この世界って醜くありませんこと? (ゆめうつろ)
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第一話「既に醜い」
俺の生まれたこの世界は、作り物だ。
文字通り人が作った「創作物」だ。
何の因果か、死んだ俺は生前に見知った物語の世界に生れ落ちた、どうやって知ったかと言うと劇中で起きた事件に関してニュースが流れていたからだ。
まあそこまでなら、ジャンルとして確立される程によくある話だしなんてことはない、俺は俺らしく「演じよう」とぐらいまでは思えた。
だが生まれ落ちた世界がよくなかった。
『祝福のエターナル』
ジャンルはオーソドックスな「異能バトルモノ」でその、なんと言うか面白い事は面白い作品であり、ファンもそれなりに多いアニメで、ノベライズ、コミカライズとメディアミックスもあり、劇場版「NEXTRA」「NEXTRA2」、続編も「N」「NE」「NEX」「NEXT」が放送され、さらに番外編である「EX」シリーズ3部作までは俺の記憶にはある。
まず最初の「無印」では主人公はよくいる異能持ちの高校生、生まれ持ち特殊な能力を持っていて幼少期にそれが原因で幼馴染であるヒロインを傷つけてしまい、それから人と関わる事を極端に避ける様に逃げてしまった少年だ。
ヒロインは怪我が理由で一時は生死を彷徨ったが真実を大人達に告げず、主人公の異能を秘密にした優しき少女、退院できるほどに回復した彼女が主人公を追って、彼と同じ高校に転入してくる所から物語は始まる。
ここまで見ればまあよくあるアレだな、ってなる筈だ。
そうそして元々が一クールアニメだったそれが好評につき二期制作決定!となれば……ちょっとやっぱり後付けの設定が生えてきたりする。
「祝エタ」も当然ながら後付け設定が盛られるわ盛られるわで、二期とノベライズで大量の新設定、当然ながら「矛盾」も発生したが……。
第二期「祝エタN」は新規ファンを獲得しつつ更に大好評、アプリの開発が始まりつつも第三期の制作も決定。
俺も実際に楽しんだが、第三期でさらなる爆弾が入ってきた。
過去改変能力である。
高校を無事卒業した主人公達の前に未来から過去改変の力を持つ者たちが現れた、それは物語のキーとなる登場人物で双子の姉妹、それぞれ敵と味方に別れ、よりよい『未来』を得る為に主人公達を戦いに巻き込んでいく。
おまけに前作からの登場キャラが犠牲となる展開がファンの心を動かし、さらに続く劇場版での舞台挨拶で監督からは「未来(ぞくへん)を望んだのはお前達(ファン)だ」という名言が生まれた。
続編が作られる限り主人公達は戦わなければいけない。
何度平和を祈ってもそれが踏みにじられ続けるという無間地獄。
それが原因で劇場版である「NEXTRA」では主人公が自らの力を捨てたいと弱音を吐き、苦悩し、戦えなくなるシーンまで追加されるが、劇場版のゲストキャラが自らを犠牲にした最後の願いとヒロインの叫びにより再び立ち上がる。
背負わされるのである。
物語としては面白いが、登場人物からすればあまりにあんまりすぎやしないか?
その反動か「NEX」はかなり緩く群像劇風味になり、同じ様に異能を持って生まれてきた少年少女の苦悩を受け止めてあげながら解決していくといったスケールの小さいものとなり、やさしい世界とも呼ばれた癒しであった。
だが、制作陣は弾けた。
第四期「NEXT」は異能を解析する過程で生まれた技術から作られた兵器により、世界ではテロや紛争が頻発。
主人公達は公的な立場を持たないがそれでも力を持つ者としてそれに立ち向かう、その途中で出会った一人の少女、同じ様に主人公達と同じ力を持つが、彼女を狙う多くの敵との戦い。
激しさを増していく中で巻き込まれていく大勢の人々、そして大切なもの。
次々と出る犠牲、総決算とでもいわんばかりのクソ鬱展開とそこからの再起。
生まれてしまった「可能性」を消す事は出来ない、だが今ある戦いを止めるはできると多くの敵を倒し、ようやく仮初ではあるが平和を取り戻し、世界を守る事は出来た。
そしてこれからも戦いは続く……
ちょっと過酷がすぎやしないか?救いがなさ過ぎないか?世界が醜すぎないか?脚本と監督と原案は鬼じゃないか?
エターナルのタイトルが示すとおり永遠に戦い続ける事が主人公の役目ってあんまりじゃないか?
とアプリ版ではこの過酷な運命を全て無かった事にしようとする主人公の「弟子」がラスボスとして立ちはだかったり、更に「別作品」の世界にぶちこまれたり、ぶちこんでこられたり、あまりに悲惨。
地獄は続く、劇場版第二作目「NEXTRA2」は別の作品で有名な「鬼」脚本を追加!加減しろ!
劇場版のゲストキャラはなんと主人公達の娘、ついに子供まで出来たかと喜べたのもつかの間、なんとこの作品のボスはヒロインだ。
未来の世界では主人公は心を無くし、完全に戦う為の存在に成り果て、世界の存続の為だけに戦い続ける。
ヒロインはそうならない様に過去を変える事を望んだが、悲しいかな時間跳躍能力持ちは「自分達が倒してしまった」ならばと、取った手段は「作る」事。
何もかもを犠牲にし、心を失った「最愛の人の命」さえも奪って作った歴史改変マシンを使っていざ時間跳躍という時に、自分が捨て去った娘が率いるレジスタンスが乗り込んできたというのがあらすじ。
ダメ押しといわんばかりにどう選択しようと、過去改変が始まった以上、主人公達の娘は生まれなかった事になり「消える」。
それを知っていた彼女は、主人公達に決して真実は打ち明けなかった。
ただ一つの救いはまだ互いを愛し合っていた頃の両親と少しの間だけ共にいられた事だけ。
全てを一人抱えて、消えていったのだ。
俺達はあまりに人の心がなさ過ぎるストーリーに唖然とした。
なんだこのクソ鬱作品は!と。
いくら未来を変えても、また別の過酷な未来がやってくる。
決して世界は主人公達を放っておいてはくれない。
オマケに俺がついぞ見る事の出来なった次回作は予告編ではかつての仲間の一人が敵となる事が確定していた。
長々と説明したがつまり……「悲劇回避しても次の悲劇がやってくる原作知識がクソの役にも立たない」世界で、なおかつ多少特殊であると「過酷な運命」に巻き込まれる世界でもある。
揺り篭でベイビー時代から俺……いや現世では「私」である少女はひたすら考え続けた。
物語の開始は2034年、私の出生は2023年で物語が始まる頃には11歳。
絶対に巻き込まれる奴だと思いながら、その時に何かが出来る様に自分が持つ「力」を知ろうとした。
「祝福」……この世界での異能の名だ、めっちゃなんかすごい超能力的な現象を起こすアレやコレで、因果律や時間にまで干渉できるが、詳しい理論はまだよくわかっていない。
私が持つのは「跳躍」ただのジャンプなら問題なくね~?と思っただろう、そこのお前。
簡単に言えばワープだ、「無」を経由して別に場所に渡る能力だが……ほんの一瞬とはいえ「消える」のである、その先は完全な無、あらゆるものが存在できない場所。
当然、実験した。
私のベビーベッドに昇って来たゴキちゃんを嫌々ながらも掴んで、跳躍して「無」に「置いてくる」とどうなるか。
結果は……いいものではなかった。
完全に消えてなくなるのだ、私が「手を離してしまえば」。
ちょっと私の能力醜すぎないか?
どうみても味方側の能力じゃない。
ただ誰かを連れて即座に逃げるとか移動には使えるか?と色々研究もした、当然親の見てない場所でだ。
そして11歳になった頃、私は物語の舞台となっている高校の側に行ってみた。
懸念はしてたが、当然巻き込まれた。
あのさ、ご都合主義が過ぎて醜くないかしら?
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『祝福のエターナル』
第一話:変身
私立ヘイセニア大学付属高校に通う少年「空雅(そらみやび)ユウ」には人には言えない秘密があった。
普通の人間とは違う、異形の姿へと変わる能力を持っていた。
初めてその力を知ったのは、事故だった。
昔から内向的な少年であったユウは幼馴染である「阿木都(あぎみや)翔子」の後ろに隠れる様にいつも過ごしていた、だがある時に無理矢理遊びに引っ張りだそうとする翔子に嫌気がさして、「拒絶」して突き飛ばした。
その時、ユウは異能を目覚めさせてしまったのだ。
翔子に大怪我を負わせ、そして自分の恐ろしい力を知って、ユウは心を完全に閉ざして逃げた。
やがて翔子に怪我を負わせたのが自分であると知れ、自分は罰を受けると思いながら引き篭もっていた。
だけどいつまで経っても罰は来ない、それどころか翔子の両親から「治療の為の引越し」を謝罪される始末。
両親の叱責と医者の勧めの元、とにかく学校へ行かされ続ける事になり、ユウは心を閉ざしながらも高校へと進学する。
入学して一ヶ月、そこに現れたのは……紛れも無く自分が傷つけた翔子だった。
動揺の中、再会した翔子にかけられた『放課後に』の言葉に従いやってきた公園。
ついに罰を受けるべき時が来た、翔子が自分に復讐しに来たと思いながら向かったユウが見たのは。
下半身が蜘蛛となった女と戦い、劣勢になる翔子の姿。
ユウには身に宿った自身の恐ろしい力があった、使う事すら考えもしなかったそれだけが、選択肢だった。
選んだのは「戦う事」であり「向き会う事」、その「祝福」である「変身」を使い、翔子の為に戦う。
純白の闘士として、拙いながらも純粋で強大な力で、蜘蛛女をついに倒す。
「やっぱり、やさしいユウくんで間違いなかった」
傷だらけの翔子は嬉しそうな顔でそう笑い、ユウは……翔子が自分を恨んでなかったと知った。
だが蜘蛛女を倒した事を監視していた蝙蝠、その情報からユウ達はある組織に狙われる事となる。
動き出す物語、ソレを影ながら見つめるのは「紫の目の少女」。
今、「永遠の戦い」が始まる。
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なんかいきなり知らん怪人出てきたんだけど……!?
