少女前線 ~銃へと憑依した傭兵~(更新停止) (蒼月 アイン)
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登場人物紹介
登場人物紹介1
という事で現状、登場してる人物たちの紹介です。
原作とは崩壊させる物をモットーにしてる私ですがまさか初期構想を崩壊させるとは思っておりませんでした。
HK433
主人公。
某少年探偵の如く、幼少期から養父に色々と仕込まれたため戦闘能力も家事能力も一流の腕前。
女性経験はあるが恋愛経験は皆無なので自分に向けられている恋慕の感情に対しては鈍感(一応、何かしら感情を向けられているのは気づく)
上記に加えAR-15達を信頼できる同僚という認識なので彼女たちのそういう想いにも気づいていない。
密かにMOD化構想を考案中。
謎の2人
物語序盤で出てきた謎の戦術人形2人組。
自分たちの上司の命令で廃墟へと来たがほぼほぼ空振りに終わる。
なお、本格的な出番はもっと先になる予定。
主が我慢できずに思わず出演してしまいました。
たぶん、2人組という時点で殆どの読者は誰だか気づいてるw
AR小隊
グリフィン社管轄にある特殊部隊。
I.O.P社への出向という形で16LABの傘下にある。
原作と違い精鋭部隊として民間にも広く知られている。
本作においては4人姉妹という設定で描かれている。
長女、M16A1
次女、AR-15(双子の姉)
三女、M4A1 (双子の妹)
末っ子、M4 SOPMODⅡ
M16A1
AR小隊の長女枠。
無類の酒好きで博打も好き、煙草も嗜む程度には好き。
433とは信頼出来る戦友であると同時に酒飲み仲間兼博打仲間。
433と妹たちの誰がゴールインするかを密かに酒の肴にして楽しんでる。
本人は否定してるが実は彼女自身も・・・
実は『ケース』を持っているの完全に忘れて書いてました。
AR-15
本作のヒロインその1.
AR小隊の次女枠で双子の妹枠であるM4とは恋敵兼姉妹喧嘩仲間。
作中で433からコートを借りて(実質的な譲り受け)おり、装備の上から羽織っている。(MOD化しても羽織っている)
まだ433に対する恋愛感情に気づいていないが気づき始めている。
現在の433に対する感情は自分のことを正当に評価して信頼してくれる大切な人。
まだ恋愛感情に気づいていないのでM4との喧嘩理由は自分の大切な物を取られたくないという子供的理由。
初期構想の頃はヒロインポジに収まるとは思ってませんでした(マジで)
M4A1
本作のヒロインその2.
AR小隊の三女枠で双子の姉枠でるAR-15とは恋敵兼姉妹喧嘩仲間。
以前は原作同様、内気な性格だったが433と出会いその影響を受けた結果以前よりは前向きな性格へと変わった。
433に憧憬の念を抱いており、彼女の様なしっかりとした戦術人形へと成りたいと思っている。
憧憬の念と同じく恋慕もしており、まだ明確には気づいていないが薄々と勘づいている。
AR-15との喧嘩もそういう感情が無意識に出て来てる故である。
初期設定では433に憧れてその姿を目標にして成長していく設定だったのだが(ry
M4 SOPMODⅡ
AR小隊の末っ子枠。
甘えん坊、癒し枠、天真爛漫枠etcのAR小隊のマスコット枠。
お姉ちゃん達大好きだけど本能的に433も気に入っているので結構甘えてくる。
つけない派、寝る時は裸族なのでこれから433筆頭としたAR小隊総員での説得が始まる予定。
S04地区グリフィン基地
グリフィン社の管轄としている地域の一つにある基地。
鉄血との最前線より一個前に存在する地区であり、後方基地という役割を持っている。
最前線への補給、増員、哨戒、救援等々仕事は多岐に渡り民間人居住区域の行政並びに治安維持も行っている。
指揮官
グリフィン社所属の傭兵であると同時にS04地区の指揮官。
後方勤務に長けた人物であり、部下の戦術人形達からの評価も高い。
むっつりなところがあるので暫し、好意を抱く戦術人形たちから睨まれてる。
初期構想での433とくっ付ける予定だった人物。
名前をつけたりと色々考えてたが方針転換の結果、無名の人物となった。
因みに声と口調のイメージは某後世世界の日本の秘匿潜水艦隊の司令長官閣下。
I.O.P社16LAB
グリフィン社との提携してる企業とその傘下にある研究所。
グリフィン社に所属する殆どの戦術人形はI.O.P社製。
ペルシカリア
I.O.P社の社員であり16LABの首席研究員。
M4達AR小隊の生みの親であり実質的な母親とも言える人物。
AR-15とM4が433へと抱いてる感情を情報ログから気づいておりそれを見守っている。
ぶっちゃけこの人もヒロインに加えてやろうかと思いはしたけど自重しました。
鉄血工廠
エルダーブレインというAIを首魁とし人類抹殺を目的としてグリフィン社や正規軍と戦争をする組織。
エクスキューショナー
本作のヒロインその3(確定)
鉄血に所属するハイエンドモデルの戦術人形の1人。
自分と互角以上に戦って見せた433に興味を抱いており再戦と決着を願っている。
ヤンデレ気質に近い執着心を433に抱いているので覚醒したらたぶん、監禁されるENDが待ってる。
初期構想では433とはライバル関係になる予定だったのにどうしてこうなった/(^o^)\
因みに主がドルフロ初めて1番最初に好きになったのは彼女だったりする。
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本編
第1話 戦場の日常
第二次世界大戦の終結とアメリカ合衆国を中心とした西側諸国とソビエト連邦を中心とした東側諸国が対立した冷戦。
だが長く続くと思われた冷戦はソ連のアフガン侵攻の大敗により、財政難に陥ったソ連の崩壊と共に
それで平和の世の中になるかと思いきや、その答えは全くもってのNO。
イデオロギーによるぶつかり合いが終わったと思えばその次に牙を剥いたのは今まで大国同士のぶつかり合いで姿を潜めていた民族または宗教における対立だった。
国家間の戦争から民族・宗教に対する対テロ戦争への移行は正規軍への負担を大幅に強めた。
アメリカにとってのベトナム、ソ連にとってのアフガンとも言える非正規戦はアフリカ、中東を中心に瞬く間に世界に拡散していった。
そんな中、需要を必要とし急速にシェアを広げていった産業が存在した。
民営化された軍隊・・・つまるところの傭兵達の集団――private military company――PMC達だった。
彼らは人手不足に喘ぐ正規軍に代わり、兵士の鍛錬、警備・護衛、兵站管理等を皮切りに続々とシェアを拡大していき、いつの間にか彼らは正規軍の代わりに戦闘までも行うまでに成長していた。
日常が非日常になり、非日常が日常の世界・・・それが現在の・・・国家間の大量破壊兵器による
西暦2028年 中東某国
イタリア、イヴェコ社製軽装甲車であるイヴェコ LMVの後部座席に座る男は興味無さげに外を眺めていた。
男はイスラエル製アサルトライフル・ガリルを装備しており首からスリングを通して抱えていて右膝に備えられたホルスターにはロシア製拳銃であるマカロフ PMが収められていた。
銃装備は歴とした兵士だが彼を含め、LMV車内の兵士は全員正規軍所属ではなくPMC所属のオペレーターだった。
彼らが属するPMCは現地の反政府組織の依頼によりかなり以前からこの国に展開しており、この男もここに来て既に1年は経っていた。
男たちは既に日常の一部と化していた哨戒任務をこなすため、決められたルートをただ黙々と車両を走らせ続けた。
彼らの間に会話は殆ど存在しない、だが仕事熱心という訳ではなくただ単に話の種がないので黙って外を眺めるだけだった。
防弾ガラスの向こうに見えるのは瓦礫の山と化した村にIEDや対戦車ロケット、地雷によってスクラップと化した色々な戦車や装甲車・・・それに既に事切れた亡骸だけだった。
配備直後は自分たちも何時かはあの中に仲間入りするのかと思い憂いていた彼らだが戦闘に駆り出されることもなく、毎日退屈極まりない哨戒任務ばっかり続けるうちにそんな考えも何時しか消え失せていた。
自分たちが死ぬことない。
その事に男は嬉しい反面、戦場に出たかったという残念に思う気持ちも持ち合わせていた。
戦場に出てるオペレーターたちと違って後方でこの様に警備活動に就いているオペレーターたちはやはり給料にある程度差があった。
もちろん、後方ではあるがここが戦場であるのは違いなく、危険手当等で彼もそこそこの高給取りであった。別に金に困ってるわけではない。
男はヨーロッパ出身で上流階級という訳ではないが中流階級出身であったが刺激を求めて軍に入隊した代わった性格の持ち主だった。
軍を5年務めた後に退役し、以後3年ほど警備会社の社員として働いていたが軍属時代派遣された中東での刺激的な生活が忘れられず猛反対する両親――軍人になる時も猛反対された――を押し切り、今のPMCに入社し志願してまで中東にやって来ていた。
軍属時代の刺激に胸を躍らせ、いざ蓋を開けてみれば待っていたのは退屈で仕方ない哨戒ばかりの毎日だった。
最初の頃は同じ班のメンバーに自分の経験談を聞かせたりと中々悪くないと思っていたが思い出話を粗方話し終えてしまうと殆ど暇を持て余していた。
とっとと哨戒任務なんて終えて、基地に戻って冷えたビールを飲みてぇ・・・
代り映えがなく、既に見飽きた光景を眺めつつそんな事を思っていると唐突に肩を叩かれた。
なんだ?と思って振り返れば隣の座席に座っているメンバーの黒人の男がこちらに長方形のケース・・・煙草の箱を差し出していた。
そこから顔を出していた煙草を抜き取り、悪いなと煙草の持った手を軽く掲げると隣の男は煙草の箱を持った手を引っ込め、変わりにライターを差し出してきた。
差し出されたライターで有難く、煙草に火を点けようとしたところで・・・男は激しい爆発と閃光に見舞われ、それ以降の意識を永遠に閉ざした。
「――・・・派手に吹っ飛んだな」
隣でそう呟いた男に、あぁと返事を返した。
遮光処理が施されたライフルスコープの向こうでは黒煙が立ち上り、そこを通った反政府側の軽装甲車を木っ端微塵に吹き飛ばした事を鮮明に教えてくれていた。
「依頼達成だな、帰ろうぜ」
「そうだな」
隣の男・・・長年、相棒を務めているバディにそう答えつつ匍匐体制から立ち上がり素早く装備を纏めた。
今回、俺たちに当てられた任務は単純明快・・・敵である反政府ゲリラたちの哨戒部隊を吹き飛ばすことだった。
奴らの哨戒ルートは既に割れており後はそのルート上に地雷を敷設し待ち伏せをするだけ、そうすれば見た通りターゲットを吹っ飛ばして終了だ。
この様な
それに今回の敵の哨戒ルートは敵の前線との補給線の役割も持っており、暫くは警戒して使われることはないだろう。
「とっとと基地に戻って飯にしようや」
「あぁ・・・」
陽気な性格でムードメーカー染みた相棒に適当に返しつつ、俺は移動用のデザート迷彩を施されたジープの助手席へと腰掛けた。
無論ながら俺もジープの運転は出来るのだがこの相棒が頑なにそれを譲らない――理由を尋ねたら根っからの運転好きらしい――
マシンガントーカー、と仲間内からそう揶揄される相棒はその名に恥じぬ通り、帰り道ジープを運転しながらこの男はマシンガンの如くいろいろな事をしゃべり続けた。
慣れ切っている俺はそれを適当に聞き流しつつ俺は懐から煙草を取り出し、火を点けた。
一仕事終えた後の習慣であるそれは嫌煙家である相棒から幾ら苦言を呈され様とも辞めずに続けている。
ヘビースモーカーではないにしろ、愛煙家である俺からすればこれは至福の時であり如何なる理由があったとしても止める気は一切なかった。
今回も煙草を取り出し火を点ければ相棒は嫌な顔をしてぶつくさと文句を垂れるが俺は構わずに紫煙を肺一杯に充満させ楽しんだ。
それから数週間後。
あの任務を終えてから2~3日ほど休暇を与えられた俺たちは新たな任務へと駆り出されていた。
任務内容は俺たちの駐屯している基地から前線の野営地への補給物資の輸送任務だった。
荷物は武器・弾薬に食料と水、あと燃料だった。
物資は3台のトラックに載せられ、その護衛としてハンヴィーが4台付くことになっている。
ハンヴィーに運転手を含めて4人ずつにトラックの運転手を含めて総勢19人のコンボイを形成することになる。
最近では中々お目に掛かれない規模と言って良いだろう、恐らくなんらかの反抗作戦または攻撃の準備ではないかというのが部隊内での噂だ。
道のりは往復2時間ほどで比較的安全なルートを通ることになっているのだが最近、反政府ゲリラと思われるパルチザン等の襲撃が増えていたためこの規模の部隊が編制されたのではと予想出来た。
「嫌な予感がする・・・」
出発前、何気なしにそう呟くと相棒はお前の感は良く当たるんだから勘弁してくれと、うへぇ~、と言わんばかりの顔で言われた。
それが彼なりの気遣いだということを重々承知していた俺はそうだな、と苦笑と共に返した。
だが、俺が長年戦場で培ってきていた感は今回、絶対に良からぬ事が起こると俺に囁き続けていた。
結局のところ、俺の悪い予感は的中した。
それも、とても悪い方向でだ。
車列は順調に輸送ルートを走っていき、今回のルートで最も警戒していたエリアを抜け出そうとした時、それは起こった。
最も襲撃される可能性があったエリアを抜けようとし、皆がが張り詰めていた緊張の糸を緩めようとした時、先頭を走っていたハンヴィーが横転した。
IEDによる待ち伏せだった。
先頭車両が横転し、車列が止まった瞬間次には最後尾を走っていたハンヴィーが吹き飛んだ。
今度はIEDではなく、対戦車ロケットによる攻撃だ。
立地も最悪と言って良い、俺たちがいる位置は山岳地帯の細い道路で敵は山岳の上からこちらを好き放題撃ち下ろしが出来る状況だ。
あと数メートルで渓谷地帯を抜け出せるところで完全な奇襲を喰らった。
「全員、ハンヴィーから降りて稜線の影に隠れろ!!」
助手席に座る奴から無線機を引ったくり部隊全員に向けてそう叫び、俺は愛銃を片手にハンヴィーから飛びおりて稜線の影に隠れた。
元々今回の任務に就いたオペレーターたちはうちのPMCでも手練れの連中だったため、ほとんどの奴が稜線の影に隠れられた――トラックの運転手一人が運悪く逃げ遅れて蜂の巣にされた。
「よう、まだ生きてるか?」
「生憎な、俺は死神に嫌われてるらしい」
「ははは、ちげぇねぇや」
隣に滑り込む様に隠れてきた相棒と軽口を叩きつつ崖上を覗く。
RPGが飛んできて崖上から掃射された後、めっきり銃声が止んだ。
崖上を監視しても人っ子一人姿が見えない、しっかり隠れているようだ。
「・・・ゲリラじゃないな」
「あぁ、十分に訓練されている・・・」
「同業かな?」
「かもな」
相棒とそう話しつつ近くにいた通信兵を呼び、現在の状況と救援要請を向かう予定だった前線基地と司令部に連絡させた。
本部からの返信では救援部隊が到着するのは早くても30分後、それまで現状を維持せよというものだった。
返信が来るまでの間、被害報告を聞いて俺は思わず顔を顰めた。
先頭で横転したハンヴィー――アルファ分隊――は軽傷者2名、重傷者1名、無傷が1名(不幸中の幸いなことに全員、ハンヴィーからの離脱に成功していた)。
次にアルファ分隊の後方にいたハンヴィー――ブラボー分隊――は1名が負傷した以外は全員無事だったがその1名が分隊長だった。
その後ろに護衛対象の輸送トラック3台――先にも述べた通り2号車の運転手が戦死。
その後ろのハンヴィーは俺と相棒が所属していたチャーリー分隊で俺が声を掛けたお陰で全員無事。
そして最後尾のハンヴィーのデルタ分隊はRPGの直撃で全員戦死。
真面に戦闘出来るのは俺たちを含めて10人程だった(トラックの運転手は非武装なので数に数えない)
「これで30分間耐えれると思うか?」
「・・・相手の数によるな」
「敵はどんぐらいいると思う?」
「・・・少なくともこっちと同数またはそれ以上だな」
「最悪だな」
「あぁ、最悪だ」
こちらは先手を取られて戦闘力が削がれた状況、地理的に相手の方が有利で相手は反政府ゲリラではなく俺たちと同じPMC、更に数は最低でもこちらと同数以上、ついでに付け加えるならこちらの援軍は早くても30分後・・・四面楚歌ならぬ五面楚歌と言って良い状況だ。
滅入りそうな気分をなんとか押し殺し、俺は愛銃のマガジンを引き抜いて内部を確認しそれを戻してチャージングハンドルを引いて初弾を装填する。
それを合図にしたかの様に相棒も自分の銃をチェックし更に他のオペレーターたちも銃のチェックをした。
チェックを終え、敵が潜むであろう崖上を睨む相棒に声を掛けた。
「相棒」
「なんだ?」
「長い一日になるな」
「・・・そうだな」
正直言って疲れた。
3本同時投稿とかなにしてるんですかね?(おい)
まぁ、一本目の一次創作は殆ど執筆止まってるのでほぼほぼ2本同時投稿という形になるんですが・・・
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第2話 日常から非日常へ
実はプロローグは3分割しようと思ってたけど筆が乗り続け、どこで切れば良いか分からなくなってどうせなら最後までやっちまえ☆となって書きました。
次回から主人公(以後、433)がドルフロ世界を放浪します。
銃声と爆発音、怒声と悲鳴が閑散とした山岳地帯に響き渡る。
頭上からは鉛玉の雨霰が降り注ぎ、それを稜線の影で凌ぎ敵の射撃が弱まった瞬間を突いてお返しと言わんばかり奴らがいる方向に向かって撃ち返した。
各分隊に必ず1名ずついる分隊支援火器持ちのオペレーター達がLMGで制圧射撃を掛け、アサルトライフルを装備したオペレーター達がLMG持ち達がリロードする間をカバーし、狙撃兵達が不用意に顔を出した敵兵の頭を撃ち抜く。
接敵してから10分ほど・・・それを俺たちは繰り返していた。
ACOGサイトをのぞき込み、サイト内で捉えた敵兵の頭を撃ち抜いた。
稜線の影に身を隠し、空になったマガジンを落として新たなマガジンを取り出して装填する。
隣で制圧射撃を掛け、加熱した銃身を冷やすために身を隠した相棒へと声を掛けた。
「何人殺った?」
「3人、そっちは?」
「こっちも3人」
お互い倒した敵の数が同じだった事に思わず苦笑を浮かべた。
「因みに聞くが、何分経った?」
そう聞けば相棒は左腕の時計に目をやり、ニヤリと笑った。
「聞いて驚け?」
「なんだ?」
「まだ十分だ」
「ジーザス!!」
思わず地面を叩きそうになったがなんとか思い届め稜線の影からこっそり顔を出して相手側の方を見る。
相変わらず景気良くこちらに鉛玉を吹っ飛ばしてきている、きっと奴らの後方には物資が山ほど積まれてるに違いない。
そんな事を思いつつ顔を引っ込め、相棒に再度問いかけた。
「こっちの損害は?」
「アルファ分隊のベイカーとスウェンソン、ブラボー分隊のヴィーノとグレッグ、それとうちの分隊のジョージがヤられた。死んじゃいないが戦闘続行は無理だな」
「なんてこった、5人もやられたか」
「そうだな・・・降伏するか?」
「冗談だろ?こっちだって同数以上の奴を殺ったんだ。奴らが許してくれるとは思えん」
「同感だ!」
そう言いつつお互い再度、稜線の影から身を乗り出し敵の方へと弾幕を張った。
マガジンを撃ち切り、リロードのために稜線の影に隠れた。
戦闘要員が減ったこともあるがもう一つ問題があった。
「相棒」
「なんだ?」
「お前、マガジンどんだけ持ってる?」
「あと3つ・・・いや、2つ半だな。そっちは?」
「あと、4本」
「参ったな、この分だと他の分隊の連中も同じかな?」
「かもな」
試しに他の分隊に無線で聞いたところ、どこの分隊も似た様な返答が帰ってきた。
どの分隊も残弾が心許なくなってきていた。
「不味いな、このままじゃ俺らはナイフで戦う羽目になっちまう」
「カッチカチに武装した奴ら相手にか?冗談だろ?」
「冗談だと良かったんだがな・・・」
そう思い、思わずため息がつきそうになった時、俺の二人隣にいたオペレーターが弾が切れたと叫んだ。
ブラボー分隊のジョニーだった。
俺はまだ未使用のマガジンを抜くとジョニーに向けて放り投げた。
「ジョニー、貸し1だ!帰ったらビール奢れ!」
「済まん!助かった!」
礼を言いつつマガジンを入れ替えて射撃を再開するジョニー。
それを見届けつつ俺は隣にいるオペレーターに声を掛けた。
同じチャーリー分隊に所属するスタンリーだ。
「スタンリー、後方に下がらせた連中から予備のマガジン受け取って来てみんなに配ってくれ」
「りょ、了解!」
そう言って後方に下がるスタンリーを見届けつつ俺は愛銃を構えなおし敵への牽制射撃を再開した。
後方の連中から受け取ったマガジンも殆ど使い果たし、ナイフ戦に現実味を帯びてきた時異変が起きた。
敵が潜む山岳地帯で2度、3度と爆発が起こり敵の射撃が途切れたのだ。
みな、不審に思いつつ稜線から顔を出すると上の方で今まで殆ど姿を見せていなかった敵兵が何かに追い立てられる様に姿を現し算を乱す様に逃亡を始めた。
突然の事にみな思わず呆然とそれを眺める、すると遠くから微かにローター音が聞こえ始めた。
思わず周囲を見渡すと俺たちが向かう予定の方向から2機のヘリが向かってくるのが見えた。
最初は米粒程度の大きさだったそれは近づくに連れてその姿は明確に見えてきた。
メインローターの上に特徴的なレーダーを載せた2人乗りの攻撃ヘリ・・・AH-64D アパッチ・ロングボウだった。
みなそれを呆然と見上げていると無線に通信が入った。
『こちらハンター2-1、ジャガー0-1、聞こえるか?』
「こちらジャガー0-1、聞こえている」
『任務を終え、帰還途中だったんだがな。そちらが襲撃を受けてると聞いて飛んできた。どうやら間に合ったみたいで良かったよ』
「救援感謝する、危うく全滅するところだったよ」
『そいつは良かった、お宅らが運んでる荷物はこいつらの飯なんでな。間に合わなかったらどうしようかと冷や冷やしたよ』
「そいつは良かったな、ではしっかりご馳走をを届けることにしよう」
『是非ともそうしてくれ、俺たちは残敵の掃討に移る』
「了解した、期待して待ってくれ。あぁ・・・それと基地に着いたら一杯奢らせてくれ」
『フッ・・・PXの酒片っ端から奢らせるから覚悟しとけ?ハンター2-1アウト』
「程ほどに頼む、ジャガー0-1アウト」
ホバーリングしていたハンター2-1は高度を上げ、敵が逃げて行った方向へと向かった。
それをやっと思考が追い付きなにがあったか理解したオペレーター達が歓声を持って見送った。
俺たちは飛び去って行くハンター2-1を見届け、車列に戻った。
幸いなことに車列に損害と言える損害はなかった、どうやら敵は車列を丸々鹵獲したかったらしい。
出来れば戦死したデルタ分隊のドックタグを回収してやりたかったが残念ながら未だにハンヴィーは燃え盛っており断念する。
代わりに現在地を記録し後程回収する手立てを整えた。
19人中、5名が戦死、重軽傷者が5人、おまけに弾薬は殆ど残ってなくあとはハンヴィーに備え付けられているM2 ブローニングぐらいだった。
更に問題なのは負傷したオペレーター達をどうするかだった。
本来なら後送したいところだがまだ襲撃を受ける可能性がある以上、彼らだけを送ることは出来なかった。
生き残った各分隊の分隊長との協議の結果、彼らも前線基地へと連れて行ってその後、後方へと送るということになった。
各分隊に指示を出し移動準備を早急に整える、俺たちチャーリー分隊が一番損害少ないこともあり俺たちが車列の先頭へと立つことになった。
負傷しているオペレーター達はアルファ分隊のハンヴィーに乗せてチャーリー分隊のハンヴィーの後ろに着かせてその後ろにトラック隊、最後尾にブラボー分隊のハンヴィーが着くことになった。
準備が整い、あとは出発するだけの段階で俺はふと景色を眺めた。
雲一つない青空に乾燥した大地に燦燦と輝く太陽が容赦なく焼き付ける。
「どうした?相棒、そろそろ出発するぞ?」
「あぁ・・・」
今乗る、と答えようとしたところで一発の銃声が辺りに轟いた。
ハンヴィーに乗り込もうとしていた俺は急速に足の力が抜け仰向けに倒れた。
スローモーションに映る視界の先では相棒が信じられないものを見たと言わんばかりに目を見開いているのが分かった。
ドサリと倒れ込んだ、胸から込み上げてくるものを感じ思わず吐き出した。
血だった・・・赤黒く変色した血、それが俺の口周りと上着を真っ赤に染めた。
胸にも違和感を感じ触ってみれば今吐き出したのとは違い赤い鮮血が手を真っ赤に染めた。
そこまでしてやっと気づいた、自分は撃たれたということに。
周りでは怒声が飛び交い、ハンヴィーに乗り込んで待機していたオペレーター達が外に飛び出し周囲を警戒し一人のオペレーターがとある方向を指さすと共に手に持っていた狙撃銃を構えてトリガーを引いた。
確か、アルファ分隊に所属する狙撃兵のクルツだ。
今回、参加している部隊内で一番能力の高い狙撃技術を持った奴だ。
それをぼんやりと眺めていると突如と抱き起こされハンヴィーの影へと引きずられた。
ハンヴィーへと凭れ掛けされ、俺を引きずった奴の顔を見るとそいつは相棒だった。
何時もの陽気な笑顔は消え失せ、ボロボロと泣いている。
相棒は泣きながら必死に傷口を抑え辺りの奴に怒鳴り散らしている。
「メディック!メディックを連れてこい!」
なんて顔してやがんだ・・・たく、そんなんじゃマシンガントーカーの名が泣くぜ?
