手間のかからない男 (筆先文十郎)
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手間のかからない男

 ファンファンファン

 

「くそくそくそ……!」

 バックミラーに映る赤い光。後ろから聞こえてくる警報を聞きながら男は顔を覆っていた覆面を無雑作に助手席に投げつけた。汗で髪がベッタリ張り付いた素顔には苦々しい表情が刻まれていた。

 ハンドルを握る手は汗でぐっしょりと濡れていた。男は気持ち悪さを感じていたが汗を拭う余裕はなく、そのままハンドルを握りしめていた。

 事の発端は1時間前。男は大金持ちで有名な老夫婦の家に忍び込んだ。

 防犯システムを無効化し、老夫婦が眠る寝室に忍び込んだ男は包丁で脅して老夫婦に金庫の開け方を聞き出した。その後金庫から金目の物を奪うと、騒がれないように老夫婦の両手足、口を布で縛り逃走した。

 時間にしてわずか数分。男の計画通りだった。

 唯一にして最大の誤算は男が老夫婦の家に侵入するところを近所の通行人に目撃されたこと。

 通行人はすぐさま警察に連絡。男は家から出てくるところを警察に見つかってしまったのだ。

 男はすぐに用意していた車で逃走。男の車を追ってパトカーも走り出した。

 男はパトカーの追跡を逃れようと人気のない暗い道に車を走らせる。その後パトカーが続く。

「しつこい奴だ!」

 ガタガタと揺れる山道を運転しながら苦虫を潰した顔でバックミラーに映るパトカーを見た後

 

「え?」

 

 何かが破裂した音が男の耳に届いた。その後、車がガタガタと揺れる。タイヤがバーストを起こしたのだ。

「あぁ!? あああぁぁぁっっっ!!??」

 男は必死になってハンドルを操作するが車は言う通り動かない。最悪なことにパニック状態になった男はブレーキペダルではなくアクセルペダルに足を置いていた。

 男はペダルを思いきり踏み込む。

 

 ブオォォォォォンンンッッッ!! 

 

 車を止めようとした意思に反して車は一気に加速していく。そして

 

 ガシャァァァァァァンッッッ!! 

 

 ガードレールを突き破り、男は乗っていた車と共に崖下へと転がり落ちていった。

 

 

 

 翌日。

『立入禁止 Keep Out』と書かれた黄色の規制線が張られた中に、複数の警察官たちが実証見聞を行っていた。その様子を大勢の野次馬がガヤガヤと見ていた。

「ひでえな」

 通行人 A が呟く。

「そうだな」

 隣で聞いていた通行人 B が答える。

「しかしあれだな」

 通行人 A は視線の先にある潰れた車とその場所を見ながら呟いた。

「墓地に突っ込んで死ぬなんて……。本当に手間のかからない男だなぁ!」

「そうだよな!」

 通行人 B は A の言葉に笑いながら答えた。

 




親に見せたら「いやいや。警察や墓の持ち主などに手間かけさせてるじゃん」と突っ込まれました(^-^;


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何もしない殺人

男は何もしない。ただ見ているだけ。行動もせず、ただ見ているだけ。


 俺は電車のホームで電車が来るのを待っていた。

 そんな時。目の前からフラフラとおぼつかない足取りで一人の中年男性が歩いてきた。どうも酔っ払いらしい。中年男性はまっすぐ歩いているつもりだろうが体は徐々に線路の方へと向かって行く。

 

 これは落ちるな。

 

 急いで中年男性を支えたり引っ張るなりすれば線路に落ちることはないだろうが、俺は特に何もしなかった。

 そして俺の予想通り、中年男性は線路に落ちた。

 中年男性は気絶したのかうめき声一つ上げない。

 その様子を見ていた中年女性がキャーと悲鳴を上げる。パニック状態の彼女は気づいていなかった。自分の近くに非常ボタンがあることを。

 そのことを俺は教えることも自分が押すこともなく、ただ様子を見ていた。

 そんな時。数人の若者がホームへとやってきた。そして女性の悲鳴で若者たちは線路で倒れている中年男性に気づき驚愕。助けようと線路へと降りた。

 

 バカだな。

 

 俺は若者たちを見てそう思った。若者たちは自分に体力があるから中年男性を持ち上げようと思ったのだが、線路からホームとの距離はかなりある。さらに言えばこの駅はローカル線で線路は狭くホームの下には隙間がない。つまり電車が来れば逃げ場はどこにもないということだ。

 さらに言えば今は雨が降る夜。電車の運転手から見れば視界が悪く、また男たちの服装もどちらかと言うと暗いため、彼らの存在を認識するのに時間がかかる。ましてや電車はすぐには止まれない。

 カンカンカンと踏切の音がする。 その音で若者たちはようやく電車がすぐ近くまで迫っていることに気づく。若者の一人が「今すぐホームに上がって逃げよう!!」と提案するが「そんなことできるか!!」、「そんな暇があるならさっさと持ち上げるんだ!!」と他の若者たちは耳を傾けない。

 そして運命の時はやってきた。

 ホームに侵入する電車があと数十メートルでホームへ突入するという距離で運転手はようやく彼らの存在に気付き急ブレーキをかけた。しかし雨で線路は濡れブレーキの効きは悪く電車は「スピードを落としていないのでは?」と錯覚しそうなほど止まらない。そして

 

 巨大な鉄の塊が肉を吹き飛ばす重い音。この世のものとは思えない断末魔の叫び。天からの雫に混じってホームまで飛び散る赤い雨。

 

 その光景を間近で見てしまった中年女性は悲鳴をあげて気絶し、惨劇の音で気づいた駅員がホームを確認すると、急いで駅舎へと戻った。

 十数分後。数台のパトカーと救急車が駅に到着。検分をしたり亡骸を移動させたり、遺族らしき者が泣き叫んでいるのを、俺は遠くから眺めていた。

 




元駅員の筆先文十郎からのお願いです。
線路に物を落としたり人が落ちても拾ったり助けようとせず、まず駅員に伝えましょう。電車が来る時間じゃなくても貨物列車が来るなどが考えられます。
決して線路には入らないで下さい。


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苦痛の生、地獄の死

死んだら幸せになれる。そう思っていたのに……


 俺は上から白い服に包まれた、紙のように白い()を見ていた。

 昨日、俺は自分で自分の命を絶った。上司から課せられる過度なノルマに耐え切れなくなり、そのストレスがもとで自ら命を絶つ行動に移したのだ。

 

 もうこれで苦しまなくなる。

 

 そう思って。だが現実は違っていた。俺の想像したものではなかった。むしろもっと……想像していたものよりもひどく苦しいものだった。

 俺の遺体にすがりつくように泣き叫ぶ母親。そんな母親に 何という言葉をかけていいのかわからず、ただじっと見つめ涙をこらえる父親。そんな両親を見ながら「何で死んだんだ……」、「くそっ!」と歯を食い縛り悔しそうに呟く友人達。

「……ッ!」

 そんな光景に耐えきれず俺は外に出た。

 庭に移動すると駐車場となっている近くの空き地に1台の車が停車した。数人の男達が降りていく。その中に顔も声も見たくも聞きたくもない、俺を自殺に追い込んだ上司が降りてきた。

