵略者の出現の報道も少ないが完全にいなくなったというわけじゃない。

 

「あー、じゃあ、いろはちゃんは」

 

「何らかの理由で宇宙人に狙われているのでしょうね」

 

 由比ヶ浜はその事実を聞いて不安そうに瞳を揺らす。

 

「ま、ただの変態という可能性もゼロじゃないからな」

 

 彼女の不安を少しでも取り除こうと俺はそういった。

 

 一瞬だったがあの姿は知識として該当するものがある。

 

 だが、果たしてそうなのかどうかはわからない。

 

 

――こういう時、彼が表にでていればどれだけよかったか。

 

 

「比企谷君、変なことを考えていないかしら?」

 

「いいや、別に」

 

「そう。ならいいけれど」

 

 ぽつりと、けれど雪ノ下の鋭い眼光がこちらへ向けられた。

 

 危ない、危ない、由比ヶ浜と同じくらい“あの件”に関しては神経質な雪ノ下だ。

 

 悟られないように気をつけなければ。

 

「それじゃあ、今日から一色さんと一緒の帰宅をしましよう……はぁ」

 

「ゆきのん?」

 

「何でもないわ。平塚先生も少しは相談などをしてほしいと思うわ」

 

「まー、あの人、悪人ではないんだがなぁ」

 

 強引ささえなければ結婚もできただろうに。

 

「ね、ねぇ、宇宙人の可能性があるならほら“ウルトラ警備隊”に通報という事は?」

 

「あの乱れた画像だけじゃ、一色さんを襲ったのが宇宙人だという証拠がない。警察も同じで悪戯と捉えられてしまうのが関の山といったところかしら」

 

「そっかぁ」

 

 それぞれ帰宅準備を始めて正門の前で一色を待つ。

 

 平塚先生に話を通しておいたおかげで一色は十分も経たずにやってきた。

 

「よろしくお願いします」

 

 ぺこりと頷いた一色と共に俺達は帰路につく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~」

 

 初日は当然というか何事もなく帰宅できた。

 

 一色を家へ送り届けて、その後は雪ノ下と由比ヶ浜を送り届けたことで俺はくたくただった。

 

「お兄ちゃん、お帰り~」

 

 玄関で靴を脱いでリビングに向かうと妹の小町が出迎えてくれる。

 

 そして、もう一人。

 

「あ、八幡、お帰り~」

 

 ふわふわと床の黒いモヤ、ダークゾーンと呼ばれる場所からひょっこりと姿を見せるのは黒と白い体、円筒形の頭部の左右についている小さな目、パーカーとズボンを履いているが人ではない。

 

 ペガッサ星人ペガ。

 

 我が家の居候であり宇宙人である。

 

「ペガ、何やっているんだ?」

 

「目覚まし時計の修理だよ。よし、できたよ~」

 

 机の上にファンシーなデザインの目覚まし時計が置かれていた。

 

 手先が器用なペガは機械いじりが趣味でこうして小町の頼みをよく聞いている。

 

「あれ、八幡、お疲れみたいだね」

 

「まぁな」

 

 ペガの隣の椅子へ腰かける。

 

「もうすぐご飯ができるからねぇ~、先にお風呂入る?」

 

「あ、いいね!ペガも入る!」

 

「え~、偶には一人で入らせてくれよ」

 

「いいじゃないか~」

 

 ペガはダークゾーンからバスセット一式を取り出した。

 

 便利だよなぁ、ダークゾーンって。

 

 横で見ながら風呂へ入ることにした。

 

「なぁ、ペガ」

 

「なぁに?」

 

「宇宙人が女の子を狙う理由ってなんだと思う?」

 

「うーん、わかんない。宇宙は広いから色々な宇宙人もいるし」

 

「だよなぁ」

 

 ペガも宇宙人だ。

 

 ペガッサ星から様々な経験を積ませようという両親の方針で宇宙を旅していたが奴隷売買を生業としている宇宙人に狙われて地球へ避難してきた時の騒動から比企谷家の一員として生活することになった。

 

 我が家の両親は共働きで中々、家に帰ることがないのと仕送りはしっかりしてくれるのでペガが一人増えたところで何ら問題もない。

 

「ねぇ、八幡」

 

「なんだ?」

 

「もし、悪い宇宙人がこの地球で悪さをしたらどうするの?」

 

「止めるさ」

 

 ペガの問いかけに迷わずに答える。

 

 俺を助けてくれた“彼”への恩返しだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、その次の日も八幡や雪ノ下達は一色と帰宅をしていたのだが、不審人物は影も形もない。

 

 

「もう、現れないってことですかね?」

 

 笑顔で一色はいう。

 

「二日、三日も姿を見せないからもう大丈夫というのは気が早いわ」

 

 雪ノ下は一色の考えを否定する。

 

「私達と帰っているからしばらく様子を見るという可能性もある。数日で答えを出すのは危険すぎるわ」

 

「でも……こんなことが続くのは息が詰まります!」

 

 我慢できないという風に一色は叫ぶ。

 

「何で私がこんな目にあわないといけないんですか?どうして我慢しないといけないんですか!おかしいですよ!ストーカーが悪いのに」

 

「そうだな」

 

 一色の心からの叫びに八幡は頷いた。

 

「本当ならお前がこういうことになるのは間違っている。だが、相手にそれを言って通用しなかったらどうする?」

 

「それは……」

 

「いろはちゃん、もう少しだけ頑張ろうよ!何かあってからじゃ、遅いんだし」

 

 由比ヶ浜の励ますような言葉に一色も小さく頷いた。

 

「あら、あれは何かしら?」

 

 帰宅途中、警官がある一角を封鎖していた。

 

「何かあったのですか?」

 

 雪ノ下が警官へ問いかける。

 

 警官の話によるとコスプレした不審者が暴れまわって逮捕されたという。

 

「じゃあ!」

 

「終わったとみるべきかしらね」

 

 破顔する一色。

 

 予想外な形で奉仕部の依頼は完了となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かあっけなかったねぇ~!」

 

「タイミングが良かったと思うべきなのかもしれないけれど、少し良すぎるような気もしなくはないわ」

 

 一色を家へ送り届けようとしたのだが、もう大丈夫だと彼女が断りを入れた為に道中で解散となった。

 

 後はぶらぶらと帰るだけだったのだが。

 

「最近、物騒よねぇ」

 

 ふと、主婦達の会話が聞こえてきた。

 

「そういえば、家出している人も多いわよねぇ?三丁目の岩田さん、旦那さんが出て行ってもう一週間くらいですって」

 

「あら、そういえば、隣町でも似たようなことがあったわよ」

 

 聞こえてきた声に八幡は歩みを止める。

 

「ヒッキー、どうしたの?」

 

「なぁ、雪ノ下」

 

「何かしら?」

 

「この町周辺の失踪事件がどのくらい起きているかってすぐにわかるか?」

 

「近くのネット喫茶で調べられると思うわ……急にどうしたの?」

 

「さっきの主婦達の会話が気になってな。とにかく、行こう」

 

 八幡達は近くのネット喫茶に入る。

 

 支払いは八幡が済ませてネットブースで検索を始めた。

 

「そろそろ教えてもらえるかしら、何を気にしているのかしら?」

 

「主婦の話では周辺で連続失踪が起こっているらしい。ただの偶然なら良いんだが、結果は?」

 

「この町周辺で四件も起こっている。でも、年齢、職業、すべてバラバラね……唯一共通点があるとすれば」

 

「女性か?」

 

「えぇ、警察は家出などで詳しい捜索をしているか、怪しいところね」

 

「どういうこと?」

 

 ぽかんとしている由比ヶ浜を横に八幡はパソコンでハッキングする。

 

 表示されたのは地球防衛軍のモンスター&エイリアンのデータベース。

 

「ちょっと、比企谷君!」

 

「え、これ!?」

 

「これだ」

 

 短い時間で目的のファイルを表示する。

 

「DADA?」

 

「今から四十年ほど前に宇宙線研究所を襲った宇宙人だ。データによると人間の標本を集めることを目的としていたらしい」

 

「標本?え、人間って標本にできるの?」

 

 おバカな由比ヶ浜はさらに横へ置いといて。

 

「貴方はこの失踪事件がダダの仕業とみるの?」

 

「おそらく、失踪事件が標本採取という点からみれば、このバラバラな理由は納得できる。それに知っているか?」

 

 八幡はかつて知った情報を伝える。

 

 

――地球人の女は宇宙人の標本としての売買は高値で売れるらしい。

 

 

 二人の女性が顔をしかめた。

 

「とにかく、一色が危ない、急ごう」

 

 パソコンを閉じる。

 

「えっと、この場合、ウルトラ警備隊に知らせるとかは……」

 

「そうね、一応、通報はしておきましょう。彼らが信じてくれるかは置いといてね」

 

 “ウルトラ警備隊”

 

 宇宙からの侵略者が多発した時代、地球防衛軍内で多くの侵略から地球を守ってきたエリートチーム。

 

 今は第二期編成になっているらしいが、宇宙人による怪事件はウルトラ警備隊を呼ぶという認識は今も変わらない。

 

 由比ヶ浜が通報しているのを横目で確認しながら八幡は急ぎ足で一色の家まで向かう。

 

 嫌な予感をひしひしと八幡は感じ取っていた。

 

 一色の家が見えてきたところでドアが開かれる。

 

「先輩!」

 

 泣きそうな顔をしている一色がこちらへ手を伸ばしてくる。

 

 部屋の中から魚眼の顔で白と黒の宇宙人が細長い武器を構えていた。

 

「一色、伏せろ!」

 

「え、あ、はい!」

 

 うずくまるように座った一色、ダダへ八幡は右手を握り締めるようにして前へ振る。

 

 念動力による攻撃でダダは吹き飛ぶ。

 

「え、なに、なに!?」

 

「一色、こっちへこい!」

 

 戸惑う一色の手を引きながら後ろへ身を隠す。

 

 攻撃を受けたダダはふらふらと姿を見せる。

 

 身構える俺の前でダダはテレポートした。

 

 逃げた?

 

「先輩!」

 

 後ろから一色の悲鳴が聞こえる。

 

 

 振り返るとダダが自らの武器で殴りかかってきた。

 

 一色を守りながら手で受ける。

 

 痛みに顔を歪めながら腹を蹴り飛ばす。

 

 少しのけ反りながらダダが手の中にあるミクロ化機を構えた。

 

 一色を守ろうと念動力を発動させようとした時。

 

 バコンとダダの後頭部に石が激突する。

 

「今よ!」

 

 雪ノ下の叫びに念動力を放つ。

 

 攻撃を受けたダダは派手に吹き飛ぶ。

 

 バチバチとミクロ化機が爆発を起こした。

 

「ダダダダァ!」

 

 顔を抑えて仰け反るダダ。

 

 再び顔を上げたダダの顔半分は火傷で醜くゆがんでいた。

 

 怒りでプルプルと体を震わせているダダは転移する。

 

 一瞬の隙を突いて、八幡を突き飛ばして一色を連れていく。

 

「いや、いやぁあああ!」

 

 悲鳴を上げている一色へ手を伸ばそうとしたが間に合わずダダと一緒にテレポートしてしまう。

 

「いろはちゃん!」

 

「比企谷君!」

 

「クソッ、ペガ」

 

「発信機をつけておいたよ!」

 

 八幡の影からひょっこりとペガが姿を見せる。

 

 ペガから受信機を受け取った。

 

「よし、雪ノ下と由比ヶ浜はここでウルトラ警備隊に事情を説明してくれ」

 

「え、ヒッキーは!?」

 

「このままダダを追いかける。彼はこの星の生命に手を出している。それは重大な罪だ」

 

「貴方……比企谷君、よね?」

 

 雪ノ下の問いかけに八幡は柔和な笑みを浮かべながら胸ポケットの奥にしまい込んでいる変身アイテム、ウルトラアイを取り出す。

 

「デュワッ!」

 

 二人の前でウルトラアイを装着した八幡は瞬時にM78星雲人であるウルトラセブンに変身する。

 

 赤い体に銀の兜、頭頂に輝くアイスラッガー、体のプロテクター。

 

 ウルトラセブンは空へ舞い上がりペガの発信機の反応の場所へ降り立つ。

 

 町外れにある廃工場。

 

 降り立ったウルトラセブンはそのまま廃工場内に突入する。

 

 中にはダダが数体、そして部屋の中心には円筒形のカプセルが複数、置かれていた。

 

 その中の一つに一色いろはがいる。

 

「一色!」

 

 ウルトラセブンの声にダダ達が振り返り一斉に襲い掛かる。

 

 襲い掛かっていたダダを殴り飛ばし、一体は投げ飛ばす。

 

 ミクロ化機を構えたダダにはウェッジ光線を放つ。

 

 光線を受けたダダは爆発を起こして地面に倒れる。

 

 残り一体、顔に火傷を負ったダダが後退った。

 

「ダダよ、星に住まう者達を勝手に連れ出すのは重大な罪だ。すぐにこの星から立ち去るんだ。そうすれば、私も命までは取らない」

 

「ウルトラ……セブン……くそっ」

 

 ウルトラセブンの言葉にダダは小さく下がりながらそのまま逃げようとした。

 

――かと思えば、落ちている光線銃を手に取ってセブンへ向ける。

 

 それよりも早くセブンは額のビームランプの前で指を構えた。ビームランプからエメリウム光線がダダを直撃。

 

 ダダは体から炎をまき散らして消える。

 

 ウルトラセブンはカプセルを覗き込む。

 

 そこでは助けを求めている女性達がいた。

 

「もう大丈夫だ」

 

 テレパシーで彼女達を安心させるように優しく声をかける。

 

 三十分後、通報を受けて駆け付けたウルトラ警備隊の隊員は星人から解放された人たちは口をそろえていう。

 

 

――ウルトラセブンが助けてくれたと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の奉仕部

 

「おっはようございます!」

 

 MAXコーヒーを飲んでいた八幡はドアを開けてやってきた人物に面倒そうな表情を浮かべる。

 

「あれ、先輩だけですか?」

 

「二人はそれぞれ用事で遅れている。もしかしたら来ないかもな」

 

「そうなんですか!先輩、少しお話いいですか?」

 

「なんだ」

 

 一色は笑顔を浮かべながら尋ねる。

 

「助けてくれてありがとうございます」

 

「あ?それならウルトラ警備隊の人達に言えよ。俺は何にも出来てないよ」

 

「そんなことないです!先輩があの宇宙人から私を守ってくれたじゃないですかぁ!感謝しているですよぉ」

 

「感謝しているならそのあざとい発言やめろよな」

 

「えぇ~、そんなことないですよぉ」

 

 既にやっていますよね?

 

 心の中で思いながら八幡は誤魔化すようにMAXコーヒーを飲む。

 

「ところで先輩達は何者なんですか?」

 

「いきなり何の話だ。俺達は地球人だぞ?」

 

「ふーん」

 

 不満そうな表情の一色。

 

 八幡は気にしない。

 

「まぁいいです。これから時間があれば遊びに来ますね?」

 

「勝手にしろ」

 

「はい!勝手にします!」

 

 にこりとほほ笑む一色。

 

 苦手だなぁと心の中で思いながら八幡はMAXコーヒーを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――地球は狙われている。

 

 しかし、理不尽な侵略に正面から挑む人類を助ける者がいる。

 

 遠い別の宇宙にあるM78星雲からやってきた地球を愛する宇宙人。

 

 名前を、ウルトラセブンという。




比企谷八幡
高校二年生、自称ボッチ。濁った目を普段はメガネで隠しているが瘴気が漏れだしたりしているため、あまり効果は薄い。
高校の入学式の日に交通事故に巻き込まれるも発生したワームホールによって宇宙空間に放り出されてしまう。
死にたくないという意思がミュー粒子となって一人の宇宙人が感じ取ったことで一名をとりとめる。
その後、多くの戦いや出来事を経て本来の世界へ戻ってきている。
超能力が少しほど使えるが人間としてのスペックは中の上程度。
専業主夫を夢見ていたが、今は少し違う模様。



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第二話:怪獣、拾いました!

第二話、色々な反響があって、驚きです。

今回、ウルトラ警備隊が絡んできます。

本来ならカタカナで表記すべきかなと悩みましたが、ここでは漢字表記でいきます。

漢字は当てはまるものを選んでいます。実際の設定では異なる可能性もありますが温かい目で見守ってください。

ちなみに第二期ウルトラ警備隊は六人編成なのであしからず。


 

 今でも鮮明にあの日のことを俺は思い出せる。

 

 入学式当日、自転車通学をしていた俺は飼い主から離れた犬を助けようと車道に飛び出したところで運悪くリムジンと激突。

 

 その後、急に現れたワームホールに吸い込まれて俺達は別宇宙に飛ばされた。

 

 宇宙空間に放り出された俺はゆっくりと自分が死んでいくことを嫌でも痛感させられる。

 

 まさか車にはねられた後に宇宙で死ぬことになるなんて誰が想像できるだろうか?

 

 徐々に体が凍り付いていく、命が失われていく感覚。

 

 本当に死ぬと思った時、俺は嫌だと叫んだ。

 

 死にたくない。

 

 まだ、生きたい!生きたいんだ!

 

 生きていたいんだ!そんな俺の叫びに赤い光が接近してきた。

 

 その日、俺は運命というものと出会ったのだろう。

 

 

 M78星雲のお人好しの宇宙人と出会った瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙、そこには人類の知らない様々な生物が存在している。

 

 その日、宇宙ステーションV3は群れを成して渡っている大量の渡り鳥怪獣を観測した。

 

 当然のことながらその情報は地球防衛軍極東基地内にあるウルトラ警備隊司令室にも伝えられている。

 

 ウルトラ警備隊司令室には第一期隊員から隊長へ昇格した古橋茂(フルハシ・シゲル)をはじめとした五人の隊員が待機していた。

 

「渡り鳥怪獣?」

 

 ウルトラ警備隊の隊長、古橋は報告してきた観測員へ尋ねる。

 

「えぇ、十年に一度、群れを成して宇宙を渡っている怪獣です。大人しく、攻撃性のない怪獣ということが過去の観測結果でわかっています」

 

「つまり、危険性はないという事ですね?」

 

「はい」

 

 観測員は頷く。

 

「その渡り鳥怪獣っていうのが地球へ来る可能性はないんですか?」

 

 東郷隊員の疑問に観測員は首を振る。

 

「渡り鳥怪獣は地球よりも温かい場所に渡る怪獣なので、地球へ来ることはないでしょう。問題があるとすれば、その渡り鳥怪獣の天敵が現れないかという事です」

 

「天敵?」

 

 梶隊員がオウムのように繰り返す。

 

「スペース・ジョーズと呼ばれている凶暴な肉食怪獣です」

 

「古橋隊長!ステーションV3から緊急連絡です!」

 

 通信隊員の報告に古橋は通信機を受け取る。

 

「古橋だ!なにぃ?わかった、すぐに向かう」

 

 通信機を置いて古橋は振り返る。

 

 隊員達は整列していた。

 

「ステーションV3から緊急報告、渡り鳥怪獣の群れを一匹の怪獣が襲撃している。その群れが地球へ向かう可能性がある。俺達はホーク2号で迎撃準備の為に出撃する!」

 

「了解!」

 

 隊員達はすぐに出撃準備に入る。

 

 極東基地からウルトラホーク2号に搭乗した古橋隊長と梶隊員が出動。

 

 司令室では東郷隊員、リサ隊員、ユキ隊員、渋川隊員が何かあればすぐにウルトラホーク1号で出撃できるように待機。

 

 ウルトラホーク2号で宇宙空間へ出た古橋隊長と梶隊員がみたのは沢山の渡り鳥怪獣。

 

 ある方向へ進んでいく姿はまさに渡り鳥を連想させる。

 

 そんな彼らを一匹の怪獣が襲撃していた。

 

 怪獣は次々と渡り鳥怪獣を食らう。

 

 一匹、また一匹と食らっていく姿はサメのようなもの。

 

「酷い、隊長!迎撃の許可を」

 

「許可はできない」

 

「どうしてですか!?」

 

 敵意のないものが一方的に蹂躙される姿に梶は攻撃を提案するが古橋は許可しない。

 

「バカ!俺達の目的を忘れるな!地球防衛以外の目的であの怪獣を攻撃して万が一、地球へ飛来させてみろ!大災害につながる可能性がある」

 

「ですけど!!」

 

 梶は悔しそうに目の前で食い殺されていく渡り鳥怪獣をみているしかなかった。

 

 その時、一匹に渡り鳥怪獣が天敵相手に突撃した。

 

 不意打ちを受けた怪獣は驚きながら渡り鳥怪獣へ襲い掛かる。

 

 攻撃を受けた渡り鳥怪獣の一体が地球へ向けて落ちていく。

 

「あぁ!」

 

「梶、攻撃準備だ!」

 

 地球へ落ちていく渡り鳥怪獣を追いかけようとするスペース・ジョーズにウルトラホーク2号が攻撃を開始した。

 

 凶悪な怪獣を地球へ向かわせてはならない。

 

 地球防衛を理由にウルトラ警備隊は行動を起こす。

 

 機首のレーザー砲で怪獣へ攻撃する。

 

 怪獣は攻撃を受けて苦しそうな声を上げながら離れていく。

 

 ウルトラホーク2号はスペース・ジョーズを追跡する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地球。

 

 

 

「何でピクニックなんだよ」

 

「いいじゃん!三人で仲良くお出かけだよ!」

 

 三連休。

 

 学生ならのんびりとした休日を送るだろう。

 

 比企谷八幡なら、そうする。

 

 そのはずだったのだが、由比ヶ浜の希望によって近くの山でピクニックをすることになった。

 

「怠け谷君は諦めなさい。あぁなった由比ヶ浜さんは止まらないわ」

 

「ペガは楽しみだよ!」

 

 ひょっこりと八幡の影から現れるペガ。

 

 影から姿を見せながら嬉しそうにしていた。

 

「ペガちゃんも大好きなおかず!ママと一緒に作ったからね!」

 

「え、あぁ、はい」

 

 由比ヶ浜の料理と聞いてペガは曖昧に答えながらダークゾーンの中に戻る。

 

 随分前に由比ヶ浜のマズイ料理を食べてしまったから苦手意識を持っているのだろう。

 

「あぁ、酷い!今回はちゃんとママ監修なんだから!ちゃんとゆきのんにも見てもらっているし」

 

「それなら安心……なのか?雪ノ下」

 

「大丈夫だと思いたいわ」

 

 ぽつりと漏らした言葉に八幡は肩をすくめて、ダークゾーンにいるはずのペガがブルブルと震えた、様な気がした。

 

 周囲の山の景色が見渡せる位置でレジャーシートを広げて弁当箱を由比ヶ浜が開ける。

 

「「「おぉ~!」」」

 

 中身を除いた面々が驚きの声を上げる。

 

 少し形の崩れたおにぎり、少し焦げ目が入っている卵焼きやから揚げ。

 

「見た目は一応、大丈夫だな」

 

「ヒッキー!ひどい!」

 

「当然の意見だ。バンデラス星系で炭を食わされた事、わすれちゃいねぇからな?」

 

「あれは酷かったねぇ」

 

 八幡とペガは遠い目をする。

 

 由比ヶ浜は頬を膨らませながら箸で卵焼きを突き刺して八幡へ差し出す。

 

「ほら!食べてみて!」

 

「……」

 

「八幡、ファイト~」

 

 ペガは助ける気がないことはわかった。

 

 八幡は意を決して卵焼きを食べる。

 

 もぐもぐと数回、咀嚼をして飲み込む。

 

「……うまい」

 

「でしょう!」

 

 えっへんと胸を張る由比ヶ浜。

 

 メロンほどの大きさの果実も揺れていたが八幡は信じられないという表情で気づかない。

 

「じゃあ、いただきまーす」

 

 箸を伸ばしてペガが卵焼きを掴むとそのままダークゾーンの中に飛び込む。

 

「いつも思うけれど、普通に食べればいいじゃない」

 

「えぇ~、恥ずかしいよう」

 

「よくわからないわ」

 

 恥ずかしがるペガ。

 

 由比ヶ浜と雪ノ下は不思議そうにする。

 

「その星それぞれの文化があるからな。しつこく言ってやるなよ」

 

「わかっているわ」

 

 もぐもぐとおにぎりを手に取って食べる雪ノ下。

 

 しばらく談笑しながら昼食を味わっていた時だ。

 

「あれ?飛行機?」

 

 由比ヶ浜が青空の中を飛行する飛行機を発見する。

 

 八幡は目を凝らす。

 

「あれ、ウルトラホークだな」

 

「何か事件かしら?」

 

 雪ノ下も空を見ていた時。

 

「何か落ちてくるよ!」

 

 ペガが落下してくる赤い火の玉のようなものに気付く。

 

「伏せて!」

 

 雪ノ下が叫んで全員がその場に伏せる。

 

 落下、衝撃が広がった。

 

 飛ばされないように、そして守るように八幡が二人へ覆いかぶさる。

 

 しばらくして衝撃が収まって三人は顔を上げた。

 

「びっくりしたなぁ」

 

「何だったのかしら?」

 

「隕石、とかではないみたいだ……この周辺に落ちたのか?」

 

 二人で話している時、移動していた由比ヶ浜とペガは地面にめり込んでいる巨大な卵らしきものを発見する。

 

「大きな、卵ぉ」

 

「危ないよぉ、結衣ちゃん」

 

 少し離れた場所だったが由比ヶ浜は小さなクレーターを作っている卵へゆっくりと近づいていく。

 

 ペガが止めることも聞かずに由比ヶ浜は卵に触れる。

 

 直後、卵に亀裂が入った。

 

「結衣ちゃん!」

 

 慌ててペガが卵から引き離す。

 

 少し遅れて卵から黄色い嘴、そして愛くるしい顔が姿を見せる。

 

「わぁ、可愛い!」

 

「でも!大きいよ!」

 

 由比ヶ浜は気にせずに卵から産まれた雛へ触れる。

 

 彼女に撫でられると嬉しそうに目を細めた。

 

「由比ヶ浜さん!」

 

「あ、雪乃ちゃん!八幡!結衣ちゃんが!」

 

「ペガ、落ち着け、こいつは危険な生き物じゃない」

 

 慌てるペガをやんわりと八幡はなだめながら由比ヶ浜に甘えている怪獣を見る。

 

「間違いない。コイツは渡り鳥怪獣だ」

 

「渡り鳥怪獣?」

 

「十年に一度、温かい惑星を目指す宇宙怪獣だ。肉食というわけでも攻撃的というわけでもない。温かい場所を目指す姿から宇宙の時の流れを教える怪獣ともいわれている」

 

 八幡は頭に流れてくる知識を伝えると雪ノ下はゆっくりと渡り鳥怪獣へ触れる。

 

 他の人間に触れられても嫌がらない、むしろ嬉しそうにちろちろと雪ノ下の手を舐めた。

 

 にこりと雪ノ下は微笑む。

 

「ねぇ、この子に名前を付けてあげようよ!」

 

「由比ヶ浜さん、まさか、飼うつもり?大きすぎるわ」

 

「でも、赤ちゃんじゃん!放っておけないよ!それに、私に何か懐いているし」

 

「あー、そのことだがな、由比ヶ浜」

 

 

 

 

「キミ達!そこから離れるんだ!」

 

 いつの間にか茂みをかき分けてグレーの隊員服に白と赤のメットを装着した人たちが独特な形をした銃を向ける。

 

「あれは……」

 

「ウルトラ警備隊ね」

 

 ひそひそと八幡と雪ノ下が会話をする。

 

 ペガは八幡の影に避難していたおかげで彼らにその姿を捉えられることはなかった。

 

「待って!」

 

 ウルトラガンを構えるウルトラ警備隊のメンバーを前に由比ヶ浜が手を広げた。

 

「キミ!危ないぞ!」

 

「この子は何も悪いことしていないです!」

 

 警戒するウルトラ警備隊員へ由比ヶ浜は渡り鳥怪獣が脅威ではないと訴える。

 

「みて、怯えている」

 

 リサ隊員は由比ヶ浜に隠れようとするように怯えている渡り鳥怪獣の姿に気付いた。

 

 怯える怪獣へ武器を向けていることに罪悪感を覚えたのか渋川や東郷はウルトラガンをホルダーへ仕舞いながら近付いていく。

 

「とにかく、この怪獣は我々が保護する。キミ達も事情聴取のため同行してもらえるか?」

 

「はい!」

 

「まぁ、仕方ないな」

 

「わかりました」

 

 その後、八幡達は地球防衛軍の管理している施設へ同行して事情聴取が行われた。不用意に怪獣へ近づいたことの厳重注意と他言無用の確約、最後に連絡先の記入をすることでようやく三人は解放された。

 

 

 

「疲れたぁ」

 

「地球を防衛している組織ということもあるけれど、通路もピリピリしていて辛いものね」

 

「つっかれたよぉぉぉぉ」

 

 くたくたになりながら三人は地球防衛軍の施設を後にする。

 

 帰りのバスに揺れながらふと、由比ヶ浜は疑問を漏らした。

 

「あの怪獣、どうなるのかな?」

 

「少なくともいきなり殺されるという事はないはずだ。どこかで保護して生活することになるんじゃねぇかな、まぁ、短い期間になると思うが」

 

「短い期間って?」

 

「渡り鳥怪獣は幼くてもすぐに成長して飛行できるようになる。まぁ、二~三週間もすれば、宇宙空間へはばたくんじゃないか?」

 

「暖かい惑星へ旅立つということね」

 

「あぁ」

 

「じゃあ、大丈夫だね!」

 

 笑顔で答える由比ヶ浜。

 

 その表情に八幡と雪ノ下は笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二日後、

 

 いつものように授業をダラダラと受けていた八幡。

 

 放課後になって奉仕部の部室へ向かおうとした時だ。

 

「あん?」

 

 頭上の校内放送で由比ヶ浜が呼び出しを受けた。

 

 空耳かと思ったが二回も放送されたので間違いではない。

 

「結衣、アンタ、何かしたの?」

 

「うーん、心当たりないなぁ」

 

 クラスメイトのトップカーストである三浦の質問に由比ヶ浜は本当に覚えがないのだろう、不思議そうに首をかしげていた。

 

「ちょっと、行ってくるね!」

 

 ちらりと八幡の方を見ながら由比ヶ浜は教室を出ていく。

 

 まぁ、後で部室に来るだろう。

 

 そう考えた八幡は廊下へ出る。

 

 奉仕部の部室へ到着すると既に雪ノ下が読書をしていた。

 

「あら、一人かしら」

 

「由比ヶ浜は職員室に呼び出しだ、理由は本人もわかっていないらしい」

 

「そのようね、校内放送は聞こえていたわ」

 

「何だろうな」

 

「貴方もわからないなら、私も知らないわ」

 

 話し合いながら八幡は一つのスペースを作って用意したMAXコーヒーを飲む。

 

「偶には違うものを飲んだらどうかしら?」

 

「それをいうならそっちも紅茶以外を飲んでみたらどうだ」

 

「あら、反論するなんて良い度胸ね」

 

 笑みを浮かべているが目は笑っていない。

 

 こわっ、と心の中で思いながら鞄の中にあった新聞紙を広げようとした時。

 

 ガララ!と部室のドアが開いた。

 

「ヒッキー!!」

 

 部室に飛び込んできたのは由比ヶ浜だった。

 

 何やら慌てた様子で室内に駆け込んでくる。

 

「なんだ?」

 

 慌ただしい姿はいつものことなので、八幡は気にしていなかった。

 

 しかし、次の発言に八幡はおろか雪ノ下も言葉を失う。

 

 

 

「私、ママになっちゃった!」

 

 

 

「……ゴフッ」

 

「ハイ?」

 

 珍しく雪ノ下が紅茶を吹き出し、八幡は呆然と尋ね返すしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊が保護した渡り鳥怪獣について参謀会議の結果、渡り鳥怪獣は成鳥になるまで保護することが決定した。

 

 地球に害を与えないという事がわかっていることから電磁バリアを怪獣の半径ニ十キロ周辺を囲む形で展開されることとなる。

 

 そこで新たな問題が発生した。

 

 渡り鳥怪獣がグズりはじめたのだ。

 

 突然のことにウルトラ警備隊の面々は戸惑いながらも渡り鳥怪獣をあやそうとしたが効果がない。

 

 そこで宇宙怪獣などの研究について第一人者と言われる城野重蔵博士の話によって渡り鳥怪獣は生まれた時に初めて見たものに懐くという地球のひな鳥と似たような習性があるという。その話を聞いて、東郷隊員が由比ヶ浜に懐いていたことを思い出した。

 

東郷隊員とリサ隊員の二人は総武高校へ私服姿でやってきて由比ヶ浜に渡り鳥怪獣の面倒をみてほしいと協力要請をしたのである。

 

 由比ヶ浜は驚きながらも引き受けた。

 

 一部始終を聞いて八幡と雪ノ下はふぅと息を吐く。

 

「寿命が縮まった気分がしたわ」

 

「そこまではいかないが、驚いたのは事実だ」

 

 身振り手振りで話す由比ヶ浜を横に八幡と雪ノ下は肩をすくめる。

 

「それで、引き受けるのは良いが大丈夫なのか?」

 

「うん、ウルトラ警備隊の人も傍にいてくれるみたいだし……ねぇ、ヒッキー」

 

「なんだ?」

 

「私に、出来るかな?」

 

「やる前から不安になるのは当然のことだが、それを他人である俺へ尋ねるのは間違いだろ」

 

 不安そうに揺れる由比ヶ浜へ八幡は厳しく接する。

 

「お前は渡り鳥怪獣が巣立つまで面倒を見るという依頼を引き受けたんだからな、奉仕部の部員ならば最後まで責任をもってやり遂げるべきだ」

 

「そこの冷酷谷君に同意するわけじゃないけれど、由比ヶ浜さん、やる前に不安になるのは仕方のないことだわ。でも、不安で踏み出す勇気を躊躇うのはよくないと思う」

 

「ゆきのん……」

 

「何かあれば私達も協力するわ」

 

 にこりとほほ笑む雪ノ下の言葉に由比ヶ浜は不安そうな表情から破顔して抱き着いた。

 

 驚きながらも雪ノ下は嬉しそうに由比ヶ浜を抱きしめ返す。

 

 そんな彼女達のやり取りを見ながら八幡はMAXコーヒーを一口、含んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィちゃん!」

 

 渡り鳥怪獣の保護エリア。

 

 総武高校のジャージ姿で由比ヶ浜は元気に手を振る。

 

 由比ヶ浜の姿を見つけた渡り鳥怪獣は嬉しそうに両手で振り返した。

 

「うわぁ、本当に由比ヶ浜ちゃんのこと親と認識しているんだな」

 

 ポインターから降りた渋川隊員は驚きながら由比ヶ浜と渡り鳥怪獣のやりとりをみて感想を漏らす。

 

「しかし、怪獣と人間が親子関係というのは変わっているな」

 

「いやいや、親子に怪獣も人間も関係ないって、東郷君~」

 

「渋川さん、俺より年上なのはわかるんですけど、君付けはちょっと」

 

「まぁまぁ、ここは年長者として可愛い女の子と怪獣の子供のやりとりを眺めるとしましょう」

 

 渋川の言葉に東郷隊員は苦笑するしかなかった。

 

 由比ヶ浜は餌を渡り鳥怪獣へ与える。

 

 渡り鳥怪獣ことピィちゃんは嬉しそうに餌を食べていた。

 

 ピィちゃんがおいしそうに餌を食べている姿を由比ヶ浜は優しく眺めている。

 

 餌を食べ終えたピィちゃんはぴょんぴょんと跳ねた。

 

 怪獣が跳ねることで小さな地震のような揺れが起こって由比ヶ浜は倒れそうになりながら笑顔を浮かべる。

 

 尚、渋川と東郷の二人はピィちゃんの起こした揺れに倒れないよう必死の姿でポインターにしがみつく。

 

 数時間ほどして、ピィちゃんはすやすやと気持ちよさそうに眠りについた。

 

 由比ヶ浜はピィちゃんの嘴をやさしく撫でてから渋川と東郷の方へ向かう。

 

「いつも悪いね!由比ヶ浜ちゃん!」

 

「いえ!こんな私でもできることがありますから」

 

 渋川の感謝の言葉に由比ヶ浜は苦笑する。

 

「でも、毎日、毎日、こんな山奥まですまないな」

 

 東郷は毎日、由比ヶ浜に山の保護エリアまで来てもらっていることに申し訳ない気持ちを抱いていた。

 

「まぁ、それも来週までの期限だな」

 

「え?」

 

 由比ヶ浜は東郷へ尋ねる。

 

「どういう意味です?」

 

「あぁ、今の成長速度で行くと来週に成鳥となって宇宙へ飛び立てるだろうということらしい」

 

「そう、なんですか」

 

 ポインターに乗り込む間際、由比ヶ浜は気持ちよさそうに寝ているピィちゃんをみた。

 

 別れの時は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、古橋隊長と梶隊員は宇宙空間で大量の渡り鳥怪獣を捕食したスペース・ジョーズ ザキラの行方を追っていた。

 

 多くの渡り鳥怪獣を捕食した存在が地球へ訪れるかもしれないという可能性を考慮したウルトラ警備隊は宇宙パトロールを強化、スペース・ジョーズ ザキラが地球へ来ないか警戒を強め、宇宙の巡回パトロールを行っていた。

 

「かなりの数の肉片らしきものが散らばっていますね」

 

「奴さん、かなりの数をくらったとみえる。こりゃ、餌を求めて地球へやってくる可能性も捨てきれないな」

 

 ウルトラホーク2号から外を見る梶。

 

 古橋はスペース・ジョーズザキラが強大な存在になっていることを予想する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと結衣!あーしの話を聞いているの!?」

 

 二年F組の教室内が一瞬だけ静かになった。

 

 突然のことに多くの生徒の視線を集めた。

 

 しかし、トップカーストの三浦優美子が周囲へ睨みを利かせるとすぐに視線を逸らす。

 

 三浦はぼーっとしていた由比ヶ浜に尋ねる。

 

「アンタ、最近、ぼーっとしていることが多すぎるわよ!どうしたのよ!」

 

「あー、ごめん、色々と考え事をしていて」

 

 小さく首を振りながら大丈夫という由比ヶ浜だが、離れたところにいる八幡からみても明らかに悩んでいることは明白だった。

 

「もう!勝手にしろし!」

 

 怒った三浦が教室を出ていく。

 

「結衣、本当に大丈夫か?何かあったら俺に相談してくれ」

 

 様子を伺っていた葉山隼人が笑顔で由比ヶ浜に言うが「大丈夫」と答えて、教室を出ていく。

 

「……巣立ちすることを悲しむ母親みたいなことになってんじゃねぇか」

 

 誰に聞かれることなく八幡は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奉仕部の部室。

 

 由比ヶ浜の姿はない。

 

 二人の本のページをめくる音だけが室内に響いた。

 

「由比ヶ浜さん、様子はどうかしら?」

 

「渡り鳥怪獣の巣立ちが来てほしいけれど、別れたくない、母親の気持ち丸出しだった。三浦が教室で怒鳴るほどだ」

 

「深刻ね」

 

「こればっかりは由比ヶ浜が決着をつけないとどうしょうもない問題だ」

 

「……私達にできることは何もない、のかしら?」

 

 雪ノ下の言葉に八幡は答えない。

 

「雪ノ下……」

 

「何かしら?」

 

「次の休み、暇か」

 

「デートのお誘いかしら?」

 

「そんなわけないだろ、ペガも連れてピクニックだ」

 

「貴方がそんなことを言うなんて驚きね」

 

「お前も心配だろ?由比ヶ浜のこと」

 

「当たり前よ。彼女は大事な存在なのだから」

 

 真剣に言う雪ノ下。

 

 その言葉にウソ偽りはない。

 

 本当に由比ヶ浜を大事に思っていることがわかる。

 

 こういう関係を八幡が望む本物だろうか?

 

 そんなことを思いながら八幡は机に置かれているMAXコーヒーを飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の休みの日、八幡はペガ、雪ノ下、由比ヶ浜と共に渡り鳥怪獣の保護エリアである場所までピクニックへ来ていた。

 

「ピィちゃん」

 

 少し離れたところで怪獣保護のための電磁バリアシステムが見える位置の近くでシートを広げて弁当を準備する。

 

「うわぁ、これ、おいしいね!」

 

「当然よ、私が作ったのだから」

 

 ペガは雪ノ下が作った弁当をおいしそうに食べていた。

 

 雪ノ下は小さく微笑みながら由比ヶ浜へおにぎりを差し出す。

 

「由比ヶ浜さんもどうぞ」

 

「……ありがとう、ゆきのん」

 

 小さく頷きながら由比ヶ浜はおにぎりを食べる。

 

「おいしい……おいしいよ、ゆきのん」

 

「ありがとう、そういってもらえると嬉しいわ」

 

 由比ヶ浜は食べかけのおにぎりをみて、渡り鳥怪獣のいる方向を見る。

 

「ピィちゃん、もうすぐ巣立ちなんだ」

 

「そう……」

 

「巣立ちっていうことはあれなんだよね、会えなくなる……ってことだよね」

 

 ぽつりと漏らす言葉に八幡は頷く。

 

「周りは巣立ちが大事だっていうけれど、別れたくないってあたしは思うんだ。これって、あたしの自分勝手な発言だよね」

 

「そうか?」

 

 八幡は疑問を漏らす。

 

「大事な人と別れたくないという思いは誰だってあるはずだ。由比ヶ浜の場合、その相手が渡り鳥怪獣だったっていうだけだろ?」

 

「そうかな……やっぱりさぁ、別れたくないや」

 

 自らの気持ちを吐き出す由比ヶ浜はやがてぽろぽろと涙をこぼす。

 

 雪ノ下は優しく、大事そうに由比ヶ浜の頭を撫でる。

 

 ペガも心配そうに由比ヶ浜を見つめた。

 

 八幡は彼女が落ち着くまで様子をみることにする。

 

 しかし、予期せぬ事態が宇宙で起こっていたことを彼らは知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇宙ステーションV3が地球へ向かっているスペース・ジョーズ ザキラの姿をレーダーで捉える。

 

 連絡を受けた地球防衛軍極東基地からウルトラホーク2号が緊急発進。

 

 宇宙空間でスペース・ジョーズ ザキラを迎えうつ。

 

 ウルトラホーク2号のコクピット内で古橋隊長と梶隊員の二人は膨大なオーラを放つ怪獣の姿をみつける。

 

「奴め、かなりの力を蓄えているようだな」

 

 ウルトラホークの機内越しからでもわかるほど、ザキラは力を持っている。

 

「梶、迎撃準備!奴を決して地球へ向かわせるな!」

 

「了解!」

 

 ウルトラホーク2号からレーザー砲がザキラに向かって放たれた。

 

 ザキラは攻撃を受けても進行速度を緩めない、それどころかよりスピードを増して地球へ向かおうとする。

 

 進路を変えようと阻止するウルトラホーク2号のレーザー砲による攻撃。

 

 ザキラは体にレーザー砲を受けながらも突き進む。

 

 レーザー砲を放つウルトラホーク2号へザキラの目が怪しく輝いた。

 

 パノスレーザーがザキラの目から撃たれた。

 

 ザキラの攻撃はウルトラホーク2号へ直撃。

 

「くそっ、エンジンをやられました!怪獣を追跡できません!」

 

「くしょう!なんて奴だ!」

 

 警報を鳴らすウルトラホーク2号の中で古橋は悪態をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピィちゃんとちゃんと向き合うよ」

 

 由比ヶ浜の言葉に八幡と雪ノ下は頷いて怪獣保護エリアへ足を向ける。

 

 事前に由比ヶ浜がウルトラ警備隊へ連絡をしていたことでポインターに乗って東郷と渋川が待っていた。

 

「やぁ、由比ヶ浜ちゃん!」

 

「渋川さん、東郷さん!すいません、無理なお願いを聞いてくれて」

 

「いやいや、こちらこそ、渡り鳥怪獣の面倒を見てもらっているんだ。これくらいは大丈夫さ!」

 

 サムズアップする渋川、東郷も同じく微笑んでいる。

 

「あ、二人に紹介しますね?私の友達!ゆきのんとヒッキーです!」

 

「お前、ちゃんと自己紹介しろよな……比企谷八幡です」

 

「雪ノ下雪乃です。私達もピィちゃんと会って構いませんか?」

 

「勿論!ただし、口外は駄目だぜ?」

 

 にやりと笑みを浮かべて渋川が許可を出したことで三人は渡り鳥怪獣のところへ向かう。

 

 渡り鳥怪獣、ピィちゃんは由比ヶ浜をみつけると嬉しそうな声で鳴いて喜びの感情を表す。そして、八幡や雪ノ下をみると興味深そうにのぞき込んでくる。

 

「やっぱり、近くで見ると大きいわね」

 

「でも、可愛いでしょ?」

 

 嘴を伸ばしてくるピィちゃんを由比ヶ浜は優しく撫でる。

 

「もうすぐ巣立ちというのは本当みたいだな」

 

 ピィちゃんの成長具合を間近でみた八幡はもうまもなく宇宙へ飛び出せるだろうという事を理解した。

 

「ピィちゃん、もうすぐ巣立ちだね……別れるのは正直、嫌なんだ」

 

 ピィちゃんも同じことを思っているのか悲しそうな声をだしながらちろりと由比ヶ浜の頬を舐める。

 

「でも、私の我儘でピィちゃんをこの場所に閉じ込めておくのはよくないよね……だから、飛び立つときは泣かずに見送るからね!だから、今は……許して」

 

 涙を零しながら由比ヶ浜はピィちゃんへ抱き着く。

 

 彼女が悲しんでいることを理解しているのだろう、ピィちゃんも涙を零す。

 

 そんな姿を八幡と雪ノ下達は見守っていた。

 

 直後、八幡は真剣な表情で空を見る。

 

 ぞっとするような悪意のようなエネルギーを八幡は感じ取ったのだ。

 

 上空を八幡が睨んでいた直後、空から一体の怪獣が降り立つ。

 

「キミ達、こっちに避難するんだ!」

 

 怪獣が現れたことで東郷がウルトラガンを構えながら三人のところへ駆け寄って来る。

 

 八幡達もポインターの方へ向かう。

 

 降り立った怪獣はスペース・ジョーズ ザキラだ。

 

「こちら東郷!保護エリアに怪獣が出現!」

 

 ビデオシーバーを開いて東郷が極東基地へ応援要請をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古橋隊長と連絡がとれない」

 

「じゃあ、私達が出撃するしかない」

 

「そうね!行きましょう!」

 

 極東基地で待機していたリサとユキの二人はウルトラホーク1号で出撃準備に入った。

 

 カタパルトに到着した二人はウルトラホーク1号に乗り込む。

 

『フォースゲートオープン、フォースゲートオープン』

 

 誘導アナウンスと共に管制塔の窓に特殊合金の金網が下りていくのと同調して、カタパルトの漆黒の天井が細く割れて青い空が見えてくる。

 

 巨大なレールに載って、二子山の斜面がスライドされてウルトラホーク1号が地下からその姿を現す。

 

『オーケー!レッツゴー!』

 

 管制塔からゴーサインが出たことを確認してウルトラホーク1号のエンジンが点火して大空へ飛び立つ。

 

 銀色の戦闘機が空を飛行する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミ達はここにいるんだ!いいね!」

 

 念を押して渋川はホルダーからウルトラガンを抜いて走り出す。

 

 東郷はポインターのバリアシステムを起動して、八幡達を守るようにしながら同じようにウルトラガンを片手に追いかける。

 

 渋川は現れたザキラにウルトラガンを撃つ。

 

 殺傷レベルに設定されたウルトラガンのレーザー光線がザキラに直撃する。

 

 光線を受けたザキラだが、体皮を少し溶かす程度だった。

 

 ザキラはダメージを気にせずに渡り鳥怪獣へ近づいていく。

 

 ボタボタとザキラの口の端から涎が零れる。

 

 目の前の獲物を捕食しようということだろう。

 

「ピィちゃん!」

 

 ポインターの車内で由比ヶ浜が悲鳴を上げる。

 

 渋川や東郷がウルトラガンで攻撃しているが効果がない。

 

 ザキラはピィちゃんを守っている電磁バリアへ手を伸ばす。

 

 バチバチと電磁バリアがザキラの手にダメージを与えた。

 

 目の前に餌があるのに邪魔されたことでザキラは苛立ちを隠さずに電磁バリアを展開している塔を破壊する。

 

 渡り鳥怪獣を捕食して通常よりもパワーが増しているザキラの一撃によって電磁バリアがなくなり、目の前の餌を阻むものはなくなった。

 

 舌なめずりしながらピィちゃんへ近づこうとする。

 

 天敵が現れたことを本能的に理解したピィちゃんは悲鳴を上げて逃げようとした。

 

 しかし、恐怖によって体がすくんでしまい、地面へ倒れてしまう。

 

「ピィちゃんが!」

 

 涎を垂らしながら近付くザキラをみて、八幡はポインターのバリアをオフにした。

 

「二人はここにいろ、ペガ、後は頼む」

 

「ヒッキー!?」

 

「比企谷君!」

 

 外へ出た比企谷は胸ポケットからウルトラアイを取り出す。

 

 あの怪獣は渡り鳥怪獣を捕食してかなりの力を有している。

 

 そんな相手に自分が勝てるのだろうか?

