カイザー召喚記 (ハロポン)
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1章 ロウリア戦役
カイザーライヒ世界線


若干違うところがあるかもしれません。あとアメリカとか日本とか中国大陸はこの作品には出てこない予定です(じゃなぜ書いた?ーのりさ。)


カイザーライヒの世界をざっくりと説明。長すぎるので省略したところ多いです。(カイザーライヒはHoi4のModを参考にしており、先日のアップデートにより中国が改変されました。具体的には、ドイツ領中国である東亜総合商社の消滅と大清帝国の国土変更、国家の追加など中国がかなり変わりました。ですがこの小説はその前のバージョンで続けます。)

 

世界は三国協商と三国同盟(中欧同盟とも言う)に別れる。

三国協商はフランス、イギリス、ロシア

三国同盟はドイツ、イタリア、オーストリア=ハンガリー

 

1914年 サラエヴォにてセルビア人の青年がオーストリア皇太子を暗殺。その後オーストリアはセルビアに宣戦布告。ロシアが参戦

ドイツがフランス、ロシアに宣戦布告しさらにパリへの道路整備のためにベルギー、ルクセンブルクを轢き殺しにかかる、が予想以上の抵抗を受け戦線は停滞。

 

ここまで史実通り。ここからがカイザーライヒ世界線

 

ドイツはアメリカが参戦しないよう無制限潜水艦作戦をしない。これによりアメリカは直接参戦する事はなく、イギリスやフランスに金貸したり武器のレンドリースをやるだけやりまくった。(急成長し始める米帝)

 

戦争はダラダラ続きイタリアは裏切る(知ってた)。

ルーマニアはベッサラビア欲しさにオーストリアへ宣戦布告したが返り討ちにあいそれどころかドイツ陣営に石油と穀倉地帯を明け渡すことになる(足を引っ張りまくるあたりイタリアと同じ、、いや自称ローマ人の国だしかたないね。)

オスマン帝国は瀕死の病人なんて呼ばれるが頑張った。イギリス、ロシア相手に奮闘した。そして真っ白に燃え尽きた(ジョー!)。

 

なおドイツではルーデンドルフの独裁政治が始まる。

 

1917年

史実通りにロシア革命ぼっ発。臨時政府がトップになりツァーリーはドイツへ亡命。

その後ソビエトが臨時政府打倒に動く。(史実通り)

そしてソビエト連邦が誕生(デデーン!)と同時に内戦発生。

1918年

ブレスト=リトフスク条約締結(東部戦線の終結。ドイツの勝利!)

 

戦線が減ったことにより危機感を覚えた協商は大規模攻勢を仕掛け戦線押上には成功したが大損害を被る。

ドイツはロシア戦に使ってた余力でギリシャを殴り12月に制圧。

1919年 3月 残りの力でフランスを殴ってみたらパリまで行けたやったぜ!

だが、フランスで革命が発生。結果第三共和政vs組合主義フランスコミューンとのフランス南北戦争と言う内戦になり結果、第四共和政フランスはアルジェリアへ亡命。本土は真っ赤なお鼻の..間違えた真っ赤なフランスコミューンとなる。

オーストリア軍はイタリアへ攻勢を仕掛けヴェネツィアで補足。イタリア軍6割を消滅させる。(ヘタリアだし妥当。)

 

11月にコペンハーゲンで講和会議〜(イギリス、日本とかは除く)

フランス内戦によりドイツ側はあまり領土貰えず代わりに海外植民地をゲット。

 

この時の講和によりベルギーはフランドル=ワロニア(属国)となる

その後も1922年まで戦争するが決着は着かず、他の国と名誉の平和が結ばれる。(白紙講和)

 

その後なんやかんやあって(おいそこ重要だろ。長すぎるのでかなりカットします)

さらにイギリスはドイツからの関税とアメリカの安い石炭により経済は赤字に。炭鉱でのストライキがきっかけとなり革命ぼっ発。イギリス王室とその他はカナダへ亡命しその影響でイギリス植民地は一気に独立する(英連邦壊れちゃう)。

インドもイギリスの影響が濃いインド自治領と藩王国の南インド、サンディカリスムの西インドに分裂。

南アフリカは内戦の危機を迎える。

 

一方その頃アメリカ合衆国では、イギリス、フランスの赤化により貸してた金は踏み倒されさらに恐慌が発生(ダブルパンチ!)

ルーズベルトは暗殺されロングは生存し、アメリカは連合国派とサンディカリスム派に分裂しかかっていた。アメリカが超大国?それどこの世界線?

 

南米でもサンディカリスムの影響によりアルゼンチンは分裂。ブラジルでも不穏な空気が漂う。いつもの平和な南米はどこいった?

 

イタリアは五等分の花嫁に近い状態で分裂。

イタリア統一前に戻る。

オーストリアはついにハンガリーが独立しようとしだし他の民族もそれに続こうとする。崩壊の危機を迎えたがドイツの仲介により他の民族をハンガリーと同じ自治権を与えることで何とか回避したものの延命措置に過ぎなかった。

 

オスマン帝国は第一次世界大戦に勝利したものの、犠牲の割に何も得られずなんとか延命治療しているに過ぎなかったし国の弱体化は止まらない。

さらにイギリスから独立したエジプトやイランなどの周辺国がオスマン領土を虎視眈々と狙っており油断できない。

 

ブルガリアは第一次世界大戦に勝利し大ブルガリアを築くが、ルーマニアの右翼化、セルビアの反ブルガリア、ギリシャの反ブルガリアによりまた戦争が起きそうな状況。(バルカン半島は常に火薬庫)

 

アフリカでは元イギリス植民地はエジプトスーダンと南アフリカを除きドイツ領中央アフリカに統合されさらにトップはヘルマン・ゲーリング。

 

中国はもうよく分からんくらいに分裂。

中国南部はドイツ版東インド会社こと東亜総合商社となりそれの北には清があったり(ドイツが作った。瀕死通り越してゾンビ国家じゃねぇか)

なお経済はドイツが支配し、正当性は皆無。悲しいな清。

満州国こと奉天政府があったり、自称モンゴル帝国皇帝が中国狙ってたり、馬家軍閥や雲南軍閥、上清天国(ほぼ太平天国と同じ)があったりと中華情勢複雑怪奇なり。

一方ロシアはロシア革命により一時的に政府はドイツへ亡命したものの、その後の内戦にドイツが介入。白軍を助けたこともあり白軍の勝利に終わる(この内戦でヒトラーは死亡。でも彼が残した書物は映画化し大ヒット作になる。悪のレッテル貼られなかっただけマシな人生なんじゃ...)

さらに弱体化したロシアを狙ってアムール国が出来たり、モンゴルがシベリア進出したりしさらに国内の共産主義者はまだまだ残っており内戦の危機はまだ終わっていない。

 

日本は民主主義最後の砦なんて呼ばれ始めた(え?民主主義国代表はアメリカだって?いやぁアメリカは、ねぇ?)

フランスとイギリスの赤化による没落するアメリカよりはましとはいえ経済的な打撃を受け、さらに関東大震災があったりと史実より状況は悪い。この状況を打破するため中国進出を狙っている。

 

そして現状のドイツは世界に覇権を握るものの、海軍は少ない上に色々な所に飛び散り国民は前の大戦の影響で反戦論が多い上に人口も打撃を受けたまま。さらに経済成長はあるものの、不穏な空気が漂う。

帝国協定という陣営を建てて、中欧を支配する。(オーストリア、オスマン、ブルガリアは加盟してません!)

 

以上カイザーライヒのざっくりとした説明。(ざっくりとは?)詳しく知りたい方はWikiの方を読んでね。

要はドイツは史実版フランス的立ち位置であり、世界中のあちこちで内戦の火種がありさらにカオスな世界なのだ!




なおロシア内戦やフランス革命はまた別の機会に書くつもりです。


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プロローグ-1-

「どうしてこうなった!どうしてこうなった!!!」

 

とターニャは、戦争に巻き込まれた事を後悔する。

 

ー 数週間前

 

ターニャは存在Xのせいで異世界転生させられた。

存在Xの言うように非科学的な要素があり、さらに追い詰められかけている世界であり男ではない。この要素全てを満たした世界だった。

 

そこは第一次世界大戦に勝ったドイツであり、史実より悲惨な世界だ。そこで戦災孤児、ターニャ・デグレチャフとして生まれた。

そこは第一次世界大戦に勝ち覇権国家となったものの、フランスとイギリスの赤化によりサンディカリスムのテロリスト共が暴れる世界であり当のドイツは弱体化している。

順風満帆な生活を手に入れるためにドイツから出ようかと考えたがどこにいけばいいのか分からない。

アメリカ?あの国はもうダメだ。借金まみれと恐慌とニューディール政策の失敗3連発で内戦一歩手前まで没落してる。

日本?性別上は女なんだ。順風満帆な生活は無理だ。

ロシア?いつ共産化するかわからん国だ。そういうことでドイツから出る事もできず、さらに私には魔力があると来た。

魔力を持ったものは将来徴兵される。なら今のうちに志願すればエリートコースから後方勤務までいける。

幸いドイツは弱体化しているとはいえ世界の覇権を握った覇権国家であり植民地も多い。道が見えた!

 

なーんて考えて航空魔導師に志願していざ研修任務というタイミングでまさかドイツが別の世界に転移されるなんて誰が想像しただろうか?

 

ーー

1936年1月1日

ドイツ帝国とその他帝国協定圏、オーストリア、バルカン半島の国々とオスマン帝国は異世界に転移された。

原因は不明。

フランスやロシアは消え、陸地だった場所は今や海。

ドイツ領中央アフリカやドイツ領インドシナ、東亜総合商社と連絡が取れないということで政府内では、「異世界に転移した説と、大規模な電波障害と大規模な地殻変動による結果」のどれかでは無いか?となりどっちも常識ではありえないため政府みんなこぞって精神科へ行ったくらいだ。

 

だが異世界転移は事実であると報告があがる。それは星の位置が違うこと。日照時間と時間が違う事。未知の魚が取れること。そして陸地の発見と文明の発見。未知の生物に乗った人間を確認したということで、異世界転移したというのは事実であるということが判明。

 

国があるという事は国交樹立が出来るかもしれないということで特使を派遣することに決まり派遣した所見事成功。ドイツの仲介もありドイツの友好国全ての国とも国交樹立ができた。さらに貿易協定を締結したため当分の食糧事情は改善された。

 

さらにドイツは相互独立保証条約を結びその他条約も次々と締結。

 

ここまでは良かった。ロウリアが攻めてくるまでは。



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プロローグ-2-

感想ありがとうございます。




クワトイネ公国

政治部会

 国の代表が集まるこの会議で、首相のカナタは悩んでいた。昨日の事、クワトイネ公国の防衛、軍務を司る軍務郷から、正体不明の物体が、マイハークに空から進入し、町上空を旋回して去っていったとの報告が上がる。

 

 空の飛龍が全く追いつけないほどの高速、高空を侵攻してきたという。

 

 国籍は全く不明、機体に十字の模様が書いてあったとの事であったが、それがなんなのかすら分からない。

カナタは発言する。

 

「皆のもの、この報告について、どう思う、どう解釈する」

 

 

 

情報分析部が手を挙げ、発言する

 

 

 

「情報分析部によれば、同物体は、三大文明圏の一つ、西方第2文明圏の大国、ムーが開発している飛行機械に酷似しているとのことです。しかし、ムーにおいて開発されている飛行機械は、最新の物でも最高速力が時速300kmとの事、今回の飛行物体は、明らかに400kmを超えています。ただ・・・。」

 

 

 

「ただ、なんだ?」

 

 

 

「はい、ムーの遙か西、文明圏から外れた西の果てに新興国家が出現し、付近の国家を配下に置き、暴れ回っているとの報告があります。かれらは、自らを第八帝国と名乗り、第2文明圏の大陸国家群連合に対して、宣戦を布告したと、昨日諜報部に情報が入っています。彼らの武器については、全く不明です。」

 

 

 

 会場にわずかな笑いが巻き起こる。文明圏から外れた新興国家が、3大文明圏5列強国のうち2列強国が存在する第2文明圏のすべてを敵に回して宣戦布告したという事実。

 

 無謀にも程がある。

 

 

 

「しかし、第八帝国は、ムーから遙か西にあるとの事、ムーまでの距離でさえ、我が国から2万km以上離れています。今回の物体が、それであることは考えにくいのです」

 

 

 

会議は振り出しに戻る、結局解らないのだ。

 

ただでさえ、隣国ロウリア王国との緊張状態が続き、準有事体制のこの状態で、頭の痛いこの情報は、首脳部を悩ませた。

 

味方なら、接触してくれば良いだけの話、わざわざ領空侵犯といった敵対行為を行うという事自体敵である可能性が高い

 

 

 

その時、政治部会に、外交部の若手幹部が、息を切らして入り込んでくる。

 

通常は考えられない。明らかに緊急時であった。

 

 

 

「何事か!!!」

 

 

 

 外務郷が声を張り上げる。

 

 

 

 

 

「報告します!!」

 

 

 

 若手幹部が報告を始める。要約すると、下記の内容になる。

 

 本日朝、クワトイネ公国の北側海上に、長さ210mクラスの超巨大船が現れた。

 

海軍により、臨検を行ったところ、ドイツ帝国という国の特使がおり、敵対の意思は無い旨伝えてきた。

 

捜査を行ったところ、下記の事項が判明した。なお、発言は本人の申し立てである。

 

 ○ ドイツ帝国という国は、突如としてこの世界に転移してきた。またその他オーストリアやオスマン帝国も転移したとのこと。

 

 ○ 元の世界との全てが断絶されたため、哨戒機により、付近の哨戒を行っていた。その際、陸地があることを発見した。

 

   哨戒活動の一環として、貴国に進入しており、その際領空を侵犯したことについては、深く謝罪する。

 

 ○ クワトイネ公国と会談を行いたい。

 

 

 

 突拍子もない話、政治部会の誰もが、信じられない思いでいた。

 

 しかし、昨日都市上空にあっさり進入されたのは事実であり、210mという考えられないほどの大きさの船も、報告に上がってきている。

 

 国ごと転移などは、神話(例えばムーの神話)には登場することはあるが、現実にはありえないと思っている。

 

 しかし、そのドイツという国の力は報告にある限りだと本物なので、まずは特使と会うこととした。そこから見極めるつもりだったのだ。

 

 

中央暦1639年3月22日(西暦1936年)午前―――

 

ドイツという国が転移してから、2ヶ月が経とうとしていた。

 

彼らと国交を結んでから2ヶ月、クワ・トイネ公国は、今までの歴史上最も変化した2ヶ月であった。

 

2ヶ月前、ドイツは、クワ・トイネ公国と、クイラ王国両方に同時に接触し、双方と国交を結んだ。その他の国々もドイツの仲介により国交を結んだ。

 

特にドイツと友好国であるオーストリア、オスマン帝国からの食料の買い付け量は、とてつもない規模での受注であったが、元々家畜にさえ旨い食料を提供することが出来るクワ・トイネ公国は、彼らからの受注に応える事が出来た。

 

 クイラ王国にあっても、元々作物が育たない不毛の土地であったが、ドイツの調査団によれば、資源の宝庫であるらしく、クイラ王国は、大量の資源をドイツ帝国とその他友好国に輸出開始していた。(後で知ることになるが友好国には転移に巻き込まれたルーマニア、セルビア、ギリシャは含まれていない)

 

 一方、ドイツやその他の国々は、これらをもらう変わりに、インフラや1部の技術を輸出してきた。

 

 大都市間を結ぶ、石畳の進化したような継ぎ目の無い道路、そして鉄道と呼ばれる大規模流通システムを構築しようとしていた。これが完成すると、各国の流通が活発になり、いままでとは比較にならない発展を遂げるだろうとの、試算が、経済部から上がってきている。

 

 各種技術の提供も求めたが、ドイツには新たに、「新世界技術流出防止法」と呼ばれる法律が出来たため、中核的技術は、貰えなかった。

 

 

ドイツから入ってくる便利な物は、明らかに彼らの国の生活様式を根底から変えるレベルのものばかりであった。

 

 いつでも清潔な水が飲めるようになる水道技術(もともと水道技術はあったが、真水ではとても飲めたものではなかった)、夜でも昼のごとく明るく出来、さらに各種動力となる電気技術、手元をひねるだけで、火を起こせ、かつ一瞬で温かいお湯を出すことが出来るプロパンガス、これだけでも生活はとてつもなく楽になる。

 

 まだまだ、2ヶ月しか経っていないので、普及はしていないが、それらのサンプルを見た経済部の担当者は、驚愕で、放心状態になったという。もちろんこれらによる産業の打撃もあるが関税をかけて最小限のダメージで抑えている。

 

 国がとてつもなく豊かになると・・・。

 

 

 

「すごいものだな、ドイツという国は・・・。明らかに3大文明圏を超えている。もしかしたら、我が国も生活水準において、3大文明圏を超えるやもしれぬぞ」

 

 

 

 クワ・トイネ公国首相カナタは、秘書に語りかける。

 

 まだ見ぬ国の劇的発展を、彼は見据えていた。

 

 

 

「はっ。しかし、彼らが平和主義で助かりました。どうやらここに転移する前に大規模な戦争があり、それによる反戦論が多くて良かったです。彼らの技術で覇を唱えられたらと思うと、ぞっとします」

 

我が国はなすすべもなくドイツに滅ぼされていただろう。直接的には兵器は見てないが、ドイツから手に入れた本などによる情報や鉄道、通信機器を見るだけでわかる。

鉄道は素早く大量に兵を送り込むことが出来るし、通信機器は素早く通信できる。通信機器だけでも戦争の常識をひっくり返せるのだ。(ちなみに通信機器がない時代のモンゴル帝国は、最大100kmくらいなら素早く情報を伝達出来たとか。誤訳かソースが間違ってるのか何かだと信じたい。事実だとしたらモンゴル帝国のあの無双っぷりも納得出来る)

 

「そうだな、しかし、武器を輸出してくれないのは、いささか残念だな。彼らの武器があれば、少しはロウリア王国の脅威も低減するのだが・・・。」

 

ドイツ本国では武器が不足しておりとても輸出なんて出来る状況では無かった。

 

 カナタは、夕日を見ながら、そう嘆いた。



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1話 ドイツ帝国

ドイツが転移して早2ヶ月。

転移してすぐに発生したブラックマンデーはクワトイネやクイネとの貿易開始により食料や資源不足はなんとか回避した。だがそれ以外の問題が山積みである。

 

ブラックマンデー

株価暴落による恐慌は転移してきた国の殆どすべてに影響を与えた。

ウクライナ王国でのブラックマンデーの余波で経済が崩壊。さらにドイツ国内での食料不足による麦問題をどうするかである。

麦を低価格で買うか規定価格で買うか?

 

これはクワトイネから麦を購入出来るのとウクライナの経済回復の為にも規定価格で買えるだけ買うことにした。

 

ウクライナにはサンディカリスムのテロリストが多いという情報は前からあったし取り締まりは今もしているが完全なる排除はまだ出来ていない。

 

次にセルビアとルーマニア、ギリシャだ。

セルビアは世界大戦のちにオーストリアの属国となったがオーストリアの帝国崩壊の危機のさいに独立した。

その後はブルガリア復讐に向け動く敵対国でありそれにルーマニア、ギリシャが続く。

だがそれは不味いため外交関係の改善をしている。

だが突然の転移ということもあり連携が必要であり有事の際のことを考えドイツ帝国はオーストリア、ブルガリア、オスマン帝国に団結を呼びかけその答えに応じてくれ、オーストリア、ブルガリア、オスマン帝国は帝国協定に加盟した。

ー帝国協定を中欧同盟に改名しようという案もあったが既にクワトイネには帝国協定という名で通しているため改名しなかった。ー

 

そして問題は軍事。

陸軍のほとんどは深刻な兵器不足に陥りさらに海軍は壊滅の危機すらある。というのも帝国海軍参謀総長のエーリヒ・レーダー提督の報告によると...

 

「艦艇の5割が消滅。86隻近くを失い、輸送船は...かなりの被害を受けました。」

 

ドイツ帝国海軍は世界一だ。だがその世界一というのは半分嘘である。イギリスが崩壊した結果、海軍艦艇数が1位になっただけであり数だけ揃えた海軍であり質は悲しいものである。さらにアフリカ、中国と守るべき海域が増えたことによる戦力分散により海軍は常に艦艇不足に陥り新型艦はほとんど中国行きである。この結果、今あるドイツ海軍はほぼ全て旧式艦であり事実上、ドイツ海軍は壊滅的打撃を受けた。

 

「現在建造中の高速戦艦と大型空母が完成した後多数の潜水艦と軽巡を建造し数を間に合わせます。この世界の文明レベルは低いため駆逐艦だけでも十分やれると考えられますが、念の為に軽巡も多く建造する事にすると。」

 

ドイツ軍は海外植民地喪失による大打撃からいち早く建て直さななくてはならなくさらに今後、未知の国との戦争の際に動力のあり即展開できる最精鋭部隊が必要でもありそのタイミングでターニャが提出した即応魔導大隊構想案は1発okが出されることになり発案者が率いることとなることになるのだがその際に問題があった。

年齢と戦功だ。

年齢はどうにでもなる。だが戦功だけはどうしようも無い。だがそれを一気に解決する好機がやってきた。

 

ロウリアがクワトイネに戦争を仕掛けてきたのだ。相互独立保証していたドイツはその日に参戦。

ドイツにとってロウリアとは問題の無い国、そう認識していた。

 

たまたま偶然、クワトイネに送られていたターニャはロウリア戦での地帯防御任務を与えられてしまった。



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2話 ギムでの虐殺と初陣

ターニャ初陣!


中央暦1639年4月11日午前

ロウリア・クワトイネ国境付近

 

ロウリア王国東方討伐軍 本陣

 

クワトイネ公国外務部から、何度も何度も国境から兵を引くよう魔法通信にて連絡があった。

 

もちろんすべてを無視する。

 

もう戦争することは、決定しているのだ。

 

 

 

「明日、ギムを落とすぞ」

 

 

 

Bクラス将軍パンドールは、ギムに攻め込む先遣隊約3万の指揮官の任を与えられていた。歩兵2万、重装歩兵5千、騎兵2千、特化兵(攻城兵器や、投射機等、特殊任務に特化した兵)1500、遊撃兵1000、魔獣使い250、魔導師100、そして、竜騎兵150である。

 

 数の上では、歩兵が多いが、竜騎兵は1部隊(10騎)いれば、1万の歩兵を足止め出来る空の覇者である。それが150騎もいる。

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょうか?」

 

 

 

副将のアデムが話しかける。彼は、冷酷な騎士であり、ロウリア王国が領地拡大のために、他の小国を統合した時代、占領地での残虐性は、語るに耐えない。

 

 

 

「副将アデムよ、お前に任せる。」

 

 

 

「了解いたしました。」

 

 

 

 アデムは、将軍に一礼すると、後ろを振り返り、すぐさま部下に命じる。

 

 

 

「ギムでは、略奪を咎めない、好きにしていい。女は嬲ってもいいが、使い終わったらすべて処分するように。一人も生きて町を出すな。全軍に知らせよ」

 

 

 

「はっ!!!」

 

 

 

 アデムの部下は、すぐさま天幕を出ようとする。

 

 

 

「いや、待て!!!」

 

 

 

 アデムに呼び止められる。

 

 

 

「やはり、嬲ってもいいが、100人ばかり、生かして解き放て、恐怖を伝染させるのだ。それと・・・、敵騎士団の家族がギムにいた場合は、なるべく残虐に処分すること」

 

恐怖を知った人はそれを他の人にも伝え恐怖は拡散される。やがて誇張された恐怖は国を崩壊させる。これが彼の目的だったのだ。

 

中央歴1639年4月22日

 

ギム上空に到着した第108魔導中隊の小隊長であるターニャ デグレチャフ少尉は最悪な光景を目の当たりにした。

 

死と焦げた肉の匂い。どうやらロウリアという国はこのギムに住む一般市民を虐殺したようだ。

 

「野蛮人過ぎるぞ。モンゴルの真似事でもしてるのか?」

 

そばにいる中隊長のイーレン・シュワルコフ中尉も同感している。

 

「これからギムにいる敵の司令部を叩く。総員突撃!」

 

ーーーーー

パンドールはギムの中で1番高い建物で戦線を見ている。

その目的はつぎはどこを狙うかである。というのも戦果を上げればかなりの報酬が貰えるからであり今回の戦争は更なる高みを目指す絶好の機会だ。おまけに勝利は確定。

軍の頂点になるのも夢ではない。

 

だが突然の轟音と地響きがパンドールを現実へと引き戻す。

 

「何事だ!?」

 

「は、て、敵が現れたました!」

 

「敵だと?このギムにか?索敵はどうした?」

 

「それが、敵は空から現れまして」

 

空から?ワイバーンを使ってきたのか。ワイバーンくらいは敵も持っているか。だがこの音と振動はなんだ?ワイバーンではとても出せるようなものでは無いしさらに近い。どうなってやがる?

 

急いで窓から空を見るとそこには空中に浮いた黒い服を纏った人がいる。ワイバーンも使わずに浮いている。

ありえない、だが実際浮いているのだ。

 

「う、撃ち落とせ!ワイバーンを飛ばせ!」

 

「それが近づこうとしても落とされてしまい」

 

「どうなってやがる?敵の数は?」

 

「それが、12人です。上空にてワイバーンを狩るものが4人!それ以外は地上部隊に攻撃を仕掛けております!」

 

たったの12人相手に負けているのか?それどころかたったの3人にわがワイバーンは落とされているのか。

 

「くそっ、敵は誰なんだ!誰なんだ!?」

 

直後、パンドールのいる建物にターニャの攻撃が直撃した。

 

 

 

 

「やはり所詮3万の暴徒か..射撃訓練をしているみたいだ」

 

とターニャは上からひたすら地上の敵を殲滅作業をしているのとこっちに突撃してくる大きな鳥、いやワイバーンか?を撃ち落としてる。

 

「小官はもう少し苦戦するかと思いました。」

横で飛んでいるヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ伍長はターニャの部下である。

彼女もまた初陣であり、3万という数に驚いていたのだ。

 

「セレブリャコーフ伍長。数だけ揃った銃も存在しない敵なんて敵とも呼べんよ。3万の暴徒と呼ぶべきだ。ほれ見てみろ。司令部を吹き飛ばされたからか統率すら出来てない。」

 

眼科に広がるあちこちに逃げ惑う兵士。統率者を失った彼らは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

遅滞戦闘がこの中隊の任務でありターニャの小隊は敵司令部の破壊。他の小隊は集積所の破壊と制空任務だがこの状況じゃ制空任務が1番楽そうだ。だがターニャはここで戦果を出し昇進しその後、後方勤務になる為には司令部破壊と+‪αしなければならないと考えていた。

だから迎撃に上がってくる西洋の竜より小さい生き物に乗っている兵を撃墜しまくっている。

 

「セレブリャコーフ伍長、あれは我々より遅いし我々の防核術式を突破出来るほどの武器は持ってないし我々の攻撃を防ぐ手立てもない。つまり雑魚だ。制空権を我々が握っている以上、我々の優位が無くなることは無い。安心したまえ。」

 

とセレブリャコーフ伍長を安心させようとするターニャ。それにキュンとくる(?)セレブリャコーフ伍長であった。

 

 

 

 

 

 

なおその後司令部を潰した第108魔導中隊は残存魔力の問題もあり撤収。ターニャはうっかりワイバーンを60騎落とし英雄となってしまう。

「3万の敵と未知の航空兵力に勇敢に戦う幼女。激しい戦闘の末、司令部とワイバーンと呼ばれる竜を60騎撃ち落とした!」と。

ワイバーンを竜と表記したのはワイバーンを知らない市民向けに分かりやすく竜としたのだがこれが誤解を生むこととなった。

 

 

 

 

 

 

一方ドイツ海軍は、ロウリアの主力艦隊撃滅のために再編された主力艦隊を出港させた。




次回は海戦回。転移により壊滅的打撃を受けたドイツ海軍vsロウリア艦隊勝つのはどっちだ!


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3話 ペーター・シュトラッサー

前回海戦の話になるとか予告ぶちかましたのに今回の話は海戦無い。え?なぜ無いかって?
海戦の前の話が思ったよりも長くなったからだよ。

ちなみにロウリアの艦隊数4400隻の維持費かなりヤバそう。


ドイツ海軍主力 空母打撃艦隊

 

再編された艦隊であり、ドイツ海軍の残った主力艦ほぼ全てを投入した艦隊だ。

1ヶ月前に就役した新型大型空母、ペーター・シュトラッサー

グラーフ・ツェッペリンに続き造られた空母で、ツェッペリン含めてほぼ全ての空母を失ったドイツ海軍に残された唯一の空母であり、建造していたため転移の影響を受けなかった。だがドイツ海軍再建のために急ピッチに造られたこともあり試験もろくにしていない。

 

見た目や大きさは赤城そっくりであり速力は赤城より早いという違いくらいしかない。ー 一説によると設計者が日本の空母を見て強い影響を受けたとか受けなかったとかー

 

その空母を筆頭に旧式の弩級戦艦6隻、駆逐艦16隻、U-140型潜水艦 ー駆逐艦と砲撃戦できる潜水艦であるU 139型の後継。お前は何を言ってるんだと疑問に思ったが実在する。第一次世界大戦に活躍した(?)U 139型の正式な後継。U 139型の特徴は魚雷発射管6基と15㎝単装砲2基を装備。最大の特徴は60mmもの装甲を張った事で、当時の駆逐艦や巡洋艦よりも装甲が厚かったがこの船はさらに装甲と火砲を強化した。一体どこに向かっているんだこの潜水艦は?ちなみに建造したのは1922年~1923年。さらにこれの後継のU 141型もある。まだ作ってたのかー を13隻加えた艦隊だ。

 

なお普通の潜水艦は無かったのかだが、普通の潜水艦は転移した日、たまたま北海で訓練していたため巻き込まれなかった。

 

この艦隊の提督はアルフレート フォン バイ大将

北海にて何度かイギリスと海戦をしドイツを勝利へと導いた将軍。

彼は出港直前に海軍参謀本部にてこう言い残した。

 

「この度の海戦の最大の敵は弾薬と輸送船の数でしょう。我らドイツ海軍は世界最強です。ロウリアとやらの海軍は数百年前の船なんでしょ?そんな時代の船が4000隻あろうと我らの敵ではありません。むしろ敵は弾薬が足りなくなるという事と沈没した敵の水兵を救助しなければならないが輸送船の数が足りないんじゃないんですかね。」

と余裕の表情を見せた。というのも練度も桁違いに高い、世界最強の大英帝国艦隊とやり合ってきた男だからこそこの余裕の表情ができる。

バイ将軍は、艦隊を出港させる。まず最初の目的地はクワトイネのマイハーク港。

ここでクワトイネの観戦武官を乗せなくてはならない。なんでも政府の連中はドイツ帝国の力をクワトイネに見せつけてあわよくば外交的に属国化するつもりらしい。

 

 

 

 

クワトイネ公国 マイハーク港

 

ここでドイツ海軍の空母打撃艦隊を見た観戦武官のブルーアイは、目を疑っていた。

 

その船は、彼の常識からすれば、とてつもなく大きかった。ドイツとの接触の際に、ドイツの船はとてつもなくでかいという噂は聞いていたが所詮ただの噂だと思っていた。だがそれは真実だ。

 

 今彼が見ている船たちは、遠くの沖合いに停泊しているにも関わらず、とてつもなく大きく、そして帆が付いていない。

 

 やがて、一際大きな船から、小さな船が出てきた。その小さな船の動力源が全く理解不能であり、その乗り物に乗り、沖合いへ移動した。

 

 「それ」は進んだ。ワイバーンよりも遅いが、遥かに快適で、人が大量に運べる。

 

 やがて、母船が見えてくる。

 

 その大きさに驚愕する。

 

 

 

(いったいなんだ!この大きさは。そうか、これだけ大きければ、人員もたくさん搭載できる。切り込みの際は、中から大勢の人が出てきて一気に一隻づつ制圧していくのだろうな。これなら、一回の戦闘に投入できる人数が多いから、1隻あたりの戦力は大きいだろう)

 

彼はこのペーター・シュトラッサーを理解しようとした。だが彼は航空母艦というものを知らない。

 

疑問は尽きない。彼は、自衛官に言われるがまま、艦内に入っていった。

・・・中が・・・明るい。

鋼鉄の船。

何か燃やしているのか?それとも、光の魔法?これは魔導船か?わけがわらないよ。

 

 

 

彼はやがて艦長と出会う。

 

 

 

「艦長のアルフレート フォン バイです」

 

 

 

「クワトイネ公国第二海軍観戦武官のブルーアイです。このたびは、援軍感謝いたします」

 

 

 

「さっそくですが、我々は、クワトイネの船の位置を把握しており、ここより西側500kmの位置に彼らはおります。船足は、5ノット程度と非常に遅くはありますが、こちらに向かってきております。我々は明日の朝出航し、すべて排除する予定ですので、明日までは、ゆっくりとされてください。」

 

 

 

 ブルーアイは驚く。彼らは、自分たちだけで、クワトイネ海軍の協力を得ずに、4400隻の大艦隊に挑むつもりなのだ。

 

 確かに艦は大きく、切り込み用水夫を大人数を収容できるだろう。しかし、たったの36隻で、4400隻に挑んでいくのは、やはり自殺行為を思われた。

 

 また、バリスタや、火矢を防ぐ木盾が無いのが、不安に思われた。

 

「ブルーアイさん、この船の事を軽く説明しましょう。軍事機密に触れない程度ですがね。」

 

バイ将軍はこの空母を説明し始める。

 

グラーフ・ツェッペリン級ペーター・シュトラッサー

ドイツ帝国海軍の航空母艦であり、航空母艦とは主に航空機を離着陸させる船であり言わば移動する飛行場ということ。航空母艦には艦上戦闘機や艦上爆撃機が載っておりこれらが敵の船を破壊すると。またこれらは全て魔力を使っておらず全て科学の力で造られているということ。また帝国協定加盟国には他にも戦艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦などがありどれもブルーアイには理解出来ないものだった。というのもこれは戦争の常識を一変するものでありドイツや帝国協定の技術力は少なくとも

 

 

列強のムーと同等以上である

 

 

と。もちろんこれが本当だったらという話であり現物がある以上本当のことなのだがブルーアイはそれを認めたくなかった。いや信じたくなかった。クワトイネは恐ろしい国を戦争に巻き込んだのではないかと.....

 

 

その日の夜、ブルーアイを含めての作戦会議が行われた。議論の末

 

 

まずこの空母からの戦闘機で敵ロウリアの航空戦力であるワイバーンを全て撃墜し制空権を確保しつつ艦上爆撃機による敵艦の破壊。

 

その後弾薬が尽きたら航空部隊は帰還した後砲撃戦を開始。その時潜水艦隊は一旦別行動をとり、ロウリア艦隊が総崩れしそうなタイミングで奇襲攻撃を仕掛ける事にした。

 

翌朝

ロウリア王国東方討伐海軍 海将 シャークン

 

「いい景色だ。美しい」

 

大海原を美しい帆船が風をいっぱいに受け、進む。その数4400隻、大量の水夫と、揚陸軍を乗せ、彼らはクワトイネ公国経済都市、マイハークに向かっていた。

 

見渡す限り船ばかりである。

 

海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。ーそりゃあ4400隻もいたら海なんて見えねぇよな数だけなら米帝もビックリだろー

 

 

6年をかけた準備期間、パーパルディア皇国からの軍事援助を経て、ようやく完成した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には無い。

 

いや、もしかしたら、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。

 

 

野心が燃える

 

 

 

いや、パーパルディア皇国には、砲艦という船ごと破壊可能な兵器があるらしいな・・・。

 

 

 

彼は、一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第3文明圏の列強国に挑むのは、やはり危険が大きい。

 

 

 

彼は東の海を見据えた・・・・ん?

 

 

 

何かがこちらに飛んでくる。

なにか大きなものがこっちにくる?

 

彼は知らない。これが戦闘機であること。

彼は知らない。近代戦というものを。

彼は知らない。制空権の重要さを。

 

彼は知らない。本当の恐怖というものを。

 

後にロデニウス大海戦と呼ばれる海戦が今幕を上げる。




ちなみにU 139型は実在します。ウッソだろお前。
なおU 141型も1925年製でありそれは全てドイツ領東南アジアに派遣された。

なおこのシリーズのさらなる後継を作ろうとしたが海軍のとある人に止められた。
ー砲撃戦に特化した潜水艦作るよりその費用で駆逐艦や巡洋艦作る方がいい。ー

なおターニャは士官学校時代にこれを見て、「ウッソだろお前潜水艦だろ」と言ったとか言わなかったとか


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4話 恐怖

英国面の珍兵器はまだ理解出来る。頑張って作ろうとした結果どうしてこうなった!?みたいなのが多いがまだわかる。
ドイツ、おめぇの所の珍兵器、ぶっ飛んだ発想多すぎてビックリなんだよ。それを実現させるところがまた凄い。(マウス→ティガーⅡで充分だろまだでかいの作るつもりかよ。 ラーテ→マウスよりさらにでかいのを作るつもりかよ P1500→ わぁ、マウスが文字通りマウスに見えるぅ。)


ロウリアにとって悪夢の1日が始まった。

 

 

戦闘機による蹂躙。ロウリアには為す術もない。

さらに木造の船が災いした。小型船は戦闘機の機銃掃射だけで沈んでいく。

 

爆撃機による破壊。ロウリアの弓矢ではうち落とせない。大型の木造船も1発で木っ端微塵に吹き飛ぶ。

 

戦艦などによる砲撃。一方的にロウリア艦隊を一撃で葬っていく。

 

ワイバーンを呼び対処しようにもドイツの戦闘機に勝てる訳もなく数分で全滅。おまけにロウリアからしたら敵が何をしたのかすら分からない。

 

海将シャークは恐怖に襲われた。

 

なにが起きている?なぜ我らの艦隊が一方的にやられる?なんだ敵の攻撃は?ワイバーンは何が起きたのかすら分からないまま死んでいく。船も敵の鉄の鳥から落とされる何かによって爆散される。

 

なぜこうなった?パーパルティア皇国相手でも勝てるか分からないが少なくとも善戦は出来るはずだ。なのになぜ我々は一方的にやられるのか?分からない。怖い、恐ろしい。

 

気がつけばシャークの膝はガクガクに震えだし、やがて座り込んだ。

 

その時艦隊の左側面から突然攻撃を受ける。

 

「何が起きた!」

 

「それが、左翼の船が突然爆散しました!」

 

「何?新手か!」

 

「それが、原因不明の爆発であり敵だとしても正面にいる敵の攻撃では有りません。また新手かと探しましたが、全く見当たりません!」

 

「何?まさか透明化でもしているのか?」

 

「透明化してもそこに敵がある限りは海面に影響を与えるはずですがそれがありません。」

 

一体、我々は何と戦っているのだ?