 家に向かって歩く中、上司は離れたところでぼそっと吐き捨てるようにつぶやいた。

 

「この忙しい時に勝手に死にやがって。本当にふざけたやつだ」

 

 俺は怒りで頭が真っ白になって叫んだ。「誰のせいで俺は死んだんだと。お前のせいで俺は死んだんじゃないか!!」と。しかしそんな俺の叫びも誰の耳にも届かない。

 上司はその後も周りに聞こえないようぶつくさと俺に文句を言うだけだった。

 泣いてほしくない人間が泣き苦しみ、苦しんでほしい人間からは罵倒される。そんな想像していなかった状況に、俺は頭を抱えながら叫ぶしかなかった。

 

 

 葬式が終わった後、おしどり夫婦と評判だった両親は離婚した。

「あいつが自殺したのはお前のせいだ!!」、「あなたがちゃんと相談にのってあげさえすれば!!」と俺の自殺の原因が相手にあると口論になったのが原因だった。

 友人達の中には「俺があいつをもっと気にかけていれば……」と精神的に参りノイローゼになる者もいた。

 俺は後悔した。俺の家に寄り悲しませたくない人は悲しみ、苦しんでほしい奴は後悔や苦悩もせず、自分の犯した罪に苛まれるどころか何も思っていないということを気づいて。

 

 生き返りたい。自殺する前に時間を戻したい。

 

 そう心の底から望んでも、状況は何も変わりはしない。

 苦しみから逃れるために死を選んだのに現実はさらなる苦しみを俺に与えた。

 死んだ俺には何も変えることはできない。ただこの逃れない地獄のような苦しみをただ受け続けるだけ。

 死ぬ前よりも苦しい絶望的な苦しみをただ受け続けるだけ。

 

 

 

 生きている頃よりも更に酷い苦しみを味わうと知っていたら……死ぬなんて思わなかったのに。

 

 




筆先文十郎も高校時代のいじめと仕事のミスによる居場所の無さで自殺しようと考えたことがありました。
しかし家族や親友の存在、元広島東洋カープの新井貴浩氏のおかげで今もこうして小説を投稿しています(新井氏については『奥さん、貸した金が払えないなら身体で払ってもらおうか!』の『親父が隠していたAVを、俺は見る!!』の後書きを見ていただけると幸いです)。

もし自殺しようと考えたら。「何で自殺しようとしているのか?」、「解決方法は自殺するしかないのか?」。そして「この話の主人公のように死んでから生きていた頃より苦しい思いをしないか?」を考えてみて下さい。

この話の主人公のような人がいないことを筆先文十郎は祈っております。


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意志なく動いた人生

誰かの顔色を気にしていた男が最後に何を思うのか。


 あぁ、なんてつまらない人生だったんだろうか……

 薄れゆく意識の中で俺はそんなことを考えていた。

 

 世界には二種類の人間がいる。自分の好き勝手に生きる『悪い奴』と『いい人』だ。

 俺は『いい人』を選んだ。万人に受け入れられるような行動を目指し、その結果。超弩級(どきゅう)に真面目で融通の利かない人間。世の中から認められている『正解』しか選ぶことができない人間に。

 間違えないこと。他人に非難されないこと。そればかりを気にして生きてきた。親や教師の顔色ばかり窺っていた。

 テストでいい点を取り、他人に好かれるようなことをする。そればかりをしてきた。 親や教師に言われるがまま、評価の高い大学に進学し、評価の高い有名企業に就職した。

 

 就職後は毎日律儀に定時に会社に出社。残業、ひどいスケジュールの出張をこなし、時期が来れば単身赴任。有給なんて取れず、休日出勤も当たり前。食事はインスタントやレトルト、家には寝に帰る状態になっていた。

 

 誰かに言われるがまま働き続けて……気づいたら俺は病院のベッドに横になっていた。うっすらと聞こえてくる医者と看護師の話し声から、俺は生きていられないのだと悟った。

 

 そうか。

 

 俺はこの時になってようやく気がついた。

 俺は人生の中で自分の意志で勝負と呼べることに挑まなかったということに。親や教師に言われた通りにすれば、負け=傷つくことはなかった。俺の人生には誰かに負ける劣等感や屈辱などはなかった。だが同時に充実感と呼べるものもなかった。負けることを恐れて勝負から逃げ出してきたのだから何も生まれないのは当然だった。

 最後の時になって俺は気づく。悔いを残さないためには挑戦し続けるしかなかったということに。もちろんそれはとても困難な道のり。だがそんな時に勇気を出して一歩踏み出すことが人生を切り開いて行ける。

 

 そんなことに今さら気づくなんて。

 

 だがもう遅い。今の俺は指ひとつ動かす力すら残っていなかった。元気な頃ならば意識せずに行っている呼吸さえも口や鼻に取り付けられた機械無しでは困難になっていた。そして同時にこうも思う。

 

 いま元気になったとして、何をすればいいのだろう。

 

 と。

 今まで親や教師、世間が欲する『正解』の行動を取る。それが俺の人生そのものだった。そんな俺がその『正解』にそむくことなど出来るわけがなかった。

 

 もういい。寝よう……。

 

 俺はゆっくりと目を閉じた。ピッピッピッと音を鳴らしていた心電図の音がピッ──と変わるのを、俺は他人事のように聞いていた。

 

 




志村さんの49日まで投稿するチャレンジをしている最中ですが、なんか暗い話ばかり……。

この主人公は極端ですが、皆さんも勝負に挑むことすら「面倒だ」と思う前にやりたかったことは越えたい難関に挑戦してみて下さい。例え負けることになっても。


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罪、積み、

罪を積み重ねた者の最後は、


「この人、チカンです!!」

「え?」

 私の悲鳴に男は狼狽(うろた)える。男の周囲にいた乗客達が男を取り押さえる。

 私に訴えられた男は「違う! 私はやってない!」と言う。しかし周囲は聞く耳を持たない。

 ちなみに男は本当にやっていない。

 なぜならば私に痴漢をしたというのは真っ赤な嘘だからだ。

 そう。私が痴漢の被害にあったというのは私の自作自演だ。だけど私はそうだと悟られないようにシクシクと嗚咽を漏らす。そうすることで私が『痴漢にあった可哀想な女子高生』という印象を周囲に認識させる。

 私の演技に騙され、周囲は男が本当に痴漢をしたと思い込み、本当のことを言う男を非難する。

 そうして私は『男が本当に痴漢をした』とでっち上げる。

 こうなっては男の取るべき方法は二つだ。

 刑務所に入れられるか示談金を支払うかだ。社会的信用の失墜を恐れて、男は示談金を支払った。

 そう、私の目的はこれだ。

 自分がこんなことを考えているとは思わない、従順そうで可愛らしい容姿であることを利用して冤罪をでっち上げるのだ。そうして痴漢の実行犯に仕立てあげて示談金を支払わせる。

