提督「艦娘が甘えてくるボタン?」 (マロニー)
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事の発端。

n番煎じです。
また、いわゆるss形式です。ご注意下さい。


 

 

提督「…艦娘が甘えてくるボタン、だと?」

 

 

明石「はい!一度押したら、その目の前の相手はもうデレデレですよ!」

 

 

提督「ほう、素晴らしいな。

流石明石と褒めてやりたいところだ。

…って事で、それ廃棄しといてくれ」

 

 

明石「!?な、何でですか!」

 

 

提督「昔ならまだしも、今はそんなん無くても好意を隠そうともしない奴らは甘えてくるからな。それで十分だ。だからそんなんいらねぇ…

…というか、興味が湧かない」

 

 

明石「い、いやいや!物は試し、まずは受け取って下さいって!」グイグイ

 

 

提督「嫌、だからいらねぇよ」

 

 

明石「まあまあまあ、ひとまず」グイグイ

 

 

提督「うおっ、ちょっ…いやに推しが強いな!これまでの発明品に付き合った時もそんなに推すこと無かったろうが!」

 

 

明石「なんてったって今回ばかりは他の人の依頼で作られてますからね。今迄のようににべもなく拒否される訳にはいかないんですよ!」

 

 

提督「…ん?このボタン、今迄とは違ってお前の独断で作ったわけじゃないのか?」

 

 

明石「…あ」

 

 

提督「…前言撤回、激しく興味が湧いて来た。

ちょっとそれについて話をしてくれないか?

話さないという選択肢は無いがな」

 

 

明石「あー…(悪い笑顔だなぁ…)

…わかりました、お話いたします。」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「成る程、俺に甘えたい奴らが『絶対に口外をするな』という条件でこのボタンを依頼。で、それを明石から渡された俺は半信半疑ながらも好奇心に駆られボタンを押してそれから…という目論見だった訳か」

 

 

明石「説明お疲れ様です。」

 

 

提督「やかましい。…しかし成る程面白い。非常に面白いじゃないか」

 

 

明石「ほんと怖い笑顔してますね…」

 

 

提督「失敬な。爽やかな笑顔と言え、爽やかだと」

 

 

明石「アッハイ…

で、結局どうするつもりなんですか?

最初に言っていたように廃棄しますか?」

 

 

提督「…なあ明石?このボタンの有効射程はどれくらいだ?」

 

 

明石「え?えーと、相手の視界に入るくらいです。そうじゃないとそのボタンの存在意義が無いので。ボタン製作を頼んできた方にもそれは伝えてあります」

 

 

提督「成る程…更に好都合だ。さっきの質問だが、とりあえずこのボタンは捨てん」

 

 

明石「あ、そうですか。結構作るの大変だったのでそれは嬉しいですが…」

 

 

提督「で、だ。明石。一つ俺からも依頼させてもらっても良いかな?」

 

 

明石「それは構いませんが、一から何か作るとなると時間はかなり掛かりますよ?」

 

 

提督「何、大した事じゃあない。

このボタンを『もう一つ』作ってくれ」

 

 

明石「うーん…?出来ない事は無いですし、確かに一から作るよりは早く出来ますけど…

それでも最低でも二週間はかかりますよ?

それに、効果だけなら一つで事足りますし…」

 

 

提督「そんなに時間はかからない筈だ。

そのボタンには効果をつけなくていいからな」

 

 

明石「え?それって…」

 

 

提督「平たく言おう。

このボタンの精巧なダミーを作れ」

 

 

明石「…あっ、そう言う事ですか。

確かにそれなら直ぐに作れますけど…提督あなた、何て性格の悪い事を考えるんですか」

 

 

提督「ハ、そう褒めてくれるな。

勿論だがこの命令に拒否権は無い。

さあ作れ、今すぐに作り出すんだ」

 

 

明石「…ハァ、了解しましたぁ」

 

 

明石(ほんとに、何で皆がこんなクソ提督が大好きなのか分からないや……)

 

 

提督(皆の前では猫被りまくってるからな)

 

 

明石(この人、心の中に直接…!)

 

 

 

 

 

 

提督「このボタン本体の事は既に、この鎮守府中に広まっていると明石から聞いた」

 

 

提督「だがこのダミーは。この偽物の存在を知っている者は俺と明石以外には誰も居ない」

 

 

提督「さあ、面白くなってきたぞ…!いいだろう、俺はみんなの要望通り、甘えたいと思っている娘の目の前でボタンを押してやろう…」

 

 

提督「但し、何の機能も無いこっちをな…!」

 

 

 




某所にあるものをこちらの方にも移させていただいてます。
もしよろしければお付き合いの方を。


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五月雨の場合。

提督「さぁて執務室にまで着いた訳だが…

テステス、聞こえてるか?」

 

 

明石『バッチリです』←インカム装備

 

 

提督「よし(インカムの装着と執務室のカメラの監視…作ってもらう条件としては緩い方か)」←同じく

 

 

提督「にしても艦娘達が手玉に取る所を見たがるなんて…あんなに俺に対して性格悪いやらクソやらゴミクズやら言ってた割には、結構お前も良い性格してるじゃないか」

 

 

明石『そ、そんなには言ってません!それに私は、ただ本物を使った場合に作動するかを』

 

 

提督「じゃあ執務室に入るか」

 

 

明石『ちょっ!せめて言い訳を』

 

 

 

ギィィィィィ

 

 

 

提督「おはよう。今日の秘書艦は…五月雨か。

少し遅れてしまってすまないな」

 

 

五月雨「おはようございます、提督!

大丈夫です、私も先ほど来たばかりですよ!」

 

 

提督「ハハ…気を使わせてすまないな。

さて、仕事をしよう。」ニコリ

 

 

五月雨「は、はい!」

 

 

明石(本当に私の言い訳聞かなかったな…にしても何だあの爽やかな笑顔。逆にちょっと気味が悪い)

 

明石(そう言えば、ボタンの噂は広まってる筈だけど、五月雨ちゃんはそれを知っているのかな?)

 

 

五月雨「……」ソワソワ

 

 

明石(うん、知ってるみたいね。なら後は提督がボタンを押すだけだけれど…)

 

 

提督「……」カリカリ

 

 

明石(ボタンを出す気配すら無いわね…

また何か悪い事でも企んでるのかしら…)

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

提督「ふぅー…とりあえずひと段落ついたな。

少しだけ休憩しようか、五月雨?」

 

 

五月雨「あ、それなら私、お茶を淹れてきます」

 

 

提督「じゃあ頼もうかな…とその前に、ちょっとだけいいか?」

 

 

五月雨「?はい、何か御用でしょうか?」

 

 

提督「まあさっきの言い訳みたいなものでな。少しとはいえ遅れて来たのには理由があるんだ。というのも、明石にこんな物を渡されたんだよ」コトッ

 

 

五月雨「あっ!それ…」

 

 

提督「ん?知っているのか?」

 

 

五月雨「い、いえ!」

 

 

提督「そうか…まあ知る筈がないよな。実はこのボタン、明石に渡されたは良いがどんな機能なのかは知らされてないんだ。」

 

 

提督「で、だ。また何か変な事が起きる前に捨てたほうがいいんじゃないかと思っててな」

 

 

五月雨「!!そ、それはダメです!絶対捨てちゃダメですから!」

 

 

提督「…そうか?しかし、何の効果か解らないものをずっと持ってるわけにもなぁ」

 

 

五月雨「うっ… じゃ、じゃあ今私に使ってみてください!そうしたらきっと、そのボタンがどんな機能なのかが解りますから!」

 

 

提督「しかし、それは五月雨に悪いし…」

 

 

五月雨「大丈夫です!害を与えるようなものじゃありませんから!…多分!」

 

 

提督「(頬が朱に染まってるのは自覚無しか。やっぱり五月雨は隠し事が下手だな)

…そこまで言うなら、そうさせて貰うぞ」ニヤリ

 

 

 

ポチッ

 

 

 

五月雨「……」

 

 

五月雨(もうボタンの効果は出てるのかな…?

押されてすぐに効果は出るって聞いたし…)

 

五月雨(…そう言われてみれば、あ、甘えたくなってきた、ような気が……)///

 

 

 

提督(なんて思ってるかもしれないが、残念ながらそれはただの思い込みだ…さあ、どうする五月雨)

 

 

 

五月雨「……」

 

 

提督(無言のままこちらに向かい…!)

 

 

五月雨「………っ」///

 

 

トスン

 

 

提督(そのまま俺の膝に座る!…うん。まあ確かに、いつもの五月雨に比べると段違いの積極性だな。まったく、可愛らしい事だ)ナデリ

 

 

五月雨「!!」

 

五月雨(頭を…!うう、とっても嬉しいけど、それ以上に凄く恥ずかしい…!!)///

 

五月雨(で、でも!せっかくのチャンスなんだから、この際もっと甘えないと…!)

 

 

 

ダキッ

 

 

 

五月雨「きゃっ!?(だ、抱き締められた!?わ、私、今提督に抱き締められてる!)」

 

 

提督「五月雨」ボソッ

 

 

五月雨「〜〜〜っ!!」///

 

五月雨(提督が抱き締めたまま、う、後ろから私の名前をさ、囁いて…!)

 

 

 

提督「伝えたい事があるんだ…実はな、このボタn」

 

 

五月雨「わ、私!お茶を淹れてきまs」ガタッ

 

 

 

 

【五月雨の頭部と提督の顎部、衝突セリ】

 

 

 

提督「い、痛え…五月雨、お前…」

 

 

五月雨「すす、すいません!今救急箱を!」

 

 

提督「!待て!そんなに急に走り出したら…」

 

 

 

ドンガラガッシャーン

 

 

 

提督「さ、五月雨ーッ!!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石『五月雨ちゃん、寮に戻してしまって良かったんですか?』

 

 

提督「ああ、秘書艦としての仕事は先程ので殆ど終わらせてもらったからな。気絶している間、寮で休ませても誰も文句は言わんさ」

 

 

明石『あ、さっきいやに真面目に仕事していたのはこういう事を見越しての事ですか?」

 

 

提督「いや、たださっさとこのボタンで遊びたかっただけだ。…にしても五月雨は可愛いかったな」

 

 

明石『その割には随分と機嫌が悪そうですが…』

 

 

提督「ああ…あいつ、五月雨。俺がネタばらしをする前に勝手に自爆してしまったからな。」

 

 

提督「可愛らしかったのは事実だが。俺は、俺の口でボタンについてのネタばらしをして、そして、俺の目の前でその娘が羞恥に震える様が見たいんだ。」

 

 

明石『またさらっと下衆な事を…』

 

 

提督「褒め言葉だ。

まあだから、次に執務室に来る娘には二人分の恥辱を味わわせてやるつもりでいる」

 

 

明石『ただの八つ当たりじゃないですか!』

 



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鈴谷の場合。

提督「さぁて、次は誰がくるのかなぁ」ウキウキ

 

 

明石(次の犠牲者は誰になっちゃうんだろう)

 

 

提督「そうだなぁ…出来ればこう…天龍とかそこらの弄りがいのあるような奴が来てくれたら個人的には嬉しいがな。まあ、そんな上手くはいかないか」

 

 

明石『そういえば、何で提督が艦娘の方に赴いたりはしないんですか?そっちの方が色々と確実じゃないですか』

 

 

提督「馬鹿言え、俺だって一応は皆を率いる身なんだし暇じゃ無いんだ。この部屋で色々やらなきゃならんのよ。専ら雑務だけどな。…それに……」

 

 

明石『それに?』

 

 

提督「誰が来るか判らない方が楽しいじゃないか」

 

 

明石『さいですか(こっちが主なんだろうな)』

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

提督「お、噂をすればだな。さてさて、次の獲物は誰だろうな」

 

 

明石(コイツ、ついに獲物と言い切った…

…ん?今度はボタンは机の上に置くのね)

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

鈴谷「提督、ちーっす!」

 

 

提督「おう、鈴谷か」

 

 

提督(ふむ…鈴谷か。色々と弄ってもなあなあな感じで終わりそうな気もするが…)

 

 

明石(鈴谷ちゃんかぁ…ちょっと気の毒だけど、反応が気になるわね。いつも面と向かって甘えていると甘えていないのボーダーな感じの子だから…)

 

 

提督(何、どちらにせよ面白い事に変わりは無い)

 

 

明石(あの、さっきからちょくちょく心を読むの止めてくれませんか)

 

 

鈴谷「んー?どうしたのさ黙っちゃってさー」

 

 

提督「いや、ただ考え事をしてただけさ。

ところで何しに来たんだ?お前今日非番だろ?」

 

 

鈴谷「む、何それ。非番の時は来ちゃいけないってのー?」

 

 

提督「そうじゃねえけど… 本当に何しに来たんだ?」

 

 

鈴谷「あー、えっとさ、提督ってもう昼ごはん食べた?」

 

 

提督「ああ、もうそんな時間か」

 

 

鈴谷「やっぱり食べてないんだ…

かなりのワーカホリックだよねぇ、提督」

 

 

提督「そんなつもりは無いんだがなぁ」

 

 

鈴谷「じゃあさ、一緒にご飯を…ん?」

 

 

提督(お、よし。ボタンに気付いたか)

 

 

鈴谷「ねえ提督、この机に置いてあるのって…」

 

 

提督「ああ、それは明石が作って来たもんだ。

曰く、押すだけで相手が甘えてくるようになるとか」

 

 

鈴谷「へー…やっぱりそれなんだ。

知ってる?結構それ、噂になってるんだよ」

 

 

提督「何?そうなのか(やっぱりか)」

 

 

鈴谷「うん、食堂がそれの話題で持ちきりになってるくらいにはね」

 

 

提督「結構どころか大感染してるじゃないか…

あ、そうだ。鈴谷」

 

 

鈴谷「ん?」

 

 

提督「ほい」ポチッ

 

 

鈴谷「ちょっ!?」

 

 

 

提督(さあ、どうなる)

 

 

 

鈴谷「……ッ!!」

 

 

鈴谷「……あれ?今それ、押したよね?」

 

 

提督「ん、ああ」

 

 

鈴谷「私、何とも無いんだけど…

あれれ、ひょっとして明石さんミスった?

それともそれ、サンプルとかだったとか?」

 

 

 

提督(…なるほど、そう来たか。いや、まあ確かに、そうなるのが普通の反応なのかもしれないな)

 

提督(…だが、諦めん。今の俺は不退転だ)

 

 

 

提督「いや、そんな筈は無いがな。

実際に明石が実演も見せてくれたし」

 

 

鈴谷「えー?でもさぁ」

 

 

提督「…一つだけ、考えられる要因がある」

 

 

鈴谷「?なあに?電池切れとか?」

 

 

 

提督「これは相手を甘えさせる為のボタンだ。だから、元々甘えている相手には効果が無いんだ」

 

 

 

鈴谷「………へ?」

 

 

鈴谷「い、いやいやいや!!それは違うでしょ!」

 

 

提督「だが、それしか考えられないぞ」

 

 

鈴谷「絶対違うから!そ、そもそも鈴谷、提督にそんな甘えたりなんかしてないし!」

 

 

提督「わざわざ非番の日に執務室に来て食事に誘うってのも結構甘えてくれてるとは思うがな」

 

 

鈴谷「うっ、うるさいなぁ!もう!

鈴谷もう行くからね!」

 

 

 

カツカツ

 

 

 

提督「おいおい、待ってくれよ鈴谷」

 

 

 

鈴谷「うっさいし!」

 

 

 

提督「…鈴谷」

 

 

 

ドンッ

 

 

 

鈴谷「えっ?」

 

 

提督「鈴谷。俺は本気で聴いてるんだ」←壁ドン

 

 

鈴谷「えっ…え、えっと。提督?」

 

 

提督「率直にだな。俺はお前から甘えて欲しい。

だからさっき、迷わずにボタンを押したし、今、女々しくお前を引き止めてる」

 

 

鈴谷「あの、わ、分かったからさ?

ちょーっと離れない?か、顔が近いんだけど…」

 

 

提督「…俺の事が嫌いか?」

 

 

鈴谷「!そんな事無いよ!寧ろ好きだっ……」

 

 

鈴谷「……い、いや、今のは勢いで…」

 

 

鈴谷「…あの、さ。勿論嫌いじゃないんだけど、その、なんて言うかさあ…複雑っていうか…」

 

 

提督「…そうか」スッ

 

 

 

【提督、壁ドン解除セリ】

 

 

 

鈴谷「あっ…」

 

 

 

提督「…引き止めて悪かったな。行ってくれ」

 

 

提督「それと、こんな事を強要してすまなかった」

 

 

 

鈴谷「……あーもう!面倒くさいなぁ!

提督!やりにくいから、顔、少し上に上げて!」

 

 

提督「?こうか…?って…」

 

 

 

 

チュッ

 

 

鈴谷「…はい、おしまい!」パッ

 

 

鈴谷「それじゃ、今度こそ行くから!じゃね!」

 

 

 

ギィィ バタン

 

 

 

提督「…顔、赤リンゴみたいだったな」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

鈴谷(ヤバいヤバいヤバい!何か調子に乗っちゃって、ちゅ、ちゅーしちゃった!!)

 

 

鈴谷(恥ずかしくって提督の反応見ないまま逃げてきちゃったし…

どうしよ、きっと呆れられてる!)

 

 

 

『お前に甘えて欲しい』

 

 

 

鈴谷「〜〜〜〜っ!」

 

 

鈴谷(…もう!絶対暫くマトモに顔見れないし!)

 

 

鈴谷「ああー、もうー!!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

 

提督「良し」

 

 

明石『なに気取ってるんですか…にしても、よくあんな嘘八百並べられましたね。正直今回はボタン押してダメだった時点で失敗かと思いましたよ』

 

 

提督「俺も正直ダメかと思ったが、まあまあ何とかなったな」

 

 

明石『…でも、何だか納得行かないって感じの顔してますね』

 

 

提督「ご明察だ。…今回、鈴谷に対して、まあ恥ずかしめることは出来たから確かに失敗ではない」

 

 

提督「だが、それはこのボタンによるものかって言われたら違う気がしてな。何か釈然としないんだ。

鈴谷も多少、自爆って感じもするし」

 

 

明石『えー…さっきので妥協しちゃダメなんですか』

 

 

提督「俺はだな、『このボタンは何の機能もないんだー』と言って…ていう下りをどうしてもやりたいんだ。それまでは妥協なんかしてたまるか」

 

 

明石『そうですか。じゃあ、頑張って下さい』

 

 

提督「そして今回も発散出来なかったこの鬱憤は今度こそ次の娘に対して味わわす」

 

 

明石『なんて理不尽な…』

 

 



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曙の場合。

提督「そろそろ遠征の子らが帰ってくる時間帯だな」

 

 

明石『どうしたんですか急にまともな提督らしい事を言い出して』

 

 

提督「俺は常にまともだ。まあスケジュールを覚えておくのは上に立つ者として当然の事だからな」

 

 

明石『…どうせその遠征のメンバーの中にそのボタンの一連をやりたい娘がいるとかなんでしょう?』

 

 

提督「ハハ、何の事やら」

 

 

明石(図星か…)

 

 

提督「…なあ明石。駄目元で聞くんだが、このボタンの依頼者が誰かを聞く事は可能か?」

 

 

明石『?何ですかいきなり。

因みに、それは流石に教えません。ただでさえあまり高くない私への信頼が地に墜ちますからね』

 

 

提督「そうか…いやな、今聞いたのはだな」

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

提督「!来たか。すまんが話は後だ」

 

 

明石『は、はい』

 

 

 

 

提督(遠征をしていた奴ら…そいつらはおそらく…否、確実にこのボタンの存在を知らない筈だ)

 

 

提督(ボタンの噂が流れたのは本当につい最近。

その間別の場所に行ってしまった彼女らには知る由もないからな)

 

 

提督(ただ、例外がいる。

それは、『このボタンを依頼した者』)

 

 

提督(俺の考え通りならば、『ヤツ』がボタンを依頼した。…いや、依頼した者の内の一人か。俺に面と向かって甘えれぬ者は多かったからな。…まあ、それはいい)

 

 

提督(ともかく遠征メンバーはボタンを知らない。

故にこの執務室にわざわざ報告をしに来たがる奴は…いるかもしれんが、それでも『ヤツ』が、自分が報告しに行くと立候補すれば譲るだろう。唯一この執務室にどうしても来たい『ヤツ』がな)

 

 

提督(…唯一の懸念は。あの罵倒が本当に俺を嫌って出てきたものという可能性。もしそうならば執務室には来ないだろう)

 

 

提督(だが逆に言うならば。もし執務室に来たならばがボタン依頼者の一人とほぼ確定する。

そうなら…凄く面白い!)

 

 

提督(さあ来い…来てくれ……来い!)

 

 

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

 

 

曙「報告に来たわよ、クソ提督」

 

 

 

提督(来たぁ )ニッゴリ

 

 

 

曙「な、何よその顔。気色悪いわね」

 

 

提督「いやぁ…何でもないよ」

 

 

明石(曙ちゃん…かわいそうに。次の犠牲者は曙ちゃんかぁ。…それにしても)

 

 

 

曙「…」ソワソワ キョロキョロ

 

 

 

提督(なんか、すげえあからさまだな。一丁前に推理もどきしてたのがアホらしくなる位)

 

 

提督「…ひとまず、遠征お疲れ様。

ゆっくり休むといい」

 

 

曙「う、うん」

 

 

提督「心ここにあらずって感じだな。

どうした?疲れているのか?」

 

 

曙「!な、何でもないわよ!ジロジロ見んなこのクソ提督!」

 

 

曙(ああ、違う!そんな事が言いたいんじゃない!ほんとはもっと、違う事を言おうと思っているのに…!)

 

曙(ていうか、ボタンは持ってないの?

もしかして明石さん、失敗した?

目論見がバレちゃったりしたのかな?)

 

 

 

提督(何てコロコロと表情が変わるんだ… 可愛いらしいな)

 

提督(そして俺は、今からそんな可愛らしい子を恥辱に染め上げる。うーん、最高だな)スタスタ

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

【提督、扉施錠セリ】

 

 

 

提督「さて、これで今この執務室で何をしても余程の事が無けりゃ誰も来ないだろう…」

 

 

曙「……は?何言ってんのよ?」

 

 

曙(ど、どう言う事?何をしてもって…まさか!)

 

 

提督「と言うことで、それポチッとな」ポチッ

 

 

 

曙(ま、まさか無理やりっ…て、ええ!?)

 

 

提督(さあ、曙。お前には考える時間をも与えん。

感じたままどんな反応をするかを俺に魅せてくれ。

…といっても、急には行動し辛いかな?ならば…)

 

 

提督「…今、この部屋は俺たち以外誰も居ないし、俺たち以外は誰も見ていない」

 

 

提督「だからさ、ほら。安心してこっちにおいで」

 

 

曙「……!てい、とく。」

 

 

明石(バッチリ私がカメラ越しに見てるけどね…ていうか今更だけどこれ、鈴谷ちゃんみたいに何の異変も無いと思われちゃったら終わりなんじゃ…)

 

 

 

曙「……」トコトコ

 

 

ダキッ

 

 

 

明石(躊躇無く行った!しかもそのまま抱きついた!駄目だ、完璧に騙されてる!)

 

 

 

提督「よしよし」

 

 

曙「……クソ提督」ギュー

 

曙(これは、ボタンのせいだから仕方ない…仕方なくクソ提督にこんな事してるんだから…)

 

 

提督「おいおい、そんなに強く抱きしめ無くても、俺はどこにも逃げないぞ?」

 

提督「(って聞いちゃいねえな)…なあ曙。俺に何か、言いたい事は無いか?」

 

 

曙「…言いたい事?」ピタリ

 

 

提督「ああ。ひょっとして、普段言えない様な何かがあるんじゃないか?それを言うといい」

 

 

曙「…いいの?」

 

 

提督「勿論だとも」

 

 

曙「…うん、わかった」

 

 

曙「……ごめんなさい」

 

 

曙「…いつも提督がどれだけ頑張ってるか、私達の為に戦ってくれてるか知ってるのに。私はいつも暴言ばかりで。でもクソ提督…ううん、提督は。そんな私にも優しくしてくれて。私はそれに甘えてばっかりで」

 

 

提督「……」

 

 

曙「本当はいつだって、こうやって甘えたかったのに…いつだって、こうやって抱きつきたかったのに…本当に、ごめんなさい…!」ギュ

 

 

提督「いいんだよ謝罪なんて」

 

 

曙「ううん、謝らせて。ごめんなさい提督。

…その、それとね、もう一つ言いたい事があるの」

 

 

提督「ああ。この際何でも言うといい」

 

 

曙「うん…そ、その。私いっつも暴言や罵倒しか言わないけれどね。それでも私、提督が…」

 

 

曙「…その…大好きだから」

 

 

 

提督「」

 

 

提督(危ない危ない。もう少しで良心の呵責が発生する所だった)

 

 

明石(そこは人間として呵責を感じましょうよ)

 

 

 

提督「…そっか、ありがとうな。

お世辞でも嬉しいぞ」

 

 

曙「!お世辞なんかじゃない!

本当に好きなの!大好きなの!」

 

 

提督「そうか、取り敢えず落ち着け。

実は俺も一つ伝えたい事があってな」

 

 

曙「ッ!嘘じゃないわよ!何なら今すぐにでも」

 

 

提督「実はこのボタン、偽物なんだ」

 

 

 

曙「その、えっちな事も……って、え?」

 

 

曙「…………?」

 

 

曙「…………!?!?」

 

 

 

提督「あれ、もしもし?曙?」

 

曙「…そ、そのボタンが?何ですって?」

 

 

提督「ただの偽物だって」

 

 

曙「じゃ、じゃあ、効果は…」

 

 

提督「当然、まったく無い」

 

 

曙「……」

 

曙「〜〜〜〜ッ!!////////」ボンッ

 

 

 

提督「いやー、まさかなー。こんなにも曙が俺を思っててくれたとはなー。嬉しいよー」

 

 

提督「で、何だっけ?色々って何だ?キスしてくれるのか?じゃあまずはその俺に回したままの腕を解かないとなー。名残惜しいかもしれんが、しょうがないよなー」

 

 

曙「……こ、この、この……!」

 

 

 

ガシィ

 

 

 

提督「ッ!?」

 

 

 

 

曙「クソ提督ーーッ!!」

 

 

 

 

グチャ ゴキッ

 

 

 

 

提督「」

 

 

 

曙「ハァーっ、ハァーっ、…いっ…」

 

 

 

曙「一遍死ね!!」

 

 

 

バタァァァン

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

曙(ど、どうしよう、どうしようどうしよう!

クソ提督にあ、あんな事を…!しかもボタンのせいじゃなくて、あ、あたし自身の意思で…!)

 

 

曙(今までの態度が全部強がりだってわかっちゃった…!全部、隠してたのが出ちゃった…!どうしよう、明日から、あたし…!)

 

 

 

曙(……)

 

 

曙(…でも、さっきみたいな態度だったら)

 

 

曙(…提督、可愛いとか思ってくれる、かな?)

 

 

 

曙「…って、違う!

そんなんじゃなくて、あたしは!」

 

 

曙「…うぅ〜〜〜!!」///

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「成功だ!」

 

 

明石『重傷ですよ』

 

 

提督「なあに、こんな傷…大した事は無い。たかが首が座らなくなって目から血が出始めただけだ」

 

 

明石『(その症状は)まずいですよ!』

 

 

提督「フ、フフ…何て、何て楽しいんだ。

これこそが本当の愉悦だな」ダラダラ

 

 

明石『ちょっ!その出血量はシャレになりませんって!待っててください、今そっち行きますから!』

 

 

提督「大きな星がついたり消えたりしている…大きい…彗星かなぁ?いや、違う、違うな。彗星はもっとこう…バァーて動くもんな…」

 

明石『それマジで見えちゃいけないヤツですって!

提督!?提督ーー!!』

 

 

 

【その後 明石がバケツをかけたら提督は完治した】

 

 

 



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鳳翔の場合。

提督「よおし、気をとり直して。次は誰かな」

 

 

明石『へ!?まだやるんですか!?』

 

 

提督「当たり前だろ?まだまだ俺は満足してないからな」

 

 

明石『いやでも…曙ちゃんが駆逐艦だったから今回ギリギリ致命傷で済んだ(?)ものを、戦艦や空母クラスにやられたら死ぬどころか爆散しますよ?』

 

 

提督「なあに、爆散くらい日本軍人としての誉れさ」

 

 

明石『そろそろあなたを軍人どころか人して認めたく無くなってきましたよ』

 

 

提督「ふぅーむ…に、しても。あれだな」

 

 

明石『?』

 

 

提督「腹が減ってきた」

 

 

明石『ああ、何かと思えば…まあでも、そう言えばさっきから何も食べてませんもんね』

 

 

提督「そうだな…いかん、自覚すると余計腹が減ってきた」

 

提督「でも、食堂には行けないな。鈴谷の言う通りなら、今の俺が食堂に行くのなんて蟻の巣に角砂糖を置くようなもんだ。途端にとんでも無いことになるだろう」

 

 

明石『じゃあ諦めて下さい』

 

 

提督「…いや、かくなる上は…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

鳳翔「少しだけ待ってて下さいね。

軽く、おにぎりとか作りますので」

 

 

提督「いや本当、すみません。

鳳翔さんはただでさえ忙しいのにこんな事…」

 

 

鳳翔「いえ、私が好んでやってる事ですから、気にする事はありませんよ?」

 

 

提督「そう言って貰えると助かります」

 

 

 

明石(執務室から離れたせいで映像は見れないけど、きっとあの薄気味悪い爽やかな笑いを浮かべてるんだろうな…)

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

明石『えっ?鳳翔さんの所にですか?』

 

 

提督『ああそうだ。昼時はそんなに人もいないだろうし、飯を食わせて貰おうと思ってな』

 

 

明石『めちゃくちゃ図々しいですね…』

 

 

提督『まあ流石に鳳翔が忙しそうだったら諦めるさ。

そんな事は無いだろうけど』

 

 

明石『はぁ…(どっからその確信は来てるのか)』

 

 

提督『そして、このボタンも持ってく』

 

 

明石『ああやっぱり。恩を仇で返すつもりですか』

 

提督『仇とは失敬な。俺はただ相手を素直にさせてやってるだけだよ。素直にな…』

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

提督「御馳走様でした。

とても美味しかったです」

 

 

鳳翔「すいません、大した物も出せなくて…」

 

 

提督「いやいやとんでもない。お世辞でも何でもなく、本当に美味しかったですよ」

 

 

鳳翔「ふふ、ありがとうございます。そうだ、お茶にしましょうか」

 

 

提督「お願いします。…そういえば、鳳翔さんもボタンの事は知っているんですか?」

 

 

鳳翔「ええ、流石に。相当噂になっていますからね」

 

 

提督「…そんなにですか」

 

 

鳳翔「おや、提督はそれを知っていたから私の所に来たのでは無かったんですか?」

 

 

提督「いや、まあそうなんですが…予想よりもずっと凄い事になってそうなので驚いてしまって」

 

 

鳳翔「みんな、提督の事が好きですからね。

…最近駆逐艦の子達が構って貰えていないって愚痴をこぼしていましたよ?」

 

 

提督「う。それ、誰が言ってました?」

 

 

鳳翔「それは言えません。ただ、提督もお忙しい身である事は分かっていますけど、少しでも気が向いたら最近話していない子とも話してあげて下さいね?」

 

 

提督「耳が痛いです…できるだけ平等に扱ってるつもりではあるんですけどね」

 

 

鳳翔「提督が一生懸命に仕事を為さっている事は私達誰もが知っています。でも、『人』とは欲張りなもので。どれだけ満たされても、もっともっと…と求めてしまいますからね。」

 

 

提督「そうですね…それでも、彼女達には不満を作ってやりたくはないと思いますよ」

 

 

提督「にしても、最近あまり構っていない娘…

うーん、咄嗟には1人しか思い浮かばないですね」

 

 

鳳翔「あら、誰ですか?」

 

 

提督「今、俺の目の前にいる娘ですよ」

 

 

鳳翔「…ふふ、そうですね。

確かに、こんなに話せたのは久しぶりです。

互いにずっと忙しかったですものね」

 

 

提督「ええ。本当に、久しぶりだ」

 

 

提督「…ねえ、鳳翔さん。まだしばらくは誰も来ないし、忙しくならないよね?

で、俺も仕事がひと段落ついた。

少しだけ休憩を取ってもいい筈だ」

 

 

鳳翔「…?」

 

 

提督「…今、俺の手元にこんな物があるんだ」コトリ

 

 

鳳翔「!それは…」

 

 

 

提督「そこで、質問なんですが。…鳳翔さんは、このボタンを押して欲しいですか?」

 

 

 

鳳翔「……!」

 

 

提督「…どうでしょうか?」

 

 

鳳翔「…あの…そのボタンって、やっぱり…?」

 

 

提督「…そうかもしれないですね」

 

 

鳳翔「…う……」

 

 

鳳翔「……」

 

 

 

提督(黙りこくったか。まあ、思った通りだな。ボタンのくだりは他の子にやるとして、鳳翔はこれで終いに…)

 

 

 

鳳翔「…押して下さい」

 

 

 

提督「…え?」

 

 

 

鳳翔「…そのボタンを、押して貰いたい、です」

 

 

 

提督「…!」

 

提督(これは…ちょっと予想外だな。

…だが、ま、そんな大したことにはならんだろう)

 

 

 

提督「…ああ、わかった。じゃあ、押すよ」

 

 

 

 

ポチッ

 

 

 

 

提督「…気分はどうかな、鳳翔さん?」

 

 

 

鳳翔「…『鳳翔』」

 

 

提督「へ?」

 

 

鳳翔「鳳翔、と。そう呼んで下さい。

さん付けなんて、他人行儀過ぎます」

 

 

提督「!? あ、ああ…分かったよ、

ええと、鳳翔?」

 

 

鳳翔「はい。 …すみません、提督。その、そちらに座っても?」

 

 

提督「え?ああ、どうぞ?」

 

 

鳳翔「ふふっ、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

【鳳翔、提督の隣に鎮座セリ】

 

 

 

 

 

提督「………!?」

 

 

提督(バカな、そちらっていったら普通はこのお座敷の向かい側だろう!まさかの横隣!

…というか近い!主に顔がすげぇ近い!)

 

 

 

鳳翔「…提督」ボソ

 

 

提督「!!な、何かな?鳳翔…さん?」

 

 

提督(咄嗟に『さん』をつけたのは…ここで呼び捨てにしたら、只でさえしなだれかかられているこんな状況が余計まずい事になる…そんな気がしたかr)

 

 

 

鳳翔「…提督はいけずですね。私の事を、親しく思ってはくれないのですか?」イジイジ

 

 

提督「い、いや。その…つい、癖が出てしまって」

 

 

 

鳳翔「…嘘つきな上に、意地悪なんですね。でも…」

 

 

鳳翔「…そんな意地悪な提督も大好きですよ?」

 

 

 

提督「」←耳へと口づけされる

 

 

提督(ど、どう足掻いてもまずかった!)

 

 

提督(まずいまずい!何で、何でこうなった!?

鳳翔さんの顔が紅くなってて、いつも見せないような表情もしてて、どこか艶めかしくて…)

 

 

提督(違う違う、そうじゃない!

ボタンには間違いなく効果が無い!なのに何故ここまでなるんだ!?)

 

 

提督(…まさか、五月雨の時のような『思い込み』でここまで?それだけでこんな、こんな…)

 

 

 

鳳翔「ふふ、提督。今ここで、口付けだけでは無く、その先もやってみませんか?」

 

 

 

提督(こんな…その、色っぽいというか…)

 

 

 

提督「あ、あの、鳳翔?ちょっと落ち着いて…」

 

 

鳳翔「あら、私とは嫌、ですか?」

 

 

提督「いやほら!誰かが来るかもしれないしさ!」

 

 

鳳翔「この時間帯は皆さん来ませんよ。

さっき、提督がそう言っていたじゃありませんか」

 

 

提督「そうだった!い、いや、一回落ち着こうって!」

 

 

鳳翔「……私の事が嫌いなら、そう言ってはっきりと拒絶して下さい」

 

 

提督「や!そう言う事では無くって…」

 

 

鳳翔「…では、愛していますか?」

 

 

提督「愛ッ…!?いや、あの…!」

 

 

 

 

ピーーーーーーーッ

 

 

 

提督「!!ほら鳳翔さんお湯が煮えたみたいですよ!やかんの火を止めにいかないと!」

 

 

鳳翔「!は、はい…」

 

 

 

提督「あ、こんな時間だ!すいません、やはりお茶はいいです!俺執務室に帰るんで!

また会いましょう!!」

 

 

 

鳳翔「あ、待っ…」

 

 

 

提督「それじゃ!」

 

 

 

 

 

【提督、遁走】

 

 

 

 

 

鳳翔「……」

 

 

鳳翔「…や、やりすぎちゃったかしら…?」///

 

 

鳳翔(ボタンが押されると、もっとこう勝手に身体が甘えちゃうとかになると思ってたけど…そうじゃ無かったのね)

 

 

鳳翔(あんな、だ、大胆な事…凄く恥ずかしかったけど…)

 

 

鳳翔(でも、ボタンのせいでもあるからしょうがない…わよね?)

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

提督「…………」

 

 

 

明石『…いやはや、さっきの提督、ぜひとも映像付きで見たかったです』

 

 

提督「てめえ…」

 

 

明石『いやだって…どうしたんですか、あんなに狼狽えて。外道な提督らしくもない』

 

 

提督「…それ以上さっきの事に触れないでくれ」

 

 

明石『ひょっとして提督、典型的な攻められるとダメなタイプの人ですか?』

 

 

提督「触れるなと言ってるだろうが!…いや、まさか鳳翔がああなるなんて思わなくって…意表を突かれたっていうか…」

 

 

明石(ちょっと前までとは別人じゃないかってくらいのヘタレ具合だなぁ』

 

 

提督「声に出てんだよこん畜生が」

 

 

明石『そういえばあんなに急いで逃げてましたけど、偽ボタンも置いて来てしまいましたか?』

 

 

提督「いや、それは何とか回収してきた」

 

 

明石「ちゃっかりしてますねー…」

 

 



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武蔵の場合。

提督「よっしゃ次行くぞ次ィ!」

 

 

明石『うわ、急に叫ばないで下さい耳が痛い!』

 

 

提督「ちっくしょうめ…次この部屋に来た奴…そいつには恥辱で三日三晩寝込むくらいの恥を与えてやる」

 

 

明石『その娘何の非も無いじゃないですか!」

 

 

提督「やかましい、俺の八つ当たりにあたるような時に来た奴が悪いんだ」

 

 

明石『控えめに言っても極悪ですよその思考』

 

 

提督「極悪結構、これはもう決定事項だ!」

 

 

明石『はぁ』

 

 

提督「…と。そうこう言ってる内に誰かが来たな。

この時間帯は…出撃が終わった頃だな。

となると、来るのはその内の誰かか。さぁて?」

 

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

 

武蔵「提督、戦果が挙がったぞ」

 

 

 

提督(武蔵…武蔵か。…武蔵だと?)

 

 

提督(…ふむ…凄いな。パッと考えてみたが、どうなるのかまるで見当がつかないぞ)

 

 

提督(俺の事を相棒と呼んだり、それでなくともいつも頼れる姉御肌で、正直あまり甘えるなんてしなさそうな奴だが…)

 

 

提督(こういう武人肌な奴に限って案外乙女趣味だったりだとか、小動物的なものを抱えてるともいうよな…しかしそれにしてはあんまりにもボロが出なさ過ぎる気もする…俺は兎も角、誰もそんな様子が見た事がないと言うくらいだし)

 

 

提督(どうなんだ?このボタンを目の前で押されたらどうなる?甘えて来るのか、来ないのか?)

 

 

提督(うーむ、正直、本物の方のボタンを使ってみたい程には興味がある、が…)

 

 

提督(…だからこそ本物は使わない。

だからこそ、面白い!)

 

 

提督「おお、お疲れ様。どうだった?」

 

 

武蔵「上々と言った所だ。

…?提督、怪我でもしたのか?」

 

 

提督「?どうした急に」

 

 

武蔵「いや、血の香りがした気がしてな。

気のせいならそれで良い」

 

 

提督「(流石に聡いな)いや、確かに先程書類で指を切った。まあそれだけだ」

 

提督(まさか先ほど駆逐艦にぶっ壊されかけた時の血とは思うまい)

 

 

武蔵「そうか。菌が入ってしまわないように気をつけるんだぞ?」

 

 

提督「分かってるよっ…と」

 

ポチッ

 

 

提督(さ、どうなる。結構俺の事を気にしてるようだから、まあまあ甘えてくるだろうか?そもそもの話、武蔵が俺にラブの感情を持ってるかすらわからないからな)

 

 

 

武蔵「………」

 

 

武蔵「……提督?報告をしても良いか?」

 

 

提督「…ん?あ、ああ。どうぞしてくれ」

 

 

提督(おや…反応がないな。

目の前で押したし、見てないって事は絶対無いが)

 

提督(何だろう、何の変化もないから甘えボタンだと思わなかったとか?)

 

提督(…あ。いや、そもそも。結構早い内から出撃しに行ってたし、ボタンの事を知らないのか?)

 

提督(…だとしたら、馬鹿な事やっちまったな。

…まあいい、取り敢えずは報告を大人しく聞くか)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

武蔵「……以上だ。何か不明な点はあるか?」

 

 

提督「大丈夫だ。全て滞り無し。流石だな。

さて、出撃御苦労。この後はゆっくり休むといい」

 

 

武蔵「ああ、そうさせて貰うよ」

 

 

 

ガチャリ

 

 

 

提督(…?扉の鍵をおもむろに閉めた?一体何を…)

 

 

提督(…何だ?悪寒が…嫌な予感がする)

 

 

武蔵「ところで、だ。貴様がさっき私との会話中に押していたあのボタンだが…」

 

 

提督「あ、ああ。あのボタンは…」

 

 

武蔵「何、流石に知っているさ。何しろ鎮守府中が噂しているからな。だから、そのボタンを押したという意図も良くわかる」

 

 

武蔵「アレをこの武蔵の前で押したと言う事…つまり、私に甘えて欲しいんだろう?」

 

 

提督(…まずい、悪い予感がひしひしとするぞ)

 

 

武蔵「全く、提督も案外恥ずかしがり屋だな。

そんな物に頼らなくとも、私に言えばそうしてやったものを…」ガシッ

 

 

提督「む、武蔵。何故俺の手を掴む?何処に連れて行くつもりだ?おい?」

 

 

提督(うわやべぇ、ち、力強っ!ちょっと抵抗してもびくともしないぞ!)

 

 

武蔵「ははっ、そう怯えるな。…言っただろう?そういった事は凱旋の後で、って」

 

 

提督「そういった事…って…

(しかも俺は仮眠用の寝台に連れてかれて、そこに横たわらせられて…)

 

 

武蔵「おいおい、まだ惚けるつもりか?

