CD買いに行ったら人生変わった件 (煉獄姫)
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覚醒の日

覚えている方はお久しぶり、初めての方は初めまして。
煉獄姫と申します。
3年ほど失踪していましたが、社畜生活で動画も作れない中創作意欲が爆発してしまったのでち細々と投稿していきます。


大切な物はいつも自分の手からこぼれ落ちていく、その日は唐突に、なんの前触れもなく突然訪れる。

どうしてなのだろうか、どうしていつも自分なのだろうか。

そうやって何度も何度も考えたって答えは出ない。

だから今度は、今度こそは、君だけは守り通す。

 

たとえ自分が灰になっても

 

◆◆◆

 

「猫を助けて入学初日から大遅刻とはぁ、やっぱお前馬鹿だなぁ~」

「しょうがないじゃん!だって人助けは私の生きがいなんだから」

「だとしても響の場合度が過ぎてるけどね。同じクラスの子に自分の教科書貸しちゃうんだもん」

「私は未来に見せてもらうから良いんだよー♪」

「はいはいご馳走様です。なら人助けついでに俺の財布も助けてください」

「それはダメ。ちゃんと8/2で割り勘だもん」

「もうそれ割り勘じゃねぇから!!」

 

新学期や入学などに忙しい春の季節、今日から花の高校生になった如月霧夜、立花響、小日向未来の幼なじみ三人組はこうして入学式の初日にファミレスに集まり近況を報告し合っていた。

もっとも、響と未来はリディアン音楽院という女子校に行ってしまったため霧夜のみ別の高校なのだが。

 

「ようやく未来の圧政から解放されたと思ったらまだ搾取されるのか俺は」

「圧政というか霧夜の自業自得だからね。今回も遅刻したら奢りって約束言い出したの霧夜なのに自分が遅刻するんだから。むしろ2割出してあげるんだから感謝してよね」

「ああー!ド正論でぶん殴ってくんなぁ!」

「未来には頭上がんないね」

 

昔から霧夜は未来に頭が上がらず、毎回なんとか未来を出し抜いてやろうと霧夜から遅刻したら奢りなどいろんな提案をするのだが毎回トラブルに見舞われ言い出しっぺの彼が自分から言った罰を行う事になる。

今回も遅れたら奢りと言い出した霧夜が遅刻して奢らされそうになったが二人に懇願してなんとか2割だけ出してもらうという事になった。

 

「で、今回はどんなトラブル起こしたの?」

「俺が毎回起こしてるみたいにいうな!」

「いやぁそれは否定できないと思うなぁ」

「お前に言われたくないんだよトラブルメイカー!」

 

今回彼が遅刻したのは風紀委員と口論してその口論が騒ぎが大きくなり風紀委員共々職員室でお説教を受けてたからである。

 

「私の幼なじみってどうしてこう変な事に首突っ込みたくなるのかな」

「別に首突っ込んだわけじゃねぇよ」

「大方その風紀委員が他の生徒に理不尽なこと言ってて我慢できなかったんでしょ」

「霧夜も素直じゃないけど人助け好きだもんね」

「そんなんじゃねぇって」

 

ふいっとそっぽを向いてしまう霧夜を微笑みながら見る二人、こんなことを言っていても実は優しいことを未来と響は知っている。

普段は抜けててデリカシーのない彼だが、本当に困っているときは力になってくれる頼もしい幼なじみ。だからきっと、今回も何か理由があったのだろう。

しかし未来は心配になる。

きっと二人は人を助けるためなら自分の危険なんて顧みず走っていってしまうのだろうと。

 

「人助けも良いけど、二人とももっと自分のこと考えなきゃダメだよ?」

「えへへー」

「だからそういうんじゃねぇから!」

 

◆◆◆

 

その夜、響と未来はリディアン音楽学院の学生寮でのんびりと過ごしていた。

 

「リディアンが女子校じゃなければなぁ~。霧夜も一緒に通えたのに」

「リディアンが女子校のじゃなくても霧夜は来なかったんじゃない?音楽聴くのは好きだけど自分でやろうとは思わなかったみたいだし」

「でもやっぱり1人足りないよぉー!」

 

どんなときも三人一緒だったためにこれから違う学校に通うと思うと少し寂しい。

 

「未来は寂しくないの?」

「まあ寂しいけどやりたい事が違うならしょうがないよ」

「そうだけどさぁー」

 

不満そうにする響を見てクスッと笑う未来。

 

「そっか、響は私より霧夜と一緒にいたいんだ」

「そういう事じゃないよ」

「いいもん、私もう寝ちゃお」

 

少しだけ意地悪をして未来は不貞腐れたようにベットに入りそれに続いて響も同じベッドに入っていく。

 

「ごめんよ未来ー!」

「ふふ、冗談だよ」

 

未来をぎゅーと抱きしめてえへへと笑う響。

二段ベットの1段目は物置にしているためこれから卒業までずっとこうして眠るのだろう。

 

「未来は私にとっての陽だまりで、霧夜は私にとっての月明かりなんだ」

「陽だまりと月明かり?」

「うん。私の帰ってくる暖かい場所が未来の居る陽だまりで、どんなに暗くて辛い所も歩ける様にそばに居て照らしてくれるのが霧夜の月明かり」

 

二人がいたからこそどんなに辛い時でも耐えてこられた。

響にとって霧夜も未来もかけがえのない存在なのだ。

きっと、二人がいなければ2年前の事件も立ち直ることは出来なかっただろうと響は思う。

いつまでも一緒というのが無理というのは響もわかっている。

だから、せめてその時までは一緒に居たい。

そう思いながら、響は眠りについた。

 

◆◆◆

 

春と言っても夜の風はまだ冷たく吹き荒ぶ。

そんな時にある女性はビルの屋上から街を眺めていた。

 

「変わらないな、この街は」

 

黒く長い髪が夜風にたなびかせながら女性は懐かしそうに、しかしどこか切なそうに呟いた。

それを隠すように女性は顔にバイザーを装着する。

ここから先に悲しい感情などいらない、弱さもいらない。

たった一人の大切な人を助けるために。

 

「今度は、私が助けるからね」

 

そう言って女性は夜の街に消えた。

 

◆◆◆

 

翌日、学校が終わった霧夜の下に響からのメッセージが飛んできた。

 

『放課後リディアン前に集合(*^^)』

 

特に予定もないが女子校前で待機は男子高校生にはなかなかにハードルが高くないだろうか。霧夜にとって女子校のイメージは男子が全く存在しないフローラルな世界、そんな中に男が紛れ込めば奇怪なものを見るような目で見られるに違いない。

もちろんそんなことは無いが霧夜にとって女子校のイメージとはそんなものだ。しかしすっぽかしたら響はともかく未来に何を言われるかわかったものでは無いので大人しく正門前で待っていた。

霧夜のイメージの様に奇怪なものを見る様な目で見られることは無かったがやはり男子があるのは珍しいのかチラチラと見られる事に居心地の悪さを感じながら待っているとこちらに響が元気に走ってくる。

 

「ごめーん!待った?」

「待ち時間はそうでもないけど女子校まで男子一人が待つのは精神的に辛い」

「ほほう?鋼のメンタル如月霧夜も流石に女子校に一人は難易度高いかな?」

「日々未来に鍛えられてるからなぁじゃなくて!ていうかなんの用だよ」

「翼さんの新しいCDが出るから買うの付き合って!」

 