原作知識が一話から役に立ってないんですけど!?
ちょっと醜さヤバくないか!?
・祝福のエターナル
人気クソ鬱アニメ、制作陣が鬼畜生、救済二次創作が多い
・私立ヘイセニア大学付属高校
学校の名前の時点で醜くないか?
・空雅ユウ
「変身!」と違う自分に変わる事が出来る能力者
超がつくほど暗い性格で戦うのが怖い
・阿木都翔子
主人公の幼馴染、自分を殺しかけた相手を庇う聖女
彼女もある秘密を抱えるが……?
・謎の少女
「醜くないか?」
・謎の蜘蛛女
知らない原作キャラ
・謎のアニメ
知ってるキャラで知らないアニメが始まった
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第二話「知らないアニメ」
前回までのあらすじ!ちょっと原作主人公達の様子を見に行ったらなんか知らない怪人が出て来て知らない展開が始まった!以上!
いやまあ、あのさ……確かに平行世界だったりだとかの可能性は考えたましたわよ?でも原作前に起きている主要な事件……そう「祝福」の力を持った人間が関わってる事件調べたのですよ!ちゃんとね!
だから原作通りに始まると確信してたわけなのですわ!
特に4ヶ月前に起きた大規模火災で100人近くが犠牲になった事件の犯人が敵の一人として出てくるしね?
そもそもあの蜘蛛女が謎過ぎた、異形系の異能も居るのはわかるけどなんでヒロインである翔子に襲い掛かったのかがまったくわかりませんわ……
なので私は今、本来の原作の知識を纏めたノートを読み返している。
まるでアテにはならんだろうが無いよりは精神的にマシという奴でありますわ。
「祝福のエターナル」
第一話「再会」
・ユウは幼い頃に意図せず異能を発動してしまい、翔子を傷つける
・翔子はその事を大人達には黙っていてケガの理由はわからないととぼけた
・治療の為に翔子一家引越し
・ユウは引き篭もりがちになる
・医者に通学するように言われ、ユウは高校に進学
・一ヵ月後翔子が転入
・放課後、翔子が公園に向かう
・ユウが公園に向かうと「変身」した翔子がユウに襲い掛かる
・翔子はユウを「試し」、ユウの「変身」を引き出す。
・二人は激突、しかしユウは相手が翔子だと「気付き」攻撃をやめる
・翔子はその結果に満足して変身を解き、自分がユウと同じ異能を「持っていた」事を話す。
・そして事故の事は最初から気にしてないといってその手を取り、仲直り
おおまかな流れだけを纏めたメモだが、翔子が公園に向かうまでしか合ってない……なんだあの蜘蛛女!?
何の前振りも無しに出てきて……外見だけじゃなくて存在も醜くなくて!?
しかし物語は始まっちまった以上、どうにもならない。
とにかく私の「行動指針」は「ヤバそうな時に介入して主人公達を生かす事」と「最低限度世界を滅ぼさせない」事。
できれば世界平和とか色々考えたけど、私じゃどうしようもありませんこと?なので早々に諦めましたわ!
態々、全部のイベントに首を突っ込む気もないですし、無理に関わる積もりもない……ベンチに座って少しぎこちない様子でやりとりをする少年少女を覗き見するのも悪趣味、別に今日はもうイベントもないでしょうし私も帰り……帰……いや本当に帰って大丈夫かな……?
「無印」で出てくる「敵」は人間の異能者で、どれもただの犯罪者、特に組織的でもない。
全13話で5人、行間というか本編で出てない分だと少し増えるが誤差の範囲。
ぶちのめした後はやってくる警察に引き渡して終わり!かそもそも自爆したり、ユウの攻撃で吹き飛んだりもする。
そう、ユウは作中で何度か暴走した異能者を殺める事がある、それが原因で苦悩する事も。
しょっぱなから蜘蛛女を爆☆殺!していたがアレはもう完全にバケモノだったので恐らく気にはならないだろうが、もっと人間らしい相手を倒したらどうなるか、その時にちゃんと翔子や周りの人間が支えてやれるか。
そこもまた未来の分岐点となりうる。
さてはて、私はどこでどこまで介入するべきやら……。
「ねぇ……キミ、もう暗いよ?帰りなよ?」
……あ、巻き込まれたわ。
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『祝福のエターナル』
第二話「未知」
「翔子……俺は」
「いいんだよ、ユウくん。私もビックリしたし、ケガしちゃったけど……あの時嫌がるユウくんを無理矢理引っ張っていったのは私なんだから」
「……俺は、ずっと後悔していた。それに怖かった、お前が来た時……ようやくお前が俺に復讐に来たんだと安心するぐらいに」
一人の少年と少女が向き合う、四年越しの再会、それは劇的なものだった。
「復讐なんてしないよ、あえていうなら……ユウくんはもう罰は受けたと思う。四年も許してあげられなくてごめんね……それに私も黙ってたところがあるから」
翔子の姿が変わる、それは赤い目をした金色の竜人の姿、直ぐに元の少女の姿には戻ったがユウは驚きを隠せなかった。
「私もユウくんと同じ様に「力」を持ってたの、だから本当はもっと早くケガを治して復帰もできたし、さっきだって本気でやればまあその……すぐ勝てたんだけど、ユウくんが今どういう気持ちでいるのか知りたくて、手を抜いてたんだ」
怪我も本当は命に関わるほどではなかった、だけど偶然通りかかった人に見つかっており、全部を治すにはあまりに目立ちすぎた、だから4年という時間をかける必要があった。
先ほどの蜘蛛女の襲撃は完全にイレギュラーだった、本当なら翔子自身がユウに戦いを挑む積もりだった。
翔子は色々な事をユウに伝えた。
「なんで……なんで翔子はそうまでして俺に気をかけてくれるんだよ」
「……私もね、この力を手に入れた時は怖くてしかたなかった。自分が怪物みたいで、いつか誰かに悪者みたいに倒されちゃうんじゃないかって……ユウくんはきっとおぼえてるよね、私達が始めて出会った日の事」
小学二年生だった頃、ユウと同じ様に内気だった翔子はいじめを受けていた。
それを助けたのは当時転校生だったユウだった。
「ユウくんはそんな私を助けてくれた優しいヒーローだった」
「俺が……ヒーロー?」
翔子がいつも内向的なユウをどこかに連れ出そうとしたのは彼女なりの恩返しであり、自分を変えようという意志。
「ユウくんが私に変わろうという勇気をくれたんだから、私にとってはヒーローだよ!それにさっきも助けてくれたし」
「……そうだ、さっきのアレは何か知らないか?あの蜘蛛の怪物!」
「うーん……なんか病院に居た頃の噂で聞いた程度だけど、怪物に襲われたって患者さんが居たらしいよ?」
過去の謎はいくつか解けた、けれど新たに増える謎。
「まあでも今日はもう遅いし、帰ろっか!ほら電話番号とアドレス交換しよ?」
「ほ……本当にいいのか、それで」
「だって一日で全部元通り!なんて初めから期待してないもん、最悪一年ぐらい時間かけてユウくんをボコボコにしつつ仲直りするプランもあったんだから」
互いの連絡先を交換しながら、さらっと恐ろしい事を言う幼馴染に思わずユウが絶句する。
「ぷっ面白い表情だね、冗談だよ。でもユウくんがその力を悪い事に使っていたならそうなってたかもしれないから、私はユウくんが変わらず優しくて本当嬉しかったよ……じゃ、また明日ね!」
遠ざかっていく翔子を見送り、手を振る。
「変わらないのは……翔子もか」
ユウは、安堵と困惑の気持ちが渦巻く胸に手を当てる。
翔子を傷つけた力で、今度は助ける事が出来た。
それは嬉しい事だった。
でも傷つけた過去、奪った時間と自由は変わらない。
「俺は、何かを返せるかな……」
一人、その場を背にして去ろうとするユウの目に一人の少女が映った。
いつから居たのか、気配すらも感じさせないが、木にもたれかかり、分厚い本を読んでいる。
もうとっくに日は落ちている、そんな時間に小学生高学年ぐらいの子供がこんな所にいるのはよくない。
普段なら声をかけようとも思わない、だけどさっきの「蜘蛛女」を思い出すとまたあんなバケモノが襲ってくるかもしれないという不安が勝った。
「ねぇ……キミ、もう暗いよ?帰りなよ?」
少女は輝く「紫色」の瞳でユウを見据える。
「何から話しましょうか……いえ、まだその時ではありませんわね……空雅ユウ、あなたには……」
「なんで、俺の名前を……」
「それも今はまだ知る必要はありませんわ」
不思議な少女だった、敵意も警戒心もない、それにまるで大人の様な落ち着き方だ。
ユウが真っ先に考えたのは自らと同じ異能者である事、それに「今はまだ」という言葉。
「今は、話せないって事なら、いつか話してくれるんだな」
「その必要が出来たなら。ああそれと……お気遣いは感謝します。そういったところはやはり貴方の美徳……変わりませんね……」
フフと儚げで含みを持たせた笑みを少女が浮かべる。
「これ以上はお母様に怒られそうなので、ご忠告どおりに帰らせていただきますわ……では、また」
まるで「闇」の様な何かに包まれ、少女の姿が掻き消え、静寂だけが残る。
「俺を、知っているみたいだったが……なんだったんだ……」
次々と増える謎、そして手に入れた力に、翔子の事。
あまりに多くの事が起きた日だった。
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町外れの古びた教会に一人の男と一人の女が居た。
「アラクネを倒すか、まあ少なくとも並以上には強いな」
「どういたしますか?」
「手駒を作る為の素材も有限だ、今はまだ捨て置く……それよりもだ……「無」の力の調査はどうなっている?」
「アラクネの戦闘の少し前に一度、それとつい先ほどもう一度感知されています」
「やはりこの街にいるようだな……」
男は満足げに表情を歪ませる。
「『虚無』……俺をして知らない力、ああ……本当にたのしめそうだ」
まるで子供じみて笑う男に、女は静かに付き従う。
「さて、楽しい狩りにしようか……お前達は俺をどこまで楽しませられるかな?」
今、邪悪が動き出す。
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主人公に声掛けられちまったよ。
お嬢様RPは上手く行ったかしら?
