なんでフェストゥムはテラにいるんですか? (野菜大好き丸)
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1章
第1話 誕生 ~てんせい~


なんで1作品書いていくのにも大変なのにこんな苦行を始めたんですかね?

作者です。アークナイツと蒼穹のファッ!?フナーのクロスオーバー作品でフェストゥムに転生したオリ主の話です。

よろしければどうぞご覧ください。


それと蒼穹のファフナーは名作だから淫夢で汚してはいけない(ブーメラン)

今ならようつべでファフナーのアニメが期間限定無料配信してるから、興味を持った兄貴姉貴たちは、見よう!(露骨な宣伝)


 唐突なメタ発言だが画面の君たちは転生といったものを知っているだろうか。そう、死んだら別の世界、あるいは以前とは別の生物となって生を受けるという、ファンタジー好きな人間にとっては憧れである非科学的現象のことだ。

 

 まぁそんな俺も最初はそんなことあればいいな~とありえない夢程度に思っていたぐらいな感じで特に気にも留めていなかったんだが…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (………………えっ?)

 

 

 

 

 目が覚めると見知らぬ荒野に放り出されていた。周りは草木があまり無く、代わりに見たことのない黒く半透明な結晶が大小様々な大きさで散らばっていた。

 おっかしいな~、確か昨日の夜、アニメを一気見しようと夜更かしした結果、無理しすぎて眠気のあまり途中からベットインしたはずなんだけどな~。しかも視点が妙に高い…………、というか高すぎないかっ!? ざっと12階ぐらいのビルやマンションから地上を見下ろしたぐらいに高いぞ!? 

 そんなあまりの高さに慌てふためいた俺は自身の体を見始めた。

 

 

 

 

 

 

 (ファッ!?)

 

 

 

 

 それを見た俺は、驚きのあまり汚い奇声を心の中で上げるも、それ以上の言葉が続かずそのまま絶句してしまった。

 体は人間のような温かさが備わった肌ではなく金色で眩しく煌めいている無機質な皮膚。まるでサイクロップス先輩のメタリックなボディのような光沢感があった。そして下半身が明らかに人間の足ではなく体全体が宙に浮いていた。

 普通ならこれだけで取り乱すものだが、俺にとってはリアルではないが何回も見たことがある姿であったからだ。

 

 

 

 

(ウッソだろお前! 俺フェストゥムになってんじゃねぇか! しかもスフィンクス型のA型種とか。見ろよコレぇ……この無残? な姿をよぉ!)

 

 

 

 

 まぁ色々とお察しの通り今俺の姿はアニメ『蒼穹のファフナー』に出てくる珪素生命体であるフェストゥムになっていたのであった。

 

 フェストゥムと言えば簡単に言うと全てを無に帰すやべー奴なのである。いきなり他の知的生命体に向けて「あなたはそこにいますか?」という質問を投げかけてくるが、「はい」なら同化してその生命体の存在を抹消する。「いいえ」ならその生命体を“あるはずのないものがある”と見做して存在を抹消するために攻撃を仕掛けて来る。

 

 そんな確定した死の宣告みたいなものに「はい、そうですか」と殺されるわけにもいかずに抵抗を試みるも、読心で考えが読み取られてこちらの攻撃は効かない、もしくは回避されるか。逆に相手は触れれば対象を即結晶に変えて同化をしてきたり、ワームスフィアで空間ごと対象を内部から捩じり切るという必殺級の能力を持っている。

 

 

 

 

 まぁフェストゥムを説明するにはいろいろと難しい所があったり複雑な部分もあったりするんだが、知りたい兄貴または姉貴たちがいたら至急ネットで調べてくれや(他力本願土方)

 

 

 

 

 ほんと何でこんな姿になったのかよくわからないが、そんなことよりも俺は今この状況は色々とまずいんではと最初に思った。

 

 まずこの見た目だ。前述のやべー能力を持つ以前に、今誰かに見つかれば有無を言わさずに敵と認識されて攻撃されそうな姿をしているんだ。まぁ見た目は綺麗で美しいから相手が見惚れているその隙を狙って攻撃される前に逃げるのも手だが、それはそれでこちらを抵抗してこない珍しい物として認識し、見世物やアクセサリーなどの素材、挙句には研究材料としてこちらを狩ろうとする奴らが来てしまう可能性が出てくるはず。てか絶対出る(確信)

 

 平和に生きてイきたいと考えている俺としてはそれは根本的な解決に繋がらない。

 つまるところもしこの世界で平和に暮らすとしたら、人間のような知的生命体と出会ってしまったら、現状やることは三つの選択肢。

 どうにかして彼らとコミュニケーションをとってこちらに敵意が無いことを伝えるか、見つかる前に彼らに近い姿を取って人の世に紛れ込むか、もしくは誰にも見られることなく姿を隠して某蛇のようにスニーキングミッションをする方法しか生き残る方法が無いわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……えっ? 元の世界や元の姿に戻りたくないかって? ぶっちゃけどっちだっていいんだよなぁ……。彼女とか居るわけでもないし、一人っ子で両親もすでに他界してるから家族に縛られず普段は色んな趣味に手を出して明け暮れているだけだしなぁ。

 確かに急にこんな姿に変わって驚いたし、別にあっちの世界での未練は無くはないけど、現状できないことを考えるよりも、まずは生き残ることを考えたほうが良いしな。生きてりゃそのうちそういったことの解決方法も見つかるでしょ(慢心)

 

 それにせっかくフェストゥムになれたんだから思う存分にフェストゥムライフを満喫して、能力とかを色々と試したほうがいいってそれ一番言われてるから。しかも原作とは違って実質ノーリスクで成れたんだからやらなきゃ損だゾ。

 でもフェストゥムとは切っても切り離さない関係であるミールがあるのかどうかよくわかっていないんだよなぁ……。特に声が聞こえるとか無いし、もしかしたら原作の来主みたいにミールの存在無しで生まれた可能性もある。まぁこれはおいおい考えていくしかないか。

 

 

 

 

 

 

 話が脱線したが、まずい状況であることには変わりなく、次の理由は衣・食・住だ。だがおそらく原作通りなら食は特に食わなくても生命維持ができる、もしくは適当に其処らのものを同化することで生き永らえることが可能なはずだからそこは生きる上では問題ない。人の生活に紛れたりするなどで必要になるなら後で味覚があるか確認しないといけないけど。

 

 衣の方はまぁ、人間体になれるかまだ分からんけどもしなれたら多分最初は王道を往く、裸になってるはずだからね、しょうがないね。なんか適当な布のぼろきれを腰に巻いたりとか最悪葉っぱパンツ一丁でどうにかするしかない。

 

 最後に住だが、生きることなら今のままでも問題ない。こいつら宇宙から飛来してきたから無酸素な環境や極寒な場所といった過酷な環境でも多少は大丈夫。でも感覚は人間だった時と同じように感じてるから今のこの状態は素っ裸で外にいるときと同じ感じだ。めっちゃスース―するってはっきりわかんだね。

 流石に今後どう動こうにも今のこの姿のままでここにずっといるわけにもいかないから、何とか人間に擬態できるまでは人目のつかないところを探してそこに潜み、擬態できたら色々と転々してみるのも悪くないかもな。この世界の暮らしというのも気にはなるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえずまずは移動しながら身を潜められる場所を探したり、自身の体でどんなことが出来るのか試したりするか。

 

 それじゃあ未知の世界へ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イグゾー! デッデッデデデデ! カーンwデデデデ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 突然テラの世界へとやって来たフェストゥム。訳も分からないまま意味不明な状況に置かれながらも希望の活路を拓くためにまず行動! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近くに落ちてあった源石を同化したり、近くにあった湖を鏡代わりにして自身の姿形が変化できるかの確認。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち捨てられていたぼろきれの布を回収したり、そして襲来する大量のオリジムシを全部同化していただきますしたり、

 

 

 

 

 

 なんやかんやあって自身のことを確かめていると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「君は誰? どこから来たの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青紫色の毛並みをしたモフモフで巨大な尻尾を携えた何者かに自身の姿を見られてしまった…………

 

 

 

 

   

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第2話、遭逢 ~うっかり~

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 




一体何ヴァンスちゃんと遭遇したんだ・・・・。


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第2話 遭逢 ~うっかり~

じゃけん宣告通り続きを書きましょうね~

作者です。なんかこっちの方を書いてるけどオーズの方もちゃんと出しますよ~出す出す。

まぁどちらも構想はだいたいあるけどちゃんと思いついたときにメモしてないから詳細がすぐに忘れて書けないゾ。

それではご覧ください。


  

 

 

 

 

 

 ―何処(どこ)に、行けば……、世界と君が、生命(いのち)をやり直すために~♪ (デッドアライエンゴー!)―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっ? 何をしているかって? 歌を歌っているんですが何か? こんな未知な状況でも歌を歌うことで元気を出すっていう寸法ですよ。まぁ口で声を出して歌えないんで、声は出さず心の中で歌っているんですがね初見さん。

 やっぱ…………、angelaのファフナー曲は……、最高やな! 

 

 じゃけん画面の前の兄貴姉貴たちも是非曲を聞いて歌いましょうね~。俺も歌ったんだからさ(同調圧力)

 

 

「もしも~し? 僕の言葉が聞こえてる~?」

 

 ……歌を歌っている途中、なんか幻聴が聞こえるが気のせいに違いない。無視だ無視! 

 

 

 

 

 

 ―生きていた、証だ。記憶に刻め、向~かうは……、デッ、ド、アライエンゴー! ―

 

 ―き・み・と、ここに居る! ―

 

 

 

「う~ん? 言葉が通じていないのかなぁ……ってグレープさん? 彼に急に近寄っていったい何を……?」

 

 

 ―痛い(痛い)、痛い(痛い)、痛い……てあ痛たたたたた!? 痛い痛い痛い、本当に痛いっ!! 一体何が起こった!? 

 

 

 

 

「グレープさん!? 何やってるの!?」

 

 

 

 足元から急に噛まれたかのような痛みを感じて下を向くと、青紫色の毛並みで目を隠している狼さんに自身の足? の部分を思いっきり噛まれていた。しかも噛む力がとても強いのか口からゴリゴリと音を立てながら足を噛み続けていた。飼い主と思われる巨大なモフモフ尻尾が特徴的な狼耳の女性もペットの狼さんのこの行動を予測できなかったのかめっちゃ驚いている。

 

 

 

 ……てか、あかん! このままじゃあ俺の体が本当に“砕け散っていく、喰らい(砕け散っていく位)! ”になっちゃ^~う。というかアホなこと考えてないでまず狼さんを足から引きはがさないと(使命感)。

 

 

 狼さん(足?を噛むのを)やめちくり~。

 

 すいませ〜ん、フェストゥムですけど、(口を離すのは)ま〜だ時間かかりそうですかね~? 

 

 

 すると俺の願いが届いたのか、狼さんは急に俺の足から口を離し、俺の顔の部分に目を向けて短く吠えた。

 

 

「ワン!」(特別意訳:じゃあ歌を歌いながら話を聞いていない振りをしないで主人の言葉に耳を傾けろや泥人形)

 

 

 

 こいつ、直接脳内に……! というわけではなく、かといって狼に向けて読心能力を使ったわけでもなく、あの短く吠えた鳴き声でそんなことを言っている気がしただけであった。てか泥人形とか失礼だなお前。確かに原作で真壁紅音はフェストゥムの理解のために珪素生命体の彼らを土と解釈して、陶芸で彼らの理解を深めようと試みようとしていたからその表現は案外間違いではないけどさぁ……。

 

 てか飼い主さんもこの状況についてこれなくておろおろしたままじゃないか。

 

 

 …………うん、こんなこと言ってないでそろそろ現実逃避をやめるかぁ………………(諦観)

 

 今俺がこんな状況になったのには少し時を遡る必要があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから荒野を移動していた俺は色々なことをやってみてわかったことがあった。

 

 まずフェストゥムの力の一端である同化とワームスフィアは普通に行えた。

 試しに適当な場所でワームスフィアを一発かました結果、その空間にあった地面、草木、そしてあの黒い半透明な結晶までもが全て綺麗さっぱりと無くなった。しかも地面に特大のクレーターを残して。

 

 ……まぁうん、わかってた。こんなことが起きた以上、フェストゥムの能力は安易に使うものじゃないってわかったよ。こんなの人前に見せれるようなものじゃないって。

 

 ついでに同化現象もそこらの黒い岩だったり、なんか集団でこちらに襲い掛かって来た原生生物に試してみた結果、緑色の結晶になってすぐに同化できましたねぇ! 

 それと同化したことでなんか腹が満たされたというか、満足感が得られたからおそらく生命活動とかに使うエネルギーは同化して補えばいいことから、フェストゥムでの食事に関してはだいたい把握できたのは旨味だな。特にあの黒い結晶の岩は特にエネルギーがたくさんあってうん、おいしい! そういやさっきの原生生物にもなんかあの岩と同じようなものが体内に入っていたけど、あの岩ってもしかして生物にとって何かしらの影響を及ぼす奴なのかな? こわいな~、とづまりすとこ(棒読み)。

 

 あとさっきの原生生物で読心能力が通用するか試してみたけど、なんていうか奴ら、考えているというよりも…………本能のまま動いている感じで、ちゃんと能力が発動できたかというと、んにゃぴそう、よくわからなかったです(アンニュイ先輩並感)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな感じで能力を試したり、体を縮ませてみたり、発声練習をしてみたり、途中で道中の黒い岩に何故かかかってあった服みたいな布のぼろきれのようなものも回収して(その黒い岩も同化しました)進んでいった結果、その先に湖を発見しました。

 

 よーし早速この姿から上手く人に擬態できないか試してみるぞー! 体を2.3メートル近くまで縮めることはできたから大きさで目立つことはないけど、見た目は相変わらず奇抜なスフィンクスA型だし。

 それに道中発声練習してみたけど

 

 

「あめんぼあかいなアイウエオ」

 

 

 すらも言えずにただ

 

 

「あなたは、そこにいますか」

 

 

 しか言えなかったからな~。しかもCV:ゆかなのボイスで、ディアブロ型みたいなあの怖い感じじゃなくて初期のあの感じだったゾ。てかこれじゃあ会話もできんし、もし人型になれなかったらあかんこれじゃあ人混みに紛れ込めなくてスニーキングなフェストゥムライフが死ぬぅ! ライダー助けて(届かぬ思い)

 

 

 てなわけで擬態出来て欲しいからな~、頼むよ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1.14514時間後…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(擬態は)駄目みたいですね…………。頑張って体の形を変えてみた結果エウロス型に近い感じにはなるけど、人間の姿にはなれなかったゾ。ちなみに今はスフィンクス型の姿になっているゾ。

 

 

 やべぇよ……やべぇよ……。このまま誰かに見つかったら俺が考えた平穏な生活チャートが壊れちゃ^~う。やっぱ咄嗟に考えたオリチャーはダメだってはっきりわかんだね。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで考え事をしていると、何かこちらの向かって近づいてくる音がした。その音が聞こえる方向に頭を向けると、

 

(マ゚ッ!?)

 

 某レストランのペナルティを受けて精神的に追い詰められたかような声を上げながら俺が見たのは、巨大なモフモフしっぽを携え青紫色の毛並みをした狼耳の女性と彼女の傍らについている狼さんの姿だった。俺は自身の姿を人に見られたことで激しく動揺している中、女性は俺に向けて声を掛けてきた。

 

 

「君は誰? どこから来たの?」

 

 

 そしてその言葉を聞いた俺は……、

 

 

 

(よし、歌でも歌ってよう(現実逃避しよう))

 

 

 

 動揺のあまり、とんちんかんな発想へと至ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして冒頭のことが起き、今に至る。俺は今、器用ながらも地面に正座をして彼女たちの前に相対していた。

 

 

「ごめんね、グレープさんが急に噛みついてきて。痛かったでしょ? あっ、そう言えば自己紹介をしていなかったね。僕の名前はプロヴァンス、ごくありふれた天災の研究者だよ。こっちは僕のパートナーのグレープさん、よろしくね」

 

 

 律儀にも彼女_プロヴァンスはペットがしでかしたことを俺に謝っており、自分たちの自己紹介までしていたのであった。めっちゃええ娘やん、しかも僕っ娘とか本当にいたんだ(驚愕)。

 

 うん、変なことを考えていたけど原因はこっちにあるから彼女は謝らなくてもいいんだが、怪我もさっき自力で治したし。しかし言葉で伝えようにも自分は喋れないから意思疎通が難しい。読心もあくまで相手の心を読むだけだからテレパシーみたいに伝えることはできない。

 

 可能性がある方法としてクロッシングがあるけど、まずやり方が分からないし、触れるといったやり方に関して条件があればこちらが攻撃されかねない可能性もある。仮にやることが出来ても相手側にどんな影響が出るのか予測できないから使えないな。

 

 

 

 

 

 

 

 ……ボディランゲージ? そんなことしたら威嚇か攻撃とかと勘違いされて攻撃されるに決まっているだろ! いい加減にしろ! 

 そんなわけで彼女たちとの意思疎通にいい方法が思いつかず俺は腕を組みながらこの状況に頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

「う~ん、どうやら僕の言葉の意味は伝わっているようだけど……。彼が僕たちに何かを伝えようにも伝えられないって感じなのかなぁ? グレープさん、あの子が何を伝えたいかわかる?」

 

「…………」フルフルッ

 

 どうやら彼女たちにもこちらの意図が伝わっているようだが、残念ながらあちらさんもいい方法が思い浮かばないようだ。

 

 

 こうして二人? と一匹が悩んでいるその時、異変が起きた。

 

 

 

「!」

 

 

「んっ? どうしたのグレープさ…………ってうわ!?」

 

 

 突然彼女の相方であるグレープさんがいきなり彼女をその場から突き飛ばした。そんな光景に俺と彼女は驚くも次の瞬間、グレープさんの背に(ボルト)が深々と突き刺さってた。

 

 

「グレープさん!? 大丈夫!?」

 

 

(攻撃!? 一体どこから来たんだ!?)

 

 

 プロヴァンスはグレープさんの容態を心配し、俺は突然の攻撃に周囲を見渡した。すると何かが放り投げたかのようにこちらへと向かってきており、それに気づいた俺は掴み取ろうと手を伸ばすが、それは俺が掴むよりも先に突然破裂して、黄色い煙を噴出し俺たちの周りに撒き散らした。

 

 

「これは…………ぐう゛っ!?」

 

 

 プロヴァンスが周囲に撒かれたガスについて意識を向けた瞬間、突然彼女の体が動かなくなりその場へと倒れ伏した。そして自分も動けなくなるほどではないが、なんか体がピリピリするような感覚に襲われた。

 

 

 

 ……いや、おそらくこの煙幕は麻痺毒が成分の毒ガスなのだろう。彼女たちの様子を見てみると眠っているわけでもなく体全体が痺れているような状態であり、自身にも襲っているこの感覚から察した結果わかったことだ。

 しかしなぜ? と思ったその時に、ゆっくりとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。それも一人ではなく複数人もだ。

 

 

「お~こりゃ相当いい上物がかかったぜ~♪」

 

 

 煙幕が晴れたその際には、粗末な装備を身に纏い仮面や不揃いに伸ばされた髪や髭で顔を隠して下卑た笑みが浮かぶような声を出しながら近寄ってくる男の集団であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideプロヴァンス

 

 

 それは僕とグレープさんが任務を終えた直後のことだった。僕たちが天災トランスポーターとしてロドスに入ってから天災の記録をまとめる任務を遂行していて、そんな任務の帰り道に荒野で奇妙なものを見かけた。

 

 

「ん? なんだろうあれ?」

 

 

 それは遠くから見ていたので姿形は良くわからなかったが、金色の光が遠くでもキラキラと煌めいていた。そしてそれは荒野の先にある森の中へと向かっていった。

 

 

「……ねぇグレープさん? ちょっと寄り道してみる?」

 

「」コクッ

 

 

 僕はグレープさんの了承を得て、光る何かを調査してみることにしたんだ。幸い先ほどの任務で節約していたおかげで物資もそんなに消費していなかったし、この先の森には大きな湖があっておそらくそこに向かったんだろうと僕の勘がそう感じ取った。それくらいなら寄り道程度の距離だから問題ないし、湖にいなかったらすぐに帰還すれば問題ない。

 

 そうして僕たちは光る何かを追って森の中に入り、目的の湖へと向かっていったところ、予想通り光る何かは湖にいた。そしてその姿は荒野で見かけた時よりも鮮明ではっきりと見えた。

 

 

「……綺麗」

 

 

 ふと自分で気づかないうちに呟いた言葉通り、それは黄金色に輝く神秘的な姿をしていた。大きさは2、3メートルほどの巨躯で、上半身は人の姿をしていて背中には翼のようなオブジェクトが浮いており、それはペンギン急便に所属しているサンクタの赤い髪の毛の娘が持つ羽と比べ神々しく感じた。下半身は足が無く代わりに蛇のような細長い胴体が存在していて、腰回りには神官の僧衣みたいな前掛けを身に着けていた。

 

 

 それに見とれていると突然それは急に姿を変えてきた。何度も体の形を変化させて最終的には人の形に近い姿になったが、すぐに最初の姿へと戻った。そしてそれは湖のほとりで何かに悩んでいるかのように考え込み始めた。

 

 

 そんな彼を見て僕は、彼に接触してみようと試みた。グレープさんには心配されたが、先ほどの彼の行動が僕にはどうも人間臭く感じており、せっかくだから調査してみようと意気込み彼に近づいた。自分に近づく足音に気付いたのか、彼はこちらに顔を向けてきた。そして僕は彼に声を掛けてみた。

 

 

「君は誰? どこから来たの?」

 

 

 その言葉に反応しているのかどうかはわからなかったが、しばらくして彼は湖の方へと顔を向け始めた。

 

 

 ……なんか無視されたかのようで悔しかったのでひたすら彼に声を掛けてみた。それでも彼は全く反応を示さなかったので言葉が通じていないかなぁと思った。その時グレープさんが彼の方へと急に近づいてきて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の足? と思われる部分に思いっきり噛みついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グレープさん!? 何やってるの!?」

 

 

 普段はこんなことをしないパートナーの突然な行動に驚き、焦った。このまま彼に反撃されるのではと思っていたのだが、彼はグレープさんに必死な眼差しで何かを訴えているような感じがしていて、それを感じ取ったのかグレープさんは彼の足? から口を離し、彼に向けて一吠えした。

 正直彼と意思疎通が出来ていていることから、グレープさんに羨ましさを感じつつも、実のところ彼は自分が言っていた言葉の意味を理解していたのでは? と思い先ほど無視をしていた彼に憤りを感じていた。

 

 それでもグレープさんがやったことは悪いことなので僕は彼に謝罪をした。すると彼は器用に極東に伝わる座り方、確か正座? という座り方をし僕たちの方へと対面していた。そこから感じられる彼の態度は先ほどに対する怒りではなく、僕たちに対して何か申し訳なさがいっぱいの様子だった。

 

 おそらくだけど彼は僕たちに何かを伝えたくても伝えられないことにもどかしさを感じているのかもしれない。だとしたら先程の無視も僕たちに対して下手な対応をしないための心遣いだったかもしれない。現にグレープさんに彼と意思疎通が出来る? と尋ねたけど首を横に振った。さっきのはたまたま上手く行っただけで本当は正確には伝わっていないのかもしれない。

 

 そうして彼のコミュニケーションの取り方について考えていた次の瞬間、グレープさんが突然僕を突き飛ばした。何が起こったのかわからずグレープさんの方に視線を向けると、彼の背中に(ボルト)が深々と突き刺さってた。

 

「グレープさん!? 大丈夫!?」

 

 僕はすぐさまグレープさんの元へ駆け寄ったけど、それは悪手だった。先ほどの攻撃から間髪を入れずにどこからか僕たちの方へと何かを投げつけてきて、黄色の煙幕を僕たちの周りに撒き散らした。

 

 

「これは…………ぐう゛っ!?」

 

 

 そしてそれを嗅いだ瞬間、全身が痺れて体が動けなくなり、そのまま地面へと倒れ伏した。

 

 

 やられた、麻痺毒だ。彼に意識を集中していたことで周囲の警戒がおろそかになっていたんだ。

 

 そんな後悔の念と共にこちらの方へと向かってくる複数人の足音と、

 

 

「お~こりゃ相当いい上物がかかったぜ~♪」

 

 

 それは粗末な装備を身に纏い、仮面や不揃いに伸びた髪や髭で顔を隠しながら下卑た笑みを浮かべてるような声を上げて近寄ってくる男の集団だった。でも僕にはその姿から彼らが何者かはわかっていた。

 

「……!? その恰好……、もしかしてレユニオン!? どうしてこんなところに!?」

 

 僕は彼らが何故ここにいるのか理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 狼の特徴を持つループスの女性、プロヴァンスとうっかり遭遇してしまったフェストゥム。彼らの対話の中、レユニオンの卑劣な行為が彼らに襲い掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麻痺毒に動けないプロヴァンスとグレープさんの様子に男たちはぐへへと彼らの元へとにじり寄り、彼女はこの先予測できる未来に涙を流し、グレープさんは動けない中でも敵に向けて必死に威嚇をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、普通に麻痺毒を同化して治療していたフェストゥムは男たちの前に立ちはだかり宣告を下す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、そこにいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第3話、嫌忌 ~へんりん~

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




(レユニオン達は)もう助からないゾ❤




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第3話 嫌忌 ~へんりん~

レユニオン「(前回の後書きを見て)馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前(天下無双)」


 前回のあらすじ。なんだこの汚っさん(たち)! に襲撃された、以上。  

 

 

 ……ってかそんなこと言っている場合じゃねぇな。男たちがこちらに近づいてくる中、プロヴァンスはそんな彼らの姿を見て驚いていたゾ。知り合いか? 