翼さんとは現在大ブレイク中のボーカリストで、2年前まではツヴァイウィングというユニットだったのだが相棒である天羽奏が事件により亡くなったため現在はソロで活動している。

風鳴翼という名前を聞いて少し顔をしかめる霧夜を他所に早く早くと手を引っ張って待ちきれないという様子の響に釣られて駆け足でショップに向かう。

 

「ていうか今どきCDじゃなくてもネットで買えばいいだろ?」

「CDは特典が違うんだよ。霧夜だってゲームに特典着いてたらパッケージで買うでしょ?」

「俺は特典ついてようが無かろうかパッケージ派だ」

 

今どきゲームをパッケージで買う人間も少ないため霧夜も彼女の事を言えない。彼いわくちょっとずつ棚に並んでいく感じが良いのだとか。

結局のところ似たもの同士なのである。

 

「早くしないと売り切れちゃうよ!早く早く!」

「ちょっと待てって」

 

そう言って2人は駆け足でショップへ向かっていった。




あらすじ変更するかもぉ。
というかいろんな機能追加されててびっくりした。


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雑音を払う歌

「そんなに焦らなくても大丈夫だって、今どきCD買う物好きお前しか居ないから」

「ダメだよ!ずっと楽しみにしてたんだから売り切れてたら立ち直れないよ」

 

言うほどのことなんだろうかと思う霧夜を他所に小走りを続ける響に連れられてCDショップへと向かう。霧夜は特典とかよりも便利さを取る人間なので面倒な事この上ない。

未来も面倒臭いから適当か用事をでっち上げたのではなかろうかと考えるがそんな事をする奴ではないので本当に用事があったのだろう。

 

「にしても人の多い夕方に走る事になるとは…あれ?なんか人が少ないような…」

 

平日の夕方、言うなれば下校や退勤する人間で賑わうはずの街中は何故か閑散としている。そう考えていると、サラサラと黒いものが風に飛ばされていくのを目にすると、周りには黒い物体が山積みになっていた。

不自然に山積みにされた大量の炭、まるでさっきまでそこで生きていたかのような。

 

「ノイズ…」

「逃げるぞ響!」

 

霧夜は響の手を掴んで走り出す。

人を炭に変え現代兵器では歯が立たない得意災害、それがノイズ。

人はノイズに襲われる確率なんて宝くじが当たるよりも低いと言うがそんな珍しい目に遭っても何も嬉しくない。

第一幼馴染の響に関しては2年前に1度ノイズの災害に巻き込まれている。本当に宝くじより低ければ響は今頃億万長者のはずだ。

 

「待って!子供の声がする!」

「バカっ!構ってる場合じゃねぇだろ!」

 

声のした方向に向かって走り出そうとする響の腕を掴んで止める。

こんな状況でほかの人間を助けになど行かせられるはずがない、自分の命すら危うい状況でそんなことをするのは自殺行為だ。

 

「でも泣いてるんだよ!助けてあげなきゃ!」

「状況考えろ!今まさにお前も俺も死にそうなんだよ!自分達のみを守らなきゃどうする!」

「…ごめん霧夜、私やっぱりほっとけない!霧夜は先にシェルターへ逃げて!すぐ行くから!」

 

そう言って霧夜の手を振りほどいて響は声の方へと向かってしまった。霧夜はそこで立ち尽くして響の背中を見ている。

自分が死ぬかもしれない状況で見ず知らずの子供を助けようだなんてどうかしている。正気じゃない。これ以上付き合うことは出来ない。

このままシェルターに迎えは自分は助かる筈だ。

安全なシェルターで、ほかの人間と同じようにただノイズが過ぎ去るのを待つ。

それだけでいい、それが正解だ。

 

 

──────────それでいいのか?

2年前のあの時も響1人だけがノイズの被害にあって、退院した後も酷いいじめを受けた。

 

──────────また1人にするのか?

もう二度とあいつが泣かないすると決めたのに、またお前は何もしないのか?

 

──────────だってどうしようもない

自分は何も出来ないのだから助けられなくても仕方ない。あの時だってライブのチケットが当たらなかったから一緒に行けなかった。

そうやって言い訳して、仕方ないと自分を正当化する。

大丈夫、きっと政府の人がなんとかしてくれるから。

──────────だから

 

「その子抱いたまま水に飛び込め響!」

 

霧夜は子供を抱いている響に声を掛けて自分が先に水の中に飛び込む。もし響が子供の重さに耐えられなくても高校生2人係なら子供1人くらい居ても泳げるはずだ。

2人は対岸へと渡り、響が抱いていた少女は霧夜がおぶって走ることになった。

 

「どうして着いてきたの!?あのまま行けば霧夜だけでもシェルターに」

「しょうがねぇだろ!考えてたら体が勝手にお前のところに向かってたんだよ!」

 

ちくしょうちくしょうちくしょうと心の中で悪態をつく。

考えるよりも先に体が動いてしまっていた。

もう二度と響を1人にしないという決意が恐怖する脳の代わりに体を動かしてしまった。

 

「はぁ…はぁ…ごめんね、霧夜まで…巻き込んで…私のせいで…」

「マジで呪われてるかもな俺たち」

 

霧夜に比べて明らかに体力の限界が近い響、このまま逃げ続けるだけでは確実に持たない。

 

「お兄ちゃん…お姉ちゃん…私達死んじゃうの…?」

「大丈夫だ…お前もこの姉ちゃんも、絶対に死なせねぇ。響、この子おぶって走れるか?いや、走れなくても気合いで走れ」

「霧夜、どうする気?」

「俺が惹き付けて引きつけてここから引き剥がすから、安全なところまで走れ!」

 

霧夜は少女を響に渡すと自分に惹き付けるようにノイズを挑発し始めた。充分に自分に注意をひきつけて走り出そうとした時、響に手を掴まれる。

 

「ダメ!そんなの絶対にダメだよ!」

「大丈夫、体力だけはあるんだ。逃げ切れるって」

「嫌!絶対に嫌だ!」

「駄々こねんなって、大丈夫だから…」

「嫌だ!だって霧夜死んでもいいって考えてるでしょ!そんなの絶対にダメ!──────────生きるのを諦めないで!」

 

その言葉を聞いた時、記憶の中の少女と響が重なった気がした。

辛かった時に一緒にいてくれた頼もしい少女、今はもういない愛おしい彼女に。

その直後、響の体がオレンジ色に光体から機械の様な物体が飛び出してくる。咄嗟に霧夜が響の体に触れると、ドクンッと身体の中で脈打っているような感覚に襲われた。

 

「うぐっ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「響っ、ぐぁぁ、しっかりしろよ!俺が着いてる!ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その場所にはオレンジ色の光と金色の光が登っていた。

 



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防人の少女

キャラが仲良くなるまでギャグっぽいの入れられないのが大変ですねぇ


「ノイズ以外の高エネルギー反応を確認、解析結果出ます!」

 

特異災害対策機動部二課のモニターに現れたのはガングニールという文字、2年前に失われたガングニールの反応が確認され二課の司令官風鳴弦十郎を初めとした面々は驚きを隠せない。

 