 こうして私は電車、バスと様々な場所で男達を痴漢の犯人仕立てあげ、多額の示談金を支払わせた。

 私は笑いが止まらなかった。普通の女子高生が欲しいバッグや靴、アクセサリーを私は思うがまま買うことが出来るのだから。

 唯一「俺はお前を探しだして復讐してやる!」と言った男がいたが、その男は痴漢の罪に問われて刑務所に送られた。

 判決は有罪とのことだが、私は興味がなかった。

 

 大学の推薦が決まった頃、あまりの痴漢被害の多さに周囲から疑われ始めた私は痴漢のでっち上げを渋々ながらやめた。大学への準備もあったからだ。

 

 そして。大学への推薦が無事終わり、来年から大学に進学することが決まった時だった。

「来年から始まる大学生活。今より自由を満喫して素敵な彼氏を見つけて、そして……ん?」

 そんな夢と希望の大学生活を想像しながら家へ帰る道中。誰かに見られている気配を感じて、私は振り返った。しかしそこには誰もいない。

「……気のせいかな」

 そう思い、私はその場を立ち去る。

 しかし誰かに見られているという感覚は行く先々で感じるようになる。

 私は意味が分からなかった。なぜ自分が誰かに見られているような感覚に陥っているのかと。

「……!」

 私は駆け足で家へと向かった。逃げるようにして走った。得たいの知れない不気味な感覚は無くなるどころか一層強く感じられた。

(早く、早く早く早くっ!!)

 恐怖でいつも以上に家までの距離が長く感じられる。小刻みに揺れる手で鍵を差し込み家に入る。鍵だけでなくチェーンロックを掛け、覗き穴を見る。そこに誰もいないことを確認した私はすぐさま自分の部屋へと入り鍵をかけた。

「……ふぅ」

 私は小さく息を吐き、その場にへたりこんだ。

「ここまで用心しておけばもう安心……え?」

 その時、ふと私の前に影が入った。私は見上げる。そこには一人の男が立っていた。

「ッ!?」

 私は恐怖で声が出なかった。

「復讐の時だ」

 男はそう呟くと私の首に向かって何かを降り下ろした。

 首に伝わる焼けるような痛み。首から液体が漏れる感覚。そして脱力感。強制的に遠のく意識。

(……え、……何?……何が、起こった……の……?)

 次第に狭まる視界。先ほどまで想像していた明るい世界が閉ざされていく絶望感が私を無慈悲に支配していく。

(…………)

 瞬く間に私の心を支配した黒い感情によって、私の頭は何の言葉も浮かばないほど完全に麻痺してしまった。そんな何も考えられなくなった頭に、『罪』という言葉が浮かんだ。『罪』は『積み』へと変わり『詰み』と変わったところで

 

「──」

 

 



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なぜ俺はこうも醜くなったのか……。鏡を投げ捨てるほど吐き気を覚える自身の顔に、男は自分の人生を振り返る。


 イギリスの作家、ジェームス・アレンはこのような言葉を残した。

 

 醜い(しわ)は愚かな思考、理性を欠いた思考、傲慢な思考によって刻まれる。

 

 と。

 もういつ死んでもおかしくないという歳になって、儂は気づいてしまった。なぜ自分の顔が好きになれない……いや、自分の顔を見ないように鏡を置かないほど嫌いになったのかを。

 思い返せば儂の人生は思い上がりと挫折、卑屈を絵にしたような人生だった。

 外交官の父を持ち母親は華族の出身。血筋や恵まれた環境、全てが生まれる前からあった。儂は心の底から思った。『自分は選ばれた人間なのだ』と。

 一流の家庭に生まれた儂は泣く子も黙る名門中高一貫校から一流大学へと進学した。

 だが儂の人生はここから狂い始めた。

 今まで当たり前だったことが当たり前でなくなったのだ。

 幼少の頃から完璧な環境で最高に効率の良い勉強術を儂は享受してきた。

 自分に分からないことがあっても質問すれば『いつでも』、『すぐに』、『完璧な模範解答を』、『最高に分かりやすく』、『懇切丁寧』に教えてもらえた。

 ただレールに乗っているだけで試験に出る必要にして十分な知識を、効率的に習得できるカリキュラムでひたすら受身でこなしてきた。

 だがその完璧な環境を取り上げられた瞬間、儂は木偶(でく)の坊に成り下がった。

 何をすればいいのか分からなくなってしまったのだ。

 今思えば社長などの要職に就いている者は、時間をかけて自分の頭で解決方法を考えたり 試験には出そうにない分野を独自に勉強したりなどしていた。

 それを見て、儂は「なんて非効率で無駄なことを!」と心の中で笑っていたが……彼らは本当の意味で学んでいた。

 答えが用意されていない、そもそも正解があるのかも分からない問題にどのようにすれば答えを導き出せるのかという勉強を。

 何とかして単位を取得し、両親のコネで銀行員になった儂は失敗をしないことを重点に誰かの意見に後追い、猿真似。成果を得るため愛想笑い、世辞。自分が被害を被らないように言い訳、責任のなすりつけ……そればかりが上手くなった。

 心の内を明かせる友などいなかった。明かせばそれを利用されるからだ。

 こうして儂は友も恋人も作らず、ただ失敗しないよう生きていた。

 その結果。信頼する友も恋人もいない、成果のみを求めてリスクや責任だけは避ける、誇れることのない人生、金だけはある醜い老人へと変貌した。

 

 もし戻れるなら……自分の力で答えを導き出せる、『本当の勉強』がしたい。

 

 そう願った所で時は戻ることはない。

 儂は部屋の一室で泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




社会人になって十数年。勉強とは高校、大学までの出来事……そう思っていました。しかし今では社会人になってからが「本当の勉強なのだ」と思うようになりました。

何も学ばなかった結果。安易ややりたくない行動しか出来ずに年をとったという事実、腐ってしまった性根によって醜い姿だけが残る。

私を含めて皆様がこの主人公の体験が『自分事』にならないことを祈ります。


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出世や成功なんてろくなもんじゃない

勝ち組と言われる男が酒を飲みながら一人、出世や成功に関して呟く。はたしてその本音は


「ふう~」

 風呂から上がった俺はワインセラーの中からとっておきの一本を取り出し、ワイングラスに注ぐ。そして冷蔵庫から適当なつまみを取りだし、お気に入りの音楽をかけて、ソファーに座りながらそれらを楽しむ。これが若くしてとある会社のトップに立つ俺の最高の贅沢だ。

 好きなことを好きなようにできる。これぞ成功者の特権だ。

 自分自身が得た特権を噛み締めていると、どうもそれを羨む者の顔が浮かび上がる。

 

 世の中には成功したいというやつは山のようにいるが、「どうして成功したいか?」と聞かれてその理由を言えない奴の方が多い。なぜかって? それは成功した旨みを知らないからだ。

 

 はっきり言おう。成功するというのは『何でも好き嫌いで決められる人生を手に入れられる』ということだ。その特権はどんな娯楽にも(まさ)る。

 

 だから俺は出世しそうな奴にはこう言っている。『成功したら成功したで大変だ成功するなんてたまったもんじゃない』、『出世したら出世したで大変だ出世なんてするもんじゃない』 と。

