GATE 黒の騎士団 彼の地にて、斯く戦えり (NTK)
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STAGE1 門 が 開いた日

とある国にある森の中で、二人の人物が歩いていた。

一人は長い緑色の髪、金の瞳を持った美女、もう一人は短めの黒髪に紫水晶の瞳を持った美青年であった。彼らはこの国の人ではない、しかし観光客と呼ぶにはあまりに不自然な格好をしていた。

しばらく静かに歩いていた二人だが、突然女性の方が驚いたように顔を上げた。

 

「…⁉︎」

 

「どうした?」

 

「…『門』が開いた感じがした」

 

「なに…⁉︎だが、『Cの世界』の門はもう…」

 

「あぁ。だがあの門とは違うが、非常に近いものが開いたのは確かだ」

 

「どこで開いたかわかるか──C.C.(シーツー)

 

「…日本だ。それで?どうする──L.L.(エルツー)?」

 

女性─C.C.の言葉に青年─L.L.は答えた。

 

「決まっている…日本に向かうぞ。もしその門とやらが『Cの世界』の(ことわり)を崩壊させた事によるものだとすれば、俺が何とかせねばなるまい」

 

────

半年後

 

ジルクスタン王国によるWHA、世界人道支援機関のナナリー名誉顧問拉致事件、通称『ハシュベスの戸惑い』から一年が経ち、世界は再び平和となっていた。

 

かつての激戦の舞台であった日本も復興が進み、ゲットーと呼ばれていた地域やトウキョウ租界もとい東京も在りしの姿を戻しつつあった。

そして今日彼女は黒の騎士団CEO、ゼロとともに復興完了から一年が経った銀座の記念式典に参加すべく、銀座へ訪問する事となった。

式典会場では日本人を始め多くの人が溢れ返っており、ゼロは通信機に手を掛けた。

 

「私だ。周辺の警戒はどうだ?」

 

「特に異変は見られません。警備のナイトメアフレーム(以後KMF)部隊からも同様の報告があります」

 

「わかった。警戒を続けてくれ」

 

前回の出来事を警戒し、現場には儀礼用の他に実戦用のKMFも待機させていた。やがて式典が始まり、現日本首相のスピーチから始まり、各国の代表の言葉、そしてナナリー名誉顧問のスピーチを行い式典は無事に終了した。

その後パレードを行い、観衆が見守る中、代表らを乗せた輸送車が銀座内をゆっくり進んでいる時であった。輸送車の先に突如として大きな石造りの門が現れた。

 

「なんだ…あれ?」

 

「こんなのさっきまで無かったよね?」

 

(これは…『Cの世界』の門に似ている…?()()()()の言っていたのはこれか…?)

 

ザワザワと観衆が騒ぐ中、ゼロは輸送車を下げ、KMF部隊に警戒するよう指示した時であった。門がゆっくりと開き出した。

─そこから現れたのはゴブリンやオーク、ワイバーンといったファンタジーの世界にいるような怪物の群れと中世ヨーロッパの軍隊のような格好をした人々であった。

 

何事かと静観していた観衆だったが、その怪物達や兵隊は観衆に向けて突撃し、虐殺を開始し始めたではないか。

たちまち辺りはパニックとなり、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 

「まずい…!代表達を安全な場所に、警備隊は対処にあたれ!それと付近の駐屯地にも応援を頼む!私もKMFで対処する!」

 

ゼロはそう指示を飛ばすと近くのトレーラーまで駆け寄った。

 

真母衣波(まほろば)の実戦装備の換装は⁉︎」

 

「既に完了しています!」

 

整備士の言葉を聞き、ゼロは真母衣波壱式(実戦仕様)に乗り込んだ。

この機体は以前に破壊されたものを回収、修復した上で零式に搭載していた内蔵火器やブレイズルミナス発生器を追加し実戦でも充分使えるものにしたものであった。

フロートシステムをオンにし、儀礼用の剣をMVSに換装した本機を起動しつつ、ゼロはその仮面を取りその素顔を露わにしたゼロ─枢木スザクは目の前の惨状を見て呟いた。

 

「またも平和が…!しかし、あれは一体…?」

 

起動が完了するとスザクはコントローラーを動かして真母衣波をトレーラーから飛翔させた。その姿を見た武装勢力─帝国兵は狼狽た。

 

「な、何だあれは⁉︎」

 

「空飛ぶ…巨人の騎士?」

 

「武装勢力に告ぐ‼︎今すぐ武器を捨てて投降せよ‼︎」

 

スザクが帝国兵に呼びかけるも、言葉が通じないのか帝国兵は槍を投げたり弓矢を放ったりして真母衣波を撃ち落とそうとしていた。

 

「警告はしたぞ…!」

 

スザクはスイッチを押し、真母衣波の内蔵式機銃を展開し帝国兵達に撃ち放ち、帝国兵やゴブリン、オークなどを吹き飛ばしていった。

 

周辺に待機してたKMF部隊も到着し、暁、サザーランドⅡ、ヴィンセントの他にナイトポリスも加わり次々と帝国兵達を迎撃していった。特に暁やヴィンセントといった飛行が可能な機体は空を飛んでワイバーンやそれに乗った兵を撃墜していった。

 

KMFに乗っていない警備兵達も手にしたアサルトライフルで帝国兵達を打ち倒して行った。

 

「何だこれは…⁉︎空を飛ぶ巨人の騎士にサイクロプス…さらには鉄の杖だと…!何もかもが我々と違い過ぎる…⁉︎」

 

「退けぇ‼︎撤退、撤退だ‼︎」

 

不利を悟った騎士団長の言葉を皮切りに次々に帝国兵達は門へと引き返して行く。それらを逃さまいとKMF部隊が追撃し、ナイトポリス複数が帝国兵と門の間に立ち塞がり、催涙ガスを放って動きを止め警備兵達が捕縛へと動き始めた。

 

────

『銀座事件』と呼ばれた事件から2ヶ月が経過し、銀座を襲撃したのは門の向こうの異世界にある帝国と呼ばれる国の軍である事、その目的が新たな領土獲得と日本の植民地化であることが日本政府から発表された。

 

これを受け超合集国は決議を行いその結果、帝国へ日本に対する行いの謝罪と賠償を求める為、門の向こう『特別地域』略して特地へ黒の騎士団を派遣することが決定した。

要請を受けた黒の騎士団は先行派遣するメンバーの選定と準備を始めたのであった。




解説
『真母衣波壱式《実戦使用》』
要は真母衣波壱式に零式の装備を追加させてMVSを加えたものです。

『伊丹達は出るのか』
一応出ますが大幅に設定が変わります。また、伊丹は今作では事情が事情なので『二ツ橋の英雄』とはなりません。

次回は派遣準備の様子を書くつもりです。それではまた次回まで。
感想、アドバイス等ありましたらよろしくお願いします。


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STAGE2 門 の 向こうへ

気がついたらお気に入り数50突破してて驚きました!

皆さまのご期待に応えられるよう頑張っていきます!




「そうか…特地、異世界からの軍勢か…」

 

部屋の中でゼロ─スザクの話を聞きL.L.はそう呟いた。部屋にいるのは彼らのみであり無論、部屋に記録媒体はなく、周辺の人払いは済ませている。尤も、誰かが入ってきたとしてもL.L.のギアスで忘れさせることができるが。

 

「すまない、君たちの忠告を聞いてながらこんな事になってしまって…」

 

「いや、こちらも『Cの世界』絡みかと思っていたがあんな化け物共が出てくるとは思ってもいなかったからお互い様だ」

 

L.L.とC.C.は数ヶ月前に日本に着き秘密裏にスザクと接触し門らしきものが開いた感覚を受けたことを話していた。その後しばらく警戒していたが結果は知っての通り、『Cの世界』どころか異世界の軍勢が現れるといった事態が起きたわけであった。

 

「それでルル…いやL.L.、君はこの件についてはどうするつもりだい?」

 

「ルルーシュでいい、あくまでL.L.は表向きの名だ。それで特地の件だが、『ゼロ』として参加するつもりだ」

 

「…一応理由を聞いてもいいかい?」

 

「特地の件がまだ『Cの世界』の理を壊した事による影響とは関係ないとは言い切れない。多くの死者が銀座事件で出た以上、それを見極める責任が俺にはある」

 

「わかった。それと、君がゼロになるなら俺はどうすればいい?」

 

「それについてはすでに考えてある。スザクには変装して同行してもらいたい。ゼロとして動けない、または動きづらい時には代わってくれ。咲世子には話を通してある」

 

