相手をねじ伏せる方法は何も腕力だけじゃ無い (赤いティントリップ (活動停止中))
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1話

自己満足で書きました、生暖かい目で見守ってくださると幸いです


私は今まで学校でかなり大人しくしてきた、クラスのウェイ系に馬鹿にされようが、慎ましく大人しく仲のいい友達と割と静かに過ごして来た

 

それなのに何故、めっちゃ顔怖い隣のクラスの男子に壁ドン……いや、さっきのは壁ダァァァアアンッッ!て感じだったな

 

取り敢えず、なんでそんなことをされる目に遭ってるんだろう

 

その壁ダァァァアアンッッ!をしてきた男子は目立つ男子なので、同じクラスに一度もなったことが無いが名前はわかってる、爆豪 勝己くんだ

 

今から帰るって事で友達と廊下で歩きながら楽しく談笑していた所に、進行を妨げるようにそんなことをされて正直不快でしか無い

 

「えっと…何ですか…?」

 

目を釣り上げて視界のほとんどを埋める爆豪くんになるべく刺激をしないようにそう問いかける

 

「テメェが読解(ヨミトキ) 心理(シンリ)だな?志望校雄英らしいじゃねーか変えろ」

 

え、名前は確かにあってるけど、急に帰る女子捕まえて壁ダァァァアアンッッ!するなり、それ?

 

あまりに理不尽すぎるので個性の情報取得を使い理由を探ると、この学校で1人だけの雄英合格者という箔が欲しいのに、私と幼馴染の緑谷 出久くんも雄英志望で、緑谷の方は受からないと思うがイラつくという理由で締めて、そして帰ろうとしたところで、この学校で唯一自分より頭が良くて雄英の普通科なら余裕で通ってしまいそうな私を彼の友人が見つけ、うっかりその事を爆豪くんに指摘してしまったため、この調子でこいつも締めよう!となったらしい

 

みみっちい上に理不尽極まりないな!それに、指摘されるまで、読解って誰だよ状態だったんかよ、もう三年君と同じ学校に通ってるはずなんだけどな!

 

後、折角分かってなかった爆豪くんに私のこと教えた友人マジ恨む、1週間くらい呪ってあげるからね

 

てか、理由によっては穏便な話し合いによる解決でも良かったかもしれないが、こいつに気を使う必要がないのはわかった

 

「私は雄英志望を変える気ないです、という事でさようなら」

 

彼と爆豪くんに挟まれてる状態から腕の下をくぐり、さっきから青ざめた顔で慌ててる友達の元に向かう

 

「おい待てや」

 

かと思ってたら腕掴まれた

 

えっと爆豪くん、手を爆発させられる個性だよね?

 

有名だからという理由で元から知っていた個性を存分に使えそうな態勢な上に悪意があることを読み取った私はすごく焦る

 

流石に腕を爆破される訳にはいかない

 

今日だって子役兼女優としての撮影があるんだ、体に怪我は不味い

 

慌てて昔から習っている護身術を使い腕をひねって拘束を解除し、そのまま掌底で胴体を一打ちし、突き飛ばす

 

まさか反撃が来るとは思ってなかったのだろう、私がかけた力の通りに後ろに体が傾き尻餅をついた

 

個性で爆豪くんのことを見て、激昂してそのまま爆破とかにならないように注意をする

 

すると、こいつ苛つく、絶対に負かすという心情が読み取れたので、巻き込んでしまわない様に慌てて一緒に帰る予定だった子達に声をかけて先に帰るように促す

 

心配そうに振り返りながらも離れていく人達に安心しながら、ゆらりと立ち上がった爆豪くんと向き合う

 

「俺をこかすたぁいい度胸してんなぁ…」

 

俯いて手を小さくボンボン言わせながらそんなことを言ってくる

 

怖ぇよ、やめてくれ、なんでそんな好戦的なんだよ!

 

というか、やり返した私も十分好戦的だけどねー!もー!やだー!

 

 

「貴方が先に私の腕を軽く爆破しようとしたからね」

「モブのくせに歯向かってんじゃねーよ!」

 

その言葉とともに手を爆発させながらさっきよりも速い速度で掴みかかろうとしてきた右手を外側から右手で捕まえ、そのまま、左手は爆豪くんの右肩に手をつき、そして背中の方に腕を捻り上げ地面に押し倒し背中に乗り、右手は背中、左手は地面に向けて押し付ける

 

「確保!」

 

「確保じゃねーよ!退けやクソモブインキャが!」

 

「確保でしょ!完全に捕まえたじゃん!」

 

そうわーきゃーしていると、急に視界の端に指が写り込んできたので、反射的に身をよじると爆豪の取り巻きの1人が私の方に指を伸ばしてきていた

 

傍にいる奴も羽を出し、こっちに来ている

 

「………お前ら寄ってたかって1人の女子襲ってプライドねぇのかよ」

 

そう言いながらも回避のために致し方なく爆豪の背中ら跳びのき、指と羽に対応する

 

「オイ!邪魔すんなや!」

 

「でも、勝己が…」

 

「テメェらの助けなんていらねぇんだよ」

 

体の前面を床の埃で汚しながらもしっかりとこっちを向きての爆発で威嚇してくる

 

「そう、でも、私用事あるからもう帰らなきゃ」

 

私はそういったかと思うと、踵を返して全速力でその場から離れる、すると、もちろん背後からブチ切れた爆豪くんが叫ぶ声と追いかけてくる足音がするので、校門まで走り抜けたのち、すぐに何度か曲がり角を曲がって路地裏に入り、なんとかして巻ききった

 

これで私の完全勝利だ

 

勝利という気持ちいい感覚に浸りながら家に帰り、素早く着替えた後に黒髪ロングのウィッグを取り、地毛の金髪姿になり、濃紺のメガネも外して水色の目がよく見えるように前髪をピンで止める

 

全身鏡の前で自分の姿を確認するとちゃんと子役〈理里〉になっている

 

そしてタイミングのいいことにマネージャーさんから家の前に着いたという連絡が来たので、祖父母に行ってきますと挨拶をして私は家から出て、止めてもらってある車に乗り込んだ

 

「今日は雑誌の撮影した後にバラエティに出演であってるよねー?」

「うん、そうだよー」

 

運転してくれている昔からのマネージャーの鈴木さん、女優の仕事で中々家に帰ってこない母親の昔馴染みで、芸能界の仕事を始めた時からずっとお世話になっている

 

「そういえば今日、オールマイトも同じ局で収録するかもっていう噂があります、この辺りで目撃情報があったみたいで」

 

「ウヘェ…あいつ今日いるかも知れないの?」

 

「うん、まあ、あくまで噂だから、ないとは思うけどね」

 

「そうだといいなぁ、会いたくないなぁ」

 

私がこんなにオールマイトを嫌がるにはもちろん理由がある、ただのNo. 1ヒーローなら私はここまで拒否反応を示さなかったはずだ、だがオールマイトは私の母の昔の婚約相手であり、私の親という嬉しくない理由がある

 

その上、私は母がオールマイトと別れた後に出来ていることに気づいて産んだ子なので、オールマイトに私は認知されていない

 

それどころか、世間的には私の母は子持ちではない、世間から私を隠して産んだからだ

 

だから私は私を出来るなら隠したい、特にオールマイトから隠したい母の気持ちを尊重し、身元を偽って芸能界の仕事をしている

 

まあ、最近会った時に母の心情読んだら、もうバラしてもいいや感強かったが、取り敢えず現状維持のままでいいやという事にしておく

 

そして、母親譲りの整った造形に抜けるような白い肌と父親譲りの明るい金髪に碧眼でかなり人気がある方だと自負している

 

女子にしては高めの身長とかなり高い方の運動神経も父親のオールマイト譲りだと母親から聞いたが、感謝する気は微塵もない

 

寧ろ、こんなに色々引き継いだのに個性は寄越さんかったんかいというクレームを入れたいくらいだ

 

母親の個性は〈読心〉で私はそれが強くなって遺伝した〈情報取得〉となっており、確かに運動神経は良いがオールマイトの無駄に強い個性は遺伝しなかった

 

まあ、遺伝してたとしても使い道なんて無いけどね、ヒーローなんて基本関わりたく無いし!

 

今日のバラエティの出演予定の中に名前を見ても誰だかわからないが、ヒーローが出演するのを見て、紙束を握りつぶしそうになる衝動を抑えながら、更に紙をめくると席順がヒーローの隣で私はついに紙を握りつぶしてしまった

 

ああ、だめだ、誰からの視線もないと思うと直情的に行動してしまう、深く深呼吸をして心を落ち着けてペラペラと紙をめくり内容を頭に入れる

 

そんなことをしているうちに撮影スタジオに着いたので、気持ちを仕事モードに入れ替えて、先にいるカメラマンやスタッフ、同じモデルの人達に笑顔で挨拶をして仕事を始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日はモデルとしての撮影は少ししかなかったので、ちゃっちゃと撮り終わり、すぐに収録スタジオに移動する

 

そして、また挨拶をして、衣装に着替え、スタジオで待機していると、スタッフの1人がが慌てた顔で駆け込んできた

 

「近くの地区でヴィラン発生!一体だが、厄介な個性持ちのヴィランが居るせいで、出演予定のシンリンカムイとMt.レディが応援要請に行ってしまい、到着予定時刻に間に合いません」

 

シンリンカムイはなんとなく聞いたことがある様な気がするが、Mt.レディは聞き覚えがない、新人かマイナーヒーローだろうか

 

「それは困ったなぁ……早期解決は望めなさそうなのか?」

 

「どうでしょう…今確かLIVE放送がやってた筈ですが…」

 

私は素早くスマホを操作してテレビをつけてみると確かに近くの地区で騒がしくヴィランが発生したところだと言う放送がやっている

 

事件発生現場は驚いたことに自分の家の近くで、よく知っている商店街が火の海となってしまっており息を飲む

 

ヴィランの個性は流動体になれると言うもの、今囚われている中学生が必死に対抗していると言うテロップが出ていて、目を凝らして画面を見つめていると、抵抗している中学生の顔が一瞬アップで映され、私は短く悲鳴をあげた

 

「もしかして、この子知り合い?」

 

気づいたら近くにいたこの番組にレギュラー出演している先輩俳優の1人にそう聞かれて慌てて首を横に振る、個人情報はどこから漏れるかわからないので下手に知り合いだなんてバレるわけにはいかない

 

私は同業者にも住んでる地区さえ秘密なんだ

 

「ただ、とっても苦しそうだなって思っただけです」

 

「そう、確かにとっても苦しそうだね、俺ならすぐに負けてしまいそうだよ」

 

顔が売りの儚げな先輩は顔を引きつらせながら画面を見ている

 

そして、ヒーローの救けが入らないまま時間だけが過ぎていき、火災範囲も広がり、爆豪くんの苦しげな表情も酷くなってくる

 

ヒーローが画面の中に何人も映る中、誰も救けられない状況が続き、焦燥感を感じていたところに1人の同じ中学の制服を着た子が走り出てきた、無個性で有名な緑谷 出久くんだ

 

そして、泣きそうな顔なのに、必死に走り荷物を投げつけたかと思うと、爆豪くんの元まで行き、取り込まれかけていた爆豪くんを救けたかと思うと、次の瞬間何処から現れたのかオールマイトが現れ、2人まとめてひっ掴みヴィランをぶっ飛ばした

 

あの異常な力なパンチによる風圧で流動体を吹き飛ばしたのを見て、顔がひきつる

 

てか、雨まで降ってきてるじゃん、天気まで左右しやがるんかよ

 

でもまあ、爆豪くんが助かってよかった、爆豪くんは救出されるなりヒーローやインタビューに囲まれてタフネス!と騒がれている

 

確かに彼のあんなに苦しそうなのに折れない心はタフネスだ

 

個性も派手な為、沢山の勧誘も受けている

 

それに比べて、勇気を振り絞って飛び出していった緑谷くんはヒーローから厳しい注意を受けている

 

緑谷くんは注意しているヒーローがタタラを踏んでいる中、救ける為に飛び出していったのに、そんなヒーローが偉そうにお説教とは気分が悪い

 

思わず顔を顰めると、隣にいた先輩俳優も顔をしかめている

 

「彼、どうして強個性でも無いのに飛び出したんだろう、確かに友達を救けるという姿勢はすごいと思うけど、褒められる行為じゃないよね」

 

私と目が会うなり意見を求められたと思ったのかそう伝えてくれるのだが、その意見は私とは相容れない意見だった

 

「彼らは制服的に同じ中学だったから友達で、仲がよかったからどうしても救けたかったんじゃないですか?それか、たとえ力がなくても衝動的に救けに向かってしまう根っからのヒーロー気質か」

 

ヒーローは困ってる人を見たら自分に危険が降りかかる可能性があったとしても救けに行かずにはいられない衝動に身を焦がされている

 

例え自分の全てを賭けてでも救けるという意識が私には到底理解できそうなものではなく、そんな衝動に突き動かされているヒーローを見るたびに理解できない不可解な相容れない生き物にあった気になる

 

緑谷くんは無個性なのにヒーローに強い憧れを持ってると噂の子なのできっと私はどんなに鮮明に理解できとしても、心から分かる事はないと強い確信を持っている

 

「Mt.レディ、シンリンカムイ急行中だそうです、後10分もすればここに着きます」

 

「さすがヒーロー行動速度が違うねー、2人が現場に着くのに合わせて撮影始められる様に用意するよー」

 

監督のその言葉を聞いて皆一斉に用意を始めるのだが、私はとっくに用意は終わっていたので、椅子に座り続ける

 

私のスマホを覗き込んでいた先輩俳優も用意は終わっていたらしく、隣で慌ただしく動くスタッフを眺めている

 

「先輩、Mt.レディってどんな人ですか?」

 

私はヒーローとは相容れないが現代に生きる芸能人として大体のヒーローの名前、個性、など大体のことを把握してるが、Mt.レディはよく知らなかったので、完全に見る専な先輩に聞いてみる

 

「今日デビューの新人ヒーローだよ、ビジュアルで売っていくらしいから、デビュー当日に地域の先輩のシンリンカムイと共演でテレビ出演って事らしい」

 

「へえ、確かにさっきLIVEで映った時美人でしたしね」

 

「うん、そうだね、でも、こんなに綺麗なのにヴィランと戦うんだよ、ヒーローって大変だね」

 

「そうですね」

 

 

 

Mt.レディとシンリンカムイが急いでスタジオに入ってきて、そして漸く収録が始まる

 

私の席はMt.レディの横で、巨大化の個性だから、元もある程度でかいのかと思っていたら、170㎝の私より全然低かった

 

それどころかシンリンカムイもあまり高くなく、よく衣装にヒールを用意されてるのに、今日の靴のかかとが低い理由がようやく分かった

 

流石にヒーローより体格がめっちゃいいとかアレだよね

 

例え肩幅がなくても、身長が高いとガタイ良く見えるしね

 

「今日はよろしくお願いします」

 

2人の元に先輩と一緒に近付き笑顔で頭を下げる

 

「こちらこそよろしくお願いします、今日は収録に遅れてしまい申し訳ありません」

 

「全然構いませんよ、人命救助は何をおいても優先される事ですしね」

 

私はヒーローと相入れることは無いと思ってるが、別にヒーローの仕事を認めていない訳でわない

 

「さっきまで活躍していたLIVE放送見てました、お二方共お仕事お疲れ様です」

 

順番に目を真っ直ぐ見て、薄く笑って言うと、2人とも自分が結局助けられなかった事をやはり心の中でモヤっとしているのか、2人して暗い顔で俯いた、ハハッ、ザマァ、そんな顔するくらいなら救助に飛び込めよ、ヒーローでしょ?

 

私は内心の嘲りを完璧隠して俯いた2人に対して不思議そうに首を傾げた

 

「どうしたんですか?そんなに浮かない顔して」

 

これで相談を始めたらかなり未熟、一般人にヒーローは不安を知られてはいけない

 

「なんでも無い、大丈夫だから気にしないでくれ」

 

不安がまだ前面に出ているMt.レディの肩に手を置いてシンリンカムイがそう真っ直ぐと答えた

 

その様子を見て流石何年もプロをやっている人は今日デビューのペーペーとは違うため嬉しくなる

 

やはりヒーローとはこうでなくては

 

「そこの4人さーん、そろそろセットお願いしまーす」

 

スタッフにそう声をかけられて私達はようやく立ち位置に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日のゲストはこのお三方です」

 

ヒーロー2人に先導されるようにセットの中央に行く階段を降りると、客席から拍手が送られる

 

「まず、ヒーローのシンリンカムイ!」

 

司会者の声に合わせてシンリンカムイが一歩前に出て頭を下げる

 

「最近デビューしたばかりの新人ヒーロー、Mt.レディ!」

 

頭を軽く下げた後に軽く手を振っていて、歓声に酔ってるのが背中からありありとわかる

 

楽しそうで何よりだ

 

「最後に女優の理里ちゃん!」

 

なるべくヒーロー2人が大きく見えるように半歩後ろに下がっていた所から一歩前に出て、礼をして、すぐまた半歩後ろに戻る

 

その上両足を揃えて立たずに軽く膝を曲げるようにしてなるべく身長を下げていると、自由トークのタイミングになった瞬間、Mt.レディがこっちを向いて

 

「ねえ、理里ちゃん、私さっきから気になってたんだけど、理里ちゃん割と身長高いよね?」

 

そう言ってきた

 

Mt.レディさんやー、なんで、人の気遣いを初っ端からぶっ壊すんですかねー

 

「ええ、まあ、この歳の女子の割には高い方だと思いますよ、でも、Mt.レディさんも女性としては高い方じゃ無いですかー?」

 

こうなったら仕方がないので人懐っこい笑顔を浮かべてそう聞く

 

「ええまあ、そうね、でも、もっと欲しかったわ、やっぱり身長が高い方がスタイル良く見えるしね」

 

「そうですか…女子で身長高くても男子に沢山僻みからくる嫌味を言われるだけですよ…」

 

学校で私は一部の男子から根暗ノッポと呼ばれている

 

まあ、気になんてして無いけどね、悲しそうにいったけど、勝手に僻んどけよ、チビ、という感じだ

 

「理里ちゃんに嫌味って、理里ちゃんこんなに可愛くて綺麗なのにっ!」

 

「えっ!?私より断然綺麗なMt.レディさんにそう言ってもらえてすごく嬉しいです!」

 

「うわぁー!何この子いい子!可愛い!」

 

ギューッとMt.レディさんが抱き着いてくるので、私も抱き締め返して2人でキャッキャしていると、カンペでそろそろ落ち着こか、2人の絡みの撮れ高はは十分だから、と見せられ、ようやくテンションが落ち着く

 

その後はシンリンカムイとMt.レディを中心として一般的なヒーローに対する質問などを司会者がしていき、2人の出身校や活躍が期待できる現場の具体例、必殺技と話が進んでいき、私にもたまに話が回ってくるので、応える

 

そして、話が進んでくると、子供はやっぱりヒーローに憧れるよね、ところで進学希望はどこなの、と、いきなり話を振られた

 

「私の進みたい高校は雄英ですよ」

 

交わすこともできるが、高校からは流石に変装を続けるのが厳しそうなので、変装を解こうと思っているため正直に応える

 

まあ、事務所に変装続行だと言われたら落ちたことにすれば良いし

 

 

「雄英って事はやっぱりヒーロー科?理里ちゃんヒーローになりたかったの?」

 

 

質問してきた司会者の人が不思議そうに聞いてくる

 

 

「いえ、私なんかではヒーローになれませんよ、進みたいのは普通科です」

 

「あら、でも、普通科もすっごい難関よね」

 

 

Mt.レディさんがそうやってどんよりとした顔で言っている

 

あんまりMt.レディさんは賢く無いのだろうか

 

「そうですね、とっても偏差値高いですし、沢山勉強しないと行けないですね、でもまぁ、普通科はヒーロー科みたいに実技ありませんし」

 

理里ちゃん、余裕そうにして落ちたとかネットに書かれたら困るのでそうやって謙遜しておく

 

まあ、今の学力ではどうやっても落ちないのだけれどね

 

 

「頑張ってくれ、雄英の体育祭は毎年観に行ってるから、受かってたら会おう」

 

 

シンリンカムイがそう言ってくれるので元気に返事をすると、Mt.レディも私も会う〜と言って便乗している

 

 

「楽しみにしててください、頑張って受かりますので!」

 

 

頼もしく見えるように胸をトンと叩いておく

 

その後も和気藹々と収録は終わっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様〜、今日は大変だったね、ヒーローの到着遅れて」

 

マネージャーの鈴木さんが運転しながらそう労ってくれる

 

「本当ですよー、まあ、人命救助ですし、仕方ないですよ」

 

「まあ、それもそうだよねー、命がかかってるっていわれたら、そっち優先するしかないし」

 

話をしながらスマホを操作し、もう1つの副業〈R〉の世間での評判を調べる

 

「はい、でも、割とスムーズに撮り終わったし、Mt.レディさんも美人だったんで、良いかなって」

 

「割と心理ちゃんって面食いよね」

 

「いやいや、そんなことは無いですよ」

 

ツイッターでエゴサしてみると、今回の新曲もかなりの好評でテンションが上がる

 

「うーん、まあ、美人以外にも分け隔てなく優しいけど、好みの美人の事は割としっかりと目で追ってるよね」

 

「んー、まあ、やっぱり、綺麗な人は見てしまいますよね」

 

先週の日曜にYouTubeに上げた曲の高評価が既に万単位で顔が緩む

 

「しかも、心理ちゃんって、かっこいい人とか可愛い人より綺麗な人が好きよね」

 

「まあ、そうですね…なんというか、流行りのかっこいい顔とか、可愛い顔っていうのがあんまりわかんないので、顔面比で人の顔判断しがちなんですよ」

 

正直、顔の美醜は分かるが、あんまり人の顔を覚えるのが得意だったりはしない

 

まあ、覚えようと思えば、暗記能力は高い方なので覚えられはするので、仕事相手は割とはっきりと覚えてる方だが、大幅にイメチェンされると、気付ける自信は皆無だ

 

「あー、なるほどねー、でも、モデルもしてるんだし、その辺はわかってた方がいいとは思うよー?」

 

「うーん、まあ、流行りのファッションや話題はなるべく目敏く耳敏くしてますけど、どうしても顔の造形はねー、どうせ流行りの顔にはある程度の顔の造形をしていたらメイクでどうにかしてくれますし」

 

正直、メイクやファッションの流行は素人には大まかなデザインやカラーの把握が精一杯だ

 

芸能人として、最低限は把握するが、ポンポン変わっていく流行りにはスタイリストさんが追いつかせてくれるので、自分は綺麗なスタイルとメイク乗りのいい整った肌を保っておけばいい

 

あとは、トーク番組に出た時に困らない教養と話題を把握する能力を磨くくらいだろうか

 

「まぁ、そうよねー、心理ちゃん程顔整ってたらどんなメイクも似合うし」

 

「まあ、どんなメイクもとは言いませんけど、割とどうにかなりますよ、だって、プロが色々してくれるんで」

 

少々肌が荒れたとしても、プロのメイクアップの人はすごい

 

「私もしてもらったら化けるかなー」

 

「鈴木さん元から綺麗ですし、プロの人達が施す化粧は本当に魔法なんで、凄いと思いますよ、なんなら、今度似合いそうなメイク教えてもらってきましょうか?」

 

無駄に沢山もらうコスメや、プロには劣るが、一般人よりかは磨かれたメイクの腕はあるので、魔法とは言わないが、それなりの事はできるため、提案する

 

「え、して貰えるなら、して欲しい」

 

「分かりました、楽しみにしててください」

 

取り敢えず、家帰ったら新曲について考えつつも、合いそうなメイク用品をピックアップする事を決めた



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2話

あの憧れのオールマイトから君はヒーローになれると言われてから、毎朝晩秘密の特訓が始まった時に、かっちゃんと僕、そしてこの学校にもう1人だけいる雄英志望の読解さんを校内で見かけた

 

彼女はいつも女子の割に高い背を丸め、黒くて長い髪の毛で目元を完全に覆ってしまっている

 

見た目の陰気さ、と言っても自分も大概陰気だが、そんな見た目でも彼女はいつも友達に囲まれて楽しそうにしている

 

無個性のボッチな僕とは大違いだ

 

ぼんやりと楽しそうに話している様子を見ていると、彼女はゆっくりとこっちの方を向き、ニコッと微笑んだ

 

女子に微笑まれるなんて初めての事で、顔が爆発しそうなほど熱くなる

 

彼女と一緒に居た女子達はそんな僕を見て、気持ち悪いものを見る視線を向けてきていて、熱くなった心臓が一気に冷え込んだ

 

だが、読解さんはそんな周りの子達の様子に叱るような仕草をしたかと思うと、一人でこっちに来た

 

「みんながごめんね?ああいうのは気にしなくていいよ」

 

あまり見えない目元の代わりに、本当に申し訳なさそうな声でそう言われて、慌てて首を横に振り

 

「ぜ、ぜぜぜぜっ、全然大丈夫だよ!!あ、ああいうのは…いつものことだし……こういう反応は、僕も気持ち悪いと思うし…」

 

俯いて腕で顔を覆いながらそう言い終わっても、返事が返ってくるわけでも無いし、かと言って視界に映る足は向こうに動こうとしないから恐る恐る顔を上げると無表情で見下ろす冷たい深い青色の眼と前髪の隙間から視線が合う

 

「緑谷くん、大丈夫じゃ無いなら大丈夫じゃないって、嫌だって言わないと、君は永遠にそのままだよ、たとえNo. 1に訓練をつけてもらっても、本質が変わらないと人は変われない」

 

無表情なままそう言われて、心臓が跳ねる

 

どうして、どうして、どうして知ってる?

 

僕が"No. 1に訓練をつけてもらってる"ことに

 

誰にも特訓の事は言ってないのに、しかも、彼女はNo. 1を強調した、オールマイトに訓練をつけてもらってる事まで、彼女にバレてる、どうしてバレたんだ

 

パニックになって、そこまで考えた後に、ようやく思い出した、彼女の個性は様々なことが分かる個性だった筈だ、そのお陰で、恋愛相談やなくし物探しはお手の物だと聞いたことがある

 

まさか、その個性で読まれたのだろうか

 

「そうだよ、個性で分かったの」

 

ヤバイ、心が読まれている

 

「そう、その気になったら私心も読めるの」

 

そう言いながら両肩に手を乗せられて、完全に体が硬直する

 

それにしても、心まで読めるなんて凄い、けど、オールマイトに誰にも秘密だと約束したのに…

 

「大丈夫だよ、ネットに書き込んだりしないし、友達に話したりもしないから、だから君の師匠にも私にバレたなんて報告しなくていいよ、寧ろ、私の名前は絶対に出さないでね、破ったら…分かってるよね?」

 

暗い影を落とした目で上から睨むように言われ、ブンブンと頭を上下に振ると肩から両手が離れる

 

「じゃあ、よろしくね」

 

小首を傾げながらニコリと口角のみ上げてそう笑ったかと思うと、踵を返して歩いて行ってしまった

 

彼女の個性はなんとなく分かるのが限度だと思っていたし、恐らく学校の共通認識はそんな感じだった筈だ、それなのに、彼女は心の中を詳細まで読んできたので、本当はもっと強力だということになる

 

その上、彼女の言い方的に前々から僕がオールマイトから特訓を受けている事を知っていた様子だったので、相手の記憶を読むことも可能で、しかもその記憶を読む相手にバレない程度に簡単に読めるようだ

 

それにしても、どうして読解さんはオールマイトに名前を知られたくないんだろう、まさか、ヴィランでオールマイトにバレたらまずいとかだろうか、もしそうなら読解さんとの約束を破ってでもオールマイトに知らせるべきか、でも、違った場合は一方的に約束を破っただけになってしまう、いやでも、オールマイトとの約束はもう破ってしまったし

 

そうグルグルと考えながらも、自分の教室に戻り必死に授業を受け、放課後になった後も、歩きながらまたグルグルと読解さんの事を考えてると、後ろから肩を掴まれると同時に呼び止められ、振り返ると苦笑いした読解さんがいて

 

「私ヴィランじゃ無いからね、それだけは本当に無いから、ヒーローのお世話にならないレベルには真っ当に生きてるから」

 

そう言われて、また考えを読まれたんだと気付き、申し訳ない気持ちになる

 

「申し訳がらなくていいよ、こっちこそ大分やり方がヴィラン側だったし、ごめんね、けど、あなたの師匠に私の存在は知られたく無いの、詳しくは説明できないけど、私ちょっとした知り合いでね、名前を出されて、向こうから関わって来られると本当に迷惑なの」

「そ、そうだったんだね、わかった、黙っておくよ」

 

けど、やっぱり、オールマイトとの約束を破ったのは申し訳ないなぁ…

 

「まあ、それに関しては私の責任だけど、将来理由知ったら納得してもらえると思う、今は誰にも言えないけど、いつか周りに知れ渡ると思うし」

「いつかは…いつかは僕にも理由教えて貰える…?」

「うん、もちろんだよ、だから取り敢えずは雄英一緒に合格頑張ろっか!」

 

そう言って、手を急に取られ、ギュッと握られ、身体中の血液が沸騰しそうになる

 

「う、うん!がっ、頑張るよ!」

「私でよかったら勉強とか教えるから、じゃあね」

 

手をパッと離して歩き去ってしまった



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3話

 

中学唯一の雄英進学者という箔は自分の隣に立つデクと脅したにもかかわらず、普通科にシレッと合格しやがったインキャ女によって無くなった

 

先生の前で問題は起こせない為、先生の話が終わり、職員室から出るなり、デクとインキャ女の腕を掴んで校舎裏まで引っ張って行こうと思い、実行に移して腕を掴むと

 

「ちょっと爆豪くん、いくらなんでも一人で受かりたかったから私ら締めるってのはおかしいんじゃ無い?緑谷くんも大人しくこいつに連れてかれなくてもいいよ、一緒に帰ろう、もう」

 

そう言いながらも、今回は警戒してしっかりと二の腕のあたりを掴んでるからか、インキャ女は逃げ出せていない

 

その場に留まろうとするが、所詮女子の力なのでデク共々力尽くで引きずっていく

 

2人の腕を校舎の壁に叩きつけるようにして離すと、インキャ女の方は上手いこと叩きつけられないように体を捻っていたが、デクは壁にぶつかる

 

「ちょっと、爆豪、危ない!」

「うるせえ黙ってろブス」

「え、女子にブスって酷いね、君、モテ無いでしょ」

「いいから黙ってろ!」

 

軽く爆発をおこして脅すと、癪なことに俺より高いが、いつも丸めている背を真っ直ぐにして、睨み返してくる

 

「よ、読解さんっ!?危ないよ!」

 

臨戦態勢の俺たちを見て、そう言い、震えながらも俺たちの間に入ってこようとするデクの姿が更にイラついてくる

 

「緑谷くん、下がってて、大丈夫だから」

「でも、怪我したら…」

 

インキャ女はデクにそう言われて、納得したような顔をしたと思ったら、こっちを向き、手で拳を作り

 

「確かに怪我しそうなことは危ないよね、よし、爆豪じゃんけんで私が負けたら大人しく話聞こう」

 

そんな提案をしてきた

 

「は?じゃんけん」

「そ、じゃんけん、って事で、いくよー、最初はグー、じゃんけんポン!」

 

慌てて手を出すと、こっちがパーで向こうがチョキのため、負ける

 

「よし、これで大人しく私は話し聞かなくていいね、じゃあ、次は緑谷くんとだよ」

 

そう言って、自分の背後にしたデクを自分の前に押し出した

 

「ほら、いくよ、最初はグー、じゃんけんポン」

 

インキャ女の声に合わせて手を出すと自分がグーでデクがチョキなので勝つ

 

「俺の勝ちだ」

「ちょっと、なんで負けてるの、緑谷くん」

「僕今までかっちゃんにじゃんけん勝てた事ない……」

「それ先に言ってよ、知ってたら別の方法提案してたのに」

「さっさと黙れクソインキャが」

 

そういうと、インキャ女は目元が見えない中、なかなかに顔を動かして全力で表情に不満を表しながらも一応引き下がった

 

 

 

「どんな汚ねぇ手使やあ無個性(テメェ)が受かるんだ

 

あ!!?」

 

デクの胸ぐらを掴みながら怒鳴ると、いつも通りデクはオドオドとしながら顔を背けるように顔の前に手をやる

 

「っ…!!」

 

ビビりまくったいつも通りの反応をするデクのことを視界の端に写るインキャ女はさっきまで味方をしていたくせに冷めた目で眺めていた

 

「史上初!唯一の雄英進学者、俺の将来設計が早速ズタボロだよ!他行けっつったろーが!!」

 

そう怒鳴ると急にデクが俺の腕を掴んだ

 

デクは怯えながらも、震えながらも口をひらく

 

「いっ…っ、言ってもらったんだ『君はヒーローになれる』って…!かっちゃん…!!『勝ち取った』んだって…!だ…だから…僕は行くんだ…!!」

 

強い意志を持っていたその言葉は明らかに俺に対する反抗で、今までそんなことなかったので、背中が粟立つかのような不快感に襲われる

 

「よく言ったね、緑谷くん、じゃあ、一緒に帰ろうか」

 

俺たちの様子を横で見ていたインキャ女はデクが俺に逆らったことが嬉しいのか、笑顔で横から入ってきて、サッとデクの手を引いて自分の目の前から歩き去っていった

 

まだ文句は沢山あったはずなのに、俺には2人を止めることができなかった

 

1人その場に残されて、唯々イライラが募った

 

 

 

 

 

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

僕と読解さんと2人で歩いて帰っていると、すぐにどもって赤くなる僕に彼女は楽しそうに根気良く話を続けてくれる

 

「来年からも一緒の学校だね、科が違うから関わりはあんまりないと思うけど、よろしくね」

「も、ももも、もちろんです!」

「そうだ、折角だし連絡先交換しておこうよ」

「へえっ!?連絡先っ!?」

「そう、連絡先、スマホ出して」

「は、はい!」

 

スマホを出してワタワタと作業していると横から、サッとスマホを取られ、ささっと作業をしたかと思うと、すぐに返してくれる

 

「これでいけたよ」

 

新しく追加された読解 心理という名前を見て気分が上がる

 

連絡先として登録されている人の少なさの中、母親以外で初めて女子の連絡先が増えたことがとてつもなく嬉しい

 

「あ、ありがとう、読解さん!」

「いえいえ、私こそありがとうね」

 

恥ずかしさから合わせられなかった顔を上げて、そうお礼を言うと、急に強い風が吹いてきた

 

その瞬間、読解さんの前髪が上がり、顔が晒された

 

慌てて読解さんが前髪を下ろしたため、ほんの少ししか見えなかったが、紺色の大きめの眼鏡をかけている彼女の顔はとっても整っていて綺麗だった

 

思わず赤面すると、読解さんも照れたように笑う

 

「顔、見られちゃったね」

 

前髪をしっかりと直しながらそう言われるが、まだ上手いこと声が喉から出てこずゆっくりと頷くだけになってしまう

 

「ど…どうして読解さんはいつも目元隠してるの…?」

 

聞いていい質問かどうかわからないため、恐る恐るそう質問すると、やっぱり気になるよねー、と呟いた後に

 

「目元を隠してる理由はね、視線を悟られたく無いからなの、個性の関係で、ジッと見られてたら、何かを知られてるって分かるの嫌でしょ?目が見えてたらたとえ偶然視線が合っただけでも誤解されやすいし」

「そうなんだ、だから隠してるんだね」

 

確かに、人に心が読まれてるって考えると、落ち着かない気もするし、彼女が目元を隠す理由は分かる

 

「うん、でも今のはみんなには秘密にして、警戒されたく無いから」

「分かった、秘密にするよ」

「ありがとう、じぁ、私はこっちの道だから、バイバイ」

「あっ!うん!バイバイ!」

 

ヒラヒラと手を振って別の道の方に行く読解さんに手をブンブンと振って見送り、自分も家に向かって足を進めた



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4話

 

ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科

 

新しく入学する、この4科コースの生徒がずらりと体育館に並ぶ中、ヒーロー科のA組のみ、出席しておらず、選ばれた奴は何してもいいのかとイラつきながらも、真面目に校長の無駄が多く長い話に耳を傾ける

 

校長の話が終わった後生徒同士の挨拶となる

 

まず、在校生代表として、1人の高校三年生が出てきた

 

「在校生代表、高校三年生、ヒーロー科、通形 ミリオ」

 

毎年在校生代表は先生からの推薦で選ばれていると、雄英の噂で聞いたことがあるので、きっと、先生からの覚えもよく、とっても強いんだろう

 

そして、新入生代表には、身長は高く、スタイルはかなりいいのに背中を丸め、長く黒い前髪で顔の大半を隠した陰気な女子が出てきた

 

新入生代表の選出方法は全科共通の普通科目テストの合計点数が高かった人で、例年ヒーロー科がすることが多く、あんな陰気な女子だが、強個性なんだろと思い、つい睨むように見てしまう

 

「新入生代表、普通科、読解 心理」

 

よりによって、普通科か

 

新入生トップになるほどの筆記の点を取ってもなお、ヒーロー科には入れないほど実技が悪かったのだろうか

 

まあ、ヒーロー科を併願してるとは限らないので、そうと決まったわけではないが、取り敢えず強個性ではない事が分かったので、向こうに咎められたわけでは無いが、なんとなく睨むように見てしまったことを勝手に申し訳なく思う

 

通形先輩が、壇上に登るなり、急に「ぜんとー!」

 

と叫び、それに答えるように「たなんー!」と三年生が叫返しているが、俺を含めて周りはただただ困惑するだけだ

 

「みんな返事ありがとう!読解さんも返事ありがとう!なかなかこれ初聞きで返してくれる人居ないのに!凄い!」

「いえいえ、正解の返事が出来て良かったです」

 

あんな意味不明な掛け声に返事をできるなんて本当に凄い、周りの新入生の中で、これに返事ができてるやつなんていなかった

 

流石学力トップと言ったところか

 

しかも代表の2人はそこで私的な会話をやめればよかったのだが、その後もマイクで声を拡張されながら世間話を続けていて、先生に注意され、どこの学校でもありそうなありきたりな事を言い、生徒同士の挨拶は終わった

 

その後は去年までいたがいなくなった先生の紹介、去年と引き続き勤務する先生の紹介、そして最後に今年から勤務することになった紹介で、オールマイトが壇上に上がった事により、盛り上がりが最高潮になった後、オールマイトからの挨拶で、入学式は終わった

 

体育館から出て、教室から戻る途中、クラスの列に新入生代表の読解さんが入ってきた

 

丁度近くにいた俺はうっかり、読解さんと顔をしっかりと合わせてしまい、話しかけられる

 

「はじめまして、私はさっき先生に呼ばれてたから知ってると思うけど、読解 心理、よろしくね、君の名前も教えてもらってもいい?」

 

顔が大半見えず、表情がわかりにくい代わりに声に感情を過剰に乗せて話しかけられる

 

「俺の名前は心操 人使、こちらこそよろしく」

 

グイグイ来るなぁと思いつつも、どうせ洗脳という個性を知ったら離れていくんだと思いながら返事をする

 

「心操くんかー、渾名とかある?」

「いや、特には、無い、読解さんは?」

「私も特には無いよ、けどまあ、これから1年同じクラスなんだし、心理って気軽に呼んで」

「じゃあ俺も人使って呼んでくれ」

 

誰かの名前を気軽に呼んだことも、人使と気軽に友人に呼ばれたことは今まで一度もなかったが、相手に合わせてそう返事をする

 

それにしても、新年度が始まるのは嫌いだ

 

なぜなら、親しげに来る奴程、名前の次に聞く個性で距離を取ってくるからだ

 

どうせ心理もそうなんだろうなと思い、個性の質問を待ち構える

 

「ねえ、人使、私君の…」

 

ほら来た…嫌な質問だよ本当…

 

「好きなものとか知りたいな、何かない?」

 

………………は?

 

「は?好きなもの…か?」

「うん、そうだよ、好きなもの、それとも通学手段から聞く?」

「なんで通学手段なんだよ」

 

個性に対する質問などではなく、通学手段と来たので、思わずつっこんでしまう

 

「一緒なら帰り一緒に帰ろうかと思って…同じ中学出身の人と一緒に帰りたくなくてね、もしかしてもうすでに一緒に帰る人いる?」

「居ない、というか、同じ中学出身の奴いるのかよ」

「うん、すっぽり抜けてたあのA組に2人知り合いがいる」

 

よりによってヒーロー科とは、3人で受験して一人落ちたとかで気まずいのだろうか

 

「私は母親がここの普通科出身だったから、私もここに来たんだけど、正直私はヒーローって職自体が苦手でね」

 

やっぱり実技が悪かったわけではないんだな

 

「そうだったのか、ヒーローが苦手な奴っているんだな」

「まあ、私は大分変わってると思うよ」

 

恐らく、訳ありなんだろう、声にありありと押し出されたここからは踏み込んでくるなという硬さに俺はどうして苦手なのかと聞こうと思い開こうとしていた口を閉じた

 

「そういえば、今日、オールマイトが今年からここで教員をするって聞いて、凄い驚いたな」

「あー、私は前から知ってたからそこまで驚かなかったよ」

 

殆どの人と話す時に、絶対外さない話題として名高いオールマイトの話を始め、前の話題を強制的に終了する

 

「前から知ってたって、新入生代表だからとかか?」

「んー、まあ、そんなところ」

「オールマイトが授業担当するの、どうせヒーロー科だけなんだろうな、いいよな」

「まあまあ、ここは普通科でも全科目プロヒーローから授業を受けれるしいいんじゃない?たしかにNo. 1じゃないけど、それでもやっぱりプロヒーローから授業を受けれるのは貴重だし」

「それもそうだな、大抵の学校はヒーロー科だけの特別授業のみプロヒーローが担当ってのが多いしな」

「そうだね」

「でもやっぱりオールマイトの授業とかってどんなのか知りたくないか?」

 

好奇心を抑えられず、先程同意を避けた彼女にもう一度そう聞いてしまう

 

「私は別に知りたくもないかな、だって私はヒーローになりたくないから」

 

そうはっきりと今までの声に比べて冷たさを感じる声で返されてハッとする

 

そうだ、心理は俺みたいにヒーローに憧れてヒーロー科を受けて落ちたわけではない

 

ヒーローという職さえ苦手なんだ、興味なんてあるわけがない

 

先程避けようと思い終わらせたはずの話題に戻ってきてしまってることに気づき、申し訳なく思う

 

「まあ、気になるなら、ヒーロー科の人に聞いてみたらいいんじゃない?私も聞けたら聞いとくし」

「あ、ああ、ありがとう」

 

柔らかく温かい声にまた戻り、言われた声に安心して、お礼を言うと、口角がキュッと上がった

 

「人使はヒーローに憧れてるんだね、頑張れ、まだその夢は努力すれば叶う域だから」

 

目元は見えてないはずなのに、心の奥底まで見透かしたかのような声にそう言われ、心が激しく波打った

 

「ああ…でも、俺の個性じゃどうせ無理だ」

「そう、諦めるならそれでもいいんじゃない?ただ、挑戦するのはタダなんだし、やれるだけやってみたらいいと思うけどね、私も出来る事があるなら協力するし」

 

どうしてこいつは今さっき初めて会った人間にここまで言えるのだろう

 

いつもなら猜疑心にまみれ、心理の言った言葉を信用しなかっただろう

 

だけど、この不思議と心の中まで見透かされてるような、そんな不快なはずなのに、あまりにすんなりと心の中を分かってくれる感じにこいつなら俺の個性を知っても離れていかないんじゃ無いだろうかと

 

寧ろもう、個性など知った上でそう言ってるのではないのかと思ってしまう

 

「なあ、今日会ったばかりの奴に聞くのはおかしいと思うが、聞いていいか?」

「いいよ、聞くだけなら会ってからの時間なんて関係ないと思うし」

「それもそうだな…、なあ、俺、ヒーローになれると思うか?」

「それは人使の努力次第だよ、私が決めることじゃないし、周りが決めることじゃない、君がどこまで本気かってことだよ」

 

彼女の言葉は真っ向から否定する大多数の人の声とも、両親などから言ってもらえると無責任に可能だという声とも違っていた

 

ただ、自分の道を決めるのは自分だと、言った

 

確かにそれは当たり前のことだが、いつも周りにはヒーローに向いてない、その個性は敵向きだと言われてて、自分の気持ちが折れそうになっていた

 

「ああ、そうだな、自分のことを決めるのは自分だよな、俺頑張るな」

「そう、頑張れ」

 

漸く広い校舎を移動し終わったと同時に、話も一区切りし、短い応援を口にした彼女は俺と離れた廊下側の最後尾に座った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜★〜☆〜数日後〜☆〜★〜

 

 

 

 

「理里ちゃん、やっぱり雄英落ちたのかぁ、どこにもそれらしき人いねぇし」

「だよなぁ、理里ちゃん賢そうに見えて実は俺らより馬鹿だったんだな」

「だな」

 

後ろの男子2人がそう話してる中、今までの学校生活と変わらず一人で過ごしている

 

初めは初対面ってことで何人かが話しかけてきたが、お世辞にも友好的に見えない人相と個性のせいで完全にクラスから孤立していた

 

何もしないままなのもあれなので、スマホを操作し、イヤホンを両耳にさして、曲を聴く

 

初日の日に、心理と友人に成れたし、この学校では上手くやれるかも知れないと思ったのは束の間の夢だった

 

心理とは同じ電車通学だったので、駅まで一緒に帰っており、大分仲がいい方だし、休み時間も話せたらいいのだが、生憎彼女は人気者で休み時間、フリーになっていることが珍しい

 

騒がしいのはあまり好きではないが、だからといってずっと一人で居たい訳ではもちろんなく、意味もなく曲選択の画面をスライドさせていると、急に画面に影がさし、自分の後ろ側から手元を覗き込まれた

 

「何の用」

 

後ろに立っていた心理にそう問いかける

 

「用って程のことは何も無いんだけど、人使ってそう言う曲を聞くんだなぁって思って、割と話が合いそうな感じの曲具合だし」

 

そう言って自分のスマホを操作し画面を見せてくるので、サッと目を通して思う

 

確かに合いそうだ

 

「でしょ?」

 

俺が納得がいった顔をしたからか、心理は満足そうに頷いている

 

だが、自分が一番昔からずっと聞いてる人のは入ってなくて、少し残念に思う

 

入ってる曲系統的に入っていてもおかしく無いので、自分の画面も見せて、指差し

 

「この人の曲とかは聞かないか?」

 

そう聞くと、動きが停止した

 

地雷とかだったんだろうか

 

「あ、うん、聞いたりするよ、その人の」

 

動き出してそう答えるので、地雷などではなかったと安心する

 

「やっぱ聞くのか、いいよな〈R〉の歌、たまに上がる本人の声の方が好きで」

「そうなんだね、でも、私はこっちの方が好みだったりするなぁ」

 

同じ系統の別の人のことを指差しながらそう言われる

 

「おお、その人もいいな」

「でしょ」

 

そしてふと、楽しそうに会話している心理を見てつい俺は疑問に思ってしまった

 

どうして彼女は洗脳という個性の俺と仲良くしてくれてるのだろうかと

 

まさか、クラス中に広まっている俺の個性を知らない筈はない

 

彼女には俺の個性が洗脳な事を教えてくれる友人くらいたくさん居て、現に何度か、友人に俺と関わるのをやめとけと言われてるのを聞いてしまった事もある

 

そして、疑問はもう1つある、彼女の個性についてだ

 

彼女はクラスの自己紹介の時、なんとなく色々なことがぼんやりと分かる個性と言っていた

 

例として、落し物が、最近落とされた身近な人のものであったならば、物から落とし主を見つけれると話していた

 

そして、人の強い気持ちも感じ取りやすいともいっていたが、正直もっと精度の高いものだと思う

 

でなければ、彼女は俺と初めて話す時に、わざわざ、あんなにしっかりと個性についての質問を避ける訳がない

 

「やっぱり、露骨に避け過ぎたかー」

 

考え込んでいた思考に対して、そう目の前の彼女が口を開いた

 

もしかして考えまではっきりと読めるのか

 

「まあ、はっきりとは分からないよ、ただ、なんとなく読み取って、そこから思考を自分の頭で推理してるだけ、本当にはっきりと何もかも読み取れるほどの能力はないよ、ただ単純に人の気持ちの機微に敏感だから、、それに個性も合わさって物凄く心を読みきれるように感じるだけだよ」

 

心配しなくても、君の心の全てを暴きはしない

 

そう言われてるようだった

 

なんでもない風に言いながらも、立っている心理を座って下から見てるお陰で少し見える目尻が下がっていた

 

前髪、眼鏡と2つのもので塞がれてるいつもなら絶対に見えない目元が少し見えた事で、顔の全容を初めて把握した

 

異様に下からという変なアングルだが、こんな野暮ったい格好をしている心理はとてつもなく美人だった

 

規則通りにぴっちりと着ている制服に、なかなか雄英では見ない、膝丈スカートの彼女の姿は、明らかに綺麗な見た目を隠すためのフェイクだ

 

「人使は本当の姿、見たい?」

 

そんなの見たい決まってる

 

縦に頷くと、口角を片方だけあげた意地悪な笑みを浮かべ

 

「今はまだ見せてあげない」

 

そう言って不敵な笑みを浮かべた

「……いつか見せろよ」

 

聞いたくせに見せないのかよとは思ったが仕方がない

 

だが、いつかは隠してる理由とともに、ちゃんと本当の姿を見たいと強く思った

 



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5話

いつものメンツで食堂にご飯を食堂に食べに来ると、常時不機嫌そうな顔をしている爆豪が、1人の女子を見た瞬間、更に不機嫌そうな顔になった

 

「どうした、知り合いか?」

 

切島がそう問いかけてると、ちげぇ!と爆豪は怒鳴るが、確実に知り合いだろう

 

何故なら、その否定の声で振り返った女子も目元が隠れていても分かるほど顔を顰めていたからだ

 

爆豪、他科にもう女子の知り合いがいるのかよ、と茶化すように、ニヤニヤすると視線だけで人を殺せそうな目つきで睨んできた上に「黙れアホ面」と言ってきたので、何も俺言ってないとかさえ言わずに大人しく笑みを引っ込める

 

 

そうしている間に、その子はサッと踵を返し、一緒に食堂に来ていた友人達の背中を押すようにして離れようとするが、その態度が気に入らなかったのか、爆豪がツカツカと歩み寄り、肩を掴んだことで逃走は失敗に終わっていた

 

「てめぇ、人の面見て逃げようとたぁ、いい度胸してんな」

 

慌てて爆豪を俺たち3人も追いかけると、目を釣り上げながらそう言っている

 

「すみませんね、では、私これで」

 

そう言ってサッと肩を掴んでいた手を外し、逃げようとしているが、そこで逃す爆豪ではない

 

二の腕の辺りをガッと掴んで逃さないようにしたが、意外なことに、相手の女子の方が上手で、タイミングよく腕を上げ、かわした

 

女子相手だしいくら手加減してるとはいえ、爆豪相手に拘束を逃れるのは容易ではないので、驚く

 

「避けてんじゃねぇよ!インキャ女!」

「いきなり掴まれそうになったら誰でも避けるでしょ」

 

叫んでる爆豪に怯まずに、落ち着いた声で返す彼女

 

「読解さん、大丈夫?」

 

一緒に居た女の子が不安そうに彼女に問いかけている

 

「大丈夫だよ、合流できたらするし、先に食べてて」

「え、でも、読解さんは…」

「大丈夫、一応この人と知り合いだから」

「一応ってなんだオラ」

 

背中に庇っていた女子を逃し、読解さんと呼ばれていた子はこっちをしっかりと向いた

 

スラリとした細く高い背を丸めた目元の見えない彼女はジリジリと爆豪距離を取り合っている

 

「オイオイ、爆豪、落ち着けって、な?」

「黙ってろ、アホ面」

 

俺のたしなめる声は一言で黙らされる

 

「そんなこと言ったらダメでしょ、友人に」

「俺に指図すんじゃねぇ」

 

噛み付く爆豪を落ち着かせるように瀬呂と切島が左右につき、女子から距離をとらせる

 

「ねえねえ、爆豪とどういった知り合いか聞いてもいい?」

「中学が一緒っていう知り合い」

 

爆豪に対してえげつ冷たい声で返していたし、怖い女子かと思いながらも聞いてみると、短い返答が親しみやすそうな声のトーンで返ってくる

 

「そうだったんだな、名前聞いてもいい?」

「読解、貴方は?」

「俺は上鳴、よろしくー」

「俺は瀬呂、よろしく」

「俺は切島、よろしくな」

 

顔が見えない上に、ものすごい猫背でも女子にしては高い身長で割と胡散臭い感じだが、発言や行動は常識人でできたら普通科の女子と仲良くなりたい俺は、サッと読解さんの手を握って

 

「良かったら一緒にお昼食べない?」

 

そう提案した

 

「みんながいいなら私はいいよ」

「誰がインキャ女と食うか!」

「黙っとけって、爆豪、俺はいいよ」

「俺も」

 

爆豪は大分不満そうだが、俺たち3人が乗り気なのを見て、渋々、本当に渋々、同じ席につくことを諦めた

 

食券を買い、トレーを持って席に移動して座る

 

爆豪は本当に離れたいのか一番遠い席に座り、その隣に切島が座り、切島の目の前に読解さん、そして彼女の右隣に瀬呂、左隣に俺と座り食べ始めた

 

 

 

 

「ヒーロー科ってオールマイトの授業、受けてるんでしょ?どんな感じだったか、良かったら教えてもらえる?」

 

 

 

読解さんがそう聞いてきたのを皮切りに、俺や瀬呂が主となって話す

 

読解さんはとても聞き上手で、俺達はかなり長いこと話してしまった

 

目元が見えない上に物凄く猫背と言う陰気な出で立ちだが、話してみると、性格自体はそこまで暗いわけでなく、ただ大人しい部類の女子といった感じだった

 

そして、和やかに食事が終わりかけた時だった

 

急に警報音が鳴り響き、俺たちに異常自体を告げる

 

慌てて席を立ち、行動を起こそうとした俺達に対して、心理ちゃんが鋭い声で止める

 

「みんな待って、これは校内に侵入者が現れた時の警報音だし、侵入者もただのマスコミだから大丈夫、落ち着いて座ってたらすぐに収まる、変に立って行動する方が危ない」

 

自分の両脇に座っていた俺と瀬呂の腕をしっかりと掴み、座り直させながら、切島と爆豪にそう伝える

 

「なんで知ってんだテメェ」

 

机越しに大人しく座りつつ、読解さんを睨みつけて、そう爆豪が聞く

 

「個性がなんとなく人の心がわかるって言う個性だからだよ、同校出身のくせに覚えてないのかな、爆発くん」

 

俺達相手には優しい話し方をしていた読解さんは爆豪に対してやたら喧嘩腰だ

 

「クソザコインキャの個性なんて覚えてるわけねぇだろ」

「そう、記憶力が悪いのね」

 

わー、2人とも口悪ぃー

 

そう思っていたら急に爆発音がして、音の元を見てみると、出入り口の上で、非常口のマークのような体勢で壁に張り付いてる

 

 

「だいじょーぶ!!侵入者はマスコミです!!落ち着いて行動してください!!」

 

 

「やるな、飯田」

「麗日?って子も協力してるっぽいよ、まあ、マスコミはプロヒーローの先生達が相手しにいったし、騒動はもうすぐ終わるでしょう」

 

あと少しお皿に残っていた食べ物を気楽に咀嚼し始めた読解さん

 

周りはまだざわつき、ゆっくりとだが、出入り口に向かってる中、この行動はそれなりに肝が座ってる証拠だ

 

そう思っていたら、急に顔を上げて、グッと何かに注意を向けるかのように一点を見つめ、と言っても目は見えないが、取り敢えず、動かなくなり、無表情だった表情が歪む

 

「…………みんな、気を付けて、非常事態はいつ起こるかわからないから」

 

斜め上に注目はしてるだろうが、イマイチどこを見てるかわからなかった視線を戻したくるなり、俺たちに向かってそう言われる

 

「え、心理ちゃん、どゆこと?それ」

「ごめん、私の個性はなんとなくわかるが限度だからわたしにも詳しいことはわからない、けど、気を付けて」

「ああ、気をつけるが…」

 

何に気を付けたらいいんだ?