「もう1つの反応は!」

「解析結果出ません!unknownです!」

「どういう事だ!?」

「未知の聖遺物?でもこの莫大なフォニックゲインはただの聖遺物じゃないわ…まさか」

「完全聖遺物とでも言うのか…」

 

失われた撃槍とデータベースにない完全聖遺物の出現、異常事態が2つも起きた。騒然とする二課をよそに天羽々斬の適合者である風鳴翼は現場へと向かう。

真相を確かめるために。

 

◆◆◆

 

(なんだこれ、体が…引きちぎられそうだ…響は…)

 

身体中に走る激痛に思わず目から涙が流れる。痛みで泣くなど何年ぶりだろうか、体が真っ二つになるような痛みに耐え必死に意識を繋ぎ止める。

その時、不意に周囲の音がパタリと消えたような気がした。

響きの絶叫も自分の絶叫も聞こえない。

そして目の前に、一人の女性が立っていた。

黒くふたつに束ねた長い髪に巫女のような服装をした女性は無表情でこちらを眺めている。どうしてこんな所に、そんな疑問を頭の中で過ぎらせる。

 

(己が役割を果たせ)

 

女性が語りかけた瞬間、現実へと意識が引きずり戻された。絶叫と激痛がまた霧夜を襲う。そしてまるで一生かと思われたその痛みにようやく解放された時、響の姿が変わっていることに気がついた。

 

「響…お前っ、なんだその格好…」

「ふぇ…えっ、何この格好…」

 

響の姿はオレンジを基調としたピッチリとしたインナーに機械的な鎧を着込んだ様な姿だった。

 

「何お前、仮面ライダーだったの?」

「違うよ!私も何が何だかさっぱり…」

「そうだよな…女の子だからプリキュアだよな

「そういう事じゃないから!」

「ていうか同じ様に痛い思いしてるのにお前だけ変身?俺なんで変身してないのズルくない?」

「知らないよそんなこと言われても!ていうかそれどころじゃないよ」

 

激痛のせいでやや錯乱していたのか全然関係ない事を語り始めていた霧夜は響の言葉で状況を思い出す。現在2人は逃げ遅れた少女と共にノイズに囲まれている最中だった。

 

「やっべそれどころじゃなかった!とにかく離れるぞ!」

「離れるってここ屋上だよ!?どうやって!」

「今のお前ならスーパージャンプ的なこと出来るかもしれないだろ!自分をプリキュアだと思えキュア響!」

「プリキュア…よしっ、今の私はプリキュア…なんでも出来るキュア響キュア響…」

「……ブフッ!」

「自分から振っといて笑わないでよ!すっごい恥ずかしいじゃん!」

「いやお前…ほんとにやると思わんかったあははははっ!でもこれでちょっとは怖くなくなっただろ?」

 

言われてみれば先程前何が起きているかわからなくて怯えてしまっていたが、今はもうそれ程まで恐怖を感じない。一緒にいた少女も今のやり取りを見て笑っていた。

 

「ありがとね霧夜」

「よっしゃ!思い切って飛べぇ!」

 

その直後響は思い切って少女と霧夜を掴んで屋上から飛んだ。普通なら考えられないが何故かその時は出来るような気がしたから。

響はそのまま2人を掴んで無事に地面へ着地し、ノイズから何とか逃れたかと思ったが無限に出てくるかの様に次々と湧き出てくる。

 

「凄い出来た!」

「ははっ、やってみるもんだなぁ…まだ足ガクガクしてら…」

 

高所からのダイブに脚が震えている霧夜を他所ににじり寄ってくるノイズ、この場から逃げようとしたその時バイクの駆動音が聞こえ音のするほうを見ると何者かがバイクで突っ込んでくるのが見えた。

その人物はバイクを乗り捨ててその場に降り立つ。

 

「惚けない、死ぬわよ!貴方はそこの2人を守ってなさい!」

 

そこに降り立ったのは風鳴翼、トップアーティストの彼女がなぜこんなところにいるのかそんな疑問の前に彼女が歌を口ずさんだ瞬間、姿が変わりまるで響の様な鎧を纏ったような姿に変貌した。

 

「翼さん?」

「なんか知らねぇけどあいつもお前も同じ様な格好してるけど…お前らひょっとしてコスプレ同好会的なやつに所属してる?」

「してないよ!ていうかリディアンに無いと思うよそんな同好会!」

 

霧夜の理解が追いつく暇もなくズバズバとノイズを切り裂いていく翼、まるでこれまでずっと戦ってきたかのような手際を見て流石にただのコスプレではないことに気づく。

そもそも先程屋上からダイブして無事という時点でコスプレではないことに気づくべきだが。

 

「とりあえずあいつに任せとけば大丈夫…響!」

「えっ?」

 

翼の姿を見ていたため近くに来たノイズに気づかず、そのノイズが響へと襲いかかっていた。咄嗟に霧夜は響を後ろに引っ張って代わりに自分が前に出る。そんなことをすれば確実に死ぬ、だがそう考える前に体が動いてしまった。

 

(やばっ、これは死んだかな…)

 

後ろから響の絶叫が聞こえてくる。しかしもう間に合わない。

如月霧夜はここで炭になって死ぬだろう。思えばろくなことが無かった人生だった。

 

━━━━━━━━━━でも大切な幼馴染のために死ぬなら良いよな

 

そう目を閉じた瞬間、衝撃と痛みが体を襲いその場所から数メートル吹っ飛ばされた。

車にぶつかられた様な衝撃が全身をめぐり、肺から空気が全て吐き出されむせ帰る。

 

「ゲホッ、ゲホッ、あれ…俺炭になってない?」

 

そう、そもそもノイズに襲われて痛みに襲われるというのがおかしい。ノイズに襲われた人間は例外なく炭にされてしまうのだから痛みを感じる暇などないはずだ。

しかし霧夜は普通に殴られたかのように数メートル吹き飛ばされはしたが炭になってはいなかった。

 

「霧夜!」

「大丈夫だ、今んとこ死んでない」

 

話していた時、響の後ろからノイズが襲いかかり霧夜のカバーが間に合わなかったが咄嗟に響が振るった拳がノイズを消滅させた。

 

「あれ、私が倒したの…」

「なんかよくわかんねぇけど、今のお前なら倒せるってことだろ!すげえじゃんお前!」

 

ノイズは響にとっても霧夜にとっても因縁深い存在。通常兵器では倒せないと言われ過ぎ去るのを黙って見ているしかないと言われていたが、今ノイズに対抗出来る力が目の前にある。

こんなに嬉しいことは無い。

そしてひとつの結論に至る。

響に倒せるのであれば、先程殴られても炭にならなかった自分にもできるのではないか。

やってみるしかない。そう考えた霧夜は襲ってきたノイズに対して拳を振るう。すると、ノイズは消し飛び炭になってしまった。

 

「やった!俺にも出来たぞ響!」

「凄いよ霧夜!私達、ノイズをやっつけたよ!」

 

そして最後に巨大なノイズを翼が巨大な剣で貫き全てのノイズが駆逐された。

◆◆◆

 

「お前それ脱がないの?」

「あっ、そうだった。どうやって脱ぐんだろ?」

「普通に脱げるんじゃねぇの?」

 

