この素晴らしい機竜使いに祝福を! (ナカタカナ)
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この素晴らしい機竜使いに祝福を!
この素晴らしい機竜使いに祝福を!



息抜きがてら書きました。ガルパンの方はovaを借りたら書きます


 「霧姫 羽沙羅(バサラ)さん、ようこそ死後の世界へ」

 

 目の前には蒼い髪をした美少女が立っていた。

 

 死後の世界・・・何故、俺が死後の世界に来ないといけなくなったのかを思い出す。

 

 そう、あれは確か学校の帰りだった。

 

 俺は中学三年生で野球部だった。といっても、部活は引退し、受験シーズンということもあり、勉強に熱をいれていたのだ。

 

 いつも通り、学校が終わり、友達と家へ帰ろうとしていたときに事件は起きた。

 

 「あ、危ないッ」

 

 少し離れたところから先生の声が聞こえた。

 

 頭上を見上げると少し小さめの鉢植えが落ちてきた。

 

 「キャッチャーフライだぜ」

 

 俺はなんの危なげもなく鉢植えをキャッチすることに成功した。

 

 ボスッと俺の顔面に降りかかった土を除けば完璧だった。

 

 「だ、大丈夫か?」

 

 ペッペッと口に入った土を吐き出していると先生が駆けつけてきた。

 

 「ナイスキャッチ」

 

 隣では友人が笑っている。笑い事じゃねぇぞ。俺じゃなったら下手すると死んでた。

 

 「なんで鉢植えなんか落ちてきたんだろう?」

 

 「さぁな、誰かの悪戯じゃねぇか?この鉢植えって絶対落ちるとこにあるわけないし」

 

 「それもそうだな」

 

 「明日は全校集会か・・・」

 

 「「めんどくせぇ~」」

 

 ちょっと危なめの悪戯の犯人を捜すために先生は職員室へと戻り、俺と友人は家に帰る。

 

 

 

 

 

 

 「あれ、なんで俺死んだんだ?」

 

 俺は再び前を見る。やはり、蒼い髪をした美少女が立っている。

 

 「あの鉢植え事件のあと、友人と家に帰ったあなたでしたが、運が悪い事にあなたは女性に撲殺されました」

 

 「えっ?」

 

 「覚えていないのも仕方がありません。あなたは家の近くにある公園で受験勉強の息抜きに素振りをしているところに、一人の女性が訪れました。その女性はあなたのストーカーで彼女とイチャイチャしているあなたにムカつき、あなたを眠らせてから素振りに使っていたバットで撲殺・・・」

 

 「Oh・・・ストーカーって・・・」

 

 「なになに・・・その女性はあなたの隣の席の女の子でぼっちだったところを、あなたに話しかけてもらったことからドンドン好きになり・・・」

 

 蒼い髪の美少女はなにか紙を見つめながらひたすらに俺の死因を読み上げていく。

 

 「その後、告白しようとしたところ、先に隣のクラスの少女に告白されてオッケーをだしたあなたは彼女とイチャイチャして過ごした。それであなたを殺したと・・・」

 

 「もういいっす。それであなたは誰ですか?」

 

 「私は水の女神アクアよ。あなたにはこれから三つの選択肢を与えるわ。一つ目、天国へ行く。

二つ目、記憶を消去して転生する。三つ目、記憶を持ったまま転生特典というなのチートを貰って異世界に転生するよ。私個人的には三つ目がオススメよ」

 

 早口で説明する蒼い髪の美少女改め、アクアは急に近づく。

 

 「じゃあ、三つ目で」

 

 「ほんとっ。じゃあ、あなたの転生する世界の説明をするわね」

 

 その後、五分くらいかけて異世界について説明してくれた。

 

 簡単に纏めると・・・

 

 魔王の脅威から異世界を救う。しかし、平和な日本に住んでいた日本人は戦いなんて縁もゆかりもない。

そこで、転生特典というなのチート装備や能力を授けて転生させる。

 

 「えぇと、じゃあ転生特典を選んでね」

 

 そういって、アクアは転生特典が書かれたパンフレットを見せてきた。

 

 伝説の聖剣やら無限の魔力、その他にも色々とチートな装備や能力があった。

 

 「あの、転生特典ってラノベの能力とかいけますか?」

 

 「できるわよ、なにがいいの?やっぱり一方通行(アクセラレータ)?」

 

 このアクアという女神、日本担当ということもあり、日本のことは詳しいようだ。

まさか、サブカルチャーまで詳しいとは・・・

 

 「いや、最弱無敗の神装機竜の機竜がいいです」

 

 「あぁ、あれね。良いわよ」

 

 「機竜は何種類までいけますか?」

 

 「そうね、最初に汎用機竜と神装機竜を一機ずつ上げるわ。そのほかの機竜は向こうの世界で見つけて契約すれば使えるようにするわ」

 

 「なるほど・・・じゃあ、ワイバーンとバハムートをください」

 

 やはり、最初の機竜といえばこの二機だろう。

 

 主人公が使う機竜ということもあるが、超カッコいい。

 

 ラノベが好きな友人に勧められて読んだが、ドハマりした。九巻までしか読めていないのが心残りだな。

 

 「あぁ、竜に関してなんだけど、討伐依頼とか出されてしまうから遺跡の最深部に眠らせておくことにするわ」

 

 「ありがとうございます。はぁ、敬語使うの慣れないわ」

 

 「それでは、霧姫 羽沙羅さん・・・ブフッ羽沙羅って」

 

 「おーい、聞こえてるぞぉ~俺の名前に文句あるなら俺の両親にいえ」

 

 「気を取り直して、それではいい人生を」

 

 アクアが笑いをこらえながらそういうと、俺の視点は一気に変わった。

 

 

 





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感想も待ってます。先にいっておく、本格的な戦闘シーンはまだ先になりそうだ


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始まりの街アクセル

 

 俺が異世界に転生して一年が経った。

 

 俺が最初に転移していたのは遺跡だった。あの女神、機攻殻剣(ソードデバイス)だけ持たしてあとはポイッなんだぜ。ビックリだろ。食料もねぇし、水もねぇ。

 

 その後、なんとか水と食料を確保し、遺跡に挑んだところボロ負けした。

 

 俺が挑んだ遺跡はティアマトが封印されており、幸い気性が穏やかだったため、戦闘ではなく俺を鍛えるという方向へ出てくれた。

 

 一ヵ月ほどでなんとかティアマトの試練を乗り越えて認めてもらい。契約してもらった。

 

 こうして、俺の異世界生活が始まったのだが、それからは色々あった。

 

 遺跡を巡り旅をして数々の出会いがあった。

 

 俺が契約してきた竜はティアマト、テュポーン、ファフニール、リンドヴルム、ドレイク・・・

 

 とまぁ、こんな感じで契約してきたのだが、たまたま立ち寄った王都で魔王軍の襲撃があった。

 

 本来なら素通りしたかったのだが、なんでも魔王軍が拠点としているところが遺跡だったらしく、俺は王都で戦いに参加した。

 

 バハムートを纏って魔王軍を蹴散らしているといつの間にか《黒き英雄》と呼ばれていた。

 

 そこからは王都の騎士団に入れだの、貴族の近衛騎士になれだのなんだかんだあった。

 

 まぁ、すぐに旅に出たのだが。各地を回りちょっとした大会に出て無敗になったり、大会にでたときに仲良くなった人物がいっそのこと冒険者になればといったので俺は始まりの街アクセルへと向かった。

 

 「ここが、始まりの街アクセルか・・・」

 

 俺が回ってきた街と比べると平和そうな街だった。魔王軍との戦いから一番離れているということもあるのだろう。本当に穏やかな街だ。

 

 街を歩いていると冒険者ギルドと書いてある看板を見つけた。

 

 中に入ると酒場になっており、さっそく受付カウンターに向かった。

 

 「ようこそ、始まりの街アクセルへ。冒険者登録ですか?」

 

 「あぁ、そうだ、じゃなくてです」

 

 「では、登録費用の1000エリスをいただきます」

 

 俺は金髪の受付嬢ルナさんというのだが、その人にお金を払う。

 

 「では、ここに名前を記入してください。それでは、こちらの水晶に触れてください」

 

 この世界の文字でキリヒメ バサラと記入したあと、ルナさんが持ってきた水晶に手を振れる。

 

 「ッなんですかこの数値は筋力、敏捷、生命力・・・全部けた違いのステータスです。しかもスキルも発言しています。《竜との絆》なんてスキル初めて見ました。これならどの職業でもつけますよ。って、既に職業がありますね。機竜使い(ドラグナイト)ですか」

 

 「えっと、これで登録って終了ですか?」

 

 「はい、冒険者ギルド一同はあなたの活躍を期待しています」

 

 ギルドで登録を終えた俺は簡単なクエストを発注した。ジャイアントドードと呼ばれる巨大なカエルの討伐だ。

まぁ、この程度のモンスターなら機竜を使わなくても機攻殻剣(ソードデバイス)だけで戦えるだろう。

 

 と思って街の外に出たのだが・・・

 

 「ア、アクアァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 「かじゅまさぁぁぁぁぁん、たすけてぇぇぇぇぇ」

 

 「はぁ、はぁ、カエルたちが私をエロい目で見てくる、はぁ、はぁ」

 

 「あのぉ~そろそろ助けてもらっていいですか?呑み込まれちゃいます」

 

 いかにもヤバそうなパーティーを見つけた。

 

 「助けた方がいいよな?というか、あの蒼い髪はアクアじゃねぇか」

 

 俺はすぐにワイバーンの機攻殻剣を手に取り、魔法使いっぽい格好をした少女を呑み込もうとしているカエルを切り裂く。狭いところでは機竜が使えないので一応剣術も使えるようにはしている。

 

 「だ、だれかしならねぇけど助かった」

 

 カエルを三匹ほど倒すとカズマと呼ばれていた少年が俺の方へと来た。

 

 「いや、気にするな。あんた転生者だろ?」

 

 「お、おうそうだが、あんたもそうなのか?」

 

 「あぁ、そこの女神に転生させてもらった。なんで女神なのにカエルに負けるんだよ」

 

 俺はカズマたちと街に戻ったのだが、その道中で色々と話を聞かせてもらった。

 

 なんでもカズマは転生特典にアクアを選んだそうなのだが、その非常に頭が弱いらしく、しかも戦闘もアンデッド戦以外では使えないと、他のパーティーメンバーも初心者らしく、クルセイダーなのに体力が低かったり、アークウィザードなのに魔力が少ないといった問題ありなメンバーらしい。

 

 まぁ、初心者だから仕方がないと思っている。

 

 「そこでなんだが、このとーりです。あなた様にパーティーメンバーに加わってもらいたいのです」

 

 「まぁ、俺も冒険者には今日なったところだし、なにもわからねぇからいいけど」

 

 「本当ですかッ。ありがとうございます」

 

 カズマが必死に頭を下げてきたので了承したのだが、このときの俺は知らなかった。

 

 誰が体力の低いクルセイダーだ?誰が魔力の少ないアークウィザードだ?誰がアンデッド戦以外では使えないアークプリーストだ?

 

 誰が予想できる耐久力だけは馬鹿みたいに高いドMクルセイダーに、爆裂魔法とかいう一発使ったら倒れてしまうような頭のおかしい爆裂娘に、水の女神どころか宴会芸の女神・・・いや、借金の女神でどいつもこいつもヤバい奴しかいないだなんて・・・誰が予想できる?

 

 そして、俺をだましたカズマよ。お前も同罪だからなッ

 

 



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悪いがお前には死んでもらう・・・なんちゃって

 書いてて思いました。ダクネスの口調が難しい。


 俺がカズマたちのパーティに入った翌日、俺達は再びクエストを受けていた。

 

 受けたクエストはジャイアントドードの討伐クエストで昨日と一緒だが、今日は昨日受けた奴よりも多く討伐しなければならない。

 

 「えぇと、改めて新メンバーのキリヒメ バサラだ。バサラって呼んでくれ」

 

 「俺はカズマ。職業は冒険者だ。よろしくな」

 

 「しっていると思うけど、私は水の女神アクアよッ」

 

 「はいはい、それでそちらの二人は?」

 

 俺は視線を金髪の美女と赤い目が特徴的な少女に移した。

 

 「私はダクネスだ。クルセイダーだ」

 

 「我が名はめぐみんッ紅魔族随一の魔法の使い手にしてばくれ「おーいめぐみんちゃん。ちゃんとした挨拶をしようねぇ、ほらバサラ君が困ってるじゃないか」むぐむぐ」

 

 カズマはめぐみんの口を手で押さえて声が出ないようにしている。そして、そのまま少し離れた所へいった。

 

 「なぁ、めぐみん。お前のことは魔力の少ない優秀なアークウィザードっていってるんだ。だから、話を合わせろ。アイツは昨日アクアが話した通り、竜の力を纏い戦う騎士なんだ。しかも、その力は強力過ぎるあまり普通の敵には使わない。王都ではちょっとした有名人らしい。だから、今ここで抜けられては困るんだよ」

 

 「わ、わかりました。紅魔族流の名乗りをできないのは嫌ですが。私はその竜の力を見てみたいですッ」

 

 「そうだ。軽く調べたところによると、アイツは正体を隠して戦っていたそうだ。なんでも、王族や貴族に目を付けられてしまうかららしいが、それでも正体を隠しながら魔王軍を殲滅する英雄だ」

 

 「カッコいいですッ」

 

 「そうだろうそうだろう。ということで戻ろうぜ」

 

 二人でコソコソと話をしたあと、戻ってきたのだがなにやらめぐみんの表情がおかしい。

なにか尊敬する師匠を見るような目だ。

 

 「さぁ、バサラさん早くクエストに行きましょう」

 

 俺は不自然なまでに腰の低いアクアに手を引っ張られジャイアントドードの出現場所まで移動した。

 

 

 

 

 

 「ジャイアントドードを発見したのはいいのだが・・・なんか数が多くね?」

 

 それが、ジャイアントドードを発見したカズマの第一声だった。

 

 見たところ軽く三十は超えるジャイアントドードがいる。

 

 その全てが俺達を発見し、向かってくる。

 

 「ね、ねぇ?大丈夫なの?」

 

 アクアが不安そうな声を出す。

 

 「ま、任せて下さい。ここは私の魔法で」

 

 「あれほどまでに性欲に飢えたカエルたちがこちらへ向かってくる。ここは私が引き付ける。早く行け」

 

 数の多さにビビったのか若干声が震えるめぐみんに、何故か嬉しそうな声でカエルたちに突撃していくダクネス。

 

 俺は機攻殻剣を引き抜きティアマトの試練によって偶然手に入れた縮地を使いカエルを切り裂く。

 

 一匹、二匹、三匹とカエルたちは肉を断たれ横たわる。

 

 「す、すげぇ」

 

 カズマは驚くと同時に、もしも、自分がアクアではなく、普通の転生特典を選んでいたら彼のように戦えたのだろうか?と考えていた。

 

 「なんなんですかアレッ超カッコいいです」

 

 「さ、流石ね。私が見込んだだけあるわ」

 

 「そ、そんな、せっかく今日こそはカエルたちのヌルヌル粘液プレイができると思ったのに・・・」

 

 後方で四人の声が聞こえたのだが一人だけおかしいのが混ざってなかったか?

まぁ、気のせいだろうと思い、俺は再びカエルを切り裂いていく。

 

 

 

 「ふぅ~、よし、これで片付いたなって悪い、全部やっちまった」

 

 「い、いや、それはいいんだが・・・」

 

 カズマが辺りを見渡す。

 

 そこにはカエルの血があちこちに飛び散り、血だまりとなっている個所も数十か所あった。

 

 「・・・グロいな」

 

 「だな」

 

 「フッフフ、これが鮮血の黒剣の実力ですか」

 

 めぐみんはグロ耐性でもあるのだろうか?嬉々としカエルたちの血を眺めている。ヤダ、何この子怖い。

 

 「さぁて、討伐も終わったことだし、帰りましょ」

 

 アクアがそう呟いた時だった。

 

 「グォォォォォォ」と南の空からドデカい咆哮が聞こえたのは・・・

 

 南の空を見ると赤く大きな物体がこちらへ飛んでくる。

 

 「なぁ、あれって」

 

 「サンダーフェニックスよ。まだ小さいけど成長すればそこそこ厄介なモンスターよ」

 

 「いや、明らかに小さくても厄介なモンスターだろッ」

 

 「あのモンスターの雷撃を受けたとき、私はどのようになっているのだろう・・・うへへへ」

 

 「今度こそ私の見せ場ですね」

 

 サンダーフェニックスか、俺も一度だけ戦ったのだが雷を使った攻撃以外は基本してこないし、してきたとしてもそれは突撃だったりする単調な攻撃しか出来ない名前負けしているモンスターだ。

 

 個人的にはそこまで脅威に感じる事は無いのだが、初心者である四人にとってはそれなりの脅威なのだろう。

 

 「せっかくだし、俺の力を見せとくか。あんまり使いたくないんだが、一応パーティメンバーだしな」

 

 俺は四人の前に出ると今まで使っていた黒の機攻殻剣を鞘に戻し、白い機攻殻剣を取り出す。

 

 「お、おい」

 

 「ま、まさか例の・・・」

 

 「バサラの背中から恐ろしい力を感じる」

 

 「や、やっちゃいなさい。あんたならあの程度すぐ終わるでしょ」

 

 機攻殻剣を構えてトリガーを引きながら詠唱符(パスコード)を唱える。

 

 「来たれ力の象徴たる紋章の翼竜、我が剣に従い飛翔せよッ《ワイバーン》」

 

 俺の体は光に包まれる。

 

 光が晴れると俺は白と青の装甲を纏う。鋼鉄の機竜に乗っていた。

 

 「これが俺の力の一部だ。さて、サンダーフェニックスさんや。ちょっくら落ちてもらうぜ」

 

 ブレスガンを取り出しサンダーフェニックス以下鳥野郎に向けて放つ。

 

 数発のうち三発が着弾し、鳥野郎は完全に俺を標的を定めた。

 

 「クゥルゥゥァァァァァ」と怒りの咆哮をあげながら突っ込んでくる。

 

 「おせえよ」

 

 鳥野郎を躱すと同時に持っていた機竜牙剣(ブレード)を使い切り裂いた。

 

 しかし、思いのほか皮膚が固く刃が通らず弾かれる。

 

 すかさず追撃をいれると鳥野郎は雷を周囲一帯に放電する。

 

 なんとか障壁を張ることに間に合った俺は少し本気を出す。

 

 「神速制御《クイックドロウ》」

 

 この技は最弱無敗の神装機竜に登場するアーカディア帝国の三大奥義の一つだ。まぁ、全部主人公であるルクスが生み出したのだがな。

 

 機竜と精神と肉体を完全にシンクロさせることで超スピードを得た俺は鳥野郎の二枚の翼を切り落とす。

 

 翼を失った鳥野郎は地に落ちるのだが地に落ちるより前に俺が鳥野郎を切り刻む。

 

 数千もの斬撃を受けた鳥野郎はなんとかギリギリ四肢が繋がっているという瀕死状態。

 

 そして地面に落ちた。土煙が舞い、完全に土煙が晴れるとそこには息絶えた鳥野郎がいた。

 

 「とりあえず、これが俺の力だ。よろしく」

 

 四人は口を開けたままその場に立ち尽くす。

 

 

 

  




 ガルパン書きたいガルパン書きたいガルパン書きたいッ


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お説教の時間ですよ


 誤字報告お願いします。


 「それで、カズマ君よ。さっきのは一体どういうことかな?」

 

 「ぐっ・・・す、すんません」

 

 アクセルの街へ戻った俺達は冒険者ギルドの酒場で飯を食っていたんだが、俺の目の前には土下座をしそうな勢いのカズマがいた。なぜこんな事になったのか話そう。

 

 

 

 

 

 俺がサンダーフェニックスを討伐したあと、再びジャイアントドードが一匹現れたのだが、一匹だけならカズマたちでも大丈夫だろうと思った俺は四人に完全に任せていた。

 

 その結果・・・めぐみんは爆裂魔法なんていう一発芸ともいわれるほどの魔法を使う。カエルはオーバーキルされ、周りにいたカエルが二匹やって来た。魔力切れとなっためぐみんとアクアはカエルに捕食され、ダクネスは一度も攻撃を当てずにやたら変な声であえいでいた。エロいなと思ってしまった俺は悪くないはずだ。

 

 そして、カズマなのだが、悲鳴をあげながらひたすら剣で戦っていた。

 

 まぁ、なんとか討伐は出来たのだが、上級職である三人が問題児どころじゃないんだが?

 

 まず、アクアよ!お前はアークプリーストだから攻撃ができないのはまぁ、目を瞑るとしよう。しかし、回復役であるお前が一番最初に捕食されたら駄目でしょッ

 

 次にめぐみんよ、お前は魔力が少ないアークウィザードだと聞いているぞ。爆裂魔法なんか使えるほどの魔力量だったら普通の上級魔法を連発出来るだろッ。

 

 そして、ダクネス。お前ふざけてるだろ。なんで攻撃を当てないんだよックルセイダーは守備の要でありながらこのパーティの前衛では攻撃の要でもあるんだぞッ。

 

 最後にカズマよ、頭が良く回り、工夫して戦っている所は評価しよう。冒険者という最弱職でありながら他の三人に比べると一番活躍しているだろう。

 

 「マジすんませんでした」

 

 カズマはひたすら土下座をしている。

 

 「俺は魔力量の少ないアークウィザード、体力のないクルセイダーと聞いたんだが?」

 

 ギクッとカズマの後ろで椅子に座っているめぐみんとダクネスが肩をあげる。

 

 「そ、それはですねぇ~・・・」

 

 そして、カズマから聞いた話を聞いた俺は絶句したとまではいわないが頭を抱えた。

 

 水の女神アクアはもうそれはもう、知能が低い残念な借金女神であると。

 

 爆裂魔法を使えるほどの魔力量を持っているめぐみんは爆裂魔法しか使わず、しかもっ撃ったあとは倒れる一撃必殺の浪漫砲台であると。

 

 クルセイダーのダクネスはドMだった。剣が当たらないのはワザとではないらしく、というかドMと聞いたことよりどんだけ不器用なんだよッて思った。

 

 カズマはそんな残念なパーティメンバーにうんざりしているそうだ。

 

 そして、何故、俺に本当のことを話さなかったのかというとせっかくパーティに誘ったのに逃げられると思ったからだそうだ。

 

 「なるほど、一応ちゃんとしたというか理由はあったんと」

 

 「はい、そうです」

 

 「もう、いつまで暗い話してんのよ、せっかくのシュワシュワが不味くなるわ、ゴクッゴクッゴク・・・プハァ」

 

 アクアはシュワシュワという飲み物を先ほどから飲んでいるが全然反省していないように思える。

 

 「あのぉ~、パーティ抜けるとか「いわねぇよ」ほんとっすか」

 

 ほんと変わり身が早いなッビックリだよ。

 

 「一つ文句を言わせろッ、命預けて戦うパーティメンバーに嘘の情報を流すなッ。こちとら命がけってことは嫌って程理解してんだ。お前らだって分かるだろ」

 

 「「「「・・・」」」」

 

 四人は先ほどまでの表情とは違い本気で落ち込んだ。

 

 「バカがなんだ?別にいいじゃねぇか。一発屋がなんだ?使いどころ見極めればいいじゃねぇか。

性癖がなんだ?攻撃が当たらなくても耐久力だけは馬鹿高いじゃん。冒険者がなんだ?工夫して戦えばいいじゃねぇか」

 

 「な、なんか超カッコいいこといってるんですけど」

 

 「こ、これが伝説の竜を従えし者の言葉ですか」

 

 「さり気なく罵倒された気もするが・・・そこがいいッ」

 

 「やべぇ、超かっけえ。アカン惚れてまう」

 

 「茶化すな。まぁ、なんだ。確かにそれぞれ何か問題を抱えてるかもしんねぇが、その分、俺が何とかするなんていうカッコいいことはいえねぇけど、だからこそ、協力しないといけねぇんだろ」

 

 俺の言葉を聞いた四人は深く考えだした。

 

 「とまぁ、これで俺からの話は終わりだ。ちなみに、俺がこのパーティ抜けるときは死んだときか、もしくはお前らが出て行けっていったときだけだから安心しろ。だから、もうつまんねぇ嘘つくなよ」

 

 「「「「はい(わかりました)(あぁ)」」」」

 

 「よし、飯食うか」

 

 こうして、俺達は楽しく飯を食った。

 

 このときのやり取りを見ていた他の冒険者たちはアクセルの問題児たちを正す教師の様な存在に見えていたようだ。いや、教師って、俺これでも十五なんだけど、いや、この世界来て一年だし十六歳か?

 

 なお、この時の説教を聞いていた他の冒険者たちも自分たちはどうなんだ?と考えた。

女性冒険者の何人かはバサラのファンとなった。男性冒険者は密かに兄貴と慕う。

 

 「そういや、バサラはなんで死んだんだ?」と、カズマが聞いてきた。

 

 「突然だな」

 

 「いや、いいたくなかったら言わなくてもいいけど」

 

 「よく覚えてねぇけど、家の近くの公園で素振りしてたらストーカー女に眠らされて俺が使ってたバットで撲殺されたんだって」

 

 「へ、へぇ~(こ、こいつこの世界でも女性に殺されましたとかなんねぇよな・・・)」

 

 「カズマはどうなんだ?」

 

 「ゲーム買いにいった帰りにトラックに轢かれそうな女の子をかばった」

 

 「かっけえじゃ「でも、トラックだと思ってたのはトラクターで」耕されたのか?」

 

 「トラックに轢かれたと勘違いしてショック死した」

 

 「oh・・・な、なんかすまん」

 

 「もういい、気にすんな」

 

 できるだけカズマの顔を見ないようにしていたが俺の視界の端にカズマの頬に水滴が垂れているのが映った。

 

 こいつも、苦労してるんだな。

 

 





 感想待ってます。書いてて思った。三人が空気だと。


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回想編 魔王軍幹部


 はぁ~ガルパン書きたいッ。このすばも書きたいッ。


 「おぉ~良く似合ってるじゃねぇか。流石クルセイダー」

 

 「そうだろう。キャベツの報酬で新調したのだが、こんなにもピッカピカになったのだ」

 

 「そうか?ただの成金貴族にしか見えねぇ」

 

 「わ、私だって普通の褒めてもらいたいときもあるのだがカズマはこういうときも容赦ないな」

 

 俺の説教事件から数日(ギルドの冒険者一同からはバサラ先生の特別指導)が経った。

 

 その間のクエストは俺が一人だけでこなしていた。理由は俺がこの町に来るより前にあったキャベツのクエストでの報酬で装備の新調をしていたからだ。

 

 それによってダクネスの鎧はピカピカになり性癖はともかく、容姿だけをみれば美しい騎士となっている。

 

 「それより、あそこにお前を超える変態がいるんだが」

 

 カズマが指さす方を見てみる。

 

 「はぁ、はぁマナタイト製のこの色艶ッ」

 

 自身の杖を股に挟みスリスリしているめぐみんがいた。

 

 その後、アクアの報酬が思ったよりも少なかったせいでアクアが文句をいったり、カズマの恥ずかしい話を聞けた。いや、男だから仕方ないと思うけど・・・

 

 俺はどうなのかって?知る必要ないよね(ニッコリ)

 

 

 

 

 クエストを受けようと思い掲示版を見たのだが高難易度のクエストしか張られていない。

 

 ルナさんに聞いたところによると近くに魔王軍の幹部が住み着いたせいで魔物が隠れちゃったらしい。

 

 ということもあり、それぞれの好きなように過ごすことになった。

 

 アクアはバイト、ダクネスは筋トレ、めぐみんは爆裂魔法の特訓、カズマはその同行。

 

 さて、俺は何をしようかなと悩んでいたところ機竜の整備をしようかと思い人里離れたところへ向かった。

 

 機竜の整備といっても転生特典のおかげでダメージなどは自然と修理されてしまうのだが気分的にも整備をこなして機竜のことを学べばその分、動かすときにもよりうまく動かせるようになると思っている。

 

 

 

 

 道中、初心者殺しと呼ばれる黒い魔物と遭遇したが機攻殻剣で素早く討伐できた。

 

 「よし、この辺りで良いかな」

 

 アクセルから大分離れた所にある森のなかで俺は機竜を呼び出す。

 

 ワイバーン、バハムート、ティアマト、テュポーン、ファフニール、リンドヴルム、ドレイクの七機だ。

 

 どれも各地の遺跡の最深部に眠っていた竜と契約したことにより手に入れた機竜である。

 

 いわば、竜そのものである。原作では古代の兵器という認識だったのだが、この世界ではちょっとした意志を持っている。会話はできないがなんとなく意志が伝わることがある。

 

 「いつもありがとな」

 

 声を掛けながら機竜の装甲を撫でる。

 

 『どういたしまして』という返事が聞こえたような気がした。

 

 「ほんと、お前らは最高の相棒だ」

 

 『当たり前。私達と契約出来たことを誇りに思え』

 

 「そうだな。俺は幸せ者だ」

 

 はたから見れば完全に独りで会話しているヤバい奴なのだが気にしたら負けだ。

 

 

 

 

 

 機竜の整備を終えた俺は街に戻ろうとしたのだが道中でカズマと背負われためぐみんと合流した。

 

 「あれ、バサラじゃねぇか」

 

 「よう、めぐみんの特訓の帰りか?」

 

 「あぁ、お前はクエストか?」

 

 「いや、ちょっと散歩してた。爆裂魔法はどうだった?」

 

 「サイコーでした」

 

 俺がめぐみんにそう問いかけるとめぐみんは幸せそうな表情を浮かべて親指を立てる。

 

 「それよりバサラ、あの機竜という奴を見せて欲しいのですッ」

 

 「見せてやりたいけど、あんま人がいるようなとこじゃぁな」

 

 「王都じゃ有名人なんだろ?」

 

 「まぁ、そうらしいな。いやぁ、ちょっと調子乗ってたわ」

 

 

 

 

 

 

 

 思い返すのは魔王軍と対峙したときの俺、ティアマトの試練を乗り越えた俺は正直、調子に乗ってた。

 

 今の俺なら魔王とか余裕じゃね?とか甘い考えを持っていた。

 

 ティアマトを使い魔王軍を蹴散らそうと思ったが、使い慣れているバハムートを使い何万もの魔王軍を一騎当千の戦士の如く戦場を駆けまわり切り裂いた。

 

 普通の魔物が機竜にかなうはずもなく、ほとんどが一蹴されてしまった。

 

 数も半分以上減ったあと、俺は親玉を叩きに向かった。

 

 そこにいたのはフードを被り淡い紫の髪をした女。魔王軍の幹部だった。

 

 その女の名はアガレス。強力な魔法を使う上に指揮官としての能力も高く、厄介な敵だった。

 

 といっても、一対一になったあとからがアイツの本領発揮だった。

 

 アイツの使う魔法の中には相手に幻覚を見せる魔法があり、それに引っ掛かった俺はかなり苦戦した。

 

 機竜の弱点というか幻覚に対して耐性がないのが駄目だった。

まぁ、俺が耐性を持っていれば良かったのだが。

 

 「オーホッホ、いいわ、いいわ。あなたすごくいいわ」

 

 頭の中に聞こえるアイツの声はどこかの高慢高飛車なお嬢様を連想させた。

 

 「ねぇ、あなた私の騎士にならない?あなたの顔つきも私好みでなかなかいいわ。それに私の部下たちを蹴散らすその鎧とそれを使いこなすあなた」

 

 幻覚のなかにもアイツが現れて俺に近づき耳元に息を吹きかける。

 

 距離を取ろうとしても動けない。気が付くと機竜もなく、機攻殻剣もない。成す術無しだ。

 

 「あなたの力があれば私達は最強になれるわ。魔王様のお力になれるわ」

 

 アイツの囁きは俺の思考をジワジワと支配していった。

 

 「私の目を見て」

 

 彼女の目を見るとラピスラズリの様に美しい青い目をしていた。

 

 「あら、嬉しいとこをいってくれるわね」

 

 この幻覚のなかでは俺の思考もアイツに筒抜けだ。

 

 『しっかりしろ!私達が付いてるのに負けるなんて許さない』という声が聞こえた。

 

 思えばこれが初めて機竜の声を聞いたんだった。

 

 その声が初めはなにか分からなかったがすぐに機竜の声だと気づいた。

 

 「お、れは負けねぇよッ暴食(リロード・オン・ファイア)

 

 俺が纏っていた神装機竜 バハムートの神装を発動し、なんとか幻覚から逃れることができた。

 

 十秒間の中でアイツをアガレスを倒そうとしたが、転移魔法を使うせいでなかなか倒すことができない。

 

 「ふふふ、面白いわあなた。私の幻覚から逃げ出すその精神。ここで、気絶させて連れ帰りたいところだけど、残念だわ。時間切れ。また会いましょ私はアガレス。あなたの名前は?」

 

 「逃げるなッ」

 

 あいつの質問に答えることなく、俺は切りかかる。

 

 「ふふ、暴力的ね。女性には優しくしないといけないわよ」

 

 いつの間にか俺の目の前に転移したアガレス。切り裂こうとするも俺の唇に柔らかいものが触れた。

 

 「これで、あなたは私のもの。私の初めて」

 

 そういって、アガレスは消えた。

 

 「お、俺のファーストキスがッ彼女とさえキスしたことなかったっていうのに」

 

 俺の初めてを奪っていたアガレス、あの魔女に俺は頭を抱えた。

 

 普通なら嫌な筈なのに、嫌ではなかった。

 

 悲しいことに、思春期の俺にとっては美人からのキスが嬉しかったようだ。

 

 って、まさか毒とかないよな・・・

 

 そう思った瞬間、俺は全身から嫌な汗が噴き出したのだが、なにもなかった。

 

 その後、騎士団と合流し、此度の活躍を報告するとかなんやらあって、王城へ呼ばれて王族と話をしたり、騎士団に勧誘されたり、色々あった。

 

 

 

 

 

 「見せてくださいよぉ~」

 

 あまりにもめぐみんがしつこかったので見せてやることにした。

 

 「来たれ力の象徴たる紋章の翼竜 我が剣に従い飛翔せよッ《ワイバーン》」

 

 サンダーフェニックス戦のときに見せたワイバーンを見てめぐみんは更に目を輝かせる。

 