 

 

 

「……!? その恰好……、もしかしてレユニオン!? どうしてこんなところに!?」

 

 

「ん~? そこのお嬢ちゃんは俺たちのことを知ってんのか~?」

 

 

「まぁそりゃ当然だよな! あいつは有名な天災トランスポーターで俺たちと同じ感染者だし、知らないほうがおかしい!」

 

 

 どうやら彼らはレユニオンという団体らしい。だが彼らの態度からこちらに対して友好的な感じが見当たらないな。まるでこちらを動けない上等な獲物としか見ていないかのように。

 

 

 それにしても感染者やら天災トランスポーターとやら聞いたことのない単語ばかりでポッチャマ……な展開だゾ(池沼)

 

 

 

「突然僕たちを襲って来て、何が目的なの!?」

 

 

「目的~? んなもん決まっているじゃねぇか。ロドスに最近加入したお前を俺たちは偶然見かけたから丁度良いと思って、お前を捕まえてそれを手土産に上層部に取り入ろうってんだ!」

 

 

「最近お前らロドスに邪魔されたおかげでこっちは上から見限られてんだよ」

 

 

「何でここらで成果を上げて待遇を良くしてもらいたいわけだ。ついでに換金用としてそこの狼と……ってかあの金色はなんだ?」

 

 

 

 彼女の質問に対してまたわからない単語が出てくるも、まるで勝ち誇ったかのように俺たちを奇襲してきた目的を喋っていた。そんな余裕をこいてて大丈夫なですかね? 

 そして喋ってる途中、集団の一人が俺に気付いて指を指してきた。それを見た他の奴らも俺の姿を見て全員驚いていた。てか気づいてなかったのか、お前らの目は節穴か? 

 

 

 

「さぁ、新種の生物じゃねぇの? 全然動いていないからさっきの麻痺毒が効いているんでしょうよ」

 

 

「それもそうか、それじゃあこいつも見世物や研究材料として売っぱらちまうか」

 

 

「頭―! あの女も上に引き渡す前に俺達で存分に()()()()()()()

 

 

「いいなそれ! 俺ら男所帯だから最近溜まってるんだよなぁ……、お前ら加減を間違えて壊すなよ?」

 

 

「それ頭が言うっすかー?」

 

 

「!? やめて……、来ないでっ!!」

 

 

「グルルルルルルルゥゥゥ!!」

 

 

 

 ……しかも俺とグレープさんを売っぱらおうと考えてるし、プロヴァンスにも嫌らしい目線を向けてナニをしてくる気満々だし。そんな彼らを見た彼女はこれから自分に待ち受ける悲惨な出来事に怯えていて、グレープさんも不意打ちの矢と麻痺毒のせいで何もできない自分に悔しさを滲ませながら奴らに向けて歯を食いしばって唸り声をあげてる。

 

 …………それとギャハハと笑いながら獲らぬ狸の皮算用をしている彼らには悪いのだが、さっきの麻痺毒はもう同化して無効化したわ。今なら体中にピリピリとした感じが無いし、ここから逃げることも可能だ。

 

 ぶっちゃけ俺はこのことに首を突っ込む意味も必要もない。生きるなら俺だけそのままトンズラすればいい。ひどいことを言えば、彼女たちは俺に関わってこなければこんなことにはならずに済んだ。俺はそれに巻き込まれただけで、彼女たちを助ける義理は無いんだが…………、

 

 

 

(正直あいつらから心を読まなくても不快でドロドロとした嫌な心情(モノ)を感じる……。というかあんないい娘に酷いことをするとか、人間の屑かこの野郎…………(AKYS))

 

 

 

 

 じゃけんさっさとこいつらを八つ裂きにしてあげましょうね~。さぁ、汚っさん解体ショーの始まりや! 

 

 というわけでよっこらっせといった感じで奴らの前に立ちはだかりましょう。

 この時彼女たちにこれから起こることを見せないよう彼女たちの前に立ったほうが紳士的で彼女らの好感度が上がりますが、今回は別の目的があるのと、彼女たちの好感度は別に必要ないのでそんなガバ行為はフヨウラ! (RTA殿下並感)

 

 

 

「「「「「「「……はっ?」」」」」」」

 

 

 

「……えっ?」

 

 

 

 なんか俺が平然と動けていることに全員驚いているようですが気にせず、茫然としていて隙だらけな彼らに向けて堂々と死刑宣告を放ちましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは、そこにいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くぅ~疲、これにて汚っさん殲滅完了です。

 

 さてと、途中RTAな感じになったけど、まぁさっきやってたことは例の問いかけから適当に一人同化させることで彼らへの見せしめを始めて、その後恐怖に怯えた奴らをじっくりと痛めつけながらじわじわと一人ずつ戦闘不能にしてやっただけなんだよな。体を結晶にして動けなくしてやったり、手を触手に変えて逃げ出す奴らを串刺しにしていったりと。

 

 

 そして最後は戦利品として全員の身ぐるみを剥いでおいてから奴らをどこか一か所にまとめて、ワームスフィアで空間ごと消し去ってやりました。う~ん、我ながらサイコパス! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………うん、ごめん。初めて人を殺したけど正直気分は糞みたいで良くないわ。あんな風に気軽に言ってたけど、もう俺の精神はボドボドダ(0M0)! 

 

 でもまだやることがあるんで倒れるわけにはいきませんぞ。

 

 

 

 

 

 というわけで麻痺して動けないプロヴァンスとグレープさんの元へと近づくよ~。

 

 …………うん、まぁ、あの戦闘とも言えない光景をやったから俺に対して恐怖の表情を浮かべながらめっちゃこちらを警戒してますわ、一応計画通りですけど。

 でもこの後これをやらないと俺の心がすっきりしないから彼らには悪いけど、今から俺がやることに対して暴れるなよ……暴れるな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして俺は彼らの全身を触手で巻き付け始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えっ? 何言ってるのかよくわからないって? それと卑猥だって? 

 

 

 うるせぇ! 

 こっちは一人と1匹の体に回っている麻痺毒を同化して取り除きを行っとるんじゃい! 確かに絵面はノンケとケモナー歓喜な状態になっているけどさぁ……、こうしないと治療できないでしょ…………ってちょっとグレープさん!? (触手を噛むのは)まずいですよ! 

 

 

 あー痛い、痛い、痛い! 

 

 

(体から血? みたいのが出て)痛いんだよおおおお! 

 

 

 痛いですね……これは痛い……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、アクシデントがありましたがどうにかして彼らの体から麻痺毒の除去に成功しました。ついでにプロヴァンスの体の中にもなぜかあの黒い岩と同じようなものがあったんでついでに取り除いたゾ。まぁ彼女の体に変化が起きていないので大丈夫だろう(慢心)。

 

 あとグレープさんの背中に刺さっていた矢も同化で取り込んで、背中の傷も自分に肩代わりさせることで治しておきましたよ~。

 

 ところで先ほど彼らが自分に怯えても問題なしと言ってたが、その理由は今後彼らが俺のフェストゥムライフに関わってこないようにするための作戦なのだ。

 それはなぜかって? まず先ほどの状況でこのまま俺が逃げていたら彼女たちはガメオベラな目にあい、おそらく奴らは俺を追って執拗に探そうとする。それじゃあ俺は平穏に過ごせない、かといって普通に助けたら今度は彼女たちが俺に関わってくるからそれも駄目だ。

 

 ならば最終手段、敵を殲滅させつつ彼女たちに恐怖を与えることで自身の脅威を教えて、二度と俺と関わりたくないようにすればいいことだぁ!! 

 先ほどの治療は恐怖を与えながらも彼女が先ほどの会話で言ってたロドスの組織の元へとちゃんと帰還させることで怪しまれないようにするための必要な一手だ。これなら彼女は俺のことについて恐怖のあまり喋らないはずだし、自身の情報も洩れないから完璧だな(ガバガバ理論)。

 

 

 えっ? 助けたことで逆に彼らが俺と関わってくるって? 

 

 まっさか~、だってあんなに俺のことを怖がっていたし、こちらを見ているけど今も恐怖のあまり茫然としているから大丈夫でしょ。

 

 

 

 

 ……まぁ覚悟はしていたけれど、せっかく仲良くなれそうな人からあんな怯えた目で見られるのは心が抉られてきますね。やはりフェストゥムと人類は分かり合えない運命ですかねクォレヴァ…………

 

 

 

 

 

 さて、いつまでもここにいたところで自分の心が辛くなりますからね。じゃけん用が済んだら先ほど剥ぎ取った戦利品を持ってとっととここから退散しまs「待って!」ファッ!? 

 

 

 

 突然後ろから呼び止められる声が聞こえ、心の中で汚い奇声を発しながら後ろを振り返るとプロヴァンスとグレープさんがこちらをじっと見つめていた。あれ? 何で君たち怯えていないの? てか彼らから何か強い決意が感じられるんですけど

 

 

 待って、これじゃあチャートが壊れちゃ^~う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideプロヴァンス

 

 

「ひ、ひいいいいいい!!? いやだ、助けてくれぇ!!!」

 

 

 

 レユニオンの一人が全身を緑色の結晶に覆われていき、体の全てが覆われた次の瞬間、バラバラに、跡形もなく結晶が砕け散った。

 

 

 僕は、いや、ここにいる全員はその光景から一体何が起きたんだと、先ほど言葉を発しただけの彼に底知れない恐怖を感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然のレユニオンの奇襲に僕たちは麻痺毒にやられて動けなくなっていた。

 奴らの目的は下劣でたかが知れていたけど、この状況は非常にまずい。何しろ全員麻痺毒で動けなくなっている。これでは逃げることもままならない。

 しかもグレープさんの背中の傷はとても深く、もしかしたら骨格や内臓にも深刻なダメージがあるのかもしれない。すぐに医療オペレーターに見せないと後遺症が出てしまうほどの予断を許さない状況だった。

 

 

 そんな僕たちをを奴らはまるで物みたいに見定めていて…………、えっ? 僕を辱めようとする気なの!? 嫌だっ!? こんな奴らに初めてを奪われたくない! 誰か、誰か助けて!! 

 

 

 

 そんな僕の悲痛な心の叫びを感じ取ったのかはわからないけど、彼らが僕たちに近づいてくる前に、

 

 

「……えっ?」

 

 

 僕は目の前で起きた信じられない光景に素っ頓狂な声を上げた。なぜなら、麻痺毒で動けないはずの彼が奴らの前へと立ちはだかり、

 

 

 

 

 

「あなたは、そこにいますか?」

 

 

 

 

 

 その問いかけを皮切りに、僕らにとっては救い、彼らにとっては悪夢のような時間が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、撃てぇぇぇ! 奴は一人だ。数でかかればっ……ギャァァ!?」

 

「こ、こんなところで死んでたまるか、俺は逃げるっ…………グハァ!?」

 

「アアアアアアアア!!? 俺の足がぁぁぁ!?」

 

「なんだこれ……、やめろ! 俺の心に入ってくるなぁぁ!?」

 

 

 それは余りにも一方的な蹂躙劇だった。最初の一人の犠牲によってレユニオンたちはクロスボウや拳銃、アーツに剣などで彼に攻撃をしていたが、彼らの攻撃は彼には一度も当たらず、唯一当たった攻撃も動けない僕とグレープさんに向かって来た流れ弾を彼が伸ばした触手で弾いただけで大したダメージにもなっていなかった。

 

 逆に彼の攻撃は的確で、一つ一つが必殺級の威力を持ち、一度も外していなかった。

 剣など接近戦を仕掛けてきた者は剣筋を読まれているのか彼に攻撃を回避され、彼はその隙に腕から変化した触手で敵の急所を貫いていた。

 

 拳銃やアーツ、クロスボウによる遠距離の攻撃もまるで読まれているのか僕たちに来る流れ弾以外は全て回避されていて、彼は敵の足だけを結晶化させて身動きを封じたり、その結晶を砕いて戦闘不能にさせていた。

 

 そしてこの悪夢のような殺戮の地から逃げ出そうとする者はすぐさま触手に貫かれたり、何らかの精神攻撃を受けているのか半狂乱な状態に陥っていた。そんな蹂躙劇を僕は見て、少なくとも彼は相手の動き、というよりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()動いていたと僕の目にはそう映った。

 

 そして彼ら全員を再起不能にさせた後、彼は彼らを一ヶ所に集め始めた。彼らの身ぐるみを悉く剥がしていき、装備は別の場所へと山積みになってまとめられていった。

 一か所に集められた彼らの様子は、先ほどの絶望のあまりに彼らの表情は酷く歪み、声も上げられなくなりか細い空気の流れの音しか発せらせずにいた。恐怖のあまり体を小刻みに震わせ、酷いものだと失禁さえもしていた。

 そんな彼らを平然と一ヶ所に搔き集めていく彼の様子はまるで神聖な存在が悪魔のような儀式を始めようしているように見て取れた。

 

 

 

 彼は一ヶ所に彼らを集め終えた後、この凄惨な蹂躙劇の終幕が始まった。

 彼の体から黒い波動が放出された次の瞬間、突然彼らがいるところから黒い球体が発生し、球体は彼らを飲み込むかのように徐々に大きくなってゆき、最終的に彼らは球体に取り込まれていった。

 その瞬間、僕は彼らの最期の表情を見てしまった。黒い球体に取り込まれた彼らの表情は苦痛にもがいているかの表情だった。

 そして黒い球体が消え去ったその空間は、地面がまるで綺麗に切り取られたかのように先ほどの球体と同じくらいの大きさがあるクレーターが発生して、その空間にあったもの全てが何もかも消え去っていた。

 

 

 

 

 

 

 悪夢の蹂躙劇が終わって僕は、目の前にいる彼は、出会ってはいけない禁忌の存在だと認識してしまった。

 

 そして彼らを殲滅した彼は、今度は僕たちの方へと近づいてきた。逃げようにも麻痺が解けず、いや、麻痺が体に回っていなかったとしても先ほどの惨劇からの恐怖で体が動かなくなっていたはずだろう。そんな逃れられない恐怖に僕はただ怯えることしか、グレープさんはそんな僕を守ろうと命がけで彼に対し威嚇をしていた。

 

 グレープさんの威嚇にも彼は気にした様子を見せず、先ほどの触手で僕たちを巻き付けようとしてきた。僕はそれにただ怯えることしかできず無抵抗で巻き付かれ、グレープさんは残ったわずかな力を振り絞ることで触手に噛みついて抵抗していたけれど、あまりの触手の多さに僕らの全身は隙間なく巻き付かれていった。

 

 そして触手に巻き付かれた僕とグレープさんの体からあの結晶が生えてきた。僕は結晶になって砕け散った人の姿が脳裏から浮かび上がり、決して逃れられない自身の最期を確信した。僕は自分の浅はかさを後悔しながら自身の体が結晶になって砕け散るその瞬間が来るまでじっと目を閉じ、最期の時を待つことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を閉じた僕の耳に結晶が砕ける音がした。ああ、僕は死んでしま……? 

 

 

 おかしい。麻痺で動かせなった体の感覚が元に戻って、いや、それ以前に結晶が砕け散ったはずなのに僕たちがまだ死んでいない!? 

 

 

 自身の体に起きた異変に僕はすぐさま目を開けた。すると僕の周りには先ほど砕け散ったのだと思われる結晶のかけらと、背中の傷が綺麗さっぱりと無くなっていたグレープさんの姿であった。僕とグレープさんは未だに信じられない状況に困惑し、そんな僕たちを彼はじっとこちらを見つめていた。

 

 

 

 僕たちをただじっと見つめている彼に気付いた僕は彼を見て、気づいてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が悲しい気持ちに包まれていることに。悲しい、寂しい、辛いといった様々な気持ちが入り混じっていたけど、彼から一番感じ取れた気持ちは“罪悪感”だ。それも僕たちに対して怖がらせて申し訳ないといった気持ちだった。

 

 

 

 どうして彼がそんな気持ちを抱いているのか理解できずに悩んでいたところ、突然彼は僕たちに背を向け始めた。その背中には傷が、それも僕にとっては見覚えのある傷がついていた。

 

 

 

 

(あれってグレープさんが受けたのと同じ傷? でもどうして………………まさかっ!?)

 

 

 

 

 それで僕は大きな勘違いに気付いた。彼は強大な力を持った化け物、禁忌の存在じゃないと。彼は僕たちと同じように心を持った存在なんだと。

 

 彼は自身の力のことを誰よりも理解していた。

 

 

 一度見せてしまえば自身が化け物として一生迫害されてしまうほどの強大さ。

 

 

 科学者や研究者にとっては研究材料として喉から手が出るほど欲しいほどの珍しさがある異質さ。

 

 

 そして、自分や彼の大切なものにさえも全て滅ぼしかねない危険さ。

 

 

 

 彼の力はそれら全ての要素が含まれていた。

 

 

 彼は力を使うことに戸惑っていたに違いない。その力を使えば僕たちが彼に恐怖を抱いてしまうことを理解していたんだ。でも彼は僕たちを守るためにレユニオンを滅ぼし、傷や麻痺毒を自身の身に肩代わりさせたことで僕たちを治療してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それなのに……、僕は最低だ。

 

 

 

 彼は自身の力を振るった結果を理解した上で僕たちを守ることを選んだ。自身の心が悲しくなることを覚悟して。でも僕は、そんな優しい彼の心を傷つけてしまった。彼にこんな選択をさせてしまったのは自分のせいなのに。

 

 

 

 

 ふと彼の姿を見ると、彼が間もなくこの場から立ち去ろうとしている。このまま何もしなければ彼はもう二度と僕の前に姿を現さないかもしれない。

 

 

 

 …………それは駄目だ! 

 

 まだ彼に謝ってもいない、許してもらってもいない。このまま彼が去っていくのを見ているだけだったら僕は一生後悔する! 

 

 

 立ち去って行こうとする彼を見て、僕は勇気を振り絞って彼を呼び止めた。

 

 

 

「待って!」

 

 

 僕の声に彼はこちらの方へと振り向いた。

 

 僕は彼をじっと見続けた。彼から決して目をそらさず、今度はしっかりと、彼と対話することを僕は選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 レユニオンの殲滅に強大な力を使ったことでプロヴァンスたちに恐れられるフェストゥム。この場から立ち去ろうとする彼に彼女は懸命な気持ちで引き留める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてなんやかんやあって二人の対話が可能となる方法が見つかる。二人はお互いの気持ちを伝えあうことに成功し絆を深めあう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして対話が出来るようになった喜びのあまりかフェストゥムはとんでもないことを暴露する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すいませんモフモフさせてください! 何でもしますから!』

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第4話、交流 ~モフモフ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 




プロヴァンス「ん?今何でもするって言ったよね?」



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第4話 交流 ~モフモフ~

こいつのチャートいつも壊れてんな(呆れ)


 はーい、よーいスタート(棒読み)

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故か女の子にガン見されて引き留められているフェストゥムライフ、はーじまるよー。

 

 なんかプロヴァンスが叫んだと思ったらめっちゃこっちを見てるんですがそれは……。しかも気迫がこもりすぎてやだ怖い……やめてください……! アイアンマン! 

 

 

 

 しばらくこっちをじっと見つめた後、彼女が勢いよく俺に向けて頭をを下げてきて……って、ん? 

 

 

「さっきは助けてくれて本当にありがとう! そして、君の心を傷つけて本当にごめん! 君は僕たちを助けるために力を使ってくれた。それなのに僕は君に怖がってしまって、酷いことをしたんだ……」

 

 

 え? 何? もしかしてあの血も涙もないアレに怯えていたことについて謝っているのか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………………天使かよ(狼なんだよなぁ…………)

 

 

 

 ってか、めっちゃええ娘やんホント。おじさん涙が出ちゃう。あんなSAN値直葬なものを見せたにも関わらず自分の非を認めるとか、これって……勲章ですよ。

 しかもグレープさんも先ほど自身が噛みついてた俺の手を舐めて怪我の心配してくれているし、ああ^~たまらねぇぜ。

 

 

 

 おっと彼女の目から涙が出てるじゃないか、これじゃあ可愛い顔が台無しになるゾ。じゃけん涙を拭って差し上げましょうね~。

 というわけで手を触手に変えてプロヴァンスの涙を器用に拭ったゾ。ついでに頭よしよしして慰めてみた。髪は結構サラサラで手入れされていて中々良かった(小並感)。

 

 

「…………僕のことを許してくれるの? あんなひどいことをしたのに?」

 

 

 

 当たり前だよなぁ? なんで許さない必要なんかあるんですか? 

 

 

 おじさんはねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の笑顔が大好きなんだよ! (笑顔大好きおじさん)

 

 

 ラブアンドピース! それが一番だって言われているから、このことはもう終わりっ! 閉廷! …………以上! みんな解散! 

 

 

 

 

「ありがとう………………」

 

 

 おいおいだから泣くなって、しょうがねえなぁ(悟空)、いいよ! 来いよ! (涙を)胸にかけて胸に! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 というわけで俺は彼女を泣き止むまで胸(胴体のどっか)を貸してあげることにした。

 

 

 

 さて、感動的な場面を淫夢語録で汚してしまって本当に、申し訳ない(無能博士並感)。

 しかしどうしたものか、とりあえずフィーリングで何とか通じ合っているんだけどまだ彼らと対話する方法が見つかっていないんだよなぁ。俺が喋れたり、クロッシングさえやり方がわかればなんとかなるけど、未だそんなことはわかんないしなぁ。なんかいい方法………………。

 

 

 

 あっ、そうだ(唐突)、この辺にぃ、先ほど剥ぎ取った戦利品が、あるらしいっすよ。というわけで何かいいのが無いか確認してみましょうね~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 36.4364分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれもこれもゴミしかねぇな~。ガラクタばっかだし衣類も何日も洗っていないのかすっげえ臭くなってる、はっきりわかんだね。

 後でワームスフィアで無に帰さなきゃ(使命感)。

 

 

 

 おっ、これは………………

 

 

 

 フェストゥムはタブレット機器を見つけた(ゴマダレ~)

 

 

 

 念願のタブレット機器を見つけたぞ! って言うとなんか殺してでも奪い取られそうな気がするのでこれは心の中で言っておこう(ミンナニハ ナイショダヨ)。

 ちょっと型はなんか古そうだけどまずは起動させてっと…………、何? パスワード? そんなもんわかるわけないだろ、いい加減にしろ! 

 

 よし、(ハッキングするために)じゃあ(体の一部を機器に)ブチ込んでやるぜ。

 

 そんなわけで俺は手の一部を有線ケーブルみたいな形に変え、機器の接続口に差し込んでみた。そしてこんなことをするならやっぱあれを言わないとな。

 

 

 

 プラグイン! フェストゥム.EXE トランスミッション! 

 

 

 

 Foo↑気持ちぃ~。やっぱ……熱斗くんの……名台詞は……最高やな! ってこんなことを言ってる場合じゃないって。タブレットの中に入り込んだらいきなりファイアウォールに引っかかってるけど、フェストゥムの思考制御を司るミールの情報収集能力の高さと、情報という概念を理解したフェストゥムにとってはこんなロックやファイアウォールなんざ、カスが効かねぇんだよ(無敵)

 

 

 

 

 …………よし、解除成功! おっ開いてんじゃ~ん! (開けたんだよなぁ…………)

 

 あとはお目当てのソフトウェアがこれに入っているかどうかっと…………、ありました、Wordもどき! これで勝つる! やっと会話することが出来るんやなって…………。

 

 

 

 ん? 何故Wordもどきを探していたかって? そこはトランシーバーとかじゃないのかって? 