…本当はもう解っているのだろう?」

 

 

提督「わ、わからないかなって…ハハ…

…あの、どうなさるつもりで?」

 

 

 

武蔵「一線を越える」

 

 

 

提督「やっぱりか!!ヤメロー!ヤメロー!」ジタバタ

 

 

武蔵「大丈夫、慌てなくてもいい。初めてだというなら心配するな。天井のシミでも数えている間に終わるさ」

 

 

提督「そういう問題じゃねぇ!!お前は上司に強制されたからって身体を差し出すような奴か?違うだろう?一旦落ち着け!ほら深呼吸!」

 

 

武蔵「?落ち着いているが」

 

 

提督「…いいか?お前は今錯乱しているだけだ。俺が変な事しちまったせいでな。それはほんとすまん。許してくれ」

 

 

提督「…で、だ。こういった事はお前も嫌々だろう?俺も望んだものじゃあない。だからさ。どうか無かった事にしてくれないか?…どうだ?」

 

 

 

武蔵「……ああ…そうだな」

 

 

提督(…よかった、分かってくれたか…)

 

 

 

 

武蔵「では始めようか」

 

提督「何も伝わって無かった!ヤメロー!!」

 

 

武蔵「まず提督は大きな勘違いをしている。

この武蔵、そのような事をもし他の人物に強制されようと、絶対に従うつもりはない」

 

 

武蔵「私がこういった事をするのは愛している貴様にだけだ。

だから当然、嫌々、という事は絶対に無い。寧ろ今が至福の時間といってもいい程だ」

 

 

提督「愛し…いやそれでも!一戦を交えて一線を越えるのはまだちょっと早すぎるって!

もう少しお付き合いをしてk」

 

 

武蔵「ええい、ごちゃごちゃと!

そろそろ覚悟を決めろ、男だろうが!

いい加減私も我慢の限界なんだ、抱かせろ!!」

 

 

提督(あらやだ男前)トゥンク…

 

 

提督(って、そんな悠長な事思ってる場合じゃねぇ!誰か助け…鍵は閉まってるし…!

戸も閉まってるから音はあまり漏れない!)

 

 

提督(…!そうだ、明石!明石、助けろ!!アイツはこの光景を聞いてるし見てるはずだ!アイツなら何とか出来るだろう!?)

 

 

 

 

明石(…とでも思ってるんでしょうか)

 

 

明石(ごめんなさい、提督。助けたい気持ちは…まあ少しはあるんですが…)

 

 

明石(どうやら武蔵さん、インカムどころか、裏方の私の事辺りまで気付いているっぽいんですよね。

さっきカメラ越しに2回くらい目合ったし)

 

 

明石(それでいてこういった行為を始めたって事は…多分、『邪魔をするな』って事ですよねー)

 

 

明石「…せめてもの情けとしてカメラの映像は切っておきますか。…ご武運を」

 

 

 

 

 

 

武蔵「さて、観念するんだな……♥︎」

 

 

 

提督「明石!何故来ない!明石ィィィ!」


 

 

 

 

 

アカ……アッーー!

 

 



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ほんのひとまずの区切り。

【工廠にて】

 

 

 

 

明石「…お疲れ様です、提督。

貞操は守り切れましたか?」

 

 

提督「聞かないでおいてくれ」

 

 

明石「あっ、そうですか…」

 

 

提督「…まあ、元はと言えば、相手を選ばずに不用意に押した俺が悪いんだ。その事に対しては誰かのせいにするつもりはねぇよ。

……だがな」

 

 

提督「明石てめえ!てめえ、よくも!!

貴様だけは絶対に許しちゃおかねぇ!!」

 

 

明石「!?な、何で私なんですか!

確かに見捨てはしましたけど、実際に行動を起こしたのは武蔵さんじゃないですか!

それに今、誰かのせいではないって…」

 

 

提督「それはそれ!これはこれだ!

裏切り者には死よりも辛い恥辱を与えてやる!」

 

 

明石「うわぁ、なんていう俺ルール!

って、それ!まさか本物の方のボタンを!

待って!それだけはやめてください!」

 

 

 

提督「ヒヒヒ、今更 命乞いしても遅いわ!

くらえスイッチ…」

 

 

 

 

明石「や、やめ……!!」

 

 

 

 

明石「…なんちゃって」ポチッ

 

 

 

提督「…へ?」

 

 

提督「……あれ?」

 

 

 

明石「…私がこの事態を警戒しなかったとでも思いますか?」

 

 

明石「私は提督が暴走した時用に、もう一つだけボタンを作っておいたんですよ。

…この、『提督が甘えてくるボタン』をね」

 

 

提督「な…に…?」

 

 

明石「…残念ながらあんまり時間が無く、そっちのボタンよりも射程距離は短い物にしか出来ませんでした」

 

明石「よって今のでは完璧な催眠状態にはできませんでしたが…あと少し…数歩ほど近づいてこれを押せば…」

 

 

提督「…お、おい馬鹿、止めろ。止めてくれ」

 

 

提督「と、いうか!お前俺の事があんまり好きでもないだろ!?やめといたほうが良いって!」

 

 

提督「ほら、ただのうざい上司から甘えられるなんて、たまったもんじゃないだろ!?」

 

 

 

明石「……その前提が、間違っていたとしたらどうです?」

 

 

提督(?前提が間違って…?一体何の…)

 

 

提督「…っておい!馬鹿、止まれ!こっちに来るな!!やめ…おま…お……!」

 

 

 

 

提督「俺の側に近寄るなァーーーッ!!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

この時に何があったのか?それは、提督も明石も一言も語ろうとしない為に、今でも深い闇に包まれてる。

 

 

ただ、その後を見た娘の証言によると、提督は天国と地獄を同時に見たような魂の抜けた表情を。そして、明石はただひたすらに満足気な顔をしていたという。

 

 

また、この後、この時の明石が作った『提督が甘えてくるボタン』の存在を巡り、新たな戦いがこの鎮守府内では勃発するのだが、それはまた別の話……

 

 

 

 

 




まだまだ続きます。
というよりこちらから先の方が圧倒的に長いです。


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龍田の場合、真。

 

提督「……」

 

 

龍田「あら?どうしたんですか、提督?」

 

 

提督「!龍田か。いや、少し天龍に用がだな」

 

 

 

【現在位置:龍田+天龍部屋前】

 

 

 

龍田「そうなんですか?天龍ちゃんならさっき駆逐艦の娘達と何処かに行っちゃいましたけど」

 

 

提督「なんだ、そうか…それなら、また後で来よう」

 

 

龍田「あら、大事な用事じゃなかったんですか?」

 

 

提督「ん…まあ別に、大した用事でもないからな。

また時を改めて来るさ」

 

 

龍田「そうだ、提督。それなら私達の部屋で天龍ちゃんの帰りを待ちませんか?」

 

 

提督「……何?」

 

 

龍田「多分そんなに遅くならないと思いますし、少しくらいならいいですよ」

 

 

提督「……ッ」

 

 

 

提督(さて、俺が此処まで来た理由。

それは、言うまでも無くボタンの為である。)

 

 

提督(がしかし。ボタンといっても偽物の方では無い。と言うのも、明石に本物の方の実験をするように頼まれたのだ。)

 

 

提督(相手は誰でもいいとの事で、俺は天龍辺りを相手にその実験をやるつもりだったが…)

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

明石『あ、そうだ。提督。

誰でも良いとは言え、相手は選んで下さいね?』

 

 

提督『あ?何でだよ』

 

 

明石『いや、提督がもしかしてこのボタンの事を都合よく勘違いしてるんじゃあないかと思いまして』

 

 

提督『…?いやに回りくどいな。何が言いたい?』

 

 

明石『つまり、それの効果を解除しても、都合よく記憶が無くなったりとかはしませんからって事です』

 

 

提督『…そうなのか』

 

 

明石『やっぱりそう思っていたんですか』

 

 

提督『…まあその可能性も無くはないと思っていたが…でも何だかんだそういった機能もついてるのかと』

 

 

明石『常識的に考えてそんなご都合的な機能あるわけないじゃないですか』

 

 

提督(それを言うならそのボタン自体…

…いやまあ、何も言うまい。)

 

 

明石『ともかく、もし押す相手に提督を嫌ってる娘…は居ないとしても、感情的になりやすい…所謂ヤバイ娘にやったら…』

 

 

提督『惨殺死体の一丁あがり、になりかねないという事か』

 

 

明石『ボタンの効果を解除した時、冗談抜きでそうなりかねませんからね…なので、相手はちゃんと選んで下さい』

 

 

提督『…ああ、十分解ったよ…』

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督(俺も流石に死にたくはないからな…相手は選ぼうと心に決めて、結果天龍にしようとしたんだが…)

 

 

提督「…済まない、そうさせてもらおう」

 

 

龍田「じゃあ、ちょっとだけ待ってて貰えます?」

 

 

提督「ああ」

 

 

提督(天龍が居なく、部屋に龍田と2人きり、か…

…フフ、好奇心がツンツンと刺激されるな…)

 

 

 

提督「…済まんな明石、俺は死ぬかもしれん」ボソリ

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 

提督「お邪魔するよ」

 

 

龍田「はい、どうぞ」

 

 

提督「おお、中々片付いてるじゃないか」

 

 

龍田「あまりじろじろと見ないで下さいねー?

あんまり見る様なら…」

 

 

提督「はは、済まん済まん。

すぐやめるから勘弁してくれ」

 

 

龍田「では其処にでも座ってください。

私はお茶でも淹れてきますので」

 

 

提督「ああ、頼む」

 

 

 

提督(…さて。)

 

 

提督(…部屋に入って、ボタンをすぐ押す事は出来た。なのに何故俺はそれをしなかった?)

 

 

提督(答えは簡単。俺は恐怖しているのだ)

 

 

提督(というのも、俺が恐怖しているのは死そのものではない。まして、龍田でもない。自分が死んで、こういった行為をする事が出来なくなってしまう事が怖いんだ)

 

 

提督(それ程までに俺はこの娘らの何時もと違う顔を見たい…それ程までに、俺は恥辱に塗れさせたい)

 

 

提督(…だからこそ、俺は自分を裏切れない。

こんな、絶好の獲物を逃せない!)

 

 

 

龍田「提督、お茶が入りましたよ〜」

 

 

提督「……」

 

 

龍田「提督?」

 

 

提督「…許せとは言わん。だが、済まん。」

 

 

龍田「?何を…」

 

 

提督「喰らえ、龍田!」

 

 

 

ポチリ

 

 

 

龍田「あ……」

 

 

龍田「………」トロン

 

 

 

提督(頬が紅潮し、いつも隙の無い龍田が夢うつつのように…成る程、本物はこうなるのか)

 

提督(さて、明石曰く、これが発動した状態の『甘える』は各人によって基準が異なるらしいが…

龍田は果たしてどうなるのか?)

 

 

 

龍田「…提督。急ですいませんが、一つお願い事を聞いてもらっても良いですか?」

 

 

提督「(早速来たか)…取り敢えず、内容を言え」

 

 

龍田「…そうですね。私のお願いは…」

 

 

提督「……ッ

(さあ、どうなる?鬼が出るか?蛇が出るか?)」

 

 

龍田「…右手を、出して貰ってもいいですか?」

 

 

提督「……?

(手?手だと?何を考えている?解らん、解らんぞ)

 

 

龍田「どうですか?」

 

 

提督「…わかった!良いだろう!」←ヤケクソ

 

 

龍田「ふふ、ありがとうございます。それじゃあ…」

 

 

提督(ッ!何だ?何が来る?…駄目だ解らん!

今、俺は初めてこいつが怖い!)

 

 

龍田「うふふ、準備は良いですか?」

 

 

提督「…っ!や、やっぱり待っ…!」

 

 

 

ギュッ

 

 

 

提督「…って、あれ?」

 

 

提督(手を…握ってきた。所謂恋人繋ぎ的な状態になってるな。…あれ?これで終わり?)

 

 

龍田「…う、ふふ。

提督の手って、大きくて格好良いです」

 

 

提督「えっと…龍田、さん?」

 

 

龍田「…もう少しだけ握らせてもらっても良いですよね?あとちょっとで良いので…」

 

 

提督(まさか…)

 

 

提督「…なあ、他の事はしないのか?」

 

 

龍田「?他の事…例えば、何ですか?」

 

 

提督「ほら、例えばキスとか、それこそセ」

 

 

龍田「…ッ!随分といやらしい事を考えてる様で!///」ギリギリ

 

 

提督「ッ!い痛ててて!

分かった分かった、俺が悪かったから!」

 

 

龍田「全く…そんな破廉恥な事、もう二度と言わないで下さいね?」

 

 

 

提督(……い…)

 

 

提督(意外!龍田は超ピュアだったッ!)

 

 

提督(いやいや、意外すぎるだろう!じゃあいつものあの余裕有りげな態度は何だったんだよ!)

 

 

提督(ていうか『甘える』の基準が手を繋ぐって…!思春期の中学生じゃあるまいし!)

 

 

提督(…じゃあ、もしかして今、こうやったら…)サワッ

 

 

 

龍田「きゃっ…!」ビクッ

 

 

提督(『きゃっ』だって?あの龍田が…?)

 

 

提督「…明石、お前やっぱり天才だ」ボソッ

 

 

龍田「て、提督…!その右手、切り落としますよ!」

 

 

提督「はは、済まなかった…なっ」

 

 

ポチリ

 

 

提督(さて、十分過ぎる程に可愛らしい事も分かったので、解除!…さあどうなる?)

 

 

 

龍田「あっ……」

 

 

 

提督(…せめて四肢が残ればいいが)

 

 

 

龍田「……」

 

 

提督「……?」

 

 

 

龍田「……」プルプル

 

 

 

提督(な、涙目に…!)

 

 

龍田「…そのボタンは、何なんですか?提督」

 

 

提督「あ、ああこのボタンは…」

 

 

提督「…『相手を素直にするボタン』だよ」

 

提督(…!何を言ってるんだ、俺は。

ここはせめて正直に事を言って謝るべきだろう。

なのに、何ゆえ嘘を重ねるんだ)

 

 

龍田「…素直に、なる…?」

 

 

提督「ああそうだ。で、素直にした結果が俺の手を繋ぐ、というお前の行動だ。」

 

提督(嗚呼 駄目だ。最早口が止まらん。

てか俺自身、もう止まれない)

 

 

龍田「…ふふ…」

 

 

提督「ちなみに、さっきの行動はどういう意図だったんだ?もしかして、甘えていたのか?

それなら俺は随分と慕われてる様だが…」

 

 

龍田「そ、それは…」

 

 

提督「『それは…』何なんだ?

ぜひとも、聞かせて貰いたい」

 

 

龍田「…それは…その…えっと…す…」

 

 

提督「聞こえないな、大きな声で言ってくれ」

 

 

 

龍田「……ば……」

 

 

 

提督「ば?」

 

 

 

龍田「……バカッ!」

 

 

 

 

パシーン

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「お帰りなさい提と…うわぁ凄い紅葉」

 

 

提督「ただいまー。いやぁ痛いの何の。

こりゃ腫れるな」

 

 

明石「もう既に腫れてますよ。だから相手は選ぶ様言ったのに…誰にやってきたんですか?」

 

 

提督「龍田だ」

 

 

明石「本当に馬鹿なんですか!?」

 

 

提督「確かに止めようとしたんだけどな…

囁いたんだよ、俺の中のゴーストが…」

 

 

明石「うっわ痛々しい。

…あれ?本当に龍田さんにやったんですか?」

 

 

提督「?ああ。こんな事で嘘を吐いてもしゃーないだろう」

 

 

明石「いやそうなんですけど…

…それの割には軽症すぎる、様な…」

 

 

提督「…どうやら、お前も彼女の事を誤解しているらしいな。さっきまでの俺のように」

 

 

明石「?それって…?」

 

 

提督「これ以上は言わん。ていうか頬が痛くて話す気になれん。つー事で湿布貼ってくる」

 

 

明石「アッハイ、どうぞいってらっしゃい…」

 

 




これ以降はサブタイトルに使ったボタンが本物の方か偽の方であるかを記載していきます。(といっても本物であることが殆どですが…)
また、一応の時系列として前回からの後日談です。


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不知火の場合、真。

 

 

 

【某日】

 

 

 

 

提督(ボタン騒動から数日たった。)

 

 

提督(ボタンについては今もかなり話題にはなっているらしい。だが、情報の流れとは激しいもので、今はこの話題で持ちきりとまではもういかないんだと)

 

 

提督(結果として多少は平穏な日常が戻ってきたという訳だ)

 

 

提督(…だがしかし。そうして少しでも周りが油断している時こそ、最も人を騙したり計ったりするのがやりやすい時期だ)

 

 

提督(だから俺は今日も今日とて仕事をしながら、誰かに向かってボタンを押す。ただ愉悦を得る為だけに)

 

 

 

 

提督「さて、今日も一日お仕事だ。

今日の秘書艦は不知火か。」

 

 

不知火「はい。どうぞ宜しくお願いします」

 

 

提督「はは、相変わらず堅いな。俺の前でくらいもう少し肩の力を抜いてもいいんだぞ?」

 

 

不知火「いえ、そういう訳にもいかないので」

 

 

提督「…ま、お前がそれを望んでるならいいさ」

 

 

提督(さて、今回も本物の方を使っていこう。

あと少しデータが欲しいとも言われたし、俺自身、こっちをやってみたかったからな)

 

 

提督(で、今回のターゲットは不知火か。

…無口で自他共に厳格な娘だが、はてさて。

一体どんな風に甘えてくるんだろうなぁ。)

 

 

提督(案外、ベタベタに甘えてきたりして?

全くイメージがつかないけど、前例的にそうならない可能性も無い訳じゃねえからなぁ)

 

 

提督(不知火の『甘える』の基準がどんななのかも少し気になるな。コイツの恋愛感というか、成熟具合というかも多少見てみたい…)

 

 

提督(……)

 

 

提督(…もしこれで、俺が偽の方のボタンを押すとどんな反応するだろうか…?)ウズリ

 

 

提督(顔を赤くして何かしてくるか?

はたまた、あくまで冷静なままで甘えてくる?)

 

 

提督(いや、それとも。これが偽物だと見破ったりして、たしなめてくるのか?)

 

 

提督(…うん、本物はまた別の娘でもいいな)

 

 

提督(という事で、明石すまん、データはとれない。不知火に対してはこっちを…ダミーの方を使おう。

もうそっちが気になってしょうがない。)

 

 

不知火「司令官?どうかしましたか?」

 

 

提督「ああいや、どうもしていないさ」

 

 

不知火「そうですか。どこか上の空だったように見えたので、声をかけたのですが…」

 

 

提督「何、大丈夫さ。

そんな事よりちゃっちゃと仕事をやっちまおう」

 

 

不知火「…解りました」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「…良し、取り敢えずこんなもんかな」

 

 

不知火「ええ。お疲れ様でした、司令官」

 

 

提督「ああ、お前もな。」

 

提督「…そうだ。以前、美味そうな氷菓子を買ってきたんだ。それを出そう」

 

 

不知火「いえ、私は…」

 

 

提督「まあまあ、遠慮するな。秘書艦としての役得と思って貰っておくといい」

 

 

不知火「ではそうさせてもらいます」

 

 

提督(あと、これの謝罪って事でな)

 

 

 

ポチッ

 

 

 

提督(さあ、いざぁ)

 

 

不知火「…!」

 

 

不知火「…司令?如何なされましたか」

 

 

提督「…む」ポチッポチッ

 

 

不知火「どうしたのですか、そのような物を向けて。不知火に何か、落ち度でも?」

 

 

提督(…へえ?成る程ね)

 

 

提督「いやぁ、すまんな。どうしてもやってみたい事があってな。」

 

 

不知火「…そうですか」

 

 

提督「ああ。例えばこんな事とかな」

 

 

ポチッ

 

 

不知火「何を…… ッ!?」

 

 

提督「さあ、何だろうな?」

 

 

不知火「…あ、あの。司令、官?」モジモジ

 

 

提督「しぃーっ…言わなくていい。

言わずとも解るさ。今、猛烈に思ってるんだろう?『俺に甘えたい』ってな」

 

 

不知火「…っ!」///

 

 

提督(ひゅう、流石明石印の本物だな。

相変わらず効果はバツグンだ)

 

 

不知火「で、では…その…」

 

 

 

提督「駄目だ」

 

 

 

不知火「…え?」

 

 

提督「不知火。お前さっき、俺が偽物のボタンを押した時にまったく反応しなかったよな。何故だ?」

 

 

不知火「何故、とは…」

 

 

提督「俺の考えでは。お前はこの偽物の存在を、やられた誰かから、既に聞き出しておいたんだろう」

 

 

不知火「……!」

 

 

提督「全く、ずるい娘だよな?そんな娘には罰を与えない限り俺に甘えさせてやらない。」

 

 

不知火「…えっと、その、罰とは?」

 

 

提督「…俺が偽物を押した時、甘えなかった理由を言え。そして、その後に『甘えさせて下さい』ともな」

 

 

不知火「なっ…!」

 

 

 

提督(『本物』の効能。それは、相手はどうしようもなく俺に甘えたくなる、だ。)

 

提督(効能はただのそれだけ。それ以外は何も無い。解除した時記憶を消す事も無い)

 

提督(そう、羞恥を薄くしたり、無くしたりも無い。それでも甘えてくるのは、その欲が羞恥すら上回る為…)

 

提督(つまりはこういう事だ、俺がやりたいのは!ちと目論見とは違ったが、これはこれで良し!)

 

 

提督「さあ、言うのか?言わないのならば、俺は絶対に貴様を甘えさせたりはしない。

それも今だけではなく、二度とな」

 

 

不知火「…!」

 

 

不知火「……」

 

 

不知火「…し、不知火は。そのボタンについての真偽を知るべく情報を集めて、結果、その偽物の存在を知りました」

 

不知火「偽物とは言えボタンを押され、それでも甘えなかったのは… し、司令にはしたない娘だと思われたくは無かったからです」

 

不知火「…そのような小賢しい真似をしてしまい、申し訳ありません」

 

 

不知火「なので…その…」

 

 

不知火「…あ」

 

 

 

不知火「あ、甘え、させて下、さい…!」///

 

 

 

提督「……」

 

 

不知火「あ、あの…?」

 

 

提督(恥ずかしげに下を向きながら、顔を真っ赤にし、尚且つ俺の目を上目遣いで見ながらのこの懇願…

うーん、たまんないな)

 

 

提督「…良いだろう甘えさせてやる」

 

 

不知火「!!そ、それでは」

 

 

ポチッ

 

 

提督(但しこのボタンは解除するがな)

 

 

不知火「…し、司令官…」///

 

 

提督「どうした?来ないのか?」

 

 

 

不知火「……う」///

 

 

不知火「…うう…」プルプル

 

 

提督(愉しい)

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「で、その後はどうなったんです?」

 

 

提督「そこまで言ったらもう変わらないと思ったらしくてな。半分ヤケクソみたいな感じで甘えてきたよ。顔を赤墨みたいにしてな」

 

 

明石「そうですか…だからそんな、かつてない程に気味悪い顔をしているんですか」

 

 

提督「いやぁ楽しかった。ほんと楽しかった。

こういう事してるとなんか生きてるって感じがするよ。やっぱお前は天才だな」

 

 

明石「よ、よして下さいよ…正直、今そんな事言われても、ただ怖くて全然嬉しくないですって」

 

 

提督「はは。今度からはお前の発明品の実験にも幾つか付き合ってやろうかな」ニコニコ

 

 

明石「ハハ…ありがとうございます…」

 

 

明石(…今度からはできるだけ実験の事を提督に知らせないよう気をつけようかな)

 

 

 

 



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山風の場合、真。

提督「とりあえずデータはとってきたが、どうだ?」

 

 

明石「かなり良いですね。どうやら、2回とも暴走や不発する事無く発動してるようです」

 

 

提督「実際そうだったよ。

…ん?不発はともかく暴走ってなんだ?」

 

 

明石「あーっとですね。…平たく言うと病みます」

 

 

提督「…精神病とかそういう意味じゃないよな、勿論」

 

 

明石「そうですね。まあ、例を挙げるとしたら監禁しようとしたり自傷行為をしようとしたり…

最悪、提督自身がそうなってたかも」

 

 

提督「なんだそりゃ。おっかねぇ…」

 

 

明石「今調整も入れるつもりなので、もうそんなことは無いでしょうけど」

 

 

提督「それでも、もしそうなってたらと思うと…ぞっとしないな。…ん?ていうか」

 

提督「お前、そうなる可能性があるような物を俺に渡し、しかもそれを言わないで実験させてたのか」

 

 

明石「…あっ」

 

 

提督「…前言撤回。お前の実験にはこれから付き合わん」

 

 

明石「えぇー…

…じゃあ、このボタンももう使わないんですか?」

 

 

提督「…いや、もうちょっと。もうちょっとだけ使う」

 

 

明石「…実験にはもう付き合わないんじゃあ」

 

 

提督「うん。実験云々ではなく俺自身がこれをもうちょいやってみたいからな。少年のような純粋な好奇心ってやつだ」

 

 

明石(うーん、この…本当、どうしてこの人が皆に好かれてるんだろう。ていうかどの口が純粋なんて言う、どの口が)

 

 

提督「では、そのお楽しみの時間に行ってくる」ヒョイ

 

 

明石「!?も、もう行かれるんですか!?

さっきここに来たばかりじゃないですか!」

 

 

提督「休息をする時間があるならば、俺はその分の時間をこのボタンに費やす。なんてったってそれが極上の癒しになるからな。と言う事で!」

 

 

明石「あっ、待っ…!!」

 

 

 

パタン

 

 

 

明石「…行っちゃった。ど、どうしよう…」

 

 

明石「…まだあのボタン、整備し終えて無いのに…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

提督(さあ、工廠を出て…向かうは白露型の所だ。

アイツは多分そこにいるからな)

 

 

提督(アイツは…そう、山風はな)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

山風「……」

 

 

提督「!居た!」

 

 

山風「ひッ…!な、何…!?」

 

 

提督「おっと、すまん。声に出てしまった。

実はさっきから山風を探していてだな」

 

 

山風「わ、私?何か用なの…?」

 

 

提督「いや、大した用事じゃあ無いからな。

まあそんなに気を張らなくていい。

ただお前を猛烈に構いたくなっただけだ」

 

 

山風「や、やっぱり…!

放っておいてって言ってるのにぃ…!」

 

 

提督「ははは、すまんすまん」ワシワシ

 

 

山風「きゃっ…!や、やめてよ…!

撫でないでよ…!」

 

 

提督(口元が緩んでる事には気づいてないか。

全く、可愛い事だ)

 

 

山風「やめ、やめてよぉ…!」///

 

 

提督「……」ピタッ

 

 

 

山風「……?」

 

 

提督「…ごめん山風。少しでもお前と仲良くなろうと思って無理矢理やっていたが…もしかしなくとも有り難迷惑だったみたいだな」

 

 

山風「…え?」

 

 

提督「いやすまん山風。今までの拒否も嫌よ嫌よも好きの内的な風に都合よくとっていたんだが…急に本当に嫌がっているんじゃないかと思ってな」

 

 

山風「…え、えっと…提督?」

 

 

 

提督「というか、最初からお前は構わないでくれと俺に言っていたもんな。

それを勝手に良い方向に捉えたのは俺だ」

 

 

山風「あの、その…あ、あたし…」

 

 

提督「悪かったな山風。今度からはもうこういう事をしないから、安心してくれ」

 

 

山風「違…て、提督…待っ…」

 

 

山風「待って、その…」

 

 

山風「うぅ……」ジワリ

 

 

 

提督(で、ここで発動!)

 

 

 

ポチリ

 

 

 

山風「う……!?」

 

 

山風「……」

 

 

提督(さあ、お前が隠してるつもりの甘えっ子ぶりを見せるんだ、山風)

 

 

山風「……」スタスタ

 

 

ギュッ

 

 

提督「(やはりこう来るか)おいおい、どうした山風?そんな、無理しなくていいんだぞ?)

 

 

山風「…」ギュウウウ

 

 

提督「(反応なしか)それとも何だ?

まさか、本当は構って欲しかったとか?」

 

 

山風「……」

 

 

山風「構わ、ないで」

 

 

提督(おや?)

 

 

山風「構わないで」

 

 

提督(…?抱きついてきているのに、構わないで?

何と言うか…ちぐはぐだな)

 

 

提督「構うなと言われても…こうされちゃあな」

 

 

山風「あたしを見て」

 

 

提督「…?」

 

 

山風「あたしを見て。あたしを撫でて。あたしに触れていて。あたしを、愛してよ」

 

 

提督(…まずいな、雲行きが怪しい)

 

 

山風「提督、あたしを見つめ続けて。あたしから目を逸らさないで。…あたしに、ずっと体温を感じさせて。ずっと、貴方を感じさせて。

貴方を、ずっと、ずっと……」

 

 

山風「ねえ、だからお願い、提督…」

 

 

 

 

山風「あたし以外を構わないで…」

 

 

 

 

提督(……ッ!)

 

 

提督(…いやまあ、正直、そんな気はしてたが…!)

 

 

提督(山風は沈んだり、置いていかれる事を怖がる。…そりゃ皆多かれ少なかれそうだが。この娘は特にその傾向にある)

 

提督(それ故、誰かへ向ける愛情も重いとちょっと予測していた…いた、けれども…)

 

 

 

山風「お願い…だから…!」ギュウウ

 

 

提督(まさかここ迄とは…痛てて、これは抱きつきというよりちょっとした鯖折りだぞ山風)

 

提督(…何とか宥めようにも、俺に抱きつきながら顔を埋めているせいでどんな表情なのかすら解らないな)

 

 

提督「あー、悪いがちょっと離れてくれ。

話しにくくてかなわん」

 

 

山風「…答えて…!そうしたら…離れる、から…!」

 

 

提督(それまでは離さないつもりか。…あ、でも力は弱まってら。やっぱり危害を与えるつもりは無いんだな)

 

 

提督(さて、俺はどうすべきか?)

 

提督(自業自得とは言えこれで断って、結果危害を与えてこないとは限らないし。かといって嘘を吐くのもマズイ事になるだろう)

 

 

提督「…そうだな。

お前以外と話さないとなるとこの鎮守府が全く機能しなくなる。それは論外だ。」

 

 

提督「つまり、答えは『NO』だ」

 

 

山風「……!」

 

 

提督(…まあ、俺はあくまで『提督』として振る舞おう。なる様になるだろ)

 

 

山風「…嫌!」

 

 

山風「嫌だ、嫌だよ!あたし、あたし…!

皆に…提督に置いていかれたくない、捨てられたくない!」

 

 

山風「愛想を、尽かしてもいいから…!

あたしを嫌いになってもいいから…!

だから、お願い、お願い…!!」

 

 

山風「あたしを、見捨てないで…!

あたしを見つめて…見捨てないでよ…!」

 

 

提督「…落ち着け。山風」

 

 

 

山風「うう…ぐすっ」

 

 

 

提督「俺は確かに山風以外を構うなという要求に応じなかったけど、何でそれが置いていかれるとかの話になるんだ。

俺、そんな事言った事あったか?」

 

 

山風「……」フルフル

 

 

提督「…だよな。じゃあ、何でそう思ったんだ?…ほら、顔をちゃんと見せて言ってくれ」

 

 

 

【提督、半ば強引に顔を上げさせる】

 

 

 

山風「ぐすっ…だ、だって、あたし…」

 

 

山風「まだ練度もあまり高くないから、性能もあまり良くないし…他の娘はみんな強いし、かわいいから」

 

山風「だから!…だから、あたし以外と関わってたらあたしは要らなくなっちゃうから…!」

 

 

山風「だから提督は、あ、あたしだけを見てて欲しくて…!あたし…!!」

 

 

提督「…確かに、お前は練度は高くないな。

で、他の娘のが強いってのも確かだ」

 

 

山風「ッ!!」ビクッ

 

 

提督「でもな。重要な事を忘れてるぞ。

…どっちかって言うと勘違いかもしれないがな」

 

 

提督「それは、お前も可愛くて、魅力的で。

で、お前に変わる娘は何処にも居ないって事だよ」

 

 

山風「……」

 

 

提督「あー、だからな?俺が勘違いさせたかもわからないが、置いて行ったり、捨てるなんて事はしない」

 

 

山風「…ぐすっ」

 

 

提督「此れからも俺は他の娘にもお前にも構うし、

お前の事もずっと見守るつもりだよ。

…口約束じゃあ信じられないか?」

 

 

山風「…うん」

 

 

提督「そっかぁ…どうすりゃ信じてくれるかな…」

 

 

山風「…たら、信じる」

 

 

提督「ん?」

 

 

山風「…キスしてくれたら信じる…」

 

 

提督「」

 

 

提督「…いや、山風?それはちょっと」

 

 

山風「や、やっぱり嘘、なんだ…」

 

 

提督「いや、そんなまさか!しかし…」

 

 

山風「……ん///」

 

 

 

提督(ダメだ聞いてない!ただ目を閉じて待機してやがる!まずい、どうする?どうすればいい?この状況を何とかして切り抜けるには…)

 

 

 

提督「……ゆ……」

 

 

提督「…許せ!」

 

 

トンッ

 

 

山風「ぁ…」カクッ

 

 

 

【山風、気絶セリ】

 

 

 

提督「…済まんな、本当に済まん。

だが、これしか方法が無かったんだ…」

 

 

提督「あの状況で解除してたら恥ずか死んでたかもしれないし、かと言って本当にする訳にもいかんし…」

 

 

提督「…ま、これに免じて許してくれ」チュッ

 

 

 

【額へのキス→親愛】

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「ただいまー」

 

 

明石「あ、提督!無事に戻ってきましたか!

いや、というのもですね…」

 

 

提督「なあ明石。

このスイッチ、故障したんじゃねえか?」

 

 

明石「というか整備の途中だったんですって!

…でも、何事も無かったようですね。」

 

 

提督「いや有ったよ。相手が病んだぞ」

 

 

明石「……え?」

 

 

提督「ああ、そうだ。急に思いつめたり、口づけを要求してきたりした。信じたくないかも知れないが、これはれっきとした…」

 

 

明石「…いや、そんな筈はないですよ?

スイッチの故障でそうなった娘相手では、提督でもかなり危険な状況になりかねませんし」

 

 

提督「…何?」

 

 

明石「ああ、ほら。記録を見ると、実際正常に稼働してますよ。」

 

 

提督「……ええと、つまりさっきまでの相手は」

 

 

明石「ただの素、って事になりますね」

 

 

提督「……」

 

 

明石「…あの、提督。

どの娘に用いてたんですか?」

 

 

提督「ノーコメントで」

 

 

 



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長門の場合、真。

提督「…ふーむ」

 

 

明石「…珍しく悩んでますね。まあまた碌でもない事についてなんでしょうけど」

 

 

提督「碌でもないとは心外な。

ただ単に次はどの娘にするかを考えてただけだ」

 

 

明石「やっぱり碌でもないじゃないですか」

 

 

提督「よし決めた、今度は長門に対してやってみるか」

 

 

明石「長門さん、ですか。

これまた意外と言うか何と言うか…」

 

 

提督「こんな機械でも無いとしてきそうに無いからな。まあ妥当っちゃ妥当だろうよ」

 

 

 

明石「そうかもしれませんが…

…その、大丈夫なんですか?」

 

 

提督「…何が言いたい?」

 

 

明石「その、何というか…

武蔵さんの時みたいに」

 

 

提督「あーやめろやめろ皆まで言うな」

 

 

明石(半ばトラウマになってるなぁ)

 

 

提督「…まあもしそうなったらダッシュで逃げるさ。で、アフターケアは翌日の俺に任せる」

 

 

提督「…本当はそうなったらお前に助けて貰えたら嬉しいんだが」チラッ

 

 

明石「?」チラッ

 

 

提督「後ろに誰も居ないわ」

 

 

明石「…まあ、行けたら行きますよ」

 

 

提督「来ないって事だな。OK、知ってた」

 

 

提督「…それじゃあまあ行ってくるよ。異様に遅れて来たり帰って来た俺がげっそりしてたら何かもう察してくれ」

 

 

明石「何故にそんな悲壮な覚悟を決めてまでわざわざ往くんですか…」

 

 

提督「勇猛で凛々しい娘を猫可愛がりするのって何かいいじゃん」

 

 

明石「知りませんよ」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

【in執務室】

 

 

 

 

長門「失礼する」

 

 

提督「おう長門。済まないなわざわざ」

 

 

長門「いや…ところで、用事というのは?」

 

 

提督「まあ、ちょっとな。

大事なんだが、騒ぐような事でも無く…」

 

 

長門「…随分とまどろっこしい言い方だな」

 

 

提督「ああ、うん。自覚してる。

…そうだな、取り敢えず扉の鍵閉めとけ」

 

 

長門「?ああ、解った」

 

 

ガチャ

 

 

提督「ん、すまんな」

 

 

長門「いや、構わないが…

一体、どうしたんだ?」

 

 

提督「わざわざ呼び立てた理由は、これだ」スッ

 

 

長門「これは…?」

 

 

提督「ほら、お前進水日だったろう?

丁度その日に祝う事ができなかったから、せめてものお祝いとして、プレゼントさ」

 

 

長門「…成る程。」クスッ

 

長門「ありがとう、提督。嬉しいよ。

ここで開けてもいいか?」

 

 

提督「ああ、良いぞ。

ただ…あー…大した物じゃ無いが…」

 

 

ガサガサ

 

 

長門「これは…ぬいぐるみ?」

 

 

提督「少し子供っぽいかも、とも思ったが…可愛いだろう?どうだ、気に入ったか?」

 

 

長門「…確かに可愛いが…少し、可愛らしすぎるよ。

もっと小さい娘達…駆逐艦の娘達なら似合ったかもしれないが、この長門には少々…」

 

 

提督「そんな事は無いがな。

俺にとっちゃ、お前もまだまだ小さい娘達の一人さ」

 

 

長門「背丈は貴方と同じくらいだろう?」

 

 

提督「いや、そういう意味の『小さい』じゃ無くてだな…まだまだうら若いというか」

 

 

長門「年齢も、提督よりずっとずっと上さ。

うら若いなんて言うような年齢じゃないぞ」

 

 

提督「実際の問題じゃ無いさ。俺個人はお前達の事をまだまだ年端もいかない娘位に思ってるんだ」

 

提督「…すまん、不愉快かもしれないが、お前達の指揮を執っているとどうしてもそうとしか思えなくてな」

 

 

長門「…いや、不愉快じゃないさ」

 

 

長門「私達をただの『兵器』と扱う者も居る中で、私達を指揮してくれている人物がそういう考えだというのは、個人的には有難く思う。…それに…」

 

 

長門「…このぬいぐるみ。

これでも結構気に入ったからな」

 

 

提督「そうか。…ま、じゃなきゃ、そんな嬉しそうな顔はして無いだろうしな」

 

 

長門「解っていたのに、わざわざ言っていたのか。全く、性格が良い事だ」

 

 

提督「はは、言葉通りに受け取っておくよ」

 

 

長門「…ところで、何故わざわざ鍵を?

これだけならばわざわざ閉めなくても…」

 

 

提督「ん?誰かが来ちまったら気恥ずかしいな、と思ってな。そんな大した理由では無いさ」

 

提督「…あと、そうだ、もう一つ理由がある」

 

 

長門「?それは?」

 

 

 

提督「用事はこれだけじゃあ無いから、かな」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

提督(押したのは本物、状況も結構良い。

さあ、どんな反応を見せる?)

 

 

 

長門「……」ギュッ

 

 

提督「(うおう、いきなり抱き寄せられた)

お、おや、どうした長門?」

 

 

長門「…すまない。

急に愛しくて堪らなくなってしまってな。

…嫌ならば直ぐ離れる」

 

 

提督「う。いや、構わないが…」

 

 

長門「…そうか」

 

 

長門「…〜♪」

 

 

 

提督(咄嗟に許可してしまったが…

結構まずい状況だな。中々強い力で締められているせいで動く事もままならないし)

 

提督(にしても何というか…山風のが抱き付きなら、これは正に『抱擁』って感じのハグの仕方だな。相手を包み込む様で体温を直に感じて…)

 

提督(…で、俺の身体に当たってる、二つの柔らかいものは…胸だな。…まあ当然か)

 

 

提督(…気まずい)

 

 

 

長門「…どうだ?」

 

 

提督「…ん?」

 

 

長門「その…感想というか。

…この身体に触れて、どう思う」

 

 

提督「…あー、あったかい、かな」

 

提督(…我ながらなんつー間抜けな返事だ)

 

 

長門「ああ…うむ、そうか。私もだ。

少しばかり、胸と顔が熱い」

 

 

提督「そんなら、離しても…」

 

 

長門「いや、其れは遠慮しておく。

…もう少し、こうしていたい」

 

 

提督「いや、そろそろ俺も…」モゾモゾ

 

 

長門「んッ… て、提督。その、あまり動かないで欲しいんだが…」

 

 

提督「っ!す、すまん!」

 

 

長門「いや、その、何だ。

確かに私は、そういった事は吝かでは無いが…

だが、時間もまだ早いし…」

 

 

提督「わ、悪い。そういう意図じゃ無かった…というか、わざとじゃないんだ」

 

 

長門「そ、そうか。…済まない、早とちりをしてしまった」

 

 

提督(抱きしめられているからか、心音を直に感じる… …早鐘を打っている)

 

 

長門「…うう。やはり、慣れない事はあまりするものでは無いな」

 

 

長門「戦闘だけでなく、色恋沙汰にも長けていたのならば、もっと気の利いた言葉でも出るのだろうが…」

 

 

提督(心音は、より一層早くなってる…

…顔も、まるで熟れた苺だ)

 

 

長門「それで…その…何というか、だな」

 

 

長門「…私は、これでも貴方に感謝しているんだ。わざわざプレゼントを用意してくれた事、ずっと、指揮をしてくれている事、私たちを提督として未来に導いてくれている事…」

 

 

長門「そして、こんな私を。

…女として見ていてくれている事を」

 

 

長門「…その感謝を、こんな形でしか返せない事を、どうか許して欲しい」

 

 

提督「感謝なんてしなくても…んんっ!?」

 

 

 

 

【長門は深い口付けをした】

 

 

 

 

 

長門「…ぷはっ。…それではな、提督。

このぬいぐるみ、大切にするよ」

 

 

 

 

ギィィ バタン

 

 

 

提督「……」←茫然自失

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

明石「あ、おかえ… あー…お疲れ様です」

 

 

提督「…お前が思ってる様な事にはなってない」

 

 

明石「え、そうなんですか?

その表情からしててっきりそうだと…」

 

 

提督「いや…うん。…なんかもう合意っぽい感じだったしもういいんじゃないかな」

 

 

明石「投げやりになってるじゃないですか…

しっかりして下さいよ」

 

 

提督「だって、俺はもっとこう…弱味を握れるレベルでのを期待していたのに。長門のやつ全然まだまだ凛々しいままだったし。結局、主導権もずっと握られっぱなしだったもんなぁ」

 

 

明石「弱味を握れるって…何というか下衆くて反応に困るんですが」

 

 

提督「…つーかそうだ、長門、あいつ俺がボタンを解除する前に出て行っちまったけどいいのか?」

 

 

明石「え、解除できなかったんですか」

 

 

提督「…やっぱりマズイ?」

 

 

明石「…えーっとですね。…あのボタン、効果の時間切れは有りません。つまり長門さんずーっとあの状態のまんまになってしまうかと…」

 

 

明石「まあ端的に言うと結構まずいです」

 

 

提督「…もう1回行けというのか…?