 「カッコいいですぅ。なんなんですかコレ。このフォルム。サイコーです」

 

 ただ見ているだけにも関わらず嬉しそうな声を出すめぐみんを見て可愛いなと思ったのは内緒だ。

 

 「はぁ~、なんで俺はあのときアクアを選んじまったんだろうな・・・」

 

 深夜テンション並みにテンションの高いのめぐみんの横には映画見る前にネタバレされた並みのテンションのカズマがいた。

 

 





 感想欲しいなぁ。感想欲しいなぁ。感想欲しいなぁ。

 大事なことなので三回いいました。

 魔王軍幹部のアガレス・・・恐ろしい奴だ。


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デュラハン襲来


 誤字とかあったら教えてください。

 できるだけないようにしていますが、私だって人間です。誤字の一つや二つあっても不思議じゃないよね。


 アクセルの街が暗雲に包まれ轟雷の降り注ぐこの日。アクセルの街にはとある来客?があった。

 

 「俺はつい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部のモノだが」

 

 首のない騎士。デュラハンはストレスの溜まったOLの様に叫んだ。

 

 「毎日毎日毎日毎日、かかさず爆裂魔法を撃ちこんでくる頭のおかしい奴は誰だッ」

 

 このアクセルの街に爆裂魔法を使える魔法使いとなればあいつしかいない。

 

 俺は右隣に立っているめぐみんを見る。

 

 プイッとなんとめぐみんは自分の隣にいた赤毛の少女を見た。

 

 「わ、私、爆裂魔法なんか使えないわよッ」

 

 信じられるか?こいつ、人になすりつけやがった。

 

 そのまま人の所為にするのかと思いきや、深呼吸をし、覚悟を決めためぐみんは一人デュラハンの元へと歩いた。そして、デュラハンの前に立ち止まる。

 

 「お前かッ、毎日毎日人の城に爆裂魔法を撃ちこんでくる頭のおかしい馬鹿はッ」

 

 デュラハンのお怒りはごもっともである。俺だってこんなことされたら怒る。

 

 「我が名はめぐみんッ紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者ッ」

 

 「めぐみんってなんだ?馬鹿にしてんのかッ」

 

 ブフッ、デュラハンの返しに思わず吹き出してしまう。

 

 「ちがうわい、我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を使い続けていたのはあなたをこの街に呼び出すための作戦。こうして、まんまとやって来たのが運の尽き」

 

 周りの冒険者がおぉ~と声をあげる。

 

 「まぁいい、俺は雑魚を相手にはしない。いいから、これからは爆裂魔法を放つのを止めろッ」

 

 「無理です。紅魔族の者は日に一度、爆裂魔法を放たないと死ぬのです」

 

 「聞いたことがないぞッ」

 

 そして、めぐみんはアークプリーストであるアクアを呼び出す。

 

 「こんな街にいるアークプリーストにはやれらない。ここはひとつ・・・汝に死の宣告を」

 

 そういったデュラハンは指先をめぐみんへと向け黒い塊を放った。

 

 めぐみんにデュラハンの死の宣告が当たる直前に金髪を靡かせた女騎士が間に入る。ダクネスだ。

 

 誰もがダクネスに当たるかと思われた直後・・・

 

 「悪いな、こういうのはクルセイダーとはいえ、女に当てさせるわけにはいかないんでね」

 

 俺が更にダクネスの前に立ち死の宣告を浴びた。

 

 「バ、バサラッ」

 

 「おいッ、大丈夫か」

 

 めぐみんとカズマそして、何故か残念そうなダクネスが寄ってくる。まぁ、なんで残念なのかはなんとなく分かる。大方、何故私をかばった。あのまま私はデュラハンにやられるはずだったのにとかだろう。

 

 「なんともねぇな」

 

 「仲間同士の結束が固い貴様ら冒険者はこっちの方が堪えるだろう。貴様は一週間後に死ぬ。そう、魔法使い、貴様の所為でだ。そこの男を助けたければ一週間以内に俺の城に来い」

 

 めぐみんはハッとなる。

 

 「自らの行いを悔いるがいい」

 

 そう言い残し、デュラハンは去ろうとする。

 

 「まぁ、待てよ。首無し騎士さんや。別にわざわざ一週間なんて待たなくてもいいだろう」

 

 俺は機攻殻剣を抜き、デュラハンの前に立つ。

 

 「誰が死の恐怖に怯えるだって?誰のせいで俺が死ぬだって?勝手に人様を殺してんじゃねぇよ」

 

 「バ、バサラ、やめろって。ここはしっかりと準備を整えて・・・」

 

 カズマが俺を止めようとする。

 

 「大丈夫だって・・・とはいえねぇが、アクアだっているんだ。何とかなるだろ。頼りにしてんぜ」

 

 「えぇ、任せなさいッ」

 

 遥か後方に見える青い髪を持つ女神、アクアが元気よく返事をする。

 

 「ということで、ここは一対一の戦いを要求する」

 

 「いいだろう、貴様のその眼、気に入った」

 

 デュラハンは嬉しそうな声を出すと大剣を構える。

 

 「「・・・」」

 

 お互いに隙を伺う。

 

 にしても、相当強いな。流石魔王軍幹部。魔法を主体としてくるアガレスとは違い、ビリビリとやべぇオーラが漂ってくる。

 

 「はぁッ」

 

 先に動いたのは俺だ。ワイバーンの機攻殻剣を振りぬきデュラハンの持つ大剣に叩きつける。

 

 「動きはなかなかいいな。だがしかし、筋力が足りぬな。この程度、虫刺されにしか感じないぞ」

 

 「はんッ、虫だって、てめぇの腐った肉体なんか刺したくないって思ってるだろうぜ」

 

 「減らず口を叩けるその根性。面白い」

 

 それからはデュラハンの攻撃が来る。大振りの癖に恐ろしく早い斬撃の数々が俺を襲う。

 

 俺はなんとか受け流すだけで精いっぱいだ。

 

 「守ってばかりでは勝負にならないな」

 

 「・・・」

 

 「受け流すだけで精いっぱいか・・・フッ」

 

 なんとか攻撃を受け流していた俺だが、デュラハンは突然攻撃を止め、アイツの全力の斬撃が俺の剣に叩きつけられる。

 

 「グハッ」

 

 機攻殻剣は吹き飛ばされ、腕も痺れている。

 

 「だ、大丈夫か?にしてもあのデュラハンなかなかのやり手だな。ジワジワと相手を痛めつける鬼畜の所業だ」

 

 「ほんと、お前は生粋のドMだな」

 

 「今日はこの変にしておいてやる。再戦を待っているぞ」

 

 「だから待てって。まだ俺は本気を出していない」

 

 「ほう、だが貴様は満身創痍ではないか?」

 

 俺は立ち上がり、空間魔法?アイテムボックス?なのか良く分からない空間から細い細剣のような機攻殻剣を取り出す。

 

 鞘から引き抜きトリガーを引きながら詠唱符(パスコード)を唱える。

 

 「降臨せよ、為政者の血を継し王族の竜。百雷を纏いて天を舞え《リンドヴルム》」

 

 俺は光に包まれる。

 

 周囲は一体何が起きているんだ?というざわめきと、カズマ達、パーティメンバーの不安気な声が漏れる。

 

 光が晴れた俺の姿を見てデュラハンは驚く。

 

 「どうだデュラハン?これが俺の本気だ」

 

 白と黄色が目立つ聖騎士のような神装機竜。

 

 「さぁ、第二ラウンドの始まりだ」

 

 

 





 読んで下さりありがとうございました。

 感想くれると嬉しいっす。


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支配者の神域

 今回は本格的な戦闘描写を書いてみました。

 私にはこれが限界です。


 「それが貴様の本気か・・・面白いッ面白いぞッ」

 

 デュラハンはリンドヴルムの姿を見て怖気ずくどころか興奮している。

 

 そして、俺の背後では・・・

 

 「な、なんだアレッ」

 

 「あんな大きな鎧見たことないわッ」

 

 「っつうか、どこからだしたんだ?」

 

 冒険者たちは始めて見る神装機竜の姿に興奮している。そして、神装機竜を見て興奮する奴と言えばもう一人。

 

 「ま、前のとは違う奴ですッ。黄色い稲妻の様な機竜ッカッコいいです。なんなんですか、なんでこうもバサラは私たち紅魔族の血に反応させるようなことをしてくれるんですか」

 

 うん、わかってた。滅茶苦茶興奮してた。というか目が紅く光っている。怖い。

 

 「いくぜッ」

 

 俺は雷を帯びた大槍の特殊武装 雷光穿槍(ライトニングランス)を振るいデュラハンの剣に打ち付ける。

 

 「ぐっ、パワーも先ほどのアレとは大違いだ。これは俺も本気を出さねばまずいな」

 

 「はっ」

 

 槍で大剣を打ち付けたあと、大剣の面の部分に鋭い突き決める。

 

 「グハッ」

 

 なんとか防いだデュラハンだったが後ろに吹き飛ばされる。

 

 「ほ、本当にここは初心者の集まる街なのか?俺はこれでも魔王軍内で強い部類なのだが」

 

 「ごちゃごちゃいってねぇで行くぜッ」

 

 俺が再びデュラハンに突っ込もうとしたとき、アイツの雰囲気が変わった。

 

 「フハハハハ、この技を使うのは久しいが、この技を見せた相手は誰も生きて帰らなかった」

 

 「なんだ?」

 

 デュラハンの体から禍々しいオーラがあふれ出る。

 

 「なに、ただの強化魔法だ。今度はこちらから行くぞッ」

 

 するとデュラハンの姿が消えた。

 

 「どこを見ているッフンッ」

 

 瞬間、消えたと思ったデュラハンの姿が目の前に現れる。それと同時に、大剣が俺を襲う。

 

 「グッ」

 

 なんとか防いだが、そこからさらにデュラハンの攻撃は早くなる。

 

 まるで、一振り一振りが音速振り下ろされる大槌のようだ。

 

 「ハァァァァッ」

 

 デュラハンは終わりだといわんばかりに大剣を大きく振り上げて振り落とす。

 

 まずい、いくら神装機竜でもあれほどの一撃を喰らえばただでは済まない。

 

 周囲の冒険者、カズマ達パーティメンバーの誰しもがやられると思った刹那、バサラの姿が消える。

 

 「なんだと、どこにいった?」

 

 「こっちだよ」

 

 俺の姿を見失ったデュラハンの頭上から槍を突きさす。

 

 「なッ」

 

 間一髪のところで回避したデュラハンは一瞬で俺から距離を取る。

 

 「消えたと思ったら俺の頭上に現れた・・・空間転移かッ」

 

 「ご名答。これぞ我が神装機竜リンドヴルムの神装 支配者の神域(ディバイン・ゲート)の力だ」

 

 そして今度は、持っていたダガーをデュラハンに投擲する。

 

 デュラハンはこの程度造作もないといいたげにダガーを叩き落とす。

 

 「グハッ」とうめき声を出したのはデュラハンだ。

 

 ダガーを落としたデュラハンの前後から俺の持つ雷光穿槍の鋭い突きがさく裂する。

 

 「重撃、ダガーを投げたと同時に俺は支配者の神域(ディバイン・ゲート)を使いお前の前後から攻撃を行う。リンドヴルムだからこそできる最速の攻撃」

 

 「はぁ、はぁ、なかなかやるな」

 

 「これでとどめだッ」

 

 膝をついたデュラハンにとどめを刺そうとした直後、俺の体が動かなくなる。

 

 「な、んだ、これ」

 

 動けない。金縛りにあったかのように俺の体はピクリとも動いたりしない。

 

 以前もこのような感覚に襲われたこともあった。まさかッ

 

 「ふふふ、久しぶりねバサラ」

 

 聞き覚えのある声がデュラハンの背後から聞こえる。

 

 「な、貴様はッ」

 

 「久しぶりねベルディア。一対一の決闘の最中に悪いけど、魔王様がお呼びよ」

 

 「・・・仕方ない。おい貴様ッ、今回は俺の負けを認めよう。だがしかし、次まみえるときはこうはいかないと思っておけ」

 

 ベルディアはそういってアガレスの転移魔法により消えた。

 

 「ふふふ、更に強くなったようねバサラ。本当に素敵だわ」

 

 未だ動かない俺の体。いまここでこいつを仕留めておきたい。

 

 転移魔法で俺の正面へと転移したアガレスは俺の頬に手を添えてじっくりと俺の眼を見る。

 

 王都であった魔王軍の侵攻の際にみたアガレスのラピスラズリのような瞳は以前と変わらず美しく、しかし、どこか怪しげな光を放っている。

 

 「ふふふ、必ずあなたを私のモノにしてみせるわ」

 

 「ッ」

 

 前回と同じくキスをされた。しかし、前回とは違い今回は舌を絡めてきた。

 

 「ううう、うう、ううッ」

 

 抵抗しようにも体に力が入らない。しかも、こいつ舌が長い。

 

 逃げようにも長すぎるアガレスの舌に捕まえられる。

 

 「はぁ~、いいわぁ。もっとこうしていたいけど、私も魔王様に呼ばれているの。じゃあねバサラ」

 

 そういって、今度こそアガレスは消えた。

 

 「やったのか?」

 

 冒険者の誰かが呟く。

 

 「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」」

 

 直後、天にも届く冒険者たちの歓喜の声が上がる。

 

 アガレスが消えたあとは俺の体も動くようになったが、神装を使ったせいかすさまじい疲労感が俺を襲う。

 

 「バ、バサラッ」

 

 リンドヴルムを解除した俺は地面に倒れ込む。そんな俺を見てカズマが駆け寄ってきた。

 

 「はぁ、逃がしちまった」

 

 「そんなことはいいから、怪我はないか?」

 

 「あぁ、怪我はないけど、あんのクソ女ッ」

 

「嘘つくなよ、ボロボロじゃねえか」

 

 「バサラッ、さっきの女は一体?」

 

 カズマに続き、めぐみん、アクア、ダクネスも寄ってくる。

 

 「魔王軍の幹部の一人だ」

 

 「そ、そのだな、まさかお前も私と同z「違うからな」はうっ」

 

 なにを勘違いしたのかダクネスが非常に失礼なことをいおうとしたのでチョップをいれてやった。

 

 「にしても、疲れたぁ~」

 

 空を見るように仰向けになる。先ほどまで雷が降り注いでいたが今は晴れ晴れとした青空だ。

 

 「ほんとうにカッコよかったです」

 

 「あぁ、お前は最高の英雄だよ」

 

 「ま、まぁ、私ほどの活躍ではないけど、あと、あんたの呪いも浄化しておいたから」

 

 「サンキュー」

 

 めぐみん、カズマ、アクアがそういう。

 

 「わ、私も幼い頃に読んだ英雄譚を思い出した」

 

 珍しくドMなダクネスではなくクルセイダーとしてのダクネスが俺を褒める。

 

 「照れるだろ。それより、ちょっと落ちるわ・・・すぴぃ~すぴぃ~」

 

 

 

 




 読んで下さりありがとうございました。

 感想待ってますね


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仲間から見たバサラ


 今回は少し長めです。


 カズマside

 

 俺は今、仲間の一人であるバサラの戦いを見て心の底から熱くなった。

 

 相手は魔王軍幹部であるデュラハンだ。こうなんというか、見ていて熱くなるというのは幼い頃にテレビで見た仮面ライダーが敵の怪人を倒すときみたいな感じの熱くなるということだ。

 

 バサラは生身でも強い。剣術スキルはとっていないが、正直、この街にいる他の剣士の誰よりも強いだろう。

 

 そんなバサラなのだが機竜というアイツの転生特典はめちゃくちゃカッコいい。

 

 本人から聞いた話では竜と契約し、その竜を鎧にし力を使うらしいのだが、リンドヴルムを纏ったバサラの姿は聖騎士そのものだ。

 

 騎士の気高いオーラを纏いながら圧倒的強者であると感じさせる王者の風格をも感じさせる。

 

 機竜を纏ったあとのバサラはベルディアを圧倒している。

 

 生身の状態ではパワーが足りなかったようだが、機竜のおかげでパワーの問題も解決している。

 

 そして、何よりあの大槍だ。雷を帯びたソレはベルディアの大剣をへし折る勢いで雷光の如き鋭い攻撃を続ける。

 

 「が、頑張れバサラッ」

 

 俺は自然とバサラを応援する声が出る。

 

 「そ、そうですよ。頑張ってくださいバサラッ」

 

 「そんなクソアンデッドなんかやっちまいなさいッ」

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、あの激しい戦闘の中、私があそこへ入ったら一体どのようなことになるのだろうか」

 

 俺に続きめぐみん、アクアが応援をする。ダクネス?あいつは只のドMだ。

 

 しかし、バサラの猛攻も続かず、デュラハンが変なスキルを使うとデュラハンは姿が見えないほど早く移動した。そして、その速さは攻撃にも反映されている。音速並みの斬撃をなんとか防御しているバサラを見るとやはり、あいつはすごいと実感する。

 

 そして、俺達でさえ、やられてしまうと思ったが、今度はアイツの姿が消えた。

 

 支配者の神域(ディバイン・ゲート)というそうだ。

 

 空間転移のスキルらしい。デュラハンのスピードをものともしなくなったバサラは再び猛攻を始めた。

 

 そして、デュラハンに勝つんじゃないか?と思ったとき、アイツの動きが止まった。

 

 なにごとかと思いきやフードを被った女が現れ、バサラにキス(しかも深い方)をしてデュラハンを逃がした。

 

 おのれ、バサラ。この色男がッ

 

 不思議な女が消えたあと、機竜を解除し地面に倒れ込んだバサラを見て俺は駆けつけた。

 

 そこには汗びっしょりになっているバサラがいた。

 

 「バ、バサラッ」

 

 「はぁ、逃がしちまった」

 

 デュラハンを逃がしたことに負い目を感じているようで眼が怖い。

 

 「そんなことはいいから怪我はないか?」

 

 「あぁ、怪我はないけど、あんのクソ女ッ」

 

 どうやらあの女とは何かあったらしい。

 

 そして、俺に続くようにめぐみんとアクアとダクネスがきた。

 

 アクアはバサラにかけられていた呪いを解呪する。

 

 呪いを無事解呪されたバサラは「にしても、疲れたぁ~」といって仰向けになる。

 

 俺達がカッコよかったぜと褒めると照れたバサラはそのまま眠ってしまった。

 

 寝ているところを見ると先ほどまで魔王軍幹部と渡り合っていただなんて思えないほど可愛げのある寝顔だった。

 

 

 

 

 アクアside

 

 ハロー皆さん。私は水の女神アクア、分け合ってこの世界に転生した女神よッ。

 

 そんな私なんだけど、今日はなんと魔王軍の幹部が来たの。あんのクソアンデッド。

生意気なことに私の浄化魔法を喰らっても平気そうな顔をしていた。

 

 その後は死の宣告とかいう呪いを私のパーティメンバーの一人のバサラに掛けたんだけど、バサラはそのままクソアンデッドと戦ったの。

 

 転生特典を渡したのは私だけど、すごく驚いたわ。

 

 なんてったって、バサラの特典は本来機竜を纏うことで効果を発揮するの。でも、バサラは素の状態でクソアンデッドとほぼ互角に戦っていたわ。しかも、剣術スキルをとってないっていってたわ。

 

 ほんと、この世界にきてどれだけ修業をしたのかしら、少しはカズマも見習ってほしいわ。

 

 でも、そんなバサラでもベルディアの筋力には叶わなかったみたい。

 

 「なにやってるのよっ、そんなクソアンデッドなんかに負けちゃ駄目でしょッ」

 

 私は後ろからバサラに声を掛ける。

 

 私の応援が聞いたのか、バサラは機竜を使ったわ。

 

 リンドヴルム、確か空間転移の能力を持つ神装機竜だったはずよ。

 

 機竜を纏ってからバサラはクソアンデッドを圧倒していたわ。

 

 「いいわよっ、そこよッ」

 

 クソアンデッドをボコボコにしているのを見ていると私も機嫌が良くなってきたわ。

 

 しかし、その快進撃も続かなかった、あのクソアンデッドは変な魔法を使って自身を強化したの。

 

 そこからは、普通の人には目に見えないほどの速さでバサラに攻撃していたわ。

 

 えっ?私には見えたのかって?当たり前じゃない。私は女神よ。

 

 私も見ていてハラハラしたわ、このままではバサラがやられちゃうって。

 

 でも、バサラは神装を使った。

 

 そのおかげもあって、クソアンデッドにとどめを刺すところまで行ったわ。

 

 なのに、あの女のせいで逃げられちゃったの。

 

 ムカつくッ、でも、なんでか分からないけどあの女からは少しだけ神の力を感じたの。

 

 一体、あの女はなんなんでしょう・・・

 

 それより、今はバサラにかかった死の宣告を解呪していげないと。

 

 お疲れ様、水の女神アクアはあなたの頑張りをしっかり見ていましたよ。

 

 

 

 

 めぐみんside

 

 我が名はめぐみんッ、紅魔族随一の魔法の使い手にして、爆裂魔法を操る者ッ。

 

 そんな私は一日に一度、爆裂魔法を放たなければ死んでしまうという呪いがかかっています。

だから私は毎日、カズマに頼んで爆裂魔法の訓練をしていました。

 

 その練習に使っていた城がまさか魔王軍幹部の者がいる城だとは思いもよりませんでした。

 

 ベルディアというデュラハンは私に死の宣告を放ってきました。

 

 回避しようにも体が動かず、そのまま死んでしまうのかと思いましたが、私の目の前にダクネスが現れ、ダクネスに当たるかとおもいきや、バサラが現れ、直撃しました。

 

 バサラはなんともないようで安心しましたが、その安心もつかの間、ベルディアは一週間後にバサラが死ぬといいました。私の所為で・・・

 

 私は一気に視界が真っ暗になりました。

 

 私のせいでバサラが死ぬ、そんな、私はなんてことを。

 

 このままではベルディアが逃げてしまいます。

 

 ベルディアは一週間以内に俺の城に来いといいました。

 

 私はすぐに向かおうとかと思いましたが、バサラが立ち上がり、ベルディアと一体一の決闘を始めました。

 

 バサラの強さは知っています。剣術スキルをとっていないにも関わらずソードマンより遥かに鋭く、強い剣術を操ります。

 

 バサラはベルディアと互角に渡り合っていましたが、ベルディアの筋力には負けてしまいました。

 

 持っていた剣も吹き飛ばされてしまい、このまま終わってしまうと思いました。

 

 すると、空間の歪みらしきところから細剣を取り出して紅魔族的にビビビーンと来る詠唱を唱えると前回見たときとはまた違う機竜を纏っていました。

 

 「すごいです、バサラの機竜は全部めちゃくちゃカッコいいです」

 

 機竜を纏ったおかげで筋力もベルディアより高くなり、圧倒していました。

 

 しかし、ベルディアが強化魔法を使うと紫電の如き速さで動き、バサラを追い詰めました。

 

 私も、バサラがやられると思っていましたがバサラは必殺技らしきものを使いました。

 

 支配者の神域(ディバイン・ゲート)なんてカッコいい響きなんでしょう。

 

 しかもその能力は空間転移、それにより再びベルディアを圧倒したバサラは完全にベルディアを追い詰めました。

 

 すると、そこへ他の魔王軍の幹部が現れました。

 

 その女はベルディアを逃し、見えない力でバサラを拘束するとな、なんと、き、キスをしたのです。

 

 女が去ったあとバサラは地面に倒れ込み汗だくのドロドロになっていました。

 

 死の宣告もアクアに解呪してもらい、疲れ切ったのかそのまま眠ってしまいました。

 

 悔しいですがカッコよかったです。

 

 

 

 

 ダクネスside

 

 やぁ、私はクルセイダーのダクネスだ。

 

 今日はなんと魔王軍幹部のベルディアが襲来した。

 

 何故駆け出しの冒険者が集まるこの街に来たのかは察してほしい。

 

 そして、めぐみんがベルディアのう死の宣告を喰らいそうになったとき、私はすかさず間に入り守ろうとした。

 

 はぁ、はぁ、おそらくあのデュラハンは死の宣告を解いてほしくば俺の言うことを聞けといって鬼畜な命令をしてくるのだろうと思っていたらバサラが私の前に現れおあずけを喰らってしまった。

 

 これは、これでなかなかいいなと思ったが、仲間の危機にそんなことは考えてられない。

 

 バサラは無事のようだが、一週間以内にバサラが死ぬと告げた。

 

 解呪してほしくば俺の城に来いといい、そのまま立ち去ろうとしたがバサラが立ち上がり一対一の決闘を始めた。

 

 バサラの強さは尋常じゃないことは知っている。剣での攻撃が一度も当たらない私とは違い、剣術スキルをとっていないにも関わらず、ソードマン、下手すればルーンナイトよりも研ぎ澄まされた剣術を操る。

 

 案の定、バサラはベルディアと互角の戦いをしていた、あの二人の戦いに挟まれればどれほどの快感を味わえるのだろう。

 

 ゲフン、ゲフン、だが、流石のバサラもベルディアの筋力には叶わなかった。

 

 力技で一気に吹き飛ばされ、剣を落としたバサラ、このままでまずいと思い、私がベルディアと戦おうとしたが、急に何もないところから細剣を取り出したと思ったら前に見せてくれた機竜を召喚し再び戦い始めた。

 

 機竜のおかげで筋力が上がったバサラはベルディアを圧倒した、時折見えるバサラの野性的な眼が私にはドストライクだった。はぁ、私にもあの眼を向けてくれないだろうか。

 

 しかし、バサラの攻撃は止められてしまった。理由はベルディアが変な魔法を使ったせいだ。体中から禍々しいオーラをだし、目に見えないほど早くなっていた。

 

 バサラは追い詰められてしまい、このままでは殺されてしまうと思った。

 

 するとバサラは消え、ベルディアの頭上に現れた。

 

 どうやら、あの機竜の能力は空間転移らしい、アクアがそういっていた。

 

 その黄色い機竜はまさに雷のようだった。

 

 空間転移により、さらにベルディアを追い詰めたあと、とどめを刺そうとしたとき、新たに魔王軍の幹部が現れた。そいつは女で魔法か何かでバサラを拘束した。

 

 そして、そいつはバサラと、キ、キスをした。

 

 このままでは私の仲間が奪われてしまう。これがNTRという奴か・・・

 

 女が消えたあと、バサラは地面に倒れ込んだ。

 

 私達はすぐに駆け寄る、汗に塗れ、ドロドロでボロボロのバサラがいた。

 

 こいつは、私の性癖を気にしない変な奴だ。それに、攻撃の当たらない私の代わりに俺が攻撃するといってくれた。

 

 私がそれまでに組んできたパーティメンバーの全員が攻撃が当たらないなら邪魔だといってきた。

 

 それはそれで興奮していいのだが、なんというか、こう、初めて言われたので少し嬉しかった。

 

 だから、今回もコイツが私の代わりに攻撃してくれたのだろう。

 

 死の宣告もアクアが解呪してくたおかげで、どうもなっていないようだ。

 

 先ほどまでの戦闘、私は幼い頃に読んだ英雄譚を思い出した。

 

 その英雄譚の主人公も強敵を前に、仲間を守り、強敵と凄まじい戦闘を行い、追い詰め、追い詰められ、やられると思うと、今度は逆転しそして、勝利する。

 

 本当に、英雄のような男だ。

 

 バサラは疲れたようでそのまま眠ってしまった。

 

 すぴぃ~すぴぃ~と可愛い寝息を立てる仲間を見て笑ってしまった。

 

 「今度は私が守る」

 

 今回はバサラが私を守ってくれたが次は私がバサラを守って見せる。仲間を守るのがクルセイダーだ。

 

 いつまでも守られるだけの私だと思うなよ。

 





 感想待ってます。

 ジャンジャン送ってきてくれていいんですよ。


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湖の浄化

 感想ありがとうございます。

 ヤンデレが出るのはもう少し先になりそうです。

 これからもお付き合いお願いします。


 「きゃぁぁぁ、なんかなっちゃいけない音がなったっ」

 

 「頑張れーアクア―」

 

 汚い水で溢れる湖を檻に入った状態でワ二に襲われながらも浄化し続けるアクアと、木陰で休みながら応援するカズマ、何故こんな状況になったのかというと、時間を少し遡る。

 

 

 

 

 「多少きつくてもクエストを受けましょうッお金が欲しい」

 

 デュラハンとの決闘から一週間が経ったとき、アクアがそういった。

 

 「「え~」」と特にお金の困っていないカズマとめぐみんが不満げな声をあげる。

 

 「私は構わないが、私とアクアだけだと・・・」

 

 「な、ならバサラは・・・って、まだ無理そうかしら?」

 

 いつもなら俺の意見を聞く前に決定されるのだが、今日は珍しく大人しい。

 

 「そうだぞ、バサラは病み上がりなんだから、あまりわがままいうな」

 

 「もう大丈夫だと聞いたが本当に大丈夫なのか?」

 

 カズマとダクネスが心配してくれている。

 

 「大丈夫だって、みんなの無事な顔を見たら元気でたわ」

 

 「随分臭い台詞を吐くんですね。これがカズマなら鼻で嗤ってましたが、バサラだとなんかこう・・・」

 

 「臭いって・・・まぁ、いい。俺は大丈夫だからクエスト受けるなら受けようぜ」

 

 「なら三人で受けましょうッ」

 

 アクアが目を輝かせる。

 

 「はぁ、仕方ない。大丈夫だっていってるが病み上がりの奴に無理させるのもあれだし、俺達もいくか」

 

 「そうですね」

 

 とまぁ、こうしてクエストを受けることになったのだが・・・

 

 クエスト選びはアクアに任せたのだ。

 

 アクアが選ぶということもあり、ヤバそうなクエストを受けそうだなと思った俺達は掲示板の前に立つアクアを見に行った。

 

 アクアが持っていた紙をカズマが奪い取る。

 

 「なになに、『マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしていて邪魔です。二匹まとめて討伐してください。

報酬は五十万エリス』・・・って馬鹿かッ」

 

 ぶっちゃけ、それだけなら俺一人で討伐出来そうだが、ここはパーティのキズナを深めるためにも一緒のクエストを受けよう。

 

 すみません、嘘つきました。実はまだ本調子じゃないです。

 

 傷などはアークプリーストであるアクアによって完治した。死の宣告もアクアによって解呪してもらったのだが、なんかこう力が出ない。本調子じゃない。

 

 考えられる理由としたらアガレスしかいないだろうな。

 

 アイツのせいでベルディアは逃がすし、ファーストだけならずセカンドまで奪われるし、舌突っ込まれるし。

 

 にしても、あいつの眼ってほんとに綺麗だなとか思ったり思わなかったりする。

 

 だがそんな心配をカズマたちに掛けたくないし、マジでヤバかったときは素直に休憩する。

 

 だから、大丈夫だろう。

 

 そう考えているとアクアが違う依頼の書かれた紙を手に取る。

 

 「これなんかどう?」

 

 「えっと『湖が汚くてブルータルアリゲーターが住み着いて困っています。湖の浄化をお願いします。湖が浄化されるとモンスターはどっかに行くので討伐はしなくて結構です。報酬は三十万エリスです』てかお前浄化とかできたのか?」

 

 「馬鹿ねあんた、私を誰だと思ってるの?」

 

 「宴会芸の神だろ?」

 

 「違うわよッ水の女神よ。私にかかれば浄化なんてちょちょいのちょいよ」

 

 「ならいいんだが・・・」

 

 

 

 

 

 こうした経緯があり、俺達は湖を浄化していたのだが、予想以上にブルータルアリゲーターの数が多く、しかも浄化しているアクアに襲い掛かっている。アクアはモンスター用の檻に入っているので怪我はないようだが、時々みしみしとなってはいけない音がなっている。

 

 当然、アクアも涙目である。

 

 「ピュリフィケーション、ピュリフィケーション、ピュリフィケーションッ」

 

 必死に浄化魔法を唱えているアクアを見ていてなんか可愛そうになってきた。

 

 「・・・」

 

 そして、俺の隣では頬が紅潮した金髪の女騎士が羨ましそうな眼でアクアを見ている。

 

 「お前、楽しそうだなとか思ってる?」

 

 「・・・少し」

 

 「行くなよ?変態」

 

 「はうっ、こ、小声で変態だなんて・・・」

 

 駄目だ。コイツ、マジでド変態だ。引きはしないが・・・一応コイツも見張っておかないとな。

 

 「きゃぁぁぁぁ、ほんとにヤバいって」

 

 流石にそろそろかわいそうになってきた俺はアクアを助けに入る。

 

 「なぁ、ダクネス」

 

 「なんだ?」

 

 「あのワ二共に追いかけてもらいたくないか?」

 

 「・・・詳しく聞こう」

 

 

 

 

 

 

 俺は《ワイバーン》を召喚し、ダクネスをお姫様抱っこしてワ二たちの近くに向かう。

 

 「なにするつもりですか二人共?」

 

 「なぁに、ちょっくらワ二どもの気をひこうかなって」

 

 「俺も少し可哀想になってきたところだ。頼む」

 

 「はいよ、それじゃあダクネス」

 

 「そ、それはいいのだが、この体制はどうにかならないのか?」

 

 「うるさい、早くスキル使えよ」

 

 「はうっ、デ、デコイ」

 

 俺はダクネスにクルセイダーのスキルであるデコイを発動させる。

 

 これにより、ワ二たちは俺達の方へ釘付けとなり、追いかけてくる。

 

 「そんじゃ、アクアあと頼むぜ」

 

 「バサラさまあああああ、ダクネスうううううありがとおおおおお」

 

 ガチで怖かったんだろうな。顔とか涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

 

 本人がいうにはアクアの体液は全て清い聖水?らしいが。

 

 「それで、どうだダクネス」

 

 「これはいいな、風が心地いい。それにあんなにも獰猛なワ二たちが私を狙って、はぁはぁ」

 

 「ほんと、平常運転だな」

 

 「それより、この体制をやめてもらいたいんだが」

 

 「いいじゃねぇか、お姫さまみたいだぜ。もしかしてなんだが、貴族だったりするのか?」

 

 「なっ、バサラ」

 

 「おっと、危ないッ」

 

 「うわあああああ」

 

 ダクネスが暴れる為、バランスを崩してしまった。その結果、ちょっとした絶叫マシンのようになったのだが・・・

 

 こちらを向いたダクネスの眼は殺気に満ちており、普段ド変態な彼女からは想像ができないほど力強かった。

 

 それから一、二時間ほど逃げ回っているといつの間にかワ二たちは消えており、湖も綺麗になっていた。

 

 これをやり遂げたアクアはどうかというと・・・

 

 「外の世界怖い、このまま連れてって」

 

 重症だった。ワ二に襲われたのがここまで響いているとは、もう少し早く助け船をだしてやれば良かったか?と後悔した。

 

 「ダクネスだけずるいです。私も今度乗せてください」

 

 機竜に運ばれていたダクネスを羨ましがりめぐみんがそんなことをいってきた。

 

 「はいはい、いつでも乗せてやるから。それより先にアクアをどうにかしないとな」

 

 

 

 

 

 

 

 アクセルの街に戻ってきたのはいいのだが、いつまでも檻から出ようとしないアクアが周囲の人からすごい目で見られている。

 

 「ドナドナドーナー」

 

 「頼むからその歌を歌うのはやめてくれ」

 

 「あれ女神様じゃないですか・・・って女神様ッ」

 

 この駄女神はどうやらまた厄介ごとを運んできたようだ。




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魔剣の勇者

 

 「女神様じゃないですかッ」

 

 突然、アクアのことをそう呼んだのは茶髪の好青年だった。俗にいうイケメンというやつだ。

 

 アクアのことを女神と呼んだからにはこいつも転生者なのだろう。

 

 見た所、結構高そうな装備で体を守っている。

 

 そして青年は一応ブルータルアリゲーターの攻撃でも壊れたりしなかった檻を自らの腕力で捻じ曲げてアクアを中から出そうとする。

 

 「えぇっ」

 

 「マジですか」

 

 カズマとめぐみんの二人はゴリラ以上の腕力を持つであろう青年を見て引き攣っている。

 

 青年がアクアと接触しようとした瞬間、いつものド変態なダクネスとは違うかっこいいダクネスが現れた。

 

 「おい、私の仲間になれなれしく触れるな」

 

 こういうとこだけは、ほんとカッコいいなと思ってしまう。これで言動がしっかりしていれば・・・

 

 「おい、あれってお前の知り合いだろ?女神とかいってたし」

 

 「女神?・・・そうよ、私は女神よ」

 

 この駄女神と言う奴は、自分でもすっかり女神ということを忘れてたんじゃねぇかッ。

 

 先ほどの廃人のような雰囲気から一転し、いつものアクアに戻った。

 

 うるさいが、こちらのほうがアクアらしくて安心する。

 

 「それで、女神である私に何の用かしら、ってあなた誰?」

 

 「ミツルギ・キョウヤです。あなたにこの魔剣グラムをいただき、この世界に転生したミツルギ・キョウヤです」

 

 「えっ・・・」

 

 まさか知らないのか?

