双子姉妹と転移の魔法界 (凪薊)
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prologue
ここではない、別世界のお話。


魔導具使い姉妹の物語、始まります。


「それではこれで依頼は達成でよろしいでしょうか?」

シストレス王国の南西、樹海の麓の町レーナ。私、リナリア・フォンターナと妹のルナリアはギルドからの依頼で討伐任務に赴いていた。依頼内容はウルフと呼ばれる小型魔獣の一掃。何でも最近になって一気に数が増えて対処しきれなくなったらしい。

「助かったよ君たち。まさかあんなに魔獣が増えているとは思わなかった。普段なら町まで下りてくることはないんだが……」

「警戒は大事。魔獣除けの魔導具を町の周りと街道に設置したから多分もう付近に来ることはないはず」

私たちは依頼主であるローランドに依頼の報告していた。冒険者は依頼を請け負った場合、その依頼達成状況の如何を問わず依頼主に報告しなければならないという規則がある。成功した場合は討伐対象の規模や討伐の達成方法などを、失敗した場合は現在の状況等をだ。

 

私とルナリアは姉妹ではあるものの、得意不得意が綺麗に分かれていた。私は剣を用いた近接戦主体。もちろん、剣にエンチャントを行うことで属性付与を行うこともできる。対してルナリアは魔法や魔導具によるトラップといった遠距離攻撃や戦術が得意だった。そこで、ルナリアにウルフの数と位置を探査魔法であぶり出してもらい私が殲滅、そしてルナリアが魔獣除けの魔導具を設置していく手法をで依頼を遂行するすることにした。ルナリアの作る魔導具は効果と持続性が非常に高いものが多く、今回の魔導具も大気中のマナを吸収することで半永久的に効果を発揮するものだった。

 

「おぉ、嬢ちゃんの事はこっちでも聞いてるぞ。フォルトゥナの領主の娘にすげぇ技術を持った魔導具の作り手がいるってな。その作り手が作った魔導具なら安心だ。必要なら依頼料とは別に魔導具の費用もベットで払うがいくら必要だ?」

「いらない。このくらいの道具ならすぐに作れるし、材料も余ってたものを使ったから。代わりに今回のウルフの件で被害に遭った人にそのお金は使って欲しい」

実際の所、ルナリアの作る魔導具はシストレス王国でも重宝されるほどのものだった。今回の様に半永久的に作動する魔導具も無いわけではないが、作れる者は王国の魔導研究員の中でもさらに一握りという程だ。そんな作り手の作る魔導具は普通に買おうと思うとそれこそ金貨が必要になってくる物さえあるほどだった。

 

「何から何まですまねぇ。その言葉通り、保障に充てるとするよ。ところで本当に泊まっていかなくていいのか?」

「えぇ、大丈夫です。ルナが転移魔法使えますから」

「ん、平気」

「転移魔法が使える冒険者なんて珍しい。……と言いたいが、嬢ちゃんならできてもおかしくないな」

ローランドは笑いながらルナリアの肩をぽんぽんと叩いていた。

流石に数が多かったこともあって既に日は西に傾き東の空は夜の帳が下りつつあった。とはいえ、レーナから私たちの住む町フォルトゥナまでは歩けば1日、馬車を使っても半日以上の距離がある。その距離を暗闇の中進むのは魔導灯(魔力を通すと暫く光る魔導具)があるとはいえ、流石に遠慮願いたい。

 

しかし、転移魔法が使えるルナリアがいる為その問題はすぐに解決する。一度行ったことのある場所であれば任意で転移することが可能なこの魔法は冒険者をやっていく上でとても重宝する一方で習得難度の余りの高さとその特性から術者は決して多くはなかった。その特性とは、移動距離に応じて魔力の消費が桁違いに上がっていくこと。短距離の移動であれば然程影響はないものの、今回のように距離が離れると魔力の消費はとても多い。ただ、ルナリアに限ってはその点は問題なかった。彼女の持っている古代魔具(アーティファクト)の一つである『ルミナスリング』。これには着用者に絶大な魔力と、魔力消費低減効果及び発動スペルの増強効果があった。 ただでさえ、魔力の多い彼女がルミナスリングを着用する……結果、彼女の転移魔法は国家間移動すら苦も無くできる程であった。

 

「それじゃ、私たちはこれで失礼しますね。

「魔道具、何かおかしなことがあったら連絡して欲しい。……多分大丈夫だと思うけど」

「おう、ありがとうな。おかげで助かったぜ。そうだ、依頼料とは別にこれも持って行ってくれ。今回のウルフの素材なんだが、如何せんあまりにも数が多すぎてな。町のやつらに配っても余っちまうんだよ。捨てるのももったいないし持って行ってくれると助かるんだが……」

 

ローランドは町の広場に山積みになっているウルフを指さしながらそう言った。既にある程度は解体され、肉や皮は町の商店に牙や骨などは武具屋に卸されていたがそれでもまだかなりの量が残っていた。とはいえ、私達は解体が得意ではない。いつもであればアイテムボックスに入れ、解体の得意な知り合いに任せていた。

「そうですね……わかりました、お引き取りします。ですが、私たちは解体が得意ではないので一先ず丸々収納しておきますね」

私がローランドにそういうが早いか、ルナリアは早速アイテムボックスに収納を始めていた。

私たちの持つマジックボックスは一般的に普及しているようなポーチやリュックといった形を成してなかった。ルナリアの得意魔法の一つである空間魔法――その応用でこの時空間から切り離された空間に物品を収納していた。収納容量は未知数。ルナリアに聞いても「さぁ…?空間魔法の効果は術者の魔力量に影響するから私にも分からない」とのことだ。

「姉さま、終わった。……いくら時間が進まないといっても流石にこの量はあっても邪魔だから帰ってミレアに投げつけたい」

ミレアというのは、先ほど言っていた解体が得意な知り合いの事だ。幼い頃から解体作業を手伝っていた女の子で、大人顔負けの解体の作業速度を誇るフォルトゥナの解体屋の看板娘だ。

「へぇ、お前さんたちアイテムボックスも持ってるのか。なんにせよ助かった。流石に処理しきれなかったからな……」

数分後、すっかり綺麗になった広場を見ながらローランドは安堵した様子でそう言った。

……まぁ確かにあの量を広場に放っておけば、数日後には阿鼻叫喚な事になるのは火を見るよりも明らかですからね。

 

「では帰りましょうか。ローランドさんまた何かありましたらギルドまでよろしくお願いしますね。ルナー、いくよー」

「わかった。それじゃ」

私たちはローランドさんに挨拶を終えると岐路に着いた。

 

 

 

「にしても疲れたわねー。あー早く帰ってお風呂に入りたい……」

「同感。 姉さま、フォルトゥナにはいつまで滞在するの? 今回は顔見せの為に一時帰郷しただけだし」

「そうねー……とりあえず帰ってから考えましょうか……」

リナリアとルナリアは領主の娘ではあるが、当主を継ぐためには外の世界を知らないとだめというリナリアの信念のもと各地を旅していた。ルナリアはそんな姉について行った形となる。そんな中での一時帰郷、決して近い距離ではなかったが転移魔法がある以上関係はなかった。

 

「姉さま、ここまでくれば町の人を驚かせなくて済むと思う。転移魔法が使えるって知ってるのローランドだけだし」

「別に隠してるわけじゃないけどね。フォルトゥナの人は全員知ってるし」

「領主の娘だし。そりゃ知られててもおかしくない。早速だけど帰る?」

私は少しだけやり残したことがないか思案したが、何かあれば転移魔法で戻ってくればいいかと結論付けルナリアに転移魔法の使用を促した。

「わかった。それじゃ私につかまって。――転移(テレポート)!」

 

あぁ……次目を開けたら家の前か。と思いにふけってるとルナリアの慌てたような声が聞こえた。

「どうして!?座標が書き換え――だめ、間に合わ――」

「ルナ!?きゃああああ!!」

いつもとは違う感覚。まるで無理やり引っ張られるような圧力を感じながら私は意識を手放した。

 

 




ということで、原作の作成を碌にせず始まってしまいました姉妹たちの転移物語。
基本設定だけはできていたので、その設定をハリポタの世界に持っていったらなんかハチャメチャなことになるだろうなーでもそれもまたよし。って感じで進めていきます。
タグの原作改変が原作改変で済むのかは分からない。崩壊するかもしれない。
一応プロットも組みましたが、果たしてその通りに進むのか……それは作者にもわかりません。でもやりたいことがいくつかあるのでそれは絶対にします。

プロローグでは彼女たちの紹介&技能などの紹介編となります。本編開始はもう少し後。


姉妹たちの紹介+オリジナル要素紹介
【リナリア・フォンターナ】
原作主人公その1。フォンターナ家の長女である彼女は体を動かすことが好き当主についての勉学の傍ら領内を常にフィールドワークしています。
妹のルナリアを溺愛しているシスコン。妹の為なら何でもする。果たしてこの子は妹のストッパー成りえるのか……や、むしろ煽りそうですね。
武器は剣。魔力量が多くないためあまり魔法は使えないが、とある事情でその制限はないに等しい。風属性を足にまとわせ高速戦闘が得意。

本作の常識枠……に、なる予定。

【ルナリア・フォンターナ】
原作主人公その2。リナリアの妹。魔法技術に長けており、魔導具の作成、錬成術、錬金術、魔法……何でもござれの超優等生。ただし接近戦はからっきしダメ。歩いて移動することすら面倒くさいと思っている節があるため移動は常にふわふわと浮いて移動している。
超絶お姉ちゃん至上主義で姉に忠実。姉からの攻撃要請であれば例え味方であろうと攻撃します。姉を害なすものが居れば容赦なく攻撃します。容赦なくです。先生だろうが友達だろうが関係なくです。

多分作中でヴォル様よりも(ある意味)危険な存在。扱い間違ったら消し飛びます。文字通りです。

【ルミナスリング】
古代魔具(アーティファクト)の一つ。着用者に絶大な魔力と魔力消費低減効果及び発動スペルの増強効果を与えます。ぶっちゃけこれがなくてもルナリアは余裕で長距離転移できますが、貰い物なのでとりあえずつけてます。本人曰く「魔導炸薬にどんなに魔力込めても疲れないから楽」とのことです。
……爆発させたら大変なことになりそうですね、その炸薬。

【アイテムボックス】
ルナリアの空間魔法の応用による賜物。(ほぼ)容量無制限の大きさ問わず何でも入る収納空間。『検知不可能拡大呪文』と似たようなものなので説明不要ですね。(内部空間の時間が進まなかったりいろいろ違うけど)


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元の世界ではない別の世界へ

姉妹、見知らぬ世界へ

早速のお気入り等ありがとうございます。
そういえばクロスオーバータグ付けてるけど、クロス元は全く書き上げてないからこれクロスオーバーじゃなくね??とか思っているのですが、どうなんですかね。



「…ここは?」

気が付くと、私の目の前には見知らぬ世界が目の前に広がっていた。え、ちょっと待ってください。ここは本当にどこなんですか?