 

みんな、それがわからず、もう少しくらい詳しくわかったりしないの?という風に心理ちゃんを見てしまう

 

「……多分、No. 1が授業予定に組み込まれてる時に、狙われると思う……」

 

何かを考え込む仕草をした後にそう言われる

 

てか、え、狙われる?もしかして敵に?

 

「学内はセキュリティがあるし、先生もいるから、大丈夫だと思うけど…」

 

切島がそう言った瞬間、隣の爆豪に叩かれた

 

「そのセキュリティが今さっき破れただろが、馬鹿か」

 

そう手厳しい言葉を投げつけている

 

「そうだよ、セキュリティさえ突破されて仕舞えば、先生の数に対して、守らないといけない対象の生徒が多いから、いくらでもやりようがあるよ、あんまり気を抜かないで」

 

硬さを感じる声で言われて、俺達は身を硬くする

 

「敵は貴方達の事を遠慮なく殺そうとしてくるの、本当に気を付けて」

 

そう言いながら、食べ終わった食器の乗ったトレーを持って、混雑が解消されつつある食堂の人混みに消えていった



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6話

本当にオールマイトが教員として組み込まれている授業で敵が出た

 

読解さんを疑っていたわけではないが、本当に敵が出て、負傷者が出てしまい、心が冷える

 

しかも、俺は敵が出た瞬間にやっぱりと言ってしまい相澤先生に睨まれた

 

その上、授業後に話と言っていたのに、先生は全身にひどい怪我を負っていて、話ができる状態じゃなくなってしまった

 

俺は不確定とはいえ、前からこれが起こる可能性を示されていたのに、このザマで自分の無力具合をものすごく悔しく感じる

 

爆豪、上鳴、瀬呂も俺と同じ気持ちなのか、とても悔しそうな表情だ

 

「先生に報告すんぞ、インキャ女の事」

 

全てが終わった後、4人で取り敢えず近くにいたからという理由でミッドナイトに伝えると、制服に着替え終わった後に職員室に全員で来なさいと言われた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室に行ってみると、ミッドナイトは既に帰宅を始めてる普通科の読解さんと一緒にいた

 

5人まとめて、会議室に連れてかれると、そこには校長先生と読解さんの担任のハウンドドッグ先生が居た

 

校長先生促され、校長先生の前に俺が座り、それに続いて他の3人も先生が既に座っている前に座る

 

読解さんだけは静かに目の前に誰も座っていない席に腰かけた

 

 

 

「さて、爆豪くん、切島くん、瀬呂くん、上鳴くん、今日は大変だったね、けが人は出てしまったが、全員無事で本当に良かったよ、で、君達4人は前々からこの事を読解さんに忠告されたと聞いて、集まったんだけど、それは本当なのかな?」

 

 

校長先生の言葉に対して、皆言葉は違うが肯定する

 

 

「校長先生、確かに私は内部に侵入している敵とみられてしまってもおかしくない発言を同級生にしました、ですが、生徒をそこまではっきりと疑うのはいかがなものですか?」

 

 

急に読解さんがそう話し出した

 

話の内容が完全に読解さんを信じているものではなく、驚くが、校長先生の表情はそう思われて心外と思うより、しくじった、という表情なので、現にそう思っていたんだろう

 

 

「私はマスコミが侵入してきた時に、職員室のあたりから、強い悪意を特にNo. 1への憎悪を感じ取りました、そのため、その場にいたNo. 1から授業を受けている彼等に警告しただけです」

 

 

そこで言葉を切り、読解さんは冷ややかな雰囲気を出しながら顔を校長先生に向け続ける、そして、また何を考えてるかわかったのだろう

 

 

「詳しく言えなかったのは、私が分かるのはあくまでその時の心情のみで、精度は距離が出るほど下がります、その上、私が読んだ後に他者から影響などを受けてしまうと、行動に変更が出てきます、その為、詳しく伝えると、警告自体が足枷になる可能性があり、それを危惧して、ぼんやりと伝えま……チッ…No. 1が今戦った後の疲弊した身体でこちらに向かってきています、ミッドナイト先生、眠らしてでも追い返して下さいませんか?」

 

話している途中にまた分かったのか、舌打ちをした後、ミッドナイト先生に冷たくそう頼んだ

 

口調は丁寧だが、拒否させる気のない強い意思を感じる

 

 

「………君は心情じゃない戦った後の疲弊した身体という心情ではなく、身体的情報を言ったけど、それはどうしてかな」

 

 

冷ややかな雰囲気を醸し出した彼女に対して、校長先生もはっきりとそう問いかける

 

 

「この4人からオールマイトが辛勝した事が分かるからですよ、それにNo. 1からしんどいが私はヒーローだ、行かなくては、という狂った声がするからです」

 

 

狂ったとは、酷い言い様だ

 

 

「ごめんね、切島くん、私No. 1の事、どうしても好きになれないの」

 

 

間髪入れずに思った声に出してそう言われ、背中に冷たいものが走る

 

 

「そうなのかい、確かにオールマイトは今疲弊している、だが、一番に駆けつけている上に、狙われている張本人としてこの話の場にいないわけにはいかない、理解してもらえるかな?」

「……まあ、それもそうですね、分かりました」

 

 

返事をしたと同時にオールマイトが焦った様子で部屋に入ってきた

 

 

「まだ話は終わってませんか!?」

「大丈夫だよ、いいから座りたまえ」

 

 

そう促され、丁度生徒の前だがまだ誰も座ってない席、つまり読解さんの前に座った

 

 

 

「君が切島少年達に警告してくれた生徒?」

「はい」

 

 

口も聞きたくないと言ったように最小限の言葉で肯定している

 

 

「君が警告をしてくれていたからか、この4人は敵が出現した時誰よりも早く対応する事ができた、本当にありがとう!」

 

 

そう言いながら、差し出された手に対して、軽く片手を掲げて握手の拒否の意を表した

 

 

「…………」

 

 

オールマイトはなかなか握手を拒否されるという事が無いのだろう、差し出した手を握ってもらえず、ちょっと寂しそうに手を引っ込めている

 

 

「校長先生、私話すべきことは全て話したはずです、もう行っても良いですか?」

 

 

本当にオールマイトのことが嫌なんだろう、一分一秒とここに居たくないと言うように声に不満を表して席を立とうとする

 

 

「いや、まださ!」

 

そう声をかけられて渋々という様子で腰をかけ直した

 

「なんでしょう」

「まだ君の個性の精度がわかっていないから、ちょっと調べさせてほしいのさ!何、ちょっと距離を置いてどんなけ分かるか言ってもらうだけさ!」

「………ミッドナイト、私が敵じゃないかという疑う気持ち、個性に対する、純粋な興味………担任、私が敵ではないかという不安と私を疑う心、私の個性でここまでできることに対する驚き………校長先生、急に心情を読み上げ始めたことに対する驚き、想像よりはっきりと心を読む個性の運用性、もう良いですか?」

「まだオールマイトが居るじゃないか」

「分かりたくもないです」

「そう言わずにさ」

 

 

校長先生にそう言われ、嫌々口を開いた

 

 

「既視感だ…心を読む個性……懐かしい…今でも彼女を思い出すとあの時の自分の愚かさに苦しくなる」

 

 

読解さんが言い始めたのは今まで3人の先生と全く違ったオールマイトの心情だった

 

 

「よく聞いてみたら声までそっくりだ、もしやこの少女は彼女の娘なんじゃないか」

 

 

明らかに場違いな心情を読み上げられて、オールマイトの表情はどんどん暗くなっていく

 

 

「読解さん、もうオールマイトが昔の恋人を思い出してるのをやめてあげて欲しいのさ」

 

 

慌てて校長先生がストップというが、貴方が読めと言ったんでしょうと冷たく言い放ち、一瞥さえ寄こさず、オールマイトを見続けて、更に口を開いた

 

 

「彼女の娘なら、侵入した敵の心を読み、警告することだって確かに可能だ、だが、彼女には娘どころか子供さえいないし、そんなこと有り得るわけがない…名前が分からないのはもちろん、顔さえ見ないし判断できない」

「いい加減にするのさ!」

「黙ってて下さい、……もし彼女の娘だとしたら誰との子供なんだろうか…………」

 

 

オールマイトの辛そうな表情を見て、どうしてそこまでオールマイトを嫌うのかという憤りを感じ、爆豪達も同じなのか、読解さんを睨むように見ている

 

 

「そんな、殺気向けないでよ、何、私がそこまでしっかりとした意味もなくあれを好きになれないのって言ってると思ってんの?」

 

 

煽るような声でそう言い、思わず、俺はカッと顔を赤くし、怒鳴りそうになる

 

 

「まあまあ、ここまできたんだし?理由知りたいよね?私があれを好きになれない理由」

 

 

そう言いながら、眼鏡を外しで机の上に置き、その後髪の毛に手をやり、パチパチと髪についているピン留を何個か外して机の上に置き、それ以外にも、そんな場所にまでピンつけてたのかよと言ったところのものをパチパチと何個か外したかと思うと、髪の毛を丸っと持ち上げた

 

 

え?ヅラ?もしかして禿げてる?

 

 

そう思ったのもつかの間、黒い髪の毛の下から明るい目の覚めるような金髪が流れるように広がる

 

下を向き、髪の毛で顔を見えないようにしつつも、立ち上がり、手でササっと髪を整えてから、彼女はいつも背を丸めて下の方を見ていた姿勢を綺麗に正し、皆に始めて顔を晒した

 

大きめの眼鏡も、目元を覆う黒い前髪もない彼女の顔は、画面の中で数え切れないほど沢山見たことのある芸能人の理里だった

 

「読解 心理です、理里って名前で芸能活動もしています、母親の名前は読解 心音で、芸名はここねって言います。後、私のこの金髪と青眼は私の事を認知してないあれ由来のものです、ついでに、今話したことは芸能業界で最重要内容指定だから絶対に広めないでね」

 

 

いつも画面の中で綺麗で可愛い笑みを浮かべていた理里ちゃんの笑顔は生で見ると、綺麗で可愛いのは間違いな笑みなのは間違いないのだが、目が全く笑っておらず、芸能人の中ではかなりと言うか、ヒーロー以外の芸能人の中では三本の指には入る程好きな理里を生で見てるはずなのに、ただただ悪寒がしていた

 

 

「う、嘘だろ…?」

「お前が愛した女がお前の遺伝子が入った子供を腹を痛めて出産したって言う事実を否定したいならすれば?」

 

 

そう言われて否定できる男なんているのだろうか

 

 

「き、君が娘…?」

「気持ち悪いこと言わないでくれます?種馬ごときが」

 

 

うっわ、きっつー、マジできっつー

 

見た目が神がかったレベルで整ってる分、本当に言葉の切れ味がすごい

 

 

「じゃあ、私本当にこの後予定あるので、帰りますね、さよなら」

 

 

机の上に置かれた眼鏡をかけ直し、ササっとヅラを被ったかと思うと、彼女は今度こそ部屋から出て行った

 

 

「……取り敢えず君たち4人も帰るのさ、さっきの読解さんの秘密は口外禁止なのさ、絶対なのさ、そして、明日休みだからゆっくり休んで欲しいのさ」

 

 

そう言った校長先生のいつもツヤツヤの毛皮は今だけはなんだか薄汚れてる上にボサボサガサガサに見えてしまった

 



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7話

校内放送は、オールマイトの声だったらそもそも来ない、別の人が呼んだ場合、その人しかいないと入室、だが、少しでもオールマイトが近づいてくる気配がしたら逃走、クラスを訪ねても、オールマイトは姿すら見えない、他の先生の場合は、オールマイトがらみでなければ、しっかりと出てきて、対応している

 

彼女は本当に個性を有用していて、校長の自分やオールマイトはおろか、他の先生にもまともに尻尾を掴ませなかった

 

そして、職員会議に持ち出して議論しようとすると、扉をガンッと蹴り、広めたら、どうなるか、わかってらっしゃいますか?

 

そう冷たい声で脅しの声をかけ、行動を制限してくる

 

彼女は個性の使い方は上手いが、それと同時に頭も良く、普段は賢く、運動もできるので、まさに文武両道といった様子なのだが、こうも相手しにくいと、悩みの種にしかならない

 

といっても、親子関係があるから何か問題があるのかとかんがえたら、確かに今まで認知してなかったのは問題だが、実害があるわけではない

 

対処のしようもないので、取り敢えず彼女の案件は保留となった

 

たとえオールマイトが関わると物凄く容赦がなくなる癖の強い性格だとしても平常時の彼女は眼を見張るほどよく出来た生徒だ

 

普通科はヒーローになりたくて受験したが落ちた人がやさぐれ、荒れたりすることがあったりするのだが、学級委員長の彼女が全て上手に捌き切り、対応してみせ、厳しいハウンドドッグ先生でさえ、彼女の対応能力と問題解決能力をべた褒めしている

 

その上、勉強がよくできるので、休み時間はクラスの皆の質問に答え、難しい問題の解説をしており、各教科の先生は彼女のおかげで小テストの平均点はあのクラスがいつもトップに立っていると手放しで褒める

 

そして、そこまで勉強できるし、運動ぐらいできなくて良いと思うのだが、普通科で実施された体力テストでは彼女は運動能力を補助するような個性ではない分、個性を使用してもそこまでぶっ飛んだ成績にはならないが、それでも増強系を除けば、かなり上位のクラスの成績を叩き出している

 

文武両道、才色兼備、そういった言葉が頭の中にぽんぽん出てくる

 

彼女の母親も雄英の普通科出身だったが、そこまで優秀ではなかった

 

どうしてあそこまで父親であるオールマイトを毛嫌いしてるのに、この雄英に来たのかと思っていたが、恐らく母親と同じ道を歩きたかったからなのだろう

 

そんな事をテレビの中でものすごく意地悪で厳しい役を演じている彼女の母親を見ながら考えていた

 




ノリと勢いと、その場のテンションで文字をスマホに打ち込むから、書いた後にこの後どうしよう…って割となってしまう


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8話

「本当に行かないといけ無いですかね…」

 

昼休みが終わりかける頃、机に座ったまま、自分の周りをグルリと囲むクラスメイトに対して、顔を痙攣らせつつ駄目元で聞いてみる

 

「行くに決まってるでしょ!」

「そうよ!普通科代表として行くべきよ!!」

「心理、宣戦布告に行こう」

 

なんでも、あの敵襲撃を受けたA組の敵情視察に行きたいのだが、自分達個々では不安な為、最高戦力となる私を連れて行きたいみたいなのだが、生憎私はヒーロー科なんぞ、どうでもいい

 

当日は祖父母が孫の運動会と楽しみにしてくれているので、それなりには頑張るつもりだが、ヒーロー科に編入したいわけではないし、勝手にしてくれって感じだ

 

「お願いだってー、ねー、付いてきてよー、そんでもって相手を煽りに行こうよー」

「宣戦布告しに行こう」

「俺は勝ち負けはどうでもいいから、A組がどんな奴が見たいから、何かあった時用に来て欲しい」

「私も興味本位だから、何かあった時対処してくれる心理についてきて欲しい」

 

これは行くって言うまで煩いやつですね、はい

 

「分かったよ、しょうがないからついてってあげる、だけど、やるからには全力で煽るよ、分かってるよね、人使」

 

何気にずっと正面に立ち、不穏なことばかり言ってる心操に向けてそう言うと、力強く頷くので、放課後の敵情視察は決定した

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは、ガタイのいい生徒の波簡単に突破できないように軽くスクラムみたいなの組もうか、興味本位の人はそれの外側、本気の人はそれの内側に居てね、で、人使、君が特攻隊長だよ、頑張ってね」

 

気付いたらC組だけでなく、普通科の全クラスとB組まで居たので、指示を出してA組の前を埋めるのだが、普通科の人達は全体的に交流があるので、素直に従ってくれるのだが、B組の人達は眉を潜めて何故普通科の女子に従わないといけないのかと不満げだ

 

そして、案の定金髪の奴がアハハハハハッと笑いながら馬鹿にするようにこっちに来た

 

「あれあれあれ〜?どうして普通科の女子なんかがここを取り仕切ってるのかなー?」

「あらあらあら!これはこれはB組の物間君じゃないですか!!すみませんねぇ!貴方達B組に宣戦布告しに行く人員を割けなくて!!A組だけで手一杯なんですよ!!」

 

思いっきり煽る口調で出会い頭にそんなことを言われたので、素早く個性で名前や個性だけでなく、感情まで読み取り、全力で煽る言葉を返す

 

「へぇー?!言ってくれるじゃないですかぁー?!」

 

煽り文句の効果は覿面で、物間くんはもちろんだが、彼の後ろに付いてきているB組からも敵意の篭った視線をもらう

 

「ちょっと、その言い方は無いんじゃないの」

 

すぐ後ろにいた女子がそう言ってきたので、彼女の方を向き、グッと笑みを深める

 

「あら?どうしてですか?拳藤さん、実際よく話題に上がるのはA組で、注目度は比べるまでもないでしょう?」

 

なるべく嫌な奴っぽく見えるように身振り手振りも付けて煽る

 

「あ゛あ゛!?例えそうでも体育祭で活躍するのは俺達B組だ!」

 

嫌そうに顔を歪めた拳藤さんと、冷たい表情をする物間を押しのけて勢いよく、そう言いながら1人の男子が出てくる

 

「へぇ!その心意気いいね!鉄哲くん!何処かの誰かのように折角の宣戦布告の用意に口出しできたり、煽りに対して、怒るだけの人達と違って好感持てるよ!って事で君は内側、他の人らは下がってよっか」

 

鉄哲だけ腕を掴み引っ張り寄せると、普通科の人達が私の言葉に合わせて、他のB組をスクラムの外に押し出した

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ!?なんだよこれ!!」

 

 

爆豪くんが扉を開けるなり、上鳴くんがとてもいいリアクションをくれる

 

 

「おい、テメェ、どういう事だ陰湿女」

「クソモブインキャ女から変わってるじゃん」

「黙れヒョロノッポ」

「また変える、他にはどんな呼び方があるのかな?」

「………オーr」

 

禁断の言葉を口にしようとしていた爆豪くんの顔の頬をかするようにハイスピードで拳をつきだした

 

唐突な行動に、皆ギョッとしたように私のことを見てくるが、気にしてる場合では無い

 

「ねえ、今、なんて言おうとした?」

「………」

 

耳に口を寄せて聴くが、顰めっ面で爆豪は口を閉じたままだ

 

「まあ、分かってるだけどね、あなたの考えくらい、まあ、言いたきゃあ言えば良いわ、社会的にその事が公になって一番困るのは、あなたが尊敬するアレだけよ」

 

 

そう言われてしまったら爆豪には反抗できない

 

爆豪は大人しく黙り込んだ

 

 

「うん、それで良いんだよ」

「黙れインキャ女」

「人の名前もロクに呼べない人に黙れと言われても、むーり」

 

 

語尾にハートでもつきそうなイントネーションでそう言うと、複雑そうな表情を向けられる

 

 

「まあ、こんな余計な話はとりあえず置いといて…」

「お前が始めたんだろ」

「ははっ、で、本題なんだけどね、宣戦布告と敵情視察をしに来たんだ、ここにいる皆はね、皆がA組を引き摺り下ろす気満々なんだ」

 

 

軽く両手を広げ、自分の背後にいる人達を見せる

 

 

「と言っても、私はヒーローになりたくは無いからどうでも良いんだけどね」

 

 

そう快活に言いながら遠慮なくA組に入り、扉のすぐ近くでワタワタしていた緑谷くんの腕をガッシリと掴む

 

 

「飯田くん、麗日さん、今日は緑谷くん私と帰るから先帰ってて」

 

 

近くにいた2人にそう伝えて、緑谷の事を引きずって教室を出る

 

そのまま人使の横を通り過ぎようとしたら腕を掴まれた

 

 

「おい、何してる」

「場は整えてあげてんだから早く宣戦布告したら?私はちょっと緑谷くんとオハナシがあるから、じゃ」

 

 

腕を外させて、人波を割り、私は緑谷くんとその場を離脱した




この後、困惑しながらも言うと決めていた事を律儀に煽りながら伝える心操と勢いで喧嘩を売りに行くテツ
その辺は原作通りでいて欲しいからわざわざ書きませんでした


修正のお知らせ
自己紹介の時にお互いに名前呼びにしたくせにシレッと心理と人使がお互いの事を苗字で呼んでいたので、少し直しました
内容に変更はございません


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9話

 

「緑谷くん、急に手を引っ張ってきちゃってごめんね」

「ぜっ、ぜぜっ…ぜ、全然大丈夫、だよ」

 

読解さんに手を握られ、そのまま人気のない校舎裏まで連れてこられて、正直少し怖い

 

「うん、全くもって大丈夫そうじゃないけど、気にしないことにするね、あのさ、前にどうして目を隠しているのかって聞いてきたじゃん?」

「僕なんかが読解さんに質問してすみません」

「いや、別にそんなことで咎めたりはしないんだけどさ、あれもう一つ理由があって、それ他の人にノリとテンションだけでバラしたから緑谷くんにも教えてあげようと思って」

 

ニコニコと口角を上げながらそう言った彼女はクルリと周りを見渡したかと思うと、髪にさしていたピン留をどんどん取っていく、正直そんなにどこに刺さってたんだろう、と言う数あり、全てを外しきると、彼女は髪に手をかけ、するりと持ち上げた

 

すると、綺麗な金髪が流れ落ちた

 

「……えっ?」

 

顔の大半を覆っていた大きめのメガネを外すと、画面の中で活躍する、僕なんかとは住む世界の違う女の子の顔が晒された

 

「実はこの顔を隠す為でもあるんだよね、あの髪型は、どう?驚いたでしょ?」

「う、うん、とっても驚いたよ、まさかあの理里ちゃんだったとは、でも確かに言われてみれば前に見た顔確かに理里ちゃんだったし、それに芸能人が顔を隠して生活するのは当たり前だよね、素性がバレるだけでパニックになりそうだし、と言うか、理里ちゃんが雄英にいるって事は、一時テレビを賑わせていた雄英に行けば心理ちゃんに会えると言うのは本当だったんだ…」

「長いから一回ストップね、でさ、緑谷くん、そんなにNo. 1のウキペディアみたいな知識がある緑谷君なら何かに気付けない?ついでに私の母親はこの学校の普通科出身でーす」

 

金色の髪の毛をさらっとさせながらそう聞いてくる

 

それだけで、なんだかいい匂いが鼻をくすぐり、思わず赤面するが、彼女のことを見ながらオールマイトと同じ色をした髪や目を見て考えると、一つの可能性に気付いた

 

「………っ!?も、ももも、もしかしてっ!?いや、でも、女優の心音さんは妊娠で休んで……いや、精神的ショックって言って半年程の休養を取ってた……けど、その休みを取る前もお腹は膨らんでなかったし、いや、でも、腹筋がある人とかなら、4ヶ月と少しくらいなら誤魔化せるかのか?でも彼女今だにお腹を出すほどで、妊娠線は特になかったし、それに何よりオールマイトのことをいくら調べても子供がいるなんて、いやでも2人は付き合ってたんだし、できちゃう事くらいありえる……ってなったらやっぱり…」

「そろそろ長いから話切るねー、まあ、そういうことだから、で、しかも私はアレに最近まで認知されてなかったの、母親の周りの人に聞いて少し探偵でも雇えば分かることなのに」

 

昏い瞳でそう言う彼女は怒りが前面に推し出た、でもどこか悲しそうな、辛そうなそんな顔をしている

 

「まあ、私にはアレがいなくても大切な家族が何人もいるからどうでもいいんだけどね」

 

本当にオールマイトの事をどうでも良さそうに軽く笑って彼女はそう言う

 

「よし、じゃあもう帰ろっか、私と一緒に帰るって言って手を引っ張ってきたけど、本当に私と一緒に帰るのでいい?」

 

聞きながら手早くウイッグを付け直している

 

「も、もちろんいいよ!むっ、むむむ寧ろ、僕なんかと一緒に帰ってくれるの?」

「うん、全然いいよ、というか、前も帰ったよね」

「そ、そそうだね」

「よし、じゃあ帰ろう」

「う、うん!」

 

彼女とそれぞれの授業での事を話しながら帰るのは楽しかった



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10話

視点が心理→人使→心理と二転します



 

「今日雄英の体育祭よね?」

「そうだよ、お婆ちゃん」

「自慢の孫の活躍、私楽しみだわ!ちゃんと観戦しに行くからね!」

「いや…私は特n「お弁当一緒に食べることはできるのかしら?」

「あの…だから私h「貴女のお母さんの時は観戦行けなかったから本当に楽しみだわ〜、心理、お婆ちゃん期待してるわ!」

 

 

 

……ああ、これは期待に応えて頑張らないといけないやつですね!

 

私にはこんなにワクワクと楽しそうにしているお婆ちゃんを裏切ることはできない

 

 

「心理、わしも見に行くからな」

 

 

今期待値が倍になりました、私頑張る…

 

 

 

 

 

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなー!今日は待ちに待った雄英体育祭だね!張り切っていくよー!」

 

待機部屋で部屋の中心に立った心理がそう言って拳を突き上げると、クラスは「おー!」と元気よく返事をして拳を突き上げる

 

まだ俺は距離を置かれてる方だが、彼女のお陰でクラスの雰囲気は柔らかくて明るいため、物凄く感謝している

 

「みんなには既にヒーロー科40人の個性の説明をしたね?そして積極的に人を落としてくるであろう人数と人の説明もしたから、忘れないように、A組B組共に足止めにとても有効な個性が揃ってるから、死ぬ気で回避していくよ」

 

そう言うと、周りは力強く頷く

 

彼女は事前の説明で、Aは轟、峰田、瀬呂、上鳴の個性に注意だと言っていた中でも轟は好戦的で初めからバンバン氷結で足止めをしてくる事と、峰田と瀬呂の2人はクラスで団結してゴールしようとしてる場合、足止めとして動くだろう、そして最後の上鳴は特に何も考えずにぶっ放しているから巻き添えを食らうなとの事だった

 

B組の方も、骨抜の柔化、凡戸のセメダイン、塩崎のツル、に注意との事だ、しかもBの方は確実に協力して動くから、大半のBより成績が落ちたら一次通過は無いと思えとはっきりと言い切られる

 

彼女の予想では一次の通過人数は40人程、二次の通過は16人であると言い切った

 

その事を聞いて、初めはヒーロー科の40人しか進める気がないのかと、俺達は皆苛立ちを覚えたが、心理が1人でも押し退ければ、そのままダイレクトにヒーロー科の人を蹴落としたことになるの、気持ちよくない?と言ったことによりやる気を更にあげる一因となった

 

 

 

 

出席番号順に列を作り、競技場に出ると、俺達より先に出ていたA組のお陰で盛り上がっていた

 

完全に引き立て役となっている普通科、サポート科、経営科の3科は割とはっきりとげんなりとした顔をしている

 

整列した状態で生徒代表としてAの爆豪が宣誓していると、急に後ろから伝言ゲームのように[通過人数は約30名、競技は急に始まる、第一種目は障害物競走、ミッドナイトが壇上に立ったら周りに注意]と回ってきたので、自分も前の人に小声で伝える

 

こんな事が分かるのは心理しかいない、そして彼女の言葉は100%の信用率なので、皆足首を回したり、肩を回したりし始める

 

中にはヒーローになる気がない人もいるが、ヒーロー科ばかりに活躍をされるのは癪だからと、個性が戦闘向きでないながら頑張ろうとしている人もいる

 

そして、皆が気を引き締めていると、ミッドナイトが壇上に登った

 

競技を決めるルーレットが回されるが、種目は決まっている

 

ルーレットが止まり、障害物競走と表示され、競技場から外に繋がる扉が開き…そしてミッドナイトは大きな声で開始を宣言した

 

本当に急に始まり、対応できてない科もあるが、先に知っている俺達のクラスは殆ど反射のように走り出す

 

ヒーロー科の生徒も流石で、俺達と殆ど差がないくらいで飛び出している

 

そして基礎運動能力の違いか、単純にスタートのゲートが近いと言うものか、A組に割と前を取られてしまった

 

それでもまだ進まないといけないコースは長い、抜かしてやると思って走っていると

 

「上に飛べー!」

 

急に後ろからよく通る声で心理のその声が聞こえてきた

 

また反射のように上に飛ぶと、一瞬で地面が凍りつく

 

周りにはその氷で足を固められ、もう走れない生徒もいて自分が命拾いをしたことに気付く

 

「助かったみたいで良かったよ」

 

後ろから追いついてきた心理がそう言って俺の肩を叩く

 

「個人的に一番応援してる、お互いに頑張ろう」

 

そう言って滑る氷の上でも危なげなくスピードを上げて走り去っていった心理、ここからは彼女の力は借りられない

 

俺は気を引き締めて足を早めた

 

 

 

 

 

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

 

 

 

人数に対して大きさがおかしいスタート地点を通り抜けてみると、ヒーロー科の入試で使われていたロボットが無駄にたくさん配置されている

 

皆は驚きで足を止めているが、私は前から分かっていたので、周りの人の配置、ロボットの位置、これからの動きと言う膨大な情報を頭に取り入れながら、最短で走り抜けられる道を全く足を止める事なく走る

 

皆がそんなことしたら危ないとでも言いたげな顔をしてくるが、全く問題なく通り抜け切った

 

空間把握さえできれば問題など全く無い

 

次は綱渡りゾーン、落ちたら戻っては来れない

 

人が少なく、自分が足を滑らせる以外で落ちる要因の無い道を判断する、単純に走る距離としての最短より、このゾーンを走り終える時間が最短となる道を周りを見渡して脳内で叩き出し、縄に足を踏み出し、軽業師の様に走り出した

 

昔からどんな役でもこなせる様に様々な技を身につけてきたため、縄の上を走るくらいなんでもなかった

 

 

そして、この時点で漸く上位10位内程となれる

 

先頭はまだ遠い

 

 

 

 

次のステージは地雷ゾーン

 

人の心しか読めませんとか周りに言いつつ、どんなものからでも情報を読み取れる私に地雷などわかりやすすぎる障害物だ

 

少々の走りにくさは感じるものの、目を凝らしたり、うっかり地雷を振り抜いて吹っ飛ばされると言うタイムロスをしている連中に比べれば断然早い、苦戦している上位組を易々と抜いていく

 

 

煽りに来たあいつ、なんかすげぇ余裕で走ってくぞ、どういうからくりだ狡い、という言葉を背中に受けながら走ると漸く苛烈な1位争いを行う二人組を見つける

 

正直あんな怪我しそうな所近づきたくない

 

飛び抜けて走る2人から少し距離を開け、気配を消して追いかける

 

2人はお互いに集中しているから、私が後ろを付けてることに気付かない

 

このまま2人が1、2を取り、無難に自分が3位になれそうだと考えていると、急に背後から爆発音が聞こえてきた

 

どうやら大量の地雷と初めのゾーンのロボットの外装を使って緑谷くんが飛んだらしい

 

そう思ってると、案の定緑谷くんが空を飛んできた

 

あれ、どうやって着地するんだろうと思い読むと案の定着地を考えていなかったみたいで、どうしよう、どうしよう、と悩んでいる

 

かと思っていると、急に閃き、自分が乗ってきた外装を叩きつけ、爆発を起こし、前2人を足蹴にして進もうとしている

 

正直、巻き添えを食らって吹き飛びたくはないが、だからといって3位からは落ちたくない

 

なので、私は息を大きく吸い込み

 

「上空から緑谷がくる!対応!」

 

前の2人にそう怒鳴ると、お互いを抜かそうとしていた2人が驚いた様にこちらを見た後に一気に個性を使って走り出した

 

どうやら対応するより引き離す事を選んだ様だ

 

まあ、対応していて私に抜かされでもしたらたまったものでは無い2人からしたら正解の行動と思える

 

けど、飛来速度からして、このままでは緑谷くんの一気爆破は確定なので、私は緑谷君のおこぼれに預かろうと、淡々と距離を詰め、2人の後を追う

 

轟くんが作った氷の道のすぐ横を地雷を避けつつ走る

 

そうしていると、案の定、激しい爆発が起こったやはり、怪我はしにくいように作られているが、かなり威力があり、思わず、身を低くして衝撃に耐える

 

そして、2人は案の定逃げきれておらず、2人仲良く踏み台となっていた

 

緑谷くん、よくあんなに思い切りよく人のこと踏めるな、と思いつつ、体勢を崩した2人が起き上がろうとしたところで、私は背後から思いっきり2人の背中を横向きに突き飛ばして、横向きに体勢をもう一度崩させてこけた

 

個性を使って弱い力でも倒れるところをしっかり選んでの、その場所を必要以上の力で押したので、2人はしっかりと横に倒れた

 

しかもしっかりと地雷を爆発させてしまえる様に

 

2人が身体の全面から地面にぶつかり、地雷がカチリと音をたてて発動する

 

その風に煽られるように私は緑谷くんの背中を追った

 

コースは残りほんの少し、私達4人は他とは物凄く離れているから、すぐに走り出せば2人は3、4位にはなれるだろう

 

地雷原を抜け、コンクリートに変わった道を走り抜け、私は緑谷くんに続き2位となった



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11話



様々な2次創作の作品がある中で作者自身が未だに例を見ないレベルでヒーロー科のメンツが落とされます

メインのA組を落とすのはダメだって?走るのに向いてない子達はさよならです

皆さんの推しが活躍の場面すらなく、落ちてしまうかもしれません、ご容赦ください



 

「緑谷くん、トップ通過おめでとう」

「よっ、読解さんも、2位おおっおめ、おめでとうっ」

 

2人でハイタッチをしていると、手をボンボン言わせててる明らかにその道の人のような人相の爆豪くんが睨んでくる

 

緑谷くんはその事に気付いた瞬間、ヒッと小さな悲鳴をあげ、身を縮こませた

 

だが、そんなのどうしようもないので2人で皆が通過してくるのを待つ

 

現時点ではまだ一桁程しか人は集まってきて居ないが、やはりヒーロー科の人しかいない

 

どうやら、私の声に反応できず凍ってしまった人や初めのロボットで心が折れた人が多いみたいだ

 

確かに、運が悪ければ踏み潰されかねないあの大きなロボットや、やけに攻撃的な発言を行う中型のロボットの合間を縫って、又は打ち倒してゴールするのは難しい

 

例え、関節の強度が異常に弱く設計されていたとしても

 

普通鉄製のロボットはあんなにひ弱な強度で細い腕や腰のような部位を付けたりしない

 

非力な私では壊すのは時間がかかるが、だとしても、壊すことはいける

 

なので、少しでも体を鍛えていれば大型以外は男子なら割と余裕だと思ったのだが………

 

 

漸く全員揃った第1種目の通過者を見ると、普通科は自分と同じクラスの人使のみだった

 

他に普通科はおらず、もう少し初めの方フォローしながら走れば良かったかも知らないと思ったが、もしそうしていたら2位は無理だったと思うので、まあ、致し方ないと諦める

 

流石に訓練もしてない普通科がヒーロー科40人を押しのけて28位以内に入るのは難しかったみたいだ

 

私が事前に教員を見たとき、数日前の予定では40名通す予定だったのに、開会式で先生達を見て変更になっているのに気づいて本当に驚いた

 

慌てて後ろから自分のクラスで伝言ゲームを開始して、全て伝えられたらからまだ良かったが、本当に慌てた

 

B組の連中も大体40名と目星をつけており、そこまでなら大体の生徒が入っていたが、予想に反して40よりだいぶ少ない28のため、まあまあな人数落ちていた

 

仮にも大体全員を連れて第1種目をクリアする気だったB組は唖然としている

 

 

 

 

 

全員が揃ったところでまたすぐにミッドナイトが壇上に上がり、説明を始めるが、元々第2種目がどういうものかはもちろん、ルールまで分かってるので、私は同じチームになりたい人にシレッと歩み寄っておく

 

そして、チーム決めのホイッスルが鳴った瞬間、私はその場に居た誰よりも早く、目的の人の前に立ち、無遠慮に両手を掴んで

 

 

「緑谷くんに挑戦しに行こう」

 

 

そう誘った



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12話

 

走るという面においてとても有利で秀でた個性を持っていながら、あまりパッとしない結果に第1種目が終わり、悔しい思いをしながらミッドナイトの説明を受け、まさに今からチーム交渉に行こうとしたところで、自分の手を無遠慮に掴んできた女子がいた

 

驚いてその女子を見ると、先日宣戦布告をしに来た内の一人だった、そして、彼女はニヤリと笑い

 

「緑谷くんに挑戦しに行こう」

 

そう誘い文句を口にする

 

その誘いはまさに俺がしようと思っていたもので、個性も知らないのに、思わず即答でいい返事を返しそうになる

 

「私の個性は様々なことがなんとなくわかる個性、この個性を使って誰がどこから攻撃し、どのような作戦で私達を狙ってるか分かれば、飯田くんのジェットエンジンで逃げ切れるし、緑谷くんに挑戦して、勝ちを収められる」

「おい、それは本当か」

 

両手を掴んだまま、彼女が熱烈に僕に向かって自分を売り込んでいると、僕が答える前に轟くんがそう言って話に入ってきた

 

轟くんの隣には既に八百万くんもいて、2人して真剣な視線を彼女に向けている

 

「本当、轟くんと八百万さんのような強個性の人がメンバーに入れば間違いなくいける、私なら貴方達からしたら個性が不明瞭なB組の個性も全て把握してある、だから私と組もう」

 

しっかりと掴んでいた両手を離して片手を轟くんの方に向けると、轟くんは迷いなくしっかりとその手を掴んだ

 

「期待している」

「私も」

 

力強く握手をした後に2人は僕と八百万くんに視線で是非を聞いてくるので、僕らは縦に頷いて返した

 

 

まず、どう騎馬を組むかという話をしようとしたところで、後ろから聞き慣れた声で名前を呼ばれ振り返ると、やはり緑谷くんと麗日くんが目を輝かせながら立っている

 

「飯田くん、一緒のチームになろう!」

 

友達である僕と純粋に一緒にしたいという好意からくる誘い、いつもなら乗っただろう

 

「飯田くんを先頭に僕、麗日さんで馬をつくる!

 

そんで、麗日さんの"個性"で僕と飯田くんを軽くすれば機動力は抜群!

 

騎手はなるべくフィジカルの強い人がいいけど…まだ決めかねてる、とにかく逃げ切りを可能にする策はこれくらいしか….!」

 

僕がその話に乗ると信じて即興ながらかなりいい作戦を話してくれる

 

「……………………さすがだ緑谷くん……だがすまない、断る

 

入試の時から…君には負けてばかり、素晴らしい友人だがだからこそ…君について行くだけでは未熟者のままだ」

 

ギュッと決意を固めるように拳を握って、まっすぐと緑谷くんの目を見据える

 

「君をライバルとして見るのは爆豪くんや轟くんだけじゃない

俺は君に挑戦する!」

 

俺は2人に背を向けた

 

「飯田くん…」

 

 

最後から残念そうな麗日くんの声がするが、そんなものは気にしてられない

 

これは誰が一番になれるかという競争だ

 

友達ごっこじゃいられない



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13話

めっちゃ計算しました。

ルーズリーフに障害物競争の順位書いて、べべの持ち点を10、そこから10ずつ足し算してそれぞれの持ち点を計算

あ、もちろんトップの緑谷くんの持ち点は100万ですよ!

そんでもって、そこからが大変だったんですが、皆に騎馬を組ませて、点を足し算、騎馬でしての持ち点を出し、どう動かせば原作と順位が変わらないかという計算を永遠してました。

正直原作のままどうして40人通過にしなかったのかと恨み言を自分に言いたいほどでした。

まあ、私自身が順位の表見ながらこいつクラス対抗の動けるレベルでさえ、綱渡りは厳しいんじゃね?っというか、大きなロボットの間とか通ってこれる?地雷走り抜けられる?



