オーバーロードな藍染惣右介(偽) (ら・ま・ミュウ)
しおりを挟む

藍染惣右介(偽)爆誕!?

リメイク版


―――あぁ、またこの夢か。

 

見渡す限りの白銀の世界。

白装束のような物を纏いて悠然と立ち尽くす私は、眼前に佇む黒く金属のような光沢を持ちながら生物のように脈動するナニカ。それを無感情に眺めて……ふと、手を伸ばす。

 

『―――待て』

 

『私』がそれを手にするのを遮るように現れた黒いローブの男。彼は決まって一つの問いを持ち掛ける。

 

『貴様はそれを手にして、何になる?』

 

声にはノイズが走り、聞き取り難い。

幾千、幾万とあまりに代わり映えしないものだから、繰り返しミピートされるそれは、壊れたラジオを聞いているような心境にある。

 

「何になるか……これを単なる生命延長上の軌跡にある物だと君が認識しているというのなら、それは凡人の発想だね」

 

哄笑の声色。その男に対して哀れみすら感じさせる冷めた瞳を細めた『私』は、私の思考・意思関係なく独りでに言葉を紡いで黒いナニカへと歩を進める。

 

『答えになっていないが?』

 

「分からないか、世界支配する大王も全知全能の神も所詮進化することを忘れた怠け者さ」

 

『何だと………』

 

呆けた返事をする男を振り払い、私はその塊を掴んだ。

 

そこで、視界はボヤけて行き………

 

 

 

 

 

 

「………さん

 

 

―――――藍染さん!

 

外世界からの音響に意識を夢から覚醒させ、私――藍染が瞼を持ち上げれば、派手な彩飾に身を包んだ骸骨が此方に顔を向けていた。

 

「………どうやら夢を見ていたようだ。ありがとうモモンガさん、最終日に寝落ちとは流石に格好がつかないからね」

 

「いえ、最近忙しいのにログインしていただいただけでも感謝です」

 

ピコンっと笑顔のチャット絵文字が骸骨の横に浮かんだ。

 

完全フルダイブ型VRMMORPG【Yggdrasil (ユグドラシル)】。

今から約十年ほど前に登場したゲームの総称であり、当時圧倒的自由度とグラフィックの高さから爆発的な人気を誇った。

しかし十年という長い歳月の果て、それはサービス終了間近のオワコンとまで言われるほど落ちぶれ、そのゲームにて猛威を振るった極悪ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』―――、ギルド長であるplayername《モモンガ》と私のようなマニアを除いて軒並み引退し、恐らくプレイヤーデータこそ消去していないのだろうが、今さらこのゲームをプレイしようというギルドメンバーの数は少ない。

 

「いやーでも最近は外にマスクなしで歩けるようになったり、身分制度が全部洗い流されて、義務教育が中学まで復活したとか。この調子で僕の会社もどうにかしてくれませんかね?」

 

「ヘロヘロさん………」

 

だが、サービス終了日の今日。

長いプレイ時間をつぎ込んだこのゲームを最後にその目に焼き付けようと懐かしい顔ぶれがその姿を覗かせた。

 

時間は疎らで、皆リアルの用事をおしてログインしてきたのか一時間にも満たずにログアウトし、私とモモンガ以外のギルドメンバーが出会わせる場面こそなかったものの、ここにいるスライム種族アバター《ヘロヘロ》がログインするのは実に三年ぶりのことだ。

 

「ははっすいません。愚痴っちゃって」

 

ゲーム世界にリアルの話を持ち出すのはご法度。

そういう風潮があるのは確かだが、このギルドに限ってはそういうものは特になく、《ヘロヘロ》は身を粉にして働く低賃金のブラック企業によって酷く衰弱したような声色で、私へとすがるように言葉を漏らす。

 

「そんなことはないですよ。必ずや8時出勤5時退社、有給30日以上のホワイト企業に変えてみせますとも」

 

私のリアルを知ってのことだ。

 

「藍染さんって本当に人間ですかね?(*´・ω・`)」

 

「おお神はここにいらっしゃった!拝まなきゃ拝まなきゃ♪」

 

「ふふっ拝みなさい、そして次の選挙では私に投票しなさい。さすれば貴殿に週二の休みを与えん」

 

「よっ未来の総理大臣!」

 

「(環境問題の改善から、教育環境の見直し。権力者の一斉摘発に人権復興まで………ほんとこの人…人間だよな?異形種なのにリアルフェイスに寄せたアバターだって言うし、死神としての彼が現実世界にいたとしても違和感が働かない)」

 

不気味に眼鏡を光らせる藍染、彼にモモンガは薄ら寒い恐怖を感じて両腕を抱える。

 

 

23:40

 

 

 

 

 

 

「では、またリアルで!」

 

「はいまた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

23:55

 

 

 

 

 

 

 

「藍染さん………アインズ・ウール・ゴウンは楽しかったですか?」

 

「ええ、」

 

玉座に腰かけるモモンガとその傍らに立つ藍染はしんみりと呟く。

 

23:58

 

互いに最愛のホームへ別れを済まし最後は玉座でと、モモンガの提案に頷き、戦闘メイドプレアデスと執事NPCセバスを引き付れた彼ら二人は、天を仰ぎ目を閉じる。

最後だからと滅多に装備しない課金アイテムやギルド武器まで持ち出したモモンガは、ふと己のボーナスをつぎ込み獲得したものの、ついぞ使うことのなかった指輪の課金アイテムの効果を思い出す。

 

「指輪よ………『I wish」

 

我がアインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!」

 

当然のように何も起こらず、指輪の流星のマークが1つ消えるだけに留まり、何かが吹っ切れたモモンガは最後は魔王らしくとロールプレイを開始する。

 

「我が友………藍染惣右介」

 

「なんだろうギルマス?」

 

「ワールドアイテムを集め世界を蹂躙し、神々の滅んだユグドラシルに最早用はない…」

 

「あぁ、大きな犠牲もあった。最後に残ったのは僕ら二人だけとなってしまったが、戦力差を憂いアインズ・ウール・ゴウンが座して待つなどもっての他だ」

 

どうやら彼もノッてくれるらしい。

調子を良くしたモモンガはギルド武器を掲げ、声高々に宣言する。

 

「故に我々は次の段階へ進む!聞け、ナザリックの者たちよ!アインズ・ウール・ゴウンはあまねく世界全てを支配する神である!如何なる脅威、絶望が立ち向かおうと知らしめるのだ!我々こそが真の支配者であると!」

 

 

23:59 57,58,59

 

00:00

 

その瞬間『ユグドラシル』は終わりを迎えた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

能ある鷹は爪を隠す

「「………ん?」」

 

00:00 1,2,3,4…

 

ユグドラシルは本日を持って全サービスを終了し終わりを迎えた、その筈だ。

サーバーがダウンしてプレイヤーは強制ログアウトとなり、二人が次に目にするのは自室――ではなくナザリック大墳墓の最下層、玉座の間である。

 

「サービスが延期になった?」

 

「不具合でしょうか?」

 

藍染は時刻を確認して首をひねる。モモンガはコンソールが開かない事から何らかの不具合でログアウトだけ遅れているのだろうと藍染に語るが、次の瞬間それは間違いであると思い知らされた。

 

「「「オォォォォォォォ!!!!」」」

 

ビリビリと空気が震える。地震が起きたのかと錯覚するような叫び声がナザリック全体を揺らした。藍染とモモンガが何事かと身構えるとプレアデスそしてセバス、守護者統括であるアルベドが拳を突き上げ雄叫びをあげていた。

だが、十名にも満たない彼らがいくら声をあげた所でここまでの迫力は生まれない。ならば、

イベント?

バグ?

魔法かスキルか?