私の知っている世界には少なくともこんな黒い棒は乱立していないし、よく分からない箱状のものが音を立ててものすごい速度で駆け抜けていったりなんてしない。ましてや、服装に至っては見たこともない恰好をした人が行き交っていた。それにこの高い建物は何ですか?ギルドの建物ですら2階建ての木造だ。この――なんでしょう?鉱石を重ねた建物は。

幸いにも、目が覚めた場所はベンチの上だった。よかった。地べたに寝転がるのはどうしようもない時の野宿だけでいい。せめてテントの中で寝たい。

 

「…姉さま起きた。ごめんなさい、ルナのせいでこんなことに」

声のする方に視線を向けると、妹のルナリアが俯きながら私に謝罪していた。 これがルナリアのせい?どういうことなのだろうかと思っていると、ルナリアがポツポツと話し始めた。

「ローランドさんの所で依頼を受けに行ったでしょ? で、その依頼が終わった後転移魔法でギルドに戻ろうとしたんだけど……転移瞬間に座標が揺らいで……それで……」

 

確かに、私達姉妹は討伐依頼を受けに樹海の麓の町レーナのローランドさんの所へ行っていた。依頼自体は簡単なものではあったけど、如何せん数をやらなければならず、結果思った以上に時間がかかったため、帰りはルナリアの転移魔法で過労としたのだ。でも魔法のプロとも言えるルナリアが失敗?

「ルナ、原因はわかるの?」

術者であれば、外因的であれ、内因的であれわかるはずだ。敵の攻撃、自身の魔力枯渇――は、ルナはあり得ないか。とてつもない魔力持ってるし。

しかし、ルナリアの答えは否定だった。首を横に振ったのだ。

「わからない。突然座標が揺らいだから。外からの攻撃でもこんなことはあり得ない。それに家の場所は転移描(テレポートアンカー)も設置してある。普通なら座標の攪乱なんて起きるはずがない。」

「そもそも転移魔法自体使える人少ないもんねぇ…」

 

ルナリアは普段からさも当たり前のように転移魔法を使っているが、この魔法はかなりの量の魔力を消費する。そのせいか元いた世界でも術者は決して多いとは言えなかった。とは言え、ルナリアはルミナスリングの効果もあり魔力がとてつもなく多いためその点は問題ない。

加えて、転移描(テレポートアンカー)が設置してある。これは座標を固定するための魔導具で、転移(テレポート)は一度行った所であれば何処へでも瞬時に移動できる魔法ではあったが、明確にイメージしないと異なった場所(座標ずれともいう)に転移してしまうこともあった。それを補うために転移描(テレポートアンカー)をルナリアは作成し頻繁に行く場所には打ち込んでいた。そしてこの描は座標の書き換えが基本的にできない。その点から、今回の転移の失敗原因が余計にわからないものになっていた。

 

「ま、変なところに飛ばされてしまったのは仕方ないね。とりあえず帰還方法を探らないといけないけど……ルナ」

「なに?」

「……この世界で私たちの魔法って使えるのかしら?」

「……ここで試してみる?」

 

見知らぬ世界である以上、私達の常識が通用するとは思えない。かと言って人の往来が激しいこの場所で使えるかも分からない魔法を行使するのも憚られる。ましてや私は魔法が"基本的には"使えない。

 

「とりあえず…人が少ない場所に移動しましょうか。ここで使って騒ぎになっても困るし。とりあえずそこの路地へ入りましょう」

「ん、姉さまに従う」

ギルドよりも高い建物と建物の間に走ってる細い路地を指さしながら私はルナリアに次の指針を示した。私に全幅の信頼――もはや崇拝かもしれないが――を寄せているルナリアは特に意見することもなく承諾した。

 

あれからどれほど歩いただろうか?いや、そんなに歩いてないかもしれない。入り組んだ路地を奥へ奥へと進んでいくと少し開けた場所に出た。相変わらず周りは高い建物に囲まれていたが、どの建物にも窓はついておらずここであれば人に見られる心配はなさそうだった。奥に進む間にに数人とすれ違ったが、誰もが怪訝な目を向けていた。そりゃそうだ。私達の世界での服装のままこの世界に来たのだから浮いているに決まってる。接近戦を主とする私は軽鎧を付けた動いやすい恰好で魔導鋼を素材としていた。ルナリア作成のこの素材は軽さと同時に魔力を付与することで硬度が変わるという面白い特性を持っており込められた魔力量によってはミスリルさえも弾くほどだった。。対してルナリアは黒のゴシックドレス調の装いをしていた。何でも彼女の趣味らしい。布には対物理属性を付与していることもあって、接近戦が大の苦手な彼女にとって重要な装備の一つであった。

「ここまでくれば大丈夫かな。 姉さま」

「そうね。早速やってみましょうか。私の場合剣が必要だけど、どうなるか分からない以上取り出すのが怖いわね」

後ろを振り返ってみると最早入り口は見えない程奥へと来ていたようだ。

「それじゃ早速始めましょうか。とりあえず……魔法が使えるかの確認をしましょう。ルナ、あそこまで転移できるかしら?」

 

そう言って私が指さしたのは開けた場所の隅に逆さまに転がっていたバケツだ。もし仮にこの世界でも魔法が使えるのであれば私たちの行動制限は大きく緩和される。転移魔法が使えるのなら一度赴く必要があるとはいえ非常に楽になるし言語翻訳の魔法が使えればこの世界の事を知ることもできる。既知が少しでもあるか、それとも全てが未知か。その違いは今の私たちにはあまりにも大きかった。 

そこで、ルナリアに転移魔法を使ってもらおうと考えた。アイテムボックスから物を取り出すでも別に良かったかもしれない。取り出せるということはここの世界でも私たちの世界の空間魔法使えるからだ。しかし、何が起こるか分からない……例えば、取り出すと同時に中身が全部漏れ出す可能性もあるのだ。そうなっては、レーナで貰った大量のウルフがこの場所に散乱することになる。何としてもそれは避けたい。単に片付けが面倒だから。では、攻撃魔法使うのはどうだろうかとも考えたが、これも出力がどうなるか分からない。下手すればこの場所が吹き飛ぶ可能性だってあるのだ。転移魔法であれば発動しないのであれば何も起きないし、発動したとしても移動するだけだ。

 

「わかった。それじゃ……転移(テレポート)!」

 

一瞬ルナリアの回りが眩い光に包まれたかと思うと、次の瞬間にはバケツの上に立っていた。……何もバケツの上に立たなくても。

「ん……っとっとと。問題なく使えるみたい。」

バランスを崩しながらもなんとか耐えたルナリナがバケツから降りながら私に向かってグッと指を突き出した。それに頷くことで返事を返す。

「よかった、一先ず魔法は使えるみたいね。ということはアイテムボックスも使えそうね。――来て、ルナ・エクリプス!」

私の呼び声に呼応するかのように手元の空間が割れそこから一振りの剣が現れた。

――魔導剣「ルナ・エクリプス」

魔導士としての傍ら、錬成術も行っていたルナリア作成の魔導剣で、銀色に光るその刀身は見るものを魅了するほどの美しさを放っていた。

ルナリアとリナリアの魔力に呼応して様々な恩恵を与えるが、それはまた後程紹介しましょう。ちなみに、剣銘自体は「エクリプス」なのだが、製作者であるルナリアは制作物に自分が作ったとわかるようにルナと銘を入れているためこのような銘になっている。

「……うん、問題なく取り出せるね。これならアイテムボックスに入れてあるもの何でも取り出せそうね」

「そうっぽい。とりあえず…翻訳(トランスレーション)!」

早速とばかりにルナリアが翻訳魔法を使う。私たちの元いた世界では種族によって使用言語が様々だ。そのためこの翻訳魔法が使えるか否か重要で少なくとも冒険者をやっていく上でパーティに1人は使い手が欲しい魔法だった。

「姉さま、とりあえず人がいるところまで戻る?」

「そうね……あ、ちょっと待って。ルミナスはこっちに来てるの?」

「そういえば。ルミナス、聞こえる?いるなら私の前に出てきて欲しいんだけど」

 

ルナリアが問いかけると、ルミナスリングが一瞬輝いたかと思うと、二人の目の前に女性の姿を模った人物が宙に現れた。

 