 

 「そ、そういえばそんな人もいたわね。ごめんね、結構な人数をこちらに送ったから」

 

 ま、まぁ、それは仕方ないだろう。俺だって忘れられてたっぽいし。

 

 「あなたに選ばれし勇者として日々頑張っていますよ。ところで何故檻のなかにいたのでしょうか?」

 

 かくかくしかじかと理由を説明する。

 

 「はァァァッ、アクア様をこの世界に轢きづりこんで、その上アクア様を湖に漬けたッ」

 

 うん、滅茶苦茶怒ってる。

 

 これはアレだな。キョウヤは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の冒険者から女神を救わねばとって言う奴。

 

 「ちょ、ちょっと、私は結構楽しんでるし」

 

 「あなたは女神ですよ、ちなみにアクア様はどこに寝泊まりをしているのですか?」

 

 「馬小屋だけど」

 

 そして、更にカズマに殴りかかろうとするミツルギ。

 

 「おい、礼儀知らずにもほどがあるぞッ」

 

 「ちょっと撃ちたくなってきました」

 

 ダクネスはともかく、めぐみんよ、貴様はやめい。

 

 二人を見たミツルギはべた褒めする。

 

 確かにこいつらはアークウィザードとクルセイダーだ。

それも、一発屋と攻撃が当たらないというところを抜けば結構すごいだろう。

 

 「君達もこれからはソードマスターである僕と一緒に行動すればいい」

 

 なんかちゃっかり勧誘してるし。

 

 俺もそろそろ止めようかなと行動にでるが、三人がミツルギにドン引きしており、俺もドン引きしていた。

 

 ナルシストかコイツ。ティアマトの試練をクリアした後の俺みたいだ。いや、流石にここまでひどくはないな。

 

 三人とも勧誘を断った。

 

 「えぇと、この通り、満場一致であなたのパーティにはいきたくないらしいので、ではこれで」

 

 結局最後まで何も言わなかったが、俺も面倒ごとは嫌なのでソロリソロリとついて行く。

 

 「ちょっと待て」

 

 しかし、簡単に行かせてもらえるわけもなく、ミツルギは再び俺達の前に立ちはだかる。

 

 「勝負をしないか?僕が勝ったらアクア様を譲ってくれ。君が勝ったらなんでも一ついうことを聞こうじゃないか」

 

 「よし、乗った。行くぞっ」

 

 ミツルギの提案に即決したカズマは突然ミツルギに襲い掛かる。

 

 「スティール」

 

 でた、カズマの必殺。

 

 今回カズマが奪ったのは魔剣グラム。魔剣グラムを振り下ろす?というか、重さに耐えきれずそのまま振り下ろしたみたいだが、剣の腹がミツルギの脳天に直撃した。

 

 案の定、ミツルギは目を回して倒れる。

 

 「ったく、言いたい放題いいやがって」

 

 「卑怯者」

 

 「卑怯者卑怯者卑怯者ッ」

 

 ミツルギのパーティメンバーと思わしき二人の女性が文句をいう。まぁ、確かに少し卑怯だと思うがよく考えろ。魔剣持ちのチーターが駆け出し冒険者と決闘しようだなんておかしいだろう。

 

 「魔剣グラムを返しなさいッ。その剣はキョウヤにしか使えないんだから」

 

 「そうなのか・・・まぁいいや。せっかくだし貰っとこう」

 

 「こんな勝ち方認めないわ」

 

 「真の男女平等主義者たる俺は女子相手でもドロップキックを喰らわせることができる男だ。手加減してもらえると思うなよ」

 

 ニヤリと黒い笑みを浮かべるカズマが指を触手の様に動かす。

 

 「まぁ、待てよ。さっきから人が黙ってれば俺の大切な仲間を引き抜こうだぁ?」

 

 流石に俺も一言二言・・・十言くらい言いたくなったので入る。

 

 「三人とも嫌だっていってるのに無理強いをするのは勇者っていえるのか?」

 

 「な、何よ」

 

 「それに、そのミツルギとか言う奴はソードマスターなんだろ?しかも魔剣グラムとかいう神器も持ってる。そんな奴が駆け出し冒険者であるカズマと戦おうだなんてなんだ?新手のいじめか」

 

 「ち、違うわよ」

 

 俺の言葉に二人の女性がたじろぐ。

 

 「それに、こんな坊ちゃんだから知らねぇだろうが、普通の冒険者っていうのは馬小屋生活から始まるもんなんだよ。お前みたいに最初から難しいクエストを受けて大金を貰えるわけじゃねぇんだ」

 

 俺は気絶しているミツルギの顔にカズマにクリエイトウォーターを掛けてもらう。

 

 「もしもぉ~し、ミツルギ君よ。聞こえてるか?」

 

 「あ、あぁ、聞こえる。そうか、負けたのか」

 

 「あぁ、だが、お前の仲間二人は納得してないみたいだ。そこでだ、もう一度だけチャンスをやろう」

 

 上から目線な言い方だが、いいだろうこれくらい。

 

 「ほんとうかいッ」

 

 「あぁ、今度は俺と一騎打ちだ。安心しろ、今回俺は魔法を使わない。純粋な剣技だけでお前を相手にする」

 

 「そ、そうか。見た所君は僕と同じくソードマスターってところかい?」

 

 「まぁ、そんなとこだ。それでいいだろ?」

 

 「あぁ、感謝する」

 

 こうして、俺とミツルギの決闘が始まる。

 

 

 

 

 「ダクネス、開始の合図を頼む」

 

 「任せろ・・・始めッ」

 

 「はぁっ」

 

 ダクネスが開始の合図を出すと同時にミツルギは剣を前に突き出しながら飛んでくる。

 

 「ほいっ」

 

 右に避けながらミツルギの足に機攻殻剣の鞘を引っかける。

 

 つまずいたところを俺は機攻殻剣を鞘ごと振りぬき転倒させる。

 

 この程度で終わるはずはなく、すぐに立ちなおしたミツルギがこちらを睨む。

 

 「なかなかやるじゃないか」

 

 「まぁな、そういうお前は熱くなり過ぎだ。しっかり周りを見ろ」

 

 「ッ、た、確かに少し頭に血が上っていた」

 

 落ち着きを取り戻したミツルギは深呼吸を繰り返す。

 

 「一ついっておくが、アクアは俺達の大切な仲間だ。いくら酒癖が悪く、借金ばっかりで宴会芸ばかり上達している自称女神だとしても、うちのパーティにはかかせないムードメーカーなんだ。引き抜くのはやめてもらおう」

 

 「し、しかし、アクア様をこのままにしておけない」

 

 「他の二人だってそうだ。めぐみんは一発しか魔法を使えないかもしれないが、その一発が盤上をひっくり返す逆転の一手なんだ。ダクネスだって攻撃が当たらないという弱点があるが、アイツほど攻撃を受け止めてくれると信頼できるクルセイダーはいないだろう。カズマも卑怯な手を使うが、最弱職であるアイツの工夫だ。現に、アイツは初級魔法を工夫して使うことにたけている」

 

 「・・・・・・」

 

 ミツルギは俺の言葉を静かに聞いている。

 

 「ここまでいえば、分かるだろ。俺のパーティメンバーを引き抜くのは止めてもらおう」

 

 「し、しかし」

 

 「しかしもくそもねぇんだよ。あんまりしつこいと沈めんぞゴラッ」

 

 「ならば、次の一撃で決めよう」

 

 『あれぇ~今のいい感じにすまなかったってなるとこじゃない?』

 

 「まぁいい、分かった。次で決めよう」

 

 「・・・喰らえッ」

 

 瞬間移動するかの如く俺の正面に現れたミツルギがグラムを横一線する。

 

 しかし、俺には効かない。

 

 「ベルディアと比べるとおせぇんだよ」

 

 グラムを機攻殻剣で受け止め心臓を全力で殴ってやる。

 

 「グハッ」

 

 いい感じに決まった拳はミツルギの身に着けていた鎧に綺麗な拳型を残す。

 

 「これぞハートブレイクショットってな」

 

 白目をむいて気絶するミツルギを放って俺は先にギルドへ戻る。

 

 理由は恥ずかしいからだ。今思い出すと俺ってば恥ずかしいことばかりいっている。

 

 

 





 感想欲しいなぁ。

 次回、サトウ・カズマ僕の魔剣は?


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魔剣使いと機竜使い


お久しぶりです。私は元気です。


 魔剣使いのヤツルギ君をちょいとばかり「おいらボコ」状態にしてやった次の日。

 

 俺達はギルドに来ていた。理由は先日受けたクエストの報酬を受け取るためだ。

報酬を受け取りに来たのは良いのだが・・・

 

 「なんでよぉ~」とアクアの叫び声が聞こえる。

 

 「あんだけ頑張ったのになんでこれっぽちしかないのよぉ~」

 

 三十万エリスの報酬が十万エリスしかないようだ。

 

 「檻の修理代もあるので・・・」

 

 そういえば、ミツ、ミツ?ミツハニー?君がアクアを檻から出すときに檻を壊してたな。

 

 一応、モンスターでも壊れなかった檻なんだがすごいな。

 

 「私が壊したんじゃないのにぃ~」

 

 うん、ここまでくるとアクアが可哀想だ。確かに、昨日のクエストで一番活躍したのはアクアだ。

アクアがいなければ湖の浄化なんてできないしな。

 

 「ぐすっ」

 

 涙目になっているアクアを見ていると可愛いなと思う。いや、酷い奴だなと自覚しているが、普段は生意気というか傲慢というか上から目線な女神がしょんぼりしているとなると可愛いなと思うじゃん。

 

 そしてダクネスは俺のそんな思考を読み取ったか如く・・・

 

 「バ、バサラは歪んでいるなッ、はぁ、はぁ」

 

 「おい、黙れッ。それ以上なにも口出しするな」

 

 俺は食べていたジャイアントドードの唐揚げをダクネスの口に放り込む。

 

 「ふぐっ」

 

 喉を詰まらせたようで、頬を紅潮させながら呑み込んでいる。

 

 「・・・昨日はなんかカッコいいこといってたのに、バサラもカズマと同じでヤバい奴ですか?」

 

 めぐみんがジト目でこちらを見てくる。

 

 「昨日のことは忘れて欲しいなぁ~、俺もね、ちょいと臭い台詞いったなって思った」

 

 「確かに昨日のバサラは私から見ても少しときめいたぞ」

 

 「「ダクネスが乙女にッ」」

 

 「お、おい、失礼だぞお前ら。私だって女だ。カズマもなんかいってやれ」

 

 「変なもんでも食ったんだろ」

 

 「はうっ」

 

 「「「あっ、いつものダクネスだ」」」

 

 とまぁ、いつも通り過ごしているとアイツが現れた。

 

 「サトウカズマとバサラはいるかッ」

 

 俺とカズマが呼ばれる。俺の方が名前しかないのは、俺の名字を知ってる奴が少ないからだろうか?

 

「なにしに来たんだ?また、ボコられに来たのか?」

 

やって来たアイツ、ミツルギに向けてカズマが嫌み成分たっぷりの返答をする。

 

「ゴッドブロおおおおおおお」

 

突然アクアがミツルギに向かって拳を放った。

 

「あんたのせいで檻の修理代払わないといけないじゃないどうしてくれるのよッ。三十万よ三十万」

 

まるでいじめっこのカツアゲを見ているかのようだ。それにしてもおかしいな。確か檻の修理代は二十万エリスだったはずだ。そしてミツルギは素直に三十万エリスをアクアに渡す。

 

ミツルギからお金をもらったアクアはすぐさま唐揚げとシュワシュワを注文する。

 

真っ赤になった頬をさすりながらミツルギはカズマに話をする。

 

「謝りに来たんだ。昨日はすまなかった。それでなのだが、その、僕の魔剣グラムを返してもらえないだろうか?」

 

「それは随分と都合がいいんじゃないのか?」

 

カズマがそういった。

 

俺はなにもいわないのかって?別にいうことはない。俺がいいたかったことはしっかりとミツルギに伝わっているみたいだしな。

 

ミツルギもアクアが俺たちの大切な仲間ということを理解してくれた。なら、俺からいうことはなにもない。

あとはカズマとミツルギの問題だ。そこに水を差すなんて俺にはできない。

 

「そ、それは確かにそうだ。し、しかし」

 

そこでめぐみんがミツルギの前にたつ。そしてこういった。

 

「まず、この男がすでに魔剣をもっていないことについて」

 

「サ、サトウカズマ・・・ぼ、僕の魔剣は?」

 

「売った」

 

「ちっくしょおおおおお」

 

ミツルギは仲間をおいて博打に負けた男かのように大声をだして冒険者ギルドからでていった。

そしてそんなミツルギを仲間の少女二人も追いかけた。

 

「いったいなんだったのだ?」

 

ダクネスが出ていったミツルギにたいしてそういった。

 

「それと、先程から女神様とはいったいなんのことなのだ?」

 

ダクネスがそういいかけたときに俺は冒険者ギルドからでていった。

 

 

 

 

 

とある武器屋の前

 

「僕の魔剣は売っていないのか?」

 

「悪いね、確かに昨日すんごい剣がはいってきたけど、すぐに売れちまったんだ」

 

二人の男が話をしていた。一人はもちろんミツルギ、そしてもう一人は武器屋の店主だ。

 

「クッ」

 

悔しそうにミツルギが声を漏らす。

 

「「キョウヤ」」

 

そんなミツルギの姿を見て仲間の少女二人も心配そうな表情を見せた。

 

「店主さん、誰がその剣を買ったのか教えてくれるますか?」

 

「えっと君の後ろにいる子だよ」

 

「「「えっ」」」

 

三人は一斉に振り返った。

 

「よう、ミツルギ」

 

鳩が豆鉄砲を食らったかの表情をするミツルギたちに俺はそういった。

 

 

 

場所は再び変わりとある街道のベンチに俺を含めた四人は座ってた。

 

「魔剣、返してほしいか?」

 

いつまでもミツルギたちがダンマリするものだから俺から話題をふる。

 

「あ、あぁ、返してくれるのかい?お金はいくらでも払う」

 

「お金はいらねぇよ。ただ、条件がある」

 

「ちょ、キョウヤ」

 

「わ、私たちがなんでもします。だからッ」

 

すると二人の少女が突然そんなことをいいだした。

 

「やめろよ、俺までカズマみたいに噂されるだろ。話は最後まで聞けよ」

 

なんとか三人を落ち着かせたあと、話を再開する。

 

「それで、条件と言うのはいったい?」

 

「ミツルギは魔剣に頼り過ぎているっていう自覚はあるか?」

 

「・・・あぁ」

 

「だよな、俺も自覚あるし。転生特典なんていうチートをもらったら誰だって楽にできる」

 

俺の話を三人は静かに聞いてくれる。

 

「もしだ、もしも転生特典が効かない相手や使えない場所にいったとき、そんな状況でお前は何ができる?」

 

「剣術スキルがあるから多少は戦える」

 

「確かにそうだ。そこでだ、少しの間、グラムを使わずに戦う練習をしてもらおうと思う。それができたらお前にこのグラムを返す。お金もいらない」

 

「その話ほんとうなんだね?」

 

「あぁ、嘘はつかねぇ」

 

「わかった。それで、具体的にどうすればいいんだ?」

 

「実はな、王竜の祠っていうダンジョンにとある竜がいるんだ。その竜に俺の名前をいって鍛えてくれっていえ。

そうすればその竜はお前を鍛えてくれる」

 

「わかった。そうすることにするよ。それにしても、君はどうして僕に優しくしてくれるんだい?昨日の件といい、僕は君に邪険に扱われても仕方ないと思っている」

 

ミツルギは俺の顔を見てそういった。

 

「同郷だからってのもあるが、パーティーメンバーに慕われているところをみると悪いやつではないってわかる。

そうだろ?」

 

「えぇ、キョウヤは優しくて強くて」

 

「私たちを守ってくれる。だから私たちもキョウヤを守りたいし、助けたい。ついていきたいの」

 

心の底からの言葉に俺も少し涙がでそうだ。

 

「ほら、可愛い子がこんなに好いてくれてるんだ間違った行動をとってしまっても、悪いやつじゃない。なら間違ったことを間違っているって教えてアドバイスする。そしたらただのいいやつになる」

 

「バサラといったね、ありがとう」

 

「気にするな。ひとついっておくが竜の試練は厳しいぞ、下手すれば死ぬかもな。俺も何度死にかけたことやら・・・」

 

「ッ・・・そ、それでも僕は頑張るよ」

 

「わ、私も」

 

「私だって頑張るわ」

 

「そっか、ならなにもいわない。じゃあな、今度あうときはお前が強くなったときだな」

 

そういって俺は魔剣グラムをミツルギに渡す。

 

「えっ?」

 

「王竜の祠までいく前に死んだらもとも子もないだろ?念のために持っとけ、たどり着く前に死んだらもともこもないしな。まぁ、それも含めて試練かもしれないが、俺はそこまでスパルタじゃねぇよ。じゃあな」

 

少しカッコつけて俺はカズマたちのもとへ戻った。

 

 

 





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ベルディアさん再来


 ベルディアさんが再びやってきましたよッ


 

 前回までの簡単なあらすじミカルギ君となんとなく仲良くなった。

 

 そしてあれから数日たった現在、《アクセルの街》には二人の来客があった。

 

 一人は魔王軍幹部の首無しの騎士ことベルディア

 

 もう一人は俺の天敵である魔王軍幹部眼が綺麗な怖い奴(←命名俺)がやってきた。

 

 「おいアガレス、あの男は俺の獲物だから手出しをするなよ」

 

 「なにいってるのよ、彼は私の方が先に目を付けていたのよ。あんたは雑魚どもを駆逐していればいいじゃない」

 

 身に纏うのは完全なる強者の風格ではあるが、幼い子供のような言い争いをしているのを見ていた冒険者たちは困惑していると同時に駆け出しの自分達に何ができるのか?と考えていた。

 

 そしてカズマたち一行はというと・・・

 

 「どうするんだよアクアッ!」

 

 「また来たのねあの腐れアンデッド、今日こそは私が浄化してあげるわ」

 

 「ふふふ、我が爆裂魔法にかかれば魔王軍幹部など一撃です」

 

 「あのデュラハンの目つきを見ろ。舐めまわすかのように女性たちを見ているぞ」

 

 カズマたちは今日も平常運転だった。

 

 「バサラァ~早くおいでなさい。私が可愛がってあげるわ」

 

 「おい小僧、貴様は俺との再戦を望むのであろう。早くあの奇妙な鎧を纏い、俺と戦え!」

 

 魔王軍幹部のお二人はお二人でバサラとどっちが戦うかでもめているし、何このカオス・・・

 

 「そんなに人の名前呼ばなくても戦いますよっと」

 

 「バサラッさっさと機竜使ってあいつらボコボコにするわよ」

 

 心底めんどくさいという気持ちを持ちながら俺はベルディアとアガレスの前に立つ。

そして俺に続くようにアクアが俺の横に立った。

 

 「ようやくでてきたか」

 

 「ふふふ、ねぇあなた。なんで私のバサラの隣にいるのかしら?」

 

 バサラが出てきたことによりベルディアは待ちくたびれたぞといいたげな反応をし、アガレスは自分のおもちゃを他人に取られたかのような反応をする。

 

 「私は水の女神アクア様よッ。あんたたちみたいな腐れアンデッドにはぴったりのお相手ということをしっかり理解してるのかしら?」

 

 「お、おいアクアッ」

 

 自身満々にベルディアと戦おうとするアクアをカズマが取り押さえる。

 

 「放しなさいよカズマッ、今いいところなんだから」

 

 「お前は女神でも駄女神だろうがッ、あんな奴に勝てるわけないだろ。はやく下がれよ」

 

 「嫌よッ」

 

 「アクアッ!」

 

 カズマがアクアを羽交い絞めし下がろうとする。

 

 「頼むからいうことを聞いてくれッ」

 

 「絶対に嫌ッ。これだけは何が何でも聞けない」

 

 「アクアッ、いい加減にしろ」

 

 断固拒否するアクアを見たカズマがついにしびれを切らし、アクアを叱りつける。

 

 「だ、って、だってだってだってだって、バサラだけに任せられないじゃないッ!」

 

 「ッ・・・アクア」

 

 「バサラは確かに強いけど、無理ばっかりするもの。この前だって無理してた。だから、私も戦うのッ」

 

 いつもの宴会芸を披露したり、酒をがぶ飲みしているアクアではなく、女神としてのアクアがカズマに訴える。

仲間のために自らも戦おうとするアクア。普段のアクアなら人任せにするであろうが、今回は自分も全力で戦うと目が物語っている。

 

 「・・・そうだな、バサラだけじゃ無理するもんな」

 

 「大丈夫ですよアクア、私の爆裂魔法が火を噴けばあんな奴らイチコロですから」

 

 「私も攻撃は当たらないが壁としてなら戦える。クルセイダーを舐めるなよ」

 

 そんなアクアの姿を見てカズマだけではなく、めぐみん、ダクネスも戦場に立った。

 

 「お前ら・・・」

 

 俺は本当なら下がってろと言いたかった。しかし、カズマたち、仲間たちの意思が籠った瞳を見て何もいえなくなる。ここで彼らに下がっていろなんていってしまったら、彼らの意志を無駄にしてしまいそうだからだ。

 

 「回復魔法頼むぞ」

 

 「えぇ」

 

 「爆裂魔法の準備しとけよ」

 

 「任せてください」

 

 「あんまり壁になるとか言ってほしくないんだが、頼りにしてるぜ最硬のクルセイダー」

 

 「あぁ、望むところだ」

 

 「カズマ・・・作戦を頼んだ」

 

 「おうッ、この町は俺達で守るぞ」

 

 俺が頼れる仲間たちにそれだけ伝えるとカズマたちだけではなく、その後ろにいた冒険者たち全員が武器を手に取った。

 

 「いくぞお前ら、アイツらだけに良い格好させんじゃねぇ」

 

 「たりめぇだッ」

 

 「バフ魔法頼むぞ」

 

 「切込み隊長様のお通りじゃあああああああ」

 

 駆け出し冒険者が集まる《アクセルの街》の全冒険者の思いが一つとなった。

 

 「・・・くだらない・・・」

 

 静かにそう呟いたのはアガレス。

 

 「くだらないわね、いくら数が増えようと羽虫は強者に勝てないのよ。バカじゃないかしら」

 

 「さて、俺はそろそろ貴様を斬るとするか。ハッ」

 

 アガレスが冒険者たちに毒を吐いているうちにベルディアは大剣を構え一瞬でバサラとの距離を詰めた。

 

 「ッ」

 

 とっさになんとか防ぐことのできたバサラだったが様子がおかしい。

 

 「どうだ、魔王様によって強化された俺の力は。先日の俺と思って戦うと貴様の首は飛ぶことになるぞ」

 

 「クッ」

 

 「バサラッ《セイクリッド・ターン・アンデッド》」

 

 足元が地面に埋もれてしまっているバサラを見たアクアがすぐに浄化魔法を発動しベルディアの弱体化を図る。

 

 「グッ・・・本当に貴様は駆け出しのアークプリーストなのか?魔王様に強化されてなかったら今のでやられていたかもしれないな」

 

 「サンキュアクア」

 

 決定打にはならなかったものの、ベルディアの体制を崩すことに成功し、即座にバサラは体勢を整える。

 

 「早くあの機竜とかいうものを呼べ」

 

 「いわれなくてもわかってるよ」

 

 バサラは細剣の機攻殻剣を取り出し《リンドヴルム》を呼び出す。

 

 「さぁ、ウォーミングアップはおしまいだ。本気で行くぞ」

 

 「来い小僧」

 

 「「ハァァァァァッ!!」」

 

 大槍と大剣がぶつかりあうと火花が散る。

 

 「ちょっと、何二人で楽しんでるの?」

 

 そういって二人の戦いに割り込んできたのはアガレス。浮遊魔法を発動しているようで空中に浮いていた。

手には禍々しいオーラの漂う杖を持ち、魔法の準備をしている。

 

 「今だッ矢を放てッ」

 

 するとカズマの声が後方からする。その後、百以上の矢がアガレスに襲い掛かった。

 

 「小賢しいわね」

 

 といって矢はアガレスに当たる直前で見えない壁のようなものに弾かれる。

 

 「効かないか・・・聖水の用意をしろ」

 

 再びカズマの声が聞こえる。なんだ、やっぱりカズマには指揮官としての能力があるんじゃないか。

なんて思っているとベルディアの攻撃が機竜の装甲を僅かに傷つけた。

 

 「なんて硬さの鎧だ。貴様もしや日本人か?ならその強さも納得だ」

 

 ベルディアは日本人のことをしっているらしい。

 

 「しかし、俺も何十人と日本人を葬ってきた。貴様にはここで死んでもらうぞ」

 

 「それは困るわベルディア。バサラは私のモノになるのだから」

 

 「ええい、邪魔をするなこのアバズレ」

 

 「誰がアバズレよッ。もう怒った。《デストロイ・ジャッジメント》」

 

 アガレスが魔力を込めて魔法名を唱えると杖の先が紫色に輝く。

 

 「お、おいっ、それは洒落にならないぞ」

 

 ベルディアも焦っている。それほどまでに強力な魔法なのか?

 

 警戒しているとアガレスはベルディアに魔法を放つ。

 

 「ぐあああああああああ」

 

 「えっ?」

 

 まさか、本当に同士撃ちをするとは思っていなかったため、アガレスの行動に目を丸くする。

 

 そして、魔法を喰らったベルディアは体の右半分が消滅し、左半分と左手に持っていた頭だけが残った。

 

 「私を怒らせた罰よ。うふふ」

 

 ローブから見える表情は恍惚としており、なんともいえない気持ちになる。

 

 「き、貴様ッ馬鹿なのかッ本気で仲間を撃つ奴がどこにおるのだっ」

 

 「あらやだ、私は一度もあなたを仲間だなんて思った事は無いわ」

 

 「今ねッ《セイクリッド・ターン・アンデッド》」

 

 「ぬおおおおおおおおおおお」

 

 そこに追い打ちをかけたのは頼れる俺のパーティメンバーの回復担当アクアだった。

 

 完全に弱り切っていたベルディアにはアクアの浄化魔法は流石に効いたらしく、蒼い光の粒子となって消えていく。

 

 それを見届けていた全員は・・・

 

 「えっ?・・・えっ?」

 

 





 シリアスだと思った?苦戦すると思った?

 まさかの展開キタコレ。これがこのすばクオリティ。

 ベルディアさん・・・ドンマイ


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アガレス・・・まさか・・・


 前回、あっけなくやられてしまったベルディアさん。強化された感じではあったのだがまさかのアガレスさんによって半身を吹き飛ばされたのち、アクア様の浄化魔法によって浄化されてしまう。


 「えっ?」

 

 まさかのベルディアさん退場展開に俺は戸惑いを隠せなかった。しかし、それと同時にラッキーと思ったのも事実だ。

 

 「やったわバサラ。あとはそこの女だけよ」

 

 「お、おう、助かった」

 

 ひとことふたことくらい何かいいたい気もするが・・・一生懸命やってくれたアクアは何も悪くないはずだ。

ただ少しだけ空気を読めないだけで何も悪くない。一応、良い子だしな。これ以上責めるのも酷な物だろう。

 

 そう自分に言い聞かせたあと、俺はアガレスと対峙する。

 

 「うふふ、ようやくあなたを私のモノにできるのね」

 

 完全にヤバい人と化しているアガレスを前に俺も少しビビっていた。

 

 「一応いっておくけど、私には瞬間移動は効かないわよ」

 

 「それはご丁寧に」

 

 「あのときの黒いのは見せてくれないのかしら?」

 

 アガレスがいっているのはおそらく《バハムート》のことだろう。

 

 《バハムート》は確かに強力だが個人的には一体一の戦いに使うよりは何千もの敵を相手にした時の方が使い慣れている。それに黒い機竜に乗れば俺の居場所がアイツ(・・・)に伝わってしまう。

 

 「悪いけど黒いのは使えないんでね。代わりにこちらでもどうよ」

 

 そういって俺は《リンドヴルム》を解除して、赤い機攻殻剣を取り出す。

 

 「うふふ、一体どんな竜が出てくるのかしら・・・」

 

 詠唱符を唱えようとすると俺の体内を流れる血液が一気に沸騰するかのような感覚に陥る。

 

 「分かってるって師匠・・・目覚めろ、開闢の祖。一個にて軍を成す神々の王竜よ、《ティアマト》」

 

 その後、俺は赤い光に包まれた。

 

 「さてと、力を借りますよ師匠」

 

 言葉は発さないが師匠の言葉が伝わってくる。

 

 『ぶちのめせ』と・・・

 

 「美しいわぁ~本当にあなたは私を飽きさせないわね。うふふ、ますますあなたが欲しくなっちゃった」

 

 ペロリと舌なめずりをするアガレス。

 

 「それでは、楽しい楽しい舞踏会といきましょうかレディ。私のダンスは少々荒っぽいですがご了承ください・・・《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》」

 

 すぐに《ティアマト》の特徴ともいえる高火力の特殊武装を展開し、ぶっぱなす。

 

 その竜の顎から放たれた閃光は爆裂魔法にも負けない一撃である。

 

 紅の光は一直線にアガレスの元へと向かう。そしてそのまま遠い彼方へと軌道を残し、消えた。

 

 「すごい威力ね」

 

 「やっぱり瞬間移動を使えるのか」

 

 直撃したかと思いきやアガレスは俺の背後で何事も無かったかのように佇んでいる。

 

 「ッ」

 

 そして直後、一瞬で俺の目の前に瞬間移動したアガレスは俺の唇を奪おうとしてくる。

 

 「もう喰らわないぞ」

 

 「あら、残念。せっかく堕としてあげようと思ったのに」

 

 三度目は流石に洒落にならない。二度の戦いで学習した俺はとっさにバックステップで回避する。

 

 「うふふ、私も少しだけ力を見せてあげる」

 

 「《ファンタズム・パーティ》」

 

 小さな声でそう呟いたアガレスの姿がブレる。一人から二人、二人から四人さらに八人へとアガレスは増えた。

 

 「「「「「「「「どう?面白いでしょ」」」」」」」」

 

 声が八つに聞こえて気持ち悪い。

 

 「マジかよ」

 

 ただでさえ面倒な相手が八人になるとか・・・これが幻術ならば本体は一体だけなのだが、某忍者漫画の影分身のように実体化しているとすれば面倒なことこの上ない。

 

 「だがしかし、分身が増えた所でこの機竜には相性が悪かったな」

 

 俺が纏っている機竜は神装機竜《ティアマト》その真なる力神装の能力とは・・・

 

 「喰らえ《天声(スプレッシャー)》」

 

 俺が神装を発動させると宙に浮いていた八人のアガレスは地面に這いつくばる。

 

 そう、この機竜の神装の能力とは重力制御。

 

 いくら人数が増えようとも重力制御の前では動きが封じられる。

 

 「なっ」

 

 そしてアガレスもこの神装に驚いたのか先ほどまで八人だったのが一人、つまり本人だけになる。

 

 「くっ、から、だが、重い」

 

 「これで終わりだといいたいが・・・」

 

 《リンドヴルム》に続き、《ティアマト》を操作したため俺の体力は既に底をつきかけようとしていた。

本来ならもう一度《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》を使って終わらせたいところだが、ここで特殊武装を使うと下手すれば機竜が暴走する可能性がある。

 

 暴走した機竜は搭乗者を命に危険に招くだけではなく《アクセルの街》にも被害を与えてしまう。

 

 「めぐみいいいいん。準備は出来てるかッ」

 

 「は、はいっ」

 

 「撃てッ」

 