 なぜそう言うか。それはそいつらに成功や出世の旨味を知られて、うっかり下克上されないためだ。

 成功すればこの先一生ずっと好きな奴らと好きな仕事だけをやっていける。嫌いな奴や嫌いな仕事が近づいてきたら速攻で断ることができる。

 嫌いな仕事は全て部下に丸投げできるのも特権だ。

 上司や嫌味な先輩に「こうしろ」「ああしろ」と言われず、自分の好きなように工夫して仕事に取り組むこともできる。

 大体人間は好きだからやっていけるのだ。嫌いなことを嫌々やっていては成果だって出るはずもない。そんなんで成功してしまった日にはお先真っ暗だ。なにせ嫌いなことを延々とやり続けないといけないのだから。

 周りがいい人だからといって大して好きでない女と付き合い結婚するなんて考えただけで寒気がする。

 どっかの偉人が言っていたが。この世で最も重いものは大して愛していない女が身体にのしかかることだ。と言っていたような気がする。そんなものはこっちから願い下げだ。

 

 ……話がそれてしまったな。

 結局俺が言いたいのは。『成功なんてするもんじゃない。出世なんてするもんじゃない。好きなことで成功なんてした日にはこの世で地獄を生きるようなもんだ』ということだ。

 くれぐれもわが社に入った際はこのことを重々理解してもらえると助かる。

 あと部下に俺がこんな独り言をいっていたということを内密にしてもらえると助かる。

 

 

 それじゃあ、良い夜を。

 俺の独り言を真に受けて、じゃなくて真摯に聞いてくれた諸君に乾杯。




いやぁ、小説なんて書くもんじゃないですよ。自分が面白いと思っても読んでくれる人にとっては面白いとは限らないし。酷評をもらうともらうとでそれはそれで傷つくし。

いやぁ、本当に小説を投稿するなんて地獄以外何物でもないですよ(棒読み)。


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誰も見てはいなかった

他人は自分が思った以上に気にかけてなどいない……


 とある番組で聞いたことがある。

『自分に自信のない人間ほど他人の噂や評価を気にする傾向がある』って。

 その時は何の気もなしに聞いていただけだったが、今になってわかる。

 

 まさしくその通りだったなと。

 

 思えばその通りの人生だった。人から誉めて貰いたい、ちやほやされたい……。そのために俺は大好きな建築とは関係ない、大して興味のない経済の大学に進学した。

 大学を卒業し就職した後は、自ら進んでやりたくない仕事をやった。「今の時代は○○だ」、「今の社会に必要な資格はこれだ」、「現在流行しているファッションは……」、そう言ったものによく吟味せず飛びかかった。

 おかげで「本当に必要だったのか? 他に時間とお金を回した方がよかったのではないか?」という後悔と無駄な物だけが増えた。

 なんか違うと思った彼女も、「あんな人と付き合えるなんて!」という周りの評価で最終的には結婚した。しかしそれでも思う。

 

 本当は顔は決して美人とは言えなかったが、気も利いていろんなことも話せた別の女と結婚した方が良かったのではないかと。

 

 進学、就職、結婚……。どれも後悔しか残らない選択ばかりだった。

 人間誰しも人からよく思われたいと思うものだ。しかし俺の場合それが度を越すことになった。『自分が何をやりたいか』ではなく『他人が自分をどう見る見ているのか』。そればかり気にして生きてきた。そうして俺は縛られた、他人の評価に。

 もっとアニメや漫画などを見て、オタクと呼ばれる奴らと同じことをしてみたかった。バカみたいな格好で周りの迷惑にならない程度に騒いでみたかった。

 しかし今までのイメージが崩れて他人にどう思われるのかを恐れた俺は結局しなかった。

 仕事でも自分が「これはいい!」と思う企画も、周りの評価を気にするあまり周りに相談し、結果企画を横取りされる。その繰り返しだった。

 趣味もラジコンやプラモデルなどやってみたかったことではなく、ただ「カッコいい!」とちやほやされる堅苦しい本の読書、ピアノやバイオリンだった。

 おかげで俺は好きでもないことでしか周りの評価を確認することが出来ず、嫌々好きでもないことを続けるしかなかった。

 今にして思う。

 

 優先するべきは他人の評価より自分の満足。虚栄心の奴隷になるより等身大の自分の自由を感じることだと。

 

 嫌われてもいい。評価をされなくてもいい。失敗してもいい。結果につながらなくてもいい。ただ自分がやりたいことをする。やりたいことを行動に移す。

 

 それが重要なのだと。

 見栄や面子(めんつ)、世間体……そんなのを気にしすぎた結果、俺は不幸になった。

 病室で危篤の状態にもかかわらず、医師と看護師以外誰もいない。俺は思った。

 

 

 

 他人は自分が思った以上に気にかけてなどいなかったのだと。




人は評価を欲しがります。しかしその評価を得ようとするあまり本来したかったことよりやりたくなかったことを優先。その結果後悔だけが残る。それは誰しもが経験したことがあると思います。
また評価をもらえずやる気を失った。これも経験したことがあると思います。

過度に評価を得ようとするあまり、自身の正義を曲げたり無駄に落ち込んだり後悔したり……皆様がそうならないように筆先文十郎は祈っております。


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重要だと思わねぇか?好きなことをするって……

好きなことに熱中する人々を見て、男は一人呟く。


「重要だと思わねぇか? 好きなことをするって……」

 

 乗客のほとんどいない電車。ガタンガタンと揺られるのを椅子の上から感じつつ、窓から見えるサッカーに興じる子どもたちを見て、男はひとり呟いた。

 

(ガキの頃は夢中でやっていた。鬼ごっこやかくれんぼ。ゲームとか……しかし歳を重ねるにつれて熱中できるもの、好きなものがどんどん減っていく。そして気づけば仕事とその合間の息抜きだけの人生……いったい何のために生まれてきたんだろうな)

 

 男は自分の人生を振り返る。ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の学校に行き、ごく普通の会社に就職して今に至る。

 

 テンプレートみたいな人生だな。

 

 そんなことを男は思う。

 何か他のものを犠牲にしてまで熱中できるほどに好きなものを見つける。男にはそれを見つけることは出来なかった。だからどれだけ時間と労力を注ぎ込んでも気にならず、それどころかその活動自体が楽しくて仕方がないと思える人を、男は(うらや)ましく思えた。

 ふと頭の中に一流スターと呼ばれる人たちの顔が浮かび上がる。歌手、野球選手、サッカープレーヤー、プロ棋士……。

 

(彼らは少年少女の頃から発声練習、素振りや守備、棋譜を読むなど決して派手とは言えない。むしろ地味とも言えることを嫌々していただろうか?)

