がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 (イギーさン)
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本編:第1章 移動編
第二十七話 たびだち


高校のライフラインはダウンし、もう使い物にならなくなった。生き残った黒田理琉、丈槍由紀、恵飛須沢胡桃、若狭悠里、直樹美紀、祠堂圭、狭山真冬、佐倉慈、太郎丸は新天地、聖イシドロス大学へと向かう。




車体ボコボコ、車検に通したら確実にアウトになりそうなVOXYハイブリッドに乗って、八人の生存者達は大学へと向かっている。

 

「大学まであとどれくらいだ?」

 

「えっと、70マイルくらいかな?」

 

「え、違うよ胡桃ちゃん、あと100マイルはあるよ?」

 

「う・・・」

 

胡桃と呼ばれる少女は何故か地図が読めない。

 

車を運転している少年、(実際は交代した)黒田理琉(くろだまさる)は恵飛須沢胡桃にあとどのくらい離れているのかを聞く。なぜ聞いているのかというとだ・・・最新型車両のはずなのにナビがついていないからだ。よって大学までは紙の地図を使用して向かっている。だが、道なりに走っていてもスムーズに事が進んでいるわけではない。所々事故車で通れなかったり、ゾンビの大群と鉢合わせになったりと、普通なら1時間半で到着できるような道を3~6時間かけて走行している・・・一日は24時間。当然夜がやってくるワケだが、いかんせん綺麗なホテルや旅館がある訳でもないので、車中泊を余儀なくされることに。

 

「やっぱ車中泊ってキツいな・・・」

 

「キャンピングカーとかあればなあ・・・」

 

胡桃は両手を頭の後ろに当てながら言っている。

 

「そンな貴重なアイテム、簡単には見つからないぜ・・・?」

 

 

前部座席に理琉と胡桃がいる。その後ろには、丈槍由紀というピンク色の髪に猫耳帽子を被った少女がウェーブヘアが特徴の佐倉慈という女性と話していたり、狭山真冬という黒髪の少女と、若狭悠里という少女が柴犬の太郎丸と遊んでいたり・・・直樹美紀という少女と、祠堂圭という少女が会話をしていたり・・・

 

 

「楽しそうだな」

 

「混ざってくればいィじゃねェか」

 

「あたしは眠いから良いよ・・・ふあ~~~・・・」

 

「俺も寝るか・・・おーい、お前らもさっさと寝ろよー、早く寝ないとお化けが来るゾ~?」

 

「ヘンな冗談やめろよ・・・」

 

「胡桃の後ろに何かいるぜ?」

 

 

「えッ?」

 

 

 

 

胡桃が後ろを見ると・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピャーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!・・・・ってなにもいねえじゃないか、脅かすなよバカ!」

 

 

「ギャハハハハハハハ、たっぷり笑わせてもらったぜ・・・イヒヒヒヒ・・・」

 

「お前覚悟しとけよ・・・?」

 

 

 

胡桃が耳まで顔を真っ赤にしている。

 

 

 

「ねえマサル・・・隣で寝てもいい・・・?」

 

真冬が乗り出して来た。

 

「えっと・・・ここ狭いぞ・・・?」

 

「大丈夫、問題ない・・・」

 

「・・・・・」

 

真冬は理琉の隣で寝る。胡桃が睨んでくるが、理琉は気づいていない。

 

 

 

 

 

 

 

夜中の事。

 

 

 

 

 

 

「ん・・・・マサル・・・起きて・・・」

 

 

真冬が突然起き、理琉を起こした。

 

 

「どうした?眠れないのか・・・?」

 

 

寝起きの彼女は目を擦る。髪は所々ボサボサで、その姿はいつものクールさとは正反対だった。

 

 

「ちょっと外出たい・・・」

 

「死にてェのか・・・?」

 

「そうじゃなくて、今日は流星群が・・・みんな起きちゃうから早く・・・」

 

「どこでそんな情報を・・・仕方ねェな・・・」

 

ショットガンを持ち、静かにドアを開けて外に出た。幸い、近くにゾンビはいないため、2人は車に寄りかかる形で座った。

 

 

「少し肌寒いな」

 

「うん・・・」

 

「・・・なんか、凄く懐かしい」

 

夜空を見上げて一人呟く理琉。

 

「え・・・?」

 

「オマエの姉ちゃんとも、二人で肩を並べてよく星を見たもんでさ・・・そンときの小春ったら凄く星に詳しくて・・・」

 

「ボクもある程度わかるよ。お姉ちゃんに教えて貰った程度だけど・・・」

 

「俺は理系だけど、天文学とかよくわからねェから、真冬に教えて貰おォかな」

 

「フフっ、ボクで良ければ付き合うよ?」

 

「ありがとうな。じゃァ早速・・・北半球では見えない星って―――」

 

 

 

 

真冬と話す時間は、まるで小春と話していた時と同じようにかけがえのないものになっていた。理琉は別に特別な感情を真冬に持っているという訳でもない。真冬と小春は一つしか違わない。容姿もほぼ同じ。一部は真冬より小春の方が勝っているが、それでも彼にとって真冬は守ってあげたいという存在。妹より早くこの世を去ってしまった姉の為にも、真冬を守り抜く・・・彼はそう誓っている。今までも、そしてこれからも黒田理琉は狭山小春の妹、狭山真冬を命がけで守り続ける・・・

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで夜が明けた。珍しく由紀が早起き。

 

 

「ん~・・・ありゃ、マー君と真冬ちゃん、いつの間にこんな寄り添ってる・・・フフッ・・・」

 

 

寝るときは被っていない猫耳帽子。それを外している由紀はいつもの子供っぽい元気な表情というよりかは、どこか大人びていて穏やかな表情をしていたのだ。

 

 

「ヒヒヒ、写真撮って胡桃ちゃんに見せちゃお~」

 

「そォいうこと言うのはこの口かァ~?」

 

「いたいいたい、ごめんなさいもう言いませ~ん」

 

理琉があおむけの状態で由紀のほっぺを両手で抓る。

 

 

「あ、マサル、おはよう・・・」

 

「起きたか真冬。・・・狭くねェの?」

 

「大丈夫」

 

「そ、そうか・・・」

 

 

声を聴いた他の人間も次々と起床した。ただ一人、起きられていない人物が・・・

 

 

 

 

「めぐねえ~もう朝だよ~?」

 

いつまでも起きない女性、慈を由紀が起こしている。だんだん強く揺さぶられていき、とうとう起き上がった。

 

「おはようございまふ・・・」

 

目を細めているため、まだ寝起きの様子。髪もボサボサで、どれがアホ毛(チャームポイント)なのかわからなくなっている。

 

「AM7:00か。まだ先は長い。慌てずに行こう」

 

「「「「「「「はーい」」」」」」」

 

「ワン!」

 

 

 

理琉と胡桃が交代で運転をしている形だ。運転技術が少しでもある人間がいれば心強い、と彼は思っているらしく、胡桃はそれに応えられるようになぜか車の中に入っていた教習所で貰うような本を読み進めている。運転はゲームでならやったことあるとか言っていたが、意外にも遠足の時は無事故(ゾンビ轢殺は除く)で行けたのであまり問題ないのだろう、と理琉は勝手に思っている。

 

美紀と圭は談笑をしており、とても楽しそうだ。美紀が太郎丸を撫でている。太郎丸もかなりご満悦な様子。

 

今度は由紀が後ろからオーディオ機器を弄ろうと前に乗り出してくる。

 

「あ、あんまり変な所触るなよ?」

 

「誤解を招く言い方すンなよ」

 

「どこもおかしくねぇだろ!」

 

胡桃が顔を赤くしてツッコむ。

 

「うん、気を付ける・・・でも・・・触りそう・・・?」

 

由紀が何かのスイッチをポチッ・・・と押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ザ―――・・・・ねえねえ聞こえる?こちらはワンワンワン放送局!この世の終わりを生きているみんな、聞こえるかな~?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「由紀ちゃん、それ、ラジオじゃない?」

 

慈に指摘をされ、由紀も驚く。

 

「あ、本当だ!しかもAMだぞこれ!?」

 

「ということは・・・」

 

「生存者が・・・」

 

「まだいるってことかァっ?!」

 

 

全員は喜び、ハイタッチを交わす。

 

 

 

「とはいうけどさ、電波の発生源わかるのか?」

 

胡桃が疑問を抱く。

 

「発電系能力者とかがいれば可能かもしれねェが、ここは能力者の街じゃァねェ。ンなことはありえない・・・」

 

「だよな・・・」

 

「地道に探すしか、無いってことですよね・・・」

 

「ワウン・・・」

 

 

 

その後も電波の発生源を目指すべく、ゆっくりと車を走らせる。田んぼの真ん中へと差し掛かったが、ここで問題が発生する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

God Damn(クソッたれ)・・・ガソリンがあと少ししかねェ・・・スタンドまであと4マイルも離れてるし・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガソリンが危機的状況となっているが、無事に済むのか?
次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第二十八話 ほきゅう
私達は、ここにいます。


皆さま、お久しぶりです。本日からまた連載をスタートいたします。最後まで見ていただけると嬉しいです。最初少しグダグダな展開になってしまいました。これから改善していくので暖かい目で見ていただけると幸いです。


もう2019年も終わりですね・・・正月ネタ書こうっと・・・


りーさんガチャは悉く爆死しました・・・


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第二十八話 ほきゅう

大学へ向かう前に少し寄り道をする学園生活部。しかし車のガソリンが底を尽きた。4マイルも離れているガソリンスタンドに無事到着できるのか?


God Damn(クソッタレ)・・・ガソリンがあと少ししかねェ・・・スタンドまであと4マイルも離れてるし・・・」

 

 

「おいおいマジかよ・・・」

 

全員が顔を青くした。ガソリンのメーターはEを指している。現在いる所からガソリンスタンドまでは結構離れているため、そこまで持ち堪えられるのか不安な所。他の車とは違いハイブリッド車なので多少長くは走れるはずだが・・・

 

「予備のガソリン持ってくれば良かったわね・・・」

 

「すまねェ、俺の失敗だ。急いでガソリンスタンドへ行くぞ」

 

「安全運転でね?」

 

「わかってるりーさん」

 

出来るだけ燃料を節約すべく、時速20マイルほどで走行し、ガソリンスタンドへと向かう。メンバーはガソリンが底を尽きないか不安になっているが、まぁ大丈夫だろう。

 

 

「最寄りのガソリンスタンドにはコンビニもある。食料を調達しつつ、今日はそこで休むぞ」

 

「はいよ」

 

胡桃が返事をした。

 

「あと、胡桃に後で話しておくことが一つある」

 

「ん?何だ?」

 

「着いたら話すさ」

 

はぐらかされ、難しい顔をする胡桃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃は一つある違和感を覚えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『温度を感じにくくなっている』ことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガソリンスタンドへ到着した。由紀が何やらソワソワしている。

 

「俺らが先に中の様子を見てくるから、りーさんたちはこの車にガソリンを入れてくれ。ハイオクで」

 

「ハイオクで走れるの?」

 

「まあ特に問題はないぜ」

 

「わかったわ」

 

 

「くるみちゃん、マー君、疲れてるだろうし、私も行くよ」ムフー

 

何かを感じ取った胡桃。由紀の頬に手を添えた。

 

「由紀に化けた宇宙人め~!本当の由紀をどこへやった~?」

 

「ちょっ!冷たっ!手伝うって言ったのにこの仕打ちひどいよ~」

 

「ンで、本音はどォなンだ?」

 

理琉が腕を組んで由紀に聞く。

 

「コンビニで漫画読みたいなって・・・」

 

「ま、そんなところだな」

 

「だと思った・・・まぁいいや、来たければ来い。ただし、あまり離れるなよ?」

 

「は~い!」

 

「由紀ちゃん気を付けてね?」

 

「大丈夫だよめぐねえ!」

 

そして由紀は胡桃と理琉を引っ張っていき、コンビニの中へと入っていく。美紀、圭、真冬が由紀を心配そうに見ている。

 

「大丈夫かなって思ってる?」

 

「え、あ、その・・・」

 

美紀が返答に困っているが、

 

「大丈夫よ。胡桃とマサル君がいるし、それにああ見えて由紀ちゃんも素早いから・・・」

 

「そういえば、そうですね。私達を助けてくれた時も、由紀先輩が走ってきましたし・・・」

 

 

 

由紀は護身用にMP5(サブマシンガン)を背負い、理琉はFA-MAS(アサルトライフル)ウィンチェスターM1887(レバーアクション式ショットガン)(手持ち)、胡桃はAK-47(ヘビーアサルトライフル)、シャベル(手持ち)を持って行った。

 

「うわぁ、やっぱり荒らされてンな・・・」

 

「ま、漫画売り切れてるし!!」

 

「薬品の類も、ほぼ無しだな・・・」

 

「生活の跡が見て取れるな。いずれにせよ、こんな汚い所で寝たくはないな」

 

「なァ由紀、俺たち、一応裏も見てくるから、ゾンビ来たら知らせるかMP5で倒してくれ」

 

「うん。そうだ、その間に床掃除しとくね」

 

由紀は売り物の棚につるされていた箒とチリトリを取り出した。何をするかと思えば、フロアをてきぱきと掃除し始めたのだ。この光景に理琉も胡桃も目を4回ほど擦った。

 

「なぁ由紀・・・お前最近・・・」

 

胡桃が由紀をジーっと見ている。

 

 

 

「美人になった?とか?」ポッ

 

 

 

「んがァっ」ビターン

 

突拍子のない発言に理琉はギャグマンガの如くコケた。

 

「はぁっ?!」

 

「クールビューティー?」フリフリ

 

「クールビューティーでもねえし!!」

 

「痛てて・・・由紀は前から美人だと思うぜ。タダコドモッポイゲンドウガオオイダケ」

 

「ふぇっ?」カァ

 

最後の言葉は聞き取れなかったのだろうか。

 

「むぅ・・・」

 

胡桃に睨まれている。視線に気づいた理琉。

 

 

 

 

「え、俺何かした?」

 

 

 

 

気づけこの鈍感野郎。

 

 

その日一日はこのガソリンスタンドで過ごすことに。幸いその日の分の食品が少し残っていたのでそれを使うことに。他にも、何か使えるモノをと、メンバー全員で探し回ってみたり・・・コンビニ内を綺麗にして寝られるように改造したり・・・一日生活できるような環境へと変えていった。入り口にはゾンビ対策として大きめの鈴をつるしておくことに。

 

 

・・・と、理琉が何やら車を改造していた。

 

 

 

「マサル、何してるの・・・?」

 

真冬が理琉に訊いた。

 

「あぁ、コレか。ガソリンがなくなっても走れるように、水素電池とソーラーパネルを取り付けたンだ」

 

「どこからそんなものを・・・」

 

「気にしたら負けだ。んで、一応ゾンビに対抗できるよう、車のフロントに刃物を取り付けておく。そうすればゾンビを轢いたとしてもダメージはこの刃物にしか行かない・・・はず・・・」

 

「う、その自信なさそうな顔・・・」

 

「心配するな、自覚はある・・・」

 

「フフッ、そういうことにしとくよ」

 

真冬は背を向け、手を後ろで組みながらコンビニの中まで歩いて行った。

 

「・・・あ、そうだ、忘れてたぜすっかり・・・」

 

コンビニに向かい、胡桃を呼ぼうとしたが、こちらが歩き始める前に胡桃がやってきた。

 

「お、胡桃」

 

「話があるって言ってたよな?」

 

「あぁ。ソレについてだ」

 

理琉は胡桃の右腕にまかれている包帯を指した。

 

「これがどうかしたのか?」

 

理琉は少し暗い顔をし、自分から伝えるにはあまりにも残酷すぎる内容を胡桃に打ち明ける。

 

 

 

 

「オマエに打った薬だが・・・アレにゾンビ化の原因となるウイルスを撲滅する効果は無いンだ。Ω特効薬と書かれているが、原材料名を見たところによるとあの中身は強壮剤と抗生物質しか入ってないンだ」

 

 

「えっ?!!」

 

胡桃が顔を青くした。

 

「それってどういう・・・」

 

「まだ症状が表れていないというのも厄介でな・・・要は、あれはただのビタミン剤に過ぎねェンだ・・・」

 

「そんな・・・」

 

「なァ、それと聞きてェことがある。果夏という少女に咬まれた後、そしてあの薬を打った後、何か自分の体に起こった変化はあったか?」

 

理琉の質問に少々返答できずにいたが、ウソは言えないため、真実を伝えるべく彼女は重い唇を開いた。

 

「最近、温度を感じなくなってきてるんだ・・・今もそう。暑いんだか寒いんだか・・・あと・・・『やつら』に敵と認識されない・・・」

 

「何っ?!」

 

「昨日車中泊する前に周りが安全かどうか確かめたんだよ・・・やつらの内の一体が距離数フィートしかないのにこっちに気づかなくてさ・・・」

 

「ちょっとそれはマズいな・・・」

 

「もしかしたら・・・あたしはもう『あっち側』なのかもしれねえな・・・」

 

「・・・まだ動けるンだよな?」

 

「まあ、AK-47の乱射くらいなら余裕だけど・・・」

 

「なら、まだ大丈夫かもしれない。だが、ちょっとでも調子が悪くなったら俺に言ってくれ。絶対助けてやるから。副部長として、誰一人死なせるわけには行かないからな」

 

「クスッ、お前も言うね。こんな世界じゃなかったらあたし惚れてたよ」

 

「オマエは先輩一筋じゃねェのかよ・・・」

 

「『前』は・・・な・・・今は・・・」

 

「前・・・?」

 

胡桃は少しそっぽを向いている。あの時彼女は自分の手で初恋の相手を殺めたことがまだ心に強い痛みを感じている・・・しかし、彼女の中で理琉に対する別の『感情』が生まれており、先輩を殺めたことの罪悪感とは違う『痛み』が胡桃の胸に来ているのだ。それが何を意味するのか、理琉はもちろん、今の彼女に理解できるはずがない。

 

「あぁもう!この話は終わり!早く行こうぜ!由紀たちが待ってる!」

 

「お、おう・・・」

 

胡桃に手を引かれ、コンビニへと戻っていく。理琉を掴む胡桃の左手は、氷のように冷たかった。しかし、どこからか温かみを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。

 

 

 

 

 

 

 

「私の出番が少ないんだけど~!」

 

圭が文句を言っている。

 

「圭、落ち着いて・・・」

 

コンビニに置いてあった酒を誤って飲んでしまい、酔っぱらっている。

 

「んもう、翠ちゃん早く原稿提出しないと締め切り間に合いましぇんよ~?」

 

「え、圭、何言ってるの?」

 

「美紀、心配するな、作者の中の人ネタだから」

 

胡桃が美紀の肩をたたく。

 

 

「おいおいそれより圭ちゃん大丈夫なンか?酔いを醒ます薬とかねェの?」

 

 

「持ってないわよそんな都合のいい物・・・」

 

「ましゃるくぅん、酔い止めならここにあるわよ~?」

 

「それ車酔い用・・・ってか佐倉先生何飲んでるンすか?!」

 

「ましゃる君モフモフ~♪」モフモフ

 

「ちょっ!やめろって!胡桃、真冬、助けてくれ~!!」涙目

 

「「知らない」」

 

 

 

「不幸だぁ~~~!!!!」

 

 

 

 

その後酒に酔った慈と圭は寝てしまった。仕方がないので布団をかけてやることに。

 

 

「ったく、酒癖が悪い女性とか初めて見たぜ・・・モカの如くモフられたし・・・トラウマになりかねない・・・」ブルブル

 

「お疲れさま・・・」

 

悠里が少し苦い顔をする。

 

 

「流石にもう酒は無いはず・・・って由紀?」

 

「ん~・・・」

 

「顔真っ赤?!」

 

「酒飲んでないよな・・・?」

 

「あら、由紀ちゃんブランデー入りのチョコレート食べちゃったの?」

 

「おいおい洋酒入りのチョコで酔っちゃうのかよ・・・」

 

 

『全くだらしない子ね!それでも私の妹なの?!』

 

 

「「今小春(お姉ちゃん)の声が聞こえたんだけど・・・」」

 

 

「あたしも聞こえたぞ」

 

「私もよ・・・ってあれ、由紀ちゃんは?」

 

 

 

 

すると、コンビニの奥の扉がギギィっと開き・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、お姉ちゃん・・・いい子になるから、もう怒らないで・・・?」オズ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「何事!!?????!!!」」」」」

 

 

「おいおいここでも中の人ネタを・・・まァ可愛いから良いけど・・・」

 

「悠里お姉ちゃん!!」

 

「ゆ、由紀ちゃんっ?!」///

 

「恐るべしブランデー・・・」

 

「胡桃お姉ちゃん、お掃除のお手伝いするよ・・・?」

 

「すげえ、新鮮だ・・・あぁ、ありがとうな!」

 

「マサルお兄ちゃん・・・」上目遣い

 

「ぐはっ」(吐血)

 

「胡桃先輩!早く増血剤を!!」

 

「ここは・・・天国・・・なのか・・・?オマエら・・・先に逝ってる・・・ぜ・・・」敬礼

 

 

 

「死ぬなバカ!!」

 

 

 

「美紀お姉ちゃん・・・真冬お姉ちゃん・・・今の私の方が・・・好き?」///

 

 

「美紀~、戻ってきて~」

 

真冬にペシペシ叩かれる美紀。現実に戻ってきた。

 

後頭部を胡桃に殴られ、我に返る理琉。由紀に一発チョップをかました。由紀は正気に戻り、顔を赤くする。

 

「い、今までの、全部演技だからね?」

 

「いや無理があるな・・・」

 

「記憶残るタイプ?」

 

 

「演技だからぁぁ~~!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

茶番を終え、就寝するメンバー。

 

「お布団いいね~」

 

由紀が太郎丸を抱きかかえて寝ている。

 

「悪いわね、掃除までしてくれちゃって」

 

「あぁ、実はほぼ由紀がやったんだぜ」

 

 

「え、うそ」

 

 

ひ、ひどいよみーくん・・・」ウルウル

 

「みーくんじゃありませんから」

 

「最近は役に立つよな」

 

「まるで普段は役立たずみたいな・・・」ムゥ…

 

 

 

「嘘だよ。昔っから役に立ってるよ」

 

 

 

「そ、そうかな・・・」モジッ

 

「それは、間違いありません」

 

「ワン」

 

「ンだな」

 

「由紀ちゃんは、もう大丈夫ね」

 

う、うん・・・」///

 

由紀は若干顔を赤くし、布団を鼻まで被り照れながら答える。

 

 

 

 

真夜中。

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 

由紀が突然目を覚ました。・・・かと思えば懐中電灯を持って外へ出ようとする。

 

 

 

 

 

「由紀ちゃん、どうしたの?」

 

 

ギクッ

 

 

「あのねー・・・おさんぽ・・・星がきれいみたいだから・・・」

 

「だめよ、夜中に外へ出たら」

 

「え~」

 

「そこに座って?」

 

「ぶ~」

 

「す・わ・り・な・さ・い?」

 

悠里は終始笑顔だが目が笑っていない。これはヤバいやつや・・・

 

「ハイ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定、由紀は説教を食らった。

 

 

 

「ん・・・・」

 

 

理琉が目を覚まし、由紀に説教している悠里の姿を目撃する。

 

 

(俺は夢でも見てるンだろうな・・・早く寝よう)

 

 

この光景を見なかったことにし、さっさと眠りにつく理琉であった。

 

 

 

 

 

 




ラジオの発信源を見つけるべく再び動き出す学園生活部。しかし結末は思いもよらぬ方向に・・・
次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第二十九話 はっけん
私達は、ここにいます。


由紀ちゃんが酔ったシーン・・・またもや中の人ネタを取り入れました。チノちゃんのあのシーンが好きすぎてついやってしまいました。楽しんで頂けたでしょうか?ではまた次回!


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第二十九話 はっけん

ふたたび発信源を探す学園生活部。しかし結末は想像を絶するものだった。


翌日。コンビニを出発した学園生活部。

 

「マサル、発信源わかるか?」

 

今度は胡桃が運転し、理流がスマホ、地図とにらめっこしている。幸いGPSが生きていたため、それを使う。

 

「ン・・・この波を計算すると、そう遠くではないはずだ・・・北北西辺りから信号が・・・いやダメだベクトル干渉出来ない・・・」

 

どこかの超能力者お前は。

 

「・・・何言ってるんだ?」

 

「いや、GPSで発信源を探してる。・・・ここから一番近いブロードキャスト施設まで約10マイルだ」

 

「おっしゃ飛ばすぜ!!」

 

「やめなさい」

 

理流は胡桃にチョップをかました。

 

「痛ってぇな」

 

「胡桃、安全運転よ?」ゴゴゴゴゴ

 

「わ、わぁってるよ」

 

 

 

 

 

数十分走り、目的地のブロードキャスト施設へと到着した。しかし、理流はにわかに違和感を覚えていた。数分前まで聴こえていた放送が途端に無くなり、それっきりずっと聴こえてこないということに・・・

 

 

 

 

 

 

「結構デケェ建物だな・・・」

 

「見るからに怪しい建物ですね・・・」

 

「これ、ドアどこだ?」

 

建物を見る限り、入り口らしいものは見当たらない。

 

「黒田くん、上じゃないかしら?」

 

慈は梯子がかかっているところを指した。

 

「あ、多分そうだな」

 

「本当にいるのかな・・・?」

 

「まぁ、ここから発信されてたンだから、誰かいる事は間違いないが、生きてるという保証はない・・・

 

「ん?」

 

「何でもねえさ」

 

建物に入る前に理琉が何かを思いついた。

 

「あァそうだ。あの中には俺、胡桃、由紀、美紀で行く。そのほかはここで待機してくれ」

 

「先輩大丈夫なんですか?」

 

「ああいう施設ってなァ見た目はでかくても中はクソ狭い空間なンだ。そんなところでもしゾンビと出くわしたらハチの巣にされる。だから少人数で行くンだ」

 

「マサル、気を付けてよ・・・?」

 

非常用の施設。特に生物兵器対策用のシェルターというものは扉が金庫のようで身動きがとりにくい。そういったことが想定される以上、大人数での潜入は危険と判断する。

 

「あァ」

 

 

胡桃たち3人は梯子を上っていく。もちろん理琉が先頭だ。

 

 

「よいしょっと・・・あァ?何だこりゃ?まるで潜水艦の入口みたいだ」

 

理琉たちはハンドルをゆっくりとひねり、入口のドアを開けた。

 

 

「静かだな・・・」

 

殺風景のスペースに、この静かさ・・・何かがおかしい・・・

 

「先輩、開けますよ・・・?」

 

「おう・・・」

 

胡桃はシャベルとベレッタM92(AK-47は担いでいる)を、理琉は右手にウィンチェスター、左手にFA-MASを構え、由紀はMP5を構えた。

 

美紀がゆっくりと扉を開ける。

 

 

 

しかしそこには誰もいなかった。放送者がいるならば、ブロードキャスト機器のすぐそばにある椅子に座っていなければおかしい。

 

理琉は置手紙を発見した。

 

 

 

『扉を開けるな!!

 扉の先には私がいる。なるべく早く始末するつもりだけどうまくやり方がわからない。

 音がしたらそういうことだと思ってくれ。

 置手紙を見つけた人にこの家とこのキーを預ける。

 

 できればあなたと一緒にお茶を飲みたかった。

 できればあなたと一緒に

 ここを出たかった。

 できれば・・・・・』

 

文字の最後の方は震えており、もう手遅れだったという事がわかる。ワンワンワン放送局の放送者は何らかの理由で(・・・・・・・)感染していたのだ。もう少し早く来ればよかった・・・と言い、拳を握り締め机をガンと叩いた。と、この隣にキーが置いてあることに気づく。鍵の形状からして結構大型の車だという事がわかった。

 

 

あれこれ考えていると、扉から不規則な音が聞こえてきた。

 

 

ガン・・・ガン・・・カリカリカリカリ

 

「マサル?」

 

「あァ、送ってくる。その方が相手も楽だと思うし」

 

「気を付けてな・・・?」

 

「あァ・・・」

 

 

 

扉の向こうへと消えた理琉。その一秒後、ズドン!という音が二回響き、理琉はまた戻ってきた。少しだけ返り血がついている。

 

 

「この先に、良いモンがあったぜ」

 

そういうと、胡桃たちを誘導する。

 

 

照明をつけると、そこには棚のようなものが広がっていた。

 

「うわーいっぱーい!!」

 

「なんか学校の地下と似てますね」

 

「ふぅん・・・ならここで暮らしてもいいかもな」

 

「だめだよ!みんなで大学行くって・・・」

 

「そォだったな」

 

「行きましょう。できるだけ早く・・・」

 

 

 

 

 

 

外に戻り、状況報告をする。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだった?」

 

「あァ・・・留守だった。でも、お土産はあるみたいだぜ」

 

理琉はポケットから先ほど見つけた鍵を取り出した。

 

「マサル、その鍵は・・・」

 

「ああ、あの車の鍵さ!」

 

理琉が指を差した先には、1台のキャンピングカーが・・・

 

「あれって・・・」

 

「あァ、キャンピングカーだ。これに乗り換える。アレならベッドもあるし、比較的快適だろ」

 

「黒田くん、ガソリンは大丈夫なの?」

 

「問題ない。前ヴォクシーに積んだソーラーパネル、そして水素電池をキャンピングカーへ移し替える。念の為予備のガソリンを持っていくぜ」

 

 

 

 

 

心配は無用だ、と一言言ってから、ヴォクシーについていたソーラーパネルを取り外し、水素電池も外す。

 

「重てえ・・・胡桃、ソーラーパネル持ってくれるか?」

 

「任せとけ!」

 

「美紀!車内すごいよ!」

 

「圭、落ち着いてよ・・・」

 

「足伸ばして寝られるんだよ?!」

 

「圭・・・荷物運ぶの手伝って・・・?」

 

「あ〜・・・ごめん」

 

圭も車へ行き、荷物を運び始める。

 

 

 

 

 

 

エンジンを噴かせ、ガソリンメーターを確認する。

 

「よし、ガソリンは満タンだ。ここしばらくは燃料に困ることはないな」

 

理琉が運転席、胡桃が助手席、その他はダイニングルームへと座る。だが、由紀の姿が見えない。

 

 

 

 

すると、トイレのドアがバーンと開かれた。

 

 

 

 

「水洗最高ー!!」

 

 

 

 

「お前なあ・・・」

 

「先輩・・・年頃の女性としては・・・それにマサル先輩もいるんですよ?」

 

「足伸ばして寝られるからいいよね!」←聞いてない

 

「由紀ちゃん、お行儀良くしよう?男の子もいるんだし・・・」

 

「う、ゴメンめぐねえ・・・」

 

謝罪した由紀。しかし続けざまに

 

「でも年頃の女の子としては、お風呂に入りたいところだよ〜」

 

「確かに、体を洗いたいところですね・・・」クンクン

 

「だったら、ここから2マイル先に川があるからそこで水浴びでもするかァ?」

 

「そうだな。んじゃ、行きますか!」

 

 

 

理琉たちは2マイル先にある川へと向かい、水浴びをすることに。

 

 

 

胡桃と由紀は既に水着へと着替えている。

 

「よーし!!行くよ〜!!!」

 

「ンでも、この時期って・・・」

 

理琉の注意を聞かずに川へ全力疾走する二人。

 

 

 

 

案の定由紀が風邪を引いた。しかし胡桃はなぜかけろっとしている。

 

「鍛え方が違うからな!」ドヤッ

 

「・・・いや、胡桃・・・それってもしかして・・・」

 

理琉に悪寒が走る。

 

「本当は水温を感じなくなってきてるんだよ・・・」

 

胡桃が苦笑いしながら理琉に言うと、彼は少し表情を曇らせた。

 

「やっぱり、抗生物質だけじゃダメだったか・・・」

 

「・・・」

 

 

 

「胡桃、ちょっとこっち向け」

 

 

 

「え?」

 

唐突な発言に戸惑う胡桃。何を想像してたんだろうか。

 

「うーん・・・やっぱり体温が下がってる。低体温症の症状は出てねェが、触っただけでわかる。氷のように冷たい・・・」

 

「もうダメなのかな・・・」

 

「ダメじゃない。オマエには生きてもらわねば困る」

 

「そうですよ、先輩」

 

「美紀・・・」

 

「マサル先輩は胡桃先輩のこと大好きなんですから」

 

「おい俺には小春が・・・まぁ死んじゃった人間をずっと好きでいるのもおかしいか・・・」

 

「あたしはいつでもオーケーだぞ?」///

 

「あのなあ・・・」

 

「マサル先輩は鈍いですからね、多分わかりませんよ、いや絶対わからないですね」

 

「美紀、オマエ俺の人生史上ワースト5に入るほどの最悪のセリフ吐いてるぞ」

 

「知りません。先輩は真冬のキモチも考えるべきです」

 

「ハーレムを作る気は無い。警告タグにヒロインは胡桃と真冬って書こうと思った、それじゃ二股交際(どちらかのヒロインに包丁で刺される運命)になる」

 

「マサル先輩はやりそうですけど」

 

「断じてやらねえ。それよりもさっきから体冷たいのに茹でダコ状態になってる胡桃をどうにかしろや」

 

「胡桃先輩、起きてくださ〜い」

 

「んあっ?あぁ、悪ぃ」

 

「さて、洗濯終わったら出発するぞ。まだ先は長い。日が暮れたら車を止めて即キャンプだ」

 

「はいよ」

 

「先輩、私に運転させてください。覚えておきたいんです」

 

「ん、わかった。だが、教えるのは明日だ。夕方以降の運転は危険だからな」

 

「わかりました」

 

「さて、俺は一つ昼寝でもするかァ・・・」ゲホッゲホッ

 

 

PM5:00

 

 

理琉が寝ている間に胡桃が運転し、10マイルほど移動した。

 

 

車の周りにはカラーコーン、規制線、防犯ブザーを設置し、ゾンビ対策をした。

 

 

 

 

夕食を済ませ、就寝するメンバー。理琉は昼からずっと寝ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真夜中。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉が目を覚まし、外を見た。目線の先にはシャベルを持ったツインテールが・・・

 

 

 

 

 

「なッ!?アイツっ!」ゲホッゲホッ

 

 

咳き込みながらも何とか近くにあったFA−MASを持っていき、胡桃の所へと向かう。

 

 

 

 

 

 

「あの野郎何してンだ・・・ッッ?!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉は目を見開いた。

 

 

 

 

 

 

 

そこには、ゾンビが周りにいても見向きせずに通り過ぎていく様が・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいっ!!待てよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃は叫んだ。ゾンビに気付かれ、襲われる。

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドド!!!!!!

 

 

 

 

ゾンビが次々へと倒れていく。

 

 

 

「えっ?!」

 

 

 

 

「何やってンだ大馬鹿野郎!!!!!ゲホッ…ゼェ…ゼェ」

 

 

 

 

 




ゾンビに気付かれない胡桃、咳き込む理琉。この二人には既に異変が・・・
次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十話 いもうと
私達は、ここにいます。


主人公が突然咳き込み始めました。これからどうなるのでしょう・・・?
では、また次回お会いしましょう!


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第三十話 いもうと

ゾンビに気づかれないほどになった胡桃。これは何を暗示しているのだろうか


「何やってンだ大馬鹿野郎!!!!ゲホッ…ゼェ…ゼェ…」

 

息を切らしながら胡桃を怒鳴りつける理琉。

 

「バカっ!お前何やってんだ!」

 

「テメェこそ一人で何やってンだよ!」

 

 

「胡桃先輩!マサル先輩!」

 

美紀も後から合流してきた。

 

 

「あぁもうっ!後だ後だ!」

 

三人は迫りくるゾンビを次々と撃破していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして車から数十メートルほどの川で血で汚れた服を洗濯している。

 

「・・・せっかく洗濯したのにな・・・」

 

「何やってンだよテメェは・・・もう少しで死ぬところだったぞ・・・?」

 

「悪いな・・・」

 

美紀は、胡桃の顔にゾンビの返り血がついていることに気づき、それを拭き取った。彼女が胡桃に触れた瞬間、一つ違和感を覚えた。

 

「・・・!・・・薬、効いてなかったんですか・・・」

 

一瞬胡桃は黙るが、すぐ笑顔になり、

 

「効いたよ。だから、いるんじゃねえか・・・」

 

「・・・どこにも行かないでください・・・」

 

胡桃は真剣な眼差しで美紀を見つめ、握ってくる美紀の手を握り返した。

 

「逝くつもりはねえよ」

 

「つもりじゃダメです!逝っちゃ・・・だめです・・・」

 

胡桃の表情はとても複雑なものだった。この体がいつ、どこで崩壊するかもわからないのに、絶対に逝かないとは言い切れない。それでも、みなの為、そして死んでいった友人たちの為にも、胡桃は絶対に生きる決意をする。

 

「・・・わかったよ」

 

額を美紀にこつんと当てる。

 

「可愛い後輩のためだもんな」

 

「・・・」

 

 

 

そのとき

 

 

 

バタン

 

 

 

「ちょっと二人共!こんな夜中に何やってるの?!」

 

「やべ・・・ってマサルは?」

 

胡桃が隣に目をやるが、すでに消えていた。

 

「アイツ、抜け駆けしやがった・・・」

 

「後でお仕置きですね」

 

二人で顔を見合わせると、クスクス笑い出した。

 

「な、なんなの?!」

 

 

 

 

 

車内にて。

 

 

 

 

 

 

騒音で目を覚ました圭。

 

「ん・・・?」

 

カーテンを恐る恐る開けてみると、そこにはガミガミと説教されている胡桃と美紀の姿があった。大きめの石が敷かれているところに正座させられているため、かなり痛そう。圭は目を擦る動作を反芻し、何度か瞬きした後、

 

「夢だね・・・お休みぃ・・・クカぁ・・・」

 

と言い、再び眠りにつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝は胡桃が運転する。理琉が珍しく寝坊助だ。

 

「ZZZ・・・」

 

「マサル、起きて・・・」

 

真冬が理琉を揺さぶって起こしている。

 

「お、起きないと、キスしちゃうよ・・・?」///

 

「ZZZ・・・」

 

「お、起きないのが悪いんだからね・・・?」

 

後ろの方連中、胡桃以外はニヤニヤしながら見ている。もちろん真冬がそれに気づく訳でもなく、彼女は目を瞑りながら自身の唇を彼の唇に運んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんだ?オマエ」

 

 

 

 

 

 

 

 

理流が起きた。数センチ先に真冬の顔が映っている。

 

「ッッッ~~!!!i h b f 殺 w q!!??」//////

 

「文字バグってるぞ?!」

 

「うわっ!?」ゴトン

 

恥ずかしさのあまり梯子から滑り落ちた。

 

「おいおい大丈夫か?」

 

「あぅ・・・痛い・・・」

 

理琉は急いで梯子を降り、真冬の手を取る。

 

「え、あ、うん。大丈夫・・・」

 

念の為後頭部を怪我していないか見ている。瘤や出血は無かったため、安堵の息を吐いた。

 

「じゃあ、出発するか。あ、そうだ。胡桃、今日は美紀に運転させてやってくれ」

 

「おう、良いけど・・・」

 

「すみません胡桃先輩。覚えたくって」

 

「いやいや、大丈夫さ」

 

美紀は運転席に座り、エンジンを噴かせる。

 

 

「出発しますよ?」

 

「直樹さん、安全運転でね?」

 

「ワン!」

 

「任せて下さい!」

 

 

ゆっくりと発進し、公道へと出るキャンピングカー。途中追いかけてくるゾンビや前から迫ってくるゾンビがいたが、それは理琉がすべてショットガンで排除した。相変わらず高速道路やその他一般道も事故車や故障車で溢れかえっており、とても走りにくい。一体どれだけの人間がこの光景を見て絶望したのだろうか。いや、絶望する暇も与えられずに命を落とした人間の方が多いだろう。まるで核ミサイルを撃ち込まれたような・・・建物こそ全壊していないものの、窓や扉などは完全に破壊されており、血痕が至るところにこびりついている。中には自衛隊の車があり、その付近を自衛官っぽいゾンビがウロウロしていることも・・・この街はもう完全に陥落してしまったのか・・・こんな景色を目の当たりにした彼らはきっとこう思う。『地獄よりも恐ろしいかもしれない』・・・と。

 

すべてのライフラインは復旧の目処が立っていない。それはもちろんのこと。非常用に整備された停電時でも使える自動販売機も、今は機能していない。また、商業施設では生存者が争ったような痕跡が残っており、それはとても痛々しいものとなっている。こんな凄惨な景色を背景に非常食を口に入れても味すらしない。乾パンはもともと非常時に食すものであり、味はあまりしない。学校に籠城していた頃はマーガリンやジャムなどで味を補っていたが今はそんな代物はあるわけでもなく、ましてやこんな口内水分を持っていかれそうな食品に水や牛乳が添えられていないというのももっと地獄だ。理琉もほかのメンバーもしかめっ面をしながらも餓えを凌ぐ。それしか無いのだから・・・たまにコーンフレークを食することもあるが、もともと数が少ないので贅沢品となる。学校で食べた肉をまた味わいたいと懇願している理琉。先程朝食(乾パン一個のみ)を摂ったにも拘らず腹の虫が鳴いている。

 

「パサパサする・・・」

 

これには真冬もやはりと言った所。今どきの学生としてはハンバーガーのような一瞬で空腹を満たしてくれるものでないと満足いかない。こうなる前はよく友達とバーガーキングやマックに行ったなぁ・・・と一人つぶやく。

 

ところで、窓際でずっと深刻そうな顔をしながら外を眺めている悠里がいる。彼女も彼女で抱えている闇が大きく、その闇が表に出始めたのだろう。向かい側に座っている胡桃、そして隣にいる慈と圭(&太郎丸)も心配そうな顔で悠里を見ているだけだ。しかし、ただ一人、悠里に話しかけた少女がいた。

 

「りーさん・・・?」

 

悠里は青ざめた顔で由紀の方へ向いた。その瞬間、彼女は一瞬目を見開き、ある言葉を口にした。

 

「るーちゃん・・・」

 

聞いていた人間は全員目を丸くする。今までに聞いたことのない言葉を聞いてしまい、疑問符を浮かべると同時に焦りも出始める。

 

「あ、由紀ちゃん・・・」ハッ

 

ハッとした悠里。正気を少し取り戻し、いつもの悠里に戻った。心なしか、彼女の目が潤んでいる。

 

「美紀、通れる所あるか?」

 

「はい、一応この国道なら」

 

「よし、さっさと行こうか!」

 

「ン?りーさん?」

 

「あっ、ごめんなさい、ぼーっとしちゃって・・・」

 

「そォか。あともう少しだから」

 

「そうね。早く学校に帰りたいものね(・・・・・・・・・・・)

 

「へっ?」

 

彼女の突拍子のない発言に、変な声が出る理琉。

 

屋上の菜園は大丈夫かしら(・・・・・・・・・・・・)・・・・・」

 

これには全員押し黙る。まるで過去の記憶を反芻させているような雰囲気だ・・・

 

自分の言動にハッとした悠里は冗談よ、と両手を左右に振って否定した。

 

「りーさん、何でも出来るのに、冗談は下手なんだなw」

 

「そう・・・冗談・・・」

 

「マイケル?」

 

「ジョーダン(※)・・・って乗せるな!」ウガー

(※)アメリカ合衆国の元バスケットボール選手。2020年現在、純資産は19億USD(日本円にしておよそ2000億円)15年間の選手生活で得点王10回、年間最多得点11回、平均得点は30.12点でNBA歴代1位、通算得点は32,292点で歴代4位 Wikiより

 

「HAHAHAHAHA」

 

理琉と胡桃の夫婦漫才が始まった。悠里にも自然と笑みが零れる。

 

「りーさん笑ったなァ。そう、笑った方がいいぜ。どんな闇を抱え込んでいるのかは俺たちゃ分からねェが、そんな落ち込んだ顔をせず、みんなで笑いあった方が、この先楽だと思うぜ?」

 

「マサルの言う通りかもな!」

 

「そうね。若狭さん、一人で悩んじゃダメよ?」

 

「悠里には、ボクらがいるんだから・・・」

 

「みんな・・・」

 

「暗い顔はやめよう?ね!」

 

由紀の眩しい笑顔に、悠里は救われた。

 

「ありがとう・・・」

 

彼女の体が軽くなる。

 

「私、妹がいるの・・・」

 

「いもうと?Sister?」

 

「ええ。その子は瑠璃って言ってね、いつも迷子になるの・・・私が隣町まで探しに行ったら、お気に入りの帽子が飛んでっちゃったって言ってね・・・なんで忘れちゃってたんだろう・・・最低なお姉ちゃんよね・・・」

 

「・・・なァりーさん」

 

「え?」

 

「その妹さんはどこの学校へ通ってたんだ?」

 

「えっと、鞣河小学校・・・」

 

すると、理琉は大急ぎでバックパックに入っている地図を取り出した。

 

「鞣河小学校・・・鞣河小学校・・・・・・・これだ!!!えっと現在地から・・・進行方向40マイル先に小学校がある。聖イシドロス大学からはおよそ5マイル。この国道沿いだ!」

 

「マサルくん、どうするの・・・?」

 

「決まってンだろ!オマエの妹さんを助け出してやる!あの小学校もどうやらあのクソ会社の傘下(独自設定)らしい。だから恐らく、恐らくだが地下施設のようなところがあるかもしれない!」

 

理琉の憶測に圭が反応する。

 

「でも先輩!もしかしたらあの時みたいに地下でやつらと遭遇するかもしれないですよ!?」

 

「それでもだ!だが望みはある!行こうじゃねェか、りーさんの妹救出作戦へ!」

 

「先輩、この国道沿いですか?」

 

「ああ、およそ40マイル先にある。だが、安全運転で頼むぞ・・・?」

 

「はい」

 

 

 

理琉はいつになくやる気が出ている。普段の彼ならこのようなことは一切無い。だが今回、救出に乗り出した。彼は気まぐれだと言うが、絶対違う。もう誰も死なせたくないという信念から出た、彼なりの美学なのだろう。小春を亡くし、自分を見失っていた彼は、漸く闇の底から這い上がり、一人の人間を助けるミッションへと動き出したのだ。もちろん、今生きているという保証は無い。それでも妹が生きている方に賭け、彼らは鞣河小学校へと目的地を変える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っててね、お姉ちゃんが助けに行くから・・・」

 

 

 

 




悠里の妹を助けるべく、鞣河小学校へと動き出した彼らは無事に救出することはできるのか・・・
次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十一話 しまい
私達は、ここにいます。

理琉のやつ急にやる気出したな・・・オマエロリk・・・すみませんなんでもありません。


次回もお楽しみに!

がっこうぐらし!12巻が手元に届き、早速すべて読みました。


素直に言います。泣きました。


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第三十一話 しまい

小学校へと急行する8人+1匹。悠里の妹の運命は・・・?


「小学校へ急行するぞ!」

 

理琉の決断により、学園生活部は目的地を一時的に小学校へと変更した。小学校に生存者がいるとも、全くいないとも限らない。少しの希望に賭け、車を現場に急行させた。

 

相変わらず国道や国道沿いには事故車、故障車、そしてゾンビとなり自我を失ったただの肉塊しかいない。ずっと変わらぬ景色にため息が出るほどだ。

 

 

「事故車が多くて思うように動けませんね・・・」

 

事故車が連なっており、通行の妨げになっている。近くの交差点を曲がり、迂回するが、また事故車や故障車。これを繰り返しているうちに、夜になってしまった。

 

「あと1マイルほどだが、今は危ない。さっさと寝るぞ」

 

「そうだな」

 

「今夜はボクが見張ってるよ・・・」

 

「狭山さん、気を付けてね」

 

真冬は慈にむかって頷いた後、ベレッタとデザートイーグルを腰に下げ、短刀を持って外に出た。

 

 

 

 

「今日はヤケに少ない・・・あれ・・・?」

 

 

 

 

 

暗闇の先の方から、何か聞こえる。真冬は音の聞こえる方向へ耳を傾け、よく聴く。

 

 

 

 

 

ゥゥゥゥァァァアアアァァァ・・・・・

 

 

 

 

 

 

「ゾンビだ・・・」ガチャ

 

サプレッサーを右手に持っているベレッタへと取り付け、ゾンビへ銃口を向ける。左手で短刀を持ち、臨戦態勢だ。・・・と、そのゾンビ、何やら様子がおかしい。

 

「スケッチブック下げてる・・・」

 

ゾンビにヘッドショットをおみまいした後、そのスケッチブックを回収し、全員を起こした。

 

 

 

 

 

 

「これ見て」

 

「何だこれはァ・・・」

 

 

そこには『なめかわしょうがっこうにいます。たすけてください。ごはんとお水さがしてます』と書いてあった。

 

 

 

「察するに、あそこに地下は存在しねえってことか・・・」

 

美紀はスケッチブックを見て、推論を自分の中で構築した。感染した子供にスケッチブックを下げさせ、外へ誘導した後にゾンビ化。そしてその状態でも助けを呼べるようにしてあったのでは、と。所謂特攻式だ。

 

「あ、そういう手もあったんですね」

 

紙をよく見ると、数字のようなモノが書いてあった。

 

「ご丁寧に日にちまで書いてあるぜィ?」2019年8月10日

 

「そうね。でも今相談したいのはそこじゃない。生存者がいるということはやることは一つ。助けに行きましょう」

 

「本当にやるつもりなのかァ?だいぶ日にちが経ってるぞ?」

 

「ええ」

 

「でも若狭さん、夜は危ないわよ・・・?」

 

「それはこの子達も同じです!!」

 

「この子たち・・・か」

 

すると、由紀が机を叩き、

 

「行こうよ!!」

 

と言った。

 

 

「何とかなりそうだが、もしちょっとでもマズかったら引き上げるぞ」

 

「その時は朝まで待ちましょう?」

 

「ンだな、行くか」

 

「私が運転します」

 

今度は圭が名乗り出た。

 

「わかったわ圭さん。安全運転でね?」

 

「了解です!」

 

圭はウインクをし、ハンドルを握った。

 

約1マイル。ゆっくり運転し、小学校の正門へと車を止めた。理琉はFA―MAS、ウィンチェスターへ弾を装填し、FA―MASのマガジンを数本ウエストポーチへ仕舞った。胡桃もシャベル、AK―47を担いだ。

 

「さァてと。一応偵察班と待機班に分ける。まず偵察班は、俺、胡桃、由紀、りーさん、太郎丸だ。あとは車に待機してくれ」

 

「わかりました。気を付けてくださいね」

 

「行くよ太郎丸」

 

「ワン!」

 

4人+1匹による偵察が始まった。校舎内は言わずもがな、真っ暗だ。暗闇に目が慣れると、赤黒い血や原型を留めていない死体がそこら中に転がっており、腐敗臭もする。1Fから地下へと続く階段が無かったため、理琉は舌打ちをした。

 

「地下は案の定無し・・・か・・・」

 

階段を登り、3Fへと向かう。少し歩いた所に大きめのスライドドアがあった。薄暗く何も見えない。胡桃が恐る恐るドアを開けて中を覗いた。

 

 

「うわあぁっ!!!!」

 

 

しかしそこに生存者はおらず、ゾンビが複数いるだけだった。

 

 

「胡桃どけッ!!!」

 

理琉は胡桃を反射的に突き飛ばし、バリケードの隙間からサプレッサーを付けたFA―MASで発砲した。

 

「中にいるかもしれないじゃない!!」

 

悠里に問いかけられるが、

 

「無理だ!!それに1体だけじゃねェ!!」

 

由紀が扉を閉めたことによりなんとかやり過ごした。

 

 

「でも、今聞こえたわよ!!由紀ちゃんも聞こえたよね?ほら、美紀さん達の時だって・・・」

 

「・・・聞こえない・・・聞こえないよ・・・」

 

「そんなはずないわ!よく聴いて!!」ガシッ

 

「うぐっ・・・」

 

「オイ、やめろ悠里!!!」

 

急に理琉に名前で呼ばれ、困惑する悠里。理琉は由紀を背後に回して護っていた。

 

「由紀に八つ当たりしたって何もならねェだろうが!」

 

そうこうしているうちに、ゾンビが1体迷い込んできた。

 

「チッ、クソが!」ドォン

 

ウィンチェスターをゾンビに向かって撃ち、再起不能にさせた。

 

「早く戻らねェと、袋小路になンぞ・・・」

 

「・・・ごめんなさいね」

 

2Fにて

 

「ワウ?」

 

「どしたの太郎丸?」

 

「ワンワン!!」

 

「あァ?どォした。・・・!?」

 

「マサル、どうしたんだ?」

 

「由紀、りーさん、胡桃。オマエらは先に車に戻ってろ」

 

「どうしたんだよ急に?」

 

理琉は太郎丸を担ぎ、2Fの廊下を歩いていく。

 

「ここは俺と太郎丸だけで探す。ゾンビに囲まれる前に早く戻れ!」

 

「何で一人で行くんだよ!!」

 

「一人のほうが楽だからだ。集団で行ったって死亡率は変わらねえ。早く戻れ」

 

「おい!待てよ!!」

 

胡桃の制止も聞かずに理琉は暗闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・太郎丸、ここから聞こえたのか?」

 

「ワン」

 

「そうか。見てみるか?」

 

「ワウ」

 

理琉はドアを見つけ、恐る恐る扉を開ける。

 

 

「こ・・・この子はッ・・・!?」

 

 

 

 

 

 

 

キャンピングカーへと戻った胡桃たち。

 

「先輩、おかえりなさ・・・って、マサル先輩はどうしたんですか?!」

 

「あぁ、アイツなら2Fを探してる」

 

「えっ・・・マサル・・・?」

 

「一人で探すからあたしらは戻ってて良いって言われてさ」

 

「今すぐ連れ戻しに・・・」

 

 

全員が校舎に体を向けると、昇降口から理琉と太郎丸が戻ってきた。

 

 

「はァ・・・はァ・・・いたぞ・・・りーさん・・・」

 

「えっ・・・?!」

 

「・・・・・??」

 

「るーちゃん?!」

 

理琉に背負われている少女こそ、若狭悠里の妹、るーちゃんこと若狭瑠璃だ。

 

「・・・・・!!!!」

 

「よかった・・・本当によかった・・・」

 

理琉の背中から降り、悠里と抱擁を交わす。

 

「悠里、良かったね。妹が無事で・・・」

 

「うん・・・マサルくん、太郎丸、ありがとう・・・」

 

「あァ。そうだ、佐倉先生。この子痩せ細っちゃってるから何か作ってあげてくれる?」

 

「お姉ちゃんに任せなさーい!」キュピーン

 

沈黙が全員を襲う・・・

 

「めぐねえそういうキャラだったっけ?」

 

由紀に突っ込まれた。

 

「一回やってみたかったの・・・」///

 

「モカに影響されたかめぐねえよォ」

 

全員はクスッと笑った。全員は車の中に戻り、自己紹介をする。

 

「えっと、瑠璃ちゃんだっけ?俺は黒田理琉。よろしくね」

 

「丈槍由紀だよ〜」

 

「恵飛須沢胡桃だ、仲良くやろうぜ」

 

「直樹美紀。よろしくね」

 

「祠堂圭。よろしく、るーちゃん」

 

「狭山真冬・・・よろしく・・・」

 

「佐倉慈です。よろしくね」ゴトッ

 

簡単な食べ物を作った慈はそれを瑠璃に渡し、少しでも腹が満たされるようにした。

 

「・・あ・・・え・・・」

 

「・・・喋るのキツそうだな・・・もしかして、ショックで言葉が発せなくなったとか・・・?」

 

胡桃が推測した。

 

「心因性発声障害はストレスや心的外傷を受けた後に発症しやすいって言うからな・・・」

 

「マサルくん、治せるの・・・?」

 

「発声練習、特にハミング出来るまで行ったらマ行を伸ばす練習、上手く行ったら母音や子音を。もし上手く行かなかった時に咳払いでリハビリした人間もいるらしい。だから、治療はそこまで難しくない。ただこのご時世ということもあるから、時間がかかる・・・しばらくは筆談かな」

 

「わかったわ。やってみるね」

 

「さて、今日はもう寝ようぜ?」

 

「そうですね。もう遅いですし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員は就寝し、翌日に備えた。理琉は眠る前にこんなことを考えていた。

 

(しっかし、よくあそこで生きてられたよな・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。車を動かした胡桃は、目的地の聖イシドロス大学へと到着した。キャンパスの門は閉まっており、入ることが出来ない。

 

 

 

 

「この塀を乗り越えて潜入するぞ」

 

「はいよ」

 

「気をつけるのよ?」

 

理琉、由紀、胡桃、悠里(瑠璃)、美紀、圭(太郎丸)、真冬、慈の順番に敷地内に入った。

 

 

「よっと。ここだな・・・」

 

 

 

敷地内を進んで行くメンバー。

 

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員!!持っている物を捨てて手を上げろ!!!!!!!

 

 

 

 

 

「なンだ?!どこからだ?!」

 

茂みの奥から眼鏡を掛けた少年がピストルクロスボウを向けてきた。

 

「全員、全員だ!!!」

 

「どォいうつもりだオイ」

 

理琉の問いかけを聞かない少年。

 

 

 

 

 

 

 

すると

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

躊躇なくクロスボウを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ターゲットは瑠璃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「センスねェ真似しやがって!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉はショットガンを拾い、瑠璃の前に立ち、クロスボウから守る。

 

 

 

 

 

 




クロスボウで威嚇される学園生活部。瑠璃に放たれた矢を理琉はどうするつもりなのか?
次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十二話 かいこう
私達は、ここにいます。

クロスボウを撃たれ、大ピンチ?!学園生活部の運命は?!

次回もお楽しみに!


