世界が静止する日【第一部?完】 (ノイラーテム)
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GR計画編
黒いアタッシュケース


 とある筋の大立者は、最新のメモ書きを見て旅行を中断した。
内容が不吉だったのと、欲しい物は『地元』でも手に入るからだ。エージェントは派遣しておくとして、無理だったとしても時間を掛ければそのうちなんとかなるだろう。
メモ書きは中途半端に途切れており、その前の文章にはこう記載されていた。


『車輪の兄弟たちが行うプレゼントの交換会。

団体客の誘いに乗って二階の踊り場に向かうのも良いだろう。

顔を伏せた月たちが後学のためにダンスを見せてくれる。

だけれど気を付けなさい。歯車は回り始めたばかりなのだから……』


●盗賊たちのラプソディ

 薄暗い雨の中、オンボロなビルの一室で男が瀟洒な小箱を開けた。

乾いた音を立てて小箱はリズムを奏で始めるが、生憎と外は雷雨。ガラガラと雷が唸り声をあげるのだが、周囲にいる聴衆は最初から音楽など気にもかけない。

 

いや、その混濁こそが良いのだと男は思ったのかもしれない。

もし尋ねられたならば、今日のプライベート・コンサートは雷鳴によって完成するのだと口にしただろう。

 

「団長。そんなに気に入ったなら取っておけばいいのに」

「いつも言ってるだろ? 手放すのが惜しいくらいが売り時だよ」

 大事にしまっていても失われる時には失われてしまう。

だからオレ達にはこちらの方が大事なのだと、壁に描かれた薄汚い落書きこそを団長と呼ばれた男は愛おしく思った。

 

コンクリートの落書きはやりたいことで一杯だ。

仲間たちが暇を持て余して描いた他愛ない我儘。それはきっと鞄や金庫の中の何よりも大切な事だろう。

 

「それに欲しく成ったらまた盗って来ればいいさ」

「それもそうだね」

 このやりとりが一同を端的に表していた。

何よりも、『盗って来る』というありようが彼らの本分だ。盗賊団であり、刹那的な愉しみの為に……。

 

いいや、違うか。

彼らは別に刹那的でも、厭世的でも、世間が言うようにサイコパスでもなんでもない。ただ流星街出身の彼らは、自分たちの命が明日もあるとか、社会的なモラルや約束事が大切だとは欠片も信じてないだけだ。

例え長年の友人との約束でも、必要ならば平然と破る程度に。

 

「これを含めて幾つかの『種銭』を用意した。一番面白い物を持ってきたチームの勝ちだ」

「高額とかじゃなくて面白い?」

 男は小箱を頑丈なアタッシュケースに入れる。

そして似たようなアタッシュケースの上に置いて仲間たちの方へ話を振った。

 

「新しく補充した仲間を含めて、お互いがどんな風に考えてどんな行動を採るかを見るだけだからな。別に利益が出る必要もないし、できるなら大儲けしてくれても構わない」

「おーけー。楽しければそれでいいってことだな」

「かといって、ツマラナイ物もて来たらコロスよ」

 団長と呼ばれた男の説明に、今まで口を挟まなかった聴衆が笑った。

稲光にチラリと顔が映り、見慣れぬターバン姿や盗賊には似合いな黒いマスクが映る。

 

「で、どっちに付くよ?」

「コラコラ。新人の能力や相性を見るんだから、勝手に選ぶなよ。選ぶとしたらシズクやコルトピの方からだろ」

 勝手にメンバーを振り分けようとしたターバンに、最初に口を挟んだ青年が抗議を入れた。

 

「関係ないね。その時つるんでるメンツで仕事する。それが流儀」

「違げーねえ。そっちの二人が嫌だってんなら、コインで決めても良いぜ」

 マスクとターバンは青年の抗議に耳も傾けず、ニヤリと笑って話に出た新人の方を眺めた。

彼らからみれば新人研修じみた事件(やま)を熟さずとも、こういったやりとりの応酬でも良いのだ。どうせ役に立たねば死ぬだけである。

 

「あ、私どっちでもいいです。面倒くさいんで」

「……同じく」

 話を振られた新人たち……シズクとコルトピはもめ事をスルーした。

団員同士のもめ事はご法度だからではなく、ともに自己主張や序列などというものはどうでも良いと思う性質(たち)だったからだ。

 

これにはターバン達も苦笑い。

肝が太いのだか無関心なだけだか知らないが、二人の思考パターンはまだ見えない。これで面倒な新人研修に出掛けるのは決まりだろう。

 

「じゃあオレはシズクでフェイタンがコルトピな。他のメンツも同じようにいま立ってる場所で分れりゃいいだろ」

「勝手に決めるとコロスよ」

 ターバンの言葉にフェイタンと呼ばれたマスクは不満を口にしつつも……。

こだわりなど最初からないのだろう。その場に居た数名と同じく、メンバー別けに同意した。

 

「ってことはオレもフランクリンもコルトピ側? 本当に大丈夫かなあ」

「あいつらが良いならそれで構わないだろう。潜入に失敗したらしたらで、面白い物が見れるさ」

 どうやらシズク側には脳筋が中心で、コルトピ側に頭脳労働派が揃っているらしい。

シズクに期待するしかない状況だが、盗んで来る予定の物まで吹き飛んでしまわないか今から不安である。

 

「それでシャル。今回は何処に潜り込むんだ? こんな御大層なケースまで用意して」

「寝台列車を会場に行われるトレード会だよ。一定ランク以上のブツを出品してさ……」

 フランクリンと呼ばれた大男の質問に、シャル……シャルナークという青年はパンフレットを取り出して説明を始めた。

パンフレットには今話題の豪華寝台列車バシュタール号が描かれており、ちょっとした観光も愉しめそうだった。もしかしたら、シャルナークも新人研修なんかする気はなくて、自分が楽しむためにこのコースを選んだのかもしれない。

 

ここに幻影旅団が動き出したのである。

 

●次回予告『バシュタール号の惨劇』

 豪華寝台列車に幻影旅団が乗り込んでいく。

まだ若い彼らがそこで出逢ったのは、世界征服を企む悪の秘密結社BF団。

 

盗みを働こうとする幻影旅団の前に立ち塞がるのは、十傑衆の一人。

 

『手伝ってやろうか? ただし……真っ二つだぞ?』




 という訳でHxHの世界に十傑衆を出すという微妙なネタクロスを始めてみます。
書きたいから書くだけなので、面白くなかったら勘弁してください。

あと登場する旅団メンバーは諸般の関係上、バランス型ばかりとなりました。
数話で終わる予定なこともあり、名前の出てないメンバーは出てきません。
その影響で、名前が出ていますがシズクちゃんも今後出ないのでご容赦ください。

え? ムサイ男ばかりだって?
クロスしてるジャイアント・ロボがそうなんだから仕方ないじゃないですか!
出ても青い肌だったり、唯一のヒロインも最後にはアレですからね……。


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バシュタール号の惨劇

●移動するトレード会場

 寝台列車は道と部屋に区切られているが、会場であるラウンジカーは幅広い。

そこに金持ちが持ち込んだ品の一部が展示されている。

 

「どしてこれを狙たらいけないか。コルトピ居れば問題ないね。それとも偽物か?」

「本物ではあるんだけど……ここにあるのはサンプルだよ。気に成ったら、それぞれの客室に交渉に行くんだ」

 フェイタンの質問にシャルナークが答えたが、展示品はあくまで参考例なのだという。

そして一同は自分たちが持ち込んだ品の前に訪れた。

 

そこには抉り出された目玉が浮かんでいる。

保存用薬液の色合いに負けない、鮮やかな緋色の色彩が随分と印象的だ。

 

「オレたちの場合だと緋の目を置いて、サイレンのオルゴールとかは手持ちで押さえてるだろ?」

「なるほどな。ここに来ればそれぞれが持ち込んだブツの傾向が判る。展示品より優れているかは駆け引きってやつだ」

 出かける前に聴いていた小箱はオルゴールだったらしい。

それにしては音の質が違っていたような気がするが……フランクリンにとってはどうでも良い話だ。三品ほど持ち込んでいるのだが、残る一つが生態パーツなので、誰かの声帯でも使った人間オルゴールなのだろうと思うことにした。

 

この交換会は同好の士を探し、好みの品を融通し合う会場なのだ。

コレクション自慢に訪れた者もいるかもしれないが、多くは展示品と類似の傾向の品を持ち込んでいる。

 

「見せ金に持ち込める品がねえと、交換を理由に潜入することも不可能ってことだな」

「それで『種銭』ね。盗賊が金払うおかしい思たよ」

 一同は持ち込まれている品を丹念に見て回る。

美術品などに興味はないが、命題である『面白い物』であるとか、単純に高価な品がないか。そして……誰の客車に押し入れば、良い品が手に入るかを物色し始めた。

 

「面倒ね。やぱりここの品全部持て行くか?」

「それはダメでしょ。きっとシズクたちは、こいつを持っていくつもりだろうからさ」

 短絡を起こしたフェイタンをシャルナークが慌てて止める。

盗みで勝負している相手チームの目論見に、どうやら見当がついているらしい。興味がそそられたのか、それとも最初から行動する気はなかったのかフェイタンは続きを促した。

 

「こいつてどれ?」

「こいつだよ、足元のこ・い・つ」

 笑って爪先を動かすと床はコツコツと軽快な音を立てる。

どうやるのかはともかくとして、シズク班は寝台列車そのものを強奪する気らしい。なんとも豪快な強盗である。

 

「シズクの能力は無生物の収納なんだ。どれだけ収められるか試してみたくない?」

「なら頭から試して、入らなくなったらどこかでチョン切るつもりだろうな。このラウンジは前側だ。無理に奪い合う必要もないだろう」

 列車強奪など大事であるが、実に楽しそうに語る。

シャルナークもフランクリンも頭脳派だが、生え抜きの旅団メンバーである。盗むことに異論があるはずはない。荒事に忌避観などなく、スマートにいけばラッキーくらいにしか思っていなかった。

 

「場所ごと持て行く。盗賊の鑑ね。ところで私たち何持て行くか? 負けるの性に合わないよ」

「表か裏の勝負で連中は表を選んだ。なら、俺たちは裏で良いんじゃねーか? 無慈悲な盗賊団に狙われた金持ちが、真っ先に持って逃げる奴だ」

 フェイタンとしては負けたと言われることが腹が立つらしい。

そんな彼にフランクリンはのんびりと、自分たちの事を無慈悲だと口にした。何しろ逃げる相手から盗んでしまおうというのだ。これが無慈悲でない筈がないだろう。

 

「陽動を向こうがやってくれるならこっちも楽になるね。勝負にこだわるなら、二番・三番の品をコルトピの力でコピーして入れ替えれば最高だけど……期限は?」

「一日。良くも悪くもそれは変わらない」

 これまで会話に加わっていなかったコルトピが質問に答える。

彼の能力である神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)はとても有益で便利な能力だ。当然ながら、多岐に渡る制限が存在した。

 

今回問題になるのは、具現化する期間は一日だから、トレードの際に嘘をついて偽物を掴ませるタイミングが難しい。渡した相手がしゃべらずとも、一度にたくさんの人間と交渉を続けたら嘘くさいだろう。

 

「俺たちは盗賊団であって詐欺師じゃないからな。探知目的で良いだろう」

「それなら暫くは物色だけで済ませて、本命は『最終日』だね」

 コルトピが製作したものは、念の探知技術である()の役割を持つらしい。

詳細までは聞いていないが、円として機能するというだけで使い方を作戦に組み込むことができる。面白い物なり、大量に手に入れたコレクターを追いかけるために利用する算段だ。

 

行動タイミングは、お客が追加される数が最大の町を過ぎてから。

シズクに付いたメンバーは乗車していないので、向こうの性格を考えたら獲物が増えた直後であると思われた。その日が作戦決行日という訳である。

 