 

 不安を抱きながらも八幡はウルトラアイを見つめる。

 

 八幡は泣きそうにピィちゃんをみている由比ヶ浜をみた。

 

 いや、必ず、勝つのだ。

 

「デュワ!」

 

 意識を集中させながらウルトラアイを装着する。

 

 眩い閃光とエネルギーが体内を駆け巡って、比企谷八幡の体はM78星雲の宇宙人、ウルトラセブンへその姿を変える。

 

一瞬で巨大な姿に変身したウルトラセブンはピィを捕食しようとしたスペース・ジョーズザキラの背にキックを入れた。

 

 ウルトラセブンのキックを受けたというのにザキラは振り返り、タックルしてくる。

 

 攻撃を防ごうとしたウルトラセブンだが、ザキラの力は想像以上に強く、吹き飛ばされてしまう。

 

 攻撃を受けたウルトラセブンが起き上がろうとした時、ザキラの瞳からパノスレーザーが撃たれた。

 

 レーザーがセブンの体に直撃、赤い体をバチバチと焼くような痛みに苦悶の声を上げながら耐える。

 

 ザキラは膝をついたセブンからピィへ視線を向けた。

 

 ウルトラセブンよりも渡り鳥怪獣の捕食を考えているのだろう。

 

 膝をつきながらもウルトラセブンが額のビームランプからエメリウム光線を放つ。

 

 光線を受けたザキラは怒りの声を上げながら振り返り、猛進してウルトラセブンへ突撃してきた。

 

 攻撃を防げなかったウルトラセブンは地面を転がる。

 

 ザキラの背にミサイルが直撃した。

 

 上空にウルトラホーク1号が飛行する。

 

「ブレイカーナックルミサイル発射!」

 

 ユキがウルトラホーク1号の操縦桿の横にあるボタンを押して攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、ザキラはブレイカーナックルを受けて平然としていた。

 

 それどころか攻撃を受けて唸り声を上げながらウルトラホーク1号へ尻尾を振るう。

 

 回避しようとしたウルトラホーク1号だったが、後部に尾が直撃して黒煙をあげながら墜落していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「苦戦しているよぉ!」

 

 ポインターからウルトラセブンとザキラの戦いを見ていたペガが困惑した声を上げる。

 

 大量の渡り鳥怪獣を捕食したザキラは通常よりもパワーが上昇しており、ウルトラセブンといえど苦戦してしまう存在になっていた。

 

「ヒッキー……」

 

 ふらふらと起き上がりながらもウルトラセブンはピィちゃんを守るために立ち上がる。

 

 ザキラの攻撃を受けながらもピィちゃんを守ろうとするウルトラセブン。

 

 勝てない相手だろうと挑もうとする姿に由比ヶ浜は覚悟を決めたように鞄から一つのアイテムを取り出す。

 

「結衣ちゃん!?」

 

「由比ヶ浜さん、それは……」

 

 雪ノ下は驚いた表情で彼女が取り出したアイテムをみる。

 

 最初は驚いていた雪ノ下だが、由比ヶ浜の真剣な表情に気付いて、静かに尋ねた。

 

「行くの?」

 

「うん、ヒッキーが命がけでピィちゃんを守ろうとしてくれているんだ。それなのにあたしが何もしないなんておかしいし、だって、あたし、ピィちゃんのお母さんだもん!」

 

「そう、なら、止めないわ」

 

「ありがとう、ごめんね、ゆきのん」

 

 ポインターから出た由比ヶ浜は手の中にあるアイテム『ジャイロ』を握り締める。

 

 ワームホールで飛ばされた先で由比ヶ浜が手に入れたアイテム。

 

 これを使うのは久しぶりである。

 

「ピィちゃん、今、行くからね!」

 

 泣いて怯えている渡り鳥怪獣の姿をみながら由比ヶ浜はジャイロの中心に怪獣が描かれたクリスタルをはめ込む。

 

 ジャイロの左右のハンドルを引っ張りながら空へ掲げる。

 

【グルジオキング】

 

 光と共に由比ヶ浜の体が包まれてその体は瞬時に巨大な怪獣、爆撃骨獣 グルジオキングにその姿を変えた。

 

 出現したグルジオキングはザキラへ頭部の角で突進する。

 

『ヒッキー!』

 

 グルジオキングからテレパシーでウルトラセブンへ語り掛ける。

 

『お前……どうして』

 

『私だってピィちゃんを守りたいもん!』

 

『そうか……行くぞ!』

 

 ウルトラセブンとグルジオキングがザキラと戦闘を始める。

 

 ザキラの光線が放たれるもウルトラバリヤーで防ぐ。

 

『今だ!』

 

『うん!くらえぇ、えっとぉ、ギガキングキャノン!!』

 

 グルジオキングの背中の大砲、グルジオバレルから放たれた技がザキラの体を撃ちぬいた。

 

 ザキラは苦悶の声を上げながらパノスレーザーを放つ。

 

 狙いは怯えている渡り鳥怪獣、ピィちゃんだ。

 

『ピィちゃんはやらせない!』

 

 両手を広げてグルジオキングがレーザー攻撃をその身で受け止める。

 

 バチバチと背中が焼けるような痛みを感じながらもレーザーを受け続けた。

 

『ピィちゃんは、あたしが、守るから』

 

 必死にザキラのレーザー攻撃に耐えるグルジオキングこと由比ヶ浜の姿にピィは涙を零しながらも両腕の翼を広げる。

 

 地面を蹴りながら舞い上がったピィは急降下して光線を撃ち続けているザキラへ突進した。

 

 突進を受けたザキラはバランスを崩して光線が止まる。

 

 ザキラは怒りのあまりピィを殴り飛ばして、そのまま食い殺そうとした。

 

「デュワ!」

 

 ウルトラセブンが頭頂のアイスラッガーを投げる。

 

 光に包まれたアイスラッガーがザキラの体を真っ二つに切り裂く。

 

 左右に体が割れてザキラは地面に倒れた。

 

 こと切れたザキラ。

 

 ふらふらと起き上がったグルジオキングへピィちゃんが近づいていく。

 

 心配そうな声を上げるピィちゃんをグルジオキングが優しく撫でる。

 

『由比ヶ浜』

 

 ウルトラセブンがテレパシーでグルジオキングこと由比ヶ浜へ問いかけた。

 

『渡り鳥怪獣は成鳥になった……もう、宇宙空間へ飛び立てる』

 

『そっかぁ』

 

 グルジオキング内で由比ヶ浜は泣きそうになるのを堪えながら目の前で自分に甘えてくるピィちゃんの頭を撫でる。

 

『ヒッキー、お願いがあるんだけど』

 

『なんだ?』

 

『あたし、ピィちゃんを最後まで見守りたい』

 

『……わかった』

 

 頷いたウルトラセブン。

 

『ピィちゃん』

 

 グルジオキングはピィちゃんを優しく撫でる。

 

『これから大変なこともあるかもしれないけれど……頑張って生きて』

 

 巣立ち。

 

 その言葉が頭に浮かぶ。

 

 ピィちゃんは由比ヶ浜の気持ちが伝わったのか頷いて両手の翼を広げて青空に向かって飛んでいく。

 

 グルジオキングから由比ヶ浜の姿へ戻ると、差し出されたウルトラセブンの掌に乗る。

 

 ウルトラセブンは赤い球体にその姿を変えると渡り鳥怪獣ピィちゃんを追いかけて宇宙へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球から何万光年も離れたある銀河系。

 

 そこには無数の渡り鳥怪獣が群れで飛んでいる。

 

 赤い球体の中で由比ヶ浜とウルトラセブンはその群れへ合流しようとするピィちゃんの姿を見つめていた。

 

 ピィちゃんは怯えることなくゆっくりと群れに合流する。

 

「ありがとう、ヒッキー」

 

「もう、いいのか?」

 

「うん……これ以上はあたしも心配してずっとついていっちゃいそうだもん」

 

「わかった」

 

 赤い球体は進路を地球へとる。

 

「元気でね、ピィちゃん」

 

 去り際に由比ヶ浜は微笑みながら群れと旅立つピィちゃんに告げた。

 

 

 

 

 

 




簡単な怪獣紹介

渡り鳥怪獣バル
出典はウルトラマン80
今回はピィちゃんという名前を由比ヶ浜からもらう。
大人しい怪獣で群れで温かい惑星を目指す怪獣。
今作では由比ヶ浜を親と認識したようにウルトラマン80においても、UGM隊員の矢的猛を親と認識してしまう。
ウルトラマン80においてはザキラから80を守ろうとして命を落としてしまうが、今作においてはウルトラセブンとグルジオキングの姿になった由比ヶ浜のおかげで無事に地球を巣立つ。


スペースジョーズ ザキラ
ウルトラマン80に登場する怪獣、上記の渡り鳥怪獣の天敵である。
基本的に渡り鳥怪獣を捕食する。今作においては餌を求めて地球へ飛来、保護されていた渡り鳥怪獣を狙い、ウルトラセブンと戦闘になる。
かなりの数の渡り鳥怪獣を捕食していたことで膨大な力を宿しており、セブンも苦戦を強いられるがグルジオキングに変身した由比ヶ浜の参戦によって状況は一転、さらに渡り鳥怪獣ピィちゃんからの攻撃を受けたところでウルトラセブンのアイスラッガーを受けて体が両断されるという最後を迎えた。


一応、次回も近いうちに投稿する予定です。


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第三話:緑の再来

台風が猛威を振るっていますが、みなさん、大丈夫でしょうか?

こちらは雨の中車を運転して、周りが暴走気味でヒヤヒヤしておりました。


さて、この話も三話目、一応、これの反響次第で、続けるかどうかを決めます。

予想出来ているかもしれませんが、今回の話は彼女メインでもあります。

ちなみに、少しばかりアンチヘイトがありますが、別に嫌いというわけではありません。


 

 

――夢をみていた。

 

 

 

 銀河系に数多ある惑星の一つ。

 

 生命が存在しないその惑星で私は一人の宇宙人と対峙していた。

 

「貴様を潰す!いけ!レイキュバス!」

 

 これから私は目の前の相手を殺す。

 

 殺すと言っても直接、殺すわけではない。

 

 自らが使役する“怪獣”を使って倒すのだ。

 

「ヒッ――」

 

 相手が悲鳴を上げながら地面へ崩れ落ちる。

 

 私はゆっくりとこと切れた相手の手の中にあったアイテムを拾い上げた。

 

「勝ったようだね」

 

「おねえちゃん」

 

 私は笑顔を浮かべてやってきた相手に駆け寄る。

 

 右目に黄色い傷のようなものがあるけれど、おねえちゃんは笑顔で私の頭を撫でてくれた。

 

「キミとコイツに勝てる相手はいないだろう。そう、キミがこのまま勝ち続けてくれるととても嬉しいよ」

 

「任せて、頑張るから」

 

 この時の私はきっと無邪気な笑顔を浮かべていただろう。

 

 姉と呼んでいた相手がどういう目的で私を利用していたのか知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの日の夢……」

 

 夜中に目が覚めた私はベッドから体を起こす。

 

 全身から流れた汗でパジャマがベトベトだ。

 

「シャワーでも浴びようかしら」

 

 はぁ、とため息を零しながら私はパジャマを脱いでシャワーを浴びる。

 

 体を少し冷やしてから新しいパジャマに着替えた。

 

 そのまま寝ようとするけれど、シャワーで汗を流した為か……少しばかり目が冴えてしまう。

 

 どうせなので勉強をすることにした。

 

 頭を使えば少しは休めるだろう。

 

 そう考えて、購入しておいた宇宙関係の本を手に取る。

 

「誰が信じるかしらね……一年前に多次元宇宙を旅したなんて」

 

 自嘲な笑みを浮かべながら私は本を開く。

 

 将来は宇宙関係の仕事に就きたい。

 

 それが今の私の将来。

 

 もう一度、広大な宇宙へ行きたい。

 

「けれど、あの夢をみてしまうと……」

 

 今まであの夢を見なかった。

 

 思い出したのはここ数日、怪事件に遭遇したことだろう。

 

 三面怪人ダダによる人の誘拐、

 

 渡り鳥怪獣ピィちゃんとスペース・ジョーズザキラの襲来、

 

 短い期間にこれだけの事件に遭遇したことであの時の出来事を思い出してしまったのだろう。

 

「ふぁわぁ」

 

 小さな欠伸が口から漏れる。

 

 本を閉じた。

 

 そのままベッドへ横になる。

 

 私はそのまま夢の世界へ向かう。

 

 できれば、幸せな夢を見たいと思うのは、我儘だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもの奉仕部の日常。

 

 その日は珍しいことに来客があった。

 

「失礼します!」

 

「あ、彩ちゃん」

 

 部室内に入ってきたのは小柄で童顔の少年。

 

 八幡は女の子が来たと勘違いしそうになったがすぐに体の骨格などで理解することができた。

 

「あれ、比企谷君?」

 

「うん?誰だ」

 

「ヒッキー!?何言っているの!?同じクラスだよ!」

 

 由比ヶ浜が目を丸くしながら八幡へ言う。

 

「あー、悪い。クラスメイトの顔、覚えていないわ」

 

「貴方らしいわね」

 

 ため息を吐きながら雪ノ下は文庫本を閉じる。

 

「えっと、僕は戸塚彩加っていいます。実はここのことを聞いて依頼をしたくてきました!」

 

「依頼?」

 

「はい!」

 

 頷いた戸塚の話によれば、テニス部に刺激を与えるために自分を強くしてほしいというものだった。

 

 三年生がまもなく受験で抜けてしまうことと、不慣れな一年生もいることから、モチベーションが低くテニス部の実力低下が深刻であるということから刺激を与えたいということらしい。

 

「そうね、いいわ」

 

「大丈夫なのか?」

 

「私がメニューを考案するから比企谷君はチェックをしてくれるかしら」

 

「あ、俺が?」

 

「えぇ、だって」

 

――人の構造などは詳しいでしょう?

 

 そこから先の言葉は小さくて戸塚は聞き取れなかったが八幡はため息を吐きながら了承した。

 

 翌日から雪ノ下雪乃考案のメニューがはじまった。

 

 基本的な体力づくりに始まり、テニスボールを使っての本格的な技術向上メニューが組み込まれていき、体を虐めるため、一見するとスパルタのようなイメージもあったけれど、戸塚が精いっぱいにこなしていることから一週間で効果が出てきた。

 

「彩ちゃん、凄い!」

 

「体力面もそうだけれど、彼自身が強くなりたいと思っているからでしょうね。精神面もかなり強くなっているわ」

 

 少し前まで本人は自信がもてないということや、気弱な印象もあった。

 

 しかし、テニスにおいては本気でやっている。

 

 疲労でふらふらになりながらも次のボールを取ろうと構える姿は雪ノ下や八幡も好感をもてた。見ているだけしかできない由比ヶ浜も凄いと叫んでいた。

 

「あー、テニスやってんじゃん!テニス!」

 

 その時、水を差すような声がテニスコートの外から聞こえてきた。

 

 視線を向けると八幡と由比ヶ浜と同じクラスで強い影響力を持っている三浦優美子と葉山隼人のグループがやって着た。

 

「ね、戸塚~、あーしらもここで遊んでいい?」

 

「悪いけど、遊んでいるわけじゃないから、今、練習中だし」

 

 片手に持っていた缶ジュースを飲み干し、軽い調子で尋ねた三浦へ戸塚ははっきりと拒絶する。

 

 戸塚の性格を知っていた三浦は自分が押せば許可するだろうと思っていた。しかし、雪ノ下や八幡たちによって鍛えられた彼は肉体や精神面も強くなり、以前と異なってはっきり否定できるようになっていた。

 

 それでもプライドの高い三浦は諦める様子を見せず、彼女の状況を察した葉山が笑顔で戸塚に話しかける。

 

「まぁまぁ、あまり喧嘩腰にならないでよ、戸塚君。みんなでやった方が楽しいし、ほら、俺達も手伝うから」

 

「悪いけれど、楽しく練習をするためじゃない。僕は真剣にやっているんだよ。だから、断るよ」

 

「それは……」

 

「言っておくけれど、このテニスコートは部の施設扱いなんだ。だから使うためには許可を取る必要があるんだ。申請も前日中に出す必要があるから、悪いけれど、無理なんだ」

 

「正論ね」

 

 ぽつりと雪ノ下が漏らした言葉に三浦が反応して睨む。

 

「アンタ、何様のつもり?」

 

「あー、これは失礼。俺達は戸塚の手伝いでここにいるんでね、ちゃんと戸塚が許可を取ってくれてここにいる。突然の乱入者じゃないんだよ」

 

 雪ノ下と三浦が争いにならないように間へ入ったつもりの八幡だったが、火に油を注いでしまう。

 

「戸塚にアンタら生意気なんじゃ……」

 

 突如、三浦が喉元を抑える。

 

「優美子?」

 

 彼女の様子がおかしくなったことに気付いて葉山が彼女へ声をかける。

 

「う、ぐ、ぐぁあああ!」

 

 葉山の声に振り返った三浦優美子。

 

 その顔は緑色の怪物へ変貌していた。

 

「うわぁあああ!」

 

 緑色の怪物へ変貌していく姿は一種のホラーだ。

 

 突然のことにグループの誰かが悲鳴を上げて逃げ出す。

 

「は、はや、と」

 

「皆下がって!」

 

 緑色の植物みたいな手を伸ばして三浦は葉山に助けを求める。

 

 しかし、葉山も顔は恐怖に染まって他のグループを守るように遠ざけていた。

 

 その姿は自分を異物としてみている。

 

 はっきりとそう三浦は感じてしまった。

 

 恐怖で震える彼女をみて、冷静に動いた者達がいる。

 

「戸塚君、テニスコート周辺に誰も近づけないようにして」

 

「え、あ、うん!」

 

 雪ノ下が戸塚へ誰も近づけないように指示を出すと手元の端末からウルトラ警備隊へ通報する。

 

 ここで警察を呼んだとしても彼らの範疇に収まらない。怪事件のエキスパートと言えるウルトラ警備隊を呼ぶべきだと彼女は考えたのだ。

 

 そして、二人が緑色の怪物へ変貌していく三浦へ近づく。

 

「優美子!大丈夫!?」

 

「ゆ、い……」

 

「意識はあるようだな、深呼吸して、落ち着くんだ」

 

 異形になっていく彼女の手を握り締めて必死に呼びかける由比ヶ浜。

 

 八幡は脈を図りながら誰にも気づかれないように三浦の体を透視する。

 

「(体内の細胞が急速に変化している。何かウィルスのようなものが侵入しているのか?)」

 

 冷静に調べながら八幡は念力を使いながら三浦の精神を落ち着かせようとする。

 

 理性を失って暴走すれば、より大きな被害に繋がる恐れがあると踏んだからだ。

やがて、ある程度、落ち着いたのか三浦の意識はゆっくりと落ちて、地面へ横になった。

 

「ゆ、優美子は大丈夫なのかい?」

 

 苦悶の声をあげることなく横たわった三浦の様態を葉山が問いかける。

 

「今は気絶している、安静にしておいた方がいいだろう」

 

「そうか、ありがとう」

 

 ちらりと葉山を一瞥してから八幡は考える。

 

 何かが起こっている。

 

 それは嫌でも感じさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラ警備隊です」

 

 通報を受けたウルトラ警備隊が駆け付けると警察が既に立ち入り禁止のテープを貼っていた。

 

 立ち入り禁止のテープ前で立っている警官へ渋川が身分証明をみせる。

 

 隊員服とヘルメットでわかるかもしれないが身分証明を見せることは規則として決まっていた。

 

 一緒にきたリサと共に立ち入り禁止のテープを潜り抜ける。

 

 テープの向こうでは一足先にやってきていた古橋と梶の姿があった。

 

「お待たせ!」

 

「渋川隊員、遅いですよ」

 

「無茶言うなって、ホーク1号でのパトロールから帰ってきて大急ぎでポインター乗ってきたんだぜ?」

 

「ところで、状況は?」

 

 渋川を横へ押しのけながらリサが尋ねる。

 

「目撃者の話によると少女が突然苦しみだして植物の怪物へ姿を変えたという事だ」

 

「そんなこと、ありえるの?エイリアンの擬態が解けたとかそういう話じゃ?」

 

 驚きを隠せない表情でリサは問いかける。

 

 人が怪物へ変身する。

 

 それでウルトラ警備隊が真っ先に考えるのは人間へ擬態していたエイリアンが本性を現すという瞬間。

 

 何度も目撃してきたからこその考えをリサは言うが、梶は無言で首を振る。

 

「問題の少女は防衛軍のメディカルセンターで検査を受けている。その結果待ちだな」

 

「メディカルセンターの方は?」

 

「そっちはユキに行ってもらっている。俺達は目撃者の事情聴取と周辺の調査だ。念のため、ウルトラガンはパラライザーモードにしておけ」

 

「わかりました」

 

 四人はウルトラガンを取り出してモードを切り替える。

 

「そういや、東郷隊員は?」

 

「目撃者の事情聴取だ」

 

 そう言いながら古橋は学校の方をみる。

 

「なんともまぁ、数奇な運命なこった」

 

 呟いた彼の言葉が暗闇の中に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いね、詳しい話を聞かないといけないんだ」

 

 にこりとほほ笑みながら東郷は目撃者である八幡、雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚、葉山へ尋ねる。

 

 目撃者は他にもいたのだが、一番近くにいたということで選ばれた。

 

 葉山のグループについては他言無用を約束して、警察に送ってもらったのである。

 

 友人である三浦が異形へ姿を変えたことにショックを受けている由比ヶ浜はスカートを両手で握り締めて俯いていた。

 

 雪ノ下は彼女を見て心配そうにみている。

 

 戸塚は不安そうにちらちらと周囲を見渡していた。

 

「勿論です。俺達にできることなら」

 

 その中で力強く答えるのは葉山だ。

 

 八幡は思案するように窓からみえる景色を見ていた。

 

 葉山は東郷隊員へ自身が目撃したことを話す。

 

 少し戸惑っているところもあるのか、彼自身の主観の話も混じっていたが、東郷もそこはわかっているのだろう。

 

「そうか、ありがとう」

 

 話し終えた葉山に東郷は柔和な笑みを浮かべて頷いた。

 

「キミ達にも確認だが、彼の話した内容であっているかな?」

 

「概ねといったところかしら、私達も三浦さんに何が起こったのかはっきりとわかっていないですから」

 

 代表する形で雪ノ下は答える。

 

「そうか、すまない」

 

「あの、東郷さん、優美子はどうなるんですか?」

 

 由比ヶ浜がおずおずと尋ねる。

 

「防衛軍管轄のメディカルセンターで検査を行っている。人間へ戻れる方法も探すことになるからしばらくは入院ということになると思う」

 

「あの、会うことは」

 

「すまない、しばらくは面会謝絶になる。空気感染も考えられるから」

 

「そんな、優美子……」

 

「結衣、彼らだって仕事なんだ。迷惑をかけちゃ駄目だ」

 

「何で!?優美子は友達なんだよ!心配して会いたいと思っちゃいけないの!?」

 

 葉山としては優しく説得するつもりだったのだろう。

 

 だが、今の由比ヶ浜にとっては怒りの起爆剤でしかない。

 

「落ち着け、由比ヶ浜」

 

「ヒッキー……」

 

 立ち上がった由比ヶ浜をやんわりと抑えたのは八幡だった。

 

「東郷隊員、み、三浦は命に別状はないんですね?」

 

「あぁ」

 

「ヒッキー、優美子が」

 

「今はウルトラ警備隊と防衛軍を信じるしかない……三浦も変異したからって元は人間なんだ。今はアイツが戻ってくることを信じろ」

 

「そう、だね……うん!」

 

 頷いた由比ヶ浜は目元の涙をぬぐって笑顔を浮かべた。

 

 無理した笑顔だったが、ふさぎ込んでいるよりかは幾分もマシだ。

 

 そんな二人のやり取りを雪ノ下は横でみていた。

 

「周辺の調査が終わり次第、キミ達も家へ送り届けよう!ウルトラ警備隊のポインターに乗れる滅多にないチャンスだぞ!」

 

 皆を明るくさせるつもりで東郷隊員が笑顔で言う。

 

「本当ですか!?」

 

 静かにしていた戸塚が笑顔を浮かべる。

 

 東郷隊員は腕のビデオシーバーからの着信に立ち上がった。

 

「ここで待っていてくれ」

 

 全員が頷いたことを確認して東郷は外へ出る。

 

「はい、東郷」

 

『古橋だ。目撃者の子供の様子はどうだ?』

 

「落ち着いてはいます。ただ、いきなり友達が目の前で変異したことで戸惑いは隠せていません」

 

『そうか、学校周辺の調査は完了した。東郷隊員はリサ隊員と一緒に目撃者の子供たちを送り届けてほしい』

 

「わかりました……隊長、メディカルセンターに運ばれた子は」

 

『今のところ、命に別状はない……検査の途中だが、彼女はエイリアンではないという結果がでている』

 

 古橋からの連絡で東郷は安堵の息を漏らす。

 

 もし、三浦優美子がエイリアンに擬態した姿だったのならば、排除の可能性もあり得た。

 

 彼女が人間だという結果が出た以上、隔離はありえるだろうけれど命が奪われる心配は消える。

 

 そのことに東郷は安心した。

 

 しかし、事件ははじまったばかりであるということを、ウルトラ警備隊はおろか、誰も知る由がなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件から四日が経過した。

 

 三浦優美子が異形な姿へ変わった事件を皮切りに既に十人もの人間が緑色の怪物へその姿を変えている。

 

 地球防衛軍は警察を通して夜間外出禁止を徹底させる。

 

 夜間はウルトラ警備隊、準隊員や警察が交代を行いながらも徹底的にパトロールを行っているのだが、目撃者はおろか怪しい人物の情報がない。

 

 ウルトラ警備隊司令室は緊張した空気が漂っている。

 

 古橋隊長が司令室のスクリーンにモンスター&エイリアンのファイルを表示した。

 

 現れるのは緑色の植物のようなエイリアンの姿。

 

「ワイアール星人、こいつはステーションV3の職員に姿を変えて地球へ侵入後、地球人を次々と人間性物Xへその姿を変えた」

 

「隊長はこの事件がワイアール星人の仕業だと?」

 

「人間生物Xへ姿を変える液体が変異した人々の中から検出されたとメディカルセンターから報告があった……だが、俺はどうもワイアール星人の仕業と思えない。ワイアール星人の仕業にしては、宇宙人の影も形も見えないというところに納得がいかねぇ」

 

「では、何の仕業だと」

 

「わからん、だが、このままいけば、徐々に被害が増えることは事実だ。早急に液体の出所を調べなければならない」

 

 ウルトラ警備隊の司令室内に重苦しい空気が広がるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃は夜道を歩いていた。

 

 夜間外出命令の時間が刻々と近づいている中で彼女は買い物を済ませて、家を目指している。

 

 ふと、彼女は暗闇の向こうに何かがいることに気付く。

 

 その人物は自販機を眺めている。

 

「貴方、何をしているの」

 

 気付けば雪ノ下は相手へ問いかけた。

 

 相手はちらりと雪ノ下をみると怪しい笑みを浮かべる。

 

「貴方、宇宙人ね」

 

 雪ノ下は笑みを浮かべる相手の姿が偽装したものだと見抜く。

 

 それは過去の経験からくるもの。

 

 笑みを浮かべていた相手が姿を変えた。

 

 人の姿から黒を基調とした体に青く輝く二つの瞳、銀や赤などの姿をした宇宙人。

 

「メフィラス星人ね」

 

「ほぉ、この姿を見ても驚かないとはなぁ」

 

「その手にある液体の詰まったケース、貴方ね、三浦さんや多くの人を植物人間へ姿を変えさせたのは……なぜなの?」

 

「地球が欲しい」

 

 両手を広げてメフィラス星人は伝える。

 

「宇宙のオアシスともいわれるこの星を手に入れたいと思うのは当然のことだろう?そのためには星に住まう生き物が邪魔だ。お前もわかっているはずだ、人間は醜いと」

 

「そんなこと」

 

「ないと言い切れるのか?ゼットン星人の右腕として戦っていたレイオニクスよ」

 

 雪ノ下の呼吸が止まる。

 

 それがわかっていたのかにやりとメフィラス星人が笑う。

 

「知っているぞ。ゼットン星人の右腕として多くの敵を叩き潰した最強のレイオニクスが地球にいるとなぁ」

 

「もし、私がそうだったら、何だというの?」

 

「俺と手を組まないか?」

 

 手を差し伸べるメフィラス星人。

 

 一瞬、過去の記憶がフラッシュバックする。

 

 ぶるぶると体が震えた。

 

 呼吸が荒くなっていく。

 

「お前の力と俺の頭脳!それがあれば、この星を支配することなど造作もない!地球防衛軍、ウルトラ警備隊も手も足も出ていないこの状況で、お前の持つ最強怪獣を使えば!」

 

 いつの間にか近づいてきたメフィラス星人が雪ノ下の腕を掴む。

 

 悲鳴を漏らして離れようとするがすさまじい力で逃れることができない。

 

 メフィラス星人の瞳が怪しく輝いた瞬間。

 

 衝撃波によってメフィラス星人が吹き飛ばされた。

 

 自販機に激突して大きな音を立てる。

 

「だ、ダメ!」

 

 宙に浮いた鞄が彼女を守るように怪しい光を放っていた。

 

 雪ノ下は鞄の中にあるものを必死に抑え込む。

 

 ぶるぶると彼女の手の中で暴れようとしている存在。

 

 それが外に出ることを雪ノ下は恐れている。

 

 必死に鞄を胸元で抱きしめた。

 

 やがて、光を放っていた何かがゆっくりと収まる。

 

「ぐぅぅ、なんて力だ。だがますます、欲しく」

 

「おい!そこで何をしている!」

 

 懐中電灯の光を向けられたことでメフィラス星人は振り返る。

 

「う、宇宙人」

 

 メフィラス星人を発見したのは巡回していた警察官だった。

 

 驚いている一人の横で年配の警官が無線で応援要請をする。

 

「ちぃ」

 

 メフィラス星人は手の中のカプセルを持ったまま走り出す。

 

 警察官が追いかける中で雪ノ下はぺたりと座り込む。

 

 髪が乱れて、過呼吸を起こす。

 

 ひどく、苦しい。

 

「たす、けて」

 

 ぽつりと漏らした言葉は誰に聞かれることなく地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!こっち!」

 

 雪ノ下雪乃が倒れたという連絡を由比ヶ浜から受けた八幡

 

 病院の通路で手を振る由比ヶ浜。

 

「声がでかい、静かにしろよ」

 

「無理だよ!だって、ゆきのんが!」

 

「落ち着け」

 

 小さく諭すようにいいながら八幡は尋ねる。

 

「雪ノ下が宇宙人に襲われたっていうのは本当なのか?」

 

「うん、東郷さんが連絡してきてくれて、それでいてもたってもいられなくて」

 

「中には入れるのか?」

 

「……うん」

 

 ノックをして中に入る。

 

 綺麗な病室の中で上半身を起こした状態の雪ノ下、そしてウルトラ警備隊の渋川と梶の両名がいた。

 

 ウルトラ警備隊がいたことで八幡と由比ヶ浜は小さく挨拶をする。

 

「じゃあ、キミはエイリアンの姿を目撃しただけだというんだね?」

 

「はい……夜間外出禁止時間が急いでいたので足早に帰ろうとしていましたら、自販機に何かをしようとしている宇宙人の姿が」

 

「じゃあ、他になにか話をしたことは」

 

「梶、雪ノ下ちゃんは疲れているんだ。そんな尋問めいた問いかけはやめてやれよ」

 

「渋川隊員、俺達はエイリアンを追いかけているんですよ。被害者は今も出ている、悠長にしている時間はないんです」

 

「だからって、一般人である雪ノ下ちゃんにここまで尋問めいたことする必要はないだろ?」

 

「そう、ですね……すまない」

 

「いえ、貴方達の仕事は理解しているつもりですので」

 

 謝罪する梶に雪ノ下は首を振った。

 

「また、何か思い出したら教えてほしい」

 

「安静にするんだよ」

 

 渋川と梶は感謝の言葉を告げて病室を出ていく。

 

「えっと、ゆきのん、大丈夫?」

 

 由比ヶ浜は横になっている雪ノ下へ問いかける。

 

「大丈夫と言いたいところだけれど、かなり疲れているわ」

 

「何があったんだ」

 

 八幡が静かに尋ねる。

 

「エイリアン、いいえ、メフィラス星人に勧誘されたわ。私の力……狙っていたわ」

 

「……ウルトラ警備隊にそのことは」

 

「伝えられるわけないじゃない……話すという事は私が、私が侵略者の片棒を担いだことを伝えるのと一緒なのよ!」

 

 慟哭する雪ノ下の言葉に由比ヶ浜は言葉を失う。

 

「で、でも、あの時はゆきのん、操られていただけで」

 

「それで許されると思う?私は、姉と語ったあのゼットン星人の為に多くの星人を滅ぼした。相手を叩き潰すために……この力を使ったのよ!」

 

 叫ぶ雪ノ下の手に握られているアイテム。

 

――バトルナイザー。

 

 並行世界の宇宙でレイブラッド星人が自らの後継者を生み出すために作り出したアイテム、レイオニクスのみが操ることができるバトルナイザーをみせた。

 

「私は許されるべき存在じゃない」

 

「そんなことないよ!」

 

 由比ヶ浜が雪ノ下の両手を握り締める。

 

 バトルナイザーが布団の上へ落ちた。

 

「ゆきのんは操られていたんだよ!本心でやったわけじゃないって、あたしも、ヒッキーも知っている!何より、ゆきのんは後悔しているじゃん!だから、あの時、ヒッキーのお兄さん達を助けようとした。だから、ヒッキーのお兄さん達も、あの父さんも許してくれたんだよ!」

 

「私は……」

 

「雪ノ下」

 

 八幡がゆっくりと雪ノ下の前に立つ。

 

「お前が本当にどうしょうもない悪人で最低最悪のレイオニクスだというのなら俺が、いや、私がキミを倒そう」

 

 ウルトラアイを取り出して机に置く。

 

「だが、キミが自分の罪を悔いて、償うために生き続けるという限りは守ろう。この星に住まう者の一人として」

 

 彼とは思えない温かく、優しい言葉に雪ノ下雪乃は俯いた。

 

 由比ヶ浜は呆然とそのやり取りをみているしかない。

 

「貴方は、本当に…………」

 

 そこから先の言葉を彼女は飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆきのん、まだ、悩んでいるんだね」

 

「あぁ」

 

 雪ノ下雪乃はワームホールに飲み込まれた時、ゼットン星人に助けられた。

 

 偶然なのか、故意なのかはわからない。

 

 その際に雪ノ下雪乃は洗脳を施されてアイテム、バトルナイザーを渡される。

 

 彼女にレイオニクスとしての適性があったことを知っていたのかわからない、偶然にも手に入れたバトルナイザーを与えて自身の右腕、ゼットン星人の妹として扱った。

 

 八幡達と再会した時は敵として対峙する。

 

 冷酷な侵略者の片腕として、次々と破壊の限りを尽くした。

 

 そんな彼女が普通の生活を送っていること、その事に悩んでいるのだ。

 

「ヒッキー、さっきの演技?それとも」

 

「演技に決まっているだろ?あの人は俺の意識の奥深くだ。不用意に表へ出てくることはしない」

 

――キミと一心同体になろう、だが、私は不用意にキミの精神、思考へ踏み込むことはしないということを約束する。

 

 ウルトラセブンは比企谷八幡と一心同体になる際に交わした誓いのようなもの。

 

 不用意に彼は八幡の中へ踏み込んでこない。

 

 ここぞという時、大事な時があれば接触してくるが、八幡の方からウルトラセブンとコンタクトをとることはなかった。

 

「ゆきのんにドリンクでも持って行こう!」

 

「紅茶か?」

 

「うん!それで時間いっぱいまで話し合うんだ!あ!ヒッキーもちゃんと付き合うんだよ!」

 

「げぇ、マジかよ」

 

 彼女の言葉に八幡はため息を漏らすしかなかった。

 

 この場にペガがいないことが悔やまれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊は雪ノ下雪乃からもたらされた情報を元に街中のすべての自販機を徹底調査。

 

 その結果、自動販売機の中に特殊な液体が含まれたドリンクが複数個発見される。

 

 地元警察などの協力を得ながら自販機をすべて調査、回収した。

 

「古橋隊長!地元警察から緊急通報!逃走する宇宙人を発見したとのとこです!」

 

 ウルトラ警備隊司令室の通信隊員からの報告を受けて、二台のポインターが通報先へ急行する。

 

 ポインターが到着すると疾走するメフィラス星人の姿を発見した。

 

「エイリアンだ!」

 

 助手席の東郷隊員が叫ぶ中、運転席にいる梶がアクセルを踏む。

 

 ポインターはうなりを上げながらメフィラス星人を追跡する。

 

 常人とかけ離れた脚力を持つメフィラス星人は振り返りながら光弾を放つ。

 

「バリア!」

 

「了解!」

 

 東郷隊員がポインターのスイッチを起動。

 

 ポインター全体をバリアが覆い隠し、光弾を防ぐ。

 

 逃げていくメフィラス星人の道をふさぐようにもう一台のポインターが現れる。

 

 ポインターから降りた古橋、リサの両隊員がウルトラガンを構えた。

 

「ちぃ!」

 

 メフィラス星人は二台のポインターに挟まれるがテレポートした。

 

「くしょう!逃げやがったなぁ!」

 

 悔しそうに古橋が声を漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれぇ」

 

 テレポートしたメフィラス星人は膝をついた。

 

 力を消耗したことで疲労に襲われる。

 

 ウルトラ警備隊によってすべての自販機が回収されたことによって計画は失敗したとみていい。

 

 人間生物Xもいずれは元の人間へ戻されるだろう。

 

 メフィラス星人は自らの計画のとん挫に苛立ちを隠せない。

 

「ならば!」

 

 せめて、手駒としてあの女を手に入れよう。

 

 メフィラス星人は運よく、転移した先が雪ノ下雪乃のいる病院であることに気付いた。

 

 にやりと笑みを浮かべながら雪ノ下雪乃がいる病室を目指す。

 

 道中に悲鳴を上げた人間がいたが光線で無力化させた。

 

 ドアを乱暴に開けてメフィラス星人が病室に踏み込む。

 

「っ!」

 

 突然の侵入者に雪ノ下は目を見開いて、後ろへ下がろうとする。

 

 一足早く、メフィラス星人が彼女の体の動きを封じ込めた。

 

 光線を受けて硬直してしまう雪ノ下をそのまま抱えようとした時。

 

「ゆきのん~、ドリンクを買ってきたよ……って、宇宙人!?」

 

「ちぃ!」

 

 メフィラス星人は窓を開けて雪ノ下を抱えて飛び降りる。

 

「ヒッキー!ゆきのんが宇宙人に!?」

 

「由比ヶ浜、ここは任せるぞ!」

 

「え、ちょっと!?」

 

 驚く由比ヶ浜を置いて、八幡は階段を駆け下りる。

 

 必死に階段を駆け下りて、メフィラス星人を追いかけた。

 

 メフィラス星人は雪ノ下を抱えているおかげかいつもより速度が遅い。

 

 ウルトラセブンと融合したことと様々な銀河系を旅してきたことで体が鍛えられていたおかげで宇宙人を見失うことはなかった。

 

「はぁ、はぁ……はぁ!」

 

 荒い息を吐きながらメフィラス星人が雪ノ下を拘束した状態で立っている。

 

「お前、雪ノ下を返せ」

 

「ふん、貴様らには理解できまい。この小娘が持つ強大な力を」

 

「雪ノ下のレイオニクスとしての力の事か」

 

「ほぉ、知っているのか……ならば、理解できるはずだ。レイオニクスの力は強大だ。その気になれば、光の国の戦士すら凌駕することができるだろう。最強の怪獣を宛がえば、よりその力は真価を発揮するというものだ」

 

「お前、雪ノ下を兵器として利用するつもりか!?」

 

「それ以外に何がある?」

 

 平然と答えるメフィラス星人の言葉に雪ノ下は俯いた。

 

 八幡は拳を握り締めた。

 

「ふざけるな、雪ノ下は兵器じゃない。俺の、俺達の仲間だ」

 

「仲間?地球人とやらは二言目には愛だの、平和だの、仲間と囁く。コイツの強大な力を理解していないのではないか?」

 

「雪ノ下が強大な力を持っていることはわかっている。だが、力というのは持っている者によって左右される。正しく使えば、正しい力に、悪いことに使えば、悪しき力に」

 

「何がいいたい!」

 

 メフィラス星人の言葉に八幡は答えない。

 

 彼の目は俯いている雪ノ下へ向けられていた。

 

「雪ノ下、全てはお前が決められるんだ。どうすればいいか、いや、お前はどうありたい?」

 

 八幡からの問いかけに雪ノ下はゆっくりと俯いていた顔を上げる。

 

「私は、普通でいたい……レイオニクスの力なんて、本当は要らないわ!」

 

 泣きながら雪ノ下雪乃は叫ぶ。

 

「お願い、助けて」

 

「貴様ぁああああああ!」

 

 その姿にメフィラス星人が髪の毛を掴んだ。

 

 直後、放った念動力によってメフィラス星人が吹き飛ぶ。

 

 倒れそうになった雪ノ下を八幡は慌てて抱える。

 

「大丈夫か?雪ノ下」

 

「……えぇ」

 

「くそう!邪魔をするというのなら……お前達ごと、叩き潰してやる!」

 

 メフィラス星人が指を鳴らす。

 

 空から眩い輝きと共に背中に翼を生やした宇宙怪獣ドラコが降り立つ。

 

「雪ノ下、ここにいるんだ」

 

「比企谷君!」

 

「デュア!」

 

 八幡は懐からウルトラアイを取り出して装着する。

 

 眩いスパークと共にウルトラセブンが現れた。

 

 ウルトラセブンはドラコの振るう鎌を回避しながらパンチやキックを放つ。

 

 タイルのような皮膚にセブンの連続パンチやキックが直撃して苦悶の声を上げるドラコ。

 

「ちぃ、ウルトラセブンだったのか、貴様を倒せばいいだけのこと!」

 

 メフィラス星人は巨大化して背後からセブンに襲い掛かる。

 

 後ろから拘束されそうになったセブンだが、メフィラス星人を投げ飛ばす。

 

 その間に飛翔していたドラコの攻撃がセブンを襲った。

 

 攻撃を受けて地面に倒れたセブンだが、起き上がろうとする度にドラコの高速飛行を用いた鎌の一撃に翻弄されてしまう。

 

「今だ!」

 

 メフィラス星人の光弾が雨のようにセブンへ降り注いだ。

 

 光弾を受けたセブンは地面に倒れる。

 

 不敵に笑うメフィラス星人。

 

「比企谷君……いえ、ウルトラセブン!」

 

 雪ノ下は叫ぶ。

 

 何を訴えればいいのかわからない。

 

 だが、一つだけ自然と彼女の口から言葉が出た。

 

「負けないで!」

 

 彼女の訴えが聞こえたのかわからない。

 

 起き上がったウルトラセブンは頭頂のアイスラッガーを投げる。

 

 回転しながら飛行するアイスラッガーがドラコの両翼を切り落とす。

 

 飛行能力を奪われたドラコは悲鳴を上げる。

 

 ウルトラセブンはエメリウム光線でドラコを倒す。

 

 ドラコが倒されたことでメフィラス星人は動揺しながらも光弾を放つ。

 

 ウルトラセブンは地面を蹴り、光弾を躱しながらメフィラス星人の顔を殴る。

 

 続けて繰り出したパンチで仰け反ったメフィラス星人。

 

 腰のあたりで両手を構えてエネルギーをチャージしながら両手を前にさせながら放つ、リュウ弾ショットがメフィラス星人の体を貫いた。

 

 攻撃を受けたメフィラス星人が大爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは大空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日常が戻ってきた。

 

 人間生物Xにされた人間はウルトラ警備隊の手によって普通の人間へ戻される。

 

 少しばかりの検査はあったものの、彼らは日常に戻って問題なしと判断された。

 

「おはよう」

 

 三浦が教室に入ってきた時、しーんと静かになった。

 

「優美子!おはよう!」

 

 誰もが近づこうとしない中で由比ヶ浜が笑顔を浮かべて彼女に近づいた。

 

「もう、大丈夫なの?」

 

「まーね、色々と検査で疲れたし」

 

「でも、無事でよかったぁ」

 

「ちょ、なんで結衣が泣くのよ!?」

 

 驚きながら三浦は抱き着いてきた由比ヶ浜を優しく撫でる。

 

 その光景を一瞥して八幡は机に寝そべった。

 

「おい、ヒキオ」

 

 傍で何かが聞こえたけれど、八幡はそのまま寝ようとした。

 

「おい、無視するなし」

 

「あ、俺のことか?」

 

 机を揺らされて八幡は顔を上げた。

 

「俺はヒキオじゃないんだが?」

 

「うるせーし、その、アンタにちゃんとお礼、言っておこうと思って」

 

「お礼?」

 

「あーしが怪物になった時、結衣と一緒に声をかけてくれたでしょ、その時、アンタの声がやけにあーしの中で残っていたからさ、アンタ達の声のおかげであーしを保てていたし、まぁ、ありがとう」

 

「別に、まぁ、何かあれば、連絡して来いよ」

 

「まー、何かあれば頼りにするし」

 

 そういって三浦は由比ヶ浜の方に戻っていく。

 

 八幡は再び眠りに就こうとした時。

 

「あの、比企谷君」

 

「戸塚か……そういえば、部活の件だが」

 

「そのことだけど、もう大丈夫!」

 

 戸塚は首を振る。

 

「これから僕自身で頑張ってみせる!僕自身の力で部活を盛り上げてみせるから!」

 

「そうか、依頼は完了ということだな」

 

 満足そうに頷いた八幡。

 

 ふと、戸塚がもじもじしていた。

 

「どうした?」

 

「その、また、機会があれば、壁打ちの練習とか付き合ってくれない?」

 

「暇なときであればいいぞ」

 

「ありがとう!あと、比企谷君のこと、八幡って呼んでいい?」

 

「お、おう」

 

 突然のことに驚きながらも八幡は頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

「そう、彼の依頼は達成なのね」

 

「本人がそういってきたぞ」

 

 部室で雪ノ下と八幡は少しの距離を開けて腰かけている。

 

 由比ヶ浜は三浦の復帰祝いということで今日は休みらしい。

 

 二人だけの部室ということで奇妙な空気が漂ってはいるけれど、いつも通りにしていた。

 

「ねぇ、比企谷君」

 

「なんだ?」

 

「貴方は私がまたエイリアンに攫われそうになったら助けてくれるかしら?」

 

「唐突だな……」

 

 八幡はMAXコーヒーを飲みながら。

 

「当たり前だろ。宇宙であれだけの出来事があった……何があろうと守るさ。お前も由比ヶ浜も」

 

「……そう、その答えがきけて嬉しいわ」

 

 にこりとほほ笑みながら雪ノ下は紅茶を一口。

 

「貴方のそういうところ、好きよ」

 

「ブフゥ!」

 

 八幡はマッカンを吹き出した。

 

 慌てふためくその姿が面白くて、雪ノ下は小さく微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢を見る。

 

 あの時の悪夢、けれど、今は夢を見ても怖いとは思わない。

 

 彼女には親友と不器用な男の子がいるのだ。

 

 二人のことを思い浮かべれば、夢のことは怖くない。

 

 雪ノ下雪乃は決意する。

 

 いつかは過去を乗り越えてみせると。

 




怪獣説明

メフィラス星人二代目
出典はウルトラマンタロウ。
マンダリン草という植物を用いて、次々と人間を襲った宇宙人。
紳士的だった初代と比べると卑怯な手段は当たり前のように使う、卑怯もラッキョウも大好きだとかいう名言はここから生まれたとか?

ワイアール星人
出典はウルトラセブン。
第二話、緑の恐怖に登場。宇宙ステーションV3の隊員に成りすまして地球へ侵入。
地球で多くの人間を植物人間Xへ変えてきた張本人。
今回は過去のデータとして。

ドラコ
出典はウルトラマン。
怪彗星ツイフォンに乗ってきたと思われる宇宙怪獣。
雪山で地球産の怪獣たちと戦うも羽をもぎとられて倒されてしまう。
メフィラス星人が怪獣兵器として地球へ持ってきたがウルトラセブンにより倒されてしまう。


今回の話は雪ノ下メインだったのですが、どういう怪獣をだすかで色々と悩みながらメフィラス星人を出すことに決めた後、偶然見た緑の恐怖の類似的な展開を考えました。
ソリチュランにするかと悩みました。





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第四話:宇宙の通り魔を倒せ!

感想を貰って思う事、

ウルトラセブンについて、様々な見解があるのは理解していますが、この作品におけるウルトラセブンは地球人よりも地球人を愛している宇宙人です。

そのため、厳しいよりも見守るという姿勢が強いところがあります。

ウルトラ兄弟のウルトラセブンというよりも、平成ウルトラセブンやULTRASEVENXよりでしょう。


 深夜の町中。

 

 一人の男が悲鳴を上げながら逃げる。

 

 その後ろではカチャカチャと刃をこするようにしながら追いかけてくる者が一人。

 

 逃げ惑う人が助けを求めるが、誰もいない。

 

 必死に逃げる人だが、やがて、追いつかれて。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 その体は真っ二つに切り裂かれるはずだった。

 

 両断しようと伸ばされた二つの刃は間に割り込んだ長い鉄パイプに阻まれてしまう。

 

「キシシ!?」

 

 振るわれた鉄パイプを慌てて回避する。

 

「逃がさんぞ、貴様!」

 

 現れた相手をみて襲撃者は不気味に笑いながら両腕の刃を構える。

 

 振るわれる刃はすべてを両断する。

 

 通り魔の刃は標識や壁を切り裂いていく。

 

「無駄だ」

 

 振るわれた鉄パイプの一撃が襲撃者の頭部を叩き割る。

 

「ちぃ!」

 

 本来ならば確実に相手の命を刈り取っていたであろう一撃。しかし、それは本来ならばである。男は舌打ちしながら鉄パイプを戻す。

 

「浅い!」

 

 鉄パイプを振り下ろしたものの、とどめを刺すに至っていない。

 

 追撃しようとしたことで相手は闇夜の中へ消えてしまった。

 

「やはり、この体では限界があるか」

 

 鉄パイプを放り投げて汗だくの顔を拭う。

 

「相談するしかあるまいな」

 

 ため息を吐きながら通り魔を撃退した人物も夜闇の中へ消える。

 

 残された男はぺたんと座り込んだまま、呆然としており、警邏中の警官が見つける時まで動くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷八幡はボッチであると一年前なら胸を張って言えただろう。

 

 しかし、今はどうだろうか?

 

「比企谷、あーしの話を聞いているわけ?」

 

「悪いが、そういうファッションとか疎いからわからないんだよ」

 

「優美子~、ヒッキーにそういうのはゆっくり教えないと」

 

「でも、八幡に似合うと思うけどなぁ」

 

 

――なに、これ?