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第三十二話 かいこう

ピストルクロスボウで攻撃された学園生活部。しかし、間一髪という所で・・・


「センスねェ真似しやがって!!!!!!」

 

瑠璃の前に素早く移動した理琉は、ショットガンを逆に持ち、クロスボウの矢を叩き落とした。

 

ギィン!!カラカラカラ・・・

 

普段聞かない金属音が鳴り響く。

 

 

「ちっ、何やってんだよ!!」

 

眼鏡をかけた少年が理琉を怒鳴りつける。

 

「何やってる?どの口が言ってンだ?笑わせンじゃねェぞ三下ァ!?子供に向かってクロスボウをぶっ放すクソ野郎がァ!!」

 

理琉はショットガンを上に向かって撃ち、相手を威嚇した。

 

「ッ!?」

 

胡桃がニット帽と眼鏡を着用している少年に近づく。

 

「これでわかっただろ、アイツらじゃないって。なら、通してくれよ」ジリッ

 

「く、来るな!!!」

 

「なんでだよ!!」

 

「アイツらじゃなくても、なりかけ(・・・・)かもしれないだろ?!」

 

「何・・・言って・・・やがンだ?」

 

「あぁっ?!」

 

理琉の堪忍袋の緒が切れた。

 

「空気感染してるチンピラの分際でェッ!?俺の仲間に向かってなりかけだァ?図に乗ってンじゃねェぞ格下がァ!!!!!」ギィン‼

 

理琉は少年の方へ走って行き、息の根を止めようとする。少年もクロスボウで応戦するが、すべて避けられてしまう。

 

「そンなオモチャで俺とやり合うってかァ?!足りねェよオマエ・・・悪の美学ってもンが全く足りてねェ!!!!!!元陸軍中尉の力、なめンじゃねェッッッッ!!!!」

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

「がはぁっ!!」

 

理琉は少年の顔面を蹴飛ばし、塀へ叩きつけた。

 

「チッ・・・」

 

「な、なあマサル、空気感染ってどういうことなんだ?」

 

「α系列のことだァ。この息吸って吐くだけの三下(クズ)はもうそれに感染している。顔色からも覗えるが、コイツはあと数日でくたばる。俺たちがトドメを刺すまでも無いぜ。あとこのクロスボウは没収しておこう」

 

「ま・・・待て・・・」

 

「なンだ、まだやり合うってかァ?」

 

「それは・・・僕の・・・だ」

 

「知るかクソボケ。せめてもの報いだと思え。・・・・(何かを思いつく)・・・わァった。返してやるよ」バキィッ!!ベキィッ!!

 

理琉は少年の目の前でクロスボウを完全に破壊し、修理不可能なレベルにまで粉々にした後、少年に返した。

 

「精々、残りの人生、腐った悪党のまま藻掻き苦しめクソ野郎。オマエら行くぞ。ここは危険だ」

 

「あ、あぁ・・・」

 

「行こう・・・ッ!?」

 

「真冬、どうした?」

 

「足が・・・」

 

真冬の左足からは血があふれていた。先ほどのクロスボウの流れ弾を喰らったのだろう。貫通しており、両方から血が出ている。

 

「早く手当しよう。胡桃、担げるか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

「よし。佐倉先生、進んでくれ」

 

「ええ。わかったわ」

 

こうして、学園生活部は一度キャンパス外へと出た。

 

 

 

 

 

 

「なァ、どォすんだこれから」グビグビ

 

車の中で話し合う学園生活部たち。理琉は高校の水道からあらかじめ取っておいた水(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)を飲んでいる。

 

「正直、先が思いやられますね・・・」

 

「せっかく来てみたけど、あれじゃなぁ・・・」

 

「さっきの瑠璃ちゃんの時もそうだけど、ちょっとあれは危ないよ・・・」

 

「ワウン・・・」

 

「話くらい聞いてみるか・・・」

 

胡桃が提案するが、

 

「「私は反対よ」」

 

悠里と慈は反対した。

 

「御大層な理由があっても、まだ小さい子供にクロスボウを撃つようなクソ野郎共なんだ。もちろん、俺も反対だ」

 

「そうだね、るーちゃんが危ないのはよくないよね」

 

「じゃあボクたちは留守番するか・・・」

 

真冬は瑠璃を撫でながら言った。

 

「ンだな、別に全員で行く必要もねェし」

 

「危ないことしちゃだめよ?」

 

「わかってますよ先生」

 

理琉、胡桃、美紀の3人が、もう一度キャンパスに侵入して話を聞きだす方針に出た。

 

「圭、いつでも車を出せるよう、エンジンをかけておいてくれ」

 

「わかりました、マサル先輩」

 

「ワウン」

 

「さってと、敵地に潜入しますかァ・・・」

 

3人は車を出て、先ほど入った所へと向かった。悠里はというと、キャビンのボックスシートに座り、外を眺めている。真冬はベレッタをリロードしており、由紀は瑠璃と遊んでいる。数分待っていると、何やら理琉たち3人が慌てて走ってくる様子が目に入った。その後ろにはバイクのヘルメットを被った二人の人間が追ってきている。

 

「若狭さん・・・?」

 

「!!??」

 

「由紀ちゃん!圭さん!!」

 

「え!?うんっ」

 

「あっ、はい!!」

 

偵察班3人が戻ってくる。

 

「圭!早く、車出せ!!」

 

「はい!!」

 

キャンピングカーは急発進した。

 

「おい待てっ!!」

 

ヘルメットを被った男二人は足を止めた。

 

 

「ったく、なンなンだアイツらは・・・」

 

「胡桃先輩、運転代わってもらえますか?」

 

「おう、今行プーーーーー!!!

 

 

車のクラクションが響いた。

 

「後ろにいます!!!!」

 

「めんどくせェ、コイツで始末してやる!!!」

 

入口のドアを開けた理琉は、ウィンチェスターをロードし、追ってくるセダンに向かって発砲した。もちろん、ただの威嚇射撃であり、フロントガラスやタイヤは狙っていない。

 

「しつこい奴らだね・・・」

 

「ん?何か聞こえない?」

 

由紀が何かに気づいた。そして、美紀も同時に察する。

 

「圭!ラジオ!」

 

「音量上げて!!」

 

 

『ねえ、キャンピングカーの人、聞こえてる?危なくなったら裏門に来て待ってるよ!!』

 

 

「圭!!もっとスピード上げろ!!追いつかれる!!!」

 

 

理琉がショットガンの弾をリロードしながら言った。

 

 

「どうなっても知りませんよ!!!」

 

 

圭はアクセルを踏み込み、セダンから振り切ろうとする。

 

 

「祠堂さん!次を右、その次左よ!!」

 

「わかりました!!」

 

 

しばらく運転すると、門が見えてきた。そこには大学生と思しき女性たちが待機していた。門の扉を開けている。

 

 

「よし、入りますよ!!」

 

キャンピングカーが敷地に入ると、セダンは引き返していった。

 

 

「チッ、クソめんどくせェな・・・」

 

 

 

 

 

「お疲れ様、大変だったっしょ」

 

車を降りると、そこには先ほどの三人の学生がいた。一人は眼鏡をかけており、もう一人は茶髪をポニーテールでまとめており、もう一人は黒髪セミロングだ。

 

「あァ・・・えっと、アンタらは一体・・・」

 

「えっと・・・生き残り?」

 

眼鏡の女性が適当に答える。

 

「違うっしょ・・・アタシたち、さっきの車の連中とは別グループだよ」

 

「そうそう、武闘派の人とはどうも合わないんだよねー」

 

「・・・」

 

(この黒髪の女性、小春と真冬に似てるな・・・)

 

(マサル、ボクってこんな感じ・・・?)

 

真冬は自分の胸部と黒髪セミロングの女性の胸部との差に少し肩を落としている。

 

 

「そんなわけで、まぁ・・・」

 

 

 

 

 

「聖イシドロス大学へようこそ!!!」

 

 

 

 

 

眼鏡の女性が握手を求めた。悠里が恐る恐る手を伸ばす。

 

 

 

「お世話になります」

 

すると、由紀がぽんっと手を置き、

 

「学園生活部、再スタートだよ!」

 

と、いきなり言い出した。それに釣られて理琉、胡桃、美紀、圭、真冬、慈も手を置いた。

 

 

 

 

「「「「「「「「おーーー!!!」」」」」」」」

 

「ワン!!」

 

 

「な、何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、校舎内へと案内される。これまでの経緯を全て話した。学校でどう過ごしていたのかということを。もちろん、理琉の過去も。

 

「へぇ~、今まで高校にいたんだ。すごいね。それでそこの少年は元軍人さんだったわけか。んで、そこにいる私達と同じくらいの女性は教師・・・か」

 

「私って、先生っぽく見えないのかな・・・」ショボーン

 

「まァ、はい。そんなところ。三年くらい前に退役しましたけどね・・・」

 

「そんでね、私達は学園生活部っていうんだよ!」

 

「おいゆき・・・一応年上なんだからさ・・・」

 

「あ、敬語とかいいよ。そういうの面倒でしょ?なるほど、学園生活部ね。うちも似たような感じかな」

 

「つゥか、こっちにもそンなのがあったのかァ?サークル的なヤツだろォけど」

 

眼鏡をかけた女性が、ドアの前に立ち止まると、突然振り返った。

 

「ようこそ!ボクたちのサークルへ!!!」

 

「やっぱサークルかァ」

 

「名前に関しては色々揉めたんだけど・・・【自堕落同好会】とか・・・」

 

「部屋の散らかり方を見る限り、その名前は正しいと思うンだが?」部屋の中へ指をさす

 

理琉はPS4やXbox one、WiiUやNintendo Switchなどのゲーム機、そして数々のラノベや邦画が置いてあるのに気づいた。置き方が汚い所為か、『自堕落』と自虐するのも頂ける。

 

「まぁ、とりあえず座ってよ!」

 

だら〜ん・・・

 

ちゃんとした椅子を置いておらず、クッションのようなものにもたれかかったり、寝転がったり・・・その絵面はただのニートだ。

 

「これが同好会かよォ〜・・・えっと、そこの眼鏡掛けてる・・・」

 

「あ!自己紹介忘れてた!ほら、代表!」

 

 

眼鏡の女性は理琉の手を取り、

 

 

「ボクはサークル代表、出口桐子だよ!」

 

 

自己紹介をし、ニコッと笑った。




大学にて新たな人間と出会い、仲間が増えた。しかし、『大学の裏側』を進む人間により、武闘派穏健派の亀裂がさらに・・・
次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十三話 さーくる
私達は、ここにいます。

大学編以降のキャラクターに声優さん付けるとしたら誰が良いと思いますか?
私だったら・・・

るーちゃん 市道真央(ロリボ)

出口桐子  内田真礼
光里昌   佐藤利奈
喜来比嘉子 南条愛乃
稜河原理瀬 種田梨沙
青襲椎子  沢城みゆき

高上聯弥  福山潤(もしくは梶裕貴)
右原篠生  加隈亜衣
頭護貴人  子安武人
城下隆茂  谷山紀章
神持朱夏  伊藤静

ですかね・・・


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本編:第2章 大学編
第三十三話 さーくる


だらぁっとしている学園生活部たち。自己紹介をした後、ここじゃアレだからと思った彼らは場所を変えた。

※キャラクターのイメージカラーについて、結局私が勝手に決める形となりました。今回は試しに着色し、今後も着色を施すかを決めようと思います。私の勝手な判断で色を意図的に付けなかったり、台本形式にする可能性がありますが、ご了承ください。


トーコ→水色

ヒカ→赤茶

アキ→黄土

変更点:理琉→黒


「とまァ、部屋変えたワケだが・・・」

 

理琉が読者に実況している。

 

「オマエが仕事しねぇからだろ!」

 

してるわ。

 

 

「いいから続けろや」

 

はいはい。

 

 

 

「つゥかよ、自堕落・・・じゃなくてこのサークルは主に何をしてンだァ?」

 

「24時間耐久ゲームとか、24時間耐久映画鑑賞とか、24時間耐久アイスクリームとか!」

 

聞いてわかると思うが、とても体に悪そうだ。流石に胡桃も美紀も理琉も苦笑いだ。だが由紀に関しては「すごいすごい!」驚いている様子。圭が不安そうに手を挙げ、大学生たちに問うた。

 

「そ、それって強制だったりします?」

 

「まさか!うちは緩いからそーいうの無いよ」

 

自己紹介をしていなかったポニーテールの学生が思い出したかのように話に割って入る。

 

「っと、忘れてた。アタシは光里昌。アキでいいや。んで、こっちが喜来比嘉子。ヒカだね。工作とか修理とかが得意」

 

「よろしく・・・」

 

昌が由紀たちを指さし、

 

「アンタたちが学園生活部だよね?」

 

「あァ、俺は黒田理琉。マサルって呼ンでくれりゃァ良いやそれとこっちが・・・」

 

「はーい!ゆきと、りーさんと、みーくんと、くるみちゃん、けーくん、、真冬ちゃん、めぐねえに太郎丸!それに瑠璃ちゃんです!!」

 

ちゃんと紹介しろや、と心の中で言うが、決して言わない。もちろん口に出したら後々痛い目に遭うというのがわかっているからだ。昌はすぐに笑顔になり、慈に訊いた。

 

 

 

「元気いいですね、お宅の教え子さん!!そういえば、そっちでは何があったんですか?!」

 

「あ、えっとそれなんだけども・・・」

 

慈はバックパックから学校に置いてあった職員用緊急避難マニュアルを取り出し、昌たちに渡した。それを一読すると、

 

「うわっ・・・大変だったんだねぇ、あんたたち・・・」

 

後ろから比嘉子が覗いている。

 

「設備が良すぎると思った・・・」

 

「そこに書いてあるの、避難場所とか物資とかのリストだけじゃねェンだよ。裏面見てみ?」

 

「コレの事・・・?えっ・・・これって・・・」

 

「あァ、どうやら俺を暗殺するためにこのパンデミックを起こしたという可能性が浮上してきたンだ」

 

「それってどういう・・・」

 

「俺は元々軍隊、それもアメリカ軍にいたという話をしただろ?そこで会った戦友が敵軍のスパイでな。その敵軍はどうやらこの会社とつながっているらしいンだ。だから俺はユークトバニア、そしてこの会社に狙われているのさ。ユークトバニアはアトランタのCDCを占領して兵器となりえる菌、α、β、Ωを持ち出した。おそらく、ランダルはユークトバニアから密輸したンだろう。あの国は生物兵器禁止条約に署名してねェからな。もォやりたい放題だ。しかもそれが公に出ていないと来た」

 

「そんなことが・・・」

 

 

 

「・・・俺の戦友も、そのスパイに殺された」

 

 

 

これを聞いた真冬は少しだが表情が暗くなる。たった一人の姉を亡くしたことへの悔しさ、悲しさがこみ上げてくる・・・理琉が真冬をちらっと見た。悲しいのは俺も、彼女も同じなんだ。とジェスチャーで伝え、その後は真冬の頭をポンポンと優しく撫でた。

 

「・・・でも今の俺には真冬も含めて皆がいる。それに君たち大学生も加わったんだ。だが、俺と関わった以上、殺害のターゲットになるかもしてねえから気を付けろ」

 

「嬉しいこと言ってくれるねぇ。うん、もちろん気を付けるさ」

 

「今回ここに来たのは、もう学校のライフラインが使い物にならなくなって・・・」

 

桐子はしばらくマニュアルを見ていた。

 

「フーン、それでうちの大学に・・・」

 

頬杖をつきながら桐子は納得する。実際大学にも同じような設備があちらこちらで施されており、地下やシャワーなどの類は揃っていた。ふと、胡桃が一つ思い出した。

 

「そういえば、そっちはこれまで何をしてきたんですか?武闘派ってのがいるんですよね?」

 

この「武闘派」という言葉にピクっと反応したのは比嘉子だった。

 

「あ、アイツらは、別に悪いやつじゃないんだけど・・・最初に騒ぎが起きた時はさ、まだ電気とか無かったんだ。だからみんな必死だった。ぶっちゃけ人がどんどん減ってったし、あのままだとヤバかった」

 

桐子は急に険しい顔になり、一瞬ためらいながらも次の言葉を放つ。

 

 

「だからアイツらは規律第一で仕切り始めたんだ。戦える奴を優遇して、戦力外だったら・・・もうわかるだろ?」

 

「それが武闘派ってやつかァ。悪党の風上にも置けない野郎だってこたァ、よくわかった」

 

「んで、ボクたちはそういうの苦手でさ、文句言ったら勝手にしろって言われて・・・それで勝手にしてるんだ。まぁ、ヒカのお陰でもあるんだよね」

 

「別に・・・」

 

「ほっとかれて水もゴハンも無くなっていよいよマズいかなって時に非常用電源と地下食料庫を見つけてくれたんだよ」

 

「こっちにも同じものがあった。非常電源っつゥこたァ、ソーラーパネルかァ?」

 

「うん。屋上にあったから・・・どこか繋がってると思って調べた・・・」

 

「それで、水も電気も食料も何とかなって、ゲームする余裕もできたワケさ」

 

由紀がふむふむ、と聞いていると、突然こんなことを言い出した。

 

「じゃあその武闘派の人たちもマッタリすればいいんじゃないかな?」

 

この発言に昌は難しい顔をしてテーブルに頬杖をついた。

 

「そうよね・・・でも一度始めたやり方って変えるのがすっごく難しいのよ・・・」

 

「ま、いろんなヤツがいるさ。大学だからね」

 

適当にそう結論付けた桐子。

 

「それ今考えたでしょ」

 

「い、言うなよ~・・・」

 

 

学園生活部と大学組はその後も色々と談笑をし、夜になった。由紀が何やらプレートのようなものに名前を書いている。

 

『ゆき』

『マーくん』

『くるみちゃん』

『りーさん&るーちゃん』

『めぐねえ』

『みーくん』

『けーくん&太郎丸』

『まふゆちゃん』

 

全て由紀が作ったネームプレート。どうやら空いている個室に貼り付ける用のものらしい。

 

「個室だよ!みーくん!すごいよね!キャンパスライフは大人の香り!」

 

「由紀先輩は個室があると大人なんですね」

 

「まぁまぁそォいうなって・・・」

 

「君、後輩なんだ・・・」

 

比嘉子が会話に入ってきた。その様子からすると、年が違うとは思わなかったのだろうか。

 

「こは・・・じゃなくてヒカさんか」

 

「はい。私が二年で、由紀先輩とマサル先輩が三年です」

 

「余ってる部屋、好きに使って。私達もそうしてるから」

 

「ありがとうございます」

 

「あ、マサル君、だっけ・・・」

 

「あ、あァ」

 

「それ、何?」

 

比嘉子は理琉が担いでいるショットガンに目をやった。

 

「あぁ、これは護身用さ。もし俺や君たちに危険が及ぼうものなら、コイツを躊躇なく使うさ」

 

「そっか・・・頼もしいね」

 

理琉は比嘉子の無邪気な笑顔を見てから、少し複雑そうな顔をした。どうもその笑顔が小春とそっくりだったのだろう。戦争中の基地で小春が星を見て笑っているのを思い出し、ため息が出る。

 

「ん?どうしたの?君、ため息なんかついて・・・」

 

「え・・・?あぁぁぁっと・・・すまねえ、見苦しいモノを見せてしまって。俺はもう寝るぜ」

 

「え、あ、うん・・・」

 

理琉は覚束ない足取りで部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

ゴン

 

 

 

 

「痛ってェ・・・」

 

ドアに頭をぶつけた。・・・バカだな、うん。

 

「・・・(^_^;)」

 

 

 

 

 

「寝るか」

 

敷いた寝袋にくるまるが、何か落ち着かない。モゾモゾ寝返りを打つ理琉。この空間に耐えかねた理琉は扉を開けた。

 

「・・・なンか落ち着かねえなァ・・・」

 

廊下に出てみると、全員がほぼ同時にドアを開けて苦笑いを浮かべていた。

 

「何か落ち着かなくて・・・」

 

 

高校で籠城していた頃、個々の不安を緩和させるために男女関係なく同じ空間で寝ていた。それがあってか、やはり太郎丸を含む全員が眠れない。

 

 

「わう・・・」

 

「太郎丸も眠れないの?」

 

コクコクと頷く太郎丸。犬もやはり全員が揃っていないと心細いみたいだ。『遠足』で彼らを救出する前と後では太郎丸の精神状態もだいぶ変わっている。数日前に咬まれているが、中身は全く変わっていない。それどころか、以前よりも圭や他のメンバーに甘えている節がある。救出してから今日(こんにち)まで太郎丸のお陰で場が和んでおり、既存のメンバーへの影響も大きい。

 

全員で一瞬顔を見合わせ、クスクス笑うと、全員で由紀の部屋へと入っていった。自前の寝袋を横列に並べ、窓側から胡桃、理琉、真冬、慈、由紀、悠里、瑠璃、美紀、圭(&太郎丸)となり、全員就寝した。理琉からすると、胡桃がいつもシャベルを抱えて寝ている理由がよくわからない。

 

(知ってたが、シャベルと寝るのコイツのマイブームなのかァ?)

 

右横を見ながら理琉は小さい声でそう呟く。何を血迷ったのか、胡桃の頭を優しく撫でる。ぐっすり寝ているはずなのに、胡桃の表情が少し緩んでいる。

 

(・・・ンだよ、こんな風に笑えるンじゃねェか。素直になれよ)

 

 

 

 

 

「マサル、何してるの・・・?」

 

 

 

 

 

「んおっ?!」

 

真冬に見つかった。

 

「なんで胡桃の方向いてるの・・・?」

 

「あ、いや、特に・・・って、何してるンすか真冬サン?」

 

真冬が急に理琉に近づき、後ろからギュッと抱きしめた。

 

「・・・マサルの背中、あったかい・・・」

 

(・・・はあ、好きにさせておくか。俺も落ち着くし)

 

こんな美少女達(断言)と一緒に寝るということは、世間一般の男子からすると精神衛生上あまりよろしくない。だが、何度も言うように、理琉はお約束の鈍感野郎だ。こんなことで興奮するような人間じゃない。よく言えば理性が強固で紳士な人。悪く言えばただの鈍感でヒロインたちの気持ちに気づけないスットコドッコイだ。彼にそもそも感情があったのだろうか、いや、無いに等しいだろう。

 

理琉的には何もしていないように感じているらしいが、ヒロインたちにはすでに何本かフラグが立っている。挙句の果てにはるーちゃんにもフラグを建てている強者だ。もちろん気づくことはないのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。

 

 

 

 

「よっ」

 

 

 

アキがツマミになるようなモノと、酒、グラスを持ってきてサークルの部屋へと入ってきた。ヒカも同席している。

 

座布団を敷き、三人で座った後、理琉達の籠城生活を聞いてから自分たちのこれまでの行動を省みた。トーコもヒカもアキも酒に呑まれて顔を赤くしている。

 

「やっぱさぁ~、先輩らしくないって思ったんだよね~」ヒック

 

アキは酒をグビグビ飲んでいるため顔が他の二人と比べても赤い。

 

「あの子たち、苦労してたもんね・・・」

 

「そぉだよ!それに引きかえボクたちはずっとゲームしてましたってのはちょっと・・・」

 

トーコもヒカも、これには同意する。彼らがどこからPS4やXboxを調達していたのかは不明だが、少なくともこの状況下で暢気にゲームをやっていた、というのは、「ダメな先輩」というレッテルを貼られてしまうような気がしているのもこれまた事実。『サークル』とか言っても、本当はただのゲーム部屋。だが理琉たちの事実を知った今、こんな堕落以上に堕落した生活をしていた自分たちに嫌気が差していた。

 

「自堕落同好会返上?」

 

アキの返上、つまり自堕落はほどほどにしよう、と提案するような言葉に、トーコはまだグラスに残っていた液体をグッと一気飲みし、乱暴にグラスを置き、

 

「うん、明日から頑張る!!!」

 

と、自堕落同好会改め、新たなサークルを立ち上げることを決めた。

 

 

 

「まぁ、そんなとこよね。・・・乾杯」

 

 

 

 

乾杯!!

 

 

 

 

 

グラスをカン、と鳴らし、三人は残った酒を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 




「先輩は将来何になりたいんですか?」
「えっとねー・・・—————————かな?」
「良いんじゃないですか?きっとなれますよ」
「うん!」
次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十四話 としょかん
私達は、ここにいます。

るーちゃんが一言も話してないことに気づいた・・・次回絶対出します!!


まだ色を付けるか決めてないけど


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第三十四話 としょかん

サークルを立て直し、新たに活動を始めることを決めた大学生組。高校生組も、色々と作業に取り掛かっていた。

悠里、理琉、慈は余っている部屋の内の一つを使って何かを組み立てている。


「なんでこんな遅れたンだよ作者!!」

 

色々忙しかったり、異世界編とか他の書き溜めがあったからさぁ…

 

「作者遅すぎる…いくらキミの力量がゴミだからってこれはひどすぎるよ」

 

グサッ…耳が痛いぜ

 

「次遅れたら今度こそカンカンですからねっ!?」

 

カンカンってきょうび聞かねえな。

 

「そォいうネタはいいから、さっさと始めろこのノロマ作者!!」

 

 

 

 

 

 

 

すみません。本編が遅れたこと、心よりお詫び申し上げます。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日。高校生組の人間の内、3人が鼻歌を歌いながら部屋を掃除している。ダスキンを掛けたり、掃除機で塵を吸ったり、ホワイトボードを置いたり・・・これから何が始まるのだろうか。

 

「ふんふふん、ふんふふん、ふんふんふーん♪」

 

「ふンふふン、ふンふふン、ふンふンふーン」

 

「若狭さん、これこっちでいいかしら?」

 

「はい、そっちでお願いしますね」

 

「よしよしるーちゃン、今から楽しい部屋を作るからな」

 

理琉は瑠璃を撫でている。

 

「ごめんなさいね、掃除とるーちゃんの面倒見て貰っちゃって」

 

「気にすンな、好きでやってるンだからな」

 

「りるにー大好き~」

 

ぴとっ、と理琉にベタつく瑠璃。……少し嬉しそうだなオマエ…お巡りさんコイツです。

 

「俺はりるじゃなくてマサルだぞ~」

 

「でもかんじはそうともよめるからりるにーなの~」

 

小学生の割に意外と賢い瑠璃に少し驚く理琉。完全に「りるにー」と呼ばれることになってしまった。

 

「しょォがねェな、はいはい俺はりるにィですよォ」

 

瑠璃と遊んでいると、後ろから慈にチョップ受けた。それが旋毛にクリーンヒットしたのか、そこで悶絶する。

 

「な、何すンねン……」

 

「もう、大変なんだから、遊んでないで手伝って頂戴?」

 

「だ、だからって旋毛にチョップをかまさなくても…」

 

わざとらしく悶絶する理琉だが、

 

「めぐみおねーちゃんのいうとおりだよりるにー。はたらかざるものくうべからず、だよ?」

 

「はいすぐ動きます!」ビシィ

 

理琉は手際よく机や椅子、ホワイトボードを定位置へと動かした。やはりコイツ、幼女の言葉には弱いのか。

 

 

「じゃあ私、扉にこの紙貼ってくるわね」

 

「はいよっと」

 

悠里は扉に『学園生活部 教室』と書かれた紙を扉に貼り、ふうっと一息つく。すると、どこからか物音がした。

 

 

 

「由紀ちゃん、おはよう」

 

物音の正体は由紀だった。先ほどからこちらの様子を覗っていたらしく、悠里が由紀の方を向いたときに一瞬隠れた。だが、すぐに気づかれた。

 

「おはようりーさん…あれ、めぐねえとマー君とるーちゃんは?」

 

「三人ならこの中よ?」

 

「何してるの?」

 

「空き部屋を改造して教室を造ってみたの。『大学生』なんだから、勉強もちゃんとね?」

 

由紀は少し冷や汗をかきながらも左手でビシっと敬礼を決め、元気よく返事をした。

 

「お、由紀か。俺たちで教える側に回るから、何でも聞けよ?」

 

「う、うん!」

 

「あら由紀ちゃん、おはよう」

 

「おはようめぐねえ!」

 

 

AM9:00は慈による現文古文を悠里、由紀、理琉で受け、

 

AM10:00からは理琉による英語、数学Ⅲ、物化生を由紀、悠里で。(教科が多いため、2時間使用)

 

AM12:00からは悠里による地歴公民を理琉、由紀で受けた。(担当科目以外、慈はサポート役に回っている)

 

 

現文古文の途中、胡桃が張り紙を発見し、3DSを片手に様子を見に来た所、悠里に気づかれ強制連行。慈の授業を受けることとなった。真冬もこの部屋に現れ、一緒に授業を受けることに。多少レベルは高いが、なんとかついて行けたようだ。

 

 

そんなこんなでPM1:00を回ろうとしていた。胡桃たちはぐで~っとしている。約4時間ぶっ通しの授業は、さすがに体が堪えたようだ。

 

 

「ふあ~…」

 

「つ、つかれた~…」

 

「こんな疲れる作業は久しぶりだよ……」

 

授業の様子を見て、腕を組む悠里と理琉と慈の三人。どうも由紀と胡桃の忘れように少し困っているようだ。

 

「二人とも忘れてるわね…」

 

「理系はもっと時間かけないと取り戻せそうにないぜ…」

 

「黒田君も現代文それなりに危なかったわよ?」

 

「い、言うなよ~…」

 

胡桃たちは先ほどのぶっ通し補習で体力はほぼゼロ。やってこなかったツケがここで回ってきているという合図だ。由紀に至ってはもう「これ何の意味があるのかわからないよ~」とまで言ってしまう。大学の入試はもっときついんだぞ…?

 

 

「あ、そうだ!!」

 

「あァ?どォした?」

 

「大学ってほら、中学や高校の勉強と違って、言われるまま勉強するのは何か違うような…」

 

「つまり、大学みたいな自主性を求めている、と?」

 

「そうそう!」

 

ホワイトボードの前に立っている三人は腕を組んで考えてみた。

 

「先生は、大学ではどんな風にやってたンだ?」

 

「うーん、あまり覚えてないわね…でも、やりたい科目や学科を自分で選んで、スケジュールをたてて、講義を受ける…そんな感じよ。何をやりたいかは自分次第ね」

 

「そォいうこったァ。もし、例えば物理が苦手なら俺ンとこに来るのもアリだし、国文が分かんなかったら先生の所に来るのもよし。そこは自由だァ」

 

「そうね。じゃあ全員、何を勉強したいかレポートに書いて提出ね」

 

「ンじゃァ俺はエントロピーについてと……RSA暗号、シュレーディンガー方程式の解き方を…」カキカキ

 

「それは無理ですっ!」

 

 

 

 

 

 

由紀はレポートを書くために美紀の部屋へ訪れた。理琉も一緒だ。

 

「レポート…ですか?」

 

「そうそう、みーくんもやろうよ~!」

 

「おい由紀、自分の将来をエミr…じゃなくて美紀に決めてもらうようじゃダメだぞ…?」

 

「本当に先輩なんですか…?あと、マサル先輩、さっきエミリアたんって…」

 

「言ってませんよ?」

 

 

「ん~…でも急に言われてもやりたいことってそんなないよね…」

 

「先輩、前回の次回予告で教s「わぁ~~!ネタバレしちゃダメですエミリア様!!」あの、先輩…?」

 

 

「唐突にレムりんになったな由紀ィ…」

 

「しかもばっちりエミリア様って言っちゃってるし」

 

「性懲りもなく中の人ネタやメタ発言をぶち込むって、作者の頭おかしいンじゃねェか?」

 

今回は深夜テンションで書いたからな。

 

「先輩、図書館とかはどうですかね?」

 

「図書館なァ。アキさン辺りに聞いてみるか」

 

 

 

 

美紀、由紀、圭、理琉の四人はアキの部屋へと向かい、図書館が安全かどうかを確かめに向かった。幸い図書館の被害はないため、四人はそこへ向かうことに。ただ、アキからは『行くならヌシに気を付けてね』と言われた。始めは何を言っているのかさっぱりわからなかった四人だが、理琉が思考を巡らせ、何となくだが察した。念のため部屋に放り投げてあるウィンチェスターを持参し、図書館へと向かって行った。

 

 

 

とは言うものの、安全な図書館も、ゾンビが荒らしたような形跡は残っている。中はとても暗く、懐中電灯が無ければ移動することもままならない。本棚を通っていき、目的の本を探している。

 

「漫画あるかなぁ~」

 

「いや違うでしょ……300番だからあっちですね」

 

 

銃の本を眺めている理琉。ふと、何か視線を感じた。

 

 

「……ン?」

 

「どうしたんですか?」

 

「誰かいるな……」ガチャ

 

理琉はウィンチェスターを構え、周りを警戒する。

 

「…気の所為だったみてェだ」

 

「そうですか。先輩、行きましょう?」

 

「そうだな。行こうか」

 

理琉は考えるのをやめ、装填してあった弾を全て取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、何してるの?」

 

 

 

 

「「「「ぬォァァァああああああああああ!!!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

理琉達は盛大に悲鳴をあげた。

 

 

 

 

 

 

「そうか、もうトーコたちとは会ってきたんだね」

 

これまでの事を簡単に話、打ち解けた美紀とピンク髪の女性。

 

「はい、先輩……」

 

「リセでいいよ」

 

「ん?リゼ(・・)さン?」(難聴)

 

ちげーよ。耳遠いのか?

 

「そォいや、リセさンはこっちで何をやってンすか?てか、ここで生活してンすか?」

 

唐突に質問を投げかける理琉。一人だけこの薄暗い所で生活しているのか、と単純に気になっただけだ。

 

「ご飯の時はそっちに戻っているけど、基本寝泊まりは図書館(ここ)なんだよね」

 

低めのトーンで話すリセ。

 

「本が大好きなんだね!」

 

「ああ。この図書館の本を全部読むのが夢なんだ」

 

由紀はふむふむと腕を組みながら頷く。

 

「私はね。世の中の素晴らしい本は全て読み通したいんだ。世の中に自分が呼んでいない素晴らしい本があると思うと、胸が苦しくて…」

 

「……?」

 

「……?」

 

「……?」

 

「……?」

 

 

由紀たちは目をぱちくりさせながら無言でリセの言動を聞いている。リセは少し寂しそうな顔で、

 

「…でもね、困ったことにどれだけ本を読んでも新しい本が出てしまう…だからね、私はこうなって少しだけ安心してるのさ…」

 

 

 

本棚に突っ伏し、———だってと言った後、こう放った。

 

 

 

 

 

 

 

「———だって、もう新しく本が増えることは、ないだろ?」キラーン

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」(′・ω・`;)

 

「……?」

 

「……?」

 

「フアァァァ…何を言うかと思えば…そんなことかァ」アクビ

 

 

 

 

 

「……おっと、話が逸れたね。探してる本ならここだよ」

 

リセは手招きをし、『教育学』の参考資料が並べてある本棚へと向かった。

 

「スゲェ数の本だな…医療関係の本ってあるンすか?」

 

「あるよ。こっちね」

 

「どォも」

 

「み―くん?けーくん?」

 

「あ、いえ…」

 

「何でも……」

 

二人共顎に手を当てて考え事をしている。何か心境の変化があったのだろうか。

 

 

 

 

その後全員は何事もなく穏健派が籠城しているキャンパスへと戻っていく。由紀が椅子に座り、先ほどかき集めてきた本を読み漁っているが、何故か浮かない顔している。

 

「う~ん……」

 

「あァ?どォした?」

 

医療関係の本を読み漁ってメモを取っている理琉は、由紀の唐突な唸り声が気になり、声を掛けた。

 

「私ってさぁ、あまり本好きじゃないのかも~」

 

「活字よりも漫画の方が良いってかァ?」

 

「確かに由紀ちゃんは漫画の方が好きよね」

 

「そうだけど!…そうじゃなくて…さっき図書館でね――」

 

 

 

 

「ってことがあったの」

 

「すごい先輩ね」

 

「だってさ、最新刊ではダリオマンと目玉壊すマンと戦うところで終わったんだよ!?」

 

 

すると由紀は自分が好きな漫画、『ダリオマン』について長々と語りだした。もちろん、全く知らない理琉と悠里は「そうか…(そうね…)」としか返しようがないが、理琉は由紀の言いたいことを粗方理解していた。

 

「まァ、確かに古臭ェ本も良いが、新しい本が無いと、ちょっと味気ねえよな」

 

「そう!!だから新しい本を作らないと!!!」

 

「俺、実は暇なときに俺たちが異世界に召喚されたらどうなるのか、みたいな小説書いてるぞ?」

 

「へぇ~!後で読ませてよ!!」

 

「ハハッ、後でな」

 

「あら、みんな精が出るわね」

 

「お、先生。由紀は一応こォいう感じらしいよ」

 

由紀が読んでいる参考資料を慈に一冊渡した。

 

「まあっ!」

 

「めぐねえこっちこっち!!」

 

 

 

 

 

 

その頃。美紀と圭、真冬は図書館へとやってきた。

 

 

 

「お、また来てくれたんだね。どうしたんだい?」

 

「えっと、これ…どうぞ」

 

「私達で作ったんです!」

 

「まだ未完成だけど、よかったら読んでみて……」

 

以前高校で『卒業アルバム』を作成しており、そのコピーを持参していた。

 

 

「うん、ありがとう。読ませてもらうよ。えっと……」

 

「あ、えっと…狭山真冬……よろしく…」

 

ぺこりと頭を下げ、リセと会釈した。

 

「あぁ、よろしくね」

 

 

「あ、あの……」

 

美紀が突然話を切り出した。

 

「私も本が好きなんですけど、やっぱり新しい本も読みたいですね…もっともっと増えると良い…そう思うんです」

 

「私も、美紀ほど好きじゃないんですけど勧められた本とか読みますよ」

 

リセは渡された卒業アルバムを一通り読み進めてみるが、まだ完結しているような様子ではなかった。

 

「そうだね…続きを読みたくなってきたよ」

 

「まだ一冊ですけど、もっとたくさん読めるようにしたいですよね」

 

「うーん、その為にはまず書く人が増えないとダメだね。人口増大。いや、回復かな?そのためには食料の安定供給と衛生、教育、文明復興だね。結構大変だよ?」

 

 

「うん…でも…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのための本…だよね?」

 

「真冬にセリフ取られたぁ~」

 

「ふふーん」ドヤ

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ゴメン…偉そうなこと……」

 

「いやいや、楽しかったよ」

 

「あ、そうだ。医療関係の本ってある…?」

 

「さっき黒田とかいう少年に渡したから、一緒に読んでみたら?」

 

「うん…」

 

 

 

「じゃあ、行こっか。失礼しました」

 

三人は軽くお辞儀をし、図書館を去っていった。

 

「気を付けてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そのための本………………か」

 

 

 

 

 

 

 

 




「なァ真冬」
「何、マサル…?」
「昨日、クロスボウの矢が左足を貫通してただろ?あれ大丈夫なのか?」
「うん。歩行には問題ない。でも戦闘にはちょっと…」
「まぁ、そこは無理するな。何かあったら俺が守ってやる」
「あ、ありがと…」

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第三十五話 かいぎ
私達は、ここにいます。


最近がっこうぐらし!メンバーの誕生日が公開されたようですので、オリジナルキャラ、そして三次創作キャラも含めて誕生日をここにまとめます。

丈槍由紀    4月5日
恵飛須沢胡桃  8月7日
若狭悠里    10月11日
直樹美紀    12月10日
佐倉慈     3月10日

黒田理琉    4月10日
狭山真冬    12月24日

狭山小春    4月18日

祠堂圭、太郎丸、るーちゃん、大学メンバー、紗巴果夏は不明 

最近Re:ゼロから始める異世界生活にハマってしまいましてね…みーくんと中の人が同じエミリアたんが推しになりつつありますww


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第三十五話 かいぎ(☆)

穏健派メンバー全員は会議室(仮)へと入っていく。ドアには『トーコゼミ』と貼ってある。雑さ加減からみて由紀の仕業というのは言うまでもないだろう。



色付けるの面倒なのでやめます…



原作の内容を少し省略、改変してお送り致します。


トーコは何やらホワイトボードを取り出して何かを書き始めた。

 

 

「……と、いう訳で……」

 

全員の方に向き直ると、ホワイトボードをバァンと叩き、

 

「第一回、チキチキアイツらの正体を探ろう会議!」

 

由紀と瑠璃は拍手をしながら「どんどんぱふぱふ~」と結構ノリ気だ。理琉は装備品のウィンチェスターを布で拭きながら話を聞いている。

 

「なァ、チキチキってところ…いるンかァ?それに第一回ってェのは…」

 

「あぁ……考えてもしょうがないことは考えないようにしてるんで」キッパリ

 

「それはトーコだけ…」ボソッ

 

ヒカが静かにツッコむ。

 

「考える意味が出来たってこと。ですよね?」

 

悠里がフォロー(?)し、本題へと移らせる。

 

「うん。君たちのお陰でね!」

 

トーコはコピーし職員用緊急避難マニュアルを手に取って見せた。彼女はクリップで止めてある資料を何枚かめくって全員に見せる。

 

 

 

「生物兵器か…間違いなく今回の事件はボク情報科学部だからわかんないや」

 

アキに振るが、

 

「あたしは文系。ヒカは?」

 

「工学部…生物は苦手……」

 

 

 

しばらく沈黙が続いていると…

 

 

 

 

「……俺、理系全般いけるから何とかなるかもしンねェ」

 

理琉が名乗り出る。

 

「そうなの?!」

 

「あァ。少なくとも今回のアウトブレイク。ウイルスによるものではないな。大抵のウイルスってのァ封じ込めておく身体が死滅したら消えるか放出されるかなンだよ」

 

 

「どういうことだ?!」

 

 

「そのままの意味だ。つまりウイルスでない何か…症状を引き起こす原因となるものは大体細菌くらいだ。事件の原因を推測してみたんだが、幾つかありそうだ」

 

全員が興味津々になり、耳を理琉の方へ傾けた。

 

 

 

「前に図書館行った時、医療本を探してたらあのクソ会社の資料を見つけた。これはほんの一部に過ぎないが、こう書かれている。『今回開発中の細菌はユークトバニア経由でアメリカのCDCから密輸した土着菌(以下Ωと称する)を品種改良するもの。これに感染したヒト及び哺乳類は腐敗、暴徒化する(中略)』とある。実は今由紀が抱えている柴犬も元感染者だ。一応置いてあった抗生物質応急処置を施しているから今の所問題ねェが、この文面を見る限り、完全に生物兵器禁止条約というのを無視しているという事がわかる。それだけじゃない。どうやらランダル製薬はこの街を実験用の街にするつもりだったらしい。もしかしたら今回の事件も人為的に起こされたという事も考えられる。だがこれだけの死者が確認されている以上、誰かが意図的にばら撒いたとは考え難い。仮に実験する日が来るのであれば、この大学、そして俺たちの高校を含めて職員に連絡が行くはずだ。だが職員のほとんどは死滅しているときた。つまり、何らかのミスによってこうなったのではないかというのが一つ目だ」

 

 

「二つ目はどうなんだい?」

 

 

トーコが問う。

 

 

 

「…あまり好きじゃないンだが、オカルト説だ。これ見ろ。この地区にはゲホッ…那酒沼がある。切り抜きには『ある飢饉の年。漁師が那酒沼に船を出して網を打つと、それは大きな魚が捕れた。魚は悲鳴をあげ、食ってくれるなと叫んだ。家族のためだ堪忍しろと男は言って、魚を打ち殺し、持ち帰って家族と食った。翌朝、その家の者は皆、死んだ。魚の腹からは人の指が出たという。それからというものの、那酒沼に船を出すと祟りがあるという事になって、今でも船は出ない。』…と書かれているンだ。オカルト説……言い換えて、お社様の祟り説と呼ぶとしよう。あの辺には確か古い神社があったと記憶している。オカルト染みた話だから何とも言えんが…」

 

 

全員、オカルトなんてありえないとでも言いたそうな顔でこちらを見ている。現代科学の社会、オカルトなんて信じる人は少ないと思うが、胡桃が少々怖がっている。

 

 

「あ、あたし呪われたんかな…」ガクガク

 

 

「まぁコレ飲んで落ち着け」

 

理琉はペットボトルに入ってる水道水(未使用)を渡した。

 

「サンキュ」ゴクゴク

 

 

 

「……とりあえず、ランダル本社へ向かえば良いってことかしら?」

 

「そういうことっすよ、先生」

 

「最初っからそう言えばいいのに…」

 

「ボク何もしてないよ!?」

 

 

「俺か。すまン」

 

「まぁ急ぎじゃないから大丈夫だけどね」

 

「それまでここでお世話になっても良いんでしょうか…?」

 

 

 

 

 

「もっちろんさ!!」

 

 

 

 

飛び切りの決め顔でこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜…

 

 

 

 

 

トーコと理琉がゲームをやっていると、胡桃と真冬もそこに入ってきた。

 

 

 

 

 

「お、胡桃、真冬。どォした?」

 

「あたしもゲームやりに…」

 

「ボクも……」

 

「そォか。隣来いよ」

 

 

 

 

 

 

「……さっき会ってきたんだ。武闘派と」

 

 

「はァ?」

 

「「えッ!?」」

 

理琉達は驚愕するが、トーコは慌てて『戦争してるわけじゃないから会ったりするよ』と補足した。

 

 

 

「ボクたち穏健派と、武闘派の縄張りが接するところに会議室があってね。そこに呼び出されたんだ」

 

 

 

 

 

ことの経緯を話していく。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

『ボクたちに何の用かな?』

 

 

会議室には金髪で釘バットを装備している青年 武闘派リーダー 頭護貴人(トウゴタカヒト)(独自で解釈したものなので、正確な読みはわかりません)、長髪で目つきが少々キツい女性 神持朱夏(カミジアヤカ)、そして右にサイドテールをしている女性 右原篠生(ミギハラシノウ)が待機していた。

 

 

「そっちに男一人と女数名、あと犬が一匹来ただろう」

 

「全部独占するのはズルいんじゃない?」

 

「知らないわよ。アンタらがクロスボウで撃ってきたんでしょ?」

 

タカヒトは即座に『威嚇のつもりだ』と言ったが、

 

「クロスボウの矢が足を貫通したってよ」

 

「…はぁ…後で高上には罰を与える。だがアイツが持っていたクロスボウを粉々にしたのは誰だ?」

 

「んなもんこっちが知ると思う?」

 

 

「…まぁいい。こっちの不手際があったのならすまない。しかし、新しい発見物は共有する約束だ」

 

「身柄はともかくとして、物資や情報はあったのか?」

 

「あの子たちの物資はあの子たちの物。それにあまり喧嘩売ると…」

 

アキが補足しようとすると、

 

「まあ面白い話があったらそっちにも伝えるよ」

 

 

 

「そうか。わかったお願いしよう」

 

「話はそれだけよ」

 

 

するとシノウがお盆に湯呑みを乗せてお茶を運んできた。

 

 

「あの、お茶…どうぞ」

 

 

「ん、ありがとう。シノウ、元気?」

 

ちょっとした挨拶程度しか交わせなくなったこのご時世において、ここでの会話は貴重なのかもしれない。

 

「勧誘はやめてよね。彼女は大切な戦力なんだから」

 

「勧誘とかって…別に…」

 

アキが若干むくれる。

 

「(グビッ)ぷはぁっ。話は分かったからまた連絡するよ。行こ、アキ」

 

そう言って二人は会議室を後にした。

 

「ふん……」

 

タカヒトは何かを企んでいそうな表情をしている……

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「ヤな奴らだなぁ…」

 

「悪党の片隅にも置けねェ野郎だ。つかアイツら殺していいか?真冬を怪我させておいて謝罪にも来ねェじゃないか」

 

「マサル…ボクは大丈夫だから……」

 

 

「トーコは……怖くないのか?」

 

胡桃が聞く。

 

「まぁ、そりゃ怖いけどさ。いつもギスギスしてるのも後味悪いし…やり方は色々あっていいんじゃないかなぁ?!」

 

「正直奴らのやり方は気に入らねェ。だが、それも悪くはないか…」

 

「そうだよな。でも……やっぱりあたしは穏健派(こっち)がいいかな」

 

「俺もこっちにいるつもりだ」

 

「もちろん…ボクもこっち……」

 

 

 

四人はゲームで対戦し始めた。

 

 

 

 

マサルゲームヘタスギダロ!!

 

オトコトシテノプライドガァ……

 

 

 

 

 

廊下では悠里と瑠璃、太郎丸が歩いていた。

 

 

「もう、ごはんの時間なのに…」

 

「りーねーお腹すいた~~」

 

「もうちょっと待っててね」

 

「太郎丸もお腹すいたよね~?」

 

「ワウン」

 

 

 

 

これが、穏健派の日常であった。

 

 

 

 

 




深くなっていく穏健派と武闘派の溝。ある時突然、穏やかな日常が消える。

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第三十六話 きれつ
私達は、ここにいます。



原作ではこの辺りから事態が変わっていくんでしたよね。



【挿絵表示】


線画というものをやってみました。今回は由紀ちゃんです。


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第三十六話 きれつ

穏健派は楽しく生活している中、武闘派はこんなことをしている。


ヘルメット、黒い服を着用…そして右手アイスピックを数本持つ人物…そこに襲い掛かるゾンビ一行…しかし黒ずくめの人物はゾンビを簡単に躱し後ろ首にアイスピックをグサッと刺した。完全に生命活動(?)を停止させると、ゾンビを軽く蹴飛ばした。

 

 

「ふう…」

 

 

サイドテールの女性、右原篠生が今回のゾンビ掃討係だ。

 

 

 

キャンパスへ戻ったシノウはアヤカに身体に異常が無いかを隅々までチェックされる。ゾンビと接触した後は必ずやることになっているらしい。

 

 

「……特に傷はないね」

 

 

ドア越しにチェックを行なったアヤカは部屋に入り、異常がないことを彼女に伝えた。

 

「お疲れ様。何かあった…?」

 

「いつも通り異常なしでした」

 

アイスピックで遊んでいるシノウ。アヤカは危ないと注意し、やめさせた。

 

いつもの服へとチェンジした後部屋を後にした。

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「シノウ、お疲れ…」

 

眼鏡とニット帽を着用した高上聯弥(コウガミレンヤ)が待機していた。理琉と対峙した時に蹴られたため、鼻にガーゼがあてられている。

 

「うん。今日もいっぱい殺ったよ」

 

「む、無理しなくてもッ…僕が代わるよっ……」

 

「ありがとう。でも大丈夫。私の方が上手いから」

 

「いや、でも……」

 

シノウはゆっくりとレンヤに近づき、優しく抱きしめた。

 

 

 

「大丈夫……絶対…負けないから…」

 

 

 

 

 

 

 

所変わって穏健派。

 

 

 

 

 

 

「マサル先輩、グラウンドって安全ですかね…?」

 

圭が理琉に問いかけた。

 

「圭、俺じゃなくてトーコに聞いてくれ…(苦笑)」

 

「アハハ、そうですよね!」

 

「…瑠璃ちゃんを遊ばせたいんだろ」」

 

「はい。ずっと校舎だと退屈しちゃうかなって…」

 

「よし、聞いてみるか」

 

「ですね!」

 

 

 

 

 

その後諸々とあり、トーコはホワイトボードに大学の見取り図を描いた。

 

 

 

 

 

「うちのガッコはこんな感じ」

 

校舎が逆L字型になっており、その左下には理学棟と、もう一つスペースがある。校舎の上方向にグラウンドが併設されているそうだ。

 

「校門はバリケードしてあるからほぼ安全だよ。ただ、この理学棟と、もう一つこのスペースには絶対近づかないで」

 

「理学棟?なンかいるのか?」

 

「あぁ…掃除しきれてないんだ」

 

「まァ大体察した。だがもう一つは…」

 

 

トーコは少し低いトーンで…

 

 

「あそこは…ほら…『お墓』かな…………………まぁとにかくあそこには近づかないでね」

 

 

 

 

「はーい!!」

 

 

 

 

 

 

「よぉぉし!!れっつご~!!!」

 

「わああああっ!!!」

 

由紀は瑠璃を肩車し、グラウンドを走り始めた。

 

「ゆきねー、あっち!」

 

「あっちだね!!それ~!!」トテテ

 

「由紀せんぱ~い、るーちゃーん!」

 

「ワンワン!」

 

「けーくん待て~~~!!」

 

 

 

 

「元気になったみてェでよかったじゃないか」

 

「そうですね。四人とも楽しそうですし」

 

「私は…ちょっと心配かも…」

 

理琉が水を飲みながら悠里に訊いた。

 

「なンでだ?」

 

「あの子が元気になってどこにでも行けるようになったら…」

 

「…寂しいんですか?」

 

「それもあるけど……怖いの…」

 

 

 

 

「目が覚めて、あの子がいなかったらって思うと…」

 

 

(そォいえば、数か月前に瑠璃ちゃんが交通事故に遭いそうになってクラスメートの藤田ってやつに助けられたって話題になってたような…そいつは瑠璃ちゃんを守る代わりに頭をコンクリートに打って死んだらしいが…)

 

 

 

 

「怖かったのは私達もです」

 

「そ、そうよね…」

 

「マサル先輩も、無茶はダメですよ?」

 

「わァかりましたよ」

 

 

すると、悠里はいきなり立ち上がった。

 

 

「私、身体を鍛えるわ」

 

「やっぱり無茶する気じゃないですか!!!」

 

「ううん、無茶はしない。でも動ける人が少しでも多い方が良いでしょ?」

 

「でも…私もいますし、マサル先輩も…胡桃先輩に真冬だっていますよ?」

 

「やっても良いンじゃね?こっちとしても戦力が増えるのはうれしいこった。だが、鍛えるより先に体力を強化しないといけないな。軍隊では体力は基本中の基本だからな」

 

「そうね。私頑張るわ!」

 

悠里はグラウンド内の由紀たちが走っているところへと向かった。

 

 

「さてと……」

 

「先輩、どこへ…?」

 

「トーコさンが言ってた立ち入り禁止エリアって所だ」

 

「私も行きます」

 

 

 

 

理琉達が向かったところにはコンテナがいくつもあり、その向こうからうめき声のようなものが聞こえてくる。

 

「ゾンビの宝庫か。確かに危険だな…」

 

理琉と美紀は合掌した。更に理学棟へと進む二人。理琉は念のためショットガンにシェルを装填した。

 

「ここが理学棟か……陰気臭いな」

 

 

 

そこから離れようとすると、突如インターホンのようなモノからノイズと共に声が聞こえてきた。

 

 

 

 

『そこを動かないで!!』

 

 

「なンだァ?」

 

 

『話があるの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃武闘派会議室では…

 

 

 

「アイツらは外の世界から来た」

 

タカヒトが当たり前のことを言っている。

 

「別に意外じゃねえだろ。俺たち以外で生き残ってた連中なんて…」

 

煙草を吸っている男性、城下隆茂(ジョウカタカシゲ)がそう呟くが、

 

「問題はそこじゃない」

 

タカヒトが考えていることはそういうことではなかったようだ。

 

 

「俺たちの目的は何だ?高上?」

 

 

レンヤは一瞬怯むが、冷静になり、

 

「安全を保ちつつ、救助を待つ……だよね?」

 

「別にこっちから行ったってよかぁないか?」

 

タカシゲは結構安直なことを言う。

 

「闇雲に行っても仕方ないわ。こっちから行っていませんでしたなんて余裕はないのよ」

 

「話を戻して…必要なのは情報。アイツらがどこから来て、何を見たのか」

 

 

「高上君がミスらなければよかったのにね」

 

 

「うう、ごめん……」

 

 

 

「とにかく…だ―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

穏健派に遊ばせておく段階では無くなった。資源(リソース)は一元化しないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悪い笑みをこぼす武闘派全員。これが後に大混乱を引き起こすことになるとは彼らは知る由もないだろう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「外の世界に、行こう!!」

 

 

トーコのその一言からプロジェクトは始まった。

 

 

「遠足だね!」

 

由紀がとても張り切っている。

 

「いや、大学生になって遠足はないだろ…」

 

「じゃあ、サークル合宿!!」

 

「クスッ、いいね…合宿…」ニコ

 

ヒカが少し笑う。

 

「つゥか、今まで外に出なかったってことなンか?」

 

「大体学内で賄えたからね。ぶっちゃけ怖かったんだよね…ここにいる間はさ…もうすぐ助けが来るかと思えたけど、もし外に出て誰もいなかったらって……」

 

瑠璃が話を聞いて悠里の服をギュッと握った。

 

「……」

 

「大丈夫よ」ナデナデ

 

 

トーコは続ける。

 

「救助隊がいなかったけど、君たちがいた。他にも生存者はいるよ」

 

 

 

 

 

「そォ…だな……」

 

 

 

 

 

理琉と美紀は少し思い詰めた顔をした。先ほど理学棟へ足を運んだ時、女性らしき声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

『話があるの』

 

 

 

インターホンから声が聞こえる。

 

 

「誰かそこにいるんですか?」

 

美紀がドアに手をかけようとするが、

 

 

 

『入っちゃダメ!ここの事は誰にも知られたくないの』

 

 

 

「じゃァ、なンで俺らに声かけたンだ?それなりの理由があンだろ」

 

 

 

理学棟内にいる女性は、間を開けながらも、

 

「なんで、かしらね……」

 

煙草を咥えながら言った。研究所のような空間は真っ暗でパソコンのモニターの光以外は何も見えない。うめき声が奥から聞こえることから察して、ゾンビを数体捕らえているのだろう。

 

 

「あの日から、私はかれらについて研究してるわ」

 

『そこにゾンビがいるンか?』

 

インターホン越しから聞こえる理琉の声に肯定の言葉を口にすると同時に、

 

「サンプルがないと研究できないでしょ?」

 

と付け加えた。

 

「あなたたちは外から来たのよね?」

 

『あァ。絶賛籠城中だ』

 

「ここの生存者は安全管理に厳しい。かれらを保管しているなんて知られたらタダじゃ済まない」

 

『ソレやってンのは武闘派の人間だけだ。俺たちは違う』

 

「そう。でも私のことは秘密にしてほしい」

 

『別に構わねェンだが…何か分かったンか?研究してみて…』

 

 

「いくつかあるが………本当に知りたい?