分からない。

 

シャークは決意する。

 

「撤退しろ、 撤退しろーーー!全艦隊撤退だ!敵の攻撃の仕掛けが分からない以上どうしようも無い。撤退しろ」

 

直ぐにロウリア艦隊は撤退を開始するもののそれでもロウリアの艦隊はまだ2900隻ほど残っている。それにドイツ側はまだ砲弾に余裕があるため追撃戦を続行。

だがゾイ提督は目的をここでロウリア艦隊の撃滅から嫌がらせに変える。というのもあまりにもロウリア艦隊の減りが早かったためなのとこれ以上ロウリア水兵の捕虜が増えても困るだけなのでロウリアの旗艦周囲の船を優先して撃沈させる。旗艦にはいつでも破壊できると恐怖を与えてあげるのだ。

 

さらに潜水艦も嫌がらせのように横から攻撃しては時々静かに浮上し砲撃した後再び潜水する。

 

ロウリア艦隊は必死に逃げ出し、ドイツ海軍が追わなくなっても港に戻るまで全速力で漕ぎ続けた。

 

ようやく港につき残った艦隊数を数えてみると1812隻だった。だが生き残った水兵はみな二度と船には乗りたくないと言い軍から逃亡したり命令拒否をしだしロウリア海軍は事実上壊滅しシャークは敗北した責任を負い辞職した。一部ではシャークの精神が異常をきたしたためと言われている。

 

 

 

 

ドイツ キール軍港

ここで勝利の宴が開かれた。ドイツ海軍は先の海戦で損害ゼロで勝利を収めた。数字だけ見れば歴史的大勝利に違いない。敵が中世レベル、それも中世中期レベルの船であり勝つのが当たり前という事を考慮しなければだが。

 

それでも勝利には変わりないとその日は海軍将校みな祝った。

 

なおこの海戦の捕虜となったロウリア人は刑務所を急遽改造した収容所に収容した。

 

中央歴1639年4月30日 クワトイネ公国 政治部会

本国に帰還した観戦武官 ブルーアイは目の前で起きたありのままの事を報告した。

 

周囲にいた大臣達はその報告に驚く。

 

「これが本当ならばドイツはたったの十数隻でロウリアの艦隊3200隻を撃滅したと。嘘をつくならばもっとマシな嘘をつきたまえ。」

 

「嘘ではありません。嘘をつく価値がありますか!?それとドイツの提督からこれを受け取りました。見てみてください」

 

それはゾイ提督が予め海戦の様子を録画したビデオカメラでありこれを提出すれば証拠として真実をクワトイネに見せつけることが出来ると考えていたものだ。

 

「わかった。これの原理が分からないが少なくともこの映像は本物だろう。ブルーアイ、君が報告した内容と一致しているし何よりこんなものを作る国だ。ありうる話だろう。」

 

ブルーアイの報告書は信用されたが次の問題がでてくる。それはロウリアの海軍はしばらく動けないとして問題はロウリア陸軍だと。

ギムにいるロウリア軍はドイツの魔導士とやらが奇襲攻撃を仕掛け司令部を吹き飛ばしたことによりとりあえずは進軍を停止させることに成功した。

 

それもたった12人が司令部を吹き飛ばしさらにワイバーンを壊滅させたという信じられない報告付きで。

 

「クワトイネではロウリアには勝てないか。ドイツ頼りになるとはな」

 

クワトイネは今、決断に迫られていた。




多分明日は更新できないかも。
次回はターニャ回の予定
みんな大好き(?)シューゲルが登場するよ!


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5話 大学

ターニャは満喫していた。人生2度目の大学生活を!

 

ドイツ帝国 ベルリンにある軍大学

 

ここでは士官候補生を育てる学校であり平時は4年の教育課程があるが戦時や非常事態に限り1年弱に短縮。その分内容はハードになっている。

 

ここにターニャは入学した。それもシュワルコフ中尉の推薦でだ。一時期はどうなるかと思った。ワイバーンとやらを撃ち落としすぎたせいで英雄扱いされてさらにロウリアへの遠征軍に編入されるという噂まであったがなんとか大学に入ることにより回避。大学席次トップのままで卒業すればエリートコースからの夢の後方勤務!

 

のはずだった。

 

 

オーストリア アルプス山脈の近く

 

ここに研修旅行としてきた訳だが、訓練は過酷を極める。

 

朝5時起床 →訓練だ。わかる。

6時 座学 →わかる

7時 朝食→ ドイツ陸軍定番のクソマズレーション。正確に言えば新しいレーションの試作品。雀も食べない不味さ。おそらくイギリス人も不味いとはっきり言うだろう、言う、よな?

8時 アルプス登山研修 精神的にも肉体的にも疲弊した将校の作戦なんて碌でもないから今からそうならないように鍛えよう!→という趣旨は理解できるが女児に重さ40kgはありそうな荷物を持たせるか!児童相談所にでも今すぐに駆け込みたい気分だ。

 

だがターニャは最後までやり切ってしまった。教官の難問も正確に答えすぎた。その結果教官からは前線向きの将校と評価されてしまう。

そんなことをターニャは知らない。

 

研修旅行が終われば次は卒業研究である。この大学の卒業研究は至って簡単。軍関連の研究所にいきそれなりの成果を出せば合格だ。選択制だが当たり外れが大きいのがこの卒業研究の難関だ。

 

ここでターニャは40ある選択肢から以下の条件を満たしたものだけを候補に入れる。

 

・確実に提出できる研究であること。

・そこそこ有名な科学者であること。

・わかりやすい研究結果であること。

・コネクションが築きやすいものであること

 

ここから3つの選択肢が残る。

 

・アーデル ハイト シューゲルの新型演算宝珠の試作実験の手伝い。魔導士が望ましい。

 

・アインシュタインによる核研究。新型兵器や新エネルギー開発が主な目的。

 

・フリッツ ハーバーによるガス研究。ガスマスク無料配布。

 

フリッツ ハーバーがなぜ今も現役なのか不思議だがそれは置いておくとしてガス研究は普通に危なさそうだから却下。アインシュタイン、お前核研究してていいのか?という疑問もあるがそもそも核は研究結果だすまでが長いため却下。そうなると安全そうな新型演算宝珠の試作実験だろう。さらに宝珠と核研究は多額の研究費用が出てると聞く。なら無茶な実験とかはしないし安全そうでありなおかつ結果がわかりやすいシューゲルの演算宝珠の方を選ぶべきだな。

 

 

ターニャはこの研究を選んだことに後悔した。

 

 

ドイツ帝国 南部の研究所

 

本日の天候は晴天なれど風強し。試験項目は半分ほど完了し湿ってパラシュートが開かなかった前回よりは条件がましだが気が乗らない。何しろ右腕は包帯でぐるぐるに巻かれている。医療技術が発展してなかったら間違いなく右腕は失っていただろう。

 

この新型演算宝珠、エレニウム工廠製95式は確かに凄い。凄いのだがその分欠陥が多い。

ありえない推進力があるわけだがその推進力のだし方とはエンジンと同じ。単発がダメなら双発で、さらに4発でという代物であり制御が難しすぎる上に魔力を底なしに食う。エンジンで例えると通常の4倍のガソリンを食われる様なものだ。

 

魔導師にとっては革新的な機能がありさらに高高度でも飛行可能というカタログスペックが良くても実用性が無い、問題だらけの宝珠なら使いたくないものだ。まるでどこぞのおフランスの軽機関銃みたいだ。

 

 

 

「高度維持不可能!安全装置を作動させる!」

高度 4000まで上昇した時突如新型演算宝珠 エレニウム95式が暴走。気を抜いたら爆発。気を抜かなくても爆発するこの演算宝珠、ターニャは既に7回実験に失敗しその度に怪我をした。

 

 

「またかね!理論上は高度1万は余裕でいけるのだぞ!なぜ出来ない!」

 

「理論と現実は違う!せめてこのポンコツを兵器にまでしてから言っていただきたい!」

 

「ポンコツだと!貴様にはこの凄さが分からないのかね!」

 

「こんなもん、イタリアの赤い悪魔並の欠陥兵器だ!」

 

「欠陥だと!なぜこの素晴らしいものが理解できないのかね?」

 

なるほど。ライト兄弟はなんて偉大なんだ。人類で初めて自分たちで作った飛行機を使って飛んだのだから。間違ったら死ぬかもしれないものに乗って彼らは飛んだ。

それに比べこのMADは人を使って命懸けの実験をさせる。これが卒業研究じゃ無かったら今すぐにでも転職届けでも出してた。

 

ターニャは後悔した。

 

「シューゲル、少し肩が痛いので医務室に行きます。さようなら!」

 

ターニャは一刻でも早くこの場から立ち去りたかったのだ。出ないとこのシューゲルに銃口を向けてしまいそうだから。




アインシュタイン×ドイツの科学力というやばい状況が出来上がってる。
ちなみにアインシュタインは核研究以外に相対性理論とかもやっている。

ちなみに卒業研究だが、たとえ完成しなくても一定の成果があれば認められる場合もある(例えば核研究)
本編以外の卒業研究は戦車やレーダー、航空機研究から戦術、要塞建築など多岐にわたる。

ハーバーが生きている理由→史実より環境が良かったのと死ぬまで研究したいという生粋の科学者で軍も扱いに困っておりバイトとして雇っている。最近ちょくちょく倒れているが本人はまだ研究したい模様。

シューゲル→幼女戦記の狂気のMADサイエンティスト。


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6話 神のお導きか

一日に2話投稿する日が来ようとは。



「だるい。これは疲労感だけでは無いな。なるほど、前世で数多の無能をリストラしてきたがこういう心情だったのか。だが私は軍人だ。たとえやる気が無くてもやらねばならん。そう、どんなに気が進まなくても」

 

ターニャは起きて着替えて定時時刻5分前にシューゲルの研究所へ到着する。

 

「おはようデグレチャフ少尉。 時間前に来るとは今日もやる気十分じゃないか。」

 

「シューゲル、もうやめません?この宝珠絶対完成しませんよ。」

 

「なぁに今日は絶対完成する。信じたまえ」

 

自信に溢れたシューゲルの言動に疑問を持ちつつもターニャはエレニウム95式を起動させる。

予定通り高度6000mに到達。ここまでは順調。

 

「とくに異常なし。続けて次の実験、高度8000mまで上昇する」

 

何か嫌な予感がする。順調過ぎる。

 

順調過ぎた。壊れる直前の機械のように順調だった。

 

高度7800に到達来た時、それはついに来た。

 

「デグレチャフ少尉。実は昨日天啓を得てね」

 

「天啓.....でありますか?」

 

あぁやはりアレなのか。嫌な予感がする。

 

「そうとも!我々が共に、神に成功を祈願すれば信ずる者は救われるのだとな!」

 

この科学者が神を信じる?ありえない。失敗しすぎて気でも触れたか?

危険と悟ったターニャは急いで安全機構を立ち上げようとする

が、立ち上がらない。

そういえば以前このMADは、安全機構は機能美が無いから取り外したいとほざいてた。まさか本当に取り外したのか。

 

「いい機会だ。2人とも神に祈ろうではないか!」

 

「シューゲル、あなたは無神論者だったはずでは?」

 

「発明の神が私に舞い降りたのだ。私は今や敬虔な信徒だよ」

 

やばい。エレニウム95式がこのMAD同様に本格的に壊れ始めた。制御が出来なくなり暴走をし始めたこいつは最終的にはこの研究所丸ごと吹き飛ばすだろう。

 

「さぁ2人で祈願しよう。さすれば成功するだろう」

「私が祈願しなければどうなるのですかね?」

「私と共に殉職だよ」

「なら先に貴様を殺そうか?」

 

どうせ死ぬなら先にこのイカレを殺してから死にたい。

 

「落ち着け少尉。お互い祈ればいい話さ。君も神にあったことがあるであろう!」

 

まさか、まさか、「存在X!また貴様か!!世界は、私は貴様らのおもちゃじゃ無いんだぞ!」

 

「魔力係数急上昇、宝珠が、崩壊、退避、総員退避しろー!」観測班の悲鳴。

 

 

 

 

「議論の末に貴女方が開発しようとしているエレニウム95式。それに奇跡を起こすことを主はお認めになられました。」

 

ターニャは見覚えのある空間で存在Xとは違うやつが出てきた。なるほど。こいつも悪魔の類か。

 

「そしておめでとうございます。あなたは無知ゆえに罪深き存在であったことを主はお認めになり、あなたを導くことを決意なされたのです。」

 

なるほど。つまり存在Xが私の人生を勝手に決めたということか。私という個人は私で決めることは出来ないのかふざけんな。

 

「ああ、安心してください。あなたは何を強制されるか不安なのでしょう」

 

強制されるか、間違ってはいない。人生を強制的に決めさせられたら不安になるし反発するのは当然だろう。

 

「ご安心ください。奇跡によりあなたの演算宝珠は完成しさらにそれを使う際には祈りの言葉を唱えるでしょう。」

 

「祈り?」

 

「ええ。貴方が主を讃えなかったのはあなたの親が子に神の偉大さを説かなかったからでしょう。ですがそれはあなたが悪い訳では無いのです」

 

済まない。何を言ってるのか理解できない。神を信仰しないのは親が悪い?宗教を強制した結果何が起こったかご存知無いのかね?十字軍やイスラム過激派、宗教戦争。神なんて語る奴らにろくなもんはねぇ。

 

「ですから私たちはあなたが祈りの言葉を心から捧げるようにこれを改造しました。」

 

「それは極悪質な洗脳にしか聞こえないな」

 

状況を整理するとこいつらは、私をこの世界へ拉致って、その後その世界の国丸ごと他の世界に拉致って極めつけに私に洗脳道具を押し付けたと。

 

幸いなのはこの世界の文明レベルが低いおかげでこいつを使わないで済みそうな事だな。

 

「ところで私の実体は?」

 

「それは大丈夫です。我々神が恩寵によりあなたの実体を保護してます。さぁ神の御業を説きなさい」

 

ターニャの意識はそこで途絶えた。

 

気がついた時には何もかもが終わった後でありエレニウム95式の起動実験は奇跡的に成功。卒業研究としては一大成功を収めた。だがターニャはあの時神を讃えた言葉を言ったらしい。

「さて、こいつは直ぐに封印だ。二度と使うものか!」

 

ターニャはその後無事卒業研究を発表し複製不可能と呼ばれる、この世界にただ1つしかないエレニウム95式の保有者となった。




存在X「たしかに今はエレニウム95式を使わなくてもいいだろうな。今は。」

次回 転換期


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7話 転換期

ドイツ首脳部は動揺していた。というのも2つの情報がクワトイネから伝えられたからだ。ひとつは文明圏という国家の階級が存在すること。その第2文明圏であるムーはドイツと同等の技術があるという情報がもたらされたのだ。航空機が存在すると。それはつまり第1文明圏はドイツと同等かそれ以上の技術を持つ可能性があるということ。

 

ヴィルヘルム二世は危機を感じた。それは世界大戦前の、文明国家か野蛮人国家か?あの時は自分たちは文明国家として暴れたが今は野蛮人国家として見られている可能性が高いと。それを無くす簡単な方法は戦争で第1文明圏の国を倒せばいいのだ。かつて東洋であった日露戦争を参考にすればいい。

 

東洋の辺境の島国は開国してたった十数年で列強国のロシアを倒した。イギリスの支援があったと言えあの時点で日本への各国の態度は変わった。それをドイツもやればいいのだが問題はある。今以上の技術革新や新戦術が必要。

 

「新兵器の開発や新しいドクトリンが必要では無いのか?」

 

皇帝のお言葉に陸軍のルーデルドルフ大将は資料を見せその資料を解説する。

 

「これからの時代は戦車であると確信します。まずこの資料の152ページを見ていただくとそこに戦車や航空機を用いた電撃戦ドクトリンが紹介されております。電撃戦とは戦車などを用いて敵戦線を突破、後方まで浸透し敵司令部を破壊しつつ包囲殲滅を狙う戦術です。戦車などの速度を用いた機動戦をするのです。敵に防御の準備をさせる前に粉砕する!」

 

「なるほど。だがそれを実行するためにはかなりの量の戦車や航空機が必要ではないかね?」

 

「それはアルベルト シュペーアの規格化統一案によりかなり改善されました。」

 

「アルベルト シュペーア?誰かね?」

 

「は!建築家であります。」

 

「なぜ建築家が軍事に?」

 

「それが、シュペーアが工場の生産効率が悪いと突っ込まれましてその改定案を提出しその結果それを取り入れることにしました。」

 

アルベルト シュペーア

ドイツの建築家で今年開催される予定だったベルリンオリンピックの会場を建築した人。今までのオリンピックとは全く違い、演算宝珠の動画記録機能を一般人でも見ることは出来るように改造した映像記録演算宝珠 通称ビデオカメラ(彼が名付け定着した。)を大量に使い巨大モニターを作ったことは有名だ。ーなお気になるお値段は1個につき戦車1台買えるという高さー だがそのオリンピックは転移により中止となり代わりに球技大会などを開催するが既に予約が殺到している。

その他にも戦勝記念館や外務省の建物などを設計し建築した建築のプロ。

 

彼をよく知るエーリッヒ・ホフマン経済大臣は彼の有用性を説く。

 

「彼は非常に優秀な男であります。陛下、よろしければ彼を、いや彼らを政府に迎えたいのであります」

 

「彼ら?」

 

「ええ。天才の建築家 アルベルト シューペタと稀代の宣伝師 ヨーゼフ・ゲッベルスを政府に迎えいれればドイツは急躍進を遂げるでしょう!」

 

ホフマンは確信していた。ドイツにはまだまだ優秀な人材は多い。これを上手く探し出し活用すればそれこそ今以上に発展するどころかもしかしたら20年の技術躍進も夢ではないと。

 

ヴィルヘルム二世は許可を下した結果2人は晴れて政界入りした。

 

それともうひとつ、クワトイネからの軍隊通行の許可と駐留の許可、駐留期間は半永久的と。その他にも色々あるが要はドイツ属国化の願いに近い内容のものだった。

クワトイネ属国化案は前からあった。だがそれが実行されなかったのはクワトイネと友好関係を築き情報を引き出すためと軍事力で脅す場合国民が黙ってないからである。

 

世界大戦による悪夢がドイツ国民にはまだ深く残っておりこの戦争だって国民はやる気がない。もはやトラウマといってもいいだろう。

 

だがクワトイネからの属国化、いや保護国化に近いこの提案は拒否する理由もなく合意した。




ちなみに海軍では前の海戦から空母量産計画へシフトした。

ー時代的にはナチスの有名人が出てもおかしくはないのでナチスの中でも比較的ましな人を登場させてます。ヒムラーとかはさすがに危険すぎるため多分出てこない。ー

クワトイネはムー国を過大評価したため間違った情報がドイツに流れているという状況です。


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番外編 ウクライナ内戦とバルカン半島の動乱

国家転移からターニャが宝珠を完成させるまでに起きた帝国協定とその周辺国の出来事のまとめ。

12月23日ー転移国家の追記と1部修正。

ぴょんすけうさぎさん、AXYS教徒さん、感想ありがとうございます。


1936年 4月3日 中央歴1639年 4月3日

 

東欧のウクライナ王国で内戦がぼっ発した。きっかけは転移とブラックマンデーの余波によるウクライナ経済の悪化と失業率の増加、さらに国王がドイツ系ということもあった。ウクライナはウクライナ人の国でありドイツ系の国王は要らないという民族主義者が多くさらに王という身分そのものの破壊と労働者による労働者のための労働者の国家建設を目指すサンディカリスムや共産主義者が利害関係で結託し内戦を引き起こした。

 

結果ウクライナはウクライナ政府側と反乱軍側と二部される状況となり帝国協定圏は大きく揺らいだ。反帝国協定のルーマニア、セルビア、ギリシャがウクライナの反乱軍に資金提供や義勇軍を派兵。この結果、バルカン半島の緊張は一気に爆発した。

 

ウクライナのサンディカリスム化を防ぐためドイツはウクライナに軍を派遣。新兵器や新戦術の実験に使い始めた。

 

軽戦車と戦闘機、新型急降下爆撃機による電撃戦の実験。対戦車兵器を保有していない反乱軍にかなりの効果があり反乱軍は瞬く間に崩壊。

 

 

その間セルビア政府はドイツの目がウクライナとロウリアにいった隙にギリシャ、ルーマニア、ギリシャを誘ってバルカン同盟を締結。

 

ルーマニアは極右政権が誕生し石油の国有化に動き出していたため、ルーマニアの石油利権を握るドイツと激しく対立。直ぐに戦争をすることが出来ないドイツの内情を知っていたルーマニアは石油国有化を宣言しドイツの石油企業を国外追放した。

ギリシャはドイツからの借金を踏み倒し軍備を拡大。

 

そして6月11日、セルビアはブルガリアに宣戦布告。ギリシャ、ルーマニアも翌日にブルガリアへ宣戦布告。

この時オーストリアはアウスグライヒの準備があり介入出来ず、オスマンは内政がズタボロだったことも重なり中立した。

 

このような状況だがブルガリアは予想以上に奮戦しさらにウクライナ内戦が短期間で終結したことによりドイツ義勇軍をブルガリアに派遣することができた。

 

さらにギリシャで現政府が倒れ親独派が台頭した事により戦争から脱落。さらにハンガリー王国は単独でルーマニアに戦争を仕掛けた。この結果ルーマニアも直ぐに脱落。右翼政権は倒れ、ルーマニアはブルガリアの傀儡となった。

 

8月16日

 

残ったセルビアはブルガリアに食われセルビアは地図上から姿を消した。のちこの戦争をブルガリアは第4次バルカン戦争と呼んだ。

 

バルカン半島は平穏を取り戻した。

 

 

1936年9月時点

ドイツ帝国 ブラックマンデーから立ち直りさらに急速な軍拡と技術革新をする。さらにゲッベルスの宣伝によりドイツ国民はトラウマを乗り越えようとしている。

 

オーストリア帝国

来年開催されるアウスグライヒを控え、軍備より内政と外交を優先する。

ちなみにハンガリーはオーストリアのゆう事を聞かない。

 

ハンガリー王国

正式にはハンガリー自治領。だがオーストリアの権力は既になく好き勝手にやってる。ハンガリー国内にはチェコ人とスロヴァキア人など多数の民族を抱えている(どっかで聞いたことある状況)

ポーランド王国

王国と名乗っているが国王はいない摂政政治の国。

吹けば飛ぶような国力である。現在、ブラックマンデーの影響で経済が低迷してる。

反独感情もそれなりに強い。

 

リトアニア王国

陸軍の総兵力が3個師団しかない、帝国協定最弱国家。

 

バルト連合

ドイツの傀儡国。反独感情が強く独立の機会を伺っている者も多い。

 

ウクライナ王国

内戦以降、国内のサンディカリスムや民族主義者が消えたことにより安定した。国内の荒廃を引き換えに。農業国家でありまた陸軍もそれなりの数がある。

なおドイツ以外に唯一空母を保有する国家。

 

フランドル=ワロン王国

ドイツの傀儡国。フランス系とドイツ系が絶賛対立中。真っ二つに分裂するまであと3歩。

 

オランダ王国

存在すら忘れられてた国。ドイツの友好国。オランダ領東インドを失ったためかなりの打撃をくらったが選挙では親ドイツ派が当選しドイツに武器売ったりしてぼろ儲けしてる。どこに行こうが彼らの商人魂は失われない。

ギリシャ共和国

親独政権が誕生したが財政の悪化に歯止めはかからない。 戦争やら借金返済の代わりに船を売ったりしたせいで大変な状況。

 

ルーマニア共和国

ブルガリアの傀儡国 世界大戦で漁夫の利を得ようと参戦したがオーストリアとドイツ軍にボコボコにされ石油を半分奪われ、極右政権の誕生により領土奪還を目指し動いたもののブルガリアには負けるわ、横からハンガリーが介入するわで負けてばかり。

 

オスマン帝国

世界大戦に勝ったが、犠牲者と利益が見合って無さすぎた。オスマンの敵であるエジプトとペルシャが消えたため延命できたものの苦労して奪還したリビアを失った。

エルサレムを所有しているため観光収入が多くオスマンの数少ない財政源。陸軍の質の低さは帝国協定の中で1番低い。オマケに1部の地方は統治すら出来てないところもあるためまるで棺桶に片足突っ込んだ瀕死の病人。(ここ重要)

 

デンマーク

存在すら忘れられてた国第2号。帝国協定から脱退したものの、ドイツとかなり友好的 -というかドイツと友好関係築かないと国家存亡の危機であるため中立と言いながらかなりドイツ寄りの国-最近ではクワトイネとも貿易を始めた。

デンマークの首都 コペンハーゲンは北欧のパリと呼ばれるくらい発展しさらに綺麗な街並みなため観光客も多い。

 

イリュリア

オーストリアの傀儡国。

 

ボヘミア

オーストリアの傀儡国。

 

ガリツィア=ロドメニア王国

オーストリアの傀儡国

 

白ルーシ

ベラルーシの事。ドイツの傀儡国。

 

アルバニア

存在すら忘れられてた国第3号。




次回 ロウリアとの会戦。


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8話 エジェイ会戦

明日はクリスマスイブですね。
明日特に予定無いので明日も投稿します。

今回の話長いので前半と後半に分ければ良かったかもしれない


中央歴 1639年 9月8日

城塞都市エジェイ

 

城塞都市エジェイには、クワトイネ公国軍西部方面師団約3万人が駐屯しており、クワトイネの主力と言ってよかった。

 

内訳は、ワイバーン50騎、騎兵3000人、弓兵7千人、歩兵2万人という大部隊である。

 

将軍ノウは今回のロウリアの進攻をこの城塞都市エジェイで跳ね返せると思っていた。

 

高さ25メートルにも達する防壁はあらゆる敵の進攻を防ぎ、空からの攻撃に対しても、対空用に訓練された精鋭ワイバーンが50騎もいるのだから。

 

まさに鉄壁、まさに完璧、いかなる大軍をもってしても、この都市を陥落させることが出来るとは思えなかった。

 

この鉄壁の都市に向けてギムにいたロウリア軍はここを落とすために来た。

ドイツの奇襲攻撃により司令部が壊滅したロウリア軍はしばらく動くことが出来ず半年たった今日ついに動くことが出来たのだ。

 

「ノウ将軍、ドイツ帝国陸軍の方々が来ました。」

 

政府から協力するよう言われているため協力しているが、彼は正直自国にのり込んで来たドイツ軍が気に入らなかった。

 

ドイツは我が国の領空を犯し、力を見せ付けた後に接触してきた。信じてはいないが、ロウリアの4400隻の船の進行も、たった30隻強でくいとめたという。

 

しかし、陸戦は何といっても、数がものをいう。今回、ドイツが送り込んで来たのは、ドイツ帝国陸軍グデーリアン戦闘団とかいう、1万の兵力おまけに新設したばかりと。

 

奴らはエジェイの南側約8kmのところに基地を作って駐屯している。

いくら政府が許可を与えたからと言って、国土に他国の軍がいるのは良い気分ではない。

 

1万名という数も、信憑性はさて置き伝え聞いているドイツの人口7400万人という人口からすると、ずいぶんやる気の無い兵力だ。

 

いずれにせよ、自分たちならロウリアを退ける事が出来るので、彼らの出番は無い。

 

コンコン

ドアがノックされる。

 

「どうぞ」

 

将軍ノウが立ち上がり、彼らを迎える。

 

「失礼します」

 

 

一礼し、室内に入る人間が4名。その中に女が1人いる。

 

 

 

「ドイツ帝国陸軍グデーリアン戦闘団団長 ハインツ ヴィルヘルム グデーリアン大佐です。」

 

 

 

自分の着ている気品のある服とは違い真っ黒な服、胸に十字の紋章、そしてなにか勲章らしきものをぶら下げている。こやつが今回のドイツの遠征軍の将軍というのが、ノウには信じられなかった。

 

 

 

「これはこれは、良くおいで下さいました。私はクワトイネ公国西部方面師団将軍ノウといいます。このたびは、援軍ありがとうございます。感謝いたします」

 

 

 

まずは社交辞令から入る

 

 

 

「ドイツ帝国の戦闘団団長、ロウリア軍はギムを落とし、このエジェイを落とすために来ています。しかし、見てお解かりと思うが、エジェイは鉄壁の城塞都市、これを抜く事はいかに大軍をもってしても無理でしょう」

 

「という事はここで立てこもるつもりですか。なら我々が打って出てもよろしくて?」

 

「ほう、出来るならやってみたまえ。ロウリア軍の予想兵力は10万を超える。たかが1万の兵で勝てるものかね?」

 

「戦闘団というのはそれだけで小国一国に匹敵する軍隊であります。機甲師団を中心に多数の砲兵、騎兵、歩兵、輸送部隊と航空魔導師を構成したものです。」

 

この機甲師団に編成されているのは全てⅡ号戦車、ケッチェン軽戦車だ。

Ⅱ号戦車は軽くて早くて丈夫で生産コストが安い。だがその代わり武装が貧弱で装甲も柔らかいという欠点もあるが規格化統一による大量生産が可能となった今やドイツの主力戦車となり次の主力戦車となるⅢ号中戦車ドナシュラーク開発までの繋ぎとして使われていた。

 

これを知らないノウは戦車というものがなんなのか分からず数値だけを見ていた。

 

「10倍も戦力差があるのに勝てると思うならどうぞ。」

 

「ありがとうございます。これで戦闘団の試験が出来ます。」

 

会談を終えたグデーリアンは退席し戦闘の準備を整え始めた。

 

 

 

 

ドイツ グデーリアン戦闘団本陣

グデーリアンはもし相手がフランスコミューンだったら勝てないだろうなと考えていた。このⅡ号軽戦車は軽い、早い、丈夫、生産コストも安いと優秀だがフラコミの戦車相手には部が悪い。さらに対戦車砲でも簡単に破壊されてしまう欠点もある。まぁその対戦車砲を破壊するために魔導師を入れているわけだが。

 

「グデーリアン大佐!準備が整いました」

 

「そうか。」

 

敵に対戦車砲も無い。航空兵力は魔導師の敵ではない。

遠征軍派遣に時間がかかってなければもう首都を落としてもおかしくないくらいのロウリア。せいぜい彼らは我々の戦闘団の演習になってもらう。

 

「さぁやつらに近代戦を教えてやる時が来たぞ!授業料はやつらの命だ!」

 

 

 

 

ロウリア軍はエジェイを落とすために総兵力、20万人で来た。再編され、数がましたロウリア軍。大軍であるからこそ彼らは戦列歩兵できた。

 

戦列歩兵、確かに統制はとりやすかろう。だが纏まっているからこそ彼らは野砲の的となることを彼らはまだ知らない。

 

 

ジューンフィルアは20万という膨れ上がった軍隊の指揮官だ。

当初は2万人の予定だったがギムでの司令部壊滅、未知なる敵に対処するためにこれだけの人数が集められた。

人が空を飛ぶなんてとても信じられないがあの襲撃で生き残った者みんながそう言ってるのだから本当なのだろう。だがそれがどうした?そんなもの大量の弓矢とワイバーンで黙らせればいい。

 

 

突然、先頭が爆発した。火山でも噴火したのか?そう思ってしまうくらい連続で爆発した。

 

ジューンフィルアは効率的に殺処分される大量の部下を見て絶望していた。

 

今まで戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみの付き合いのあった上級騎士、共に強くなるため汗を流した仲間たち。

 

すべてが・・・虚しくなるほど、泣きたくなるほど、あまりにもあっさり死ぬ。

 

死神は、彼だけを逃がしてはくれなかった。

 

押されたような衝撃とともに、自分の体がバラバラになって飛んでいく姿、それが彼の人生最後の記憶になった。

 

耕された大地、その強大な魔導が去り、土煙が去った後、辛うじて生き残っていたロウリア兵にさらに絶望が襲いかかる。

ドイツ軍の戦車が襲いかかる。生き残った勇敢な騎兵は戦車に突撃したが戦車に突きつけた槍は折れ戦車に踏み潰されたり機銃で掃討された。逃げる者も出たがその退路に向けて砲弾が飛んでくる。その砲弾を観測する魔導師によりさらに効率的に殺されるロウリア兵。

 

後方にいるロウリア兵にも前線と同様に平等な死が降り注いだ。航空魔導師の強襲攻撃。これに対し勇敢にも弓矢で攻撃した者もいたがそんなもので魔導師を殺せるはずもなく一方的に倒される。

 

その後完全に指揮が崩壊したロウリアは撤退を開始しその敗残兵にも容赦なく砲弾をぶち込んだ。

 

「砲兵が戦場の神とはよく言ったものだ。なら戦車は神の尖兵かな。」

 

実験は成功。グデーリアンは満足した。敵軍主力と思われる20万を撃退。包囲殲滅するべきだが兵力が足りないため8万人くらいは逃げられただろうが彼らが再び戦線復帰するとは思えない。仮にしたところで我々の敵ではない。

 

 

 

ドイツ参謀本部

 

「これ以上ロウリア相手に時間かけるのは良くないだろう。色々実験は出来ただろうルーデルドルフ」

 

マンシュタイン元帥はこれ以上戦争を続けるのはあまり宜しくないと考えている。

これにルーデルドルフも賛成しそばにいるゼートゥーアも同意見だ。

 

「ならこれでトドメを刺すぞ!航空魔導師による首都襲撃作戦。ゼートゥーア大将、作戦の説明を」

 

「は!本作戦は航空魔導師の機動力を利用した後方襲撃 ですがこれを実行するのは即応魔導大隊が必要であります」

 

「例の参謀本部直轄の即応魔導大隊構想か。分かった任せよう。で大隊長は誰かね?」

 

「提案者のターニャ デグレチャフ少尉です。」

 

「デグレチャフ少尉か。確かエレニウム95式を奇跡的に完成させてたな。階級が問題だが、」

 

「それなら大丈夫です。卒業で中尉に。卒業研究の功で大尉にし大隊編成の功で無理やり少佐にしましょう。」

「強引だな。よかろう。だが期間はどうする?編成、訓練するだけでも2年はいるだろう。頑張っても半年はいるはずだ。現に遠征軍編成するだけで半年はかかったのだぞ」

「大丈夫です。彼女は断言しました。本気でやれば訓練は1ヶ月あれば出来ると。」

「ゼートゥーアがそこまで推すとは。ではゼートゥーアを信頼して任せよう!」

 

「は!」




ターニャ「卒業すればきっと後方勤務だ!」
→次回、ターニャの夢は叶わない


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9話 崩壊

ところで今日はクリスマスイブですね。私はSchoolDaysの最終話を見て日を越します。

悲しみの向こうへと
たどり着けるなら〜


ターニャは、大学の広告でとんでもないものを発見した。

 

求む求人!新型兵器の開発!新たなる時代を開けるのはあなただ!

 

主任、ヴェルナー フォン ブラウン

副任、ディータ グラウン

 

 

この人をターニャは知っている。前世ではV2ロケットを開発したドイツの科学者だ。

恐らく新型兵器とはロケットのことだろう。だがいくらなんでも開発を開始するのは早すぎる。

いや、今のドイツは人材に恵まれている。

元の世界で活躍したナチスの建築家アルベルト シュペーア。

ナチスを有名にしヒトラーを支えプロパガンダで国を支えたゲッベルス。

ユダヤ人としてナチスに終われアメリカへ逃亡した天才科学者 アインシュタイン。

ウラン核分裂を発見し核兵器開発へ繋がったフリッツ シュトラスマンとオットー ハーンとフリッツ ハーバーと同じ研究所にいたユダヤ系のリーゼ マイトナー。

毒ガスやハーバー ボッシュ法を発見したフリッツ ハーバー。カールボッシュ。

 

知ってるだけでこれである。特にやばいのはアインシュタインの研究所にはシュトラスマンとハーンとマイトナーさらにマンハッタン計画の一員でもあるレオ シラードがいることだろう。ーこの時のターニャは知らなかったが前世のマンハッタン計画に参加していた亡命ユダヤ人と同じ人物がこの研究所に参加している。あっー

 

本気で原子爆弾作る気だぞこいつら。3年くらいで原爆作りそうな予感がする。

 

横の広告には「来たれ帝国軍人!新しく生まれ変わった戦車が君を待っている! エルヴィン・ロンメル大佐」

 

もし私が航空魔導師でなければこれに応募してたな。そうか、前世でいた科学者もいるなら電撃戦の親のグーデリアンやマンシュタイン、空の魔王やその他大勢もいそう。ゲーリング?彼はアフリカに行ってたからこっちにはこれないよ。

 

さて、他にも色々求人広告はあるが魔導師に関する求人広告は特になかった。というのも航空魔導師はどこも人手が足りてないため個人に直接渡すとか。

 

ご苦労な事である。さてと今から相談室へ行くか。

私の進路がそこで決まる。あわよくば後方勤務に!