―――いや、違う。

その真相はモモンガが数分前に使用した課金アイテム〈星に願いを〉にあった。

『我がアインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とせよ!』

通常なら選択肢が現れ、それが選択されると願いを叶える超位魔法の経験値消費を三度だけ肩代わりする課金アイテム。それはユグドラシルから異世界へと転移する際に不発だったモモンガの願いをモモンガが望む最も近い形で叶えるべく“全ての階層にモモンガのロールプレイを大画面で映し出した”のだ。

 

異世界転移によりアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーが召喚又は一から創造したNPC達には明確な自我が生まれ、全員がナザリック、ひいてはギルドメンバーである至高の41人に絶対の忠誠を誓っている。そんな彼らの頂点とも云えるモモンガが世界征服を宣言した。………興奮しないわけない。ナザリックの全ての者達は雄叫びを上げアインズ・ウール・ゴウンの新たる伝説の幕開けだと歓喜の渦に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

「………………騒々しいな、静かにしないか

 

ズウウン

それが冷や水を浴びたように鎮まる。

モモンガの映る画面は藍染へと移り変わりその熱を感じさせない瞳に全ての者たちが震えた。

 

「ギルマスの言葉はまだ終わっていない。さぁギルマス続きをどうぞ」

 

「う、うむ。現在ナザリックは―――」

 

そして混乱から立ち直ったモモンガはセバスに周辺の地理を探るようにアルベドに六階層の闘技場へヴィクティムやガルガンチュアを除く階層守護者全員を集めることを命じた。

そこで、モモンガは藍染の創造したNPCも呼び出すべきかを迷い尋ねる。

 

「藍染よ、『ウルキオラ』はどうする?」

 

「彼は領域守護者だ。あのルベドに匹敵するとはいえ、ワールドアイテムそのものともいえる彼を安易に呼び出す訳にはいかないだろう」

 

「そうか。ならばナザリックのシモベ達よ、行動を開始せよ!」

 

「「「ハッ!」」」

 

セバス達が玉座の間を去り

タイミングを読んだように〈星に願いを〉で映し出されていた大画面が消えた。

 

 

「………ギルマス。僕たちはもしかしてとんでもない事態に巻き込まれたのでは!?」

 

「と、取り敢えず、危機を乗り越えられたことを喜びましょう!」

 

故に彼らの支配者とはかけ離れた情けない姿は、誰一人として目にすることはなかった。




この藍染様の見た目は護廷十三隊五番隊隊長時代のものです
異形種形態ははんぺん。


「騒々しいな、静かにしないか」
ズウウン

霊圧でノイズが走ったみたいになるあれ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

階層守護者

「君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き南へと歩を進めよ

【破道の三十一・赤火砲】」

 

藍染の手のひらから放たれた赤い閃光がモモンガが召喚した低位アンデットに直撃する。火属性耐性のないアンデットはカンスト勢の放つ第三位階魔法相当の破道を受け、カラカラと音をたてて崩れ落ちた。数秒ほど神経を張り巡らせ異常がないと悟ると藍染はほっと息を吐き、モモンガは瞬時に十位階魔法を行使出来るよう構えていたギルド武器を下ろす。

 

「スキルや魔法は問題なく使えるようです」

 

「レメゲトンのゴーレムへの命令権も問題ありませんでしたし、最低限の自衛手段は確認できましたね」

 

「欲を言えばギルド武器の性能も確かめたかったですが………流石に部屋の中で使えるものじゃありませんからね。」

 

「続きは、階層守護者に会ってから闘技場で行いましょう。彼らが反逆を翻すような存在じゃないにしてもナザリックだけで今回の事件が終わるとは思えない。」

 

藍染はリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。モモンガの右手薬指にもはめられた指輪であり、アインズ・ウール・ゴウンのメンバー全てが保有していた“ナザリック内の名前がついている部屋ならば回数無制限に転移出来る”マジックアイテムを起動し――ようしとして様子がおかしい事に気づく。

 

 

「〈飛行(フライ)〉〈魔法詠唱者の祝福(ブレスオブマジックキャスター)〉〈無限障壁(インフィニティウォール)〉〈魔法からの守り・神聖(マジックウォード・フォーリー)〉〈生命の精髄(ライフエッセンス)〉〈上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)〉〈自由化(フリーダム)〉〈虚偽情報・生命(フォールスデータ・ライフ)〉〈看破(シースルー)〉」

 

見ればモモンガは麻袋のような装備で高速詠唱による強化魔法を何十と重ねている。

 

「ギルマス、何のつもりですか」

 

「――えっシャルティア対策ですがなにか?」

 

「まさか、その装備で行くつもりですか」

 

「―――えっpvpで騙し合いは基本でしょう?」

 

この後、無理やり着替えさせられたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六階層に転移すると既に守護者達は跪いて主人の声を待つのみとなっていた。

 

「では皆、至高なる御方に忠誠の儀を」

 

「第一、第二、第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン御身の前に」

 

「第五階層守護者コキュートス御身ノ前ニ」

 

「第六階層守護者アウラ・ベラ・フィオーラ」

「ぉ、同じく第六階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレ」

「「御身の前に」」

 

「第七階層守護者デミウルゴス、御身の前に」

 

「守護者統括アルベド御身の前に」

 

「第四階層守護者ガルガルティア及び第八階層守護者ヴィクティムを除き各階層守護者、御身の前に平伏したてまつる。ご命令を至高なる御身よ

我らの忠義全てを御身に捧げます」

 

 

「………よく集まってくれた感謝しよう」

各々の言葉を聞き、まるで何日も前から打ち合わせを重ねたようにスムーズに動く守護者達にモモンガはえらく感動して激励の言葉をかける。少しばかりアルベドの言動が忠義というには行きすぎた物だったが、モモンガや藍染もまだ許容できるレベルだった。

 

「さて、現在ナザリック地下大墳墓は原因不明の事態に巻き込まれている。すでにセバスに地表を捜索させているのだが、」

 

そろそろ戻って来るだろうと何気なく闘技場の入り口に視線を送ると歩いてくるセバスを発見した。

 

 

「何、草原だと?」

 

「はい、かつてナザリック地下大墳墓があった沼地とはまったく異なり周囲一キロに人工建築物、人型生物及びモンスターの類いは一切確認できませんでした。」

 

「ご苦労だったなセバス。ナザリックが何らかの理由でどこか不明の地に転移してしまったのは間違いないようだ」

 

「これは僕の記憶が正しければなのだが、ユグドラシルにそのようなエリアは存在しなかった筈だよ」

 

「ふむ。するとここは――異世界と言うわけか」

 

おぉぉぉ………

 

「ん?」

 

複数の感嘆めいたため息にモモンガが意識を向けると守護者達の一人デミウルゴスが、胸のうちを抑えきれないとばかりに口を開いた。

 

「我らナザリックが一同。至高なる御方方にこの世界、いえあまねく全ての世界を献上し、真なる支配者とは誰か思い知らせてみせます!」

 

「―――えっ?」

 

恐らく先ほどの演説ロールプレイを聞いての言葉だろうが、完全に予想外だったモモンガは支配者らしからぬ間の抜けた声を漏らす。

 

「なにか、私の言動が」

 

デミウルゴスの戸惑った声に、モモンガは己の犯した致命的なミスを悟り焦る。しかし、一介のサラリーマンに過ぎない自分がここで下手に言葉を被せた所でどうにかなる物なのかと迷い口を閉ざしてしまった。

デミウルゴスの戸惑った様子に守護者達は何事かと、不安が広がる。

 

「(ま、不味い何とかしないと!)」

 

モモンガは、支配者の演技も忘れ慌てて言い訳を伝えようと――――「分からないかデミウルゴス」

 

「最初から誰も天に立ってなどいない 僕もギルマスすらも

これからだ。これから私たちは――天に立つ。君のその言葉は少し早計だとギルマスは言っているのだ」

 

「おぉ!出すぎた真似を申し訳ございません」

 

「よい、下がれデミウルゴス。お前達の忠義しかと受け取った。以後励むがよい。」

 

 

「「「ハッ」」」

 

 

その言葉を最後にモモンガと藍染が転移により去る。

 

 

「「「………………」」」

 

 

闘技場は異常な静けさを放っていた。




ナザリック図鑑

「欲を言えばギルド武器の性能も確かめたかったですが………流石に部屋の中で使えるものじゃありませんからね」


――パンッ

突如鳴り響く〈完全なる狂騒〉


「あっゴキブリ」

「魔法三重化(トリプレットマジック)現断(リアリティ・スラシュ)!」

「ギャァァァ!!!」←恐怖公


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大悪魔と蟲王

至高の御方であるモモンガと藍染がリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンにより闘技場を後にされてから、数刻の間。彼ら階層守護者は誰一人として言葉を発せず、アルベドが立ち上がって初めて安堵の息を漏らした。