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

 

あの時話していたことが頭によぎってしまい、頭がボーっとする美紀と理琉。

 

「みーくん、大丈夫?」

 

「…マサル、どうしたの……?」

 

「だ、大丈夫です」

 

「お、俺もだ」

 

 

トーコがホワイトボードに記したのは、『サークル合宿計画』。遠征部隊数名によってランダル製薬本社に潜入、情報をかき集めるという採算だ。

 

 

「—————という感じ。何か質問ある?」

 

胡桃がスッと挙手した。

 

「遠征には何人で行くの?全員で行くなら車もう一台必要なんだけど…」

 

「俺たち9人でも狭かったからなぁ…」

 

「……全員はやめた方が良いとボクは思う…」

 

真冬がぽつりとつぶやいた。

 

「そうだね。ここも維持しないと……」

 

ヒカもその案には同意見。

 

「二手に分かれるか。待機班と、遠征班」

 

 

「できるだけ体力のあるやつ、身軽なやつを連れていきたい。高校組も何名かはここに残ってもらうことになるかもしンねェ」

 

 

「じゃあ、私残ります」

 

悠里が名乗り出た。

 

「えっ?りーさんなんで?」

 

「危なくなるかもしれないし、この子は連れていけないわ」

 

瑠璃の安全を考えるとなると、連れて行くのは危険だ。そう判断したのだ。

 

 

「……まぁ、行くメンバーは俺が決めることになるな。武闘派のクソ野郎の事を考えると、胡桃は狙われるかもしれないから連れて行くのは前提として…」

 

 

「ゆっくり考えてくれたまえ。急ぎじゃないんだし」

 

 

「……そォさせてもらうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の中でスマホにメモを取っている理琉。

 

 

 

 

「……うーん……しかし、今日のりーさん頑張ってたなァ……武器にも限りがあるからもう少し身軽に……」ブツブツ

 

 

「…マサル……?」

 

「お、おォなんだ真冬か」

 

「ゴメン……驚かせちゃった……」

 

「別に?」

 

「…メンバーはどうするの……?」

 

「お前の足の状態にもよる」

 

「…足……もう大丈夫…だけど…」

 

大丈夫と言うが、まだ左足にはカットバンが貼られており、血も滲み出ている。

 

「走れるし……」

 

 

 

「……そうか。よし…これで行くか」

 

 

 

「見せて…」

 

 

 

「はいよ」

 

 

遠征メンバー:黒田理琉 狭山真冬 恵飛須沢胡桃 丈槍由紀 若狭悠里 直樹美紀 太郎丸

 

待機メンバー:佐倉慈 祠堂圭 若狭瑠璃 出口桐子 光里晶 喜来比嘉子

 

 

「これで行こう。先生にはここで待機してもらってみんなを引っ張ってもらう。圭は銃の扱い方を見る限りだと戦闘にはあまり向かない娘だ」

 

「みんな銃使えるんだっけ…?」

 

「多分な。俺はウィンチェスターM1887、オマエはデザートイーグル、胡桃はAK-47、由紀はMP5、悠里はM4、美紀はP90をそれぞれ装備しているはずだ。まァ今は使ってないからキャンピングカーに放置してあるんだろうけど」

 

「マサル持ってきてるし…いいかなって…」

 

「なんだそりゃw」

 

「フフッ……」

 

笑顔を見せると思ったらまた表情を変えた。

 

 

「なァ…」

 

「…ん?」

 

「りーさんがさっき名乗り出ただろ…?残るって……」

 

「うん……」

 

「最終的に連れて行こうと編成を組んだわけだけど、俺たち高校組がばらけるのって信じられないと思ってンだ」

 

頬杖をつきながら窓の外を見やる。

 

「……でもこれまでの事…小春のこともそうだけどさ…そういう…モンだと割り切るべきなンだと思う………けど…大切な人間とお別れをしなきゃいけない世の中ってさ…残酷だと思わないか…?」

 

「……ボクも…そう思う。でも、人間は必ず死ぬからさ。お別れってのは避けられないんじゃない……?」

 

真冬は理琉の隣に腰を掛けた。

 

「……お別れは嫌だ………ずっとマサルの隣にいたい…」

 

「…そうか。やっぱり誰かの隣に居たいっていう気持ちわかるよ。安心したいもンな」

 

「……………」

 

真冬は黙ってしまった。

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

『外の世界は、もうない…』

 

『国が生きていれば、救助が遅れても放送位するはずだ』

 

理琉は理学棟の女性が言っていたことを思い出した。

 

『だがAM FM BSテレビなども全部試したが、大規模な放送はどこもやっていない。それを踏まえると……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『日本全土、恐らくは世界の全域で―――』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『国家に準ずる組織は消滅したと考えた方が良い』

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

「……(クソッタレが…)」

 

 

心の中で理琉はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

武闘派の夜。

 

 

 

シノウがある部屋に来た。

 

「れん君、起きてる…?」

 

返事はない。レンヤはすでに寝ているのだろう。

 

 

 

「スー…スー…」

 

 

 

「おやすみなさい…」

 

 

 

ドアを閉め、その場を後にした。窓から空を覗くと、一面の星空に月が一つ上っていた。

 

 

 

「外の世界…かぁ」

 

 

 

自身の下腹部をさする。彼女とレンヤの間に新しい命が宿っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

就寝中の高上聯弥。彼は心地よく寝息を立てていたが、あるとき息が荒くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ゼェ…ゼェ…ハァ………ヒュー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学内でまた(・・)感染者が出た……

 

 

 

 




ついに戦いの火蓋は切られ、武闘派が動き出す。穏健派が騒ぎに巻き込まれ、事態は最悪な方向へ

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第三十七話 ぬれぎぬ
私達は、ここにいます。



理琉たちはこの夜、異世界へと飛ばされます。


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第三十七話 ぬれぎぬ(☆)

高上聯弥は死亡。残る武闘派は四人。彼らはとんでもないことを企み始めた。


翌日の朝。まだ少し暗い廊下を一体の『ゾンビ』がさまよっている。向かっている先からは音楽が聞こえており、ゾンビはそれに釣られる。

 

 

 

階段までたどり着き、降りようとする。しかし、後ろから誰かに蹴落とされた。階段から落とされてもゾンビは止まらない。ソレが向かっている先には一つのポータブルCDプレーヤーが…

 

 

 

手を伸ばした瞬間、そのゾンビは転落した。

 

 

 

 

「し……シノウ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様子を上から覗っていたシノウは悲しそうな表情を見せ、その場に座り込んでしまった。

 

 

「何してるの。行くわよ」

 

 

 

 

 

 

武闘派会議室にて……

 

 

 

 

 

 

「高上か死んだ……隔離体制は完璧だったはずだ」

 

 

「シノウ、彼が最後に外に出たのはいつだったかしら?」

 

 

「えっと、六日前で身体検査もしてます」

 

 

パトロール当番記録表めくりながら言った。

 

 

「いや……ありえん……」

 

 

タカシゲは面倒くさそうに

 

「起きたんだから仕方ねぇだろ」

 

「自殺とか…?」

 

 

 

「そんなのありえないですッ!!」

 

 

 

シノウはアヤカの自殺というワードをバッサリと否定した。無意識に力が入り、バインダーを破壊しそうになった。

 

 

 

「まぁ、あなたがそう言うなら、そうなんでしょうね」

 

「けっ…」

 

 

 

彼らは様々な推測をした。

 

 

 

「自殺じゃないなら……他殺…?」

 

「どうやってやるんだよ」

 

「あいつらの血を使えばいいんじゃない?それを注射針で刺せば痕も残らないだろうし……」

 

 

「あ、いや、俺じゃぁねえぞ?」ガクブル

 

 

「あなたなんて一言も言ってないわよ」

 

 

「やめろ。俺たちは………仲間だ」

 

全員が静まり返る。

 

 

「校舎内での外部との接触、あるいは他殺。犯人ははっきりしている」

 

 

「おう、そうだな」

 

 

 

 

 

穏健派(アイツら)を野放しにしていたのが間違いだった

 

 

 

 

 

 

学園生活部及び穏健派は濡れ衣を着せられることとなった。

 

 

 

 

 

 

胡桃の部屋。

 

 

学校で果夏に咬まれたところを確認している。あの特効薬(?)を打ってから特に変わりはなさそうだ。だが、以前から倦怠感を感じており、予断を許せない状況だった。

 

 

 

コンコン

 

 

 

ドアがノックされ、胡桃は慌てて包帯を直した。

 

 

「おーい、てつだってー」

 

 

トーコの声だ。

 

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

 

包帯を整え、部屋のドアを開けた。トーコはよっ、と一言言った後、

 

「合宿するんでしょ?荷造りしないと!」

 

 

 

ラウンジのようなブースで荷造りをする穏健派。理琉は自分のショットガンに少し改造を施し、装填数を7発から10発に変え、その他の武器、ナイフや短刀なども研いでいた。

 

 

 

「……よし、こんなもンか。拡張マガジンも作ったし、あとはこれを車に入れておくだけだな。………それにしても…なんだこのスイッチみたいなやつ…持ってたっけ?」

 

 

 

 

 

「えいっ!」

 

 

 

バコッ!

 

 

 

「っデェ!!!何すンだよ胡桃!」

 

「サボってんじゃねーぞ?」

 

「サボってねーよ」

 

「ふん、どうだか」

 

 

 

「ねぇめぐねえ。本当にここに残るの…?」

 

荷造り中、由紀が慈にこんなことを発した。

 

「そうね。私運動あまり得意じゃないし、みんなの足手まといになっちゃうかなって」

 

「…でも……」

 

「由紀ちゃんなら大丈夫。それに、何かあれば黒田君がしっかり由紀ちゃんたちを守ってくれるから」

 

 

 

「美紀、校舎は私達が護ればいいんだよね?」

 

「そうなるみたいだね」

 

「う~、美紀と一緒に行きたかったなぁ~…」

 

「あまり人数が多いと…ね?」

 

「そうだよね。我慢する!あ、マサル先輩!」

 

「ンァ?どォした?」

 

「あとで良いんで、私のUZI9㎜を少し改造してくれませんか?」

 

「そォ言うと思って、もう改造してあるぞ。可愛い女の子でも扱いやすいようにな。ハイ、これ。くれぐれも武闘派に見つからないようにな」

 

理琉は改造されたUZI9㎜サブマシンガンを圭に渡した。

 

「あ、ありがとうございます!(可愛い女の子って…///)」

 

 

(先輩が圭を口説いてる…)

 

 

もちろん彼にそんなつもりはない。またしてもフラグを建てやがった。

 

 

 

アキと悠里は椅子に座って何かをメモしている。

 

 

「ごめんね〜、アタシ整理とか苦手で…」

 

「ふふっ、任せてください。得意ですから」

 

悠里が淡々と語り始める。

 

「整理整頓は基本ですから。まず目録です。何があって何がないのかを調べてペラペラペラ管理のためには家計簿をつけましょう。それからそれから……」

 

長ったらしく語られたので、アキが若干引いている。

 

 

「よっと。じゃァ俺も手伝うか。……あァ…何だこりゃ」

 

 

理琉は一冊のノートを発見した。

 

 

「『自堕落同好会ノート…?』って、ここ消されてサークルノートになってるし」

 

「ありゃ、こんなとこにあったんだ。見つからないわけか」

 

アキが理琉に近づいてノートを覗いた。

 

「みんなで適当に回し書きするんだ」

 

交換日記のようなものだろう。と理琉はふむふむと頷きながら考えた。彼自身交換日記などはやったことはない。ずっと軍にいたため、満足に学校にすら通えていないのだから。

 

「はいはーい!!わたしたちも書いていいですか〜?」

 

「もちろんいいよ」

 

トーコは快く許諾した。

 

 

「どんなこと書いてあるのかな〜?」

 

「……えーっと、スミコさんって誰…?」

 

スミコという言葉に三人は固まった。

 

「随分前に出ていったっきり、戻ってこないんだ…」

 

「……」

 

(死亡フラグ建ってンだが)

 

 

「由紀ちゃん、手が止まってるわよ〜」

 

慈に呼び出された。

 

「ら、らじゃ〜」

 

 

「アタシたちも作業に戻ろっか」

 

「うん」

 

 

 

美紀、理琉、トーコの三人は荷物を運んでいる。階段に差し掛かった所で理琉が唐突に口を開いた。

 

「なァ、トーコさン」

 

「ん?何?」

 

「さっき言ってたスミコってのァ、どンな奴だったンだ?」

 

「…ん〜、ゴスロリで…酒豪だったかなぁ」

 

「酒飲むンかよ」

 

「酒飲むとよく歌うんだよな…」

 

「へ、へェ」

 

「六甲おろしとか懐かしいなぁ」

 

「……阪神タイガースのファンなのか?」

 

「多分ね。今度じっくり話すよ」

 

 

 

 

「胡桃ちゃん、はいこれ!!」

 

先程理琉が見つけた自堕落同好会ノート…否、サークルノートを手渡した。

 

「お、もう書いたのか。どれどr「わ〜見ちゃダメ!!」ぱーん(>〰<)ノ

 

由紀は強烈(?)な平手打ちをかました。

 

「なんでだよ!」タタクコタナイダロ

 

「いいから胡桃ちゃんもちゃんと書いてね」ゴミン

 

 

「はいはい」

 

 

 

「ん〜どれどれ…?」

 

胡桃は椅子に座り、ノートを開いた。

 

 

 

 

 

 

学園生活部は不滅です!ゆき

 

 

 

 

 

 

「………ッ!!!」

 

 

 

 

そこには高校組全員の似顔絵も描いてあった。

 

 

 

「くくっ…あいつ、本当に面白いな」

 

 

 

胡桃は少し涙を浮かべながらニコリと笑った。

 




穏健派、武闘派の溝が深くなっている中、胡桃の身体にはある「違和感」が…

次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第三十八話 げんかい
私達は、ここにいます。



【挿絵表示】

こちらはチモシーさんに描いて頂いた本作品オリジナルキャラクター狭山小春ちゃんです。彼女は医者になりたいという夢を持っているため、白衣を羽織ってオシャレしています。(本編では登場しない)
チモシーさん、最高に可愛いイラストを本当にありがとうございます!!




女性キャラがなかなか描けない…


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第三十八話 げんかい

穏健派による遠征計画が始まる。






はずなのだが……


「え~、合宿準備が無事完了したということで…」

 

 

 

 

 

「おつかれー!」

 

 

 

 

 

『おつかれさま~!!』

 

 

 

 

胡桃は紙コップに入ったコーラをグイっと口に含んだのだが妙な違和感を覚え、少し顔を引きつらせた。

 

 

 

 

(…味がしねぇ……)

 

 

 

 

 

 

「大丈夫…?」

 

 

隣に座っていたヒカが胡桃に声を掛けてきた。

 

 

「だ、大丈夫ですよ?」

 

「このコーラ…賞味期限とか…微妙だから…」

 

「あ…ペットボトルなら平気です」

 

「よかった。じゃ、乾杯」カコン

 

 

「ところで……その眼鏡どうしたんスか?」

 

 

「聞かないで…///」

 

 

「ブフッ!!ゲホッゲホッ!!」

 

渦巻状の伊達メガネをかけたヒカを見て理琉がコーヒーを噴き出した。

 

「…マサル、大丈夫……?」

 

真冬はマサルの背中をさすっている。

 

「ゲホッ…大丈夫だ……」

 

 

「いよいよ明日だね~!」

 

 

「先輩、お土産期待してますよ!先生も!」

 

 

「もちろん!るーちゃんは何が良い?」

 

 

「ん~…あのヒゲが付いてるクマさんかな~?」

 

 

「おっけ―!」

 

美紀は少し表情を暗くしている。

 

「どしたの?」

 

「あ、いえ…なんでも…」

 

 

 

 

 

その様子を一人の武闘派が双眼鏡で見ていた。

 

 

視線に気づいた理琉は武闘派の一人に向かって中指を立てて睨みつける。

 

(なンだアイツ…またロクでもねェこと考えてンだろォな。真冬たちに手ェ出そうもンなら速攻で殺す)

 

察しが良い彼は何となく武闘派がくだらないことを企んでいることに気づいていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、明日だと?」

 

シノウが盗み見した情報をタカヒトに知らせると少し驚く表情を見せた。

 

「あぁ、明日出発するらしい」

 

「フッ、決まったわね。あいつらの仕業だわ」ニヤリ

 

「悠長な奴らだな」

 

「本来なら、明日くらいに発症するはずだったのかもしれん…」

 

妙な推測を立てるが、あくまでも推測に過ぎない。

 

「どっちにせよ許しちゃ置けないわね」

 

「その通りだ。居場所は?」

 

「えっと、図書館に一人。他はいつもの場所です」

 

「よし、では計画通りに」

 

「……どうしたの?嬉しくないの?」

 

「高上くんの仇を討てるのよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜。

 

 

美紀は手洗い場から戻る最中、煙草を吸っているアキを発見した。

 

 

「アキさん、吸うんですね」

 

「やめてたんだけどね…」

 

「それって、おいしいんですか?」

 

「ん~ん、健康にもよくないし…でもこの世界で長生き・健康志向ってのもバカバカしいけどね」

 

「あ…」

 

 

 

美紀は遠く離れた窓から明かりが漏れていることに気が付いた。あのエリアは武闘派の縄張りらしいのだが。

 

 

「明かり、ついてますね」

 

「消灯時間厳しいはずなのに、何かあったのかな」

 

「そういえば、前は向こうに居たんですよね?どう…でした?」

 

「どうって……」

 

「私、向こうの人ってあまり知らないんですよね…」

 

「うーん…気を許さない方がいいね」

 

予想通りの回答だった。

 

「アヤカっていう女がいてさ、いっつもつまんなそうにしてるんだよね。まだ会ったことないか」

 

アキが言うには、アヤカの周りにいると息が詰まるらしい。どうにかしてやりたい、してやらないといけない…アキはその一心でアヤカと向き合ってきた。

 

だが…

 

「でも、アイツはもうダメだなって……」

 

「どうしてですか?」

 

「アイツ、笑ったんだ。『お墓』の前でクスッと…アタシの見間違いなのかもしれない。でも、あんなの見ちゃったら、もうあそこにはいられないよ…」

 

 

丁度美紀たちが話している所を、胡桃が目撃。少し離れている所から聞き耳を立てた。

 

 

 

「不安はなかったんですか?」

 

 

「不安…ね…正直怖かったよ。でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――一緒にいるとダメになるって思った(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 

「そういうのってあるのよ」

 

 

この会話を聞いた胡桃は逃げるようにこの場を立ち去った。

 

 

「?」

 

「どうかした?」

 

「いえ、なんでも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラウンドまで走って行き、真ん中にゴロンと寝転がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ…駄目かな…」

 

 

 

 

 

彼女の苦悩は『自分が学園生活部にいるとダメになってしまう』だ。このまま残ったら足手まとい…下手したら由紀たちを傷つけかねない…胡桃が以前から感じていた体の不調による不安が払拭されず、彼女の頭や心の中にモヤがが掛かってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……?」

 

 

理琉が目を覚ます。先ほどから感じる妙な気配…窓際に置いた改造済みウィンチェスターを拾い、廊下へと出た。そこには誰もいない。

 

 

「気の所為…か?」

 

 

だが、あまりにも不気味な気配から『疑念』が『確信』に変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、数メートル離れた部屋から声が聞こえる。

 

 

 

 

 

「……大学組が酒を飲んでンな」

 

「んぅ……どうしたのマサル…?」

 

「おわ、真冬かビックリしたぁ」

 

真冬も起きた。

 

「ワンワン」

 

「太郎丸も一緒か」

 

「圭がボクの部屋で寝ちゃった…」

 

「まぁ寝かせてやれ」

 

 

 

二人は肩を並べて大学組が集まっている所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「なァにしてるンすか?こんな夜中に」

 

「ありゃ、見つかっちゃった?」

 

「…ヒカはなんでトーコに抱きついてるの…?」

 

「まぁ色々さw」

 

「大丈夫だって。トーコすぐ戻ってくるって言ったじゃん」

 

(おィ、それは立派な死亡フラグ…)

 

「ん、もう一杯」ほろ酔い状態

 

サワーの空き缶を揺らし、新しい酒を要求しているヒカ。

 

「もう少し控えた方がいいんじゃない?」

 

 

「…ヒカだからヒカえめ?」

 

 

(クソ(寒い……))

 

 

「…トーコ」

 

「ん?」

 

「戻ってくる?」

 

「ああ。大丈夫さ。お土産何が良い?」

 

「……スミコ」

 

 

「…わかった。探してくるよ」

 

 

(誰?)

 

(名前だけ聞いたから俺もよく知らン)

 

 

「何か足りないと思ったわ」

 

「スミコの歌?」

 

「泣き上戸なのよね」

 

((??))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『走るのは、嫌いじゃない。でも、部に入った動機は…………えっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃がもう一つ抱えている違和感…『記憶の脱落』だ。これまでに経験してきた出来事を、彼女は徐々にであるが忘れ始めている。もっと言えば、既にここ数か月の記憶は頭からポロっと抜け落ちている。ゾンビ化の進行が止まっていない、ということを暗示しているかのように…

 

 

 

 

 

 

 

胡桃がリマインドしているのは、ゾンビ騒動の日の事。理琉達と屋上に避難している時…胡桃はゾンビと化した先輩に襲われる。確か、シャベルでとどめを刺して…えっと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ…こうだっけ……なんか違う……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!!!!」

 

 

 

 

胡桃はいつの間にかキャンピングカーの中で寝ていた。

 

「寝てたか…」

 

 

ガサっ

 

 

外から物音が………恐る恐るカーテンを覗いてみると、一人の男がこちらに向かっていた。

 

 

「チッ……マズいな…」

 

胡桃はシャベル………ではなく、車内の倉庫に入っているAK-47アサルトライフルを手に取り、マガジンに弾を込めた。

 

 

 

 




武闘派による穏健派狩りが始まる。理琉達の運命は?!

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第三十九話 ぎせい
私達は、ここにいます。


原作死亡キャラのセリフが少ない?難しいんですこれが……


少し余談を……この小説のヒロインの一人(本編では死亡済み)である小春ちゃん(オリジナル)の声のイメージが、佐倉綾音さんよりも石見舞菜香さんっぽくなってきたかな…と、最近思い始めました。皆さんはどう思いますか?





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第三十九話 ぎせい

武闘派による穏健派狩りが今始まろうとしている。理琉が妙な気配、そして妙な違和感を覚えたという点からこれからとんでもないことが起こるのではないかと危惧している。


図書館で本を立ち読みしているリセ。ドアが開く音を微かに聞き取った彼女は、『相手』に話しかけた。

 

「やあ、どうしたんだい?やっと図書館の魅力に気づいたのかな?君たちの目的が何であれ、本を破損させたり盗まないのであれば歓迎しよう」

 

 

リセは、武闘派の生き残りに囲まれていた。タカヒト、アヤカ、シノウの三人に…絶体絶命……

 

「…この状況でよくそんな無駄口が叩けるんだな」

 

「ふぅん、君たちとは共存できると思ってたけど、私の知らない間に状況が変わったということかな、武闘派の諸君」

 

リセはあくまで予測をたてているに過ぎない。彼女はずっと図書館にいたワケでもあるし、外の状況なんて知ったことじゃない。だが、武闘派の人数が当初の時より違っていたことにはさすがに気づいたようだ。

 

「そういえば、二人足りないね。背が高い男と、眼鏡の子……同時多面展開ってやつかな?さすが武闘派だね」

 

やや皮肉交じりにそう解釈するリセ。

 

 

「そうやって煙に巻くつもりか?」

 

 

「……ずっと図書館に籠ってたから外のことはあまり知らなくてね。何かあったのかい?」

 

「あなた、そうやって現実逃避しかできないんでしょ」

 

「ん~…そう言われても仕方ないかもね。でも、現実(いま)を変えるとしたら、ここからなんじゃないかな?あの子たちが教えてくれた」

 

「あぁ、そうだそれだ。そいつらについて話を聞きたい。ついてきてもらう」

 

 

「あの子たちの話はあの子たちに聞けばいいんじゃないかな?紹介はするよ。でも、あそこには…」

 

 

あそこと言うのは穏健派の事。彼女はあそこには理琉がいるということを言いたかったらしい。手荒な真似をするとそっちが酷い目に遭わされるということも忠告するはずだった。…だが、

 

「話にならんな…」

 

「きっと、わかっていないのよ…愛する人を失う痛みってのが……」

 

高上が死亡してから状況が悪い方向へと向かっていき、武闘派と穏健派の溝が深くなっているのは言うまでもない。しかも今回の件で一番キレているのはシノウだ。アイスピックを握りつぶしそうなくらいに…

 

すると、アヤカが急に一服し始めた。しかし一回吸い終わると、フロアにポイ捨てをした。

 

「ちょっ!!ここは禁煙って、貼り紙も…」

 

 

 

すると後ろからクロスボウをリロードする音が聞こえた。今のは相手の気を逸らすための罠だったのだ。

 

 

「これでわかったでしょう?」

 

 

 

 

 

 

「確保完了」

 

 

 

 

 

 

穏健派メンバーが一人捕まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ハッ!?!!!」

 

 

 

 

突如として目を覚ました理琉。先ほど大学メンバーと雑談をしてその後さっさと寝床へと着いたのだが、先ほどといい、色々と嫌な予感がしていた。素早く起き上がると、動きやすい服に着替え、ウエストポーチにショットガンシェル、予備の銃ベレッタM92とマガジン数本を入れ、そしてすでに装填しておいた10発のウィンチェスターM1887を持った。

 

 

「マズい、このままだとヤバいかもしれン…」

 

隣で寝ていた真冬、太郎丸も起きた。

 

「ん…マサル、どうしたの?」

 

「やっぱり何かおかしい。真冬、太郎丸。俺に付いて来てくれ」

 

「う、うん」

 

「ワウ?」

 

「太郎丸、いいか?もし何かあったら、吠えるんじゃなくて尻尾を振るか、俺をツンツンして知らせてくれ」

 

「アウ」コクリ

 

「よし、行くぞ」

 

理琉は真冬の手を取り、足早に廊下を出た。

 

「あ…ぅぅ……」///

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、キャンピングカー付近では…

 

「……っ」

 

外でバールを構えている男、タカシゲがいた。キャンピングカーの中には、同じく武装した少女、胡桃がいる。

 

 

(武闘派の人間かもしれない…よいしょっと…一応背中に担いでおくか)

 

紐のついたAK-47を背中に担ぎ、ドアをバァンと乱暴に開けた。一瞬タカシゲが後ずさる。

 

 

 

「あ…ぁ…って、誰…だ?」

 

 

一瞬ゾンビっぽい動きを見せた胡桃だったが、言葉を発せているため、タカシゲは一安心。だが、暗さで胡桃が銃を持っていることには気づいていない。

 

 

「し、新入りの一人だな?悪いがちょっと一緒に来てもらうぜ」

 

「は…?なんでだよ、そんな口車に乗せられてたまるかってんだよ……」

 

「まぁ、そう言うなって……っ」

 

胡桃の腕を掴んだ瞬間、タカシゲは顔を青くした。

 

()てぇ…」

 

「てめぇ……やっぱッ!!!!!」

 

 

突然バールを振り下ろして来た。胡桃は状況が掴めなかったが、とっさの判断でバールを躱した。

 

 

「足は生きてるのか…最悪だろ、それ…」

 

 

胡桃はタカシゲが怯んだ瞬間を見計らったそこから逃走した。

 

 

「あっ!!ったく、もったいねえな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎内にて…

 

美紀と圭が由紀の部屋の前にいた。

 

「由紀先輩、佐倉先生」

 

「なーにー?」

 

「どうしたの直樹さん?」

 

「胡桃先輩がいないんです…」

 

「あと、マサル先輩も真冬も、太郎丸もいないんです!」

 

「胡桃ちゃんは…トイレじゃないの?」

 

「いませんでした」

 

「マー君と真冬ちゃん連れてトーコさんと徹夜ゲーム?」

 

「いえ」

 

「じゃあ…お散歩…かな?」

 

「お散歩ですか…?」

 

「多分、黒田君はこの辺りの見回りをしていると思うわ。さっき足音が聞こえたもの」

 

「そうですか…?」

 

圭は腕を組む。自分は寝ていたからわからなかったのだろうか…?

 

「キャンプの見回りしてたクセで、夜になると目が冴えちゃうんだって」

 

「そうなんですか…胡桃先輩、いつも元気そうだったから逆に心配になるんですよね…それにマサル先輩も、このところ様子がおかしくて…」

 

「直樹さんは優しいのね」

 

「美紀はたまーに優しいんですよ~」

 

「圭、余計なこと言わないの」

 

「由紀ちゃんは、いつも元気よね」

 

「そうかなぁ~」

 

 

「まあ、とにかくそういうことなら…すみません、夜分遅くに……」

 

 

「いーよいーよ、可愛い後輩のためならね!」

 

「おやすみなさい、由紀先輩、佐倉先生」

 

「うん」

 

「おやすみなさい」

 

 

 

二人が部屋に入った所で、由紀がその場に座り込んだ。

 

「み―くん、気づいちゃったのかな…」

 

「由紀ちゃん…?」

 

「あ、うん。胡桃ちゃん、最近空元気だから…眠れないって言ってるし…今日だけじゃないんだよ…」

 

「彼女なら、きっと大丈夫よ。学校で打ったあの薬が効いているはずだから…それに、この根本を調べるために、本社に乗り込むんでしょ?もっといい薬があるかもしれないわ」

 

「うん。でも間に合うのかな…」

 

「大丈夫よ。信じましょう?」

 

「うん。そうだよね。ずっと……一緒だよね…めぐねえも、マー君もみんな…」

 

「きっと……」

 

「怖い…怖いよめぐねえ………」

 

由紀は半べそをかきながら慈にしがみついた。慈は我が子をあやすかのように頭を優しく撫で、二人はいつの間にか眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

タカシゲから逃げていた胡桃は、大学の塀にまで追い込まれてしまった。

 

「なあ、おい。まだ意識はあるんだろ?悪いようにはしないから、降参しろよ」

 

胡桃は聞く耳を立てなかった。

 

 

「オイっ!!!!!!!!!」ガスッ

 

 

思いきりバールを振ったために、木にめり込んだ。

 

 

「痛い目に遭いたくねえだろ?それとも、もう痛みなんてないのか?試してやっても、いいんだぜ…?」

 

 

 

「……フッ…やれるもんならなッ!!」

 

胡桃はそう言った瞬間、地面を蹴って塀を飛び越えた。

 

「なっ!!おい待てコラ!!!……………体育会系舐めるなよ…」

 

命がけの鬼ごっこが始まった。僅かな月明かりに照らされる中、タカシゲは胡桃を執拗に追いかける。胡桃は負けじと逃げまくる。

 

(一旦戻るか…?いや、ガキの一匹、どうとでもなるか)

 

どうやら追い詰めることを選んだようだ。

 

ちょっとした茂みを抜けると、奥の方に胡桃が走って行くのが見えた。その時に見てしまった。銃を担いでいることに……

 

「じゅ、銃…いや、モデルガンか」

 

否、彼女が持っているのは正真正銘のアサルトライフルだ。だが彼は威嚇用のモデルガンとしか思っていなく、柵まで追い詰めた。

 

「なあ、本当にやるのか?」

 

「安全第一だからな。こっちも一人死んでる。もったいないよな、本当………」

 

 

 

 

 

「クソ………これしか…ないのか…」

 

 

 

 

 

「ねえよっ!!!そういうもんだ!!!!!」

 

 

胡桃がこれしかないと言った。だがそれはタカシゲに降参するしかないという意味ではない。

 

 

 

 

ゴスッ!!!!

 

 

バールを胡桃に振り落としたが、胡桃はびくともしなかった。すると、胡桃は急に走り出して距離を置き、背中に抱えていたAK-47を構えるとガチャリと音を立て、上方向へとフルオート乱射した。

 

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

けたたましい発砲音で、近くにいたゾンビを集めてタカシゲにトドメを刺すしかないのだ。彼女はそういう意味でこう叫んだ。

 

 

 

これしかないのかよォッッッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

 

「て、テメッ!その銃、本物!?な、何やってんだよ!!!!う、うわっ!!!来るなっ!!!おいっ!!!」

 

 

大声で胡桃を呼んだとき、彼は絶望した。ゾンビの中に胡桃が紛れており、それらは胡桃に一切襲い掛かろうとしていないという所を…タカシゲは多数のゾンビに襲われ、ギリギリのところで抵抗しているが、数に押され、ついに防衛能力は安全に失われた。

 

 

「お、おいっ!!俺が悪かった!!悪かったからッ!!助けてくれッ!!!見捨てる気かッ!!た、助けてくださいお願いしますッ!!たすけ…グチャッがァッ!!」

 

 

 

 

ガブッ グチャッ ゴリッ クチャクチャ グシャッ グガァァァァァァッ

 

 

 

 

胡桃はただひたすら泣くことしか出来なかった。その場に蹲るほど……

 

 

 

 

……少し落ち着き、立ち上がった。

 

 

 

 

「……あたしはもう…あそこには戻れないな…」

 

 

 

 

校舎の方向を向く彼女の目には一筋の涙が滴っていた。胡桃は校舎とは反対側の方角へと体を向けると手に持っていたAK-47の紐を肩にかけ、ぎこちない足取りでその場を去って行った……

 

 

 

 

 




タカシゲが死亡。残る武闘派は三人。この状況を打破する者は現れるのか。
次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十話 えらばれつぶされ
私達は、ここにいます。

今回は少し長めですね。次回は8巻9巻を挟んで一本に収めて行こうと思います。次回もお楽しみに!


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第四十話 えらばれつぶされ

イギー「そォいえば、圭ちゃん実装おめでとさん」

圭「ありがとうございます!作者さん!」

イギー「エトワリアでも美紀と楽しく暮らすんだぞ?」

圭「美紀ったら、私が向こうに行ったこと気づいてくれるのかな?」

イギー「親友だろ?オマエ達は。だから大丈夫さ」

圭「へへっ、そうかなぁ~」

イギー「さて、ギフト券買ってくるか~」

圭「課金するくらい私が欲しいんですか…?」

イギー「まぁそこは大目に見てくれ」

圭「は~い」

イギー「それとまたがっこうぐらし!の連載が始まったんだってね」

圭「らしいですね!美紀ったら、私の髪型真似してる~」

イギー「似合ってるからいいんじゃね?」

圭「親友として嬉しいですよ!」

イギー「……涙がこぼれるんですが、なんで?」(原作読了済み)

圭「作者さんって、案外涙もろい人…?」

イギー「そうですよ?原作で圭ちゃんいなくなったの、すごく泣いたし」

圭「大げさですよ~…ちゃんとフォワード買ってくださいね?」

イギー「俺の地元の本屋、フォワード扱ってないンですわ」(ガチ)