その後L.L.はスザクにある事を話した。彼らが来る前に感じたという門の反応が同一であれば敵がこちらの情報を得る為に何名かこちらの人間を拉致している可能性がある。その為半年前から銀座で行方不明になっている人間がいないかの調査をする必要があるとの事であった。

 

「なるほど…もしそうなら早く調査しないと…」

 

「その辺はシュナイゼルあたりに任せるとしよう。とにかく、特地に行くメンバーを選定しなくては。リストはあるか?」

 

L.L.はリストを受け取り、メンバーの選定を始めていた。

 

────

 

メンバーの選定を終えてから三ヶ月、先行派遣隊の特地入りが一週間に迫った日にゼロ(L.L.)は格納庫へ向かっていた。そこにはラクシャータの姿があった。

 

「ゼロ、待ってたわよぉ」

 

「蜃気楼の修理は完了したようだな」

 

「修理って言うか、殆ど一から作り直したんだけどねぇ。前と違うのは稼働時間の延長とハドロンショットの威力を20%くらい上げたくらいねぇ」

 

彼女達の前には以前の戦いで失われた蜃気楼の姿があった。完全に大破した本機を先程彼女が述べた通り修理という名の再生産を行い、ドルイドシステムの方もロイド博士の協力の元で作り直し、あとは少しばかりの改良を加えたといった形である。

搭乗機に蜃気楼を選んだ理由としては、以前使用した月虹影では機体が大きいことと複座式であるため、単座式の蜃気楼の方が汎用性があるのがひとつ。

もう一つは防御面で優秀な蜃気楼を使う事で万が一撃墜されてL.L.もといルルーシュの姿が露見するのを防ぐためでもある。

 

「にしてもゼロ、何で私じゃなくてロイド(プリン)達を特地に行かせるのぉ?」

 

「ラクシャータにはロイド達が得た特地のデータをもとにKMFの調整プランやオプションパーツの開発を頼みたい。例の天才児達も使ってくれ」

 

「フレームコートは?」

 

「いらん。向こうには侵略目的で行くわけではないからな、向こうの戦力から鑑みるに紅蓮特式で充分すぎる」

 

会話からわかる通り、特地派遣隊にはロイド、セシル、カレンの参加が決定していた。もちろん彼らにはL.L.の同行については話を済ませていた。

 

そして一週間が経ち、シェルターで厳重に封鎖されている門の前で終結している黒の騎士団に対し総理大臣、本居慎三による演説が行われていた。

 

「黒の騎士団の皆さん、ついにこの時がやってきました。これから皆様が向かうのは未知の地です。そこにどういった危険が待ち構えているかわかっていません。しかし私は日本の首相として、また合集国日本の代表として皆様が与えられた任務を全うし、無事に帰って来ることを強く確信しています」

 

「では次に黒の騎士団CEO、ゼロからの言葉です」

 

「諸君、君らの目的は今回の首謀者の拿捕以外にも帝国に拉致された日本人の救出も含まれている!よって、街への攻撃には充分に配慮せよ!そして必ずや目的を達成し、平和を手に入れようではないか‼︎」

 

シュナイゼルらの調べとL.L.のギアスによる帝国兵の自白で少なくとも三名の日本人が拉致されている事が判明していた。彼らの救出も今回の派遣の目的である。

 

「銀座事件には現れなかったが、門の向こうにはKMFを撃破しうる存在がいるかもしれん‼︎諸君らは細心の注意をもって任務にあたってくれ!では間もなく突入する!」

 

各員はKMFや装甲車、戦車や機動戦闘車などに乗り込んでいく。

 

「全隊、突入!」

 

突入の合図とともに各部隊が門に突入していった。そんな中、黒の騎士団の一人、倉田が近くにいた伊丹に話しかけた。

 

「あの、伊丹さん。門の向こうに猫耳娘っていますよね?」

 

「ん?…いないわけないだろう?」

 

これはある世界とつながったもう一つの世界の物語──

 

 

二つの世界をつないだものを人はこう呼んだ──

 

 

 

─ GATE ─と…




すまない狭間さん…トップが同行する以上ゼロが言葉を贈る形になるんや…
次回以降から本格的に絡ませるつもりです。

ちなみにゲートメンバーは全員黒の騎士団所属になっています。(何人か詳しい経歴をのちに書きます)そのため制服も黒の騎士団の制服です。まぁ狭間さんとかは藤堂さんが着てるような服装ですが。また、黒の騎士団にこれといった階級がなかったので最後の倉田のさん付けはそのためです。

それでは解説です。

『復活の蜃気楼』
ぶっちゃけ月虹影を完成させたのと迷いましたが資料が少な過ぎるのでこちらにしました。
あとゼロビームを帝国兵に見せて神の雷だーとか恐れ慄かせたいのもありますw

『本文のキャラ以外のコードギアス側の参戦キャラ』
C.C.、ジノ、玉城、南、藤堂、千葉、ジェレミアです。
特にジェレミアは本作ではゼロの命令で二重スパイをしていた設定にしたのでそこまで白眼視されてません。多分場合によって追加入ります。
玉城を入れたのは彼がちょくちょく言ってたゼロとの関係とゲート原作のあるイベントを絡ませて面白い事を考えてるからです。
絶対特地メンバーにロイド選ばれた時ラクシャータに「残念でしたぁ♪」って言ってそう。

『拉致メンバーの確認の経緯』

シュナイゼルが行方不明者の確認をしてる間にL.L.が特地語ある程度覚えて捕虜に特地語でギアスかけて詳しい特地語を教えてもらったあと各捕虜に片っ端からギアスかけて情報吐かせた次第です。
ちなみにスザクも入れ替わった際に問題ないよう特地語を覚えさせられてます。

さて次回は特地側の話とアルヌス攻防戦です。
特地でKMFを大暴れさせますので楽しみにしてください!


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STAGE3 アルヌス の 戦い

伸び方が…!伸び方がエグい…!

エタらないよう頑張っていきます!
それではアルヌス攻防戦です。あと今回から文字数が増えていく予定です。
ちなみにゲートキャラの見た目はあるキャラを除いて漫画版準拠です。


帝国帝都、ウラ・ビアンカでは元老院議員による緊急の会議が行われていた。議員の一人、ガーゼル侯爵が眼前にいる皇帝、モルト・ソル・アウグスタスに問いかけていた。

 

「大失態でしたな皇帝陛下。帝国の保有する総戦力のなんと六割が喪失。如何なる対策をご講じられますかな?皇帝陛下はこの国をどうお導きになられるか?」

 

ガーゼル侯爵の質問に周りの議員が少しばかりざわめくなか、モルト皇帝は返答を返した。

 

「カーゼル公爵。卿の心中は察するものである。此度の損失によって我が帝国の軍事的優位が薄れたというのは確かだ。これを機に近隣諸国や帝国に不満を持つ民が反旗を翻して帝都まで進軍してくるのではないかと不安なのであろう?だがそういった危機の度に皇帝元老院、そして国民が心を一つにして立ち向かい、今日まで切り抜けてきたではないか。250年前のアクテク戦役のようにな」

 

先ほど『国民』と言ったが、彼のいう国民とは所謂彼ら人類種のことであり、亜人種に対しては迫害する政策を考えたり、支配した土地の亜人種の差別や圧政、さらには奴隷狩りなどを容認していた。

 

「戦争で百戦百勝などありえぬ。それ故に此度の敗北の責は問わぬ。まさか他国の軍勢が帝都を包囲するまで《裁判ごっこ》に明け暮れようとする者はおらぬな?」

 

議員全員に問いかけた冗談交じりの言葉に議員たちは少し笑うがガーゼル侯爵は自身の責任を不問にしたモルト皇帝に不満を感じていた。

次にゴタセン議員が発言を始めた。

 

「しかし、如何なされる?送り込んだ軍は僅か二日で壊滅してしまいましたぞ?しかも敵に門を奪われ、こちらに陣を築いておられます!無論我らも門を奪還せんとしましたが、パパパッと音が鳴ったかと思いきや我らの軍は木葉のように吹き飛ばされましたぞ!それに敵には騎士のような格好をした巨人やサイクロプスが鉄の杖や剣を振りかざして我らを蹂躙していきました!巨人たちはこちらの武器を通さず、中には空を飛び回るものもいました!」

 

ゴタセン議員の言う『巨人たち』とはもちろんKMFの事であった。ゴタセン議員は若干興奮しながら話を続けた。

 

「なかでも緋色の巨人は空を飛び巨大な右腕をこちらにかざした瞬間、赤い光が放たれ、それを浴びた兵たちは弾けていきました!そして黒と金の巨人は掌から赤黒い光を放ち我らを蹴散らしたあと、胸から銀の液を放ったあと、光を放ちその後光は幾つにも分かれて我らに降り注いだのです!他にも空飛ぶ剣になる巨人に仮面をつけ、光の帯を放つ巨人…あんな魔法、ましてや魔法を扱う巨人など見た事がございません!生き延びた兵たちは神々の遣いではないかと騒ぎ、怯えております!」