既に動かすのでさえ億劫になってる右手を動かし、傷口を抑える相棒の手に添える。
今になって激痛を認知し、思わず顔を顰めてしまうが相棒に向けてニヤリと笑みを浮かべる。
「もう・・・十分だ・・・」
「なに言ってやがんだ!この程度の傷でお前が死ぬ訳ねぇだろ!?すぐにメディックが来る!そしたら直ぐに・・・」
と続けようとする相棒の言葉を遮り、首を横に振った・・・それだけでも激痛が走った。
・・・それに既に足の感覚が殆どない、手も段々と感覚が遠のいていくのが分かった。
「・・・肺をやられた・・・もう助からん」
「ダメだ!ダメだ!、死ぬな、相棒!」
泣きじゃくり、俺の肩を揺する相棒に向けてニヤリと笑みを浮かべようとして突如と込み上げてきたものを吐き出した。
さっきより更に赤黒さを増したどす黒い血液だった。
あぁ、くそ・・・口の中が鉄臭ぇ・・・
「相棒・・・頼みがある・・・」
「なんだ?」
「わりいが俺の懐から煙草取ってくれ・・・無性に吸いてぇんだ・・・」
「・・・分かった」
そういうと相棒は俺の懐から煙草とライターを取り出すと不慣れな手つきで煙草に火を点すと俺に咥えさせた。
大きく吸いたいところだが残念な事に肺に穴が開いてるために吸うことが出来ず浅く吸うことしか出来ない。
「わりぃな・・・」
「なんてことはねぇさ・・・」
泣きながら笑う相棒に俺も笑みを零した。
そうだ、笑え、お前に泣き顔なんざ似合わねぇ、何時も通り笑ってみんなを笑わせろ。
「・・・相棒」
「なんだ?」
「俺の持ってるJAZZのCD・・・確か欲しがってたよな・・・?」
「あぁ・・・」
「お前にやるよ・・・」
「・・・分かった、貰っとく」
泣きながら頷く相棒に満足し俺は空を見上げる。
最後の煙草を楽しみながら俺は今までの人生を振り返った。
戦災孤児だった俺は傭兵だった義父に拾われ、戦闘技能を叩きこまれてきた・・・その後は義父の後を追って傭兵になって世界中を渡り歩いた。
とある切っ掛けで今のPMCにスカウトされ、相棒と出会った。
思い返せば中々、波乱万丈の人生だったものだと思わず苦笑が出そうになった。
そろそろ限界かな・・・?手足の感覚は既になくなり、視界も既に朧気・・・思考もままならなくなってきていた。
「相棒・・・」
「なんだ・・・?」
「わりいが、先に休ませてもらうぜ?」
あぁ・・・おやすみ」
「あぁ・・・おや・・・すみ・・・」
重くなってきた瞼に抗うのを止め、目を閉じれば体から残っていた力が抜けていき何時しか意識は途切れていた。
暗闇へと沈んでいた意識が浮上していくのを感じる。
目を開ける、ぼやけていたが暫くすると視界がはっきりとしてきた。
目に入ってきたのは薄暗い天井だった。
俺はあの時、確かに死んだ・・・いや、死んだ筈だった・・・もしかして奇跡的に生き残った?
いや、あり得ない、肺に風穴が開き2度も喀血したしなにより手足の感覚が無くなり死を直感する程だったのに生き長らえるとは思えない。
だが、実際に自分は死ぬことなくこうやって生きている・・・なにがあった?
そうやって思考を巡らすも答えを得ることは出来ず、とりあえず起きるかと上半身を起こした。
体は抵抗なく――少なくとも肺に穴が空くという重症を負ったとは思えないほど――起き上がることが出来た。
その事に違和感を覚えつつ俺は部屋の中をグルリと見回す。
俺が寝ているベッドの他には姿見用の大型の鏡にテーブルとその上に置かれたモニターの電源が入ったPC。
それとテーブルの上には衣類が置かれており、そのテーブルの横の壁にはガンラックが設置され何かしらの銃――恐らくアサルトライフル――が掛けられている。
明らかに病室ではない、がだからと言って基地にある俺の自室という訳でもない(そもそも俺の自室はこんな殺風景じゃない)
どこだ?ここは?益々深まる謎頭を傾げつつベッドから立ち上がろうとして俺は自分自身の異変に気付いた。
自分の髪に違和感を持ちそれに触れると髪は中々の長さを持ち感覚では腰ぐらいまであるということに気づいた。
確かに仕事が忙しい頃は髪を切る時間さえなく、伸ばしっきりのまましたことはあるがここまで伸ばしたことは無かったはずだ。
それにあの任務の時、俺は髪を切ったばっかりで殆ど伸びてなかった筈・・・なのにここまで伸びているのは何故か・・・そう思いつつ俺は後ろ髪を持って目の前に持っていく。
「・・・は?」
俺は目の前に持ってきた自分の髪を見て、思わずそんな声を上げた。
指の隙間をサラサラと流れる様に零れる水色に近い綺麗な銀髪だ・・・因みに俺は黒髪なので銀髪ではなかったはずだ。
暫く、サラサラと流れる銀髪を目を見やりつつそう言えばと思う。
さっきはいろいろと考え事していたお陰で全く意識していなかったが自分はあんなに胸が盛り上がっていただろうか?
恐る恐る、俺は両手を胸にやり、胸部で自己主張が激しい”それ”へと触れた。
ムニュリ
擬音にすればそう鳴るである様子と共に指が沈み込んだ。
その時、可笑しな感覚を味わい思わず変な声を上げそうになったがなんとか抑え込んだ。
次にもしやと思って股間に手をやり、本来そこにある筈ものがなくなってる事に気づいた。
「・・・マジか」
思わず泣き崩れそうになりそうなるのを我慢し視線を周囲に回せば目に入ったのは姿見の鏡だ。
自分の現在の姿を見るのは少々、怖かったが何時までもそうしてる訳も行かず、おずおずと鏡の前に立った。
「ほぉ・・・」
思わず感嘆の声が漏れた。
それほどまでに鏡に映った姿・・・自分の現在の容姿は美しかった。
見た感じ年齢は18~20歳ぐらいで腰まで届く水色に近い銀髪に切れ目ガチの鋭い灰色の瞳。
スタイルも良く出るとこは出て締まるところは締まっているモデル体型のそれは薄手の病衣の上からしっかり教えてくれた。
その姿を暫し見つめた後、俺はため息をついた。
薄々気づいていたとはいえ、まさか自分が女になっているとは夢にも思わなかった。
確か、こうゆうのを憑依だとか転生だとか言ったのだろうか?
以前、ニホンのサブカルチャー文化にどっぷりとはまり込んでいた相棒から散々と聞かされたことを思い出す。
当時はそんなものあるかと言って適当に聞き流していた訳なのだが・・・まさか、自分がそれを体験する等とは夢にも思わなかった。
しかも、男から女に性転換する等と・・・もし神とやらがいるのなら是非ともそいつには鉛玉を1マグ分お届けしてやりたいところだ。
いつまでも鏡の前で突っ立ってる訳にもいかず、まずは情報収集するためにテーブルの上のPCへと向かった。
「なるほどな」
かなり古いパソコンで操作に四苦八苦しながらもなんとか欲しい情報を仕入れ、頷いた。
結論から言うなれば俺が今いる場所・・・いや、この世界は・・・
「異世界・・・か」
そう、異世界だった。
俺がいた世界とは異なる歴史を辿った言わばIFの世界。
少なくとも俺のいた世界にはグリフィンという名のPMCやIOP製造会社、鉄血工造等と言う企業は存在しなかった。
そして何より・・・
「戦術人形・・・ねぇ?」
人間の少女と殆ど変わらない容姿を持ち高度なAIによって人間となんら変わらない思考と感情を持ったロボット。
そして、俺自身・・・いや俺の魂を宿したこの子も戦術人形の一種だ。
先ほど見つけたこの子に関する資料を開き中のデータを閲覧する。
「HK433・・・か」
資料に載っているこの子の名前を呟き、チラリとガンラックに掛かったアサルトライフルを見た。
IOP社16LAB研究所にて試作されていた特別製の戦術人形HK433。
ヘッケラー&コッホ社製アサルトライフルHK433をモデルとした戦術人形。
通常の戦術人形に比べて性能が向上しており、更に高度な指揮モジュールを搭載しているため単独行動並びに部隊の指揮も可能。
「至れ尽くせり・・・だな」
椅子から立ち上がりガンラックに掛けられたアサルトライフルを手に取る。
初めて手に持つ筈のアサルトライフルはまるで長年使い続けた様に違和感なく手に馴染んだ。
「便利なもんだな・・・戦術人形というは」
思わずそう呟きながら、俺は手に取った新たな愛銃のチェックを始める。
例えこの子の半身の様な存在であってもチェックは欠かさない、これは長年傭兵をやっていた自分の習慣だった。
サイトはフロントサイトとリアサイトがフリップ式に換装されホロサイトが装備されている。
バレル下部のピカティニィレールにはバーチカルフォアグリップが装着され、マズルにはサイレンサーが取り付けられていた。
一通りの確認を終えてから動作チェックをし、特に問題ないのを確認しそれを満足しながらライフルをテーブルに置き次はテーブルの上に置かれたサイドアームを手に取る。
「ふむ・・・H&K社製Mk.23か・・・」
悪くない拳銃と言って良いだろう。
俺自身、愛用してた訳ではないが何度か使ったことがあった。
マズル部分にはサイレンサーが取り付けられ、銃身下部にはLAMが装着されていた。
Mk.23も一通りチェックし動作を確認しテーブルの上へと置いた。
一通りの確認を終え、満足した俺はチラリとテーブルの上に置かれた衣服に目を向けた。
「さて・・・着替えるか」
流石に何時までも病衣のままでいる訳にもいかず、この子の服装であろうそれらに手を伸ばし俺は着替えを始めた。
病衣を脱ぎ捨て、ズボン、インナー、ジャケットと着込んでいく(下着類はこの子の中のデータに着け方があったので助かった)
サイドパックを体に取り付け、腰のベルトを通して右膝にレッグホスルターを装着し腰の裏側にナイフホルスターを取り付ける。
ブーツを履いて脱げない様にキツく靴紐を縛り上げて結び、スリングを装着したHK433を体に通しその上から防弾・防刃・耐火・耐水と何気に凄いケープを身に纏った(因みに髪は邪魔だったのでポニーテールにした)。
「まぁ、こんなもんか」
オープンフィンガーグローブを調整しながら鏡の前で今の姿を確認する。
特にへんなところは見当たらず、上手く着こなせていると判断する。
最後にライフルを構える、ハンドガンに持ち替える、ナイフに持ち替える等の一連の動作を行い行動に支障がないことを確認した。
「それじゃあ、行ってみますかね、異世界って奴に」
パソコンの電源を落とし、俺は室内を見渡した後に部屋の唯一の出入り口であるドアを開け、外へと最初の一歩を踏み出した。
ものすっごく急展開で物語進めました。
けどこれで次回から楽しい楽しい本編です(`・ω・´)ゞ
あ、因みに433の服装のモデルはAK-12です、なんでAK-12かだって?作者がAK-12大好きだからだよ
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第3話 廃墟放浪
これと言って書く内容が思いつかず、プロットを一切考えずに適当に書いてたら中身が殆どないに等しい回になってしまいました。
あ、それとあとがきにて主人公の軽い紹介載せておきます。
崩れ去り既に原型を留めない廃墟、焼け落ちて最早木炭同様へとなり果てた樹木、必要な養分を得ることが出来ず枯れ果てた草花。
俺が寝ていた建物――恐らく元はIOP社が保有していたと思われる工場――を出て既に一週間を過ぎようとしていた。
今まで目にしてきたのは俺がいた世界でも普通に見かけた荒れ果てた大地と長い戦乱によって朽ちた建物たちばかりだった。
人っ子一人どころか生き物さえ未だに出会うことなく、俺は彷徨い歩いていた。
「さて、どうしたものかな」
見上げれば広がるのはどんよりと曇った空模様。
今ににでも一雨降って来そうな気配があるが未だに天候は崩れることなく、現在の状況が続いている。
「全く、いやな天気だ」
思わず空を睨みつけつつ、俺はサイドパックを漁る。
ゴソゴソとパックの中を漁り目当ての物を引っ張り出す。
サイドバックから取り出した箱を慣れた手つきで振れば中から一本の棒状の白い筒が顔を出し、それを咥えて引き抜くと箱をパックに戻し代わりにライターを取り出して先端に火を点した。
「~♪」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。
上機嫌となって咥えたそれを燻し、肺一杯にそれを吸い吐き出した。
ぷはぁ~、という声と共に口から紫煙が吐き出されそれは空中に広がって露散した。
バックから引っ張り出したもの、それは煙草である。
三日ほど前に偶々物色するために侵入した廃工場が運よく煙草の製造工場であり自分が吸っていた物とは銘柄が違ったが有り難く頂戴したものだ。
予備を含めて5箱ほど拝借してきたので暫く、煙草に困ることはないだろう(勿論、その後に別の廃工場に潜入して食料やら飲料水等の物資も入手した)
暫し紫煙を楽しみつつ廃墟の間を歩き続ける。
特に宛てがある訳ではないがこの世界の現状を良く知るためにはこうやって自分の足で歩いて確認するのが一番である。
「~♪」
生前――というのも違和感があるが――最後に吸った煙草が満足するほど吸えなかったためか、こうやって好き放題吸えることで上機嫌だ。
思わず鼻歌を歌ってしまうレベルには気分が良かった。
ガランッ・・・
微かに聞こえた瓦礫が崩れる音。
その音を目聡く聞き取るとさっきまでの上機嫌はどこへやら、一瞬にして傭兵としての顔に戻ると共にスイッチを切り替える。
煙草の火を入念に消して携帯灰皿へとねじ込むとそれを懐に仕舞い、スリングで吊るしているライフルを構え音が聞こえた方へと向かった。
周囲をクリアリングしつつ、音を立てない様に細心の注意を払いつつ先ほどの音の発生源へと向かう。
瓦礫の向こう、廃墟の裏に敵がいるものと仮定し一つずつ入念に索敵しながらジリジリと歩を進める。
やがて一つの廃墟の向こうからなんらかの気配があることに気づき、その廃墟を背にしてゆっくりと内部を確認した。
(・・・居た)
廃墟の中には3体の人影が確認出来た。
だが、その3体とも人間という訳ではない。
独特な装備で固めそれぞれ手にはSMGやARを装備している。
パソコンで見た覚えがあった、グリフィン・・・いや、人類と敵対している鉄血の人形で確かSMGを装備しているのがリッパーでARを装備しているのがヴェスピドだった筈だ。
ヴェスピドが1体にリッパーが2体、こちら側に背を向ける形で円になっているのが確認出来た。
奴らに注意を払いつつ、ライフルをチェックする。
マガジンを外して残弾と内部の状況を確認、まだ一度も戦闘をしていないため残弾に心配はない、次にチャージングハンドルを引いて薬室の状況を確認。
双方に問題ないのを確認するとマガジンを差し込み、音が出ない様にゆっくりとチャージングハンドルを引いて初弾を装填する。
セーフティをセーフからセミへと切り替える。
足元に転がっている石ころを拾い、数度深呼吸を行い俺がいるのとは正反対の方へと石を放り投げる。
ガランッ・・・ガランッ
放り投げた石が音を立てて地面に落ちた。
その音を聞いた鉄血兵たちの意識がそちらに逸れた瞬間を狙い、一気に突入する。
まずは一番近くにいるリッパーを狙った、素早くを狙いを定めてワンショット、後頭部を撃ち抜かれてそのまま前に倒れ込んだ。
次に狙うのもリッパーだ、室内戦ではARより小回りが利くSMGの方がよっぽど脅威になる。
それにリッパーの方が仲間に倒れたのに気づいて素早くこっちへと振り返った。
突如の奇襲に驚いた様な顔をする奴の眉間を狙ってトリガーを引いた。
撃ち出された弾丸は正確に奴の眉間を撃ち抜き、奴はそのまま衝撃で仰向けに倒れた。
最後に残されたヴェスピドが慌ててこちらにARを向けようとしたがそれより早く懐へと飛び込み、蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたヴェスピドは壁にぶつかり一瞬、動きを止めたがすぐさまこちらへ対応しようとしたがもう遅い。
「残念、ゲームオーバーだ」
奴が動くよりも早く接近し眉間にライフルを押し付け、トリガーを引いた。
「ふむ、まぁこんなところか」
倒した鉄血兵たちから装備を物色し終え、そう呟く。
食料や飲料水等は特に問題ないのだが弾薬の類となると簡単に入手することは出来ない。
放棄された基地や補給拠点に訪れれば補給出来るだろうが生憎、そう簡単には見つからないし良しんば見つけれたとしても現在、人類は鉄血と戦争の真っ最中。
大事な弾薬が遺されているとは到底思えなかった。
だから出来れば鉄血兵から補充することは出来ないか、と思っていたのだが運が良いことに奴らが使ってるARも5.56×45mm弾を使っていてくれた。
「さて、そろそろ移動するか」
何時までもここに留まっていたら敵が来るかもしれない。
そう判断した俺は足早に廃墟を去った。
適当に歩いてたらいつの間にか住宅街へと到達していた。
住宅街と言っても殆ど廃墟ばかりだが中にはなんとか形を保っている一軒家が見られるため、そう判断出来た。
ブラブラと住宅街を散策し、2階建ての一軒家が目についた。
特に見覚えがあった訳ではない、ただなんとなく目についた、ただそれだけだ。
暫し、その家を眺め中に入ることにした。
門扉に手を掛けて軽く押すとギイィという金属が錆びた音と共に開いた。
一応、中に何か居た時に備えてレッグホルスターからMARK23を引き抜き、セーフティを解除しておく。
正面に抱えているライフルは邪魔にならない様に腰へと回し準備を整え、ゆっくりとドアノブを回した。
幸いにも鍵は掛かっておらず簡単に家の中へと入ることが出来た。
一応、死角に注意しつつ室内のクリアリングをしていく。
玄関、リビング、キッチン、バスルームの順に一階の確認を終え、次は2階へと移った。
2階には三つほど部屋があり、一つずつクリアリングしていく。
最後の部屋のクリアリングを終え、家の中が完全に安全だということを確認して緊張の糸を緩めた。
右手に構えていたMARK23にセイフティを掛けてホルスターに戻し、一階のリビングへと降りた。
ケープの留め具を外し、それをソファの背凭れに放り投げ、更にジャケットの首元を緩めた。
リビングを見渡せば室内は荒れ果てており、長年ここに人が立ち寄っていないことを察することが出来た。
ふと、部屋の壁際に設置されている戸棚に写真立てが置いてあるのに気づいた。
何気なしそれを手に取った。
写真立ては埃を被っており、それを軽く拭って中に収められている写真を確認する。
場所は恐らくこの家の前、夫婦と思われる一組の男女が二人の子供と思われる二人の赤ん坊を抱え、仲睦まじげに笑顔を浮かべている写真だった。
この家の本来の主たちであろうことは一目で分かった。
果たしてこの家族は無事に逃げることが出来ただろうか?もしかしたら・・・
と、そこまで思考をし頭を振った。
そんなこと考えたところで自分には関係のない話だ。
写真立てを元にあった位置へと戻し、ソファへと腰かけた。
ギシリと軋み長年使われていないソファは思った以上に深く沈み込んだ。
そのまま、背凭れに凭れ掛かって暫し、天井を見上げる。
5分、10分と天井を見上げたままボッーとしふと、喉が渇いていることに気づいた。
サイドパック――煙草が入ってるのとは違う方――からペットボトルを取り出し、中身の水を幾分か口に運んでのみ込んだ。
サイドパックの留め具を外してテーブルの上に置き、ブーツの靴紐を解いて脱ぎ捨てる。
スリングで体に掛けているライフルを外してすぐ手に取れる様にソファのひじ掛けへと立てかけた。
なんとなく、ゴロリとソファに寝っ転がった。
そのままボッーとしていると段々眠気が襲ってきた。
不味いな・・・ちょっと横になるだけだったんだが・・・思った以上に疲れていた・・・かな?
遠のいていく意識の中でそう思いつつ、俺は眠りに就いた。
主人公紹介
名前 HK433
メイン HK433
サイド MARK 23
傭兵の前世を持つ元男の戦術人形。
とある仕事で戦死、目が覚めたらHK433の戦術人形へと憑依していた。
前世では名が知れた傭兵だったため腕前は確かで戦闘技能においては他の戦術人形達に追随を許さない。
ヘビースモーカー程ではないが愛煙家であり常に煙草を常備している。
容姿端麗で腰まで届くロングヘアの水色に近い銀髪に灰色の瞳をしている。
服装はダークブルーと白の二色で統一されており、上からケープ、インナー、ズボン、軍用ブーツを着込んでいる。
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第4話 懐かしき夢と暗躍する二つの影
書く内容思いつかないので中々難航したよ・・・パトラッシュ
なお、内容は殆どない模様
パラリ・・・パラリ・・・
静まり返った室内で本の頁を捲る音だけが微かに響いてる。
とても静かな時間だ、時折窓の外を車が走って行ったりドアの外を歩いてく足音と声が聞こえるだけだ。
普段、銃声と爆音を日常的に聞く生活をしているがどちらかと言えばこういう静かな時の方が好みだ、まぁ・・・周囲の奴には驚いた顔を良くされるが・・・
パラリ・・・パラリ・・・と頁を捲りつつ、喉の渇きが気になればテーブルの上に置かれた生温い水が入ったペットボトルを口に運んだ。
ドタッドタッドタッ・・・!
廊下の外から慌ただしく走る音が聞こえ、思わずため息をついて睨みつけた。
任務続きでやっとの思いで得た休暇だ、出来れば読みかけで続きが気になっていた小説の続きを読んだりとのんびり過ごしたかったのだがそうはいかないらしい。
足音は部屋の前で止まり、ノックもせずにドアが開かれ一人の男が入ってきた
「おう、戻ったぜ」
静かな時間をぶち壊され、恨みがましく睨みつける俺に対して悪びれた様子も見せずにそういう男。
身長は180cm台に届くだろう長躯にブラウン系の
俺から相棒と呼ばれ、仲間内からはマシンガントーカーと
思わず受け取ってしまい、その瓶に貼られたラベルを確認しこれを渡してきた張本人に声を掛けた。
「おい、まだ昼前だぞ?」
「ケチケチすんなよ、どうせ休みなんだから良いだろ?」
俺に瓶を渡し、ドカリと隣のベッド――俺と相部屋――に腰を掛けた相棒はニカッと笑みを浮かべながら手に持った瓶・・・ビール瓶の蓋を開けて呷った。
朝っぱらからいきなりどこかへと出て行ってたのだがまさか、
寝そべって本を読んでいたのだが起き上がってベッドに腰かけ、本に栞を挟んで横に置いた。
暫し、手元のビール瓶を凝視しややあって蓋を開けて俺も相棒に続いて呷った。
ゴクリ・・・ゴクリ・・・と喉をビール独特の苦みと炭酸を流し込んだ。
キンキンに冷えている訳ではなく、生半可に冷たいビールを1/4ほど飲み干し、視線を感じて前を見れば相棒がニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「・・・なんだよ」
「いや、昼前だとか言ってる癖に飲むんだなぁって思ってな」
「ほっとけ」
ビール瓶をテーブルに置いて読みかけの本を手に取り、壁に凭れ掛かって続きを読み始めた。
相棒はそれをニヤニヤと笑いながらビール瓶を煽っている。
その態度に思わずイラッとして何か投げつけてやろうかと考えたが手短なところに丁度良い物がなく、代わりにビール瓶を手に取って呷った。
数分ほどこちらを見て笑いながら瓶を煽っていた相棒はそれが飽きたのか、口を開いてしゃべり始めた。
「なぁ?知ってるか?ニホンには面白い文化があってだな?」
マシンガントーカーと呼ばれるに相応しく、相棒はどこで仕入れたんだと聞きたくなる知識を披露し始めた。
「・・・ッ!」
目が覚めた。
暫し薄暗い天井を眺め、それが寝る前にお邪魔した一軒家のリビングの天井だということを思い出す。
懐かしい夢を観た、あれは何時頃だったかな?と思いつつ起き上がる。
今の時間を確認したいのだが生憎、手元にもましてやこの家にも時計はないので時間を確認する手段がない。
確か、この家に着いたのが夕方だったのでもしかしたら今は夜かもしれない。
そう思いつつ軽くストレッチして固まった体を解しつつ立ち上がり、ベランダに繋がる窓ガラスへと向かう。
窓ガラスは割れて足元にガラスが散らばっており、それを踏みつけない様に注意しながら進み窓を開ける。
窓は錆びついていて開けるのに中々苦労したがなんとか開けて外を見た。
空は真っ暗から段々白んで来ているのが分かった、どうやら俺は朝まで寝ていたらしい。
余程、疲れていたんだなと内心、苦笑しつつテーブルの方に戻りサイドパックから眠気覚ましにと煙草を取り出した。
煙草を口に咥え、ライターを手の中で弄びながらベランダに戻りそのまま縁側へと腰かけた。
なんとなく、室内で煙草を吸うのは気が引けたからだ。
カチンッ、という子気味の良い音と共にライターに火が点り、それに咥えた煙草をかざして火を点けた。
煙草の先端に火が点ったのを確認してライターの火を消して隣に置いた。
「すぅ・・・はぁ・・・」
紫煙を吸い込み、吐き出す。
それだけで煙草の味が体中を駆け巡り、ぼんやりとぼやけている頭をしゃっきりとさせた。
朝一番の煙草を堪能していると白け始めていた空に太陽が昇り始めていた。
新しい1日の始まりだ、さて今日はどこに行こうか?