 

 

 自称ボッチを貫いていた筈の八幡。

 

 それがいつの間にか元トップカーストの三浦優美子やら、葉山グループにいた由比ヶ浜、テニス部に所属している女の子と間違えられそうな男の子、戸塚彩加。

 

 そんな彼らに包囲されている事態に八幡は心の中で疑問符を浮かべていた。

 

 答えはすぐにでる。

 

 先日のメフィラス星人による侵略事件だ。

 

 三浦は目の前で人間生物Xに変貌した。

 

 地球防衛軍の参謀がニュースで今回の事件のあらましについて報道をしていたが、三浦優美子が怪物に変貌したということで噂が一気に広まってしまったことで距離をとられてしまっている。

 

 葉山は気にせずに話しかけようとしていたが周りの取り巻きにとめられてしまったらしく、三浦は孤立しかけるところだったのだが、由比ヶ浜は変わらず友人と接している。

 

 そのことで三浦は辛うじて腐らずに済んでいた。

 

 戸塚は前の一件を通して部活を盛り上げると頑張っており、友人のようなクラスメイトという立ち位置になっている。

 

「(ボッチの俺がどうしてこうなっているんだか?)」

 

 疑問を抱いていたところで目の前に雑誌が突きつけられる。

 

「話聞いているし!?」

 

「あー、はいはい」

 

 大きな声を上げる三浦に辟易しながら八幡は休み時間が終わることを切に願った。

 

 しかし、休み時間が終わるまでにまだ十五分あったことを知った八幡は絶望する。

 

「ヒッキー!こっちだよ!」

 

「結衣!絶対にこっちだって!」

 

「あははは、大変だね~」

 

 これでもう一人が加われば四面楚歌になるなぁ。

 

 どうでもいいことを思いつつ、天井を見ながら八幡は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、甘くておいしい」

 

 放課後、手持ちがゼロになったのでMAXコーヒーを購入して八幡は部室棟へ向かう。

 

 奉仕部の部室が見えてきたところで八幡は立ち止まる。

 

「お前ら、何やってんの?」

 

 部室のドアの前で雪ノ下と由比ヶ浜の二人が立っていた。

 

 二人は困った表情を浮かべながら部室を覗き込んでいる。

 

「あ、ヒッキー」

 

「丁度、良かったわ。比企谷君……部室の中に変な人がいるのよ」

 

「変な人ぉ?」

 

「分厚いコートをきたデブ」

 

「シンプルな説明だな、おい」

 

 一瞬で誰か該当した八幡は呆れながら部室のドアを開ける。

 

「フッフッフッ!待っていたぞ!比企谷八幡よ!」

 

「お、お前は……デブの材木座かよ」

 

「チョッ!?ハチエモーン!?」

 

 メガネをかけてダラダラと汗を流しているデブこと、材木座義輝は部室内で悲鳴を上げた。

 

「二人に自己紹介をしておくと、コイツは材木座義輝。中二病患者で、一応、顔見知りの関係だ」

 

「ケプコンケプコン!中二病とは失礼な!我は剣豪将軍――」

 

 ガクンと体が傾いて動きが止まる。

 

「……キモイ」

 

「一歩、間違えれば、変質者ね」

 

「ただし、表向きの紹介になるけどな」

 

「え?」

 

 八幡が続けた言葉に二人が疑問の声を上げようとした時。

 

「ディヤァアアアア!」

 

 背後からカッと目を見開いた材木座が手刀を振り下ろす。

 

 その動きを読んでいた八幡は手刀を弾きながら拳を叩き込もうとする。しかし、相手は振るった拳を受け止める。

 

「うわっ、汗でベトベトじゃねぇか」

 

 手を振り払いながら用意していたタオルで拭う。

 

「フン!肥満の証拠だ」

 

 悪態をつきながら汗まみれのメガネをポケットにしまって、しかめっ面の材木座が八幡を睨む。

 

「鍛えていないからこんなに汗をかく、くだらぬ小説を書いている暇があれば、鍛錬をすべきなのだ!」

 

「……え、どゆこと?」

 

「二重人格というわけではない、わね?」

 

 突然の事態に目を白黒させる由比ヶ浜と雪ノ下。

 

「実は、コイツの中には宇宙人がいるんだよ。宇宙剣豪って呼ばれた最強剣士が宿っている。聞いたことはないか?宇宙剣豪ザムシャーって」

 

 八幡はため息を吐きながら説明した。

 

 告げられた名前に二人は息をのんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、粗茶ですが」

 緊張した様子で雪ノ下は緑茶の入った紙コップを材木座の前へ置いた。

 

「かたじけない」

 

 ぺこりと会釈しながら雪ノ下が用意した緑茶を飲む。

 

「(緑茶もあったのか)」

 

 MAXコーヒーを飲みながら八幡は材木座に尋ねた。

 

「それで、ここへ何の用事だ?」

 

「うむ、本来ならば誰かに頼るというのは酷く抵抗があるのだが、背に腹は代えられない状況なのでな」

 

「話が見えない!!」

 

「由比ヶ浜、静かにしろ」

 

 八幡は続きを促す。

 

「この星へ侵入している宇宙人を倒したい、お前の力を借りたいのだ。ウルトラセブン」

 

 材木座は眉間へ皺を寄せながら口を開いた。

 

「侵入している宇宙人?それはつまり、侵略者?」

 

「えぇ!?それってウルトラ警備隊へ通報しないといけないじゃん!」

 

 雪ノ下の言葉に由比ヶ浜がオーバ-に反応する。

 

 彼女達の言葉に材木座はフンと鼻音を鳴らす。

 

「ウルトラ警備隊か、確かにアイツらならなんとかできるかもしれんだろう、だが、奴……ツルク星人は神出鬼没だ。連中が気付くまでにどれほどの犠牲者がでるか」

 

 材木座の告げた名前に雪ノ下と八幡は目を見開く。

 

 由比ヶ浜は知らないようで首をかしげている。

 

「おい、奴が地球へ来ているのか?」

 

「それは……早急になんとかしないといけないわね」

 

「え?え?どういうこと?」

 

「そういうことだ、俺一人で対処をしたかったのだが、この体では万全に戦えん、そこでウルトラセブン、いや、比企谷八幡、非常に癪だが、貴様に協力を申し込みに来た」

 

「それは依頼か?」

 

「あぁ」

 

「わかった」

 

「うむ、ではあばばばばばばば」

 

 壊れた家電のように不気味な動きをする材木座。

 

 しばらくして、ハッと周りを見る。

 

「あれ、我は何を」

 

 先ほどまでの威厳の類など存在しない。

 

 中二病の材木座義輝がそこにいた。

 

「熱さにやられたんだろ、そんな恰好をしているからな」

 

「うーむ、真面目にお祓いを考えた方が――」

 

「それで、お前は何でここに来たんだ?」

 

 この後、材木座は自作のラノベを読んでもらいたいという依頼のために奉仕部を訪れたのだという。

 

 分厚い印刷用紙を受け取るとルンルンとした足取りで彼は去っていった。

 

「さて、そろそろ説明をしてもらえるかしら?」

 

 材木座の気配が完全になくなったことを確認して雪ノ下が尋ねる。

 

 八幡は少し考えながら事情を話すことにした。

 

 理由は数か月前、侵略者の持ち込んだ怪獣兵器が街中で大暴れした事件があった。

 

 ウルトラ警備隊の活躍によって被害は最小限に抑えられる。

 

 しかし、戦いの中で負傷した者がいた。

 

 それが材木座義輝である。

 

 死の淵をさ迷いかけた彼は偶然にも地球へ来訪していた宇宙剣豪ザムシャーと一体化することで一命をとりとめた。

 

 材木座の体が完全に回復するまでザムシャー自身は精神の奥深くまで寝るつもりでいたらしい。

 

「だが、一体化するというところでミスがあったらしくて、時々、あーやってザムシャーの意識が表へ出てくる時があるんだよ。そのタイミングで俺と遭遇したわけでアイツの正体を知っているんだ」

 

「そういうこと」

 

「でもでも、宇宙剣豪ザムシャーって、確か、ヒッキー以上のボッチで冷酷だって聞いたけど、人助けなんかするの?」

 

「お前」

 

「由比ヶ浜さん、事実だけど、容赦ないわね」

 

「この地球へ来る前に一人のウルトラマンと戦って、心境の変化があったと本人は言っている」

 

「貴方ではないのね」

 

「違う」

 

「それはそうと、ヒッキー、あの依頼引き受けるの?」

 

「あぁ、材木座……いや、ザムシャーが依頼してきたとなると放っておくわけにいかないしな」

 

「じゃあ、あたし達も!」

 

「いや、今回は」

 

 八幡は正直、この依頼は一人で受けようと考えていた。

 

 ツルク星人は神出鬼没かつ残酷な存在である。

 

 もしかしたら由比ヶ浜や雪ノ下に命の危機が迫るかもしれない。

 

「ヒッキーだって危ないじゃん!」

 

「そうだが」

 

「あなた一人を行かせて何かあれば、後悔するのは私達も同じよ。そうね……逐一、貴方が報告してくれるというのなら行かせてあげるわ」

 

 ニコリ、いや、ニヤリという笑みを浮かべる雪ノ下。

 

 戸惑っている由比ヶ浜だが、雪ノ下だから良い考えなのだろうと考えて、彼女は何も言わない。

 

「逐一の連絡でいいんだな?」

 

「えぇ」

 

「わかった、約束する。逐一、連絡すればいいんだろ」

 

「その通り」

 

 微笑みを浮かべる雪ノ下に八幡は完全敗北した。

 

「でもでも、あのデブが表に意識がある場合、ザムザムは表に出てこないんでしょ?連絡とか大丈夫なの」

 

「そのことについてだが、多分、向こうが荒技を仕掛けると思う」

 

 首をかしげる二人の姿に八幡はただ肩をすくめる。

 

 言えるわけがない。

 

 意識を表に出すために、無理やり材木座義輝にランニングをさせて疲労させるなんて。

 

 いつぞやのスポ魂漫画でもあるまいしと心の中で八幡は漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の町中。

 

 高校生が夜にうろついていれば、最悪、警察に補導されてしまうだろう。

 

 そんな危険をはらみつつ、八幡は私服姿で家を出る。

 

 家の守りはペガに任せてきた。

 

 小町を守るために最悪、ダークゾーンへ入ってもらえばいい。

 

 尤も、ペガは「ツルク星人!?怖いよう!」といって早々にダークゾーンへ逃げてしまった。

 

 宇宙の通り魔といわれる侵略者達の中で凶悪な存在として名があがる宇宙人ということを知っていれば、震えあがってしまうのは当然だ。

 

「遅かったな、ウルトラセブン」

 

「俺は地球人、比企谷八幡っていう名前がある。確かにウルトラセブンと同化しているけれど、ここでは地球人としての名前を呼べ、お前に宿っている材木座という名前があるように」

 

「フン、覚えておこう」

 

 鼻を鳴らしながら材木座と共に夜道を歩く。

 

「奴が出現する宛はあるのか?」

 

「先日、奴の頭を叩き割り損ねた。そのことから俺を潰そうと躍起になるだろう。そのことからいけば」

 

「自らを囮にするわけか」

 

「その通りだ。だが、この体の反応は悪い。もしかしたらを考えて貴様を呼んだ」

 

「だろうな」

 

 一応、定期報告も兼ねて連絡を入れておく。

 

 夜道だけあって人の気配がない。

 

 いくら文明が発展したとしても人類は明るい時間に活動して夜は眠りにつく。

 

 勿論、例外はあるとしてもそこは変わらない。

 

 夜の世界に住まう殺人鬼こと宇宙人。

 

 奴がどのタイミングで姿を現すのか警戒をしなければならない。

 

「来たぞ」

 

 材木座の言葉でこちらへ近づいてくる宇宙人の存在を感じ取る。

 

 向こうは足音を立てないようにしているのだろう。

 

 しかし、地球に住まう者ではないという体に流れるエネルギーといえばいいのだろうか?そのようなものが不思議と八幡は感じ取れた。

 

 二人は同時に左右へ避ける。

 

 直後、ツルク星人の振り下ろした刃が地面に突き刺さった。

 

「フン、後ろからにしてはわかりやすすぎる!」

 

 ザムシャーは用意していた鉄パイプでツルク星人へ振り下ろす。

 

 回避しようとするツルク星人へ八幡は右手を握り締めて念動力を放った。

 

 背後からの攻撃にツルク星人は動きが鈍る。

 

 そこにザムシャーの一撃がツルク星人の頭へ振り下ろされようとした瞬間。

 

 真っ赤な光弾が飛来する。

 

「ちぃっ!」

 

 咄嗟にザムシャーは鉄パイプで切り裂くもドロリと握っているより上が溶解してしまう。

 

 突然の不意打ちに身構える二人を余所にツルク星人は暗闇の中へ消え去った。

 

「今のは……」

 

 真っ赤な光弾が飛来した方向をみる八幡。

 

 暗闇を透視するように彼の両目が輝く。

 

 しかし、怪しい影は何も映らなかった。

 

「逃げられたか」

 

「邪魔が入った。プライドの高い奴のことだ……次は巨大化して暴れるだろう」

 

 ザムシャーの言葉は事実になるだろう。

 

 八幡は自然と拳を握り締めた。

 

 あの光弾を放った存在は何者なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういうつもりだ?」

 

 薄暗い闇の中、ツルク星人は相手へ問いかける。

 

 暗闇の中、相手は笑みを浮かべた。

 

「何だ?助けなければよかったか?あのままでは宇宙剣豪と地球人にやられていたぞ?」

 

「ぐっ!」

 

 人物の指摘にツルク星人は顔をしかめる。

 

「このまま、ザムシャーの奴に舐められたままでたまるか!次は巨大化して叩き潰してやる!」

 

「そうか、では、これを受け取るといい」

 

「何だ、これは?」

 

「特殊な細胞を宿したカプセルだ。それを飲めば強くなれるぞ」

 

 暗闇から囁く言葉にツルク星人は思案しながらカプセルを手に取った。

 

 ニヤリと相手が不気味な笑顔を浮かべていたことにツルク星人は気づかない。

 

「巨大化する前に飲むといい、確実にお前の力となり、邪魔存在を叩き潰せる」

 

「わかった、だが、俺を騙していたら容赦はせんぞ」

 

 カプセルを握り締めながらツルク星人は姿を消した。

 

「あぁ、騙してはいないさ。強大な力を手にすることができる。ただし、何事も代償は付き物なのさ……そう、強大な力っていうものはさぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 八幡やザムシャーの予想していた通りに巨大化したツルク星人が街に出現する。

 

 人型のような姿からトカゲのような姿は最早、怪獣同然のようなものとなっていた。唯一、人型と似ているところがあるとすれば、それは両腕についている刃だろう。

 

 振るわれる刃は近くの高層ビルを次々と両断する。

 

 昼間に出現したツルク星人に人々は悲鳴を上げながら逃げていく。

 

 ツルク星人の出現は即座に地球防衛軍へ連絡がいった。

 

 地球防衛軍極東基地の地下格納庫からウルトラホーク3号が発進する準備を取っていた。

 

 発進カタパルトで出撃準備をとるウルトラホーク3号の正面ゲートが開く。

 

『オーケー!レッツゴー!』

 

 管制塔から発進許可が下りた。

 

 偽装滝が流れている中をウルトラホーク3号が出動する。

 

 慣れない者が操縦すれば水圧に負けてコントロールを失って墜落してしまうだろう。

 

 しかし、搭乗しているのはウルトラ警備隊。

 

 並々ならぬ訓練を積んでいる彼らにとって偽装滝から降り注がれる水圧など苦ではない。

 

 二子山がスライドした場所からウルトラホーク1号が緊急発進する。

 

「くそう、隊長!星人一体だけで被害は甚大です!」

 

 梶とユキの両隊員を乗せたウルトラホーク3号がツルク星人の暴れている市街地へ到着する。

 

「攻撃、開始します」

 

 ユキが操縦桿の横についているボタンを押す。

 

 ウルトラホーク3号から放たれるミサイル弾。

 

 攻撃を受けてツルク星人はのけ反る。

 

 旋回しながら再度、攻めようとした時、ツルク星人の刃が煌めく。

 

 咄嗟にユキ隊員がウルトラホーク3号を上昇させる。

 

 彼女の判断が窮地を救う。

 

 標的を失ったツルク星人の斬撃が背後にあったビルを両断した。

 

「何て奴だ!?」

 

「今の斬撃を受けたら流石のウルトラホークも一刀両断だ」

 

 少し遅れて渋川の操縦するウルトラホーク1号が到着する。

 

「くしょう!侵略者の好き勝手にされてたまるかってんだ!」

 

「隊長、もう少し、速度をぉおおおおおおおおおお!?」

 

 古橋が操るウルトラホーク1号のブレイカーナックルミサイルがツルク星人へ降り注ぐ。

 

 揺れる機内の中で冷や汗を流しながら渋川はしがみつく。

 

 ウルトラホーク3号もツルク星人へミサイル攻撃を続ける。

 

 地上ではポインターに乗った東郷隊員とリサ隊員が避難活動を行っていた。

 

「リサ隊員、威嚇射撃だ!」

 

「了解!」

 

 地上の二人はウルトラガンを構えてツルク星人へ撃つ。

 

 レーザー光線をツルク星人は刃で弾く。

 

 接近するウルトラホーク3号。

 

 ツルク星人の刃が煌めく。

 

 振るわれた攻撃がウルトラホーク3号の片翼を切り裂いた。

 

 黒い煙を放ちながら地上へ緊急着陸しようとするウルトラホーク3号。

 

 地面へ回転するようにしながらウルトラホーク3号は不時着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宇宙人が街で暴れているって!」

 

 総武高校は宇宙人出現のニュースを聞いて騒ぐ。

 

 自分達のいる場所からかなり離れたところということもあって、彼らは祭りのような気分だ。

 

 自分達が実際に被害を受けない限り、どこか他人事のような雰囲気を放つ彼ら。

 

 八幡は静かに立ち上がる。

 

「ヒッキー?」

 

「悪い、出かけてくる」

 

 静かに告げて、八幡は廊下へ出る。

 

 屋上へ向かおうとした先で材木座、否、ザムシャーがいた。

 

「行くのか?」

 

「あぁ」

 

 短く答えて、八幡はザムシャーの横を通り過ぎる。

 

 屋上に出たところでウルトラアイを装着した。

 

 ウルトラセブンは空からツルク星人の暴れている市街地へ急行する。

 

 上空からツルク星人の背中へキックを放つウルトラセブン。

 

 攻撃を受けて前のめりに倒れるツルク星人だが、起き上がると同時に腕の刃をセブンへ振るう。

 

 後ろへ下がりながらツルク星人の刃を躱す。

 

 突如、ツルク星人の体に異変が起こる。

 

 緑色の不気味な光を放ちながらツルク星人の背中から複数の触手が現れた。

 

 蠢く触手にツルク星人は苦悶の声を漏らしながら暴れだす。

 

 突然のことに驚くウルトラセブン。

 

 反応するよりも早く複数の触手がセブンの体に絡みついて、その体を持ち上げる。

 

 抵抗しようとするが強い力で体を締め付けられて苦悶の声をあげた。

 

「渋川!ホルバスターミサイル準備!」

 

「了解!」

 

 ウルトラホーク1号の機内で渋川がシステムを起動する。

 

 ホーク1号の下部ハッチが開いて、ホルバスターミサイルが発射準備となった。

 

「準備オーケーです!いつでもどうぞ!」

 

「ホルバスターミサイル!発射!」

 

 ホルバスターミサイルが暴走するツルク星人の背中に直撃。

 

 全身を焼かれるような痛みに悲鳴を上げる。

 

 ウルトラセブンは力が弱まった瞬間をついて、拘束から脱出。

 

 頭頂のアイスラッガーを投げる。

 

 光に包まれたアイスラッガーがツルク星人の背部の触手全てを切り裂く。

 

 戻ってきたアイスラッガーを逆手持ちで構えるウルトラセブン。

 

 二つの刃を構えるツルク星人。

 

『勝負は一瞬だ』

 

 その時、ウルトラセブンへテレパシーで囁きかける者の声が。

 

『奴の斬撃は二段攻撃だ。それが終わった瞬間、隙ができる。その時を狙うことが勝機の鍵だ』

 

 テレパシーの言葉に相手の動きを伺うウルトラセブン。

 

 走り出すツルク星人。

 

 振るわれる二段斬撃。

 

 攻撃が繰り出された直後を縫うようにウルトラセブンのアイスラッガーが煌めく。

 

 振りぬいたアイスラッガーをそのまま頭頂へ戻す。

 

 両腕を切断されて、宙を舞う。

 

 刃が二つともツルク星人の胴体へ突き刺さる。

 

 振り返ると同時に両腕をL字に組んでワイドショットが放たれた。

 

 光線を受けたツルク星人は緑色の光に包まれて消えていく。

 

 構えを解いたウルトラセブンはとあるビルを見る。

 

 ビルの屋上では真っ直ぐにこちらをみていた材木座義輝の姿があった。

 

 ウルトラセブンは胸の前で両拳をぶつける。

 

 白いスパークと共に比企谷八幡の姿へ戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の奉仕部

 

「全然、ダメね。起承転結がしっかりしていない。そもそも話の骨格がぐちゃぐちゃだわ」

 

「ぐふぅ!」

 

 雪ノ下雪乃による的確過ぎる発言が材木座義輝にクリティカルヒット。

 

 材木座義輝は汗をまき散らしながら膝をついた。

 

「まぁ、こうなるわな」

 

「ハチエモン~~!」

 

 涙でグシャグシャになった顔を近づこうとするが、手で阻む。

 

「うわぁ、キモイ」

 

 汗だらけの材木座をみて由比ヶ浜がぽつりともらす。

 

 しばらくして、落ち着いた材木座が尋ねた。

 

「その、また、持ってきても良いかな?」

 

「お前、ドMか?」

 

 雪ノ下に徹底的に指摘されながらもまた持ってくるという言葉に八幡は戦慄した。

 

「違うもん!あの、その……こうして評価してくれる人がいないから、その、何度か読んでもらいたいんである」

 

「言葉遣いが滅茶苦茶になってんぞ、まぁ……」

 

 八幡はちらりと雪ノ下と由比ヶ浜をみる。

 

「そうね、依頼という形であれば問題ないわ」

 

「うん!まー、時間つぶしくらいはなるかな?」

 

「ありがとう」

 

 そういって材木座は出ていった。

 

 再び戻ってくる。

 

「今度はザムシャーの方かよ」

 

「ややこしい!」

 

「意識が昇天したおかげで出てこられたのだ」

 

 あれだけで昇天するって、色々と問題があるのではないか?

 

 心の中で三人は同時に思った。

 

「この前はすまなかったな。感謝を伝えに来た」

 

「……そうか」

 

「でも、私達、何もしていないよね?」

 

「私と由比ヶ浜さんはね」

 

 首をかしげる由比ヶ浜とため息を漏らす雪ノ下。

 

「感謝するぞ。比企谷八幡」

 

 そういってザムシャーはそういって今度こそ、教室を出ていく。

 

「ツンデレ?」

 

「宇宙最強と言われている剣豪に対してツンデレと言える由比ヶ浜さんはある意味、強者ね」

 

「激しく同意だな」

 

 そういって三人は笑いだしてしまう。

 

 彼らの声を聴きながらザムシャーは奉仕部を後にした。

 




アンケートをしようと思います。




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登場人物

本編の投稿が間に合いそうにないので、世界観や登場人物(三人だけ)を簡単にのせます。

尚、本編開始前の設定がさらっと入っています。



世界観

 

ウルトラマンが地球に訪れたことがなく、現れた怪獣や侵略者は人類の手によって撃退されたことになっている。

記録としてはウルトラQ~ウルトラマンTくらいまでの怪獣や星人が確認されている。

 

 

 

地球防衛軍

 

激化する怪獣災害や侵略者と対抗するために人類が組織した軍隊。

当時の科学技術を結集して作られたライドメカや武装などで怪獣と戦ってきた。

本部はパリに置かれており、各国に支部が置かれている。

 

 

 

 

地球防衛軍極東基地

 

地球防衛軍の日本にある極東基地。

富士山麓の地下に広がる施設。

300階というフロアを持ち、ウルトラホークなどの格納庫や都市部などへ直結されているシークレットハイウェイが地下に設営されている。

 

 

 

 

 

 

 

ウルトラ警備隊

 

最も星人による侵略や怪獣が暴れていた時期に活動していた地球防衛軍極東基地内に組織された六名からなる特殊部隊。

長きにわたる戦いにおいて六名から死亡者を出したことがないことから栄光のウルトラ警備隊、伝説として防衛軍内では憧れの的となっている。

初期はキリヤマ隊長が率いていたが、現在は第二期編成となっており、隊長はフルハシ・シゲル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、主要キャラ紹介~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡

高校二年生、自称ボッチ。濁った目を普段はメガネで隠しているが瘴気が漏れだしたりしているため、あまり効果は薄い。

高校の入学式の日に交通事故に巻き込まれるも発生したワームホールによって宇宙空間に放り出されてしまう。

死にたくないという意思がミュー粒子となって一人の宇宙人が感じ取ったことで一命をとりとめる。

その後、多くの戦いや出来事を経て本来の世界へ戻ってきている。

超能力が少しほど使えるが人間としてスペックは中の上程度(というのは本人による自己申告だが、侵略者と渡り合えているのでかなり怪しい)

ワームホールから宇宙で放り出された時に、異変を察知したウルトラセブンと融合する形で一命をとりとめる。その際に融合の影響で一時的に八幡の意識が表に出た状態で様々な異変を解決。

由比ヶ浜や雪ノ下と再会して、いつしか、本物の関係が欲しいと思うようになっていく。

元の世界へ戻る際に本来なら融合を解除するつもりだったのだが、八幡の中にかなりの“ウルトラセブンの力”が宿ってしまったことから、彼の将来を案じて融合したまま、八幡の住む宇宙へ戻る。

意識は彼の生活のために出てくることはないが、ふとした拍子に切り替わるようにウルトラセブンの意識が出てくる(本人たちがどの程度自覚しているかは不明)。

将来の夢は専業主婦であるらしいが、密かにもう一つ、夢があるとか、ないとか。

アナザースペースを旅したことから人として成長しており、異性からもてるようになっているが本人は中学の時の出来事からもてるとは信じていない。

ある宇宙人が彼を求めて、やってくるかもとか、そうでないとか。

 

 

 

 

由比ヶ浜結衣

高校二年生、ビッチ(八幡の初期の印象)。髪の片側を団子にして制服を着崩した少女。

高校入学式の日、飼い犬が車道へ出てしまうのを止めようとしたところでワームホールに巻き込まれてしまい、惑星O-50へ転移してしまう。

当初はO-50にあった村でなんとか生活をしてきたが、星間連盟の一部の過激派の暴動から親しくしてくれたものを守ろうとして、偶然にも戦士の頂へ訪れる。

戦士の頂の光へ触れたことで【ジャイロ】と複数の【クリスタル】を手にして星間連盟の怪獣兵器をジャイロの力を用いて撃退。

その後、星間連盟に目をつけられてしまったことと与えられたミッションを達成するため逃げるように宇宙へ飛び立つ。

助けたファントン星人の宇宙船で各惑星を旅している途中で八幡と再会。

元の世界へ帰る方法を模索する旅をはじめる。

道中で敵対した雪ノ下とぶつかりあい、友人としての関係を築き、今までの自分から変わることを誓う。

元の世界へ戻ってからは誰かに流されることのない強い人間を目指す。

飼い犬を助けようとしたり、色々なところで助けてくれた八幡に対して好意を抱いているが、同じ気持ちを持っているだろう雪ノ下に対して、少しばかりの遠慮をしており、あまり進展はない。

 

 

 

 

 

雪ノ下雪乃

高校二年生、女王(八幡の初期の印象)。長い髪に整った顔立ちをした少女。

高校入学式の日、他の二人と同じ場所にいたことによってワームホールで別宇宙へ飛ばされてしまう。その時、狙っていたのか、偶然なのか不明だが、ゼットン星人と出会う。

ゼットン星人は雪ノ下の記憶から尊敬する人、最愛の人=姉としての姿を象って、彼女に助けを求める演技をして、バトルナイザーを雪ノ下自らが使わせるように仕向けた。

その目論見は成功して、雪ノ下はバトルナイザーを起動させて怪獣使いとして覚醒。

姉のフリを続けるゼットン星人に協力することで多くのレイオニクスを倒していき、やがて、ゼットン星人の右腕として、宇宙で名前を広めるようになっていく。

姉の為に星人や怪獣を倒していくことに知らないうちに苦悩や恐怖を蓄積していくが、姉の為と感情を押し殺して戦い続けていたところで、八幡や由比ヶ浜と再会。

当初は敵として、戦いを続けていく中で八幡、由比ヶ浜と心の中の気持ちをぶつけていくことで、ゼットン星人から離れていくこととなる。

元の世界に戻った後、ゼットン星人の右腕として活動していた自分のことを恥じて、罪の意識を抱き、バトルナイザーの力を使うことに拒絶していく。

自分を受け入れてくれた由比ヶ浜を親友として、大切に思っている。

八幡のことは少なからず異性として思ってはいるが、初めての感情でどうすればいいかわからないということと、自分が好きなのは比企谷八幡なのか、ウルトラセブンなのかわかっていないため、あまり進展はない。

 

 

 

 



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第五話:天国と地獄

ウルトラマンタイガ、今回、闇堕ち脱出からのようやく相棒としての再スタート?

これからどうなるのか楽しみ。

ボイスドラマ、タイタスさん、春ごろにどんな反応をするのか楽しみだ。




 

「遅れましたぁ」

 

 教室のドアを開けて中に入る八幡。

 

「遅刻か?比企谷」

 

「すいません、寝坊しました。反省しています」

 

 ぺこりと会釈する八幡。

 

 ここで不用意に言い訳しても良いことがあるわけがない。

 

 沈黙が一番。

 

 何より相手は平塚先生、不用意な発言をしてゲンコツを受ければたまったものではない。

 

 そう思っていると背後からドアが開く音。

 

 振り返ると長い髪をポニーテールにして、総武高校の制服を少しばかり着崩した女子。

 

 鋭い目つきに八幡は後ろへ下がってしまいそうになった。

 

「川崎、お前も遅刻か」

 

「すんません」

 

 短く会釈して川崎と呼ばれた少女は席へついた。

 

「全く、おい、比企谷、いつまで立っているつもりだ?」

 

「あ、すんません」

 

 謝罪して八幡は自身の席へ向かう。

 

 ちらりと過ぎる際に川崎の姿を見るも、彼女は肘をついて、窓からみえる景色をみていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

 

 

 

 八幡は妹の小町と共に近くのファミレスへ来ていた。

 

「偶にはお兄ちゃんのオゴリ夕飯も良いよねぇ~」

 

「ペガも、ペガも!」

 

 足もとのダークゾーンからペガが嬉しそうに顔を出す。

 

 こういう場でもし見つかったらという不安もあるけれど、ファミレスの周りはほとんどが楽しく談笑しているか、勉強している人のみだ。

 

 こんなところに宇宙人がいるなど、夢にも思わないだろう。

 

 八幡はそう思いながら店員さんが運んできたフライドポテトを手に取る。

 

「ファミレスの料理もバカにできないねぇ」

 

「ここは店長がこだわりを持っているらしいぞ?」

 

「ペガも調べたオススメだよ!」

 

 ネットサーフィンが趣味でもあるペガによってオススメのファミレスとしてここがピックアップされたのであった。

 

 フライドポテトをつまみながら一部をダークゾーンへ落とす。

 

「お兄ちゃん、学校はどう?」

 

「まぁ、ボチボチだな。最近は日常生活から離れているし」

 

「怪事件の連続だものねぇ~」

 

 小町の言うことに八幡は苦笑する。

 

「八幡、ペガ、おかわり!」

 

「はいはい」

 

 ペガは嬉しそうにポテトを食べる。

 

「あ、比企谷さん!」

 

 食べていた時、学生服を着た男子が小町へ声をかける。

 

「あ?小町の知り合いか?」

 

「うん、友達科の子だよ」

 

「友達っていうことだよな?なんでそんな遠回しな言い方」

 

「えへへへ、お兄ちゃんを心配させないためだよ」

 

「(それはそれでどうかと思うけど?)」

 

「(まぁ、黙っていよう)」

 

 やってきた男子は川崎大志で小町のクラスメイトらしい。

 

 礼儀正しいが少しばかり固い印象があった。

 

「はじめまして、お兄さん!」

 

「お兄さんというんじゃねぇ、小町と恋人というわけじゃねぇのに」

 

「す、すいませんっす!」

 

「もう、お兄ちゃんはぁ」

 

 ため息を零すが満更でもない表情を浮かべる小町。

 

 この二人はもう、とペガはため息を吐いた。

 

 対面へ着席した川崎大志は相談があるらしい。

 

「実は、相談っていうのは姉ちゃんのことで、家の姉ちゃん、その川崎沙希っていうんですけど」

 

「……(なーんか、聞き覚えのある様な名前)」

 

 横でそんなことを思いながら話を聞く。

 

 高校二年になったところで姉は急に帰宅時間が遅くなったという。

 

 日付が変わった時、さらには朝の五時に帰宅してきた時もあったという。

 

「それで、俺、姉ちゃんが不良になったんじゃないかって、心配で、危ないこととかしているんじゃないかとか……そうじゃなくても、俺、姉ちゃんには傍にいてほしいっていうか、出来れば、妹や俺と遊んでほしいと思うんです」

 

 ゆっくりと、けれど、己の不安を吐き出すようにしながら悩みを伝える。

 

「……それで、小町、いや、俺にどうしてほしいんだよ?」

 

 八幡は途中から相談をしたい相手というのが小町ではなく自身にあることを気付いていた。

 

「その、姉ちゃんのこと、見てほしいんです。できれば、前みたいな家族仲良くみたいな、その……」

 

 少し考えながら八幡は尋ねる。

 

「おい、大志といったな。お前、父ちゃんと母ちゃんはどんな人だ?」

 

「えっと、優しいっす!休みになれば、俺達をどこかに連れて行ってくれたりしますし、うちの両親、共働きなんです。姉ちゃんに口うるさいこといわないし、俺や妹の面倒見たり、暮らしも一杯一杯なんですよね」

 

「何か、うちと少し似ているところがあるね」

 

「だな……まぁ、どこまでできるかわからんが、調べてやるよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 ぺこぺこと頭を下げる大志に八幡や小町は笑みを浮かべる。

 

 尚、ペガは感動して涙をこぼしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、大志から姉が働いているであろうお店の名前を聞いた。

 

 ペガに頼んで調べさせたところ、エンジェルラダーというBarではないかという話になる。

 

「Barかぁ」

 

「お兄ちゃん、いけないね。未成年だもん~」

 

「そうだな、まぁ、学校で話をして駄目だったら考えるかぁ」

 

「頑張ってねぇ~」

 

「ペガも応援はするよ~!」

 

「こいつら……まぁ、最悪、雪ノ下達にも協力してもらうとしよう」

 

 明日、川崎へ接触してみることにするか。

 

 八幡はそう考えていた。

 

 そんな彼らを見ている者がいるなど、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

 

「あ、比企谷、どこへいくのさ?」

 

「……人探し?」

 

「何で疑問形なんだし」

 

 話しかけてきた三浦へ八幡は少し考えて無難な答えを選んだつもりだったのだが、失敗だったようだ。

 

 気になるという様子で三浦が尋ねてくる。

 

「そうだ、三浦、お前、か、川崎がどこにいるかって…………知っていませんかねぇ?」

 

「あぁ?」

 

 きょとんとした表情から徐々に鬼のように険しい表情に変貌する三浦さん。

 

 突然のことに会話の後半が尻すぼみしてしまう。

 

「川崎?川崎つった?アンタ、何でそいつを探しているの?」

 

「いや、その、なんていうか、その川崎と話をしないといけないことがありまして」

 

「フーン、屋上でもいるんじゃない。一匹狼気取って」

 

 鼻音を鳴らしながら三浦は離れていく。

 

 今の様子からして二人は面識でもあるのだろうか?

 

 しかし、今の三浦に問いかける勇気はなかった。

 

 八幡は教室を後にする。

 

 総武高校の屋上へ向かうとこちらを睨んでくる川崎沙希の姿があった。

 

「川崎沙希さんだっけ?少しお話よろしいですか?」

 

 川崎大志から聞いていた彼女の好物と献上品として差し出す。

 

 献上品をむすっとした表情を崩さないまま、受け取る。

 

「何か用事?」

 

「まぁ、川崎大志から相談を持ち掛けられた」

 

「大志から?」

 

「あぁ、単刀直入に言う。夜のバイトはやめておけ、弟が心配している」

 

「他人のアンタは関係ないよね?」

 

「確かに俺は赤の他人で関係ないとはっきりいえるだろう。だが、今回はお前の弟から頼まれたんだよ。一応、話してくれるなら教えてくれないか?なんで夜のバイトをしている?」

 

「教える理由はないよね」

 

「あぁ、だがまぁ、予想は出来る」

 

 ギロリと川崎が睨む。

 

「言い方は悪いけれど、金が必要なんだろ?」

 

「……続けなよ」

 

「大志から聞いた話によると、良心は共働きで生活費とか色々と苦労が絶えないと聞く。だから、自分の分くらいなんとかしようと考えたんじゃないのか?」

 

「……アンタ、超能力者かなんか?」

 

 驚きを隠さずに川崎は驚きの表情を浮かべる。

 

「俺も妹を持つ兄だからな。そういうことくらいの予想は出来る。後は知り合いにすこーし、調べてもらった」

 

 ペガの力もバカにできない。

 

 八幡はもう一つ、用意しておいた書類を取りだした。

 

「答え合わせといこうか?」

 

「……恐ろしいくらいに正解だよ、本当に。アンタ、シスコンでしょ」

 

「かもなぁ」

 

 苦笑しながら自分の分のMAXコーヒーを飲む。

 

「そこで、一つ提案だ」

 

 事態解決の為に八幡はある提案をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。

 

 

 

 地球防衛軍(Terrestrial Defense Force)はパリに本部を持ち、各地に支部を持っている。

 

 1966年に出現した古代怪獣ゴメスをはじめとする様々な怪獣災害、宇宙人による侵略活動を阻止するべく結成された。

 

 地球防衛軍極東本部に富士山麓の地下に秘密基地を設営しており、300人以上の職員が昼夜問わず、侵略者の活動に目を光らせている。

 

 極東本部の中にはエリート部隊であるウルトラ警備隊があった。

 

 1967年に発生したクール星人による人間消失事件を解決してからというものの、様々な侵略者や怪獣との戦いを潜り抜けてきた最強の六人。

 

 現在は第二期編成だが、ウルトラ警備隊は伝説の存在であり、栄光の隊員達として常に防衛軍内で語り継がれている。

 

 ウルトラ警備隊の司令室は常に最新鋭の設備を導入しており、今、古橋を隊長とする五人の隊員達はある映像を見ていた。

 

 

 KCBというメディアの放送をみている。

 

 

 放送の内容は「多発する怪事件について」という内容。

 

 近年、多発する侵略者による怪事件を皮切りに怪獣騒動、そして、現れた赤い巨人「ウルトラセブン」について。

 

 ウルトラ警備隊が苦戦するような怪獣を次々と倒していく赤い巨人。

 

 その巨人は敵か味方かということでKCBが呼んだゲストが司会者の進行によって議論が行われていく。

 

 普段はマスメディアの内容などみている暇などないウルトラ警備隊だが、彼らもウルトラセブンという存在に興味があり、どのような内容なのかみてみたいということで正面スクリーンに映されていた。

 

「地球は常に狙われています。地球防衛軍が呼称する赤い巨人、ウルトラセブンもいずれは地球を狙うはずです」

 

「ですが、ウルトラセブンは多くの侵略者や怪獣を倒しています。先日、発生したケムール人による人間誘拐事件においてもウルトラ警備隊を手助けしたという話があります」

 

「それも演技ですよ。栄光の部隊といわれるウルトラ警備隊、彼らの信用を得ることができれば、裏でどんなことをしていても、誰も疑うことをしない」

 

「つまり、侵略のための準備であると?」

 

 テレビで行われる内容はほとんどが「ウルトラセブンは侵略者」という話で進んでいる。

 

 内容を見ていたウルトラ警備隊の司令室ではリサが憤慨していた。

 

「信じられない!ウルトラセブンは私達の為に戦ってくれているのに!」

 

「自分達よりも強大な力を持つ存在を人は恐れる」

 

「ユキ隊員はウルトラセブンを侵略者だというんですか!?」

 

「そうじゃない、人は正体不明の存在、自身より強大な存在を恐れる。それ故にウルトラセブンという未知の存在を恐れるという事は仕方のないことだといいたいだけ」

 

「二人の言い分もわかるが……実際のところ、俺達もウルトラセブンについては何もわかっていないしな」

 

「侵略者なら叩き潰せばいいだけですよ!」

 

 東郷の漏らした言葉に梶が攻撃的な意見を告げる。

 

「隊長、隊長はウルトラセブンのこと、どう思います?」

 

 渋川の問いかけに古橋は全員を一別した後。

 

「そんなもの、自分達で考えろ」

 

 柔和な笑みを浮かべながら置かれている湯飲みの茶を飲んだ。

 

 納得いかないという表情をしている隊員達だったが定時パトロールの時間になったため、ヘルメットを手にして渋川とリサの二人が司令室を出ていく。

 

 極東本部の地下にはウルトラホークをはじめとするライドメカの格納庫、ポインター等の各種車両の為の駐車場がある。

 

 誘導員の許可が下りた特殊車両ポインターが各都市に繋がる地下の秘密通路(シークレット・ハイウェイ)を通って道路へ出ていく。

 

 運転席にいる渋川は助手席にいるリサが怒っていることに気付いた。

 

「おいおい、リサ隊員。まーだ、怒ってんのか?」

 

「だって、一緒に戦ってきたウルトラセブンをあんな否定されたら我慢できませんよ!」

 

「こらこら、キミはウルトラ警備隊なんだからね?冷静かつ的確に!が大事なんだからさぁ」

 

「冷静かつ的確に!私はウルトラセブンが味方だと思っています。渋川隊員はどうなんです!?」

 

「俺だって、ウルトラセブンは味方だと信じたいなぁ、だが、確固たる証拠がないもんだからなぁ」

 

「共に戦っているじゃダメだと?」

 

「報道で演技だという可能性もあるからなぁ……ま、俺達のやることは変わらねぇよ。侵略者を倒して、地球の平和を守るってもんだ!ウルトラセブンが敵味方かどうかについてはいずれ、答えがでるって」

 

 渋川の言葉にリサも一応の納得する様子を見せた。

 

 直後、ポインター内に緊急通信が入る。

 

「こちら、ポインター!」

 

『基地のレーダーが高エネルギー反応を検知しています。至急、急行してください』

 

「ポインター了解!」

 

「向かうぞぉォ」

 

 アクセルを踏みながらポインターを目的地へ急行しようとした。

 

 遠くから赤い閃光が空へ走る。

 

 直後、大きな爆発が起こった。

 

「渋川隊員!!」

 

「なんてこった!」

 

 驚きのあまり言葉を失いつつも渋川は目的地へポインターを走らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆発が起こったのは無人の廃ビル。

 

 取り壊しが決まっていた建物だったことが幸いで被害者はゼロだった。

 

 ポインターで駆け付けた渋川とリサは警察の現場検証が終わるのを待っている。

 

 爆発が起こったといっても、今回の事件が人的被害によるものなのか、侵略者の仕業なのかわからない為であった。

 

「運が良かったですね、爆発があったにしても、人がいなくて」

 

「そうだなぁ、ま、ウルトラ警備隊や警察、その他は大変だけどなぁ」

 

 渋川が楽観的に呟く。

 

 リサは倒壊した建物を見ながらなんともいえない表情を浮かべていた。

 

「え、爆発物の反応がない?」

 

 やってきた警察から告げられた言葉に渋川が驚きの声を上げる。

 

「え、じゃあ、これ、どうやって倒壊したっていうんだ?」

 

 困った表情を浮かべる警官の話では周囲を捜索したけれども、爆発物はおろか、火薬の反応も見られなかったという。

 

 リサがポインターの車内に置かれていた機械を使っていたが反応がない。

 

「どういうことだよ」

 

 崩壊した建物の跡地をみながら渋川は額から流れる汗をぬぐった。

 

 何か嫌な予感がひしひしと感じ取る。

 

 事件はこれからはじまるのではないだろうか?

 

 そんな予感がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜に事件が起きた。

 

『聖なる炎が穢れを焼き払うであろう!キリエル人に従うのだ!キリエル人こそが人類を救うことができる。従う証をみせなければ、さらなる炎が穢れを焼き払おうとすることになろう!』

 

 ニュース放送中に美人キャスターの一人の髪が逆立ち、瞳の周りが真っ黒に染まると天井へ浮かび上がった。

 

 突然の事態に放送を止める暇もないまま、映像は全国に流されてパニックを巻き起こしその日に発生したビル倒壊事件が大々的に報道されることとなる。

 

 翌日、総武高校において、話題となっていた。

 

「何か、みんな、騒いでいるね……」

 

「知らない」

 

 机に突っ伏している八幡に戸塚が声をかける。

 

 周りを見れば、誰もが携帯を片手に昨日のニュース、キリエル人の予言について喋っている。

 

 由比ヶ浜は三浦と海老名の三人と騒いでいる彼らの様子を眺めていた。

 

「八幡はどう思う?キリエル人について」

 

「内容はテロリストが国家へ犯罪声明を流すものと似たようなものじゃないか?まぁ、大抵、あぁいうものは無視されるか却下されるか相場は決まっているけどな」

 

「でも、ビルを原因不明の力で倒壊させたってきくよ?」

 

「それが本当にキリエルなんちゃらがやっていればな」

 

「え?」

 

 ぽかんとする戸塚に八幡は面倒そうに話す。

 

「爆発が起こってすぐにあぁいう放送がされたから誰もが爆発=キリエル人の仕業って繋げてしまう。もしかしたらそこを狙ってあぁいうインパクトある放送をしたって考えられるだろ?」

 

「そっか、凄いね!八幡」

 

「まぁな(おそらくは違うけどな)」

 

 表面上は別の考えを伝える八幡だが、本当は違う。

 

「(あの映像に合成や細工の類は感じられなかった。直接、みたわけじゃないがキャスターに何者かの意識が入り込んだと考えられる……これは明らかな侵略行為だ。ウルトラ警備隊が活動を起こすだろうなぁ)」

 

 八幡は周りを見る。

 

 昨日の映像が原因で誰もがキリエル人について話し合っている。

 

 まるで新たな新興宗教の誕生だな、と心の中で彼は思った。

 

「ねぇ」

 

 考え事をしていたところで声をかけられる。

 

 視線を向けると眉間へ皺を寄せた川崎沙希がいた。

 

「少し、良い?」

 

 複数の視線が集まるのを感じながら八幡は頷いた。

 

「この前はありがと、アンタのおかげで夜間にバイトとかしなくて済むようになった……あと、大志や親と話し、した」

 

「それはよかったな。ただ、俺に感謝されてもなぁ、俺はただ大志の奴に頼まれた。感謝なら家族を大事に思っていた大志に言ってやれ……それか、何か飯でも奢ってやるんだな」

 

「そうする……」

 

 家族の話題は恥ずかしいのか、視線を逸らす川崎。

 

 少しして、視線をさ迷わせながら話を切り出す。

 

「それで、さ、アンタ、おかしな出来事とか、そういうことに詳しいって話を聞いてさ、相談したいことがあるの」

 

「おかしなって、何だよ」

 

 話を聞いたというが誰が言ったのだろうか?

 

「一年生で噂になっていたよ?怪しい出来事はアンタに相談すればいいって」

 

「(一色だな)」

 

 すぐに噂の出先がわかった。

 

 呆れながら八幡は頷いた。

 

「まぁ、出来ることと出来ないことはあるが……話を聞かせてくれ」

 

「昨日、私の前に予言者っていうのが現れたんだ」

 

 川崎の話は驚くことに昨夜、あのニュース放送が終わった直後のことらしい。

 

 予言者と名乗る男が川崎の前に現れて、キリエル人へ忠誠を誓う様にと言ってきたのだ。

 

 もし、誓わないのなら大勢の者が炎で焼かれることになるという脅しまで。

 

 突然のことに戸惑って動けない川崎の前から予言者は姿を消したという。

 

 時間にして五分程度。

 

 夢のような話に川崎自身も現実だったのか、自身の妄想だったのかわからないという。

 

「それ、お前一人だけの時に?」

 

「うん……ただ、その、本当にわかんないだけど、ベランダの宙にソイツ、浮いていたんだ」

 

 八幡の表情が一瞬だけ変わる。

 

 宙に浮いていた。

 

 川崎の前に現れた予言者が実際にいたというのならそれは人間ではない。

 

 人の姿をした何かであろう。

 

「夢だったのかな、私、怖いんだ」

 

 険しい表情は不安を必死に隠しているのだろう。

 

 他からみれば機嫌が悪そうにみえる。

 

 だが、大志から聞いた彼女の印象から弱いところをみせたくないのだろう。

 

「わかった、川崎、もし、変な事があれば、俺に相談してくれ。解決できるかはわからないにしても、一人で抱え込むよりマシだ」

 

「……ありがと」

 

 険しい表情を緩ませて川崎が感謝の言葉を告げる。

 

 その時、川崎の携帯端末がブルブルと震えた。

 

「あ、ごめん」

 

 携帯の画面を見た川崎が戸惑った声を漏らした。

 

「どうした?」

 

 彼女の異変に気付いた八幡が尋ねる。

 

 震える手で八幡へ携帯の画面を見せた。

 

【穢れを焼き払う炎は止まらない。貴方がキリエル人へ従うという証を見せない限り、炎は次々と噴き出すだろう。さぁ、今回はH-1地区です。予言者】

 

 メールの内容は明らかな脅しのようなもの。

 

 驚くべきところは送り主のアドレスが表示されていないという事だ。

 

 これだけで、相手が普通でないことが窺い知れる。

 

 総武高校の屋上から離れたところからもくもくとあがる黒煙がみえた。

 

「ウソ、でしょ」

 

 信じられないものをみる表情で川崎は目を見開いていた。

 

 

――決まりだ。

 

 

 予言者は実在する。

 

 どういうわけか川崎が狙われている。そして、予言者は普通の人間ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 H-1地区の上をウルトラホーク3号が飛行する。

 

 三十分前は多くの人達が当たり前のように生活していた。

 

 仕事の為に道を歩くサラリーマン、楽しく話す主婦、せっせと働く従業員たち。そんな人達が原因不明の爆発によってその命を失う。

 

 ビルは爆発を起こし、炎によって人は一瞬にして炭になる。

 

 紙は燃え付き、パソコンは壊れ、ガラスは割れて地面へ散らばった。

 

 そんな地獄の光景をウルトラホーク3号から梶隊員とユキ隊員がみている。

 

「こちらホーク3号、H-1地区の被害は甚大です!犠牲者多数!繰り返します。被害は甚大です!」

 

「これは人類の仕業じゃない」

 

 無線機に叫ぶ梶隊員の横で燃え上がる街を見下ろしながらユキ隊員はぽつりと呟いた。

 

 

 H-1地区の被害のことで地球防衛軍はキリエル人に対しての緊急会議が開かれることとなった。

 

 極東基地の参謀会議室は重たい空気が広がっている。

 

「では、キリエル人と名乗る謎の存在についての緊急会議をはじめる」

 

 老齢の山岡長官の言葉に参謀たちは様々な意見を告げた。

 

「相手は侵略者です。迎撃すべきです!」

 

「どういう目的であんなテロ行為に等しいことをするのかまず、その原因を探るべきだ」

 

「予言をしたニュースキャスターは今も昏睡状態にあります。彼女から情報を探ることは難しいでしょう」

 

 会議は難航していた。

 

 正体不明の相手からの攻撃に対抗すべきと告げる参謀がほとんどだが、敵の居場所もわからず、有効策も見つかっていない今において、最適解は見つかっていない。

 

「一つ、情報部からの報告でキリエル人の予言者と名乗る人物が一人の少女へ接触したという報告があります」

 

「接触?」

 

 稲垣参謀の言葉に山岡長官が尋ねた。

 

「はい、報告によれば、H-1地区爆破予告もその少女へ行ったと」

 

「キリエル人とやらの仲間ではないのか?」

 

「あるいはキリエル人そのものかもしれんぞ」

 

「少女については?」

 

「ウルトラ警備隊が事情聴取を行っています。H-1地区の爆破については、目撃者が傍にいたということで直接的な犯人とは考えられないでしょう」

 

 山岡長官の問いかけに竹中参謀が答える。

 

 参謀会議は続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「送り主のアドレスがない」

 

 ウルトラ警備隊に事情を説明しようという八幡の意見で川崎は防衛軍へ連絡。

 

 やってきたウルトラ警備隊の渋川とリサ隊員へ川崎沙希はメールの内容をみせる。

 

「悪戯でもなさそう……でも、なぜ、貴方にキリエル人の予言者っていうのは接触してきたのかな?」

 

「そんなの!……わかるわけ、ないじゃないですか」

 

 リサの言葉に川崎が叫ぶ。

 

 彼女自身、色々と混乱している。

 

「落ち着け、落ち着け~、川崎ちゃんだったよね。もし、また予言者から連絡があれば、すぐに俺達へ教えてくれないかな?」

 

「ウルトラ警備隊に?」

 

「そう!大丈夫!何があっても俺達、ウルトラ警備隊が解決するから泥船にのったつもりで信じてほしい!」

 

「大船ですよ、渋川隊員!」

 

「え、あ、いけね!」

 

 リサ隊員の指摘で慌てる渋川。

 

 そのやりとりに川崎が小さな笑みを浮かべた。

 

 わかっている限りの情報を伝えて、川崎は家へ帰らせる。

 

「酷い話だよな、あんな将来これからって子に多くの人の命をゆだねさせるようなことを強いるなんてよ」

 

 去っていく川崎の背中を見ながら渋川は呟く。

 

 それだけキリエル人の予言者という人物がやったことに対して渋川は腹立たしかった。

 

 必ず予言者を見つけ出して、事件を解決する。

 

 決意を新たにして渋川とリサは隊長からの連絡で極東基地へ戻ることになった。

 

 ぶらぶらと道を歩いていた川崎沙希。

 

 不在を知らせる着信があって、内容を確認すると弟の大志からだった。

 

「あ、もしもし、大志……うん、これから家へ――」

 

 帰ると言おうとした川崎は人ごみの中を流れる様に進む男の姿を見つける。

 

 男の姿を見た川崎は目を細めた。

 

「ごめん、大志、少し寄り道してから帰るから、うん、じゃ」

 

 短く会話を終わらわせて川崎は男、予言者の後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 川崎は予言者を追いかけて高層ビルへたどり着く。

 

 男が部屋に入ったところを確認して階段をあがる。

 

 目的の部屋の表札を確認した。

 

 どこにでもある名前をみて眉間へ皺を寄せる。

 

「何が予言者だよ、アンタはどこにでもいる人間だってこと証明してやる!」

 

 ゆっくりとドアを開けて中に入る。

 

 夕方から夜空に変わっているというのに室内は灯りの一つもついていない。

 

 疑問を抱きながらも奥に向かう。

 

 ゆっくりとドアを開けた。

 

 リビングは驚くほどに質素だった。

 

 机と椅子、観葉植物がいくつか。

 

 生き物の類はない。

 

 川崎は机にパソコンが置かれていることに気付いた。

 

 予言者の姿がないことに疑問を抱きつつもゆっくりとパソコンへ触れる。

 

 ブゥゥゥンと音を立てて起動されたパソコンの画面。

 

「どういう、こと?」

 

 パソコンを操作した川崎は疑問の声を漏らした。

 

 開くすべてのファイルが二年前で更新のすべてが止まっている。

 

 全てのファイルが、である。

 

「なんで」

 

「簡単なことだよ」

 

 背後から聞こえた声に川崎が振り返る。

 

 何かがいた。

 

 暗闇でわからないが複数の何かがいることを川崎はなぜか理解できる。

 

 闇の中から何かが放たれた。

 

 衝撃が腕、足、腹、胸、肩と襲う。

 

 突然のことにされるがまま、の川崎の体は宙を浮いて、何も貼られていない白い壁に叩きつけられる。

 

「ぐふっ!」

 

「話の続きだが」

 

 暗闇の中から予言者が現れる。

 

 靴音を鳴らしながら川崎の傍へ近づく。

 

「私は二年前に死んでいるのだよ。死んだ私はキリエル人に選ばれて予言者となった」

 

「つまり、アンタは死人!?」

 

 驚きの声を上げる川崎。

 

「なんで、なんで、私なんだよ!」

 

 自らの疑問を吐きす川崎。

 

 苦しかった。

 

 なぜ、自分、なのかと。

 

 突然、崇めよと選ばれて、多くの人が死ぬ瞬間をみせられて。

 

 傍に彼がいなければ、おかしくなっていたことだろう。

 

「貴方が、いえ、貴方も奴を受け入れようとするからですよ」

 

「奴?」

 

「奴が現れるよりも前からキリエル人は地球にいたのです。人を導くために……ですが、奴を受け入れようとする者達がいる。それは許される事ではない」

 

「その、奴が誰のこといってんのか、知らないけれど、私は」

 

「受け入れないというのなら多くの人が聖なる炎に」

 

 拒絶しようとしたタイミングで告げた予言者の言葉に川崎の顔が歪む。

 

 暗に拒絶すれば多くの人が死ぬぞ、と告げているのだ。

 

 脳裏に大事な弟や妹、家族の姿が過ぎる。

 

 最低だ。

 

 心の中で悪態をつくも壁に縫い付けられたように手足は動かない。

 

 予言者の試すような笑顔が悔しくて視界が滲む。

 

「それは脅迫っていうんじゃないのか?」

 

 響いた第三者の声。

 

 その声に川崎は目を見開き、予言者は忌々しそうに顔を歪める。

 

「比企谷……アンタ!?」

 

 驚く川崎に対して予言者はため息を吐く。

 

「脅迫というのは失礼な言い方ですね」

 

「違うのか?動けない相手に従わないというのなら大勢の命を奪うぞという言葉をちらつかせているのは脅迫でないというのか?」

 

 八幡の言葉に予言者は笑みを浮かべる。

 

「人類はキリエル人に従うべきなのだよ!これからはじまる大いなる恐怖から救われるためにはねぇ!だからこそ、お前は邪魔だ。いや、要らない。貴様のような存在は消えてしまえ!」

 

 予言者の口から炎が吐かれた。

 

 仰け反りながら躱した八幡は右手に力を込めて、念動力を放つ。

 

 放たれる念動力は予言者を捉えたはずだった。

 

 目の前にいた筈の相手がいない。

 

 同時に拘束されていた川崎の体が床に落ちる。

 

「川崎、大丈夫か?」

 

「……アンタ、なんでここに?」

 

「大志に感謝しておけよ。アイツが気になって俺に連絡してこなければ気付かなかったからな」

 

 八幡に肩を借りながら川崎はゆっくりと体を起こす。

 

『最後の予言を伝えよう』

 

 暗闇の中で響く予言者の声。

 

「最後だと?」

 

『キミ達が生きている間に聞くこととなる最後の予言、という意味だよ。聖なる炎が焼き払う場所、それは、ここだぁ!』

 

「ふざ、けんな!アンタは何だと思ってんだ!」

 

 苛立ちをぶつけるように川崎は天井へ叫ぶ。

 

 八幡はゆっくりと川崎と共に立ち上がる。

 

「すぐに、ウルトラ警備隊へ通報しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「市民からの通報で次のキリエル人の攻撃先が判明した」

 

 ウルトラ警備隊司令室で古橋が隊員達へ告げる。

 

「ですが、敵の攻撃の対抗策が……」

 

「その件ですが、敵の攻撃は地下からくることがわかりました」

 

 ユキ隊員が前に出る。

 

「科学班からの報告で地下からの対抗策として電磁波を放つマイクロウェーブに効果があると言われています」

 

「よし、ホーク3号にマイクロウェーブを搭載して梶、現場へ急行せよ!ユキは梶と同行してサポート!残りは俺と共にホーク1号で民間人の避難を行う!」

 

「了解!」

 

 全員が敬礼をする。

 

「時間が限られている!ウルトラ警備隊、緊急出動だ!」

 

 極東基地からウルトラホーク1号とウルトラホーク3号が緊急発進した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現地では多くの住民が警察や防衛軍隊員の誘導の元、避難をしていた。

 

 この街に人を殺す炎が吹き荒れる。

 

 誰もが恐怖に包まれながら、避難誘導に従う。

 

 その中に当然のことながら八幡と川崎の姿もあった。

 

「ごめん、比企谷。色々と迷惑をかけて」

 

「困った時はお互い様っていうだろう……俺には無縁な言葉だが」

 

「アンタねぇ」

 