とりあえずとしては、ユウと翔子に味方をする方針ではあるので、とりあえず情報を小出しにしつつ、敵対する気はないというアピールも欠かさない。
とはいえ、あんな怪しさ満載の私によく話しかけますわね、敵かもしれないのに。
盗み聞きした分では翔子もあの敵の事はしらないようだし、一体なんだアレ。
本当に「祝エタ」は原作知識がまったく役に立たねぇな!
・ユウ
困っている相手は放っておけない主人公
・翔子
金竜の戦士、力をまだまだ隠している、愛が重すぎる
・謎の少女
想定外しか起きなくてもう泣きそう
・謎の組織
エンジョイしたい
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第三話「目覚めの時」
チャートどころか攻略情報が一ミリも役に立たない物語はーじまるよー!
この世界に生きている以上、原作キャラだけでなくモブや、イレギュラーである私にも人生というものがある。
ついでにいえば家族もいる。
「あらあらあら……お勉強もせずに遊びに行くなんて奈々(なな)はかわいいわね」
「お許しくださいお母様」
「私は別にいいのですよ?ですが……友達の一人も居ない貴方が突然こんな遅くまで……心配ねぇ」
「お許しください」
赤い目、隻眼、黒髪ロング、ギザ歯……まるでボスキャラみたいな外見のこの女性は私のお母様。
……まあその……この方も原作には登場して無いけど「祝福」持ちかつ「人外」でございます……はい。
名は紅始音(くれない しおん)……真名不明の「怪物」です。
この世界には祝福を持った人間だけでなく、人外の存在も多く住んでいる。
本編にも吸血鬼やアンデッドに、食人鬼、人造人間に宝石をコアとする怪物、宇宙から来た擬態生命体まで。
人知を超えた存在がちょくちょく出てくるのだがお母様もその内の一体だという……ただ人間に積極的に敵対する存在ではなく、むしろ私のお父様がただの人間である事から、ある程度好意を持っている事も理解している。
「まぁそれが貴方のやりたい事なら、止めはしないわ」
「本当にお母様の理解に感謝します」
お母様の祝福は「読心」、生まれてすぐ私の心を読んできて「オギャ」ったのはいい思い出だ、すくなくとも私の存在にある程度の理解を持ってくださるのは本当にありがたい。
「で……肝心の物語はどうしたのかしら?」
「その……全然、物語どおりにはならず……はい……」
「役に立たないわねぇ……」
まるで幹部クラスのボスにパワハラされる怪人の様な光景だが、お母様も最初から私をアテにしている訳ではない。
ぶっちゃけこの世界がハチャメチャなのは……ある程度長生きしている人外だとわかりきっている事らしい。
次から次へと侵略者や新種、さらに能力者まで生まれてくるのだ。
予言や予知能力もクソの役にも立たないらしく……お母様の代でも大予言がしょっちゅうひっくり返ったという……。
この世界の醜さは昔からだとは思わなかった。
「でもその様子だと主人公とヒロインは同じだったようね、だとすると……貴方自身も物語に組み込まれてるかもしれないわね」
「……」
「……それを考慮してないのは流石にアホよ」
「あえて考えてなかった事を言わないで下さるかしらお母様」
過酷な試練とか必要ねぇんだよ!ただただ俺は相応に世界に馴染んだ生き方がしたかったんだよぉ!無理だとしてもっ!
「この世界って本当に醜くないかしら」
「小物めいた事を言う暇があったら自分に出来る事を考えなさい」
「はい」
本当にクソ鬱世界ですこと!!
私は即座に部屋に転移して「設定資料・攻略チャートまとめ」を広げる。
最低限度、「無印」「N」で出てきそうな奴を机の上に広げる。
この世界の事なので下手したら更に後の時系列が前倒しになったりする可能性も高いが、少なくとも登場人物の年齢で逆算して出てくる可能性が高いのは初期の二作。
三作目より後はまだ子供だったり生まれてすらない人物だったりする、「パラドックス」とかを考慮すると生まれてすらこない可能性も考えなければならないかもしれないが……「NE」のキーとなる「特異点」の双子は曰く「考えるだけ無駄」だそうなので……。
それにこの世界が物語なら特に敵ポジションの奴らは否応が無く生えてくる可能性が高い。
逆に言えばわからない味方も突然に生えてくる可能性もあるし、敵キャラが味方になる可能性もある、逆もまたしかり。
ならば初手は絶対に攻撃しない事、そして可能な限り対話を諦めない事は徹底しなければならない。
そしてもしユウ達が危ない場合は……やるしかないだろう。
彼らが本当に主人公たりえるのなら、その危機も乗り越える可能性もある。
だが、それでも足りない可能性もある。
現実は創作より奇なりとも言うが創作物の中の現実はもっと奇としか言いようがない!
前世の世界には異能なんてなかったからそうそう世界の危機にはならんかったぞ!こっちなんて見てみろ!世界終焉スイッチが転がりすぎなんだよ!!加減しろ!
気を取り直して資料、最初の戦いはそう……ユウと翔子の戦い。
本当なら一話と二話に渡って過去と現在を行き来して描写され、二話目でようやく決着がつき。
そして三話で彼らの前に……最初の敵が出てくる。
最初の敵はそう……「今日起きた放火事件」で死んだ事によって「目覚めた力」の反動で攻撃衝動に支配され暴走する少年「駆郎(くろう)タクミ」一度打ちのめされた後に翔子の力で救われて仲間となる存在……。
……?
…………????
「クソわッ!!!!???こんなことしてる場合じゃなかろうがっー!!!」
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第三話「衝動」
目の前で家族は皆殺され、自分もまた流れ出る血と酸欠により少年は死んだ。
だが運命は彼に安息を許さなかった。
復讐心と破壊衝動が彼の中に眠る「獣の祝福」を目覚めさせた。
炎を纏い紅蓮を纏い「生存本能」に従い、崩れ落ちる屋敷を突き破って夜の闇に飛び出した。
瀕死の重傷を癒す為には血肉が必要だ、それも強き血肉が。
探す、魂の嗅覚に従い、己の命を永らえさせるモノを探す。
そして見つけた。
一人の少女だ、その少女は阿木宮翔子。
マンションの廊下を歩く彼女を見つけたのは引き合う祝福か?それとも呪いか?
そんな事はわからずに「駆狼タクミ」は「生存(サバイヴ)」の衝動のままに彼女へと飛びかかる。
「ッ!!」
だが彼女もまた「黄金の竜」だ。
「神」と対等に戦える可能性を秘めた竜は即座の殺気を感知して、獣の一撃をかわした。
「……変身」
即座にその姿を竜と人の間の存在へ変え、翔子は距離を取る。
決して鍛えに鍛えた達人や戦場に身を置き続けた者の動きではないが、純粋な能力がその動きを可能とする。
コンクリートの壁をぶち抜き、即座に下の駐車場に降り立つ二人。
「貴方……いや正気を失ってるね……」
素人目にも目の前の存在が悪意や敵意を持っているわけじゃない、先ほどの蜘蛛女とは違い目の前の「人狼」からはただ「生きたい」という感情しか読み取れなかった。
自分の力なら、目の前の存在を止める事が出来る……いや止めなければならない。
目の前にいるのはあの時のユウと同じく、自分の力を制御できない存在。
前は出来なかったが今は出来る。
人狼の攻撃を受け、避け、喰らいながらもチャンスを探る。
その応酬はたったの数分だけだったが、果てしなく長く感じた。
だがそれも終わりを告げる。
「そこまでです、駆狼タクミッ!!」
獣の本能に塗りつぶされていたはずの心が、自分の名を呼ぶ声によって引きずり出された。
どうして俺は戦っている?死んだ筈の俺が生きてるのは何故だ、そして俺の名を呼ぶのは誰だ?
疑問が頭を埋め尽くし、理性と冷静さが満ちていくと激しい痛みが襲ってくる。
タクミは変身を維持できずに倒れる。
「……阿木宮翔子、あなたの力で癒してあげてください」
「聞きたい事は沢山あるけど、そうだね……まずは……そうさせてもらうよ」
翔子の持つ「金竜」の力はそれこそ「祝福」と呼ばれる異能の中でも強力極まりない。
自分の戦闘力を底上げするだけでなく、自他問わずその傷を癒す事が出来る。
「ああ、間に合って本当によかったわ。これで可能性がまた一つ拓けた」
紫色の瞳の少女が安堵の溜息を吐く、心底安心している様子にこの少女に敵意や何か悪しき策謀があってこの少年を助けに来たという予想を翔子は否定する。
「……それで、この男の子……駆狼くんと……あなたはどういう関係?それとどうして私の力を知っているのかな?」
「私が一方的に知っていただけですわ、あなたの力もまた一方的に。目覚めていなくても他人の力が少し見える……そういう力なのですよ」
確かにそういう「力」ならありえるだろう、だとして。
「それに私からはあまり手出ししにくいから……困ったら空雅ユウと……そのタクミくんと頑張って、今のところは」
待って、の一言を伝えるよりも早く少女「奈々」は姿を消す。
「……消えた」
金竜の力を以ってしても捉えられない、一瞬だった。
謎は深まるばかり、首をかしげながらも近づいてくるパトカーや救急車、消防車の音を聞きこれはユウの家に厄介になりにいくしかないと決心する翔子だった。
///////////////////
あっぶねぇ!!!翔子ならきっとどうにかするとは思っていたけど無事止まってくれてよかった……!