その状態のままの彼女の元に?部屋に?」

 

 

明石「自業自得って事で」

 

 

提督「ウソだと言ってよ明石」

 

 

 

 

【この後、提督は『何とか』無事に解除した】

 

 

 



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飛龍の場合、真。

提督「飛龍だ!」

 

 

明石「うわっ、何ですか急に!」

 

 

提督「次のターゲットさ。

今度は飛龍にやるんだ!」

 

 

明石「…なんでもいいから、とりあえずその頬のキスマーク拭いたらどうです?」

 

 

提督「あー、うん。そうする…

…後でシャワー浴びなきゃな」

 

 

明石「…あの、長門さんの部屋で何があったんですか」

 

 

提督「……」

 

 

明石「……」

 

 

明石「…まあ、さっきも言いましたが、自業自得ですからね。そこらへんの責任は全部提督が持ってくださいね」

 

 

提督「…元はと言えば貴様の実験に付き合ってるんだがな」

 

 

明石「そんな事完璧に建前にして楽しんでたじゃないですか」

 

 

提督「…まあな」

 

 

明石「まあこっちとしてはジャンジャン使って欲しいから良いんですが…」

 

 

明石「…話を戻しましょうか。飛龍ちゃんでしたっけ。なんでまたそう急に相手を決めたんですか?」

 

 

提督「ん?それは今ちょうど窓から覗いたらいたから…」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…ってのは冗談で。

ほら、本物を使った娘って今まであんまり面と向かって甘えてきたりはしない感じの娘ばっかだったろ?だからちょっとだけでも、そっち向きの娘にやろうと思ってな」

 

 

明石「…本当ですか?」

 

 

提督「本当だって」

 

 

明石「…目を逸らさないで下さいって」

 

 

提督「…じゃ、行ってくるわ!」

 

 

 

スタコラサッサ

 

 

 

明石「あっ逃げた…

…まあ、データが入るなら何でもいっか…」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 





 

飛龍「あ、提督!」

 

 

提督「おお、今戻った所か?」

 

 

飛龍「うん、ちょうど訓練が終わった所!

提督はどうしたの?お仕事は?」

 

 

提督「俺も執務がひと段落ついたところさ。

で、別に用がある訳では無いが、ちょっと見回りとかでもと思ってな…」

 

 

飛龍「へー… ねえ提督、その見回りって後どれくらいかかる?」

 

 

提督「ん、もう終わりだな。

まあ元々ただ息抜きにやっていただけだし」

 

 

飛龍「そう?それなら、一緒にご飯食べにいかない?

提督も、たぶんお腹減ってるでしょ?」

 

 

提督「…確かに、腹減ったな。

そうだな。それなら、お言葉に甘えて」

 

 

飛龍「ほんと?やった!それじゃあ、早く行こっ!もうお腹ペコペコなの!」

 

 

提督「そうだな、早く行こう。

意識すると急に腹減ってきたよ」

 

 

提督「…あ、そうだ。奢りとかは無しだからな」

 

 

飛龍「えー… 提督のケチー」

 

 

提督「何とでもいえ。…かっこつけて奢れるほど、金に余裕が無いんだよ」

 

 

飛龍「…何かごめん」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

飛龍「ふー、食べた食べた!

やっぱり、ここの食事は美味しいなー」

 

 

提督「そう言ってくれると有難いな。にしても、本当、見ていて気持ち良い食べっぷりだったな」

 

 

飛龍「…なんか、そう言われると恥ずかしいかも」

 

 

提督「恥じる必要なんて無いがな」

 

 

飛龍「必要うんぬんじゃなくて、食べてる所はあまり見られたくないの!提督や多聞丸もきっとそうでしょ?」

 

 

提督「多聞さんがどう感じるかはわからないが…まあ、そうかも知れないな」

 

 

飛龍「まあその…なんていうか、提督になら見られても良いけどさ」

 

 

提督「…信頼してくれてるんだな。ありがとう」

 

 

飛龍「へへ、どういたしまして」

 

 

提督「…さて、それじゃあ俺はそろそろ執務室に戻ろうかな?」

 

 

飛龍「それじゃ私もまた訓練に行ってくるね」

 

 

提督「ああ、いってらっしゃい…」

 

 

提督「…あ、そうだ。ちょっと待ってくれ」

 

 

飛龍「ん?なあに…」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

飛龍「へっ?」

 

 

飛龍「……」

 

 

 

提督(さあ、どうなる)

 

 

 

飛龍「…」

 

 

 

飛龍「…」ニタッ

 

 

 

提督「…!?」ゾッ

 

 

 

飛龍「…ねえ、提督。

訓練はまたちょっと後でやるとしてさ。

…私の部屋に来ない?」

 

 

提督「…どうしたんだ、急に?

何か頼み事でもあるのか?」

 

 

飛龍「別にそういう訳でも無いけどさ…

急にちょっと、『お話』したくなって。

ね?いいでしょ?」

 

 

提督「…済まないな、執務があるんだ。

それに、訓練はサボっちゃあいかんだろ。

多聞さんに叱られるぞ?」

 

 

飛龍「えー?そんなに時間はとらないって。

それにサボるんじゃなくって、少しだけ後回しにするだけ!」

 

 

提督「……」

 

 

 

提督(さて、執務があるなんてのは嘘だ。

全部終わらせてからここに来たからな)

 

 

提督(それでもこんな嘘をついたのは…

ボタンを押してからの調子からして、この誘いに乗るのはあからさまにヤバいからだ)

 

 

提督(潤んだ眼、上気した頬…

そして何より、さっきよりも全体的に距離が近い…プラス、さっきから身体への接触が多い!)

 

 

提督(多分、『お話』に誘われてほいほい部屋にまでいったら部屋内の共通言語が肉体言語のみになる事間違いなしだろう)

 

 

 

飛龍「えー!いいじゃん!

…それに今部屋に来たら、私たち二人きり、だよ?」

 

 

提督「無理ったら無理だ(二人きり、ねぇ。どうしてそれをわざわざ強調するんだか)」

 

 

飛龍「…ねぇ、ほんとに無理なの?」スッ

 

 

【飛龍、提督を後ろから抱き竦める様な状態へ】

 

 

提督「…飛龍、離れなさい」

 

 

飛龍「えー?」

 

 

提督「えーじゃない。まずはその、俺に触れている手をどかせ…!」

 

 

飛龍「…ねえ、提督。

私の鼓動、聞こえてる?」

 

 

提督「……ああ」

 

 

飛龍「…ね、凄くドキドキしてるの。

…ね?その、提督は勘違いしてるかもしれないけど、私、誰にでもこういう事はしないから」

 

 

提督「…いいから離れてくれ」

 

 

飛龍「ねえ、提督は私の事が嫌い?」

 

 

提督「…まさかだろ」

 

 

飛龍「ふふ、そう言うと思った。

そんな提督だから、私は…

 

 

飛龍「ねえ提督。私もね、提督の事嫌いじゃないよ。…ううん!寧ろ…」

 

 

提督「…ッ!」

 

 

飛龍「…ねえ、提督。私ね?」

 

 

飛龍「……わ、私ね、提督の事……」

 

 

 

提督「……ッ」

 

 

 

飛龍「……」

 

 

飛龍「……あはは、ごめん、やっぱり何でも無い!…訓練!行ってくるね!」///

 

 

提督「あっ、ちょっと待っ…」

 

 

飛龍「えっとその、色々ごめんね?

そ、それじゃあ!」

 

 

 

【飛龍は素早く去って行ってしまった】

 

 

 

提督「…危な、かった。さっき、解除ボタンを早めに押しておいて良かった。ギリギリ、効果の解除が早かったらしいな」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「いやー、モテモテですね。このスケコマシ猫被り提督」

 

 

提督「不敬だぞ貴様…

まあ確かに嬉しくないって言ったら嘘になるが」

 

 

提督「ていうかどういう事だ。このボタンは積極的になるとかの機能は無いはずだろう?何故飛龍があんな事に」

 

 

明石「それは…うーん、私もよくわかりません」

 

明石「…彼女にとっての『甘える』は、隠してる本心を提督に向かってさらけ出す事だった、とかなんでしょうか?」

 

 

提督「…うーん、成る程?

にしても…あー、明日からまた飛龍との会話がぎこちなくなるだろうなぁ」

 

 

明石「まあそれは…あんな事の後ですし」

 

 

提督「…明日以降の俺が上手くやる事を祈るしかないな」

 

提督「…なあ、やっぱこれに記憶を消す効果も付けてくれよ」

 

 

明石「面倒くさいので嫌です」

 

 

提督「殺生な」

 

 

 



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朝霜の場合、偽。

明石「今度はどうするおつもりですか?」

 

 

提督「そうだなぁ…朝霜にしようかな。

アイツにやったら、また色々と面白そうなリアクションをとってくれそうだ」

 

 

明石「ああ…なんというか。

その、納得の人選って感じです」

 

 

提督「そういう言われ方すると、あんまり面白く無いがな…が、妥当だろう?」

 

 

明石「妥当かどうかは何とも言えないですけど…まあ、良いんじゃないですか?提督の傾向的には、かなり好みの娘でしょう」

 

 

提督「良く解ってるじゃないか。

流石は俺のパートナー」

 

 

明石「あんまり良く解りたくなかったですよ自分の上司のどす黒い趣味なんて」

 

 

明石「ていうか、パ、パートナーって…」

 

 

提督「嫌だったか?パートナー」

 

 

明石「い、いえ?別に嫌と言う訳では…」

 

 

提督「そうか。…にしても朝霜にやるとしたら、こっちの方も試してみたいなぁ」

 

 

明石「ん?ああ、偽の方のボタン、まだ持っていたんですね」

 

 

提督「ああ、まあ一応な。ちょっととはいえ資材も使われているから無闇には捨てられんしな。それに…」

 

 

明石「それに?」

 

 

提督「…また使うかもしれないからな」

 

 

明石「…本物の方を使って下さいよ?今、私は提督にデータを集めて欲しいんですから」

 

 

提督「あー、はいはい。解ってるよ…じゃあ、そろそろ行ってくるかな」

 

 

明石「…本物の方使って下さいよ?」

 

 

提督「解ってるって」

 

 

明石「今回だけでも偽の方、使わないで下さいね?」

 

 

提督「解ったっつってんだろ」

 

 

明石「…絶対ですからね?」

 

 

提督「…お前が俺を全く信用してないってのもよく解ったよ」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「よう、朝霜」

 

 

朝霜「ん?どうした司令。何か用か?」

 

 

提督「ああいや、見かけたから声を掛けただけだ。忙しかったか?」

 

 

朝霜「いーや。遠征も終わったし、特にやることは無いぜ。…ん?」

 

 

提督「どうした?」

 

 

朝霜「司令、なんか隠し持ってるものでもあるのか?」

 

 

提督(…おや?)

 

提督「まあ、あるっちゃあるな」

 

 

朝霜「何だよその煮え切らない態度…

なんだよ、ひょっとしてバレたくないような事でもあんのか?」

 

 

提督「いいや、別にバレても構わないようなもんだよ」

 

 

朝霜「なぁんだつまんねぇの」

 

 

提督「はは、ご期待に添えなくて悪いな。

…しかし、何で解ったんだ?」

 

 

朝霜「ん、そこまでちゃんとした理由があるわけじゃないけど…あんたの歩き方が」

 

 

提督「歩き方?」

 

 

朝霜「ああ、何かを庇ってる様な感じがしてさ。…あたいの勘違いかとも思ったんだけどさ」

 

 

提督「へぇー、凄いな。

自分ではそんな意識は全然無かったんだが…流石だな朝霜」

 

 

朝霜「へへ、こう見てもあたいはエースだからね!」

 

 

提督「ああ、いつも頼りにしてるよ」

 

 

朝霜「へへん!」

 

 

 

提督「ハハハ…ああ、そうそう」

 

提督「因みに、隠していたのはこれだ」ポチッ

 

 

 

朝霜「へ…」

 

 

朝霜「……ッ!?」///

 

 

朝霜「しし、司令!あんた、それっ!!」

 

 

提督「お、知ってたか。

まあちょいと時間経ってるとはいえ

相当噂は流れたらしいしなぁ、当然か」

 

 

朝霜「そんな事より!そ、それって!

あんた…そのボタン、やっぱり…!」

 

 

提督「…何かはもう解ってるだろ?

その様子からするとな」

 

 

朝霜「……う……///」モジモジ

 

 

朝霜「ち、ちくしょう!

そのボタン!早く解けって!」///

 

 

提督「アハハ」

 

 

朝霜「笑ってないで解けよ!

…ていうか、そのボタン寄越せよ!」

 

 

提督「もうちょいお前を観察したらな」ヒョイ−

 

 

朝霜「今すぐ渡せっ!このっ、このっ!」ピョンピョン

 

 

提督「ははは、ほらほら。

俺が手を上げてしまえば届くまい」

 

 

朝霜「〜ッ!もう!動くなって!」ガシッ

 

 

提督「おおっと」

 

 

朝霜「よし、そのままじっとしてろよ!」

 

 

提督「…まあ、俺は別に構わないが。

にしても、また随分とダイタンな事するな」

 

 

朝霜「え?」

 

 

提督「…自分の今の状態。よく見てみろ」

 

 

 

朝霜「…」←抱き留め、腕を掴んでる状態

 

 

朝霜「…」←背の関係で密着しないと腕に届かない

 

 

朝霜「…」←つまり顔と顔が近い

 

 

 

朝霜「……ッ!!」

 

 

 

提督「…な、だから離さないか、ちょっと」

 

 

 

朝霜「……」

 

 

提督「…朝霜?」

 

 

朝霜「うぇっ!?な、何だよ!!」

 

 

提督「いや、だから離れてくれって…

聞こえてなかったのか?」

 

 

朝霜「う…」

 

 

提督「う、じゃなくって…

ほら、このままだと誤解を招く事になるぞ」

 

 

朝霜「…だ」

 

 

提督「?」

 

 

朝霜「…やだよ」

 

 

提督「…え?」

 

 

朝霜「…何だよ!司令は、あたいに抱きつかれるのがヤなのかよ!近づかれるのかイヤなのか!?」

 

 

提督「いや、そういう事じゃなくて」

 

 

朝霜「あたいの事、嫌いか!?」

 

 

提督「そんな訳無いだろ」

 

 

朝霜「じゃあいいじゃねぇかよ!

どうせ、そのボタンの所為なんだろ!?」

 

 

提督「まあ待て、一度冷静に」

 

 

 

朝霜「ああもう、うっさいな!」ギュッ

 

 

 

提督「ムグっ」←口を塞がれる

 

 

 

 

朝霜「…こんな時くらい、甘えさせてよ」

 

 

 

提督「…」

 

 

提督「…ごめんな」ナデナデ

 

 

朝霜「…ッ!」

 

 

提督「…無遠慮な態度をとっちまったな。あんな事言って、悪かった」ナデナデ

 

 

朝霜「…ん。許す」

 

 

提督「…ついでに許して欲しいのがな。

さっきのボタン偽物なんだ」

 

 

朝霜「…!?」

 

 

朝霜「…そう、なのか」

 

 

提督「…狼狽しないんだな。今まででは種明かししたらそうなってたんだが」

 

 

朝霜「…どうせかいちまった恥は同じだしな」

 

 

提督「成る程、そんなもんか」

 

 

朝霜「…でも!それはそれだ!ボタンが偽物だった事、簡単には許さねぇぞ!」

 

 

提督「げ、マジか。今の調子なら許してもらえるとばかり思っ…」

 

 

朝霜「…」カリッ

 

 

提督「ッ!?痛ッ…!」

 

 

 

朝霜「プハッ…へへっ。

だから、これは仕返しだぜ…♡」

 

 

提督「な、お前…!」

 

 

朝霜「そんじゃ、少しは気も済んだし、あたいはこれでおいとまするよ。…じゃな!」

 

 

提督「おい、ちょっと待っ…!」

 

 

 

 

朝霜「…この続きはまたいつか、な?」

 

 

 

 

【朝霜は恥ずかしがりながら遁走していった…】

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

明石「あ、提督!」

 

 

提督「…ああ、明石。どうした」

 

 

明石「どうしたもこうしたも!

貴方あんなに言ったのに偽物使ったでしょう!何が『俺が信頼されてないのが〜』ですか!私の態度は正しかったんじゃないですか!」

 

 

提督「アッハッハ」

 

 

明石「笑って誤魔化さないでください!」

 

 

提督「まあ落ち着いてくれよ、次の娘こそは本物を扱うからさ。……たぶん」

 

 

明石「ちっちゃい声で多分って言ったの聞こえましたよ今」

 

 

明石「全く…ってあれ?

どうしたんですか、その首」

 

 

提督「…ッ。さっき、虫に刺されてな」

 

 

明石「絆創膏貼ってるって事は、掻きむしっちゃったりしたんですか」

 

 

提督「…まあ。ちょっとだけ血が出て、な」

 

 

明石「それくらいなら治せると思いますし、治しましょうか?」

 

 

提督「ッ!い、いやいや!そんな事でわざわざお前に手間は取らせられねぇって!」

 

 

明石「そ、そうですか?ならいいんですが…」

 

 

明石(…この人も大概、隠し事が出来ないタチよね…)←大体察した

 

 

 

 



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木曾の場合、真?

提督「…なんか、最近、追い詰められる事が多い気がする」

 

 

明石「追い詰められる、ですか?」

 

 

提督「ああそうだ。

ボタンを押した結果ギリギリまで追い詰められて…みたいなのが多すぎる」

 

 

明石「完璧に自業自得じゃないですか」

 

 

提督「そうだが!そうだけどさ!

俺が見たいのはタジタジしちゃったりとかさ!恥ずかしくて泣いちゃったりとかさ!そういう所なの!」

 

 

明石「はは、最低ですね。

…じゃあ、次の娘はどうするんですか?」

 

 

提督「…ちょっと賭けで。木曾にする」

 

 

明石「え?木曾ちゃんって…もう提督が負ける未来しか見えないんですが…」

 

 

提督「だから賭けなんだよ。

これで甘えてもイケメンだったら俺はもうアレだが…だがもし龍田のように純情さんだったら…その分、ギャップで楽しいだろう?」

 

 

明石「…ま、まあ私は止めませんが…」

 

 

提督「よし、じゃあ行ってくるよ」

 

 

明石「早ッ!?さっきから思ってましたけど、思い立ったが吉日にも程がありますよ貴方!」

 

 

提督「そう褒めてくれるな!それじゃ!」

 

 

明石「褒めてな…ああ、行っちゃった…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

木曾「提督。軍服のボタン、ほつれているぞ」

 

 

 

【提督+秘書艦木曾、共にin執務室】

 

 

 

提督「…あ、本当だ。後で直さないとな」

 

 

木曾「俺が繕おうか?」

 

 

提督「いや、わざわざやってもらわなくともいいさ」

 

 

木曾「なあに、遠慮しなくてもいい」

 

 

提督「いや、悪いし…」

 

 

木曾「そんなに手間もかからないし、構わないさ」

 

 

提督「…それじゃあお願いしようかな」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

木曾「よし、直ったぞ」

 

 

提督「お、ありがとう。

…にしても木曾、裁縫できるんだな」

 

 

木曾「おいおい、出来ないと思ってたのか?」

 

 

提督「や、そういう事じゃなくてだな!」

 

 

木曾「はは、解ってるさ。あまり、そういうイメージが無かったんだろ?」

 

 

提督「…正直。悪いな」

 

 

木曾「でもそのイメージは合ってたぜ。少し前まで、俺は裁縫なんて出来なかったからな」

 

 

提督「ん?そうなのか?」

 

 

木曾「前まで…いや、今もかな。俺は戦う事にしか能がないからな。得意げにやった今の裁縫も、散々練習した結果なんだ」

 

 

提督「…木曾に戦うしか能がないか否かはともかく。なんでまた裁縫をそんなに練習したんだ?」

 

 

木曾「裁縫だけじゃなくて、料理とかもさ。

…お前の為だよ、提督」

 

 

提督「…俺の為、か?」

 

 

木曾「ああ… いや、本当は自分の為かもしれないな。お前にアピールをして、俺の事をもっとよく見てもらう為…」

 

 

提督「…話がよく見えないな」

 

 

木曾「はは、結構わかり易く言っているつもりなんだけどな」

 

 

提督「…」

 

 

提督(さて、突然だが、俺はもう既にボタンを押してる)

 

提督(押したのはさっき…

木曾が縫物をしてくれている真っ最中。つまり彼女はずっと甘えたい状態になっている)

 

提督(…そんな状態なのにこの応対。

女の子の可愛らしさと男らしさのハイブリッド。やはり木曾には無謀だったのか?)

 

 

提督(…いいや、違うね。

寧ろ俺には勝機が見えた)

 

 

 

提督「…なあ木曾」

 

 

木曾「ん?何だ、提督?急に改まって」

 

 

提督「いやな、さっきから気になっている事があるんだが…」

 

 

提督「…何故さっきから顔を逸らしているんだ?」

 

 

木曾「!…大した理由じゃない」

 

 

提督「そうか。てっきり俺は耳まで真っ赤だからそれを隠してるのかと思ったよ」

 

 

木曾「!!」バッ

 

 

提督「…まあ嘘だが」

 

 

木曾「な!お、お前…!」

 

 

提督「…しかし、どうも俺にはぴんと来ないな。俺の為に様々な事の練習をしている事と、お前が顔を赤くする事。どうも結びつかない」

 

 

提督「だから、察しの悪い俺の為にもっと解りやすく言ってくれないか」

 

 

木曾「……ッ!」

 

 

木曾「…この嘘つきめ。

本当はわかっている癖に…」

 

 

提督「何のことやら?」

 

 

木曾「ぐっ…いいぜ、言うさ。俺は…」

 

 

 

提督「…その前に、俺の目を見ろ」

 

 

木曾「…え」

 

 

 

グイッ

 

 

 

提督「ちゃんと俺の目を見て言え。

俺に何かを言う時はな」

 

 

 

木曾「なッ…!」

 

 

木曾「……うう…」

 

提督「何も言わないのか?」

 

 

木曾「…いや、言うさ、言うとも。…俺は!

 

 

木曾「俺はお前が好きなんだ。敬愛や友愛じゃない、もっと深い所から!」

 

 

木曾「お前にこっちを向いて貰いたいのも、こっちを見ていて欲しいのもお前を愛しているから。お前に気に入って貰いたいからだ!」

 

 

木曾「…これで、満足か?」

 

 

提督「ああ」

 

 

木曾「…なら早くこの手をどかしてくれ。か、顔が近くて…」

 

 

提督「いや、もう少し。このままお前の可愛い顔を見させてくれないか」

 

 

 

木曾「〜〜ッ!!お前はッ……!」

 

 

木曾「……ッ」

 

 

木曾「……」

 

 

 

木曾「………」///

 

 

 

木曾「………ん」

 

 

 

 

 

【暫く、二人で見つめ合った…】

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「押し切ったぞ」

 

 

明石「…酷い男ですよ、ほんと。

あんな子の想いを弄ぶなんて…」

 

 

提督「その手の悪口はとうに言われ慣れてるわ馬鹿め。…しかし、ふふ、俺の賭けは正解だったな明石よ」

 

 

明石「得意げにしてる顔がウザいので一発喰らわせていいですか?」

 

 

提督「駄目に決まってるだろうこの素っ頓狂が」

 

 

明石「…あれ?そういえばボタン解除してましたっけ?さっきしてなかったような」

 

 

提督「ああ、顎に手を添えてこっちに無理矢理顔を向けさせた時くらいに解除しといたさ。流石に同じ過ちは繰り返さんさ」

 

 

明石「そうですか…

…じゃあ最後の告白とか、見つめ合いタイムはボタンの効力とかでは無く…」

 

 

提督「あいつの望みのままに、って所だな。

案外あいつも乙女だったって事だ」

 

 

明石「…そんな乙女の一世一代の告白を話のネタにするって、本当に最低ですね」

 

 

提督「…まあ、流石に何か責任は取るさ…」

 

 

明石(あ、そこら辺はちゃんとするんだ。まあどちらにせよだけど)



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陸奥の場合、【error】。

提督「…ふぅ」

 

 

明石「おや、物憂げな溜息ですね。どうしました?いよいよネタ切れですか?」

 

 

提督「バカ言え。…ただな、こう連続してやってると、流石に些か疲れてな」

 

 

明石「…久し振りに提督の人間らしい発言を聞いた気がしますよ」

 

 

提督「何だよそれ、逆に俺は今までどんな発言してたんだよ」

 

 

明石「あ、これ自覚無いやつですか」

 

 

提督「…まあ、それはそれとしてだ!

今度は陸奥にやる事にしたぞ」

 

 

明石「…それは、元々決まってたんですか?

それとも、今突発的に決めたんですか?」

 

 

提督「後者だ。理由は疲れを癒してくれそうな娘な感じがしたから。以上!」

 

 

明石「…」

 

 

提督「無言は傷つくなぁ…まあいいや、居た堪れない空気になった所で行ってきます」

 

 

明石「あっ、いや、今の無言は…

って行っちゃった。」

 

 

 

明石「…癒されるような事になると思えないって言おうと思ったんだけどな」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「あ、陸奥。丁度いいところに」

 

 

陸奥「あら提督。何か用?」

 

 

提督「用っちゃ用だな

別に大した事では無いが…」

 

 

陸奥「あらそう?てっきり、長門にやった事みたいな事をやられちゃうのかと思った」

 

 

提督「!」

 

 

陸奥「あら、図星?」

 

 

提督「…あー、ひょっとして聞いた?」

 

 

陸奥「ううん、直接聞いては無いけど…

でも、あんな表情してたら流石に、ね?」

 

 

提督「成る程。まあ、口止めもしてないし隠す必要も無かったし、何より噂も相当広まってたしな…別にいいか」

 

 

陸奥「で、どうするの?私にも長門にやった事みたいな事、する?」

 

 

提督「……」

 

 

提督「いや、別にいいや。

呼び止めて悪かったな、陸奥」

 

 

陸奥「…え?」

 

 

提督(…既に知ってるとなると、また別の娘でいいな。できたらその事について知らない子にやってみたいし)

 

 

提督「それじゃあ」

 

 

陸奥「え、ええ。じゃあね…?」

 

 

 

陸奥(…そっか。私にはやらないんだ。

長門にもやったのに…)

 

 

陸奥(…)

 

 

 

陸奥(…ッ)

 

 

 

提督「…!」

 

 

提督「あ、そうだ陸奥」

 

 

陸奥「…ん?何かしら?」

 

 

提督「いやその、何というかなぁ」

 

提督「…俺は結構、決心が揺れやすい質でな。

服を着る時もこっちの方が良いかとか悩むし、買い物もすぐに心変わりしてしまったりする」

 

提督「悪い癖さ。軍人としても男としても致命的だと思ってるし、直そうとも思ってるんだが、いかんせん直らなくってなぁ」

 

 

陸奥「?ええっと…何かに関係がある話?」

 

 

提督「まあ、そうだな。

つまり、だ。簡単に言うと…」

 

 

 

提督「気が変わったって事さ」

 

 

ポチッ

 

 

陸奥「っ…」

 

 

 

提督(急に気が変わった理由…それは、今俺が去ろうとした時の、陸奥のあの表情。

凄くそそられる、良い顔をしていた…)

 

 

陸奥「…提督って、凄く意地悪ね。」

 

 

提督「そうか?」

 

 

陸奥「ええ。だって今、私に浮かんだ想いが全部解ってて、その上でボタンを押したんでしょう。…もしかしてさっき立ち去ろうとしたのも、この為?」

 

 

提督「いいや、さっきも言っただろう?

気が変わっただけさ。別に、君にわざわざ後ろ暗い感情を抱かせようとした訳じゃない」

 

 

陸奥「…本当かしら?信じられないわ。だって、長門にも他の娘にもやった事を、私にだけやらないで去ろうとする、なんて事をする提督なんだから」

 

 

陸奥「…凄く、嫌な気持ちになったわ」

 

 

 

提督(あの顔が含有していた感情…

それは、『嫉妬』。それも、かなりのな)

 

 

提督「それはどうも、申し訳ない」

 

 

陸奥「ううん、まだ許さない。…ねえ、何でさっきはそのまま去ろうとしたの?

私みたいな不幸艦には、甘えられたくなんかなかった?」

 

 

提督「…答えはシンプルさ。

君が、俺がボタンを押して廻ってるっていう事実を知っていたからっていう、ただそれだけの理由。君を避ける理由なんて無いよ」

 

 

陸奥「…本当?」

 

 

提督「俺が嘘を吐いた事があるか?」

 

 

陸奥「数え切れないくらい、ね。」

 

 

提督「はは、こりゃまた手厳しい…」

 

 

陸奥「…でも、信じるわ。提督が、私を避けたりしてる訳じゃないって事」

 

 

提督「そりゃありがたい…けど何故?」

 

 

陸奥「…だって。そうなら、貴方に甘える事が出来るから。…それに…」

 

 

 

 

【陸奥、提督へとしなだれかかる】

 

 

 

 

陸奥「…最愛の姉を妬ましく思わずに済むから…」

 

 

 

提督「…そう、か」

 

 

陸奥「ええ。その二つの為なら、貴方を盲信するわ」

 

 

陸奥「……ねえ提督。」

 

 

提督「…何だ?」

 

 

 

【陸奥は迷わず首筋へ口付けをした】

 

 

 

陸奥「…このキスの意味、調べておいてね。

今はそれだけよ」

 

 

 

【そのまま陸奥は去っていった…】

 

 

 

提督「…調べずとも知ってるさ。首筋へのキスへの意味はな」

 

 

 

提督(ああそうさ、俺は知っているよ、その口づけの意味を。首へのキスが含む意味を)

 

 

提督(…それが『執着』だって事を…)

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「誰だ陸奥との会話は癒されそうだーとか言った奴は!」

 

 

明石「他でもない貴方でしょうが!

…え、いや、どうしたんです?」

 

 

提督「かくかくしかじか、紆余曲折あってな。

全く、癒されるなんてとんでもない」

 

 

明石「…それって例によって例の如く、提督のただの自業自得ですよね」

 

 

提督「嫌、だって…正直、陸奥がああいった暗めの感情を持ってるのなんて全然予想して無かったし…出来るわけ無いし…」

 

 

明石「…提督の事だし、また相手の気持ちも考えずに引っ掻き回してしまったんでしょう。やっぱり自業自得ですよ」

 

 

提督「…グ、反論できない。

確かに、相手の気持ちにもう少し寄り添って考えを深めた方がいいかなぁ…」

 

 

明石「本当に相手の気持ちになるならそのボタンを押さない事が一番良いと…」

 

 

提督「というより、今迄が何も考えずにやり過ぎていたか。実際それで失礼な言葉を言ってしまって、それで気分を損ねかねないような場面もあったし…」ブツブツ

 

 

明石(ああダメだ聞いてない。完全に自分の世界に入っちゃってるなぁ… …ほんと、この勤勉さを別の方に使えば良いのに…)

 

 

 

 



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瑞鶴の場合、真。

提督「ああ、そうだ。明石。

そういえば聞き損ねていたけど、これって、このボタンからの距離が全く同じ二人に同時に使ったらどうなるんだ?」

 

 

明石「え?ああ、そういえばまだ複数相手に使ってないんでしたっけ?その場合は、所有者の意識を読んで、より求めている方へ効果が出るようになりますよ」

 

 

提督「へぇ…やけに凄いテクノロジーだな。

…どれ位無駄な資材を使ったのやら」

 

 

明石「無駄ではありませんよ。実際に提督が今しがたフル稼動させてるじゃないですか」

 

 

提督「それは詭弁じゃないか…?

…まあいい。じゃあ、次は瑞鶴にしようか」

 

 

明石「何に対しての『じゃあ』ですかそれ…

今度はまたどうして急に決めたんですか?」

 

 

提督「姉妹同時に押してみたいと思ってな。

瑞鶴ならきっと翔鶴と共にいるだろうし」

 

 

提督「…ま、居なくてもそれはそれで愉しませてもらうがな。」

 

 

明石「セリフの節々が小物すぎて笑えてきますね」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

瑞鶴「で、提督さん、何か用なの?」

 

 

 

【in 空母寮】

 

 

 

提督「ああ、まあ用なんだが…」

 

 

提督「…翔鶴はいないのか?」キョロキョロ

 

 

瑞鶴「…」ムッ

 

瑞鶴「…翔鶴姉ぇならまだ用事があるわ。

残念だったわね」

 

 

提督「なんだ、残念だな」

 

 

瑞鶴「用はそれだけ?それなら帰ったら?翔鶴姉ぇに用事があるなら私が伝えておくから」

 

 

提督「いや、瑞鶴にも別に用があって…

…あの、何か怒ってる?」

 

 

瑞鶴「別に。提督さんの気のせいじゃない?」ムスッ

 

 

提督「…さいですか」

 

 

提督(…翔鶴の事を不躾に聞いてしまったのがいけなかったかな?まあいい、瑞鶴の機嫌が悪かろうと、翔鶴がいなかろうと、やる事は一つきり)

 

 

瑞鶴「で?用事って何?早く言って?で、部屋から出てって欲しいんだけど」ツーン

 

 

提督「(にべもないな)了解。ただ…」

 

 

提督「口頭で伝えるよりこっちのが早い」ポチッ

 

 

 

瑞鶴「ふーん、そうなん…」

 

 

瑞鶴「……!?」

 

 

提督(さて、どうなるかな)ワクワク

 

 

提督「よし、俺がやりたい事はこれで終わり。それじゃあな」

 

 

瑞鶴「なっ…!

ちょ、ちょっと!どこ行くの!」

 

 

提督「どこ行くもクソも…部屋を出てくだけさ。お前が言った通りにな」

 

 

瑞鶴「…っ」

 

 

提督「んじゃ、またな」

 

 

 

キュッ

 

 

 

瑞鶴「……」

 

 

提督「…裾を摘まれちゃったら、部屋から出て行けないんだが」

 

 

瑞鶴「…」

 

 

提督「おーい?瑞鶴?」

 

 

瑞鶴「…い、行かないでよ…」

 

 

瑞鶴「さっき言った事は謝るから…

その、ここに居て欲しいな…」

 

 

提督「…なら、そうするが」

 

 

提督「…」

 

 

瑞鶴「…」

 

 

提督「…瑞鶴?」

 

 

瑞鶴「きゃぅ!な、何よ!?」

 

 

提督「いや、黙っちまったから… 何か目的があって俺に居て欲しがったんじゃないのか?」

 

 

瑞鶴「えっと…う、うん…そうなんだけどさ…」

 

 

瑞鶴「…うぅ…」

 

 

提督(…尻込みして行動は起こさないか。

なら、もう一度ボタンを押して解除だけしてから…)

 

 

 

瑞鶴「…よし!!」

 

 

提督「!?」ビクッ

 

提督(気合いを入れた?

いや、覚悟を決めたのか…!?

まずい、これは大丈夫か…?)

 

 

瑞鶴「て、提督!そのさ!」

 

瑞鶴「なんていうか、その…」

 

 

 

提督「…」ゴクリ

 

 

 

瑞鶴「…あ、頭。撫でてもらえないかな?」

 

 

 

提督(…覚悟を決めてそれかよ)ズコッ

 

 

瑞鶴(〜〜ッ!違う違う!私の馬鹿!

せっかくなんだし、もっと大きなお願いを…!)

 

 

 

提督「…」ナデナデ

 

 

瑞鶴「!!」

 

 

提督「これでいいか?」

 

 

瑞鶴「う…うん…」///

 

 

瑞鶴(あったかい…

提督さんの手が私の頭を撫でて…)

 

 

 

瑞鶴「…」

 

 

瑞鶴「……♡」プツン

 

 

 

瑞鶴「…えいっ!」

 

 

 

提督「!?」ポチッ

 

 

 

 

【瑞鶴、ハグしつつ提督を横にする】

 

 

 

 

提督「な…!?おい、瑞鶴?」

 

 

瑞鶴「…なあに?提督さん」

 

 

提督「いや、何故俺を横にし…んっ!?」

 

 

瑞鶴「んっ…んんっ…ぷはっ…♡」

 

 

瑞鶴「…えへへ。ほんとはさっきまで、さっきのお願いだけで…撫でられるだけでも良いかなって思ってたんだけど…提督さんに撫でられてるうちに…」

 

 

瑞鶴「…我慢出来なくなっちゃった。気持ちが溢れて、つい押し倒しちゃった。…ごめんね?」

 

 

提督「い、いや、お前…」

 

 

瑞鶴「提督さん、好き、大好き。

…ね?だから、キスの続きまで」

 

 

瑞鶴「いっしょ…に」

 

 

 

瑞鶴「……」

 

 

 

瑞鶴「……ッ!」/////

 

 

 

提督(あ、やっと正気付いた。

ようやくボタン解除の効果が効いたか)

 

 

 

瑞鶴「…ぎ」

 

 

瑞鶴「ぎゃーっ!」

 

 

 

ビターン

 

 

提督「痛ってぇ!」

 

 

 

瑞鶴「あ、ごめんなさい提督さん!じゃなくて!えっと、ま、待って!ちちち、違うの!

これは、その、そのボタンのせいで!」

 

 

提督「わ、わかった。わかったから落ち着け」

 

 

瑞鶴「う、うん… でも、その、えっと…!」

 

 

提督「いや、その…まずは俺が謝るべきだな。急にボタンを押しちまって悪かった」

 

 

瑞鶴「…そ、そうよ!元はと言えばこうなったのも、そのボタンのせいなんだからね!提督さんたら、最低!」

 

 

提督「…悪い。出来れば今のは無かった事にしよう。お互い、今の事は忘れるって形で…」

 

 

瑞鶴「う、うん。」

 

 

 

瑞鶴「……」

 

 

 

瑞鶴「…で、でも!」

 

 

 

提督「?」

 

 

 

瑞鶴「でも…えっと、さっき言った…すきっていうのは、その、本当だから、さ」

 

 

瑞鶴「…それだけは忘れないでくれたら嬉しいな…なんて…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「よう、ただいま」ヨロヨロ

 

 

明石「おかえりなさ…どうしたんです?

そんなによろついて…」

 

 

提督「いや、ボタンを解除したら、瑞鶴が俺を壁にまで突き飛ばしてな」

 

 

明石「うわあ…それはまた…」

 

 

提督「でもまあ、手が咄嗟に出ちゃった位の物だったらしく、威力は大した事無くてな。それのお陰で命拾いしたよ」

 

 

明石「そんな大袈裟な…

いや、大袈裟でもないんでしょうか?」

 

 

提督「にしても…明石。

ボタン効果の解除が反映されるまでにタイムラグあるの何とかならないか?する時は一瞬なのに、何で解除には時間がかかるんだ」

 

 

明石「…解除は最初は予定されていない機能だったもので。後付けで付けたもの故、いかんせん上手く作動してくれないんです」

 

 

提督「そうなのか…ん?」

 

 

提督「…このボタンって、元は俺に甘えたい娘が明石に依頼したんだよな?それなのに解除機能付いてなかったのか?」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…このボタンの作成を依頼した娘、中々ヤバイ娘だな」

 

 

明石「…否定はしません」

 

 

 



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娘、以外の場合…

提督「…このボタンの触れ込み、なんだっけ?」

 

 

明石「へ?何ですか急に」

 

 

提督「いや、俺の思い違いで無ければ艦娘が甘えてくるボタンっつってたよな?」

 

 

明石「ああ、はい。たしかにそう言いました」

 

 

提督「そう、それだよ。俺はそれが気になってたんだ。お前はこのボタンを艦娘が甘えてくるって言った。じゃあ、その艦娘以外に使うと、一体どうなるんだ?」

 

 

明石「艦娘以外って…憲兵さんにでもやるんです?」

 

 

提督「…俺にそっちのケは無い。

そうじゃなくて、例えば妖精さんとか…

それこそ連装砲ちゃんとかだよ」

 

 

明石「あー…どうなんでしょう?機能的には一応効くとは思いますが…」

 

 

明石「うーん、考えていませんでした。

すいません提督。そちらのデータもとって頂けませんか?」

 

 

提督「ふふふ、そう言われると思ってな」ゴソゴソ

 

 

明石「?」

 

 

提督「はーい、こちらにある物が島風から盗…借りてきた連装砲ちゃんになっておりまーす」

 

 

麻袋「…!」ジタバタ

 

 

明石「さっきからその麻袋何かと思ったら連装砲ちゃんだったんですか!?は、早く出してあげ…っていうか何で麻袋に!?」

 

 

提督「サプライズ感出そうと思って」

 

 

明石「大きなお世話です!!

ああほら可哀想に、凄く怯えてますよ!」

 

 

連装砲ちゃん「…!」ガタガタ

 

 

提督「そっちの方が反応の差異を見やすいし好都合だろ」

 

 

明石「貴方に人の心は無いんですか!?

…いや、愚問でした」

 

 

提督「さて、じゃあ押してみようか。ほれ」

 

 

明石「…え?私が押すんですか?」

 

 

提督「俺が押しても良いけど…その、嫌な予感がな」

 

 

明石「…私にその嫌な予感がするような出来事を押し付けるつもりって事ですか?成る程、提督が押してください」

 

 

提督「…口が滑りやすいのが俺の唯一の欠点だな。まあそれじゃあ、俺が押すよ」

 

 

明石「唯一?」

 

 

提督「…いいからボタンを寄越せ。

よし、それじゃ」ポチッ

 

 

連装砲ちゃん「!!」

 

 

連装砲ちゃん「♡♡!!」ビュン

 

 

提督「やっぱり飛んできt痛いッ!!」ゴシャァ

 

 

明石「と、とんでもない勢いで…!

無事ですか提督?」

 

 

提督「この質量の鉄にあの勢いで飛びかかられて痛くない訳ねぇだろうが!」

 

 

明石「痛いで済んでるならまだいいんじゃないですか?…にしても嫌な予感ってこれですか」

 

 

提督「もしボタンの効果があるならば、甘える手段はボディランゲージしかないだろうって思ってただけだけどな。こいつら喋れないし…痛ててッ!スリスリするな!角がゴリッゴリ削れる!!」

 

 

連装砲ちゃん「♡♡♡」

 

 

明石「にしても効果テキメンですね。

艦娘へやった時よりも効果が出てる様な…」

 

 

提督「艦娘を構成している部分である艤装そのものだしな。艦娘よりも効果が出るのも結果としちゃ当然なのかもしれん」

 

 

提督「ただ正直こんな事になるなんて思わなかった!艦娘にやった時よりこんな痛い結果になるとは!痛みもだけど重みもキツイ!」ギチギチ

 

 

明石「と、取り敢えずボタンの解除をしたら…」

 

 

提督「痛てて、ああ、そうし…」

 

 

提督「…あっ…」

 

 

明石「どうしまし…あっ」

 

 

 

 

ひしゃげたボタンくん \ ムリッス /

 

 

 

 

明石「…」

 

 

提督「…さっきの衝撃でかぁ」

 

 

明石「…まあいつかはこうなると思ってましたけど、まさかこのタイミングでですか」

 

 

提督「落ち着き払ってる場合か!

ど、どうするんだこれ!」

 

 

明石「大丈夫ですよ。いつかはこうなると思っていたって事は、即ちそれへの対処も準備してあるって事です!」

 

 

提督「おお、さっすが明石!開発者の鑑!」

 

 

明石「えへへ、もっと褒めてもいいですよ?」

 

明石「…って事で今から修理してきますね」ヒョイッ

 

 

提督「っていやいや!スペアがあるとかじゃないのかよ!」

 

 

明石「いや、流石にめんどくて…まあ何も用意していない時よりは格段に早く修理は完了すると思うので、それまで耐えて下さい」

 

 

提督「で、出来るだけ早めにな!?本当、なるべく早く頼…熱ッ!?コイツ発熱してるぞ!?暴発しそうなくらい熱い!」

 

 

連装砲ちゃん「///」

 

 

明石「じゃあ私は別室で修理をするんで、お2人でごゆっくり…」

 

 

提督「早めに頼むっつってんだろ!