 予言者から受けた攻撃が体に響いているのだろう。

 

 川崎から汗が流れる。

 

「無理はするな、避難所で休めばいい」

 

「アンタは、どうするの?」

 

「逃げるさ、こんな危ない事態は大人……ウルトラ警備隊に任せればいい」

 

 ちらりと周囲をみる。

 

 老人、大人、子供、多くの人が誘導に従っている。まるで、これから起こることが世界の終りのようなものに川崎は感じられた。

 

「私達、滅びるなんてことに、なるかな?」

 

「ならないだろ」

 

 不安の声を八幡は一蹴する。

 

 避難所に到着したところで川崎を八幡は座らせた。

 

「さっきの話だけど」

 

 小さな笑みを浮かべる。

 

「そう簡単に人類は滅びねぇよ、地球人よりも地球人を愛している宇宙人だっている」

 

 川崎は戸惑いの表情を浮かべている中、八幡は立ち上がる。

 

「水でもとってくる。川崎はそこで休んでいてくれ」

 

 離れていく八幡。

 

 その姿を目で追いかけていた川崎だが、視線を感じて振り返る。

 

 怪しげな笑みを浮かべている男がいた。

 

 みられていることに気付いたのか男は歩き出す。

 

「っ!」

 

 予言者かもしれない。

 

 ふらふらと鉛のように重たい体を引きずりながら川崎は後を追いかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラホーク3号は市街地上空に到着する。

 

「マイクロウェーブ起動!」

 

「起動します」

 

 梶の言葉にユキがシステムを起動する。

 

 ホーク3号の下部からマイクロウェーブが姿を現す。

 

「五秒前!」

 

 ユキがカウントする。

 

 マイクロウェーブは少しでも位置がずれればその効力を失う。

 

 故に科学班が予想した位置へ正確に放たなければならない。

 

 市街地は無人。

 

 そのはずの場所にふらふらと川崎が現れる。

 

 男の姿を探していたが見失ってしまう。

 

「どこに……」

 

 額から汗を流しながら川崎は市街地を歩く。

 

 マイクロウェーブの範囲内に自身がいることに気付いていない。

 

「川崎!」

 

『四秒前!』

 

 バランスを崩して地面に倒れる川崎。

 

「川崎!どこだ!」

 

 彼女がいないことに気付いて探しに来た八幡。

 

『三秒前!』

 

 八幡は地面に倒れている川崎の姿を見つける。

 

 声をかけるも彼女が起き上がる様子はない。

 

『二秒前!』

 

 彼はウルトラホーク3号がマイクロウェーブを発射する状態であることに気付いた。

 

『一秒前!』

 

 八幡はポケットからウルトラアイを取り出して装着する。

 

『発射!』

 

 ウルトラホーク3号から放たれるマイクロウェーブ。

 

 眩い閃光を放ちながら瞬時に巨大化したウルトラセブンが市街地に姿を現す。

 

 彼の手の中には意識を失っている川崎沙希の姿があった。

 

 ゆっくりとウルトラセブンが川崎を地面へそっと寝かす。

 

 ウルトラ警備隊のおかげでキリエル人の攻撃は失敗に終わる。

 

「ようやく姿を現したな!ウルトラセブン!」

 

 呼ばれた声にセブンは視線を向ける。

 

 予言者が道路の真ん中に姿を見せていた。

 

 彼は怒りに染まっていた。

 

『お前はなぜ、こんなことをする』

 

 テレパシーでセブンは問いかける。

 

「キミは地球の守護神になるつもりかい!」

 

 しかし、セブンの問いかけに予言者は答えない。

 

「烏滸がましいと思わないかい!?地球人は我々キリエル人の導きを待っていたのだよ!」

 

『仮にキリエル人の導きとやらを地球人が望んでいたというのなら、なぜ、なぜ……多くの命を奪う!貴様がやっていることは侵略者と大差ない!』

 

「みるがいい!キリエル人の怒りを!怒りの炎を!!」

 

 地面に亀裂が入り、そこから炎が噴き出していく。

 

 炎が形を変えていき、やがて、異形の巨人がその場に現れる。

 

 心臓の部分を胎動する発光部分、黒とグレーが混ざり合ったような体皮。

 

 それこそキリエル人が戦うために姿を変えたキリエロイドである。

 

「あれが、キリエル人の正体だっていうのか!?」

 

 避難民を誘導して上空のホーク1号で様子を伺っていた東郷隊員が驚きの声を上げる。

 

『多分、違います』

 

 ホーク3号のユキ隊員から否定の言葉が入る。

 

『奴の姿を見る限り、ウルトラセブンと戦うために、身長、体重、全てを模倣したと思われます』

 

「何て奴だよ。相手と戦うために同じ姿になるなんてよ」

 

「それだけ、ウルトラセブンを敵視しているということ」

 

「どちらにせよ、奴は侵略者であることは変わらん」

 

 動揺している隊員達に対して古橋隊長は鋭い目でウルトラセブンとキリエロイドの戦いをみていた。

 

 先手を切ったのはウルトラセブン。

 

 キリエロイドに接近してパンチを放つ。

 

 同じようにキリエロイドもパンチを繰り出してウルトラセブンとぶつかりあう。

 

「ジョキィ!」

 

 不気味な声を上げながらパンチやキックを繰り出してくるキリエロイドにセブンは真っ向から挑む。

 

 ウルトラセブンと同じ身体能力を宿しているという事で互角の戦いが続いていく。

 

 距離が開いたところでセブンが駆け出す。

 

 キリエル人は手に炎を纏い放つ。

 

 炎の塊がウルトラセブンの体を焼こうとする。

 

 銀のプロテクターを溶かそうとするほどの熱にセブンは苦悶の声を漏らす。

 

 ダメージに膝をついたウルトラセブン。

 

 不気味に笑いながら接近したキリエロイドがセブンの体を持ち上げて、顔を殴る。

 

 何度も殴り、そのまま投げ飛ばす。

 

 近くのビルの上に体をぶつけながら倒れこむウルトラセブン。

 

 キリエロイドは自らの勝利を予見しているのか両手を広げて笑う。

 

「しっかりしやがれ!」

 

 気付けば古橋はウルトラホーク1号のスピーカーをONにして叫んでいた。

 

「てめぇがどこの誰で!どういった理由で地球人の為に戦ってくれているのか知らねぇ、けれど、俺達の為に戦ってくれているというのなら、必ず勝て!ウルトラセブン!」

 

 古橋の操縦しているウルトラホーク1号からブレイカーナックルミサイルが放たれた。

 

 攻撃を受けたキリエロイドはのけ反りながら、炎の塊をウルトラホーク1号へ投げようとする。

 

 起き上がったウルトラセブンが頭頂のアイスラッガーを投げた。

 

 真っ直ぐに放たれたアイスラッガーがキリエロイドの胸部に激突。

 

 標的を失った炎は地面で爆発を起こす。

 

 戻ってきたアイスラッガーを頭頂に戻して、構えを取るウルトラセブン。

 

 苛立ちの声を上げながら駆け出すキリエロイド。

 

 先ほどよりもセブンのパンチの速度があがる。

 

 まるで拳が燃えているように次々と繰り出されるパンチ。

 

 連続ラッシュを受けて、ふらふらになるキリエロイド。

 

 ウルトラセブンは後ろへ下がりながら両手をL字に構えて、ワイドショットを放つ。

 

 反撃しようとしたキリエロイドはワイドショットの直撃を受けて大爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは夜空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷、ちょっといい?」

 

 キリエル人の事件から数日後。

 

 念のため、入院をしていた川崎沙希が復学した。

 

 大志からの情報によると体に異常はみられなかったという。

 

 いつの間にか大志とメールのやり取りが異様に多いことが発覚してしまうが、ただ、そういうことであり、今後は減る。

 

 必ず減るはずだ。

 

 ペガの呆れた声を思い出しながら八幡は川崎と屋上へ出る。

 

「その、前はありがとね」

 

「礼なら大志にいえって」

 

「しっかり言ったよ……そうしたらアンタに言えっていわれちまったよ」

 

「そっか、良い弟だな」

 

「自慢の家族だよ」

 

 川崎はちらちらと視線をさ迷わせる。

 

「色々と迷惑かけたけど、ありがとう。無事に解決したから」

 

「まぁ、俺にできたことは少ないけどな」

 

「そんなことないよ、アンタがいたから、助かったところもあるし……いつかは、お礼するからさ」

 

「それだけ聞くと、少し不安になるんだが」

 

「ハァ?」

 

 鋭い瞳でみられて八幡は自然と後ろへ下がる。

 

 苦笑しながら川崎は近づく。

 

「ありがとうね、お節介な宇宙人さん」

 

「は?お前、今、なんて?」

 

「さぁね。あ、そうだ。今度から普通に話しかけるから声かけても無視とかしないでよ」

 

 手を振って屋上から出ていく川崎の姿を見ながら八幡は呟く。

 

「よくわからんが、またボッチから遠ざかった気がする」

 



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第六話:チェーンメール事件

今回、短いです。

あと、つなぎのようなものです。
ちなみに私は話の流れ上、アンチな展開もしますが、基本的にそこまでアンチ好きじゃないです。

次の話は小町メイン?になる予定です。


 

 

「ねぇ、八幡は職場見学どうするの?」

 

 昼休み。

 

 小町特製の愛妹弁当を食べ終わった八幡に戸塚が問いかける。

 

「職場見学、あぁ、そんな時期か」

 

 総武高校は職場見学という行事がある。

 

 進学校として、将来の職業を考えさせる為にという目的であるというのだが、八幡としてはここのところ連続して起こった事件ですっかりと忘れていた。

 

 まるで空想特撮番組のように一週間ごとに怪事件に巻き込まれている――なんて、八幡はバカみたいなことを考える。

 

「もしかして、考えていなかった?」

 

「全く」

 

「何の話ぃ?」

 

 二人で話し合っていると三浦、由比ヶ浜、海老名の三人がやって来る。

 

 続いて、川崎が会話に気付いてやってきて、三浦とにらみ合う。

 

「定番だね~」

 

 文庫本を片手に微笑む海老名。

 

 由比ヶ浜や戸塚は苦笑している。

 

 あっという間に出来上がる摩訶不思議グループ。

 

 その中にボッチである自分がいることに八幡は未だに信じられない。

 

 ボッチ街道からいつの間にか外れてしまっているようだ。

 

「職場見学かぁ、今回は色々とあるよねぇ」

 

「あーしとしては、“愛染テック”が興味あるかなぁ」

 

「複合企業だよねぇ、かなり社長さんがユニークって噂だよねぇ~」

 

 皆がそれぞれの企業の行く先について話す中で、八幡は一つの候補を選ぼうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩~~!」

 

 奉仕部のドアを開いて現れたのは一色いろは。

 

 いつも通りに部活が終わるかと思っていたタイミングの来訪者に八幡はため息を零す。

 

「何の用事だ?一色」

 

「えへへ、先輩ぃ、職場見学、どこへいくんですかぁ?」

 

「別にどこだっていいだろう?」

 

「いいえ!もし愛染テックへ行くなら!愛染社長のサインをもらってきてほしいんです!」

 

「唐突だな」

 

「一色さん、職場見学は将来を見据えた行事であって、遊びではないのよ?」

 

「あー、でも、優美子たちも愛染テックに行きたがっていたなぁ」

 

「そうです!もし、行くなら愛の伝道師っていっている社長さんのサインをくださいよ!自慢できますから」

 

「お前があったわけじゃないだろ……それに、行く先なら俺は決まっているぞ」

 

「え?ヒッキーはどこに」

 

 コンコンと奉仕部のドアがノックされた。

 

「…………どうぞ」

 

 もうまもなく帰る時間というタイミングで新たな来訪者出現に雪ノ下は入室を促す。

 

「やぁ、失礼するよ」

 

 部室に入ってきたのはクラスの人気者、葉山隼人だった。

 

「すまない、サッカー部の課題が終わるのに時間が掛かってしまって」

 

「そちらの都合の話をされても困るわ。こちらはそろそろ帰ろうと思っていたから依頼の話をすぐにお願いするわ」

 

 爽やかな笑顔を浮かべる葉山に対して雪ノ下は厳しい。

 

 普通に謝罪をすれば良いのに言い訳をしてしまったからだろう。

 

「あ、それで、隼人君、依頼っていうのは?」

 

「これなんだ」

 

 困った様な様子で葉山が携帯端末を差し出す。

 

「チェーンメールね」

 

 雪ノ下が八幡と由比ヶ浜へメールの内容をみせた。

 

『戸部はカラーギャングの仲間、ゲーセンで西高狩りをしている』

 

『大和は三股をかけている。美女のより取り見取り』

 

『大岡はラフプレーで相手校のエースを潰している。エースキラー』

 

 上記のような内容の所謂チェーンメール。

 

 こういったメールがクラス内に出回っているらしい。

 

 そして、こういうチェーンメールによってクラス内の空気がかなり悪いとのこと。

 

「そうか?てか、こんなメールこねぇしな」

 

「あぁ、その、キミや結衣達がいるグループはかなり特殊じゃないからかな?えっと、比企谷君」

 

「ふーん、それで、葉山だっけ?お前の依頼はこのメールの犯人を突き止めるという事か?」

 

「いや、それは、できれば、したくない……その、こういうメールがでなくするにはどうすればいいだろうか?」

 

「原因の根絶ではなく、一方的な対処ということね、相変わらずのこと」

 

 ぽつりと雪ノ下が呟いた言葉を八幡は聞いたが反応しないことにした。

 

「出来るかな?雪乃ちゃん」

 

「難しいわね。犯人を特定してやめさせれば一発だけれど、それをしないというのなら、これは止まらない。一時的に止める手段は思いつくけれど、あぁ、もう一つあったわ。原因を取り除くことくらいかしら」

 

「原因?」

 

 葉山の問いかけに八幡が察する。

 

「このメールが出始めたのは何か理由がある。その理由を取り除けば、チェーンメールも回らなくなるってことか」

 

「そう、心当たりはあるかしら?」

 

「……すまない、あまり」

 

「あー、これって、あれじゃない?職場見学の話が出たころくらいだと思う」

 

 首を振る葉山、その直後の由比ヶ浜の言葉に部室内の時が止まった。

 

「あ、あれ?」

 

「由比ヶ浜先輩、タイミング悪すぎですよ」

 

 先ほどまで沈黙していた一色の言葉に由比ヶ浜はみんなをみる。

 

「まぁ、由比ヶ浜さんがヒントを与えてくれたわね」

 

 ため息を吐きながら雪ノ下が言う。

 

「けれど、なぜ、職場見学でチェーンメールが出回るのかしら?」

 

「あの、質問いいですか?」

 

 話を聞いていた一色が手を挙げる。

 

 ちらりと雪ノ下が八幡を見た。

 

「一色、何が聞きたいんだ?」

 

「はい、あの葉山先輩……ここの名前の挙がっている人達って先輩のグループですか?」

 

「え、そうだけど……」

 

「私、分かったと思います」

 

「え、ホント!?」

 

「教えてくれるかしら?一色さん」

 

 驚く由比ヶ浜の横で雪ノ下が続きを促す。

 

「はい、このチェーンメールって、おそらく牽制だと思います」

 

「牽制?」

 

「はい、おそらくですけれど、葉山先輩と職場見学へ行くための……ほら、葉山先輩って大人気じゃないですか、大人気の葉山先輩と一緒に見学へ行けれるように他の人達を蹴落とそうとする……こういうことをする女の子がいるんでわかっちゃいました」

 

「(一色はやっていないだろうけれど、そういうことをやる女子をみてきたんだろうな)」

 

 一色の話の横で八幡は推測していた。

 

「じぁあ、どうすれば」

 

「簡単だ」

 

 戸惑う葉山に対して八幡がある提案をする。

 

「お前が行く連中を堂々と宣言すればいい」

 

「え、宣言?」

 

「あぁ、お前の取り巻きはどこへ行くのかわかっていない。だから、牽制をすることで一番乗りできないようにしたいんだろう?だったら、お前がはっきりと誰と行きたいかを言えばいい、つまり、ここの連中とどこへ行きたいかを考えて決めればいい」

 

「それで、解決するのか?」

 

「チェーンメールをやろうとすることはなくなるだろうよ」

 

「……わかった、やってみるよ」

 

 そういって葉山は感謝を告げて教室から出ていく。

 

「今回は一色さんの手柄ね」

 

「えぇ~、本当ですかぁ?でしたら、先輩に何かお礼を」

 

「はいはい、あざとい、今度、何か駄菓子でも奢ってやるよ」

 

「えぇ、そこはパフェとか、あ、そうだ!」

 

 何か思いついたような表情を浮かべる一色。

 

 嫌な予感が八幡の中を駆け巡る。

 

「先輩、今度の休日、予定はないですよね?」

 

「だったら、なんだ……」

 

 おそるおそる八幡は尋ね返す。

 

「休日にデートしましよう!それがお礼です!」

 

 一色がこの場に爆弾、否、水爆を投下したと八幡は心の底から思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡も大変だねぇ、女の子とデートなんて」

 

「俺はデートと断じて認めない」

 

「相変わらずなんだから」

 

 自室で寛いでいるとダークゾーンからペガが顔を出す。

 

「そういうペガはどうなんだ?女の子とで、デートに誘われたら」

 

「えぇ!?それは嬉しいけど……でもぉ、恥ずかしいよう」

 

 そういってダークゾーンの中に消えた、と思うと再び顔を見せる。

 

「その子は八幡に好意を持っているの?」

 

「は?ないない、アイツはあざとい後輩だ。ただ、お礼として揶揄っているだけだ」

 

「じゃあ、僕も付き合っていいよね?」

 

「は?」

 

 ペガは体を出して本棚から数冊の漫画を取り出す。

 

 ベッドから体を起こして八幡はペガをみる。

 

「着いてくる気か?」

 

「八幡の影から顔は出さないよ。デートというものを知っておきたいからさ」

 

「はぁ、お前の勉強の為か」

 

「いいでしょう~?八幡~」

 

「わかった、わかった、一色の邪魔だけはするなよ?」

 

「やったぁ~!」

 

 嬉しそうにはしゃぐペガの姿に八幡はため息を零す。

 

 休日のデート、何も起きなければ良いのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当日、八幡は私服姿で駅前へ来ていた。

 

 まるでリア充のような待ち合わせ場所である。

 

 八幡の傍にイケメンの男子が立っていた。

 

 ちらりとこちらをみてフッと笑う。

 

 何を評価したのか八幡は知らないし知りたくもない。

 

「遅れてごっめーん、待った~?」

 

 隣の男の待ち人はやってきたようである。

 

「いやいや、俺も今来たところだぜ!」

 

 まるで八幡へ女性をみせつけるようにしながらニヤリと笑う。

 

 こちらに勝ち誇った様な笑みだが、張り合う気もない八幡は気にしなかった。

 

「先輩~、遅れてごめんなさぁい」

 

「あざといぞ。てか、お前、約束の時間より十分も早く来るんだな」

 

「うわっ、先輩、時間測っているんですか?細かいです、怖いです、残念ですけれど、先輩はあくまで友達という関係であって恋人とかそういうものではありませんのでごめんなさい」

 

「何で俺が告白して振られたみたいになっているんだよ。てか、お前に付き合うだけなんだからな」

 

 呆れながら八幡

 

 女の子らしい薄いピンクを基調とする服装に身を包んで、白いベレー帽をかぶっている。

 

 あざとさ全開の一色の姿に八幡はやれやれと呆れながら歩き出す。

 

「あれれぇ、手をつなぐとかはないんですか?」

 

「遠慮しとく。行くぞ」

 

 一色に行くぞといいながら二人はショッピングモールへ向かう。

 

 休日ということで人ごみだらけの中をはぐれないように一色と一定の距離を保ちながら進んでいく。

 

「プランは一色が決めるという事だったが」

 

「はいはーい!デートといえば定番は映画です!チケットはネットで購入していますので行きますよぉ!」

 

 前に出てきた一色が八幡の腕を引いていく。

 

 抵抗する暇もないまま映画館へ入る。

 

 一色は映画のチケットを購入してからポップコーンとソフトドリンクを購入。

 

 八幡はソフトドリンクを買うことにした。

 

「先輩はポップコーンを買わないんですか?」

 

「ドリンクだけで十分だ。ところで、見る映画は何なんだ?」

 

「これでーす!」

 

 一色が選んだ映画のタイトルは「ウルトラQ」と書かれていた。

 

 

 

 

 

「え、マジ?」

 

 

 

 

 

――ウルトラQ。

 

 航空会社に勤務していた社員が今までに遭遇した怪事件を記したノンフィクションの本を映画化したものである。

 

 数十年前に出版されたものだが、今でも根強い人気を持ち、何より怪事件が再び連発していることから熱を持ち始めたらしい。

 

「ネットの評価で人気だったってことだから選んだんです。先輩も男の子ですからこういうの好きですよね?」

 

「え、あぁ、まぁ」

 

 曖昧に頷く八幡。

 

 その姿に一色は首を傾げながらも映画館内へ入る。

 

 二時間くらい経過して。

 

「いやぁ、面白い映画でしたねぇ!」

 

 有名な映画監督が作ったという事だけあってクォリティは最高だった。

 

 最高だったのだが。

 

「(まぁ、本物をみたことがあるからなぁ……面白いと言えば納得なんだが)」

 

「さぁ、次は買い物です!荷物持ち、お願いしますね!」

 

「……荷物持ち確定なんだな」

 

 ため息を吐きながら一色とショッピングモール内を行き来する。

 

 服に拘りを持たない八幡はあっさりと選んで買い物は完結するのだが、一色は試着を重ねて服を選んだ、かと思えば……買わなかったり、買ったりということを繰り返していた。

 

 興味のない八幡にとっては苦痛に等しい時間だ。

 

 夕方ごろにようやく八幡は解放された。

 

「死ぬかと思った」

 

「大袈裟過ぎますよ、女の子の買い物は長いんです!先輩が彼女をできた時はこういう苦労を味わうんですからね!」

 

「へいへい、俺にそういう機会がくればな」

 

 ため息を吐きながら荷物を持つ八幡に一色は尋ねた。

 

「先輩は奉仕部の二人とお付き合いとか考えないんですか?」

 

「ないな」

 

 八幡は考えるそぶりを見せずに答えた。

 

「えぇ?あの二人、美人じゃないですか、私より劣るかもしれないですけど」

 

「そういうことを言えるお前は凄いと思うわ」

 

 自信満々なのは悪いことではないが、あの二人は美少女だと八幡は思う。

 

 一色もまた別方向の美少女であるけれども。

 

「美少女とお付き合いとか考えないんですか?」

 

「さっきもいったがない……」

 

 脳裏をよぎるのは別宇宙での出来事。

 

 泣きながらバトルナイザーを構える雪ノ下と傷だらけになりながらジャイロを握り締める由比ヶ浜の二人の姿。

 

「本当にぃ?」

 

 疑う様にこちらをみてくる一色に八幡はため息を零す。

 

「さっきからなんだ?」

 

「何でもないですぅ」

 

 頬を膨らませながら先を歩く一色。

 

「先輩は職場見学、どこに行くか決めたんですか?」

 

「まぁな」

 

「そうですかぁ、お土産、期待しますね!」

 

「勉強の一環だってこと、忘れるなよ」

 

「何ですかぁ!ケチィ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チェーンメール事件の後日談というかオチ。

 

 葉山隼人が愛染テックへ仲間達と一緒に行きたいと昼休みや休憩時間に堂々と宣言したことが功を成したのかあれからチェーンメールがクラス内を飛び交うことはなかったらしい。

 

 ちなみにこの情報は葉山から伝えられた。

 

 本人は今の関係を崩すことがなく解決できてとても喜んでいた。

 

「(いつまで続くかわかんねぇ関係だけどな)」

 

 人間関係など些細なことで壊れやすい。

 

 勿論、本物の絆といえる関係ならやすやすと壊れることはないだろう。

 

 彼の知る宇宙人と地球人による強い絆をみてしまえば、よくわかる。

 

 葉山隼人が告げたが果たして本当にチェーンメールは起こらないかと言われると今後もありえる。

 

 今回は葉山が率先したことで解決したけれど、実際、悪化する可能性もあった。

 

 賭けに勝っただけである。

 

「さてと」

 

 八幡は席から立ち上がり後ろの黒板をみる。

 

 そこには複数の企業の名前が記されていた。

 

 

 

 

 

 世界環境保全委員会が管理する太陽エネルギーの発展を目的とした【ハイパーソーラーシステム研究施設】。

 

 日本における複合企業においてナンバーワンということと社長が有名過ぎる【愛染テック】。

 

 自然と人類の共存を目的として試験的に開発が進められている大学の研究施設、【バイオ空間】。

 

 宇宙開発に力を入れている企業であり、社長が最年少で博士号をとったといわれる文字通り天才が一代で築き上げた【サイテックコーポレーション】

 

 学生が滅多に立ち入ることのできない企業や施設に行けるということで多くの生徒が楽しみにしている中で八幡は一つの項目に自らの名前を書き込んだ。

 




本当は一色登場する予定はなかったのですが、一話から全く出てきていないので、ここで活躍してもらいました。


どの企業に行くかで起こる事件が違う……なんてことがありえるかもしれない。


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第七話:小町とダークマター

川崎さんの次にアンケートで票が多かった小町の話です。


 

「買い物、よろしくね、っと」

 

 放課後、中学生の小町は携帯端末を鞄の中に入れる。

 

 メールの送り先は彼女の兄。

 

 放課後の教師の手伝いで帰りが遅くなるので、兄に買い物を頼むことにしたのである。

 

「いやぁ、三人分の料理というのも中々に大変だなぁ」

 

 比企谷小町。

 

 年齢十五歳。

 

 普通といえばいいかわからないが兄よりも優秀なハイブリッドボッチ。

 

 誰とでも親しくなれるし、独りになろうと思えば、好きになれる。

 

 そんな比企谷小町の周りは普通じゃない人達がいた。

 

 まず、彼女の兄。

 

 一年前に事故で別宇宙を旅して戻ってきたと思ったら宇宙人と一心同体になって生活している。

 

 普段は普通の人としてふるまっているが身近で怪事件が起これば、女の子が惚れこむほどのイケメンになる(尤も、腐った様な目が惚れこむ要素を少しだけ引き下げてしまっている)。

 

 続いて居候のペガ。

 

 ペガッサ星という地球から遠く離れた星から社会勉強の為に旅をしていたのだが、宇宙船が壊れて、様々な理由から比企谷家に居候している。

 

 手先が器用で内職で比企谷家の家計を助けていた。

 

 兄の周りには他にも普通じゃない人はいるものの、毎日、楽しそうだ。

 

「けどまぁ、小町は心配なのです。お兄ちゃんは危ないことに平気で首を突っ込むし」

 

 メフィラス星人事件、キリエル人事件もそうだが、表向きウルトラ警備隊の活躍で解決したことになっているが少なからず、いや、ほとんど兄が関わっていると思われる。

 

「妹としては誰か素敵なお嫁さんを手に入れて幸せな生活を送ってほしいと思うのですが」

 

 周りに美少女がいて素晴らしい物件があるのだが、兄はそれを選ぶ様子はない。

 

 まぁ、宇宙人と一心同体しているし、色々と思うところがあるのだろう。

 

「兄の考えなど、小町はすぐに理解できるのです」

 

 胸を張りながら小町は家へ帰ろうとしていた時、地震が起こった。

 

「え、地震!?」

 

 驚きながら倒れないようにする小町。

 

 地震と共に離れた場所から巨大な塔が姿を現す。

 

「うわぁー、マジですか」

 

 街中に巨大な塔が出現したというのに、周りの人間は慌てる様子がない。

 

 それどころか、さっきの地震は凄かったなぁというだけである。

 

「怪事件の予感がしますぅ~」

 

 同じころ、別の場所で騒ぐ三人の子供がいたとか、いないとか。

 

 

 

夜の比企谷家。

 

 両親は共働きで滅多に家へ帰ってこないから食卓は居候のペガも含めた三人である。

 

「ねぇ、ペガちゃん~、そろそろダークゾーンから出てご飯を食べない?」

 

「えぇ~~!恥ずかしいよう!」

 

「うーん、ペガッサ星人の生活に小町は興味が出てきますなぁ!」

 

「ほとんど大差ないはずだ。ペガは恥ずかしがり屋なところもあるしな」

 

「もう~~!からかわないでよ!八幡」

 

 茶碗をダークゾーンから机の上へ置きながらペガが文句を言う。

 

 一年前は兄妹二人だけの食卓で少し寂しいものを感じたが、居候、宇宙人が増えただけでここまで楽しくなるものなのだろうか?

 

「あ、そうだ、お兄ちゃん」

 

「なんだ?」

 

 ズズズとみそ汁を啜っている兄へ小町は報告する。

 

「今日、小町、怪事件の前兆を目撃しました」

 

 今の発言で漫画ならみそ汁を吹き出していただろう。

 

 だが、ここはボッチエリート?を極めた兄。

 

 この程度で動揺することはなかった。

 

「ごくん」

 

 みそ汁を飲み込んで八幡はお椀を机へ置く。

 

「前兆って?」

 

 おぉ、ここは冷静に尋ねるようです。

 

「えっとねぇ、地震起こって、地面から巨大な塔が出てきたんだけど、周りの人達、地震のことばかりで誰も塔のことを気にしないし、驚きもしないんだよねぇ」

 

「どんな形の塔だ?」

 

「写真撮ったんだけど、こんなんなっちゃったんだよねぇ」

 

 小町が端末の画面を見せる。

 

 八幡とペガがのぞき込むと画面はノイズが走っていて、塔らしき姿は映らない。

 

「みえないね」

 

「これは、塔そのものをみにいくしかないかもなぁ」

 

「おぉ!お兄ちゃんがやる気出してくれた!」

 

「妹の頼みだからな。兄としてひと肌脱ぐのは当然だろう」

 

「そこは愛しい女の為とかいうべきだよ。小町も嬉しいけれどさぁ」

 

「八幡のシスコンは変わらないからねぇ」

 

 呆れながらも明日、八幡は小町達と一緒に塔へ向かうことが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、ウルトラ警備隊司令室に梶とリサの二人が入室する。

  

 腕を組んでいた古橋の前で二人は敬礼した。

 

「早速だが、二人はこれから指定した場所に調査へ向かってもらいたい」

 

「エイリアンですか?」

 

「それはわからん」

 

「わからないんですか?」

 

 叫ぶ梶の傍に竹中参謀が現れる。

 

「実は防衛大臣から要請が入ってね。一夜にして不思議な塔が出現したという話を聞いたらしい。それだけなら天下のウルトラ警備隊に出動を要請する必要はなかったのだが、エリア周辺でダークマターの反応があったのだよ」

 

「ダークマター?」

 

「宇宙に漂う未知の物質だ。それがどうして地球で探知されたのか、もしかしたら侵略者が何か企んでいる可能性がある」

 

「そういうわけだ。梶とリサの両隊員はポインターで調査へ出動!」

 

「「了解!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「調査はわかるけどさぁ、俺達は防衛大臣のパシリじゃねぇんだぞって」

 

 運転席で悪態をつく梶。

 

 ポインターは極東基地からシークレットハイウェイを抜けて市街地を走っていた。

 

 陽の光を受けて輝く銀色の車体は道路をまっすぐに突き進む。

 

「防衛大臣というけれど、実際は防衛大臣の息子さんの友達ということらしいわよ?」

 

「子供が親の権力使うなんて、世も末だな」

 

「悪態をつかない!もしかしたら怪事件の始まりなのかもしれないんだから、まずは調査!調査!」

 

「わかっているって」

 

「あ、あそこね」

 

 リサの指をさす方向、ポインターをみて手を振る子供たちと緊張した様子の警官がいた。

 

「じゃあ、あの塔はいつかあるのかわからないってことですか?」

 

 白い複数のアンテナのようなものがついた塔を指さしてリサが尋ねる。

 

「はぁ……」

 

「あの塔はどういう用途で作られたのですか?」

 

「いやぁ、それがぁ」

 

 梶の質問に対しても警官の言葉はたどたどしい。

 

 本当に白い巨塔がどういった用途で作られたのかわかっていないということだろう。

 

「リサ隊員、周辺住民へ聞き取りをしよう」

 

「了解です」

 

「本官はこれにて!」

 

「あ!」

 

「逃げた」

 

 自転車に乗って去っていく警官。

 

 その後ろ姿を見て、目撃した子供が呟いた。

 

 一人ならともかく、二人以上の目撃者がいる以上、ウソだと断言するわけにいかず、二人は聞き込みを開始する。

 

 開始したのだが。

 

「あの塔?いつからあったかしら?前からあったような気がするわぁ、あ、タイムセールスはじまるからごめんなさい~」

 

「儂が生まれる前からあったと思うなぁ、多分」

 

「さぁ?あんなの気にしているほど暇ではないので」

 

 聞き込みを開始して三十分、思うような成果を得られなかった。

 

「誰も、あの塔がいつからあって、何のためにあるのかわかっていないわけか」

 

「皆、些細なことだと思って気にしていられないのかしら」

 

「さぁな」

 

 リサの疑問に梶は首を振る。

 

 子供たちは不安そうに二人を見ていた。

 

 笑みを浮かべたリサは子供たちと目を合わせる。

 

「大丈夫!私達、ウルトラ警備隊が責任をもって調査するから!」

 

 彼女の言葉に子供たちは嬉しそうな笑みを浮かべた。

 

 梶はVCを起動する。

 

「こちら梶、すまないがこの町周辺の地図を調べてほしい。あの塔がいつからあるのか調べたい」

 

『東郷だ。了解した。少し時間が掛かる。わかり次第、連絡する!』

 

「頼む」

 

 通信を終えて、梶は塔を指さす。

 

「塔の周辺を調査しよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「近くでみるとデカイなぁ」

 

 子供たちを乗せたポインターは白い巨塔の前に到着する。

 

 窓一つない巨頭はコンクリートらしき素材で作られているが、壁を叩くとガラスのような音が響いた。

 

「窓一つもない。一体、この塔はなんなんだ?」

 

 その時、VCから通信があり、梶は蓋を開く。

 

『東郷だ!頼まれていた地図などを調べてみたがそこに塔の類は存在しない!また、建築予定の記録もなかった!』

 

「つまり……これは一夜にしてできたってことか!」

 

『梶隊員、こちら渋川!その地区周辺でダークマターの収束率があがっている!危険だから一旦、そこから離れるんだ』

 

「了解!あれ、リサ!リサ隊員!」

 

 梶は塔の周辺を調べているはずのリサがいないことに気付いて声をかける。

 

 直後、梶の目の前で眩い光が起こった。

 

 あまりの輝きに目を閉じる梶。

 

 再び視力が回復した時、目の前にいたはずのリサと子供たちの姿がどこにもなかった。

 

「リサ隊員!くそっ!隊長!こちら梶!非常事態!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「梶!」

 

 梶隊員からの要請を受けた東郷隊員と渋川隊員はポインターで応援として急行した。

 

「東郷さん!渋川さん!すいません」

 

「謝罪は後々、この塔の中にいるってことか?」

 

「その、はずです」

 

「じゃあ、このエネルギー探知機を使って!」

 

 渋川がエネルギー探知機を塔へ向ける。

 

 しばらくして探知機か反応を示した。

 

「ここが入口か……」

 

 探知機を置いて、三人はゆっくりと塔の入口へ近づく。

 

 三人が振れた直後、白い輝きを放って三人を塔内部へ誘う。

 

 塔内部は薄暗く、壁や床は全て緑色の輝きを放っていた。

 

「警戒を怠るな」

 

 東郷を先頭に三人はウルトラガンを抜いてゆっくりと通路内を進んでいく。

 

 狭い通路をゆっくりと進みながら順調に彼らは上のフロアにあがっていた。

 

「ジョアァ」

 

「おいおい、東郷隊員、変な声ださないでくれよ」

 

 聞こえた声に身構えるもすぐに静かになったことから渋川が文句を言う。

 

 前を歩いていた東郷が数歩、下がる。

 

「俺、じゃない」

 

 二人は警戒してウルトラガンを握り締める。

 

 東郷たちの前に宇宙人が現れる。

 

 青い一つ目に白い爪のような者を持つ宇宙人に三人がウルトラガンを構えた。

 

 直後、背後から黄色い瞳の宇宙人が姿を見せる。

 

「東郷隊員!渋川隊員!」

 

「くそっ!」

 

 三人がウルトラガンで撃退しようとするが、二体の宇宙人から光線が放たれた。

 

 光線を受けた三人は苦悶の声を上げながら繭のようなものに包まれてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊の三人が塔へ突入してから少し。

 

 比企谷八幡は妹の小町、そしてペガと一緒に白い塔の前まで来ていた。

 

 本来なら小町は留守番だったのだが上目遣い+お願い、お兄ちゃんコンボによりあえなく撃沈。連れてくことになったのである。

 

「ありゃ、近くで見るとやっぱりでかいねぇ」

 

「これは……」

 

「この作り、多分、ザム星人のものだよね?」

 

 塔に触れる八幡へペガが問いかける。

 

「間違いないYY星系第9惑星のザム文明の素材が使われている」

 

「でも、確か、ザム星って滅んだんだよね?原因は僕も知らないけれど……」

 

「え、そうなの?」

 

「うん、僕が生まれるずっと前の話だけど、ザム星で何かが起こったって」

 

「ふぅん」

 

 小町とペガが話している横で八幡は意識を集中させる。

 

 彼の両目が輝いて内部を透視した。

 

 塔の内部を探っていくうちに白い繭に囚われたウルトラ警備隊や子供たちの姿を発見する。

 

「ペガ、内部に入るぞ」

 

「えぇ、大丈夫かなぁ?」

 

「ザム星人は好戦的な宇宙人ではない筈だ。話し合いで解決するはず、小町はここで」

 

「小町もついていく!」

 

「え、いや、危ないよ?だから、ここは」

 

「えぇ、お兄ちゃんが可愛い小町のことを守ってくれるんでしょう?」

 

 自らの可愛いとわかってくる角度で見上げられたことでシスコンの八幡にクリティカルヒット。

 

「お兄ちゃんに任せろ!」

 

「八幡、チョロイよぉ」

 

「よし」

 

 超能力を使って入口を発見した八幡と小町、ペガは中に入る。

 

 緑色に輝く通路内を歩いていく。

 

 迷いそうな構造をしている内部を八幡は迷わずに進んでいた。漂うミュー粒子を通して、何者かが八幡を呼んでいるのだ。

 

「八幡、進んでも大丈夫なの?はわわ!」

 

 不安そうにしていたペガが悲鳴を上げる。

 

「おぉ!宇宙人だ!」

 

 彼らの前にザム星人が現れたのだ。

 

「挟まれちゃったよぉう!」

 

 背後に現れたザム星人。

 

「落ち着け、こいつらは番人だ。敵意を見せない限り何もしない」

 

「ほ、本当ぅ?」

 

 不安そうな声を上げるペガ。

 

 男の子なのに、既に涙目なのである。

 

 男の娘にジョブチェンジすべきだ。

 

「俺は比企谷八幡、地球人だ。アンタ達はこの塔で何をしようとしている?」

 

 ミュー粒子を通して相手へ問いかける。

 

 返事は同じくミュー粒子だ。

 

「何て?八幡」

 

「彼らは故郷を失い、再び生き残るために宇宙に漂うダークマターをこの塔へ集めて進化しようとしているらしい」

 

「えぇ!?それって危ないんじゃ」

 

「危ないことだ、そんなことをすれば、体にどんな変化を及ぼすかわからない。なぁ、ザム星人、そんな危険なことをせずに地球への移住を希望すればいい……宇宙の観点からすれば、キミ達は悲しい理由で故郷を失った者達だ。キミ達が望めば、受け入れてくれる者がきっと出てくる」

 

 八幡の意識にふわりと温かい何かに包まれる。

 

 彼の中に眠る宇宙人の感情が八幡の感情と混ざり合う。

 

「だから、無理な進化はしなくてもいいんだよ」

 

 再びミュー粒子を通して返答がやって来る。

 

「ペガ、最上階へ向かうぞ」

 

「え?」

 

「お兄ちゃん?」

 

「連中のトップが会いたがっている」

 

 そういって歩き出す八幡の後を小町が追いかける。

 

 ペガは戸惑って、ザム星人達をみてから、慌てて着いていく。

 

 複数の階段を上りながら到達したフロアは先ほどまでと異なって様々な機材と闇色の天井。

 

 そして、機械から伸びたケーブルに繋がっている赤い瞳のザム星人がいた。

 

「お前がザム星人のリーダーだな」

 

『そうだ』

 

 機械を通してザム星人の声がフロア内に響く。

 

 低いけれど、優しさを感じるような声だなと小町は感じた。

 

『キミ達の星へ無断に入ったことを許してほしい……しかし、宇宙で一番、ダークマターが集まっていたのはここでしかなかったのだ』

 

「どうして、ダークマターで進化しようとするんだ?」

 

『私達の星は悪魔に滅ぼされたのだ。故郷のザム星は奴の力で生まれた怪獣であふれかえり、環境を破壊されてしまった。奴によって我々は故郷を追われてしまったのだよ』

 

「悪魔?」

 

『悪魔から我らの故郷を取り戻すために力が必要なのだよ。そのためにダークマターに手を出すことにした』

 

「地球に……」

 

 ザム星人が地球へ来た理由をきいて小町は思ったことを尋ねる。

 

「地球に住めばいいよ」

 

『…………』

 

「わけのわからないもので進化してもきっと、良いことはないよ。背伸びなんてせずに地球で生活しようよ!文化とか色々と違うかもしれないけれど、互いに理解していけばできるんじゃないかな?」

 

「小町…」

 

「うちだって、ダメなお兄ちゃんに気弱な宇宙人の居候だっている……ほら、貴方達も生活できるかもしれない可能性が目の前にあるんだよ?それを掴もうとしようよ!」

 

「あの、小町ちゃん?ダメなお兄ちゃんって」

 

「気弱な宇宙人って、僕のことだよねぇ」

 

 後ろで外野が騒がしいけれど、無視である。

 

 小町はゆっくりと近づいていく。

 

 ケーブルに繋がれたザム星人は後ろへ下がっていこうとするが壁にぶつかってしまう。

 

 ハサミのような形をした手と小町は手を握り締める。

 

「温かいねぇ~」

 

『……』

 

 息をのんだザム星人に小町は微笑む。

 

「無理な進化なんて考えないでさぁ、この星で住むことを頑張ろうよ」

 

『しかし、システムは』

 

「システムはまだ起動していない……地球に漂うダークマターもいずれは拡散していく。時間は掛かるかもしれないだろう、だがザム星人……小町が言う様に無理して進化する必要はないのではないか?」

 

『良いのだろうか?我々がきても』

 

「知っているはずだ。先住民を暴力で追い払って支配することは宇宙の法は認めていない。だが、友好的に、共に歩む者達を邪魔する者はいない」

 

 八幡の姿が一瞬だけ変わる。

 

 その姿はミュー粒子を通してザム星人へ伝わった。

 

 平和を愛するM78星雲の宇宙人としての姿。

 

『ありがとう……キミの言葉に私は自分の考えが如何に危険なことなのか、理解させられたよ……キミの名前は?』

 

「比企谷小町です!」

 

 ザム星人へ笑顔で挨拶する。

 

『小町……』

 

 人間と違い、表情の読めないザム星人だが、不思議と相手が笑顔を浮かべていることがわかった。

 

『どれだけ長い年月がかかるかわからない。だが、この素敵な星、新しくできた友人達となら新しい人生を歩めるだろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これだけならハッピーエンドだっただろう。

 

 しかし、悪魔はその結末を認めなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ!?」

 

 バチンと設備の一つが音を立てて爆発した。

 

「え、なに!?」

 

『グゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ!?』

 

「ザム星人さん!」

 

 小町の目の前で苦しみの声を上げるザム星人。

 

『ど、どうゆうことだ!?システムが起動して、私の中にダークマターが!』

 

「え、ウソ!お兄ちゃん!」

 

 小町が悲鳴を上げながら八幡をみる。

 

 八幡はシステムを調べた。

 

「何だ、これ、システムが書き換えられている!?」

 

『悪魔の仕業だ』

 

 体から蒸気を吹き出すザム星人。

 

『このままでは暴走してしまう!』

 

「お兄ちゃん!」

 

「駄目だ、システムは何も受け付けない!」

 

 八幡の言葉に小町はザム星人へ触れようとする。

 

 ザム星人は小町達から離れていく。

 

「ザム星人さん!?」

 

『こうなっては仕方がない……私はダークマターの力を制御する!だが、もし、もしも、実験が失敗して、この星に迷惑をかけてしまうとしたら、その時は……頼むよ、ウルトラセブン』

 

 八幡とザム星人の視線が交差する。

 

 頷いたことを確認してザム星人が塔のシステムの一部を起動した。

 

 一瞬で、八幡達三人、ウルトラ警備隊の東郷、梶、渋川、リサと子供たちは塔からはじき出される。

 

 呆然とする小町の前で塔が爆発した。

 

 爆発する塔の中から巨体が姿を見せる。

 

 ダークマターを自らに取り込んだザム星人だ。

 

 彼は苦しそうに自らの体を揺らしながら町中で暴れだす。

 

「あれは、進化じゃない」

 

 八幡は暴れるザム星人の姿を見て呟いた。

 

「はわわ!あのままじゃ、街を破壊しちゃうよ!」

 

 ペガの言葉通り、暴走しているザム星人によって街が壊滅してしまうのは時間の問題だった。

 

 暴れるザム星人は倒されてしまう。

 

 人類の手によって?

 

 それとも、

 

 動けない小町の頭を八幡が撫でる。

 

「お兄ちゃん?」

 

「ごめんな」

 

 小さく謝罪して八幡は前に踏み出す。

 

「頼まれた以上、ザム星人の暴走は俺が止める」

 

「まっ――」

 

 小町が止めようとする前で八幡は懐からウルトラアイを取り出して装着。

 

 眩い閃光と共に暴れるザム星人の前に現れるウルトラセブン。

 

 ウルトラセブンの存在を脅威と感じたのか、それとも本能のままに敵として認識しているのかわからないがザム星人は声を上げながらウルトラセブンへハサミを動かしながら接近した。

 

 振るわれるハサミを躱してザム星人の腹部を拳で殴る。

 

 拳を受けたザム星人はのけ反りながら目から怪光線を放つ。

 

 光線を躱しながら接近しようとするウルトラセブンだが、ハサミを地面へ突き立てる。

 

 連続して地面が爆発を起こす。

 

 破壊弾によって土煙が舞い上がる中、突きぬけるウルトラセブン。

 

 しかし、目の前にいたはずのザム星人の姿はどこにもなかった。

 

 周囲を警戒するウルトラセブン。

 

 直後、地面からザム星人のハサミが両足を掴む。

 

 逃れる暇もないまま、宙に持ち上げられたウルトラセブンは何度も地面へ体を叩きつけられる。

 

 何度か叩きつけられたところで投げ飛ばされた。

 

 地面を転がりながらも起き上がろうとしたところで両手に雷のエネルギーを吸収して放つ。

 

 雷のエネルギーを浴びたウルトラセブンは後ろへ吹き飛ぶ。

 

 倒れたウルトラセブンへとどめをさそうと雷のエネルギーを集めようとするザム星人。

 

 突如、ザム星人の背中が爆発を起こす。

 

 上空に現れるのは二機のウルトラホーク。

 

 ウルトラホーク1号にのる古橋はスイッチを押してブレイカーナックルミサイルを。

 

 ウルトラホーク3号に搭乗しているユキ隊員は機首からレーザー光線を放つ。

 

 二機のウルトラホークの攻撃を受けて攻撃を中断されたザム星人へセブンは額の前で構えて、エメリウム光線を放つ。

 

 一条の光線がザム星人を射抜いた。

 

『―――!』

 

 動かしていた腕をだらりとさせて、大きな音を立てて地面に倒れこむザム星人。

 

 ウルトラセブンはゆっくりと近づいてザム星人の体へ手を伸ばす。

 

 エメリウム光線を受けて息絶えたザム星人の体を抱きかかえる。

 

「あれは……」

 

 ホーク1号の操縦席から古橋は地面から姿を見せる円盤に気付いた。

 

 円筒形の円盤は不規則な動きを見せながらウルトラセブンの前で停止する。

 

 円盤から光が放たれてこと切れたザム星人の肉体を回収するとそのまま空に向かって飛んでいく。

 

「古橋隊長、追撃しますか?」

 

「追撃はしない」

 

 ユキの質問に古橋は首を振る。

 

「相手は敵意がない。追撃の必要はない」

 

「……了解です」

 

 二機のウルトラホークが円盤を追撃しないことを確認したウルトラセブンは光に包まれる。

 

 ウルトラアイをポケットにしまって、八幡は小町とペガの方へ歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツの墓か?」

 

 翌日、ザム星人が暴れた跡地に小町は小さな石と花束を置いていた。

 

「うん、遺体はないけれど、安らかに眠ってほしいから」

 

 八幡の問いかけに小町は小さく頷く。

 

「お兄ちゃん、ザム星人さんの仲間はどうなるのかな?」

 

「宇宙を放浪する旅を続けることになるだろうな」

 

「せっかく、安住の地を見つけたかもしれないのに、こんなことで追い出されるって納得できないなぁ」

 

「そうだな」

 

 小町は両手を合わせていた手を離す。

 

「さ、帰ろうか」

 

「あぁ」

 

 小町と共にザム星人の墓から離れながら八幡は考えていた。

 

 ザム星人が死ぬ間際にウルトラセブンへミュー粒子を通して伝えてきた警告。

 

 死ぬ間際に理性を取り戻したのだろう。

 

「(悪魔に気をつけろ、か)」

 

 伝えられたメッセージの意味はわからない。

 

 だが、ザム星人ほどの知性や科学力を持つ者が恐れるほどの相手。

 

 それが地球にいる。

 

「(忘れないようにしよう。この地で生きようとしていたのに、それができなかった悲しい宇宙人のことを)」

 

 来るべき戦いを予見しながら八幡は小町と共に家へ帰っていた。

 




二回目の職場見学のアンケート協力ありがとうございます。

その結果、以下の話を書くことにしました。

職場見学(八幡ルート)地球環境保全委員会

職場見学(由比ヶ浜ルート)愛染テック


途中でサイテックコーポレーションも追い上げていたのですが、この二つに届きませんでした。





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第八話:職場見学(八幡ルート)

遅くなりました。

今回はアンケートで投票の多かった職場見学になります。

かなり難産でした。

太陽エネルギー作戦を何度見返して、話の展開を考えたか……みんな、この話が大好きなんでしょうね。

ちなみに愛染テックについては誤字ではらいませんのでご注意を。


「ほう、でかいな」

 

 バスからみえる巨大なパラボラアンテナがついたシステム、ハーパーソーラーシステムをみて、感嘆とした声を漏らす。

 

 職場見学で俺が選んだのは地球環境保全委員会が計画進行中のハイパーソーラーシステム研究施設だ。

 

 今も地球を蝕んでいる環境汚染、地球温暖化という問題を解決するために従来のエネルギーから新エネルギー候補として太陽エネルギーの使用を目的として作られた試作機、ハイパーソーラーシステムを俺はみている。

 

「でっかい、アンテナだね」

 

 通路側の席にいる川崎も窓から見えるハイパーソーラーシステムをみる。

 

「そういえば、何で川崎はこっちを選んだんだ?」

 

「消去法かな……愛染テックは興味ないし……サイテックコーポレーションは天才肌が集まるイメージで、どちらかにするってところでアンタがいる方を選んだわけ」

 

「あ、そう」

 

 やめてよ。

 

 聞いたら俺がいるからバイオラボを選ばなかったみたいに聞こえるんですけど?

 

 しかし、ハイブリッドボッチに比べると劣りはするが、エリートボッチである俺は勘違いしない。

 

 中学時代ならともかく、広大な宇宙を旅して多くの宇宙人と出会った俺に死角など、いや、ありまくりかぁ。

 

「そういや、アンタはなんでハイパーソーラーシステムを選んだわけ?」

 

「あ、僕も聞きたいかな?こういうところでいえば、バイオラボもあったわけだし」

 

 後ろの席にいた戸塚が身を乗り出して俺に尋ねてくる。

 

「あぁ、そのことか?太陽エネルギーっていうのに興味があったんだよ、クリーンでいくら使用しても問題がないと言われるエネルギー、それを人類はどういう風に利用するかって……バイオラボの方は何か、あれだ、資金援助を狙っているっていうイメージがしたんだよ」

 

 俺と一心同体になっているウルトラセブンのエネルギーは太陽だ。

 

 元は人のような姿をしていたというM78星雲の宇宙人たちがどのような経緯で太陽エネルギーのみで生きていけるようになったのか、人類もいつかウルトラセブンのようになれるのか?