●襲撃

 一同は他のお客と無駄話をしながらノンビリしていたわけではない。

自分からトレードを持ちかけたり、断ったりする間に、誰がどんな宝物を持っているか。護衛はどの程度の能力かを測っていたのだ。

 

そして予定通り大勢の客が乗り込んだ時……。

取引に応じると称して、幾つかの『仕込み』を行った。

 

「それではミスター陳。良いお話をありがとうございました。可能な限りの良い旅を」

「こちらこそミスターシャルナーク。これで旦那様に面目を施せます。できうる限りの良い旅を」

 お互いに黒いアタッシュケースを渡してトレードし合う。

陳という男はターバンにサングラスという風情で、どこかの執事という触れ込みだが念能力者だろう。能力者はそれなりの数が居たが、緊張感を伴うのは陳を始めとした数人だけだった。

 

退席した後は油断なく仲間たちの元に合流し、ケースを開けて中身が本物かどうかを確かめる。

 

「どう?」

「本物」

 アタッシュケースに入っていた本にコルトピが無造作に触れ、その場で偽物を作り出した。

否、その場でしか偽物を作り出せず、その期間は僅か一日、しかも念能力で作られたものはコピーできないという性質を持つ。だが、ここではコピーを見破る方法に使えるのでありがたい。

 

丁寧に作られた偽物かもしれないが、今回は団長への土産なので気にはしてない。

自分達を騙し通すほどの本ならば、それなりの土産にはなるだろう(自分たちは愉快ではないが)。

 

「偽物はどうなってる?」

「あっちの客車から動いていないよ」

「疑っていないか、頼まれ物だから最初から興味ないだけの可能性もあるが、まあ予定通りだ」

 幾つもの条件が苦にならぬほどコルトピの複写能力は破格だった。

見分けがつかぬほどの精巧さを誇り、円の役目を兼ねているので相手の位置が特定できる。この様子ならば安心できるだろう。

 

「何を恐れてるか。偽物ごと他のお宝回収すればいね」

「余計なリスクを背負うことなくない? みんな居ないのに無理することはないだろ」

 ストレートに行きたいフェイタンに対し、スマートに行きたいシャルナークとでは土台の意見に差があった。

 

フェイタンとしては出合う者はみな殺し、宝物はみな奪うほうが楽でいい。幾ら考えても同じことは良くあるからだ。

シャルナークとしては、来ていない者も含めて戦闘向きのメンバーが分散した状況で無理に戦う必要は見い出せない。

 

「俺はどっちでもいいぞ、団長は誰の指示に従えとか言ってないしな」

「並行線か。じゃあコインで……」

 フランクリンが仲裁を投げたことで、いよいよ話し合いは決裂する。

団員同士の争いはご法度なので、コイントスで決めようとした時。大きな変化が一同……いや列車を襲った。

 

「時間切れね。出会たらコロスよ」

「あーもう! いきなりかよ~」

 ビリビリとした振動の後、列車が不規則に揺れ始める。

こちらに居ないメンバーが既に襲撃をしたと知って、フェイタンがにやりと笑って飛び出した。ここに至っては説得する時間も必要もない。シャルナークたちも行動を開始した。

 

だけれども、事態は一同の想像を超えていたのだ!

あえていうならば、列車ごとお宝を奪おうとする盗賊団だからこそ、抜け落ちていた考えだというべきか。

 

「あ……~。短気で堪え性がないとか思ってごめん。別口が居たんだね」

「てめえが普段どう思ってるかよーくわかったよっ。見ての通り取り込み中だ」

 外に出て暫くすると、列車の一部が破壊されていた。

そこでは奇妙な大男……まったく同じ顔が数人ほど暴れている。

 

「双子とか三つ子ってわけじゃないよねえ。念獣かな」

「どっちでも構わねえよ。近づけねえのが問題だったが、フランクリンが居るなら問題ねえ」

 仲間たちがソレと相対していたが、遠慮なく降り回される鉄球にヘキヘキとしていた。

相手は体格的にというか膂力的に、列車の屋根であっても微動だにせず、こちらは迂闊に飛ぶと列車から振り落とされかねない。とはいえ列車の中から迎撃に徹していると不利なままだろう。

 

大男が念で作り出された念獣なのか、操られて異常強化されているだけか。

どちらなのかで対処は変わるのだが、操作系であるシャルナークにとってすることは一つだ。

 

「相性悪いしそいつらの相手お願いするね。オレは前の車両に行くから」

「あ、ってめえ! 抜け駆けする気か!」

 操作系はハマると一撃で戦況を決める癖の強い能力系統だ。

だがしかし、同じ操作系に対しては『早い者勝ち』というルールがある。加えて念獣を操作できるタイプの能力ではないので、シャルナークが大男を無視するのは当然だった。

 

加えて言うならば現在は勝負の継続中である。

列車ごと盗むのは面白そうだが、共闘を頼まれても居ないのに、仲間だからという理由で協力する気にはなれない。むしろお宝をいただいてくる方がよほどスマートな盗賊と言うものであろう。

 

「さてと……。目的地に着いちゃうと面倒だし、振り落とされるのを心配するのも面倒だよね。ここは動力車を切り離すとしますか」

 展示室であるラウンジカーを越えて、そこから先の連結を解除すればよい。

それでシズク班の勝利は無くなるし、こちらは最低限の物を回収しているので問題ない。後は逃げだす金持ちからお宝をいただいていけば楽勝だろう。

 

そう思って連結部に来たのだが見たこともない造りになっていて戸惑った。

当然ながら、自分が考えることは他人も考える物だ。とっくに対策済みで、手順も知らずに手動で何とかするのは難しそうだった。

 

「うえ~面倒くさいなあ。爆弾処理でもさせる気かよ。これじゃ不本意だけどぶっ壊した方が早いじゃん」

 ハンターサイトを検索すると類似の機構が表示された。

細部の違いはあれど参考になるはずだが、あまりに面倒過ぎてやる気にはなれない。加えて言うならば彼の能力は携帯を経由するので、画像を見ながら作業するのは緊急時の対応ができないことを意味する。

 

「いよっと! オレじゃあ素のままだと全然歯が立たないや。ウヴォーでも居ればなあ」

 拳にオーラを集めて殴ってみるが塗装が剥がれた程度である。

別の用事があって今回来なかった仲間に頼りたくなるのも仕方があるまい。

 

そんな時の事……。

 

「手伝ってやろうか?」

「へ?」

 掛けられた声に思わず間抜けな声を出してしまった。

それだけタイムリーな言葉だったと言っても良い。とはいえ、一つだけ問題があったのだ。

 

「ただし、真っ二つだぞ?」

 パチンと澄んだ音が鳴り響いたのはその時である……。




 という訳でHxHxGロボの第二回に成ります。

無理やりGロボのネタを入れたのでハンターらしさが無くなり、慌てて修正したら微妙になったでゴザル。
それを調整してGロボ風味に整えると、どこかで齟齬が出るという……ウゴゴ。

なお登場人物ですが……。
コルトピ班:
・コルトピ
・シャルナーク
・フランクリン
・フェイタン

シズク班:
・シズク
・フィンクス
・ノブナガ
・パクノダ

居残り・またはまだ加入していない
・マチ、ヒソカ(オモカゲ)、ボノレフ、ウヴォーギン、団長

アルベルト → ヒィッツカラルド
イワンとミスターQ → ミスター陳
列車ロボ維新竜 → バラン

という感じに挿し替えになっております。

●次回予告『ステルス・ネット・ワイヤー作戦』さながら上海雑技団の様に
 動き続ける列車での死闘。
鳴り響く素晴らしき指先は、全てを切り裂いていく。
絶体絶命のピンチに陥った旅団の元に、この場に居ない仲間からのメッセージが入った。
「ボクの胸に飛びこんできて♥受け止めてあげるよ♦」


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ステルス・ネットワイヤー作戦

 豪華寝台列車で行われるお宝交換会。
その会場である列車ごと奪おうという幻影旅団の前に、今までにない敵が襲い掛かる。

戦いの中で、動力車との連結解除に苦労するシャルナーク。
彼に掛けられた言葉は意外な物であった……。

『手伝ってやろうか? ただし、真っ二つだぞ?』


●ステップ・シークエンス

 パチンと澄んだ音が鳴り響いた。

するとどうだろう、閉め切っておいたはずの扉が自動ドアの様に開いていくではないか。

 

「あ、やべっ」

 シャルナークが咄嗟にバックステップを掛けられたのは偶然に等しい。

否! それは偶然などではなかった。その時は知る由はなかったが、ちゃんとした理由によるものである。

 

キン! と音を立てて両断される扉。

さきほど念を込めた拳でもビクともしなかった連結部ごと、列車が切り裂かれていく。

 

「……いやいやいや。これはないでしょ」

 不意に横殴りの風が吹き、自動ドアの次は自動車窓か。

そんな冗談すら考える余裕があったのは、シャルナークは同じような能力を良く知っているからだ。

 

旅団のメンバー同士でも念能力の詳細は教えないが、一緒に行動する時に困る程度のことは知らせ合っている。仲間の一人に、口にしたことを行う『発』を持つ居る男が居るのだ。能力の名前までは知らないが、シャルナークは勝手に『有言実行(コトダマ)』と綽名を付けていた。

 

「ってか、念のコントロールが現実離れしてるし。あいつらもここまでの出力だせるかなぁ」

 目の前の扉を切り裂くのは判るし、仲間の能力で説明できる。

だがそれ以上、具体的に言うと列車の側面すら切り裂くのは異常だった。放出系だとは思うが、同じタイプのフランクリンですらこれほどの威力が出せるだろうか?

 

 

「我々が先に目を付けた物を奪って行こうとは困った子だな。人の物を勝手に持っていってはいけないとお母さんに習わなかったかな?」

「生憎とそんな上等なものはお目に掛かったことはないんだ」

 現れたのは白スーツの伊達男だった。

髪を流したウルフヘアーに、負傷なのか何かの制約なのか、黒目の無い白眼が印象的である。

 

人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべて意味のない最後通牒を口にした。

 

「今ならば見逃がそう。早く立ち去りたまえ」

「さすがにそういう訳にもいかないなあ。もう少しくらい話に付き合ってよ」

 先ほどから感じている殺気はまるで減っていない。

見逃す? ありえない。無策で逃げ出したら背中から切り付けかねない。だいたい、男の背後は血だらけだ。この状況で運転手を殺すような奴が本気で見逃してくれるとは思えない。

 

それに、もう一つ理由があるのだ。

時間を稼げば仲間たちがお宝を奪っている可能性は高い。そして……。

 

「っ!」

「……。フェイタン~」

 会話中に仲間の一人が襲い掛かった。

切り裂かれた天井から侵入し、一足飛びに襲い掛かったのである。シャルナークはそのために、気を引き付けていたともいえるだろう。

 

「……誰ね。この白眼蟹」

「知りたいかね?」

 逆風の中で飛び込んだせいか、運悪く刃が脇に外れるはずだった。

しかし男は必要もないのに刃の先をつまむと、ヒョイっと強引に腕を別方向へ逸らせる。フェイタンが舌打ちしているが、袖口かどこかに暗器でも仕込んでいたのだろう。

 

「BF団が十傑衆の一人。”素晴らしき”ヒィッツカラルド。そう呼ばれているよ」

 男はやれるもならば刺してみろと言わんばかりに胸を逸らせる。

そして後ろ手に腕を組み、ニヤリと不遜な笑いを浮かべた。

 

「自分で自分を素晴らしい、言う。とても滑稽ね。そんなに自分良く見せたいか」

 尊大無比な自己紹介に対するのは嘲笑だ。

フェイタンは剣を一回り短く構え直し、幅広の袖口でリーチを誤魔化しながら嘲笑う。飛び交うのは売り言葉に買い言葉である。

 

「これは忠告だがちゃんと聞いておいた方がいいな、お嬢ちゃん。私の存在自身が素晴らしい、そういう能力なんだよ」

「てめえ……ぶっ殺す!」

 女扱いされた事に激高したのか、剣を振るおうとした腕が肘打ちで止められる。

お互いに肘と肘が合い打って、オーラが弾ける姿はとても絵になった。その姿はまさに余裕綽々で、能力を説明してやったというハンデもまた本当なのだろうか?