ゆっくりさせるな!!」

 

 

明石「じょ、冗談ですって…

それじゃあ行ってきますね」

 

 

 

バタン

 

 

 

明石「…さて、じゃあ直さないと。

でも正直、そんな急ぐ必要は無さそうね。

そんな大事になりそうでも無いし…」

 

 

 

 

\ ヤメロ!! ソレイジョウ チカヨルナ!! /

 

 

\ ♡♡♡ /

 

 

 

ドカーン

 

 

\ アバーッ! /

 

 

 

 

明石「…うん!だから今聞こえた砲声も悲鳴も気のせいよね、きっと!」

 

 

明石「……」

 

 

明石「…馬鹿な事言ってないで早く直さないと、本気で提督が爆散しそうね」カチャカチャ

 

 

明石(…さっきの悲鳴的にもう手遅れかしら)

 

 



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電の場合、真。

明石「無事ですか?」

 

 

提督「電だ」

 

 

明石「ああ、お気の毒に…脳にまで来てますね、これは…」

 

 

提督「次は電に対してボタンを押そう」

 

 

明石「あっスルーですか。…にしても先ほどの爆発の痛みもまだ冷めやらぬ内にやるんですね。よっぽどの命知らずというか…」

 

 

提督「まあさっきのは不慮の事故みたいなもんだし気にするだけ無駄だろう…にしても、すごいな、バケツ。怪我一つ残らんぞ」

 

 

明石「そういう風にできているものですからね、バケツは」

 

 

明石(…ただ…)

 

 

提督「まったく、妖精さんの脅威のテクノロジーに敬礼だな」

 

 

明石(…人間が治るようにはなってないはずなんだけどなぁ)

 

 

提督「まあいいや、話を戻そう。次は電がターゲットで、問われる前に先に理由を言っておくと、素直な娘にボタンを押したいような気分だったから!はい以上!何か質問は!」

 

 

明石「…元々質問なんてしても碌に答えないじゃないですか」

 

 

提督「いや、そんな事は…」

 

 

提督「……」

 

 

提督「…まあ行ってくるよ」

 

 

明石(…今までの行動を鑑みて、自分でやりかねないと思ったんだろうな、きっと…)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

電「あっ、司令官さん!」

 

 

提督「ん?おお、電か。どうかしたか?」

 

 

電「いえ、特に用という訳では…

ただ、その…少しお話ししたいなって…」

 

電「もも、勿論その、よかったらで良いのですが!」

 

 

提督「ああ、いいぞ。寧ろ好都合だ」

 

 

電「へ?好都合…?」

 

 

提督「いや、何でも無い。それじゃ場所を移そうか。間宮はどうだ?」

 

 

電「いえ、わざわざそんな…!」

 

 

提督「こんな往来で話をするってのもな。

それに、折角の機会だ。ゆっくりと甘味でも味わいながら近況報告でもしよう」

 

 

電「でも、その、悪いのです…」

 

 

提督「まあまあ、いつも大した事もやれていないんだ、こういう時くらいかっこつけさせてくれよ」

 

 

電「そ、それでは。ふつつか者ですが、お願いします!」

 

 

提督「…その返事はおかしくないか?」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「今日も今日とてあんみつは美味い。

…逆に、不味い事なんてあるだろうか?」

 

 

電「…司令官さんは甘い物が好きですね」

 

 

提督「おっ、気づいてしまったか?それは極秘情報ゆえ誰にも漏らさない様にな」

 

 

電「きっともう皆にバレてると思いますよ?」クスッ

 

 

提督「はは、そりゃ残念。全く、最高機密だったはずなのになぁ」

 

 

電「…あの…」

 

 

提督「…ん?どうした?冗談が詰まらなかったか?」

 

 

電「い、いえ!そういう事では無く…!

その、少し聞きたい事があって」

 

 

電「司令官さんが、その…例のボタンを押して回ってるっていう噂は本当なのですか?」

 

 

提督(…まあそりゃあ耳にするわな)

 

 

提督「…うん。本当だ。」

 

 

電「!!」

 

 

提督「結局、好奇心には勝てなくてな…

…やっぱり軽蔑するか?」

 

 

電「そんな、軽蔑なんて!電はただ、真偽を確かめたくて!それと、お願いがあって…

そのう…」

 

 

電「…そのう……」

 

 

提督「…?」

 

 

電「い、電にも!ボタンを押して欲しいのです!!」

 

 

提督「了解!」ポチ−

 

 

電「嫌ならば…って即決ですね!?」

 

 

提督(そりゃ元々やるつもりでいたからな)

 

 

電「そ、それでは…し、司令官さん?

甘えても、良いですか?」

 

 

提督「ああ。君は俺に甘えてもいいし、甘えなくてもいい。どうする?」

 

 

電「…電の答えは最初から決まってます」

 

 

ソッ

 

 

提督(っと…席を立って、俺の膝に座ってきたか。うん、まあ甘えるって事なら膝に座るってのは普通なのかもしれんが…)

 

 

提督(…ただ…)

 

 

提督「…なあ、方向がおかしくないか?」

 

 

 

【電、提督と向き合うように座す】

 

 

 

電「いえ、これで良いのです…えいっ!」ギュッ

 

 

提督「おっと」

 

 

電「い、痛かったですか?」

 

 

提督「いいや全然。ちょっと驚いただけさ」

 

 

電「なら、良かったです…

てっきり力が入りすぎちゃったかと」

 

 

提督「電は何というか、慎重だな」

 

 

電「…いえ、電は慎重ではなく、ただ、臆病なだけです」

 

 

電「…電が、さっきボタンを押して欲しいって言ったのは。普通だと恥ずかしがってしまって、何も言い出せないからです」

 

 

電「臆病だから。私、迷惑がられたらどうしようって思ってしまって…何も司令官さんに言えなかったからなのです」

 

 

電「…でも。今なら言えます。

今なら、貴方に伝えれます」

 

 

電「…本当は。ずーっと、司令官さんと二人で、こうしていたい。電が望むのは、海の平和と、それくらいです」

 

 

電「…その、えっと、つまり…」

 

 

電「……大、好きです、司令官さん…」

 

 

 

提督「……」

 

 

 

電「………」//////

 

 

 

 

ナデリ

 

 

 

 

電「ふぇっ!?」ビクッ

 

 

提督「ありがとな、電。

そう想ってくれてるのは、本当に嬉しいよ」

 

 

提督「でも、一つだけ。お前は臆病なんじゃない。ただ優しいだけだ。だから、その優しさは、誰かに申し訳なく思うようなものじゃないよ」

 

 

提督「…説教臭くなっちまったな」

 

 

電「いえ。そんな事は…! …えっと、その…」

 

 

 

電「…ありがとう。司令官さん」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督「凄く…こう、なんだろう。

心の保養になったよ」

 

 

明石「心なしか肌もツヤツヤしてます」

 

 

提督「何というか、最初の五月雨の時も思ったが…純真な娘達はいいな。癒される」

 

 

明石「あれ?五月雨ちゃんの時は提督イラついてませんでしたっけ?」

 

 

提督「あの時は求める物が違ったから…」

 

 

提督「…しっかしなぁ」

 

 

明石「?」

 

 

提督「いや、途中から電も俺も、甘味処という公共の場という事を忘れててな。周りの目が凄く痛かった事を思い出していたんだ…」

 

 

明石「…まぁ、身から出た鯖ですね…」

 

 

提督「いい思いをする代償ってとこかな…」

 

 



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霞の場合、真。

特にキャラ崩壊がひどい回となってしまってます。
気になる方は飛ばしていただければ幸いです。


 

 

 

提督「さて、次はどうしたものか」

 

 

明石「…霞ちゃんなんてどうでしょう?」

 

 

提督「…どういう風の吹き回しだ?

あんなに批判的だったお前が」

 

 

明石「あー、いや。特に理由はないんですが…」

 

 

提督「まあ、霞が依頼主の一人…それも強力にバックアップした人物だなんて言える筈も無いものな」

 

 

明石「!?何でそこまで知って…」

 

 

提督「…え、本当にそうなの?」

 

 

明石「…語るに落ちてしまった…

ごめんなさい霞ちゃん…」

 

 

提督「いや、まあ不自然な推薦の時点で依頼主の一人だってのは分かってたが…その調子では最初に依頼したのもあの娘だな。

で、依頼主本人が文句を言いに来たとか?」

 

 

明石「私はもう何も言いません」

 

 

提督「…まあいい。ならば俺は望み通りに、霞に本物を使いにいってやるさ」

 

 

提督「避けては通れない道だし、何より…」

 

 

明石「何より?」

 

 

提督「元々避けるつもりも無いからな」

 

 

明石「…ですよねー」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

【時は飛び、翌日の朝】

 

 

 

霞「…」

 

 

提督「…」

 

 

霞「…その、ごめんなさい」

 

 

提督「まあこっちも悪いから…

すまん、反省している」

 

 

霞「…うん」

 

 

提督「…」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

【遡る事、数刻前】

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

霞「このクズ!」

 

 

提督「おっ、開口一番罵倒とは景気が良い」

 

 

霞「何ふざけた事言ってんのよ…

じゃなくて!何だったのよ、アレは!」

 

 

提督「アレ?」

 

 

霞「惚けんじゃないわよ!

さっきのアレの事よ、アレの!」

 

 

提督「?…ああ、電との。

霞も見てたのな。やー、恥ずかしい」

 

 

霞「アンタが恥ずかしいとか恥ずかしくないとかはどうでも良いの!そんな事よりっ!」

 

 

霞「……」

 

 

提督「そんな事より?」

 

 

霞「…いいえ、何でも無いわよ」ムスーッ

 

 

 

提督「おお、そうか」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

霞「……」←ボタンに気付いていない

 

 

霞「…!?」

 

 

提督「ついに愛想を尽かされちまったか」

 

 

霞「えっ?い、いや、そんな事は…」

 

 

霞「…!?」モジモジ

 

 

提督「…電みたいに甘えたいのならそう言ってくれれば…なんてな」

 

 

提督(さーて、気付かれないようにボタンを押しては見たが…どうなるかな?)

 

 

 

霞「…」

 

 

 

霞(これは…この激情は、きっと…)

 

 

霞(…やっぱり、そうなんでしょうね。

やっぱり…)

 

 

霞「…もう、ダメみたいね」

 

 

 

提督「…へ?」

 

 

ガシッ

 

 

霞「…ちょっと来て」

 

 

提督「え?いや、何処に」

 

 

霞「いいから来なさい!」

 

 

提督「ちょっと待っ…」

 

 

 

 

【提督、部屋へと強制連行さる】

 

 

 

 

バタン ガチャ

 

 

 

提督「…あ、あの?霞…さん?」

 

 

霞「…」ハァハァ

 

 

 

霞「…もう無理よ」

 

 

 

提督「へ?」

 

 

 

霞「…ごめんなさい、司令官」

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

提督「んッ!?」

 

 

霞「ん…」

 

 

提督「何…んんっ!」

 

提督(し、舌が入って…!)

 

 

 

霞「ん、ぷはっ… ふー…」

 

 

提督「な、急に何を…!?」

 

 

霞「やっぱり、もう無理よ。もう駄目。

もう、もう…」

 

 

 

提督「…?」

 

 

 

 

霞「もう我慢出来ない」

 

 

 

ガバッ

 

 

 

霞「司令官、司令官、司令官♥︎」

 

 

提督「うわっ!?」

 

 

霞「ねえ、司令官。

私の事どう思う?好き?」

 

提督「…ええっと…」

 

 

提督「…??」←思考停止中

 

 

 

霞「私はね、司令官の事が好き。大好き、大好き!大大、大好き!」

 

 

提督「ええ?えええ…?」

 

 

霞「だからね…えいっ!」

 

 

チュウウウ

 

 

 

 

霞「ぷはっ、えへ、えへへへ♥︎

しちゃった♥︎またキスしちゃった♥︎」

 

 

 

提督「」

 

 

提督(…ええ…!?)

 

 

提督(いや、キャラ変わり過ぎだろう!?

お前そんな…だってこのボタン、意識とかを混濁させたりは無いh)

 

 

 

霞「それじゃあ…♥︎」ガシッ

 

 

提督「だああ待て待て止めろ!

俺のベルトに手を掛けるな!!」

 

提督(せめて、少しモノを考える時間を!)

 

 

 

霞「…私の事、嫌い?」ウルッ

 

 

提督「い、いやそんな…!」

 

 

霞「ならいいでしょ?」

 

 

提督「かすm」

 

 

霞「…ずっと、引っ込みが付かなくって。

司令官にも迷惑かな、とも思ってこれまでずっと何も言わなかった、言えなかった」

 

 

霞「でも、もう、もう…私、耐えられない!

司令官に甘えたい。司令官に甘えられたい。

司令官と抱き合っていたいし、ちゅーもしたい!お嫁さんになりたい!」

 

 

霞「…もう駄目、無理なの。

だから、司令官…♥︎」

 

 

提督「だ、『だから』って…お前」

 

 

 

 

ガバッ

 

 

提督「や、やめっ…アッ」

 

 

 

チョッ ヤメッ オマエッ

 

 

オマ…

 

オ…

 

 

オレノソバニチカヨルナーッ!!

 

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

 

【事情の説明の後、現在に至る】

 

 

 

 

提督「…さっきも言った通り、俺がボタンを押してたせいで、感情の抑えが効かなくなっちまってたんだ」

 

 

霞「……」

 

 

提督「…だから、まあ、その。俺の自業自得だし、気に病んだりだとかする必要は…」

 

 

霞「…でも、襲っちゃったのは事実だから…

本当にごめんなさい…」

 

 

提督「ハハ、謝るなんて霞らしくも無い」

 

 

霞「…」

 

 

提督「…その…霞、俺の事が好きなんだよな」

 

 

霞「…うん」

 

 

提督「まあ、確認するまでも無かったな。

途中からボタン解除してたのに普通に襲われてたし… …何よりさっきあんなに言われたしな」

 

 

霞「…う…」

 

 

提督「『大好き』、『愛してる』、『結婚して』…後は何だったか」

 

 

霞「や、やめて…」

 

 

提督「後はそうだ、抱き合ってたいとか膝枕したいとか、毎日…」

 

 

霞「やめてってば、このクズッ!!」

 

 

提督「よし、その顔だ。やっぱりお前にはしおらしいのは似合わないよ。」

 

 

 

ナデナデ

 

 

 

霞「…うん」

 

 

霞「…その。さっきのも、これまでのも」

 

 

提督「うん?」

 

 

霞「…その、クズっていうの。本心なんかじゃ無いから。だから…」

 

 

提督「大丈夫、お前が心根の優しい娘だってのは分かってるよ」

 

 

霞「…ありがとう、司令官」

 

 

提督「どういたしまして、霞」

 

 

 

 

 

霞「…ねえ司令官」

 

 

 

 

提督「ん?何だ?」

 

 

 

 

 

霞「もう一回しましょ♥︎」

 

 

提督「雰囲気台無しだよ…アッやめっ」

 

 

 

 

ヤメ… アッーー!

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

提督「……」ゲッソリ

 

 

明石「まあ、もう何も言いませんとも」

 

 

提督「…そうしてくれると助かる。

ていうかお前こうなる事薄々わかってただろ」

 

 

明石「失礼な。薄々どころか完璧にわかってましたよ」

 

 

提督「なおさら悪いわ。…なあ。今回、俺ただ喰われに行っただけなんじゃないか?」

 

 

明石「…まあ正直、今回を例えるならお腹が空いてる狼の前にダイブしていったようなもんですから」

 

 

提督「うん…正に狼だったよ…足柄直伝かなー…なんつって…」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…せめて笑ってくれよ」

 

 

明石「…いや、なんか…すみません」

 

 

提督「なんかなぁ…凄く、こう…身体に刻まれてしまった…畜生、もうお婿に行けねぇ」

 

 

明石「こんな汚れきったお婿さん元々誰も貰わなかった気もしますがね…」

 

 

 



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秋津洲の場合、偽。

提督「ちょっと箸休めというか…

もう少しソフトな娘に次はやりたいなぁ」

 

 

明石「さっきがハード過ぎましたからね。

…といっても、そんな安パイな娘なんて居るんですか?」

 

 

提督「んー、多分大丈夫」

 

 

明石「…そんな感じで押しに行って、今まで何回も危ない結果になっていましたよね?」

 

 

提督「…まあ、そうだな。

でも恐らく平気だと思うよ、秋津洲は」

 

 

明石「あぁ、今度は秋津洲ちゃんですか。

確かに大丈夫そうな感じが…」

 

 

提督「豹変したりしてもポンコツだし何とかなりそうだけどな」

 

 

明石「さすがにその発言は酷すぎませんか?」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

秋津洲「あーっ、提督かも!」

 

 

提督「うわっと…どうしたんだ急に?

そんな大声あげて」

 

 

秋津洲「最近、噂の渦中の人に会っておきたいなーって思ってたかも」

 

 

提督「なんだか青葉みたいな事言ってんなぁ。…噂?」

 

 

秋津洲「うん。今すっごく噂になってるよ?

ある駆逐艦の娘とイチャイチャしてたっていう噂」

 

 

提督「…どっち?」

 

 

秋津洲「どっちって…最低でも二つ以上心当たりがあるかも?ていうかやっぱり噂じゃないの…?」

 

 

提督「…ま、まあそれはいいだろう。

で、用はそれだけか?」

 

 

秋津洲「え?…まあ…う、うん。そう…かも」

 

 

提督「…相変わらずどっちだかわからんな、その言い方だと…」

 

 

秋津洲「…ごめんなさい」

 

 

提督「いや、そんなに気にしなくとも…

…まあ取り敢えずお前の用事は終わりかな」

 

 

秋津洲「えっと…はい…」シュン

 

 

 

提督「…?」

 

提督「そうか…まあ、それはそれとして」

 

 

 

提督「俺もお前に用事があるんだよ」スッ

 

 

秋津洲「!!」

 

 

提督「今からこのボタンを押s」

 

 

秋津洲「提督さん大好きかも~♪」

ダキッギューッスリスリ

 

 

提督「まだ押してないんだけど」

 

 

秋津洲「あ」

 

 

スッ

 

 

秋津洲「…間違えたかも、今の無しかも。

改めてお願いします」

 

 

提督「えぇ…」

 

 

秋津洲「いいから」

 

 

提督「アッハイ」

 

 

秋津洲「よし、ばっちこいかも!」

 

 

提督「…(最早何も言うまい)」ポチィッ

 

 

秋津洲「!」ダキッ

 

 

提督「おお、よしよし」ナデナデ

 

 

秋津洲「えっへへ〜、もっと撫でてほしいかも〜!折角回ってきたこの機会、楽しまなきゃ損かも〜♪」

 

 

提督(『折角回ってきた』って…)

 

 

提督「…なあ、ひょっとして俺を探していたのって、もしかしてこのボタンのくんだりをやってほしかった為だった、とかか?

 

 

秋津洲「…そういう事、解っているのにわざわざ乙女に言わせるのは酷いと思うかも!」

 

 

提督「(あ、マジでそうなんだ)…悪い」

 

 

秋津洲「うーん、もっと撫でてくれたら許してあげるかも!」

 

 

提督「よーしよしよしよし」ワシャワシャ

 

 

秋津洲「えへへへ♪」

 

 

提督(可愛いなこいつ)

 

 

秋津洲「あ、そうだ!これはあくまでボタン押されてるせいであって、私がやろうとしてやってる訳じゃないかも!」

 

 

提督「今更何を言ってるんだ」

 

 

秋津洲「…まあ一応建前として、かも」

 

 

提督「さっき押したボタン偽物だけどな」

 

 

秋津洲「ええーっ!」

 

 

 

秋津洲「…」

 

 

秋津洲「……」ウーン

 

 

 

秋津洲「…まあもう別に構わないかも♪」スリスリ

 

 

 

提督(かわいい)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「…って事で偽物使いました。

本当に申し訳ない」

 

 

明石「まあ前回が前回でしたし…今回偽物の方を使ったのをとやかく言いませんよ」

 

 

提督「あ、本当か。正直小言言われるつもりでいたんだがな」

 

 

明石「…全く反省していたり申し訳なく思ってる様子が無いのが少し癪に障りますが…」

 

 

提督「ちゃんと謝っただろうに」

 

 

明石「そういう態度を言ってるんですよ」

 

 

提督「…まあ、優しい明石は許してくれると信じているよ」

 

 

明石「まったく、調子いいことばっかり言うんですから…」

 

 

提督「にしても…いつにもまして噂になっている気がするなぁ、ここ最近」

 

 

明石「ああ、ボタンの事例についてですね…

提督が隠す気も無く、公共の場で、ほいほいとやってるからじゃあないですか?」

 

 

提督「ああ、やっぱそうなのかな…

とっちめられても困るし、今度からは執務室とかでやるかなぁ」

 

 

明石(犯罪者の…それも常習犯の台詞ねこれ)

 

 



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時雨の場合、真…?

ザァァァ…

 

 

 

提督「おや…雨か」

 

 

明石「あ、本当ですね。

直ぐに止むといいですけど」

 

 

提督「驟雨って感じだしそんなに長引きはしないだろう。すぐ止むんじゃないか?」

 

 

明石「雨はいつか止むさ、って所ですかね」

 

 

提督「はは、そうだな」

 

 

提督「…」

 

 

明石「…あれ、提督?」

 

 

提督「…よし、そうだな。

今度は時雨にボタンを押してみよう」

 

 

明石「そ、そんな、話の流れだけで!?

どんだけ人選適当なんですか!」

 

 

提督「いやもう、最近ボタンを押す娘のこじつけに疲れたんだよ。だからもうこれでいいだろ?」

 

 

明石(そんな気はしてたけどついにこじつけって言い切りやがった!)

 

 

提督「と、いう事で早速行ってくる。

じゃあな!」

 

 

明石「あー…行っちゃった。

…時雨ちゃん、ごめんなさい」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

【in 時雨の部屋】

 

 

 

 

提督「よお時雨」

 

 

時雨「あ、提督。ごめんね、急に呼び立てて」

 

 

提督「いや、丁度用事があったしな。

気にしないでくれ」

 

 

時雨「そう言ってくれるとありがたいな」

 

 

提督「しかし…かなり降ってきてしまったなぁ、外。」

 

 

時雨「ん…そうだね。でも最近暑かったし、丁度いいんじゃないかな?」

 

 

提督「まあなぁ。後はいつ止むかが問題だけど…」

 

 

時雨「雨はいつか止むさ。

それでいいんじゃないか?」

 

 

提督「ふふっ」

 

 

時雨「む。何で笑うのさ」

 

 

提督「いや、さっき明石と話していた時もそんな会話をしていたからな。つい笑ってしまって…」

 

 

時雨「……」

 

 

時雨「…そう…」

 

 

 

時雨「…あ、そうそう提督。

それで、部屋に呼んだ要件について何だけど」

 

 

提督「ん、そうだったな。で、何の用だ?」

 

 

 

時雨「山風に何かやったかい?」

 

 

提督「え?」

 

 

時雨「言葉通りだよ。

山風に、何かやった?」

 

 

提督「…何故それを?」

 

 

時雨「様子が変だったから聞いてみたらね…

しかも提督、最近かなりやんちゃしてるみたいじゃないか」

 

 

提督「やんちゃって…まあ否定しないが」

 

 

時雨「で、僕の妹までその毒牙にかけたわけだ」

 

 

提督「…まあ、そうだが…

随分とまあトゲのある言い方をするなぁ」

 

 

時雨「そうかな?そんなつもりはないけど、ついそうなっちゃうのかも」

 

 

 

時雨「ていうのもね。

…僕、これでも結構怒ってるんだ」

 

 

 

提督「…!」

 

 

 

時雨「…結構、解らない事も多くてね。

ねえ、どうして…」

 

 

時雨「どうして妹に、山風にボタンを押したの?他の娘に使ったの?ねえ、どうして…」

 

 

 

提督「……ッ」

 

 

 

 

時雨「どうして僕の所に来てくれないのさっ」ムスッ

 

 

提督「えっ」

 

 

時雨「ずるいじゃないか、ひどいじゃないか!僕だって提督をずっと待ってたのに!なのに提督は人の気も知らずに他の娘の所にばっか行って!」

 

 

時雨「そんなに僕に魅力が無いかい?たしかに僕は女の子っぽくないし、む、胸も!あんまりないし、肉付きも…!」

 

 

提督「ま、待て、落ち着け時雨!とんでもない事を言い出しそうになってんぞ」

 

 

時雨「……ご、ごめん」

 

 

提督「ああ。…その、俺はただボタンを押して回ってるってだけで。セレクトに他意は無いんだ」

 

 

提督「だからな、そんなに思い詰める必要は無いというか…」

 

 

時雨「…本当かい?」

 

 

提督「もちろん」

 

 

時雨「…今までが今までだし、信じられないなぁ」

 

 

提督「そうか…ふふっ」

 

 

時雨「…何また笑ってるのさ」

 

 

提督「いや、山風もそんな感じの事言ってたなぁって……ん?」

 

 

時雨「……」プクーッ

 

 

提督「あのー、時雨、さん?」

 

 

時雨「…二人きりの時に他の娘の話しないで」

 

 

提督「すまん、軽率だったな」

 

 

時雨「…ううん、僕が無茶を言ってるのはわかってる。この鎮守府で提督が関わる人はほとんど皆、女の子だしね。出来ない相談だっていう解ってるさ」

 

時雨「…でも!…だから」

 

 

 

時雨「…だからせめて今は、今だけは。

…僕だけを見てくれないかい?」

 

 

提督「…ああ、分かったよ」

 

 

 

時雨「!!」

 

 

提督「…ただ。『そういう』事はしないからな。…鍵まで閉めてもらって悪いが。」

 

 

 

時雨「…そこまで僕の気持ちが分かってるのに、何もしないなんて…」

 

 

 

時雨「…ばーか。いくじなし」

 

 

 

提督「はいはい、俺はバカだよ…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

提督「ああ良かった、一方的に思い詰めて問い詰めてくる怖い子時雨は居なかったんだね」

 

 

 

明石「開口一番それですか…ていうかそんな風に時雨ちゃんの事思ってたんですか?酷いですね…」

 

 

提督「いや違うんだって!急に部屋に呼ばれるわ、お前についての話題を話すと顔から表情消えたわで、途中まで本当に怖かったんだよ!

 

 

明石「表情が消えるって、そんな大袈裟な」

 

 

提督「お前は実際に見てないからそんな悠長な事言えるんだって」

 

 

提督(…しかし今回、問い詰められてる最中にボタン押さなくても対して変わらなかった気がするな)

 

 

明石「あ、そういえば、昨日から時雨ちゃんがとってもツヤツヤした満足気な顔でいるのって提督に関連あります?」

 

 

提督「ノーコメントだ」

 

 



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秋月の場合、偽。


こちらもまたキャラ崩壊が激しいと思われます。
嫌な予感がした方は飛ばしていただければ…


 

 

 

 

 

【ある日の執務室】

 

 

 

提督「ふう、疲れたな…

こんな日は明石のとこに行って」

 

 

秋月「司令、いらっしゃいますか?」

 

 

提督「おお、秋月?どうしたんだ急に」

 

 

秋月「その…お聴きしたい事がありまして」

 

 

提督「?」

 

 

秋月「…先日、ある子の部屋に司令が入っていったところを目撃しまして。そして、その翌日からその子はやけに高揚していたので…」

 

 

提督(ああ、時雨の話か。

わざわざボカす必要あんのかね?)

 

 

秋月「それで…その、何が起こったかの詳細をお聴きしたくて」

 

 

提督「断る」

 

 

秋月「え?」

 

 

提督「嫌だと言ってるんだ」

 

 

秋月「ど、どうして…」

 

 

提督「別に意地悪をしているわけじゃあない。単純に、言いふらすような事じゃないからな」

 

 

秋月「そ…そう、ですか…」

 

 

提督「……」

 

 

提督(この表情から察するに、勘違いをしてるな秋月。…まあ、お年頃だからかな)

 

 

提督(…いい、表情してるなぁ。

この、にべもなく断られた顔)

 

 

提督(…今、ボタン押したらどうなるかなぁ)

 

 

 

提督「…いいや、気が変わった。

やはりお前には教える事にしよう」

 

 

秋月「えっ?」ビクッ

 

 

提督「そうだな…何か用事は有るか?

無いなら俺の部屋に来るといい。そうしたら時雨に行った事を教えるとしよう」

 

 

提督「…その身体にな」

 

 

 

秋月「!!」

 

 

秋月「な、何を言ってるんですか…!」

 

 

提督「無理ならば別に良いがな。

さあ、来るか?」

 

 

提督(…来るかな?多分秋月は完璧に『そういう』風に勘違いしているが…)

 

 

 

秋月「…」

 

 

秋月「行き、ます」

 

 

 

提督「…そうか」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

【in 提督部屋】

 

 

 

提督「まあそこら辺に座っててくれ。茶でも出す」

 

 

秋月「あ、それなら私が!」

 

 

提督「いや、客はゆっくりしてるもんだ。

少し待っててくれ」

 

 

秋月(…ここが司令の部屋。入るのは2回目だっけ。前は無茶して秘書作業中に倒れた時、気付いたらこの部屋のベッドに居て…)

 

 

秋月(…ベッド…)

 

 

秋月(…)

 

 

秋月(…これから…)

 

 

秋月「……」///

 

 

 

提督「お待たせー」

 

 

 

秋月「は、はいっ!」ガタッ

 

 

提督「おお、良い返事だな。余程待たせたか」

 

 

秋月「あ、いえ、そういう訳では無くて」

 

 

秋月(な、何を考えてるの、私!そんな…するって決まった訳でもないし!それこそ、司令は私をただ部屋に呼んだだけで…)

 

 

 

提督「で、要件についてだったな。

時雨にやった事を教える、って事だ」

 

 

秋月「!!!」

 

 

提督(一言だけでガチガチに緊張しちゃってまぁ…可愛らしい事だ)

 

 

秋月「し、司令?その、お茶もまだ飲んでいないですし」

 

 

提督「そんなに時間がかかる訳でも無いし大丈夫さ。それに、飲みながらでもいい」

 

 

秋月(時間がかからないって…!それに、飲みながらって、そんな変則的な!?初めてが、そんな特殊な形でなんて!)

 

 

秋月(…でも…お相手が司令なら…)

 

 

 

提督「…じゃあ、始めるか」

 

 

 

秋月「!!待ってください!

えっと、その、心の準備が…!」

 

 

 

 

提督「いいや、待たない。始めるぞ…」スッ

 

 

 

秋月「なっ……!」バクバク

 

 

秋月「て、提と……」

 

 

秋月(…ごめんなさい、皆。私、一足先に…!)///

 

 

 

 

 

ポチッ

 

 

 

 

秋月「…へ?」

 

 

提督「よし、と。

こんな風に、時雨にこのボタンを押したのさ」

 

 

 

秋月「……」ポカン

 

 

秋月「…」

 

 

秋月「〜〜〜ッ!!!」

 

 

秋月「な…なるほど、そうだったんですね…

てっきり、その、私…」///

 

 

提督「『てっきり』…何だ?」

 

 

秋月「あ、いや…その…てっきり…」

 

 

提督「どんな事を思ってたんだ、一体?随分と顔を真っ赤っ赤にしているけど…

まさかまさか?あの秋月がいやらしい事を考えている訳も無いしなぁ」

 

 

秋月「!!」ビクッ

 

 

提督「一体何を考えていたか興味があるなぁ。是非とも教えてくれないか?」

 

 

秋月「い、いえ!そんな司令に言うような内容でも無いので…」

 

 

提督「なに、どんな下らない内容でもいいのさ。公的な任務でも無く、ただ俺が気になってるだけなんだし。だから教えてくれ」

 

 

提督「どんな、想像を、してたんだ?」

 

 

 

秋月「…その…」////

 

 

 

提督「俺が秋月に好き勝手する事を許可するんだからなぁ…よっぽどの事だろうな」

 

 

秋月「わ、私が司令に好きにされるなんて!

私はそんなつもりで…言ったんじゃ…」

 

 

秋月「そんな…つもりで…」

 

 

 

秋月「…そんな…つもりで…した。…うう…」///

 

 

 

提督「ほらほら、俯いてちゃ解らないだろ?

ちゃんと俺の目を見て」クイッ

 

 

 

秋月「ひっ!?そ、その…私…!」

 

 

秋月「わた、私は、その……!!」

 

 

 

秋月「…い…‥」

 

 

秋月「いやらしい娘でごめんなさい〜っ!!」

 

 

 

【秋月は脱兎の如く逃げていった】

 

 

 

提督「あ、待っ… もう遅いか。

もうちょい遊びたかったなぁ」

 

 

提督「…こんな事なら最初から偽物じゃなく本物押して、逃げられなくしておくべきだったか」

 

 

提督「…まあ、過ぎた事だ。次行くか。」

 

 

 

 



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照月の場合、真。

 

明石「あ、提督。久しぶりですね」

 

 

提督「久しぶりって…一日しか空けてないだろうが」

 

 

明石「あれ、そうでしたっけ?

…で、どうするんですか?」

 

 

提督「あ?何がだ」

 

 

明石「惚けなくてもいいでしょう。わざわざ工廠に来たって事は…ほら、あのボタンを使うんでしょう?」

 

 

提督「…まあ、うん」

 

 

明石「で、次はどの娘にやるんですか?

今度は満潮ちゃんとかですか?」

 

 

提督「…自分も楽しんでる事を隠さなくなって来てるなお前な…」

 

 

明石「た、楽しむなんてそんな…」

 

 

提督「そんなに目をキラキラさせて何を言う…まあ別に良いけどな。…どっちでも」

 

 

提督「で、今度の娘はだな…」

 

 

 

ガンガン

 

 

 

明石「ん?夕張ちゃんか大淀かな?」

 

 

「明石さん!提督居ます?」

 

 

提督「ああ居るぞ。どうした?」

 

 

 

「あ、やっぱり居た。もう、探したんですからね!提督に少し聞き出したい事があるんです!」

 

 

提督「…最近そんな事が多いなぁ」

 

 

 

明石「まあ自業自得ですよね…」

 

 

 

提督「じゃあちょっと工廠に入りな。

そんな長い話でも無いだろう?

な?照月」

 

 

 

照月「…場合によると思いますが…

けど、取り敢えずお邪魔します」

 

 

 

提督「はいよ。……」

 

 

 

提督「…」

 

 

提督「…!!」ピコーン

 

 

 

提督「……」ニタァ

 

 

 

明石(あっ。

…次は照月ちゃんか…)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「まあまあ、とりあえず座れって」

 

 

明石「あ、私この場に居ない方がいいかしら」

 

 

照月「あ、いえ、大丈夫です。そんなに時間はとらないつもりなので」

 

 

提督「ああ、というか居てくれ」

 

 

明石「?」

 

 

照月「さては明石さんを盾に糾弾を避けるつもりでしょ。甘いですよ提督!」

 

 

明石「やっぱり糾弾なのね」

 

 

照月「そうです!ズバリ、提督!秋月姉に何したんですか!」

 

 

提督「何したって… おいおい、俺が何かした証拠でもあるのか?」

 

 

照月「惚けてもダメ!ていうか、提督が何かしない限りあんな風にはならないもん!」

 

 

明石「あんな風?」

 

 

照月「…今、秋月姉は顔真っ赤にして、布団を被ってぷるぷるしながら『提督、ごめんなさい』ってずっと言ってるんです…」

 

 

明石「…うわぁ…それはまた、何というか…」

 

 

提督「わりぃ」

 

 

照月「謝罪を三文字で済まさないで!

…っていうか、本当に何やったの?」

 

 

提督「いや、ちょっとしたイタズラって言うか…傷つけるような事はしてないんだけど」

 

 

明石(犯罪者の言い分みたいだぁ…)

 

 

照月「言い訳はどうでもいいんです!

私が言いたいのは、その…!」

 

 

照月「…え、えっちな事。したでしょ」

 

 

 

提督「…してない」ポチッ

 

 

 

照月「嘘ですー!そうじゃなきゃ秋月姉があんなに塞ぎ込む訳無いも…の…」

 

 

 

照月「……?」

 

 

 

明石「?どうしたの、照月ちゃん」

 

 

 

照月「…へ?」

 

 

照月「い、いやいや!何でも!」///

 

 

 

 

明石「そう?でも、様子が…」

 

明石「…あっ」バッ

 

 

 

提督「…〜〜♪」

 

 

明石(…成る程、私を呼び止めたのはそういう訳ですか)

 

 

照月「え、ええと…提督?その、本当に何もしなかったんですか?」モジモジ

 

 

提督「ホントだって」

 

 

照月「…そうですか」

 

 

 

照月(うぅ〜…絶対におかしい… こんなに急に提督に…あ、甘えたくなるなんて…)

 

 

照月(!まさか、悪名高いあのボタンを押したんじゃ…!秋月姉もきっとこれをやられて…)

 

 

照月(…じゃあ私も…)

 

 

照月(…秋月姉がされた様な事をされる、の?)

 

 

照月「…〜〜ッ!」///

 

 

 

提督「おや、どうした照月?

顔が赤いが…風邪か?」

 

 

明石(なんて白々しい…)

 

 

照月「いや、えっと…ちょっと変かな?なんて…」

 

 

照月(…正直!ちょっと期待しちゃうけど…でも!)

 

 

照月(でも、今はダメ…!だって…)チラッ

 

 

 

 

明石「…」

 

明石(気まずい)

 

 

 

 

提督「おや、本当か?どれ…」

 

 

 

【提督、額と額を合わせる】

 

 

 

照月「!!!!」

 

 

提督「ふむ、熱は無いみたいだが…」

 

 

提督(さあ、第三者から見られている故に、甘えたくても甘えられないこの状況。照月はどんな反応をするかな?)

 

 

 

照月「あっ… はっ…♡」

 

 

照月「……ッ、て、ていとく…」

 

 

照月「…んっ♡」チュッ

 

 

 

提督「ッ!?」

 

 

明石「!!」

 

 

 

提督「お、おい、照月…!」

 

 

照月「……え?」

 

 

照月「……」

 

 

照月「…」ハッ

 

 

照月「ご、ごめんなさい!

今のは…その、つい…!」

 

 

照月「明石さんも、その…

見なかったことにしてください!!」

 

 

明石「え、ええ、分かったわ…?」

 

 

照月「そして提督!」

 

 

提督「は、はい?」

 

 

照月「ええっと…そうだ!」

 

照月「…後で、私の部屋に来てください」

 

 

提督「…え」

 

 

照月「…そこで、その…続きはしますから。…ええっと…」

 

 

 

照月「…待ってます!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

提督「…なあ。さっきの照月の『続き』ってさ。…どっちのこと言ってたんだと思う?」

 

 

明石「糾弾の…お話の方の続きって感じじゃありませんでしたよね、どう見ても」

 

 

明石「極め付けは最後に言った、『待ってる』ですからね…恐らくは、その…」

 

 

提督「…なあ、本当に部屋に行かないとダメかな。ボタンの解除も明石がやってくれよ」

 

 

明石「嫌ですよ!自分で蒔いた種でしょう。自分でなんとかして下さい!」

 

 

提督「チクショウ、正論が俺を痛めつける…」

 

 

 



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Гангутの場合、真。

 

 

【数時間後】

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

明石「お帰りなさ……あっ…

えーと、お疲れ様です」

 

 

 

提督「…まぁ、ちゃんとボタンは解いてきたよ。まあその後甘えるのを止めるかっていうのは別だったんだが…」

 

 

提督「…はぁ…」

 

 

明石「…物憂げな溜息をつかれても、私にはどうしようもないんですが…」

 

 

提督「…そりゃあそうだよな。

じゃ、次だ次!切り替えてこう!」

 

 

明石「うるさっ!…情緒がもう…!」

 

 

提督「…すまん。なんかこう…ハイになってかないと歩みを止めてしまいそうで…」

 

 

明石「いっそ止めましょうよこんな歩み」

 

 

提督「いいや、止まらないね。今度は…そうだな、海外艦の娘にやってみようか」

 

 

明石「海外艦、って言うと…」

 

 

提督「プリンツ、ローマ、ビスマルク、アイオワ…選り取り見取りだが…」

 

 

提督「…今回はガングート。逝ってみようと思う」

 

 

明石「ガ…!?マジでやばい娘じゃないですか!?自殺願望持ちですか!?」

 

 

提督「いやいや、あの娘だって一人の艦娘なんだ。差別はいかん。バックにある某連邦とかを見ないで、あの子自身を見てやらんとな」

 

 

明石「…やらんとしてる事に目を向けなければとてもいい言葉ですね」

 

 

明石(あと震えてる手を見て見ぬ振りすれば…)

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 

 

 

 

 

提督「よお、ガングート」

 

 

Гангут(以下ガングート)「何だ、貴様か」

 

 

提督「おいおい、何だとは何だ。

一応上官だぞ俺は」

 

 

ガングート「上官、か…ならもっとそれらしい振る舞いをしたらどうだ?」

 

 

提督「上官らしい振る舞いって言われてもなぁ…今更それすると怖がる娘が出るだろうよ」

 

 

ガングート「私が言いたいのは高圧的になれ、という意味じゃない。皆に示しがつくような行動をしろ、という事だ」

 

 

ガングート「…要するに、それで遊び呆けるのを止めろ」

 

 

提督「…げ、バレてら」

 

 

ガングート「バレるも何も『それ』と、それを使ってる貴様の噂はもう回りきっているぞ?それこそ、余所者である私が知るくらいにな」

 

 

提督「…ガングート」

 

 

ガングート「!…すまん」

 

 

提督「…以前も言っただろ。俺たちはお前を余所から来たとかで線引きしたくないし、しない。だからお前の方からも、一線を引かないでくれないかって。」

 

 

ガングート「…ただの口癖だ。実際、私自身、もう自分を余所者と思ってなんか無い」

 

 

提督「…そうか?」

 

 

ガングート「そうさ。ここにはちっこいのも居るし…それに、あるお人好しにさんざっぱら言われたからな。もうそんな風に思っちゃいない」

 

 

提督「お人好しねぇ。はて、誰の事だか」

 

 

ガングート「…フ」

 

 

提督「ははは、鼻で笑われちまった」

 

 

ガングート「ハッ…全く、面白いな貴様は」

 

 

提督「お、そうか?そいつは光栄だ」

 

 

ガングート「ああ。…その、貴様のそういう所は嫌いじゃあ無いぞ」

 

 

 

提督「そうか。それっ」

 

 

ポチッ

 

 

 

ガングート「…」

 

 

ガングート「…!?なっ!貴様ァ!」

 

 

 

提督(さあ、よーく見せろ、その反応を…)

 

 

 

ガングート「ぐっ…き、貴様!こっちを見るな!それ以上見たら銃殺刑にするぞっ!」

 

 

提督(おいおい、そんな健気に顔を隠されたら…どうしても見たくなるじゃないか)

 

 

 

【提督、優しく手を取る】

 

 

 

ガングート「!!な、何を…!」

 

 

提督「…顔が真っ赤だな。白い肌と合わさって、本当に綺麗だ」

 

 

ガングート「ッ!ええい、放せ!というか離れろ!…ち、近いだろうがッ!」

 

 

提督「嫌だ」

 

 

ガングート「なっ!この…!」

 

 

 

提督「…」

 

 

 

ガングート「きゃっ!……っ!」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

ガングート「…もう、いいだろう?」

 

 

 

提督「…ああ」

 

 

 

 

【提督はようやく手を放した】

 

 

 

 

ガングート「…ええい、そのボタンを貸せ!」

 

 

提督「痛ッ」

 

 

 

ガングート「すまな…じゃなくって!これをもう一度、私に向けて押せば…」

 

 

 

カチッ

 

 

 

ガングート「…ハァ、全く酷い目に合った」

 

 

 

ガングート「…さて」ギロリ

 

 

 

提督(…遂にこの時が来たか。

覚悟は決まってる。さあ、どんと来い!)