圭「ふぁっ!?」




イギー・圭「それでは、本編をどうぞ!」




~~~~~~~~~~~~~






周囲を警戒しながら廊下を進む理琉と真冬、そして太郎丸。

「チッ、やっぱり何かおかしい。胡桃も帰って来ねえし」

「見回りにしては遅すぎる…」

武闘派の縄張りを避けつつ、音もたてずに移動し、胡桃を探しに…

「クソっ…」


タカヒトが選ばれた理由。

 

彼曰く、決断が必要だったという。ゾンビウイルスパンデミック事件以降、備蓄されている食料や水は少なくなりかけていた。それは理琉達が高校に居たときとほぼ同じようなことだ。地下備品庫が見つかるまで近くのコンビニやスーパーなどから回収して補わなければならなかった。誰かが上に立つ必要があり、まとめ役というのを必要とした。こいつ等をまとめられる人間は…俺しかいなかったんだ、と。

 

 

「そう…俺は…選ばれたんだ」

 

 

しかし、これはただ自分に自惚れているだけの愚かな考え方だ。武闘派はそういう人間が集まっている、いわば自信過剰な過激派集団。彼らは自分の考えを正しいと自分に言い聞かせて逃げている。ただそれだけなのだ。だから平気で穏健派に濡れ衣を着せるし、挙句の果てにはかつて10人近くいた仲間を散々見捨ててきた。レンヤが感染して『処理』された時と同様、使い物にならない人間はすぐに『ゴミ箱』逝きにされた。

 

 

この手の人間は早死にする確率が高い。

 

 

「ふぅ…」

 

タカヒトは扉を開け、中にいる人物と対面した。

 

 

「カツ丼が欲しい所だね」

 

まるで取調室に連行されたかのようにカツ丼というジョークを放ったのは、図書館で捕獲された人間、リセだ。

 

 

「はあ、面倒なやつだ」

 

 

「私はずっと図書館に居たし、それに君たちを襲う義理も理由もないと思うよ」

 

 

「だとすればテメェらはクソ野郎の極みだ!!!!食料も水も無限じゃない!!いつか尽きるんだ!そっちに仲間が増えた分、間引きしたんじゃないだろうな?!」

 

 

とんでもない考えだ。今の武闘派の情勢からしたらそう考えるのも無理はないかもしれないが、大して脳もない連中はすぐ他人の所為にする。もちろん憶測にしか過ぎない。しかし彼らはそれを正当化しようとし、穏健派までも乗っ取るつもりだ。

 

 

「君たちはそう考えるんだね。確かに原作よりも人数が多い。でも逆に考えれば食料調達などは比較的楽に出来るんじゃないかな?」

 

「さらっと出たメタ発言は置いておいて、随分と現実から目を逸らした楽観論だな。確度の低い、もしくは過度に投資を行えばいつか全滅すんだよ」

 

「そんなこと目的にしたら私たち穏健派も君たち武闘派も共倒れになるよ?問題は全滅どうこうじゃなく、『これから何をするか』じゃないかな?生き残るために、色々なことを試すのも一つの手だと思うんだ…」

 

「チッ…まぁ、それは食料や水などのライフラインが潤っていたらそれも一つの答えかもしれん。だが、もうお前らを遊ばせておく段階では無くなった」

 

「そうかい。好きにするといいさ。だけど、君たちの命……そう遠くない内にどこかへ消え去るよ」

 

 

「??」

 

 

 

疑問符を浮かべたままタカヒトは扉を閉めた。

 

 

「…どうだった?」

 

「ダメだ、まるで情報が無い。とりあえず縛っておけ」

 

「それと出発の準備だ。タカシゲが戻り次第出発する」

 

「わかったわ」

 

 

 

 

………なんで笑わないのかしら

 

 

 

 

 

アヤカの場合

 

 

 

 

彼女も自分を選ばれた存在だと自画自賛し、今の自分に酔いしれている人間の一人だ。彼女は、学校が嫌いだったらしく、毎日当たり前のように過ぎて行く先の見えた人生を生きて何が楽しいのか、何が充実しているのか全く分からないヤツだった。それが今、先の事件をきっかけに環境はガラリと変わり、彼女の言う『素晴らしい世界』になった。不要な人間が死んで、何をしてもお咎めなし。自分は自由だ、と……

 

「ふっ…この世界は…私のためにあるようなもの…私は死なない。最強無敵の存在だ…」

 

 

 

 

 

 

こういう風に、自分は選ばれた、と自画自賛する者がいれば、その逆も存在する。

 

 

 

 

 

 

ヒカの場合

 

 

 

「私は…選ばれなかった」

 

オルゴールのネジを締めながらそう呟く女性、ヒカは自分の無力さに嫌気が差していた。目の前のゾンビを包丁で始末出来なかっただけで戦力外通告され、現在に至っているのだという。元々穏健派と言うのは非戦闘要員ばかりの集団のため、ゾンビを簡単に始末するなんて荒業できっこない。だが彼女自身、これは別に悪くないと思っており、穏健派ブースに入ってからは得意な工学や玩具の修理、オルゴールの作成などに注力している。

 

 

 

「うん。別に、無駄じゃないよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、彼女は気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

スッ

 

 

 

 

「ひっ……!」

 

 

後ろからアイスピックを向けられ、大ピンチに。

 

 

 

「声を出すな。さもないと殺す」

 

 

 

 

穏健派の一人がまた捕まった。

 

 

 

ヒカが所持していたオルゴールを強奪したアヤカは、それを使い他の人間をおびき出す。

 

 

案の定アキやトーコも捕獲されてしまった。

 

「トーコを放して!!!」

 

 

「騒ぐな。騒げば奴も殺す」

 

 

 

 

トイレに起きていた由紀。慈もすぐ近くにおり、一緒に行動している形だ。奥の方からオルゴールの音色が響き、由紀と慈はヒカが戻ってきたのだと推測した。

 

 

「先輩!」

 

「喜来さん?」

 

 

 

しかしそこに居たのは他のメンバーを捕獲しに出た武闘派の面々だった。

 

 

 

 

 

 

 

うわああああああああああッッッッッッっッッッッ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の叫び声を美紀と圭は聞き取り、急いで悠里と瑠璃の寝ている部屋へと急行。様子がおかしいと伝え、一緒に逃げるよう促した。

 

 

 

 

 

もちろんこの声は違う所へ身を潜めていた理琉達にも聞こえていた。

 

 

「クソっ!!まさか由紀がッ…?!」

 

「…ど、どうしよう」

 

すると、理琉はポーチからベレッタM92とホルスター、装填済みマガジンを取り出し、真冬へ渡した。

 

「これ持っとけ」

 

「う、うん…」ガチャ

 

ホルスターのベルトを腰に巻き付けた。理琉の方もウィンチェスターとショットガンシェルを準備し、万が一の戦闘に備える。

 

「あまり生きた人間を撃ちたくはねェンだが、止むを得ン」

 

「太郎丸。静かにね…?」

 

「アウ」

 

「もし匂いがしたら俺の頭に乗って知らせるんだ」

 

「」コクコク

 

 

 

 

 

 

その頃、由紀と慈の悲鳴を聞き、とりあえずその場を離れた悠里と美紀。

 

「ここの地下なら安全かもしれないわ」

 

「りーねー…怖いよ…」

 

「大丈夫よるーちゃん。お姉ちゃんが守ってあげるから」

 

 

「それにしても美紀、この辺り静か過ぎない…?」

 

「気の所為だとは…思うけど……」

 

 

 

すると瑠璃。何かの視線を感じた。

 

 

 

「!!!みき!けい!!にげて!!!!!!」

 

 

 

瑠璃の声にいち早く美紀が反応し、後ろへと引いたが、圭が後ろから気配を殺していたシノウに捕まってしまった。

 

 

「くそっ!!!!」

 

 

不覚を取った圭は後ろから羽交い絞めにされ、アイスピックを向けられる。

 

 

「美紀!!りーさん!瑠璃ちゃん!!早く逃げてっ!!!」

 

「圭!!でもっ!!」

 

 

「いいから早くッッ!!!!」

 

 

「ゴメン!!必ず助けるから!!!」

 

 

 

 

「…んで、私に何する気?」

 

圭はものすごい形相でシノウを睨みつけた。

 

「無駄口を叩くと痛い目見るよ」

 

 

 

 

 

ひたすら走る美紀、悠里、瑠璃。途中、大講義室のようなところに身を潜めていたが、突然ドアが開き、こちらの存在がバレそうに。

 

 

「りーさん、瑠璃ちゃん、こっちです!」

 

 

 

「ここから出ましょう」

 

 

 

咄嗟に扉を開け、逃げようとしたが、足がもつれ、三人は将棋倒しになってしまった。すぐ横にはアヤカが待機しており、彼女が三人の足を引っかけて転ばせたとみられる。

 

 

「うあああッ!!」

 

瑠璃が2メートルくらい吹っ飛んだ。

 

「うう…痛い……」

 

 

「る、るーちゃん!!」

 

「うげっ…た、助けてりーねー…みきぃ……」

 

 

「黙ってなさい小娘!!!」

 

アヤカが突然蹴りを入れた。

 

「グヘッ…!!!」

 

瑠璃が血を吐いてしまい、気絶してしまった。美紀も悠里も捕獲され、成す術もない。

 

「ふん、大したこと無かったわね。その小娘は放っとけば死ぬでしょ」

 

 

「絶対に……ゼッタイニユルサナイ……」

 

「うぐっ…りー…さん…」

 

 

 

 

二人は連れていかれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、すぐ近くの小部屋は、理琉達が待機していた所。周囲を確認した理琉はすぐさま瑠璃のもとへ向かった。

 

 

「瑠璃、瑠璃!クソっ、もう少し早ければッ…」

 

「…ひ、ひどい……」

 

真冬が涙を浮かべている。理琉が瑠璃の口元に手を当て、呼吸を確認する。

 

「……よかった。まだ息はある。だが応急処置が必要かもしれン。真冬、人工呼吸は頼んだぞ」

 

「…うん、任せて」

 

 

二人は瑠璃に応急処置を施した。まだ小さい身体の為、慎重に扱わねば死亡しかねない。

 

 

「よしよし、心臓は安定してきた」

 

「ふー…ふー…」

 

「アウ?」

 

 

 

「かはっ…あれ…りるにい…まふゆ……」

 

「瑠璃!起きたかぁ…よかった……」

 

「こわかった……おねえちゃんにおなか蹴られて…血はいちゃって……」

 

 

「な、なんだと……?」

 

 

「さ、最悪だ………ん?マサル…?どうしたの?」

 

突然立ち上がった理琉に驚きを隠せない様子だ。

 

 

「…これでよォやく三下共の素性がわかった……武闘派のクソ野郎共は俺がまとめて皆殺しにしてやる。こんな小さい子供に重傷を負わせやがって」

 

「でも理琉…相手は複数だよ…?」

 

「何言ってんだ?俺ら何装備してるよ?」

 

「あ、そういえば…」

 

 

 

「コイツを一発ブチ込ンでやらねば気が済まねェ」

 

 

 

今日の理琉は相当ブチ切れている。三年前小春を殺したクリストファーの時と同じくらいにだ。今の黒田理琉には情の欠片もないような状態だった。そう、まさに殺し屋…そんな表情だった。

 

 

 

「……真冬…オマエは瑠璃と太郎丸を連れてキャンピングカーへ逃げろ…由紀たちを救出し、胡桃を見つけ…武闘派をブッ潰す」

 

真冬は瑠璃をおんぶし、太郎丸のリードを持つ。瑠璃は真冬の背中でグーグー寝ており、先ほどの事件が無かったかのように心地よさそうな寝息を立てている

 

 

「…わかった。気を付けてね……」

 

「ああ。気を付ける」

 

「あ、そうだ。マサル…」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

真冬が背伸びをしたかと思うと、理琉の左頬にキスを放った。

 

 

 

「……絶対帰ってきて。もし死んだら殺すから」

 

「死んだら殺すって……日本語になってねーよ」

 

「フフッ…じゃあ、また後で」

 

「あァ」

 

 

真冬と理琉はそれぞれ別の方向へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

「さァて……お料理の時間と行きますかァ……」ニィッ

 

 

 

 

 

 

 

理琉は、手当たり次第、由紀たちが捕まっているであろう部屋を探す。ここでもない…あそこでもない……どのドアも全て空振りだった。

 

 

 

 

 

だが、奥の方からシノウが歩いてくるのが見えた。とっさに身を隠し、様子を覗う。シノウはある一室へと入っていった。そこはまだ理琉が探していない所だ。

 

 

「まさか、あそこに由紀たちが…?」

 

 

 

忍び足でドアの前へと向かう。銃を構え、いつでも戦闘が出来る状態にした。

 

 

『奥へ行って』

 

ドアの向こうからそう聞こえた。

 

『あなたたちのうち…高上を殺したのは誰?』

 

 

(は?なンでそォなる?証拠あンのかよ…)

 

 

廊下で盗み聞きをしている理琉は内心そう呟いた。仮に触れただけで感染する場合、接触が無ければありえない。このいい加減な推論に理琉はさぞかしムカついた。

 

 

『あの、その前に、あなた誰?』

 

圭が聞いた。

 

『シノウ、右原篠生。高上はあなたたちが来た時にクロスボウで撃った人』

 

(あのニット帽野郎、とうとう死んだか。ザマァねェな)

 

『あの、殺されたって、どういう…?』

 

『変わったのよ…かれらに………』

 

『でも、外で感染したっていうのは無いのかしら?』

 

慈がそう推測するが、

 

『いや、外には出ていなかった…あなたたちが来て事件が起きた。答えて。あなたたちが彼を殺したの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テンメェ…由紀たちにとんでもねェ濡れ衣着せてンじゃねェか」

 

 

由紀たちはこの声を知っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

理琉は扉を蹴破った。

 

 

 

 

 

「よくもまァ、ありもしないコトをとうとう俺らの所為にしやがったな、三流の悪党風情が!!!」

 

「あなた…誰?」

 

「あァ?俺か?ンなもン、てめェには関係ねェ。それより…」

 

 

理琉は持っていたショットガンをシノウの額に向けた。当の彼女は驚きのあまりその場から動けない。

 

 

 

「俺の仲間をよくもこンな目に遭わせてくれたな?オイ。俺を敵に回したらどォなるかわかってンのか?」

 

 

 

「黒田君!殺しちゃダメよ!」

 

 

慈が咄嗟に止めた。理琉は一瞬慈を見て、舌打ちをした後、銃口を下ろして冷静になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ…仕方ねぇ……テメェみてェなちっせぇ頭でもわかるよう、簡単にわかりやすく説明してやる。まずだ。オマエ、風邪やインフルエンザなどはどうやって移る?」

 

 

「飛沫感染とか、空気感染とかではないのかしら?」

 

「あァ、そォだ。じゃぁ、今回起こったこの事象について。そもそもこの事件の始まりってのは、元からいたゾンビが人を襲ったとかそんなンじゃねぇ……」

 

「どういう…?」

 

 

「オマエ、さっき言っただろ?風邪やインフルは飛沫や空気で感染するって……なら今回のも例外じゃねェ」

 

「まさか…空気感染……?」

 

「あのニット帽の男だがなァ、俺が一瞬見ただけで空気感染ってなァ予想できてたンだよ。コイツらには一応そのような旨の説明はしたが、詳しく話していない。本当に空気感染があるってのもわかンねェからな。だがなァ、俺と美紀はある研究者から聞いたンだ。国家に値する組織はもう丸潰れだってな。おそらく日本からばら撒かれた細菌に感染してそォなったンだろうよ。その点を踏まえた上でヤツは空気感染しているという確信が持てた。だが遅かったみてェだなァ?フッ、三流以下の悪党がそンな無様な死に方するなンてなァ…無抵抗の人間に武器を使うクソ野郎にはお似合いの末路、とでも言うべきか?三下ァ」

 

「あなたッ!!!」

 

シノウが激昂して理琉の胸倉を掴んだが…

 

「オイ、今テメェが何やってるかわかってンのか?その気になればこの銃で全員皆殺しだ。それになァあのニット帽はクロスボウの矢を瑠璃に向け放ち、挙句の果てには真冬の足にクロスボウの矢が貫通、怪我させやがった。もう威嚇射撃じゃ済まねえ。こっちで怪我人が出ている以上そンな野郎にかける情けなンてこれっぽっちもねェンだよクソッたれが!!!!!」

 

 

 

 

ボガッ!!!!!

 

 

 

 

理琉は右手に持っているウィンチェスターを逆さに持ち、シノウを殴り飛ばした。三メートル程吹っ飛ぶシノウ。右頬を抑えて謝罪し始めた。

 

 

 

「っっつ……ご、ごめん…なさい……レン君が…そんなことを…」

 

 

 

「マサル先輩……」

 

「マサル君…」

 

 

「それと、りーさん。瑠璃の事だが、命に別状はない」

 

「本当?!」

 

「安心しろ。真冬と太郎丸の三人でキャンピングカーで待機していろと伝えてある。そン時にでも、瑠璃の顔拝んでやってくれ」

 

「ありがとう…マサル君……」

 

 

 

 

 

 

「最後に言う。俺らが高上とかいう男を殺す義理も無ければ理由もねェ。それだけだ。これ以上何を求める?」

 

「そう…よね。ごめんなさい。あの時撃って……」イタタ

 

 

「…その言葉は俺じゃなく、真冬と瑠璃に言うンだな。それより、このままだとヤバいンじゃねェか?オマエら武闘派、随分とんでもねェことやってるらしいじゃねェか」

 

 

「そうね。こっちのリーダーたちがあなたたちを殺そうと目論んでいるのかもしれないわ。鍵は開けておくから、しばらくしたら逃げて」

 

 

「もちろんそォさせてもらう。胡桃を見つけ次第、とりあえずこの敷地には戻ってくるが、オマエ以外の武闘派を見かけたら容赦なく殺す。奴らはそれだけのことをしてっからなァ。どォいう殺し方がお好みなンだろうなァアイツらは……」

 

 

シノウは一旦部屋から出た。

 

 

理琉の表情、殺し屋の顔だ。これまでのことと言い、彼は相当ブチ切れている。自分たちの考え方がいかに甘く、愚かだということを、奴らに教えてやろう、と言わんばかりに、ウィンチェスターをスピンコックした。落ちたショットガンシェル(未使用)を拾い、ポケットに詰め、今すこーしだけ格好つけたことを後悔した。

 

 

「……!!?」

 

 

理琉は咄嗟に窓へと体を向け、銃を構えた。窓をゴンゴン叩く音が聞こえる。

 

 

「誰だ!」

 

 

「おーい、開けてくれー」

 

 

この声はリセだ。タカヒトの尋問を受けた後、こっそり脱出したらしい。

 

「リセさンか。大丈夫なのかその怪我!」

 

リセは左肩から流血している。圭がすぐさまリセに近づき、持っていた布を巻き付けて応急処置をした。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、ありがとう、圭くん。そんなに心配してくれるのかい?」

 

「あ、大丈夫ですね」

 

 

リセは遠くに逃げろ、と指示した。

 

 

「リセさンたちはどォすンだ?」

 

 

「私達は残るよ。自分たちは時間に甘えすぎた。話し合うべきだったんだ」

 

 

「だとしたら、あンたらをこんな部屋に閉じ込めるか?」

 

 

「もし本当に危ないことをするんだったら、こんな狭い所に閉じ込めないよ」

 

 

確かにそれは一理あるかもしれない。殺すとすれば見つけた時点で攻撃しているはずだ。

 

 

「そォだな。それもあるかもしれン。じゃァ、俺たちはひとまず外に出よう。車の近くに居れば最悪逃げられる」

 

「そうだね。あ、そうだ!!胡桃ちゃん探さないと!!!」

 

由紀が重大なことを知らせた。そうだ、まだ胡桃がいないんだった。

 

 

「俺が連れ戻す。オマエ達は車に戻って銃の準備をしろ。そして鍵を差しておけ。真冬と瑠璃、太郎丸がそこで待機しているから、なるべく早めにな」

 

 

「みなさん、胡桃先輩ですが、まずさっきマサル先輩が言っていたように、車を探しましょう。それからです」

 

「俺はこの敷地内をくまなく捜索する。その間、持ち場は維持してくれ」

 

 

「了解!!」

 

 

 

「じゃァリセさん、あとは頼んだ」

 

「任せてね」

 

 

 

「よっしゃ行くぞ」

 

 

 

「あ、UZI9㎜忘れた!!」

 

圭が忘れ物に気づいた。

 

「今は無理だ。車に向かえ!!」

 

 

 

理琉とその他は一旦解散し、理琉は敷地内を捜索することに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「胡桃のやつ、勝手に何処か行きやがって……見つけたら説教してやる」

 

 

 

 

気を引き締め、胡桃捜索へと出発した。

 

 

 

 

 

当の胡桃は大学の敷地内で倒れていた。意識が朦朧としており、自分でもだいぶ弱っていることが分かる。

 

 

 

 

(なんでだろ…マサルに貰った水を飲んだ後少しだけ体調が良くなったのに…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




武闘派壊滅へのカウントダウンが始まった。また理琉たちは胡桃を連れ戻せるのか

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十一話 さいごまで
私達は、ここにいます。


作者は原作を読んでいた時、武闘派のやり方にとてもムカついていたのでこの作品では武闘派をボロクソに言ってます。次回も波乱の展開が待っているかも!!お見逃しなく!



イギー「…はい、大爆死です」(泣)

圭「作者さん、まだ次がありますよ~」

イギー「チケットも石もそこを尽きた…成す術はない…星彩石が☆5を呼ばないなら……みんな死ぬしかないじゃない!!!(水橋かおりボイス)」(大号泣)

美紀「圭ってば愛されてるねw」

圭「あのねぇ…」///

イギー「もう諦めようか…」

美紀・圭「諦めるの早っ!!」


感想や意見を頂けると作者もやる気が倍増します!ぜひ読者様の意見をお寄せください。


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第四十一話 さいごまで

理琉達は胡桃を探しに。そして大学組は武闘派の尋問を受けることに。


今回はとんでもない位字数多いです。


大学穏健派メンバーは、学園生活部をひとまず逃がし、自分たちが武闘派を迎え撃とうという結末になった。とは言うが、これは戦うためではなく、話し合うためだ。

 

 

「どうして逃げなかったの?」

 

「は?」

 

「新入りを逃がして、なんで自分たちは逃げなかった」

 

「…ボク達は同じ学校だから、話し合うべきだったんだ」

 

「容疑者を逃がしておいて話し合い?戯言は聞き飽きたわ」

 

 

「高上が発症した。しかし外には出ていない。お前たちの仕業だ!!!タカシゲも帰ってこねぇんだ!!」

 

 

「城下くんのことは聞いてない。でも高上くんが接触したのはうちの新入りだけ。だから原因はあの子たちにあると?」

 

 

「そういうことだな」

 

 

「高上くんは怪我とかはしたのかな?」

 

 

「新入りの一人に蹴っ飛ばされたと聞いたわ。でも濃厚接触は無かったと言ってた」

 

 

「ボクらもその話は聞いてる。でも、一回蹴っただけで発症するのは難しくない?」

 

 

「確かに、難しいかもね」

 

「だとしても!!高上が…奴が発症したことには、何も変わりはないだろうが!!!」

 

タカヒトは更に苛立ちを見せ、何かと穏健派の所為にしようとしている。

 

「ちょっと!言いがかりも大概にしてよ!!!」

 

アキが少しキレ気味になるのに対し、トーコは落ち着いた様子で話を進めている。

 

「ボク達にはそんなことはできない。でもあの子の内の誰かならできるかもしれない……そう考えるのはこっちもわかるよ。でも、知らない相手が近くにいるんじゃ不安になるし、疑いも出てくる!!だったら話し合うしかないじゃないか!!!!」

 

「よくもまぁ、口が回るな。散々『夜逃げ』する準備していたクセに」

 

突然出てきた夜逃げという言葉を理解できないアキ。

 

「車に食料運び込んでたでしょ」

 

アヤカの言葉で、遠征計画を指しているということに気づいた。

 

「あれは、本社に情報がないか確かめるための準備だよ。大半はこっちに残るさ。だから、そういう話をもっと時間をかけてするべきだったんだ……」

 

 

「まあ、ひとまず筋は通っているわね」

 

 

しかし、タカヒトは納得いかない様子。

 

 

「くだらん!!!くだらなすぎる!!!どうせ全部詭弁ばかりだ!!貴様らがやったに決まっている!!!!!」

 

 

アヤカはこの時、かすかに感じていた。

 

 

 

 

タカヒトの体に、異変が出ているということに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……由紀、ボクたちはマサルと胡桃を探してくる……ここでりーさんと瑠璃ちゃんを…お願い」

 

真冬、美紀、圭の三人で胡桃たちを探すこととなった。

 

 

「うん、絶対見つけて来てね!」

 

「直樹さん、祠堂さん、狭山さん、絶対無理しちゃだめよ!」

 

 

悠里は、車の中で眠っているほぼ満身創痍な瑠璃を見て暗い顔をした。いくら助かったとは言え、体の損傷は所々にある。

 

 

「大丈夫、胡桃ちゃんたち、絶対見つかるよ!」

 

「悠里さん……大丈夫?」

 

「え、ええ……」

 

「……私ね、ずっと思ってたんだ。私なんかがここにいて良いのかなって………自分よりすごい人とか、頑張っている人とかもいたのに、どうして私なのかって思うよね…でもみんなが……マー君もめぐねえも胡桃ちゃんもみーくんもけーくんもまふゆちゃんも太郎丸もりーさんも……」

 

 

「みんなのお陰で、私はここにいるんだよね…ううん、それだけじゃない。こうなる前だって父さんとか母さんとかお医者さんとか、いっぱいいっぱい助けてもらってたから……だからもうちょっとだけ頑張ってみようと思うんだよ…だから、りーさんも……めぐねえも…太郎丸も…ね?」

 

「ZZZ……」

 

「あら、悠里さん寝ちゃったわね」

 

「めぐねえ、私、胡桃ちゃん探してくるよ!」

 

「由紀ちゃん、今外は危ないわよ!?」

 

「だったら、ずっと外で出歩いている胡桃ちゃんの方が危ないよ…」

 

「なら、私も……」

 

「ううん、めぐねえはりーさんと、太郎丸と、るーちゃんと一緒にいてあげて。それに、太郎丸も段々弱っちゃってるの見ててわかるもん……私、すぐ戻るから……」

 

由紀は、衰弱し始めている太郎丸を抱え、慈の膝へ乗せた。

 

 

 

 

また、由紀は車の倉庫に入っていたMP5を取り出し、背中に背負ってキャンピングカーを出た。

 

「ワウ」ゼェゼェ

 

 

 

 

 

「……」

 

美紀と圭と真冬は、理学棟へ訪れていた。

 

「…あの、青襲さん、いますか?」

 

『君か。久しぶりだね。おや、そこの二人は友達かな?』

 

「はい。あの、ジャージを着たツインテールの娘と、ショットガンをもった男の人を見かけませんでした?」

 

『いや、見てはいないけど、何かあったの?』

 

 

「はい…実は……」

 

 

美紀は事の経緯を青襲へ打ち明けた。

 

 

『ふむ、なるほどね。予想された事態ではあるな』

 

 

「「「え?」」」

 

 

三人は青襲の話に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

その頃

 

 

 

 

「お前たちが…毒を、毒を盛ったんだろう!!!!」

 

 

「ちょっとやめてよ!!」

 

 

「た、タカヒト?」

 

アヤカが少し止めに入るが、聞く耳を持たない。

 

 

「水に入れたとか!!そんなところだろう!!!」

 

「だったらアタシらも感染しちゃうでしょ!!!」

 

 

「だから!解毒剤を出せって言ってるんだ!!!」

 

 

「タカヒト、落ち着きなさ「触るな!!!!」

 

 

タカヒトの呼吸が不規則なものへと変わっていた。そこにいる全員はおそらく察したであろう。タカヒトの顔色、呼吸などすべてに異常が起こっていることに。……コイツもまた、空気感染していたのだ。

 

 

「タカヒト…あなた……」

 

 

「だ……黙れ!!俺はッ……」

 

 

「フッ、あなたの決めたルール、でしょ?」

 

シノウもアイスピックを構えて戦闘態勢に。タカヒト自身、自分の限界には薄々気づいていた。次処刑されるのは自分の番なのか、と思うと、震えが止まらない。彼はたまらず逃げだした。

 

 

タカヒトの逃走先には美紀たちがいる。

 

 

 

「マサルの言う通りだ……早くみんなに知らせないと…」

 

「でも、こんなこと何て言えば……」

 

「美紀!!前!!!」

 

 

 

「なっ!!!」

 

 

 

正面には、先ほど全力疾走していたタカヒトの姿が。真冬は腰に下げてあったベレッタを抜き取り、銃口をタカヒトに向ける。

 

 

 

「……ど、どこへ行く…」

 

 

「は?」

 

 

「どこへ…行く…」

 

 

 

「どこって……何処へ行けばいいんだよ!!!!!」

 

真冬が激昂した。

 

「そんなにボクらを狙って、一体何が目的なの…?」

 

 

「ふざけるな…仕掛けたのはお前たちだろうが!!」

 

 

「どっちがふざけるなって話だ……まず、あのニット帽ならボク達じゃない」

 

「理学棟の人に聞いたんです」

 

 

先ほど青襲から聞いた話を順を追って説明した。

 

 

 

 

『なるほどね。予想された事態ではあるな。接触感染では遅すぎる。同時多発テロのようなものを想定したところで、全世界が一度に潰れるのは難しいの。だから、初期段階の「空気感染」もしくはそれに準ずる感染ルートがあった、と考えるべきね』

 

 

『マサル先輩が、そんなようなことを言ってた…あ、でも私達はなんで…?』

 

『たまたま生き残ったか、ある種の抗体があったのかどちらかね。一応忠告しておくけど、血液感染に免疫があるかは試さないことね』

 

『つまり、空気感染の心配はないってことですね』

 

『……君は美紀君…と言ったね。インフルエンザワクチンを毎回接種する理由、わかるかしら?』

 

『えっと……』

 

 

『ウイルスは変異する。免疫があるからと言ってそれが続くとは限らない。それは今回の事件も例外じゃないわ』

 

 

「へ、変異ウイルスの空気感染…だと…?」

 

「一つの憶測だけれど…」

 

 

 

 

 

シノウは、タカヒトと真冬たちの会話を聞いていた。『空気感染』という言葉で、ようやくレンヤが学園生活部の仕業ではないということを理解した。

 

「あの少年の言う通りだったのね……レン君…もう、無理だよ……」

 

 

 

 

 

「ウソだ!!!お前らが感染させたのはわかっている!!!」

 

 

「じゃあ証拠はあるの!!?」

 

圭が大きい声で問うた。

 

「…何?」

 

「仮に私達が感染させたとして、その根拠と証拠、ましては検査結果とかはあるの!!?」

 

 

「いいから、解毒剤をよこせ!!!」

 

この期に及んでまだ犯人は学園生活部の連中だと言い張るタカヒト。見かねたのか、真冬がベレッタの引き金を引いて足を撃ちぬいた。

 

 

ドォン!!!

 

 

「があッ!!……ウプッ!ごはっ!!ゲホゲホ……オエッ……」

 

 

 

「美紀、真冬、一旦逃げよう?」

 

「うん、行こう」

 

「そうだね」

 

 

三人はその場を走り去った。

 

 

「ま、待ってくれ………解毒剤を…」

 

 

 

タカヒトは痛む足を引きずり、塀を支えにしながらヨロヨロと歩いていく。意識も朦朧とし、今にも死にそうな状態だ。そんな彼は、今まで散々見捨ててきた仲間の幻覚を見る。

 

「そうか…お前ら……俺が憎いか…」

 

五人、十人と、タカヒトが殺してきた仲間の数々が出てくる。

 

 

 

クソっ!!!俺は一体何のために生き残った!!!何のために俺はお前らを殺した!!生きるためだ!!生き残るためだ!!!!クソっ…俺は絶対に…諦めんぞ……」

 

 

 

彼はとんでもないことを始めた。大学の正門を開放し、持っている釘バットでガンガン音を出したのだ。当然音に反応するゾンビたちは、タカヒトを無視して大学の敷地内へと侵入した。

 

「解毒剤を出さないなら、使わせるまでだ!!!」

 

 

 

上から見下ろしていたアヤカは、もはやこれまでかと思っていた。

 

「ここも面白かったけど、そろそろ潮時かもね」

 

一人そう呟くと、暗闇に包まれた道の先にある放送室へ足を運んだ。

 

 

「ここでコレを鳴らして、全て終わらせてやるわ」ニタァ

 

 

 

 

 

 

ウーーーーーーーー!!!!

 

 

 

 

 

けたたましいサイレン音が鳴り響き、辺りは騒然とする。

 

 

「おいおい冗談じゃねェ!!」

 

もちろん外で胡桃を探していた理琉もこのサイレンを聞き取っていたため、大慌て。急いで胡桃を連れ戻さねばと、走り出した。

 

 

 

 

キャンピングカーにいた悠里もこれを聞き取り、メンバーの安否が気になってしまった。瑠璃をおんぶし、太郎丸を連れてとりあえず外へ出た。もしかしたら校舎内のどこかでサイレンを止められるかもしれない。そう思い、無我夢中で走る。

 

「太郎丸、私の肩に乗って!」

 

「ワン!」

 

「行くわよ!!」

 

 

「悠里さん!!危険よ!!!」

 

 

「みんなを放っておけないです!!」

 

 

 

「え?んもう…」

 

 

 

慈もキャンピングカーから降りて悠里の後を追った。僅かに悠里の方が早く、追いつけず仕舞いだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あれ…何処だココ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっか、戻ってきたんだっけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻っちゃ……駄目なのに…

 

 

 

 

頭の中に、大好きな友人たちの声が入ってくる。中には、アキの……

 

 

 

『一緒にいるとダメになるって思った』

 

 

 

という言葉まで聞こえてきた。

 

 

 

 

 

―――そうだよな、もう、駄目……だよな。

 

 

 

 

 

 

AK-47を落とし、覚束ない足取りで歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おィ由紀!!こんなところで!!」

 

「あ!マー君!!胡桃ちゃんが!!」

 

「わかってる、話は後だ!!まずそのライフルこっちに渡せ!!」

 

「あ、うん!!これ多分胡桃ちゃんの銃だよ!!」

 

「ああ、あの野郎、こんな大事な物捨てて逃げる気か!!」

 

 

 

理琉と合流した由紀。胡桃っぽい影を見つけ、お互いそちらの方向へと走って行ったのだ。

 

 

 

 

そして漸く、胡桃を発見。理琉は周りにいるゾンビを警戒し、塀へかけてある梯子を使っててっぺんまで登った。塀の上を走り、ひたすら胡桃のいる方向へと走る理琉と由紀。

 

 

「てめェ待ちやがれ!!!由紀をどれだけ泣かせば気が済むンだ!!!」

 

「胡桃ちゃん!!どんなことがあってもずっと…ずっと一緒って!!!」

 

「テメェの友人に対する想いはそンなものなのか!!!!」

 

 

「胡桃ちゃん!!!」

 

 

少し近づいた所で、由紀がすかさず手を伸ばした。しかし、運悪く足を踏み外してしまい、真下へと落下。理琉が由紀を助けようと手を掴むが、銃の重さや地球の引力には逆らえず、そのまま落下してしまった。その際理琉は左足を変な方向に曲げてしまった。

 

 

「ぐッ、ぐああああッッっっっ!!!!」

 

 

幸い骨折とまではいかないだろうが、決して軽傷とも言えない。

 

 

ゾンビが声に反応してしまい、こちらへと近づいてくる。理琉は落としたAK-47とウィンチェスターに手を伸ばすが、足の自由が利かない所為か、中々届かなかった。

 

 

 

「ッ!!!!」

 

胡桃が二人に気づき、すぐ近くに走ってきた後、二人を庇うように覆いかぶさった。

 

「く、胡桃っ?!」

 

「ったく、お前ら馬鹿だな……こんなんじゃ、安心して逝けないだろ…?」

 

「何を言ってンだよ……ってェ」ゴキッ

 

足を無理矢理元に戻し、一応歩けるくらいになった。

 

「どこへ…行くの?」

 

「あまり意識が無いんだ……今だって、いつまでこの状態でいられるかもわからない。だから、これで良いんだ。ゴメン……あたしはもう……」

 

すると由紀はこれまで以上にブチ切れた。

 

「ごめんじゃないよ!!!」

 

「それってつまり足手まといとか…いない方が良いとか…そういうことだよね…?」

 

「自分はもう死ぬからとか、もう無理とか、もう諦めたとか…そォ言いたいンだよな」

 

 

理琉達は声を揃えて、

 

 

「「そんなの、絶対に許さない」」

 

「いや、でもさ…「でもじゃないよ!!!!」」

 

「胡桃ちゃんのいない学園生活部なんて嫌だよ!!」

 

「ンなもン、ルーの無いカレーと一緒なンだよ」

 

 

「聞き分けないこと言うなよ…あたしだって…あたしだって逃げたくて逃げてるんじゃねえよ!!!今日は大丈夫とか、明日も大丈夫と思って!!でもいつかダメになるんだ!!だからいっそここから出ようと思って…でも出ていけなくて……それに、もう、あたしはっ……」

 

 

すると理琉が立ち上がり、胡桃の正面へと立った。

 

「てンめェ………今………何て言ったァ!!!?」グイッ

 

 

 

 

 

 

こンのバカ野郎!!!!!

 

 

 

 

 

 

バシィッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

胡桃の胸倉を掴んだと思えば、その場で強烈な平手打ちをかました。

 

 

「さっきからグチグチグチグチ弱音ばっか吐きやがって!!!じゃあ俺たちは一体何のためにここまで来たんだ!!誰か一人でも欠けるなんてことがあれば、俺たち学園生活部は負けたも同然だ!!!挙句の果てには簡単に自分はもうダメだって、そこで白旗挙げてリタイヤするってか?!!だとしたらテメェは大馬鹿だ!!大馬鹿野郎だ!!!オマエ、俺に言ったよな!?『まだ希望はあるっていうのに、俺はもう死ぬとか軽々しく言うな!お前がいなくなったらあたしらどうすればいいんだ!』ってなァ!!今テメェは昔の俺とおんなじことをやろうとしている!!そンな人間を放っておけるか!!!人間は必ず死ぬし、いつか別れが来る、それは俺たちには変えることのできない宿命だ!!だがなァ、今ここで死んでしまえばオマエの人生はもう終わりなンだよ!!命は100円でコンティニュー出来ないンだよ!!強くてニューゲームなんてモノもないンだよ!!テメェの自分勝手な判断で学園生活部(俺たち)を壊すンじゃねェ!!!!!!!そンなクソッタレな考え方を抱いてるって言うなら、まずはその腐った幻想をブチ殺してやる!!!!!」

 

「ま、マサル……」

 

 

 

理琉は胡桃を離す。

 

 

 

「そうだよ!!!それに知らないうちにいなくなって生きてるどうかもわからないなんて、そんなのズルいよ!!!」

 

「きっとみんな心配してると思うよ…胡桃ちゃんがどうなっても、グルグルに縛ってでも連れて行くから!!」

 

「なっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

だから絶対………最後まで一緒だよ

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃は自分の愚かさに気づき、涙を一筋こぼした。

 

 

「グスッ……わかったよ。あたしが悪かった。ゴメン」

 

胡桃は理琉からAK-47を受け取った。

 

 

 

 

 

「ほら、二人とも、行こうぜ」

 

 

 

 

 

「うん!」「ああ!」

 

 

 

「ところで、杖無いかな…?」

 

「杖?」

 

「さっき落ちた衝撃で左足を少々やっちまってね。動かせるから骨折じゃないと思うんだけど……」

 

 

 

「この辺には…無いな……マサル、肩貸すよ」

 

 

 

「……悪いな。多分車にならあるかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって大学穏健派ブース。

 

 

 

「誰かいた?」

 

 

トーコはヒカに問いかけるが、ううん、と首を振るだけ。

 

「そっか」

 

「…玄関は?」

 

「ああ、大体終わった。あいつら、もう入ってこれないよ」

 

「あの子たち、大丈夫かな……」

 

「まあ、もし残ってたらアキが連れてくるでしょ」

 

「そう……だね……」

 

 

 

 

シノウは下にいたため、ゾンビの始末に追われていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

 

後ろからガサッという音と共に人影が見えた。シノウはすかさず先制攻撃を仕掛けようとする。

 

 

 

「危ないじゃないの」

 

 

 

影の正体がアヤカだったため、殺すのは不可能だった。

 

 

「アヤカさん…すみません……」

 

 

「こんな所でどうしたの?高上くんの仇は見つけた?」

 

 

「それが……レン君、空気感染みたいです……」

 

 

「そう、空気感染ね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………フッ、面白いじゃない」

 

 

 

「っ!!」

 

「不景気面にはもううんざりなの。せっかくこんな楽しい世界になったのに、不平不満を垂れ流して目を死なせているヤツばっかり……」

 

 

 

 

綺麗に片付くならそれでいいじゃない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

 

「死ぬかもしれないんですよ!?」

 

 

「アンタたち…はね」

 

 

 

シノウはこれに呆れ、アヤカを振り払った。

 

 

 

アヤカのクズさに呆れ、その場から逃げてきたシノウ。しかし、もう彼女は疲労困憊。木にもたれ掛かり、そのまま座ってしまった。

 

 

「もう…疲れたなぁ……レン君、ゴメンね…」

 

 

 

正面から人影が……ニット帽をかぶった男型のゾンビだった。

 

 

「レン君…?レン君なの…?」

 

 

しかし明らかにそこにいるのは別人だ。彼のニット帽は胸中にある。

 

 

 

「ちがう…コイツは…レン君じゃないっ!!!」

 

 

 

シノウはアイスピックを投げ、ゾンビにとどめを刺した。

 

 

 

「そう……だよね。生きなきゃね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続いて、悠里、瑠璃、太郎丸の三人。

 

 

「何とかサイレンは止めたけど…」

 

「ワンワン」

 

「どうしたの太郎丸…?」

 

「りーねー……あっち……」

 

 

後ろからおこぼれのゾンビが湧いてきた。

 

 

「ウソッ!?」

 

 

急いでその場を離れ、がら空きの部屋へ籠城した。

 

 

 

「もう……いやっ……」

 

「りーねー……だいじょうぶ…?」

 

「ワンワン」

 

「あ、りーねー、おそと、まどあいてるよ」

 

「あそこから出られるかも……」

 

太郎丸は悠里のリュックサックを開け、その中に入った。そして瑠璃は悠里にがっしりとしがみついている。

 

 

「っ……」

 

ゴクリと喉を鳴らし、覚悟を決めた。現在いるのは2F。運が良ければ着地できるが、バランスを崩したら骨折する可能性もある。

 

 

「行くよ。しっかり掴まっててね…」

 

「うん」

 

「ワン」

 

 

「いち……にの………」

 

 

 

バッ!!

 

 

 

悠里は意を決して飛び降りた。着地点は畑。上手く着地できたが、少しぬかるんでいるため足を滑らせた。気づいたゾンビたちが悠里の方向へと歩み始める。

 

 

 

 

ドシャッ!!!

 

 

 

 

「妹さん、大丈夫かしら?」

 

 

シノウがゾンビを始末したことで事なきを得た。

 

 

 

理琉、由紀、胡桃の三人は無事美紀、圭、真冬、慈、そして悠里たちと合流。

 

 

「よかった、無事だったか」

 

理琉が指差確認をし、全員の安否を確認する。

 

「由紀、胡桃、悠里、美紀、圭、真冬、先生、瑠璃、太郎丸、アキさん…っと。OK全員揃ったな」

 

 

「マサル、その杖は何?」

 

理琉はよく見るとロフストランドクラッチ式の杖をついて歩いている。

 

「足を変な方向に曲げちゃってな。一応杖があればギリジョギングまで出来る」

 

 

すると、上からカーテンのようなモノが降ってきた。

 

 

 

「リセ!!ヒカ!!!」

 

3Fから声が聞こえる。カーテンを下ろし、登れるようにしたのだ。

 

 

 

 

「おい、ちょっと待て。なンだあの車」

 

 

 

「!!!!アキさん!!!そのまま上がって!!!!圭!!真冬!!こっちへ!!!!」

 

 

「うわああっ!!」

 

 

「あうっ!!」

 

 

 

車が校舎に突っ込んで来た。

 

 

 

「何だあの車!!!!」

 

 

 

 

 

「チッ、まさか……」

 

 

 

 

 

「「やめて(ください)タカヒトさん!!!!!」」

 

 

 

 

「タカヒト!?」

 

 

「やはり武闘派リーダーかァ!!」

 

手にはクロスボウを持っており、今にも目の前にいる圭と美紀に撃ちかねない。

 

 

 

 

 

「今度こそ……逃がさない……」

 

「解毒剤を……よこせ……」

 

「アンタっ、この期に及んでッ」

 

 

 

「さっさと上がれ!!上がらないと撃つぞ!!!」

 

 

 

「美紀に手出しはさせないっ!!」

 

圭が前に立ちはだかる。

 

「そうか、ならお前も感染させてやろうか…」

 

「そうすればあいつらも薬を持ってくるだろう」

 

 

 

 

 

「てめェみてェな悪党につける薬なンてねェ!!!!おとなしく自滅しろ!!!!!」

 

 

「うるさい!!!なら確かめてみるか…?」

 

 

「あなたは……切り捨ててきたの…?」

 

 

圭が鋭い視線を向けながら問う。

 

 

「無論だ。水も食料も無限じゃない。生き残る者は選ばらねばならない…お前たちは違うと言うのか?!」

 

 

「そうかも……しれないね」

 

 

 

 

圭は、でも……と言った後、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きていればそれでいいの(・・・・・・・・・・・・)??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…お前らに何が分かる!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

クロスボウの引き金を引くタカヒト。美紀、圭、真冬の三人は目を瞑るが、矢が飛んでこない。

 

 

 

 

 

シノウが咄嗟の判断でタカヒトにアイスピックをブッ刺していたのだ。

 

 

「がぁッ!!」

 

 

 

 

そして理琉も、

 

 

 

ドン!!ドン!!!

 

 

 

クロスボウを破壊し、使用できないようにした。

 

 

 

 

「早くこっちへ!!」

 

「みき!けい!まふゆ!」

 

「「「りーさんっ!!」」」

 

悠里と瑠璃の二人が三人の二年生組を避難させた。

 

 

 

 

 

シノウはもう、武闘派のやり方にうんざりし、タカヒトに向かって絶縁宣言をした。

 

 

「私はもう無理です」

 

 

「何をいまさら!!!お前だって散々殺して来ただろ!!!!!!高上は…お前が!!!」

 

 

 

 

「うるさいッッッッ!!!!」

 

 

「何が違うってんだ!!!!!」

 

 

タカヒトはシノウに殴りかかる。しかし、シノウがアイスピックを寸止めで止めたため、大事には至らなかった。

 

「違うとか違わないとかそんなの知らない。この子の為にも、生きるって決めたから」

 

 

 

学園生活部全員はそれが何を意味しているのかを唐突に理解した。レンヤと、シノウの間の子供だ……と……

 

 

 

 

 

 

とうとう全員に囲まれ、成す術無し。理琉と胡桃に関しては銃をこちらに構えているモンだから、手出しができない。

 

 

「……ちっ…」

 

 

タカヒトは降参し、その場を立ち去った。

 

 

 

 

「……中へ行きましょ」

 

 

 

 

「……………」

 

 

理琉がタカヒトの方を向いている。

 

 

 

「ん?マサル、どうした?」

 

 

胡桃が理琉の袖をつついた。

 

 

「ああ。武闘派とケリをつけてくる」

 

 

そういって理琉もタカヒトと同じ方向へと歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タカヒトは、散々見捨ててきた男。『墓場』に足を運び、上から見下ろす。

 

 

「お前ら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

感染者! 排除! ルール! 絶対! 感染者!! 排除!! ルール!! 絶対!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は…俺は違う……

 

 

 

 

 

 

 

タカヒトの先に右手が見えた。それはアヤカだった。

 

 

「何だ…お前か……驚かせるな……シノウが裏切った。だが俺たちはまだ終わらん……」

 

 

「それって辛くない?」

 

 

「誰かがやらねばならない……そのために俺は選ばれたのだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………冗談でしょ?」ゲシッ

 

 

 

 

 

アヤカはタカヒトを蹴飛ばし、墓へ突き落とすというとんでもない行動に出た。

 

 

 

 

 

 

選ばれたのは私よ

 

 

 

 

 

 

タカヒトはゾンビの餌食にされ、死亡した。

 

 

 

 

アヤカはほくそ笑み、墓を立ち去ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バカじゃねェの?オマエ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉が目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

「ンなもンは関係ねェ。今、テメェは選ばれたと言ったな?」

 

「ええ、そうよ。私は選ばれたの。私は死なない。最強無敵よ」

 

 

「そうか。なら、この鉛玉を受けても死なねェンだな?」

 

 

理琉はウィンチェスターをスピンコックしてアヤカの眉間へと向けた。

 

 

「フン、そんなオモチャで私をやれるなら、やってみなさい」

 

 

 

 

 

理琉はニィッと笑い……

 

 

 

 

 

 

ドォン!!!!

 

 

 

アヤカの腹部へと発砲した。

 

 

 

 

「があッ…!!!?あなた…それッ……」ドサッ

 

 

 

 

 

「コイツは正真正銘本物のウィンチェスターM1887だ。ヘッ、違う意味で見れば、確かにオマエは選ばれたな……この銃では……」

 

 

 

「な、何っ……?」ガハッ ビチャビチャ

 

 

 

 

 

 

理琉は軍に居たころの殺し屋の顔を見せ、続きを言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この銃では初めて人間を殺す。喜べ!!オマエはその第一人者に選ばれたァ!!!」ギャハッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォン!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ビシャッ!! ドシャッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

頭にエイムを合わせ、彼は一発発砲した。神持朱夏、学園生活部所属 黒田理琉によって射殺。

 

 

 

 

今までゾンビに対してしか使われていなかったウィンチェスターM1887は今日、初めて生きた人間の殺害に使われたのだ。

 

 

 

 

 

「精々地獄で悪党の美学を学びなおしてこい……惨めなクソ野郎が…」

 

 

 

 

 

現代的な杖をついて理琉はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉は3Fに戻り、寝袋にくるまって少々の仮眠を取った。左隣には真冬、右隣には胡桃がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん…あれ、りーさん?」

 

悠里が忽然と姿を消していた。

 

 

 

シノウはあの会議室のようなところから外を見ている。扉の開いた音がしたのでそちらを見てみると、そこには悠里と瑠璃がいた。

 

 

 

「どうしたの?」

 

「あの、さっきはありがとうございました」

 

「ううん、いいのよ」

 

「るーちゃんがお礼を言いたいって……」

 

「……ありがとう、しのうおねえちゃん……」スッ

 

「……どういたしまして」

 

「私達、しばらくここを出ると思います」

 

「そうなんだ……」

 

「はい。諦めなければ、まだ出来ることがあるんだって、るーちゃんとシノウさんに教えてもらいました」

 

「うん…よかった。私は行けないけど……」

 

「あの…妹を…預かってくれますか?」

 

 

そういうと、悠里は瑠璃をシノウの前へと出した。

 

 

「私が…?」

 

「危ない所には連れていけませんし…それに……」

 

「おねえちゃん、ともだちになってくれるかな?」

 

「っ!うん。……るーちゃん…よろしくね」

 

「うん!しのうおねえちゃん!!」

 

シノウは瑠璃を優しく抱擁した。サラサラした瑠璃の髪を撫でると、瑠璃は眩しい笑顔を見せる。やっと、一段落したんだな……そう思える三人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次章予告

「遠征の事だが、体力に自信のあるやつは全員来てもらう。体力、気力に自信のあるやつは挙手してくれ」
胡桃、由紀、悠里、美紀、圭、真冬の六人が挙手した。
「私はあまり走るの得意じゃないからやめておくわ」
慈は辞退した。
「え~、めぐねえも行こうよ~」
「ゴメンね、本当は大人として行かないといけないんだろうけど、瑠璃ちゃんが残るからね」
「そっか。るーちゃんがいるんだよね」
ランダルコーポレーション遠征組は、黒田理琉、丈槍由紀、恵飛須沢胡桃、若狭悠里、直樹美紀、狭山真冬、祠堂圭となった。

いよいよ始まる本社遠征。そこで得られる物はあるのか。また、次回から新メンバーが加わる!?

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十二話 しゅっぱつ
私達は、ここにいます。


10000文字超えてしまった。次回は第三章 遠征編へと入ります。理琉が胡桃ちゃんに渾身の説教をかましました。シーズン1で言われたことを今度は胡桃ちゃんに言うという展開に持ち込んでみたかったのです(笑)




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本編:第3章 遠征編
第四十二話 しゅっぱつ(☆)


武闘派は悉く壊滅。そして自分に酔っていたタカヒトはゾンビまみれの空間に、そしてアヤカは理琉の銃によって死亡した。

【挿絵表示】

↑アヤカを殺害した時の理琉はこんな感じ。


武闘派との戦いが終わり、静かに朝を迎えた。朝日が差し込む一つの部屋。仮眠を取っている胡桃。(他はもう起きているため、この部屋にはいない)まるで明け方の戦闘を忘れているかのような表情で寝ていた。だが右手には手錠がかけられている。

 

 

 

そこへ、一つの人影が………

 

 

 

その影は何やら右手にホワイトボードマーカーを握り締めている。ピンク色の髪を揺らしている、丈槍由紀の姿がそこにあった。彼女は突然、胡桃の目の前に座る。

 

 

 

「……胡桃ちゃんがいけないんだからね……」

 

 

 

キュポッという音と共に、ペンのキャップが開かれた。

 

 

 

 

 

 

「ま~るま~るさ~んかくひ~げかいてちょ~ん♪」キュッ キュッ キュッ

 

 

 

 

なんと、胡桃の顔に落書きを始めたのだ。

 

 

 

 

「これでよしっと」

 

 

 

 

 

 

 

「よしじゃねぇだろ!!」(# ゚Д゚)ほあちょお!! CHOP

 

「はう!?」ボカッ 5のダメージ

 

 

近くに置いてあった手鏡を取り、自分の顔を見てみる。まるで猫みたいな落書きを施されており、胡桃は少し呆れる。そして近くにあったウェットティッシュで顔を拭った。

 

「なんでこんなことしたんだよ…」フキフキ

 

「胡桃ちゃんが……勝手に一人で行っちゃうのが悪いんだよ…?マー君だってものすごく心配してたんだから……」(・3・)

 

「……ほんと、悪かったよ」

 

胡桃は相当申し訳なさそうに謝罪した。

 

「気づかなかった私も駄目だけどさ……本当に…駄目!だからね?」

 

「わかったよ。マサルにも、改めて謝っとく。でも、それとこの顔の落書き、何の関係があるんだよ?」

 

 

由紀は率直に、

 

 

「胡桃ちゃんってカッコつけてるよね?」

 

「そうか…?」

 

「うん。寂しい時は寂しいって言わずに………

 

 

 

 

 

 

こんな顔して……笑うんだ………」

 

 

 

 

 

 

困ったような笑顔、もしくは空元気……あるいはもっと違う、中身が空っぽになってしまっているような笑顔。そんな顔を自分は見せていたのか…というような表情だ。動きがピタッと止まり、何だか申し訳なさそうな目を由紀に向けた。

 

 

「あー……そんな顔、してたかも」

 

「してたよ……だから寂しい時は言ってくれないと……」

 

「うん」

 

「でね、その顔ならカッコつけられないでしょ?」

 

「ん……ん?」

 

遠い目してなんかカッコイイこと言っても(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)その顔なら大丈夫(・・・・・・・・)!!」

 

「ほ…ほほぉ…?」

 

「ん?」

 

 

「そりゃぁ良いコト聞いた。お礼しないとなぁ」ガシッ

 

 

胡桃はマーカーのキャップを取り、由紀の肩をガッシリ掴んだ後、先ほどの仕返しをし始めた。

 

 

 

「プークスクス……」

 

「うぅ……」

 

ひげのついたクマのぬいぐるみを模倣したような落書きを施し、胡桃はクスクスと笑っている。

 

「マサル達にも見せようぜ。ちょっと呼んでくるからそのままにしとけよ?」

 

ひとしきり笑った胡桃は少し元気を取り戻したかのようだ。由紀は少し安堵の表情を見せると、部屋を後にしようとする胡桃にひしっと抱き着いた。

 

 

「胡桃ちゃんは何があっても……絶対私が守るからね?」

 

 

 

「頼りにしてるぜ」

 

 

 

 

 

所変わってここは穏健派会議室。以前と比べて随分と賑やかになり、大学内の平和(?)を取り戻したかのような雰囲気に……

 

 

「だぁ~~~~~……疲れたぁ…色々大変だったぁ……でもまぁ細かいことは後回しで……」

 

 

 

 

 

 

「おつかれー!!!」

 

 

 

 

 

紙コップに入ったジュースを上にあげ、トーコは乾杯の音頭を取った。ヒカが近くの箱に入っていたジュースをテーブルに置いていたり、悠里とシノウ、そして瑠璃が楽しく会話していたり……理琉がショットガンやライフルの手入れをしていたり…

 

「な、何かアタシたちいっつも乾杯してるよね」

 

「そ、それが大学生ライフってもんっしょw」

 

真冬はコップに口を付けながら、何か考え事をしていた。否、真冬だけでなく、美紀、圭も同様だ。明け方に聞いた『あのこと』について考え込んでいるのか…

 

 

「やっ」

 

「うわっ……びっくりした……」

 

 

「胡桃ちゃんの具合はどう?」

 

「……今は大丈夫みたい…」

 

「胡桃先輩、また無茶しなければいいんだけど……」

 

圭の方はむしろ胡桃の事が心配だった。

 

 

「武闘派の人…空気感染みたいだったね。シノウさんからいろいろ聞いたよ」

 

「……そう…」

 

 

「なんか、燃えるよね!」

 

 

「「「え?」」」

 

 

「人類絶滅の危機!タイムリミット!カウントダウン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「世界の命運は高校生に託された!!!!」バーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちゃァゲームの主人公か何かかァ?」

 

「こら、後輩を困らせるなゲーム脳」

 

「ま、まあ、ゲームの良い所は、頑張ればクリアできるコトだよね!」

 

「バグってなければ……ね」

 

 

「それは、信じる心だよ!!」キュッキュッ

 

 

ホワイトボードに何かを書き始めた。

 

 

「そォいうもンか?」

 

理琉が半信半疑でそれを問う。もちろん冗談半分でだ。

 

「難易度ハードコアのクソゲーかもしれないけれど、攻略の道は必ずある!そう信じるんだよ。何もしないよりよっぽどマシさ!」

 

 

 

 

「ミッションスタート!! ランダル研究所を捜査せよ!!!!!!」

 

 

 

 

「……という訳で、頑張ってね」

 

 

「トーコさン結局俺ら任せかィ」

 

 

「ボクらも行きたいけれど、ここを守るよ。一人増えるしね」

 

シノウの事だ。

 

「そォか。遠征の事だが、体力に自信のあるやつは全員来てもらう。体力、気力に自信のあるやつは挙手してくれ」

 

胡桃、由紀、悠里、美紀、圭、真冬の六人が挙手した。

 

「私はあまり走るの得意じゃないからやめておくわ」

 

慈は辞退した。

 

「え~、めぐねえも行こうよ~」

 

「ゴメンね、本当は大人として行かないといけないんだろうけど、瑠璃ちゃんが残るから…守ってあげないと」

 

「そっか。るーちゃんがいるんだよね。私、頑張るよ!」

 

ランダルコーポレーション遠征組は、黒田理琉、丈槍由紀、恵飛須沢胡桃、若狭悠里、直樹美紀、狭山真冬、祠堂圭となった。また、感染を不完全ながらも克服した太郎丸も同伴することになる。

 

 

「そこのワンちゃんも、マサルたちと一緒に行くだろう?」

 

「わん!!」

 

トーコが太郎丸の顎をコショコショして遊んでいる。太郎丸も嬉しそうだ。

 

「それに、食料に限界があると思うし、畑を作っておこうと思うんだ!」

 

「それは、大切はミッションだと思います」

 

美紀も同意見のようだ。

 

トーコは顎に手を当てて、もう一つ、言わんばかりのジェスチャーをする。

 

 

「あとは…攻略サイト(・・・・・)があれば良いんだけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

攻略サイト……と言うよりは、この現象について色々と知識を詰め込んでいる者。大学のどこを探しても、理学棟にいる人物しかいない。リセはインターホンを鳴らし、その人物を呼ぶ。

 

「もしもーし……もしもーし」

 

 

『何の用かしら?』

 

 

「スカウトだよ。美紀君たちに会ったでしょ?彼女らが今度遠征するって言うから、いっしょに行ってくれないかな?」

 

 

しかし、当の本人は拒否。

 

 

『用心棒は向いてないぞ』

 

「行くのが例え、ランダル製薬本社だとしても…?」

 

『……!』

 

「こんな穴蔵にこそこそ隠れてたのは何のためだい?ただ生き残るため?違う。まだ死ねないから。知りたいことがあるから…だろ?ね。研究者さん。変異ウイルスの事もある。ずっとそこで滅亡までのカウントダウンを待っているつもりかい?それに……この資料、何かと役に立つと思うからさ」

 

 

リセが掲げたのは、理琉たちの高校の『禁転載 職員用緊急避難マニュアル』だ。これを見た理学棟の研究者は驚き、すぐに出発の準備を進めた。

 

 

『待ってろ』

 

だがその前に後始末を済ませる。ガスマスクを装着し、二体のゾンビの前へと歩み寄る。頭をつぶすため、大き目の工具を使い、ゾンビ二体を処理した。

 

 