 「任せてくださいッ。我が最強の爆裂魔法を受けるがいい《エクスプロージョンッ》」

 

 だからこそ、俺はパーティメンバーで一番の火力を持つ厨二ロリのめぐみんに託す。

 

 おびただしい量の魔力が集まり、闇を作り星を作りそして爆裂を生み出す。

 

 「ぐっ・・・」

 

 爆裂する直前、アガレスの声が聞こえた。これでアイツもベルディアと同じ場所へ行くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 爆裂魔法が平原を焼き尽くしたあと、砂ぼこりが巻き上がり、視界が遮られる。

 

 少しずつ煙は晴れていく。そして、完全に煙が収まったあとに残っていたのが焼尽と化した平原。

アガレスの姿はそこになく。勝ったのだと確信した。

 

 冒険者たちも勝どきをあげようとしたその直後

 

 「危ないッ」

 

 ダクネスが機竜を解除した俺の正面に立つ。

 

 「ガハッ」という声がしたと思ったらダクネスは倒れる。

 

 「ダクネスッ」

 

 「だ、いじょうぶだ」

 

 すぐに抱き起すと軽い打撲で済んだダクネスに安心する。

 

 そしてダクネスを攻撃したのは・・・

 

 「よくもやってくれたわね」

 

 アガレスだった。

 

 顔を隠していたフードは完全に燃え尽きてしまい素顔が見える。

 

 人形のように整っている顔だが、一か所だけ明らかに人間とは違う場所がある。頭だ。

アガレスの頭からは二本の角が生えていた。

 

 そしてその角は俺も似たようなものを見たことがある。というか、なじみ深い角だ。

 

 「お前・・・竜なのか?」

 

 「ッ・・・見られちゃったら仕方ないわね。吹き飛びなさいッ《デストロイ・ジャッジメント》」

 

 顔を見られたことで逆鱗に触れてしまったのかベルディアに向かって放ったものと同じ魔法を《アクセルの街》へと向けて放つ。

 

 「避けろッ」

 

 声が張り裂けそうな勢いで叫んだ。

 

 そのおかげで冒険者たちは直撃を免れたが四肢をなくした者とかもいる。これくらいならアクアの回復魔法でどうにかなるだろうと思ったが、《アクセルの街》の城門は吹き飛ぶ。

 

 「つ、次こそは必ずあなたを私のモノにしてあげるから覚悟しなさいよッ」

 

 怒りが収まったのか冷静に戻ったアガレスがそう吐き捨てて消える。

 

 「また逃げられた」

 

 その後、俺の意識も途絶える。

 

 最後に感じたのはめちゃくちゃ硬い鉄の感触とふわりと俺を優しく包む甘いいい匂いだった。

 

 

 

 

 

 





 アガレスの正体はまさかの竜ッ

 これは何かのフラグなのか?原作通り《アクセルの街》は破壊されてしまったのだがこの修繕費は一体だれが出すのやら・・・


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特別報酬・・・


今回はキリのいいところで終わらせているので短いです


 

アガレスが去ったあと、気を失ったバサラをダクネスが抱き止めた。

 

「全く、お前はいつも気絶してるな」

 

子供のような寝顔を見せるバサラを見てダクネスは「うふふ」と微笑む。

その姿からは普段のドMのド変態という事実が信じられない。

 

それほどまでに今の彼女は美しかった。

 

「ダクネスぅ」

 

そんな彼女のそばにカズマとめぐみんも駆けつける。

 

「バサラは無事ですか?」

 

「あぁ、気を失っているだけだ」

 

「ほんとこいつは心配ばっかさせられるぜ」

 

人の気もしらないですやすやとダクネスの膝枕で眠るバサラを見てカズマがデコピンを放った。

 

ペチンといい音が響くと同時にバサラの顔が若干強ばる。

 

「お、おい、やめてやれ」

 

「いいや、これくらいしとかないと気がすまない。いったいどれだけ心配したと思ってるんだ」

 

そういってカズマはため息を吐く。

 

「カズマさぁ~ん、バサラは?」

 

するとそこへ先程まで負傷者の治療をしていたアクアがやって来る。

 

「命に関わる怪我はないわね。《ヒール》」

 

アークプリーストの十八番である回復魔法を使用しバサラの怪我を治す。

 

「それにしてもやはりバサラの機竜はカッコいいですね」

 

「そうだな、こいつは俺たちの英雄だよ」

 

「あぁ、全くその通りだ」

 

 

 

 

 

 

 

ベルディアとアガレスの襲来の翌日。

 

カズマたち一行は冒険者ギルドにて報酬が渡されていた。

 

ギルドの酒場はいつもより人が多く、昼間だというのにベルディア討伐記念の宴会が開かれていた。

 

「ダクネス、私だって少しくらい飲んでもいいじゃないですか?」

 

「ダメだ。幼いうちから飲んでいると体を壊す」

 

「カズマッ、ダクネスがケチなことを」

 

「今日くらいいじゃないか」

 

「し、しかしだな」

 

報酬をもらったカズマたちも飲んだくれている。

 

「それじゃあ、俺はジュースでももらおうかな」

 

「「「バサラッ」」」

 

「よう、全くひどいな怪我人放置で自分達だけ宴会を楽しむだなんてよ」

 

酒のことでめぐみんとダクネスが争っていたが、そこへバサラが入り込む。

 

「怪我はいいのか?」

 

「怪我はアクアが完治させてくれた・・・ってなんかデジャブだな。まぁいいや、それよりめぐみんも絶対に飲むなとはいわないがあまり飲みすぎるなよ」

 

「は、はい。バサラは飲まないんですか?」

 

「あ、あぁ、俺までカズマみたいにセクハラ魔になりたくないしな」

 

何かを誤魔化すようにバサラは酒を断る。まるで過去になにかあったかのように・・・

 

「バサラ、報酬はもらったの?」

 

すると今度はアクアがやって来る。

 

アクアの両手には扇子が握られており明らかに先程まで宴会芸を疲労していたとわかる。

 

「報酬か」

 

 

 

 

 

そして報酬を貰いにいったのはいいのだが・・・

 

「実はカズマさんたちのパーティには特別報酬が出ていまして。魔王軍幹部のベルディアを見事撃ち取ったということで、三億エリスを与えます」

 

「「「「さ、三億ッ」」」」

 

バサラ以外はその金額に目を回す。

 

「さ、三億だってなんかおごれよカズマ」

 

「カズマさぁ~ん、素敵ぃ」

 

あちこちでカズマたちを称えるもとい玉の輿を狙う声が聞こえる。

 

「え、えぇと、その・・・カズマさんたちにはアガレスが最後に放った攻撃の被害を弁償してもらうという声が上がっております。さすがに全額ではありませんが一部ということで三億四千万エリスの弁償金額が」

 

苦笑を浮かべるルナを見てカズマは顎を地面にぶつけるほどに口を開ける。

 

「全く、あの女はどんだけ人様に迷惑をかけるんだよ」

 

ここまでくると笑うしかないとでも言いたげにバサラは先程受け取った報酬の五十万エリスが入った袋をルナに渡す。

 

「これで残りは三千九百五十万エリスだな。俺は金に困ってないから今回はいらない」

 

「かっけえ」とカズマがこぼす。

 

「というか今回のMVPは完全にアクアだしな。ベルディアの浄化に加え死人の蘇生と怪我人の治療」

 

「それはそうだけど?ほんとにいいの?」

 

「いつも金、金いってるアクアが遠慮するなんて珍しいな。気にすんな、その気になれば残りの借金だってすぐに返せるしな」

 

そういってバサラは先程注文したジュースをガブ飲みする。

 

「ぷはぁ~、アガレスのやつ次あったら絶対に許さないからなああああ」

 

ジョッキのジュースを飲みきったあと、バサラは大声で叫ぶ。

 





今回で原作の一巻は終了です。
二巻ではついに黒き英雄が姿を現す・・・のではないかと思います。

さて、バサラ君のいい人ぶりが少し狂気的に思えますね。
一体なにがあるのやら・・・


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この素晴らしいパーティに祝福を!
冬将軍到来


 さて、ついにやってきました冬将軍・・・


一面真っ白な雪のカーペットが広がる世界にの一ヶ所に真っ赤な液体の水溜まりができていた。

 

そしてその傍らには首から上を失った俺のパーティのリーダーであるカズマ。

少し離れた位置には目の光を失っているカズマの頭があった。

 

「カズマアアアアアア」

 

一気に全身の血液が沸騰するかのような感覚に襲われる。

 

しかし、俺は落ち着いて冷静になる。怒りに任せて行動してもなにもできない。

そう、わかっているから冷静になる。

 

なぜこうなったのかと、ことのはじまりは少し前まで遡る。

 

 

 

 

 

あの宴会から数日後、俺たちのパーティはとんでもない危機に襲われていた。

 

「金がほしいッ」

 

「そりゃ誰だってほしいわよ。というかあんた甲斐なさすぎでしょ。仮にも女神である私を転生特典に選んでおきながらこの有り様よ。少しはバサラを見習ってほしいわ」

 

カズマの悲痛な心の叫びはアクアの言葉によって一蹴されてしまう。

 

「はぁ~、なんで俺たちだけに借金がかかるんだよ」

 

「悪いな、あそこで俺が完全にあいつを倒してたら借金なんてなかったはずなのに」

 

二人の会話にバサラが加わる。

 

バサラの表情はいつもとは違って心の底から申し訳なさそうだ。

 

それもそのはず、カズマたちに背負わされた借金はもとをたどればアガレスがやったことではあるが、さらに遡るとバサラとの因縁から始まったことなのだ。

 

「お前だけが悪いわけじゃねぇよ。ったくここの領主はちゃんと仕事してるのか?」

 

カズマの愚痴は領主へと矛先を変える。

 

「全く、お前らは朝から何を騒いでいるのだ?」

 

そんな三人を見たダクネスとめぐみんが頭を抱えながらやって来る。

 

「クエストを受けましょう」とめぐみんが提案する。

 

「そうだな、先程ちらっとみたがどのクエストも報酬がいいものばかりだ」

 

「よし、いつまでもウジウジしてられねぇな」

 

そういって掲示板を眺めたのはいいのだが・・・

 

「どれも高難易度クエストしか残ってねぇじゃねぇか」

 

「なんだったら俺一人でやってこようか?」

 

 「いや、それだと大変だろ?昨日の疲が完全にとれたってわけじゃなさそうだし」

 

 俺がカズマにそう提案するが却下された。

 

 「こ、これなんかどうだ?」

 

 そういってダクネスが手に取った依頼は

 

 牧場を襲う白狼の群れの討伐。

 

 「獣たちに蹂躙される・・・いい」

 

 いつものド変態ぶりを見せるダクネスにバサラ以外がドン引きしている。

 

 「却下だ却下。おっ、なんだこれ?」

 

 そう呟いたカズマが目につけたのは

 

 「機動要塞デストロイヤー接近中につきその偵察?なんだよデストロイヤーって」

 

 「デストロイヤーはデストロイヤーだ。高速で移動する要塞」

 

 「ワシャワシャ動いて全てを蹂躙する子供達に妙に人気のある奴です」

 

 「いや、そういわれてもわからねぇよ」

 

 「まぁ、簡単に説明するなら坊ハ○ルの動く城が辺り全てを殲滅するようになった危険な要塞といえばいいか?」

 

 「へぇ~、却下」

 

 偵察くらいなら大丈夫だとは思うがめぐみんあたりが「わが爆裂魔法を受けてみよ」とかいいだして面倒なことになりそうだ。

 

 「雪精ってなんだ?」

 

 そしてカズマが選んだこの雪精討伐のクエストがあの悲劇を産み出すことを俺たちはまだしらない。

 

 

 

 

 

 

 そして場所は変わり、とある平原へと俺たちは来ていた。

 

 そこはまだ冬ではないはずだが辺り一面が真っ白な雪でおおわれている。この白いのが雪精なのだろう。

 

 「それでお前らその格好はなんだ?」

 

 カズマがそういいたいのもよくわかる。

なぜならアクアとダクネスの格好がおかしかったからだ。

 

 アクアは虫取網に小瓶を持っている。どこかに虫でも捕まえにいくつもりだろうか?

 

 「雪精を捕まえればいつでもキンキンに冷えたしゅわしゅわがのめるでしょ」

 

 そしてダクネスはというと

 

 「鎧はどうした?」

 

 「修理中だ。なに、安心しろ多少寒いとは思うがそれが我慢大会のようでこうふ・・・なんでもない」

 

 「風邪引くなよ」

 

 防具も着けないで剣を背負うダクネスに俺は軽くいっておく。まぁ、こいつが風邪を引くかどうかは知らんが・・・というかコイツって頑丈すぎて風邪ひかないんじゃ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 そして雪精討伐が始まったのだが蓋を開けてみると雪精を討伐するのは簡単だった。

 

 雪精自体こちらに攻撃することがないのでこちらは思う存分雪精を討伐することができた。

一匹倒すことに春が半日早く来るといわれており、一匹討伐するだけで十万エリスも報酬が出る。

 

 俺はすでに機攻殻剣で五十に届きそうなほど雪精を討伐していた。

 

 ちなみにカズマは三匹、めぐみんは爆裂魔法を放って八匹。ダクネスはいつもながら攻撃があたらず一匹も討伐できていない。アクア?あぁ、あいつなら用意した小瓶に雪精を詰めてるよ。

 

 「見てみて四匹目よッ」

 

 ほら、こいつに至っては討伐するんじゃなくて捕獲目的だからな。

 

 「むっ、来たな」

 

 そのときだった、突然俺の鍛えられたセルフ気配探知にとんでもなくヤバい存在が引っ掛かった。

 

 「カズマに教えてあげるわ。何故冒険者がこのクエストを受けないのか。それはね、あなたも一度は聞いたことあるかもだけど、冬将軍が出るからよ」

 

 そしてアイツが現れた。

 

 真っ白い雪の鎧武者。冬将軍が・・・

 

 めぐみんは死んだふりをし、カズマはアクアと逃げている。ダクネスは・・・って何やってんだ。

 

 ダクネスは防具を付けていないにも関わらず冬将軍へと切りかかっていた。

 

 攻撃は勿論空を切り、冬将軍にはかすり傷一つついていない。

 

 「馬鹿ッ」

 

 そして冬将軍はダクネスへ攻撃を放つが、その瞬間、俺がダクネスを抱きかかえて離脱する。

 

 「何考えてんだお前はッ」

 

 「バ、バサラ、いまいいところだったのに・・・これがお預けと言う奴か」

 

 「お前なッ性癖についてはなにもいわないが死ぬところだぞ」

 

 「わ、私は死なない」

 

 「はぁ~、あとで覚えてろよ。そんなにお仕置きされたいなら俺がしてやる。だから今は逃げるぞ」

 

 そういってその場から逃げ出したが冬将軍に追いつかれてしまう。

 

 「冬将軍は寛大よ、きちんと謝れば許してくれるわ。さぁ、みんなで土下座するわよ」

 

 逃げられないことを悟ったアクアはその場に倒れるようにして綺麗な土下座をした。

 

 死んだふりをしていためぐみんもいつの間にかこの場におり、土下座をする。

 

 「き、騎士が頭を下げられるかッ」といってダクネスは断るが、俺が全力で地面に叩きつける。

 

 「はうっ」と嬉しそうな声をだして顔を埋もれさせる。

 

 そして俺がカズマの方を見て瞬間だった・・・

 

 「カズマッ」

 

 「えっ?」と間抜けな声を出した瞬間、カズマの頭と体はお別れグッバイをし首からおびただしい量の鮮血を巻き上げる。

 

 真っ白だった雪のカーペットは一瞬で真っ赤なレッドカーペットへと変わり、カズマも物言わぬ死体となった。

 

 「カズマアアアアアア」

 

 そして冒頭へと戻る。

 

 俺は来ていたコートをダクネスに掛け空間魔法で短剣の機攻殻剣を取り出し詠唱符を唱えた。

 

 「始動せよ。星砕き果て穿つ神殺しの巨竜。百頭の牙放ち全能を殺せ、《テュポーン》」

 

 そして現れた紫の神装機竜は即座に冬将軍へ向けてワイヤーを射出すると冬将軍の体に突き刺さる。

 

 「喰らえッ《竜咬縛鎖(パイル・アンカー)》からの《竜咬爆火(バイティング・フレア)》」

 

 その直後、冬将軍に刺さっていたワイヤーを巻き取りその体を掴むことに成功した俺は、《テュポーン》の特殊武装の能力である爆破の能力を使い冬将軍へ大ダメージを負わせる。

 

 雪の塊である冬将軍は流石に爆破には堪えたらしくところどころ雪が解けていた。

 

 「カズマッ、カズマッ」

 

 背後ではアクアがカズマを蘇生する声が聞こえる。

 

 アクアならカズマを生き返らせれると分かってはいたが、アクアが頑張っている声を聞いて更に冷静になれた。

 

 そこからは特殊武装での攻撃のオンパレードだった。

 

 ワイヤーで近づいて爆破、近づいて爆破、一度離れて、背後から回り込み、爆破・・・

 

 そんなこんなで冬将軍の刀を避けながら爆破を続ける。

 

 「ぐはっ」

 

 しかし、その攻撃もいつまでも続く事は無く冬将軍の能力だとは思うが、横からつららが飛んできた。

 

 回避しようにも回避できず直撃した俺は吹き飛ばされた。

 

 「ま、だだ」

 

 溝内を強く打ち呼吸困難となったが、なんとか声をだす。

 

 すぐに体制を整えて冬将軍へと攻撃を行う。

 

 そしてどれくらい経ったか分からないが気が付くと冬将軍は消えており、一面雪だらけだった平原はまだ少し雪は残っているがほとんどなくなっていた。

 

 《テュポーン》を解除したあと、すぐにカズマの元へと向かう。

 

 「アクアッ、カズマは?」

 

 「えぇ、大丈夫よ。もうすぐ目を覚ますと思うわ」

 

 「はぁ~、流石女神だな」

 

 「えぇ、というかバサラもボロボロじゃない・・・ってあんたその怪我」

 

 アクアが悲鳴を上げて指を指す方を見ると俺の太ももに大きな穴が空いていた。

 

 「あぁ、これも治療を頼む」

 

 今はアドレナリンのおかげで少し痛むくらいだがもうそろそろ痛み出す頃だろう。いつ喰らったのかは覚えていないが冬将軍のつららが俺の太ももを貫通していたのだろう。

 

 アクアがすぐに治療してくれたおかげで完治した。

 

 そしてこのときめぐみんがカズマに何をやっているのかは気が付かなかった。

 

 「・・・う、うんぅ」

 

 「カズマッ」

 

 「・・・チェンジで」

 

 「上等よクソニートッ」

 

 カズマが目を覚ますとアクアの姿を見た瞬間「チェンジ」といった。一体何のことだろうか?と思いつつも、今は生き返ったカズマを見て「ほっ」と一安心した。

 

 

 

 

 

 

 

 「バ、バサラ・・・」

 

 無事《アクセルの街》に戻った俺達だったが、色々あって疲れたため報酬を貰わずに宿へ戻ったのだが・・・

何故か俺の部屋にダクネスが来ていた。

 

 「なんでここにいるんだ?」

 

 風呂から帰ってきたら俺の借りていた部屋にいるもんだからびっくりしたことこの上ない。

 

 「いや、さ、先ほどの約束・・・」

 

 「約束って・・・ま、まさか」

 

 そこで俺は思い出す。

 

 冬将軍へ攻撃していたダクネスに向かって俺は「はぁ~、あとで覚えてろよ。そんなにお仕置きされたいなら俺がしてやる。だから今は逃げるぞ」といってのを・・・

 

 「そうだ。まさか忘れたとはいわさないぞ」

 

 「あのなぁ~カズマが死んだんだぞ。分かってるのか?」

 

 「わ、わかっている。そうだな、不謹慎だった。すまない」

 

 流石のダクネスも分かってくれたみたいでしょんぼりとする。

 

 「はぁ~、そんなしょんぼりするなよ。俺が悪者みたいだろ?」

 

 「私が悪いのだ。変なプライドで叶わないと分かっていたのだが、気が付くと冬将軍へと向かっていたのだ」

 

 するとダクネスは自然に俺の部屋のベッドへ座り小声で自分の反省を口に出す。

 

 「仲間を守ることはいいことだと思うぞ。だがな、お前の場合は、そ、その、ドMだからだろ?」

 

 「あぁ、全くその通りだ」

 

 こ、こいつなぁ。先ほどまでしょんぼりしていたと思えば一転して今度はなんの悪びれもなく自信満々にそう言い放つダクネスを見て少し殴りたいと思ってしまった。

 

 「はぁ~、お前は自分がされたいからいいかもしれないがな、目の前でパーティメンバーがモンスターとかに、その、や、やられてるところとか見せられてみろ。そいつをすぐに切り殺したくなるぞ」

 

 「へっ?」

 

 「お前だって俺の大切なパーティメンバーなんだ。そんな奴が自分の目の前でやられているところを見て何も思わないなんてことはないんだからな」

 

 「そ、そうか」

 

 なんか様子のおかしいダクネスを前に俺の口は止まらなかった。

 

 「ベルディアにしろ、今回の件にしろ・・・」

 

 永遠と口から洩れる言葉に俺自身もビックリする。

 

 「お、おい、バサラ」

 

 「んだよ、まだまだいいたいことはあるんだぞ」

 

 「わ、私の求めるものとは方向性がだな違う」

 

 「うるせっ!ったく、いくらアクアが死んでも蘇生できるからって目の前でパーティメンバーが死ぬのなんて御免だ。お前ももっと自分の身を大切にしろ・・・あっ、そうだ。いっそのことお前を縛れば・・・ブツブツ」

 

 「バ、バサラ?わ、私が悪かった。いや、しかし、縛られるのも魅力て・・・なんでもない」

 

 そして何をトチ狂ったのか俺は《テュポーン》のワイヤーを使ってダクネスを縛った後、ベッドに放置し、俺は固い床で寝ることにした。

 

 「はぁ、はぁ、はぁ、バ、バサラの奴、こんな積極的だったなんて・・・はぁ、はぁ」

 

 縛られて放置されたダクネスはというと・・・もちろん興奮していた。ミノムシ状態でベッドの上でクネクネ動く。

 

 「なっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 さてさて、やっと本格的にメインヒロインにしたダクネスとバサラの絡みが始まる・・・かも

 最後「なっ」で終わりましたがダクネスに一体、何があったのでしょうか?

 あっ、一ついっておきますけどバサラ君は変態ではなくちょっとした事情があるのです。
決して、この時点でダクネスに恋愛感情は持ってない・・・はず。

 感想くれてもええんやで


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ダクネス

 前回何があったか覚えていますか?

 そうです、あの続きです。


 「なッ」というダクネスの声が上がる。

 

 それと同時に暗いバサラの泊っていた部屋のベッドからダクネスが落ちる。

 

 ベッドから落ちたダクネスはバサラの上に覆いかぶさるということはならなかったがバサラのほぼ真横に落ちた。顔と顔が近づき、その距離わずか数センチといったところだ。

 

 「こ、この体勢は流石にまずいぞ」と小声でつぶやく。

 

 そのときダクネスは、もしこのまま目が覚めたらバサラはいったいどう思うだろうか?とこのまま朝まで目が覚めなければ一体どうなるのか?という二つの疑問が浮かんでいた。

 

 前者ならばバサラはどのような反応を見せるのだろうか?もしかすると私を罵倒してくれるかもしれないというドMであるダクネスの欲望がガンガン漏れ出した考えに至り。

 

 後者の場合だと・・・きっと罵倒してくれるだろうという結論に至った。

 

 どちらにせよドMであるダクネスにとっては美味しい展開になるとダクネスは考えた。

 

 その結果、彼女がとった行動というのが・・・

 

 「うむ、寝ようと思ってもなかなか寝付けないのだな」

 

 そう、添い寝もとい、このまま朝まで寝るということになった。

 

 しかし、思いのほかバサラが隣にいることを変に意識したダクネスは寝付けずに一時間ほど過ごしていた。

ダクネスも雪精討伐のクエストで疲れているはずなのだが、寝付けないらしい。

 

 寝ることをあきらめたダクネスは、そっとバサラの顔を覗き込むように見た。

 

 そこにはいつも見せるすやすやと心地よさそうに眠るバサラの顔があった。

 

 「全く、床で寝ているというのに気持ちよさそうに眠るな」

 

 そう呟きふふっと笑う。

 

 「うむ、こうして改めてみると整った顔立ちをしているな」

 

 いつも見慣れているはずなのに今一度じっくりとバサラの顔を見たことでダクネスは改めてバサラの整った顔立ちに少し驚いていた。

 

 「こいつももう少し鬼畜になってくれればありがたいのだが」

 

 ダクネスは自覚していないだろうが、相当ヤバい事をいっている。

 

 「それにしても、初めてだ。私の性癖を聞いても引かなかった奴は・・・」

 

 そしてダクネスは思い出す。

 

 「クルセイダーの癖になんで攻撃が当たらないんだよッ」

 

 「誰かこのド変態をどうにかしろッ」

 

 「もうやだ、このドM」

 

 「はッきりいうが、お前は邪魔だ」

 

 カズマのパーティに入る前に所属していたパーティメンバーからいわれた言葉の数々を・・・

 

 あのときは罵倒に興奮していたが改めて考えると少し落ち込むな。しかし、そこがいいッ

 

 「だけど、バサラは違ったな。ふふっ、攻撃が当たらないなら俺が攻撃する。こいつ以上に攻撃を受け止めてくれると信頼できるクルセイダーはいない・・・か」

 

 随分と臭い台詞を吐くんだなと思いつつも内心ではすごく嬉しかった。

 

 罵倒されるのが好きではあるが、こうして信頼されることが嫌いというわけではない。むしろ、嬉しい。

だが、これまでバサラを守れたことはほとんどない。

 

 初めて一緒にクエストを受けたときも、ベルディアのときも、その次のベルディアとアガレスのときも、そして今日の冬将軍のときだって、私はクルセイダーとして役目を果たせていない。

 

 「そう考えるとムカついてきた・・・」

 

 本来なら私が攻撃を受け止めていたはずのことを思い出しムカつくダクネスだったが、それもすぐにおかしくなって笑ってしまう。

 

 「お前だけだよ、私をお姫様扱いしてくれたのは」

 

 「まぁ、モンスターに凌辱されるお姫様というのも捨てがたいがな」

 

 




 やはりダクネスはダクネスだった。

 ララティーナ嬢呼びは嫌なのにお姫様扱いはいいの?と思うかもしれませんが、ただたんにお姫様が凌辱されるものも嫌いではないというだけです。

 恋愛フラグは立っているのでしょうか?

 感想待ってますからね。待ってますからね。待ってますからね。大事なことなので三回書きました。是非是非、感想をお待ちしております。


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パーティ交換?

 あれから数日が経った。

 

 えっ、あのあとどうなったのかって?

 

 滅茶苦茶ビックリした。すぐ横にダクネスがいるんだぜ。朝起きたらド変態ではあるが超絶美人が隣に寝てるんだビックリするなという方が無理だ。

 

 しかも、何をトチ狂ったのかアイツが喜びそうなワイヤーで縛るなんてこともしてるし。

 

 アイツはアイツで寝てなかったみたいだし。

 

 「おい、もう一度いってみろ」

 

 それで話は変わるのだが、現在冒険者ギルドの酒場にてカズマとダストが喧嘩を繰り広げていた。

 

 「何度だっていってやるよ。荷物持ちの仕事だと?上級者ばっかのパーティにも関わらずよぉ、パンツばっか脱がせてないでもっとマシなことはできないのか?アアンッ」

 

 完全にチンピラ同士の争いだ。

 

 「なぁ、なぁ、なんか言い返せよ最弱職さんよぉ。ったく、あんな綺麗どころをそろえてしかも、全員最上級職と来た。さぞいい思いをしてるんだろうなぁ」

 

 あぁ、アレだ。完全なる男の嫉妬という奴だ。確かにうちのパーティメンバーの女性陣は美人と美少女しかいない。見てくれはな・・・中身はどうもいえないが。

 

 ダストの言葉が止まると同時に酒場全体が大爆笑する冒険者たちで溢れかえる。

 

 「カズマ、相手にしてはいけません」

 

 「そうだぞカズマ。酔っぱらいのいうことなんて聞き捨てればいい」

 

 「ふふふ、まぁ、仕方ないわよね。私みたいな美しい女神がいるんだから、男だったら嫉妬の一つや二つ当たり前だもの。にしても男の嫉妬って見苦しいわね」

 

 めぐみんたちからダストのことは気にするなという声がかかる。

まぁ、当人であるカズマもダストのことを相手にしていないようだが。

 

 次のダストが放った言葉でカズマの我慢も限界が訪れたようだ。

 

 「あぁ~あ、羨ましいぜ。いい女ぞろいに、バサラとかいう英雄もいる。一体どんな手を使って引き込んだんだ?他の上級職におんぶ抱っこで楽しやがってよ。苦労知らずで羨ましいことこの上ないぜ。一度でいいから変わって欲しいなぁ!」

 

 「・・・・・・ってやるよ」

 

 ダストの挑発にカズマはかすかに何かをいった。よく聞こえない。

 

 「は?」

 

 「そんなに代わって欲しいなら代わってやるっていってるんだよおおおおおおおおおおお。ああッ!、大喜びで代わってやるよッ!」

 

 俺も含めた全員が「へっ?」という反応をする。

 

 流石の俺もここまではっきりいうとは予想外だった。

 

 「だから何度もいわせんな。代わってやるっていったんだよ。さっきから黙って聞いてりゃやれぺらぺらと良く回る口だこと。確かに俺は最弱職だ。だけどお前そのあとなんつった?」

 

 「いい女ぞろいに、バサラとかいう英雄がいる」

 

 「バサラの方はまぁ、多少卑怯な手を使って引き込んだかもしれないからそこはいい。だがなッ!そのあとなんつった?いい女ぞろい?どこにいるんだよ?どこにいい女なんているんだよッ。俺の濁った目ん玉じゃ見当たんねぇんだよ。お前いいビー玉持ってんのな、俺のと交換してくれよッ!!なぁあああああ」

 

 まるでストレスの限界でぶち切れて同僚に愚痴をこぼすOLのようだ。

 

 「「「あ、あれぇ?」」」

 

 三人に至っては頭の上に?マークが数えられないくらい浮かんでる。

 

 「てめぇ、この俺が羨ましいっつったな。しかも、俺が羨ましいだと?そんなに羨ましいなら代わってやるっつってんだよ」

 

 「・・・そ、そのすまん。酔った勢いで言い過ぎた。だ、だけどな、お前は恵まれてんだよ。か、代わってくれるんだよな。一日!一日パーティを交換するってどうだ?」

 

 とまぁ、こんな経緯がありまして、俺とカズマはダストがいたパーティで一日過ごし、ダストはアクア、めぐみん、ダクネスの三人とパーティを組むらしい。

 

 俺とカズマはまぁ一日くらいならいいかという反応だったが、ダストのパーティが許可するかわからないので許可を取りに行ったのだが・・・

 

 「「「いいよ」」」と二つ返事だった。

 

 

 

 

 

 

 そして、交換日当日。

 

 「俺はカズマ。よろしく!」

 

 「俺はバサラ。まぁ、一日だけどよろしく」

 

 お世話になるパーティのメンバーに挨拶をしていた。

 

 「俺がこのパーティのリーダーのテイラーだ」

 

 「私はリーン。見ての通り魔法使いよ」 

 

 「俺はアーチャーのキースだ」

 

 三人も俺達のことを快く歓迎してくれた。

 

 「なんか、誰かに指示されるって新鮮だな」

 

 「お前があのパーティのリーダーだったのか?」

 

 「まぁな、最弱職だが、頭は切れるぜ」

 

 「ほう、それは楽しみだ。といいたいところだが、今回のクエストでは荷物持ちでも頼むか」

 

 カズマは荷物持ちにされてしまった。

 

 「申し訳ないから俺も手伝う」

 

 「いや、気にするな。よく考えてみろ。荷物持ちだけが仕事なんてサイコーじゃねぇか」

 

 一気に申し訳ない気持ちが失せる。

 

 「それで、クエストの内容は?」

 

 「ゴブリンの討伐だ。まぁ、ゴブリン程度なら大丈夫だと思うが、気を付けろよ」

 

 

 

 

 

 

 そして、俺達を含めたテイラーのパーティはゴブリンのいる。山道を歩いていた。

 

 「敵感知に何か引っかかった」と荷物持ちをしていたカズマがいう。

 

 俺もなんとなく勘で何か来るとは分かったが、それがゴブリンではないということを理解した。

 

 「敵感知なんて持ってるのかッ。数は?」

 

 「一体」

 

 「おかしいな。ゴブリンは群れで行動するモノだ」

 

 そこで俺はとあるモンスターの名称をいう。

 

 「初心者殺しだなコレ」

 

 「しょ、初心者殺しッ」

 

 姿を確認するより先に俺達は茂みに隠れてカズマの潜伏スキルを発動する。

 

 少しして現れたのは猫のようなモンスター。しかし、猫のように可愛くはなく、完全に化け物である。

やはり初心者殺しだった。

 

 初心者殺しはゴブリンなどの初心者の冒険者が受けるクエストのモンスターたちの近くを徘徊し、冒険者を襲う。迷惑極まりない最悪のモンスターだ。俺は余裕だが、テイラーたちは厳しいようだ。

 

 「ぷはぁ~、こ、怖かったぁ~」

 

 完全に初心者殺しの気配が消えたと思ったらリーンが涙目でそういった。

 

 「ゴブリンの奴ら、アイツに追われてここまで逃げて来たんじゃねぇのか?」

 

 「これはギルドへ報告することも忘れないようにしないと」

 

 そして、初心者殺しを知らないカズマにテイラーたちが説明する。

 

 「ナニソレ怖い」と片言の反応が返ってきた。

 

 「おいカズマの荷物を持つぞ。今回みたいに何かあったら逃げるの大変だろ」

 

 「「べ、べ、別に俺達がカズマに頼ってるわけじゃないんだからなッ」」

 

 というテイラーとキースのツンデレが見られた。

 

 リーンのツンデレはメッチャ可愛いと思うがテイラーとキースのツンデレとか誰得だよ。

 

 

 





 感想待ってますッ!!