駆狼タクミは重要人物、純粋に戦闘力が高いだけではなく……精神的に成長した結果多くの異能者や人外の存在との架け橋にもなる。
ここで失えばどれだけの可能性が閉ざされるかわかったものではない………ぶっちゃけそんな損得感情で人を見るのも、とは自分でもどうかと思うが……これは知る者としての義務と宿命かも……いやそんなこともないかも。
ここは原作通りに行ってくれたからよかったものの、あの謎蜘蛛女みたいなイレギュラー要素がこの先も無数に出てくる可能性しかない。
もう頭が痛いし眩暈もするし、吐き気も止まらない。
下手な知識なら欲しくはなかったよ!!クソ!
・ユウくん
主人公不在
・翔子
実はめっちゃチート、メイン能力は竜人化と治癒
・ガバ預言者
あやうく後の重要人物をスルーする所だった
・タクミくん
狼男、本当はメッチャ優しい子なんだけど死に掛けて能力が暴走、祝福は『生存』
・タクミくんの家族の仇
原作では一期のボスだが
・母上
原作未登場
・父上
普通の人
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第四話「剣の王子」
第四話「闘争」
-A part-
「なあ翔子、俺達のこの力ってなんの為にあるんだろう」
「それは……私にもわかんないや、でも私は無いよりはよかったと思うよ?」
「……俺は、無けりゃよかったと思っている」
「まあそりゃあユウくんからしたら私を傷つけた呪いみたいなものだからねぇ」
昼休み、校舎の屋上で翔子とユウは語り合う。
自分達の力の事、自分達が何をするべきか。
「私は、この力を皆を助ける為に使いたいかな。最近、なにかと物騒だよね?ほら、私のマンションの件に連続火災、それに今朝だって」
今この街を連続殺人犯がうろついている、犠牲者は皆「矢」で射抜かれて殺されている事から同一犯とみられているが、監視カメラが尽く壊されており手がかりが全く無い状態でもある。
犯行時間は全て夜のうちに行われている為、夜間の外出禁止令まで出ており、あらゆる場所には警察官が出動している。
「怖くは、ないのか?」
「怖いよ、だからこそ怖くなくなるように私は止めたい」
「……翔子がそうしたいなら、俺はそれを手伝うよ……まだ上手く力は使いこなせないけど」
平和に過ごしたい、その為には「力」で掴み取るしかないのか。
そう考えながらユウと翔子は空を見上げた。
あの火災から三日、タクミは火災のショックから街を彷徨っている所を翔子に保護されたという事になった。
大した怪我がない事から空雅家の経営する小さな診療所で療養状態となり、意識が戻ったのが今朝。
それから警察の聞き取りが入るが、事件当時の事の多くを語れないタクミの様子にユウの父であり主治医であるタケシが聞き取りは精神的負荷が高いと中断。
しかし「放火殺人」である事と、犯人が男である事だけはタクミが伝え、聞き取りの続きは後日となった。
そして授業を終え、居候となった翔子とユウが帰って来た事によって物語は進む。
ユウの母であるユカリが用意してくれた紅茶に悪戦苦闘するのはタクミ、彼は致命的なまでに猫舌だった。
机を囲む三人の雰囲気は緊張感に満ちている。
それはそうだ、ユウは翔子と再会したばかりだというのに謎の少年が運び込まれてきて、それが翔子を襲った異能者で、タクミからしても自分が暴走して襲い掛かってしまった相手に助けられて、その知り合いの家族の病院で休ませてもらったという、気まずいもの。
それに加え、家族を一気に失った悲しみと自分がバケモノに変わってしまった困惑もある。
「んじゃ……その自己紹介からしようよ、まず。私は阿木都翔子、このユウくんの幼馴染で……君と同じ様な能力を持ってるよ」
「俺は空雅ユウ、俺も翔子と同じ様な力を持つけど、真面目に使ったのは昨日ぐらいの初心者だ」
「………俺は、俺は駆狼タクミ……私立ヘイセニア大学付属中学3年……それだけ……です」
タクミは二人よりも一つ年下、とはいえ同じ学校である事にユウと翔子も驚く。
「身近にいるもんだね、能力者って」
「そうだな……で……駆狼……さん?」
「……タクミでいいです、先輩」
「じゃあタクミくんはこれからどうしたいのかな?」
このやりとりは、あくまで診療所としての治療などではなく……同じ「異能者」としてのやりとりだ。
だからユウと翔子が聞きたい答えは、その力で何をするかという事だ。
「俺は……まだわからないです。ただ……父さんを、母さんを……妹を殺した奴を許せない……そいつがただ憎い。それだけです」
「そうだね……私達は家族を殺されてないからわからない、けどそうなるよね……それなら、私はそいつを捕まえるのには協力したい。話の通りなら殺人犯が今も街をうろついているってことだよね?まだ誰かが犠牲になるかもしれないのは、私は許せない」
「……俺は、俺もわからない……だがタクミくんが困ってるなら、俺はタクミくんを助けたいとは思う」
わりとしっかりとした翔子、まだ戸惑いのあるユウ、その違いにタクミは少し親近感を抱きつつも、少しだけ安心した。
そのやり取りを気配を消して見守る少女は少し安堵の笑みを浮かべ、その姿を消す。
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少年少女の青春異能バトル物語、はっじまるよー!
あれから三日、特に事件も起きず、敵も現れない……とでも思っていたのか?
いやニュースを見ているとなんとまあ次から次へと出てくるわ凶悪犯罪者。
放火魔……の方は一応誰か見当はついているので主人公達がもっと戦える様になってから倒してもらうしかない。
というかあの三人じゃないと初見で耐えられないので……。
とはいえ矢を使う奴はまったくわからない、原作では矢を使う奴なんて居なかったのでおそらくはまた生えてきた存在でしょうなぁ……。
おかげさまで、警察に所属するお父様が大忙し……「異能犯罪対策科」と呼ばれる部署に所属し、政府や企業と共同でパワードスーツの開発や異能の研究などを行ってもいるのですが。
昨日帰ってきた際に「ここ最近、謎の怪物が現れていて出撃続きだ」とぼやいていた。
お母様も「半分ぐらい始末しようかしら?」と言ったがお父様は「いいや、お前を守るのは俺だって約束したろ?」という口説き文句で返し、お母様メロメロ。
娘の前でイチャラブしすぎだよこの夫婦。
とまあ、とりあえず得た情報としては……。
この街には何かしらの悪の勢力が居るという事。
それはそれとして、この世界の政府や公の組織が秘密裏に異能と戦う為の研究を行っているのは私の原作知識通り、「神経圧裂弾」とかユウ達でもくらうとマジでヤバイ武器だったり、対異能者戦闘向けのマニュアルだったり、逆に政府側に所属する異能者も多い。
お父様はただの人間です、でもパワードスーツ「GXF-S」を着ている時は異能者すら圧倒する正義の味方。
組織と技術の力で戦うのもまた人間のやり方なのです。
まぁ原作だと10年後にようやく実戦配備されるはずの技術なんですが……なんでこの時代で既に完成しているんですかねぇ……?
もしかして未来から来た人でもいるのかな……。
とまぁ、疑問はさておき、今日も日課の主人公達のストーキング。
何かあった時には即対応!
ここ二日は特に全然寝れてないよ!なんでかって?タクミがなかなか起きかったからだよ!
本当なら一日で起きる筈だったんだがなぁ……。
で、ようやく起きて彼のチャームポイントの猫舌を堪能した後に主人公チームの意志確認が始まった。
原作では特にそういう事はなく、普通に学校に通っていると次々と戦いの巻き込まれていくという感じで主人公達から積極的に突っ込んでいくのは続編からの筈だった。
タクミが家族の仇を探すのは想定内、むしろ原作では黙って行動していた際に襲われて重傷を負うのでここで話すのはいいかもしれない。
翔子がタクミの手助けと犯人探しを手伝うのも想定内、いつ自分達の平和が壊されるかと考えるとそうなるのも当然。
となるとユウも翔子についてくるのもまた想定内だった。
彼はどうしようもなくお人よしだ、だから困っている奴がいたら助けたくなるし、人を殺しまくる敵を放ってはおけない。
となると今後は主人公チームの行動にこっそり後ろからついていく、という形になるか?