吸い殻と化した煙草を携帯灰皿にねじ込み、立ち上がった俺は体を伸ばしつつ出発の準備を整えるため、室内へと戻った。
簡易的な朝食――廃工場で拝借した長方形のクッキ――を水で流し込み、脱ぎ捨てていた装備を着込んでいく。
ジャケットを締めてサイドパックを取り付け、スリングを体に通してケープを羽織い最後にブーツを履いた。
持ち物を確認して忘れ物がないことを確認をして玄関へと向かった。
ドアを開け、外に出ようとして中に振り返った。
「・・・お邪魔しました」
無人の室内にそう呟き、外へ出た。
廃墟と化した町を二人の少女が進む。
無駄のない動きで周囲のクリアリングをしつつ的確にそして迅速に進んでいく。
やがて二人はとある廃墟の建物の前で動きを止め、ハンドサインでお互い意思疎通を行うと廃墟の入口にへと張り付いた。
片方が周囲を警戒しもう片方が内部を確認した後、内部へと突入を図った。
周囲を警戒していた方もそれに続いて迅速に内部へ突入、先に突入した方と共に素早く内部のクリアリングを行っていく。
「クリア!」
「クリア!」
お互い声を掛けて安全を確認し、構えていた銃を下げた。
「ここの筈よね?」
「はい、そう聞いています」
部屋の中心に集合した二人はそう言って周囲を確認し、部屋の隅に集められている鉄血兵を見つけた。
日陰な上、入口からは死角になる位置に置かれたそれは直ぐに気づくことは出来ない。
片方の少女が慌ててライフルを構えようとしたがもう片方の少女がそれを手で制した。
訝しげにしていると手で制した少女は笑みを浮かべそのまま鉄血兵の方へと無警戒で歩き始めた。
思わず声を掛けようと口を開いたところでそれを遮られた。
「警戒する必要は不要よ?ここに入ってきた段階で撃たれなかった時点でね?」
そう言って彼女は倒れ伏す鉄血兵の傍によるとそれを確認し始めた。
それをわき目にしつつ無線機へと手を伸ばす、相手は彼女たちの指揮官に当たる女性だ。
報告を終え、一息ついたところでで声を掛けられた。
「どうしました?」
「これを見て頂戴」
「?」
相棒である彼女にそう言われ、彼女に指さすもの・・・機能を完全に停止させた鉄血兵を確認する。
変哲もない、良く見かける鉄血の戦術人形のリッパーとヴェスピドだ。
「?これがなにか?」
「気づかない?」
「?」
可笑しそうに笑う彼女に訝しげに思いつつもう一度確認する。
強いて言うなれば3体共、
「気づいたみたいね」
「えぇ・・・これは・・・」
「そう、あり得ないのよ・・・ここまで
そう普通はあり得ないのだ、
いや、撃ち抜くこと自体は難しいものではない、自分や彼女だってやれと言われればやれるという自信はある。
だがこの様なことを最初っから軍用としてではなく、民生用として作られた
答えは否だ、彼女たちにそんな器用なことは出来ないしそもそもそんな必要なく彼女たちは鉄血兵を蜂の巣にするだろう。
「このリッパーは後ろから、こっちのリッパーは正面から、それでこっちのヴェスピドは正面から・・・装備が一部損壊してるところを見ると蹴り飛ばされて壁にぶつかったところで至近距離から」
そう言って彼女が見る先を追えばその先にはなにかがぶつかって崩れ掛かっている壁があった。
「・・・グリフィンでしょうか?」
自分自身、信じてないが思わずそう聞いた。
彼女はさぁ?と言って肩を竦めた。
もしかしたら軍事訓練を受けた人間、という可能性もあるがその可能性は殆どない。
高濃度の汚染地域からだいぶ、離れているとはいえ全くの無害というわけではない、ただの人間では長居すればそれ相応に被爆する可能性がある。
そんな状況下でそんなことをする物好きなどおるまい。
「それだけじゃないわ、ヴェスピドの装備を良く見てみなさい」
そう言われて倒れているヴェスピドの装備を確認して気づく。
「・・・マガジンが無くなってますね」
「そう、マガジンが無くなってる・・・つまり相手は未知の敵ではないってこと」
残念ね、と冗談めかしにそう言う彼女をしり目に演算能力をフルで動かして思考を巡らす。
相手は誰だ・・・?これほどの腕前を持つ人間又は戦術人形・・・
一応、思い当たる連中なら知っている、彼女たちならこの程度のことなら造作もないだろう。
だが、態々彼女たちがこんなことをするとは思えない。
彼女らだったら証拠の隠蔽を兼ねてグリフィンの戦術人形たちと同じ様に蜂の巣にして証拠を残さない様にする筈だ。
そう結論したところで隣に立つ彼女が笑い声をあげた。
「フフフッ・・・」
「どうしました?」
「いえね?会ってみたいと思ったのよ、これをやった犯人に」
心底楽しいと言わんばかりに獰猛な笑みを浮かべる彼女に思わずまたかと呆れた。
普段は冷静沈着なのにこういう時に限って本性を現す彼女に癖癖とした。
「まぁ、良いわ・・・合流ポイントに行きましょう」
「・・・はい」
夢の部分とお邪魔していた家を出るところを掻くまでだけで4000文字超えるとは思ってなかった・・・
最後の二人は・・・いったい誰なんですかね?(すっとぼけ)
早くAR小隊とか404と絡ませたいな~
あ、あとタグいろいろ追加しました(保険として)
これで好き放題出来るね!(おい)
とある方の感想で中々良いアィデアが生まれたのでその内、設定集的なのも上げたいと思います
-追記-
多機能フォームで打ち込んだ後、そのページを閉じて投稿するとなんかバグるみたいですね・・・
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第5話 前編 味方との合流
7か月近く放置された小説、誰も気づかへん気づかへんって(銃声
はい、という訳で久々の更新です、ほんと遅くなってすませんでした!!
リアルが忙しかったりモチベ死んだり、買った公式資料読んでたらやろうと思ったネタが吹っ飛んだり、HoiⅣやったりドルフロやったりしてたらこんなに経ってました☆
けど、これ不定期更新だから(震え
許して?☆
ガチャッ・・・
少しだけ開けたドアから室内を確認するが中は薄暗くしっかりと確認は出来ない。
仕方ないのでHK433からMk.23へと持ち替え、銃身下部に装着されているLAMのフラッシュライトをオンにして室内へと侵入を図る。
正面から、右、左へと確認を素早く行い、室内に敵が潜んでないのを確認する。
最後に入ってきたドアをしっかりと閉めて警戒を緩めた。
思わず煙草を、と思ってサイドバックを探りそうになって手を止めた。
代わりに室内を物色していくことにしてMk.23を構え直して室内を確認し始めた。
あの一軒家を出てから一週間ほどが経った。
この世界の現状を粗方把握したのでそろそろグリフィン社に合流しようと思っていたのだが、そうは問屋が許さなかった。
あの家を出た後も何度か鉄血兵と遭遇し交戦を繰り返す内にあちらさんでも俺の存在が鬱陶しく感じ始めたのかここら辺に展開する鉄血兵の数が増えてきたのだ。
増えたと言っても殆どの敵はプラウラーやスカウト、ダイナーゲートが殆どでその中に少数のリッパーやヴェスピドが紛れてる程度だ。
個々の戦力は大したことなく問題なく対応できるのだが流石に数を頼みに攻められるとこちらが圧倒的不利であった。
お陰でこちらは思うように動くことが出来ず、未だにこの街から出れるずにいた。
幸いなことに、弾薬はまだ余裕があった。
敵が増えてきたのを早く察知出来たので交戦は必要最低限に控えていたしヴェスピドから弾薬を頂戴していたのでまだ持つだろう。
・・・まぁ、いざという時はMk.23とナイフがあるが正直、これで戦うのは勘弁願いたいところだ。
それは兎も角、今回侵入を果たしたのはどうやら食品等の倉庫だった様で積まれた段ボールを確認すれば中に入っていたのは食料とミネラルウォーターのペットボトルの山だった。
食料と言っても非常食の一種であるスティック状のクッキーばかりだった。
まぁ、この様な情勢下なので文句を言えないので有難くそれらを頂戴してサイドバックの空きへと詰め込んでいく。
パンパンになったサイドバックに満足しつつさて、次はどうしたものか?と考えようとしたところで耳に微かな物音が聞こえた。
「これは・・・爆発音か・・・?」
生前、聞き慣れた爆発音だった。
急いで外に飛び出し、耳を澄ませば2度、3度と爆発音が繰り返し響きそれだけではなく断続的に銃声も響いているのが分かった。
どこかしらの敵対勢力同士が戦闘を行っている様だ。
十中八九、片方は鉄血兵でもう片方は人類側の部隊・・・もしかしたらグリフィン社やもしれない。
「行ってみるか」
もしグリフィン社の部隊だったらそのまま合流出来るかもしれないと判断し俺は装備を確認する。
ライフル用のマガジンが9本にハンドガン用のマガジンが6本。
更に鉄血兵や廃墟から入手したグレネードが2個にフラッシュバンが4個。
装備としては十全とは言えないが援護をするぐらいには十分だろうと判断してHK433のセーフティをセミに切り替え、銃声の方へと駆け始めた。
「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・!」
廃墟の合間と合間を全力で走り抜ける。
自分の周囲を後ろから迫る鉄血兵たちが放った銃弾が掠めて行った。
早々当たるものではないと分かってはいるが聞こえる複数の銃声と擦過音と周辺への着弾音が恐怖を煽っていく。
一発の銃弾が自分の左頬を掠めて行った、思わず振り返って反撃しようと思ったがすぐに思い留まってそのまま走り続けた。
最初の頃に比べて明らかに後ろから聞こえる銃声と弾幕が増えている、走りながらチラッと後方を見る。
プラウラーにスカウト、ダイナーゲートにリッパーやヴェスピドの姿も見えた。
幸いなことに奴らは光学兵器を装備した一戦級ではなく、実弾系を装備した二戦級の様だ。
それでも数が多いしなんなら現在進行形でその数を増やし続けているのでこのままではじり貧だ。
途中、思わず足元が縺れて転びそうになったがなんとか踏み止まった。
そろそろ、限界が来てる・・・
内心、そう判断しつつ前方の一つの廃墟が目に入った。
崩れ掛けておりなんとか建物という体裁を保っている様なあり様だが構うものか。
最後の力を振り絞ってその建物まで走り寄り、ドアを蹴破った。
見た目通り、ボロと化していたドアは簡単に吹っ飛びそのまま室内へと飛び込んだ。
スライディングする様に室内へと飛び込み、一息をつく間もなく窓際の壁へと身を隠した。
その瞬間、出入口と窓から雨霰と言わんばかりの銃弾が室内へと撃ち込まれた。
「クソッ・・・鉄血の屑が・・・!」
微かに残っていた窓ガラスや銃弾から頭を守る様にしゃがみつつ、思わず悪態をついた。
弾幕が落ち着いたのを確認しつつライフルに装填されたマガジンを引き抜き、残弾を確認してまた戻す。
チラッと敵に見えない様に気を着けつつ窓の外を確認する。
プラウラーにスカウト、ダイナゲートにリッパーとヴェスピドが合計で数十体ほどがこの建物を半包囲する形で布陣している。
このままでは圧倒的にこちらが不利だ、このまま籠城戦を続ければ周辺から続々と敵の増援が駆け付けこちらを完全包囲するだろう。
そうなれば逃げ出すことが出来ず、ゲームオーバーだ。
その前になんとか打破したいところだが生憎、こちらは装備が不足していた。
ライフルのマガジンは今、装填してる分を除いて残り2本、ハンドガン用は残り3本、フラグ等のグレネード系はゼロだ。
「本当・・・今日は厄日・・・!」
思わずそう愚痴った。
いつも通りの慣れた任務、目標地点に行ってそこに残されてる重要資料を回収して帰るだけの任務だった。
一緒に任務を遂行するのは自分が最も信頼する姉妹たちでその技量も十二分に理解していたと言って良かった。
唯一の不安点はまだ部隊への指揮が不十分だった隊長である自分であったがその程度は些事だと思っていた。
今回の任務を課した自分たちの上司からは最近、目標地点周辺の鉄血兵の活動が活発化していると聞いていたが留意する程度で問題にならないと思っていた。
それが良くなかったのだろう。
任務は順調に進行、想定外のことに目標地点は敵勢力下であったが無事に制圧し資料を回収して撤収した。
あとは基地に帰るだけという段階だった。
自分含め、みんなが気を緩めていた。
その結果、自分たちが乗っていたヘリは鉄血兵の攻撃を受け墜落した。
幸いなことに私たちは全員無事だった。
だが墜落したのは最近、敵勢力が活発化していると聞かされた区域だった。
ヘリが墜落して1時間と経たずに鉄血兵が集まって来て交戦状態に入った。
救援を呼ぼうにも頼みの綱である通信機は墜落の衝撃で故障。
撃てど撃てど減るどころか増え続ける鉄血兵に観念し、姉からの進言で撤退を開始。
そしてその撤退を開始してから交戦中に皆とはぐれてしまいそれから既に3日経って現在に至る。
装備不足だけではなく、空腹と疲労は既に限界を迎えていた。
遠のく意識を頭を振って起こすと体勢を整え窓から敵に対して反撃をする。
弾を節約するため、セミオートに切り替えて精確に相手を狙い出来るだけ一発で仕留める様に心がける。
1本目のマガジンを撃ち切り、2本目を素早く装填して射撃を再開する。
こちらに接近しようとしていた8体目のダイナゲートを撃ち抜いたところで2本目のマガジンを撃ち切った。
3本目のマガジンを装填する・・・
これを撃ち切れば後はハンドガンのみ・・・実質的な戦闘力は喪失したと考えても良い。
そうなった時は・・・
思わず最悪の未来を想像し、頭を振って振り払う。
こんなところで死ぬ訳にはいかない、絶対に生き延びて皆と合流してみせる!
そう決意しトリガーを引き絞った。
その時、敵の後方から爆発音が響いた。
相変わらず不定期更新ではありますがボチボチと書いて行きたいと思います。
更新遅くても待っててやろよ!!という方はゆっくりお待ちください
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第5話 中編 味方とこれからの展望
前編後編か前編、中編、後編のどっちかになるかと思っていましたが後者になりました。
前編は3000文字超えた程度でしたが中編は5000文字余裕で越えましたw
後編ももしかしたら5000文字超えするかもですw(内容的に超えるんだろうな~)
「あそこか・・・」
銃撃音を頼りに追跡した結果、なんとか追いつくことが出来た。
確認出来るのは一つの廃墟とそれを半包囲する様に展開し制圧射撃を掛ける多種多様の鉄血兵たちの姿だった。
時折、廃墟の中から反撃してるのが見えるのでまだ生きていることが分かる。
だが見えるマズルフラッシュは一つだけでそれ以外に攻撃してる姿が確認出来ない。
負傷してるのかあるいは・・・
(そんな事考えてる場合じゃないな)
まずは必死に反撃してる味方を助けるのが先決だ。
だが、助けると言っても敵を殲滅する等という事は出来ない。
こちらも決して弾薬・装備が豊富という訳ではないし時間が経てば敵の増援が集まってくる。
ミイラ取りがミイラになる等という状況は真っ平ごめんだ。
だとすれば取れる手は限られてくる。
敵陣後方を奇襲し相手が動揺してる隙に味方を助け出し離脱する。
使うのはフラググレーネード二つ。
敵陣後方に一つ投げ、更に前衛を張るダイナゲートの中心に二つ目を投げる。
そしてその隙に廃墟に接近して連れ出して離脱する。
作戦が決まったのでそれを実行するために移動を開始する。
奴らに気づかれない様に慎重に接近していき最適な位置に着く。
サイドバックからフラグを取り出し、一つ目の安全ピンを抜く。
これを投げたら後は時間との勝負だ、一つ目を投げたらすぐさま二つ目を投げるポイントまで移動して投擲、あとは迂回する形で全力で廃墟を目指して味方と合流する。
一つ目のフラグを投擲する。
成果を確認する前に急いで次の投擲ポイントまで移動して二個目のフラグを投擲する。
一つ目はドンピシャで敵の後方に落下して爆発、数体のリッパーとヴェスピドを巻き込んで相手を混乱させることが出来た。
二つ目のフラグは残念ながら狙ったところぴったりに落ちなかったが数体のダイナゲートを巻き込んだ。
お陰で敵は混乱して廃墟へと銃撃が止まった。
その隙を突いて廃墟への接近を図る。
敵、包囲陣左翼に展開していた3体のプラウラーとスカウトがこちら気づいた。
足を止めてる暇はない。
素早くHK433を構えてトリガーを引く。
スカウトの中心部のセンサーユニットを破壊、スカウトはそのまま錐揉みしながら地面に落下して機能停止した。
同じく一体目のプラウラーも中央のカメラユニットを破壊して更に右足を破壊して擱座させる。
二体目のプラウラーは左足と機銃を破壊して放置しそのまま廃墟へと進んだ。
今の戦闘でこちらに気づいたのだろう、他の鉄血兵も俺に対して攻撃を始めた。
それに構うことなく、廃墟へと接近し割れた窓から中へと飛び込んだ。
「だ・・・誰!?」
室内に飛び込み、声を掛けられた方を見るとそこには建物正面の窓辺に隠れてこちらに銃を向ける一人の少女の姿があった。
「落ち着け、味方だ」
「味方・・・?」
両手を挙げて交戦の意思がないことを伝えると少女はこちらに向けていたライフルを下ろした。
「助けに来た、動けるか?」
「は、はい」
少女に確認を取りつつ室内を確認するが他に味方の姿はない・・・彼女だけか・・・?
「他に仲間は・・・?」
「・・・数日前にはぐれてそれっきりです」
「そうか・・・兎に角今は・・・」
脱出しよう、と続けようとして外から銃撃が撃ち込まれてきた。
思わず舌打ちを打ちながら彼女とは反対側の窓際へと隠れた。
「少々、強行軍になる・・・残弾は・・・!?」
「・・・今装填してる分で最後です」
申し訳なさそうの顔をしつつ彼女がライフルに装填されているマガジンを叩いた。
「使ってる弾は?」
「5.56x45mm弾です」
「ならこいつを使え、同じ5.56x45mm弾を使ってる」
マグポーチからマガジンを3本抜き出して床を滑らす様に彼女へと渡した。
彼女はお礼を言いつつ受け取ったマガジンを自分のポーチへと仕舞った。
その間、俺は窓から反撃して時間を稼ぐ。
「準備は?」
「なんとか」
準備を済ませた彼女に頷き、サイドバックからフラッシュバンを二つ取り出し、一つを彼女に投げ渡した。
「3秒後にこいつを投げて隙を作る、その間に裏の窓から脱出する、そっちから先に脱出しろ」
「わ・・・分かりました」
態勢を整え、フラッシュバンの安全ピンを持って何時でも投げれる様に構える。
彼女にアイコンタクトを取ると彼女も頷きフラッシュバンを構えた。
「3・・・2・・・1・・・今だ!」
俺の合図と共に敵に向けてフラッシュバンを投擲する。
バン、バン、と炸裂音と共に外からの銃撃が止んだ。
それを確認して彼女に向けて叫ぶ。
「今だ、行け!!」
「は、はい!!」
彼女が裏の窓へと向かって走っていき、外へと飛び出すの確認するのと同時に自分も後に続いて外に飛び出した。
「・・・撒いたみたいだな」
「ハァ・・・ハァ・・・そう、みたいですね」
敵が追ってこないのを確認しつつそう言えば隣で膝に手を着き、上がった息を整える少女が答えた。
「大丈夫か?」
「すいません、大丈夫です」
そう言って彼女は屈めていた上半身を起こした。
前髪の一部に緑色のメッシュが入り、頭にヘッドフォンを着けた黒いセミロングの少女だ。
ホロサイトにパーティカルグリップ、サイレンサーを着けた白系の塗装が施されたM4A1を携えている。
彼女も俺と同様、戦術人形なのだろう。
それよりも気になったのは・・・
「酷い顔だな、何日寝てない?」
彼女の顔色だった。
目元には深い隈が出来ていて肌もかなり煤けている。
良く見ると髪も荒れている様に見える。
「・・・3日ほどです」
「3日?ずっとか?」
「はい、ずっと鉄血兵に追われてて」
「そうか・・・仲間とはぐれたって言ってたな?」
「はい・・・」
「合流地点とかは決めているのか?」
「一応・・・」
「場所は?」
「場所は・・・」
そう言って続けようとして、彼女は突如こちら倒れ込んできた。
慌ててて抱き留めて顔を見ると静かに寝息を立てていた。
三日間の不眠不休で鉄血から激しい追撃を受けていたのだ、危機を脱して緊張の糸が途切れてしまったのだろうと判断出来た。
攻めることが出来ない状況ではあるがさて、どうしたものか、合流地点を聞く前に倒れられてしまったので移動しようにもできない。
取りあえずは安全な場所を確保して彼女を寝させるのが先決か・・・
そう判断して俺は彼女を抱き上げ、雨風を凌げる場所を探し始めた。
パチッ・パチッ・・・パチッ・・・
微睡む意識の中、焚火の音が耳に届いてきて自分の意識を徐々に覚醒させた。
視界に入ったのはボロボロになったコンクリートが剥きだしの天井だった。
そのまま頭だけ左に向けると焚火の火が静かに薪を燃やしていた。
「目が覚めたか?」
声を掛けられ、焚火の向こう側に人影があるのに気づいた。
ぼやける視界が明瞭になっていき、焚火の向こうにいるのは自分を助けた銀髪の戦術人形であるのが分かった。
起き上がろうとすると自分にコートの様な物が掛けられているのに気づいた。
どこか見覚えがあると思っていたがそういえばこれは焚火の向こうに座る彼女が羽織っていた物だ。
お礼を言い、彼女にコートを返そうとしたが彼女は首を横に振った。
「着ておけ、その恰好じゃ流石に夜は冷えるだろう?」
そう言われて初めて今が夜であることに気づいた。
どうやら自分は気絶してしまい、ここまで彼女が運んくれたらしい。
その事について謝罪とお礼を言うと彼女は苦笑をしつつ、気にするなと言った。
今度、彼女に何かしらのお礼をしなければと思いつつ彼女の好意に甘えてコートを羽織って焚火の前に座った。
ぼんやりと、焚火の前に座る彼女を見つめる。
水色系に近い銀髪に灰色の瞳の整った顔立ちをしている。
首元を緩めたジャケットの上からでも確かに分かるほど良いプロポーションを持ったスタイルを黒と白の二色のインナーとズボンで包んでいる。
その胸の大きさに思わず羨ましいと思ってしまい、思わず自分の胸を触ってしまったがコートを羽織ってるお陰で彼女は気づいた様子はない。
それに内心、ホッとしつつ更に観察すると彼女の右隣には彼女の愛銃と思われるアサルトライフルが置いており、左隣には複数のサイドバッグが置かれている。
「そう言えば、お互い自己紹介をして居なかったな?私はHK433だ、そっちは?」
HK433?聞いたことのない戦術人形だと思いつつ自分も自己紹介をする。
「M4A1です、M4って呼んで下さい」
「分かった、よろしく、M4」
「は、はい、よろしくお願いします、433さん」
「呼び捨てでも構わないぞ?」
「は?はぁ・・・」
首を傾げると彼女は可笑しそうに笑みを零した。
だが、すぐさま真面目な顔に戻って聞いてきた。
「さてM4、お前は仲間とはぐれたって言ってたな?」
「はい」
「どうゆう経緯で仲間とはぐれたか教えてくれるか?」
「分かりました・・・」
そう言って私はこれまでの経緯を彼女に説明し始めた。
説明中、彼女は時折相槌を打ちつつも何かを考える様な仕草をしていた。
「なるほど、良く分かった、ありがとう」
「い、いえ・・・私も一つ聞いて良いですか?」
「なんだ?」
「あの・・・HK433さんはどこの基地の所属なんですか?」
「ほう?」
どこか、こちらを試す様な目を向ける433さんにたじろぎつつ、私は続ける。
「433さんは少なくとも私が知る限りどこの戦術人形にも当てはまらない程高い能力を持っています」
状況判断能力、即応力、作戦立案能力、行動力・・・そして戦闘能力。
どれを取ってもそこらのグリフィン社の戦術人形を大幅に超える能力を有している。
少なくとも、自分より総合能力は上だというのが私の判断だった。
それほどの戦術人形なら普通、グリフィン社が広告してるだろうし名前も知られている筈だ。
だが、HK433という戦術人形はグリフィン社に存在しない・・・一体、なぜなのか?
殆ど自分の好奇心に近い疑問を投げかけると彼女はふむ、と悩んだ素振りを見せた後、答えた。
「さぁ?私にも良く分からん」
「は?」
思いも寄らなかった答えだった。
一瞬、はぐらかされたのかと思ったが彼女の表情を見るにそうではないらしい。
「どこの基地所属かと問われれば無所属と言ったとこだろう、なんせ目覚めたらI.O.P社の廃工場だったんだからな」
「廃工場・・・ですか?」
「そうだ、ここから凡そ30マイル北にある廃工場だ、だから無所属・・・言ってしまえば野良と言ったところか」
戦火に晒され廃棄された工場に目が覚めた戦術人形。
噂程度にはそういう存在もあり、戦場で回収される戦術人形たちにもそういう境遇の者が多いと聞いていたがまさか彼女ほどの実力者がそうであるとは思わなかった。
「さて、私はお前の質問に答えた、次は私の番だ」
「はい」
「お前が気絶する前に言いかけていた仲間との合流地点・・・それを教えてくれ」
「はい・・・凡そこの街から東に6マイル言ったところにある廃棄された飛行場です」
「東に6マイルか」
「はい、鉄血兵に襲撃される前に散り散りになった時の合流地点として決めていました」
「救援の手立てはあるのか?」
「廃棄されたと言っても非常時の際に利用するのを想定されて通信機が遺されている筈ですからそれを使えば・・・」
「救援を要請出来る・・・か」
「はい」
「分かった、信じよう」
「ありがとうございます」
「と、言っても移動は夜明けを迎えてからだ。夜中に動き始めて鉄血兵と遭遇しましたじゃ話にならん」
「そうですね・・・」
そう言ったところでぐぅ~、と可愛らしい音が聞こえた。
発生源は私のお腹、思わずお腹を押さえたが一度鳴ってしまったものは取り消せない。
チラッと433さんを見れば彼女は驚いた様な顔をした後、なんの音かを察して笑い始めた。
私は恥ずかしさの余り、顔を真っ赤に染めながら彼女を睨むことしか出来なかった。
「済まない、そう言えば三日間食事をしてなかったんだったな」
一頻り笑い、落ち着いた彼女は謝罪の言葉を述べながら隣のサイドバックを漁り始めた。
「現状、こんな物しか持ってないが許してくれ」
そう言って彼女が私に渡したのは数本の携帯食料とミネラルウォーターのペットボトルだった。
なんとかお礼を言いつつそれらを受け取った私は三日ぶりの食事に思わず夢中になってかぶり付いた。
夢中になって携帯食料を食べる彼女を眺めつつ自分も食事を終えて、今は愛銃と煙草を片手に歩哨に立っていた。
M4は焚火の近くで俺のコートに包まって静かに寝息を立てている。
俺が見張っているから寝て良いと伝えたのだがその時もひと悶着あった。
彼女曰く、何もかも俺に頼ってばかりじゃ申し訳ないので見張は自分がするので俺が寝てくれとのことらしい。
真面目で責任感が強い彼女らしい言葉だったが俺はそれをやんわりと断るのが彼女も頑なに折れ様としない。
傭兵時代、夜の見張等を腐るほどやっていて余裕のある俺なら兎も角、三日間鉄血兵と鬼ごっこしていた彼女は体力的にも精神的にも消耗しているので出来るだけ休んで欲しかったのだが彼女はそれを頑なに嫌だと言う。
仕方ないので代案として交代で見張をしようと提案すると彼女は渋々と言った感じで了承した。
寝る間際まで2時間交代だと何度も言っていた彼女はコートに包まって横になると数分とせずに静かに寝息を立て始めた。
その様子に思わず苦笑を浮かべつつ、俺は煙草を吸った。
「・・・なにも無けりゃ良いんだがな」
そう呟きながら吐き出した紫煙は夜空に霧散して消えた。
前編で出てきた戦術人形が誰だか判明ですよ、えぇ
ドルフロの主人公(笑)と言われているM4A1です。
そうです、主人公とファーストマッチするのはAR小隊です(最初の予定じゃ別だったんだけどな~w)
あ、一応言っておくとここの小説がM4含めAR小隊は原作の様な目は遭いません、てか遭わせません(鋼鉄の決意)
因みに主人公(笑)とか言ってますが主は普通にM4好きです。
AR小隊、404、反逆小隊、ネゲブ、ワーちゃんに指輪渡したぐらいです(隙自語り)
早くAK-15とRPK-16実装されんかな(ボソッ
それは兎も角。
次は残りのAR小隊メンバーであるM16姉さん、SOPⅡ、AR-15と合流です!!