 

 

「す、凄く恐かったね。お姉ちゃん」

 

「うん、押し潰されるかと思ったよ」

 

「マサカアレホドトハ」

 

 

モモンガが途中から常時発動させていたスキル 絶望のオーラⅤ(即死)。本来なら高い耐性を持つ彼らには効かないものだが、訳あって階層守護者全員を信用していなかったモモンガが持ち出したギルド武器によって強化され、即死とまではいかない物の、死を突きつけられた咎人のような恐怖に階層守護者達は怯え、同時に歓喜していたのだった。

 

「あれが、支配者としてのお姿お見せになったモモンガ様………」

 

「我々ノ忠義ニ応エテ下サッタト言ウコトカ。シカシ………」

 

「あぁ、君もそう思うか」

 

コキュートスとデミウルゴスは決して声に出さない。けれど、その心情は同じだった。

 

『藍染様の方が、ナザリックの支配者として相応しいと感じてしまった』

 

特に、藍染と直接応対したデミウルゴスは強くそう感じた。

モモンガ様の守護者ですら底の見えない力、能力に頼るものではなく感情に働きかけるそれは支配者として確かに素晴らしい物だろう。だが、目線だけでナザリック全てを震え上がらせ部下の心情を瞬時に読み取り適切なアドバイスを入れた藍染様はどうもモモンガ様のそれ以上を宿している気がしてならない。かつてナザリックはたっちみーからモモンガへギルド長の座を譲り渡した。まだ藍染はアインズ・ウール・ゴウンへ加入していなかった時期だったと聞く。もしその時に藍染が加入していたらナザリックの今の支配者は―――

 

「(いえ、私ごときが至高なる御方を推し量ろうなど不遜な)」

 

「このビッチ!」

 

「八ツ目鰻!」

 

「コレハ止メルベキナノデハ?」

 

「あぁ、そうだね。」

 

アルベドとシャルティアがどちらがモモンガの正妻に成るかを賭けて本気で争いかねない状況を眺めながら、願わくばこの均衡が永遠に崩れないことを願うデミウルゴスであった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

ステータス公開

 

藍染惣右介 レベル100

 

種族 死神(異形種)

属性…中立 【カルマ値0】

種族レベル 死神 Lv10 その他

職業レベル 大鬼道長Lv10 護廷十三番隊五番隊隊長 Lv10 その他

 

 

藍染の装備

黒覇装…伝説級(レジェンド)

五番隊隊長の羽織り…伝説級

リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン

指輪A…探知系魔法に対し完全耐性

指輪B…デスペナルティなしの復活

指輪C…上位全能力強化

指輪D…虚偽情報・魔力

そのほか

 

斬魄刀『鏡花水月』…神器級(ゴッツ)

崩玉…ワールドアイテム。ナザリック勢には存在を秘匿。武器扱いではない為コキュートスも知らない。




――新章

「ビーストマンどもが装備だけを残して消えたじゃと?………願ったり叶ったりじゃが妙じゃの」


「ふふふ、貴方とっても強いのね」


「がせっ………嫌だ俺ばッ人間ヲ辞べだぐ!」


「アカンで、逃げようしたってどうせ助からへん」
「クソガァァ!!!」


【目覚めよ崩玉】


そして、舞台は土日祝日投稿へ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

キラキラとした

新章の一歩手前


闘技場での問答を終え一先ず最低限の信用を確認した藍染とモモンガが向かったのはナザリックの外だった。本来ならばマーレに頼む予定だったナザリックの隠蔽作業をモモンガと藍染が行う為であり、伝え忘れたと〈伝言〉を送ろうとしたモモンガに藍染が夜に子供を働かせるのは酷だろうと優しく諭したからだった。

 

「(…うわっ寒。耐性切ったら結構冷えるなぁ)」

 

モモンガは召喚したアンデットが地道に土を被せて行く作業を眺めながら満天の星空を見る。

 

 

ブループラネットさんは、今じゃ天文台に籠りっきりで新しい星でも探して要るのだろうか?

 

モモンガの元いた世界でもこんな星空は一応()()()()()()()()。しかし、ここまでの星空となるとネットも繋がらないような森の中や山の上でもなければ難しい………が、それでも昔のように不可能じゃない。それを理由に彼=ブループラネットがアインズ・ウール・ゴウンを辞めた日の事をモモンガは鮮明に覚えていた。

 

『モモンガさん!近年、環境汚染に対し大規模なプロジェクトが進行している事はご存知でしょうか!?』

 

『ええ、確か藍染さんがプロジェクトリーダーなんですよね?』

 

『そうですよ!もうっ彼のお陰で我々がどれ程救われたか!

…それで、ですね。十年に及ぶco2ゼロ計画やアマゾンの森林伐採の禁止、色々な努力が実を結んで最近アルプス山脈のとある観測所で星が見えるようになったんです』

 

『あぁ、それは』

 

『国内サービスのユグドラシルでは海外からログイン出来ません。誠に勝手ながら今日でアインズ・ウール・ゴウンを引退させていただきたい』

 

「あの時は、星なんかで…なんて思ったりしたけど納得だよ。ブループラネットさんはこの光景に憧れたんだ」

 

みんなリアルの生活の為、叶う筈のなかった夢を叶えるチャンスを得てギルドを辞めていったんだ。快く送り出してきた筈なのにいつから忘れていたのだろう…俺がここに残っていたのは俺の夢がこのギルドだったからだ。

夢はいつしか覚めるものだ。それを嫌だと駄々をこねる、ましてやこれから夢を見ようとする友に怒りを抱くのは検討違いと言うものだろう。

 

「楽しかった…そう楽しかったんだ」

 

モモンガは一人、もしかしたら自分たち以外にも転移してきたギルドの仲間がいるかもしれない。そんな下らない妄想を捨てた。

あの世界を全力で生きている彼らが、今さらこっちに戻ってくる訳がない。

 

 

それに、

 

 

 

この世界は…俺の、

 

 

 

 

 

 

 

………俺だけの

 

 

 

 

 

 

 

 

アインズ・ウール・ゴウンの夢の続きだ。

 

 

 

誰にも邪魔はさせない。藍染さんはリアルでなくてはならない存在だ。だからまずは彼を帰す。そして彼を帰したら………

()()()()なんて面白いかもしれないな

 

「フフフ、ハハハハハハ!!」

 

モモンガはそう呟き邪悪に嗤った。




藍染様無双も良いけど………藍染vsガチ魔王アインズ様も観たいこの頃。

藍染様 新情報
一部の守護者達から好感触なのはリアルで彼らの創造主がめちゃくちゃ感謝しているから。
もしかしたら、原作のモモンガさんみたいに『モモンガを愛してる』ならぬ『藍染に感謝している』とか書き込みにきたギルドメンバーもいたりして?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

軋轢

Yggdrasil (ユグドラシル)』の最終日、ログインしていた私とモモンガは、ゲームアバターのまま異界の地へと飛ばされた。

 

そこでは私達がゲーム内のルールに乗っ取り、簡単なプログラミングと外装付けを行ったNPCがまるで生きているかのように振る舞い、何故か創造主ですらない私やモモンガの為になるなら命を捨てることすら構わないという。

 

(これは、参ったな)

 

アイテムボックスから取り出した調味料を舐めて、ぴりついた辛さに藍染は嘆息を漏らす。

 

現実と仮想世界を混合しないように建てられた法律により、全てのフルダイブ型ゲームにて、五感のリンク性は厳しく取り締まられ、中でも味覚と嗅覚は完全に遮断されている。

法改正があった等の話は聞いていないし、何より一企業が国家に喧嘩を売るような真似をするとは思えない。

 

モモンガに付き添ってナザリックの外に出た私には幸いにも星読みに覚えがあった。この世界の空を見て、本能的に美しいと思いつつ、理性の目を光らせ、これだけ澄みきった夜空でありながら地球上なら確認できる星々が何一つとして見当たらないことで―――確信を得た。

 