ノイズが全て倒されたあと政府の人間達がやって来て事後処理を始めていた。霧夜と響はあの後すぐに保護され現在は待機中だ。もちろん少女も保護されて今は母親といる。

どうやってこのスーツを脱ぐかどうかを話していたら急に響の体輝いた直後に制服姿に戻っていた。その際ふらついた響の手から職員に貰った温かいコーヒーが霧夜の顔面へ直撃した。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!俺の顔面に温かいものがァァァァァァァァァ!」

「あの、翼さんありがとうございました!」

「それよりまず俺へのコメントォォォォォォォォォォ!」

 

地面をゴロゴロと転がる霧夜を放って翼にお礼を言う響。彼女がこれで助けられるのは二回目だと言うと翼に伝えると翼は苦い顔をしてどこかへ行ってしまう。

 

「あっ、行っちゃった」

「ふんっ!」

「痛ったぁ!何で叩くの!」

「顔面に熱々のコーヒーぶっかけられたらぶっ叩きたくもなるわ!たくっ、そろそろ帰ろうぜ。結局CDも買えなかったし」

 

そうやって帰ろうとした瞬間、大勢の黒服に囲まれてしまう。

そしてその中心には先程までいた風鳴翼。

 

「あなた達を返すわけには行きません。このまま特異災害対策機動部二課まで来てもらいます」

「なんでですか!」

「そうだそうだ、こっちはもうクタクタなんだよ」

「関係ありません」

「俺たちだってそっちの都合なんか知らねぇよ。帰らせてもらう」

 

そう言って帰ろうとするとガチャりという音が隣から聞こえた。

響の手には頑丈な手錠が嵌められており、身動きが取れなくなっていた。

 

「お気持ちはわかりますが落ち着いてください。あくまで一時的に拘束するだけですから」

「ふざけんな!人を犯罪者みたいに扱いやがって!ノイズに襲われたのがそんなに行けない事なのかよ!俺たちだって好きで襲われてたんじゃねぇ!」

「そういうことではないんです。詳しい話は移動してから致しますので、少し我慢して頂けませんか」

 

そう言うといつの間にか霧夜の手にも響と同じ手錠が付けられていた。

 

「くっそ!ふざけんな絶対行かねぇぞ!」

 

じたばたと暴れ散らし黒服を大いに困らせた霧夜だったが流石に大人数相手には歯が立たなかったのか無理やり車の中に押し込まれて、連れ去られてしまった。

ちなみに響も同じ車に載せられている。

 

「どうしよう霧夜〜」

「とりあえずてめぇは殴る。絶対殴る」

「あははは、嫌われてしまったみたいですね」

「その胡散臭い笑顔が腹立つんだよ!」

「すみません、霧夜身長が高くてカッコイイ人見ると食ってかかっちゃうんです」

 

ぐるるるる…と目の前のイケメン、風鳴翼のマネージャーである緒川慎次に敵意剥き出しの霧夜とそんな彼に苦笑いの響、二人を載せた車は響と翼が通っている学校、リディアン音楽院に着いた。そこから歩いていき中央棟に入るとエレベーターに案内された。

そして緒川が何かをかざすとエレベーターの扉がメタリックなものに変わり取っ手が現れる。

 

「さっ、危ないので捕まってください」

「触んなイケメン」

 

緒川が霧夜の手を取ろうとしたときに霧夜はサッと離れて翼の横の取っ手を掴もうとした瞬間、エレベーターが急降下し取っ手を掴んでいなかった霧夜の体は浮き上がり頭を思いっ切りぶつけてさらに床に叩きつけられた。

完全にアホである。

 

「霧夜大丈夫!?」

「大丈夫なわけねぇだろ…頭割れるかと思ったわ…」

「そうなるのできちんと取っ手を掴んで頂きたかったのですが…」

「はぁ…」

 

気を取り直して立ち上がり今度はしっかりと取っ手を掴む霧夜、ガラス越しに外を眺めると古代文字のようなものがびっしりと書かれた巨大建造物が目に入った。

 

「お前の学校の地下なんなの、ダンジョンかよ」

「あはは…なんなんだろうね…」

「愛想は無用よ。これから向かうところに、微笑みなんて必要ないから」

 

そして目的の階層に到着し、エレベーターを降りると。

突然クラッカーが鳴り響き垂れ幕にはようこそ、立花響さま、如月霧夜さま、という文字か書かれていた。

そしてなぜかシルクハットをかぶった筋骨隆々の赤髪の男性がいた。

 

「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策課機動部二課へ!」

「おい来るとこ間違ってないか」

 

そうジト目で訴える霧夜に翼は目線を合わせなかった。

 




二次創作自体久しぶりだからちゃんとできてるか心配


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櫻井了子という女

今回は少し短めです。


「たくよぉ、人を犯罪者扱いして連れてきたと思ったら次は歓迎しますだぁ?ふざけんじゃねぇよ。そんなこと信じられると思ってんのか?ああ?こちとらエレベーターに仕掛けられた罠で満身創痍なんだよ」

「といいつつ食事には手をつけるのねぇ」

「そもそもエレベーターの件は貴方のせいです」

「すいませーんこの肉まだありますー?」

 

手錠から解放された霧夜は一通りの説明を受けた後警戒はしつつパーティーに出された肉などを頬張り始める。先ほどまで命を掛けた状況に置かれていたためまだ夕食を食べていなかったためか次々と口の中に放り込む。

 

「はっはっはっ!男はよく食うくらいが丁度いいからなぁ!どんどん食べてくれ!」

「あっ!霧夜それ私が食べようと思ってた鶏唐揚げ!」

「早い者勝ちだっつうの」

「かーえーしーてー!」

 

さっきまで命を掛けた状況だったにも関わらずこの二人はいつもの調子を取り戻して居る様子を見て胆力だけはあるのだろうかと風鳴翼はため息をつきながら眺める。

しかし、どうしても面白い気分になることは出来なかった。

unknownと呼ばれているこの騒がしい少年はともかく、もう一人の少女は2年前自分の片翼である天羽奏のガングニールをその身に纏っていたのだ。疑問は尽きない。

 

「さてとお二人さん?食べるのはそれくらいにして、お互いの力について知りたくない?」

「知りたいです」

「まあたしかに…」

「じゃあ私からのお願いが2つ、今夜のことは誰にも言わないこと。それと…とりあえず脱いでもらいましょうか?」

 

そこで霧夜に衝撃が走る。目の前にいるのは髪をアップにしてメガネをした巨乳の女性、白衣を着ているところを見ると医者かなにかだろう。そんな女性に脱げと言われてドキドキしない高校生はいない。

いや逆にいいんですか?脱いでいいんですか!?一体俺何をされてしまうのだろうという霧夜の妄想は広がる。

 

「優しくお願いします!」

「ダメだよ霧夜!明らかに目が怖いよあの人!」

「うるせぇ!今から俺は大人の階段を上る!イケメンじゃない俺にはまたとないチャンスなんだよ!」

「そうかしら?綺麗な顔立ちだと思うけれど?」

 

そう言うと女性は霧夜に近づき頬を撫でる。その手つきは妖艶で、さらに顔が近づくにつれて女性のいい匂いがして更にドキドキと心臓が脈打つ。男子高校生にこの刺激は強すぎる。

 

「ほんとに綺麗な顔…憎らしいほどに…」

「え?」

 