内側からドアがノックされる。気づいたリセが、ドアに巻き付けられていた結束バンドなどの類を全て取り外し、扉を開けた。

 

 

「お疲れ」

 

 

「うう…外は苦手だ……」

 

 

理学棟のゾンビ研究者、青襲椎子だ。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「……と、いう訳で新メンバーの……」

 

 

「青襲椎子だ」

 

 

理琉、美紀、圭、真冬はこの人物と以前会った。

 

 

(また会ったな美紀君たち)ニッ

 

(どうも)ペコリ

 

(ウッス)ヨッ

 

(……)ペコッ

 

(こんにちは)ペコリ

 

 

 

「資料は全て見せてもらった。ランダル本社に行くのは妥当と考える。この、黒田理琉抹殺計画と書いてあるが、もうその計画は頓挫してると言える。ユーク軍もこの事件が起こる数か月前にアメリカによって壊滅したもんでね」

 

「そォすか。ひとまず安心だ」

 

「ここよりも研究設備がマシと考える。んで、行くのは誰だ?」

 

「俺こと黒田理琉、丈槍由紀、恵飛須沢胡桃、若狭悠里、直樹美紀、祠堂圭、狭山真冬、太郎丸。計8名だ」

 

青襲はじっと胡桃の方を見つめていた。隣にいる理琉や由紀たちもじっと……圭に抱えられている太郎丸は少々青襲を警戒している。

 

「…その顔はどうしたんだ?」

 

理琉はおそらく落書きのコトだと思い、胡桃にウェットティッシュを手渡した。

 

「とりあえず拭け…」

 

 

「丈槍さんも恵飛須沢さんも、仲良いのよね」

 

慈が二人について少し話した。

 

 

 

だが、青襲に関して言うと、気になっているのは胡桃の顔に施された落書きではなかった。突然立ち上がり、ズカズカと胡桃の後ろへと歩み寄り、突然胡桃の顔色なり脈なりを調べた。

 

 

 

「胡桃ちゃん、ちょっと風邪気味で……」

 

 

 

「お前、感染してるな(・・・・・・)そこの犬も」

 

 

「一応、不完全だけど克服はしてンだ。あまり害を与えるなら容赦はしねェぞ?」

 

 

「何もわかっていないな。お前たちは……面白い……面白くなってきたぞ。不完全とは言え、発症を克服できている。この子とそのワンこはすべてを解決するキーパーソンかもしれん」

 

一同はこれに騒然とする。胡桃が、太郎丸が…世界を救うための切り札になるという、青襲の言葉に……

 

 

 

青襲の計画はこうだ。胡桃から血清を作ることが出来れば、この世界は救われる…と。そのためにもランダル製薬本社へと乗り込み、研究を完成させる。大学だけの設備ではとても困難であるため、早急に向かう必要があるとの判断に至った。諸々の準備を済ませ、学園生活部一同は青襲と共に出発する。

 

 

 

「ま、いろいろあったけどさ、良いコトもあったと思ってもらえたら嬉しいかな」

 

 

「当たりめェだ」

 

「当たりまえだろ!」

 

 

胡桃は握手を求めた。しかし、自分は感染者。危害を加えてしまわないだろうか…と思っていた矢先、トーコが自分で握手してきた。

 

 

 

 

「みんなが来てくれて、本当に良かったよ!」

 

 

 

 

学園生活部一同は自然と笑顔がこぼれる。

 

 

 

 

「めぐねえ、みんなをお願い!」

 

 

「先生に任せなさい!!」ビシッ

 

 

「絶対薬持って帰りますから!!」

 

 

「圭君、任せた!!」

 

 

「I'll be back だぜェ」

 

 

「…ヒカ……行ってくるね」

 

 

「行ってらっしゃい、真冬ちゃん」

 

 

「気を付けてね。待ってるから」

 

 

「りーねー、いってらっしゃい!」

 

 

「行ってくるわ♪」

 

 

理琉がハンドルを握り、準備万端。

 

 

「準備は良いか?では、学園生活部!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「いざ出陣!!!!!!」」」」」」」

 

 

 

「ワン!!!!」

 

 

 

エンジンを噴かせ、キャンピングカーを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は太平洋沖。

 

 

 

 

10機ほどのF/A—18スーパーホーネットと軍用ヘリを積んでいる空母がいた。その中の一機、軍用ヘリが飛び立ち、日本列島へと向かって行くのであった。

 




いよいよ始まるランダル遠征作戦。そこで明らかになる事柄はいかに!?学園生活部よ、世界を救えるか!?
次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十三話 まくあけ
私達は、ここにいます。


実はゾンビという言葉は理琉しか使っておりません。気づきましたか?


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第四十三話 まくあけ

ランダル製薬本社へと駒を進める学園生活部。そして青襲椎子。人類は果たして救済を得ることはできるのだろうか。


「ふぅ………」

 

ハンドルを切りながらため息をふっとつく少年。少年の隣の助手席にはウトウトしているツインテールの少女が座っている。

 

「……」ウツラウツラ

 

「ん……眠いのか?胡桃」

 

静かにうなずく胡桃。以前理琉に貰った水をグイっと飲み、ペットボトルを空にした。カラのボトルには微かに水滴が残っており、つい先ほどまでこの中に水が入っていたのだと思い知らされる。それを下に置くと、自身の膝に掛けてあった布切れを胸のあたりまで被った。

 

「…その水、それで最後だからな。大学から持ってきたのは残ってるけど、高校からのはそれだけだからな」

 

「あぁ…悪いな、勝手に飲んじまって」

 

「いや、予備はたくさんあるんだし、全然構わねェ。しかし、水より心配なのは武器だ。これまで小説内で描写してなかったけど、物資を確保するために制圧したホームセンター、あそこで何発も発砲した。あのペースで使っていったら三日は持たない。その辺に弾薬を売ってる店があれば良いが、いかんせんここは日本だ…そんな都合のいい所なんて無い……だからもし弾薬が尽きたらもう…」

 

キャンピングカーのキャビンでは、由紀たちが各々所持している銃のマガジンに弾を込めていた。青襲は書類データを見ていたり、万が一のためにグレネードとなりうる爆弾を作っていたり……カチャカチャという弾を込める無機質な音と、由紀たちの他愛のない会話が車内BGMとして流れている。

 

「何か、これって異様な光景かもな」

 

「何が?」

 

「いや、みんな原作じゃ銃なんて持ってないし、満足いく武器ってのはシャベルしかねェだろ?随分とヌルゲーになったなって」

 

「それは触れちゃダメだ」

 

胡桃が目を細めてツッコミを入れる。

 

「まぁ、二次創作だからな。気にしちゃ負けさ…現に今だってメタメタなセリフだろ?」

 

本来ならば物語の登場人物がこの小説制作の裏側や原作について触れるというのはあり得ない。ただし作者の性格上、そういうメタ要素があるだけで充分楽しめるのではと踏んでいた。タグにメタ発言と堂々と書かれていたり、中の人ネタや共通点の多い作品とのオマージュだったりなど…

 

「言っちまえばお前らが行った凍京ネクロの世界ではメタフィクションズとか言われてただろ?」

 

「創作上の人物…なんて想像してなかったもん。多分あれ聞いて一番びっくりしたのって美紀だと思うぜ」

 

「俺もその中に入ってみたかったなァ」

 

凍京ネクロネタ考えてるから待ってろ。(書くとは言っていない)

 

 

 

ある程度作業を終えていた由紀たちは車内でリラックスしていた。太郎丸は圭の膝の上でぐっすり眠っており、悠里は所持品の確認をしている。

 

 

「………」

 

「えいっ」

 

窓の外を向いていた美紀が何気なく視線を移そうとすると、由紀に頬をつんと突かれた。

 

「も~、またボーっとしてる……」

 

「スミマセン…」

 

ちょっと悪戯した由紀は途端に穏やかな笑顔を美紀に見せる。

 

「…大丈夫。きっとみんな……上手くいくと思うよ」

 

「そう…ですね……」

 

 

 

 

しばらく走っていると、スターバックスコーヒーの看板が見えてきた。

 

「…少し休憩していくか」

 

突然車が止まり、青襲は理琉にどうしたと問う。少し休憩しよう、と言い、ウィンチェスターカスタムを持って外へと出た。

 

(…しかし、胡桃はどうも寝る頻度が高くなっている…)

 

「ねえ、外に出る意味あるの……?」

 

真冬の素朴な疑問には圭が答える。

 

「まぁ、いざという時に体ほぐしておかないとね。でも、無理しちゃダメだよ?真冬は怪我人なんだから」

 

「ワン!」

 

自身の脚をチラッと見る真冬。大学の敷地内に潜入した時にクロスボウの矢の流れ弾を受けた痕だ。今は出血も無く、歩行に支障をきたすものでもないが、痛みは消えていない。

 

「…じゃあ、待ってる」

 

「よし、ある程度出たな。由紀、真冬、圭。胡桃を頼んだ」

 

「らじゃー!」

 

「……わかった」

 

「了解です!」

 

 

理琉は美紀、悠里、青襲が車から出たことを確認すると、ボタンを押してロックを掛けた。

 

「……」

 

「理琉くん、どうかしたか」

 

「いや、実はこの車、とあるシェルターで手に入れて来たもンでな」

 

「そうなのか。立派な車だな。…ん?シェルターと言ったか?」

 

「あァ、恐らくあのクソ製薬会社関連ってなァ申し分ねェだろ。あそこは梯子で登った先の屋上にある金庫の扉みたいにハンドルを回して開けるタイプのドアだった。本来ならあン中にゾンビ共が入るとは思えねェ。しかし、その中の人間は既にゾンビ化していた」

 

理琉があのシェルターで起こっていたことを赤裸々に語る。

 

「ほう、つまりは…」

 

「『空気感染』という事象が間違いなく起こってるっつゥことだ。俺は専門家じゃねェから断定はしかねる。だがあれだけ厳重な設備にも拘らず、しかも咬み傷も無い(本編中ではないが胡桃が言った)…となると空気感染意外ありえねェンじゃないかと思ってな。それに当時行ったときは埃だらけで誰も入ったような形跡はなかった」

 

「誰も出入りが無い状態での感染……今回の武闘派と合わせて間違いないだろうな」

 

「しかし、仮にそれがわかった所で、俺たちにはどン位猶予があるってンだ?」

 

「さあな。結局、どっちでもいいんだよ」

 

それだけ言って青襲は去っていった。理琉の後ろでは美紀と悠里が自前の銃を持って立っていた。

 

「先輩、ちょっと手伝ってくれませんか?」

 

「構わんぜ。倉庫狙いだろ?」

 

「まぁそんなところね」

 

「…やっぱり銃は使いにくいか?」

 

「ううん、大丈夫よ。それにマサル君たちに頼りっきりなのはダメだもの」

 

変に気を遣われるとむず痒くなる理琉。若干頬を緩ませながらもあくまで平静を装って対応する。

 

「あァ、あンがとよ」

 

「…まだ抱え込んでいるのかしら?」

 

「いや、別にそういう訳じゃない。単純に嬉しかっただけ。でも、やっぱり俺を頼ってほしいと思っちゃうンだよ。人間って不思議だよな…」

 

「あなたは事件当初と比べてだいぶ変わったわね」

 

何も言えない理琉。小春の死以降常に自分の事は卑下しており、何事もマイナスに捉えていた。しかし由紀たちとの出会いでそれは間違っているということに気づかされる。胡桃にぶん殴られた時もそうだ。自分は女の子一人守れなかったクズなのに…それでも自分の事を思ってくれる……そんな姿勢に理琉は衝撃を受け、考えを改め始めたのだ。

 

「フッ、俺だって人間なンだからよ。何かをきっかけに変わることもあるもンだ。一々こんな事で落ち込んだって仕方ねェしな…ここで負ける訳にもいかない」

 

「胡桃でしょ?」

 

「ぶふっ!!?な、何でよ!?」

 

「胡桃のパンチが効いたのかもしれないわねwww」(S1 第十九話参照)

 

「あうゥ……」

 

間抜けな声を出しその場で悶絶した。

 

 

 

 

「ん?…悠里先輩?」

 

先ほどの理琉イジりから一転、悠里は険しい顔をした。

 

「……そうよね…るーちゃんたちの為にも…負けられないよね…どんなことをしても…絶対に勝つの」

 

「……」

 

(そうだ…負けられない……俺たちの本当の敵はゾンビではない。この事件の元凶となったクソ会社だ)

 

 

 

「……あァ……必ず勝つぞ………」

 

 

 

色々と物資を漁っていると、客が現れた。

 

 

グガァァァァ

 

 

「おっとお客さンだ。美紀、りーさん、俺の後ろに来て目ェ瞑っとけ」ガチャ

 

 

 

 

 

ドォン!!! グシャァ!!

 

 

 

 

 

ゾンビの脳天にショットガンをクリティカルヒットさせた理琉。ゾンビの頭は吹き飛び、『中身』がビシャっと飛び散った。

 

 

「うわぁ…やっぱり何回見てもグロいですね……」

 

「まァ、所詮は腐った死体だ。これくらいどうってことはない」

 

 

理琉の服が返り血で汚れる。

 

「…きったねェな…服交換してくっか…二人とも、悪いが先に戻っててくれ」

 

「わかったわ」

 

「はい」

 

 

青襲と合流したあと、理琉は隣の店へと足を運んだ。ドアは壊れているが、幸い中はそれほど荒らされていなかった。

 

「これで良いか、動きやすいし」

 

自分のサイズにフィットしそうな服を選択。(バイオRE2の初頭でレオンが着ていた服をイメージ)血に汚れ、所々損傷している制服はここで破棄し、着替えが完了。

 

「戻ろう。あいつら心配させちゃマズイしな……お、こんなとこにサプレッサーがあった」

 

ショットガンをリロードし、周囲を警戒しながら由紀たちの待つキャンピングカーへと戻っていった。途中ゾンビを何度か見かけたが、音をたてずに移動したため気づかれずに済む。

 

 

 

「わりィなみんな。服がきったなくて交換してきた」

 

「マサル遅い……」

 

「マー君、お土産ある~?」

 

「ない」バッサリ

 

「え~」(・3・)ブーブー

 

美紀が持っていた紙袋を覗き、何かを取り出す由紀。

 

「ノート?それも二冊……」

 

「はい。日記でも書こうと思って…圭の分もあるよ」

 

「本当に?ありがと!」

 

二冊重ねてある内、一冊を圭に渡した。

 

 

 

 

 

 

「ん~……そろそろこのショットガンも寿命か?」

 

色々とカスタムされているウィンチェスターM1887、これまで使い込んで来たからなのか所々傷が見受けられたり、上手くコッキングできなくなっている。万が一に備え、大学の地下倉庫にあったショットガン(M870)を用意したが、やはり手に馴染むものでないと色々と落ち着かない。

 

「マー君、その銃私にも扱えるかな?」

 

由紀が後ろから覗き込む。

 

「由紀にはちょっと難しいかもしれないな。それにMP5だけでも結構な重量だろ?」

 

「うん、あれ重くて……」

 

「もし使いにくかったら、そこの棚の中にスペアのグロック17が入ってる。それを使ってもいいぜ」

 

「わかった!ありがとね!」

 

 

夜中

 

 

「はぁ……ボク達、勝てるのかな……」

 

 

布団に潜りながら一人呟く真冬。

 

 

『真冬なら、きっと勝てるよ。お姉ちゃん信じてる』

 

 

「!!??」

 

 

ガバッ!ゴンッ!!

 

 

「痛ぁい………」

 

車の天井に頭をぶつけてしまった。

 

 

 

翌日

 

 

 

 

『これを読むあなたへ。もしこれを読むあなたが人間以外の何かだったら、私達は失敗したのだろう。だとしても私達は精一杯生きた。これはその証だ。  直樹美紀』

 

 

『これを読んでいるキミへ。もし私と同じような境遇の人、そうでない人もいるかもしれない。生きていればそれでいいの?この言葉に、私は心を揺さぶられた。でも親友の為にも生きると誓った。  祠堂圭』

 

 

それぞれの冊子に自分の思いを綴っていった。

 

 

 

車内では胡桃がすーすーと寝息を立てており、心地よさそうに寝ている。青襲はデジタル温度計をポケットから取り出し、胡桃の表面温度を測ろうとした。その物音で目を覚ます胡桃。

 

「んあ…?」

 

「起きたか」

 

間抜けな声を上げて起床した。目を擦り、青襲の方を見る。

 

「調査だ、口を開けろ」

 

「んがっ」

 

手元の温度計は、30.7℃を指した。(原作だと24.5℃)

 

「……あたし、どうなってます?」

 

「体温は普通の平熱より低いが、気温よりは高い。熱を放出しているということは何らかの代謝はあるようだ」

 

こういう話を聞いてもやはり安心できない。

 

「ん?どうした?」

 

「これって、生きてるって言えるのかなって……あたしもあいつらと同じ死体なのかな……ゾンビみたいに死なない死体みたいな……」

 

「いや……死体をなめるな」

 

青襲は真顔でそう答える。

 

「え?」

 

「そもそも個体が死亡すると、細胞は溶解酵素を出して分解、消化していく。共生された細菌も、内臓を消化して腐敗反応を起こす一方、土着菌に動物や昆虫も加わって物理的科学的に死体は分解される。死とは、長年の進化によって得られた精巧極まりない再利用システムだ」

 

 

「なンだか食物連鎖をもっと掘り下げたよォな内容だな。んでも、胡桃は生きてるンだ。それに越したことはねェと思う」

 

「生にだけ目を向けるのは、人間の悪い癖だ」

 

「あン?」

 

「でも、あいつら死なないじゃん……バイオみたいに撃っても撃っても起き上がるし……一体何なんだよ……」

 

「それは、私も知りたい。そのためにここまで来たんだからな」

 

そう、カーテンを開けた先には彼らの目的地であるランダルコーポレーション本社ビルが鎮座している。

 

 

 

施設潜入にあたって、色々な道を確保しておかねばならない。まずは進入路。繰り返し使う道。そして脱出路。これらの内一つでもゾンビに占拠されようもんならゲームオーバーだ。偵察班は美紀と理琉の二人。正面玄関から入れるか、またはもっと違う入口…例えば裏口。もしなければ上階へ登るための梯子…使えるものが無いか手当たり次第探しだす。理琉はM1887からM870に変え、美紀はM4カービンを持った。

 

 

 

「美紀、あそこに梯子があるぜ」カツカツ

 

「わかりました。伝えてきます」

 

「この付近のゾンビは俺が掃除しておくから安心しろ」カツカツ

 

 

 

昼の内に近寄ってくるゾンビを一掃し、道を広く保たせる。

 

 

 

「弾が欲しいってかァ?ほらくれてやるぞクソ野郎共!」ズドォン‼ グチャッ‼

 

 

 

 

その日の夜。車を梯子の近くへ駐車。いつでも車に乗れるようにした。

 

 

 

「あれね」

 

「うわぁ~…ゲームのラスダンみたいだね」

 

「胡桃ちゃん、いけそう?」

 

 

「ああ。これくらいは登れるさ。マサルの方が危ないんじゃないか?杖ついてる状態じゃ…?」

 

 

「いや、問題ねェ。変な動きさえしなければな」

 

理琉はM870を背中に担ぎ、左手で杖を持ちながら先に登っていった。

 

 

 

「よいしょっと…ここは安全だ。早く登ってこーい」

 

 

胡桃、美紀、由紀、真冬、悠里、圭の順番で梯子を上り始めた。

 

 

 

登った先は、どうやらオフィスのようだ。圭が電気が点くか確認したところ、パッと点いた。

 

 

 

「おィ…この壁の数式……」

 

 

壁には数式がびっしり書かれており、右下の方にはQ.E.D.(証明完了)とNO FUTURE!!の文字が。

 

 

「まるで最初っから諦めてたみてェな感じだな。結局、何がしたかったんだか。何が未来は無い…だァ?」

 

呆れてモノも言えない。そう吐き捨てると、理琉は近くの仮眠室の方向へと向かった。

 

「お掃除しないと!」

 

「今日は遅いから、明日にしましょ?」

 

 

学園生活部全員が仮眠室に入ると、理琉が奥の方から入って来た。

 

「一応、この近辺にゾンビが入れるような場所はない。しばらくは安全と言えるぜ。あとなぜか知らねェけどシャワールームと湯船があったぜ」

 

それを聞いた全員は目を輝かせる。このところ湯船に浸かる機会がなく、日本人として風呂が恋しかった。

 

「まぁ落ち着けって。さっき簡単に掃除してきたから、先に入って来いよ」

 

 

 

「……マサル先入りなよ。せっかく掃除とかこの辺の安全確認をしてくれたのに、あたしらが先に入っちゃうのもちょっと気が引けるし」

 

「それもそうね。いつもあなたに助けられてばかりだし。今日くらいはゆっくり休んで欲しいわね」

 

「オマエら……」

 

 

ここはお言葉に甘え、先に久しぶりの湯船に浸かることに。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……やっぱ日本人としては湯船がねェとなぁ~………」

 

 

 

比較的大きめのバスタブで贅沢に足を伸ばして疲れを取る理琉。こんな贅沢な入浴は何か月ぶりだろうか……

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

ドアが開く音が聞こえ、とっさに縮こまってドアの反対側を見ている。ここには彼以外女性しかいない。ゾンビが進入するとは考えにくいし、多分あのメンバーの内の誰かが入ってきたのだろう……

 

 

 

 

「一緒に入っても……いいかな?」

 

 

 

 

由紀の声だった。

 

 

「ちょっ、これバレたらマズいんじゃ……?」

 

「りーさんたちにはお風呂行ってくるねってもう言っちゃったよ?」

 

「こ、これ……あとで真冬とかに尋問されそう………」

 

バスタオルで体を隠しながら、由紀は理琉の反対側に座ってきた。

 

(精神衛生上悪いよこれ………)

 

「ふう~……やっぱお風呂は気持ちいいね!」

 

「そ…そうだな…」

 

 

 

 

 

 

「…ねえ、私たち、本当にこれから生きて行けるのかな…?外はバケモノばっかりだし……まるでゲームみたい…ほんとはね、学校で生活してたときとっても怖かったの……怖くて怖くて…いつからだったか現実から目を逸らしちゃって…めぐねえやみんなに迷惑かけて……」

 

「…俺だって胡桃だって…みんな辛くて…生きることを諦めかけてた。でもそんな時、キミがいつも答えをくれてた。俺たちの助けになってたんだぜ?」

 

「ちがうよ……わたしなんて……わたしなんて本当に辛いコトはみんなに押し付けて自分はずっと逃げてただけなのッ…そういう弱い人間なの……だから、そんな自分が情けなくて…バカみたいで…」

 

由紀は俯きながら涙をポタポタとこぼす。やはりよほど溜め込んでいたのだろう。

 

「…ったく、何言ってるンだ。オマエが教えてくれたから、後輩たちが助かったンだろ?あんな俺たちじゃ聞き取れないような微かな声もしっかり聴きとって、俺たちを導いてくれたじゃねェか……全部…オマエのおかげなんだよ。由紀………オマエがいてくれたから俺たちは救われたンだ。もしあの場にオマエがいなかったら、俺自殺してたぞ?こんな所嫌だって……そんな場面に出くわしても、いつも笑顔で振る舞っていたじゃねェか。俺よりもよっぽど強いよ………」

 

「ヒグッ……そうなのかな…?」

 

「そうだとも。もしさ、みんなドヨンと暮らしてたらどうよ?きっとあの籠城生活クソつまらなかったと思うぜ?校舎内で体育祭やったり、室内でテント張ったり……俺じゃ考えつかないようなアイデアをたくさんくれた。本当は男として皆を引っ張って行かなければならないンかもしれない。けれど、やっぱりこの学園生活部の真のリーダーは由紀だよ。俺なんか敵を殺して仲間を助けるみたいないわば悪党(ダークヒーロー)みたいな立ち位置かもしれないけど、由紀は俺の……みんなの英雄(ヒーロー)さ……」

 

「ヒーロー…ダリオマンみたいな…?」

 

「その辺はよくわからないけれど、俺はそう思うぜ。これから俺たちはもっと過酷な運命を背負うことになる。もしかしたらバイオハザードのレオンとクレアみたいに俺たちが世界を救う最後の切り札になるかもわからない。俺たちはまだ死なない。いや、死ねないンだ。ヒーローは待つンじゃなく、なるもンだろ?なら、俺たちがこの世界を救うヒーロー、ヒロインになってやろうぜ!」

 

理琉が由紀の方をチラッと見て告げる。

 

「……うん…!そうだね!私たちがヒーローに…大学のみんなを…世界を………」

 

「あァそうだ。俺たちが救うンだ。人類を…!」

 

 

二人は窓から見える月を眺め、人類を救う誓いをたてたのだ。

 

 

 

「ねぇマー君……?」

 

 

「ん?何だ?」

 

 

「月が…綺麗だね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………あァ、綺麗だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




青襲が本社ビル内を探索すると、ハザードシンボルが描いてあるドアを見つけた。

「フッ、当たりだな」

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十四話 きぼう
私達は、ここにいます。 


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第四十四話 きぼう

ハザードシンボルの描かれた扉が開かれる時、この事件の全貌が明らかになる!

※注 ここからは独自解釈(オリジナル要素)が入ります。


「フッ、当たりだな」

 

『コノ先ハ制限エリアダヨ。通行証デタッチシテネ』

 

無機質な機械音声、簡単に言えばSiriのような声がパネルから聞こえる。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

女子トイレにて、由紀と美紀、悠里がいるのだが、何やら緊迫している状況。

 

 

 

「……私、変じゃない?本当のことを言って」

 

「ぜ、全然変じゃないよ!!」

 

 

「……ボーモン君、本当?」

 

『本当カ 嘘カ…… 90%ノ可能性デ 嘘 ダヨ』

 

「………」ゴゴゴゴゴ

 

 

別の場所では…

 

 

「それにしても、このAI役に立つンか?青襲が俺のiPhoneにも一応セットアップしてくれたンだけどな……」

 

「……Siriみたいな感覚かな?ボクはあまり使わないからよく分かんないけど…」

 

「どうなんだろうな?」

 

「なぁ、胡桃。今は歩ける状態なんだろ?」

 

「ああ…普通に歩けるんだけどさ、由紀が無理するからダメ!って言うもんで……」

 

「確かに、オマエは無理をし過ぎだ」

 

 

胡桃は現在、由紀に自身の身を心配されたのか、車椅子に乗っている。普通に歩け、走れる状態であるが念には念をという事でこうなった。

 

 

「ふぅ……こンなAI、もう二度と使うことは無いだろうと思ってた。だが、こんな形でまた再会するとはな」

 

「使ったことあるの……?」

 

「軍に居たときにちょっとな。だからセットアップしてもらってすぐに軍で使っていたサーバーに変換した。コイツの使い方、活用法は一応全部熟知している。ハッキングだってする気になれば出来る」

 

「え、大丈夫なんですか?」

 

「バレなきゃ問題ないさ」

 

「え、えぇ……」

 

「ふーん、どんな風にやるんだ?」

 

胡桃が覗き込む。

 

「いやハッキングはさすがにしねェよ。まぁでもそうだな。適当に聞いてみるか…………

Hey Bowman. Tell me more this Zonvie panic. We wanna know details.」

 

『This Zombie panic is considered to be almost equivalent to the fungus indigenous to Megrigaoka. However, indigenous bacteria are not the cause. Randall Corporation's holding company seems to have developed a virus equivalent to the fungus.』

 

「何ィ…?」

 

「何だって?」

 

「…どうやらランダルコーポレーションよりも更に上の組織がいたようだ……そしてその組織が、この事件の原因となっているウイルスを開発したって言ってる。てかコイツ、急に『巡ヶ丘の土着菌』とか言い出しやがってさ。一体何のことを言ってるンだかさっぱりだ……」

 

「巡ヶ丘……土着の菌…どっかで聞いたことあるような…?」

 

圭がその言葉に引っ掛かることがあるらしい。

 

 

「これは青襲が追々研究していくと思う。俺も勝手に調べているが、確度は保証しないでくれ。とりあえず今は彼女の研究結果を聞こう」

 

 

真冬が胡桃の車椅子を押し、理琉は念のため周りの警戒を、そして圭は太郎丸と戯れ、由紀たちと合流した後、青襲の待つ会議室へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

「やぁ、遅かったな。調査が一区切りしたんで、報告だ」

 

「…目的の情報とやらは見つかったンか?感染源とか……」

 

「ああ、内部メールを見たが、この辺りが爆心地と言っても過言ではない」

 

「ここでウイルスを作ってたんですか?」

 

「いや、どちらかと言うと『ここで作っていたのは』細菌…だな」

 

「はい!どう違うんですか?」

 

由紀がビシっと手を挙げて答えるが、青襲は少し呆れ顔で、

 

「……最近の高校は何を教えてるんだ…?」

 

とため息交じりに言った。

 

「細菌ってなァ細胞膜とか色々な機能を持つ細胞内器官を備えているが、ウイルスには細胞膜が無く、中身もDNAかRNAくらいしかねェ。だがそれがどォしたって言うンだ?」

 

理琉が代わりに答える。

 

「大体正解。それが今回、必然的にばら撒かれてしまったという訳だ」

 

「ふむ、しかし細菌だァ?おかしいな。俺の軍用ボーモンがよォ、巡ヶ丘土着菌の効果と同等のウイルスをこのランダルコーポレーションよりも上に位置する組織が開発したっつゥ話だぞ?」

 

「……補足する必要もなかったようだな」

 

「だがよ…お前らよく考えてみろ。仮にそのウイルスが存在しているとして、そンな危険なものを事実上傘下であるこの会社の本社ビルの機密倉庫、しかも地上に置いておくか?普通ならこういうのってなァ何百フィートも地下の研究所かどこかに保管しているはずじゃねぇのか?必然とは思えねェ。もしそォだとしてどンだけ杜撰な管理をしてやがったンだって俺は問いたい」

 

 

「……あまり言いたくなかったが、理琉君の読み通りだ…」

 

 

全員が青襲の方向を向く。

 

 

「そう、このウイルス……管理が杜撰だった上、ウイルス管理者のバカ野郎がそれを扱った後、手を洗わなかったから……だから人類は滅んだんだ……

 

 

 

「厳重な設備でも管理者がいい加減なら意味がない……ってとこだろ?大それた考えだが、この状況も納得がいく」

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

青襲の一言に、理琉以外は絶句してしまう。しかし、理琉はあくまで平静を保っているというだけだ。

 

 

 

「そんな………」

 

真冬が膝をついてしまう……

 

「なんかこう、もっとブチキれるはずなんだろうけど……なんか悔しいな……」

 

胡桃が指の爪を咥えてそう呟く。無理もない。この騒動があってから数か月、マニュアルを見つけて謎を紐解いていった。最終的にこの会社に行きつき事件の黒幕の首根っこを掴んでやろうとも考えていた。その結果がこれだ。

 

 

「これ…治るの…?」

 

圭が恐る恐る聞いた。

 

「…わからない。本当に、わからない……さっき理琉君が言っていたようにこの街には問題となっているウイルスと、その基となった土着菌がある。ランダルに倣ってΩとしようか。実は過去に流行したこともある」

 

「確か……1968年にこの街って人口が一気に減ったっつゥ話だよな?」

 

「それがΩ菌の最初の流行年と言って差し支えないだろう」

 

「でも、そうしたら…私達は…」

 

「そう、その時世界は滅びなかった。つまり、この騒動を収束に導くカギは存在する、という訳だ。どうやらこの菌とウイルス、全く違うように見えて性質も弱点もどうやら同じみたいだ」

 

「あの、前に胡桃先輩に打った薬は……」

 

「アレに関してはまだ解析中だ」

 

 

 

学校で注射した薬に関しての話題になると理琉がいや、と言い、

 

 

 

「その必要はねェ。あのアンプルはただの抗生物質とオキソアミヂンが含まれた強壮剤ってだけだ。あれの効果ってのは三日から四日くらいのはずだが、胡桃の様子がおかしくなってる感じはしねェ。一時期メチャクチャ弱ってたが、後になって普通に歩けるようになってる。太郎丸もそォだ。あれだけ弱ってたのに、今は何故かちゃんと動いている」

 

 

 

「マサル先輩、そうだったんですかっ……?」

 

美紀が驚いた表情で理琉を覗き込む。理琉はメンチを切りながらもまた語りだす。

 

「あぁそォだよ、あの後使い方も見てみたンだが、これまたクセもンでよ。『定期的に摂取しないといけない』みたいなこと書いてあったンだ。しかしあそこに置いてあった注射器はたった一本だ。ハナから治療目的で置いてあったとは思えねェンだよッ…」

 

理琉は右手から出血するほど右手を握り締めた。

 

「…なんでそれを……先に言わなかったのよ…!」

 

悠里が少しキレ気味になる。理琉自身そう責められることはわかっていた。わかっていたからこそ、堪忍袋の緒が切れた。感染爆発の原因がバカげたものであることに平静を保っていたが実際は真逆。内心はもう怒りと悔しさで壊れてしまいそうだった。

 

「仕方ねェだろ!!言わなきゃいけないのは俺もわかってた!!だが言おうにも言えなかった!胡桃があの状態で、更に注射器が一本しかないなんて言ったら、お前らパニックになると思ってなァ!!!」ガチャ

 

 

机を蹴飛ばし、理琉はM870を全員に向けた。

 

 

「マサル、やめろって……!!」

 

 

胡桃が仲裁に入った。

 

 

「お、落ち着け理琉君。君の言うことは間違っていない。注射器を使い回せば、別の弊害が出るかもしれない。それに、アレは強壮剤、そう言ったな?特効薬と謳ってあの薬を置いてあったとすれば、それは立派な犯罪だ。しかし今それは置いておこう。ともかく、人類が生き残る方法はゼロじゃない。『少なくともこの土地にある』からな」

 

 

「…チッ……クソったれが!!!」

 

 

ショットガンを懐にしまい、足早に会議室を後にしていく。

 

 

(何やってンだ俺……いくら理不尽な原因とはいえ、あんなはしたねェことしやがって…)

 

 

「あぁクソ!!…………………ん…?何だァここは…?」

 

 

昨日入ってきたオフィスとは違うオフィス(おそらく上級職員用)があった。

 

 

『上級職員用のカードキーをスキャンしてください』

 

 

「めんどくせェ…Bowman, hack this office」

 

 

『Hacking...........Complete』

 

 

「案外簡単じゃねェか」

 

 

軍用ボーモン越しにそのオフィスをハッキングし、中に潜入する理琉。一つ電源が入っているコンピュータを見つけ調べてみることに。

 

 

「…この機密情報、ロシア語で書いてあるな……何々…?Ωウイルス感染地域拡大防止のため、およそ――日後にK県巡ヶ丘市を――――――――――こんなの絶対アイツらに言えない…」

 

 

 

その頃胡桃は、医務室にて青襲から採血を受けていた。

 

 

 

「…彼は一体何者なんだ?」

 

「幼い頃からアメリカ軍に居たらしい。まぁ当時の事を詳しくは話してくれないけど、戦場で想い人を亡くしてるって……」

 

「そうか…それはつらいな…刺すぞ」

 

普通の注射針より若干太めの針…ようは採血用を針を胡桃の血管へと刺し、静脈血を吸引する。

 

 

「そういやさ、さっき話逸らしただろ。治せるってこと、あの場で言っても良かったのか?」

 

「知恵が回るな。まぁ出来る限りの事はするが、……あまり期待しないで欲しい…」

 

『嘘 ノ 可能性 15%』

 

「…どうにかしないとな、ソイツ」

 

 

 

 

「……ボーモン…胡桃は治るよね…?」

 

真冬が自身のスマホでボーモンを開き、弱々しい声で問いかけた。

 

『ハイ 治ル トイイネ』

 

「ボクは信じてる…信じるしかない……胡桃は絶対に治るって……」

 

 

『嘘ノ 可能性60%』

 

 

「……ひどっ…」

 

 

 

 

 

真夜中。仮眠室で寝ているメンバー。

 

 

ヴーヴー

 

 

「…なンだ…こんな時間に……?」

 

 

『Wireless communication has arrived. Do you wanna connect?』

 

 

「んァぁ…!?おい、お前ら起きろ!!」

 

「ん~……何ですか先輩こんな夜中に……」

 

圭の髪が少々爆発している。

 

「こ、これ見ろ…」

 

「通信…?!美紀、先輩方!起きて!!」

 

「圭、急いで青襲呼んできてくれ」

 

「了解ですっ!」

 

「先輩のこれ、言語英語ですよね?」

 

美紀が理琉に確認をする。

 

「日本語訳するから大丈夫」

 

スマホから聞こえてくるのは、ノイズのようなザッ…ザーッという音。

 

 

「連れて来ました!!」

 

「おォ、ありがとう。青襲さン、さっきからモールスが聞こえるンだが」

 

「よくモールスってわかったな。これは英語なのか?」

 

「多分この信号を聞く限りだと英語だ。翻訳は任せろ。Hey, Read the morse code.」

 

 

 

『Can you hear me? this is the Randall Protection Organization』

 

 

「『聞こえますか?こちらはランダル保護機構』」

 

 

「同周波数で音声通信に出来るかやってみてくれ」

 

 

「了解っと。Match the frequency and switch to voice communication. And translate to Japanese.」

 

『ハイ。 日本語 ニ 変エル ヨ』

 

 

…もしもし、ボーモン君?再起動したの?周囲に人間は…?

 

 

「もしもし!!」

 

 

悠里が返事をした。

 

 

!!誰かいるの!?

 

「います!ここに犬を含めて9名!他にも……」

 

無線の主はどうやら女性の声のようだ。20代後半くらいと言ったところか。

 

 

生存者確認!!緊急対応!!そちらの状況は?

 

「こっちァ、何とか安定してる」

 

OK、救助部隊を急行させるわ。正確な位置をお願いできるかしら

 

「北緯35.427905、東経139.637901。ランダル旧本社ビルだァ」

 

………

 

「ちょっと貸せ」

 

理琉のスマホを青襲はヒョイと取り、相手と会話する。

 

「水と食料は確保してある。数日耐えれば助かるということだな」

 

…ええ

 

「なら問題ない。そちらの場所は?」

 

ごめんなさい、上の許可を取らないと言えないの。すぐ取れると思うから待ってて

 

「そういうものか?」

 

(………)首を傾げる理琉。

 

あなた方と話せてよかったわ

 

「ああ、またな」

 

 

通信はここで切れる。

 

 

「よ……よかった……」

 

「私達、助かるよ……」

 

「ワウゥ~」

 

 

 

少し離れた場所で……

 

 

「これ、返そう」

 

「どォも。なんだか、意味ありげな会話だったな。青襲さン、ボーモンのコンソールというか起動したパソコン見せてくれ」

 

「何か問題でもあるのか?」

 

「胡散くせェンだよ。旧本社ビルって言ったら途端に態度変えたし」

 

「君もそう思ったか。おそらく知っていると思うが、このボーモンには嘘を見抜く機能が搭載されてる。そこで詳しく音声の解析とその情報の信憑性を調べる」

 

「俺にやらせてくれ。これでも3年くらい使ってたンだ」

 

「そうか」

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

「こういう時は、パーティだよ!今までですっごいパーティを……ふわぁ……」

 

「もう遅いわね。明日にしましょ」

 

「……ボクもう寝る…」

 

「そうですね。でも眠れるかな……」

 

「マサル君も早く寝ましょう?」

 

「…………あァ、だがその前にちょっと野暮用だ」

 

 

理琉はショットガンを背中に担ぐと仮眠室から姿を消し、青襲がいる所(オフィス)へと向かって行った。

 

 

 

 

目が覚める由紀。隣の寝床に胡桃の姿はない。心配になって探してみると、窓から月を眺めていた。(もちろんちゃんと立っている)ふう、とため息をつくと、何かを呟く。

 

 

「……本当に上手くいくんかな…」

 

「…胡桃ちゃん、起きてたんだ」

 

「んあ、由紀か。今の独り言聞いてた…?」

 

「ううん、何にも?」

 

「な、なら良いんだけど……」

 

二人はボーっと突っ立っている。

 

 

「……あ、胡桃ちゃん無理しちゃダメだよ!」

 

「車椅子めんどくさくってさ、あのまま歩けなくなるより今存分に歩いちゃおうってさ」

 

「…もう、そこまで来てるの…?」

 

「アハハ……」

 

「嫌だよ……胡桃ちゃんがいなくなっちゃうなんて…私は嫌だよっ!!」

 

「…大丈夫だよ、そんな簡単に消えたりしないさ。そうだ、マサルと椎子さんがなんか作業してるみたいだぜ」

 

「マー君たちが…?」

 

「ああ。行くか?」

 

「うん、行こう♪」

 

 

 

二人も、理琉たちのいるオフィスへと向かって行く。

 

 

 




互いはもとより、誰も信用できない世の中。嘘だらけの世界でこのゾンビパニックを乗り越える術を見つけることはできるのか。

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十五話 うそ
私達は、ここにいます。


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第四十五話 うそ

もう、何も信じられない。理琉達は極限状態に…


「本当に聞きたいのか?」

 

青襲は険しい表情で由紀たちを見る。一方、パソコンで作業中の理琉は、自分のスマホをパソコンへと接続し、先ほどの通信をボーモンに読み取らせていた。

 

「後悔しねェな?おそらくこれから出てくるのは全部俺たちの期待を裏切るモノだ」

 

「うん、私も…この通信は怪しいって思って……」

 

「察しが良いンだな。Bowman, analyze the voice」

 

 

――――――――

 

 

OK、救助部隊を急行させるわ。正確な位置をお願いできるかしら嘘の可能性5%

 

「北緯35.427905、東経139.637901。ランダル旧本社ビルだァ」

 

………

 

「水と食料は確保してある。数日耐えれば助かるということだな」

 

…ええ嘘の可能性97%

 

「なら問題ない。そちらの場所は?」

 

ごめんなさい、上の許可を取らないと言えないの。すぐ取れると思うから待ってて嘘の可能性80%

 

「そういうものか?」

 

あなた方と話せてよかったわ嘘の可能性10%

 

「ああ、またな」

 

――――――――

 

 

 

嘘の可能性98%

 

 

 

 

「……これが、全て嘘……?」

 

 

「おそらくは……いや、奴らの口ぶりからして場所を言った辺りから既に怪しいとは思ってたンだよ。少なくとも救助する意思はあった。だが場所が問題だった」

 

「クッ…感染源に生き残りがいるとは思わなかったってことか…?」

 

胡桃が悔し紛れに言う。

 

 

『ランダル保護機構ノ意図ハ、感染地域ノ広域消毒ジャナイノカナ?』

 

 

「!!?!!まさかッ……」

 

 

理琉は急に立ち上がり、とある場所へと向かって行った。廊下に足音と、杖の音がカツカツと鳴り響く。

 

 

「理琉君、どこへ!?」

 

「上級職員用オフィス!!」

 

「私たちも行こう!」

 

由紀、胡桃、青襲も理琉に続いて行った。

 

 

 

(仮にあのボーモンの言っていることが正しいのであれば、あそこに置いてあった機密文書はマジもンのヤツ!!)

 

 

 

大急ぎでハッキングした上級職員オフィスへと入り、先ほど確かめたロシア語の機密文書を読み直した。

 

 

 

「!!!!やっぱり奴ら、本気で街を消し飛ばそうとしてやがる!!!」

 

 

 

「「「!!!!」」」

 

理琉が以前読んでいた文書…………

 

 

 

 

 

『Ωウイルス感染地域拡大防止のため、およそ数日後にK県巡ヶ丘市を大型巡航核ミサイル5発で破壊。 協力 アメリカ空軍、陸海空自衛隊、ロシア空軍、イギリス空軍』

 

 

 

 

 

「嘘……だろ……」

 

「そんな……」

 

 

由紀たちはその場で膝をついてしまった。

 

 

「明日からでもここを出発しなければ間に合わない!数日後と書いてあってももしかしたら早めてくるかもわからない!」

 

 

「マサル、何かないのか!?」

 

 

「ないことは無いが……えっと、例えばウイルスの回復例を上に報告し、ミサイル発射をやめさせる。やりようによっては胡桃が交渉材料になるのかもしれないが、そんな危険なことはさせられないし、ましてや街を消し飛ばそうとしている連中にンなこと言っても簡単に呑むとも思わん。そうやってモタモタしているうちに俺らは消し炭だ。もしこのミサイルが投下されれば北は埼玉の越谷、南は静岡の御殿場まで全壊する」

 

 

これ以上にない緊急事態に由紀たちはもちろん、青襲ですら驚きを隠せない。

 

 

「…さっき見たが、あのキャンピングカーに入ってる残りのガソリンじゃ、精々行けても渋谷までだ」

 

青襲はキャンピングカーに入っているガソリンの残量を既に確認していた。

 

「このまま死ぬのを待つしかないんかよッ……」

 

「そんなことはさせねぇ……少なくともここにいる全員は生かす。一人でも欠けるようなことがあってはダメだ」

 

「そうだね……ふわぁ………」

 

「……寝るか。明日すぐにここを出る準備をしろ。早朝、りーさんたちにもこの情報を伝える。ゲホッゲホッ‼」

 

 

今日はこの場で解散し、各々は眠りについた。

 

 

 

 

 

だが、理琉だけ、なぜかまだ起きている。

 

 

 

 

 

「……こいつらには言わなかったが…あの資料には、地下にワクチンサンプルがある……それをぶんどって、俺が交渉する……二度とこいつらを離れ離れにさせない…」

 

 

理琉はそっと仮眠室を抜け出し、M870と弾20発と、グロック17と弾15発を持って地下へとエレベータで向かっていった。

 

 

暗闇の中懐中電灯を照らし、ゾンビをかえくぐりながら進む理琉。物音一つたてたら命取り。ゾンビホラーゲームでもやっているような感覚である。ゾンビに気づかれ、咬まれたらゲームオーバー……

 

 

「ハァ…ハァ………ここか…」

 

 

地下200mの機密倉庫に、ワクチンサンプルはあった。

 

 

「………」

 

 

もう一つ、理琉は何かを探す……

 

 

「これを使って………」

 

 

注射器を見つけると、理琉はワクチンサンプルを自分の身体に注入したのだ。

 

 

「ふぅ……これで大丈夫………」

 

 

お気づきだろうか。この男の出身は巡ヶ丘ではないという事を。彼は北海道のとある町からここへ引っ越して来た人間。原作読了済みで勘の鋭い読者様ならどういう事かきっとわかるはずだ。

 

 

「抗体さえあれば…何とか行ける……」

 

 

理琉はそもそも抗体を持っておらず、本来ならば空気感染していてもおかしくなかった。しかし彼はここまで感染せず生きて来たのである。では、あの日なぜ感染しなかったのだろうか……

 

 

「ったく、運が良いんだか悪いんだか………さて、さっさとこのクソ暗い所から立ち去って寝るか…一応この空瓶を持っていこう。交渉材料になるかもしれん」

 

 

再び地上行のエレベータへと乗り込み、仮眠室のある階へと戻った。

 

 

「……みんな寝てるな。よし、俺も寝よう」

 

 

自分の寝床へつき、寝るのだった。

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「ん……もう朝……?」

 

いち早く起きたのは真冬だった。

 

「ふあぁぁ……(ゴン)…あうっ」

 

寝ぼけていたのか、天井へ頭をぶつけた。

 

「痛ぁ……またやっちゃった……」

 

まだ寝ぼけ気味の真冬。顔を洗いに行こうと、手洗い場に向かった。

 

「………………ふわぁ…」バシャバシャ

 

目が覚めない真冬は、オフィスの窓を開け、荒れた町を眺める。

 

「……」

 

 

「お、起きるの早いな」

 

「胡桃……?」

 

まだ眠い目を擦り、後ろを振り返る。

 

「ああ。あたしだ」

 

ニッと笑い、真冬の隣へと来た。

 

「胡桃、最近調子悪そう……」

 

「あ、わかっちゃった…?実は少し感覚がなくなってきてな…痛みどころか、気温すら感じられなくなってさ……」

 

「…………もう、ダメなの?」

 

「わからない。こればっかりは…」

 

「嫌だよ……胡桃がいなくなるなんて……嫌っ……」

 

「アハハ……由紀とおんなじこと言ってる…でも大丈夫だよ。幸いまだ走れるし」

 

「ほんと?」

 

「ああ、安心しろ」

 

真冬の頭をポンポンと撫で、安心させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん……そうだった……全員、早く起きてここから出る準備を!!」

 

ふと我に返った理琉が、由紀、悠里、圭、美紀、太郎丸を起こした。

 

「ん……なんでしゅかこんな朝早くに……まだねむいれしゅ…………」

 

圭がしぶしぶ起き上がり、バックパックに銃や飲み物を詰めた。

 

「今は準備しろ、説明は後だ」

 

「ワウ?」

 

「おっと、太郎丸。ちょっと待ってな」

 

フードボウルにドッグフードを乗せ、太郎丸は朝食。

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

「それでマサル君、そんなに慌ててどうしたの?」

 

「昨日の通信を全て解析したんだ。そしたら―――――――」

 

 

「「「えっ!?」」」

 

 

「それだけじゃない。もう一つ特別なオフィスに行ったら―――――――」

 

 

「ウソでしょ……」

 

 

「残念ながらそれが現実だ。逃げるしかない」

 

横から青襲が現実を突きつける。本当は彼女もこんなことは言いたくなかったはずだ。だが、こうなってしまった以上、もう後戻りはできない。

 

「……お引っ越しだね」

 

「そォだな。引っ越しだな」

 

全員集まり、荷物などを整えた。オフィスにあった非常食や衣類などの生活必需品をぶんどっ………否、頂いていく。

 

「あ、でもボーモン君は置いて行っちゃうんだよね…?」

 

「そうみたいだな。流石にあんなデカいコンピュータをいくらキャンピングカーが大型とは言え場所を取るし」

 

「心配はいらない。お前たちが寝ている間に簡易プログラムを設定してスマホでも使えるようにした」

 

「……だってよ」

 

「ありがと~椎子さん~!!」

 

「……まぁ、いざとなれば俺の軍用ボーモンも使えるし、そっちがイカれたら俺のを使えば良いさ」

 

 

オフィスから梯子を伝い、メンバー全員はキャンピングカーへ乗り込んだ。

 

 

「マサル君、今日は私が運転するわ」

 

「そうか。頼んだ。俺はもうひと眠りする」

 

「こっちは任せて、ゆっくり休んでね」

 

 

 

由紀と真冬は、自身のスマホを起動し、ボーモンを開いた。

 

 

 

「ボーモン君、聞こえる?」

 

「ボーモン、応答して……」

 

 

「簡易版だから返事は遅れるぞ」

 

 

「ほぉ、なるほど~」

 

 

『音声ヲ認識。ユキ サン、マフユ サン』

 

 

「はぁ、よかった」

 

 

真冬も安堵した様子だ。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

出発してから数十分後。

 

 

 

 

 

「……何か聞こえる…」

 

 

 

由紀が何かを聞き取った様子。彼女の言葉に気づいた悠里は急ブレーキをかけた。

 

 

 

「ぬおっ!!」ゴチーン

 

 

進行方向に頭を向けて寝ていた理琉は、壁に頭を強打してしまい、頭に瘤が。

 

 

 

「イッテェ……ん…?お前ら、ちょっと車で待ってろ」カツカツ

 

 

 

銃と双眼鏡を持って外へ出た理琉。

 

 

 

「そうか、由紀が聞き取ったのは、アレの音だな?」

 

理琉の指した場所には一機のヘリコプターが。

 

 

「そう、アレ……」

 

 

「早速迎えに来たって所か」

 

 

「あの周辺をグルグル飛んでいるね……うぅ、見つからないよね美紀……」

 

 

「…………」

 

 

「ワウワウ」

 

 

「ちょっと、太郎丸ってば、くすぐったいよぉ~」

 

 

………そろそろ潮時なのかもな(   ・・・・・・・・・・・)」ボソッ

 

 

「何が潮時なの?」

 

 

隣にいた悠里に聞かれたみたいだ。

 

 

「あ、聞こえてたか。すまん、何でもねェ」

 

 

「???」

 

 

 

車に戻り、しばらく待機することに。

 

 

 

 

グゥ…………

 

 

 

 

「みんな、腹減ってるだろ。そろそろ昼飯にしようぜ」

 

「そうだね!わたしもお腹ペコペコだよ~」

 

 

 

全員は少し早めの昼食を取ることに。

 

 

 

(万が一、コイツらがあのヘリの連中に襲われる可能性があるというのなら……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――あのクソ野郎共は俺が全てブチ殺す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




謎に包まれた事件の真相。理琉の見つけたワクチンサンプル。それを胡桃にではなく自分に投与。彼の意図は……?

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十六話 しおどき
私達は、ここにいます。

色々端折りましたが、原作に忠実過ぎるのもアレなので、最終回まで進み方は原作と同じものの、設定や解釈は独自のモノで行きます。

以前に出した「オヤシロ様の祟り説」はこのゾンビパニックや、ひぐらしのなく頃にと全く関係ありません。ただ理琉がオカルト的に考えたらその言葉が出て来ただけ…と考えて頂けると幸いです。

理琉が英語もロシア語も分かるマルチリンガルというのはあまり気にしないでくださいw


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第四十六話 しおどき

追い詰められる学園生活部。この時既にある人物の体調に異変が……


理琉side

 

本当に潮時なのかもしれない。全員が助かる方法が着弾地域外へ逃れるしかないというのなら尚更だ。それも、60マイル以上も離れた所へ…だ。交渉材料をなんとか用意して巡航ミサイルの発射を止めるという手もある。だが、それだと感染を克服した胡桃しかその交渉材料になれないという事……それだけは避けなければならない。

 

 

「……だったら俺が…」

 

 

そう、あのワクチンサンプルを自らにぶち込んだ俺ならば交渉材料になる…これが最後の希望だ。

 

 

「なあ、マサル。変なこと考えてるんじゃないよな?」

 

いつの間にか起きていた胡桃にそう聞かれるが、考えてないと首を振って嘘をついた。仕方ないンだ。こうするしかこの子達を救えないから……

 

 

 

 

 

理琉sideout

 

 

 

 

 

ヘリがどこかへ消え、安堵する全員。再び悠里の運転によって今日の休憩所を探しに…

 

「そこにあンのコンビニじゃね?」

 

割と綺麗なコンビニを見つけた。悠里もすぐさまハンドルを切り、駐車した。

 

「このところ食料が少ないから節制しないとね…」

 

「もうそんなになくなったんですか?」

 

「ええ、このままだと後一週間持たないわ」

 

「でも先輩、このコンビニ、もしかしたら…」

 

「そうね。それは今ここにある食料だけの話。ここから調達できれば話は別よ」

 

「無ければ無いで、食料の節約をするのは合理的だな」

 

「コンビニ確かめてから今後の事を決めようじゃねェか。まァ、もし誰かいたら速攻で排除するがな」

 

 

M870を片手に外へ出ていき、コンビニ内をざっくりと見るが、ゾンビのような影や物音は無く、また誰かが籠城していた痕跡があまり無い。先客がいると考えていた理琉。どうやら杞憂だったようだ。

 

 

 

「あの食料制限、マズいと思うぞ」

 

「合理的って自分で言ってたじゃねェか」

 

「まぁ、そうだな。被爆範囲から逃れることを目的としているが、何日かかるかわからん。既に軍隊か自衛隊とかが待ち伏せしてるかもしれないし」

 

青襲の言っていることは一理ある。逃げるにせよ、逃げた先でトラブルに巻き込まれるかもわからないしそもそも間に合わない可能性も否めない。

 

「…あの…な。実はアイツらには黙ってンだが、俺がランダルのクソ野郎共と交渉しようと思ってンだ。俺というただでさえ珍しい血液型の血清なんてアイツらが欲しがるだろ」

 

理琉の突拍子の無い発言に青襲は目を丸くする。

 

「……!!お前、まさか…」

 

「あァ、そのまさかさ。あの本社の地下にあった唯一のワクチンサンプルを俺自身に打ち込んだ。万が一アイツらに見つかった場合に俺が奴らと一戦交える…そういう魂胆さ」

 

「死ぬつもりなのか!?」

 

「死ぬか生きるかは俺にもわからねェ。少しの可能性とアイツらの負担、ストレスを軽減させるためにはこうするしかねェからよ。万が一殺し合いに発展しても俺が簡単に死ぬと思ったら大間違いさ」

 

一匹狼こと理琉の護るべきもの……学園生活部の安全と笑顔…少しでも彼女たちの役に立てるのなら自分は魂も捧げるつもりなのだ。

 

「アホなのかお前は」

 

「あァ、とんでもないアホさ。軍隊に居たときもそうだった。スパイを見破れずに一人の女の子を死なせてしまった、クソッタレさ。でもそんな目に遭うのはもう懲り懲りだ。仲間を生かすためなら…俺はどんなに無謀な策でも遂行してやるぜ」

 

だけど、まぁ…と口にした後、青襲の方を向いて一言放つ。

 

 

 

 

「願わくば、交渉、取引…とかじゃなく…『凱旋』と行きたい所…だがな」

 

 

 

 

犠牲を伴う『交渉(トゥルーエンド)』よりも、全員が無事に帰れる『凱旋(ハッピーエンド)』を選びたいと純粋に願う少年なのである。

 

「まぁ、今それは置いておいて…晩飯でも食うか」

 

インスタントコーナーに、ペヤングなどのカップ麺が少々余っていた。

 

「フッ、食糧問題は先送りだな」

 

 

 

「胡桃ちゃんはもっと食べた方がいいよ。えっと、これ!プロテイン摂らないと鋼の筋肉がなまっちゃうよ?」

 

「誰が鋼の筋肉だこの幼児体型」

 

「ぐあぁぁ!言ってはイケナイことを!」

 

理琉のアンテナがピコっと反応したのは言うまでもない。

 

「マサル、なんで固まってるの……」

 

「………え、あぁ、なんでもないさ」

 

「……??」

 

「由紀先輩は本当に元気ですね」

 

「そォだな。作者が『ぐらし!キャラの推しが変わった』って言ってたけど、アレ見たら納得できるぜ」

 

「理琉先輩も作者さんもロリコンなの?」

 

「あのなぁ圭ちゃん……」

 

ちょ~っと表出よっか。

 

「作者は引っ込ンどけ……」

 

はい。

 

「フフッ、私知ってますよ~。作者さんがあんハピ♪とか、わすゆとかのラブコメ書こうとか考えてるの」

 

カイテマセンヨベツニ。

 

「はァ、別に書くなとは言わんが、この小説書き終わってからにしろよ…?」

 

っとと、美紀ちゃん、由紀ちゃんが何か言いたそうだよ?

 

「話逸らした。……ど、どうしました?由紀先輩」

 

「秘密を知りたい!?」

 

「え?あ、はい」

 

「さっきボーモン君に聞いたんだ。これからどうすればいいかって…まだ考え中って言われちゃったけど、きっと上手くいくよ」

 

笑顔で言う由紀だが、今の彼女の笑顔は……………少し無理をしているようにも見えた。

 

「先輩……先輩がいてくれて嬉しいです…」

 

「お、みーくんは良いコト言うねぇ~」ナデナデ

 

「美紀はたまーに良いコト言うんですよ~」

 

 

 

すると青襲は立ち上がり、見張りを交代すると言って店舗を出た。悠里と交代し、太郎丸を抱えながら店内に入ってきた。

 

 

 

「お、りーさン、お疲れ」

 

「お疲れ様」

 

 

 

 

 

…何やら車の方では青襲が何かノートパソコンを操作していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝。

 

 

「みーくん、胡桃ちゃん、りーさん、けーくん、まーくん、真冬ちゃん。通信が入ってるよ!!」

 

「あ?あ、ホントだ」

 

 

「椎子さん、通信が!!」

 

 

「………通信だと?」

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「なあ、まずなんで通信が入ってるんだ?」

 

「それはアレだ、トランポリン(・・・・・・)!」

 

「そォいやウォーキートーキー機能あるって言ってたな」

 

 

「ああ、強い電波があれば受信するようになっている」

 

 

「………どんな通信だったの…?」

 

 

『再生スルヨ』

 

 

『Hello? This is the Randall board We are your side』

 

 

「な、何?ランダル評議会だとォ?(英語が不自然だ…まるで日本人が発音したかのような…)」

 

「ランダル…評議会…?」

 

「前のはランダル保護機構だっけ?」

 

「…虫が良過ぎませんか?」

 

「うん、私もそう思うわ」

 

「これ、トラップだな」

 

「…Bowman, analyse.」

 

『ヨク ワカラナイ モウ一度 質問シテネ』

 

「プログラムはあるから時間をかければ解析できる」

 

「それってどンくらいかかるンだ?」

 

「一日はかかる」

 

「なンでそんなかかるンだ?」

 

「え?あ……」

 

「俺の軍用ボーモンはコンソールが近くにない状態、つまり今みたいな簡易版ボーモンの状態でも無線の解析には1時間もかからなかった。何か隠してるンじゃねェのか」

 

「………1時間で解析してみ……

 

 

 

 

ブロロロロロロロロロロロロ

 

 

 

 

 

「シッ!!!」

 

 

ヘリコプターのプロペラが真上から聞こえ、由紀たちはテキストでの会話を始めた。

 

由紀『どうしよう』

 

悠里『私達を探しに来たのね』

 

胡桃『どうするんだ?』

 

美紀『逃げます?』

 

圭『いや隠れたほうが…』

 

理琉『いずれは見つかるかもしれん』

 

真冬『なら、夕方にここを……』

 

…ということで、夕方このコンビニを出発することに。

 

 

 

「悠里、この国道は結構広いから60マイルくらいであのヘリを振り切れる」

 

「60マイル…?」

 

「あぁっと…大体100km/h。」

 

「後ろから近づいてきてます」

 

「ちィっ、とうとう見つかったか…?」

 

助手席に座る理琉が後ろを見て確認するが、当然見えない。

 

「いや、大丈夫、振り切ったみたい…………」

 

 

「ちょっと数多いな……」

 

「プロペラの音で出てきたのかもな」

 

「ねえりーさん…もう少し狭い道の方がいいんじゃないかな…」

 

「上から見たら同じだと思うわ。スピード優先で行きましょう」

 

「じゃあ、この角を………」

 

 

 

と、突然車が止まった。

 

 

 

「うわぁ……まっずいなコレ……」

 

胡桃が前の状況を見て一言。そう、ゾンビの大群があったのだ。

 

「……掴まっててね」

 

 

悠里はアクセルを目いっぱい踏み、急加速した。

 

 

「おい!何をする!!」

 

 

「バカ野郎!!!死ぬぞ!!!」

 

 

ドカドカとゾンビを轢き殺していき、大群を突き進んだ……のだが…………

 

 

「!!!!」

 

 

目の前には電柱が…このままでは確実に大事故になる

 

 

「WHAT THE FUCK‼‼‼‼‼‼」

 

 

いきなり罵声を上げ、悠里が握っているハンドルを無理矢理切った理琉だが、あと一歩間に合わず、前方右側が電柱に激突してしまった。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

「チックショウ……」

 

「悠里…車動かないの……?」

 