「やーっと見つけましたよ、ルナリア様。突然こちらの世界から反応が消えたかと思ったら今度はこのよく分からないところに居るなんて。いったい何があったのですか?」

「ルナにも分かんないけど。なんか転移魔法失敗したっぽい?」

「なるほど。それで突然反応が消えたんですね。幸い私の作ったルミナスリングは契約の依代ですし、そのおかげで場所の特定も簡単でした。直ぐにでも行きたかったのですが如何せん世界が違うとなれば、契約者の呼びかけがなければ動けないというよく分からない精霊界の決まりがありますからね。それにしてもよかったです。ルナリア様とリナリア様に何かあったら精霊界の長として示しがつきませんから」

そう一気に捲くし立てる彼女は魔力と知識を司る月精霊のルミナス。旅の途中で欠けたルミナスリングを入手した際、ルナリアの魔力に呼応するように現れた精霊だ。

曰く、彼女は精霊界の長であると。

曰く、そのリングは彼女が作成したもので、長い年月を経て破損した古代魔具(アーティファクト)であると。

曰く、そのリングを直してくれたら感謝の印として契約したいと。

古代魔具(アーティファクト)なんて直せるのかと私は思ったが、そこは流石ルナリア。数日で見事に直して見せた。なんでも魔力を個体化させたリングだから逆に魔力を流し込むだけで終わったらしい。……尤も、その流し込んだ魔力が膨大な量であることは容易に想像つくが。

そんなこともあり、今では私たちの冒険の良き仲間である彼女。彼女司る魔力と知識――魔力はルミナスリングによるものだが、知識については契約者に望む知識を授けるものだった。

魔導具、錬成術、錬金術……知識を昇華させることが大好きなルナリアはこれに大喜びし、より一層高度な技術を身に着けるのだが、それはまた別のお話。

 

さて、無事ルミナスの召喚も確認した一行は開けた場所を後にし、目覚めたときにいた通りまで戻っていた。

翻訳魔法を使った今、この世界の文字も容易に読める……意味までは分からないが。

「えーっと……ぐれーとぶりてん……連合?どこよそれ」

「こっちには……おいしいしょくぱんやさん?……触手モンスターでも販売してるのかな。姉さま、このお店破壊した方がいい?」

その意味が分からない結果がこれだ。"ぐれーとぶりてん"なんて場所は知らないし"しょくぱん"なんてものも知らない。そしてルナリアが私にとんでもない事聞いていた。ここで私が「いいよ」といえば目の前のお店は跡形もなく消えてなくなるだろう。

こういう時にはルミナスに聞くに限る。

「えーっと……なるほど、ここはイギリスという国みたいですね。食パンは食べ物です。ですから、魔力を込めないでくださいねルナリア様」

「へぇ、この世界にも国があるのね」

イギリスの連合国といったところだろうか。私たちの世界にもいくつかの国の集合体として一つの国となしている場所がいくつかあるからそれと同じなのだろう。

そして改めて思う。本当に知らない世界に来たのだなと。しかしここで落ち込むのは違うのではないかと私は思った。

せっかく、知らない世界に来たのだ。もちろん帰る手段を探して早く帰りたいという思いもある。だが、それ以上に知らないことをより多く知りたいとそう思うのもまた事実であった。帰るまでにどれだけ時間がかかるか分からない以上、前向きに過ごすことにした。

 

「魔物を売ってないのなら興味はないかな」

「……魔物欲しかったんですか?」

「研究用に少しだけ?」

「マジックボックスに何体かいませんでしたっけ?」

「あれもう使っちゃったから無いよ?今残ってるのは鉱石系の素材だけ。あ、でもこの世界に知らない生物いるだろうし、それ捕まえて研究すればいいかな」

「……あまり派手なことはしないでくださいね?」

――何とも物騒なやりとりだこと。

 

一先ずこの世界の事は多少分かった。次は町の人にここの場所の事を聞こう。旅をしていると初めて赴く場所もたくさんある。その場合、まず住人に聞くのがその場所を知るうえで何よりも最適な手段だと私は思う。

ルナリアとルミナスに行くよと声をかけ早速私たちは町の人に声をかけることにした。

――ちょうどいいですね、あの人にしましょうか。

私は黒いローブを羽織った女性に近づき声をかけた。

「すみません、少々よろしいでしょうか?」

「あら、どうかされましたか?もしかしてあなた方マグルの方も聞き及んでいるの?遂に『例のあの人』が打ち滅ぼされたとを!これほどめでたい日が今までにありましたか?ないですよね!やっと平穏が戻ってきました。ハリーポッター万歳!生き残った男の子に栄光あれ!」

「そんなのどうでもいい。ここの場所について教えて」

ローブを羽織った女性のマシンガントークに耐え切れず、ルナリアは冷たい口調で女性に言い放った。……何も起きないといいのだけど。

「あれ?もしかしてご存じでない?これは失敬」

そう言って女性はそそくさと立ち去っていく。恰好から想像つかない程俊敏な動きであっという間に姿を消した女性に呆然としながら私たちは眺めることしかできなかった。

 

「なに、さっきの人。姉さまが聞いてるのに無視した挙句、打ち切って消えるなんて。探知魔法であぶり出して捕まえる?」

「まぁまぁ、ルナ落ち着いて。そこまでしなくていいから」

実際、「この場所はどこですか?」と聞いたところで、「ここはイギリスですよ。旅行ですか?楽しんでくださいね」といった返事しか望めないだろう。

ともなれば、この場所について調べるよりも先に拠点を確保する方が正解だろうか。

「ねぇルナ。この世界の事については追々調べるとして、先に拠点を確保した方がいいと思うけどどうかしら?」

「姉さまがそうしたいなら、ルナは従うよ。アイテムボックスにテントしまってあるからどこでも大丈夫。幸い食……そういえば解体してなかった、あのウルフ」

そういえば……ありましたねウルフの山。アイテムボックス内は時間の経過が無い為腐敗はしないものの、いずれ如何にかしないといけないけど……いっそ私が刻んでルナに焼いてもらおうか……。

まあ、それはいつでもできるので先に拠点となる場所を探さなければならない。現在いる場所は人の往来の激しい街の中。さすがにここに拠点を設けるのは考え物だった。郊外……できれば人里離れた山の中が望ましかった。山の中であれば、多少派手な事を周りに気が付かれることはないだろう。

「そもそもルナが空間隔絶すれば周りにも気づかれないけど」

そういえばそんな魔法もありましたね……。

とはいえ、やはり離れた山の中を目指した方が今後の為にも良いだろう。空間隔絶も最小限で済むし、何より周りに気を使わなくて済む。

 

結局、私たちは町を離れ山を目指すことにた。理由は先にも述べた通りだ。

電車という乗り物を使い(魔力とは違う力を使って動いているらしい)北へ向かった(この世界のお金は質屋に偶々アイテムボックスに入っていた金を売却することで確保した)。

「ここまでくると建物も減ってきたわねー。なんだか元の世界に戻ってきた気分」

「同意。えーっとここは……まだイギリスのイングランドってところっぽい」

「え、まだイングランドなの?どれだけ広いのよこの国……」

あれからどれほどの電車を乗り継いだのだろうか。気づけば、初めにいた場所(ロンドンという場所の様だ。駅で知った)から随分北上していた。車窓から外を見れば、長閑な田園風景と先には山脈がそびえている。うん、このあたりならよさそうだ。

「ルナ、そろそろ降りるよ。ここからは歩いていい感じの場所を探すことにしましょう」

「わかった。……でも歩くのは面倒だから浮いていくね」

「……まぁ、気づかれなきゃいいでしょ」

私たちは電車を降り、山脈の方へ向かうことにした。付近にいる人に聞いたところ、あの山脈はペナイン山脈というらしい。麓の町までここから距離にして数百kmらしい。……遠すぎる。

「姉さま、もう面倒くさいから認識阻害かけて飛んでいこう?」

「そうしましょうか……。でもここは人が多いから建物の陰に行きましょう」

――諦めました。遠すぎますから。いくら風属性魔法を付与しても流石の私も面倒です。おとなしくルナリアの意見に従うことにします。

 

駅の裏手に入り私はルナリアに認識阻害の魔法をかけてもらう。この魔法は非常に便利なもので、自分たちの存在が文字通り認識されなくなる。例え真正面にいても気づかれないため潜入時は非常に役に立つ魔法だった。

「一応ここにも描を打ち込んでおこう。姉さま、準備はいい?」

「いいわよ。というかルミナスはいつの間にリングの中に戻ったの?」

「(電車の中でですよ。新しいこともないので飽きました)」

そ、そうですか。いやまぁわかりますけどね?途中から車窓の様子変わらなくなったし。

「(そういえばお二人ともソウルリンクはこちらの世界でも維持されているようですよ?リナリア様は気にせず魔法が使えるかと)」

「え、そうなの? 浮遊(フロウ)

私が詠唱すると、ふわりと自分の体が浮きあがった。風属性魔法の汎用魔法である浮遊(フロウ)は自分にも相手(人、物問わず)にも付与できる魔法だ。対象を軽くし浮かせることができる。効果はそれだけだがそこから更に風魔法を噴射することで高速移動することもできるため移動には最適だった。

――もっと早く知っていれば、電車なんてものを使わずに移動できたのに、とも思わなくはないがここはぐっと堪える。

 

ところで、私とルナリアにかかっている契約魔法である『ソウルリンク』は魂魄魔法と呼ばれるものだ。自身の根源たる魂を依代とした契約であるそれは契約主と契約者がお互いの力を分け与える(というよりは共有するといった方がいいだろうか)ものだった。お互いの弱いところを打ち消しあうのに最適なこの魔法は一見便利そうに見えるが、代償はあまりにも大きい。

その代償とは『契約者間のどちらか一方が死亡した場合、そのもう一方も死亡する』ものだった。そして私とルナリアの契約内容は魔力の共有化。私には魔法適正はあまりなく、魔力量も微量であったがこの契約によって圧倒的なルナリアの魔力を使うことができた。先ほどの浮遊魔法が使えたのもそのおかげだ。

 

私の魔法の発動を確認するとルナリアも浮遊魔法を付与し、私たちは大空に飛び立った。

出来れば湖畔で静かな場所があればいいのだけど。

 




気が付いたら7000文字超えてました。
どうしても、他世界から来ている為説明的になってしまっているのをどうにかして直したいところではあるけど、まいっか。
プロローグはあと1話だけ続きます。それが終われば本編開始です。

ところで、この姉妹は平気で魔法を使ってるけど魔法省に感知されないのですか?って質問がきそうなので予めお答えしておきます。
彼女たちが使う魔法はこの世界の魔法とは術式が違うと思ってください。よって魔法省にも感知されません。つまりやりたい放題です。(今の所)特に被害が出るような魔法使ってないからセーフですよね?