 

 まずトランシーバーやラジオとかだとうっかり「あなたは、そこにいますか?」発言しちゃって相手を同化しちまう可能性があるから、声をうまく制御できない現状は却下だ。逆にこういった文章作成ソフトなら声を出さなくても何とか相手に意思を伝えられるから、ちゃんとソフトが入っていたこのタブレットは今後しばらくはとても重宝するアイテムとなるだろう。

 これは期待の新人(アイテム)だ! フォォーッフォッフォフォッフォ! フォォーッフォッフォフォッフォ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………なんか一瞬KFKがインストールされたけどままエアロ(風属性)。

 

 というわけでそろそろ泣き止んだプロヴァンスちゃ~ん、このタブレットを見てくれ。こいつをどう思う? 

 

 

「ん? これって…………タブレット? これがどうしたの?」

 

 

 うん、こんな純情な娘にくそみそなネタをかまそうとしている時点で俺が穢れた存在だってはっきりわかんだね、まぁ彼女は俺の心の声が聞こえていないんだけど。

 さてこれに文字を書き出してっと(ちなみにここの世界の言語はタブレット内のデータベースでスピードラーニング済み)、これでどうかな? 

 

 

『文字が読めますか?』

 

 

「! うん、読めるよ……! ということはもしかして……!」

 

 

『これでお話ができるよ』

 

 

「………………」

 

 

 …………あれ? なんか固まっちゃってるけど大丈夫? 雄っぱい揉む? (シリコン製)

 

 

「────やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! これで君とお話ができるね!」

 

 

 おおう、すごいはしゃぎようだな。まぁこれで誤解されずに済むからこっちも万々歳なことになっていいゾ~コレ。

 

 さ、話そうか(MNSR並感)

 

 

「うん! いっぱいお話しよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 8109.31秒後…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぬわあああああああああああん疲れたもおおおおおおおおおおおおおおおん。チカレタ……(小声)。

 ちょっといくらか犠牲? が出たけど色々と知ることが出来てよかったゾ。

 

 えっ? なんか不穏なことを言ってるって? じゃけん今からそれを説明するからまま、そう焦んないで(GO is GOD)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡り、俺はプロヴァンスからこの世界のことについて色々と質問してみた。今思えば会話できたことに喜ぶあまり、後にとんでもないことになるとはこの時の俺は予測していなかった。

 

 話を戻すが、何でもこの世界はテラと呼ばれる世界らしく、多種多様な動物の特徴を持った人型生物:先民(エーシェンツ)が暮らしているとのこと。

 そしてこの世界は源石(オリジニウム)というあの黒い結晶の鉱物が普遍的に存在し、先民たちはそれを利用してアーツと呼ばれる魔法のような技術を行使したり、オリジニウムエンジンという機械技術で文明を発展させてきたんだと。はえ^~すっごい技術……。

 

 ただしその代償として、源石を使用すると鉱石病(オリパシー)と呼ばれる不治の病に侵される危険があり、一度罹ったら最後、死から逃れられない定めとなり最終的には体が源石そのものになるとか。

 こわいなーとづまりすとこ。

 てかやっぱりあれ、生物にとって悪影響じゃないか、いい加減にしろ! 大丈夫かな俺の体…………。

 

 

 

(ここでフェストゥムさんはアイデアを振ってください)

 

 

 

 っ!? なんだ今の声!? というかアイデアを振るとかいつの間にクトゥルフTRPGになってんだ……、これもうわかんねぇな? 

 

 

 

 カラカラカラ…………(サイコロが転がる音)

 

 

 

 ちょっと待って!? なんか勝手にサイコロが振られてんですけど!? 

 

 

 

 ダイス目:19  フェストゥム、アイデア:60 →成功

 

 

 

 なんか数字が汚く感じるなぁ…………、しかも成功しているし、どうなるのこれ? 

 

 

 

(勘の良いあなたは思い出すでしょう。湖に来る途中、服のような布のぼろきれがかかった人と同じくらいの大きさの源石を見たことを)

 

 

 

 あっ……(察し)

 

 

 

(それは鉱石病に罹った人のなれの果てだということを、先ほどの話からそれが真実だということを、あなたは嫌でも理解することが出来るでしょう。さらにそれを同化してしまったという事実に気づくでしょう。SAN値チェックです。0/1D6で減らしてください)

 

 

 

 クゥーン……(子犬先輩)。てか何で異世界に来てまでクトゥルフしなきゃいけないんだよ。だが成功すればいいだけの話だぁぁぁぁ! (フラグ)

 

 

 

 ダイス目:100(デデドン! (絶望)。ファンブル、減らすSAN値を3倍にしてください)

 

 

 

 ウッソだろお前www。アカンこれじゃSAN値が死ぬゥ! 頼む最低値来いっ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1D6 ダイス目:6  フェストゥム SAN値69→51

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ゙あ゙あ゙も゙お゙お゙お゙や゙だあ゙あ゙あ゙ああ゛!!!! 

 

 

 

(発狂からは)ああ逃れられない! (カルマ)

 

 

 

 しかも一時的だけじゃなくて不定の狂気まで、アーイキソ…………(諦観)

 

 

 

※狂気などのクトゥルフ神話TRPGのシステムを詳しく知りたい人はクトゥルフ神話TRPGを調べよう! 

 

 一時的狂気 1D10 ダイス目:9 奇妙なもの、異様なものを食べたがる(泥、粘着物など)

 

 不定の狂気 1D10 ダイス目:5 フェティッシュ(ある物、ある種類の物、人物に対し異常なまでに執着する)

 

 

 えっ、ちょ、この組み合わせ…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ヒャッハーッ! モフモフの時間だオラァ!!!! 

 モフモフと毛が食べたくて(同化したくて)ああ^~たまらねぇぜ! (変態モフモフ土方)

 

 というわけでプロヴァンス、グレープさん! 早速だけどモフモフさせろや!!! 

 

 

「? 君なんか様子がおかしいけど、どうしたの?」

 

 

 おっと、タブレットを使わないとこっちの内容が伝わらないよな。これで……ヨシッ! (現場猫)

 

 

『すいませんモフモフさせてください! 何でもしますから!』

 

 

 さぁモフモフさせろや! 

 

 

「え、ええっ!? う……、でも君なら、モフモフされてもいいかなって///」

 

 

 まぁそっちが拒否ろうが、こっちも何でもするといったが、そんなことはお構いなくモフモフさせてもらうけどな(人間? の屑)。

 

 では早速! 

 

 

「えっ…………ひゃあん!!?!??」

 

 

 ふむふむ、初めて彼女を見て最初に目が引いたのはこの尻尾だが、見た目に違わず素晴らしいモフモフを持っている。それに普段とても手入れが行き届いているのか毛が荒れていないのもポイントが高い! 

 

 

「あっ……んんっ……ふぁっ!」

 

 

 そういえば久しぶりにモフモフしたな。俺がモフモフできたのは友人の飼い猫をモフモフする時ぐらいだったからな~。あの子は長毛種ではなかったが、なかなかふっくらとした毛並みだったから存分に堪能していたゾ。

 しかもあの子、何故か俺に良く懐いていたしな。別に飼い主との仲は悪くないけど、あまりの仲の良さに友人はその光景に血涙していたけど。

 

 

「そこっ……待っ……ひゃん!!」

 

 

 おっと毛が抜けてるじゃないか。もったいないんで同化しておこう。

(プロヴァンスの毛の味は)うん、おいしい! やっぱ……プロヴァンスちゃんの……抜け毛を……最高やな! 

 そして手を櫛状にしてブラッシングタイムや!!! 

 

 

「~~~~~~~~~///////」

 

 

 

「…………」ソロリソロリ……

 

 

 あっ、おい待てぃ(江戸っ子)ガシッ! 

 

 

「!?」

 

 

 全く飼い主を置いてどこへ行こうというのかね(MSK並感)? 

 お前もモフモフして、お前を芸術品に仕立てや…………仕立てあげてやんだよ。

 

 

「ワン! (訳:ふざけんな!)」

 

 

 お前を芸術し…………品にしたんだよ。

 

 

「ワンワン!!! (訳:ふざけんな!)」

 

 

 お前を芸術品にしてやるよ(妥協)。

 

 

「ワ・オ・ワ・オ・ワン! アオーン!!! (訳:フ・ザ・ケ・ン・ナ! ヤ・メ・ロ・バ・カ!!)」

 

 

 というわけでそろそろモフモフタイムのクライマックスだ。思いっ切りモフモフするけどいいよね? 答えは聞いてない! (RUTRS並感)

 

 

「んっ……これ以上は……もうだめぇ……」

 

 

「クゥーン、クゥーン……」

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヌゥン! ヘッ! ヘッ! ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!! 

 

 

 

 ウ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ!!!!! 

 

 

 

 フ ウ゛ウ゛ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン!!!! 

 

 

 

 フ ウ゛ゥ゛ゥ゛ゥン!!!! (大迫真)

 

 

※モフモフしているだけです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………あれ? 

 俺途中から意識が飛んだような? 一体何をしていたんだっけ…………っ!? 

 

 

 周りを見渡してみるとプロヴァンスとグレープさんが何故か倒れていた。しかも顔はR18並に蕩けていて、呼吸も弱弱しくも荒くなっており、もうこの姿がセクシー、エロいっ! って言ってもいいくらいの状態だった。

 

 ってそんなこと言ってる場合じゃねぇ!? お二方ぁ! ナニがあったんだ!? 

 

 

「……あっ、君……、正気に戻ったんだね…………」

 

 

 あっ……(察し)。これは俺がお二方にナニをしましたね……。やべえよ……やべえよ……、性的に襲っておいて(※勘違いです)謝って済む問題じゃないけど、とりあえず謝んないと……。

 

 

『すいません許してください何でもしますから!』

 

 

 これでどうだ………………ん? なんか彼女がこのメッセ―ジを見た途端、急に彼女の目が野獣の眼光のようなまなざしでこちらを見て来たんだが。

 

 

「…………ふ~ん? 今なんでもするって言ったよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………これ詰んだかもしれん。

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideプロヴァンス      

 

 

 僕たちは立ち去ろうとする彼を引き留めた後、彼に謝罪するため頭を深く下げた。彼は僕たちに対してどう思っているのだろうか。僕たちの虫の良さに怒り、先ほどの彼らのように消滅させて報復するのか。いずれにせよ、僕とグレープさんは彼からの罰を受け入れる気でいた。

 

 

 

 だが彼は、そんな僕たちに対し罰を与えなかった。それどころか彼は、いつの間にか頬に伝っていた僕の涙を器用に拭い、慰めるかのように僕の頭を優しく撫でていた。彼は僕たちのことを赦した。一番傷ついているのは他ならぬ彼なのに……。

 その温かさが心地良いと思う反面、彼の優しさに甘えてしまった自分が情けなく思う。相反した感情が抑えられなくて、また涙が溢れてきてしまった。彼はそんな僕に対し自らの体を貸し、思いっきり泣くようにと勧めてきた。彼の厚意に甘えて、僕は彼の体に顔をうずめて思いっきり涙を流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく泣いていた後、彼は唐突に何かを持ってきて、それを僕に見せてきた。

 

「ん? これって……タブレット? これがどうしたの?」

 

 それはいかにも古そうなタブレット機器だった。おそらくさっきのレユニオンが持っていたものなのだろう。所々傷があるが使うには問題ない状態だった。彼はそれを嬉しそうに見せびらかしていたが、何故そんなに喜んでいるのか僕には理解出来なかった。しかしその後の彼の行動で、僕の考えは一瞬で逆転した。

 

 彼が持っていたタブレットの画面が突然動き出し、レポートとかで使う文章作成のソフトを起動させた。そして驚くことに、タブレットの画面内に文字が自動で入力されていった。よく見ると彼の体の一部が機器の接続口に差し込んでいて、それでタブレットを操作していると分かった。

 でも確か、このタブレットの機種には古い型だけど、パスワード機能と強力なファイアウォールシステムが搭載されていることで有名だと聞いたことがある。本来それを解除しないと使えないはずなのに、彼は平然とそれを使っている。ということは彼は短時間でこのタブレットをハッキングして使えるようにした事実が浮かび上がる。

 

 未知数な彼の能力に驚く僕を余所に、彼は画面に打ち込まれた文章を見せてきた。それはこんなことが書かれていた。

 

『文字が読めますか?』

 

 書かれていた文章にはそんなこと書かれていた。僕は驚きながらも彼に読めることを伝えた。

 するとまた文章が書き込まれた。

 

 

『これでお話ができるよ』

 

 こんな予想もできない結果に僕は愕然としてしまった。彼は僕たちとの対話を諦めていなかったのだ。彼が文章作成ソフトを示したのは、彼は言葉を自分の思い通りに発することできないこと。そしてあの問いかけは僕たちに影響が及ぶことを配慮してこの手段を選んだんだろう。

 

 でも僕はそんな彼の配慮よりも、彼と会話できることに嬉しく思い、思わず大喜びをした。そんな僕の様子に彼は驚くも、同じように喜んでいるように感じられた。

 

 

 喜び終えた僕たちと彼は、互いを理解するために話をした。と言っても話のほとんどが、彼の質問を僕が答えただけだった。なんでも彼はいつの間にかここに居たらしい。そして人間だったけど、何故かこの姿、彼曰くフェストゥムという存在になっていた。突然の状況に困惑し、彷徨っていたところ僕たちと出会った。

 彼はなかなか目まぐるしい出来事にあっていると僕は思いつつも、次の言葉には流石に僕も耳を疑った。それは彼がこの世界の知識や常識を全く知らないとのこと。源石や鉱石病はおろか、僕のように狼の耳や尻尾を持った人間なんて見たことなく、せいぜい空想上の人物という認識が普通とのこと。

 

 そんな話を聞いて、ほっとけない僕は彼にこの世界の知識を教えることにした。彼は真面目に、僕の話を一言も逃さないかのように聞き入っていた。これで彼に対する罪滅ぼしになるとは思っていないが、彼にとっては役に立つ情報らしく、情報を提供してくれた僕たちに誠意を込めて感謝していた。それと彼の話し方ってなんか独特でかつ、意外とユーモアがあって話が弾んだのもコミュニケーションが円滑に進んだ大きな要因だと思う。

 そんなことがありながらも、引き続き僕は彼に様々なことを教えた。しかし、この後後悔するようなことが起きるとは、この時の僕は想定していなかった。

 

 

 彼に源石と鉱石病の関係を教えた時、急に彼の様子がおかしくなった。まるで気づいてはいけない真実を気づいてしまったかのように、彼はその場に立ちすくんでいた。様子がおかしいことに気づいた僕は彼に声を掛けた。すると彼はタブレットをすぐさま見せてきた。書かれていた内容にはこんなことが書いてあった。

 

『すいませんモフモフさせてください! 何でもしますから!』

 

 ……えっ!? モフモフしたいって、もしかして僕の尻尾のことを指しているの!!? 

 

 

 唐突な彼の爆弾発言に僕はうろたえながら自分の尻尾を見る。自慢じゃないけど、僕の尻尾は他のループス族と比較してとても巨大で、ふわふわな毛に覆われている。それは一種のチャームポイントとして自覚しているし、ロドスでも心を許した相手には触らせたりしている。正直な所、彼に尻尾をモフモフされるのは別に構わない。でもあまりにも唐突すぎて心の準備が出来ていないというか、恥ずかしいというか……。

 恥ずかしさでモジモジとしていると、彼は有無を言わさずいきなり尻尾を触って来た。

 

「えっ…………ひゃあん!!?!??」

 

 彼がいきなり尻尾を触ってきたことで僕は短い悲鳴を上げてしまう。彼の手はいつの間にか触手状に変化させ、僕の尻尾に絡みつく。しかしその力は体全体に縛られた時のような強さではなく、まるで壊れ物を扱うかのような繊細な力加減で、尻尾の毛の間を丁寧に(まさぐ)っていた。

 

「あっ……んんっ……ふぁっ!」

 

 彼の繊細な攻めに思わず色っぽい声を上げてしまう。尻尾を雑に扱わず、気持ちいい所を的確な力加減で刺激してくる。そんな攻めを受け続ければ当然、全身が脱力し、そのまま地に臥せってしまうのは目に見えた。攻めに耐えかねてそのまま地に臥せてしまう次の瞬間、脱力した僕に彼が優しく体制を整えてくれた。破廉恥なことをしているのに心遣いが出来る優しさは変わらない。ここまで来ると怒ればいいのかどうかわからなくなってくる。

 

「そこっ……待っ……ひゃん!!」

 

 彼が僕の尻尾をモフモフしていると、尻尾から毛が抜けるのが見えた。抜け毛に気づいた彼はその毛をもったいないと言わんばかりにすぐさまキャッチし、体に取り込んでいった。これには流石の僕もドン引きしてた。だけど、この行為を見たおかげで、今の彼が正常な判断で動いていないことが分かった。まるで何かで狂っているかのように感じられた。

 僕がこの後どうしようかと考えていると、彼は手の一部を櫛状に変化させた。変化させた櫛を見て、次行われることが容易に想像できた。

 

 

 このままではマズイ。でも先ほどの快感が体中に走るせいで体が上手く動かない。だけどこの状況打開するには、気を確かにして耐えなきゃいけない。幸い、次の行動はわかっているから強い意志で意識を保てば問題ない筈だ。ブラッシングに僕は負けない! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1.14分後

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~~~~~~~~///////」

 

 ブラッシングには勝てなかったよ……。

 

 ってか何でこんなに上手いの!? とっても気持ちいいし、引っ掛かりによる痛みがほとんど無く毛が梳かされていく。次第に僕の尻尾の毛艶が生命が吹き込まれたかのように輝きを取り戻し、毛の膨らみが増していった。普段僕がやるのとは大違いだ! 

 僕は彼のブラッシング技術の高さに驚くも、現状の打破に頭を悩ませた。このままではいけない、彼のブラッシングによる魔の手から戻れなくなってしまうと。ブラッシングに悶えてながらも、何か解決策が無いかと周りを見渡す。

 

 

 そしたらグレープさんがこの場から逃げようとするのを見えた。

 

 

 

 

 ちょっと!? 僕を置いてどこに行く気なのー! グレープさんの裏切り者ー! 

 

 

 

 

 ……あっ、捕まった。グレープさんは抵抗するけど、抵抗空しく彼にモフモフされてしまった。パートナーである僕を置いて逃げ出したんだからいい気味だと思う。

 

 

 

 しばらくすると堪能したのか僕はブラッシングから解放された。快感で動けない体を必死に動かしながら彼の方を見ると、彼の体からただならぬオーラが見えてくる。まるでさっきまではお遊び、ここからはクライマックスだと言わんばかりな雰囲気を醸し出している。

 

 

 

 僕、生きて帰れるかなぁ…………。

 

 

 

 もはや諦めに近い境地で、僕は彼のモフモフ行為を抵抗せず、受け入れることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 も、もうだめ……、腰が……。

 

 いつの間にか、僕たちは彼のモフモフ行為から開放されていた。彼にモフモフされた僕とグレープさんは、全身が快感に包まれ、体が動けなくなっていた。きっと、今の僕は他の人には見せられないような蕩けた顔をしているに違いない。あともうちょっとこれが続いていれば、僕はこの快感から戻れなくなるほど嵌りかけるところだった。

 

 

 荒い呼吸を整えながら、僕はふと彼の方を見やると、彼は僕たちの姿に驚いた様子でその場に立ち尽くしていた。やっぱりあれは彼の意思でやったわけじゃなさそうだ。その証拠に彼はすごく慌てふためいた様子でおろおろとたじろいでいる。こんな彼の姿を見ていると本当に彼が人間臭く感じ、ある種の親近感が芽生えてくる。

 

 

 

 

 慌てふためく彼を見ていたら毒気が抜けてくる。それも彼の魅力なのだろう。我ながらおかしなことを考えてる途中、彼は僕にタブレットを見せてきた。

 

 

『すいません許してください何でもしますから!』

 

 

 その言葉に僕はすぐさま彼を狙いすますように目を向けていた。

 

 

 

「……ふ~ん? 今何でもするって言ったよね」

 

 

 

 この時の僕はとても悪い顔をしていたと思う。でも彼がこんなことを言うんなら、僕もつい意地悪したくなるじゃないか。それに彼は律儀に約束を守ってくれそうだから存分にからかい甲斐がありそう。

 

 

 そんな黒い考えをしながら先ほどの仕返しとして、僕は彼に意地悪な提案を提示した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 すれ違いが解けてプロヴァンスからこの世界のことについて学んだフェストゥム。しかしある事実によって起きた発狂ロールプレイからか、不幸にも彼女たちをモフモフしてしまい見せられないよ! 状態にしてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 貞操を奪ってしまったこと(※勘違い)の責任を感じたフェストゥムに対し、天災トランスポーター、プロヴァンスに言い渡された示談の条件とは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあまず、君の名前を教えてくれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第5話、証明~Your Name~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 




フェストゥム「(自己紹介を)やれば許して頂けるんですか?」


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第5話 証明 ~Your Name~

お ま た せ!

仕事が忙しくて書く気力が残ってなかったり、小説を面白く書きたいがために文章の書き方に関する本とか読んだり、スランプになったりしてなかなか筆が進まなかったゾ。

あと今回の話で原作キャラにこの小説内でちょっとした独自要素が入っていますが、悪しからず。

※前話の最後辺りで恒例のsideプロヴァンスの話を入れていなかったと思いますが、小説構成の推敲した結果、追加いたしました。当初はこの話の最初に入れる予定でしたが、色々と考えた結果このような形にいたしました。ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした。


 

 

 

 

(≧Д≦)ンアッ──────!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やぁ、開幕野獣の咆哮をしてすまない。でもしょうがないんだ。ただ今俺、プロヴァンスに体を弄られています。何で? 

 

 

 

 何でも先ほど俺は彼女たちをMO・FU・MO・FUしてしまったらしく、恥ずかしい目を合わされたその仕返しとして俺の体を弄ることを強要された。良かった、彼女にR18なことはしてなかったんや! 

 

 

 

 それでも悪いことにしたのは申し訳なく思っているし、さっき“何でも”と言ったから彼女の提案を断れないんだけど。てなわけで彼女に絶賛揉まれています。ちなみに揉まれてもちょっとくすぐったいだけで、暇なんすよね。マグロプレイかな? 

 

 

 てなわけで、さっきの野獣の咆哮はお遊び半分で上げたんですよ。もちろん声は出せないから心の中で。ただ顔の部分に(≧Д≦)を浮かび上がらせたら、その顔を見た彼女が思いっきり吹いていた。やったぜ。

 

 

 

 

 

 ……それにしてもプロヴァンスちゃん? なんか揉みしだくスピードと力が強くなっていない? 君の顔、揉み心地に対して癖になっているような表情しちゃってるよ? 

 

 

 

「……むう、さっきの変顔と言い、君の体の感触が癖になると言い……。僕が仕返しをしているはずなのに、なんか君の手のひらで踊らされてる感じがする。悔しい……」

 

 

 

 がわ゙い゙い゙な゙ぁ゙プロ゛ヴァ゛ン゛ス゛ぢゃ゛ん゙。

 

 そんなむくれた顔をして何なの? 俺に対するGO褒美なの? 後でなでなでさせてくれ。

 

 

 

 

 おっといけない。鼻?あたりから結晶が出てきた。あまりの萌え力に情熱が出てきたんだね。

 

 

 あっ、心配しなくて大丈夫だから。鼻血みたいなもんだから。そんなわけでこの後はひたすら揉まれ続けただけの絵面なのでカットしよう!! 

 

 

 てなわけで、キング・クリムゾン!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 以上が、前回の8109.31秒間で起きた出来事なんだ。ホント、色々有り過ぎてチカレタ……。

 

 

 

 

 

「ふぅ、とりあえず君への仕返しはこれくらいにするね…………」

 

 存分に俺を揉みしだいたおかげか、プロヴァンスも落ち着いたようだ。しかし俺の体って、そんなの揉み心地が良かったのかね? 彼女なんか病み付きになったような顔をしているんですけど。自分でも触ってみたが、なんというか俺の体ってシリコンゴムみたいな感触なんだよ。ちなみにレユニオンとの戦闘で分かったが、俺の体はある程度自在に伸縮させたり、硬化と軟化を使い分けることが可能だゾ。

 

 

 

 そういや揉まれていたあまり忘れていたけどさ。君、なんか罰としてもう一つ俺にお願いしたいことがあったんじゃないんかね? 