【異世界転移】

 

それは数世紀前に一大ジャンルとして名を馳せ、幾十とアニメ作品を誕生させてきた日本サブカルチャーの一つ。

 

こんな簡単な言葉で表せれば、SF染みていると鼻で笑われるだろう。

 

しかし、高度に発達した科学は、魔術と見分けがつかないと聞く。

 

この()()()()()において物質の限定的な転移とはもはや空想の話ではなく、職業柄そういったものへの知識も浅くない藍染はこの現状を簡潔にまとめ上げた。

 

 

「…………」

 

暗がりの中。

モモンガの独白に耳を傾けていた藍染は思考を悩ませる。

 

(まさか、彼がそのような精神状態だったとは…)

 

先ず我々が目指すのは、安全の確保。異世界転移した原因の調査、そして元の世界への帰還。

 

良くも悪くも癖の強いアインズ・ウール・ゴウンの中で、共に転移したのが常識人たるモモンガであったことに安堵を覚えた藍染であったが、その胸の内に長年抱え続けてきた闇の一端を見たことによって、その評価を改めざる終えない。

 

目に見える裏切りなど知れている。本当に恐ろしいのは目に見えぬ裏切りだ

 

まだ弱く儚く、下を向いて最低限の水と食糧を有り難がって辛うじて生を繋いでいた私が、星の救済を志した時から座右の銘としていた言葉だ。

 

彼は必要とあらば、知人に友人……肉親すらも、切り捨てる冷酷さを秘めている。

 

安全の確保。異世界転移した原因の調査、これらは我々の関係に軋轢を生むものではない。

 

しかし、元の世界への帰還。

果たしてそれが私とモモンガ、二人にして叶えられるものであったのなら……彼方側になんの未練も持たず、その身に宿した力を惜しむような人間であるのなら、彼は私を――殺すだろうか?

 

 

 

…………今、気づけてよかった。

 

これで彼は私を殺せない。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

目に見える裏切り

ナザリックの隠蔽が終わると藍染と別れて寝室へと戻ったモモンガであったが、「眠れない…」アンデットの体となり睡眠と飲食が不可能となった彼は遠隔視の鏡を用いて周囲の状況を知ろうと椅子に腰を掛けた。

 

コンコン

 

「モモンガ様…」

 

「セバスか、(こんな夜更けに何のようだ?)」

 

モモンガはさっとギルド武器=スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取ろうとして止めた。

 

「入れ」

 

 

 

 

 

 

「はい、執事は主人のお側に仕えるべきだと。たっちみー様に『そうあれ』と私は創造されました。」

 

「成る程、つまりお前たちの行動原理は友たちの設定通りと言うわけか」

 

本当にゲームが現実になったみたいだ。

モモンガはその事を内心嬉しく思い………『モモンッガ様!ァ、ァァ!』無い筈の胃を痛めた。

だが、これでNPC達が反旗を翻すような存在でないことに裏付けが取れたわけだ。詳細なデータとなると難しいが、約一名を除き反乱を企てるような設定を持つNPCはナザリックに存在しないとモモンガは記憶している。最悪NPCとの全面戦争を考えていた彼にとっては肩の荷が一つ降りたと言っていい。

「(道こそ違えたが、彼らの子供達を手にかけるのは辛いからな)」

 

「セバス」

 

「はっ」

 

「…頼りにしているぞ」

 

「!?」

 

 

その後、二人に会話はなく気まずい時間が流れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――???

 

そこは太陽がなかった。

ただ広く草木どころか水すらもない、天高く聳える城がなければ正確な地理も測れない砂の大地に一人の女性が舞い降りる。

 

 

 

「貴方が、第八階層守護者ウルキオラね」

 

「…何の真似だ?」

 

アルベドは黒い鎧と異色の籠手を纏い、城の入り口から歩いてきた全身真っ白な男に笑みを浮かべる。

この八階層『虚圏(ウェコムンド)』の領域守護者であるウルキオラはそんな侵入者に警戒を表し刀に手を添えた。

 

「あら、怖い。レディーの扱いが分かっていないんじゃなくて?」

 

「守護者統括のお前と言えど第八階層に限りその権限はない。これより先は藍染様の根城だ。進むというなら、斬る」

 

殺気というにはあまりに覇気がないウルキオラの魔力が僅かに揺れる。階層守護者含め領域守護者での彼の強さはルベド、ガルガンテュア、シャルティアの順に四番目だ。アルベドの知識では()()()()()いる。ナザリック最硬のアルベドが例え完全装備で挑んだとして、間違っても勝ち目のない相手だ。

 

「藍染様に直接お伝えすべき言伝てをモモンガ様より賜っているの。〈伝言〉でもいいけど、やっぱり至高の御方に対して失礼にあたるじゃない」

 

「聞こえなかったのか。第八階層に転移することが問題だと言っている。」

 

「それも、モモンガ様にご許可頂いたわ」

 

「…そうか」

 

魔力の揺らぎが止まり、アルベドはほっと息を吐く。

 

「じゃあ先を急いでいいかしら?」

 

「藍染様のご友人であるモモンガ様が許可を出されたのなら俺から言うことはない

 

だが……」

 

ウルキオラの魔力が一気に膨れ上がる。

 

「それを使う気なら止めておけ、“使った”そう認識した時にはお前は死んでいるだろう」

 

「………チッ

 

アルベドの小さい舌打ちは至高の御方に対して自分が牙を剥けるような存在だとウルキオラに認識されていたものなのか、これから面会する藍染の強大さに苛立ちを覚えた結果なのか。

 

ワールドアイテム=《真なる無》を撫でる彼女の顏から伺い知る事は出来なかった




アランカル大百科

「俺の名は、ウルキオラ。第八階層『虚圏』を守護する領域守護者だ」

「へぇ、領域守護者は十刃とは違うん?」

「――それは」

「あー!時間になってもうた。その続きは今度の機会でな。
えっ僕が誰やて?
………秘密や♪」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

藍染パパ

「待て待てー!」「あっ瞬歩だ!」「ずっるい~」「追い詰めたぞ!」「わはは」「あれ?」「どこだどこだ?」

 

ガシャ ゴショ ドカドカ

 

第八階層『虚圏』虚夜宮(ラス・ノーチェス)

 

ウルキオラと一悶着あったアルベドはその光景が信じられず、目を見開いて呆然としていた。

 

「甘いぞ、ピカロ。僕はここっ――あぶしッゥ!?」

 

「わー転んだ」「カッコ悪い!」「オーぅ!」「きゃー♪」

「藍染様ぁぁ!」「今だ捕まえろぉ」「バラ、バラ、虚弾♪」

 

少年と少女、人型のものや骨格から違いのでる異形種の子供達が至高の御方である藍染様を相手に追いかけっこをしているのだ。

いや、それだけなら微笑ましいですむかもしれない。しかし相手はあの藍染様だ。

 

…今、魔法攻撃をしなかったか!?

 

ナザリック一慈愛の心を持ちリアルで絶大な活躍を成される藍染様。アルベドはナザリックの支配者がモモンガ様ならリアルの支配者は藍染様だと思っている。

『リアル』ユグドラシルの上位次元にあるとされるそれを変革し、征服した藍染様を一部ではナザリックの真の支配者へ担ぎ上げる動きもあるのだ。

彼の偉業は至高の御方々の中でも飛び抜けたものだとナザリックの誰もが認めている。だが、その一定数の愚者共の多くはモモンガ様の悲しみと慈悲深きお心を理解出来ていない…

 

本当に忌まわしい

 

…話がずれた。

 

そんな至高にして絶対の(リアル世界の)支配者である藍染様が、子供相手にお遊戯を?