 

 その疑問をここならわかるのかもしれない。

 

 淡い期待のようなものが俺の中にあったから、ここを選んだのだと思う。

 

 みえてきたハイパーソーラーシステムを大きく迂回するようしながらバスは研究施設の正面ゲートに到着する。

 

 ほとんどの生徒が愛染テックを選んだことからここへやってきた生徒は十人とかなり少ない。

 

 しかも、愛染テックの人数制限にあぶれたから仕方なくここを選んだという生徒もいる。

 

 大滝というメガネをかけた職員の話をまともにきいているのはおそらく俺と川崎、あと、戸塚くらいだろう。

 

 余談だが、俺のクラスで来ているのはこの三人だけだ、由比ヶ浜は三浦に誘われる形で愛染テックへ行っている。

 

 職員と一緒に歩いていると別の方向から制服を着た集団の姿が見える。

 

 普通なら気にしないのだが、中にウルトラ警備隊の制服を着た者がいれば気になってしまう。

 

「あのぉ、あっちの人達は?」

 

 戸塚も気づいたのがおずおずと質問する。

 

「あぁ、今日は世界環境保全委員会が開催している会議があってね。そのための視察だよ」

 

「大丈夫なの?そんな日に学生が来てさ」

 

「このハイパーソーラーシステムを開発した楠原博士の要望だよ。多くの人に太陽エネルギーの素晴らしさを知ってもらいたいという、ね」

 

「ふぅん、なんていうか凄いね」

 

 大滝主任から話を聞いた川崎は納得した声を漏らす。

 

 実際のところ、太陽エネルギーは画期的なシステムだと思う。

 

 この先、導入されていけば、環境破壊の危険をはらんでいる化石燃料等、多くのエネルギーが使用されなくなり、オゾン層の破壊という心配すらなくなるのだ。

 

「さ、ここからは会議で来ている役員の人達も話に参加することになるから静かにしているんだよ?」

 

 大滝さんの言葉に俺達は頷いた。

 

 ウルトラ警備隊の隊長さんがいたということで一部の生徒が騒がしくなるも、事前に静かにしておかないといけないと釘を刺されていたからすぐ静かになる。

 

 多くの偉い人達と一緒にハイパーソーラーシステムの立案者で責任者でもある楠原博士の話を聞いていた。

 

 環境破壊を防ぐこと、地球をこれ以上破壊しないという名目で太陽エネルギーがどれほど素晴らしいものかであるかと語る楠原博士。

 

「しかし、日本中のありとあらゆる場所にエネルギーを振り分けるという事になるとハイパーソーラーシステムは十二万機以上、必要になります」

 

 新しいシステムを開発することは難しい。

 

 実例がない以上、手探りで行わなければならないし、どんな危険が含まれているかわからない。

 

 しかし、太陽エネルギーはクリーンなものであり、危険はないと力説していた。

 

 それだけ太陽エネルギーに無限の可能性があると信じているのだろう。

 

 直後、事件が起きた。

 

 パソコンの画面に【緊急事態発生】という文字が映る。

 

「博士!」

 

「どうしたんだ!?」

 

「熱交換器が異常です!」

 

「集熱盤の温度が急激に上昇しています!原因は、まるで、わかりません!」

 

 フッと室内の明りが消えた。

 

「きゃあああああ!」

 

「な、なんだよ!?」

 

「ヤバイんじゃないのか!?」

 

 突然のことに多く者達、特に総武高校の生徒達がパニックを起こす。

 

「危険だ!みんな、ここから避難するんだ!梶!」

 

 真っ先に動いたのはウルトラ警備隊の古橋隊長だ。

 

 彼は学生や政府の役員たちをすぐに避難口へ誘導する。

 

「博士、早くここから避難しないと!」

 

「危険はない!太陽エネルギーはクリーンなエネルギーなんだ!事故じゃない!これは事故じゃありませんよ!」

 

 少し遅れて、隊長に同行していた梶隊員がやってきた。

 

「比企谷!逃げないと!」

 

「あ、あぁ」

 

 川崎に言われて後を追う様に外へ逃走する。

 

 隙を見計らって俺はある方向へ駆け出す。

 

 偶然だが、ハイパーソーラーシステムの傍を高速で走る人間を発見していた。

 

 あれは人間じゃない。

 

 宇宙人と融合した影響なのかはわからないが、人の姿をしていようと宇宙人としての本質のようなものが感じられるようになっていた。

 

 先回りするようにハイパーソーラーシステムから少し離れたところにある倉庫エリアの前に向かう。

 

「待て!」

 

 高速で走っていた女性が止まる。

 

 青い服で少し外側に伸びている髪、男性たちを虜にしそうな笑顔を浮かべた。

 

 だが、それはあくまで宇宙人が変身している姿であり、本当の姿ではない。

 

「お前は何者だ」

 

「ただの女の子よ?」

 

「ウソをつくな」

 

「怖い顔ね……そういう貴方は人間じゃないわね」

 

 ニコリと笑みを浮かべていたが、その笑みは見る者を凍り付かせるほど、底知れない闇が広がっていた。

 

 俺は右手に力を込める。

 

 直後、周囲に赤いガスが広がっていく。

 

「ゲホッ!な、なんだ!?」

 

「じゃあね?」

 

 突然のガスに視界が塞がれた隙を突かれて女に逃げられてしまった。

 

「くそっ、逃げられたか……それにしても、今のガスは一体」

 

 赤いガスを超能力で払いのけた俺は振り返る。

 

 あの宇宙人によって破壊されたハイパーソーラーシステムの姿がそこにあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方、侵略者よね?どうして、ライバルの手助けをしたのかしら?」

 

 ハイパーソーラーシステムの襲撃犯である女性は手助けしてくれた黒衣の男へ問いかける。

 

「ライバルなんてとんでもない。俺はあるお方の使いであんたらに敵意はない。手助けといったが、邪魔者がいてねぇ、そいつに嫌がらせをしただけさ」

 

「あの男の子ね……何者なのかしら?」

 

「噂くらいは聞いたことがあるだろう?この星を守るために戦う自己満足の宇宙人」

 

「……ウルトラセブン」

 

 忌々しいという表情で少女は顔を歪める。

 

 既に地球の守護者ウルトラセブンの名前は宇宙に広まり始めていた。

 

 多くの侵略者から青き惑星を守る者。

 

 強大な相手として、青き星、テラを狙う者達にとっては忌々しい存在として名が広まり始めていた。

 

「だけど、ウルトラセブンといえど、我々の邪魔をすることは出来ない。こちらには最恐の切札があるんだから」

 

 にやりと笑みを浮かべる少女。

 

「まぁ、どんな切札なのか知らないが、これからの活躍に期待しているよ……」

 

 男はそういって歩き出す。

 

「そう、あの方が復活するまでの間の短い支配を夢見ていると良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古橋さんから連絡があった時は心臓が止まるかと思ったわぁ」

 

 楠原家。

 

 その玄関で友里アンヌは楠原に安堵の声をかける。

 

 ハイパーソーラーシステム爆発事件の後、楠原博士をウルトラ警備隊の東郷とリサの二人が家まで送り届けたのである。

 

 そこで意外な人物と二人は出会う。

 

「アンヌ先輩!お会いできて光栄です!」

 

 敬礼する東郷とリサ。

 

 

 楠原家に連絡を受けてやって来た女性の名前は友里アンヌ。

 

 第一期ウルトラ警備隊として侵略者と戦ってきた女性であり、今は宇宙飛行士の男性と結婚して一児の母親である。

 

「これから我々が二十四時間警護任務につきます」

 

「そのことなんだが、アンヌさん。ウルトラ警備隊が護衛につくことになるし、周りが騒がしくなるから家へ帰った方がいい。キミに何かあれば、火星探査へ向かっている弟に申し訳ない」

 

 アンヌの旦那は宇宙飛行士であり、火星調査の為、宇宙にいる。その間、楠原家でお世話になっていたのだが、今回の事件から再び楠原が狙われる危険性もある為、家へ帰るようにと提案したのである。

 

 しかし。

 

「あら、私だって元はウルトラ警備隊よ!大丈夫よ!ねぇ?」

 

 問いかけられた東郷とリサは苦笑するしかない。

 

「だけど」

 

「それにおばさんがいてくれた方が安心よ!」

 

 楠原の言葉を遮ったのは彼の娘であるトシコだ。

 

 母親のいない楠原家で家事を担っている彼女にとってアンヌがいると何かと助かるのである。

 

「そうかなら、お願いしようかな、ところで、ダン君は?」

 

「森よ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンヌの息子 ダンは森の中で写真を撮っていた。

 

 ウルトラ警備隊として戦ってきた母親と宇宙飛行士の父親の影響か、ダンは空を見上げる事や自然の中に住まう生き物を撮影することが趣味になっている。

 

 薄暗い森の中で彼がカメラを覗き込んでいた時、小さな光が目に入った。

 

 それがわからず、カメラから顔を離すダン。

 

「怪獣よ」

 

 彼の前に一人の女の子が現れる。

 

 青い衣服を身に纏う彼女は小さな笑顔を浮かべて森の奥を指さす。

 

「怪獣がでたわ」

 

「怪獣?」

 

 十代のダンは好奇心旺盛だ。

 

 怪獣が出たというのならその姿を一目見ようと思い、カメラの機材などを担ぐ。

 

「危ないわよ」

 

「大丈夫、大丈夫!」

 

 笑顔を浮かべながらダンは森の奥に入る。

 

 季節は春を過ぎたばかりなのだが、ダンの歩く森の中は異様に暑かった。

 

 まるでサウナの中にいるような暑さで、風邪をひかないように温かい格好をしているからか、余計に汗が額を流れていく。

 

 ふと、奥で何かが動く姿をダンは捉える。

 

 正体が何なのか確かめるために彼は脚立を置いて、カメラを覗き込む。

 

 遠目でわかりにくかった姿はカメラを覗き込んだ時、白い怪獣の姿を映しこむ。

 

「うわぁああああああああ!」

 

 悲鳴を上げながらダンは走る。

 

「怪獣が出たよ!」

 

 森の中にたたずんでいる少女の手を掴んで逃げた。

 

 逃げる際、少女が何かを見上げていることは気づかない。

 

 必死に森の中を走り抜けたところで眩いライトに照らされる。

 

「うわぁああああああ!」

 

 悲鳴を上げるダンの前でポインターが急停車した。

 

「キミ!大丈夫!?」

 

「危ないじゃないか!」

 

 ダンは車から出てきた人たちがウルトラ警備隊であることに気付くと叫ぶ。

 

「ウルトラ警備隊のおじさん!怪獣が出たよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だ、この唸るような暑さは」

 

 ダンの話を聞いた東郷とリサの二人は懐中電灯を片手に森の中を突き進む。

 

 二人の後ろには目撃者のダンと一緒にいた少女がいる。

 

 ウルトラガンを片手に森の中を探索していた東郷は真夏を超えるような暑さに顔をしかめていた。

 

 ウルトラ警備隊の隊員服はどんな環境でも活動できるように特殊繊維で出来ていて、多少の熱さで参るようなものではない。

 

 だが、隊員服を着ていても突き抜けてくる暑さに東郷は額から流れる汗を拭う。

 

「ねぇ、僕、怪獣なんてどこにもいないじゃない」

 

 リサはウルトラガンをホルダーにしまいながらダンへ目線を合わせる。

 

「本当にみたもん!」

 

「でも、いないじゃない」

 

 ダンは後ろにいた少女へ尋ねようとした。

 

 しかし、いつの間にかダンと共にいた少女は消えている。

 

「あれ?」

 

「あの女の子は?」

 

 リサの問いかけにダンは首を振る。

 

 その間に東郷は足元の地面へ触れていた。

 

 唸るような暑さの影響なのか地面は酷く乾燥している。

 

「何で、ここだけ、こんな乾燥しているんだ?」

 

 森全体が乾燥していれば気にしなかっただろう。

 

 しかし、東郷達のいる一角だけが酷く乾燥していた。

 

 東郷はそれが酷く気になりつつも、ウルトラガンをホルダーに仕舞う。

 

「こんな時間だ、怪獣がいる、いないにしても、子供は家に帰らないとな。うちはどこだ?」

 

 肩を叩かれたダンは家の住所を伝える。

 

 それは楠原博士の自宅であることにリサと東郷は互いの顔を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊はハイパーソーラーシステム破壊の原因を探るべく、施設の監視カメラなどを調べていた。

 

「ちょっと待った!今のところをもう一度、みせてくれ!」

 

 司令室で監視カメラの映像を見ていた古橋はユキに止める様に指示をする。

 

 ハイパーソーラーシステムから少し離れたところにある設備の一角。

 

 そこに青い服を着た女の子が映っている。

 

「なんだ、女の子か、遊びに来ていたのかな?」

 

「バカ!カウンターをよくみろ!六十分の一しか映っていないんだぞ!マラソン選手でもこんな速く走ることは出来ねぇ」

 

「つまり?」

 

「梶隊員、貴方はそれでもウルトラ警備隊なのか?」

 

「なっ、どういう意味だよ!?」

 

 呆れるユキ隊員の言葉に梶が顔を赤くした。

 

「古橋隊長の見立てでは、この少女は人間ではない、おそらくエイリアンと考えているんですよね?」

 

「その通りだ」

 

「怪獣とエイリアンのデータを調べます!」

 

「頼む……それにしても、宇宙人と太陽エネルギーか……一体、どういう繋がりがあるんだ?」

 

 考え込む古橋の横でユキはハイパーソーラーシステムの映像をみていた。

 

 梶はパソコンのモンスター&エイリアンを立ち上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 楠原博士はハイパーソーラーシステムの爆破の原因を探るべく、自室のパソコンでシステムのチェックをしていた。

 

 既に時間は夜の十時を過ぎている。

 

 食い入るように画面をみている楠原博士。

 

 その時、彼の部屋のドアの下から侵入してくる白い煙に気付かなかった。

 

 徐々に楠原の室内を包み込んでいく。

 

 煙を吸い込んだ楠原は急に眠気へ襲われる。

 

 眠気に必死で抗おうとしていたが次第にキーボードの上へ突っ伏してしまう。

 

 暗くなる室内。

 

 そんな空間に現れるのは森でダン達と一緒にいた少女である。

 

 彼女は寝ている楠原博士を退かせるとそのままキーボードを叩いて地球防衛軍のネットへ侵入した。

 

 本来なら何重ものプロテクトがされているネットに侵入を果たした少女はそのまま過去の出現した怪獣や宇宙人のデータが収められている【モンスター&エイリアン】のファイルへアクセス。

 

 検索エンジンを用いて「エレキング」を検索した。

 

 少しして表示されたエレキングのデータを少女はそのまま削除する。

 

 削除を終えるとロープを取り出して寝ている楠原博士の首へ巻き付けた。

 

 そのまま首を絞めようとした時、少女の耳は接近してくる車のエンジン音に気付く。

 

 外を見るとウルトラ警備隊のポインターが停車している。

 

 ため息を吐いて少女はそのまま屋上へ出て、そのまま姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミが楠原博士の甥っ子さんだったんだ!みんな、心配していたんだよ?」

 

 森で保護したダンへリサがいう。

 

「本当はすぐに帰るつもりだったんだよ」

 

 しょんぼりしているダンの肩へ東郷は手を置いた。

 

「森でターザンごっこをするのも良いが、夜遅くまで遊んで迷惑をかけるのは感心しないな」

 

「うん……ターザンって?」

 

「ターザン、知らないのか?」

 

 東郷は固まる。

 

 頷いたダンの姿を見て、東郷はリサをみた。

 

「よ、よし!ターザンっていうのはぁ!森の王者で、えっと、あと、なんだっけ?リサ」

 

「えぇ!?そこで私に振らないで」

 

「あぁあああ!」

 

 ダンが家の屋上を指さす。

 

 その声を勘違いした東郷は手を叩く。

 

「なんだぁ!知っているんじゃないか!そう!あぁああああ!って雄叫びをあげるのが……って、どうしたんだ?」

 

「屋上に女の子がいた」

 

「なに?」

 

 東郷やリサが屋上を見るがそこに誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義兄さん!ウルトラ警備隊の人達が迎えに来たわよ?」

 

 朝、楠原博士の自室へ入ってきたアンヌに体を揺らされて目を覚ます。

 

「ん、あぁ、すまない。すぐに準備をするよ」

 

 アンヌに揺らされて起きた楠原博士は着替えなどの準備に入る。

 

 着替えを終えて、パソコンの画面をみた。

 

 そこには【削除しました】と書かれて空白になっている何かのファイルがある。

 

 首を傾げながら楠原博士は準備を始めた。

 

 しばらくして、アタッシュケースを片手に楠原博士とウルトラ警備隊の二人はポインターでハイパーソーラーシステム研究所へ向かうことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨夜のダン少年が写真撮影をしていた森。

 

 そこに宇宙人の円盤が隠されている。

 

 円盤の中に二人の少女がいた。

 

 少女の一人は緑色の液体の詰まったカプセルを眺めている。

 

「エレキング、さぁ、暴れなさい」

 

 にこりと少女がほほ笑んだ直後、カプセルの中で激しいスパークが起こっていく。

 

 光が収まるとカプセルの中にいた“エレキング”の姿が消える。

 

 カプセルの中のエレキングが消えたことで笑みを浮かべていた時、もう一人の少女が声をかけた。

 

「あの子が来るよ!」

 

「処分して」

 

 片方の少女へもう片方の少女は冷たい声で告げる。

 

 応えない少女へ念を押すように少女は伝えた。

 

「処分して!」

 

 頷いた少女は宇宙船の外へ出ていく。

 

 宇宙船から少し離れた場所でダンはカメラを片手に森の中を歩いていた。

 

 昨夜、見た物の正体を確かめるため、何よりウルトラ警備隊の役に立ちたいという気持ちがあった。

 

 楠原博士の迎えにやって来た東郷隊員からもらったウルトラ警備隊のマークのバッジをポケットの中で握り締めながら森の中を歩く。

 

「随分と好奇心旺盛なのね」

 

 森の中で木霊する声。

 

 その声は森でダンが聞いた少女のもの。

 

「キミなのか?昨日の女の子だろう?」

 

 確かめる様に森の中で叫ぶダン。

 

 後ろから現れた少女によって視界が塞がれてしまう。

「明日、この世界は真っ暗闇になるのよ」

 

「やめろよ」

 

 少女の手を払いのける。

 

「急にいなくなって心配したんだよ?」

 

 揶揄う笑みを浮かべる少女の姿にダンは少し怒りながら訴える。

 

「優しいのね……」

 

 少女から笑みが消える。

 

「でも、優しさは何の役にも立たないわ。優しい心はね、身を滅ぼすのよ」

 

「早く森から出ないと怪獣から食べられちゃうよ、ほら、行こう」

 

 腕を掴んだダン。

 

 直後、腕から流れた電気がダンを襲う。

 

 体を焼かれるような痛みに悲鳴を上げながら後ろへ吹き飛ぶ。

 

 吹き飛んだ際に手からカメラの機材などが地面へ落ちる。

 

「あぁ、うわぁああ」

 

 怯えた声を出しながら後ろへ下がろうとするダン。

 

 にこりと笑みを浮かべながら少女が近づいていく。

 

 下がろうとするが痺れて、動きが鈍っているダンの顔へ覆いかぶさるように手を伸ばしていく少女。

 

「やめろ!」

 

 視界がぼやける中で響く声を聴きながらダンは瞳を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、お前か」

 

 冷笑を浮かべる少女を前に八幡は無表情で対峙する。

 

 侵略者がハイパーソーラーシステムを破壊して終わりとは考えられない。

 

 本来ならこういう社畜みたいなことは嫌いな八幡だが、興味のある施設が破壊されて侵略者が関わっている場合、無視することは出来ない。何より、彼の中にいる宇宙人が許さないだろう。

 

 対峙している相手が人間ではないことは既に理解している。

 

 ちらりと八幡は横を見た。

 

 先ほど、少女によって電撃を受けた少年が倒れている。

 

「お前達は何を企んでいる」

 

「あら、言わなくても理解していると思っているけれど?ウルトラセブン」

 

 自らの正体がばれていることに八幡は驚かない。

 

 あの時の遭遇した時のやりとりで自分がただの地球人ではないことがバレていてもおかしくはなかった。

 

「俺の正体を知っているならそちらも名乗るべきじゃないのか?」

 

「ふふふ、無駄よ。貴方はここで死ぬのだから」

 

「?」

 

 少女の言葉の意味を理解しようとした直後、八幡の足元で爆発が起こる。

 

 土煙で視界が覆われる中、隙を突いた少女がダンを確保して消え去ってしまう。

 

 あっという間の出来事に八幡は追跡することすらできない。

 

「くそっ……」

 

 周囲に漂う赤いガス。

 

 見上げると赤いガスを放つ怪獣の姿がそこにあった。

 

 唸り声を上げながら襲い掛かって来る怪獣。

 

 八幡は走りながらウルトラアイを取り出そうとした。

 

 それよりも早く怪獣の放った息吹によって八幡は地面を転がる。

 

 転がっていた時にウルトラアイが手から離れてしまう。

 

「仕方ない……」

 

 八幡は腰のベルトに下げているピルケースから一つのカプセルを取り出す。

 

「行け!ミクラス!」

 

 放り投げたカプセルから閃光と爆発を起こしながら姿を現すのは巨大な角に筋肉の塊ともいえるボディを持つ怪獣、ウルトラセブンの頼れる仲間の一体、カプセル怪獣ミクラスだ。

 

 ミクラスは雄叫びを上げながら赤いガスを放つ怪獣へ突撃する。

 

 突撃を受けた怪獣は正面から受け止めながらミクラスを押し戻そうとした。

 

 しかし、ミクラスのパワーの方が怪獣よりも上だったことから角によって宙へ持ち上げられる。

 

 投げ飛ばされた怪獣は悲鳴を漏らしながら体中から赤いガスを出し始めた。

 

 警戒を強めるミクラスの前で赤いガスに包まれて姿を消す怪獣。

 

 ガスの中へ突撃するミクラス。

 

 煙が晴れた時、そこに怪獣の姿はなく、ミクラスは勢いよく地面へ体を打ち付けた。

 

「ミクラス!戻れ!」

 

 八幡が手を伸ばすとミクラスは光の渦に包まれてカプセルの中に戻って八幡の手の中へ戻る。

 

「逃げられたか……しかし、あの怪獣は一体」

 

 カプセルをケースの中に戻しながら八幡は警戒を強める。

 

 同時刻、ウルトラ警備隊がエレキングと戦っていることなど、八幡は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閃光と共に現れるエレキング。

 

「か、怪獣だ!」

 

「逃げろ!」

 

 森の中に現れたエレキングにキャンプをしていた人間達が悲鳴を上げて逃げようとする。

 

 腕を前に構えたエレキング。

 

 その先端から放たれた白いガスのようなものが噴出された。

 

 ガスは周囲へ広まり、逃げようとしていた人間達は激しくせき込みながら倒れて動かなくなる。

 

「エレキングだ!」

 

 ポインターでハイパーソーラーシステム施設へ向かっていた東郷とリサ隊員の二人はエレキングの出現に気付いた。

 

「エレキングだ!」

 

「隊長!T167地区にエレキングが出現しました!」

 

 VCでエレキング出現の報告をしたリサ隊員。

 

 隊員の連絡を受けた古橋と梶隊員はウルトラホーク1号で現場へ急行した。

 

「隊長!」

 

「うん」

 

 ホーク1号の中でエレキングの姿を目撃した古橋隊長は梶隊員へ攻撃の指示を出そうとした。

 

 エレキングがホーク1号に向かって白いガスを放つ。

 

 ガスを回避したホーク1号だが、機内はかなりの高温だった。

 

「あぁ、くそっ、何だこりゃぁ」

 

「隊長、こりゃ、耐えられないっすよ」

 

「ホーク1号の中がこれだけの熱さだと、地上の人間達が心配だ」

 

「ピット星人が盗んだんだ!エレキングのデータを!隊長!これじゃあ、作戦をたてられません!」

 

 過去の怪獣のデータはピット星人によって削除されている。

 

 そのため、エレキングの対策は過去に戦った古橋隊長の頭の中にしかないのだ。

 

「そうか!」

 

 地上。

 

 安全な場所まで離れている楠原博士は声を漏らす。

 

「バリアの正体がわかったんですか?」

 

 エレキングから周囲へ広がるバリアのようなものを楠原博士は調べていた。

 

「あぁ、エレキングの発射しているものの正体が分かった」

 

「なんです?」

 

「エレキングが放出しているのは高熱と二酸化炭素です」

 

「「なんですって!?」」

 

 東郷とリサが驚きの声を上げる。

 

 VCの蓋を開けて東郷は慌ててウルトラホーク1号の古橋隊長へ連絡を繋ぐ。

 

『なにぃ、高熱と二酸化炭素だとぉ?』

 

「古橋隊長、あのバリアの中こそ、三十年、いや、二十年後の地球の姿です。化石燃料を燃やし続けて、地球を温暖化させた未来があそこにあるのです」

 

 侵略を狙うピット星人が送り込んだ怪獣エレキングは地球の環境悪化を促進させるため、改造したエレキングが放つ高熱と二酸化炭素の増加によって地球温暖化を加速させようとしている。

 

 その状況下で飛行するウルトラホーク1号の機内もかなりの熱気に包まれていた。

 

「参ったなぁ、このままじゃ、俺はエレキングに倒される前に肉まんになっちまう」

 

 古橋隊長は額から流れる汗を拭いながら悪態をついた。

 

「隊長!攻撃の指示を!」

 

「あぁ、うるせぇ、いま、考えている!」

 

「エレキングの弱点は!」

 

「うっせぇっての!」

 

 暑さで苛立ちながら古橋はエレキングをみる。

 

 エレキングの腕、尻尾、口元、そして回転する頭部の角。

 

「あぁ、思い出したぞぉ!角だ!角を狙えぇ!」

 

「了解!」

 

 エレキングが体を回転させながら尻尾を振るう。

 

 ウルトラホーク1号は上昇して尾を回避した。

 

 空中で旋回しながらウルトラホーク1号は回転するエレキングの角へ狙いを定める。

 

「今だ!ブレイカーナックル、発射!」

 

「了解!」

 

 梶は発射スイッチを押す。

 

 ウルトラホーク1号から放たれたブレイカーナックルミサイルがエレキングの角へ命中。

 

 角が爆発を起こして火花を起こす。

 

 悲鳴のような鳴き声を上げるエレキング。

 

 片側の角を狙ってミサイルを放とうとした時、エレキングの姿が消える。

 

「くそう!逃げやがったなぁ!」

 

 姿を消したエレキングに古橋は顔をしかめた。

 

 地上では荒廃した大地の侵攻が止まっていない。

 

「エレキングがいなくなったのにバリアが消えない!」

 

「二酸化炭素が生んだ温暖化現象を戻すには並々ならぬ努力が必要なのです」

 

「エレキングめ……また、現れるな」

 

 リサはエレキングの放ったガスによって荒廃した大地をみて困惑する。

 

 楠原はあることに気付いてパソコンで計算を始めた。

 

「そうか、そういうことか?」

 

「何か良い方法が?」

 

「ハイパーソーラーシステムですよ」

 

「ハイパーソーラーシステムでエレキングの熱を吸収できるんですか?」

 

「おそらく」

 

「ピット星人はそれを知っていて……」

 

「だからハイパーソーラーシステムが狙われたのか」

 

「えぇ、そしてピット星人に教えてもらいましたよ。ハイパーソーラーシステムのもう一つの使い方を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「可哀そうにぃ」

 

 ピット星人の宇宙船。

 

 カプセル型の水槽の中で傷だらけのエレキング。

 

 頭部の角が破壊されて痛々しい姿にピット星人の少女は悲しい声を出す。

 

「本当に地球人って乱暴なんだから」

 

 呆れているピット星人の少女。

 

 その時、船内にもう一人のピット星人の少女がやってきた。

 

 片手にダンを抱えている。

 

「何で処分しなかったの!?」

 

 ダンが生きていることに気付くと片方のピット星人が咎めた。

 

「だって、可愛い子なんだもん、ペットとして買おうと思って」

 

「……まったく」

 

 片方の少女の趣味に呆れてしまう。

 

 こうして他所の星で興味を示したものを何でも収集しようとする。

 

 コレクターのような趣味に相方は辟易していた。

 

「エレキングは治療しないといけないから、まずは太陽おじさんの抹殺をはじめましょう」

 

「わかったわ」

 

 宇宙船からハイパーソーラーシステム研究所へ小型のスパイカメラが飛び立った。

 

 二人のピット星人の少女は中央に設置されているシステムを起動する。

 

 システムからエレキングのカプセル型の水槽へエネルギーが注がれていく。

 

 眩い光と音にダンが目を覚ます。

 

「あら、お目覚め?今、エレキングに太陽エネルギーを与えているところよ」

 

「太陽?」

 

「エレキングだけじゃないわ、私達も、この宇宙船もすべてのエネルギーが太陽なのよ。そして」

 

「ウルトラセブンを倒すために用意した必殺兵器もね」

 

「何だって!?」

 

 眩い光を放ちながらカプセルの中のエレキングの角が修復される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハイパーソーラーシステム研究所。

 

 その入口に二台のポインターが停車している。

 

 ピット星人の侵略兵器として用意されたエレキングの対策としてハイパーソーラーシステムの必要は不可欠ということで昼夜問わず修理が急がれているため、渋川とユキの二人も応援として施設に来ていた。

 

 ふわぁぁと欠伸を漏らす渋川隊員を無言でユキが咎める視線を向ける。

 

「あ、こりゃ、失礼……しかし、立ったままっていうのもなぁ」

 

「侵略者はどんな手段で攻めてくるのかわからない。我々も警戒はしておくべきだ」

 

「まぁな、しかし、何でこうも眠いのか……」

 

「昼にあれだけカツ丼を食べたからでしょう」

 

 地球防衛軍の食堂で渋川隊員がどんぶり五杯くらい食べている姿を偶然にもユキは目撃していたのである。

 

 しかし、今の呟きは渋川に聞こえていなかった。

 

 そんな彼らの頭上を静かにピット星人のスパイカメラが通過していく。

 

 施設内に侵入したスパイカメラはゆっくりと進んでいた。

 

 目的は太陽おじさんこと、楠原博士の抹殺。

 

 スパイカメラが通路を過ぎ去った時、別の部屋のドアが開く。

 

 資料をまとめていた大滝主任は視界の片隅を何かが通過したことに気付いて、通路の方へ向かう。

 

 電子音と共にスパイカメラが大滝主任の方へ向けられるとともにエネルギー弾が放たれた。

 

 エネルギー弾が大滝主任を撃ちぬいて爆発を起こす。

 

 資料をまき散らしながら床に倒れる大滝主任。

 

 大滝主任を抹殺したことを確認したスパイカメラはそのまま目的の部屋に侵入する。

 

 天井に浮遊しているスパイカメラはゆっくりと周囲を調べた。

 

 室内には楠原博士と職員数名、そしてウルトラ警備隊の東郷とリサの二人がいる。

 

 楠原博士はリサのVCを通して極東基地の古橋隊長と話をしていた。

 

「そうです、ハイパーソーラーシステムは明日になれば修理が完了します」

 

『一刻も早くハイパーソーラーシステムの復旧を急いでください。敵は環境破壊という力を利用して地球を支配しようとしています。唯一の対抗策はハイパーソーラーシステムということになります』

 

「わかっています。ですが、こういう形でハイパーソーラーシステムの力を利用することになるというのは酷く残念で仕方ありません」

 

『博士の仰ることは理解できます。今回の事件が解決した時に再び平和利用としての研究を進めましょう』

 

「そうですね、古橋さん」

 

「大変です!大滝主任が倒れています!」

 

 通信が終わった室内に職員が慌てた様子で入って来る。

 

「なにあれぇ!」

 

 リサは天井に浮いているスパイカメラに気付いた。

 

「伏せろぉぉお」

 

 怪しい音を放ちながらスパイカメラから光線が放たれる。

 

 東郷の叫びで伏せた直後、光線が床に炸裂して爆発を起こす。

 

 光線の二発目を躱しながら東郷とリサの二人がホルダーからウルトラガンを抜いた。

 

 二発の光弾がスパイカメラに直撃。

 

 爆発を起こしたスパイカメラが地面へ落ちた。

 

 スパイカメラがバラバラに砕け散る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「太陽おじさんの抹殺に失敗したみたい」

 

「大丈夫……エレキングが全てを破壊してくれるわ」

 

 ピット星人の少女が修復を終えたエレキングのカプセルに触れる。

 

「それに万が一、ウルトラセブンが現れたとしても最強の兵器が抹殺してくれるわ」

 

 にこりとほほ笑みながらピット星人はエレキングへ指示を出す。

 

「エレキング、ハイパーソーラーシステムを粉々に破壊してくるのよ」

 

 カプセルの中から閃光が迸り、地上にエレキングが姿を現す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウルトラ警備隊の司令室で待機していた古橋のところへ梶が報告へやって来る。

 

「隊長、東郷隊員達が破壊したのはピット星人のスパイカメラだったようです」

 

「つまり、我々の作戦が奴らにバレたということか」

「連中、エレキングを使ってハイパーソーラーシステムを破壊しにくるかもしれませんよ!」

 

「それは十分にありえるな。ウルトラホークで現地へ飛ぼう」

 

「了解です!」

 

『フォースゲートオープン、フォースゲートオープン』

 

 誘導アナウンスと共に管制塔の窓に特殊合金の金網が下りていくのと同調して、カタパルトの漆黒の天井が細く割れて青い空が見えてくる。

 

 巨大なレールに載って、二子山の斜面がスライドされてウルトラホーク1号が地下からその姿を現す。

 

『オーケー!レッツゴー!』

 

 管制塔からゴーサインが出たことを確認してウルトラホーク1号のエンジンが点火して夜空へ飛び立つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古橋達の予見した通り、早朝にエレキングが姿を現す。

 

 エレキングは修復中のハイパーソーラーシステムを破壊しようと徐々に近づいていた。

 

 施設内で待機していたリサや渋川、ユキの三人が屋上でウルトラガンを構える。

 

 三人のウルトラガンから放たれた光弾がエレキングへ命中した。

 

 しかし、エレキングは止まる様子を見せない。

 

 リサはVCを開く。

 

「隊長!もう間もなくエレキングにハイパーソーラーシステムが破壊されます!誰も、避難しようとしないんです!」

 

『わかった!梶、ホーク1号でエレキングをけん制しろ!』

 

『了解!』

 

 上空からウルトラホーク1号がエレキングへ攻撃を仕掛ける。

 

 しかし、エレキングは与えられた指示を忠実に果たすべくウルトラホーク1号など眼中になかった。

 

 もう間もなく、エレキングがハイパーソーラーシステムへ到達するという瞬間、上空からウルトラセブンがキックを放つ。

 

 攻撃を受けたエレキングはハイパーソーラーシステムから遠ざかった。

 

 着地したウルトラセブンはエレキングへ突進するように攻撃を仕掛ける。

 

 エレキングの自慢の尾による打撃を躱しながら懐へ入り込み、アッパーを放った。

 

 仰け反るエレキング。

 

 追撃しようとした瞬間、エレキングの両手から二酸化炭素のガスが放たれる。

 

 眼前で二酸化炭素ガスを受けたセブンの動きが鈍った。

 

 動きが鈍ったところでエレキングに殴られる。

 

 連続して殴られてふらふらになるウルトラセブン。

 

 仰け反ったところでエレキングの尾によってウルトラセブンは上空へ投げ飛ばされる。

 

 地面に倒れたウルトラセブンがふらふらと起き上がろうとしたところで再びガスを吹きかけられた。

 

 ガスによって動きが完全に鈍ってしまったウルトラセブンをエレキングは長い尾で捕獲する。

 

 動きを完全に封じ込まれたウルトラセブンへエレキングは尾から電流を流す。

 

 全身を覆う電流にセブンは苦悶の声を上げて膝をついた。

 

 ウルトラホーク1号が援護しようとした時、上空からピット星人の円盤が現れる。

 

 ピット星人の円盤から放たれた光線によってウルトラホーク1号が爆発を起こして緊急着陸した。

 

 円盤の中でウルトラセブンがエレキングによって追い詰められているところを見ていたピット星人は彼を抹殺するために用意した必殺兵器の準備に入る。

 

 大気圏外に設置している衛星から太陽エネルギーを吸収、そのエネルギーを円盤の上部に設置されている吸収装置へ集めていく。

 

 膨大なエネルギーが注入されたことを確認してピット星人が船内の装置を動かす。

 

 その光景を見ていたダンは気づかれないように手錠を後ろから前へもっていこうとしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『博士、修理が完了しました』

 

 報告を聞いていた東郷が博士をみる。

 

「博士!」

 

「準備が整いました」

 

「では!太陽エネルギー作戦の開始ですね!」

 

「はい、ハイパーソーラーシステムを起動」

 

 楠原博士の指示でパソコンを操作している職員がハイパーソーラーシステムを起動させる。

 

「エネルギー変換ブースター作動!」

 

「集熱盤角度を南南西へ修正」

 

「ハイパーソーラーシステム作動!」

 

 楠原博士の指示と共にハイパーソーラーシステムがエレキングのエネルギーを吸収する。

 

 エレキングは自らの力が抜けていく感覚に気付いてハイパーソーラーシステムを睨む。

 

 ウルトラセブンがエレキングの尾から脱出しようとした直後、背後から膨大なエネルギーの奔流が襲い掛かる。

 

 ピット星人の必殺兵器による光線だ。

 

「あぁ!」

 

 ウルトラセブンが光線に飲み込まれる姿を屋上でみていたリサ達が悲鳴の声を漏らす。

 

「このぉお!」

 

 その頃、ピット星人の円盤内では小さな反抗が起こっていた。

 

 手錠を胸元まで移動させたダンが装置を操作していたピット星人の少女を突き飛ばす。

 

「何しているの!」

 

「やめろぉ!離せぇ!」

 

 もう一人が後ろから羽交い絞めしようとするがダンのタックルを受けて壁にぶつかる。

 

 その間にダンは船内の中央のシステムを操作する。

 

 今はウルトラセブンを撃退するために操作されているがダンはエレキングにエネルギーを補充していた機能へ切り替えたのだ。

 

 ウルトラセブンを襲っていた膨大なエネルギーが攻撃ではなくなる。

 

 直後、爆発にウルトラセブンが包まれる。

 

 ウルトラ警備隊や大勢の人達が目を開く中で煙の中からウルトラセブンが姿を現す。

 

「よし!」

 

 ウルトラセブンが復活した姿に東郷たちが歓喜する。

 

 復活したウルトラセブンはエレキングの振るう尾を回避しながら頭頂のアイスラッガーを投げた。

 

 光に包まれたアイスラッガーがエレキングの尾を切り裂く。

 

 アイスラッガーを戻したウルトラセブンはエメリウム光線を放つ。

 

 光線を受けたエレキングは爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは構えをとくと宙に浮いている宇宙船へ視線を向ける。

 

 両目が輝いて二人のピット星人によってダンが電撃を流されている姿をみつけた。

 

「デュワ!」

 

 ウルトラセブンは瞬時に人型サイズまで縮小するとピット星人の円盤内に出現する。

 

『ピット星人、エレキングは倒した。お前達の侵略もここまでだ』

 

「ふふふっ」

 

 不敵に笑う少女。

 

 その姿がピット星人へ変わる。

 

「うわぁああ!?」

 

 少女がピット星人へ変わったことに悲鳴を上げるダン。

 

 もう一人の少女も笑いながらピット星人本来の姿へ戻った。

 

 ダンを突き飛ばして二人のピット星人がウルトラセブンへ襲い掛かる。

 

 ウルトラセブンは一人を殴り飛ばす。もう一人が後ろから攻撃を仕掛けてくるけれどもいなしながらキックで脇を狙う。

 

 戦闘能力がないに等しいピット星人達が動けないことを確認したところでダンのところへ近づく。

 

『ダン、大丈夫か?』

 

 テレパシーでダンに安否を尋ねるウルトラセブン。

 

 ダンは頷いたところで後ろをみた。

 

 ふらふらと起き上がったピット星人の姿に気付く。

 

「セブン!後ろ!」

 

 振り返ると同時にウルトラセブンは念動力を放つ。

 

 念動力は船内の中央に置かれていたシステムを破壊して大爆発を起こす。

 

 爆発の余波で吹き飛ぶピット星人達。

 

 炎からダンを守りながらウルトラセブンは円盤から脱出した。

 

 地面へ降り立ったウルトラセブンは掌の中にいるダンを下す。

 

「ダン君!」

 

「お姉ちゃん!」

 

 リサ隊員がダンを保護したことを確認してウルトラセブンはワイドショットでピット星人の円盤を破壊した。

 

 ウルトラセブンはそのまま大空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一昨日の職場見学した場所、あの後、怪獣が現れたらしいね」

 

 事件が解決した翌日、八幡は総武高校の教室で戸塚や川崎達と話をしていた。

 

「けど、ウルトラ警備隊とウルトラセブンが撃退したってニュースで言っていた」

 

 携帯端末をみて、川崎が言う。

 

 端末から目を離して川崎が思っていた疑問をぶつけることにした。

 

「アンタ、今日はやけに元気よくない?」

 

「そうか?」

 

「うん!八幡、何かいつもより生き生きしているようにみえるよ」

 

「心なしか、肌がツヤツヤしていない?」

 

「そんなことはないって」

 首を振る八幡だが、いつもより生き生きした様子である。

 

 昨日の戦いでかなりの太陽エネルギーを取り込んだおかげなのか、いつもの気怠さがウソのようにない。

 

 肩をすくめながら八幡は空を見る。

 

 青空の向こうで太陽がキラキラと輝いていた。

 

 

 




次回は続けて、職場見学。
遅れた理由としては前書きに書いてあったことと、別の小説を熱心に書いていたことが原因である。

次回からは気をつけようと思います。

感想欲しいなぁ。


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第九話:職場見学(由比ヶ浜ルート)

遅くなって申し訳ない。

この先の展開を考えて、書いては消して、書いては消してを繰り返し、帰ってきたウルトラマンやウルトラマンタロウをみていたり、ウルトラマンをみたり、そして、ウルトラセブンをみて、ゴジラをみたりと色々やっていました。

今回の話は二番目にアンケート回答が多かった回、果たしてうまくいっているだろうか、

あ、連載形式に変更しました。
よろしくお願いします。



――アイゼンテック社。

 

 愛染誠が社長として経営する大企業。

 

 町工場だった愛染鉄鋼を社長一代で大企業までなりあがった。

 

 愛染マコトが社長であることから愛染テックと呼ぶ者もいた。

 

 昔の鉄工業などから宇宙開発や新エネルギーの研究などで世界中から注目を集めている企業。

 

 今回、職場見学の許可が下りたことから総武高校の生徒達がこぞってやってきていた。

 

 その中に由比ヶ浜や三浦優美子、そして海老名姫菜達の姿もある。

 

「大きなタワーだし」

 

「アイゼンテックのシンボルともいえる愛染タワーらしいよ?」

 

「へぇ~」

 

 三人がタワーを見上げていた時、何かが光った。

 

「あれ?何か光った?」

 

 由比ヶ浜が首をかしげている中で空から白い影がゆっくりと彼らの前に現れる。

 

 背中に飛行ユニットを背負い、ヘルメットを被り、白いスーツの上下を纏った男性がゆっくりと降り立つ。

 

「皆さん、ようこそ!アイゼンテックへ!私が「愛と善意の伝道師」であり、社長の愛染誠です!」

 

 ヘルメットを脱いで爽やかな笑顔を浮かべる彼こそが一代で町工場だった愛染鉄鋼をアイゼンテックへと進化させた社長である。

 

 彼の登場に生徒達が興奮していた。

 

 戸部が訳の分からない言葉を叫び、葉山も苦笑している。

 

 三浦や海老名も彼の登場に興奮していた。

 

 中にはサインを求める者達もいる。

 

 ただし、由比ヶ浜は普通の反応をしている。

 

 今までにインパクトある宇宙人や怪獣を見てきた影響だろうか?空から人が降ってきても平然としてしまっていた。

 

 愛染社長の登場と共にアイゼンテックの社内案内が始まる。

 

 生徒達の誰もがアイゼンテックで開発されている様々なものに目を輝かせた。

 

 愛染社長が登場する際に背負っていた飛行ユニット。

 

 黒いボディスーツを着る事で体操選手のように自由自在に動ける特殊スーツ。

 

 何よりも生徒が興奮したのはジェットブーツである。

 

 見た目は普通のシューズだが、スイッチを起動するだけで反重力システムによって宙に浮くことができた。

 

 このシューズを体験として生徒達のほとんどが試す。

 

 スカートをはいていた三浦や由比ヶ浜女性陣は遠慮したが戸部達はまるで無重力の中を無邪気な子供のみたいにはしゃいでいた。

 

「あーし、驚いてばかりなんだけど」

 

「アタシも、まぁ、姫ちゃんがさっきから鼻血出しているのはどうなのかな?」

 

「擬態の失敗だし」

 

 幸せそうな表情をしている海老名の視線は愛染社長と共に飛行ユニットで町内を一周している葉山と愛染社長へ向けられている。

 

 彼女の中にある腐女子本能が騒ぎ出していた。

 

 苦笑しながら由比ヶ浜は空を舞う彼らの姿を見ている。

 

「(ヒッキーも来ればよかったのになぁ)」

 

 ヒッキーこと、比企谷八幡はアイゼンテックではなくて地球環境保全委員会が推進しているハイパーソーラーシステム研究所の方を選んでおり、そのために由比ヶ浜達と別行動である。

 

 彼がいればもう少し楽しめただろうと由比ヶ浜は心の中で思っていた。

 

 そんな彼女の姿を見つめている者がいると知らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休憩時間になって、アイゼンテックの社員食堂で生徒達は集まっていた。

 

 皆、先ほどまでの空中散歩の熱が冷めていないのだろう。がやがやと騒がしい。社員の人達は気にしていないどころかニコニコと見守るような目を向けている。

 

 空を飛んだ生徒達が談笑している中で由比ヶ浜がアイゼンテックのパンフレットを眺めていた時だ。

 

「隣はよろしいかなぁ?」

 

 対面へにこにこと座りながら腰かけたのは社長の愛染誠である。

 

 突然のことに目を丸くする由比ヶ浜。

 

「どうも、愛と善意の伝道師!愛染誠です!」

 

「あ、それは、さっき」

 

「いやぁ、若者は良いねぇ。元気と若さがあって素晴らしい!その熱意で宇宙進出も夢じゃないと思うんだよ!」

 

「宇宙進出ですかぁ」

 

「おやおや、キミはあまり興味ないかい?」

 

「いえ、その、突拍子無さ過ぎて」

 

 実のところ、宇宙へ出て、旅をしていたことがあるなどと口が裂けてもいえるわけがない。

 

 話したところで信じてもらえるかわからないところだろうけれど、由比ヶ浜は心の中で苦笑してしまう。

 

「愛染社長はどうして、アイゼンテックを立ち上げたんですか?」

 

「憧れがあるのさ」

 

 先ほどまで笑顔を浮かべていた愛染誠は何かを思い出すように目元を緩める。

 

「憧れ?」

 

「そうとも!宇宙は夢が詰まっている!冒険、恋愛、まだみぬ未知の惑星!それを探索することが私の夢なのだとも!そして、いつかは……光の巨人に会いたいとね」

 

「光の巨人?それって、今、話題になっているウルトラセブンですか?」

 

「ウルトラセブンかぁ……確かに、それもあるだろう、だが、私が敬愛する光の巨人は別にいる!輝きの聖剣を携えた」

 

「へ?」

 

「コホン!キミは歴史に興味があるかな?」

 

 まるで話題を切り替える様に愛染誠尋ねる。

 

「いいえ、あんまり」

 

 そもそもあまり成績が良くない由比ヶ浜である。

 

 歴史においても少し前に全力で暗記して赤点回避をしていた。

 

 今は雪ノ下雪乃や八幡のおかげでなんとかなっている。

 

「まぁ、ききたまえ!私は世界中を旅したんだがね?どこの国においても古き時代、まだ科学が華を咲かせる前の時代に悪魔や怪物から人々を守ったという光の巨人の伝説がある」

 

 光の巨人と聞いて、由比ヶ浜の脳裏にはウルトラセブンと酷似した赤と銀の巨人の姿が過ぎった。

 

「人類がどうしょうもないくらいのピンチに襲われた時、どこからともなく光の巨人が現れて怪獣や様々な脅威から人類を守る。そんな素敵な存在に私はいずれ」

 

「いずれ?」

 

「あぁ、何でもないよ」

 

 首を振っていた愛染誠だが、ある方向を見て目を見開く。

 

「あれは……」

 

 ダッと走り出した愛染社長の姿に由比ヶ浜はポカンと口を開けてしまう。

 

 愛染社長はカウボーイのような帽子をかぶっている生徒へ話しかけるとどこかへ連れていく。

 

「変な人」

 

 それが由比ヶ浜の抱いた愛染誠に対するイメージである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイゼンテックの社長室。

 

 隠し部屋に愛染誠はいた。

 

「あれがo-50の力を受け継いだ子か」

 

 目の前に投影された映像には友達と楽しくしゃべっている由比ヶ浜結衣の姿がある。

 

「ふざけんなよぉ!なんであんな奴が戦士の頂で力を認められるんだよ!?ありえぬ!認められるかぁあああああああああああ!」

 

 ひとしきり暴れた後、愛染誠は不気味な笑顔を浮かべる。

 

「まずは小手調べ!その力がどれほどのものかぁ、みせてもらおう!」

 

 懐から愛染誠が取り出したのは由比ヶ浜が使う【ジャイロ】と酷く酷似しているもの。

その名もAZジャイロ。愛染誠お手製のアイテムだ。

 

 彼の手の中には二つのクリスタル。

 

「まずはお手並み拝見!」

 

 AZジャイロの中心にクリスタルをはめこんで左右へ引っ張る。

 

【アーストロン!】

 

 眩い閃光と共に町中に怪獣が姿を現す。

 

 爬虫類を連想させる姿に黄色い瞳、そして、頭部へ伸びる角。

 

 怪獣 アーストロンが出現した。

 

 マグマ光線によってビルは倒壊。

 

 街の人達は悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

 そして、アイゼンテックも職員や生徒達も避難指示が出ていた。

 

「落ち着くんだ!アイゼンテックには頑丈で安全!そして、大勢の人たちが収容できるシェルターが完備されている!あぁわてずに避難をするのだぁあ!」

 

 悲鳴を上げる生徒達だが、颯爽と現れた愛染誠の言葉に安心した表情を浮かべて慌てることなく進んでいく。

 

 逃げる生徒達から少し離れた場所で由比ヶ浜は鞄からジャイロを取り出す。

 

 此処のところ、連続して発生している事件からもしかしたら必要になるかもしれないと念を入れて持ってきていた。

 

「ヒッキーやゆきのんがいないんだ。だから、私が」

 

 ジャイロを構えて中心へクリスタルをはめ込む。

 

【グルジオキング】

 

 クリスタルの輝きと共に由比ヶ浜はグルジオキングへ変身する。

 

『わっ、ととぉ!?』

 

 変身したものの、アーストロンの目の前へ出現してしまったことで正面からぶつかりあってしまう。額を押さえるグルジオキング。

 

『いったいなぁ、もう!』

 

 頭をぶつけたアーストロンは悲鳴を上げながらマグマ光線を放つ。

 

 光線はグルジオキングの強固な皮膚に直撃。

 

『わわって、あれ?そんなに熱くない』

 

 ぺちぺちと手で皮膚を叩くグルジオキング。

 

 アーストロンは今の攻撃が通用していないことに目を丸くしている。

 

 慌てながらも近くの瓦礫を次々とグルジオキングへ投げていく。

 

『わっ、こら!いい加減にしないと怒るよぉ!』

 

 隙を突いて近距離で熱戦を放つアーストロンの体を掴みながらそのまま投げ飛ばす。

 

 アーストロンは頭から地面へ落下しながらもふらふらとその体を起こす。

 

 哀れ、アーストロンとグルジオキングには圧倒的な力の差が存在していた。

 

『行くよ!ギガキングキャノン!』

 

 グルジオキングに搭載されている砲台から必殺の光線が放たれた。

 

 光線を受けたアーストロンは爆発を起こして消滅する。

 

 怪獣が消滅したことを確認してグルジオキングは一息つこうとする。

 

 その時、上空から怪獣出現の報告を受けた防衛軍の空軍部隊が向かってきていた。

 

 ウルトラ警備隊がハイパーソーラーシステムの護衛で不在であったため、スクランブルしたのである。

 

『わっ、ヤバッ!』

 

 不用意な争いを避けるためにグルジオキングは光に包まれる。

 

 光が消えるとアイゼンテックの建物の近くに由比ヶ浜が降り立った。

 

「ふぅ、びっくりしたぁ……みんな、大丈夫かな?」

 

 由比ヶ浜は鞄の中にジャイロを仕舞うと避難所にいる三浦たちのところへ向かう。

 

「結衣!アンタ、どこにいたし!?」

 

「あははは、道に迷っちゃって」

 

「もう!心配かけるなし!」

 

「良かったよぉ~、現れた怪獣も後から現れた怪獣に倒されたみたいで、その怪獣もどっかいっちゃったし」

 

「うん、ごめんね、二人とも」

 

 心配してくれている三浦と海老名の二人に由比ヶ浜は謝罪する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い闇の部屋。

 

 そこで愛染誠は地団駄を踏んでいた。

 

「何で怪獣なんだよ!O-50で戦士の頂に触れたんだろう!?光の力を手にしたんだろう!?それなら怪獣のクリスタルじゃなくてウルトラマンのクリスタルだろう!しかも何だい何だい!登場から怪獣と激突するとかふざけている!カッコよく登場するものだろう!キメワザはともかく!もっと苦戦して苦戦して苦戦してぇ、最後の逆転劇だろう!?平然と怪獣を倒しやがってぇ!」

 

 地団駄を踏みながら机に拳を叩きつけた。

 

 その拍子に机に置かれている複数のクリスタルが地面へ落ちる。

 

 クリスタルが落ちたというのに愛染は気にしない。

 

 荒い息を吐きながら彼は懐から取り出した一つのクリスタルを眺める。

 

 聖剣を構えている光の巨人のクリスタル。

 

 にやりと愛染誠は不気味な笑顔を浮かべる。

 

「必ずなるんだ。私が光の巨人に、ウルトラマンオーブに!!」

 

 不気味な表情を浮かべながら愛染誠は自らの企みを実行へ移すためにクリスタルを握り締めた。

 

「だからこそ、利用させてもらうぞ?お前を」

 

 愛染は机に置かれている街中に設置された監視カメラ。

 

 ノイズ交じりの中に映されている黒衣の男の姿がそこにあった。

 