…………………無理じゃね?ってなってしまったんですよね

まあ、逆にお前空飛べるのになんで障害物競争そんな順位なん?ポニーちゃん…とかも居たんですけどね、彼女正直、騎馬戦も空中から角使ってハチマキ取っちゃえば無敵じゃね?と思うんですけどね

まあ、この時点ではそういう芸当できなかったという解釈で





「取り敢えず前騎馬は飯田で決まりでいいな?」

「私達の中で最も体格がよろしいですし、賛成ですわ」

「俺もそこが1番自分の長所を活かせるから賛成だ」

「私も賛成」

 

4人で小さめの円になり、話し合いを始めるなり、俺がそういうと、3人が同意をしてくれる

 

「4人の中で1番体格が劣る……えっと…名前はなんだ?」

 

前髪で顔の大半が覆われた普通科の女子の名前がわからず、素直に尋ねる

 

「読解だよ、まさか名前さえ知らないとは思っても無かったよ」

「すまない」

「いいよ別に、ヒーロー科の皆さんからしたら普通科なんてその程度の存在だしね」

 

そう冷たく言われ、少しは否定したいが、名前さえ分からなかったのは事実なので黙り込む

 

「後、私轟くんに体格劣ってないよ?背筋伸ばせば貴方より身長高いし」

 

そう言われるので、背筋を伸ばしてもらい、背中合わせになると、飯田がサッと頭の高さを確認して

 

「本当だ、読解くんの方が1cm程高い、読解くん、そんなに背中曲げていたら腰を痛めてしまうぞ」

「心配してくれてありがとね、でも、猫背が癖になっちゃってるんだよね、まあ、騎馬戦の間は背筋を伸ばすから」

 

 

そう言って、ググッと伸びをした読解のスタイルはとてもよく、背中を丸めていた時は分からなかったが、八百万ほどでは無いにしても胸もある

 

身長が高く、腰も細く、足も長いスタイルは真っ黒な髪で覆われた陰気な頭とちぐはぐで物凄い違和感を与えてくるが、取り敢えず気にしない事にしておく

 

 

「で、ポジションなんだけど、騎手はもちろん轟くん、格闘技をやってる人の方がやっぱりバランス良いからね、で、轟くんの髪が赤い方に八百万さん、白い方に私でいく」

 

俺の髪の毛を見ながらそう指示をしていく、確かに自分の髪は左右ではっきり色が分かれているので、分かりやすくはあるだろうが、なんとなく複雑だ

 

 

「左右に意味などはやはりあるのですか?」

 

 

読解の意見を聞くわけでなくただの指示を聞いて八百万が素早く質問をする

 

 

「勿論あるよ、轟くんがカバーできない左側を八百万さんがカバーする為のポジション、そして逆に、右側の私は肉体派じゃないから氷でしっかり守ってね轟くん」

「障害物競走で俺のこと突き飛ばして2位をとったお前が肉体派じゃないとかあり得ないだろ」

 

 

緑谷の爆発に巻き込まれ、その上で背中を踏み台とされ、そして、極め付けに、背後にいた読解に突き飛ばされ、地雷に突っ込んだ

 

たとえ体勢を崩していたとしても、生半可な力では俺も爆豪も倒れない

 

そのことから、読解にはかなり力があるんだと思っていたが…

 

 

「それがあり得るんだよね、あの順位は少し鍛えている運動能力と、色々わかるこの個性で取れたものだから、色々武器を作れる八百万さんや、足が速い飯田くん、氷や炎を出せる轟くんに比べれば弱いんだよ、肉体的に」

 

 

そう言われると確かにそうかもしれない

 

彼女は俺達を抜く前も抜いた後も普通に走っていっただけだ

 

多少平均的な女子より早く走っていたとしても、飯田のように物凄く早かったりも、八百万のように何かしらアイテムを作ったりも、俺のように氷の道を作ったりもしていない

 

 

「ね?私は弱いでしょ?」

 

 

考えていることを読んだのか、軽く口角を上げた彼女がそう聞いてくるから頷く

 

 

「ああ、そうだな、その代わり、頭使ってもらうぞ」

「任せて」



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14話

後書きに持ちポイントを書いておきます
騎馬の合計ポイントも一応書いておいたんですが、暗算で適当にしただけなんで、ミスってたらすみません



14

 

 

 

 

 

「で、ポジションの次は、試合の前の準備なんだけど、八百万さん、いくつか作ってもらいたいものがあるけどいい?」

 

 

読解さんが体ごとクルリとこちらの方を向き聞いてくるので、力強く頷く

 

 

「私にできることなら幾らでも構いませんわ!お任せください!」

「オッケー、じゃあまずは私用にネットガン、大体1つの騎馬を一気に捕まえられるものを2つ、クラッカーの様な形式の使い捨てで簡単な物で出来ればポケットにさしておけるようにして欲しい」

「それくらいならば簡単ですわ!すぐにお作りします!」

 

出来上がったコンパクトサイズのネットガンを手渡すと、早速彼女は体操ズボンにさし、上から服をかけてサッと隠している

 

上の服を捲った時、綺麗に括れた細い脇腹がチラリと見えた

 

上半身にブラしか身につけていない私が言えることではないかも知れませんが、轟さんと飯田さんが居ますし、女性ですので、もう少し注意して欲しいと思いました

 

「ありがとう、後は轟くん用に棒、轟くんの氷結はどこぞの氷の女王様みたいに飛ばせるわけじゃ無いから、地面に氷張る用の棒が必要なの、けど、そんな棒持ってたら警戒されるから、ペーパーヨーヨーの大きい版のものが欲しい、強度は轟くんが氷で覆うことによってカバーしてもらう、飯田くんはまだしも、私と八百万さんは女子だからあまり重たいもの持って貰うと困るんだよね」

「伸ばした時の長さはどれくらいにいたしましょう?」

「飯田くんの身長が約180cmだから、170cmくらいで、材質は厚紙、持ち手は15cm程、材質は丈夫で氷結に耐えられるような金属を滑り止めで覆った物でお願いできる?」

「勿論お任せください!」

 

 

細かい指示があったので、念入りに作りながら脇腹から少しずつ出していき、出来上がったものを轟さんに渡す

 

 

「ありがとう、あ、後、これ、良かったらどうぞ、少しでも足しにして」

 

読解さんの不自然に膨らんでいたポケットからチョコレートを取り出し、渡されるまま受け取る

 

「チョコレートですね!十分な量です。ありがとうございます。それにしてもどうしてポケットにこんなに?」

 

 

障害物競走と、さっきのネットガンと大きめペーパーヨーヨーの生成で失った脂質をサッと補給できる十分な量を受け取り、早速食べながら聞いてみる

 

 

「飲み物休憩の時にシレッと鞄から持ってきた、八百万さんに負担をかけること分かってたから」

「まあ、ありがとうございます」

「いえいえ、図々しくお願いばかりしてる身だからね」

「そんな!勝つためですからお気になさらず!」

「そう言ってもらえて良かったよ、後は……どうしよっかな…」

 

そこで初めて読解さんは周りを見渡した

 

「何を見ているんだ?」

「他の騎馬のメンバーと作戦」

 

メンバーの方はまだ分かりますが、作戦を見るだけで分かるのは読解さんの個性によるものなので、やはり、肉体的に弱い代わりにその分強力な個性と素晴らしい頭脳をお持ちしている方なのだとしっかりと感じさせられる

 

「みんなはやっぱり緑谷くんの100万を取りに行くんだよね?」

「勿論だ!」

「ああ」

「勿論ですわ!」

 

緑谷さんの方をチラリと見てから、視線を私達3人の方に戻しなさる

 

「騎手緑谷くん、右騎馬麗日さん、左騎馬発目さん、前騎馬常闇くん」

 

全く騎馬になっていない緑谷さんのポジションを迷うことなくおっしゃる

 

「麗日さんが浮かして発目さんのサポートアイテムで飛ぶ、だからあまりに飛び続けるようなら私が作ってもらったネットガンを轟くんに渡して撃ち落として貰う、ただ、全体的にあの性能なら割と高くまで飛べるから、撃ち落とすのは難しいかもしれない、というわけで先に重りがついたロープを投げて、誰かの足に引っ掛けて引きずり落としてかもいいと思うんだよね、というわけで轟くん、そういう芸当できる?」

「流石にできねぇ」

「だよねー、分かってた。というわけで空中の緑谷くんの相手は爆豪くんにしてもらいます。彼相手に緑谷くんの騎馬は空中戦したら負け確定なので、それで逃げて地上に降りてきたら緑谷くんの騎馬を捕まえる。爆豪くんが取ってこれたら、爆豪くんが戻ってくる前に彼の騎馬を凍らせて待ち伏せ、彼の飛行性能上、必ず戻ってこないといけないので、そこをネットガンで捕まえよう。爆発で出てこられるでしょうが、一度100万持って仕舞えば飯田くんのエンジンで逃走、八百万さんの創造と轟くんの氷結で守備を固めればまあ、確実に私達に手を伸ばせる人は居ません。後は緑谷くんの騎馬の前騎馬担当常闇くん対策に私が指示を出したら、即興で発光弾を作って欲しい。そして試合が始まる前にサングラスを自分含めて私達3人に渡して欲しい」

「お任せくださいまし」

 

手の上で想像したものを渡すと、ポケットにサッと読解さんはしまい込み、そのことを見た飯田さんと轟さんもポケットにしまい込見ましたので、私もしまい込む

 

「あ、待って、飯田くんの分は自分で付けれないから轟くんが持って必要なタイミングで轟くんがかけてあげて」

「分かった」

「頼んだ」

 

 

轟さんは大きめのペーパーヨーヨーをズボンにさし、ポケットにサングラスを2つ入れているので、少し腰回りがゴテゴテし始めている

 

 

「後は細かい作戦を決めないとね、誰がどう動くか、始まってしまえば私にも分からなくなるから、細かいといってもだいぶ大まかなものしか決めれないだけど、取り敢えず初めは様子見、途中からは100万を持っている人とサシで対決、サシで対決するためには氷結で他と分ければいい。その時に氷結を塞がれたら困るから発光弾で視力を奪う、他の変に奪ってる間に緑谷くんに逃げられたら困るから、他はもう気にせず、緑谷くん捕獲することに集中して、多分爆豪くんの相手はB組と蛙吹さんの騎馬がしてくれる、私達は緑谷くんを上手いこと分断させれたら、邪魔者は入らない」

「わかった」

「分かりましたわ」

「おう」

「100万、絶対に取るよ」

 

その言葉に皆、力強く頷いた

 

 






1・緑谷・100万
2・読解・270
3・轟・260
4・爆豪・250
5・塩崎・240
6・骨抜・230
7・飯田・220
8・常闇・210
9・瀬呂・200
10・切島・190
11・鉄哲・180
12・尾白・170
13・蛙吹・160
14・障子・150
15・八百万・140
16・心操・130
17・宍田・120
18・芦戸・110
19・円場・100
20・柳・90
21・拳藤・80
22・物門・70
23・角取・60
24・取陰・50
25・麗日・40
26・耳郎・30
27・上鳴・20
28・発目・10







騎手の人の名前に☆を付けています




☆緑谷
・麗日
・常闇
・発目

100万と260



☆轟
・飯田
・八百万
・読解

890



☆爆豪
・瀬呂
・芦戸
・切島

750



☆心操
・ 尾白
・円場
・宍田

520



☆物門
・拳藤
・角取
・骨抜

290



☆塩崎
・鉄哲
・柳
・取陰

710



☆蛙吹
・障子
・上鳴
・耳郎

360


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15話

いつもいつも、誤字の報告ありがとうございます。
お気に入りの登録者がまさかの3桁に乗りました!
物凄く嬉しいです!
この調子で頑張りますので、これからも応援お願いします。


 

マイク先生の必要以上に五月蝿い声で競技が始まる

 

大半のグループが一直線に緑谷の100万を狙いに行くが、B組の奴の騎馬、普通科の奴の騎馬、そして俺が騎手をしているこの騎馬は様子を見るように少し距離を置いている

 

一気に囲まれた緑谷の騎馬がどうするのかと見ていたら、読解の言う通り、飛び上がった

 

「緑谷くんの着地点に近づく11時の方向、固まった騎馬を迂回して近づく」

 

読解がそう言ったのに合わせ、走り出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

騎馬戦も後半となった頃、読解の言っていた通り、爆豪はB組の騎馬と蛙吹によって妨害を受け、実際緑谷を狙うのは俺らだけとなった

 

だが、念のため氷で他の奴らから分断する

 

 

氷を地面に這わした時に麗日が身につけていた機械まで凍らし、無理に使おうとして損傷、冷気を吸い込んだ緑谷のバックパックも壊れたので、もう空は飛べない

 

もう一度、氷結を使用と凍ったペーパーヨーヨーを構えるが、常闇が上手い具合に逃げていて、捕まえることができない

 

時間も短くなってきて、焦っていると飯田が、急に話し始めた

 

「八百万くん、読解くん、しっかり掴まっててくれ、轟くん、必ず取れよ」

 

その言葉に反応して、読解が慌てて飯田の肩を服がグシャっとなる程強く握りった上に足を置いている手にもグッと力を入れたのを見て、八百万も慌てて同じように力を入れた

 

「轟くん、手に持ってる奴捨てて」

 

読解に言われるがまま、俺はペーパーヨーヨーを手放す

 

そうして、2人ともしっかり掴まったのを確認するなり、飯田は個性のエンジンの回転数を無理やり上げ、急な加速をして、緑谷の騎馬の横を走り抜けた

 

 

横を通り過ぎる時に言われた通りしっかりとハチマキを奪う

 

 

しっかりと対応して奪えたから良かったが、もう少し説明があっても良いだろう

 

 

 

「飯田さん、説明不足ですわ!」

「悪い、読解くんがいるから説明が少なくても意を汲んでくれると思い、急いでしまった」

「まあまあ、取れたからいいんじゃない?八百万さん」

「そうですけど」

 

 

「飯田くんそんな必殺技あるなんて知らんかったー!」

 

 

「必殺技などではない!間違った使い方だこれは!」

 

「確かに、黒煙出ちゃってるじゃん、これ完全にエンストしてるよ」

「冷静に分析してる場合じゃありませんわ!緑谷さんの騎馬が近づいてきています!」

「常闇くん、厄介だよね、って事で、サングラス」

 

読解の言葉に合わせて、俺はサッと飯田にサングラスをかけ、自分にもかけた

 

全員がすぐにかけたのを見て、八百万が手から発光弾を作り出し、近づいてくる緑谷の足元に投げると

 

 

激しい光が上がった

 

 

すると、今にも俺に襲いかかろうとしたダークシャドウが怯み、常闇の元まで戻って行った

 

だが、それでも接近自体を防げるわけじゃない、騎馬の体格上、下から首元に手を伸ばされる

 

緑谷の腕から個性を使う時特有の緑のスパークが上がっている

 

 

 

防がなければ

 

 

 

そう思ったと同時に俺は無意識に左を使った

 

 

 

 

 

自分の炎で覆われた腕が緑谷が振るった腕の風圧により跳ね除けられて始めて左を使ってしまった事に気づき、呆然とする

 

と同時に、急にグンッと身体が急に片方だけ持ち上がり、バランスを崩したことによりハッとする

 

「轟くん!何惚けてるの!?危ないよ!?」

 

読解のその叫び声で、完全に持ち直し、身体を全力で傾ける

 

緑谷の手が、俺の首にかかったハチマキを取ろうかとれまいかの所で掠って、結局取れずにまた距離をとった

 

 

 

「ごめん!取れなかった!」

「緑谷くん!惜しかったよ!」

「このままじゃやばいですよ!緑谷さん!残り時間後少しなのにゼロポイントですよ!私達!」

 

 

焦った様子の緑谷達と向き合っていると、急に爆発音が近づいてきて、思わずそっちの方を見ると、爆豪が手を爆発させながら近づいてきている

 

対応しなければと思い、冷気を纏うが

 

 

ボカンッ!!

 

 

爆豪は読解が躊躇なく発射したネッガンにより捕獲された

 

そのおかげで、ベショッと地面に落ちてしまい、騎馬の組み直しを余儀なくされたため、残り時間的に爆豪の脅威はもうない

 

 

と思っていると、今度は急に右足を引っ張られた

 

 

落ちることは無いが、バランスを崩して、大分身体が下がる

 

 

と同時に、頭からハチマキを取られた感触がして、そして、終了のブザーが鳴った

 

 

「轟くん、最後危なかったよ」

 

騎馬を崩しながら読解がそう言っくる

 

「ダークシャドウに100万のハチマキ取られるところだった」

「悪りぃ、爆豪に意識を持ってかれていた」

「まあ、あれは仕方ないか、100万を最後に持ってるのは私達だし、取り敢えず喜ぼう」

 

「ああ」

「やったな」

「そうですね」

 

 

 

緑谷への挑戦は取り敢えず俺や飯田の勝ち越しとなった

 




お気に入りの登録者、評価や感想をくだされば、作者単純なので歓喜しながら創作意欲を大量に湧き上がらせますので、どうかお願いします。
私にお恵みを


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16話

前話の後書きに入れる予定だったのに、忘れていて、でも加筆するのもなんか違うよねって事で騎馬戦の最終結果、ここに持ってくることになりました。
よければ目をお通しください。





騎馬戦の最終結果

順位・騎手の名前

取ったハチマキの騎手の名前というように表示しております

ちなみに、原作より爆豪の妨害に来るB組の数が少ないため、原作より爆豪は轟の騎馬に早く近づいてます。そのため、轟は爆豪に意識を向けてしまい、最後常闇にハチマキを取り返されかけた上に、爆豪を読解がわざわざネットガンで撃ち落としました。

順位・騎手の名前→総合所持得点

奪った騎手の名前→奪ったハチマキの点


と言うふうに書いてきます

理系のくせに暗算が苦手な作者が暗算で計算した表なので、あまり信用しないで下さい。






1・轟→100万と260

緑谷→100万と260


2・爆豪→1400

爆豪→750
蛙吹→360
物間→290


3・心操→1330

心操→520
塩崎→710


4・緑谷→890
轟→890








メンバー内訳は変わっていますが、原作と大幅な変更はございません






「おい、ちょっと面貸せや、根暗クソ女」

 

第1種目といい、第2種目といい、どちらも散々な目に合わせてきた根暗クソ女の肩を掴んで呼び止める

 

「アッ、バクゴウクン、ドウモ」

 

流石に色々やらかしたという意識があるのか、口元だけで分かる程引き攣った表情を返される

 

 

「お前、散々やってくれたな、ただで済むと思うなよ」

 

「そんな凄まないでよ、あれは競技だったし仕方ないじゃん………まあ、必要以上の力で突き飛ばしはしたけど…」

 

「テメェな!」

 

「悪かったって、そうだね……お昼ご馳走するってのはどう?お婆ちゃんがお弁当を作っていて、友達を呼んできてほしいって言われててね、味は保証するよ、本当に、美味しんだよね、お婆ちゃんのご飯」

 

 

詳しい説明などをしているわけではないが、声からして本当に美味しい事がわかる読解の雰囲気にかなり興味が引かれてしまう

 

どうせ、自分は親とご飯を食べる約束はしていない

 

だが、今日も食堂は解放され、ランチラッシュがご飯を作っている

 

本当に美味しいかわからない根暗女の祖母より、よっぽど信頼のある美味しい料理を食べるという選択もある

 

 

「爆豪、いい事を教えてあげよう、ここだけの秘密なんだけどね、お婆ちゃんの個性は料理をするのに向いている個性でね、ランチラッシュも美味しいけど、うちのお婆ちゃんもすごく美味しいんだよ」

 

 

そこまで言われれば、人間興味を引かれない方が珍しい

 

 

「さあ、行こう」

 

 

行く気になった心境を見透かされ、有無を言わさず、腕に腕を絡められ、連れて行こうとする

 

反抗する言葉や意思は出てくるが、やはり食べてみたいという気持ちが優っているため、大人しく腕を引かれていると、急に歩みを止め、振り返り一点を見つめた読解

 

視線を辿ると、轟と緑谷の2人が神妙な顔で歩いている

 

 

「根暗女、飯の前にあの2人にも話がある」

 

「えっ、あー、やめといた方がいいんじゃない?」

 

「あ?俺はあの2人にも話があんだよ、いいから行くぞ」

 

 

微妙な表情の根暗女を今度は自分の方が引きずって、俺は2人に近づいて行った

 

 

 

 

 

 

 

2人は人気のない所に行ったらしく、大人しく付いてくる気になった根暗女と2人気配を消して歩く

 

既に話し声がしていた為、耳を澄ませてみると、まず半分野郎の声でデクに向かって「お前オールマイトの隠し子か何かか?」と言っているのが聞こえて、思わず吹きそうになり、慌てて口元を押さえた

 

隣の根暗女、もとい本物のオールマイトの隠し子も同じように口元を抑えている

 

 

デクが半分野郎の言葉に対してどもりながらも、かなりの大声と勢いで否定をすると、半分野郎はあまりにその必死な否定で、逆に怪しんでるが、正直疑うだけ無駄だ

 

あちゃーとでも聞こえてきそうな体勢の根暗女から視線を外し、耳を澄ませると、聞こえてくるのは轟の重苦しいバックグラウンド

 

そういった理由があったとしても全力で戦わねぇのは気にくわねぇが、大分胸糞悪りぃ話ではある

 

本当は2人に文句を言ってやりたかったが、流石にこんな雰囲気の中でて行けるほどお気楽な頭はしていない

 

話が終わった所で根暗女と共にその場をそっと離れた

 




書き忘れてた事(心操について)


考えるだけ考えといて、完全に忘れてた設定なんですが、どうせ思い出したなら、ということで書いておきます。

体育祭が始まる前に心操は心理から、操れたらラッキーな自分を運ぶのに有利な個性を持った人を聞いていました。

そのため、B組の宍田を洗脳し、彼に乗って第1種目を突破しました。

そして、そのまま個性を解除せず騎馬戦でも、宍田を使っており、そこに加えて原作通り尾白と庄田を洗脳し、競技が終わると同時に解除して、その場を離れました。


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17話

 

「お婆ちゃん、お爺ちゃん、ちゃんと友人連れてきたよ」

 

一度、控え室により、財布とスマホのみ持って競技場の外で待ち合わせをしていた祖父母と落ち合う

 

 

「あらぁ、心理、男の子を連れてくるなんて、予想していなかったわ」

 

「話しかけてきたから、丁度いいと思って誘ったの、場外の飲食物持ち込み可能な特設場所あるし、そこに行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特設コーナーでお弁当食べ始めるが、取り敢えずすごく目立つ

 

雄英の生徒がここで食べているのさえ珍しいのに、その上ここにいるのはに決勝進出を決めている私と爆豪くん

 

そして、一緒にいるのが老けていても分かる程上品で綺麗な老夫婦(身内の贔屓目が無いとは言い切れないが、超美形の女優の親だから不細工なわけはもちろん無い)正直目立つ要素しかない

 

屋台で買ったものを食べれる場所でもあるので、観覧者はもちろん、休憩中のヒーローからの視線も合わせて物凄く視線が突き刺さってくる

 

始めのうちはその視線1つ1つを個性を使い、悪意など無いかを確かめていたが、途中から処理が面倒になってやめてしまった

 

どうせここで悪意を持って事件を起こそうが、即刻取り押さえられる力が揃っているので、問題ない

 

居心地悪そうな祖父母を心配しつつも、お婆ちゃんの美味しいご飯を視線など知ったことかと言う態度の爆豪と共にどんどん食べていく

 

隣の席で私と同じように重箱から取り皿にちゃっちゃと取り分けては口に運ぶ爆豪は口にはしないが、思考から満足してることはありありと分かるので、お婆ちゃんに向かってニッと笑ってグッドマークを出す

 

そんなことをしていると、常時なら嫌そうに視線をよこしてくる上に脳内で暴言を吐いてきそうな所だが、美味しいご飯にがっついているので私の様子に気付きもしない

 

そんな勢いで2人で満足いくまで食べていく

 

祖父母も一応自分たちの取り皿を手に持ち、食べてはいるが、沢山食べるのをみる方が楽しい、どうせ自分達はほとんどお腹空いてないし、と言う気持ちで微笑ましく私達のことを見守っている

 

 

 

 

 

 

 

お婆ちゃんが作ってきた料理はかなりの量があったため、私と爆豪が午後のことも考え、腹八分目で食べ終えた後も、まだ全然残っていた

 

 

「残りは持って帰るから全然気にしないで、私とお爺ちゃんはまだここでゆっくりするけど、2人は準備運動とかもあると思うし、もう行っても構わないよ、午後頑張ってね、応援しているわ」

 

 

おっとりとした口調に優しい笑顔でそう言われ、私はもちろん、爆豪も軽く会釈して短く返事を返した




個性について(読解)


取り敢えず、名前なんですが…

この物語の主人公は、読解 心理

主人公母の名前が、読解 心音

そして、主人公の祖母の名前が、読解 心


ついでに読み方は上から順に

シンリ

ココネ

ココロ

です、まあ、なんのひねりもないんで分かりやすいと思います。

そして、肝心の個性なんですが、大雑把に言えば、祖母の個性は人が口にするものについて様々知ることができ、それによって栄養バランスの良い美味しく、見目も良い料理を作ることができます。

そして、その個性が少し変わり遺伝した母は、人自体のことが分かります、主にわかるのは強く大まかな心情のみですが、頑張れば細かく知ることができ、そこから体調などの情報も読み取ることができます。

そしてまた、個性が変わり、より強力に変化した主人公の個性は既に作中に出ている通り様々なものから様々な事を読み取れるというものです、心情把握はもちろん、空間把握もお手の物、怪我や病気まで確かめられる非常に有用性の高いものです。

そして、この3人の個性なんですが、繋がりを分かりやすいように言い換えると

祖母の個性は

私(人)が食べるものの事がわかる

母の個性は

私(人)が関わる人のことがわかる

主人公の個性は

私(人)が関わる全てのことがわかる


というふうに強化されていってます。




納得できない方もいらっしゃるかもしれませんが、この話の中ではこの考え方を、使わせてもらいます。








思い付きとなんとなくで書き始めたこの行き当たりばったりの小説が思いのほか多くの人に読んで頂けて本当に嬉しいです。

皆さんからの応援を糧にこれからも頑張らせていただきます、





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18話

長らくお待たせいたしました
何回書き直しても気に食わなくて、ついに諦めてしまって、ヤケになって書きました
納得してないので、大筋変えずに変更する可能性高めです


 

 

 

 

帰る前に飲み物でも買ってから帰ろうと言い、自分も丁度飲み物が欲しかったの上にお詫びの一環として飲み物を奢ると言われたので、人の波に飲まれながら根暗女の後ろを歩く

 

もっとズカズカ人を押し退けてきゃあ良いのに、わざわざ個性を使ってるのか、真剣に前を見続け、誰かにぶつかってもおかしくないこの人混みを上手いことスイスイ間を縫って進んでいる

 

お陰で後ろの俺も同じ動きをしないといけないので、少し面倒だが、進むの自体は早いので大人しく後ろを付いて行っていると、急に、根暗女が立ち止まった

 

 

「んだよ、急に立ち止まんなよ」

 

「まずった、空間把握しか面倒でしてなくて、人を障害物として認識して歩いてたら、厄介な集団に近付いてしまってた」

 

「そんなもん気にせずすすみゃあいいだろ」

 

「じゃあ、爆豪だけ行ってきて、私ちょっとと大回りするから」

 

そう言ってクイっと視線でさした方を見ると、休憩時間のため、様々な人に突撃インタビューをしている何局かのリポーターとカメラマンがいた

 

たしかに厄介そうだ

 

 

「………うし、引き返すぞ」

 

「だと思ったよ」

 

 

2人して、なるべく気配を消して、ササっと向きを変え、そそくさと引き返し、少し大回りして無事に競技場に帰還した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、どうぞ」

 

聞きもせずに自分が飲みたかった飲み物を迷う事なく買い、渡されるので、受け取ると、陰気女はまた自販機に小銭を入れ、自分の分を買ていた

 

 

 

 

そして、そのままどこかに行けばいいのに、シレッと無言でついてくる

 

 

「いや、着いてくんなよ!」

 

「あ、ごめん、無意識だった」

 

「んだそれ!試合前にぼんやりしてるとか余裕か!なめとんのか!」

 

「あー、その試合について考えてたんだよ、誰にあたるかと、対戦相手による対策、後どこまで頑張るか」

 

 

当たり前のように後ろをついてきながら、斜め上の虚空を見ながらそう返してくる

 

 

「どこまで頑張るかって、てめぇ、全力でやらねぇつもりかよ」

 

「いやまぁ、怪我するのもさせるのも芸能人としてアウトだし、活躍を見せるって分では本戦出場できた分で十分だし、後ヒーローになるために優勝目指してるって訳でもないから、正直、適度に頑張って終わりたい」

 

 

ゆるく拳を握り、グッと弱々しいガッツポーズをしている

 

 

「んな態度じゃ一勝もできねぇぞ」

 

「いや、対戦相手にもよるけど、大抵の人には手加減して勝てるよ?これでも芸能人だから、一般人よりかなり多くのヴィランに狙われて対処してきたからね」

 

「普通対処はヒーローがするんじゃねぇのかよ」

 

「そんなの待ってたら怪我しちゃう」

 

 

ヒーロー飽和社会にいながら、そんな発言が出てくるとは

 

おそらくこいつからすれば、たかが1度ヴィランに襲われた俺のクラスなんて、なんて事ないんだろう

 

 

「そんなのもんなのか」

 

「まあ、大抵の人はお抱えのヒーローがいたりするんだけど、爆豪くんも知っての通り、ほら、私素性がちょっとアレじゃん?だから身近に人置けないんだよね」

 

 

それはさぞ人を近くに置きにくい事だろう

 

まあ、俺の知ったことではないが

 

 

「そろそろ、私もう行くね、流石にこのまま子鴨のように爆豪くんの後ろついていくわけにいかないし」

 

「たりめーだ」

 

「じゃあね」

 

 

丁度分かれ道となったところで、別の方に根暗女は欠伸が出そうな速度で歩いていった



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19話

サイドストーリー・心操 & 宍田

「なぁ!私の記憶が朧げなのは其方のせいですな!?」

「ああ、そうだよ、俺が個性で洗脳した」

「騎馬戦の時の他の2人もか?」

「ああ、だがあの2人は騎馬戦の時からだ、初めから洗脳したのはお前だけ、すげぇ助かった、ありがとな」

「記憶が無いのにそんなお礼言われても受け取れるわけがなかろう!それに何もできていないのに、本戦に行くなんて…」

「いや、お前が本戦に行けるのは、俺に操られたからじゃない、お前は俺が操らなくてもお前は本戦に行ける実力があった、だから俺は、俺だけの力じゃ、本戦に行けなかったから、お前の力を無理矢理借りた、だが、まあ、そりゃあ納得出来ねぇよな、初めっから操られちまってたら」

「……はぁ、本戦では必ず活躍してみせますぞ」

「本当に応援してる、嘘じゃないからな」







サイドストーリー、またの名を話の帳尻合わせのための前置きとも言う、会話だけでごめんなさいね!一応シチュはは人気のない通路で2人きりで話してる設定だよ!


19

 

 

 

「よー、人使、もう直ぐトーナメント発表だね」

 

 

自分と同じく普通科で本戦に出場する権利を得た心理がお気楽そうに控え室に戻ってきた

 

運動神経が良く、かなり侮れない奴だとは分かってはいたが、まさか、今までの競技を2位、1位グループと通過する程だとは思っていなかったので、正直びっくりしているが、それよりも、上手いこと使える人材を教えてくれた感謝の方が多い

 

 

「人使が無事に本戦出場圏を得られて良かったよ、運良く宍田くん洗脳できたみたいだし」

 

 

心理はやはり何も言わなくても、全てを分かってくれている

 

 

「実力は別に隠してた訳じゃないんだよ?体力測定の時も、中学までと違って全力で挑んだし」

 

「中学までは手を抜いてたんだな」

 

「うん、完璧なインキャになる為にね、この見た目で運動できるのも不思議でしょ?」

 

「まあ、そうだな、そういえば、心理、その髪型動きにくくないのか」

 

 

そう言って、俺はつい何となく隣の席に座る心理の黒く長い括られていることすらない横髪を髪を撫でる様に触ってしまった

 

 

「っ!?」

 

 

急に俺が触った事に驚き、心理が飛びのくが、俺は触った時に気付いてしまった

 

この触り心地は地毛じゃない

 

 

俺はつい何となくで、心理がヅラである事を暴いてしまったんだ

 

 

心理は女子だし、もちろん同い年なので、もちろん若い、それなのに、ヅラを使ってる事なんて、絶対に周りにバレたくないに決まってる、それなのに、俺は迂闊なことに暴いてしまった

 

 

そして、心理には、この俺の不味い、心理の髪の毛はヅラだったという考えはもちろん、もしかして心理ってハゲてんの?なにそれすげぇ気になる、というもっと不味いことも筒抜けだ

 

 

恐る恐る心理の方を見ると、疲れた表情で顔を額を肩で抑えていた

 

 

「あ、あの、心理、ごめんな?俺は心理がどんな髪の状況でも…」

 

 

自分も立ち上がり、両手を合わせて謝る

 

 

「自分の名誉の為に言うけど、私髪の毛生えてるからね、確かにこれは地毛じゃないけど、これをつけている理由は、ハゲだからじゃないからね」

 

 

もう一度俺の隣の椅子に座りなおした心理が深く息を吐いた後にそう言うが、正直、信じられない

 

 

「心理、別に隠さなくても…」

 

 

俺、この歳でハゲでも全然気にしないし

 

 

「私が気にするよ!」

 

 

力強く言いながら机をダァンッと叩いてる

 

まあ、確かに、女子がこの歳でハゲだとしたらかなり気にするだろう

 

 

「だから違うって!」

 

 

そう言ってあまりに強く否定するので、どうせなら確認したくなり、椅子に座っている心理に立ったまま近づき、髪に手を伸ばす

 

 

が、普通に避けられた

 

 

まあ、ど正面から愚直に手を伸ばしてもそんなものだろう、のけぞれば終わりだ

 

だが、心理は椅子に座っており、避けるには限界がある、少し、少しでも髪をめくれれば目的は達成できる

 

 

そう思って、手を1、2度、手を出すが、うまく捌かれる

 

 

流石にそこまで隠されると、見たくなるのが人の性だ

 

 

まさか、心理の見た目を占める殆どの長い黒髪ロングがヅラだとは思ってなかったが、地毛ではなかったので、膝下スカート、黒タイツ、第1ボタンまできっちり締められたネクタイ、たまに少し見えたかと思うと、でかい青フレーム眼鏡のせいで、ほとんど見えない彼女自身について知ってることが減ったことになる

 

 

心理はかなり仲良くしてくれている

 

俺を個性で判断して怖がったりなんてしない

 

けど、俺は心理の事を殆ど何も知らない

 

心理は俺の事を沢山知っているのに、俺は

 

俺は何も知らない

 

だから、せめて

 

 

せめてハゲかどうかぐらいいいだろ!?

 

 

「いや、だからハゲじゃないって!」

 

「なら、無理にでも見るだけだ」

 

 

手を出して払われるなら、もう身体ごといくしかない

 

 

俺はそう思い切って、座っている心理を覆うように抱き締めた

 

 

そして、後頭部の方のヅラの髪をかきあげると、本当に髪が生えていた

 

 

地毛はそれはもうはっきりとした綺麗な金髪だった

 

 

もっと地毛の方を見たくて、よく見ると、何本も刺さっているピン留を丁寧に抜いからヅラを外してみると、ふわりと軽いウェーブのかかったこれまたロングの金髪が出てくる

 

まさかこんなに綺麗な髪だとは思っていなくて、驚嘆する

 

 

思わず、ヅラを机に起き、胸元に顔面を押し付けさせたまんまの心理の肩を掴み、顔を見ようとすると、いつも覆っている黒髪の代わりに、両手で顔を隠していた

 

 

「人使がまさかウイッグ完全に取るとは思ってなかったよ」

 

 

両手で覆ったままで文句を言われる

 

 

「いや、だって、ハゲだと思ってたら、すっごい綺麗な金髪で、思わず、しっかりとみたいって思ってしまって」

 

「そう、もう十分見たでしょ?その手に持ってるウイッグ被せてくれない?」

 

「いや、ここまできたら顔も見たい」

 

 

本来なら女子とここまで近くに寄るのは恥ずかしいが、心理は元からパーソナルスペースがかなり狭く、いつも割と近いため、今更抱きしめたいくらいでは問題ないし、そして、顔を覗き込もうと顔面を近づけても、大丈夫だ

 

 

まあ、女子にかなり失礼なのはわかっているが、心理の見た目が陰気な感じで、あまりキャピキャピした女子らしい女子でなかったのも関係していたりする

 

 

という事で、片手は逃げられないようにしっかりと背中に回しながら、もう片手で手を除けようとするが、流石に強い

 

 

とても白く、細い手のどこにそんな力があるのか分からないくらい離れない

 

 

「俺の素顔知ってるくせに…っ、俺は知らないのは狡い…っ!」

 

 

俺も体を鍛えているわけではないが、かなり体格のいい方の男子だ、流石に顔から離れてくれたっていいだろう

 

というか、本当に見たい

 

俺だって、大切な、俺なんかと仲良くしてくれる、心理のことを知りたいんだ

 

心理に感謝していて、心理の事を好きだから、お願いだ、見せてくれ

 

 

本心から願えば、心理は優しいから、大抵軽く笑って俺のお願いを聞いてくれる

 

 

だから、こうやって口に出さずに、見たいという気持ちだけ心の中で考えるのは少し狡いと分かっていてもやってしまう

 

 

そこまでしても、俺は大切な心理の事を知りたかった

 

 

誰よりも仲のいい心理の素顔さえ知らないままなんて嫌だった

 

 

 

「うわぁー、もう、分かった!分かったよ、見せてあげるから、だからそろそろ、所々小っ恥ずかしい心情やめて、照れる」

 

「そんな事言っときながら、耳さえ赤くなってないくせに」

 

 

 

文句を言うと、肩が小刻みに揺れ、笑い声は聞こえないが、かなり笑われているのが伝わってくる

 

 

 

「素顔見せるの、特別だからね」

 

 

 

そう言って両手の離された顔を見て、俺は口から心臓が出るかと思った

 

まさか心理が実は芸能人だとは思ってもいなかったので、慌てて、体に回していた腕を離し、離れようとするが、いつのまにか、首に回されていた腕をのせいで離れられない

 

意地の悪い表情を浮かべていても、同じ人だと思えない程綺麗な顔を至近距離で見てしまい、顔が瞬間的に真っ赤になる

 

正体を知ったことによる驚愕と、最早天上の人と言っても過言でもない美形の芸能人とお互いの顔の間僅か15cm程と言う顔から火が出てもおかしくない位に感じる恥ずかしさ

 

 

「どう?私の素顔」

 

 

ニッと片方の口角を上げた心理に対して、真っ赤になりながら何か言おうとするが、テンパりすぎて何も言葉が口から出てこない

 

美人だとか、綺麗だとか、実は正体理里だとは思っていなかっただとか、色々言いたいのに、何一つ口から発せられない

 

パクパクとただ口を開閉していると、その様子に心理は漸く意地の悪い笑顔をやめ、ヘラっと純粋に笑った

 

 

柔らかい笑顔に思わず、こっちも少し気が抜け、軽く笑顔を返せるようになった……

 

 

 

 

かと思ったら、ギョッとした表情をした心理が、急にジッと一息に俺の上の体操服の前チャックを開け放ち、素肌に直接抱き着いてきた

 

そして、それと同時くらいの時に、勢いよくクラスの連中が控え室に入ってきた

 

 

 

 

 

そのお陰で、心理の急な変質者のような行為の理由がわかった

 

純粋な隠れ蓑にする気だ、コイツ

 

机の上に置いてあったウイッグをしれっと取り、髪をまとめて、ささっといつもの黒髪バージョンに戻ろうとしている

 

 

 

丁度心理が座っている位置は俺を挟んで扉と対角線なので、俺の服に隠れるように抱き着けば、体操服を着ている体しか見えないので、誤解はそれはもう沢山生まれそうだが、取り敢えず素性はバレは防げる

 

「え、あ、し、心操…その、何やってんの?」

 

 

引き攣った表情で明らかに女子に抱き着かれている、と言っても、正確には、凄く近くまで近づいて、体操服の内側でヅラを付け直してるだが、取り敢えず、俺にその質問が来るのはまあ、当たり前だな

 

 

「まあ、ちょっと色々あってな」

 

「へー、やっぱ心操、心理さんとデキてたんだね、お邪魔しちゃってごめんね、けど、もう、第2試合出場者の集合時間だから行こう」

 

 

まさか、心理だと言い当てられるとは思っていなかってのに、当てられ焦る上に、普通に恋人認定されていて余計に焦る

 

 

「違うよー!デキてないよ、人使とは」

 

 

ピンはさし終わってないが、見た目上いつも通りに戻った心理がさっと俺からはなれ、誤解をしたクラスメイトに否定する

 

まあ、芸能人相手にそんな噂など恐れ多いので、正直ささっと誤解を解いてほしい

 

 

「そう、でも怪しいなぁ〜」

 

「そんな怪しまれても、違うものは違うしねー」

 

「まあ、そうだよね、行こっか」

 

「うん、分かった」

 

 

 

 

ピンをさし終わってない状態で大丈夫なのかと不安だったが、本戦のトーナメント発表がされた後も本戦まで時間があるから激しい運動もしないし大丈夫だろうと思い、クラスメイトに手を引っ張られ連れて行かれる心理の後を追った




迷走に迷走を最近重ねています


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20話

納得のいく文章が書けません
最近コロナの影響で無駄に時間がある分迷うんですよね


 

 

峰田くんと上鳴くんがヤオモモに伝えていた偽情報により、チアのコスプレをする事になってしまい、好奇の視線を一身に浴びながら、怨嗟の視線を元凶に向けていると、ブフォッッという、吹き出した声が聞こえてきた

 

声の元を見てみると、肩を震わし、腹を抱えて小刻みに震えているが、声は辛うじて漏れていない、と言った状況の読解さんがおった

 

私自身はちゃんと話した事は無いが、デクくんや爆豪くんと同中出身という事や、体育祭で普通科なのにヒーロー科に勝って、上位を取っているため、名前は知っていた

 

そう言った、然程親しく無い相手に服装を笑われたとしたら、辛いっ…、辛すぎる……っ!やっぱりこんな服私には似合わへん!

 

 

 

「ご、ごめんね…っふっ…あの、あまりにも鮮やかにっ…ふふっ…騙されてその服着てるみたいだったからっ…っ!…ふぅ…、それに、似合ってはいるよ、とっても可愛いよ麗日さん」

 

 

前半の爆笑理由については笑いながら言われたが、後半の褒め言葉は笑いを収め、普通に褒めてくれて、かなり照れる

 

真正面からまさか可愛いよ、なんて言われるとは思っていなかったので、本当に恥ずかしい

 

 

「あら、読解さん、すみませんこんなお恥ずかしい格好で」

 

 

読解さんに気付いたヤオモモが恥ずかしそうに声をかけた

 

 

「確かに、周りとは格好が違うから目立つけど、八百万さん、やっぱりスタイルもいいし、よく似合ってるよ」

 

 

顔の大半が髪で隠れてる為、表情での判断などはデキないが、態度的に本心で褒めてくれていそうで、ヤオモモも私同様読解さんの言葉に赤面する

 

 

「あの、よ、よろしければ読解さんもチアの格好をなさるというのはいかがですか?」

 

「え?私も?私そういうのはあまり…」

 

「読解さんは私以上に背が高く、綺麗な体型をしていらっしゃるので、お似合いになられると思いますし、わたくし、気合いを入れてお作りいたしますよ?」

 

「いやー、でも、ほら、私陰気だし」

 

「えー!でも、読解ちゃんは可愛いって私の勘が言ってるよー?」

 

 

三奈ちゃんも輪に加わり、読解さんの背中を後押しする

 

 

「そうよ、心理ちゃん、私もオススメするわ」

 

「ちょっ、みんな読解さんの迷惑になってるって」

 

「えー、でも響香ちゃんも読解さんにチアの格好をして欲しいでしょー?」

 

「そりゃあ、して欲しいけどさ、でも、迷惑はかけられないし」

 

 

響香ちゃんと透ちゃんも読解さんをチアに参加させようと声をかけてきている

 

 

「チアの格好たのしーよー、一緒にやろうよ!」

 

「私心理ちゃんとはお友達になりたいと前から思っていたの」

 

「あー、……えっと…」

 

 

A組女子に囲まれてタジタジの読解さんはいつも以上に背中を丸め、後ろに下がろうとするが、背後には既に透ちゃんが回っており、下がれずにいる

 

 

だが、それでも無理に下がろうと後ずさりして、見えない透ちゃんの足に引っかかり後ろ向きにバランスを崩した

 

慌てて、目の前にいた私は手を出し腕をつかめたが、とっくに引き起こせる体勢では無かったため、一緒になって倒れてしまった

 

 

 

ベショッと真上に乗るように倒れてしまい、本当に申し訳無かったが、読解さんは流石というか、さっと片手で私の事を胸元に抱き締めた上で、どうやったかようわからないが、上手に衝撃を逃しており手を出して助けようとしたこと自体が無駄足になってしまってる事に気付いて落胆する

 

 

謝ろうと思い、顔をあげ、読解さんのことを見ると、思わずヒュッと息を吸い込んだ

 

 

「麗日さん、大丈夫?痛い所とか無い?」

 

 

目の前の金髪美少女にそう問いかけられ、思わず、無言で首をブンブンと振るが、正直そんな場合では無い

 

なぜなら、読解さんそして、モデルの理里ちゃんにのしかかってしまってる状況なんだ

 

 

慌てて飛び退く

 

 

すると、私の様子がおかしい事により、漸く、変装が解けている事に気付いた読解さんが恐る恐る自分の頭を触った後に、視界に入れる事の出来る後ろ髪をそーっと見えるようにして、思わずと言ったように両手で顔を覆った

 

 

「あ、あの、読解さんは…どこか…その、痛い所とか…あらへん?」

 

「大丈夫だよ、どこも痛く無い」

 

 

そう言って外れてしまっていた黒髪のウイッグを拾い上げた読解さん

 

 

「そうやったらよかった、それで、その、読解さん、その髪と顔は…」

「え?ああこれ?私実は理里っていう芸名で芸能活動しているの」

 

 

読解さんは変装していたため、正体をバレたく無かったみたいだが、私含め、至近距離でこの事件を見ていた同じA組の女子はもちろん、雄英体育祭を撮りに来ているマスコミのカメラにもしっかりも映り、観客も理里ちゃんコールを始めていて、何かを諦めたのだろうか

 

目だけぼんやりとしているが、芸能人らしい綺麗な笑みであっさりと返事をされる

 

「あの、読解さんごめん!私が手を出したくせに支えられなかったから…」

 

「大丈夫だよ、麗日さんが私を助けようとすぐに手を出してくれただけで、私は嬉しいから、それに私身長高い分体重重いから支えられなくて当たり前だよ」

 

 

今度は目にもしっかりと光がともり、明るい笑顔でそう返される

 

 

「麗日さん、ありがとう」

 

 

立ち上がった読解さんが両手を握りそう言われ、頷くが、正直これ程の美人に手を握られ、とてもドキドキする

 

 

「あ、もうミッドナイト先生が壇上に上がろうとしているからもう行くね!」

 

 

ガッとウイッグを掴み、ポケットに無理やりねじ込んだ(と言ってもかなりはみ出している)かと思うと、私達から離れて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本戦出場者は1位から4位の騎馬の人たち、合計16名だったのだが、3位の騎馬だった、尾白くんとB組の庄田くんが辞退したので、初めに騎馬として持っていた点が高かったB組の塩崎さんの騎馬から二人繰り上がることになり、騎馬内での話し合いの結果、塩崎さんと鉄哲くんが繰り上がる事となった

 

 

 

そして、機械により、シャッフルされ、トーナメントが発表される

 

私の対戦相手はまさかのあの爆豪くんで、思わず、少し遠くにいた爆豪くんのことをガン見してしまう

 

 

 

 

さっきまでの競技では私は挑戦なんてせずに友達と仲良くよりたいという考えや、頼りになる緑谷くんに頼るという甘えた考えを持ってても通過できた

 

 

 

人を頼りにできた

 

 

 

そして、その考えは、飯田くんの挑戦するという言葉を聞いた時、恥ずかしくなった

 

 

甘えられるからと言って、甘えていいわけじゃ無い

 

 

勝ちは自分で掴み取らなければならない

 

 

怯える心を叱咤して気合を入れた




次の話は比較的早くあげれそうです


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21話

本戦トーナメント表
追記(3)

【挿絵表示】



トーナメント表です、見にくいと思いますが、めっちゃ頑張って打ったんでご勘弁ください

ついでに、試合を作中で描くのは、イレギュラー対戦のみです、原作通り戦ってるキャラは書かないか、さらっと流すだけです









〜〜〜〜呼び方について〜〜〜〜

爆豪派閥が心理を呼ぶときの呼び方、安定してなかったので、ここで安定させます。

爆豪→根暗女、インキャ、などなどの悪口

切島→読解さん

上鳴→心理ちゃん

瀬呂→心理ちゃん


後、クラスメイトや普通科の他クラスからは、心理さん、や、読解さん、などさん付け、心理と呼び捨てをするのは人使だけです。

心理はクラスメイトからしたら、勉強ができる上に、頼りにもなり、怒らない優しい達観した人、その上放課後の誘いに一度も乗ったことがない距離のある人という立ち位置です。そのためタメで話はしますが、距離は感じます。

これで、前の話も修正しときたいんですが、まあ、それはおいおいそのうちやります(これ多分やらん人の意見)。







追記(1)
すみません、一回執筆途中で投稿してしまいました







 

 

「上鳴くん、瀬呂くん、私もレクリエーションの借り物競走参加するんだ、よろしくね」

 

「よ、よろしく、心理ちゃん…」

 

「あ、ああ、よろしく」

 

 

借り物競走出場者の集合場所にいると、笑っているはずなのに、どこか目が笑っていない表情の心理ちゃんが軽く手を振って近づいてくる

 

 

報道陣が観客席からこっち側に来れないのをいいことに、遠くから投げかけられる質問に対して一度よく通る声で質問は事務所にお願いします!と言ったっきり、報道陣が発する全ての質問がまるで全く聞こえてないかのようにシレッとしていた

 

 

 

「国民的アイドルに挨拶してもらえるなんて!妬ましいぞー!オメェらー!」

 

 

「峰田くんもこの競技出るんだね、応援してるよ!」

 

 

「ありがとうございましたー!!」

 

 

 

ファイトっと手振りもつけられて峰田はご満悦だ

 

というか、中身が世間一般に知られている清純派かつ、優しい性格では無いと分かっている俺も思わず見ほれてしまう

 

 

何故なら彼女は美人だから

 

それに、笑うと可愛い

 

身長が高いのに、顔ちっちゃい

 

ヅラ着けて猫背になってても身長が高く細いことは分かっていたが、猫背をやめてヅラを外すと、スタイルは最早神がかってる

 

そして、俺のこの、外見べた褒め心境もきっと彼女にストレートに伝わってるはず

 

だから俺も応援されたいっていうのも理里ちゃんには分かるはず

 

という事で、期待の目を向けていると、苦笑いしながらこっちを向いてくれた

 

 

 

「もう、瀬呂くん、私は読解 心理だよ、これ絶対ね?」

 

 

人差し指を立てて軽く起こるような仕草でそう言われ、思わずデレデレしながら心理ちゃんと名前を呼ぶ

 

 

「なあに?して欲しい事は口にしないと分からないよ?」

 

 

ああ、まあ、そりゃあそうだ

 

いくら心を読めるからと言って、察しろはあんまりだ

 

 

「し、心理ちゃん、俺も応援してください!」

 

「えっ!ずるい!俺もお願い心理ちゃん!」

 

 

俺に便乗するように、上鳴も両手を合わせてお願いをしている

 

 

「瀬呂くん、応援してるよ!上鳴くんも応援してるからね」

 

 

まる凄い絵を描く人が美人画として描いたかのような心理ちゃんの応援は本当に可愛くて、素の性格や動作とは違うはずなのに、全くの違和感がなく自然で子役としてのとても高い腕前がたったこれだけのやり取りで垣間見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は当たり障りのないカバンというお題で問題なく観客から借り、何事もなくクリアしたが、峰田が拾ったお題がまさかの背脂でもちろん持ってこれず失格となった俺たちの番の後、最終走者として、心理ちゃんがスタートラインに並んだ

 

 

 

 

最終走者に出されるお題は難問ばかり置いてある、と、マイク先生が楽しそうに実況している

 

 

 

 

 

パァンッとピストルの音が響き、皆一斉に走り出した

 

 

だが、流石障害物競走で2位になった実力者の心理ちゃん、お題に辿り着くまでの短い距離でさえ、他の走者より少し早く、頭一つ抜けている、

 

 

そのため、お題の元まで1番にたどり着き、簡単に折られていて、見えるはずのないお題をさっと視線を向けたかと思うと、自分から1番近い訳じゃないお題の1つを手にとって開けた

 

 

 

 

 

 

 

「ミッドナイト先生ー!私と一緒にあの白いゴールテープを切りましょう!」

 

「ごめんなさいね!とても魅力的なお誘いだけれど、私は主審だから借りられないのよ!」

 

「それは残念です!他当たります!」

 

「頑張って頂戴」

 

 

え?お題なんだったの?