まぁ・・・それ以外にもライバル(予定)のあの人ともエンカウントするんですけどね?(誰だろうね?w)
後編は遅くても明日明後日ぐらいまでには投稿します(多分)
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第5話 後編 その1 合流と籠城戦準備
はい、という訳で後編 その1の投稿です。
本来なら午後に投稿予定だったんですけど寝付けなくていっそ起きてるかと思って起床、そしてバイトに行くまでの暇な時間を利用して執筆です
今回は長いっす、約7000文字近く書いたっす(文字数6774文字)
後編 その1と書いてますが下手したらそのⅢまで書くかもしれないっす
最終回かな?と思うレベルで長いです
第5話だけで文字数2万余裕で越えますね、くぉれは・・・
焚火を入念に踏みつけて種火を消し、出発の準備を済ます。
夜の帳は既に明け、朝日はまだだが東の空は既に白みかかってる。
この分だと1時間としない内に太陽が姿を現すだろう。
既にサイドバックは身に着けてM4に貸していたコートは返して貰って身に纏っている。
朝食は既に済ましてあるしM4にも数本の携帯食料とミネラルウォーターを渡してある。
マガジンの残りは5本+装填していて半分ほど消費したマガジン1本。
M4の方は俺が渡したマガジン2本と装填してる分で計3本。
あとは精々、フラッシュバンが残り2本ある程度だが合流地点まで移動するだけなので移動中は戦闘を避けて行けば問題ないだろう。
「M4、そっちの準備は良いか?」
「・・・・・」
後ろにいるM4に声を掛けるが返事がない。
後ろに振り向けばそこにはそっぽを向いているM4の姿がある。
言外に私、怒ってますと言わんばかりの雰囲気をしている。
思わず頭を掻いてしまった。
まだ、怒ってるのか・・・
「済まなかった、私が悪かったからそろそろ機嫌を直してくれ」
「・・・・・・」
3度目の謝罪をするが彼女は無言でこちらを抗議する様に睨んでる。
どうやら、まだ許してくれる気はないらしい。
まぁ・・・彼女が怒っているのは俺のせいなので自業自得とも言える。
昨晩、俺は彼女と2時間交代で見張を交代するというのを約束したのだが・・・まぁ、俺が彼女を起こさなかったのが原因だ。
鉄血兵の活動が活発してる中、移動するというのはかなりの体力と精神を消耗する、少しの気の緩みが原因で奴らに見つかるということだってある訳だ。
そうなると体力的にも余裕がありその手の作戦で経験がある俺よりも三日間も鉄血兵と戦闘を続けていた彼女には辛いものがある。
そう判断して俺は彼女を起こさずに1人で見張を続けていたという訳だ。
まぁ、そのお陰で明け方直前ぐらいに目を覚ました彼女を怒らせる羽目になったのだが・・・
目を覚まし、起こしてくれなかったことを知った彼女は俺に対して文句を言い続け――食料を渡した時は小さくお礼を言われた――それが終わると今度は今の様子に無言を貫いている。
さて・・・どうしたものかな?
出発前にどうすれば彼女から許しを得れるか考える事になった。
なんとか彼女の許しを得ることが出来た。
まぁ、条件として次、何かあった時は自分を頼る様にと約束させられたが・・・
まぁ、それは兎も角。
俺たちは道中、警戒をしつつも目標地点へと向かっていた。
道中、何度か鉄血兵と接触することがあったが物陰に隠れてやり過ごしたり、ナイフと拳銃を使って片付けたりしてなんとか飛行場へと到着することが出来た。
「ここがそうか?」
「そうだと思います」
太陽が真上に来たぐらいで目標の飛行場に到着することが出来た。
飛行場は放棄されて長いのか、劣化の多さがやはり目立った。
区域内の地面は所々で罅が入ってるし、雑草の類が所々で生い茂っている。
元グリフィンの飛行場という事もあり戦闘もあったのだろう、区域内の所々には装甲車や軍用のジープらしき物の残骸が転がっている。
滑走路と思われる広場にも複数のクレーターとかも確認出来た。
更に滑走路に隣接する形で建てられている管制塔と思しき物と3つの格納庫と思われる建物も損傷は酷い。
特に管制塔に至っては管制室の天井部分が一部吹っ飛んでるぐらいだ。
「取り合えず、管制塔に行ってみよう」
「そうですね」
お互い周囲を確認しながらも管制塔へと足を進める。
これと言って敵の気配は感じない・・・というか生物の気配すら感じと言って良い、完全な無人の状態だ。
果たして彼女の仲間たちはここまで辿り着けているのだろうか?
道中、M4自身から仲間たちの実力について聞いてはいたが何せ、ここら一帯の鉄血兵の活動が活発になってるのだ。
俺と合流出来たのなら兎も角、単独でここまで辿り着くとなると困難と言って良いが・・・
周囲を警戒しながら管制塔へと近づき、中に入ろうとしたところで、俺は右手を挙げてM4を制した。
驚いた顔をするM4にハンドサインで伝える。
頷いたM4はライフルからハンドガンに持ち替えて出入口の右側に音を立てない様に張り付いた。
俺もHK433からMk.23に持ち替えて出入口の左側へ張り付く。
M4とアイコンタクト、お互い頷き、そして内部へと突入する。
俺が左の死角を確認し、M4が右の死角を確認する。
正面に振り返ってお互い、問題がないのをアイコンタクトで確認する。
正面に見えるのは2階に続く階段と1階の何かしらの部屋に続くドアだ。
M4にハンドサインで合図する、向かうのはドアの方だ。
俺がドアの左側に着き、M4がドアの右側へと張り付いた。
M4にアイコンタクトを送り、彼女が頷くのを確認してドアをゆっくりと開ける。
これと言った違和感は無し、トラップの類は設置されてない様だ。
ドアノブを離して一度体勢を立て直し、ドアを思いっきり後ろ足で蹴破った。
すぐさま下がると間髪入れずにM4が内部へと突入した。
俺もそれに続いて内部へと突入し、彼女が確認してるのと別の方向を確認する。
室内は待合室かなにかだった様で長テーブルや長イスだと思われる物が散乱しているだけの状態だ。
敵の姿どころか人影すら確認することが出来ない。
お互い、顔を合わせ張り詰めていた息を漏らした。
さて、となると残りは上の階か・・・
緩めた緊張を再度張り直し、部屋を出て階段の傍の壁に張り付く。
M4が後方に続き、出入口を警戒する。
チラリと壁から顔を覗かして上の階を確認するが物音一つ聞こえてこない。
だが、何かしらの気配を感じるのは確かだ・・・それが味方か鉄血か、果たして・・・
一度、顔を戻し構えているMk.23のマガジンをリリースして残弾を確認する。
残弾は8発と薬室に1発の計9発、道中で鉄血兵を排除するために数発使ったがまだ平気だ。
一度、深呼吸をしてからM4の肩を軽く叩いてからゆっくりと、音を立てない様に気を着けながら階段を登る。
後ろからM4が同じく後方を警戒しながら続いて登ってきた。
一段ずつ、確実に音を立てない様に注意して登り切ろうとしたところで・・・首筋にゾワリと嫌な感覚が走った。
殆ど直感と言って良い、咄嗟の判断で首を下げて伏せたその直後
チュイーンッ・・・
自分の頭があった位置を一発の銃弾が通過していき、壁に跳弾した。
あのまま登ってたら間違いなく自分は頭を撃ち抜かれてそこら一帯に鮮血をぶち負けていただろう。
驚いたM4が慌てて俺に近寄ろうとしてきたので手で制し、サムズアップして無事であろうことを伝える。
伏せた状態から立ち上がって体勢を立て直し、壁へと張り付いた。
状況を確認するために聞き耳を立てるとあちらも今のを避けられると思っていなかったのだろう、動揺した声が聞こえた。
「嘘っ・・・避けられた!?」
「チッ・・・感の良い奴がいるな・・・」
「ど、どーするの!?2人とも!?」
数は3人、どれも女性・・・というか少女の声だ。
鉄血兵ではない、奴らが会話するというは確認していないからだ、だとすると彼女たちは鉄血ではない戦術人形となる。
あり得るとしたらM4の仲間であるグリフィン社の戦術人形の線が一番だが生憎、確証が持てない。
どうしたものか、と考えてると動いたのは後ろで同じく聞き耳を立てていたM4だった。
「その声・・・M16姉さん!?それにSOPⅡとAR-15!?」
「その声・・・M4か!?」
「はい!!」
そう言ってM4は階段を登って2階へと上がった。
俺もそれに続いて階段を登って2階へと上がった。
そこで待っていたのは3人の少女・・・戦術人形たちだった。
「わぁーい!M4無事だったんだね」
その内の一人、黒づくめの恰好をしたクリーム系に前髪と横髪の一部を赤色に染めたロングヘアの幼さの残る少女がM4に駆け寄って抱き着いた。
その後ろを苦笑しながら髪の一部を黄色に染めた黒髪を三つ編みにした眼帯をした少女とどこか呆れた様な顔をした薄いピンク系の髪をした少女が続く。
「良かったよ、M4、そっちも無事だったみたいだな」
「はい、M16姉さんたちも無事な様で」
「まぁな」
抱き着いてきた少女を抱き留め、その頭を優しく撫でつつM4はM16姉さんと呼ぶ少女と話す。
「それで?そっちの戦術人形は?見たことないけど」
その光景を一歩下がったところで見ていた薄いピンク色の少女が俺を見てそう聞いた。
M16と呼ばれた少女もそれで俺の存在に気づいた様でこっちに視線を向けてきた。
ふむ、やっと俺の出番らしいな。
未だ持ちっぱなしだったMk.23のセーフティを掛けながら彼女たちへと歩み寄った。
「HK433だ、いろいろ訳アリでね、いろいろ有ってM4と一緒に行動していた」
「なるほどな、そういう事があったのか」
M16が納得した様に頷いた。
場所はさっきの管制塔の屋上である管制室に場所を移していた。
お互い自己紹介を終え、とりあえずはという事で場所をここに移しこれまでの詳しい経緯を俺はM16へと話していた。
傍にいるのは俺、M4とM16だ。
AR-15とSOPⅡは少し離れたところで通信機を使ってなんとか救援要請を出そうと操作している。
話に寄ると彼女たちがここに到着したのはほんの数時間前とのことだった。
彼女たちは運よく市街地で合流出来、ここまでなんとか来ることが出来たとのことだった。
「M4が無事だったのもアンタのお陰だ、改めて礼を言うよ。433」
「別に構いはしないさ、私もグリフィン社と合流しようと思っていたところだったからな」
そうか、それなら良かった。
そう言って彼女はミネラルウォーターへと口を着けた。
やはりと言うべきか、彼女たちも食料や飲料水を不足していた。
十分な数を持っているとは言えないが救援が来るまでの数時間だったらまぁなんとかなるだろう。
それに彼女たちの話だとまだ格納庫の探索をやっていないとの事だったのでもしかしたら格納庫の内部に非常食ぐらい残ってる可能性もあった。
これからどうするかとお互い意見交換をしていると通信機をいじっていたAR-15とSOPⅡがこちらへと戻ってきた。
「通信機自体は使えたわ、だけどマイクとスピーカーが壊れてたから出せるのは救援信号だけ」
「そうか・・・」
通信機自体が全壊してるよりはマシではあるが余し良い状況ではなかった。
救難信号を出せば確かにグリフィン社は拾ってくれるだろう、だがそれと同時に鉄血兵にもそれを探知されることになる。
「来るな・・・」
「お前もそう思うか?」
「・・・来ますね」
「・・・来るでしょうね」
「来るね~!」
上から俺、M16、M4、AR-15、SOPⅡの順で答える。
誰もがここに鉄血兵が襲来することを察ししていた。
「問題はグリフィンと鉄血、どっちが先にここへ到着するかだ」
「掛けるか?私は鉄血だと思う」
「同じく、鉄血が先だろうな」
M16とお互い不敵な笑みを浮かべ、ため息をついた。
食料・飲料水が不足し弾薬も十分とは言えない状況だ。
その状況で救援部隊が来るまでの籠城戦・・・正気とは思えない。
更に言うならその救援部隊が来るという確証もない状態だ。
救援が来れば良いが来なかった又は間に合わなかった場合、俺たち全員この朽ちた飛行場が墓場になるだろう。
「こうしてても仕方ない、格納庫を見てこよう、何かしら使えるものがあるかもしれない」
「そうですね・・・M16姉さんとAR-15はここから一帯の警戒をお願いします、私とHK433さん、SOPⅡの3人で格納庫を見てきます」
「あぁ、分かった」
「了解・・・」
「了解~♪」
取りあえずの方針を決めて俺とM4、SOPⅡは格納庫に向かうために階段を降りようとしてM16に呼び止められた。
「433!」
「なんだ?」
「一応、これを持っていけ」
そう言って彼女は何かをこちらに向けて投げ、それをキャッチする。
これは・・・通信機か?
渡されたのは多少、草臥れていたが間違いなく軍用の通信機だった。
「お前たちが来る前にここを探索してる時に見つけた奴だ、ちゃんと動作することも確認している」
「ありがたい、何かあったら連絡する」
「そうしてくれ」
受け取った通信機を腰に着けながら俺たちは階段を下りた。
管制塔の左隣に併設される形が三つの格納庫が並んで建てられているのだが管制塔から一番遠い三つ目の格納庫は運悪く迫撃砲か何かの直撃を受けていた。
外観から見れば特に異常は見られず、無事に見えるのだがいざ、内部を覗けば左斜め上の天井にはぽっかりと大きな穴が開いていて、建物内部で炸裂した炸薬が内部のものを殆どスクラップに作り替えていた。
望みは薄いが一応はという事で内部を探索したのだがやはりと言うべきか使える物は一つも残ってなかった。
次に2番目の格納庫の確認へと向かった。
SOPⅡは収穫が無かった事に残念そうにしていたが次こそはと意気込んで格納庫へと入って行った。
俺とM4もそれに続いて中へと入って手分けして捜索を始める。
「M4!433!これ見て!!」
探索を始めてから数十分ほどしてSOPⅡがなにかを抱えて戻ってきた。
探索を中止してSOPⅡの元に行けば同じくM4も捜索を中止して集まってきた。
「奥の木箱を開けたら入ってたの!!」
そう言って両腕で抱えてる物を彼女はこちらに見せてきた。
その内の一本を受け取って確認する。
「これは・・・5.56×45mm弾のマガジンか!」
「うん!!奥にまだあるよ!!」
「良く見つけたな、SOPⅡ、大手柄だ!!」
そう褒めればSOPⅡは嬉しそうに頷いた。
その後、SOPⅡの案内の元で奥の探索を行った俺らはそれなりの数のマガジンや装備を入手することに成功した。
内訳は・・・
アサルトライフル用マグ10本
ハンドガン用マグ6本
フラググレーネードが3個
スモークグレネードが2個
と言ったところだ。
アサルトライフルのマガジンだけでも手に入っただけでも望外だったのだがまさかこれだけ手に入るとは思ってなかった。
2番目の格納庫を終えて最後の格納庫へと向かう。
SOPⅡは先ほどの収穫で更に機嫌を良くしており、もっと良いのを見つけるぞと行き込んで格納庫へと駆けこんでいった。
その後をしょうがないと言わんばかりにM4がため息をつきながら続いて行き、俺も後に続こうとしたところで通信機が鳴った。
『433?私だ』
「M16か、なにかあったのか?」
『いや、こちらに異常はない。ただ、SOPⅡの奴が上機嫌で格納庫に入っていくのが見えたからな』
「ん?」
言われて管制塔の方を見上げれば管制室から一つ下の屋上の展望エリアからM16がこちらに手を振ってるの見えた。
なるほど、確かにあそこからならこちらが見えるな。
「なに、SOPⅡが大手柄を上げたんでな、それに喜んでるだけだ」
『ほう?なにを見つけたんだ?』
興味深そうに聞いてくるM16に先ほど見つけた戦果について教えると彼女も嬉しそうに答えた。
『そうか!それは良かった、それだけあればある程度は耐えれるな!』
「あぁ、だが物が物だからな。とりあえず最後の格納庫を探索してから纏めて運ぼうと思う」
『そうしてくれ・・・にしても残念だな・・・』
「ん?なにがだ?」
『いやなに・・・その中に酒があれば私は大満足だったんだがな?』
通信機の向こうで彼女が言った事を一瞬、理解するのが時間が掛かり理解した後、俺は思わず爆笑した。
格納庫内を探索していたM4とSOPⅡが驚いた顔をしてこちらに振り向いたがなんでもないとジェスチャーを送ると二人は首を傾げながらも探索へと戻った。
『いきなり笑うなんて失礼な奴だな・・・』
「いや、済まない。まさか、この状況で酒が欲しかったなんて言われるとは思ってなくてな」
通信機に耳を向ければ不機嫌そうなM16の声が聞こえた。
どうやら、彼女は冗談ではなく割と本気で言っていたらしい。
「因みに聞くが好きな銘柄は?」
『私の好みかい?ジャック・ダニエルさ!』
自信満々に答えるM16にまた笑いが込み上げてきたが咳払いすることで抑えた。
同じ轍を踏んで後々、彼女から後ろに撃たれたくないからな。
そこから少し互いの趣味について雑談を講じてるとSOPⅡに名前を呼ばれた。
「433!!」
「すまん、SOPⅡに呼ばれた様だ、後でな」
『あぁ、待ってる』
お互いそう言って通信機を切って腰に戻すと格納庫内で俺を待つSOPⅡとM4の方へと向かった。
「何か見つけたのか?2人とも」
「はい、これなんですけど・・・」
そう言う二人の前には一つの木箱が置かれている。
何が入ってるのやらと思いつつ蓋を開ける。
中に入ってる物を確認した俺は驚いたがその後に思わず笑みを浮かべた。
「・・・良いこと思いついたな」
因みに余談だがこの時の俺の笑顔を見た二人はは後に・・・
「余し・・・人に見せられる顔じゃありませんね」
「すっごい悪そうな顔してたね!」
・・・と語っていたらしい。
次の後編 その2でやっとライバルさん(予定)が登場予定ですよ
さぁて、次で433とライバルさんが戦闘する予定なんすけど描写どうしよっかな・・・
次回、飛行場の探索を終え、戦闘準備を整えた433とAR小隊一行!
救難信号を察知して先に現れるのはグリフィン社の救援部隊かそれとも鉄血の大部隊のどちらか!?
そして433が思いついた策とは一体・・・!?
次回も433と共に地獄に付き合ってもらおう!(ポト〇ズ風)
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第5話 後編 その2 少女の告白と開戦
感想で読者様の一人に突っ込まれた事があったのでそれの補間として話を盛り込みました。
まぁ、戦闘開始する前に丁度良いかなって感じで書きました。
今回は短め(3894文字)だけど許して☆
次回は更に長くなる(予定)だから
「よぅ、お疲れさん」
「お互いにな」
襲撃してくるであろう、鉄血兵への防衛準備を一通り終え、展望エリアに上がると落下防止用フェンスに凭れ掛かったM16が俺を迎えた。
俺も彼女の隣に同じ様に凭れ掛かりながらサイドバックからミネラルウォーターを取り出して口に運んだ。
「格納庫から木箱を引っ張り出してきて入口の外で何かしてたみたいだが何をしていたんだ?」
「ん?あぁ・・・なに、ちょっとした歓迎準備だよ」
ニヤリと笑いながらそう言うとM16は引き攣った笑みを浮かべた。
「そ、そうか。それで?その準備は?」
「仕掛けは上々後は特とご覧あれ、と言ったところだ」
「そうか、ところでM4たちは?」
「M4なら管制塔のAR-15の所だ、何か話が有るって言ってたな、SOPⅡは下の待合室で休んでるって言ってたぞ」
「そうか」
その後は幾つか雑談を興じた後、お互い特に話すことなく青空を見上げた。
ぼぅっと特に考えることなく、空を眺めているとM16が口を開いた。
「なぁ、433」
「なんだ?」
「416って奴を知ってるか?」
唐突に問われた内容に内心、首を傾げた。
416・・・彼女が言う416とはHK416の事だろうか?
生前、HK416は何度も使った事があり、馴染み深いアサルトライフルではあったが戦術人形である彼女が言う416というは戦術人形としてのHK416を指しているのは確かだろう。
だとすれば俺は会ったことがない。
「いや、悪いが会ったことないな」
「そうか・・・すまん、忘れてくれ」
「あ、あぁ・・・」
少し様子が可笑しいM16に首を傾げているとM4が展望エリアへと姿を現した。
どこかスッキリした様な顔をしているのはきっと気のせいだろう。
「433さん、M16姉さん。上で配置決めと弾薬と装備の分配をしましょう」
M4の言葉に俺とM16は頷き、管制塔へと昇った。
「――・・・まぁ、配置はこんなとこだろう」
締めに俺がそう呟けば、皆が神妙な顔で頷いた。
数十分の話し合いの元、俺らは敵が来た際の配置と弾薬・装備の分配を決めた。
配置は以下の通りだ。
前衛担当
俺(HK433)
M4A1
M4 SOPMODⅡ
後衛担当
M16A1
ST AR-15
前衛担当の3人は滑走路で駐車場から引っ張り出してきた車等を遮蔽物代わりにして足止め&囮役を担当。
後衛担当は中・長距離戦闘に長けたAR-15が管制室から狙撃で前衛を援護し、M16が展望エリアで戦場全体を俯瞰し前衛担当に指示と場合によってはAR-15のフォローを担当することになってる。
それに寄って弾薬・装備の分配も自然と決まった。
AR用マグは全員が2本ずつ、HG用マグは俺が2本で他のメンバーに1つずつ、フラグは前衛担当それぞれ1個ずつでスモークは俺とM4がそれぞれ持つ事になった。
決める事が終わったので作戦会議はそこで終了となり、敵が襲撃まで解散するという事になった。
M16とAR-15は戦闘が始まった際の状況によるお互いの動き方などを相談し、SOPⅡは待合室で休んでると言って出て行き、M4もそれに付き添って下に降りて行った。
手持ち沙汰になった俺はどうしようかと考えるが、一人でここに待ちぼうけというのもアレなので展望エリアへと降りた。
手頃のフェンスへと凭れ掛かり、サイドバックを漁って煙草を取り出す。
M4と合流してから慌ただしかった事もあり中々吸えてなかったのだが、もしかしたら最後になるかもしれないと思いケースから一本取り出し目の前まで掲げて暫し眺める。
白い巻紙にフィルターが取り付けられた一般的な煙草だ、生憎銘柄は知らないが自分が生前吸っていた物とは違うのは確かだ。
まぁ、この世界に俺の愛煙していた煙草があるのかどうか分からないのだが・・・
そんな取り留めのない事を考え、思わず苦笑しつつも煙草を咥えてライターを取り出そうとサイドバックに手を入れようとしたところで、声を掛けられた。
「HK433」
「ん?」
声の方を向けば出入口にAR-15が立っていた。
「話し合いは終わったのか?」
「えぇ・・」
「M16は?」
「上で見張をしているわ」
「そうか・・・」
AR-15はそのまま歩いてくると俺の隣に来てフェンスに寄りかかった。
様子から察するに何か話があるらしい。
そう判断した俺は咥えていた煙草を手に取った。
生憎、ケースに戻す気にはなれなかったので手の中で転がして遊ぶことになった。
「驚いたわ・・・」
「うん?」
「あなた、見掛けに寄らず煙草を吸うのね」
「まぁな、私の数少ない趣味と言ったところか・・・」
AR-15の目線は俺の手の上で指の隙間をボールペンの様に器用に動き続ける煙草へと向かっていた。
「それで、話というのは?」
「・・・私は貴女に謝らなければならないことある」
「・・・?」
「最初会った時の話よ・・・私は貴女を殺そうとした」
「あぁ・・・あの時のことか」
その事かと納得した、俺は余し気にしていなかったのだが・・・
生きるか死ぬかの瀬戸際だったんだ、相手が敵か味方かも判断付かない状況で先手を撃って攻撃するというのは間違いじゃないと俺は思ってる。
「気にするな、私は無事だった」
「えぇ・・・けどそれは結果論に過ぎないわ、もしあの時貴女が咄嗟に避けていなければ私は貴女を殺してしまってた」
どこか落ち込んだ様子を見せるAR-15。
初めて会った時は冷徹・・・というよりどこか冷めた印象があったんだが実はそうでもないらしい。
M4とは似ても似つかないところが多いが責任感という点についてM4と同じがそれ以上に持ってる様だ。
だが、どうにも何処か言い辛そう印象がある・・・ふむ・・・
「M4に何か言われたのか?」
「・・・知ってたの?」
AR-15が驚いた様な顔をした。
管制室での会議前にM4がAR-15に話があると聞いていたのでもしやと思ってカマを掛けてみたが案の定だったらしい。
「なんとなくな」
「そう・・・実は管制室での会議前にあの子に怒られたわ」
そう言ってAR-15は苦笑を浮かべるのだが何処か嬉しそうだった。
「・・・そう言う割には嬉しそうだな」
「・・・そうね、嬉しい・・・というべきかしらね」
そう言って彼女はポツポツと今までの・・・俺と会う前のM4について語り始めた。
俺はそれを黙って聞くことにした。
AR-15が語った以前のM4の性格を纏めるとこうなった。
彼女は内気な性格で良く言って慎重、悪く言ってしまえば臆病と言えるほど判断能力が鈍かった。
その上、自分がみんなの隊長を務まるのかと普段から不安にし気にしていたという。
姉であるM16は何時もお前なら大丈夫だ、と言って励ましたりしてたが自分はその態度が気に入らず、何度か冷たい事を言ったこともあった。
だが今回のヘリ墜落のあと、離れ離れになってから再会した彼女に驚いたという。
まだ以前の様に優柔不断なところは抜け切っていないがそれでも彼女は変わっていたとのこと。
あそこまであの子が感情を露わにしてこっぴどく叱って更に貴女に謝ることを約束させられるとは思わなかったけどね
そう言って笑う彼女は妹の成長を喜ぶ姉の様に見えた。
それは良かった、と内心そう思っていると彼女はフェンスから離れて俺の真正面に立っていた。
彼女から既に先ほどまでの妹を想う姉の様な笑顔はなく、1人の決意をした顔をした少女が立っている。
俺も自然と掌の上で遊ばせていた煙草を止めて彼女の言葉を待った。
「そういう訳だからこれはあの子との約束と私個人のケジメ」
「あぁ・・・」
「HK433、さっきの誤射の件ごめん・・・」
なさい、と言って頭を下げようとした彼女を見つめる俺の耳に聞き馴染みのあった音が聞こえた。
ヒュルルルルルルル・・・
それがなんの音かと脳が理解する前に、俺は咄嗟に動いていた。
「伏せろ!!」
「え?」
驚いた顔をしてこちらを見上げるAR-15を押し倒して床に伏せた直後・・・滑走路の中央ら辺に迫撃砲弾が着弾した。
『433!!』
爆風が収まった後、起き上がるとほぼ同時に通信機から怒鳴る様な声が響いた。
「聞こえてる!奴らが来たか!!」
『あぁ、AR-15は!?』
「一緒だ、怪我はない。今から上に上がらせる、私はM4たちと合流して外に出る」
『任せたぞ!!』
通信が切れたのを確認し覆い被さる形で庇ったAR-15を確認する。
「大丈夫か?」
「え・・・えぇ、大丈夫よ」
呆然としていたAR-15が我に返って返事を返してきた。
「悪いが謝罪は後回しだ、敵が来る!」
「了解」
手を貸して立ち上がらせながらそう言うと状況を把握した彼女はすぐさまスイッチを切り替え1人の戦術人形としての顔を覗かせた。
「私は作戦通り、M4達と合流して迎撃に出る。援護は任せたぞ!」
そう言うとAR-15は目を見開いた後に不適の笑みを浮かべた。
「誰に言ってるのよ・・・任せなさい」
そう言って彼女は管制室へ上る為に階段を登って行き、俺はM4達と合流する為に階段を駆け下りた。
1階に降りると管制塔の出入口で既にM4とSOPⅡが戦闘準備を整え俺が来るのを待っていた。
その間にも敵の砲撃が続いており、着弾の衝撃が建物を揺らしていた。
「「433!!(さん)」」
2人が俺に声を掛けてきた。
俺は二人に頷き返すと同時にライフルとハンドガンの状況を確認して二つのセーフティを解除した。
2人も俺と同じくライフルとハンドガンをチェックして俺に目線を合わせてきた。
2人とも準備が出来たのを確認し俺は外へと飛び出した。
「行くぞ、2人とも!!」
「「はい!!(うん)」」
2人は元気よく返事をすると俺に続いて外へと飛び出した。
さて、救援部隊が到着するまで持久戦の開始だ・・・無事に生き残ってやろうじゃないか!!