最後に睨まれたような気がしたが、気のせいだったのかまたニコニコとして霧夜から離れた後、女性は櫻井了子と名乗った。

その後メディカルチェックが行われてその日はそのままそれぞれの自宅へと送り届けられた。

響は未来がいるリディアンの寮に、霧夜は自分の学校の寮に。

 

「ただいまー、誰もいないけどな」

 

霧夜の学生寮は普通のマンション型になっており部屋もそれぞれ一人に割り当てられているという好条件になっていた。

間取りはロフト付きの1K。

もちろん希望すれば誰かと相部屋になり部屋も少し広いものが割り当てられるのだが、全然知らない人間と住むのはめんどくさいと霧夜は普通に一人で住んでいる。

1人は慣れているので問題ない。

 

「今日は色々あったよ…父さん」

 

霧夜はロフトに敷いてある布団に横になり今は亡き父親に語りかける。彼の父親は彼が6歳の頃に病気で死亡しており、母親は彼が3歳の頃に家を出てそれきりだった。父親の死後は祖父に育てられたが、いろんなところを飛び回っていたためか家では1人が多かった。

だから寮で一人になったところで変わりはないのだ。

 

「うわ、未来からエグいぐらい着信来てる…明日返そ」

 

スマホを見ると未来からの通知が溜まっていたが翌日に回し、目を閉じると疲れていたのか数分もしないうちに意識は暗闇へと飲まれて行った。

 

◆◆◆

 

誰もいない二課の研究室、そこで櫻井了子は如月霧夜と立花響のメディカルチェックの結果を眺めていた。

二人とも聖遺物と人体が融合している融合症例に間違いない。これは今までに前例はなく聖遺物研究者にとっては大きな発見だ。しかし、何故か了子は不満そうに霧夜のデータを眺めていた。

 

「忌々しい…どうやって…なぜこの時代に居る…よりにもよって今、この時代にっ!」

 

ギリッと歯を食いしばると、了子の髪の毛が黒髪から金色へと変わりアップに纏めていた髪を解き下ろした。

 

「また私の邪魔をするのか…天彩歌(ういか)

 

 その表情は、憎しみに染まっていた。

 




早くGくらいまで書きたいなぁ


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シンフォギアと完全聖遺物

話が進まん…


「毎回お前らは手錠しないと話できねぇのか」

「すみません、規則なものですから」

 

 霧夜は自身の寮にいた時にまたまた黒服に連れて行かれてご立腹である。その際に霧夜の目の敵である緒川も居たため彼は荒みに荒んでいた。隣人から、どうした?地下行きか?などと煽られたためさらにご立腹である。(ちなみに隣人は緒川が適当に誤魔化した様子)

 

「さて、二人のメディカルチェックの結果だけど。特に異常は無し、二人とも健康そのもの…一つを除いてね」

「一つを除いて?」

「響ちゃんの胸には2年前失ったはずのガングニールという聖遺物が埋まっている」

 

 2年前、かつて風鳴翼が天羽奏と組んでいたツヴァイウイングというユニットのライブでノイズが発生する事件が起きた。

その事件により数万人のファンと天羽奏がなくなったとされている。

響はそのライブに一人で行ってその事件に巻き込まれた。

 

「あのライブで戦っていた奏君のガングニールの破片が響君の胸に残ってしまっている。それが響君がガングニールを使えた理由だ」

「破片は体の深くに残ってる。奏ちゃんの…置き土産ね」

「…天羽奏も…ノイズと戦ってたのか…」

「そうだ。奏君はノイズとの戦いで命を落とした」

 

天羽奏は巻き込まれたのではなく、ノイズと戦っていた死んだ。そう聞かされた霧夜は改めてノイズと戦うことの危険を認識する。

事実自分でさえも本来響を庇った時に死んでいたとしても不思議ではなかったのだから。

 

「だからとて、どんな歌、誰の歌にでも聖遺物を起動する力がある訳では無い!」

 

扉の近くにいた翼が我慢ならずに吠える。

彼女にとってガングニールは相棒の武器、それを昨日ぱっと出てきた他人が使うなど我慢出来なかったのだろう。

あまりの衝撃に耐えかねたのか、翼はその場から出て行ってしまう。

すぐに了子が補足説明を行い、シンフォギアは適合者と呼ばれる人間の歌によって起動して再構築されて鎧の姿を象るのだと言う。

 

「じゃあ響がそのシンフォギアを使える理由も、ノイズと戦える理由も分かったけどさ、なんで俺はノイズを倒せたんだ?響みたいにシンフォギアってやつを使ったわけじゃないだろ?」

 

理解が追いついていないという顔をしている響を置いて話を進める。

 

「霧夜君、ここまで話したシンフォギアは経年破損で破片などになってしまった物を再構築して使ってるっていうのは理解出来たわよね」

「一応」

「でもね?聖遺物の中にはそのままの状態を残している物もあるの。それを私たちは完全聖遺物と呼んでいるわ」

「シンフォギアの上位互換みたいなもんか?」

「その通り、この完全聖遺物はシンフォギアの様に歌で再構築する必要はなくそのまま使うことが出来るの。その分希少価値が高くて国が秘密裏に管理するような代物なのよ」

「その完全聖遺物が、霧夜君…君の体に存在する様だ」

「はぁ!?」

 

響の体の中に聖遺物があるというだけでも頭がいっぱいなのにましてや自分の体にはそれを超える物が存在すると言われて霧夜は驚きを隠すことが出来ない。しかしレントゲンを見るとそんな物体はどこにも見当たらない。

 

「でもレントゲンには映らなかった。響ちゃんの様に物理的に埋まっている訳では無いようなの。同化していると言ったら正しいかしら、だから外科的に取り出そうとしても無理ね」

「しかもその聖遺物はうちのデータベースにも存在しない物だった。何か知っているかと思ったが…その様子だと何も知らないみたいだな」

「当たり前だろ。シンフォギアだの完全聖遺物だの今初めて知ったよ。そんなご大層なもん持ってた記憶もねえし食った記憶もねえ」

 

記憶を辿ってみてもそんな国家機密に関連するような出来事は今までに遭遇したことは無いし、そんなとてつもない物体など見たこともない。

 

「その聖遺物の力でシンフォギアと同じような能力、アンチノイズプロテクターに近い膜の様なものがあなたの体を覆っていたからノイズに触れることが出来たの。つまり霧夜君は擬似的にシンフォギア装者と同じ状態ということよ」

「この事が知れればこの国だけでなく米国政府も黙っちゃいないだろう。最悪君を引き渡すように要求してくるかもしれない」

「いやいや、たかが高校生に大げさな…」

「それだけ完全聖遺物は凄まじいってことよ。一つあれば国を変えるなんて容易にできるんだから」

 

米国に引き渡されたら人体実験とかされまくるのかなぁと身震いする霧夜をよそに弦十郎は話を続ける。

 

「だからこそ、この事は他言無用で頼む。君たちの身はもちろん、君達の身の回りの人間も危険に巻き込みかねないからだ。最悪命の危険すらある。俺が守りたいのは機密などではない、人の命だ。だからこの力の事は隠し通して貰えないだろうか」

 

自分の身の周りの人間と言われて霧夜と響は真っ先に幼馴染の未来を思い浮かべる。どんなに近しい友人であったとしてもこの事は他言してはいけない。

 