 

急にコースから外れ、ミッドナイトの元に走って行き、紙は見せる仕草すらせずに手を差し出し、とてもよく響く美声で借りられて下さいとかではなく、なんとなくミッドナイトが好きそうなセリフを吐いたかと思うと、普通に断られる一部始終を見て、首をかしげる

 

 

 

 

「Hey Presents Mike!Please borrow me, teacher!」

 

「Sorry!I have a live job!」

 

「OK!Hit another person!」

 

「Good luck!」

 

 

 

 

今度は超滑らかな発音でマイク先生を借りようとしたが、これまた滑らかな英語で拒否られていた

 

まさかの二連続アウトで心理ちゃんは落ち込むかと思いきや、普通に元気に身振り手振り付きで他を探しに行った

 

この時点で、同じタイミングで走ってた人は全員お題が分かっていて、〈好きな人〉〈クラスの中の良い異性〉〈クラスで1番怖い人〉〈顔が好きな異性〉などなど、それぞれ違った難しさのあるお題ばかりだ

 

そして、心理ちゃんも借りたがってた人的に自分の学年の先生とかなのだろう

 

 

 

そのことに気づいたのか、いつのまにかオールマイトが教員用の控え室から出てきて、競技場内の端に、と言ってもかなり目立つ場所に立っている

 

かなり嫌われていたのに、よくやるなと思わず思ってしまう

 

やはり、娘は可愛いのだろうか

 

 

と思っていると、走っていた心理ちゃんがかなりオールマイトに近づいた

 

金髪青眼で、やはり似ている

 

 

そして、心理ちゃんはオールマイトの目の前で止まった

 

 

てっきりスルーされるものだと思っていたのか、オールマイトは凄く嬉しそうだ

 

 

そんなオールマイトの様子を見て、ニコリと心理ちゃんが口角を上げたかと思うと

 

 

「エンデヴァーさん!是非私に借りられて下さい!お願いします!」

 

 

視線をオールマイトから外し、今までで1番大きな声でそう観客席に向かって叫んだ

 

 

 

ズギャアンと音が付きそうな表情でオールマイトがショックを受けている

 

 

「貴様の目の前の奴を借りていけばいいだろう」

 

 

確かにそのとおりだ、わざわざエンデヴァーが出ていかなくても、借りられたそうなオールマイトを引っ張って行けばいい

 

 

「いえ、貴方がいいんです!」

 

 

差し出した手を下げる気がない動きでもう一度強く出た

 

 

「…分かった」

 

 

渋々というように、観客席から飛び降りて、競技場内に着地し心理ちゃんの手を取った

 

 

「ありがとうございます!さあ走りましょう!」

 

 

 

そう言ってグイグイ引っ張るが流石エンデヴァー、心理ちゃんの力なんてものともせずに普通に歩いている

 

 

 

「急ぎましょう!」

 

「今更急いだところでもう他の奴らはゴールしているぞ」

 

「いや、まあ、そうですけどね、でも一応これ借り物競走なんですよね」

 

「知らん………貴様、テレビに映される側の人間だな」

 

 

心理ちゃんも引っ張るのを諦め、一応手だけは繋いだまま、広い競技場内を二人してゆっくりと会話しながらゴールテープに向かっていってる

 

 

「もっと良い言い方無かったんですか?」

 

「芸能には生憎明るくないんでな」

 

「まあ、ヒーロー職で忙しいでしょうからね、私は今のところ一応子役で、芸名は理里で、本名は読解 

心理です、どうぞよろしくお願いします」

 

 

自己紹介文をねじ込んできた心理ちゃんの顔をエンデヴァーはジッと見つめ、何かを考えている

 

 

「読解……貴様オールマイトの子か」

 

「芸能に明るいじゃないですか、轟 焦凍くんのお父さん」

 

 

ナチュラルに暴露したエンデヴァーに対してヘラリと軽薄な笑みを浮かべて肯定も否定も発さない

 

 

 

「噂には聞いていたがまさか本当に子供がいたとはな、しかも奴の個性を継いでいないのに、予選結果が焦凍よりいいとはな、貴様には期待しているぞ」

 

「いや、期待されても個性の相性上、私には手も足も出ませんよ、それに今まではただ運が良かっただけなんです、サシでガチバトルって、なったら駄目ですよ」

 

 

そこまで言ったところで、言葉をきって、心理ちゃんは軽く手招きして、エンデヴァーに少ししゃがんでもらい、そして耳元に口を寄せて何かを囁き、薄ら寒い笑みを浮かべた

 

 

「さあ、ゴールはもうすぐですよ」

 

 

フワッと画面の中でよく見るぬくもりのある無邪気な幼な目の笑顔でそう言ってエンデヴァーと手を繋ぎ彼女はゴールした

 

 

ゴールしたときに発表されたお題は〈卒業生〉で、確かにミッドナイト先生でも、マイク先生でも、エンデヴァーでも、そして、オールマイトでもオッケーなお題だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ここからエンデヴァー視点です

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール間近となった時に手を軽く下に引っ張りながら耳を貸せとジェスチャーしてくるので、しゃがんでやると、口の動きを読まれないためか、両手で、口の横に持っていき耳元に口を寄せて

 

 

 

「私のような非力で、父親から個性はもちろん、愛も金も温もりも何もかも貰えず、それこそ、髪と目の色位しか貰えなかった子供は、両親から個性を両方引き継ぎ、そうなるべく作られた完成品に手も足も出ませんよ」

 

 

そう言った声はとても冷たく、危うさを孕んでいた

 

まるで太陽のようだと称される奴とは本質から違う

 

 

「さあ、ゴールはもうすぐですよ」

 

 

まるで邪気など全く持っていないとでも、自分はとても充実しているとでも、言わんばかりの笑顔や声と動作、先程の姿を見たあとだから違和感を感じるはずなのに、まるでもとから、そういう人間だと思ってしまう程、目の前の少女から暗い裏の性質なんて感じられなかった

 

 

子役をしているからか、元からの性格か

 

 

どちらかは分からないが正直不気味だ

 

 

まさか真っ直ぐ裏などなく、ただ光の中だけを走る奴と血が繋がってるとは正直思えない

 

 

 

 

 

「貴様は本当に見た目だけだな」

 

「正直見た目もいらないんですけどね」

 

「まあ、俺もヒーローだ、時間があるときなら相談に乗ろう、連絡先は焦凍に聞け」

 

「ありがとうございます、なら、是非頼らせて貰いますね」

 

 

軽く笑った彼女が本当に俺に頼ってくることは無いんだろうと、俺はその笑顔を見てわかってしまった

 

 

 




この話、慣れないことを多くしているので、何度も短い時間の間に投稿し直してしまいました。
落ち着きがなくすみません。




またまたすみません、ガッツリミス見つけたので改正しました!


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22話

 

 

 

人使が第1試合で早々に負けてしまった為、表彰台からヒーロー科を引きずり落とそうぜ作戦の実行には私しかいなくなってしまった為、観客席に座っていると、普通科の生徒がまるでご機嫌でも取るように上目遣いで、少し離れて視線を向けてくる

 

 

そして、何故、近付いて来ずに、少し離れているのかというと、初めに話しかけてきた人達に試合前集中したいから話しかけるのはもちろん近寄らないで欲しいと頼んだからだ

 

 

人使の試合の時はクラスの人全員最前列の席にすら座りもせずに、皆観客席から身を乗り出すようにして全力応援をしたのだが、即終わった轟、瀬呂戦では皆下がっていった

 

 

最前列に座り、今始まったばかりの飯田、発目戦を注視する、次の対戦相手はこの試合に勝った方となるので、作戦、身体能力などを見るのだが、発目さんの心境を見た瞬間、私はすぐに控室に行く事を決めた

 

私の二回戦の対戦相手はよっぽどの何かが起きない限り飯田くんで決定だ

 

 

まず自分の初戦の対戦相手の宍田くんを倒さないといけないのだが、まあ、相性的に問題はないので、私は、私の事を呼び止める声が試合に向けての緊張でまるで全く聞こえなくなってしまってるとでも言わんばかりの演技をして控室に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここから人使視点です

 

 

 

 

 

 

 

サポート科の発目と言う人の商売根性逞しすぎる試合が終わった舞台に交代するように上がってきた心理と対戦相手のヒーロー科B組宍田、心理は女子にしてはかなり身長が高い方で流石モデルという感じで、宍田よりも高いが、宍田は発動型の異形、しかもビーストという身体能力がとても向上するもので、強力なものだ

 

 

例え心理が身体能力が高く、相手の考えを読めるからと言って、正直勝てる想像ができない

 

 

怪我してしまわないといいが、これは試合、相手も手加減なんて今まで予選であれほど好成績だった心理にはしないに決まってる

 

 

不安に気持ちで見ていると2人が試合開始位置に着いた

 

 

 

『ごめん!未だに目立つ活躍なし!だけど、頑張ってね!ヒーロー科宍田 獣郎太!

 

ヒーロー科じゃないのに2位、1位と強すぎるよ!子役の理里ちゃん!けど個性はまだ目立って使ってないし、芸能プロフィールにも一般公開されてないから個性が分からないよね!普通科読解 心理!』

 

 

心理の個性は確かに傍目からでは使ってるか使ってないかが全く分からない

 

 

正直その気になれば無個性だと完全に偽れると思う

 

 

先程ささっと検索に理里とかけてみたところ、様々な俳優や女優と同じように非公開となっていた

 

 

そう言う職業の人は公共の場で個性を使用してはならないと言う規則を遵守しなければならない為、常時発動型の異形系以外公共の場に晒さないように徹底している

 

 

もし、晒してしまい、そして個性が珍しかった場合、闇市出品用に攫われやすくなり、自分の身が非常に危なくなる

 

その為、芸能人で個性が分かっている人はかなり限られている

 

 

 

『そんじゃ早速始めようか

 

 

レディィィィイイイ!!!FIGHT !!!

 

 

 

始まりの合図と共にビーストを発動した宍田が真っ直ぐに突っ込んで行く

 

 

 

結局ヅラをつけ直すのを諦めたのか、キラキラと光を受けて輝く金髪を揺らして危なげなく宍田の突進をかわした

 

 

『読解やるなぁ!流石障害物競走、特に変わった事もせずにただ走り続け、最後に男子を2人こかしてゴールをした女子!ただの普通科女子じゃねぇなぁ!』

 

 

全くその通りだ、正直あんなの男の俺でも避けられない

 

いくら考えが読めるからと言って、あの動きは普通じゃない、あれは、戦闘にある程度慣れた人の動きだ

 

 

 

『怒涛のように振り下ろされる拳!当たれば終わりだぜ!シビィー!』

 

 

ほんと、マジでシビィって

 

そう思いながら、拳を少しずつ下がりながら避けていた心理が線ギリギリにまで追い込まれてしまった

 

最後の一撃が振りかぶられる

 

 

『これで終わりか!読解ー!』

 

 

マイク先生がそう言い、もしもの時は直ぐに保健室に駆けつけようと思ってより前のめりになって見ていると

 

 

振り下ろされた拳をスレスレでもう一度避けた心理はその空振りした腕を引っ張り、そして、足を引っ掛け、体勢を崩させて、場外に顔面から突っ込ませた

 

 

『し、宍田くん場外!!よって読解さんの勝ち!』

 

 

ミッドナイト先生の宣言で試合が終わると会場がワアッと盛り上がる

 

 

心理は追い込まれたように見せかけて、場外ギリギリまで誘導していたことに気付き、思わず笑いが出てくる

 

流石心理、本当にやってくれる

 

 

「人使ー!私がそんな簡単にやられる訳ないでしょ!」

 

 

舞台から降りてきた心理がVサインをしながら笑顔でそう叫んできた

 

 

まるで青春ドラマのワンシーンのように輝いて見える心理にVサインを返した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

観客席にヒラヒラと手を振りながら心理はすぐに戻ってきた戻って

 

 

 

 

「ほんと、皆して心配しすぎなんだよ!そんな簡単に蹴落とされるほど私は柔くないからね!」

 

 

ワラワラと出迎えたクラスの皆ににこりと笑ってそう言うと、皆も心配してた表情が少しマシになるが…

 

 

「でもやっぱり心配だよ!ヒーロー科は個性使用の訓練してるんだよ!?けど普通科はサポート科みたいにアドバンテージ何1つないし!読解さん身長高いし、運動神経もいいけど、取り敢えず細いし!!私でも本気で蹴れば折れそうなくらいなんだもん!」

 

「私確かに細いけど、流石に折れないよ、ほら腹とか触ってみて?普通にモデルの仕事するときに腹出しNGになるくらいには割れてるよ?」

 

 

心配する言葉を発した女子の手を掴み、自分のお腹を触らせると、その子は触った瞬間ギョッとした表情で心理の顔を見た

 

その様子を見て、他の子もソワッと心理の腹を触りたそうに視線を向けた

 

 

「みんなに触らせるわけにいかないから、これ見せるの特別だよ、ほら、みんな円になって」

 

 

 

心理の言葉に合わせて皆で円陣でも組むようにギュッと円になる

 

 

「カメラに映されるわけにもいかないからちょっとだけだよ」

 

 

そう言って上の服をペラっとめくると、ハッキリと縦と横に線が入った腹が現れる

 

正直女子の腹?と言うレベルだ

 

 

そして、またすぐに隠された腹、こんな可愛い顔してヤバイ腹してるな、と言う視線がまた心理に集まってる

 

 

「私、露出が高い服はイメージに合わないからって理由で着ないからこれでもいけるんだけど、そろそろどうにかしないといけないんだよね」

 

 

そのセリフはまるで太ってる人が出ている腹をどうにかしないと、と言っているようだった、まあ、真逆だが

 

 

 

「このまま表彰台目指すからねー!」

 

「いや、そこは優勝目指せよ」

 

 

思わずツッコムとケラケラと軽い笑われた

 

その笑い方にむすっとした顔をすると、ごめんごめん、と謝られる

 

 

「まあ、なるべく頑張るよ?けど相性とかもあるからね、期待はしないでほしい」

 

「ああ、わかった…」

 

 

「よし、じゃあ私が対戦しなければいけない相手の観察をしないといけないから、集中するね」

 

 

隣にいた俺をシレッと連れて試合前からずっと取っていた最前列の席に向かった心理に対してクラスの連中は大きく頷き一言応援だけ口にし、少し離れていった

 



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23話

我ながらウチの主人公ちゃん、高圧的で自分本位で性格悪いなって思います。
まあ、そんな反感全部ぶっ飛ばしてやんよ、みたいなところには個人的に気にってるんですけどね。
まあ、ここまで沢山の人に読んでいただける上にお気に入り登録までしてもらえ、作者は幸せです。
これからも愛想を尽かさずに長いお付き合いをお願いします。


八百万、常闇戦は常闇の勝利で直ぐに終わり、次は芦戸、塩崎戦が少ししたら始まる

 

 

「さあ、人使、クラスの中で唯一本気でヒーローになりたいと思い、本戦に行った君に聞きたいんだけど、次の試合、どっちが勝つと思う?今から言う情報で判断してね」

 

 

隣に座った心理から急にそんな事を持ちかけられる

 

 

「ヒーロー科A組芦戸 三奈、個性 酸 vs ヒーロー科B組塩崎 茨城、個性 ツル、二人共女子なのは知ってるね?」

 

「ああ、それは知ってる」

 

「純粋な運動能力なら、まず芦戸さんが負けることは無いけれど、塩崎さんは障害物競走で5位に入るほどの実力者

 

塩崎さんのツルは汎用性が高く、本当に厄介、捕まったらまず逃げられないと思った方がいい

 

だけど芦戸さんはそんなツルを簡単に溶かすことができる酸がある、さあ、それぞれの勝率を教えてほしい」

 

 

 

まるで数学の問題の解説の時と同じように、聞いてきた

 

だが、これは数学の問題のように答えが決まってるものではない、それなのにまるで答えを知ってるような聞き方で思わず顔を顰める

 

 

 

「勘違いしてるみたいだから一応言っておくけど、私は別に勝敗を知ってるわけではないよ?ただ、これは相手の力量をこれだけの情報でどこまで推測でき、パーセンテージというわかりやすい数値として出せるかという特訓だよ、これをすることによって、相手の力量や戦闘スタイルを見極め、有効な最善手を選択できるようになる」

 

「成る程な、そういうことか」

 

「もうすぐで試合が始まってしまうから、早く答えて」

 

「ああ分かった、えっと…、勝率は芦戸が60、塩崎が40」

 

「判断理由は?」

 

 

間髪入れずに短く問いかけられる

 

 

「芦戸の酸は人に向けてはあんまり使えないが、ツルになら遠慮なく使えるから、それで捕縛から抜け出して、直接対決となったら身体能力の差で押し切れると思ったから」

 

「いい考え方だね、じゃあよく観察しながら試合を見よう」

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

試合が始まり、すぐに予想してた通り、塩崎がツタで捕まえようと、芦戸がツタを溶かしながら近付こうとしている

 

何度か一部なら捕まえられている塩崎だが、すかさず全身どこからでも分泌される酸によってちぎれ溶けてしまってるため、芦戸の接近を許してしまった

 

そこからは一瞬で、強力なアッパーを決められて塩崎が沈んで芦戸の勝利としてこの試合は終わりとなった

 

 

「大当たりだったね、よし、じゃあ次の対戦相手についても話そうか」

 

「次の対戦は個性ダダ被り組だったよな」

 

「そう、勝率はどうだと思う?」

 

「正直五分五分じゃね?としか言えねぇ」

 

「まあ、体格、個性、技術共にトントンなそんなものよね、正直私もそう思ってるし」

 

「そうなのか」

 

「ただ、私は切島くんが勝つかなとも考えてる」

 

「どうしてだ?」

 

「ロボットの下敷きになったとき、切島くんの方が先に出てきた、そのことから判断してから行動するまでの流れが切島くんの方が滑らかだから、強いと思ったの」

 

「なる程な」

 

「まあ、正直ここまで実力僅差な個性ダダ被り組は戦闘スタイルなんて殴り合いオンリーだし、あんまり予想する意味はないんだけど、一応ね、まあ、戦闘自体は見てて経験になるからじっくり見ないとね」

 

「ああ分かった」

 

 

 

 

 

そして、試合はすぐに始まり、終始ドストレートな殴り合いをして、二人同時に気絶して終わった

 

決着は簡単な何かで決めるらしく、先に爆豪、麗日戦が始まった




なんというか、いろんなヒロアカの二次創作読んでますが、あまりこういう形式で体育祭が進むのはあまり見ませんね。


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24話

 

『コースどころかクラスまで違うが騎馬戦で同じチームだった為、お互いの個性を知っているこの試合!

 

どんな対決となるのか期待してるぜ!

 

飯田 vs 読解!!!

 

 

レディィィイイイイイ

 

ファイト!!!

 

 

 

 

 

マイク先生のスタートの合図と同時に先手必勝、エンジンをフル回転させ、自分自身ですらコントロールし切れる限界スピードで読解君に迫り、掴もうとするが、急速に俺が近づいたことに驚いたのか、軽く後ろに下がってしまった為、掴みそこねてしまう

 

だが、もう一度直ぐに方向転換して蹴りを放つが、これもまたギリギリで避けられてしまう

 

そして、もう何度かまた避けられて、そこで漸くギリギリで避けるのも、始めに軽く下がって避けたのもわざとだと気付き、一度エンジンを止めて、彼女から少し距離を置いて止まる

 

 

 

「流石だな読解君!正直君の事を甘く見ていた!すまない!」

 

「そのまま甘く見ていてくれていいんだよ?私弱いしさ!」

 

「いや!ここまで勝ち抜いてきた君の実力を全力で警戒して更に頑張るさ!」

 

「それは厄介極まりないね!」

 

 

 

また腰を落とし走ろうとする体勢に俺がなると、向こうも警戒して構えを取った

 

そう言った格闘の仕草をするのを見るのは今日始めてなので、そこからどういった技が出されるかわからないが、速さに勝るものは無し、見えていても避けられない、自分でさえもコントロールしきれない速さで迫る

 

 

 

「おー!速いねー!流石ヒーローインゲニウムの弟さん!」

 

 

蹴りを余裕を持って避けた読解さんが構えをやめて、拍手しながらそう言ってきた

 

突然の褒め言葉で思わず止まってしまいそうになるが、軽やかにバックステップで舞台の上を円を描くように避ける彼女に蹴りを放ちつつ追いかける

 

 

「それにしてもお兄さんかっこいいね!飯田くんが憧れるのも分かるよー!」

 

 

彼女の個性にかかれば、俺を見るだけで兄の見た目や性格まで分かるのだろうか

 

 

「お兄さんも飯田くん、みたいに優秀な弟を持てて嬉しいだろう!………オイオイオイオイ!冗談だろォ!?ちょっと待って!!飯田!!タイム!!ミッドナイト先生!!タイム!!ねえ!!お願い止まって!!」

 

 

突然血相を変えて俺の放った蹴りを避けずに綺麗に手で払い捌き、足を降ろさせ、そして始めて急に避けずに捌かれた事にビックリして少し体が固まった俺に思いっきり抱き着き、ミッドナイトにタイムを要求した

 

 

 

「ど、どうした…」

 

「黙って!場所は保須市!相手はステイン!最適は…駄目だ時間がない!」

 

 

 

俺の目を見ながら急にそんなことを言ったかと思うと、次は腕をパッと離し、ヒーローが沢山座る観客席に視線を向けたかと思うと

 

まるで視覚でスキャンでもしているかのように左右に顔を動かし……

 

 

「ホークス!!急に試合を休止して焦っていて不思議だと思いますし、不躾なのは分かってるんですが、この方向に真っ直ぐ最速で飛んで保須市の路地裏で交戦中のインゲニウムに加勢、又はインゲニウムの救出を頼みます!一刻を争うのでなるべく早くお願いします!!」

 

「えらく唐突だけど、それは根拠があるからだよな?」

 

「はい!信じ難いと思いますが信じてください」

 

「おっし、分かった直ぐに向かう」

 

 

 

直ぐに赤い翼を広げ瞬く間に大空に消えていったホークス

 

 

「…その………読解さん、貴方の個性上今のはデタラメではないと分かるので、飯田くんもお兄さんが危ないそうなので取り敢えずこの試合は引き分けで決着はまた後で決めるということでいいかしら?」

 

「そうしてもらえると嬉しいです」

 

「俺も集中なんてできないのでお願いします」

 

 

二人して頭を下げるとミッドナイト先生はムチを軽くひとふりして

 

『第10試合飯田 VS 読解 戦は引き分けとし、後々勝敗を決めるものとする!』

 

そう宣言した




私自身が関西出身なので、うっかりホークスに関西弁しゃべらせかけてしまいました。

「えらい唐突やけど、根拠があるんやんな」

って一度打った後、これファットやんってセルフツッコミしました


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25話

いつも誤字報告ありがとうございます。
一応書き終わった後に目を通すようにしているのですが、やはり見逃してしまうんですよね、力不足ですみません。

そうそう、ただの思いつきなんですが、私このシリーズでは一度もサブタイトル入力せずに空欄にすることによって自動で書き込まれる話数をサブタイトルとしてたんですが、なんか急にそれを寂しく感じてしまって、かなり本気で何か考えようかと思い始めてます。


 

 

 

 

 

「飯田君、手出して、私の目を見て視線を逸らさないで」

 

 

 

それぞれの担任がお互いの対面に机を挟んで座ってるのさえ視界に入らないとでも言うように、隣に座る俺の椅子を引っ張り、自分の方を向かせ、その上、手をガッチリと読解君に握ら…いや、掴まれて正面から目を合わせられる

 

 

彼女の目は確かに自分の事を見ているのに何故か自分をみていないようで、オールマイトと同じ水色の瞳に吸い込まれそうになる

 

 

 

「お兄さんのことだけ考えて、ほら、天晴兄さんのどう言ったところが尊敬できる?」

 

 

 

 

椅子に座っていたはずの読解君はまるで詰め寄るように片手は手を握ったままもう片手を頬に伸ばしてきて目を覗き込んでくる

 

 

 

 

「より強烈に、より鮮明に、より詳細に、より私に分かりやすいように」

 

 

 

 

瞬きすらせず、まるで狂ってるかのようにそう詰め寄られ、言われるがまま兄さんの事を思い浮かべる

 

 

 

 

「そう、その調子、ほら、もっと」

 

 

 

 

 

まるで悪い熱にでも浮かされたようにさらにまた距離を詰め寄られるが、気にせずに兄さんの事を脳内で強くイメージして目を合わせ続けていると、彼女の顔がどんどん苦々しくなってゆく

 

 

 

その事に不安になっていると急に読解君の口角がキュッと上がり

 

 

 

 

 

「間に合った」

 

 

 

 

 

そう満足そうに言ってまるで糸でも切れたかのように身体から力が抜け自分の方に崩れ落ちてきた

 

 

慌ててその身体を抱き止めると、とても熱く、尋常じゃない量の汗をかき、息も荒い

 

 

どこからどう見ても異常な状態の彼女を再度きちんと抱え、直ぐ近くにいる相澤先生とハウンドドッグ先生に視線をやると、2人は既に腰を上げており、直ぐに駆け寄ってきた

 

 

 

 

「保健室!!」

 

 

相澤先生に短く指示され、読解君を横抱きにし、立ち上がる

 

 

兄さんの事が心配だが、彼女は倒れる寸前に"間に合った"と言った、だから大丈夫だと信じて急いで読解君を保健室に運び込んだ

 

 

 

リカバリーガールが指示する通りのベッドに横たわらせると、苦しそうに目を閉じていた彼女の目が薄っすらと開き、直ぐ近くにいた俺の体操服を握って上体を起こした

 

 

「大丈夫か!!読解君!!!」

 

 

補助するように身体を支えると軽く頷き

 

 

「……あぁ……ごめん………これ……ただの個性の…………キャパオーバーだから………」

 

 

荒い呼吸で絶え絶えになりながらそう言われ、原因が分かり少し安心する

 

 

 

 

「頭が……情報量過多で……ショートするの……」

 

「そうだっのか、すまない、俺のせいで……」

 

「気にしないで………それでお兄さんに……ついてなんだけど……ある程度の……怪我はしてるけど…………大丈夫……問題なく治る範囲だ…………間に合った………ホークスのお陰………本当に良かった………」

 

 

 

彼女は苦しそうながらも優しげにそう微笑みを浮かべた

 

 

 

 

「……それと先生………私試合続行不可なので………飯田君の不戦勝でお願いしま……」

 

 

 

そして、もう一度意識を失い、急に力を失った身体を受け止めて、そっとベッドに降ろす

 

 

 

それと同時に保健室でコール音が鳴り、リカバリーガールが出て、何度か頷いてから電話を切った

 

 

「無事インゲニウムを救出。怪我は少しすればまだヒーロー活動可能な域だが、念のため病院に運ばれた。ホークスはインゲニウムと対戦していたステインを追ったが、途中で黒いモヤに吸い込まれ取り逃がしたんだとさ」

 

「黒いモヤって…….ヴィラン連合……」

 

 

かつてUSJで襲撃してきた奴らの中にいた黒霧が頭によぎる

 

 

「多分そうだろうね、でもまあ、今はそんな事より早く試合に戻りな、まだ体育祭は終わってないんだよ」

 

「だが、しかし……」

 

「この子の事は私に任せな、確かに自分のために個性を使った事で自分が不戦勝となるのはあまり気分の良いことではないけど、彼女が自分で言ったんだ、なら君は誰よりもそれに従わないといけない、そう思うだろ?」

 

 

リカバリーガールにそう言われ、俺は一度眠ったままの読解君の手を握り

 

 

「またこの決着は後日放課後にでもつけよう」

 

 

そう言ってから、相澤先生とハウンドドック先生に連れられて保健室から出て行った




私、ヴィジランテまで読んでる民なので、先に原作を読んで、インゲニウムが再起不能になった時は、「まあ、飯田君の成長のための台や道標になったんだな」程度しか思ったんですが、後々ヴィジランテまで読んでしまうと、もう!駄目ですね!

初登場のシーンから入院状態とかやってられません!

よって、私は次に小説を書く時は必ず救いたいと思ってました!
それが例えかなり無理矢理で他力本願でもです!(かなり心理ちゃんに無茶させた自覚はある、今度からはしない、………多分)



後書き・その2
心理の個性について

クラスメイトには人の心を集中すればなんとなく分かる程度だよ、と言い

一部の親しい人(人使や自分を育ててくれている祖父母)や成り行きで暴露した人(爆豪派閥やオールマイト、ミッドナイト、根津校長、ハウンドドック)にはその人を見るだけで音読できるほど人の心が読める、という風にしているが

彼女の個性は情報取得であって、読心ではない為、もっと様々なことができる

既に出ている使い方では

空間から情報取得しての精密な空間把握

人から情報取得し次の攻撃を知り避ける

人から情報取得し、相手の注意を逸らすように話しかける話題を探す

そして、今回無茶させた使い方が

自分(心理)と関わっている人(飯田)に関わる人(飯田兄)について情報取得をして、兄が飯田に対してどう思ってるか言えば更に集中できないと思い個性を強くしてみると尊敬する兄が焦ってる事に気付き、その上、「こんなところでヒーロー殺しのステインに会うなんて、駄目だ、俺じゃ敵わない」という心境を知ってしまうというものです。

この使い方は飯田で言うと、無理矢理エンジンの回転を上げスピードを急速に出せる代わりにエンストする、と言う感じと同じなので、間違った使い方に入ります。

その為、急速に身体に負荷を、特に頭にかけるので、個性のキャパオーバー起こし、ストレス性高体温症のようになってしまうと言うものです。

と言うわけで、彼女の個性の事を彼女以外に正しく知っている人は居ません。


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26話

ほら、原作でやった対戦はわざわざ愚作者が手を出すべきじゃないじゃん?
私、他のハーメルン作者のように原作と同じ組み合わせでも面白く!とか力不足過ぎて無理なんですよね!
でしたら、ほら、いっそ思い切ってその辺の話ぶった切った方が思い切りがいいよね、と言う事で、体育祭は原作通り爆豪が優勝、轟が2位、飯田と常闇が4位ということで閉幕です!はい!以上!解散!

それと、すごい今更なんですけど、飯田の一人称って「僕」だった気がするのは私だけ?


今回は心理視点の繋ぎの回、ひたすら部屋でスマホ両手に持ってテレビも見てのんびりしてる(正直あっても無くてもいいと思う)

 

 

 

 

 

危惧していたヴィランが襲ってくると言う事なく無事体育祭が終わり、と言っても私は個性の使い過ぎでぶっ倒れたせいで強制終了だったが、翌日の体育祭休日の昼頃には体調も良くなり問題ない

 

 

ただ、大変だったのはそれからだ

 

 

もうね、世間大騒ぎよ

 

 

 

 

オールマイトの隠し子が見つかったー!?

 

現在海外で活躍中の女優 ここね には実は娘がいたー!?

 

子役 理里とヒーローオールマイトの親子関係は最悪!?

 

理里、落ちたと言われてた雄英に実は合格していた!?

 

理里頭だけでなく運動もできるスーパー女子!!

 

素性が広まったと言う事はこれからはオールマイトとテレビに出演したりするのか!?

 

 

 

 

 

いや、もう、どのチャンネルに変えても私とオールマイトの話題じゃん!

 

母親の話もちょっと出てくるが、流石にこの日本ではオールマイトに勝てる知名度と人気率を誇る人など存在しないので…

 

 

理里の見た目はオールマイト由来の綺麗な金髪青眼!!

 

 

などと、取り上げられてる

 

まあ、その通りだけれども!

 

 

 

そして、体育祭があった日、つまり昨日の夜に事務所の長く丁寧な公式発表は簡単に纏めると…

 

 

オールマイトは血だけ繋がった他人です。

 

彼女と一緒に住み養育しているのは両親ではなく母方の祖父母です。その為オールマイトの私生活は知ら無いから聞いてもどうせ答えられません。

 

今回こんな事が起きてしまいビックリしてるし世間を混乱させて悪いと思ってます。ごめんない。

 

 

 

と言った内容だ

 

 

 

そして、元から体育祭の日から1週間は念のため仕事の予定を入れていなかった為、休日を謳歌したかったのだが

 

 

仕事用(理里用)、プライベート用(心理用)どちらのスマホからも様々な人からの連絡が引っ切り無しに届き、流石に鬱陶しく感じてくる

 

まあ、仕方ないんだけどね!

 

 

 

取り敢えず仲のいい人からの連絡だけ見ようと思い、開けると通学どうするの?という内容ばかり届いている

 

まあ、そんなん決まってるよね、変装の種類変えるだけだよー、と言ってもそんなお粗末なもの直ぐに見破られるとは思うがやらないよりマシだよね、と思いながら次に学校に行く時に必要となるものを着々と用意し始めた

 

 

 

 

これからは元々のあの楽な変装姿で簡単に出かけられなくなってしまったと考えるととても惜しいが仕方がない、中学3年間と高校はじめの数ヶ月、思いの外持った方だといいように考えよう

 

 

 

 

 

 

流石に個性の使い過ぎ、中でも頭の容量オーバーで倒れた次の日にいくら体調が治ったとしてもまともに頭を使う気になれず、ぼんやりゆっくりとした1日を体育祭を頑張ったという事でいつも以上に優しい祖父母に甘やかされて過ごした




沢山のお気に入り登録をしていただき、本当に嬉しく思います。
感想も貰ったらすぐ読ませてもらい、貰えた嬉しさについ長文を返してしまうことばかりです。

これからも頑張りますので、どうかこの愚作をよろしくお願いします。


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27話

いつも誤字報告ありがとうございます。
とても助かってます。






心理は世間に事故とはいえ、かなり派手に素性暴露されたので、いくら毎朝一緒に駅から登校してるとはいえ、流石にもう無理だろうと思っていたら、いつも通りの時間にいつもと同じように登校するから安心して、と連絡が来た

 

また一緒に登校できると分かり、嬉しいと思う反面、芸能活動を行う彼女のファンに殺されてしまわないだろうかと思いながら、いつも以上に落ち着かなくて、待ち合わせの時間より早く駅に着いてしまい、ソワソワと落ち着きなく待っている

 

 

 

少しすると、軽く肩を叩かれ名前を呼ばれたので振り向くと見覚えのない男子生徒がそこに立っていた

 

 

身長は同じくらい、濃紺の髪で、全体的にモサッとした黒いメガネをかけた、心理と同じ青が………

 

 

「って、まさかお前しっモガッ……」

「お前が名前言っちまったら意味ねぇだろ」

 

 

前髪に隠れ気味な両目でジトッと睨みながら口を塞いだ手を離される

 

 

「悪い…」

 

 

口調はもちろん、立ち方まで完全男に変装した手間を全て無駄にしてしまいかけてのは悪いと思い素直に謝る

 

 

「まあ、驚くよな、急にこういう変装にしたらな」

 

「あ、ああ、だけど、違和感が無いのが凄いな、流石って感じがする」

 

「まあ、別人になるプロだからな」

 

 

並んで学校に向かうが、誰一人として俺の隣にいる男が心理だと気付かない

 

まあ、歩き方まで完全に男な心理を心理だと気付けたらそいつは相当な観察眼でも持ってるのだろう

 

顔の造形が分かりにくいように俯きがちで歩いてる姿は少し陰気なただの男子生徒にしか見えない

 

 

 

「この姿はいつまでもつかなー」

 

「クラスメイトの良心次第ではかなり持つと思う」

 

「んー、まあ、みんないい人だしいい回ったりはしないとは思うけど、学校内で隠し切るのはほぼ不可能だと思うし、取り敢えず外歩く時に呼び止められて囲まれさえしなければいいからなー」

 

「同世代の中でトップで有名なのも大変だな」

 

「同世代どころか上下1つづつの世代合わせてもトップなんだよな、これが」

 

「自分で言うか、それ」

 

「まあ、言うべきではないよな」

 

「それを分かってて言ったのかよ」

 

 

 

軽い感じでいつも通り話しながら登校するのだが、なんだかいつもより視線を感じ、もしかして誰も話しかけてこないだけで実は心理の変装がバレてるんじゃないかと思い不安になってくる

 

 

ただ、もし、周囲にバレてる場合、そう言う人の機微に鋭い心理が気付かないわけが無いが、それでも不安で落ち着かなくなってきていると、隣で普通に歩いてた心理の肩が小刻みに震えてるのに気付いた

 

 

「さては心理、俺の内心の不安を笑ってるな」

 

「ごめん、だってお前、周囲から見られる原因を自分だという可能性を全く考えて無いから」

 

「は?俺がどうして見られるんだよ」

 

「普通科で雄英体育祭の決勝トーナメントに出たんだぞ?注目の的にもなるさ」

 

 

 

そう言われてハッとした、そう言えば俺もテレビに映ってたじゃねーか

 

 

 

「電車の中で声をかけてられた時て驚いてたのに、もう忘れてたのかよ」

 

「シレッと見て無いに決まってる時の話だしてくるな」

 

「まあ、そう言う個性ですし?世間的には私の個性母親と全く同じの〈読心〉だって予測されてたけどな」

 

「ああ、後他には〈先読み〉とかもあったよな」

 

 

昨日テレビでタレントや、番組に呼ばれたヒーロー達が何が正解だろうと真剣に話し合い考えていた時の内でとかに押されていたものを1つあげる

 

 

「俺の個性の使い方的にその2つが有力説だったよな、後は〈バックグラウンド〉とかもテレビで言われてんの見たな」

 

「あー、あったな、まあ、正解は母親から遺伝した読心だけど、母親より強力、ってところだよな?」

 

「まあ、強力になりすぎて個性名〈読心〉じゃねぇけどな」

 

「は?そんなこと聞いたことないぞ」

 

 

シレッと今までは嘘の個性を言っていたことを暴露され眉間にシワが寄る

 

 

「言ったことすらねぇな、基本人に個性は口外しないし、しても軽い読心で、集中すればなんとなく好きな人がわかるんだ、程度だな」

 

「それ、今年の4月にしてた個性紹介だな、シレッと嘘つくな」

 

「嘘は嘘だとバレなきゃ嘘じゃねぇんだ、だからバラしてくれんなよ人使」

 

「俺は今この瞬間犯罪の片棒を担がされた」

 

「しっかり担ぎ切ってくれよ」

 

 

 

そんな軽口を叩きあってると、ようやく雄英の校門が見えてきた

 

正直毎朝どうして雄英はこんな山の上に建ってるのかと文句が浮かんでくるがどうしようもない

 

 

 

 

 

 

「心操、おはよう、隣の男子は…えー、心操の兄弟?」

 

 

靴箱のところで会ったまだ話せる方のクラスメイトが挨拶と共に俺と一緒にいた心理について少し悩んでから訪ねてくる

 

うん、俺ら兄弟に見られるのか、もしかしてそれも考慮して心理は髪色を選んだのだろうか

 

俺の髪は紫色だし、心理の着けている濃紺の髪色と系統で括れば一緒だ

身長も、嬉しくはないが同じくらいなので、兄弟で通そうと思えば通せそうだ

 

 

そう思っていると、そのクラスメイトに少し近づき、手招きしてむこうからも少し寄らせてから

 

黒いメガネをクイッと持ち上げ顔が見えるようにし、ニッと怪しく笑ってこの事は秘密でお願いしますね、と囁いてからまた眼鏡をかけ直した

 

 

いくら心理が女子とはいえ、今は男装中だ、しかもその男装をしている心理は、顔面偏差値が天井知らずなのはもちろん、女子にしては高めな身長、そんなかのじょが発したいつもより低い声

 

そんな様々な要因により、彼女は一気に茹で蛸なようになってしまった

 

 

コクコクと頷いた後、心理に促されるまま教室に浮ついた足取りで向かっていった彼女の背中を見てるとなんだか申し訳ない

 

 

「誑かすなぁ、心理は」

 

「失礼な言い方だな、けど、間違ってないな、役者は本当の自分とは違う姿に化けて、人の心を魅了し、誑かす職業だからな」

 

 

ニヤリと口元を歪めた心理は自慢げな笑い声を小さく漏らした



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28話

この話は今後の話のための踏み台です、面白くもなければ内容は特にありません。


今回オリキャラが一人出てきます。
居なくても話は進められますが、居た方が話のテンポが良く進めやすいので投入しました。
使い勝手が良ければまた使いまわします。


オリキャラ設定

ヒーロー名→チャーム
個性→魅了
目を10秒間合わせた相手に対してウィンクしてから男性なら5分間女性なら2分半相手を意のままに


こんなに少しの事しか決まってないキャラです





 

 

私は今美人なお姉様方の玩具にされている

 

 

「ねえ、これとかどう?とても理里ちゃんに似合うと思うわ」

 

「確かにそれ良いわね!けど、私はやっぱりこれがいいと思うの」

 

「あー、その2つも捨てがたいね、でもこれとかもどう?良くないかしら?」

 

 

 

美人で有名なスネークヒーローウワバミ

 

その知り合いでウワバミと同じように本職はヒーロー、副業で芸能活動をしているチャーム

 

そして、偶然雑誌の取材を受けに来ていたリューキュー

 

 

 

3人はとても楽しそうに、企業のお偉いさんから私宛に送られてきた十数着のワンピースドレスの中からどれが最も私に似合うかと話し合っている

 

 

 

キッカケは些細な事だった

 

ただ、ほんのちょっとの出来心だった

 

 

 

 

ウワバミとチャームが2人で歩いてるのを見つけ、元から知り合いだったので挨拶をしようと駆け寄ろうとすると、向こうも私に気付き、手を振ってくれる

 

 

そして、いつもならここで終わるのだが、今回は2人に体育祭での事をほめられた

 

 

そして、そこで御礼を言って終われば良いものを、私は何故かそこで話を辞めずに話し続けた

 

 

その上、わざわざ話題を変えて

 

 

「私に化粧を教えてくれませんか」

 

 

などと言ってしまった

 

 

2人の顔が驚愕に染まり、動きが完全停止しているのに対し

 

 

「私、今まで様々な化粧品や服飾品を頂いても有効活用できなかったので、そろそろこのままではダメだと思ったので、美人な御二人に聞ければ良いと思ったんですが、駄目ですかね?」

 

 

そうあざとく私は聞いてみると、元から個性で知ってはいたが今からは完全にフリーだと言う2人はなんなら今から教えてくれるという事で、完全な乗り気の2人に連れられて私の楽屋に向かう

 

 

 

そして、その途中で送られてきた衣装をスタッフから受け取り、偶然会ったリューキューと合流し、私の着せ替え人形としての運命が開始された

 

 

取り敢えずそのワンピドレス全部きてみて、そして、その1番良く似合うドレスに合うメイクしよう

 

 

 

と言う風に方向性が決まったのだが、もう気持ちがついていかない

 

 

知ってる?服を脱いだりきたりするのって体力使うんだよ?