さて、時間も時間だし、私は私でそろそろ「起きそう」な事件の場所へと向かう必要がある。
祝福のエターナル 第四話は平和な昼のAパートと、クッソグロテスクなBパートに分かれている。
おおまかなあらすじとしては
・ユウと翔子の学園での生活
・帰ってきて目を覚ましたタクミとのやりとり
までがAで。
・護送中の快楽殺人者(名称不明)が異能に目覚めて脱走する
・その途中で大勢殺傷してあちらこちらで爆発が起きたりする
・それに主人公達が気付き止めに行く
・はじめての「悪」との戦いが始まる
だいたいこんな流れだ。
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-B part-
スコンと矢が警備員に突き刺さり、ドサリと倒れる。
そこにすっと舞い降りてきたのは蝙蝠の怪人だ。
突き刺さった矢から「生命エネルギー」だけを吸収し、蝙蝠怪人は満足げに頷く。
「う……ウワーッ!!!バケモノだ!!」
それは互いにとって運が悪かった、交代の時間としてちょうど居合わせた別の警備員と蝙蝠怪人が出くわす。
即座に蝙蝠怪人は矢で警備員の心臓を打ち抜き殺害、生命エネルギーを回収。
しかしその叫びを聞いて駆けつけてきた巡回中の警官達に見つかった。
「動くな!」
それは聞けない要求だ、怪人は空に飛びあがり、警官達が発砲する。
飛び交う弾丸を軽く避け、蝙蝠怪人は夜の空を舞う。
そして辿り着いたのは古びた教会。
蝙蝠怪人は恭しく膝を着け、頭を下げ、差し出す手の上に生命エネルギーを結晶化させたものを出現させる。
「ようやく、規定の量までエネルギーを集めたか……だが最後の最後でしくじるとはな、このアジトも引き払わねば」
一人の男がそれを受け取り、吸収する。
「うむ、肉や血などという不純物よりも純粋な生命エネルギーだけが俺の乾きを癒してくれる」
目の前の怪人は男が創ったものだ、人間を改造し、創造した「改造人間」だ。
もっともそこに元の意志はなく、命令に忠実なだけのプログラムや目的にあわせた能力だけ。
「さて……いい加減に出てくればどうだ?いつまでも隠れられるとでも思っているのか?」
男が移した視線の先には紫色の瞳の少女、奈々だ。
「……貴方は何かしら?」
「狩人(ハンター)だよ、君達「祝福されし者」を狩るためのね」
「……その為に無関係な人間を犠牲にするの?」
「別に人間も君達もかわらないぞ?鳥を狩るか鹿を狩るか程度の違いしかない」
「そう、なるほど……つまりあなたは敵ね」
邪悪な気配に少女は怯えもしない、それが男にとってはつまらず……不愉快でもあった。
スコンと壁に矢が刺さる。
蝙蝠怪人の放った矢は奈々を貫く事はなく空を切っただけだった。
その様子に男は驚き、喜びの表情を浮かべた。
「ほう!まさか君が「虚無」だったとは!これは驚いた!」
その様子にもまるで表情を動かさず、奈々は落ち着いた様子でそれを見下ろす。
「あなたは私をどうにかしたいようだけれど……残念ながら私はあなたをどうこうする訳ではないわ……あなたと戦うのは……」
男が眉をひそめるのと同時だった。
教会の壁が吹き飛び、剣を携えた一人の「銀騎士」が飛び出した。
「お前か!お前が大勢の人達を!」
怒りの篭ったその声は若い男の声だった。
「……潮時か、後は任せるぞ」
狩人は即座に背を向け姿を消し、場に残ったのは銀騎士と奈々、そして蝙蝠怪人。
燃え盛る教会の中で戦いが始まるのを少女を見下ろしていた。
-----------------------------------------
肝心の快楽殺人者さんは待てども待てども現れず、代わりに現れた蝙蝠の怪人を追いかけてみたら、かなり邪悪なタイプの知らないおっさんがおりまして……。
少なくとも今の私の力では勝てそうになさそうな強敵感も醸しだされていたので、ユウ君たちに投げるかと考えていたら、これまた知らないタイプのヒーローが登場した件。
誰なのアナタは一体……!?味方なんですよね!?わたくしと一緒に戦ってくれるんですよね!?
・ユウ
この力どうしよう
・翔子
人助けしたい!
・タクミ
仇討ちしたい
・お父上
実はパワードスーツを着て戦う
・お母様
旦那様大好き
・蝙蝠怪人
生命エネルギー集め係
・謎の狩人
異能者狙いの奴
・奈々
なんか知らん奴が増えた……
・銀騎士
全身鎧、剣を使う謎の男 あだ名は王子
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第五話「動き出している未来を止められない(絶望)」
第五話「戦士」
-A part-
燃え盛る教会の中、銀の騎士と蝙蝠怪人の戦いを奈々は見下ろしていた。
おそらく超常の素材で作られた鎧は同じく超常の素材で作られているであろう矢を容易く弾きながら、騎士は怪人との距離をつめ、拳で圧倒していた。
怪人は主人の命令に従い、邪魔者の始末を遂行する為に超音波による攻撃や、弓矢を使った攻撃を繰り出し続けるが、そのどれもが決定打に至らず、逆に騎士の反撃によりダメージを受け続けるだけ。
「決着を!」
そして騎士が腰から下げていた剣を手にすると、刀身が稲妻を放ち始める。
まずいと思った怪人は逃げ出そうとしたが、時既に遅し、必殺の一突きが怪人を貫き爆散させた。
同時に教会の崩壊が始まり、騎士は直ぐに外へと出た。
「こちら「シルバーソード」目標を撃破しました」
『了解、こちらの映像でも確認しました。お疲れ様です』
その騎士の肩には「スペード」と日本政府所属の「魔術機関」のシンボルが描かれていた。
「すみません、そこの方」
「へっ!?女の子!?」
騎士は驚きと共に声のした方を向く、そこには紫の目の少女。
「あっ、その色々と聞きたい事があったりするのですが……日本政府の所属の方で間違いないですよね?」
「……そうだ」
ちょっと戸惑い気味の表情でつかず離れずの距離を保つ少女、それは対話を求める姿勢であった。
「えーっと……私は紅奈々と申します、私自身はどこにも属してないのですが、父は警察に属してて……よくにた装備を使っているので少し気になりまして」
「紅……?もしかして君はあの武さんの娘さんなのか!?」
「え、まあそうですけど……」
「俺は木切(きぎり)ツルギ、武さんの弟子だ!」
ああ、なるほどと奈々は納得がいったように頷く。
「そうですか、それなら間違いないですね。少しお願いがあるのです、この街には多くの異能者がいるのは当然ご存知だと思うのですが、どうやら異能者を狙って「狩る」などといった事を目的としている人物がいる様なのです、さっきの蝙蝠の怪人もその人物の手下の様で……」
「……さっきの男……いや、待て君はさっきの戦いを見てたのか!?」
「いえ……むしろ私とその男とのやりとりの際に突然ツルギさんが突っ込んできたので……それに私にも力はあるので、あまりお気になさらず……」
「いやいやいや、危ないだろ!そもそも最近は物騒なんだからこんな時間に出歩くのもよくない」
「あー……まあ……その通りなんですけど、とにかく……あなたが何者か知れたので今日はもういいです、それでは」
気まずそうに笑い、奈々はその姿を消す。
残されたツルギは鎧を着たまま困惑を浮かべた。
「なんだったんだ、あの子」
翌朝、学校に通うユウ達の姿があった。
タクミはまだ療養との事で診療所に残っているが、翔子とユウには学生としての生活もある。
「ねーねー、阿木都さんと空雅さん、今日一緒に登校してきてたよね」
「借りてたマンションで崩落があって危ないからユウくんの所に居候させてもらってるんだよ」
「えっ!?いきなり同居!?」
「元々幼馴染で私が怪我の治療の為に大きな病院に移されるまではよく泊まってたよ」
「すごい……そこいらの敗北者幼馴染とは格が違う……」
「まてい、アタシを敗北者だと!?」
「よせ!乗るなカズミ!」
元より他人とのコミュニケーションを得意とする翔子には既に多くの友人が出来ていた、一方でユウはといえば。
「翔子が戻ってきてから随分と調子がよくなってるな?」
「……ああ、まあそうだな……」
「そうなのか?高校からの付き合いだから知らんのだが」
「こいつは翔子が怪我でいなくなったショックから完全に引き篭もってやがったからな」
「それよりもコイツにあんなかわいい彼女がいた事に俺はショックを隠せない」
「か、彼女ではない……まだ」
「つまり俺にもチャンスは」
「ないぞ、翔子はコイツしかみていない」
「クソァッ!」
ユウはかなり内向的ではある、だが完全に話をしないわけでもない。
付き合いの長い人間との関係はなかなか切れないものなのだ。
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知らないオッサン(原作未登場)と父上の弟子(初登場)とか頭祝エタかよ!?
今日も平和の為に頑張る物語はじまるよー。
父上に確認を取ったらツルギなる人物はきちんと実在するお弟子さんでした。
所属も装備しているパワードスーツもきちんと正規品、とはいえ夜に出歩いていた事に少々お叱りを受けてしまった。
でも謎の敵キャラの親玉らしき人物と遭遇できたのは幸運だ、新しいデータ表に記入する。
異能者狩りの異能者は珍しくもなんとも無い、なんならシリーズ内の設定でも書かれているぐらいに。
生命エネルギーを「喰っていた」のも含めると、あれはおそらくただの人間ではなく魔術師だったり妖魔の部類だろう。
後つれていた蝙蝠怪人が蜘蛛怪人ともデザインが似ていた事を考えると、おそらく翔子を襲ったあの蜘蛛怪人は生命エネルギーを回収しようとしていて翔子とぶちあたった可能性がある。
そしてツルギさんの扱いは……まあ父上の弟子だし信用していいかも、「ボス」にぶつけるには少々耐性が不安だけど……逆にあの狩人気取りにぶつけるのはいいかもしれない。
最後に私を見て言った「虚無」の力。
まあ少しは予想がつく、この転移の力の本質は「無」を経由したもの。
お母様はまあ「なるようになる」としか言ってなかったけれど、少なくとも「虚無」なんて名前でまともな能力というのは絶対にありえないので、詳しそうな人とかを自力で見つける必要もありそうだ。
気配を消してヘイセニア付属高校に忍び込むと主人公達は無事に青春していた、私は通信制の授業を受けているので……もう学校に通うこともない。
二回目の学園生活も興味がない事も無いけれど、それよりも私は私がやれる事をするべきなのです。
とにかく学校では特に問題もないようd……校門が燃えてる?え?
は?
は?????????
なんでボスキャラがここで沸いて出てくるのかな?
え?シナリオは?