「ノイズは通常兵器では倒せない。例外があるとすれば、シンフォギアを纏った戦姫と完全聖遺物を宿す君のような存在だけだ。日本政府、特異災害対策課機動部二課は改めて君達に協力を要請する。その力を対ノイズ戦で役立ててくれないだろうか」

 

真剣な眼差しが2人を捉える。正直、気乗りはしない。そもそも日本政府自体に霧夜はいい感情を抱いていない。2年前のあの事件以来、政府はノイズ事件で生き残った人達のケアなんて何一つしていなかった。どれだけ響が苦しんだかも知らないだろう。

だが、それはこの人達が悪いわけじゃないこともわかる。

本気で人を救おうとしているのも。

 

「響はどうする?」

「私は…」

「正直俺はお前に断ってほしい。危ないし、未来に対して誤魔化すのも難しいしな。でもお前がどうしてもやりたいって言うなら、俺も付き合う」

 

2年前にもう一人になんてしない、絶対にそばにいると約束した。自分の他に頼れる人間が響のそばに現れるまでは。

 

「…私の力で、誰か助けられるんですよね」

 

その問に弦十郎と了子は頷く。

 

「分かりました!私、ノイズと戦います!」

「霧夜君、君はどうする?」

「やっぱやるよなぁ…しょうがない、響1人で放って置いたら逆に街ぶっ壊しそうだしなぁ、俺も手伝うよ。それにノイズには色々と借りがあるしな」

「分かった。君たちの協力に感謝する」

 

そう弦十郎が頭を下げた時緊急を知らせるアラートが鳴り響いた。

 

「司令!ノイズが出現しました!翼さんが既に現場に急行しています!」

「私も行きます!」

「まて、君はまだ!」

「私の力で、誰かを助けられるんですよね!だったら私行きます!」

「おい!待てよ響!」

 

響は弦十郎の忠告を聞かずに駆け出し霧夜もそれに続いて行ってしまった。

 

「人のために自分の命を投げ出す…あの子達もこちら側という事ね。それに…」

 

ノイズに借りがある。

そう言った霧夜の目は、数年前に見た天羽奏と同じ目をしていた。

 

 




ちょっと端折ってもいいかもしれませんね


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ノイズよりも幼馴染の方がよっぽど怖い

少し遅くなってしまいました。
仁王とどうぶつの森の新作が出ちゃったからね、仕方ないね


「そらっ!」

 

霧夜の拳で人型のノイズが炭化して朽ちる。

霧夜と響が二課に加入してから1ヶ月程度だったが、依然として響と翼の険悪なムードは続いていた。険悪と言うよりは翼が一方的に響を突っぱねていると言った方が正しいか。

 

「これで5体目…俺結構頑張れてる方じゃね?そりゃ防人さんに比べたら全然だけどさ…」

 

1ヶ月ノイズと戦い、最初の頃に比べると動けるようになって来た霧夜はもう一体のノイズを殴り倒す。流石に大型のノイズは手が出せないが小型であれば倒せるようになってきた。

 

「響ー!そっちはどうだー!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!それどころじゃないよぉぉぉぉ!」

 

響の方に目をやるとノイズに追いかけ回されていた。

「飛び降りてこっち来い!2人でならなんとかなる!」

「わかったぁぁぁ!」

 

飛び降りた響を追って大量のノイズが霧夜の元へと降り注ぐ。それを何とか避けて響と共に一体ずつ確実に倒していくが、響が吹き飛ばされ自動車に激突し気を取られた霧夜も殴られて吹き飛ばされてしまう。

炭化しないとはいえ、威力そのものが消える訳では無いためシンフォギアを纏っていない霧夜にとっては一撃が命取りになりかねない。

 

「いってぇ…」

 

その後すぐに翼が2人のカバーに入り、残ったノイズを全て撃破して今回の任務は終了した。

 

「霧夜!大丈夫?」

「ああ…心配すんな。あんたもありがとな、助かったよ」

「…自分の身を第一に考えなさいと言ったはずよ」

 

霧夜にそう吐き捨て響を人睨みしたあと去ってしまった。

初出動の日から翼はこのように2人に辛く当たっている。

「ごめん霧夜…私のせいで食らっちゃったんだよね」

「ちげぇよ、俺が避け損ねただけだ」

「それに…あの夜も私のせいで翼さんに」

「それもお前のせいじゃなくて俺が突っかかってボコられただけ、はいこの話終わり。さっさと帰ろうぜ」

 

今にも泣きだしそうな顔をする響の頭をぐしゃぐしゃっと撫でて事後処理を待った。

 

◆◆◆

 

1か月前

霧夜と響が現場に駆けつけた時には既に翼がノイズと戦っていた。

巨大なノイズの攻撃を食らいそうになった翼を霧夜が庇い、響が飛び蹴りを食らわせる。そして体勢を整えた翼はノイズを切り裂きノイズを全滅させた。

 

「わりぃ、出しゃばったよな」

「貴方はシンフォギアを纏っていない、炭化しないとはいえ攻撃は命取りになるはずよ。だから装者を庇うのはやめなさい」

「ですよね…」

 

睨みながら怒られる事に居心地の悪さを感じながら平謝りをする霧夜を他所に響は笑顔で翼に歩み寄る。

 

「翼さん!私、今はまだ足手まといかもしれないけれど、一生懸命頑張ります!だから、一緒に戦ってください!」

「そうね…戦いましょうか。貴女と私」

 

その瞬間、剣を突きつけられる響を庇うように霧夜が前に出る。

それでも翼は剣を退けることはしない。

 

「すみません、こいつバカなんで空気読めないんすよねぇ。ほら響?あの人今お忙しいみたいだから、また今度話そうな?」

「ふぇ?ちょっと?」

「待ちなさい」

 

その場から状況の分かっていない響を連れて退散しようとした霧夜を凛とした声が止める。素人が背を向けていても分かる敵意に背筋にゾワッと悪寒が走った。

 

「私は彼女に言っているの、貴方は下がってなさい」

「いや、マジですみませんでした。こいつにはきつく言っときますんで今回は勘弁してもらえないっすか?」

「あ、あの!私、翼さんに何か失礼な事を言っちゃいましたか?」

「違うわ。私が貴女と戦いたいだけよ」

「どうしてですか!」

「私はあなたを受け入れることが出来ない、貴女と力を合わせて戦うなど…風鳴翼が許せるはずがない」

 

剣を構えて響を射殺さんというほど睨みつける翼、響は憧れの人間から殺意にも近しい感情を向けられて恐怖で身が竦んで震え出す。その響を庇うように霧夜は恐怖を抑えて前に出る。

 

「貴女もアームドギアを構えなさい、それともそのまま彼の後ろに隠れているつもり?」

「響、このまま少しずつ離れていけ」

「でもっ!」

「話が出来る状態じゃねぇだろうが!離れてろ」

「それは常在戦場の意思の体現。 あなたが、何者をも貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば、胸の覚悟を構えて御覧なさい!」

「か、覚悟とかそんな私、アームドギアとか分かりません!分かってないのに構えろなんて…それこそ全然分かりません!」

「アホかお前!火に油を注いでどうすんだ!」

「だって、分からないものは分からないよ!」

 

半泣きになりながらそう答える響に、ついに我慢の限界が来たのか翼の雰囲気が一気に変わる。先程までの怒りとは違う、明確な殺意

 