 

 

しかもその着替えてる服が一歩間違えたら破いてしまいそうな繊細な服ばかりでとても神経を使う

 

 

しかもどれも高いんだー、アッハッハー

 

 

是非普段着としてとか書いてあったけど、いつ着るんだよ、こんな普段着

 

普段の私の生活をなんだと思ってるんですかね、シャチョーさん

 

 

そして、極め付けに美女3人に遠慮のないガン見を1着着る度にもらう

 

視線で穴を開けられるなら、私の体はとっくに蜂の巣だ

 

 

 

「理里ちゃんの金髪、それにしても本当に綺麗でハッキリした色をしているわね、色はオールマイト譲りだけど、オールマイトと違ってストレートよね髪、ストパ当ててる?」

 

「いえ、母の方の遺伝です」

 

「へぇ、ココネさんストレートなんだ、じゃあ大抵ウエーブしてるのはパーマしてるんだね」

 

「そうですね」

 

「じゃあ、良く見る濃い青緑色の髪も染めたりしてあの色?」

 

「いえ、それは地毛です、まあ、良く髪を染めているみたいなんで、時々地毛に限りなく近い染めた色かもしれませんが、大抵そうですね」

 

「へえー、そうだったんだ」

 

 

 

話しながら漸く十数着のドレスを着終わり、お姉様方の厳正な審査と個人的な好みをによって、最も似合っていたと選ばれた黒いドレスに着替え始める

 

 

この黒いドレスは胸元までがシルク生地、そこから首と二の腕までレース生地となっていて、良い感じに透けてる為適度な色気がある

 

そして、腰の所に濃紺の太めの革のベルトが巻かれ、腰の細さを強調し、下のスカートはフレアのように広がっている上、フィッシュテールとなっており、膝が見えるが、上品でとても綺麗だ

 

 

 

「やっぱり黒を着るとこの鮮やかな金髪が生えて綺麗ね」

 

 

リューキューがまだ止められていなかったドレスの後ろのボタンを閉めながら、髪の毛をふわりと軽く手ぐしで撫でるようにしながら褒めてくれる

 

 

「ありがとうございます」

 

「身長も高いし、本当にドレスが映えるね」

 

 

チャームがスマホでカシャカシャ写真を撮りながら楽しそうにしてきる

 

連絡先交換しているし、後々送ってくれるよう頼もう

 

 

 

「よし、じゃあこの調子でメイクまでしよう、肌に合わない化粧品とかはあるかしら?」

 

「全くありません、今まで様々な化粧品使われてきましたが、荒れたことは無く、メイクさんにも肌が丈夫だと褒められます」

 

「それなら良かったわ、今は何もしてないのよね?」

 

「はい」

 

「それでこの肌の綺麗さ、羨ましいわ」

 

「若いっていいわね」

 

 

 

 

化粧水を塗り、乳液で肌を整え、下地を塗り始められる

 

 

 

丁寧に一つ一つ説明し、色を重ねられていく

 

 

とても説明が丁寧でわかりやすく為になる

 

 

今まで自分で化粧をした事はないが、化粧は経験だと言われたので、これから少しづつ日常的に練習していく事を決めた

 



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29話



この話の視点は容姿どころか、名前さえ決めてないC組のモブ女子です。



 

 

 

 

「なあ、心操と読解に用事があるから呼んでくれ」

 

 

教室の出入り口の横で昨日に引き続き男装姿の読解さんや他の女子と話しをしていると小汚いおじさんが扉を開け、急にそんな事を言ってきた

 

誰?というのが全面的に押し出されていたんだろう

 

 

「俺はA組担任の相澤だ」

 

 

と、面倒くさそうに付け足される

 

 

 

「人使ー!相澤先生が呼んでるぞー!」

 

 

 

声を低くした読解さんが自分の席に座り静かにスマホを弄っていた心操に向かって叫ぶと、怪訝そうな顔をして顔を上げ、クッと読解さんが視線で促した方を見ながら席から立ちこっちに来た

 

 

 

「相澤先生、すみません、読解は……居ないですね…」

 

 

教室を見渡す仕草をしながらいけしゃあしゃあとそう謝る読解さん

 

 

「そうか、だったら会ったら伝えておいてくれ、相澤が呼んでいたから職員室に来るようにと」

 

「はい、分かりました」

 

「何が分かったんだ、自分が読解だろ」

 

 

 

こっちに来た心操が呆れ顔で読解さんに突っ込んだ

 

 

 

「おい、バラすなよ人使」

 

「よみ……と、き?」

 

「心理、あの黒髪ロングの変装が公になったんでこれに変えたんです」

 

「そうだったのか、よくできてるな、男装、心操と並ぶとまるで兄弟だ」

 

 

 

そう言われた2人は微妙な表情でお互いの顔を見つめ合っている

 

 

 

 

「相澤先生、もし俺らが本当に兄弟だとしたらどっちが兄だと思いますか?」

 

「は?」

 

「直感でいいんで答えてください」

 

 

 

すぐに答えない相澤先生に心操も相澤先生に少し距離を詰めて聞く

 

 

「心操」

 

 

「よぉおしっ!!」

 

 

「うーわ!マジかー!」

 

 

拳を突き上げて喜ぶ心操とうなだれる読解さん

 

 

「いや、でも、まだ俺の方が18:6で圧勝中だからな」

 

 

気を取り直した読解さんが自慢げな表情で心操にいうと、心操も負けじと余裕ありげな表情を浮かべた

 

 

「ここから逆転に決まってんだろ」

 

「3倍の差はなかなか難しいぞ」

 

「お前ら、何でもいいから取り敢えずその話は一旦終えて俺の話を聞け」

 

「「はい」」

 

 

相澤先生の呆れた声に2人して頷き付いて来いと言われ、大人しく付いて行っていた

 

 

相澤先生は何の用事か言わなかったが、恐らく2人とも雄英の体育祭の決勝トーナメントに出た為、ヒーロー科移籍の話をしに来たのだろう

 

 

流石に決勝トーナメントに進んだからすぐに移籍とはならないだろうが、もし2人共移籍してしまうとしたら寂しく感じる

 

 

特に読解さんはクラスの皆と仲が良く、勉強がとても良くでき、教えるのも上手い、そして、あの理里として芸能活動をしている憧れの存在だ

 

学力、見た目、運動能力、そして性格まで全てが揃っている夢の世界の人間のような読解さん

 

その上、オールマイトという不動のNo. 1ヒーローの一人娘

 

 

だが、その事が体育祭で公になった今でも誰も彼女にその事を深く聞けていなかった、読解さんはどこか皆に壁を作り、決してクラスメイトの殆どに踏み込ませない領域がある

 

その領域の外側にいて、近づけない私達は誰も隠し子なんて踏み込んだ内容について聞けなかった

 

 

ただ、このクラスでその領域に踏み込む事を許されている心操だけは聞いたのだろうか

 

それとも、心操でさえその事に触れられないのだろうか

 

もし、例え心操でさえ触れさせてもらえなかったとしても、それでも心操は彼女に一番近い

 

 

このクラスで心操といるときだけはまるで小説の中のとても良くできた優等生そのままの性格とは違い、素の状態で楽しそうにしている

 

 

何が彼女の領域に踏み込むために必要なのかは分からない

 

 

そして、その何かをクラスの中で唯一持っていた心操の事がクラスの皆は羨ましくてたまらなかった






これからもこの愚作をよろしくお願いします。


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30話

相澤先生の口調が迷子です、助けてください…





 

 

 

「読解、心操、2人共トーナメントに進むだけあって意思や強さがヒーロー科に移籍する資格があると判断した、もちろん移籍するには訓練が必要だ、その訓練を終え、もし移籍できたしても元々ヒーロー科の奴らからはただでさえ遅れてる、その為訓練はかなり厳しいものとなる、それでもお前らは頑張れるか?」

 

 

 

「はい、もちろん頑張ります」

 

 

俺の言葉に対して、意志の強い目で直ぐに返事をした心操

 

 

こいつは目的のためならどこまでも頑張れる奴だ

 

 

そして、意気込んでる心操の直ぐ横で読解は

 

 

「よし、じゃあ人使頑張ってね、俺応援してるから」

 

 

肩に手を置き、そう激励の言葉を送ってそそくさとその場を離れようとする読解の手を掴み逃げていかないようにする

 

 

 

「へ?あの、相澤先生?私は頑張れませんよ?というか、ヒーロー科に移籍する為の訓練をする時間はそもそもありませんし」

 

「行ける日だけでいい、お前はそもそもある程度の強さがあるし、どうせヒーロー学もある程度習得しているんだろ?」

 

「ヒーロー科に通っていない一般人がヒーローになるために必要なヒーロー学の筆記試験と仮免取得という実技の内、筆記の方はもう既に合格済みなので、私仮免取得試験に挑む資格を持ってます、ですが、ヒーローになりたい訳ではないので今のところ受験予定はありません、なので、相澤先生は人使だけを訓練してください」

 

 

 

そう柔らかに笑いそっと俺に自分の手を添えてスルリと掴まれていた手から抜けようとしたところをもう一度捕まえ直す

 

 

危なかった、思わず話してる途中で緩んだ拘束から逃れられるところだった

 

 

 

「お前が芸能活動で忙しいのは知ってる、時々学校を休まなければならない程多忙な事はな、だが、読解、お前を大人しく教室に戻してやる訳にいかない」

 

「…………私が日時指定をしてもいいなら対戦をお受けします、もちろんコスチュームの着用は禁止、対戦するのは私が対戦する予定だった飯田、轟、爆豪の3名のみ、それ以上は相手できません」

 

 

 

手を掴まれた状態で嫌そうに目を細めながら俺のことをジロジロと見たかと思うと、頼もうとしていたことの返答が返ってくる

 

 

「ちゃんと体育祭の時と同じように場外となる範囲を決めての対戦でお願いします、それと、対戦はさせませんが、人使に見学の許可を、それとA組は対戦する3名以外に対戦を見ることは遠慮させて下さい」

 

 

「お前の対戦方法は力の弱い戦闘向きではない個性の女子には経験になる、全員は戦闘スタイルが露見するのが嫌だとしても女子は許可してほしい」

 

「芦戸さんは既に自分のスタイルがある為、私のを見る事により得る経験は少ないと思います。

 

蛙吹さんには蛙という個性がある為、私の戦闘スタイルは合いません。

 

麗日さんは基本触れれば勝ちなので、私の避けるスタイルよりも触れる為のものを学んだ方がいいので私のを見る必要は無いと思います。

 

耳郎さんは基本イヤホンジャックを武器として戦闘を行う為私の戦い方は合いません。

 

八百万さんは武器を製作できる為、私のスタイルよりも有効なものが有ります。

 

ので、葉隠さんだけ見学を許可します」

 

 

「心理、どうしてそこまでA組女子の情報把握してるんだ?」

 

 

 

一気にA組の女子の詳しい情報を言った事に対する疑問は俺よりも先に心操が聞く

 

 

「どうしてって、人使、敵情視察行ったの忘れた?」

 

「ああ、あの一瞬で情報抜き取ってきたのか、そういえばお前だけ教室に踏み込んで行ったな」

 

 

確かに一度クラスの出入り口に人が溢れていて、そして、彼女は何をするかを伝えるなり、教室に踏み込んできて、緑谷の手を掴み出て行った

 

 

だが、その時特に周りを見渡していたわけではないのに、よくあの時だけで個性を使ってそこまで知れるとは

 

 

 

 

 

「お前の個性は本当に凄いな、流石普通科の先導者だな」

 

 

 

 

 

教員の中で彼女は今そう言われている

 

ある程度、体育祭の前でも周りに認められていたが、体育祭の決勝トーナメントに進んだ事により、彼女は多大なる信頼と共に確固たる地位を手に入れた

 

 

個性のお陰か、彼女は人を操る事が絶妙に上手い

 

 

そのお陰で、C組は読解と心操以外体育祭で活躍は出来なかったが、その心操を妬んだり、ヒーロー科を疎んだりせずに、素直に拍手を送った

 

 

自分の憧れる場所に立つ他人を素直に賞賛を送ることは難しい

 

 

だが、それを可能としたのは読解だ

 

 

しかも、その時は保健室で寝ていたので、その場で操ったのではなく、そうなるように前々から仕向けていた事になる

 

 

 

そこまでの手腕があり、個性を使った個人個人の判断

 

 

 

正直、普通科だけでなくうちの科も面倒見て欲しい

 

 

そして、手始めに格闘を見せて欲しい、なんならクラス全員に

 

 

 

 

「いや、なんで人数増やすんですか」

 

「頼む」

 

 

「……………分かりました、では希望すれば普通科も見れるように、日時は仕事の調整が終わり次第お伝えします。そちらにも事情があると思うので、大体1週間以内に対戦できるように調節します」

 

 

「ああ、頼んだ、これで話は取り敢えず終わりだ」

 

 

 

当たり前のように職場体験があることは知ってるのか、やはり流石だな

 

 

 

 

「人使、やったね」

 

「ああ、これで夢にまた一歩近付いた」

 

 

 

 

読解と心操は2人していい笑顔でハイタッチをしている

 

 

その様子は本当に仲のいい兄弟のようだった



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31話

やっぱり金髪青眼、文武両道、眉目秀麗、って良いですよね。
学生時代に戻ってそんな人になってみたいです。






 

 

 

「いやぁ〜!こんなに人が集まるとは思ってなかったな〜!」

 

 

心理が全く変装をしていない状態でポニーテールにした金髪を揺らしながら軽く笑いながら呑気にそんな事を言っている

 

ついでに、変装は全校生徒に変装後の姿を見られたら学校での変装の意味がなくなると言う事で、大勢の人に見られるのがわかってるこの舞台に来るときに外していた

 

 

 

「それにしてもびっくりだよ!ねぇ人使!気付いたらね、この対戦観戦できるの全校生徒だってさ!アッハハハハハハ!!」

 

 

 

俺が編入する可能性がある事は皆にまだ秘密なので、まるで仲がいいから荷物持ちとして付いてきました、という雰囲気を醸し出しながら立っている俺に心理は狂ったように話す

 

まあ、知り合いだけの対戦だと思ったら学校規模になっていたというのはかなり面倒だし、そうなってしまうのはわかるが

 

 

 

「悪い、校長に押し切られた」

 

「相澤先生!構いませんよ!私吹っ切れたんで!ただ、この人数の前で私男子をブン殴るのかと思ったら複雑な心境なだけです!」

 

「俺が根暗ノッポなんかに殴られるわきゃねぇだろ!!ぶっ殺す!」

 

 

ボンボン手を爆発させながら目を一体何度になるのだろうと思うほど釣り上げた爆豪が歯をむき出しにして叫んでいる

 

 

「俺も兄を助けられた恩はあるが手を抜いたりはしない!正々堂々としよう!」

 

 

「俺も負けねぇ」

 

 

 

「相澤先生、私飯田くんに即負けしたら次の試合無しですよね?こんなの3人も相手にしたら私怪我しますって!」

 

「安心しろ、読解のためにリカバリーガールには待機してもらってる」

 

「うーわっ!!私が怪我する前提ってやつですね!!ねぇ!そうですよね!?」

 

 

心理が勢いのまま相澤先生の胸倉に摑みかかり、前後に揺するが、相澤先生は特に抵抗もせずに気まずそうな顔をして決して心理の方を見ずに揺すられている

 

 

 

「うっわー、マジ終わったわ、これ3人相手にするまで帰れません、って奴だ、しかも爆豪に至っては本気でやらずに場外にダッシュした方が爆破の危険がある奴だこれ」

 

 

相澤先生から手を離し死んだ目で準備体操を始めた読解

 

 

「分かってんならさっさと準備しやがれ!殺すぞ!」

 

 

爆豪の発言はいちいちキツイな

 

 

「わーってるよ!!だから今準備運動してるじゃねーか!見えてんだろ!!」

 

 

爆豪に引っ張られてるのか、心理も言葉が荒れてきてるな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合観戦をする生徒はかなり離れての観戦をさせられているが、俺とこれからの心理の対戦相手、それと興味本位で見にきた先生陣はかなり近くでの観戦をしている

 

そのおかげで、2人の動きや声がとてもよく聞こえていい特等席だと思う

 

 

 

 

「それでは、第1試合、飯田 対 読解 戦を始めます、よーいスタート」

 

 

 

相澤先生のやる気のない声とともに、これまた覇気のない旗が振り下ろされた

 

 

 

その瞬間、体育祭の時よりも早い速度で飯田が一直線に読解に突っ込む

 

 

 

そして、それを心理はまた体育祭の時と同じように軽く後ろに下がり避ける

 

 

その後ろに下がったところに足を振り上げ蹴ろうとするが、また読解は後ろに下がり避ける

 

すると、蹴り上げた状態の足を今度は勢いよく振り下ろした飯田、その足をまた心理は避けるのかと思っていたが、彼女は振り下ろされる足スレスレを通り、飯田の胴体に近付き、そして拳を振り上げた

 

 

飯田は足を振り下ろした事により上体もかなりの速度で下がった、そして胴体に引っ張られるように頭を丸め込み、そして、胴体に付いてくるように頭も下に、つまりより心理へとより近づいた事により、彼女が振り上げた拳が顎にクリーンヒットした

 

 

 

自分の目で追うのさえやっとな速度と、心理の容赦のない振り上げは加算され、飯田の脳に多大な衝撃を与えた事だろう

 

 

案の定、飯田はその一撃で伸びてしまった

 

 

 

 

「勝者、読解 心理」

 

 

旗をゆっくりと上げ、そう宣言した相澤先生

 

 

試合時間は1分にも持たないとても短いものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、休む時間も入れずに次行くよ、次は読解 対 轟 戦、よーいスタート」

 

 

試合開始の合図とともに大氷壁が舞台を覆った

 

 

 

 

 

A組の連中、試合開始と共に心理に遠慮のない攻撃をする奴ばっかりだな

 

 

まあ、飯田にあんな勝ち方したのを見た後なら近づきたくないのはわかるが

 

 

だが、それにしてもやりすぎだろう

 

 

流石の心理もこの中で凍ってるだろ

 

 

これ、早めに救出しないと危ないやつな気しかしないんだが

 

 

 

 

氷のせいで視界が悪い中目を凝らしてみるが、無駄にでかい氷を出したせいか煙が凄くて不明瞭な視界しか確保できない

 

 

 

 

「こんな大きな氷出すって轟ー!!爆豪の個性に頼りきりの大雑把な攻撃ってやつ直す気ねぇのかー!!!!」

 

 

 

 

心配していると、急にそんな大声が聞こえてきた

 

 

取り敢えず氷漬けではないことはわかったので良かったが、どこから叫んでるんだ?氷に反響しすぎて位置が全くわからない

 

 

試合開始位置から全く動いてない轟もその声を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をしたかと思うと、氷に手を当てて左手で溶かし始めた

 

 

 

その蒸気が出て、元から悪かった視界がさらに悪くなる

 

 

 

シュゥゥゥゥウウウと氷を溶かす音だけが響いてる

 

 

轟は自分が無駄にでかい氷を出したせいか、全てを溶かしきるにはかなり時間がかかりそうだった

 

 

というか、心理は本当に何処だ?

 

 

 

轟が立っている位置より心理側は全て凍り付いてしまってる

 

 

 

それなのに、場外に姿を見せる事はもちろん、俺にも姿が見える位置には出てこない

 

 

 

ヒュッ

 

急に空気を割く音が聞こえたかと思うったら、それと同時に轟が頬を抑えた

 

その頬には赤い筋が走っていて、今のは心理が何かを投げて攻撃したのだと気付く

 

 

「イテェな…読解、お前俺が氷を溶かす音に紛れて氷を砕いて、投げてきたな」

 

 

 

氷を溶かすのをやめ、今だに姿を見せない心理が何処にいるのかと神経を集中させている轟

 

 

 

カンッ

 

 

 

軽くその音が鳴った瞬間、鳴った方向をまた大きな氷で覆うように一直線に氷で凍らした轟

 

 

これで流石の心理も終わったな、俺はそう思った

 

 

だから、轟もそう思って張り詰めていた緊張が弛緩してしまったのだろう

 

 

 

何処からか姿を現した心理は遠慮なく左頬を殴り、息をつく間も無く髪を両手で掴み、顔面に膝蹴りをブチ入れた

 

そして、極め付けに肘で背中を打ち、地面に転がした上で鳩尾を力の限り蹴り飛ばし、片足を掴んでジャイアントスイングの要領で場外に放り投げた

 

鈍い音を立てて場外に落ちた轟はピクリとも動かない

 

 

あの整った轟の顔は鼻血や吐瀉物で汚れていてとても悲惨だ

 

 

 

 

「勝者、読解 心理」

 

 

 

今回はそれなりに時間がかかった

 

 

 

そして、今更なのだが、心理の戦闘スタイルは避けるスタイルじゃなかったか?

 

この2試合、思いっきり殴って勝ってる気がするのは俺だけか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、どんどんいくぞー、読解 対 爆豪戦、よーいスタート」

 

 

「ハウザーインパクト!!!」

 

 

開始早々、大技を披露した爆豪、初っ端からこの技が来るとは思ってなかったのか、単純に効果範囲が広いからか、心理は地面を転がるようにしてギリギリで避けた

 

まあ、避けられるだけ凄いが

 

 

 

「オイオイオイ!!!テメェは私を殺す気か!!!!」

 

「死ねぇ!!!!!」

 

 

体勢を直した直後に両手から交互に細かい爆破を心理に遠慮なく向ける爆豪

 

 

「あ゛ー!!!こいつマジだ!!!!本気と書いてマジと読むやつだよ!!!!」

 

 

 

 

舞台を円状に走ったり、時々ハンドスプリングやバク転で逃げ回りながら叫んでいる心理

 

そんな爆豪に舞台の中心から爆破を続ける爆豪

 

 

 

「クソがぁぁああああ!!当たれやぁぁぁぁああ!!!」

 

「当たってたまるかぁぁぁああ!!!こんなもんに当たってみろ!!!!一発アウトだ!!!!私の脆さ舐めんなよぉぉおおおお!!!!」

 

「ならさっさと死ねやぁぁああああ!!」

 

 

「嫌だぁぁぁああ!!!!」

 

 

 

 

お互いに叫びながら激しい戦いを繰り広げている

 

 

まあ、主に激しいのは爆豪だが、心理の方も、ただ走るだけでなく、爆破に緩急や強弱をつけてくる爆豪に対して、かなりアクロバティックに逃げているため、ただ逃げているだけだが、派手さを上げている

 

 

「どこぞのデコ広王子のような一定の攻撃にしろよ!!」

 

「俺は野菜の国の王族じゃねぇ!!!」

 

「てか、攻撃威力上がってきてんな!!!身体が温まってきたのかな!?」

 

 

 

ただでさえ激しい爆破がより激しくなり、心理が避けるのがさらにスレスレになり、当たってしまうのかと思ったら、違った

 

 

今までより何故か余裕で避け、徐々に爆豪への接近を開始した心理

 

 

 

 

にじり寄られてる事に気付いた爆豪は、片手ずつの爆破をすぐに辞め、両手を後ろに向けるようにして

 

 

 

「爆速ターボ!!!!」

 

 

やばい顔して心理に向かった

 

 

そして、直前で両手を前に持っていき、心理に向けて思いっきり爆破した

 

だが、その爆破を直前にしゃがむ事により回避した心理にもう一度手を下に向けて思いっきり爆破した

 

 

その事により、爆煙が上がり、また視界が悪くなる

 

 

お陰でまた何も見えない

 

 

だが、そんな煙の中からボンボンという爆破音と、ガッ、ゴッという打撃音が聞こえるため、こんな視界の悪い中2人は殴り合ってることが分かる

 

 

時々煙が巻き上げられ、少し身体が見えるが、新たに爆破が起こりまた煙が立ってしまうため、全く全体は見えない

 

 

 

そのまま、少しの間殴り合う音がしていたが、一際大きな何かを打ち付ける音が鳴ったのを最後に音がしなくなった

 

 

そして、ようやく煙が晴れると、うつ伏せで倒れる爆豪の上に座り、押さえ込んだ心理が見えた

 

 

 

爆豪が全く動かないところを見ると、おそらく飯田と同じように落とされたのだろう

 

 

「勝者、読解 心理」

 

 

 

気怠げに相澤先生が旗を揚げて勝利宣言を行うと、心理は爆豪の上から退き、地面に寝っ転がった

 

 

やりきった表情で地面に寝転がる彼女に賞賛の拍手が送られ、彼女のことを褒め称える言葉がたくさん聞こえてくる

 

 

 

というか、本当に強すぎないか?

 

 

爆豪なんか、今年の体育祭優勝者だぞ?それを倒すなんて

 

 

 

そう思っていると、寝転んでいた心理に手招きされる

 

 

 

観客大注目の中舞台に上がるのは気がひけるが、自分は心理の荷物持ちとしてここにいるので、素直に登り、寝転んだ心理の近くにしゃがむ

 

 

 

「どうした?」

 

「肩貸して、私も怪我人なのに、救護ロボ私の事運んでくれなかったから」

 

 

寝転がった状態から、上半身だけ起こし、起き上がりそう言われ驚く

 

まさか心理が人の手を借りなければいけないほど消耗していると思ってなかったからだ

 

 

「ほんと、爆豪女子の足思いっきり蹴りやがって、立てねぇじゃーん」

 

「立てないほど酷いのか」

 

 

いつまでも舞台から動かない心理に寄ってきていた相澤先生がさっと、足を捲ろうとするが、心理がその手を抑えた

 

 

「しっかりとした青痣になってますし、他にも細かな痣がありますので、大勢の目に晒すにはちょっとあれなんですよ。まあ、骨は折れてはないですので、このまま休憩し続ければ痛みを我慢すれば動けるほどにはなります」

 

 

「だが、いつまでもここに居るわけにはいかねぇだろ」

 

 

「そうですね、だから人使を呼んだんですよ、まあ、肩を借りるレベルで立てれば良いんですが」

 

 

 

なら、心理は身長高いし、俺は力に自信ないからお姫様抱っこは難易度が高いにしてもおんぶくらいはするが

 

 

と思っていたら、相澤先生が軽く心理のことをお姫様抱っこで持ち上げた

 

 

 

なんだろう、この、男として圧倒的に負けた気がするのは

 

 

 

「相澤先生、ありがとうございます、助かります」

 

 

 

赤面すらせずに、相澤先生の首に手を回す心理

 

 

 

その様子に観客は物凄く盛り上がっている

 

 

 

まあ、造形が整った心理がお姫様抱っこをされるというのはかなり見ててテンションが上がるだろう

 

 

 

そんな観客の様子に対してうざったそうな相澤先生と面白がってる心理

 

 

「これの何が面白いんだか」

 

「まあ、お姫様抱っこはラブコメの定番ですし、見てる分には面白いと思いますよ、なんなら頬にキスでもすればさらに盛り上がると思いますし」

 

「だろうな、してみるか?」

 

「やめろって言わないんですね、では、遠慮なく」

 

 

ただでさえ近かった顔をさらに近づけ、チュッと軽く頬にキスをした心理

 

 

そして、爆発したかのような歓声が起こる観客席

 

 

「耳がいたいな」

 

「黄色い悲鳴なんてそんなものですよ」

 

 

当の本人達は冷めた態度で舞台から降りていった

 

 

 

俺もその場に立ち尽くしたままでいるわけにはいかないので、2人の後を付いて行った

 

 

 

俺と同じ普通科に通いながら連続でヒーロー科のトップクラスの男子を負かした心理、全員気を失わされたが、決して皆弱くないどころか、かなり強い

 

 

元から心理が強いことは、凄いことは知っていた

 

 

だが、ここまでだとは思ってはいなかった

 

 

 

 

「頑張らねぇとな……」

 

 

 

俺は小さくため息をつき、決意を固めた






急募・戦闘シーンを上手に書く方法


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32話

誤字報告いつもありがとうございます。

今回も繋ぎ回です。






 

 

相澤が主観

 

 

 

「なあ、読解、お前どこが非力で避けるスタイルだ、バリバリの武闘派じゃねぇか」

 

 

保健室に連れて行き、治癒が終わるなり、ベットに寝転ばした読解に少し非難の視線を向ける

 

 

「何言ってるんですか、バリバリの武闘派なら、相手の力を利用して弱点狙ってようやく気絶とか、コソコソ相手の死角通って攻撃とか、わざと爆煙に紛れて必死に相手の攻撃当たらないように避けてからの、首根っこ引っ掴んで地面に打ち付けてようやく勝利とかになるわけ無いでしょう、まあ、凄い卑怯な個性ガチ使いはわざと避けましたけど…」

 

「その、凄い卑怯な個性のガチ使いはどんな戦い方なんだ?」

 

 

また、俺が気になったことを俺よりも先に心操がすかさず質問する

 

 

「相手の世間に絶対に知られたくない情報を叫ぶって脅す」

 

「それは卑怯だな」

 

 

思ってた通りといえば通りの使い方で、普通に使われたくない使い方だ

 

 

「でも、絶対に知られたくない情報なんて、そんな個性でポンポン見つけられるのか?」

 

 

個性でどこまで分かるか分からないが、対戦中に呑気に個性で相手のことを探る余裕は無いはずなので、そこを不思議に思う

 

 

「一番は幼い頃の話ですね、昔そんなにお母さんのこと大好きだったんだー、家族が仲良しっていいねー、で大体動きが鈍ります

 

 

 

まあ、大人になった時に大衆の面前で昔のことを詳しく知られて暴露はかなり恥ずかしかろう

 

 

「まあ、猛者は理里ちゃんが俺の事をそんなに知ってくれてるなんて、女神だ、とか言いながら抱きついてきますが」

 

「それは大変だな、芸能人ってやつは」

 

「はい、まあ、仕方ないですよ、あー、後は今回使わなかったけど、一応非力だけどできる個性を使用した戦い方がありますね」

 

「どんなんだ?」

 

「相手の身体の中で弱点となっているツボを突いて終わり」

 

「なんで今回使わなかったんだ?」

 

「誰一人大人しく私に近寄らせてくれなかったからだよ」

 

「ああ、それもそうだな」

 

 

 

たしかに、あの面子に近接格闘は限りなく向いていない

 

 

 

「もう2度と戦いたく無いな、ヒーロー科の人達とは、やっぱロボットぶっ壊して入学した人らだから好戦的だし、何より怖い、常日頃ただでさえ多種多様なヴィランに襲われてるのに、その上どうして戦闘しないといけないんだ……」

 

 

死んだ目をした読解は心底面倒だと言うようように死んだ目で虚空をみつづけている

 

 

 

「でも、私の意思関係無しに爆豪は再戦を望むんだろうな」

 

 

もう何も知りたくないとでも言うかのようにベッドに寝転んだ

 

 

 

「分かってんじゃねーか、これから定期的に組手の相手を頼むな、お前の戦い方や教え方はとても良いからな」

 

「まあ、余裕があれば手伝いますよ、ただ、これからドラマにゲスト出演があったり、モデルとして表紙をする仕事がある上に、かなりややこしい問題に頭突っ込んでしまった為、殆ど時間は取れないですね」

 

「ややこしい問題?」

 

「まあ、いずれ分かりますよ、なので、今は知らない方がいいです」

 

 

意味深な笑みを浮かべた彼女がシーッと口元に手を当てた

 

 

 

「俺にも言えないのか?」

 

 

心操が少し不満そうに言うと、彼女は強い意志を灯した表情で、でも柔らかな笑みを浮かべて緩く横に首を振った

 

 

彼女は一体何を抱えているのか全く分からなかった






いつも評価、感想、お気に入り登録ありがとうございます。
とても嬉しく創作活動の励みにさせていただいてます。


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今後の進め方に悩み続けながら手持ち無沙汰に書いた閑話

お久しぶりです。長い間更新しておらずすみません。
この後の展開を完全にオリジナル路線を突っ走るか、ある程度原作から情報が届くまで待機にしようか永遠迷い続けてました、というか、現在進行形で迷ってます。
ほんと、どうしたらいいんですかね?
そんな感じに続きを考えているので、話が進むのにはまだ時間がかかりそうです。



この話はあまりにメインストーリを進められないので、書きました。





 

 

 

「人使、人使って目の下のクマ凄いよなそのせいで人相悪く見られがちだし」

 

 

 

休み時間、相変わらずの男装姿で隣に座っていた心理は顔面をジッと見ていたかと思うと急にそんな事を言い出した

 

 

 

「ああ、だが、十分な睡眠を取っても、もう跡になってるから取れねぇんだ」

 

 

「そっかー……まあ、染み付いたクマはなかなか取れないよな……それもそうだよな…」

 

 

 

納得しつつも、何かを考えている様子の心理だったが、心理が何かを考えてるのはいつもの事なので、その時は特に気にしなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜翌日〜

 

 

 

 

「よし、じゃあ人使、椅子に座って、斜め上45度の方向を向いて目を瞑って動かないで」

 

 

 

朝登校するなり、そう言われ、首をかしげるが、心理がいい笑顔で無理矢理席を勧めてくるので、特に抵抗もせずに大人しく座って言う通りにする

 

 

 

 

「よし、じゃあまずは化粧水からいきます、スプレーかけますね」

 

 

 

 

プシュッと顔に液体がかけられる

 

 

 

 

急にそんな事になり、慌てて、目を開くと、心理は化粧道具が沢山入った小物入れを持ち、既に俺の周りにはギャラリーが出来てきた

 

 

 

「……は?」

 

 

「次は下地を塗っていきます、目を瞑ってください」

 

 

「いや、待てよ、心理、何する気だ」

 

 

「今になってそれ聞く?」

 

 

「いや、まあ、確かに俺は素直に心理の言う通り椅子に座ったが、まさか化粧されるとは」

 

 

「今からすることが化粧ってわかってるじゃん、人使、クマがあるままでも十分カッコイイんだけど、そのクマを怖がる人もいるから綺麗に消そうって思ってね、私、いろんな人に人使の良さを知ってもらいたいからさ」

 

 

 

手に何かのチューブを持ちながらそう照れたように笑う心理

 

 

 

彼女は本当にずるい、そんな言い方をしたら俺がNOといえない事を知っていて、そんな言い方をしてくる

 

 

 

 

「分かった、好きにしてくれ、ちゃんとかっこよくしてくれよ」

 

 

 

目を瞑り、そうお願いすると、任せてと彼女は言い、優しい手付きで俺の顔にクリームを塗り始めた

 

 

 

それから、目を瞑ってる間に顔に何かをペタペタと塗られる感触がした後に、髪の毛を弄られた感触がして漸く目を開ける許可が出た

 

 

 

 

恐る恐る目を開けると、心理がいい笑顔で触れた鏡を渡してくるので、それを受け取り、そっと自分の顔を見てみると、最早誰だと言いたくなるほどいつもの自分とは違っていた

 

 

 

「クマが完全に消えてる上に、髪が逆立ってない、血色も良くなってるし、眉毛も少し弄ってるのか?」

 

 

「後は、ちょっと唇の血色も良く見えるように薄いリップを塗ってた、うん、我ながらよく出来て良かったよ、元がいいからかも知れないけど、本当にカッコイイ、しかも万人ウケする系のカッコイイ」

 

 

 

満足そうな様子の心理の横や後ろから興味津々にクラスメイトが俺の顔をジロジロと見てきている

 

 

 

 

いつもは個性のせいで近寄ってこないタイプの奴も不躾に視線をよこしてきていて、いつもならうざったく感じるが、心理にカッコイイと言ってもらえて機嫌のいい俺には全く気にならない

 

 

 

 

「あんまり顔を触らないように、一応落ちにくようなメイクにしているけど、触りすぎると流石に取れるから」

 

 

「ああ、分かった」

 

 

 

 

俺のメイクが施された顔を見て、羨ましそうな視線を向けてくる女子がかなりの数いて、思わず目線を落とす

 

 

 

 

顔に穴が開くんじゃないかという程見つめられ、思わず助けを求めるように心理を見ると、ニコッと笑顔を返された

 

 

 

 

「ジャンケンして勝った人1人だけ」

 

 

 

 

 

 

女子を見渡してそう軽く笑って言うと、女子の全力のジャンケン大会が始まった

 

 

 

 

「ほんと、人使、連れて歩くのが楽しい見た目になったな」

 

 

「そう言うお前はメイクしてるのか?」

 

 

俺と同じく、それはもう最高に連れて歩くのが楽しそうな見た目の心理の整った面を見て、それももしかして俺が気付いていなかっただけで実はメイクをしてその顔なんじゃないかと聞いてみる

 

 

 

「してるわけないじゃん、ノーメイクだよ、いつも」

 

 

 

そうか、しないでその整った面か

 

 

 

俺、素から万人ウケする美形なの、とウィンクしてくる心理に思わず溜息を深くついた

 









駄作者はメイクド下手勢です、作者名メイク用品名にしてるくせに、不器用すぎてアイラインで目を突いてしまったり、口紅を唇からコースアウトさせます。


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34話

皆さん、長らくお待たせしました。
漸く大体ですがこう言う方向性で話を書いていきたいと言う筋が出来たので、投稿させていただきました。



 

 

 

保須市にあるスタジオでCM撮影の合間、耳に飛び込んできた速報はこの近くで脳無が大量発生したという、直ぐにでもこの場から逃げなければならない知らせだった

 

 

 

最近、保須市ヒーロー殺しも出たし、不穏すぎじゃない?

 

 

 

撮影の合間だっため、衣装の綺麗なフリルのワンピースにフルメイクの状態でスタジオから出て、避難をする人波にスタッフと共に混ざる事になったのだが、ガッツリ芸能人らしい状態の私は人混みの前に出た瞬間、群衆の足の進みを緩めてしまう原因となる程目立つ

 

 

 

一応スタッフや警備の人が囲ってはくれているが、何しろ、状況が状況のため、殆ど意味がなく、寧ろさらに避難速度を遅めてしまう

 

 

 

個性を使って周りを見てみると、この場所はまだ発端となった場所からは少し離れているため、避難する人でごった返してはいるが、早急に避難をすれば問題ない距離なのだが、モタモタしていると、正直どうなるかわからないが、かといってパニックを起こして走り出すのも危ない、だが、あの人造敵である脳無の怖い所は予想をつけにくい所なので、なるべく早く避難をしたい

 

 

それか、避難は無理でも、何かが起こった時に人混みに揉まれ、何もできないという事にはなりたくない

 

 

その為、自分という存在が避難の邪魔になってる事を酷く苦痛に感じ、仕方がないので、近くに登ってもいい少し高くなってるところに目を付け、マネージャーと警備員に短く要件を伝え、素早く目をつけていた場所に立ち

 

 

 

 

手を大きな動作で大きく叩いて鳴らし、リズムを刻み、注目を集める

 

 

 

「皆さん!!落ち着いて迅速に避難をお願いします!!」

 

 

 

少し早足で歩く程のテンポで手を叩く事により、個人個人の歩く速度が一定となり、避難の列の進みが良くなる

 

 

 

腹の底からできるだけ多くの範囲の人に届くように声を張り上げる

 

 

 

 

「足を止めたら周りの人に影響が出ます!!ちゃんと周りを見て歩いて下さい!!」

 

 

 

 

「避難列から離れようとしないでください!!事件現場の方に近づいてしまうと危険です!!」

 

 

 

 

「周りの人を押さないで下さい!!危険です!!」

 

 

 

 

手は一定のテンポを保って叩きながらも、個性をフルで活用して避難誘導と注意喚起を行う

 

 

 

 

かなり人が避難出来てきているが、それでもかなりの脳無が出てしまった分、避難区域が広く、避難はまだ完了しない

 

 

 

 

今避難誘導を行なっているこの通りは避難経路の大通りになっているので、ここの流れがスムーズになった分、避難完了までの時間は大分短くなり、まだかかるが、大人数が事件に巻き込まれてしまうような事は起きなさそうだ

 

 

 

適当なタイミングで自分も避難したいのだが、もしこの誘導をやめた瞬間、今までの誘導が無駄になる程流れが乱れるのも嫌なので、自分が避難するのは最後の方になりそうだと諦めつつ、近くにいてくれていたマネージャーと警備員には先に行くように促し行ってもらう

 

 

 

誰か脳無の相手に向いていないヒーローでもいれば避難誘導を代わってもらうのだが、ヒーローはヒーローの方で一杯一杯なのか、避難誘導の応援は望めなさそうだった

 

 

 

まあ、視線を集めるという点では、そういう個性持ちでない限り、殆どのヒーローよりその能力には優れているので、根気強く避難誘導をし続ける

 

 

 

 

避難ももうそろそろ終了となってくると、かなり中央に残ってしまい焦って走ろうとする人と、野次馬精神で現場に残りたがる人が出てくるので、さらに声を張って落ち着いて歩かせる

 

 

 

 

「足を止めないで下さい!!周りの人にも迷惑がかかります!!」

 

 

 

 

「スマホを構えている場合ではありません!!周りをよく見てください!!」

 

 

 

 

「無理に進もうとするのはやめて下さい!!危険です!!」

 

 

 

 

 

野次馬精神で残ろうとする馬鹿を睨みつけ、女の人を突き飛ばしてでも逃げようとした男を指差して怒鳴り、注意する

 

 

 

 

 

もう、避難誘導が必要ないほど人がはけてから、避難するのに補助が必要で逃げ遅れた人などが近くにいないかと個性で探ってみると、少し事件現場の方に近づいたところの路地で足を痛め、立てなくなってる人を見つけ、慌てて、そっちの方に向かって走っていく

 

 

 

途中で見つけたポールを持ち、個性をフル活用して次に助けなければならない人を探す

 

 

 

「お兄さん大丈夫!?これ支えにして頑張って逃げて!」

 

 

 

手を引っ張り、立ち上がらせ、持っていたポールを渡し、避難方向を指差して、向かわせる

 

 

 

「気をつけてね!」

 

 

「ああ!ありがとう、理里ちゃん」

 

 

 

杖をつく様にして、避難していたのを見送ることすらせずに、親とはぐれて細い路地の物陰に蹲って泣いていた6歳くらいの女の子を個性で見つけたところまで全力で走る

 

 

 

また、事件現場の方へと近づいてしまってるが、まだ大丈夫

 

 

 

何かが起こったとしても直前に察知して避ける事は私なら可能だ

 

 

 

「ねえ、お嬢さん、私が来たからもう大丈夫、一緒にお母さんを探しに行こう」

 

 

 

避難先でお母さんが彼女のことを必死に探してるのを感じながら声をかける

 

 

 

「り、理里ちゃん…?」

 

 

「うん、私は理里だよ、危ないから私と一緒にお母さんのところに向かおう」

 

 

「……っ、うん」

 

 

こういう風に、簡単に子供に信用してもらえると、いつもは面倒に感じることもある自分のとても高い知名度もとてもいいものだと思える

 

 

「危ないし、何かあるといけないから、私がおんぶするけどいい?」

 

 

「うん、いいよ」

 

 

 

へんじをもらってから背中を向けて、乗ってもらい、しっかりと背負う

 

 

 

「ちゃんと捕まっていてね」

 

 

 

「分かった」

 

 

 

 

背中に背負った状態で、既に人が避難しきり、人気のない路地から出て、少し太めの道に出ようとして、慌てて後退した

 

 

 

なぜなら、その道を一直線に走る脳無を少し遠くに見つけしまった上に目が合うという超特大のアンラッキーを引き当ててしまったからだ

 

 

 

自分だけならまだしも、女の子を背負ってよくわからない存在と直接対決するわけにはいかないので、女の子を背負った状態で細い路地を全力疾走

 

 

個性のせいか、変な走り方をして追いかけてくる脳無から死に物狂いで逃げる

 

 

 

距離を詰められたら終わりと思え、私

 

 

 

もし、脳無に直接会ったら、体の構造がどうなってるか、A組の人達を介してではなく、直接個性で読み取ってみたいと思っていたが、そんな事は余裕なぞなく、ただ走る、ひたすら走る

 

 

 

本当なら、避難場所に逃げたいが、背後をついてくる余計なものを避難した人に近づける訳にはいかないので、致し方なく近場で脳無の処理をしているヒーローがいる方向に走っていく

 

 

 

誰かヒーローに出会えればきっと助けてもらえる

 

 

 

そう信じて、細い路地を個性をフル活用して走り抜け、至る所で脳無が暴れる大通りに出て

 

 

 

「助けてください!!」

 

 

 

 

そう叫び、路地から出て直ぐの所から真横に飛んだ

 

 

 

その瞬間、鋭い爪を振り下ろす脳無が路地から出てくる

 

 

 

「あっぶなぁ!!」

 

 

 

そう叫びつつ、距離をしっかりととり、この場にいるヒーローの中でだれが一番実力が高く守ってくれそうかを判断して、直ぐに1人のヒーローへと近づき

 

 

 

「エンデヴァーさん!!どうにかしてください!!」

 

 

 

炎で脳無をどんどん丸焼きにしていってるエンデヴァーさんに叫んで、脳無を指差してお願いする

 

 

 

「導線上から退け!!どうにかしてやる!!」

 

 

「ありがとうございます!!」

 

 

 

再度振り下ろされる爪から庇うように、背中に背負っていた女の子の体を自分の体の前に手早く持ってきて、しっかりと抱き締めながら、地面を強く蹴って導線上から横に退き、地面を勢いよく転がった

 

 

 

その瞬間、眩い炎が脳無の白い体を焦がした

 

 

 

 

脳無が完全に沈黙したのをみて、地面から起き上がる

 

 

 

「ごめんね、痛いところはない?大丈夫?」

 

「痛いところはない…理里ちゃんが守ってくれたから私は大丈夫、だけど……理里ちゃん腕とか足とかから血が出てる…」

 

「これくらい大丈夫だよ、平気」

 

 

そう言って安心してもらうために優しく笑う

 

 

まあ、嘘だけど、正直凄い痛い

 

 

間一髪で爪の直撃は避けたが、少し掠ったみたいで、鋭い痛みが背中に少しと、地面を勢いよく転がった時に打った体の至る所が痛い、けど、私は笑わなくちゃいけない

 

 

 

 

「お前、その子はどうしたんだ?」

 

 

「この子は迷子です、見つけたので保護しました」

 

 

「よくやった、誰か怪我をしていないヒーローにでもあとは頼め」

 

 

「分かりました」

 

 

 

ヒーローの1人、おそらくエンデヴァーのサイドキックの1人が素早く女の子を保護しに来てくれる

 

 

 

そして、怪我をした一般人の私も保護対象だと思い、保護してもらえるのを待っていたら、サイドキックの人は私に感謝と賞賛の言葉だけを行って何処かに行ってしまった

 

 

え?なんで?

 

 

私は保護してくれないの?ほら、怪我人だよ

 

 

 

そして、疑問の目をエンデヴァーに向けると同時に、こんなパニックで忘れていたが、エンデヴァーの近くに職場体験に来ているはずの轟くんがいないことに気付いた

 

 

その事になんだか嫌な予感がして、個性で見てみると、案の定、今回の脳無大量発生事件の中で危険度が指折りで高い奴と戦っているとのことが読み取れる

 

 

いや、飯田くんや緑谷くんと一緒に何やってんだよ轟くん

 

 

飯田くん、折角お兄さんは助かったのに、なんで君が危ない目に首突っ込んでるのかな!

 

 

 

 

「エンデヴァーさん、ここいらの脳無の相手は大体終わりましたね、早く轟くんが先程指定してきた応援に向かいましょう」

 

 

「貴様がそう言うってことは何かあったんだな、わかった急ごう、それとお前も来い、近くにいた方が守りやすいからな」

 

 

 

 

近くにいた、手が空いているヒーローを呼び、指定の場所に向かい始める

 

 

 

 

「じゃあ、私がサイドキックに保護されなかったのは、エンデヴァーさんが直々に守るため?」

 

「ああ、そうだ、あの脳無は明らかにお前を狙っていたし、なんせお前は自身が有名人な上に親も親だ、また強いヴィランに狙われるかも知れんしな」

 

 

「成る程、それは心強いですね、私この騒動が一区切りつくまで、絶対にエンデヴァーさんから離れません」

 

 

 

轟くん達がいる方へヒーローを引き連れてぞろぞろと走って向かっている途中、翼が生えた脳無に手こずってるヒーロー達に出会う

 

 

 

「まだ残っていたか」

 

 

 

エンデヴァーが脳無を見た瞬間、炎で撃ち落そうとするが、ひらりと避け、飛んで逃げて行ってしまう

 

 

 

「くそっ!外した!追うぞ!」

 

 

「分かりました!」

 

 

真っ直ぐと何処かへ向かって行ってしまう脳無を追いかけて、入り組んだ路地を最短ルートを通って追いかける

 

 

個性を使った私と本気の鬼ごっこ、逃げ切れると思うなよ

 

 

 

まるで何かを探す仕草をして飛んでいく脳無に対して、追いつくことだけを考えて個性を使用して走る

 

 

そして、路地を抜けたタイミングで漸く脳無の真下にまで追いつく

 

 

その通りの少し先にには私達と同じように路地から出てきた轟くん達がヒーロー殺しを捕まえたボロッボロの状態でいる

 

 

そんな状態の彼らを見つけて、死ななくてよかったと思って安心したのがよくなかった

 

 

脳無が急に加速して滑空しながら急降下してきて彼らへと近付いて行った

 

 

 

「そっちに脳無が一体行った!!!」

 

 

エンデヴァーさんが慌てて叫んで知らせるが、間に合わず、緑谷くんが呆気なく引っ掴まれ、空へと向かって行ってしまう

 

 

 

どうにかして脳無から緑谷を取り戻せないかと個性の出力を最大まで上げて、脳無を見た瞬間

 

 

 

あまりに悪意に塗れた、最早死んでいた方がマシだと言うカラダの詳細が頭に流れ込んできた

 

 

 

グロテスクで悍ましい、倫理観への冒涜行為を煮詰め固めたかのような存在について詳しく知ってしまい

 

 

 

抑える事さえ出来ずに、道路に胃の中身を全てぶちまけた

 

 

 

まだ、道の端に寄れただけ良かったのだろうか

 

 

 

仲が別に言い訳じゃなかったが、仮にも、去年まで学校が一緒だった奴があの疎ましい存在に混ぜられていると思うと、吐き気が止まらない

 

 

 

「うっ……オエッ…ゴホッゴホッ…オエッ…っ!…ゲホッ……」

 

 

 

 

吐き気が全く治らない上に、涙が抑えが効かない程流れてきても、それでも脳無の方をもう一度見ると、攫われた緑谷の事はヒーロー殺しが救出してくれていた

 

 

 

ああ、緑谷くんはヒーロー殺しに認められたのか

 

 

 

 

ヒーロー殺しに緑谷を殺す意思がないのを読み取って安心する

 

 

 

 

ヒーロー殺しが緑谷くんを救出した後、地面に放り捨て、自分の信念を貫く意思でヒーロー達を圧迫した

 

 

ヒーロー殺しの思想は英雄回帰といわれる思想で、私とは合わない考え方だった

 

 

自分と同じ人に物語の中の主人公のような高潔さを求めるな、イカレ野郎

 

 

 

根気だけで吐き気をなんとか抑えて、ハンカチで涙を拭った後に口元も拭って少し離れた道路の端からヒーロー殺しの前へと大股で歩き出た

 

 

 

「お前のような考えをする奴がいるからただの人だと言うのに、英雄になれると信じる勘違い野郎が出てくる!いい加減目を覚ませ!人は万人の英雄になどなれない!」

 

 

 

正面切って言い返して、ヒーロー殺しを見ると、刃物を使い、切りかかろうとしてくる

 

 

だが、私が対応しようと思っていた有効打撃範囲内に入る前にヒーロー殺しは沈黙した

 

 

どうやら、怪我の状態がかなり酷いらしく、気絶してしまったようだった

 

 

 

 

 

ヒーロー殺しが気絶してしまった事により、彼に殺された脳無を再度視界に入れてしまい、無理矢理抑えていた吐き気がぶり返し、道の端に駆け寄り、しゃがみこんでえづく

 

 

 

もう、吐くものなんてないのに、吐き気が収まらず、足から力が抜けて立ち上がれない

 

 

 

 

 

「どうした?」

 

 

 

 

エンデヴァーが背中に手を当てて気遣うように聞いてくれる

 

 

 

 

「ど、どうもしていません…」

 

 

 

ハンカチで口元を拭い、なんとか笑顔を作ってエンデヴァーに答える

 

 

 

「何がどうもしていないだ、そんなに顔面蒼白にしやがって、どうした?ヴィランの個性にでもやられていたのか?」

 

 

 

 

背中を優しくさすりながらそう聞かれ、首を横に振る

 

 

 

 

「あの、あの人だったモノを個性で見てしまったせいです………ヴィランの個性の影響ではありません」

 

 

 

視界には決して入れずに、脳無を指差して、そう伝えると、エンデヴァーは驚いたように目を少し目を見開いた

 

 

 

「そうか、よし、じゃあお前も怪我をしているあいつらと一緒に病院に搬送だ、外傷もある事だしな」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「何かがありそうなら、3人に知らせて守ってもらえ」

 

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しするとボロッボロのヒーロー殺しステインを搬送する護送車と、ステインとの戦闘で怪我をした3人と私を搬送する救急車が現場にやってきた

 

 

端の方で大人しく座り込み、口元を押さえて耐えていた状態から、よろよろと立ち上がろうとするが、力が入らずよろけると救急隊員の人に支えられて、救急車へと乗せられた

 

 

 

「大丈夫?読解さん」

 

 

 

先に救急車へと乗り込んでいた緑谷くんに能天気にそう尋ねられた

 

 

先程まで道路に吐き散らかし、顔を苦痛に歪めている私に対して心配そうな表情で無神経な言葉選びをする緑谷くんに対して、いつもの私なら、なんとも思っていない振りをできたのだろう

 

 

だが、心身共に疲弊していて、心に余裕がなくなってしまっていた私は思わず視線は決してやる事なく脳無の方を指差して口を開いてしまった

 

 

 

 

 

 

「ねえ、緑谷くん、貴方はどうしてアレを見て何も思わないの?

 

どうしてアレに自分が狙われたんだと思う?

 

どうしてアレは君の元へと一直線に来たんだと思う?

 

どうしてアレは個性を複数持ってるんだと思う?

 

どうしてアレにはあんな羽が生えてるんだと思う?

 

ねえ、君が知ってるあの羽を持っていた人はどうしたんだと思う?

 

君が昔からしている周りの人の個性調べは無駄だったの?

 

あんなに周りの人の個性を調べていたのにどうして思い至らないの?

 

ヒーローになるための個性ノートは一体何だったの?