書いてて思った・・・これAR-15がヒロインじゃねって?
マジか・・・こんな感じで書けば良い感じじゃねって直感頼りに書いたらAR-15がヒロインポジに収まりかかってるし更にはM4も割とフラグ立ちかかってる・・・
可笑しいな、初期構想では指揮官×HK433とかを考えてたのに・・どうして・・・どうして・・・
それは兎も角、次回からとうとう、鉄血との戦闘開始です!
あ、因みに言って置くと433達と鉄血の戦力費を現すと5対60ぐらいだとお考えください、・・・うん、普通に死ぬわ()
次回、とうとうHK433達が籠城する飛行場へと鉄血兵の大部隊が来襲する!
433が用意した策と433とAR小隊の高い練度と連携を持って初戦を有利に進めるも次第に物量に追い詰められていき苦しめられる5人、そこに追い打ちを掛けるが如く、AR-15が狙撃を続ける管制室に敵の砲撃が直撃し動揺するHK433たちの目の前に鉄血のあのハイエンドモデルが姿を現す!!
安否不明のAR-15と突如と現れた強敵にHK433はどう対処する!?
次回、籠城戦開始!!
次回も433と地獄に付き合って貰おう(ポト〇ズ風)
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第5話 後編 その3 籠城戦開始
ちかれた・・・まさか1万文字近く書くとは思ってなかった・・・(9316文字)
やっと第5話の8~9割ぐらいを書き終えました。
次ぐらいで第5話は終了です・・・
まさかここまで長くなるとは最初は全く思ってませんでした・・・
鉄血の砲撃が続く中、前衛担当の俺たち3人はなんとか配置に着くことが出来た。
降り注ぐ砲撃は散発的なもので殆どが見当外れのところへと着弾している。
攻撃目的ではなく、こちらのあぶり出しと精神的な揺さぶりが目的か・・・?
だとしたら、俺たちは敵の術中に嵌ったことになる。
だが、それで籠城を続けていたら虱潰しに砲撃を建物に撃ち込まれて全員、瓦礫の下敷きになっていたというのも容易に想像できた。
やがて、砲撃が止み飛行場一帯に戦闘が始まる前の緊張感が漂い始めた。
『・・・奴らが見えてきたわ』
通信機からAR-15の緊張した声が聞こえてきた。
携帯通信機は全員分あって、全員が装備していた。
因みに今回は指示を聞き逃さない様に通信機は腰ではなく左肩に取り付けている。
「数は分かるか?」
『数は・・・冗談でしょ・・・?』
敵の数を聞こうとするが返ってきたのは狼狽したAR-15の声だった。
通信を聞いていたM4とSOPⅡが不安げな表情でこちらを見た。
俺はそれを見つつも再度、AR-15に問いかけた。
「AR-15・・・敵の数は?凡そで良い教えてくれ」
『・・・5・・・10・・・15・・・20・・・25・・・いえ、それ以上・・・少なくとも60以上の鉄血兵が接近してくる!!』
その報告を聞いて流石に俺も顔を歪めた。
俺たちはたった5人しかいない、それに対して敵は倍以上を動員してこちらに向かってくる。
「油断も慢心もなしか・・・」
『仕事熱心で結構な事さ、私たちからすれば迷惑な事だけどな・・・!』
冗談を言うM16だがその声音は緊張感があった。
果たして俺が設置したトラップでどれほどの敵を潰せるか・・・
俺たちの命運にはそこに掛かってるかもしれないな。
そう思いつつ、俺は敵の姿が見えるのに備えた。
その状況から5分・・・10分と経ったところで、飛行場に突如と爆発音が轟いた。
最初はまた敵の砲撃かと皆は騒いだが飛行場に着弾する様子は一向にない。
皆が砲撃じゃないと気づき、落ち着いた頃に更に連鎖的な爆発音が轟いた。
『・・・433、これがお前が言っていた
M16の言葉にニヤリと笑った。
「あぁ、格納庫で見つけた地雷を使った即席の地雷原だ、前の住人は不要と判断して置いて行ってくれて助かったよ」
『やれやれ・・・お前が敵じゃなくて良かったよ』
「褒め言葉と思って受け取っておくさ。だがな、あれはただの地雷じゃないぞ?」
『と言うと?』
「良く見ていろ」
そう言って俺はサイドバックから二つのスイッチを取り出し何度かリズムを作って起動させる。
すると爆発音が止まり、静かになっていた敵の方向からまた連鎖的に爆発音が轟いた。
『・・・まさか』
今の一連の爆発音で何を仕掛けたのか察したのだろう、M16が呆れた声で呟いた。
「そのまさかさ、
『お前の事だ、ただ設置しただけじゃないんだろう?』
「勿論だ、起爆方式はワイヤー式にリモコン式にセンサー感知型を織り交ぜて選り取り見取りさ。偽装も十分に施したし地雷同士が誘爆しない様に配置も気を使った」
『・・・最早、鉄血兵たちが哀れだな』
『私も鉄血兵に同情する日が来るとは思いませんでした』
『私も~』
『私も同感ね・・・』
「何を言ってるんだ、お前たち。一時的な借家とは言え人の家に大勢で押しかけてきたんだ、熱烈な歓迎ぐらいはしてやらないとな?」
『『『『・・・・・・』』』』
AR小隊の面々はこの時誓ったという、何があっても
「さて、お前ら楽しい楽しい花火の鑑賞タイムは終了だ」
連鎖的に響き続ける爆発音をボケッと聞いてたAR小隊はハッと我に返って武器を構えた。
「地雷原で足止めしたと言っても奴らの物量だ、時期に突破して飛行場に流れ込んでくるだろう」
通信機に向かってそう話すが誰も返事はしない、だが聞いてるというのは理解出来た。
「そうなれば後は私たち自身の手で奴らの攻撃を遅らせる必要がある。AR-15、顔を出した奴を片っ端から撃ち抜いてくれ」
『フッ・・・誰に向かって言ってるのよ、任せなさい』
「頼もしいな、任せる。M16、私たち前衛組の命運はある意味お前が握ってるんだ、指示のタイミングを間違えるなよ」
『誰に言ってるんだ、M4たちの命が掛かってるんだ、絶対に間違えやしないさ』
「そう信じようか・・・死んだら化けて出てやるからな?・・・SOPⅡ」
『な~に~?』
「前衛の中ではお前が一番の火力持ちだ、盛大にやってくれ」
『了解~♪ 40mmグレネードはあと三つぐらいしかないけど頑張るよ!!』
「最後にM4」
『はい・・・』
「落ち着いてな?能力も実力もあるんだ、落ち着いて常に冷静に対処しろよ?ある程度の事はこっちでフォローするからな」
『433さん・・・はい!分かりました!』
気合を入れ直したM4がはっきりとした声で返事をする。
それとほぼ同時に今まで聞いたことのない規模の爆発音が轟いた。
『信じられない・・・奴ら、地雷原を砲撃で全部薙ぎ払って来た!?』
『チッ・・・強引な奴だな』
「強引ではあるが手っ取り早い手段だな・・・M4、SOPⅡ、フラグを準備しろ、奴らの鼻っ柱を叩き折るぞ」
2人が返事するのを聞きつつ俺もサイドバックからフラグを取り出して安全ピンを何時でも投げれる様にする。
やがて・・・出入口の向こうから無数の影が姿を現し始めた。
「3秒後に同時に投げるぞ、3・・・2・・・1・・・投げろ!!」
思いっきりフラグを投擲する、M4とSOPⅡも続いてフラグを投げた。
投擲された3つのフラグは飛行場への侵入を果たそうとして鉄血兵の前衛部隊の目の前にコロコロと転がっていき、それに気づいた鉄血兵たちは蜘蛛の子を散らす様に逃げていき起爆。
それぞれ数体の逃げ遅れた鉄血兵を巻き込んだ。
これで多少は相手の出鼻を挫くことが出来ただろう、そう思うと同時に管制室からAR-15の狙撃が始まった。
宣言通り、的確に鉄血兵の頭を撃ち抜いて行くAR-15に内心、称賛しつつ俺は通信機に向かって叫んだ。
「全員、生き残るぞ!!」
『『『『了解!!』』』』
「リロード!!」
「カバー!!」
「AR-15!!2時方向、リッパー2体!!」
『了解・・・!』
こちらに突貫しようとしていたリッパー2体がすぐさま狙撃され躯を滑走路に横たえた。
それを横目にしつつ正面から弾幕を形成する鉄血兵――確かストライカーと呼ばれる鉄血兵――3体の頭を撃ち抜いた。
『433、そろそろ限界だ。第2ラインまで下がった方が良い!!』
「了解・・・!M4!SOPⅡ!後退だ!」
「了解・・・!」
「分かった!」
「SOPⅡ、先に行け!その次はM4だ!」
SOPⅡは頷き、敵の射線に気をつけつつ後方へと下がって行った。
それを俺とM4、更にM16とAR-15が敵へと攻撃を仕掛けて援護する。
「次、M4行け!」
「分かりました、向こうで待ってます」
「あぁ、すぐに行く」
SOPⅡと同じ要領で全員が援護射撃を持って支援する。
M4が無事に後方の第2防衛ラインに辿り着いて射撃体勢を整えた。
『433さん、辿り着きました!』
「分かった、今行く、援護頼むぞ!」
更に数体のヴェスピドの頭を撃ち抜いた後に弾切れとなったマガジンを交換する。
タイミングを計り、奴らの弾幕が弱まった瞬間を突いて一気に移動を開始する。
装甲車の残骸の影にスライディングの要領で滑り込み、タイミングを計ってM4達がいる第2防衛ラインまで下がって車の影に隠れた。
「大胆な下がり方しますね・・・」
「あれが一番手っ取り早かったからな」
同じ車の影に隠れていたM4が顔を覗かせて鉄血兵に数発、銃弾をお見舞いしたあと影に隠れてそう言った。
その顔は言外にあんな危ない真似するなと抗議していたが俺は匍匐体制になって車の下の隙間から鉄血兵を狙う素振りをして気づかない振りをした。
「M16、そっちから見て敵の様子はどうだ?」
『とんでもない数だな、この区域全ての敵が集まってる様だ。正に雲海の如しだ』
「聞くんじゃなかったな・・・」
『私も見るんじゃなかったと思ってる』
「何時頃、救援が来ると思う?」
『掛けるか?』
「面白そうだ、負けた方は勝った方に一杯奢るでどうだ?」
『乗った!』
「そうだな・・・私は管制塔に籠城する前に救援が来るに掛ける」
『それじゃあ私は管制塔に籠城し始めた後に救援が来るに掛ける』
「掛け成立だな、帰った後の一杯を楽しみにするとしよう」
『言ってろ』
隣でM4がこんな時に何してるんだと言わんばかりの目をしていたが俺は極めて見ない振りをして射撃を続ける。
「そろそろここもキツくなってきたな・・・」
「えぇ・・・そろそろ潮時ですかね」
「かもしれないな・・・」
敵の弾幕が更に激しくなって来ていた。
影から覗けば明らかに正面に展開している鉄血兵のの数が増してきていた。
そろそろここまでヤバイかもな、そう判断して撤退を指示しようとした所でM4が遮った。
「次、最初に後退するのは433さんからですよ?今度は私が殿を務めます」
「おいおい、私が殿の方が安全だ「433さん?」・・・なんだ?」
「朝、約束しましたよね?次何か有ったら私に頼る様にって」
ライフルを構えて射撃をしていたM4が顔だけこちらを向けて行った。
顔がこれ以上、私を心配させるなと訴えてる、やれやれ・・・NOとは言えないか。
AR-15、お前の妹はもしかしたらお前の思ってる以上に逞しいかもしれんぞ?
内心、管制室で狙撃を続けてるであろうAR-15にそう告げ、俺はため息と共に観念した。
「分かった、先に行く。正し、私が配置に着くまで決して無茶するなよ?」
「分かってます」
「無茶して死んだらあの世まで追っかけて説教してやるからな」
「はい」
「全く・・・SOPⅡ!、私が後退したら次はお前だ。準備しとけ!」
「了解~♪」
少し離れたところにある装甲車の影に隠れていたSOPⅡが手を掲げながら答えた。
匍匐体制から立ち上がり、最終防衛ラインに下がる準備を整えた。
「後方で待ってる、死んでも下がってこい」
「はい・・・」
ライフルを構えて射撃を続けるM4の肩に手を乗せてそう告げ、俺は後方へと下がった。
「位置に着いた!次、SOPⅡ来い!」
M4達の援護の元、後方へと下がる事に成功した俺は車の影に隠れてすぐさま射撃体勢を整えてSOPⅡに後退を指示する。
SOPⅡも危な気なく、後退するのに成功し最後はのM4の番となった。
『位置に着いたよ!』
通信機からSOPⅡの声を聞き俺は通信機でM4に伝えた。
「次、M4の番だ!来い!」
『はい・・・!』
視界の先で最後まで残っていたM4が後退をし始める。
それを妨害せんと鉄血兵が動き始めるがそうはせない。
リッパー2体が影から飛び出してきて両手に持ったSMGを構えようとした所をすぐさま頭を撃ち抜く。
(次っ・・・)
4体のダイナゲートが背中に装備された機銃をM4に指向しようとしたが撃たれる前に全てのダイナゲートのカメラアイを撃ち抜いて破壊する。
「チッ・・・リロード!」
「か・・・カバー!」」
こちらを思わず呆然と見ていたSOPⅡが慌てて援護に入った。
弾を使い切ったマガジンを銃を軽く振ることによってリリース、そのままマグポーチから抜き出した新しいマグを差し込み素早くチャージングハンドルを引いて初弾を装填する。
「スタンバイ!」
「スイッチ!」
遮蔽物に隠れるSOPⅡと入れ替わる形で援護射撃を再開する。
M4もすぐ傍まで後退してきていた、あと一回の移動で最終防衛ラインの遮蔽物ての後退が終わる。
あと少しだ・・・!
『ッ!?1時の方向、敵スナイパー!』
「なに!?」
確かに一時の方向。
敵部隊の後方にスナイパーライフルらしき物を構えた鉄血兵の姿が見えた。
その銃口は確かに後退しようとしているM4を捉えていた。
『AR-15は!?』
『ごめん、リロード中!間に合わない!』
「ッ!?タイミングの悪い・・・!」
距離は結構遠い、ホロサイトで狙うにはキツイ・・・だがやるしかない!
一度、大きく深呼吸を行い息を吸って吐き出しもう一度大きくすって止める。
一瞬、周囲の音が消え、スローモーションに見える感覚を覚えるが・・・構わず、トリガーを引いた。
銃口から発射された一発の銃弾は何者にも妨害を受けることなく真っ直ぐ突き進み・・・
ホロサイトの向こうで鉄血兵がパタリと崩れ落ち、M4が無事に最終防衛ラインへの後退を済ませたのはほぼ同時だった。
それと同時に止めていた息を盛大に吐き出した。
こんな真似、二度としない・・・
遮蔽物の裏に隠れて荒れた息を整えながらそう思った。
兎に角。
無事に後退を成功し体勢を整えるのに成功したのだが・・・鉄血兵はこちらに攻撃を加えてくるものの一向に近づいてくる素振りを見せなかった。
正確に言うなら俺たち、前衛組は管制塔のほぼ目と鼻の先とも言える最終防衛ラインに展開しているのだが鉄血兵は第一防衛ラインの辺りから一向に動かないのだ。
敵への攻撃に気を取られていた俺は気づく事が出来なく、その違和感に気づいたのは管制室から狙撃を続けていたAR-15だった。
彼女に言われて俺も遅まきながらそれに気づき、敵の意図に気づくが一歩、遅く・・・敵の後方から複数の落下音が響き始めた。
「全員、伏せろぉぉぉぉ!!」
通信機に叫ぶと同時に俺は遮蔽物の裏に伏せた。
それとほぼ同時に、数発の砲弾が飛行場へと着弾した。
「ケホッ・・・ケホッケホッ・・・全員、無事か」
爆風が収まり舞い上がった土煙に思わず咳き込みながら通信機で安全を確認する。
『・・・こちらM4、大丈夫です』
『うぇ~・・・埃だらけだよ~・・・SOPⅡ、大丈夫だよ~』
『こちらM16だ、生きてるよ。AR-15、そっちはどうだ?』
『はぁ・・・あいつらとんでもない事するわね・・・こちらAR-15、行動に支障なし』
どうやら全員、無事らしい。
その事に安堵しつつ俺は起き上がってコートに降り掛かった砂を落とす。
まさか、戦闘中の敵味方の間に砲撃を撃ち込んでくるとは思いもよらなかった。
「全員、備えろ。奴ら、一気に来るぞ」
今まで遮蔽物兼障害物として敵の侵攻を押し留めていたのだがその遮蔽物も今の砲撃で丸ごと消し飛んでしまった。
こうなれば後は鉄血の独壇場だ、数に物を言わせた物量作戦を展開してくるに違いない。
愛銃に異常がないか確認をしつつ、俺は通信機に話しかけた。
「なぁ、M16。さっきの掛けの話なんだが」
『どうした?降りるか?その場合はお前の負けだぞ?』
「バカ言うな、降りる気はないさ」
『ならなんだ?』
愛銃に異常がないのを確認し、無事だった最終防衛ラインの遮蔽物代わりの車で構える。
「いやなに、救援が来る前に俺たちが全滅したら勝負はどうなるかって思ってな?」
『あぁ~・・・そういや考えてなかったな』
チッ・・・サイトがイカれてやがる・・・
さっきの着弾で罅が入り、サイトとしての機能を停止したホロサイトを取り外してサイドバックへと放り込み、バックアップサイトとして装着してるフリップ式アイアンサイトを直立させた。
ホロサイトより少々見づらいのは確かだがサイトなしで戦うよりはマシだろう。
『そうだな~・・・良し、その場合はお互い負けってことにしよう』
「ってことはドローか?」
『いや、あの世でお互い奢ろうってことさ』
「そうか・・・それなら安心した・・・!」
M16へと返事しながら未だに舞う砂塵の中で不用意に姿を現した鉄血兵を撃ち抜いた。
それを合図にするが如く、M4とSOPⅡ、M16にAR-15が攻撃を開始した。
敵の砲撃の結果、俺たちの射撃が止まってしまい更には土煙のお陰で視界不明瞭での戦闘をする羽目になった。
完全に至近距離での混戦状態に陥り、俺たち3人はなんとかお互いが見える距離で近接戦を繰り広げていた。
M16とAR-15もなんとかこちらを支援してくれようとするものの土煙のお陰で有効な支援射撃が出来ないでいた。
「やれやれ、酷い戦闘・・・だ、な!」
飛び掛かってきた
続いて後方から忍び寄ってきたリッパーの顔面に愛銃のストックを叩きつけて怯んだ隙に振り返って引き抜いたMk.23を撃ち込んだ。
「M4、SOPⅡ、そっちは大丈夫か?」
「敵、多過ぎだよ~」
少し離れたところではM4とSOPⅡが互いに背中合わせにしながらなんとか、鉄血兵たちに対抗していた。
ふむ・・・養父にCQCやCQBをみっちり仕込まれた俺は兎も角、やはりその手の訓練を受けてない戦術人形でしかない彼女たちはキツいか・・・
内心、そう考えながら左側からナイフを構えて突っ込んできたブルートをしゃがんで避け、足払いをして倒れたところに首へとナイフを突き刺した。
刀身部に付着した人工血液を経った今、撃破したブルートの衣服で拭き取ってホルスターに戻す。
M4達に合流しながら彼女たちの足元に近寄ろうとするダイナゲートを撃ち抜き、通信機に手を掛けた。
「M16、まだ救援部隊の姿は見えないか!?」
『まだだ!影すら見えない!!』
「こちらはそろそろ限界だ、早く来ないと管制塔での籠城戦になる!!」
『それでも私は一向に構わないぞ!?そうすれば掛けは私の勝ちだからな!!』
「それは勘弁願いたいな!」
ブルートのナイフを紙一重で避け、お返しに膝を蹴り飛ばして体勢を崩させる。
体勢を崩したブルートは俺の目の前で膝を着く形となりその頭にライフル弾を見舞った。
なんとか抵抗出来てはいるがこのままじゃじり貧だな・・・仕方ない
そう判断した俺はM4とSOPⅡに指示を出す。
「M4、SOPⅡ、このままじゃじり貧だ。仕方ないが管制塔内に撤退するぞ!」
「は、はい!」
「了解!」
二人は返事をすると鉄血兵を撃退しながら管制塔の入口へと後退していく。
俺もそれに続いて鉄血兵を捌きながら管制塔の入口に向かってジリジリと後退しようとして今回何度も聞いたあの音を耳にした。
ヒュルルルルルルル・・・・
「また砲撃か!?」
思わず警戒して周囲を見回す。
だが聞こえる音からして降って来てるのは一発だけだ。
どこに向けて撃った?一発だけというのは可笑しい、今更牽制の砲撃とは思えない。
では、一帯・・・どこに・・・
いやな予感がした、一発の砲撃だけで済む攻撃対象・・・M4たち?あり得ない、老朽化してるとは言え管制塔は頑丈だ、たった一発の砲撃程度で破壊出来るとは思えない。
なら狙いは俺か?それも違うだろう、態々砲撃を撃ち込むより周りの鉄血兵で一斉に攻撃した方が手っ取り早い。
なら敵の狙いは・・・?