 

 男は自身のつぶやきに対して首を横に振る。

 もし嫌いだったらそんなことはすぐにやめていただろう。彼らは歌や野球やサッカーや将棋が大好きだったから、寝食を忘れて熱中しながら練習していたのだろう。

 これが実を結ばなければ今までしたことが全て無駄になる。そんなことも考えなかっただろう。その行動自体が楽しかったはずだ。そんな後ろめたい思考が少しもよぎらないほどに。

 そして、成功を掴む。

 得ようとする強い意志を持ち、得るために積み上げ、そして最終的にその夢を掴む。

 男は諦めた顔で小さく笑い、再び何の感情もない無表情に戻る。

 

(結局俺は見つけることができなかった。やりたいこと、好きなことってやつを)

(何なんだろうな、俺って……)

(俺は何のために生まれてきたのだろう……)

(幸せって……何なんだろうな)

 

 窓に映る自分の顔を、男はじっと見る。喜怒哀楽……どれにも当てはまらない、静かな顔がそこにはあった。

 

「重要だと思わねぇか? 好きなことをするって……」

 

 男は再び小さな声で呟いた。その言葉は同じ車両に乗る乗客に言ったのか、それとも自分自身に言ったのか。それは誰にもわからない。

 

 




小説を書く場所を提供してくださるハーメルンの関係者様、ハーメルンで投稿&読まれる強敵(とも)に、小説を書くのが好きな私がこの場を借りて一言申し上げます。

ありがとうございます。


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自殺を試みようとする男

突然職を失い、妻には通帳を持って目の前から去られて全てに絶望した男が自殺しようと道具を買いに行く。


 俺はどこにでもいるサラリーマン。……一か月前の話だが。

 なぜそうなったのか。それはギャグマンガなどでよくある会社が汚いことに手を出してそれが公になり即行で潰れたからだ。ちなみにヒラの俺は会社がそんなことをしていたなんて知るわけがなかったし、そういったことは一切していない。よって俺は刑務所のお世話になることはなかった。

 もっとも今の俺にとってそれがどうした? という話だった。家に帰れば通帳と金目のものと共に妻が消えていた。家は賃貸で無一文の俺はすぐに追い出された。

 ハローワークに行きながら何とか見つけた日雇いの仕事でインターネットカフェで寝泊まりする。

 そんな生活をして何とか凌いできた俺だが不景気のご時世だ。仕事は決まらず生命線となっていた日雇いの仕事もなく、インターネットカフェで寝泊まりする金もなくなった。

 

「……死のう」

 

 俺は疲れた。頑張っても頑張っても好転の(きざ)しすら見えないこの状況に。

 心身ともに疲れ果てた俺は町の外れにある雑貨店に入った。そこにあった練炭が目に入る。最終処分品ということで今の俺でも買える値段だった。

 俺は迷わず練炭の箱を脇に抱えて眼鏡をかけた禿げ頭の店主がいるレジに向かった。

「はい、毎度」

 俺はなけなしの金を店主に渡すと店を出ようとする。その時だった。

「よお、川爺(かわじい)。元気にしてたか?」

 いかにも、という五十代くらいの釣り帰りの男が店に入ってきた。

「おぉ、山坊(やまぼう)。どうした?」

 山坊と呼ばれた男は「昨晩海に出てよ」とニコニコしながら肩にかけていたクーラーボックスから大きな魚を取り出した。

「ほお、これは立派な(ぶり)じゃないか!」

 川爺と呼ばれた老人は眼鏡をクイッと持ち上げ男が取り出した魚を見る。

「じゃあこの鰤を煮付けで食おうじゃないか! 確か練炭あったよな。それで作ろうぜ!」

「す、すまん山坊。練炭はそこの人が──」

「あ、どうぞこれ、使ってください!」

 二人のやり取りを見ていた俺は練炭の箱をレジの机に置く。

「お、悪いね。兄ちゃん!」

 五十代の男は手際よく練炭を数個取り出すと店の七輪を持って店の中へと入っていく。

「あ、兄ちゃん!」

 奥に引っ込んだ男がひょっと顔を出す。

「急いで作るからよ、兄ちゃんも食っていけや!」

「あ、でも俺これから……」

「何か用事でもあるのかい?」

「い、いえ。少しだけなら……」

 これから自殺しようとしていたので、と言えるわけがなく俺はお邪魔することにした。

 店主と共に居間でテレビを見ながらどれくらい待っただろうか。

「待たせたな!」

 鰤や大根などが盛り付けられた大きな器と共に男が居間に入ってきた。机に置かれた鰤の煮付けからは食欲をそそる匂いが立ち上っていた。

「これで終わりじゃねえぞ!」

 男はホカホカの白ごはんと共にキンキンに冷えたビールを持ってきた。

「よし。それじゃあいただくとするかの!」

 店主の言葉とともに俺は「いただきます」と言うと鰤に手を付けた。

 

 ポタッ、ポタッ、ポタッ……

 

「お、おい! 兄ちゃん!? どうした!?」

 涙を流した俺に男が心配そうに声をかける。

「……う、美味いっす……」

 脂の乗った鰤が舌の上でとろけた瞬間、俺は不覚にも涙を流してしまった。ここ数日まともに食べずに公園の水が主食だった俺にとって、旬の鰤を煮付けにした料理は名料理人が作った高級料理にも勝る代物だった。

「美味い! 美味いっす!」

 俺は無心になって鰤や煮汁がほどよくしみ込んだ大根、白米を口の中に運んでいく。それらと一緒に流し込むビールが体中の細胞という細胞に染み込んでいく感覚を覚えた。

「いやぁ、いい食いっぷりだね!」

「こんな食いっぷり見せられたんじゃあ、これ出さない訳にはいかないだろう!」

 そう言って店主は冷蔵庫から一升瓶を取り出す。

「お、そりゃああまりの美味さに女房を質に入れてしまうと名高い『質入(しちい)れ』じゃないか! いいのか、川爺?」

「ええ、ええ! よぉし、今日は飲んで食って騒ぐぞ! 人間美味いもんがありゃ死ねねぇからな!!」

「……ッ! そうですね!!」

 

 人間美味いもんがありゃ死ねねぇからな!! 

 

 店主が何気なく言ったその言葉は、俺にとっては神の言葉のように聞こえた。そして俺の中にあった死のうという気持ちはきれいさっぱり無くなっていた。

 俺は店主と男と共に飯を食らい酒を流し込み、酔いつぶれて一晩お世話になった上にシャワーを借りた後、ハローワークに足を運んだ。

 

 

 

 そして一年後。俺は店主の店で男の釣った魚を(さかな)に酒を飲んでいた。

 

 

 




美味いごはんがあれば人ってそれだけで幸せなんですよね。


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他者から見た自分、自身から見た自分

人から羨ましがられる人生は当人にとって幸せなのか?