 

 

相談室

軍大学内にある普通の相談室。

 

私の前にいるのはオットー デーニッツ教官。進路指導の主任という立ち位置に近い人だ。

 

「ターニャ フォン デグレチャフ中尉。おめでとう、貴官は主席でこの学校を卒業する。さて、卒業後の進路だが貴官にはこれだけの就職先がある」

 

デーニッツは机に魔導師の求人を並べる。

それをターニャは1枚1枚見る。

 

魔導師教育機関や演算宝珠の研究所、あのMADのところからも来てる。どれも後方勤務であり数年そこで働けば一生楽して生きていけそうだ。

 

「我が夜の春ですね。多すぎて迷っちゃいます」

 

「それなら嬉しい。それと参謀本部から一通。小官はこれにて退席させてもらう」

 

参謀本部から?という事はこれらは全て建前。本命はこれか。

 

参謀本部からのものを蹴る馬鹿者はいない。つまりこれは強制だ。どうやらこの世界には職業選択の自由は存在しないらしい。

 

デーニッツ教官の代わりに入ってきたのは、ゼートゥーア大将だ。デーニッツ教官の座ってた席に座り話し始める。

 

「貴官のことだ。事務的な事がよかろう。貴官には新設する航空魔導大隊を編成してもらう。」

 

「こ、航空魔導大隊ですか?」

 

「あぁ。」

 

最悪極まる。大隊とか荷が重すぎる。無能な部下の責任なんて取りたくないぞ!なんて言いたいが相手はゼートゥーア大将。言えるわけが無い。だからこそ何か理由を付けて断らねば。

 

「そうでありすか。でも小官は本日中尉になったばかりでとても大隊長は」

 

「安心したまえ。編成が出来、訓練が出来ればその功績で無理やり少佐にするつもりだ」

 

「訓練でありますか」

 

「そうだ。こちらで集めた魔導師360人から48人までなら好きにした前」

 

「48人という事は増強大隊ですか。」

 

増強大隊とは普通の大隊+1個中隊のことだ。

 

「ああ。練度の不足もあろうかと1ヶ月間の猶予を与える。その間に完成させたまえ」

 

「1ヶ月でありますか。さすがに短すぎます」

 

「以前貴官は、新兵教育は訓練内容を厳しくすれば1ヶ月で精鋭になれると。悲しいことに参謀本部の多くの将校は嘘だと思っている。是非嘘ではないと証明させてやってくれ」

 

「は。はい。」

 

どうしてこうなった?確かに1ヶ月でもできるとは言ったがあれは自分が教育大隊に行きたいから言ったことであり参謀本部直轄の部隊になりたいから言った訳では無い。

参謀本部直轄?後方勤務の夢は絶たれたに等しい。

 

なら徹底的に訓練し脱落者を出させてそれを口実に時間を稼ごうか。これならできる!

 

 

 

 

1936年10月5日

ドイツ キール軍港

 

世の中上手くいかないものなんだな。

 

ターニャは目の前にいる48人の航空魔導大隊を眺める。

ターニャはこの1ヶ月、360人をふるい落とすべく知ってる限りのありとあらゆる地獄の訓練をさせた。雪中行軍、拷問訓練、高高度順応訓練に急降下訓練。さらに砲撃訓練までしたのだ。根をあげるに違いないと思ってたらまさか48人残るとは。

 

「さて諸君、最後の訓練だ。我ら第603魔導大隊は今日から第203航空魔導大隊となる。さらに参謀本部からの通達だ。なぁにただの観光旅行だ。中世風の街並みを見物しつつ現地人と戯れお友達になって連れて帰るのだ。」

 

「楽しそうですな。場所はどこですか?」

 

「敵ロウリア王国首都だ。ちなみに連れて帰るお友達はロウリアの国王とその他王族だ。嬉しすぎて暴れる輩もいるだろうがそいつらは眠らせてもいいぞ。」

 

 

 

◇◆◇◆

ロウリア王国 首都

 

「ほら余裕で到達できるくらい防空が甘いぞ。さてでは諸君作戦開始だ。」

 

今回の作戦は国王を連行する事だ。悲しいことに敵は戦時国際法を批准していない。だから何をやってもいいという訳では無いが奇襲攻撃してもよかろう。

 

「さて諸君、戦争の時間だ。国王と王族を拉致した後直ぐに帰還する。 さてセレブリャコーフ中尉、私たちも王宮の観光旅行でもしようか。」

 

「はい!少佐殿!」

 

◇◆◇◆

ドイツ 参謀本部

 

マンシュタイン元帥はこの作戦の結果に驚愕する。

 

「まさか、ここまでやるとは」

 

そもそも航空魔導師は兵科として若く、初めて実戦投入されたのは世界大戦末期、西部戦線だ。

そのためどこの国も完成したドクトリンは無く、どこまで可能かすらハッキリせず、訓練の仕方も非効率だった。

 

だがターニャ フォン デグレチャフ少佐は魔導師の損耗を抑制した訓練、ありえない程危険な訓練をし、死の恐怖を取り除いた部隊 それが第203航空魔導大隊だ。

 

今の帝国にあの訓練を合格できる人材は存在しない。

 

「ターニャ フォン デグレチャフ少佐か。使えるな。これ程航空魔導師を上手く扱えた人は存在しないだろう。」

 

「デグレチャフ少佐は使えます。ただ、問題は年齢でしょう」

 

ゼートゥーアはターニャを孫に近い感覚で捉えているが、その中身は

 

「ゼートゥーアよ。彼女の年齢はたしか11歳だったな。彼女が20歳になった頃にはどうなってる事やら...」

 

◆◇◆◇

 

ロウリアの王族を確保したことによりロウリア王国は無条件降伏をした。その後の講和会議でロウリア王国はほぼ全てをドイツの植民地下にし残った山脈地帯をクワトイネに割譲させた。

 

ターニャとドイツはこれから激動の時代を迎え始める。




次回、震撃!

ところで震撃って変換しようとしたら予測変換で

駆逐してやる!! この世から・・・一匹・・・残らず!!

ってのが出てきたんだけどこれはリア充の事を指し()


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2章 パワーバランスの崩壊
10話 ベルリンオリンピック


オリンピックの話書きたいなぁって思って書いたらこれだけで1話出来た。


1936年 中央歴1639年11月12日

 

ベルリン国立競技場

シュペーアによって建築された競技場で最大収容人数はおよそ8万人という転移国家最大の大きさと鷲の彫刻がいくつも並び、さらに席が満席になるくらいの人がいる。

今日は時期遅れのベルリンオリンピック開催日だ。

転移により開催するはずだったベルリンオリンピックは中止になったがゲッベルスの提案により延期に変わりさらにこの世界の国々も招待する事になった。

 

というのもドイツの目的は自国の凄さを、現実を見てもらう為に開催したのだ。

 

参加国

ドイツ+帝国協定加盟国

デンマーク

オランダ

ギリシャ

クワトイネ

フェン

クイラ

ドーパ

ネーツ

その他10ヶ国が参加。

またこれと同時に新世界国家(ドイツ国民がクワトイネやクイラなど文明圏とか関係なく国を指すときに用いる)の外交官や王族まで来ている。

 

開会式には航空魔導師を使って空に巨大な絵を描いた。

その絵とはドイツの象徴でもある鷲だ。

 

「これがドイツの国章、ワシですか。このワシの意味を教えてくださいませんか?」

アルタラス王国のルミエス王女はベルリン観光とドイツやその他帝国協定加盟国との外交、オリンピックに出場するアルタラスの選手の応援に来ているのだ。

 

「鷲には強さ、勇気、遠眼、不死などの象徴として使われ、空の王者や最高神の使者とも考えられていました。」

 

「そうなのですか。私はワシを見たことが無いので今度見てみたいです。ところであれを描いたもの達は?」

 

「あれは第203航空魔導大隊ですよ。」

 

「そうなんですか。あの、出来れば大隊長に合わせて頂けますか?これに感動しまして。」

 

「問い合わせてみます。ただ、大隊長は11歳の少女でして、誤解を招く恐れがあるので説明します。」

 

ドイツの外交官は、軍隊が幼女を求めているみたいな誤解を招かないためにルミエス王女に説明する。

 

ドイツは基本 志願制であり、戦時の場合のみ徴兵制に変更する。だが数が少ない魔導師は強制的に徴兵される。

ターニャ フォン デグレチャフ少佐の経歴を説明した。

 

◆◇◆◇

「え?面会ですか?誰とですか?」

 

「喜べデグレチャフ少佐。アルタラス王国 王女ルミエスだ。」

 

「アルタラス王国...」

 

ターニャはアルタラスを詳しくは知らない。知っていることはクワトイネより発展してて、鉱山資源の恵まれた国であること。最近政府が積極的に関係改善を行っている国だと言う事。その王女だ。なんの用があるのか知らないが会いたくなんてない。何か問題がひとつでもあれば国家間の問題になりかねんからだ。

 

その上これからターニャは休暇だ。隊の編成と訓練、そしてロウリア首都襲撃と労働基準法なんて存在しないんだというくらい働かされている。ようやく休暇が取れたと思えば一国の王女から会ってくれだと?

 

断りたいが断る事はできない。

 

「分かりました。日時と場所を教えてください。」

 

◆◇◆◇

 

ベルリンの大通りはオリンピック加盟国の国旗や王家の紋章の旗が掲げられてその通りを車が走る。

ポルシェ社が開発した量産型の車。国民車として安く安全性の高い車が普及し出した。

 

通りには大きなビールショップや家具店、食品店や本屋がありその中の1つ、カフェ クラフクにターニャと王女のルミエスとその護衛が一緒にいる。

 

その空間は別世界のようだったとその店に来ていたとある客は語る。「軍服をきた少女というより少女を纏った軍人という印象の人と見慣れない民族衣装なのか不思議な美女と、おとぎ話に出てくるような騎士の格好をした女が居たよ。あそこだけは空気が違ったよ。きっと物凄い会話でもしてたんだろうな!」と。

 

だがその会話の内容とは...

 

「あなたがオリンピックの会場であの大きなワシを描いた部隊の隊長ね!なんて可愛い!!!抱きしめていい?」

 

と目を輝かせながらターニャを抱きしめる王女、ルミエス。

「ルミエス王女、抱きしめてますよ。ターニャ殿が引いてますよ」

 

と冷静なツッコミをするルミエスの護衛のリーゼ。

「可愛い,..だと?(私は男だろ!)」

 

とショックを受けるターニャ。

「ターニャちゃん、その死んだ目が可愛いのさ」

「ルミエス王女、それ褒めてません。」

「なに?立派な誉め言葉じゃないか?」

 

「だれか、助けてくれ、」

 

と唸るターニャ。抵抗したいが向こうの方が身分は上である。何か問題起こせばキャリアは全てパァだ。

故に我慢するしか無かった。

 

20分後

 

「さて、本題に入りましょうか。あまり時間も無いですし」

 

「あの、ルミエス王女、既にターニャ殿がぶっ倒れてます」

 

「あら大変お持ち帰りしましょうか」

 

「ゴホン、殿下、お時間です」

 

と2人の会話に割ってはいるレルゲン大佐。彼がきた目的は、中々帰ってこないルミエス王女殿下とその護衛を連れて帰ることだ。

レルゲン大佐の声を聞き、我に戻ったターニャは喜ぶ。ようやくここから開放されると。

 

「大佐!(ターニャの心;私が連れていかれないよう引き止めに来てくださったのか!なんていい上司!理想の上司!)」

 

「うちの部下を連れ戻しに来ました。彼女にはまだ他に仕事が残ってますので(レルゲン大佐の心;このウォーモンガーを帝国から出してしまったらどうなるかわからん。この化け物をここから連れ出さないと)」

 

◆◇◆◇

ベルリン

外交用の豪華な部屋にきたルミエス王女とその護衛。

彼女らの本当の目的はドイツをしっかりと見極めた上にドイツとの貿易や軍事協定を締結するか否かを判断するためだ。

彼女はドイツの首都ベルリンに来た時、異世界に来たのかと思った。そして街の活気や車という馬車よりも早く、馬よりも生産できるという便利なものやワイバーンを軽く超える性能を持つ航空機。さらにそれを応用できる秀英さ。これぞ列強国。

ドイツと組んで損は無いと判断したのだ。

 

「条約の件ですが、締結しましょう!」

 

◆◇◆◇

ベルリンオリンピックは無事成功。ドイツがメダルを40個獲得し優勝という結果で終わった。やはり新世界の国はメダルをあまりとることは出来なかった。だが彼らはそれ以上のものを手に入れた。

それはドイツの情報だ。

 

ドイツの使用する兵器の1部は一般の本屋で購入出来るし技術もある程度なら輸出可能。さらに列強国と違い拡張主義では無いと。結果、各国はこぞってドイツと貿易や軍事、技術や経済などの条約を結び始めた。

 

結果、パワーバランスの崩壊へと繋がる事をまだ誰もこの時は予測してなかった。




次回は、崩壊の始まり
です。


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11話 震撃

パーパルディア皇国の話がしばらく続きます。あとオリジナルキャラ登場。


パーパルディア皇国

第三文明圏にして列強国。数多くの属国を支配し覇を唱えんとする国。

 

文明圏外の国に対しては基本馬鹿にしたような態度で迫り、属国か戦争かという2択しか選ばせない。

ターニャはこの国を「コンキスタドールと変わらない国」と考えていた。

 

コンキスタドール スペイン語で征服者。彼らは改宗か戦争かという慈愛に満ちた選択肢を与え、戦争を選べばその国の王を天へ送り届けた後スペインの持つ素晴らしい文化を原住民に教育させるというものだ。今でこそ野蛮と呼べる訳だが当時のヨーロッパでコンキスタドールを野蛮なんていう人は存在しないだろう。何しろ異教徒は人ではないなんて言ってた時代もあったのだから。

 

そんな国パーパルディアは今、重大な局面を迎えている。

 

 

第三外務局

 

「我々はもうあなた達の命令は受けない!」

 

と叫ぶトーパの外交官。

「いいのかそれで!我が国の庇護がないどころか技術提供も無いのだぞ!」

 

「ああ、なくて結構。たかが数十年ちょっと先の技術を得るために自国民を奴隷として提供しないといけないなんてゴメンだ!それに今はお前らより遥かに技術の進んでいるドイツがいるんだ!」

 

といいトーパの外交官は退室した。

 

「これで5カ国目か。」

 

第三外務局員のニコチンは何がどうなっているのか把握出来なかった。

 

◆◇◆◇

パーパルディアのとある酒場

「なぁエランテ、一体何がどうなってるんだ?もう5カ国目だぞ?庇護下から抜けた国は」

 

ニコチンの同僚であるエランテ。

「わかんねぇよ。俺ん所もお前と同じような事が3件あった。奴らに共通することはドイツか。」

 

「ドイツってなんだよ?」

 

「俺も知らねぇ。だが知り合いはこう言ってたぞ。何でも東方の海に出来た新興国だとか。それにドイツ以外にも国があるんだと。」

 

「いったいどんな国だよ。我が国の技術支援を拒否するぐらいの技術がドイツにはあるのか?」

 

とニコチンが言うとエランテはそばにより他の人には聞こえないよう小さく呟く。

 

「ここだけの話だ。絶対他の人には言うなよ。下手したらこの地位から落とされる可能性があるからな」

 

「な、なんだよ。」

 

「ドイツという国にはワイバーンは存在しない。が、ワイバーンがいないほど弱いのではなく、ワイバーンが必要でないほどの物がいると。なんでもドイツには航空魔導師というものが存在しそいつらの1人、十一番目の女神がギムにいたロウリア兵やロウリア王都を襲撃したと。」

 

「十一番目の女神?」

 

「あぁ。情報局によれば暗号電文に✕が11個あったのさ。それで十一番目の女神って事さ。」

 

「なるほど。そんな奴とは関わりたくないものだな。」

 

「そうだな。俺も今の国に不満はあるが自分とその家族さえ生きれるならそれ以上は望まないさ。」

 

エランテには父と母と姉がおり、姉はたしか商売関係の仕事をしているとか。そもそもエランテや俺は他の外務局員と違い、他国に対しても高圧的な態度で接することは無い。恐らく原因は他の人みたいな愛国心が無いからだろう。愛国心教育なんて受けたが自尊心の塊とも言えるようなこの国は自分には合わない。だがこの国に生まれた以上、反政府勢力に組みしてまで国を変えたいなんて思わないし平和に暮らせればいいという考えだ。

 

「エランテ、もしかしたら今が変革期なのかもな」

 

「変革期?」

 

「うん。他国の歴史を見れば分かるがある時期を境に文明や文化、技術や思想、色々な物が変わる時期がある。それが変革期だ。まぁ自分でそう名付けたんだけどね」

 

「そういやお前歴史好きだったな。ムーやレフォイどころか文明圏外の国の歴史まで調べていたのはびっくりしたぞ」

 

「そのおかげでなんとなくだがこの先この国がどうなるかわかったよ。」

 

「どうなるんだ?」

 

 

ニコチンは席を立ち、店員に会計を頼むとエランテに、ハッキリとこう言った

 

「このままパーパルディアが現実を見ず他国を見下し続けるならばこの国はドイツとか言う国に滅ぼされるだろう。」

 

「ドイツなんて多少技術が上なだけだろ?そんなの数で押し潰せば!」

 

「たとえ倍以上の戦力でぶつけても技術に差があればそれはひっくり返される。物量で押しつぶせるのは技術が同レベルもしくはそれ以下の国までだよ。それは歴史が証明している。」

 

店を出たニコチンはそのまま闇に溶け込んだ。

エランテは今までニコチンは間違った事を言ったことがない。パーパルディア人とは思えないほど愛国心が低くさらに他国の歴史に興味があり熱心に読む彼はパーパルディアの中で1番現実を見つめている。

 

パーパルディア皇国は拡張主義の国だ。

土地を支配するためには軍事力が必要。その軍事力のためには金と資源が必要でその土地を支配するために戦争。奪った土地を支配するためには軍事の増強と悪循環に陥っておりさらに支配地域では横暴な統治政策により反体制派もかなりいる。それがこの国。

他の国にはパーパルディアを、「プライドの塊」なんて揶揄してるがその通りだ。

 

エランテは決心する。

「自分とその家族を守るためにはまずドイツという国の情報を入手しよう。亡命も視野に入れておくか。」

 

 

 

◆◇◆◇

パーパルディア皇国ではフェン王国に対して国土の1部と王女の献上を要求したが断ったためフェン王国懲罰を開戦事由とし戦争開始の準備を始めていた。

目的は他の文明圏外の国に対してパーパルディアの力を見せつけるためだった。

 

まさかこれがパーパルディア崩壊のきっかけになるとはこの時は誰も予想していなかった。




次回はキャラ紹介回の予定。


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人物紹介とその他

キャラ紹介回
ちょくちょく更新させる予定


ドイツ帝国

陸軍

 

ハインツ ヴィルヘルム グデーリアン・・グデーリアン戦闘団の団長。電撃戦ドクトリンの産みの親であり頭が切れる。電撃戦ドクトリンはターニャが士官学校時代に書いた論文の「戦車と装甲車、航空機の速度を活かして大規模包囲を狙う」という文から閃いたとか。

 

フリッツ・エーリッヒ・フォン・レヴィンスキー・ゲナント・フォン・マンシュタイン・・元帥。ドイツ陸軍の最高司令官。非常に頭が切れ、参謀本部の三翼と呼ばれる。

 

クルト フォン ルーデンドルフ・・大将。参謀本部の三翼の1人。力こそ正義と考える節があり、少々強引な男。

 

ハンス フォン ゼートゥーア・・大将。参謀本部の三翼の1人。かつてイギリス連合は彼をこう評価した。「フランス(コミューン)と共にドイツを攻めれば勝てるだろう。ゼートゥーアさえ居なければ。だからこそ彼を暗殺すべきでありスパイを張ったものの逆利用される。恐るべきゼートゥーア」と。

ターニャとは士官学校で1度あっておりその時に航空魔導師の有用性を知った。ちなみにターニャが今休暇が取れないとか後方勤務できないのはだいたいゼートゥーアが原因。本人曰く「デグレチャフ少佐が前線に行きたいんだと言ってるんだ。」であると。

 

海軍

エーリヒ・レーダー ・・元帥。海軍のトップであり現在ドイツ海軍を再建中。

Z計画を立案し遂行中。

 

政界

皇帝 ヴィルヘルム二世・・ドイツ帝国皇帝。現在体調が悪く崩御するのも時間の問題と言われている。かつて母に酷い評価されたが、世界大戦を経験したことによりかなりいい方に成長した。

 

エーリッヒ ホフマン・・経済大臣。ブラックマンデーから経済を建て直した。

 

アルベルト・シュペーア・・建築大臣。天才建築家でありオリンピックの会場や外務省の建物などを建築した。さらに偶然知り合いの軍需工場を訪れた際、規格化統一の話をしたらそのまま採用された。

 

ヨーゼフ・ゲッベルス・・宣伝大臣。プロパガンダがかなり上手く、ロウリア戦での国民の反発を抑えさらにオリンピックを開催することでガス抜きもした。

オリンピックを開催させようと3日間かけて首相を説得した。

 

ヒンデンブルク・・旧ドイツ陸軍元帥。現在首相。

ドイツの英雄にして国民から絶対的な人気を得る。

 

オランダ王国

 

ウィルヘルミナ女王・・・世界大戦でオランダの中立を維持し続けた。

ドイツに対して、「もし侵略してくるならオランダ王国は海の底に移動する。海の底までついていきたいならどうぞ侵略して」と警告し、ドイツ政府も不干渉を貫くよう方針を固めた。なお商人のネットワークは非常に広く、オランダ領東インドを失った被害を他国との交易により回復させた。帝国主義的思想もあるものの、オランダにその兵力はないため諦めてる。

 

 

 

 

パーパルディア皇国

 

ニコチン・・(オリキャラ)愛国心皆無だが自分の命をかなり大事にしており現状を冷静に見ている。悪くいえば自己中でありよく言えば、冷静な判断ができる人。エランテとは付き合いが長くかなりやばい会話もする。

 

エランテ・・(オリキャラ)自分と家族の命さえあればいいという考え方。だが頭はそこそこよく、給料も高い第3外務局についてる。いざと言う時は直ぐに亡命できるよう準備をしており耳のいい知り合いを通してドイツの情報を入手する。

 

反乱軍・・(まだ未登場)パーパルディアの圧政から立ち上がろうとしている。反乱軍の規模は不明だがパーパルディアの反乱軍狩りにより壊滅の危機を受けている。

 

 

Z計画・・・ドイツ海軍の再建及び空母を中心とした建造計画。

ドイツ艦艇(建造中)

 

プロイセン級弩級戦艦 オルデンブルク(近代化改修中)

最高速度15ノット

航続距離 4500km

大戦型大型主砲が3基、副砲1基、

50口径12.7mm対空機銃 8基

 

シャルンホルスト級高速戦艦 グナイゼナウ

 

マインツ級空母 ライン、ホルシュタイン、ブランデンブルク。

 

ヒンデンブルク級巡洋艦、ヒンデンブルク、フリードリヒ

 

ビスマルク級高速戦艦空母(高速戦艦から高速戦艦空母へ変更)

ビスマルク、ティルピッツ

 

H45(戦艦から急遽空母への設計見直し。)

 

ライプツィヒ級軽巡洋艦 ー艦名未決定ー12隻建造中。

 

Z級駆逐艦、潜水艦も建造中。



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12話 出会いは唐突に

キャラが変わることがあります。


トーパ王国 首都ベルンゲン

人口10万人ちょっとの都市だったこの国に1人の皇女が来ている。

パーパルディア皇国のレミール

別名「狂犬のレミール」

 

彼女がここにきた目的は、パーパルディアに逆らったトーパ王国がなぜ強気なのかを知るためだ。

 

トーパ王都、聞いていた話と全く違う。聞いた話では発展の遅れた蛮人の都市だったはず。

 

それが、綺麗な、石ではない幅の広い道。

綺麗に区間整理された街並み。

所々ある標識。

オマケにゴミ箱まである。

 

野蛮人の国では無かったのかここは?

 

いや、見た目だけは綺麗なだけかもしれない。中身が伴ってなければ意味が無い。

 

彼女は近くの喫茶店に入る。

 

喫茶店 ドトール

 

店の中は綺麗で中にいる人も小汚い人はいない程度だ。

店員からメニューを受け取り見てみたが、トーパ語は読めないしトーパ語の下に2つほど言語が書かれている。

片方は見たこともない文字だがもう片方は知っている文字だ。

フェン語、レミールが習った言語で完璧ではないにしろある程度なら読める言語だ。

 

とりあえず「みるひかかお」というものと「しょーとけーき」というものを頼んでみる。選んだ理由は見た目だ。どの食べ物も聞いたことがないものだ。まぁ蛮族の食べ物だ。仕方ないか。不味かったら文句を言ってやる。

 

料金は590トパと少し高いがどうせ国のお金で払うのだから気にしない。

 

数分待つと、白っぽい茶色の液体が入ったカップと白いなにかが出てきた。

 

それを受け取りベランダの椅子に座る。

 

「これが、みるひかかお という飲み物か。見た目からして野蛮そうな飲み物だな」

 

恐る恐る、1口飲んでみる。するととても甘い、コクのある味が口いっぱいに広がる。なんだこの飲み物は?今まで飲んできた飲み物のなかで1番甘くて美味しい。

 

「なにこの味? は!いかんいかん。ここは野蛮人の国だ。たまたまこの飲み物が美味しいだけだ。このしょーとけーきとやらは期待できないだろう!」

 

ショートケーキをフォークを使って食べてみる。するとこれまた今まで食べたことの無い未知の味がする。

 

「こんなに美味しい物をこの国は作っていたのか!この国を滅ぼすのだけはやめて差し上げましょうか。なんて私は優しいんだろう。」

 

「ちょっと相席いいですか?」

 

とイケメンの貴族っぽい服を纏った男が私の前の椅子に座る。

 

「ちょっと、あなたの名前は?」

 

「僕ですか。失礼。ヴィルヘルム アルテル フリードリヒ クリスティアン カールです。アルテルと呼んでください。」

 

とお辞儀をする。どうやらトーパの貴族では無さそうだ。どこの国だ?感じからして列強国レベルの気品はある。

「あなたのお名前は?」

 

「ああ、私の名前はレミール。パーパルディアの国の人よ。ところであなたどこの国の人?」

 

「ちょっと諸事情がありましてあかせません。」

 

「どうして?」

 

「ちょっと今家出してまして、連れ戻されたくなく」

 

家出?一体何があったのか?好奇心で聞いてみると

 

「強制的に結婚されそうになったんですよ」

 

なんだこの人?バカなのか?

だが彼の目は本気だ。

 

「なぜ、逃げ出したんですか?」

 

「だって、人生のパートナーなんですよ!初めてあった名前も素性も知らない人と結婚しろなんて嫌です!結婚くらい自分で決める!」

 

彼の目は真剣だ。なるほど、それで逃げてきたと。

「でもなぜここに逃げてきたんですか?」

 

「だってここなら本国から遠いし顔バレしてないし、さらに偽造パスポートとか作れるからね!」

 

前言撤回。馬鹿だこの人。

 

「そう、ですか。よく出来ましたねそんな事」

 

「身近に変装の達人とか偽札作るのが得意な人がいるから。」

 

「偽札はだめだろ!どうなってるんだ友好関係は!」

 

 

こんな貴族初めて見た。なんというか、自由すぎる。なんか国のために生きてる私がなんか馬鹿みたい。

 

「ところで首にかけてるそれはなんですか?」

 

アルテルの首に2つ丸いのがある。

 

「これですか。ひとつは演算宝珠。もうひとつは懐中時計です。」

 

演算宝珠は聞いたことがないが、時計は知ってる。たしかムーにそんなものがあると聞いたことがあったからだ。という事はやはりこの人はムー辺りか。

 

「いやぁ久しぶりにこれだけ会話しましたよ。よろしけば今後も会話相手になってくれません?」

 

ムーと友好関係が築けるきっかけになるならいいだろう。

 

 

「ええ。喜んで」

 

以後定期的にドイツ帝国皇帝 ヴィルヘルム二世の次男のアルテルは演算宝珠を使って城から脱走し、偽造パスポートや変装を駆使してレミールと密会を続けた。



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13話 事実は小説よりも奇なり

昨日は忙しくて更新できませんでした。年末だしね。


パーパルディア皇国

 

フェンへの懲罰戦争が決定された。

この事に異論を唱える人はいない。問題はその日時だ。

 

その日フェン王国ではドイツ軍の軍事演習を披露する日であり噂のドイツ軍を見るため多くの国の大使が参加するということだ。大使やドイツ人がもし死んだら戦争になりかねない。

 

レミールはこれを知って直ぐに陛下へ謁見し説得しようとしたが、「国が転移するなど有り得ぬ。」と切り捨ててしまいさらにニコチンやエランテが調べたドイツの情報も切り捨てた。ここでレミールとニコチン、エランテは気づいてしまった。

 

「この国はやばいと」

 

 

◆◇◆◇

トーパ王国

喫茶店 ドトール

 

レミールはアルテルとまた密会している。

レミールは先日アルテルの正体を知った。

 

数日前、

パーパルディアの反乱軍の一味がマスケット銃でレミールを暗殺しようとした時に彼が私を抱きしめながら演算宝珠を起動させて守ってくれた。

 

「大丈夫かレミール」

 

「あ、ありがとう。これは、一体?」

 

「実は、僕はドイツ帝国皇帝の次男でさらに航空魔導師なんだ。と言っても飛ぶのは苦手なんだけど」

 

と言いながら彼は懐から銃を取り出し襲撃犯の足を狙って発砲。3発目の弾が襲撃犯の足首に貫通。倒れた所を周辺の人達に取り押さえられた。

 

「あなたがあの、ドイツの、皇帝の、次男??」

 

「はい。今まで黙っててすみません。その、ずっと隠すつもりでしたがレミールさんの命が危ないと思ったら体が勝手に動いて」

 

とモジモジするアルテル。

「ありがとう。助けてくれて」と笑顔で返すレミール。

 

「アルテル様。本当にドイツの皇族?」

 

「そうだよ」

 

「じゃ、結婚が嫌だから家出したのも事実?」

 

「うん。そうだよ。」

 

「冗談だと思ってた。」

 

ドイツはやはり油断出来ない国だ。マスケット銃を相手に防御魔法で防ぐとは。パーパルディアにはあのマスケット銃を改良したものしか無いが、その程度の武器ではこれを破壊することは出来ないだろう。

それにアルテルが使用していた銃もマスケット銃とは比べようもないくらい性能が高い。

 

「あの、アルテル様」

 

「アルテルでいいよ」

 

「アルテル さん。私にドイツについて色々と教えてください。」

 

こうして私はしばらくドイツという国を彼から学んだ。

ドイツではマスケット銃は数百年前の骨董品でありマスケット銃より威力も高く、命中率もよく、さらに連射できる機関銃も存在していること。

ドイツはドイツ民族で構成されており、転移前は世界最強の軍事国家だと。

 

食は基本じゃがいもであり びーる というお酒も美味しいと。さらにこの喫茶店ドトールはドイツ国内の会社でありこの喫茶店にあるメニューの7割が向こうのものだと。ーなおドトールを立ち上げた人は日本人だったりするー

 

この事を早く父上に知らせなければ

 

◆◇◆◇

現在に至る。

 

レミールはアルテルから貰った本や情報をまとめて皇帝に出したが読まずに欺瞞情報と切り捨てた。

 

さらに、調べれば調べるほどパーパルディアの現状は悪い。のにそれに気づかない皇帝。なんとか説得しようと連日皇帝に話をしに行ったら、謹慎処分を食らった。

 

「この国はもう終わりだ。」

 

レミールは諦め、亡命する準備を始めた。

 

 

◆◇◆◇

「え?第203航空魔導大隊はフェン王国の軍事演習に参加と?」

 

ターニャはレルゲン大佐から新たな任務を受けた。

 

「なぁに。ただの観光旅行さ。以前から貴官は休暇が取りたいと言ったでは無いか。警備と言っても、上空や街中で待機しとくだけの簡単な任務だ」

 

レルゲン大佐、普通の休暇を下さいと言いたい。

がこれは命令だ。拒否することはできない。

 

「承りました」

 

こうしてターニャ達はフェン王国での軍事演習に参加することになった。




アルテル・・・航空魔導師だけど成績はかなり悪くろくに飛ぶ事もできない。さらに補助具も無いため現在飛行する事は出来ないのだが護身用として演算宝珠を持ち歩いている。
射撃は上手いとは言えないレベル。そのため最初の2発を外してしまった。


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14話 フェン王国

フェン王国 武の精神のある国であり強いものならどんな人だって認めるという国だ。

 

フェン王国の軍事演習

トーパ王国、ドイツ帝国、オーストリア帝国、デンマーク、オランダが参加している

 

ドイツ帝国 シャルンホルスト級戦艦 シャルンホルストとS級駆逐艦 3隻。

 

オーストリア帝国 ハウス級戦艦 ハウスと駆逐艦2隻

 

デンマーク ナヤーデン型駆逐艦 ナヤーデン

 

オランダ ジャワ級軽巡洋艦 スマトラ

 

合計 戦艦2隻、軽巡洋艦1隻、駆逐艦6隻となっている。

これらの艦隊がロウリア王国に集まっておりフェン王国はもちろん、各国大使や見物に来た人達も驚いている。

 

その中にムーの諜報員もいた。

 

「これが、ドイツの船ですか。いや、他にも国旗があるからドイツ以外もいるのか。それにしても一つ一つ船が他の国に比べて大きい。我が国の最新鋭の戦艦より大きいのではないか。こんな国が最初っからあったのならなぜ今まで話題にならなかった?もしかして転移したのか?」

 

ドイツの戦艦、シャルンホルストがフェン王国の用意した廃船に砲撃する。たった1発でフェン王国の船は大きな爆発と共に沈んだ。

 

◆◇◆◇

「レルゲン大佐のいった通りただの観光旅行だなこれは。」

 

ターニャは上空で監視するだけの簡単な任務だ。

上空から敵が現れることは無いからかなり楽だ。

 

服がドレスじゃ無ければ最高の任務だろうな。

 

何でもフェン王国や他の国の王族も来ているらしく

上層部では幼女が軍服着ているのは印象が悪いためいっその事マスコットキャラクターみたいな扱いにすればいいと考えたらしい。

 

そのマスコットキャラクターにされている人の気持ちを考えていただきたい所だ。例えば、いい歳したおっさんがヒラヒラの、魔法少女みたいな服を着させられているとしよう。その時のオッサンの気持ちはこうだ。

 

「恥ずかしすぎる。今すぐこの服を脱ぎ捨てたい」

 

もう嫌です。

 

「その、少佐、可愛いですよとっても。」

 

そばにいるセレブリャコーフ中尉の目が怖い。

セレブリャコーフ中尉も、他の人も普通の軍服だ。私だけがドレス。もうやだなこの仕事。

 

そう思ってた時、砲撃音が響く。どうやらドイツの戦艦が砲撃を開始したようだ。

「1発で廃船に命中させるとは。さすが海軍だな。」

 

ドイツ帝国の海軍は軍艦の質は低いが練度は高い。特に海兵魔導師や偵察機を導入したことにより着弾観測もでき砲撃の精度は飛躍的に上昇。高確率で命中させることができるようになっている。

さらに戦艦シャルンホルストは最新鋭の戦艦でありドイツ海軍最後の戦艦という。戦艦空母を除いてだが。

主砲は38cm砲の3連装砲で威力も高い。それが4基搭載している。

オマケに対空もかなり強化されており史実のシャルンホルストとは似て非なるものとなっている。というか戦艦ビスマルクの方が似ている。

 

「あの少佐殿、なんでデンマークやオランダも参加してるんですか?」

 

「帝国協定加盟国外の国もあるということと、独自の交易ルートの確保だろうな。オランダは商人の国だし商売の為には敵に武器だって売る国だ。」

 

ベイラントとかいう奴がいてそいつは敵であるスペインに武器を売り儲けた。だがやがて捕まり裁判になったがベイラントは貿易の自由を立てに無罪を勝ち取った。

 

オランダとはそういう国だ。

 

「ではなぜオスマン帝国やブルガリアは来ないんですかね?」

 

「オスマン帝国は今やそれどころでは無い。国家崩壊の危機を迎えてるんだあの国は。だから何もできない。」

 

オスマン帝国はあちこちで民族の反乱が起きている。

もうダメだろうなあの国。反乱を抑えようと税金を低くしたり、自治権を与えているらしいが時すでに遅し。

 

「ブルガリアは、あの国の海軍は確か駆逐艦1隻だったはずだ。」

 

ブルガリアは陸軍に予算を振ったため海軍は無いに等しい。さらに先のバルカンでの戦争でブルガリア海軍はルーマニア相手に壊滅的打撃を食らってしまった。

 

セレブリャコーフ中尉も納得したようだ。

「そうなのですか。あれ?でもオランダってもっと軍艦持ってませんでした?」

 

オランダは小国にしては軍艦がかなり多い。それはオランダがアジアに植民地を持っているというのもあるのだが。

 

「オランダもドイツ海軍と同じさ。転移でかなりの数の軍艦を失った。オマケに大量の資源も失ったわけだから1番被害が大きいのはオランダかもしれんな。」

 

さてと、本当に暇だ。2個中隊で上空を警備し2個中隊は地上にあてさせている。地上任務させているヴァイス中尉やグランツなども今頃お土産とか買ってるだろうな。

 

ん?北の方角から何か接近しているな。ワイバーンか?

だとしたらフェン王国のかガハラとかいう国のものか?