「覚悟持たずにノコノコと遊び半分に戦場に立つ貴女が奏の…奏の何を継いでいるの!」

「逃げろ響!」

 

翼が行動する前に咄嗟にその場にあった鉄パイプで霧夜は彼女を殴り付けるが、その鉄パイプは翼の手によってあっさりと両断されてその場に転がる。

 

「立ちふさがるのならば!」

「幼馴染に剣向けられて逃げられるかよ!」

 

両断された鉄パイプの残りを翼に投げつけて駆け出す。

もちろん彼女に勝てると思っているほど霧夜は能天気な人間ではない。何をどうやったとしても勝てないのは明白だ。

だが、響が襲われそうになっているのを黙って見てはいられなかった。

 

「そんな動きで勝てるとでも!」

「くっそ!」

 

霧夜は彼女に向かい拳を放つ。

しかしそんな素人の拳など翼にとってはなんの脅威でもなく危なげなく避けて霧夜の懐に入って彼の顔面を剣の柄で強打した。まともに顔面を硬いもので殴られ目の前がチカチカと点滅し体がぐらりと傾く。彼女の殴打は気絶するほどではないが人間が倒れるくらいには十分な威力を持っていた。

それでも、倒れられない。

 

「ぐぉぉぉぉぉ!」

 

がむしゃらに拳を振るうもそれら全ては容易によけられてその度に手痛い反撃をもらう。これまての人生で喧嘩慣れはそれなりにしていたつもりではあったが、そのへんにいる不良とは訳が違う。相手は今までノイズを1人で葬ってきた猛者、そんな人間に普通の高校生がやけくそになったとしても勝てる道理などない。

数分経つ頃にはもう既にフラフラで立っているのがようやくの状態になっていた。

 

「ここまでね。貴方はもう限界よ」

「アホか…まだまだっ…」

 

ついに体が限界を迎えた霧夜はその場に倒れ込む。それを見た響は咄嗟に霧夜の前に出て翼に頭を下げる。

 

「すみません!私が悪かったのなら謝ります!霧夜が突然殴りかかったのも謝ります!だから…もうやめてください」

「貴方はノイズにもそうやって頭を下げるつもり?」

「私はただ…奏さんの代わりに…翼さんのそばに居られたらって!」

 

その言葉を聞いた瞬間、翼は空中へ飛び上がり巨大な剣を出現させる。

 

「戦う覚悟もない…守る覚悟もない貴女が…奏の代わりになどなれるはずがない!」

 

その巨大な剣を、響に向かい蹴り飛ばした。

何とかしなければ、なんとかして響だけでも逃がさなければと身体を必死に動かそうとするがどれほど力を込めても動かない。

霧夜が霞む目で最後に見たのは、弦十郎何かが巨大な剣を受け止めて破壊する姿だった。

 

◆◆◆

 

その後病室で目を覚ました霧夜は弦十郎から事の顛末を聞き、翼の事に対しての謝罪を受けた。

 

「本当に済まなかった。この件に関しては俺からキツく言っておく」

「いや、先に手を出したのは俺だから気にしないでくれ。むしろ俺が謝らなきゃいけない立場だからさ、向こうは怪我とかしなかったか?」

「ああ、問題ない。響君にも特に怪我はなかった」

「そっか、よかった」

 

ベッドに横になりほっと一息着く。しかし後を引くと思うと少しげんなりしてしまう。

 

「君は優しいな、殴られた相手のことまで気遣うとは」

「そもそも俺が殴ったのが原因だし、それにあいつが怒るのも無理ないかなって思って」

「というと?」

「そりゃ死んだ相棒の形見を持って、なんの経験もしてない素人が馴れ馴れしく接してきたら気分悪いだろ。響は人当たりが良すぎるから、そういうのが苦手な人間にはちょっとな」

 

それが響のいい所でもあるんだけどな、とクスクスと笑う。響の笑顔に霧夜自身何度も救われてきた。だから、今度は自分が守る。あの日そう決めた。

 

「これから迷惑かけるかもしれないけど、よろしくなおっちゃん」

「ああ、これからよろしく頼む」

 

そう言って霧夜と弦十郎は握手を交わした。

◆◆◆

 

その日から響と翼の亀裂は決定的なものになってしまった。かと言って霧夜と翼の関係が良いという訳では無いが。

 

「だから、悪かったって言ってるだろ?気づかなかったんだって」

『それ前も言ってたじゃない!最近ノイズが頻繁に出てるから心配で電話してるのに…』

 

響と別れた後、予想通り未来からの着信(15件)があったためかけ直すと予想通り大激怒されてしまった。もちろんノイズと戦っていたなどとは口が裂けても言えず、学校が忙しかったとしか言えなかった。

 

「ごめんな心配かけて、でもほんとに大丈夫だ」

『霧夜がそう言う時って大抵嘘ついてるんだよね…』

「俺未来さんに嘘ついたことないっす」

『真顔で嘘つかない』

 

何故電話越しなのに表情が分かったのだろうか。

 

『そう言えば最近響の帰りが遅いんだけど何か知らない?』

「彼氏でも出来たんじゃねぇの?」

『それは無いよ。響だもん』

「お前は響をなんだと思ってんだ…」

 

響の事を知られる訳にはいかないためシラを切る。未来に伝えたい気持ちもあるが、そのせいで彼女を危険にさらすわけにはいかなかった。

それに心配も掛けたくない。もう既に少し心配をかけてしまっているが命のやり取りをしているなどと知ったらもっと心配するだろう。

 

「あ、そうだ。未来に伝えなきゃいけないことがあったんだけどさ」

『なになに?生活費足らないの?』

「だとしても流石に幼馴染に集らねえわ。そうじゃなくてさ、この度めでたく彼女が出来ましたー」

 

話を逸らすために適当に嘘をついたが、その瞬間未来が目の前にいないにもかかわらず周囲が凍りつくような感覚に襲われた。そして、電話越しの未来の声が普段よりも重く、低くなる。

 

『どこの人?』

「えっと、クラスメイトなんだけど…」

『どっちから告白したの?霧夜?それとも向こう?なんで付き合ったの?どこが好きになったの?クラスメイトってことはまだ知り合って1ヶ月くらいだよね?なんでそんなに早く決めちゃうの?恋人はもっと慎重に決めなきゃいけないんじゃないかな』

 

予想した反応と180度違う反応を示す未来になぜか冷や汗が止まらなくなる。この場にいないにもかかわらず心臓を鷲掴みにされたように霧夜はその場から動けなくなった。ノイズと相対した時も、翼と戦った時にも感じなかった明確な恐怖が襲う。

霧夜はてっきり「はいはい、見栄はらなくていいから」とか「えっ!?どんな子なの!?」など嘘と見抜いて相手にしないか信じて興味津々になるかどちらかと思っていた。

今も興味津々と言えるが気迫が違う。

 

「な、なーんつって。嘘ぴょーん」

『…ほんとに?』

「な、なんか未来の元気がないからびっくりさせてやろうかなぁ〜って思っただけです…はい」

『……霧夜』

「はい?」

『面白くないからやめて』

「はい」

 

ノイズよりも、シンフォギア装者よりも未来の方がよっぽど怖いと思った霧夜は二度と未来にこの話題は振らないと心に誓った。




翼と霧夜の戦闘シーンぶっちゃけ影縫いで良かったかもしれない説。
でもまあ霧夜の見せ場ということでご容赦くださいm(*_ _)m


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銀髪の少女

ごめんなさい!
更新遅れてしまいました。


「さーて何作ろっかな〜」

「決めてなかったの?」

 