 年収数千万に10歳年下の若い美人妻と成績優秀で非行とは無縁の二人の子ども。住む家は家賃数十万の高層マンション。車は国産の高級車。身に着けている物は見る者が見れば一目で良い物と判断できる物ばかり。

 こんな生活を送っている男を多くの人間はこう思うだろう「何て幸せなんだろう、(うらや)ましい」と。

 そんな生活を送っている俺は……不幸だった。

 傍から見れば望む物すべてを手に入れていたような成功者に俺は見えるだろう。しかし俺自身幸せだと感じられなかった。

 まずこの成功は俺にとって鎖だった。会社の偉い人の目に留まった上に類稀なる強運を持ち合わせていた俺は、エレベーターで昇るかのように出世して一つの会社を任せられるようになった。そして今なお収益を上げ続けている。だがそれは俺にとって終わりの見えない綱渡りをしているようなものだった。

 若くして出世した俺に対する嫉妬と失敗を望む期待。自分の判断で数十人という従業員の生活を左右させてしまうプレッシャー。

 俺を憎む者、慕う者に弱いところを見せられないという精神的圧迫が俺を心の底から苦しめていた。

 妻や子どももそんな俺を尊敬している。俺には自身の感情を吐露する場所はどこにもなかった。

 そのような重要な立場だから自分の意思で心情を明かせる旧友に会うことも出来ず、会うのは仕事でならともかくプライベートまで会いたくない重要な取引先ばかり。

 もし俺がただの平社員だったら……そう思うことがある。

 そもそも俺は一人でいるのが好きだった。皆で一緒に行動したりするのが苦手で一人で黙々と作業するのが好きだった。しかしそんな生活を送りたいと思っても何をすればいいのか分からず周りに身を委ねてしまった結果、遂には出世という名前の檻に閉じ込められ逃げることの出来ない状態に追い詰められていた。

 元々プレッシャーに弱くしかも他人の人生を背負うことの出来ないほど一人が好きな俺に、今の地位はあまりにも重すぎた。

 俺は知っていた。自分がどのようなタイプの人間なのかということを。にもかかわらず俺は決断せず周りに流されるまま自分には合わないライフスタイルを受け入れてしまった。

 その結果。自分を偽り、どこにも安息の地がないプレッシャーに晒される立場に置かされ、自分の時間を大切な人だけに使うことが出来ず、「もしあの時こうしていれば……」という仮定の自分と比べて自己嫌悪する日々を送ることになった。

 時折この苦しみから逃れるために自ら命を絶とうと考えることもある。しかしここで自分が死ねば妻や子どもの将来は狂い、従業員たちが路頭に迷う。喜ぶのは俺の失敗を望む者だけ。そんな今の地獄よりもさらに生き地獄を味わう。そんなのは誰しもごめんだろう。

 

 こうして俺は自らを偽り続ける。

 

 心が身体を(むしば)み、命を絶つその日まで。

 

 




自己啓発の本などを読み、「人が幸せになる方法とは」を考えてみました。

①自分の時間を大切な人に使えるようにする。
②他人、「もしもあの時こうしていたら……」という仮定の自分と比べるのをやめる。
③自分を知りその自分に合った生き方をする。
④自分を好きになる。

いろいろあると思いますが、とりあえずこれらが私の思う人が幸せになる方法だと思います。

人生は一度きり。この小説を読んでくれた方はもちろん、読んでいない方も満足する人生を送ってほしいと筆先文十郎は祈ってます。


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生き様と死に様

 俺はH。結婚を控えた40になる男だ。

 色々な仕事をしてきたが向き不向きだったり勤め先の事情だったりと仕事が長続きせず定職に就くことが出来なかったのだが、数年前から勤め出した会社の社長から「正社員にならないか?」と誘われその会社に正社員として就職。そこで真面目に働き、行きつけの居酒屋で偶然出会った2歳年下の彼女と婚約が決まった幸せな男だ。

 そんな俺に高校時代の恩師である奥さんからの報せが耳に入った。

 同級生のMが亡くなったという報せだった。原因はぜんそくによる呼吸困難による窒息死だった。

「そうか……」

 俺はその報せを聞いた時、静かに目を閉じた。

 はっきり言って俺とMは特別仲が良かったというわけではない。お互い勉強が苦手で赤点を取っては担当教諭の呼び出しを受け補習を受けていた。

 俺は勉強はするけど覚えるのが苦手で点数が取れず、モチベーションが上がらないから勉強をしないタイプ。一方Mは「勉強する暇があるなら遊んでいた方がいい」という自堕落なタイプ。同じ赤点常連でもタイプが違っていた。

 あまりにタイプが違い過ぎるため俺達二人は親友と言えるほど仲良くなることはなかったが、同じ赤点を取る仲ということもあり連絡の交換はした。

 といっても向こうから連絡がくることと言えば自分の愚痴や自慢話とかばかり。こちらの話は話し半分という感じだったが。

 それでも少し感謝すると言えば。これから妻になる今の彼女と付き合えるようになったのはそいつのアドバイスのおかげなのだが。

 と言っても「俺、今気になっている女性(ひと)がいるんだけど」に対するアドバイスは「いいじゃん、告っちゃえよ! 女なんて星の数ほどいるんだ。だからその女にフラれた所で別の女に行けばいいだけの話じゃん!」という本気で俺のことを考えているとは思えないものだった。

 この時の俺は「コイツは他人事だと思って!」と内心ムカついてどうしようもなかったが、少し考えてみると「Mの言う通り、この人に告白してフラれても命を取られるわけではないし俺が一生結婚できないわけでもない」という考えに行きつくことができた。

 

 この人に断られたとしてもそれは縁がなかっただけ。

 

 フラれたらどうしようとかという迷いを消した俺は勇気を振り絞って彼女に近づき、少しずつ会話をしたりするなど接触する機会を増やして……告白した。

 結果はOKだった。

 そんな俺に対してあいつは色々な女性と遊んでいたので早くに結婚していた。しかし結婚後もあいつのいい加減な性格は直ることはなかった。定職につかず、就いたとしても自分勝手な理由で辞めてしまい、そのままずるずると親に頼っていたらしい。

 子どもが生まれてもあいつのいい加減さは変わることはなかった。奥さんの誕生日や結婚記念日は覚えていなくても子どもの誕生日は覚えていたので、父親らしい情はあったと思う。それでもあいつはあいつのままだった。

 そんなあいつに我慢できなくなった奥さんはついに離婚を突き出した。親権は奥さん。そして母親にも「もう家から出て行け!」と追い出された。あいつが新しい住居となったアパートでぜんそくで死んだのはその数日後だったとのことだ。

 

 今思えば死ぬ数日前、俺は電話をもらっていた。しかしいつもの下らない自慢話か金を貸してくれという催促だと思った俺は、繁忙期ということもあって出ることもかけ直すこともしなかった。

 今思えばあいつは聞いて欲しかったのかもしれない。自分の置かれた境遇を。自分の中で蠢く苦しみを、打ち明けたかったのかもしれない。しかしあいつが死んだ今、その真相は誰にもわからない。

 電話に出なかったことを後悔しているかといえばそれほどでもない。繁忙期で肉体的にも精神的にもかなり限界がきていたあの時の俺にあいつを助けてやることは出来なかったように思える。あとあいつの普段の行動から「どうせ話を盛っているだろう」と思って話をまともに聞いていなかったかもしれない。

 仮に俺がまともに聞いていたからといって、あいつの未来が救われたかというとそうとも思えない。

 あいつが俺の助言を聞いたとも思えなかったし、例え聞いたとしても最早手遅れのように思えたからだ。

 

 はっきりいってあいつが死んだのは自分のことしか考えず、他人に配慮しない自分勝手に生きた結果、周りに見放されて手を差し伸べられることもなかった。だからあいつは一人さびしく死んだ。それは当然の結末だ。