◆◇◆◇

フェン王国剣王 シハン

 

「あれが、ドイツの船か。なんて大きさだ。それに破壊力も凄い。」

 

シハンはドイツとその他の国の力の強さを知りたかったので手っ取り早く知る方法、軍事演習を行う事にした。

一応フェン王国海軍とドイツとその他の国との軍事演習というものだがフェン王国海軍の船は出てない。

というのも当日フェン王国海軍の提督たちがみんな揃って病気になったのだ。ードイツの戦艦を見て実力差が分かってしまったからみんな仮病で逃げた。ー

 

「パーパルディアとは比べ物にならないな。ドイツは拡張主義の国では無いんだろ?」

 

「は!ロウリアとの戦争でロウリア領のほぼ全てがドイツの植民地になったという点を除けば拡張主義ではないかと。」

 

ロウリア王国との戦争でドイツは圧勝した。しかもたった3回の戦闘で終わった。実力差があり過ぎたからだろう。

 

「ロウリア王国は、喧嘩を売る相手を間違えたしあの国は危険だった。自業自得だ。ドイツとなら各種の条約を締結してもいいだろう。」

 

「は!」

 

シハンは空を見あげた。空にはドイツの航空魔導師という者がいる。こんなに綺麗に飛べるとは不思議なものだ。

 

「あそこのドレスを来た少女はきっとあの部隊の誰かの娘なんだろうな。空からの脅威なんてないんだから安全だと思い連れてきたのかな?」

 

シハンの言う、ドレスを来た少女がまさか航空魔導師の大隊長という事はまだ知らない。

 

◆◇◆◇

 

「全部隊へ告ぐ!所属不明の部隊がそちらへ向かっている!」

 

無線からなる警戒音と所属不明の部隊の登場。

確かに北からワイバーンがおよそ50騎ほど来る。

 

「CP!交戦許可は?」

 

「出ている。ただし先に所属不明の者が攻撃した場合のみだ。」

 

所属不明のワイバーンを撃ち落としても問題無い?なら撃ち落としてもかまわんか。

 

「第2中隊と私はやつらにビザの提示を求めてくる。他の中隊は交戦用意したのち待機だ!」

 

ターニャは素早く命令を出した後、ワイバーンへ突っ込む。

ワイバーンに乗っている人は何かを投下し、その何かが下にあった建物を燃やし始めた。あれは恐らく火炎瓶か。という事はあれは爆撃機に近いような役割のものであり、テロリストか敵か?

 

「フェン王国への入国は初めてですか?ビザはお持ちですか?」

 

と魔力で音声を上げながら敵に警告する。すると敵は何故かブチ切れた用で弓矢を使ってこちらに攻撃を始めた。

 

「少佐殿、敵が攻撃してきました。」

 

「ビザはお持ちでは無いと!よし、敵が攻撃してきた為これより我々は敵の殲滅を開始する。我に続け!」




アンケート機能を実施しました。というのも都市をどうするか迷ったためです。
次話は年明けの予定です。いい年末を!


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15話 アマノキ航空戦

あけましておめでとうございます。新年もよろしくお願いします。



アマノキ上空

 

パーパルディア ワイバーン部隊は3つに別れた。

これを見たターニャは敵の狙いを探る。

片方は艦隊を。片方は市街地への爆撃を。もう片方はこちらに突っ込んでくる。

 

「16対17対17か。第3中隊は艦隊へ向かう敵を倒せ。第2中隊は市街地。第1中隊はわれに続け!第4中隊は新手がこないか注意しろ!」

 

「了解です!」

 

第203航空魔導大隊は綺麗に別れ、各個撃破を狙う。

 

◆◇◆◇

戦艦 シャルンホルストの艦長のクメッツはこちらに向かってくる敵を凝視している。

 

「これがワイバーンというものか。神話や伝承のようなものがある世界とはな。」

 

クメッツは攻撃命令を出し、シャルンホルストに搭載している対空砲が火を噴く。

 

以前ドイツはロウリアとの海戦で、船は空からの攻撃に弱いと気付いた。というのも敵艦隊は航空機によってあっさりと沈められ、もしこれが自分たちの艦隊ならどうなるかを調べたところ、あっさりと沈められる事が判明したため、あらゆる軍艦は対空装備を充実させさらに制空権確保のための空母量産化計画が始まった。これがZ計画でありこれには現存する艦船の改修も含まれていた。

そのためシャルンホルストは改修され以前より対空能力が上がりさらに砲塔上部の装甲は厚くなった。

 

この船に突っ込んで来たワイバーンはシャルンホルストや駆逐艦からの高射砲で撃ち落としていく。

この弾幕を突破した10騎ほどのワイバーンは艦隊に接近したものの、デンマークやオランダの対空機銃で撃ち落とされた。

 

◆◇◆◇

「指揮官1人、いや2人だけ捕虜にしろ!それ以外は撃ち落とせ!」

 

ターニャの目的は指揮官を捕まえ尋問することだ。

こいつらがどこのテロ組織なのかわからんが分からないなら聞けばいいだけの話。

 

こいつらとの戦闘なんて戦闘とも言えない。蹂躙だ。

ワンサイドゲームであり勝利は確定。

 

戦闘は30分で終了した。

 

どうやら艦隊の方へ行った敵は見事海の藻屑となりはて、指揮官と副指揮官も無事確保。損害はゼロ。

素晴らしいな勝てる戦闘というものは。

 

「さて、勝った事だし戻ろうか。気の利いた余興もできた事だし我が国の力を十分見せつけたであろう。」

 

「はい!少佐殿!」

 

敵ワイバーン50騎中、48騎撃墜。2騎を捕虜にし尋問した結果、敵ワイバーンはテロ組織ではなくパーパルディア皇国と判明。早速どういう事なのか事情を聞くためパーパルディア皇国に向かったが

 

「帰れ!貴様らと会談する気は無い」

 

と門前払いされ、フェン王国も問題解決の糸口が見えず、その間にドイツやオーストリア、オランダなどの力を知った各国はドイツなどの国と各種の条約を締結。

とくにパーパルディア皇国と戦争寸前まで進んでいるアルタラス王国はオランダから鉱石の代わりに武器や軍事顧問を派遣しアルタラス王国の近代化軍隊を作り始めた。これによりオランダはかなりの大儲けをしさらに廃棄する予定だった旧式の武器や軍艦全てをアルタラスへ高値で売りさばき、アルタラスは近代化された軍隊とさらに技術を手に入れ、これがこの後のパーパルディアとの戦争に大きく関わって来ることをまだ彼らは知らない




次回はアルタラス王国とパーパルディア皇国との戦争回です。


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16話 不運とアルタラス王国

なんか、その、長くなった。

デンマークやオランダが目立ち始めて影が薄くなっていくオスマンとブルガリアくん。


アマノキ航空戦が行われていた時、近海に待機していたパーパルディア皇国の懲罰艦隊はデンマーク主力艦隊である戦艦3隻、重巡5隻、軽巡8隻、駆逐艦12隻という大艦隊と海戦をしていた。

 

というのもデンマーク主力艦隊はここの海域で違法密漁をしていた。お目当ての魚はザーギーという宝石魚だ。

ザーギーは亀と似たような甲良を持った魚で、この甲良には希少金属がたっぷりと含まれていた。

デンマークのとある学者は、海底火山の近くにあるレアメタルを多く含んだ石やレアメタルを含んだ海藻、バーゼンを食べたのが原因とされる。と発表したがそんなことはどうでもいい。デンマーク政府としては、ドイツ、オランダからしか手に入らないレアメタルがここの海で取れるのだ。ここでとらないという選択肢はなく、さらにここはフェン王国の領海付近。ここで密漁したら国際問題になりかねない。下手すればドイツやフェン王国と中が悪くなりかねないためデンマーク政府が下した決断は。

 

フェン王国との軍事演習でフェン王国やドイツなどの各国の目が艦隊に釘付けになるこの日であった。

 

さらにデンマーク政府はここでザーギーを密漁しさらに生態が解明されればドイツからレアメタルを買わずに自国で生産できると踏んだ。だが万が一他国の船に見つかると大変なため一瞬で片付けできるよう主力艦隊を護衛に付けた。ーこの時間、ドイツやオランダ、他の帝国協定加盟国の船がここを通らないという事は把握済みー

 

だがここで誤算が発生した。

 

パーパルディア皇国の懲罰艦隊がフェン王国を滅すべく向かっておりその艦隊がデンマーク主力艦隊に発見された事だ。

 

デンマーク艦隊は直ぐに撃沈命令をだし、ここに海戦が勃発。デンマークはパーパルディアとは知らずに攻撃。

 

デンマーク 戦艦ユトランドの36cm砲がパーパルディア艦隊を襲い、一瞬で砕け散っていく。

パーパルディアにとって最悪な日だろう。

 

フェン王国を潰すためにワイバーンを送ったタイミングで横からデンマーク艦隊の砲撃をくらい、航空戦力を欠如した状態で海戦になった。その上パーパルディア艦隊が狙っていたフェン王国海軍ではなく所属不明の軍艦であり1隻1隻が大きい。

 

「どうなってる?」

 

こちらの攻撃は射程圏外で届かない。なのに向こうは届く。圧倒的なまでの技術格差。オマケに命中率も高い。

撤退命令を出したが、デンマークが逃がす訳もなく、速度の早い軽巡や駆逐艦が地獄の果まで追いかけ沈めてた。

 

◆◇◆◇

パーパルディア皇国

「フェン王国への懲罰部隊敗北!」

 

元々、ワイバーンロード部隊により、フェン王国首都 アマノキに攻撃を行い、フェン人に恐怖を植え付け、軍事演習に参加している文明圏外の蛮国武官に力を見せつける。

 

そして、艦隊による無慈悲な攻撃により、フェン王国首都アマノキを焼き払い、パーパルディア皇国に逆らったらどうなるのかを他国に見せつける・・・計画だった。

 

しかし、結果は惨憺たるものだった。

皇国艦隊全て連絡を閉ざした。

 

どうやったのかは不明だが、おそらく全滅したものと思われる。

 

これについては、当初 ガハラ神国 の風竜騎士団が参戦したのではないかと疑われた。しかし、風竜は確かに強いが数が少なく、通信する間も無く全滅するのは考えにくい。オマケにワイバーンには勝てても艦隊にはさすがに勝てない。説明が出来ないのだ。

 

ただ、レミールやニコチンなどがドイツやその周囲の国にはとんでもない兵器を持っていると報告してたが、文明圏外の蛮国がそんな超高度な兵器を持っている訳が無い。

このまま皇国が負けたと広まるのは不味い。

ならどうするか?

 

勝てばいいのだ。勝利で上書きすればいい。

 

その際、白羽の矢がたったのはアルタラス王国だった。

 

直ちにアルタラス王国にアルタラス王国が拒否するであろう要求を突きつけ、予定通りアルタラス王国は断った。

 

それを口実にパーパルディア皇国はアルタラス王国へ宣戦布告。

大艦隊とパーパルディア主力軍を引き連れて侵攻を開始した。

 

◆◇◆◇

アルタラス王国

国王は海を埋め尽くすほどのパーパルディア皇国の艦隊を眺めていた。

 

海から絶望がやってくる。

 

パーパルディア皇国は先日フェン王国を襲撃しドイツの航空魔導師に撃墜された。パーパルディア皇国にとって敗北とは許されないものであり八つ当たりの矛先が我が国になった。だがアルタラス王国とて黙ってパーパルディアにやられるわけにはいかない。鉱山を使って稼いだ資金でオランダから大量の武器と軍隊を作ってもらった。

 

アルタラス王国 パラモ軍

オランダから購入した兵器やオランダの軍事顧問から指導を受けた、近代兵。500人と1個連隊ほどだがこれまでの常識を覆す存在であり、アルタラス王国1の精鋭。アルタラス王国最後の希望であり、全滅が確定した兵隊でもある。

 

アルタラス王国は負ける。それでもタダで負けるつもりは無い。

 

国王はこの戦争で負ける原因を考えていた。

 

・相手が悪い

・アルタラス王国海軍ではパーパルディア皇国艦隊には勝てない。

・兵力差が絶望的

・パラモ軍でも、限られた弾薬でパーパルディア皇国軍を撃退することは出来ないため、弾切れで全滅する。

 

と。いくら兵や武器が優れていても、戦争は数が物をいう。弾が切れたらどんな優秀な武器もただの鉄パイプになる。だが国王は、王女を逃がす計画をたて実行させた。今頃最後のオランダの貿易船に乗っているだろう。

 

「娘よ。ワシはいい父親だったかな?今までずっと仕事ばっかしてろくに娘と遊んでなかったな。せめて最後、遊びたかったものだ。」

 

◆◇◆◇

アルタラス王国 海岸 ここにパーパルディア皇国軍、陸戦隊3000人が上陸。

艦砲射撃によりボコボコになっている砂浜を歩く皇国兵。

ズブッといういやな音と共に何人か兵が倒れる。

なんと地面から槍が生えてきた。いや、地面に潜んでいたアルタラス兵だ。

 

「くらえ!」

 

実は、艦砲射撃で砂浜に潜む伏兵を全て殺すことは不可能だ。さらに艦砲射撃した場所は安全だと認識してしまうため油断を誘う。とくに今回の戦争のような、列強国と非列強国との戦争の場合はだ。

オランダの軍事顧問はこう言った。

 

「戦争に勝つ方法を教えよう。戦争の主導権はこっちが握ることがまずひとつ。次に敵を油断させろ。取るに足らない相手だと認識させろ。そして最後に、油断出来ない相手だと認識させろ。ついでだが、作戦は誰にも思いつかないような、奇想天外のようなものが一番よく効く。」

 

彼はその奇想天外な作戦のひとつにこう言った。

「ほぼ必ず死ぬが敵に大ダメージを与える簡単な方法。それは砂浜に蛸壺を掘って隠れることだ。艦砲射撃で全ての物を吹き飛ばすのは難しい。とくに砂浜なんて障害物がほとんど無いから伏兵がいるなんて考えすらないだろう。そこをつく。確実に敵を潰すことが出来る。」

 

まさに、砂浜に隠れていた30人ほどのアルタラス兵はパーパルディアの陸戦隊を何十人も倒した。だが多勢に無勢。65人ほどの死者を出しつつもパーパルディアはアルタラス兵を撃退。進軍を再開した。

 

だがここでアルタラス王国第2の罠が発動する。

パーパルディア陸戦隊が60mほど歩いた所で突然姿を消した。それも何人もだ。

 

原因は直ぐに判明した。アルタラス王国はあちこちに落とし穴を仕掛けていたのだ。さらに厄介なことに落とし穴の底には尖った木の棒が仕掛けられている上に、

 

「臭い!これは、糞だ!」

 

と糞が塗られている。木の棒自体は短く20cmほどで、穴の深さも2mも無いくらいだが、落ちたら木の棒が足を貫通する。それだけではなく糞が塗られていることにより、破傷風やその他の感染症にかかる可能性が高くなる。

 

「だれか引き上げてくれ!」「足が、足が!」「み、水をくれ!死にたくない」そこには阿鼻地獄が広がっていた。

 

それをなんとか突破した兵は正面のちょっとした高さのある道から放たれた弓矢の餌食になる。

この弓矢には魔法がかけられており射程距離をめいいっぱい伸ばしていたのだ。さらに凶悪なことにこの矢にも糞が塗られていた。

 

これを見た指揮官のゼークトはアルタラス王国の目的を理解した。

 

「なるほど。奴らの目的は勝利でもなく、引き分けでも無く、こちらの損害を増やすことだな。それも、死者では無く負傷者を出すことを目的としている。」

 

死者が出ればここで燃やしてしまうだけで済む。だが負傷者が出た場合、本国まで連れて帰らねばならなくなりその分食糧を消費する。さらに厄介なことに破傷風などの感染症予防のために医療品が大量に必要となり水もかなり消費する。それが無くなれば船内は地獄となる。

とくに水は死活問題であり恐らく市内にある井戸は全て使えなくなっているだろう。

それだけでは無い。最初の奇襲攻撃のようにどこに兵が潜んでいるのか分からない恐怖とどこに罠が仕掛けられているか分からない恐怖。

 

ゼークトはとある本を思い出した。

パーパルディア皇国ができる少し前、天才的な軍師が考えたゲリラ戦。それは理不尽なほどの技術格差がある場合、兵数差がある場合、その最悪な戦況をいかに覆すかという本だ。

 

「敵の人的資源を枯渇させろ、か。なるほど。最初はよく分からなかったが今なら理解出来る。奴らの狙いは人的資源の枯渇とこちらの兵站を枯渇させるつもりだな。」

 

 

 

ーーーー1914年、世界大戦が勃発した時オランダは中立国だった。それも世界大戦が終わるまで。隣のベルギーはドイツの奇襲により国土を失いさらに人がバタバタ死んでいく西部戦線が誕生した。人が1人死んだくらい問題が無い。人の命が最安値を更新し続ける西部戦線。もしこれがオランダを襲ったらどうなるか?その対策を考えたとある軍人はこう言った。「敵人的資源をいかに削るか。罠を仕掛けたり伝染病を発生させるのが一番手っ取り早いだろう。」そして彼はこのドクトリンを完成させた。糞ドクトリン。敵人的資源を削ることを考えすぎたため塹壕戦ではとても通用しない文字通りのクソドクトリンだが、ここでは違った。ー

 

既に陸戦隊250人くらいの負傷者を出しているためゼークトはワイバーンで弓矢を黙らせる方法にでる。これしか方法は思いつかなかった。

 

「敵の指揮官の方が優秀とはね。全軍に告ぐ、敵指揮官は生け捕りにしろ!」

 

出来れば確保したいものだ。




次回、アルタラス王国市街戦(予定)


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17話 足音

アルタラス王国の最新鋭の部隊は、浜からやってくるパーパルディア皇国を相手に戦っている。

が、軽機関銃が一丁壊れて動かなくなった。

 

「撃て!なに?弾が出ない?また壊れたのか!」

 

アルタラス王国指揮官はうなる。またかと。

オランダから購入したこの軽機関銃 シャーシャ軽機関銃は軽くて取り回しがいいという利点と連射できるという優れものだが最大の欠点を抱えていた。

 

壊れやすいのだ。とくにうち過ぎるとオーバーヒートにより壊れる。それが発生してしまった。

次第にあちこちでシャーシャ軽機関銃が故障し使えなくなり予想に反して弾が余るという事態になった。

問題はそれで終わらずさらにここで敵のワイバーン部隊が接近してくる。

ライフルは1人一丁、100人ほどいるためある程度は撃ち落とせるがその間に敵陸戦隊はこっちに来る。

 

「大変です!包囲されました!」

 

「想定より早いな。ここで終わりか。皆よくやった!突撃だ。アルタラス王国はここで終わるが、国民が終わる訳では無い。ここでパーパルディアの力を弱めることによって反パーパルディアの希望になるだろ。

アルタラス王国万歳ー!」

 

このあと数時間後にアルタラス王国は降伏。地図上からアルタラス王国は消えた。

パーパルディア皇国はワイバーン15騎、陸戦隊460人死亡、1590人負傷という大損害をくらい、圧倒的な勝利ではなく、辛うじて勝利というものとなった。

 

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国 ミュンヘン

11月中旬

季節は冬だが緯度の関係かあまり寒くない。

ミュンヘン中心部にある喫茶店にターニャは軍服でコーヒーを飲んでいる

 

ワイバーンを50騎ほど落としたため休暇が貰えたのだ。

魔導師の規定で敵航空戦力を50機以上撃破した場合1週間の休暇と一流のフルコース料理が食べれる。

ただ、この航空戦力にワイバーンが入るか入らないかが疑問だったが適用されたためこうして休暇が取れたのだ。

 

「ドイツ料理も悪くないもんだ。参謀本部の食事は不味すぎたが。」

参謀本部名物の食堂。調度品に金をかけすぎたためコックを雇う金すらなく結果無茶苦茶不味い。

海軍のご飯の方が美味しい。

就職先間違えたかな。

 

「時間だな」

 

ターニャは楽しみにしている事がある。それはこれから見る映画だ。

 

「我々の闘争」

 

アドルフ・ヒトラー作の日記が元。

世界大戦やロシア内戦でのイデオロギーや戦争の悲惨さ。ドイツ民族の優秀さを説いたものであり、我が闘争からユダヤ人などの劣等民族意識を無くしたようなものだ。

 

 

◆◇◆◇

「うん、中々いい話だった。」

 

ウィンストン・チャーチルのかいたヒューライヒとやらよりはかなり面白い。

 

ヒューライヒ

世界大戦で連合国が勝利したというifの世界だが、いわゆる史実の世界ではなく、ドイツが解体されてたり、ロシアが共産化してたり、オスマンは生きているものの分割されまくってたりと史実以上に酷い状況となっている。

この世界でハルラーという男が解体されたドイツを統一し第二次世界大戦を起こすというのがこの小説なのだが、色々無茶苦茶だったりするため全く受け入れられなかった。

 

「号外!号外だ!」

 

号外新聞を配る青年。ターニャは彼から1部受け取り内容を見る。

 

そこにはこう書かれていた。

 

「アルタラス王国へ観光旅行していたドイツ人がパーパルディア皇国に捕まる!!劣悪な収容所に送られた!」

 

と。




次回、交渉


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18話 交渉

デンマーク政府

 

「やってしまった。」

 

先日デンマークはフェン沖で密漁していた頃、接近してきた所属不明の艦隊を全滅させた。

確かに全滅させろと指示はしたがまさか相手がパーパルディア皇国だったとは。

 

いくら相手の技術が低くても列強と呼ばれている。

貿易相手としてはいい相手なのだが、どうも上手くいかない。こちらに不平等条約を結ばせるまで貿易はしないと言っているのだ。今のデンマークには国防するだけで手一杯なため戦争を起こす気もない。そのためずっと平行線を辿っている。

 

「どうしたものか」

 

◆◇◆◇

オランダ

 

「なぜ上手くいかない。せっかく実践データも送ったのに」

 

オランダの武器商人、ヤン ボンは悩む。というのも、アルタラス王国へ廃棄予定の武器を大量に売り、その実践データを元にパーパルディア皇国にも兵器を売る予定だった。

アルタラス王国への武器販売は大儲けした。だがパーパルディア皇国へ商売に行くと門前払いされた。それどころか、「次やってきたら殺す」まで言われた。

 

「一体俺が何をした?」

 

◆◇◆◇

パーパルディア皇国

皇帝 ルディアスは怒っていた。その原因は、アルタラス王国との戦争のことだった。

 

雑魚とも言えるアルタラス王国相手にパーパルディアは大損害を食らった。さらにその損害を与えた原因は他国の介入。それもオランダという国だ。あの国がアルタラス王国へ武器や戦術を売った。つまりオランダは敵である。だがオランダという国を知らない。知らないということは文明圏外の国であり恐らく他の列強が技術支援をしたのだろう。問題はその他の列強国だ。

 

「ドイツという国も恐らく他の列強から支援を受けているに違いない。だからこそロウリアを一瞬で降したのだ。」

 

皇帝の部屋に外交局員がはいる。

 

「失礼します皇帝陛下!」

 

「何用だ?」

 

「は!実はアルタラスにてドイツ人観光客20人を捕まえました!このことについてドイツ帝国はドイツ人を渡して欲しいと!」

 

アルタラスにてドイツ人観光客を捕まえた。

その数は20人でありどうやら集団で観光していたようだ。それ以外にドイツ人はいないというおかしな点もあるが、問題はこれの扱いである。

皇帝は笑った。

(これは好機だな。ドイツを我が国の属国にできるいい機会だな。)

 

「よし、ドイツにこう伝えよ。もし我が国の属国になるのならこの観光客を10人ばかり返してやろう。残りは奴隷として扱ってやるとな。」

 

「は!」

 

皇帝は慈悲に溢れた内容だと考えていた。

 

(本来ならドイツ帝国の皇帝を奴隷にしても良かったが余は優しいのでな。10人の奴隷及び背後にいる他の列強の正体をばらすだけで許してやろう。)

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国

内閣府

 

「ドイツ帝国がパーパルディア皇国の属国となるのなら、ドイツ人の捕虜10人を返還する。残りの10人は我が国の奴隷とする。これを断るのなら、ドイツ人捕虜をスパイとして扱うと。」

 

外交官、リッペントロップはパーパルディアからきた返信を読み上げた。

 

「なんて事だ。ゲッベルスよ、本当にここまで予定通りなのか?」

 

ヴィルヘルム二世は恐怖を感じた。

 

ドイツ人観光客20人をアルタラス王国へ送る。これを考え実行したのはゲッベルスだ。

ゲッベルスの最大の仕事は、ドイツ人に残るトラウマをどう克服するかだ。このトラウマを克服せねばこの世界最強とされる国と戦えない。

そこでゲッベルスは悪魔の計画を思いついた。

 

ドイツ人を何人かパーパルディアに虐殺させそれを口実にドイツ国民を立ち上がらせさらに列強国とされるパーパルディアを倒し、ドイツ帝国を世界に認識させること。

ショック療法でトラウマを克服しようとしているのだ。

 

ここで1つ問題が生じる。誰を送るかだ。

そこでゲッベルスは送る人のリストを提示した。そこに書かれた人はみな、法で裁けない悪人であり、中にはサンディカリスムと繋がっている疑いの高い人もいた。

「こいつらなら死んでも問題ない。大丈夫だ」

 

その後この20人に自然な形で無料旅行券を渡し戦争前のアルタラス王国へ送り、この度予定通りパーパルディアの捕虜となった。

 

この要求を断ればパーパルディアは彼らを虐殺するだろう。それこそが狙いでありこれを全国放送させるつもりだったのだ。

 

ゲッベルスは自信をもって答える

「予定通りこの提案を断ります。その際にビデオカメラを持っていって録画してきてください。虐殺映像は録画次第すぐにあちこちで流し、ラジオを使ってパーパルディアの非道を全家庭に流します」

 

ゲッベルスはこの時の為に色々準備していた。

発明されてまだ日の浅いラジオを大量生産させ全国民に普及させ、さらにドイツ人の優秀さを説いた我々の闘争をあちこちで上映させた。さらに書籍もなるべく安く売らせた結果、累計9900万部という最高記録を叩きだした。

種は十分撒いた。あとはたった1つのきっかけである。

 

「パーパルディア滅亡の時は近い!そしてドイツ帝国は新たな時代を迎える。」

 

ゲッベルスは後世でこう語られることとなる。「悪魔のような宣伝能力を持った人物だと。」

 

◆◇◆◇

ムー国

 

列強国

技術士官マイラスは軍を通じて伝えられた外務省からの急な呼び出しに困惑していた。

 

外務省からの呼び出しは、空軍のアイナンク空港だった。

 

誇り高き列強ムーには、民間空港が存在する。まだ富裕層でしか飛行機の使用は無く、晴天の昼間しか飛ぶ事は出来ないが、民間航空会社が成り立っている。

 

民間の航空輸送は私の知りうる限り、神聖ミリシアル帝国とムーでのみ成り立つ列強上位国の証である。

 

機械超文明ムーの発明した車と呼ばれる内燃機関に乗り、技術士官マイラスは空軍基地アイナンク空港に到着した。

 

しかし、わざわざ急遽空軍基地に呼び出すとは、いったい何だろうか?

 

控え室で待つこと20分、

 

カチャ・・・。

 

軍服を着た者と、外交用礼服を着た者2名が部屋に入ってくる。

 

「時間が無いため詳細はこれを読んでくれ。まずドイツ帝国が乗ってきた輸送機と軍艦を見てくれ。そのあとドイツの外交官と接触し情報を引き出してくれ」

 

マイラスは書類を見る。そこにはドイツという国の大まかな情報が記されている。

 

なるほど、ドイツという国は結構大きい国みたいだ。

2人は言うことだけ言って帰った。

 

5分後

マイラスは空港でドイツの輸送機を見る。

小さい複葉機でとてもだが速度が出せるようなものでは無さそうだ。

 

「これがドイツの戦闘機、か。航空技術があるだけでも充分脅威だな」

 

◆◇◆◇

マイラスはドイツの使者が滞在する部屋の扉をノックした。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

扉をゆっくりと開ける。

中には、2名の男がソファーに座っていた。

 

「こんにちは、今回会議までの一週間ムーの事をご紹介させていただきます、マイラスと申します」

 

ドイツ帝国の使者は立ち上がり、挨拶をする

 

「外交官のルンシュテッド ヴィルヘルム ルッサーです。今回ムー国をご紹介いただけるとのことで、ありがとうございます。感謝いたします。こちらにいるのが、メッサーシュミット観測機 b108の操縦士 ルーザーです。」

 

「では、具体的にご案内するのは、明日からとします。長旅でお疲れでしょうから、今日はこの空港のご案内の後に、都内のホテルにお連れします」

 

 

マイラスは、空港出口へ行く前に、空港格納庫内に使者を連れて行く。

 

格納庫に入ると、白く塗られた機体に青のストライプが入り、前部にプロペラが付き、その横に機銃が2機配置され、車輪は固定式であるが、空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機が1機、駐機してあった。

 

ピカピカに磨かれており、整備が行き届いた機体だと推測される。

 

 

マイラスは説明を始めた。

 

 

「この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機械です。

 

これは我が国最新鋭戦闘機「マリン」です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い380km/h、前部に機銃・・・ええと、火薬の爆発力で金属を飛ばす武器ですね。を、付け1人で操縦出来ます。メリットとしては、ワイバーンロードみたいに、ストレスで飛べなくなる事も無く、大量の糞の処理や未稼働時に食料をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です。」

 

自信満々に説明する。

ドイツ人とやらは、口をあけて、「はー」とか、間抜けな言葉を発している。

 

どうだ!!あんな小さい、速度の出ないような国には到底作れまい!

 

「は―・・・主力戦闘機が複葉機なのですね―」

 

ルーザーとかいうやつが驚いて見ている。

「我が国の主力戦闘機なら余裕で勝てそう。」

 

「え?」

 

「我が国の主力戦闘機 メッサーシュミットbf 108なら、最大速度:621km/hを出せます。」

 

「え?」

 

マイラスはドイツという国を少しずつ理解し始めてきた。




ジェットエンジンは改良中。
多分そのうち試作型ジェット機だす。
ちなみに現ドイツ帝国主力戦闘機は史実のメッサーシュミットBf 109Gと同じスペック。だが史実より少し早い登場。
次回、処刑(もはやネタバレ)


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19話 公開処刑

「この提案は受け入れられません。そのことを伝えに来ました」

 

パーパルディア皇国の城でドイツ外交官のリッペントロップはパーパルディアの外務局員に提案拒否を伝える。

 

「ほう、拒否するとは。だがこれを見ても断れるかな?」

 

パーパルディアの外務局員はモニターらしきものにある映像を映す。

それは、囚われたドイツ人だ。

 

処刑場のような場所で目隠しされ縛られたドイツ人。

それを見るドイツの外交官とその護衛4人は顔が引きつっていた。

 

「アルタラス王国を攻め落としたがこやつらは、我が国に対する破壊活動をする可能性があるのでな・・・スパイ容疑で拘束している」

 

ドイツ人観光客20人全員が縛られている。

 

皆脅えきった顔をしている。

 

「彼らはアルタラス王国に観光に来ていただけで、何の罪も無い人々だ。即刻釈放を要求する!!!」

 

「要求する?たかが蛮族が皇国に要求するだと!?立場をわきまえぬ愚か者め」

 

パーパルディアの外務局員は通信用魔法具を取り出す。

 

「処刑しろ」

 

彼ら、ドイツ人観光客は20人全員、殺された。

一部始終、全てを見たリッペントロップ達は、声を失った。

 

「.....」

 

「ふん。声も出ないようだな。これでも我が国の提案を断るなら、貴様らドイツ。いや、オランダも含めてこの光景が貴様らの土地でも行われるだろう」

 

これは脅迫だ。外交なんてない。生きるか死ぬかでありパーパルディアには友好関係を結ぶという意思はない。

 

いくらこれが仕組まれたことであっても、前の世界ではこんな事をする国はない。

 

「ではパーパルディア皇帝にこう伝えてください。あなたの国に対して正式に宣戦布告すると。」

 

リッペントロップは予め用意していた宣戦布告の紙を渡す。これはあくまでパーパルディア皇国がドイツ国民を殺した場合のみ渡すものでありリッペントロップはこれを渡さないよう願っていた。

だがそれは実現しなかった。

 

「ほう。では次会うときは収容所ですかね。もちろんパーパルディアの収容所ですが」

 

リッペントロップ達は退室し帰国した。

◆◇◆◇

ドイツ帝国海軍 高速駆逐艦 I-2型

燃費の良さと速度を重視した駆逐艦にターニャは乗っていた。

リッペントロップとともに帰国しているのだ。

 

この国には労働基準法が適用されない職業がある。

軍人はそのひとつだ。

 

ターニャは3日前まで休暇をとり、我々の闘争を見ていたのだが突然参謀本部から招集され来てみればなんとリッペントロップとともにパーパルディアに行き、そこで起きたこと全てを録画してこいと。

 

「労働基準法が適用されないとしても幼女を酷使するか普通?」

 

だか今のドイツに暇な魔導師はターニャ率いる第203しかいなかった。というのも、北方方面軍は、 突然動員をかけ始めたデンマークに対処しなければならなくーパーパルディア戦を見据えたデンマーク政府は動員をかけた訳だがそれをドイツは知らないー

南方方面軍は、オーストリアとハンガリーの対立の激化に伴い動かすことが出来ず、東部方面軍は予備兵力のほとんどをパーパルディア攻略軍に組み込んでいるため動かせない。西部方面軍はロウリアへ派兵しており呼び戻すのに時間がかかるからだとか。

 

まぁ、今回の任務が撮影だけであり命をかけないだけましなのだろう。

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国各地で、パーパルディア皇国がドイツ人観光客を虐殺したという映像が出回り、ドイツ人は目が覚める。

 

かつて列強のほとんど全てを相手に、言語が統一出来てない、近代化の遅れたオーストリアと瀕死の病人オスマンとともに戦い、絶望的な状況をも覆し、勝利を収めたドイツ帝国。

 

あまりにも犠牲者をだした影響で戦争恐怖症とも言えるドイツ国民は、この虐殺映像をみて何を思ったか?