結局あのあと未来から本当に嘘かどうかの事情聴取が30分ほど続き、気分を害した罰ということで買い物に付き合わされていた。その後機嫌を良くしたのか霧夜の買い物にも付き合うと言ったので彼の趣味であるガンプラが販売されている店舗に足を運んでいた。

昔から霧夜のガンダム好きは未来も知っていて、たまに二人揃って作品を見たりゲームをしたりガンプラを作ったりしているため未来もガンダムには明るい。

しかし作品を少ししか見ていないのに霧夜よりもガンダムゲーとガンプラ作りはなぜか未来の方が遥かに上手い。

 

「うーん、HGとRGだけじゃなくて久しぶりにMG作りてぇなぁ…」

「そんな事言って接続部分ニッパーで切り落とさないでよ」

「それ中一の時の話だろ!いつまで引っ張んだよその話!」

「どうしよう未来〜って泣きついて来たの霧夜でしょ?」

「あれは切断部分と接続部分を一緒にしてたパーツが悪いんだよ」

「その後もデカール失くしたりで大騒動だったよね」

 

ふふふっ、と昔のことを思い出して笑う未来と傷口をほじくられてバツの悪い霧夜。響の事で悩んでいる様子だったが、今は楽しんでいる様だ。

 

「こうやって2人で出掛けるのも久しぶりだね」

「大抵響入れて3人だからな〜」

 

今回響は授業のレポートに追われて居残り中である。

 

「響の奴学校でどんな感じなんだ?相変わらずか?」

「うん、この前も授業中に寝ちゃって先生に怒られてた」

「高校行っても変わんねぇな」

「でも私以外に友達出来たし楽しくやってるよ。それより霧夜はどうなの?」

「俺は…非常に濃いメンツと知り合った」

 

一応霧夜にも友人は居るのだが、個性的というかめんどくさいというかとにかく一筋縄では行かない人間ばかりなので出来れば知り合いだと思われたくない。そもそも紹介したくない。

 

「この前女子の幼馴染が居るって言っただけで殺されかけた」

「霧夜が通ってるの高校だよね?魔界じゃないよね?」

 

もはや魔界よりもひどい惨状だったりするが心配するので何も言わない。

 

「でもなんか納得かも」

「納得すんなよそこ、平和な学校生活とは180度変わってくんだから」

「だって霧夜自体が濃いからね。ちゃんと友達できるか心配だったんだよ?」

「お前は俺のお母さんですか」

 

霧夜は人付き合いがうまい方ではないためちゃんと友達が出来るかどうか不安だった未来だが心配はなさそうだ。

 

「あっ、100分の1スケールのルプスレクス置いてる!でもHGの第6形態もいいなぁ…ぐぬぬ」

「MGは専門店の方が安いんだからHGにしときなよ」

「うーん、じゃあお母さんの言う通りHGにしときますかね」

「別にしろとは言ってないんだけど」

 

HGのバルバトス第6形態のガンプラを会計に通しお店を出て当てもなく街をブラブラと歩く。こうやって幸せがずっと続けばいいのにと考えるがノイズが居る限り長くは続かないだろう。

願わくば今だけは空気を読んで出てこないでほしいものだ。

歩いていると不意に未来が立ち止まって後ろを振り返り怪訝な表情を浮かべる。

 

「どうした?」

「やっぱり誰かに付けられてる」

「俺にストーカーなんて着くわけないだろ」

 

一瞬二課の誰かかと思ったが基本プライベートには口出ししないと弦十郎が公言していたためそれは無い。仮に監視していたとしても素人である未来にバレるような尾行はしないだろう。

 

「気のせいかと思ったけど、やっぱり付けて来てるよ」

「考え過ぎだって、ほら行こうぜ」

 

霧夜のそんな言葉を耳に入れず未来は気配がすると言った方へ歩いて行き、そのまま裏路地へと入っていってしまった。

未来を追って裏路地に入ると未来が銀髪の少女の腕を握り潰す様掴んでいた。

 

「離せよっ!くそっ!」

「貴女ずっと私達のこと付けてたよね?何が目的?」

「何やってんだよ未来!離してやれって!」

 

急いで手を振りほどかせ未来と銀髪の少女の間に入る。それでもなお未来は銀髪の少女を睨みつけており、少女は腕を抑え涙目になりながらそれに対抗して睨む。

 

「この子が1時間くらいずっと私達のことつけてたんだよ」

「そんなことしてねぇって言ってんだろ!証拠でもあんのか!?」

「じゃあどうしてこんな裏路地で何してたの?」

「そ、そんなのあたしの勝手だろ」

「何をする訳でもなく隠れて私たちのこと見てたよね?いや、正確には霧夜の事かな?」

 

うっ、と図星をつかれた様な表情をした彼女に対して未来は更に追求していこうとしたが霧夜に阻まれて少女から物理的に離されてしまう。

 

「いい加減にしろって、別に裏路地ウロウロしてたって良いだろ?昔の事があったとはいえ敏感になり過ぎだって。それによぉ」

 

ポンッと銀髪の少女の頭に手を置いてわしゃわしゃと撫で回す。

 

「こんなちっさい中学生に何が出来んだよ」

「…だ」

「うん?」

「あたしはこれでも16歳だぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

その瞬間、少女の蹴りが霧夜の股間を直撃しあまりの衝撃に悶絶して霧夜はその場に蹲ってしまい、少女はしまったという顔をしてその場から直ぐに立ち去ってしまう。

 

「待ちなさい!」

「待ってくれ未来ぅ…ちょ…腰の辺りトントンして…無理…片方の玉どっか行った…戻してぇ…戻してくれぇ…」

 

すぐに追いかけて問い詰めたかったがこの状態の幼馴染を置いて行くわけにもいかず未来は霧夜の腰を優しく叩いて玉が元の位置に戻るまでそばに居た。

ちなみに戻るまでの10分間通行人になんだあいつらという目で見られていたのは言うまでもない。

 

◆◆◆

 

失敗した失敗した失敗した!

銀髪の髪を揺らしながら走る雪音クリスは尾行相手に気付かれて全力でその場を離脱している最中であった。

彼女の保護者から如月霧夜という少年を監視しろと指示をされて彼を監視していたのだが本人ではなくそばに居た少女に尾行がバレてしまった。

あんな華奢な身体のどこからあの万力の様な握力が発揮されたのかクリスには検討もつかない。軽くトラウマである。

 

「それにしてもあんな奴がほんとに融合例なのか?」

 

1時間程度とはいえ監視した彼の第一印象はどこにでもいる普通の、この平和な国で、何不自由なく育った普通の少年。

だが彼女の保護者は如月霧夜、そしてもう1人の融合例である立花響に夢中だった。特に如月霧夜については可能な限り情報を収集しろと言われたほど。

それがクリスにとっては腹立たしかった。

自分の事を何も見てくれない保護者の視線を一心に受けている彼という存在が。

もうクリスには居場所が無い。彼女に見捨てられてしまったらもう何処にも行けないのだ。だから、クリスは今日も彼女のために働く。

自分の居場所であるフィーネのために。




393がハイスペックになっとる…


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