「私がウルトラマンオーブとなって人類を導く栄光ある伝説のはじまりだぁああああああ!」

 

 

 

 

 

 



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第十話:ウルトラマンという名前の意味(前編)

今回、かなりのアンチ・ヘイトが含まれています。

前後編なので、次回はしばらく待ってください。





 その日、温かく、とても昼寝に適した素敵な日。

 

 突如、街中に怪獣が出現した。

 

 地底怪獣デットンは叫び声を上げながら建物を破壊する。

 

 昼間、怪獣の出現という事で街の人達は悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

 他人を助ける余裕もなく、自分が助かろうと先に、先へ逃げていく。

 

 混沌が広まる中で突如、上空から眩い光が降り注ぐ。

 

 突然の光に人間はおろか現れた地底怪獣デットンすら歩みを止める。

 

 光は地面へ降り立ち、衝撃を放ちながらゆらりと姿を見せた。

 

 漆黒と銀の体、胸の中心はOを象った赤いクリスタル。

 

 赤く光る瞳、片手に巨大な剣を握り締めた巨人は低い体勢をとりながら聖剣を構える。

 

 地底怪獣デットンは涎を垂らしながら巨人へ襲い掛かった。

 

 突進を回避しながらがら空きのデットンの背中へ剣を振るう。

 

 悲鳴を上げるデットン、巨人はそのまま足蹴にしてビルへ叩きつけた。

 

 剣を振り下ろしてデットンへダメージを与え続ける。

 

 デットンは巨人から逃げようとした。

 

 直後、体が緑色の発光と共に不気味な触手を生やす。

 

 巨人は驚きのそぶりを見せたと同時に攻撃を避ける。標的を失った触手は次々とビルを破壊していく。

 

 隙を突いて逃れた巨人は構えている剣の側面を回す。

 

 すると剣の中心にある四つの丸い部分の一つが赤く輝いた。

 

 炎を纏いながら巨人はデットンへ突撃する。

 

 デットンは逃げる暇も抵抗できずに炎に包まれてその体を焼かれてしまう。

 

 爆発が起こった直後、光と共に巨人が現れた。

 

 巨人が姿を見せたことで人間達は驚き、歓声をあげる。

 

 腰に手を当てて胸を張る巨人の姿に誰もが興奮した。

 

 通報を受けてウルトラ警備隊が駆け付けた時には巨人も怪獣の姿もまるでなかったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比企谷八幡は盛大に欠伸をしながら教室へ入る。

 

 教室へ入るとボッチとしての経験から室内の雰囲気が何かおかしいことに気付いた。

 

 いつもより遅れた時間に来た八幡はみんながざわついている空気に疑問を抱きながらも自分の席へ向かう。

 

 そして、机に突っ伏して眠りにつく。

 

 HRがはじまって、授業があり、昼休み。

 

「やっぱ、カッコイイっしょ!ウルトラマンオーブ!」

 

 昼休みに大きな声が聞こえたのは葉山グループだ。

 

 由比ヶ浜や三浦達は混ざっておらず、視線を向けるだけだ。

 

 普段なら気にしない八幡なのだが、聞こえた『ウルトラマン』という単語に視線を向けてしまう。

 

「やべーし!葉山君もそう思うっしょ!颯爽と現れて苦戦しながらも怪獣と戦う剣を持つ巨人!」

 

「そうだね……俺も、そう思うよ?」

 

「でもさぁ、真っ黒だし、赤い目なんだから不気味だろ?」

 

「なーにいってんべ!颯爽と現れて怪獣と戦ってくれんだべ?ウルトラセブンと違って、俺らの為に戦ってくれるんだから悪い奴じゃねーって!」

 

「まぁ、ウルトラセブンと比べたらなぁ、ウルトラマンオーブは怪獣が現れてすぐ来て戦ってくれるから助かるよなぁ……ウルトラセブンなんか、街が壊れてヤバイってなった時にしかきてくれねぇし」

 

「そうだよなぁ!これからもウルトラマンオーブなら安心じゃね?」

 

「あのさぁ、あんまり、ウルトラセブンのことを悪く言うのは」

 

「あれぇ、もしかして、葉山君はウルトラセブン派?」

 

「そういうわけじゃ、ただ、何でもウルトラマンに任せるっていうのは」

 

「えぇ~~、怪獣と戦ってくれるんだし、いいじゃん」

 

「そーそー、困った時はウルトラマンオーブって感じでいいだろうし!ウルトラセブンより頼りになるって」

 

 彼らの中でウルトラマンオーブは自分達の為に戦ってくれる最高のヒーローというイメージ図になっているらしい。

 

 八幡は興味ないという様子でマッカンを買いに外へ出る。

 

「ヒッキー……」

 

 購入を終えて教室へ戻ろうとしたところで、由比ヶ浜に声をかけられた。

 

 何か言いたそうに手を合わせながら視線をさ迷わせる彼女の姿に八幡は何かを感じて、自販機に戻って紅茶を購入する。

 

「ほらよ」

 

「え、ありがと」

 

「何か話したいことあるんだろ?」

 

「うん」

 

 二人でベンチに座る。

 

 由比ヶ浜が距離を詰めようとしたところで横へずれるが、すぐに端へ追いやられてしまう。

 

 諦めた八幡はマッカンを飲む。

 

「あの巨人のこと、ヒッキーはどうするの?」

 

「別に、なにも」

 

「え?」

 

「あれがどういう意図で怪獣と戦っているのか知らないが、こちらへ特に悪意を振りまいていないというのなら今は放っておく」

 

「え、でも、あのウルトラマンが賞賛されているんだよ?ウルトラセブンなんか、悪口まで」

 

「由比ヶ浜」

 

 八幡は飲みかけのマッカンを地面へ置いて彼女をみる。

 

「“ウルトラマン”は賞賛されるために戦っているわけじゃない。俺が知る“ウルトラマン”はどこまでもお人好しで賞賛が欲しくて戦っているわけじゃない。どこまでも善意の心に応えようとする……あの黒いウルトラマンがそういう気持ちでやっているのかはわからないが、俺は自分から進んで賞賛欲しさに動くなんてことしない」

 

「ヒッキー……」

 

「何より、面倒だし」

 

「最後ので台無しだしぃ!」

 

 叫ぶ由比ヶ浜を置いて、八幡はマッカンを手に取って立ち上がる。

 

「眠たいから教室戻るわ」

 

「うん……ヒッキー、ありがとう」

 

 笑みを浮かべる由比ヶ浜を直視するのが恥ずかしくて視線をそらす。

 

「お礼言われるようなことはしてねぇし」

 

 八幡は通路を歩きながらあることを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウルトラマンオーブっていう名前は誰がつけたのかしらね」

 

「さぁな」

 

「ネットで誰かがそう呼んだらしいよ?」

 

 放課後の奉仕部。

 

 いつものような時間を満喫していたところで、雪ノ下が漏らした疑問に由比ヶ浜が答える。

 

「あれは、この世界のウルトラマンなのかしら?」

 

「さぁな、そもそも、この世界にウルトラマンがいるかどうかはわかっていねぇからな」

 

「もし、この世界のウルトラマンだとしたら、彼はどうして、このタイミングで現れたのかしらね」

 

「ゆきのん、どういう意味?」

 

 首をかしげる由比ヶ浜。

 

 雪ノ下は読んでいた小説を閉じる。

 

「今までに人類は数多くの怪獣や侵略者に狙われてきたわ。その脅威から戦ってきたのは誰?ウルトラマン?違うわ、人類自らの手で守ってきている。今になって、人間が大好きな別宇宙のM78星雲の宇宙人さんが助けてくれるけれど、もし、そういう侵略行為を許せない者達がいるというのなら」

 

「地球へ現れていてもおかしくはない、か」

 

「じゃあ、あれは演技?」

 

「なんともいえないわ、そもそも、あの黒い奴が何の意図をもって地球へ現れたなんてわからないのだから」

 

「……そう、だよね」

 

「?」

 

 由比ヶ浜の様子がおかしいことに気付いて首をかしげる雪ノ下。

 

 フォローする形で八幡が説明する。

 

「オーブとやらの登場でセブンの悪口をいわれることが我慢できないみたいだぞ」

 

「そういうことね。仕方ないわ。人というものは自分にとって都合の良いものを信じてしまう傾向にある……怪獣出現に颯爽と現れたウルトラマンオーブ、人類が限界まで努力した時に現れるウルトラセブン。これだけで新たに出現した巨人へ好意を向けるなんて愚かに思えるわ……もし」

 

 雪ノ下は先の言葉を飲み込む。

 

 続きを予想できた八幡は何も言わずに手にしている新聞へ意識を向ける。

 

 静かになった奉仕部。

 

 それからいつものように彼らは家へ帰る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間に一回、どこぞの特撮番組のように怪獣が姿を現す。

 

 怪獣が現れて人が逃げ惑う時に颯爽と現れるのはウルトラマンオーブ。

 

 輝く剣を振るい、時に光線技を使いながら怪獣を次々と倒していく。

 

 その姿を人々はヒーローへ向ける羨望の眼差しとなっていく。

 

 ニュースにおいても、ウルトラマンオーブは地球の味方!と大々的に騒ぐ人間も出てきている。

 

 子供たちの話題も主にウルトラマンオーブになっていた。

 

 薄暗い部屋の中、愛染誠は空間に投影されているニュースへ向けられている。

 

「いいぞぉ、いいぞぉ!私の望む展開になってきたじゃないかぁ!これから、私、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの活躍は続いていくのだぁ」

 

 ニュースはウルトラマンオーブが怪獣を撃退したということで戦闘の一部映像が映されている。

 

 聖剣を振るうウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツと倒されるデマーガの姿が表示されていた。

 

「あん?」

 

 映像が切り替わって別の戦いが流れる。

 

 そう、ウルトラセブンとキリエロイドの戦いだ。

 

 ある評論家がウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツについて好評する中で一部の人間がウルトラセブンについて話をしているのである。

 

 ウルトラセブンこそが地球の守護神であると語っている姿に愛染は歪んだ笑みを浮かべた。

 

「これは、まだ、修正が必要なようですなぁ」

 

 机に置かれている一つのクリスタルを愛染誠は手に取る。

 

 クリスタルの表面にはウルトラセブンと酷似した存在が描かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か、嫌だなぁ」

 

 比企谷家の食卓。

 

 小町お手製の料理を味わっていた八幡は妹の言葉に顔を上げる。

 

「何が?」

 

「街の雰囲気……どこもかしこも、新しく出てきたウルトラマンのことばっかり」

 

「まぁ、怪獣被害がほとんどないからな」

 

「代わりに怪獣の出現頻度が増えたでしょう?」

 

「まぁ、な」

 

 ひょこっとダークゾーンからペガが顔を出す。

 

「地球人は楽な方を望むんだね。自分達だけで努力して、限界を超えた時に助けてくれるウルトラセブンよりも怪獣と戦ってくれるウルトラマンオーブを望むんだからねぇ」

 

「楽な方を望んでしまうのは仕方のないことだよ。苦しむことを進んでやりたがる人間はいないからねぇ。でも、ペガちゃん、人間が楽な道ばかりを選ぶバカな生き物じゃないって、小町は思いたいんだよねぇ」

 

「小町は強いねぇ」

 

「そりゃ、兄や居候の子達の分の食生活などをも考えていますから!」

 

 えっへんと胸を張る小町の姿に八幡とペガは癒されつつも、もう少し家事を手伝おうと心の中で誓い合うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカな生き物じゃない、か」

 

 食事を食べ終えた八幡は自室のベッドへ横になる。

 

 手の中にあるウルトラアイを天井へ掲げた。

 

 別宇宙で八幡が出会ったウルトラマン達は誰もが地球人を愛して、地球人の善性を信じている。

 

 ウルトラマンオーブとやらは怪獣が出ると颯爽と現れて倒すことは人々にとって良いことでもあるのだろう。だが、ウルトラマンという存在に甘えて頼り切るという事はまた違うのだと八幡は感じていた。

 

「この世界の地球人を見て、M78星雲のお人好し達はそれでも守ろうとするのだろうか?」

 

 八幡の呟きに応えてくれる者はいない。

 

 一番に応えてほしい相手は八幡の精神に干渉することなく自らの意識を奥深くに閉じ込めている。

 

「こんなことで迷うことになるとはなぁ……本当に、人生ってハードゲームだ」

 

 ウルトラアイを仕舞って八幡は眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、街の中心地に突如、ウルトラセブンが出現した。

 

 怪獣や宇宙人が出現していないのに突然、現れたことに住民は戸惑いの表情を浮かべる。

 

 誰もが困惑している中、ウルトラセブンは信じられない行動を起こす。

 

 拳を振り上げて、ビルの一角を壊した。

 

 自らの力を誇示するように両手を広げながら次々と破壊活動を行うウルトラセブン。

 

 突然の事態に誰もが悲鳴を上げて逃げ惑う。

 

 ウルトラセブンが街を破壊しているという連絡はすぐにウルトラ警備隊へ届いていた。

 

 二子山のゲートを展開して緊急出動するウルトラホーク1号。

 

 ウルトラホーク1号が現場へ急行すると悠然と進むウルトラセブンの姿があった。

 

「隊長!」

 

「こりゃひでぇ……攻撃準備!」

 

「でも、隊長!ウルトラセブンは」

 

「バカ!俺達が悩んでいる間に次々と街は壊されて住民に被害が出るんだ!攻撃開始!」

 

 納得していないリサは席へ戻る。

 

 操縦桿を握る梶は照準をウルトラセブンへ向けた。

 

 放たれる大量のミサイル弾。

 

 ミサイル弾を体に受けたウルトラセブンだが、その動きは止まることがない。

 

 それどころか、ウルトラホークへ瓦礫の一部を掴んで投擲する。

 

 間一髪のところでウルトラホーク1号は上昇して回避した。

 

 ウルトラセブンは両手を広げながら再び街の破壊活動を開始しようとする。

 

「くそっ、こっちのことはお構いなしかよ!」

 

「仕方ない、ホルバスターミサイル!発射準備!」

 

「了解!」

 

 ウルトラホーク1号の下部から特殊ミサイル、ホルバスターミサイルが発射態勢に入った。

 

「よく、狙え……発射!」

 

 古橋の合図でウルトラホーク1号からホルバスターミサイルが発射。

 

 ミサイルはウルトラセブンへ直撃して大爆発を起こす。

 

 直撃を受けて地面に倒れるウルトラセブン。

 

 しかし、すぐに起き上がって光線を放つ。

 

 光線はウルトラホーク1号に右翼に直撃、黒煙をあげながら安全な場所へ緊急着陸をとる。

 

 ウルトラセブンは避難誘導をしている東郷とユキ隊員の方へ視線を向けた。

 

「マズイ、急げ!」

 

「!」

 

 東郷が避難を急がせる中、ユキ隊員がホルダーからウルトラガンを取り出して構えた時。

 

 上空から眩い光を放ちながらウルトラマンオーブが姿を現す。

 

 横薙ぎに聖剣の一撃を受けたウルトラセブンは近くのビルへ倒れこむ。

 

「ジュワァッ」

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツは聖剣オーブダークカリバーの刃から光輪を放つ。

 

 カリバースラッシャーを受けたウルトラセブンはのけ反りながらも額から光線を繰り出す。

 

「フン!」

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツはひらりと光線を回避する。

 

 光線は後ろのビルに直撃して火災が起こった。

 

 オーブダークカリバーを手に駆け出すウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツはオーブダークカリバーの岩と記されている紋章を起動。

 

 カリバーを地面へ突き立てて衝撃で生じた岩石を放つ。

 

 次々と飛来する岩石は周囲のビルや建物、地面に大きな穴を作りながらウルトラセブンにダメージを与える。

 

 ふらふらになっているウルトラセブンの姿を見て、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツはカリバーを地面に突き立てて、両手を十字に構えた。

 

 必殺の【ダークオリジウム光線】がウルトラセブンに直撃。

 

 大爆発を起こしてウルトラセブンが消失する。

 

 胸を張っているウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの姿はまるで大笑いをしている風にみえた。

 

 地面に突き刺さっている聖剣を引き抜いてウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツはそのまま大空の中へ消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、新聞の一面にはこの一言が大きく記されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

【ウルトラセブンは人類の敵だった!?】

 

 

 

 



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第十一話:ウルトラマンという名前の意味(後編)

時間が掛かりました。

てなわけで後編です。




 

「いい加減にしてよ!」

 

 昼休み、昼寝を満喫しようと考えていた八幡は大きな怒鳴り声にびっくりする。

 

 室内の喧騒は静まり返り、大勢の視線が一点へ向けられていた。

 

 拳を握り締めて怒った表情をしている由比ヶ浜結衣の目は葉山グループへ向けられている。

 

「戸塚、これはどういう状況だ?」

 

「え、あぁ……その、彼らがウルトラマンオーブについて、話をしていて、その、前のウルトラセブンの悪口になったところで、由比ヶ浜さんが怒りだしたんだ」

 

「そういうことか」

 

 戸塚の説明で状況は理解できた。

 

 先日、街中でウルトラセブンが街を破壊するというとんでもない事件が起こった、ウルトラ警備隊が苦戦する中で破壊の限りを尽くす巨人から人類を守ったのはウルトラマンオーブ。

 

 ネットでもその姿は拡散されて、今やウルトラマンオーブは地球人にとっての新たなヒーローとしてたたえられている。

 

 片やウルトラセブンは人類の敵という触れ込みが広まりつつあった。

 

 八幡の推測でしかないが、由比ヶ浜はウルトラセブンの悪口を言う彼らのことに我慢ができなかったのだろう。

 

「なんだよ、悪い奴を悪く言って何がいけないんだよ」

 

「それをいい加減にしてって言っているの!」

 

「わけわかんないって、ウルトラマンオーブがいるから今の俺らの生活あるんだぜ?ウルトラセブンが何をしてくれたよ?怪獣が暴れる前に颯爽と倒してくれるわけじゃない。俺らが困った時にしか来てくれない、結局、街を壊してウルトラマンに倒されている。そんな奴を悪くいう事の何が悪いっていうんだよ」

 

 ほとんどの者が同意する。

 

 ウルトラマンオーブの実績は今までの戦いで証明されてきた。

 

 

 怪獣出現と同時にどこからか現れて聖剣を振るい、時に光線を撃って怪獣を倒す。

 

「それにこの前なんか女の子が飛ばした風船を取って渡したってニュースもあったじゃん!」

 

「そーそー!あれ、カッコイイし、ヤベーッショ!」

 

 誰もがウルトラマンオーブ良い者説に傾いている。

 

 ほとんどは傍観している者ばかり。

 

 どちらにも味方する気はないというものだろう。

 

 ウルトラセブン側についているのは由比ヶ浜だけだ。

 

「それだけのことで皆はアレをヒーローっていうの?」

 

「あぁ、あれはマズイ」

 

 拳を握り締めてぶるぶると震えている姿を見て八幡は察する。

 

 宇宙で共に旅をしてきたことで由比ヶ浜のことは多少、理解しているつもりだ。

 

 今の彼女は本気で怒っている。

 

「確かに街を壊される前に怪獣を倒してくれるのは助かるかもしれない。そもそも、怪獣が現れるのはなんで?あたし達が色々やって来たことのツケが回ってきているからじゃん!怪獣出現を招いているのはあたし達人間なんだよ?そのツケを他人に払ってもらって満足するの!?」

 

「それは……」

 

「話が違うだろ!?」

 

「違わないよ!怪獣を倒してくれるからって、わかっていないのかもしれないけれど、オーブが戦った後の惨状は怪獣が暴れた時よりもひどいことってわかっている!?」

 

「それは怪獣と戦うために仕方なく」

 

「仕方ない?それを本気で言っているんだったら間違いだよ!ウルトラセブンだって、セブンの方は街を壊されないように注意しながら戦っているんだよ!あたし達が傷つかないように……今まであたし達に手を貸してくれたウルトラセブンにこんなこといったら、掌を返されても文句なんかいえないよ!」

 

「何の騒ぎかね?」

 

 教室内に平塚先生や他の教師たちが入ってくる。

 

「行こうぜ」

 

「すいません、何でもないでーす」

 

 逃げる様に去っていく葉山グループの男子達。

 

 残った葉山が教師たちへ頭を下げる。

 

 由比ヶ浜は三浦に付き添われる形で平塚先生と話をしていた。

 

「何か、嫌だね」

 

「……戸塚?」

 

「僕はどっちが正しいとか、そういうのはわからないけれど……少し前まで、僕達の為に戦ってくれていたウルトラセブンの悪口を言われるのは嫌だな……でも、あんなことがあったからさ」

 

「ウルトラセブンが街を破壊した、か」

 

 静まり返っていた教室に再び喧騒が戻ってくる中、八幡はぽつりと呟く。

 

「話し合うか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら順調のようだな」

 

 愛染誠のいる薄暗い部屋。

 

 踏み入れた黒衣の男の姿を見ると愛染誠は笑みを浮かべる。

 

「キミかぁ!いやぁ、あの提案は素晴らしいね!一気にウルトラセブンが悪者!そして、私のウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツこそが正義の味方という展開になったよう!これ、お礼の品」

 

 男の手を取って愛染誠が渡したのはウルトラマンオーブダークノワールブラッスシュバルツのソフビ人形(愛染お手製)である。

 

「しかしぃ、まさか、このクリスタルの力を使って偽物を用意してそれを私が倒す作戦とは、キミはどうして、私に協力してくれたのかな?」

 

「利害の一致だ」

 

 愛染のテンションに対して男は淡々と話す。

 

「ウルトラセブンは私にとって邪魔だ。お前にとってもお前の活躍を阻む可能性がある。お前はより人間達から支持を、私の目的の為に邪魔者の排除、地球人は奴が訴えたところで耳を貸すことがない。噂のウルトラ警備隊も次からはウルトラセブンを攻撃してくれるだろう、ほら、利害の一致だ」

 

「そういうことかぁ!利害の一致とはすばらしいねぇ!それで、キミはこれから何を?」

 

「我らの主を蘇らせること」

 

「……主?」

 

「お前も名前は聞いたことがないか?宇宙で悪魔と恐れられる存在のことを」

 

「悪魔?あぁ、ゴーデスのことか」

 

 愛染は思い出したように手を叩く。

 

「だが、その存在は遠い昔に宇宙の正義の手によって滅ぼされたと聞くが?」

 

「確かに肉体は滅ぼされた、だが、完全に消滅させられる瞬間、自らの肉体を細胞レベルまで分解して宇宙へ逃げた」

 

「そのゴーデスが地球にいると?」

 

「復活の苗床として地球を選ばれた」

 

「ふーん(待てよ、つまりはそのゴーデスとやらを復活させたところで、私事ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが華麗に倒せば、地球上で私を崇拝しない者は誰もいないという事だ……おぉ、これは良い展開だぞぉ)」

 

「(コイツのことだ、ゴーデス様を利用して自分の地位をより確固たるものにしようと企むだろう……それでいい、闇が混ざっているとはいえ、光の力で倒されれば倒されるほど、ゴーデス様の力はより強くなっていく。今回の騒動でかなりの細胞が集まってきている。もう少しすれば、ゴーデス様は完全復活させることができる)だが、今のままではダメだろうな」

 

「なぬ?」

 

 男の言葉に愛染が驚きの声を漏らす。

 

「気付いていないのか?未だにウルトラセブンを信じる者がいる。そいつらを完全になくさない限り、お前の地位は揺らぐ危険があるぞ」

 

「しかし、ウルトラセブンをこれ以上、貶すことはあまりなぁ」

 

 ウルトラマンを尊敬している愛染誠としてはこれ以上、ウルトラセブンを貶すような真似はしたくなかった。

 

 いくら、自分の地位を確固たるものにするとはいえ、流石にやりすぎちゃったかなぁ?と心配になってきたのである。

 

「―――ウルトラマンオーブになりたいのだろう?」

 

 そこで悪魔が囁く。

 

 悪魔の配下である男にとって、愛染誠が何を求めているのか調べることくらい造作もないことだった。それこそ、ミュー粒子を介する必要もない。

 

「お前は憧れだったウルトラマンになりたい、いや、なるのだろう?お前の気持ちはその程度のものだったのか?」

 

「なにをう!?バカにするんじゃない!私はウルトラマンになる!いや、必ず、なるんだ」

 

 愛染の脳裏をよぎるのは輝きの聖剣から放つ光で巨大な怪獣を倒した光の巨人。

 

 彼の尊敬するウルトラマンオーブ。

 

 幼かった彼は心の底から誓った。

 

 ウルトラマンになりたい。

 

 ウルトラマンになるのだ、とその為にここまで頑張ってきたのだ。

 

 邪魔する存在は許さない。

 

 敵対するものはどんなことをしても倒すのだ。

 

 愛染は悪人のような黒い笑みを浮かべる。

 

「グググ!よぉし、ならば、もう一つ、手を打ってやろうじゃああありませんかぁ!」

 

 両手を叩く愛染。

 

 彼の手の中に二つのクリスタルが握られていた。

 

 悪魔はにやりとほほ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪獣出現の兆候がない?」

 

 その頃、ウルトラ警備隊の司令室では最近、多発している怪獣騒動について議論がされていた。

 

「はい」

 

 全員の視線が集まる中でユキ隊員が頷く。

 

「あの黒いウルトラマンが姿を現した時から、今日まで、各部署のデータを調べたのですが、怪獣出現の兆しが全くありませんでした」

 

「ま、全く?」

 

 驚きの声を漏らす渋川にユキは頷く。

 

「しかし、そんなことを調べて何になるというんだ?」

 

「おかしいとは思わないのか?」

 

 質問を質問へ返す形になっているがユキは梶へ問いかける。

 

「いくら少し前の怪獣頻出期といわれるような状態になりつつあるからといって、一週間に一回、テレビ番組のように怪獣が何の前触れもなく現れるというのはおかしい。何か切欠がなければ怪獣が現れるなんて考えられない」

 

「待ってくれ、ユキ隊員は今回の怪獣騒動に何か裏があるとみているのか?」

 

「えぇ」

 

「待ってよ!裏があるって、まさか宇宙人の企みか何かってこと?」

 

「そこまでははっきりとはいえないが……だが、考えてみてほしい」

 

 戸惑う東郷やリサにユキは問いかける。

 

「怪獣が出現する場合、何か異変が起こる、それか侵略者が連れてきた怪獣兵器の可能性がある……今回のケースはそのどれにも該当しない、いや、一つだけ、可能性はある」

 

「あの黒いウルトラマンのことだな?」

 

 腕を組んで目を閉じていた古橋の言葉にユキは頷いた。

 

「そうです。最近の怪獣は現れるとすべてが黒いウルトラマンに倒されています。偶然と片付けるには回数が多すぎると思いませんか?」

 

「しかし、あのセブンについてはどう説明する」

 

「まだ、わかりません、ですが、あのウルトラセブンに生命反応が感知されていません。そこに謎を解くカギがあると私は思います」

 

「調査をしたいということだな?」

 

 目を開けて古橋は手を叩く。

 

「よし、ユキ、満足するまで調べろ。そして、はっきりとした結果を報告するように、梶、お前もついていけ」

 

「隊長!?」

 

「お前、前の任務でホークを墜落させていたな?始末書は免除してやるから、代わりにユキに付き合え」

 

「そりゃないっすょ!?」

 

「ハハッ、まぁ、レディをエスコートしてやるんだな!優男さんよ」

 

 渋川の言葉に梶は嫌そうな顔をして、ユキは小さなため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「綺麗な場所だな」

 

 俺はどこまでも澄み切った青空、キラキラと輝く湖、そして風を受けて揺れる緑。

 

 天辺に輝く太陽。

 

 自然の中を八幡は歩いていき、やがて、一人の人物を見つける。

 

 バラ色の頬を持つ美青年。

 

 纏っている衣服がウルトラ警備隊の隊員服でなければ、街中で女性を虜にさせていただろう。

 

 彼こそが、恒点観測員として地球に訪れて、地球人を愛し、身を犠牲しながら戦い続けた。

 

 ウルトラセブン本人だ。

 

 今は地球人の姿をコピーしたモロボシ・ダンとしての姿で俺の前にいる。

 

「珍しいね。キミがこちら側に踏み込んでくるなんて」

 

 にこりとほほ笑む青年の横へ俺は腰かける。

 

 ここは地球のどこかにある自然、というわけではない。

 

「アンタに話があったんだよ。ウルトラセブン、いや、モロボシ・ダン」

 

 俺と一心同体になっているウルトラセブンの心象風景が具現化した場所。

 

 大自然の一角をくりぬいたような素敵な場所で俺とダンさんは大きな岩へ腰かける。

 

「綺麗な場所だな」

 

「私が訪れた地球の緑豊かな場所だ。不思議とこの景色を見ていると心が現れるような気分になる……こういう美しいものを私は、私達は守りたいと思っている」

 

「ダンさん、貴方に相談があります」

 

 ちらりとダンさんが俺を見た。

 

 融合はしているものの、俺の心の中に彼が踏み込んでくることはない、まして、干渉することなく。どうしても必要な時に俺の人格は沈んで、彼が表に出てくる。

 

 だが、絶対というわけではない。

 

 こうやって俺が望めば話しかけてくるし、警告なども飛ばしてくる。

 

 どこまでもこの人は優しいのだ。

 

 この人だけじゃない、あの星に住まう人たちは。

 

「いいとも、教えてくれ」

 

 俺はダンさんにできる限りのことを話す。

 

 多発する怪獣、それを倒すウルトラマンオーブという存在。

 

 少し前に現れたニセウルトラセブン。

 

 そして、由比ヶ浜の訴え。

 

 全てを話し終えて一息ついたところで、ダンさんは静かに告げる。

 

「キミは私にどうしてほしいんだい?」

 

「え?」

 

 予想外の返しに俺は固まってしまう。

 

「あの黒いウルトラマンがどういう意図で怪獣と戦っているのか知らない。もしかしたら地球平和のためかもしれない。それと偽物の私と繋がりがあるのかどうかもわかっていない」

 

「だけど、あの偽物のせいでウルトラセブンは悪者だって」

 

「私は私の信じた者達の為に戦う。私の決意は揺るがない、たとえ、愛する地球人から石を投げられたとしてもね」

 

「それは……いや、アンタは本当に地球人を愛しているんだな」

 

「勿論」

 

 彼は頷いた。

 

 どこまでも澄み切った、ウソ偽りのない笑顔を浮かべられ、俺は言葉を詰まらせる。

 

 この人や他のウルトラマン達と話していると心の中のすべてをさらけだされそうになる。そんな気分になってしまう。

 

「正直、黒いウルトラマンがどういう意図で戦っているのか、偽セブンが現れたことに関係があるのかもわからない。けれど、俺は許せないんだと思う、ウルトラセブンを……俺の命を助けてくれた恩人を侮辱するようなことを」

 

「八幡君、キミはとても優しく、そして、誰かが傷つくくらいなら自分が傷ついてでも解決しようとする子だ。もし、キミが大切な者の為に力を使うというのなら躊躇わないことだ」

 

「俺は……」

 

「キミは正しいことに力を使える。少なくとも私はそう信じている」

 

 段々と景色が白くなっていく。

 

 目の前にいたはずのダンさんがどんどん遠のいていた。

 

「待ってくれ!」

 

 まだ、話したいことが、聞きたいことが沢山、あるのに!

 

「これ以上の接触はキミの精神へ良くない影響を与えてしまうだろう。八幡君、戦う決意を決めたのなら、迷うな。キミは大切なものの為に戦える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セブン!」

 

 ガバッと俺は体を起こす。

 

「俺の部屋……」

 

 周りを見ると、俺の部屋だ。

 

「大丈夫?魘されていたけど」

 

 俺が目を覚ましたことに気付いてペガがダークゾーンから顔を出す。

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

「汗がびっしょりだ、もう一度、風呂に入ってきたら?」

 

「……そうする」

 

 ペガに言われて八幡は浴室へ入る。

 

 服のポケットから隠しているウルトラアイを取り出す。

 

 ウルトラアイを覗き込みながら八幡は、ため息を吐いた。

 

「過大評価しすぎなんだよ……はぁ」

 

 そういって八幡はウルトラアイを置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で街中に出るんだよ?」

 

「調べたいことがある」

 

 梶とユキの両隊員は私服姿で街中へ来ていた。

 

「どこもかしこも、例のウルトラマンオーブの話題ばかりだな」

 

「新たな人類の守護者といっている連中もいるようね」

 

 淡々と答えるユキに梶は前から気になっていたことを尋ねる。

 

「なぁ、ユキはウルトラマンやウルトラセブンについて、どう思っているんだ?」

 

「別に」

 

 ユキは静かに答える。

 

「地球は人類の手で守るべきだと私は考えている。ただ、手を貸してくれるウルトラセブンはともかく、怪獣を颯爽と倒すあの黒いウルトラマンとやらはあまり好きになれないな」

 

「ふーん」

 

 彼女の話を横で聞きながら歩いていた梶はある少女に気付いた。

 

「おい、あの子じゃないか?黒いウルトラマンに風船を取ってもらったっていう少女」

 

 梶の言葉にユキは視線を向ける。

 

 公園で遊んでいる少女は梶の言うとおり、少し前にウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツに風船をとってもらった人物だろう。

 

 何気なしにみていたユキはある一点に気付くと真剣な表情を浮かべて駆け出す。

 

「おい!?」

 

 慌てて追いかける梶。

 

 ユキは少女へ話しかけていた。

 

「ねぇ、その人形、どうしたの?」

 

「もらったの!」

 

 少女は笑顔でユキにある人形を見せる。

 

「これって……」

 

 手の中にあったのはウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの人形だった。

 

 小さいながらも精巧にできている人形をみたユキは尋ねる。

 

「誰からもらえたの?お姉さんも欲しいな」

 

「あそこのビルの社長さん!大人の人に、私がウルトラマンオー、えっとぉ?なんとかに風船を取ってもらったってことを伝えてほしいって」

 

「そうなんだぁ、ありがとうね」

 

 手を振りながら去っていく少女。

 

 

 ユキは少女の指さした建物をみる。

 

「やはり、アイゼンテック社か」

 

「どういうことだよ?人形がどうかしたのか?」

 

「早すぎないか?いくら、ヒーローと言われているとはいえ、あの黒い奴の商品が出ているなんて」

 

「どこかの企業が売れると見込んで投資したという可能性もあるだろう?」

 

「それだけじゃない、この街中、やけに黒いウルトラマンの広告宣伝が多いと思わないか?」

 

「言われて、みれば……」

 

 指摘されて梶はようやく気付く。

 

 黒いウルトラマンが出現して、一カ月が経っているが、彼がヒーローと言われだしたのは街を破壊したウルトラセブンを倒した時だ。その日から考えると流石に流布されているものが早いという疑問が生まれる。

 

「じゃあ、アイゼンテックが怪しいと思うのか?」

 

「そこはわからない、だが、何かを知っている可能性は高いと私は思っている」

 

「……調べるか?」

 

「あぁ」

 

 頷いたユキと梶はアイゼンテックのタワーをみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてさて、そろそろ、次の段階へ進むとしようか」

 

 愛染誠はタワーの屋上で街中を見渡していた。

 

 アイゼンテックのおかげで繁栄した街をこれから破壊することになるが、愛染自身、否、彼の変身するウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの栄光の一歩と思えば、多少の破壊など必要経費と思えばいい。

 

「そう、私はなるんだ……ウルトラマンオーブに」

 

 昔を思いだしている愛染誠、否、彼に寄生している宇宙人は手の中のウルトラマンオーブが描かれているクリスタルを握り締める。

 

「まずは、彼から、出番です!」

 

 AZジャイロにクリスタルをはめ込んで、左右のレバーを引っ張る。

 

 眩い光と共に街中にウルトラセブンが現れた。

 

「では、続けて」

 

 ジャイロに怪獣のクリスタルをはめ込もうとした時、まばゆい光と共にグルジオキングが出現する。

 

「え?」

 

 呆然としている愛染の前で現れたグルジオキングは雄叫びを上げながらニセウルトラセブンへタックルした。

 

 攻撃を受けて派手に吹き飛ぶニセウルトラセブン。

 

 背部の砲塔から砲撃を行う。

 

 攻撃を受けて仰け反るニセウルトラセブンを終始、グルジオキングが圧倒していた。

 

「えぇい!なんてタイミングで邪魔をぉ!」

 

 呆然としていた愛染誠だが、すぐにカッ!と目を見開くと怪獣クリスタルを放り投げて彼が開発したオーブリングNEOをジャイロにはめ込む。

 

 レバーを左右に広げながら愛染は叫ぶ。

 

「絆の力ぁ!お借りします!」

 

 叫びと共に光の中からハートのポーズをとりながらウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが姿を現す。

 

「銀河の光が我も呼ぶ!」

 

 現れた姿こそ愛染誠の変身したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。

 

「と、同時に攻撃ぃぃぃぃ!」

 

 現れるとともにオーブダークカリバーを振るってグルジオキングの背中を切り裂く。

 

『あぐぅ!』

 

 背中にダメージを受けてグルジオキングに変身している由比ヶ浜が苦悶の声を上げる。

 

『ほう、キミかぁ!』

 

『愛染社長!?貴方が真っ黒マンの正体だったの!?』

 

『誰が真っ黒マンだぁあああああ!私の姿はウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ!』

 

『えっと、オダブ?』

 

『変な略し方をするなぁ!』

 

 首をかしげた由比ヶ浜に激昂した愛染はオーブダークカリバーを操作して【オーブダークロックカリバー】を放つ。

 

 怒りと共に放たれる技だが、グルジオキングは自慢の装甲で防ぎきり、口からネオボーンブレスターを撃った。

 

 火炎を受けたオーブダークは焼けている箇所を手で払う。

 

『どうして、どうしてこんなことをするの!?』

 

『決まっているだろう!私の夢のためだ!私はウルトラマンになる!ただのウルトラマンじゃない!惑星O-50、そこにある戦士の頂に触れて光の巨人になったウルトラマンオーブ!』

 

『戦士の頂……それって』

 

『そう、お前も触れて資格を得たはず、しかぁし!お前はウルトラマンになるどころか怪獣の姿でストォップ!加えて、ヒーローとしての自覚もまるでなし!だからこそ、私がなるんだ!人々に危機が迫った時、銀河の光と共に現れる巨人、それこそがウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ!』

 

『だったら、何でセブンを悪者にするの!こんな偽物なんか使って』

 

『いやぁ、本当はそういうことするつもりなかったんだけどねぇ、ほら、違うとはいえ、一応、ウルトラマンだしさぁ、でも、私の邪魔になるなら仕方ない!正義のヒーローと見せかけて実は悪でした計画は成功したということだよ!なっはっはっ!』

 

 笑う愛染の姿に由比ヶ浜のぶるぶるとジャイロを握り締めている手が震えていた。

 

『最っ低!』

 

『なぬぅ!?』

 

 叫びと共に放たれた雷撃がオーブダークを捉える。

 

 ビリビリと痺れて剣を手放してしまう。

 

 瞳に涙を溜めながら由比ヶ浜は攻撃を続ける。

 

『貴方に……』

 

 ボーンショッキングを続けながら由比ヶ浜は叫ぶ。

 

『貴方にウルトラマンを名乗る資格はないよ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別宇宙、M78星雲、光の国。

 

「由比ヶ浜結衣君、ウルトラマンという名前がどうして付けられたか知っているかな?」

 

 由比ヶ浜結衣は茶色いベストに黒いシャツにズボンという姿の青年、ハヤタ・シンの言葉に首をかしげる。

 

「え、それが名前じゃないの?」

 

 由比ヶ浜の言葉にハヤタは苦笑する。

 

「ウルトラマンという名前は、私が一体化していた地球人がつけてくれた名前なのさ。ウルトラ作戦第一号の協力者、ウルトラマンと……最初はただの呼称だったけれど、いつからか、この名前を私は愛するようになった地球人がくれた大事な名前だと」

 

「へぇ」

 

「だが、いつからか、地球人にとってウルトラマンという名前は別の意味をもつようになった」

 

「別の意味?」

 

「私の後に弟達が地球を守ってきた。地球人と共に怪獣や侵略者と戦う私達をいつからか、地球人は友と、大事な仲間として迎えてくれる。ウルトラマンとは地球に、地球人にとって大切な存在になっている。それが嬉しくもあり、彼らの成長を見守る理由なのだと、私は思うようになった」

 

 昔を懐かしむハヤタの姿を見ながら由比ヶ浜は感嘆の声を漏らす。

 

 O-50の戦士の頂に触れて力を手にした為に宇宙を旅することになった由比ヶ浜はウルトラマンという名前を耳にすることがあった。

 

 M78星雲、光の国に存在する宇宙警備隊の一人の名前。

 

 侵略者を許さず、正義の為に戦う者の名前。

 

 地球のことを愛する者の名前。

 

 侵略者が恐れる正義の味方。

 

 名前の意味を由比ヶ浜ははじめて、知った。

 

「私は、どうすればいいのかな?」

 

 由比ヶ浜は自身の手の中にあるジャイロをみる。

 

 O-50の指示でミッションをいくつもこなしてきた彼女はいつか、光の巨人の力を手にすることができるかもしれない。

 

 その時、自分は目の前の人達のような強い存在になれるだろうか?

 

「由比ヶ浜君、我々、ウルトラマンは神ではない。どんなに頑張っても届かない思いもあれば、救えない命もあるということを忘れないでほしい」

 

「神じゃない……か」

 

「大きな力を使う事はおおいなる責任が伴う。それを忘れないでほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハヤタとの言葉を思い出しながら由比ヶ浜――グルジオキングは唸り声を上げながらオーブダークへ爪を振り上げようとした時。

 

 背後からニセウルトラセブンがキックを放つ。

 

 不意打ちにグルジオキングの動きが鈍る。

 

 その隙を突くようにウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが全身に炎を纏った必殺技【ダークストビュームダイナマイト】を繰り出す。

 

 繰り出された攻撃をグルジオキングは防ぐ暇もないまま受けてしまい、近くのビルにその巨体を倒してしまう。

 

『ふん!所詮はウルトラマンになりきれない小娘だったということだ!とっとと倒して、私の壮大な計画を実行に……』

 

『負けない……』

 

 傷だらけになりながら起き上がるグルジオキング。

 

 由比ヶ浜はダメージと疲労で倒れそうになる体を必死に起こしながらオーブダークをまっすぐにみる。

 

 握り締めているジャイロを構えた。

 

『貴方をウルトラマンなんてあたしは認めない!ヒッキー……ウルトラセブンを侮辱した……許さないから!』

 

 ギラリとグルジオキングの瞳が輝く。

 

『生意気なぁ!大人しくしていたら優しく倒してあげようと思っていたものをぉ……まぁいい、貴様はこいつに倒されるがいい!いけぇ!ニセウルトラセブン、いや、ウルトラセブンよ!』

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツがニセウルトラセブンへ指示を飛ばす。

 

 ニセウルトラセブンは起動すると満身創痍のグルジオキングの頭部を掴むと腹部へパンチを叩き込む。

 

 攻撃を受けて仰け反ったグルジオキングへキックを放ち、地面へ押し倒す。

 

 グルジオキングは反撃しようとするがその腕を掴んでニセウルトラセブンが額のビームランプから光線を放つ。

 

『こんな、こんな奴に』

 

 近距離から光線を受けて苦しみの声を上げるグルジオキング。

 

 当然、変身している由比ヶ浜自身もダメージを受けている。

 

 起き上がることのできないグルジオキングの上にのしかかり、一方的な暴力を振るう。

 

 あまりの光景だというのにウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツは満足しているような態度をとっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、比企谷八幡は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「由比ヶ浜……」

 

 グルジオキングに変身している由比ヶ浜が偽物とはいえウルトラセブンによって一方的になぶり倒されている姿を見ているのはとても気分が悪かった。

 

 気付けば強く拳を握り締めている。

 

 握り締めた個所からポタポタと血が零れていた。

 

 かつての自分ならどう思っていただろうか?

 

 疑って何もしなかった?

 

 見て見ぬふりをしていただろうか?

 

 少なくとも今は。

 

 八幡は胸ポケットの奥からウルトラアイを取り出す。

 

 彼はウルトラアイを見つめる。

 

「俺が由比ヶ浜を助けるために力を使うことがエゴだと言われても、俺が本物だと、失いたくない者を守るためにこの、力を使う」

 

 八幡は覚悟を決めてウルトラアイを装着する。

 

 眩い閃光と共に八幡の体がウルトラセブンへ変身した。

 

 ニセウルトラセブンへウルトラセブンはアイスラッガーを投擲する。

 

 光に包まれたアイスラッガーがニセウルトラセブンの胴体へ直撃。その体を吹き飛ばす。

 

『なぬぅ!?本物をぉ!?』

 

 倒れたニセウルトラセブンをみて、現れたウルトラセブンに気付いたウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツは驚く。

 

 ウルトラセブンは倒れているグルジオキングへ手を差し伸べる。

 

『由比ヶ浜、大丈夫か?』

 

 テレパシーを使ってグルジオキングへ問いかけるウルトラセブン。

 

『ヒッキー、なの?』

 

『あぁ、俺だ』

 

『ごめん、あたし……あの偽物がヒッキーじゃないってわかっていたんだけど、、我慢できなくて、ヒッキーがバカにされていると思って、悔しくて、だから、こんなこと、きっと、間違っていると思っていたんだけど、だけど』

 

『大丈夫だ』

 

 彼女が必死に涙をこらえている姿をミュー粒子が教えてくれる。

 

 ウルトラセブンはグルジオキングを起こしながらその頭を撫でた。

 

『お前が俺の為に怒って、泣いてくれていることはわかった。だから』

 

 振り返るウルトラセブン。

 

 迸るエネルギーは怒りで体中からあふれ出している。

 

 まるでウルトラセブンが燃えていると錯覚するほどに怒っていた。

 

『ここからは俺が身の潔白を証明する』

 

 本来、比企谷八幡が変身する時、彼の人格は精神の奥深くに沈み、ウルトラセブンの人格が表に現れて戦闘をする。

 

 しかし、今は比企谷八幡がウルトラセブンとして戦っていた。

 

 冷静な戦い方をするウルトラセブンと異なって比企谷八幡の戦い方は若くも荒々しい戦い方をする。

 

 それは遠く離れた宇宙、独りぼっちで生き残るために戦ってきたゆえのスタイル。

 

 ニセウルトラセブンはウルトラセブンの攻撃を冷静に対処しようとする。

 

 しかし、次々と繰り出されるウルトラセブンの猛攻に圧倒されていた。

 

『えぇい、本物が出てきたことは驚いたが、邪魔はさせんぞぉ!』

 

 ウルトラセブンとニセウルトラセブンの戦い。

 

 横から乱入してくるオーブダーク。

 

 振るわれるオーブダークカリバーをウルトラセブンはアイスラッガーを逆手に構えて受け止める。

 

『お前、ウルトラマンじゃないな!』

 

『いいや!私こそがウルトラマン!真のウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツなのだ!』

 

『略してオダブだな』

 

『やめんかぁあああああああああああああああああ!』

 

 激昂したオーブダークが袈裟切りに振り下ろしたカリバーを躱しながら後ろへ回り込んだウルトラセブン。

 

 蹴り飛ばされたオーブダークは頭から地面に倒れる。

 

『ヒッキー!』

 

 グルジオキングが背後から光線を撃とうとしていたニセウルトラセブンへタックルする。

 

 光線技を放つことに失敗したニセウルトラセブンは倒れて、オーブダークの近くの地面へ倒れた。

 

『由比ヶ浜……』

 

『あたしだって、いるから、ヒッキーは一人じゃないよ!』

 

 頷いたウルトラセブン。

 

 横に並ぶグルジオキング。

 

 ふらふらになりながらオーブダークは叫ぶ。

 

『なぁに、アツアツカップルみたいなことをやってんだよ!お前ら、ウルトラマンとしての自覚を』

 

『『うるさい!お前がウルトラマンを語るな!』』

 

 ウルトラセブンは【ワイドショット】を、グルジオキングは【ギガキングキャノン】を。

 

 二つの必殺技がウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ、ニセウルトラセブンへ直撃。

 

 大爆発を起こす。

 

 ウルトラセブンは横にいたグルジオキングをみて、空へ飛び去る。

 

 グルジオキングは光の粒子に包まれてその姿が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、いつもの奉仕部。

 

「街の人達はどちらを信じたのかしらね」

 

 一定の距離を開けながら読書をしていた八幡へ雪ノ下が話しかける。

 

「いきなりなんだ?」

 

「今朝のニュース、街を破壊したのは偽物のウルトラセブンではないかという報道がされていたわ」

 

「そうか……」

 

「ウルトラセブンは正義の味方っていうことかしら?」

 

「ハッ、人の主観はそれぞれ異なる。片方が正義と言ったところで、相手も正義という、人の数だけ語る正義があるんだよ。ウルトラセブンは正義の味方っていうわけじゃない」

 

「じゃあ、何かしら?」

 

 微笑みながら問いかけてくる雪ノ下の言葉に八幡が告げようとした時。

 

「ヒッキー!」

 

 部室のドアが開いて笑顔の由比ヶ浜が八幡の腕を掴む。

 

「ほら、行くよ!」

 

「え?どこにだよ」

 

「ハニトー!」

 

「は?」

 

 頬を膨らませながら由比ヶ浜は八幡を引っ張る。

 

 グルジオキングになり二対一という不利な戦いをしていた少女とは思えないタフさだ。

 

「食べに行くって、約束!」

 

「そんな約束したか?」

 

「ほら、行こう!」

 

「わかった、わかったから引っ張るなって!」

 

「今日の部活はここまでにしましょうか」

 

 二人の姿を見て雪ノ下は部活終了を告げる。

 

「じゃあ、ゆきのんも行こうよ!」

 

「え、私も?」

 

「うん!ほら、三人で食べるって約束していたし!」

 

 そこでようやく八幡は思い出す。

 

「あぁ、惑星ボリスで約束していたことか」

 

「ほら!」

 

 由比ヶ浜に引っ張られながら八幡は部室を出る。

 

 少し遅れて雪ノ下も部室を出て鍵を閉めた。

 

 いつもと少し違う光景だが、これも悪くないと三人は思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇい!これで終わりだと思うなよぉぉぉぉ!私にはまだこれがあるのだからなぁ!」

 

 薄暗い部屋の中、ボロボロの愛染誠は怒りで顔を染めながら手の中にあるAZジャイロとオーブリングNEOを握り締める。

 

「これにはまだ、奥の手があるのだ……それに」

 

 愛染の視線は壁に設置されている計測器へ向けられる。

 

 計測器は上昇していく数値が表示されていた。

 

「最大の悪魔、そこに恐怖する人類を救う事こそ、ウルトラマンの意味……悪魔、お前を利用させてもらうぞぉぉぉぉぉぉぉ」

 

 雄叫びを上げる愛染誠だが、彼は知らない。

 

 自身の力が悪魔によって利用されていることを。

 

 彼の体からうっすらと緑色の粒子のようなものがちらついていたことを。

 



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第十二話:亡霊のレイオニクス

ピカチュウ版をやって以来のポケモン盾をやっていて、遅れたわけじゃないです。

今回、ゆきのんメイン?の話です。

かなり設定が捏造されている可能性があります。さらりと平成セブンネタが入っています。

アンケートの協力ありがとうございます。

結果については、あとがきで伝えます!


 

 

 闇の中、ソレは渇望していた。

 

 

 

――モット、だ、モット!

 

 

 

 肉体が消滅しながらもソレは望んでいる。

 

 自らの目的、自らの欲を果たすという事を。

 

 正常な判断をできる思考力を長い年月の間に失い、ただ、己の目的、野望の為だけを渇望している姿は怨念のようなものに捉えてしまうだろう。

 

「そうか、ならば、取引しないか?」

 

 暗闇の中、悪魔の使者が姿を現す。

 

 

――オマエハ、ナンダ?

 

 

「俺が誰だって、どうでもいいだろう?」

 

 悪魔の使者はささやく。

 

「お前は蘇りたいのだろう?」

 

 

――ソウダ、ヨミガエリタイ!オレハ、オレノモクテキノタメニ!