 

「狼狽えるな!魔法を扱うとはいえ所詮蛮族が操る巨人、取るに足らぬ!兵が足らねば属国から集めばよい‼︎そして再び門の向こうへ攻め入るのだ‼︎」

 

ポダワン議員の発言を始めに慎重に事を運ぶべきと話す議員と攻撃し、撃滅あるのみと話す議員たちとで言い争いが始まり、あたりは騒がしくなった。

しばらく静観していたモルト皇帝が片手を上げると議員たちは静まり返った。

 

「事態を座視する事は余は望まん、ならば戦うのみしかあるまい。属国や周辺諸国に使節を派遣し援軍を求めよ。フォルマート大陸侵略を狙う異世界の賊徒を撃退するために…我らは連合諸王国軍(ゴドゥ・リノ・グワバン)を糾合し、賊徒からアルヌスの丘を奪還するのだ‼︎」

 

「…皇帝陛下、アルヌスの丘は人馬の躯で埋まりましょうぞ?」

 

その言葉にモルト皇帝はニヤリと笑って返すが、その真意に気付くものはこの時点ではいなかった。

 

────

 

すぐに使節は派遣され連合諸王国軍が結成、アルヌスへの進軍を開始した。

そして奪還作戦の当日、エルベ藩主国国王のデュランは進軍する連合諸王国軍を眺めていると顔馴染みのリィグゥ公が隣にやって来て話しかけてきた。

 

「さてデュラン殿、どのように攻めますかな?アルヌスに先発した帝国軍によれば異世界の軍は穴や溝を掘って籠もっている様子。これほどの軍をもってすれば鎧袖一触、戦いにもなりますまい」

 

「そうですな…」

 

そう相槌を打つデュランだが、内心今回の連合諸王国軍については疑問があった。そのような敵ならば帝国軍のみで充分の筈だが、何故わざわざ連合諸王国軍を呼集したのかと。

 

「リィグゥ公、戦いに油断は禁物ですぞ」

 

「ハハッ貴公も歳に似合わず神経が細かい。なに、敵はせいぜい一万ほど、二十一ヶ国総勢三十万を号する我らが合流すれば自ずと勝敗は決しましょうぞ。敵には空を飛ぶ巨人らがいるようだがこの物量には敵いますまい」

 

リィグゥ公を始め、この場にいる殆どの兵は勝利を確信していた。だがそれは間違いであった事にすぐに気づく事になる。

道中にご丁寧にこちらの言葉で書かれた警告文を載せた看板が幾つかあったが、蛮族の言葉に耳を傾けるはずもなく看板を踏み潰して進んでいく。その後兵から帝国兵が一兵もいないとの報告を聞きデュランやリィグゥ公らは動揺した。

 

「どういう事だ…⁉︎まさか、すでに敗退──」

 

その時だった。風切り音が聞こえたと思えば突如地面が爆発しそこにいた兵を吹き飛ばしていった。彼らが丘に目を向けると、そこには機動戦闘車や戦車がいたが何より彼らの目を引いたのはパンツァー・フンメルやバズーカや大型キャノンを構えた暁やサザーランドⅡであった。それを皮切りに他のKMF部隊や戦車や機動戦闘車、歩兵の銃撃が彼らを襲い次々と彼らは地に伏せていった。

 

「な、何だあの巨人は⁉︎矢も届かぬところからこうも正確に我らを…!こんなものが戦であってなるものか⁉︎こんなものが…!」

 

リィグゥ公の叫びは彼の近くに命中した砲撃の爆発音にかき消されていった。やがて第一陣は全滅し、ワイバーン部隊を中心に再編成した第二陣が進軍した。

ワイバーン部隊が敵─黒の騎士団を上空から狙おうとした瞬間、幾つかのワイバーン部隊が真っ二つになった。彼らを斬り伏せたのは斬月とトリスタン・ディバイダーであった。

 

「生身相手にKMFは過剰過ぎるが…敵である以上、容赦はせん!」

 

「しかし、KMF同士の白兵戦に特化したトリスタン・ディバイダーや斬月じゃやりづらい…あとで射撃武装を開発してもらう必要があるか…なっ!」

 

藤堂やジノの乗る機体は射撃武装が無いに等しく特地の敵相手には少々やりづらかった。そうこうしてるうちに暁やヴィンセント・ウォードなどが空を飛びワイバーン部隊を撃墜していき程なくして第二陣は壊滅した。

 

その日の夜、デュラン達は僅かに残った兵を率いて夜襲を仕掛けようとしていた。今夜は新月、この暗闇ならあの巨人達も戦えないだろうと踏んでいたデュランらだが、彼らの認識は甘かった。サザーランドⅡに乗ったパイロットがファクトスフィアで彼らの姿を捉えていた。

 

「ニッフィー3、ニッフィー3、敵を視認。地面が三分に敵が七分、地面が三分に敵が七分だ!戦闘配置!戦闘配置‼︎」

 

「またかよクソ‼︎今度は夜襲か‼︎」

 

「DVD途中なのに…」

 

「つべこべいうな!急げ急げ!」

 

文句を言いつつも黒の騎士団たちは各自の持ち場につき武器を構える。KMF部隊も何機かは照明弾をセットして合図を待った。

 

「まだ撃つな……今だ!照明弾撃てぇ‼︎」

 

合図とともに照明弾が放たれ、辺りを明るく照らす。それに気づいたデュランが部下に指示を下して馬を走らせるが直後に銃撃や砲撃が飛び交い、彼らを吹き飛ばしていった。

デュランは必死に敵陣まで駆けるが鉄柵に引っかかって落馬する。デュランを守ろうと部下が盾を構えるが直後に銃撃が襲い彼らの命を奪っていく。

 

「な、何故だ…何故こんな事に…⁉︎」

 

デュランは半ば自棄になり近くにあった弓矢を拾って放つがもちろんそれは何の意味もなく、デュランは狂った笑い声を上げたあと爆発に巻き込まれていった。翌日、辺りには兵やワイバーン、ゴブリンなどの死骸が転がっており、腐臭や地面の焦げた匂いが漂っていた。

 

「しかし、銀座と併せて約十二万か… ちょっとした地方都市一個分の人が死んだって事か…どんな国か知らねーけど、もう末期症状じゃねぇ〜の?」

 

伊丹がそう呟く中、仮設施設内でゼロは藤堂らから同様の報告を聞いていた。

 

「ふむ…妙だな…」

 

「ゼロ、妙とは?」

 

「今回来た敵だが、装備に統一性がない。捕虜にした帝国兵の話によれば帝国は幾つかの属国を持っていると聞いている。今回の敵はそういった属国の兵の可能性が多いにある」

 

「という事は、帝国は銀座で兵力を失ったために属国から兵を集めたと?」

 

「ありえるな。もしくは…兵力を失ったことで反旗を翻される事を恐れた帝国が属国の兵力を弱める為に彼らをこちらに差し向けたかだ」

 

「まさか⁉︎いや、だとすれば向こうの皇帝は…」

 

「あぁ。なかなかのやり手だな。こちらの方が戦力面で有利とはいえ、油断は出来ない。まだ特地について不明な点も多い。早急に特地の内情調査が必要だな」

 

 




なんだかんだ帝国ってブリタニアと似てるとこ多いんだよなぁ。
違うのは第一皇子の性格くらいかな。

『議員パニック』

そらそうだ。あんなもん目にしたら誰だってビビる。
ちなみにゴタセン議員が言ってた巨人は出た順に紅蓮特式、蜃気楼、トリスタン・ディバイダー、サザーランド・ローヤルです。…よくこれで二日も生きてたな。

『アルヌス攻防戦』

見ろ、人がゴミのようだ!
一応これでもデュラン殿下は生きてます。輻射波動浴びようがフレイヤに巻き込まれようが生きてた奴がいたし生きてても不思議じゃないでしょ?
パンツァー・フンメルいるなら戦車とか要らなくねとは言ってはいけない

『ゼロ、モルト皇帝の策を見抜く』

この人なら普通に気づきそうだなと思って書いてみました。


次はいけたら炎龍戦かな〜。
ではまた次回まで。また見てギアス‼︎


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STEGE4 特地 第三 偵察隊

気がついたらお気に入り百件超えてたり評価に色付いてたりと本当にありがたいです!