ちなみに、イギリスのペナイン山脈は綺麗な場所です。谷間にある湖とか見に行ってみたいですね。

・今回のTips
【魔導剣『ルナ・エクリプス』】
剣銘はちょっと中二なのが好き。ってことでこんな名前になりました。ルナリア作成の魔導剣です。純粋に切れ味がやばいです。大体何でも切れます。こんにゃくも切れます。魔力付与すると付与されている属性を増強する効果あり。
風属性を付与すればエアスラッシュもできます。きっと相手を怯ませる効果があるはず。

【月精霊 ルミナス】
ルナリアがさらにぶっ壊れスペックになった全ての元凶。ただでさえ魔力が多い子にさらに魔力増強しちゃダメでしょ。ただでさえ、魔導、錬金、錬成といろんな技術修めてる子にさらに知識与えちゃダメでしょ。
基本丁寧口調です。顕現するときは契約者から魔力を吸収します。でもルナリアには関係ありません。大体ルミナスリングのせい。

転移描(テレポーションアンカー)】と【転移(テレポート)
座標固定の描です。関連魔法があるけど、それはまた登場したときに。
転移は基本何処へでも行けます。魔法界とマグル界は表裏一体の平行世界だからいけるのはおかしいって?空間断絶できるルナリアにそれを言うんですか……?

翻訳(トランスレーション)
単純に他言語がわかるようになります。リアルに欲しい魔法ですね。旅行し放題になります。

【ソウルリンク】
魂魄魔法です。魂魄同士を共鳴させて能力などを共有します。でもどちらかが死んだらどっちも死にます。強力な能力には大きな代償は必然ですよね。
なお、二人は契約の際即答した模様。流石シスコン。流石お姉ちゃん至上主義。

浮遊(フロウ)
浮遊呪文なんてなかった。浮遊呪文より便利な魔法です。浮かせます。浮かせた後は好き放題できます。ぶっ飛ばしたり、吹き飛ばしたり。

【認識阻害魔法】
付与されたものは周りから認識されなくなります。シンプルですが非常に便利。闇討ちとかに使えそうですね。


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私たちのこれから

トレローニ先生の予言時の口調が全くわからん!!

お気に入りやしおりありがとうございます!


あれから暫く、ペナイン山脈の上空にて私たち湖畔の静かな場所を探して飛んでいた。

浮遊(フロウ)を使い風魔法を使用した高速移動は、当たり前だが電車よりも早かった。何より直線的に移動できる上に自分たちの目で場所を選定しながら移動できる。……やはりロンドンの時点でソウルリンクの事をルミナスに聞いておくべきだったと今更ながらに後悔した。

「できれば谷間で湖があるといいんだけど……」

「その場所ならさっきあったよ?」

え?全く気が付かなかった。

私はルナリアに案内されその場所に降り立った。見渡してみるとなるほど、確かに。なだらかな谷間には渓流が湖に流れ込み美しい湖畔を形成していた。

ただ、湖畔を離れると固い層があるせいなのか土壌はそんなに良くないようだ。最も、私たちには農作スキルは無い為その点は全く問題なかった。

冒険者である以上、農作スキルは習得している時間がない――といえば、「まあ、確かにな」となるかもしれないが、実際の所は私たちにはアイテムボックスがある。要は買い貯めできるのだ。それにいざとなれば転移で一度町に戻り補給することもできる。そのせいでますます農業スキル必要性が皆無だった。

 

さて、理想の場所を見つけた私たちは、もう一度浮遊(フロウ)を使い飛び上がると辺りを確認することにした。周りの民家の有無、生き物の存在、立地の確認……他にもいろいろ確認することはあったが、とりあえず拠点の確保を優先する為に最低限の確認をすることにした。とは言え、民家の確認はしなくてもよかったのかもしれない。どちらにせよ、認識阻害を拠点周辺にかけるのだから。

加えてルナリアの事である。過剰なまでの防御、妨害その他致命傷にならない程度のトラップをばら撒くことだろう。今までがそうだったのだから。

 

「姉さま、このあたりに建物何もない。生き物の気配はするけど人間じゃないみたい」

「ありがと、ルナ。それならこの辺りを拠点にしてこの世界の事を調べていきましょうか。ロンドンでローブを着た人が言ってた『例のあの人』とか『ハリーポッター』ってのも気になるしね」

「それに『マグル』って言葉もあった。あの人も人間みたいだけど、もしかして姿形は一緒でも種族が違うかも?ルナたちの世界の魔族みたいな」

 

魔族とは、私たちのような人間と姿は一緒でも先天的に魔法技術に長けている一族の事だ。

私たち人間と違い(ルナリアというイレギュラーを除けばだが)膨大な魔力を持ち魔科学と呼ばれる技術が発達してる種族だ。

 

「それも含めて調べましょう。幸い私たちにはルミナスもいることだし」

「期待されても困りますけどね? 流石の私もこの世界の知識は初めて触れるものばかりですから」

私の言葉に反応したのか、いつの間にか顕現していたルミナスは謙虚にそう答える。同時に、知識を司るルミナスにも知らないことがあるのかと私は思った。

「リナリア様、私にだって知らないことはあるのですよ?確かに知識を司る精霊ではありますがこのように知らない世界に来て早々では流石にどうしようもないです」

どうやら表情に出ていたらしい。私は苦笑いしながらルミナスに謝る。

 

「でもルミナス」

「何でしょうか?ルナリア様」

「結局、この世界の全知を得るのも時間の問題でしょ?」

「あと1日くらいですね。魔力と知識を司る精霊たる私です。この世界には精霊も存在しますし精霊信仰もあることは来てすぐにわかりました。ともなれば、彼らに知識の蒐集の協力を頼みましたからそんなに時間はかかりませんよ。何やら興味深いことも知ることができましたし」

 

ルナリアの疑問に当り前のように答えるルミナス。精霊ネットワークと称すべきか……流石精霊の長である。

精霊長たるルミナスだけど、世界違っても影響あるようだ。精霊は私たちより高次元存在であるため世界をまたいでもあまり関係ないかもしれない。

 

「でもこの世界にいる精霊たちに分かるものなの?人間――マグルってのが人間かはともかく――と精霊って全く違う種族だよね?」

私の疑問にルミナスは穏やかな笑みを浮かべながら答える。

「ふふ、ご安心ください。精霊というものは常にどこかしらにいるものです。故に、人間の営み、技術、発展、衰退、歴史、表と裏の世界、そのすべてを彼らは見てきました。そしてこれからも見ていきます。もっと言えば精霊というのは基本的に個ではなく集合体です。よって、精霊が存在してからこれまでの、そしてこれからの知識は全て蓄積されていくのですよ。というわけですので、はっきり言ってしまえば精霊から聞いた方が手っ取り早いのです」

 

なるほど、よく分からないけどすごいことは分かった。

 

「ルナ達が書物やギルドカードに結果や記録を残すように、精霊たちは知識を共有して消滅するまで永遠に保持するってことだよ、姉さま」

「……わかったような気はする」

ごめんよルナ、お姉ちゃんにはちょっと難しすぎる……。

 

「じゃ、ルミナス。そのあたりは任せた」

「お任せください、ルナリア様。何より私が知らないことが増えるのが一番楽しいですからむしろ任せてください」

そう言い残し、ルミナスは姿を消した。早速この世界の精霊たちと知識の共有・交換をするようだ。

 

「それじゃ私たちは拠点を作ってしまいましょうか」

「姉さま、テントお願い。私は周りに認識阻害とトラップ撒いてくる」

「あー……ほどほどにね?」

「何かがあってからじゃ遅いから徹底的にすべき。それにルナたちはどうせ転移魔法で移動するから関係ない」

「……それもそうね。それじゃ思いっきりやっちゃいなさい」

「まかせて」

 

ルナリアはそう言い残し飛び去った。早速作業を始めるようだ。ここに侵入してくる人たちの生存を願うばかりである。

 

「さてと……」

私はアイテムボックスからテントを取り出す……取り出すといって良いのだろうか。最早その場に召喚というべきかもしれない。設置状態をイメージしながらテントを呼び出すとポンッという音共と共にテントが出現する。相変わらず便利なものだ。手で引っ張り出し、組み立てそして固定……これらの作業をしなくていいのだから。ちなみにしまう時はテントに手を当て収納をイメージすればいい。

 

見た目2人用の小さいテントではあるが、中に入ると広い空間が広がっていた。

入ってすぐには広々としたリビングがあり、そこから4つの扉と階段が続いており、それぞれキッチン、浴室等の水回り、貯蔵庫、ルナリアの工房、そして階段を上がると部屋が3部屋(うち1室は私とルナリアの部屋だ)につながっていた。アイテムボックスがあるのに貯蔵庫がいるのかという疑問は尤もだが、幾らなんでも入るとは言え、拠点として使う以上頻繁に使うものや食料は一度貯蔵庫に出してしまった方が楽なのだ。