 

フェイタンは怒りのあまり、演技を忘れて本来の口調が漏れ出てしまう。

 

「シャルナーク。こいつの言ってることをちゃんと訳せ」

「はいはい。BF団ってのは世界征服を企む悪の組織で、十傑衆ってのはそこで一番強い連中」

 悪党は数居れど、世界征服を企むなどと言う狂人は彼ら以外にはいない。

恐ろしいことに本気で実行しようとしているあたり、他の組織が付いていけないのも当然だろう。

 

「見分けは簡単。覆面なら雑魚で、顔を見せてるやつは強い奴。そして……十傑衆ってのは世界の外に行っても通用するレベルだったかな」

 冗談のようでどこまでも本気。

だからこそシャルナークは呆れているし、フェイタンは沈黙したままだ。

 

「その通り。例えば私のこの指先はね、世界最高なんだ」

「っ! くそが!」

 そしてヒィッツカラルドが指先を前に向けた時、フェイタンは恥も外聞もなく飛びのいていた。

 

パチン!

指先が弾かれ、フィンガースナップが鳴った瞬間。

それまでフェイタンの居た場所は両断されている。その一撃で天井の破れた車両は、完全に切り割かれて動力車と分断されてしまう!

 

「よし、怪我の功名! これで時間が稼げ……てないか。逃げるよ!」

「っ!?」

 ホっと一息つく間もなく、シャルナークが腕をひっつかんで後方に逃げ出す。

フェイタンが離れて行く動力車を見ると……。前傾姿勢を保ったまま走って来る男の姿があった。

 

その上体は微動だにせず下半身の力だけで走って来る。

体術のレベルまで常識をかけ離れており、『今の二人』では勝機がまるで見えない相手だった。

 

「この程度で死ぬなよ。お嬢ちゃん達?」

「いつか、殺すころす、コロス!」

 ヒィッルカラルドの右手が音を鳴らし、続いて左手が鳴る。

車両が切り刻まれ、続いて両手同時に鳴らすと、十文字に切り割かれた。何の冗談か四度目は、片方の腕を背中に回す曲芸のような撃ち方である。明らかな手加減というべきか、これではフェイタンならずとも怒りを覚えよう。

 

「落ち着いてよ。あいつの言葉、たぶんワザとやってるから」

「はっ? どういうことだ!!」

 シャルナークはボリボリと頭をかいた後、その指先を車両の後方へ向けた。

そこには他の仲間が穴から顔を出しており、ヒィッツカラルドに何かしらの攻撃をしたようだ。

 

「見ての通りフランクリンの狙撃に対する牽制。あいつの行動にはちゃんと意味があるんだよ。というか、あれも含めて能力じゃないかな」

「……なんの意味がある。言うか」

 手加減ではなくこちらを援護する仲間への対策だった。

そう聞かされてフェイタンも少しだけ怒りを収める。トーンはまだまだだが、口調はなんとか元の調子を取り戻している。

 

「あいつ自身がヒントだって言ってたろ? きっと能力を説明した方が強く成るタイプなんだよ。あのレベルの能力者がゴロゴロいるとは思えない。あいつクラスじゃないと歯が立たない外来種ってどんだけ強いのさ?」

 ヒィッツカラルドは強過ぎる。

狙撃していた仲間を牽制しているという事は、たった一人で幻影旅団と戦う気なのだ。世界に強い奴はいるだろうが、十傑衆という事はBF団にはあのレベルが他にも居るらしい。

 

「フランクリン以上の放出系で、ノブナガ以上のコントロールで、ウヴォー並みのパワー。常識ありえない」

 しかしこれほど強い人物が、都合よく何人も同じ組織に所属するだろうか?

それを考えればルールによって、劇的な強化を図っているという事だろう。

 

「……制約と誓約ね。頭では理解したよ」

「そっ。仮に今だけなら逃げ回ればいいし、狭いルールを運用してるなら、サイトを通して世界中にばらしてもいいね」

 ヒィッツカラルドが接近する間にも撃ち合いが行われている。

掌底やバックハンドで放たれる広範囲のショック・ウェーブなら、フランクリンの念弾も普通に通用している。だが、あの指先を弾く攻撃にはまるで通用せずに押し負けていた。

 

ここで問題なのは、フランクリンは能力者の限界枠に差し掛かっているという事だ。

人が鍛え上げられるレベルというのは基本的に『幅』が決まっており、屈強の念使いはその幅を飛び越えるための努力をしていると言ってもいい。

 

人間の限界まで来ているフランクリンをアッサリ退けるということは、テクニックなり覚悟で幅を飛び越えたという事だ。

この相手は恐るべき、そして忌まわしい敵であると同時に……。

 

「ははは。あの能力を奪てやるか。それも面白いね。盗賊の戦い方、らしいといえばらしいよ」

 ワザとらしい笑いは、怒りを鎮める為だろう。

その事が理解できるので、下手に茶化さないでおいた。

 

そして動力車を切り離された車両は、いつまでも移動し続けはしない。

動きが止まると同時に、奴がそのうちやって来る。どう戦うか今の内に考えておくべきだろう。

 

「っと。返事が来た。あいつ一人でオレ達を相手にするって言うなら……良いじゃない。全員を相手にしてもらおうよ」

「連絡入れてたか。何処で戦うか?」

 シャルナークはフェイタンの質問に、周囲の地形で大きなカーブになった場所を指さした。

そこは断崖絶壁。一見戦うには不利だが、幻影旅団は戦闘集団ではなく盗賊団である。時に盗み、時に騙し合うのが本文であろう。

 

「あいつの能力はだいたい想像ついているんだ。ステルス・ネットワイヤー作戦開始だよっ」

 果てして、その作戦とはいかに!?

 

迫るは最強十傑衆、迎え撃つは表裏比興の幻影旅団。

戦いの趨勢はいまだ見えないでいた……。

 

●次回予告『盗賊たちの黄昏。勝利の歌声、未だ響かず』

 無残に切り裂かれた豪華寝台列車バシュタール号。

そこに秘められたお宝を奪うために、幻影旅団とBF団の決戦が始まる。

罠を張り巡らせて逆襲に出る旅団メンバー。人界屈指の力を持つはずの彼らを、圧倒的な力で蹂躙すらする十傑衆。勝利の天秤はどちらに傾くとも知れなかった。

 

「今日は特別でね。もう一人来ているんだ」




 という訳で考察会です。
戦闘的には蹂躙してるんですが……。
別に対抗できないからではなく、一度離れて様子見してるだけなのでアッサリ気味です。ま原作の数年前の段階で、ゾディアック家に相当する敵とバランス型が戦ったら蹂躙されても仕方ないとは思いますけどね。

真面目な話、幻影旅団は戦闘メンバーだけではないですし、能力もバランス取れてる人が多いですからね。
純粋に戦闘オンリーの相手と戦えば、そりゃあ不利なのは仕方ない。ウヴォーギンならやってくれるはずですが、此処にはいないので仕方ない。ヨークシンでの陰獣戦とはちょうど逆のポジションとなります。

●能力考察
ノブナガの能力。
 特に書かれていないので
1:指定した行動を自動的に行える
2:オーラの配分を瞬間的、かつ効率よく行える
としています。
念の応用業である『流』をベースに、『硬』をリスクなしで行う感じですかね?
『円』の中に入ったモノを斬るといえば自動で切り、その行動を高速化する。
対象が何であれ切り裂くと言えば、鉄をも切り割く斬鉄剣に成る感じで。

名前は出ていないので、ひとまずシャルナーク視点で勝手に名前を付けた。
言葉に出す必要があるとして、有言実行と言魂を引っ掛けた綽名にしています。
それこそ常在戦場でも敦盛ダンサーでも何でも良いのですが。

●BF団十傑衆”素晴らしき”ヒィッツカラルド
 素晴らしい指先を含めた、その存在自体が凄い人。
今川監督がフィンガースナップで指を鳴らす練習中に、自動ドアが開いたというエピソードから作られたとか。

念系統:放出系
『発』
1:世界最高の指:
 所作で衝撃波を生み出し、焦点を絞れば真空波にすら達する。
オーラを注げば注ぐほど、絞れば絞る強く成る。強化系・変化系もバランスよく必要。

2:アクター・ザ・ヒィッツカラルド
 素晴らしい所作をすればするほど放出するオーラ・コントロールが強化される。
難しい連続動作・巧みな動きであるほどオーラの総量が増えるとか。
上記の『世界最高の指』とのシナジー効果が強く、特に指先を鳴らした時の強さは凄まじい。

フィギア・スケートの羽生結弦の点数が世界最高の力になり……。
マイケル・ジャクソンの動画再生回数が伝説級の力になると思えば楽。
ジャンプ漫画で言うと、ブリーチのオシャレな方が強いのと同じである。


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盗賊たちの黄昏。勝利の歌声、未だ響かず

 人界において傍若無人を誇ったはずの幻影旅団。
その彼らをして圧倒的な力の前に蹂躙されていく。

彼らは盗賊、世界征服を企むBF団の前に苦戦するのは仕方ないのかもしれない。
だがしかし、忘れることなかれ! そう……彼らは盗賊。時に巧みに騙しきり、時に暴力において解決する存在なのだ。

秘かに進行する作戦によって、十傑と呼ばれるほどの秘密。そして勝利をも盗み取ろうとしていた!



●ダンス・マカブル

 背後から撃ち込んだはずの念弾へ、振り向きざまにバックハンドで(あお)がれた。

ただそれだけで衝撃波の壁が発生し念弾を叩き落とされたが、問題なのはそこからである。

 

容易く相殺されたことに舌打ちし、牽制を続行するためにもう一発。

だがピッピッと甲高い音がした瞬間、こちらの第二射を切り裂いて真空波が飛来する!