狙い安い私でもなく、管制塔へと退避したM4たちでもないが鉄血兵じゃ攻撃が届かず、砲撃が唯一届き、砲撃じゃなきゃ攻撃が届かないターゲット。
そこまで考えて・・・俺は敵の狙いを察知した。
俺は通信機に向かって叫んだ。
「AR-15!!」
逃げろ!、そう続ける前に敵の砲撃が管制室へと着弾した。
周囲に管制室の一部だった瓦礫が飛び散った。
土煙が晴れ、姿を現したのは砲撃の直撃で半壊した管制室だった。
俺はただ茫然とそれを見上げるしか出来なかった。
そんな状況の俺に突如と声が掛けられた。
「よぅ、グリフィンの戦術人形」
聞き覚えのない声だった、M4でもSOPⅡでもM16や、AR-15の声でもない知らない声。
だが、その声を聞くと背筋にゾクリと冷たい物が走った。
そして直感に頼るがまま、俺は左方向へと身を投げた。
その瞬間、俺がさっきまでいた場所になにかが通り過ぎて地面に突き刺さった。
咄嗟の回避だったがなんとか受け身を取り、俺を狙った敵を確認した。
黒い長髪に角を思わせる髪留めらしき物に赤い瞳の整った顔立ち、服装はノースリーブのインナーにホットパンツに腰にはサイドポーチらしき物を着けたベルトを装着していて太ももまで届くブーツの様な物を履いている。
それだけでも十分目立つのだがそれ以上に彼女を目立させてるのはその右腕と左に持ってる物だろう。
左手に持ってるのは大型拳銃ほどの物だが問題は右腕だ。
上腕から下を機械化された一回りも二回りも巨大な腕を持ち、その右手には彼女の身の丈ほどはあろうブレードを保持している。
そのブレードは地面に突き刺さり、アスファルトの地面が見事にひび割れている。
あのまま避けていなければ今頃俺はあのブレードで真っ二つになってただろう。
「へぇ・・・あれを避けんのか。ちったぁやるじゃねぇか」
獰猛な笑みを浮かべながら彼女は地面に突き刺さったブレードを軽々しく持ち上げ、肩に背負う形で構えた。
数多の戦場で修羅場を掻い潜って来た感が最大レベルの警鐘を鳴らしている。
こいつはただ者じゃないと・・・その辺の鉄血兵の雑魚ではないと・・・
俺の中での警戒レベルを最大限に上げ、油断なくライフルを構える。
相手の様子を窺う俺の通信機に通信が入って来た、相手はM16だ。
『433、無事か!?』
「・・・なんとかな、それよりこいつは・・・?」
『・・・鉄血のハイエンドモデルだ』
「ハイエンドモデル・・・?という事はここら辺に鉄血兵のボスと言ったところか?」
『あぁ・・・そいつの名前はエクスキューショナー・・・鉄血のハイエンドモデルの一つだ』
「Executioner・・・処刑人とはまぁ、洒落の効いた名前だ」
『冗談言ってる場合じゃないぞ!?』
焦った様な声を出すM16。
彼女がこれほどまで焦るとなると相当ヤバい部類に入るらしい。
まぁ、俺も本能的に察していて内心、どうしたものかと思ってるところだ。
「M4達は?」
『無事だ、今1階で即席のバリケードを作って鉄血兵と応戦してる』
「・・・・・・AR-15は?」
『分からない・・・』
「M16、お前はAR-15の安否を確認しに行ってくれ」
『だが・・・』
M16が言い淀む、確かに彼女は妹のAR-15の安否が気になるだろう。
だが、それと同じ以上にエクスキューショナーやその他の鉄血兵に囲まれた俺を気に掛けている。
「ハッ・・・面白れぇ奴だな、お前、おいお前ら!こいつは俺の獲物だ、手出すなよ!!」
エクスキューショナーが周囲の鉄血兵にそう言うと俺を半包囲していた鉄血兵たちは構えていた武器を下ろし後ろに下がった。
「奴は俺とのタイマンをご希望らしい・・・M16頼む」
『はぁ~・・・分かった、任せたぞ』
「済まん」
『貸し1だな』
「今度返す」
『当たり前だ!』
そう言って彼女からの通信が途絶えた。
これで大丈夫だろう、あとはこいつと戦って勝つか・・・少なくとも引き分けぐらいに持ち込むかだ。
「よぅ、お話は終わったか?」
「あぁ、悪かったな」
「別に構いやしないさ・・・」
なんともないと言わんばかり笑うエクスキューショナー。
いきなり奇襲して来たので暗殺の方が得意かと思いきやそうでもないようだ。
彼女は左肩をグルグルと廻した後、先ほど以上の獰猛な笑みと殺意をにじみ出してきた。
「それじゃあ・・・始めるか!」
「あぁ・・・」
はい、433が用意した策、なんのことないクレイモアを使った地雷原ですw
因みに作動方式のセンサー型は本作品のオリジナル要素ですw
地雷原のイメージはHELLSINGの奴ですw
正直、自分で書いててドン引きするレベルでえげつねぇと思いましたw
あと433のライバルさん登場です、皆さんご存じの処刑人ことExecutionerさんですw因みに主が鉄血のハイエンドモデルで代理人の次に好きですw
というか順調に433がM4とAR-15とのフラグを建てて行ってる・・・これはいっそ路線変更してHK433×M4A1&ST AR-15を書くべきか・・・迷うな・・・!!
次回予告
突如、鉄血のハイエンドモデル、Executionerの襲撃を受け危機に陥る433!
AR-15の安否をM16に託し、自分はExecutionerとのサシの対決へと挑みなんとか互角の戦いを繰り広げるが情勢は圧倒的不利!
敗北を予感する433だが自分を囲む鉄血兵が突如と爆撃される!!
次回、来援!
次回も433と共に地獄に付き合って貰おう(ポト〇ズ府)
(因みに主はポトムズ知りません)
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第5話 後編 その4 来援!
疲れた・・・!!(8012文字)
まさかこんな長くなるとは思ってませんでしたが第五話終了です!!
次は基地に着いてHK433のアレコレやったり、出来れば日常パート書きたいな~って思ってます。
あと第五話だけで合計文字数が36509文字あるそうです・・・なにこれ・・・(白目
「それじゃあ・・・始めるか!」
「あぁ・・・」
お互い、その一言に戦闘態勢に入った。
先手を取ったのはエクスキューショナーだった。
左手のハンドガンを数発撃ってきた、接近するまでの牽制目的なのだろう、簡単に避ける事に成功した。
こちらもお返しにライフルのトリガーを引くがブレードによって簡単に弾かれてしまった。
マジか・・・片手で容易く扱っていると思っていたが軽々しく構えて盾代わりにするとは思ってなかった・・・
「おら、次はこっちの番だ!」
「チィッ・・・!」
エクスキューショナーが一気に距離を詰めてきた。
そのブレードを横薙ぎに払ってくるのを後ろに倒れ込む形で回避する。
顔擦れ擦れ上をブレードが空気を切り裂き、轟音と共に通過していく。
あんな物に斬られ様ものなら一発で俺の頭はそこら辺に転がることになるだろう。
無理やり避けた為、そのまま地面に倒れそうになるがその前に右手を地面に着けて体勢を安定させる。
その隙をエクスキューショナーが見逃す筈なく、左手のハンドガンをこちらに向けてトリガーを引こうとした。
「悪いがそう簡単にはやらせん!」
「チッ・・・!」
トリガーを引かれる前に足を振り上げて奴の手首を蹴り上げる。
銃口はあらぬ方向に向かって銃弾を吐き出し、俺はそのまま右手を支えにしてバク転する様に後ろに下がり、更にそのまま後ろにバックステップで距離を取った。
距離を取ってライフルを構え警戒しながらも思考を巡らす。
さっきの蹴り、出来れば奴がハンドガンを手放せばと思い全力で蹴り上げたのだが残念ながらそういう結果にならなかった。
ブレードを地面に突き刺して右手で左手首を摩るだけで特に意に介した様子を見せない。
攻撃しようにも射撃はあの攻防自在に振るうブレードに邪魔されて届かない、なら接近戦を仕掛ければ漏れなくあのブレードの餌食だ。
先にあのブレードを手放させないといけないか・・・
そう判断するも一体、どうやってあのブレードを手放させるかと悩んだ。
右腕はあのブレードを片手で保持出来る程の代物だ、左手のハンドガンを手放させ様とする以上に苦労するだろう。
そう考えてる間にもエクスキューショナーは右手にブレードを持ち直し、戦闘態勢を整えた。
「おい、そっちから来ねぇなら・・・こっちから行くぜ!」
そう言うとほぼ同時にエクスキューショナーはあの驚異的な瞬発力を持って距離を詰めてきた。
取りあえずは牽制でライフルを撃つがやはりと言うべきかあのブレードで弾かれるか、容易く避けられてしまう。
お返しにと言わんばかりにエクスキューショナーはハンドガンを構えて数発、撃ち返してくる。
殆どは避けれたが最後の一発が体を掠って行った。
致命傷どころか体にダメージは入ってないもののライフルを吊るしていたスリングを破壊された。
だがそんな事を気にする暇もなく、距離を詰めたエクスキューショナーがブレードを振るった。
袈裟切りする様に振り下ろすが左足を半歩下がらせ、体を斜めにする事で回避、ライフルを構えてる暇がないのでMk.23を引き抜いて狙いを定めようとして・・・
「さっきのお返しだ!!」
「しまっ・・・!?」
素早く体勢を立て直したエクスキューショナーがMk.23を持った右手に蹴りを入れられ思わず手放してしまった。
俺の手から離れたMk.23は空中を弧を描く様に飛び、離れたところに転がった。
更に返し刀に足を振り落としてきたがそれは咄嗟に両腕をクロスさせる事で防御する、だが代わりにスリングを壊されていたライフルを落とす事になった。
「よう、どうした。そんなもんか?」
エクスキューショナーが余裕のある笑みを浮かべながら力を込めてくる。
押し切られまいとこちらも力を入れるが・・・腕からミシリという事が聞こえてくる。
このまま続ければ明らかに俺の方が不利だ・・・
一か八か、やってみるか・・・!
そう決断し、防御してる腕の力を態と抜いてそのまま防御態勢を止めた。
いきなり抵抗を失ったエクスキューショナーは思わずそのまま足を振り下ろして来たがそれを紙一重で避ける。
地面を踏み抜いたエクスキューショナーの右足を踏みつけて動けない様にする。
そのままエクスキューショナーの顎に掌底を撃ち込む。
「ぐっ・・てめぇ・・・!」
不意打ちを喰らったエクスキューショナーは左手のハンドガンをこちに向けてきた。
だが中・近距離戦からなら兎も角、至近距離での戦闘においてだったらハンドガンよりナイフや素手の方が早い。
エクスキューショナーがトリガーを引く前に左手をホールド、そのまま手首を捻った上で手刀を落とせば彼女は苦悶の声と共に容易くハンドガンを落とした。
苦し紛れに今度は自由な左足で蹴りを入れて来たがそれも既に予想済み、タイミングを合わせて逆に脛を蹴り飛ばした。
「調子に・・・乗るな・・・!」
怒りに満ちた声と共に今度は左からブレードを横薙ぎに振るってきた。
流石にあれをこの状態で受け流すことは出来ない、そう判断した俺は咄嗟に身を屈めてブレードを回避した。
間に合わなかったコートの右手側がバッサリ切り飛ばされたがそんな事を気にしている暇はない。
ブレードが通り過ぎたのを確認して素早く起き上がる、その時に一緒に踏みつけてるエクスキューショナーの右足に力を籠める。
起き上がると同時に腰のホルスターからナイフを取り出した。
無理な姿勢から強引に振るったブレードを持つ手は未だに自由に動かせず、完全に無防備な姿を晒したエクスキューショナーの首筋へと逆手に持ったナイフを滑らした。
(獲った・・・!!)
「ハァッ・・・ハアッ・・・ハァツ・・・!」
螺旋階段を駆け上がる、もうすぐで管制室へと到着だ。
道中、崩れてきた瓦礫が邪魔で時間が掛かったがなんとか管制室へとたどり着けた。
「AR-15!!」
管制室に入ると同時に妹の名前を叫んだ。
管制室は酷いあり様だった、迫撃砲の直撃を受けた為に残っていた壁は綺麗に吹き飛んでいて管制室内はその瓦礫だらけだ。
数時間前まで、自分たちが居た場所とは決して思えない惨状だ。
パッと周囲を見渡すが自分の妹の姿は見えない。
まさか・・・さっきの砲撃で・・・
M16の胸中で最悪の未来が過ぎ去り、顔を蒼褪めさせた。
「AR-15、何処だ!?」
頭に浮かんだ物を振り払う様に再度、妹の名前を叫んだ。
だが、返事は返って来ない・・・
M16の胸中に絶望感が漂った時・・・彼女の後ろから何かが崩れる音が聞こえた。
ガラリッ・・・
咄嗟にそっちの方、管制室中央にある操作パネル台の裏を見た。
そこには確かにAR-15の姿があった、瓦礫に埋もれてはいるが確かに彼女の姿だ。
妹の無事に安堵しつつM16はすぐさま、彼女の元に駆け寄った。
「AR15・・・無事か!?」
「・・・ッ!・・・生きてるわよ・・・うるさいわね」
顔を苦痛に歪めながらもAR-15から返事があった。
改めて彼女を見れば酷いあり様だった。
体中は傷だらけの上に額からは人工血液を垂れ流している。
「・・・怪我の状態は?」
「最悪の一言・・・左腕が折れてるわ」
自己診断プログラムを走らせた彼女が苦虫を噛んだ様な顔をした。
確かに言われて見れば彼女の左腕は力なく垂れ下がっている。
「ペルシカが怒りそうだな」
「勘弁してよ」
AR-15は嫌そうな顔をした。
間違いなくペルシカは怒るだろう、それと同時に心配もするだろうが・・・
だが、それよりも気になることがあった。
「にしても良く無事だったな?殆ど避ける時間はなかったと思うが?」
「・・・433のお陰ね」
「ほう?」
「彼女が私の名前を叫んでくれたお陰で咄嗟に影に隠れることが出来たわ」
「礼を言わなきゃな・・・改めて」
「そうね・・・謝らなきゃならないのに更に貸しを作るなんてね・・・」
「ん?なにか言ったか?」
「なんでもない、それより私のライフルを取ってくれる?」
そう言って彼女が指さす方向には瓦礫の中から銃身だけ顔を見せてる彼女の愛銃だった。
瓦礫から引き抜いて確認するが多少、埃を被っただけで特に異常は見られなかった。
埃を払って渡すとAR-15は片手と両膝の間を器用に使ってマガジンを取り外してチャージングハンドルを引いて装填されていた弾を排莢し、マガジンを指し直して再度チャージングハンドルを引いて装填した。
それを見ていたM16だがAR-15が何をしようとしてるのか察した。
「おいおい、まさか戦う気か?」
「当然でしょ?リロードには手間取るでしょうけど片腕さえあれば銃は撃てる、それに皆がまだ下で戦ってるていうのに私だけ寝てる訳にはいかないわ。」
そう言って立ち上がろうとする彼女に思わずM16はため息をついた。
全く・・・こうゆう頑固な所はM4とそっくりだな・・・
内心そう思いつつM16は立ち上がる事に四苦八苦しているAR-15に肩を貸すことにした。
「肩貸すぞ、掴まれ」
「M16・・・」
「左腕の痛覚切っとけ・・・痛むんだろ?」
「・・・そうね」
出来るだけ気をつけつつM16はAR-15の右腕を肩に回した。
「下の戦況は?」
「M4とSOPⅡが正面入り口に即席のバリケードを作って抵抗してる」
「M4とSOPⅡ?433はどうしたの?」
「・・・管制塔の外でエクスキューショナーと交戦中だ」
「エクスキューショナー・・・?・・・ッ!!あいつがここに!?」
「あぁ・・・」
「どうして433を一人にしたの!?」
「私もそうはしたくなかったんだがな・・・433の奴にお前の無事を確認してくれって頼まれたんだ」
「私の?」
「あぁ・・・」
「そう」
顔を俯かせたAR-15を気にしつつ、M16は階段を下りて展望エリアへと降りる。
そこから展望エリアを通り過ぎてM4と合流しようとした所で俯いて黙り込んでいたAR-15に声を掛けられた。
「M16・・・ちょっとお願いがあるわ」
「うん?」
顔を上げたAR-15は何かを決意した様な顔をしていた。
ガキィンッ・・・
首筋を捉えた筈のナイフはエクスキューショナーの首を切り裂き、鮮血の如く人工血液を撒き散らす事はなかった。
「惜しかったな・・・」
「チッ・・・!」
すぐそこまで追い詰めていた筈のエクスキューショナーは残念そうに呟いた。
俺は険しい顔をしながら奴の首を獲り損ねた原因・・・彼女が右手で構える俺と同じ
彼女の首を切り裂こうとした俺のナイフは彼女が咄嗟に下から突き出したナイフによって物の見事に食い止められていた。
「本当に惜しかったぜ?俺をここまで追い詰めたのはお前が初めてだよ」
「そいつはどうも・・・」
「寡黙な奴だな・・・お前、名前は?」
「・・・聞いてどうする?」
「別にどうしようもしねぇさ、ただお前は俺の名前を知ってるのに俺がお前の名前を知らねぇのはフェアじゃねぇだろ?」
「・・・HK433」
「HK433か・・・へぇ・・・覚えたぜ?」
ナイフ同士の鍔競り合いが続く中、エクスキューショナーは嬉しそうに笑みを浮かべた。
それに反して俺は額に汗を浮かべていた。
現状、互角・・・いや、少しこちらが押され気味だがなんとか抵抗が出来てはいる・・・だがこれが何時まで持つか分からない。
俺は兎も角、管制塔の入口で必死に戦闘を続けているM4たちが何時まで耐えれるか分からない・・・
出来れば俺があちらに合流したいところだがそれにはまずエクスキューショナーを撃破或いは撃退する必要がある。
どうする・・・?どうすればこの状況を打破出来る・・・!?
焦燥に駆られ、起死回生の一手を考えだそうとする俺を遠巻きに囲んでいた鉄血兵たちが・・・突如と爆撃された!
「なに・・・?」
「んだと!?」
俺もエクスキューショナーも想定外の事態だったらしく、お互い鍔競り合いをしている状況から綺麗に吹き飛ばされた鉄血兵たちの方へと目線が向いた。
それとほぼ同時に上空を二つの影が高速で通り過ぎて行った。
通り過ぎて行ったその影を追えばそこにはボディにグリフィン&クルーガー社のロゴが入ったAH-64Dが2機、飛行場上空を我が物顔で飛び回る。
機体下部に取り付けられたHUDと連動している30mmチェーンガンと機体両側のスタブウィングに懸架されたハイドラロケットが次々と飛行場を埋め尽くす鉄血兵達を屠っていく。
無論、鉄血側もそれに対抗して対空攻撃をしようとするが高速で飛び回り続け、時には地形の影に隠れて翻弄するアパッチに着いていけず次々と撃破されていく。
粗方鉄血兵が撃滅された後、2機の輸送ヘリが飛行場に姿を現した。
見た目はアメリカのUH-60 ブラックホークをベースにしたと思われる2機の輸送ヘリはアパッチが取り零した鉄血兵を掃討してランディングゾーンを確保、着陸すると部隊を展開し始めた。
それに気を取られ、ナイフへ入れてる力が抜けているエクスキューショナーを押し切り、そのまま彼女を蹴り飛ばして距離を作る。
「てめぇ・・・!」
油断した所を突かれたエクスキューショナーが怒りを露わにするがそれを無視して足元のライフルを拾い上げてマガジンを素早く交換する。
Mk.23も回収したかったが残念ながらそんな暇は無さそうだ・・・
エクスキューショナーに銃口を向けつつジリジリと下がり・・・そして一気に走り出す。
俺を捉えるべくエクスキューショナーも走り出そうとし、その足元に数発の銃弾が撃ち込まれた。
思わぬ攻撃にエクスキューショナーは動きを止め、俺は狙撃してきた方向・・・管制塔の方へと向いた。
管制塔の展望エリア、そこには匍匐状態になってライフルを構えるAR-15とその隣で片膝を着いてスポッター役をしているM16の姿があった。
AR-15の援護射撃の元、救援部隊の方へと向かうがエクスキューショナーは諦めず、AR-15の狙撃をブレードで弾きつつもこちらへ向かってくる。
俺はその姿を後ろ目で確認しつつ、サイドバックからある物を取り出す。
そしてエクスキューショナーの方へと振り返りながら叫ぶ。
「AR-15!!」
彼女の名を呼びながら『それ』を投げた。
「ハッ・・・そんなもん喰らうかよ!!」
そう言ってエクスキューショナーは投げつけられた『缶』を避けようとして、それが目の前で銃弾に撃ち抜かれて爆発した。
俺が投げたのは唯一、使われることなく所持していたスモークグレネードだった。
彼女が上手く撃ち抜いてくれるかは賭けだったのだが彼女は俺の信じてた通り、ドンピシャのタイミングで撃ち抜いてくれた様だ。
スモークグレネードを至近距離で食らい、動きを止めたエクスキューショナーをしり目に俺は救援部隊との合流に成功する。
駆けつけてくれた彼女たちに礼を言いつつヘリに搭乗する、M4とSOPⅡはもう一機のヘリに既に搭乗してるらしい。
地上に展開していた救援部隊が全員搭乗するとヘリは浮上し今度は展望エリアへと向かった。
展望エリアにいるM16とAR-15を回収するためだ。
ヘリは二人が乗れるギリギリの高さを維持しながらホバリングする。
出迎えた二人はボロボロだった。
特にAR-15はズタボロで頭からは人工血液を流してるし左腕は力なく垂れ下がっている。
「ボロボロだな・・・」
「そうね・・・けど、貴女のお陰で生きてる」
「そうか・・・さっきの狙撃、助かった。ありがとう」
「ふっ・・・当然ね」
作戦開始前の時と同様にAR-15が不敵な笑みを浮かべた。
俺はその姿思わず笑みを零しつつ手を差し出す。
「さぁ、とっととこんな処からオサラバしよう」
「その通りね」
差し出された手を取ったAR-15を引っ張り上げヘリへと乗せた。
M16もその後に続いてヘリに搭乗し、ヘリは離脱するために上昇し始める。
「私には何もないんだな・・・」
M16が何か言っていたが無視された。
ヘリは数時間に渡り激しい戦闘を繰り広げた飛行場を後にする。
上昇中、滑走路に何もせず、こちらを見上げるエクスキューショナーがおり目が合った。
こちらを見上げるエクスキューショナーの口が動いた。
「次はぜってぇ逃がさない」
声が聞こえた訳ではないがそう言った様に見える。
どうやら、彼女とは長い縁になりそうだ。
離脱するヘリの中で俺はそんな予感を感じていた。
「よぅ」
「うん?」
飛行場から離脱し、所属基地へと向かうヘリの中、カーゴハッチの淵に寄りかかって外を眺めていた俺にM16が話しかけてきた。
M16は俺と反対側の淵へと寄りかかる様に座った。
・・・ズボンの俺だったら兎も角、ミニスカート姿のM16が片膝を立てて座ると見えるんだが分かってるのだろうか?
「今回はお疲れさん」
「あぁ、お互いにな」
暫しお互い無言だったがM16が口を開いた。
「AR-15のこと、助かったよ。お前が咄嗟に呼んでなかったら私は大事な妹を失うとこだった・・・M4の事も含め、改めて礼を言わせてもらう」
「気にするな、俺も咄嗟に声が出ただけだ」
「そうか・・・」
「AR-15の容態はどうだ?かなりボロボロだったが・・・」
「現在は
「そうか・・・」
そう言って俺は機内の椅子に寝かされ、眠りについてるAR-15を見やった。
彼女の上には433が羽織っていたコートが掛けられている、イスに寝かしつけた際に俺が彼女に掛けた物だ、彼女は最初驚いたがその後に嬉しそうに笑顔を浮かべたのが印象的だった。
M16も同じくAR-15を見ていた。
暫しそうした後、俺は外に視線を戻した。
少しして何気なくサイドバックを漁って煙草を取り出した。
結局、今日1日吸えずじまいだったなと思い、咥えてライターで火を点けた。
それを眺めていたM16が口を開いた。
「なぁ、私にも1本貰えるか?」
唐突な申し入れに驚きつつタバコケースを取り出して差し出すとM16はその中から一本抜き出して咥えた。
俺がライターを向けるとM16は前かがみになって咥えてる煙草に火を点けた。
火が点いたのを確認してライターを懐に仕舞い、お互いまたヘリへと寄りかかった。
煙草の火を何度かを燻ぶらせた後、二人でほぼ同時に紫煙を吐き出した。
「しかし、M16が煙草を吸うとは思ってなかったな」
「ん・・・?ふぅー・・・まぁな。普段は殆ど吸わないんだが・・・極希れにな?」
その後はお互い、煙草を吹かしながらいろいろと雑談を講じながら基地へと向かった。
余談だが、基地に到着してヘリを下りて合流したM4とSOPⅡに煙草臭いと二人揃って文句を言われた・・・解せぬ。
あのグリフィンの戦術人形・・・HK433が乗ったヘリが去って行った方向を眺め続ける。
今回、被った損害のことを
更にAR小隊の連中も逃がしたとあれば説教を言われるのは間違いないだろう。
思わずため息をつきたくなった。
それにしても・・・
「HK433・・・か」
思い出すのはあのグリフィンの戦術人形のことだった。
そこらの雑魚とは違う見た目、装備、そして戦闘技術・・・
油断したとは思ってなかった、戦い初めてすぐに慢心も捨てた・・・だがそれでも奴を仕留めることが出来なかった。
「楽しませてくれるじゃねぇか・・・!」
初めて会う強敵に思わず昂って来た。
次会ったらぜってぇ逃がさねぇ、必ず決着を着ける。
そう決意し、帰ろうとしたところで、視界の隅に何か光る物を捉えた。
普段なら興味も持たずにそのまま立ち去っただろうが不思議と目を取られ思わずそれに近づいて拾った。
「なんだ、これ?」
果たして拾ったのはハンドガンだった。
だが俺や鉄血兵のガードが使ってる様な代物じゃない・・・どちらかと言えばグリフィンの戦術人形や人類が使ってる代物だ。
暫し、なぜそんな物がこんな所に転がっていたのか頭を傾げて考えた・・・
あっ・・・思い出した。
確か、HK433が持ってた奴か・・・
奴との戦闘中に俺が蹴り飛ばした奴だった、すっかり忘れていた。
暫しそれを見つめ、持って帰る事にした。
特にこれと言った理由は無かったが・・・強いて言えばあいつの持ち物というのが気に入った。
因みに基地に戻った後、代理人に報告したらみっちり叱られた。
苦労しました・・・特にエクスキューショナーとの戦闘パートはずっと脳内シミュレーションしながらの苦闘の連続でした・・・
因みに救援部隊が使ってるヘリが米国製なのはただ単純に 主 の 趣 味 で す
主はUH-60が大好き人間なのでグリフィン社のヘリはUH-60をベースに主が好き勝手に改造施した物が殆どになります。
あ、それと色々吹っ切れたのでこの作品は433×AR-15&M4というカップリングで書いていく事にします、えぇ・・・そうします。異論は認めません。
・・・エクスキューショナーにヤンデレ系ヒロインのフラグが建った気がするけどきっと気のせいです(目逸らし)
早く、433とAR-15たちをくっ付けてイチャイチャしてるの買きたいな~(ボソッ
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第6話 S04地区とあいつと私たちの恋愛事情
第5話をかき終え、これで暫くは落ち着くだろうと思っていた・・・
が、そう思うのは主だけでした(10529文字)
いろいろと書きたいこと書いたりフラグ建築進めたり回収するかどうかも危うい伏線引いたりしてたらまた1万文字超えました・・・ちくせう
第5話をかき終えた反動でモチベが死んだり、構想が上手く練れなくて難産でしたがなんとか第6話投稿に漕ぎ着けました。
あ、とても私事ではありますがつい先日、ボイスロイドの紲星あかりのの音声ソフト買いました(小説関係ない)
S04地区のグリフィン&クルーガー社の基地は普段以上の喧騒に包まれていた。
鉄血の支配地域に隣接する地区の一つ後ろに存在し、後方基地としての役割を持つこの基地の仕事は多岐に渡る。
前線基地への物資補給やその補給路の哨戒。
緊急時等で前線基地の部隊だけじゃ間に合わない時の増援。
市街地の治安維持並びに警備。
敵地で孤立した友軍部隊への救援部隊の展開等だ。
今回もその内の一つで敵地で孤立、救援要請を発した味方部隊の救援が任務だったのだが規模が違った。
G&C社と技術提携先のI.O.P社で取り分け縁の深い16LABからの緊急依頼。
対象は16LAB傘下にある特別製の戦術人形で編成された特殊部隊だと言う話だ。
救援信号が発されたのは最近、鉄血の活動の活発化が確認されている地域だった。
面倒な地域からの救援だと指揮官は内心、顔を曇らせたが断ることは出来ない。
グリフィン本社からヘリアントス上級代行官を通して社長であるクルーガーさんからも「必ず成功させよ」という絶対命令に近い指示も出ていた。
お陰で派遣する部隊は通常の倍の規模を動員することになった。
通常だったらCAS担当の戦闘ヘリが1機、救援部隊兼回収用の輸送ヘリが1機と戦術人形一個小隊で済んだがそうは行かなかった。
今回に限り、確実性を持つために戦闘ヘリ2機に輸送ヘリ2機が用意され、基地所属の中でも精鋭の戦術人形を二個小隊を動員することになった。
動員したメンバーには非番や休暇を取っていた者もいて、文句を言われたが臨時手当を出す事で納得してもらうことになった。
慌ただしく準備を進め、救援部隊が基地を発ったのは救援部隊が発せられてから2時間後。
現地まではヘリでも1時間掛かる位置だったが後は到着まで彼女たちが無事である事を祈るのみだ。
約1時間後、執務室で書類を片づけながら待っていると救援部隊から連絡があった。
救援を要請した部隊が立てこもる廃棄された飛行場には多数の鉄血兵が殺到していたとのことだ。
更に鉄血のハイエンドモデルであるエクスキューショナーの姿も確認されており、指揮官は思わず血の気が引く思いをした。
だが運の良い事に救援を要請した部隊は全員無事で回収にも成功したという。
回収した戦術人形たちはみな、消耗しており程度の差はあるとは言え負傷していて一人は左腕を骨折するという重症を負っているとの事だ。
友軍部隊が全員、無事である事に指揮官は安堵の息を漏らし、すぐに医療班に緊急搬送の準備をする様にと指示を出した。
そしてそれと同時に救援部隊から奇妙な報告を聞いた。
「
という事だ。
今回の救援のために、16LABから対象の戦術人形の人数と名前と顔写真が送られてきていた。
だが実際に現地に行ってみればそこには対象の4人以外にもう1人、知らない戦術人形がおり彼女も回収したとの事だ。
外見的特徴を聞いてみたが指揮官も聞き覚えがなく首を傾げることになった。
16LABにも問い合わせてみたがあちらも知らないという事だ。
不審に思ってると回収した部隊の隊長が彼女は野良の戦術人形であり、今回運良く合流出来たという報告が来た。
基地に到着した後に正確なことを調査するという事に決まり、とりあえずは救援部隊が帰還するのを待つことになった。
2時間後、救援部隊が基地に帰還したという報告が入った。
出来れば自分自身が出向いて見知らぬ戦術人形を一目見てみたいと思うが書類仕事を投げ出す訳にもいかない。
報告に来た秘書担当の戦術人形に彼女たちに執務室に出向く様に頼むのを指示すると同時にヘリアントス上級代行官と16LABの首席研究員であるペルシカリア女史にも連絡を入れる。
ヘリアントス上級代行官とは最低限の報告だけで済んだのだがペルシカリア女史の方が手間取った。
AR-15の容態はどうなのかから始まり、見知らぬ戦術人形の事についてあれやこれやと話し始める。
更に専門用語でいろいろ話し始めたところで後で報告書出すのでそれを確認してくれと言って通信を切った。
思わずため息をついた所で執務室のドアがノックされた、丁度件の彼女たちが到着したらしい。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言って入って来たのは2人の戦術人形たちだった。
確か、資料によればM4A1とM4 SOPMODⅡだった筈だ。
あと3人いる筈だが・・・一人は医療棟に搬送されたとして残りの二人はどうしたのだろうか?