 

テントの設置を終え、リビングで愛用の魔導剣を弄っているとルナリアが帰ってきた。

「ただいま。設置終わった。たぶん誰も入ってこられない」

「おかえり。……一応聞くけど、何を仕掛けたの?」

「まず家の周囲1kmに認識阻害を掛けた。これで一般の人はまず入ってこれない」

「うんうん、それぐらいなら普通だね」

「でもそれだけじゃ心もとないから、私たち以外の魔力を感知したら自動で発動する魔力吸収と減衰のトラップを仕掛けた。認識阻害掻い潜れる人って私たちの世界だと魔族くらいだったでしょ?だったらこっちでも同じようにしておけばいいかなって。ちなみに効果はいつもの十倍。発動したら最後、魔法は使えない」

「うん……うん?そこまでする必要はないと思うけど」

「ついでに暇つぶしにつくった魔導炸薬にありったけの魔力を注ぎ込んで埋めておいた。多分発動したら死ぬ。それでも来るなら面倒だけど警報音が鳴るようにした。とてもめんどくさいけど直接空間的に切り離そうかなって」

「……ちょっと過剰じゃない?」

「姉さまを守るためにはこのくらい当然」

「そ、そっか」

 

明らかに過剰と言える防御魔法にトラップを仕掛けたルナリアが褒めて?とばかりに私にくっついてくる。

私の為を思ってやってくれたんだもんね。私はありがとうの気持ちを込めて頭を撫でてやった。ルナリアはくすぐったそうにしながらも私にされるがままに身を任せてた。

 

 

翌日。

私たちは部屋でルミナスの帰りを待っていた。

昨日はトラップを仕掛け終わってから二人でこの世界の事について話し合っていた。

マグル、例のあの人、ハリーポッター……この3つはまず最優先でルミナスに確認することとなった。この世界の人が言ってたことだ、何か重要な意味があるのだろう。

次に確認すべきはこの世界のこと。転移魔法のトラブルでこの世界に来た以上、魔術やそれに類する技術があれば帰還の一口となるだろう。とは言え、この世界に来てここに来るまで魔法的なものといえば、電気と呼ばれる未知のエネルギーぐらいでこのほかにもあるのかは分からない。

最後に私たちのこれから。下手をすればこの世界に何十年いることになってしまうかもしれない。そうなれば、仮に元の世界に戻ったとしても私たちは依頼中の死亡という形で処理された後だろう。そうなってしまっては戻る意味もなくなってしまう。……そうなったときはいっそこの世界で暮らそうか?元の世界に戻る手段がわかったのなら、こちらに戻ることもできるだろうし。

 

「ただいま戻りました」

「ルミナス、丁度いいところに来た」

「おかえりなさい、ルミナス。早速で悪いのだけど説明してもらおうかしら。この世界の事とか色々」

「お二人ともお待ちください。結構長くなりそうなのでお話はリビングで行いましょう」

ルミナスはそう言い残し姿を消した。私たちもそれに倣って下に降りると既にルミナスは机の横で待っていた。

話が長くなるのならと私は一度キッチンへ行き飲み物を持ってこようとするがルナリアに止められる。

何なのだろう?とルナリアを見ると彼女はアイテムボックスから一つの金の盃を取り出した。

「姉さま、せっかくこれがあるのだから準備しなくてもいい。コップもあるし」

「すっかり忘れてたけど、そんな便利アイテムありましたね……」

ルナリアが取り出した金の盃――想起の盃も古代遺物(アーティファクト)の1つだ。組成識っている液体、一度飲んだことのある液体、作り方を解っている液体であれば魔力と引き換えに何でも生み出すことができる便利アイテムだ。古代遺物(アーティファクト)は精霊たちが関わっている物が殆どではあるが、これを作った精霊、もしくは人はどんだけ自堕落だったのだろうか。この古代遺物(アーティファクト)……恐らく飲み物を手に入れるために作ったと思う。尤も、私たちもその恩恵に肖っているのだからあまりも大きな声では言えないのだけど。

 

ルナリアは盃からとぽとぽとコップに淡い緑色の液体を注いだ。

あぁ、緑茶ですね。東方の地域の国産でしたっけ。ほのかな渋みと緑茶特有の甘さがあり非常においしい飲み物だ。

 

「さて……何から話したものでしょうか……。お二方、先んじて聞きたいことはございますか?」

私たちが席に座ると徐にルミナスは口を開いた。

「とりあえず、マグル、例のあの人、ハリーポッターこの三つについて教えて。それ以外にも聞きたいことあるけど、この世界の人が言ってたことをまず知りたい」

「承知いたしました、ルナリア様。前もって言っておきますと、その三つは全て共通点がございます。それは何れも魔法使いに係わること事だということです。先ず『マグル』という単語ですが、これはこの世界の魔法使いが魔法使いでない人間を指す言葉の様です。対してマグルと呼ばれる方々は魔法使いに対しての名称は持っていないようですね。どうやら、魔法使い……魔法族と言いましょうか。魔法族はマグルに対して存在を隠しているようですね」

「つまりこの世界には魔法族とマグル族がいるってことなの?」

「その通りでございます。話を続けますね。次に『例のあの人』と『ハリーポッター』と呼ばれる人についてですが……どうやら、例のあの人とはヴォルデモートと呼ばれる魔法族における犯罪者のようですね。そのヴォルデモートが殺害しようと襲ったのがハリーポッターと呼ばれる人らしいです。ですが、僅か1歳のハリーポッターに返り討ちに遭いヴォルデモートは失踪したようですね。ですから、『生き残った男の万歳!』というように崇められてるようですよ」

 

要約すると、この世界には魔法族とマグル族がいるということ。ヴォルデモートと呼ばれる魔法族の犯罪者が同じく魔法族のハリーポッターを殺そうとしたところ失敗、そして失踪したと。つまりこういう事の様だ。

 

「つまりこの世界には魔法があるってこと?」

「その通りでございます」

「転移魔法やその類は?」

「姿現しと姿くらまし、そして煙突飛行ネットワークと呼ばれるものがあるようですが……どれもルナリア様の転移魔法と比べてしまうと程度が低いものですね。ですが、習得難度は転移魔法よりかは優しいようです」

「なるほど。ほかには?」

「申し訳ありません……転移魔法に関するものは先ほど述べたものしかないようです」

「そっか」

 

転移魔法の類は当てにならないと分かるとルナリアはぶつぶつとつぶやきながら思考の海に潜っていった。こうなってはしばらくは戻ってこないだろう。

 

「ルミナス、他にも聞きたいことあるんだけどいいかな?」

「構いませんよリナリア様」

「えっとね。この転移魔法はさっき言ってたのしかないって言ってたけど私たちの世界で言うところの儀式魔法的なものは無いの?」

儀式魔法。大がかりな術式を発動させるために魔法陣を直接描き発動させる魔法の一種だ。規模や効果はずば抜けて高いものの利便性は極端に劣るため、主に王城の守護として用いられている。

 

「そうですね……私たちの世界のような儀式魔法はないみたいですが、一応破れぬ誓いといった仲介人を立てて行う契約魔法があるようですよ?約束を破ったら破った人が死ぬとのことです。ほかにもいくつかあるようですが、転移やその類のものはないみたいですね」

 

儀式魔法もないと来た。これではいよいよもって帰る術がないのでは?

 

「そもそも、この世界の魔法族は自力では空も飛べない様です。その点を考慮すると、そもそも転移魔法自体が習得は容易とは言え珍しいものなのかもしれませんね」

 

「つまり私たちで帰還の方法を探さないとダメってこと」

「あ、おかえり。ルナ」

いつの間にか思考の海から戻ってきていたルナリアがぽつりと声を漏らす。

「そういう事になりますね……。一先ずこの世界の知識をお教えます。マグル族の知識には魔法に関することはほとんど含まれてませんでしたのでとりあえず省きましょう。魔法族に関する知識及び、彼らが使っている魔法を一通り。あと薬剤もありましたからそれも教えておきますね」

 

それからというもの、ルミナスの知識の教授が始まった。

魔法族について、彼らが使う魔法・薬・契約……それ以外にも地域に学校と様々である。

私はというと魔法族の歴史や有名家系を聞いたところで既にお腹いっぱいであった。元より私は魔法は補助程度にしか使わない。そんな私が純粋な魔法に薬の事を聞いたところでさっぱりなのは考えるまでもない。

対してルナリアは歴史や家名なんかどうでもいいから魔法と薬そして契約について早く教えてとルミナスを急かしていた。魔導技術者としてか、はたまた未知に対する強い探求心からか、貪欲知識を吸収していた。

 

そんな二人はというと……

 

「ホグワーツでは魔法は平均的に、ボーバトンは女性が多い、ダームストラングは闇の魔術…攻撃魔法?をメインに教えると」

「はい。安全性の面ではホグワーツが一番だと一般的に言われていますね。とはいえ、どの学校も自分の学校が一番安全だと言いたいのは当然なので本当なのかどうかは知りませんが」

「なるほど。賢者の石ってのはなに?ルナが前に作った魔力伝導がものすごく高い魔導石とは違うの?」

「賢者の石というのは、命の霊薬と呼ばれる魔法薬を作るための媒体のようですね。飲み続けると不老不死になれるみたいです」

「不老不死になったところで周りに先立たれて不幸しかなさそう。でも不老不死ね……エリクサーも寿命伸びたよね確か」

「伸びますね。しかも想起の盃で量産可能ですね」

「だよね。しかも作るのもそんなに難しくないし。……賢者の石、いらない子説?」

「……少なくとも私たちにとっては要りませんね」

「まぁいいや。次の質問。許されざる呪いってのは?」

「服従、拷問、そして即死の3つの呪文の事です。すべて言葉通りの意味ですね。使ったらアズカバンと呼ばれる魔法界の刑務所に投獄され終身刑となるようです」

「服従は分かるけど、拷問と即死?普通に魔法でやっちゃえばよくない?ほら、重力魔法で徐々に加圧するとか、炎魔法で火あぶりにするとか。即死にしたってそれこそ重力魔法でぺしゃんこにするとか、空間魔法で空間ごと隔離するとかいろいろあるよ?」