 

 

 

ガングート「…本来なら貴様に、シベリアで木を数える仕事に就いてもらう所だが…」

 

 

 

提督(『だが』と来たか。シベリア流刑よりもやべーってなると、もう拷問くらいしか思い浮かばないが…)

 

 

 

ガングート「…が、今の私は気分が良い。特別に許してやろう」

 

 

 

 

提督「…」

 

 

提督「……え?良いのか?」

 

 

 

ガングート「二度は言わんぞ。

それとも銃殺刑がお好みか?」

 

 

 

提督「イヤ、そんな事は無いが…」

 

 

提督「…」

 

 

提督「…一つだけいいか?さっき俺が手を掴んだ時。お前らの…艦娘の力なら力づくで振り解けたはずだ」

 

 

 

ガングート「……」

 

 

提督「それに、『気分が良い』って…」

 

 

 

ガングート「……」///

 

 

 

提督「…」

 

 

提督「……」ニヤリ

 

 

 

ガングート「…っ!な、何だその顔は!!

本当に銃殺刑にするぞッ!!」

 

 

提督「ガングート様の寛大さに甘んじて、撤退!」

 

 

 

 

【提督は去っていった】

 

 

 

 

ガングート「なッ、おい貴様…!

…全く。よくもまあアレで上官だぞと宣えるものだ。私にあんな事をしておいて…」

 

 

 

ガングート「あ、あんな事を…」

 

 

 

 

ガングート「……〜ッッ」///

 

 

 

ガングート「…ええいっ!やはり赦さん!!

貴様、待て!懲罰房に送ってやるーっ!」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「…で、どうしたんですか?」

 

 

提督「そりゃあ平謝りよ。拝んで拝んで拝み倒したら、いつかアッチの地元に挨拶するって事で手打ちにしてくれた」

 

 

明石「へー、思いのほか優しいですね…

って、地元に挨拶?」

 

 

提督「ああ。すぐで無くともいいけど、私と共に行くぞ、だそうだ」

 

 

明石「…あの。ガングートさん…

それ以外に何か言ってませんでした?」

 

 

提督「ん?えーと…あれだ。

『責任は取ってもらうぞ』って言ってたな。何のこっちゃかわからんが、まあ何とかなるだろ」

 

 

明石(…この人、過去最大に追い詰められている事に気づいてないのかしら…)

 

 



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舞風の場合、真。

 

提督「なあなあ。今度の娘は舞風ってのはどうだろう。きっと可愛いぞ」

 

 

明石「…随分とまあ出し抜けですね。だけどまあ良いんじゃないですか?」

 

 

提督「…そっちもだんだんと投げやりになってきたじゃないか。いいねそういうの。熟年夫婦みたいだ」

 

 

明石「な、何をアホな事言ってんですか!

そもそも投げやりなのは貴方が選ぶ娘をこじつけでって言っていたからで…!」

 

 

提督「あーすまんすまん、そんなにいきり立つな。別に怒らせる意図があったんじゃないからさ」

 

 

明石「…私も怒ってる訳じゃ…」

 

 

提督「そうか?まあ、取り敢えず逝ってくるわ。多分直ぐ戻るよ」

 

 

明石「あ、ハイ、いってらっしゃい。

お話楽しみにしておきます」

 

 

明石「…ふふ。今の会話、熟年夫婦みたいですね」

 

 

提督「う…」

 

 

提督「…さっきの仕返しか?全く。

今度こそ逝ってくるぞ!」

 

 

明石「ええ、いってらっしゃい」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「やあ、舞風」

 

 

「…あれ、提督?

どうしたの、急に部屋に来て」

 

 

提督「ああ。ちょっとな。入っていいか?」

 

 

「うーん、ちょっと少し待ってくれると嬉しいかも?」

 

 

提督「よしわかった。入るぞー」

 

 

ガチャ

 

 

「え、ちょっと!」

 

 

提督「あれ、その格好…」

 

 

 

舞風(浴衣)「あはは…えっと、これは…」

 

 

 

提督「…やっぱり似合ってるな」

 

 

舞風「!…ありがとう」

 

 

提督「しかしまあ、随分と急だな…

季節的にも少し寒いんじゃないか?

何でまた浴衣を着てるんだ」

 

 

舞風「…まあ、虫干しっていうか…

たまには着とこうかなって思ってて」

 

 

舞風「…ていうか。『待ってて』って言ったのに何で開けたの?」

 

 

提督「つい」

 

 

舞風「つい、じゃないって!これが着替えの途中とかだったらどうしてたんです!」

 

 

提督「…確かに。考えが足りてなかったな」

 

 

 

舞風「…まあ、別に提督なら良いですけど」ボソッ

 

舞風「…で、本当にどうしたの?一緒に踊る?」

 

 

提督「いや踊らないが…

代わりに心が躍るような事をしに来た」スッ

 

 

舞風「!!もしかしてそのボタンっ!」

 

 

提督「問答無用!オラッ喰らえっ!」ポチッ

 

 

 

舞風「ッ!……」

 

 

舞風「…提督。覚えてます?

この浴衣見て、褒めてくれた事」

 

 

 

提督「…ん?ああ、覚えてるが…

急にどうした?」

 

提督(効果はもう出てる筈だが…

それ程までに話したい事なんだろうか)

 

 

 

舞風「アレが凄く嬉しくって、あの日はもう部屋で一人で小踊りしちゃって…」

 

 

舞風「…で。最近、提督が女の子を侍らせて遊んでるって言うから舞風もちょっぴり期待してたんです。いつか舞風の所に来るかなーって。

で、そしたらどうしようかな、なんて」

 

 

提督「侍らせるってのは語弊があるなぁ…いや、まあ仕方ないが」

 

 

舞風「でも!…提督全然来てくれないから、それなら舞風の方から行こうかなー、なんて思って。で、せっかく『お誘い』するんだから、以前褒めてくれた格好で行こうなんて思ってたんだけど…」

 

 

提督「…ん?じゃあその浴衣って…」

 

 

舞風「うん。さっきは照れ臭くて言わなかったけど、ほんとは提督の為に着たんだ。

…えへへ、やっぱ恥ずかしいな」

 

 

提督「…そっか。それなら俺が来たせいで、わざわざその格好したの無駄になっちまったな。悪い悪い」

 

 

舞風「無駄じゃ無いですよ!

だって、提督が来たじゃないですか!」

 

 

提督「いや、だってそれは…違うだろ?」

 

 

舞風「いいんですよ、細かい事は。

大事なのは…よいしょっ」

 

 

提督「うわっ!?」

 

 

 

【提督、寝台に押し倒される】

 

 

 

舞風「ふうっ…大事なのは、提督が舞風のところに来てくれて、甘えさせてくれるって事だもん。…さぁて、観念してくださいね?」

 

 

 

提督(マズイ…このままじゃ、また…!)

 

 

舞風「ふふふ、まずは…そうですね、膝枕なんてどうだろ!」

 

 

提督「…ん?」

 

 

舞風「?どうしたんです、素っ頓狂な顔して。

…嫌とは言わせないよ?」

 

 

提督「…いやな。汚れているのはこれまでの実績か俺自身かをちょっと考えててな…」

 

 

舞風「?よくわからないけど、早く、早く!」

 

 

提督「ほいほい、んじゃこっち来な」

 

 

 

【その後、舞風の気が済むまでそれは続いた】

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

明石「うーん…その話を聞いてる限りだと提督が汚れてるだけなように思えますが…」

 

 

提督「いやだってさ…これまでがこれまでだったから…部屋で、二人きりで、ベッドに押し倒されてって時点で『やっちまった』って臍を噛んでたっていうか…」

 

 

明石「それは提督が自分で蒔いてしまった種なので仕方のない事では…」

 

 

提督「…ごもっとも」

 

 

明石「あはは…ええと、それで?ボタンの解除はしてきたんですよね。何か反応はありましたか?」

 

 

提督「ああ…つっても元々あの子は明るいというかあけっぴろげというか…そんな子だからな。ちょっとは恥ずかしそうにしてたけど…」

 

 

提督「…そうだな、あれは多分、俺に甘える口実ができて嬉しかったっていう感じだったと思う。そっちの喜びが勝るっていう感じのな」

 

 

明石「そうですか…

しかし、全く罪な男ですよねぇ、提督も…」

 

 

提督「…そいつは褒め言葉か?」

 

 

明石「半々です。だって、単に悪し様に言っても、貴方聞き流すじゃないですか」

 

 

提督「うーん、ごもっとも」

 

 

 



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白露の場合、【?】。

 

明石「あ、そうそう。そういえば提督が不在時に白露ちゃんが来てましたよ」

 

 

提督「ん、何だろ。何かあったかな」

 

 

明石「いや、きっとそういう切羽詰まった感じのものでは…」

 

 

提督「…ああ、ボタン関連か。

大方、時雨辺りから話を聞いたんだろうな」

 

提督「よし、いいだろう。今度は彼女だ。

こうなったらもうお望みどおりにやるまでさ」

 

 

明石「…今更ですけど凄い自惚れですね。

ボタンを押されたがってるだなんて…」

 

 

提督「…まあ着任以来、そうなるように…皆が俺に何かしらの好意を抱くように行動してきたからな」

 

 

明石「…え?それってどういう」

 

 

提督「…誰かに好意を抱き、それを心に持ち行動を起こしその人の為に成りたいと願う。その願いは限界以上の力を引き出すもんだ。その好意が思慕でも尊敬でも親愛であろうとも」

 

提督「…まあ明石。お前の思ってる事と大して変わらん。俺は最低って事、それだけだ」

 

 

明石「…提督…」

 

 

提督「何だ?」

 

 

明石「…いえ、その…何というか…」

 

 

明石「その話とこのボタンを押しに行くのは別の話ですよね?」

 

 

提督「クソっ、いい話で終わらなかったか」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

白露「ていと…くっ!」

 

 

提督「うおっ!?…なんだ、白露か。

急に飛びついてくるのは止めろったら…

腰をいわしたらどうするんだ」

 

 

白露「あはは、何おじいちゃんみたいな事言ってるの…それよりもほら、見て!」

 

 

提督「ん…おお!これまた、随分可愛らしい格好してるじゃないか」

 

 

白露(秋私服)「でしょー?カワイイでしょ?やっぱり私が一番でしょ!」

 

 

提督「ああ、可愛いぞ。…しかしまたどうしたんだ急に?」

 

 

白露「うん?いや、提督ったら制服じゃ我慢出来ないヘンタイさんだから、白露も満足させるにはおめかししなきゃって思ってて」

 

 

提督「……」

 

 

白露「あれ、どうしたの?今度は頭痛?」

 

 

提督「…それは…白露が勝手に考えたんだよな?まさかそんな噂が流れてるとかじゃないよな?」

 

 

白露「…違うの?」

 

 

提督「違ぇよ!?どこからそんな話聞いたんだ!」

 

 

白露「さあ?どこかから聞いたんだけど。

なんだ、違うんだ。ざぁんねん…私服なら提督をメロメロに出来ると思ったのになぁ」

 

 

提督(…前回の…舞風辺りからの情報かな…)

 

 

白露「メロメロにしてその後洗脳しちゃえば私は提督の一番に…って聞いてる?」

 

 

提督「ああ、聞いてる聞いてる。ちゃっかり恐ろしい事言ってたのも聞いてたぞ」

 

提督「…そんな恐ろしい事を言う娘にはコレはお預けかな?」

 

 

白露「…!ボタン!」

 

 

提督「おいおい、せっかくの可愛らしい格好なんだ。そんな怖い顔をするな」

 

 

白露「むむー…いじわる」

 

 

提督「そうか?」

 

 

白露「そうだよ。…やっぱり、私は提督の一番になりたいのに、提督は私の事なんてどうでもいいと思ってるんだ」

 

 

提督「おいおい、捻くれすぎだ。

どうでもいいなんて思ってる訳無いだろ?」

 

 

白露「え〜、本当?ならなんで…」

 

 

白露「…それなら何で私にそのボタンを押しに来なかったの?」

 

白露「姉妹達の中でも一番にしてくれなかったよね。山風と時雨の後に。ねえ、なんで」

 

 

提督「…」

 

 

白露「…答えられないの?

やっぱり、提督にとって」

 

 

提督「大事に決まってるだろう?」

 

 

白露「でも一番じゃ無い?」

 

 

提督「同率一位さ、他のみんなとな」

 

 

白露「……」

 

 

提督「ハハハ、露骨に不服そうな表情だな!

まあでも、こればかりは本当だからな。皆が俺の大切な同僚だ」

 

 

白露「大切な同僚とは肉体関係を持たないと思うんだけどなー」

 

 

提督「ゲホッ!」

 

 

白露「…あ、その反応からしてこれは本当なんだ」

 

 

提督「…いや…それには訳が…」

 

 

白露「うん、提督の事だしきっと無理矢理押し切られちゃってって事なんだろうなーってのは解ってるよ。…って事はつまり」

 

 

白露「…『ムリヤリ』ならそのまま押し切れちゃうって事だよね?」

 

 

提督「!?やめ…」

 

 

白露「本当は提督が嫌がる事はあまりしたくないんだけど…ごめんね?やっぱり欲しくてさー?」

 

 

提督「な、何を…」

 

 

白露「決まってるじゃん!提督の…」

 

 

 

白露「…いっちばーん♪」

 

 

 

 

 

ヤ…ヤメ…

 

 

ンアーッ!!

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

明石「ああ…!て、提督!」

 

 

提督「明石…俺はもうダメだ…」

 

 

明石「ボタンは無事ですか!?」

 

 

提督「…先にそっちの心配か、てめぇ…」

 

 

明石「あはは、冗談ですよ冗談。

…にしてもまた、ずいぶんと…ええと…」

 

 

提督「…おムコに行けない…」

 

 

明石「前もそんな事言ってましたね…

いっそ貰ってもらったらどうですか」

 

 

提督「バカ言え、俺が所帯を持つ何て真似したら示しが付かんだろう。…それに、この組織そのもの瓦解しそうだ」

 

 

明石「…確かに一理ありますね…ってあれ?今回のデータが入って無いんですが」

 

 

提督「え?

…あ!そういや今回ボタン使ってねぇ!」

 

 

明石「ただダシに使われただけ、ですか。

それも提督が使うんじゃなく、相手の娘に」

 

 

提督「…本当に申し訳ない」

 

 

 



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浦風の場合、真。

提督「なあ、そろそろお前が必要としてるデータとやら…十分に集まったんじゃないか?」

 

 

明石「まあ足りないことはないですが…

有るに越した事は無いんで、もう少しやって頂けませんか?」

 

 

提督「…かーっ、仕方ないな。

可愛い部下が必要としてるしな!仕方ないな!」

 

 

明石「その緩みきった顔はもはや隠すつもりすら無いですね、提督」

 

 

提督「しかしそうだな…一度俺に浴衣や私服姿を披露してくれた娘の所に行ってみようか。面白そうだ。となると…」

 

 

提督「…よし、浦風だな」

 

 

明石「…?話がイマイチ繋がりませんが…

何故急に私服や浴衣姿の娘を?」

 

 

提督「おそらく舞風といい白露といい、俺への噂が流れているだろうからな。事実無根とまでは言えないが…」

 

提督「…で、それをやっきになって否定する必要があるかって言われたらそうでも無い。いや、むしろ…」

 

 

明石「それに便乗した方が面白い、と。

…とことん刹那的な快楽主義ですね」

 

 

提督「褒め言葉だな。

じゃ、行ってくるよー」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

浦風「…提督さん。

何でうちが怒っとるか分かる?」

 

 

提督「…い、いえ…」

 

 

浦風「…女心をわかっちょらん。

確かにうちは噂を聞いてこの服を着た」

 

 

提督「ウス」

 

 

浦風(浴衣)「私服や制服とは違う服を着たら喜ぶ聞いたからじゃ…季節外れでも提督が喜ぶ言うけぇ、着たんじゃ。恥を忍んで着たんじゃ…」

 

浦風「…最初、この姿を見て何言うた?」

 

 

提督「…よ、『よく似合ってる』と…」

 

 

浦風「その次じゃ」

 

 

提督「…『やっぱ浜風や浦風とかは似合うな。陽炎型は浴衣が似合うのかもしれない』」

 

 

浦風「…はぁ…」

 

 

提督「……」

 

 

浦風「…他の娘の話をするなっちゅう訳じゃあ無くて。普通目の前の人を褒める時にその場に居ない人を並列化して褒めるかっちゅう話じゃ」

 

 

浦風「…うちを見ろ!うちが、提督の為にこれを着てるんじゃ!うちだけを見ろ!!」

 

 

提督「…悪い…軽率な発言だった…」

 

 

浦風「…ふんっ」

 

 

提督「お、おーい。浦風」

 

 

浦風「……」ツーン

 

 

 

提督(ヘソを曲げちまった…

我ながら軽率だったな。

まさかこんなに怒らせちまうとは)

 

提督(…取り敢えずご機嫌を直してもらおう。そうしなきゃ出来ることも出来ねぇし)

 

 

提督「済まなかった、浦風。何とか機嫌を直してくれないか?なんでもするからさ…」

 

 

浦風「…『何でも』言うたな?」

 

 

提督「うっ…

まあ、そこは常識的な範囲内で…」

 

 

浦風「……なら」

 

 

提督「…」

 

 

浦風「………る」

 

 

提督「…?すまん、何だって?」

 

 

 

浦風「…ボタン。

押してくれたら、許しちゃる」

 

 

提督「…そんな事でいいのか?」

 

 

浦風「そんな事『が』ええんじゃ。

…察して欲しいわ、朴念仁」

 

 

提督(こっちとしては願ったり叶ったりだ)

 

提督「よっしゃわかった」

 

 

ポチッ

 

 

浦風「!ちょっとは心の準備ちゅうもんが…」

 

 

浦風「…〜〜ッ、ほんと…

そがいなとこよ、女心が解らないって…」

 

 

提督「…すまん。

火に油を注いじまったかな」

 

 

浦風「…うーん。実は、な」

 

 

提督「?」

 

 

浦風「…あんまり怒ってはないんじゃ。

その、さっきから…」

 

 

提督「そうなのか?いや、そうなら良いんだが…てっきり怒髪衝天って感じかと」

 

 

浦風「確かにちょっとは怒っとったけど、そんなには…それでもそんなフリしとったのは…」

 

 

提督「ああ、ひょっとして俺に構って欲しかったのか?」

 

 

浦風「……」

 

 

提督「……ごめんなさい。

そういう所って言われたばっかだった」

 

 

浦風「…いや、まあ事実やけん。それにウチが好きになったのは、そういう提督やから」

 

 

提督「おお、嬉しい事言ってくれるな」

 

 

浦風「それじゃ早速甘えさせてもらけぇ、

覚悟しといてな?」

 

 

提督「!!」ビクッ

 

 

浦風「…?

…ああ、安心して。『そういう事』はせんよ。無理矢理したらかわいそうじゃけぇな」

 

 

浦風「……ただ…」チラッ

 

 

浦風「…ええと、もし『そう』なったら。

その、うちを使うてもええんよ?」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「耐えた、耐えた、耐えた耐えた。

耐えたぞ!」

 

 

明石「…ず、随分とまあ…心が疲れていらっしゃるみたいで。…ええとその、そういった事を?」

 

 

提督「いやまあ…こっちからは勿論言い出さないし、あっちからも露骨にそういう事はやってこない…というか本当に健全なスキンシップしかしない上に、寧ろ肩もみとかすらしてくれたんだけど…」

 

 

明石「けど?」

 

 

提督「…その…フィジカルの暴力というか…」

 

 

明石「フィジカル?って言っても浦風ちゃんは他の娘と比べてもそんな力が強いとかいう訳では無いような気が……あっ」

 

 

提督「……」

 

 

明石「…最低…」

 

 

提督「いやだって!俺も一応男だしさ!なんていうか、ついさぁ…!」

 

 

明石「その発言がですよ!忘れがちかもしれませんが私だって…い、一応女の子なんですから!」

 

 

提督「あ…」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…す、すまん。

その、確かに配慮が無かった」

 

 

明石「…いえ、こちらこそ錯乱してました…」

 

 

 



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球磨の場合、真。

提督「うーん…」

 

 

明石「?今度はどうしたんですか?」

 

 

提督「いや…『これ』の噂が流れたせいで相手からほぼ求めてるってのが増えたなぁって思ってな。で、それはまた何かちょっと違うんじゃないかとも思い始めてる訳で…」

 

 

明石「違うって…まあ確かに最初の方はドッキリ的な感じもあるものでしたもんね、このボタン」

 

 

提督「ああ。だから、出来れば今度はあまり俺にそういうのを求めてなさそうな奴にやってみたいんだ。…けど、それが思いつかなくってなぁ」

 

 

明石「成る程…姉が大好きな娘とかはどうでしょうか?」

 

 

提督「ん?姉…姉か…」

 

 

提督「よし、球磨にしよう」

 

 

明石「…が、ガン無視ですか!」

 

 

提督「いやすまん。だってそこら辺にやったらまたタダじゃ済まなそうだし…それに思いついてしまったから仕方ないじゃないか」

 

 

明石「開き直らないでください!

…まあ提督はそういう人ですから。大丈夫、わかってます」

 

 

提督「…その反応はそれでムカつくな」

 

 

明石「なんて理不尽な!」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「球磨ー、球磨さんやー」

 

 

球磨「…うっさいクマ。そんな何度も大声で呼ばなくても聞こえてるクマー」

 

 

提督「お、居たな。よし!」スッ

 

 

球磨「ぎゃー!見つけて即ボタンを押そうとするなクマ!」ダッ

 

 

提督「待てコラ逃すかァ!」ガシィ

 

 

球磨「ぐえー!」

 

 

提督「フハハ、もう抵抗しても無駄だぞ…!」

 

 

球磨「!や、やめ…!離すクマ!誰か助けてクマー!鬼畜提督に手篭めにされるクマー!!」

 

 

提督「ええい騒ぐな!後その言い方はやめろ!語弊…って感じでもねぇなこれ」

 

 

球磨「何をしみじみ自分を見てるクマか!」

 

 

 

提督(…にしても。うーん、ガチ拒否だな。

ちょっと新鮮な気分…)

 

 

球磨「…な、何を感動してるんだクマ。

すっげぇ気持ち悪いクマ…」

 

 

提督「ん?ああいや、こっちの話さ」

 

 

提督(…しかし、ここまで本気の拒否をしてる相手にこのボタン押したら…)

 

 

提督「…」チラッ

 

 

球磨「……!」

 

 

提督(…このボタンは甘えさせるもの。

つまり本人の意思がどうあろうと関係ない。例え相手が俺の事を好きじゃなかろうが…)

 

提督(…これ、マジで俺憲兵にひっ捕らえられるんじゃ…)

 

 

提督「……」

 

提督(いや、まあ今更か)スッ

 

 

 

球磨「っ!」ビクッ

 

 

提督「…」

 

 

球磨「……?」

 

 

提督「…」スッ

 

 

球磨「…ッ!」ビクッ

 

 

提督「……」

 

 

球磨「…〜〜ッ!あー、もう!せめて一思いにやれクマ!!」

 

 

提督「了解っす」ポチッ

 

 

球磨「でもほんとは押さないで欲し…って!」

 

 

球磨「……ハァ〜、もう煮るなり焼くなり好きにしたらいいクマ。で、何をするクマか?」

 

 

提督「…」

 

 

提督「いやいや、何を勘違いしてるんだ。

俺は何もしないさ」

 

 

球磨「…へ?」

 

 

提督「俺はこのボタンを押したかっただけ。

それでやりたかった事は終いさ」

 

 

球磨「ど、どういう事クマ…?」

 

 

提督「どういうもクソも今行った通り。

…だからなぁ、『何か』…例えば、甘えさせて欲しいってんなら…」

 

 

提督「俺に『おねだり』してみろよ」

 

 

 

球磨「……!!何を言って…!」

 

 

提督「嫌なら別にイイさ。俺は既に目標を達成してるからな。このまま満足してこの場を去るだけだぞ?」

 

 

球磨「んなっ…!」

 

 

球磨(…〜〜ッ!!こんな口車に乗せられる訳無いクマ!乗せられて…たまる…)

 

 

 

球磨「…抱きしめさせて欲しいクマ…」///

 

 

 

球磨(うぅ〜っ…覚えてろクマ…!)

 

 

 

提督「よく出来ました。ほら、こっちにおいで」

 

 

球磨「……うん」

 

 

 

ギュッ

 

 

 

提督「よしよし。…で、やってほしい事はそれだけか?それならそれでいいが」

 

 

 

球磨「!ま、待って!…その…ある!

まだあるから待てクマ!」

 

 

球磨「えーっと、その…

……させてほしいクマ」

 

 

提督「おおっと、聞こえないぞ?…それに」

 

 

球磨「…?」

 

 

提督「人に頼むんなら、もっと頼むべき態度ってものがあるんじゃないか?」

 

 

球磨「……ッ!あ、あとで覚悟しとけクマ…」

 

 

提督「覚悟ならとっくに完了してるさ。

さあ、お前も覚悟を決めてもう一回!」

 

 

球磨「…キス、を」

 

 

提督「ん?」

 

 

 

球磨「…キスをしてください、クマ…」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「あー、楽しかった」ボロッ

 

 

明石「おっと、痛めつけられてますね。

まあどうせ自業自得なんでしょうが」

 

 

提督「失敬な。まあその通りなんだがな!」

 

 

明石「しかし、なんであんなに嫌がってたんでしょうか?押されてしまってからは、何というか満更でもない感じでしたが…」

 

 

提督「『オモチャにされるのが目に見えていたから絶対やだったクマ』だそうだ」

 

 

明石「ああなるほど…

実際そうなってましたしね」

 

 

提督「いやー、しかし。やっぱりからかい甲斐があるってのは良いな。ほんとはもうちょいしたいんだが…」

 

 

明石「が?」

 

 

提督「…そうしたらガチで嫌われそうでな…」

 

 

明石「ああ…なんというか微妙にみみっちいですね。そこは嫌われても構わないから、とはならないんですか」

 

 

提督「責任とかをほっぽり出せる立場ならそうも思えるんだろうがなぁ…」

 

 

明石(多分本気で嫌いになる娘は殆どいないでしょうが…)

 

 

明石(…ちょっとムカつくので黙っときましょ)

 

 

 



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水無月の場合、真。

 

明石「……あの」

 

 

提督「……」

 

 

明石「…提督?」

 

 

提督「…ん?ああすまん、どうした?」

 

 

明石「ああいえ、急に押し黙ってしまったので何事かと思いまして。お腹痛いんですか?」

 

 

提督「いや大した事じゃない。ただな。この前出した遠征部隊…ちょっと編成を失敗してしまったかも、って思ってただけだ」

 

 

明石「…!?て、提督が…提督らしい事をしている…!?」

 

 

提督「しばくぞコラ …あくまで推測だが、水無月がちょっとミスして…で、それを結構引きずってしまってるんじゃないかと思う。よってそのアフターケアも含めて」

 

 

提督「…このボタンを押しに行ってくる」

 

 

明石「…うわぁ。成る程。

そうまでして大義名分を作ろうとしますか」

 

 

提督「いや、嘘は言ってないからな!?」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

提督(水無月は…居た。

ちょうど入渠を終えたところみたいだな)

 

 

提督「おーい、水無月」

 

 

水無月「!こんにちは、司令官」

 

 

提督「ああこんにちは。体調はどうだ?

もう大丈夫か?」

 

 

水無月「うん、元気いっぱいだよ!

すぐに出撃だって出来るくらい!」

 

 

提督「はは、頼もしいな。ただ出撃はまだ良いぞ。…その、何だ。執務室に来てくれないか」

 

 

水無月「…ッ …うん、わかった。」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「さて、水無月をわざわざ呼んだ理由だが…」

 

 

水無月「……」

 

 

提督「…艦種の得手不得手を吟味せずに無責任に出撃を命じた。結果、君に怪我を負わせてしまった」

 

提督「俺の采配ミスだ。申し訳ない」

 

 

水無月「…へ?な、何?改まって」

 

 

提督「…いや、その…謝っておかなきゃと思って…お前たちの努力に泥を塗る事になっちまうかとも思ったけど…」

 

 

水無月「ううん、そんな事無いよ…にしても、良かった。安心しちゃった」

 

 

提督「?」

 

 

水無月「いや、てっきりね、失敗しちゃったから怒られるのかと思っちゃってた」

 

 

提督「あ…だからヤケにしおらしかったのか。重ねて済まない。確かに、こんな状況だっあら勘違いもするわな」

 

 

水無月「ううん、気にしてないよ!…そうだ司令官、お腹空いて無い?何か作ろうか?」

 

 

提督「いや、お腹は空いて無いよ。

それよりもな、ちょっとやって欲しい事が…」

 

 

水無月「あ、もしかしてウワサのあのボタンの事とか?それならバッチコイ、です!さあどうぞ!」

 

 

提督(おお話が早い…)

 

 

提督「そうか?よし、なら遠慮なく押させてもらうが…」

 

 

水無月「え?冗談半分で言ったつもりだったのにホントにそうなの…」

 

 

提督「えっ」ポチッ

 

 

水無月「あ!」

 

 

 

提督「あー……」

 

 

水無月「…あはは、えっと…」

 

 

水無月「……」

 

 

水無月「…ごめん、ちょっと良い?」///

 

 

 

提督「…ああ。ほら、おいで」

 

 

 

 

【水無月、座った提督の膝の上に座す】

 

 

 

水無月「……えっへへへ。

司令官の膝の上は不思議と落ち着くよね」

 

 

提督「そうか?お世辞にも座り心地は良く無いと思うが…」

 

 

水無月「そう言う事じゃなくて…

…もう!司令官もホントは分かってるくせに!」

 

 

提督「ハハ、悪い悪い」

 

 

 

水無月「……ありがとう。」

 

 

提督「…何がだ?」

 

 

水無月「…実はさ。さっきから結構引きずっちゃってたんだ。だから怒られても仕方ないかな、なんて…何ていうか自己嫌悪とかしちゃってたの」

 

 

水無月「でも司令官がこうしてくれたおかげで少し…ううん、とっても気が楽になったよ。だからありがとうね?」

 

 

提督「…まったく、気にしなくていいのにな」ナデナデ

 

 

水無月「ん〜…えへへ…」

 

 

提督「なんて言うかなー…そりゃ責任感はあるに越した事は無いかもしれないが…ずっと持ってても、それはそれでしんどいぞ?」

 

 

水無月「大丈夫だよ!水無月はちゃんとしてるし!…それに…水無月の隣には司令官が居るから」

 

 

提督「…そうか」

 

 

水無月「うん。…あ!でも、じゃあ折角だから一つ頼んでも良い?」

 

 

提督「ん?何だ」

 

 

水無月「このまま、ぎゅっと抱きしめて?」

 

 

提督「はいよ」

 

 

水無月「わっ……」

 

 

水無月「…うん、ありがと♪」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「…どうにも、自分に与えられている責任を深く考え過ぎる子が多い気がするよ」

 

 

明石「まあ…提督のように責任をほっぽり出して遊び呆けるよりは良いとは思いますが…」

 

 

提督「ちょくちょく正論で殴りつけてくるのはやめろ。心が痛い。…いやな、俺は彼女らをどーしてもか弱い女の子にしか見れないんだ。実際の強さとかどうとかっていうのを全て知っている上でだ」

 

 

提督「特に駆逐艦や海防艦の子らなんてまだ心身ともに子供じゃないか。…そんな、純真な子供達を守る為に俺達は戦争をしてるんじゃないのか?」

 

 

提督「なのに俺達はその未来ある子供に、その小さな身が潰れそうな程の責任を背負わせて。それだけでは飽き足らず死の危険がある任務を任せて。…それでいいのか?なんて、柄にも無い事をしみじみと考えちまってな」

 

 

明石「…本音は?」

 

 

提督「駆逐艦って最高だなって」

 

 

明石「憲兵さーん!!」

 

 

 

 



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多摩の場合、真。

 

提督「…なぁ、明石えもん。これどうしよう」

 

 

明石「誰が国民的キャラですか。

…『これ』?一体どうし…」

 

 

 

多摩「……」グテー

 

 

 

明石「…えぇ…?あの、何故多摩ちゃんをおんぶしてるかを聞いても?…あ、もしかして遂に…」

 

 

提督「いや、別に何もしてないからな!?

…執務室に戻ったらコイツが寝てたんだよ。で、放っておく訳にもいかねぇしさ」

 

 

明石「は、はぁ。その…ここに連れてこられてしまっても正直なところ困るんですが」

 

 

提督「…まあ、そりゃそうだろうな。んじゃ仕方がないし取り敢えず仮眠室にでも寝かせてくるわ」

 

 

明石「執務室で寝ていたんですから執務室に戻してあげたらいいんじゃ?」

 

 

提督「お前な…気の失った艦娘を自分の部屋に放置している男をもし目撃したら、普通どう思うさ。それも子供ではなく、見た目年齢が既にちゃんとした娘をだ」

 

 

明石「あー…成る程、鬼畜か変態ですね」

 

 

提督「だろう?そういうこったよ」ヨイショ

 

 

明石(まあ提督の場合はちょこっと弁解すれば大体は大丈夫な気もするけど)

 

 

提督「何か言ったか?」

 

 

明石「いえ、もう既に変態の鬼畜じゃないかなーって思って」

 

 

提督「お、辛辣ゥ!」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

提督(やれやれ、多摩にも困ったもんだ。

猫じゃないなんて言っときながら言動はほぼマジもんの猫じゃないか)

 

 

提督(結構揺らしてるし起きてもおかしくは無いんだがな…まあ、熟睡するくらいには信頼を置いてもらってるとか思っておくかな)

 

 

多摩「…ん…」

 

 

提督「おっと、揺らしてたら起こしちまうな」

 

 

提督「……」

 

 

提督「!」ピコーン

 

 

提督「…よし、多摩にやるかぁ!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「はーいよー。多摩さんやー、起きろー」

 

 

多摩「…うん…んにゃ?」

 

 

提督「おはよう。悪いが、移動させて貰ったぞ。あの部屋だとちょっと不都合がな」

 

 

多摩「んー…ごめんなさい、にゃ。

迷惑かけるつもりはなかったにゃ」

 

 

提督「いやいや、迷惑じゃあないさ。

まあたしかに最初はちと困ったが…でも、サボる口実にもなるしな?」

 

 

多摩「んっ…そう、かにゃ?」

 

 

提督「そうそう。だから気にすんな」

 

 

多摩「それなら。謝罪は取り消して、代わりにありがとうにゃ」

 

 

提督「こちらこそ」

 

 

多摩「?」

 

 

提督「あーいや何でもない。何でもないぞ」ナデナデ

 

 

多摩「…む、露骨に誤魔化されたにゃ」

 

 

提督「はは、でもそう分かってて誤魔化されてくれる多摩が好きだぞ」

 

 

多摩「都合のいい女が好きってワケにゃ?」

 

 

提督「言い方ァ!…いやでもそういう意味になっちまうか…」スッ

 

 

多摩「あ、手を止めないで欲しいにゃ」

 

 

提督「ん?」

 

 

多摩「考え込んでもいいから、多摩を撫で続けて欲しいにゃ。…だめ、にゃ?」

 

 

提督「ああいや、ダメというか、そんな思案するつもりは別に…」

 

 

多摩「…」ジーッ

 

 

提督「…いやしかし」

 

 

多摩「……」シュン

 

 

提督「よーしよしよし」ワシャワシャ

 

 

多摩「んにゃあ〜♪」

 

 

提督(常日頃猫じゃないって言ってるのになぁ、全く…)

 

 

提督(…猫、か)

 

 

提督(猫なら首を撫でられると喜ぶ、が…)

 

 

 

スッ

 

 

 

多摩「ひっ」ビクッ

 

 

提督「!すまん!」

 

 

多摩「い、いや…その…大丈夫にゃ。

だから、続けてほしい、にゃ」

 

 

提督「え?でも…」

 

 

多摩「いいから続けてにゃ。

…ほら、今の続きでいいからにゃ」

 

 

提督「…りょ、了解」サワッ

 

 

多摩「…!」

 

 

提督「…」

 

 

多摩「…ッ!んんっ…」

 

 

提督「……」

 

 

多摩「…あっ、ひゃっ…」

 

 

多摩「くっ…ふぅ…」

 

 

 

提督(…無心だ、無心。無心になるんだ。

でないと、何というか…頬を赤らめて息を漏らしている様子が…)

 

 

 

多摩「…てい、とくぅ?

手、止めちゃいやだにゃ…?」トロン

 

 

提督「へ?あ、ああ!すまん!」

 

 

 

多摩「…ん、あ、あ…!」

 

 

 

提督「…多摩。その、声抑えされないか?」

 

 

多摩「…う、ごめん、にゃ。

…提督のが気持ち良くて、つい、声が…」

 

 

 

提督「〜〜ッ!!」

 

 

 

提督「…い」

 

 

 

多摩「……?どうs」

 

 

 

提督「いやらしいのはいけないと思いまぁす!!」グニ–

 

 

多摩「フギャーっ!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「めたくそ怒られた」

 

 

明石「急にほっぺを挟み潰されたら誰だって怒りますよそりゃ」

 

 

提督「なんだか微妙に、こう…あの雰囲気というか、嬌声に耐えられなくなっちまって」

 

 

明石「ああ、まあ…仕方がないような…

いやまあ自業自得でもあるような」

 

 

提督「…何度か、一線を超えてから微妙にタガが外れちまいそうになってな。最近色々危ないんだ俺…」

 

 

明石「もういっそタガなんて外せば気が楽になるんじゃないですか」

 

 

提督「俗世間ではそれを発狂ってんだよ」

 

 

明石「あはは… あれ、そういえばボタンいつの間に作動してたんですか?」

 

 

提督「ああ、寝てる間に押しといたのさ。

意識がないとダメかなーとも思ったが、どうやら行けたみたいだ」

 

 

明石「へー…流石私」

 

 

提督「その反応からしてどうやら想定外だったみてぇだな。開発者としてどうなんだ」

 

 

明石「こちとら急ピッチで仕上げさせられたんですよ!」

 

 

 



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山城の場合、【error】。

 

明石「そういえば結局、ですね」

 

 

提督「?何がだ」

 

 

明石「いえ、ちょっと前に私言ったじゃないですか。姉が大好きな娘とかにやったらっていう旨の事を」

 

 

提督「あぁ…球磨の前あたりだったか。

確かに言ってたな。うん、言ってた」

 

 

明石「タダじゃ済まなそうだからって言ってましたけど案外いけるんじゃないです?」

 

 

提督「おいおい気軽に言ってくれるなぁ…

殺られるのは俺なんだぞ?ったく」

 

 

明石「流石に大袈裟ですよヤられるなんて…」

 

 

提督「…だが、な」

 

 

明石「…あれ、ひょっとして本当にやる気ですか?」

 

 

提督「前、龍田にやった事を思い出してな」

 

 

明石「ああ。…なんだか不思議と遥か前の出来事のように感じます。具体的には2年前くらい」

 

 

提督「?何言ってんだお前は。…まあいいや。絶対生きては帰れないと思っていたあの事案、だが思いの外ヤツはチョロ…ピュアだった」

 

 

明石(心の声が漏れ出てる)

 

 

提督「だから今度も!…ってな一縷の望みを抱いて山城に行ってみようと思う」

 

 

明石「…また何というか…殺されるかどうかの瀬戸際の所を行きますね」

 

 

提督「…なあ、大丈夫だよな」

 

 

明石「し、知りませんよ…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

山城「はぁ…こんにちは提督」

 

 

提督「会うなり溜息とはご挨拶だな。

いつもの事だからいいが」

 

 

山城「それで、何の用ですか?

呼び止めたんですから理由があるんじゃ」

 

 

提督「あー…そう…」

 

 

提督(…いや、待てよ。それまでは知れ渡ってなかったりでそう言った類の事を言ってもよかったが、今は…だし。それに警戒されてしまったらマズイかもしれない)

 

 

山城「…あの?」

 

 

提督「え?ああすまん!

別に用があるわけじゃないんだ!」

 

 

山城「…じゃあ、何で呼んだんですか」

 

 

提督「えーと…ちょっと話をしたいと思っただけだよ」

 

 

山城「それでは」

 

 

提督「ちょっ、ちょっと待て!

ノータイムで帰ろうとするんじゃない!」

 

 

山城「もう、何ですか!私は姉さまと居られる時間を無駄にしたくないんです!」

 

 

提督「無駄って言い切るな!ほらそんな事言わずに!今なら甘味もつくからな?」

 

 

山城「……」

 

 

提督「…」

 

 

山城「…はぁ、ほんっと不幸だわ…

わかりました、少しお話ししましょうか」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

提督「…な、なあ。そろそろ…」

 

 

山城「ダメです。動かないでください」

 

 

提督「はあ…」

 

 

 

【現在、膝枕状態】

 

 

 

 

提督(…どうしてこうなった)

 

 

提督(よし、整理しよう。俺は話をするって言って執務室に山城を連れ込んだ。で、有無を言わせずボタンを押したんだ)

 

 

提督(…が、そうすると山城の様子が一変して。『他の娘にもやってたでしょう?』みたいな強引な口調でこの状況になって…)

 

 

提督(…だめだ、整理してる筈なのに意味わからねぇ。何だこの状況。いや確かに甘えてくるってボタンを押したのは俺だが)

 

 

山城「提督。私にもっと意識を向けてください。気を散漫にしないでください」

 

 

提督「!は、はいよ」

 

 

提督(怖っ!何で分かるんだ!

ていうか今どういう感情なんだコイツ!)

 

 

提督「…あー、なあ。その…楽しいか?」

 

 

山城「…その質問、野暮と思いませんか?」

 

 

提督「面目ありません…」

 

 

山城「…ええ。幸せですよ、今とても」

 

 

提督「…そう、か?」

 

 

山城「はい。この上なく」

 

 

山城「…分かっています。

面倒な女ですよね?」

 

 

提督「いやそんな。

膝枕も、まあ多少は慣れてるし」

 

提督(ほんとは痺れてきてるけど)

 

 

山城「今のこれ、だけでは無くて。

…いつもの私は。面倒くさい女でしょう?」

 

 

提督「…山城」

 

 

山城「とっくに解ってるんです。運も悪くて、事あるごとに不幸をばら撒いて、周りにも強く当たって。そんな女が好かれる筈も無い」

 

山城「でも姉さまと一緒に居られるなら、嫌われても良い。むしろ、周りから私たちを遠ざけるなら好都合って、そう思ってたんですもの」

 

 

提督「…今も、そう思うか?」

 

 

山城「…いいえ。今は、皆と繋がっていたいと素直に思います。それでも態度を変えられないのは、意地…とも言えない…」

 

山城「…きっと、ただ単に引っ込みがつかなくなってしまったんです」

 

 

提督「ハ、随分とまた。

ぶっちゃけた話をするな」

 

 

山城「……この部屋の出来事は夢なんです。面倒くさい女が、ある男にかどわかされ、眠った末に見た、七面倒くさい悪夢」

 

山城「…醒めれば覚えていない、泡沫の夢。だから今なら言える。いつも言えない感謝だって。…ある人への愛慕だって」

 

 

提督「……!!」

 

 

山城「…面倒くさい女だって、

幻滅しましたか?」

 

 

提督「…させたかったのか?