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-B part-
「ハハハ……匂いがする、「異形」の血の匂いだ……消さないとなぁ」
その男は警備員達を「焼却」し、悠々と校舎へと足を運ぶ。
目的は「汚らわしい怪物」を消し去る事。
自分自身こそがもっとも恐ろしい怪物と化している事に気付かないまま、男は「二つの匂い」へ向かって歩を進める。
「……ユウ、翔子……あなた達の力が必要です」
警報と共に避難する生徒達に紛れ、奈々が突然現れた。
「あなたはこの間の!」
「何が起きているんだ」
「敵です、戦えるのは……今ここで戦えるのは、あなた達しかいない」
それだけ言うと奈々は再び姿を消す、だがその言葉だけで翔子とユウは互いに顔を合わせ、避難する生徒の波からそっと外れて、「変身」する。
「感知」が広がり、校舎の中の人間の位置が手に取るようにわかるようになる。
それは「一体」の異物と犠牲者の位置も。
「ユウくん、行くよ」
「……ああ!」
二人はヒトを超えた動きで向かう、そしてついに敵とぶつかる。
「……あっはぁ……出てきた、バケモノが……」
「バケモノは……お前だ」
みすぼらしい格好をした、明らかに正気ではない人間の目。
焼き尽くされた死体を見て、ユウは強く拳を握り締めて駆け出す。
白い外骨格の様な人外の姿のユウは跳躍と共に蹴りを繰り出す、が男が手をかざした瞬間、爆発が起きた。
「ユウくん!」
火達磨になりながら、ユウは転がり、立ち上がる。
「翔子、こいつはヤバい」
変身によって強化された肉体であったが故に耐えられたが、生身の人間なら即死している威力の「炎」。
それが敵の攻撃の正体だった。
「わかってる、それよりも……」
「ああ……どうやって戦うかだな」
今の一瞬のやりとりでおそらく「範囲内」に入ったことにより相手の能力が発動したのだとユウは気付いた。
でなければ今、この瞬間にも敵はあの攻撃を繰り出している筈だ。
「……一撃で死なないのは、はじめてだなぁ」
警戒しているのは男も同じだった。
これまで相手にしてきた異能者は皆「一撃」で葬ってきた。
だからユウが耐えたのは想定外、もしもダメージを無視して突っ込んでくれば危険なのは自分だと男は理解していた。
男は狂っていた、狂っていながらに判断する正確さも持っていた。
だが新たにもう一人、その場に戦士が現れた。
「お前はァアアアッ!!!!」
白き狼の姿となったタクミだ、コンクリートの壁をも粉砕する一撃を男は紙一重で回避。
その隙を逃さずユウと翔子も動き出し、男に向けて攻撃を繰り出す。
だが。
「獣が三体もか!やはりこの街は腐っているなああ!!」
男を中心にまるで太陽がその場に落ちたかのような熱が発せられ、大爆発が起きた。
校舎の一角は完全に吹き飛び、瓦礫が降り注ぐ。
「くく……生き汚い獣どもめが……これで仕留めきれんとは……」
サイレンの音を聞き、男はその場から逃げ出す。
その直後、溶融した瓦礫を退かし、タクミと翔子、そしてユウは這い出した。
痛々しいダメージを負ったものの三人は無事だった。
「クソッ……!」
「何て強さだ」
生き残りはした、得たものは無力感だけ。
初めての「敵」との戦いは敗北だった。
それを奈々は物影から静かに見つめていた。
---------------------------------------
ヤバイと思ってタクミをつれてきたおかげでユウと翔子は無事だった。
いや……無事じゃないかも。
いきなり学校が爆破されるのナンデ????
なんで無印ラスボスがもう出てるの?何してるんですか「九場弾(くば だん)」さん???
「九場弾」
家族を能力者に殺され、自分も死の狭間にあった時に覚醒して能力者となった。
それから復讐の為に能力者を狩る様になったが、そのやり方は見境がない。
そしてそれは新たな復讐を生み出す、タクミの家族の仇でもある人物だ。
能力は「発火」を基点とし「爆発」まで変化する。
それはユウ達ぐらいに頑丈な変化タイプの能力者でないと致命的なダメージを負う事になるほどのもの。
とても私では太刀打ちできない。
原作では、最終的に九場の反応速度を超える事で倒したが……どうしたものか。
・ユウ/タクミ/翔子
ボロ負けしたが、生き残りは出来た
・蝙蝠怪人
南無
・木切ツルギ
「シルバーソード」と呼ばれるパワードスーツを着用、主人公の父である紅タケシの弟子
・九場弾
家族を能力者に殺され復讐鬼となってしまったもの、復讐の連鎖
・主人公
いそがしい
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隨ャ6隧ア「異変」
第■△話
皆さんご存知、人気シリーズの「祝■のEt○※ナ■」の世界。
オレはどういう訳か死んで、神にそこに転生させられる事になった。
このシリーズのメインの主人公「駆狼タクミ」は家族を異能者によって家族を殺され、自身も死の淵にあったが「運命」に目覚める事で命を繋ぎとめ、同じ異能者である「空雅ユウ」そして「阿木都翔子」によって救われた少年である。
キャラとしては物静かで無愛想、ここまでならよくある異能バトルモノの主人公の設定なんだがこいつが気に入らない。
この世界には異能者だけでなく、到底人間と共存できないバケモノも多く存在する。
タクミは人間とバケモノの共存を掲げる、まあ主人公としては当然の主張なんだろうけど、復讐完了後に出会う少女「マリア」の影響を受け、仲間がバケモノを倒そうとする度にそれを止めようとしたりするようになる。
更に自分は家族の仇を討ったというのに同じように仇討ちを望む能力者を止めようとしたり、挙句にタクミが殺さずに見逃した敵が後にとんでもない事件を起こす。
それは感染する事で人間を人食いの怪物「グール」に変えてしまうウイルスをばら撒き、10万もの人間を怪物に変えてしまうものである。
さすがに目の前で襲われている人間は助けるが、それが原因で他の異能者や別の種族への迫害が加速するという大戦犯。
その癖、仲間は誰もタクミを責めない。
脚本や尺の都合もあるし黒幕である「くれniな。」の暗躍こそが真の原因であるが、それでもオレはこいつが気に喰わない。
だから悲劇を起こさせないし、バケモノどもの好きにもさせない、そして「■れない○な」の思い通りにもさせない。
オレの名前は矢車ソウジ、クソッタレなこの世界を変えるもの。
愛すべき妹と弟が笑って暮らせる世界を作るもの。
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『隨ャ蜈ュ隧ア』
『荵晏?エ蠑セ縺ョ隘イ謦?↓繧医▲縺ヲ蟄ヲ蝨偵?』
ついに私が知る「正史」の資料が文字化けを起こし、読めなくなった件について。
とうとうなにが起こるかわからない物語、はーじまるよー。
いやどうすんだこれ。
私がこれまで参考にしてきた記憶にすらモヤが掛かり始めている、先日の学園襲撃から世界が「変わり」すぎている。
これまで未来からの改変なんかもあったかもしれない、がそれでもこうもはっきり「異常」が起きる事など私にも「俺」にも感じ取れる事などなかった。
なんだ、これは。
どうすればいい?
一人では到底、解決できないと母上に謁見を願うが……間の悪い事に母上が不在だ。
「血の繋がり」というもののおかげで存在は確認できるけれど、物理的に外出中と見る。
これで母上が消えたり、誰かが消えているなんて起きたら俺は徹底的にどうしたらいいのかわからなくなる。
ユウと翔子……そしてタクミが心配だ。
とにかく、彼らが無事なら何とかなると私は信じている。
というか無事になんとかしてくれ、頼むよ。
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「ねえ、ユウくん」
「どうした翔子」
いつも通り、通学路を歩く少年と少女。
彼らは一見普通の学生、しかしその真の姿はこの街を守る正義のヒーロー。
「なんかおかしくない?」
「……」
「昨日、沢山人が死んだんだよね?」
「わかっている、だが今はまだ様子を見るんだ翔子」
「タクミはまだ寝たままだし、ユウくんのご家族は仕事があるから何もいわなかったけど」
「……彼女なら、あの紫の目の子なら何か知ってるかもしれない」
「……期待しすぎるのもよくない」
彼、彼女は違和感の中に居た。
だがそれは、超常の世界に長く入り浸りすぎた幻想かもしれない。
「その通りです、私にも何がなにやらさっぱりわからない」
呼ばれて飛び出てくるのは黒幕、「縺上l縺ェ縺?↑縺ェ」という名の少女。
「……タクミの時もそうだったけど、優雅そうにしているけど格好乱れているよ」
「そうならその時に言ってくださいな……それはさておき、あなた方が異常を認識していて助かりました。あなた方がこの事態に巻き込まれていたなら、私は一体誰に頼ればいいのかと……」
正しい世界で狂っているのは、この三人。
「ねえ、いきなりで悪いんだけど、俺達は君の名前を知らない」
「ああ……そうですね、私は一度も名乗ってませんからね」
「確かに、そっちは「私達」の名前を知っていたのに私達が知らないのはフェアじゃない」
名前を知ってはいけない。
「私の名前は「紅―――」」
---------------------------------
空間が歪み、オーロラの向こうからスーツを着た「青い薔薇の頭」の男が現れた。
「君は本当に、迷惑な奴だよ「イレギュラー」」
「私からすれば貴方の方がイレギュラーでございますわよ」
景色がモノクロに塗りつぶされる中、正しく「動けている」のはこの場に居る四人。
「……なんだお前は」
「少なくとも私の勘ではロクな奴ではないと思うよ」
その中にはユウと翔子も含まれていた事に奈々は心の底から感謝していた。
彼女は――戦えないから。
「無から可能性を生み出す、ありえない未来を作る……それは確かに美しい言葉かもしれないでしょう……ですが、その実あまりにも歪で……見苦しい」
「え???」
本気でわからない、と奈々は首をかしげる。
その様子にはあ、と呆れた様な様子の男。
「つまりは、あなたの存在そのものが……必要ないんですよ」
男の「予備動作」を瞬間的に見抜いた翔子が変身し、奈々と男の間に割って入り、ユウもまた感情のままに「白」の姿へと変わり駆け出す。
男の姿は消え、青の宝石に彩られた黄金の騎士がその場に立っていた。
それと同時に翔子の体にいくつもの短剣がぶつかり、火花を散らす。
「何故、それを庇う?」
「少なくともお前よりは信用があるからだ!!」
翔子を攻撃された怒りか、それとも義憤か、激情がユウの力を目覚めさせる。
白から赤へ、力が変わる。
振りかぶった拳が金の鎧の胸を打ち、火花が散る。
だが青薔薇の男はまるで効いていないかの様に平然と立っていた。
「なるほど……ならその綺麗事を抱いたまま、薔薇と散れ」
ユウを軽々と投げ飛ばすと、男の姿が掻き消えた。
透明化したわけではないと翔子はすぐさま感じ取った、それは「加速」だ。
目にも見えない速度で動いている。
対処不能な事態、それでも。
それでも、世界は「変わっていく」。
金属がひしゃげる音が、モノクロの世界に響いた。
「ぐっ!」
それはどちらの呻きか。
翔子と奈々の視線の先には地面に落ちるユウと青薔薇の男、そして「三人目」の存在。
「ありえない」
奈々は信じられないと、呟いた。
それは「正史」の存在。
燃え盛る炎の様な騎士。
絶対にもう、ここに現れる事のない人物だった。
-----------------------------------
EXシリーズ、祝福のエターナルの番外編。
ユウ達とはまた違う異能者達の物語。
その中で、最後の勝者の願いを叶える魔術師達の殺し合いがあった。
無印の5年前の話だ。
主人公は戦いに巻き込まれただけの人間だった。
彼に願いなんて無かった、なにせ巻き込まれただけなのだから。
でも彼はどうしようもなくお人よしだった。
だから巻き込まれた人々を助ける為に戦って戦って、その果てに死んでしまった。
俺は、私は、どうしても彼を嫌いになれなかった。
どうしようもなくバカで、どうしようもなく自分の正義を進んだ彼を。
「ここがあの世かって思ったけど、そうじゃないらしいな」
騎竜シンジ、魔術師にも満たないただの新聞記者。
契約するのは戦いの儀式の参加者に配られた使い魔の一体「赤竜」。
どちらも5年前に死んだ筈の……私が見殺しにした存在だった。
なのに、どうして今、貴方は現れた?