「ダメみたい…」

 

「マサル、修理できるか?」

 

「できないことは無いが部品が無いンじゃ元も子もねェよ」

 

「で、どうするんだ?」

 

「強行突破しかねェンだよな……」

 

理琉はちょっとした倉庫に入っている銃を指さした。

 

「武器は全て持ち出せ。もうこの車には戻ってこないからな」

 

理琉は背中にガタが来たウィンチェスターM1887、右手にM870を、由紀は腰にグロック17、右手にMP5を、胡桃はAK-47を、悠里はM4カービンと包丁を、美紀はP90とシャベル、圭はUZI9㎜、真冬はベレッタM92とデザートイーグル、青襲はコンバットナイフと護身用の厚手タオルを左腕に。また、全員が持つ銃にはサプレッサーを付け騒音対策を施した。

 

「俺と太郎丸がデコイになる。テメェらは先に進んでくれ。行くぜ太郎丸」

 

「ワン」

 

「じゃあ、理琉君、頼んだわよ」

 

「任せとけって」

 

二人はゾンビが比較的集まっていないところから出た。

 

 

 

「おらァゾンビ共!!遊んでやるぜェ!!」

 

「ガウガウ!!」

 

杖をつきながらではあるが、ジョギング程度で走り抜け、太郎丸にひたすら吠えてもらう。

 

 

「ワンワンワンワンワンワン!!!!」

 

 

こうして、車周辺にゾンビはいなくなった。その隙に全員は車から脱出し、理琉の進む方向へと歩いて行った。

 

 

 

一方、理琉は籠城できる場所を見つけた。

 

「ここならなんとか凌げそうだな」

 

「アウ」

 

「おっと、お客さんだ」

 

一体のゾンビが近づいてきたので、ショットガンで速攻始末した。

 

「フゥ……」

 

 

 

しばらくして由紀たちが合流。

 

「まーくん、弾が少なくなってきちゃった…」

 

「予備は俺のポーチに入ってるから大丈夫だ」

 

ビルの階段を上っていき、空いている部屋に入った。

 

「ひとまず今日は休みましょう」

 

「明日は明日の風が吹くってね!」

 

 

 

「…………」

 

「マサル?」

 

「ん?」

 

「あ、いやなんか考え事してそうだったからさ」

 

「まぁな」

 

 

 

「さっきの通信の解析が終わった。間違いない。ランダル評議会だ。ゴホッゴホッ」

 

 

青襲がせき込む姿を見て理琉の表情が少し変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あァ……俺、わかっちゃったかも」

 

「え、何がだ…?」

 

 

胡桃の疑問は消えない…

 

 

 

 




理琉は全てを悟った。彼の中で、最善と思っていた選択肢が少しずつ削られていく…

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十七話 おやすみ
私達は、ここにいます。


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第四十七話 おやすみ

何かを悟る理琉。その表情はもう何とも言えないモノだった。


「…あァ……俺わかっちゃったかも…」

 

虚空を見上げ、光を失った目でそう呟く理琉。これまで少し謎めいていた青襲のことが少し気になり、自分で考察し始めた結果、一つの答えを導き出した。しかも一番考えたくなかった最悪のシナリオ…をだ。

 

 

 

 

 

 

「何が?」

 

 

「青襲の事だよ。前々から色々と気になっていてね。例えば今の咳、武闘派のクソ野郎と同じ咳き込み方なンだよ」

 

「それってまさか…」

 

「断定はできない。ただの風邪という可能性もある。だがゾンビを研究しているという事はつまり、少なからず『検体』が近くにあったはずだ」

 

 

一応周りに聞こえないよう、小声で胡桃に告げる。

 

 

「もしかしてもう手遅れとか…?」

 

「仮に感染しているとしたら、多分今夜辺りで発症する可能性がある。治療薬は…手元に無いから無理だ」

 

「クソッ……黙って発症を待つしかできないのかッ……」

 

悪態をつくしかない。

 

「何もできない自分が恨めしいぜ」

 

 

 

理琉の言葉の通り、青襲は夕方辺りから様子がおかしくなった。身を案じてか、胡桃が青襲が待機している玄関付近へとやってきた。

 

 

 

「なあ、椎子さん。本当に大丈夫なのか?まさかアンタも…」

 

「あ、ああ…だが自分の体は自分が一番よく分かる。気にするな」

 

「そ、そうか…椎子さんに何もできなくて…ホントごめん」

 

「謝ることはない。いずれこうなることはわかっていた」

 

「……」

 

「彼…理琉くんは恐らく、君やあのわんこと同じように、この事件を解決するための緒になるかもしれん……だから、後は頼んだぞ……」

 

「ど、どういう……」

 

そう言って玄関を去っていく青襲。

 

唇を噛み締め、自分の無力さを嘆いた。もうあまり力が入らない拳を出血するくらいまで握りしめ、壁を殴りつける。

 

 

「クソッ!!」

 

 

俯きながら扉の奥へと消えていく胡桃。

 

 

 

「ボーモン君からメッセージが来たよ!!」

 

 

 

慌ててボーモンを起動し、全員に見せる由紀。

 

「あ?またか?」

 

 

『ランダル評議会 の 素性 がわかった よ。ランダル保護機構 と対立 の関係に いる みたい。でも 彼ら が助けに来る 保証はできない。 今みんな にできるのは、諦めない こと。保護機構の 人間が 来るから 明日朝には ここを 離れたほうが いい ね』

 

 

「この期に及んでまだ俺たちを殺そうとしてンのか。証拠を全てぶっ潰すために…」

 

仮にこの情報が本当なのだとすれば、もう睡眠どころの話ではない。真冬が窓の外を見回しているが、特殊部隊がウロウロしている様子はない。

 

「まだ猶予はあると思う……もう寝たほうが良いかも…光でここがバレるかも知れない…」

 

「そうだな。みンな、目的地は埼玉方面なのは変わらずとして、経路はどうする?」

 

「ねぇマー君、首都高速中央環状線の『山手トンネル』?は地下だから万が一やられてもやり過ごせるかも?」

 

「よし、そっちだな。だがあまり時間がない。明日の朝6時に出発だ。準備しろ」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

夜中、物音を聞き取った圭が近くにあった理琉のサプレッサー付きのM870を持って玄関を出た。

 

 

「なんだろこんな夜中に……」

 

 

 

ガチャガチャと金属音が聞こえ、その方向へと向かっていく。

 

 

 

「…………ッ!!」

 

 

 

ァアァアァァァァァ………

 

 

 

「し、椎子さんッ……」

 

 

 

もう、青襲は変わり果てた姿になっていた…今の彼女はゾンビと言っても差し支えないだろう。

 

 

 

「ご、ごめんなさいッ………」

 

 

 

コッキングし、ゾンビの頭を撃ち抜いた。

 

 

 

「うぅッ……えぐっ……ひぐっ………」

 

 

 

小声で泣きじゃくり、その場にペタンと座り込む。

 

 

……近くには血塗られたスマートフォンが…

 

 

「…ズズッ………こ、これって!!!!」

 

 

画面が起動している状態であったため、『テキストメッセージ』らしきものを見つけてしまった。

 

 

「そんなのアリ……?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

翌朝

 

 

 

全員起床し、脱出の準備だ。

 

「弾はマガジン3個分しかない。極力使わずに、ゾンビと遭遇したら逃げろ」

 

「ああ」

 

それぞれ自前の誤射防止用の安全装置はかけたまま銃にマガジンを詰め、バックパックに入れた。ただライフル状のものは完全に入れられないため手持ちだ。

 

「今ならいない………ボクらが先に出るから、由紀たちは着いてきて……」

 

真冬と理琉が先に外へ向かい、安全確認を行う。周りは電柱や建物に衝突して原型をとどめていない乗用車や、ゾンビにすら成り下がれなかった人間の死体が転がっており、まるでそこは地獄絵図だ。建物そのものや道路にも亀裂があり、車で走るのは困難を極めるだろう。

 

「改めて見るとヒッデェな…」

 

「…ダメ、使えそうな車がない……」

 

「仕方ねぇな…最寄り駅から線路沿いに横浜、東京方面へ歩こう」

 

「そうだね……」

 

使えそうな車は置いてない。仮にあったとしても鍵が刺さっていないのだから動かすことすらできない。もう、歩くしかない。

 

全員が建物から出てきたことを確認すると、小走りで最寄り駅へと走り始めた。

 

「まるで、モールの時と同じだ…」

 

「最上階で籠城してたときとね…やっぱ上層階にはあまりいないんだね」

 

 

 

 

「駅構内にもゾンビがいる。ここは始末して先に進もう」

 

 

バックパックから銃を取り出し、ゾンビに向けて数発発砲。由紀は胴体に10発ほど当て、1体始末。

 

 

「ふう、一段落したね。早くランダル評議会と合流しないと」

 

 

「その事だが、評議会との合流はできなくなった」

 

「えっ……」

 

由紀は目を見開いて驚く。手に持っていたスマートフォンを指を差す。

 

「でも、ボーモン君が!」

 

「いいえ、もうボーモン君はいません」

 

「先輩、よく聞いてください。そもそも評議会なんて存在しませんでした…」

 

「それって……」

 

 

 

「あァ、全部青襲のウソ…ってことだ」

 

 

 

「そっか…全部ウソだったんだね……実はね、薄々そう思ってたんだ。もし、数パーセントでも可能性があるならって思って信じてみたけど…やっぱり、ダメだったんだね……」グスッ

 

 

「由紀……」

 

由紀の言動に胡桃も言葉が出ない。

 

「ぐぁあ"あ"あ"あッ!クソ野郎がァァァ!!!」

 

理琉は駅のベンチを蹴って破壊した。

 

「何が一時間で解析だッ!!何がランダル評議会だッ!!何がッ……何がっ……ヒグッ…クソォ……」ドゴッ!ドゴッ!

 

更には駅の壁(コンクリート)を拳でヒビが入るまで殴りつけた。拳から真っ赤な鮮血がダラダラと流れている。

 

「クソっ………クソっ!!!!!」ドガッ!ドガッ!

 

「でも、一体どこからが椎子さんだったのかな……」

 

「それなんだけど……」

 

圭が挙手して、自身のスマホを取った。

 

 

 

『ランダル評議会 の 素性 がわかった よ。ランダル保護機構 と対立 の関係に いる みたい。でも 彼ら が助けに来る 保証はできない。 今みんな にできるのは、諦めない こと。保護機構の 人間が 来るから 明日朝には ここを 離れたほうが いい ね』

 

 

 

「このメッセージ覚えてますか?ここからが椎子さんだったんです……こっちには本人のスマホもあるんですが、電池が……」

 

 

 

「っつ……まぁ、変だとは思ったンだよ。簡単な応答機能やウソ発見器はあるものの、ここから離れろなどという高度な会話は無理だ。というか、昨日の『一日で分析』とかもう既に胡散臭かったンだよ」

 

 

「…はい、多分その辺りからもう嘘だったんです…」

 

 

「良いランダルは…いなかったんだね」

 

 

「残ってンのは過激派ランダルのクソ野郎共か」

 

 

「でも由紀、多分椎子さんはアタシらのために……」

 

 

「それくらいっ……それくらい、わかってる…でも、悔しいよ………」

 

 

「…ねえみんな、話してるところ悪いんだけどさ……早く行かないと追いつかれるかも」

 

 

真冬がプラットフォームの窓から下を見下ろすと、何やら迷彩服の人間がチラホラうろついていた。

 

 

「線路伝いに行こう。追いつかれたらマズい」

 

 

線路へと降り、北方面へと歩いて行く。

 

 

「大学にいる人たちに核ミサイルの旨を伝えないとね」

 

 

「電話繋がらねぇンなら元も子も無いのだが」

 

 

「とりあえず、次の駅で車と休憩できる場所を探しましょ。あとコンビニで食料も補充しておかないと」

 

「お菓子とかぁ…あ、お餅とか良いかも!!」

 

「七輪でコンガリと焼いたサトウの切餅とかうンめェよな……」

 

「もしかしたらあるかもしれませんね」

 

「アタシは磯辺焼き派だな」

 

「あ、ボクも磯辺焼き好き……」

 

「俺はお汁粉派かな」

 

「え~、きな粉派いないんですかぁ~?」

 

「ワウ~」

 

 

「みんなで一緒に、学校でもどこでも!ずっと一緒なら……それで………」

 

 

「………そォだな……パンデミック以降に知り合っただけの間柄だけど、俺たちは『ズッ友』だ」

 

 

「ズッ友……かぁ。良い響きだな」

 

「フフッ、そうですね」

 

 

 

 

 

―――この時、俺は気づいた。

 

 

 

この旅が、戦いが…終わりに近づいているということに………

 

 

 

 

 

 

―――――

 

―――

 

 

青襲が力尽きる直前に遡る。

 

「ボーモン、メモランダム朗読……」

 

『学園生活部 ハ オカシイ』

 

『クルミニ ウタレタ クスリハ タダノ強壮剤ダ。クルミガカマレタ際 身体ヘノ浸食ハ キワメテユックリダッタ。アル種ノテイコウリョクガ予想サレル。無論、偶然ニ過ギナイトイウ可能性も否メナイ。ダガ偶然デナイト スレバ、ソコニ何カアルハズダ』

 

スマホを滑らせてしまう。

 

「ボーモン、メモランダム……追記」

 

『メモニ追記スルヨ』

 

「土着の菌……過去に流行……祟り……違うそうじゃない…抗体…AntiΩがどこかに……考えろ…考えろ……こうたい……がくえん……み………なざ………さい……す」

 

『未送信ノメールガ一件アルヨ。ドウスル?』

 

何も言葉を発さない青襲。

 

手を伸ばしてスマホを拾おうとしたところで彼女は意識を手放し、力尽きた………

 

 

―――

 

―――――

 

 

 

 

 

次の駅で一旦高架を降りていく一行。理琉と美紀を先頭に周囲にゾンビや特殊部隊がいないどうかを確かめる。周りは開けており、見つかると少々面倒だ。

 

 

「こっちです!」

 

 

「胡桃、走れるか?」

 

 

「イケルイケル」

 

 

休憩できそうな施設があれば、ひとまずそこでやり過ごせる。良い具合にガストを見つけ、ひとまずそこで身を潜めることに。

 

 

「う~ん、体温上がらねぇなぁ……」

 

 

胡桃は自身の体温を温度計で測っていた。依然として摂氏30度前後。

 

 

「悪くなるよりかはマシだと思うぜ」

 

「圭、椎子さんのスマホ取ってくれるか?」

 

「良いですけど、電池切れてますよ?」

 

「あ、マジか……」

 

 

 

「さて、これから私達どこへ行けばいいのかしらね……東京方面へと出るしかないのはわかるけれど、大学の人たちを置いて行けないし……」

 

「無線機の電波が大学に届けば良いが、そんな都合よく届く訳がねェだろうし……」

 

理琉がスマホを弄り、何とか大学とコンタクトを取ろうと試みるが、結果は良くない。

 

「っ、ごめんなさいね。疲れてるのに……」

 

「…少し休もう…?ボクらだいぶ疲弊してるよ」

 

「……だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

とある男の夢。

 

 

「……ん…ここは…………」

 

「マサル君、ボーっとしてどうしたの?」

 

「いや、何でもないさ。疲れてんのかな……ふあぁ……」

 

「フフッ、なら、私の膝、貸そっか?」

 

「ンじゃあ、お言葉に甘えて………なぁ、俺もう疲れちったよ……」

 

「……………」

 

「外ではゾンビが蔓延ってるしよ……もう嫌だ。いっそ死んでしまいたい」

 

「そっか……」

 

 

 

 

―――――――

 

―――――

 

―――

 

 

 

 

日は暮れ、すっかり夜になってしまった。

 

 

 

 

「疲れたよね……私も、もう疲れちゃったよ……」

 

 

由紀が理琉に膝枕をしていた。

 

 

「……」

 

 

「んっ……」

 

 

寝返りをうって仰向けになった理琉の額にキスを放つと、彼の頭を太腿から下ろし、由紀はその場から離れていった。潤む目元を手で拭い、ズズッと鼻をすする。

 

 

 

 

 

 

外に出ると、すうっと息を吸い始め……

 

 

 

 

「螢の光、窓の雪

 

 書讀む月日 重ねつゝ

 

 何時しか年も すぎの戸を

 

 開けてぞ今朝は 別れ行く……」

 

 

消え入るような声で『蛍の光』を歌い始めた。

 

 

 

 

すると、頭上から何やら小型のヘリ、すなわちドローンが降下してきた。

 

 

 

『こらー、お前たち何してるー!!』

 

 

 

「わわっ!!?みみ、みんな!!」

 

 

 

『待って!』

 

 

何やら聞き覚えのある声だ。

 

 

「え?」

 

由紀は振り返る。

 

 

『ボクだよ!自堕落同好会リーダー、出口桐子!!』

 

 

 

ドローンの操縦者は大学穏健派の出口桐子だった。近くにはヒカ、さらに慈と瑠璃もいた。

 

 

 

 




ドローンの操縦者、出口桐子とカメラ越しに再会。保護機構に追われる少年少女たち。彼らの運命は?

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十八話 さいかい
私達は、ここにいます。

いよいよ最終章です。次章で漸くこのパンデミックと決着がつきます。

次章予告
もう後がない学園生活部。何故か埋まらない、ナゾに満ちたジグソーパズルのピースの正体はなんと意外なモノだった!?

最終章 帰還編


シーズンⅢのおたより編は……やめます。原作がちょっとアレなので……


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本編:最終章 帰還編
第四十八話 さいかい


トーコのドローンが現れ、学園生活部一同が再び動き出す。


『急いでここを出るよ。追われてるんだろ?』

 

スピーカーらしきところから聞こえてくるトーコの声に、第二に反応を示したのは胡桃だった。

 

「トーコ!?なんでこんな所にいるんだ!?」

 

『話は後!他のみんなも早く呼んできて!』

 

「わ、わかった!お~い、りーさん、マサル、美紀、圭、真冬~!」

 

 

小走りで店内へと戻り、他のメンバーを呼び出した。

 

 

 

 

 

時は少し遡る。

 

 

 

 

 

場所は再び大学キャンパスに。

 

ヒカが以前に見つけた地下倉庫に、待機組全員が入った。

 

「高校の設備と全く同じね」

 

慈はこの光景にあまり驚きもせず、至って冷静だ。一方瑠璃にとってはここは初めてであり、慈の服の裾と、シノウの手を握って辺りをキョロキョロと見回している。

 

「先生ん所の高校にもあったってあの子たち言ってたなぁ……てかなんでモスバーグM500とFA-MAS背負ってるんすか」

 

「黒田君に持ってろって言われたんですよ」

 

「軍用ライフルを背負う若い高校教師の図……」

 

「喜来さん、からかわないでくださいっ!」プクーッ

 

大学メンバーは笑う。

 

「でも、先生とアタシたちってそんな年変わらないですよね」

 

「あ、そういえば……」

 

今更か、と思わせるような反応を見せたトーコ達大学メンバー。

 

「あぁところでさ、ここに何しに来たんだっけ?」

 

「水とか食料の運び出しでしょ?それにもしかしたら武闘派の奴らが残してったお宝とかあるかもしれないじゃん」

 

「……だったらなんで銃を見つけなかったんだろう?」

 

 

「ん~、多分そこは作者さんの好みってヤツじゃないかしら?原作でも持ってなかったし、もし銃とか持ってたら黒田君たちが瀕死になってたかもしれないし」

 

慈が腕を組んでそう推察する。(正しい)

 

「佐倉先生原作ではここに来てないのになんでわかるんスか」

 

「アハハ、なんでかしらw」

 

 

「……ねえ、何かあったよ」

 

 

ヒカが引き出しのようなものを開けるとそこには小型ヘリのラジコン、俗にいうドローンが入っていた。

 

 

「ドローンなんてあったのね」

 

アキが後ろから覗き込む。

 

「あとこんなのもあった……」

 

ヒカが取り出したのは、生産中止になったドイツのH&K製の銃、VP70だった。

 

「そんな物騒なモノが地下に…しかも隠し部屋とかじゃなく」

 

「あ、でも弾入ってない」

 

 

ということもあり、全員は銃が隠されてあると思われる倉庫を探し始めた。

 

 

「そういえば、高校の地下倉庫は冷蔵室の奥にもう一つ部屋があって……そこに銃があったって、黒田君が言ってたような……(本編では語っていない)」

 

 

「よし、ならそこへ行こう!」

 

 

冷蔵室は、既に空っぽだった。

 

 

「高校にはお肉がたくさんあったんだけどね……」

 

「アイツらに食われたか」

 

「………」

 

 

探しているうちに、慈が扉を発見した。

 

 

「…あったわ」

 

 

「ほ、ホントだ……」

 

 

「アイツらここの中身知らなかったのか…」

 

 

特にパスワードがある訳でもなく、ボタンを押しただけで隠し倉庫の扉が開いた。

 

 

「うおおおお!!」

 

一番興奮しているのはトーコ。

 

「ちょっとバリエーションが違うけど、これも使えるわね」

 

グロック18C、グロック19、デザートイーグル(10インチバレル)、44マグナム、レミントンM1100、レミントンM500、フランキ・スパス12、ウィンチェスターM1912、AA12、L96A1、FN SCAR、M60LMG、トンプソンM1921、AUG、RPG-7などの名銃が揃っていた。なぜロケットランチャーがあるのかをツッコミたいが、全員抑えている。

 

「っしゃ、ボクこれにしよっと」

 

トーコはグロック18C。

 

「…私はこれで良いかな」

 

ヒカは先ほど取ったVP70.

 

「これ良いわね。重いけど」

 

「光里さん、それ反動スゴイから気を付けてね?」

 

アキはデザートイーグル。

 

「アイツら本当にバカだったんだ……」

 

シノウはAA12。

 

「わたしはコレほしいの~」

 

瑠璃が手に取ったのはグロック19。(マガジンに弾は入っていない)

 

「瑠璃ちゃんが銃持ってる姿って、結構カオスだよね。ちょっと構えてみて?」

 

「こうかな?」

 

銃を構える瑠璃の姿は中々様になっている。(トリガーに指はかかっていない)

 

「カッコいい~~」

 

「ムフー」ドヤッ

 

そう言いながらリセも一つ銃を手に取った。トンプソンM1921だ。

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

「とまあ、銃取って来たけど、特に使い道無いんだよねw」

 

「でもこのドローンであの子たちを援護出来るんじゃ…?」

 

アキが言うには、ドローンを使って学園生活部を誘導するという事だ。彼女らの様子からしてランダルが動き始めているというのは薄々察していたらしく、理琉達を送り出してから様々なシナリオを考えていた。その中のシナリオにドローンを使うプランがあったらしい。

 

「そう、少し話したシナリオの中のプランC!略して、『学園生活部誘導作戦α』!!」

 

「略してないし……」

 

「そ、そこはノリってやつよw」

 

「それで、どうするのかしら?」

 

「そのドローンを本社に飛ばすのは少々無理があるんじゃないかな?」

 

「確かに、そこまで電波は届かないね…」

 

「それに、アタシらじゃやつらを殺しながらの援護は無理。銃はあっても弾数に限りがあるし、何よりそんなに使ったことが無い…」

 

「確かに、ボクらじゃ戦闘力が皆無…なら、潜伏作戦ってのはどうかな?無双じゃなくて、ステルス!」

 

「……?」

 

「これでやつらを探して、道をクリアにする。バレずに進めるし、広ければ走りやすい」

 

「ん~、バレずには無理じゃないかしら?結構音大きいはずよ?」

 

「わたしもそうおもうよ。おばけがそのドローンにくっつくんじゃないかな?」

 

「瑠璃ちゃん、それを利用するんだよ」

 

リセがホワイトボードに追記し始めた。

 

「プロペラの音で誘き寄せれば安全に動ける」

 

「でも、飛ばしっぱなしじゃ電池切れるんじゃ…?」

 

「どこかの屋根に着陸させればいいんじゃないかな?」

 

「これ、スピーカー付いてるよ。これなら人の声とか流せるし」

 

「電池が切れたら?」

 

「ソーラーパネルチャージできると思うよ」

 

「もし故障したら?」

 

「そこは予備があるから補える。…とまあ、細かい所は置いておいてさ、イケそうな気がするんだけど、どうかな?」

 

 

「はぁ…絶対に無理をしないこと。想定外のことが起きたらすぐに引き返す。OK?」

 

「ああ、出来る限りそうするよ。人類存続の危機がかかっているからね。……それに、後輩たちに任せっきりってわけには行かないだろ?」

 

ヒカもうんうんと頷く。

 

「なら、私も一緒に行きます」

 

「先生?」

 

「長らく顔も合わせてないし、由紀ちゃんの事心配だから……」

 

「めぐね~、わたしもいく~。りーねーがしんぱいなの~…」

 

「…私も行く。修理とかできるし……真冬たちも心配だし」

 

「先生、ヒカ、瑠璃ちゃん。トーコが無茶しないよう見張っててね」

 

「ボクはアキの子供かっ!!」

 

「よし、では『学園生活部誘導作戦α』Mission start!!」

 

 

「「「「お~!!」」」」

 

 

 

「うあああ!!ボクのセリフ~!!!」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

流石に車で行くわけにはいかないため、全員自転車で行くことに。戦闘控えめというコンセプトで行くつもりだが、念には念をということで一応銃をポケットに入れた。慈もショットガンとFA-MASを背中に担いで自転車に。瑠璃もポケットにグロック19を入れて自転車に跨る。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

「行ってくる……」

 

「いってくるね~」

 

「大学の方、お願いね」

 

 

「「「行ってらっしゃい」」」

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

「由紀ちゃんたちはどうかしら?」

 

「今ファミレスで休憩してますね。理琉君に膝枕してあげてます」

 

「胡桃は…ピンピンしてるね」

 

「でも出口さん、このヘリ……」

 

「そうです、コイツです。厄介なのは……」

 

「あれがランダル…?」

 

「あのヘリがカプコン製なら良いんだが……」

 

「???」

 

トーコ以外はハテナマークを浮かべた。

 

「りーねーだ。つらそうなの」

 

「ん……でもこいつら、どことなく軍隊っぽいんだよね。アメリカ軍か?ロシア軍か?」

 

「いずれにせよ、接触しないほうがよさそうね…」

 

「よし、こういう時こそアレを使って注意を引こう!」

 

 

スピーカーを使用し、女性の悲鳴を流した。M4を持った迷彩柄の人間は、由紀たちのいるファミレスとは真逆の方向へと走って行く。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

安全が確認できた所で、理琉達を誘導し始めた。

 

 

『そのまま直進。その近くにホテルがあるから急いで!』

 

 

「便利なドローンだな」

 

「そうだな」

 

 

ホテルロビーへと到着し、全員はソファに腰を掛けた。

 

 

「ンでよ、青襲は昨晩逝っちまった」

 

『…そうか、アオちゃんが……』

 

「トーコ先輩たちの所はどうなのかな?」

 

『みんな無事だよ。あ、そうそう、君ん所の先生と瑠璃ちゃんも来てる』

 

「めぐねえ?」

 

『由紀ちゃん、大丈夫?』

 

「うん…まぁ…ね」

 

『りーねーつらそうだよ…?』

 

「大丈夫よ、るーちゃん……」

 

 

 

「クソっ…アタシら、もうどうしていいか分からないんだよ……」

 

 

『ヒカです。椎子さんは「ランダル評議会」って言ってたんだよね』

 

「……椎子は、ボクらが困ってたから嘘でも希望をくれたんだと思ってる……」

 

『わかる…でも本当に絶望的だったらそんなこと言わないと思う……』

 

「ヒカには、椎子の事がわかる……の?」

 

『……わからない…真冬くんは…どう思う?』

 

「……」

 

真冬は黙る。すると美紀が口を開いた。

 

「あの人は、くどいけど……先を考えないような人じゃない…」

 

 

「そうだよ…椎子さん、わたし達に嘘ついたり、色々冷たい所とかあったけど……それだってッ…自分がッ………」グズッ

 

 

啜り泣く由紀の頭を、理琉が優しく撫でている。

 

 

「それによ、いくら嘘と言えど何の根拠も無しにホラ吹いたとは思わねぇンだよ」

 

「根拠が無かったら胡桃先輩の治療方法とか絶対研究していないだろうし!」

 

圭も理琉に便乗する形で言う。

 

『うん……みんなは椎子さんが何を考えていたか調べてみるんだ……』

 

「ねえ、トーコ先輩たちはどうするの?」

 

『キミたちを誘導するよ』

 

 

「いや、戻ってくれ…」

 

『え?』

 

「ランダルのクソ野郎共は数日後にこのエリア一体を核で焼却するって宣言してやがるンだ。だから早く大学から持てるだけ荷物を持って早く東京の首都高中央環状、山手トンネルへと向かってくれ…だが俺らはすぐに合流できるかわからん…」

 

『…君らが心配だけど……了解、伝えとくよ』

 

「…大丈夫?」

 

『ああ、避難することはそんな難しくないさ。やつらとランダルをひっかきまわしてから大学に戻るよ』

 

由紀はカメラに近づいて一言発する。

 

「私達だって負けてないよ!東京方面には逃げるけど、治療方法見つけて世界を救っちゃうから!」

 

『ああ、任せたよ』

 

「そっちも頑張ってね。それじゃ……またね」

 

 

 

―――――

 

 

 

「トーコ」

 

「ん?」

 

「私達、良い後輩持ったね」

 

「間違いないね。先生も良い教え子さん持ちましたね」

 

「ええ、最高に頼れる子達だわ」

 

「スゥ…スゥ……」

 

「瑠璃ちゃん寝ちゃってる……♪」

 

 

四人は立ち上がり夜空を見上げた。

 

 

 

 

「ガンバレよ。人類最後の希望!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




東京方面に逃げながらも治療法を探す学園生活部。彼らの目に光が戻ってきた。

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 第四十九話 かいけつ
私達は、ここにいます。


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第四十九話 かいけつ

「とまあ、色々とあったわけだが、一匹狼の護るべきものもいよいよ終わりが見えてきましたぜィ」

 

 

「先輩、誰に言ってるんですか?」

 

 

「何でもない。それより、前に話したウイルスの件だが、青襲が性質も弱点も同じだって言ってたのを覚えてるか?恐らく、治療法もウイルス、Ω菌で同じだという事が予想できる」

 

 

「えっと確か、1968年に流行したって言ってたよな?」

 

 

胡桃が言っているのは1968年の巡ヶ丘―――当時の男士市の人口が半減したという事件。当時『不発弾が爆発か?』という記事が記載されているのだが、裏をかけばこれは感染者を焼却処理したとも考えられる。

 

 

「今回ランダルがやろうとしていることと同じですね」

 

ランダルが掲げている核ミサイルによる巡ヶ丘周辺地域広域消毒。まるで過去の事件を彷彿させるかのようなモノだ。

 

「……でも世界的に広がっているならもう手遅れだと思うけど…………」

 

「だけど、もっと昔はどうだったんだろう?核爆弾とか無かったよね?」

 

由紀が冷静に考える。

 

「そうですね、だから椎子さんの言う通り、この土地に治療法があるのかもしれないです。多分、そのヒントがこのボーモンに……」

 

圭が青襲の遺品であるスマートフォンを手に取った。

 

「ボーモン君、椎子さんの研究データを見せて」

 

『エラーモード 管理者ヲ呼ンデネ』

 

「あちゃァ、こりゃメンドクセェことになったな」

 

「せ、先輩何してるんですか!?」

 

美紀が突然の行動に大声をあげるが、理琉は冷静に答えた。

 

「ボーモンがエラーを起こした場合はこうやって強制終了させンだ。そうすればちゃんとアクセスできる。Bowman, restart.」

 

 

『研究データヘアクセススル場合ハ パスワードヲイレテネ』

 

 

「ぱ、パスワード……」

 

「誰かわかるヤツいねェか?」

 

由紀も胡桃も、その他のメンバーも首を振る。

 

「……じゃあ、クソったれランダル製薬」

 

 

ブー

 

 

「いやそんなパスワード入れないでしょ……」

 

真冬が冷静にツッコむ。

 

「じゃあ、理学棟」

 

ブー

 

他にも、『聖イシドロス大学、Ω、ウイルス、細菌、ランダル保護機構』などなど、思い当たるワードを片っ端から入力してみたが、ボーモンは反応しない。

 

 

 

『ヒントハボクノ名前ダヨ』

 

 

 

「機械がヒント教えンのかい………いや待てよ…ひょっとしたら………」

 

「ボーモン君!!」

 

由紀が自信満々に答えるが、『フルネーム』と返されてしまった。

 

「デビット・ボーモン!!」

 

 

ブー

 

 

「由紀ちゃん、なんでデビット…?」

 

「デビットっぽかったから……」

 

「ボーモンはクレジットカードかィ!」

 

「これさ、案外単純だと思うんだけど、良いかな?」

 

胡桃が挙手して全員に言う。

 

「今ボーモン君がヒント言ってただろ?圭が駅で言ってた事思い出してみろよ」

 

「あ、やっぱりそォか。俺もそれだとは思ってたンだ」

 

理琉、胡桃以外のメンバーは首を傾げている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!そういう事ですか!!」

 

圭が反応した。自分で言ったことと、今目の前で起こっている事を擦り合わせした結果、一つの答えに繋がったようだ。

 

「美紀、貸して!!」

 

 

『パスワードヲイレテネ』

 

 

「椎子………青襲椎子!!」

 

 

『パスワードヲ確認』

 

 

全員は思い出したかのように拳を手のひらにポンと乗せた。

 

 

 

 

すると、画面が勝手に作動し、一通のビデオメッセージが映し出された。スマホの画面は青襲を映している。

 

 

 

 

『まず、ウソをついたことは謝っておこう。お前たちが突き止めたように、ボーモンは私だ。ハッキリ言って、お前たちは甘すぎた。辛い現実と向かい合うくらいなら全員仲良く死ぬのを選ぶより甘い。だからお前たちに辛い現実を押し付ける役を選んだ。だが鞭だけで人が動くとは思えん。飴も用意する必要もあった。そのためにボーモン使った。全ては研究を成功させるためだ。こんな世界だが、こんな世界だからこそ、私は学者として最高の研究対象に巡り合った。そのためにはどんなことでもすると誓った。この動画が開かれたという事は恐らく私はもう死んでいるのだろう。東京方面へ逃げながらでもいい。お前たちが研究を引き継いでくれることを祈っている。特に理琉君と胡桃君。キミたちがキーパーソンだからな。死ぬんじゃないぞ。もう時間だな。最後に一つ。歩みを止めるな。動き続けろ。お前たちといられて………楽しかった…幸運を祈る』

 

 

 

「嘘だよ……椎子さんが研究にしか興味ないなんて……ねえみーくん、マー君、胡桃ちゃん、みんなッ……」

 

 

 

「わからねェ…俺も由紀と同じで青襲が冷たい人間だとは思ってねェ。だが色々と想像することは出来る。…本当の事は、もうわからないけど…」

 

 

「でも、あたしらに出来ることはあると思うぜ、由紀」

 

 

「椎子さんの研究を引き継ぐことです。私達ならそれが出来る。圭、ボーモンの中に研究データとかのファイルあるかな?」

 

 

「これかな?」

 

 

『クルミニ ウタレタ クスリハ タダノ強壮剤ダ。クルミガカマレタ際 身体ヘノ浸食ハ キワメテユックリダッタ。アル種ノテイコウリョクガ予想サレル。無論、偶然ニ過ギナイトイウ可能性も否メナイ。ダガ偶然デナイト スレバ、ソコニ何カアルハズダ』

 

 

遺されたメモを再生すると、全員がこの謎を解き始めた。

 

 

「やっぱあたしが治ったのってあの注射じゃなかったんだな」

 

「薬も効いたんでしょうけど、元々抵抗力があったってことね」

 

抗体は抗体でも、現在理琉にある抗体とは少し違う。例えば胡桃の家系が巡ヶ丘出身だった場合、その可能性もある。だがそれは元を辿ってないため信憑性が無い。それにその道理が通るのならば、他の人間も学園生活部のように生き延びていたかもしれない。

 

例外もある。例えば理琉の実家は北海道だが、今回のパンデミックの影響は受けていない。仮に受けていたとしても、現在の状態から推測するに、症状の進行が遅いと予想される。

 

 

「学校、それも学園生活部だけに何かあったってことかしら?」

 

「ボーモン君、他には?」

 

『最新ノメモファイルヲ再生スルヨ』

 

 

 

―――土着の菌……過去に流行……祟り……違うそうじゃない…抗体…AntiΩがどこかに……考えろ…考えろ……こうたい……がくえん……み………なざ………さい……す

 

 

 

「……!!Borman, Search "Naza" on device」

 

出てきたのは以前大学で話していた『那酒沼のおしゃべり魚』の記事だった。

 

「やっぱりか!そして恐らく、青襲が放っていた『み』は水!」

 

「きっと沼の水を飲むんだよ!!」

 

「それは飛躍しすぎじゃないかしら?」

 

「いや、由紀の考えはあながち間違ってはいねェ。Bowman. Find out the source of Meguriaoka Highschool's water supply」

 

『朽那川ダヨ』

 

「……ということは…ボーモン、水源はどこ……?」

 

 

『那酒沼ダヨ』

 

 

これでようやく抜けていたピースが埋まってきた。

 

 

「…待って、まだ謎は解けてないわ。もし水道が原因ならもっと大勢生きてるはず!!」

 

「あっ!!誰か、学校のパンフレット持ってるか?」

 

理琉が咄嗟に何かを思いつく。何かと思い、電子版ではあるが由紀のiPhone内に入っていたパンフレットを受け取った。

 

 

 

「これだ!!」

 

 

 

全員が理琉の後ろに回り、スマホを覗き込む。

 

 

 

 

 

「「「「「「災害用浄水施設!!??」」」」」」

 

 

 

 

 

「そうだ!那酒沼にAnti-Ωがあって、普通ならソイツも浄化するはずなンだ。だけどあの浄水施設は普通のと比べて簡素だから、Anti-Ωが残ってるっつゥことだ!!」

 

「まさか、マサルに貰った『高校の水道からあらかじめ取っておいた水』がそうだったのか!!」

 

胡桃も合点の行く表情をした。

 

「だがアレの在庫はもう無い。学校に戻るか、那酒沼に直接向かうか………」

 

「ここからですと学校の方が断然近いです」

 

「でも核ミサイルが……」

 

 

しばらく議論して、理琉は一つの結論を出した。

 

 

「一か八か……賭けに出よう」

 

 

「「「「「「えっ!?」」」」」」

 

「ワウ?」

 

 

「ロシアもアメリカも、そう簡単にミサイルをバンバン撃つような真似はしないと思う。だから、ここは一旦路線変更して高校に戻る!!」

 

 

全員は東京行きを中断し、東京方面とは真逆の方向にある学校を目的地にした。

 

 

「本当にあるのかな……?」

 

「わかりません…でも行ってみる価値はあると思います」

 

「そうだね、行こう!!学校へ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『全く、どこまでもしぶとい男だ。今度こそ殺してやろう、お前の仲間も道連れだ……』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を遠くから双眼鏡で見ている一人の男がいた。




―――みんなでヒーローになるって!!
―――お前がいなくなったらアタシらどうすれば!!
―――部長として行かせないわ
―――先輩が行くなら私も…!
―――先輩!!先輩がいなくなったら、ここにいるみんなが……
―――キミまで行かないでよッ……
―――ワンワンワン!!!
―――…俺がお前ンとこに帰ってきた時……そのショットガンを手渡して欲しい。もし帰って来られなくてもそれは―――俺がこれまでお前らと生きてきた証さ



―――こっから先は、一方通行だァ!!

―――『今度こそお前を殺す。そして俺が真の英雄になる』

―――Hasta La Vista Baby!!

次回 がっこうぐらし!! 〜一匹狼の護るべきもの〜 第五十話 けっちゃく
私達は、ここにいます。


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第五十話 けっちゃく

理琉と、ある人物との決着がつく。


学校へ戻る!!という決断をし、翌日。彼らは動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃別の場所では…

 

 

 

 

 

 

 

 

一隻の空母上で繰り広げられた銃撃戦。攻撃していた側の軍人らしき人間がM4を担ぎながら船内へと向かい、ある一台のコンピュータを操作。ボーモンを起動し、その後カチャカチャと操作した後、Enterキーを押した。

 

 

『Beginning......Operation great cleansing.』

 

『Deciphering Nuclear launch code』

 

『Estimated time 2days 16hours 22minutes』

 

 

核ミサイル発射のカウントダウンが始まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

そんなことを知るはずもない理琉達は、急いで学校へと戻るべく、車を探した。

 

「確かこの辺にワンボックスカーが……」

 

「先輩、ありました!!」

 

「ナイス圭!」

 

 

理琉は運転席側の窓をブチ破り、鍵を開けた。幸い、車の中にキーが置いてあったため、あとはボタンを押してエンジンを作動させるだけだ。

 

 

「クッ…かかれッ……かかれッ!!」

 

全員が乗り込み、発車できる状態だが、肝心な所で躓いてしまう。

 

 

漸くエンジンが起動し、走行可能に。ガソリンは2割程残っている。ハイブリッドカーだからか、ゾンビの接近は無い。

 

 

「ッしゃ行くぜ。巡ヶ丘高校へ……」

 

 

「……この車タバコ臭いね……」

 

「窓開けようか」

 

胡桃がボタンを押して後部座席の窓を開けた。外を見る胡桃。凄惨な光景は今も変わっていない。それどころか数ヶ月以上放置している所為で街が朽ち果ててしまっている。今更と思うかもしれないが、これほどにも酷い景色はスラム街や海外の治安が悪い場所にも無い。

 

 

 

「ふぁぁ……」

 

 

「運転代わる?」

 

 

「あぁ、頼むぜりーさん……」

 

 

車を目立たない場所へと駐車し、理琉は伸びをする。ん~っと間抜けな声を出した後、首を回してストレッチ。悠里や美紀も出て来て外の空気を吸っていた。その他は少々仮眠取っている。また、太郎丸は圭の膝の上で丸くなっている。

 

 

「美紀、もしかして何か不安なことが…?」

 

「あ……はい。別に何ってワケじゃないんですけど……」

 

「けど?」

 

「なんかこう、胸騒ぎがするんです…宿題忘れた時みたいな……」

 

「それは、俺も同じだ。嫌な予感がするっつゥかな」

 

「変な事言ってますよね、私」

 

「そんなこと無いわ」

 

「んだな。美紀の気持ちわかるぜ。要するに不安なんだろ?」

 

「はい……水も食料も武器も少なくて、ガソリンも殆ど無い…ランダルが追ってくるかもわからない…準備も無くて行き当たりばったりで…すごく怖いです……」

 

「あァ…できればしっかり準備していくべきなンだろうが、時間かかるしよォ……」

 

しっかりと準備ができない環境…RPGで言えば、所持金も回復アイテムもほぼ無し。その上装備は初期装備で近くには町は無く、エンカウント率もやたら高い………そんな状況下では胸騒ぎがするのも当然だ。いつ死ぬかわからない……ゲームならやり直せるが、現実は死んだらコンティニューできない。そういった恐怖も襲ってくるため、不安度は一気に高まる。また、そこに時間制限も加わる……肉体的にも、精神的にも折れてしまってもおかしくはない…

 

「物資が少ない所に都合よくコンビニが見つかるとも思えませんし……」

 

「踏んだり蹴ったり…だな」

 

「いつもマッタリしてる由紀ちゃんが先頭に立つと、調子狂っちゃうわよね」

 

「そのおかげで俺たちはこうして生きられてるンだけどな。ホント、やるときはやるあの娘は勇者だよ」

 

「本当にそうね。由紀ちゃんには感謝だわ」

 

「由紀先輩は…本当に凄いです」

 

「アニメ第11話の予告でも言ってたな。『先輩といるとどんな時も元気が出る』って。言う通りだよ。元気も出るし、頼りになるし……作者の推しが由紀に変わる気持ちも分かるわ……」

 

「変わったんでしたっけ」

 

「ああ、つい最近な」

 

「浮kむごっ!?」

 

「言っちゃダメだ」

 

「ふぅ……じゃあ、そろそろ行きますか。二人ともありがとうございます。話して少しすっきりしました」

 

「我慢すンなよ。あんまり我慢すると、大切なことを忘れちまうンだからな」

 

「大切なことなら、きっと思い出します。きっと」

 

「美紀は頭イイから多分忘れないと思うぜ」

 

運転席には悠里が座り、理琉が助手席へ。美紀はその後ろの座席へと座った。

 

「ふあぁ……ねっむ………」

 

「胡桃、起きたンか」

 

「何かまた眠気が酷くってさ……」

 

「もう少しの辛抱だ」

 

 

エンジンを作動させ、出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……りーさん止まって…音…聞こえた………ヘリ…来てる…多分気づかれてる…」

 

 

「嘘でしょッ!?」

 

「マジか…もはやここまでなのかッ……?」

 

胡桃が後ろを見ながら拳を握る。

 

「待って、マサル、何してるの?」

 

理琉は足元にあった銃(ウィンチェスターM1887、M870、デザートイーグル、ナイフ)を取って、ドアを開けた。

 

 

「俺が時間を稼ぐ。だからお前らは早く学校へ!」

 

「何言ってるの!?」

 

「上手くいけば、奴らと交渉できるかもしれねぇンだ。俺の身体ン中には、Ωの抗体……特に珍しい血液型の人に有効な血清が作れる血液があるンだ!B型RH-のこの俺が、奴らと交渉して、必ず凱旋する!」

 

 

由紀が車から出て来て理琉を抱きとめた。

 

 

「マー君待ってよ!!前にみんなでヒーローになるって!!言ったじゃん!!」

 

 

「もう、お前らはヒーローだよ。俺なんかよりずっと」

 

 

「マサルがいなくなったらアタシらどうすれば!!行かせないぞ絶対にッ!!」

 

 

「私も、部長として行かせないわ」

 

 

理琉の左手を握る悠里だが、理琉に優しく振り払われた。

 

 

「大丈夫だ。俺ならな。数々の戦争で生き残ってきた俺を舐めんなよ」

 

 

「先輩が行くなら私も…!」

 

 

「ダメだ。一番の頭脳派が死んだらどうすンだ」

 

 

「先輩!!先輩がいなくなったら、ここにいるみんなが……」

 

 

「ここにいるみんなのために、俺は行くンだよ。俺は皆に、生きていて欲しいから…」

 

 

涙目でそう語る理琉。後部座席に座っていた真冬も出て来て理琉を抱きしめた。腰まで腕を回し、泣きじゃくる。

 

 

「ヒグッ…グズッ…キミまで行かないでッ……お姉ちゃんもカナもいなくなって……マサルまでいなくなるなんてことになったら……」

 

 

「すまん、もう決めてたンだ。お前らを守るためならこの命、いくつでも捧げてやるってな」

 

 

真冬を優しく引きはがし、車の中へと戻す。理琉はゆっくりと車を離れるが、すぐに戻ってきた。

 

 

「そうだ由紀……俺がお前ンとこに帰ってきた時……そのショットガンを手渡して欲しい。もし帰って来られなくてもそれは―――俺がこれまでお前らと生きてきた証として、残ってるから」

 

 

理琉が由紀に手渡したのは、使いこんで壊れかけているウィンチェスターM1887だった。それを受け取った由紀は、それをギュッと握り込む。

 

 

「ま、待ってマー君!!あの時の返事、まだ聞いてないよッ!!」

 

 

「あの時……」

 

 

「一緒にお風呂入った時、マー君気づかなかったかもしれないけどッ!!私、勇気を出して言ったんだよ!!『大好き』って!!」

 

 

本社での事だ。しばらく考えた彼。漸く理解したのか、申し訳なさそうに頭を掻いた。

 

 

「………ありがとな。だが、返事はもう少し待ってくれ。この任務が終わってお前ンとこに戻ったらちゃんと返事するから。それまでな」

 

 

それに……と一言言ってから全員の目を一人ずつ見ていく。

 

 

「これはお別れじゃない。いつか……いやすぐにまた逢えるから。だからバイバイとかさよならじゃない。いつか会う友達には――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――■■■■■■■■■」

 

 

 

「………っ!!!」

 

 

ヘリのプロペラ音が近づいてきた。プロペラ音で理琉の言葉が聞き取れず、全員は茫然としている。

 

 

 

 

 

「そろそろ行かないと……お前らがやられちまう。怖くても頑張りどころだな。ここは俺に任せて、みんなは早く学校に戻ってて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――またね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空いている方の手を一振りすると、ぎこちない走りでヘリの音が聞こえる方へと向かって行った。

 

 

「うぅ………ぅぁああああッ………」

 

 

「由紀ちゃん……行きましょうか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小走りでヘリの近くへと向かう理琉。気づいたのか、ヘリが降下してきた。中にはおよそ10~15名程の人間が乗っており、全員銃を装備していた。

 

 

 

「よォ、ランダル保護機構のクソ野郎ども…散々俺らを追いかけまわしてくれたみてェだな」

 

 

 

 

銃を構える複数の人物。

 

 

 

 

「『…あまり殺し合いは好きじゃねぇ。だからお前らに交渉しに来た。この小瓶、何だかわかるな?』」←英語で話している

 

「『………!!!』」

 

「『察しが良いヤツはもう分かるか。そォだ。ワクチンサンプルだ。コイツを俺自身にぶち込んだ。つまり抗体ができ、血清が取れるという状態だ』」

 

「『治療薬や量産ワクチンを作れる。だが条件だ。核ミサイルの発射を今すぐ中止しろ。さもないとお前らをぶっ殺し、俺も自害。治療法を完全になくす。そうすりゃ、生きてる人間もいつかはゾンビ化秒読み開始だァ。さァ、どうする』」

 

理琉が交渉を持ちかけるが、彼らは聞く耳を持たず、銃をこちらに構えて来た。

 

 

「フッ…交渉決裂みてェだな……そうかそうか。お前らは話し合うより切り刻んだり溶かしたりすンのがお好みのよォだなァ……いいぜ受けてやるよ。お前らのヘナチョコな弾丸がァ…俺ごときに通用するってンならなァ!!!!!!」

 

 

 

 

ショットガンを構え、複数人の武装者にかかって行った。敵側もすかさずライフルを乱射し、理琉を撃ち殺そうとする。が、彼の機動力はとてもすさまじいものでありそれは常人を凌駕するものだった。

 

 

 

 

「『!!!!』」

 

 

 

 

「おっせェんだよ!!!」ドォン!!!

 

 

 

 

まずは一人始末し、死骸を投げ捨てた。他の生き残りはライフルのリロードに手間取っており、その隙を見た理琉がM870でヘッドショットを連発した。

 

 

 

「さァて、残るは………」

 

 

 

「『………!!!』」

 

 

 

「言っておくがなァ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こっから先は一方通行だァ!!

 

 

 

震えてトリガーを引けない人間に、次々とヘッドショットを決め、殲滅させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『いやぁ、お見事だねマサル』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリから、もう一人の人物が降りて来た。その人物は理琉のよく知る……そしてあの憎くて忌々しい男。

 

 

 

 

「『久しぶりだなァマサル』」

 

 

 

「『く、クリストファー・ダヴァッチ………貴様生きてたのかァ!!!』」

 

 

 

「『ユーク軍は崩壊したが、俺はランダル保護機構のトップに選ばれてなぁ、そんで今こんな感じなのさ』」

 

 

 

怒りが徐々にこみ上げ、最高潮に…

 

 

 

「『それにしても懐かしいねぇ、キミの目の前であの女を撃ち殺した時の感覚が甦るよ』」

 

 

 

かつて自身が殺害した狭山小春の事を引き合いに、せせら笑いして指を差すクリストファー。理琉はもう、我慢の限界だった。

 

 

 

「『あァ……?今……なんつッたァ………?』」

 

 

 

「『あ?』」

 

 

 

「『テメェ……今…なんと言ったァァァァァッッッッッッ!!!!』」

 

 

 

「『危ない危ない。そんな怒るなって。たかが女一人じゃないか。たった一人殺されたくらいで何をキレてんだか』」

 

 

 

 

「『――――してやる』」

 

 

 

 

「『何だ?』」

 

 

 

 

I'm gonna kill you FUCKER!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

「『おぉ~怒った怒った。そう来なくちゃな。さてと……………今度こそお前を殺す。そして俺が真の英雄になる』」

 

 

 

 

 

「ォォォォォオオオオオオオアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

銃を捨て、ナイフを構えた理琉は、クリストファーに突進していく。

 

 

 

 

「『遅いんだよッ!!!』」

 

 

ドゴッ!!!!

 

 

咄嗟によけた後、理琉の腹部に膝蹴りをかました。

 

 

「ゴフッッッッ!!!かはぁッ!!」

 

 

「『そんなんじゃ俺には届かねぇ!!!』」

 

 

蹴りをかましたあと、顔面を殴り、5メートル先へと吹っ飛ばした。

 

 

「『共に訓練してきたんだ。動き位読めるんだよ!』」

 

 

目の前に見たかと思うと、足で理琉を踏みつけた。

 

 

「く、クソッタレがァ……」ガクッ

 

 

理琉が手を伸ばす先には、自身が投げたデザートイーグルがあった。

 

 

「『もうくたばるか。じゃぁもういいか』」

 

 

クリストファーがヘリに戻り始めた。だが……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乾いた発砲音が響き渡り、クリストファーの動きが止まった。

 

 

「『がはっ!!!て、テメェ………』」ビチャッ

 

 

弾丸がクリストファーの腹部を貫いたのだ。

 

 

「『よくこんな簡単な手に引っ掛かったな。全く、死ぬとこだったぜ』」

 

「『なん……だと………?』」

 

跪き理琉の方を向くクリストファー。彼は既に立ち上がっており、デザートイーグルを脳天に向けた。

 

「『最初っから交渉する気はなかったンでな。あの娘達の邪魔になるから、テメェらだけは殺す。それだけだ。テメェは頭悪いよな。目先の事を考えずにすぐ動き出すとか。お前らはどうせもう核ミサイル発射カウントダウン始めたンだろ?』」

 

「『フッ、そうだ。だから今更もう手遅れなのさ。いずれここは消し炭なる。そしてお前を楽して殺せる』」

 

 

「『このバカ野郎が!!!』」

 

 

クリストファーをデザートイーグルで殴った。

 

 

「『テメェの私怨のために、日本を巻き込むだと?愚かすぎて言葉も出ねぇわ。殺したければ正々堂々と来やがれこの腰抜け野郎が』」

 

 

「『フッ、だからこうしてお前ん所に出向いてやったんじゃないか』」

 

 

クリストファーが、何か長いモノを手に取った。

 

 

 

「『こうやってなぁ!!!!!!!』」

 

 

 

 

 

 

 

ザクッ!!!ビシャッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「がッ……て、テメェ……」ドサッ

 

 

「『ようやく俺の任務は達成だ。後はここを消し炭にして、俺はさっさとユークに帰るわ』」

 

 

理琉は血反吐を吐き、意識も遠のいて行った。だが、彼は決して倒れたりしなかった。

 

 

「グヘッ……ったくよォ、やってくれんじゃねぇか。クソったれが……」

 

 

「『そのまま死んでしまえ』」

 

 

「『ハハッ、そォだなぁ…確かにこのままじゃ死ぬな……けどなァ……』」

 

 

 

 

 

 

「コイツの存在、忘れて貰っちゃ困るぜ……!!!」

 

 

 

 

 

 

右手に持っていたデザートイーグル。クリストファーはもうその中に弾が入っていないと踏んでいたため、驚いて後ずさりした。

 

 

 

 

 

 

「地獄に堕ちるのは、オマエだけで十分だッ……Hasta La Vista Baby(地獄で会おうぜベイビー)‼‼‼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

たった一発の発砲で、クリストファーの頭部は弾けるように粉々になり、首から上が無くなった者は糸が切れた人形の様に倒れ、それから動くことは無くなった。血だまりが辺りに出来、その様はもう酷いモノだった。

 

 

 

 

 

「さてと、アイツらンとこに行かない……と…」

 

 

 

一歩を踏み出そうとしたところで、意識がふわっと遠のき、遂には倒れてしまった。

 

 

 

「これまでか…………」

 

 

 

かろうじて意識は残っているものの、もう虫の息だ。

 

 

 

無線から声が聞こえる。

 

 

 

「―――――――――――」

 

 

 

「この……声………ゆ………き……………」

 

 

 

降りしきる雨の中、理琉は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――約束…守れそうにないかも……ごめん…ゆき……

 

 

 

 

 

 

 

 




―――ヒーローはなるもンだろ?

―――振り返るな。一体来るぞ

―――マサル君をお願いね


―――うん!わたし、頑張る!!!

次回 がっこうぐらし!! ~一匹狼の護るべきもの~ 最終話 またあした


学園生活部は不滅です!!!


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最終話 またあした

長きに渡る冒険はここでピリオドを打つ。


理琉がクリストファーを殺す少し前の事。

 

「グズッ………」

 

ショットガンを抱きしめながら啜り泣いている由紀。

 

「大丈夫だよ由紀…アイツはすぐ駆けつけてくるさ……」

 

「そ、そうだよね……きっと大丈夫だよね……」

 

「ワウゥ……」

 

「…………マサル……」

 

真冬は理琉と別れた場所、つまり後方を見ながら寂しそうにつぶやく。拳が握られているが、自分でも気づかない。

 

 

 

「……ちょっと待ってください。やつらが結構集まってます」

 

 

ハイブリッドカーとはいえ、多少ゾンビが集まってくることは覚悟の上だったが、どうもこの集まり方は異様としか思えない。鼻をすすった由紀が前や周りを見て一言発した。

 

 

「……多分、ヘリがもう一機いるんだと思う……」

 

 

「もしかして先回りされちゃったんですかね…」

 

 

圭が最悪のシナリオを唱えるが、全員も同じようなことを考えてしまったらしく、学校の校門を潜ることをためらってしまう。

 

 

「でも、行くしかないよね…」

 

「そうね、行きましょう」

 

悠里がアクセルを踏み込み、学校の門を潜り抜けた。

 

「りーさん!!前々!!」

 

ハンドルが狂い、車が不安定に。何とか体勢は立て直したものの、目の前には昇降口が。

 

 

 

 

ズガァン!!

 

 

 

 

盛大に突っ込み、車は動かなくなった。

 

「痛ってぇ……」

 

「あうぅ………痛い…」

 

「真冬、胡桃先輩、急いで!」

 

美紀と太郎丸、圭が前衛へ。その他は後衛に回り、ゾンビを警戒した。太郎丸が匂いや音でゾンビの居場所を知らせ、美紀がサイリウムを投擲。怯んだところを圭がUZIで始末。これを繰り返した。ごくたまに後ろから来ることがあるのだが、その場合は真冬がベレッタで対応。由紀も右手にグロック17を持ち、周りを警戒。悠里は、歩みが鈍くなっている胡桃のサポートに回る。

 

「ワンワン!」

 

「エイッ!!」

 

「そりゃッ!!」ドドドドドド

 

 

ドタッ

 

 

「ナイス圭!」

 

「これくらい任せて!」リロード

 

 

美紀が安地を見つけた。『技術準備室』は比較的荒らされておらず、一時的な籠城には最適と判断。太郎丸に先行してもらい、安全を確認。全員は一時的に休憩を取ることにした。

 

 

「……汚れてるね…」

 

「長い間掃除してなかったからね…」

 

高校を出てからずっとこの場所を放置してきた。原作のように火事にこそなっていないが、ホコリが溜まってしまっている。

 

「掃除したらまた住めるかな?」

 

「そうね。でも発電機は修理しないと」

 

「…ヒカならできると思う……」

 

「それ良いかも!!そしたら、また体育祭とかやりたいね!!まだやってない文化祭も良いかも!?バレーボールとか!」

 

「おいおい、それって文化祭かぁ?」

 

「え~?じゃあキャンプ!」

 

「……ガチキャン△になりそうな予感」

 

「う、占いとか!」

 

「由紀先輩占い出来るんですか?」

 

 

「なせば大抵なんとかなる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

……なる…よね………?」

 

 

「まぁ、あたしの体調次第だな」ニヒヒ

 

「あとは、理琉先輩が帰ってきてから………」

 

「……そうだね」

 

 

 

しばらくの沈黙の後、美紀が立ち上がった。

 

 

 

「水、取ってきます」

 

「あ、ボクも行く。一人じゃ危ないと思うから……」

 

「わかった。よろしくね」

 

 

「みーくん!!」

 

 

「……?」

 

 

「絶対戻ってきてね…?」

 

「ワン!!」

 

 

 

 

 

「…はい。必ず」

 

「行こう。あまり時間がない…」

 

 

二人は部屋を出て水道を探し始めた。真冬が近づいてくるゾンビを処理し、その隙を見払って水道を探すという分担制になった。(即席だが)

 

 

『発電機がイカれているからポンプは動かない。でも既に溜まっている水なら何とか出るはず』

 

 

 

 

しかしここで問題発生。

 

 

 

 

「み、水が出ない!?」

 

「まさか、タンクの水が底を尽きた……?」

 

「もしかしたらパイプに届いていないのかも……そうだ、屋上!」

 

 

 

 

二人はとにかく階段を駆け上って屋上を目指した。

 

 

 

 

「多分あのタンク…」

 

「これで壊せるかも」

 

「真冬、お願い!」

 

 

ベレッタの安全装置を解除し、タンクに向けた。静かな発砲音と共にタンクに風穴を開け、水を溢れさせた。思ったより水が溜まっており、噴き出してくる水を上手くキャッチ。2Lペットボトルが満タンになった辺りで水の噴射が止まり、今度こそ水が底を尽きてしまった。

 

 

「……よし、行こう」

 

「うん!」

 

 

急いで階段を降り、由紀たちの所へと向かう二人。

 

 

「うっ、マズい……この先にいる…………」

 

 

いるのはゾンビ…ではなく、迷彩柄の服を着た生きている人間だった。見つからぬよう迂回して下へと降りる。

 