 

 

 

「……あっ」

 

 

 

 おい、忘れてたなその反応。ちゃんとしてくれよな~頼むよ~(棚上げ)

 

 

 

「ごめんごめん。僕がお願いしたいことはね、君の名前を教えて欲しいんだ」

 

 

 

 …………名前? あれ? 俺って彼女に自己紹介してなかったっけ? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム脳内記憶読み返し中…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………そういえば言ってないですね、クォレヴァ……。

 

「うん。これから君のことをどう呼べば良いか分からないし、お互い名前で呼び合った方が何かと都合が良いんじゃないかな? どう?」

 

 

 あっいいっすよ(即答)。 特に断る理由もないし、じゃけん自己紹介をしましょうね~。

 

 

「ありがとう! じゃあまず、君の名前を教えてくれるかな?」

 

 

 

 

 ―フェストゥム脳内―

 

 さて、自己紹介しようにも名前はどうしようか? 

 

 

 いや、別に名前が思い出せないわけじゃないし、TDNやひでや野獣先輩のような忌むべき名前でもない。だがそれは人間だった時の俺で、今の俺はフェストゥムになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 何が言いたいのかって言うとな。いまいち実感が湧かないけど、俺は一度死んでしまったも同然なことになってしまっている。なのに死んだ人間の名前を使うのも縁起が悪いじゃないか。なんで新たな生を受けた以上、心機一転として名前も変えてみようかと。

 

 

 まぁ一番の理由は何の面白みが無い元の名前よりも、単純にそっちの方が面白そうだと思ったからですけどね、初見さん。

 

 

 

 

 よし! じゃあ(異世界転生で王道を往くキャラクリエイトを)ぶち込んでやるぜ! そしてフェストゥムになっているんで、せっかくだから原作の来主と同じように名前で存在を証明すんぞオラァァン!? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(脳内時間)33.4秒後……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キャラクリエイティング工事完了です……。え―、色々と考えた結果、俺はこれから“渡界 楔(とかい せつ)”として生きていこうと思います。淫夢民にあるまじき、略してホモという名付け方をしたわけでもないし、普通だな! 

 

 名前の由来? 安直に決めたからそんな深い意味はないよ。一応簡単に言うと、

 

 

 

・苗字は異世界に渡ってしまった事柄と、どうにかして親からもらった元の名前を遺しておきたいがために上手く取り入れようと考慮した結果こうなった。ちなみに元の名前は渡の方で、わたると読むゾ。

 

・名の方は、寝落ちした結果こんなことになってしまったので、今度は撃ち込まれた楔のように世界にしがみ付きたいと考えた結果だゾ。なんか女っぽい名前になったから女の子になっちゃう!な展開がありそうで不安だゾ。まぁ某機動戦士にカミーユという女みたいな名前を持った男もいるし、多少はね? 

 

 

 

 

  

 ……改めて考えると、何で寝落ちしただけで元の世界から離れてしまったのか、これもうわかんねぇな? 

 

 

(異世界に行ったから)何の問題ですか? 何の問題ないね(レ)

 

 

 

 

 なんかレスリングの空耳が聞こえた気がするけど、名前も決まったことだし、そろそろプロヴァンスに俺の名前を伝えにいきますかね。

 

 

 

 

 ―脳内会議終了―

 

 お待たせ! 名前決まったけど自己紹介始めていいかな? まぁ後はタブレットの画面に名前を入力していくだけなんですがね。

 

 

 というわけで俺の自己紹介にワクワクしているプロヴァンスとグレープさんを見ながら俺はタブレット画面を彼女たちに見せながら名前を入力していった。

 

 真っ白な画面にぽつぽつと入力されていく俺の名前。ほんのわずかな時間で画面には俺の名がはっきりと表示される。

 

『名前は渡界 楔。 読み方は姓がとかい、名がせつと読むゾ』

 

 さてさて、ちゃんと伝わって……いるな。小さな声で「……せつ。とかい せつ……」と呟いて覚えようとしている彼女は見ていてほっこりする。いいゾ~これ! 

 

 じゃけんニックネームを提案して親しみを良くしていきましょうね~(コミュニケーションの鏡)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この時調子良く浮かれていたことが原因で、俺たちの近くまで接近してきた何者かの存在に、俺は気づくことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ファイヤー! ブレイズ! インフェルノ!!!」

 

『まぁ呼び方はせっちゃんやせっくん、またはせっさんとでも呼んだりして────―くぁwせdrftgyふじこlp!!?』

 

「!!? せっくん!?」

 

 背後から響き渡る掛け声と共に、突然背中に激しい痛みと纏わりつくような灼熱が襲いかかる。…………ってアァっ……、アア! ヌア! アツゥイ!!! めっちゃ焼かれてんすけど俺ぇぇぇ!!! 

 

 誰だいきなり攻撃した奴は! もう許せるぞオイ! もう許さねぇからなぁ?(豹変)

 

 

 

「しっぽから離れなさい! 化け物!」

 

「プロヴァンスさん! 無事ですか!?」

 

 声の方へと振り向くと、そこには猫耳少女と狐耳の少女の二人が森の中からいつの間にか現れていた。猫耳の方は俺を突き刺すような視線で牽制し、狐耳の方はプロヴァンスの方をハラハラした雰囲気で見つめていた。にしても新たな獣耳の娘、これがけものフレンズちゃんですか? 

 

 

 

「スカイフレア!? アンジェリーナちゃん!? どうしてここに!?」

 

「任務を終えたはずのあなたがまだ戻ってこないのと、先程ここでレユニオンが活動しているとの報告がありましたわ。故に救援として私と彼女であなたの捜索に参りましたの」

 

「周囲を警戒しながらここまで来たけど、肝心のレユニオンは見つからなかったんだ。でもまさか、こんな生物がいるなんてね……」

 

 ん? プロヴァンスの知り合い? …………ということはつまり、彼女たちはプロヴァンスを助けに来たってこと? おうちに帰れるよ! やったねプロちゃん! 

 

 

 

 

 

 

 ……ん? おいゴルァ! つまり俺は今、彼女たちから敵って見られているってことじゃねぇか!! その証拠になかなか倒れない俺に苛立っているのか、猫耳の攻撃が激しくなって痛いんだよおおおおおおおおおおおお!!!! (マジギレ)

 

 

 

「なかなかしぶといですわね……。こうなったら……」

 

「! 待ってスカイフレア! 彼は──―」

 

 

 猫耳が憎らしげに吐き捨てるかのように呟くと、彼女は何かの詠唱を始め、それが終わると持ってる杖を空高く振りかざした。俺は杖の動きに釣られて上を見ると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冷たい印象を与えるかのような蒼い炎を纏った巨大な隕石が俺にめがけて天空から迫って来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ファッ!? ちょっと待って!? あの猫耳、俺を倒すならともかくこのままだとプロヴァンスまで巻き添えになる…………ってあれ? 

 

「スカイフレアさん! プロヴァンスさんの救出を成功しました!」

 

「よくやりましたわアンジェ!」

 

 いつの間にかプロヴァンスがいないと思ったら狐耳の少女によって安全圏まで離れていた。なるほど、これなら彼女を巻き込まずに済むな。とりあえず彼女の方は大丈夫そうで安心した。

 

 

 

 

 

 

 って落ち着いている場合じゃねえ!? このままだと隕石が俺まっしぐらに突っ込んでくるんじゃねぇかYO!! ふざけんな!(声だけ迫真)

 

 

 

 

 やべぇよ……やべぇよ……。どうすんだよ……、どうすんだよ……。

 

 

 

 

「余所見をしている場合かしら? そんなことをしていましたら、空があなたを焼き尽くしますわ!」

 

 

 

 この猫耳の言う通りだ。先ほど余所見したおかげでいつの間にか隕石が急接近していることに気づいた。もうこの距離じゃ避けるにも間に合わない。このまま直撃すれば全身絶え間なく焼き尽くされ、命の灯は燃え尽きるだろう。

 

 

 

 

 だがどうすればいい? もはや避けることも、誘爆に巻き込まれずに隕石を破壊することもこの刹那に過ぎる時間では到底間に合わない。

 

 

 

 

 しどろもどろとしている内に隕石と俺の距離はぐんぐんと狭まっていくばかり。何の策も思いつかないまま時間を無駄にしてしまった。せっかく転生したのにこんなところで死ぬなんてやだ! やだ! ねぇ小生やだ! 

 

 

 

 

 やがて、隕石と衝突するまであと3、2、1…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっくん!! 逃げてぇ────―!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悲痛さがこもった彼女の叫び声を耳にするのを最後に、俺の体は炎の隕石に呑まれていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 残念!! 

 

 

 私の冒険はこれで終わってしまった!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 sideスカイフレア 

 

 

「全く、しっぽも世話が焼けますわね。任務から帰還してこないなんて」

 

 

「ん~、でも真面目なプロヴァンスさんがこんなミスをするのかな?」

 

 

 

 

 私は今、任務から帰還してこないしっぽの捜索のため、トランスポーターであるアンジェリーナことアンジェと一緒に現地へと赴いたのですわ。

 

 

 

 私と彼女はつい最近ロドスに加入した者として交流を持ったのがきっかけですわ。ちなみに私が彼女のことをアンジェと呼ぶのは、彼女の名前が長いことに文句を言っていた私に対し、彼女が提案してくれたのがきっかけですの。私もこれなら呼びやすいため、提案してくれた彼女には感謝していますの。

 

 

 

 ……話を戻しますわ。普段であればしっぽが帰還に遅れたとしても、そんなに気にする必要がないのですわ。天災トランスポーターとしての仕事にトラブルは付き物ですから、何か手間取っているだと思うに過ぎません。

 

 

 しかし、今回はそういう訳にも行かなくなりました。つい先程、彼女の任務地付近にレユニオンの部隊が活動しているとの報告が届きましたわ。その報告を聞いたロドス本部は、たまたま手が空いていた私とアンジェを召集し、現地へ派遣させましたの。

 

 

 本来ロドスに参入してからまだ日が浅い私たちにそんな任務をさせるのはどうかと思いましたが、最近ある大きな作戦の決行準備により人員のやり繰りが厳しいということ。かと言って、貴重な天災トランスポーターの損失は今後のロドスにも大きな影響が出てしまうとのこと。そこでアーツの応用で機動力があるアンジェと、迎撃火力のある私による二人組編成で速攻による捜索作戦が立案されることになりましたわ。

 

 

 

「それにしてもプロヴァンスさんも、報告にあったレユニオンの部隊は見当たらないね? 帰還ルートを照らし合わせた結果、ここに潜伏でもしていると思ったんだけど」

 

「そうですわね。目の前に見えるうっとうしい木々を焼き払えば、捜索は楽になるのでしょうけど」

 

「ま、間違ってもそんなことしないよね……?」

 

 

 現在私たちは、広い荒野にポツンとある小さな林の中へと突入していますわ。アンジェの言う通り、彼女の帰還ルートの中で怪しい箇所はここぐらいですの。その林に関しては、中心に湖が存在していることぐらいの情報ですが、他に目ぼしい箇所もないためここを捜索することになりましたの。

 

 

 本当は木々を焼き払って捜索を楽にしたい所ですが、そんなことをすればしっぽが絶対カンカンに怒りますから、仕方なく我慢して地道に調べていくことになりましたわ。

 

 そうして私たち木々を通り抜け、湖付近に近づくと……、

 

 

「!? スカイフレアさん、伏せて!」

 

 

 

「ちょっと、アンジェ!?」

 

 

 

 アンジェが急に小さな声を上げた途端、私を無理矢理茂みの中に身を隠させてきましたわ。本来なら文句を一つ二つ言いたいところですが、彼女の鬼気迫る表情を見て、咄嗟に文句を言いかけた口をつぐみましたわ。

 

 

「……どうなさいましたの、そんな険しい顔をして?」

 

「…………スカイフレアさん、あれを見て」

 

 

 小声で彼女に理由を問いただすと、彼女は答えながら湖がある進行方向に指を指しましたの。それにつられて私も視線を湖の方に向けると……、

 

 

「…………アンジェ。なんですの、あれ?」

 

「それはこっちが聞きたいよ…………。でも綺麗だね……」

 

 

 私たちの目には、黄金色に輝く人型の異形な生物が湖のほとりに佇んでいたのですわ。その姿は見たことの無い形を取っているにも関わらず神秘的なオーラを漂わせて、その証拠にアンジェが不意にポツリとあの生物を称賛していました。

 しかし、湖にいるのはあの生物だけで、しっぽもレユニオンも見当たらないですの。

 

 

 

「それにしても、しっぽは一体どこに……?」

 

「…………あっ! スカイフレアさん! あそこに!」

 

 

 

 湖にまで来たにも関わらず、しっぽの行方が分からない結果となり疑問を抱いていると、アンジェが何かに気づいたかのように声を上げましたわ。私も彼女が指し示した先を再び見ると、そこにはしっぽとしっぽのペットがあの生物の近くにいましたわ! 

 

「あれの陰に隠れていたんだ。……でもあれ、プロヴァンスさん達に何かしようとしているような? でもここからだとよく見えないな」

 

「……まさかっ!? アンジェ、今すぐしっぽを助けますわよ!! 私が奴を引き付けている内にあなたはしっぽ達を!」

 

「えっ? ……ちょっ!? そんないきなり!? まってよスカイフレアさん!」

 

 

 アンジェの言葉からしっぽ達はあの生物に襲われていると推測した私は茂みから飛び出して間髪入れずにアーツ詠唱の準備を始めましたわ。幸い、あの生物はこちらに気づかず無防備な背中をさらしたままでいますわ。獲物の前で舌なめずり、その油断が命取りですわ、化け物! 

 

 

 

 

「ファイヤー! ブレイズ! インフェルノ!!!」

 

 

 

 

 愛用している杖の先から全てを焼き尽くす紅蓮の炎が放出し、炎は化け物に襲い掛かりましたわ。炎を喰らった化け物は突然の痛みに苦しみ悶え、その様子からアーツが効いていることを証明させていますわ。

 

 

 

 

「しっぽから離れなさい! 化け物!」

 

「プロヴァンスさん! 無事ですか!?」

 

「スカイフレア!? アンジェリーナちゃん!? どうしてここに!?」

 

 

 

 私たちの乱入に驚くしっぽ。化け物に対する攻撃の手は緩めず、私は彼女の疑問に答えました。

 

 

 

「任務を終えたはずのあなたがまだ戻ってこないのと、先程ここでレユニオンが活動しているとの報告がありましたわ。故に救援として私と彼女であなたの捜索に参りましたの」

 

「周囲を警戒しながらここまで来たけど、肝心のレユニオンは見つからなかったんだ。でもまさか、こんな生物がいるなんてね……」

 

 

 私の後に呟いたアンジェは即座に先ほどの作戦に行動を移し始めましたわ。私はあの化け物の注意を引くだけですわ。

 

 

 

 

 

 

 ……それにしてもこの化け物、思った以上に耐えますわね。あれだけの攻撃を喰らいながらも、まだ立っていられるなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ならば奥の手を使わせていただきましょう! 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなかしぶといですわね……。こうなったら……」

 

「! 待ってスカイフレア! 彼は──―」

 

 しっぽが何かを言ってるようですが、より強力なアーツの詠唱に集中していた私はその声がよく聞き取れませんでしたわ。そして詠唱を完了させた私は一番強力なアーツを化け物にめがけて放ちましたわ。化け物は私が何をしたのか気になって空を見上げると、空から落ちてくる隕石に気づいて動揺していましたわ。

 

 

 

 ………………おや、人質のつもりなのか化け物がしっぽを確認しようと余所見をしていますが、それも無駄なことです。

 

「スカイフレアさん! プロヴァンスさんの救出を成功しました!」

 

「よくやりましたわアンジェ!」

 

 

 無事作戦が成功し、アンジェがしっぽ達を彼女のアーツで浮かせて救出を済ませました。本当に彼女のアーツは汎用性があって便利ですわね。

 

 

 

 ……それにしてもしっぽの様子がおかしいですわね? 救助に成功しているはずなのに、彼の方を見ながら何かに慌てているような……。

 

 

 まぁそんなことよりも化け物さん、あなたの目論見が外れて残念ですわね。でもこのまま慌てふためいていいのかしら? 

 

 

 

「余所見をしている場合かしら? そんなことをしていましたら、空があなたを焼き尽くしますわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ最も、あなたが何をしようとも、既に手遅れ。あなたの命もここまでですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 隕石が化け物に衝突したその瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眩いほどの蒼い白光が私の視界を塗りつぶし、耳がつんざくほどの爆音と肌を焼き焦がすような爆風が、爆心地から遠くから離れていた私にも襲い掛かりましたわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 やめて! スカイフレアのアーツで、フェストゥムを焼き払われたら、せっくんの肉体と精神まで燃え尽きて、憎しみの感情に堕ちちゃう! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お願い、死なないでせっくん! あんたが今ここで倒れたら、この小説の主人公はどうなっちゃうの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コアはまだ残ってる。ここを耐えれば、物語は進むんだから! 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第6話、漂流 ~ひんし~

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 




まぁ生きてるんですがね、初見さん(無慈悲なネタバレ)


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第6話 漂流 ~ひんし~

スネ夫古龍で予定狂わされたので初投稿です。

そう言えばbeyondの7、8、9話の劇場公開日が決まりましたね。もう話タイトル的にヤベーのがありますが、心が砕けぬよう私はしっかりと見に逝ってきます。もう6話で心が砕けまくったんや…。

じゃけん画面の兄貴姉貴たちもしっかり劇場で見ましょうね~


追記:よく見たらバーがオレンジになっていました。投票してくれた兄貴姉貴たちありがとナス!これからもじっくりじわじわと良い小説を書いていきますぞ。


     

 

 

 

 

「お前は何者だ? 何処からここへ来た?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前にぞろぞろと並び立つ雪のように真っ白な外套とフードを纏った謎の集団。彼らの先頭にはフードを下し、雪が具現化したかのような冷たい印象を与える兎耳の女性が目の前の存在に問いかける。口調こそは穏やかのものの、彼女からは未知な物に対する不審と、侵入者に対する警戒と殺気がこの空間に立ち込められていた。

 

 

 

 

 俺ことフェストゥムのせっくんは今、再び命の危機に立たされていた…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………えっ? そんなことより俺が生きていたことに驚いてる? 前話の後書きでネタバレされてるからそうでもないって? そう……(無関心)。

 

 まぁ現在、何でこんなことになっているのかきちんと回想を流してやるから見とけよ見とけよ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―数時間前―

 

 

 目前に迫る燃え盛った隕石。あの時俺は何も抵抗できないまま隕石に直撃し、この身の限りを炎上してあっけなく散る──────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……っなわけないだろ! いい加減にしろ! 馬鹿野郎お前、俺は生き延びるぞお前! (天下無双)

 

 

 

 ってなわけで隕石に直撃する直前、まず俺は咄嗟の判断でワームスフィアを高密度に圧縮し、楔状にして放つワームヴェッジを隕石に撃ち込んだ。そして食い込ませた隕石の内部でヴェッジを起爆させることで、直撃する前に隕石を爆発させることでそのまま直撃するよりも受けるダメージを減らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 と言っても至近距離で爆発をもろに受けたことと変わりないし、爆風によるダメージは結構痛かったよ(小並感)

 

 

 

 

 

 

 

 後は爆炎と爆音に紛れながら近くの湖にシュゥゥゥ──────ッ!! 超! エキサイティン!! な勢いで飛び込んだ。爆炎と爆音のおかげで姿を視認させないわ、湖に飛び込む音を掻き消してくれるわで助かったゾ。ピンチはチャンスってそれ一番言われているから。

 

 ちなみに湖の存在を思い出したのはワームヴェッジを撃ち込んだ後だったゾ。あの猫耳の奇襲によってめちゃくちゃ動揺していたからすっかり頭の中から抜け落ちていたのもまぁ、多少はね? 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで湖に飛び込んだ俺は湖の中に潜伏していた。しかし、潜伏したはいいが、この後どうするべきかと周囲を見渡していたら、湖底にどこかへ通じる穴が開いていたゾ。いわゆる湖底洞窟ってやつだな。

 

 

 これを発見した俺は少し考えた後、とりあえずこの洞窟に入ることにした。このまま水面に上がってもまた猫耳に攻撃されるだけだし、プロヴァンスのことはあのままあいつらに任せれば問題ないから、フェストゥムのせっくんはクールに去るぜ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………まぁ、プロヴァンスとはちゃんとお別れをしたかったけど、生きていればどこかでまた会えるでしょ。元々一人でいることには慣れてるし、へーきへーき。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それなのに、何か心がすごい痛いゾ……? これが、悲しみ……? (カァーナーシィィィーミノォー、ムクォォエトゥ-)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心にぽっかりと空いたような気分になりながらも水で沁みる火傷の痛みを感じつつ、俺は体を無理にでも動かして湖底洞窟に入っちゃっ……たぁ! 

 

 それにしても、この体が既に水中に対して適応していたのはありがたかった。確かROLまではフェストゥムって海水に弱くて、代謝機能を獲得するまでは海水に触れると異常結晶化による自壊が発生するはずだったからな。そもそもフェストゥムが淡水も駄目なのか、この湖が海水なのか淡水なのかはわからんけど、今思えば俺って一か八かの賭けをしていたんだな。賭けには勝ったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 …………それにしてもあの猫耳め、ボコスカと炎を浴びせてきやがって。めっちゃ痛かった(小並感)、人間の姿のままだったら死んでたゾ。フェストゥムの体が強靭で助かった……。

 

 

 

 ……あれ? 人間の姿だったら攻撃されなかったかもしれないから、実のところフェストゥムになってしまったのはかなり不幸である可能性が微レ存……? まぁいい、あの猫耳今度会ったらびっくりさせたる! 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁクソ、体中があちこちと痛ぇ…………。早く残ったエネルギーを回復に回さないとマズイなこれ。さっさと治療しないと…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そんなわけで、おじさんにぼこぼこにされたひでのごとく重傷を負った俺は、体の傷を癒しながら湖底洞窟に繋がってた地下水脈へと辿り着いた。その後櫂も掴めないまま流れに身を任せて適当に移動していたら何処か見知らぬ場所へと辿り着いた。水脈内は暗くてよく見えにくいおかげで岩や壁にぶつかったり、場所も把握できていないおかげで途中5回くらい行き止まりに阻まれて頭にきますよ! まったく、出口はどこ……? ここ……? …………ん? 

 

 

 迷いこんだ果てに辿り着いたこの場所だが、妙に水中が明るいことに違和感を覚え、訝しげに上を見上げると、水面から光が差し込まれていた。

 

 

 

 おっしゃ! これはおそらく出口だ! これはもう浮上する以外の選択肢はねぇな? ずっと泳いでいたから体がチカレタ……。そんなわけで今すぐここから浮上じゃい! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イキますよー、イキますよ、イクイク…………、ヌッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザパァンと音を立てながら水面に浮上すると、そこは見たこともない洞窟のような空間だった。先ほどの光の正体を調べるため天井を見上げると、幻想的な青白い光が夜空の星々のように輝いていた。なんか芸術的(+1145141919点)

 

 

 でも光をよく見てみると、なんか蠢いていることに気づいてかぁっ、きもちわり! やだおめぇ……(-1145141919点)

 

 

 冗談はここまでにして、天井にいるのはおそらく何かしらの発光生物なんだと理解出来たゾ。確か地球ではツチボタルっていう生物が洞窟内で発光しているのを聞いたことがあるからそれに似た仲間かなんかでしょ?(適当)

 

 

 

 

 さて、水面から顔を出しながら周囲を見渡してみると何かどっかに続いていそうな通路の入り口があったゾ。おっ開いてんじゃ~ん! 

 

 

 じゃけん陸尉に上がってから穴に向かって突撃―!をする前に、探索準備として今持ってるアイテムを確認しないと。RPGでも荷物確認は一番大事だって、それ一番言われているから。それに湖に飛び込む直前、持ち物は全部体内に収納したとはいえ、さっき水の中にいたから異常でもないか確認しないと。特にタブレットは今の俺にとっては最後の希望だから壊れないでくれよな~頼むよ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥムアイテム整理中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荷物を確認した結果、タブレットは特に異常もなくきちんと稼働していた。やったぜ。あと搔き集めたぼろ布や戦利品のフードを上手く縫合して、俺専用の特大ローブをクラフトしてやったゾ。ちなみに縫合用の糸は戦利品には無かったので、代わりに体の一部を使い、フェストゥムでおなじみのパスタで縫合したゾ。出来上がりは自分でも惚れ惚れするくらいの匠の技に仕上がっているって、はっきりわかんだね。これでこの奇抜な見た目を何とか誤魔化せるな! 