 

「フランクリン!」

「問題ねえ。てめえも自分の持ち場を守ってろ」

 フランクリンは大きな手で顔を抑え、傷口周辺を念で焼き止血に変えた。

チャージをイメージして撃ってはいないが、連射タイプの攻撃で切り裂かれた事実はあまりにもショッキング。隔絶した念能力の差にむしろ笑いしか出てこない。

 

「さて。どうしたもんかね。暫く時間を稼げとは言われちゃいるが……」

 自分たちが蹂躙されているというのにフランクリンは笑った。

威力の天井と言うか……壁にぶちあたって以来、自分はどこか覚めた目で見ていた。これが放出系の限界だと。

 

若くして放出系を極めたと言われたこともあるが、まるで楽しくなかった。

自分は普通車が精々だが、強化系の仲間は馬鹿げた威力で装甲車も一撃でスクラップ。それなのに誇れるものか。今だって自分を切り裂いた真空波を、正面で相対しているチョンマゲ頭が簡単に迎撃しているのが見えるじゃないか。

 

だが、逆に言えばそこまで能力を絞った強化系に対し、同じ放出系のあの男は互角の威力を叩き出しているとも言える。

同じことが自分にできないと何故言えるのか? 幻影旅団を蹂躙する相手だ、互角に戦うどころか、テクニックを奪えばさぞ爽快に違いあるまい。そう思って昔の様に獰猛に笑う。

 

「ほう。器用だね。何発耐えられるかな?」

「何発でも叩きおとしてやるよ! 能書きはいいから掛かって来いってんだ!」

 踊るようなステップで放たれる強烈な真空波。

それを刀が迎撃し、背中越しに放たれた判り難い一撃も無造作に切り捨てる。『口にした事しか実行できない』が、『口にしたことだけは確実に実行できる』能力だからだ。

 

最初は『どうしてモロバレな能力にしたんだ?』とほぼタイマン専用の能力に首を傾げた。

しかし今だからこそ判る。このチョンマゲ頭は自分と同じような壁にぶちあたって、状況を限定することでアッサリ克服したのだ。旅団に強化系は何人か居るが、『判っている事態』に対して、ここまでの対応力を持つ男は他に居ない。

 

「なにやってるんだか。こっちからも行くぞ。構えな!」

「ハハハ。やってみたえ」

 まともにやって勝てないので連射をイメージして指を鉄砲の様に構える。

こうやった方がコントロールし易いと思ったからだが、まだ何か足りない気がする。特にこの男を前にしてから特にそうだ。

 

軽やかなステップを刻んでパチン。

二歩目は空中で僅かに足を留め、そこから踏み出すようにまた一歩。大胆にも背中を見せてパチンパチン。踊るようなリズムに合わせて指を弾く音が聞こえ……。フランクリンの体には無数の斬撃が刻まれた。

 

「ったく。こいつを足止めしろとか、シャルのやつ無茶言ってくれるぜ」

 敵は正面組を相手にしつつ、牽制しているはずのこちらをズタボロに変えた。

だが切り刻まれながらフランクリンは手応えを感じる。この傷は経験値なんだと思えば、ヘでもない。

 

ヒィッツカラルドは強過ぎる。

同じ放出系のフランクリンが威力の天井にぶちあたっているのに、だ。そのことがフランクリンに能力の正体を教えてくれていた。

 

バックハンドや掌で仰ぐ範囲攻撃だと、こちらと同じ威力。

余裕こそ見えるがソレは攻め手であり『補助能力』の結果なのだとしたら、威力の天井はこの男にも言えるのではないだろうか? つまりあのフィンガースナップだけが特別なのだ。

 

「あと少し、あと少し時間を稼げば洗いざらい持っていける。踏ん張れよ!」

「まあ無理だがね?」

 仲間の攻撃に合わせ、足元に集中的に打ち込むことで態勢を崩す。

それに対して男はスっと足を留め、優美な動きで腕を持ちあげた。そしてフランクリンを見下した目で嘲笑うのが見えた。

 

パチン!

澄んだ音が聞こえた瞬間、ただそれだけでフランクリンの人差し指が半ばから切り落とされたのだ。これでもう、指鉄砲のポーズでコントロールするのは難しいだろう。

 

「覚悟。覚悟の差か……判っちゃ居たんだよ。……なあクロロ」

 フランクリンはこの場に居ない男の事を思い出していた。

寝台列車ごと盗むと聞いて面白がり、今頃はこちらに向かっているらしい。だが、思い出されるのはかつての日々である。

 

気楽に生きていたはずのあの青年は、ある日から突如として豹変した。相手の能力を奪うという、恐るべき念能力を備え幻影旅団を結成する。

 

今思えば、旅団を作ってナニカしろと命令……いや使命のような物を流星街の長老たちから託されたのではないだろうか?

流星街には他にも旅団が存在したが、どうして結成されるのか? そしてその役目が何かは良く判っていない。

 

『人は犠牲なしには幸せになれないのか?』

 ある時、団長はとある本の言葉からそう引用していた。

あの時、なんとなくそうじゃねえかと流星街の現状を見て思っただけだ。ゴミ以外に何もない町で生き残るには犠牲無くして生き残れないだろう。

 

だが今ならば何となく判る気がする。

旅団とはその長を鍛えるための犠牲として、コミュニティそのものを人質に取ったのではないだろうか? そして旅団の長……場合によっては入れ替わった団長たちの間で次代の長老が決められる。

 

迂闊な事をすれば旅団……友人たちごと皆殺しにされるとあっては奮起せざるを得まい。

それだけではない、他の旅団と殺し合えと注文されたらどうだろう? そいつらが友人ではないとどうして言えるだろうか? その決定を覆すには勝つ以上に強大な力が必要なのである。

 

自分の命を、トモの命を、町の命を救うには犠牲無くしては進めないかもしれない。

だが欲しいモノがトモであるならば、その犠牲が出る状況を乗り越えなければならないのだ。その覚悟こそがクロロをして、あの能力に目覚めさせたのだろう。思えば長老の爆破能力も、命を資源化することで有効だと思わせる能力じゃないか。

 

「ああ。判っちゃいたんだ。勝手に天井を作ってるのは自分だと。限界を作ってもう何もしなくていいと言い訳を作っているのは自分だってな!」

 止血の為に握り締めた指を、ことさらに握り締めてフランクリンは吠える!

否! 必要以上に力を込めて引きちぎったのだ!!

 

「そんな自分に腹が立つ!」

 力を籠め過ぎて、興奮し過ぎて血が溢れ出る。

筋肉が締まって血を止めるが、そんなことも忘れるくらいに力と決意が溢れて来た。

 

「おい。やめとけって。後で縫ってもらえば……」

「いいんだよ。いや、これがいいんだよ! きっと、この方がいいに違いねえ!」

 フランクリンは仲間の言葉も無視して先の千切れた指を敵に向ける。

そして血が漏れるのも気にせず、オーラをそこに充填した。千切れた指先を銃口に見立ててこれまで以上のオーラを注ぎ込む!

 

「足りねえぞ! 俺を倒したかったら三倍盛ってこい!」

「ク……フハハハ。何とも素敵な強がりだ。もう少し遊んであげよう」

 最初に出た強烈な一発は、指を千切った覚悟への祝砲だろうか。

それだけならばマグレという事もあるが、続けて放たれる念弾は明らかに今まで以上の威力だ。皮肉にもヒィッツカラルドが回避を始めたことでそれが証明された。

 

明らかに自分に匹敵する威力を出されたことに驚きもせず、むしろ口笛さえ吹きながらヒィッツカラルドは踊り始める。怒涛のごとく放たれる念弾と真空波が、相殺どころか周囲を消し飛ばしながら銃撃戦を始めてしまった。

 

「あーもう無茶ばかりするんだから! 時間稼げって言ったけど、無茶し過ぎ! コルトピ! 第一段階発動だよ!」

「もうやってる」

 ここで行われるのは目眩ましだ。

流れ弾どころか余波を浴び、ラウジンジカーがグラリと軋む。それでなくとも先ほどまで念獣の大男が暴れていたのだ、長くは保つまい。

 

念弾で守り切れず、車両の天井が真っ二つになった時。シャルナークの指示で無数のアタッシュケースが出現。本物も偽物も周囲にバラまいておいた。今となっては御目当てはこんなものではない。

 

「あんたらもこのお宝が欲しくてやって来たんだろ?」

「ん? 荷物をばらまいたにしては多いね。……なかなか佳い悪足掻きだ」

 シャルナークとしてはお宝を守りつつ自分達への手立てを邪魔する。

そんな作戦……だと思わせておいた。本命は別に居るが、今は時間を稼ぎながら『凝』を誤魔化す材料に成ればいい。

 

そんな中で、ヒィッツカラルドは暫し動きを止めた。そして片手を挙げるポーズを見せる。

 

「まさか休戦ってわけじゃないよね? それとも十傑衆ともあろうものが怖気づいた?」

「いやいや。役立たずの念獣(バラン)を下げるように伝えただけさ」

 話がつながらない。

自分が戦闘を止め、念獣の大男も下げるという事は自然と休戦にならないのだろうか?

 

それともこちらと同じように時間稼ぎを?

そう思った時、ヒィッツカラルドがサディスティックな笑みを浮かべるのが見えた。

 

「十傑衆と言えば……今日は特別でね。実はもう一人来ているんだ」

「っ!?」

 ヒィッツカラルドただ一人で旅団の半数を圧倒している。

それなのに、まだ居るというのか!?

 

その答えは彼方から伸びてくる長い鞭。

そして無数のアタッシュケースの中から、一つを奪い去る巧みな鞭捌きである。

 

「残念ですねえシャルナークさん。私は君が割と好きだったのですが」

「まさか陳さん!? コルトピ、あれは?」

「……駄目。持っていかれた」

 それを実行したのは交渉していた陳というターバンの男だった。

鞄を開けた時に見えたのはよりにも寄って本物の緋の目。どうやって見破ったと言うのだろうか?

 

「ある時はオイルダラー。ある時は万能執事ミスター陳。その正体はBF団十傑衆が一人、”眩惑”あるいは”幻惑”のセルバンテスと申します」

 

ここに来て二人目の十傑衆が現れるという衝撃の展開。

戦いはいまだ途中、双方の思惑が秘かに進行しているのであった。

 

●次回予告『真実の世界へ向け、バシュタール号で明かされるGR計画!』

 現れた二人目の十傑衆。

その眼力は無数のダミーをものともせず、容易く緋の眼を奪い去った。

では以前に渡した偽物も見抜かれているのか? そして怨念渦巻く品を次々に奪い去ろうとする、その目的とはいかに!?




 という訳で蹂躙vs策略回です。

旅団メンバーが蹂躙されるとかねーわ。と思われる方はプラウザバックの前に、数年前。
まだまだ彼らが強く成る前だと思ってください。
フランクリンで言うと顔に傷がなく、指もまだ切り離してない時期。
強くはあるけど当たり前の強さ(上限まであがっておいて当たり前とはいったい)。
これから原作の強さを手に入れていく、発展前の時期という感じになります。

●ホースと水の関係
 大量の水がオーラの総量として、出力はホースの直径の大きさ。
でも瞬間的な威力は小さくした方が、勢いを増します。それが誓約と制約の効果の一部。
ヒィッツカラルドは難しい条件をクリアして放っており、フランクリンはまだでした。
それが原作と同じ、切り離した指先から放つことで、劇的に威力を高めるという展開。

●旅団の目的?
 あくまで考察の一つであり、Gロボの『犠牲無くして……』に絡めて選んだもの。
次の長老を決めるための試練であり、失敗したらコミュニティごと始末される。
だから最初に選ばれた団長は絶対だけど、旅団そのものも重要。という考えですね。
旅団を運営して凄い組織になれるならば、街の運営に関わっても問題ないレベルまで成長。
旅団同士で争って上に立てる強さならば言う事は無いし……。
相手の旅団を降伏させ、周囲にも傘下に入れる利益を提示できれば、双方ともに活かせる。
でもその強さは単に強いだけではなく、圧倒的強さと能力を求められると捏造『考察』しています。

しかし、そう考えれば納得できることがあります。
能力を奪う条件に『生きている事』があることで、相手を降伏させて生かす意味が出る。
長老の人間爆弾化も、住人に街への愛着を抱かせる必要があるので……。
人間がゴミではなく、有効な資源に変わるという訳ですね。

●”眩惑”あるいは”幻惑”のセルバンテス
 十傑衆の二人目。
ミスター陳というのは、Gロボの元ネタであるバビル二世に登場した時の名前。
せっかくなので偽名の一つとして利用してみました。
Qボスとオロシャのイワンを兼ねているので、まあこんなものかなと。
能力は『PK-MT』あるいは『確率操作能力』

念系統:操作系または変化系との混合

発:
舞台演劇(サイコドライバー)
 状況あるいは相手の思考を歪ませ、特定方向に誘導する。
熱量を集めるだけでも炎を生み出せるが、その真価は行動や思考のを誘導。
人の心を操ることで、緋の眼ほかお宝を囮に使う事を決断させた。
本物を見つけ出したのも隠す心理から見抜いたこと、そして確率そのものも操れる為。

なお他人を操作することにおいて圧倒的ながら、戦闘能力はそれほど強くない。
あの長い鞭はそのための物なのであろうか?
まあGロボの展開をある程度真似てるので、予想は可能だと思いますけどね。


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真実の世界へ向け、バシュタール号で明かされるGR計画!