ちなみにゼロの格好ですが、復活のルルーシュ時の格好です。
あと今回思ったより長くなったのでテュカと出会うまでです。


連合諸王国軍が壊滅したという知らせを聞き、モルトはほくそ笑んだ。

彼が連合諸王国軍を糾合した目的はゼロが読んでいた通り、諸王国が帝国に攻め入らないように力を削ぐ為であった。続けてモルトは焦土作戦をマルクスに告げた。が、当のマルクスは渋い表情をした。

 

「焦土作戦ですか…税収低下と内部離反が心配と言ったところです」

 

「と、いうと?」

 

「ガーゼル侯が中心となって元老院で陛下の罷免を企てる動きが見られます」

 

「ふっ、ガーゼル侯らには好きにさせておけ。その件は枢密院あたりに調べさせておくとして、これを機に元老院の整理でもしておくか」

 

その時、扉を開いて一人の少女が中に入ってきた。

彼女はモルトの娘の一人であり、帝国第三皇女であるピニャ・コ・ラーダであった。

 

「陛下‼︎」

 

「何用だ、我が娘ピニャよ」

 

「無論アルヌスの事です!連合諸王国軍は壊滅し、敵は聖地であるアルヌスの丘に居座っているというのに、陛下はこれを静観なさるおつもりですか⁉︎」

 

「いや、殿下、我々は敵がアルヌスに留まってる間に兵を集めて再び奪還作戦を…」

 

「数十万の軍が敗れたのだぞ⁉︎丘を取り戻すだけの兵を集めるのに何年かかると思っているのだ‼︎」

 

マルクスの言葉をピニャが一喝すると、モルトが口を開いた。

 

「ピニャよ、そなたの言う通りだ。余もこの状況をよく思わぬ。しかし、我々は敵の事をほとんど知らぬ。そこでだ、そなたが自身の騎士団を率いて偵察に行ってくれないか?」

 

「妾が…?」

 

「そうだ。そなたの騎士団が兵隊ごっこで無ければだがな」

 

「…ッ!確かに承りました。すぐにでも出発致します」

 

────

 

アルヌスの丘では周辺に敵の動きがない事を確認するとゼロの提案の元、周辺偵察のための部隊を編成していた。仮説テントの中で伊丹は檜垣からの説明を受けていた。

 

「…というわけで今後の方針を決めるためにも我々はこの地の人間やその他の種族、産業・宗教や政治形態、風習などの調査が必要だという結論に達したわけだ」

 

「なるほど、良いかもしれませんね」

 

「良いかもじゃない!君が行くんだ!」

 

「…まさか一人で行けと?」

 

「な訳が無いだろう。まずは六個の深部情報偵察隊を編成する。編成内容等は資料に記載されている通りだ。君の任務はそのうちの一つ、第三偵察隊の指揮だ。担当地域の住民と接触して民情を把握、可能ならば友好的な関係を結んできたまえ」

 

「はぁ、まぁそういう事でしたら」

 

「よろしい!伊丹耀司、これより第三偵察隊の指揮を命ずる‼︎」

 

その後伊丹は装備を整え集合場所に行くと、第三偵察隊のメンバーの桑原、倉田、富田、栗林、戸塚、勝本、東、仁科、笹川、古田、黒川、そして玉城と南の十三名が集まっていた。

 

「ん?玉城さんと南さんもいるの?」

 

「おう!先輩として新任の伊丹隊長の面倒を見てくれってゼロに頼まれてな。俺と南は暁に乗っていくからよろしく、伊丹隊長さん!」

 

(実際はこいつが隊長だと部隊が壊滅しかねないからゼロがうまく言いくるめたんだがな。ちなみに俺は玉城のストッパー役だ)

 

玉城の暁は右手にバズーカ、左手にハンドガンを装備したタイプで、南の暁は右手にハンドガン、左手にグレネードを装備したタイプであった。また、両機ともに飛翔滑走翼を装備していた。

 

「暁が二機も入れば大抵はなんとかなるか。んじゃま、出発しますか」

 

第三偵察隊はアルヌス駐屯地を出発し、コダ村という小さな集落に着き村長らから周辺の地域についての情報を聞き出した。初めこそ警戒されたものの、敵意がないとわかると親切に話してくれた。KMFに対してもオーガーなどの怪異と思っていたそうが、生き物ではなく巨大な鎧のようなものと説明すると警戒を解き近づいて触ってみる者もいた。

それから周辺の村々を回っていき、日暮れへと差し掛かっていた。

 

「おい倉田、この先の小川で右折して川沿いに進め。しばらく行ったらコダ村の村長が言ってた森が見えてくるはずだ」

 

「了解、おやっさん」

 

川が見えたところで桑原はある事を伊丹に提案する。

 

「伊丹隊長、意見具申申します。森の手前で野営にしましょう」

 

「ん、賛成」

 

「あれ?一気に乗り込まないんですか?」

 

「だって今森の中行ったら夜になるでしょ?幾らKMFが居ても危険過ぎるし、集落があるからそこの人たちを威圧することになるしね。俺ら全ての弱きものの味方の黒の騎士団だよ?俺たちの任務は現地の人と交流して情報収集することだし。えっと、確か挨拶は…サヴァール・ハル・ウグルゥー?(こんにちは、ご機嫌いかが?)

 

「棒読みッスね。駅前留学行ってたほうがよかないスか?」

 

うるせー、と伊丹が軽口を叩くと、南がある事に気付いた。

 

「隊長!例の森ですが、燃えてます!それも、かなりの規模です!」

 

見ると確かに森は巨大な黒煙を上げて燃えていた。自然災害かと話していた伊丹だったが、桑原から渡された双眼鏡を見ると、そこには赤く巨大な龍が口から火を吹いて森を焼き討ちにしていた。

 

「あれま!」

 

「隊長、どうしますか?」

 

「栗林ちゃ〜ん、おいら一人じゃ怖いから一緒に着いてきてくれる?」

 

「嫌です」

 

「俺と南ならいつでもいけるけど、ドラゴンと戦うか?」

 

「いや、ドラゴンの情報が少ない。こちらから仕掛けるのはよそう。そういやあの辺りに集落があるって村長が言っていたな…ドラゴンが立ち去って、夜明けになったら森に突入しよう」

 

やがてドラゴンは飛び去っていき、夜明けとともに伊丹達は森─と言ってもほぼ焼けて荒れ地となっているが─へと突入した。

 

「まだ地面が暖かい…」

 

「これで生存者がいたら奇跡ッスよ」

 

集落があったであろう残骸に辿り着くと、黒こげになった死体が幾つか見つかった。

 

「隊長、これって…」

 

「言うなよ…」

 

結局生存者らしきものは見つからず、ドラゴンが戻ってこないか警戒して被害を確認していった。

井戸の端に座っていた伊丹に栗林が報告しに近づいていった。

 

「隊長、この集落には建物のような構造物が三十二軒。確認した遺体は二十七体と少なすぎます。手足のみのものもある事から、大半は瓦礫の下敷きか、あのドラゴンに食われたと思われます」

 

「一軒に数人いたとして、百人近い人数がやられたか…この世界のドラゴンは集落を襲うことがあるって報告しておかないとな」

 

「酷いものです。また、丘で戦った小さなドラゴンでも腹部を12.7mm徹甲弾でどうにか貫通ということでした」

 

「へぇ、ちょっとした装甲車だね」

 

「KMFの通常装備なら対処に問題ありませんが、あのドラゴンが同じ硬さの鱗を持つとは限りませんしね…遭遇した時のために、援軍を要請した方がよろしいかと」

 

「そうだね…本部に連絡すると同時に、ドラゴンの巣と出没範囲を調べておかないとね。コダ村の村長なら何か知ってるかな?」

 

そう言い伊丹は水筒を補充すべく井戸に桶を放り込むが、コーンと空井戸にしては妙な音が聞こえた。不審に思い井戸の中をライトを照らすと

 

「…人だ!生存者がいるぞ!」

 

そこには金髪のエルフらしき少女が気を失って井戸の中に浮かんでいた。




第三偵察隊のメンバーは基本的に原作+玉城と南です。場合によっては追加したり抜けたりします。

次回こそ炎龍戦です。
援軍ですが、結構離れたところにすぐ迎える機体となるとだいたいは予想つくと思います。


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STAGE5 炎 吹く 龍

ちょっと別作品の更新に詰まって遅れました。
というより、この小説見るたびお気に入り登録者増えてるのですが、皆さんこれを登録しろってギアスでも掛けられてるのでしょうか?
さて、今回は炎龍戦です。
今回オリ設定入ります。


伊丹達はロープを使い件のエルフ少女を井戸から引き揚げる。

 

「栗林は車から拭くものを‼︎黒川は彼女を診てくれるか?」

 