 

 

 ……それでも見た目が怪しいことには変わりないんですがね、初見さん。しかも宙に浮いているせいでなんか幽霊っぽく見えてるから、一部の人にとっては見ただけでSAN値直葬不可避だろコレ。だから幽霊が苦手な兄貴姉貴たちは今の俺の姿をバッチリミナー! バッチリミナー!(ゲス顔)

 

 ついでに天井にいるツチボタルもどきを何体か同化して、某転生したスライムみたいに発光能力を獲得して懐中電灯代わりにしたゾ。これで暗い洞窟でも視界が確保できて完璧やな! 明かりが無いと事故が多発しやすいからまっ、多少はね?  見えねえってのは恐えなあ……(ねっとり)

 

 

 

 というわけで視界ヨシッ! 装備ヨシッ! 全部ヨシッ! (ガバガバ現場猫)

 

 

 

 さぁ、(洞窟の)中へ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム洞窟探検中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、道中分かれ道で迷ったり原生生物の襲撃があったりもしたが、しばらく洞窟の中を進んでいくと外に出られた。すっげえキツかったゾ~。

 

 迷うのはまだいいけど、ここの原生生物はすごく厄介なものしかいなかった。異常なくらいにまで硬い鋼の甲殻類な奴だったり、以前荒野で同化した奴(プロヴァンスからオリジムシだと教えられた)に似た奴がいたけどそいつとは違って強力な酸をぶっかけてきたり、果てには自爆してくる蜘蛛っぽいやつとかもいたゾ。最後のお前ボムかよぉ!?(FF並感)

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ全部倒せたからモウマンダイ。それに倒す際、ただ同化するだけじゃなくて色々と試したかったこともできて大満足だったゾ。

 

 

 

 まずは戦利品のボウガンや拳銃、色々な道具を同化して、エウロス型みたいに体の一部を武器に変えて攻撃できるか試してみたら、上手くできた上に、あいつらが使っていたのよりも火力が高かった。うっかり全力で撃ったら発砲音や破壊音が洞窟全体に鳴り響いた、ヤダ怖い……。

 

 

 

 その代わり体が変な異物感に襲われた。多分マークザインみたいに『自身が違う存在になる感覚』に近いもんだと思う。実際ザインも武器をそうやって同化することで機体の一部として扱い、火力を向上させていたし。

 

 

 

 

 あと、拳銃を同化したおかげでこの世界の銃の構造がだいたいわかったのと、アニメから興味を持って調べた現代知識による銃の知識を理解していたおかげで、ちょっと応用すればライフルみたいな形状に変化させることが出来たゾ。同化した道具の中には双眼鏡みたいなのがあったから、それを利用してスコープもつけれるようになったから狙撃も可能だ。でもあっちで狙撃なんてしたことないので腕前はクソザコナメクジなんですがね、悲しいかなぁ……。

 

 

 

 

 一方原作の武装であるガルム44のような機関銃タイプに変化させること出来なかった。連射機能についての知識があっても、感覚の方がんまぁそう……よく分かんなかったです。どっかで連射式の銃とか同化してぇ~な~、俺もな~。

 

 

 

 

 

 次に剣とかの近接武器をザインみたいに同化して力を流し込むと、ボロッちい武器でもあの硬い甲殻類がバターのように切れるくらいにパワーアップしたゾ。その代わり武器が一回使ったら砕け散ったけど。おそらく強度のある武器なら耐えられるかもしれないけど、武器の寿命を一気に縮めかねない技ですねクォレヴァ……。考えて使わないと原作の鏑木君みたいに武器無し状態になって窮地に陥っちゃうから無駄遣いはやめようね! 

 

 

 

 

 

 

 さて、ここまで来ると原作を知っている人にとっては分かる通り、SDP(超次元現象)の一つである増幅(アクセル)じゃないかこれ。いや、SDPあるのはありがたいし、増幅も強力だからいいんだけど、他の能力も使えないんですかね? 一応SDPはフェストゥムの持つ力でもあるから、他の能力が使えてもおかしくないんですが。あとフェストゥムだとは言え、力を使い過ぎてデメリットが無いか(原作で増幅なら過眠症になってしまう)心配だゾ。

 

 なんやかんやで迷いながらも出口を求めて洞窟の中をぐるぐるしていると、外からの光が差し込まれている出口らしき穴が見つかって、見つけたワシ(53歳)は出口に向かって突うずるっ込んで外へ出た。いざ、未知の世界へ────―、

 

 

 

 

 

 ヒュゥゥゥゥウ──―!(風くん渾身のアピール)

 

 

 

 

 

 うん、外に出れたのはいいんだが、気温がクッッッッソサムゥイ! あまりの寒さに周りを見渡すと、雪降ってるじゃない! 寒いと思ったわぁ^~。……ってカッチャマをしてる場合じゃねぇや、どうやら俺は雪国の方へと迷い込んでしまったようだな。

 

 さて、あたりを見渡してみるとこ↑こ↓はどこかの村のようなんだが、いかんせん人っ子一人もいない。おそらく今は使われていない廃村なんだと思われる。そしてさっき出てきた洞窟を外から見ると、洞窟の正体は草木の無い巨大な寂れた山だった。そういえば道中何かを採掘された痕跡があったような気がするから、この山はきっと何かの鉱山だったんだろう。

 

 

 

 

 

 ん? なんか急に吹雪いてきて気温が一段と寒く……ファッ!? 体の一部がなんか凍ってきてる!? しかも超スピード!?(レ)な勢いで凍っているし、あかんこれじゃあ凍死するぅ! 

 

 

 

 

 

 のんきに村を見渡していると、突然起きた不可解な現象が俺に襲い掛かる。俺は急いで代謝機能を上げ、体温を保つようシバリングをし始めたゾ。体の負荷を度外視した熱を生み出したため、途轍もない疲労がまだ回復しきっていない肉体に襲い掛かった。だが、負担を掛けたかいもあって体温は灼熱にも近いレベルに上がり、急上昇させた体温によって体に纏わりついた氷はみるみると溶けていき、体の表面と周囲の地面からは溢れんばかりの水蒸気が立ち込めていた。

 

 氷が解け、再び凍り付くことがないと安堵した俺だが、どうやらこの現象を起こした元凶は俺に一時の休息をくれることさえも許さなかった。突然どこからか風を切るスピードで、俺に向かって何かが飛来してきた。

 

 

 

(おっぶぇ!?)

 

 

 

 

 水蒸気で周りが見えない中、俺は咄嗟の判断で読心を活用することで飛来物の射出位置を予測し、反射的に腕を鞭状に変化させ、それを地面に叩き落とした。叩き落されたものを見ると、それは黒く半透明に煌めく鋭い氷柱(つらら)のようなものであった。

 

 何故氷柱がこんなところに? と疑問に思っていると、こちらに近づいてくる雑踏が聞こえてくる。水蒸気が立ち込める中、足音がなる方へ振り向くと、そこには全身真っ白な外套を纏った人間の集団がこちらの姿を見据えていた。

 

 

 

 というか人いたのかよぉ!? ステルス性能高スギィ! 

 

 

 

 

 アホなこと考えていると集団の先頭に立つリーダー格と思われる女性が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は何者だ? 何処からここへ来た?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう呟く女性からは射殺すような視線をこちらに向けながら、強烈な敵意を露わにしていた。

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideプロヴァンス

 

 

 

「あ……、ああ……」

 

 

 かすれた声を発しながら地面にへたり込む僕の目の前には全てを焼き尽くした跡が残る焦土のみ。そこには先ほどまで、お互いを理解するために対話をしていた存在がいた。でも、彼はあの爆炎の中に飲み込まれ、爆炎が消え去ったあの場所には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼が、いなくなってしまったという事実しか残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 虚ろな目で燻る焦土を見る僕の隣には、グレープさんがか細く切ない声を出しながら僕と同じように焦土をじっと見据えていた。

 

 

 

「ふぅ、あれほどの火力を叩き込めば流石に焼き尽くされているでしょう…………」

 

 

「でもスカイフレアさん、あんなに派手な攻撃をやったらここに居ると報告にあったレユニオンに気づかれるんじゃ……」

 

 

「だからこそ、今すぐここから撤収しますわよ。それよりもしっぽ! 無事ですの!?」

 

 

 

 救援に駆けつけてくれた彼女たちは僕の元へと向かう。彼女達には何の落ち度もない。ただ帰還に遅れていた僕の身を案じ、命がけでここまで来てくれたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………でも、心の奥底から湧き上がる汚泥のような感情はどうすればいい? 何処にぶつければいい? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕は彼のように、目の前の理不尽に対し心穏やかでいられない。このどす黒い感情に身を任せるまま僕はすっとその場から立ち、

 

 

 

「────―スカイフレアァァァァァッ!!!」

 

 

 

 今まで発したことの無いぐらいに荒げた声を上げながら、彼女_スカイフレアに向けてボウガンを突き付ける。彼女たちは突然予期せぬ行動を取る僕に対し目を見開き、肩を強張らせる。

 

 

 

「プロヴァンスさん!? 一体何を!!?」

 

「しっぽ! 気でも狂ったのですの!?」

 

「どうして!? どうしてせっくんを攻撃したんだっ!!」

 

 

 

「せっくんって、さっきの……?」

 

「あなた、あの化け物に襲われていたのではないのですの?」

 

「それは違うよ! むしろ、彼は僕たちをレユニオンから助けてくれんだ! なのに……」

 

 

 

 トリガーに指を添える。少しでも力を入れれば、彼の仇である目の前の彼女の命を奪うことが出来る。しかし心の中では躊躇いが残っているのか、僕は指を引き金に添えたまま、憎しみと理性の鍔迫り合いに苦しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「──────────っ!? 」

 

 

 

 

 

 

 

 やがて憎しみが理性を超え、声にもならない叫びを上げながら意を決して引き金を引こうとした瞬間、服が引っ張られる感触が感じられた。感触の先を見るとグレープさんが僕の服を加えて引っ張っていた。

 

 

 

「っ!? グレープさん、止めな────っ!」

 

 

 言葉を言い切る直前、僕は止めようとしてくる相棒の顔を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうやめて、彼はそんなことを望んでいない」

 

 

 愁いを帯びた表情でそう伝えるかのように僕のことを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ああ、僕だってわかっているんだ。彼がこんなことを望んでいないと。優しい彼は彼女たちを憎んでいないんだろう。そして彼女たちの行動は何も悪くないということも。それでも、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グレープ、さん……。うう……、うわああああああああん!!!」

 

 

 握っていたボウガンはするりと手放される。僕はグレープさんに抱き付き、涙が枯れ果てるまで泣き続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼を失ったという現実。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕はそれを受け止めるだけで、精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 命からがらとスカイフレアの猛攻から逃げ、生き延びたフェストゥムのせっくん。彼が地下水脈や地下洞窟に迷いながらも辿り着いたのは寂れた寒村。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし一難去ってまた一難。彼の目の前には謎の集団がせっくんに襲い掛かる! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 交渉の余地もなく敵意を向ける彼等にせっくんが取る選択は!? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こうなりゃ一か八か、やってみるしかない!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第7話、雪怪 ~スノーデビル~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 




数多のドクターの心をバラバラに砕け散らせた白兎降臨。


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第7話 雪怪 ~スノーデビル~

せっくんいつもボロボロになって不遇な感じがするけど、戦闘スペック自体ならアークナイツ世界では最高クラスなんだよなぁ…。まぁ元は争いとは無縁な場所で過ごしていた人間で、この世界での倫理的な感性の違いで精神的に苦労しているから多少はね?




 一難去ってまた一難なフェストゥムライフ、はーじまるよー。俺のスローライフどこ……ここ……? 

 

 

 

 

 さて、なんか白づくめの集団が敵意剥き出しでこっちを見てるが、落ち着け俺。まだ慌てる状況じゃないゾ。ここで慌てたら余計に怪しまれるからな。先程命からがら逃げ延びたのに、また攻撃される展開はもう十分堪能したよ……。

 

 だが、このフェストゥムのせっくんは2度も同じ過ちは繰り返さないゾ。前回とは違い、今回はタブレットでこちらの意思を伝えることができるからな。これで敵意は無いことを伝えればどうとでもなる! 勝ったなガハハ! 

 というわけで、早速タブレット君の出番だz──

 

 

 

 

 

 

 バギィ!! 

 

 

 

 

 

 

(はっ?)

 

 

 タブレットを懐から取り出そうとした瞬間、何かが目に見えない程のスピードでこちらの方へと襲い掛かる。それに気づいた時には何かの破壊音がこの空間に響き渡った。物凄く嫌な予感を感じ取りながらも、おそるおそる音の鳴った自身の懐の方へと視線を向ける。そこには氷柱で見事に画面が貫♂通され、無残な姿に変貌したタブレット君があるじゃないですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………ほんぎゃあああああ!!? 最後の希望(タブレット)がああああああ!!?   

 

 

 

 

 

 

 

 

「妙な真似をするな。先程の質問に答えろ」

 

 

 

 先程の一撃を放ったであろう目の前の兎耳が淡々と言い放つ。答えたいからタブレットを取り出そうとしたんだよ! それを無残な姿にしやがって、あーもうめちゃくちゃだよ。

 

 

 ってか唯一の対話手段が潰されちゃったよ。誰だよ勝ったなとか言ったやつ! これじゃあ前回と変わりないわね、ふざけんな! (発狂寸前)

 

 

 

「……あくまで沈黙を続けるつもりか? 先ほどの音はお前の仕業だろう」

 

 

 

 予想外の状況に困惑している中、こちらが喋れないのを余所にあっちがなんか変なことを言ってる。音って何のことだよ? 

 

 せめてものジェスチャーとして、俺は知らないと言わんばかりに首をかしげることで彼らに意思表示をする。その態度が気に食わなかったのか、兎耳が眉間にしわを寄せ、より不機嫌な表情をしていた。

 

 

 

「とぼけるつもりか。先ほどこの廃村に私たちが辿り着いた時、鉱山から凄まじい爆音と振動が鳴り響いた」

 

 

 

 あっ……(察し)

 

 

 

「あれほどの音と振動は今までの軍の兵器ではありえない威力だ。私たちはウルサスの軍がここで秘密裏に開発している特殊な戦略用兵装ではないかと疑い、その真偽を確かめるために先ほど潜伏をしていた。そして待っていたところで鉱山から出てきたのはお前だ。今一度問う、お前は何者だ?」

 

 

 

 えっとつまり、先ほど俺が増幅による試し撃ちで鳴り響いた音に警戒して、彼女達は鉱山から出てきた俺をウルサスっていう所の軍人かどうか疑っているってことか? 

 

 

 

 

 

 

 

 ……うん、軍人ではないけど完全に原因は俺の方ですわ。だったら尚更誤解と解かないと(使命感)。でもタブレット壊れているし、ジェスチャーで何とか伝えられるかこれ? 

 

 

 できることなら戦いたくないんだよなぁ。こっちの疲労も一つの理由だけど、彼らの心を読んでも悪意が感じ取れないから多分根は良い人達なんだと思う。悪意があるなら殺すことも辞さないけど、そうでないなら平和的に行きたいのが俺の主義なんで。あと殺害はこっちの気分が気持ち悪くなるので、できれば殺し合いはしたくない。こちとら人畜無害な一般ピープルなんだよ! 

 

 

 

 

 

 

 ……え? じゃあなんであのレユニオンの汚っさん達は躊躇無く殺せたのかって? あれはもう正当防衛に入るし、生かしたところでこちらにまた危害を加えそうだったからな。某ギアス使いの皇帝だって言ってるじゃないか、撃って良いのは、撃たれる覚悟がある奴だけだって言う名言。

 ちなみにアレ、元ネタはどっかのアメリカの小説にあるらしいゾ。詳しく知りたい兄貴姉貴は自分で調べて、どうぞ。

 

 

 

「…………まぁお前がウルサスの軍人かどうかはどうだっていい」

 

 

 

 ん? なんか流れ変わったゾ。これはワンチャン行けますかね? 完全勝利するためにUNICORN流さなきゃ……。

 

 

 

「……だがお前が今纏っているそのローブは同胞が着ていたものと似ている。どこで入手したのかは知らないが……」

 

 

 

 あれ? 同胞って……、もしかしてこいつらレユニオンかよぉ! しかもなんか目が据わってきてませんかね? 

 

 

 

「そのローブがもし同胞を殺し、奪った物ならば、お前を野放しにするのは危険だ。これ以上同胞に危害が出る前に、お前をここから生きて帰す訳にはいかない。……悪いが、ここで死んでもらう!!!」

 

 

 アーアーアーアー♪ アアアアーアー♪ アアアアーアーアー♪(完全敗北UCバージョン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!! 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 やっぱりこんな展開になるのかよおおおおおおおおお!!! そして話し終わった瞬間、こいつらいきなり襲い掛かってきてるし、お慈悲^~! 

 

 

 

 ちょ、なんか魔法みたいのが直撃して腕がまた凍った!? もう一回溶かさないと。……ってなんか長い刀持った奴が来たー! 回避―! 

 

 

 

 ってああああああ!!! 腕が切られてどっかに飛んでったあああああ!!! 痛いんだよおおおおおおおおおおおお!!! 早く再生しなきゃ……って、今度は氷柱が飛んできたー! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ふざけんじゃねぇよオイ! 誰が攻撃していいっつったおいオラァ! 

 

 

 本気で怒らしちゃったねぇ! 俺のことねぇ! おじさんのこと本気で怒らせちゃったねぇ! 

 

 

 

 

 こうなったら相手してやるから、じゃあオラオラ来いよオラァ!(逆ギレ豹変)

 

 

(≧Д≦)ンアッ──────!!!!(絶命)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム戦闘中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヌッ! ……ウッ、ハァ、ハァ、ハァ……。凍らされたり、腕が何本も落とされたり、氷柱で滅多刺しにされたりしたけど、どうにか奴らの猛攻を凌ぎきったゾ。というかあっちの攻撃が激しくて防戦一方だったんですがそれは。付け入るスキ無さすぎぃ!! 

 

 だけどあちらさんも流石にあれ程の猛攻をしたのか、疲れが見える見えるな状態になってる。だが気を緩めるにはまだ早い。いかんせん逃げるには奴らからどうにか隙を突かないと……。

 

 

「はぁ……、はぁ……、あいつ、まだ生きてんのかよ……」

 

 

「まさか、俺たちの連携を耐えきるなんてな……」

 

 

「凍結のアーツを何度も喰らってるのに! ……姐さん、どうします?」

 

 

「……まさか、ここまでしぶといとはな」

 

 

 あちらさんの会話を聞く限り、どうやらこっちの生存が想定外に思われているな。確かに読心で彼らの動きを読んでも、奴らの動きが速すぎて躱しきれない部分があった。人間のままだったら命がいくつあっても足りない状況だったな、フェストゥムの強靭さにまた感謝しないと。

 

 それと俺よりも遥かに戦い慣れている感じがしたから、おそらくこいつらって戦闘のプロなんじゃないか? フェストゥムとはいえよく生き残れたな俺。

 

 

「しかたない……、全員急いで安全圏まで下がれ。全力を出す」

 

 

「!? でも姐さん! それだと「いいから下がれと言っている!」っ! わかり……ました……。全員! 姐さんから離れろ! 巻き込まれるぞ!」

 

 

 ? なんか様子がおかしい。優勢なのはあっちなのに味方が兎耳から離れていく。それに兎耳の周りにエネルギーが集まってきているような……。

 

 

「できればこれは使いたくなかった。下手をすれば私の兄弟姉妹にも被害が及びかねないからな」

 

 

 兎耳が手を上空にかざす。

 その時、今まで感じていた以上の冷気が彼女から放出され、彼女の周りにあるもの関係なく襲い掛かった。周囲の建物や木々など、村にある物が瞬時に凍っていく。この村を、いや、あるいは国一つくらいは凍らせてもおかしくない程の冷気がこの空間を支配する。

 

 

 

 急激な変化に動揺する俺は何か嫌な予感を感じ取りふと、兎耳の頭上を見る。そこには膨大な冷気が巨大な球状の塊となって渦巻いていた。ってボーっとしてる場合じゃねぇ! 見るからに当たったらお陀仏なもんが出来て来てるんですけどぉぉぉぉぉ! 

 

 

 

 やべぇよ……やべぇよ……。疲労と冷気で動きが鈍くなっている今、あんなもん回避できそうもない。苦肉の策として残った力を振り絞ってアレに抗う方法もあるが、今の俺の状態でアレに対抗はできるか? 

 

 

 

「私に全力を出させたのは褒めてやる、お前は良い戦士だった」

 

 

 そう言い放つ兎耳は頭上のエネルギーを溜め終えたことを確信し、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せめてもの手向けだ、受け取れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強烈な冷気の塊を俺に向けて投げつけてきた。

 

 

 アカン、迷ったせいで直撃を避けようにも間に合わねぇよこれ。物凄い勢いで地面を破壊しながらこっちに向かって来てやがる! 

 正直ここまで来ると、切り抜けるにはもう真っ向から打ち破るしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……あーもう! こうなりゃ一か八か、やってみるしかない!!)

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 やけくそ交じりに心の中で悪態をつきながら、俺は右手の掌で小さなワームスフィアを発生させた。それを目の前に迫るエネルギーみたいに球体に保ちながら渦巻くようにエネルギーを回転させる。そして残った力をワームスフィアに凝縮させることで、某忍者漫画の螺旋丸もどきを何とか生成させた。

 

 さらに右手に結晶を生み出すことで増幅を発動させ、威力を底上げさせる。これで見た目以上に凄まじい破壊力が期待できるはずだ。あとはタイミングを合わせるだけ。

 

 

 

 即席の対抗策を用意した俺は、目の前に迫り来る冷気の塊をじっと見据えながら、反撃のタイミングを待つ。

 

 

(迎撃地点まであと5、4……)

 

 

 

 吹き荒れる暴風と共に凍てつく冷気が肌を刺すような感覚に襲われる。塊は地面を粉砕する音を立てながら迫ってくる。少しでもタイミングを間違えれば、俺の命はこの吹雪によって確実に消え去るだろう。

 

 身に纏っていたローブも暴風によってバタバタと音を立てながらはだけていき、いつの間にか自身の姿が露わになっていた。そして体もいつの間にか再び凍り付き、体を動かすのもやっとの状態。特に翼のオブジェは凍り付いていた一部分が砕けて破損していた。凍結による同化現象、これほどとは……。

 

 

 

 だが今はそれらに気を取られるわけにはいかない。頼む俺の体、もうちっとだけ耐えてくれ。

 

 

 凍った体を無理矢理奮い立たせ、右手に仕込んだワームスフィアをあの冷気の塊に撃ち込む態勢に入る。塊が迎撃地点に入るまであと3、2、1……、

 

 

 

(…………ゼロッ!!!)

 

 

 

 次の瞬間、荒れ狂う吹雪に向かって俺はワームスフィアを叩きつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────―ッ!!!!!!!!!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 白と黒、二つのエネルギーの衝突。

 

 

 

 

 

 暴風のように吹き荒れるエネルギーの流れ、それに伴い耳をつんざくような何かの咆哮に近い音がこの空間に響き渡る。

 

 

 

 

 二つのエネルギーは互いに食らいつかんとぶつかり合う。

 

 

 最初は巨大な白が矮小な黒を呑み込まんとしていた。しかし、黒が白を徐々に喰らい始めるかのように、白を無へと帰していき、白の力を弱らせる。

 

 だが、黒を生み出した彼の体はもう限界へと近づいていた。損傷によって鈍く輝く金色の肉体は、今にも膝をつかんとするばかりに地面に押し込まれていく。衝撃波によって既に彼の体の大部分は砕け、バラバラになっていた。

 

 しかし、彼の心の中で燃え盛る闘志はまだ消え去っておらず、彼は諦めていない。負けるわけにはいかないと。この一撃を耐え、生きるために。大地を踏みしめるかのごとく屈しかけていた体を再び立ち上がらせ、抵抗を続けていた。

 

 

 

(──────―っ! …………無に、帰れぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

 

 

 体中の全ての力を振り絞らんと心の中で叫ぶ。同時に、それに呼応するかのように右手の結晶にも変化が起きた。手だけ覆われていた結晶が腕全体にまで広がり、結晶が放つ光はより強く輝きだす。

 

 

 輝きは強くなると同時に、黒はより貪欲に白を喰らい尽くしていく。押されていたはずの力が、対等へと近づいていく感触を味わいながら彼は白を押し切らんとする。

 

 

 あとちょっと、そう思った瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────―パリィンッ!!! 

 

 

 

 

 

 

(──────────ッ!?!!!)