「まぁ……理屈はわかりますけど、即死魔法は対抗魔法がないみたいですよ?拷問魔法もあれこれしなくても一つの魔法で強烈な苦痛を与えられることを考えると……言い方は悪いですが、便利なものであるかと」

「なるほど?んじゃ次。吸魂鬼(ディメンター)ってなに?」

「魔法界における魔法生物の一種ですね。非存在にして破壊不能の生物と言われています。人間の幸福感情を餌に生きており、名前の通り魂を食らうこともあるようですね。一応防衛手段として、守護霊魔法があるようです。最も幸福な思い出を思いながら呪文を唱えると使える魔法だとか」

「破壊不能ってのはあくまでこの世界でのこと?」

「その通りです。私たちの世界の手法なら可能かもしれませんね。尤も出会いたくはないですけど」

「確かに。もしも出てきたら姉さまの剣に守護霊魔法を付与魔法(エンチャント)して切ってもらおう」

「あの剣、付与魔法(エンチャント)の増幅効果ありますしね。可能かもしれません」

「ま、遭いたくはないけど。それじゃ次だけど――」

 

……と、このような様子で終わりが全く見えなかった。私はこれからのことを考えながら二人の会話が終わるのを待つことにした。

 

 

 

 

数時間後。

「取り合えずはこれで基本的なことはお教えできたと思います。ルナリア様、魔法薬と呪文については後程纏めたものをお渡しいたします。リナリア様、長い間申し訳ありませんでした。また何か聞きたいことありましたらいつでも聞いてくださいませ」

「ん、分かった。ありがと」

「やっと終わったのね……えぇ、分かったわ。ルミナスもお疲れ様」

 

ルミナスは私たちに向かって一礼すると姿を消した。

窓から外を見ると辺りはすっかりしんと闇に包まれていた。

「それじゃこれからのことなんだけど、姉さま」

「うん?」

ルナリアは真剣な顔で私の顔を見ながら告げる

「結局のところ、私たちで探すしか手段はない。一先ず、この世界の魔法技術を習得してからでも遅くはないはず」

「なるほど」

「それに元の世界はここまでのんびりと事を構えることは少なかった。姉さまと一緒に何かをできるのは私にとって至上の幸せ。むしろこのまま帰れなくてもいいまである」

「うん、うん?」

「さしあたっては姉さまと一緒にお風呂に入る所存」

「え?いいけど……これからのことは?」

――何やら雲行きが怪しくなってきましたよ?

「さっきも言った通り。だからお風呂入ろう?」

「……ルナもしかして……面倒になった?」

「うん。面倒になった。時間ならいくらでもあるし」

 

ルナリアは確かに優秀である。優秀ではあるものの、優先順位がおかしいのだ。普段であれば、知識や技術に対する欲が圧倒的に強い為そのようなことはないが、時間的に余裕があるときはすぐに作業を投げる節がある。そして投げた後はこれだ。

 

ルナリアは私にべったりなところがある。

曰く「姉さまがいない日常なんてありえない。王国が姉さまを敵視した?だったらルナはそれをすべて破壊する。どんな手段を用いたって破壊する」

『姉さま至上主義』とはよく言ったものだ。もちろん、気持ちは嬉しい。嬉しいのだけど……時々愛が重すぎると感じることもあるのも事実。

とは言え、私もルナリアの事は大好きだし大切にしたいと思うのも事実、お互い様かもしれない。二人の力が合わされば最強ってね?

 

 

あれから二人でお風呂に入ることとなった。二人で入ってもゆったりと浸かれる広さの湯船。

そうですね……時間はたくさんあるのだから。

今はこのひと時を楽しむことにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ある場所にて

「どうじゃ?何か見えるかの?」

すっと立ち上がる女性を老人は静かに見つめる。

「……太陽と月!少女を妨げてはならない!決して敵対してはならない……! 敵対は死を意味する……そうなれば最後……闇の帝王は再び力をつけるのだ……!」

そう言い残し、女性は気を失うように倒れた。

 

「どういう事じゃ……?一体何が……」

老人は気を失った女性を一瞥しつつ静かに思い巡らすのだった。

 




これにてプロローグ編終了となります!

正直キャラ紹介程度に軽く書くはずだったのですが、変に設定を考えてしまったせいで余計な時間を食った感が否めない。

さて、ここでこの魔法界における基礎知識は全てリナリア及びルナリアに渡ったことになります。大体ルミナスのせいです。


次回から本編スタートとなります。ですがまだ書いてません、次回投稿はしばし待たれよ!


今回のTips

【想起の盃】
古代遺物(アーティファクト)その2
知っている液体であれば何でも生み出せる盃。ハリポタ世界において禁忌アイテム。調合のクッソ怠いポリジュース薬も、幸運薬も真実薬も量産できます。ただし魔力は消費します。魔法薬学なんてなかった。
なお、当人たちはもっぱらエリクサーを飲むために使ってる模様。
リナリア「これのむと日頃の疲れが取れるんですよねぇ~」
ルナリア「同意、明日に残らないから最高」

【エリクサー】
万能回復薬。ゲームによくあるアレです。状態異常、体力、魔力その他けがとかなんかもろもろ全部ひっくるめて回復します。あと副作用で寿命がちょっと延びます。病気で瀕死でも完全回復して寿命が延びます。命の水なんて可愛いものですよ。
エリクサー病?(´・ω・`)知らんな

付与魔法(エンチャント)
対象に属性や魔法を付与することができる。物理攻撃をする際に何かと便利。

【テント】
イメージは炎のゴブレットのあのテントです。あれ便利ですよね、リアルに欲しい……。

【ある場所】
一体どこなんでしょうね? 時間的には最初の予言はすでに語られたあとです。


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賢者の石編
修練と経過


なんか一気に気温が暑くなったから私の家の周りを空間断絶して欲しい()


あれからというもの、私たちはひたすらにここの魔法界における知識と技術の習得に明け暮れていた。ルミナスによると、この世界では17歳以下の人が魔法を使うと魔法省に検知されるらしい。元の世界の魔法は使っても問題はなさそうではあるものの、この世界の魔法は何か対策が必要になるようだ。

 

とはいえ、魔力吸収ならともかく魔力隠蔽の方は今まで必要なかったためどのようにすればいいのか私たちには分からなかった。

「ルミナス、何か方法ある?」

困ったらとりあえずルミナスに聞く。知識を司る精霊たる彼女に聞けば大体の事が解決するのだから。

「そうですね……もういっそ空間断絶してしまえば早くないですか?」

――空間断絶。

空間魔法の一種であるそれは、指定範囲の空間の接続を切り離しあらゆる干渉を受け付けなくする絶対防御魔法だ。ただ、同時にその空間内から空間外に干渉することも不可能となるが、体制の立て直しや拠点を隠すためにはもってこいの魔法である。ただ、高位魔法であるため使える人は限られているのが私たちの世界の常識だ。

 

「とりあえず張ってみる。空間断絶(ブレイクスペース)

瞬間、今まで鳴っていた風の音、草木の擦れる音、その全てが無くなる。断絶された空間の中では周りの干渉は一切受けない。その結果だった。

 

「ん、とりあえず拠点の周辺を囲ってみた」

さも当たり前のように、これでいい? とばかりに私とルミナスを見返すルナリア。果たしてこの子に使えない魔法はあるのだろうか……ないかもしれない。だってルミナスいるし。

 

「それでは私は外に出ますので何かこちらの世界の魔法を使ってみてください。こちらの世界の魔力が漏れていればわかりますので」

「いつも思うんだけど、なんでルミナスはこの断絶の効果受けないんだろうね」

 

尤もな疑問。外界と断絶されている以上、魔法を解除しない限りは外へ出ることはできないはずだ。

 

「それは私達精霊は空間はもとより上位次元の存在だからです。そうでなければ今頃世界も異なるのにお二人の元へなんて来れていませんよ。 一先ず外に出て待機していますね。頃合いを見て魔法を使ってみてください」

そう言い残し、ルミナスは姿を消した。

「ルミナスの魔力を感じないから本当に外に出たみたい。 とりあえず、何か適当にいくつか使ってみる。 姉さまも」

ルナリアは、私に魔導石を加工した棒状のものを差し出してくる。 確かこの世界の魔法族の人々はこの『杖』と呼ばれるものを使って魔法を行使するとルミナスに聞いた覚えがある。

光に当てると七色にキラキラと輝く魔導石製の杖を恐る恐る受け取り、手に持った瞬間、ソウルリンクでつながっているルナリアの魔力が一気に私の体に満ちていく。――この魔力の満ち方には身に覚えがある。以前、ルナリアが魔力伝導の極めて高い魔導石――賢者の石を作った際、それに触れたときに感じた魔力の満ち方と全く同じだった。

 

「ねぇルナ。これって……」

「賢者の石の削り出し。 私たちの世界の魔法なら別にいらないけど、この世界の魔法を使うのにどれだけ魔力減衰が発生するかわからない。 だから一応念のため。」

「やっぱり……」

 

流石にここまで高伝導なものを杖にしなくてもよいのではとも思うが、現状魔導具を作れるのはルナリアしかいないためこれを使うほかない。

 

「それじゃ、早速使ってみるわね。――ルーモス(光よ)