 

「藍、染さま?」

 

君臨者としてのイメージが強かったアルベドは、幼子に揉みくちゃにされる、イメージとはかけ離れた姿にうわずった声を漏らす。

 

「うっ、ごほっ―――あれ、アルベドかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり彼らはウルキオラの前任の領域守護者だと?」

 

「あぁウルキオラがワールドアイテムを素材にした虚の上位種であることは知っているだろう。

彼らはそのワールドアイテムで試験的に作った存在なんだが、僕が欲張って擬似的な不死を試みた結果…ヘロヘロさんでも匙を投げるレベルでね。とても領域守護者なんて勤まらせられないから虚圏の端に作った牢獄に閉じ込めていたんだ。…まぁこういう状況さ」

 

「群にして個」全てを殺さない限り無限に復活を繰り返す元領域守護者の名は『ピカロ』

休息をとるために虚夜宮を訪れた藍染に対して彼らは不敬にも、当人の意思を無視して脱獄し

就寝する藍染を叩き起こして遊びをねだったらしい。

 

 

「至高の御方に対して不敬な!直ぐに処分するべきかと!」

 

「よさないか。彼らはまだ子供だ」

 

「しかし!」

 

「――それに、彼らはワールドアイテムを素材にしている

“ワールドアイテムに対抗出来るのはワールドアイテムだけ”その意味が分からないわけないだろう。彼らは遊び相手でもあり何より頼もしい護衛でもあるのだよ」

 

「そーだ、そーだ!」「僕らは働いてるんだ」「人柱!」「遊ぼう」「すごいぞ」「ほめろほめろ!」

 

アルベドを取り囲み責めるようにはしゃぎたてるピカロ

 

「なっ!?」

 

アルベドは恐れと驚愕に体を震わせる。

この一体一体が、ワールドアイテム?

何を、馬鹿な。そんな、そんな不条理がまかり通って!

 

「なんなら試してみるかい?それを使って」

 

「!?」

 

藍染の視線が《真なる無》へと動く

完全に不意を突かれた。アルベドは生きた心地がしなかったが、それを必死に隠して言葉を返す。

 

「………いえ、遠慮させていただきます」

 

「そうか、ならギルマスの言伝てを教えてくれないかな?」

 

「は………い、今後のナザリックにおいてですが、モモンガ様は―――」




アランカル大百科

「「僕はピカロ!」」

「あれ~君ら本編に登場したっけ?」

「「小説読め!」」

「それってオーバーロードの………」

「BLEACHだよ」「常識じゃん」「勉強が足りないんじゃない」「これだから…にわかは」

「君らこのコーナー元は僕のだって忘れてない?(涙目)」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

BLEACH

数多あるMMORPGが一見関連性のないアニメや漫画をコラボという形で世界内にコンテンツとして取り込むように『Yggdrasil (ユグドラシル)』もその例に漏れず、私がこのゲームを初めて幾ばくかの頃、とある漫画作品とのコラボをYggdrasil (ユグドラシル)は行った。

 

BLEACH

 

普通の高校生、黒崎一護(くろさきいちご)がとある事件を切っ掛けに死神代行となり様々な事件に巻き込まれていく物語。

某、少年雑誌にて連載され漫画界の黄金期を飾った作品の一つである。

確か運営とスポンサーにこの手のファンがいたとかでその規模は過去最大となったとか。

 

『死神』『虚』『滅却師』

 

三つの種族が追加されたといえばその凄さが分かるだろうか。

種族追加は後先にもあったが、コラボ作品で追加される事はなく、斬魂刀シリーズという突き詰めれば神器級(ゴッズアイテム)に匹敵する武器や世界級(ワールドアイテム)まで造られた時にはYggdrasil (ユグドラシル)プレイヤー誰もが目を剥いた。

 

まだゲームを始めたばかりであった私はその方向性を決めかねており、ネットの記事や口コミを参考にして、コラボ種族限定でしか手に入らないアイテムがあるならと、最終的に死神という異形種を選択した。

 

 

 

 

――第八階層・虚圏(ウェコムンド)

 

白い砂漠と明けない夜空の下、藍染は居城へと歩く。

 

「おかえりなさいませ、藍染様」

 

その彼の目の前には彼自身が手掛けた虚の上位種『破面(アランカル)』のウルキオラが膝をおって頭をたれている

 

ウルキオラは他のNPCとは異なり、

レベル百でありながら製作可能ポイントを用いず、召喚されたモンスターといった扱いでもない。

一度消滅すれば復活は不可能であり、そして藍染は彼のフレーバーテキストに何一つとして書き込んでいなかった。

 

階層守護者を集める時に彼を召集しなかったのはその点で忠誠の二文字が不確かであり、力こそ階層守護者最強たるシャルティアに及ばないとはいえ、彼の殲滅力は周囲へ甚大な被害を誘発しかねない。

万が一、暴走などされてはナザリックの階層が一つ消失するレベルの損失だ。

 

よってオブジェクトの殆どが存在せず、彼が暴れても問題のない第八階層にて、藍染は初めて意思を持ったウルキオラと対面することとなる。

 

「―――ふむ、何も写さないか」

 

長い沈黙のすえ私は一言、そう呟いた。

 

「ご苦労だったねウルキオラ、僕らの城へと戻ろうか」

 

「はっ」

 

ウルキオラは短く返事をして藍染の斜め後ろに付き添った。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

藍染惣右介の策略
仲間集め その1


少しだけ時間軸がずれます


「ここがそうかい?」

藍染が言った。

「はい。この城の奥に」

ウルキオラは答える。

虚夜宮の数倍はあろうか。荘厳な城門の前に立つ藍染はその美しさに少しばかりの感動を覚え壁を撫でる。

長い年月を一級の職人達が手間暇かけて完成させたのだろう。人の手が離れて随分と時が立つのに城門としての役割は勿論、色褪せた様子がみられない。

 

「リアルでは、資源に余裕がなかった。歴史的建造物も破壊されて等しく……初めて目にしたがやはり素晴らしいな」

 

「………」

 

ウルキオラはその感情が理解出来ない。しかし至高の御方である藍染様が美しいというのだからそれだけ価値が有る物なのだろうと城の姿を瞼の裏に焼き付けた。

 

「行こうか」

 

「はっ」

 

そして二人は城内へと侵入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界においてドラゴンは最強の種族だ。

人間ではおよそ到達不可能な過酷な土地でも、そこには適応した種がほぼ必ず存在する。そしてそれはこのアゼルリシア山脈でも例外ではなく、支配者層としてドラゴンが君臨していた。

そのドラゴンの種族をフロスト・ドラゴンと言う。

ドラゴンと言うより腕を生やした竜に近く霜を降らしたような白色の鱗からそう呼ばれるようになった。環境に適応し、冷気に対する強い耐性を得た種族である。

 

そのフロスト・ドラゴンの王であるオラサーダルク=ヘイリリアルは自らの玉座にとぐろを巻きつつ、機嫌をとろうとする三人の妻を押し退け対立する息子達を眺めた。

 

「ロォォォォ!!!」

 

冷気を宿したドラゴンブレスを放つ長男と何処から見つけてきたのか炎の魔道具で防ぐ何番目かに生まれた息子。長男はブレスが無駄だと悟ると牙を剥き出しに飛び込み、その丸く太った巨体を揺らしてヒイヒイと言いながら避ける弟。実に見応えのない試合だ。

「止めろ貴様ら」

 

暇潰しに殺し合わせてみたが、面白みのない。実力の劣る臆病者の戦いだ。

こいつらを率いて霜の巨人を皆殺しにし世界を支配するのに何年掛かるか。先が思いやられ「ギョァァァア」

 

「何だ?」

 

ヘイリリアルは目の前で爆散四散する長男に目を見開く。まさかもう一人がやったのかと横を見れば、白目を剥いて気絶していた。ダメだ、こいつじゃない。一瞬、新たな魔道具を使ったのかと考えたがそんなものがあるなら先ほどの醜態をとる意味が分からない。では、誰―――

 

 

「お初にお目にかかる僕は藍染、藍染惣右介。君がアゼルリシア山脈のオラサーダルク=ヘイリリアル王だね」

 

長男の前で二匹の劣等種がこちらを見上げていた。

こいつらが長男を殺したのだろうか?