 たった一人によって蹂躙され追い詰められた幻影旅団。
強者との実戦によって急激に成長する彼らだが、無慈悲な宣告が告げられる。

『今日は特別でね。実は、もう一人居るんだ』

一人で旅団の半数を圧倒する十傑衆がもう一人。
仲間の全員が揃っていない以上は全滅もあり得る絶望的なこの状況。果たして覆すことはできるのだろうか?


●向かうべきベクトルと、存在強度

 沈み始めた太陽の代わりに緋の眼が燦然と輝いている。

アタッシュケースから取り出されたソレは、いまや復讐者となって旅団(はんにん)を見つめているかのようだ。

 

「素晴らしい。この威容、この澄んだ殺意。もしや貴方がたが手づから収穫されたのですかな?」

(……殺意だって?)

 その言葉にシャルナークは違和感を求めた。

いかにも蒐集家が美術品を愛好しているような姿だが、とてもそうは見えない。言葉でそう言っているだけでなく……まるで武装を値踏みしているような気がするのだ。それこそフェイタンが銃のバレルや残弾を確認するかのように。

 

(どうやってこれだけのコピーの中から見つけ出した? オーラで? コピーもまた念だ)

 ただの美術品とならばオーラで区別できる。

団長が言っていたような気もするが、素晴らしい作品や料理にはオーラが篭り『格』が違うのだという。

 

だから凝でお宝を見分けてみることも偶にやるのだが、それだってコルトピがコピーした際にオーラだらけのはずだ。本命の作戦実行に当たってオーラを隠し易くするため、コピーだらけにしたのだから。

 

(でも殺意? 品に籠った殺気と言うならアレは確かに相応しい。あいつらなら死後の念にでも成り……死後の念?)

 セルバンテスが言うように殺害犯は旅団なのだが、その時のことを色々と思い出していた。

目を赤く輝かせると強く成り、しかも死んですらこちらを睨み続けるあの眼。彼らが念能力者に近い存在であれば、思い当たるフシが存在したのだ。

 

「死後強まる念……ね。呪いでも掛ける気かな」

「素晴らしい! 半分ほどではありますが正解です。だから私は君が好きなのですよ」

 この連中は秘密結社ではない。

顔を晒すことが一流の条件であり、能力を知られても問題ない程の腕前が精鋭の条件。ならば独特の制約と誓約でもあるのかもしれないと、あえて聞いてみた。

 

知られることが、説明することが条件の一部ではないか?

言われてみれば知られても問題ない程の強さで蹂躙すればよいのだから、知られて困ることなどないのだろう。だとすればあえて聞くことで説明してくれるのではないだろうか?

 

自分達はスタコラ逃げるつもりなので強化されても構うまい。ゆえにシャルナークは無責任に聞いてみた。

 

「先ほどの念獣はバランと申すのですが、あれには二つ足りないものがあります。一つは言うまでもなく実力。貴方がたならば他愛もなく倒せるでしょう?」

「違いないね。よくできたガラクタだよ、アレ」

 何となく言わんことは理解できた。

大男の形をした念獣は厄介ではあったが対処は難しくない。百体・二百体と居るなら別にして、増援のない状況なら戦闘の苦手なシャルナークですら一人一殺は確約できるし、数人で班を組んで対処すれば瞬殺すら可能である。また操作系独特の問題ゆえに直接関与できる念は持ってないが、念獣専用の攪乱術でも覚えていたら、同士討ちも可能かもしれない。

 

要するに中途半端であり切り札には到底成り得ない性能なのだ。

知られても困らないことが連中の基準であるならば、物足りないどころではあるまい。精々が警備兵として使い捨ての駒にするぐらいだ。

 

「ですので稼働するだけでオーラを食らう念獣を用意してみたのですよ。死後強まる念ならば怨念増殖炉になりそうでしょう?」

「イカレてるよあんたら。何の為に、何と戦う気だい?」

 あの大男でも弱いので他者のオーラを食らって強化する力を与える。

おそらくはセルバンテスの能力でも強化し始めたのだろう。彼方にオーラを感じるのだが……会話を続け、質問を続けるたびにドンドンとオーラが強く成るのを感じた。

 

凝もそのうち不要になりそうだ。そんな存在を何に使うのだろうか?

 

「もちろん我らがボス、ビッグファイア様の為に! 外世界を征服する為のGR計画ですぞ!」

「じーあーる……計画?」

 セルバンテスは瀟洒なスーツの腕をまくり上げ、妙に厳めしい腕時計を見せた。

カチリと押せばアンテナが飛び出すギミックは、なんとなく格好良いと思う辺りシャルナークも男の子である。そしてその仕草に自分と通じるモノを感じて嫌な予感がする。

 

あれは自分と同じ操作系ではないだろうか?

そしてセルバンテスがシャルナークと似たようなことをできるとして、使い捨ての相手や念獣専用の強化能力(ドーピング)があるのだとしたら?

 

「さあ来い、GRⅡ!」

「うわっ!?」

 ズン、ズン、ズン。

一歩一歩と踏み出すたびに、溢れるオーラがまき散らされる。きっとまだ未完成なのだろう……垂れ流されるオーラが放出系の攻撃の様にすら感じられてしまう。

 

そこに現れたのは鋼の巨人だった。

空洞からはオーラが溢れ、試験運用としても3mか4mありそうな巨体を容易く動かしている。

 

「このデカブツ。フランクリンよりでけーじゃねえか。コイツも奪って帰りゃあいいのか?」

「甲冑? むかし戦争で使てた大鎧か何かね。コロスの骨が折れそうよ」

「ちょっと黙ってて。もう少し聞きたいことが……って。あーもう、色々と台無しだよ!」

 本命の作戦の為に時間稼ぎしながら、可能な限り情報を奪っておきたかった。

今回はお宝奪って逃げるのが趣旨になったので、相手の強化と引き換えに情報を聞き出していたのだ。

 

しかしシャルナークとセルバンテスによる言葉のキャッチボールは中断され、駆け引き無しに戦闘になりそうである。

 

とはいえここまで来ればすることは一つだ。

 

「叩け、GRⅡ!」

『マ゛ッ!!』

「速っ……?」

 さながら水辺のピポポタマスであるかのようだった。

サイズに合わない身軽な機動と、サイズに見合った膂力と移動力。アッサリと接近されて直撃でもされたのか、誰かが一撃で吹っ飛ばされる。

 

ピポポタマス……カバの突進の前には獅子や虎が瞬殺されるように、ただの一撃で倒されたのだ。

体は既に停止した車体にめり込み無残な最期を……。

 

「……クソっが!!」

「あ、生きてる。オメデトー」

「ちゃんと死んでおくね。迷うのよくない」

 騙されたならとかく、油断して死ぬ方が悪い。

淡々としていた仲間たちは運の良い仲間の無事を喜んで見せた。

 

さて、運が良いとかご都合主義はありえない。なにが原因なのだろうかと頭の方はフル回転している。

 

「咄嗟に『堅』で防御したんだよ! ちゃんと回避もな!」

「篭手、浮遊してるね。きっとそれで間合いを誤魔化したね」

「それよりも伝達速度と判断速度がヤバイね。指示受けてから、ちょっ(ぱや)じゃん」

 フェイタンが見抜いたのは、大鎧の腕が射出されたことだ。

間合いが長くなって回避機動を捉えたが、代わりに威力が落ちたのだろう。そしてシャルナークが見抜いたように指示を受けてからの動きも速いが、避けられると判断して射出攻撃への切り替えも異様に速い。

 

「ですが思ったよりも威力が出てませんね。サイズ不足か、それとも燃料にしているオーラが思ったよりも弱かったのか。まあ貴方がたの売り物です。巡る因果でしょうか」

「そいつぁどうも。自業自得じゃねえか」

(ということはコルトピのコピー? ……なら、もしかして)

 血反吐を吐きながら立ち上がる仲間を無視し、シャルナークは冷静に思考を巡らせていた。

ワザワザ自分たちを悔しがらせるために、自分たちが売った物を選んだとは思えない。単純に基準値に達する物がなく、売りつけたコピーが当て嵌ったに過ぎない。

 

「コルトピ。念の為に尋ねるけど、あとどのくらい保つ?」

「あと半日」

 デスヨネー。

苦笑しながら情報を整理していく。

 

出力が足りてなのは、死後強まる念ではないからだ。これは良い面。

本来ならば瞬時に食いつぶされるのだろうが、コルトピの能力は一日と期間が決まっている。これが悪い面に当たるだろう。

 

「十傑衆が二人にバカみたいな性能の念獣か。こりゃあ骨が折れるなあ」

「ではどうするかね? 私もそろそろ暇を持て余して来たのだがね」

 ニタニタと嘲笑うヒィッツカラルド。

手を出していなかったのは余裕もあるだろうが、適度なところで絶望を味合わせうつもりだったのだろう。本当にコイツ性格が悪いな。きっと十傑衆の中でも一番の小物に違いないと、心の中で舌を出しておいた。

 

「そりゃあ盗賊団だからね。お宝奪って逃げるに決まってるさ」

「ハハハ! それは傑作だ。できるものならばやってみたまえ。ただね……一歩でも動いたら命の保障はしないよ?」

 よほど傑作だったのだろう。腹を抱えてねじる様に笑う。

なにせ戦いはゲームのように『お互いのターン』など存在しない。同時進行で思考するし、片方が対策を考えるならば相手もソレを事前に潰せるのだ。

 

旅団側が何か対策をするとして、ここまで有利なBF団側がソレを見逃すだろうか?

否! 何もできないように次々に攻撃を撃ちつつ、新たな奇策ごと叩き潰せる実力と経験を持っているに違いない。

 

まさに窮地、まさにピンチ。

千日手ですら命を長らえさせるに過ぎない! このままではこの場に居る『八名』全員が殺されてしまうだろう。

 

「じゃあ、少しだけ悪足掻きをしちゃおうかな」

 そんな時、シャルナークは不敵に笑って携帯電話に向かって呟いた。

彼が念能力を使うためには、そんなことをしたらいけないのに。

 

否、否否否!!

発を使って他人を操るのが難しいと決まった時点で、彼は最初からここには居ない仲間へ連絡を送っていたのである!

 

ゆえに一言、こう叫ぶだけでいい!

 

「叩け、ウヴォー! ビックバン・インパクト!」

『う、おおお、おおおおお!!』

 先ほどのセルバンテスの真似をして見せた。

その瞬間に断崖絶壁が『足元から』不自然に盛り上がる!!

 

猛烈なオーラが弾け一同が戦っていた戦場を吹き飛ばしたのであった!!