「了解!」

 

「わかりました」

 

栗林は車に向かい、黒川がエルフ少女の様子を診ていると倉田がどこからか取り出したデジカメで写真を撮っていた。

 

「隊長、エルフ、エルフっすよ‼︎」

 

「なんだ倉田、お前エルフ萌えか?」

 

「いえ自分はケモノ娘一筋ですが、エルフがいるならケモノ娘もいるはずですよ絶対‼︎」

 

「なぁ南、エルフって何だ?」

 

「確か精霊とかの類いって聞いたことはあるな…」

 

「へぇ、あのトンガリ耳が精霊か…」

 

「はい、見世物じゃないからあっち行く‼︎特に倉田‼︎」

 

栗林の怒鳴り声で隊員達は蜘蛛の子を散らすように去っていった。しばらくして黒川がエルフ少女の容体を告げに伊丹に近寄った。

 

「あの子は大丈夫そうか?」

 

「体温が戻ってきたので取り敢えず命の危機は脱しています。それで、彼女はどうしましょうか?」

 

「うーん…集落はこの有様だし、このまま放置するわけにもいかないから保護って事で連れて行こう」

 

「隊長ならそうおっしゃってくださると思っていましたわ」

 

「僕が人道的だから?」

 

「さぁどうでしょう?隊長が特殊な趣味をお持ちだからとかあの子がエルフだからとか、色々正直に話しては失礼になるかと」

 

「は、ははは…」

 

その後伊丹達は報告のために一度アルヌスまで帰還することにし、ついでにコダ村で例のドラゴンについて聞いてみたところ、あのドラゴンは炎龍と呼ばれはるか昔から人々から恐れられている古代龍であり、人やエルフなどの集落を次々に襲い回る習性があるという。しかし、炎龍の活動期はあと五十年は先らしいが今はそんな事はコダ村の人には無関係であり避難の準備を進めた。

伊丹達も彼らをそのままにしておくわけにもいかず、安全なところに退避できるまで護衛をする事にし、アルヌス駐屯地にその事を報告した。

 

一方でアルヌス駐屯地では伊丹達の報告を聞いたゼロはカレンを呼び出していた。

 

「ゼロ、私に指令とは?」

 

「あぁ。カレン、君には第三偵察隊の援軍に行ってもらいたい。どうやら炎龍と言う大型のドラゴンに遭遇し、コダ村の人達が退避するまで護衛をしているのだが、いくら生き物とて炎龍に暁二機で対処できるかわからない。故に紅蓮にて援護してくれ。出来るな?」

 

「わかりました。ですが、その炎龍に輻射波動が通用するでしょうか?」

 

カレンがそう言うのにも訳があった。丘での戦闘時にワイバーンに輻射波動を浴びせたところ、何秒か耐えていたのであった。

その事を疑問に思ったロイドがワイバーンの鱗を採取して調べたところ、どうやらワイバーンの鱗には電磁波を弾く性質がある事が判明していた。その為一種の電磁波である輻射波動に耐えていたとの事である。同じドラゴンである炎龍にも同様かそれ以上の性質を持っている可能性がある。

 

「炎龍に輻射波動が通用する可能性は低いと私は見ている。しかし、ここからコダ村との距離が離れていることと、いつまた炎龍が来るかわからない以上、速力のある紅蓮特式が最適と判断した。それに輻射波動が効かなくとも防御に使えばコダ村の人を炎龍から守れる筈だ。それと人員輸送車を一台抱えて向かってくれ。運転手は任せる」

 

「了解。準備を進め次第向かいます」

 

カレンが部屋を出て行くとゼロは顎に手を当てて考え事をしていた。

そんな彼に先ほどから部屋の隅でくつろいでいたC.C.が問いかけた。

 

「どうした?考え事か?」

 

「…炎龍は何故五十年も早く目覚めたんだ?我々がここに来た事でイレギュラーが起きたか?」

 

「そいつが人語を話せない以上わかる訳がないだろう。それに、長生きしてると時間の感覚が曖昧になる。案外炎龍からすれば十分くらい早く起きた感覚かも知れんぞ?」

 

「…それはお前の実体験か?」

 

「…さぁな?」

 

────

 

避難を行なっている魔導師のカトー老師とその弟子レレイは馬車で歩を進めていたが渋滞で進めなくなっていた。話を聞くと荷物の積みすぎで車軸を折った馬車が道を塞いでいるらしく、負傷者もいるらしい。

仕方なくその場で待機していると二人の視界に大きな緑色をした単眼の巨人─暁が目に入った。

 

「なんじゃあれは?あんなオーガー見たことないのぉ」

 

「あの感じ…鎧を着ている?」

 

するとそのオーガーらしきものの一体が立ち止まり、首の後ろあたりが飛び出し、中から髪を立たせた男─玉城が現れたのを見てカトーは仰天した。

 

「何と⁉︎人が中から出てきおったぞ⁉︎」

 

「……お師匠、多分あれはオーガーではなくて巨大な鎧のような物だと思う。でなければ人が出てくる理由が解明できない」

 

「ほー鎧とな?しっかしどこの兵士じゃ?帝国では無さそうじゃが…」

 

見ると男は何やらレレイ達の知らない言葉で何か指示を出しており、見ると近くには黒い服を着て杖のようなものを持った人達があちこちを回っていた。

レレイは馬車を降りて先に進んで様子を見てみると倒れて苦しんでいる馬と、馬車から投げ出された人達が横たわっていた。

 

「この子が一番危険な状態…」

 

レレイは倒れている少女の容体を見ようとするとそれより先に黒服の女性兵士が容体を見ていた。

 

「医術者…」

 

すると先程の馬が突然立ち上がって暴れ出し、レレイに向けて前足を振り下ろそうとするが、パパン‼︎と音が鳴り馬が血飛沫を出して倒れていった。音のした方を見ると先程の大鎧が首の付け根から黒服の兵士が持っているのと同じような筒を出していた。恐らくそこから何かを出して馬を鎮めたのだろう。

 

「大丈夫かい嬢ちゃん?」

 

「玉城‼︎不用意に撃つなよ!女の子の方に当たったらどうすんだ⁉︎」

 

「わ、悪い南…ついとっさに…」

 

レレイは男が何を話してるかわからないがこれだけははっきりわかった。

 

「この人達が…私を助けた…?」

 

その後、移動準備が整いコダ村の住民達の避難が始まった。しかし道はこの前の雨でぬかるんでおり、車輪が埋まって動けなくなったり、再び荷物の詰め過ぎで車軸が折れたり、逃避行は困難を極めた。途中カレンが合流し彼女が持ってきた人員輸送車に馬車が壊れて歩く事になった老人や女子供を乗せたり、車輪が埋まり動けなくなった馬車を暁で持ち上げたりと出来る限りの手助けをしていた。

 

逃避行から数日が経った頃、村人達に疲れが見え始め、伊丹達もトレーラーに積んだ暁の予備武装を出来るだけ持ってそのスペースに住民を乗せているがエナジーフィラーの関係上、早いところ避難先を見つけないとエナジー切れを起こす可能性があった。そんな中、道の真ん中で座り込むゴスロリ少女を発見した。空には無数のカラスが飛び回り、自身の身長の倍以上はあろう巨大なハルバードを抱えているさまは異様であった。

 

「ん?ゴスロリ少女⁉︎」

 

「うわぉ!等身大の球体関節人形か?」

 

「あー、勝本、古田。もしかしたら例の拉致被害者かも知れないから話しかけてくれる?」

 

「了解」

 

二人が例のゴスロリ少女に近づき話しかけるとどうやら話は通じているようであり、こちらに近づくと何かを話しかけてきた。

 

「えーと、何て言ったかわかるか?ある程度わかるが自信がなくてな…」

 

「いや、どこから来たみたいなことは聞こえますが、ハッキリとは…」

 

伊丹達が口籠っていると近くにいた村人達が彼女を取り囲んで歓声を上げていた。ところどころ聞こえる単語から察するに彼女はどうやら神官の類であるようであった。少女は合流してきた紅蓮特式や暁を興味深げに見上げていた。

 

「あれはなぁに?」

 

「グレンやアカツキっていう黒の騎士団さん達が使う大鎧だって!」

 

「へぇ、大鎧ねぇ…それで、黒の騎士団ていうのはこの人達のことぉ?」

 

「うん!騎士の格好してないけど良い人達だよ!あと、この乗り物すごく乗り心地が良いよ!」

 

「ふぅん…じゃ、ちょっと失礼♪」

 