 

「まぁいい、丁度退屈していた所だ。歓迎してやろう…ようこそ我が城へ劣等種の小僧」

 

「ありがとう。それと、これは君が好むだろうと思って用意してきた物だ。ぜひ受け取ってくれ。」

 

「ほうっ黄金か………」

 

普段なら気にも止めない雑種だが、それが用意した財宝の数々にヘイリリアルは目を光らせる。

 

「つまりお前は我が庇護下にありたいと言うことだな。よかろう、これ程の財宝は見たことがない。これからも献上するというのなら貴様が生きる事をこの俺が許してやろう」

 

「――砕けろ『鏡花水月』」

 

その瞬間、彼の運命は結した。




アランカル大百科

「はいはい、皆久しぶりやね~さて今日紹介するのは」

「えっ、これ読め?」

「『ギリギリ間に合った(汗)明日は投稿出来ません(泣)』はい次回も宜しく~てっそんなあほな!?」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

大虚

「藍染様、エ・ランテルにて英雄が現れたそうです」

 

「やはりギルマスはパンドラズ・アクターと接触したようだね」

 

『藍ァイィ染ンンンン!!!』

 

予定通りだ。そう言葉を漏らし、低く唸り声をあげる仮面のドラゴンを一目見て、藍染は黒いガラス玉を懐にしまう。

その足下には首から上のない脱け殻…死したドラゴンが仰向けに倒れていた。

 

「行こうか」

 

「………宜しかったのですか?」

 

「あぁ、これ以上の強化は元の魂魄を過度に蝕んでしまうからね。だからと言ってギリアン級の彼に未完成のコレで破面化を施した所で完全な人型となると厳しいだろう。彼の憎しみが感傷ではなくその身全てを燃やし尽くす憎悪なら自己の力でヴァストローデ級の虚へ至れると僕は信じているよ」

 

 

 

『貴様ダケハァァァ殺スゥゥゥ!!!!』

 

 

そんな中、ヘイリリアルを思わせる仮面のドラゴンは口を大きく開け、赤いエネルギーを放つ。

煮えたぎる怒りを露にする仮面のドラゴンはブレスを使う要領でそれを放ったのだろうが、生前の彼が放つドラゴンブレスと比べ数十倍以上の威力を含んでいた。

 

「もう使えるのか、ユグドラシルならレベル50以上で初めて取得可能になるが、この世界はレベルの常識に囚われないのかな」

 

この世界で藍染とウルキオラ、もしかすればモモンガは知っているかもしれないそれの名は虚閃(セロ)

霊圧を凝縮し一撃の元に全てを蹂躙する大虚クラスの言わば必殺技である。ユグドラシルでは対策が容易であり、回数制限がある為、派手な見た目のわりに不人気であったが技量・条件次第で《超位魔法》に届きうるというぶっ壊れ性能である。

 

しかし、ウルキオラは手刀の構えを取り呆気なく虚閃を叩き落とした。

 

「荒いな、ピカロ達といい勝負だろう」

 

『グォォォ!?馬鹿ナァア!』

 

 

―――ウルキオラ

 

仮面のドラゴンは何かワメいているようだが、この霊子の薄い現世で全力の虚閃を放った影響か霊圧が極端に低下している。このままでは消滅するかもしれない。ウルキオラはチラリと藍染を見ると彼は嬉しそうに笑って踵を返した。

 

「?」

 

このまま放って置けば、この大虚(メノス)は消滅するだろう。アレはもう使えないと言っていたが霊圧の回復は藍染様の得意とする回道に通じる物がある。何もしないということは藍染様はこれを見限ったのか?

ウルキオラはまた口を開こうとして――止めた。

 

「次はタレント、未知の力か………興味深い」

 

とても愉しそうに笑っている。

ならば、主の愉悦を従者が妨げるわけにはいかないと自制したからである。




アランカル大百科

「本日紹介するのは、コレや」

【大虚】

「ユグドラシルでいう異業種『虚』の上位種であり、進化条件は同族喰らいだと言う………エライ物騒な種族やな。
強さは最下級大虚ギリアン、中級大虚アジューカス、最上級大虚ヴァストローデと分けられており、とあるワールドアイテムを用いて唯一転生が可能だというユグドラシルの変わり種やぁ
全プレイヤー中、たったの百人ぐらいしか選ばなかったって言うで。
本当、藍染様はこんな変なのを部下にして何が面白いんやろ?
………ここだけの話、『藍染様のNPCは?』のアンケート結果で死神が選ばれた場合、僕が藍染様の腹心だったねん。今からこっそり、アンケートを再開するからみんな『死神』に投票して僕を本編に出してくれへんか?」

「貴様何を………」

「本日はこれでお仕舞いや!皆さようなら!」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

『ナザリックが危ない』

音もなく一人のアンデットがナザリックに帰還した。

「うん?」玉座で資料の検分を進めていたモモンガはその仄かに漂う麻薬にも似た甘い死の気配を感じ取り、アルベドやデミウルゴスを下がらせる。

 

「随分と遅かったではないか」

 

「迷惑をかけたな」

 

間もなくしてアンデットはモモンガの前に転移魔法で現われ一対一で向き合い、沈黙が流れる。

先に動いたのはアンデットだった。肉と皮のどう見ても下級アンデットにしか見えない彼は幾つもの付与魔法を解除し、特殊な加工のされた指輪を外す。すると、どうだろう。驚くべきことに下級アンデットはアンデットの頂点オーバーロード『モモンガ』へと姿を変貌させたではないか。

 

「………それで、大丈夫、だったか?」

 

「ブハッモモンガッ様!(わたくし)ッ頑張りました!」

 

モモンガに化けていたドッペルゲンガー『パンドラズ・アクター』は変身を解除して机を乗り上げ、創造主であるモモンガに抱きつく。「(*`Д´)ノ!!!一ヶ月アルベド嬢の精神的セクハラにも耐え!デミウルゴス様の無駄に犠牲を出そうとするサディスト精神に胃に穴を上げながら――あっ私、胃はないんですけど―――耐え抜いたのです!」

「あー、すまん。今回ばかりは俺が全面的に悪い」

 

モモンガは二、三日ほど留守を任せると一方的に仕事を押し付けてしまい、結果的に一ヶ月近くナザリックを離れていたので、とても気まずそうにしていた。

 

「(組織の運営も簡単じゃないよな…)」

 

気分は後継に据えたい息子の心労を宥める父親である。

己がナザリックの柱となり皆を引っ張らなければ、いずれナザリックは崩壊すると分かっているのだが、優秀な息子に任せて置けば何とかなるのでは?心の底でそう思ってしまう。

 

 

モモンガにとって“世界征服=ナザリックと共に”ではない。

 

 

 

調べた限りだとこの世界のレベルは低い。破滅の竜王は例外だった。過去、我がギルドの半分もワールドアイテムを有していないユグドラシルプレイヤー達は転移して僅か数十年のうちにこの世界を滅ぼしかけたそうだ。ワールドアイテムはギルドの強さ。ナザリックの助けを得るということは世界制服はほぼ確実となるであろう。

 

………つまらない。ロマンビルダーのモモンガからすれば作業のように、本当にただ黙っているだけで結果にたどり着くそれは退屈過ぎた。

 

「藍染さんに任せられれば最良だったが、ナザリックの封印も考えておくか………」

 

「どこまでもお供しますモモンガッ様!」




ギルドメンバーとの未練を絶ちきり、むしろ強大過ぎる力にウンザリしてしまったモモンガさん。

モモンガ「世界征服だ!」
ナザリック「お任せください!」
モモンガが動けばより良く早く達成されるが、何もしなくてもいいんやで?
モモンガ「ちょっと出てくるわ!」
ナザリック「では従者を!」
多分大丈夫だけど、心配だから24時間365日離れません。
………元社会人にこれはキツイ。

今のところパンドラズ・アクターが一番好感度が高い。
ナザリックを封印することになっても彼だけは連れて行く。




現在のナザリック

モモンガ「チートだからいらない」
藍染「人が下等種族か………よろしい戦争だ。」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

竜王国

突然ですが、週一投稿に切り替えようと思います


「「ビーストマンが消えた?」」

 

竜王国の女王ドラウディロン・オーリウクルスと宰相は全く同じ言葉で口を開く。

 

「どういうことじゃ」

 

「どういうことですかな?」

 

「それが、奴等の拠点に武器と羽織のみが残され、まるで初めから存在しなかったかのように忽然としか。」

 

竜王国は近年、ビーストマンとの戦争で国力を低下させ二重の意味で人口の流失には頭を悩ませている。食人に戦闘狂、そのビーストマンが消えたと言うなら願ったり叶ったりだが、「「不気味じゃな(ですな)」」武器や衣服まで残したとなると不気味である。

何らかの理由で早急に撤退せざるおえなくなり、荷物になる武器を放棄したのなら、まだ分からなくもない。しかし、服まで脱いでいかなければならない状況など想像も出来ない。

 

「死体などはなかったのか?