 

どんな個性でも凄いと言って褒め称えていたのは何だったの?」

 

 

 

 

 

そう、緑谷くんに向かって一息で言ってしまう

 

 

 

 

ああ、やってしまった

 

 

 

 

怪訝そうな顔をした轟くんや飯田くんを視界の端に捉えつつ、1つ1つの質問を聞くたびに青ざめていく緑谷くんの顔を見て、言い切った事に対する後悔がどっと押し寄せてくる

 

 

 

 

「い……いや……そんな…まさか…いや、嘘…だ、よね…?」

 

 

 

 

縋るような視線から私は顔をただ逸らした

 

 

 

 

「いや、だって、彼が……まさか、そんな…そんな事……あり得るわけ……」

 

 

 

 

震えて頭を抱えながら嘘だと言い続ける緑谷くんに対して何も言わずに私は視線を下に落とした

 

 

 

仕方がない、いつだって世界は深く知れば残酷な事ばかり

 

 

皆、知らない方が幸せに生きていける

 

 

だからこそ、私は緑谷くんに言うべきではなかった

 

 

知らせるべきではなかった

 

 

でも、言ってしまった

 

 

 

 

 

後悔が胸中を一杯に満たす中、救急車の扉は閉められて、発車した

 






本当にお待たせ致しました。

こんなに長い事更新していなかったのに、読んでもらえて本当に嬉しいです。


主人公がオールマイトの事を嫌う理由なども、粗方は元から決まっていたのですが、詳細までは決めておらず、かなり迷ったのですが、それもかなり細かく決まったので、近いうちにちゃんとした文章に仕上げて投稿していきます。




もしよろしければ、感想、評価、お気に入り登録をよろしくお願いします。


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35話

すごい面白い話を連日投稿できる人って、最早人じゃなくて神だと思うんですよね
しかも、文字数も多い人とか崇め奉ってます。


 

 

 

警察の人からお叱りの言葉を頂いてから、スマホを見てみると、ネットニュースのトップにはよく知った顔がトップに来ていた

 

 

 

「ちゃんとした活躍とはこう言う事を言うんだろうね」

 

 

 

ネットニュースになっている読解さんが避難誘導をしていた話を読みながらそう口から漏らすと、轟くんが画面を覗き込み、納得の声を漏らした

 

 

 

「ヒーロー科の俺らよりも読解の方がよっぽどヒーローみたいだな」

 

 

 

凛とした姿で声を張り上げている動画を見ながら轟くんは無表情ながらも悔しそうしている

 

 

 

「読解はヒーローになりたい訳じゃない筈なのに、強くて、ヒーローらしい行動をできて、色んな人から人気で本当に凄いよな」

 

 

「うん、老若男女、全ての世代から人気を獲得している読解さんの能力は本当に凄いよ」

 

 

 

 

 

 

「へえー、そんなに褒めてくれるんだ、ありがとうね」

 

 

 

部屋の入り口から急にそんな声がしたと思ったら、僕たちと同じ入院服を着た読解さんが立っていた

 

 

 

「まあ、私はヒーロー殺しを学生3人でプロヒーローっていう荷物を背負った上で相手したのも大分凄いと思うけどね、普通あんな怖いの見つけてしまったら私なら恥も外聞も捨てて全力逃走開始する」

 

 

 

 

ヘッと鼻を鳴らすような笑い方をしている読解さん

 

 

彼女怪我をしてしまった為、入院となったことは知っていたが、入院服で出歩ける距離の部屋に入院しているとは思ってなかった

 

 

「私、有名人だし、隔離対象に入るんだよね、だから、あんまり色んな人に会うわけにはいかないけど、3人なら会ってきてもいいって許可貰ったし、一人部屋で暇だから遊びに来ちゃった」

 

 

 

出入り口の扉を閉めて、取り敢えず目が一番に会ったからか、僕の方まで歩いてきたので、僕が見ていた動画を覗き込んできていた轟くんと共に彼女が座りやすいようにお互いに距離を取るように端に寄り、読解さんは間に座った

 

 

 

「いま隔離対象扱いされているの、私とヒーロー免許も無いのにヒーロー殺しと個性を使用して戦った3人だけだから、ここしか遊びにこれないんだよね」

 

 

「戦いたくて戦ったわけでは無い!」

 

 

飯田くんが座っていた自分のベッドから立ち上がり、反論をしながらこっちに歩いてきた

 

 

「そんな事知ってるよ、復帰して早々ヒーロー殺しに対応するために保須市で活動していたお兄さんの所に職場体験に行って、急に湧いて出てきた脳無の相手をしていたら、路地から悲鳴が聞こえたから単独行動して見に言ってみると運の悪いことにヒーロー殺し会ってしまったことくらい、兄弟揃ってヒーロー殺しに会う運命でも持ってるの?」

 

 

 

まるで見ていたかのように飯田くんの事情を淀みなく読解さんは言い返している

 

 

昨日、出会ったタイミングにでも個性で読み取っておいたのだろう

 

 

 

「そんな運命は無いと思いたいな」

 

 

 

嫌そうな表情でこっちまで寄ってきた飯田くんは結局、轟くんの横に座った、そのため、読解さんが僕の方に寄ってきたので、ほんの少しも体が触れてしまわないように端に詰めた

 

 

あれ?どうして僕のベッドに横並びに4人も座ってるんだろう

 

 

 

一番端で壁のシミにでもなりたいのかってほどに壁に体を寄せながら飯田くんの行動に首を傾げる

 

 

 

「そういえば、読解くん、君はどうして怪我をしたんだ?」

 

 

 

昨日合流した時から痛々しい背中の傷が見えていた読解さんに対して3人とも疑問に思っていた事を飯田くんが代表して質問してくれる

 

 

 

「ああ、なんか両腕が鎌鼬みたいになった脳無にザシュッと、そのネットニュースにになってる避難誘導の最後の最後で脳無に狙われちゃってね。

 

上手にヒーロー達の方に逃げれた上に対応できるエンデヴァーが居なかったら私今頃ここじゃなくて、棺の中だったかもね」

 

 

 

笑いながら話してるが、全く笑えない

 

 

寧ろ、腹の底から身体が冷たくなってくる

 

 

 

 

「子役としてその背中の傷、大丈夫なのか?」

 

 

 

触れるほど近くに座っている轟くんが読解さんに対して心配そうに声をかけた

 

 

 

「運のいいことに、物凄く切れ味のいい鎌だったから綺麗に切れたお陰で完治すれば傷は殆ど残らないよ、まあ、切れ味が良い分、結構いったんだけどね、良かったら背中見てみる?」

 

 

「ああ」

 

 

服の裾に手をかけ、自分の隣に座る轟くんに見えやすいように、そして、必然的に轟くんのとなりに座る僕にも見えるように読解さんは入院服の上をずり上げた

 

 

 

あまりに自然で思い切りのいい行動に、思わず、両手で顔を覆って目をそらす事すら出来ずに、ゆっくりと脱ぐその姿を見てしまうと、背中一面に包帯が巻かれていた

 

 

女子の背中を見てしまった疚しい気持ちよりも、痛々しいその包帯の方に意識が向き、目をそらす事が出来ない

 

 

 

「広範囲に斜めに切り傷が入ったから仰向けになる事すら出来ないんだよね」

 

 

 

入院服から両腕や頭を抜くと、胴体をグルグル巻きにしている包帯がようやく全て見える

 

 

細くくびれた腰や胸元の柔らかい膨らみ全てを覆って巻かれた包帯が怪我の酷さを物語っている

 

 

 

「背中以外にも傷はあるけど、他は正直家にある救急箱で対処できるくらいだから、本当にこの背中の傷はやっちゃったなーって感じなんだよね」

 

 

 

どこか自虐的な笑みを浮かべた読解さんは自分の身体を抱きしめるように両腕を自分の体へと回した

 

 

 

「いつもは強い戦闘向きの個性なんて要らないって思ってるんだけど、こういう時はなんで私には戦う力が無いんだろうって考えてしまうんだよね」

 

 

 

悲しそうな表情で言って俯く姿は弱々しく、いつも強気な読解さんらしくなくて、彼女でもそういうことで悩む事を意外に思ってしまう

 

 

それほどに、脳無の事や、背中をザックリといったのは、彼女の心にダメージを与えてしまったのだろうか

 

 

気持ちが沈んだ読解さんになんて言葉をかけようかと迷っていると、読解さんは俯いていた表情をあげて、ニッコリと笑った

 

 

 

 

さっきまで凹んでたのに、急に笑い始めるのは心臓に悪い

 

 

 

 

「まあ、生まれつき向いてない事が人よりできるようになりたいとか無茶だよね!

 

私みたいな戦闘向きじゃない人は荒事なんてヒーローに任せとけばいいんだよ。

 

大人になってもっと人気の女優になったら今以上に危ない目に沢山会う機会が増えるだろうし、今まで襲ってきた事がない脳無とかもくるかもしれないけど、もう今度からは避難誘導なんてせずに大人しく逃げる。

 

 

私はやっぱり他人を体を張ってまでも守りたいと思えないから」

 

 

 

顔は笑っているのに対して、声は、まるで何処か自分に失望したかのような声で、でも、納得をしたような声だった

 

 

 

 

 

 

「3人は頑張ってヒーローでいてね」

 

 

 

 

 

くしゃっとした本心からだと思える声と表情が一致した状態で言われたその言葉は僕にとって重くて、でも、背負わなくてはいけない重さだった

 

 

 

 

「「「もちろん」」」

 

 

 

 

3人で声を合わせて答えると読解さんは嬉しそうに軽く笑った

 

 

 

そして、手に持っていた入院服を着直そうとするのだが、服を着ようと両腕を入れようときた所で動きが止まってしまって動かなくなった

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 

停止した読解さんに轟くんが心配そうにきく

 

 

「大丈夫じゃなかった、背中の傷が痛くてこれ以上体を前に倒すことも、腕をあげる事も出来なくて、どうしようもなくなっちゃった」

 

 

 

再度服から手や頭を抜き、困った表情になっている

 

 

 

 

「でも、まあ、うん、そんな事もあるよね」

 

 

 

 

考えるのが面倒だったのか、完全に思考を放棄した言い方で心配になってくる

 

 

というか、この発言以外にも、今日は発言や行動はいつものような隠しきれない賢さが溢れる感じとは違い、情緒不安な上に無計画さが目立つ

 

 

 

 

「こうなるなら脱がなきゃよかったかな、けど、もう脱いじゃったしなぁ」

 

 

 

 

やっぱり、今日はなんか行き当たりばったりで行動が幼くなってる

 

 

 

 

「ねえ、着せて貰ってもいい?」

 

 

 

 

ほら、幼くなってるよ、行動が!

 

 

同級生の異性にそんな事頼まないよ、いつもの読解さんなら

 

 

 

 

 

「ね、お願い」

 

 

 

標的を僕に絞ったのか、自分の上の服を胸元に押しつけるように渡しながら可愛らしい感じでお願いをしてきた

 

 

ただでさえ壁に追いやられていたのに、さらに距離を詰められ、本当に壁のシミになれそうな気すらする

 

 

両手を顔の前にやり、頭を激しくブンブン左右に振るが、無邪気に服を押し付けてくる上に僕に縋るように上目遣いまでしてくる

 

 

やっぱり、見た目がいい!顔がいい!

 

 

 

 

「ちょっと着替えの手伝いをお願いしてるだけだよ、緑谷くんも怪我してるけど、ちゃんと両腕動きそうだからさ、ね、お願い」

 

 

「俺がやろうか?」

 

 

「ああ、轟くんが着せてくれるんだ、よろしくお願いします」

 

 

 

僕に押し付けていた服を反対側の轟くんに渡し、轟くんは特に照れた様子もなく怪我を気遣いながら読解さんに着せた

 

 

そして、僕は轟くんに注意が向いてるこの隙に、僕のベッドの隣にある轟くんのベッドへと移動した

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

柔らかい甘えるような笑顔で礼を言う姿は純粋に可愛くて、至近距離で笑いかける轟くんがどうして素面で居られるかが分からない

 

 

 

 

 

「そ、その、読解さん今日は、なんというか、その…お、幼いね?なんか、こ、個性とかの影響?」

 

 

 

「うん、そうだよー」

 

 

ニコニコと可愛い笑顔と共に肯定されたので、個性の影響なことはわかったのだが、なぜ彼女の心を読むという個性で幼くなるのかが分からない、もしかして誰かに個性でもかけられたのだろうか

 

 

少し聞けば疑問は晴れると思っていたが、こちらの意図を全く汲み取らない読解さんから帰ってきた言葉は短か過ぎて、結局意味がわからない

 

 

 

「君の個性でどうして幼くなるんだ?」

 

 

 

轟くんの隣から僕の隣へと移動しながら飯田くんが質問した

 

 

 

「私の個性はね、私が知りたいって思うのと同時に無意識で発動されるの、だから、どうしても個性を使いたくなかったら、ずっと何もわからない幼い子供のような精神状態を保たないといけないから、今こんなに幼い感じになっちゃうの」

 

 

 

 

「もしかして、個性を使いたくないのは昨日脳無を見てしまったせい?」

 

 

 

 

「いや、そんな事はないよ、ただ、この個性、取り入れる情報量が多過ぎて周りの人と共感覚になる事が多い個性なの。

 

で、平常時ならそうはならないように操作することも出来るんだけど、今はとにかく背中が痛くてね、というか全身痛くてね、個性の操作なんてやってられないの。

 

そして、そんな状態で話す相手が自分と同じように怪我をしてる3人組、まあ、万が一にも共感覚なんて絶対味わいたくないよね、痛いのは嫌なので」

 

 

 

両手で大きくバツを作って笑ってるが、確かに痛みに慣れていない人が自分の痛みに耐えている上に僕ら怪我人と共感覚なんて笑い事では済ませないほど嫌だろう

 

 

 

そりゃあ、幼くもなる訳だ

 

 

 

 

 

「あーあ、痛い思いなんて全くせずに、楽して生きていきたいなー」

 

 

 

自分の願望を口にしながら身体を半回転させてうつ伏せでベッドの上へと倒れ込んだ

 

 

 

 

そう、よりによって、僕が寝ていたところに女子が寝転んだ!!

 

 

しかも、あの読解さん!!

 

 

僕なんかとは比べものにならないほど別世界の住人で姿形が物凄く、それはもうとっても整っている読解さん!!

 

 

 

 

「駄目だ、眠たくなってきた……そろそろ自室に戻るね」

 

 

 

ベッドからゆっくりと起き上がった彼女は眠たそうに欠伸をして立ち上がり……の時に思いっきりバランスを崩し一瞬で顔が青褪めた状態で目の前の僕に突っ込んできた

 

 

 

思わず反射で受け止めたが、かなりヤバイ、なんか、凄いいい匂いがする…っ!

 

 

 

「ダッ…ダイジョーブ!?ヨミッヨッ、読解…サン…」

 

 

 

声裏返ったー!

 

 

 

「ありがとう、大丈夫足から急に力が抜けただけだから」

 

 

グッと僕の肩を押して体を僕から離し、今度はしっかりと背筋を伸ばして地面に立ち上がった

 

 

「遊びに来た私がいう事じゃ無いけど、安静にね、じゃ」

 

 

 

ヒラヒラと手を振って問題なさそうに部屋から出て行く彼女に手を振った

 

 

 

「読解の事、本当に強いやつだと思ってたけど、あいつも守るべき一般市民の一人なんだな」

 

 

「ああ、どれ程強くても読解君はヴィランと戦う訓練は行なっていない」

 

 

「頑張らないとね、本当にヒーローになりたい僕達が」

 

 

 

 

恐らく今回の出来事は社会的に彼女がヒーローとなる事に対して背中をかなり押す出来事となる事だろう

 

 

ヒーローに憧れる人間ならいいが、憧れも何も無い人間からしたら、ヒーローを推されるのは正直嫌だろうし、確実に迷惑だろう

 

 

ただでさえ平穏に女優をするのが難しい環境にいる彼女が少しでも真っ直ぐに歩きたい道を勝手に祈る事しか僕にはできなかった




面白いアイデアを思いつく能力と、素早く文章を構成する個性が欲しいです。
多分、個性に名前をつけるとしたら【神作者】とかになりそうな個性誰か授けてくれませんかね?


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36話

今回正直魔が差して書いてしまった話なんですが、思いの外長くなってしまいました。
近いうちに続きも投稿します。



 

 

 

「はいそこ!理解できていないのに、理解できたふりをして次に進むのは駄目だからな!ちゃんと理解をしてから進むこと、何事も積み重ね!」

 

 

 

期末が近づいてきて、中間の時と同じように勉強会が開始する

 

 

黒板の前に立ち、どの教師よりも見やすく分かりやすい板書を書き、休み時間という限られた時間で抑えるべき要点に限り、解説し、個性を存分に使い、分かってない人を炙り出していく

 

 

 

ついでに心理は自分の男装が気に入ったのか、いつも結構ノリノリで男のフリをしている

 

 

正直クラスのメンツには正体バレてるんだし、自教室くらい男っぽく振る舞う必要もない気がするが、本人がしたいならしててもいいかと考えない事にしている

 

 

 

俺は仮にもクラスで最も仲のいい人であるので、テスト1週間前のこの期間にならなくても、その日のうちにしっかりとした理解をできるというサポートをして貰えてるので、今更焦って勉強しなければいけない教科などなく、心理とともに教える側へとまわる

 

 

 

中間考査では、心理に続き、クラス順位2位だった上に、テストが終わった直後の授業の後も、心理に付きっ切りで勉強を叩き込まれているのを見られているので、ずっと質問をされ続け、幾ら自分の勉強にもなるといってもしんどい

 

 

 

中間考査の時は心理はこれを一人で捌いていたのかと思いながら、チラッと彼女の事を横目で見ると自分よりも何倍も分かりやすい上に纏められた質問に対する答えを口にしていて、自分もまだまだだと思い、ノートと教科書を持って質問をしにきた男子の問題に向き合った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後は基本質問を直接受けない事にしているので、授業が終わり、すぐに心理と帰る途中、喉をたくさん使ったから、喉が渇き、飲み物を買いたいと思い、自販機に寄ると、自分で自販機にお金を入れる前に心理がお金を入れ、俺が飲みたかったものを押した

 

 

心理も同じものが飲みたかったのかと思っていると笑顔でそれを手渡された

 

 

「へ?」

 

 

「今日手伝ってくれたから、そのお礼、お疲れ様、人使のお陰で結構楽できた」

 

 

「それなら、心理もお疲れだろ、何が飲みたい?」

 

 

 

自販機にお金を入れながら聞くと、少し迷った後に心理も俺と同じものを選択した

 

 

 

俺の放課後訓練も心理の急ぎの仕事も無く一緒に帰れるのは久し振りで、いつもよりゆっくりと歩く

 

 

 

「あ、そーいえば、新しいCMのロングバージョン、俺も昨日の夜漸く見れた。

 

クラスの皆が言ってたみたいに、やっぱり可愛いな、調べたらスマホでも簡単に見れるけど、どうしてもテレビで見たくて最近テレビの前に結構居座ってて親に不思議がられちまった…」

 

 

「あー、あれね、あの撮影は大変だったなぁ」

 

 

「何かあったのか?」

 

 

「ネットニュースにもなった保須事件、その日に事件現場の近くのスタジオで撮影だったの、本当なら後数バージョン撮る予定だったんだけど、結局ショート、ロング共に1つだけになったんだ。

 

まあ、あの事件のおかげで俺の知名度と支持率がまた上がったからまあ、監督は落ち込みつつも仕方がないと諦めていたし、俺としても痛い目にあった甲斐も少しはあった気もするかな」

 

 

 

「そうだったのか、保須事件で派手に背中を切られたって聞いたとき、驚いたけど、その時のだったんだな」

 

 

 

 

「そうー、本当に大変だったんだよ、それに今も背中の傷見た目上は完治してるけど、まだ背中の広範囲に違和感とかは残ってる上に激しい運動は禁止で、動けていないから私の腹から横筋が消えた。

 

だから、引き締まってるけど、一応女子の腹ってくらいなの、今。

 

いつかは消さないとって思ってたしこれからキープしようと思って」

 

 

 

「良いと思うぞ、俺は別に横にも割れてても良いとは思うけど、やっぱりイメージって大事だしな」

 

 

 

「たしかに、細い女子の腹が実はバッキバキはイメージブレイクが過ぎるんだよなぁ」

 

 

 

「世間のイメージを助走をつけた上に飛んでドロップキックを入れるようなもんだよ……あれ?あのヒーロー科の奴ら何やってんだ?」

 

 

道の先に居るA組の上鳴、瀬呂、切島の3人が困った顔で道の端に立っている

 

 

「爆豪が居ない……訳じゃねぇみたいだな」

 

 

個性で詳細をいち早く知ったのか、フフッと笑い声を漏らしている

 

 

「姿は見えねぇ」

 

 

「いや、見えてるぞ、切島くんの手元をよく見て」

 

 

言われた通りに視線を向けると、なんか、フワッフワの毛玉?を抱えている

 

 

「は?……あれは…ポメラニアン…?」

 

 

「そうだ、あれは可愛い可愛い爆豪犬だ」

 

 

そう言って楽しそうに心理は困り顔で立っている3人組に近づいていった

 

 

「なあ、爆豪撫でさせて貰っても良いか?」

 

「うおっ……急に誰だよ…というか、どうしてこれが爆豪って…」

 

「俺はこんな格好してるけど、心理だよ、で、爆豪は……」

 

 

言葉を切って、じーっと爆豪(犬)を見つめている

 

 

「そっか、個性で1時間だけ犬に変わってしまったんだな、犬の姿のままここで呆けているのも、時間の無駄だし、最寄りも一緒だから私が途中まで連れて行こうか?

 

……え?私の手助けなんていらないって、でも、テスト前に時間を無駄にするのは良くないと思うんだけど

 

……勉強は足りてるっていっても、私は爆豪くんはもっと勉強した方がいいと思うけどね、だってクラス順位所詮三位だし、まだ上を目指せるじゃない、学年順位になると、さらに順位落ちるしね

 

……はぁ、今度個性使ってズルをしてるって言ってみ?お前の秘密大声で叫び散らすから、別に個性を使わなくても、別に学年主席を守るくらいは簡単なんで、それで、どうするの?ここまで言われても時間が惜しくならないの?

 

……そりゃあ、そうだよね、惜しいよね、ちゃんと連れて帰ってあげるよ、丁度下校にかかる時間1時間くらいだし」

 

 

 

側から聞いていたらただの独り言のようにただひたすら話した後に、切島に向かって両手を出した

 

 

 

「爆豪くんを渡して貰ってもいい?」

 

「ああ、分かった」

 

 

不機嫌そうに腕の付け根のあたりを両手でダラーンと持たれていた爆豪を片手は下から支えるようにお尻に、もう片手はその補助として添えられていて、爆豪も心なしか座りが良さそうだった

 

 

「ねえ、人使、爆豪くん、すっごいフワフワでめちゃくちゃ気持ちいい」

 

「それは良かったな」

 

 

 

補助として支えていた手で、背中を撫でながら、すっごいキラキラした目で心理が言ってくるので、すごい触ってみたいが、もし触れようものなら、噛みつかれそうな気しかしないので、笑って流しておいた





なんというか、後日談と、思いつきのネタと、繋ぎの説明とかを入れたようとしたら、収集がつかなくなって長くなってしまったという私の技量不足が悲しいくらいに浮き彫りになってしまった話ですね。
泣きそうです。


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37話

評価やお気に入り登録者が増えて、最近テンションが異様に高い駄作者です〜!
これからもこんな私に末永く付き合ってくだされば嬉しいです。








 

 

 

 

 

爆豪くんをそのまま電車に乗せるわけにはいかないので、私のリュックか、自分の鞄の2択をしてもらい、爆豪の鞄の中身を一時的に移してから、入ってもらう

 

 

はじめのうちは、鞄から、窮屈だとか、息苦しいとか聞こえてきたが、最寄り駅が近くなった頃には寝始めていた

 

 

 

暗くて狭くて適度な揺れ、確かに眠くなる要素ばかりだし仕方がない

 

 

なるべく起こしてしまわないように優しく運ぶことにしたのが、良かったのか、最寄りで電車を降りてからも一向に起きる様子がない

 

 

親、特に母親にだけはこの姿を見られたくないらしかったので、家の近くにある、少し前に急に綺麗になったと噂の海辺にある屋根の下にあるベンチへと腰掛けた

 

 

鞄の中で戻ってしまうのは可哀想だが、起こすのも、ここまで起こさずに移動できた分、今更起こすのもなんか、何かのゲームで負けた気がするので、そろーっ、と鞄を開け、ゆっくりと手を身体の下に差し入れ、慎重に鞄から出す

 

 

犬である状態は後約10分、この時間の間起こさずに終えれるか

 

 

フワッフワな毛並みの爆豪くんをゆっくりとベンチに下ろそうとすると、少し眉間に皺が寄ったので、慌てて動きを止めて、息を殺す

 

 

 

くそっ、あとちょっとなのに、なんで起きそうになるんだよ

 

しかも、可愛い犬なのに、なんで眉間に皺が寄る?

 

 

 

爆豪くんの夢を読むと、硬い、冷たい、というベンチに対する文句が出てきていたので、このままベンチに下ろすと、起きてしまうので、下ろせない

 

かといってこの方法で抱え続けるのも不安定で落としてしまうかもしれない

 

 

そこで、私は起きたら怒られるだろうなと思いつつも、ゆっくりと自分の膝の上へと下ろした

 

 

 

どうだ、これなら冷たくもなければ、硬くもないだろう

 

 

 

膝の上で丸くなり、下腹部に擦り寄ってきた爆豪くんに体は全く動かさずに内心ガッツポーズをする

 

 

 

これなら、後8分程持つだろう

 

 

 

スマホのカメラ機能を起動させて、無音カメラで、膝の上で寝る爆豪くんを取り敢えず連写しておく

 

顔のアップ、全身、私の顔まで一緒に写したバージョン、などなど、こだわって撮り続ける

 

体を撫でてみると、本当にフワフワで、色合いが、元々の爆豪くんと同じで、つい、声を出して笑ってしまいそうになる

 

 

残り時間は後6分程となった

 

 

スマホでしたい写真撮影も終わったので、戻った後にスムーズに帰れるように、荷物を移し替えしておく

 

膝の上にいる爆豪くんを揺らしてしまわないように荷物を移すのは大変だが、なんとかやり切る

 

 

 

残り時間は後2分程となる

 

 

 

もう、特にやることもないので、適当に海を眺める

 

 

この海は綺麗になってからデートスポットとして人気で、よく人が来るが、今日は人が全くおらず、波の音が聞こえる

 

 

 

 

 

もうそろそろかと、膝の上に視線を戻すと、安らかに眠っていた爆豪くんの眉間に皺がより、急に激しい発光が起こった

 

まるで閃光弾のような光に思わず目を瞑り、視線を外す、すると、ものの数秒で発光はやんだ

 

 

視線を膝の上へと戻すと、私の膝を枕にして寝ている人の姿の爆豪くんに変わっていた

 

 

 

まさか、戻っても起きないとは思っていなかったので、すぐにスマホで連写を始める

 

顔を私の腹のあたりに埋めていているせいで撮れないのは残念だが、これはこれで面白いので、また何バージョンか撮っておく

 

 

無音カメラで撮った沢山の写真を犬の時と人の時、それぞれ一枚ずつ以外、普通のカメラフォルダからは見れないシークレットモードの方に保存して万が一にも消されないように隠してから、私の腹に顔を埋めてぐっすり眠る爆豪くんの肩を揺らした

 

 

「起きて、爆豪くん、戻ったよ」

 

「……んっ…?」

 

 

寝ぼけた様子でゆっくりと上体を起こし、欠伸をする爆豪くんの目が、ゆっくりと開く………かと思いきや、かっ開いた

 

 

急だなぁ…

 

 

 

「おはよう」

 

「何で俺はテメェの膝の上で寝てたんだ…」

 

「家に犬の状態で帰りたくないらしい上に、寄り道をしてベンチに座るに当たって、爆豪くんはベンチが硬くて冷たいのが嫌だったみたいだったから」

 

 

 

爆豪くんが嫌な事を避けていくと、こうなったんだよね

 

 

 

「途中からやけに寝心地が良くなったかと思ったらその時点でテメェの膝に乗せられたって訳か!クソが!」

 

 

「寝心地良かったんだ、へぇ、私の膝って、もう一回寝転んで見る?」

 

 

 

膝をトントンと叩くと、目がえげつつり上がった

 

人間、そんな角度まで目尻上がるもんなんだ

 

 

 

 

「嫌に決まってんだろ!殺すぞ!」

 

「殺されたくはないし、もう帰ろっか」

 

「チッ」

 

 

 

 

帰り道、一応自分の都合に私を付き合わせたという意識があるのか、別に構わないのに家までわざわざ送ってくれた

 

 

そして、私の祖父母に見つかり、かなり熱心に晩御飯に誘われていた

 

 

ごめん、勉強のために帰った時間結局プラマイゼロになるわ、これ

 

 

内心そう謝りながら、その様子を傍観していた







今まで作品紹介をまともに書いてなかったのですが、少し前にそれじゃ駄目な気が唐突にして、一応それっぽい文章を書きました。
ああいう、作品の顔って感じなの、題名と同じで書くのが凄く苦手なんで、何回か下書きをしたにもかかわらず、最後は投げやりに書いて終えました。



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38話

ここ数話爆豪の角が丸くなってしまってる問題発生中
ただ、個人的に爆豪は、善意で行動する上に爆豪にとっても得となる目上の人にすごく弱そうと言う偏見にまみれた意見を持ってます











 

 

結局、押し負け、ババアに連絡を入れてから、案内された居間で座って待っていると、恐らく一度自室に行っていたであろう根暗女、いや今は根暗男……取り敢えず根暗状態から芸能活動をしている時のオールマイト譲りの金髪を揺らし、私服で戻ってきた

 

 

鮮やかな金髪に濃い青にも薄い水色にも反射で見える瞳が見えていると、根暗状態の時に対して、当たり前だがオールマイトの実娘だというのを強く感じる

 

 

 

「この姿だと、オールマイトの子供って感じが強いでしょ」

 

「根暗状態でずっとおれや」

 

「何故我が家で顔を隠さなければならないの、家でくらい素の姿でゆっくりしたいよ」

 

 

ググッと伸びをする根暗に、思わずじっとりとした視線を向けてしまう

 

 

そういえば、この家にオールマイトが来たことはあるのだろうか

 

 

やっぱり最近で認知はされていなかったとしても、当時付き合っていた人の実家だ、もしかしたら来たことがあるかもしれない

 

そう思うと、なんだかそわそわとしてくる

 

 

 

「爆豪くんも是非寛いで、この家にはたしかにオールマイトが来たこともあるけど、私達が生まれる前しかないから」

 

 

「そうだな…俊典くんは今心理が15だし、大体17年前位に来たのが最後だな、まあ、二度とこの家の敷居は跨がせてやる気は無いがな」

 

 

 

少し離れたところに座っていた根暗の祖父が先程まで浮かべていた人好きのする笑顔のまま、瞳だけが視線で人を殺せるんじゃないかというほどまで一気に冷たく変化した

 

 

あり得ない話だが、なんだか、部屋の温度まで下がった気さえする

 

 

というか、まあ、そりゃあ、オールマイトの事嫌いだよな

 

 

あの爺さんからすれば娘を妊娠だけさせてどっかに行った無責任野郎になるんだ、好きなわけがない

 

 

 

 

「あいつが赴任する事を知っていたら、心理を絶対に雄英に行かせることは無かったんだが、サプライズ好きな馬鹿のせいで入学してからしか分からなかった事に心底怒りを覚えるよ」

 

 

「お爺ちゃん、落ち着いて、私は大丈夫だから、それにアレに直接会う事で得られたものもあったし、直接的な害はもちろん無いしね、そして、いつかは社会に娘であることは広まると分かってたから」

 

 

 

2人して、オールマイトに対して、あいつや、アレ、と呼び方が雑い

 

 

 

 

「まあ、こんな気分が悪くだけの話は置いておこうか、料理ができるまでの間勉強教えるよ」

 

 

「テメェに教わるものはねぇ」

 

 

「苦手科目は…特には無いみたいだね、よし、なら得意科目の数学完璧にしようか」

 

 

「話聞けや!」

 

 

「ちょっと待ってて、必要なもの一式取ってくる」

 

 

「テメェの耳は飾りか!」

 

 

俺の声を総無視してヘラヘラ笑いながら手を軽く振ってまた居間から出て行った根暗にイライラして舌打ちを打つと、微笑ましそうに祖父がこっちを見てくる

 

 

その視線に見られ続け、なんだか居心地が悪く、ソワソワとすると余計に微笑ましそうになる

 

 

「爆豪くんみたいな友人が心理にできて良かったよ、あの子、いつも人と距離を取るのに、君には少し心を開いてるみたいだ」

 

 

 

 

人に深入りせず、そしてさせない、基本当たり障りのない対応ばかりをその他のモブ共にあの根暗はよくしている、だが確かに俺に対してはかなり暴言を吐いてくる

 

 

まあ、俺の対応に合わせてるだけな気もするが

 

 

 

 

「これからも仲良くしてくれると嬉しいよ」

 

 

 

 

今まで一度も仲良くなんかした記憶は無いが、まあ、一応頷いておく

 

 

 

 

「お待たせー」

 

「勉強頑張ってね」

 

 

元気に今に戻ってきた心理と交代するように祖父は立ち上がった

 

 

「うん頑張るよ」

 

 

祖父の言葉に素直に頷いたのを見て、祖父は部屋から出て行った

 

 

 

「まずは基礎からって思ってたけど、爆豪くんなら応用や発展から始めてもいけそうだから、複雑な問題を素早く正確に捌いていく練習しよっか」

 

 

 

 

そう言いながら、また俺の隣に座り、目の前のローテーブルに持ってきた勉強道具を置いた後、問題集や教科書を開くわけではなく、ルーズリーフに問題を5問書き連ねた

 

 

 

「この5問は、まあ、言ってしまえば難易度順、しかも爆豪くんを基準にした難易度、だから平均よりは難しい設定になっているよ。

 

1は基本、間違ったら絶対に駄目な問題。

 

2は標準問題、計算さえ間違わなければまあ正解になる難易度の問題。

 

3は応用問題その1、頑張れば解ける問題、計算も複雑になってきてるから気をつけてね。

 

4は応用問題その2、多分頑張っても正解できない問題、途中で計算が行き詰まると思うから、部分点をもぎ取りにきて。

 

5は発展問題、絶対に正解はできない問題、これも部分点をもぎ取りにきて、って事で今すぐ解いて」

 

 

 

シャーペンと消しゴムと共にローテーブルに置かれ、いい笑顔で進められる

 

 

 

「なんで俺がテメェが即興で書いた問題を解かなきゃなんねぇんだ」

 

 

「確かに即興だけど、答えは綺麗な数値になるように考えた問題だから、解いてみてよ、まあ、爆豪くんが、どうしても、私が今、ここで、暗算で、考えた問題ごときを、解けないっていうなら、それでもいいんだよ?まあ、私より爆豪くん馬鹿だもんね、仕方がないよ、解けなくても、うん、仕方がない、仕方がない」

 

 

「解き殺したるわ!!」

 

 

ソファに座ったままでは体勢的に解きずらかったので、敷かれたカーペットの上に直接座る

 

 

「そうこなくっちゃ、流石爆豪くん」

 

 

 

シャーペンを持ち、解答用に置かれているルーズリーフにガリガリと書き、計算を重ねていく

 

 

俺に合わせて根暗が作った問題は確かに俺にあった難易度設定がされている上に途中の式がどれほど複雑になろうが、最後は気持ちいいくらい綺麗な数字が出てくる

 

 

そして、根暗の予想通り、4の途中でシャーペンが進まない、既に何パターンか試すが、どれも計算が明らかに間違っていて、先に進めない

 

 

そんな俺の手元をソファに座ったまま背後から覗き込んでいる根暗はふーん、とでも聞こえてきそうな声で見ている

 

 

「諦めて5に進もうか」

 

 

「クソが!!」

 

 

そう言いながらも5に取り掛かるが、4よりも早くこれも分からなくなる

 

 

それでも、根暗の問題を解けなかった事を認めたくなくていくつもの公式を引きずり出してくるが、どれも微妙に当てはまらない

 

 

 

 

「もう終わりかな、うん、1・2・3は正解。100点満点で5問だから今のところ60点。

 

それで4は大体4分の3位までは計算できてるから15点加算。

 

5は……触りの所だけ書けているから5点加算。

 

よって合計80点、テストとかはよく8割合格って言うし、合格点には達している計算になるね、けどどうせなら全て正解にしないと解説するからよく聞いてね」

 

 

 

 

ソファから降り、俺と同じようにカーペットに直接座って赤ペンでサラサラと丸付けをしながらそう評価を言い渡される

 

 

 

 

「これ解けるようになったら、爆豪くんならケアレスミスさえなければ期末の数学、満点も取れると思うから、頑張ろうね」

 

 

 

そう言った後に、閉じたままだった教科書、そして見たことのない参考書をパラパラといくつか開けて机の上に広げていった

 

 

 

「まず、4の最後に答えを求める方法なんだけど、教科書に公式の応用としてチョロっと乗っていたやつを使用するの」

 

 

 

そう言いながら指さす場所を見てみると、確かに2行ほどチョロっと公式の応用として、公式が複雑な変形をした後の状態で書かれている

 

 

 

「まあ、授業でもちょっと触れたか触れないか程しかやってないと思うし、できなくても仕方がないよ、しかもこの変形、無駄に難しく書かれてるから、必要な部分だけにするために、もうちょっと削れるの、で、削った状態がこれ」

 

 

 

次は参考書の一部分を指差してるので、視線を向けると、確かに変形はされてるが、複雑さが減った状態で載っている

 

 

 

「というわけなので、この公式に当てはめて計算してみて」

 

 

追加にルーズリーフを手渡しながら軽く言われ、言われた通りに計算をすると、どうやったら次に進めるのか全く分からなかった複雑で長い式がすっきりとまとまり、また綺麗な数字として出てくる

 

 

なんというか、とてもスッキリとする問題だった

 

 

「おめでとう、正解だよ、残るは最終問題だけだね、この問題の解き方はね、まあ、また公式を複数使うのは分かってると思うんだけど、複数の公式のうち、教科書には載っていないものを使用します」

 

 

「そんな問題ありなんか」

 

 

「んー、その公式は、もし、教科書にギリギリ載っている最高難易度の公式に入れた上に、グラフ、増減表、からのリミットまで使用すれば使わなくてもいいっていう、公式だから、教科書に載ってる情報だけでしたいなら、その凄い遠回りの方を教えてもいいんだけど…」

 

 

「さっさと公式言えや」

 

 

「そりゃそうだよねー」

 

 

 

参考書をまたペラペラとめくり、今度は参考書でさえ3行程しか書かれていない公式と、公式についての短い説明が出てくる

 

 

「このまま、このよくわからない数字や文字の組み合わせを暗記できるのなら、それでもいいんだけど、それじゃ定着はしないと思うから、この公式がどうしてこの公式となり、この問題に使用するかから説明するね」

 

 

 

そう言って自分もルーズリーフを出してきて、解説を始めた

 

 

その解説は参考書でさえたった3行なのに、物凄く複雑で、その公式を求めるまでに、その単元に出てくる公式はもちろん、別単元の公式まで混ぜ込まれており、公式を理解するだけでも、この単元に対する更なる理解が確実にできてきている

 

 

一行一行、俺が理解できる度に書き足されていくルーズリーフを見ていると、細かい数字の羅列のため、少しでも集中が途切れかけるだけで、どこでしているかわからなくなってしまうので、必死に解説に意識を追いつかせる

 

 

結局公式の理論は、結構細かい文字で書いていたはずなのに、分数や、簡易的な図やグラフィックな理解をするために、書いた折れ線グラフなどで場所を取ったからか、1枚目の表裏、2枚目の表まで広がった

 

 

 

そして、ここまで複雑で長いものなのに、教え手である根暗の腕がいいからか、とても理解ができていた

 

 

 

「よし、じゃあ最後頑張ってみようか」

 

 

「ああ」

 

 

 

反抗する時間すら惜しくて、教えてられた公式を使い、5に再チャレンジすると、面白いくらいどんどん答えまで近づき、解けきれた

 

 

「よし、正解、お疲れ様爆豪くん」

 

 

後で復習するときに計算式が見えなくなってしまうことを考慮したのか、問題番号に小さく丸を付けた根暗が手放しで褒めてきた

 

 

「よし、勉強は終わりにしよう」

 

 

ペンを投げるように筆箱に直して、教科書や参考書を全て閉じて一纏めにして机の端に寄せ、またソファに戻ってから、ダラけている

 

 

「あ、そういえば、切島くん達に人に戻ったこと連絡してないよね、心配してたし、安心させるためにも自撮り付きで報告送ったら?」

 

 

「なんで、自分の写真わざわざ撮って送るのがめんどくせぇ」

 

 

「えー、でも心配してたしさ、なんならスマホ貸してよ、爆豪くんの事撮って送って安否報告までしておくからさ」

 

 

 

そう言って手を差してくるので、数秒迷ったのち、ロックを解除して渡した

 

 

「よし、じゃあ全身映す?」

 

 

 

そう尋ねながら立ち上がろうとする根暗の腕を引っぱり、隣にとどめる

 

 

 

「テメェも写れ、ピンでテメェに撮られるんはなんかキメェ」

 

 

「まあ、単独で写真写るのは、慣れないとちょっと奇妙な気分になるよね、いいよ」

 

 

 

 

そう言ってインカメラに切り替えたスマホで、俺にわざわざ体ごと寄せて撮ろうとするので近付いてくるのに合わせて身体を引けば、ガッと肩に手を回され、身体を固定される

 

 

 

「寄ってくんな」

 

 

「ある程度寄らないとフレームアウトするでしょ、というか、笑えとまでは言わないけどさ、どうにかならないの?その表情、顔面に不機嫌って書いてるのは流石にさぁ」

 

 

 

スマホを構えた状態で呆れた表情を直接向けてくるので、ハッと嘲笑の表情を作ると、根暗は微妙な表情に一度なった後に、根暗もハッと嘲笑の表情を作ってからシャッターを切った

 

 

まさか乗ってくるとは思ってなかったので、驚いたが、画面の中では2人して全力で相手を煽る表情で、そして、肩に手を回してるからか、とても仲が良さそうな写真だった

 

 

 

 

「これ、送って、文も適当に打っとくよ」

 

「ああ」

 

 

 

 

肩に回していた手を離し、でも密着した体は離すことはせずに、ささっとスマホを操作し、やる事をやったのか、直ぐにスマホが返されたが、ふと思案顔になった後

 

 

 

 

「……そういえば連絡先交換してなかったし、交換しとこうよ、いい機会だし」

 

 

 

そう言うので、またスマホを手渡すと自分のスマホと同時に操作して、登録を済ませている

 

 

 

「あ、そうださっき撮った写真送ってもらおう」

 

 

 

そう言いながらスマホを操作して写真を勝手に送ってるが、それくらい勝手にすればいいので、横目で一応見つつも何も口を出さない

 

 

 

「あ、そうだ、私も爆豪くんの写真があるんだよ、送っておくね」

 

 

 

そう言いながら、今いまで操作していた速度より、操作の速度を上げ、パパッと何かわからない写真を送信した

 

 

 

「はい、スマホ返すね」

 

 

そう言って返されたスマホを操作して送られてきた2枚の写真を見て、思わず、吹き出した

 

 

1枚目は根暗の膝の上で眠る犬になっていた時の俺の写真

 

これはまだいい、その気になればその犬は俺じゃないとしらばっくれることができるからだ

 

 

ただ、2枚目は人の姿の俺が根暗の腹のあたりに顔を埋めるようにさて気持ち良さそうに寝てる写真

 

流石にこれはしらばっくれられねぇだろ

 

 

「おいコラ!テメェいつのまにこんな写真とってやがんだ!!」

 

 

「爆豪くんが爆睡中にチャチャっと」

 

 

両手でフレームを作りカシャッって言ってるが、笑い事ではない

 

 

「そんな無駄な手際の良さは死ぬ程いらねぇわ!」

 

 

こんな恥ずい写真が人のフォルダに保存されているとか我慢ならない

 

 

俺がいる方とは逆の根暗の隣に置いてあるスマホに根暗越しに両手を伸ばすが、伸ばした手を握られてしまい、取れなくなってしまう

 

 

強く握られてるわけではないのに、指を絡めるような握り方で、簡単に外せない

 

 

流石にしっかりと両手を握った状態で爆破をするわけにはいかないので、なんとか両手を上げたりして、外そうとするが、癪な事に根暗の方が腕が長いので、問題なく付いてくる

 

 

「ヒョロ長げぇ!」

 

 

「なんか、その言い方嫌だな」

 

 

余裕の笑みを浮かべた状態なのがスゲェ頭にくる

 

 

 

もうこの際、根暗を押し倒すようにして無理矢理スマホに近づけばいいやと、根暗の両手をこちからも握り、肩の位置から両腕を後ろに押すと、力技で押し込まれると気付いたのか、今まで無抵抗だった手に力が入る

 

 

 

「押し倒してしまってからスマホを取ろうとは、考えたね」

 

 

 

関心したように言ってくるも、押し合いは止まらない

 

 

根暗も体格は良いが女子なので、力負けし、徐々に手の位置が後ろに下がってきている上に、開いてきているが、腕の可動域にも限界はあるものなので構わず押し込む

 

 

 

力負けしてきているのが、悔しいのか、徐々に余裕そうな表情ではなくなってきている

 

 

 

さあ、ぶっ倒れてしまえ

 

 

 

 

更に強く押し込むと、諦めたのか、抵抗していた力がフッと急に抜けた

 

 

あまりに急に抜けたので、思わず根暗の方に倒れる、そしてそのまま胸元に顔面から突っ込んだ

 

 

 

 

……は?どうして胴体の位置が全く変わらず腕だけ真後ろまで引かれてるんだ、肩どうなってんだ?

 

 

 

 

「胸元に飛び込んでくるとは積極的だねー」

 

 

 

 

掴んでいた手をあっさりと離され、俺の頬と背中に腕が回される

 

 

 

 

 

「したくてしたんじゃねぇ!!てか、テメェ肩の可動域バケモンか!」

 

 

 

「両手握ったまま、一周回せるよ、関節の可動域は広ければ広いほどできる動きが増えるから、なるべく動くようにしているの」

 

 

 

一度背中側に両手を持っていったかと思うと、両手が組まれた状態で腰の後ろ、背中のあたり、肩の真後ろ、頭上、と経由して動き、最後には起きるタイミングを逃し、胸元に突っ込んだままの俺を抱きしめるかのように腕が回った

 

 

関節が柔らかすぎて、キモいが、そんな事よりも凄さが勝る

 

 

これをしたいからするっていうのでするこいつは可笑しい

 

 

 

 

「意思の力でどうにかできる領域だとは知らなんだわ」

 

 

 

 

「大抵のことがしたければできるんだよ、それに、爆豪くんも肩の可動域は広げた方がいいと思うよ。

 

今でも柔らかい方だけど、振りかぶった方が威力の上がる爆破は、振りかぶれる範囲を広げるのは、戦闘能力上昇に直結するよ、という事で、今からストレッチしようか」

 

 

 

「その前に写真消せや!」

 

 

もうこの際密着したままでいいやと、スマホに手を伸ばすと、また直前で先に取られてしまう

 

 

「テメェ!」

 

 

「落ち着いて、写真はちゃんと消すから、ほら」

 

 

目の前でスマホが操作され、ゴミ箱へと入れて消した上に、数日間保存されるゴミ箱のファイルでも再度選択し、完全消去を行った

 

 

 

「これでいい?」

 

 

「そんなあっさり消すなら初めからやれや!」

 

 

 

文句に対して、軽く笑いながら、落ち着けとでも言うように背中を一定の間隔でトントンされる

 

 

なんだか、その行為は小さな子を落ち着かせるためのようなものだったので、自分の眉間にシワがより、こめかみに青筋が浮いたのがわかる

 

 

 

「目指すは可動域化け物だね!」

 

 

そう言って遠慮なく腕を掴んで後ろに下げようとしてくるのを力尽くで押し返す

 

 

「テメェ!肩をぶっ壊させる気か!!」

 

「ちゃんと壊れる前にやめるよー」

 

 

 

胴体を密着させた状態でまた手を取られ、ググっと下げられるが、普通に痛い

 

 

 

次第に下げられる腕に力を入れ、根暗に体重をかけて耐えるような体勢で一応止まりかける

 

 

 

「爆豪くん、さすが筋肉の塊って感じで重たいね…」

 

 

 

徐々に耐えられなくなり後ろへと下がっていってる根暗に更に体重をかけていく

 

 

 

「私、ほら、身長は確かに高いけど筋肉元からそんなにある方ではない上に最近入院とかしててさらに筋力落ちたから支え切れないよ」

 

 

 

今度こそ、腕を真後ろに回すという化け物行為を行わずに大人しくソファに沈んだ

 

 

 

 

「流石に馬鹿正直な力勝負は勝てるわけないよね、ほら、重たいから退いて」

 

 

 

トントンと軽く肩を叩かれるので、根暗の顔の横に手をつき、身体を起こして座った後に根暗に手を差し出して起き上がらせた

 

 

 

 

「ポメラニアンの時はいつまでも抱えていたいくらい軽かったし、気持ちよかったんだけどな」

 

 

 

 

名残惜しそうな視線を向けられるが、冗談じゃない

 

 

 

あんな状態なんて、二度となりたくないし、できることならなった事実も消し去ってしまいたい

 

 

 

「でも、戻っちゃったのはどうしようもないし、柔軟続けようか、目指せ可動域おばけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その宣言をされてから、根暗の祖母が料理ができたと呼びに来るまでの時間、俺の身体は限界まで酷使された

 

 

根暗は肩だけでなく、関節という関節全てが柔らかくて、とてもでは無いが、それなりに柔軟性に自信があった俺の自信は完全にぶち壊されボロボロになった

 






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ぜひ、作者の為を思ってしてくれませんかねあ…、あの、ほんと、すぐですよっ!

感想も、ほんと短くていいんで!書いてくれませんか?お願いしますよ!そこのお姉さん、お兄さん

作者単純なんで、どれか1つだけでもしてもらえたら喜びますし、全部してもらえたらほんと、天に召されそうな程喜びますよ!

そんでもって頑張って文章書きますよ?ね?