少女は突然伊丹の膝の上に座り込んだ。その後すぐにどかそうとする伊丹とそれを拒む少女の攻防戦が続いたが、伊丹が窓側半分、少女が車内側半分ということで決着がついた。余談だが、その様子を南が少し羨ましそうに眺めていたのは別の話である。

 

その後しばらく移動し、あたりは岩肌が見える丘となり、照りつける太陽が伊丹達や村人達の体力を削っていった。

 

「なぁ、ここの太陽って日本より暑くないか?」

 

「多分ここの気温は日本より高いってところですね」

 

「どーりで暑いと「隊長‼︎」ん?どったのカレンちゃん?」

 

「後方に大きな熱源反応あり!恐らく炎龍と思われます‼︎」

 

「なっ⁉︎わかった!カレンちゃん達は先行して炎龍の相手を頼む‼︎俺達もあとから続く‼︎」

 

「了解!」

 

「よっしゃ!ドラゴン退治だ‼︎」

 

「暁でどこまで相手にできるかだな…」

 

カレン達は後方に向かい、伊丹達も方向転換し急行した。

すでに後列は炎龍に襲われており、吐き出す炎に焼かれたり、爪で引き裂いたり噛み殺されたり、中には暴走した馬に踏み潰されたりする者もいた。

そんななか、炎龍は一つの家族に狙いを定めた。

 

「お母ちゃん、早く‼︎」

 

「だめ、もう足が…」

 

「メリザ、立つんだ‼︎」

 

逃げようとする家族に炎龍は火を吐き出し、メリザ達一家はもうだめだと目を瞑る。しかし、いつまで経っても熱さはやってこず、目を開けるとそこには大きな右手を持った真紅の大鎧、紅蓮特式が右手から紅い光を出して一家を守っていた。

 

「これ以上やらせるかぁ‼︎」

 

カレンは操縦桿を押し込み、炎龍に突撃する。

 

(輻射波動を照射して避けられたら被害が出る、直接掴んでやれば…!)

 

炎龍は本能的に紅蓮特式の右手が危険と察したのか、飛んで逃げようとするが、追いついた暁や戦闘車両の銃撃に気を取られ、追い越されて背中に回り込まれてしまう。そして背鰭の一つの根本を紅蓮特式の右手が掴んだ。

 

「よし!いっけぇカレン‼︎」

 

「弾けろトカゲ野郎‼︎」

 

カレンはスイッチを押し、輻射波動を炎龍に浴びせる。

しかし、輻射波動は炎龍の鱗に当たった途端に霧散し、不発に終わってしまった。

 

「嘘⁉︎耐えるどころか効いてない⁉︎…うわっ!」

 

炎龍は地上に急降下して紅蓮特式を振り解き、尻尾を振るうが紅蓮特式は間一髪で避けることができた。

 

「ええい、こうなったらカレンに代わってこの玉城様が相手になってやる!」

 

玉城がそういうやいなやバズーカを構えて炎龍に突撃するが、炎龍は玉城の乗る暁に向かって行き、尻尾を暁に直撃させる。暁はくの字に折れ、爆発するが直前に脱出装置が働き、玉城は強制的に飛ばされた。

 

「チクショー‼︎ここでもかよ⁉︎」

 

だが尻尾が当たる前にバズーカは発射され、放たれた弾は炎龍の顔面に当たり、左頬と牙の一部を吹き飛ばし、炎龍は雄叫びをあげた。

 

「爆発物は効くようだな、勝本!パンツァーファウスト!南さんも頼みます!」

 

「了解!」

 

「了解!っとと、後方の安全確認っと」

 

(馬鹿、早く撃て!)

 

南はトレーラーから持ち出したバズーカと左腕のグレネードを撃ち、一拍遅れて勝本のパンツァーファウストが放たれるがパンツァーファウストの方はガク引きを起こして見当違いの方向へ飛んでいく。

すると伊丹の近くにいたゴスロリ少女が扉を蹴破りハルバードを投擲する。ハルバードは炎龍の足元の地面に当たり、衝撃で炎龍がバランスを崩す。

それによりパンツァーファウストの弾頭は炎龍の左腕の付け根、暁が放ったバズーカは炎龍がバランスを崩したことで外したものの、グレネード三発はそれぞれ左右の太腿と腹部に当たり、着弾部は吹き飛び、左腕は落ちた。

炎龍は再び雄叫びを上げると伊丹達を睨みつけ、空へ飛び立った。カレンは逃すまいと追撃しようとするがエナジーの減少を示す警告音が鳴り、追撃を断念した。

 

その後亡くなった人の追悼をし、避難を再開した。大半の生存者は近隣の身内や他の街や村で生活する事となった。怪我人や他の者はどうするのか村長に聞くと、村長は他の村人達も自分らのことで精一杯であり、他の者たちの心配をしている余裕は無いらしい。伊丹らは村長達を見送ると、残った者らの事について考えた。残ったのはケガをした女性や男性、身内を亡くした子供や老人やそれ以外の理由で残った者達で計二十五名であった。彼らはどこか不安そうな顔で伊丹を見ていた。

 

「ま、いっか…だぁ〜いじょ〜ぶ、ま〜かせて!」

 

伊丹はそう言いVサインを送るとアルヌスへと帰還していった。




今回色々あったので解説入ります。

『炎龍、輻射波動無効化』

いやね、これくらいしないと楽に炎龍討伐しちゃって紅蓮無双になって、もう全部こいつだけで良いんじゃないかなってなるのでこうしました。一応鱗さえ取れればそこから効くようになります。

『安定の玉城』

お約束というか、脱出装置が専用機みたいなもんだからね。でも一矢報いたよ。しかしおかげで《特地で初めて撃墜された奴》っていう不名誉な名前付いちゃったけどw

『炎龍、原作よりボコボコに』

KMF三機(実質二機)+第三偵察隊相手に左腕一本で済むのはあれですからね。

さて、次回は交流会ですね。ロウリィにC.C.とL.L.(ルルーシュ)を会わせますかね〜。


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STAGE-6 亜神 との 接触

生きてますよー!
すみません!
ネタの練り直しと別作品のコラボ企画やらで遅れました!

今回はロウリィがルルーシュ達と接触します。


とある酒場にて、そこにいた人々はメリザが話すある事に興味を持っていた。

 

「炎龍を追っ払っただって⁉︎そんなバカな⁉︎」

 

「魔導師やエルフでも不可能なんだろ、本当に炎龍なのか?新生龍や翼竜とかの見間違いじゃないのか?」

 

「いいや、確かに炎龍だった。この目で見たんだよ」

 

「それに、その炎龍相手にコダ村は八分の一の犠牲で済んだんだぜ?」

 

「じゃあ誰がやったんだ?」

 

そんな会話をピニャ達四人の偵察隊が聞き耳を立てて聞いていた。

そのうちの一人、ハミルトン・ウノ・ローが隣にいたノーマ・コ・イグルーに話しかけた。

 

「『黒の騎士団』と名乗る、鎧を着ずに黒い服を着たヒト種の集団に、グレンとアカツキなる大鎧の噂…騎士ノーマ、どう思われます?」

 

「これだけの噂が広まってるのなら事実なのだろうが、相手が炎龍という点は些か信じがたいな」

 

ノーマがそういうと、こちらの話を聞きつけたメリザが駆け寄った。

 

「本当に炎龍だよお客さん、間違いないね」

 

「はは、私は騙されないぞ」

 

「まぁまぁ私は信じるからさ、良かったらその『黒の騎士団』って人達のことを詳しく教えてくれるかい?」

 

ハミルトンが金貨をチラつかせながら頼むとメリザはひったくるように受け取り、話を始めた。

 

「ありがとよ、若い女騎士さん。こりゃ、とっておきの話をしなかきゃね…えっと、私たちを助けてくれた黒の騎士団って人達は騎士団って言うけど鎧を着てなくてね、オシャレな黒い服を着てたんだよ。初めは十四人いてアカツキって言う緑の大鎧が二体いたんだけど、途中からグレンって言う紅い大鎧に乗った女の人が大きな荷車を持って来たんだ。女の人もいてね、全部で三人いたよ」

 

「女はどんな姿だったか?」

 

「男ってのはみんなそれだねぇ。えっと…一人は背が高くてきれいな黒髪のさらっとした異国風の美女。もう一人は栗色の髪で小柄な可愛い娘。牛みたいな胸でさ、だけど腰はちゃんとくびれてんだよ。最後の一人は紅い髪をした元気そうな娘だったよ、この娘も栗色の髪の娘と同じくらい胸があるけど背は高くてね、この娘だけ服が違ってて紅いなんかピッチリした服で身体の線がハッキリわかる服だったよ」

 

その言葉に男性陣が湧き立つが、構わずメリザは話を続けた。

 