 

他人事ではない。ここで立ち上がらねば死ぬ。

これはただの戦争ではない。生きるか死ぬかの生存闘争だと。

 

こうしてゲッベルスが狙っていたショック療法は驚くほど効果的に発揮し、ドイツ各地で世界大戦前のようなムードとなった。

 

その日、正式にドイツ帝国はパーパルディアに宣戦布告。さらにオランダもパーパルディアに宣戦布告した。

 

その2日後、デンマーク政府もパーパルディアと揉めた結果、宣戦布告した。




2章完結。パーパルディア戦始まります


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3章 激戦!パーパルディア
20話 亡命


中央歴1640年 1月28日

パーパルディア皇国

ゼルン

パーパルディア皇国の首都から北西にある港湾都市。

ここにレミールとニコチンとエランテ、カイオスはいた。

 

レミール達は目立たないような格好をしさらに大きな荷物を持っていた。

カイオスを除いた彼女らの目的は、亡命だった。

 

2日前、パーパルディアはドイツ人観光客を虐殺した。

これが意味することはひとつ。パーパルディアはドイツに喧嘩をうりドイツもそれを買った。結果間違いなくパーパルディアは滅亡する。

だからこそレミールとニコチン、エランテは亡命を決意した。

まずここからシオス王国へ渡りその後、オランダ商船へ紛れてオランダへ行き、その後ドイツへ渡る。

 

既にオランダとドイツには話をつけており準備は万端だ。

 

「本当にいいの、カイオス?このまま残っても」

 

カイオスは唯一、レミールやニコチン、エランテからのドイツの情報を真剣に聞いてくれた人だ。

「俺は、この国が好きなんだ。だからこそこの国の暴走を止めなくてはならない。俺は内部からこの国を変えるつもりだ。」

 

カイオスはこの国をどうにかして存続させたい。それこそクーデターを起こしてでもだ。

 

「じゃあな。次会うときは、平和になったパーパルディアで」

カイオスほどパーパルディアを愛している者はいないだろう。なら私も祖国を守るためにドイツと交渉をしよう。

 

3人をのせた船は出発した。

 

レミールは決断した。

今のレミールはかつてのレミールとは違う。

現実を受け止めさらにどうすべきなのかを的確に判断する。

 

「変わりましたねレミール様。」

 

ニコチンはかつての狂犬レミールを知っているためその変わり様に驚く。

 

「ニコチン。人とはきっかけがあれば変わるものです。そう、例えば恋とか。」

 

レミールからの恋という言葉に笑い出す2人。

 

「な、なんで笑うんですか!」

 

「だって、レミール様が、、恋、なんて言うから。1番無縁そうな人がですよ」

 

「恋は人を変えると言いますからね。たとえ無縁そうな人でもきっかけがあれば変わる。レミール様はそういうパターンでしょう。」

 

3人を乗せた船は、中立国 シオス王国へ向かった。

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国 海軍総司令部

 

「現在パーパルディア皇国艦隊はフェン王国へ向けて出航していることがスパイにより判明しました。つきましては、今後の作戦の障害にもなりかねないこの艦隊を壊滅させようかと考えてるんですがいかがでしょうか?」

 

ラインシュッド提督はドイツ、オランダ、デンマークの連合艦隊によるパーパルディア艦隊壊滅作戦を立てる。

 

この作戦はドイツ主力艦隊がまず最初に仕掛け、側面をオランダ艦隊が突く。敵が逃げたところをデンマーク艦隊が追う。

 

「よかろう。問題は艦隊だ。航続距離もある故、補給艦も何隻か組み込まなければならないのだが、燃費の悪い旧式艦は除きたい。でだ、その代わり先月進水したドクトル エッケナーを組み込みたい」

 

ドクトル エッケナー

グラーフ・ツェッペリン級空母の3番艦。対空性能も充実しており、最近開発された近接信管が取り入れられた。ー史実より数年早い。ー

 

「なんと。もう完成したのか。」

 

戦艦は費用対効果が悪過ぎる。そう結論が出たため、ドイツ海軍は空母を中心とした機動部隊を建造し始めた。

ーとくに1934年ターニャ デグレチャフが出した航空主兵論がレーダー提督の目に留まり、空母の有用性を理解した彼は急遽グラーフ・ツェッペリン級の3番艦、4番艦を建造することを指示した。

 

レーダー提督はもうひとつ問題をいう。

 

「この作戦最大の問題は、いかにパーパルディア艦隊を捕捉するかだ。」

 

艦隊を捕捉するのは容易ではない。最初っから位置が分かっていたロウリア艦隊ならまだしも今回はフェン王国へ向かうとしか情報は無い。

なら対処法は1つ。

 

「レーダー提督。それなら大量の駆逐艦と海兵魔導師、偵察機を導入しての索敵しか無いでしょう。メッサーシュミット観測機 b108なら戦艦や駆逐艦、水上機母艦にも搭載できますし。」

 

「b108、別名空飛ぶ理不尽か。」

 

メッサーシュミット観測機 b108

日系ドイツ人が設計したその観測機は空飛ぶ理不尽とも呼ばれている。その理由は複葉機で観測機なのに異常なまでの格闘性能を持っているからである。

 

速度は遅く、航続距離はそこそこあるが旋回のしやすさと初心者でも扱いやすいことから練習機としても使われるこの機体はドイツ最新鋭の戦闘機、メッサーシュミットbf 108を相手に模擬戦で勝利を収めた。それどころか近接戦闘に持ち込めばどの国の戦闘機を相手にしても腕があれば勝てる事が判明。だからこそ「空飛ぶ理不尽」とか「空飛ぶ不条理」とか呼ばれた。複葉機も捨てたものじゃない。ーだが速度が遅すぎるため戦闘機としては使えない。あくまで近接戦にならないと戦えない。高高度を飛行できないという欠点も多く複葉機そのものの欠点もあるため戦闘機として扱われることは無く、艦隊の護衛として使える万能観測機として使われる。ー

 

「それでいこう。不足分の駆逐艦は、ウクライナやバルト連合の艦隊を使って補え。 パーパルディア艦隊はロウリアより強い艦船を保有している。腐っても列強国だ。全力で潰すぞ。」

 

こうしてドイツ、オランダ、デンマークの主力艦隊はフェン王国へ向けて出航。

今、大海戦が始まろうとしている。




次回はオランダ、デンマーク、ドイツ連合艦隊による大海戦回です。


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21話 フェン沖海戦

フェン王国海域 ここにふたつの勢力がいままさにぶつかろうとしていた。

 

ひとつは総勢389隻にも及ぶパーパルディア皇国の艦隊。

パーパルディア最新鋭の戦列艦と竜母を含む大艦隊。揚陸艦もありこれでフェン王国へ上陸を仕掛けようとしている。

それに対して100㌔ちょい離れた場所にいるオランダ、ドイツ、デンマーク主力艦隊。

 

オランダ海軍 超弩級戦艦1隻、高速戦艦1隻、巡洋艦4隻、駆逐艦12隻のオランダ主力艦隊。

 

ドイツ海軍 空母2隻 軽空母4隻 水上機母艦1隻 軽巡洋艦5隻、駆逐艦36隻、潜水艦25隻の主力艦隊。

 

デンマーク海軍 戦艦3隻、重巡5隻、軽巡8隻、駆逐艦12隻。パーパルディアを襲った艦隊と同じ艦隊だ。

 

ドイツの観測機による索敵の結果、パーパルディア皇国の艦隊の位置を把握したため、連合艦隊は撃退すべく動いている。

 

偵察機による写真からパーパルディア艦隊の編成がよくわかった。先頭の第一艦隊は戦列艦や竜母が多く含まれておりこれが主力艦隊だろう。

そのやや後ろにいるのが小型の船、ー恐らく輸送船ーがほとんどの第二艦隊。

その後ろにある大型帆船がおおい第三艦隊。 この中に1隻、大きめの戦列艦が混じってることから恐らくこれがこの第三艦隊の旗艦だろう。

 

「戦列艦か。何年前のものだろうか。前弩級戦艦の前の装甲艦より前のものだったかな。」

 

レーダー提督は骨董品を見るように偵察の写真を見る。

横にいるムーの観戦武官 マイラスは乗っている空母ペーター シュトラッサーに驚きながらも、レーダー提督の意見に同意した。

ムーにもかつては戦列艦があった。もちろん今はそんな旧式艦はムーには存在しない。

 

「あれはなんですか?」

とマイラスが指を指した駆逐艦には、大きな丸い筒状の物が搭載されていた。

 

直径10mちょっとのものだが大砲には見えない。

他にもあるのか探したが見た限りこの船とその近くにいる3隻の船くらいしか無い。

その質問にレーダー提督は答える

 

「これはG1ロケットです。と言っても試験型で実戦に使うのはもう少し先ですけどね。」

 

「ロケット?なんですかそれは?」

 

「私も詳しいことは知りませんがなんでも射程およそ150km。破壊力はかなり高く、戦艦の存在意義が失うものだとか。」

 

戦艦の存在意義を失う?マイラスには到底理解できない言葉だった。

 

戦艦は確かに金がかかるが戦艦を倒せるのは戦艦しかない。

 

「マイラスさん、戦闘が始まります。まず今回の作戦をもう一度説明します。」

 

レーダー提督はマイラスに今回の作戦をもう一度説明した。

 

まず第1作戦。ヴェルナー自慢のG1(Gott sei Dank(神の槍))ロケットをパーパルディア第2艦隊にぶち込む。

こうすることによって敵の目は第二艦隊に行く。

第2作戦。空母から出撃した航空機によるパーパルディア第一艦隊への強襲攻撃。ここで敵竜母と戦列艦を壊滅させる。

第3作戦。パーパルディア第三艦隊に向けてオランダ艦隊をぶつけ艦隊決戦に持ち込む。

第4作戦。ドイツ主力艦隊をぶつけパーパルディア第一艦隊を壊滅させる。

最後に逃亡するパーパルディア残存艦隊をデンマークが追撃し葬り去る。

 

ドイツ海軍は、パーパルディア艦隊を1隻残らず沈める気だった。

 

◆◇◆◇

パーパルディア艦隊 中央付近(第二艦隊)

 

この艦隊には、フェン王国を落とすべくかなりの数の揚陸艦と護衛用の小型船が組まれている。

フェンが終わればオランダとドイツだ。

パーパルディアに敗北はない。という自信に溢れた兵士。

 

突然、ヒューという高い音が鳴り響く。

 

「なんだこの音?どこから聞こえるんだ?」

 

1人の兵士が空を見上げるとそこには筒状の物がこちらに向かってくる。しかもそれは上空で分解。いくつもの鉄の棒が中から出てきて、それがこの艦隊に降り注ぐ。

 

「なんだこれは?なんなんだこれは!」

 

瞬く間にあちこちの船から火の手が上がる。あの鉄の棒はどうやらかなり高音で木造船が燃えていく。

 

100隻近い艦隊はたった4発のロケット攻撃により16隻が一瞬で沈没。

28隻が炎上。その中にこの艦隊の旗艦も含まれておりこの艦隊の指揮系統は一瞬にして崩壊した。

 

◆◇◆◇

パーパルディア主力艦隊

副司令官のアルモスは突如入った、後続の上陸用の艦隊が攻撃を受けたという知らせを聞いて驚いていた。

 

「なに?原因不明の敵の攻撃によって半壊しただと?どういうことだ!」

 

連絡員は受け取った報告をそのまま伝えた。

 

「それが本当ならこの作戦は失敗になるぞ。何しろ今作戦はフェンへの上陸作戦だ。なのに上陸できる兵が少ないのではどうしようもない。くそ。こうなったらフェン王国の海岸を徹底的に荒らすぞ。」

 

その時、ブーという羽虫のような音とともに爆音が響く。

 

「副司令官殿!旗艦ミール撃沈!敵の攻撃です!」

 

前方から無数の鉄竜がくる。そいつは次々と竜母や戦列艦に向けて何かを投下しそれが原因で次々と竜母や戦列艦が沈没していく。

 

「竜母ガナム、マサールともに轟沈」

 

「対空にはワイバーンだ、ワイバーンをだせ!」

 

「それが、ガナム、マサールが残った最後の竜母です。」

 

一瞬だった。たった数分でこの艦隊の竜母全てを敵に潰されたのか。

 

「俺は、夢を見てるのか。そうかこれは夢だ。夢に違いない、は、は、ハハハハ」

 

「アルモス殿が発狂なされたぞ!」

その直後、アルモスの乗っていた船はドイツの艦爆によって沈められた。

 

◆◇◆◇

パーパルディアの後方の艦隊(第三艦隊)

 

「憎きオランダを潰せ!」

 

突然艦隊の左舷から現れたオランダ艦隊(パーパルディアの船乗りが望遠鏡でオランダ国旗を確認したため)を撃滅すべく動くが、こちらの戦列艦が射程圏内にはいるより前にオランダ艦隊から攻撃を受ける。

 

「どうなってる、どうなってるんだ!」

 

一方的に撃たれるパーパルディア。

近づけばオランダは後ろへ下がり、こちらが下がれば追ってくる。常に一定間隔で距離を保ちつつ、一方的に撃たれる状況。

 

ワイバーンも近づく前に小さな鉄竜に落とされる。

 

パーパルディア全艦隊は徐々に数を減らし、ドイツの主力艦隊やデンマーク主力艦隊が加勢した事により、パーパルディアのフェン攻略の艦隊全てが沈没した。

 

 




ヴェルナー「改良型のG2もあるぞ!それに後1年経てば超長距離ロケットもできる!」

ターニャ「史実よりミサイルの発展速度が早すぎる。どうなってんだこれ?」

核研究員達「こちらも、あと1~2年で原子炉が完成する」

天才たちが揃っているのと、異世界の魔法が入ったことにより史実以上の技術発展が起きてる模様。


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22話 ハーメルン

番外編に近い話です。


ドイツに亡命したレミールとドイツへと逃亡し、しばらくここで暮らしているルミエスと一緒にハーメルンへ来ていた。

護衛としてターニャとリルセイドがセットで。

 

ターニャはパーパルディア戦に置いて決定的な一撃を与える作戦に強制参加された。

軍人だしょうがない。のだが、その作戦の要であるルミエスを作戦開始まで護衛しろというのが今回の任務だ。

 

ターニャはルミエスが好きではない。どちらかと言えば苦手である。ターニャの中身はおっさんである。性別の違いがストレスになっており普段は軍服を着たり、私服も中性もしくは男性寄りの服を着ることによってストレスを和らげていたのだがルミエスはほぼ強制的にターニャに可愛いドレスを着させていた。

 

今日もターニャはドレスを着させられている。

 

「ルミエス王女。その、良かったんですか私と一緒に書店にいくなんて。その私、パーパルディア人ですし」

 

レミールはパーパルディア皇帝の娘だ。娘としての権力は既にないがそれでもパーパルディア人に変わりはないしアルタラスを滅ぼした人達の1人でもあるのだ。

 

「大丈夫ですよレミールちゃん。私はね、気づいたの。確かに祖国は無くなった。パーパルディアに滅ぼされたし父上も殺された。多くの国民が死んだわ。でもパーパルディア人は悪くない。悪いのはパーパルディアの皇帝とそれに加担したもの達だって。

だから仲良くしようよ。ほらそこの書店に入りましょ!ドイツの書店は凄いんだよ!なーんでも揃ってるんだよ。」

 

「そうなんですか!ところでルミエス王女はどんな本読むの?」

 

満悦の笑みでこう答える。

「拷問器具の歴史!」

 

「「「.....」」」

 

3人がドン引きした。どうやらルミエスの精神はだいぶやばい状況らしい。

 

「ルミエス殿下、何故それを選んだんですか?」

 

「え?これを使ってカストを処刑したら楽しいかなって?ほら、ファラリスの雄牛とか良いでしょ。」

 

ファラリスの雄牛をレミールやリルセイドは知らない。

だがターニャは知っていた。古代ギリシャの処刑器具でイカれた拷問、処刑器具ランキングがあればそれに必ずランクインするほどのものだ。

 

「ルミエス王女、病院、行こう?」

 

ターニャはルミエスにそう提案した。

内心では、ルミエスが入院すれば自分は護衛を解かれはれて休暇が取れると考えていたからだ。

通常のターニャならありえないと切り捨てるはずだが、精神的疲労が溜まりすぎて考えられなかった。

 

「いやだ。それと私がここにきた目的は病院じゃない。ハーメルンの笛吹き男の舞台になったこの街に来たのよ!」

 

ハーメルンの笛吹き男

1284年に実際におきた少年少女誘拐事件だ。

色々謎が多く伝承のみ残っている。

 

ーハーメルンの町にはネズミが大繁殖し、人々を悩ませていた。ある日、町に笛を持った男が現れ、報酬をくれるなら街を荒らしまわるネズミを退治してみせると持ちかけた。ハーメルンの人々は男に報酬を約束した。男が笛を吹くと、町じゅうのネズミが男のところに集まってきた。男はそのままヴェーザー川に歩いてゆき、ネズミを残らず溺死させた。しかしネズミ退治が済むと、ハーメルンの人々は笛吹き男との約束を破り、報酬を払わなかった。

約束を破られ怒った笛吹き男は捨て台詞を吐きいったんハーメルンの街から姿を消したが、6月26日の朝に再び現れた。住民が教会にいる間に、笛吹き男が笛を鳴らしながら通りを歩いていくと、家から子供たちが出てきて男のあとをついていった。130人の少年少女たちは笛吹き男の後に続いて町の外に出ていき笛吹き男も子供たちも、二度と戻ってこなかったー

 

「この話にはいくつもの説があるのよ。特に子供たちが死んだ理由。川で溺死した説、ペスト説、バラバラにされた説。他には十字軍説、東方植民説、街から追い出された説とかね」

 

ルミエス王女はどうやら本当にハーメルンの笛吹き男を調べていたようだ。

 

「あの、なんでそんなに詳しいの?あと街から追い出されたってなんで?」

 

とレミールは質問する。

 

「調べたからよ。街から追い出された理由は、ハーメルンは城塞都市で住める人には限りがあったの。まぁこの説は間違ってる可能性が高いけどね」

 

「じゃぁ、1番有力な仮説は?」

 

「それは東方植民説だよ。しかも攫われたという形で。子供が攫われるということはちょくちょくあった時代で、彼らの姓と一致した都市や街が実在するため攫われた子供たちがここで街を作ったとされるわ。攫われずに自主的に出たという説もあるけどね。

それよりも気になるのは、笛吹き男が使ったやつよ。」

 

一説には笛吹き男は魔法使いだったというのもある。

というのもその時代は魔法使いが実在すると信じられた時代でもあり、さらにペストが猛威を振るっていた時でもあり中世暗黒時代、そう言われた時代でもある

 

「恐らくこれ、集団催眠魔法じゃないかしら?」

 

ルミエス王女は集団催眠魔法を説明する。

 

集団催眠魔法とはその名の通り特定の集団に対して催眠術をかける魔法だ。笛の音が催眠魔法を使用した証拠ではないのかと言っているようだ。

 

「殿下、その、集団催眠魔法って実際に使えるのですか?」

 

 

 

「恐らく使えるわよ。条件が揃えば。ただ、私の知ってる魔法とターニャちゃんが使う魔法はちょっと違うのよ。似て非なるものというか。私はこれを研究してみたいの!」

 

王女は目をキラキラにしていう。

 

「あのルミエス王女、ドイツに留学なされたらどうでしょうか?」

 

とターニャは提案してみると、ルミエス王女は喜んで「それだ!」と答えた。

 

 

◆◇◆◇

「ほう、ゼートゥーア。これが君の、パーパルディア皇国を崩壊させる作戦か」

 

マンシュタイン元帥はゼートゥーアから受け取った対パーパルディア戦用の作戦を見る。

 

「よかろうゼートゥーア。この作戦でいこうじゃないか。この作戦の先陣はそうだな、使い勝手のいい第203に任せようか」




シューゲル「出番をくれ!」

???「残念だったな先にワシが出る」

ターニャ「てめぇは出てくんな」

次回、久しぶりに???が出てくる(かも?)


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23話 愚者は踊る

パーパルディア皇国 北方のとある村

 

都市部から少し離れているため人口も少ないこの街で1人の男が出ようとしていた。

 

「次の休暇はいつ頃になりそう?」

 

と美しい妻は、夫の心配をする。

 

夫のヨハネはパーパルディア皇国のワイバーンの隊長だ。

 

「大丈夫だよミーシャ。次の休暇は恐らくこの戦争、フェンとドイツとその他の弱小国との戦争が終わるまでない。まぁ心配するな。今回俺が行くのはアルタラスだ。後方なんだし大丈夫さ。」

 

「そうね。でもアルタラスではテロリストが多いんでしょう?それに最近、反乱軍が活気づいているし注意してね。」

 

反乱軍。パーパルディアに反旗を翻した奴らだ。テロリストと違う所は、ヤツらは指揮系統がしっかりと整っているのがテロリストと違い厄介な所だ。

 

「大丈夫だって。パーパルディアが負けるわけがない。俺も後方だしいくら反乱軍が活気づいても俺たちワイバーン部隊を倒すことは出来ない。それにこの戦争が終わったら旅行にでも出かけよう!」

 

「そうね。」

 

夫はそのまま近くの基地へ行った。

夫の姿が見えなくなったところで妻は天に向かってこう願った

 

「創造主よ。夫が無事に帰ってきますように!」

 

 

天にいる、普通の人には見えない何かが「汝の願い、聞き届けよう。男にはどんな銃弾も当たらないという加護を付与しよう。これを打ち破れるのは同等の奇跡のみ。」と呟いた。その声は人には聞こえない。なぜならある者は創造主と。ある者は神と。またある者は存在Xと呼ばれるものだからだ。

 

◆◇◆◇

Uボート、ドイツ潜水艦

ドイツの大型潜水艦で航続距離を重視した潜水艦だ。

というのも元々、対アメリカ用に設計された潜水艦であり、遠いアメリカ本土近海でも輸送船を沈められるように作られたのだから。

 

現在この潜水艦3隻にはルミエス王女と第203航空魔導大隊と兵器及びルミエス王女のお気に入りの荷物1つが乗っている。

お気に入りの荷物がなんなのか分からないが、とにかくこの潜水艦隊の目的地はパーパルディアが占領しているアルタラス王国だ。

そこにはまだ残っている地下組織があり彼らと合流後、大規模な反乱を起こしパーパルディアを壊滅させる。

ここで重要なのは戦力だ。

 

地下組織と第203を合わせてもせいぜい1000人程度。それに対してパーパルディアのアルタラス駐屯部隊はおよそ3万。

 

ターニャは部下を集め作戦会議を始める。

潜水艦の中は狭い。その狭い中に各中隊長4人と潜水艦の艦長とルミエス王女もいるのだ。窮屈だが仕方ない。

 

「さて、今回の作戦はパーパルディアに占領されたアルタラス王国を解放するのが目的だ。属領とだけあって、属領が解放されればパーパルディア皇国は崩壊するだろう。だがアルタラスにある地下組織のメンバーと合流しても我々の戦力は精々1000人程度。それに対してパーパルディアは3万の駐屯兵がいる。市民が味方になるかどうかは分からない。不確定要素だ。そして敵軍は3万。まともにぶつかればこちらの弾薬が無くなる方が早い。だからこそ罠を張る。」

 

「罠ですか」

 

「あぁ。アルタラスにはいい廃墟の建物がある。それも崩れやすそうな建物がなー」

 

◆◇◆◇

旧アルタラス王国

地下組織

アルタラス王国最大地下組織にして最後の地下組織、自由アルタラス。

 

自由アルタラスの方針は、機会があればパーパルディアを滅ぼすというものであり穏健派に近い組織だったため、過激派とは馬が合わず組織は分裂した。だがその分裂した組織は各地で反乱を起こしてはパーパルディアに潰されるという事が相次いだ。

 

ここで彼らは悟った。正面から戦っても勝てないと。

そのためいつかくる機会を狙って自由アルタラスは影に隠れ続けた。

 

機会は来た。

 

自由アルタラスに朗報がもたらされたのだ。

「ルミエス王女は生きておりさらにドイツと手を組み、アルタラス王国を解放する」と。さらにもうひとつ、「自由アルタラスはルミエス王女の指揮下に入って欲しい」という申請だ。つまりルミエス王女の親衛隊になって欲しいともとれる。

 

 

自由アルタラスの構成員の中心的メンバーのほとんどは元兵士でありルミエス王女に忠誠を尽くすのは当たり前の事であり疑問はなかった。

 

◆◇◆◇

パーパルディア皇国、アルタラス駐屯部隊5000人はオンボロの建物、旧アルタラス王国兵器工場に来ていた。目的は、ここにテロリストの幹部たちが集まっていると通報を受けたからだ。

 

「地下も探せ!テロリストを捕まえろ!」

 

指揮官のディーゼは、アルタラス最後のテロ組織、「自由アルタラス」をついに壊滅できる好機が来たと喜んでいる。夜のためくらいから他の人にかれの表情は読み取りにくいが彼は今笑っている。

 

「既に敵は袋のネズミ。過剰とも言える兵力を出してこの敷地を完全に包囲した。」

 

彼は知らなかった。まさか誘い出されていた事を。

 

突然地下で爆発が発生。それと同時に1階の床が崩落。それにつられて2階を支える柱も折れ、2階も崩落。

崩落は建物だけでなく敷地すべてが崩落。この事態はだれも予想しておらず、歩兵しかいなかった彼らに逃げるすべは無くみんな仲良く地中に埋まった。

 

◆◇◆◇

「作戦成功か。素晴らしい」

 

とターニャは、ヴァイス中尉、タイヤネン中尉、ノイマン中尉からそれぞれ作戦成功の知らせを受け取る。

 

実はターニャが仕掛けた罠とは、パーパルディアの駐屯兵に自由アルタラスの幹部たちがいる。さらにそこにはオランダから武器が渡った厄介な兵器があると嘘の情報を流し、それぞれの場所に兵を集めさせ一気に潰した。

2箇所はオンボロの建物に。

この建物はオランダがテコ入れした兵器工場であり、表沙汰にならないよう地下に工房を作った。のは良いが、敷地ギリギリまで拡張した工房に、建築関連の法律をいくつも破るような、地下崩落の可能性が高い違法拡張によるバランスの悪い地下空洞という環境が生まれた。

アルタラスにそんな法律は無いから問題は無いと判断したのだろう。だがそれが今回は役に立ったのだ。

 

天井を支える柱を数本爆発すれば勝手に建物、いや敷地ごと崩壊する。これによってパーパルディア駐屯兵およそ1万弱を消し飛ばすことに成功。

 

さらにもう1箇所では、川の上流のダムを破壊し、下流の敵の駐屯基地丸ごと水没させた。あんまり大きくない基地だから2000人ほど消し飛ばすことに成功。

計12000人を倒したのだ。残りの敵は18000人ほど。

 

「準備は整った。反乱を起こすぞ。」

 

この1戦でパーパルディア戦は終わる




存在X久々に登場。パーパルディアの宗教は分からないので少し困った。
次回は彼とターニャがぶつかる!


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24話 自由を求めて〜

感想ありがとうございます!


「作戦開始まで残り3分!こちらデグレチャフ少佐。そちらの準備は万端か?」

 

無線でターニャはルミエス王女のいる自由アルタラス本部の通信所に連絡する。

 

「こちら自由アルタラス通信室。準備は万全。作戦通り0800に、独立宣言をする。予定通りこの通信は第三国のマーズやシオス王国に繋がってるぞ」

 

「了解。では派手に演説したまえ。なるべく多くの市民

を奮い立たせるような演説が望ましいぞ」

 

通信を切ったターニャは銃を強く持つ。

ターニャの部隊の今回の任務は、作戦開始と同時に敵総司令部を吹き飛ばす事だ。

 

「3、2、1、作戦開始!」

 

ターニャ達は演算宝珠を起動させ上昇。高度を一気にあげ大規模遠距離術式を展開する。

 

「目標、敵司令部!発射用意、うて!」

 

巨大な光の弾が敵司令部目掛けて飛び、ドカンという激しい音ともに建物及びその他の施設丸ごと吹き飛ぶ。

 

と同時にあちこちに仕掛けたスピーカーからルミエス王女の演説が始まる。

 

「みなさん、私はアルタラス王国の王女ルミエスです。現在我が国はパーパルディア皇国によって、不法に占拠されています。

ですが、我々アルタラス人は不滅です。いくら雨が激しくてもやまぬ雨はありません。やがて晴れます。私ルミエスを長として、ここにアルタラス王国の正統政府を宣言いたします。私は、英雄的活躍をしたパラモ軍に兵器を販売したオランダと、フェン沖でパーパルディア皇国艦隊を打ち破ったドイツ帝国とデンマーク王国と共に、パーパルディアと戦います。

 

私がドイツへ亡命した後もアルタラス王国で戦い続けた自由アルタラスはこれからパーパルディア アルタラス基地に攻撃を仕掛けます。

 

パーパルディアは強くても最強では無い。故に我々が立ち上がれば勝てます!この悪夢に立ち向かおうではありませんか!」

 

と勇ましく語るルミエス王女に刺激された市民は家から出てパーパルディアの基地があった場所を見る。

 

パーパルディアの基地はターニャの攻撃によって燃えており基地機能が麻痺している事は誰にでも分かった。

 

「パーパルディアは強くても最強では無い 」

 

ルミエス王女の演説により愛国心を刺激された人達は各々武器を持ち声高々にこう叫んだ。

 

 

「憎きパーパルディアを滅ぼせ!パーパルディアを消滅させろ!アルタラス王国ルミエス王女万歳!」

 

これがきっかけとなりアルタラス全土で大規模な反乱が起こった。

 

◆◇◆◇

アルタラス方面軍総司令部 だったもの。

 

「いたたたた。確か、危機感を感じて外に出たら吹き飛ばされて」

 

ヨハネは基地を見るとそこには信じられない光景が広がっていた。基地は燃え、さらに自分のワイバーンは先程の謎の爆発で死んだ。

 

「ちくしょう、何が起こってる?足が痛い」

 

どうやら右足を骨折したらしい。

それでも俺は立ち上がる。

 

なんとか街中に出て、周りを見渡すと市民が武器を持っているのが見えた。

 

「反乱か。早く他の味方を探さねば。」

 

仲間を救出か。問題は救出後どうするかだ。足を引きずりながら彼は生き残った仲間を集め、王城へ向かう。そこにはパーパルディア アルタラス統治機構の本部があるからだ。

 

◆◇◆◇

「どうなってる?なぜこの時に反乱が起きるんだ!」

 

パーパルディアのアルタラス統治機構のある元王城で敷地をとるカストは、昨日から一睡もしてなかった。

というのも昨日の晩、突然駐屯部隊の半分近くの兵が消えた。

捜索に出た部隊が報告してきたのは、老朽化した建物の崩落に巻き込まれたのと、ダムの決壊に巻き込まれたと。

 

ではなぜ、崩落の危険のある建物に駐屯部隊は向かったのか?それは分からなかった。

 

テロリストの罠か事故か。どちらにせよ早急に本国にこのことを知らせてさらに部隊の再編成と再配置をしなければならなく慌ててたところにこの1報だ。

 

「ルミエス王女が生きておりさらにアルタラス王国の独立宣言をし、それに呼応して民衆が反乱を起こした。

アルタラス方面の駐屯部隊の総司令部は原因不明の攻撃によって既に吹き飛ばされ、街の治安は悪化。既にほとんどの地域がパーパルディアの支配下から離れたと。」

 

パーパルディアの属領が独立すればパーパルディア各地の属領も独立する。つまりこの動きを抑えなければパーパルディアは終わる。

 

だが、反乱に対して兵の数が足りないためカストは、逃亡を決心する。

 

だが事態はカストの予想より早く動く。

 

カストのいる階のステンドグラスが割れ、王城に4人の兵士が入ってくる。

 

そのうちの背の低い、少女らしきものが銃口を向けながらこういう。

 

「やぁこんにちは。あなたがここの責任者かね?んー、その服装からしてそうだろうな。こいつとそばにいる将校以外は撃て」

 

発砲音と同時に、一瞬で仲間が次々と殺される。

パーパルディアに連射できる銃は無い。

相手は自分たちより技術が上。それはアルタラスでの戦闘で分かっていた事だが、認めたくなかった。

 

カストは近づいてきた敵の女性の1人によって気絶させられた。

 

◆◇◆◇

王城の入口でヨハネは各地から逃げてきた兵士を指揮して、王城に突撃してくる市民に向けて発砲していた。

 

「あと数時間持ちこたえろ!リージャック将軍が来てくださったらこの状況は変わる!」

 

「ヨハネ殿、リージャック将軍は、戦死させれました!」

 

「くそ、海軍はどうなってる?艦砲射撃でもして市民に恐怖を与えろ」

 

「それが、港に停泊してた艦艇が次々と謎の爆発を起こし沈没しています!」

 

ターニャを載せてきた潜水艦は港に停泊していたパーパルディアの戦列艦や竜母を中心に魚雷で沈めていたのだ。

海軍は使えない。

城から使いが来た。

 

「大変です!カスト殿が敵に捕まりました!」

 

その使いは恐らく敵から攻撃を受けたのだろう。右腕から血が出ていた。

 

「分かった。カストを救出しに向かう。ここで統治機構が無くなればパーパルディアは終わりだ。それだけは防がねばならない! 」

 

ヨハネはここの指揮を他の人に任せ、カストのいる王城最上階へ走っていく。

 

◆◇◆◇

王城最上階

 

「任務完了だな。統治機構の首を狩ることに成功し、アルタラスにいるパーパルディア陸軍はほぼ壊滅。一階にいる敵もやがて降伏するだろう。何しろここには武器庫がない。そのうち弾薬が尽きて終わる。」

 

ターニャは気絶したカストを背負って帰ろうとした時、敵がこの部屋に入ってきた。

 

そいつは左足から血を流し、右手に持っている銃もなんとか持てているような感じでよくここまできたという状態だ。

 

「ここまで走ってきた褒美を与えたまえ。撃て」

 

3人の銃弾がヨハネに向かって飛んでいく。が、銃弾はヨハネの体を掠っただけだった。

 

何十発撃っても結果は同じ。

 

「た、弾が当たりません!」

 

セレブリャコーフ中尉は恐怖を感じた。弾に当たらない敵なんて今まで居なかった。命中率には自信があった。

なのに当たらない。

 

ターニャは射撃を止め、自身の銃に着剣をする。

 

「ここは私が出よう。こいつの守りは任せる」

 

敵に向かって一直線にかける。

敵はターニャに向けて銃を向け発砲するが、それはターニャの防核を抜くことは出来ず、弾かれ、ターニャの剣は敵の心臓を貫く。

 

「ぐはっ、クソが、おれは、ヨハネ。きさまを、殺して、パーパル 、ディア、を、すく、ぅ」

 

「ああそうかい。それは叶わない夢だな。」

 

ヨハネはそのまま息を引き取った。

 

「なんなんだこいつは。弾が当たらないというか弾が避けていった。そんな事がありうるのか?」

 

訳が分からないが、敵は死んだ。死んだのならもうどうでもいい。

ターニャは任務完了を報告してその場から立ち去った。

 

 

数時間後、王城の入口で立てこもっていたパーパルディアの残党は弾切れにより全滅し、敗残兵は各地で市民に殺され指揮官はあちこちでさらし首にされた。

 

さらにそれだけでは終わらず、各地でパーパルディアの国旗や書物が燃やされ、さらに一般市民であるパーパルディア人が各地で虐殺されるなどパーパルディアがアルタラスにやってきた事がいかに酷い事だったのかがよく分かることとなった。




反〇感情が高まると何が起こるか分からない。
お隣の国がそうだったり、戦前の日本もそうだったり。
パーパルディア統治下で起きたアルタラスの悲劇は原作と同じです。

次回、姫のお気に入りとパーパルディア滅亡へのカウントダウン


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25話 公開処刑と列強の崩壊

予告はよく変わる。ー
今回の話はグロ要素多めです。注意してください。



パーパルディア皇国 属領 クーズ

皇国に長らく支配されていたこの国では、クーズ国民は奴隷として生きていくのが普通と化していた。

 

だがその中でたった一つの放送が全てを変えた。

 

「パーパルディア属領の1つ、アルタラス王国がパーパルディア統治機構を打ち破り独立した!」

 

クーズにいる反乱軍は武器を集め、来る時に備えて準備を始めた。

 

◆◇◆◇

カイオスの懸念は確信へと変わった。

 

やはりドイツの力は本物だ。ニコライやエランテから受け取った報告書と商人から貰ったドイツ軍事史の通り、ドイツの力はムーをも超える高度な科学技術を持つ。

さらにドイツは総力戦、国家が持ちうる限りの金や資源、技術、国民などのありとあらゆる全ての戦力を戦争へ注ぎ込むという狂気のような戦争を経験している。

 

そんな国に総力戦も経験していない。これまで苦戦もせずに圧勝してきたパーパルディアが勝てるわけが無い。

 

先日、アルタラスが独立を宣言。

これに対しどうやら軍部はアルタラス再占領に向けて軍を編成しているらしいが人の無駄遣いだ。

上は物量で叩けば勝てると思っているがそれが通用するのは同等の技術をもった国家か、損害度外視の人津波を起こさねば無理だ。

 

こうなったらクーデターを起こすしか無いが、

 

「いつ起こす?近衛兵の大半は味方につけたが、皇都の軍が多すぎる。せめて彼らがどっかに行かねば動けない。」

 

皇都にはかなりの数の軍がおりさらにワイバーンオーバーロードがいる。新種であるこいつは従来のワイバーンロードとは違う。ムーの戦闘機すら落とせるらしいこいつをどう片付けるか。

 

カイオスはクーデター計画をもう一度練り直し始めた。

 

◆◇◆◇

アルタラス王国王城前広場

 

ここには民衆が集まっていた。先日、アルタラスはパーパルディアから独立し監獄に囚われていた女性たちを解放。

さらに今日は悪の統治者、カストの処刑の日だ。

 

こいつの処刑を見に何人も人が来ているのだ。

 

ルミエス王女が大きな箱を台車で押しながら、広場のステージに上がる。

側近が1辺3mの立方体の箱を台車から降ろす。

 

箱を開けるとそこには金属で出来た牛があった。

それを取り出し下に薪や油っぽい物をまく。

 

「皆さん、本日のカスト公開処刑にお集まりいただきありがとうございます。今回使用する処刑具はファラリスの雄牛というものです。

 

これは同盟国であるドイツがいた世界の古代ギリシャにあったものでおよそ2400年以上昔のもののレプリカです。

レプリカですが本物を忠実に再現したものであり、ドイツのいた世界でも有数の極悪な処刑具です。

 

皆さんも知っての通りカストはアルタラスを占領して無実の市民を虐殺してり略奪、強姦、放火などやりたい放題したもの達を罰しないどころか推奨までしました。

 

もちろん私も、ドイツに亡命してなければ今頃精神を病んで自殺してたでしょう。

 

そんな悪の歴史に残るカストを今回は、悪の歴史の一つであるファラリスの雄牛で焼き殺します。では本人を連れてきましょう!」

 

ルミエス王女はそういうと拍手をし、王城から鎖で縛られたカストを兵士が引きずりながら連れてきて、ファラリスの雄牛の中に詰め込める。

そしてカストの鎖の鍵を外し、自力で自由になれるようにした後蓋を閉めた。

 

 

「出せ、出してくれ。俺が悪かった。なんでも聞くから俺をここから出してくれ!」

 

手足が自由になったカストは、ファラリスの雄牛を叩き命乞いをするがだれもそれを聞かない。

 

「では、カストの処刑を始めます!」

 

その声を聞いたカストはより一層激しく叩き、民衆にもカストが泣いているのが分かった。だがここにいる市民の大半が娘や妻をパーパルディア兵に殺されたもの達や、家を失ったもの達でありカストの命乞いは彼らの怒りに油を注ぐだけだ。

 

「さっさとカストを殺せ!」「妻の仇を!」「娘を奪っておいて自分は命乞いかよ!」

 

ルミエス王女は松明に火をつけ、ファラリスの雄牛の下にある薪に投げる。

薪に油が染み込んでいるため直ぐに燃え始め、ファラリスの雄牛を熱し始める。

 

中にいるカストは、徐々に足元が熱くなっていくのを感じた。さらに自分はこれから焼き殺されるのではなく蒸し焼きにされて殺されるのだと。

 

彼は泣き叫んだ。だが青銅で覆われた中にいるため音は反響し、まるで牛が吠えるような音になる。

 

「熱い、下も熱いし空気が徐々に熱くなっていく。」

 

やがて青銅の温度が60度を超え始めた頃には、彼は中で暴れまくっていた。

何しろ、2秒でも直で青銅に触れていると火傷する。しないためには触れるのは一瞬で無ければなく、その結果暴れることになる。だが中は狭く特に低い天井に何回も頭をぶつけては暴れてを繰り返すがやがて体力が尽き、青銅を直に数秒触れてしまった。

 

「あつぃ」

 

手を無理やり離すと皮膚は剥がれ、血が流れるが、その手がまた青銅に触れると剥がれた皮膚、傷口は焼けて塞がり失血死することも無いと彼は悟った。

 

徐々に皮膚は焼け剥がれ、神経も麻痺し中の温度が200度を超えた頃、カストは痛みで意識を失う事が出来ずさらに猛烈な勢いで水分を失っていき、口はもう塞ぐ力もなく、人の言葉を喋ることも出来なくなっていた。

 

 

(地獄だ。いつまで地獄が続くのか?)