 

 

「肉体を失っても己の野望の為に生存を望むとは、面白い、あのお方が気に入るわけだ」

 

 にやりと悪魔の使者は笑う。

 

 彼の体から緑色の液体が零れ落ちる。

 

 液体は生き物のようにソレにまとわりついて、体を形成していく。

 

「器は出来上がった。後はお前次第ということだ、期待しているぞ?お前の執念を」

 

 満足したように去っていく悪魔。

 

 残された器に入っていく黒いモヤモヤしたもの。

 

 瞳が輝き、ソレは動き出す。

 

「さぁ、はじめよう……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、奇遇ね」

 

「奇遇だな」

 

 ショッピングモールの本屋。

 

 偶然にも比企谷八幡は雪ノ下雪乃と遭遇する。

 

「貴方も本屋へ用事?」

 

「あぁ、小さな本屋だと見つからなくてな」

 

 八幡の手の中には本があった。

 

 生物図鑑である。

 

「貴方、そんな趣味があったの?」

 

「まさか……ペガが家にあった図鑑を珈琲で汚しちまったから新しいのを小町に買ってくるように言われたのさ」

 

「体の良いパシリじゃない」

 

「おつかいといってくれ。そういう雪ノ下は何を買ったんだ」

 

「これ」

 

 雪ノ下が取り出したのは分厚いハードカバーの冊子だった。

 

「辺見芳哉というSF作家の新作よ……十年ぶりに出たという事で買いに来たの」

 

「十年って……お前、七歳の時からそんな分厚い本を読んでいたのか?」

 

「そうね、小さい頃から頭はよかったから」

 

 互いにレジで支払いを済ませて解散……にならなかった。

 

「どうせだから、近くの喫茶店でお茶でもしない?」

 

「俺は別に、帰って」

 

「お茶でもしない?」

 

 雪ノ下さん、NPCになる。

 

 同じ言葉を繰り返しながら絶対零度の眼差しでこちらへ向けてきた。

 

 断れば、凍らされてしまう。

 

 そんな恐怖に八幡は勝てなかった。

 

「わかったよ、お茶にしよう」

 

「美少女とお茶ができてよかったわね、幸福谷君」

 

「そのやり取り、久しぶりに感じるわ」

 

 呆れながら八幡と雪ノ下が喫茶店へ向かうとがやがやと楽しく談笑している若者たちと遭遇する。

 

「(おいおい、何だ、あれ?)」

 

 ボッチとしての観察眼で八幡は中心にいる女性が仮面をかぶっていることに気付いた。

 

 楽しそうに会話をして、皆から好かれてはいる。

 

 しかし、本心が全く見えない。

 

 ある意味、魔王のような存在感に八幡は驚きの表情を浮かべてしまう。

 

 その女性がこちらに気付くと笑みを浮かべて輪の中から抜け出してくる。

 

「雪乃ちゃん、久しぶりじゃん~」

 

「……姉さん」

 

「雪ノ下の姉か?」

 

「隣の人は彼氏かなぁ?妹がお世話になっています。雪ノ下陽乃でぇす。よろしくね?」

 

 笑顔を浮かべているがその目の奥は全くの光を映していない。

 

 こんな人間がいるのかと言葉が出ない八幡。

 

「行きましょう、比企谷君」

 

「へぇ、比企谷君っていうんだぁ、ねぇ、比企谷君、雪乃ちゃんのこと、よろしくね?姉として妹のことが心配だからさぁ」

 

「大丈夫よ、姉さん。そっちにも予定があるでしょうから私達はこれで失礼するわ」

 

「久しぶりの姉妹再会なのに、つれないなぁ、じぁあね?比企谷君」

 

 笑顔を浮かべて集団の中へ戻っていく雪ノ下陽乃。

 

 八幡は隣の彼女へ声をかけようとする。

 

 その時、八幡の肩へ雪ノ下は頭を乗せて、そのまま彼の手を掴んできた。

 

「ごめんなさい、しばらく、こうさせて」

 

 そういう雪ノ下の声は震えている。

 

「(俺の柄じゃないが……仕方ないか)あぁ、とにかく、近くの喫茶店へ行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい」

 

 雪ノ下雪乃は未だに過去に怯えている。

 

 姉という存在を語った宇宙人の為に本当の姉を前にしても震えてしまうのだという。

 

 それほどまでに姉の姿を模したゼットン星人の存在が心の奥深くに刻まれている。

 

 最後の戦いの直前に拒絶したとはいえ、長い時間行動していたことと、偽物とはいえ、姉として生活していたという事実と向き合うことが難しいのだろう。

 

「お前が悪いわけじゃない、あんなことがあったんだ。傷が癒えるのも時間がかかるだろう」

 

「本当は、私も前に進まないといけないと思っているの……でも、ダメね……」

 

 俯きながら彼女は紅茶に映る自分の顔を見た。

 

「貴方や由比ヶ浜さんが羨ましい」

 

「そんなことないぞ」

 

 雪ノ下の漏らした言葉を八幡は否定する。

 

「俺なんて、水をぶっかけられて目を覚ます、由比ヶ浜なんか、難民みたいな状態からのスタートだ。それに比べたら温かい食事などがでてきただけマシといえる」

 

「……慰めてくれているのかしら?」

 

「どうだろうな……ただ、出会い一つですべてが決まるってわけじゃないだろう」

 

「そうね。あれと出会って、その後に貴方達と知り合ったおかげで私は変わる切欠を得られた……」

 

「ほらな?一つの出会いですべてが決まらないだろう」

 

「屁理屈よ」

 

 苦笑している雪ノ下。

 

 先ほどまでの震えていた彼女ではなかった。

 

「でも、そうね」

 

 紅茶を一口、飲んで雪ノ下は微笑む。

 

「許されるなら、この幸せな時間を大切にしたいわ」

 

「それぐらい許せるさ」

 

 

 

――この広い宇宙で小さな時間を奪う権利など、誰にもない。

 

 

 続けて口から紡がれた言葉に雪ノ下は目を開く。

 

「その言葉、まるで彼みたいね」

 

「え?」

 

「何でもないわ」

 

 首を振りながら雪ノ下は紅茶を飲む。

 

 さっきまで感じていなかった苦さが雪ノ下の口の中に広がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ」

 

 雪ノ下雪乃は借りているアパートのベッドの上へ腰かける。

 

 あの戦いの後、元の地球へ戻ってきた雪ノ下は家を出ていった。

 

 出ていく際に持っていた少ない金を色々な手段で稼いで安いアパートだが、雪ノ下はそこで生活をしている。

 

 贅沢さえしなければ、生活はできた。

 

 ベッドの上に置かれているぬいぐるみを手に取る。

 

 彼女が自分のお金で買って、大事にしているぬいぐるみ。

 

 少し目つきの悪いネコのぬいぐるみを抱きしめた。

 

「私は、恋をしているのかしら?」

 

 ネコのぬいぐるみに顔をうずめながら雪ノ下は今日の出来事を思い出す。

 

 姉に会うという予想外のことがありながらも彼とお茶をしたのは良き思い出の一ページ。

 

 学校では対して気にならないのに外へ出ると妙にドキドキしてしまっていたのは秘密だ。

 

 緊張を悟られないようにしながら彼に誘いをかけてひと時の時間を楽しめた。

 

 しかし、途中で生まれた些細な疑問が雪ノ下の中に生まれている。

 

「私は、どっちを好きなのかしら」

 

 彼が漏らした言葉。

 

 あれと似たような言葉を雪ノ下は聞いたことがあった。

 

 緑豊かな惑星で自分よりも年上でありながら人間よりも純粋だった人。

 

「私は、彼を好きなの?それとも、あの人を好きなの?」

 

 生れた疑問に答えてくれるものはいない。

 

 そんな雪ノ下の不安に揺れる様に机に置かれているバトルナイザーが小さく明滅していることに気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩、学校にオバケが出るって話、知っていますぅ?」

 

 いつもの奉仕部……といわうけではなく、その日、一色いろはが来客していた。

 

 気の向くままに部室へやってきては色々な話をしてくる彼女に八幡はマッカンを飲みながら応対する。

 

「オバケ?進学校でオバケってどうなんだよ?」

 

「いやぁ、私もそう思ったんですけどぉ、何か、一年生の間で結構、噂になっているんですよ!」

 

 一色の言葉に由比ヶ浜が反応した。

 

「あ、それ優美子から聞いた!夜の学校に現れる鎧のお化けでしょ?」

 

「アホらし」

 

 八幡は呆れた声を漏らす。

 

「あのな、ここは日本、加えて科学が発展している時代だぞ?一昔前の木造建築の学校でオバケというのなら納得できるが……しかも、鎧?落ち武者じゃあるまいし」

 

「あれ、先輩は幽霊否定ですか?」

 

「……否定はしない、ただ、チグハグな話は信じない主義なだけだ」

 

 実際、肉体を失いながらも怨念だけで生き続けているヤプール人を目撃したことのある八幡は完全に存在しないと否定することは出来ない……ただし、この話があまりに信憑性がなさすぎるため、否定しているだけである。

 

「失礼するぞ!」

 

 その時、部室のドアが開いて平塚先生が入ってきた。

 

「平塚先生、ノックをしてくださいと何度言えば、わかってもらえるのですか?」

 

 小説を読んで我関せず貫いていた彼女の言葉に平塚先生は苦笑するだけで謝罪をしない。

 

 あ、改めるつもりないなぁと雪ノ下、八幡、一色は理解した。

 

「さて、奉仕部に私から頼みがある」

 

「先生からですか?」

 

 平塚先生からの提案に雪ノ下が疑問を浮かべる。

 

「そうだ、近頃、一年生の間でオバケという不確かな存在の噂が広まっている。なんでも夜の学校に現れるというそうじゃないか、一つ、調べてもらえないだろうか?」

 

「……それはこの部と無関係の話ではありませんか?」

 

「おや、雪ノ下は幽霊の類がダメな口か?」

 

「……バカなことを言わないでください。私はそんなものを信じていません」

 

「ほう、では、この幽霊騒動も何かしら理由があるということだな?」

 

「そうに決まっています」

 

「では、調べてもらおう!なぁに、学校の方の許可は私がとっておこう!」

 

「望むところです!」

 

「お、おい」

 

「では、頼んだぞ!」

 

 八幡が意見する暇もないままに奉仕部が幽霊騒動の調査をすることが決定してしまった。

 

「フフッ、お膳立てはしたからな?」

 

 部室を出た平塚先生が不気味な笑顔を浮かべたことに誰も気づかないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、こうなるかなぁ」

 

「うわぁ、夜の学校って不気味だねぇ、ヒッキー」

 

「どうして、ペガも?」

 

「諦めろ、一蓮托生だ」

 

 部屋で寛いでいたペガを無理やり参加させながら八幡は夜の総武高校の前へ来ていた。

 

「何だ?宇宙人なのに、夜が怖いのか?」

 

「そんなことないよう、お化けが怖いだけだよぅ」

 

 八幡の揶揄う言葉にペガは懐中電灯をブンブンと振り回す。

 

「何をしているの?行くわよ」

 

 三人が振り返ると巨大な懐中電灯を持っている雪ノ下がいた。

 

 しかも、ヘッドライトタイプのものまで装着している。

 

「ま、まぁ、そろそろ」

 

「先輩~~」

 

「まず、ペガ、隠れろ!」

 

「はわわ!」

 

 慌ててペガが八幡の影へ隠れる。

 

 少し遅れて、彼らの前に一色が現れた。

 

「一色さん、貴方、どうしてここに?」

 

「え?だってぇ、私も話を聞いていたし、参加する流れかなぁって」

 

「いや、そんなわけないだろ」

 

「えぇええ!でも、夜の学校って少し興味あるんですよ!それに夜道を女の子に帰らせるというのは危ないので先輩、送ってください。あ、これは告白とかそういうものではなくて、男子として必要な義務だと私は思いますので、ごめんなさい」

 

「え、何で俺、告白されたみたいになって振られているの?」

 

 呆然としている間に一色も参加メンバーとして学校へ入ることが決まった。

 

 四人プラスαという状態で彼らが足を踏み入れた瞬間。

 

 視界が歪み、彼らの意識は一時的に闇の中へ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!起きて、ヒッキー!」

 

「あん?」

 

 体を揺らされて意識を取り戻す。

 

 目を覚ますと心配そうにこちらをみている由比ヶ浜の姿があった。

 

 体を起こす。

 

「俺は……」

 

「あたし達、校舎へ入ったと思ったら……ここにいたみたい」

 

 周りを見渡すとごつごつした岩で構成された場所にいた。

 

「どこだろう、ここ」

 

「少なくとも校舎でないことは確かだな……」

 

 空を見上げる。

 

「携帯は?」

 

「ゆきのん達に連絡を取ろうとしたんだけど、ダメみたい」

 

「ペガ……もいないな、どうやら完全に分断されたか」

 

「どうしょう?」

 

「ここにいたって仕方ない……移動するか」

 

 幸いにも鞄の中に簡単なペットボトルとスナック菓子があるので少しはなんとかなるだろう。

 

「持ってきておいてよかった非常食ってか」

 

 しかし。

 

 八幡は鋭い目で周囲を睨む。

 

 何者かの悪意が絡んでいる。

 

 他の皆の安否を気遣いつつも八幡と由比ヶ浜は歩き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅぅぅ、八幡~、どこいったのさぁ」

 

「私、宇宙人と一緒に歩いているなんて」

 

 その頃、ペガと一色は一緒に行動していた。

 

 目を覚ました一色は傍に転がっているペガに警戒していたのだが「あ、キミがあざとい後輩ちゃん?」という最初の言葉から笑顔でお話が始まり、今は“一応の友好関係”が築かれている。

 

 戸惑いながら懐中電灯を構えているペガの姿を見ながら一色はペガの後姿をみていた。

 

「(先輩が何かを隠しているとは思っていたけれど、まさか、宇宙人と一緒に生活していたなんて、由比ヶ浜先輩や雪ノ下先輩は知っているのかな?それにしても、宇宙人と一緒にいる先輩って、何者?)」

 

「あれ、いろは、どうしたの?」

 

「うわ、気安いなぁ」

 

「え?駄目だった?」

 

「まぁ、良しとしますか、ペガ君、なに?」

 

「えっと、こういう事態でやけに冷静だなぁって思って」

 

「うーん、前に魚眼の化け物に襲われたからかなぁ」

 

「魚眼って、ダダのことだよね?」

 

「そういうの?あれ、何でペガがダダのこと知っているの」

 

「だって、僕も一緒にいたんだよ?八幡の影の中に」

 

「えぇ!?」

 

 ペガの告白に驚きの声を上げる一色。

 

 ダークゾーンの力をみせるペガ。

 

「うわぁ、何か根暗が入っていそう」

 

「……」

 

 さり気ない一色の一言に傷ついたペガだった。

 

「さ、どこかにいるはずの先輩を探しに行きましょう!色々と教えてもらわないと!」

 

「うぅ、八幡~」

 

 先を歩く一色に続く形でペガも岩場から移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここはどこなのかしら」

 

 独りだけ岩場のような場所から移動をする雪ノ下。

 

 校舎へ入ろうとしてこんな場所に転移されたということで警戒をしている。

 

「こんなことをできるのは地球人じゃない……そう考えると」

 

「その通り、私がキミをここへ呼び寄せたのさ」

 

 聞こえた声に雪ノ下は振り返り、目を見開く。

 

「貴方は……」

 

 不気味に輝く瞳を揺らしながらにやりと相手は笑う。

 

「また会えたな、ゼットン星人の右腕ぇ」

 

「バット星人……」

 

 触覚宇宙人 バット星人。

 

 別宇宙の征服を狙う邪悪な宇宙人であり、そのために邪魔な光の国の宇宙警備隊を潰すべく最強艦隊を率いて、長期戦争を起こしたほどの野望を秘めた宇宙人。

 

 尤も光の国へ侵略する計画はウルトラマンやゾフィーをはじめとするウルトラ兄弟によって失敗に終わった。

 

 そして、雪ノ下の目の前にいるバット星人。

 

「貴方、レイオニクスのバット星人ね」

 

「覚えていたかぁ、じゃあ、コイツのことは覚えているかぁ!」

 

 バット星人の背後から大きな音を立てて現れる巨大な影。

 

 灰色の体にゆらゆら揺れる銀の角、顔らしき部分は黄色い光が点滅を繰り返している。

 

「ゼットン……」

 

「そう、俺様が用意した最強のゼットン!いや、そのはずだった」

 怨念の言葉を吐きながら目を見開いて動かない雪ノ下の周りをバット星人が歩く。

 

「あの時、小惑星で最強のレイオニクスになるために邪魔なお前とゼットン星人を抹殺しようとした。しかし、俺とこのゼットンは負けた!ありえるか!バット星の誇る科学技術こそが宇宙で一番ゼットン育成に適しているのだ!なのに、野生のゼットンに俺の作り出した最強のゼットンが負けたことが信じられない!だが、俺は悪魔と取引をした」

 

「何を言っているの……」

 

 狂った笑いをするバット星人に雪ノ下は恐怖して後ろへ下がる。

 

 元から侵略者であり宇宙のすべてを支配すると妄語していた連中の一人。だが、明らかに前出会った時よりも狂気が増しているように感じられた。

 

「さぁ、戦おうじゃないか!お前の怪獣を出せぇ!」

 

 瞳をギラつかせながら手の中の刃物を振り回すバット星人。

 

 いきなりのことで座り込む雪ノ下。

 

 それが彼女を救った。

 

 振るわれた刃が空を切る。

 

 座り込んだ雪ノ下へ緑色のオーラのようなものを放ちながらバット星人が刃を振り下ろす。

 

 瞬間。

 

「なにぃぃ!?」

 

 音を立てて折れる刃。

 

 雪ノ下の前にオーラを放ちながら浮いているバトルナイザーの姿がそこにあった。

 

「バトルナイザー……」

 

 鞄から飛び出したバトルナイザーが雪ノ下を守ったのである。

 

「えぇい!忌々しい!ゼットン!こいつらを踏みつぶせ!」

 

「ブモォォォォォ!」

 

 牛のような唸り声を上げながらゼットンがゆっくりと雪ノ下を踏みつぶそうと迫る。

 

 何かが飛び出そうとするように震えるバトルナイザーをみて、雪ノ下は咄嗟に掴んだ。

 

「駄目!」

 

 必死に押さえつけるようにしながら逃げるために走り出す。

 

 そんな彼女を笑う様にゼットンが踏みつぶそうと迫った時。

 

「行け!ウインダム!」

 

 眩いスパークと共に銀色の鳥類を連想させる怪獣が出現してゼットンへタックルする。

 

 突然のことにゼットンは対応できずに地面へ倒れた。

 

 大きな衝撃と揺れが近くにいた雪ノ下とバット星人を襲う。

 

「ぬぐわぁ!?」

 

 衝撃で派手に地面へ倒れるバット星人。

 

 不意打ちしたカプセル怪獣 ウインダムは倒れたゼットンへ圧し掛かる。

 

「頼んだぞ!ウインダム!」

 

 どこからか聞こえた声、間違えるわけがない。

 

 雪ノ下は宙に浮くバトルナイザーを掴んだまま走り出す。

 

「逃がすかぁああああああああ!」

 

 怨念の籠った声を上げながら追いかけようとするバット星人。

 

 ゼットンと戦っていたウインダムが上半身を回転させながらレーザーショットを放つ。

 

「ぬぉう!?」

 

 乱射されたレーザーショットの一つがバット星人へ直撃する。

 

 体の半分を焼かれるバット星人だが、緑色の光と共に体が復活した。

 

「逃がしたかぁああああ」

 

 再生した体で雪ノ下を追いかけようとした時、彼女の姿はどこにもなかった。

 

 怒りに染まりながらバット星人は暗い空に怨念の声をあげる。

 

 ゼットンに不意打ちしたウインダムはいつの間にか姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒッキー!ほら、急がないと!」

 

「慌てるなって、転ぶぞ?」

 

「子供じゃないし!わっとと」

 

「ほら、言わんこっちゃない」

 

 倒れそうになる由比ヶ浜の腕を掴んで引き戻す八幡。

 

「ミュー粒子を通して困惑、悲哀の感情が伝わってくる。おそらく、あっちに雪ノ下がいる」

 

「それを先に言うし!」

 

――それを話す前に飛び出したのはお前なのだが、といいそうになる口を必死に抑える。

 

「あぁ(だが、雪ノ下の近くに漂う激しい憎悪のようなものはんだ?背筋が凍り付いてしまうような)」

 

 体が震えたような気がして八幡は両腕をさする。

 

 彼女の身を案じながら自然と足早に岩場を進んでいく。

 

「由比ヶ浜、下がれ!」

 

「え、きゃああ!」

 

 由比ヶ浜の腕を掴んで下がる八幡。

 

 呆然としている目の前で起こる爆発。

 

 咄嗟に由比ヶ浜の頭を抱えるようにして岩の上を転がり落ちていく。

 

 勢いが衰えたところで八幡は抱きしめている由比ヶ浜へ声をかけようとする。

 

 その前にものすごい勢いで離れる由比ヶ浜。

 

 顔が真っ赤だった。

 

「由比ヶ浜、大丈夫か?」

 

「うん……一体、何が」

 

 その時、二人の周囲を赤いガスが漂い始める。

 

「奴だ」

 

 八幡の視線は岩場から顔を出している赤い体皮の怪獣へ向けられていた。

 

 怪獣は口から赤いガスを吐き出す。

 

「吸い込むな」

 

 由比ヶ浜の口を咄嗟に抑えながら八幡は腰のピルケースから小さなカプセルを一つ手に取る。

 

「行け!ウインダム!」

 

 カプセルを空に向かって投げる。

 

 爆発と閃光が起こりながら赤い怪獣の目の前にカプセル怪獣 ウインダムが姿を現した。

 

「頼んだぞ、ウインダム!」

 

 駆け出したウインダムの姿が消える。

 

「なに?」

 

 戸惑う八幡。

 

 しかし、どこからかウインダムの声が聞こえていた。

 

「どういうことだ……ウインダム、戻れ!」

 

 光と共に八幡の掌の上にカプセル怪獣の入ったカプセルが戻って来る。

 

 ピルケースへ戻した時、八幡は気づく。

 

「そうか、四次元空間だ」

 

「へ?」

 

「忘れたのか?俺達は、一度、経験をしているぞ」

 

「……あぁ!」

 

 由比ヶ浜は思い出す。

 

 とある惑星で遭遇した怪獣のことを思い出す。

 

「え、じゃあ……」

 

「前に使った方法で脱出するぞ、手伝ってくれ」

 

「手伝う……うん!」

 

 由比ヶ浜はポケットからクリスタルとジャイロを取り出す。

 

 八幡はウルトラアイを取り出して装着する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下は呼吸を整えるために立ち止まる。

 

 後ろを見るもバット星人の姿はない。

 

「あれは比企谷君のカプセル怪獣……光はあっちへ向かっていったから、そこへ行けば」

 

 ふと、雪ノ下は立ち止まる。

 

「そこへ行って、どうするというの?」

 

 何かあれば、彼に頼ればいい。

 

 当たり前のようにそう考えていた自分に気付いてしまう。

 

「いつから、こんなに私は弱くなったの?」

 

 今まで誰かに甘えるという事をしてこなかった。

 

 姉のように何でもできるようになりたい。

 

 必死に頑張ってあの背中に追いつこうとしていた自分が誰かに頼る、否、すがろうとしていた事実に雪ノ下は気づいてしまう。

 

 頼るのはまだわかる。しかし、縋ってしまうのは違う。

 

 それは弱さだ。

 

 雪ノ下は彼に縋ろうとしていたことに酷く嫌悪した。

 

 

――俺は本物が欲しい。

 

 最後の戦いの前の日の夜。

 

 語り合っていた時の彼の言葉を思い出す。

 

 あの時、自分は何を望んだ?

 

「そうだ、私は」

 

「見つけたぞぉォぉ」

 

 地面の底から響くような声に雪ノ下は振り返る。

 

 ブンブンと刃を振り回しながら近付いてくるバット星人。

 

「何だぁ、逃げるのをやめたのか」

 

「逃げない……いいえ、本当は逃げたいわ」

 

 恐怖に震えそうになる手を抑えながら雪ノ下は顔を上げる。

 

「でも、決めたの……私は強くなる。強くなって彼や由比ヶ浜さん、大切に思える人たちの為に力を使えるようになりたい……私は、そう決めたの」

 

「フン、下らん。ゼットォン!叩き潰してしまえ!」

 

 唸り声を上げながら現れるゼットン。

 

 雪ノ下を踏みつぶそうと迫るゼットン。

 

『させない!』

 

 横からグルジオキングに変身している由比ヶ浜がタックルした。

 

「由比ヶ浜さん!」

 

『ゆきのん!大丈夫!?』

 

 雪ノ下の姿を見つけて手を振るグルジオキング。

 

「ブモォォォォォ!」

 

 殴られて怒ったゼットンが唸りながらグルジオキングの腹を蹴り飛ばす。

 

『うわっ!もう痛いじゃない!』

 

 戦いをはじめるゼットンとグルジオキング。

 

 バット星人は乱入してきたグルジオキングの姿にいら立ちの声を上げる。

 

「えぇい、こんなところで……だが、ここにはまだ」

 

 バチンと空に亀裂が入る。

 

「ま、まさか!」

 

 割れた空の向こうから青と赤の奇抜なデザインをした物体が地面へ落下した。

 

 続けて、降り立つのはウルトラセブン。

 

 四次元怪獣ブルトンはバチバチと体から火花を散らして瀕死の状態だった。

 

「バカな!どうやってブルトンを」

 

「そういうことね、ブルトンが相手だとわかったのなら対処法は簡単よ」

 

 動揺を隠せないバット星人へ雪ノ下が冷静に告げる。

 

 雪ノ下達はブルトンに遭遇したことがあった。その時、ウルトラマンの超能力によってブルトンの四次元空間から脱出したことを思い出した八幡はウルトラセブンに変身。

 

 ウルトラセブンの超能力によってブルトンへ大ダメージを与えたのである。

 

 一目で理解した雪ノ下にバット星人は苛立った声を上げた。

 

「えぇい、ならば、直接、俺が貴様を潰せばよいだけのことだぁああああ!」

 

 怒りの声を上げながら雪ノ下へ迫るバット星人。

 

「舐めないで」

 

 直後、雪ノ下の瞳が輝いた。

 

 衝撃を受けて地面に倒れるバット星人。

 

「なっ、何が……」

 

 ふらふらと起き上がったバット星人がみたのは雪ノ下の傍を浮遊している【バトルナイザー】。

 

 浮遊しているバトルナイザーを雪ノ下は掴む。

 

「思い出したの、私は向き合うと……だから、貴方とも向き合いたい」

 

 バトルナイザーは雪ノ下の感情に応える様に胎動する。

 

「だから、お願い、力を貸して」

 

【バトルナイザー!モンスロード!】

 

 バトルナイザーが輝き、そこから光が空へ飛び立ち、やがて、雪ノ下の傍に黒い巨体が降り立つ。

 

 宇宙恐竜 ゼットンである。

 

 バット星人が用意したゼットンよりも少しスリムで余分な改造をされていないシンプルな個体。

 

 しかも、ただのゼットンではない。

 

 別宇宙で初代ウルトラマンを倒したといわれる“あのゼットン”である。

 

 怪獣墓場で漂っていた魂をゼットン星人が回収、新たな肉体を与えて生み出した最強の個体だ。

 

「貴方に教えてあげる。ゼットン使いの実力っていうものを」

 

 赤い瞳を輝かせながら雪ノ下雪乃はバトルナイザーを握り締める。

 

「えぇい、バット星人の生み出したゼットンこそが最強なのだ!こんな個体など!」

 

 怒りに体を震わせながらゼットン(初代)へ攻撃を仕掛ける。

 

 瞬間移動してバット星人の目の前から消えた。

 

「ぬぅ!?」

 

 背後に回り込んだゼットン(初代)に肩を掴まれて宙に持ち上げられる。

 

 足をジタバタさせるバット星人を地面へ叩き落す。

 

「うぅぅぅ、おい!俺を助けろぉぉぉぉぉ!」

 

 バット星人の指示を受けて瞬間移動したゼットン(二代目)がゼットン(初代)へ襲い掛かる。

 

「ブモォォォォォ!」

 

「ゼットォォォォン!」

 

 瞬間移動を繰り返す二体のゼットン。

 

 しかし、僅かな差で二代目が初代の後ろへ回り込んで背後から右腕に装着されているゼットンナパームを放つ。

 

 攻撃を受けたゼットン(初代)は地面へ倒れる。

 

「うっ!」

 

 雪ノ下は背中を抑える。

 

 彼女はゼットンとリンクしており、命と痛みを共有している。そのため、ゼットンがダメージを受ければ雪ノ下もダメージを受けてしまう。最悪、命を落とす危険性もあるのだ。

 

「ふはははは!所詮はどこにでもいるゼットンの個体よ!我がバット星の科学力で強化されたゼットンにかなうものか!」

 

「舐めないでもらえるかしら」

 

 冷めた声で雪ノ下がバット星人を見上げる。

 

「私と共に戦ってきたゼットンがたかが“科学力で強化”された程度で負けるなんて思わない事ね」

 

 直後、音を立ててゼットン(二代目)が地面へ叩きつけられる。

 

 ぶるぶると体を揺らしながら見下ろすゼットン(初代)

 

 見下したような姿にバット星人は怒りで震える。

 

「ふざけ――」

 

「お遊びはここまで、ゼットン」

 

 雪ノ下は指示を下す。

 

「焼き払いなさい」

 

「ゼットォォォン」

 

 彼女の指示を受けたゼットンは両手を前に伸ばして一兆度の火球が放たれる。

 

 咄嗟にゼットン(二代目)がバリアを展開した。

 

 ウルトラマンの八つ裂き後輪を粉砕するほどの強度を持つバリアならば、どのような攻撃であろうと耐えられる。

 

 そう、普通の攻撃であれば。

 

「バカな……」

 

 信じられない、と言葉を漏らすバット星人。

 

 数えきれないレイオニクスの使役する怪獣を倒した雪ノ下のゼットンの技は本来のゼットンのスペックを圧倒的に上回っている。いくらバット星の科学力で強化されているとはいえ、大きな差があるのは当然といえる。

 

 バリアごと消滅するゼットン(二代目)

 

「こんなことが」

 

 動揺を隠せないバット星人。

 

 戦意喪失していることは明白だった。

 

 バット星人をどうするか雪ノ下が考えていた時、バット星人に異変が起こる。

 

「ググゥゥゥゥゥゥ!」

 

 苦悶の声を上げたバット星人。

 

 体から緑色の粒子を吹き出しながら体が変貌する。

 

「グルルルルルルルル!」

 

 不気味な異形といえる姿になったバット星人。

 

 唸り声を上げながら雪ノ下へ襲い掛かろうとするが。

 

 左右からウルトラセブン、グルジオキングが攻撃を仕掛ける。

 

 阻まれたバット星人が暴れる中、ウルトラセブンがエメリウム光線を撃つ。

 

 バット星人の体をエメリウム光線で貫かれる。

 

 続けてグルジオキングの放ったギガキングキャノンがバット星人の体を粉々に砕く。

 

 肉片すら残さないという風にゼットンが波状光線を放つ。

 

「戻って……いいえ、戻りなさい、ゼットン」

 

 バトルナイザーを向けて告げる雪ノ下。

 

 ゼットンはカード状の光に包まれてバトルナイザーへ収納される。

 

 雪ノ下は小さく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の奉仕部。

 

「昨日のアレ、何だったのかなぁ?」

 

「平塚先生は何も覚えがないそうよ」

 

「まぁ、考えられるならあのバット星人の仕業だろう」

 

 奉仕部に集まっている三人。

 

 話の内容は当然のことながら昨日のバット星人の陰謀。

 

 由比ヶ浜は隣の雪ノ下へ問いかける。

 

「ゆきのん、大丈夫?」

 

「……少し、怖いけれど……大丈夫よ」

 

 震える声で雪ノ下は鞄の中にあるバトルナイザーをみた。

 

 久しぶりにバトルナイザーを解放した際に雪ノ下はほんのわずかだが、レイオニクスの闘争本能に支配されかけたという。

 

 同時に嘗ての冷酷なゼットン星人の右腕に戻っていたらしい。

 

 あの時は色々な感情の流れの末にバトルナイザーを使用することを決めたそうだが、向き合うことはまだまだ時間がかかりそうであるというのが本人談だ。

 

「さて、問題がそろそろ来るぞ」

 

 八幡がぽつりと漏らした時。

 

「先輩ィィィィィ!失礼します!」

 

 ドアを乱暴に開けて入ってきたのは一色いろは。

 

 あの後の騒動でペガと共に元の世界へ戻ってきたのだが、疲れていて話をいなしながら三人は帰宅したのである。

 

「(やはり、諦めなかったみたいだな)」

 

「さぁ、先輩!昨日はうやむやにされましたけど、そうはいきませんよ!ペガのやりとりはスマホに録画していますし!遠くですが、由比ヶ浜先輩が怪獣になったところを見ています!ですから、隠していることを話してください!」

 

「……っていっているが、どうする。二人とも?」

 

 八幡は雪ノ下や由比ヶ浜へ問いかける。

 

 ここで惚けたところで変な事に首を突っ込まれても困るので八幡は話すことを二人へ提案した。

 

 あの時の話は八幡一人が勝手に話してよいものではない。

 

「あたしは、別に大丈夫かな」

 

「……一色さん」

 

 鋭い目でみられて一色は身構える。

 

「これから話す話はウソ偽り、そういうものではないわ。他言無用してほしくない話もあるし、何かあれば私が徹底的に貴方を潰すから、その覚悟があるのなら、座ってもらえるかしら」

 

「……別に、あの時のことは些細な夢のようなものだと思って出ていくこともできるぞ」

 

 フォローするつもりで八幡は一色へいう。

 

 彼なりに一色を気遣っての言葉だった。

 

「聞きます!私、先輩達が隠していることを知りたいです」

 

 真剣な表情で一色は椅子を取って座る。

 

「話を聞くってことだな?」

 

「はい!」

 

「そう……じゃあ、教えてあげるわ」

 

「あたし達が体験した、ギャラクシークライシスを」

 

 




アンケートの結果、過去話を書くことになりました。

次回から三人のそれぞれのはじまりを書きます。

そこまで長くはならない。




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過去編:宇宙のぼっち

過去編第一弾、一回目は彼からです。


 

「(俺、死ぬのかな?)」

 

 体の全身が凍り付いていく。

 

 徐々に体温が奪われていくことが俺に死というものを明確に意識させた。

 

 何でこんなことになったのだろうか?

 

 今日は高校の入学式。

 

 少し早めに家を出たことが悪かったのかわからない。

 

 車道に飛び出した犬を助けようとしてリムジンに激突したと思った直後、空に黒い渦のようなものが現れた。

 

 事態を理解する暇もないまま、その黒い渦に俺と他の人達が吸い込まれた。

 

 途中でバラバラになった後、俺はこの闇の空間に放り出される。

 

 呼吸も出来ず、体の体温が奪われていく。

 

 この黒い世界でぼっち一人が死んだとして、誰が気付くだろうか?

 

 いいや、気付くわけがない。

 

 こんな闇の中で俺の意識など、小さすぎる。

 

 誰にも気付かれないまま死ぬのだ。

 

「(嫌だ)」

 

 死にたくない。

 

 俺がいなくなっても小町や家族以外に悲しむ奴はいない。むしろ、俺が死んだとしても覚えてくれる人などいないだろう。

 

 だが、俺は死にたくない。

 

 まだ、何もできていない。

 

 何も見つけていない。

 

 やりたいことも、

 

 好きだといえることも、

 

 何も見つけていないのに、こんなわけのわからないところで死にたくない。

 

 そうだ、俺は死にたくないんだ!

 

「ぁ……ぁああ」

 

 突如、目の前で赤い光が現れる。

 

 視界一杯に広がる赤い光はこちらにやってくるとそのまま俺を包み込んだ。

 

「(温かい)」

 

 赤い光の中に包まれて、俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――キミの願いは通じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブッ!」

 

 再び意識を取り戻した時、顔いっぱいに水をかけられた。

 

「ベッ、べっ!」

 

「あ、目を覚ました」

 

「一体、何が……」

 

 戸惑いながら俺が周りを見ると、白い衣服を纏った少女と目が合う。

 

「お兄ちゃん、目を覚ましたよう~!」

 

 金髪の少女は笑顔を浮かべる。

 

 近くで波の音が聞こえた。

 

 体を起こすとどうやら海岸近くの岩場の上で寝ていたらしい。

 

「って、うぉぉおおおお!?」

 

 目の前でこちらをみている巨大な生き物の姿に気付いた。

 

「な、なんだ、これ!?」

 

「ティグリスだよ?私の友達!」

 

 少女が笑顔を浮かべて手を振ると嬉しそうな鳴き声を上げてティグリスという怪獣が応える。

 

 見た目は獅子の姿をしていて恐怖しそうになったが、少女の言葉に目を細めて嬉しそうにしていた。

 

「か、怪獣!?」

 

「もしかして、お兄さん、旅人?怪獣を見るのはじめて?」

 

「そ、そんなの当たり前だろう、地球で怪獣がいたなんて、聞いたことがない」

 

「チーキュ?なにそれ?」

 

 きょとんと首をかしげる少女。

 

 その仕草で俺の頭に嫌な考えが過ぎる。

 

「ウソ、だろ」

 

 何気なしに空を見上げた俺は気づいた。

 

 太陽が二つ、宙に浮いている。

 

 これが夢とかそういうもでないというのなら。

 

「ここ、地球じゃないのか?」

 

 宙に浮かぶ二つの太陽を見ながら俺は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、じゃあ、お兄ちゃん、ここがどこだか知らないんだ?」

 

「あぁ、気付いたらここにいた」

 

 あの後、少女と一緒に海岸から移動して森の中を歩いていた。

 

 何でも彼女の住む村が近くにあるのだという。

 

 歩きながら話を聞いている。

 

「旅人さんにしては服装が身軽だからおかしいと思ったけど、じゃあ、お兄ちゃん、迷子?」

 

「うぐっ、この年で迷子とっていわれると色々とクルものがあるが、そうなるだろうな」

 

「ふぅん」

 

 抱えている荷物を背負いなおしながら少女は相槌を浮く。

 

 森に生える植物は地球に育つものと似ているが、異なるものばかりだ。

 

 空に浮かぶ二つの太陽からして、地球ではないだろう。

 

 何より、この少女が纏っている衣服。

 

 ギリシャ神話の映画とかでみるような白い衣服を着ている。

 

 確か、ヒマティオンだったか、トーガっていうものに似ていた。

 

「こっちだよ!」

 

「なぁ、さっきから歩いてばかりだが、どこへ向かっているんだ?」

 

「私の住まい!」

 

「あの怪獣は?」

 

「ティグリス?ティグリスは森が住まいなの」

 

「ふぅん」

 

 彼女の話を聞きながらたどり着いた場所。

 

 それは。

 

「円盤?」

 

 目の前にあるのは朽ちた円盤。

 

 何十年もそこに放置されてきたのだろうか?とこどころさび付いてボロボロである。

 

「ようこそ!私の住まいへ!」

 

 笑顔を浮かべる少女を前に、俺は何も言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、お兄ちゃんの名前は?」

 

「比企谷八幡だ」

 

「長い名前だね!私、イエリ」

 

「比企谷が名字で八幡が名前だ」

 

「ミョージ?それ、なに?」

 

「家族の名前みたいなものだ」

 

「カゾク?それ、なぁに?」

 

「知らないのか?お前、育ててくれた人はいないのかよ」

 

「ティグリスが教えてくれた!」

 

「ティグリスって、あのでかい怪獣か?」

 

「ティグリスはこの星の守り神!私、この容器の中にいたんだけど、ティグリスが色々と教えてくれたの」

 

 イエリが後ろにある小さなカプセルのようなものを指す。

 

「よくわからないけれど、カプセルの中にいた私をティグリスがみつけて、それから色々と教えてくれたんだ!」

 

「そうか」

 

 あの怪獣、見た目と違って、優しいということなのだろうか。

 

「ヒキガヤハチマンはどうして、ここに?」

 

「八幡でいい。俺は、そうだな……気づいたらここにいた。元々は地球という星に住む学生だ」

 

「ガクセイ?」

 

「毎日、集団で勉強をしたり団体行動という面倒なことを強いられるところだよ」

 

「楽しそう!」

 

 俺の言葉にイエリは目を輝かせる。

 

 そういえば、ティグリスに教えられたといっていたが、他に人間はいないのだろうか?

 

「なぁ、イエリ」

 

「なに?」

 

「ここにお前以外の人っていないのか?」

 

「うーん、いるよ?いるけど、戦ってばっかり」

 

「戦って?」

 

「うん、りょうどとか、そういうものをとりあっていて、戦っているの」

 

「そうか」

 

 どういう世界なのかわからないが、イエリ以外の人間と接触する時は注意した方がいいのかもしれない。

 

 争ってばかりの野蛮人みたいなのに遭遇したら俺の身が危なくなる。

 

「そろそろ、寝よう?明日も早いから」

 

 イエリは毛布みたいなものを取り出して横になる。

 

 そのまま寝るのかと思うと小さなスペースを作ってぽんぽんと叩く。

 

「?」

 

「ほら、ハチマンも寝よう?夜は冷えるよ」

 

「あ、いや、俺は」

 

「ほら!」

 

 腕を掴まれて毛布の中に押し込まれてしまう。

 

「暖かいねぇ」

 

 小さな毛布に子供と高校生になり立ての男が二人っきり。

 

 日本なら問題になる案件だ。

 

 しかし。

 

「スゥ……スゥ……」

 

 目の前で気持ちよさそうに寝ているイエリを前にしているとそんな考えがバカらしく思ってしまう。

 

 それだけ、イエリが俺に心を開いてくれているからだろうか?

 

 勘違いだと判断してそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、早朝と同時に海へ潜ることになるなんて」

 

 イエリは朝に漁をして食事を確保しておくらしい。

 

「うわぁ、カラフルな魚、食えるのか?」

 

「食べられるよ!おいしいんだから」

 

 俺の横で片手に数匹のカラフルな魚を捕まえている少女がいた。

 

 無人島でも生活できるぞ、この子。

 

 俺は岩の上に脱いでいる服を手に取った。

 

「あん?」

 

 胸ポケットから赤い何かが落ちた。

 

 手に取るとそれは赤いメガネのようなもの。

 

 不思議と太陽のようなポカポカした温かいものを感じる。

 

「これはウルトラアイ、太陽エネルギーを吸収したアイテム」

 

 驚いた顔をして、俺は周りを見た。

 

 頭の中にすらすらあと浮かんできた言葉に戸惑う。

 

 何で、俺はこれを知っているのだろうか?

 

 はじめてみた筈のものなのに。

 

「ハチマン~?どうしたの?」

 

「あぁ、いや、何でもない」

 

 上着の胸ポケットへアイテムを仕舞う。

 

「何かあったの?」

 

「いいや、何もない」

 

 浮かび上がった不安を消し飛ばすようにしながら俺はイエリの傍へ戻っていく。

 

 こうした生活が数日、続けていると人間というのは慣れてしまうらしい。

 

 イエリと一緒の毛布の中に入ることすら当たり前になっていた。

 

 小町以外の異性とここまで触れ合う事がなかったから戸惑いもあったのだが、いつの間にか慣れていく。

 

 慣れって怖いなぁと心から思う。

 

 今日くらいは変な夢をみずに眠りたい。

 

 そう考えながら俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、夢を見ていた。

 

 夢の中で俺は別人になっていて、昆虫の姿をした怪物や獣のような怪獣と戦っている。

 

 ただ、ただ、流れるのは戦いの記録。

 

 しかも、自分ではない別の人間からの視点からのものである為にまるでTVドラマをみているような気分だ。

 

 しかも、結末は決まって同じ。

 

 満身創痍の状態で赤い双頭の怪獣と戦って勝利する。

 

 そこで俺の夢は終わるのだ。

 

 一体、俺はどうしたというのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広い宇宙。

 

 人類が住む地球以外にも多くの星系が存在し、未だ遭遇したことのない多くの知的生命体が存在する。

 

 中に友好的な存在もいるだろう、しかし、高度な科学力で他の惑星を支配しようともくろむ者達、いわゆる“侵略者”がいた。

 

「文明レベルは……フン、とても低いな」

 

 ある一隻の宇宙船が青い惑星へ近づいていた。

 

 船の中で宇宙人はその星の文明レベルを調べて、表示された結果は彼らの文明よりもとても低いことがわかる。

 

 自分達よりも劣る文明レベルであることに宇宙人は見下した笑いを漏らす。

 

「まぁ、ここならレベル上げにもってこいだろうな」

 

 不敵な笑いを漏らしながら宇宙人の視線は机に置かれた一つのアイテムへ向けられる。

 

 青と白の長方形のアイテム。

 

 これから起こることを想像しながら宇宙人は笑みを浮かべながら目の前に広がる星を見下ろす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん?」

 

 いつものように海岸で漁を手伝っていた俺は奇妙な気配のようなものを感じて周りを見る。

 

「ハチマン、どうしたの?」

 

「あぁ、何でもねぇよ、多分っぅ!」

 

 頭痛がして額を抑える。

 

 何だ?

 

「大丈夫!?」

 

 イエリが慌てた様子でこちらへやってくる。

 

「気分が悪いなら帰る?」

 

「そうだな、どちらにしても、漁は終わったし、帰る方向で」

 

「お?こんなところに人がいるぞ?」

 

 森の方から武装した集団が現れる。

 

 映画とかでみるような甲冑姿で腰に剣をぶら下げていた。

 

「あ、ガキかよ」

 

「よくみろよ。まだ幼いが育ちゃ、良い線いくんじゃねぇか」

 

 あぁ、これはよくないパターンだ。

 

 武装した連中は邪な目でイエリをみている。

 

 イエリは見た目の年齢(多分だが、十歳未満?)でも美少女に分類されるだろう。

 

 この連中がどういう考えを持っているかわからないが、少なくとも良くない事が起こりそうなことは嫌でも分かる。

 

「イエリ、すぐに」

 

「お前は邪魔だな、死ね」

 

 え、躊躇いとかなし?

 

 腰の剣を抜いて近付いてくる男達。

 

 逃げようにも足が震えて動かない。

 

「ハチマン!」

 

 イエリの悲鳴が後ろから聞こえる。

 

 男が下劣な笑みを浮かべながら剣を振り下ろしてきた。

 

 あれ?

 

 目の前でゆっくりと振り下ろされる剣、死ぬ間際は何もかもスローモーションになると聞いたことがあるけれども、ここまで遅いものなのか?

 

 躱すことができるぞ。

 

 ひょいと横に避けるけれども、まだスローモーションが続いていた。

 

 これ、殴ったら効くんじゃない?

 

 そう考えた俺は拳を作って殴る。

 

 喧嘩などしたことがないからへなちょこパンチだが。

 

「へ?」

 

 繰り出した拳を受けた男が数メートルほど吹き飛んだ。

 

 文字通り、吹き飛んだのだ。

 

「は?」

 

 間抜けな声を漏らしたのは俺だけではなかったようだ。

 

 吹き飛んだ仲間もぽかんとした表情で後ろを見ている。

 

「ぐ、ふぅ」

 

 殴られた男の兜はどこかに吹き飛び、鼻からドバドバとおびただしい量の血が流れていた。鼻、折れていませんよね?

 

 拳を突き出した状態で呆然としていた俺の前で他の仲間達は恐れをなしたのか、倒れている仲間を連れて森の中へ消えていく。

 

「えっとぉ」

 

「ハチマン!大丈夫!?」

 

 呆然としていた俺の腰にイエリが抱き着いてくる。

 

 衝撃で倒れた俺の上にのしかかるようにしてイエリが頬や鼻をぺたぺたと触ってきた。

 

「おい、大丈夫だって、てか、重たい、離れろって」

 

「心配した!ハチマンが死ぬんじゃないかって!」

 

「いや、俺も死ぬかなぁって思ったんだが……どうなっているんだ?」

 

 驚きながら自分の手に触れる。

 

 見た目は何ら変わらない、普通の手だった。

 

「おい、いつまで泣いているんだ?」

 

 服の上で泣きじゃくるイエリへ問いかける。

 

 俺の服、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってんだけど。

 

「だって、だって、ハチマンが死んじゃったら、死んだら……」

 

「死にたくねぇよ、俺だってやりたいことがあるからな」

 

「本当?」

 

 涙で目を腫らしているイエリの頭を俺は撫でる。

 

 小町にしていたように優しく撫で続けた。

 

 泣きじゃくっていたイエリだが、落ち着いたのか俺から離れる。

 

「帰るか」

 

「うん」

 

 歩き出そうとした俺の手をイエリは掴む。

 

 とても小さな手、まだ、さっきのショックが抜けていないようだ。

 

 小町にしていたように俺はイエリを抱きかかえる。

 

 最初は驚いていたがいつものように無邪気な笑顔のイエリをみて、俺は安堵の表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、何なんだよう!これはぁ!」

 

 その日の夜。

 

 森の中で八幡達を襲撃した鎧の集団達は逃げていた。

 

 彼らは戦場から逃げ出した脱走兵で、山賊として活動しようと拠点を探して、ここまで訪れたのである。

 

 八幡のパンチを受けて一人がダウンしたことで逃げてしまった彼らは森の中で復讐の機会を狙うため、打ち合わせをしていた。

 

 そんな彼らを信じられないものが襲い掛かる。

 

「ぎゃあああああああ」

 

 後ろから聞こえる悲鳴に男達は恐怖する。

 

 振り返れば、闇夜から伸びる赤い舌のようなものが最後尾にいた仲間を包み込む。

 

 ベキバキバキィ。

 

 最後尾の仲間の骨という骨の砕ける音が木霊する。

 

「ひいぃぃぃぃ、何だよ、なんなんだよ!」

 

「知るか!走れ!」

 

 そう言っている間に伸びてくる舌が次々と仲間達を捕食していく。

 

「くそう!くそう!くそぉぉぉおおおおお!」

 

 やがて最後の一人が長い舌に包まれる。

 

 涙、鼻水を垂らしながら腰の剣を舌へ振るうも音を立てて折れる。

 

 悔し涙を流しながら男は全身の骨を砕かれ、そして舌の先、涎を垂らしている怪獣の口の中へ放り込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、これ、なんだろうな」

 

 岩場で俺は胸ポケットの中から例のアイテムを取り出す。

 

 本来なら冷たいもののはずなのに、まるで太陽へ手を向けたような温もりを感じる。

 

「これ、本当に何なんだろうなぁ」

 

 疑問が浮かぶけれども答えるものはいない。

 

 いや、想像はできるのだ。

 

 けれども、確証がない。

 

「はぁ、どうするか」

 

「ハチマーン!」

 

 聞こえた声に顔を上げる。

 

 海水から顔を出して元気に手を振って来るイエリ。

 

 手にはカラフルな魚が二匹だ。

 

「あれ、今日は少ないな」

 

「結構、もぐってみたんだけど……なんか、少なかったんだよねぇ」

 

「少ない?」

 

「うん、大きな魚でもきたのかなぁ」

 

 首をかしげるイエリ。

 

 俺はそろそろ気になっていたことを告げる。

 

「おい、そろそろ服を着なさい」

 

「なんで?」

 不思議そうに首をかしげるイエリ。

 

 さっきから黙っていたんだが、お前、裸なんだよ?男の前で裸をさらしているってこと理解している?俺は気にしないけれど、人によってはビーストへトランスフォームする危険性だってあるんだからね?

 

 ため息を零しながら用意しているタオルみたいな布でイエリの頭を拭く。

 

 嬉しそうにきゃーきゃー騒いでいるイエリを着替えさせる。

 

「うん!?」

 

 その時、視界の片隅で変なものを見た気がした。

 

 慌てて、海面をみる。

 

「気のせいか?」

 

 海水の表面にでっかい目玉のようなものがあったような?

 

 疑問を浮かべながらイエリを着替えさせる。

 

 最初は苦戦していた白い布なども慣れれば造作もないことだった。

 

 イエリを着替えさせた俺は家?へ戻ろうとする。

 

 嫌な予感が体中を駆け巡る。

 

 ゾクゾクと体が震えた。

 

「ハチマン、どうしたの?」

 

「いや、何でも……走るぞ、イエリ!」

 

 俺はイエリを抱えて走り出す。

 

 少し遅れて、俺達のいた場所を赤い舌のようなものが通り過ぎた。

 

 標的を失った赤い舌は少し離れたところにあった木を引っこ抜く。

 

「きゃああ!」

 

 悲鳴を上げるイエリを抱えながら俺は振り返る。

 

 海水から音を立てて現れるのは青色?の体皮をした怪獣だ。

 

 頭部と口らしき部分の先端に角を生やしている。

 

 怪獣は舌で捉えた木を投げ捨てるとこちらをみた。

 

 ボタボタと口の端から大量の涎が零れていく。

 

 うへぇ、気持ち悪い。

 

 俺の気持ちが伝わったのか怪獣は唸り声を上げながらこちらへ迫って来る。

 

「逃げるぞ!イエリ!」

 

「う、うん」

 

 イエリを抱えながら俺は走り出す。

 

 怪獣はボタボタと涎を垂らして追いかけてくる。

 

 逃げようとするが相手は数十メートルのある怪獣。

 

 どれだけ走っても距離が縮まっている気がしない。

 

 怒りに染まった怪獣が長い舌を地面へ叩きつけた。

 

「うぉっ!?」

 

 衝撃で俺とイエリは宙を舞う。

 

「あぁ、くそぉ!」

 

 悲鳴を上げるイエリを守るようにしながら傍にある瓦礫を踏み台にして跳ぶ。

 

 不思議と体が軽い。

 

 まるで超人になったみたいに体が軽くて、やろうと思っていることができてしまう。

 

 俺は一体、どうしたというのだろうか?

 

 無事に地面へ降り立った俺はイエリを抱えて逃走をしようとするも、怪獣が手を伸ばしてくる。

 

「くそっ!」

 

 イエリだけでも守ろうとした時、地面が揺れる。

 

 雄叫びを上げながら森林の中からティグリスが姿を見せた。

 

「ティグリス!」

 

 ティグリスの姿を見てイエリが喜びの声を上げる。

 

 怪獣は現れたティグリスに驚きながらも長い舌を伸ばそうとしてきた。

 

 ティグリスは前足で舌を地面へ叩きつける。

 

 悲鳴を漏らす怪獣の隙をついて、ティグリスが体当たりをした。

 

 体当たりを受けて海面へ倒れる怪獣。

 

 ティグリスは雄叫びをあげて怪獣を睨む。

 

「へぇ、やるじゃん、あの怪獣」

 

 俺とイエリがティグリスと怪獣の戦いを見ていた後ろから声が聞こえた。

 

 振り返ると宇宙人がいた。

 

「何だ、お前」

 

「俺はゴドラ星人のレイオニクスだ」

 

「ゴドラ星人?レイオニクス?」

 

 向こうの告げた言葉に困惑する俺の前でゴドラ星人は怪獣とティグリスの戦いを見ていた。

 

「この星の文明レベルは低いと思っていたのだが、まさか、あそこまで強い怪獣を発見できるとは思わなかった。これは良い収穫とレベルあげになりそうだ」

 

 ゴドラ星人と名乗る存在の目的はわからないが、気になる言葉があった。

 

「レベルあげ?」

 

「その通り、俺達レイオニクスは戦えば戦うほど強くなる。怪獣のスペックというのもあるが、成長すればするほど、より強い怪獣になる……あの怪獣は強そうだなぁ」

 

 興味深そうにティグリスを見上げるゴドラ星人。

 

 イエリは怯えた様子で俺の服にしがみついている。

 

 その間に怪獣とティグリスの戦いに進展があった。

 

 ティグリスの角が怪獣によってへし折られてしまう。

 

 悲鳴を上げるティグリスへ攻撃の手を緩めない怪獣。

 

「フン、見込みがあると思ったが俺のコスモリキッドの敵ではないらしい。さて、お前達はコスモリキッドの餌にでもなってもらおうか」

 

 ゴドラ星人が右腕をこちらへ向けた。

 

 

――避けろ!