「それと、大鎧なんだけどみんな空を飛べてたんだ。アカツキって呼ばれてたのは板みたいなやつだったけど、グレンってのは紅い綺麗な翅を背中から出してたんだ。私ら家族が炎龍に焼かれそうなときにグレンが守ってくれてね、そのあと炎龍の背中を掴んで何かしようとしたんだけど失敗したみたいで振り解かれた後、一体のアカツキが鉄の筒を持って炎龍に向かったんだけど尻尾で叩き落とされたんだ。乗ってた人は無事だったんだけど、叩き落とされる前に何かを鉄の筒から出して炎龍の顔半分を吹っ飛ばしたんだ」

 

「炎龍の顔を⁉︎鱗一枚傷つける事すら難しいのに…どんな魔法だ⁉︎」

 

「まだ話は終わってないよ、それを見た黒の騎士団の頭目みたいなのが何かを指示してね、騎士団の一人が鉄の逸物を取り出して『コホウノ・アゼンカクニ』って唱えてそれに合わせてもう一体のアカツキが鉄の筒と一回り小さい鉄の筒三つから何か出すとすごい音がして炎龍の左腕と太腿と腹の一部を吹っ飛ばしたんだ」

 

「ふむ、どうやら凄い騎士団のようです。ピニャ殿下、如何でしょう?」

 

「妾は大鎧とやらに興味がある。話してはくれないか」

 

「構わないよ。大きさはだいたい3レン(約4.8m)くらいで、アカツキってのが薄い緑色で赤い一つ目をしてて、グレンってのが深い緋色で緑の二つ目で右腕が異様に大っきいんだ。初めは生き物かと思ったから、突然うなじ辺りから人が出てきて驚いたよ」

 

「そうか、ありがとう。(アルヌスで戦った巨人と似た特徴だな…もしや…)」

 

────

 

炎龍との戦いを終えたあと、特に盗賊や他の怪物の襲撃を受けなかった伊丹達は、アルヌスの拠点に帰還した。

難民達だが、初めは無断で連れて行こうとした伊丹だったが、カレンにそれがバレてしまい、もしかしたら難民を放り出せと言われるかもしれないから一応の言い訳をしたが、『ゼロがそんな事言うはずがないし、隠し事をすると余計なトラブルを起こしますよ!』と妙に説得力のある言葉を受け連絡したところ、ちょうどゼロも情報収集のために住民を何名か招こうとしてたがその方法を探してる最中だったため、保護の名目で受け入れる事となった。

 

「おっほ〜!これが例の炎龍の腕だねェ?で、カレン君。こいつには輻射波動がまるっきり効かなかったって?」

 

運ばれた炎龍の左腕を見てロイドは目を細めてどこか嬉しそうな声をあげた。

 

「ええ、輻射波動は効きませんでしたが、爆発物は有効でした。とりあえず数日後には向こうに送って調べてもらう予定ですが…」

 

「なるほど、ボクとしても非常に興味深いから個人的に調べてもいいかな?」

 

「それは上に聞けばわかると思いますが…仮に許可が下りた場合は期日になったらキチンと返してくださいよ?」

 

「わかってるわかってるって」

 

結果的に許可は下りたのだがやはり期日ギリギリまで調べてた挙句、もう一日だけと粘ったがセシルに鎮圧される形で返還されたのは別の話である。

その翌日、本格的な村を作ることが決まり、作業用KMFなどで土地を開拓、整地していきすぐに仮設住宅が出来上がった。

その後、住民達の登録を行い始めた。

 

「ほえー、あのトンガリ耳、165歳なのか!すっげ〜な」

 

「本当にエルフなんだね…」

 

玉城と伊丹がテュカの年齢に驚いていたが、途中で会ったゴスロリ少女ことロウリィはそれとは比べものにならないくらい歳上と聞きさらに驚いていた。一方でロウリィは拠点本部の方を眺めていた。

 

「………へぇ、なかなか面白そうじゃなぁい?」

 

誰にも聞こえないような声でそう呟き、ロウリィはニヤリと笑っていた。

 

────

 

その夜、ゼロ_ルルーシュは司令室で報告書を読んでいた。側にはスザクが成り変わった時のために共に報告書を読み、ソファにはC.C.が愛用のチーズくんぬいぐるみを抱いて寝転がっていた。

 

「ふむ…ここには長寿命の生き物がそれなりにいるようだな」

 

「彼らはまだ話ができるからいいよ。でも問題は怪異と呼ばれてる生き物だね…」

 

「あぁ、奴らの知能が動物レベルの場合、俺のギアスが通用しない可能性がある。それにエルフなどの亜人種にも通用するかも水面下で調べておけば今後の活動も上手く行くだろうな」

 

「それはそうとルルーシュ。今日来た避難民の中にいたロウリィとか言う子供、只者ではないぞ」

 

ソファから起き上がって話すC.C.にルルーシュはその言葉に訝しんだ。

 

「どう言うことだ?」

 

「ヒトではない事は確かだが、凄まじい…オーラか生命力とでもいうのか?そのようなものを感じ取った。多分向こうも「お呼びかしらぁ?」っ⁉︎」

 

突然の声に三人が声のした方を向くと、いつの間にかロウリィが立っていた。

 

(マズイ!C.C.はともかく、スザクを見られた‼︎この事を話される訳には…!)

 

そう考えルルーシュは一か八か彼女にギアスを掛けようとするが次の瞬間、ロウリィはある事を口にした。

 

「そこの緑色の髪の子と貴方、()()()()よねぇ?正確には仮面の貴方は少し違うようだけど…門の向こうにも私みたいな亜神はいるのぉ?」

 

「…亜神?亜神とは何だ?」

 

「あら?知らないみたいねぇ。亜神というのは神に仕える使徒で不老不死、千年の時を経て肉体を捨てて神となる存在よぉ。ほらぁ、こちらが答えたのだから貴方達も質問に答えなさぁい」

 

「(神に亜神だと…そのような存在までいるとは…おそらくシャルルが殺そうとしたのとは全く別物と考えた方が良さそうだ)…わかった。だがこの事はここにいる三人と私が許可した人間以外に口外しないと誓えるか?」

 

「えぇ。エムロイの名において誓うわぁ。それと、差し支えなければその仮面を取って話してくれるかしらぁ?」

 

「…いいだろう」

 

ルルーシュは少し黙ったあとゼロの仮面を外しロウリィに素顔を晒した。その行為にスザクが声を上げようとするが、彼なりの考えがあるのだろうと思いその場は留まった。

その後ルルーシュはロウリィに不死のコードやギアス、それに自分達に関連する幾つかの事を正直に話した。反対にルルーシュ達は特地における神について聞き出した。話を聞き終えたロウリィは納得したような顔をした。

 

「ふぅん、つまり貴方達は神とは関係ないのねぇ。てっきりそっちの神が代理戦争を仕掛けたのかと思ってたわぁ」

 

「わざわざそれを確かめに来たのか?」

 

「そんなところねぇ。私は貴方達の行動を見極める必要があるからここに留まらせてもらうからよろしくねぇ」

 

「わかった。念を押すが、ここであった事と、俺とスザクについては絶対に話すんじゃない。俺達はすでに死んでる筈の人間だからな」

 

「しつこいわねぇ。話さないわよ。それで、普段は貴方のことをゼロって呼べばいいのねぇ?それで、たまにそこのスザクって坊やがゼロになる事があるから呼び方に気をつければいいのでしょお?」

 

「坊やって…」

 

「あぁ。頼んだぞ」

 

わかったわぁとロウリィが返事をし、部屋を出ようとするがその途中でC.C.に近づき話しかけた。

 

「ねぇ貴女、その身体になってから何年くらい経ってるのぉ?」

 

「それは暗に年齢を聞いているということか?中々に不躾だな。まず自分の年齢からいえばどうだ()()()()()?」

 

その時確かに空気が変わったのをルルーシュとスザクは感じ取った。ロウリィは軽く眉をヒクつかせ再び口を開いた。

 

「お嬢ちゃん?これでも私は961歳なんだけどぉ…もし貴女がそれより下なら訂正させてもらえるかしらぁ?」

 

((961歳(だと)⁉︎))

 

ルルーシュとスザクが内心驚くなか、C.C.はロウリィに近づき耳打ちをする。するとロウリィは驚いたように目を見開いた。

 

「えっ⁉︎嘘ぉ?」

 

「わかったか?これで訂正しなくてもいいなお嬢ちゃん?」

 

「〜〜ッ‼︎」

 

ロウリィは悔しそうな顔をしてC.C.を睨むとプリプリと怒りながら部屋から出て行った。しばらくの沈黙の後、ルルーシュはC.C.に尋ねた。

 