 

●次回『世界を導く北辰 全てはビックファイアのために』

 断崖絶壁での死闘は、最初から旅団の仕掛けた罠だった。

崩れ行く大地に紛れ、BF団と幻影旅団は殺意と狂気を交わし合う。

 

『求め続ける事にこそ価値がある』




 という訳で解説と逆転回です。理屈と説明多すぎて面白くない?
「パンチだ、ウヴォー!」CV:山口勝平
全てはこれがしたかったに尽きます。

シャルナーク:時間稼ぎ

セルバンテス:説明すればするほど、状況を望む方向に変動させられる

というお互いの目的の為に呑気な会話をしていました。
シャルナークはこっちに向かってるはずのウヴォーギンに対し
「あの辺一帯をぶっ壊して」と連絡して、その間にお宝にマチの糸を括りつける予定。
そもそも最初から来てないので、間に合うかどうか怪しいために
自分たちが脱出する可能性を含めて断崖絶壁までおびき寄せた感じですね。

逆にセルバンテスはGR計画の最初の段階を達成するため
オーラを食らう怨念増殖炉を稼働。その暴走がBF団の要求する方向に向かうよう
彼の能力で補強する必要があるのですが、相手に喋らせる必要があるので会話。

念獣:大鎧『GR』
 かつての戦争・威圧用に使われた戦闘用重甲冑をベースに、色々と改造したもの。
基本的に念で動かす絡繰りであり、強化外骨格のイメージ。
いまではオーラを消費して動くタイプの念獣になっており、『死後強まる念』を使い
ちょっとやそっとでは消費されず、その強度も大きなものにしていた模様。

用途に従い『百勝』『双鞭』『天目』『豪天雷』という四機が製造される予定。

●GR系計画
 本筋とそしてはまだ不明。
しかし第二段階では外世界進出を行うため、二つの能力が必要になった。
一つ目は外来種の強度に匹敵し、なおかつ高速演算可能な戦闘力。
二つ目は洗脳・ハッキングが当然と考えられるので、ソレを跳ねのける強固さ。

要するにこの二つを兼ね備える素材が、『死後強まる念』での強化である。
真の計画はその延長上にあるとされるが、いまだ知るものはいない。


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世界を導く北辰、全てはビッグファイアのために

 戦場であった断崖絶壁が砕け散り、投げ出される戦士たち。
だがこれは幻影旅団による策略なのだ、彼らは蹂躙されたフリをしておびき寄せていたに過ぎない。素早く態勢をリカバリーすることなど容易いものだ。

しかし彼らが見た物は、狂気すら感じる念能力だった。
あれほどまでに高めた念は、本当に必要なのであろうか?

問われればBF団は答えたであろう。

『求め続ける事にこそ価値がある』



●逆転、あるいは……

 ビッグバン・インパクトにより砕け散り、舞い上がる土砂。

その中でアタッシュケースの一部が、ナニカによって巻き上げられていく。幻影旅団のメンバーも似たような形で地面や岩壁に留まっていた。

 

「やったか? この高さから放り上げられたら連中だって……」

 そう言いながらメンバーの一人が腕を回していた。

なに遊んでいるんだとは誰も言わない。それが強化系能力者である彼が持つ、判り易い条件なのだから。

 

自分達が同じ条件でもなんとかなるだろう。

だからこそ、この場所を万が一の逃走経路にしたし、当然無事だと判断して待ち構えているのだ。

 

()べ、GRⅡ!」

「ハッ! だろうと思ったよ」

 あの念獣が浮遊する篭手の力なのか、元に近い位置に浮かんでいる。

そこへ向けて鞭が伸び、セルバンテスが脱出を成功させたようだ。腕を回していた仲間は、先ほど殴り倒された仕返しをしようと獰猛な笑顔を浮かべていた。

 

ではもう一人は?

そう思った時、ありえない光景を目の当たりにしてしまった。

 

「嘘だろ……。あいつ、壁を走ってやがる」

「どんだけー? てか鹿かよ……」

 最初はポンポンと壁を蹴っていたヒィッツカラルドだが、やがて態勢を立て直して壁面を疾走。

それも綺麗な壁などではない。断崖絶壁に相応しいゴツゴツとした岩場の壁を、斜め下に向かって走っていたのだ。

 

「でも、やっぱり間違いないね。あいつは行動の連続性が……って、どこに行くのさフェイタン!?」

「あいつ笑いやがった……! ブチ殺すに決まってるだろうが!!」

 シャルナークが止めるのも有らばこそ、フェイタンは念で作られた糸から抜け出した。

自身も落下を始めると壁を蹴りながら態勢を整えていく。そして最後の最後で猛烈なオーラを発揮し、ありえない力で壁を抉ると態勢を強制的に整えたのだ。

 

掴んだ場所から指を離し、油断なく態勢を入れ替えるとそいつが待っていた。

 

「もしかしてハンターでも目指しているのかね? 犯罪(クライム)・ハンターとかバトル(戦闘)・ハンターの分野で星を得ようとか」

「そんなものはクソ食らえだ。てめえはオレを舐めた。他に理由は要らねえ」

 よくハンターでシングルだのダブルだのを能力者の指標にしている者が居る。

しかし、この二人はそんな者には興味はなかった。共に『何がハンターだ、オレの方が強ぇえ!』と思っており、そもそもラベルに興味などない。

 

だが我慢ならない物を挙げるとすれば舐められることだ。

ヒィッツカラルドとしては十傑衆を罠にかけ、出し抜いたと思われたら腹が立つから優雅に降下して見せた。もし誰も追って来なければ、その所作ため込んだオーラで上を真っ二つに切り割いてやるつもりだった。

 

それはフェイタンも同様だ。

『勝てないから逃げるんだろう?』とか『お前にはできないだろう?』と言われたような気がして、腹が立ったというだけだ。

 

「勝てる気で居るのかね? 時間潰しをするよりは、君の仲間を皆殺しにしておきたいのだがね」

「黙れ」

 フェイタンはフードに指を掛けると一息に脱ぎ去った。

脱ぎ捨てたフードはバサリではなく、ドサリと鈍い音がした。それほどまでにフードの中には色々と仕込んでいたのだ。

 

そして軽快なステップでシャドーボクシングを始める。

今から戦うというのにその姿は滑稽。

 

だがしかし、体の中から滲み出る圧倒的なオーラを抜きにすればの話だ。

拳を振るうだけで天が割れ、舞散る埃がその様子を伝えるほどだ。踏み出せば足元の土砂が吹き飛ぶことで、大地が割れる程の威力を教えてくれた。

 

「変化系か。剣なし、お互い素手と言うのも良いね。少しギアを上げていこうか」

「黙れと言ったぞ、三下ぁ!」

 怒りを暴力に変える能力、これこそがフェイタンひとつ目の発。

フェイントを多用し隙を突くトリッキーな軽戦士。その暗殺者めいた外面は偽りであり彼の本質は狂戦士だった。軽装のはずの一撃が、怒り共に爆発的な火力を持つのだ。

 

「ククク。十傑衆を三下呼ばわりとは。Aランク以上の能力者だと分類でもしてあげようか? お嬢ちゃん」

(っ腕を隠して……。クソが! どっちだ!?) 

 挑発に対して挑発返し。

そしてヒィッツカラルドは両手を背中で組んだ。

 

腕を隠すこということはフェイントか?

フェイタンは左右を判断するのではなく、自ら動くことでその選択肢を除外した。

 

残像すら生じる高速で相手の右から迫り、腕を狙った一撃。

防がねば肋骨を粉砕するコースを選び、自身の目は奴の左側を凝視しておく。

 

それに対して繰り出されたのは右肘。

最低限の動きで攻撃を留め、ゆっくりと左手を突き出したのである。ピっという軽い音に対しても油断せず、咄嗟に回避したのだが……。

 

「ぐう……? 馬鹿な。回避したはず」

「覚えておくと良い。同じ技だけれど、同じ撃ち方だと思うからそうなる。初速と弾着が違うんだ……このくらいね」

 気が付けばフェイタンの脇腹が斬られていた。

ヒィッツカラルドが親指と人差し指を軽く広げて、僅かな差だと説明していた。どうやら速度特化の撃ち方らしいが、拳銃の早撃ち(クイックドロウ)どころの速度ではなかった。

 

「クソが。本気になりやがったってことか」

「ギアを上げていくといったろう? 私が敵を前に慢心する馬鹿だとでも思ったのかね?」

 念の質そのものは追いつける算段が付いた。

だが戦いはそこからだ。同じ土俵に立つ『敵』ならば、ヒィッツカラルドが手を抜く必要はない。これまでが嬲り殺しにするだけの小物(おもちゃ)だと思われていただけの事だ。

 

「敵か……。敵ならば、殺さなきやなあ!!」

 そういってフェイタンは笑う。

これほどまでに強い相手が彼を『敵』として認めたからか?

 

否、フェイタンは別にバトル・ジャンキーの類ではない。

自分の腕前が上がったこと、強さが自覚できたことなどどう(・・)でもいい。強敵など難易度の高い障害でしかなく、その克服に喜びなど感じない。

 

(殺れる。強いだけの相手なら、ぶっ殺してやれる)

 旅団の仲間はスッキリした奴が多いので普段は合わせている。

だが決してフェイタンはそういう性格をしてはいない。溜め込まないし・後に引きずらないからクールに見えるだけで……彼自身は恨みや怒りに左右される性格をしていた。

 

「死ね!」

「できもしないことは口にしない方が良いと言わなかったかな?」

 先ほどと同じように右側から攻め立てる。

同じように肘でブロックされるが、オーラを瞬間的に爆発させて威力を底上げした。無手で戦うのは、オーラの攻防移動よりも速い火力上昇にあった。こうなればもはや剣など重りに過ぎない。

 

剣よりも強力な肘打ちが、奴の肘骨を砕きに掛かる!

例えそれを受け止めたとしても、もう片方の手で殴り倒してしまえば良い! 彼の発は怒りを筋力や脚力に変えることで、パワーとスピードを両立させていた。

 

「さっきの焼き直しと思ったか! 死ぃぃ……」

「考えることはお互い様だ。もう一枚くらい手を加えたまえよ」

 肘を起点に動こうとしたところまでは同じ。

素早いオーラの移動でヒィッツカラルドへのダメージは軽減され、驚くべきことに掌底がフェイタンの手の平にぶつかって小気味よい音を立てる。

 

憎らしい敵との間に強制ハイタッチ。

吐き気を催す気色悪さだが、それは決して気分の問題だけではないだろう。走り抜ける衝撃波がフェイタンの体を揺さぶった。おかげでこちらの追撃はカスっただけで大してダメージを与えられていない。

 

「惜しいね。君が女の子だったらとっくに口説いているんだが」

「ぬかせ。その時はひんむいて布団の中だろうがこのゲス野郎!」

 ベっと血を吐き出しながら正面から拳を連続で叩き込む。

それも左右に分身とおも思えるようなステップを残し、方向性を誤魔化しながら攻め立てた。もっとも踏み込んだに一撃にオーラをたらふく載せていく。

 

腕だけでは止められないと見たのか、肘と膝を組み合わせたブロックで止められてしまう。上乗せしたはずの火力に匹敵するほどのオーラが瞬時に生成(精製)されている。

 

「そろそろ終わりにしようか。上の連中も始末したいからね」

 ヒィッツカラルドの方は血を吐き出すのではなく、優美にハンカチで口元を拭っている。

強い。今の段階で奴が強いのは仕方ない。念の強さは追いついても、使い方や戦闘経験までは追いつけてないからだ。

 

だが、倒せないわけではない。

念能力者の戦いにおいて、重要なのは強さではないのだから。

 

「……ふん。ご自慢の念獣を潰されて焦ってるんじゃないのか?」

 バラバラと篭手や鎧に使っている素材が落ちて来た。

おそらくは旅団の誰かがセルバンテスを倒したか、念獣だけでも破壊したのだろう。

 

「焦る? 私が? 試作品に過ぎないGRⅡを潰された程度で? ……ふ、は、ハハハハ!! ああ実に面白い冗談だ」

 傑作だとばかりにヒィッツカラルドは大笑いした。

これだけ実力差を見せつけられて、大した強がりだと下卑た笑顔を浮かべる。

 

それはやがてサディスティックな笑顔に変わり、鳥が翼を広げるように両手を見せつける。あるいは指揮者が音楽を奏でるように楽団へ指示を出すかのようだ。

 

「別にGRⅡが壊されようが、セルバンテスが死のうが構わないよ。我らが全てはビッグファイアの為にある」

「馬鹿みてえなもんをありがたがりやがって。(つら)拝む前に死にな!」

 あえて挑発しながらフェイタンは突っ込んだ。

手は拳として固めているが、中指を立てていてもおかしくはない。

 

それに対してヒィッツカラルドの動きは優美で、そして最低限の動きだった。

スローモーにすら感じる動きで、両手の指がパチン・パチンと甲高い音を立てる。

 

緩やかな動きゆえに、指先の差が明確に判るのが不気味だ。

右手はよくあるフィンガースナップだが、左手は少し違う。弾指と呼ばれる所作で音を立てたのである。違う鳴らし方なのに同じ音を出しているのが小気味よい。

 

右からは凄まじい切れ味の真空波が発生し、左からは僅かに遅れていながら右を凌駕する速度で放たれている。袈裟懸けに切り裂く一撃に、逆袈裟の一撃が追い付いて軌道を大きく変えた。それも……フェイタンが回避した方向にである!