私が呪文を唱えたと同時に杖先から強烈な光が迸る。ルミナスに聞いた限りでは辺りを照らす程度の明るさと聞いていたのだけど……これはそのレベルではない。閃光といっても差し支えないだろう。何より目が痛い。対人戦で使えるんじゃないだろうか。

 

「流石姉さま。この明るさなら目つぶしとしても有用」

「この魔法ってそんな用途じゃなかったよね!?」

「ところで、この世界の魔法は呪文の後に『マキシマ』をつけるとより強化されるって聞いたけど」

ルーモス・マキシマ(強き光よ)。一部の魔法は『マキシマ』と続けるとより性能が強化されるのは確かにルミナスから聞いた。

しかしだ。通常でさえここまで強烈な光がさらに増強されるとなると、ここで行使するのは少々憚られる。

「ものは試し。ルーモス・マキシマ(強き光よ)

「ちょ、ルナ――!?」

試すのは流石にやめようとルナリアに告げようとした矢先、ルナリアは呪文の詠唱を行う。

次の瞬間には辺りが白に染まっていた。

 

 

「……うぅ、目が痛い……まだチカチカする……」

「魔力消費ほとんどないわりにここまでの効果……この世界の魔法すごい」

あれから10分は経っただろうか。

未だに視覚が麻痺してる私をよそに、ルナリアはこの世界の魔法の扱い奴さに素直に感動しているようだった。

実際、(ルミナスリングの効果があるとはいえ)少ない魔力でこれだけの効果を簡単に生み出せるのだから、奇襲には向いているのかもしれない。実用性はないけど。

「とりあえず分かったことは……この世界の魔法は威力が高くなりすぎるってことかしらね。魔力制御もうまくできないし」

「うん。光源魔法は私たちの世界のものを使えばいいから、このルーモスは攻撃魔法ってことが分かった」

 

それは違うと思う。少なくともこの世界の人にとっては。

 

そのあとにもいくつかの魔法を試した。

炎上呪文であるインセンディオを使えば爆炎が起こった。

反対呪文である水増し魔法を使えば、辺りは水で覆われ。

裂傷呪文を使えば何故か複数個所が裂けた。

 

総じて私たちは結論付けた。

「この世界の魔法は扱いにくい」

と。

 

「お二人とも、魔力漏れは全くないようで――これはこれは、また凄まじい惨状ですね‥‥」

「ルミナス、この世界の魔法使いにくい。もうやだ」

「何とか制御しないといけないわね、これ」

戻ってきたルミナスは悲惨な惨状を目にしながらも魔力漏れは全くなかったことを私たちに報告してくる。

確かにひどい惨状だった。

家の周りの木は燃やされ切り裂かれ水浸しに。その周りも同様にボロボロだ。

何も知らない人が見たら戦争でもあったのかと錯覚してしまうほどだ。

 

現状はさておき。

ともかく、これで心おきなく魔法の練習ができる環境は整った。

こちらの魔法の魔力制御を安定してこなすには時間はかかるかもしれない。しかし、やらなければならない。このせいで何かトラブルが起きてからでは遅いのだから。

 

そして冒頭へ戻る。

 

時は流れ1年後。

私たちはある程度の制御ができるようになっていた。それでもまだ実用には程遠いものではあるものの、少なくとも最初期に比べれば幾分かましになっていた。 何よりひどい惨状にならないのが大きい。

ルナリアに至っては実験的にこちらの世界の魔法を利用した魔導具を作っていた。初めて使ったルーモス・マキシマ。その閃光の威力を何かに利用できないかと思った故だ。まだ実験段階ではあるが、うまくいけば私たちの防衛手段の糧になるかもしれない。

 

さらに1年が経った。

完璧とは言えないものの、制御ができるようになった。

ルーモスは通常の周りを明るく照らす程度に。

インセンディオは物を燃やすのに丁度良い火力に。

アグアメンティは鉄砲水になることはなくなり。

ディフェンドは狙った箇所が引き裂けるようになった。

 

とりあえずは必要十分な制御はできていると言えるだろう。

問題はルナリアだ。

魔導具の作成の進捗はあまり順調ではないらしい。魔力の封じ込めと起動条件の固定が上手くできないらしいが、私にはさっぱりだ。

こればかりはルナリアに任せるしかない。

 

また1年が経った。

制御はもう問題ないといって良いだろう。

浮遊呪文、粉砕呪文、呼び寄せ呪文……その他数多の呪文も問題なく使えるようになった。

 

依然として汎用性は元の世界の魔法の方が便利ではあるものの、単一の呪文でここまでの効果が出る魔法は私たちの世界にはなかったため、魔力量の調整次第で規模も容易に変えられるこの世界の魔法は非常に使い勝手がよかった。

ルナリアはというと、無事魔力の封じ込めに成功し、起動条件を満たしたときに発動するルーモス・マキシマの呪印を刻んだ魔導具の開発に成功していた。

なお、実験と称して部屋に投げ込んだ後、目の前が真っ白に染まり暫く何もできなかったことを私は言っておきたい。

 

その後、付与魔法への応用も無事成功し、燃える水だとか、光るゴーレムだとかよく分からないものがたくさん出来上がったのだがこれはまた別のお話。

 

そんな生活を続けていくうちに、この世界に来てから10年の月日が経っていた。

 




予定ではもう少し早く書き上げるつもりだったのですが、気が付いたら結構日が経っていた件について。

賢者編……の序章にになります。二人のこの10年間何やってたんだろー?ってお話です。

ちなみに閃光魔導具と化したあの道具は今後もちょくちょく出てきます。目つぶしって奇襲における重要な要素だと私は思うの。

今回のTips
空間断絶(ブレイクスペース)
絶対防御魔法……と銘打ってますが、そりゃ空間的に隔離されたらそうなります。
自分の回りや自分の正面、さらには相手の周辺など結構自在に断絶できるため、隠しものや防御、あるいは攻撃魔法として使える汎用性があります、応用性はないけど。

・ルーモス・マキシマの呪印を刻んだ魔導具
閃光弾です。ルミナスリングによってブーストされたそれを刻み込んだ魔導具です。
起動方法は接触式、時限式、魔力感応式の3つ。
とりあえず敵陣に投げ込みましょう?

・付与魔法への応用
他の二次創作でもある二重詠唱やデュアルスペルみたいなもんです。
アグアメンティ+インセンディオで燃える水に仕上がりました。……エタノール?

・賢者の石を削りだした杖
凄まじく魔力伝導の良い材料を杖に仕上げてみました。 正式な持ち主のニワトコの杖と同じかそれ以上のスペック。ただし耐久性に難あり。


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入学案内

お気に入り、しおりなどありがとうございます!!
執筆の励みになります…!感謝!



天気の良いある日。

私たちは相も変わらず帰還方法を調査していた。とはいえ、この10年間に目立った進捗はない。煙突飛行ネットワークや姿現し/くらましを調べてみても、空間転移の原理はあったものの、それは私たちにとっては既に既知のものであったし、そもそも世界を跨ぐなんて概念なんて存在しなかった。

 

「…だーめだね。なんっにもわっかんない!!」

「この世界って死から逃れる方法とか延命の方法とかはある癖に、なんでほかの世界の移動方法は研究しない訳?概念くらいは研究しててよ」

「こちらも駄目ですね……過去に一度たりとも世界の移動は研究された痕跡はないようです。ですが、魔法省の神秘部というところでは死のゲートと言われるものがあるみたいです。とはいえ、入ったら最後。もう戻ってこれないそうですが」

 

3人(精霊を人としてカウントしていいのかはさておき)であーでもないこーでもないと悩んでいると不意にルナリアが席を立った。

「どうしたのルナ?」

私の問いかけに答えずじっと外を見つめているけどいったいどうしたのだろうか。

「鳥。なんか持ってこっち来てる」

ルナリアが指さす方向に目をやると、一羽の鳥がこちらに向かって飛んできていた。

「梟……ですかね。そういえば認識阻害は人間には確かに効果ありますが、それ以外にはあまり効果ありませんでしたね……」

そうこう言っているうちに飛んできた梟は私たちの目の前に降り立ち足に括りつけられたものをすっと差しだしてきた。

私は梟の足からそれを取り外し、2人の前で広げる。梟は目的を達成したとばかりに悠々と空に飛び立っていった。

 

「あら、これホグワーツ魔法魔術学校からみたいよ?」

手紙を広げて真っ先に目に飛び込んだホグワーツ魔法魔術学校という文字。10年間、魔法省からも全く察知されなかったこの場所にどうやって手紙を届けたのかという疑問はともかく。内容を読み進める。

 

ホグワーツ魔法魔術学校

校長 アルバス・ダンブルドア

マーリン将軍、勲一等、大魔法使い…etc

 

親愛なるリナリア・フォンターナ並びにルナリア・フォンターナ殿

 

この度、ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されたましたこと、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

新学期は9月1日に始まります。7月31日必着で梟便にてのお返事をお待ちしております。

 

敬具

 

副校長 ミネルバ・マクゴナガル

 

「…ねぇ、姉さま。一つ疑問がある」

「そうですね、私もあります」

 

読み終えたと同時に神妙な顔つきをしたルナリアとルミナスが声を上げる。

疑問については私も大体察しがついていた。

 

さて。

ホグワーツ魔法魔術学校は魔法界における全寮制の学校だ。その入学資格は9月1日の時点で11歳である魔女や魔法使いだ。

 

そして、私たちは姉妹だ。長女の私、次女のルナリア。

そして問題なのは年齢。この世界に来た当初は私は15歳、ルナリアは13差だ。

……超過しているのである。入学条件なんてとっくに。

ましてや、この世界に来てから10年も経っている。いくら愛飲しているエリクサーのせい体は元気そのもの、見た目もかなり若く見えるとは言え25歳と23歳だ。元の世界であればいい年である。今頃どこかの貴族家の男と結婚していてもおかしくはない。

私とルナが結婚ですかー……正直想像できないけど。ずっと二人いそう。父さまは焦るかもしれないけど。

 

閑話休題(それはさておき)

今回の手紙は私達姉妹充てに送られてきた。それが意味するところはつまり、”この世界において、私たちは年齢が同じである”ということ

そうです、双子ってことです。いえ、双子かは知りませんが、双子ってことにしておきます。元の世界では決して叶うことの無かったルナリアとの学校生活……!これはもう運命といっても差し支えないのでは?