 

 結晶が右腕ごと跡形もなく砕け散る。右腕が砕け散ったことで残された肩から大量の鮮血を撒き散らす。強烈な痛みを感じながらも存在しない右腕を見た彼は最悪な予感が脳によぎる。

 

 

 

 右腕が砕け散ったことでワームスフィアは消失し、均衡が破れたことによって白はそのまま彼を呑み込む。彼の命という灯を凍てつかせるために。

 

 それを見た彼はこう思ったであろう。

 

 

 

 

 

 

 

(あっ、これダメなやつだ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 もはや避けようのない運命を直視したおかげか、彼の思考は不思議と澄み渡っていた。絶望もせず、自分の結末を淡々とした感情で目の前の現実に受け入れられたのは果たして救いだったのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼の最期の視界には、

 

 

 

 

 

 

 

 

 命の息吹も感じられない白だけしか映らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、やったか……?」

 

 

 その場に倒れ伏した私の目の前には巨大な氷塊がそびえ立つ。先ほど未知の存在を葬るために一時的に抑えていた冬を解き放った私だが、その代償として途轍もない疲労感に襲われていた。

 

 

 全く、ただの調査がどうしてこんな死闘へとなってしまったのか。心の中でそう独り言ちる私は先ほどまでの出来事を思い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は兄弟姉妹と共に軍によって滅ぼされ、そのまま遺棄された村の調査に向かっていた。この村は私がかつて居た場所と同じように源石採掘の鉱場であることを事前に調査をして知った。軍に滅ぼされてから数年も経っているためここに居た生存者はもはや絶望的だ。

 

 だが、今回の目的はそれではない。流浪の果てにこの村で一時避難している感染者の調査、保護が今回の目的だ。

 

 感染者は世界中で迫害を受けている。彼らは安住できる居場所が欲しくても、国や政府、非感染者による迫害によってそれすらも叶わない。故に行く当てもなく世捨て人のように世界を放浪する感染者は珍しくない。レユニオンはそんな彼らを共に戦う同胞として勧誘、受け入れを行っている。いずれ身を落ち着ける場所を手に入れるために。

 

 

 

 そうしてこの村に辿り着いた私たちだが、村に入った直後に突然大きな爆発音と振動が村にある鉱山から鳴り響いた。急な事態に私たちは即座に周囲の警戒をした。もしかしたらここは軍が秘密裏に兵器実験を行っている場所ではないかと。

 

 急遽私たちは鉱山の張り込みをし、先ほどの首謀者が出てこないか村に潜伏していた。もし潜伏して時間がある程度たったら斥候を送り偵察をするつもりだったが、予想より早く鉱山から何者かが出てきた。ボロボロのつぎはぎなローブを纏った何かだ。“何か”と言うにも奴には足が無く、ふわふわと宙に浮いていた。あれは何だ? 見たこともない存在を見ても私は顔色を変えずにいたが、内心驚いていた。そしてそれを見た兄弟姉妹も奴の姿に驚き、何人かは「姐さん! あれ絶対お化けだよー!?」と小声で泣き喚いていた。

 

 

 

 流石に軍の人間には見えないが、それでも奴を見逃す理由は私達には無い。もしあの現象が奴によって引き起こされたのならば、ここで何をしていたのか問いたださなければならない。私は奴を逃がさないためにアーツで四肢を凍らせて動きを封じようとした。奴の体は凍り付いたが、異変に気付いた奴が取った行動に私は驚愕した。まさか体に付いた氷を体温の熱で溶かしてしまう荒業に私は目を疑った。加減をしているとはいえ、私のアーツは生半可な熱のアーツでは溶かせないほど強力な力だ。

 

 

 もしいるとするならば、私の知っている限りはタルラくらいしかいない。レユニオンのリーダーで私とは対をなす強大な灼熱の力を持つ彼女なら氷を溶かすどころか、そのまま私に反撃を加えてくるだろう。だがそれを易々と溶かす奴は何者だ? まさか彼女と同等の力を持つ存在がここに居るとは……。

 

 

 私は底知れない恐怖を感じながらも奴の危険性に対しすぐさまアーツで生成した氷柱を奴に放った。しかし軌道を読まれたのか寸前のところで氷柱が叩き落される。

 

 おかしい、吹雪で視界が悪く何も見えないかつ、音も吹雪の音で聞こえづらい筈だ。体捌きも素人臭く先ほどの攻撃を避けられなさそうな筈なのに、当たる寸前でのところで対処された。奴はいったい何者なんだ? 

 

 

 

 そう思った私は兄弟姉妹と共にすぐさま奴を取り囲み、奴の動きを警戒しながら奴に問いかけた。

 

 

 

「お前は何者だ? 何処からここへ来た?」

 

 

 

 私の問いかけに対し、奴の答えは沈黙……いや、懐で何か探っていた。妙な真似をしていたので懐に目掛けで氷柱を飛ばした。そしたら奴は氷柱で貫かれたタブレットを見てすごく動揺していた。どうやら奴の目論見を潰せた様だ。いい気味だ。

 

 

 

 再び問いかけると腕を上げ怒ったような反応を見せたが、その後何故か諦観に近い反応へと変わった。どういうことだ? そのまま先ほどの音について奴に問うたが、何故か首をかしげて分からない?といった反応を見せた。……なんかその態度に何故かむかついた。

 

 

 

 しかし、このままでは埒が明かず、仕方ないが奴に説明することにした。説明を終えた後、奴はどうやら心当たりがあった反応を見せ、なんか悩んでいた。それにしてもなぜ奴は話さないんだ? もしかして奴はこちらと会話ができない? 

 

 

 そんな疑問を胸に抱きながら奴の様子を見ていると、ふと気づいたことがあった。どうも奴が身に纏っているものがレユニオンが着ているものと似ていた。いや、継ぎ接ぎで縫合されているが、あれは間違いなく同胞が着ていたものだ。何故奴が……とそれを見て思った私の脳裏には最悪な考えがよぎった。

 

 

 

 もし奴はすでに同胞を手に掛けたとすれば……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 このまま生かしておくわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう思い至った私は奴を始末することにした。意思疎通が出来ないのならば尚更、奴を放って置くにはいかない。この先奴によってこれ以上同胞に危害を加えられるのを見逃すこともできない。

 

 

 

 奴に宣戦布告した後、私は兄弟姉妹と共に連携で奴を追い詰めた。だが、奴は予想以上にもしぶとかった。凍らせても奴はまた氷を溶かしていき、凍った部位を溶かされる前に私たちが切り落としても、そこから翡翠色の結晶が元々あった部位を形取るように生成され、失ったはずの部位が再生した。その生命力の高さにはある種の恐怖を感じた。

 

 だが、私はそれに怯まず兄弟姉妹に渇を入れることで戦意を鼓舞し、怒涛の攻撃で奴に反撃の隙を与えず防戦一方に維持することで消耗戦へと陥らせた。そのおかげで奴の動きは徐々に鈍くなっていったが、こちらも奴に有効打を与えられず疲労が蓄積するばかりであった。正直ここまで耐え忍ばれたのは称賛に値する。

 

 

 

「しかたない……、全員急いで安全圏まで下がれ。全力を出す」

 

 

 

 その一言に兄弟姉妹たちは目を丸くしたかのように驚く。そのような反応をするのは当然だ。私の全力は下手をすれば彼らを巻き込みかねない威力を持つ。だが彼らはおそらく別の心配をしているのだろう。

 

 

 今の私は鉱石病の後遺症でひどく蝕まれている。それなのに鉱石病をより悪化させかねないアーツを、それも全力で発動すればどうなるか私がよく知っている。だが、ここで奴を仕留めるにはこれしかない。私は兄弟姉妹たちに離れるよう強く言い放ち、彼らも私の意図を汲んでくれたのかすぐさま退避し始める。

 

 

 

「できればこれは使いたくなかった。下手をすれば私の兄弟姉妹にも被害が及びかねないからな」

 

 

 

 手を空にかざし、アーツのエネルギーを上空に練り上げる。弱っている今の奴ならこれを喰らえばひとたまりもない筈だ。だがアーツを発動している私にも体に大きな負担が圧し掛かってくる。おそらくこれを撃ったら私はもう動けないだろう。

 

 

 

「私に全力を出させたのは褒めてやる、お前は良い戦士だった」

 

 

 

 それでも、同胞たちのために刺し違えても奴を倒させてもらう。

 

 

 

 

 

 

「せめてもの手向けだ、受け取れ」

 

 

 

 

 

 

 エネルギーを溜め終えたことを確信した私は巨大な冷気の塊を奴に向けて放った。地面を引き裂きながら迫る冷気は奴を凍りつかせると思ったが──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 流石にそう都合良くはいかなかった。どうやってやったかは知らないが、奴はあの冷気に抵抗していた。その証拠に冷気は周囲に拡散せずエネルギーの塊のまま奴を呑み込もうとしている。本来なら冷気が爆散し、目の前に巨大な氷塊が出来ておかしくないはず。

 

 何故? と考えている中、目の前の冷気が少しずつ弱まっているのを感じ取る。強烈なエネルギーの奔流に目も開けていられないが、おそらく奴が冷気を相殺しているのだろう。このままでは拙いと、私はすぐさまアーツで冷気のエネルギーの強化を始めた。既にボロボロな体に鞭打つがごとくアーツを発動させる。体は軋み、腕や足の一部には源石が滲み出し、その源石から黒い氷の結晶へと生成される。

 

 

 そんな体を顧みず私は僅かに残ってる力で冷気を強化する。焼け石に水程度だが、それでもと力を込める。

 

 

 

 

 

 力と力のぶつかり合い。

 

 

 

 

 

 だがそれは永遠と続かなかった。突然奴の力が消え失せ、均衡が崩れた。その瞬間を逃さず私の冷気が奴を呑み込み、巨大な氷塊へと変えていった。

 

 

 

 激闘の末、勝利を勝ち取ったのは…………、私だった。

 

 私はその光景に安堵し、緊張が解けたのかその場で倒れ伏した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姐さーん!! 無事ですかー!?」

 

 

 後方から先ほど待機させた兄弟姉妹たちが私を呼ぶ。倒れ伏しているため彼らの顔は見えないが、切迫した声から察するに。彼らにとても心配をかけてしまったようだ。

 

 私が倒れているのを知った彼らはすぐさま私の元へと駆け寄り、今にも泣きそうな声を上げながら私を抱き抱える。

 

 

「姐さん! しっかりしてください!!」

 

 

「……聞こえているからそんな大声で叫ぶな、体に響く……ごほっごほっ!」

 

 

「姐さん!」

 

 

 全く心配症な奴らだ。彼らは馬鹿だ。だが、私には勿体無い位の良い馬鹿(きょうだい)だ。  

 

 

「──―心配するな、ただの咳だ。………それよりも、早くここから離脱するぞ」

 

 

「え? でも奴はもう凍って……」

 

 

「……こんなことを言いたくもないが、どうも嫌な予感がする。早くここから「────―!」ッ!?」

 

 

 離脱の指示を出す途中、かすかな音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 方角は、あの氷塊。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、姐さん?」

 

 

「……お前たち、さっきの聞こえたか?」

 

 

「え? 何を言って「────―ッ!」……聞こえました。まさか……」

 

 

「お、おい! あれを見ろ!」

 

 

 兄弟姉妹たちが動揺する中、そのうちの一人が巨大な氷塊に指を指して叫んだ。全員が氷塊に目を向けると、そこには目を疑うような光景があった。

 

 氷塊の内部で、翡翠色の結晶が氷を侵食するかのように生成されている。そのスピードは桁違いに早く、瞬く間に氷塊のすべてが翡翠色の結晶へと変化した。

 

「まさか……、そんなはずはっ!?」

 

 兄弟の一人が呟く。あの結晶は見覚えがある。奴が生成する結晶だ。何故今になって……という疑問は野暮だ。これが現実なら奴はまだ……。

 

 

「ッ! 撤退だ! 私を置いてでも行け!」

 

 

「な、なに言ってんだ姐さん! 姐さんも「早くしろ! 奴は……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────―ピキピキピキ、パリィン!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「ッ!」」」」」」」

 

 

 

 彼らに怒声を上げながらも命令する中、巨大な結晶は音を立てながらひび割れていき、最後は大きな音共に砕け散った。

 

 私たちは散った結晶の先を見ると、そこには……、

 

 

 まるで何もなかったかのように悠然と佇む奴の姿が目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 寒村の激闘で倒したはずのフェストゥムがまだ生きていたことに驚くフロストノヴァとスノーデビル隊達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び倒そうとフロストノヴァが体を奮い立たせようとするも、先ほどのアーツで急激に活性した鉱石病が彼女を蝕む! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼らの様子を見たせっくんは選択する。逃げるか、倒すか。それとも……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺は、お前だ……。お前は、俺だ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第8話、共有 ~いたみ~

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 




最後の方BGMの「禁忌」が流れてそう(小並感)


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第8話 共有 ~いたみ~

うんうんと話の構成で悩みに悩んで時間がかかってしまいました。ホントは長期休みに入る前に出したかったなぁ。

今回アークナイツ6章、というよりフロストノヴァに関するネタバレ要素が含まれていますのでどうかご了承ください。



あとAFを強襲含めてクリアしたり、2円ガチャで何とか課金福袋の範囲内で2円を引き当てました。ついでにアッー!とウーン…も手に入れました。

でも育てる素材が無いの…。購買部を使ったり基地施設を上手く使っても映像と龍門幣と昇進素材が足りないの…。教科書は腐るほどあるがな(主要以外に使っていないだけ。今後枯渇する可能性あり)。


(………………むぅ、ん?)

 

 

 

   

 

 

 体全体にひんやりと感じる地面の感触によって眠っていた意識が覚醒し、目を開ける。

 

 

 

 

(……あれ? クォクォア……?)

 

 

 

 

()()()()()()()倒れていた自身の体を起き上がらせ、周囲を見渡してみると四方八方黒まみれな空間にいた。そこは他の物体や生物の姿が見えず、光も通さない黒に塗りつぶされた異質な世界だ。謎の場所かな? 伝ポケが居そう(ポケモントレーナー並感)。

 

 

 

 

 

(……待て、手はともかく足だと?)

 

 

 

 

 

 何気なく感じ取った足の感覚に違和感を覚え自身の体を見てみると、そこには人間の手と足、命の温かみが感じられる皮膚の肉体が目に映った。しかもKRS君みたいにすっぽんぽんな裸で。とりあえず裸なのは置いといて、次に俺はその手で自身の顔をペタペタと触れて確かめる。指の感覚から目や鼻、口や耳といった顔の部位は欠けることなく存在していた。流石に鏡とかは無いのでどういった顔までかはわからないが、間違いなく俺は人間の体になっている。

 

 

 

 

 

(というか何で人間に戻っているんだ? それにここは……? 俺は死んだんじゃ……ん?)

 

 

 

 

 先ほどまで無かった後ろからの視線を感じ取り、すぐさま振り返ってみる。するとそこには……、

 

 

「………………………………」

 

 

「ファッ!?」

 

 

 金色に輝く人型の異形な存在、フェストゥムのスフィンクスA型がいつの間にかそこに佇んでいた。大きさは原作に出てくるようなのと同じくらいの大きさで、その圧巻の大きさによる迫力でつい汚い悲鳴を上げながら見上げてしまう。そんな存在が今、顔を俺の方へと向けて、じっとこちらを見つめている。

 

 

「………………………………」

 

 

「おわっ!?」

 

 

 突然現れたフェストゥムに驚き茫然と見ていると、フェストゥムが巨大な手でいきなり俺の体を掴み、そのまま捕らえられてしまった。幸い加減してくれているのか体は潰れたトマトのような事態にはなっていない。だが、いずれにせよこのまま握り潰されてしまうのか、はたまた同化されてしまうのか分からないが、どっちにしろ絶体絶命な状況だ。

 困惑と恐怖で混乱していた俺に体の異変を感じる。よく見るとフェストゥムの手ごと俺の体から緑色の結晶が生え始めていた。生成スピードは遅いものの、徐々に体が結晶に覆われていき、このままだと俺自身が砕けてバラバラになる未来はそう遠くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ってマジでシャレになんねー状況になったゾ! ライダー助けて! 嫌よ! 嫌よ! 無に帰るのは嫌よ~! …………ア゛ッ゛!? 

 

 

 身をよじって拘束に抵抗し暴れていると、一閃の雷撃のような痛みが突然頭を貫いた。そして極彩色の閃光が複数に瞬きながら目の前を覆い尽くし、今まで感じたことの無い眩暈に襲われる。それと共に、今度は頭の中に何かがが流れ込む。

 

 

「ぐぁっっっ!? 、ぐぅ……」

 

 

 脳を直接灼かれるような痛みと、閃光による視界の幻惑によって意識が朦朧とする中、歯を食いしばりながら頭の中に流れ込む何かの正体を探る。

 

 

(これ、は……、感情……か? 怒り、憎しみ……)

 

 

 それは感情だった。生物が持つ自らの在り方を示すもの。

 本来持ち得るはずの無い目の前にいる無に帰す者(フェストゥム)はそれを体の内に滾らせ、俺にぶつけていた。

 

 

 

(……そうか。こいつは……、目の前にいるのは俺自身だ)

 

 

 流れた感情から目の前のフェストゥムは、フェストゥムとしての俺を司っている存在だ。おそらく(おれ)は俺がフェストゥムとして転生した時に生まれたんだろう。

 

 だけど、(おれ)は生まれた世界(テラ)を憎んでいる。何故俺がこんな理不振に合わないといけないのか、俺が何か悪いことをしたのかっと。

 

 

 

 

 

 あぁ、お前の主張(怒り)は間違っていない。俺だってあんな理不尽さには腹が立ってるんだから。でもな……、

 

 

「おい(おれ)、憎んでばっかだといずれ取り返しのつかない出来事に辿るゾ」

 

 

「………………………………」

 

 

 冷静に、そして静かに語る俺の言葉に対し(おれ)の返答はいらだちだった。ぐぐぐと俺を握り締める手の力が強まり、体からミシミシと骨がきしむような音が聞こえる。まるで「同じ痛みを受けたお前も分かっているのに何故?」と言いたげな反応だ。

 痛みに苦悶の表情を浮かべながらも俺は(おれ)をじっと見据え続ける。

 

 

「そりゃあ俺も思うところはあるけどよ、……一つ聞くぞ(おれ)。お前はあの娘、プロヴァンスのことが憎いか?」

 

 

「!?」ブンブンッ! 

 

 

 俺の問いに(おれ)は否定するかのように首を横に振る。

 

 

「まぁお前が俺ならそう反応するよな。なぁ(おれ)、世界には理不尽なことだけじゃないんだ。彼女はお前に交流という祝福を与えてくれたんだ」

 

 

「………………………………」

 

 

 小さな子供を諭すかのように語りかける俺に対し、(おれ)はただじっと、俺の言葉に耳を傾けた。おそらく(おれ)はまだ幼い、まるで昔の俺みたいに。物事の善し悪しは理解しているのだろうが、言ってしまえば極端なんだ。

 

 

「それは自身の存在を証明するかけがえの無いものなんだ。…………だがお前が世界を憎んで、その憎しみのまま世界を滅ぼそうとすれば、そんな大切なものを与えてくれた彼女を否定することになるんだゾ」

 

 

「!!!」

 

 

「たとえ自分の意思に関係あろうがなかろうが、憎しみは何もかも破壊し尽くす。俺もあっちでそれに囚われたこともあったが、幸い引き留めてくれる人がいたおかげで最悪な事態には陥らなかった」

 

 

「だから今度は俺がお前を引き留める。お前が憎しみしか知らない存在にさせないために何度でも引き留めてやる」

 

 

「………………………………」

 

 

 俺の言葉に何処か思うところがあったのか、体の拘束も少しずつ緩み始め、生えていたはずの結晶もいくつか砕け散った。

 

 

「…とまぁ、かっこいいことを言ったんだが死んだ今、どうしようもできないのもまた事実なんだが……」   

 

 

「………………………………」

 

 

「いや、そんな呆れた雰囲気で見ないで。事実を偽ったところで今置かれている現状は解決しないからさ…………って?」

 

 

「………………………………」

 

 

「えっ、マジ? まだ生きてんの俺? 死へと片足突っ込んでいる状態だからまだどうにかなるの?」

 

 

 俺の締まらない一言に呆れていた(おれ)が衝撃の真実ぅ~!を俺に伝えた。どうやら俺はまだ生きているらしく、今現在、あの兎耳の攻撃の際にできた氷塊を同化して無理矢理自己再生しているとのこと。やっぱフェストゥムってチートじゃね? 

 

 ままええわ、取りあえず生き返るとしますか。だけどどうすればいいんだ? ……えっ、何々? あっ、ふーん(察し)。そんじゃまぁ、やってみるとしますか。

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 イキますよー、イキますよ、イクイク…………ヌッ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識を元いたところに戻るよう強く念じる。そして最後の力んだ瞬間、頭上の空間に真っ白な穴が突然出現し、漆黒の空間ごと俺とフェストゥムを吸い込む。

 

 

 黒と白の奔流に流される中、俺たちは抵抗せずそのまま穴へと吸い込まれていき、俺はその感覚を感じるとともに俺の意識はゆっくりと閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ^~生き返るわぁ^~♨)

 

 眠っていた意識を起こし、カッチャマしながら目を覚ますと見覚えのある寒村に俺はいた。というかホントに生き返ったよ俺。すげーな再生(リバース)のSDP出来んのか。

 

 落ち着いて辺りを見渡すと周囲には散らばっている緑色の結晶、そして目の前には信じられない光景を見て立ちすくんでいる白づくめの部隊と……、

 

 

「やはり……、生きていたか…………」

 

 

 分かっていたと言わんばかりに、忌々しげにこちらを睨む兎耳が満身創痍で仲間から肩を借りていた。やはりあの一撃はあちらにとっても諸刃の剣だったらしい。見た感じ身動き一つも取れなさそうで、誰かが支えていないと今にも崩れ落ちそうな状態だ。

 

 

「ゴホゴホ、手を離せ。ここは私が囮にな…………がぁっ!?」

 

 

「「「「あ、姐さんっ!?」」」」

 

 

 な、なんだ? 急に兎耳が無理して立ったと思ったら、急に苦しみだして…………、おわ!? 兎耳の右腕から黒結晶が生えてきたっ!? 

 

 

「っ!? ま、まさか…………。お、おい! 撤退の準備だ! このままだと姐さんが…………」

 

 

「わ、わかった。なら何人かは俺と一緒にあの金ぴかの足止めをするぞ! 時間を稼ぐんだ!」  

 

 

「「「おう!」」」

 

 

 そう言って白づくめの彼らは慌しくも迅速に動き出し、その内の何人かはこちらの方へと向かってきた。いやいや、こっちは戦闘の意思はないって言ってんだろ! この人達おかしい……。

 

 それはそうと、どうしたものか。復活したおかげか、それとも体がさっきよりも動けるようになっている。このままサラダバー!してこの場から離れるように逃げるか、それとも今までのちかえしとして奴らに反撃してもいい。でもな……。

 

 

「ぐっ…………、うぅ…………」

 

 

「姐さんっ!? 気をしっかり持ってくれ!」

 

 

 苦しそうに呻く彼女。悲痛な声と共に黒い結晶、源石が彼女の体を蝕んでいくように次々と侵食していく。その周りには苦しむ彼女をどうすることもできず涙声で彼女を励ましている彼ら。そんな彼らの姿が俺の目に映り、脳裏に焼き付いて離れない。

 

 …………なぁ(おれ)、お前にとっては気に食わないことだけど、俺の我儘を手伝ってくれないか? 

 

 

 

 ⦅──────────⦆

 

 

 

 声は聞こえない。だが、少なくとも手伝ってくれることは受け入れてくれたようだ。ありがとナス! 