 

外ではルミエス王女が嬉しそうにファラリスの雄牛を解説していた。

 

「さぁ、もうそろそろこの中の温度は450度に達します!雄牛が黄金色に輝いたらフィナーレです!」

 

やがて黄金色に輝きだし、カストは熱気と全身の火傷、脱水症状などにより意識をついに失い、その数分後、薪が燃え尽き処刑は終わった。

 

 

◆◇◆◇

薪が燃え尽きたため処刑は終了し民衆を解散させた。

文献によれば処刑後の死体はかなりグロいらしく、民衆に見せるべきではないと判断したのだ。

まぁその死体を取り出さないといけない兵士が気の毒だが。

 

ルミエス王女はファラリスの雄牛からカストだったもの、黒焦げの何かを取り出した。

 

「これが蒸し焼き人間なのですか。これは予想以上にきますね。」

 

ルミエス王女も流石にこれはやり過ぎたと思った。

 

だがその死体はまだ息をしていた。

 

「ふぅー、はぁー、ふぅー、はぁー」

 

「驚愕。生きているなんて驚き。古代ギリシャのやつでは完全に絶命する事は出来ないという研究結果って事実なんだね」

 

そばにいた兵士は、ルミエス王女に突っ込む。

「これでも生きていると言っていいんですか?これはもう動く屍ですよ。放っておいても直ぐに死にますしここまできたら魔法使っても回復させるのは不可能です。」

 

カストの原型すらとどめてないそいつは、喋ることも出来ず呼吸だけしている。それに意識があるのかすら疑わしい。

 

「そうね。最後に息の根を完全に止めた後、火葬してあげて。骨は、そうね、砕いた後肥料にでもして。」

 

「は!」

 

ルミエス王女は行事のひとつを終えた後次の仕事に取り掛かる。

 

ドイツから飛行場使用許可と改造の許可願いが来ているのだ。なんでもドイツは せんりゃくばくげきき とやらでパーパルディア皇都を焼き払うつもりらしい。

 

勿論許可する。

 

ルミエス王女は空を見上げ、ファラリスの雄牛をどう処分しようか考えていた。

これを使い続けたファラリスもまた、ファラリスの雄牛で処刑されたという伝承もある。

お気に入りでも処分した方がいいだろう。

 

彼女はその後、ファラリスの雄牛を溶かして祭壇具を作ったという噂が流れたがそれが事実かどうかは誰も知らない。




ちなみにファラリスの雄牛、有名だからか結構色んな作品に出てくる。

次回「戦略爆撃」


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26話 戦略爆撃機

お気に入り100越えありがとうございます!
それと感想ありがとうございます。ファラリスの雄牛を越えるものってあるんですね(スカフィズム、これ考えたやつ人間じゃないだろ)




「なんだあれは?」

 

パーパルディア皇都で警戒のために飛んでいたワイバーンオーバーロード部隊は、空飛ぶ鉄の化け物を見た。

 

それは大型戦略爆撃機 SB-1

ドイツ版B-29であるこの爆撃機の航続距離は1万kmであり、全長30m 全幅43m越えという常識を超えた大きさであり、戦闘機無しでも爆撃できるよう機銃が沢山ついたこの機体は別名、空飛ぶ要塞。

 

数年先の技術を無理やり使った事もあり非常に鈍足で、高度もあまり取れない、対空砲の的であるため対第二文明圏以下用に作られた機体であり、機体には大量の爆弾を積んでいる。またエンジンを沢山搭載することにより重量をカバーすることができたものの、燃費の悪さは最悪でありこれと同時に設計されたSB-2の方がSB-1より速度、高度、安定性、燃費などありとあらゆる点で勝るものの航続距離という問題と武装が貧弱であることから却下された。

ーなお、速度が出ないなら代わりにジェットエンジン付ければいいじゃないとヴェルナーが提案し作った史上初の試作型ジェット爆撃機 SB-1 Aは速度こそ従来の爆撃機を凌駕するがその代わり数時間でぶっ壊れるエンジン。燃費の悪すぎるジェットエンジン特有の問題。そして短すぎる航続距離という散々な結果を出した。だがこれの問題が後のジェット戦闘機への開発へと繋がるー

 

こんな化け物の機体が20機も飛んできているのだ。

恐怖を覚えるのも仕方ないだろう。

 

そもそも人は理解できないものに恐怖を覚える。

彼らワイバーンオーバーロード部隊は今まで見たことがない、鋼鉄ノ鳥をみたのだ。

鳥というより空飛ぶ船に近い印象だが...

 

「ひ、飛行機械なのか。ひ、怯むな!落とせ!」

 

とSB-1に突っ込むワイバーンオーバーロードだが、12.7mm機関銃が容赦なくワイバーンオーバーロードを撃ち落とす。さらに、撃ち落としながら低空飛行で基地目掛けて飛んでいく。

 

「ばけもの、だ。どうれば落とせるんだよ」

 

その後彼もまた、12.7mm機関銃の餌食となった。

その後、SB-1は基地を次々爆破していきパーパルディア陸軍や航空基地を再起不能まで叩き潰していた。

 

◆◇◆◇

皇都に住む市民は、異様な音と見たことも無い大きな煙に包まれた基地と、そこから聞いたこともないほど大きい爆発を聞き、恐怖を抱いた。

 

「あれは、なんだ?」

 

男が指した方向には銀色の大きな物が飛んでいる。

 

「あれは、竜なのか?いや、竜なら頭はどこだよ?」

「わからないが言えることは1つ。あれの攻撃によって基地は攻撃されたとしか」

 

基地は爆破された。

上空を先程まで飛んでいたワイバーンもいないという事は撃ち落とされたか逃げたか。

 

「なんなのだ、、あれは?」

 

住民にとって長い1日は始まったばかりだ。

 

◆◇◆◇

第三外務局でドイツとの講和案を練っていたカイオスは、突然の爆音に気づき異常事態か何かと思い外を見る。

 

そこには鋼鉄ノ鳥がいた。

何機いるのかはわからないが、距離がかなりあるにもかかわらずはっきり見えるということは相当大きいのだろう。

 

上空の警備に当たっていたワイバーンオーバーロードは、そいつに向かって突撃したが一瞬で撃ち落とされる。

 

なるほど。どうやらこの鋼鉄ノ鳥はドイツかオランダ、デンマークの爆撃機というやつらしい。

ドイツの資料で見たことがある。ドイツには新型戦術爆撃機があるというのを。大きさが資料のものとは全然違うため恐らく新型だろう。

どちらにせよ、皇国最高のワイバーンオーバーロードはドイツの爆撃機に歯が立たないということがわかった。

 

ドイツの目的は基地の爆発。航空基地と陸軍の基地を空爆したことからこれからドイツが何をするのか考える。

 

まず、威力偵察を兼ねた爆撃。ドイツの力を知らしめ、講和に持っていく。

 

無いだろう。そのために基地を爆撃する理由もない。こんなに徹底的に爆撃したら逆効果だ。

 

では、脅威を取り除く為か。何のために?

 

「陸軍とワイバーンを消し去っておいた方が楽。という事はここに上陸してくるつもりか?」

 

もしそうなら早急にクーデターを起こさねばパーパルディアが滅亡する。

 

「まだ準備は万端ではないが仕方ない。クーデターをやるぞ。」

 

カイオスは外務局の通信設備から各親衛隊の通信室宛にクーデター決行の暗号を送った。

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国

 

ポツダム市にいるムーの観戦武官 マイラスは、この転移国家の技術力を見て驚きを感じつつもドイツの技術者、シューゲルと会談する。

なんでもシューゲルはヴェルナーという人と共同で作った兵器があるらしくそれを特別に見せてくれるとか。

 

それと同時にレルゲン大佐は一言「彼を止めてくれ」とも言ってた。なんのことかさっぱりわからん。

 

どうやらヴェルナーという技術者は先の海戦で使われたG1ロケットの開発者らしく、ドイツ帝国内でも有名な狂人だとか。 そんな彼が帝国内最凶の狂人、シューゲルと新兵器共同開発を始めた結果、基地を二、三個吹き飛ばしたという逸話を生み出したとか。

 

部屋でドイツの本(マイラスはドイツ語とオランダ語が読めるようになっている)を読んでいた頃、

 

「ババーーー〜ん!」

 

という声とともに白衣のオッサン2名が入ってきた。

 

「君がムーとやらの技術者、マイラス君だね!これも神のお導きか!どうもわしはドクトル シューゲルだ!」

 

「俺が天才科学者、ヴェルナーだ。ロケット開発の父である。」

 

「は、はぁ。私はムーの観戦武官にして技術者、マイラスです。どうぞお見知り置きを」

 

◆◇◆◇

バカと天才は紙一重という言葉を聞いたことがあるだろうか?

正しくそれが目の前の光景だ。

 

ポツダム市郊外にある研究所。

ここに1つ大きな戦闘機らしきものがあった。

 

「これは何ですか?」

 

「良くぞ聞いてくれた!これが今回君に紹介するV1ロケットだ!」

 

「この機体にはジェット燃料をたっぷりと使って、途中でエンジンを切り離して目的へ飛ぶ爆弾だ。ちなみに最高速度はマッハ1.2 音速の1.2倍だ。」

 

ん?爆弾?

 

「でもこれ、操縦室ありますよね?」

 

「おお、あるぞ。人力誘導爆弾だ。」

 

「それ、自爆兵器じゃ。」

 

「何を言っておる?この中に魔導師を詰めて発射して魔導師だけ脱出すれば問題ない。それにこれに魔導師以外詰めることは出来ない。あぁ、これも神のお導きか」

 

「マイラス殿。これは音速に達した時、設計上の問題でエンジンが爆発しますが魔導師ならエンジンの爆発を抑えることが出来ます。なぁに。これが分かるまで2、3回この基地が吹き飛びましたよ」

 

バカなのか天才なのか分からなくなってきた。

なるほど。レルゲン大佐の言ってた言葉の意味がわかった。

ヴェルナーはロケットを作った天才で発言力も高くここでは止めにくい人物なのだろう。またシューゲルもこんなものを作るくらいの天才だからこそヴェルナーと同じ位置にいるのだろう。

 

ここまで来たら天才というか、

 

「天災。天の災いだな。」

 

マイラスは、ムーの観戦武官という立場ではなく1人の技術者としてヴェルナーとシューゲルに助言した。

 

「搭乗員の命を大切にしてあげて」と。

 

この後V1ロケット計画は中止になり、ヴェルナーは引き続きG1ロケットの問題点である、短距離、命中率の悪さを改善するG2ロケット開発に復帰。

シューゲルはアルタラスの魔法研究を始めた。




ちなみにSB-2はドイツ版b-17 フライングフォートレス

どちらも角張った感じの爆撃機。
比較

航続距離
SB-1>SB-2

速度
SB-1<SB-2

高度
SB-1<SB2

などと、搭載できる爆弾と航続距離、武装以外全てSB-2に劣る感じ。(無理して作った結果。)


作中のV1ロケットは幼女戦記に出てきたV1とほぼ同じです。
ターニャ「あれに乗らなくて助かった。」

V1は名作なのか迷作なのか...

次回、「想定外」


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27話 クーデター前編

クーデター回。長いため2分割。(なお後編はまだ書いてない)


オランダ王国 ウィルヘルミナ女王 親独派であり、

さらに賢王。

 

彼女は今、王宮でレミールと会談をしている。

 

「...して、あなたがパーパルディアのレミールですか。」

 

「はい。いいえ。元パーパルディア人です。既に私はパーパルディアから逃亡した身なので。」

すでに皇族からも削除されたレミール。本国に帰れば間違いなくリンチされるだろう。

 

「そうでしたね。して、今日はあなたに商談があるのです」

 

「商談ですか?出せるものは無いのですが」

 

「なぁに。そんな高いものじゃないですよ。簡単に言えば私たちはあなたの国の人と商売がしたい。その際の人脈を提供して欲しいのです。」

 

「パーパルディアとですか。でも今は戦争中ですし商売なんて出来ないですよ。」

 

「なぁに。もうすぐその戦争も終わります。商人の情報網を舐めないでください。パーパルディアの商人の8割はオランダの勢力下です。」

 

オランダは商人国家だ。戦争より金を重視する。悪くいえば拝金主義者の塊だ。彼らからしてみれば戦争とは金がかかるものであるが巨大な市場だ。1つ何万というお金がダース単位で消費されていく世界だ。

現在ドイツ相手に大儲けしているオランダ。

デンマークやアルタラスとも商売しており、戦争前からパーパルディアとも商売を開始していた。

 

もちろんオランダとは名乗らず、第三国経由でパーパルディアと取引をし、パーパルディアの商人を少しづつオランダ陣営に組み入れて。

 

結果、ドイツの諜報員より素早く情報を手に入れることができさらに現在パーパルディアでクーデターが発生しており講和の手続きをしているということもわかった。

 

「パーパルディアは既に基盤がガタガタ。下手したら飢饉が起こるでしょう。そこで我々は貴国と取引をしたいのです。その仲介をお願いしますよ。」

 

「何が目的ですか?あなた方は無銭で食料提供なんてすることはない。何を見返りに求めるんですか?」

 

レミールはオランダという国を調べた。

世界は神が作ったがオランダはオランダ人が作った。

この言葉でオランダがどういう国なのかわかる。

オランダ人は干拓地を作りまくって土地を広げ続けた国でありさらに慈悲深い国ではなく何かしらの見返りを求める国だ。

 

「ほう。よく我が国を知っていますね。

見返りは、資料の提供。」

 

「資料の、提供?」

 

「ええ。情報は命です。情報を制する者が世界を制する。我が国にはこの世界の知識がほとんどありません。特に噂の魔帝とかね。こればっかりは噂話程度の情報しか得られなく信憑性も怪しいものばかり。どうです?資料とあなたの人脈で何万人もの人が救われるのです。」

 

「分かりました。パーパルディアの幹部や資料のある建物を紹介しましょう。ですが私は今パーパルディアに行く事は出来ません。せめて名前を変えて変装しなければ出来ません。」

 

「分かりました。交渉成立ですね。」

 

◆◇◆◇

パーパルディア皇国

 

「皇帝を捕縛しました!」

 

と連絡員から報告を受け取るカイオス。

彼は、ドイツが空爆した時に直ぐにクーデターを決行した。

いや、ムーがドイツに付いた時にやるべきだったかもしれない。

 

だが、幸運なことに今日は会議の日だ。皇帝含めて各要人を簡単に捕縛することに成功。

 

「これでパーパルディア皇国は既にこの手の中か。」

 

皇帝。ー今のカイオスはその地位に近い状態だー誰しもが憧れるものだろう。だが支配する国が沈みゆく泥舟じゃなければなの話だが。

 

「早く、ドイツとオランダ、デンマーク宛に和平交渉をしたいと伝えよ!」

 

「は!」

 

連絡員は部屋から出ていく。

◆◇◆◇

 

カイオスは第三外務局の局長室にきた。

 

「局長も今日で終わりか。色々あったな。」

 

局長に就任した時、まさかこうなるとは想像もしなかっただろう。

 

そばにある民間用通信機ーラジオみたいなものーを付けるとたまたまアルタラス王国の放送を受信した。

 

「ガガガー ...により、私、 ルミエスは本日をもって女王となります。私はもう、戦争のない平和な世界を願い、決して虐げられることの無い国を目指すことを宣言します。また、パーパルディアに虐げられているもの達よ。今こそ立ち上がる時です!パーパルディアは連合軍の攻撃を受け既に各地で壊滅しています。先日、皇都へドイツ空軍が爆撃をし皇都防衛部隊を壊滅させました。さらにパーパルディア主力艦隊相手にも大打撃を与え、パーパルディアは既に力を失っています。...ガガガ」

 

突然通信が切れた。というより故障したようだ。

なるほど。ルミエス王女は正式に即位式をやり女王になった。さらに属国の反乱を誘う演説か。

これでパーパルディアの属領が一斉に反乱を起こすだろう。今までの比にならないくらいの反乱が起こる。

 

カイオスは早急に次の手を打たねばならない。

 

「次は軍の完全掌握か。皇都の軍の半分はこっち側だがそれ以外は全部敵だ。」

 

その時誰かが扉をノックした。

 

「誰だ?」

 

「は!ディーノです!皇族レミールについての報告が!」

 

「入れ」

 

扉を開けて入ってきたディーノ。彼は第三外務局に俺が入ってきた時からの同僚であり相棒だ。軍服を来ているのは趣味だろう。何しろ彼は軍事が大好きだからな。

 

 

「あの、皇族レミールはどう扱うつもりですか?」

 

皇族レミール。ドイツの皇子と会って以来人が変わりその後ドイツへ亡命した。彼女は彼女でパーパルディアを存続させるつもりだ。

 

「彼女は既に皇族じゃない。いわば棄てられた皇女だ。放っておこう。」

 

「では、皇帝はどうするのですか?」

 

突然目の前まできたディーノ。いつもと様子がおかしい。

クーデター計画にいち早く賛同した彼のおかげもあってクーデターに必要な人員が簡単に集まったのだが、何か今日はおかしい。

 

「なんだ急に? まぁいい。ドイツから要請があってな。講和するならまずパーパルディア皇族をドイツの法にて裁くこと。しかしレミールは皇族では無いため対象外だとか」

 

「そうですか....」

 

彼は何かを諦めたような表情をした後、突然カイオスを小さなナイフで刺した。

 

「カイオス。皇族は全て殺さなければならない。パーパルディアの存続なんて許さない。ルディアスは俺たち、反乱軍が殺す。ドイツになんて渡さない。」

 

胸を刺されたカイオス。あまりにも突然であり相棒のディーノがまさか刺してくるとは思わなかった。

 

「なぜ、だ?なぜ..反乱軍に?」

 

血を吐きながらカイオスは、致命傷をおっていることを悟った。

もう助からない。せめてその理由をカイオスは知りたかった。

 

ディーノはナイフをカイオスから抜き、カイオスが床に倒れて彼が致命傷をおっていること。もうまもなく死ぬことを確認してからなぜ自分が、パーパルディア皇国のエリートである外務局でありながら反乱軍に加わったか説明を始めた。




ディーノはオリキャラです。

次回、クーデター後編


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28話 クーデター後編

後編です。



俺、ディーノは属国クーズで産まれた。

両親がパーパルディアであり統治機構の職員だったためか、俺は両親の影響を強く受けた。

 

クーズ人はクズ。そう教えられてきた。

 

だが9歳になった頃、仲良くなった女の子がいた。

彼女は綺麗で頭も良く、俺の初恋の相手だった。

 

12歳の頃には彼女をどうにか今の環境から救い出す方法を考え、ひとつの結論に至った。

 

彼女を俺の奴隷にしよう。身分だけは俺の奴隷だがそれ以外は普通の女の子として接しようと。

美人な女は他の駐屯兵によって攫われるのが当たり前であり強姦も日常茶飯事だ。だが奴隷なら他の兵も手を出しにくくなる。何しろ所有物でありそいつに暴力を振るっただけで器物破損として逮捕されるのだ。

 

正直心苦しいがこれが彼女らを安全に守る方法だろう。

勿論これが自分の考えだけを相手に押し付けた偽善だが、これしか無い。

 

だから俺は親に提案し、実行しようとした16歳の夏。

彼女はパーパルディア兵に強姦され殺された。

 

それも首を絞めさらに喉や腹を切り裂かれてだ。

 

さらに誰が犯人なのかすらろくに調査せず、犯人は不明として処理された。

こんな終わり方なんて認めない。彼女の復讐をしてやる。

この国をぶっ壊してやる。それも徹底的に。俺はパーパルディアを内部からぶっ壊すため親のコネを使い倒し第三外務局に入ると同時に反乱軍にも入隊した。

 

カイオスと友達になった後も反乱軍での活動を続け、密告などを使い俺の敵対勢力を削ぎ落とし、5年の歳月をかけ反乱軍をほぼ支配する事に成功。

さらに反乱軍を書類を偽造してからパーパルディア軍や政府に少しづつ入れていき皇族暗殺計画も立てたが、やはり最大の問題があった。

 

それは皇都にいるパーパルディア軍のワイバーン部隊だ。彼らだけは手を出すことが出来なかった。

 

だが好機が訪れる。それはドイツとの戦争ぼっ発とそれに伴うパーパルディア軍の壊滅。そしてカイオスのクーデター計画。

 

「クーデター計画は有難かったよ。正直、ワイバーンが消えただけではどうしても皇帝やその他行政機関を完全に破壊する事は出来なかったよ。逃げられたら終わりだからね。

 

だが俺は運がいい。カイオス派閥を味方につけることができたからさ。知ってるかい?皇帝が最近やけにカイオスに敵対しているの?あれ俺なんだ。」

 

カイオスは幾度も皇帝に対してドイツの脅威を唱えた。

だがそれは無視し続けられさらに皇帝からも敵視された。やりすぎたのが原因だとカイオスは考えていた。

 

だがディーノはあの日、皇帝に対してこう助言した。

 

「あれね、カイオスは実は反乱軍に通じており、ドイツの情報は全て嘘。皇帝陛下を簡単に騙す事ができるとカイオスはタカをくくっているんですよ。皇帝陛下、彼は今すぐ捕まえるというのはやめましょう。彼を徹底的に監視し、反乱軍との連絡路を抑えてから捕まえましょう!」

 

勿論これは嘘である。が、人は嘘か本当かより信じたいものを信じるものである。ー新興宗教しかり。癌は嘘。伝染病は全て生物兵器から生まれたとのたまうやつもしかりー

厄介な事に皇帝はこれを鵜呑みにしカイオスを徹底的に監視した。カイオスと接触したもの達のリストはディーノの手に渡りこれを元にカイオス派の大きさを調査。

 

あとはドイツの爆撃も重なり、カイオスは実は反乱軍に通じてなかったと皇帝にいい、皇帝もカイオスが反乱軍かどうかより国をどう立て直すかを早急に考える必要があったためお咎めなしで俺は解放された。

 

そしてこの日、行政機関の人達全員が集まる時を狙って、これまで隠れてきた反乱軍を使って皇帝や行政機関の人違を全員捕縛した。

 

「つまりカイオス。貴様は俺の掌で踊っていたのさ。」

 

苦しみながらもカイオスは尋ねる。

 

「では、なぜ、...俺にあの、質問を?」

 

「なに単純さ。もしカイオスが皇族を殺すと言ったら、反乱軍に誘おうと思ってただけだ。」

 

「そう..か。では、お前は74ヶ国連合と繋がってるのか?」

 

「あー、あの旧属国が集まった連合国家か。関係ないぞ。反乱軍の目的はパーパルディアの消滅。アイツらの目的は主権国家としての独立とパーパルディアとの決別だ。奴らにはパーパルディアを滅ぼそうという気持ちが無いからな。」

 

反乱軍は亡霊の集まり。そういう噂をカイオスは聞いたことがあった。

これまで過激に破壊活動をしていた反乱軍はいつの間にか反乱をやめた。組織が壊滅した訳ではなく何も事件が起こらず次第に反乱軍は壊滅したとか、解散したとかの噂が出回った。

 

だがアルタラス王国との戦争前に各地で反乱軍が反乱を始めた。

ようやく尻尾を掴めたと陸軍を導入して鎮圧しようと現地に向かうとそこには誰もいなかったと。既にもぬけの殻でありこれが数件も続けば反乱軍は実在しない亡霊と思った者も少なくなく、そのせいで亡霊の集まりとも呼ばれたのだ。

 

これもディーノの指示である。

パーパルディアを撹乱する罠だったのだ。

 

「残念だったな。今頃各陸軍のトップも暗殺してる頃だろう。」

 

「そう...か...クーデター...は...失敗...か。」

 

カイオスはクーデターでパーパルディアを救おうとした。

それは平和と国民のため。だがそれは成功しなかった。

全ての点で上にいったディーノ。

なるほど最大の敵はワイバーンオーバーロードではなく同僚であり相棒だったわけか。

 

カイオスは、静かに息をひき取った。

 

「さよなら相棒。さて、部下から報告を受けなければ」

ディーノは速やかに部下から各職員を全て殺した事。

パーパルディア軍がこちらに向かってきている事を知り、撤退をするよう通達。

 

こうしてパーパルディア中枢全てが死亡するという前代未聞の暗殺事件が発生し、パーパルディアは内政が完全に麻痺。ドイツなどと講和する機会もなくさらに他国の介入もありトップを失ったパーパルディア軍は烏合の衆と化し、あちこちで敗走を開始。

 

パーパルディアは消滅寸前となっていた。




ちなみに反乱軍の総数はおよそ5千人程度。
反乱軍は多種多民族で構成されておりみな、パーパルディアを憎んでいる。
彼らはディーノから渡された偽造書類を使ってずっと隠れてきた。

これで反乱軍の伏線は回収できた。

ちなみにここから原作と大幅に変わっていくつもりですー

次回ー思惑と現実


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29話 思惑と混乱

ドイツ帝国

内閣は荒れていた。

 

というのもドイツの、ゲッベルスの思惑と現実があまりにも違うからである。

 

ゲッベルスの作戦はパーパルディアを煽り、虐殺を起こしそれを理由にトラウマを抱えるドイツ国民を立ち上がらせる。さらに列強国であるパーパルディアを倒すことにより世界中にドイツ帝国という名を轟かせるのが目的だった。

 

轟かせた後適当なところでパーパルディアと講和するつもりだったのだ。

 

そのためにカイオスのクーデター計画を利用し、資金や情報を第三国経由で、ドイツが関わってないように提供していた。

 

それが、クーデターは失敗。反乱軍の発生によりカイオスを始めパーパルディア幹部全てが死亡。

突如出現した反乱軍を概ね倒したものの、

陸軍も半壊しておりこのままでは講和どころの話ではない。

 

パーパルディアが消滅する。

 

経済大臣ヒャルマル シャハトはゲッベルスに質問する。

 

「現在、戦費はまだ賄うことはできますがこれ以上出すのは無理だ!このままいけば資金不足で食料輸入もきつくなりカブラの冬を繰り返すことになるぞゲッベルス!」

 

カブラの冬 それは1916年から17年に起きた大飢饉の事だ。

 

穀倉地帯であるフランス、ロシア、ルーマニアとの戦争による食料輸入量の減少。

イギリスによる、ドイツへの輸送船を取り締まる海上閉鎖によってアメリカからの食料も閉ざされる。

 

農民は軍需工場や兵隊となり人が足りなくなる。

豚が食糧を食べるから豚を減らせばいい。

この噂が流れたことにより動物性タンパク質の不足と、解体すら出来ないレベルの人手不足。売り出されることも無く腐る豚肉。

肉不足による、肉の傘増しの為にじゃがいもを入れ始める。

さらにここへくるじゃがいもの凶作。

食料でもないカブラを食べ始め飢えをしのごうとしたがそれでも収まることはなく大量の餓死者を出した。

 

さらにこの後スペイン風邪が襲ってくる訳だが、この時のドイツの死者数はとんでもない数でありもしせめてロシアを相手にしなければ良かったとヴィルヘルム二世は語った。

 

ゲッベルスは答える。

「まさか、パーパルディアが壊滅するとは思いませんでしたよ。」

 

誰だってそうだろう。まさかパーパルディアの反乱軍がカイオスの相棒だったなんて。

 

反乱軍というのはここにいる人達全員知っている。何しろ第2皇子が暗殺されかけたのだ。一時期は反乱軍壊滅作戦なんて出たが実行できる訳もなく見送られた。

 

その反乱軍がこんなに脅威だったとは。

 

「ここまで来たらもう、パーパルディアを直接占領するしかないでしょう。マンシュタイン元帥、可能ですか?」

 

マンシュタイン元帥は答える。

 

「可能か不可能かで言えば可能です。空挺降下作戦と強襲上陸作戦を両方共にやればの話ですが」

 

「となると海軍の方の意見を。レーダー提督」

 

レーダー提督は、資料を持ちながら喋る。

 

「現在、主力艦隊はアルタラス王国にて待機しています。そのため出撃は可能であります。ですが強襲上陸用の船をまだ運んでないため直ぐに実行することは出来ません。1週間、待ってください」

 

「ということは可能なのか」

 

「はい。現在、最新鋭の強襲揚陸艦を配備したため以前より上陸が楽になっているかと。」

 

 

レーダー提督は皆にその書類を配布する。

 

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン級強襲揚陸艦

 

元々1930年から計画された、対イギリス連合上陸作戦の一環で考案された強襲揚陸艦計画。

普通の上陸艦艇では一度に運べる数も少なく大量の輸送船がいるため効率が悪い。さらに戦車もどうにか運べないか考え、1934年2月

 

「どうせなら上陸用の兵だけを運べる船を作ればいいんじゃね?」「でも一度にたくさんの兵を送れるようにしようとしたらどうしても大型になる。それでは浅瀬の海岸にたどり着けない」「ならいっその事中に上陸艦艇入れればよくね?ボートとか?」「いいなそれ!」「じゃ、戦車も運べるよう改造するわ!」「戦車は戦車用で分けようか!」

 

という発想を実現したのがこの船だ。

 

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン級強襲揚陸艦

ホルシュタインと

シュレスヴィヒ

 

設計者がシュレスヴィヒ=ホルシュタイン出身でどうしてもこの名前を譲らない。だがシュレスヴィヒ=ホルシュタイン戦艦は実在するため、(現在は無い。)2分することで決着がついた。

ホルシュタインは兵員用でシュレスヴィヒは戦車用と使い分けられている。

 

ー問題を変態的な技術と発想で解決するのがドイツー

 

一度に運べる人数は最大2000人が限度だが、パーパルディア相手には十分であり足りない分は往復すればいいだけ。

 

なおこれの一回り大きい新型強襲揚陸艦の建造も始まっている。

メーメル級強襲揚陸艦(仮)

 

「これがあれば上陸できるのでは?」

 

「ええ。19世紀のイギリスも裸足で逃げ出しそうなパーパルディア海軍は既に半壊。ですが距離の問題で上陸してもしばらくは数の暴力に晒されます。なので出来ればそれを少しでも減らして欲しいのです」

 

弾に余裕はない。

 

「なら安心してください。このゲッベルスに作戦があります!」

 

他の人は彼の作戦を尋ねる。

 

「この作戦は成功率が高いかと。カイオス無き今、パーパルディアは事実上無政府状態です。軍部の中佐が臨時政府を指揮してるようですがほとんどの支持を得られていない。だが、彼より支持を得られさらに我らが占領しても負担がかからない方法が一つだけあります」

 

「それは?」

 

「レミールを。彼女を皇族として、パーパルディア皇帝として即位させパーパルディア帝国を作り、臨時政府を倒せばいいのです!」

 

ただでさえカオスな状態のパーパルディアに内戦という新たな要素をたすことによりこの混沌を収束しようとしているのだ。

 

「もし、レミールがこちらに反旗を翻したらどうするのかね?」

 

「それについてはご安心を。第二皇子とレミールを結婚させれば問題ありません。」

 

「パーパルディアに行くことになりますが問題ありません。定期的に帰国すればいいのですから」

 

ドイツがパーパルディアを直接占領すれば統治がかなり困難になるだろう。文化の違う場所を統治するのは困難だ。それは世界大戦後、アジアの統治やロウリアの統治で経験済みだ。ロウリアでは何件も文化の違いによる問題が多発している。

 

レミールには半ば強制で合意させ、第二皇子と結婚。

そのごパーパルディア帝国を建国させ本格的な内線がぼっ発した。

 

 

◆◇◆◇

2週間後ー

オランダ王国

 

議会

ヘンドリクス コレイン 首相 は、ありのままのパーパルディアの惨状を女王含めて皆に報告した。

 

レミールをトップとするパーパルディア帝国は、ドイツ帝国の援助の元、パーパルディア皇国に宣戦布告し内戦に突入。さらに皇都にドイツ軍が上陸し制圧したことにより国民の半分がパーパルディア帝国についた。

 

そのごパーパルディア帝国は74ヶ国連合と和平を結び、パーパルディア皇国を追い詰めた。

また反乱軍はパーパルディア帝国と皇国両方共に戦闘しており各地でゲリラ戦を繰り広げるものの弱ってきているが反乱軍のリーダーであるディーノはまだ捕まっていない。

さらに、レミールと結んだ契約は、カイオスの死亡により消滅。パーパルディアの利権はほぼ全てドイツへ流れるだろう。

 

要はオランダは、ドイツとの利権競争に負けた。向こうにその気がなかったとしてもオランダはドイツに負けたのだ。

 

「さらにもうひとつ、反乱軍が図書館を焼き払ったとの情報が」

 

「どうしてこうなったんだ!!」

 

◆◇◆◇

デンマーク

 

クリスチャン フォン グリュックスブルク国王(親独派)

は、コペンハーゲンを眺めながらワインを飲んでいた。

 

「ドイツ帝国か。我が国がシュレスヴィヒ=ホルシュタインをドイツに奪われたのは痛いが、それを抜けばいいパートナーだな。

栄枯盛衰。どんな国も衰えるか。我が国も昔は北欧を支配してたのに今や弱小国だ。ドイツ経済に依存しすぎないようにしとけよトルヴァル首相ー」

 

◆◇◆◇

オーストリア帝国

 

このパーパルディアとの戦争には参加していない。その理由は戦争する余裕が無いからだ。

オーストリア皇帝カール4世は、これから始まる1937年アウスグライヒの準備を始めていたのだ。

 

アウスグライヒーそれは妥協。

かつてオーストリアだけでハンガリー含めた地域を統治するのは出来なかったため、マジャール人と連携して統治しようという、オーストリア・ハンガリー帝国誕生日のきっかけとなったもの。

 

だが世界大戦後、民族主義により統治が出来なくなり色々あった結果、ボヘミアなど多数の地域に自治権を与えざるを得なくなりオーストリアはほぼ崩壊状態となった。

 

だが今はそんなことをしている場合では無いのだ。

オーストリアを再びまとめなければ本当に崩壊する。

だが1番の障害はハンガリーだ。

 

ハンガリーは今ややりたい放題でありハンガリーの力を削がなければ統一なんて出来ない。

 

「なら、ハンガリーを怒らせるようにすべきなのかもな」

 

1937年 アウスグライヒは始まるー




次回くらいでパーパルディア編終了です。

次回ー元列強パーパルディア


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30話 元列強パーパルディア

1640年ー西暦1937年ー 6月10日

ほぼ1年をかけた戦争の結果、パーパルディア皇国は降伏。

74ヶ国連合はドイツの圧力もありパーパルディア帝国と講和。74ヶ国連合は全ての領土を奪還することで妥協し、パーパルディア帝国はレミール女帝となったードイツ帝国の内政干渉も可能なため他国ではドイツの傀儡と見られている。ー

 

また、パーパルディア帝国建国時にドイツから大量の借金をしており、その借金の対価として鉱山の利益と港の使用料で相殺するという条約を結んでおりドイツは自由に港が使えるようになっていた。

 

またオランダ王国は他国から手に入れた情報を元に、伝説の魔帝復活をまとめデンマークや帝国協定各国に配布した。

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国

 

「以上が、オランダ王国女王、ウィルヘルミナから届けられた魔帝の情報です。」

 

とフリードリヒ ヴェルナー フォン デア シューレンブルク外務大臣は書類を配布した。

 

そこには

 

・古の魔帝、ラヴァナール帝国は28年以内に復活すると推測される。

 

・ラヴァナール帝国は人間ではなくその上位種で構成されており神に挑んだ国である。

 

・天罰のため神は隕石を落としたがラヴァナール帝国は国家事未来に飛ぶことで回避したと。

 

・ラヴァナール帝国は現在異空間にいるとされる。

 

・ラヴァナール帝国はジェットエンジンの様なものを持った飛行機を有しておりさらに誘導弾や核兵器も存在する可能性がある。

特にジェットエンジンは神聖ミリシアル帝国にもあるため確定。

 

・それに対してドイツ帝国、いや我ら地球からの転移国家にはまだジェットエンジン実用化は出来ておらず試作どまり。後数年は必要。

誘導弾は構想はあるためこれも後数年は必要。

核兵器は、ウランの濃縮までは進んでいるためこれも後1年くらいは時間がかかる。だが研究費をこれに割いている分、国庫が空になるのが早いか完成するのが早いかというチキンレースが始まっていることを忘れずに。

 

・以上の点からドイツ帝国はまだラヴァナール帝国に勝てる事は出来ず、20年以内にラヴァナール帝国に勝てるだけの力をつけねばならず、窮地の事態は避けられていない。

 

と。

ドイツの危機的状況はまだ終わっておらず、それどころかグラ バルカス帝国もドイツ帝国と同等レベルと思われる。

グラ バルカスについての報告書

 

・グラ バルカスもドイツと同じ転移国家である。

 

・かの国には戦車や46cm砲のある戦艦も存在しておりさらに航空機も単葉機である。以上のことからドイツ帝国と技術レベルは同程度とされる。

 

・また、その戦艦には近接信管も備わっているため航空機での攻撃にも損害が出る可能性が高い。

だが、ある程度の損害を許容すれば撃沈可能。

 

・核技術があるか、ジェットエンジンがあるかどうかは現状不明。また、オランダ王国からの報告によればグラ バルカスの首都の位置も把握済み。

 

やっぱり商人の情報網は凄い。ドイツには逆立ちしても出来ぬ事だ。

 

グラ バルカスは最近侵略に突っ走ってるため注意が必要。というか仮想敵国だ。

 

レーダー提督は、グラ バルカスの海軍情報を読み上げる。

 

「グラ バルカスの海軍総数はイギリス連合とカナダ、アメリカを足したくらいの数があると思っていいいでしょう。戦艦はどれも最新型であり我が海軍の戦艦、シャルンホルスト級と同等もしくはそれ以上の物もあります。また技術的にも潜水艦があると見てもいいため、シーレーン防衛の計画も練った方がいいかと。」

 

「シーレーンを守るために必要な船はどれくらいだ?」

 

「現在だと駆逐艦26隻、軽巡洋艦12隻くらいは必要かと。」

 

「それだけでいいのか?」

 

「はい。既にロウリアでも駆逐艦建造は始まっており我が海軍の駆逐艦総数は既に205隻。人員不足になりそうな状態ですよ。」

 

ドイツ帝国はシーレーン防衛計画を、転移して直ぐに建て直した。そのため駆逐艦と軽巡洋艦を中心に建造している。

 

「なお軽巡洋艦は36隻。巡洋艦は6隻。戦艦は1部払い下げたため3隻。航空戦艦2隻。航空母艦6隻、潜水艦266隻です。」

 

Z計画に1部変更はあったものの、パーパルディア戦で国民は戦争にやる気が出たため志願者は増え、特需景気を迎えた。さらに国もロウリアの鉱山で稼いだ金をそのまま海軍に投入。そういうこともあり比較的安価な駆逐艦や潜水艦を量産していたのだ。

 

さらにレーダー提督はもうひとつの報告を上げる。

 

「それともうひとつ、これは対魔帝用の決戦兵器として、H45級戦艦、ゲルマニア級戦艦の建造許可を貰いたいのですが。」

 

H45級戦艦 ーゲルマニア級戦艦ー

西暦世界最大の列車砲 80cm列車砲グスタフを搭載した戦艦。一説には、列車砲事態新世界では使えないため列車砲計画は廃止したがそれでもロマン兵器を作りたいとか言って密かに80cm列車砲を完成させたのだがやっぱり使えないため廃棄ーするはずだった。

だが棄てるのは勿体ないし戦車に載せようぜ!