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パーティ交換?2

 

 あれから、初心者殺しが帰ってくる気配はなく、俺達は順調に山道を上っていた。

 

 テイラーがいうにはそろそろゴブリンが発見された地点に着くらしい。

 

 「カズマどうだ敵感知に何か反応はあるか?」

 

 「この山道をおりたあたりに反応があるぞ。それもかなりの数だ」

 

 「いっぱいいるっていうならゴブリンだな。よし、いくぞ」

 

 「ちなみにゴブリンって基本はどんだけいるんだ?」

 

 そんなカズマの様子にリーンも少し不安になる。

 

 「ね、ねぇそんなにいるの?様子見をしてからいこうよ」

 

 「大丈夫だって、ゴブリンなんて所詮雑魚だ」

 

 「最悪、俺が遠くから狙撃してやるよ」

 

 しかし、テイラーとキースはそんなリーンを知らんぷりだ。

 

 「ま、まぁバサラもいるしな。大丈夫だろ」

 

 カズマもテイラーとキースの言葉を聞いて不安が消える。

 

 「そうだな。最悪機竜を出せばいいからな離脱だってできる」

 

 ということでゴブリン達のもとへと着いたのだが・・・

 

 「「ちょっ、多ッ」」

 

 なんとゴブリンは三十以上いたのだ。

 

 テイラーとキースはその多さに思わず叫んでしまう。

 

 「だから様子見しようっていったじゃん」

 

 「いや、多いっていっても十やそこらだろ。こんないるなんて」

 

 俺とカズマを除いた三人は悲壮な顔をしながら攻撃の準備を始める。

 

 するとゴブリンの放った矢がリーンに向かって飛んでくる。

 

 「きゃあっ」

 

 誰もが矢が刺さると思った・・・しかし、その矢はリーンに刺さることはなかった。

 

 「大丈夫か?」

 

 俺はリーンに当たる直前で機攻殻剣を抜刀し飛んできた矢を切り落とした。

 

 「あ、ありがとう」

 

 「いえいえ、カズマあれやれ」

 

 「アレって、ああぁ、あれか。オッケー《クリエイト・ウォーター》」

 

 カズマが初級魔法を唱えると同時にカズマの掌から水が噴き出る。

 

 その水は坂をまんべんなく濡らす。

 

 「からのぉ~《フリーズ》」

 

 そして、びしょびしょになった坂に向かってカズマは氷の初級魔法を放つ。

 

 案の定、坂は凍り坂を上ってきていたゴブリン達はつるつる滑っていた。

 

 「テイラー、この足場でも上ってきた奴らは俺達でしばくぞ」

 

 「お、おう」

 

 「リーンは防御魔法で飛んでくる矢を防いでくれ」

 

 「わかったわ」

 

 「キースはそのままゴブリン達を狙撃してくれ」

 

 「おうよ」

 

 カズマは持っていた剣を手に取り、素早くテイラーたちに的確な指示を送る。

 

 「バサラも俺達と一緒に登ってきた奴をしばいてくれ」

 

 「はいよリーダー」

 

 パーティメンバーは違うが、いつものように指示を出すカズマに返事をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くっくっく、なんだよあの魔法。聞いたことねぇよ! つかなんで初級魔法が一番活躍してんだよ」

 

 「ほんとだよッ! 私なんて魔法学校では初級魔法なんて習得するだけ無駄だって言われたのに・・・なのに何よアレ」

 

 「うひゃっひゃひゃひゃひゃ、こんな楽なゴブリン退治はじめてだぜ」

 

 カズマの魔法のおかげで危なげなくゴブリンを討伐出来た俺達は先ほどの戦闘の話題を話していた。

 

 「おい、戦闘終わったんだから荷物よこせよ。最弱職の冒険者は荷物持ちが基本だろ」

 

 俺の隣でいつも以上に意地の悪いながらも楽し気な笑みを浮かべるカズマを見て俺も少しツボる。

 

 「わ、悪かった。いや、これからは最弱職だからって馬鹿にしないから」

 

 「ほんと、ごめんねカズマッ」

 

 「おいカズマ。お前はMVPなんだから俺に荷物をよこせ」

 

 そんなやりとりを見て俺はさらにツボる。

 

 「あれれ、バサラ君はカズマと違って活躍してないよねぇ~」

 

 すると、カズマの荷物を受け取ったキースは俺に話しかけてくる。

 

 「そうだな、いやぁ~カズマの魔法のおかげで楽だった」

 

 「それにゴブリンの討伐数って一番少ないよね?」

 

 ニヤニヤしながらキースは追い打ちをかける。

 

 「ぐはっ」

 

 先ほどまでツボっていたのが嘘かの様に俺は精神的ダメージを負う。

 

 「お、おいキース」

 

 「アハハ、悪い悪い。少しからかいたくなっただけなんだ。そうだ、カズマ。俺達のパーティにこないか?」

 

 キースは俺をからかうのをやめたかと思いきや今度はカズマを勧誘する。

 

 「おいやめとけ。カズマには帰る場所があるんだ・・・たく、なんでカズマが上級職ばっかりのパーティでリーダーやってるのかが分かったぜ」

 

 こんな感じで和気あいあいとしながら草原まで戻ってきたところで俺達は思い出した。

 

 ゴブリンなんかよりも、もっと注意を払わないといけない存在を・・・

 

 「しょ、初心者殺しだ」

 

 テイラーが冷汗をかきながら声を漏らす。

 

 「ちょ、カズマッ逃げないの」

 

 三人はすぐさま逃げ出そうとするが、俺とカズマはその場に立ち止まる。

 

 「なぁバサラ。お前だったら初心者殺しとか余裕か?」

 

 「まぁな」

 

 「だったら、令呪を持って命じる初心者殺しを討伐しろ」

 

 さっきの戦闘で調子に乗っているのか、カズマは俺に令呪を使うようだ。あっ、ちなみに俺はライダーだぞ。

 

 「はいよカズマ、じゃなくてマスター」

 

 俺もそんなカズマに乗ってマスターとカズマのことを呼んでやる。

 

 「じゃあな子猫ちゃん」

 

 一閃。かの新選組沖田総司の《無明三段突き》の如く、俺は縮地で初心者殺しとの距離を詰めて機攻殻剣を抜き、すれ違うと同時に首を落とす。

 

 一瞬で初心者殺しの首は飛び、そこから赤黒い血が噴水のごとく噴き出す。

 

 「さて、これで今回のMVPは俺だな」

 

 「よくやったセイバー」

 

 「ばっか、俺はセイバーじゃなくてライダーだ」

 

 「「「・・・・・・」」」

 

 とまぁ、楽しそうに会話する俺達を見て三人は言葉を失っているのだが、そんな三人を見てスッキリする。何がとはいわないが、強いて言うなら先ほど俺をからかった罰だな。

 

 「「「いや、まじ調子乗ってすんませんした」」」

 

 三人も先ほどのことを謝ってくれている。

 

 「なぁ、バサラ。やっぱりパーティ移籍しね?」

 

 カズマが俺にそんなことをいってくる。

 

 普段のカズマの大変さをしっている俺だからカズマの気持ちはよくわかる。

 

 借金駄女神、頭のおかしい爆裂娘、ドMクルセイダー

 

 「しねぇよ」

 

 「えぇ~」

 

 「そんなこといってもだぁ~め」

 

 「だ、だってよぉ。このパーティ・・・俺が憧れた冒険者そのものなんだよぉ」

 

 「はいはい、アホなこといってねぇで帰るぞ」

 

 

 

 

 

 

 そして、冒険者ギルドについたんだが・・・

 

 「かじゅましゃんッ ばしゃらぁ~」

 

 歯形やら何かわからないぬめぬめした液体まみれのアクアにアクアに背負われた白目をむいて気絶しているダクネス。そして、ダストに背負われている(おそらく魔力切れの)めぐみんの姿を見てなにもいえなくなる。

 

 「聞いてくれ、俺が悪かった。なぁ、カズマ、俺が悪かったから」

 

 ダストの話を纏めると、めぐみんがダストに爆裂魔法が使えるといって何もない草原に爆裂魔法を放ち、その音を聞きつけた初心者殺しが襲ってきて、ダクネスは鎧もつけずに突っ込みやられて、ダストとアクアもやられたらしい。

 

 「よぉ~し、新しいパーティ結成にカンパーイ」

 

 「「「カンパーイ」」」

 

 そしてカズマを含めた三人は新しいパーティの結成を祝う。

 

 今回の原因であるダストはというと・・・

 

 「俺をもとのパーティに戻してくれえええええええ」という魂のの叫びがギルドに響きわたるだけだった。

 

 

 

 

 流石に可哀想になり、心身ともにボロボロであろうダストからダクネスを引き受けたあと、俺はアクアと一緒にめぐみんとダクネスの介抱をする。

 

 「ったく、大丈夫か?」

 

 「いたがったよぉ」と涙を浮かべるアクアを見て撫でたくなる衝動に襲われるが、なんとかその衝動を抑え込んで二人が目覚めるまでジュースを飲んでいた。

  



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機竜とは

 お久しぶりです。

 今回はバサラとめぐみんの会話が主な話となっていますが、めぐみんはバサラのヒロインではありません。


 パーティ交換事件から数日が経ったある日。

 

 カズマが「明日はクエストにいく」なんて言い出した。

 

 普段はそんなこといわないカズマが急にクエストを受けるなんて珍しい。

 

 パーティ交換事件でテイラーたちと組んだため、冒険に熱が入ったのだろうか?

 

 まぁ、なんにせよ、クエストを受けて金を稼ぐというのは大切なことだ。

 

 といっても、今回、カズマが受けようとしているのはダンジョンの探索だ。

 

 そのダンジョンの名前は《キールのダンジョン》といい、洞窟型のダンジョンらしい。

 

 なので、爆裂魔法が放てないめぐみんは落ち込んでいた。

 

 それに加え、冬将軍と戦った際に剣を折られてしまったダクネスも今回は不参加ということらしい。

 

 俺も探索に加わろうとしたが、カズマが「今回は俺とアクアでいく」といったので、俺も今回は不参加だ。

 

 そんなこんなで、俺はめぐみんと一緒に外で待機している。

 

 「あぁ~暇です~爆裂魔法撃ちたいです」

 

 「あのなぁ~こんなとこで爆裂魔法撃ってみろ、ダンジョンに入っているカズマやアクアが埋もれて死ぬぞ」

 

 「分かってますよ。ただいっただけじゃないですか」

 

 「だがまぁ、暇というのは俺も同意する」

 

 「そうですよね!というわけで、機竜を見せてください!」

 

 そういって、めぐみんは俺が抱えていた機攻殻剣をキラキラした目で見つめる。

 

 「駄目だ。こんなとこで召喚してみろ、厄介なモンスターが寄ってくるかもしれないだろ」

 

 「むぅ~」

 

 「はいはい」

 

 俺が適当にあしらうと、めぐみんは項垂れる。

 

 「じゃあ何か面白い話をしてください!」

 

 「面白い話?」

 

 「そうです!バサラはカズマと出身地が同じと聞きました。どんなところだったのか気になります」

 

 「そうだなぁ~。まぁ、ひとことでいえば、平和な国だった」

 

 「ほうほう」

 

 「魔王たちも手を出せないほど遠い国だからな。モンスターも魔獣とかもいねぇし」

 

 「そんな国があるのですか!」

 

 俺の話をめぐみんは信じられないといった様子の表情を浮かべる。

 

 「だから魔法とかも使う奴はほとんどいなかったな」

 

 「そんな!爆裂魔法をしらないだなんて、人生の半分以上を損しています」

 

 「そこまで損するか?」

 

 「当たり前ですッ!でしたら、この私が直々に爆裂魔法を披露しに「あほかッ」はうっ」

 

 ちょっとしたテロを起こそうとしている爆裂娘に俺は軽くチョップを喰らわせた。

 

 「あんなもん見せられたら高齢者が一斉にショック死するわ」

 

 「そんなぁ~、で、ですが、そんな平和な国だったら、なんでこんなところに来たんですか?」

 

 めぐみんの質問はごもっともである。魔王という存在に脅かされている国とは違い、安全な国で生まれているのだ。そんな奴が何故、わざわざ、危険な国にやってくるのだろうか?

 

 「まぁ~ノリと勢い?そしたら、この国にきていた」

 

 「そうなんですか。バサラもカズマと同じで馬鹿なところがありますね」

 

 「なんだと」

 

 めぐみんの言葉に若干同意しつつも言い返す。

 

 「だけどまぁ、この国にきたことを後悔はしてないな」

 

 「・・・そうですか」

 

 チラッとめぐみんの方を見るとニッコリと笑っている。

 

 「さて、俺の話はここまでだ。あとはカズマにでも聞いたらいい」

 

 「で、では、機竜について話してください!!」

 

 「まぁ、話すだけならいいか」

 

 

 

 

 

 

 

 装甲機竜とは本来、遺跡から発見された古代兵器であり、機竜本体と機攻殻剣の一対となっている兵器のことである。

 

 機攻殻剣のグリップを握りながら詠唱符(パスコード)を唱えることで機竜を召喚することができる。

 

 また、機竜の中には神装機竜と呼ばれるものがあるが、それらは全て一種類ずつしか存在しない。

 

 汎用機竜と呼ばれる量産型の機竜とは違い、神装と呼ばれる特殊な能力が備わっている。

 

 この機竜を扱うには高い身体能力と高度な操作技術を必要としており、男性の方が操作する適正は高いとされている。

 

 しかし、それは神装機竜の世界においてだ。

 

 アクアによって特典でこの世界に持ってくることのできた機竜の特徴は、まず、俺にしか扱えないということ。

 

 次に、機竜は世界各地に存在する竜と契約することで入手することができる。

 

 それ以外は、神装機竜の世界と一緒だ。

 

 転生特典ということもあって、機攻殻剣の収納は特殊な空間になおすことができるので荷物はかさばらない。この点に関してはアクアに感謝しなければいけない。

 

 「とまぁ、こんな感じだ」

 

 「ほうほう、私も機竜を使いたいと思いましたが、バサラにしか使えないのですか。残念です」

 

 「湖のクエストをやったときみたいに抱きかかえながら空を飛んだりすることはできるから、それで勘弁してくれ」

 

 俺がそういうと、めぐみんは渋々頷く。

 

 「だけどまぁ、俺がまだまだ未熟なせいで、神装機竜を使うと意識がなくなるんだよなぁ」

 

 「やはり、バサラでも扱うのは難しいのですか?」

 

 「《ワイバーン》とかは大丈夫なんだがな、ベルディアやアガレスと戦った時に使った《リンドヴルム》や《ティアマト》なんかは使ったあとは疲労がすごい。めぐみんの爆裂魔法と一緒だ」

 

 「そうですか。あっ、そういえば機攻殻剣というのは機竜ごとによって形が違うのですよね!」

 

 「あぁ、そうだが」

 

 「見せてくれませんか?」

 

 「それくらいならいいぜ。ほら」

 

 そういって、俺は特殊空間から六本の機攻殻剣を取り出す。

 

 「こ、これは!?」

 

 「どうしたんだ?」

 

 「滅茶苦茶かっこいいですううううううううう」

 

 そういってめぐみんは機攻殻剣を持ち上げて頬ずりする。

 

 「特にこの黒い機攻殻剣の色ッ、艶ッ・・・そして、私達ッ紅魔族の血を騒がせる赤い水晶。百点満点です!!バサラッ、私にこの機攻殻剣をくれませんか?」

 

 「あほかッ!」

 

 めぐみんがあまりにもしつこいので俺は機攻殻剣を特殊空間にしまった。

 

 「あぁ~」

 

 めぐみんは残念そうな表情を浮かべながら俺の方へ手を伸ばしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 それから、しばらくすると、どこか満足げなアクアと心身ともに披露しているカズマが帰ってきた。

 

 これでクエストは達成だ。

 

 




 もう一度いいます。

 めぐみんはバサラのヒロインではありません。


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ぼっち少女と王都で買い物

 今回はタイトル通り、あの娘が登場します。

 買い物のほうは私の趣味が入っております。


 キールのダンジョンのクエストを終えてから一週間ほど経った。

 

 その間に俺達は幽霊屋敷と呼ばれる場所のクエストを無事完了し、大きな屋敷を手に入れた。

 

 まぁ、簡潔に屋敷を手に入れた経緯を説明すると、最近アクセルの郊外にある屋敷で幽霊が頻繁に現れるようだ。いくら退治してもでてくるため、屋敷の管理人は困っており、そこでクエストを受けたものの成功報酬に屋敷を提供するとの子だった。

 

 俺達のパーティにはアクアがいるので、そのクエストを受け、無事にクリアしたのだが、その屋敷に幽霊が集まるのはアクアのせいだったりした。

 

 とまぁ、なんやかんやあったにも関わらず、俺達は屋敷をゲットしたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 そして、現在、俺はパーティから離れて一人で行動していた。

 

 王都へ買い物に行くからだ。

 

 パーティ全体での借金はあるものの、俺自身の貯金はだいぶあるので、ストレス発散も兼ねて王都で買い物をしようと思ったわけだ。

 

 機竜もあるので装備品などの買い物は必要ないかと思っているが、服が欲しいと思っている。

 

 この世界に来てから衣類は必要最低限なものしか買っていなかった。

 

 俺だって服好きな女子ほどではないが、日本では、まぁ、ちょくちょく服や靴などを買っていた。

 

 ということで、王都に来たのはいいのだが!!

 

 「素晴らしいッ!!」

 

 俺は歓喜していた。

 

 何故かって?その理由は靴屋に並んでいる革靴にある。

 

 この世界は中世のヨーロッパに似ているということもあり、王族や貴族なども存在している。

 

 そんな彼らが履いているのが革靴。

 

 つまり!!王都にある靴屋の革靴は素晴らしいものが揃っている。

 

 しかもだ!!冒険者の多くは足を守るために頑丈なブーツを履いている。

 

 革靴だけではなく、ブーツの種類まで豊富なのだ!!

 

 「くぅ~日本だとお小遣いを溜めて買っていたが、ここは異世界ッ!!しかも、貯金はかなり余裕がある。ふへへ、今日はめちゃくちゃ買うぜッ」

 

 そう意気込んだ俺は、何かのときに使えるドレスシューズ一足と普段履くようのブーツを二足買った。

 

 

 

 

 

 

 

 いい買い物をしたとホクホク顔で歩いていると、ひとりの少女を見つけた。

 

 その少女はキョロキョロ辺りを見回しており、あきらかに困ってそうだった。

 

 しかし、誰一人、その少女に声を掛けない。

 

 おそらくだが、彼女が紅魔族だからだろうか?どこかでチラッと聞いたことがあるが、紅魔族は変なやつが多いため、クエスト以外ではあまり関わらないようにされているらしい。

 

 まぁ、めぐみんを普段から見ている俺からしてみれば、確かに変に絡んで怒らせてしまったら上級魔法でやられてしまうと思われているのだろう。

 

 そういった理由から誰も彼女に声を掛けないのだろう。

 

 見ていられなくなった俺は、彼女に声を掛けた。

 

 「さっきからキョロキョロしてるけど、何か困ったことでもあるのか?」

 

 そう、少女に声を掛けた。

 

 これが、俺とゆんゆんの初邂逅だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「へぇ~王都にきたのはいいけど、誰もパーティを組んでくれないと」

 

 「はい、そうなんです」

 

 「見たところ、紅魔族っぽいけど、普通は引く手多数なんじゃないのか?」

 

 そういうと少女ゆんゆんは顔を俯かせる。

 

 「そ、そのぉ、わ、私、人と話すのが苦手で」

 

 「あぁ~なるほど」

 

 「それで、なかなかパーティにいれてもらえず」

 

 そういってゆんゆんは瞳に涙を浮かべる。

 

 「ちょ、な、泣くなって」

 

 俺はあわててゆんゆんにハンカチを差し出す。

 

 「あ、ありがとうございます」

 

 「でも、ゆんゆんは上級魔法を使えるんだろ?どっかの一発屋と違って」

 

 「も、もしかしてめぐみんを知ってるんですか?」

 

 「知ってるも何も、同じパーティの仲間だからな!よかったら、ゆんゆんも一緒に来るか。うちのリーダーなら、多分喜んで入れてくれると思うぞ。まぁ、拠点はアクセルにあるから王都から離れないといけないけど」

 

 「ほんとですか!!」

 

 先ほどとはうって変わって笑顔になったゆんゆんは俺の両手を握り、顔を近づかせる。

 

 ゆんゆんという少女はめぐみんと同じでかなりの美少女である、そんな美少女に一気に近づかれると俺も恥ずかしい。

 

 「あっ、ご、ごめんなさい」

 

 「い、いや、大丈夫だ」

 

 「えっと、バサラさんは何故王都に?」

 

 「おう、今日はな買い物に来てたんだ。よかったらゆんゆんも一緒に回ろうぜ。服が欲しいんだけど、女の子の意見も聞きたいんだ」

 

 「は、はいッ!!」

 

 ゆんゆんは二つ返事で了承してくれた。

 

 

 

 

 

 「へぇ~ゆんゆんは族長の娘なのか」

 

 「そうなんです。でも、友達がいなくて」

 

 「めぐみんとは同級生なんだろ?」

 

 「は、はい、でも、めぐみんとは友達というか、ライバルのような関係でして」

 

 「へぇ~あいつ、いっつも「我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして爆裂魔法を操る者」っていってるけど」

 

 「一応、学園での成績はめぐみんが一番で、その次が私でした。それなのに、めぐみんったら爆裂魔法なんか覚えちゃって、あんな魔法使ったらそのあと魔力切れで動けなくなっちゃうのに・・・」

 

 ゆんゆんは大分打ち解けてくれたのか、楽しそうだけど、どこか困ったように紅魔族の里での話をしてくれる。

 

 「あっ、すみません。私ばかり話してしまって」

 

 「気にすんな。面白い話をたくさん聞けたしな」

 

 「そういってもらえると、わ、私も嬉しいです」

 

 楽しそうにしている彼女を見ていると俺まで楽しくなる。

 

 「おっ、ここの服屋見てもいいか?」

 

 「は、はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「こ、これはッ」

 

 「ど、どうしたんですかバサラさん?」

 

 俺はまたしても歓喜していた。理由はなんとこの世界にライダースがあったからだ。

 

 この世界では革の服はたくさん売られているが、ライダースの形をしたアウターはなかなか見かけない。

 

 「お客様、こちらの商品に目を付けるとは」

 

 すると店の奥から店主らしき女性が現れる。

 

 ゆんゆんは、店主さんにビックリしたのか俺の背後に隠れてしまう。

 

 「えっと、店主さんでいいのか?」

 

 「はい、私がこの店の店主です」

 

 「じゃあ、この店にあるライダースを全部見せてくれないか?」

 

 「少々お待ちください」

 

 そういって、店主さんは再び店の奥に入ると、何着かのライダースを持って出てきた。

 

 「こちらの商品はとある勇者さまが広めて下さったジャケットでして、このファスナーというものがボタンの代わりをしてくれているのです」

 

 「あぁ、知ってる。これ一着でいくらする?」

 

 「こちらは五万エリスでして、こちらの方は五十万エリスとなっております」

 

 「ほうほう、やっぱり素材の違いか」

 

 「そうでございます。こちらの素材は防具などに使われる素材をしようしておりまして、比較的頑丈な造りとなっておりますが、こちらの素材は凶暴なモンスターからとれる素材でして、魔法耐性を備えております」

 

 そういって、店主は説明をしてくれる。

 

 五万エリスの方は牛の革でできているらしい。うん、牛革のライダース、カッコいい。

 

 それに対して、五十万エリスのライダースは若干馬革を使ったライダースに似ているが、かなりしっとりしているため、触っていると革が手に吸い付くようだ。

 

 「ゆんゆん、どっちがいいと思う?」

 

 「わ、私は高くても魔法耐性が付いている方がいいかなぁと」

 

 「それもそうだな。よし、両方買う」

 

 「かしこまりました。色はどちらを?」

 

 「両方とも黒を一着ずつと、五十万エリスのほうでワインレッドを一着」

 

 「そ、そんなに買うんですかッ!?」

 

 「まぁな、ゆんゆんもいるか?」

 

 「い、いえ、私は大丈夫です」

 

 そういって、ゆんゆんは引き下がる。

 

 「今回はサービスで三着合わせて百万エリスでどうぞ」

 

 「おっ、ラッキー」

 

 「いえ、試着しますか?」

 

 「そうだな、どうせなら着て帰るか」

 

 ということで、俺は荷物を減らすという意味も含めてワインレッドのライダースを羽織った。

 

 「おお~とてもよくお似合いですよ」

 

 「これすごいな、着心地抜群だぞ」

 

 「わぁ~バサラさんッすごく似合ってます」

 

 「ありがとな。じゃあ、店主さん、これお金」

 

 「はい、ピッタリ百万エリスですね。今後ともご贔屓に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いやぁ、ごめんな、時間かけちゃって」

 

 「い、いえ、私もこうして誰かとお買い物するのは初めてで、とても楽しいです」

 

 そういってくれるゆんゆんに、俺は思わずにホッコリする。

 

 「そっか、買い物に付き合ってくれたお礼になんか奢るよ。あっ、甘いモノとか好きか?」

 

 「えっ、そ、そんな悪いですよ」

 

 ブンブンと両手を振って断るゆんゆん。

 

 「気にすんなって」

 

 「そうですか?」

 

 「あぁ、おっ、ここの屋台のやつ旨そうだな。ここでいいか?」

 

 「は、はい!」

 

 「おっちゃん、これ二つ」

 

 「はいよー二つ合わせて六エリスだよ」

 

 おっちゃんから、クレープに似たお菓子を受け取ったあと、ゆんゆんに渡す。

 

 「ありがとうございます」

 

 「ゆんゆんは他に見たいものとかあるか?」

 

 「いえ、私は大丈夫です」

 

 「そっか、じゃあ、アクセルに戻るか」

 

 「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、俺とゆんゆんは王都の転送屋からアクセルへと帰ったのだった。

 

 

 

 

 




 次回からゆんゆんもパーティに加入します。


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ぼっち少女のパーティ入り


 キリのいいところで終わりました。


 紅魔族のボッチ少女ゆんゆんと出会った俺は、彼女と王都で買い物をし、アクセルに戻ってきた。

 

 屋敷に戻ってゆんゆんの話をしようと思っていたのだが、どうやらみんなはクエストを受けているらしい。

 

 俺もどうせなら、ゆんゆんを連れてクエストの手助けをすることで、ゆんゆんをパーティに入れてもらおうという算段だ。

 

 ということで、王都で買ったものを自室に置いてゆんゆんと共に草原に向かったわけなのだが、

 

 「ぎゃあああああああ助けてかじゅましゃああああああん」

 

 「アクアああああああそのまま引き付けておいてくれええええ」

 

 「こいっ、ジャイアントトードよッ。クルセイダーである私が受け止めてやる」

 

 「・・・・・・」

 

 アクアは迫りくるジャイアントトードから逃げており、カズマは剣を持ってアクアを追いかけているジャイアントトードを倒そうとしている。

 

 ダクネスは・・・いつも通りで、めぐみんに至っては顔から食べられており、ジャイアントトードの口から下半身だけ見えている。

 

 「くっそ、バサラがいればこんな奴らッ」

 

 カズマがそう叫ぶ。

 

 「ゆんゆん、助けてやってくれないか?」

 

 「ま、任せてください!《ライトオブセイバー》」

 

 俺がゆんゆんに頼むとゆんゆんは即座に上級魔法である《ライトオブセイバー》を放ってくれた。

 

 一刃の光はアクアを襲っていたジャイアントトードを切り裂くと、軌道を変えてめぐみんを呑み込んでいたジャイアントトードを切り裂く。

 

 「バ、バサラッ、」

 

 突然の魔法に驚き、カズマがこちらに気付く。

 

 「ようカズマ。心強い仲間を連れてきたんだが」

 

 「わ、我が名はゆんゆん!紅魔族の族長の娘にして上級魔法を操る者!!」

 

 少し恥ずかしがりながら紅魔族特有の名乗りを上げる。

 

 「さて、ここからは俺も手伝うから詳しい話はクエストを終えてからなッ」

 

 そういって、俺は腰に携えていたワイバーンの機攻殻剣を抜く。

 

 それと同時にあとからやってきた十五匹ほどのジャイアントトードの群れに突っ込む。

 

 「ゆんゆん、サポート頼むッ」

 

 「はいっ《ライトオブセイバー》」

 

 俺が目の前のジャイアントトードを切り裂くと横から襲い掛かってきたジャイアントトードにゆんゆんの魔法が炸裂する。

 

 さらに、倒したジャイアントトードを踏み台にし、上に飛んだあと、他のジャイアントトードの頭に着地しながら、頭に剣を突き刺す。

 

 

 

 

 

 

 その後、無事、残りのジャイアントトードを殲滅することの出来た俺達は冒険者ギルドにてゆんゆんの話をしていた。

 

 「め、めぐみんッなんでジャイアントトードなんかにやられてるの?それでも本当に私のライバルなの?」

 

 「はてさて、あなたは一体どちらさまでしょう?」

 

 「ええッ?わ、私よ私。紅魔の里の学園ではいつもあなたと勝負をしていたゆんゆんよ!」

 

 「とまぁ、そういうことです」

 

 ゆんゆんに対してのめぐみんの対応が辛辣なのはライバル故なのだろうか?

 

 「そういえば王都に行ったんじゃなかったか?」

 

 カズマが俺にそういう。

 

 「あぁ、王都で買い物をしていたんだが、この通り、ゆんゆんと出会ってな。パーティを組めずに一人でいるっていうから、それだったら一緒にパーティ組まないか?って俺が誘ったんだが駄目だったか?」

 

 「い、いや、駄目じゃない。先ほどの魔法を見た感じでは大歓迎したいんだが」

 

 「ほ、本当ですか?」

 

 バンッ!!