法国の奴等が、『亜人風情が服を着るとは――」

 

バシッ

 

女王は宰相を一目みて兵士に向き直る。

 

「………本当に誰もいなかったの?」

 

「はい周囲を半日かけて捜索させましたが、僅かな痕跡すら拠点を出た境に発見する事が出来ませんでした。」

 

「そうなのか、ご苦労だった………とでも言うと思ったか?何の成果も得られなかっただと、貴様ら真面目に探しっ

 

バシッ バシッ バシバシッバシッ!!!

 

やったのじゃ!これで戦争しなくてすむのじゃ!皆、みーんなハッピーなのじゃ!」

 

涙ぐみながらその小さな体いっぱいに喜びを表す竜王国の女王ドラウディロン・オーリウクルス

両親の元を離れ幼いながらも国を思い日々奮闘する彼女。一兵士は、その愛らしさにころっと騙され、ますます国の発展へ忠義を捧げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《ドラウディロン・オーリウクルスと宰相》

 

「痛いのじゃ!我の頭が禿げたらどうするつもりじゃ!」

 

「年齢的に禿げてもおかしくないでしょう(笑)」

 

「竜人と人間じゃ寿命が違うと何度も言っておろう!…と言うか!女性に年齢の話をするでない!

第一、我の本当の姿は誰もが見惚れる傾国の――「禿げ」貴様ァァァ!!!」

 

見た目幼女な竜王国の女王は宰相に掴みかかり、宰相は何のそのと受け流す。「今日と言う今日は我慢ならん!お前を殺して酒を飲んで大広間で雑魚寝してやる!」「なりませぬぞ!そんな幼女に国民はついて来ません!ミルクを飲んで目をこすりながら兵士の裾でも掴みなさい!」「そんな恥ずかしい真似出来るかァァァ!!!」

 

 

「陛下!」

 

「「!?」」

 

扉が開き低く野太い声が投じられる。そこにいたのは、ワーカーを引退しビーストマンとの戦争で最前線を駆けるこの国の英雄だった。

 

乱闘を繰り広げる両者はバッチリ観られてしまったわけだが、彼は数少ない宰相側の理解者である。自国の女王が肉体を幼く繕い、媚びを売って他国の援助を受けてきた悲しい現実を受け止め、戦場に骨を埋める覚悟を固めた時「ロリババ最高…」そう言葉を漏らしていた。

つまり性癖的に全然ウェルカムな危険人物である。

これでも実力と指揮官の腕だけは一流なので、かなり優遇されているが、女王はいつ差し出されるのかと気が気ではなかった。

 

「な、なんじゃ!突然入ってきて!?」

 

女王を前にすれば頬を高潮させ、だらしなく顔を緩ませてきた。そんな彼が真っ青になって息も切れ切れに膝をついたのだから、ただ事ではないと女王と宰相は顔を見合わせる。

 

「ご報告申し上げます!ナザリック地下大墳墓が支配者、アインズ・ウール・ゴウン様が面会を求められています!」




……アインズ・ウール・ゴウン?
モモンガさんは改名してないのに、一体誰の事を言っているんでしょうね~あははは(≡^∇^≡)
関係ないけど、苺味のチョコが食べたくなってきたなぁ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

絶望の真実、崩された覚悟

最後に部屋に入ったデミウルゴスは足取り早く室内を横切り、空席にどかりと座り込んだ。普段の彼ならば決してしないような乱暴な動きが、物言わず、十分に心の内を語っている。

 

「それで、()()は何の冗談かお伺いしましょうか?」

 

デミウルゴスは同じテーブルを囲む階層守護者達の一人、アルベドに目を閉じたまま苛烈に問いかける。

握られていた一枚のスクロールをテーブルの中央で広げ、収められていた魔法を解放した。

 

『ブハッモモンガ様!私ッ頑張りました!』

 

「「「!?」」」

 

守護者達の視線が動く。そこにあるのはスクロールに記録された映像だ。そしてそこにはナザリック地下大墳墓の支配者モモンガと彼に抱きつくパンドラズ・アクターが映っていた。

 

「ドウ言ウ事ダ!アルベド、貴様ッマサカ!至高ノ御方ニ対シテ盗ミ観ルヨウナ真似ヲ行ッタトイウノカ!」

 

「何やってんのよ!あんた!」

 

「ぅ、うえ!不敬です!」

 

「アルベドおんしは………」

 

デミウルゴスに同調するように階層守護者達は一気に敵意を通り越した殺気をアルベドに向ける。

 

それでも普段と変わることのないアルベドに、デミウルゴスは不審に思い――「まさかッ」サッと顔を青ざめた。守護者を集めると連絡を受けたとき、同時に送られてきたこの映像。自分以外にも送られてきたと思っていたのが彼らの反応を見るにそれは間違いだった。

ならこの後に流れる映像を共有するのは不味い。デミウルゴスは急いで映像を停止しようと動こうものの、

 

『藍染さんに任せられれば最良だったが、ナザリックの封印も考えておくか………』

 

寸前で間に合わず。

 

「えっ」

 

それは誰が発した言葉だったか。

アルベドは守護者達が全身を硬直させる中、平然と映像が終わるのを待ち冷笑を浮かべて言葉を紡いだ。

 

「皆、集まってくれてありがとう。今回集まって貰ったのは他でもない、モモンガ様がナザリックの放棄を決定なされたことについてよ」

 

守護者達全員の顔にはっきりと浮かぶ絶望の色、デミウルゴスはアルベドが何をしたいのか、理解出来ぬまま叫んだ。

 

「貴方は何を言っている!この映像の何処にそんな話が出たと言うのだ!」

 

モモンガ様は封印すると言っていた。放棄と封印では意味合いが違う。絶望に染まる守護者達を鼓舞するようにデミウルゴスは続けた。

 

「それに、モモンガ様の口振りでは我々に失望したという様子は診られない」

 

「なら!何故、モモンガ様はナザリックの封印をお考えになられたでありんすか!」

 

「………それは分からない。だが、理由があるはずた。我々では想像も出来ない超越者の視点を持つあの方々なら」

 

「簡単よ。アインズ・ウール・ゴウンにナザリックは必要ない。少なくともモモンガ様は判断なされたの」

 

「黙れ!」

 

デミウルゴスは目を見開く。憤怒を隠さない彼の瞳は通常のそれではなく宝石だった。燃え上がるように煌めいた無数のカラットがアルベドを見る。

 

「――――でも、藍染様は違うわ」

 

「ッゥ!?」

 

理解し難い感情が渦巻く。口を大きく開けたデミウルゴスは、荒い息を繰り返し先ほどの憤怒が嘘のように怯えた声で絞り出した。

 

「ま、まさか………我々に、選べと言うのですか?