 

 

 頭の中に響いた声。

 

 俺は咄嗟に横へずれる。

 

 一発目の光弾は回避したが二つ目が地面へ着弾して、イエリと一緒に後ろへ倒れた。

 

 その際に胸ポケットに入れていたウルトラアイが地面へ落ちた。

 

「フン……ん!?」

 

 右腕の銃口を向けながらこちらをみていたゴドラ星人は俺が落としたウルトラアイをみて、驚きの声を漏らす。

 

「そのアイテム、まさか、お前は!?」

 

 信じられない表情でこちらをみてくるゴドラ星人。

 

 ウルトラアイのことを知っている?

 

「何故、貴様がこんなところにいるのかは知らん、だが、我々の邪魔になることは明白だ。ここで貴様を排除させてもらう!」

 

「ハチマン!」

 

 倒れている俺を守ろうとイエリが前へ出た。

 

「イエリ!寄せ!」

 

「愚かな小娘だ」

 

 ゴドラ星人が腕の光弾を撃とうとした時、背後から眩い光が降り注ぐ。

 

「ぐはぁ!?」

 

 背後から蹴りを受けて地面へ倒れるゴドラ星人。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「ゴドラ星人、俺が相手だ」

 

 起き上がったゴドラ星人が振り返ると、人が立っていた。

 

 金髪で特殊な繊維で出来たスーツを纏った人。

 

 背中に【ASUKA】と記されている。

 

 ゴドラ星人が腕の光弾を放つも回避して、近距離の拳のぶつけあい、拳を払いのけて、蹴りをいれた。

 

 がら空きになった胴体へとどめを刺すようにハイキックを繰り出す。

 

 攻撃を受けたゴドラ星人は地面を転がりながら森の中へ逃げる。

 

「みたか!俺の超ファインプレー!」

 

 ビシッとポーズをとる男性に俺は呆然とするしかない。

 

「ハチマン!大丈夫!?」

 

「バカ!」

 

 気付けば俺はイエリに叫んでいた。

 

「お前、一歩間違えたら死んでいたんだぞ!?」

 

「ひう!」

 

「頼むから、あんな無謀なことはもうしないでくれ」

 

 自分の無力感を覚えながら泣きそうになるイエリの頭を撫でる。

 

 最低だ。

 

 命を張って守ろうとしてくれたイエリを俺は叱った。

 

 大事な命を無駄にしないでくれと叫ぶことで守られたという事実を有耶無耶にしようとしている。

 

「ごめん、なさい」

 

「助けようとしてくれて、ありがとうな……」

 

「いやぁ、良い場面だなぁ」

 

「あの……貴方は?」

 

 この人がこなければ、イエリは最悪、命を落としていたかもしれない。

 

 見たところ、人間のようだが?

 

「俺はアスカ・シン、地球人じゃあ、ウルトラマンダイナっていう方がいいかな?」

 

「地球人だけど、ウルトラマンダイナって、知らない」

 

「え、そうなの!?」

 

 ドンと地震が起こる。

 

 倒れそうになる俺達だが、視線を向けるとティグリスが怪獣コスモリキッドによって地面へ投げ飛ばされていた。

 

「まずはあっちを何とかした方がよさそうだな!本当の戦いはこれからだぜ!」

 

 アスカという人は懐から顔を模した奇妙なアイテムを取り出すと空へ掲げる。

 

「ダイナァァ!」

 

 眩い光がアスカを包み込み、大地に光の巨人が降り立つ。

 

 赤、青、銀の三色、胸部に青く輝いているクリスタルのようなものがあるけれども、俺が夢でみた巨人の姿とどことなく雰囲気が似ていた。

 

 あれが、ウルトラマンダイナなのだろう。

 

 ウルトラマンダイナはティグリスへとどめを刺そうとしていたコスモリキッドへハイキックを放つ。

 

 コスモリキッドは唸りながら長い尾をダイナへ伸ばす。

 

 ダイナは長い尾を払いのけながらパンチを放った。

 

 パンチを受けたコスモリキッドは悲鳴を上げる。

 

 ウルトラマンダイナが優位だったが、背後から光弾がダイナを襲う。

 

「このままでは終わらんぞ!」

 

 巨大化したゴドラ星人が腕の光弾をウルトラマンダイナに放ったのか。

 

 二対一になりながらもダイナは戦う。

 

「イエリ、ここにいるんだ」

 

「え、ハチマンは?」

 

「……行ってくる」

 

「ハチマン!」

 

 イエリが後ろで叫ぶ中で俺は拾っておいたウルトラアイを取り出す。

 

 あの夢と関係があるのかわからない。

 

 だが、このままみているだけでいられない。

 

 自分の中の何かが訴えてくる。

 

 

――戦えと。

 

 

 ウルトラアイを構えて装着する。

 

 眩い閃光と全身を包み込む膨大なエネルギー。

 

 全身を切り裂かれるような痛みを感じながら体が巨大化していく。

 

 比企谷八幡だった存在が形を変えていく。

 

 赤く、肩と胸部に銀色のプロテクター、銀の兜のような顔、そして頭頂に装着されているアイスラッガーというアイテム。

 

 額の緑色に輝くビームランプ。

 

 俺はウルトラマンダイナと同じくらいの巨人に変身していた。

 

「ウルトラセブン!」

 

 ゴドラ星人が俺を見て驚きの声を上げる。

 

 俺は自分の体を見る。

 

 四十メートルくらいはある体、一歩踏み出すだけで大地が揺れていると錯覚しそうになった。

 

 ぺたぺたと自分の体や腕に触れる。

 

 超人。

 

 夢の中でみていた存在に俺は変身していた。

 

 ゴドラ星人がこちらへ光弾を放つ体制になっていることに気付いて、俺は駆け出す。

 

 よくよく考えれば、こいつはイエリを殺そうとしていた。

 

 その事実を思い出した俺は怒りを感じながら赤く染まった拳を振るう。

 

 拳はゴドラ星人へ直撃して相手はのけ反る。

 

 戦い方がわからない俺だが、ゴドラ星人の武器は腕についている武器。

 

 それを使わせないように近距離で戦えばいい。

 

 喧嘩なんてしたことのない俺だが、そういう知恵くらいはまわる。

 

「グッ!」

 

 ゴドラ星人ばかりに意識を向けたことが原因だろう、背後から伸びてきたコスモリキッドの舌に気付かなかった。

 

 首に巻き付いた舌はものすごい力で締め付けてくる。

 

 ゴドラ星人から距離が開いたことで、光弾を撃たれてしまう。

 

「ぐぅ、ハァ!」

 

 体を襲う痛み。

 

 痛みに膝をついたところで背後のコスモリキッドが顔を近づけてくる。

 

 食われる!

 

 恐怖にかられた俺は頭部についていた武器、アイスラッガーを手に取った。

 

 アイスラッガーをそのままコスモリキッドの首へ突き立てる。

 

 悲鳴を上げるコスモリキッドを前にそのまま深くアイスラッガーを刺す。

 

 首を絞めつける力から解放されたことで呼吸を整えようとしたが背後からゴドラ星人が次々と光弾を撃ってくる。

 

「俺を忘れるんじゃねぇ!」

 

 ゴドラ星人にウルトラマンダイナがタックルを仕掛ける。

 

 ウルトラマンダイナがゴドラ星人の相手をしているので俺は後ろを見た。

 

 首からどくどくと緑色の液体を垂れ流しながらこちらをみてくるコスモリキッド。

 

 血走った瞳がこちらをみている。

 

 気付けば、俺は両腕をL字に構えていた。

 

 夢の通りならワイドショットという技が撃てるはず。

 

 俺の思った通り、腕から光線が発射される。

 

「っ!」

 

 衝撃と威力に後ろへ倒れてしまうが光線はコスモリキッドへ直撃した。

 

 コスモリキッドは大爆発を起こした。

 

 べちゃべちゃと海へ落ちていくコスモリキッドだった肉片。

 

「なぁ!俺のコスモリキッドが!」

 

 驚きを隠せない声を上げるゴドラ星人。

 

 ゴドラ星人は拳を握り締めながら姿を消した。

 

 敵がいなくなったことで緊張の糸が切れた俺はそのまま倒れる。

 

 ウルトラセブンの姿から比企谷八幡の姿へ戻り、死んだように眠りについた。

 

 




小さなネタバレ。

ゴールド星人 イエリ(I-erI)
ある惑星で八幡が出会った少女。
本人は自覚がないが、別の星系の宇宙人であり、不時着した宇宙船の冷凍カプセルの中で眠りについていた。
自身が別の星系の宇宙人だと知らず、そこに住むティグリスに色々と教えてもらいながら生活している。
八幡と出会って彼のことを家族と思うようになった。
外見の見た目は十歳程度だが、実年齢は驚くことに100歳である。




ゴドラ星人
ウルトラセブンで登場した宇宙人と同種族。
レイオニクスでレベル上げの為、八幡のいる惑星へやって来た。
所持しているバトルナイザーにはコスモリキッドがいる。
些細な裏設定ですが、マックス号の生き残り、そのため、ウルトラセブンのアイテムのことを知っていた。
後にウルトラマンダイナによって倒される。

コスモリキッド
ウルトラマンタロウに登場した怪獣と同種族。
かなりの暴食で、初登場した際にに人間を三人ほど長い舌で捕まえて食べている。


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過去編:戦士の頂に選ばれた少女

なんとか、今日に更新できた。

今日のウルトラマンタイガ、色々とネタ満載で笑ってしまいました。

BGMも良いし、マンダリン草がらみの自販機もみれて、幸せですなぁ。

今回は戦士の頂に選ばれた少女の話。

話はボイスドラマを参考にしています。


「おーい、ユイ、そろそろ休憩しよう」

 

「は、はい!」

 

 重たい荷物を倉庫へ入れながらあたしは外に出る。

 

 倉庫を出て、店内へ戻るとファントン星人、ミシュラさんが手を振っていた。

 

「いつも思うけれど、ミシュラさん、どれだけ食べるの?」

 

「うん?これくらいファントン星人では普通だ。わしよりもっと食べる奴だっているぞ」

 

 目の前に広がる様々な料理。

 

 このあたりの果実や他の星の食べ物など様々で、見た目はとにかくアウトだけれど、食べられないわけじゃない。

 

 最初は拒絶しちゃったけれど、今はなんとか食べられるようになっていた。

 

 あたしがここ―惑星O-50へ訪れて一カ月が過ぎようとしている。

 

「サブレもほら、食べて」

 

 愛犬のサブレと一緒に散歩をしていて、あたしのミスでサブレが車道へ出てしまった際に起こったわーむほーる?という現象であたしはこの惑星へ飛ばされた。

 

 右も左もわからず、ならず者達に襲われそうになったところをファントン星人 ミシュラさんに助けてもらった。

 

 それから、色々なことをミシュラさんに教えてもらっている。

 

 宇宙共通言語も、今は普通に話せる。

 

 今、あたしはファントン星人 ミシュラさんが経営しているジャンク屋で働いていた。

 

 ジャンク屋というのがよくわからないけれど、この星へ訪れた宇宙人たちからするとそこそこの知名度はあるらしい。

 

「そーいえば、あたし、何でこの星に色々な宇宙人が来るのか知らないや」

 

 食事を終えて睡眠に入っているミシュラさんの姿を見ながらあたしはふと、呟いた。

 

 この惑星、O-50というらしいけれど、そこにある唯一の村は必ずと言っていいほど、宇宙人がやって来る。

 

 どうしてくるのか、そういった理由をあたしは知らない。

 

「サブレ……って、寝ているし」

 

 あたしと同じようにやってきた愛犬のサブレは幸せそうにミシュラさんの膝の上で寝ている。

 

 飼い主のあたし以上にミシュラさんに懐いているんじゃないかな。

 

 そんなことを思いながらあたしは食器を片付けることを始めた。

 

 料理は、その、できないけれど、それ以外のことは不器用ながらになんとかできるようになったし。

 

 閉店と宇宙共通言語で書かれている看板を裏返して空を見る。

 

 薄暗い夜空なのに、どこか幻想的な輝きに見えるのはここが地球じゃないと思うからなのかな?

 

 そんなことを思いながらジャンク屋の中へ戻る。

 

 けれど、あたしは知らなかった。

 

 運命の日がすぐそこに近づいていることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か、街が騒がしいね」

 

 あたしはいつものように店の前にジャンクパーツを並べていた。

 

 大きな機械で、ミシュラさんの話によると宇宙船の心臓部に当たるパーツらしい。

 

 宇宙船なんてまだみたことないからわからないけれど、宇宙人によって技術が異なるんだって。

 

「すまない」

 

 機材を置いていたところで、声をかけられる。

 

「うわっ!」

 

 驚きの声をあたしはあげてしまう。

 

 そこにいたのは二メートルくらいの長身の大男だった。

 

「すまない、驚かせただろうか?」

 

「あ、ごめんなさい、えっと、何か買い物?」

 

「戦士の頂を探しているんだが、知らないだろうか」

 

「戦士の頂?知らないなぁ」

 

「そうか。手を止めさせて申し訳ない」

 

「いえいえ!大丈夫ですから!」

 

 大男は手を振ると去っていった。

 

 あたしは残りの作業を行うことにする。

 

 これを終わらせないと休めないんだから。

 

「失礼」

 

 振り返ると宇宙人の少年が立っていた。

 

 見た目はあたしより下くらいだろうけれど、気をつけないといけない。宇宙では外見は判断材料にならない。見た目が子供に見えてあたしより年上なんてごまんといるらしい。

 

「何でしょうか?ジャンクパーツを探しですか?」

 

「いえ、そんなガラクタに興味はありません。失礼ですが、戦士の頂がある山はどちらでしょうか?」

 

「戦士の頂?さっきも聞いたなぁ」

 

 名前に首をかしげる。

 

「知りませんか?」

 

「うーん、知らないかも、あ、でも」

 

 あたしはある方向を指す。

 

「この村へ来た人達は大体、あっちへ行くよ」

 

 ジャンク屋の手伝いをはじめて少し過ぎるけれど、この星へやってきた人たちは何故か、ある方向をいつも目指す。

 

 ここにいる人もあっちの方へ行くのだろう。

 

「あぁ、あちらですか、ありがとうございます」

 

「ねぇ、戦士の頂?そこを目指してどうするの?」

 

 あたしの質問に青年の宇宙人は笑みを浮かべる。

 

 人を小馬鹿にしたような笑みで好きじゃないなぁ。

 

「決まっています。人を導く光になるんですよ」

 

「光?」

 

「えぇ、それでは時間が惜しいので」

 

 そういって、青年の宇宙人は去っていった。

 

 残されたあたしはジャンクパーツの片づけを終えて店内へ戻る。

 

「何だ?いつもより時間が掛かっていたみたいだが?」

 

 店内でくつろいでいたミシュラさんにあたしはさっきのことを話した。

 

「はぁ、また、戦士の頂へ挑戦する者がでてきたのか」

 

「そういえば、さっきの子も話していたけれど、戦士の頂ってなんなの?」

 

「あぁ、まだ話していなかったかな?」

 

「うん」

 

 サブレといちゃついているミシュラさんにあたしは頷いた。

 

 近くの椅子へ腰かけたあたしはミシュラさんの話に耳を傾ける。

 

 この惑星 O-50に切り立った崖の上に青白く燃え上がる光の輪がある。そこを戦士の頂といい、たどり着き、輪に選ばれた者に強大な力を与えてくれるらしい。

 

「強大な力?さっきの人は光といっていたけれど?」

 

「どうだろうな、戦士の頂へたどり着いた者はいるそうだが、輪に選ばれた者は未だにいないと聞いている。眉唾という話もあるからなぁ」

 

「ふーん」

 

「そもそも、ここは戦士の頂に挑戦して失敗した者達が集まってできた村という話らしいぞ」

 

「そうなの?じゃあ、ミシュラさんも?」

 

「いいや、わしは各地を旅して落ち着ける場所を探していただけだ」

 

「落ち着ける場所がここってこと?」

 

「どうだろうな、もしかしたら資金集めでここにいるのかもしれん」

 

「そっかぁ」

 

 落ち着ける場所、ミシュラさんは目的があって行動をしているってことだよねぇ。

 

 じゃあ、あたしは?

 

 あたしはどうしたいのだろう。

 

 元の場所へ戻りたい。

 

 それだけの為にここでお金を稼ぐ?

 

 何も定まっていないあたしが少しだけ嫌になった。

 

「ここ、宇宙なんだよね」

 

 その日の夜、あたしは部屋の外からみえる空を眺めていた。

 

 宇宙飛行士が地球を出ていくけれど、行ける距離に限りがあるって聞く。

 

 あたしみたいに地球から遠く離れた場所へやってきたのは一人だけだろう。

 

「そーいえば、あの場にいた人達はどうなったのかな?」

 

 わーむほーるに飲み込まれる瞬間、一緒にいた人達はどうなったのだろうか?

 

 サブレを助けようとしてくれた男の子、リムジンに乗っていた女の子。

 

 二人はどうなったのだろう?

 

 そんなことを考えながらあたしは横になる。

 

 明日も一応、慣れてきた日常が続くはず。

 

 あたしはそう考えていた。

 

 間違いだとすぐに思い知ることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 O-50の村は突如、襲撃を受けた。

 

 村を蹂躙するのは人の形をしたロボット。

 

 人たちは悲鳴を上げながら逃げ惑う。

 

「ミシュラさん!」

 

「ユイ!すぐに逃げるんだ!」

 

「何なの、あれ!」

 

「星間連盟の兵器だ!連中、ここを破壊するつもりだ」

 

 星間連盟?

 

 破壊?

 

 どういうこと!?

 

 戸惑いながらもあたしは逃げるしかない。

 

 サブレはミシュラさんが抱えて逃げてくれていた。

 

 村の近くにいると人型兵器に踏みつぶされてしまう危険があるから、あたしは山の方へ逃げることにする。

 

「ぎゃぁあああ!」

 

 近くの岩場で一息ついたところで悲鳴が聞こえてびくぅと体が震えた。

 

 おそるおそる岩場の角から顔を出す。

 

 近未来的なデザインの銃らしきものを構えた集団が逃げる人たちを次々と撃っていく。

 

 あたしは恐ろしくて一歩も動けない。

 

 勇敢な人なら飛び出して一人でも助けようとするだろう。

 

 その勇気があたしにはない。

 

 死ぬかもしれないという恐怖に一歩も動けなかった。

 

 集団が去ったことを確認して由比ヶ浜はゆっくりと岩から出ようとする。

 

「むぐ!」

 

 後ろから伸びてきた手によって再び岩陰へ戻されてしまう。

 

「静かに……連中は離れたがまだ索敵の範囲内だ。動けばすぐにバレてしまう」

 

 冷静な声で言われてあたしは頷く。

 

 しばらくして、手が離れて振り返る。

 

「貴方……」

 

 後ろにいたのは以前、道を聞いてきた人だ。

 

 戦士の頂へ挑戦しようとしていたことを考えると実力はあるはず。

 

「お願い!村の人を助けて!」

 

「そうしたいのは山々なのだが、いかんせん、星間連盟の人型兵器の数が多すぎる」

 

「人型兵器?」

 

「あれは人の形をしているがその本質はロボットだ。ただインプットされた指示を行う為に作られた兵器」

 

「全然、そんな風にみえない」

 

「それだけ連中の技術が上ということだ」

 

 しばらくして、もう大丈夫だと言われてあたしは岩陰から出る。

 

 人型兵器が出てこないことを確認して振り返った。

 

 手が四本、足が四本という姿で見た目がおそろしいと思ったけれど、さっきの会話のやりとりから、不思議と恐怖心のようなものはない。

 

「キミは」

 

 向こうもあたしのことを覚えていたのか目を見開いている。

 

「えっと、村で会いましたよね?」

 

「あぁ、覚えている。私はジークルトだ」

 

「由比ヶ浜結衣です。えっと、由比ヶ浜が苗字で名前は結衣です」

 

「キミはテラ人だな」

 

「テラ?」

 

「キミ達の星の言葉でいうなら、地球人だったかな?」

 

「地球のこと知っているんですか!?」

 

「昔、とても昔だが、地球へ行ったことがある」

 

 あたしは驚いた。

 

 地球のことを知っている人がいるなんて。

 

「このあたりに人型兵器が来るかもしれない、上の方へ行こう」

 

「あ、はい」

 

 あたしが頷いたことを確認してジークルトさんと一緒に山頂に向かう。

 

 山頂は険しいから人型兵器も上がって来ることが難しいというのはジークルトさんの言葉だ。

 

 ジークルトさんは地球から何万光年も離れた星の出身(星の名前は宇宙共通言語でも訳すことが難しいらしいからわからない)で戦士の頂へ挑戦するために惑星 O-50へやってきたのだという。

 

「どうして、戦士の頂へ?」

 

「光の力を求めて……ユイ、キミはどうして、この星へ?私の記憶が確かならテラはこの星まで航行する技術を有していない筈だ」

 

「えっと、実は」

 

 あたしはジークルトさんにファントン星人 ミシュラさんに話したようなことを伝える。

 

「ワームホールか、それは災難だったな」

 

「うん、でも、ミシュラさんとか、村の人達のおかげで生活できているから」

 

「キミは強いな」

 

「え、そんなことないよ、あたし、逃げるだけで精いっぱいだったし」

 

 さっきのことを思い出して体が震えそうになって腕で抱きしめる。

 

「……どうして、こんなことになったのだろう」

 

 ぽつりとあたしは呟く。

 

 わーむほーるに巻き込まれて、村で静かに暮らしていたのに、星間連盟とかいう訳の分からない人たちに襲われるなんて。

 

「理不尽な事というのは広い宇宙で当たり前のことだ。どれだけ足掻いても手に入らない者もあれば、絶望感というのは当たり前のようにやって来る。だから、私は光を求めている」

 

「光って……何なのかな?」

 

「キミは知らないのか?」

 

 ジークルトさんの言葉にあたしは頷いた。

 

「では、キミはウルトラマンのことも知らないのか?」

 

「ウルトラマン?」

 

 何だろうか?

 

 あたしの言葉にジークルトさんは苦笑しながら話してくれる。

 

 ウルトラマンとは、ここより遠い場所M78星雲にある光の国に存在する超人のことを言うらしい。

 

 彼らは宇宙警備隊という組織で平和の為に自らの超人的な力を使っている。

 

「そして、戦士の頂に認められた者は強大な光の力を手にすることができるという言い伝えだ」

 

「言い伝え?」

 

「戦士の頂が発見されて長い時間、光を手にした者がいないからな」

 

「そうなんだ」

 

 あたしが驚いているとジークルドさんの長い腕が伸びてきて地面へ伏せさせる。

 

「な、なに!?」

 

「追手だ!」

 

 赤い瞳で後ろを睨むジークルドさん。

 

 ぞろぞろと人型兵器が武器を構えてやってくる。

 

「このままだと」

 

 ちらりとジークルドさんは山頂を見る。

 

「ユイ」

 

「な、なに?」

 

「すまん」

 

「え、きゃあああああああああああああああああああ!?」

 

 ジークルドさんによってあたしは思いっきり空に向かって投げ飛ばされる。

 

 突然の事態に混乱しながらもあたしはスカートだけは抑えた。

 

 女の子だもん、これくらい当たり前でしょ!?

 

 悲鳴を上げて、あたしは暗雲を一時的に突き抜けると、そのまま重力引かれて、落ちていく。

 

「い、いったい」

 

 何とか着地は成功しました。

 

 けれど、足や腕とか滅茶苦茶痛いぃ。

 

 服についた土や汚れなどを払い落としてまわりをみる。

 

 薄暗い空の下、宙に輝く丸いわっか。

 

 輪は炎のように白い輝きをゆらゆらと放っている。

 

「何だろう?あれ?」

 

 魅入られる様にあたしは光の輪へ手を伸ばす。

 

 手を伸ばした時、輪が強い輝きを放つ。

 

 驚いて下がるあたしの前で輪の中心から光り輝く何かが形成される。

 

 光で作られたアイテムがあたしの手の中に握られた。

 

「えっと、どういうこと?」

 

 突然の事態に困惑しているあたしの前で光の輪がまた輝く。

 

 輪から小さな光があたしの手の中に入る。

 

 握った手を開くと複数の丸いメダルのようなものがあった。

 

「そうだ、ジークルドさんは」

 

「動かないでもらいましょうか」

 

 いつの間にか後ろに一人の青年の姿をした宇宙人が立っていた。

 

「おや、村の生き残りですか」

 

「貴方、戦士の頂へ挑戦しようとしていた」

 

 あたしの言葉に男の子の顔が歪んだ。

 

 浮かび上がる感情は怒り。

 

 手の中にある光線銃をあたしの足元へ向ける。

 

「何するの!?」

 

「うるさい!拒絶するものなどいらない!邪魔する奴も、こんな風になぁ」

 

 彼が指を鳴らすと人型兵器がどさりと何かを投げ捨てる。

 

 目の前に転がっているものをみて、あたしは目を見開く。

 

「ウソ……まさか、ジークルドさん!」

 

 すぐに駆け出したかったが、光線銃を向けられて動けない。

 

「ここを破壊しようとしたら邪魔をしてきましてねぇ、コイツのせいで数体の兵器が破壊されましたが、所詮、一人だ。できることなど限られている」

 

 倒れているジークルドさんを蹴り飛ばす。

 

「やめて、そんなこと!」

 

「うるさい!」

 

 足もとに光線が直撃して石の破片が飛び散る。

 

 びくっと怯えて後ろへ下がってしまう。

 

「どいつもこいつもバカにしやがって!僕が星間連盟のトップの子なのに、見下したような目をしやがって!戦士の頂の力を手にしようとしたら、弾かれた。ふざけんなよ!どいつもこいつも!」

 

 げしげしとジークルドさんの体を蹴り飛ばして悪態をつく姿はとても恐ろしく思える。

 

 出会った時は笑顔を浮かべていたけれど、これが本性なんだろう。

 

「さて、貴方を排除して、ここを破壊する。まぁ、可能ならこの星を丸ごと爆破することくらいしたいのですがねぇ、持ってきた超獣で星を破壊することができないのが酷く残念ですよ」

 

 青年が指を鳴らすと目の前で武器を構える兵器たち。

 

「ユイ!!」

 

 倒れていた筈のジークルドさんが起き上がり、両手を広げてあたしの前に立つ。

 

 放たれる光線が次々と彼を撃ちぬいていく。

 

 あたしはそれを見ていることしかできない。

 

「グフッ」

 

 口から血を吐いて膝をついたジークルドさんの姿を見て、ようやくあたしは走り出した。

 

「ジークルドさん!ウソ、えっと、これは」

 

「ユイ!」

 

 伸びてきた手があたしの肩を掴む。

 

「ジークルドさん、血、血がぁ」

 

「私は戦士の頂へ挑戦した。けれど、認められることがなかった。この醜い容姿のせいなのかはわからない……だが」

 

 ジークルドさんの目があたしの手の中にあるクリスタルとアイテム、ジャイロへ向けられる。

 

「キミは、とても優しい子だ。それでいて、強い……その強さをなくさないでくれ、そして、出来れば、出来れば」

 

 ゴフッと吐いた血があたしの服にかかる。

 

「すまない、私をキミの重荷にしたくはなかった。だが、叶うなら……もし、キミがいつか、私の故郷へいったら仲間に伝えてほしい――」

 

 

――力は手にできなかった、だが、光は正しい者の手に渡るだろう。

 

 

「え、なに?」

 

 聞こえないよ、ジークルドさん?

 

 何を言おうとしたの?

 

 ねぇ、聞こえないよ?お願いだからもう一度、教えてよ。

 

 あたしに、何を伝えようとしたの?

 

「ねぇ、ジーク」

 

「死んだか、まぁいい」

 

 あたしの声を遮って青年が冷めた目であたしとジークルドさんをみる。

 

「このまま銃殺してやってもいいかもしれないが、これだとつまらない、どうせだから」

 

 青年が指を鳴らすと唸り声をあげて巨大な怪獣が現れる。

 

「ミサイル超獣 ベロクロン。全身ミサイルの怪獣に戦士の頂諸共、存在を消し去るがいい」

 

 唸りながら口や体の突起物から無数のミサイルが放たれる。

 

「消え去れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミサイルが由比ヶ浜へ迫る中、彼女は手の中に握り締めていたクリスタルの一つ、強い輝きを放つものを握り締める。

 

 片手に持っている【ジャイロ】の中心へクリスタルをはめ込む。

 

 そのまま由比ヶ浜は左右のハンドルを掴んで横へ引っ張る。

 

 数回、引っ張るとジャイロの中心から輝きが広まっていく。

 

【グルジオボーン】

 

 由比ヶ浜は光に包まれて、赤い骨のようなものに全身を覆われた怪獣【グルジオボーン】へ変身する。

 

 全てのミサイルを叩き落したグルジオボーンはそのままミサイル超獣 ベロクロンへ拳を振るう。

 

 ミサイル超獣 ベロクロンは宇宙怪獣と珊瑚によって作られた生命体であり、その力は自然発生する怪獣よりも強力でおそろしいものになっていた。

 

 今は亡きヤプールの手によって体の至る所にミサイルが存在しており、地球の防衛軍の戦闘機部隊を全滅させたほどの威力を持っている。

 

 その相手にグルジオボーンは尾のボーンテイルを振るう。

 

 連続で繰り出されるボーンテイルによってミサイルを撃つ暇がないベロクロン。

 

 振るわれる攻撃の隙をついて、ベロクロンが口から火炎放射を放つ。

 

 攻撃を受けて怯んだグルジオボーンへ両手からリングを放って体を拘束する。

 

 両手の自由を奪われたグルジオボーンへ次々とミサイルを発射する。

 

 とどめとばかりに口からカタパルト式中型ミサイルを放った。

 

 二発のミサイルがグルジオボーンへ直撃して、地面へ倒れる。

 

『セレクト!クリスタル!』

 

 叫びながら由比ヶ浜はジャイロの中心のクリスタルを入れ替える。

 

【ホロボロス!】

 

 グルジオボーンが光に包まれて、その中から青い体皮、白い毛皮に覆われたライオンを連想させる怪獣、豪烈暴獣 ホロボロスが現れる。

 

 姿が変わったことに動揺したベロクロンの口の中へ爪を押し込む。

 

 唸りながらホロボロスは力任せにベロクロンの口からミサイルのカタパルトを引き剥がす。

 

 悲鳴を上げて逃げようとするベロクロン。

 

 追撃するホロボロス。

 

 不意を突くように背中からミサイルが迫る。

 

 だが、既にホロボロスはその場にいなかった。

 

 ベロクロンの前に回り込んだホロボロスの両手の爪がエネルギーに包まれる。

 

『メガンテクラッシャー!』

 

 頭の中に浮かんだ必殺技を叫びながらホロボロスがベロクロンを細切れにする。

 

「ば、バカな!超獣だぞ!?ベロクロンだぞ!それが、あんなわけのわからない怪獣に倒される!?そんなことがあっていいわけが、あ、あぁあああああああああああああ」

 

 ベロクロンが倒されて動揺する青年。目の前に迫る爆風によって崖から真っ逆さまに落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジークルドさん……」

 

 ホロボロスから人の姿へ戻った由比ヶ浜はふらふらと彼の亡骸を探す。

 

 さっきの爆風によって彼の亡骸もどこかへ姿を消していた。

 

「なんで……何でなの」

 

 由比ヶ浜は戦士の頂の中心で輝く光の輪へ叫ぶ。

 

「なんで、あたしなの!?どうして、あたしがこんなものを手にしているの!?これなら、ジークルドさんにあげてよ、どうして、どうして、こんなことに……最低だよ!」

 

 光の輪が強い輝きを放つ。

 

 手の中にあるジャイロが共鳴して由比ヶ浜の前に光の文字を形作った。

 

 指令である。

 

「知らない!」

 

 由比ヶ浜はその手で文字を払いのける。

 

「あたしはこんな力、欲しくなんかなかったよ!」

 

 ジャイロを地面へ叩きつけようとしたところで彼女は地面へ座り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、ユイ!無事だったか!」

 

 あの後、由比ヶ浜はどうやって戦士の頂から村へ戻ってきたのか覚えていない。

 

 彼女が気付いた時、目の前に笑顔で手を振ってやってくるミシュラとサブレの姿があった。

 

「うぅ、うえぇえええええええん!」

 

「お、おぉ!?どうした!一体、どうしたんだ!?」

 

 恥も外聞もない由比ヶ浜の泣いている姿にミシュラは戸惑いながらあやすことにする。

 

 しばらくして、落ち着いた由比ヶ浜を連れて、店の地下深くに隠されている格納庫へ移動していた。

 

「ここに、何があるの?」

 

「宇宙船だ!といっても……地球人が事故か何かで捨て去ったものを改造したものだがな!」

 

 バチンと照明が灯ると目の前に黄色の巨大な飛行機型の宇宙船がそこにあった。

 

「ジャンクドラゴン!元はなんとかドラゴンっていう名前だったのを改造したんでな!なぁに、ジャンクパーツの寄せ集めとはいえ、この星を脱出することくらい造作もないぞ」

 

「脱出?」

 

 戸惑う由比ヶ浜へミシュラが真剣な表情で見つめてくる。

 

「ユイ、お前さんがO-50の戦士の頂の力を手にしたことと、星間連盟が関わっている以上、この星へ長居することは危険につながる……」

 

「だったら、あたしだけが出ていけば」

 

「宇宙のことに詳しくないお前さん一人を放り出す?そんな無責任なことができるか、ここであったのも何かの縁……安全な場所にたどり着くまで手助けするとも」

 

 ミシュラの力強い言葉に由比ヶ浜は少しだけ救われた気持ちになった。

 

「さぁ、出発だ!コイツの運転をする日がくるとはわくわくしてきたぞ!」

 

 騒ぐミシュラに同意するように吠えるサブレ。

 

「ありがとう、ミシュラさん」

 

 彼らに感謝の気持ちを由比ヶ浜は呟いた。

 

 




ファントン星人 ミシュラ
惑星 O-50にあった村で宇宙船関係のジャンク屋を営んでいる宇宙人。
元々は各惑星を放浪していたらしい。
ファントン星人らしく食欲旺盛である。
由比ヶ浜が戦士の頂に選ばれてからは地下に隠していた宇宙船ジャンクドラゴンで光の輪からの指示と彼女の帰るための方法模索に協力した。
噂では、ファントン星人グルマンと友人の関係にあるとか、ないとか。


ジークルド
人の形をしているが昆虫の特性を備えた宇宙人。
戦士の頂へ挑戦するべくO-50へやってきた。
彼の住まう惑星は巨大昆虫が生息しており、弱肉強食の世界。
平和を望み、光の力を求めるも拒絶されてしまう。
出会った由比ヶ浜が光に選ばれたことを知り、彼女を守るために奮闘するも星間連盟の人型兵器の攻撃によって命を落とす。
裏設定で、地球へ訪れたことがあり、坂田という男性と出会い、救われたことがあるという。


星間連盟
宇宙人によって作られている連盟。
きな臭い噂が絶えず、裏で侵略の為に各惑星を掌握しようとしているのではと囁かれている。

青年
星間連盟トップの息子。
見た目は優しく、人を導くといっているが、それは偽りであり、本性は自分を見下す全てを支配することを考えている。
戦士の頂へ挑戦、失敗後、その事実を抹消するために村を襲撃。
ミサイル超獣ベロクロンと人型兵器を連れていくも、グルジオボーンに変身した由比ヶ浜の手によって失敗。
生き残ることに成功するものの、自分に辛酸を舐めさせた由比ヶ浜を狙って、行動を起こす。
最終的にある宇宙人によって怪獣に改造されて、倒されてしまう。



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過去編:レイオニクスの美少女

今回でひとまず、最初の過去編は終了です。

次回から本編へ戻ります。


 

「おや、おいしくなかったかな?」

 

 宇宙船の中で雪ノ下雪乃は丸いテーブルに置かれている紅茶をみていた。

 

 そんな彼女に女性の姿をしている宇宙人が問いかける。

 

「いえ、味わったことのない素晴らしいものです」

 

 置かれているカップの中の紅茶を味わいながら雪ノ下は頷いた。

 

「それは良かった、地球にはないものなのでキミの口に合うか不安だったのだよ」

 

「はい……」

 

「不安かな?」

 

「いえ、その」

 

「怯えることはない。キミ達の星はまだ宇宙へ進出していないからね……広大な宇宙で一人だけというのは辛いものだろう」

 

 優しく諭してくる宇宙人の言葉に雪ノ下は戸惑うばかりだ。

 

 ワームホールに飲み込まれた彼女はゼットン星人と名乗る目の前の宇宙人に助けられた。

 

 最初に彼女の本来の姿をみて、気絶してしまったことは申し訳ないと思う。

 

 置かれているカップに口を含む。

 

 飲んだことのない味だが、不思議と気持ちが落ち着いた。

 

 目の前の彼女の話では地球にない茶葉らしい。

 

 雪ノ下は自身を落ち着かせながら記憶を手繰る。

 

 リムジンで移動していた途中に車道へ飛び出してきた犬と少年を運転手が急ブレーキを踏んで止めたところまでは良い。

 

 その後、空に現れた黒い渦に雪ノ下と犬と飼い主の少女、そして、少年が吸い込まれた。

 

 宇宙の空間に放り出されたと思ったところで彼女の宇宙船に助けられて今に至る。

 

「それで、どうして、助けてくれたんですか?」

 

 落ち着いたところで雪ノ下は尋ねる。

 

 助けてくれたことに感謝はしているが、助けたことに何か裏があるのではないかと考えていた。

 

 人というのは打算的な生き物だ。

 

 雪ノ下が知る限り、無償の善意で行動することはない。

 

 今までに汚い大人たちをみてきたからだろう。

 

 それ故に目の前の宇宙人が助けてくれたことにも何か裏があるのだろうと考えている。

 

「警戒しないでほしいな、別にとって食べるとか、実験動物としてビーカーに入れるような真似はしないよ」

 

「不安にさせるようなことを言わないでもらえるかしら」

 

 ため息を雪ノ下に宇宙人は笑う。

 

「安心してくれ、乱暴な宇宙人もいるが、私は紳士、いや、淑女であるつもりでいるよ。一応、キミを助けたことに理由はある。それが聞ければ満足かな?」

 

「えぇ」

 

 雪ノ下が頷いたことを確認してゼットン星人は笑みを浮かべる。

 

「キミは冷静だね。普通の人間ならパニックを起こして混乱や悪ければ、自我が崩壊することもありえるというのに、益々、気に入ったよ」

 

 理由はわからないがこの宇宙人は自分のことをいたく気に入ったらしい。

 

 警戒を強めるかどうするか悩んでいたところで宇宙人は話を切り出す。

 

「キミには怪獣使いになってもらいたい」

 

「怪獣使い?」

 

「……これを」

 

 宇宙人が机の上に青と黒い長方形のアイテムを置いた。

 

「バトルナイザー、怪獣を操ることができるアイテムだ」

 

「……バトルナイザー」

 

 雪ノ下は置かれたバトルナイザーへ視線が離れない。

 

 彼女の姿に宇宙人は満足したような笑みを浮かべる。

 

「どうして、このアイテムを私へ?」

 

「残念なことに私では使うことができなくてね、適合するための条件があるのさ」

 

「その条件に私が合致しているというの?」

 

「嬉しいことにね。キミにはそのバトルナイザーを使って怪獣使いとして戦ってほしいのさ」

 

「私は普通の生活をしていた女の子よ?いきなりこんなアイテムを渡されて怪獣を操れと言われても出来ないわ」

 

「そんなことはない」

 

 雪ノ下の言葉を宇宙人は否定する。

 

「キミがこのバトルナイザーを手にして、戦う覚悟を持てば、これが自然と教えて、導いてくれる……なぜなら、キミはレイオニクスなのだから」

 

 ゼットン星人は語る。

 

 レイオニクスとはバトルナイザーを使って怪獣を使役することができる存在であるとゼットン星人が説明する。

 

 説明を聞きながら雪ノ下はバトルナイザーをみた。

 

「これはただの機械でしょう?」

 

「見た目はね?これは普通のアイテムじゃあない。ナノマシンと有機体で構成されているハイブリッドだ」

 

「……そんなもの、どうやって」

 

「さぁね?生まれた経緯を説明しても良いけれど、時間がない」

 

「え?」

 

 直後、室内が衝撃と揺れに襲われる。

 

「何が……!?」

 

「どうやら来てしまったようだ」

 

「来た?」

 

「黙っていたんだが、私は今、野蛮な宇宙人達に追われていてねぇ」

 

「………………え?」

 

 ぽかんとしてしまう雪ノ下だった。

 

 暗黒に広がる宇宙。

 

 ゼットン星人の宇宙船を三隻の宇宙船が追跡していた。

 

 自動操縦にしていたが、追跡の宇宙船から放たれる光線が掠める。

 

 正面スクリーンで三隻の宇宙船を見ているゼットン星人は冷静であった。

 

「しつこいねぇ、近くの小惑星へ着陸するよ」

 

「え、待って」

 

「無理だね」

 

 戸惑う雪ノ下を置いてゼットン星人の円盤は近くを浮遊している小惑星の一つへ着陸する。

 

 少し離れたところで着陸する三隻の宇宙船。

 

 そこから姿を見せるのはサーペント星人、ナックル星人、ギロン人だ。

 

「やい、ゼットン星人!星間連盟から奪ったバトルナイザーを返してもらおうか!」

 

 光線銃を構えながらゼットン星人の宇宙船へ叫ぶサーペント星人。

 

「応答がなければ破壊する!」

 

「そんなちまちましていで、とっとと爆破して残骸から探せばいいだろう?」

 

「いいや、無傷で回収するように指示がでてくる」

 

 宇宙船の爆破を提案するナックル星人だが、ギロン人に止められて、渋々、下がる。

 

 ゼットン星人の宇宙船が開いて、そこからゼットン星人がゆっくりと降りてくる。

 

 その後ろに続くのは雪ノ下雪乃だ。

 

「ゼットン星人、返答を聞かせてもらおうか?」

 

 サーペント星人の言葉にゼットン星人は考えるそぶりをみせる。

 

「悪いが、断るよ。これを星間連盟へ渡すと面倒なことになるからねぇ……それに、レイブラッド星人の野望に協力するっていうのも嫌だしねぇ」

 

「そうか、ならば、死ね」

 

「嫌だよ」

 

 光弾がサーペント星人の体を貫いた。

 

 ゼットン星人の手に光線銃が握られている。

 

「てめっ」

 

 武器を構える暇もないまま、ナックル星人の頭部を光弾が射抜いた。

 

「流石はゼットン星人ということか、知能だけで戦闘能力は低いと思っていたのだが?」

 

「ふむ、普通のゼットン星人ならそうだろう、だが、私は少々、変わり者でねぇ、肉体も少しばかり鍛えているのさ」

 

「ふむ」

 

 銃口を向けられているというのにギロン人は冷静だった。

 

「キミはさっきの二人よりいくらか冷静みたいだからねぇ、大人しく引き下がってくれないかなぁ?私、無駄な殺生は好きじゃないんだ。ほら、汚れるし」

 

 

「確かに、今の戦闘能力を見せられたら引き下がるしかないだろう、だが」

 

 ギロン人は手に持っていた光線銃を捨てる。

 

 片手に握られているのはバトルナイザー。

 

「こちらのレベルアップに協力してもらおうじゃないか、いけ、アリブンタ!」

 

【バトルナイザー!モンスロード!】

 

 輝くバトルナイザーから現れるのは大蟻超獣 アリブンタ。

 

 肉食のアリと宇宙怪獣で合成された超獣。

 

 両手の爪を鳴らしながらアリブンタはゆっくりとゼットン星人の円盤へ近づいてくる。

 

「驚いた。そちらにレイオニクスがいたとは」

 

「偶々、星間連盟にいた方が情報を入手しやすいのでね」

 

 ギロン人はバトルナイザーを構えた。

 

 指示を受けたアリブンタが動き出す。

 

 ゼットン星人は光線銃で迎撃を試みるがやはり超獣、光線銃を受けても平然としていた。

 

「さて、こうなっては仕方ない。戦ってもらえるかな?」

 

 ゼットン星人の視線は後ろにいる雪ノ下へ向けられている。

 

「このままでは私とキミはあの超獣に潰されてしまう。何もできないまま、何かを見つけることもできないまま、そして、元の世界へ帰る方法を探す機会も失われる」

 

「それは……」

 

「戦わなければ、目的を果たせない」

 

 差し出されるバトルナイザー。

 

 真剣なゼットン星人の言葉に雪ノ下は震える手でバトルナイザーへ手を伸ばす。

 

 バトルナイザーへ雪ノ下が振れた刹那。

 

 眩い輝きを放つ。

 

 あまりの輝きにゼットン星人は目を閉じる。

 

【バトルナイザー!モンスロード!】

 

 青と黒のバトルナイザーから輝きが放たれる。

 

 揺れと共にアリブンタの前に現れるのは漆黒の怪獣。

 

「あれは!」

 

 ギロン人もその姿に驚きを隠せない。

 

 全身が黒く、頭部と胸部の部分に黄色く発光する器官をもつ、頭部にある二つの角。

 

「ゼットォォォォン」

 

 低い声と共に宇宙恐竜ゼットンがアリブンタと対峙する。

 

 アリブンタは現れたゼットンに驚きながらも走り出す。

 

 対してゼットンは冷静に両手を前に突き飛ばす。

 

 攻撃しようと爪を振るおうとしていたアリブンタは吹き飛び、地面へ倒れる。

 

 ゆっくりと近づいていくゼットン。

 

 アリブンタは両手から火炎を放つ。

 

 不意打ちにゼットンは少しばかり仰け反りながらもゆっくりとアリブンタへ近づこうとしている。

 

「潜れ!アリブンタ!」

 

 ギロン人の指示で地面へ潜る。

 

「そのまま、四次元蟻地獄へ落としてしまえ!」

 

 地面から姿を見せないまま、ゼットンの足元が突如、蟻地獄のように沈んでいく。

 

「ゼットォォォォン」

 

 飛翔しようとするゼットンの足を現れたアリブンタが捕まえる。

 

 アリブンタの口から溶解液が放たれた。

 

 溶解液をかけられたゼットンが苦悶の声を漏らす。

 

「ゼットン……!」

 

 雪ノ下は苦しみの声を上げるゼットンをみて、バトルナイザーを握り締める。

 

「(そろそろ、か)」

 

 不安そうに揺れる雪ノ下をみて、ゼットン星人は小さな笑みを浮かべる。

 

「どうすれば、どうしたら」

 

「戦えばいい」

 

 戸惑う雪ノ下へゼットン星人が近づく。

 

「戦う?」

 

「そうだ、キミは怪獣使い……キミ自身が戦うことを望めば、ゼットンは応える」

 

 段々と雪ノ下の意識がぼんやりと沈んでいく。

 

 同時にバトルナイザーの輝きが強くなる。

 

「さぁ、願うんだ。ゼットンに勝利することを」

 

 ゼットン星人が雪ノ下へ囁く。

 

 その姿は悪魔が人へ企みを教えようとする姿と酷似していた。

 

「ゼットンへキミが勝利するために祈れば、どんな敵だって倒せるさ。なぜなら」

 

――ゼットンは最強なのだから。

 

 ゼットン星人が囁いた言葉がトリガーになったのかはわからない。

 

 雪ノ下雪乃の瞳が真っ赤に輝く。

 

「ゼットン!」

 

 バトルナイザーを握り締めて、ゼットンへ叫ぶ。

 

「テレポートして、抜け出しなさい」

 

 指示を受けたゼットンがテレポートする。

 

 アリブンタの拘束から抜け出したゼットンは地面へ降り立つ。

 

「ゼットン」

 

 赤く輝いた瞳の雪ノ下は次の指示を出す。

 

「燃やしなさい」

 

「ゼットォォォン」

 

 一兆度の火球をアリブンタへ放った。

 

 アリブンタは逃げることも四次元の蟻地獄へ潜ることも叶わずに炎によって焼き尽くされる。

 

「バカな、アリブンタが、超獣だぞ!?」

 

 動揺を隠せないギロン人にゆっくりとゼットンが近づいていく。

 

「おい、何を」

 

「おやおや?わかっていないのかい」

 

 ギロン人へゼットン星人は呆れたように告げる。

 

「この宇宙は弱肉強食、レイオニクスであるのなら、尚更だろう?つまり、弱者は消え去るといい」

 

 ぞっとするほどの低い声と共にギロン人の眼前に現れるゼットン。

 

「な、なぁ、助けてくれ!アンタ!」

 

 ギロン人はバトルナイザーを握り締めている雪ノ下へ訴える。

 

 雪ノ下は柔和な笑みを浮かべた。

 

 ギロン人は希望を見出したような表情になる。

 

「ゼットン、潰しなさい」

 

 冷酷な少女の言葉と共にゼットンがギロン人を踏みつぶした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、素晴らしい初陣だったよ」

 

「そう、だったかしら?」

 

「勿論だとも、晴れてキミはゼットンを操る怪獣使いになったのだからね」

 

「少し、疲れたわ」

 

「初の戦闘で疲労がたまっているのかもしれないね。部屋でゆっくり休むといい」

 

「そうさせてもらうわ」

 

「……お休み、雪乃ちゃん」

 

「えぇ、姉さん」

 

 ぽつりと漏らして雪ノ下は部屋に消える。

 

「まぁ、計画通りかな」

 

 雪ノ下の姿が見えなくなってゼットン星人は女性の姿から本来のほっそりとした一つ目の姿へ戻った。

 

「それにしても、姉さんか、彼女の心象の中にある憧れの姿をしてみたものだが、まさか、実際に姉と”また”呼ばれることになると感慨深いものだ」

 

 そういいながらゼットン星人は空中に映像を表示する。

 

「宇宙恐竜ゼットン、特別に調整したとはいえ、まさかあれほどの性能を発揮したことは、彼女が特別なのか、しかし」

 

 ちらりとゼットン星人は別室、雪ノ下雪乃が眠る部屋へ視線を向けた。

 

「ソリチュランの葉を潰して紅茶に混ぜてみたら、想像以上に精神へ影響を与えてしまった……まぁ、これから怪獣使いとしての成長を期待しよう、強くなれば、忌々しい光の国へ攻め込むこともできるだろう」

 

 計画を練りながらゼットン星人はこれからのことを思案する。

 

 雪ノ下雪乃をどのように自分を手駒、否、右腕として利用できるかどうか。

 

 

 

 

 

 

 ゼットン星人の計画は順調に進み始めていた。

 

 しかし、小さなイレギュラーが起こり始めていたことに気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪ノ下雪乃の寝室。

 

 疲れたように眠っている彼女の傍、置かれているバトルナイザーが小さく輝いた。

 

「ゼットォン」

 

 ポンと音を立てて現れるのはミニサイズの宇宙恐竜ゼットン。

 

 ゼットンはピポパポと音を鳴らしながら雪ノ下を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代。

 

「以上が俺達のはじまりってところなんだが」

 

 奉仕部の部室で八幡が半眼で一色をみる。

 

「お前、なんでポップコーン食っているの?」

 

「え?ペガが勧めてきたんですけど?」

 

「話を聞くなら必要かなって」

 

 八幡の影からひょこと出てきながら一色の手の中にあるポップコーンを掴む。

 

「一応、確認なんですけれど、先輩がウルトラセブンなんですよね?」

 

「まぁな、他言無用だからな」

 

 釘を刺す八幡に一色は頷いた。

 

「絶対に言いません!」

 

「とにかく、今日はここまでだ」

 

「えぇ!?」

 

「残念だけど、一色さん、下校の時間よ」

 

 本を閉じて雪ノ下が時間を確認する。

 

「ちぇ~、続きを聞きたかったのに」

 

「機会があれば、また話してやるよ」

 

「絶対ですよ!?約束ですからね!」

 

「はいはい」

 

「じゃあ、帰ろうか!」

 

 由比ヶ浜の言葉で八幡と雪ノ下も鞄を手に取る。

 

「あ、私、鞄を取りに教室へ戻るので、先に帰っていてください」

 

「そう……気を付けてね」

 

 雪ノ下に言われて一色は頷きながら奉仕部の部室を出ていく。

 

「少し、わかったかなぁ?」

 

 ぽつりと漏らしながら一色は奉仕部の部室をみた。

 

「(あの人たちの関係って、一体、何なんだろうなぁ)」

 

 彼女の疑問はおそらく過去の出来事にある。

 

 話の続きが気になりながらもまたの機会ということで一色は廊下を歩いていく。

 

 






ゼットン星人
ワームホールに飲み込まれた雪ノ下雪乃を助けた人物であり、過去に地球へ部隊を率いて科学特捜隊の本部の破壊工作を行ったゼットン星人の姉である。
星間連盟が入手したバトルナイザーを奪取して、自身の計画の為に雪ノ下を抱き込んだ。
雪ノ下を手駒として利用するべく、彼女の心象の中にあった最愛の人物の姿を利用している。


サーペント星人、ナックル星人、ギロン人
星間連盟の配下、ギロン人はレイオニクスであった。


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