 

 それでも俺は思う。高校時代から付き合いのあったあいつにもっと親身になっていたら、あいつが一人寂しく死ぬことはなかったのではないかと。

 

 

 

 俺は心の中であいつを救えなかったことをわびた。




 この物語は2020年12月26日に永眠した、作者がM兄と慕っていた男を思って書きました。もちろん作中の友人MはM兄のことです。
 はっきり言ってM兄とは数年間音信不通だったので私にはどうすることも出来ませんでした。それでも何かしてあげられたのではないかな、と今でも思います。

 M兄のような最期にならないよう、皆様も自分勝手に生きずに他者に気を配れる生き方をしてください。



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残された者の復讐

とある男が星になった親友に復讐を誓う。


「よいしょ」

 俺はどこにでもいる大学生。今日は一週間前にきた渓流(けいりゅう)に足を運んでいた。

「よっ、と」

 俺は一週間前に座っていた岩に腰掛け釣り糸を垂らす。

 何匹か釣れたので俺は持ってきた串に刺して焚火の前に置く。

「ウホッ、美味そう」

 徐々に焼き目がつき香ばしい匂いが立ち上る。表面から油が浮き上がる魚を見ながら、俺は一週間前と今の状況を比べる。

「あの時もこんな空だったよな」

 俺は空を見上げる。澄み切った青空。ゆっくりと流れる魚のような雲。俺の頬を優しく撫でる暖かい風。

 一週間前と違うのは今回は一匹も釣れなかったボウズではなかったこと。そして……高校の時からの親友、藤田(ふじた)がいないこと。

「藤田……」

 俺は暗い影を落とす。その一週間前に藤田が帰らぬ人となったからだ。

 死因は練炭による一酸化炭素中毒。

 遺書は残されていなかったが、普段汚いはずの彼の部屋が綺麗にされていたことと、外部の犯行による形跡などがなかったこと。そして『「部屋の掃除をするから当分来ないでくれ」と息子に言われた』という母親の証言から自殺と判断された。

 俺はショックを受けた。大の親友が自殺したということもそうだが、その親友と自殺する日に会っていたということ。その親友の自殺を止めることができなかったということ。気付いてあげられなかったということ。そして

「なんで俺に相談してくれなかったんだ……」

 この世と別れを告げるという重要な決断を俺に話してくれなかったということ。親友が自殺を考えていたのにそれに気付いてあげられなかった自分の観察力のなさへの怒り。親友を助けることができなかったという無力感。そして胸の内を話してくれなかったと言う藤田への不信感。

 様々な感情が頭の中をぐるぐると回る。

「俺はどうしたらいい? 教えてくれよ藤田……」

 当の本人が死んだ以上その答えは見当たらない。

「くそっ!」

 俺は程よく焼けた魚を骨ごと食った。ムシャムシャと歯で身も骨も噛み砕き、すりつぶす。

 塩などの調味料を振ってなくても焼き魚は美味しかった。しかし俺の心は美味しいと思えていなかった。

 

 美味しいのに美味しくない。

 

 そんな矛盾を抱えながら俺は焼き魚を貪った。

「くそっ! 藤田! お前のせいでせっかくの魚の味がわかんねぇじゃねえかよ!!」

 俺は涙を流しながら歯を食いしばる。

「藤田……今に見てろよ」

 俺はこの時、俺をこんな思いにさせた親友に復讐することを思い付いた。

「俺はこれからエンジョイする人生を送ってやる。いい女を嫁にもらって、子供を作って、子供の成長を何よりの楽しみとする……そんな親バカな父親になって、いっぱい幸せになって……家族に見守られながら死んでやる! そうして言ってやる……『自殺なんていうバカなことをしなければこんな幸せな思いができたんだぞ!!』って大笑いしてやる……覚悟しておけよ、藤田!!」

 そう誓うと俺はほどよく焼けた魚に手を伸ばした。



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隣の芝生は青くなかった

 隣の芝生は青い。

 他人の持っているものがよく見えて仕方がないという意味である。そういう人は青く見える芝生の正体を見極めた方がいいのではないかと思う。私のようにならないために。

 私は40代の専業主婦。正確には40代の専業主婦でした。こうなってしまったのは他人の幸福を実際以上に過大評価した、ある種の幻想を抱いてしまったことが原因です。

 離婚する前、私には数人のママ友がいました。

 うちの娘は私立の幼稚園に通っていてマンションの前まで送迎バスが迎えに来ます。当然その場にはママ友と一緒。そうなると挨拶だけで終わらずどうしても世間話をすることになってしまいます。

 本当は話なんてしたくないのですが付き合わないと必ず後で悪口を言われます。なので私は仕方なくその話に付き合っていました。

 そこで聞かされるのは自慢話。

「この間うちの主人が昇格しまして!」

 マシンガンのように話し出すのはママ友の中でも一番自慢したくてたまらない一柳(いちやなぎ)さん。彼女の8歳年下の旦那さんは日本有数の一流会社に勤める高給取り。

 たいしてうちの主人の勤務先はそんなに有名な会社ではなく給料もあまり高くないのでマンションも30年ローンでやっと買ったのですが、一柳さんの家はご主人の実家がお金を出してくれたとかで最上階の広い部屋を現金で購入したようです。そういう様を見せつけられるたびに落ち込んでしまうのです。

 一柳さんの自慢話を聞いた後は気持ちが暗く沈みます。

 夫が真面目に働いてくれているのは分かっていました。そして私や子どもを大事にしてくれていることも。それでも ママ友達に自慢できるものを持っていない夫に怒りがこみ上げてきました。そしてついに言ってしまったのです。

 

 なんであなたは稼ぎが悪いのよ! 

 

 その一言が破滅への始まりになったことを、その時の私は気づきもしませんでした。

 夫の「俺は家族のために一生懸命働いているんだぞ! そんな夫に言う妻の言葉か、それが!」という言葉を、『稼ぎの悪いのを私のせいにする軟弱な男』に見えてしまった私はさらに夫を罵り、それに夫が怒る。それは近所から苦情が来るまで続きました。

 その後も喧嘩が絶えず、夫婦仲は完全に決裂。

 数ヵ月後、私たちは離婚しました。

 経済上の理由から娘の親権が夫になり、私は実家に戻りました。後になって聞いた話ですが、一柳さんは姑が「お金を出してあげたんだから!」と何かにつけて干渉してきたそうです。家具やカーテン照明まで全て決めてしまったうえ子供の教育にまで口を出してくる。

 また彼女の自慢の年下夫はすらっとしたイケメンで一流会社に勤めている高収入なのですが、それゆえに会社の若い女の子や接待で行ったクラブの美人ホステスなどと付き合いが多かったそうです。

 姑への干渉と妻の立場が危うくなるというストレスから安定を求めてホストクラブに通うようになり、それがバレてついには離婚するはめになったとか。

 私が想像するような思ったような生活はできなかったそうです。

 

 夫と娘と別れて数ヵ月後の今頃になって気づきました。隣の芝生は青くなかったのだと。

 そして。その芝生以上のものを私はすでに持っていたことを。それを自らの手で壊してしまったことを。

 

 隣の芝生よりも、私の芝生は青かったのだと。




人間は今持っているものに目を向けずに持っていないものに目が行きがちです。
もっと褒めてもらいたい、いいねがほしい、もっと○○されたい……そう思った時、自分が持っているものに目を向けてください。

多くの人に認められたのにも関わらずもっと評価を得ようとして自分が書きたい小説よりも投稿することを優先、思った評価を得られず自己嫌悪に陥った私のようにならないことを切に願います。


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俺を見て子どもは俺に憧れるだろうか?