モモンガ様か藍染様…どちらにつくのか……を。」




アランカル大百科

「今日紹介するのは、ユグドラシル武器『斬魄刀シリーズ』や。これは、種族レベルで死神かアランカルを修めている者のみ装備出来る武器で、ユグドラシルでかなり人気があったみたいやね。ただ本来の姿を引き出したプレイヤーは思ったより多くなく………始解は攻略サイトが広まってほぼ全員。卍解まで云ったのは一、十、二十、、、少ないなぁ


よしっ今日は特別に僕の始解を見してやろ。皆この藍染人形に注目~!
『射殺せ――』」

ガキンッ

「ここで何をしているギン」

「………藍染、」

――絶望end


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

愉悦

アウラside

 

『ブハッモモンガ様!私ッ頑張りました!』

 

アルベドに呼ばれた私たちは、デミウルゴスが流した映像を見てアルベドに怒りを抱いていたんだと思う。

至高の御方々の最高位に在られるモモンガ様を盗撮するなんて絶対に許されざる行為なのだから。

 

「ぁあ?何とか言ったらどうなんだ!」

 

「ヤム終エナシ」

 

コキュートスやシャルティアが武器に手を伸ばすのを見て嫌悪感や忌避感などはなかった。ただ煮えたぎる怒りを消化すべく私自身も(武器)を手にとっていたのだから。

ただ何となく、私はシャルティアを見ていると時折熱が冷めるような感覚に陥る。その時も少しだけ冷静になって、感情のままにアルベドを裁くよりナザリック一の知恵者であるデミウルゴスに指示を仰ぐべきなのかと考えたんだ。

 

 

―――どうしてあんなに焦った顔をしているんだろう

 

 

『藍染さんに任せられれば――』

 

デミウルゴスが手を伸ばす先に釣られて

ズキリッと胸が痛む。

観てはいけない。全身がそう訴えるのに、そこにはモモンガ様と見たこともないナザリックのNPCが居て

 

『ナザリックの封印も考えておくか………』

 

 

静寂。生者やアンデット関係なく息もするのも忘れた守護者達はその言葉を反芻し、

ある者は呆然と、ある者は体を震わせ、またある者は、目をまんまると開きながら頬まで伝う大粒の涙を流す者がいた。

 

「嘘、でしょう?」

 

その中でアウラは、隣で涙を流すマーレ同様、この映像が己の創造主が去ったあの日に重なって見えた。

 

『ごめんね、ごめんね。アウラ、マーレ、』

 

どれだけ悲しくても切なくても声が出なくて、伸ばしたいその手が動かなくて

 

『待って行かないで!私達を置いて、あ、ぁぁ!ぶくぶく茶釜様ぁぁぁ!!!』

 

ただ受け入れるしかなかった絶望が再び彼女の前へ舞い降りたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何も直ぐに答えを出す必要はないわ、モモンガ様がご決断なされる最低でも3日前に、私の予想だと二週間は先だから大事をとって、そうね…5日後に会合を開きましょうか」

 

5日後――ナザリックを不必要と言葉を残した圧倒的な力と叡智を欲しいままとするナザリックで最も貴く名実共にナザリック真の支配者であるモモンガ様と観測次元のリアルを治めるナザリックで誰よりも尊敬の念を集める藍染惣右介様

そのお二方のどちらに付くか守護者達は選ばなければならない。

守護者はその選択に重く苦しみ、また“もしかしたら”その甘美な可能性に激しく葛藤していた。

 

これが、ペロロンチーノやたっちみーなどの他のギルドメンバーなら守護者達全員が悩む要因は生み出されなかったであろう。せいぜいがモモンガ派と中立派、そのギルドメンバーが創造した創造物の極少数派に別れるだけで最終的な実権はモモンガが握っている。

しかし、アウラもマーレもシャルティアやコキュートス、デミウルゴスでさえも――いや、ナザリックの創造物なら誰しもが望む願い。

 

『創造主と会いたい』

 

それを叶えられる存在は化身(アバター)を用いてユグドラシルに干渉するギルドメンバーが存在した世界『リアル』の支配者である藍染様をおいて他にない。

 

それ故に、彼ら守護者は悩む。苦しむ。どちらかに傾いてしまえば後戻りが出来ない故にモモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、「ペロロンチーノ様」、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、「正解なんてない」、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様、モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か、「嫌だ私はまだ尽くしたい、、」藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様「ぶくぶく茶釜様…」、モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様、「再ビ剣ヲアノ方ト、」モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様モモンガ様か藍染様―――――――――

 

 

最後に天秤が傾くのはどちらになるか。

その答えは未だ出ず。

 

 

 

 

 

 

 

【翌日】

 

 

「喜びなさいデミウルゴスにシャルティア、貴女達にモモンガ様から命令が下されたわ。内容はカルネ村跡地に現れた謎の集団の調査、可能なら捕縛。アインズ・ウール・ゴウンの害になると判断すればその場で殲滅せよ、との事よ」

 

「「!?」」

 

「恐らく最後のチャンスでしょうね?

私はあの方の判断が如何なるものであろうと受け入れるつもりであるけれど、期待していると言っておくわ。」

 

それを嘲笑うかのように世界は動き出した。




アランカル大百科?

「あらら、藍染様の同意もなしに勝手に悩んで哀れやねぇ~
確かに、藍染様ならいずれNPCを現実世界へ召喚することも可能かもしれん。ただ藍染様にその気があれば、や。ユグドラシルで不遇種族やったアランカルになんで藍染様が執着するのか、その答えを早い事見つけんと、誰からも必要とされない本当の意味で創造“物”に成り下がるで?」

「次回、竜王国編、再開。俺の出番はないが藍染様のご活躍、しかと目に焼き付けるがいい。」

「…なにさらっと僕のコーナーに再登場してんねん」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

それを慈悲と呼べるか

※前話は諸事情により削除させてもらいました。


カルネ村

 

既に住民の多くはナザリックが管理する『牧場』もとい、『箱庭』と名付けられたエ・ランテルにほど近く、ドブの大森林から子供の足でも往復で(薬草摘みなどを時間に入れたとして)半日掛からないだろう平原を開拓し移り住んでいる。

 

シャルティアとデミウルゴスが訪れた先にあったのは村の名残を僅かに残した廃墟だった。

 

「モモンガ様は……何ゆえ、このような場所へわっちらを差し向けたのでありんすか?」

 

「アウラやヴィクティムではなく何故我々が……あの御方の事だ。何か深い意図が…」

 

『謎の集団の調査、可能性ならば捕縛』となっているが、お世辞にも自分達が適しているとは言えない二人。

何かの間違いではないか?

そう心の内で考えてしまうも……しかし、ただでさえ御方のお心は我々から離れ始めているというのに、此度の任務を失敗すればどうなる事か。

 

『恐らく最後のチャンスでしょうね?』

 

思い出すだけで悪寒の走るあの言葉。

 

「…今考えるべきは、何故我々が選ばれたかではなく如何にして任務を遂行するか、ではないかね?」

 

「ッゥ!…そ、そうでありんすね!」

 

最悪の思考を振り払うべく行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、ナザリック周辺を彷徨いていた集団に関してはアイツらに任せて置けば大丈夫だろう」

 

「ええっモモンガッ↑様の為さる事に間違いなどございません!…若干、過剰戦力のような気もしますが

 

「…何か言ったか?」

 

「いえっ何も!」

 

ナザリック放棄し、世界征服は個人で行う事を本人の了解なしに公言される形となったモモンガとそれに抱かれる猫…パンドラズ・アクター。

 

彼ら二人は着々とナザリックを放棄=藍染さんに丸投げ、リアルに帰る為に利用するならどうぞどうぞと……自分よりも圧倒的に優れた為政者が共に転移したことで、支配者としての責務を譲り渡し、冒険の旅(世界征服はその後)へ繰り出そうとしていた。

 

別に十年以上共にあり続けたナザリックに嫌気がさしたわけではない。

 

ただ純粋に異世界への好奇心がそれを僅かに勝ってしまった。

 

ロールプレイではない本物の支配者がナザリックに降臨している今、ギルド長としての立場など内面が露見すれば失望されるだけだ。だが、藍染ならナザリック組織を円滑にコントロールし、リアルへ帰還する為に効率よく利用出来る筈である。

 

『藍染さんはリアルへ帰りたいですか?』

 

『…えぇ、あの世界でやり残した事がありますので。』

 

既に言質は取った。

ならば、全部彼に任せれば良いではないか。

 

モモンガは思った。

それを後押しするように、自分よりも優れた存在として命を得たパンドラズ・アクターも彼がナザリックの支配者として君臨して特定の誰かが不幸になることはないだろうと言っている。

 

「未知の開拓か……楽しみだな!」

 

「ええっ!」

 

それに、邪魔だから封印ってのも可哀想だからな。

 

モモンガは内心呟き、そしてまだ見ぬの冒険の旅へ心踊らせていた。

 

 

 

 

 

※パンドラズ・アクターは猫に化けることで、ペット枠として、ちゃっかりモモンガの同行メンバーに加わっていることを知る者はいない。




アランカル大百科

「みんな~オーバーロードの最新刊(14刊)出るらしいで~」


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。