 

 「ちょっと待ってください二人共!このパーティには既に優秀な魔法使いがいますよね?」

 

 机を叩いためぐみんは大声でそういった。

 

 「優秀な魔法使いは何人いても困らないと思うんだが?」

 

 「そうだぞ、それにお前の爆裂魔法と違って小回りが利きそうな魔法が使えると来た」

 

 「う、うぅ、し、しかし」

 

 「私も歓迎するぞ、前衛をしている私からすれば背後からのフレンドリーファイアッ! はぁ! はぁ!」

 

 めぐみんはゆんゆんのパーティ入りに反対のようだが、ダクネスは歓迎?している。

 

 「ア、アクアは?」

 

 「う~ん、いいんじゃない?私を助けてくれたんでしょ。良い子に決まってるじゃない!!」

 

 「ぐっ」

 

 満場一致の意見にめぐみんも反論できなくなっている。

 

 「・・・あぁ~わかりましたッ分かりました。分かりましたよ!」

 

 「ということで、これからよろしくな。ゆんゆん」

 

 「は、はい!精一杯頑張ります!」

 

 こうして、ゆんゆんはパーティに加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆんゆんがパーティに加わった翌日、俺達はクエストを受けに来ていた。

 

 「それで、どんなクエストを受けるんだ?」

 

 「そうだなぁ、ゆんゆんも加わったことだし、少し難易度の高いクエストを受けてもいいと思うが」

 

 そういいながら、カズマは何個かのクエストを見る。

 

 「ゴブリン討伐とかあればいいんだが、そう簡単にはないよなぁ」

 

 「これなんかどうだ?」

 

 俺がカズマに渡したクエストは《白狼討伐》報酬は百万エリス。

 

 「前は難しそうだったが、今ならいけるんじゃないか?」

 

 「うぅ~ん、少し不安だが」

 

 「安心しろ、ヤバそうなときには機竜を使う。《ティアマト》の神装なら白狼たちも抵抗できないだろうし」

 

 「よし、ならそれを受けるかッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ということで、白狼の被害にあっている牧場に来た。

 

 「カズマさぁ~ん、見てみてぇ~」

 

 「モーモー」

 

 そういって牛の背中を撫でているのはアクア。

 

 どうやら、牛たちに懐かれたらしく、三頭の牛に囲まれている。

 

 「おおぉ~宴会芸だけではなく動物芸まで覚えるのかぁ~」

 

 「う、牛、や、やめろおお、わ、私の身は決して牛のような」

 

 「それにしてもゆんゆん、一体どのような口説かれ方をしたのですか?チョロいあなたのことですから簡単に引っ掛かったんでしょうけど」

 

 「し、失礼ねッ」

 

 上から、カズマ、ダクネス、めぐみん、ゆんゆんなのだが・・・

 

 カズマとダクネスは平常運転だな。しかし、めぐみんよ、俺は決してゆんゆんを口説いたりはしていない。

 

 あと、やっぱりゆんゆんはチョロいのか。いや、なんとなく、わかっていたけど。

 

 俺はめぐみんの言い草に少々ムカついたので背後からひっそり忍び、一気にめぐみんのこめかみをグリグリしてやった。

 

 「い、痛いですッ!痛いですッ。やめてください」

 

 「ったく、俺はダストと違うんだぞ」

 

 「はぁ~バサラもバサラですよ。この子は騙されやすいんですから、あんまり優しくしていると痛い目に合いますよ」

 

 「お、おう」

 

 その瞬間、俺は自分の死因を思い出す。

 

 「・・・」

 

 「バ、バサラさん!?顔色悪いですけど大丈夫ですか?」

 

 「あ、あぁ」

 

 それを見ていたカズマはアクアにひっそり耳打ちする。

 

 「なぁ、バサラの死因って?」

 

 「えぇ、なんとなく察していると思うけど、ヤンデレの女の子に撲殺されたの」

 

 「ひぇぇえ~」

 

 「しかも、よく考えてみれば、その子はゆんゆんと同じでぼっちだったわね」

 

 「・・・あいつ、ぼっちに対してなんかあるのか?」

 

 「さぁね」

 

 





 次回は戦闘をいれたいです。


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ぼっち少女の初陣

 今回はかなり戦闘シーンを描きました。


 カズマside 

 

 さて、クエストを受けた俺達なのだが、依頼主によると白狼たちは夜にやってくるらしい。

 

 そこで、俺達は昼間のうちに白狼たちに対しての罠を作ることにした。

 

 といってもまぁ、落とし穴を作るだけなのだが。

 

 白狼たちが引っ掛かって逃げ出せないようにするためには、そこそこ深い落とし穴を作る必要があったので、

バサラに機竜を使って深さ五メートルほどの大きな穴を十個ほど作ってもらった。

 

 他には、アクアが牧場全体に結界を張ったり、牛たちを牛舎に避難させる。

 

 全てが終わるころには日もすっかり暮れて、夜になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バサラside

 

 「バ、バサラさん」

 

 「どうしたんだ?」

 

 「その、私って役に立っていますか?」

 

 「あぁ、もち「いいえ、全然、役に立っていませんッ」お、おい、めぐみん」

 

 初のパーティで挑むクエストのためなのか、ゆんゆんはいつも以上に不安になっているようだ。

 

 俺は「勿論だ」といおうとしたが、横からめぐみんが割り込んできた。

 

 「第一、上級魔法なんて私の爆裂魔法の足元にも及びません!」

 

 仲がいいんだが、悪いんだが良く分からないが、二人のやり取りを見ていると、とても微笑ましくなってくる。

 

 「め、めぐみんには聞いてないわよッ。それよりも、爆裂魔法なんて一発使ったら終わりじゃないッ」

 

 「ふん、わかっていませんね。確かに爆裂魔法は一発しか放つことは出来ません。しかし、その一発で、全てが終わるのです」

 

 それから二人の喧嘩はとどまることをしらず、更に激しくなる。

 

 「お、おい、二人共そこまでにしておけ」

 

 見かねたダクネスが二人を仲裁する。

 

 ほんと、こういうところは頼りになるよな。性癖をどうこういうつもりはないが、もう少しこういったところを普段から見せてくれれば・・・

 

 ダクネスの仲裁のおかげで、なんとか喧嘩は収まり、静かになった。

 

 「あぁ~あ、こんなに暇なら酒でも持ってきたらよかったわ」

 

 そういって、アクアは欠伸をする。

 

 「そうだなぁ~。もしかしたら、今日は来ないのかもな」

 

 カズマも続く。

 

 「なん、だとッ。そ、それではまるでッ、焦らしプレイではないかッ!!」

 

 「それならそれでいいんですけどね」

 

 「ね、ねぇ、めぐみん。そういう台詞って学園で習ったフラグを立てるって奴なんじゃ・・・」

 

 「・・・来たな。よし、準備しろ」

 

 四人の完璧なフラグを立てる台詞により、先ほどまで何も感じなかった周囲から四十ほどの反応を感じる。

 

 「ダ、ダクネス《デコイ》で引き付けてくれ。ゆんゆんはダクネスに迫りくる白狼を魔法で倒してくれ。

アクアは支援魔法だ。めぐみんは待機、バサラはダクネスのデコイに引っ掛からなかった白狼を倒してくれ。俺は、ゆんゆんと一緒にダクネスの援護に回る」

 

 カズマの素早い指示により、俺達は一気に戦闘態勢となる。

 

 「来るなら来いッ!血に飢えた野獣どもめ・・・うぅ、たまらん」

 

 「見えたッ。ダクネス来るぞ」

 

 千里眼スキルを使って白狼たちを捕らえたカズマが剣を引き抜き構える。

 

 「《ライトオブセイバー》」

 

 そして、ようやく表れた先頭を走る三匹の白狼をゆんゆんの上級魔法で倒す。

 

 「《パワード》!!」

 

 そこに、アクアの支援魔法が加わり、カズマ、ダクネス、俺の筋力を上昇させる。

 

 「それじゃ、いってくる」

 

 カズマにそういって、俺は《デコイ》に引き付けられなかった白狼たちを機攻殻剣で切り裂いていく。

 

 「グルゥゥ」

 

 「ちっ、素早いな。でも、これくらいなら」

 

 正面の白狼を斬るとその勢いで右側からやってくる白狼を斬りつける。

 

 その後、背後から襲ってきた白狼の口に剣を突き刺し、一度、剣を手放す。

 

 すると、再び正面から白狼がやって来たので蹴りつけると同時に《リンドヴルム》の機攻殻剣を取り出し、突き刺す。

 

 ここまでで三匹、更に二匹が左右から襲ってきたので、先ほど突き刺した《ワイバーン》の機攻殻剣を回収し、二本の機攻殻剣を扱い、バックステップで白狼たちの攻撃を回避したのち、二匹の白狼の首を切り落とす。

 

 それからさらに七匹ほど倒し、カズマたちのほうへ向かう。

 

 「《ボトムレス・スワンプ》」

 

 「《クリエイト・ウォーター》からのッ《フリーズッ》」

 

 ゆんゆんの魔法により、固まっていた白狼たちは纏めて沼に沈む。

 

 なんとかゆんゆんの魔法から逃げることの出来た白狼たちはカズマの魔法により、つるつると足を滑らせた。

 

 「《ライトオブセイバー》」

 

 そして、ゆんゆんの魔法が決まる。

 

 「・・・よし、敵感知に反応が無くなった」

 

 「これで終わりか。ふぅ~案外、余裕だったな」

 

 「そうですね、我が爆裂魔法を使うまでもなかったです」

 

 こうして、無事に襲い掛かってきた白狼たちを撃退することに成功した。

 

 「はぁ、はぁ、白狼なかなかのモンスターだった」

 

 「ねぇねぇ、カズマさん。今回は私、活躍したわよね」

 

 全員が安心した、そのときだった。

 

 「!?まだだ、とびっきり大きな反応が現れたッ」

 

 しかし、まだ終わりではないらしい。

 

 カズマのいう通り、俺もその反応を感じた。

 

 先ほどまでの白狼たちとは比べ物にもならない反応だ。

 

 「グルゥウウウッ!!」

 

 そして、夜の闇に血走った瞳を輝かせて現れたのは先ほどまで相手をしてた白狼の四倍はありそうな巨大な白狼だった。

 

 「こいつが親玉かッ」

 

 「くう~そんな血走った目で私を見つめるなんて、はぁ、はぁ」

 

 「ね、ねぇ、カズマさん。滅茶苦茶強そうなんですけど」

 

 「ふふふ、この程度の白狼なら我が裂魔法で消し飛ばして見せましょう」

 

 「だ、駄目よめぐみん。ここで爆裂魔法を使ったら牛さんたちが起きちゃうわ」

 

 慌てているかと思いきや、みんな案外大丈夫そうだ。

 

 アクアは少し怯えているが、まぁ、大丈夫だろう。

 

 「まぁ、めぐみん。爆裂魔法はやめておけ。爆発音に他のモンスターがやってくるかもしれない」

 

 「え、えっと、私が魔法で」

 

 「ゆんゆんは《ライトオブセイバー》で頼む。カズマッ目つぶしを頼む」

 

 「おうッ《クリエイト・アース》《ウィンド・ブレス》」

 

 「ギャンッ!! グルゥウウアァッ」

 

 「ちょ、ちょっと、更に怒っちゃんたんですけどッ」

 

 カズマの目つぶしはそこそこ効いたらしく、白狼はたじろぐ姿を見せた。しかし、その直後には怒り狂った方向をあげる。

 

 「アクアッ支援魔法」

 

 「え、えぇ《パワード》」

 

 「ダクネス、攻撃を引き付けてくれ」

 

 「あぁ、任せろ」

 

 再びアクアの支援魔法で筋力をあげてもらった俺は、ダクネスの背後から飛び出して、白狼の右側から走り込む。

 

 その間に

 

 「《ライトオブセイバーッ》」

 

 俺が走り込んでいる反対側から魔法で攻撃する。

 

 「グルっ」

 

 「ええッ効いてないッ!?」

 

 「《デコイッ》」

 

 ゆんゆんの魔法は白狼には効いてなかったらしく、攻撃の矛先をゆんゆんに向けた。

 

 それを見てダクネスが素早く《デコイ》を発動してゆんゆんをかばう。

 

 「ゆんゆんは一度下がれ」

 

 カズマがゆんゆんに態勢を立て直すように指示する。

 

 「バサラッ」

 

 「おうッ」

 

 カズマの声を聞いて、すぐさま、《リンドヴルム》の機攻殻剣をなおして、代わりに《バハムート》の機攻殻剣に持ち帰る。

 

 《ワイバーン》と《バハムート》の片手直剣型の機攻殻剣を構えて大きく跳ぶ。

 

 白狼の背後に着地するときに二本同時に刺す。

 

 「グルウウゥウッ」

 

 痛みに悶える白狼から離れないように剣をさらに深く突き刺す。

 

 「お、おいっ、こらッ動くなって」

 

 闘牛のように暴れまわるせいで攻撃ができない。

 

 「クソっ」

 

 《バハムート》の機攻殻剣を抜き、《ワイバーン》の機攻殻剣を持ち手に白狼の背中に幾十もの切り傷を刻み込む。

 

 「バサラ大丈夫かッ?」

 

 「あぁ、にしてもコイツっ」

 

 「《ボトムレス・スワンプ》」

 

 すると、そこにゆんゆんが魔法を放つ。

 

 白狼の丁度足元に展開された沼地はみるみるうちに白狼の足を捕らえ、動きを鈍らせた。

 

 「ナイスだゆんゆん!!」

 

 訪れたチャンスをものにするために《ワイバーン》の機攻殻剣も引き抜き、二本の剣で一気に白狼を切り刻んだ。

 

 その後、俺は背中から跳びカズマの目の前に着地する。

 

 それと同時に、白狼の体中からおびただしい量の血が噴き出す。

 

 「グ、グゥウ」

 

 うめき声をあげながら、白狼は倒れ込む。

 

 「・・・ふぅ~、今度こそクエスト完了だな」

 

 「あぁ、そのようだな」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、ゆんゆんの初陣は大活躍で終わりを迎えた。

 

 




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サキュバスのサービス

 なんか今日は調子がいいな


 白狼クエストで大型のモンスターが出たと報告した俺達は臨時報酬として三十万、一人五万づつの計算で報酬をくれた。

 

 よって、百三十万エリスを六人で分け、一人当たりだいたい、二十一万ほど収入を得た。

 

 そして、ゆんゆんも屋敷に住むことになった。

 

 先日まではアクセルで宿屋を取っていたのだが、今日から俺達と一緒に屋敷に住むことになった。

 

 アクアとカズマはどちらが暖炉の前で過ごすか喧嘩をしており、ダクネスとめぐみんはチェスのようなもので遊んでいる。

 

 ゆんゆんは、二人の対戦を観戦しており、勝った方がゆんゆんと戦うらしい。

 

 それで、俺はというと・・・

 

 「ふへへ、ふへへ」

 

 王都で買った革靴、ブーツ、ライダースの手入れをしていた。

 

 アクセルの靴屋を見てみると靴磨きに必要な道具が揃っていたので、それを買った俺は革靴たちを磨こうと思い、大部屋の隅っこで作業をしていた。

 

 王都で買ったドレスシューズの色はボルドーだ。

 

 革靴のボルドーというのは光の加減により色の見え方が変わる。

 

 例えば、室内などの場所で光に当たればブラウンのような色になっており、外などで太陽の光を浴びれば赤みの強い茶色に見える。

 

 また、ボルドーは履き続けていると革によっては茶色になったりする。

 

 「ふへへぇ~楽しみだなぁ~」

 

 そんなこんなで靴を磨く。

 

 仕上げの鏡面磨きを施したあとの革靴は鏡面の名に恥じぬ輝きを放っていた。

 

 つま先を覗き込むと自分の顔が映っている。

 

 「おっと、いけないいけない」

 

 自分の顔が映るのはいいが、そこに映っていたのは完全にニヤケきった自分の顔だった。

 

 するとカズマがやって来た。

 

 「何やってるんだ?」

 

 「靴磨き」

 

 「・・・えっ?」

 

 「いや、だから靴磨き」

 

 「そ、そうか」

 

 「カズマもやってみるか?めんどくさそうに見えるかもしれないが、やってみると案外楽しいぞ」

 

 「い、いや、いい」

 

 「そんなこといわずになッ」

 

 

 

 

 

 

 一時間後

 

 「結構面白いな」

 

 「だろぉ~靴は綺麗になるし、無心で作業できる」

 

 「ちょっとした癒しになるな」

 

 アクアたちside

 

 「ね、ねぇ、あの二人、靴見ながらニヤけてるわ」

 

 「常識人だと思っていたバサラまでもが、変人でしたか」

 

 「そうか?ただ靴を磨いているようにしか見えないが」

 

 「え、えっとぉ、楽しそうだからいいんじゃないですか?」

 

 アクアとめぐみんは可哀想なものを見る目で、ダクネスは普通の眼で、ゆんゆんは微笑ましそうな眼で彼らを見ていた。

 

 バサラside

 

 「ふへへ、ふへへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺とカズマは街に出かけていたのだが、不審な二人を見つけた。

 

 ダストとキースだ。

 

 二人は辺りをキョロキョロ見回しながら、人の少ない路地に入ろうとしている。

 

 気になったカズマは二人に声を掛けた。

 

 すると、ダストとキースはカズマの耳元で小さな声で囁く。

 

 しばらく話を聞いたカズマは俺の方を見て手招きをした。

 

 何事かと思いついて行くと、怪しげな店に連れ込まれた。

 

 その店はどうやら、サキュバスたちが経営する店らしく、冒険者たちに良い夢(ムフフな夢)を見せる代わりに精気を提供してもらう店とのこと。

 

 しかも、精気は加減して吸ってくれるため、翌日の仕事にも影響しない素晴らしいサービスらしい。

 

 まぁ、確かに馬小屋などで生活している冒険者は色々と溜まるだろう。かといって、隣で寝ている女性冒険者を襲おうものなら、反撃をくらってしまうかもしれない。

 

 さらにだ、男性冒険者の色々と溜まって物が発散されることで女性に対しての暴行などが起こらないため、アクセルの治安を守るといった点においても、非常に役に立っているそうだ。

 

 話を聞いているかぎりでは、確かに素晴らしい店だと思う。

 

 ということで、俺はカズマに手を引かれ店に連れ込まれたのだが・・・

 

 「いらっしゃいませ、お客様」

 

 そこにはかなり扇情的な衣装を纏ったサキュバスの女性が何人もおり、顔見知りの男性も数多く存在していた。

 

 「この店のサービスはご存知ですか?」

 

 すると、俺を担当してくれるサキュバスのお姉さんが一枚のアンケート用紙を用意してくれた。

 

 そこには名前、職業などの必要事項から夢の中での自分の状態や、性別や外見などの項目がある。

 

 「ふふふ、夢の中ということもあり、勇者や英雄、王様にもなれますし、女性にもなれますよ」

 

 サキュバスのお姉さんは蠱惑的な笑みを浮かべて説明してくれる。

 

 「へぇ~、面白そう。例えばどんなのがありますか?」

 

 「そうですね、例えば、年端も行かない少年になって強きな女性冒険者に押し倒されたいとか」

 

 「は、はぁ~」

 

 「ちなみに、相手の設定はどんな設定でもできますよ。外見は勿論、正確や口癖、存在しない相手でもいけます」

 

 「それはすごいな。でも、相手に申し訳ないような」

 

 「安心してください!!夢ですから」

 

 「そうですね」

 

 口ではそういいながらも、内心では『大丈夫じゃないだろおお』と叫んでいた。

 

 「あっ、注意事項に酒を飲み過ぎないようにしてくださいね。熟睡しては夢が見れませんので」

 

 「それは、大丈夫だ。酒は飲まないから」

 

 「そうですか、では、お決まりになりましたらお呼びください」

 

 

 

 

 

 とまぁ、勢いで連れ込まれてしまったため、別にサービスを受けるつもりはなかったんだが、せっかく、説明してくれたんだし、これでサービスを受けなかったら申し訳ないよな。

 

 なので、一応記入した。

 

 相手の外見 おまかせ 性格 おまかせ 口癖 特になし

 

 自分の設定 このままで

 

 シュチエーション 癒しが欲しい

 

 このようになった。

 

 サキュバスのお姉さんは「かしこまりました」と了承してくれた。

 

 

 

 

 

 

 カズマと揃って屋敷に帰ったのだが、どうやら今晩はごちそうらしい。

 

 ダクネスの実家から霜降り赤蠏と呼ばれる高級食材が送られてきたらしく、蟹三昧らしい。

 

 「あわわわわ」

 

 「す、すごい」

 

 めぐみんとゆんゆんは涎を垂らしている。

 

 アクアは蟹より酒のほうにしがみついている。

 

 この蟹がいかにすごいか説明すると爆裂魔法大好きなめぐみんがこの蟹にために、一日爆裂魔法を我慢して、蟹を食べたあとに爆裂魔法を放つくらいらしい。

 

 うん、よくわからんが、すごいのだろう。

 

 ということで、ダクネスには感謝だ。

 

 「いただきます」

 

 そして、俺は蟹をタレに付けて口に運び込んだ。

 

 「!!!!!!」

 

 『なんじゃコレッ。うますぎるッ。ヤバい』

 

 あまりの旨さに手が止まらず、一気に食べてしまう。

 

 すると、アクアがカズマに火を頼む。

 

 「この酒の美味しい飲み方を教えてあげるわッ」

 

 そういって、網の上に蠏味噌の入っていた甲羅を置いて、酒を注ぐ、更にそれを熱する。

 

 ブクブクとイイ感じに暖まると、アクアはそれを少し口に含めて・・・

 

 「ほう」

 

 赤い顔をしながら、息を吐く。その顔はいわなくてもわかるだろう。滅茶苦茶満足げだ!!

 

 続いてダクネスもアクアと同じように酒を飲む。

 

 「これはいけるなッ!」

 

 それを見ていためぐみんとゆんゆんも

 

 「わ、私も飲みたいですッ。いいですよね今日くらい」

 

 「私も飲みたいです」

 

 「駄目だッ。子供のうちから飲むとパァーになると聞くぞ」

 

 こういったところでは厳しいダクネスが二人を止める。

 

 「ジャンジャン飲むわよぉ~」

 

 アクアはそう言って、さらに酒を飲む。

 

 そして、宴会芸を披露した。

 

 「起動要塞デストロイヤアァァァァッ」

 

 「おおッ、この動きはまさに起動要塞デストロイヤ―ッ」

 

 「指だけであの複雑な動きを表現するだなんて」

 

 「ア、アクアさん、やっぱりすごいですッ」

 

 デストロイヤ―とは前世でいう災害のようなものだ。今回は置いておくとして・・・

 

 ダクネスは先ほどから酒を飲もうとしないカズマを見て心配になったのか、声を掛けていた。

 

 「どうしたんだ?口に合わなかったか?」

 

 「いや、ちょっとダストたちと飲んできてな」

 

 「そうか」

 

 そしてダクネスはいつものドMっぷりからは考えられないような優し気な笑みを浮かべる。

 

 「悪い、今日はもう寝るわ」

 

 すると、いたたまれなくなったのか、カズマは席から立ちあがり、自室へと向かった。

 

 『そういえば、サキュバスの店で酒は飲み過ぎないでって注意されたな。そのせいか・・・にしても、サキュバスのサービス受けなくても良かったな』

 

 カズマと同じく、俺まで罪悪感にあふれてきた。

 

 「バサラも酒は飲まないのか?」

 

 「えっ?あ、あぁ、俺は酒を飲まないようにしているんだ」

 

 「そういえば、前もそんなことをいっていたな。確か、カズマのようにセクハラ魔になりたくないと・・・も、もしや、酒を飲むとお前はケダモノになるのかッ」

 

 「・・・あ、あはは、そうかもなぁ~」

 

 別に女性を襲ったりはしない。ただたんに、酒が苦手なだけなのだが、誤魔化しておく。

 

 「そうか、残念だ」

 

 「お前は自分の体を大切にしろよな。美人でスタイルもいいのに」

 

 「なっ」

 

 少しやり返してやろうと思った俺はダクネスを褒める作戦にでた。

 

 「髪の毛だってサラサラで綺麗な金髪、顔立ちも整っていて、スタイルも抜群ときた」

 

 「にゃ、にゃにをいってるんだ」

 

 「いや、本心で思ってることをいってるだけだが?」

 

 「う、うぅ、これは私の求める羞恥とは違う」

 

 いつもとは違う反応をするダクネスを見て俺も少し興が乗ってしまい追い打ちをかける。

 

 「俺がダクネスの旦那さんなら、ダクネスを誰にも見られたくないから家の地下に監禁するかもな」

 

 耳元でドスの効かせた声で囁いた。

 

 「はうぅ~」

 

 するとダクネスは顔を真っ赤にさせて気絶した。

 

 「あ、あれ、ダクネスッ?やべ、からかいすぎた」

 

 「あぁ~バサラがカズマのように鬼畜になっているではありませんかッ!!」

 

 「やだ、バサラさんったらドSだったのぉ~」

 

 「えぇ!!バサラさんって、ド、ドSだったんですか?」

 

 「お、おい、ちょっと待って。俺はカズマのような鬼畜じゃないッ。ドSでもないからなッ」

 

 

 




 前回までゆんゆんがヒロインしていたので、今回はダクネスにスポットライトをあてました。

 次回は、カズマさんは・・・


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食後の語らいと戦争

 今回の話なのですが、カズめぐを推している私はカズマとダクネスのくだりをカズマとめぐみんに変えております。

 ですので、今回のお話でカズマと混浴するのはめぐみんということになっております。

 


 ダクネスの実家から送られてきた霜降り赤蠏を腹いっぱい食べたのだが、アクアが酔いつぶれてしまい部屋に運んでやった。(ゆんゆんもアクアの飲んでいた酒を間違ってのんでしまい、酔いつぶれたため、部屋に運ばれている)

 

 めぐみんは風呂に入るといい、部屋からでていき、この部屋にはダクネスと俺だけとなった。

 

 「ごちそうさま」

 

 俺はそういった。

 

 「あぁ、気にするな。普段から世話になっているお礼だ」

 

 「そっか。俺も世話になってるしお相子だな」

 

 「そうだな」

 

 それから会話は続かなくなり、無言のまま、ただひたすら時間だけが過ぎていく。

 

 「さて、片付けも終わりだな」

 

 「あぁ、風呂に入りたいところだが、めぐみんが入ってるからな」

 

 「一緒に入ればいいんじゃないか?」

 

 「いや、もう少しあとになってから入ることにする」

 

 そういって、ダクネスは暖炉の前にあるソファーに腰を下ろした。

 

 「それじゃ、俺はライダースの手入れでもするかな」

 

 自室で作業しようかと思ったが、寒さのあまり、俺も暖炉の近くで作業することにした。

 

 この世界の冬は日本と同じでかなり乾燥している。

 

 適度にこうやって手入れをしてやらないと革が乾燥してパリパリとした感触になる。

 

 「そういえば、バサラはカズマと同郷だったな?」

 

 作業を始めて十分ほどしたときにダクネスが突然そんなことをいった。

 

 「あぁ、そうだな。といっても、向こうではあったことないけど」

 

 「この国にきてかなり経つと聞いたが、里帰りなどはしないのか?」

 

 「・・・そうだなぁ、まぁ、しないかな」

 

 「両親の顔は見ないのか?」

 

 「べっつにー、あっ、でも婆ちゃんには会いに行きたいな」

 

 「両親は大切にしておいた方がいいぞ」

 

 「・・・あ、あぁ、そうだな」

 

 「バサラはお婆ちゃんっこだったのか」

 

 ダクネスにそういわれ少し恥ずかしくなる。

 

 「婆ちゃんの作る手料理がなすんげーうまいんだ」

 

 「それは私も食べてみたいな」

 

 「今日の霜降り赤蠏は素材の旨さだとすれば、婆ちゃんの手料理はお袋の味だな」

 

 「私もその言葉を聞いたことがあるぞ。そうか、バサラにとってお婆ちゃんの料理はお袋の味なのか」

 

 「思い出したら腹減ってきたな」

 

 「おいおい、さっき食べたばかりだろう」

 

 優し気な表情で微笑みかけてくるダクネスにドキッとしてしまったのは内緒だ。

 

 「よし、一通り手入れは終わったな」

 

 「その服は王都で買ったのか?」

 

 「あぁ、そうだ。ゆんゆんと一緒に回ったんだが、そのときに良い感じの店を見つけてな」

 

 「なるほど、それが王都で有名になっているファスナーというものか」

 

 「へぇ、そんなに有名なのか」

 

 「知らずに買ったのか!?」

 

 「いや、見た瞬間にコレだッ!て俺の直感がな」

 

 「そういうものか、確かに、私もあの鎧を見た時に似たような思いを抱いたものだ」

 

 確かダクネスの鎧はかなりいい鎧だったような・・・

 

 「ダクネスってさ、もしかしたら貴族だったりするか?」

 

 「な、なにッをいって」

 

 「いや、なんとなくなんだが、作法とか見てたら王都で会ったバリバリの戦姫を思い出して・・・」

 

 「戦姫・・・まさか、アイリス様のことか?」

 

 「知って・・・いや、知ってて当然か。まぁな、アイツと同じ金髪碧眼だし」

 

 「なっ」

 

 「いや、別に貴族だからどうこうとかいうわけじゃないけど」

 

 「・・・バ、バサラは貴族に何か恨みでもあったりするか?」

 

 すると、ダクネスは少し声を抑えてそういった。

 

 顔を見ると表情が暗い。

 

 「いいや、全くないよ。強いて言うならあのお姫様がしつこいくらいだな」

 

 「おいっ、アイリス様に向かってしつこいとは、ってさっきから気になってたんだがバサラはアイリス様と、どういう関係なんだ?」

 

 「う~ん、王国の騎士団に誘われてな、断ったら余計にしつこく追いかけてくる関係?」

 

 「バ、バサラがっ!?だ、だったらなんで断ったんだ?」

 

 「以外でもないだろ。俺は騎士団とか向いてない」

 

 「そんなことはないと思うが」

 

 「それに、俺は結構このパーティのことが気に入ってるんだ。いっつも面倒なことを起こしてくれるが、そこが楽しい」

 

 「そ、そういうことをいわれると私も少し恥ずかしいのだが」

 

 「ハハハ、ということで、俺は寝る準備でもするかな」

 

 「あぁ、おやす「ビィッー!ビィッー!ビィッー!」なっ」

 

 突然、屋敷全体に警報のような音が鳴り響く。

 

 「こ、これは一体?」

 

 ダクネスは突然の出来事により、戸惑っているようだ。俺もそうだ。一体どうしたんだ?

 

 ドタドタドタドタバンッ!

 

 今度は俺達がいた部屋の扉が強引に開かれる。

 

 「みんなッ悪魔よッ」

 

 扉から顔を覗かせたのはアクアだった。隣にはゆんゆんも一緒だ。

 

 「私がこの屋敷に張っていた結界に反応したの。間違いないわ、こっちよ」

 

 そういって、アクアはダクネスと俺を連れて廊下を徘徊する。

 

 『悪魔って・・・まさかッ』

 

 俺は心当たりとなる悪魔の存在があった。

 

 そう、あのお店のサキュバスだ。夢を見せに来てくれるといっていた。それが、アクアの結界に引っ掛かってしまったのだろう。

 

 アクアは女神ということもあり、悪魔やアンデッドを非常に嫌っている。そんなアクアがサキュバスと対峙でもすれば・・・間違いなく消されるッ。

 

 『ヤバいヤバい』

 

 俺は内心で焦りまくっていた。カズマに強引に連れられてしまったわけではあるが、俺も賛同してサービスを受けてしまった身である。これで、サキュバスの女性が消されたなんてことになると、店の方にも、サービスを届けに来てくれたサキュバスの女性にも申し訳ない。

 

 そして、廊下の真ん中にサキュバスの少女がいた。その少女は銀髪の幼い顔立ちをした少女で、頭からサキュバスの象徴的な角が生えている。

 

 「どうしたっ!!」

 

 すると、そこへ騒ぎを聞きつけたカズマが合流する。何故か全裸で腰にタオルを巻いている。

 

 風呂にでも入っていたのだろうか、いや、でも、風呂にはめぐみんも入っていたような気が・・・

 

 「ふふふ、さくっと、この私が悪魔祓いしてあげるわッ」

 

 「ひいッ」

 

 アクアの言葉を聞いた少女は小さく悲鳴を上げる。

 

 そのときだった、少女の前にカズマが立ちふさがる。

 

 「ニゲロ」

 

 若干片言ながら呟かれたそれで、サキュバスの少女は「ですが」と言葉を漏らす。

 

 「ちょ、ちょっとカズマッ!その子はカズマとバサラの精気を狙って襲いにきた悪魔なのよッ!」

 

 「正気かカズマッ!」

 

 「そんなッ、カズマさんしっかりしてください!」

 

 アクアとダクネスがカズマに訴えかける。

 

 「お客さん、こんな状況になったのは侵入できなかった未熟な私の責任でもあります。お客さんに恥をかかせるわけにもいけません。私は退治されますから、お客さんは何もしらないふりを・・・」

 

 「・・・・・・」

 

 サキュバスの少女はカズマにしか聞こえない声でそういったが、カズマは何もいわず、ただ立ち尽くす。

 

 その姿は騎士のようにも見える・・・いや、騎士の方に失礼か。

 

 しかし、カズマの考えていることは分かる。自分たちが引き起こしてしまったことだ。

 

 にもかかわらず、ここでサキュバスの少女が退治されてしまうのは胸糞悪い。

 

 なので、俺もカズマのようにサキュバスの少女を守る形で立たせてもらった。

 

 「カズマ、バサラ、そこを退きなさい。袋叩きにはされたくないでしょう」

 

 「「・・・・・・・」」

 

 俺とカズマは何もいえない。だから、無言で立っていることしかできない。

 

 「ちょ、ちょっと待ってくださいッ!カズマとバサラはそのサキュバスに操られているに違いません!でないと、おかしいです。先ほどからヘタレなカズマが強引にあれやこれやと、その・・・」

 

 更にそこへパジャマ姿のめぐみんが現れる。

 

 「うぅ、もうお嫁にいけないです」

 

 『いやっ!?風呂場で一体なにがあったんだ?』

 

 めぐみんの口から語られた内容に驚きを隠せないが、カズマがサキュバスの少女に早く逃げるように告げる。

 

 「カズマ、バサラ、いくら可愛くても、それは悪魔。何をトチ狂ったんですか?」

 

 「どうやら、二人とはここで決着をつける必要があるみたいね。バサラにはカズマさんと違ってすごく、世話になっているから心苦しいけど、二人纏めてケチョンケチョンにしたあと、そこのサキュバスを倒させてもらうことにするわ」

 

 そういいながら、拳をパキパキと鳴らすアクア、その顔つきはどこぞのスタンド使いがでてくる漫画の如しだ。

 

 「くっ、すまないカズマ、バサラ」

 

 「怪我しても文句いわないでくださいね」

 

 「バ、バサラさん、少し我慢してくださいね。私が正気に戻してあげます!」

 

 そこへ、三人も参加した。

 

 「イイゼ」

 

 カズマが片言でそういった。

 

 「イタイメヲ、ミルノハドッチダ」

 

 俺もカズマと同じように片言でいった。サキュバスに操られているかのように振る舞うためだ。

 

 「「カカッテコイヤァァァァァァァァァァァァァァァァ」」

 

 そして、アクセルきっての頭のおかしいパーティは男と女に分かれて小さな戦争が起きたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、俺とカズマはサキュバスに操られていたということになっている。

 

 まぁ、語らぬが吉ということもあるだろう。めぐみんに至ってはカズマと混浴したそうだ。

 

 ここで、変にカズマが別にサキュバスに操られておらず、夢と勘違いした結果の行動だと悟られてしまった方が、カズマにとっても、めぐみんにとってもいいことだと思う。

 

 「なぁ、バサラ」

 

 「どうしたんだ、ダクネス?」

 

 「昨日、本当にサキュバスに操られていたのか?」

 

 「だから途中から記憶がないっていってるだろ」

 

 「い、いや、しかしだな」

 

 「なんで、そこまで疑うんだよ」

 

 先ほどから、ダクネスにずっと同じ質問をされている。やはり、騙すのは無理があったか?

 

 俺としても、パーティメンバーに嘘をつくのは心苦しいが、サキュバスの店のことを考えると、ここで無暗に話して閉店されてしまったら、この町の男性冒険者の多くが敵になるだろう。

 

 「それは、お前は私達の攻撃を受け流すだけで一度も攻撃をしてこなかったからだ」

 

 「なっ、そ、それはきっと、何かあったんじゃないか?操られるなんて体験、初めてだから何もいえないが」

 

 「他にも、お前は魔王軍幹部のアガレスとかいったか?そいつの魅了も受け付けなかったみたいだが、そんなお前が下級サキュバスの魅了程度で魅了されるかと思ってな」

 

 「・・・ちょっと、気を抜いてたんだよ。お前と話してて楽しかったから」

 

 「にゃ、にゃにをいってるんだッ」

 

 とっさに出た言葉に俺自身もビックリした。確かに、ダクネスと話してたのは楽しかったが、言い訳にするには少し苦しくないか?