…が二人はその人間に気を取られ過ぎてゾンビの存在を完全に忘れてしまっていた。

 

 

グァァァアアアア‼‼‼

 

 

「グぁッ!!!!」

 

「真冬!!」

 

真冬は左肩を軽く咬まれてしまい、その場で悶絶した。彼女が落としたベレッタを美紀が拾うと、そのゾンビに向かって発砲。そのゾンビは倒れたが、背後から迫ってくるゾンビに気づかず、美紀も咬まれてしまった。

 

「!!!!」

 

 

 

 

 

 

ドォン!!!

 

 

 

 

明らかに美紀が持っている銃の音じゃない発砲音が聞こえて来た。美紀が甘噛みをしたまま動かなくなったゾンビを見ると、急に倒れて来た。体重に耐えられず、美紀も倒れてしまう。

 

 

 

…英語で会話している声が聞こえてくる。美紀には早すぎて聞き取れないが、このような単語を拾った。

 

 

 

『Possible』、『antibody』、『vaccinesample』

 

 

 

 

この三つを聞き取り、何か違和感と既視感を覚えた美紀。すると突然銃声が鳴り、血しぶきが飛んできた。迷彩服を着た男性が倒れて、虫の息に………どうやら美紀に何かを話しているようだ。

 

 

 

「Sorry, please speak slowly...」

 

美紀が片言の英語でその男性に発すると、男性は一言。

 

「Nuclear missile...will land 2days...」

 

「!!!」

 

 

それを聞いた美紀は急いで真冬を担ぎ、由紀たちの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待機中のメンバーは、ソワソワしながら二人の帰りを待っている。圭に至っては太郎丸のほっぺをムニムニして遊んでいる程。胡桃の足の調子があまり良くなく、立ち上がって歩く際も棒が必要になってしまった。

 

「…由紀ちゃん、きっと大丈夫よ」

 

「だよね…みーくんと真冬ちゃんなら……きっと」

 

 

 

 

パァン!!!

 

 

 

 

乾いた銃声が聞こえ、由紀たちは慌てる。

 

 

「…」

 

 

そっとドアへと耳を当て、真剣な表情になる由紀。

 

「近くに来てる……でも悲鳴とかは聞こえない」

 

「ど、どうしよう……」

 

「落ち着け由紀、圭、りーさん」

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

 

ノックする音が聞こえ、全員がバックパックから銃を取り出した。

 

 

「開けて下さい、美紀です」

 

 

「みーくん!!」

 

 

急いで解錠し、ドアを開ける。

 

 

「真冬!?」

 

そこには左肩を抑え、痛みを訴える真冬がいた。美紀の首元にも少々傷があり、息も荒い。甘噛みとはいえ、一刻を争う状態だ。

 

「みーくん、その大量の水…」

 

「タンクを破壊して採ってきました……」

 

「美紀!その怪我……」

 

「大丈夫…甘噛みだったから……」

 

「ダメだよ!!早く手当しないと!!」

 

「私より、真冬をお願い……」

 

ペットボトルを差し出すと、悠里が口に水を含み、口移しで真冬に与えた。ビュォォオオ!!……とか言ってる場合じゃない。

 

「んくっ……ありがとう…でも口移しは流石に恥ずかしい…」

 

「あら…ご、ごめんなさいね」///

 

「胡桃ちゃんも早くこれ飲んで!!」

 

「そう急ぐなって。美紀、お前が先だ」

 

「でも先輩……」

 

「アタシはあの強壮剤を美紀に打ってもらった。今回は後輩であるお前を優先するさ」

 

「……ありがとうございます」

 

 

「そうだ…ミサイルが、あと二日で着弾するって………」

 

「「「「!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

美紀、真冬を休ませ、これからについて悠里は少し考えるが、先ほどの美紀の発言で少しおかしくなってしまった。

 

 

「りーさん、大丈夫…?」

 

「ええ、ごめんなさいね」

 

「…ここに来ようって言ったの、私だよね…なるべく諦めないよう頑張ったけど、…結局上手くいかなくて…でも後悔はしてなくって……もう、これで良いっていうか……」

 

悠里は疑問符を浮かべる。

 

「…だってさ、私たち、最後まで一緒…一緒でいられるよね……それだけは…よかったって思えるよね……」

 

理琉が遺していったショットガンを手に持ち、見つめながら言う。コッキングしてみると、まだ弾が一発入っていた。勢いよく飛ぶとカコンと音を鳴らし、ゆっくりと転がっていく。

 

「ありがとう、由紀ちゃん」

 

「でも、それだけじゃダメだと思うぜ?」

 

「胡桃ちゃん?」

 

先ほどの水でいくらか回復した胡桃が由紀の左隣に座る。

 

「あたしらだけなら良かったかもしれないけど、今はみんな(大学の人)がいる。だから、諦めちゃダメだ。それにマサルだってもうすぐここに来ると思うし」

 

「先輩、恐らく通信機か何かがあるはずです。それを取って保護機構にミサイル発射の中止を求めましょう!」

 

「そうね。なら、私が行くわ」

 

「…やだ……行っちゃやだよ」

 

由紀が抵抗した。

 

「由紀ちゃんが教えてくれたのよ。あの騒動の日からずっとつらかった。諦めたくて、死にたくて…毎日やめようとも思った…でもいつだって由紀ちゃんは助けてくれた。楽しいコトをいっぱい教えてくれた。あなたは英雄よ」

 

かつて理琉に言われたことを悠里も発した。

 

「そんなんじゃない……私なんか…今まで本当に辛いことは皆に押し付けて、自分は現実逃避してただけだよ!!!!」

 

「だからね……ありがとう…由紀ちゃん」

 

 

「あたしも、先輩を殺めた後、由紀に救われたからな」

 

「私も、トロンで由紀先輩に救われましたよ。ね、太郎丸」

 

「ワン」

 

「りーさん…胡桃ちゃん…けーくん…太郎丸…」

 

 

「すぐ戻るわ。絶対に外に出ちゃダメよ」

 

 

「…あたしも行く。みんなに助けられっぱなしなのも性に合わねぇ」

 

銃…ではなく、シャベルを持ち、

 

「私も行きます。核なんかにやられるなんて!!」

 

圭はカスタムUZI9㎜、ポータブルレコーダーを持った。

 

「……」

 

由紀は準備室に残された。理琉のショットガンを握って、自分も決意した。

 

(私だって……やるときはやるんだから!!)

 

かつて自身が放送で全員を救った時と同じように、彼女はまた皆を助けたい。役に立ちたい。そう心の中で叫んだのだ。

 

 

 

悠里、胡桃、圭は手分けして通信機を探す。軍人の死体がゴロゴロと転がっているが、肝心の通信機が見当たらない。あったとしても電池切れか故障しているモノだった。

 

 

「クソッ!!こっちもダメだ!電源が付かねぇ!」

 

「こっちも駄目です!って、悠里先輩!!」

 

「二人とも逃げて!!」

 

「今助け……しまった、弾切れだ!!」

 

「今のあたしじゃあの数は対処できないッ!」

 

悠里は目を瞑ってM4を撃ちまくった。周りのゾンビは次々と倒れ、道が開けた。

 

「胡桃と圭さんは向こうをお願い!!」

 

「了解!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

ふと、真冬は学校の屋上にいた。

 

『よォ』

 

『マサル…』

 

やって来たのは、杖をついた理琉。

 

『どォしたンだ?』

 

『どうしたんだろうね』

 

『なンやねンそれ』

 

『なんか……ボク、いろいろと忘れてた気がする…お姉ちゃんのことも、カナの事も…一人で勝手に浮かれて、マサルや由紀たちと幸せになって……』

 

『人間誰しも、そォいうことはあるさ』

 

『でも…ボクはこのまま、みんなの事も忘れちゃうかもしれないッ!もう…誰かを失うなんて……イヤだ…』

 

『…生きてるとよ、何かしら辛ェことや楽しいことがあってよ、ずっと覚えてることもあれば、忘れちまうこともある。そんなもンだよ。でも、例え忘れてたとしても、生きていればきっと大丈夫さ。ココ(記憶)で覚えてなくても、ココ()できっと憶えている。俺だって忘れねェよ。小春の妹だもん。決して忘れやしないさ。もちろん小春の事も、由紀たち、トーコさンたち、青襲さンも忘れやしねェ』

 

『………』

 

『例え俺が死んだとしても、俺がオマエを、みんなの事を忘れることは無いさ。生きた証がココにあるンだ。きっと大丈夫』

 

理琉が見せて来たショットガン。真冬はそれを受け取った。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

「……ん…ぁ……」

 

 

「んぅ………」

 

「みーくん!真冬ちゃん!!」

 

「由紀……水、効いたかも…」

 

「よかった…みーくんは?」

 

「私もです……」

 

 

由紀の表情を見て、真冬は何かを察した。

 

 

「どこか行くの?」

 

「うん、りーさんたちが外にいるから……」

 

「学園生活部心得……第四条」

 

 

「「「部員はいついかなる時も互いに助け合い支え合い、楽しい学園生活を送るべし」」」

 

 

「行ってらっしゃい…」

 

 

「うん、すぐ戻るから。―――またね」

 

 

外に出ると、由紀はゾンビの視界をかいくぐって悠里達を探す。残り一発のウィンチェスターを右手に持ち、我武者羅に走った。

 

「マー君、力を貸してッ……」

 

ギュッとそれを握り込んだ。

 

「うわぁっ!!」

 

しかし前を見ておらず、前方のゾンビと接触。足を挫いてしまった。銃も手の届かない所へと飛んでしまい、絶体絶命に。

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 

胡桃と圭はゾンビたちに追い詰められ、こちらも絶体絶命。運良く視聴覚室の扉が後ろにあったため、一時的に身を潜める。

 

「クソッ!…どうすれば………」

 

「………」

 

 

 

一方悠里は大量のゾンビに追われている。近づいてきたゾンビはとにかくM4で乱射して撃ち殺すのだが、弾切れを起こしてしまう。

 

「っ!!」

 

ライフルを逆に持ち、近くのゾンビを殴り倒しながら進んでいった。

 

「エイッ!!」

 

力いっぱいゾンビを殴ったことで、M4が大破。武器が無くなった。逃げるしか無い。物理室に逃げ込んで身を潜めるが、ゾンビたちに簡単に破られてしまい、追い詰められる。ふと目に入ったのは割れた窓。ここは1階であるため、窓から外へ逃げられる。というか、もはやそうするしか無い。悠里は一目散に窓を飛び越えた。

 

「……こ、これは……」

 

なぜかハンドガンが落ちていた。恐らくランダルの過激派と思わしき人間が落としたモノというのは見当がつくが、問題はマガジンの中にある残弾数。5発しか無いため、ゾンビの始末は無理と判断。彼女はどこか高台の代わりになるところを見つけ、そこに登った。(ミニバンみたいなやつ)

 

 

 

 

「ゆーーーきーーーちゃーーーん!!」

 

 

 

大声で叫び由紀を呼ぶが、大雨で且つゾンビの唸り声でかき消され、由紀に届かない。

 

 

 

「これしか無いわね」

 

 

 

ハンドガンの安全装置を解除し、上に向かって発砲。

 

 

 

 

 

パァン!!!パァン!!!!

 

 

 

 

乾いた銃声が響き渡り、ゾンビが音に反応する。音が発せられた方向へゆっくりと歩いて行く屍たち。足を挫いた由紀は悠里の発砲によって事なきを得たのだ。

 

 

「あれ、どうしたんだろう……?」

 

何がなんだかわからぬままゾンビが歩いていく方向を見ていると、誰かが由紀に声をかけた。

 

 

 

『由紀。もう少しだ…もうすぐ、全て終わる。由紀が終わらせろ』

 

理琉の幻覚を見た。

 

「マー……君?」

 

『そこに通信機があるだろ?その無線はまだ生きてる。屋上でランダルと通信するんだ』

 

「うん……」

 

『ほら、俺の銃だ。持ってけ』

 

目の前にあった理琉の遺品を拾い上げた。

 

 

 

理琉に肩を支えられ、屋上近くの階段へと向かう。

 

 

『振り返るな。一匹来るぞ』

 

青襲の声も聞こえてきた。

 

『由紀ちゃん。みんなと、マサル君をお願いね』

 

会ったことの無いはずの小春が声をかけてきた。

 

 

『行け。ヒーローはなるもンだろ?勇者(ヒーロー)は、気合と根性だ!』

 

 

「…うん!わたし、頑張る!!」

 

 

足を引き摺りながらも階段を登る由紀。だが足の痛みなんてもう感じないほどだった。

 

 

「はぁ…はぁ……もしもし、ランダル保護機構ですか…?」

 

『設定言語ヲ日本語ニ スルヨ』

 

「ボーモン君!?ランダル保護機構に繋げられるかな?」

 

『通信要請中……受諾』

 

 

『だ…誰……?』

 

「もしもし!?ランダル保護機構の方ですよね?核ミサイルの発射を中止してください!治療薬が…治療法が見つかったんです!」

 

『……まって……続けて』

 

「朽名川の水です!えっと、朽名川の水は那酒沼っていう沼と繋がってて…そこはΩ菌とウイルスに有効なんです!さっき咬まれた友達がそれを飲んで体調が良くなったんです!!」

 

『OK…続けて……』

 

 

 

 

「……あのね…騒動が始まった時からずっとつらくて大切な人や友達を亡くして…怖くて不安で息も吸えなくて……もうどうしようもない位までに落ち込んじゃった……でも私はまだ生きてるよ!生きるのは怖い…死ぬのももちろん怖い……出来ることなら、みんなとずっと一緒にいて、ずっと笑い合って、当たり前の日常を過ごしたかったよ……でもそれだけじゃダメってわかったんだ…胡桃ちゃんが諦めかけてた気持ちが今ならわかる……足手まといになりたくない………でもみんなのこと大好きだからッ!ずっと一緒にいるだけじゃ……行ってらっしゃい、行って来ます、またねって言って……ここまで来たよ。ランダルの人達に会うために……生きるためにここに来たよ………大切な友達のために…大切な初恋の人のために……」

 

 

由紀は呼吸を整えて発した。

 

 

「私は…私達は、ここにいるよ。こちらは巡ヶ丘学院高校学園生活部、丈槍由紀。あなたの事を教えてください……何処にいるか…そして誰なのかを……」

 

 

通信は、ノイズが混じった後、女性っぽい声が聞こえて来た。しかし、ノイズと共に、通信はそこで途絶える。

 

 

 

「あはは……みんな…わたし、やったよ……」

 

 

 

雨がやみ、雲の切れ間から太陽が覗き込む。濡れたアスファルトの匂いと眩しい光に包まれながらも、世界は静寂と混沌を保ったままであった……

 

 

 

大学組は荷物を軽トラに載せる。軽トラを運転する人間、そして人間を乗せる車を持ってきた慈。大学組は避難を始めた。

 

 

 

「シノウおねえちゃん……?」

 

「フフッ、大丈夫。お姉さん、もうすぐ戻ってくるからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから月日が流れ、5年が経った。直樹美紀(22歳)は大学キャンパスの図書館へと足を運んでいた。

 

「こんにちはリセさん」

 

「やぁ」

 

美紀は各地を回る書記、いわばジャーナリストの道へ進んだ。

 

「これ、お願いします」

 

「確かに」

 

パラパラと本を捲り、一通り目を通したリセ。

 

「今度は東北?結構遠くに行ったね」

 

「少しずつです」

 

「圭君はどうなのさ?」

 

「圭は今四国に行ってるんですが、なぜかあそこだけ無傷だったみたいで、今太郎丸と一緒に調査中って言ってました」

 

「そうか。……もうずいぶん経ったね」

 

「そうですね……」

 

 

 

 

美紀によると、あの後ランダル保護機構という組織は先が見えず崩壊寸前で、由紀たちの処遇について争っていたという。由紀が通信をかけたオペレーターのような女性が彼女の声を施設中に流したことによってランダル穏健派が核ミサイルを止めたらしい。

 

そう、かつて青襲が言っていた、善いランダルはある意味居た。そしてそのきっかけは由紀の通信だったこと……由紀が世界を救ったと言っても過言ではなかったのだ。

 

 

 

 

「そういえば、由紀先輩は……」

 

「あ、まだ先輩なんだ」

 

「学生の時のクセって中々抜けなくて…w」

 

「う~ん、良いんじゃない?彼女は世界を救ったヒーローなんだし」

 

「そうかもしれませんね。でも、由紀先輩だけじゃないですよ。それに通信だけで方針転換って、ゲームじゃあるまいし…wきっと、彼らも悩んでいたんだと思います。面倒で辛いから、逃げようとして…でも彼女の声で皆が気づいて…声を聴いて、そこに人がいるってわかってて殺すことは辛いです」

 

「うん」

 

「それに治療薬が見つかったのだって、椎子さんや胡桃先輩、理琉先輩がいたからであって……」

 

 

 

 

「だから、世界を救ったのは皆です。生きてる人も、生きようとしてる人も……みんな」

 

 

 

 

「―――――かくのごとく、直樹美紀は語った、まる。っと。勇者に相応しい謙虚さだったね」

 

 

 

「恥ずかしいからやめてください……」

 

 

 

「あ、そうだ、手紙来てるよ」

 

 

若狭悠里(23歳)からの手紙だった

 

 

「りーさんは忙しいみたいですね」

 

手紙を読みながらそう呟く。

 

「復興指揮地区リーダーだからね」

 

災害時に設立される組織のリーダーとして働いている模様だ。

 

 

「なんかムカつく女性の先輩がいるらしいです。なんかたまに政策とかで揉めているとか」

 

 

「あはは、でも悠里君に丸められちゃいそうだね」

 

 

続いて…狭山真冬(22歳)からのお便り。

 

「あ、真冬からだ」

 

「何て?」

 

「今アメリカで、レオン・S・ケネディっていう方と共にエージェントをやってるみたいです。アハハ…もう一人のクリス・レッドフィールドって方の身体能力がバケモノ過ぎて少し引いてますね…w」

 

「な、なるほどw」

 

 

そして次の人物。恵飛須沢胡桃(23歳)

 

「これは胡桃先輩…うぉぉ、凄い…医師免許取れたみたいです。研修医として学んだあと、国境なき医師団と共に世界を飛び回るって言ってます。薬とリハビリのお陰で足の調子も良くなってるみたいです」

 

「それは凄いね」

 

佐倉慈(30歳)からのお便り。

 

「えっとこれは佐倉先生から…文科省や厚労省で今回のような騒動が二度と起こらないよう熱く語ってますって」

 

「我ながらスゴイ先生だねw」

 

 

「…そういえば、彼は……?あれから連絡が無いけど…」

 

 

「そういえば、リセさんは知らないんでしたっけ。………彼は…その………あの後、すぐランダルに保護されたんですが…………死亡が確認されたみたいです……なんでも、長い棒のようなモノを腹部に刺されてそれが致命傷になっちゃった…みたいな」

 

 

「そっか……残念だね…」

 

 

「終わったら部員全員で集まろう…って思ってたのに……先に逝ってしまうなんて………由紀先輩が可哀そうですよ……」

 

啜り泣く美紀。

 

 

 

 

理琉のあれからというと、パンデミック後の活躍が首相官邸や防衛相に届いたのか、総理大臣賞と感謝状、そして死亡したため、米軍から二階級特進が授与された。通夜や告別式は国を挙げて行われたらしく、学園生活部高校メンバーは全員参加したのだとか。(大学メンバーは今までそれを知らなかった)

 

 

 

 

「彼が死ぬ間際に、『俺の血清で治療薬を作って、B型RH-の人に分けてあげてくれ』とスマホのボイスメモに残していたらしいです」

 

「なるほどね……彼も勇者だった…ってわけか」

 

「………」

 

 

「でも不思議だね、ずっと一緒かと思ってたのに」

 

「そうですね。あの時はずっと一緒にいられればそれで良いって思ってたんですけど、でも今は皆それぞれ自分の道を好きなように進んでいて…それが嬉しいんです」

 

「遠くにいても、心は繋がってる…例えこの世にいなかったとしても………か」

 

 

「そういえば由紀先輩は……」

 

「ああ、巡ヶ丘で張り切ってたよ。今日から新学期だって」

 

 

 

 

スーツを身に纏い、丈槍由紀(23歳)は教師になったのだ。

 

 

「ゆきねえ!おはよう!!」

 

「ゆきねえじゃないでしょ、もう……」

 

 

青空教室というカタチであるが、学校としての機能は果たしている。近くには中学生になった瑠璃が立っており、由紀のサポート役に。

 

 

 

「はい!静かに!授業を始める前に、皆さんにすっごい秘密を教えちゃいます。学校では勉強ももちろん大切だけど、勉強だけするところじゃないんですよ。気の合う友達、気の合う教師、仲間……そういう人間関係を築いていく…そういう所なんです。楽しいコトをして、分かち合って…悩んだら相談して……そうして心を繋げたら、世界だって救えるんですよ。みんなが…みんなで学校を凄くする…こんな騒動が起こって学校は壊滅しちゃったけど、ここから始めればいいよね?一から……ゼロから……だからみんなと私で、ここから学校を始めます。みんなで再出発するんです!」

 

 

そう熱弁すると、子どもたちは目を輝かせた。

 

 

(マー君……私、ここまでできたよ……私はもう大丈夫……)

 

 

 

 

 

 

『頑張ったな。なるべく諦めない!そうだろ?だから下を見ず、前だけみて突き進め。俺はずっと見守ってるよ』

 

 

 

 

 

 

 

(うん……ありがと、マー君…)

 

 

 

 

「……さぁ、今日の授業を始めますよ~!教科書を開いてね~」

 

 

彼女の左手薬指が日光の反射でキラリと光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒れた高校の元学園生活部部室。そこのテーブルには由紀、胡桃、美紀、悠里、圭、真冬、慈、太郎丸が写っている一枚のチェキ、理琉の遺影とドッグタグ、ウィンチェスターM1887、そして由紀のと同じ模様の入った一回り大きめの指輪が彼の写真の近くに添えられているのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

がっこうぐらし! ~学園生活部と一匹狼~ ~一匹狼の護るべきもの~  Fin




      CAST
黒田理琉      柿原徹也
丈槍由紀      水瀬いのり
恵飛須沢胡桃    小澤亜李
若狭悠里      市道真央
若狭瑠璃       〃
直樹美紀      高橋李依
祠堂圭       木村珠莉
佐倉慈       茅野愛衣
太郎丸       加藤英美里
狭山真冬      諸星すみれ
狭山小春      佐倉綾音

出口桐子      内田真礼
光里昌       佐藤利奈
喜来比嘉子     花澤香菜
稜河原理瀬     種田梨沙
青襲椎子      沢城みゆき

高上聯弥      梶裕貴
右原篠生      加隈亜衣
頭護貴人      子安武人
城下隆茂      谷山紀章
神持朱夏      伊藤静

クリストファー・ダヴァッチ  松風雅也


OPテーマ ふ・れ・ん・ど・し・た・い(第二十七話~第四十一話)
     エガオノキミヘ(第四十二話~最終話)
     

EDテーマ アフターグロウ(第二十七話~第四十九話)
     やくそく(第五十話)
     未来エピローグ(最終話)

脚本 イギー
構成  〃


原作 海法紀光(ニトロプラス)まんがタイムきららフォワード
原作キャラデザ 千葉サドル
オリキャラデザイン チモシー イギー

参考にした作品 ご注文はうさぎですか? とある魔術の禁書目録 結城友奈は勇者である バイオハザードシリーズ Re:ゼロから始める異世界生活 etc...

スペシャルサンクス チモシー様 読者の皆様

制作サイト ハーメルン



以上をもちまして、イギーによるがっこうぐらし! ~学園生活部と一匹狼~ ~一匹狼の護るべきもの~ の連載を終了いたします。ここまで読んで下さった皆様、拙い作品を応援して下さり、誠にありがとうございました。新たな文字の世界で、またお会いしましょう。

※お知らせ※ 日常編、異世界編は廃止と致しました。


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設定etc

これまで学園生活部と一匹狼、一匹狼の護るべきものを読んでくれた方へ、この小説内においての原作、オリジナルキャラの設定を書き込んでいきます。ネタバレを含む要素ですので、もしまだ目を通していない方はブラウザバックを推奨します。


まず、主要キャラから。年齢に関しては本作で出た一番若い年齢から、最終話までの年齢を表記するものとする。(※血液型など、公式で明らかになっていないデータがあります。それに関しては作者のオリジナルという事で通させていただきます。作者は面倒くさがりなので、主要キャラ以外のデータを考えてませんw)

 

 

黒田理琉 男 12歳~18歳(享年) 

誕生日:4月10日

血液型:B型RH-

身長:170cm

体重:62kg

モデル:アクセラレータ

台詞の特徴:一人称は『俺』口調はキツめ。基本的に『ん』や小文字はカタカナ

性格:クール 普段は優しめだが、愛想があまり良いワケでも無い。キレると表情が豹変する。自分を悪党と自虐していた。

使用武器:ウィンチェスターM1887、デザートイーグル、M870

地元:北海道

出生地:アメリカ カリフォルニア州 LA

家族:FBIの母親(黒田梨花)。米国軍大佐の父親(黒田弘和)。

 

声優:柿原徹也

 

本編での彼:元米国陸軍中尉。(死亡後は昇級して少佐)小さい頃に父親から訓練を受け、若くして米国軍へ入隊。クリストファー・ダヴァッチと知り合い、彼と共に米軍での訓練を受けていた。実戦でも共に陸上戦を戦い抜いた。また途中で同い年の少女、狭山小春と出会い、恋に落ちる。しかし突然基地にいたスパイを抹殺すると言って彼女の元を離れた所、そのスパイ…クリストファーに射殺された。それから理琉は少し壊れてしまう。地元に帰ったが、家族は殺されており、父、弘和の遺品(ウィンチェスター)を持って巡ヶ丘へとやって来た。自頭が良く、分析力や謎解きの力に長けている。だが勉強面において英語、数学以外は壊滅的。本編終盤でクリストファーと再会し、戦闘になる。デザートイーグルでクリストファーにトドメを刺したが、細い鉄骨のようなものを左腹部に刺され、貫通する。運悪く大動脈と接触し、それが致命傷となって死亡。ランダルが到着したころにはもう瞳孔が開ききっていたという。死亡してから数ヶ月、功績が讃えられ、内閣総理大臣賞及び感謝状が贈られ、米軍からは二階級特進が授与された。日本語、英語、ロシア語、北京語を話すマルチリンガル。

 

 

 

 

丈槍由紀 女 18歳~23歳

誕生日:4月5日

血液型:A型RH+と思われる

身長:??

体重:??

台詞の特徴:全体的に平仮名が多め(但し一人称は『わたし』と『私』が混在していることも)

性格:天真爛漫で皆の癒し。理琉に色々助けられ、密かに恋心を抱く。

使用武器:MP5、グロック17

 

声優:水瀬いのり

 

本編での彼女:原作同様、途中までゾンビパニックのショックで解離性同一性障害のようなモノを患っていたのだが、何かの拍子にそれが治り、アニメで言う所の第7話辺りでは既に正気に戻っている。それからは由紀も戦闘員となり、大学編からはMP5を使っている。5年後の職業は教師。担当科目は特にない。小学生を相手にしているため、幅広く教えている。だが恐らく彼女が得意とする教科は理数系と思われる。原作と違い、慈を意識したワンピースは着込んでおらず、普通のレディーススーツ。

 

 

 

恵飛須沢胡桃 女 18歳~23歳

誕生日:8月7日

血液型:O型RH+と思われる

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一人称は『あたし』。原作同様全体的に砕けた感じの口調で敬語も少なめ。

性格:元気系な少女。理琉の事は好きなのだが、恋愛的なのかどうかは自分でもあまりわかっていない。

使用武器:シャベル AK-47

 

声優:小澤亜李

 

本編での彼女:ゾンビ騒動のすぐ後、かつて想いを寄せていた「先輩(CV.古川慎)」を殺めてしまい、後悔してしまっているが、理琉の言葉で吹っ切れる。戦闘においては前衛で、図書館でゾンビと遭遇した際、理琉の援護射撃の後にシャベルでトドメを刺している。真冬と共に地下区画行ったとされる犬の太郎丸を探した時にゾンビ化した紗巴果夏と遭遇し、真冬が殺せずに固まっていた所を助け、自身が咬まれてしまう。その後美紀と理琉が取ってきた強壮剤で一命を取り留めるが、高校を出て以降、身体に異変が出始める。だが理琉が気づかずにあげていた『高校の水』によって下半身不随には至らなかった。治療薬開発により胡桃の感染は完治。5年後は医師に。国境なき医師団と共に世界を飛び回っている。

 

 

 

若狭悠里 女 18歳~23歳

誕生日:10月11日

血液型:AB型RH+と思われる

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一般的なお姉さん系の口調。メタ的なことを言うと怒る時は特殊エフェクトがかかる

性格:基本的に頼れるお姉さんでとても家庭的かつ優しい。だが怒ると何か知らないが謎の黒いオーラが出て対象を怖がらせる。そして豆腐メンタル。

使用武器:M4カービンライフル シグザウエルP226(終盤のみ)

 

声優:市道真央

 

本編での彼女:ゾンビ騒動から表情にこそ出していないが、精神的には相当参っている。由紀が精神安定剤になるほどだから……高校では基本的に家事をこなしている。料理も上手く、うどんを打つ程()。家計簿をつけていると一週間先のことなどを予想できる能力を持っている。身体能力が低め(ある部分の所為か?)のため、基本的に戦闘には赴かない。だが高校を離れてからは体を鍛え、アサルトライフルを連射できるほどにまで向上した。妹である瑠璃を理琉が救出してから、彼の事をもっと信頼するようになった。5年後の職業は復興指揮地区リーダー。これまでのゾンビの習性とかを分析して冷静に判断する。ただ気に入らない女性の先輩というのがいるらしい。政策であまり噛み合わないことが多いが、彼女のオーラで屈服させられる。

 

 

 

直樹美紀 女 17歳~22歳

誕生日:12月10日

血液型:O型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:基本的に相手が年上ばかりなので敬語が多い。

性格:クール 冷静 友達想い

使用武器:P90(あまり使ってない) シャベル 短刀

 

声優:高橋李依

 

本編での彼女:ショッピングモールの生き残り。騒動以降数日間ずっとモールのスタッフルームに籠っていたが、理琉達が来たことで脱出。初めは由紀の事をあまり良く思っていなかったが、理琉に説教され、その後に由紀と『体育祭』を行ったことで由紀の事を理解する。頭脳派+身体能力高めというかなりハイスペックな少女。一時期太郎丸に嫌われていたが、いつの日か懐いてくれるようになる。どちらかと言うとツッコミ担当(?)身体能力は高いが基本的に戦闘を好まないため、あまり銃を持たない。5年後は書記として全国を旅している。リセに渡したノートは数知れず……

 

 

 

佐倉慈 女 25~30歳(独自設定)

誕生日:3月10日

血液型:A型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:悠里と比較すると、ほわほわしている方。基本的に由紀以外には苗字+君(さん)呼び。

性格:少し天然 頼れる 抜けている所がある

使用武器:モスバーグM500 FA-MAS

 

声優:茅野愛衣

 

本編での彼女:原作と異なり、死亡していない。原作同様由紀たちを庇って扉を閉めるが、理琉が駆け付けたことでゾンビに襲われずに済んだ。一応高校編では由紀の幻と同じセリフを話しているが、胡桃たちにもしっかりと聞こえている。割と心配性。高校を出てからは保護者として皆を影ながら守っている。大学メンバーとの仲も良好。5年後も教師を続けている設定だが、文部科学省や厚生労働省に訴えかけたり、ボランティア的な活動もしている。

 

 

 

祠堂圭 女 17~22歳

誕生日:6月7日(独自設定)

血液型:B型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:美紀には当然タメ口だが、年上には敬語。そしてツッコミ担当。特に理琉や作者のメタ発言へのツッコミが多い。

性格:調子が良く、メンバーの中では一番のやんちゃ系と思われる。美紀の事を大切な親友と思っている。

使用武器:カスタムUZI9㎜

 

声優:木村珠莉

 

本編での彼女:原作ではモールから単身で出ていったが、今作ではその描写は無い。ただ精神的には参っていたが、太郎丸と美紀、そしてその他のメンバーが精神安定剤となっていた。運動神経はそこまでじゃないが、運転技術がまあまあ優れており、武闘派の一味とカーチェイスしていた時も、時速120㎞で交差点を一気に曲がるなどの神業を披露している。銃の腕前は人並み以下だが、SMGを操れる程度。ソフトドリンクで場酔いすることもある。5年後は調査隊として四国へと足を運ぶ。そこではなぜか無傷だったのでその辺の調査を始めた。

 

 

 

太郎丸 オス 推定4歳~推定9歳

誕生日:7月14日(独自設定)

血液型:DEA3+と思われる。

体長:???

体重:???

台詞の特徴:基本的に吠えるだけだが、平仮名片仮名が混在している。

性格:犬にしては賢い。

 

声優:加藤英美里

 

本編での彼:シーズン1終盤で死亡せず、強壮剤や高校の水で感染を克服。咬まれて以降身体能力が爆上がりしているが、特にそれを見せるような素振りは無い。だが大学編で理琉とコンタクトを取っていたため、人間の言葉は理解できていると言っても差し支えないだろう。5年後は圭と共に四国を探索している。

 

 

 

狭山真冬 女 17歳~22歳

誕生日:12月24日

血液型:

身長:???

体重:???

台詞の特徴:『……』が全体的に多い。

性格:クール ボクっ娘

使用武器:ベレッタM92(サムライエッジ マフユモデル)

キャラデザ:チモシー様

 

声優:諸星すみれ

 

本編での彼女:小柄な割に身体能力が高めで、ベレッタなどのハンドガンを片手で撃てる。この世界においての彼女のエイム力は理琉よりも高く、タカヒトの足を正確に撃ちぬく程の腕前。ショッピングモールでの生き残り。美紀たち同行してモールへと遊びに行っていた所でゾンビ騒動に巻き込まれる。友人の紗巴果夏の遺品であるシュシュを左腕に常時着けている。今作では実の姉がいた。理琉に恋心を抱いていたが結局言えずに彼が死亡してしまったため後悔している。5年後は世界を飛び回るエージェント。クエントに愛用しているベレッタM92を改造してもらい、以降はレオン・S・ケネディ、クリス・レッドフィールド、クレア・レッドフィールド、ジル・バレンタインなどと共に行動している。

 

 

 

 

続いてサブキャラ

 

 

 

 

狭山小春 女 12歳~15歳(享年)

誕生日:4月18日

血液型:AB型RH-

身長:150㎝(15歳の時点で)

体重:???

モデル:喜来比嘉子

台詞の特徴:一人称は『私』。理琉と話すときは砕けている。初対面の相手には敬語を使う。

性格:乙女 比較的アクティブ

所持武器:グロック17

特技:怪我人の応急処置や急病人の救命

キャラデザ:イギー

 

声優:佐倉綾音

 

本編での彼女:今作では真冬の実姉で且つ米国陸軍の衛生兵少尉。主に傷を負った兵士の手当てや病人の治療をする役目だった。(12歳でこれをこなしていたが、なぜこんな若いときに?というツッコミは無しね)理琉とは、彼が一般人の負傷者を連れて来た時に出会い、以降はよく話す相手となった。恋心に気づいたのは15歳の時だが、中々踏み込めずにいた。そこで事件は起こる。敵軍のスパイに狙われ、撃たれてしまう。一通の手紙を理琉に託し、絶命した。

 

 

 

クリストファー・ダヴァッチ 男 27歳〜33歳(享年)

誕生日:10月16日

血液型:A型RH+

身長:180cm

体重:76kg

台詞の特徴:特になし

性格:表と裏がわかりやすい

使用武器:M4カービン

使用言語:英語 ロシア語

出身:ユークトバニア連邦共和国

 

声優:松風雅也

 

本編での彼:表向きはアメリカ軍少尉。裏では敵軍スパイ。理琉とともに米国陸軍で行動していたが、スパイとしての本性を表し、理琉の友人である狭山小春を殺害する。3年後に理琉と再会し、戦闘に。致命傷を理琉に与えたが、自身もデザートイーグルでヘッドショットをおみまいされ、死亡した。

 

 

 

紗巴果夏 女 17歳(享年)

誕生日:???

血液型:B型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:誰にでも砕けた口調で話す。

性格:真冬とは真逆で超絶アクティブな少女。由紀と波長が合うと思われる。

キャラデザ:チモシー様

 

声優:洲崎綾

 

本編での彼女:ショッピングモールの生き残り。美紀たちと共に籠城生活を送っていたが、耐えきれず脱出を選んだ。その際真冬に彼女が愛用していたシュシュを預けて去っていく。その後の消息は不明だったが、なぜか学校の地下倉庫にいた。もちろんゾンビ状態だが……そのため原作と異なり、胡桃は彼女に負傷させられる。その後、理琉と美紀と遭遇し、二人に見送られた。

 

 

ラジオDJ(名前不明) 声からして女性と思われる。

性格:オープンな女性だと考えられるが詳細は不明

 

本編での彼女:放送機器を使い、崩壊した街へ『ワンワンワン放送局』としてずっと放送を流し続けていた。理琉にその放送を拾われるが、彼らが到着したころにはもう手遅れだった。

 

 

 

若狭瑠璃 女 10歳~15歳

誕生日:2月1日(独自設定)

血液型:AB型RH+と思われる

身長:???

体重:???

台詞の特徴:全体的に平仮名が多め

性格:基本的に無口。ゾンビパニックのショックで一時的に言葉が発せなかったが、理琉達のお陰で普通に話せるようになった。

獲得武器:グロック19

 

声優:市道真央

 

本編での彼女:飛んでいった帽子を捕まえようと、車道に出てしまうが、何者かによって助けられて命拾いする(代わりに助けた人間は死亡した)。その後ゾンビパニックに遭遇する。当時小学校にも生き残りがいたのだが、次々と力尽きてしまい、彼女だけ生き残った。理琉に助けられ、少し気になりだす。アヤカに腹部を蹴られ、内臓に少し傷が入ってしまったが命に別状はなく、落ち着いた頃に病院で診察を受け、今は薬によって快方へと向かっている。

 

 

 

青襲椎子 女 22歳(享年)

誕生日:???

血液型:O型RH+と思われる

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一人称は『私』クールな口調

性格:本当は優しいのだが、学園生活部の前では死ぬまで真逆の対応をしていた。

使用武器:コンバットナイフ

 

声優:沢城みゆき

 

本編での彼女:原作とほぼ変わらない

 

 

 

出口桐子 女 20歳〜25歳

誕生日:???

血液型:A型RH+と思われる

身長:???

体重:???

台詞の特徴:『ボク』が一人称

性格:結構適当な人間

獲得武器:グロック18C

 

声優:内田真礼

 

本編での彼女:原作とほぼ変わらない

 

 

 

光里晶 女 21歳〜26歳

誕生日:???

血液型:B型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一人称は『アタシ』

性格:少し強気

獲得武器:デザートイーグル 10インチバレル

 

声優:佐藤利奈

 

本編での彼女:原作とほぼ変わらない

 

 

 

喜来比嘉子 女 20歳〜25歳

誕生日:???

血液型:AB型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一人称は『私』

性格:少し控えめな性格

獲得武器:VP70

 

声優:花澤香菜

 

本編での彼女:原作とほぼ変わらない

 

 

 

右原篠生 女 21〜26歳

誕生日:???

血液型:A型RH+と思われる。

身長:???

体重:???

台詞の特徴:一人称は『私』それ以外は特に特徴的な話し方はしない

性格:強気だが、恋人である高上を大切にしている

使用武器:アイスピック AA12

 

声優:加隈亜衣

 

本編での彼女:原作とほぼ変わらないが、理琉に殴られてから改心する。

 

 

 

高上聯弥 男 19歳(享年)

誕生日:???

血液型:本人も知らない

身長:???

体重:???

台詞の特徴:特になし

性格:内気だが、シノウのことを大切に想っている。

使用武器:クロスボウ

 

声優:梶裕貴

 

本編での彼:真冬をクロスボウで負傷させた張本人。もちろん理琉に返り討ちにされる。すでに空気感染しており、就寝後に発症、武闘派の別メンバーによって『処理』された。

 

 

 

頭護貴人 男 21歳(享年)

誕生日:???

血液型:本人も知らない

身長:???

体重:???

台詞の特徴:特になし

性格:強気で疑心暗鬼

使用武器:釘バット

 

声優:子安武人

 

本編での彼:本編同様、自分を選ばれた者だと自画自賛する男。使えない人間は切り捨ててきた。いざ自分が発症するとその場を逃げるように去っていき、武闘派との決着後はアヤカにトドメを刺される。

 

 

 

城下隆茂 男 22歳(享年)

誕生日:???

血液型:本人も知らない

身長:???

体重:???

台詞の特徴:特になし

性格:疑心暗鬼

使用武器:バール

 

声優:谷山紀章

 

本編での彼:原作と特に変わらないが、胡桃にトドメを刺されるとき、シャベルで音をたてるのではなく、胡桃自身が所持していたAK-47の銃声によってゾンビの餌食にされた。

 

 

 

神持朱夏 女 22歳(享年)

誕生日:???

血液型:本人も知らない

身長:???

体重:???

台詞の特徴:特になし

性格:自分が選ばれたと自惚れる上、死人をみてニヤつくほどのサイコパス

使用武器:特に無い

 

声優:伊藤静

 

本編での彼女:原作同様、選ばれたと自賛する上に、死人が出ると笑顔になる。タカヒトにトドメを刺したあと、理琉と遭遇。彼に二発撃たれ、死亡した。

 

 

 

 

 

原作との相違点:原作死亡キャラが少ない。ゾンビパニックの原因は、ウイルスと細菌。また、ランダルコーポレーションだけが関わっている事件では無い。バンダイナムコエンターテイメントのゲーム、エースコンバットシリーズの『ストレンジリアル』の世界で出てくる国家、部隊が存在する。 (ex オーシア連邦、ユークトバニア連邦共和国、ラーズグリーズ、三本線etc...)

 

 

 




お付き合いいただき、ありがとうございました。


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不定期短編集
短編 大掃除


かれらのいない平和な世界。一人暮らしの黒田理琉は部屋の大掃除に追われている。


「ひィ・・・なんだこのホコリは・・・どンだけ掃除してなかったのかを思い知らされたぜ・・・」

 

 

 

時は2019年(令和元年)12月31日。高校は冬季休業へと入っているため、理琉は年末の大掃除をしている。一見キレイな部屋だが、彼の書斎には勉強グッズが2割、ごちうさグッズが8割を占めている状態だ。勉強する気あるのかコイツ・・・

 

「課題は理系と英語以外答えを写してもう終わったさ。あとは俺の『嫁』であるココアちゃんを愛でて年越しを・・・ン?俺ぼっちで年越しなのか?まァ仕方無いよな、胡桃は両親と一緒に新潟の親戚の家に行ってるみたいだし、美紀は圭と太郎丸と温泉旅行・・・佐倉先生は実家に帰省・・・由紀は両親と沖縄旅行・・・りーさんは妹と一緒に年越し・・・真冬は果夏と大阪に行ってる・・・ったく、寂しい人間だな・・・俺の親父もお袋も昔死んじまったからな・・・よいしょっと、これは可燃ごみで、これは危険物・・・」

 

 

毎年そんな風に一人で年を越しているのか?というと、実はそうでも無かったりする。

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいはァい、今開けるぜ~」

 

 

理琉は玄関のドアを開ける。そこには黒髪セミロング、紫の瞳に整った顔立ち、そして年相応の容姿をした少女がいた。

 

 

「マサル君、今年も一緒に年を越そう?そば買ってきたよ!」

 

「小春!毎年ありがとうな。ささ、入って、どうぞ」

 

「おじゃましまーす!」

 

「部屋汚いけど、すまないな・・・」

 

「大丈夫だよ!いつものことだし!」ニコッ

 

「うっ、それはそれで傷つくな・・・」

 

名前は狭山小春。真冬の実の姉だ。理琉とは幼馴染であり、毎年末このように彼の家に遊びに来る。彼は気づいていないが、小春に想いを寄せられている。毎年バレンタインは理琉にしかあげていないし、誕生日も必ず祝ってくれる。毎年そのようにしているのに、気づかない理琉もどうかと思うが・・・

 

「そうだ、大晦日は何観る?」

 

「決まってるでしょ?紅白歌合戦ね!」

 

「そうだったな。毎年恒例だもンな」

 

 

そばを台所に置いた小春は理琉の書斎などの片づけを手伝いに行く。

 

「マサル君ごちうさ好きだよね~」

 

「ココアちゃんが可愛すぎて昇天しそうだよ」

 

「作者さんの心境をそのまま語ってるよ、マサル君・・・」

 

「まァそンなことより、小春。なんかココアのモノマネしてよ」

 

「モノマネって・・・えーっと・・・こほん・・・」

 

 

小春は咳払いをした。

 

 

 

 

 

 

 

「ヴェアアアア!!!!!チノちゃん取られる~!!!」チーン 

 

 

 

 

 

「上手過ぎィ!!」

 

「褒めても何も出ないよ?ww」

 

「そういや、小春もアニメ好きだよな~」

 

「うん!がっこうぐらし!は見たこと無いけどね・・・」

 

「今度観ようぜ、あれ結構癒されるから」(大嘘)

 

 

理琉は知っているが、小春はがっこうぐらし!の内容を全く知らない。また、登場人物が理琉と小春の友達と同姓同名であることも知らない。

 

 

ごちうさグッズ(主にココアちゃん)がぎっしりと並べてある所は他のどのスペースよりも綺麗に保たれているという点で、作者・・・否、理琉のココアへの愛が見て取れる。

 

「マサル君、早く片付けよう?」

 

「はいよ」

 

 

それから時間が進み、ようやく片付けが終わった。

 

 

「ふぅ~・・・小春、ありがとうな。こんな時間まで手伝ってくれて」

 

「えへへ、どういたしまして~。これからそば茹でるね~」

 

「天ぷらとかは俺が作るぜ」

 

「おいしく作ってね~?」

 

「マサル様に任せなさーい!」

 

「それ、めぐねえにやってもらったら?」

 

「まぁ中の人同じだから今度頼んでみるか」

 

「もう、マサル君はいつもメタい!w」

 

「てか、小春ってこんな性格だったっけ?」

 

「本編ではすぐ死んじゃったから作者がうまく性格を安定させるのに手こずってるんじゃない?」

 

「まァそうかもな」

 

 

 

 

そうこうしているうちに、PM19:10に。

 

 

「おっと、もう始まるね」

 

「そうだね!」

 

二人はこたつに入り、そばをすすりながらニュースを・・・そして五分後の19:15、2019年を締めくくる大イベント、紅白歌合戦が始まった。二人は歌で盛り上がり、歌い、踊り・・・部屋はまるでライブ会場のようになった。もちろん管理人からうるさいと怒られたが・・・

 

 

 

そして、23:00・・・・

 

 

 

リビングに布団を二人分敷き、布団に潜る。

 

 

 

 

 

 

「あと1時間で年明けか・・・来年もよろしくな、小春」

 

 

 

「うん、よろしくね、マサル君♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

睡魔に襲われ、二人は眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くのお寺では、除夜の鐘の音が・・・ボーン、ボーンとひたすら音を響かせ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして2020年(令和2年)1月1日 AM0:00 除夜の鐘108回目の音を最後に、日本人の全員へ年越しを知らせたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Happy new year!!!

 

 

 

 

 




短編は初めて書いたので多少変なところがあるかもしれませんが、いかがだったでしょうか?小春ちゃんの声は佐倉綾音さんのイメージでしたので唐突に中の人ネタを入れてみたくなりました。



何気に理琉のやつ女の子とお泊りデートしてますよね・・・?


あとがき
小春ちゃんは真冬ちゃんと大阪には行かず、理琉と過ごすと決めたのにはいくつか理由があります。彼女がマサルのことが好きというのもありますが、もう一つは、「これは真冬と果夏ちゃんの旅だから、二人で楽しんで行ってきなさい」だそうです。本当にお姉ちゃんなんだな~・・・と思っていて下さいね。良いお姉ちゃんですから!


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短編 バレンタイン

季節的にもこのようなイベント事があるみたいですねぇ・・・きらファンもとあるIFも、イベントクエストはバレンタインがテーマとなっているため、書いてみたくなりました。


・・・ちなみに私にチョコをくれるようなパートナーはいません故、毎年一人で家にこもりながら小説を書いたり、スマホゲームをやっております。


皆さんご存じかもしれないですが、アメリカでのバレンタインデーというのは「男性が女性にプレゼントを贈る」という文化らしく、女性が男性に向けてチョコを作って贈るという習慣は無いそうです。(義理チョコや友チョコも無い)男性が女性にチョコを贈るというモノはあるらしいですが、それ以外にも手紙や花束(主に薔薇)などを用意する人も多いそうです。

男性が女性に向けて告白、プロポーズをするときに、
"Will you be my Valentine?"
などと言うそうです。


当たり前ですが、米国にホワイトデーはありません。完全に日本文化です。


そもそもバレンタインデーの由来とは何かご存じでしょうか?まぁ全て話すと長くなるので割愛しますが、簡単に言えば、「ウァレンティヌス」という方が処刑された日です。(諸説あり)


そんな違いがあるバレンタインデーですが、今回のお話は日本式で行きたいと思います。その方がドキドキ出来ると思いますので・・・


それではどうぞ!


2020年2月14日・・・・より7日ほど前の話である。

 

 

理琉&涼side

 

放課後のこと。理琉と涼は廊下の窓にもたれ掛かり、何かを呟いている。

 

 

「「はぁ・・・出会いが欲しい・・・」」

 

 

 

 

 

ボカッバゴッ!!!!

 

 

 

 

 

「あだっ!?」

 

「にゃにするンだよ!!」

 

二人のクラスメートに頬を殴られる。

 

「いや~、黒田と藤田が言うと嫌味っぽく聞こえるぜぃ」

 

「そうそう、オレたちを置いて大人の階段を登っていくお前らを見てるとな」

 

あまりパッとしない見た目の男二人に妬まれている。

 

「何言ってンだか・・・」

 

「いや、僕ら本当にそういうの無いんだよ・・・」

 

涼は手を振って否定する。

 

「付き合ったことも、好きになったこともないンだよ、残念ながら」

 

「黒田、狭山とはどうなんだよ?」

 

「あぁ〜、もらったことはあるけど、多分義理チョコだろ」

 

「「はぁ〜、ダメだこりゃ」」

 

「ファ?」

 

「「お前は鈍すぎる!!!!!」」ボカドカ‼

 

「イテエエエエエ!!!!アイエエエエエ!!??ナンデ!?!?!??」

 

 

 

 

 

 

sideout

 

 

 

 

 

 

ヒロイン達はというと・・・

 

 

「胡桃ちゃんは明日来る?」

 

「いや・・・あたしは・・・」

 

由紀、胡桃、悠里、小春が教室で何やら会議をしている。

 

「胡桃は渡したいんでしょ?だったらお手製じゃないとね」

 

「うぅ、わかった、あたしも行くよ・・・」

 

「よし、決まりだね。ねえ、りーさん」

 

「何かしら小春さん?」

 

「真冬が参加したいって言ってるけど、良いかな?」

 

「大歓迎よ。だったら美紀さんや圭さん、果夏さんも誘ったらどうかしら?」

 

「そうだね!」

 

「じゃあ、その旨を伝えておくね!」

 

小春はメールで真冬に明日のプランについての連絡を入れた。

 

『わかった。明日悠里の家ね』

 

「OKOK♪」

 

「小春ちゃんテンション高いね!」

 

「ふえっ?ssssそんなこと無いよ・・・?」

 

「バグ文字で言われても説得力無いぜ・・・?」

 

「ふふっ、じゃあ、明日は私の家でチョコレート作りね」

 

明日は土曜日。14日は来週の金曜日だ。7日後に来るこの日は、恐らく彼女たちにとっては重要な日で、同時にチャンスでもある。胡桃はというと、顔を真っ赤にしており、今にも蒸発しかねない。

 

「胡桃さん、そんなに恥ずかしいことなのかな・・・?」

 

「ま、まぁな・・・」

 

「大丈夫だよ!なんとかなる!」

 

小春は胡桃の肩をポンポン叩き、緊張をほぐす。

 

「でさあ、その作ったチョコレートって・・・」

 

「え、渡すんでしょ?好きな人とかに・・・?」

 

「す、好きな人って・・・?義理とかじゃないのか?」

 

「それはお世話になった人とかに渡すのが良いんじゃない?」

 

「そうかな・・・」ポー

 

「あっ?!もうこんな時間?!ゴメンみんな!今日マサルくんと特売行くんだった!先帰るね!!」

 

「特売って、主婦みたいだね」

 

「本当、仲良いわよね。あの二人って」

 

胡桃は変な想像をしてしまう。

 

(まさか・・・いやいや、マサル(あの鈍感男)に限ってそんなことは無いだろ)

 

この世界の胡桃は、多分理琉のことが気になっているのだろう。小春と一緒にいるところを見ると、なぜか複雑な気持ちになる。

 

以前慈に部活の先輩について相談したが、理琉とは少し感覚が違うらしい。彼女曰く、先輩には『憧れの感情』、理琉には『また別の感情(・・・・・・)』がある・・・・らしい。だが、この2つの感情を理解しているようで理解出来ていない。本当は、もっと違う『何か』があるのではないかと・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃校門では・・・

 

「マサルくんお待たせ〜!」

 

「お、やっと来たか」

 

「いやぁ、いつものメンバーと話し合いしててさ〜」

 

「そうかそうか」

 

二人並んで夕日に照らされている街を歩く様子は、初々しいカップルのようだ。だが彼らは付き合っているわけではない。ただの幼馴染(理琉曰く)だ。小春は密かに思いを寄せているのかもしれないが、理琉はもちろんそんなことに気づくことはない。

 

 

 

スーパーの特売へと向かい、夕食の材料を買いに行く二人。もちろん、小春にはもう一つ目的がある。

 

 

 

「ン?小春?何でそんなにチョコ買ってくンだ?オマエそんな甘党だったっけ?」

 

「え、あ、うん。そうだよ!(本当は違うけどね)」

 

少し目が泳いでいるが、理琉は特に気にしてはいないようだ。

 

「さてと、今日の晩飯は鍋にすっか・・・」

 

現在所持金は7000円しかない。週に1回サバゲー大会に行っていつも優勝していたため金には困っていないはずだが、ここの所体調が悪く大会に参加出来ていない。家に置いてあるウィンチェスターM1887やFA―MASのモデルガンもホコリを被っている。家に多少貯金があるが、そもそも持ち歩かない。持っていてもカードだけだ。

 

「・・・一応これで2500円以内に収まるな・・・」

 

「何ブツブツ言ってるの?」

 

小春が後ろから不意に声を掛けたため、ビビって3メートルほど前に進んでから後ろを振り返った。

 

「ビックリさせんなよ・・・」

 

「えへへっ、ごめんね~」

 

「・・・やけにテンション高いな。彼氏でも出来たンか?」

 

この『彼氏』という言葉に少しピクっと反応する小春。もちろんだが今のアクションを理琉が見ていたわけでもなくて・・・

 

「い、いや、彼氏できたってわけじゃ・・・無いんだけど・・・」///

 

「大丈夫かァ・・・?(熱でもあるのか?)」

 

「だだ、大丈夫!!うん!さっ、早くレジに向かうよ!」

 

理琉の手を取り、会計を済ませた後、スーパーから足早に退散した。

 

 

 

 

「なァ小春。晩飯食ってくか?寒いから鍋にしようと思ってさ。真冬も連れてきなよ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えようかな♪」

 

小春は満面の笑みで承諾した。

 

 

 

 

その後は理琉の自宅で鍋を嗜み、二人を隣の一室へと送った。

 

 

 

 

 

「さてと、明日は秋葉原でごちうさグッズを買い漁るから、早く寝よう・・・」

 

明日の予定は藤田涼と東京の秋葉原でごちうさのグッズを爆買いする予定でいる。

 

「藤田に連絡すっか」

 

スマホを取り出し、涼へとメールを打った。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、行くか」

 

理琉は早めに起床し、身支度を済ませたあと、駅へと向かい、涼と合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所では・・・

 

 

「みんなお待たせ〜!」

 

小春と真冬が走って悠里の自宅前に来た。悠里を含めた他のメンバー(胡桃、由紀、美紀、圭、果夏)も揃っており、皆各自でチョコレートを袋に詰めて持ってきていた。

 

「あら、小春さん、真冬さん、いらっしゃい。さぁ、みんな入ってね」

 

「「お邪魔しまーす!」」

 

由紀と果夏が何やらすごく張り切っている。

 

「元気だね二人とも」

 

「美紀!私達もはしゃごうよ!」

 

「圭、お祭りじゃないんだから・・・」

 

「え〜」

 

「なありーさん、このキッチン使っちゃってよかったのか?」

 

「ええ、大丈夫よ、片付けさえきちんとやってくれれば、ね」

 

他人の家のキッチンを使わせてもらっているのだから、まぁそれは当然のことなのだが、

 

材料を各自持参させたのには理由がある。誰かに渡すというのはわかっているため、必要な分だけを持ってきた。また、余ってしまうと後処理にも困る。

 

「ボク、少し多めに持ってきた・・・試食用にと思って・・・」

 

「試食用か、確かに大事だな。どうせ食ってもらうんだから、美味く作らねぇと」

 

それから諸々と準備を始め、チョコレート作りへと入った。まずは基となるチョコレートを湯煎して溶かしていく。溶かしていくうちにカカオの香りが漂って来ており、部屋はチョコレートの甘い匂いでいっぱいに。

 

「わあ〜、良い香りだよ真冬ちゃん!」

 

「ホントだ・・・」

 

「うぅ・・・失敗したらどうしよう・・・」

 

「美紀、失敗したらどうすんの・・・?」

 

「ゼロから作り直・・・いや、なんでも無い・・・」

 

「ほほぉ〜う?」ニヤニヤ

 

意地悪な笑みを見せる圭。美紀は一気に顔を赤く染めた。

 

「べ、別に先輩に渡すとか、そんなんじゃないからね?!」

 

「何か、いざ作るってなるとハズいよな・・・」

 

「そ、そうだね。(ペロッ)うん、このままでも送れるかも!」

 

小春がつまみ食いをした。

 

「あっ!小春ちゃんだけズルい!」

 

「おいおい、渡す分のチョコが無くなるぞ?」

 

「こらこら二人とも?ダ・メ・よ?」

 

悠里が小春と由紀に笑顔を見せながら注意するが、目が笑っていない。

 

「「ごご、ゴメンナサイ」」

 

「お姉ちゃん、その状態で渡してもチョコが固まっちゃうから意味が無くなるよ・・・?」

 

「あ、そっか!」

 

小春の天然ボケが発動した。由紀と波長が合うかもしれない。

 

「ねえねえ真冬ちゃん、出来た?」

 

「まあまあってところかな・・・?果夏は?」

 

「型崩れしちゃうんだよね・・・」ショボン

 

「こうすれば良いと思うよ」テキパキ

 

 

 

「あれ、りーねー、みんなもきてたの?」

 

「あらるーちゃん起きたの?」

 

「うん、声が聞こえたからもうみんなきてるのかなぁって」

 

「るーちゃんも作る?」

 

「うん!!」

 

「瑠璃ちゃんこれ食べる?」

 

由紀がしゃがんで聞いた。

 

「はむっ、ん〜おいし〜!そうだ、りーねーは誰にあげるの?」

 

「ヒ・ミ・ツ♪」

 

「わたしのもある?」

 

「もちろんよ」

 

「わーい!りーねー大好き〜」

 

「先輩、るーちゃんと本当仲良いですよね」

 

「うらやましいなぁ〜」

 

こんな妹が居たらいいなぁ、と思う小春以外のメンツ。なんとも微笑ましい姿に自然と口角が上がる。

 

 

 

 

 

「・・・っと、こんなもんかな」

 

胡桃は固まったチョコレートをパッキングし、まだ一週間前ということもあるため保存が効くようしっかりと処理を施した。

 

 

「中々の出来かも・・・」

 

「真冬ちゃんのチョコ可愛い〜!」

 

「えっと、カナのソレ、何・・・?」

 

「何だろう?わかんないや!☆」

 

「美紀!何さっきからチョコとにらめっこしてるの?」

 

「大丈夫かな・・・どこかおかしいところとか・・・」ブツブツ

 

「みーき!」

 

「はっ?!あ、ゴメン、ぼーっとしてて・・・」

 

 

小春はなぜか三箱分作ってある。しかも一つだけ無駄に豪華だ。

 

「これでよしっと・・・」

 

ニコッと微笑む彼女。これはもう恋する乙女の顔だ。一体このチョコは誰に贈られるのだろうか・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃・・・

 

 

 

「ふう、大分買ったなァ」

 

「ごちうさグッズだけで50000円も使うとはな」

 

「金欠の俺が唯一遠慮せずに買える商品だぜィ」

 

「黒田、お前ココアちゃんのグッズ多いな」

 

「当たり前だよなぁ?ココアちゃんの声、小春とよく似てて好きでさぁ・・・」

 

「・・・そうか」(無自覚に狭山のこと好きって言ってるようなもんだぞ・・・?)

 

「そういうオマエは、随分とシャロちゃんグッズを買い込んだようですねェ」

 

「あのツンデレ感、声がたまらねぇんだよ!!」

 

「オマエごちうさ以外にもドラクエのベロニカちゃんとかマギレコの月夜ちゃんも推してたよなぁ?」

 

「あぁ・・・やっぱ中の人が好きというか・・・」

 

「まァわかる。俺もココアちゃんの中の人めっちゃファンだし」

 

ごちうさトークから声優トークになり、最終的にこの創作小説の原作の話にまで展開していった。

 

 

 

「やめよこれ、原作の話すると泣けてくる。特にアニメは・・・」

 

「そ、そォだな・・・アニメのめぐねえに感情移入して目腫らせちゃったし・・・」

 

「おいおいそれは泣きすぎだ」

 

電車を待ちながらそんな話をしている。

 

 

 

『へっくし!噂されてるのかな・・・』

 

某高校教師が嚔をした。

 

 

 

「そういや、昨日アイツらに殴られたけど、14日ってバレンタインデーじゃねェか」

 

「今気づいたのかよおっせぇな」

 

「うわクソ鈍感一級フラグ建築士野郎に言われるとかもう世も末だな」

 

「おいこら表出ろや」

 

「裏行きまァす」

 

「おいw」

 

『まもなく3番線に快速、大船行きが参ります。危ないですから黄色い点字ブロックまでお下がりください』

 

「電車来るぜ」

 

水色のラインを纏った電車がやってきた。自宅のある巡ヶ丘へと戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、バレンタイン当日。

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉は何気なく学校へと向かった。涼が何やら恋愛攻略本を読んでいた。普段鈍感で何にも気づけない男が、恋愛に興味を示すとは・・・

 

 

「今日の恋愛運は・・・最高!意外な子からのアプローチが来るかも?!・・・そして、大人の階段を・・・黒田!大人の階段ってどんなだ?!」

 

「いや、知らねェよ。その前に、靴箱の中にも机の上にも置いてなかったンだろ?」

 

「諦めるのは早い!もう一回靴箱を見てくる!」

 

「その前に机の中もしっかり確認しとけよ〜」

 

「そうだ・・・ない・・・無いッ!!!」

 

 

「バカかよアイツら・・・」

 

胡桃が憐みの目で見ている。ポケットには先日包装したモノが二つ・・・一つは星型、もう一つはハート型の・・・

 

 

 

すると、由紀が理琉と涼の前に立った。

 

 

「おはよ!はい、これ!バレンタイン!」

 

二人にチョコを渡した。

 

「わざわざあンがとよ。ちなみに、どっちか本命だったりするのか?」

 