「なぁ、お前…一体何歳なんだ?あの反応だとあいつより上みたいだが…」

 

「さぁな?その歳になるまで生きてたら教えてやる。それで?アレは信用していいのか?」

 

「彼女が仕えるエムロイとやらが戦う理由に限定するとはいえ、嘘を好まないのなら平気と考えていいだろう。問題は十二使徒というからには彼女以外にあと十一人いると言うことだ。もし一人でも敵対したならマズイ事になる」

 

「不老不死ならジルクスタンの時みたいに永遠に眠らせればいいんじゃないのか?」

 

「スザク、それはあくまでも『そいつに目、もとい視覚がある場合』だ。目のない種族だった場合俺のギアスじゃ太刀打ちできない。それらに遭遇した時の対処も考えなくては…」

 

ロウリィによる接触により今後の課題が増え、改めてことの難しさを知るルルーシュ達であった。




『避難民の扱い』
原作と違い無断で連れて来てはいません。故に柳田とのお話は無いです。まぁ世界観がアレなので利権どうこうは無きに等しいんですがね。

『年齢:ロウリィ<C.C.』
何かそんな気がする…しなくない?
初期の中世ヨーロッパ時代にコード継承したのならそれくらいいくんですよね…。少なくとも今作品ではロウリィより歳上の設定です。

『その歳まで〜』
要約すると『それまで一緒にいろよ?』という彼女なりのデレです。

さーて、次はイタリカ編かな。
また遅れるかもしれませんが暖かく見守ってください!


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STAGE-7 戦乱 の イタリカ

すみません、別作品の展開の行き詰まりや仕事の都合で遅れました。
不定期連載ですみませんが、何卒宜しくお願いします。

今回はイタリカにたどり着くあたりまでです。


元コダ村の人々は今後の生活費をどうするか悩み、最悪身売りを考えていたがレレイが黒の騎士団に仕事がないか尋ねてみたところ、先のアルヌス戦で死んだ大量の翼竜の死骸処理に困っていたので自活に要るなら好きにしていいとのことであった。

それからカトー達は道具を借り、鱗や牙などを採取し水で洗ったあと売り物になるものを選定していった。その結果、鱗二百枚と牙十本という成果が出た。特に牙は死体が落下した時に欠けるものだが斬月やトリスタンなどが撃墜時に首を切り落としたのもあり結構無事なのが残っていた次第である。

鱗一枚で銀貨30枚から最高で70枚で売れる。ちなみに銀貨一枚につき、一般家庭が五日間不便無く生活できる。それを踏まえると働かなくとも十分に暮らせる量が採れたため、いい加減な店で安く買われてはいけないのでイタリカにいるカトーの古い知人の元で売る為、その護衛を黒の騎士団に提案した。

 

黒の騎士団としてもイタリカなどの交易都市の調査と交流を行う必要があるため、第三偵察隊に道中の護衛と輸送任務を与えた。しかし、KMFは下手に多数出撃させて彼らを刺激するとマズイので南機のみである。どのみち、玉城機は撃墜されて予備機待ちなので都合が良い。炎龍クラスの敵の対処のため、武装はバズーカと、万が一のための対人用にハンドガンである。

アルヌスを出た一行はテッサリア街道を走りつつ、レレイから補足を受けながら地図に情報を書き取っていた。

しばらくしてイタリカにそろそろ到着といった頃に前方に煙が上がっているのを南が発見する。

 

『隊長、前方に煙が上がっています』

 

「やだな〜この道、あの煙がある所に続いてない?レレイ、どう思う?」

 

「あれは煙、だけど畑焼く煙ではない、季節違う。人のした何か…鍵?でも大きすぎる…」

 

「鍵じゃなくて火事ね。全車周辺と対空警戒、慎重に接近する…ん?ロウリィどうした?」

 

指示を出したあと伊丹はロウリィがどこかワクワクした顔をしたのが気になり話しかけた。

 

「…血の臭い」

 

────

 

イタリカでは多数の盗賊団が襲撃し、武装勢力が出現したという情報を入手し、それがイタリカに侵攻してきた異世界の軍勢(黒の騎士団)と思いやってきたピニャ達が急遽指揮をとり防衛戦を行っていた。

やがて今の状態で突破は困難だと判断した盗賊団は撤退していった。

 

「ノーマ‼︎ハミルトン、無事か⁉︎」

 

「い、生きてまーす…」

 

「同じく…」

 

「姫様、小官の心配はしてくださらないのですか?」

 

「グレイ、お前が無事なのは見てわからないほど妾は馬鹿ではないぞ」

 

疲れ切ってる二人と違い、ほぼ無傷で立ってるグレイに話しかけるとハミルトン達に柵の修理を命じ、自身は館に入り食事を摂ったあと、何かあれば起こしてくれとここのメイド長のカイネに伝え仮眠をとる。

しかし、しばらくして彼女はバケツの水をかけられ起こされた。

 

「何事か⁉︎もしや敵か⁉︎」

 

「果たして敵か味方か…ともかく東門にてご自分の目でご覧ください」

 

ピニャは鎧に着替えて東門に向かい、様子を伺う。

 

「なっ⁉︎あの巨人のようなものは何だ⁉︎いや、あの見た目…酒場で聞いたのと特徴が似ている…あれが例のアカツキとかいう大鎧なのか?あの攻城用の木甲車みたいなものは木でなく鉄か…中にいる奴らは妙な黒い服を着てるな…持ってるのは武器か?やけにガラの悪いのがいるが*1…盗賊の仲間か?ノーマ!」

 

「他に敵は見えません!何者だ‼︎敵ではないなら姿を見せろ‼︎」

 

ノーマが叫ぶと少ししたあと、二人が荷車から出てきた。

 

「魔導師か。あの杖はリンドン派の正魔導師…それにエルフもいるとは…油断してるうちに弩銃で…いや、仮に仕留めたとしてもあの大鎧はどうにも…」

 

そう考えを巡らせると、もう一人荷車から降りてきた。ロウリィである。その姿を見てピニャは驚愕する。文字通り人間離れした力を持つロウリィがいるとなればこちらに勝ち目はない。だが、彼女が盗賊の仲間ならとうの昔にここはやられている。ならば別件で来たと考えても良いだろう。今のピニャの選択肢は追い返すか強引に引き入れて盗賊の相手をしてもらうかだ。ピニャは後者を選び、門の閂を取り外し勢いよく門を開いた。

 

「よく来てくれた‼︎」

 

しかしながら彼女達はピニャでなく地面を見ていた。見ると先ほど開けた門にぶつかったのか、一人の男が伸びていた。そのまま彼女達は気絶してる伊丹を城内に引き入れ、介抱する。その際ピニャはテュカに勢いよく扉を開けた事に対して怒られていた。すると伊丹は目を覚まし体を起こした。

 

『隊長、応答してください‼︎突入しますか?』

 

「いや、気を失っていただけだ。状況を確認するからしばらく待機で。…それで、誰かこの状況を説明してくれる?」

 

するとイタリカ内の兵たちは一斉にピニャの方を向いた。

 

「…妾が?」

 

その後ピニャは伊丹たちを城内に引き入れて、互いに軽く自己紹介をしたあと、今のイタリカの状況を説明した。当然ながらこのままでは交易はまともに行えない。そのため第三偵察隊も防衛戦に参加することになった。

 

(あのタマキとかいう男…彼らの軍勢、黒の騎士団の団長のゼロと親友と言っていたな…下手にこちらと問題を起こし、彼を傷つけてゼロ騎士団長の怒りを買わないようにしなくては…)

 

一方で、アルヌスの本拠地ではゼロが伊丹達からの連絡を受け考えていた。

 

(なるほど…この状況を利用すればイタリカ市民の信頼を得ることが出来るな…しかも、イタリカには皇族がいる…こちらと接触し味方につければ帝国との交渉が有利になる…)

 

「支援部隊の編成は如何なさいますか?」

 

狭間の言葉を聞き、ゼロはこう答えた。

 

「いや、部隊編成は必要ない。イタリカの支援は────私自らが行こう‼︎」

*1
玉城の事




『牙が増えた』

藤堂さん綺麗にワイバーンの首斬り飛ばしそう…飛ばしそうじゃない?
鱗が原作と変わらないのは気にしないでね?

『下手に傷つけて〜』

さて問題です。この後原作では何が起きましたか?

『ゼロ、援軍に』

オイオイオイ死んだわ盗賊。絶対この人戦場で大演説かましてイタリカ市民の心掴むぞ。

次回はイタリカ防衛戦です。いつ投稿するか未明ですが楽しみに待っていてください。


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