なら残念だったな。幻滅なんてするもんか」

 

 

山城「ふふ、やっぱり。

そう言ってくれるって信じていました」

 

 

提督「…この『夢』での。

君の想いは真実なんだな?」

 

 

山城「ええ。一切合切、全て。」

 

 

提督「なら良いさ。心があるならばいつかは伝わる。その想いも、誰かへの恋慕も。きっと現実で伝わるだろうよ。だからそれで良い」

 

 

山城「……そうですか」

 

 

提督「そうだ。だから今は、この部屋で一緒に同じ悪夢を見よう。

 

 

山城「…ああ。

この夢が永遠で有れば良いのに」

 

 

提督「残念だな、夢は醒めるから夢なんだ」

 

 

山城「本当は、こっちこそが現実で。いつもの私こそが夢だったら。なんて。」

 

 

提督「『胡蝶の夢』か?

安心しろ。君の現実は俺が連れてきてやる」

 

 

山城「…ふふ、やっぱり不幸だわ、私って。

……いいえ、私は…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「……」フラフラ

 

 

明石「ど、どうしたんですかフラついて!

まさか脳震盪でも起こして…」

 

 

提督「いや、単に足が痺れてるだけだ。

…あとそれと精神的動揺で」

 

 

明石「ああ、心配して損し…動揺?

何かあったんです?」

 

 

提督「……その、山城が…な?」

 

 

明石「…本当ですか?え…ええ!?」

 

 

提督「あー、俺も全部夢にして忘れちまいたいよ!明日からどんなツラして会えばいいんだ!」

 

 

明石「…これまで何度も言ってますが、改めて最低ですね。忘れたいなんて…」

 

 

提督「あー…確かに軽率でござんした」

 

 

明石「何弁ですかそれ」

 

 

 

 



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卯月の場合、真。

 

提督「次は卯月にやろうと思う」

 

 

明石「これまた唐突な。まあ最早毎度の事ですけれど…理由は聞いておいた方が?」

 

 

提督「ああ。アイツ、俺がちょっと楽しみにとっておいた羊羹食いやがった」

 

 

明石「それはまた何というか…えっと、犯人が卯月ちゃんでは無い可能性は?」

 

 

提督「残念ながら0だ。ご丁寧に書き置きまで残していってたしな」ピラッ

 

 

明石「…『バカが見るっぴょん』ですか。

古典的ですが結構効果的な煽りですね…」

 

 

提督「…まあ実際、あまり怒っちゃいないんだがな」

 

 

明石「?てっきり怒り心頭でイタズラし返すっていう事かと思ってたんですが」

 

 

提督「まあ長い事やられてるから慣れたってのもあるしな。それに、子供のやる事を一々咎めても仕方ないだろう」

 

 

明石「おお…らしからぬ大人な意見…

じゃあ何故卯月ちゃんをターゲットに?」

 

 

提督「誰がらしからぬ、じゃこら。…まあやる相手に悩んでたからってのもあるし、あと…」

 

 

明石「あと?」

 

 

提督「…いい加減苛ついてきたから流石にそろそろお灸を据えてやろうかと…」

 

 

明石「結局キレてるんじゃないですか!

大人げなっ!」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督(さて、卯月はどこかなっと…)

 

 

卯月「げ」バッタリ

 

 

提督「あ」

 

 

卯月「…」

 

 

提督「…ちょうど良かっt」

 

 

 

卯月「…!」ダッ

 

 

提督「逃がすかコラァ!」ガシィ

 

 

卯月「ぐえーっ!」

 

 

提督「うはは、もう抵抗しても無駄だぞ。

俺の捕縛技術は教官のお墨付きだからな」

 

 

卯月「んな自慢知ったこと無いっぴょん!」

 

 

提督「お、この状況においても随分と余裕あるみたいだなこの悪戯っ子め」

 

 

卯月「…まだだっぴょん。

まだ償う為の罪が足りないっぴょん」

 

 

提督「償いの時間が今来てるんだよ!往生せい!」

 

 

卯月「…ダメ元で言うけど…助けて?」

 

 

提督「ダメだ」ドナドナー

 

 

卯月「知ってたっぴょん…」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

卯月「…で、どうされちゃうっぴょん?」

 

 

提督「…案外おとなしいんだな。もっと抵抗すると思ってたのに」

 

 

卯月「一応、隙あらばここから逃げだそうとは思ってるぴょん」

 

 

提督「尚更逃がさんぞこんにゃろう」

 

 

卯月「…まあぶっちゃけチョロ…優しい司令官の事だからそんなひどい事はされないと思っての余裕っぴょん」

 

 

提督「…今の発言で貴様への露ほどの同情や遠慮とかも失せたぞ」

 

卯月「きゃー、怖っ!ぴょん!

…それでどうなるぴょん?」

 

 

提督「…やりたくは無かったが…

仕方がない。お前をこの部屋に放置する」

 

 

卯月「…うぇ?」

 

 

提督「聞いての通り、何にもしないをする。

この部屋でたった一人ずーっと放置だ。他の娘にも立ち寄らないようにさせてな」

 

 

卯月「な、んなぁ…!何っぴょんそのおいしくなさすぎる刑罰!!」

 

 

提督「ふはは、効果覿面みたいだな。

尚更やるべきだなこりゃ」

 

 

卯月「…えー。じょ、冗談…だよね?」

 

 

提督「……」

 

 

卯月「…!ちょ、ちょちょっと待つっぴょん!他なら何でもいいからこれはちょっと勘弁してほしいぴょん!」

 

 

提督「そんじゃあな。

明日には出してやるよ」

 

 

提督(っと、気づかれないようにボタンを…)

ポチッ

 

 

卯月「な!ホントに…」

 

 

 

バタン

 

 

卯月「………ぴょん」

 

 

卯月「……」

 

 

卯月「…し、しれーかん?

本当はそこにいるっぴょん?」

 

 

卯月「…あ、あー!うーちゃん急用思い出しちゃった!だから解いてほしいっぴょん!」

 

 

卯月「……ほ、ほんと、に?」

 

 

卯月「…」

 

 

 

卯月「…うぇ…」

 

 

 

 

ガチャ

 

 

 

提督「なーんてな。そこまではやらねぇさ。つーか俺が通報されるわそんなの」

 

 

卯月「……」

 

 

提督「…卯月?」

 

 

提督「ハハ、流石に反省したか?

これに懲りたら…まあやめなくてもいいがほどほどにするようにな」

 

 

卯月「……う」

 

 

提督「う?」

 

 

卯月「…うっそぴょーん!」ドーン

 

 

提督「うわっ、急に飛び込んで…」

 

 

卯月「あっはは〜!反省してると思ったっぴょん?凹んでると思ったっぴょん?残念ながらうーちゃんはその程度じゃへこたれないっぴょん!」

 

 

提督「うわっお前… …ん?」

 

 

提督「…あー」

 

 

提督「…すまんな。

流石に大人気なさすぎた。だから泣くなって」

 

 

卯月「…泣いてないっびょん。

司令官は目も性格も悪いっぴょん」グスッ

 

 

提督「失敬な、目は結構良いぞ俺は。

両目とも脅威の1.8だ」

 

 

卯月「知ったこっちゃないっぴょん!

司令官なんて嫌いっぴょん!」

 

 

提督(…へそを曲げちまったか。

しまったな、やりすぎた)

 

 

卯月「…う」

 

 

卯月「…嘘だぴょん…!嫌いになんてなれるわけないぴょん!だから置いてかないでぇ〜!一人にしないでっびょん〜!!」グズグズ

 

 

提督「うわわ、鼻水がお前!

大丈夫だって!一人になんてしないから!」

 

 

卯月「ゔぅ〜…ほ、ほんとに…?」

 

 

提督「ああ…って言っても今さっきそうしようとしてたから説得力無いだろうが」

 

 

卯月「…うう、でも信じるっぴょん。

だって、司れい、かんの…」

 

 

提督「……?卯月?」

 

 

卯月「………うぅー…」

 

 

提督「おーい、どした?

…?…まさかこいつ」

 

 

卯月「… zzz」スー

 

 

提督「…泣き疲れて寝やがった。

こういう所はやっぱまだ子供だな…」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

明石「…で、まさか本当にお灸を据えに…」

 

 

提督「行ったぞ?

これでヤツも流石に反省したろうよ」

 

 

明石「…うへぇ。何というかちょっとした敗北感まで感じますよ。まさか本当にイタズラ程度に反撃するなんて…」

 

 

提督「うはは、なんとでも言うがいいさ。

ま、とりあえず向こう数週間くらいはイタズラも収まるだろうさ。因みにお灸の内容は人間性が疑われるから秘密だ」

 

 

明石「もう手遅れ中の手遅れですってば。

…ん?何です、その服の汚れ」

 

 

提督「ん?ああ…(さっきの鼻水か)」

 

 

提督「まあ何というかさっきも言ったように俺の人間性が疑われるのと、卯月の尊厳が失われるからノーコメントだ」

 

 

明石「尊厳…?人間性…」

 

 

明石(…カピカピになった液体?

…人間性が疑われる、部屋、二人きり…まさか!)

 

 

明石「…ッ!憲兵さ」

 

 

提督「ご、誤解だ誤解!!

俺は今お前が思ったような事はしてねぇ!」

 

 



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若葉の場合、真。

提督「よし、これで今日の執務は終わりか。

後は結果待ちだな」

 

 

提督(さあて、本日分の仕事も終わった事だし明石の所へ行くか。今度は誰に…)

 

 

 

若葉「提督」

 

 

提督「うお、びっくりした。…若葉?何故執務室にいる。今日秘書艦ってわけでもないだろう」

 

若葉「うむ」

 

 

提督「だよな。俺に何か用か?」

 

 

若葉「用事といえば用事だが、まず聞いておきたい」

 

若葉「…最近、提督が色々な所をほっつき歩いて多くの人を拐かしてると聞いた」

 

 

提督「かどわか…まあ間違ってないから否定しようが無いけど。それで?それについて怒りに来たのか?」

 

 

若葉「いや、そういう訳ではない。

ふむ、事実なんだな。ならば…」

 

 

 

提督「…んん?何をやってる?」

 

 

若葉「見ての通りだ。

提督の前で、これ以上ない隙を晒している」

 

 

提督「ああそれ隙を晒してんのな。

てっきりアリクイの威嚇かなんかと」

 

 

若葉「む、誰がオオアリクイだ。」

 

 

提督「オオは付けてねぇよ」

 

 

若葉「…」

 

 

提督「……」

 

 

若葉「…あまり待たせないでほしいんだが」

 

 

提督「え、俺が悪いの?ていうか今の話の流れからするとお前自分からボタンをやられにきたのか!」

 

 

若葉「……」

 

 

提督(…マジか。なんていうかこりゃちょっと予想外だな。いやまあいつか来るかもしれないとは思っちゃいたが、第1号は若葉か。

うーむ、少し意外だったな)

 

 

提督(さて、俺はどーすっかな)

 

 

提督(まあ特段に拒む必要も理由も無いが…どうにも釈然としないんだよな、相手の思い通りに事が進むの)

 

 

提督(…まあ偶にはいっか)

 

 

提督「仕方ないな…ほら、いくぞ」ポチッ

 

 

 

若葉「…」

 

 

若葉「…?」

 

 

提督「ん、どした。何か不服か?」

 

 

若葉「む、そういう訳では。ただもっと大きな変化があると思っていた」

 

 

提督「まあ何だかんだいってある一定の感情を増幅させるってだけだしな。それ以上になると洗脳スイッチだろ」

 

提督「…待てよ。それ、いいな。

今度これを改良して…」

 

 

若葉「提督。思索に耽るのもいいが、その」

 

 

提督「ああすまん。で、どうしてほしい」

 

 

若葉「…ふむ、どうして欲しい、か。

そうだな、あまり考えていなかった」

 

 

提督「なんというかまた…

随分と衝動的に行動を起こしたんだな」

 

 

若葉「たまにはそういうのも悪くないと思ったからな」

 

 

提督「本当かー?本当に『たまに』かー?」

 

 

若葉「それについてはノーコメントだ。

…よし、決まった」

 

 

若葉「背中を向けるから。

その背中を抱きしめてほしい」

 

 

提督「ああ、所謂あすなろ抱きってヤツか。

なんていうか結構ロマンチストなんだな」

 

 

若葉「あすなろ抱きというのか?名称があるとは思わなかったが…うむ、多分それだ。それを頼む」

 

 

若葉「…ダメか?」

 

 

提督「ダメじゃないさ」ギュッ

 

 

若葉「!」

 

 

提督「…感想はどんなだ」

 

 

若葉「…うん、不思議な感じだ。

凄く窮屈で動きづらいし、落ち着かない」

 

 

若葉「だけど、暖かくて心地いいし…」

 

 

提督「いいし…何だ?」

 

 

若葉「…………」///

 

 

提督「…聞かない方がいいのな」

 

 

若葉「…うん」

 

 

提督「他に何かご要望は?」

 

 

若葉「…このままでいいから強く、抱きしめてくれ。少しだけ痛むくらいでいい」

 

 

提督「…マゾの気があるのか?」

 

 

若葉「! 人聞きの悪い。

なら良い、もう離して…」

 

 

提督「冗談だってば冗談、拗ねるな。

ほら、そのまま大人しくしてろ」ギューッ

 

 

若葉「……むう。ずるいな。

それに、さすがに少し暑苦しい」

 

 

若葉「…だが、悪くない」

 

 

提督「そうか」

 

 

若葉「…」

 

 

提督「…」

 

 

若葉「漂っていると」

 

 

提督「?」

 

 

若葉「偶に、もう戻る事はないのかと思ってしまう。この海の上で一生を終えるんじゃないかと。そうならないとは知っても、つい」

 

 

提督「!それって…」

 

 

若葉「いや、PTSDとかそういったものではないから安心してくれ。だが、偶に不安になるんだ」

 

 

若葉「…だからこうしてここで、『若葉』をぎゅっと抱きしめてくれ。ここに、引き留めておいてくれないか」

 

 

提督「…ああ、勿論。

それくらいならお安い御用だ」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

提督「…って感じで、自分からやられに来てな」

 

 

明石「まあ何というかついにって感じではありますがね…にしてもどういう風の吹き回しですか?」

 

 

提督「ん?」

 

 

明石「いえ、随分とまあ若葉ちゃんに対しては優しかったじゃないですか。気まで使って、要望も聞いて、言葉で追い詰める事も無く」

 

 

提督「…お前性格ねじ曲がってんな」

 

 

明石「なっ!今まで提督がやった事を鑑みての発言です!さすがに怒りますよ!?」

 

 

提督「おー怖え怖え。

しかしそうだな。まあちょっとした気まぐれである事には違いないが…特典みたいなもんだ」

 

 

明石「特典?ですか」

 

 

提督「おお、初めて能動的に、執務室にまでボタンを押されに来たで賞って事でな。多分そんな心境だったんだと思うぜ、さっきの俺は」

 

 

明石「はぁ、成る程…

じゃあもし、これから二人目以降が来たら?」

 

 

提督「サービス期間はもう終わったのさ」

 

 

明石「ひ、ひえぇ…」

 

 

提督「…あんま似てないぞ、そのモノマネ」

 

 

明石「別にモノマネした訳じゃないですよ」

 



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伊勢の場合、真。

提督「これまでにさ。

戦艦の娘に結構やってきたよな」

 

 

明石「え?えーと…まあ、はい。

一番多いのは多分駆逐艦の娘ですが」

 

 

提督「そりゃまあ駆逐艦は絶対数も多いし仕方ないだろ。んでだ、今回もまたボタンを使う相手は戦艦ではあるんだが…」

 

 

明石「『が…』なんです?」

 

 

提督「まあ単刀直入に。今回は伊勢に対してやろうと思ってるんだ」

 

 

明石「ああ、なるほど。確かに戦艦ではありますが、少しだけ別の艦の要素がありますね」

 

 

提督「ああ。まあ別に艦種によって性格やらなんやらあるわけでも無し、だからぶっちゃけ関係も全然無い。人はその一つの存在一つにつれ一つずつ個性を持ってるもんだしな」

 

 

明石「はあ…

ではなんでさっきみたいな話を?」

 

 

提督「まあ何というか…ふとさっき思ったのさ。このボタンはこの鎮守府の誰にでも使えるんだから、折角なら艦種コンプリートしてみたいなーって」

 

 

明石「…なんかもう不純を極めてますね」

 

 

提督「純粋この上ない好奇心だからセーフ」

 

 

明石「この上なく最低の弩アウトですよ!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

伊勢「もしもし?提督?」

 

 

提督「うおっと、なんだ伊勢か。

どうした?」

 

 

伊勢「ボーっとしてたみたいだから声かけただけなんだけど…お邪魔だった?」

 

 

提督「ああいや全然。失礼、もうちょいだから終わらせるよ」

 

 

伊勢「あ、ごめんなさい、急がせるつもりじゃなかったんだけど」

 

 

提督「…よし。終わりだ。そっちは?」

 

 

伊勢「言われた事くらいは終わらせたよ。にしても…急にボーッとするなんてらしくないですね。私の横顔に見惚れちゃったとか?」

 

 

提督「んー、そんなもんかな」

 

 

伊勢「もう、適当に流さないでよ」

 

 

提督「テキトーなんかじゃないって。お前見てたのは事実だし」

 

 

伊勢「ん?それって…?」

 

 

提督「一息いれるか。麦茶でいいか?」

 

 

伊勢「あ、えーと…それくらいならあたしがやろうか?」

 

 

提督「まあまあ、どうせ注ぐだけだし俺がやるにもお前がやるにも変わらないさ…っと。

へいおまっとさん」

 

 

伊勢「ありがと」

 

伊勢「…ねえ。

さっき言ってたの、どういう意味?」

 

 

提督「そりゃ文字通りの意味だよ」

 

 

伊勢(…?じゃあボーっとしてたのは本当にあたしを眺めていて?そもそも『そんなもんかな』って否定しなかったって事は本当にあたしの事を…?)

 

 

伊勢(…そ、それって…)

 

 

伊勢「え、ええと、提と」

 

 

提督「何故ならずっとこうしたかったからなぁ!」ポチッ

 

 

伊勢「うわっそういう…!」

 

 

提督「よしよし、顔を見せ…ん?」

 

 

 

【伊勢、両手で顔を隠す】

 

 

 

伊勢「…ごめんなさい。ちょっと顔見ないで」

 

 

提督「えー」

 

 

伊勢「えーじゃなくって!」

 

 

提督「そこをなんとか」

 

 

伊勢「…嫌」

 

 

提督「嫌かー」

 

 

伊勢「だって恥ずかしいだもん!

絶対見られたくないの!」

 

 

提督「…」

 

 

伊勢「…」

 

 

伊勢「…ど、どうしても見たいなら…

一つお願い聴いてくれたら、いいよ」

 

 

提督「おお、話がわかるな。

で、その条件は?」

 

 

伊勢「…笑わない?」

 

 

提督「聞いてみない事にはなんとも」

 

 

伊勢「…さっきの、提督があたしに言った事。あるじゃない」

 

 

提督「ん?ああ」

 

 

伊勢「それに加えて、このボタンって…

その、そう思っていいん…だよね?」

 

 

提督「…まあ、そうだな」

 

 

 

伊勢「……〜〜ッ!」///

 

 

伊勢「……じゃあ、その、条件」

 

 

伊勢「その、なんていうかさ…」

 

 

 

伊勢「…優しくして…?」

 

 

提督「…ぷっ。ははは。

ああ、いいだろう。わかったよ」

 

 

伊勢「!ほら笑った!!

もー頭きた!もう絶対に…!」

 

 

 

【提督、半ば強引に手を顔から離させる】

 

 

 

提督「…条件は呑んだんだ。いいだろ?」

 

 

伊勢「うっ…」

 

 

 

伊勢「……うん…」///

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

明石「なんというか…ギリ憲兵さんにとっ捕まりそうな感じの強引さでしたが大丈夫です?」

 

 

提督「大丈夫、ほぼ合意の上だ。マジに嫌なら俺なんぞ力づくで振り解けるだろうし、そもそも覆ってる手を俺の力で引き剥がす事なんて出来ねぇしな」

 

 

明石「ああ、確かにそうですね…

にしてもかなり強引な気がしましたが」

 

 

提督「まあそれ位はご愛嬌って事で。つい血が騒いだっていうかな。……それに…」

 

 

明石「?」

 

 

提督「…今回ので捕まるんならもう既に前例で捕まりまくってるなって……」

 

 

明石「…今更ですがほんと最低ですね!」

 

 



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那珂の場合、真。

明石「ああそうだ。このチラシいりませんか?」

 

 

提督「ん?何々、『次回のライブのお知らせ』…って那珂のか。随分手の込んだチラシだな。明石が作ったのか?」

 

 

明石「最初の方はそうしていたんですが、だんだん『自分で作りたい』との事で、色々と作り方とかを教えた形で」

 

 

提督「へぇー…すげぇなアイツ。いやマジで」

 

 

明石「神通さんの姉妹なだけあって努力の達人ですよね、那珂ちゃん」

 

 

明石「…ただちょっと、余ったチラシを大量に置いていくのはやめてほしいなって…」

 

 

提督「ああ、今俺に配ったのってそういう事か。どうりでな」

 

 

明石「はい。もしよければ消費するの手伝ってくれませんか?」

 

 

提督「ハハ、考えとくよ」

 

 

明石「嘘つき、考えるつもりもないでしょう。

それなら一思いに断ってくださいってば」

 

 

提督「うわ、お見通しか。怖い怖い」

 

 

提督「…」

 

 

明石「…提督?どうしました?

…あ、まさか…」

 

 

提督「…ああ、このチラシに載ってるライブ日にはまだ随分空きがあるが、折角だ。今会いに行ってみようか」

 

 

明石「それって、やっぱりそういう意味で」

 

 

提督「当然だろ」

 

 

明石「ですよね…」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

那珂「はーい、どなたで…って提督?」

 

 

提督「はいどうも提督ですよ。…なんだ。てっきり油断して情けない格好のお前が見られると思ったのに」

 

 

那珂「うわぁ、そーゆー事なの?でも残念でした!那珂ちゃんはいつだってアイドルだから、ONOFFの切り替えは行ってないの」

 

 

提督「うーむ、シンプルに偉いな。

流石に二足の草鞋を履くだけある」

 

 

那珂「……んん?」

 

 

提督「ぬぁんだその微妙な反応は」

 

 

 

那珂「……えぇっと…単純に褒められるのがなんか新鮮というか、不気味だなーって」

 

 

那珂「…もしかして何か企んでない?」

 

 

提督「……そんな事有るはずないだろ?」

 

 

那珂「何、その間」

 

 

提督「まーま、そんな気にするな。

ところで少し場を移さないか?折角ならちゃんと話し…」

 

 

那珂「じゃ、部屋に入って!」

 

 

提督「…っと、いいのか?自分で言うのもなんだが相当怪しいぞ、俺」

 

 

那珂「提督だからいいの、ほら早く!」グイッ

 

 

提督「あたた、わかったから引っ張るな」

 

 

 

【In 那珂部屋】

 

 

 

那珂「で、何の用?那珂ちゃん、悪いことはしてないハズだけど…」

 

 

提督「いやなに、用事って程のもんじゃ無いんだが…これ見てな」ペラッ

 

 

那珂「あ、チラシ。

もしかして提督も来てくれるの?」

 

 

提督「勿論…って言いたいところだがこれでも忙しい身でな。少し厳しそうだ」

 

 

那珂「…ちぇー、残念」

 

 

提督「そう拗ねるな、その代わりに今時間をとってるんだ」

 

 

那珂「…え?今ってそうゆう時間なの?

どうしたの、提督にしちゃあ凄く優しいね」

 

 

提督「前半部分が余計だわお馬鹿。

…ま、単に親切ってわけでも無いんだがな」

 

 

那珂「やっぱり!」

 

 

提督「はいじゃーん。

某噂のボタンでございます」スッ

 

 

那珂「うわ、それが例の…

え、ほんとにやるの?やっちゃうの?」

 

 

提督「と、思ってたがな。先程言ったようにどうやらライブにいけなさそうだからその償いも兼ねて、だ。やるかやらないかを選ばなせてやる」

 

 

那珂「…えっ」

 

 

提督「どうする?」

 

 

那珂「……はぁ〜〜〜っ」

 

那珂「…ほんっと性格悪いよね提督!

朴念仁とかじゃないもんね!」

 

 

提督「おお酷い言われようだな。

俺は純粋な善意から提案してるのに」

 

 

那珂「純粋な悪意でしょ、もう…」

 

 

那珂「…やってよ。お願い」

 

 

提督「…ふーん、聞いといてなんだがマジにいいのか?アイドルって基本恋愛禁止じゃないのか?ONOFFの切り替えはないんじゃ?」

 

 

那珂「那珂ちゃんは恋する乙女系のアイドル狙ってるから大丈夫。それに…」

 

那珂「確かにオンオフの切り替えは無いけど!でもそれならそれで貴方一人のアイドルにはなれるから…なんちゃって」

 

 

提督「…」

 

 

那珂「…何、その顔」

 

 

提督「いやすまん、不覚にも普通に可愛く思っちまって」

 

 

那珂「…それ、謝罪部分は余計だよ、馬鹿」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「事の顛末はこんな風だ。

まあこの後は語る事も少ないさ」

 

 

明石「え、省略部分が一番大切なところじゃないんですか?」

 

 

提督「って言ってもあのアイドルテンションでつらつらと話したりとかで面白い事は無かったしな。顔がずっと赤かったのは印象的だったけど」

 

 

明石「うーん、確かに何というか普通ですね。恥ずかしさが優っちゃったんでしょうか」

 

 

明石「……ん?」

 

 

提督「?どした」

 

 

明石「あぁいえ、その…あの、那珂ちゃんの部屋で仮眠とかしました?」

 

 

提督「?何で分かった?」

 

 

明石「いやその…か、勘ですかね…」

 

 

明石(…うん、話した後、散々『甘えてた』みたいね……流石夜戦好きの姉妹というか…)

 

 



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天津風の場合、真。

天津風「…これで報告終わりよ。

どう。満足かしら、あなた?」

 

 

提督「ああ、ありがとう。

いつだって満足する成果ですよ…っと。

よし、それじゃ退室していいぞ」

 

 

天津風「……」

 

 

提督「…ん、どした」

 

 

天津風「………」

 

 

「「あの」」

 

 

「「…」」

 

 

提督「先にどうぞ」

 

 

天津風「う、うん。

その…私今日、MVPとったの」

 

 

提督「ああ、そうだったな」

 

 

天津風「…で…その…」

 

天津風「…ああもう!最近のウワサの事よ!

あのウワサの!」

 

 

提督「…?」

 

 

天津風「とぼけないでったら!

…知ってるんでしょう?」

 

 

提督「…すまん、マジでわからん。

あれの事か?いや、それとも…」

 

 

天津風「MVPとった娘が例のボタンを押して貰えるって噂よ。…だから、その…」

 

 

提督(へー、いつの間にそんな噂が…

あ、若葉の一件のせいかな?それとも自然発生的にだろうか。ま、どちらにせよ)

 

 

提督「…残念だがそりゃガセネタだ。

どっかから噂が流れたかは知らないが」

 

 

天津風「…え、あ、そう。

…ふんっ、なら良いわよ。それじゃ失礼––」

 

 

提督「ただそれはそれとしてだ。

もし天津風がやってほしいなら俺は今このボタンを押すつもりではいる」

 

 

天津風「…!」

 

 

提督「はい、『おねだり』してみよう」

 

 

天津風「……ッ、あなた…ねぇ…!」///

 

 

提督「ほれほれどうした」

 

 

天津風「…ッ!お、お願い。その…」

 

 

天津風「…あ、あなたの前で。

素直になりたいの…」

 

 

提督「……」

 

 

天津風「……!」プシュー

 

 

提督(…なんだか意外と早く堕ちたなぁ。

もう少し葛藤あると思ったけど…)

 

提督「…よしいいだろう!それじゃ…」

 

 

天津風「ま、待って!

ちょっとだけその…!」///

 

 

提督「おっと…

なんだよ、覚悟決まったんじゃないのか?」

 

 

天津風「そんな簡単には行かないの!

ほら…だって…!」

 

 

提督「関係ねぇよ!さっさとくらえ!」ポチ

 

 

天津風「ッ!待っ、酷…もう!」

 

天津風「……ぐぅ…」///

 

 

提督「ん、腹の音か?」

 

 

天津風「違うわよ、あなたねぇ…!」

 

 

提督「ははは、怒るな怒るな。多分あれだろ?そのボタンが押されたら自動的に甘えたくなって羞恥心とか吹き飛ぶって思ってたのにそんな事はなくて困ってるんだろ」

 

 

天津風「!なんでそこまで…!」

 

 

提督「俺がお前らの提督だからさ。

まあそれならそれでいい。せっかくだし…」

 

 

 

【提督、頭を撫で始める】

 

 

 

提督「俺から手出しさせてもらおうかな」

ワシャワシャ

 

 

天津風「…!?え、ええっ!

ちょっ、ちょっと!勝手に撫でられたら、その…吹き流しが!」

 

 

提督「なあに後で俺が直してやるさ。

で、お前はこのままでいいのか?」

 

 

天津風「……うー、よくない。

もっと、甘えたいわ」

 

 

提督「なら、おいで」

 

 

天津風「……あ……」

 

 

天津風「……え、えいっ!」

 

 

 

【天津風、傍につき胸に顔を寄り添わす】

 

 

 

提督「おっと積極的だな。よしよし」

 

 

天津風「……うう、恥ずかしい…」

 

 

提督「じゃ、離れるか?」

 

 

天津風「それは絶対イヤ!」

 

 

天津風「……その、ありがとう。

色々気遣ってもらっちゃって」

 

 

提督「?何のことだ」

 

 

天津風「だ、だって。尻込みしちゃってる私を気遣ってくれたんじゃないの?そうじゃなきゃ、わざわざ…」

 

 

提督「…ああ、そりゃ勘違いだ。

俺はただこんな可愛くて好きな娘に、こうやって甘えて欲しかっただけだよ」

 

 

天津風「か、かわっ…それに好きって…

…はぁ、ほんと罪な人よあなたって…」

 

 

提督「…?ごめん?」

 

 

天津風「そこは謝らないでよ。

……まったく」

 

 

天津風「…私も、大好きよ。あなた…」

 

 

提督「……」

 

 

天津風「…」

 

 

天津風「…な、何とか言ってよ!」///

 

 

提督「…ああ、ごめん。

ちょっと不意打ち気味にやられちゃった…」

 

 

 



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明石の場合、真?

提督「よう、久しぶり」

 

 

明石「おや提督。何か用ですか?」

 

 

提督「用ってよりは…ほれ、これ」

 

 

明石「ああボタン…最近来なかったのでてっきりもう飽きたもんだと思いましたよ」

 

 

提督「まだ飽きるもんか。いちいち此処には来なかっただけでやる事はやってたんだ」

 

 

明石「そうですか。それじゃ今日は何の御用で?別に来なくても良かったんじゃ?」

 

 

提督「おいおい、随分にべもない…」

 

 

提督(……拗ねてる、のか?これ)

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「…なあ、機嫌なおしてくれよ明石」

 

 

明石「ふん、別に怒ってなんかいませんよ。

所詮私は道具だけの女ですし」

 

 

提督(うへぇ、めんどくせ…」

 

 

明石「言葉に出てますよお馬鹿」

 

 

提督「おっとうっかり。

…なあなあ、機嫌なおしてくれよ。お前が居なきゃダメなんだよー」

 

 

明石「また調子のいいことばかり…

いいですよ、どうせ面倒くさい女ですとも」

 

 

提督「そう不貞腐れるな…よっと」グニー

 

 

明石「いひゃいいひゃい、急になにふるんでふか」

 

 

提督「ほれ、こうやって…

な。笑顔の方がお前は似合うからさ」

 

 

明石「う…」

 

 

提督「はい、スマイルスマイル!」

 

 

明石「…はー、わかりました、わかりましたよ。貴方に免じて許してあげます」

 

 

提督「お、本当か!

いやー、よかったよかった!」

 

 

明石「はーあ、我ながらなんてちょろい…」

 

 

提督「物分かりのいいって事にしようぜ、な?ほら、ため息ついてないで」

 

 

提督「……ところで」

 

 

明石「?……はっ!」

 

 

提督「流石の反応速度!だが一手遅い!」ポチッ

 

 

明石「くっ……!」

 

 

提督「はは、ようやく隙を見せたな?

ここまで待った甲斐があるってもんだ。さあて…」

 

 

明石「!ち、ちょっと遠く行っててください!こう…そんな近くで見ないで!」

 

 

提督「おっと、了解」

 

 

明石「…うわぁん!

やっぱり遠くに行かないで!」

 

 

提督「ハハハ、了解」

 

 

明石「何笑ってるんですか!そんなに…!」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…?ん、どした」

 

 

明石「…すみません。『そんなに嫌いだったら言ってください』って、言おうとしてたんですけど…その…」

 

明石「実際言われたら怖いなーって…

いや、そんな事無いとは思ってるんですが」

 

 

提督「…」

 

 

明石「いやだって私その…機械弄りばっかりであんまり女の子らしい事も出来てないし、結構暴走気味になっちゃうしそれにその場の雰囲気で割と失礼な事も言ってるし…」

 

明石「…うわ、自分で言ってて段々不安になってきちゃった…」

 

 

提督「…明石」

 

 

 

【提督は距離を縮め始めた】

 

 

 

明石「!ちょ、ちょっとそのままの距離でいて下さいっ!あまり近寄られたら…」

 

 

提督「嫌だね」

 

 

明石「なっ…!?

せ、せめて少しだけでも…!」

 

 

提督「断る」

 

 

 

明石「…〜〜ッ!」

 

 

 

 

【ゼロ距離にまで近づいた!】

 

 

 

明石「……ッ、ち…近…っ」

 

 

提督「…お前は自己肯定感が足りなすぎる。だから、今から徹底的に褒める」

 

 

明石「へっ」

 

 

提督「まず、その見た目。あんまり女の子らしい事が出来てない?それでその綺麗さなのか。素晴らしい。機械弄りばっかりしてるって?それのおかげで俺たちは助かってるんだ、お前がいなきゃ成り立たない程」

 

提督「失礼な態度?一度も思った事が無いぜ。寧ろこういう付き合いが出来て俺は楽しい。好きだ」

 

 

明石「ななな、何を急に…っ!?

や…やめてください、こそばゆい!」

 

明石「そ、それに!お世辞にしたってそういう事はそんなみだりに言う事じゃ…!」

 

 

提督「お世辞なんて一つも言ってないぞ?

だって…」

 

 

 

 

【二人の影が一つに重なった】

 

 

 

提督「…ほら、綺麗な肌してるじゃないか。

髪もサラサラのまんまだ」

 

 

明石「な…あっ…」///

 

 

提督「ふむ、お世辞だと取るとはな…どうやらまだまだ褒め足りないみたいだ、さて次は…」

 

 

明石「やめ…っ!わ、わかりました!わかりましたから!今は取り敢えずやめて下さい!頭がどうにかなりそうです!」

 

 

提督「おやそうか。しかし…ハハ、顔の色と髪の色が同じみたいになってるぞ」

 

 

明石「だ、誰のせいですか、誰の!

…そろそろ満足でしょう…?」

 

 

提督「…しゃあない、解除するか」ポチッ

 

 

明石「はぁっ、ふぅー…

あぁ、色々危なかった…

あとちょっとで襲いかかるところでした…」

 

 

提督「えっ、どう言う事それ」

 

 

明石「そのままの意味ですよ!普段は抑えてるんですからね、もう金輪際やらないでくださいよ!」

 

 

提督「オーケー、俺の身の安全の為にもそうした方がよさそうだな」

 

 

明石「ええ、もうボタンは押さないようにしてください!フリじゃないですからね!」

 

 

提督「…!!!」

 

 

明石「そんな心底驚いた顔しなくても…」

 

 

提督「…絶対そういうフリかと……」

 

 

明石「紛れもない本心ですよ…」

 

 

明石「…」

 

 

明石「……た、ただですよ?

その…なんというか…」

 

 

提督「?」

 

 

明石「…さっきの。すごく嬉しかったです。

それも、本心です…」

 

 

提督「…!そうか!よーし、お望みとありゃあこれからは定期的に誉め殺しに…!」

 

 

明石「そ、そんな常にやってほしいわけじゃないですって!どうしてそう極端なんですか、もー!」

 

 



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比叡の場合、真。

提督「…さて、人心地ついたところで続けるか」

 

 

明石「え?また私に押すんですか?」

 

 

提督「ちがわい。また他の娘にやりに行くんだよ」

 

 

明石「ああ。なんというか安心したようながっかりしたような…」

 

 

提督「…うーん、しかし、だな。

しかしだ。そろそろまた誰にやるかが決まらなくなってきたぞ」

 

 

明石「散々やってきてますからね…流石にそろそろネタ切れってところですか」

 

 

提督「まだまだこの鎮守府に在籍してる娘はいるからそういう事はないんだがそれでもな…」

 

提督「って事でちょっと探しに行ってくる。

次、ここ出て初めて会った娘に無差別にやってやる」ヨイショ

 

 

明石「うわ怖ッ…なんですかその快楽殺人犯的な発想は」

 

 

提督「んじゃいってくるわ。

まあ多分すぐに帰ってくる」

 

 

明石「えっあっ…はい、了解です。

…ってもう行っちゃった。早っ」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

提督「お」

 

 

比叡「あ、提督。どうかしましたか?」

 

 

提督「……成る程ねぇ。よりにもよってお前か。いや、予想してなかったが確かに結構面白い事になりそうだなぁ…」

 

 

比叡「……?な、何だかよくわかりませんが凄く邪な感じがします…」

 

 

提督「いやぁ、こっちの話さ。

話は変わるが、お前の方は何か用事が?」

 

 

比叡「いえ、特には…」

 

 

提督「尚更好都合だあ…」

 

 

比叡「…さっきといい、何かすっごい嫌な予感がします…」

 

 

提督「なあ比叡。これ一発いいか?」ヌッ

 

 

比叡「そ、それは悪名高いボタン…!

嫌に決まっているじゃないですかぁ!」

 

 

提督「えー、ノリでオーケーしてくれよ。な?」

 

 

比叡「嫌ですって!どう考えてもろくなことにならないですもん!」

 

 

提督「…そっかあ。残念だなぁ。

ならあの事を言わせて貰うしかないな」

 

 

比叡「…へ?あの事?」

 

 

提督「ああ、心当たりがあるだろ?まあ金剛辺りは優しいから許してくれるだろうが…他の子たちはどう思っちゃうだろうな」

 

 

比叡「ちょちょっと待っ…!

え、どれですか!?」

 

 

提督(いやそんないっぱいあるんかい)

 

提督「…さあ、どれだかな。俺は一つしか知らんが、それも言われたら厳しいことになるんじゃないか?」

 

 

比叡「…わ、わかりました。その…押してください。代わりに言わないでくれるなら…」

 

 

提督「オーケー、交渉成立だな」

 

 

比叡「脅迫もいいところですよぅ…」

 

 

提督「よっしゃくらえ」ポチッ

 

 

比叡「ひっ…」

 

 

比叡「…?押しました、よね?」

 

 

提督「ああ。見ての通り」

 

 

比叡「……」

 

比叡(…何ともない、けど。どういう事…?でもだって押してたし本当効果ないとかだったらあんなに噂にはなってないし、でも…)

 

 

提督(悩んでる悩んでる。単純に偽物押しただけなんだがな)

 

提督(…うし、ここから更に追い込む)

 

 

 

提督「うーん、このボタンどうやら元から甘えたいと思ってる相手にやるとオーバーフローしてな、効果無くなるらしいんだ。どうやらそれかな」

 

 

比叡「…え?えええええ!!?

そんなのって、違…いや、その!」

 

 

提督(真っ赤な嘘だって事くらいいつもならわかるだろうに…パニックに陥ったら人間こんなもんか)

 

 

比叡「そ、そんなの絶対に違いますよ!ほら、ちゃんと甘えたいですから!…えーと、えい!」

 

 

提督「…」

 

 

比叡「……」

 

 

提督「…きゃー大胆ー」

 

 

比叡「……せ、せめて恥ずかしがるなりしてくれないと、その、私…」///

 

 

提督「自分から抱きついて胸押しつけといて何を照れてるんだよ…」

 

 

比叡「む、胸は押しつけてません!

それに私はこう、甘えたくなってるって事をちゃんと証明したいだけで、えっと…」

 

 

提督「ま、嘘なんだがな」

 

 

比叡「……?な、何が…」

 

 

提督「何もかも。ボタンも偽もんだし、オーバーフロー云々なんてある訳ねぇし。『あの事』を知ってるって事しか本当の事言ってねぇよ」

 

 

比叡「……ひ、ひえぇ…」

 

 

提督「ドン引くなドン引くな。

…さて、そうなると。随分気になる事言ってたなぁ。甘えたくなってて、しかもそれを証明までしようとしていたってな」

 

 

比叡「いや、それはっ、だって…!」

 

 

提督「どおしてだろうなぁ。俺は甘えるようにするボタンなんざ押してないのになぁ?」

 

 

比叡「〜〜〜ッ!へ、変態!

提督、変態です!もう、知りません!!」///

 

 

 

【比叡は逃げるように走り去っていった】

 

 

 

提督「あ、おーい、まだ話は…

ま、そこそこ楽しめたからいっか」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

明石「で、結局なんだったんですか?」

 

 

提督「?何が」

 

 

明石「いや、『あの事』を知ってるってやつですよ。何か弱み握ってたんですよね」

 

 

提督「ねぇよそんなん」

 

 

明石「…やっぱりカマかけでしたか…」

 

 

提督「ああ。やましい事が無い奴なんて居ないし。それをさっきみたいに自信満々に、断定的に言えば相手は勝手に不安がって、弱みを出してくれるって寸法だ」

 

 

明石「何度も実践済みってくらいには小慣れた手法ですね…実際どうなんです?」

 

 

提督「んー、ノーコメント。

信頼がなくなりそう」

 

 

明石「手遅れですよそれに関しては」

 

 

明石(…しかし、比叡ちゃんは一体何を暴露されるのをそんなに怯えたのかしら)

 



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ちょっとした、アップデート

 

明石「あ、どうも提督。お疲れ様です」

 

 

提督「おう、どもども。なんか用か?」

 

 

明石「用事…そうですね、ちょっとだけ。今でなくともまあ良いんですが…」

 

 

明石「…今、あのボタン持ってますか?」

 

 

提督「ん?おう、肌身離さず持ち歩くようにしてるぞ。急にどしたんだ」

 

 

明石「いえ、良ければ貸していただけませんか?