「AR小隊隊長のM4A1です。今回、救援部隊を手配してくれたこと感謝します」
「S04地区の指揮官だ、礼には及ばない。これも仕事だからな、ところであと一人のメンバーと例の彼女は?」
「2人はAR-15・・・負傷した仲間の様子を見に医療棟に行っています、執務室の場所は教えてあるので時機に来ると思いますが・・・呼びますか?」
「そうか・・・いや、結構だ。M4A1、彼女たちが来るまでの間にこれまでの経緯について説明を頼む、グリフィン本社と16LABに報告書を上げなきゃならないからな」
「分かりました、それでは最初に私たちが墜落した経緯から説明させて頂きます」
「あぁ、よろしく頼む」
「―――・・・以上になります」
「これまでの経緯は了解した、ご苦労だったな」
「ありがとうございます」
一通り、説明を終えたことで彼女も安心したのか小さくため息をついた。
彼女の報告は記録されており、後程纏めた上でグリフィン本社のヘリアントス上級代行官と16LABへと送られることになる。
録音ソフトの停止ボタンを押し、録音データを保存したところで彼女に個人的に質問してみた、例の彼女についてだ。
M4A1はその問いに少々、悩んだ様子をした上で答えてくれた。
「
「異質・・・?」
「はい・・・グリフィン社に属する・・・いえ、鉄血含めあらゆる戦術人形を以てしても彼女に並び立つ者は少ないかと思います」
「それほどまでにかね?」
「はい、戦闘能力、作戦立案能力、即応力、どれを取っても彼女のそれは一級品というべき物です」
「・・・君たちAR小隊は16LABの特別製の戦術人形と聞いている。その君たちさえも凌ぐと?」
「はい、悔しくは思いますがそれは間違いありません」
「そうか・・・」
悔しい、と答えたが彼女の表情はその言葉と裏腹に何処か誇らしげにしていた。
普通だったら劣等感や善望を覚えるところだと思うのだが違うのだろうか?
そう思っていると彼女は苦笑して見せた。
どうやら、顔に思っていたことが出ていた様だ。
「お疑いでしたら後程、今回の一連の戦闘データを16LABにて収集されるでしょうからそれを確認してみてください」
「そうさせて貰おう」
今聞いた事は先の音声データとは別に報告書として添付して本社と16LABに送ることにするか。
そう思ったところで、ドアがノックされた。
どうやら医療棟に出向いていた2人が到着したらしい。
入室を許可すると2人の戦術人形が入って来た。
先に入って来たのは三つ編みに右目に眼帯をした少女でその後に例の彼女の彼女が続いて入って来た。
救援部隊からの連絡で特徴は聞いていたが実際に見てみると確かに見覚えも聞き覚えもない容姿をしている。
白銀に輝く銀髪をポニーテールに纏め、灰色の瞳の切れ目と整った理知的な顔立ちは美人というに相応しく、その纏っている雰囲気も合わさってクールな印象を受ける。
その均整の取れた体はその四肢を包むインナーとジャケット、ズボンの上から十二分に分かるほど立派であり、思わず自己主張の激しい一部に目がいってしまったがこれは致し方ない男の性であると思う。
次に目についたのは彼女が右手に持ち、左手で銃身を支えているアサルトライフルだ。
見た限り、M4A1をベースしたアサルトライフルだという印象を受ける。
・・・いや、どちらかと言うとM4 アサルトライフルをベースにしたHK416を元に設計にしたと言ったところだろうか?
そう言えば、報告によれば彼女は今の服装の上から同じ色合いのコートを着けていたと聞いていたが今の彼女はコートを着けていない、何らかの理由で外しているのだろうか?
まぁ、個人的に言わせて貰えば非常に眼福な物を見せて貰ったので文句はない。
そんな事を思っているとM4A1たちと数度、言葉を交わしていた彼女がこちらへやって来て目の前に立った。
その美貌に違わぬ、涼やかな声で彼女は自己紹介を始めた。
「M4から粗方の事は聞いていると思うが改めて自己紹介させて貰う。HK433だ、今回の救助の件、感謝する」
HK433か、生憎実物を見たことはなかったが名前だけは知っていた。
HK416とG36の特徴を組み合わせたアサルトライフルだった筈だ。
「・・・あぁ、無事で何よりだ・・・かなり激しい戦闘だったと聞く、どこか負傷したりしてないか?」
「いや、問題ない、かすり傷程度で済んでるので治療を必要とする程じゃない・・・まぁ、強いて言えば」
そう言って彼女は目線を自分の右足へと向けた。
釣られてその後を追えば彼女の右膝にはハンドガン用のホルスターが付けられており、本来そこに存在する筈のハンドガンは無く空白を作っていた。
「御覧の通り、エクスキューショナーとの戦闘中にサイドアームを落としてしまったので代わりになるハンドガンを頂ければ有難い」
「分かった、手配しよう。後程、要望を聞くのでその時に欲しい銃があれば言ってくれ」
「了解した、感謝する、指揮官」
そう言って彼女は会釈して後ろに下がった。
それを見届けた後に室内にいるAR小隊全員に向けて話す。
M4A1が冷たい目で見てきていたのはきっと気のせいだろう。
「今回の任務、ご苦労だった。長期間の戦闘で皆、疲れていることだと思う、部屋と食事あとシャワーを用意させているのでゆっくりと休んで欲しい」
その言葉にM4 SOPMODⅡが嬉しそうにはしゃいで見せた。
M4A1やM16、HK433もM4 SOPMODⅡほどではないが嬉しそうにしている。
「今後の君たちに関する指示はまだ来ていないが、恐らくは休養を取った後に君たち全員16LABに送られ、そこでメンテナンスと修理を受けることになると思う」
その言葉にAR小隊のメンバーが頷いてみせた。
AR小隊のメンバーではないHK433は静かに聞いてるだけだ。
「それとHK433、君はIOP社の試作戦術人形だ。かなり詳しく調査されると思うのでそのつもりでいてくれ」
「了解した、覚悟しておこう」
「そうしてくれ・・・それでは、以上、解散!」
「「「「了解!」」」
最後にそう締めくくると彼女たちは敬礼して答え、こちらも答礼して答えた。
敬礼を解けば彼女たちも敬礼を解いて各々、喋りながら執務室を出て行った。
それを見送った後、端末を立ち上げてグリフィン社と16LABに提出する報告書作りへを始めることとした。
因みに後日談ではあるが、16LABより開示されたHK433の戦闘記録やAR小隊の戦闘映像を見た指揮官は思わず飲んでいたコーヒーを噴出したとのことだ。
「どう思いましたか?ここの指揮官は」
執務室を退出し、用意したという部屋に向かっていると前を歩いていたM4が肩を合わせてそう問いて来た。
数秒、考えた後にその問いに答えた。
「悪くないと思う、私たち戦術人形を物としてではなく人として見てるのは好感が持てるな」
「そうですか・・・433さんは胸を思いっきり見られてたの全然気づてなかったんですね」
M4が何が言っていたが生憎、声が小さくて良く聞き取れなかったが・・・まぁ問題ないだろう。
不思議そうに首を傾げる俺を見て、M4がため息をつきその後ろを歩いていたM16が同情気味に肩を叩いた。
「それで?この後はどうする?」
M4を慰めていたM16が隣に並んで俺たちにそう聞いた。
「とりあえずシャワー!!私、シャワー浴びたい!!」
そう言ったのはSOPⅡだ。
今回の戦闘で土煙を被っていてシャワー浴びたいと言っていたなと思い出す。
その事については同意見で俺も今回の戦闘で土煙を被ったし、エクスキューショナーとの戦闘で汗をかいていたので早くどうにかしたかった。
M4とM16もそれについては同意見らしく、頷いていた。
まずは部屋に行き、シャワーを浴びてからその後の事を決めるという事で纏まり、俺たちは気持ち足早で兵舎へと向かった。
兵舎に着き、エントランスで俺たちの事を告げれば受付がそれぞれ4人分の鍵と部屋の位置やシャワールームの場所や食堂等いろいろと教えてくれた。
受付に礼を言ってから4人で用意された部屋に向かった。
室内には4人分のベッドに簡易的なキッチンやシャワールーム等、必要な物が取り揃えられていた。
テーブルの上には何種類かのサンドイッチと数種類のペットボトルが置かれていた。
簡易キッチンに併設された冷蔵庫の中にビールを見つけたM16がハイテンションになっていたがM4にシャワーの後だと釘を刺されていた。
とりあえず、4人それぞれで使うベッドを決めて着込んでいた装備を外した。
15分ほど室内でゆっくりした後、M4の一言でシャワールームへと向かう事になった。
用意されていた着替えを持ち、全員でシャワールームへと向かう。
一番、シャワーを待ち侘びていたSOPⅡが先頭を今にでも突貫せんと言わんばかりに走っていく。
それを俺たちを危ないから走るなと宥めつつもその後を追ってシャワールームへと向かった。
シャワーシーンあると思った?残念、総カットです
シャワーを浴び終え、部屋へと戻った俺たちはそれぞれ思い思いに羽を伸ばしながらこの後の事を話していた。
因みにシャワーを浴びる際にいろいろとあった。
シャワーを浴びる際に服を脱いだ俺を見たM4が自分の胸を触った後に落ち込んでそれをM16が励ましたり慰めたりしていた。
何かあったのかと問えば、M4に
「433さんには持たない人間の気持ちは分からないんですよ・・・」
と暗い顔でそう言われM16には
「お前って戦闘に関しては一流だが、こっち方面に関してはからっきしだな」
と呆れた様な顔で言われた。
理解出来ずに首を傾げると2人から呆れた様にため息をつかれた・・・解せぬ。
その後、シャワーを待ち侘びたSOPⅡに急かされてシャワールームへと入ったのだがその際にも一波乱あった。
シャワールームはそれそぞれのスペースが区切られ、個室になっていたのだが・・・
慣れぬ長髪の洗髪に悪戦苦闘していると隣のシャワーブースに入っていた筈のSOPⅡがいつの間にか忍び込んで来ており、いきなり抱き着いてきたのだ。
突如の奇襲に驚く俺を気にすることなく、抱き着いて背中に擦り付いてくるSOPⅡ.
自分のシャワーブースへ戻る様に告げるが彼女は戻るどころか、俺に頭を洗えと要求してくる始末。
最終的には俺が折れて彼女の頭を洗うことになり、更にはシャワーを出た後に頭を拭く羽目にもなった。
等とというハプニングがあった。
それは兎も角。
取りあえず、用意されていた食事を口にしつつこの後の事を話し合う。
因みにM16は部屋に戻ると上機嫌で冷蔵庫から冷えたビール缶を取り出し、蓋を開けてゴクゴクと喉を鳴らしながら飲んでいる。
それぞれがこれからの予定を話し、その通りにすることとなった。
M16はこのまま一人で酒盛りを続けるらしく、M4はM16の監視兼留守番するらしい。
SOPⅡはシャワーでスッキリした上に満足いくレベルでの食事を摂ったのと疲労が出たらしくすぐに寝ると言っていた。
俺はAR-15の様子が気になったので彼女を様子を見に行くことにした。
鍵を持って部屋を出る際、べろんべろんに酔ったM16が
「可愛いからって私の妹に手を出すなよ?」
と言っていたがM4が「姉さん?」と言って良い笑顔で締め上げていた。
医療棟のAR-15に割り当てられた部屋に入ると彼女は既に目を覚ましていたらしく、ベッドの上で暇そうにしていた。
容態を聞けば頭の傷やかすり傷は問題ないのだが折れた左腕は16LABに行かないと修理することは不可能らしい。
ベッドに座りとりあえずこの基地の指揮官の事と明日以降の予定やらを知らせ、その後は当てが割られた部屋の事やシャワーの話や酔ったM16の事を話しの種に雑談に講じた。
シャワーについて話せば「私もシャワー浴びたい!」と愚痴を言われたので私が拭いてやろうか?と聞けば
「ば、バカじゃないの!?」
と、顔を真っ赤にして拒否された。
まぁ、流石にそう思うよなと思いつつも雑談を続けた。
シャワールームでのM4とのやり取りを教えれば
「M4に全力で同意するわ、貴女は持たざる者たちの敵よ」
と鋭い目つきで睨みながら嫌味に似たことを言われ、その後のシャワーブースでのSOPⅡの事を言うと
「あの子は・・・全く」
と呆れた様な声でため息をついた。
その後、酔ったM16に言われた事を伝えると
「な!な!な・・・!!M16はなんてこと言ってんのよ!?」
とピンク色の髪以上に顔を真っ赤にして狼狽して見せた。
コロコロと顔色を変える彼女が面白くてそれに思わず笑みを浮かべつつ雑談を続けた。
「あ・・・えと、これ」
「うん?」
小一時間ほど、雑談をしそろそろお暇しようかと思って立ち上がったところでAR-15に声を掛けられた。
見れば彼女は自分の上に掛けていた物を手に取ってこちらへと渡そうとしていた。
良く見ればそれは俺がヘリの中で彼女に掛けといたコートだった。
そう言えば彼女に渡したっきりだったなと思い出し、少し考えた後にそれをやんわりと断った。
「持ってて構わない」
「え?だけど・・・」
「別に後は部屋に戻って寝るだけだしな、良いさ」
「・・・分かった」
そう言って彼女は持っていた手を下ろしてコートを自分に掛けなおした。
「まぁ、なんだ。エクスキューショナーとの戦闘で破けてるし、少々煙草臭いが我慢してくれ」
「・・・そう言われると返したくなるんだけど・・・まぁ、いいわ」
「まぁ・・・その内、気が向いた時に返してくれれば良いさ」
「そうね・・・もしかしたら捨てちゃうかもしれないけど」
「おいおい、勘弁してくれ」
「・・・冗談よ」
その間はなんだ?と聞きたい気もしたが気にしてもしょうがないので俺は帰ることにした。
「まぁ、良いさ。それじゃあ、また明日」
「えぇ、また明日」
お互い別れを告げ部屋を出ようとしたところで、そうだと踵を返した。
「あ、そうだ」
「?」
「夜中に一人で寂しく思うかもしれないが、そいつを使って我慢してくれよ」
「は!?・・・ば・・・バッカじゃないの!?」
俺の言葉にAR-15は顔を真っ赤にして反論して置いてあった枕を掴んだ所で、俺はそれを投げられる前に部屋から出て行った。
医療棟から戻り、鍵を開けて部屋に入る。
テーブルの方を見ればM16がテーブルに突っ伏しており時折、寝言らしきものが聞こえてくる。
その周囲には飲み切ったビール缶が数本散らばっていた。
次にベッドを見ればM4が眠っているのが見えた・・・SOPⅡの姿が見えないと思っていたがM4と同じシーツに包まっていた様だ。
M16のベッドからブランケット取ってきて、彼女の肩に掛ける。
起きた素振りを見せないのを確認しつつ、自分のベッドの上に置いたサイドバックからタバコケースとライターそれと携帯灰皿を持ってベランダへと向かった。
ベランダに出ると二組のイスが向かい合う形で置かれており、スライドドアを閉めてそれの片方へと腰かけた。
足を組みつつ、タバコケースから煙草を出して咥えライターで火を点ける。
大きく息を吸って紫煙を体内に取り込み、咥えた煙草を外して支援を吐き出した。
数度その行動を繰り返し、ぼんやりと夜空を眺めていると突如と閉めた筈のスライドドアが開いた。
振り返ればそこには酔い潰れて寝てた筈のM16の姿があった。
「M16・・・」
「飲もうぜ」
ニヤリと笑みを浮かべつつM16は両手に持ったビール缶を掲げて見せた。
まだ飲むのか・・・
俺は内心、そう思いつつタバコを携帯灰皿にねじ込んでから彼女からビール缶を受け取った。
「AR-15の様子はどうだった?」
「暇そうにしていた、シャワーについて話したら私も浴びたかったって文句を言われた」
「そうか、そいつはご愁傷様」
M16は反対側の椅子に腰かけ、お互いビール缶を開けて乾杯して一口飲んだ後に雑談を始めた。
最初は医療棟にいるAR-15の様子についてだった。
「頭の傷やかすり傷とかはどうにでもなるそうだが腕に関しては16LABにいかないと直せないとも言ってたな」
「だろうな」
気になったのでM16に16LABという場所はどういう所かと聞いてみた。
する彼女は16LABとそこの首席研究員であるペルシカリア女史という人物について掻い摘んで教えてくれた。
説明を聞き、だいたいの事を知ったところでもう一つ聞いてみることにした。
「もう一つ良いか?」
「構わないぞ?今はキンキンに冷えた美味いビールが飲めて最高に機嫌が良いからな、なんでも答えてやるぞ?」
私の3サイズが知りたいか?やら、ビールよりもジャック・ダニエルがあれば・・・
等とブツブツと呟くM16、酔いが覚めたかと思いきや飲んだお陰でまた酔いが回って来たらしい。
彼女がまた酔い潰れてしまう前に聞くことにしようと判断し口を開いた。
「私がAR-15の様子を見に行こうとした時、お前は私に『可愛いからって私の妹に手を出すなよ?』と言ってきた、あれはどういう意味だ?」
そう問うとビール缶を呷っていたM16はピクリ、と反応した。
その反応に俺はやはりか、と思った。
あの時、M16は俺に対して酔った風に装って言っていたが俺を見ていた目は酔っていなかった様に見えた。
それを確認する前にM4に締め上げられてしまったので出来ず仕舞いだったが今のやり取りで分かった。
M16は俺になんらかの意味を含んでああ言ったらしい。
「言葉通り受け取れば。お前の言葉はまるで私がAR-15を襲うことを前提にした様な口ぶりだったが・・・」
「やれやれ、疎い癖にほんとに鋭い時は鋭い奴だ」
「?、なんか言ったか?」
「なんでもないさ、ところで、私も一つ質問良いか?」
「?」
「お前、AR-15のことどう思ってる」
「どういう意味だ?」
「そのまんまの意味さ」
「そうだな・・・良い奴だと思うさ」
「ほう?」
「最初会った時はちょっと冷めた奴と思っていたが話を聞いて見ればあいつはあいつなりにM4の事を心配していたしな」
「ふむ・・・それで?」
「腕も悪くないな、常に冷静で周囲を見て最善の手を判断して行動に移してる。狙撃の腕も悪くない、改善点はあるがそれを入れても背後を任せても安心出来るな」
「やれやれ、見てないと思いきやしっかり見てる上にこうも高評価とはな・・・」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもない」
「そうか・・・ところでさっきの私の質問の答えなんだが・・・」
「悪い・・・ちょっと酔いが廻ってきたみたいでな・・・先に寝させて貰う」
「あ・・・おい」
俺が引き留める間もなく、M16は立ち上がると足早に部屋の中へと消えて行った。
俺は質問に対する明確な答えを聞けなかったことに落胆しつつ、ビール缶を呷った。
部屋に戻ってベランダへと振り返った。
そうすればそこにはビール缶を呷り、そのまま夜空を眺める433の姿があった。
さっきの質問をされた時、私は思わず考えたことがバレたかと思って反応してしまった。
ビールを呷る振りをしながら更に聞けばあいつは私の言ったことについてまだ半信半疑と言ったところだということが分かって安心した。
にしても433の奴、あからさまな反応を見せるM4やAR-15の事に気づかないわ、自分の胸を凝視ししていたこの基地の指揮官に目線に気づかないわでてっきりそっち方面は疎いのかと思っていたんだが・・・強ち、そういう訳じゃないらしい。
恋愛に疎い433もそうだが話を聞いた限り、AR-15の奴も奥手・・・というかまだ正確に433に対する感情がなんなのか気づいていない様だ。
だがそう遅くないうちにAR-15も自分の感情に気づいて明確に動き始めるなと思った。
それにしても今回のシャワーブースでのSOPⅡの行動についても驚かされた。
あいつが私たちAR小隊の誰かではなく、まだ会って一日と経ってない433に対してあそこまではっきりとしたスキンシップを取るとは思ってなかった。
SOPⅡの行動が無意識での親しい仲間への行動か、それとも恋愛感情故かは分からないがひょっとしたらありえるかもしれない。
M4も今までの行動を見るとやはり433に好意を抱いているのは確かだ。
でなきゃ、433に不躾な目線をするS04地区の指揮官にあんな目は向けないし、私に対してもあんな行動を取らないだろう。
自分の感情に半ば気づいてるM4にもうじき気づくであろうAR-15と無意識に行動に移すSOPⅡだ。
大本命のM4に対抗馬のAR-15・・・そして大穴のSOPⅡ・・・はてさて誰に軍配が上がるかな?