 

 

 

 じゃあいっちょ、人助け……する前に目の前の彼らをどうにかするか。

 

 

「──────ッ!」

 

 

 悠長に考え事をしていた俺に白づくめの一人が切りかかる。狙いすました切っ先は俺の命を刈取ろうとするが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(お前のそれが隙だったんだよ!(迫真))

 

 

「なっ!?」

 

 

 切りかかった白づくめが声を上げる。何故なら相手が先ほどまで避けられていなかった斬撃を余裕に紙一重で避けられたのだ。あの時も避けられたこともあったが、それは相手もかなり切迫した雰囲気が出ていた。だが今回のはもう喰らわないと言わんばかりに余裕をもって避けられた。

 

 確かに先ほどの俺だったら避けられなかった。だが、復活したおかげか、今の俺はほぼ全快に近い。それに、さっき死ぬ寸前まで痛めつけられたおかげでそっちの攻撃はもう見切ったし、動き方を学ばせてもらった。だから……、

 

(喰らえ! 邪拳『夜』!(TDN右ストレート))

 

 

「がはっ!?」

 

 

 攻撃が外れ、さらに驚きのあまり硬直していた白づくめの腹にすかさず拳をねじ込む。あっ、威力は何故瑠璃不審者(黒咲隼)を沈黙させるレベルで殴ったから白づくめは気絶しただけで済んだゾ。   

 

(彼女は瑠璃ではない)

 

 

 

 

 

 いや何だこの幻聴? まぁそれはともかく、それと兄ちゃん、武器は借りて行くぜ(暗黒KMR)。

 

 そう心の中で呟きながら気絶した白づくめから剣を奪い取る。にしてもこれだと傷つけしまうからなぁ、ちょっと改造させて貰うゾ。

 

 手元に結晶を発生させ、俺は手に持っていた剣の刀身に氷を纏わせた。それも剣の形ではなくまるで棍棒の様な形へと氷を纏わせ、形状を変化させた。よし、あの時話を聞いてもしかしたらと思ったが、上手くいって良かった。これなら使いやすいし、相手を切り殺すといったことはないゾ。

 

 

 

 

 

 復活の際、同化した氷から凍結能力を獲得した俺は、強化した氷の棍棒の出来栄えに満足し、数回素振りをする。一方、俺の一連の動作に驚きを隠せないのか近づいてきた白づくめの部隊は動揺していた。動揺するのはいいけどさぁ、そんなんじゃ死んじゃうよオラオラ(死なせないけど)。

 

 彼らの油断を突いて俺は彼らの元へと急接近する。だが、流石に戦士としての経験は豊富なようで、彼らは俺が懐に近づく前には既に迎撃態勢を整えていた。まぁこの先の動きや考えは読ませてもらっているんで関係ないんですがね。

 

 

 このまま突撃し、彼らの攻撃を誘う。俺の誘いに乗った白づくめ達は俺に攻撃するが、攻撃は全て躱され、あるいは受け流させられる。そして攻撃の隙を狙った俺は棍棒を彼らの体に叩きつける。腕の距離的に届かない相手には棍棒を持っている腕を鞭状にしならせて、遠距離攻撃をする白づくめに攻撃する。

 

 だがしかし、棍棒の一撃を喰らった白づくめ達はよろめくも体勢を立て直す。そんなの当たり前だ。確かに攻撃は当てたが、手応え的に良いダメージを与えられなかった。

 

 だけど、今は()()()()()()()()()

 

 

「「「「っっっっ!?」」」」

 

 

 白づくめ達は自身に起きた現状に声も出せず目を見開いた。なんと棍棒に当たった個所から体が急速に凍り付き、すぐに氷が全身に広がり身動きが取れなくなっていた。予測できない事態に陥った彼らは脱出しようと身じろぎをするも氷はびくともせず彼らを封じ込めるように凍り付く。

 

 よしよし上手くいったな。何とか逃れようと身じろぎしてるけど、邪魔になるからそのままじっとしてろホラ。…………ん? 

 

 

 凍り付いた白づくめ達を軽く一瞥した後、兎耳の方へと見やると残りの白づくめ達がものすごい勢いでこの場から離れようと荷物と動けない兎耳を担ぎながら逃げ出そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あっ、おぃ、待てぃ(江戸っ子)。兎耳が逃げられたら意味ないダルルォ? じゃけん足止めしましょうね~。

 

 逃げ出す彼らに対し俺はすぐさま棍棒の先端を錐状に変え、彼らに向けて投擲する。こちらに向かってくる棍棒の存在に気づいたのか何人かはボウガンと氷のエネルギー弾で撃ち落とそうと反撃してきた。しかし、棍棒はそれらに当たっても勢いは衰えず、氷のエネルギー弾に対しては当たった瞬間にエネルギーが棍棒に取り込まれてしまった。

 

 撃ち落とせない棍棒に恐怖しながらも這う這うの体で逃げ出そうとする彼らだが、無慈悲にも棍棒は彼らに追いつき、彼らの誰かに…………ではなく彼らの中心の地面に突き刺さった。当たらなかったことに安堵する彼らだが、兎耳だけは棍棒を見開いた眼でじっと注視していた。

 

 

「────―!? ──────っ!!!」

 

 

 兎耳がハッと何かに気づき、必死に何かを叫んだが時すでに遅し。地面に刺さった棍棒は表面にひびを立てた次の瞬間、棒身は甲高い音を立てながら爆散し、棍棒から強烈な冷気が彼らに襲い、包み込んだ。

 

 もくもくと雪煙が立ち込め、次第に煙が晴れていくと、そこには全身を氷漬けにされた白づくめ達と、爆風で地面に転がされ体の一部が凍り付いた兎耳の姿であった。

 

 その状況に持ち込めたことを確認した俺はすぐさま兎耳の元へと急接近した。獲物の前に舌なめずりしながら悠長と近づくのは三流のやり方だってそれ一番言われているから。俺が彼女の元へと近づくと、俺の接近に気づいた兎耳がキッと睨み付け、呪詛をぶつける様に俺を罵る。

 

 

「お前……っ! よくも兄弟姉妹たちを…………!」

 

 

 一応加減をしてあるので彼女が心配せずとも彼らは死んでないと思うが、何も知らない彼女は当然のように怒り狂う。とりあえず同化(治療)するから暴れるなよ……暴れるなよ……

 

 俺は顔を彼女と同じ目線に合わせ、彼女の両肩に手を添える。触ってみて分かったが、彼女の体はとても冷たい。コート越しで彼女の体に触れているが、もし肌を直に触れたりすれば、触れた相手が酷い凍傷を負いかねないほどだ。

まぁフェストゥムにはあんま関係なんですがね。よく考えればあいつら本来宇宙にいるから多少の冷たさは何ともないんでしょうよ。でも元が人間だったので感覚はどうもそっちよりになるんだよなぁ。

 

 話がそれたが、添えられた手から結晶が発生させる。それを見た彼女の顔は恐怖で引きつらせていた。そりゃそうなるよね。でも我慢してくれ。

 

 驚き恐怖する彼女を余所に、俺は意識を集中させる。

 

 

(俺は、お前だ……。お前は、俺だ!)

 

 

 心の中で彼女に伝えんと言わんばかりにそう叫んだ瞬間、両手の結晶が眩い閃光を放ちながら彼女の体を、特に源石が生えている個所を中心に結晶で覆い尽くす。結晶が彼女を覆う中、俺の意識はどこかへと連れて行かれるような感覚に襲われ、視界が暗転し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気が付くと吹き荒れる吹雪の中にいた。

 

 雪と強風で視界が悪い中、辺りを見渡すとそこには雪原に囲まれた採掘場の様な場所だった。

 

 採掘場の方を見ると、そこには二人の男女の大人がいた。しかしその姿はとてもぼけていて、何とか性別が分かるくらいの姿だった。男は女を守るように手を広げて立ちはだかり、女は胸の懐で何かを守るようにして抱え、うずくまっていた。

 

 男が見やる方向に目を向けると、そこには靄の掛かった黒い人影の群れがボウガンを取り出し、それをあの二人の男女に向けてきた。それを見て背筋に悪寒が走る。

 

 

(待っ―――)

 

 

 手を伸ばしながら声を上げようとした瞬間、人影達がボウガンを男女の方へと構え、大量の矢が彼らに向けて放たれる。矢の多くは針山のように男の体に刺さり、体は血みどろになって男は地面に倒れ伏す。だが男が身を賭して守ったおかげで女には一本も刺さらなかった。

 

 あまりの残酷な光景に俺は言葉を失う。しかし、人影達は女も殺せていないことに苛立っているのか、あるいはもう一回楽しめるかと言わんばかりに嬉々とボウガンの準備をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、俺の中の何かが切れた。

 

 

(うああああああああああっ!!!)

 

 

 一心不乱に人影達に向けてワームスフィアを放つ。あんな腐れた外道を生かしては置けないと言わんばかりに必死に放ち続ける。

 

 

(消えろっ! 消えろっ! 消えろぉぉぉぉぉ!!!!)

 

 

 怒りのあまり放たれたワームスフィア。これだけ喰らわせれば跡形も残らないはずと俺は考えていた。

 

 

 

 しかし、そんな俺の考えとは逆に、ワームスフィアが晴れた先には無傷の人影達……、いや、人影達がいた地面にも変化が起こっていなかった。

 

 

(まさか…………、これって…………)

 

 

 その事実にある仮定が浮かび上がる。そうしているうちに人影達は女の方に向けてボウガンを構える。

 

 

(っ! やめろっ!!)

 

 

 奴らの動きから咄嗟に反応し、急いで女と人影達の間に割り込む。どうにか発射される前に割り込むことには間に合った。だが、奴らは俺のことを意も介さずそのまま矢を女に向けて放った。

 

 先程の男のように女を守るように俺は立ちはだかる。そして飛来してきた矢は…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の体を通り抜け、無情にも女の体に突き刺さった。

 

 

 

 

 その事実に後ろを振り向いた俺が見たのは、

 

 

 

 

 男と同じく大量の矢を受け、血みどろになりながらもうずくまり、何かを守ることをやめなかった女の姿と、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の陰からひっそりと覗かせた、目の前の現実を茫然とした表情でこちらを見る白い兎耳の少女の顔だった。   

 

 

 

 

 

 その顔を見た瞬間。視界が暗転し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び気が付くと、今度は荒れ果てた採掘所にいた。周囲には泣き喚く子供たちと、それをあやそうとする大人たち。何かの道具を持って慌しく駆け巡る大人たち。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、一人の大男が目が覚めない小さな兎耳の娘に対し何かを呼び掛け、仲間に何かの指示を出していた。

 

 大男は巨大な一対の角を頭部に携え、顔は何かの動物に象られた兜を被っており、煌めく赤い眼光以外に表情は窺えない。だが、雰囲気と動作からして必死にあの娘の安否を案じていることはわかる。

 

 しばらくすると娘が目を覚まし、それに気づいた大男が嬉しそうにはしゃぎ、喜びのあまり彼女の体を力いっぱい抱きしめた。奇妙なことに彼女に接触している大男の露出した腕の一部分が赤く炎症し始めた。しかし彼はそのことを何とも思わずにただひたすら、寒さに震える彼女を温めようと抱きしめていた。

 

 

(やはり…。これは、あの兎耳の過去の記憶か?)

 

 

 そう思った瞬間、視界が暗転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は戦場のような場所だった。“だった”というのはそこにいたのは全身が氷漬けにされた数多くの兵士のような人間と、

 

 

 

 

 

 

 白い髪をなびかせ、凍った兵士を一瞥しながら佇む兎耳の少女と、彼女のお供であろう白づくめの集団だった。

 

 

(これは彼ら……。いや、彼女だけがやったのか?)

 

 

 少女が生み出したと思われる目の前の異様な光景を眺めていると、兎耳がこちらの方角へと振り向き、何かを口にする。

 

 

『ワ・タ・シ・ヲ、ケ・ス・ナ』

 

 

 そう呟くや否や急に辺りが暗くなり、強烈な吹雪が俺に襲い掛かる。耐え凌ごうとするも風の勢いは強まるばかりであり、どこから紛れ込んだのか吹雪の風に乗って氷の刃が俺の体を切り刻み始める。

 

 

 

 

 

 やがて風の勢いに押し負け、俺の体は踏ん張りが効かなくなり、後ろへと吹き飛ばされる。

 

 一体何が起きた? 消すなとは一体どういうことだ? それに……、

 

 どうして呟いた兎耳が()()()()()()()()()()()こちらを見たんだ? 

 

 突然の拒絶に疑問が尽きない中、俺は体が暗闇に吸い込まれる感覚を受けながら、意識はそこでぷっつりと途絶えた。

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

 奴が結晶から出てきた後、私は命に代えてでも兄弟姉妹達の撤退のために殿を務めようと動かぬ体を奮い立たせた。だが、体の方はとっくに限界だった。

 鉱石病の末期。私の右腕から今までよりも巨大な源石の結晶が発生し、痛烈な痛みが体中に駆け巡る。そして体の至る所に結晶が滲み出ていくのを感じる。

 

 

 

 

 彼らは苦しみ始める私を見て、血の気が引いた様子で撤退の準備を急いで行い、何人かはそれの時間稼ぎとして奴の足止めに向かった。

 

 だがそんな目論見は薄氷のように瓦解した。奴に切りかかった一人の攻撃を躱され、カウンターを喰らい、武器を奪われた。普通ならそこで怯むべきじゃないが、その時の奴の動きがさっきまでとは全くの別物になっていたことに私たちは驚いていた。

 

 

 奴の変化に戸惑いながらも兄弟姉妹たちは撤退の準備を急いで完了させた。だが、それと同時に、奴も足止めに向かった彼らを片付けていた。信じられないことに高性能な防寒用の装備を着た彼らが氷漬けにされた。おそらく奴の手に持っている氷の棍棒の効果だろう。奴の奪ったのは剣のはずだが、棍棒へと変化させてあれほどの威力を持つ武器へと変化させた。奴の棍棒と仲間の様子を見て頭にある予想がよぎる。

 

 

(まさか、奴は私のアーツを使える様になったのか!?)

 

 

 最悪な予想を頭によぎらせ、兄弟たちに担がれながらも奴の姿をじっと見ていた私は、奴に底知れぬ恐怖を感じた。このままだと奴によって全滅すると警鐘を鳴らしていた。兄弟たちも奴の脅威に気づいたのか、準備を完了させた瞬間すぐさまこの場から撤退し始めた。

 

 私達が撤退している中、奴は撤退するこちらに気づく。しかし自ら追おうとせず、今度は手に持っている棍棒の先端を錐状に変え、こちらに向けて投擲してきた。兄弟の何人かはそれに気づき、矢やアーツで迎撃していた。だが、それでも棍棒の勢いは止まらず、それどころかアーツが棍棒に当たると、そのアーツのエネルギーが吸収されてしまった。

 

 回避しようにも避けるのは叶わず、誰かに当たると思ったが、棍棒は私たちの中心近くの地面に突き刺さった。それを見て兄弟姉妹たちは安堵するが、私には嫌な予感が引っ掛かったままだった。

 すると突然棍棒の氷がひび割れ始めた。

 

 

「これはっ!? 全員、今すぐ離れっ──!!!」

 

 

 兄弟姉妹たちに離脱の指示を放つも時既に遅し。氷が破裂し、私達を包み込むように強烈な冷気が襲い掛かった。

 

 もくもくと立ち込める雪煙の中、冷気によって氷漬けにされていく兄弟姉妹の姿が目に映った。私は爆ぜる寸前に担いでいた兄弟の機転により投げ出され、冷気の中心範囲から逃れた。しかし爆風の余波によって体の一部が凍りつき、動けない体は受け身も満足に取れず地面へと叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地面に叩きつけられた痛みに苦しむ中、私は周囲を見渡す。だがそれは私にとって残酷な結末を知るに過ぎなかった。目の前の現実が夢なら覚めて欲しいと願った。

 

 

 周囲には一人残らず氷漬けにされて動かなくなった兄弟姉妹。

 

 

 アーツと鉱石病の反動で仲間も助けられずに身動き一つも取れない自らの非力さ。

 

 

 そして、この現状を生み出した元凶が私の目の前に立っている。ローブが無い奴の姿は金色の体を煌めかせ、神秘的な雰囲気を醸し出していた。しかし私にとって奴は私たちを滅ぼそうする悪魔にしか見えなかった。

 

 

「お前……っ! よくも兄弟姉妹たちを…………!」

 

 

 今の私が出来るのは奴に向けて睨み付けるくらいだ。だがそれは滑稽で、傍から見れば哀れなあがきにしか映らない。まるで小さな子ウサギが強大な肉食獣に威嚇するのと同じくらいに。

 

 しかし奴は私の威嚇を意に介さず、奴は私の両肩に手を添え、添えられた個所からあの翡翠色の結晶が生成される。その現象に身の毛もよだつような感覚に襲われ、顔を引きつらせた。

 

 

 ああ、私はここで死ぬのか。兄弟姉妹を助けることはおろか、仇を討つのも叶わないのか。

 

 

 目の前で起こる現実に現実に心の中でただ歯噛みし、私はこれから来るであろう痛みに対して目を瞑るしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………? …………痛みが来ない? いや、それどころかさっきまで感じていた胸の痛みが引いていく? 

 

 不可解な現象に私はそっと目を開ける。目を開くと目の前には意識を集中している奴と、温かい光を放つ翡翠色の結晶に覆われた私の体だった。どういうことだ? 奴は何をしているんだ? 

 

 パリィン! 

 

 しばらくすると右腕に覆われていた異様に大きい結晶が音を立てて砕け散る。そこには先ほどまであったはずの源石の結晶が存在せず、破れた衣服から雪の様に真っ白な肌が覗かせていた。

 

 

(これは……!)

 

 

 まぎれもなく源石の消失。奴は私の鉱石病を治していた。大地の呪いであり、不治の病である鉱石病を敵である私に対して治療を行っていた。

 

 私に気にすることもなく奴は懸命に意識を集中し続ける。その姿から私は、奴に対して大きなすれ違いをしたのでは?と考える。思えば奴は私たちを殺そうとしてこなかった。初めからさっきのように動けば、奴は私たちをいともたやすく殺せたはずだ。

 おそらく奴は性格はとても温厚なんだろう。しかし私たちが仕掛けてきたことで向こうも仕掛けざるを得なかった。そうだとすれば、これは私たちに非がある。

 

 奴……いや、彼には謝らねばならないな。そう思ったその時、再び体に違和感が覚える。体中に湧き上がっているはずのアーツの感覚が弱まっていく。どういうことだと疑問に思うも、これまでの現象から私はある仮定が浮上する。

 

 彼によって起きているのかは不明だが、鉱石病の治療はもしかしたら源石を消すとともに患者のアーツ能力も消しているのでは? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………それは駄目だ。

 

 

 彼の厚意を無碍にしてしまうことは百も承知だが、私はまだ感染者の立場を捨てるわけにはいかない。お父さんと兄弟姉妹、数知れぬ多くの同胞を置いて、私だけがのうのうと自由になるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らのために、私はまだレユニオンからいなくなるわけにはいかないんだ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感染者として秘めた思いを心の奥底から叫んだ瞬間、異変が起きた。突然私の体を覆っていた結晶が全て砕け散り、目の前の彼が頭を抱え苦しみ始めた。痛みが引いた体を起こしつつも何が起こっているんだと困惑する中、彼の右腕から源石の結晶が発生し、次第に金色に輝く彼の体から源石の結晶が染め上げるように散らばって発生する。まるで先ほどまでの私と同じ状態と同じだ。

 

 

(まさか彼は治すのではなく、源石を自身の体に移し替えたのか!?)

 

 

 苦しみ悶えていた彼は数分もがいた後、苦痛のあまり気を失ったのかゆっくりと地面に倒れ伏す。彼が倒れたその時、周囲に何かが砕けたかのような音がした。

 

 

「う~ん……、あれ? 俺はあの時凍らされて……」

 

 

「何だ何だ? 急に氷が砕けたぞ?」

 

 

「あっ! 姐さーん! 無事ですかー!!」

 

 

 それは氷漬けにされた兄弟姉妹の氷が砕けた音だった。おそらく彼が気を失ったことで効力が無くなったのだろう。何が起きたと言わんばかりに周囲を不思議そうに見渡す彼ら。そのうちの一人が私に気づくと皆一斉に私の元へと駆け寄った。

 

 

「姐さん! 体の方は大丈夫なんですか?」

 

 

「うわっ! 金ぴかが倒れてる! もしかして姐さんが……?」

 

 

「私ではない。それと、彼は敵ではない」

 

 

「えっ? 姐さんそれってどういうことだ? それに彼って……?」

 

 

「詳しいことは後で話す。とりあえず彼を運びながらあの鉱山の中に避難するぞ。村の建物は先ほどの戦闘のせいで半壊しているのがほとんどだからな」

 

 

「いやそれって姐さんのせいじゃ「何か言ったか?」イエ、ナンデモアリマセン。じゃあ金ぴかは俺と……。ビッグベア、手伝ってくれるか?」

 

 

「わかった」

 

 

 そうして私達は彼を寂れた鉱山の中に運びながら、鉱山の洞くつで身を休めることにした。

 

 

(頼む、絶対に目を覚ましてくれ。お前には色々と話したいことがあるんだ)

 

 

 私は担がれていく彼の傍に近づき、彼の顔をそっと撫でる。彼からは生物が持つ温かみが感じられず、無機物の様な冷たさが手袋越しに伝わる。それでも彼が目覚めることを、私はただ信じるしか術がなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 

 

 

 フロストノヴァの治療中、気を失ったせっくん。目が覚めるとそこは鉱山の天井が目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目覚めたせっくんに気づいたフロストノヴァとスノーデビル隊は彼との対話を試みる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対話を望む彼らにせっくんは……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そんじゃまぁ、俺の歌を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第9話、和解 ~クロッシング~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 




せっくん「ダイナモ感覚!ダイナモ感覚!YO!YO!YO!YEAH!」


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第9話 和解 ~クロッシング~

アイスボーンでミラボレアスが来ることが分かり、今日公開求人でツチノコ(インドラ)を引き当てたので初投稿です。次はヴァルカン300当てなきゃ(使命感)。

にしてもイベントに出てくるキャラの表情差分があると何か新鮮味が感じられるゾ。今度ユーザーアンケートがまた来た時には書いてやるからボイスでも表情差分が変化するようにしてくれよな~頼むYo~star。


(知らない天井だ……)

 

 

 

 はいどうも、いつの間にか意識を失っていた系フェストゥムのせっくんです。何故か洞窟っぽい所で寝ていましたがとりあえずここどこ……? ここ……? 

 

「目が覚めたか?」

 

 状況を把握しようとした矢先、突然声を掛けられた。声がする方向へと顔を振り向いたら、そこにはあの兎耳と、何人かの白づくめ達がやって来た。というか兎耳無事だったんかワレェ! 同化(ちりょう)した甲斐があってウレシイ……ウレシイ……。

 

 

「何か異常があると思って来てみたが、その様子なら心配も要らなそうだ。先ほどまで源石に侵された状態とは思えないほどにな」

 

 

 

 えっ? 源石? この人何言って……おわっ!? よく見たら俺の右肩に源石生えてる!? 

 

「何だ、気づいていなかったのか? ふむ、それなら一度説明したほうがいいな」

 

 

 

 

 そう言って兎耳が、俺が気を失った後の顛末を語り始めた。

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、いうわけで俺は今、兎耳から色々な話を受けることになりました。彼らの話をざっくりと要約すると「いきなり攻撃してすんませんでしたぁ!! あと姐さんの命を救ってくれてありがとうございましたぁ!!」といった内容である。

 

 

 

 兎耳ことフロストノヴァが率いる彼ら、スノーデビル隊はレユニオンの特殊部隊ということらしく、ここに迷い込んだ感染者がいないか調査・救助しに来たということ。そこでばったりと出会った俺に警戒、あちらの早とちりで危険視し襲い掛かって来たという。全く早とちりで襲われるなんて頭にきますよ! もう許さねぇからなぁ? 