 

「――姉さま、姉さま!聞いてる?」

「はっ……ごめん、ルナと双子で一緒の学校ってことで意識とんでた……」

「あ、姉さまも気づいてたんだ。実際、10年こっちに居るのに体は全く成長してないしおかしいとは思ってた。でもルナも姉さまと一緒の学校に行けるから嬉しい」

すりすりと私に頭を押し付けてくるルナリアを受け入れながら私はルミナスに聞く。

「何か原因があるのかしら」

「現時点では何もわかりませんが……あの転移の事故で何かあったのか、はたまたこの世界からは私たちはイレギュラーとして見られているのか……なんにせよ、不明ですね」

 

それにしてもホグワーツですか。

イギリス魔法界では特に安全な場所と評価されているらしい。教える内容も低学年では広く平均的に、学年が上がっていくと選択的により専門的に教えるようだ。

……いずれにしても、ルミナスのおかげでこの世界の魔法は大半は既に既知のものとなっている。今更学校に行く必要もないといえばその通りだ。

しかし、学校というからには、図書の類も膨大にあるはず。1000年も続いているのだ、少しくらいは知らない蔵書もあと思いたい。そしてそれが帰還のきっかけになってくれればいいのだけど。

 

「あ、そういえば梟便……」

「……飛んで行っちゃいましたね」

「え、これ返信どうするの……?」

既に飛び立っていった梟を思い浮かべながら私は空を見上げる。……戻ってくる気配は全くない。当然か。

 

「返事がなかったら誰か来ると思う。この認識阻害の中場所を特定したくらいだし、容易に入ってくると思う」

無表情ながらも、どこか楽しそうにそう告げるルナリア。

ルナリアが楽しそうにしているときは大体碌な事を考えてない。私は閃光弾を投げ込まれたことを未だに覚えている。あれは本当に目が痛かった……。

 

「そうね……7月31日は…10日後ね。買っておいてよかった、カレンダー」

 

私たちの世界では明確な暦は存在していなかったため、このカレンダーというものは何かと便利だ。一目見ただけで今日はいつかという優れもの。できれば元の世界でも広めたいところではある。

 

そういえば教科書リストも同封されていたっけ。何々……?

 

普段着ローブ3着、普段着の三角帽、冬用マント……あぁ、どこかで見覚えがあると思ったらあの時の魔女が来てた服装ですか。納得です。

後は安全手袋…え、ドラゴン居るんですかこの世界。竜素材の収集は困らなさそうですね。それに類するものでいいということは、ルナリアの普段着に使ってる布でもいいかもしれないね。あれ恐ろしく高い対物理性能持ってるし、対魔法と耐薬性能つければきっと十分でしょう。あとで聞いておこう。

 

教科書は……まぁ一応取り揃えましょうか。いくら知識はあるとはいえ、もしかしたら知らない内容も書いてあるかもしれないし。

後は……杖と大鍋、薬瓶と望遠鏡に物差しですか……。

大鍋はこの標準2型っていうのがよく分からないから買うしかない。材質も指定されているし。薬瓶は何とでもなりますね。ルナリアの部屋に転がってますから。

望遠鏡と真鍮の物差しは買わないとなさそうですね……それにしてもなぜ真鍮指定なのかしら。別にいいのだけど。

 

問題は杖。

一応、過去に作ってもらった賢者の石を削り出したものはある。あるが、如何せん目立ちすぎる。光が当たればキラキラと七色に光るものを持っていくわけにはいかない。となると……これも買った方がいいかもしれないね。

 

「んー売り場はどこなんだろ」

「ダイアゴン横丁。漏れ鍋っていうパブから行けるみたい。存在を知らないマグルの人たちには隠されているらしいけど、知識と知っているルナ達なら問題なくいけるはず」

「あのロンドンにあるパブですか。魔法界とマグル界の接点らしいですね。ロンドンの街中にひっそりと存在してますが、精霊たちに聞けば場所は分かりますから、今度行ってみますか?」

 

パブっていうことは酒場ですか。情報収集にも丁度よさそうですね。ぜひとも行ってみたところだ。……お酒は飲めないけど、流石にソフトドリンクくらい置いてあるだろう。

何にせよ、31日まで様子見だ。入学はするが、学費とか気になるし。

今まではマグル界で金を換金しながら生活してきたが、それが魔法界でも通用すかもわからない。尤も魔法界にもグリンゴッツ銀行はあるようだし、恐らく換金は問題なくできそうではあるけど。

 

 

「姉さま、杖どうする?買ってもいいけど、別に作ることもできる。作り方はルミナスに聞いたし」

魔導技師としての血が騒ぐのか、興奮気味にルナリアが私に聞いてくる。

というか作り方をいつの間に聞いていたのだろうか。まぁあの二人だし暇なときにやり取りしていたのだろうけど。

 

「でもさすがに専門の人が作ったものの方がよくない?いくら作り方が分かるとはいえ……」

「姉さまには私の作ったものを使って欲しい……誰のかわからない物を使われるのはヤダ」

「う……そういわれると弱いけど……ルミナス、作り方って具体的にはどんな感じなの?」

グッと手を握り締めて俯いているルナリアの撫でながらルミナスに問う。

2層構造になっているというのは知っているけれど、詳細はよく覚えていない。

 

「杖の技師によって若干異なるようですが…原則、素体となる木材と芯材となる魔法生物或いはその他魔術的なものを組み込んで完成となります。木材と芯材の組み合わせによって杖にも性格というものがあるようでして、千差万別のようですね」

 

なるほど。

確かに聞いた覚えがある。

木材はアカシアやセコイア、その他数多の木が使われていると。

曰く、アカシアを使った杖は所有者を選ぶだとか、セコイアを使った杖は幸運を呼ぶ杖だとか。

芯材もいろいろだ。一角獣の毛、ドラゴンの心臓の琴線、不死鳥の尾羽、バジリスクの牙その他いろいろ。

曰く、一角獣の毛は安定した魔法を繰り出せ、魔力を伝えやすいが、闇の魔術には向かない。

曰く、ドラゴンの心臓の琴線は魔力効率がよく、派手な魔法を繰り出しやすく闇の魔術も扱いやすい。しかし事故を起こしやすい。

 

どれも一長一短ではあるものの、木材との組み合わせによっては、お互いのデメリットを打ち消しあいながら良いところをより昇華し最高の杖になるようだ。

 

「……まぁ、どこの杖を買えっていう決まりもないしルナにお願いしようかな」

「……!本当!?ルナに任せて、姉さまに合ったこの世で最高の杖作るから!」

「一応限度は考えてね?ルミナスもあまりルナが暴走しないように見ててね」

「お任せください、リナリア様。精一杯ルナリア様のサポートをいたしますわ」

 

あ、これは安心できないやつだ。

だけどもう遅いかな……一度やる気になったルナリアを止めるのは至難の業だ。ましてや今回は私の為にっていう前提があるのだから余計に止まるはずがない。

早速始めるからルミナス来て、とルナリアがルミナスに告げ工房へ移動する。

 

 

一体どんな杖が出来上がるのかという楽しみ。その一方でどんなえげつないものが出来上がるのかという不安に苛まれながら私は「早速始めるからルミナス来て」とルナリアがルミナスに告げ工房へ移動背中を見ながら思うのだった。




お手紙が来たーぞ!
返事書く前に梟帰っちゃったけど。

当初、ホグワーツまで転移と一瞬浮かびましたが、そういえばホグワーツ行ったことないじゃん、出来ねーわ。となったので却下されました。
ちなみにロンドンへは転移で飛べます。プロロ2話でロンドンにいたし、転移錨打ってあるし。

さて、ついにタイトル回収です。リナリアとルナリアでは原作(まだ書いてない)の方でも15歳と13歳です。蛇足になりますが、元の世界で冒険者になるには12歳以上です。

13歳にしてはやけに博識なルナリアですが、もともと、魔術や魔導具に強い興味を持っており、工房のおじさんが触らせたらドはまりした結果です。知識と技術がさらに加速したのルミナスのせい。

さて、そんなルナリアが作る杖がどんな性能になるのか。それは次回。
そしてお迎えに来る先生は誰なのか。これも次回。

……そういえば、家の周囲にトラップが大量に仕掛けられてましたね……。

今回のTips
・ルナリアの普段着に使われている布
プロロ2話でも登場したあの普段着に使われている布です。近接戦が苦手なルナリアは自身の服に対物理性能を付与することで何とかしました。
正直風魔法のシールドとか使えば何とでもなりそうな気がしますが、それを破られたらもう守るものがないってのも駄目ですからね。ルナリアは賢いのです。

・転がっている薬瓶
 ガラス製、クリスタル製、ミスリル製……いろいろ転がっています。元の世界では通常のポーション類はガラスかクリスタルの薬瓶に、ドラゴンの血やその他有毒なものは複合耐性を持っているミスリル製の薬瓶に入れています。

・漏れ鍋
マグルには隠匿された魔法界のパブ。
場所を知っている場合には分かる。勉強会にて一通りの魔法界知識を知っている為このパブの存在も知っています。


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