という計画のもとP1500計画、陸上戦艦こと超超超超重戦車計画が始まったが速度がどう頑張っても亀より遅くなると判明。

 

だったら戦艦でいいじゃん!ということでH45級が出た訳。

 

「主砲が80cmって、レーダー提督、お前は宇宙人とでも戦うつもりか!一体何と戦うつもりだよ!」

 

そりゃそうである。ー世界最大の大和の主砲ですら46cm砲。こっちは80cm列車砲だ。ー

さらに計画では排水量70万トン。ー比較として大和はおよそ7万トンー

 

「ですがこれならどんな国の戦艦でも一撃で葬り去ることができます。これくらいあれば空中戦艦が出てきても撃破できます。完成するのにおよそ10年くらいかかりますがー。」

 

レーダー提督は何とかこの戦艦の建造を取り付けた。

 

こうして化け物戦艦は生まれるー

 

◆◇◆◇

アルタラス王国

 

どうもターニャ フォン デグレチャフです。

パーパルディアとの戦争でアルタラス王国へ飛び、次の任務待機してたらパーパルディアで内戦が起こり複雑怪奇な状態になって、気がつけば戦争が終わってました。

やっと休暇貰えるかなと思えばまさかのアルタラス王国での特別休暇ー

本国への帰還はダメらしい。

 

噂によれば航空魔導師の教育指導に充てられるらしい。

 

ドイツにより整備された軍港に行くとそこには、航空戦艦 ビスマルクが来ていた。

 

「航空戦艦か。写真で伊勢型のやつは見たことあったがまさかそれを実物で見ることになるとは。しかもそれもビスマルクとは。」

横にいたセレブリャコーフ中尉は、「いせがた?とは何ですか?」と尋ねる。

 

「気にするな独り言だ。」

 

話には聞いていた、高速戦艦ビスマルクの空母化計画。

 

空母が足りなくなりその埋め合わせとして戦艦ビスマルクともう1隻の戦艦を空母化しようとしたが時間も足りなかったため航空戦艦で手を打ったとか。

 

「これに新兵が乗ってるのか。新兵の訓練とか面倒だな」

 

上はめんどくさい事をさせてくるな。

にしてもなぜアルタラス王国で訓練させるのか?

 

謎だ。




もはやタイトル詐欺である(パーパルディアの話が少ない。)

今回でこの章は終わりです。次回新章突入。

次回 揺れる列強


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4章 次なる戦争
31話 1937アウスグライヒ


前々からちょこちょこでてたアウスグライヒ回。
これからオーストリアとブルガリアも出てくる予定です。


西暦1937年ーアウスグライヒの記録ー

 

4月21日 オーストリアは帝国領の再編も含めた1937年アウスグライヒを開催。 ハンガリーをアウスグライヒに招待。

またオーストリアの各国も招待。

27日。各国参加を表明。

 

5月7日。ハンガリーの政治家がカール1世を侮辱するような演説をする。これに対しオーストリア政府はこいつを会議から追放処分。

 

5月8日。ハンガリーがイリュリア問題での賠償金を要求するがオーストリアはこれを拒否。その結果ハンガリー代表は切れてアウスグライヒから抜ける。

 

5月9日。ボヘミアがハンガリー領のスロヴァキア人国家設立を要求。オーストリアはこれを承認。

 

5月11日。イリュリアがハンガリー領西パナトとヴァイヴォデォナを要求。オーストリアはこれを了承。

 

13日。トランシルヴァニアが独立を要求。オーストリアはこれを承認。

 

 

5月14日、ハンガリー抜きのアウスグライヒ終了。

 

5月25日、ハンガリーに対してトランシルヴァニア、スロヴァキアの独立、イリュリア問題を要求する最後通牒を送る。

 

5月29日、ハンガリーはこれを拒否したためオーストリアはハンガリーに宣戦布告。

 

8月12日、ハンガリー王国降伏。講和の結果、ハンガリー王国はオーストリアの傀儡となりさらにスロヴァキア、トランシルヴァニアが誕生。オーストリア帝国の構成国家となり、

 

9月12日

 

オーストリアは合衆国憲法を採用しオーストリア構成国家全てをまとめて大オーストリア合衆国が誕生。

 

国家分裂、崩壊の危機を迎えたオーストリアは生まれ変わり、カール1世を終身大統領とした大オーストリア合衆国。国内の民族問題、宗教、文化を認めたこの国はようやく安定した国になったのだ。

 

カール1世は国内の安定化に満足しこう言った。

 

「ようやくオーストリアも新世界に勢力を伸ばせる。」

 

オーストリアはこれから新世界に進出できる。

◆◇◆◇

その頃、オスマン帝国では議会と選挙を導入。自治権を与えて反乱を抑え、何とか弱体化を抑えるのに成功。

さらに食料をウクライナやクワトイネから大量輸入し回復することに成功。

 

バルカン南部の覇者となったブルガリア王国は、ルーマニア、セルビアを併合し連邦制を採用。さらにブルガリア国王は皇帝を名乗りここに、ブルガリア連邦帝国となった。

さらに隣国の独立国家、ギリシャが破産し身動きが取れなくなりブルガリア連邦帝国に加盟すると宣言。

数日後にはギリシャはブルガリア連邦帝国の1部となった。

 

◆◇◆◇

パーパルディア帝国

レミール女帝は、がれきと化した皇都を見てなぜ自分がここにたっているのか不思議に思っていた。

 

私は国を棄てた女だから普通ならここに帰ってきた時点でリンチにあってもおかしくない。だが戦争により国内がボロボロになった今、国民は皇帝が誰とか関係ないのだ。

 

だからなのかあっさりと受け入れられた。

 

「受け入れられたのはいいけどそれより国内問題が多すぎる」

 

今ある問題は食料問題、街の復興、治安維持と資金不足。失業率の高さ、書物が焼けたことによる歴史書の焼失。等...

 

反乱軍リーダー ディーノは先日、クーズの墓地にて自殺死体を発見。銃を使った自殺だった。

なぜリーダーであるディーノがそんな所にいるのか?

ディーノが倒れていた墓に何があるのか?

を調査した結果、

 

カイオス暗殺後、パーパルディアの文化遺産を徹底的に破壊した後パーパルディアから脱出しリーダーの座を明け渡し突然の引退。そのごクーズに入国しある人の墓の前で自殺。

その墓にはとあるクーズ人女性が眠っていたとされており、パーパルディア人のディーノがなぜ彼女の墓の前で死んだのか不明でさらに反乱軍に入った同期も不明だった。

 

だが彼のパーパルディアを憎む気持ちは本物であり、この国はかなりのダメージを受けたのだ。人材不足による内政麻痺とか。

 

ディーノの自殺について一説には、

墓の女性はディーノの恋人だったとか、その女性の幽霊に取り憑かれたとか色々あるが調査する余裕もないため真相は闇の中。

 

ディーノ亡き後、反乱軍は壊滅。誰も救われなかったカイオスのクーデター事件はこれで幕を閉じたのだった。

 

「後味が悪すぎるわよ。カイオス、生きていて欲しかった。まさかクーデター派に反乱軍が混じってるなんて思いもしなかったし。」

 

そのごパーパルディアは徐々に復興。オランダの支援もあり何とか立ち直ることはできた。

パーパルディアの治安も良くなってきた頃、ニコチンやエランテとその家族はパーパルディアに帰国。

彼らは新編された外務省につくこととなった。

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国 国内

 

各地で戦争祝賀会が開かれ、凱旋パレードがあちこちで起きている。

市民の顔はどれも吹っ切れて、笑顔で笑う。

 

あの大戦のトラウマから完全に乗り越えたドイツ。

軍隊が国家を所有すると比喩される国。

 

軍部は新たな仮想敵国、グラ バルカスへの戦争計画を立てておりこれは万が一の計画だとし、

ゲッベルスはグラ バルカスの危険さを国民に伝えていた。

各新聞会社はグラ バルカスの危険性を特集記事として報道。とくに新世界についての情報があまり入って来ないドイツではグラ バルカスの話題で持ち切りであり、軍隊への志願者が続出した。

 

大衆消費社会が実現したこの国ではありえない勢いで発電所が増設されたり、家電商品が発達。軍事むけの航空機が発達していく中、輸送機から民間旅客機まで恐竜的進化をし、1部の金持ちはクワトイネやロウリアへ旅行することが可能となった。

 

だからか、国民は裕福になっていく反面、この便利な生活を失うかもしれない恐怖があった。

さらにここでゲッベルスはこう唱えた。

 

「グラ バルカスはフランスコミューン、イギリス連合、カナダ自治領、アメリカを足したような国であり戦争になればあの大戦と同等規模の、それ以上の苦戦を強いられるだろう」と。

 

かなり盛った内容だが、これは瞬く間にオランダ、デンマーク、オーストリア、ポーランド、ウクライナ、ブルガリア、オスマン帝国へと渡りグラ バルカスを滅ぼせというデモ行進が行われた。特にドイツではそれが激しかった。というのも、パーパルディアでドイツ人が殺されており国民からしてみれば拡張主義を唱える野蛮人国家は滅ぼさねばならないという風潮ができていたのだ。

 

そうなるようにゲッベルスが仕組んだ訳だが。

 

こうして国を挙げた、戦争準備期間へと帝国協定は突き進む。

 

その先は茨の道だとしても....




アウスグライヒ前軍事力数ランキング(治安維持部隊は除く)

ドイツ>デンマーク=オランダ>ブルガリア>オーストリア>ハンガリー>オスマン帝国>ギリシャ

アウスグライヒ後
ドイツ≧大オーストリア合衆国>デンマーク=オランダ=ブルガリア連邦帝国>オスマン帝国

次回、訪問。


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32話 新たなる始まり

今回短いです。
リアルが忙しくなってきてるのでしばらく不安定。


「ここがオランダ王国ですか。文明圏外のわりに発展してますね」

神聖ミリシアル帝国情報局員、ライドルカはオランダの首都、アムステルダムに外務省職員フィアームと来ていた。

目的はドイツ帝国とその他の国がどれくらい強いのかという偵察と世界会議出席の通達をするためだ。

 

ドイツ帝国とオランダ王国、デンマークはパーパルディア相手に蹂躙したため、列強入りが確定した訳だがどれくらいの技術を持つのか分からない。

だから今回わざわざここまできたのだ。

 

オランダ王国首都 アムステルダム

 

綺麗な街並みで水の都という印象がある。

確かにその辺の文明圏外国と違い街灯や綺麗な道、治安も良さそうな感じで第2文明圏に匹敵するような感じだ。

 

「確かにその辺の国とは違いますね。ですがあの垂れ幕は何ですか?」

 

街のあちこちにある垂れ幕。その垂れ幕にはなにか文字が書かれているが読めない。

 

「お待たせしました。今回ドイツまで案内致しますゼッケンドルフです。」

 

と、真っ黒のピシッとした服をきた、白ひげの老人はそう言った。

確か案内役を付けると話には聞いてたがこんな老人とは。

 

「こちらこそよろしく。ところであそこに垂れ下がっているのは何ですか?」

 

「あれはプロパガンダです。 グラ バルカスに注意せよ!と書かれています」

 

「なぜグラ バルカス?」

 

「かの国が拡張主義ですから危機感を持ったのでしょう。パーパルディアの件もありますし。あちこちでこういうのが見れますよ。」

 

確かにあちこちにこの垂れ幕と似たような記号の物が並んでいる。なんか、開戦前夜みたいな感じだ。

 

◆◇◆◇

夜8時を回っていたため、アムステルダムのホテルで1泊することになった。

 

アムステルダムのホテルはかなり大きくそして豪華だ。

装飾品にみとれて寝付けない2人。

 

「オランダ。なるほど、文化も技術も高い。驚異はドイツだけではないということか。もしかしてわざわざオランダに立ち寄らせたのもこれが理由か?」

 

その次の日、彼らはドイツの首相と会談した後、世界会議の開催および参加する資格が貰えた。

 

 

◆◇◆◇

アルタラス王国

王都より少し離れた田舎街 アルテナ

 

地質の問題で麦などが育たないため手付かずの森が多いこの村で第203航空魔導大隊は訓練をしていた。

 

「このノロマ!さっさとついて来ないか!」

 

「は、はい。」

 

というのも補充部隊であるグランツ少尉ら数名を訓練しているのだ。

訓練内容はもちろんあの地獄の訓練だ。

 

拷問耐久訓練、ヘルウィーク、その他思い出せる限りの地獄の訓練全てを混ぜた訓練を1ヶ月ほどやった。

 

訓練を無事になんとか終えた補充部隊は、本土への帰還命令が出たため大型輸送機で帰還中、

 

 

突如行方不明となった。ー




次回、第203航空魔導大隊の消失


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33話 忘れ去られた国

色々忙しくて更新できませんでした。
しばらくは不定期更新です。


「酔ったものが多いな。」

 

第203航空魔導大隊を載せた輸送機は、軍用のためか非常によく揺れるため飛行機酔いが多い。

 

(普段空を飛んでいるのに酔うのか。いや、普段空を飛んでいるからこそ酔うのだろう。)

 

先日、突然参謀本部から本土への帰還命令が入り帰還中なのだが恐らく内容は碌でもないだろう。

 

「諸君、知っての通り参謀本部は我々を馬車馬の如く働かせるつもりだ。オリンピックやらパーパルディア戦やら護衛任務だとかあちこち引っ張られて。」

 

ヴァイス中尉はいう

 

「なんと参謀本部は立派なキャロットを用意してくれるとか。」

 

キャロット。つまり給料なのだが、あまり期待できない。なにしろ今の軍は兵器開発や増産に力を入れすぎてお金があまり無いらしい。

 

その時、突然機体が揺れる

 

「どうした!機長?」

 

「エンジントラブル発生、操縦不能。計器も故障しておりまもなく墜落します!」

 

揺れる機体。さらに急降下し始める。

既に制御を失っている。なぜこのタイミングでエンジントラブルが起きたのか分からないがとりあえず、

 

「総員、衝撃に備えろ!墜落するぞ!」

 

防御術式を展開し墜落時の衝撃に備える。

 

やがて数秒後、輸送機はとある島に墜落する。

 

◆◇◆◇

墜落して数分。機体はボロボロになっており煙が出ている。ターニャは急いで外にでて、状況を確認する。

 

既に他の者も出ており、さらに既に整列していた。

 

「ヴァイス中尉、状況はどうなっている?」

 

「は!軽傷者はいるものの、隊員全員無事であります!しかし機長および副機長は死亡しており輸送機は完全に壊れました。爆発の危険があるため退避しましょう」

 

「そうだな。総員、武器や通信機をとりしだいここから離れるぞ!」

 

「は!」

 

ここはどこなのか分からない。無人島なのかすらも分からない。

ターニャは帰れるのか不安になりつつも部下を不安にさせるべきでは無いため悟られぬようにした。

 

墜落した輸送機が爆発した頃、少し離れたところで本国へこのことを報告しようとしたが通じない。

 

「どうやら磁気嵐のようです」

 

「なるほど。セレブリャコーフは引き続き磁気嵐が収まるまで通信できるか試してくれ。」

 

「はい少佐!」

 

セレブリャコーフ中尉は再び通信機を触る。

 

「ヴァイス中尉は各中隊に周辺の偵察を命じろ。無人島なのか人がいるのか調べるんだ」

 

「は!」

 

ヴァイス中尉はテキパキと各中隊に指示する。できる部下がいると本当に楽だ。

さて、ここはどこだ?

 

周りに島が無いからここは絶海の孤島。武器はそれなりにあるが食料はあまりない。持って2日。

救援がくるまで最短でも3日~5日だろう。魚でも釣ってもたせるか。

 

「よくよく考えれば、海でのサバイバル訓練だけしてなかったな。良い機会だな。」

 

この言葉を聞いた他の隊員は一瞬で顔が青ざめ、気持ちを引き締めるのだった。

「遭難による恐怖より隊長殿が恐ろしい」と。

 

◆◇◆◇

国家存亡の危機にあるエスペラント王国。

 

-ズー……ン―

 

恐怖を掻き立てる重低音が響き渡った。

少女 サフィーネは音のする方向を見る。

 

「え!?何あれ!!!」

 

するとそこには彼女には理解できない物体が目に映る。

 

「鳥?でも、火を……煙を吐いている!!!」

 

 

一見魔物のように見えるそれは、翼の付近から煙を吐きながら落下してきた。

 

やがて「それ」は、彼女から約1km離れた小高い丘に激突し、土煙を上げながら停止し、その後爆発した。

 

「ちょっと見てくる!」

 

そういうと彼女は爆発のあったところに向かって走っていった。

 

◆◇◆◇

 

「どうだヴァイス中尉?」

 

「は!どうやらここはグラメウス大陸のエスペランド王国というところらしいです。」

 

グラメウス大陸?エスペランド王国?

グラメウス大陸は確か...

 

「地図で1度見たな。魔物が沢山いる大陸だと。」

 

ターニャは1度、この世界の地図を見ておりその時にグラメウス大陸があったのを思い出した。噂では人もいない、魔物だらけの大陸だったはず。

だが現にこうして人がいるのだからそうなのだろう。

 

ターニャの目の前にはここの住人が集まっておりどうなってるのか気になっているようだ。

エスペランド王国か。地図には存在しない国。

だが国があるということは情報も聞き出せるしさらに上手くいけば食料も手に入れられそうだ。

 

「よしヴァイス中尉は引き続き住民からこの国についての情報と食料提供の相談をしてくれ。食料に関しては相応の対価を払うということも付け加えて」

 

「対価ですか。具体的には?」

 

「魔物退治だ。この大陸には魔物と呼ばれるやつを退治してやるとでも言っとけ。良かったな。しばらくの間猟師に慣れるぞ?」

 

「ちょうど良かったです。猟師になってみたかったんで。」

 

「なら良かった。ではヴァイス中尉、交渉は任せた。こんな外見の私じゃこの隊の大隊長なんて言っても信用されんだろうからな。」

 

そう、ターニャは少佐とはいえ見た目は子供なのだ。

 

「あとは磁気嵐がおさまってから本国へこの状況を連絡せねばな。」

 

これからの事で不安になるターニャであった。




次回、ティガー計画


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34話 ティガー計画

伏線たてていくぅ
今回の話は
やや右寄りの要素が入っております。



「完成したぞ!」

 

ヴェルナーは研究所で時間をかけて開発した物が完成し喜ぶ。

 

「これは歴史を変えるぞ!この対艦ロケットは!」

 

目の前にある大きな筒状の物。

ヴェルナーは、戦艦の砲弾に匹敵する威力のある対艦ロケットを開発したのだ。

重量の問題でこれを乗せられてさらに高速で飛べる機体は少ない上に無誘導のため命中率が低いという問題もあるのだが、これを実験する場所を彼は探している。

 

◆◇◆◇

「なに?エスペランドの国王が私に会いたいだと?」

 

ターニャはヴァイス中尉からの報告を受ける。

ここに来てから早2日。

なんとか本国と連絡がつき、状況を知らせたところ

「魔物の情報を集めて報告せよ」ときた。

どうやらここの魔物を滅ぼすつもりらしい。

エスペランド王国のものでは無く所有者不明の土地なら合法的に統治の問題もなく領土にできるという事を狙ってるのか?

 

といことでグランツら補充部隊が魔物を7体ほど倒し、本国とエスペランドの騎士にも報告したわけだ。

一応、エスペランドでは遭難者として扱われているのとお礼として情報を提供している。

 

「おい、そこのちっこいの。貴様がこの部隊の隊長なのか?名前はなんだ?」

 

突然、騎士らしき者が来る。

無礼にも程があるぞ

 

「貴様とはなんだ。それに名前はそちらから名乗るのが礼儀だろ?」

 

ターニャも反論する。

 

「ふん。俺の名は騎士、ジャスティードだ!」

 

「そうか。では私も名乗ろう。ドイツ帝国軍第203航空魔導大隊 大隊長のターニャ フォン デグレチャフ少佐だ。」

 

と帝国式敬礼をする。

 

「敬礼か。 ところで....」

 

ジャスティードは剣を抜き、剣をターニャへ向ける。

 

「おまえ.....本当は魔物ではないのか?最近の王国への侵攻の真の目的はなんだ?答えろ!!」

 

彼はターニャを切り掛るつもりで剣を向ける。

ヴァイス中尉らもジャスティードに銃を向ける。

ターニャは落ち着いた様子でいう。

 

「人と獣の区別もつかんのかこいつは。騎士がこれとはこの国も末期なんだな」

 

ジャスティードはキレる。王国を侮辱された。自分を侮辱されたと。だが彼の本能が同時にこう呟く。

 

彼女、ターニャは歴戦の兵士だ。自分では勝てないと。

 

目に恐怖は無く、それどころかやれるならやってみろ。お前には無理だろうがなと感じるような目だ。

 

ジャスティードは剣をおさめ、ターニャに質問する。

 

「魔物では無さそうだな。王国以外にも人類がいたとはな。もし本当ならなぜ神話を知らんのか!」

 

ヴァイス中尉から何度か神話がどうのとか言ってたな。

それの事か。

 

この世界の国は神話を信じてる国も多い。まぁ中世レベルの文化だったら神話を信じてもおかしくは無いな。

魔帝が復活するという神話も信じてる国も多いし。

 

「神話なんぞ知るか。ただでさえ神話多いのに」

 

日本神話とか、ギリシャ神話、北欧神話など色々ある。

 

どうやらターニャの言葉にきれたジャスティードは反論する。

 

「神話を知らない?それでも貴様は人間か!」

 

「感情むき出し。謎理論。話にならんな。」

 

その後もジャスティードが騒ぐがそれを無視。

やがて疲れたのかジャスティードらは帰ってった。

 

にしても神話か。気になるな。神話というのは真面目に読むのではなく面白く読むものだ。

例えば日本神話での日本の成り立ちなんて考古学を馬鹿にしたような内容だし。

天照大御神が天岩戸にこもった理由が、

スサノオが糞をばらまいたりとやんちゃしまくり溜まった不満が爆発。

日本史上初の引きこもり事件へと発展する。

なんだこれ?

 

「ヴァイス中尉。神話についての情報も集めてくれ。」

 

「はい。」

 

「さてと。今ある武器はこれくらいか」

 

重機関銃2丁 弾は200発程度

隊員分の軽機関銃 弾は1人につき260発

訓練の余りの地雷 3個

手榴弾 29個

対戦車ライフル 1丁 弾8発

ナイフ

拳銃 隊員分。

 

これだけだ。もう数日すれば本国から連絡船が来るため持ちそうではある。

 

 

◆◇◆◇

ドイツ帝国参謀本部

 

「これが対グラ バルカス戦の作戦計画、ティガー計画だ。」

 

マンシュタイン元帥立案の作戦計画、ティガー計画。

その作戦目標は、簡単に言うとグラ バルカス主力を引きこみ包囲殲滅するというものだ。

さらにグラ バルカスのもつ大艦隊を減らすための作戦まである。

 

「ティガーか。たしか新型重戦車にティガーがあったな。そこからとったのか?」

 

ルーデンドルフは軽戦車の次に量産が決定されていたティガー戦車を思い出した。

 

早い、強い、硬い。傾斜装甲を取り入れた画期的な戦車でありオーストリアの戦車相手にでも十分勝てる。

 

「ああそうだ。この作戦にはありとあらゆる最新の兵器が必要だ。状況によってはこの作戦は無くなるかもしれないがな。」

 

「マンシュタイン元帥のおっしゃる通りで。またあの大戦を繰り返すのだけはごめんですな。」

 

「ルーデンドルフもグラ バルカスとは戦いたくないのか」

 

ワインを飲むゼートゥーア

 

「ああ。さすがに嫌だぞ。ゼートゥーアもマンシュタイン元帥も知ってるだろ?かの国の海軍はあのイギリスとフランスを足したような国だ。我々とたいした性能差も無い、かなり厄介な国だ。とっておきでも使わねば勝てないだろうな。」

 

「そうだなルーデンドルフ。そのとっておきだが、もう時期完成するぞ。」

 

「そうなのか!何時だ?」

 

「来年か再来年だ。全く、我が国は優秀な人が多くて助かったな。」

 

◆◇◆◇

ゲッベルスの自宅

 

至って普通の家で暮らすゲッベルス。彼は今、次の計画をたてていた。

愛国心のあるものをもっと増やしたい。そう考えていたのだ。

プロパガンダでも限界はある。プロパガンダ映画ばっかでは効果が無いから普通の映画もやりつつ、プロパガンダ映画がプロパガンダとは思えないような出来にしたり、ー例えば恋愛映画だがよく見ると主役はドイツ人だが悪役はグラ バルカスの関係者だったりそれを連想するようなものを仕込んだり、悪役は決まってグラ バルカスだったりとー フォルクスワーゲンの車の値段を下げたりーこの時のフォルクスワーゲンは国営企業ー

鉄道や道路の整備やロウリア、クワトイネなどの旅行を推奨したりして不満を無くし反感を減らしているが数年後は分からない。

 

「子供の代が問題なんだよな。道徳教育に愛国心を芽生えさせるような方法もありだが人口減少が起きたらなぁ。ん?人口減少を止める?」

 

ゲッベルスはいい政策を思いついた。

 

「子供を増やすよう、結婚を奨励する法律を作ればいいんだ。」

 

この後ゲッベルスは結婚資金貸与制度と愛国心が芽生えるような教科書を作らせた。




次回、焼却

しばらくはweb版エスペランド王国編が続きます。
あまり長くは続きませんが


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35話 帝国の進出

ドイッチュラント級重巡洋艦

アドミラル グラーフ シュペー

と旗艦 航空戦艦 ビスマルク 空母 ペーター シュトラッサーを中心に軽空母5隻、軽巡6隻、駆逐艦19隻、補給艦、輸送船多数、の大艦隊が大海原を進んでいる。

 

目的は、第203航空魔導大隊の救出及び大陸の制圧だった。

 

鋼鉄の船が進む。

 

もちろんこれを他国が傍観している訳もなく、近くにオランダ艦隊やオーストリア艦隊、デンマーク艦隊、ブルガリア艦隊もおり、なかなかの風景となっていた。

 

◆◇◆◇

「おおーあなた達が例の人達か!!!君のその格好も、実にエキサイティングだ!!文化の違いを感じるよ。

 

 私は王宮科学庁のセイという学者だ。よろしくな!!」

 

突然馬車が来て中にいた、細身で、少し変人がかった彼は降りて直ぐにこっちに来ては、ターニャに握手を求めながら、はなしかけてくる。

 

少し引きながらも、国の科学者が来るという話は聞いてたため握手はしておく。

 

「よろしくお願いします。」

 

科学者か、どこぞのMADを思い出す。

 

「ところで、これは君の国が作り出したのかね?」

 

学者は、墜落した輸送機を指示し、ターニャに尋ねる。

 

「はい。ドイツ帝国産です。」

 

食料提供の見返りにある程度の情報を与えなければならない。本国から了承は得たからいいんだけど。

 

「ふむ。さっぱりわからん。恐らくこの板が高速で回転し風を作り、推進力で飛ぶことができるのだろう。だがそれだけのエネルギーを出すための方法がさっぱりだ」

 

この学者、よく一目でこの輸送機の仕組みがわかったな。

 

「なぜ分かるかって?なぁに私もかつてこういうのを作りたくて絵を描いた事があるのさ!」

 

そういえばダ・ヴィンチも未来の兵器を描いてみたとかでヘリや戦車を描いてたな。着眼点は悪くないと言ったものだが。

 

「大隊長殿、敵が来ます!」

 

ケーニッヒ中尉が無線で連絡してくる。ケーニッヒの中隊には偵察を任せていたのだ。

 

「セイさん、ここに敵、魔物が来ます。」

 

「敵は何かね?」

 

セレブリャコーフ中尉は偵察から戻ってきて報告する

 

「魔物の数は150。うち、真っ黒なやつが2、ハイオークが3体、残りはゴブリンです。」

 

ハイオークやゴブリンは何体か倒したから分かるが真っ黒なやつとはなんだ?

 

「真っ黒なやつ、漆黒の騎士か。やつは強いぞ」

 

「それだけではありません。後方に、大量の魔物がいました!恐らく主力かと」

 

「セレブリャコーフ中尉、どれくらいだ?」

 

「5万です。」

 

こんなに魔物が集まっているとは。恐らく原因は魔物狩りだろう。単体では勝てぬと踏んだ魔物が集まったわけか。

 

「セレブリャコーフ中尉よ。どうやら敵は多少の知恵はあるみたいだ。だが集まっている、密集しているのだろう?」

 

5万、確かに数は凄いが集まっているなら別だ。

 

「第3中隊はそのまま主力を偵察。第2中隊は接近中の敵を倒せ!残りは大規模長距離狙撃術式で敵主力を葬るぞ!」

 

 

◆◇◆◇

セイは目の前で次々と魔物が倒されていく光景を見た。

 

人が空を飛び、次々と魔物を倒していく。

それはまるで神話の使徒のようにー。

 

◆◇◆◇

戦闘開始から既に4時間。

さすがに5万はキツかったか。

超長距離狙撃や爆裂術式をぶっぱなしているものの、やっぱり思ったより削れない。

地雷を使っているもののこっちの弾薬量にも限りがあるから問題だ。

ターニャは焦る。

 

「まだ来ないのか。」

 

「デグレチャフ少佐、弾薬がもうありません。残存魔力にも余裕が...」

 

「くそ、第2ラインまで撤退。王国兵も使ってやる」

 

第2ラインは城壁だ。ここで奴らを迎え撃つ。

混戦となれば銃を使う事は出来ないが弾の節約にはなる。

 

第203は第2ラインまで後退。そこへ魔物1万近くがくる。中には戦車のようなものも混じっている。

ゴブリンらは王国兵へ突撃。数の差もありやや劣勢。

 

「第2中隊は戦車を!第3、第4と補充部隊は前線と中央の間を叩け!残りは私と一緒に来い!敵司令部を叩く。」

 

ターニャは陣形から敵の司令部を推測しそこへ向かう。

弾薬が尽きるのが先か、救援の部隊が来るのが先か。




次回でこの編は終わりです。


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36話 平定

「デグレチャフ少佐、弾薬、残存魔力既にありません!」

「王国兵の前線が突破されました!」

「魔力切れによる脱落者が半数を超えました!」

部下から続々報告が来る。既に脱落者が大量に出ている

魔力か切れれば防核すら保つことが出来ない。

いくら近接格闘戦に慣れていようが多勢に無勢。それに相手は人間ではない。人より大きいのだ。熊とやり合って勝てるような人間なんてそうそういない。

 

「くそ、もうここまでか!」

 

王国兵ももうズタボロだ。敵戦車は破壊したものの数の暴力というのは恐ろしいものだな。

 

「数の暴力か。ベルリンの戦いもこんな感じだったのかな。」

 

あと何分持つか、それも分からない。

 

 

「....ジジジ....第..3...航空....,.ジジジ」

 

無線に反応があった。

 

「...こちらドイツ帝国艦隊、第203航空魔導大隊、応答セヨ」

「こちら第203航空魔導大隊 大隊長ターニャ フォン デグレチャフ少佐だ」

「デグレチャフ少佐、喜べ救援に来た。そちらに爆撃機を派遣した。」

 

海を見るとそこには大量の鋼鉄の船、ドイツ海軍などがいる。

そこから大量の爆撃機がやってくる。

 

「これは、勝った」

 

爆撃機に着いている大きな筒が途中で切り離され一直線に飛んでいく。

それが敵に突っ込むや否や、大爆発を起こす。

 

「対艦ミサイルか。いや対艦ロケットか。」

 

さっきまでの劣勢が嘘のようだった。

2万の魔物はあっという間に数を減らしていく。

艦砲射撃も加わり既に敵はボロボロ。

 

数分間艦砲射撃をした後、ほかの航空魔導師がくる。

 

あとは蹂躙だった。

 

その後魔物は壊滅。無人の土地はドイツ、オランダ、デンマーク、オーストリアが4: 2.5 :2.5:1 でわけられることとなり、エスペランド王国は各国と国交を樹立。

魔物を完全に滅ぼし平和が訪れることとなった。

◆◇◆◇

ドイツ帝国 最高統帥議会

ドイツの首脳やその他官僚、さらには皇帝陛下も出席する。

今回の議題は、「世界会議について」だ。

この世界の列強が参加する世界会議。もちろんドイツは参加する。オーストリアは参加出来なかったがそれも仕方ない。

 

「世界会議に参加するとはいえ、戦艦を派遣するのは情勢的に考えてありえないでしょう!」

 

外務大臣は言う。

「ようやく各国と連携が取れてきたのです。ここで軍事力をみせ他国を脅迫するのはよろしくない。それは世界大戦で理解したでしょ!」

 

今のドイツに世界を相手に戦えるほどの兵力は無い。いくら軍事力に差があろうとも治安維持にも兵をさかねばならない以上、限界はある。

 

「ならどうする?」

 

レーダー提督が提案する。

 

「なら、重巡、シュペーと駆逐艦1隻を派遣してはどうですか?」

 

「戦艦ではないし、海賊対策としても悪くないか。」

 

こうして世界会議に派遣する船が決まった。

 

 




次回から世界会議編になります。


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5章 亀裂
37話 世界会議


世界会議の始まりです。


神聖ミリシアル帝国 港町カルトアルパス

 

広大な港湾施設を持つ港町カルトアルパス、先進11ヵ国会議には、各国の軍が大使を護衛し、やってくるため、すべてが収容できるよう、開催地には、この港町カルトアルパスが選ばれた。

 

港湾管理者の元には、続々と到着する各国の軍の情報が集約される。

 

「グラ・バルカス帝国到着、戦艦1隻のみ」

 

「おお!!」

 

それを見た者すべてが感嘆する。

グラ・バルカス帝国の誇る、(自称)全世界最大最強の戦艦。

 

全長263.4m

全幅 38.9m

満載排水量 72800t

 

港町カルトアルパスの住人は、その雄々しい姿に圧倒される。

 

「化け物かこれは?」

 

45口径46cm3連装砲を3基、世界最大の砲は、誇らしげに水平線を向く。

 

グラ・バルカス帝国超弩級戦艦グレードアトラスターは、神聖ミリシアル帝国港町カルトアルパスに入港した。

グラ・バルカス帝国の戦艦は、あまりにも大きく、強烈であり、近くに見える第1文明圏、トルキア王国の戦列艦や、アガルタ法国の魔法船団がおもちゃに見える。

 

オマケに大砲はあまり積んでないものの1発1発の威力が高く、直撃しなくても損害を与えることができそうだ。

 

「おい、あれを見ろ」

 

少し遅れてグラ バルカスより小さい船が入ってくる。

 

「ドイツ帝国が来ました。巡洋艦1、小型船1、輸送船4隻です。」

 

ドイツ重巡洋艦 アドミラル グラーフ シュペー

全長 186 m

最大幅 21.6 m

排水量 16000トン

 

近くにあるグレートアトラスターに比べるとシュペーが重巡洋艦ではなく軽巡洋艦に見えてしまいそうだ。

 

「そばにいる小型船も大きいな。」

 

あの小型船だけでも第2文明圏相手なら余裕で勝てそうだ。そんな気さえする船。

 

「まぁ俺達には勝てないさ」

 

◆◇◆◇

「まさか、ほとんどの国が艦隊を連れてきているとは....各国すべてが本当に砲艦外交のような事をしているのか。」

 

アドミラル グラーフ シュペー艦長、ハンス・ヴィルヘルム・ラングスドルフ大佐は驚く。

ビスマルクやシャルンホルストを派遣しなかった理由は砲艦外交をしないためだったのだが、ラングスドルフからしてみれば重巡洋艦送っているだけでも砲艦外交では無いかと疑問視していた。

 

元々シュペーは、小さい戦艦ことポケット戦艦として設計されたものであり主砲は52口径28.3cm3連装砲2基となっている。シャルンホルストと変わらない主砲だ。

 

でもそれよりも大きい戦艦、グラ バルカスのグレートアトラスターに比べれば可愛いものだ。

 

「しっかし、なんて大きさだ。その代わり遅そうだが。」

 

主砲は40?いや46cmはあるな。こいつは航空機じゃないと倒せなさそうだな。

 

ラングスドルフ大佐は外交官のリッペントロップが戻ってくるまで船で待機することにした。

 

「副艦長、コーヒーを持ってきてくれ」

 

「既に持ってきています」

 

気の利く副艦長だ。

コーヒーを飲みながら各国の船を見る。

 

「戦列艦か。プロイセン時代にはあったと聞く。こんな骨董品をまじかで見れるなんて人生何があるかわかったもんじゃないな」

 

「艦長、ここは異世界ですよ。にしてもグラ バルカスと言いましたっけ?あの船、日本の戦艦と見た目が似てません?」

 

「そうだな。日本には2、3回行ったことあるがその時にみた戦艦とちょっと形が似ているな。大きさは違うが。」

 

ラングスドルフ大佐は前に日本に行ったことがあり、その時に日本の戦艦をみた。

 

「日本か。ドイツの仮想敵国とは言えなかなかいい国だったよ。文化が違いすぎて異世界と感じてしまうくらいにはな。」

 

「大佐、言語が通じるだけここの世界の方がマシですよ。」

 

2人は外交官が帰ってくるまで待つつもりだった。




次回、愚行


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38話 開戦

ターニャ登場はもうちょいお待ちください(びっくりドッキリメカで登場させる予定)


世界会議

各国が占いの話で盛り上がっている。

リッペントロップにとって魔帝とはよく分からない国である。

ドイツでも魔帝は危険視されている。と言うのもある仮説が出たからだ。

 

ドイツやオーストリア、デンマーク、オランダなどがこの世界に飛ばされた理由は魔帝に対抗するためというものがある。と言うのも魔帝にはロケットや、最重要機密だが核兵器に匹敵するものが存在するとされている。

 

そんな国が突然やってくるなんて非現実的だがそもそも我が国がこの世界にやってくるのも非現実的だ。

非現実的が現実になっているのだからその辺を考えるのは無駄なのかもしれない。

 

それよりも今回、この私がやる事は各国の動きを探るのが目的だ。特にグラ バルカスの動きは要注意だ。

 

と注意していたらグラ バルカスが突然侮辱発言をしだす。

正直、グラ バルカスが何を考えているのか理解できない。どうやらレイフォルとやらを倒したのがかなり嬉しいようだ。

 

グラ バルカスの女性ははっきりとみんなにこう告げた。

 

「一つ、最初に伝えておこう。

我が国は、今回、会議に参加し、意見を言いに来たのではない。

 

この地域の有力国が一同に会するこの機会に、通告しに来たのだ。

 

グラ・バルカス帝国 帝王グラルークスの名において、貴様らに宣言する。

 

我らグラ バルカスに従え。

 

我が国に忠誠を誓った者には、永遠の繁栄が約束されるだろう。

 

ただし、従わぬ者には、我らは容赦せぬ。力で潰してやる

 

沈黙は反抗とみなす。

 

まずは尋ねよう。今、この場で我が国に忠誠を誓う国はあるか?」

 

沈黙。

その後の罵声。当たり前といえば当たり前だ。

どうやらグラ バルカスは本当に砲艦外交のつもりで来たようだ。従わなければ滅ぼすか。それはつまり宣戦布告と受け取っていいのでは?