 

「……右手っ!」

「おっ。咄嗟に首は庇ったのか。少々大人げなかったかな? まあ、これにて閉幕と……?」

 膨大なオーラを集中させた右手でフェイタンは真空波を殴りつけた。

それなのに相殺どころか、首を守るので精一杯。右手は切り落とされ掛けブランと垂れ下がり、体の方もボロボロであった。だからこそ……。

 

だからこそ、それがヒィッツカラルドの『敗因』となったのである。

 

血だまりのなかでフェイタンは顔をあげて、こう呟いた。

 

許されざる者(ペインパッカー)……はげ山の一夜(ブラッドラスト)

 流れ出た血が針となって射出され、刺さった場所から流れ出る血がさらに針となって周囲を覆う。憎しみが憎しみを呼び、谷底どころか断崖の淵まで覆うほど、無数の針が居る者全てを傷つけた……。

 

●北辰は今、ここに輝きたり

 その様子を彼方から見つめる複数の影があった。

 一つは撤退したセルバンテス。そして協力して念獣を作り上げた能力者たちである。

「あれで良かったのですか?」

「GRⅡだけではなくヒィッツカラルド様まで……」

「構いません。外世界、真実、力。求め続ける事にこそ価値がある」

 能力者たちが驚くのも当然だろう。

作り上げた念獣が破れたのみならず、無敵を誇った十傑衆までもが!

 

「全てはシナリオ通り。問題ありませんともそう……すべては」

「全てが我らがビッグファイアの為に!」

 セルバンテス……いや、この場ではミスター陳というべきか。

アタッシュケースの中から緋の眼を取り出し、眩しそうに眺める。

 

「データは?」

「順調です。イレギュラーはありましたが、奴らからも観測できました」

「特定ベクトルに向けた精神力の深度が計測できました」

 『万能執事』ミスター陳としての彼は計画遂行のために行動していた。

 

「よろしい。これでGR計画は第二段階を越えました」

「おめでとうございます! これでBF団の戦力にも磨きが……?」

 陳は戦力と言う言葉を聞いて、僅かに首を傾げた。

どうしてそのような愚かなことを言うのだろうと思い、真意を告げていなかった事を思い出す。

 

「ああ。戦力などどうでもよろしい。GR計画の初期段階は外来種の精神的・肉体的な汚染から我々をブロックするための物。その為の精神ベクトル、そのための精神深度。そのための死後強まる念なのです」

 あまり知られていないが、過去人類は外の世界に赴いたことがある。

手痛い敗北を喫したどころか、そもそも戦いにすらなっていないのだ。ある物は戦いに敗れたが、ある者は汚染される仲間たちを見て心が折れた。同士討ちなど実に可愛らしいものである。

 

中には外世界の道に触れ、強化した者も居るがモノに成り果てた。

だがGR計画が着実に進行することで、その心配がなくなるのだ!

 

「いつやって来るとも知れない外来種に、怯えることない夜を。

 やがて赴く新世界へ希望を抱いで眠れる、美しい夜を!

 それは幻ではない! 全ては我らがビッグファイアの為に!」




 という訳で旅団の反撃回です。
フェイタン負けてる? そこに至る流れで相手のサド気質を理解して
挑発しながら致命傷は避けて、最後の反撃に出たので実質勝利です。
正確にはカウンターを考慮せずにイビリ倒したヒィッツが、一人で負けただけとも言いますが。

描写する旅団メンバーでシャルナーク・フランクリン・コルトピ……。
そして最後にフェイタンなのはクロス作品双方の矛盾なくするためです。

Gロボにおけるテレポート災害回ですが、そんな再現できないので
ビッグバン・インパクトに変えて、そのまま別の技につながる流れ。
ヒィッツカラルドに関しては漫画版・アニメ版・その原稿で扱いが違い
中条長官との一騎打ちをイメージした戦いに変更しております。

●フェイタンの言葉と、二種の発
・いつもの調子 = キャラ作り
・謎言語 = 変化率を上げるために思い付いた
・本音  = 単純にブチ切れて、キャラ作りを忘れるだけ

と解釈しております。
謎言語で喋るのはどう再現して良いのか悩むので、仕方ないですね。
アルファベットになおして逆から呼んでも良いのですが、面倒ですし。

発:
『怒りの日』:読み方はアングリー・ムーブ
 感情がそのまま乗る強化系と違って、憤怒の感情のみを変換。
絞っている代わりに、脚力・腕力への変換が速い。

『はげ山の一夜』読みはブラッドラスト
 暗器の針としての使い方、流れ出る血潮の流用。
地水火風なり木火土金水の応用があると仮定して、そのバリエーション。
Gロボの追魂奪命剣という技をそれらしく再現した物ともいえる。

●GR計画
 これは三段階で予定されている。

第一段階は、外世界でも通じる戦力を用意すること。
 別に念獣である必要もなく、念の教育システムの確立だろうが、組織則りでも何でも良い。

第二段階は、外世界での汚染を避けること。
 戦力を用意しても乗っ取られたら意味がない。同士討ちを警戒して雑魚を連れて行くことにはもっと意味がない。やるなら外世界で生活できるだけの戦力を用意することに意味があり、外のデータを得るだけなどBF団の目標ではないのだ。

第三段階は、いうまでもなくビッグファイア様。
 しかしこれがどういう意味なのかはいまだ不明。
「どういうことだ。まったく判らんぞアルベルト?」と言われてもアルベルトは居ないので答えようはない。以下次号を待たれたし。


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大団円-満ち足りしは、幻の蜘蛛

 流れ出る血潮とオーラが無数の針となって射出される。

針による殺戮の宴。もはやここが断崖絶壁の峡谷だったとは思えない。

 

「……いた。居やがった。……生きていやがった!!」

 フェイタンが憤怒の表情を浮かべたのは一瞬。

一転してウットリとした笑顔に切り替わった。

 

「ククク。アハハハあ……あァァー~。十傑衆ともあろうものが情けない姿ね」

 捕虜にして連れ帰り、秘密を洗いざらい吐かせれば多大な利益になる。

旅団にとってもそうだし、フェイタンは仲間から一目置かれるようになるだろう。自分たちをたった一人で蹂躙したヒィッツカラルドを仕留めたという事は、それだけの功績なのだ。

 

だがしかし、そんなことを考えたのは僅かな間でしかない。彼の理性は蒸発し、かつてないほどの欲求が鼓動と彼自身をエレクトさせる。

 

年頃の少女が抱く恋心の様にドキドキと。

 

その辺りに落ちていたガラスの破片を握り締め、ヒィッツカラルドの腹に突き刺した!

 

「グゥ……。おの……れ……」

「生き恥を晒したくないだろう? 助けてあげるね」

 フェイタンの早鐘の様に打つ心臓はまるで乙女の様ではないか。

ズブリと肉を割く手応えに自然と笑みが零れてくる。後ちょっと、後ちょっとくらい突き刺しても死なないだろう。もう少しくらいは深く突き刺しても構わないか?

 

耳元で舌なめずりしそうな程に息を荒げ、興奮し、ガラスの破片を強く握り過ぎてヒィッツカラルドのものか自分の血なのかすら分からないほど滲んでいた。

 

ああ、いけないいけない。

このままでは簡単に殺してしまう。もっと屈辱を味合わせなければ。

虫けらの様に追い回されたのは屈辱の極みだった。それが勝利によって逆転する。この時の為だったと思えば全てが許せる。楽しい、愉しい、たまらなくタノシイ。

 

「誰かに獲物盗られない内に済ませてしまう良いね。あぁ、でも、もし生きてたら情報もらうよ」

 普段のフェイタンは好悪の感情を我慢しない。

その場で垂れ流すし誰とでもサッパリした付き合いをする。信用できないと口にし嫌いだと口にし、腕前を見ればそれなりの評価をする。昨日まで殺し合った連中と酒を飲み、昨日までの知り合いと簡単に殺し合える。入れ替わった新人に遠慮ない口出しするのも平気でやっている。

 

だから彼は憎しみも恨みも持続させない。

ヒッィツカラルドに対する恨みはここで思う存分済ませてしまおう。思い切りズブリとやって死んだらそれまで。生きていたら仲間の元に持ち返って情報を洗いざらい抜き出せばよい。そう思って一気にガラス片を突き出した。

 

「直ぐに殺してくれ言うようになるね。ワタシこれでも凌遅刑、得意中のとく……」

 肉が割ける感触や苦悶の声を聴くのは何より楽しい。

どうやら咄嗟に防御したので死んでないようだが、ここで切り刻めば死ぬだろう。そう考え思い切り腹を抉っていくと、途中で軽い手応えがした。

 

そしてフェイタンは奇妙なモノを見つけたのである。

 

 

 やがて細い糸が谷底へ降りてくる、無数の針が突き立つ中に三人ほど。

見渡すところ針ばかりで、かつて生物だったモノはみな貫かれて針山と化している。

 

「針による絨毯……まさしく絨毯爆撃ってやつですね」

「シズクって意外とオヤジギャグ好きだよね」

「つまらねー冗談言ってんじゃねえよ。邪魔っけな針をどうにかしな」

 シズク・ムラサキは無表情のまま掃除機を出現させた。

そして『血や体液で作られた針を吸って』と口にした途端、目の前にある針山が消滅したのだ。そこには元の峡谷と列車であった物の一部が転がっている。

 

「フェイタンのやつ生きてんのか?」

「どうだろうね。今回戦ったヒィッツカラルドと『ペインパッカー』の相性は良いから、勝ったとは思うけど相打ちの可能性はゼロじゃないとは思うよ」

 刀使いの質問にシャルナークは曖昧な言葉で返した。

ペインパッカーは大規模カウンター能力だ。サディストらしきヒィッツカラルドがフェイタンを追い詰めれば追い詰める程に大ダメージを発生させるが、それは仲間の生存に直結しない。

 

「誰がそんなマヌケか。生きてるね」

「おっ。無事だった」

「ズタボロじゃねえか。上にみんな居るから、さっさと縫ってもらいな」

 やって来るフェイタンは足を引きずり、千切れかけた片腕を縛って止血していた。

体中に切り傷があるが、オーラで防御してなお相当に攻撃を食らっていたのだろう。顔色も悪く今にも倒れそうだ。

 

「そうさせてもらうね。あとコレ、ヨロシク」

「戦利品か?」

「ていうか人だよね。……誰?」

 フェイタンが無事な方の腕で抱えていたナニカを転がした。

縄代わりにカーテンか何かで縛られているが、そいつは見たこともない男だ。

 

頭部がスキンヘッドの黒人だが……。

何より奇妙なのは体のあちこちに穴を空けている事だ。それも昨日・今日になって空けたものではなく、当然ながらフェイタンの放った針で傷ついたものではない。

 

「戦利品と言えば戦利品ね。良く判らないから団長に考えてもらうがいいね」

 なんにでもイラつく代わりに後に感情を引きずらないフェイタンが、珍しくブスっとした表情を見せている。

戦いに勝利したはずなのに、まるで勝ち逃げでもされたかのようだ。もっともヒィッツカラルドが生きているのならば、もっと悔しそうな顔をしているか、さもなければ警戒しているだろうが。

 

「なんだ? どういうことかサッパリ判らねえ。おいフェイタン、ちったあ説明をだな……」

「あ、この人生きてますね」

「聞こえる? 君って誰だい? 何をしてたの?」

 何も答えないフェイタンに刀使いが問い詰めるがまるで反応がない。

代わりに簀巻きにされた黒人男にシズクとシャルナークが反応を示した。こうなれば刀使いの方も仕方なく、男を担いで二人の方へ顔を向けてやる。

 

「お、おれ、オレはボノ……レノフ。世界で……もっとも、美しくたた……かう一族……。おれが、オレこそが……」

 その名前は聞いたことのない名前であり、知らない顔に対して謎は深まるばかりだった。

一体、この谷底で何が起きたのだろうか?