少し試したい事があるんです」

 

 

提督「?別にいいが…何をするつもりだ」

 

 

明石「まあそれはお楽しみという事で!大丈夫です、提督にとっても美味しい話の筈ですよ」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「はい、出来ました」

 

 

提督「おお、サンキュ。…見た目が変わったか?」

 

 

明石「全体的な性能の調整、向上と…後はちょっとした機能の追加を。アップデートしたんです。かっこつけて名付けるならMK.2ってところでしょうか?」

 

 

提督「Mk.2ねぇ…で、その機能って?」

 

 

明石「バリエーションというか。目盛りを作ったんです」

 

 

提督「?…どういうこった」

 

 

明石「まあ、つまりですね。これまでの…旧型は甘える度合いを調節できなかったでしょう?だからこう、何度もその…襲われたり…」

 

 

提督「なるほど、今回はちと理性を残したままに出来るか、意識をトバすくらいに出来るかを選べるって訳か!」

 

 

明石「トバすって…まあでも、そういう事です!」

 

 

提督「ははぁ、流石明石。いつだって研鑽を積んでるな。…しかし何故急にこうアップデートをするつもりを?」

 

 

明石「…誰かさんのお陰で、色々とデータが取れすぎてしまったので。ついつい作ってしまったんです」

 

 

提督「なるほど、俺のおかげと」

 

 

明石「なんてポジティブな…まあ、それでいいです。それでともかく、やってもらいたい事は…」

 

 

提督「これが上手く動くかの実験、てとこか?

オーケー、任せんしゃい!」

 

 

提督「さて、と。それじゃあ一体誰に対して最初に使ってみっかね。ていうか最初のボタンの段階でもうまく使いこなせちゃいなかったが、これになった事でなんとか使えっかなあ…いやまあなんていうかそんな真面目に悩む事でもねぇ気もするが…」ブツブツ

 

 

明石「うわ、なんて嬉しそうな顔で独り言を…

…今更だけどわざわざ変な事やらない方がよかったかしら…いや、まあいずれにしてもどうせ被害者は出てただろうし…うん、たぶん私悪くない」

 

 

提督「おっと自己弁護を重ねてどうした共犯者どの。

今更もってお前だけ罪を逃れるのは無理だぞ」

 

 

明石「…ですよねー…」

 

 






これ以降、また少しだけ変化します。


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響の場合、MK2。

 

 

提督「なら、そうだな。最初試運転って事も含め、だ。表情が分かりにくい子にでもやってみようかな」

 

 

明石「と、なると?」

 

 

提督「うーん…響とか?

感情自体は豊かだけど、結構顔に出ないからな。ちょうどいいだろう」

 

 

明石「『ちょうどいい』って…そういった発言はどうなんです?また憲兵さんに誤解されそうな…」

 

提督「……もし憲兵に発言の意図を聞かれたときしてと100%誤解とは言い切れねぇな…」

 

 

明石「…確かに…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「よお響。ご機嫌いかがかな」

 

 

響「うん、良いよ。どうしたの?」

 

 

提督「いや、まあ別に何がどうって訳でもねぇんだけどな。どうだい、一緒に遊ぼうぜ」

 

 

響「おや、お誘いか。なら一緒に甘味屋でも行きたいな。以前、電が二人で行ってたっていうのが羨ましかったんだ」

 

 

提督「おおそうか。んじゃあそうしよう。

喜べ、奢ってやるからな」

 

 

響「ハラショー」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

響「ほら、早く口を開けて。

こぼれちゃうから」

 

 

提督「…なあ、響。そろそろ、やめにしないか?その…周りの目もあるし」

 

 

響「?私と司令官がここに居て愛し合うのに、周りを気にする必要が?」

 

 

提督「愛ッ…いやその、な?」

 

 

提督(…やべぇな。すごいぞMK.2。凄すぎて俺の社会的地位が地にめり込みそうなくらいだ)

 

提督(同じ机に座り、甘味を頼み、そしてその後来たくらいに目盛りを最大近くにしてやったが…こんな事になるか)

 

提督(いや確かに考慮してなさすぎたってのもあるが!にしてもこれは…!)

 

 

響「…嫌だったかな」

 

 

提督「え?いや、そういう訳じゃ」

 

 

響「ごめんね。困らせたかった訳じゃない。けど、どうしてもこうしたくなって。耐えられなくなって」

 

響「…いや、本当はもっともっと。でも、流石に此処じゃそれはできないから、我慢してるんだ。それでも…」

 

 

響「…司令官。その…今、私は変だ…

わかってるけど、止められないんだ…」

 

 

 

【響、食器も置き、提督へ擦り寄る】

 

 

 

響「なあ司令官、私を見てくれ。私だけを…今だけでいい。本当はずっとそうして欲しいけど、それだときっと困るだろうから…」

 

響「…ごめん、こんな事を言って嫌われてしまっても文句は言えない。でも、でも…!」

 

 

提督「よしよし、大丈夫。知らないかもしれないが、俺はお前たちが思ってるよりお前たちの事が大好きなんだ。嫌いになる事なんてあり得ないさ」

 

提督「わかったよ。今だけになっちまうけど。それでも今は周囲の目とかじゃなく、お前を見るよ。お前だけな」

 

 

響「…ああ、ありがとう司令官。大好きだ。愛してる。幾ら言っても足りないくらい好きで、好きだ。私の求める言葉を、どうしてそうも的確に言ってくれるんだ。あぁ…」

 

 

提督(……)

 

 

響「なあ、キスしてもいいかな…」

 

 

提督(……これ、マジやべぇな…)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「……これ、今までみたいにポンポン気軽に使っていいもんじゃねぇな。心臓に悪すぎる」

 

 

明石「あ、おかえりなさい。その様子だと上手く作用はしたみたいですね」

 

 

提督「ああ。…効果内にあった響は、解除した後恥に耐えきれず去ってったが。あのまま解除してなかったらどうなってたんだ」

 

 

明石「…そんなに、ですか」

 

 

提督「ああ、そんなにさ。しかも何が恐ろしいって、あんなまでにテキメンだったのにまだ目盛りはMAXじゃない事さ。かなり高い所ではあったがな」

 

 

明石「…でも、使う気ではあるんですよね」

 

 

提督「何を今更!」

 

 

明石「やっぱり!」

 

 

提督「…しかし、響大丈夫だろうか。

初めて見るくらいの慌てようだったが」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

響「はっ、はっ…!」

 

 

響(…言ってしまった、言った。想いを、洗いざらい、何もかも!恥ずかしい、恥ずかしい!)

 

響(さっきまで正気じゃなかったのはわかってる。けど、想い自体は全部、全部私のものだ!それをぶちまけた!)

 

 

響「〜〜〜ッ!!」///

 

響(言っただけじゃない。い、色んな事も…

唇に、まだ、さっきの感触が…)

 

 

響「…うぅ、も…戻ろう。部屋に…

マトモに頭が回る気がしない……」プシュー

 

 

 

 



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大淀の場合、MK2。

 

 

提督「しかしだ、ヤバイ代物である反面、これの効能自体は相当凄いものって事はよーく理解できた。要は上手く使えればいいんだ」

 

 

明石「古今東西、使いこなせない人のセリフじゃありませんかねそれ」

 

 

提督「なら俺が例外になるまでよ。

…と、息巻いたは良いがどうするかな次。変に地雷踏んだらそのまま死にそうだが」

 

 

明石「…あ、わかりました。今、提督無難な娘が誰かって悩んでるんじゃなくてギリッギリが誰かを考えてるでしょう」

 

 

提督「おお、よくわかったな。まあ長い付き合いだしな、そこらはわかっちまうか」

 

 

明石「あはは、まあ…

で、決まったんじゃないんですか?」

 

 

提督「ああ、大淀にやろうかなって」

 

 

明石「……んー、んー…」

 

 

提督「なんだその唸りは」

 

 

明石「…いや、想像出来ないなーって思ったのと、その…」

 

明石「…大丈夫です?

こう、任務が受けられなくなったりとか」

 

 

提督「……」

 

 

提督「…大丈夫だろ、多分!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

大淀「…はい、ではこちらが達成報酬です」

 

 

提督「ええ、了解です。

いつもありがとうございます」

 

 

大淀「はい。…ええと、それでは」

 

 

提督「ああ、ちょっと待ってもらっていいですか」

 

 

大淀「あ、はい!なんでしょう!」

 

 

提督「はは、いい返事…いえ、この後って少し時間空いたりしてます?」

 

 

大淀「あはは、ナンパですか?」

 

 

提督「そうですね、それに近い…

いや、それそのものです」

 

 

大淀「な、なんて正直な。そこはぼかす所じゃないんですか?まあ誤魔化されても困るんですが…」

 

大淀「…ふふ、はい。その、暇です」

 

 

提督「そうですか。いや、ならよかった。

それなら遠慮なくホイと」ポチッ

 

 

大淀「!!」

 

 

提督(…しまった、目盛りどうしてたかな。思い出せねぇや)

 

 

大淀「…ふふふ、成る程。今の問答はそういう事ですか…はあ、これでも結構期待してたんですけど…」

 

 

提督(…あ、機嫌損ねたかな。確かに暇か聞いて即ボタンとか印象悪すぎるわな)

 

 

提督「…申し訳ない。今すぐ解除し…」

 

 

ガシィ

 

 

提督「!?」

 

 

大淀「いえいえ♪それはそれとして。この際ゆっくりと楽しみましょう?そうですね、まずはその敬語を無くして貰っていいですか?」

 

 

提督「は、いやぁ、でも」

 

 

大淀「明石とはあんなに仲良しなのに?

よよよ、私ではやっぱりダメなんですね」

 

 

提督「『よよよ』て…

いやそういう訳じゃなくて」

 

 

大淀「やっぱり、ここは親睦を深めるべきだと思いませんか?私、つくづくそう思うんです。ああ、解除はまだ、まだです」ガシィ

 

 

提督「ひえっ…

親睦を深めるったって、どうやって…」

 

 

大淀「そうですね。どうすべきでしょう?」

 

 

提督「え、俺が答えるんです?

えーっと…なんだろ。こう、いつもしないような事してみるとか?」

 

 

大淀「ああ、それは名案ですね!

じゃあ失礼して…と」

 

 

提督「いやいやいや!俺の机に潜り込む事は『いつもやらない事』じゃなくて『やってはいけない事』だろ!」

 

 

大淀「あ、敬語じゃなくなってますね。

嬉しいです♪」

 

 

提督「そんな事言ってる場合じゃ…

ぎゃあ距離近ッ!」

 

 

大淀「はい、それじゃあお願いします」

 

 

提督「……」

 

提督「……え、何を?」

 

 

大淀「何って…嫌ですねもう、女性にそんな事言わせないでくださいよ!」

 

 

提督(いやいや…ていうかさっきからテンションたけぇな!躁かよ!)

 

提督(…えーっと、目を瞑って待機して…

何が正解なんだ?)

 

 

提督(…あ、てか今なら解除できるな)ポチッ

 

 

大淀「……!」

 

 

大淀「…」

 

 

大淀「…あ、すみません、少しそこ空けてもらっていいですか」

 

 

提督「ああ、そこ(机の下)から出られませんもんね、どうぞどうぞ」

 

 

大淀「すみません、お手数を」

 

 

提督「いえいえ」

 

 

大淀「…」

 

 

提督「…」

 

 

提督「何とか取り繕おうと思ってるみたいですけど耳まで真っ赤ですよ」

 

 

大淀「誰のせいですか、誰の!!」//////

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「まあ、特殊な交渉術でなんとかご立腹は収めてもらったよ」

 

 

明石「その交渉術ぜひ習いたいですね…

…ていうかなんですけど」

 

 

提督「ん?」

 

 

明石「なんで大淀には敬語で私はそうじゃないんですか?」

 

 

提督「大淀はこう…しっかりしてるからなんか仕事モードになるっていうか。そこらへんはちゃんとしておこうかなって」

 

 

明石「そんなまるで私がしっかりしてないみたいな!」

 

 

提督「そういう訳じゃ…

じゃあこれから敬語にします?」

 

 

明石「それは…嫌ですね」

 

 

提督「ンモー、ワガママなんだから」

 

 

明石「カマ口調はもっと嫌です!」

 

 



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時雨の場合、その2、MK2。

 

 

提督「そういえば俺、一回やった娘に全くなんもやってないな」

 

 

明石「?何のことです」

 

 

提督「いや、ボタン。一度ポチッとなしたはいいけどそれ以降別に関わり方変えたりとか、そういうのしてないと思ってさ」

 

 

明石「うーん、最低ですね」

 

 

提督「お、最低って言われたの何度めかな?

まあそういう事で。俺は今からちょっとMk.2になる前にボタンした娘にMk.2を押しに行こうと思うんだ。それすればまた前とどれくらい違うかってのもわかりやすいし」

 

 

明石「なるほど、で、誰に?」

 

 

提督「そこは風の吹くままって事で…

次に最初にあった子にするぜ、んじゃ!」

 

 

明石「いつもどおり行き当たりばったりって事ですね…って、もう行っちゃった」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

時雨「やあ、提督」

 

 

提督「……」

 

 

時雨「あれ?無視?かなり傷つくんだけどな。おーい」

 

 

提督「無視じゃない無視じゃない。

ちっとぼーっとしてただけだ」

 

提督「時雨か…いや、うん」

 

 

時雨「どうしたの?」

 

 

提督「いやな、件のボタンがちと改善っつーか強化されたっていうか。それで、比較って思惑もアリで前バージョンを試行された子を探しててな…」

 

 

時雨「…あ、なるほど。

ていうか、そこは隠さないんだね」

 

 

提督「まあ隠した所でもう遅い気もするしな。あと、一回既にやっちまってるし、どうしても嫌なら拒否してもらおうかと」

 

 

時雨「僕は良いけど」

 

 

提督「…っと、即答か」

 

 

 

時雨「うん。…提督は僕を見かけたから、とかの理由で僕を選んだのかもしれないけど…」

 

 

時雨「…なんていうかな。自惚れるようだけど、もしも僕が、僕だから選ばれたのなら…」

 

 

時雨「…その。僕は凄く嬉しい、かな…」

 

 

提督「…」

 

 

提督「…しっとりとした雰囲気にしようとしてるところ悪いけどそのドヤ顔が隠せてないぞ」

 

 

時雨「あ、ごめん。つい」ドヤァ…

 

 

提督「ほいほい、んじゃまあやっちまうぞ」

 

 

時雨「うん、ばっちこいだよ」

 

 

提督「よし来た」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

 

時雨「!!」

 

 

提督「…っと、どうだ?

やっぱり、相当違うもんか」

 

 

時雨「…す、ごいね…!前は、まだ、理性とかは全然、保ったけど、これは…」

 

時雨「ふっ、ふーっ…」

 

 

提督「大丈夫か?やっぱ、目盛りの調整がイマイチわかんねぇな…低くすれば前みたいになるのか?取り敢えず解除を…」

 

 

時雨「待っ、て。

手を。手を貸して貰えるかな」

 

 

提督「え?ああ」

 

 

時雨「…!」

 

 

 

【時雨はその手を口腔内に入れた!】

 

 

 

提督「……んん!?何を…!」

 

 

時雨「フーッ、フーッ…!」

 

 

 

提督(目が、正気じゃねぇ…!)

 

提督「俺の手なんか不味いだろ!

ほれ、ぺっしなさい。ぺっ!」

 

 

時雨「…!」フルフル

 

 

提督「ほら、俺の指なんざ咥えてるから話せないだろ?ちゃんとお話ししようぜ。俺はお前と楽しく話したいんだ」

 

 

時雨「…うん、うん」

 

 

提督「よしよし、いい子。それじゃ…(まずいな、取り敢えずはボタンの解除を…)」

 

 

時雨「は、離れないで!

ダメ!絶対、僕の側に居てったら!」ガシッ

 

 

提督「いや、離れようとは…」

 

 

時雨「わかってる、わかってるんだけど…!ああ、頭が変になる!ダメだ、こんなの!提督が居ないとイヤだ、イヤだ!」

 

時雨「…ね?僕とずっと一緒に居ようよ!きっと頑張って幸せにするから、僕も幸せにして…」

 

 

提督「…あーわかった、わかったから落ち着け、な?」

 

 

時雨「お、落ち着けないよ。それ、本当にまずいよ。僕、もう、こうでもしなきゃあ襲っちゃうって…!」

 

時雨「…うう、でももしそれをしたら嫌われちゃうから、だから、だから!」

 

 

ポチッ

 

 

 

提督(……フー、間に合ったか)

 

 

時雨「…はっ、はっ…」

 

時雨「…ああ、ごめんね、錯乱しちゃって。さっきは急に沸騰したみたいに、今度は急に落ち着いてきたよ」

 

 

提督「そっかそっか。いや、悪いな。

まさかこんな事になるとは」

 

 

時雨「…ああでも、どうしよう。その…」

 

 

提督「…ん?」

 

 

時雨「……その、昂ったままの、想いだけがちゃんと残っちゃってるっていうか…」

 

 

提督「昂ったって…うん?」

 

 

時雨「………」/////

 

 

提督「…あっ」

 

 

時雨「…ねえ提督、少し、仮眠室に行こうよ。大丈夫、少しだけだから…」

 

 

提督「ま、待っ!」

 

 

時雨「…提督のせいなんだから、まさか嫌とは言わせないからね…!

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

提督「この目盛りの目安をちゃんと教えてくれ」ボロッ

 

 

明石「うわぁ、また満身創痍な…」

 

 

提督「何がちょっとだけ、だ時雨…ぜんっぜんちょっとじゃねぇよ!全身に噛み跡やら何やらだよ俺もう!」

 

 

明石「大丈夫…じゃあないですねどう見てもどう考えても」

 

 

提督「クソウ、これも明石がちゃんと目盛りについて教えてくれないから…」

 

 

明石「教えようともしてたんですけど、その前に提督が何処かへ行っちゃうんですもん」

 

 

提督「だってまさかこんなさ!こんな馬力に差があるとは思わないっていうか…こんな、正気を失わせるレベルだなんて!」

 

 

明石「嘘つき!時雨ちゃんの前の、それまででちゃんと知ってたでしょう!それなのに大丈夫だってタカ括ってたのは提督です!」

 

 

提督「…ムムム…」

 

 

明石「さあ、何か弁解があれば」

 

 

提督「…慢心せずして何が王か…」

 

 

明石「いつから王になったんですか貴方」

 

 

 



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川内の場合、MK2。

川内「夜戦だ!」

 

 

明石「う、うわ!何ですか急に!」

 

 

川内「夜戦だ、夜戦だー!」

 

 

提督「よお、川内。マジでどうしたんだよ急に。驚いたんだけど」

 

 

川内「夜戦の気配を感じた」

 

 

提督「は?」

 

 

川内「いやいやほんとほんと。

なんかそーいう雰囲気になってなかった?」

 

 

提督「…あ、隠語的な意味かい。

いや、そんな雰囲気には…」

 

 

明石「……」

 

 

提督「…」

 

 

明石「…きゅきゅ、急用を思い出したのでその、失礼しますね!!」///

 

 

バターン

 

 

 

川内「あ、行っちゃった」

 

 

提督「そりゃそうもなるわ。

…しかしなぁ、お前がそう言った意味で夜戦って単語使うとは思わなかったぞ」

 

 

川内「えー?提督私の事なんか夜戦しか知らない娘だと思ってない?」

 

 

提督「…否定はしない」

 

 

川内「ひっど!一応これでも色々考えてるんだぞ!例えば…」

 

 

川内「…今。わざわざここに割り込んだのは妬いたから、とか」

 

 

提督「…本当か?」

 

 

川内「ジョークかもね。どっちだと思う?

そのボタン使ったら、わかるかもよ?」

 

 

提督「…やれやれ」

 

提督(…まんまと、って感じだな。まあ、いいだろう、こいつの思惑通り川内にボタンを押すか)

 

 

 

川内「で、どうする?」

 

 

提督「どーするも何も、やれる事はそんなに無いだろ。だからそんなに期待した目をするんじゃあねえ」

 

 

川内「あれ、そんなに顔に出ちゃってた?」

 

 

提督「そうでもないさ。ただ俺があまりにも感情の機微に聡いだけだ…ぞっと」ポチッ

 

 

川内「っ…こりゃ…」

 

 

提督「まあ、これでも加減してMAXじゃないんだ。幾らかは我慢してくれよ?」

 

 

川内「えー?いじわるだな、こんな状態でそんな事出来るワケ…」

 

 

提督「動くな」

 

 

川内「…!」ピタッ

 

川内「提督?何…」

 

 

提督「先にやるべき事、あるだろ?」

 

 

川内「…?消毒とか?潔癖症だったっけ」

 

 

提督「違う違う。さっき何した?」

 

 

川内「??」

 

 

提督「俺の邪魔をしただろ。急に飛び込んで来てな」

 

 

川内「あー…それはごめん。だから…」

 

 

提督「別にそれを気にする程心が狭いわけじゃあないさ。ただ、仕置きも必要だよな?」

 

 

川内「え?」

 

 

提督「という事で、『待て』だ。そのまんまの状態で、俺が良いと言うまで放置されろ」

 

 

川内「…それだけ?そんな、犬じゃないんだしそれくらいは出来るって」

 

 

提督「…言ったな?」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

提督「〜〜♪」

 

 

川内「…ね、ねえ…まだ…?」

 

 

提督「あと少しでこの短編を読み終える。それくらいは待てるだろ」

 

提督「それとも何か?まさか待てないとか?おやおや、犬じゃないなんて言ってなかったか?」

 

 

川内「それは…!そのボタンのせいだから、仕方ないでしょ!?」

 

 

提督「仕方なく、無い。お前はその状態を認識したうえで大丈夫だと言ったんだ。それ位は出来ると。そこに嘘はないだろ?」

 

 

川内「…う」

 

川内「で、でも、もう無理だってぇ…

こんなだとは思わなかったから、その…そろそろ良くない?」

 

 

提督「ダメ」

 

 

川内「ぐっ……」

 

川内「お…お願いだから…」

 

 

提督(……)

 

 

川内「ね、お願いだからもう甘えさせてよ…

本当に、もう限界なんだってばぁ…」

 

 

提督(もう少しかな)

 

 

川内「あー…さっきのも、謝るから!ほら、だから、ほら!」

 

 

提督「…」

 

 

川内「うう…ご、ごめん。ごめんなさい!」

 

 

ガバッ

 

 

提督「うおっと…!

これはこれは。立派な命令違反だぞ川内。

まさか罪を重ねてくるとはな、ええ?」

 

 

川内「意地悪、意地悪!我慢とか無理だよ、もう!ぜったい解っててやってるでしょ!ダメだって言っても、もう止まれないって!」

 

 

提督「はいはい、済まなかったな。流石に焦らしすぎたか。俺も大人気なかった」ナデナデ

 

 

川内「う!ぅ…」

 

川内「…ずるい」

 

 

提督「はは、ずるいか?そうかもな。

まあ、許してくれよ。これくらいしないとお前たちから主導権を握れないからな」

 

 

川内「…それだけの為にこんな事したの?性格わるー」

 

 

提督「いやな、ついつい。挑発的な言動が多かったから色々と来るものがあってな」

 

 

川内「来るものって?ひょっとして興奮しちゃったとか?」

 

 

提督「…ああ。お望み通り。

滅茶苦茶にしてやるよ」

 

 

川内「〜〜〜ッ!?」ゾクゾク

 

 

川内「…え、ほんとに?冗談、じゃないか。

嬉しいけど、意外だなぁ」

 

 

提督「…さあ、『待て』は終わりだ。

ここからはお前の大好きな…」

 

 

川内「…『夜戦』?」

 

 

提督「…」

 

 

川内「きゃっ…目が怖いって…♡」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

 

明石「あ、お帰りなさい。

どうですか調子の方は?」

 

 

提督「ごくごく良い。最高だ。

ようやく掴めて来たぞ、加減だとか使い方だとかが」

 

 

明石「それはまあ、おめでとうございます」

 



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鳳翔の場合、その2、MK2。

 

提督「よおし、このままリベンジとか行ってみるか?」

 

 

明石「リベンジ…?」

 

 

提督「ああ。Mk2になる前に俺の思う通りにならなかったりした娘らの所に行ってみるのさ」

 

 

明石「…失敗フラグですね?」

 

 

提督「違うわ!よおし、では、一番最初にそうなった…鳳翔の所に行ってくるか!」

 

 

明石「えー…やめた方が。絶対有頂天になっての使用なんて痛い目見る気がしますしましてや相手が悪すぎ…」

 

 

提督「ごちゃごちゃうるせー!」ポチッ

 

 

明石「きゃあ!…あっ…」

 

 

提督「んで即解除!

それじゃ行ってくるぜー!」

 

 

明石「て、提督…!

もう!こっちは親切心で言ってるのに!」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

提督「どうも。

こんにちは鳳翔さん。今空いてますか?」

 

 

鳳翔「あ…こんにちは。

はい、今はとりあえず…」

 

 

提督「それは良かった、んですが…」

 

提督「…疲れていますか?」

 

 

鳳翔「え?」

 

 

提督「どこか元気が無いような気がして。

気のせいならばいいんですが…もし、そうなら何時でも言ってください。きっと、鎮守府皆がどこだろうと助けに行きますから」

 

 

鳳翔「ふふ、嬉しい限りです。

…その『皆』には提督も?」

 

 

提督「そりゃ当然!」

 

 

鳳翔「ありがとう、ございます。

…ただ、今はその、そう言った訳では無くて…」

 

 

鳳翔「その、聞いてしまいまして。

以前提督がいらっしゃった時の…」

 

 

提督「あー…あのボタンが偽物だったって事をですか。…ひょっとして怒ってます?」

 

 

鳳翔「正直、ちょっとは。ただ、その…それよりも…」チラッ

 

 

提督「?」

 

 

 

鳳翔「…わ、私…」

 

鳳翔「私、その…あんなにふしだらじゃありません…!」///

 

 

提督「…ほお?」

 

提督(『あんな』ってのは以前偽物押した時のあの行動の事だろうな。ふしだらって言うほどでもなかった気もするが…)

 

 

提督「これはまた、随分と…

では何です、あの時の発言や行動は何もかも嘘であったと?」

 

 

鳳翔「!そんな事は!あ、あの時言った気持ちは嘘じゃないですが…」

 

鳳翔「ただその…私はそんな…」

 

 

提督「取り繕わなくても大丈夫ですよ。俺は全て受け入れますから」

 

 

鳳翔「…」

 

 

提督「いいですよ。俺はどんな鳳翔さんも受け入れます。どんな鳳翔さんも好きですから。貴女が貴女であるだけで、愛していますから」

 

 

鳳翔「でも、私…」

 

 

提督「これを」スッ

 

 

鳳翔「!それは…」

 

 

提督「あの時と同じですね。

…俺は質問するだけです。貴女はこれを押して欲しいですか?」

 

 

鳳翔「…ほんとうに、いけずですね」クスッ

 

 

提督「それはどうも」

 

 

 

鳳翔「…お願いします。お願いしたいです」

 

 

 

提督「了解です。それじゃあ」

 

 

 

 

ポチッ

 

 

 

鳳翔「…!これは、成る程…確かに、あれは偽物だった事がよくわかります…」

 

鳳翔「…その」

 

 

提督「どうぞ?」

 

 

鳳翔「…」///

 

 

 

ダキッ

 

 

 

提督「…」

 

 

鳳翔「はしたない、と思いますか?」

 

 

提督「全然。

むしろ、今の貴女の方がずっと可愛らしい」

 

 

鳳翔「そう…でしょうか。

私、不安で…もし嫌われてしまったらと…」

 

 

提督「鳳翔さん」

 

 

鳳翔「あッ…」

 

 

 

提督「……これから、お手すきでしょうか」

 

 

鳳翔「今、からですか?」

 

 

提督「ええ。貴女はこのボタンのせいで、ですが…俺は、単純に我慢できなくなってしまいました」

 

提督「こんな自制心のない男。

はしたない、と思いますか?」

 

 

 

鳳翔「我慢…ですか?」

 

 

鳳翔「…あっ……!」

 

 

鳳翔「……」///

 

 

鳳翔「…いえ、ええ。

今の貴方の方が、可愛らしく思います」///

 

 

提督「…」

 

 

鳳翔「!んっ…」

 

 

 

鳳翔「……♥︎」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「…え、成功したんですか。

てっきり失敗フラグだとばかり」

 

 

提督「フハハハ!今の我は無敵だ!

今ならなんだって出来そうな気分だ!」

 

 

明石「調子に乗りすぎて一人称まで変わってる!ちょっと落ち着いてください!このままじゃおちおち話も出来ない!」

 

 

 



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北上の場合、MK2。

 

 

提督「ああ、ああ、すまんすまん。

ちょっと…いやかなり正気を失ってた。

フフ、ここまで連続で上手くいくのなんて初めてだったからな」

 

 

提督「ッシ!この勢いを絶やさぬまま行こう!今ならそれまで駄目そうだった相手にでも勝てる、勝てるぞ!」

 

 

明石(…あっ)

 

 

提督「底知れない…北上なんてどうだ!そうだ、彼女の慌てる様を目に焼き付けてやるぞ!」

 

 

明石(…なんか、もう駄目そうね…)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

北上「…提督ってさぁ。

ほんと、そういう所だよね」

 

 

提督「?」

 

 

北上「え、そこで惚ける?もう無理でしょ」

 

 

提督「いやぁハハハ、すまんな。こうでもしないとなんだか勝てなそうでな」

 

 

北上「なんか勝負してる訳でもないのに勝ち負けとかあるの?…ま、いいけどさ」

 

 

提督「…ほう、なんだか随分余裕じゃあないか。今までの娘らはこの目盛りの状態でやったらコロッといきかけてたんだけどな」

 

 

北上「それ知った上でやったんだ。かなーりサイテーじゃない?」

 

 

提督「超今更だろそんなの。

というか言われ慣れたわ」

 

提督「…で、どうだ。お前もそんな感じかい」

 

 

北上「ん?うーん…どうだろ。

確かにかなり変化はあるけど、辛抱堪らなくなるって程じゃないかな」

 

 

提督「おや、そんなもんか?

うーん…そりゃ個人差はあるだろうが、ここまで揺らぎが出るって事はあるのか…?」

 

 

北上「うーん。不調って感じかな。

ちょっと見せてよ」

 

 

提督「お、機械関連詳しいのか?んじゃほい」

 

 

北上「うん。えい」ポチ

 

 

提督「?もっかい押したら解除になっちま…

……あっ!!」

 

 

北上「そりゃわかるよ、それが不調でもなんでもないの。めちゃくちゃ効果あったし。あー、危なかった」

 

 

提督「…見事に騙された。

なんちゅーポーカーフェイスだ…」

 

 

北上「ふふん、凄いでしょ。

さぁて、ここからはやり返しタイムなんだけど…」

 

北上「うーん、このボタンは提督には効果無いみたいだし、どうしようかな」

 

 

提督「いっぺん俺に返してみない?」

 

 

北上「そういうダメ元な発言嫌いじゃないけどダメ。絶対なんか悪さするでしょ」

 

北上「…いや、そうだねえ。

ねえ提督。ちょっと私にキスしてみない?」

 

 

提督「は?…な、何を言ってるんだ」

 

 

北上「そうしたらこのボタン返してあげようか、考えてみるつもりだけど、どうする?」

 

 

提督「むう…わかった、良いだろう」

 

提督(…変な気持ちになっちまわないように自分を整えよう。集中、集中)

 

 

北上「…ふふ」

 

 

提督「…どした、そんな俺アホ面だったか」

 

 

北上「そんな事は…あったけど」

 

 

提督「あるんかい」

 

 

北上「それより、理由はどうあれ提督が自分の意思で私にキスしようとしてくれてるのが嬉しくってさ。された事は何度もありそうだけど、それは少なそうじゃん?」

 

 

北上「『初めて』なんて贅沢な事は言わないし、他の娘にやってるからそれが嫌とか、面倒くさい事は言わないけど。やっぱり貴重なモノの方が嬉しいよね、こういうのってさ〜」

 

 

提督(…ヌウ、平常心、平常心。折角口づけだけでオッケーだっつってくれてるんだから…)

 

 

提督「…それじゃ行くぞ」

 

 

 

チュッ

 

 

 

提督「よし、これで…」

 

 

北上「……」

 

 

提督「…」

 

 

北上「……ねえ」

 

 

提督「…別に、マウストゥマウスって条件はなかったろ」

 

 

北上「…そういう所だよね」

 

 

提督「頬だってキスには変わらないぞ。

想いに優劣がつく訳でもない」

 

 

北上「そういう…理屈じゃないんだよ。

女の子がキスを求めるなら唇を重ねるっていうのがさ…いや、まあ、いいけど」

 

 

北上「…提督は私の事嫌い?」

 

 

提督「!それはあり得ない。信じてもらえないかもしれないが、それだけは断言させてもらうぞ」

 

 

北上「なら、この場限りでもいいから…」

 

北上「…やっぱいい。それじゃ返すね」ポイッ

 

 

提督「お、おお」キャッチ

 

 

北上「もう用はないでしょ。んじゃね」

 

 

提督「…北上」

 

 

北上「?何…んッ!?」

 

 

提督「…ぷはっ、これでいいか。

それとも、今度は舌を入れようか」

 

 

北上「…急すぎるでしょ」

 

 

提督「デリカシー無かったか」

 

 

北上「それもだしさ…

でも、満足したよ。あんがと」

 

 

提督「ああ。それじゃ、今度こそじゃあな」

 

 

北上「うん、またね」

 

 

 

北上「……」

 

 

北上「……」///

 

 

北上「…はぁ、参ったなぁ…」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

明石「で、今度はどうだったんです」

 

 

提督「…勝ち負けを何にでもつけるなんて馬鹿馬鹿しいとは思わないかい明石くん」

 

 

明石「いや貴方がこれまで散々っぱら…!

…まあ、いいです。今回に始まったことではないので」

 

 

提督「ジョーダンジョーダン。

…失敗だとか負けに近いかな。ガッツリ利用されちまってるし、少なくとも知能戦では完璧に負けた」

 

 

提督「ただ、やっぱり効能はかなりあったみたいだからな。あのポーカーフェイスに騙されなけりゃワンチャンあったかもしれん」

 

 

明石「さすが、私作ですね」

 

 

提督「…まあ確かにその通りなんだが、それを自分で言うんじゃねぇやい」

 

 

 



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千歳の場合、MK2。

 

提督「ん?おおどうした。千歳か。

急を要する用事…」

 

提督「って訳じゃなさそうだな。

その手にあるものを見ると。いや、ある意味急を要する用事か?」

 

 

千歳「えへへ、つい珍しいのが手に入ったから。ここに置いておいてもいいですか?提督の部屋なら取られたりとかも無いはずですし」

 

 

提督「別に取られる事なんてねぇだろ…

…まあ、なんだ。わかった、置いといてやろう。代わりに…」

 

 

千歳「勿論、一緒に呑みましょう。

そのつもりで声をかけたんですから!」

 

 

提督「さっすが、話が早い」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

 

提督「はは、へべれけになるまでは飲まねぇよ。ま、精々がほろ酔いくらいだな」

 

 

千歳「えー、なんかつまらない…折角ならすごく酔っちゃったりしてみませんか?どんな醜態でも私は受け入れますよ?」

 

 

提督「いや、酒の失敗は一回で良いよ。

元々前後不覚になるくらい酔うのも好きじゃないし。つーかそもそも、酔うのがあんまり」

 

 

千歳「酔うのが嫌い…って、それもうお酒飲む必要無いんじゃない?…もしかして、嫌々付き合ってます?」

 

 

提督「いやいや、んな事はないさ。

たまーに呑むと普通に美味いし、ほわほわする程度ならまあ好きだし、そんで何より…」

 

 

提督「…酔っている君たちを見るのが好きだ」

 

 

千歳「…うわあ」

 

 

提督「ハハ、キザすぎたか」

 

 

千歳「うーん…正直、キザを通り越してちょっと気持ち悪いです」

 

 

提督「まあまあ、酔っ払いの戯言だと思って流してくれ」

 

 

千歳「…なら、これも酔っ払いの戯言だと思って流して欲しいんですが」

 

 

提督「ん?」

 

 

千歳「案外、気の利いてる言葉だなんて思っちゃいました。そのキザな台詞が」

 

 

提督「…そりゃあ、酔いすぎだ」

 

 

千歳「やっぱり、そうですか?」

 

 

提督「…ぷはっ、やっぱうめえな。

そら、もう飲まないのか?」

 

 

千歳「ん?んー…なんだか提督を見てたらあんまり飲む気にならなくなってきちゃいました」

 

 

提督「んだそりゃ。悪口か?ん?傷つくぞ?」

 

 

千歳「違いますよー。その折角の大切な人との時間を、シラフで居たくなったっていうか…」

 

 

千歳「…あはは、もっとキザな言葉を言うつもりだったんですけど。提督はよくあんな事顔色変えずに言えますね」

 

 

提督「おう、俺の凄さがわかったか」

 

 

千歳「ある意味、です」

 

 

提督「で、どうする。今のお前の発言は酔っ払いの戯言として流しておいた方がいいか?」

 

 

千歳「…ずるい」

 

 

提督「そうか?」

 

 

千歳「…出来れば、流さないで欲しいです。

ただ、提督がそっちでありたいなら、私はそれでも…」

 

 

提督「悲しい事言うね。

俺がお前の気持ちを嫌がるなんて事、何があろうとあり得ないさ」

 

 

千歳「……〜〜っ…また息を吐くようにそういう事を…本当に、酔ってないんですか?」

 

 

提督「シラフもシラフよ」

 

 

千歳「ならきっと、提督はとんでもない女誑しか詐欺師かですね」

 

 

提督「滅相も無い。俺は善良な軍人さんだ」

 

 

千歳「…自分でも、思ってたより酔ってたのかもしれません。どうも、変なんです」

 

 

提督「変?」

 

 

千歳「吐き気だとか、そういう訳では無いですよ?どうも、自制が利かないような…」

 

千歳「…さっきの言葉。

折角なら、酔っている『君たち』の姿を見るのが好き、じゃなくて」

 

 

千歳「『君』が、と言って欲しかったとか」

 

 

提督「…」

 

 

千歳「…じょ、冗談ですよ。あはは…」

 

 

提督「…酔いすぎだ。

膝を貸してやるからゆっくりしなさい」

 

 

千歳「…はい…」

 

 

 

千歳(…膝を借りられるのは少し嬉しいけど、私の求めてる言葉は言ってくれないんですね)

 

千歳(…心にもない事は、言えない?)

 

 

提督「…そういった事は、折角だ。今じゃない。もっと、ちゃんとした時に言ってやる。そうさせてくれよ」

 

提督「だから、なんだ。

別に思ってないから言わない訳じゃない」

 

 

千歳「…!こ、言葉に出てました?」

 

 

提督「目は口程にモノを言うってな。

そんな悲しそうな目をされたら分かるさ」

 

 

千歳「……」///

 

 

提督「ほら、顔が赤いぞ。

かなり酔いが回ってるみたいだ」

 

 

千歳「…わかって言ってますよね?

…やっぱり、ずるいです」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

明石「あれ?ボタン使って…ました?」

 

 

提督「MK2になる前までの程よい感じも出来たらいいと思ってな。大体これくらいの調整でやればいいか?実験したんだ」

 

 

明石「ああ、発動自体はそのメモリを控えめにしてやったと。いつやったんですか?」

 

 

提督「悪いがそんな面白い回答じゃねぇぞ。

普通にコップとかの用意してもらって背を向けられてる内に押しただけだ」

 

 

明石「なんです、つまらない」

 

 

提督「毎回毎回ミッションインポッシブルするわけにもいかねえし仕方ねぇだろ」

 

 

明石「…そういえば、本当にお酒はあんまり好きではないんですか?」

 

 

提督「嫌いでは無いがな。

単純に酒にあんまし強くもないし…」

 

 

明石「なんだか意外ですね。

…ちょっと酔い潰されたりしてみません?」

 

 

提督「お前のワクワクしてるその目が怖いからやだ」

 

 

 



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大井の場合、MK2。

 

 

提督「ふう…」

 

 

提督(なんだか疲れたな…まあ、そんな疲労の理由も遊び過ぎだなんてクソ情けない理由だが…)

 

 

大井「どうしたんですか、ため息なんてついて。幸せが逃げていきますよ」

 

 

提督「ん、そうだな、正しくその通り」

 

 

大井「どうせ、遊び呆けているせいで疲れてるとかのしょうもない事でしょう。ぬるめのお茶煎れましたから、これ飲んでささっと終わらせてください」

 

 

提督「ああ、ありがとう…

…遊び呆けてるからってのは的中だよ。

凄いな、エスパーか?」

 

 

大井「聞きたくもない噂がどんどん流れてきているだけです」

 

 

提督「は、手厳しいな。

もしかしなくても、これについてだよな」スッ

 

 

大井「!持ち歩いてるんですか…」

 

 

提督「一応、他の人に悪用とかされんようにな。まあ流石に真面目な仕事の時にゃ使わんさ。その一線だけは守らんと」

 

提督「それに、今日はお優しい秘書艦さまもいるからな?」

 

 

大井「…そうですね」

 

 

提督「おっと、一応言っとくが皮肉じゃあないぞ。お前は本当に優しいからな」

 

 

大井「ご機嫌取りですか?

全く…悪い気はしないですけど…」

 

 

提督「……もし、俺がこの仕事を終えた後、お前にこのボタン押すって言ったらどうする?」

 

 

大井「!!」

 

 

大井「…別に、どうもしません」

 

 

提督「そうか」

 

 

大井「…それを両手を広げて歓迎したりも、生娘のように逃げ出したりも、何も。

…好きに、したらいいんじゃないですか」

 

 

提督「…そうか」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

 

 

 

大井「……」

 

 

大井「横、座ります」

 

 

提督「あいよどうぞ」

 

 

大井「…ありがとうございます」

 

 

提督「どういたしまして」

 

 

大井「提督」

 

 

提督「ん?」

 

 

大井「ありがとうございます」

 

 

提督「…そんなに横に座りたかったか」

 

 

大井「そうじゃありません。

…そうでも、あるのかもしれませんが」

 

 

提督「…あのなぁ。俺はお前らが思ってるより馬鹿なんだ。もう少しちゃんと言ってくれんとわからねぇよ…」

 

 

大井「私を見つけてくれてありがとうございます。私が私である全てを、ありがとう」

 

 

提督「…」

 

 

大井「この今の想いも、大切なものも、日々も、未来も。私がここにいて、私が大事だと思えるものは、きっと貴方が与えてくれたものだから。それを今言っておきます」

 

 

提督「大袈裟だな。お前がお前であるのは、お前自身の弛まぬ努力と信念のお陰だ。それを俺のせいにされちまっても困る」

 

 

大井「そうですね。…それでも言わずにはいられない。それが感謝ですから」

 

 

提督「…まあ、確かにな」

 

 

大井「理屈なんて超えて、何度も何度も思ってるんですよ。喜びも、夢も。これからも。意味を持たせてくれた色々な『ありがとう』を、ありがとうって。愛していますって」

 

 

提督「随分とまあ、素直じゃないか。いつもそんな風だったら俺はもっと嬉しいんだがな」

 

 

大井「…それが出来る女だと思うの?」

 

 

提督「…ノーコメント」

 

 

大井「…ふん」

 

大井「…張り詰めて居なきゃいけませんから。少しでも、例え必要じゃなくても。今という、最高の状態を続ける為には」

 

大井「…そう思っていたのに、その忌々しいボタンのせいよ。ほんの今だけでも、提督なんかに、全部甘えようなんて思っちゃうなんて」

 

 

提督「『甘える』にしても、そんな難しいことを言わんでもいいだろう。もっともっと肩肘張らず、グダッとさ」

 

 

大井「いつかは絶対に言わなければ行けないことで、多分、ここで言わなきゃもう言えないから仕方がないのよ」

 

 

提督「ま、お前がそう思ったのならそれを尊重すべきだな。にしても、『言わなきゃいけない』なんて事あるか?」

 

 

大井「言わなきゃいけないのよ。

いつか、死んじゃうんですから」

 

 

提督「……お前」

 

 

大井「…事実ですよ?勿論、提督も私たちも全力を尽くしてますし、このまま犠牲なんて無いまま終わるかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

 

大井「…それでも、いつかは死ぬんです。

だから絶対、言わなきゃいけないの」

 

 

提督「…大井、お前…」

 

 

大井「…」

 

 

 

提督「…そんな事ばっか考えてて疲れねえか!?甘えてる状態でそれだろ!?俺よりぜんっぜん色々考えてんじゃねえか!」

 

 

大井「…はぁ、貴方が考えなすぎなのよ」

 

 

提督「うっ耳が痛い。まあなんだ、そこは適材適所って事でな?」

 

提督「…冗談はさておきさ。別にそう言ったことを考えるなとか、俺が言ったこと以外は考えるなんて言うつもりもねえ。ていうかそもそも聞かねえだろそんな命令」

 

 

提督「だから、ほんのちょっとアドバイス。手軽な幸せってのは、案外目の前にあったりするものだぞ?」

 

 

大井「?」

 

 

提督「ほら」

 

 

大井「…」クスッ

 

 

大井「ええ、そうね。まあ、たまには何にも考えなくてもいいわよね」

 

 

大井「…お言葉に甘えさせて貰うわよ?」

 

 



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卯月の場合、その2、MK2?