「僕も気になるぞ〜」

 

「えへへ〜、どっちでしょ〜♪」

 

無邪気な笑顔を見せ、答えを誤魔化す由紀。それを見た小春たちは感心している。

 

「ゆ、由紀ちゃんすごい・・・」

 

「お前・・・すげえ・・・あたしらには無理だ・・・」

 

「由紀ちゃんだから出来るのかもね」

 

 

 

小春も勇気を出して二人のところへ向かう。

 

 

 

「マサルくん、涼くん、はい、これあげるよ!(まぁこれは義理だけど)」

 

「小春か。嬉しいよ、あンがと」

 

「おぉ、結構豪華なパッキングだなぁ・・・ありがとうな」

 

「そ、そうかな・・・?(本命はもっとすごいんだけどね・・・)」

 

 

 

小春はそそくさと退散していった。

 

 

(何かいつになくソワソワしてたな)

 

 

 

 

 

そしていつも通り授業を受ける。眠くなりながらも午前中の授業を乗り切った。

 

 

 

 

理琉と涼は学生食堂へと向かうが、そこである人物と遭遇する。

 

「あ、いたいた。ほら美紀早く〜!」

 

「待ってよ圭・・・」

 

美紀と圭、そして真冬と果夏が走ってくる。その隣にも何やら(髪が腰まで長く、胸も悠里に劣らず大きい)少女がいるが、理琉は会ったこともなかったため、名前は覚えていない。

 

「先輩方、今からお昼ですか?」

 

「うん、いつものメンバーとな。てか真冬達何してるんだ?」

 

「これ、私と美紀からです!涼先輩の分もありますよ!」

 

「こんなに良いのか?」

 

「義理ですからね・・・?勘違いしないでくださいよ?」

 

「もう、素直になりなよ美紀ったら・・・」

 

「どォいうこった?」

 

「少しでも変なところがあったらこんな変なの二人に贈r「わああああああっっっっ言っちゃダメ!!!!」」

 

「なんかそこまでしてくれると、義理でも僕たちすごく嬉しいよ」

 

涼がもらったチョコを素直に褒めている。

 

「・・・日頃の感謝の気持ちってことで、受け取ってくださいね?」

 

「あいよ。ありがとな、美紀、圭」

 

 

「これはボクから・・・心込めて作ったから、食べて欲しい・・・お姉ちゃんには劣るかもしれないけど・・・」

 

「ありがとう真冬、いただくぜ」

 

理琉は真冬からチョコを貰い、

 

「涼先輩!これを・・・」

 

「えっと、果夏ちゃんか。僕にくれるのか?」

 

「はい!お菓子作りはあまり得意じゃないんで少し形崩れてるかもしれないけど、味は多分大丈夫だと思います!果夏ちゃん特製ですから!」エッヘン

 

「ハハッ、ありがとう。嬉しいよ」

 

涼は果夏からチョコを貰った。

 

「あの、黒田先輩・・・ですか?」

 

「えっと、キミは・・・」

 

「初めまして、那珂歌衣です。あの、このチョコを胡桃先輩に渡して頂けますか・・・?」

 

「別に構わねェンだけど、自分で渡したほうが良いんじゃないのか?」

 

「ちょっと渡す勇気が無くて・・・」

 

その少女、よく見ると結構震えている。自分で渡すのがよほど恥ずかしいのだろうか。

 

「・・・わかった。ちゃんと渡しておくよ。その代わり、キミもちゃんと胡桃と話すんだぜ?」

 

「わかりました、ありがとうございます!」

 

理琉は快く受け入れ、本来胡桃へ渡すチョコレートを「経由便」で送ることに。

 

 

「あら、楽しそうね」

 

「お、佐倉先生か。佐倉先生は誰かに渡すンか?」

 

「わ、私は・・・特にそういう人いない・・・から・・・」

 

「・・・?そうか。先生誰からも好かれそうだからなぁ、彼氏の一人くらいは居ても良いんじゃないか?ハハッ」

 

「もう、先生を誂うんじゃありませんっ」

 

慈は頬を少しふくらませるだけ。『ぷんすか』という擬音を当てはめるのが正しいかもしれない。そんな健気さに理琉やその他二年生の連中もクスッと笑っていた。

 

 

 

 

 

「荷物多いな・・・」

 

両方のポケットにチョコレートの箱がパンパンに詰まっている。制服のズボンの生地が傷みそうだが、まぁ大丈夫だろう、と理琉は勝手に結論づけて食堂へと入っていった。

 

「藤田、オマエ何食うンだ?」

 

「カツカレー」

 

「わかった、食券買ってくるぜ」

 

「おごってくれるのか?」

 

「バーカ、ンなわけねェだろ、金寄越せ」

 

「なんだよ期待してたのに」

 

「それはまた今度な」

 

歌衣から託されたチョコを胡桃に渡した後、理琉と涼達は昼食を済ませ、教室へと戻る。

 

 

「今日一日だけで大収穫だったな」

 

「あの占い、主旨は違うけど、僕たちにとっては当たってたも同然だな」

 

 

 

午後の授業は数学、物理、生物という理系科目。理琉はもちろん全て寝ている。いつも居眠りをして担当教師にイチャモンを付けられるが、アタマに来た理琉はその度にテストで毎回満点を取り、『文句ありますか?』と言わんばかりの表情で教師をにらみつけている。ただし英語以外の文系の成績は凄惨なため、一応真面目に受けているらしい・・・その後も涼と理琉は悠里から「これ、私とるーちゃんからね」と言われて小包を渡された。

 

「るーちゃんにもありがとうって言っておいてくれよ」

 

「ええ!」

 

 

「あァ眠かった・・・さてと、涼のヤツはまた人助けしてお礼されてるし・・・一人で帰るか・・・」

 

 

カバンを持ち、教室のドアに手をかける理琉。すると、何やらブレザーに違和感が・・・

 

「ん?何か引っかかったかな・・・?って、胡桃?」

 

「あ・・・えっと、さ・・・これ・・・あたしから・・・」

 

胡桃はうつむいたまま、ハート型の小包を渡してきた。

 

「あの、これってひょっとすると・・・」

 

「箱がそれしか無くてさ・・・中身はフツーだからな?」

 

「・・・ありがとう。スゲエ嬉しい。食ってみていいか?」

 

「あっ、今ここで開けるのは・・・」

 

 

と、言い終わる前に理琉は包を開けた。中身は普通だが、一枚の紙切れのようなものも同封されていた。

 

「・・・えっと、これは・・・?」

 

「い、今は読むな!!」

 

「わかったよ、でもこれちょっと食わせてよ」

 

「・・・まぁ、良いけど・・・っていうか元々お前のなんだから一々許可求めるな!」

 

「はいはい」

 

胡桃から許可が下りたため、早速口に放り込んだ。

 

「甘い・・・美味い!」

 

「ほ、本当か?」

 

「ああ!おかげで元気出たよ!本当ありがとう!」

 

「えへっ・・・なんか、照れくさいな」

 

「なンだよ今更・・・」

 

「今まで誰かにあげるなんて、無かったからさ・・・」

 

今、この教室には誰もいない。胡桃は周囲を確認してから、理琉に手招きする。

 

「・・・ん?」

 

胡桃は背伸びをしたかと思うと、理琉の頬にキスを放ったのだ。

 

「これが、あたしからのもう一つのプレゼント・・・」

 

「胡桃・・・」

 

「あぁ!もう行かなきゃ!じゃな!気をつけて帰れよ!!」

 

「お、おう・・・」

 

胡桃は走って教室を去っていった。

 

「・・・何だったんだ一体・・・」

 

 

 

理琉は胡桃の今の行動に疑問符を浮かべていた。鈍すぎるにも程がある。

 

 

 

「ん?佐倉先生じゃないか?」

 

「あら黒田くん、まだ残ってたの?」

 

「まぁ、そんな所」

 

「作者さんいるかしら?」

 

俺か?

 

「ちょっと時間いいかしら?」

 

あ、あぁ、まだ時間あるし。理琉、先に帰ってろ。

 

「あいよ」

 

 

 

それで、どうしたんだ?ここに呼び出して・・・

 

「あの・・・これ・・・作ってみたんだけど、余っちゃって・・・」

 

俺にくれるのか・・・?

 

「あ・・・うん。せっかくだし、あなたにあげようかなって・・・本編でもあなたに助けられたし、私、すごく感謝してるの」

 

そんな、俺なんて何も・・・

 

「いいえ、あなたはすごいと思うわ」

 

大げさだよ。俺なんてただストーリーの実況してるだけだし・・・でも、めぐねえがそう言ってくれると、作者としてもすごく嬉しい。これからも本編やスピンオフで「作者」としてストーリーに出てくると思うけど、そん時はよろしくな。

 

「ええ!」ニコッ

 

(箱を受け取る)・・・ん、ありがとう、めぐねえ。

 

「もう、めぐねえじゃなくて、佐倉先生でしょ?」

 

俺は「生徒」じゃないんだがなぁ・・・

 

「私にとっては、あなたも生徒よ♪」

 

そっか。んじゃぁ、理琉(あのバカ)を待たせてるから、俺は行くぜ。チョコありがとうな!(手を振る)

 

「うん、またね♪」

 

「・・・渡せてよかった・・・」(胸に手を当てて安堵の表情をする。顔が赤いが、照れているのと、喜んでいるのとで混ざり合っているという・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

(パクっ)美味い・・・おっと失礼。続けますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉が自身のマンションへと到着した。

 

「ふぅ、大漁だったな・・・胡桃がこの紙を同封してたけど、何だろう・・・?」

 

理琉は由紀、悠里、胡桃、圭、美紀、真冬、小春から一つずつ貰った。

 

涼も全員からそれぞれ一つずつ貰っていた。

 

「じっくりいただきますかね」

 

理琉は貰ったチョコを冷蔵庫に仕舞い、食事の後にでも食べようと考えていた。

 

 

 

 

 

すると・・・

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

 

 

 

 

 

インターホンが鳴った。

 

「ん?誰だろう・・・?」

 

 

理琉はドアを開け、誰が来たのかを確認した。

 

 

「ま、マサル君・・・」

 

「小春?どうしたんだ?」

 

「じ、実はさ、マサル君だけにはもう一つ用意しておいたんだけど、流石に学校で渡すのは恥ずかしくて、結局ここで渡すことになっちゃった」

 

「えっと〜・・・さっきのチョコってのは・・・」

 

「アレは義理だよ?」

 

理琉は首を傾げた。義理ならばもう一つ用意しているというのはとても違和感があった。義理2つという今までに無いスタイルでも流行りだしたのか?とでも思っていたのだが・・・

 

 

 

「こ、これ!マサル君だけに!」

 

「・・・?」

 

先程見たヤツより箱やラッピングが豪華なモノだった。それはしっかりとハートを型どっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、私の本命だよ・・・マサル君・・・///」

 

 

 

 

 

 

 

 

理琉は目を丸くした。

 

 

 

 

 

 

「ウソ・・・だろ・・・?良いのか・・・?」

 

「もちろん・・・だって、私、マサル君の事、大好きだから・・・///小さい時からずっと・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

衝撃の言葉を放った。小春が、俺のことを・・・とでも言いたそうな顔である。彼女は顔を赤く染めながらも・・・照れを隠そうと、満面の笑顔で・・・

 

 

「小春・・・おわっ!!?」

 

小春が急に床を蹴って抱きついて来た。

 

「・・・」ギュウ…

 

「ちょっ、ちょっと待った!!待て待て落ち着け俺・・・・・・小春。気持ちはすっげェ嬉しい。でも、『今は』ゴメン・・・俺はみんなとの関係を崩したくない。卒業するまでは、俺の『親友』でいて欲しいんだ。だから、卒業したら考えよう」

 

 

 

「っ・・・うん!待ってるよ!!」

 

 

 

「・・・本命チョコ、すっごく嬉しい。ありがとうな。小春」

 

「どういたしまして!」ニコッ

 

 

小春は家に戻って、ベッドに寝転がる。真っ赤に顔を染めながらベッドで悶えている。彼女は理琉の喜ぶ顔を見て、とても幸せな気分になった。渡すチャンスを何度か逃したものの、今、この日に渡せたということに喜びを感じ、同時に、頑張ってよかった・・・と、心からそう思える瞬間であった。

 

 

 

 

 

「今はフラれちゃったけど・・・将来・・・・・フフッ♡」

 

 

 

 




理琉と涼がひたすら羨ましいだけのお話でしたな。小春ちゃんフラれちゃいましたが、「近い将来」どうなるかはわかりません・・・それにしてもめぐねえのチョコってどんなのだろう?食べてみたい・・・


まあとにかく2020年バレンタイン編はこんな感じです。・・・羨ましい・・・


※スピンオフ にちじょうぐらし!とは無関係です。ご了承ください。

本文だけで9255文字・・・

ちなみに胡桃ちゃんが同封したと思われる一枚の紙ですが、「いつもありがとな。これはちょっとしたお礼だからな!」と書いてあったそうです。こんな時も素直になれない胡桃ちゃんも良いモンです♪


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短編 サプライズオブ0310

0310の意味はもうわかるはず。

※もう少しで卒業、みたいな描写は無いです。短編、スピンオフは所謂サザエさんキャラというやつで、何年経っても年を取らないというスタイルです。

(今回のお話の前提として、由紀は慈の家を知っており、合鍵も渡されている、という設定にしています)


理琉達の何気ない日常。それはとても穏やかで、かけがえのないモノ。一見普通すぎて退屈かもしれないが、一つの事件で全てを失ってしまうと精神的なダメージも大きい。過去に理琉はその事件の引き金となるモノを全て陥落させ、街、そして世界の平和を取り戻した。ゾンビもいない、戦争もない…そんな所に住む彼らだ。

 

 

 

 

そんな世界で過ごす理琉は数日前…

 

 

 

 

学校にいる時の事。放課後、何やらいつものメンバー(胡桃、由紀、悠里)で話し合っているのを目撃した。

 

「ン?アイツら何話してるンだ?」

 

「さあ、僕たちに関係のあることかな?」

 

「ちょっと聞いてみる?」

 

 

理琉、涼、小春の三人は、話し合っている三人の方向へ歩いていった。(理琉だけロフストランドクラッチ式の杖をつきながら歩いている)

 

 

「よォ、何話しているンだ?」

 

「あ、マサル達か。ちょっと話し合いしててな」

 

「明後日、めぐねえの誕生日でしょ?だから、プレゼント何にしようかなって相談してたの!」

 

「そういえば、10日だったっけ」

 

「それで、佐倉先生には色々とお世話になってるから、プレゼント以外にも何かサプライズをしようかなって思ってね」

 

「めぐねえサプライズ好きだもんね!サプライズ返ししてあげないと!!」

 

「ン?他作品混じってねェか?どこかのパン屋さんのサプライズ姉さんと」(誰とは言わない。そういえば、今度きらファンで実装されるみたいだな)

 

「あ、そうだったね」

 

 

いずれにせよ、このまま何もしないわけには行かない。二年生組にも協力を要請して、準備をすることに。

 

 

 

「先輩、どうしたんですか?ここに呼び出して…」

 

「何かやらかしたのかな?」

 

「圭ちゃン、そういう余計なことは言わないの」

 

「明々後日、佐倉先生の誕生日だから、サプライズを考えるんだって……」

 

「む、難しいね、真冬ちゃんはどうしたいの?」

 

「ボクは……」

 

真冬自身、誕生日というものをあまり気にしていなかったためか返答に困っている。

 

 

 

「こォいうのはどうだ?カクカクシカジカ」

 

 

 

「ふむふむ、なるほど…」

 

 

一体どんな作戦にするつもりなのか…

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

 

 

理琉は他のクラスメートなどにも協力を依頼することに。

 

 

 

「3年C組全員!!聞いてくれ!」

 

 

 

「どうしたんだ黒田?」

 

 

 

 

「明後日、3月10日は何の日かわかるか?」

 

 

 

 

「えっと明後日は………あっ!!先生の誕生日!?」

 

「そォだ!というわけで、オマエらにもサプライズの協力して欲しい!」

 

「どうするのさ?」

 

「まあ簡単さ、先生が帰りのHRを終えた後に全員で『おめでとう!!』って言うンだ。これだけだと流石に足りないから、任意でプレゼントの類を持ってきてくれ。あと、この色紙も先生に見つからないよう、一人一人書いていくンだ」

 

 

そう言うと、ピンク色の色紙を全員に見せた。

 

「俺たちは既に書いたから、柚村に預けておく。各自時間の空いている時に書いてくれ」

 

「わかったぜ!」

 

理琉は柚村に色紙を渡し、慈が来る前にそれをしまった。

 

 

 

 

 

タイミングよく慈が到着した。口を滑らせないようにしているのか、皆終始無言だ。

 

 

 

 

 

「おはようございます〜………え?何かあったの?」

 

「いや、何でも無いよ、めぐねえ!」

 

由紀が沈黙を破り、号令を掛けた。

 

 

 

 

 

HRが終わり、慈が教室を出る。その隙に柚村はメッセージを書いた。

 

「フフッ、由紀の字可愛いな」

 

『めぐねえ!お誕生日おめでとう! ゆき』

 

少しにやけながらも綴ったメッセージ。彼女の文もありきたりなモノだったが、気持ちは伝わるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

何とか勘付かれずに一日を乗り切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、残っていたクラスメートで色紙にメッセージを残していった。理琉は購買でコーヒーを購入し、教室に戻っている。杖をつきながらという、何ともぎこちない歩き方だ…

 

「なあ黒田。校長にさっき聞いてきたんだけどさ、クラッカー持ってきても良いって言われたぞ」

 

「あ、マジか。ダメかと思って諦めてたけど、校長からOKもらってンなら持ってくるかァ」

 

 

 

 

 

 

 

理琉は、涼、小春を連れてダイソーへ向かった。クラスメート40人分のクラッカーを購入。

 

 

 

 

 

 

「880円になります」

 

「カードでお願いしまァす」つブラックカード

 

 

 

ダイソーから出た三人。

 

「ねえマサル君、先生へプレゼント買っていく?」

 

「そォだな。折角モールへ来たンだし、買ってくか」

 

「なあ、佐倉先生ってどんなのが好きなンだ?」

 

 

…………

 

 

「何だろう…」

 

「さァ…」

 

「…しゃァねェ。適当に回るか」

 

 

三人はモールを一通り回って行く。何階か上に行った後、何やら目に付くものがあった。

 

 

「このクマ、絶対好きだよな」

 

「ミニクーパーのバックミラーにもついてたな」

 

「そういえばついてたね」

 

 

そんな話し合いをしていると、一人見覚えのある少女を見つけた。

 

 

 

「あれ、マー君!」

 

「ン?やっぱり由紀か!」

 

 

 

同じ店に由紀がいたのだ。恐らく彼女も慈に何をあげようか考えていたのだろう。首を傾げて腕を組んでいたのを理琉は見ていたから。

 

「オマエも佐倉先生へのプレゼント考えてンのか?」

 

「うん。でもこのクマは持ってると思うし…」

 

「コレか?…ってデカッ!!人一人分くらいあるぞ?!」

 

涼があまりの大きさに驚いている。

 

「うわあ…高そうだね…」

 

「いくらだァ?」

 

 

値札には143000円と書いてある。

 

 

「……よっこらしょっと。そうしたらコレ買っていくか」

 

「え、こんな高いのに?」

 

「こンなの俺のポケットマネーで賄えるさ」

 

 

 

 

巨大なクマのぬいぐるみを購入し、当日、慈の家に郵送するように頼んだ。

 

 

 

 

「ねえねえマー君!私、めぐねえの家の合鍵持ってるんだけど、当日そこでパーティの準備しない?」

 

「合鍵なんて持ってたのか。いいンじゃね?」

 

「小春ちゃん、真冬ちゃんたちにも声かけてくれるかな?」

 

「うん、良いよ。明後日だよね?」

 

「うん!みーくんたちにも来て欲しいから、お願い!」

 

 

「良いよ!お姉ちゃんに任せなさい!!」ココアボイス

 

 

 

小春がモノマネをしたせいか、

 

「ぐはっ(吐血)」バタッ

 

理琉が気絶した。

 

「オイ黒田、大丈夫か?!」

 

 

「こ、ココアちゃんが目の前に…ガクッ」チーン

 

 

「昇天しやがった」

 

涼は呆れながら理琉を運び、家へと送っていくことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは…家…俺いつの間に帰ってたンか」

 

「ねえねえ大丈夫…?」

 

近くには小春がいた。

 

「おわっ、小春か。びっくりしたァ」

 

 

「ココアの真似しただけで倒れるなんて、どんだけ好きなの…」

 

小春に若干呆れられている。理琉は苦笑いし、頬を掻く。

 

「ま、まァ、そこは大目に見てくれや。俺はそういう人間だってな」

 

「フフッ、マサル君ならそう言うとは思ってたよ」

 

「そういや、今何時だ?」

 

「もう朝の7時だよ?」

 

「おわっ、まさか日を跨いだってことか?!」

 

「うん、まぁね。ご飯出来てるから、一緒に食べよ?」

 

食卓には朝食が並んでいた。理琉は起き上がり、ダイニングへと向かう。

 

「おはよう、マサル」

 

「おはよう。悪いな二人とも、朝飯まで作ってくれて」

 

「ううん、いいのいいの。私達が好きで作ってるだけだから」

 

隣にいる真冬もコクコク相槌を打っている。

 

「マサル…先生の家でパーティ開くって言ってたけど、どうするの?」

 

小春がコップを片手に問う。具体的な内容はまだ話していなかったので理琉は答える。

 

「俺のプランとしては、当日の参加者はいち早く由紀と一緒に先生の家にお邪魔する。そこで色々装飾し、先生が帰ってきたところでまた……」

 

「「また…?」」

 

 

 

「サプラ〜イズ!!……って感じ」

 

 

 

「フフッ、先生喜ぶかもね」

 

「マサルってこんなキャラだったっけ……?」

 

「この短編だけはこのキャラで行こうと思ってる。流石にスピンオフや、本編、異世界モノではこのキャラはやらねェよw」

 

「へ、へぇ」

 

尋常じゃないメタ発言を放つ理琉を適当に流す二人。

 

 

 

朝食が済み、食器を片付ける理琉。

 

「私がやるから良いのに…」

 

「いや、作ってもらったのに洗わせるなンてバカなことァできねェよ。外で待っててくれ。着替えて来るから」

 

理琉は食器をサッと洗い、登校の準備をした。通学鞄にモノが入っているかしっかり確認していく。姿見の前で制服を着用。

 

「よしっ、行くか」

 

 

杖を持って歩くというものに中々慣れることが出来ない。これは自分が犯したミスなので他に責任転嫁することは出来ない。裏を返せば他人の所為にしているだけ。それは避けたい理琉は、『全て自分がやったことだ』と言って割り切ってしまう。もっとも、由紀たちには今でも気を遣わせてしまっているのだが。前のように自由には動けないが、出来ることを全うしていこう、と気を張っていく理琉。プライドが高いのだろうか…

 

 

 

「待たせてすまン。行くか」

 

「「うん!」」

 

 

 

 

 

 

「よう、黒田」

 

「柚村か。どォした?」

 

「色紙、全員書き終わったぞ」

 

「早っ。マジか、ありがとうな」

 

理琉は貴依から色紙を返してもらい、自身の通学鞄へとしまった。

 

「あァそうだ。全員分のクラッカーを買ってきた。明日の朝配るから待ってろよ」

 

「マサルは仕事が早いなぁ」

 

胡桃が苦笑いしながら理琉に言う。

 

「作者が熱いンだよ。あの野郎、『めぐねえの誕生日公開されたから急遽短編を書く』って俺に言ってきたからな。投稿日は3日ほど遅いけど」

 

「作者のめぐねえ愛が強すぎるなwww」

 

「あ、でも最近は胡桃も良いって言ってたな」

 

「なっ、冗談はよせよw」

 

学園生活部以外の人間には何を話しているのかさっぱり理解出来ていない。作者、中の人ネタ、メタ発言が通じる人間はこのメンバーだけだからだ。

 

 

「めぐねえ来たよ」

 

 

「はーい、席についてくださいね〜」

 

今日も一日の始まりを知らせるチャイムが鳴り、授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通り昼食を摂る学園生活部メンバー。

 

「真冬ちゃん、その玉子焼き美味しそうだね!」

 

果夏が真冬の弁当を凝視している。いかにもちょうだいアピールをしているような雰囲気だ。

 

「…食べてみる?」

 

「うん!!」

 

 

 

「そうだ、マサルくん。今日私の家でケーキを作ろうと思うんだけど、参加してくれないかしら?胡桃たちも来てくれる?」

 

「りーさん、ケーキも作れるンか」

 

「ええ。何度かるーちゃんと一緒に作った事があるわ」

 

「アハハ、瑠璃ちゃんって器用なんだな。OK、放課後行くぜ」

 

胡桃も了承し、放課後全員で悠里の家へ行くことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

「はいよ。真冬、小春、行こうぜ」

 

 

悠里に家へと向かう理琉達。由紀と涼が楽しそうに話している。

 

 

「美紀、前先輩にチョコ渡した時みたいに、失敗したらどうしよう、とか思ってるんでしょ〜」

 

「け、圭!忘れてよ〜…」

 

「アハハハ!でも、美紀らしいや」

 

圭の言葉に若干頬を染める美紀。満更でも無さそうだ。

 

 

悠里の家の玄関には瑠璃がいた。

 

 

「あ、りるにーいらっしゃ〜い!!」

 

「おわっ、(ドスッ!!)痛ェ…だから、俺は『りる』じゃなくて『マサル』」

 

理琉に飛びつく瑠璃。杖をついている理琉はその場で倒れた。

 

「お前は相変わらず瑠璃に好かれてるんだな。ロリコンなのか?」

 

胡桃に肘鉄される。

 

「痛っ、ちげェし!つか、純粋な娘の前でそういう発言するな!!」

 

「りるにー、ろりこんってなに〜?」

 

「瑠璃ちゃんは入ってはいけない領域だ。聞かなかったことにしてくれ」

 

 

「さあ、始めましょうか。るーちゃんもやる?」

 

「うん!!りーねーとりるにーがいっしょならやるー!」

 

悠里の妹も参加することになり、総勢11名となった。

 

 

「たった一つのケーキを作るのに、大人数すぎるとは思うが、その分デカいケーキを作るぞ!」

 

「涼が随分とノリ気だな。こりゃァ景気(・・)が良いってか?」

 

 

…誰かストーブ持って来てくれ。

 

 

「寒いこと言って悪かったな!!」

 

 

 

予め購入していた生地や生クリームなどをダイニングとキッチンに準備をし、早速作業に取り掛かる。ケーキの生地を混ぜ、それを型に詰めていく。途中、由紀と果夏が生地をつまみ食いしたため悠里に滅茶苦茶説教されたのは別のお話。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、後は、コレを焼いて、飾りを付けて完成ね」

 

 

そして…

 

 

 

 

「「「「「「「「「「「完成!!!!!」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

20インチほどのホールケーキが完成した。イチゴ、ホイップクリーム、チョコプレートなど、飾りは定番のモノを使った。

 

「めぐねえ喜ぶね♪」

 

「そうね。みんな、ありがとう。明日コレをめぐねえの家に持っていくわね」

 

「俺たちは当日早く帰って部屋の中を装飾するぞ」

 

「楽しみだね、真冬ちゃん!」

 

「カナのパーティじゃなくて、先生のパーティだよ……?」

 

「それでも!真冬ちゃんと一緒にいられるには変わりないんだし!」

 

 

「じゃァ、今日は解散にするか。三年の人間、明日は頼んだぞ」

 

「「「「「ああ!(うん!)(ええ!)」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月10日当日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、おはようございます。今日の連絡は―――」

 

 

朝のHRが終了。

 

「じゃあ、7時間目お会いしましょうね」

 

 

ガラッ バタン

 

 

 

 

 

「全員、作戦はわかってるよなァ?」

 

「ああ!」

 

全員のサプライズ準備は万端のようだ。また、7時間目が始まる前にクラッカーを配布すると全員に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

「時間、間に合うかな?」

 

「何がさ」

 

由紀が不安そうな顔をしている。

 

「めぐねえが家に戻る前に準備進められるかなって…」

 

「心配すンなって。さほど遠くないし、先生だって放課後も忙しいンだから」

 

「そう…だよね!」

 

「ん?何話してるんだ?」

 

胡桃が来た。

 

「先生の家でのアレ、間に合うかなって話してたンだ」

 

「まぁ、大丈夫だろ!マサルがしっかり働いてくれるんだからさ」

 

「俺はオマエの奴隷か!!」

 

理琉がキレていると、胡桃が笑い出す。それを見ている皆が笑顔になる。一見当たり前の光景だが、両親がいない理琉にとっては一番の癒やしであったりする。

 

 

 

 

午後の授業。

 

5、6限は数学2時間という、理系特化の理琉にとっては貴重なスリーピングタイムだ。

 

「ZZZ…」

 

「マサル…起きろ…作戦どうするんだよ…」

 

「ン…ンアァ?ふァ~…」

 

胡桃に起こされ、眠気が覚めた。

 

 

「そォだったな。先生が来る前に早く配らないと」

 

 

休み時間は10分。理琉と涼の二人で配り終えた。

 

 

 

 

 

「それでは、授業を始めますよ~」

 

 

そして、何事もなく授業が進んでいく。全員の机の中には理琉が買ってきたクラッカーが入っている。

 

 

 

 

「—————————ちょっと早いけど、今日はここまでにします。それじゃあHRを『『先生!!!』』え…何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「お誕生日、おめでとう!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!!!

 

 

 

 

全員のクラッカーが一斉に鳴った。

 

 

 

 

「えっ?!ええぇっ!!??」

 

 

 

 

すると、涼が理琉から色紙を慈へ渡した。

 

 

 

 

 

「先生が今日誕生日だって言うから、みんなでサプライズ計画立ててたンですよ!」

 

 

「そ、そうだったの?!!」

 

 

「はい。喜ぶと思って。これは僕たちからのお祝いメッセージです」

 

 

 

 

 

「みんな……グスッ……ありがとうっ……!!」

 

 

 

 

 

あまりの嬉しさに涙を見せる慈。胡桃ちゃんなんかもらい泣きしてますよw

 

 

 

 

 

パチパチパチパチ!

 

 

 

 

 

拍手が巻き起こる。

 

 

「…先生から一言。みんな、本当にありがとう!こんな私だけど、これからもみんなと一緒に生活できたら、と思っています!グスッ…もう、私ったらこういうのに弱いからなぁ……」

 

 

涙を指で拭う慈。全員がクスッと笑う。慈も笑っていた。理琉も、涼も…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サプライズ大成功。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、これだけでは終わらないのが、理琉達によるサプライズだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

 

 

 

 

「よぉし、みんな、行こう!!」

 

 

「おォ!!」

 

 

「行くぜ!!」

 

 

 

 

由紀、胡桃、悠里、理琉、涼、小春、そして合流してきた美紀、圭、真冬、果夏の10人で慈の家へと走って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

慈の家へとお邪魔し、早速装飾を始める。悠里は一旦家に戻り、昨日作ったケーキを瑠璃と一緒に持参し、その他はパーティー用のお菓子やジュース(酒は無し)などを購入し、二年生組は飾り付けなどを大急ぎで。

 

「ケーキも準備万端ね。それじゃあ、電気を消して先生を待つわよ」

 

 

 

 

PM7:00

 

 

 

 

 

ミニクーパーが駐車場に入ってきたのを確認した。

 

 

「お、来たな。全員位置につけ!」

 

胡桃の指示で配置につく。二年生組が玄関の近くで彼女を迎えるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…今日も疲れたなぁ…」

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

 

 

 

 

パァン!!!

 

 

 

美紀 圭 果夏 真冬「「「「先生!お誕生日おめでとうございます!!!」」」」

 

 

 

三年学園生活部 「「「「「「おめでとうございます!!!!!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

「ウソでしょッッッ!!???」

 

 

あまりにも驚いている。

 

 

「めぐねえ!こっちこっち!!」

 

「由紀ちゃん?!」

 

 

 

ダイニングテーブルにケーキが置いてあるのを見てさらに驚いた。

 

 

 

「ええええぇぇぇッッッッ!!!!!!!」

 

 

 

「よっと。先生。今日のあれだけで終わると思ってたでしょ。俺たちのサプライズはそンな温くないぜ?」

 

「昨日、一昨日で決めてたんだ。あたしらでどうお祝いするかってな」

 

「ケーキも作ったんです。みんなで食べましょう!」

 

 

 

 

「…うんっ!みんな本当にありがとうっ…先生嬉し過ぎて死んじゃうわ…」ボロボロ

 

 

 

 

「佐倉先生、そこのドア開けてみてください」

 

美紀と圭に誘導され、ドアを開く。

 

「まあっ!!」

 

そこには先日購入した人一人分の大きさをしているクマのぬいぐるみがあったのだ。

 

「これ、欲しかったやつ…でも高いからずっと諦めてたのに…」

 

「これさ、マサルがポケットマネーで買えるって言って買ってきたんだぜ?」

 

胡桃が由紀と小春から聞いた情報を教えた。

 

「あら、そうだったの?!」

 

「これくらいなら楽勝っs「ありがとう黒田君!!!!」」ガシッ

 

慈が急に抱きついてきた。

 

「ちょっ!先生!!苦しいよっ!」///

 

 

 

「写真撮っておくか。後で晒してやろうw」

 

涼がそんなことを企むが、

 

「涼くん、それはやめとこ?」

 

「うん、マサルが流石に可哀想だよ」

 

「…そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

その後もパーティを楽しむ。涼がいつの間にか持ってきていたニンテンドースイッチで桃太郎電鉄やもじぴったん、太鼓の達人などをやり、大いに盛り上がった。

 

 

「ん!このケーキ美味しい!!!」

 

「このスポンジ、由紀がやったンだぜ」

 

「さあ、みんなも食べよう!!!」

 

由紀は切り分けたケーキをメンバー全員に配り終え、全員で賞味した。

 

 

 

「う、うめェ……」

 

「甘い…美味い…」

 

「こりゃ美味いな」

 

「お、おいしい…」

 

「真冬ちゃん!このイチゴおいしいよ!」

 

「フフッ、そうだね」

 

「圭、鼻にクリーム付いてるよ」

 

「え?あ、本当だ」

 

「るーちゃん、美味しい?」

 

「うん!!とっても!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、今回のサプライズは大成功だなァ。…ン?メールが…!!天々座理琉(リル)……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ファッ!!?三日後モカねえの誕生日だと!!??」

 

 

 

 

 

 




めぐねえの誕生日が公開された、ということで急遽投稿いたしました。4日ほど遅れてしまい、すみません。




…と思って書いていたら、なんとごちうさのモカねえとめぐねえ、誕生日が3日違いだという事に驚きました!!


リルという人物はファンタジー・オブ・ローンウルヴズに出ている人物と同じです。


そこでちょっとだけクロスオーバーさせてみたくなりました。めぐねえとモカねえは中の人繋がりでいける、と思い、最後の方でちらっと出しました。

1日遅れですが、モカさんお誕生日おめでとう!!


では、次の投稿でまた会いましょう!!


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短編 おくりもの 0807

夏休み真っ最中の今。学園生活部の(胡桃を除いた)面々は、由紀の自宅へ集まっていた。一体何が始まるのか。


「ねえねえ!一週間後、胡桃ちゃんの誕生日でしょ?」

 

由紀の自宅リビングで輪を作って話しているのは、理琉、涼、小春、悠里、真冬の四人。

 

 

「そういえばもうそんな時期だなァ…時の流れは早いモンだ……」

 

「黒田っておっさんみてえだよな」

 

「るせぇ」

 

 

スマホのカレンダーを見て、日にちを確認する。今日は8月1日。現在夏休みだ。

 

 

 

「でも、学校ないからお祝いできないんじゃないかな…?」

 

小春は腕を組みながら現在置かれている状況を話す。

 

「そうね。それにサプライズするなら前のめぐねえの時よりもスゴイモノにしないと……」

 

 

りーさん、作者にプレッシャーを与えるなよ……

 

 

「だってずっと同じじゃマンネリ化しちゃうでしょ?由紀ちゃんの誕生日も、小春さんの誕生日もこっちじゃお祝いできたけど、作者さん参加できなかったじゃない?」

 

 

今現在の活動状況よくご存じでいらっしゃる。スミマセン、当時めちゃくちゃ忙しくて……

 

「僕としては、彼女の家に行ってお祝いするのが筋だとは思うんだけど…」

 

「でも……具体的に何をするの……?」

 

真冬の素朴な疑問に由紀は自信満々な様子。

 

 

 

 

「ふっふっふ~…そんでね、私考えちゃったんだ~」

 

 

何やら得意げにそう宣言しているが、はたして何を言い出すのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「名付けて、『胡桃ちゃんがマー君の家に何気なく遊びに行ったらみんながいた!!』作戦!!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「あはは……なんともそのまんまだね……w」

 

「つか、なんでウチってことになってンだ?」

 

「だって胡桃ちゃん、よくマー君の家に遊びに行くでしょ?噂じゃ朝帰r「ちょっとまったァァァァ!!!!」

 

「胡桃ちゃんは確かにウチに遊びに来たことあるけど、そこまでしてねーよ!!!!」

 

 

「「「破廉恥……」」」

 

 

「そのドン引きした視線向けないで!!落ち込むから……」

 

 

「でも、胡桃ってマサル君の家しか知らないはずよね?」

 

一応今回だけの設定でそうしているだけで、普通のスピンオフじゃ知ってる設定だよ。

 

「別に俺としても反対ではないが……仮にそうするとして、どうやって胡桃ちゃんをウチに連れてくるンだ?」

 

 

「フフッ、二人でデートでもしてくればいいじゃないw」

 

「で、デート!?」

 

りーさんのやつ、悪魔の笑みを浮かべてやがる。とでも言いたそうに悠里を見る理琉。

 

 

クルミサントデートクルミサントデート…マサルクンノトナリハワタシノモノナノニ」ブツブツ

 

 

「小春?どうした?」

 

「お姉ちゃん?」

 

 

「え……?あっ、ううん!なんでもない!」

 

 

「デートっつってもなぁ……俺女性経験ねェからよくわかんねぇよ……」

 

「おまけに黒田は鈍感と来た」

 

「オマエに言われちゃおしまいだな」

 

「んだと?!」

 

 

 

そんなこんなで、勝手に物事が進んでいき、胡桃の誕生日は理琉の家で祝うことになった。由紀の作戦を採用することに。

 

 

 

 

「ンじゃぁ、各自何か胡桃ちゃんに渡したい物があったら用意しておいてくれ。真冬、後で美紀たちにも声かけてくれないか?」

 

 

「うん。任せて」

 

 

 

「よし、今日は解散するか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当日までは一週間ある。メンバーはその間にプレゼントの類を準備し始めた。理琉に至っては胡桃を誘って遊びに行くというプランも立てねばならない。

 

 

 

(一応、店予約しておくか)

 

 

 

一応横浜駅付近にある高級レストランを予約し、準備は整った。あとは胡桃の反応を待つだけ。パソコンを閉じると、胡桃に一本の電話を入れた。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

『ん?どうした?』

 

 

 

「あ、胡桃ちゃん。金曜日空いてるか?」

 

 

 

『空いてるけど…?』

 

 

「その日、俺とどっか行かね?」

 

 

『ふ、二人でっ?』

 

 

「あぁ。二人だ」

 

 

受話器の向こう側では顔を真っ赤にして悶えている胡桃の姿があった。

 

(そそそ…それって…で、デートってやつ?)

 

 

「だってオマエ、7日誕生日だろ?だから、お祝いさせてよ」

 

『そんな…気を遣わなくていいのに……』

 

「ここは男として譲れない。キミに最高の贈り物をしたいんだ」

 

『そ…そうなんだ……わかった。何時集合?』

 

 

「朝の五時」

 

 

『早すぎるわ!!!!』

 

「冗談冗談、根岸駅に8時くらいでいいぜ」

 

『了解。期待してるぜ!』

 

「はいよ。じゃあまた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦決行の前日。

 

 

コンコン

 

 

「あ、小春いるか~?」

 

 

 

「……ん~?どうしたの?」

 

 

 

「これ、スペアキー。俺当日早いからさ」

 

ポケットから金属の物を取り出すと、小春にそれを手渡す。

 

「うん。わかった。ここは任せてね!」

 

「ああ、任せたぜ」

 

 

 

 

 

「………はぁ…」

 

 

ドアを閉めると小春は大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

当日

 

 

 

 

 

 

 

 

午前7時30分。根岸駅前にて一人の少女が待っていた。

 

 

「早く来すぎたかな」

 

 

胡桃は楽しみのあまり予定時刻より早く来てしまった。

 

 

「く、胡桃早ェな」

 

 

それはどうやら理琉も同じだったみたいだ。

 

 

 

 

「よっ」

 

「おはようマサル」

 

「悪いな遅くなって」

 

「かれこれ一時間待っ……なんでもない」

 

「集合時間8時だよな?ははぁん……もしかして楽しみ過ぎて6時半くらいからここにいるんだなァ?」

 

「ぶふっ!!」

 

 

やはり図星。

 

 

「お、お前が誘ったんだからな?ちゃんとあたしをエスコートしろよ?」

 

「りょーかい、お姫様」

 

「いつからあたしはお前の姫になったんだよ…」

 

 

 

 

 

それから二人は横浜へと向かい、昼までゲーセンで満喫。(理琉はゲームがヘタクソのため、レーシングも音ゲーも全部胡桃に負けるが)

 

 

「なぁ、これやってみない?」

 

「ン?何々…プリント俱楽部…?なんだそれ」

 

「ウソ、知らないのか……」

 

「ゲーム機とかは知ってても、これは初めて見たぜ……」

 

「なら、撮ってみるか?」

 

「俺ァ別に構わねェが……」

 

 

なら決まりだ!と、胡桃は理琉の手を引いてプリクラのマシンへと入っていった。

 

 

「俺こういうのよくわかんねぇから任せたぞ……?」

 

「はいはいっと」

 

 

フレームを選んでいる胡桃。フツーのヤツか、ハート型かで迷っているようだ。うーん…と唸り声をあげていると、理琉に話しかけられた。

 

 

「な、何だよ!!」ビクッ

 

「これなんかどうかな?」

 

 

すぐ隣にあったのは、Happy birthdayと書かれたフレーム。一見なんでもなさそうに見えたが、胡桃は結構気に入ったのかこのフレームを選択した。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「えへへっ……ありがとな。プリント代まで払ってくれて」

 

「これくらい普通さ。んじゃぁ、昼飯食いに行くか。良い店予約しておいたンだ」

 

「なんか妙な予感……」

 

 

 

 

その予感は的中。理琉達がいるのは高級ホテルの中にある高級レストラン。高校生が普通は行かないようなところだ。

 

 

「こ、こんな高い店予約してたのかよ……」

 

「あァ。そしてこれも全部俺のおごりだよ」

 

「なんか、本当すまねえな」

 

 

「…なんというか…俺がしたくてしたことだからさ、『すまねえ』って言われるより、『ありがと』って言われた方が俺としてもやり甲斐があったなって思えるんだ。せっかく胡桃ちゃんの誕生日だから、喜んでもらいたくて……」

 

 

「……」

 

紛れもない本心。始めはプランの一つに過ぎなかったが、理琉にとってはまたとない好機だった。正直由紀の作戦はひっくり返るほどだった。だがこうして胡桃を喜ばせることが出来たのも事実。心の底から『ありがとう』って言われたい…そんな単純な男なのだ。黒田理琉ってヤツは。

 

「それもそうだな。ありがとな、めっちゃ嬉しい」

 

両者、自然と笑顔が零れる。作った笑顔ではなく、本物の笑顔。

 

 

しばらくすると、ウェイターが料理を持ってきた。

 

 

「お待たせいたしました」

 

 

「おお…美味そう……」

 

「こりゃァ美味そォだ」

 

 

運ばれてきたのは高級和牛ステーキ。赤ワインソースのかけられた逸品。(飯テロ注意)

 

 

「はむっ……う…美味い……」

 

 

「や、柔らけェ……」

 

 

口の中で蕩ける牛肉と赤ワインの香り…まさに天国のようであった。

 

 

 

 

 

それから色々と料理が運ばれ、デザートにはケーキも来た。

 

 

 

 

 

 

Happy birthday Kurumi

 

 

 

 

 

 

皿に描かれていたその文字は、胡桃を泣かせるモノだった。

 

「そちらのお客様がご予約の際にこうしてくれとおっしゃっておりました。素敵な彼氏さんですね。ではごゆっくり……」

 

 

「…ずるいよ……こんなの……」

 

 

「粋だったろ?」グッ

 

 

「すっごい嬉しい……」

 

 

「アハハ、泣くほど嬉しかったンならよかったよ…」

 

 

 

 

 

そんなこんなで数時間。レストランでの食事が終了し、会計へと進んだ。

 

 

 

「二名様で8万4000円です」

 

「カードでェ」つブラックカード

 

「ちょっとあたしトイレ行ってくるぜ」

 

「はいよっと」

 

 

理琉は胡桃が行ったのを確認すると、スマホを開き、由紀たちと連絡を取り合った。

 

↓チャット

ゆき『マー君、胡桃ちゃんとのデート、うまくいってる?』

 

Masaru『あぁ。あと、こっちはもうすぐ戻る。準備は進んでるか?』

 

りょう『おう。今、りーさんがケーキ持ってきてくれたんだよ』

 

こっはー『私達も、色々持ち寄ってるからね?』

 

まっふぅ『…ボクも作ったんだ』

 

Masaru『お、良いじゃないか』

 

みき『先輩、早く戻ってきてくださいね。こっちは結構待つことになるんですから』

 

Masaru『わかってるさ』

 

ケー『先輩、もしかして胡桃先輩に何かエッチなことしてませんか?』

 

マサル『してねーわ!!!圭ちゃん、あとでちょろっとお話しようか~?(#^ω^)ピキピキ』

 

ケー『わーこわい(棒)』

 

ゆうり『二人とも、気を付けて帰ってきてね』

 

Masaru『りょ。おっと、胡桃来たから一旦落ちるぜ』

チャット終

 

 

「お待たせ」

 

「おォ。じゃあ、そろそろ帰るか?」

 

「そうだな。……えっとさ、お前んち寄って良い?」

 

「あぁ、いいぜ。そうだ、こんな高い店行ったってのは内緒な?」(計画通り)

 

「わかってるよ」

 

 

 

二人は京浜東北線に乗り、横浜を後にした。

 

 

 

「…なんか量そこまで多くなかったから腹減ったな……」

 

「オマエもか。俺もだ。戻ったら何か食うか?」

 

「お前の手料理か?」

 

「お、俺って料理できそうに見えるか?」

 

「見えない」バッサリ

 

「うっ……」

 

 

 

根岸駅へ到着し、理琉の自宅へと向かう二人。

 

 

「えっと、今日は本当ありがとな。今までで一番楽しい誕生日だったよ」

 

「あぁ。こんなことしか出来ない俺だけど、胡桃ちゃんには……笑顔でいて欲しいからさ」

 

「お前ってそういう恥ずかしいコト堂々と言えるよな……」

 

「え?恥ずかしいって…何が?」

 

(コイツ無自覚だったのか)

 

 

ヴヴッ

 

 

(ン?メール?)

 

ゆき『準備万端!いつでもできるよ!!』

 

Masaru『おk。こっちももう着くぜ』

 

 

 

自宅マンションへと着き、エレベータで上階へと行く二人。

 

 

 

「着いたぁ……」

 

「お、お邪魔します……」

 

「はいよっと」

 

 

 

 

家の中は真っ暗だ。

 

 

 

 

「暗っ……」

 

「電気付けるか」

 

理琉の手には、暗くてよく見えないがクラッカーが握られていた。

 

 

 

 

 

 

パチッ

 

 

 

 

 

 

パァン!!パァン!!!

 

 

 

 

 

「「「「「「「胡桃ちゃん!!お誕生日おめでとう!!!!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

「えっ?えええええっっっっ!!?」

 

 

 

 

 

「サプライズ大成功!!!」

 

由紀が景気よく飛び出した。

 

「ま、マサル…これって……」

 

「みんなで計画してたンだ。胡桃ちゃんの誕生日はこんな風に祝おうって。発案者は由紀だけどな!」

 

 

顔なじみのメンバーから渡されるカラフルな箱。その中には思い思いの物がたくさん入っていた。

 

 

「おまえらぁ………」

 

胡桃はぼろぼろ泣いている。だが、頬が緩んでいる以上、これは嬉し泣きというのは全員理解できた。

 

「このケーキ、りーさんが作ったんだよ!」

 

「この前由紀の誕生日祝った時のとおんなじやつだ!」

 

「う、うまそォ……」

 

「えっと、この寿司は私達が作ったよ!」

 

小春と真冬の合作の握り寿司だった。

 

「先輩、このフルーツは私達からです」

 

「是非食べてください♪」

 

ラ・フランスや、スカイベリーなどの高級果実がテーブルに並べてあった。

 

 

「みんな……ホント……ありがとう……あたしは…超シアワセだぜ!!!!」

 

 

「オィオィ、キャラ崩壊もほどほどになw」

 

 

 

 

 

全員の笑い声が理琉の部屋のリビングに響き渡った。

 

 

 

 

 

 




胡桃ちゃんHappy birthday!

…というわけで胡桃ちゃんの誕生日短編を書いてみました。最近更新できなくて本当申し訳ないです。胡桃ちゃんは私の最推しなので、絶対書こう!とは思ってましたが、投稿が半日遅れてしまいました……

読者様がこの作品を楽しんで頂ければ良いなと思いながら、作品を投稿しておりますのでこれからも何卒宜しくお願い致します。

そしてこの小説をここで初めてご覧になった読者様、この度は【がっこうぐらし! ~一匹狼の護るべきもの~】を手に取っていただき誠にありがとうございます。不定期ながら更新していきますので宜しくお願い致します。また、私は【あんハピ♪ ~Unknown Happy~】や、【ご注文はうさぎですか? ~Rize's Brother~】も不定期投稿しておりますので是非ご覧ください。


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おまけIF編:がっこうぐらし! ~Resident Evil ∞~
第一話 新たな任務


あったかもしれないもう一つの物語。

新シリーズ【がっこうぐらし! ~Resident Evil (infinity)~】開幕

IFストーリーですので、本編とは一切関係ありません。


あの時、俺は死んだと思っていた。クリストファーに腹部を刺され、大動脈に接触し、失血死………していたかもしれなかった。

 

 

「がッ………」

 

 

かろうじて残った意識。俺は無線を拾い、とある少女の通信を聞いていた。

 

 

『―――ここにいるよ』

 

 

「……まだ、俺にもやれることがあるじゃねェか………」

 

腹部に刺さった金属棒は抜かず、近くに置いてあったヘリコプターへと歩いて行った。…痛い。苦しい。熱い。様々な感覚が俺を地に落とそうとしていた。

 

「クソッたれが……アイツらを守れなくて何がみんなでヒーローになるンだとか抜かしやがる……こんな所でくたばってたまるかッ!!ゴハッ……」ビシャッ

 

意識をはっきりさせようと俺の脳が働きかけるが、血が足りない。

 

「このヘリで、迎えに行かねェと……」

 

 

―――俺の任務は学園生活部の安全を守ること。それを達成させるためには、自分が死んじゃダメだ。生きて、必ずや由紀たちの元へ帰るんだ。

 

 

 

 

 

『あの時の返事!まだ聞いてない!!』

 

 

一瞬、本社で発せられた由紀の言葉が頭に浮かぶ。「大好き」と遠回しに言っていたような発言。まるで有名な詩人が訳したような……そんな感じのヤツ。あの娘に…今度こそちゃんとした返事をしてあげなければ、きっと死んだ小春も報われない。あの時は……返事も返せずに死んでしまったのだから…………

 

 

「ありがとう…キミのお陰で、一歩を踏み出せるよ」

 

 

ヘリコプターのエンジンを起動し、プロペラを回す。

 

 

「エンジンよし。プロペラよし。上昇!!」

 

 

ヘリコプターを離陸させ、由紀たちの高校へと向かった。かつて彼女らと過ごしたあの高校。今はどうなっているのだろうか。

 

 

「あそこだな」

 

漸く見えてきた学校の校舎。相変わらずボロボロだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブロロロロロロロロ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

屋上で一人座っているわたし…あの通信から一体どれくらいかかったのだろうか。実際そこまでかかっていないのかもしれない。

 

「!!…あ、あれは……おーい!!!ここだよ!!」

 

わたしは両手を大きく振って、飛んでくるヘリコプターへ合図を送った。するとあのヘリは校庭のど真ん中へと下降していった。わたしは急いでみんなの所に戻る。

 

「みんな!!ヘリが来たよ!!多分ランダルの人たちだよ!!」

 

「本当ですか!?」

 

「やっと……」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

 

 

「よっと…痛ェなこれ」

 

刺したままにしてある金属棒のようなモノがヘリのあちこちに当たるため、痛みが来る。早くこれ取りたい。残弾数の少ないショットガンで近くのゾンビを蹴散らし、弾は完全になくなった。

 

「……人影が見えるな。行ってみよう」

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

わたしは急いで一階へと降り、着陸したヘリに向かった。マー君に託された銃を抱えて……

 

「!!!あれ……もしかして………」

 

目を疑った。でも、あそこに見えるシルエットは彼以外考えられなかった。

 

「由紀先輩!走ったら転びますよ!!」

 

わたしは脚を挫いている。でもそんなのお構いなしにひたすらに走った。

 

 

 

「マー君ッ!!!!」

 

 

 

―――――――――

 

 

理琉は少女の声に気づき、声の聞こえる方向へと目を向けた。

 

 

「ゆ…由紀……」

 

彼の方へ走ってくる少女、丈槍由紀。

 

「マー君!!」ガシッ

 

「おおっと……」

 

「よかった……本当によかったよぉ……」

 

「すまねェな。心配かけたみたいで」

 

「ううん…マー君が帰ってきてくれただけで、わたしは十分だよぉ…!」

 

「……ありがとう、待っててくれて」

 

 

昇降口から美紀と真冬、そして後から合流した胡桃、圭、悠里はその様子を見守っていた。

 

 

「ったく、熱いねぇあの二人は…」

 

「もう、胡桃。茶化さないの」

 

「……よかった。生きて帰って来れて……」

 

 

 

 

抱擁を交わした二人だが、由紀はあることに気づく。

 

「って、マー君血だらけだよ!?」

 

刺さっている金属棒を見て驚く由紀。

 

「アハハ、やらかしちゃいましてね」

 

「もう、戻ったらお説教だからね?」プンプン

 

 

「…ハイ」

 

 

説教、特に悠里の説教は怖すぎると聞く。

 

 

……と思っていた理琉なのだが、いざ戻ってみたら説教ではなく、皆涙目で理琉に抱きついてきたのだ。

 

 

「ちょっ、オマエら…っつ……」

 

抱きつかれた衝撃で傷が痛む。

 

「心配したんだぞ!」

 

「ボクらを置いて行くなんて……」

 

「……すまん」

 

 

由紀に裾を掴まれる。

 

 

「マー君、ちょっと来て…?」

 

「ん?」

 

「ごめんみんな、ちょっと二人きりにさせてくれる?」

 

「ええ。ゆっくりお話ししてね」

 

 

「ちょっ、俺何されるの?」

 

 

由紀に連行されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねえ、マー君」

 

いつも被っている帽子を外し、真っ直ぐ理琉の方を向く。

 

「何だ……?」

 

「これ……」

 

由紀が渡して来たのは、託したウィンチェスターM1887だ。

 

「わたしに『戻ったら渡してくれ』って頼んだでしょ?」

 

「ああ、そうだな。ありがと、大事に持っててくれて」

 

「それでその……お返事も聞きたいなぁって…………」モジモジ

 

「あれか。だから二人きりで話したかったのか」

 

「うん…///」

 

「ったく、調子狂うぜ…こういうのに耐性無いからよ…それにああ言われたの、小春以来だからさ。複雑っていうかなんて言うか……」

 

「……///」

 

告白はこれが初めてではない。最期にか細い声で小春に囁かれてから実に三年ぶりの告白だ。それまでずっと、誰とも付き合わず、恋もしなかった。自分が相手に恋をすれば、また遠い所へ行ってしまうのではないかと思って………だがそれは違うという事に気づかされた。恋することに罪は無い。むしろ素晴らしいことではないか…と。小春への想いは一生消えない。だからと言ってずっと独り身というわけでもない。彼はこう見えて結構寂しがり屋なのだ。誰かがそばに居なければ、きっとどこかで壊れてしまうだろう。それは自分でもよく分かっていた。

 

 

その上で、彼女への答えも自ずとわかってきた。

 

 

「…俺は俺自身で小春を救えなかった贖罪として……でもいつまでも引き摺っていたらキミも守れないかもしれないな。だから……正直に言う。……俺も由紀の事大好きだ。こんな俺でよければ、そばにいて欲しい」

 

「っ……///」

 

「……全く、恥ずかしいったらありゃしねェ…ほら、さっさと戻るぞ。由紀」

 

「うんっ///」

 

由紀は理琉の左手を握り、皆の元へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからおよそ3年が経つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メンバーはそれぞれの道へ進む………………………はずだったのだが…

 

 

「俺はアメリカの様子を見てくる。恐らくあっちも無事では済まなかったはずだ」

 

「わたしも行く!!」

 

「でも、エージェントはとっても危険な仕事だ。それでもいいのか?」

 

「うん!あなたと一緒ならどこまでもついて行くよ!」

 

「ったく、しょうがねぇな」

 

 

由紀だけ教師を選ばず、理琉と渡米することを選んだ。それは真冬も同じらしく、エージェントとして世界を飛び回りたいとのこと。米国の機関に問い合わせたところ、快諾された。

 

 

「俺たち三人は、海外進出ってか」

 

「そうだね。ボクらの新たな冒険がはじまる!……みたいな?」

 

「映画かよw」

 

 

「あたしらは日本に残ってやれることをやるよ」

 

「そうね。私も今は復興指揮をするだけでも精一杯だもの」

 

「私も、明日から北海道へ出張ですし」

 

「私は四国遠征だよ~」

 

「ワン!」

 

 

「てなワケで、しばらくお別れだ。数年に一回は戻ってくる。そん時は、全員で集まろうぜ」

 

「ああ、そうだな!」

 

 

「じゃあみんな、―――またね」

 

 

「「「「またね」」」」

 

 

 

 

 

 

 

理琉、由紀、真冬の三人は、遠い異国の地、アメリカへと旅立って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新たな物語(悲劇)が待ち構えていることも知らずに…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




IFストーリーにおいての黒田理琉:クリストファーに金属棒を刺されたが、致命傷には及ばなかった。以後、パンデミック後の活躍と経験を買われ、米国のエージェントとしてレオン・S・ケネディと共に行動するようになる。使用武器はベレッタM9A1と修理済みウィンチェスターM1887。ベレッタは改造してもらい、
【サムライエッジ マサルモデル】が生まれる。

【サムライエッジ マサルモデル】とは
サプレッサー、ロングマガジン(装弾数20発)、レーザーサイトを取り付けた、どちらかというと隠密行動向けの銃。性能自体はウェスカーモデル寄りだが銃自体の作りはシルバーメッキ仕上げが施されているため、外見はクリスモデルに近い。9x19mmパラベラム弾を使用する。



IFストーリーにおいての丈槍由紀:理琉同様米国エージェント。そして理琉の配偶者。クレア・レッドフィールドと共に行動する。愛用銃はベレッタM92F。こちらも改造して貰い、
【サムライエッジ ユキモデル】が生まれる。

【サムライエッジ ユキモデル】
マズルブレーキで反動を大幅抑えることによる威力ダウンを装弾数アップで補い、15発から60発になった。外見はジルモデルに近いが、性能はバリーモデルVerⅡに近い。9x19mmパラベラム弾を使用。フラッシュライトやレーザーサイトも取り付けてある。



IFストーリーにおいての狭山真冬:由紀、理琉同様米国エージェント。主にジル・バレンタインなどと行動している。ベレッタM92を改造してもらい、
【サムライエッジ マフユモデル】が生まれる。

【サムライエッジ マフユモデル】とは
グリップを握りやすく、かつ.357マグナム弾も使えるようにバレル強化改造が施されている。銃の反動を抑えるため、マズルブレーキが搭載されている。また、レーザーサイトも取り付けられている。(バリーモデル、ウェスカーモデルを織り交ぜたようなヤツ)それ以外の性能を全体的に見ればジルモデルとほぼ同じ。基本的に9x19mmパラベラム弾を使用する。

バイオハザードネタを織り交ぜたオリジナル展開を予定しております。更新は更に不定期となり、一年後…という事もありえます。また、原作バイオハザードシリーズの時系列とは一切関係ありません。

        CAST
マサル・クロダ      柿原徹也
ユキ・タケヤ       水瀬いのり
マフユ・サヤマ      諸星すみれ

レオン・S・ケネディ   森川智之
クリス・レッドフィールド 東地宏樹
クレア・レッドフィールド 甲斐田裕子
ジル・バレンタイン    湯屋敦子


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