スポーツって誰に向けてしてるんですか?
スポーツの選手はいつも子どもの手本でなきゃダメなんです。
将来大きくなって「あんな人のようになりたい。だから頑張るんだ」と思ってくれるようなプレイヤーでなきゃいけないんですよ。
子ども達が見て正しいと思ってくれる道しかスポーツの選手は歩いちゃダメなんです。
それを大人が今、特にマスコミという大人が忘れていますよ。

元広島東洋カープ選手&解説者、衣笠(きぬがさ)祥雄(さちお)


 とある本によると、人が称賛されるには

 

 ①その結果を出そうとする意図があり

 ②その結果を出そうと正しい行動をし

 ③最終的に意図した結果が出る

 

 の三つが(そろ)った時に初めて世間から称賛してもらえるらしい。

 とある元プロ野球選手は『スポーツの選手はいつも子どもの手本でなきゃダメなんです』と言っていた。その時、俺は『俺も子どもの手本になるような恥ずかしくない生き方をしなければいけないなぁ』とぼんやりと思っていた。

 

 ある大雪の日のことだった。俺が自転車で中途半端に踏み固められた歩道を四苦八苦しながら走っているとブオーンッ!! という音が聞こえた。

 視線を向けるとそこには凍った道路によってタイヤが空転している軽自動車があった。その後ろには対向車線も渋滞していることもあり避けることができず、空転する車が動かなければ前に進めない車の長い列。

「……」

 どうするべきか少し考えた後、俺は歩道の脇に自転車を停めると空転する車の後ろに回り全力で車を押した。後ろから力が加わったこともあり、危うく反対車線に行きかけるも車は前に進みその危機を脱した。

「……ふぅ」

 車が前に出たことを見届けた俺は会社に向かうため、自転車に(またが)りペダルに力を込める。その時だった。

 

「ありがとうございます!」

 

 運転手が窓を開けてお礼を言ってきたのだ。

「…………」

 振り返った俺は呆気(あっけ)に取られた。俺が車を押したのは『困っている運転手を助けたい』という理由ではなかったからだ。

 空転する車を見た時。俺は『無視するべきか、それとも何かするべきなのか』と悩んだ。

 そして車を押す決断をしたのは『このままこの車が前に進まなければ後ろの車が困る。そうなれば大きな損失に繋がる』と思ったからだ。運転手のことなど1ミリも考えていなかった。

 だから礼を言われたことに面を食らってしまったのだ。

 

 俺は車を押そうとする意図があって車を押し、それによって車は危機を脱するという結果につながった。それは褒められるべきことだろう。

 しかし運転手を助けるためではなく『助けた方が大きな利益につながるから』という理由で俺は動いた。

「……とある元野球選手は『「あんな人のようになりたい。だから頑張るんだ」と思ってくれるようなプレイヤーでなきゃいけないんですよ』と言っていたが、俺のような男を子どもはなりたいと思うだろうか……。まぁ、やらない善よりやる偽善。やらないよりマシだが……」

 

 

 

 答えが見つからないまま、俺は自転車を()いだ。



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残された時間

人にとって本当の幸せとは何なのだろうか?


 春の暖かさを感じるのはまだ先の二月下旬。

「…………」

 私は墓の前で手を合わせている。墓には木根(きね)(はら)政人(まさと)()(はか)()られている。私の夫の名前だ。

 

「あなたが死んでもう3年経つのね」

 

 私は呟く。

 生前。夫は教師をしていた。当時の私は介護士をしていた。結婚してすぐに私は子宮の病気で子宮を取り除いたため子どもはいない。それでも私たちはそれなりに楽しく暮らしていた。

 夫婦二人で年を取っていく。お互いの黒い髪が真っ白になり、近所の子どもたちの成長を見て「もし私たちにも子どもがいたら孫ができて、あんな風にはしゃいでいたんでしょうねぇ」などと話をしながら。そう信じていた。しかしそんな日は永遠に来ることはなかった。

 ある日。夫が学校で苦痛を訴え病院に運ばれたのだ。

 詳しく検査した結果、ガンが見つかった。ガンは至る所に転移しており余命は持って半年と言われた。

 

「夫は助かるんですか!?」

 

 そう切羽詰まった私の問いに医師は悲痛な表情で首を横に振った。

 治る見込みはなかった。

 病室に戻った私は言うべきか隠すべきか迷ったものの全てを正直に伝えた。

 

「……嘘だろ、『嘘だ』と言ってくれよ!!」

 

 死に(おび)え震える夫を、私は「ごめんね、ごめんね」と力いっぱい抱きしめた。

 落ち着きを取り戻した私たちはその後どうするべきかを語り合った。

 二人で考え抜いた結果。夫は教職を辞め、私は会社に無理を言って休職を申し出た。

 夫が死ぬまでの半年。まだ歩ける体だった夫と一緒に何となく「行けたらいいね」と言っていた場所へ観光しに行った。以前飲みたかったと言っていたお酒も二人で飲んだ。ただ3ヶ月ほどすると夫は歩くのに支障をきたすようになり病院のベッドで過ごすようになった。死ぬまでの間、痛みを(やわ)らげる点滴などを打ち続け、そして余命通り半年後、夫は息を引き取った。

 夫が死んで私は深い悲しみに包まれた。でも不思議と後悔はなかった。死ぬまでにあの人とやりたかったことを最後にできたのだから。

 私は思う。人は『富や名声よりも何をしたかったのか。何をしてきたのか。その経験や思い出が自分が何者なのか証明するのだ』と。

 あの人は充分に生きて、そして死んでいった。他人から見れば特別ではない、普通の人生だったかもしれない。でもあの人はあの人の人生を謳歌(おうか)し、最期は満足そうな顔で()った。だからあの人の人生は価値あるものだったと思う。

 

「……あなた。私の夫になってくれてありがとう」

 

 私は微笑みながらそう言うと、夫の墓に一礼して駐車場へと向かった。




幸せの定義は人によってそれぞれ違うと思います。そしてどんな人生を歩みたいかも人によって違うでしょう。

有名になりたい。静かに余生を過ごしたい。栄華を極めたい。うまい飯を食って良い家に住んで良い車を乗り回す。家族と幸せに暮らす。一人で自由に生活する。

上記以外にも色々な生き方があると思います。その中で

『後悔なく自分の人生は自分だけのものだ』と言える人生が最も幸せな生き方ではないか?

と思い今回の小説を書きました。
もちろんこれが最も幸せな生き方なのかは断言できません。しかしやり残したことなく逝けたら、それも悪くない人生ではないかとは思います。



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