 

 

 

 

提督「…んでそこの定食がまた旨くてさ。

ありゃ鳳翔さんにも並ぶね」

 

 

明石「あら、そこまで言うほど?

そんなに豪語されると気になりますね」

 

 

提督「はは、さすがに言い過ぎたな。

でもまあそれくらい旨かったんだよ」

 

 

明石「じゃあまた今度提督の奢りで…

あ、そう言えば」

 

 

提督「サラッと奢らせようとするんじゃねぇ。…で、なんだ?」

 

 

明石「いえ、全然関係のない話なんですが。さっき卯月ちゃんが来たなって…」

 

 

提督「ああ、なんだろ。

意趣返しでもしようとしてたのかな」

 

 

明石「というよりはどちらかと言うと怯えた様子というか、なんというか…」

 

 

提督「?」

 

 

明石「…本当に何もしてないんですよね」

 

 

提督「い、いやいやマジでしてねぇって!この目を見ろ、そんな事すると思うか?酷いことをするような人間に見えるか?」

 

 

明石「思います、見えます。」

 

 

提督「だよな!!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

 

提督「さあて、卯月卯月はっと…」

 

 

提督(俺のやったことが思いの外、心の傷になってたりとかしたんだろうか…?そんな風には思えなかったが…)

 

提督(いずれにせよ一度会ってみないとかな…どこにいるか…)

 

 

 

卯月「あっ」

 

 

提督「はっ」

 

 

 

「「……」」

 

 

 

 

ダッ

 

 

 

 

提督「ぬぁぜ逃げるゥ!」

 

 

卯月「びょおおん!逃げるに決まってるぴょん!自分の胸に…っていうかその妙ちくりんなボタンに聞けっぴょん!」

 

 

提督「待て!取り敢えず待て!

何もしない!何もしないから!」

 

 

卯月「嘘つけっぴょん!」

 

 

提督「くっそ、信頼が0だ!そらそうか!

なら仕方ねえ…!オラッ食らえッ」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

卯月「っ…!」

 

 

提督「さあて、まあ別に悪いようにするつもりはないんだが…これ以上追いかけっこするのもな」

 

 

提督「んで、そうだ。

俺が呼び止めたのはだな…」

 

 

卯月「…う゛」

 

 

提督「ん?」

 

 

 

卯月「ゔえ゛え゛ん…!」

 

 

 

提督「……!?」

 

提督「いや、その…あれぇ?」

 

 

 

卯月「じれいがんのいじわ゛る゛ぅぅ!!

うーちゃん、それイヤなのにぃ…!」

 

 

提督「…う」

 

 

卯月「うう゛ぅぅ…卯月だって、そんなもの無いまんま甘えたいのにぃ…!」

 

卯月「司令官のばか゛ぁぁ…!」

 

 

提督「……」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

提督「…あー、その、なんだ。

ごめんよ。ほら、怖いのはもう無いから。しまったから。な?」

 

 

卯月「…うそつきな司令官は嫌いっぴょん゛…」

 

 

 

提督「嘘ついてないよ。

ほら。ボタンも解除したし」

 

 

卯月「……」

 

 

提督「ごめんな。流石にこんな俺でも、君らに泣かれちゃったらな…いくら謝っても駄目かもしれないけど、ごめん。嫌いにならないでくれないか?」

 

 

卯月「…ならない」

 

 

提督「そっか、よかった。

じゃ、もし良ければ仲直りしないか」

 

 

卯月「…ん」

 

 

 

トコトコ

 

ギュッ

 

 

 

提督「よしよし、本当にごめんな」

 

 

卯月「…ゆるさないっぴょん…」

 

 

 

提督「か…勘弁してくれないか。

今までやった事考えりゃあ許してくれなんて図々しい事言えるような立場じゃないが…」

 

 

卯月「…どうせ司令官は出撃とかに困るから機嫌を取ろうとしてるだけっぴょん」

 

 

提督「それは違う!俺は俺の意思でお前らと仲良くし続けたいと思ってるし、親しい関係で居たいと思ってる!そこに打算は無い!」

 

提督「…信じてもらえないかもな。

でも本当だ。俺は…卯月、君とちゃんと仲良くしたいんだ」

 

 

提督「どの口がと思うかもしれないが…俺は、卯月の事好きだからさ」

 

 

卯月「……く…」

 

 

提督「ううん、どうしよう。

そうだ、何か欲しいもんとかないか?

いや、モノで釣るみたいで嫌か。んっと、それじゃあ…」

 

 

卯月「…くっ…くく…」

 

 

 

提督「あ、そうだ。一回言う事聞くとか…

…?卯月?」

 

 

 

 

卯月「…ぷっくっくー!」

 

 

 

提督「うわっ!?」

 

 

 

卯月「うっそぴょーん!

うーちゃんの迫真の演技に、すっかり騙されたっぴょん?ぷくく、ワタワタと必死になってる指揮官面白かったっぴょーん!」

 

 

提督「…ほほう、嘘泣きだったかー。

こりゃ騙されちまったよ」

 

 

卯月「でしょ、でしょ?そんじゃ、うーちゃん行くっぴょん!次のイタズラを楽しみにしてるっぴょーん!」

 

 

 

 

【卯月は走り去って行った…】

 

 

 

 

提督「……」

 

 

提督(目は涙で赤くなってたし、顔もなんだか赤くなっていたが…ま、俺が騙されたって事でいいだろう。そこの詮索は野暮だな)

 

 

提督(…たまにゃあすっかり騙されるってのも悪くないな)

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

タッタッタ…

 

 

卯月「はっ、はっ…ふぅー。

ここならもう、誰も居ないっぴょん…」

 

 

卯月「…」

 

卯月「…にへへ」

 

 

卯月(!い、いけないっぴょん!司令官は酷いことやってきたんだぴょん、それを許すどころか、あんな事だけで嬉しくなっちゃうなんて…!)

 

 

卯月「…」

 

 

 

(卯月の事、好きだからさ)

 

 

 

卯月「…えへへへ…」///

 

 

 

 



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足柄の場合、偽。

 

 

明石「最近また、噂が流れてきましたね」

 

 

提督「ああ、このボタンについてな。

一時はまた他の話題に埋もれるくらいになっちまってたが、アプデを境に再浮上してきたようだ」

 

 

明石「まあ極端に使用してるどこかの誰かが居ますからね、そりゃ噂にもなりますよ」

 

 

提督「よせやい。

…いやま、確かに俺がやたらめったら使いまくってるってのもあるけど、この性能による所も大きいみたいだぞ?なんなら、俺への好意より好奇心から押されたいって声もある」

 

 

明石「それまた…随分物好きな」

 

 

提督「まあ、どれであろうと俺はやるだけなんだから楽で楽しいもんだ。そんで、どっちかわからない娘が、今俺の部屋の前に居る」

 

 

明石「あれ、誰ですか?」

 

 

提督「足柄だ」

 

 

明石「…うーん、前者じゃないですか?」

 

 

提督「どちらにせよ、ゴーゴー!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−–

 

 

 

 

足柄「あら、提督!待ってたのよ!」

 

 

提督「ん?どうした。何k」

 

 

足柄「しらばっくれ無くてもいいわ!さあ、ボタンを出して私にやりましょう?」

 

 

提督「…げ、元気だなぁ、オイ。

それにまたド直球な」

 

 

足柄「何でも直球が一番早いじゃない。早く行って、そのまま勝利!うーん、良いわ!」

 

 

提督「勝利…勝利か。お前の求めるようなモノは正直手に入らないんじゃねぇかなぁ、このボタン云々じゃ」

 

 

足柄「もう、まだそんな事言うんですか?提督ったら朴念仁なんだから!」

 

 

提督「…すまんな。そこまで女性に言わせなきゃ気づかんなんて、とんだボンクラだ」

 

 

足柄「いいのよ。さあ!」

 

 

提督(……)

 

 

足柄「…その、駄目かしら?」

 

 

提督「え、いやいや、別にそういう訳じゃないぞ。だからそんな顔すんな」

 

提督(うーん…どうすっかな…ヨシ)

 

 

 

ポチッ

 

 

 

提督「……」

 

 

足柄「…あれ?押した?本当に?」

 

 

提督「まあ、見ての通り」

 

 

足柄「そ、そうよね…なんというか…もっと凄い事になっちゃうって聞いてたから。案外普通で、ちょっと驚いちゃって」

 

 

提督「はは、まあ、噂なんてそんなもんだ」

 

提督(本当は偽物なだけだけど)

 

 

足柄「そ!それじゃあ、提督?私に…」

 

 

提督「ほい、それじゃあ何でもしていいぞ」

 

 

足柄「…え?提督が何かやるんじゃないの?」

 

 

提督「いやあ。ほら、お前『飢えた狼』だろ?勝利はその手で掴まなくっちゃあな」

 

 

足柄「そ、それもそうね。でも、えーっと…」

 

足柄「…よし、行くわよッ!」

 

 

提督「おう、どんと来ブッ」

 

 

 

 

【足柄、衝突事故的な口づけをす】

 

 

 

 

提督「〜〜ッ!!痛…ッ…

ず、随分と、情熱的なキッスだな…?」

 

 

足柄「痛〜ッ……ごめんなさいね。その、あんまりこういう事に慣れてなくって」

 

 

提督(まあこの女所帯で慣れられてても困るからそれはいいんだが…)

 

 

足柄「…うう、失望したかしら。

ごめんなさい、いきり立ってここに来たけれど、私本当は『おぼこ』なの」

 

 

提督「んな事恥じることも無いし、失望なんざする筈もないだろ。むしろアリだ」

 

 

足柄「そう!?なら良かったわ!」

 

 

提督「うおう元気になるの早いな。

…にしても、それじゃあ随分痛々しいファーストキスになっちまったなぁ」

 

 

足柄「ふふ、そうね。でもまあ仕方が…」

 

 

 

スッ

 

 

足柄「な…い…?」

 

 

提督「…ふう。

だから、二回目は優しく。な?」

 

 

足柄「…」ポカン

 

 

提督「…おーい、大丈夫かー」

 

 

 

足柄「ああ、はい…その…ありがとう…」

 

 

提督「どうする?三回目もしておくか?」

 

 

足柄「い、いいわよ!あんまりがっついてもアレじゃない!?」

 

 

提督「はは、気にするなんて足柄らしくもない気もするがな」

 

 

足柄「…気にするわよ。色気が無いかもしれないけど、私だって女の子だもの」

 

 

提督「…またデリカシーがない発言だったな。すまんすまん」

 

 

足柄「…なら、そのお詫びとして。次は初めてのデートをしましょう!嫌なんて言わせないわよ?」

 

 

足柄「…『三回目』はその時に、ね?」

 

 

 

 



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日向の場合、【?】。

 

 

 

 

提督「…よし、次は日向に決めた」

 

 

明石「理由は聞いた方が?」

 

 

提督「ん、まあどっちでもいいけど」

 

 

明石「えー…じゃあ折角なので。

やっぱり、ミステリアスな感じに惹かれたんでしょうか」

 

 

提督「ミステリアス?ミステリアスかぁ」

 

 

明石「あれ、そんなに的外れでした?」

 

 

提督「少なくとも、俺はそうでも無いと思っててな。明け透けに物を言うし、快活で、どちらかというと竹を割ったような気持ちの良い奴だと思ってたから」

 

提督「…いやまあその、なんというか…

ある艦載機についての情熱は確かにミステリーチックであるかもしれんが…」

 

 

明石「あはは…あ、それで結局理由は?」

 

 

提督「おう、つっても理由らしい理由も無いんだけどな。そういう、物事を真っ直ぐ言ってくるようなあの子を恥ずかしさやらなんやらで言い淀ませてみたいってだけだ」

 

 

明石「相も変わらず不純ですね…」

 

 

提督「まあ、もうそれを言うのすら飽きてきたんじゃねぇのか?」

 

 

明石「それくらい言われる事を自覚してるならやめましょうよ」

 

 

提督「絶対に断る」

 

 

明石「でしょうね!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

提督「よ。こんばんは、日向」

 

 

日向「ん…どうしたんだ、提督」

 

 

提督「まあなんだ。多分、もう色々知ってるし、分かってんじゃあないか?」

 

 

日向「…まあ、そうなるかもしれないとは思ったけど、一応君の口から聞こうと思って」

 

 

提督「ハハ。本当は問答無用で出会い頭…とも思ったんだけど後が怖そうでな。ちゃあんと許可を取る事にしたよ」

 

 

提督「そんじゃあ改めて。

このボタン、押してもいいか?」

 

 

日向「嫌だ」

 

 

提督「おお即答。嫌か。まあ仕方ない…」

 

提督(…と言って、直ぐに納得しちゃう程諦めは良くないんだよな)

 

 

提督「そっか、嫌なのはまあ仕方ない。そうだな。代わりと言っちゃなんだけど、何で嫌かを教えてもらえねぇ?」

 

 

日向「言うまでもない。恥を晒すのは、誰だって嫌だろう?」

 

 

提督「なあに、旅の恥はかき捨てとも言うじゃないか」

 

 

日向「人生は旅なんて、ポエミーな事を言いたいの?それに、その言葉は恥をかいてもいいなんて意味じゃ無いだろう」

 

 

提督「うむ、ごもっともだ」

 

提督(…言いくるめんのは、無理だな)

 

 

日向「それじゃあ、もう良いかな」

 

 

提督「えぇー。頼むよ、後生だからさぁ」

 

 

日向「そんな事言われてもな…

嫌なものは嫌だよ」

 

 

提督「そうだ、出来る範囲で何でも一つ言うことを聞こう。その交換条件でどうだ?」

 

 

日向「!」

 

 

提督(お、食い付いた)

 

 

日向「……ッ…」

 

日向「…」

 

 

日向「…勘弁してくれないか。

揺らいでしまいそうになる」

 

 

提督「これでもダメか…

まあ、今度こそ仕方ない。諦めるよ」

 

提督「…ただ、どうもそこまで断る理由が、恥をかきたくないってだけには思えん。何か理由があるのか?」

 

 

日向「…」

 

 

提督「まあこれも言いたくないなら良い…というかそもそも俺の考え過ぎかもしれないけどな」

 

 

日向「…まあ、嘘ではないよ。

君の前で恥をかきたくないというのも」

 

日向「自惚れのようだが、君はある程度私を好いてくれてると思っている。そうだろう?」

 

 

提督「まあそうだな」

 

 

日向「そしてそれは、『いつもの』私を好いてくれているものだ。…そうでしょう」

 

 

提督「…?」

 

 

日向「…きっと私は取り乱して、いつもの私じゃなくなってしまう。いつもとは違う姿を見せてしまうと思う」

 

日向「君の前で恥をかき、失望されるのが怖い。だから恥をかきたくない」

 

日向「…これで納得したかい?」

 

 

提督「…」

 

 

提督「おお、納得はした。ただ、どうも勘違いしてるようだから、それについては釈明をば」

 

 

日向「勘違い?」

 

 

提督「俺がお前を好いてるってのはそりゃもう間違いないさ。ただ気になるのは失望って部分だ」

 

提督「はっきり言っておくが。俺ぁお前の全部が好きなんだよ。だからこそどんな姿であろうと見たいし、だからどんな風になったにしてもお前を見損なうなんてあり得なん」

 

 

日向「…そうか」

 

 

提督「どうだい?それを踏まえて」

 

 

日向「…やっぱり、嫌だな。それでもまだ少し怖いし、何より心の準備が出来ていない」

 

 

提督「そっか。なら仕方ねぇな。

今回は諦める事にするよ」

 

 

日向「…ただ、今言ってくれた事。

例え嘘でも凄く嬉しかった」

 

日向「そうだな。もし私が自分の意思で、それをやってほしいと思えるようになったなら。その時は私から頼む事にする。

それでもいいかな」

 

 

提督「応、もちろん」

 

 

日向「それは良かった。

じゃあ、その時は君も約束を忘れないように」

 

 

提督「約そ…何でもするって…

え、待て!そん時まで有効なの!?」

 

 

日向「ふふ、発言には責任を持たないと。

君は、提督なのだからね」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

提督「むう、結局やりたい事は出来なかったなぁ。正直悔しいわ」

 

 

明石「何というか、今回は随分と優しかったですね。

いつもはもっとこう…相手の事を考えないというか」

 

 

提督「万が一怒らせたり失望されたら怖いからなぁ。他の娘はならないと思うが、日向がもしそうなったらと思うと…」

 

 

明石「ふふっ」

 

 

提督「?何がおかしい」

 

 

明石「いえ。今もし日向さんが聞いていたら、提督が言ったそのままを返されてたと思いますよ?」

 

 

提督「?」

 

 

 

 

 



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瑞鶴の場合、その2、MK2。

 

 

 

 

 

 

提督「…おや、もう夜か。

なんだかまたあっという間に過ぎたな」

 

提督(そうだな…今日は大人しく…)

 

 

瑞鶴「あれ、提督さん」

 

 

提督「ん、おお瑞鶴。どうした急に」

 

 

瑞鶴「別に何かって訳じゃないんだけど…なんか神妙な顔してたから、大丈夫かなって」

 

 

提督「あぁ、もしかして真面目な顔付きになってたか?随分珍しい物見たなぁ」

 

 

瑞鶴「ほんと。

…何か心配事って訳じゃない?」

 

 

提督「ん、マジで大した事じゃないよ。

…何か隠そうとしてる奴の言い分みたいだが、本当だぞー」

 

 

提督「…いや、そうだ。なあ瑞鶴」

 

 

瑞鶴「ん?」

 

 

提督「ちょっと付き合わないか?」

 

 

瑞鶴「!?

…いや、付き合うってそう言う事じゃないわよね」

 

 

提督「ハハハ、そりゃそんな大事な事なら流石にもっとかしこまるさ。今の意味は、ちょっと一緒に来ないかって事だ」

 

 

瑞鶴「うーん…何処に行くか、によるかな」

 

 

提督「飯さ。一緒に食いに行こうぜ」

 

 

瑞鶴「あっ。じゃあ、せっかくだし、奢ってもらっちゃおうかな?」

 

 

提督「…ヨシ、いいだろう。但し食い過ぎは厳禁だぞ」

 

 

瑞鶴「あはは、ケチっぽい」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

 

 

 

 

提督「さて、どうだった?

…気に食わなかったか?」

 

 

瑞鶴「ん?いやいや、そんな事ないって。美味しかったし、満足満足!」

 

 

提督「そうか?なら…いや、まあいいか」

 

 

瑞鶴「…わっ。見てよ提督さん!凄い星!」

 

 

提督「ん…おおほんと。瞬いてんな!

長い事来てるが、知らなかったよ」

 

 

瑞鶴「へへ、お手柄かな?」

 

 

提督「応ともさ。

しっかし、綺麗だな。月も…」

 

 

瑞鶴「…」ピクッ

 

 

提督「……」

 

 

瑞鶴「…言わないの?」

 

 

提督「…いんや、それを言うんだったら、もっとちゃんとした言葉で伝えるさ。勿論、これがちゃんとしてないって訳じゃないが」

 

 

瑞鶴「そう?あぁ、良かった。

もし『月が綺麗ですね』なんて言われたら、私多分吹き出しちゃってたから!」

 

 

提督「おいおい、酷いな。夏目漱石もとばっちりじゃないか」

 

 

瑞鶴「いや、言葉が変なんじゃなくって、提督さんが言ったら笑っちゃうってだけ」

 

 

提督「尚、酷くねぇ!?」

 

 

瑞鶴「あはは!…よいしょっと」

 

 

 

提督(…っと、こんなとこにベンチもあったんだな。よっぽど俺が散漫なのか…)

 

 

提督「…冷えるぞ?」

 

 

瑞鶴「なら誰かが温めてくれればいいじゃない?」

 

 

提督「クク、中々強かだな。

確かにその通り。横、失礼するぞ」

 

 

瑞鶴「うん」

 

 

提督「よいしょっと…」

 

 

瑞鶴「あはは、おっさんくさい」

 

 

提督「しゃーねえだろ実際そうなんだから」

 

 

瑞鶴「ふふ」

 

 

提督「……」

 

 

 

【瑞鶴は提督の肩に頭を預けた】

 

 

 

瑞鶴「…重くない?」

 

 

提督「むしろ軽すぎる」

 

 

瑞鶴「ねぇ。

あのボタン、持ってたりしない?」

 

 

提督「…一応、持ち歩いてはいる。

悪用されても困るしな」

 

 

瑞鶴「…」

 

 

提督「だが、必要ないだろう」

 

 

瑞鶴「ううん。使って」

 

瑞鶴「弱い私の、言い訳にさせて」

 

 

提督「…お前は強い、とか。

そういう発言は求めてねぇよな」

 

 

瑞鶴「あはは。…うん」

 

 

提督「なら、やろう」

 

 

 

ボチッ

 

 

 

提督(…あ。そういや目盛りどうしてたっけな。やっべ、全然気にしてなかった)

 

 

瑞鶴「…だ…」

 

 

提督「だ?」

 

 

瑞鶴「ダメっ!やっぱり恥ずかしい!」グイーッ

 

 

提督「グワーッ!おま…さっきまで耐えてたのに!」

 

 

瑞鶴「ご、ごめん提督さん!でも、どうしてかな…急に恥ずかしくなっちゃって…」

 

 

提督(…!そうか。目盛りが最弱に近かったせいで、甘えていた瑞鶴の状態が逆に弱い感情に上書きされたのか…)

 

 

瑞鶴「ほんとになんでかな。

…折角、チャンスなのに」

 

瑞鶴「…」

 

 

提督「ああ、落ち込むな落ち込むな。

ほら、涙なんて似合わないぞ」

 

 

瑞鶴「泣いてないって!」

 

 

提督「あら元気」

 

提督「…まあ、なんだ。どうしても今日じゃなきゃいけないって、訳じゃあないだろ?明日になっても俺はお前らの前に居るぞ」

 

 

瑞鶴「そういう事じゃないって!…提督さんてば、肝心な所でデリカシーないよね」

 

 

提督「ぐえっ耳が痛い」

 

 

瑞鶴「……ごめんね、提督さんに当たっても意味ないのに。なんでだろう。やっぱり、どうしても勇気が出ないし、恥ずかしい」

 

 

提督(…)

 

 

 

ギュッ

 

 

瑞鶴「…精一杯がこれだって言ったら、笑われちゃうかな」

 

 

提督「笑うもんか」

 

 

 

【二人は静かに、手を握り合う】

 

 

 

提督「…そろそろ、戻るか。

いよいよ寒くなって来た」

 

 

瑞鶴「うん。

…帰るまでこのままでいいかな」

 

 

提督「ああ、好きにするといい」

 

 

 

【体温を、静かに確かめ合った…】

 

 

 

 



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神通の場合:MK2?

 

 

 

 

 

 

【某日、工廠にて】

 

 

 

 

明石「ほら、こういう風に…」

 

 

提督「ああー成る程…

やっぱ専門家は違うな明石センセ」

 

 

明石「あはは、悪い気はしませんね」

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

提督「ん?どうぞ」

 

 

 

ガチャ

 

 

神通「失礼します…提督、やはりここにいらっしゃったのですね」

 

 

提督「あら、どした神通」

 

 

明石「…まさか、執務ほっぽり出して此処に来てるんじゃないでしょうね」

 

 

提督「い、いやいや。今回はそんな事ぁ無いって。違うよな?神通」

 

 

神通「…え?は、はい!そのような事は…」

 

 

提督(…?随分と歯切れが悪いな。

俺なんかしたっけ…)

 

 

明石「大丈夫ですか、神通さん。この人に口止めとかされてませんか?」

 

 

提督「お前はお前で俺をなんだと思ってるんだコラ」

 

 

神通「ふふ…いえ、大丈夫ですよ」

 

 

提督「……まあ、俺を探しに来てたって事は何か用事だろう?取り敢えず二人になろうか。それじゃあまたな、明石」

 

 

明石「はい、それではまた」

 

 

神通(……)

 

 

提督「悪いな、待たせた。ここで話すのは都合が悪いか?何処に行こうか」

 

 

神通「え…?いえ、私、提督に気を遣わせるつもりは…」

 

 

提督「まあまあ、人の親切は受け取っておけ。ありがた迷惑な場合は突っぱねにゃならんが…それは釈迦に説法かな?」

 

 

神通「な…もう、私を鬼か何かと思っているんですか?これでも、少しは気にしてるんですよ」

 

 

提督「あ、ごめんごめん。

それで、どうだ?ありがた迷惑か?」

 

 

神通「いえ、そんな事は…!

…ええと、それでは…」

 

 

神通「…私の部屋に来て頂いても、宜しいですか?」

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

神通(……)

 

 

提督「お邪魔します…と。どうにも部屋に入るとなると萎縮しちまうな」

 

 

神通「……え?

す、すみません。今なんと…」

 

 

提督「いや言い直すような事でも…珍しいなぼーっとして。大丈夫か?疲れてたりしないか?」

 

 

神通「いえ、そのような事は…!

あ、すみません、お茶をお出ししますね!」

 

 

提督「ああ、いいよ。

そんな長く居座るつもりもないしな」

 

 

神通「……そう、ですか…」

 

神通「…ずっと…」

 

 

 

提督「…ん?すまない、今、なんと」

 

 

神通「!いえ、何でもありません」

 

 

提督「で、何だ?用事って」

 

 

神通「え?」

 

 

提督「なんかあるから呼んだんだろ。

ほら、言ってみなよ」

 

 

神通「そうです、よね…」

 

神通(何か言わないと…何か…)

 

神通(でも、言ってしまえばきっと、また何処かに行ってしまう。それならいっそこのまま…)

 

神通(…何を、思ってるの。

違う、ちゃんと言わないと)

 

 

神通「……ッ」

 

 

提督「神通?」

 

 

神通「…申し訳ありません。嘘、なんです」

 

 

提督「…」

 

 

神通「何か話すべき事があるというのも、提督に言わなければいけない事というのも、嘘なんです」

 

 

提督「そうか。何故そんな嘘を?」

 

 

神通「嫉妬…していたんです。

楽しげに、明石さんと話す姿や、川内姉さんが行われた件の事。それでも私は、いいと思っていた筈なのに…」

 

 

神通「…本当に申し訳ありません…

罰なら、なんなりと…」

 

 

提督「そ、そんな大袈裟な話にはしなくていいだろ。というか、大体分かってたよ」

 

 

神通「…え?」

 

 

提督「本当は別に用事なんてなかったんだろ?分かってたさ、それくらい」

 

 

神通「な、何故私が嘘をついていると…」

 

 

提督「なんていうか…神通は嘘を吐くのが下手くそだな。ま、そんなにうまくても困るか」

 

提督「それともそれは俺が相手の時だけだったりするのか?それならそれで嬉しいな」

 

 

神通「では、どうして私の部屋に付いて来たのですか?わ…」

 

神通「…私を、罰する為ですか?」

 

 

提督「そんな事言ってないだろ。申し訳なく思うのもいいが、自罰的になりすぎるな」

 

 

神通「!すみま…」

 

 

提督「謝らなくていい。

何も悪い事なんてしてないだろ?」

 

 

神通「悪い事なら、しました。私情を優先し、上官の行動の阻害をするなど、場合によるならば、極刑も有り得る程の事です」

 

 

提督「……」ポカン

 

提督「…くく、自分の罪を理路整然と言うのかよ。それも、不問にって言ってるのにわざわざ自分で。ほんと、生真面目なのな」

 

 

提督「そうさな。上官の云々ってんなら、今はプライベートだから問題無し。そんで嘘ついた事だが…」

 

提督「…嘘だとわかっていてもここまで付いてきたのは、一体どういう意味だと思う?」

 

 

 

神通「…あ…」

 

 

提督「そう、合意って事さ。

これなら何も問題なんてないだろ」

 

 

神通「でも…そんな…良いのでしょうか、私…」

 

 

提督「そんなまた遠慮して…」

 

 

神通「確かに嬉しいんです!…でも、それでも、どうしても、つい」

 

 

提督「…そうだな。

じゃ、それこそこういうお題目はどうだ」

 

 

提督「『貴艦は不要な罪悪により私の楽しみの邪魔をしてくれた。よって、罰を与える』…キザすぎるかな」

 

 

神通「きゃっ…

…そうですね、少し、軟派すぎるように感じます。いつもなら、鍛え直すべきと思うくらい」

 

 

神通「…でも、今は少し、そうは思いません」

 

 

提督「…それなら良かった」

 

 

 

 

【二人はしばらく時間を過ごした…】

 

 

 



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夕立と、不知火の場合。

 

 

 

 

提督(まあそりゃそうだ。噂はずーっと流れっぱだしそもそも隠すつもりも0だし)

 

 

提督(ああ、いつかこんな日が来るだろうとは思っていたが…)

 

 

夕立「提督さ〜ん♪こっち向いてっぽーい!」

 

 

不知火「…司令官」

 

 

提督(二人同時に、こうなる日が来るとは思ってはいたが…)

 

提督「…勘弁してくれよ、ドッグセラピーにゃ過剰過ぎるぞ…」ワシャワシャ

 

 

夕立「ぽい?」

 

 

不知火「誰が犬ですか。犬のように扱うのはやめてください」

 

 

提督「え、いいじゃん犬。可愛いし」

 

 

不知火「そういう問題ではありません。

…はぁ、司令官がそう言うのであれば仕方がないのかもしれませんが」

 

 

提督(そういう忠実な所が犬っぽいっつったらまた怒られるかな…)

 

 

提督「…夕立は否定しなくていいのか?」

 

 

夕立「ん?んー…いいっぽい?」

 

 

提督「いいのか」

 

 

夕立「うん!それで提督さんと遊べるならそれでいいっぽい!」

 

 

提督「夕立は可愛いなぁ!」ワシャワシャ

 

 

夕立「あはは!くすぐったいっぽい〜!」

 

 

不知火「……」

 

 

不知火「…離れなさい。司令官が窮屈に思っているでしょう」

 

 

夕立「ん、ごめんなさいっぽい提督さん。迷惑だった?」

 

 

提督「いやそんな事ないぞ。むしろもっと来てもらっていい。いつだってウェルカムだ」

 

 

夕立「お言葉に甘えるっぽい♪」

 

 

提督「はははこやつめ!」ワシャシャシャ

 

 

不知火「……〜〜〜ッ」

 

 

提督「ほら、不知火もいいんだぞ?

いいのか?こっちに来なくて」

 

 

不知火「!…結構です!」

 

 

提督「そうか。ならいいけど」

 

 

夕立「…提督さん」

 

 

提督「ん?」

 

 

夕立「夕立、提督さんの事は大大大好きだけど、いじわるな時の提督さんは、ちょっと嫌いっぽい」

 

 

提督「く、あはは。ごめんごめん、そうだな。でも今回は意地悪ってより普通に俺もちょっと困ってるんだよ」

 

 

夕立「困ってる、ぽい?」

 

 

提督「ああ。ホントのとこ意地悪もちょっとあるんだけどな」

 

提督「…不知火はどうしても恥ずかしいんだろう。俺の前で甘えるのも、特にまた夕立がいると…」

 

 

不知火「!」

 

 

夕立「そうなの?」

 

 

不知火「…」///

 

 

提督(…こういう時こそボタンの使いどころかな。それじゃあ…)

 

 

夕立「!」ピコーン

 

夕立「いい案、思いついたっぽい!」

 

 

提督「うお、どうしたどうした。案?」

 

 

夕立「不知火にとって恥ずかしい事が、恥ずかしくならなくなる事をすればいいっぽい?」

 

 

提督「…?どういう…ッ!」

 

 

不知火「なっ…!」

 

 

 

 

【夕立、マウス・トゥ・マウス】

 

 

 

 

夕立「んー…むっ、ぷはぁ」

 

 

提督「げほっ!い、息が…」

 

 

夕立「もう、そうやって雰囲気がない事言わないでほしいっぽい?」

 

 

提督「いやあ、だって急にやってきたもんだから苦しくって…」

 

 

提督「…成る程?こうして、お前が恥ずかしい事をすれば、不知火がこれからやろうとする事も抵抗がなくなるだろうって事か」

 

 

夕立「ふふーん、その通りっぽい!」

 

 

提督「…嘘こけ、お前キスしたかっただけだろ?」

 

 

夕立「えへ、ばれた?」

 

 

提督「あはは、素直でよろしい。

…さて。どうする不知火?」

 

 

不知火「…し、しかし…不知火は、その…」

 

 

提督「ああ、まあ無理強いは勿論しないし、夕立もあくまで善意で言ってくれてるからな。無茶はしなくていいんだが…」

 

 

不知火「……ッ!」

 

 

提督(おっと早歩きで近づいてきて俺に手を伸ばして…!?)

 

提督「うわ、わ!何するんだ!」

 

 

不知火「…あのスイッチを…!」ゴソゴソ

 

 

提督「へ!?あのボタンが欲しいのか!?出すからやめろ!く、くすぐってえ!」

 

 

夕立「わあ、大胆っぽい」

 

 

不知火「……?」

 

 

 

【衣服をまさぐる状態に在り】

 

 

 

不知火「……」

 

 

提督「……」

 

 

不知火「ひゃ、あ…」///

 

 

提督(おお、らしくない声)

 

 

不知火「す、すぐに離れます!」

 

 

提督「おっと逃がさん」ガシッ

 

 

夕立「ナイスハグっぽい」

 

 

不知火「なっ、離っ…

…さなくても…いいです…」

 

 

提督「おお、そうか。

まあ、色々と予想外だったがヨシとしよう」

 

提督(たぶん、恥ずかしさを誤魔化す為にあのボタンを自分に向けて押そうと思ったんだろうが…結果オーライか)

 

 

提督「よしよし、よく頑張ったな」

 

 

不知火「…ありがとうございます」プイッ

 

 

提督「はは、今更顔隠しても無駄だぞ。真っ赤っかなのはもう見てるから」

 

 

不知火「いえ、その…見てしまうと、タガが外れてしまいそうで…」

 

 

提督「?…あ、着崩れたまんまだった」

 

 

不知火「……」///

 

不知火「…か、重ね重ね申し訳ありません…」

 

 

提督「いや、まあ減るもんでもないし。

なあ?夕だ…」

 

 

夕立「……」

 

 

提督「…夕立ー。ひょっとして、拗ねてんのか。不知火ばかり気にしてたから」

 

 

夕立「…ぽい」

 

 

提督「いや違うな、当てよう。

さっき自分は散々甘えたから我慢しなきゃと思ってるんだろ?」

 

 

夕立「!なんでわかったっぽい!?」

 

 

提督「お前ら本当に可愛いなぁ…」ホッコリ

 

 

不知火「…し、司令官」

 

 

提督「おう、二人ともおいで。

どっちも好きなだけ甘e」

 

 

夕立「ぽーい!」

 

 

提督「うわっと!

…っはは、元気いっぱいだな!」

 

 

不知火「…」ギュッ

 

 

提督「…こっちもな!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

提督「…うーん、きっかけとして使えたのなら、まだいい部類なんだろうか」

 

 

明石「ああ…また使えなかったんですか?」

 

 

提督「そうなんだ。なんていうか、噂の浸透と共に皆が大分積極的になっちゃって来てな。それが悪い事とは言わない…というかむしろ役得なんだけど、このボタンを使いたい側からすると」

 

 

明石「少し、使いづらいと?」

 

 

提督「ていうか単に必要じゃない時が多い」

 

 

明石「うーん…難しい問題ですね。

それこそ、そういった状態でも態度を崩さない娘たちをって所なんでしょうが」

 

 

提督「…明石、もっかい押されてみない?」

 

 

明石「な!や、やですよ!もう二度とごめんです!」

 

 

 

 



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龍驤の場合、Mk2。

 

 

 

 

提督「『拝啓…』いや、流石に硬すぎるかな」

 

 

明石「?何を書いてるんですか?

重要な書類って感じでも無いようですが」

 

 

提督「ああ、手紙を書いてるんだ。場当たり的に声かけるより、こうやって呼び出そうかと思ってな」

 

 

明石「へー…面白そー…」

 

 

提督「心底興味無さそうな…まあいいや。

下手に仰々しい文だと、なんか機密文書とかと勘違いされそうだし、どう書こうかビミョーに迷ってるんだよな」

 

 

明石「ああ、そうですね。…その手紙は誰に書いてるんですか?」

 

 

提督「ん゛…んーと、とりあえず内緒」

 

 

明石「おやおや、何ですか今の声。なにか隠しているんじゃないんですか?ほらほら、隠し事は身体に悪いですよ?」

 

 

提督「こ、ここぞとばかりに元気になりやがって!

…龍驤だよ。龍驤に向けた手紙を書いてんだ」

 

 

明石「龍驤さん…ですか?

確かに、随分最初の頃から居る人ですが、そこまでかしこまらなくても優しい人だし、大丈夫じゃあ…」

 

 

提督「あーー…まあ、そうだな。優しいんだけどさ…それは間違いないんだけど、いつもやりくるめられるから、今度こそは優位に立ちたくて仕方ないんだ」

 

 

明石「へー、やりくるめられる提督ですか…見てみたい」

 

 

提督「クソッ言うんじゃなかった!目を輝かせやがって!…よし、文面はこれでいいや!」

 

 

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−-

 

 

 

 

 

【倉庫裏にて】

 

 

 

 

提督「よお、龍驤。うぇーい」

 

 

龍驤「うぇーい…なんやねんこの挨拶」

 

 

提督「ノッてはくれるんだな」

 

 

龍驤「ん、まあね」

 

 

龍驤「…それで、なんなのキミぃ。

こんなモノ送ってきて」ヒラヒラ

 

 

提督「ああ、そうした方が雰囲気出ると思ってな。変だったかね。…お前ベンチ座らないの?」

 

 

龍驤「座らん。『倉庫裏ニテオマチイタス、司令官ヨリ』…ラブレターかと思ったわ」

 

 

提督「んじゃ俺だけ座るか。…というか、お前はそんなのに釣られるようなタマじゃないだろうよ」

 

 

龍驤「…」

 

龍驤「まあ、ええわ。それじゃあ何で呼んだんや?まさかウチをあの悪名高ーい、くだんのアレの餌食にするってワケやないやろ?」

 

 

提督「ぐっ」

 

 

龍驤「…図星かい。

ほんと、アホらしいわ…」

 

 

龍驤「…ほんのちょっぴりでも期待したウチがアホみたいやないか」

 

 

提督「いや、ほんとすいません」

 

 

龍驤「なんや似合わんな。司令官の事だからてっきり開き直るかと思ったけど」

 

 

提督「俺を何だと…

…いやいつもならそうしてただろうなぁ確かに」

 

 

龍驤「ぷっ、あはは!認めるんかい!」

 

龍驤「…♪」

 

 

 

龍驤「よし。それ、やってもええで」

 

 

提督「え、マジで。

てっきり絶対断られると思ってたんだけど」

 

 

龍驤「そっちの方がよかった?」

 

 

提督「いやいや、願ったり叶ったりだ。

そんじゃあ遠慮なく」

 

 

 

ポチッ

 

 

 

龍驤「…ふっふーん。これで、司令官をめちゃくちゃにする大義名分が出来た訳やな」

 

 

提督「えっ何怖い事言ってんの。

…というか大分強めにかけたのに、なんつーかいつもと変わらないな」

 

 

龍驤「ん?だってそれ、そもそもが甘えたいーって娘には関係ないんやろ」

 

 

提督「…それって」

 

 

龍驤「ふふ。何かウチが企んで、そのボタンを押すのを許可したと思ったやろ?この朴念仁」

 

 

提督「いや、何も考えてなかった」

 

 

龍驤「あは、はは!ほんっとキミおもろいなぁ!

あ、膝借りるわ」ボスンッ

 

 

提督「うおっと、事後承諾やめろ。

…うーん、おm」

 

 

龍驤「何か言ったか」

 

 

提督「言ってやせん!!」

 

 

龍驤「あはは、その殊勝な態度に免じて一発で許したるわ」ペチン

 

 

提督「いてて、命拾いしたな。…めちゃくちゃにされるってのもこれで終えたって事でいいか?」

 

 

龍驤「うん?ああ、そういえばさっき言ってた?じょーだんやて、あんなん。真面目にしちゃって可愛いわ」

 

 

提督「ぐ…だって、やりかねないだろ」

 

 

龍驤「む、確かにそうやな」

 

 

龍驤「…くふふ。

キミ、よく見ると案外カワイイ顔してるな」

 

 

提督「何処が?自分で言うのもなんだが、憎たらしさ百パーだぞ?」

 

 

龍驤「あはは、本当に自分で言うことやないわ!まあ、あばたもえくぼって言うやん?それとも、惚れた弱みって方がいい?」

 

 

提督「…あー、じゃあ前者」

 

 

龍驤「…ね。『流石に近いわ!』とか、『離れろ!』とか。そういうこと、言わんの?」

 

 

提督「どうせ言っても天邪鬼さんは離れないだろ?」

 

 

龍驤「…ふうん?

天邪鬼はどっちやろうねぇ」

 

 

提督「何を…んっ…むっ…」

 

 

龍驤「…っ……ぷはぁ…。

嘘つきな口には、『こう』や」

 

 

提督「…嘘なんて…

…ああ待った待った!言う、言うから!」

 

 

提督「…離れろ、とか言わないのは、俺が個人的に離れて欲しくないからです。そのままで居てください。…これでいいか?」

 

 

龍驤「…くくっ♪顔、真っ赤っ赤や」

 

 

提督「…うるせぇ、お前もな」

 

 

龍驤「ウチはいいんや、ウチは。

…うう、ただ流石に冷えてきたな。戻ろ」

 

 

ピョン

 

 

 

提督「あー…そうだな」

 

 

龍驤「…そんな物寂しそうな顔せんでも、中で『続き』すればいいでしょ?」

 

 

提督「えっ、ああ…

…そんな顔、してた?」

 

 

龍驤「あほ、カマかけや。

でも、思ってくれてたんやな。嬉しいわ」

 

 

提督「……〜〜〜ッ…」

 

提督「ほんま、かなわんわ…」

 

 

龍驤「あ、セリフ取られた」

 

 

 



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