もしかしたらまた別のパターンが・・・というのもあり得る。
433には本人が気づいてないが他人を惹きつける独自の空気・・・いわばカリスマの様な物がある。
それに惹かれてあいつら以外にも集まってきてそいつに取られるというのもある。
だがもしかしたら・・と思うがその可能性に関してはないだろうと思って頭を振った。
確かにあいつは一緒にいて楽しい奴だし良い酒飲み仲間だと思っているが・・・だからと言って・・・
「流石に飲み過ぎたか?」
普段の自分ならしない様な思考してる事に驚き酒を飲み過ぎたかと思った。
まぁ、誰とくっ付こうが構うもんか・・・美味い酒とそれを引き立てる美味い肴に対する対価なら文句も出ない。
そう思いつつ、私はテーブルの所から433が私に掛けたブランケットを取って自分のベッドへと潜り込んだ。
後年、自分も思いも寄らぬ結末を迎えたことに対してM16は
「あの時は3人の誰かとくっ付くんじゃ?と思っていたがまさか、こういう結果になるとはね・・・」
と、苦笑を漏らしたそうだ。
だがその言葉とは裏腹に彼女自身は実に嬉しそうにしていたと言う。
一応、最後はどうなるかというのは何となく考えてあります。
考えた上での伏線を配置です。
なお、この小説が完走すればの話であり、しなかったら無意味の産物と化します。
ところで次回は16LABに行ってそこでペルシカさんと会ったりいろいろやります。
余談ですが最近、点け始めたサブタイは大体、適当です(爆)
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第7話 似た者姉妹
第6話投稿から数時間と経たずに執筆を終わらせ投稿。
そしてまず弁解させてください。
私は第6話のあとがきで次は16LABとペルシカさん回をやると言いました。
そして実際、書こうとしたんです。
それで16LABに行くためにいろいろと下準備を兼ねて書いてたら・・・いつの間にか今回の話が出来上がってました・・・
なのでわたしは悪くな(銃声
屋根のある部屋、フカフカのベッド、そして安心して眠れる味方の領地内。
フカフカだったかは置いておいてベッドは初めて目覚めたI,O,P社の廃工場以来だったか・・・
だが屋根のある部屋と安心して眠れる味方の領地というのは実に久方ぶりだった。
前世では仕事中に狙撃されて死に、その後目覚めてからは鉄血が占領する廃墟を放浪とし続けた。
屋根のない建物で寝たり果てには野営して固い地面や木をベッドや枕代わりにして夜を過ごす事は傭兵時代に幾度と経験したがやはり、味方の領地内というのは別格だ。
野営は野生の獣にいきなり襲われたり、敵勢力からの夜襲を警戒してぐっすりと寝ることが出来ない。
だが、味方の領内や基地であれば野生の獣に襲われることもないし、突如と敵に奇襲されることもないし敵勢力が夜襲を仕掛けて来ても警戒してる味方が応戦して時間を稼いでる内に自分たちも万全の準備を整えることが出来る。
更に言えば温かい食事に熱いシャワーを浴びることが出来、可能であれば煙草や酒と言った嗜好品にもあり付くことが出来る。
正に味方の基地というのは信頼出来る要塞であり、それと同時に兵士たちに取ってなくてはならない楽園であるのだ。
昔、とある将軍が兵士たちはパンと肉が無ければ暴動を起こすと言ったが確かにその通りだろう・・・付け足すならばそこに嗜好品と娯楽があれば言うことなしだ。
・・・さて、現実逃避は良い加減にして現実を見るとしよう。
俺とAR小隊は昨日、グリフィン社の救援部隊に助けられなんとかここS04地区にあるグリフィン社の基地へとたどり着く事が出来た。
そこで俺たちはこの基地の指揮官の好意でフカフカのベッドが用意された部屋とシャワー、更には軽食とは言え食事を用意して貰えその好意に甘えて久方ぶりに羽を伸ばした。
シャワーを浴びて食事を摂り、その後は嗜好品であるビールを飲み煙草を吸うという前線の兵士からしたら最高クラスに等しい贅沢を味わった。
そして皆、各々ベッドに潜り込んで――SOPⅡはM4と同じベッドで――就寝に就いた筈だった。
別に俺はここの基地の所属という訳でもなく、更に言えば仕事を受けている訳ではないので久方振りのベッドでもっと惰眠を貪る事が出来たのだが・・・
悲しいかな、傭兵時代の習慣というのは中々抜ける事が出来ないらしく俺は目覚ましを掛けている訳でもないのに朝6時きっかりに意識を覚醒させた。
意識を一度覚醒させれば寝てる間感じてなかった物も徐々に感じてくる訳であり、ぼんやりとした思考が動き始めると自分の体に感じる違和感も鮮明になってきた。
体と言うか右腕に違和感を感じた・・・動かそうとするがまるで動かない。
流石にそこまですれば俺の意識も完全に覚醒してる訳で・・・何が押さえつけてるのか確認するべく目を開いた。
まず目に入ったのはクリーム系に近い色をした物体だった。
やがて眼が明るさに慣れてきて輪郭が鮮明になってくればその物体がなんなのか理解することが出来た。
クリーム系に前髪左側と横髪の先端を赤く染めた物体・・・いや、少女。
「・・・SOPⅡ?」
俺の右腕を枕代わりにあどけない表情でスヤスヤと眠るSOPⅡだった。
彼女は確か、M4のベッドで一緒に寝ていた筈だが・・・
と思い首を動かしてM4のベッドを確認すればSOPⅡが寝ていたと思われる空間がぽっかりと空いていた。
どうやら、寝てる内に起きたSOPⅡがこちらに潜り込んでいたらしい。
潜り込んできた事もそうだがそれに気づかないで朝までぐっすり寝てる辺り気づかない内に俺も相当、疲労が溜まっていたらしい。
ここが戦場でなくて良かったと思う、もしこれが戦場で起きてたら俺は目覚めたら天国でしたという笑えないオチになっていたところだ。
起きて早々、冷や水を浴びた様な感覚を覚えて人知れずため息をついた。
さて、この状況をどうしたものか?と考えたところで寝てるSOPⅡに違和感を覚えた。
SOPⅡは俺と一緒にシーツを被っていてそこから肩が露出してるのだがそれが問題だった。
彼女は肩を露出してる・・・そう、素肌の肩をだ。
見た限りシーツの上から何か着ているという感じは見受けられない。
「まさかな・・・」
嫌な予感がした。
無事な左手でそっとシーツを上げてその下を確認してから静かに下した。
その後、たっぷり10秒ほど沈黙した後に思わず無事な左手で顔を覆った。
「・・・なんで何も着てないんだ?」
昨日、シャワー浴びた時はM4達に気を取られて見てなかったし、シャワー浴びた後はSOPⅡの髪を拭いた後自分の髪を拭いたり体を拭いたりに気を取られて全く気づかなかった。
その後にAR-15の様子を見に行って帰って来た時、チラッと見た時は少なくとも何かしら服を着ているのが見えたので気にもしてなかった。
何時脱いだか?考えるまでもない、みんなが寝てる間に起きたSOPⅡが俺のベッドに潜り込む際に全部脱ぎ捨てたのだろう。
何故脱いだのか?彼女は元々、寝る時には全裸で寝る裸族と言われる存在なのだろう。
何故寝る時ではなく、夜に起きた時に脱いだのだろうか?寝る前のSOPⅡは本当に眠そうで返事も殆ど生返事に近かった、その結果脱ぐより寝るを優先した結果あぁなったと予測出来た。
M4たちはこの事を知ってるだろうか?たぶん知ってる・・・いや、出来れば知らないでいて欲しいがどうだろうか・・・
起きて早々、頭が痛かった。これは後程、M4たちと話し合う必要がありそうだ・・・知ってるなら何故止めないかを聞き、知らないなら話し合って対策しSOPⅡを説得する。
・・・うん、そうしよう。
そう思いベッドの周辺を見回すとそこら中にSOPⅡが着ていたと思われる黒のパーカーとスカルマスクにスカート、そしてストッキングとブーツが転がっている。
・・・着けてる筈と思っていた下着類が見当たらない事についてはもはや、何も言うまい。
取りあえずはベッドから抜け出すところから始めよう。
朝からどっと疲れた思いをしたがそれは兎も角、SOPⅡの腕枕からの脱出とベッドから抜け出すために動き始める。
彼女が目を覚まさない様に気をつけつつ彼女の頭を持ち上げ、右腕を引き抜いて代わりに枕を差し込む。
そのままそっと振動を与えない様にベッドを抜け出した。
ここまで来てやっと一息をつけた。
その後はとりあえず、周囲に散らかっているSOPⅡの衣服を拾っていく。
一個ずつ拾っては綺麗に畳んで彼女の横に置いていく・・・やはりというべきか、下着は無かった・・・話す内容がまた一つ増えた様だ。
洗面台で顔を洗ってまだぼやけてる意識を叩き起こし、ベランダに出て朝日を浴びながら一服するというこれまた格別な煙草を味わい、部屋に戻ればM4やM16が起き出し、各々眠い目を擦りつつ起き出し始めた。
SOPは俺のベッドで未だに夢の中だ。
寝ぼけている二人と挨拶したりしながら2人が顔を洗ってきて意識をしっかり目覚めさせたところで2人に声を掛けた。
「2人とも、話がある。極めて重大な話だ」
俺の大真面目な顔を見て二人は顔を合わせてから首を傾げ近寄って来た。
さて、とりあえず・・・この二人は黒かな?白かな?
その辺次第によって対応が変わってくるのだが・・・そう思いつつ俺は話題を切り出した。
二人とのO・HA・NA・SHI☆が済んだ後、やっとこさSOPⅡも起き出し本格的に動き始める。
それぞれ、外していた装備を着け直したところでドアがノックされた。
こんな時間に誰だ?と思いつつ出れば廊下に立っていたのは昨日、エントランスにいた受付だった。
指揮官の指示で態々、俺たちの部屋に朝食を届けに来てくれたらしい。
礼を言いつつ受け取り、全員で温かい食事に舌鼓を打った。
食事を終え、この後どうするかと相談し合う。
その結果、とりあえずまずはAR-15の元へ向かいその後、指揮官の元へ行って指示を貰うという事に落ち着いた。
エントランスで受付に朝食と一晩世話になったことの礼を告げ、鍵を返して宿舎を辞した。
医療棟に着き、AR-15が居る部屋に行くと既に彼女は一通りの準備を終えて俺たちが到着するのを待っていた。
服装はいつも通りなのだがその上に一つ新しい物が付け加えられいた。
「AR-15、そのコートは?」
「あぁ、これ?433が暫く使ってて良いというから有難い使わせて貰ってるのよ」
右側を大きく切り落とされ、偶然にも右腕を簡単に出し入れ出来る様になったコートを羽織った彼女はどこか嬉しそうやら気恥ずかしそうと言う感情が混じった笑みで答えた。
因みに俺は彼女より肩幅が広いからなのか、彼女が俺のコート着けると体をすっぽりと包み込んでいる様に見える。
「・・・本当ですか?」
「ん~・・・まぁ、そういう事になるな」
頬を掻きながらM4の問いにそう答えた。
あの時はあの一晩はという意味だったのだが・・・まぁ、別になくても困らないし彼女が気に入ってるなら良いだろう。
顔を俯かせてプルプルと震えていたM4だが突如と震えが止まり、顔を上げればそこには笑顔があった。
綺麗な笑顔と言える、だが俺はそれに見覚えがあった。
その笑顔を見た隣のM16がビクッと反応した、それで思い出すことが出来た。
昨日、M16を締め上げた時とほぼ同じ笑みだった。
あれは何か、どキツイ仕返しを思いついたな。
昨日のM16を思い出し、俺はそう確信した。
実際、M4は――AR-15とっては――どキツイ仕返しをした。
「構わないですよ?それは先に私が着ていましたし、なんなら掛け物代わりに使わせて貰っているので・・・どうぞ好きなだけ使ってください、AR-15?」
後にM16から聞いた話だったのだが、M4がここまで他人・・・しかもAR-15に対して攻撃的な発言するのは初めて見たそうだ。
「・・・今、なんて?」
「ですから、
先ほどまで余裕諾々だったAR-15の顔が一瞬にして凍り付いた。
あぁ・・・この流れ丁度今見たなと思った。
そして思った通りのことを聞かれた。
「・・・433、どういうこと?」
「3人と合流する前の事だったな、M4と合流したんだがな、その時にM4が倒れてその時適当な廃墟で野営した時に貸した」
「えぇ、その時私にその恰好じゃ夜冷えるから着とけって言って貸してくれたんですよ?」
それに倒れた時は私の事、お姫様だっこして運んでくれたんですよ?と嬉しそうに言うM4。
なんでそこと知ってるのかと問えば自分は気絶したが実は外装してた戦闘記録用カメラが廻っていて偶々、その様子が映っていたらしい。
ふと、視線に気づき隣を見ればM16がニヤニヤと意味深な笑みを浮かべて俺を見ていた。
「・・・なんだ?」
「いやぁ~・・・お前も中々、隅に置けない奴だなって思ってな」
言ってる意味が良く分からなかったがイラッと来たのでM16の左足を割と強めに踵で踏みつけてやった。
割と強めに抑えたとは言え、軍用ブーツで踏みつけたのだ、M16は目の色を変えて痛がり文句を言ってきたが無視してやった。
そんな事をしてる間にもM4とAR-15の自慢は続いている。
それをただ、興味なく眺めていると左手を引っ張られた。
なんだ?と思って見れば暇そうにしているSOPⅡがいた。
どうしたんだと問えばSOPⅡは
「433、暇~抱っこして~!」
子供か、と思ったがそういやこの子の感性は子供に近かったなと思い出す。
一応、彼女の保護者兼姉――本来なら、M4に頼むところだから今アレな状態なので――であるM16にどうにかしろと目線を向けるが・・・
「(好きにさせてやれ)」
「(お前の妹だろう?姉であるお前がしてやれ)」
「(生憎、SOPⅡはお前をご希望だからな、諦めろ)」
「(・・・お前、さっき足踏んだこと根に持ってるだろ)」
「(・・・なんのことだろうな)」
「(後で覚えてろ・・・!!)」
数秒でアイコンタクトを取り合い押し付ける事を不可能と悟った。
仕方ないので彼女の要望通り抱っこしようかと思ったが俺も彼女も装備をフルで身に着けており、この状態で抱っこ等すれば幾ら戦術人形の体でもそう長時間は出来ない。
何か良い物はないかと思って辺りを見渡し、丁度良いところにイスがあるのを見つけた。
それを持ってきて座ると膝を叩いてSOPⅡを呼べば彼女は嬉しそうに膝の上に座った。
「わぁ~い、クッションだ~!」
そう言ってSOPⅡは何度も俺の胸に押しついては反動で跳ね返るのを繰り返す。
流石に息が苦しいので止めさせて大人しくする様に伝えた。
SOPⅡが大人しくなったものの手持ち沙汰なのは確かであり、丁度目の前にはSOPⅡのロングヘアがあるので色々といじり始めた。
因みにM16はまたしてもそれを見てニヤニヤと笑っていたので思わず蹴ってやろうかと思ったが残念ながら今は膝の上にSOPⅡが座っているため、断念せざるを得なかった。
この借りは何時か必ず返すとしよう。
それから十分ほど、SOPⅡの髪を触りながら二人と雑談したりしながらM4とAR-15の競い合い――というか最早、喧嘩の域――を眺めることになった。
本来なら、M16が仲裁に入りそうものだが彼女は2人の様子を嬉しそうな笑みを浮かべながら眺めているだけだ。
どうして仲裁に入らないのかと聞けば
「普段、AR-15に何か言われても決して言い返さなかったM4があそこまで言い返した上にAR-15と口喧嘩するなんて夢にも思ってなくてな。姉として心行くまで口喧嘩させてやりたいと思うのさ」
とのことらしい。
確かに、親しき中にも礼儀ありとは言うがお互いや片方が遠慮して自分の意見を言わないというはコミュニケーション状よろしくない事態だ。
特に以前のM4は内気な性格で何か言われても殆ど言い返すということをしないと聞いていたのでこれはこれで有りなのかもしれない。
確かに二人の顔を見ればお互い口喧嘩をしつつ笑顔を浮かべているのが分かり確かにその通りかもなと納得した。
「それに」
「ん?」
「こういうのを修羅場って言うのか?一応、データとしては知ってるんだが実際見てみたいとずっと思ってたんだよ」
思わずため息が出た。
姉として良いところが見えたと思った途端にこれだ。
やはり、後程なにかしらの罰を考えるべきだろう。
因みに最終的に二人の口喧嘩はこの後20分ほど続いたのだが・・・
いい加減、飽きて来て退屈していたSOPⅡが遅いと怒って二人の間に突入し仲裁した。
口喧嘩をしていた二人はまさか俺やM16ではなく、SOPⅡに仲裁され説教されると思ってなくただただ彼女からの説教にしどろもどろに答えるしかなかった。
最終的にはSOPⅡの提案で二人と謝罪した上で仲直りの印としてお互い握手することによって幕を閉じた。
流石の二人も毒気を抜かれたのかお互い、普通に謝罪した上で握手した。
流石の俺とM16もこの様な展開になるとは予想してなく、思わずお互い肩を竦ませてから3人に合流、指揮官の元へと向かった。
執務室で俺たちを出迎えた指揮官は遅かったことについて心配していた様でなにかあったのかと聞かれたのだが・・・
まさか、二人で口喧嘩していた等と言える筈もなく、M4とAR-15は気まずげに目を逸らしながらなんとか弁解していた。
書いてて思いました、この二人もう自分の感情に気づいてね?ってだけどまだ自分の感情に気づいていないと言う設定です、現在の二人にとって433は一体、どういう位置づけなのか近いうちに纏めて投稿したいと思います
因みに小ネタですが最初の方の昔、とある将軍が兵士たちはパンと肉が無ければ暴動を起こすという下りは銀英伝の双璧の会話が元ネタですw
あと、SOPⅡのつけてない設定って公式なんですね・・・調べて普通にびびりました・・・確かに重症絵はかなりギリギリだと思ってましたが・・・ふぅ
あ、因みにSOPⅡの矯正計画はその内、日常編か番外編でやろうと思います。
M4とAR-15の自慢合戦はもっと書こうかと思ったんですが流石に長くなるのでカットしました。
あと、作中で書かれていることは殆ど主が個人的に思ってることです。
特にこれと言った影響を受けた訳ではないです。
次回ことそは16LABとペルシカさんやります、流石に寄り道しません!
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第8話 16LABとペルシカリアという人間
非常に難産でした。
理由不明な気力の消失等をしつつなんとか投稿に漕ぎ着きました。
今回は最近にして珍しく短いです(3440文字)
ペルシカさんの口調忘れたので結構、適当です
本当のこと言える筈なく要領の得ない言い訳を続けるM4に俺が助け舟を出すことで一応の理解を得れた。
それでもまぁ、指揮官は首を傾げていたが要件を伝えるのを優先したのか特に追及することはなかった。
「先ほど、16LABから連絡があった」
「16LABからですか?」
「そうだ、準備が出来たので早速君たちを送って欲しいとのことだ」
「昨日の今日で随分早いですね」
「あぁ、ペルシカリア女史はよほど君たちの事を気にしているらしい」
指揮官の言葉にM4たちは顔を見合わせ、苦笑した。
彼女たちの中でのペルシカリアという人物像と照らし合わせ、その通りだと思ったらしい。
「それとHK433、君のことも興味を示していたよ」
「私が?」
「あぁ、なんせ君はI.O.P社にて試作されたのみで製造されてないプロトタイプだ、彼女が興味を抱くのも訳ないだろう」
ふむ、そんなものだろうか?
思わず内心、首を傾げたが会ってみれば分かるだろうと思い頷いて見せた。
「そういう訳で既にヘリを用意してある、君たちはそれを使って16LABに向かってくれ」
指揮官のその言葉に返事をし、俺たちはヘリに乗るためヘリパッドへと向かった。
ヘリパッドに用意されたヘリに乗り数時間、俺たちはS04地区にあるグリフィン基地から16LABへと訪れていた。
16LABに隣接される形で置かれているヘリパッドにヘリが着陸し、俺たちは16LABへと降り立った。
「ペルシカさんは多分、研究室にいると思いますので私たちが案内しますね」
「頼む」
16LABに関して詳しいM4たちの先導の元、俺は16LAB本棟へと足を踏み入れた。
グリフィンの基地と違い、廊下ですれ違う職員は殆どが白衣を纏った科学者が殆どだった。
AR小隊は16LAB特別製の戦術人形という訳あってか顔見知りの職員も多くすれ違う職員たちは彼女たちと挨拶して行ってる。
その中で混ざる俺に不思議そうな顔をする者たちだが俺の噂を知っている者たちは納得した様に頷きながら通り過ぎていく。
「着きましたよ、ここです」
16LAB本棟内を歩く事、10分ほどで目的の部屋へと到着した。
俺が頷くとM4も頷き返し部屋へと入った、それに続いて俺も部屋の中に入った。
「やぁ、4人共お帰り待ってたよ」
そう言って1人の女性が俺たちを待ち受けていた。
腰まである長髪――何故か犬耳の様な物が着いてる――の女性だ。
十分、美人の域に入る見た目なのだが癖だらけの髪に熊が溜まった目元、ヨレヨレのシャツの上からこちらもヨレヨレな白衣を纏いかなり短いタイトスカートを履いている。
そのお陰でどうもズボラのイメージが先行している。
「ただいま帰りました、ペルシカさん」
「うん、お帰り、今回はみんな大変だったね」
笑顔で出迎えるペルシカリア女史に皆もそれぞれ答える。
「聞いたよ、AR-15。左腕を骨折したんだってね?」
「うっ・・・えぇ、まぁ・・・」
「とりあえずはチェックが先だね、お説教はその後」
「はい・・・」
「他の3人もメンテナンスだね、さて・・・」
そう言ってペルシカリア女史は俺の方に向き直った。
「君がHK433だね?」
「あぁ」
「今回の一件はS04地区の指揮官君から聞いてるから粗方の事は知ってるよ」
「それはまぁ・・・」
「君が居なければM4達は帰ってくる事が出来なかった、改めて礼を言わせて貰うよ」
「「「「ペルシカ・・・(さん)」」」」
そう言って頭を下げるペルシカにM4たちは目を見開いて驚いていた。
流石の俺も驚いていた、初めて会う面識のない相手にこうも簡単に頭を下げるとは思っていなかった。
だが、彼女が初対面の相手でもこうやって頭を下げるぐらいには彼女たちを大事に思っているということは理解できた。
さて、どうしたものかな・・・
思わず、頭を掻きながら俺はとりあえず彼女の頭を上げさせる事にした。
「あぁ~・・・ペルシカリア女史、とりあえず頭を上げてくれ。M4達と合流出来たのは偶々出し私もグリフィンと合流出来て助かってるのだ」
「・・・そうだね、そうさせて貰うよ」
そう言って頭を上げるペルシカリア女史。
「・・・知ってると思うが改めて、HK433だ。一応?I.O.P社製の戦術人形ということになる」
「ペルシカリアだよ、ペルシカって呼んでね。一応ここ16LABの首席研究員だ。M4たちの生みの親ということになるかな?」
お互い自己紹介をして握手した。
科学者と聞いていたので排他的かと思っていたがその様な心配は無かった様だ。
「さて、自己紹介も済ませたところだし・・・」
「うん?」
「君の事はいろいろと気になってたんだ、調べさせて貰うよ?」
「あぁ・・・S04地区の指揮官から事前に言われてるからな、構わない」
「それは良かった♪」
嬉しそうに笑って見せるペルシカ。
排他的ではないにしろ、科学者の知的好奇心という点ではどうやら変わらないらしい。
「・・・なにこれ?」
ペルシカは自分の前に置かれた端末に表示された数値とグラフを見て思わずそう呟いた。
現在、彼女・・・HK433はペルシカのいる部屋の隣の部屋でテストを受けてる最中であり、部屋はガラス張りで様子を確認する事が出来た。
確かに彼女の戦闘能力の高さはS04地区の指揮官からの報告書や現在、別室でメンテを受けてるAR小隊から収集した戦闘映像で把握していた。
だがそれを実際の自分の目で見てグラフや数値にして確認すればやはり自分の目を疑うほどだった。
射撃能力や格闘能力に作戦能力、どれを取っても超一級品と言えた。
その性能の高さは戦闘記録にあった廃飛行場での戦闘映像でも十二分に伺えた。
現地に残されていた地雷を使った即席且つ有効的な地雷原の設置に遮蔽物兼障害物となる車両の配置と段階的な防衛線の策定。
それだけじゃない、その後の混戦では冷静かつ的確に接近する鉄血兵を排除し最終的には引き分けだったとは言え鉄血のハイエンドモデルで格闘能力に秀でたエクスキューショナーと互角に渡り合える戦闘能力。
通常の戦術人形ではあり得ない性能だった・・・悔しいが自分の自慢のAR小隊でさえ彼女には及ばない。
「面白いね・・・彼女」
傍に置いてあったマグカップを手に取り、笑みを零した。
悔しくはあるがこれほどまでに自分の欲求を刺激してくれる存在は久方振りだった。
楽しみが出来たね・・・
内心、そう思いつつコーヒーを啜ろうとして気づいた。
「そう言えばさっき飲み終わって新しく淹れようとしてたんだっけ?」
思わずため息をつきながらイスから立ち上がってコーヒーメーカーへと向かった。
「やぁ、お疲れ様」
一通りのテストを終え、部屋に戻るとペルシカが齧りついていた端末からこちらに向き直って出迎えた。
室内を見回してみたがM4達の姿はない、まだ戻って来て居ない様だ。
「その様子から察するに私はお目に叶ったってことで良いのか?」
「そうだね、実に興味深い戦術人形だよ、君は。既存の戦術人形以上の戦闘能力に作戦立案能力・・・実に興味深い」
「それは・・・誉め言葉と思って受け取っても?」
「そうだね、それで構わないかな?」
「・・・M4達は?」
「M4とM16、SOPⅡはメンテと簡単な修復だけで済んだけどAR-15がちょっと時間掛かるね」
「と言うと?」
「君も聞いてると思うけど彼女は左腕を骨折してる」
彼女の言葉に俺も頷いて見せた。
コートを羽織っていて見えないがAR-15は左腕を吊るしてる状態だった。
「人工皮膚と人工筋肉の方は殆ど問題なかった、問題は左腕のメインフレーム骨格と光ファイバー神経かな?」
「・・・それで?」
「メインフレーム骨格は見事に折れてる上に光ファイバー神経に関しては所々で断線してるレベルだったよ」
「直せるんだろう?」
「それは勿論、ただここまで来るといっそ、総取っ替えした方が早いレベルでね。今はその作業中だよ」
「その弊害は?」
「光ファイバー神経が新品になった分、伝達速度が上がって慣れるまで暫くは違和感を覚えるだろうね」
「・・・大丈夫なのか?」
「おや?心配なのかい?」
「・・・彼女は優秀なスナイパーだ、戦場で過剰な反応速度は狙撃に影響を与える」
「ふむ・・・なるほどね・・・」
顎に手を当て、頷いて見せるペルシカ。
その顔を俺を見ており時折頷いて見せ・・・最終的にはニヤニヤし始めた。
「・・・なんだ?」
「いや、別に・・・なるほど、あの子がね・・・」
最後になんか言っていたが聞き取れる事が出来なかった。
それからはペルシカから幾つか質問されそれに答えつつM4達が戻ってくるのを待った。
戦闘映像とかと一緒にAR-15の感情データも見ているのでペルシカさんは普通にAR-15が抱いてる感情に気づいてますw
なんならM4の方にも気づいてますが基本見守るスタイルを貫くので干渉せずにM16と同じくニヤニヤしながら見てます。
次は433vsAR小隊の内の誰かorAR小隊全員との模擬戦でもしましょうかね?w
質問やこうゆうネタが見たい!やコラ依頼してやんよ!というお方は是非ともお願いします~(意訳:ネタ下さい
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=249152&uid=54123
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