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39話

 

 

 

瀬呂視点

 

 

 

 

「へー、実技試験内容不透明なんだー、大変だねー、頑張れー」

 

 

久し振りに食堂で一緒にご飯を食べれる事になった心理ちゃんは期末に対して不安を感じている俺らに語尾が全体的に伸びた気の抜ける返事を寄越した

 

 

なんだか、もっと元気のいい、こう、気分が上がりそうな応援を期待していた身としてはなんだか、ずっこけそうになる応援だ

 

 

まあ、心理ちゃんからしたら完全に他人事なので、仕方がない

 

 

 

 

「心理ちゃん!俺実技試験も気になるけど、昨日の写真についても気になるー!」

 

 

「心理って、誰と勘違いしてんの?俺はヒロシだから」

 

 

 

 

いつものチャラいテンションで男装した心理ちゃんに絡む上鳴を濃紺の髪の隙間から、何本名叫んでんの?、というか鋭い責めの視線を浴びせながらなぜその名を選んだのか分からない偽名を名乗った

 

 

 

その対応に対して、ピキッと一度表情が固まってから、取り繕った笑顔を引き攣りながらもなんとか浮かべた

 

 

 

「そもそも、あの写真爆豪の家?ヒロシの家?」

 

 

 

名前に疑問は抱いたままだが、何度質問しようが爆豪は答えてくれなかった疑問を取り敢えず聞く

 

 

 

「俺の家。祖母が爆豪を無理矢理夕御飯に誘ったから、それ待ってる間に撮った」

 

 

「だとしても、あの表情のチョイスは何故…」

 

 

「爆豪が一緒に写真撮るときに、仏頂面だったから、せめてそれ以外ってなった時に選んだから、同調した」

 

 

 

だからといって、あの表情には驚かされた

 

 

心配していた爆豪から送信された写真を見ると、写っているのが爆豪だけでなく心理ちゃんも一緒というのにまず驚き、表情が2人して全力煽りの表情に驚いた後、2人の顔面偏差値にも驚いた

 

 

2人して嘲笑を浮かべているのだが、2人ともカッコよすぎるし、そんな表情なのに、素の顔の良さがすごくわかる写真で、特に心理ちゃんの方は理里として金髪姿でいる時はこういう表情を浮かべるキャラではなく、王道正統派としてやっているので、珍しさも相まって、結構な時間画面を見つめてしまった

 

 

 

 

「爆豪、怒鳴ってなきゃかっこいいんだよなー」

 

 

「ああ!?黙れ死ねアホ面」

 

 

「うわっ!辛辣ー!俺褒めたのに!」

 

 

「さっきの言葉は褒めたに入ると思うか?」

 

 

俺の問いかける視線に対して、切島と心理ちゃんは分からないと言うふうに両肩と両手を上げて軽く首を左右に振る

 

 

「みんなひどーい」

 

 

ブーブー文句を言う上鳴に対して心理ちゃん口元だけでもわかる苦笑いをしながらも特に何も言わずに黙々と食べ物を口に運び咀嚼している

 

 

どうやら俺ら3人と同じで上鳴の絡みに真面目にとりあう気は無いようだ

 

 

 

 

 

 

 

「俺、心理ちゃんはもっと可憐でか弱い天使だと思っていたのにな」

 

 

 

食べ終わるなり上鳴はそんな事を言った

 

まあ、食事している間、どんだけ話しかけてもうざったそうな表情でスルーされ続ければ、まあ、自業自得だが、文句を言いたくもなるだろう

 

まあ、自業自得だが

 

 

 

「天使なんて今は現実に存在するわけないだろ、まあ、あと何世代か後になったらそう言う強力な個性も発現してくるかもしれないけどね」

 

 

「俺がお爺さんになる頃には居るかなー?」

 

 

「んー、最短かつ、非人道的で人工的に作る天使なら、取り敢えずヒーローのチャームにそうだな……」

 

 

 

急に"非人道的"という物騒な言葉を出してきた彼女は、1人目に芸能活動をよくしているプロヒーローの名を上げてから、少し考えるようにして周りを見渡した

 

 

まるで沢山ある宝石を眺めるかのようにじっくりと視線を周りに対して往復させてから、口角が少し上がった口を再び開いた

 

 

 

「この学校のヒーロー科3年生のサンイーターの子供を成功条件を2人の個性を引き継いだ女の子って言う条件で成功するまで産ませる

 

 

それから、個性が強力だからと政府から個性の使用を禁止されている代々時飛ばしの個性を受け継ぐ一族に強力してもらって、成功した子供を一気に16まで引き上げる

 

 

この時点で発動タイプだけど、純白の翼と人を魅了はできるから、ああ、俺のクラスの人使も掛け合わせたら人の心を操れる天使になるから追加しよう

 

 

だから、またさっきと同じ成功条件で産ませ続け、成長させる、そして、後は見た目を自分が天使だと思える人をひたすらかけていけば、あと少し

 

 

本当に完成したと思えるところまできたら、その時は無理に成長させずに子供の頃からじっくりと育てるんだ

 

 

そしたら、中身も見た目も個性も何もかもが揃った可憐でか弱い天使の出来上がりだ」

 

 

 

口角を頬が裂けてるんじゃないかと錯覚させられるほど不気味に釣り上げ、髪の隙間から眼を鈍い嫌な光らせ方をさせて、上鳴に向かって彼女はそう締めた

 

 

 

「よくそんな酷い話をスラスラと言えるな」

 

 

 

切島がまるで裏切られたとでも言うように歪んだ表情で冷たく言う

 

 

俺も口には出さなかったが、切島と同じ気持ちだった

 

まさか心理ちゃんがそんな恐ろしい話を考えられるとは思っていなかった

 

 

 

「だから言っただろ、最短かつ、非人道的でいいならと、まあ、この手段以外を使用するなら結構時間かかるけどね、それこそみんなが死んでからになると思うぞ、じゃないと天使なんて神話上の生き物なんて無理無理

 

それに、さっきの話はまだ優しい方なんだぞ?

 

今のやり方なら、強力な個性に合わせて身体の方も世代を重ねていたけど、壊れたなら次ってやり方でいいなら、適当な見た目がいい子にそう言う系統の個性押し込んで、合わずに死んだら、残念、次でもいいんだし」

 

 

 

まるで、人を使い捨てのモノみたいな言い方をする

 

 

 

 

「個性を押し込むって…」

 

 

「世の中にはそう言うことが出来る悪者も居るんだ気をつけろよ」

 

 

 

 

怯えた様子の俺らに対して少し申し訳なさそうな表情になってから、最後にはいつものように外面全開のそれこそ、どこにでもいそうな柔らかい表情になり、さっきまで纏っていた暗い粘ついた気配がまるで元からなかったかのように霧散し、陽だまりのように安心感のある気配に変わった

 

 

 

「まあ、たまに親の相性が良すぎて世代的におかしい強力な個性が発現する事もまあまあ有るんだけどね、まあ、ある程度までならどうにかなるけど、もし、どうにかできなかったら、一般的に個性が身体に合ってないって言われてるやつになるし、下手すりゃ死ぬ」

 

 

「例えば誰だ、それにテメェの言う強力な個性ってどう言う意味でのだ」

 

 

 

ずっとしかめっ面で聞いていた爆豪が不満を全面に押し出した声を発した

 

 

 

「それこそ、爆豪自身とかいい例だ、あの親からそれ程強力な爆破の個性が生まれてきたのは珍しい事だ」

 

 

「強力の意味は?」

 

 

「上位互換が少なく、下位互換が多い、もちろん、ダダ被りも少ない」

 

 

 

攻撃力、防御力、汎用性、などではなく、どれほどその分野において優れているか、という考え方でいけば、確かに爆豪の個性は爆発という行為において、確かに上位互換の人はまだ合ったことがない

 

 

 

「俺隣のクラスにダダ被りが居るから、強力な個性じゃねぇ」

 

 

 

あまり見た目は変わらないが少し嬉しそうな爆豪の隣で切島は手を軽く硬化させながらどんよりととした雰囲気を纏っている

 

 

 

「残念だったな、切島」

 

 

 

そんな切島の事を全力で煽る上鳴、だが…

 

 

 

「そう言うお前の放電も結構よく聞く個性だぞ」

 

 

 

俺がそういうとピシッと固まった

 

 

 

「瀬呂のテープは……物をくっつけると言う点では俺と同じで隣にいるよな」

 

 

 

そういや、俺にもダダ被りとまでは言わないが、被ってるのは居たな

 

 

 

「ロープアクションみたいに使ってるのは、身体強化系の個性ならそもそも必要ねぇしな」

 

 

「俺ら全然駄目じゃねぇか」

 

 

 

切島は自爆だが、俺や上鳴3人は個性の強力さで言えば、あまり良くないという結果が出る

 

 

 

「根暗、お前はどうなんだ?」

 

 

「ヒロシって呼べよ爆豪」

 

 

「な、なあ、なんでヒロシをわざわざ選んだんだ?実はさっきから気になってたんだけど」

 

 

 

軽口を返す心理ちゃんにさっきから気になっていた事を聞くと、さっきまで爆豪の方を向いていた顔がこっちを向いた

 

 

 

「人使の兄のヒロシっていう役柄設定に決まったから」

 

 

「ああ、あの本選に進んだ紫髪のよく一緒にいる?」

 

 

「そう、どっちが兄かは結構争ったけど、周辺の人投票の結果俺が兄に決まったんだ、つい今朝」

 

 

「待って、すげえ最近」

 

 

 

しかも、周辺の人投票って、なんか楽しそうだな

 

 

 

「それまでは人使の兄弟のヒロシだったけど、ようやく兄となりました」

 

 

「おい!根暗!さっさと答えろ!」

 

 

軽口を叩いていると、爆豪の短い導火線が全て燃え尽き怒鳴る

 

 

「だから俺はヒロシだって、もう、いいけどさ

 

で、質問の答えだけど、俺は俺よりも読心能力が高い相手に今だに一回も合った事ないし、知らないよ、だから俺の個性はとっても強い、他人の追随なんて許さないくらい強力な個性だ」

 

 

 

 

キッパリと強力だと言い切った直後、彼女は急に身を捩り、隣に座っていた俺にかなり身体を寄せてきた

 

 

ワアッ!!キュウニセッキョクテキダァ!!

 

 

脳内パニックを起こしつつ、何事かと彼女の方に視線をやると、彼女がもともと座っていた位置には、誰かの手が伸びていた

 

 

その手を辿ると、残念そうな表情の物間が居た

 

急に来たな、こいつ

 

 

 

「避けたらコピーできないじゃないか、読解さん」

 

 

なんで、物間はこの男子が心理ちゃんだとわかってるんだ?

 

 

「コピーなんてされてたまるか、それに、お前盗み聞きはやめたほうがいいんじゃないか?人間性が疑われるよ」

 

 

盗み聞きをしていたから心理ちゃんだと分かっていたのか、まあ、そこまで俺たちもヒソヒソ話していたわけではないから耳をすませばよく聞こえた事だろう

 

 

「何もかもを盗み見れる君には言われたくないな、それに他人の追随を許さない?僕だけは別さ」

 

 

 

また伸ばされる手を身体を捻り、今度は上鳴の方に身体を寄せるようにして避ける、よくこんな椅子に座った状態でそこまで体を捩れると感心しながらも、俺と上鳴は心理ちゃんが避けやすいように最大限身を引いた

 

 

 

「人の内面を見ておきながら、自分は人に見られるのが怖いのかい?」

 

 

「この個性はお前が使える個性じゃない、悪いことは言わないからやめておけ」

 

 

「お前は生い立ちが特別、見た目が特別、個性まで特別だっていうのか?」

 

 

 

鼻で笑い馬鹿にした様子で椅子に座ったままかなり頑張って手を避ける

 

 

 

「そうだ、今から職員室に行き、個性を使ってお前らに期末試験の実技の内容を教えてやろう、先輩に聞いたなら、より正確に知る為に俺の個性を使ったっていいはずだ」

 

 

 

そうか、内容が分からなければ先輩に聞いたりして、事前に探るのもありなのか、そして、先輩に聞いていいなら、確かに心理ちゃんの個性を使用して探るのもありな気もする

 

 

 

「既にロボット対戦と知ってるからこれ以上の情報は要らない、それより僕は君の個性をコピーしたい」

 

 

「そう?ロボットの数は?種類は?生徒側はチーム戦?個人戦?勝利条件は?そもそも去年と同じ事をするのか?俺なら分かる」

 

 

「君の個性をコピーした僕でも分かる!」

 

 

「分かるわけないだろ!使いこなせる訳がないんだから!」

 

 

 

 

イラついている事は先程から分かっていたが、遂に心理ちゃんは怒鳴った

 

 

 

 

怒鳴ると同時に机を勢いよく叩いたせいで既に食べ終わっていた食器が耳障りな音を鳴らして跳ねる

 

 

 

さっきまで騒がしかった食堂が静まり返り、一気に注目が集まる

 

 

 

物間もまさか怒鳴られるとは思っていなかったのか、煽る表情のまま硬直している

 

 

 

顔を歪めて大きな舌打ちをした後に心理ちゃんは立ち上がった

 

 

 

食器を持ち、集まった視線など全く気にしていないかのように食器返却口へと向かっていった

 

 

 

それに合わせて、爆豪も立ち上がり、食器を持ってついて行ったので、慌てて俺らも空になった食器を持って立ち上がった









完全に自分の話なんですけど


自分の男性キャラ推しが上から順に


・相澤先生
・心操
・天喰
・爆豪


なんで、上記4名なんで、ここ4人登場頻度高めなんですよね

3番目は別ので十分書いたのでこっちでは出る予定全くないんですけど、取り敢えずここ4名に対する贔屓強めです


以上、これまでの話展開的に今更言わなくても知ってるよって言われそうな情報でした


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40話

前回の話から思いっきり繋がってる話です。
前話が前編、今回が中編、次が後編となる予定です。
ただ、予定なので、もしかしたらこれが中編その1、次が中編その2となってからの、後編になってしまうかもしれません。


 

 

 

「怒鳴っちゃってごめんな、驚かせたよな」

 

 

食器を片付け終わった所でそう謝ると、丁度隣に居た切島くんがキョトンという表情になってから、ニカっと人好きのする笑みを浮かべた

 

 

「別に構わねぇよ!無理にコピーしようとしたらあいつが悪いし」

 

 

「ああ、まあ、そうなんだけど、別に怒鳴って机叩く必要は無かったからな…感情的になりすぎた、気を付けねぇと」

 

 

「それにしても、どうしてそこまでコピーされたくないんだ?」

 

 

「え?あー、まあ、昔色々あったんだ」

 

 

 

ボカすように答えると、同時に硬直から復活した物間くんがまた懲りずに近づいてきていた、そして、それに注意を向けていると拳藤さんに捕まった

 

 

女子同士だからか、腕ごと胴体に抱きつくことに躊躇いが全く無い上に個性柄強めの腕力のため、抵抗しても直ぐには離せない

 

 

まさか、物間くんのストッパー役として良く活躍している彼女が加担してくるとは思っていなかったのと、食器返却の場所ということで壁際、積み上がった食器やゴミ箱が近くにある上に、周りに切島くん達が居た事により結構しっかりとやられた

 

 

そして、そんな私から拳藤さんを相手が女子のため遠慮しつつも離させようとしてくる一番近くに居た切島くんが引き剥がすよりも早く物間に触れられた

 

 

 

「やった!これで君の昔のことも暴いてやる!お前は特別じゃない!」

 

 

「やめて!駄目!」

 

 

 

女子だという事に全く遠慮をしない爆豪が無理矢理拳藤さんの首根っこを掴み私から引き剥がした事により腕から解放されるが、コピーをさせてしまったことによるショックでその場にへたり込んでしまう

 

 

そして、つい一瞬前まで喜んでいた物間の顔が急速に青ざめていった

 

 

「な、なんだこれ…」

 

 

そう言いながら、大変気分が悪そうに、口元に手を当てたので、丁度近くにあるゴミ箱を座り込んだまま、引き寄せ、押し付けるようにして口元を押さえて震える物間に渡すと、さっきまで食べていたであろう物を全て吐き出した

 

 

その様子を拳藤はもちろん、周りの人は唖然とした様子だが、私はこうなってしまった人見るのは初めてじゃなかった

 

 

物間の状態はやっぱり、昔私の個性で壊れてしまった人と同じ状態だった

 

 

 

ヨロヨロと震える足に無理矢理力を入れて立ち上がり、膝をついて止まるところを知らないほど吐き続ける物間を見ると、かなり苦しそうだ

 

 

「だから言ったんだ!お前にこの個性は使いこなせないって!」

 

 

そう言いつつも、昔みたいに、私の個性で脳にダメージが行き、人が廃人になってしまう訳にはいかないので、嘔吐の苦しさからか、夏とは思えないほど、冷え切った背中をさする

 

 

 

「なあ!物間!俺はやめろって言ったのに!それなのに!本当に何してんだよ!」

 

 

 

多くの情報をなるべくシャットダウンできるように周囲の喧騒が搔き消えるほど大声で叫ぶ

 

 

この個性が取り込む情報は視界に映る物の量や聴こえる音の量などに左右されるので、個性による意識を私にだけ向ける様に叫ぶ

 

 

だが、それでも個性による周辺情報の強制大量入手は止まらないので、物間の症状は酷くなるばかり、今はもう嘔吐するものがなくなったのか、ただえづいている

 

顔は蒼白で、全身がガタガタと震え、吐き気と、激しい頭痛で、涙まで流している

 

 

「物間!俺の声だけに集中すんだ!早く!俺の話を聞いて!意識を私に!だからやめとけって言ったんだ!お前にはこの個性は使えない!クソが!なんとか5分持耐えてくれ!頼むから!じゃないとお前は廃人だ!」

 

 

そう言いながら、一通り吐くものがなくなったからか、口から特に何も出てこなくなった物間の吐瀉物で汚れた口元を拭う時間すら惜しく、胸元が汚れるのも気にせずに物間を横抱きで抱え上げた、目指す場所は人が少ない場所だ

 

もし近く、かつ、人気のないところにいるならこの状態を解除できる相澤先生の元に走っても良いが、生憎人の多い職員室にいる為、連れてはいけない

 

ただでさえ食堂という人の多いこんな最悪の場所なんだ、早くここから離れないと、取り返しのつかない事になる

 

 

たとえ自業自得とはいえ、自分の個性で廃人になられるなど、目覚めが悪いどころの騒ぎではない

 

 

人の波を一睨みして、道を開けさせて、その間を走る

 

 

「ねえ!本当に廃人になる訳ないよね!?」

 

 

拳藤が焦った様子で付いてくるが、正直人が多ければ多いほど取り込む情報量の多い状態の物間に姿を見せたり、声を聞かせるの良くないので、胸元に物間の顔を少し抑えつけながら強く睨むと、ヒッと短く悲鳴をあげる

 

「こいつの今の状態はカセットテープ流す機械にSDカード入れ無理矢理読み込ませようとしたようなものだ!壊れる可能性が高いに決まってんだろ!何事も駄目なものには理由があるのにやったのはお前らだ、覚悟はしておけ」

 

周りでざわざわと何事かと騒ぐ野次馬を胸元に物間を抱えながらぐるっと見渡して睨みつける

 

 

「全員黙れ!今すぐ黙れ!そしてさっさと離れろ!決してこいつの意識に入るな!声も聞かせるな!存在を認知させんな!拳藤は職員室の相澤先生に事情の説明!単独で仮眠室に走って来るように伝えろ!」

 

「わ、わかった!」

 

 

 

あーくそっ、吐瀉物の付いた胸元が気持ち悪い、本当ならこんな馬鹿野郎の事なんてこんなに必死に助けたくない、けど、自分の個性で万が一にでも死にでもしてしまったらと思うと、怖くて見捨てる事なんて出来ない

 

というか、死ななくても、廃人の時点で見捨てられない

 

私だって、昔はどんどん強くなってくる個性に対応しきれずに、何度も嘔吐を繰り返し、貧血を起こし、ぶっ倒れて、それでも何とか耐え、ここまで何とかやってきたんだ

 

そんな簡単にコピーして使いこなすなんてできるわけがない

 

その上この個性、危険性に対して発動条件が緩すぎる

 

 

せめて、相当意識をしなければ発動できないものであれば良かったが、そんな優しい個性ではない

 

 

怒鳴り散らしたい気持ちを抑え、物間に声をかけながら好奇の視線に晒される校内の廊下を走り抜けていった

 

 

 

 

 









心理描写、単純に力量不足な所はまあ、努力あるのみだなって思うんですけど、わざと心理ちゃんの性格が悪そうに見せるために心理描写や過去を書いてない場合、そう仕向けたのは自分なのに、いざ、性格が悪いと言われると、心が痛むぅ〜
でも、仕方がないのぉ〜
どうしようもないんだよぉ〜
だって、過去編まだかけてないんだものぉ〜


情緒不安定でした、お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません。


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41話

サブタイの必要性を感じる今日この頃……





 

 

解放されている無人の仮眠室の扉を勢いよく開けて、ベッドに物間を横たえ、一応ゴミ箱を掴んでベッドに近づけてからその目の前に自分も寝転び物間の視界がふさがるように抱き締めた上に掛け布団を2人とも覆えるように被る

 

 

「ゆっくり深呼吸して、落ち着いて、私の心音に意識を集中させて、ほら、深く息を吸って……吐いて…また吸って…、ねえ、私だけに意識を向けて」

 

 

背中を一定のリズムで摩り、少しでも症状が軽減するように声をかける

 

 

精神が安定すれば、不安定な時よりも取り入れられる情報に統一性が出る為、量は同じでも楽にはなるので、ひたすら声をかける

 

すると、過呼吸になっいた呼吸が早く浅いが、まだマシにはなってくる

 

 

「あ、頭が…痛い…、耳鳴りがする…」

 

 

か細い声でそう言いながら、震える指で私のワイシャツを縋るように握ってくるので、少しでも軽減できたらと頭を撫で、耳を手で塞ぐ

 

 

「割れるように頭が痛いね、誰も怒鳴ってないのにずっと酷い声が聞こえるよね、でも、大丈夫だよ、大丈夫だから」

 

 

そんな事をしても私の個性では情報の強制大量取得は止まらないが、それでも、相澤先生が来るまでのあと少しの間、声をかけ、意識を向けさせ、痛む頭に手を添える

 

 

「誰のものかわからない喜怒哀楽の感情、複雑な思考、欲深い願望、何もかもが流れ込んできて痛いよね」

 

 

そうしていると、ようやく先生が近くに来れたので、物間を抱えたまま、起き上がっておく、後は先生が入ってきたときに布団さえ取ればすぐに抹消してもらえるように

 

 

「大丈夫、もうちょっとだから、大丈夫、大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

激しい音と共に扉が開くと同時に布団を取ると、髪が逆立ち真っ赤に発光しているような鋭い視線が向き、個性が解除された

 

 

 

そして、フッと強張っていた物間の体から力が抜けた

 

 

 

 

 

 

「おい、何があったか詳しく説明しろ」

 

 

ベッドに腰掛け、私が抱える物間を受け取りながら聞いてくる

 

 

「やめろとかなり拒絶したのに無理矢理食堂で個性をコピーされました。

 

私の個性、単純に言えば、オールマイトのあの規格外な個性の力を全て数値変換して、読心という能力を強化するためにその数値を全て全振りした様な個性なんですよ

 

だから、物間くんの身体は耐えきれずに嘔吐、痙攣、寒気、貧血、発熱、頭痛、などの症状が出ました、そして、これから少しの間重度の熱中症の様な症状が続きます」

 

 

 

「期末は受けれる程度か?」

 

 

「筆記は問題有りませんが、実技は受けれてもあまり良くないコンディションでしょう」

 

 

 

そんな話をしていたら、爆豪達と拳藤さんの5人が仮眠室の扉をノックした

 

 

 

 

「入っても大丈夫か?」

 

 

 

代表で切島くんの声がするので、チラッと相澤先生に視線を向けると、お前が決めろと言うように顎をくいっとされた

 

 

 

「大丈夫だよ」

 

 

 

そう答えると扉が開き始めたので、まるで悪い結果があるみたいに私は暗い表情を瞬時に作った

 

 

 

「その…物間は大丈夫?」

 

 

 

拳藤さんが入ってくるなり、私を見てそう尋ねてくるので…私は顔を悔しそうに歪めて視線を下に落とす

 

 

 

「やっぱり……駄目だった…いつ目覚めるかも分かんなくて……もしかしたら一生このままかも…」

 

 

 

声に涙を滲ませて目に涙の膜を張る

 

 

彼女には反省してもらわないといけないので、子役の実力を十二分に使い、鼻を軽くすすった

 

 

 

「私の個性強過ぎるから……昔私の個性を借りたおばさんみたいに……廃人に……なってしまって……」

 

 

顔をくしゃりと歪めて、昔本当にあったことを話しつつ嘘の涙を流すと、拳藤さんも泣き始める

 

 

 

 

相澤先生もだいぶ大雑把だが、事情を説明したからか、黙ってくれている

 

 

 

 

「おばさん……あの時から10年以上目覚めてないから………物間もいつ目覚めるかも分からない……………もしかしたら……もう二度と目覚めなくて…………ヒーローを目指すなんて夢にっ……」

 

 

 

それから耐えきれないと言わんばかりに両手で顔を覆った、もちろんおばさんの話は本当だが、物間はまあ、明後日くらいならまた普通に歩けるが、悲しそうに少し嗚咽を零しておく

 

 

 

「あの時私が止めておけば!そしたら物間はこんな事に…っ!」

 

 

 

そう言って、床に膝をつき、相澤先生が横向きに抱える物間の腹の上で顔伏せて泣き出したので、私は両手を顔から外した

 

 

もちろん、とっくに涙なんて出ていない

 

 

 

無表情で冷たく物間と拳藤のことを見る私に相澤先生はどこか感心した様な視線を向けてくる

 

 

 

そして、爆豪達は声こそ出してはいないが、皆胡乱な表情だ

 

 

 

 

「拳藤さん、後から悔やんでも遅いんだよ、今度からちゃんと物事を見極めれる様になろうね」

 

 

泣き続ける拳藤

 

 

「そんな、今更……」

 

 

「それが、今更じゃないの、物間くんは廃人にはならなかったよ、かなり危なかったけど、数日安静にしていれば日常生活は問題無いくらい、10日もあれば個性も身体的には問題無く使える」

 

 

「え…ほ、ほんと?」

 

 

「本当だよ、今は気絶してるけど、目覚めるだけなら、大体後1時間位でいけるよ、まあ、その時に目覚めても体力的にまたすぐ寝てしまうけど」

 

 

 

そう伝えながら吐瀉物の付着した上の服を脱ぐためにネクタイに手を伸ばすが、手が震え、力がまともに入らずネクタイが外せない

 

 

それでも何度か無理に外そうとしていると、誰かの手が伸びてきて、ネクタイを丁寧に外し始めてくれる

 

 

驚いて顔を上げると眉間にしわを寄せた爆豪が立っていた

 

 

 

「気絶してる男1人無理に抱えたらそらそうなるだろ」

 

 

「それもそっか、ありがとう」

 

 

 

必死だったからすぐに抱えたが、確かにかなり腕を酷使してようやく抱えられる重さだ

 

 

現に無理に使った両腕が今になって痛み出し、足も少なからずダメージを受けたのか、軽く震えている

 

 

かなりの無茶をした自分に自嘲気味の笑いが出てきた、私はそろそろ自分の力量を正確に把握しなければならないのかもしれない

 

 

 

 

ネクタイを外した爆豪は、そこですぐに終わりだと離れずに、内心で汚れた上の服をどうするか悩んでくれていたので、両手を合わせてお願いと言う仕草をすると、上のボタンを外し始めてくれる

 

 

 

「えっ!?ちょっ!爆豪!?」

 

 

「こいつがやれっつってんだよ」

 

 

 

慌てる切島に視線さえ向けずにボタンを外し切る爆豪

 

 

少しは手間取ると思っていたがさすが器用ですぐに中に着ているTシャツが見える

 

 

「おい、腕を抜け根暗」

 

 

言葉に優しさはひとかけらも見当たらないが、丁寧な手つきでワイシャツを脱がしてくれる

 

 

 

「Tシャツもよろしく」

 

 

そう頼むと、嫌そうに顔を歪めつつも、服の裾へと手を伸ばしてくれる

 

 

そして、服を掴みかける直前に、拳藤が爆豪の手を掴んだ

 

 

「ば、爆豪!私変わるよ、読解さん女子だし…」

 

 

成る程、私が女子だからと気を使って同性の自分が手伝うことを申し出てくれた訳ね

 

 

でも、それは余計なお世話だ

 

 

大人しく変わろうとした爆豪に震える腕を伸ばして抱きつく様にして留めつつ、手を伸ばしてきた拳藤の腕を避けた

 

 

本当は爆豪の服の裾を掴むだけにしたかったが、生憎今は指先に力が入らないのでそこは爆豪には仕方ないと言うことにしてもらいたい

 

 

 

「っ、!?んだよ」

 

 

「私は拳藤より爆豪がいい、自分に危害を与えようとした人になんて触られたくないし、なんなら近寄って欲しくないから」

 

 

 

そう伝えると、目が一度驚いた様に開いてから、素の表情に戻り、痛めた腕を気遣うようにやんわりと離されてから短くバンザイと声をかけられた

 

 

 

「ありがとうね、それとこの下についてはもう一枚シャツ着てるから」

 

 

 

内心でこのTシャツの下は女性用下着か、胸を潰すためのさらしがまかれているのか、鍋シャツか、と考える爆豪に言っておく

 

 

 

「なあ、今更だと思うんだが、その服脱ぐの後じゃ駄目なのか?」

 

 

 

 

居た堪れないと言うふうに顔を背けていた相澤先生が今になって急にそう声をかけてきた

 

 

確かにただ水に濡れただけとかならそれでもいいかもしれない

 

 

だが、私の服を汚す原因は吐瀉物だ

 

 

「確かに匂いや、感触は不快だと思うが、ここには着替えも無いし、そこまで急いで脱がなくても構わないだろ」

 

 

「構わなく無いです。

 

だって吐瀉物ですよ?匂いや、不快以前に、長いこと皮膚に付着していたら肌がかぶれてしまいます。

 

私は世間的にそれこそ天使の様な要素を求められる私は、この体に目立つ傷をこれ以上付けるわけにはいかないので、早急に脱ぐ必要があります」

 

 

 

脱がせてもらったTシャツの汚れていない部分で肌に浸みた部分を拭き取って貰うと、最後まで身につけていたシャツはタンクトップで胸元が広くデザインのため汚れておらず、取り敢えずこれ以上肌がダメージを受けないようになる

 

 

 

「テメェこの格好になってどうすんだ、この部屋から出れねぇだろ、それにあの端で顔赤くして壁に張り付いてる奴らも」

 

 

なるべく首より下には視線を向けない様にしつつも、そう尋ねられるので、体力的に疲れて回すのが面倒な頭を回し始める

 

 

「んー、物間と拳藤の監督不行き届きの責任をブラド先生に被せて、自教室から体操服を持って来させようかな」

 

 

理不尽な責任と言えなくもないが、まあ彼らの担任である彼なら持って来てくれる事だろう

 

 

「そ、その役目、お、俺がするというのはどうですか!?というか自教室に体操服があるなら俺ひとっ走りしてきます!」

 

 

 

そう言って切島くんが片手を上げて主張を始めた

 

 

 

どうやら欲望に勝てずに少しタンクトップ姿を見てしまった事を気に病んでるみたいだ

 

 

「俺も行ってきます!」

 

「俺も!」

 

 

そして、似たり寄ったりな理由により自らパシられるために挙手をする残りの2人

 

 

 

「私の教室に行ったら心操に声をかけて事情を説明して、体操服を取ってもらって、じゃ、よろしくね」

 

 

 

私の肌を見た対価を払いたがってるのを止める理由もないので、手を振って送り出した

 

まあ、別にタンクトップ姿くらい至近距離でガン見した訳じゃないしなんとも思わないけどね

 

 

「相澤先生ももう物間と拳藤を連れて保健室に向かってください」

 

 

「ああ、分かった、読解、お前も体操服を着たら保健室に来い、足や腕をリカバリーガールに見てもらわねぇと」

 

 

「分かりました」

 

 

 

返事をすると相澤先生は物間を両手で抱え、拳藤に扉を開けさせて部屋から出て行った

 

 

 

これで部屋は私と爆豪だけになる

 

 

 

 

 

「……おい、根暗」

 

 

律儀にも脱がした服を汚れた部分が内側になるように畳んでくれていながら声をかけてくる

 

 

 

「ん?何?」

 

 

何かだなんて、いつもなら聞かずに個性で見るが、もう、疲れていて個性を使う気になれず大人しく質問を返した

 

 

 

「モノマネ野郎のあの状態は無理に体に個性を入れようとして体が個性に耐えきれず壊れかけた状態という認識で合ってるな?」

 

 

「うん、そうだね」

 

 

物間は食堂で話している無理矢理個性を身体に入れてどうにかならなかったバージョンだ、まあ、気絶や嘔吐などの重度の熱中症みたいな状態にはなったが、これで済んだならまだ良かった方だろう

 

 

最悪死ぬ個性による影響が重度の熱中症で済んだ原因の1つには、廃人となってしまったおばさんより世代を重ねていたというのも理由が入ってくる

 

 

他にも理由は幾つもあるが、取り敢えず自分の若さに感謝しろよ、と思う

 

 

 

「お前が言った通りなら、お前は普段、そこいらのモブなら個性を使用した瞬間体に異常をきたすほどの強力な個性を制御してるんか?」

 

 

まるで苦虫を口いっぱいに突っ込まれたかのような表情で聞かれたことに対して、是である事を伝えるために軽く口角を上げた

 

 

 

「個性が発現してから基本的にはずっとしているよ、もちろん訓練も重ねてるし、体も個性に合わせて鍛えるしね」

 

 

 

 

そう伝えると、黙り込み、頭の中でなにかを考え始めるので、思考を少し読み取れば、流石オールマイトの子供だから体の構造から違うのか、とか出てきていて、オールマイト関連は心の健康に良くないので、これ以上はもうやめといた方がいいと思い、目元を片腕で覆って座っていた布団へと後ろ向きに沈み、深く息を吐いた

 

 

 

 

「ねえ、爆豪色々ありがとう」

 

 

 

 

目元を覆ったまま感謝の言葉をかけると、ん、と短く返事が返ってきた

 

 

 

 

「それでさ、何かお礼したいんだけど、なんか私に出来る事ある?」

 

 

「柔軟、組手」

 

 

 

どうやら、昨日私に比べ身体が大分硬かったことや、観戦試合での敗北が結構彼のプライドに傷を付けていたみたいだ

 

 

 

「分かった」

 

 

「直ぐにテメェなんか抜かしてやんよ」

 

 

 

「組手はまだしも柔軟は難しいよ、性別の差もあるし私もこれには自信があるし」

 

 

 

組手は筋力の差で押し切られる日 が割りとすぐにやってきそうだが、柔軟は昔から頑張ってるし、筋力勝負ではないのでまけたくない

 

 

 

「抜かし殺したラァ」

 

 

「なにそれ、こわっ」

 

 

 

本当に殺す気がないのは分かっているので、軽口で笑って返すと私が寝転んだベッドの隣に爆豪も座った

 

 

 

「覚悟しておけよ」

 

 

「楽しみにしておく」

 

 

 

私も抜かされないように頑張らなくてならない

 






物間廃人ルート回避






呼び名について・第二段

基本名前の後に女子ならさん、男子ならくんを付けて呼ぶようにしているが、

・自分に危害を加える人
・ある程度親しくなり他人行儀な呼び方が面倒になった人
・周りの人がそう呼んでいるから
・意図的に距離を詰めたい場合


などの理由に当てはまる人はその限りではない





と言うのが、心理の中の基準となっています



物間、拳藤の2人が1番上の理由

爆豪、瀬呂、上鳴、切島の4人が2番目の理由

心操が4番目の理由となっています


またこれからも大体この基準で名前の呼び方を徐々に変化させていけたらと思っています






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忘れられない記憶・1

久しぶりの投稿、なんか、懐かしい




 

 

 

「心理ちゃんは可愛いね」

 

 

 

 

 

昔から言われ慣れた言葉だった

 

 

「賢いね」

 

 

「偉いね」

 

 

「美人さんね」

 

 

「綺麗だね」

 

 

 

 

この世にある褒め言葉の全てはきっと私自身を褒めるためにあるんじゃないか

 

 

 

そう幼い頃に錯覚してしまった事があった程私はよく褒められる子だった

 

 

 

でも、大人は口先ではそう言っても心の中では蔑んでいる事も多かった事を知ることになってしまったのもまた幼い時だった

 

 

 

 

「心理ちゃんは可愛いね」

""純粋無垢で馬鹿な子""

 

""どうせ大人になるに連れて大衆に埋もれるに決まってる""

 

""親の七光りでここまでやってこれてる""

 

 

 

 

相手が口で発した言葉が私の鼓膜を揺らすよりも先に個性の影響で直接頭に相手の意思が流れ込むこともあった

 

 

 

「賢いね」

 

 

""ガキのくせに小賢しい""

 

 

 

 

「偉いね」

 

 

""偉そうで鼻に着く態度だ""

 

 

 

 

「美人さんね」

 

 

""まるで作り物みたいで気持ち悪い""

 

 

 

 

「綺麗だね」

 

 

""芸能人としてちやほやされるには微妙だな""

 

 

 

 

 

 

頭が割れそうだった

 

 

 

酷い感情の濁流に飲まれもう2度と戻って来れないと感じた

 

 

 

憎悪に体の内側から汚染されていくような感覚だった

 

 

 

相反する感情が渦巻く心の中

 

 

 

でも、決して皆、誰であろうと知ることができないと信じて

 

 

 

私も周りと同じように嘘を吐いた

 

 

 

 

そう言った方が耳障りがいいから

 

 

 

そう言うことにしておけば当たり障りがないから

 

 

 

 

そんなつまらない何よりも大事な理由で吐いた嘘はまるで汚染されてとごった水は流れないのと同じように私の心に溜まっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

個性が発言した頃は何度も高熱を出し、食道が荒れるほど胃の中のものを口から戻し続けた

 

 

 

 

個性が体に対して強力過ぎた

 

 

 

 

もちろんその理由が大半だったが、関わる人全てから必ず少しは感じる負の感情に当てられて気持ち悪くなる事も決して少なくなかった

 

 

 

 

 

 

 

何度も狂いそうだった

 

 

 

 

 

 

 

 

いつだって頭に満ちているのは自分以外の知りたくない数々の情報

 

 

 

 

 

 

 

だが、もし、このまま狂えばどうなる?

 

 

 

3歳の頃から芸能活動を始め、2年経って個性が発現した現在5歳、芸能界が自分の世界だと、どれほど周りに疎まれても、妬まれても、多くの羨望の眼差しと重たい期待を背負ってきた

 

 

 

 

ここで止めれば自分の背中をせせら嗤い、私の立ち位置を奪う奴がいる事が自分にはどうしても許容できなかった

 

 

 

 

 

 

年の近い子供はまだいい、ここがどう言う場所かよくわからないまま周りに言われたまま動かされるそんな純粋な存在、心の中と言う事が矛盾している事は殆どなく害が限りなく少ない相手

 

 

でも、その親や周りの人間は違う

 

 

自分の子供が一番可愛い、親がそう考えるのは至って普通の事だ

 

 

そして、その可愛さを周りに知って欲しいのもわかる

 

 

そして、その為には一際目立つ可愛い私はただの目の上のたんこぶだ

 

 

切除できるなら少々荒技も厭わない、そう思ってる狡猾な思惑が筒抜けで恐ろしかったし、鬱陶しかった

 

 

 

 

 

だから、私に清らかな期待と憧れを抱いてくれている人達の為に

 

 

 

私に醜い憎悪を抱く人達を素知らぬふりして踏み潰す為に

 

 

 

 

 

 

私は輝かしい舞台に意地でも立ち続けた

 

 

 

 

 

 

ある時、センターを私が取った写真を撮った時にサブの方となってしまった子の両親が視線だけで殺せそうなほど私の事を睨んできた事があった

 

 

 

どれだけ苦しくてもこの場を誰かに譲る気は無い、そう決めていたが、自分の横にいるこの子は両親に望まれてこの仕事をしていて、しかも自分もこの仕事が好きなんだ

 

 

 

その事を無駄に流れ込み続ける情報の中で知り、心の底から羨ましくなってしまった

 

 

 

 

 

自分は父親からは生まれて欲しくないと望まれ、母親は別れた父親との繋がりだと思うと、堕ろすに堕ろせなくなった世間から隠された子供

 

 

 

 

そんな自分とは違う、明るい存在

 

 

 

 

 

その子に罪や悪気があるわけじゃない

 

 

だが、私が嫌いになる理由としては十分すぎた

 

 

膨大な量が取り込まれ続ける情報の中からカメラマンが撮りたいショットを頑張って読み取り、その撮影中、私は一度もフレームアウトする事なく終わった

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

幼くして、人生の酸いも甘いも経験し過ぎてる上に、日々取り込み続けていた情報量を意識的に減少方向に持っていけていけるようになってきていた時だった

 

 

偶然オールマイトが自分の撮影しているスタジオがある局にいる事を人から情報を読み取って知った

 

 

 

オールマイト、誰だってしってるNo. 1ヒーロー

 

 

 

そして、よく、ママの記憶の中にいる人

 

 

ママに優しく笑いかけ、甘やかな時間を過ごし、冷酷に別れを告げた酷い人

 

 

オールマイトと過ごした時間が楽しかった分だけ、別れが辛かった記憶はママの暗い記憶としてよく読み取っていた

 

 

ただ、人越しに人を読み取る能力はまだ未発達で、ママの弱い個性で読み取ったものをそのまま読むのが幼い当時の限界だった

 

"一緒に居られない"

 

"守りきれない"

 

"後悔"

 

"懺悔"

 

 

 

 

そして、そんな事を思っているくせに強く感じる""愛している""という思い

 

 

 

 

そのせいで嫌いになれなかったママを愚かだと言い切るには冷徹さが足りなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もし、直接オールマイトに会うことができれば

 

 

 

 

私は私が生まれた意味の正解を知ることができるのだろうか

 

 

 

 

そう考え始めたら、止まらなかった

 

 

 

 

使い過ぎたら頭が痛くなって、熱が出てしまうことくらい分かっていた、それでもこの広いビルの何処かには必ずいる

 

 

 

 

個性を使って走り回れば、私なら絶対に会える

 

 

 

 

そう確信した私は、自分の撮影を全力で巻いてすぐさま終わらし、なるべく偉くてオールマイトの居場所を知ってそうな人と手当たり次第に握手をして目を合わせて情報をわざと大量に読み取った

 

 

 

欲しいものだけ読み取る能力があれば良かったが、大雑把な量の調節しかできなかった私は相手の頭から必要なものを取り残してしまわないように沢山取り入れた

 

 

 

その瞬間、身体の内側でけたたましく警鐘が鳴るが無視をして走り出した

 

 

 

 

場所は最上階

 

一番広いスタジオで収録

 

放送時間はゴールデンタイム

 

内容はエンデヴァーとの対談

 

収録時間は不明

 

 

 

 

 

廊下ですれ違う人全ての声を大きくなってくる体内の警鐘を無視するのと同じように無視してエレベーターに乗り込んだ

 

 

 

収録現場は関係者以外立ち入り禁止だが、それくらいどうにかしてやる

 

 

それに、もし止められたとしても

 

 

 

 

エンデヴァーが憧れのヒーローでどうしても会いたい

 

 

 

 

そう幼い子供が強請れば通して貰える

 

 

 

私は脳内で何パターンもの作戦を組み立てながら上へと向かい、収録スタジオがあるフロアに着く頃には心を決めた

 




大変お久しぶりです。
リアルが忙しいのと、どうしても話が纏まらないのダブルコンボで大分更新できていませんでした。
今回の過去話は何部かに分けての投稿になる予定です。
ただ、現在の方との折り合いもあるため、どう言う順で投稿できるかは正直作者にも分かってないです。申し訳ございません。


後ただの自分の話なんですが、ハールメンの機能使いこなせないのがすっごい悔しいです、はい


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43話

いつも、誤字報告ありがとうございます。
とても助かってます。


 

side・切島

 

 

読解に頼まれた通りに急いでC組に向かい、出入り口付近から教室の中を覗き込んで心操を呼べば、お前らが俺に何の用だといった感じの訝しげな表情で寄ってきた

 

 

 

「何の用だ?」

 

 

 

食堂での騒ぎをまだ知らないためか呑気に、でもどこかトゲのある雰囲気を纏い聞いてくる

 

 

 

「読解の制服が色々あって着れない状態になってしまったから、体操服が必要なんだ」

 

 

 

そう伝えた瞬間、心操、そして、C組にいた生徒の視線や雰囲気が張り詰めた

 

 

 

まるで視線が実際に質量を持ってるかのような鋭い視線が俺に突き刺さる

 

 

 

「心理に何があった?」

 

 

 

絶対零度の心の底から凍えさせられる声で尋ねられて、まだ長い説明をしたわけでは無いのに、喉が痛いほど乾いていた

 

 

 

「え、あ……ああ、それは……」

 

 

 

何処からどうやって話そう

 

 

ここに着くまでにある程度考えていたはずなのに無言のC組全員から感じてくるもし読解に何かあったら覚悟をしておけと強烈に語る視線に飲まれ、頭の中が真っ白になってしまった

 

 

説明するのを上鳴や瀬呂が変わってくれたらいいのに、2人も俺と同じように気迫に飲まれたのか、ヒュッと引き攣った呼吸音が聞こえてきただけで話せそうもない

 

 

「もう一度聞く、心理に何があった?早く答えろよ、なあ!」

 

 

 

心配と焦りが混じった目でそう聞かれ、早く答えたいと思うのに、一度緊張で乾ききり、萎縮した身体はなかなか言葉を発せない

 

 

「はあ…説明はもういい、だけど、心理が無事かどうかだけ答えろ」

 

 

 

俺の様子に呆れたようにため息をついた後に心操はそう言った

 

 

明らかに苛ついているのがわかる声色で、何か俺が悪いことをしたわけでもないのに身がすくむ

 

 

だが、これさえも答えられなければ、もうなにかが駄目になりそうだったので、頑張って口を開いた

 

 

「ぶ、無事だ…」

 

 

 

そう答えると、感じる圧迫感が少しマシになった

 

 

 

「わかった、詳しい説明は体操服を俺が直接持って行って心理本人に聞く、体操服を取ってくるから場所を教えろ」

 

 

「仮眠室、案内する」

 

 

「わかった」

 

 

 

「すぐに体操服持ってくる」

 

 

 

小走りで体操服を取って直ぐに戻ってきた心操を連れて読解が待っている仮眠室へと急いで戻り始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

仮眠室に着き、多分しても意味はないだろうが、一応2回軽く扉をノックをした

 

 

 

「体操服持ってきた、入ってもいいか?」

 

 

 

「いいよ」

 

 

 

 

返事が返ってきたので、扉を開けようとすると、心操にしれっと押し退けられ先に部屋に入っていった

 

 

 

そして、俺ら3人もそろっと、決して読解がいるであろうベッドの方を見ないようにして部屋に入った

 

 

 

「おまっ、何て格好してんだ!」

 

 

 

部屋に入るなり心操があげた怒鳴り声でやはりノックは無駄だったと知る

 

 

そう思いつつ、決して欲に負けてその姿を見てしまわないように壁に向かって立ち惚けることにした




題名、もしつけるとしたら第1話からちょっとづつつけていくしかないんですかね。
一気に編集とかできたらいいんですけど


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44話

いつも誤字報告ありがとうございます。大変助かっています。





 

 

side・心操

 

 

「切島がノックしただろ!布団の中にでも入っとけよ!」

 

 

 

グデーとやる気なく薄い胸元の開いたシャツを着た状態でベッドに寝転んでいる心理の姿を見てしまい、一気に顔に熱が集まる

 

 

 

「別にこれくらいいいじゃん」

 

 

 

のんびりと気の抜けるような動きで上体を起こした心理は全然良くないのに呑気な事を言う

 

 

 

「いや、何でいいって思えたんだ?男装も解いてるのに、いや、男装してても駄目だけどさ」

 

 

「男装っていうか、ウィッグは服脱がして貰った時に乱れたから全部外して貰った」

 

 

くいった顎を受けた方を見てみれば綺麗に畳まれた制服の上に置かれている

 

 

 

「そうだったのか、体操服もってきたから早くこれ着ろ、そしてなにがあったか教えてくれ」

 

 

「服着せて、自分で着れない」

 

 

 

折角顔をそらして体操服を渡したのに、そんなことを言われ、思わず至近距離でしっかりと見てしまった

 

 

 

 

「無理をしたから腕がまともに使えないの、別にジロジロ見ても何も言わないから、お願い」

 

 

 

 

それは役得と受け取ってもいいんだろうか

 

 

それに、もし俺が断れば多分心理は俺以外の誰かに頼むに決まっている

 

 

それこそ、心理と離れてはいるが同じベッドに座ってどこかを見ている爆豪にでも頼むんだろう

 

 

だけど、俺は自分以外の誰かが心理に頼まれ服を着せている姿は見たくなかった

 

 

独占欲が胸の奥の方から湧き上がり、恥ずかしさや至近距離で薄着の彼女を見る申し訳なさよりも勝った

 

 

 

 

 

 

無言で体操服を広げ上まで律儀にあげられていたチャックを開け、伸ばしてくる手に通す

 

 

 

 

「なんで無理をしたんだ?」

 

 

「んー、一言じゃ纏められないから初めから順を追って説明するのでいい?」

 

 

 

いつものようにハキハキとした明確な答えではない上に、俺に確認する方式での話の進め方

 

 

 

どこか眠たそうに見えるぼんやりと眠た珍しい雰囲気をした心理に頷いた

 

 

白くて細い肌をなるべく見ないようにして、腕を通し終わり、チャックを上げて、ようやく着せ終えた

 

 

 

「ありがとう、よし、じゃあ保健室までおんぶして」

 

 

 

「………おぶる事自体は全然構わないけど、先にどこを怪我したのかを教えてくれないか?」

 

 

 

甘えるように両手を広げた状態の心理に対してやはり見た目がいいと無言で感心した後に聞いておく

 

 

知らなければ、痛めたところを触れてしまいそうだったからだ

 

 

 

「怪我というより、重いものを無理矢理持ち上げて筋肉に無理をさせたから痛めた、なんで持ち上げたかは道すがら話すよ」

 

 

 

 

 

だから早くというように両手を広げる心理の前に背中を向けてしゃがむと、よっこいしょ、という老けた声と共に背中に重さが少し加わった

 

 

だが、いつまでたってもそこから増えないので、どうして乗らないのかと怪訝に思っていると、肩をタップされた

 

 

 

「もう乗れたよ、重たくて立てないとか?」

 

 

 

そう聞かれたので、直ぐに立ち上がるが、背中にかかる重さが軽すぎてちゃんと乗っているのか不安になる

 

 

 

「………本当に乗ったのか?」

 

 

 

「とっくにね」

 

 

 

心理の太腿を支えて、胸が背中に当たりにくいように少し前のめりの状態を保つ

 

 

 

「あんまり前屈みだと落ちそうで怖いから、もうちょい上体あげて」

 

 

 

人の配慮を一蹴する気だな、心理

 

 

 

いつもと違い、心情に聡く無いどころか最早かなり疎いレベルでの対応は、よく、弱い個性の振りをわざと親しく無い人にしている時のようで、なんだか距離を感じてしまう

 

 

だが、言われるがまま上体を起こした俺に全身を預けるようにピッタリと体を寄せて物理的距離を体温が直接伝わるゼロ距離になった事により、開いた気がした距離が今度はとっても近く感じれた

 

 

 

 

 

「ごめん、瀬呂くん、扉開けて貰ってもいい?」

 

 

 

一番扉の近くにいた心理を背負った俺を少し羨ましそうに見ていた瀬呂に心理がそう頼むと元気のいい返事と共に扉をあける

 

 

 

 

すると、廊下にはB組の担任であるブラド先生が渋い顔して立っていた

 

 

 

ブラド先生は俺に背負われた心理を見ると、俺の正面に立った

 

 

 

背負ってるのを交代すると言いにきたのだろうか

 

 

 

 

「保健室までの人払いは済ませておいた、読解、本当にうちの物間と拳藤が迷惑をかけた、申し訳ない」

 

 

 

 

予想と違い、俺に向かって、正確には俺に背負われた心理に向かって90度ほど腰を曲げて頭を下げた

 

 

急になんだと思っていたら、気怠げに回されていただけの腕に少し力が入り、グッと俺の肩の所から心理が顔を出して

 

 

 

「ええ、確かに迷惑でした」

 

 

 

 

そう冷たい声で言い切った

 

 

何も事情を知らない俺からしたら急に何という感じだが、心理にはもちろん、チラッと横目で伺った上鳴達にも心当たりがありそうな表情だ

 

 

 

「まあ、私は職業柄あんな奴山程相手してるんで、あれくらい可愛いもんですけどね」

 

 

 

ハハハハハッと乾いた抑揚の無い笑い声が日頃の苦労を物語っている

 

 

 

何があったのかは相変わらず分からないが、表情が分かりやすすぎる上鳴や切島の表情がドン引きになってるので、相当な事をされたんだろう

 

 

 

 

「って事で、もう保健室に向かいますね、背負われたまま長話はしたく無いですし」

 

 

 

「ああ、悪い」

 

 

 

「人使、長いこと背負わせてごめんね、保健室に向かってもらってもいい?」

 

 

 

耳に口を寄せた状態で言われたため、あまりに声が近く、ブンブンと頭を縦に振った後に、なるべく心理に振動がいかないように配慮しながら歩き始めた

 

 

心理に負担はかけたく無い、でもなるべく背負っていたい

 

 

背中の温もりを手放したくなくて保健室までゆっくりと進む

 

 

いつもなら鬱陶しく思う事の多い無駄に広い校舎を今なら心からとてもいいものとして考えられた

 






サブタイトルについてご投票いただきありがとうございました。
あんなに多くの人に投票してもらえると思っていなかったので感激しています!
投票により、サブタイトルについて、通常の話はこの数字のままということになりました。
特別な閑話や過去編にのみサブタイトルを付けて投稿させてもらいます。


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45話



なんか、毎回毎回お久しぶりですって書いてますね!