 

 「この話はもういいだろう、ほら、さっさと屋敷に入るぞ」

 

 そして、屋敷に入ろうとしたときだった。

 

 「デストロイヤ―警報!デストロイヤ―警報!起動要塞デストロイヤ―が現在この町に接近中です」

 

 という放送が流れた。

 

 

 




 バサラはまだ気づいていないようですが、心のどこかでダクネスのことを他のメンバーとは違う形で見ています。

 それが、恋愛かどうかはまだ定かではありませんが・・・

 次回はついにデストロイヤ―戦となっております。

 楽しみにしておいてください。

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緊急クエスト発生


 今回からデストロイヤー戦ですが、キリのいいところで終わらせます。



 

 緊急のデストロイヤ―警報を聞いた俺達は冒険者ギルドへと来ていた。

 

 「ちょ、ちょっと待ってくれよ。一体何なんだデストロイヤ―って」

 

 「カズマ、今この街には、それが通ったあとにはアクシズ教徒以外、草も残らないとまでいわれる、最悪の大物賞金首、起動要塞デストロイヤ―が迫ってきています。これと戦うとか、無謀にも良い所ですよ」

 

 「紅魔族の里でも起動要塞デストロイヤ―とアクシズ教には関わるなと教わりました」

 

 「ね、ねぇ、なんで私の可愛い信徒たちがそんな風に言われないといけないのかしら?」

 

 とまぁ、アクアはともかく、めぐみんとゆんゆんのいったことから分かるように、アクセルにとんでもなくヤバい奴が迫ってきているということが分かる。

 

 正直、話を聞いた俺は破壊できるのか?とすら思っている。

 

 「めぐみんの爆裂魔法で破壊は出来ないのか?」

 

 「無理そうらしい。なんでもデストロイヤ―の周囲には強力な魔法結界が張られているらしい」

 

 「そうです。その結界のせいで我が爆裂魔法も真価を発揮せずに防がれてしまうのです」

 

 その結界をどうにかできればいいのだが・・・現在、冒険者ギルドに集まっているのは、俺達のパーティを含めてダストやテイラー、キース、リーンのいるパーティに数々の男性冒険者、ミツルギまでいる。というか、お前、帰ってきていたのか。

 

 「お集まりの皆さん!本日は、緊急の呼び出しに応えて頂き、大変ありがとうございます」

 

 ざわつくギルドの中心で普段は受付嬢をしているルナさんがそういった。

 

 「只今より、対起動要塞デストロイヤ―討伐の、緊急クエストを行います。このクエストには、レベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。無理と判断した場合には、街を捨て、全員で逃げる事になります。皆さんがこの街の最後の砦です。どうか、よろしくお願い致します!!」

 

 その声に導かれ、ギルドに来ていた冒険者たちは全員が中央のテーブルに集められ座らされる。

 

 ギルド内がとてつもない緊張感で満たされる。

 

 「それでは、お集まりの皆さん、只今より緊急の作戦会議を行います」

 

 「さて、それでは。まずは、現在の状況を説明させていただきます」

 

 そういって、何やら魔道具らしきものを使うとディスプレイのようなものが表示された。

 

 「起動要塞デストロイヤ―は、元々は対魔王軍の兵器として魔導技術大国ノイズで開発された、超大型ゴーレムのことです。しかし、その国はデストロイヤーの暴走で真っ先に滅びてしまっています」

 

 『なんだよそれッ!やべー奴じゃん。魔王より質悪いぞ』

 

 外見は蜘蛛のような八本足で国家計画で作り出されたため、高価な魔法金属をふんだんに使用されているらしい。外見に似合わない軽めの重量で、八本の巨大な脚で、馬をも超える速度がでるらしい。

 

 「特筆するのは、その巨体と進行速度です。凄まじい速度で動く、その八本脚で踏まれれば、大型のモンスターとて挽肉にされてしまいます。また、常時、結界が張られているため魔法攻撃は無意味」

 

 物理攻撃は効くらしいが、近づこうにも挽肉にされるわ、遠くから弓や石を投擲するも、もともとがゴーレムのためほとんど効かないそうだ。

 

 様々な意見をだして、どう対処するかを話し合っているが、どれもいまいちだ。

 

 「なぁ、それって結界を破れればいいんだろ。アクアだったら破れないのか?」

 

 カズマが突然、そんなことをいった。

 

 そうだ、アクアは女神だ。人間とは比べ物にならないほどの魔法が使える。

 

 「そうね、やってみないとわからないけど」

 

 「結界を破れるんですかッ!!」

 

 アクアの言葉にルナが飛びつく。

 

 「えぇ、多分できると思うわ」

 

 「なら、その後が問題ですね。高火力の攻撃を浴びせないと」

 

 ルナがその後も話を進めたが・・・

 

 「高火力ならいるじゃないか。とびっきりの奴が・・・」

 

 一人の男性冒険者がそういった。

 

 「あぁ、いるな。頭のおかしいのが」

 

 「いるな、とびっきりの爆裂魔法を使う頭のおかしい紅魔族の娘が」

 

 彼らの言葉を聞いた冒険者たちが一斉にめぐみんに視線を向ける。

 

 「おい、待て。それが私を指しているのだとすれば、ここでいかに頭がおかしいのは知らしめることになりますよ」

 

 そういって、めぐみんは杖を構える。

 

 「ちょ、ちょっと何をやってるのめぐみん」

 

 それを見てゆんゆんがめぐみんを抑える。

 

 するとそこへ・・・

 

 「遅くなりました」

 

 一人の女性が現れた。聞き覚えのある声の主はウィズだった。

 

 この女性は俺がパーティから離れている間に知り合った元冒険者らしく、その正体はリッチーでしかも魔王軍の幹部らしい。といっても、結界を維持するだけのなんちゃって幹部だと本人はいっているが。

 

 現在は、アクセルの街で魔道具屋を開いているらしい。俺も何度が世話になっているが、いかんせん、まともな商品が置いてないのがたまに瑕だ。

 

 「店主さんきたあああああああああ」

 

 「店主さんほどの強キャラが来れば勝てるぞッ」

 

 「いつも、夢でお世話になっています」

 

 一人ほどおかしいものがいるような気がするが、彼らの言葉から分かるように、ウィズは元冒険者らしい。

 

 しかも、かなり高レベルの冒険者らしく、氷の魔女といわれていたらしい。

 

 「私も爆裂魔法を使えます」

 

 先ほどの会話を聞いていたらしく、アクアが結界を破ったのち、ウィズとめぐみんの二人で爆裂魔法を放つことになった。

 

 「なら、俺は足止めをさせてもらおう」

 

 そこで、俺は提案する。

 

 「八本脚で移動するんだろ、もし何かの手違いで爆裂魔法が外れたら一貫のおしまいだからな、俺が結界を破ったあとに、あいつの脚を破壊する。起動要塞の起動をなくしてしまえば、ただの要塞だ」

 

 「そんなことできるのか?」

 

 カズマが不安そうにそういう。

 

 「ああ、任せろ」

 

 「わかった」

 

 「では、準備に取り掛かってくださいッ!!」

 





 次回から、本格的なデストロイヤー戦です。

 バサラの活躍を見逃すなッ!!


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決意


 ようやくあの黒い機竜を登場させることができました。

 今回は相手が相手なだけあって、あまり活躍していませんが・・・


 

 緊急クエスト会議の後、冒険者たちは全員でデストロイヤーに対抗するための準備をしていた。

 

 アクセルの門の前には最終防衛ラインとして何十人もの冒険者たちが陣を張る。

 

 門の上には、右翼にめぐみん、左翼にアクアとウィズを配置している。

 

 そして、最終防衛ラインからだいぶ離れたところにダクネスと俺が立っていた。

 

 「こんなところにいて大丈夫か?」

 

 「あぁ、大丈夫だ」

 

 剣を大地に刺し、構える姿はどこかの騎士王、いや、この場合は金木犀の剣を持つ聖騎士といったほうがいいか。彼女に似ている。

 

 「私は普段の行動のせいで、自分の欲望のために立っているかと思われるかもしれないが、今回は住民たちのためにも後ろには下がれない」

 

 「それは騎士だからか?」

 

 「それもあるが、私の本名はダスティヌス・フォード・ララティーナという」

 

 そして、ダクネスは話してくれた。

 

 「この近隣を収めるダスティヌス家の娘だ」

 

 「やっぱり、お嬢様だったのか」

 

 「皆にはいうなよ」

 

 ダクネスは真剣な目つきでこちらを見た。

 

 「あぁ」と頷く。

 

 「私は騎士だ。領民の暮らしを守るのは私の使命であり、誇りだ」

 

 真剣に話す彼女の姿は、誰が見ても貴族の鑑であり、騎士の鑑だろう。

 

 「わがままなパーティメンバーは嫌いか?」

 

 「まさか、昨日いっただろ、このパーティはめんどうなことばかり起こしてくれが楽しいって」

 

 「そうか」

 

 嬉しそうな表情になると、ダクネスは再び前方を向き、これからやってくるであろうデストロイヤーに身構える。

 

 「ララティーナ、いや、ダクネス」

 

 「言い直して正解だ。そちらの名前で呼ぼうものなら、私はお前を殴っていた」

 

 「はいはい、だけどまぁ、そんな身構えなくてもいいぜ、俺が動きをとめるからな」

 

 「そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、デストロイヤーはやってきた。

 

 「冒険者の皆さん、戦闘準備をお願いしますッ」

 

 ルナの言葉とともに奴は現れる。

 

 機械的な体をした蜘蛛。とてつもなくデカい。

 

 あんなのがアクセルを通過したら・・・考えるだけでも恐ろしい。

 

 「ほんとに大丈夫なのッ?」

 

 ここにきてアクアが弱音を吐く。

 

 「大丈夫、大丈夫、大丈夫」とめぐみんも片言で弱音を吐きながらガクガクと震える。

 

 「めぐみんッ大丈夫よ。あなたは私のライバルなのだから!!」

 

 ゆんゆんがしたからめぐみんを励ます。

 

 そして、アクアが魔法を放った。

 

 「セイクリッド・ブレイク・スペルッ」

 

 爆裂魔法にも引けを取らないほど巨大な魔法陣を展開したのち、それら全てから収束された虹色の光が起動要塞デストロイヤ―へと向かって突き進む。

 

 「くううう」

 

 アクアの顔は苦しそうだ。

 

 「ぐうう、うおおおおおおッ」

 

 力の全てを吐き出す勢いで魔法を放つと、虹色の光は更に太く力強い光になり、デストロイヤーを守っていた魔法陣を見事、打ち破った。

 

 「俺もアレを見たなら出し惜しみはしないッ。離れてろダクネス」

 

 「あぁ」

 

 デストロイヤーの結界が完全に破れたことを確認した俺は黒い機攻殻剣(ソードデバイス)を取り出す。

 

 「すぅ~はぁ~」

 

 一度ゆっくりと深呼吸をする。

 

 そして、詠唱符を唱えた。

 

 「顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴竜、黒雲の天を断てッ!!《バハムートッ》!!」

 

 直後、紅の光が俺を包む。

 

 光がやむとそこには、漆黒の騎士が立っていた。

 

 「黒い、騎士、まさかッ」

 

 「おっと、ダクネス。それは内緒にしておいてくれ。にしても、貴族なだけあって、やっぱり知ってたか」

 

 どうやら、ダクネスは俺のことを知っていたらしい。まぁ、それもそうだろう。アイリスとかなり親し気だった。

 

 「いってくる」とだけいって、俺は《バハムート》でデストロイヤーに飛んでいく。

 

 ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャ、ガシャと駆動音を響かせながら近づくデストロイヤーの正面に着くと、俺は《バハムート》の特殊武装である烙印剣(カオス・ブランド)を取り出す。

 

 「いくぜッ」

 

 そして、デストロイヤーの脚に斬りかかる。

 

 ガキンッ

 

 しかし、デストロイヤーの脚は思っていたよりも頑丈だったらしく、傷一つ付かなかった。

 

 「クッソ、でたらめな硬さしやがって」

 

 その後の何度も切りつけたが傷が付くことはなかった。

 

 「このままだとまずいな」

 

 そう思って焦っていると、脚の関節部分に目が向く。

 

 「あそこならっ」

 

 思った通り、脚の関節部分は弱いらしく、そこを重点的に攻撃していた。

 

 複雑な構造をしており、一本の脚に四か所の関節部分が存在している。

 

 「一個ずつチマチマやってる時間はないかッ」

 

 破壊できることはわかった。

 

 みんなが全力で街を守ろうとしている。

 

 ならば、俺も全力で街を守るしかない。

 

 「《暴食(リロード・オン・ファイア)

 

 迷わず俺は《バハムート》の神装を発動した。

 

 先の五秒間でエネルギーや現象を数分の1にまで減少させ、次の五秒間で爆発的に開放する。

 

 かなりピーキーな神装ではあるが、そこへさらに、ティアマトとの修業で身に着けた神速制御(クイック・ドロウ)を重ねて発動し・・・

 

 残っていた27箇所の関節部分を破壊した。

 

 そこで、初めてデストロイヤーは歩みを止めた。

 

 ダクネスとの距離は一キロないくらいだ。

 

 「なんとかギリギリだな。というか、急いで離れないと」

 

 そして、俺がデストロイヤーから離れた直後、俺の背後でデストロイヤーに特大の爆裂魔法が二発炸裂した。

 

 そのときに破壊されたデストロイヤーの破片がダクネスの方へと飛んでいく。

 

 ただの破片であるならダクネスの耐久力によって防げると思うが、今回飛んだ破片はかなり鋭利なもので、下手すればダクネスの体を突き刺すかもしれない。しかも、かなり大きい。

 

 急いでダクネスの前に立ち。

 

 「《機竜咆哮(ハウリング・ロア)》」

 

 機竜に搭載されている幻想機核(フォースコア)から渦上の障壁を展開し、投擲物などを防ぐ技で迫ってきた破片を受け止める。

 

 「大丈夫かダクネスッ?」

 

 「あぁ、問題ない」

 

 そして、爆裂魔法によって土煙が舞い、姿が見えなくなっていたデストロイヤーだが、段々と煙が晴れ、姿が見えた。

 

 そこには、脚を失い、爆裂魔法によりボロボロとなったデストロイヤーがいた。

 

 

 

 

 





 次回はデストロイヤーに乗り込む話ですが、そこで再び《バハムート》に活躍してもらおうかと思っています。


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デストロイヤー散るッ!


 さて、ようやく二巻も終了です。

 デストロイヤー戦、最後は勿論・・・


 

 めぐみん、ウィズの二人が爆裂魔法を放ち、作戦通り、起動要塞デストロイヤーを破壊することに成功したのはいいのだが、新たな問題が発生した。

 

 アクアがフラグの立つような言葉をいってしまったせいで、デストロイヤーの自爆機能が起動してしまった。

 

 超緊急クエスト 起動要塞デストロイヤーの自爆を阻止せよ!!

 

 本体を破壊できたと思ったら今度は自爆かよッと内心で舌打ちしつつ、どうするか考える。

 

 後ろを見ると、冒険者たちは既に逃げ出している。

 

 「ダクネス・・・が逃げる訳ないよな」

 

 「あぁ」

 

 ダクネスの方は平常運転らしい。

 

 「私は突撃してくる」

 

 とだけいって、一人でデストロイヤーの中に入ってしまった。

 

 そんなダクネスの姿を見て男性冒険者たちもダクネスに続く。

 

 といっても本音ではこの街にある、あのお店を守るためらしいが・・・

 

 ということで、俺も《バハムート》を纏ったままデストロイヤーの中へ突入する。

 

 幸い、神装を発動したのは一度だけだ。まだ操作するには余裕がある。

 

 『自爆するっていうことは、かなりのエネルギーを持った物体があるってことだ!なら、それをどうにかできれば、自爆はしないだろう』

 

 そう思い、デストロイヤーの中を探索する。

 

 「「「「「ギギギ」」」」」

 

 しかし、中には侵入者を排除するためのゴーレムが無数に存在していた。

 

 見たところ、全部魔法金属でできているらしい。あとからやってくるであろう冒険者たちでは対処が難しいと考えた俺は、《バハムート》を操り、一気に殲滅する。

 

 にしても、ダクネスはどこに行ったのだろうか・・・

 

 途中ではぐれてしまったダクネスのことを心配しながら襲い掛かってくるゴーレムたちを破壊しつくす。

 

 正面に群がる三体のゴーレムを薙ぎ払い胴体を真っ二つにしたり、《烙印剣(カオス・ブランド)》を縦に振り下ろして破壊するなど、とにかくゴーレムを破壊する。

 

 「魔法金属っていっても、デストロイヤーの脚よりかは柔らかいな。これだったら余裕だ」

 

 ならば、あとは行動に移すのみ。

 

 それから、およそ三分が過ぎた頃には辺り一面、ゴーレムの亡骸が散乱していた。

 

 「バサラァァァァァ」

 

 すると、そこへようやくやって来たカズマたち。

 

 「よう、遅かったな。この変のゴーレムは全て片付けたから先に進もうぜ」

 

 「あ、あぁ、これ、お前がやったのか?」

 

 「まぁな」

 

 「流石バサラさんねッ」

 

 そのときだった・・・

 

 部屋の壁が開き、そこから先ほどのゴーレムの二倍はありそうな、大型のゴーレムが現れた。

 

 「カズマ、先にいけ」

 

 「わかった」

 

 カズマにそういうと、すぐに了承してくれら。

 

 「お~い、見つかったぞ」

 

 そして、奥の方から他の冒険者の声が聞こえる。

 

 どうやら、動力炉を発見したようだ。

 

 その声を聞いたカズマたちも急いでそちらへ向かう。

 

 カズマ達がいなくなったあと、俺はゴーレムと対峙する。

 

 「ギギギ、シンニュウシャ、ハイジョ、スル」

 

 こいつ喋れるのか!?

 

 少し驚いたが、その直後、ゴーレムは一瞬で俺との距離を詰めて腹目掛けて強力なパンチを繰り出してきた。

 

 「っぶねぇ」

 

 とっさに《烙印剣(カオス・ブランド)》を盾にして攻撃を防ぐ。

 

 「ギギギ」

 

 攻撃を防いだと思ったら今度は素早い蹴りを放って間合いをとってきた。

 

 「こいつッ」

 

 熟練の格闘家のような動きをするゴーレムに翻弄される・・・と思ったか!!

 

 「おりゃっ」

 

 ゴーレムの脚を掴むと一気に引っ張り上げる。

 

 体勢を崩したゴーレムに剣の柄を使って打撃を与える。

 

 直撃したその攻撃でゴーレムの胴体が深く凹んだ。

 

 「まだまだッ」

 

 回し蹴りの要領でゴーレムに蹴りを炸裂させると、吹っ飛んだゴーレムに《神速制御(クイック・ドロウ)》を使って接近し、一気に切り倒す。

 

 「ギ、ギギ」

 

 肩から斬ったのだが、そのまま一刀両断することはできず、胴体の部分で剣は止まる。

 

 「がああッ」

 

 そこへ、全身全霊の力を持って剣に力を入れる。

 

 「ギ、ギギッ・・・ギィ」

 

 すると、ゴーレムは真っ二つに分かれ、爆発した。

 

 「ふぅ、こんなもんか」

 

 そして、カズマたちの方へ向かおうとしたときだった。

 

 バアッと巨大ゴーレムが現れたところの扉がさらに開く。

 

 そちらの方を見ると一本の剣があった。

 

 「あれは・・・もしかして」

 

 わずかながら見覚えのあるその剣に、俺は飛びつく。

 

 「やっぱり、機攻殻剣(ソードデバイス)か、なんでこんなところに」

 

 しかも、その機攻殻剣は刀の形をしており、俺はその機攻殻剣を知っていた。

 

 最弱無敗の神装機竜において、主人公の従者となる切姫 夜架という少女が扱う神装機竜を宿した機攻殻剣だ。

 

 神装機竜《夜刃ノ神(ヤトノカミ)》。それが、この機攻殻剣に封じられている神装機竜だ。

 

 「色々気になることはあるが、今はカズマたちが心配だ」

 

 そう思い、機攻殻剣を回収したのち、俺はカズマたちが向かった部屋へと急いだ。

 

 「「「「「ふざけるなっ!」」」」」

 

 という声が聞こえたあと、俺はみんなに合流した。

 

 あとから聞いた話によると、賢者と呼ばれるデストロイヤーを作った人間の書いた日記があまりにも衝撃的だったそうだ。

 

 そして、問題は暴走しているコロナタイトだ。どうやら、これがデストロイヤーの動力炉らしい。

 

 「一体どうすれば・・・」

 

 カズマが頭を悩ませていると・・・

 

 「ウィズ、あんたならどうにかできないの?」

 

 「わ、私ですかッ!て、転移魔法なら」

 

 「それよっ」

 

 ウィズの言葉にアクアは賛同する。

 

 「で、ですが、それをするためには魔力が足りません。座標も設定していませんから、どこに転移するかもわかりませんし」

 

 「いや、それでいこう」

 

 カズマがそういった。

 

 「で、では、カズマさん・・・吸わせてください」

 

 「喜んでッ」

 

 ウィズの言葉にやけに嬉し気な表情を浮かべてオーケーをだす。

 

 「ありがとうございますっ」

 

 ウィズはすぐにカズマの首に手をあて、魔力を吸い取った。

 

 「うわああああ」

 

 みるみる魔力を吸い取られるカズマは若干やつれていた。

 

 「ちょっとウィズッ。カズマが干からびちゃうわよッ」

 

 アクアの声にウィズは「はっ」となり、手を離す。

 

 「すみません、ですが、これでテレポートできますッ!しかし、いいんですか?変なところに転移でもしたら」

 

 「大丈夫だ。責任は俺がとる。なぁに、俺はこうみえて、運がいいんだ」

 

 不安げなウィズにカズマはそういった。

 

 「そうだな、カズマの運ならきっといいところに転移させてくれるだろう。だから、頼むッ」

 

 俺もウィズにそういった。

 

 「分かりましたッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、無事に暴走したコロナタイトは転移し、デストロイヤーの危機も去った・・・かのように思われた。

 

 外にでると、いつの間にか脱出していたダクネスが不穏気な言葉を発した。

 

 「私の天敵感知センサーに反応がある。まだ、終わっていないぞ」

 

 その言葉のとおり、次の瞬間、デストロイヤーが膨張しだした。

 

 「なにいいいいいッ!?」

 

 カズマが叫ぶ。

 

 「ウッソだろ、まだ終わってないのか」

 

 俺もゴキブリのようにしぶとく、さらに質の悪いデストロイヤーに軽く感嘆する。

 

 「これは、内部に溜まった熱が噴き出そうとしているのでは?」

 

 どうやら、先ほどまで内部にあったコロナタイトのせいで熱膨張しているそうだ。

 

 「クッソ、爆裂魔法は?」

 

 カズマがウィズに聞いたが

 

 「無理です。魔力が足りません」

 

 そこで、カズマがアクアから魔力を吸い取り、ウィズに注入しようとしたが、リッチーのウィズにアクアの魔力が注がれるとウィズは浄化されてしまうといわれ、断念する。

 

 そこへ、かっこよく現れたのが・・・めぐみんだ。

 

 「真打登場」

 

 「めぐみんッ」

 

 「先ほどは情けない所をみせましたが、今回は大丈夫です」

 

 力強くいい放つめぐみんに俺も加勢する。

 

 「カズマ、俺も手伝う」

 

 「できるのか?」

 

 「あぁ、任せろ。俺も準備するから、めぐみんへ魔力の注入を頼む」

 

 それから、俺は纏っていた《バハムート》を解除し、《ティアマト》の機攻殻剣を取り出す。

 

 『力を貸してください師匠ッ』と願いながら詠唱符を唱える。

 

 「目覚めろ、開闢の祖。一個にて軍を成す神々の王竜よ、《ティアマトッ》」

 

 《ティアマト》を纏ったあとは、特殊武装である《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》を展開し、魔力を貯める。

 

 「来ました来ましたッ来ましたよぉぉッ」

 

 すると、めぐみんの方は魔力の注入を終えたようで詠唱の準備に入っている。

 

 「行きますよバサラッ」

 

 「あぁ、行くぜめぐみんッ!!」

 

 そして、めぐみんの魔力が練られる。

 

 「光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし爆炎よ、他はともかく、爆裂魔法のことに関しては誰にも負けません」

 

 「喰らいやがれッ」

 

 「我が最強の爆裂魔法」

 

 「いっけええええええええ」「エクスプロージョンッ!!」

 

 二人同時に放たれた滅びの光はデストロイヤーを灰燼返したのだった・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 起動要塞デストロイヤーとの戦いは終わり、アクセルの街に再び平和が訪れた。

 

 こちらに来てから何気ない平和の日々が俺を癒してくれた。

 

 俺に思い出をくれた。俺に仲間をくれた。俺に絆を与えてくれた・・・

 

 そして、俺はパーティから少し離れていた。

 

 ゆんゆんもついて来てくれている。

 

 しかし、そんな俺の知らない所で事件は再び発生していた。

 

 なんと、カズマが国家転覆罪で捕まったのだ。

 

 それを知らない。俺とゆんゆんはというと・・・

 

 「なぁ、ゆんゆん、ほんとにいいのかついて来てもらって?」

 

 「はいっ、そ、その、バサラさんは私がいてはお邪魔でしたか?」

 

 「いいや、全然、むしろ、心強いよ」

 

 「それにしても、どうしたんでしょうね王城からの呼び出しなんて」

 

 「うぅ~ん、まぁ、なんとなく予想はつくけどな。しっかし、やっぱり《バハムート》を使ったせいか」

 

 そう、俺は王都にある城へと呼び出しを喰らっていた。

 

 手紙の差出人はベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリス。この国の第一王女様だった・・・

 





 さて、ようやく終わりましたデストロイヤー戦ですが、最後はめぐみんとバサラの二人でとどめを刺しました。

 次回からはオリジナルエピソードをいれます。

 一体、バサラはどうなるのか?

 カズマはどうなってしまうのかッ!?

 次回もお楽しみに・・・


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一騎当千 神装機竜無双!!
機竜使いの王城入り



 いよいよ始まるオリジナルエピソード

 今回は機竜の本領発揮といったところでしょうか?

 魔王軍を蹴散らすさまが、なんとも清々しい。


 

 「ふぅ~ゆんゆんと出会ってからあまり経っていないはずなのに」

 

 「随分昔のことのように感じますね」

 

 「そうだな」

 

 王城からの呼び出しがかかった俺は、こうしてゆんゆんと二人で王都に来ていた。

 

 思えば、初めてゆんゆんと出会ったのもここだった。

 

 といっても、ゆんゆんと出会ってから一ヵ月も経っていない。

 

 にも関わらず、これほどまで昔のことのように感じるのは、それだけこの世界に来てからの生活が充実しているということだろう。

 

 「バサラさん」

 

 「どうしたんだゆんゆん?」

 

 「そ、そのぉ、随分荷物が多そうですけど何なんですか?」

 

 そういって、ゆんゆんは俺が背負っている荷物を指差す。

 

 「えっ?あぁ、王城に呼ばれてるし、最低限正装は用意しておかないとなって思って」

 

 「そういえば、そうですね。で、でも、私・・・」

 

 「そっか、ゆんゆんにいってなかった俺も悪かったな。どうする?話している間、宿屋で待ってくれるか?」

 

 「えっ」

 

 すると、ゆんゆんは悲しそうな顔をする。

 

 「ははは、冗談だよ。ちょっとその辺の服屋で正装を買うか」

 

 「は、はい」

 

 ちょっとした冗談でゆんゆんをからかうと、ゆんゆんは顔を赤くして俺の服の袖を握った。

 

 「ごめんごめん」

  

 「もう、バサラさんの意地悪」

 

 涙目上目遣いで訴えてくるゆんゆんに胸を撃たれるッ!!

 

 「ぐはっ」

 

 「ど、どうかしまたかバサラさんッ!?」

 

 そんな俺をみてゆんゆんが心配してくれる。

 

 「だ、大丈夫だ。少し懺悔したくなっただけだ」

 

 「は、はぁ~」

 

 そして、俺達はそのまま以前、御世話になった服屋へと来ていた。

 

 「いらっしゃいませ・・・お客様ッ」

 

 店に入るとさっそく、店主さんが来てくれた。

 

 「お客様、本日はどういったものをお探しですか? ライダースですか?」

 

 「いや、今回はこちらの子に似合う正装を買いに来たんだが」

 

 「ほほう、彼女さんに似合う服ですか」

 

 そういって、店主さんはゆんゆんのことをじぃ~っと見つめる。

 

 「か、彼女じゃないです」

 

 ゆんゆんは店主に彼女といわれたことが恥ずかしかったらしく、すぐに否定していた。

 

 そんなに必死に否定されると少し傷つくが・・・まぁ、気にしたら負けだ。

 

 「紅魔族の方ですよね?」

 

 「は、はい」

 

 「でしたら、黒いドレスなどがありますが」

 

 「で、では、それで」

 

 そして、店主さんが三着ほど黒いドレスを持ってきてくれた。

 

 「お客様に似合いそうなのはこちらになります」

 

 三着ともゆんゆんに似合いそうなのは確かだが・・・少々露出が激しいような。

 

 「あ、あのぉ、もう少し地味な物は?」

 

 「お客様はスタイルがよろしいので、こちらの方がお似合いかと」

 

 しかし、店主さんは引かない。むしろ、押してきた。

 

 「バ、バサラさんは?」

 

 「そうだな、確かに俺もちょっと露出が多いような気がすけど、でもまぁ、似合うと思うぞ」

 

 「そうですか?」

 

 「店主さん、試着させてもらえるか?」

 

 「えぇ、勿論です」

 

 店主さんからオッケーを貰ったので、ゆんゆんには試着室に入ってもらい、三着全てを見させてもらう。

 

 一着目はレースがついており、露出は一番すくないが、ところどころ透けているため下手な露出より刺激が激しいドレスとなっていた。

 

 「よくお似合いですよお客様ッ!」

 

 「あぁ、すんげー似合ってる」

 

 「うぅ、恥ずかしいです」

 

 二着目は背中を大胆に露出させたドレスとなっており、ゆんゆんの白い肌が映えている。

 

 「うぅ~」

 

 「こちらもお似合いですッ!!」

 

 「あ、あぁ、似合ってるけど、刺激が強いな」

 

 そして、三着目

 

 「こ、これなら」

 

 「露出はそこそこありますが、お客様のスタイルならば男の引く手待ったなしですよっ!!」

 

 「・・・・・・」

 

 「バ、バサラさん?」

 

 「えっ?あ、あぁ、悪い」

 

 「ふふふ、お客様の姿に見惚れていたようですね」

 

 「こ、これにしますッ!」

 

 そういって、ゆんゆんは即決した。

 

 「あ、お金は俺が払うよ」

 

 「そんな!悪いですよ」

 

 懐から金貨袋を取り出すとゆんゆんが止める。

 

 「いいって、付いてきてもらってるんだし」

 

 「で、でも」

 

 「お客様、こういうときは男性にカッコつけてもらうのがマナーですよ」

 

 「だそうだ。ということで」といいながら、俺は金貨袋を店主に渡した。

 

 

 

 

 

 

 ゆんゆんの正装を準備した後、俺とゆんゆんは王城へと案内された。

 

 「来てくださりましたか」

 

 玉座へと案内するために、俺達の対応をしてくれたのは、この国でも由緒正しい貴族の家で、ダクネスと同じクルセイダーで、アイリスの護衛を務めているクレアだった。トレードマークは短髪に白い男性用のスーツ。しかし、女性である。

 

 「あぁ、久しぶり」

 

 「それで、そちらの方は?」

 

 「俺の仲間だ。頼りになる魔法使いだ」

 

 「そうですか、確かに見たところ、紅魔族のようですし」

 

 「ゆ、ゆんゆんです」

 

 「私はクレアだ。アイリス様の護衛を務めている」

 

 そして、俺とゆんゆんはクレアによりアイリスのもとへと案内された。

 

 「やっと来てくれましたねッ!バサラ様ッ!」

 

 玉座に入室した瞬間、可愛らしい少女の声が俺の名を呼ぶ。

 

 声の方を見ると、ひとりの少女が座っている。

 

 美しい金髪の髪に碧眼の少女、年齢は十二歳でありながら、王族の血を引いているため、高い戦闘能力を所持している、この国の第一王女。

 

 そう、この少女こそが、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスである。

 

 「久しぶりだな、アイリス」

 

 「お、おいっ、不敬であるぞ」

 

 「いいのよ、クレア。私がいいっていったの」

 

 「で、ですが」

 

 「ク・レ・ア」

 

 「か、かしこまりました」

 

 王女であるアイリスを呼び捨てにしたことで、クレアが怒るが、アイリスはドスの効いた声でクレアを宥めた。

 

 「バサラ様、そちらの方は?」

 

 そして、アイリスはゆんゆんを見る。

 

 「わ、私はゆんゆんと申します。バサラさんのパーティメンバーです」

 

 「そうなんですね!!でしたら、是非、バサラ様の冒険のお話を聞きたいのですが」

 

 「アイリス様ッ!!」

 

 ゆんゆんが俺のパーティメンバーと知ると、アイリスはすぐに提案した。

 

 なにせ、アイリスは冒険譚が大好きで、よく冒険者を城に呼び、冒険譚を聞いている。

 

 しかし、今回は別件のようだ。そのため、クレアが注意する。

 

 「むぅ、わかっていますよ」

 

 そして、アイリスは咳ばらいをした。

 

 「バサラ様にお願いがあるのです」

 

 それから、アイリスは俺を呼び出した訳を話してくれた。

 

 

 

 

 

 どうやら、魔王軍の大規模な軍隊が王都へ向かっているとのことだ。

 

 しかも、今回は魔王軍幹部だけではなく、ドラゴンを連れているらしい。

 

 「それで、その魔王軍幹部というのは?」

 

 「はい、御察しの通り、アガレスです」

 

 『またアイツかッ』と心の中で叫ぶ。

 

 「そういえば、アクセルの街でアガレスと戦闘したという報告を聞いたのですが?」

 

 そこで、アイリスの横にいたアイリスのそば付きをしている、魔法使いの女性レインがそういう。

 

 「報告では、アクセルの街に、アガレスはベルディアと共に攻めてきたにも関わらず、同士撃ちをする形でベルディアを攻撃し、弱ったところを、仲間のアークプリーストが浄化し、ベルディアを撃退したと報告されています」

 

 「快挙ですよ!!今まで誰も成し遂げることの出来なかった魔王軍幹部の討伐」

 

 「それに加えてデストロイヤーの討伐と来ています。やはり、バサラ殿には我が王国の騎士団に」

 

 三人が興奮して話を続けるが・・・

 

 「それで、魔王軍の進軍はいつごろなのでしょうか?」

 

 ゆんゆんが話を戻してくれた。

 

 「あ、はい、すみません。偵察の報告によれば二日後だと」

 

 「二日後ッ!」

 

 「はい、ですので時間はないのですが」

 

 クレアがもし分けなさそうに話す。

 

 「それで、俺が呼ばれたと」

 

 「その通りです。しかも、頼りになるアークウィザードと共に召喚されていただけるとは」

 

 更にレインがそういった。

 

 「ちょっと待ってくれ」

 

 そこで、俺は待ったをかけた。

 

 「どうかなさいましたか?」

 

 「少しゆんゆんと話す時間が欲しいんだが?」

 

 「かまいません」

 

 許可を得た俺は、ゆんゆんの方を見る。

 

 「悪いな、まさかこんなことになるとは、ついて来てくれて悪いんだが、手伝ってくれるか?」

 

 ゆんゆんは深く頷き

 

 「勿論ですッ」

 

 二つ返事で了承してくれた。

 

 「すみません、ゆんゆんもこういってるんで、その戦いに参加するということで」

 

 「バサラ様ならそういってくれると思っていましたわッ」

 

 アイリスだけではなく、他の二人も嬉しそうな顔をしている。

 

 「ち、ちなみに、魔王軍の規模はどのくらいなんでしょうか?」

 

 小さく手をあげたゆんゆんが訪ねる。

 

 「はい、およそ二千ほどかと」

 

 「二千ッ!?」

 

 ゆんゆんはあまりの数の大きさに驚く。

 

 「なんだ、二千か」

 

 「ええッ!?バ、バサラさん。二千ですよ?二千、しかも幹部とドラゴンもいるって」

 

 「別に大した数じゃないさ」

 

 俺は自信満々にそういってやった。別に見栄を張っているわけではない。

 

 二千程度なら、本当に楽勝なのだ。なにせ、こちらは機竜がある。ドラゴンや、幹部ならまだしも、ただのモンスターたちには後れを取らない。

 

 「おぉッ!流石バサラ殿です」

 

 「なんなら、今から奇襲でもしてこようか?」

 

 直後、バタッと急に扉が開く。

 

 「し、失礼します」

 

 「どうしたッ!今は謁見中だぞ」

 

 「はっ、実は王都の周辺に大規模なテレポートにより魔王軍が攻めてきましたッ!!」

 

 「なんだとッ!?」

 

  

 

 





 キリのいいところで終わります。

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ぶっ飛べ有象無象!バーストッ!!!