 

「とりあえず明確な書類や被害がある訳でもない。冗談というオチもある。冗談で済めばいい話だけどな。1度本国に情報送るか。」

 

グラ バルカスの女性が退出した後にリッペントロップは一旦情報を本国へ送った。

 

◆◇◆◇

 

それから数日後、世界会議にてグラ バルカスの艦隊が神聖ミリシアル帝国艦隊へ奇襲をかけ被害が出たという報告が出た。どうやらやはりあれは宣戦布告のようだ。

 

どうやら一時期避難させるつもりらしいが船はどうするつもりなのだろうか?

各国はどうやらグラ バルカス艦隊とやり合うつもりらしい。

 

「すまないが我がドイツ帝国は民間船もあるためこの海域から脱出させる。これはドイツ本国からの指示である。」

 

グラ バルカスに拿捕なんてされたら最悪だ。本国の指示は、対グラ バルカス戦は協力するが港の貸出しなどの許可を貰う事と派遣している艦隊を早急に本国へ帰還させること。無理ならば自沈させろというものだ。

 

「な!ドイツはグラ バルカスごときに恐れをなしたのか!」

 

「今ある戦力ではグラ バルカスの艦隊を撃退出来ない。戦力を整えねばならないのだ。」

 

「だがなリッペントロップよ。既にグラ バルカス艦隊はここに近づいて来ている。協力しないとここから脱出もできないだろ?」

 

拒否権はないということか。

リッペントロップは小さくつぶやく。

 

「どうなる事やら。シュペーではあのデカブツには勝てない...来ないことを祈るしかないか」

 

◆◇◆◇

ラングスドルフ大佐は異世界の艦隊をみる。

 

「数はあってもなぁ。弾除けくらいにはなるだろう。」

 

「艦長、全速力でいけばギリ突破できるかもしれません。ですが...」

「最悪突破出来なければこの船を盾にすればいいだろ」

「確かにそれなら駆逐艦や民間船は逃げることができるでしょう。でもそれだとこの艦は沈み」

「この艦に乗った時点で死ぬ覚悟はあるだろ?」

「えっあっはい。」

 

重巡洋艦シュペーを盾に駆逐艦や民間船は進む。その船に乗っているのは希望か絶望か。

 

◆◇◆◇

「レーダーに反応あり!敵航空機およそ200機!」

 

報告が上がる。

ラングスドルフ大佐は敵艦隊の規模を推測する。

 

「敵戦力は最低でも空母3~4、駆逐艦10隻以上か。空母機動部隊だな。」

 

絶望的な戦力差。他国の船も含めれば50隻以上がこの港に集まっているが正直戦力としてカウントしていいのはムーと神聖ミレシアムくらいだろう。

 

「とりあえず対空戦闘用意!観測機を上げろ!」

 

これから歴史にも残る大海戦が始まる




次の投稿は多分土日..

絶望がやって来る....
次回「大艦巨砲主義」

ターニャ「え?何これ新しい作戦の指令書?本当にこれ、やるの?(どうしてこうなった...)」
ヴァイス「今回は死を覚悟した方が良さそう」
ケーニッヒ「あぁ、彼女欲しい」


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39話 グレートアトラスター

自称最強国家 神聖ミリシアル帝国の防空網を容易く突破したグラ バルカス航空部隊は湾内に侵入。そこには海をも埋めつくさんとする程の艦隊があった。

 

 

「これが敵の艦隊か。やっぱり前時代の遺物がおおいな」

 

グラ バルカスのアンタレス艦上戦闘機に乗っているロメイは獲物を探す。

既にムーの航空機やワイバーンは既に壊滅させたし、風竜とかいうやつとは旋回性能が高くアンタレスと互角にやれるということがわかった。

 

「ん?あれは噂のドイツの航空機か。なんだ、複葉機じゃないか。複葉機ということは格下か。ドイツの技術力もそんな程度か。 」

 

ロメイはドイツの複葉機に向かって急降下する。

太陽を背にすることにより発見しにくくしつつ高度差を生かした速度で潰そうとした。

 

「敵複葉機は5機。それに対しこっちは7機。余裕だな」

 

だが彼は知らない。複葉機は確かに単葉機に比べて速度や上昇能力は劣るがその分いい所があるということを。

 

「しねおらぁ」

 

機銃を撃つが、その瞬間目の前からドイツの航空機が姿を消した。

 

「な、なんだ?何処へ消えた?」

 

後ろを振り返るとそこにはドイツの航空機がいた。

 

次の瞬間、ロメイはドイツの偵察機に撃ち落とされた...

 

メッサーシュミット観測機 b108は別名「空飛ぶ不条理」観測機とは思えない性能でグラ バルカスのアンタレス艦上戦闘機を次々撃ち落としていき7機撃墜したところでアンタレス艦上戦闘機は逃げていった。

だが上空でアンタレス艦上戦闘機とドイツのメッサーシュミット観測機が戦っている間にシュペー目掛けて魚雷を撃とうと海面スレスレを飛ぶリゲル型雷撃機 計12機。

 

狙いはもちろんシュペーを轟沈させることだ。

だがシュペーも対空を強化された重巡洋艦であり、

魚雷を積んでいるため鈍足なリゲル型雷撃機はただの的でしかなった。オマケに一直線で来るのだ。

それだけでは終わらない。海面スレスレを飛んでいるのだ。

 

水しぶきだけでも航空機は墜落する。

 

一機、また一機と撃墜されていく。

だが3機程が魚雷を投下。それも100%シュペーに当たる位置で。

 

◆◇◆◇

「魚雷3本来ます!避けれません!」

 

「海兵魔導師を出せ!」

 

海兵魔導師とは航空魔導師の海軍verだ。

魚雷の破壊、対潜水艦、制空もできる便利屋。

ただし航空魔導師と同じで数が少ないのが欠点。

 

「艦長、ケイル島南側から戦艦出現!!グラ・バルカス帝国グレードアトラスターです!!

同艦は、ケイル島南側から、海峡入口に向かい進行中です!」

 

魚雷は破壊したが一難去ってまた一難。

 

「海峡を塞ぐつもりか。よし、全員に告げる。本艦はこれよりグレートアトラスターと戦闘に入る!駆逐艦と民間船がグレートアトラスターの射程圏外に退避するまで我々は戦う。

グレートアトラスターの足を奪うため全力で後方を狙え!なお弾薬制限はない。全弾使い切ってもいい!」

 

「艦長、司令部から連絡が」

 

「今更なんだ?」

 

「その、白銀を送ると」

 

白銀とはターニャの事だ。

 

「そうか。信号を送っておけ。ここにいるとな」

 

◆◇◆◇

ミリシアル帝国艦隊やムー国の艦隊がグレートアトラスターに突っ込んでいったのを好機と捉え全速力で海峡を渡ろうとするが、目の前であっさりとミリシアル帝国艦隊とムーの艦隊が壊滅。

 

グレートアトラスターはシュペーに狙いを定め、

またシュペーはグレートアトラスターとやり合う準備を終わらせた。

 

ここにグレートアトラスターvsシュペーの一騎打ちが始まろうとしていた...




次回予告とサブタイトルが非常によく変わる。(これってサブタイトル詐欺に入るかな?)

今回ターニャの話を入れようと思ったがそうすると長くなるため次回...

次回「グレートアトラスターvsシュペー」



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40話 グレートアトラスターvsシュペー

「なぁ、これに乗るのか?」

 

グラ バルカスが世界に宣戦布告した頃

ターニャは参謀本部から渡された作戦を実行するべくキール軍港にあるこの研究所に来たのだ。

 

目の前には大量のエンジンが搭載された飛行機がある。

 

「どうかね大佐!この美しい、すらっとしたスタイル。この最新型ジェットエンジンが大量に取り付けられた機体!大量のジェット燃料を消費する代わりに最高速度は音速の2倍!マッハ2!!ドイツでもこの速度についていける機体は存在しない!え?方向を変えられない?方向なんて変える必要は無い!ただ真っ直ぐ、真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ飛べればいいのだ!!さらにさらに戦闘についている爆弾の威力は対艦ロケットと同じ威力!これぞ神に認められた私にしか出来ない代物だ!」

 

と自信満々に語るこの機体の設計者 シューゲル。

相変わらずMADだ。

 

「あのぉ、衝撃波による問題は.....」

 

「そんなもんとうの昔に解決した!既に最新式ジェット機を配備しているのだ安心したまえ!」

 

ジェット戦闘機なんていつ配備したんだ?少なくとも見たことないぞ?

 

「解決してるならいいか。いや良くない。」

 

人命軽視の代物に乗りたくないんだ。

 

「あの、これ確か開発事態凍結されたと聞いてるんですが?」

 

「開発凍結?そんなもんとっくの前に撤回させた!さあデグレチャフ少佐、これは命令だ。出撃しなさい」

 

どうしようもない。

 

「分かりました。その前にヴァイス中尉」

 

「は!」

 

「大量のアルミ箔と旧式の通信機の用意を!」

 

「な、何故でありますか?」

 

「使うからだ。優秀な兵器も時にはそれが弱点となることを奴らに教えてあげるのさ」

 

ターニャは悪魔のような顔で笑う。

 

敵の技術は1940年代の日帝と米帝レベル。ならつけ入る隙はあるということ。

 

◆◇◆◇

グレートアトラスターとの戦闘開始からすでに10分が経過。

 

「2番砲塔、うて!」

 

シュペーの28.3cm砲が火を吹く。砲弾は正確にグレートアトラスターの後方に命中するが、対空砲が潰れるくらいの損害しか与えられない。

 

「くそ、火力が足りないか。魚雷全門発射!」

 

シュペーの魚雷8本がグレートアトラスターに向う。

爆音と巨大な水柱がたつ。

 

「どうだ!全弾命中か!」

 

傍の観測員は正確に情報を艦長に伝える

 

「いえ。5本即発です!1本は避けられ命中2。なおグレートアトラスター傾いてません!」

 

「くそ!海軍研究部のクソッタレどもめ。魚雷の重要性を理解してないのか!いっその事職員を魚雷の代わりに発射してやろうか!」

 

ードイツ海軍正式魚雷

G7b2は射程距離 7500m 40ktだが最大の弱点があった。それは不発と即発がしやすく木銃と評価されレーダー提督も「こんな酷い魚雷を配備している国も無いだろう。」なんて言うくらいだ。

 

なおそんな酷い魚雷を使い続けた理由はまず、ドイツは陸軍国家だ。海より陸、空を重視し対イギリス戦の基本も空軍であり陸、空の急速な技術発展は海にまで行くことはなく予算も陸、空中心に割り振っているからでもある。

魚雷のコストが高いことも相まって酷さは変わらない。

一応初代よりはましになっている。ー

 

「艦長!敵艦から発煙確認!」

 

「総員、衝撃に備えろ!」

 

船の傍で大きな水柱がたつ。さらにその衝撃により船が大きく揺れる。

 

「これが46cm砲か。」

 

ランスグドルフ大佐も経験したことの無い揺れに慌てる。

 

「そういえば今、80cm列車砲搭載の戦艦作ろうという噂を聞いたことがあるがあれって本当なのかな。」

 

頭から血を流している副艦長は小さい声でつぶやく。

 

「さすがに嘘でしょ。80cm列車砲もあるのかすら分からないし。」

 

「副艦長、それだけ喋れるなら大丈夫だな。」

 

何かに頭をぶつけ頭から血を流している点以外は特に問題の無さそうな副艦長。

 

「へへへ。艦長。この俺がこんな事でくたばるとでも?俺は船に生きると決めたんだ。死ぬなら船と一緒に死ぬ。それまでは絶対に死なない。」

 

「全く悪運が強いな。おい、海峡突破まであと何キロだ?」「8キロです!」

 

「艦長、敵艦の砲塔全てがこちらに向いてます!」

観測員は恐怖で声が震える。

 

それはグレートアトラスターが本格的にこっちを狙ったということだ。

 

「どうやら敵さんはさっきの魚雷にブチ切れたらしい。」

 

沈めなかったとはいえ、確実にダメージは与えたはずだ。例え微量だったとしてもだ。

 

「魚雷放て!」

再び魚雷8本がグレートアトラスターに向かっていく。

再び大きな水柱が起こる。

 

「魚雷....6本即発!命中2!」

 

距離があるとはいえいくらなんでも即発し過ぎだろ。

 

「このくそ魚雷め!だから潜水艦に砲塔をつけるべきだとかいう声が上がるんだ!」

 

「艦長!グレートアトラスターが傾いてます!致命傷ではないですがかなりのダメージは与えました!」

 

グレートアトラスターは魚雷のダメージにより数度傾き、速力も落ちた。だが主砲は再び火を吹く。

それも全門一斉射撃。

 

ズドンッという激しい音と共に揺れる船。さらに続く大爆発音。どうやら直撃したらしい。

衝撃により艦長も近くのパイプに頭をぶつけた。

 

「損害は!」

 

「か、艦長!後方に被弾!機関停止!航行不能です!」

「Dブロックにて火災発生!」

「左舷浸水!限界をこえました!」

 

どうやらシュペーもここまでのようだ。

 

「艦長。恐らく5発直撃しました。もうこの船は鉄の棺桶です。」

「沈む…か。総員、逃げろ。副艦長はどうする?」

「決まってるでしょ。最後までこの船にいますよ。そうだね。最後は弾薬庫を爆破させようかな?そういう艦長は?」

「そうだな。この船と心中するさ。最後にせめてケーキが食べたかったな。 さて、駆逐艦が無事海峡から出られるよう煙幕をはりたいがどうすれ....」

「どうしました艦長?」

 

「は!副艦長!この船を爆破して煙幕を出そう!」

 

この後シュペーから脱出した乗組員は駆逐艦に救助されどんどん傾き始めるシュペーからある程度離れたタイミングでシュペーの火薬庫が爆発。

シュペーは真っ二つにさけ、どデカい黒い煙をだしそれに紛れた駆逐艦と民間船は海峡から脱出した。




シュペー轟沈。
グラ バルカスが逃げた駆逐艦をそのまま見逃す訳もなく追撃戦が始まります。
次回「白銀は舞い降りた」


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41話 白銀は舞い降りた

グレートアトラスター 艦橋

 

「ドイツ帝国重巡洋艦、撃沈したな」

 

艦長ラクスタルは予想以上にあっさりとドイツのシュペーを撃沈できたことに喜んでいた。というのもグレートアトラスターはシュペーの魚雷を受けたのだ。

 

「魚雷数本じゃ沈まない。グレートアトラスターは不沈艦だ。」

 

傾いたグレートアトラスターは、浸水した区画の反対側に水を入れることにより体勢を建て直したが修理は必要となっていた。

だがそれを知らない他の国にはグレートアトラスターは不沈艦だと認識した。

 

ドイツの船はデカく、砲も大きく威力も高いがグラ バルカスのあの巨大な船には一切通用しなかった。

ドイツの謎の攻撃(魚雷)によりその船は確かに傾いた.....だがそれは今や体勢を立て直し何事も無かったかのようにいるのだから。

ミリシアル帝国、ムーに続きドイツの船まで轟沈した。

士気がボロボロになった各国の船はグラ バルカスの航空機からの攻撃によりさらに轟沈していき、全滅まで時間の問題となっていた。

 

シエリタは逃げたドイツの船も沈めるようラクスタルに伝えた。だが、

 

「残念ながらあの駆逐艦にはこの船では追いつけん。代わりに他の駆逐艦を追撃に送った。2隻もいれば沈められるだろう。安心したまえシエリタ嬢。ドイツの駆逐艦は我らと対して変わらなかそうだがあの魚雷だぞ?ほとんど即発するような欠陥魚雷を使うような国なんてたかが知れてる。余裕で沈められるさ」

 

と返ってくる。グレートアトラスターは速度が遅いのだ。仕方ないのだがシエリタには嫌な予感がしてならなかった。

というのもシエリタはドイツの複葉機の変態的な動きをまえにあっさりと主力戦闘機が撃墜されたのを見たからだ。はたして予想通り事が運ぶとは思えなかった。

◆◇◆◇

海を全速力でかける駆逐艦1隻と民間船その後を追いかけるグラ バルカスの駆逐艦2隻。

ドイツの駆逐艦、Z級駆逐艦の艦長 エーリヒ少佐はやせ細った頬を触る。

彼は身の危険を感じると頬を触る癖があったのだ。

 

「敵艦の速度は!?」

 

「敵艦、速度およそ34ノット!」

 

現在この船の速度は20ノット。もうまもなく追いつかれる。

敵艦の大きさおよそ102.6メートル、45口径12cm単装砲4基と魚雷が数門。

 

「敵艦は恐らくキャニス級駆逐艦です!キャニス ミナー級とは別艦です!」

 

「ということはもう少しで奴らの射程圏内か。」

 

その時船内にアラームが鳴り響く

 

「味方の援軍が来ました!識別暗号は、青、赤、白?いや銀、 白銀!ということは第203航空魔導大隊です!ただ、数が聞いている情報より多いのですが。」

 

レーダーにははっきりとターニャ達の部隊とその後ろに200以上もの航空機が映っていた。

 

「味方の戦闘機か?」

 

『 こちら第203航空魔導大隊のターニャ フォン デグレチャフ少佐です。救援にまいりました。』

 

無線で子供の声、ターニャの声が響く。

 

「こちらZ級駆逐艦 艦長エーリヒだ。貴官の部隊は48人しかいないと聞いたがその200以上の航空機は何かね?」

 

『 これらは全てダミーです。』

 

そういえばレーダーの性質上の問題で反応しやすい金属片があると聞いたことがある。もしかしてそれか?

 

『 敵にはレーダーが搭載されている可能性が高いと聞き、撹乱のためにこの辺一帯にアルミ箔をばら撒きました。』

 

「艦長!敵艦速力が落ちました!戦闘態勢に入った模様です!」

 

そりゃあレーダーに突然200以上の航空機が現れれば直ぐに対空戦闘の用意を始めるだろう。もはや追撃する余裕も無くなるものだ。

 

「なるほどデグレチャフ少佐。敵艦が速度を落とした隙に我々はトンズラするよ。あとシュペーは沈んだ。生き残ったのは我々だけだ。歓迎会でも開こうか。」

 

エーリヒはデグレチャフ少佐にそう言い終わると直ぐにデグレチャフ歓迎会の準備に取り掛かった。

 

◆◇◆◇

その頃その空域にて。

 

ターニャは味方の駆逐艦が完全にこの海域から抜けたのを確認してから離脱の準備に取り掛からせた。

 

セレブリャコーフ中尉はターニャに質問する。

 

「あの少佐、なんで離脱するんですか?今ならあの駆逐艦を沈めることだってできるのに?」

 

「いいかねセレブリャコーフ中尉。駆逐艦は戦車とは違う。やつの装甲は硬い。我々ではさすがに分が悪い。オマケに向こうには近接信管まであるそうじゃないか。

あれに突っ込むのは死ににいくようなものだ。」

 

先祖の日帝様は米帝の艦隊の中に突っ込んで行ったがあれはおかしい。精神力が違いすぎる。まだ死にたくないぞ私は。

 

「それにだ。駆逐艦なんて何隻沈めても直ぐに補充されるさ。狙うだけ無駄ってことだ。さぁ帰るぞ。」

 

ターニャは早く帰りたかった。なぜなら、人間ロケットでここまで飛ばされた挙句、駆逐艦と睨み合うという状況が嫌だったのだ。

 

その後、ドイツの駆逐艦と民間船は無事帰還できたもののそれ以外の船は全てグラ バルカスに撃沈されこの海戦はグラ バルカスの勝利で幕を閉じた。




キャニス級はオリジナル艦です。モデルは旧大日本帝国海軍 春風です。

次回「勝利の秘訣」


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42話 反撃の準備

風邪引いたけど治しました。雨ニモマケズ風邪ニモマケズ
1部説明が間違ってましたすみません。訂正します。



中央歴1642年 西暦1938年5月

やや暑くなってきたこの日、ターニャはオランダから仕入れた新聞を読む。

トップにはこう書かれていた。

 

「オランダ政府は正式にグラ バルカスに対して宣戦布告。ドイツと共に戦う事を決意!これでヨーロッパ諸国参戦国はオーストリア、デンマーク、ブルガリア、ポーランドと新たにオランダとなった。」

 

ターニャは改めて思う。グラ バルカスは世界を相手に戦うという無謀な事をしていることに。

 

「戦争なんて金の無駄使いなのによくやるよな。」

 

この戦争は今までのように簡単には終わらなそうだ。

海軍力は転生前のアメリカ、日本と同じ。

転移前ならアメリカ、イギリス連合、カナダ、日本、フランスコミューンとほぼ同じときた。それだけの艦艇数を維持出来る経済力とか化け物級だろうな。

 

これは机上の空論だが陸戦、航空戦なら一方こっちが有利。だが海戦はこっちが不利と言ったところか。艦艇数の差はどうしようも無いものだ。余程の技術差が無ければ。そう、60年、70年位の差が無ければ。

◆◇◆◇

 

ドイツ帝国 統帥議会

 

いつもは陸海空と財務省が喧嘩する統帥議会。というのも陸海空と財務省は犬猿の仲だ。だが今日は静かだ。

 

海軍のレーダー提督が今回の海戦結果を伝える。

 

「今回の海戦は我々の敗北です。まず重巡洋艦 アドミラル グラーフ シュペーが轟沈し艦長以下4名が死亡。残りの乗組員は全員救助されたものの、敵艦 グレートアトラスターと呼ばれる戦艦は厄介です。46cm砲を搭載し対空性能も高い。さらに報告によれば魚雷を受け傾いたグレートアトラスターはその後注排水により体勢を立て直したと。」

 

「というとなんの損害も与えれなかったと?」

 

「いえ。損害は与えてます。恐らく2ヶ月くらいは修理のためドックから出られないでしょう。」

 

ドイツ帝国 首相 ヒンデンブルクはレーダー提督に質問する。

 

「ということはレーダー提督、傾いても直ぐに体勢を立て直されるのならグレートアトラスターは沈めることはできないと?」

 

「いえ、グレートアトラスターには弱点があります。確かに大口径と対空砲もりもりですがその分速度は非常に遅く、ダメージコントロールが追いつかないほど片方に魚雷を打ち込みまくれば沈みます。」

 

「ならシュペーが全速力でかければ海峡を抜けれたのでは無いのか?」

 

「シュペー艦長、ラングスドルフ大佐は何故か敵艦、グレートアトラスターに突っ込みました。恐らく確実にグレートアトラスターの機関部を破壊しようとしたのでしょう。」

 

「なるほど。ではどうやってグレートアトラスターを撃沈させるのか?」

 

「見たところグレートアトラスターには対潜装備もなさそうなので潜水艦で撃沈可能です。つまり魚雷が命運を分けます。どうか魚雷開発に予算を!」

 

レーダー提督はドイツ海軍の魚雷の弱点が出まくったシュペーの雷撃をそのまま報告した。これにより彼らは、「魚雷が弱すぎる」という事がはっきりと伝わったはずだ。敗北は次の勝利へ繋がる。

これまでのドイツ、プロイセン時代がそうだったように。

 

「空軍からもどうか魚雷開発をやって欲しいです。」

 

空軍長官も言う。というのも空軍としても相手が相手だ。艦隊とやり合うにはまともに動く魚雷が欲しいのだ。

 

「でも、これ以上予算を軍にやると国内産業にも影響が...」

 

財務省もこれ以上、軍事に予算を回すのは無理だと答えるしかない。事実そうなのだから。ロウリアやパーパルディアでの利益を軍事に回してるのだ。これ以上やると国民も悲鳴をあげるのではないかという恐れもある。

 

この重い空気を変える一言が放たれる。

 

「では総力戦体制に移行すれば問題は解決できるのでは無いのかね?」

 

ヴィルヘルム2世の発言。総力戦体制になれば確かに当面の問題は解決するがそれをすれば国民の不満が爆発するのではないか?

 

「国民の不満が爆発すると心配しているんだなアウト大臣」

 

図星をつかれた財務省アウト大臣は驚きの声を上げる。

 

「え、あ、はい。その通りです。いくらトラウマを乗り越えたと言ってもあの時代を繰り返したいなんて考えるものは少ないでしょう」

 

「そうか。だがその心配は必要ない。ゲッベルス、あるのだろうその問題を解決する方法は?」

 

宣伝大臣 ゲッベルスは立つ。

 

「ええ。ありました。すでに問題は解決しているのです。これらの資料を見てください」

 

ゲッベルスは資料を配る。資料にはこう書かれた。

 

「グラ バルカスとの戦争に賛成ですか?」

 

というアンケートとその結果が。

 

「実は先週、あちこちでアンケートをしました。するとなんと開戦派が99.9%でしたよ。」

 

ゲッベルスの布石。それはグラ バルカスの脅威をそのまま一切隠すことなく公表することだった。これにより国民はグラ バルカスという野蛮な国を撃退するという意志で統一することが出来、不満がたまることも無い。

 

こうしてゲッベルスの布石もありあっさりと総力戦体制に移行。国内基盤をしっかりと整える事に成功し魚雷開発も一気に進むのであった。




次回は番外編の予定。前に書いてた奴が残ってるので。

「首切りジャック」

サイコパスキャラをぶち込んでいくぅ


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番外編 首切りジャック

前回の話にて多数の誤りがありました。
指摘ありがとうございます。



パーパルディア帝国

 

「レミール殿下、本当にこいつをナンバーズに組み込むのですか!」

 

と食事をしているレミール女帝に今回編成される最精鋭部隊、ナンバーズに入ることとなった男 ジャックに危機感を覚え反対するジェリー軍事大臣。

 

「仕方ないでしょ!反乱軍のせいで優秀な人は全員死んで人が足りてないのよ。将軍も足りないし士官も足りない。足りない士官はドイツから雇っているけど期間がきれたら終わりだし。その代わりの精鋭部隊なのよ。」

 

レミールは人手が足りないために何人分もの仕事をしていたのだ。産業、経済、人事...そろそろ過労でぶっ倒れるのでは無いかという噂もたっているくらいだ。

なお夫のドイツ帝国第二王子も外交、法務、財務などをしているためこっちもこっちでぶっ倒れそうだ。

 

「殿下、それは分かってます。急いで軍事を建て直さなければならないのも。でも、彼は犯罪者です。」

 

ジャック 別名首斬りジャック。

元パーパルディア皇国の処刑人でありあまりにも多くの罪人の首を斬ったため精神がおかしくなった。

正義を準ずるものだが無実のものを命令とはいえ毎日処刑したのが原因だったとか。

皇国が崩壊し故郷に戻った彼はそこで敗残兵から野盗とかしたパーパルディア皇国兵を殺しまくった。

その数、524人。さらに名だたる犯罪組織を単独で壊滅。殺す時は必ず首を斬り落とすことから首斬りジャックと呼ばれた。

彼が捕まった時、尋問した人ははっきりとこう言った。

 

「彼の心は壊れている。」

 

ジャックが人を殺す理由。それは、

「楽しい。首を斬り落とすのが楽しくて楽しくて仕方が無いんだ。特にそれが悪なら特に。ねぇ?お前は何か悪いことをした?」という快楽殺人者。

人を殺すことに幸福を覚えるそういう奴だ。

 

「分かっているが、最精鋭部隊を作るにはどうしても彼のようなやつがいるのだ。機関銃を相手にでも戦えるような身体能力を持っているんだぞやつは。」

 

機関銃も恐れず突っ込んできたという情報もある。

 

「殿下がそこまで仰るなら。しかし注意してください。彼は、悪魔です。」

 

ジェリーがようやく下がった。

 

「分かっている。彼ほど危険なやつはいないことも。でもここまで深刻な人手不足ともなると使わざるを得ないんだよ。それにやつが敵と認識したものは悪だ。」

 

こうしてパーパルディア帝国最強の戦闘集団、ナンバーズが設立された。

構成員は計9人と少ないものの、隠密性や格闘戦闘に特化しており射撃は、至近距離から撃てば問題ない程度とされた。

 

ナンバーズはドイツからの支援要請もありムー国へ派遣された。




次回 「各国の反応」


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43話 反撃の準備

色々忙しくて更新出来ませんでした。
ティッシュのデマのせいで色んな店回ることに。
鼻炎辛い。


ムー国 アルー付近

グラ バルカスに近いこの街でドイツ陸軍機甲師団と多国籍軍と航空魔導師が集まっていた。

2万人ちょっとのドイツ兵とウクライナ、ポーランド兵が集まっていたのだ。

 

 

アルー司令所

 

ここに機甲師団のトップ、ロンメル将軍と航空魔導大隊のターニャ、ウクライナ軍 セヴァストポリ将軍、ムー国のアルタ将軍とムー国航空隊のトップが集まっていた。

 

「さて、戦況はどのような状況で?」

 

ロンメルはアルタ将軍にたずねる。

 

「はい。現在我々連合軍は3万人。それに対し敵軍はおよそ4万。さらになにか箱みたいなのが多数あったと」

 

「箱?それは鉄でできているのか?」

 

「そう聞いてます」

 

ムーには戦車がない。だから知らないのも無理は無いだろう。

 

「戦車か。たしかグ帝の戦車は日本と同じ戦車だったな」

 

ロンメルは転移前から他国の戦車の性能なども調べていたのだ。だから日本の戦車の性能も知っていた。

 

「なら問題ないな。日本の戦車と同じ性能なら我々の障害にすらならない。」

 

それはターニャにも予想はついていた。

(そりゃそうだ。敵は日本のチハとほぼ同じスペックの戦車に対してこっちはティガーⅠとⅣ号戦車だ。ワンサイドゲームもいい所だ。)

 

チハは登場時は悪くなかった。だが欧州の戦車の恐竜的進化に取り残されアメリカの格下戦車に負けるという悲しい状況となった。さらに日本という立地の関係上、装甲を薄くしたのが問題だった。

一応、アメリカ戦車ともやりあえるために強化されたチハ改がある訳だが登場するかどうか。

 

ロンメルはしばらく考えた後、作戦を言う。

 

「まずムー国兵を敵にぶつける。勝てとは言わん。嫌がらせ程度にだ。」

 

ロンメルの作戦は至って簡単。ムー兵をぶつけ敵を怒らせる。怒った敵は反撃のためにこっちに来るだろう。そこで敵をたたきつぶすというものだ。

 

「なぁに、防衛用の塹壕はもうあるし鉄条網もひいてる。さらに対戦車砲、野砲も多数配備してるから敵戦車なんて怖かねぇ」

 

「お前は俺の部下を見殺しにしろというのか!」

 

キレるアルタ将軍。それもそうだ。ムーの銃はグ帝の銃より性能が悪い。しかも作戦もほぼ捨て駒に近い。

とターニャは考えてたわけだがロンメルはそんなこと一切考えてなかった。

 

「何が捨て駒だって?そんな事する訳ないじゃないか。無理に敵を倒す訳では無い。嫌がらせだ。適度に叩いて即撤退。撤退の援護にムー国航空隊と第203を使う。」

 

え?

 

ターニャは最前線送り。しかも、今までと違って対空砲もあるだろう場所にだ。

 

「デグレチャフ中佐、期待してるぞ。」

 

ターニャに逃げ場は無かった。

 

 

解散後、

ロンメル将軍はこの戦争全体の戦局をみる。

 

神聖ミリシアルとムー、多数の連合艦隊が先日グラ バルカスとやり合い負けた。いや、戦闘結果では引き分けだが戦略的大敗北だろう。何しろ神聖ミリシアルは空中戦艦という、空飛ぶ戦艦というワケわからない物をだしたがそれもグレートアトラスターに撃沈された。

戦局は劣勢。

うちだってシュペーが撃沈された。

このままでは裏切る国が出てくるだろう。

イタリアみたいに。

 

「参戦国の中には中立の国もあるからな。表面上は参戦してるが傍観を続ける国も多い。大半は小国だから気にしなくてもいいが。」

 

ロンメルはデグレチャフの書類を見つける。

そこにはデグレチャフの経歴と戦歴と戦果が書かれている。

 

「あの小娘、最初は聞いていた通り餓鬼だと思ってた。だが話してみると小娘というより将軍と話しているようだったな。よくここまで昇進できたものだ。貴族が昇進しやすいというのに。まぁ使えるなら徹底的に使うまでだ。」




多分週末にあげる。あげたい。


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44話 グ帝の悪夢 1

3月5日 朝。アルーからグラ バルカスへの攻撃が始まった。

 

ムー国1200人とムー航空隊、それと第203航空魔導大隊。

これからこの軍勢でグラ バルカスに攻め込む。嫌がせが目的とはいえ相手が相手だ。対空砲も脅威だし。

 

「任務は地上への適度な攻撃と味方部隊の撤退の支援か。 攻撃ヘリのような動きが理想なところだな。」

 

「こうげきへり? とはなんですか?」

 

とセレブリャコーフの質問。

 

「独り言だ気にするな」

 

 

しばらくムーの歩兵の動きを見る。

密集して進軍してないだけでも高評価だ。どうやらムー国兵は一応第一次世界大戦前レベルの戦術教育を受けているみたいだ。なんだろう、これまでの国のレベルが低すぎたからかムーが強く見えるな。

 

ターニャはグ帝の陣地を見る。

どうやら塹壕も掘っておらずたいした機関銃も置いてない。かなり舐めきってるようだなこれは。それに対空砲が4基ほどしかない。後方には多数の戦車が確認出来る。恐らく侵攻の準備をしていたのだろう。

 

「あの戦車が動き始めたら即撤退だな。ムーには対戦車砲無いし、我々40人強であの戦車を全て破壊するのは無理だろう。」

 

ここにルーデルがいれば話は違うんだが。

 

「さて、3個中隊で対地攻撃するぞ。残りは制空権の確保と敵機甲師団の監視だ。動きがあれば知らせろ!」

 

「はい!」

 

 

◆◇◆◇

「ムー国軍!敵の防衛線を突破!敵の防衛力は非常に脆弱です!」

「前線の制空権を確保!」

「第203航空魔導大隊より報告。多数の機甲師団を発見。なお対空砲は4基しかなくそれも全て破壊済みだと。」

 

ロンメルは作戦の報告を受け取る。

嫌がらせとしてはもう十分完了している。

まさかここまで敵をボコボコにできるとは予想してなかった。

 

「どうやら敵さん、殴ってこられるとは思ってなかったのか?」

 

対空砲も少ないしおかしい。

いや、考え方の違いか?

 

「順調ならいい。第2フェーズを開始しろ」

 

◆◇◆◇

グ帝に侵攻した連合軍はグ帝の防衛線を次々突破。

グ帝が機甲師団を投入する直前で突如連合軍は撤退を開始。

グ帝は連合軍に一撃を与えるべくムー国へ侵攻を開始。

最新のグ帝の戦車はムーの第1防衛線を難なく突破。だがこれがロンメルの罠だった。

 

◆◇◆◇

ターニャは空からグ帝の機甲師団を眺める。

なるほど、グ帝の戦車は本当にチハそっくりだな。

これなら自走砲だけでも勝てそうだ。

 

「さてと、ロンメル将軍はどう倒すのかな」

 

史実では砂漠のキツネと呼ばれていたのだ。ここのではどう呼ばれるのか気になるな。

 

「大隊長!中央のムー国軍が下がっていきます。」

 

ヴァイス中尉が撤退していくムー国軍を見つける。

第二防衛戦では、グ帝の戦車を食い止められていたのに下がる。

 

「どこまで下がるんだ?」

 

その時、ターニャはロンメルが何をしようとしているのかを悟った。

 

「ロンメル将軍はポケットを作ってグ帝を包囲殲滅するつもりだな。」

 

両翼の機甲師団はそういう意味だろう。ならやる事は1つ。

 

「よしパーティの時間だ。グ帝狩りの始まりだ」



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