本当にすみません!

長らくお待たせしました、こんなにも長い期間をあけてしまっても投稿話を読んでくださる方がいて、本当に嬉しいです

これからもどうか愛想を尽かさずによろしくお願いします

もう、本当にお願いします!ほんとにほんとにお願いします!


長いこと更新してないゴミのくせに図々しくてすみません、けど、皆さんに愛想つかされたらマジで、どうしようもないです、はい


 

 

 

side ・上鳴

 

 

 

「私が筋肉痛めたのは何となくもう分かってるとは思うけど、B組の馬鹿に迷惑をかけられたからなの」

 

 

 

そう心理ちゃんは彼女を背負った心操に急に話しを始めた

 

 

 

「あの、宣戦布告をしに行った時に突っかかってきた金髪ボーイとサイドテールガール覚えてる?」

 

 

 

髪型と性別しか特徴を挙げられてないが、突っかかってきたB組が多かった訳じゃ無いっぽく、直ぐに2人の顔が浮かんだみたいだ

 

 

 

「ああ、さっきブラドキング先生が言ってた物間と拳藤って言う名前の人達だったよな、確か」

 

 

 

「そう、その2人組、その内の1人に、物間が私の結構重たい私の個性をコピーして、キャパオーバーとかで自爆した」

 

 

 

なんというか、ザックリとした説明だな

 

 

 

「え、自爆って死んだのかよ…マジか、それ、え?」

 

 

 

心操はその心理ちゃんの雑な説明を聞いて驚いた様子で足を止めて、振り返り、心理ちゃんとの顔の距離感に照れてすぐに前を向きなおした

 

 

 

「いや、死んではないよ、けど結構やばかった今も気絶してる」

 

 

「ああ、ならよかった、たとえ自爆でも心理の個性で誰かは死んでほしくないから」

 

 

 

あっさりとした否定に対して胸をなでおろした様子は物間が死んでしまったかもしれなかった事より、心理ちゃんが殺人に関与したかもしれなかった方を気にしていたようで心操の中の明確な区別が分かる

 

 

まあ、人死にが出たかもと言う表現で焦っていたから物間がどうでもいいわけでは無いだろうけど

 

 

 

「うん、私も死んでほしくない、けどね、自爆の度合いは、下手すれば重度の熱中症のような症状で死亡しててもおかしくないくらいでさ、結構危なくて焦ったー」

 

 

「軽く言うけど、それかなり危ないよな」

 

 

 

 

語尾を伸ばしたのんびりとした口調で告げられたびっくりな事実、そうか、死ぬかもしれない可能性があるのは食堂で心理ちゃんが叫んでたから知ってたけど、そういう感じに死ぬ可能性があったんだ

 

 

 

「そう、結構危なくて、元々食堂で倒れたんだけど、人気のないところに運ばないと私の個性の副作用強いからさっき私がいた仮眠室に運んだの」

 

 

「あー、人が多いと情報を取り込む量が多くてより脳に負担を強いるとかか?」

 

 

 

ちょっと考えただけでその答えにたどり着いた心操はやっぱり心理ちゃんと仲がいいんだな

 

 

 

「そう、そんな所」

 

 

「…………もしかして男1人無理に運んだから筋肉痛めたとかか?」

 

 

 

まさかなー、なんて乾いた笑い声を小さく漏らした心操、それに対して、軽く肩を揺らして心理ちゃんは笑ってる

 

 

 

「あったりー、そうだよー、この私が、この腕で、倒れた奴を抱えて、この足で、食堂から仮眠室に、運んだんだ」

 

 

「わー、えっと、お疲れ様でいいのか?」

 

 

「うん、労って自分より重たい男を運んだの、お姫様抱っこで」

 

 

 

苦労の伺えるセリフを本当に疲れた声で言って、深いため息をついている

 

 

 

「それは、大変だな」

 

「ほんとにね、もうヒロシの格好も無駄になっちゃったし」

 

「結構気に入ってたのに残念だな、どうする今度は妹のヒトエとかにするか?」

 

 

 

まさかの兄をした次に妹をシレッと提案するとは思ってなかった

 

 

思わず、吹き出してしまうと、俺と同じタイミングで切島や瀬呂、それに控えめだが、爆豪まで珍しく吹いた音がした

 

 

 

「どーしよ、けど、一回心操の兄弟やっちゃってるからバレやすいし広まりやすいだろうから、別の人の方が良いかな」

 

 

そう言いながら、品定めするようにチラッと俺らの方を向いてきた心理ちゃん

 

 

 

「俺はテメェと兄弟とか死んでもごめんだ!!!!」

 

 

「そっかー、なら、意表をつけていいね、同中も緑谷しかいないからバレにくそうだし、赤いカラコンつければなんとかできそう」

 

 

 

見た目を寄せれば、もう彼女の演技力でどうとでもできるだろう

 

 

 

 

「兄弟なんかいねぇ!!!」

 

 

「私…お兄ちゃんに嫌われてるの……強い個性のお兄ちゃんに比べて私、没個性だから………」

 

 

 

うっわ!ヤベェ、なんか、兄弟っぽい!

 

 

 

「黙れ上位互換ほぼ無しの強個性女が!!テメェの兄とか寒気がするわ!!」

 

 

 

そう怒鳴る爆豪を見てみると、意外なことに律儀に畳んだ心理ちゃんの服を丁寧に持っていて、予想外の優しさに、なんというか感動らしきものを覚える

 

 

 

「んー、だよねー、私やっぱり兄にするなら優しい方がいいから、人使にする」

 

 

「自由か!!」

 

 

 

 

服を持ってない方の手で抗議に合わせて一度爆発を起こしてる、火花が燃え移ったりとかしないか不安だが、爆豪はそういうとこ気にするタイプなので大丈夫だろう

 

 

 

 

「うん、今後母親次第でできる可能性のある義理の兄の選択権は私の自由じゃ無いし架空位いいでしょ?」

 

 

「オールマイトに連れ子はいねぇ!」

 

 

「推しカプ固定の過激派かよ、まあ、私に義理の兄ができるとしたら、それこそ結婚相手に上の兄弟がいるっていうの以外無いと思うけどね。

 

私としては母にはあんな金髪野郎の事は忘れて新しいいい人と一緒になって欲しいけど」

 

 

 

そう言った心理ちゃんがあまりに悲しくて、寂しそうで、そして切実な願いが込められてることが分かる声と雰囲気だったから流石の爆豪も怒鳴りながらの即レスはしなかった

 

 

 

 

「それこそ、テメェが決めれる話じゃねーだろ」

 

 

「まあね、人の心が読めるだけで、それを変える術は私は持ってないからね、もし変えられるなら躊躇いなく変えるけど!」

 

 

「させねぇよ!」

 

 

「止めてみろよ!」

 

 

「心理、耳元で怒鳴るのはやめて貰ってもいいか?」

 

 

「あ、ごめんね」

 

 

 

 

そんなことを話している間に保健室に着いた

 

 

 

 

「思ったよりも遅かったな」

 

 

「しょうがないじゃ無いですか、この学校無駄に広いんですから」

 

 

「心操も増えたのか」

 

 

「切島君たちが連れてきてくれました」

 

 

 

心操に抱えられたまま先に保健室にいた相澤先生の質問に答えている

 

 

 

「人使、ここまで運んでくれてありがとう、私重たいし疲れたでしょ、本当にごめんね」

 

 

「全然大丈夫、心理軽いから」

 

 

 

 

そう言って、相澤先生が無言かつ視線で示したベッドに優しく、壊れ物を置くように心理を降ろした

 

 

そして、その横に服など一式を爆豪が雑に叩き置いた

 

 

 

「爆豪ありがとう」

 

 

「チッ!」

 

 

 

爆豪が舌打ちとはいえ、お礼に返事しただけいい方なのだろう

 

 

 

 

「読解、さっき軽くなら聞いたが、詳しい説明をして欲しい、俺やリカバリーガールはもちろん、もうすぐで校長やハウンドドッグ先生が来るから、集まった先生全員の前で」

 

 

「分かりました」

 

 

 

そう返事をしてのんびりと欠伸を噛み殺している

 

 

 

 

「眠たそうだな」

 

 

「まあ、身体を無理に使った上に私もそれなりに個性を発動させたんで」

 

 

「そうか、だが、まだ寝てもらったら困る」

 

 

「わかってますよ」

 

 

 

眠たいそうに目をこすって、頭を軽く振ってなんとか起きようとしている姿はこんな時だけど、とっても可愛いなと思ってしまった



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忘れられない記憶・2

長い事更新してなかったお詫びの連日投稿!






 

 

 

 

頑張って走ってようやく着いた収録スタジオの前、ここまで全力疾走したせいで乱れた髪や服を直し、息を整える

 

 

そして、私はまるで私がこのスタジオにいるのは当たり前だと言うように静かに侵入した

 

 

大人の人の視点では私は見逃しやすいのを利用してカメラが回り、実際に収録しているところを見えやすく、でも人の目には着きにくい場所を探してコソコソと移動した

 

 

そして、その場所に立ち、ようやくオールマイトを直接しっかりと見れる場所に立てた

 

 

だが、いざ真っ直ぐと見て、読み解ける場所に立つと急に怖くなった

 

 

 

 

 

 

もし、世間のイメージと違ってとっても怖い人なら?

 

 

 

もし、オールマイトが胸の内に信じられないくらいの巨悪を抱いていたら?

 

 

もし、オールマイトが狡猾で卑劣な人なら?

 

 

もし、オールマイトが偽善に塗れた人なら?

 

 

 

 

もし、…

 

もし、…

 

もし、…

 

もし、…

 

もし、…

 

もし、…

 

 

 

 

一度始まると止まれない思考がどんどん悪化していく

 

 

 

 

もし、ママの事を綺麗さっぱり忘れていたら?

 

 

もし、とっくに家族がいたら?

 

 

もし、私以外に既に子供がいたら?

 

 

 

 

 

何1ついいことなんて頭に浮かばなくて、ただひたすらに暗雲が立ち込めるかのように暗い考えが出てきた

 

 

 

そして、ぐずぐずと悩むこと数秒、急に体から力が抜けてその場に崩れ落ちそうになって、慌てて足に力を入れてなんとかしっかりと立つ

 

 

 

ああ、そうだった

 

 

 

私には悩んでいる余裕なんて無いんだった

 

 

つい、思考の沼にどっぷりと浸かってしまっていたが、無理矢理現実世界に意識を引きずり戻し、頬を軽くパチンと両手で叩いて気合いを入れる

 

 

時間的な余裕は自分の体が肉体的に限界が近いからほとんどない

 

 

そう覚悟を決めて目を瞑ったまま大きく息を鼻から吸い込み、口で深く吐き出してから顔をしっかりとあげ、目を開けた

 

 

 

 

 

初めて画面や記憶を挟まずに見たオールマイトはなんというか、世間的なイメージ通りの人だった

 

 

 

心から人を助けたいと思い、その通りに行動できる人

 

 

 

胸の内に巨悪なんて無くて、心から優しくて、肉体的に鍛え上げられた強い体

 

 

 

 

「エンデヴァー 、そういえば君の所の末っ子はいくつになったんだっけな?」

(確か女の子が1人、男の子が3人だったよな)

 

 

「5歳だ」

(何故オールマイトなんぞに答えてやらなきゃやらないんだ)

 

 

「もうそんな歳になるのか!プレゼントは何がいい?」

(子供の成長っていうのはやっぱり早いな、私に子供がいない分余計に成長の度合いがわからない)

 

 

「貴様からは何も受け取らん」

(絶対に受け取らないからな)

 

 

 

駄目だ、会話とその裏ばかりを読み取ってしまう

 

 

もっと、もっと集中して

 

 

オールマイトの過去の心を解き明かさなきゃ

 

 

そう思ってより強く個性を発動した瞬間、急に真後ろから本当に心臓を後ろから鷲掴みされたんじゃ無いかと錯覚するほどの殺意が湧き出てきて、反射的にその場から飛び退いた

 

 

 

着地も何も考えない本能的な回避だっため、撮影機材の配線が沢山置かれた所をゴロゴロと転がってしまう

 

 

 

そして、そんなことをして仕舞えば、当たり前だが注目が集まってしまう

 

 

 

 

「コロッ、殺ス、殺シテヤル、……殺シテヤルー!!!!」

 

 

 

 

だが、私の背後に現れたヴィランに直ぐに注目が移った

 

 

 

それにしても、No.1・2揃ってる時に襲撃とか捕まえてくださいって言ってるようなものでしょ、なんでこんな時に来たのよ

 

 

そう思った瞬間、個性が発動して、私に向けられた殺意が身体に突き刺さった

 

 

 

「ヒィッ、やだっ、死にたく無い!」

 

 

正気を失ってるのか、目を緑色に発光させて、口の端からゆだれを垂らす姿は狂気にまみれている

 

 

 

慌てて倒れたままの身体を起こして、スタジオのヒーローの方へと走ろうとした

 

 

 

だが、ヴィランの目がより強く緑の発光をした瞬間、下に沢山散らばっていた配線がまるで命でも吹き込まれたかのように手足に絡みついてきた

 

 

 

「きゃあっ!やめてっ!」

 

 

 

遂に首に巻きついてきそうになった瞬間コードが目の前で燃え尽きて灰となった

 

 

 

だが、まだ手や足にはコードが巻きついたままで、皮膚に密着してるから焼き尽くすわけにもいかないので、更に巻きつくことだけは無いように床に散らばるコードが全て燃え、オールマイトが手を掴んで火の所から私を退けた

 

 

 

「子供の周りに火をつけるとは危ないな!」

 

 

「俺が子供に引火や火傷をさせるわけないに決まってるだろ!」

 

 

 

そんな言い合いをヒーローがしてる間に腕や足に絡みついていたコードが更に上に上がってきて、衣装がボロボロになり、また首まで覆われそうになり、慌ててエンデヴァー が掴み局所的に焼き尽くした

 

 

 

「この子は任せた」

 

 

 

そう言って、私の事をエンデヴァー に押し付けて、配線や撮影機材を浮かせて武装したヴィランの方へとオールマイトは行ってしまった

 

 

 

「人質を回収してきた所は褒めてやるが、人に押し付けて行きやがって」

 

 

そう言いながらも丁寧に肌や髪が燃えてしまわないように絡みつくコードを焼いてくれる

 

 

 

だが、肌に食い込むようにミチミチと絡むコードは量が量なのと、完全に焼き尽くさなければ破片が動くのもあってかなり厄介だ

 

 

「痛い!ねぇ、エンデヴァー、助けて!」

 

 

「おい!ヴィランをさっさと倒せ!オールマイト!!」

 

 

 

そこまでの力は込められないのか、コードで身体を締めての圧死は無さそうだが、肋骨や胸骨辺りにそろそろどこかヒビが入りそうな程の力が込められてる

 

 

 

「かなり個性増強していて厄介なんだ!加勢は!?」

 

 

「この子を見捨てられない!」

 

 

 

チラッとヴィランを伺うと個性増強薬だけでなく、かなり麻薬漬けになってるみたいで、数発はオールマイトの攻撃も通ってるはずなのに、なんとも無いように机をオールマイトに飛ばしてる

 

 

 

「悪いな、もう少し耐えてくれ」

 

 

首だけは締められたら即アウトなので、そこに巻きつこうとするのだけをなんとか掴んで焼き落としながら申し訳なさそうにしてる

 

 

 

ああ、それにしてもいつになったらオールマイトは倒してくれるんだろう

 

 

 

 

別に室内だからって遠慮なんてしなくていいじゃん、ぶっ放せよ

 

 

 

 

なんで、私がこんな痛い目に合ってるのに周りへの被害とか考えてるの?

 

 

 

あ、そっか、人を巻き込んじゃダメだもんね

 

 

まだ、避難が完了してるか分からないもんね

 

 

それに、私は別に"特別"でもなんでもないもんね

 

 

 

でも、大丈夫だよ、元々このフロアはこの撮影しかしてないし、スタッフは全員こっち側に避難してるだからさ

 

 

 

 

あ、ダメだ、肋骨と胸骨一本ずつヒビ入った

 

 

 

 

「オールマイトォォォオオ!!!出入り口側、それの背後にはこのフロアに誰もいないからさっさとぶっ倒せ!!!!」

 

 

 

さっきまで痛い、救けてって泣いていた女の子がよく通る声で急にそう怒鳴ったのは一番近くにいたエンデヴァーはもちろん、その場にいた全員を驚かせるには充分すぎたらしい

 

 

空気が一瞬で凍ったが、私がして欲しいのは固まるじゃなくて倒すだ

 

 

 

「いつまでちんたらしてんだ!!!!さっさと勝て!!!」

 

 

 

そして、大声で怒鳴るために肺に無理矢理空気を沢山入れたのがダメだったらしい、更に派手にビビが入ったし、痛みが酷くなった

 

 

 

「カハッ、ゴホッゴホッ、ケホッ、」

 

 

 

まずい、更に肋骨にもヒビが入った、始めての骨折で信じられないほどの痛みが身体を襲う

 

 

 

空気が足りずに喘いでいると、ドゴンッと言う激しい打撃音がして、身体に巻きついていたコードから力が抜けた

 

 

良かった、これで助かった

 

 

そんな安心感と一緒にどうしてお母さんがオールマイトと別れたかハッキリと分かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、お母さんはオールマイトの"特別"が欲しくて痛感したんだ

 

 

 

 

どんなに好きと言われても

 

どんなに大切に扱われても

 

どんなに愛されても

 

 

 

 

 

絶対にオールマイトは"特別"をくれないって

 



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47話

お詫びの投稿三連投目!!!
お願いシャース!!


 

 

side ・上鳴

 

 

 

 

「なあ、爆豪私の代わりに説明してくれたりとかしない?」

 

 

ほんの少し前よりも数段眠たそうになって限界が近そうな心理ちゃんが急に爆豪にそう頼んだ

 

だが、あの爆豪だぞ?変わってくれる訳ないだろ

 

 

「しねぇ」

 

 

ほらやっぱり、即答で拒否してんじゃん

 

俺、どう頑張ってもこの爆豪を縦に頷かせる術が思いつかねぇんだけど

 

そう思ってると、心理ちゃんが腰掛けていたベッドに靴を脱いで上がって、布団の中にもしょもしょと潜り込み始めた

 

 

 

え、爆豪を頷いてないのに、寝るの?

 

 

 

そう思ってたら、布団の中に痛むであろう体をなんとか布団に入れれた所で爆豪の方をいい笑顔で向き、手招きした

 

 

「誰が行くか」

 

「損はさせないよ」

 

 

自信満々にそういう心理ちゃんの元へと渋々近づいた

 

 

「今度さ、登山用具業界No. 1シェアの企業が主催する企業向け一般参加無しの用具展覧会に呼ばれてるんだけど、付き添い1人オッケーなんだよね」

 

 

「30分くらい寝てろ、説明終わったら起こしてやる」

 

 

いっそ鮮やかとすら言える手のひら返しだった

 

ベッドに座っていた心理ちゃんの背中に手を添えて、優しくベッドに倒して、布団をしっかりと肩までかけた

 

 

 

「ありがとう、おやすみ」

 

 

そう言って目を閉じてすぐに穏やかな寝息を立て始めた心理ちゃん、の様子で本当に限界が近かったんだなと知り、心の中でお疲れ様と労いの言葉をかける

 

 

「爆豪、説明できるのか?」

 

 

「モノマネ野郎がはじめ絡んで来た時から、個性をコピーして自爆した時その場にいた、その後体操服を待つ間に倒れた原因説明させた、後はモノマネ野郎らが絡んでくる前にこいつが考える強力な個性の定義の話も聞いた」

 

 

爆豪が尊大な態度で椅子に座って言った言葉に対して、俺らは聞いていたから分かってるが、相澤先生、リカバリーガール、ブラドキング先生、心操が能力な個性の定義という言葉に引っかかった

 

 

「強力な個性の定義っていうのは単純な火力とかではないって事だな」

 

 

「説明聞かなきゃなんねぇ奴らが全員揃ったら説明する」

 

 

「分かった、もう直ぐで校長、マイク、オールマイト、C組担任のハウンドドッグ先生が来るから頼んだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして先生が皆揃うと爆豪はいつもの粗悪な態度ではなく、無愛想ながらも流石頭がいいだけあるなという話し方で話し始めた

 

 

 

しかも、寝ている心理ちゃんを起こしてしまわないよう抑えた声で話している辺り本当に心理ちゃんが提案した展覧会に行きたいのだろう

 

 

 

 

そして、しっかりと一通り話が終わった所で俺達と心操、それとずっと黙っていた拳藤さんは教室に戻るように指示された

 

 

ここで聞いた話や食堂であったことの詳細などは周りに話してはいけないという注意を受けてから保健室から出されてしまった

 

 

もう、5限目が終わりかけの時間で、今更戻った所で校舎の広さ的に授業には間に合わないが、だからといって戻らないわけにもいかないので教室に向かった

 

 

 

 

 

 

爆豪や先生達が話している間もずっと眠り続けていた物間の食堂での馬鹿な行動に俺自身に被害は無いが、かなりムカついた

 

 

だが、それと同時に心理ちゃん自身の態度や体育祭や公開組手の結果などからハッキリと痛い程に突きつけられる実力の差にヒーロー科として焦りを感じているのは俺も物間と同じで、今回の物間をただ責める気にはなれなかった



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忘れられない記憶・3

 

 

side・エンデヴァー

 

 

 

 

「はあっ、はあっ…ひゅっ、ゴホッゴホッ、ゴホッ」

 

 

 

咳をすればするほど痛いはずなのに、急に胸骨、および全身への圧迫がなくなったせいで、急に酸素量が増えなことにより息が乱れており、依然苦しそうなままの子供の背中に手を当てる

 

 

力尽くで引き剥がせば表面的な肌はもちろん内臓や骨に余計に負担をかける程の力で硬い鉄なども含まれたコードが食い込み絡まれていたんだ、紐の形に青紫の痕となり、いたるところに痛々しい鬱血痕ができている

 

 

 

「落ち着け、息を吸って、…吐いて…そうだ、ゆっくり」

 

 

 

俺が言うのに合わせて背中が大きく上下して乱れた息がマシになってくる

 

 

その間に、手先の器用な女性スタッフが駆け寄ってきて、力が抜けても絡まってしまって未だに身体に巻きついたままのコードを丁寧に解いていくと、体についた青紫の痣が目立つ

 

 

 

「そうだ、また吸って、、ゆっくり吐く」

 

 

 

なんとか息が整ってくるとそのまま安心させるように優しく抱き締めると、キュッと抱き着かれ、グッとすり寄ってきた

 

 

なかなか子供に懐かれることはないので、珍しい子だなと思いながら、痛むであろう身体に刺激にならない程度の力で抱き上げた

 

 

 

「下に救急車を呼べ」

 

 

「もう来てます」

 

 

「そうか、なら俺が直接下まで連れて行く」

 

 

 

ここは最上階だし、出入り口の方は瓦礫、エレベーターも衝撃で直ぐには動かない

 

 

 

怪我人はこの子供しかいないし、恐らく骨を痛めているのでなるべく早く病院に連れていかなければならない

 

 

 

「エンデヴァー 飛べるのか?」

 

 

なるべく壊してしまわないように気をつけててはいたものの、いくつかの粉々に壊していた機材の片付けを行いながらオールマイトが不思議そうに聞いてくる

 

 

 

「ゆっくりと下降出来るだけだ」

 

 

「そうかい、じゃあその子は任せた、そうだ、ねえ君名前は?」

 

 

グッと顔を寄せるようにしてオールマイトが尋ねたら、子供にしては珍しくふっと目線を外されていた

 

 

 

「あれ、私あんまり子供に嫌われないんだけど」

 

 

「わたしは嫌い」

 

 

おかしいなー、と笑うオールマイトに対して俺の腕の中でそうはっきりと子供は言った

 

 

「そうか、オールマイトのことが嫌いか、俺はどうだ?」

 

 

「エンデヴァー は好き、私の芸名は理里…」

 

 

 

ギュッと俺に抱きつきながらそう答えたガキを現時点から可愛がることが俺の中で決定した

 

 

 

「理里、今からビルの窓から外に出て、下の救急車に行く、俺が抱えて絶対に落とさないから大人しく出来るか?」

 

 

さすが最上階のスタジオを、広いバルコニーの方へと出て、足をかけながら尋ねる、まあ、無理と言われても連れて行くしかないが

 

 

 

「できる」

 

 

 

短く答えて大人しくしがみつく子供を抱えながら、オールマイトの方を見ると、凄く残念そうな表情をしてる

 

 

 

「行ってらっしゃい、私は自分が壊した瓦礫を丁寧に退けておくよ」

 

 

 

肩を落としながらそうどんよりと俺たちに背中を向けて結局一番派手に壊した広いスタジオの出入り口だったものの瓦礫の山の方へと行った

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイトを嫌いとは珍しいガキだな」

 

 

 

ゆっくりと下降中に少しでも生身での下降の恐怖心を紛らわせればと思い話を振る

 

 

まあ、しがみつく力が強くなる程度はしたが、割と楽しそうに景色を見るこいつにそんな気遣いが必要とは思えんが、一応

 

 

 

「オールマイトはね、愛してるとか言う癖にみんなに優しいから嫌い」

 

 

「…………….そうか」

 

 

 

この子はオールマイトに弄ばれた事でもあるのだろうか

 

口を不満気にキュッと突き出しながら幼い子特有のクリクリした目に怒りの炎を灯している

 

 

 

「でもね、行動では示さない癖に心の中では大切って思うんだよ、みだりに人の恋情を弄んだりしないし」

 

 

「オールマイトに手を出されたのか?まさかあいつがそんな奴だったとは思ってなかったが、大丈夫か?」

 

 

 

青紫に変色した痕や痛めた骨他にもいくつも身体中に残る身体的外傷だけでなく、心にも傷を負ってしまってるなら、今でも大分大変だが、何割か増しでより大変だ

 

 

 

「私は出されてない、大丈夫、紛らわしい言い方してごめんね」

 

 

「いや、大丈夫なら俺は構わんが」

 

 

「でもね、特別扱いできないなら特別な相手は作っちゃダメだと思わない?」

 

 

 

理里はオールマイトに大層お怒りのようだが、何故そんな話になったのか、全く分からない

 

 

もしかして、私は、と言っていたし友達とかが…

 

 

 

「友達も手を出されてない、オールマイト幼女趣味じゃ無いよ、オールマイトが好きなのは、身長が高くて、全体的にスラってしてて、とっても顔が整ってて、でもちょっとキツイ感じがして、オールマイトより歳下だけど、精神的に落ち着いた人だし」

 

 

「心を読める個性か」

 

 

「ううん、心も読める個性」

 

 

 

弄ばれるや、友達が被害にと思ったら否定の言葉を話すので流石に気付いた

 

 

それに、オールマイトの好みえらく具体的だな、別にあいつの好みなど詳しく知りたくなかったぞ

 

 

 

「でもね、もう使い過ぎて頭痛いの、もう、ほんとにね、いたいくて、ゴホッ」

 

 

 

行儀よく両手で抑えて一回咳をした

 

 

そして、口元を抑えていたその手を見ると真っ赤に血で汚れていた

 

 

「わあっ、避難が完了してるか確認のために個性使ったのがダメだったのかなぁ…ふふっ」

 

 

とっても痛いはずなのに、無邪気に可愛らしく笑う理里に流石にかなりの危機感を覚えた

 

 

「理里、急ぐぞ」

 

 

「うん、わかった」

 

 

痛みに対する防衛本能なのかフワフワした笑顔を浮かべる理里の身体の負担になってしまわない程度に速度を上げた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから事件が収束し、理里が病院を退院してから、犯人の犯行動機をサイドキックがまとめてくれていた事後報告書で知ることになった

 

 

 

 

 

名前・動力 操

ナマエ・ドウリョク ソウ

 

個性・念動力

 

家族構成・娘が1人、妻は病死

 

・犯行動機・

理里と同い年で、死んだ妻にそっくりな娘が芸能活動をする際に目の上のたんこぶとなり、邪魔な存在の理里に消えて欲しかった

自分の娘が理里をより輝かせるための脇役となるのが耐えられなかった

娘が悔しがってる時に、冷たい目で当たり前だと言わんばかりに見てきた理里が憎らしくて仕方がなかった

 

 

 

・犯行状況・

ヴィランは犯行当時、麻薬による判断力欠如が見られ、第三者が個性増強薬を渡した可能性が高い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの鮮やかな金髪の女の子は随分恨みを買いやすい立場みたいだ

 

 

 

たしかに、意識してテレビ画面を見ればかなりの頻度で出ていて、かなり目を惹く

 

それに、流石心も読む個性、まだ子供だと言うのにトーク力や間の取り方も大人顔負けで、見た目だって一際存在感を感じさせるほど整っている、きっと大人になるに連れてもっと綺麗に成長していくのだろう

 

 

 

 

 

 

様々な事情を抱えていそうな子供だったが、あのオールマイトに向かって怒鳴った時のような気概の持ち主なら大丈夫だろう

 

 

強い意志のこもった眼をしたあの子はこれから自力で様々な困難を押し退けていくことができるはずだ

 

 

 

 

 

 

「まあ、もう狙われないのが一番だがな」

 

 

 

 

 

 

そう呟いてから事後報告書に印を押した




そろそろ、オールマイト側からの話も書いて投稿しないとなって思ってます

今頑張って、粗筋から考えてるんで、お願いします、時間をください!

オールマイトの表現難しいんですよ!

こういう心境を表現したい、けど、どうしたら上手に読者に伝わるか、いや、分かんない!を永遠にループしてます



救けて!!!オールマイト!!!




〜作者の裏話的なもの〜

手早いテンポで投稿も、長い話を投稿もしないから、既に書いてて、未投稿の話の内容が感想への言い訳のようになってしまうんだよ!愚かな自分!って焦ってます。


描写が未熟といわれ、既に投稿していた話を大幅に加筆した話は一話のみ存在しますが、基本的に大筋や初めは書いてるけど、まだ締めを決めてないや、セリフのやりとりが多すぎるため、間に挟む文を考えている途中で放置されてる作品を在庫として多く持ってるので、感想に影響されて投稿の話が変わる事はございません。


これからはなるべく早く、必要な話を書いていけるように頑張ります。


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49話

そーいえば、凄い今更なんですけど、この作品ではC組の担任をハウンドドック先生って事にさせてもらってます。
理由は確実なものは無いです、が、ただ、雄英の先生陣の中ではまだ有りそうな方かなって思って抜擢させて貰いました。
今後、公式の方で担任が確定した場合は、あたかも初めからそうであったかのように続きは担任を変えて書きます。



49話

 

 

 

side・山田 ひざし

 

 

 

 

「おい、起きろ」

 

 

消太が声をかけると、直ぐにゆっくりと目が開いた

 

 

「あれ、人使は?」

 

 

あくびをしながら消太に背中を支えられるままに起き上がり、ゆったりと周りを見渡して、この場から退出させられた人のことを聞いた

 

 

「教室に戻ってもらった、爆豪や拳藤もだ」

 

 

「そうだったんですね、爆豪はちゃんと説明してくれてますね、やっぱり言動は荒いけど育ちや頭がいいからしっかりした説明ですね」

 

 

「眠気はマシになったか?」

 

 

 

問いに対して頷きながらグググッと伸びをして大きなあくびを一度だけすると、もう眠たそうだった目がパッチリと開いていた

 

 

 

「はい、だいぶ楽になりました、なんで、追加説明させてもらいますね、まず、今読んだ感じ物間は後10分ほどで起きます、ので、その時までに先生方は私と一緒に彼の処分について話しましょう」

 

 

 

先生方と言いつつ、しっかりと校長先生だけを見つめている姿は寝起きとは思えないほどの芯の強さを感じさせる

 

 

 

「被害者は君だから主に君の判断に委ねるよ」

 

 

「校長先生ありがとうございます、では、私が求める処分の説明を取り敢えずさせて頂きます。

 

まず、今回の事が起こった事の発端は体育祭の前に私や普通科の皆がA組に宣戦布告をしに行った時です」

 

 

処罰についての説明の前に、発端から話し始めるのは読解の丁寧な性格がよく現れている

 

 

 

「だいぶ遡るわね」

 

 

「はい、その時に私はヒーロー科から皆を引き摺り下ろすという意味合いの事を宣言し、実際体育祭では予選を誰よりも好成績で通過しました」

 

 

 

そんな宣言をしていたのは知らなかったが、予選を好成績で通過してたのは解説席からちゃんと見てた

 

 

 

「あれには思わず歓声を上げてしまったわ」

 

 

「俺も普通科の読解が予選の総合結果誰よりも良かったのにはシビレたぜー!」

 

 

「あの時はただ勉強ができるだけのやつだと思っていたからかなり驚いた」

 

 

 

主審のミッドナイト、俺、消太がその時の感想を簡単に伝える

 

 

 

「まあ、役作りで身体鍛えてるのはもちろん、私の地位や名声に嫉妬してのヴィランの襲撃とかの対応をしてるうちに強くなったのと、後は強いヒーローの格闘経験を個性で読んでの利用とかもできるので同い年では基本的に相手になりませんよ」

 

 

「経験や知識、慣れなどは強い戦闘能力になるからな」

 

 

 

確かに、力が強いや、体が大きい、なども強い戦闘能力にはなるが、それらを有効活用する為には豊富な経験や知識、そして自分の力を発揮しきる為の慣れなども大変重要だ

 

 

 

「はい、で、B組やA組、特にB組が、主にA組が襲われたという事件があったこと、おまけレベルで、オールマイトの娘の私が居るという理由によってヒーローが警護により注意を向けて居られるようにという理由から通過人数が大幅に減らされた事の煽りをモロに受け、思うように体育祭で結果が残せませんでした」

 

 

「インターンに呼ぶための学生を見ていたらその分警備が手薄になるから、数を減らすだけでヒーローの注意力がグッと上がるのよ」

 

 

「オールマイトは貴方が娘と知らなかったけど、ヴィランの中にはそう言ったことを知れる個性の奴が居るかもしれないし、オールマイトの血縁者はそれだけで非常に狙われやすいからね」

 

 

 

なんたって、No. 1ヒーロー、多くの人から信頼される反面、憎悪を向けられることもやっぱり多い

 

 

 

「本当にね、体育祭で世間的に私がそうだって広まってから面白いくらいにヴィランに襲われるよ、特に一番死ぬかもしれないと思ったのは脳無に追いかけられた時だね、背中の切り傷だけで済んだのはエンデヴァー のお陰だよ、ほんとエンデヴァー 大好き」

 

 

「エンデヴァー にお礼の手紙を送っておくよ」

 

 

それは、父親として感謝の手紙を送るって事だろうか、それならやめたほうがいいと思うぜ、オールマイト

 

 

「自分でメールしたし、電話もしたからいらない」

 

 

「私も君の連絡先知らないのにエンデヴァー は知ってるのかい!?」

 

 

「うん」

 

 

 

ゲーンッというのかエフェクトが見えそうなほどオールマイトは落ち込んでしまっている

 

 

 

 

「おい、読解、オールマイトが泣きそうだぞ」

 

 

「エンデヴァー は10年以上前にヴィランから助けてくれて以来ずっとファンなの、と言うのが表向きの理由で、本当は普通に事務所がしっかりしててサイドキックとの連携具合とかが、ヒーローは仕事って感じがして好きなんだけどね」

 

 

 

暗にオールマイトのサイドキックがいない環境をディスってるのだろうか

 

 

 

「トドメを刺してやるな」

 

 

どんよりとした影が差し、いい歳した大人のオールマイトのその姿は居心地のいい姿では無い

 

 

「ついでにオールマイトは私の事ををチャチャッとエンデヴァー に押し付けてヴィランの退治に向かった、それが最適だったとはいえ、酷いよね、誰狙いか分からなかったとはいえ、ヴィランの最優先殺害対象の私から離れるなんて」

 

 

「えっ!?そんな事をしてしまっていたのかい!?もしかしてそれが原因で私の事を嫌いに!?」

 

 

「いや、あの時は確かにそれも原因で嫌いだと感じたけど、今考えるとオールマイトは結局ヴィランを倒したし、あれは状況的に仕方なかったって思うから特になんとも」

 

 

あっさりとした否定はあんなけ話しておきながら本当になんとも思ってないという感じなのでなんというか拍子抜けだ

 

 

「相性ってあるよね、ヴィランとっていうよりも事件発生時の環境っていうか」

 

 

「君が無事で良かったよ、でも、ならどうしてオールマイトの事が嫌いなのかな?」

 

 

 

校長がベッドの上にもしょもしょ上がろうとしながら聞くので、未だに重たい影を背負ったオールマイトの方に皆して視線を向ける

 

 

 

「……………No. 1、心当たりとかないですか?」

 

 

「……………な、ない…」

 

 

顔を背け、明後日の方向を向いてしまったオールマイト、それはあるって言ってるような仕草だぜー?

 

 

「その返答は流石に心が読めなくてもあるってわかりますよ、オールマイト」

 

 

「まあ、いずれ話してくれるんじゃないですかね、まあ、今はそんな事はどうでもいいんで、物間の話に戻ります」

 

 

 

脱線していた話題を力技で読解がささっと戻したので、またオールマイトに行っていた注目が読解に集まる

 

 

 

「ああ、で、脱落者が多く出るような第1種目の何がいけなかったんだ?」

 

 

「先生方は知らなかったかもしれませんが、B組、実はクラスのほぼ全員で協力して第1種目の突破を狙ってました」

 

 

A組の個人でクリアっていうのに比べ、B組は結構協力している人が居た

 

 

「ああ、みたいだな」

 

 

「でも、結果はその協力に参加しなかった人と普通科に利用されたやつと通過、ほんの一部だけが通過、そして物間や拳藤自身も何気に通過、これ、先導してたやつからしたらかなりの責任ですよ」

 

 

「確かにな」

 

 

先導しておいて、ほとんどの人は脱落、でも先導していた人はしれっとクリア、まあ、協力してたなら、譲ってもらったりしての結果だと思うが、あまりいい話ではない

 

 

「まあ、ヒーロー科は全体的にお優しいからきっと正面切ってお前の責任だって詰る奴はいないと思うんですけど、それでも先導してた物間からしたらかなりの重圧を感じてしまう案件です

 

 

「って事は、精神がまだ未熟なのに、ケアを怠った大人の責任は重たいって訳だな」

 

 

今度はオールマイトではなくブラドが重たい影を背負った

 

 

「そゆこと、正直本人への罰はこのぶっ倒れたのと、死ぬほどキツイ夏合宿の補修でいいんじゃない?このぶっ倒れ、後に引くし、今後個性を使っていく上でかなりのトラウマだよ」

 

 

ハハッと乾いた笑い声を上げている姿は普通にちょっと怖い

 

 

「ああ、情報収集をする事は自分が有利に立つ為に大事だと教えておきながら、それが裏目に出てしまう処置を取ったのは教師である俺の責任だからな」

 

 

「それも、体育祭だけではなく期末試験も情報収集が仇になりそうですしね、まあ、今回はA組の方へも話が通ってるので条件は同じですが」

 

 

「ああ、A組の奴らも頭を使う気になったのか」

 

 

消太がどこか感心したように言うが、その言い方なんか、貶してるみたいだぞ

 

 

「そんなあの子達が馬鹿みたいな言い方やめないよ、相澤くん、自分のクラスでしょ」

 

 

「まあ、頭を使いすぎても下手打ってしまうって言う無駄な難易度の高さというか、その、脳筋具合は結構この学校ありますよね」

 

 

「まあ!否定はできないよね!」

 

 

校長はハッハー!と笑い飛ばしたが、あんまり笑える内容ではない

 

 

「まあ、期末は頭使う方の戦闘試験ですし、脳筋なだけじゃ無いですよね」

 

 

「当たり前なのさ!」

 

 

今度は小さな手で胸を叩いた、これはいい内容だな

 

 

「じゃあ、私もう今日はこのままここで寝ますね、そろそろ物間起きると思いますし、彼には特別な処罰はなし、これから先絶対に風当たりが強くなる事自体と私の個性の反動でぶっ倒れた事が罰と伝えておいてください」

 

 

 

そう言って起き上がっていた布団に戻り、一瞬で寝転んで寝息を立て始めた

 

 

 

「最早早業ね、相澤くんと一緒だわ」

 

 

「俺、こんな、説明だけしてさよならって感じじゃな……いや、割とこうだな」

 

 

「終礼まで寝かしといてやるか」

 

 

 

そう言っている内に物間が軽く呻いて目をゆっくりと開けた









もうそろそろ楽しい明るい話書きたい!
シリアスなんてもうしんどい!
もうちょっとで、楽しい話を私は書くんや!!


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50話

今回は焦りましたって事で2連投!


50

 

 

 

 

side・心操

 

 

 

 

物間はあれから一度心理の元へと来て、かなり深く頭を下げ、誠心誠意謝罪してくれたそうだった

 

 

正直、先生の許可無しで個性を使い心理に危害を加えた人間が謝罪のみで許され、特に罰がないのは納得できないが、被害者は心理、彼女が許すというなら俺には何もできない

 

 

だが、ふとした瞬間などには、まだ俺の顔には不満と書かれていたか、頭の中でかなり不満だと思っていたんだろう

 

 

俺の事を見て、心理はクスッと微笑みを浮かべた

 

 

 

「今日のお昼ご飯は体育館の裏の階段で2人きりで食べよう」

 

 

「またそんな人気のない、そこ告白スポットの1つだろ」

 

 

「まあまあまあ、気にしなさんな」

 

 

 

ああ、これは何か犯罪ではないけど世間的にあまりよろしくない、主に心理にとって得のある話だなと確信した

 

 

 

 

 

それから、授業を受け、お昼の時間になるなり、今は黒髪黒眼鏡のどこにでもいるな真面目な男子生徒の姿をした心理と一緒に人気のない方へと向かう

 

 

 

「物間のさ、私実はちょっと仕組んでたんだ」

 

 

「は?」

 

 

初っ端からあまりに驚きの事実で頭の処理がちょっと追いつかない

 

 

あれ、仕組んだって、何、え?どゆこと?

 

 

あまりに混乱していると、心理に落ち着いてと言われながら深呼吸を促され、一度平静になった

 

 

「まあ、仕組むといっても、なんていったらいいんだろ、あそこは危険地帯ですよって口頭で一回だけ注意はしたけど、その危険地帯に目に見える危険はないし、そこを避けて通れば回り道になってしまう上に、黄色いテープで囲ってもなければ、注意喚起の看板もないって感じ」

 

 

「あー、で、案の定物間は入ってしまったって訳か」

 

 

「そゆこと」

 

 

当たり、と人差し指を立てている姿はいつもの解説モードに入った時の心理のくせで、俺は結構好きだったりする

 

 

「でも、個性をコピーされて何か心理に利点あったか?」

 

 

正直死ぬ気で救護をしなくてはならなくなって、不利益を被ったようにしか感じない

 

 

「物間の副作用が見れた、私の個性をコピーすればどうなるかの」

 

 

「それの何がいいんだ?」

 

 

「昔、大体7歳位の時に、人の個性を借りれるという個性の私達より四回り、つまり丁度二世代位上にちょっと貸してって借りられたの」

 

 

立てていた人差し指のさきをクルクルと回しながら昔の話を始めた

 

質問の答えになってはないが、関係のない話をこういう時にブッ込んでくるタイプではないので素直に聞く

 

 

「人の個性を借りれるって二世代上にしてはかなりの強個性だな」

 

 

「んー、いや、借りれる個性は一日一人まで、しかも使用可能率はわずか50%ってところだったから、そこまで強くは無いかな、異形系とかはそもそも無理だし」

 

 

「結構縛りが多いな、で、借りられてどうしたんだ?」

 

 

まあ、その人が強個性かどうかは今然程重要ではないので、続きを促す

 

 

「借りた瞬間、痛む頭を抑えて胃をひっくり返したみたいな勢いで吐き、それから尋常じゃない量の汗をかいてからの、意識混濁で、そのまま意識不明、ついでに目覚めてない」

 

 

くるくると回していた指の動きをぴたっと止まったのが、まるで動いていた心臓が止まってしまったみたいで不吉で、思わず聞いてしまった

 

 

「も、もしかして、その人は亡くなってしまったのか?」

 

 

「いや、死んでないよ、まだね、ただ、正直今の医療では時間の問題だと思ってるし、たとえ目覚めることができてもどうにもならない脳の障害がかなり残る」

 

 

淡々と話す心理の横顔からは、感情というものが抜け落ちていて、何も読み取れない

 

 

「でね、そんな事があったから私そういう人の個性を使用できる系統の個性の人を物凄く避けてと通ってたし、万が一にも二の舞を出さないように気を付けてたの」

 

 

 

そこで言葉を切り、グッと両手を握り、震えるほどの力を込めていて、それの力の入り具合や肩の強張りは心理の過去の出来事に対する怯えを表してるのに、相変わらず表情だけは感情が抜け落ちたままだった

 

 

 

「自分で扱い切るのも困難、人が使えば再起不能、こんな個性を使えるキャパシティを持ってる人は多分自分がおばあちゃんになる頃にならないと居ないと思ってたの」

 

 

「でも、見つけてしまったのか、コピーという個性で、ヒーロー科に入学できる程の運用性があり、キャパシティも大きい物間を」

 

 

 

俺の言葉に対して深いため息をつき、組んでいた手を解き、顔を覆ってしまった

 

 

 

「自分の個性を扱い切れないのは分かってたの、でもね、どうしても、どうしても抑えられなくて、つい罠を仕掛けてしまった。

 

けどね、自分で仕掛けておきながら、やっぱりかかると怖くなって、また、昔のようになってしまうって思って危険だって教えたの。

 

なのに、せっかくの忠告を無視して個性を使ってきた」

 

 

顔を覆っていた手を離し、隣に座った俺の手を両手で急に握ってきた

 

 

突然のことに驚きながらも、辛そうな心理の顔を見て、そっと握り返す

 

 

 

「結局私はさ、向かってきた物間や拳藤の2人を本気で止める気は無かったの、忠告を聞かなかったのは2人だ、個性を使ってきたのは向こう、私は悪くないって言い訳してさ

 

先に人を煽って原因を作り、罠に誘導したのに被害者面して本当、何やってんだろね」

 

 

心理の自虐的で悲痛な表情を見てられなくて、握った手を引っ張り、体を寄せて、頭を胸元に抱えると、握っていない手で胸元が軽く握られる

 

 

「心理、そんなに自分を責めるな、確かに心理も煽っていたけど、始め絡んできたのは物間の方だった

 

それに、心理が仕掛けた罠にわざわざ危険だと教えてやったのにかかったのはあいつらの意思だし

 

そこまで気に病む必要はない」

 

 

「ありがとう、人使は優しいね」

 

 

 

悲しそうな無理に作った笑顔で言われた言葉は、その言葉の裏に込められた"私は優しくない"というのが痛いほど分かる言葉だから、首を横に振って否定する

 

 

「そんなに自分を卑下するな、俺も優しくない」

 

 

結局忠告を聞かなかった物間の為に心を痛めれる心理が優しく無いなら、俺も優しくなんかなくていい

 

 

「ありがとうね、人使」

 

 

照れた表情でお礼を言う心理はなんだかとってもいつもより可愛く見えた

 

 

 

「さてさて、色々話したけど、まあ結局副作用とかの具合とかは見れたのは良かったし、私の糧にさせてもらうよ、起こってしまった事はもうどうしようもないしね」

 

 

「筋肉痛の分だな」

 

 

「後、変装を変えた手間賃かな」

 

 

 

ニヤッといつもの心理の悪戯っ子みたいな笑い方に戻り、ようやくお昼ご飯を一緒に楽しく食べ始めた

 



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