 ふふふ、ようやく機竜が本格的に活躍し始めます


 

 突然の報告に俺達は言葉を失う。

 

 「か、数は?」

 

 レインが訪ねた。

 

 「はっ!およそ、五千ほどかと」

 

 「五、五千ッ」

 

 二千の倍じゃないかッ

 

 「くっそ、二千の部隊は、奇襲のための囮か!」

 

 「いや、しかし、五千もの部隊を転移だなんて、聞いたことないッ」

 

 「アイツなら、アイツなら、それくらい余裕だろうな」

 

 「バサラ殿?」

 

 「アガレスだ。アイツの魔法なら、それくらいできてもおかしくはない」

 

 そうだ、アイツは竜だった。魔力量だって人間とは比べ物にならないはずだ。

 

 だとすれば、いや、しかし、竜でも五千もの数を一斉に転移させるなんてことは不可能だろう。

 

 なのに、何故だろう。アイツならそれくらいやってくると感じるのは?

 

 「いや、今は魔王軍をどうにかしないと。ゆんゆん行くぞッ」

 

 「は、はいっ」

 

 「クレアたちは、至急、王都にいる冒険者たちを集めて戦線へ、俺は機竜で先に攻撃しておく」

 

 「わ、わかりましたッ!!」

 

 そして、クレアは指示を出し始めた。

 

 騎士団は勿論、宮廷魔導士たち、そして冒険者たち全員にだ。

 

 「ゆんゆん、装備は?」

 

 「は、はい、ワンドとローブは持ってきてますので」

 

 「よしッ。今はいちいち着替えてらんねぇ」

 

 王城の中庭にでた俺は《ティアマト》の機攻殻剣を取り出す。

 

 「目覚めろ、開闢の祖。一個にて軍を成す神々の王竜よ、《ティアマト》」

 

 《ティアマト》を纏った俺はゆんゆんを呼ぶ。

 

 「ゆんゆん、つかまれ」

 

 お姫様抱っこの容量でゆんゆんを抱える。

 

 「しっかり、掴まってろよ」

 

 「はいっ」

 

 そして、そのまま戦場へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 報告の通り、王都を囲む形で魔王軍たちが攻めてきていた。

 

 ゴブリンやコボルト、ミノタウロスにキメラ、ゾンビ、スケルトンなど様々な種族で構成されている。

 

 パッと見たところ、アガレスの姿は見えない。ドラゴンもいない。

 

 まぁいい。今はこいつらを殲滅することだけ考えよう。

 

 「ゆんゆん、ここで正面からやってくる奴らを魔法で倒しておいてくれ。俺はとりあえず、殲滅していく」

 

 「わかりました!気を付けてくださいね」

 

 「あぁ、頼むぞゆんゆん」

 

 「はい、任せてください」

 

 王都の城門の上にゆんゆんを下したあと、俺は周囲にいる魔王軍に攻撃を仕掛ける。

 

 「こういうとき、めぐみんが居れば」

 

 俺は自分の仲間である頭のおかしい爆裂娘の姿を思い浮かべる。

 

 「《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》」

 

 先のデストロイヤー戦で俺のレベルは上がり、機竜使いのスキルを取っていた。

 

 そう、それは・・・

 

 「ぶっ飛べ有象無象ッ バーストッ!!!」

 

 直後、《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》の銃口から、超ド級の滅びの光は発射される。

 

 機竜使い専用スキル 特殊武装強化 特殊武装威力上昇 神装効果延長の三つを習得していた。

 

 これにより、《ティアマト》の特殊武装の威力はけた違いに上がり、爆裂魔法と引けを取らないようになっていた。

 

 そして、《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》の砲撃を喰らった魔王軍は一気に五百ほど消滅した。

 

 「ア、アイツをどうにかしろおおおおおおお」と地上から声が聞こえる。

 

 どうやら、魔王軍は俺の存在に気付いたようだ。

 

 魔法を使えるものが、俺に向けて魔法を放ってくる。

 

 「吹き飛びやがれッ バーストッ!!!」

 

 第二射を放つと、魔王軍の魔法は簡単に呑み込まれて、魔法もろとも再び三百ほど魔王軍を呑み込んだ。

 

 「クッ、威力は上がったがその分、消費する魔力も増えたか」

 

 前までとはくらべものにならない威力になったものの、やはりその分の消費魔力は増えていた。

 

 これ以上ぶっぱなすのは、すぐにガス欠になると理解した俺はすぐさま、《七つの竜頭(セブンス・ヘッズ)》を直し、神装を発動した。

 

 「ひれ伏しなッ《天声(スプレッシャー)》」

 

 スキルを習得したあとの《ティアマト》の神装により、俺を中心としておよそ半径五キロに渡り、重力を五十倍にする。

 

 一気に地に伏せた魔王軍の大半は、自信の重さでつぶれた。

 

 これで、また五百ほど減っただろうか。

 

 おかげで、周囲の魔王軍は消えて、違う場所へ向かう。

 

 「にしても、力を使い過ぎたな」

 

 神装機竜は力を使い過ぎると暴走してしまう危険がある。まぁ、最弱無敗の神装機竜の主人公であるルクスは、その暴走を利用して通常以上の力を引き出す奥義もあるが、それは負荷が激しい為、今回の戦いでは使わない。

 

 だから、俺は最後に《ティアマト》のもう一つの特殊武装である巨大な鏃型(やじりがた)の投擲兵器である《空挺要塞(レギオン)》を召喚し、ここから離れた場所に攻めてきていた魔王軍の部隊に向けて

全力で投擲した。

 

 「おらああああああッ」

 

 ビュンと空を裂き、一直線に魔王軍の部隊のもとへ向かう《空挺要塞(レギオン)》。

 

 そして、直撃する。

 

 あまりの質量を受けた部隊は案の定、崩壊した。

 

 そこで、俺は《ティアマト》を解除する。

 

 それと、同時に《空挺要塞(レギオン)》は消える。

 

 《ティアマト》を解除したことにより、落下する俺は、短剣型の機攻殻剣を取り出す。

 

 「始動せよ。星砕き果て穿つ神殺しの巨竜。百頭の牙放ち全能を殺せッ 《テュポーンッ》」

 

 今回、俺が呼び出した機竜は今まで使っていた飛翔型の機竜とは違い、陸戦かつ、近接に特化した神装機竜である《テュポーン》だ。

 

 華麗に着地したのはいいのだが、俺の周りを魔王軍の部隊がパッと見で千はいるだろうか・・・

 

 「よくもまぁ、ぬけぬけと来たもんだ」

 

 そう呟いたのは、見ただけで他の奴らとは違うと分かる鬼族の女だ。

 

 「かかって来なッ」

 

 その言葉が開始の合図にし、俺一人対魔王軍(およそ千)の戦いが幕を開けた。

 

 

 

 





 次回は《テュポーン》対 千の軍勢

 どうでしたか?できる限り《ティアマト》の特徴である高火力を出してみましたが?

 スカッとしていただければ幸いです。


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神装機竜無双からの・・・〇〇〇〇無双


 感想ありがとうございます。

 前回は鬼族の女との戦いで終わりましたので、今回はそこからですが・・・




 

 「かかって来なッ」

 

 鬼族の女が発した言葉が開戦の合図となり、魔王軍たちは一斉に俺に向かって魔法を放った。

 

 「ふんっ」

 

 俺は真上に数メートルほどジャンプしたと同時に、《テュポーン》の特殊武装である《竜咬縛鎖(パイル・アンカー)》を射出する。

 

 全身から射出された《竜咬縛鎖(パイル・アンカー)》に捕縛された者はそのまま引き寄せられ、鞭のように扱われる。

 

 「なっ」

 

 自分たちの仲間を武器に扱う俺を見て、敵は若干引いている。

 

 「これは戦争だ。勝たないといけねぇんだよッ」

 

 そのまま捕縛した奴らを使い、俺を囲んでいた奴らを一掃する。

 

 だいたい一掃できたと思われるが、少しばかり精鋭が残っているようだ。

 

 鬼族の女も勿論残っていた。

 

 「くっ、あなた一体何者なの?」

 

 「そうだな、只の機竜使いといったところか?」

 

 「聞いてないわよッ、こんな奴がいるなんて」

 

 鬼族の女が怯んでいる今がチャンスだと思い、俺は一気に女との距離を詰めた。

 

 そして、掴む・・・が、掴んだのは女ではなく、横から現れたのは男った。

 

 「ラキ様に手出しはさせない」

 

 どうやら、女を守りにきたようだ。

 

 しかし、《テュポーン》に掴まれえてしまったのが、運の尽き。

 

 「破ぜろッ」

 

 その言葉が紡がれると、《テュポーン》の掌から爆発が起こる。

 

 これこそが、《テュポーン》の特殊能力である《竜咬爆火(バイティング・フレア)》。

 

 掴んだ物体にエネルギーを流すことで破裂させる、まるでハンターハンターに登場するボマーのような能力だ。

 

 もちろん、正面から喰らった男はひとたまりもなく、血を出すこともなく焼け死んだ。

 

 「うっ、い、一度引くわよ」

 

 鬼族の女はそういって、懐から何やら取り出す。

 

 それを握りつぶすと女は姿を消した。

 

 「くっ、空間転移かッ」

 

 逃してしまったが、すぐに切り替えて他の所へ向かう。

 

 辺りを見てみると、大分数は減ってきていた。五千あった敵は二千と少しくらいまでになっている。

 

 そこで、俺はゆんゆんのことが心配になり、目につく敵を殲滅しながら、ゆんゆんの様子を見に行った。

 

 王城の城門まで来て見ると、敵がすぐそこまで迫ってきており、城門の上にいるゆんゆんは宮廷魔導士と思われる連中と共に、回復ポーションを飲みながら戦っていた。

 

 「大丈夫そうだな」

 

 そして、思いのほか、迫ってきている魔王軍を殲滅するために、加勢に入る。

 

 辺りが血だまりになる中、クレアが大柄のゴブリンに襲われているのを見つけた。

 

 「あれは、ゴブリンロードかッ!」

 

 ゴブリンロードの体長は三メートルを超えており、その巨体から繰り出される攻撃にクレアは押されつつあった。

 

 「くう」

 

 力いっぱい踏ん張っているが、足が地面にめり込んでしまうほどの威力を前に反撃ができない。

 

 「ぶっ飛べッ!」

 

 俺は横から、ゴブリンロードの腹に蹴りを入れると、ボール玉のようにその巨体は吹っ飛んだ。

 

 「バサラ殿ッ!」

 

 「よう、クレア。大丈夫か?」

 

 「はい、助かりました」

 

 「敵の大将はどこにいる?そろそろお出ましだと思うんだが」

 

 「そうですね、まだ発見されてないところから考えるに、どこかに潜伏しているのかもしれません」

 

 「そうだな、アイツならそうするだろう」

 

 「周囲の敵はどうなりましたか?」

 

 「一応、二千ちょっとほど、殲滅したところだ」

 

 「なっ!そうですか、やはりあなたは規格外だ」

 

 クレアの会話を聞きながら、俺は再び《竜咬縛鎖(パイル・アンカー)を放って、周囲の敵を捕縛しつつ、それを鞭の代わりに振り回す。

 

 一気に数を減らしたここが、チャンス。

 

 後ろにいた、ゆんゆんたち魔導士が一斉砲撃にでる。

 

 上級魔法の弾幕を喰らった魔王軍はその数を一気に減らし、正面の敵はいなくなっていた。

 

 「ふふふ」

 

 そのときだった、俺にとっては嫌になるほど聞き覚えのある声が不気味に周囲に反響している。

 

 「ふふふ」

 

 「ふふふ」

 

 何度も反響するその声を聞いていると気分が悪くなる。

 

 そして、その声が止んだと思ったら・・・

 

 「久しぶりねバサラ」

 

 「でやがったか、アガレスッ」

 

 俺の因縁の相手であるアガレスが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふふふ、ますます強くなったわねバサラ」

 

 「そういうお前はますます色気が増したんじゃねぇか?」

 

 アガレスの言葉に俺は皮肉を込めて言い放つ。

 

 「あら、嬉しいことをいってくれるわね。恋をすると女は美しくなるものなのよ」

 

 うっとりとした表情を浮かべ、アガレスは嗤う。

 

 「でも、そろそろ、あなたは私のモノになってもらおうかしら」

 

 直後、俺の正面にアガレスが現れる。

 

 「クッ」

 

 なんと、アガレスは魔法で攻撃してこないで素手に機竜を殴りつける。

 

 ギリギリ、攻撃をガードしたが、すごい威力だった。

 

 「お前」

 

 「どうかしたかしら?私は魔法を主に使うけど、別に近接戦が苦手ってわけでもないのよ」

 

 引っ掛かったと舌をだして、俺を挑発するアガレス。

 

 すぐに反撃にでる。

 

 アガレスを掴まえようとしたが、やはり空間転移で逃げられる。

 

 「ガハッ」

 

 すると、下から何者かに殴られる。

 

 「ア、ガレス」

 

 「ふふふ、空間転移だけに気を取られていたら、こうして分身体に攻撃されるのよ」

 

 そういって、さらに俺の腹に蹴りをぶち込んだ。

 

 「グハッ」

 

 そのまま、俺は十メートルほど吹き飛ばされる。

 

 「な、んだ、その、馬鹿力」

 

 「馬鹿力って酷いわね。これでも、乙女よ。まぁ、一応、私は竜だから。これくらい当然よ」

 

 「そう、か」

 

 そして、再び、アガレスに攻撃を仕掛けようとしたそのときだった。

 

 「なっ」

 

 《テュポーン》が解除されてしまう。

 

 「あらぁ~その鎧姿でいるのも限界が来たようね」

 

 「くっ」

 

 アガレスは空間転移を扱い、俺を後ろから拘束する。

 

 「はなっ、せッ!」

 

 「うふふ、せっかく捕まえたのに離すわけないでしょう」

 

 捕らえられた俺の姿をみて、クレアが救助に入る・・・が

 

 「うっとおしいわね」

 

 アガレスが蠅を払うようにつぶやくと、分身体が現れ、クレアを吹き飛ばす。

 

 「うふふ、安心して、すぐに私のモノに堕として、あ・げ・る」

 

 そして、俺は分身を含め四人のアガレスに囲まれる。

 

 「くっ、絶対絶命か」

 





 めぐみん「どうしましょうカズマッ!バサラが、バサラがS」

 カズマ 「お、落ち着けめぐみん、バサラならきっと大丈夫だ」

 ダクネス「それにしても、あの《竜咬縛鎖(パイル・アンカー)》は、素晴らしいな!」

 アクア 「ちょっと、カズマさん、バサラがかなりピンチっぽいんですけど、どうしましょうッ」

 カズマ 「あぁ~もう!うるせええええ俺は今、捕まってるんだよおおおおおお」

 次回、バサラ堕つ


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浸食せよ


 前回、絶体絶命のピンチに陥ったバサラ

 一体どうなる!?


 

 「くっ」

 

 《ティアマト》に加え、《テュポーン》まで使った反動か、強制解除されてしまった、俺はアガレスに捕まり、ピンチを迎えていた。

 

 「そんなに怯えなくてもいいじゃない」

 

 そういって、正面にいたアガレスが俺の顔を両手で包む。

 

 「さぁ、契約よ」

 

 アガレスの顔が段々と近づいて来る。そのときだった!!

 

 「《ライトオブセイバーッ》」

 

 光の剣がアガレスに襲い掛かる。

 

 「効かないわよッ」

 

 何やら障壁を展開したアガレスは光の刃を弾く。

 

 「ゆんゆんッ!」

 

 「バサラさんッ」

 

 先ほどの魔法を放ったのはゆんゆんだった。

 

 顔色が悪く、ローブの下に着ているドレスは少し汚れている。

 

 「助けにきました」

 

 「あらあら、私がいるのに他の子を見るの?」

 

 そういって、アガレスはすぐさま俺の顔を包み、目を合わせる。

 

 「《ライトオブセイバーッ》」

 

 そこに、ゆんゆんが更に魔法を放つ。

 

 「しつこいわねッ」

 

 アガレスがゆんゆんに向かって、《カースド・ライトニング》を放つ。

 

 「きゃあっ」

 

 ゆんゆんはなんとか間一髪のところで避けたものの、空間転移したアガレスが無防備のゆんゆんに強烈な蹴りを放つ。

 

 「カハッ」

 

 大の男が喰らっても気を失ってしまいそうなその一撃をゆんゆんは正面から喰らってしまう。

 

 「はぁ、全く」

 

 倒れ込むゆんゆんに目もくれず、アガレスは再び俺の方へ向かう。

 

 「ま、だ」

 

 ピクリと小さくゆんゆんが手をアガレスの方へ向けてそういった。

 

 「まだ、まけて、ないッ《ライトニング》」

 

 もう上級魔法を放つ魔力が残っていないからか中級魔法である《ライトニング》をアガレスの背後に放つ。

 

 「ほんとうにしつこいわね」

 

 そういいながら、背後に障壁を展開し、ゆんゆんの《ライトニング》を防いだ。

 

 「もういいわ、あなた。殺してあげる」

 

 「くっ」

 

 静かに呟くとアガレスはゆっくりと、ゆんゆんに歩み寄る。

 

 「やめろッ!」

 

 「・・・・・・」

 

 「やめてくれ!」

 

 「・・・・・・」

 

 俺の制止するように求める声に耳を傾けず、そのままゆんゆんに迫る。

 

 「頼むッ!やめてくれッ!」

 

 そして、アガレスはゆんゆんの髪の毛を掴み拳を握る。

 

 「やめてくださいッ!」

 

 俺は折れた。

 

 「ふふふ、やめて欲しい?そんなにこの娘のことが大切なの?」

 

 アガレスは舌なめずりをしたあと、ゆんゆんの顔を掴む。

 

 「さぁて、この娘はどのように殺してあげましょうかしら?頭を潰す?それとも、体に風穴開けてあげようかしら?あっ、殺す前に私の部下に楽しませてあげるのもいいわね」

 

 アガレスが楽しそうに提案する。

 

 「お願いだ!やめてくれ!」

 

 「あら~ん?お願いだぁ~やめてくれだ?」

 

 「お願いします。やめてください」

 

 「アーハッハッハ!いいわぁ、すごくいいわぁ」

 

 ゆんゆんを離したかと思ったら自身の体を抱きしめるアガレス。

 

 「ゾクゾクしちゃう」

 

 そして、俺の方をみたアガレスの瞳は青く怪しげな光を放っていた。

 

 「バサ、ラさん。わたしの、ことは、いい、ですから」

 

 虚ろな瞳となったゆんゆんが声を枯らしながらそういった。

 

 「あなたは黙ってなさい」

 

 アガレスがゆんゆんの頭を踏もうとする。

 

 「俺の負けです」

 

 「なんていったのかしら?」

 

 「俺の負けです」

 

 「アッハッハッハ、ほんとッ!サイコーよ。あんなにも私達のことをボコボコにしてくれた《黒き英雄》様がこんな娘のために負けを認めるだなんて。

 

 『・・・全く、ご主人様は甘いんですから』

 

 と、聞きなれない声が聞こえた。

 

 ギュウウウンと変な音が聞こえる。

 

 「この音は一体?」

 

 そして、現れる。

 

 亜空間から勝手に飛び出してきたものそれは・・・一本の機攻殻剣だった。

 

 「こ、これは」

 

 刀型の機攻殻剣

 

 そう、デストロイヤーの内部にて発見した《夜刀ノ神》の機攻殻剣だ。

 

 「そうか」

 

 俺の脳内に直接《夜刀ノ神》の声が届いた。

 

 「浸食せよ、凶兆の化身たる鏖殺の蛇竜。まつろわぬ神の威を振るえ、《夜刀ノ神》」

 

 《夜刀ノ神》を纏った俺は、背後から俺のことを抑えていたアガレスを掴み神装を発動する。

 

 神装《禁呪符号(スペル・コード)

 

 この神装は触れた箇所を中心に一時的に支配権を得るというものだ。

 

 そこで、俺はアガレスの頭を掴み、思いっきり力を使った。

 

 その結果、アガレスの分身体は消え去り、アガレスを一時的に抑えることができた。

 

 「があああああ」

 

 もろに神装を喰らったためか、アガレスは頭を抑える。

 

 「よ、よくもやってくれたわねッ」

 

 そういって、アガレスは姿を消す。

 

 「ま、また逃げられた」

 

 いや、今はそんなことどうでもいい。

 

 俺はすぐさまゆんゆんの元へ走り寄り、持っていた回復ポーションを飲ませる。

 

 「う、うう」

 

 ゆんゆんはすぐに意識を取り戻す。

 

 「あ、れ」

 

 「よかったッ」

 

 ゆんゆんが目を開けるのを確認した俺はゆんゆんを強く抱きしめた。

 

 「えっ、ええっ?バ、バサラさん」

 

 「よかった、よかった、ごめんなゆんゆん。俺が弱いせいで」

 

 「そ、そんな」

 

 その後、ゆんゆんは何もいわない。俺も、ただ溢れてくる涙を噛み締めながらゆんゆんを抱きしめていた。

 

 

 





 さて、なんかアガレスが大分強キャラと化しているような気がします。

 では、何故《夜刀ノ神》の神装が使えたのか気になると思いますが、ちゃんとした理由はあったりします。

 しかし、現段階ではネタバレ防止のためにも説明は省かせていただきます。

 といっても、次回で明かすつもりですけどねw


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失意の中で、そして・・・


 前回、ゆんゆんをフルボッコにされたバサラはなんとか勝利する。

 しかし、気になる点がいくつかでてきた。


 

 アガレスを退けたあと、俺はゆんゆんを抱きしめていた。

 

 未だ戦いの最中でありながら、俺は周囲など気にせずにひたすら、ゆんゆんを抱きしめる。

 

 「あ、あの、バサラさん。そろそろ」

 

 そこで初めてゆんゆんの反応に気付く。

 

 「わ、悪い」

 

 顔を見ると赤くなっている。

 

 回復ポーションで怪我を治療したといっても、彼女の着ている服はボロボロであり、破れたところから、彼女の素肌が見えている。

 

 普段の俺であれば、そんな扇情的な姿にドキッとするのだが、先ほどのアガレスの仕打ちからそんな気など起こせないほど、自分への怒りと情けなさでいっぱいだ。

 

 「ごめんな、余裕だとかいってたのに・・・」

 

 「いえ、私の方こそ、助けに来たつもりが、逆に助けられてしまい」

 

 本当に情けない。この世界にきて、自分の強さに慢心していた。

 

 その結果、アガレスに負けて、再び初心に戻ったのだが、デストロイヤーを破壊したことによって、再び慢心していたようだ。

 

 無様に敗北宣言をさせられた。

 

 思わず、拳に力が入る。

 

 「そ、それよりバサラさん。まだ戦いは終わっていません」

 

 「そうだな、指揮官のアガレスが撤退したといっても、まだそこら中に魔王軍がいる」

 

 「えぇ、早く片付けないと」

 

 そして、俺達は再び戦いに参加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 機竜を使い過ぎたことにより、俺は機攻殻剣で魔王軍を蹴散らす。

 

 後衛には心強いアークウィザードがいる。

 

 油断せずに一体一体倒していく。

 

 「バサラさんッ」

 

 すると、背後から現れたゴブリンに向けてゆんゆんが《ライトニング》を放つ。

 

 「サンキュー」

 

 頼もしい相棒の援護を受けて、その後も油断せずに戦闘を続けていった。

 

 そこから、五十体ほど倒した。

 

 魔王軍も撤退し、防衛線はここで終わるかと思ったそのときだった。

 

 再び、アガレスが現れる。

 

 「よくもやってくれたわね」

 

 普段の怪しげな声ではなく、怒気の籠った声が戦場に響く。

 

 「でも、まぁいいわ。これから王都は滅びるんですもの」

 

 ヒステリック気味に何やら魔法を発動した。

 

 「さぁ、現れなさいッ 《リヴァイアサン》」

 

 アガレスの魔法が発動すると、戦場に巨大な魔法陣が現れる。そこから姿を現したのは青い体を持つ竜。

 

 「《リヴァイアサン》ッ」

 

 俺はこの名を持つ竜を知っている。

 

 もし、この竜が俺の特典である機竜に関するドラゴンだとするのであれば、何故アガレスが使役できる?

 

 精神操作などいった能力を使っているのだろうか?

 

 いや、しかし、ここは異世界だ。俺の特典に関わらず、たまたま名前が同じだったということもあり得る。

 

 ・・・考えてもキリがない。ただ分かるのは、その竜が暴れれば間違いなく王都が滅んでしまう。

 

 ベルゼルグ王家に伝わる神器を使えば倒せるかもしれないが、こんな最前線にアイリスを連れてくるなんてクレアたちが許さないだろう。

 

 「バサラさん。なんとかしないと、王都がッ」

 

 「あぁ、でも、機竜を使えない。どうすればッ」

 

 そんな風に周囲の状況を確認しながら考えていると・・・

 

 「ひ、怯むなッ。ここから先はなんとしても通してはならないッ。必ずここで食い止めるぞ」

 

 クレアを筆頭にした騎士たちが《リヴァイアサン》の前に立ちふさがる。

 

 「魔導士隊詠唱準備」

 

 今度は宮廷魔導士たちが、《リヴァイアサン》に向けて放つ魔法の準備をする。

 

 「やりなさい《リヴァイアサン》」

 

 アガレスが感情を感じられない声で命令した。

 

 「グルアアアアアアアアアアア!!」

 

 直後、狂暴な口を開き、魔法陣を展開させる。

 

 そこから放たれるのは水のブレス。

 

 凄まじい水圧のブレスはあっという間に騎士たちの陣形を破壊し、王都の城門まで破壊してしまった。

 

 「アッハッハッハ!いいわよ《リヴァイアサン》」

 

 狂ったように嗤うアガレスの姿は、まるで魔女。

 

 「そんな」

 

 ゆんゆんは目の前で起きた出来事に頭を悩ませる。

 

 「は、早くなんとかしないと」

 

 そういってゆんゆんは飛び出してしまう。

 

 「ま、待てッ」

 

 すかさず、ゆんゆんの腕を掴まえる。

 

 「離してくださいバサラさんッ!」

 

 「落ち着けゆんゆん」

 

 「で、でもッ!」

 

 「いいから、落ち着け」

 

 「バサラさんは、さっきまで命がけで戦ってました、だから今度は私がッ」

 

 「いい加減にしろッ!」

 

 俺はとっさに怒鳴ってしまう。

 

 しかし、一度爆発してしまった感情は止まらない。

 

 「俺はもう、ゆんゆんに傷ついてほしくない。俺が弱いから、俺がアガレスに負けたから、ゆんゆんはあんな風に嬲られた」

 

 「バサラさんの馬鹿ッ」

 

 すると、俺の頬に鈍い痛みが走る。

 

 そう、ゆんゆんにぶたれた。

 

 何もいえないままでいると、ゆんゆんの姿はもうなかった。

 

 「クッソッ。何が《黒き英雄》だよ、ただの負け犬じゃないか」

 

 悔しさと情けなさのどん底に突き落とされた気分だ。

 

 『あぁ~あ、行っちゃった』

 

 そんな声が聞こえる。

 

 『本当にいいのかい?このまま彼女を行かせてしまって』

 

 「そんなわけないだろッ!!」

 

 『なら、助けないと』

 

 「分かってるッ!そんなこと誰よりも分かってるッ!でも、どうすればいいんだ」

 

 『僕が力を貸してあげる。どうやら、《リヴァイアサン》は、あの魔女に操られてる』

 

 「てことは、あの竜は・・・」

 

 『そうだよ、君の考えてる通り、機竜のドラゴンだ』

 

 「でも、どうすればいいんだ?それに、お前は《夜刀ノ神》でいいんだよな?」

 

 そこで、俺は先ほどアガレスから救ってくれた機竜《夜刀ノ神》に問いかける。

 

 『あぁ、そうだよ。情けない君の力になろう。僕を纏って《リヴァイアサン》に神装を使うんだ』

 

 「そうかッ」

 

 『でも、気を付けてね。君の体は限界だ。纏えるのは五分が精々いいところだ。それ以上は無理』

 

 《夜刀ノ神》の言葉を聞いて、すぐに行動に出る。

 

 「浸食せよ、凶兆の化身たる鏖殺の蛇竜。まつろわぬ神の威を振るえッ!《夜刀ノ神》」

 

 再び、機竜を纏うことに成功した俺は、すぐに《リヴァイアサン》に向かう。

 

 だが、そのときだった。

 

 「グルアアアアアアア」

 

 天に轟く咆哮をあげながら、尻尾を振るう。

 

 その広範囲攻撃の直線状にはゆんゆんがいた。

 

 「くっ、間に合えええええええ」

 

 奥義《神速制御(クイック・ドロウ)》を発動し、一気にゆんゆんと尻尾の間に体を滑り込ませる。

 

 「ガハッ」

 

 なんとか攻撃を受け止めることはできたものの、衝撃までは防げず、内臓のいくつかがやられ吐血する。

 

 「バ、バサラさん」

 

 目を限界まで見開いたゆんゆんが悲鳴を上げる。

 

 「ごめ、んな。で、も、もう、大丈夫、だ」

 

 うまく呼吸ができないが、精一杯ゆんゆんに話しかける。

 

 「コイツは俺がなんとかする」

 

 そして、尻尾を掴んだ俺は神装を発動した。

 

 直後《リヴァイアサン》の精神に呑み込まれていくような感覚に襲われた。

 

 蜘蛛の巣にからめとられた何か光の様なものを見た。

 

 『ここは《リヴァイアサン》の精神世界。僕の神装の力で一時的だけど《リヴァイアサン》の精神世界に侵入できた。この蜘蛛の巣を取り払うことで、彼の魂は元に戻る』

 

 「つまり、アガレスから救えるってことだよな?」

 

 『その通り。さぁ、早く』

 

 「分かった」

 

 《夜刀ノ神》のアドバイスを聞いた俺は、すぐさま蜘蛛の巣のようなものを除去する。

 

 しかし、蜘蛛の巣は恐ろしい程に《リヴァイアサン》を侵食しているようで、こびりついて剥がれない。

 

 『何をやってるんだ弟子よ』

 

 すると、そんな声が聞こえた。

 

 「師匠?師匠なのか!?」

 

 『全く、我が鍛えたというのに情けない。鍛えなおしてやりたいところだが、今は時間がないのであろう。仕方ない、我が力を貸してやろう』

 

 俺の隣に高貴なオーラを放つ竜が現れる。

 

 その体躯は小さいながらも、身に纏うオーラは果てしない。

 

 「師匠ッ」

 

 そう、この小さな竜こそが、俺の師匠である《ティアマト》である。本来の大きさではないながらも、偉そうなところは変わりない。

 

 『戯けッ誰が偉そうじゃ!実際に偉いのじゃ』

 

 小さくなったことで声まで幼い感じがする。

 

 『全く、扱き倒すぞ。でもまぁよい、今は同胞を救うことが先じゃ。目覚めよ《リヴァイアサン》』

 

 そういいながら、師匠は小さな魔法陣を展開し、《リヴァイアサン》の魂に張り付ける、

 

 『ふむ』

 

 直後、辺り一面に張り巡らされていた蜘蛛の巣は取り払われる。

 

 『ではな、我が弟子よ』

 

 そういって、師匠は消えた。

 

 『あ、あれ?』

 

 また違う声がする。おそらく《リヴァイアサン》の声だろう。

 

 『俺は、一体・・・思い出したッ』

 

 と、独り言を呟く《リヴァイアサン》に話しかけた。

 

 「なぁ、正気に戻ったってことでいいのか?」

 

 『お前は、そうか、お前が助けてくれたのか。感謝する』

 

 声は男のようで、爽やかな男声だった。

 

 「いや、助けたのは師匠なんだが、まぁいい。アガレスに操られて大暴れしてたようだが、俺と契約してくれないか?」

 

 『そうだな、わかった。契約しよう。あの魔女には煮え湯を飲まさなければ気が済まない。だが、気を付けろ。奴も俺らの同胞だ』

 

 「それって」

 

 『よし、契約は終わった。俺の肉体も消えるだろう』

 

 「あぁ、助かる」

 

 『俺の方こそ、迷惑をかけた』

 

 そして、俺は意識が戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 《リヴァイアサン》の精神世界から戻ってきた俺は、掴んでいた尻尾を離す。

 

 すぐに、《リヴァイアサン》の肉体は消滅していき、アガレスは顔を歪ませた。

 

 「また邪魔をッ、もう許さない。次会ったときは必ず、あなたを堕とす」

 

 その後、アガレスは消えた。今度こそ撤退したのだろう。

 

 「バサラさん」

 

 ゆんゆんが俺のほうを見た。

 

 「終わったぜ」

 

 「はいっ!」

 

 気づくと、俺は《夜刀ノ神》を解除し、嬉しそうに返事をするゆんゆんを再び抱きしめていた。

 





 アガレスも機竜だった!?

 何故、彼女は魔王軍なんかに?

 謎が深まる話でした。

 次回、凱旋、そしてダスティヌス家の・・・


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