・青薔薇の男
謎の存在、また突然生えてきた。
奈々の存在を知っている様だが?
・ユウ
本来とは違うシチュエーションでようやく初期フォームに
・黒幕イレギュラーちゃん
なんかえらいことになっていて泣きたい
・騎竜シンジ
番外編の主人公、死んだ筈の人間
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第7話「運命と出会う日」
さてはて、と振り返ってみればいつしか自分に「忠告した」彼女が立っていた。
成長して姿が変わっても、やっぱり面倒事に巻き込まれるのは変わってないなと、シンジは心の中で笑う。
「どうして……どうしてあなたがここに」
「言ったろ、俺は出来る限り誰も死なせたくない。助けられる限りは助けるって」
出会いはそう、謎の失踪事件を追っていた事からだった。
蜘蛛の様な怪物に襲われていた所を幼い少女に導かれ、助けられた事から。
―あなたにはきっとつらい運命が待っている、死ぬかもしれない、だから後戻りするなら今
諦めているような、どうともいえない表情で自分に語りかける少女を見て、助けたいと思った。
この世界には理不尽な事が数え切れない程にある。
魔術師としての役目から逃げて、記者として生きていた自分が本気で誰かの為に戦いたいと思った。
―それ以上は戻れなくなる
『でも俺はそれを望んでいる』
―あなたは行くのね
それは本来あるべき運命と変わらなかったのだろう、より一層深い諦めの表情を見せながら彼女は言った。
最後に会ったのは、そう……死ぬ直前だった。
怪物が街にあふれ出さんとするのを止める為に命を全部使い切る勢いで戦って、致命傷を負って、その果てに戦いの中で出来た友が呼びかける向こうに彼女を見た。
涙を堪えるような彼女の表情に、彼女が本当に望んでいた事を知った。
彼女は救って欲しかったんじゃない、救いたかったんだって。
だから死ぬ前に願い事が出来てしまった。
後悔と未練が出来てしまった。
----------------------------
それは私がまだ夢を見ていたからか。
世界を変えようと思った、運命を変えたいと願っていた。
だから犠牲になる者を一人でも減らそうと思って、「彼ら」の戦いを止めようと陰から動いた事がある。
その結果は、まあ察しの通り。
何も変わらなかった、死人も犠牲者も。
私が直接的に接触したシンジも、最後には「原作通り」死んでしまい。
儀式もまた「原作通り」に失敗した。
だから私は諦めた。
だから私は運命を信じて、記憶の通りになると思って生きてきた。
だが結果はどうだ?
知識は役立たず、世界はバグる。
死んだ筈の彼は今私を助けている。
意味不明、俺も私もわからない。
脚本としてみても危ない薬でもやっているのかとしか言えない。
喜べばいいのか、嘆けばいいのかもわからない。
ただただ頭が痛いだけだ。
「騎竜シンジ……何故死んだ筈の貴様がここにいる」
「俺にもわからねえし、そんなことはどうでもいい……俺はここにいるから戦う、それだけだ」
ご丁寧に儀式の遅さにテコ入れとして用意された強化形態のご登場、ここにいるユウと翔子と違い目の前の騎士は激戦を潜り抜けた猛者だ。
「イレギュラーに死人……全く以って美しくない」
だが相手は凄まじい「加速」を使う、どうする?
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「シンジさんでいいんだっけ……助けてくれてありがとうございます」
「ああ気にしなくていいさ、俺がやりたかった事だから……」
「俺はユウ、こっちが翔子、向こうの子は「奈々」です」
「そうか奈々ちゃんか、まあそれはそれとして今は目の前の奴を倒す事が大事だ、二人は奈々ちゃんを頼む」
二人がまだ戦士として未熟だということをシンジは見抜いていた、だからここは引き受けると前に出る。
「そういやアンタの名前もまだ聞いてなかったな」
「……もう一度消え去るお前に名乗る名などない」
青薔薇の男、その名をコルカスというが……非常に傲慢な男だ。
彼は再びその姿が掻き消えるほどの速度で動き出す、目の前のシンジを倒す為に。
だがそういう相手は「知っている」。
「アクセル……!」
「魔術」によりシンジもまた「加速」する。
先ほど、ユウを救えたのもまたシンジが加速していたからだ。
「ソード!」
「ぬぅっ!!」
魔術によって作り出された剣がコルカスの鎧にぶつかり、大きな火花が飛び散る。
「悪い、アンタの目的とか願い事とかしらない。けどあの子を助けたいから、アンタを倒す」
地面がまるで鏡の様に変化し、そこから一体の赤いドラゴンが現れる。
人造の使い魔「赤竜」だ。
「ばかな……こんなことが……たかが死人ごときに……」
「ファイナル」
ドラゴンが吐き出す炎を纏い、放たれたシンジの一撃を受けてコルカスは派手に吹き飛び、空中で爆発した。
舞い散るのは青い花弁のみ。
「す……すごい」
翔子もユウも、その圧倒的な戦いぶりに驚いていた。
奈々もまた……この妙な状況にどうすればいいのかと悩んでいた。
世界は色を取り戻し、再び動き出す。
だがシンジの姿が消えたりする事もない。
彼は間違いなくそこにいた。
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同じ頃、二人の戦士が一体の異形と戦っていた。
「おいツルギ、トドメをさすぞ」
「わかってる、いくぞソウジ」
それはツルギとソウジ、どちらも同じ組織のパワードスーツを纏っていた。
蹴りに纏わせるのは二つの雷の力で、連携攻撃が決まった異形は爆発炎上した。
彼らは同じ日本政府の所属ではあるが部隊が異なる為に滅多に会う事はない。
だが今日はその滅多だった。
突然、ソウジとツルギ以外の世界が止まり、彼らはその原因究明と解決の為に動いていた。
―これはあの黒幕女ではなさそうだ
ソウジの持つ知識の中に、アレがこんな時間停止みたいな事をやるイメージはなかった。
むしろアレは世界をどんどん回転させていくタイプの奴だ。
ふと自分達と今襲い掛かってきた怪物以外は止まっていた筈なのに爆発音が聞こえた。
「ツルギ」
「ああ」
二人は急いでその方向へと向かう。
距離はそこまで離れておらず、パワードスーツの機能を使えばあっという間であった。
その途中で世界の停止が解除されたのも知覚しつつ、辿り着いたソウジが見たのは。
「人間の姿の」ユウと翔子、そして謎の騎士に……スーツのセンサーの表示がバグったナニカだった。
ここに戦士達は出会った。
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さてはて、問題です。
自分以外に転生者や原作知識持ちがいた場合、どうなる?
私も知りたい!
「紅……奈々……!」
しかも滅茶苦茶敵意に満ちた目で見られているのは何故だ。
ここの所、世界は私に優しくないのではないか?
少なくとも私はこの男を知らない。
本当にどうしたものか。
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Ep8「何を信じる?」
ユウ、翔子、タクミ、ツルギ、シンジ、そしてソウジ……。
両親が不在の中、この6人を屋敷に招待する事となった。
この世に生まれてこの方、他人を家に呼ぶなど初めてで、自分の交友関係の無さに涙する女!紅奈々!
「まあ、お茶も出せませんが……その、お話し合いをさせていただきましょう。私は紅奈々、少し前までは限定的に未来が見る事の出来た「半分人間」です、もう半分はよく知りません」
死んだ筈の人間が生き返り、物語に知らない登場人物が次々と現れ、挙句には私以外にも物語を知っている者まで出てくる始末。
こうなってしまってはもう吐いてしまった方が楽と開き直る事にした。
「なるほどな」
と一番に頷くのは最も「関わりが深かった」シンジだ。
次にユウと翔子もああ、と納得がいった様だった。
「それで私達にタクミを助けたりさせたわけなのかな?」
「はい、ですが正直言って私の知識は……あなた方二人があの蜘蛛の怪人と戦った時から既にもうクソの役にも立ってなかったので……おそらくまともに役に立った唯一の知識かと」
ガタッと誰かが立ち上がる音がした。
「……待て、俺が……俺の家族が襲われる事を知っていたのか」
「それに関しては、詳しくは知りませんでしたし。気付いた時には手遅れでした」
それはタクミだった、おそらくこの中で私をぶち殺す権利を持つとしたら、彼だけだ。
私の原作知識の中にはタクミの家の場所などなかったし、そもそもどうやって助けるというのだ?戦えもしないのに。
「私は……貴方に殺されるなら仕方ないというくらいには思っていますが……今はまだ、まだ少しだけ生きなければならない」
これはウソではない、少なくともユウと翔子、そしてタクミがまともに戦える様になるまでは私はまだ死ねない。
それにただ殺されてやるつもりもないので「全力」で逃げに徹した私を殺せるぐらいに強くなってくれれば未来も安泰だ。
「駆狼タクミ、そもそもお前の家族の仇はその女ではないだろう」
変な所から助け舟が来たぞ?矢車ソウジ、ツルギの同僚らしい。
しかし何故彼がその事を知っているんだ?