 

●その名は……

 薄暗い部屋の中で本が開かれる。

黒い豹の描かれたページに指を挟み、オーラを流し込むとグニャリと絵が動き出した。そいつは地面に降り立った後で、ドロドロと粘液状に形を変えて倒れている男を後ろ手に拘束する。

 

そのまま部屋の天井に吊り下げれば踏みしめる大地もなく何もできなくなるだろう。

消費オーラも少ないので長時間拘束にはピッタリの能力なのだが、捕縛目的の能力ゆえ強制的に眠らせるしまうために尋問できないのが残念なところだ。

 

「十傑衆。倒したと思たらコイツになたね」

「本当かよ? 身長とかはともかく肌の色とか全然違うじゃねえか」

 謎の男を連れ帰ったフェイタンの言葉に仲間たちは疑問の声を上げる。

とはいえ戦利品の質を高めるために、抗議をしているわけではない。謎を解くために現実に起こったことを淡々と告げているだけだ。

 

「……だ、そうだが。シャル、お前の見解は?」

「うーんそうだねえ。まずコイツはヒィッツカラルドの部下で、お互いの位置を入れ替えたとか、姿ごと能力を借り受けた。……ってのが考えられるかな」

 転移能力は極めて希少だが、狙って取得できない訳でもない。

強力な放出系が前提になるが、キーがヒィッツカラルドならば十分だ。その上で重要な部下を犠牲にすることを前提に、もう幾つか条件を付ければ可能だろう。

 

もう少し簡単な方法は、外見と能力をレンタルすることだ。

旅団の長であるクロロがそういった能力を持っている。例えば今使っている粘液に変化する黒豹は、その能力で取得したものだ。転移に関する仮定と同じように難しい条件を付ければ可能と思われた。

 

「だがお前は違うと考えている。事態はもう少し深刻だと?」

「うん。だってそこまで大げさなことをして、目標が『死後の念』を持つアイテムだなんて釣り合わないよ。仮に団長がその能力を奪ったとしても、オレ達の誰かを犠牲にしてウヴォーやフランクリンを呼ぶとかありえないでしょ?」

 復讐だとかメンツが関係すれば別なのだろうが、普通はコストというものを考える。

倒されなければ犠牲は出ないにしても、他にも幾つかの条件はあるだろう。大したことのない獲物の為に犠牲を考慮しては割りに合わないのだ。

 

「団長やパクを守る為なら許容範囲だが、俺らじゃあ割りに合わんな」

「そういうこと。もう大前提がおかしくなっちゃうんだよ。もっと大掛かりな目標の一環だとか、コイツもまたGR計画とやらの実験ならまだ判るけどね」

 もちろんクロロを始めとするレアな能力者を守る為なら仕方ないという場合もあるだろう。

しかしヒィッツカラルドに相当する旅団メンバーはフランクリン辺りになる。鉄砲玉を守るのに鉄砲玉を犠牲にしていたのでは、作戦にしても組織運営にしても成り立つはずがない。

 

「実験。実験ねぇ……何をやってんだか」

「むう。どういう事だか、まったく判らねえぞ」

「念獣の話じゃ外世界に進出する為とか言ってた気もするけど、コイツと何か関係してるのか今のところ判んないね」

 結局のところ情報が少な過ぎる。

そう結論付けようとしたところで、クスクスと笑い声がした。

 

一同が顔を向けるとそこにはメンバーの一人、ピエロにも似た男が座っている。

 

「本当に気が付かないのかな? ヒントはとっくに出てると思うんだけどね♦」

「あん? んなの何処にあったよ」

「判たならささと言うね。コイツの代わりに痛い目あいたいか」

 ピエロの言葉にイラッと来て答えを強要するが、どうしようかな~とはぐらかす。

答える気がないのであれば最初から口にすまい。からかっているだけなのだろう。

 

「彼らが自分たちで言ってるじゃない。ビッグファイアの為♥だってさ。本物が居るなら偽物で我慢する必要なんかないよね♠」

 ピエロは最初に自分たちを指さし、次に団長であるクロロを指さした。

 

先ほどの例とちょうど逆だ。

鉄砲玉どころではなく限りなくレアな能力者が十全に動けるための手段であれば、その辺りの能力者を犠牲にしても問題はない。負けなければ死なないのであれば言う事もないだろう。

 

「奴らの首領をか!? そりゃあどうせコピーするなら強い方だが……」

「いや。ヒソカの言う事も判る。盲点だったな……確かに連中の頭は目撃例がない」

 ピエロ……ヒソカと呼ばれた男の言葉をクロロが認めた。

最初は半信半疑だったメンバーも、団長のいう事ならばと荒げた声を潜める。それにBF団の首領が目撃されていないのであれば、考え得る状況が幾つかあるのだ。

 

「十傑衆ほどアクの強い連中が首領が不調なのに従うはずがないと思っていた。だが本当に不調で動けないのに、それでもなお従わざるを得ないほどの実力者であるとしたら?」

 重傷であるとか、昏睡状態であるとか。

もしそんな理由で動けないが、凄まじい特殊能力があるならばどうだろう? BF団の首領ビッグファイアが自由に動くことが目的になっても何の不思議もないだろう。

 

「それってハンター協会のネテロ会長とか、ゾディアック家の長老とかクラス。最悪それ以上ってことだよ?」

「だからじゃない? その二人って確かに外世界に行ったって話だよね」

「詳しいじゃねえか」

 例に挙げられた人物は念能力者の中で金字塔と言える人物だ。

半ば伝説と化しているが、もしそんな人物級ならどうだろうか。それ以上の強さ……はありえないにしても、そのクラスの能力者でレアな特質系ならば辻褄が合う。

 

そして、その人物が外世界に行ったことがあるとしたら意味が通る話も出てきてしまう。

最初に出て来たバランという念獣は量産タイプとしては高性能なのに強さが足りない。その後に出て来たGR-Ⅱでもまだまだ。と言っていた。

 

果たして、どの基準は何処からきたのか? 実際に戦ったからだ。

そして、コントロール奪取の警戒も含めて『死後の念』を求める理由が判るのだ。何しろ外世界に行った連中は、同士討ちや洗脳を含めてアッサリ全滅したとのことである。

 

「……シズク。体内にある薬品を指定して抜き出せるか? 複数ある内の一つをだ」

「どんな薬なのかさえ判れば可能ですよ。一番新しいとか、一番最初に使われたとかでもいいですけれど」

 クロロは何事かを悟ると、これまでにない難しい顔をしてシズクに尋ねた。

キョトンとした顔で返す彼女の言葉を、クロロはずっと吟味している。

 

「その昔、V5に連なるお抱えの研究所で噂になったことがある。外世界から持ち返った標本の第一級資料。そこから取り出した成果物の第一とでも言うべき貴重な薬品があると」

「まさか団長!?」

「知ってるのかシャル?」

 クロロとシャルナークは顔を見合わせ、仲間たちは邪魔をしないように黙った。

その様子を楽しそうにヒソカは眺め、どんな楽しい話になるのかと興味を示している。

 

「普通、研究素材とか成果物の番号って発見順なんだよ。でも、ソレに関しては有用過ぎて機密指定の順番が入れ替わってる」

「そうだ。指定番号1の1。世界最重要機密……その名は超人薬ワン・ゼロワン」

 V5が所有する標本とは外世界の汚染に耐えきった被験者。

その成果物とは汚染を再利用して作られた、誰もが超人に成れる薬であるという!

 

そしてボノレノフと呼ばれた黒人より、名前指定で吸い出されたことでその薬の存在が確定された。

 

「奴らの首領は世界政府に捕まってるってことか?」

「決まったな。連中が奪い返しに行くなら横からかっさらっちまおうぜ」

「推論だから本当かどうかも判らないけどね。まあ今は情報待ちかな」

 こうして幻影旅団の目的に一つの遊びが加わった。

BF団とV5の抗争に首を突っ込み、奪えるモノを奪うという事だ。

そこに同情などなく、あえていうならば自分たちに喧嘩を打ってきたBF団に逆襲してやろうというくらいだ。

 

彼らの行く末がどうなるかは分からない。

だが世界が続く以上は物語もまた進んでいく。

機会があれば『白昼の残月』そして『ドミノ作戦』について語られることもあるだろう。

 

今は幻影旅団がお宝を奪い、見事にBF団の目的を見抜いたことで大団円としよう。




 という訳で第一部完というか、クロスを思い付いた範囲を終わります。
ここまで読んでくださった方には感謝を。

このシリーズはアニメのジャイアントロボ地球が静止する日と
ハンターxハンターをクロスして、特に十傑衆を登場・戦闘させてみようという物でした。
なので基本的にはジャイアントロボのストーリーを下敷きに再現した感じ。

それなりに再現度は高めたつもりですが……。
欠点としては再現度と整合性を気にするあまり、ダイナミックな戦闘・陰謀に欠けた事が残念な結果になりました。
これならヒィッツカラルドの能力を参考にしたオリ主が無双する話の方が面白かったかもしれませんね。Gロボみたいならアニメ見た方が良いわけですし。

●今回のパロディというかネタ
 追魂奪命剣から「生き恥を晒して苦しいだろう?」に繋ぎ
アキレスの牢と十傑衆裁判、そしてサニー・ザ・マジシャンとビッグファイアの覚醒。という感じに進んでおります。
初期に名前を出したメンバーにフェイタンが居るのは、レッドと十常寺との兼役。
最期はGロボではなく、元ネタのバビル二世の続編「その名は101より。
なお「ナルトの後半みたいだなって思っちゃいました」「思うだけでやめとけ」という原作のメタ会話を入れようかと思いましたが、止めておきました。

●この世界のGR計画
第一段階:強い念獣を生み出すために材料、死後の念アイテムゲット
第二段階:外世界に通じる戦闘力と、汚染対策を確保
第三段階:能力の奪取は流行ってるけど、その逆をやって、能力者コピー

究極的には外世界に行ったり、戻ってからV5によって問題の生じたビッグファイアを、無事な状態のデータを元に覚醒させる。ということです。
外世界の汚染や政府に人体実験に対して、BF様は御心を閉ざして防御されているので、目覚めさせてあげよう。と説明を受けています。

ちなみに元ネタのバビル二世は1万3000年前に現れたエイリアン。
似た伝承のある鞍馬尊天魔王尊(サナトクラマ)は650万年前に金星からやって来た少年とか。
こんな人を蘇らせて世界が無事に済むかは判りません。


●ボノレノフ・ンドンゴ
 超人薬を打たれ、セルバンテスの『舞台演劇』で洗脳されていた可哀そうな念能力者。
彼が音楽を奏でると強力な念を発するので、ヒィッツカラルドの再現に使われたらしい。良く似ているとはいえ具現化系なのに放出系の真似をさせられたことで、これでも最大火力は落ちているのだとか。(平均アベレージは上がったが)
今回の件で団長に助けられた形になり、恩を感じて旅団に加わる設定になる。


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