「……何故知っている」
「それは俺もそこの女同様に未来の知識があったからな、だが……それが上手くいかないのがこの世界だ。俺の知らない要因が次々と現れ、別の事件を起こしていく」
あー……こいつもつまりは「転生者」か、それとも未来から来た人間か。
しかしやたらに私を目の仇にしているのも、未来での私のムーブとか知っているのか……それとも。
「つまりは……これまでの歴史や、これからの運命が滅茶苦茶になっているって事か?」
「そうだツルギ、そしてそこの女は未来において人類を脅かす存在となる……と俺は知っていたが、何故かそうならない気もする」
ああ、やっぱり私の事も知ってた、しかし人類を脅かすのは何故?能力の暴走だったらマズイな……。
「それで、結局どうするというのですか」
「そうです、これからそんな歴史や未来の危機だなんて……」
ついていけていないのはユウと翔子だ、仕方あるまい、ただのちょっと異能を持っていただけの学生がこんな世界の危機に巻き込まれるなんて考えもしなかっただろう。
でも今でこそまだ弱いけれど、彼らには変える力がある。
「私としては、ユウと翔子、そしてタクミが未来において世界を救う者となる知識がありました、だからあなた達には強くなって欲しい」
「それは俺も同じだ、まず目先の家族の仇を討ち果たせるぐらいには強くなってもらわねば困る、駆狼タクミ」
ソウジの知識も私と同じかな?タクミは異種との架け橋となる存在だからな……特に強くなくては……。
「まあ、そうだよねータクミおにいちゃんは強くないとー」
突然知らない少女の声が部屋の中に響いた。
皆一斉に、声の方向を向くとそこには10歳ぐらいの少女。
ピンクの髪が滅茶苦茶目立つのに何故、今の今まで誰も気付かなかったんだ。
「……あの、どちらさまですか」
「あーそうだね、「あなた」は私と出会わなかったから初対面だね、私は「アリス・タイムライナー」……時間の旅人だよ」
…………ああああああ!!クロノスくんの妹かぁ!ついぞ設定だけしか出なかった!
NXあたりの歴史改変系でも特異点として消えずに正しい歴史を覚えていられる存在だ!
「なるほど、過去から死人がやってくれば未来からまだいないものまで来るか」
「そうだよなぁ、過去から来るだけとは限らないよな」
ソウジとシンジがうんうんと頷くが、それをツルギが頭を抱えてみている、私も頭を抱えて倒れ伏したいよ。
「そーれでねー……未来や歴史が変わっても唯一変われない私から皆様に一言言いに来たんだ!この世界ホントにロクでもないね!!まるでノリと勢いだけで作られた女児向けアニメだよ!!だからノリに乗ってアドリブで世界の危機を救ってね!以上!」
「ノリ……え?ええ……?」
「この世界はノリに乗ってる奴が強いの!強化フォームでも最悪お披露目の次の回には負けたりするかもしれない、だからとにかく強キャラムーブをして!なんか勝てそうな雰囲気を作って!フラグを立てて!倒す!それね!」
まるでオタクみたいな話し方をするな!
「お前は戦わないのか」
「必要なら戦うよ?っていうか正直、今のあなた達の誰よりも強い自信もあるよ?」
ソウジの言葉に対して、さも当然の様に「自分が強い」と言い返せるこの少女、間違いなく只者では無い。
記憶が正しければ「タイムライナー」の一族は未来と過去を好きに行き来できるんだった……確かにかなりどうにもならない相手の一人だ……。
というか、こんなに戦える奴が集まっているなら……
「そ……そうです!出来れば皆さんで……ユウさんや翔子さん、タクミさんに訓練をつけてもらえませんか?」
何も私が積極的にやらんでもいいじゃん!!!
「あ、奈々お姉ちゃんだっけ、あなたもやるんだよ」
は?え?
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ここは廃棄された採石場、一応の所有は国となっているが、主にツルギやソウジ達の様な組織の人間が訓練に使う場所。
「遅いぞ」
「はぁっ!まだまだだ……!」
ぶつかりあうのは赤と赤、ソウジとタクミだった。
タクミはいつもの灰色の姿ではなく、ソウジの組織で開発された変身装着式のパワードスーツを纏いつつも目にも留まらぬ凄まじいスピードで動いていた。
「お前は元から加速できるだろう、スーツの機能と合わせろ」
ソウジの鎧「KB-10」もまた、加速の力を持つ。
元々は宇宙からの侵略者に対抗する為に作られたスーツで、魔術ではなく純科学だ。
タクミが纏うのはそのプロトタイプである「5式」、加速機能は10秒間しか使えないが通常戦闘性能は最新のKB-10にも劣らない。
「……お前の強みを生かせ」
ソウジはタクミの事を多く知っている、気に食わない奴だとも思っている。
だがそれはそれとして、気持ちもわかるし、不幸になってほしいとも思っていない。
もう既に家族を失ってしまった彼の行く先に、せめて救いがあって欲しいとは思う。
だからこうして特訓をつける事だけでなく、旧式とはいえ強化スーツを提供するまでした。
一方で翔子とユウが相手にしているのはツルギとその先輩であるヒビキだ。
ヒビキは古代から日本で妖怪を相手に戦って来た一族の末裔、修羅場も多く潜り抜けてきたベテランだ。
「まずは基本的な体力をつける事、戦い続ける力を付ける事が一番大事だ!重りをつけたまま広場を30週!」
変身しているとはいえユウと翔子がドン引くほどの重量の重りを軽々と持ち上げながらヒビキは走る。
「やっぱ一流だな……ヒビキさんは……」
「ツルギ、お前も走るんだ」
「ハイ!」
そして奈々は。
「無理無理無理、剣なんて持てませんって!!」
「やるんです、やれ」
アリスに「戦えない事」の克服を命じられていた。
奈々には生来よりどういうわけか「武器」を持つと全身に怖気が走り、最悪アレルギー反応が出るという奇妙な体質があった。
まるで戦いアレルギーとでもいわんそれが、「自力」での介入を妨げていた。
だが前の敵のコルカス、アリス曰く彼は未来人だったらしいが……彼の様に奈々を狙う人物が現れる可能性も高い、だから自衛ぐらい出来る様になる為に克服しろとの事だった。
「案外、どんな奇跡だって起き放題だな……この世界は」
それをシンジは笑いながら見ていた。
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EPISODE FINAL
どこまで話したかな?ああ、そうそう……新しく生まれてくる君がやるべき事だね。
それはこの世界で生きる事、ただそれだけ。
何をするかは君が決めるんだ。
それが君の……この世界に生きる者の役割なのだから。
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EPISODE FINAL/NEXT WORLD
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「だぁあああっ!!」
「てやぁあああっ!!」
ユウと翔子のキックが怪物の巨体を貫き、有り余るエネルギーが爆発を起こす。
その向こうではタクミが家族の仇である九場弾をついに討ち取った。
「血印よ……目覚めよ!」
同じ頃「狩人」と戦っていたのは奈々とシンジ、そしてツルギだ。
母より渡された「血の継承者」の印である「ナイトザンバー」を開放し、人々を自らの快楽の為に殺す狂人を倒した。
さらにソウジとヒビキ、そしてアリスが別の怪物の群を蹴散らし、薙ぎ倒していた。
この世界ではいつもどこかで誰かが戦っている。
平和と自由を守るために、愛する人を守るために、あるいは自分の願いを叶える為に。
それが、この世界に生れ落ちた者の祝福であり、役割だからだ。
「……また、新しい可能性が生まれた。祝福しよう」
ビルの上、不思議な格好をした少女が手にした携帯端末を見て笑う。
彼女こそが、この世界を作り出した「最初の女神」。
それでいて、ソウジや奈々をこの世界に送り出した存在でもある。
「我々の邪魔をしているのは貴様か!」
異形の姿をした怪人達がオーロラの向こうから次々と現れ、女神を取り囲む。
「あー私としては別に邪魔をしているつもりはないのですよー?あなた達だって私の子供なんだから、贔屓なんてしてないし」
「ならば我々にひれ伏せ!その力を我々に寄越すのだ!」
あー……と呆れた表情を向けて、女神は肩を落とす。
「タイミング悪いね、君たち」
「なんだと……?」
怪人のリーダーが女神の言葉の意味を知る事はなかった、それはその存在が終わりを迎えたからだ。
「なるほど……これがここでの俺の役目か」
運命を破壊して、新しい世界を生み出す存在がそこに現れたからだ。
「これで……世界は私の手から離れ、私の知らない物語が始まる」
満足げに怪人達を蹴散らす新しい戦士の背中を見送ると女神は姿を消し。
彼女が手にしていた携帯端末だけがそこに残されていた。
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私達、俺達は瞬間瞬間を必死に生きている。
というのもこの世界は何が起こるかまるでわからない。
未来の事はわからない、過去の事もあてにならない。
信じられるのは今、この瞬間だけ。
原作知識?転生者?メタ視点?むしろ持ってきてくださいなんでもしますから!!
なんの事かわからない……?そう、んじゃまぁ……ようこそ、物語へ。
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