 

 

 

 とはいえ以前レユニオンの一部隊をを殺したのは事実だし、俺の見た目があまりにも不審な姿だったから襲われても仕方ないね♂

 余談だが俺が以前殺した汚ッさんレユニオン達は普段から悪辣で素行が悪く、彼らからも煙たがられていたとのこと。後にそれを知った彼らは本来はやるべき粛清を、俺が代わりにやったことで手を汚させる結果になってしまったことで深く謝罪していた。何だよ、スノーデビル隊って良い奴じゃん!(YUM並感)

 

 

 

 話がそれたがその後交戦し、俺がフロストノヴァの同化(ちりょう)を試みたその後、突然俺が苦しみだし、源石が体中に滲出し始めた。幸いそのまま気絶したおかげで彼らには被害が出ておらず、彼らは気絶した俺を鉱山の中に運んでいったという。

 

 気絶している内に俺を殺そうとしなかったのかと彼らからもらったメモ紙に書いて(文字は壊されたタブレット機器にあるデータベースで学習済み)尋ねてみたら、どうやらフロストノヴァ、名前長いからNOVAうさぎ……、おっと冷たい視線が。しょうがないのでノヴァちゃんと呼ぶか。

 

 とにかく彼らはノヴァちゃんの説明で俺が命の恩人だってことが判明した。それを聞いた彼らは恩人に仇討ちすることはスノーデビル隊の名に反するのと、敬愛する彼女を救ってくれたことに涙ぐみながら俺に感謝していた。こいつらすごく人間の鏡ですよ。

 

 

 

 

 

 

 ただ彼らがその後「何でもするから」と言い、彼女も二言は無いと言わんばかりに肯定してきたので思わず「ん? 今何でもするって言ったよね?」と思ってしまった俺は悪くないはず。そんなこと言われたらこっちもどんなお願いしようか迷うじゃないか(マジキチスマイル)。とりあえずお願いは後で考えることを伝えておいた。

 

 

 

 

 

 

 だが彼女自身の意思で鉱石病を完治するのを拒まれたため、鉱石病の症状が和らいだとはいえ彼女の体は未だ鉱石病に蝕まれたままとのこと。やっぱりな♂

 

 一応もう一度やってみるかと尋ねたが、彼女はやんわりと断った。だが、案じるかのように不安気な表情で彼女を見つめるスノーデビルの諸君が気がかりだった。

 鉱石病に関しては俺よりも彼女の方がよく知ってるし、だからこそ彼女が何故拒否した理由は分からないが、深い理由があってのことだと思ったので俺も追求はしない。流石に部外者の俺が割り込むには複雑な事情だと汲み取ったので、そっとしておくことにした。

 

 ちなみに俺の右肩に生えてる源石のことだが、結局こうなった原因は不明だ。彼らの話曰く、最初は体全体源石まみれになっていたらしいが、その後徐々に源石がまるで俺の体に融けこむかのように小さくなっていったとのこと。多分源石を同化していったんだろうが、そうなると何故源石が突然体から生えたのか見当がつかない。今まで源石を同化したがこんなことは起きなかったし、もしかして同化が失敗したのか? とにかく源石と鉱石病に関しては未知なことが多すぎて気が狂うっ! 狂いそう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで彼らと話を弾ませていると、隊員の一人が大量の荷物を積載したリアカーを牽引してこの大部屋にやって来た。その荷物に関して疑問に思った俺を見た彼女が言うには、俺が気を失っている間に彼らが廃村を捜索して何か使えないかと漁り、見つけた物らしい。

 彼らが持ってきた荷物を見る限り、確かにガラクタなようなものや変わったもの、もしかしたら使えそうなものなど色々とある。中には俺が欲しいものがあるし、分けてくれませんかね? 

 

 

 物欲しそうに荷物に視線を向けていると、持ってきてくれた彼から「よかったら何か持っていくっすか?」と聞いてきた。ありがとナス! じゃあ俺、アイテムもらってクラフトするから。

 

 お言葉に甘えて彼らが持って来た廃村の荷物を早速物色させてもらった。

 

 目の前の山積みになった物資は使えそうなものがたくさんあった。その時の俺はこう思っていただろう。

 

 

 

 

 

 

 ええ素材やこれは……、クラフトしがいがあるなぁ……(マイクラ並感)。

 

 

 

 

 

 おぉ……すっごいなこれはぁ……(喜色)。

 

 

 

 

 

 

 

 もし顔に目があったら瞳をキラキラさせていたであろうぐらいに俺のテンションは好調だった。色々な物を物色し、体内に収納したり同化してみたり、彼らにとって有用で自分には不要なもの(食料品とか)は彼らに譲ったりした。今回のでかい収穫の一つは、良いサイズの巨大な毛布があったので新たな外套として作り替えることが出来たことやな。今迄着ていたローブ、ボロボロになったんすよね。自信作だったのに……(遠い目)。

 

 

 なので今回は奇抜な姿を隠す以外に増幅(アクセル)を応用して耐久面も得られるような設計にして作り上げたゾ。後日スノーデビル隊に手を貸してもらってこのマントの性能を試したところ、彼らが放つ矢やアーツ弾に対しマントは傷一つも付かないどころか思い切り弾いていた。やべえよ……やべえよ……、手伝ってくれた彼らも目を丸くして口をあんぐりと開けてるし、思った以上にコレ性能たけぇよ……。

 

 そんなわけでこの武装の名前は見た目と性能から某十字骨なガン○ムに出てくるABCマントになぞって“Killinng_Barrage_Surviverマント”、略してKBSマントに決まった。名前に殺人的な弾幕の中でも生還するという意味を込めたから、決して金! 暴力! *自主規制*! の方ではないゾ。

 

 

 

 

 

 

 

 そして物色している内に大量にあったはずの物資の山は俺の体内にどんどんしまわれてゆくことで減っていき、最後は人が入るには少し小さい黒塗りの棺桶みたいな箱だけを残した。

 

 にしても最後に残ったこれ、なんか不気味だな。サイズは小さいが、本当は人でも入ってるんじゃない? 車で有名な某日産最高責任者もこういうので入って国外逃亡したっていうし多少はね? 

 

「ふう、金ぴかさんが手伝ってくれたおかげで簡単に仕分けることが出来て助かったっす。でも大丈夫なんすか? さっきから色んなものを体に取り込んでいたんすけど、体に何か影響を及ぼしていないっすか?」

 

 荷物を持ってきてくれた彼は心配そうに尋ねてくるが、俺は問題ないと言わんばかりにサムズアップする。大丈夫だって安心しろよ~。

 

「それならいいんすけど……。金ぴかさんは俺達スノーデビル隊にとっては命以上の恩人ですから無理はしないで欲しいっす。……それにしても最後に残ったのは何でしょうかね。なんか不気味ですし、開けようにも金具が錆びついてて開けることが出来ないっす」

 

 彼の言う通り、箱には閉じるための金具が見事に錆びついていて、とてもじゃないが普通の力じゃ空きそうもなく、かと言って無理矢理やれば二度と蓋を閉めることはできないだろう。

 だがでぇじょうぶだ、フェストゥムの力で難なく開けられる(GKU並感)。

 

 じゃあ錆びを同化して取って……、おっ開いてんじゃ~ん! (開けたんだよなぁ……)

 

「……全く、なんと言うべきか。お前の行動にはつくづく驚かされる」

 

 フロストノヴァが呆れたかのように呟くが、当然の権利のように俺はスルー。こんなことにいちいち気にするとハゲるぞノヴァちゃん。

 

 

 

 

 ……あっ、すんません! 言いすぎましたんでその視線は止めてください凍えてしまいます。さっきも喰らったけど俺はその視線で興奮するようなドМじゃないんで、お姐さん許して! 

 よい子の兄貴姉貴たちは女性にハゲとか、言わないようにしようね! 

 

 というか何で俺の思考を読めるんですかね? こいつ実はフェストゥムじゃねえの? (迷推理)

 

 

 

 などと馬鹿なことを考えながら箱を開けて中身を見てみると、箱の中には木製のフレームでできたギターが鎮座していた。なんでぇゴー○でも入っているかと思ったのに残念だゾ。

 

 まぁそれは置いといて、ギターは見た感じ木製のフレームで形成されており、電気を使うようなパーツが無いから所謂アコースティックギターといったやつだろう。長年に渡って使い込まれていたのか、ボディの色が若干色褪せてはいるが、ピンと張ってある6本の弦、弦の張りを固定するフレットや駒、ナットといった各パーツに変な損傷は無い。かつての持ち主はこれを大事に使っていたのが見ただけでうかがえる。

 

「ほう、これは……」

 

「うわ~、中身はギターだったんすか。でも弾けるんですかねこれ?」

 

 箱から取り出したキターを傍らで見ていたノヴァちゃんと荷物を持って来た隊員は、年月の深みが感じ取れるその風貌に感嘆する。

 

 弾けるかどうかだって? じゃあ弾いてみるか? 見た感じギター自体には問題無さそうで弾けそうだし、一応ギターは弾けるゾ。弾ける曲はアニソン主体だけどな。

 

 

「……もしかして弾けるのか?」

 

「面白そうっすね。できるのでしたらお願いしますっす」

 

「何だ何だ? 金ぴかが弾くのか?」

 

「そんじゃあ俺、他の奴らを呼んでくるわ」

 

 

 スノーデビル隊は期待を満ちた目でこちらを見てきて、何人かはまだここに居ない隊員を呼びに一度部屋から出ていった。ちょっとハードル上げるのやめちくり~。けどいっちょやってみるとしますか。曲は…………、あれでいいかな? 

 

 

 

 久しぶりの演奏で出てきた緊張をほぐすために心の中ですーっと深呼吸をして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そんじゃまぁ、俺の歌を聞けぇぇぇぇぇぇ!!!)

 

 

 歌で世界を平和にしたBSR兄貴ばりなテンションを心の中で出しながら、俺は指で弦を弾き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム演奏中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―……life goes on♪ 守りーたくてー♪ ―

 

 

「祈りを、時空(そら)に馳せてー♪」

 

 

「本当の、悲しみを、知った瞳は~♪」

 

 

 ―愛に、溢れて……♪ ―

 

 

「「「愛に、溢れて……♪」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フゥー↑気持ちいい~!!! やっぱ……、life goes onは、最高やな! 

 

 

 

 ん? 「何でSEED DESTINYの曲を歌っているんだ」だって? 何言ってるんだ、これファフナーの曲じゃないのか? (スパ○ボUX並感)

 

 どちらにしろいい曲なんだし、こまけぇこたぁいいんだよ。曲を聞いてた彼らもテンション爆上がりで盛り上がってるし、掴みとしては良かったんじゃないか? 

 

 

 

 ……にしてもスノーデビル隊の諸君、サビ部分だけとはいえよく歌えたな。実はこの世界でも有名な曲だったりするのか? 

 

「ん? いや、こんな良い曲は初めて聞いたけど、アンタが歌詞を言ってくれたおかげで合いの手を合わせることが出来たんだよ」

 

 そっかそっか~、俺が口ずさんだ歌詞で覚えたのか~。なるほど~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ちょっと待って? 気のせいじゃなければ俺達は今、会話できてませんかね? 

 

 

「えっ? もしかして気づいていなかったのか?」

 

「金ぴかがギターを演奏し始めた後、突然アンタから声が聞こえたんだ。最初は何処から聞こえるって驚いたよ」

 

 

 

 

 ………………………………………………。

 

 

 

 

 

「お。お~い? どうしたんだ急に黙り込んで……? 腹でも痛いのか?」

   

 

 

 アイエエエ!? 対話!? 対話ナンデ!? アババババババッ!? 

 

 

 

 

「ちょ、おまっ!? ホントに大丈夫か!?」

 

 

 

 ……大丈夫だ、俺は 正気に 戻った!(裏切りの竜騎士並感)

 

 うん、突然告げられた真実に頭がやっと追いついたから心配しないでいいゾ。というか何で会話できてるんですかね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………おろ? 急に声が聞こえなくなっちまった?」

 

「あっ、本当っす。すいません金ぴかさん、もう一回できるっすか?」

 

 と思ったらどうやら途絶しちまったよ。どういうことなの? それと君、俺だって何故こうなったか分からないから困ってるんですが。

 

 

「……もう一度ギターを弾いてくれないか? 今度は音を出すだけで良い」

 

「姐さん?」

 

「おそらくだが、先ほどの現象は音に関係してるのではと推測した。彼が弾いていた時にあの声が聞こえたから少なくとも何か関係しているはずだ」

 

 

 

 はえ~、すっごい洞察力。じゃけん試しに弾きますよ~弾く弾く……ヌッ! 

 

 念のため声が聞こえるかの確認で何か口ずさんでみるか。せーの……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―ダイナモ感覚! ダイナモ感覚! YO! YO! YO! YEAH! ―(ギターで音を響かせながら)

 

 

「あっ、聞こえたっす!」

 

「どうやら正解らしいな」

 

「それにしてもダイナモ感覚って何だ?」

 

 

 どうやらノヴァちゃんの推測は当たっていたようだ。おかげで俺も会話が出来ることが分かってうん、おいしい! あとダイナモ感覚は悪乗りで言っただけなので、そんなこと気にしなくていいから(良心)。 

 

 

 

 

「だが会話するには音を出し続けないといけない、か……。問題はそこをどうするのかだな。ずっとギターを弾くわけにはいかないだろう」

 

 

 ノヴァちゃんの懸念だが、俺はその対策を考えていた。さっきの山積みになっていた物の中に音叉っぽい物が都合良く紛れ込んでいたんで、それを今から同化して声帯替わりにしてみようかと。上手くできるかは分からないがやってみないことには何も始まらない。てなわけでさっそく実行! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はい、結論から言うと無事成功しました。音叉を同化した後、それと同じ性質を持った結晶を首元に発生させた。そして結晶から音波を出すことによって疑似的なクロッシングを引き起こし俺の思念を彼らに伝えられるようになったゾ。誰かと言葉を交わしてやっと会話することが出来て涙が出、出ますよ……。

 

 

 

 その後会話ができるようになった俺はノヴァちゃんとスノーデビル隊と雑談したり、洞窟内でちょっとしたミニライブをしたりしてどんちゃん騒ぎへと発展していった。意外にも彼らは寡黙そうな見た目に反してお祭り好きでフレンドリーな性格で驚いたゾ。

 

 雑談していく内に彼らとは仲良くなり、特にビッグベアとバーニィ(口癖が「っす」と言ってる隊員)とは音楽に関して話が合い、彼らを含めて全員に色々な曲を教えたりしていた。

 

 

 

 

 引き続き行われた俺の演奏に気分が浮かれたのか、途中彼らの一部が「今日はお祝いだ!」と言ってしこたま酒を飲み始め、同じく飲める奴らも感化されて完全にヒャッハーな世紀末状態になっていった。ただし何人かはオエーッ鳥の如くキラキラしたものをリバースする始末。

 

 おかげでそれを見たノヴァちゃんの顔が般若のような形相になってた。スノーデビルさん!? まずいですよっ!

 

 

 とは言えノヴァちゃんもこの騒ぎにこめかみを押さえてたけど、何だかんだで彼らの羽目外しを黙認していた。ヤダかっこいい……、惚れちゃいそう……。

 

 

 

 

 

 

 彼らの和気藹々とした光景に、俺は自分の心を信じ、その意思を貫き通して彼女を救う選択をしてよかったと思う。もし彼らを憎み、その報復として反撃、あるいは何もしなければこんな良い光景を見ることはおろか、もしかしたら最悪な結末を迎えていたかもしれない。

 

 

(なぁ(おれ)、憎しみだけだったらこんなにも温かいものを触れることが出来なかったんたぜ)

 

 

 ⦅………………………………⦆

 

 

 目の前の光景に尊さを感じながらギターを弾き、沈黙しながらも俺の言葉に耳を傾ける(おれ)に問いかける。

 

 

(確かに世の中は綺麗事だけで出来ていないから嫌なことだってあるし、別に憎しみを抱いてはいけないとは言わないけどよ。でも世界は嫌な物だけに満ち溢れているわけじゃないんだ)

 

(彼女の過去を見て俺も分かったが、この世界にも残酷な現実もある。だけど人の心の温もりもまた存在するんだってお前に知って欲しかった)

 

 

 

 だからこれからも一緒に、世界を、生命の営みを知っていこうや。そして、俺達がなんでこの世界に生まれたのか見つけていくんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それが俺がお前に与える、祝福だ。

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

「あれ~? 姐さんが何人もいる~?」

 

「えへへ~、姐さんも歌いましょうよ~」

 

「はぁ……、はしゃぎすぎだ馬鹿者共……」

 

 簡素な寝具に寝かせた隊員毛布を掛けながら、兄弟姉妹達のうわ言にため息をつく私。全く壮絶な殺し合いを行った相手とまさか宴会じみた騒ぎになるのは予想外だったが、だがいくら何でもここまで気を許せとは言ってないぞ。

 

『まぁたまにはこういう息抜きがあっても良いと思うゾ俺は。人間緊張しっぱなしだと、いずれタガが外れて取り返しのつかないことになるしね、しょうがないね』

 

「別に息抜きするのは悪いとは言ってない。羽目の外し方の程度を考えろと言っただけだ。それと宴にまで発展した一番の原因は一体誰のせいなんだがな……」

 

 

 目の前で片付けと、兄弟姉妹達を寝床に運んで寝かしている金色の異形がからからと笑いながら軽口を叩く。彼の姿を初めて目撃した時には驚いたが、厳かで煌びやかな見た目に反して意外と温厚で、明るく饒舌な性格をしている。

 

『(原因を作ったのは誰なのかは)知らなーい(棒)。……よし!これで全員寝かしつけたゾ、ノヴァちゃん。後はやること残っていないよな?』

 

「あぁ、ご苦労だった。やることは全部片付いたのでもう他にやることないぞ。それと私の愛称がノヴァちゃんというのはいくら何でもどうなんだ? もっと他に良いの考えられなかったのか?」

 

 そして律儀な所もあり、私の手伝いを率先として引き受け、せっせとやってくれた。そんな奴の名前はセツという。彼はフェストゥムという種族だが元は人間だと言っており、自分でも何が起きたのか見当もつかずもとにいた世界からこのテラへとやって来たそうだ。

 

『ん? じゃあNOVAうさ……「ノヴァちゃんでいい。お前に名前のセンスに期待する私が馬鹿だった」…………(´・ω・`)』

 

 奴が失礼なことを言い出しそうだったので軽く睨みつけて話を切らせた。話を遮られて落ち込む彼の姿は余りにも違和感しかない。雰囲気はお預けを喰らって落ち込むスノーファングに似てるが、犬と異形という姿の違いでこんなに違和感が出るのはどうかと思う。こいつにはプライドや威厳とかはないのか? 

 

「はぁ……、とりあえずこっちに来い。火の番は暇だから退屈凌ぎに少し私の話し相手になれ。ほら」

 

 そう言って私は彼を焚火の近くに誘いながら、彼に向けて何かを投げる。

 

 

『? これは……飴玉か?』

 

「何もないよりはマシだろう。それを舐めるだけでもお前が退屈せずに済む」

 

 彼はキャッチした飴玉を不思議そうに見つめる。言葉ではこう言いつつも、私の心の中では悪戯心を躍らせながら少しばかりの意図返しとしてうっすらとほくそ笑んでいた。

 

 

 

『お、良いのか? そんじゃ遠慮なく、いただきまーす…………カリャイ!!? アッー、辛いっす! 辛いっす! ーアッ! 辛いっす! 辛いっす! カルェ! カライ! カライ! カライ! カライ! カライ! アー……カライ!』

 

「っ? ……ふふ、すまない。なかなか巡ってこない機会につい悪戯したくなってな」

 

「しかし読心?の能力を使わなかったのか? そうすればこんなちんけな悪戯に引っかからずに済んだはずだ」

 

 

 躊躇なく飴玉を取り込む彼だが、その後すぐにあの飴玉を食べれば当然と言える反応を示した。まさか引っかかるとは思わなかった私は一瞬驚くも、すぐさま意地悪い笑顔を浮かべながら彼に対して疑問を問いかける。

 

 

 

 

 彼には読心という相手の考えを読む能力がある。私達の戦闘で彼が異様にしぶとかったのも彼自身の耐久力の他に、この能力による恩恵が一番大きかったと私たちに話してくれた。だが本人曰く、この読心はおろか、フェストゥムが持つ力を未だ充分に使いこなせていないらしい。

 

 

 …………あれだけの力を持ちながらも完全に扱えていないという事実に表情を変えずにいられたが、私は内心驚愕していた。

 

 実際に立ち会ったことでその恐ろしさを肌に感じ取った読心と同化、鉱山の異変を引き起こした増幅(アクセル)、そして実物は見たことないが彼が話してくれたワームスフィアという空間ごと対象を捻じ切り、消滅させる能力。

 

 自らの経験と彼の話を聞いて分かったことは、はっきり言って異質で非常識的だ。軍の一小隊はおろか、上手く使えば国一つを一人で殲滅することが可能な力だ。

 

 

 

 

 そんな力を個人で持っていることが世界に知れ渡れば、間違いなくこの世界は新たな混沌に満ちるだろう。兵器、あるいは実験素材としての利用価値によって彼を巡る戦争。強大な力を持つ彼に恐れて存在を否定、迫害する者の出現。

 

 

 

 

 そして何より、その気になれば無慈悲な暴力によって彼が世界の支配者になりかねないこと。……幸いなのは、彼がそのような悪辣で支配欲にまみれた性格ではなかったことだ。

 

 

 

 

『…………ふう、落ち着いた。まさか辛い飴という飴の概念に意表を突くなんて、このせっくんの目をもってしても読めなかったゾ。ノヴァちゃん……、恐ろしい娘! …………でもそういうとこしゅき』

 

 彼の力に危惧していた私を余所に辛さが引いて落ち着いたのか、彼は能天気に私の悪戯に対して大袈裟な評価を下す。本当に、彼と敵対し続けないでよかった。でなければ我々は既に、彼によってこの世から消し去られていた違いない。

 

 

『あぁ、それと読心しなかった理由は何てことない。単純にそれをする理由が無いからだゾ。最初は生き残るために必要と感じて読心を使ったけど、今はもうそれをする必要は無い。使わなくてもこうして言葉で分かり合おうとしているから』

 

『それに、俺から見ればもうノヴァちゃん達は友人だ。不用意に読心を使って友人を疑う真似なんかしたくないゾ』

 

 

「っ!!」

 

 

 

 そうか……、お前は感染者である私達のことを……、友人と呼ぶか。

 

 不意に放たれる思わぬ言葉。だがその声色には、彼の本心が詰まっているように腹の底から出したかのように力強く響かせていた。彼にとって感染者かどうかは関係ないんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 しかし……、全く、ふざけたほどに甘い答えだ。こんな世の中でそんなことを言えるとはな。

 

 異世界から来た彼にはこの世界の事情を深く理解していないだろうが、この世界は鉱石病という不治の呪いが蔓延している。昨日は友と言えた存在も自身が感染者になるだけで彼らから迫害され、敵になってしまう世界だ。そんな世界に疑うことは生きるのに必須なことで恥ずべきことではない。だが彼はそれを捨てて──―、

 

 

 

 

 

 …………いや違う。彼は疑いを知らないわけでも、捨てたわけでもない。最初は彼も私たちのことを警戒していた。しかし彼は、私達と違った点があった。

 

 

 

 彼は殺されそうな立場にいたのにも関わらず、私達を殺すことにためらっていた。戦い、殺し合うことを疑わない私達に対し、彼は本当にこれしか方法が無いかと疑っていた。

 

 

 

 私が鉱石病の悪化に苦しんだ際、彼はさっきまでのいざこざなんか関係ないと言わんばかりにその身に痛みを背負って、鉱石病に蝕まれている私を救った。

 

 

 

 結果、私達は無事に全員助かり、私達は救われた恩から気を失った彼を殺さなかった。そして今、目覚めた彼とこうして言葉を交わし、お互いを分かり合おうとしている。

 

 

 

 

 

 

 だが戦場ではそんな甘い考えをしている奴から死ぬのが当然だ。故に普通ならそんなことを考えない、考えてはいけない。

 

 

 彼の行いは、彼にとって何のメリットもない貧乏くじであったことに変わりない。自身の身に危険を晒し、最悪死ぬ可能性があった。実際に彼は苦痛のあまり気絶し、私達は気を失った彼を殺すことだってできた。彼もおそらくはそれを理解していたはずだ。

 

 それでも自身の考えを変えなかった。その決定的な違いが奇跡を呼び起こした。彼は、人の善に可能性を賭けることを選び、実行した。自身が望む未来のために。私達の心に宿す善性を彼は信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──―っくく、ははははは!!!!」

 

 彼の答えに自分でも信じられない声で思わず笑いが噴出してしまう。突然の状況に彼は理解できずに、覗き込むようにこちらを見つめる。

 

 だが、私の口から出たそれは嘲笑ではない。可能性を信じ、起きてしまった事態に対して直向きに向き合い、結果を最善へと導いた勇気ある戦士へ向けた称賛だ。

 

「……ああ、すまない。別に馬鹿にしたわけではない。お前の在り方がこの世界にとってはおかしくもあるが、その前向きさを認めたいと思っただけだ」

 

『? まぁ前向きに生きていた方が一度きりの人生を存分に楽しめるしな。ポジティブ is GOD。そして、 GO is not GOD、はっきりわかんだね』

 

 彼はまたよく分からない理論を繰り出していたが、自身の在り方を褒められたことをわかって嬉しいのか声色がより朗らかになっていた。願うなら、その前向きさを見失わないで欲しいものだ。

 

 そんな時、私はふと思い出したかのようにあることを彼に問いかけた。不思議と彼にこれだけは聞いて置きたかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうだ。一つ聞きたいことがあった」

 

 

 

 

「確か、お前は行く当てがないと言っていたな。なら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────―もしお前が良いのならば、私達の所(レユニオン)に来るか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 

 

 

 無事彼らとの和解を済ませ、騒がしい宴会の後フロストノヴァからレユニオンの勧誘を受けたせっくん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女からの勧誘でせっくんはこの世界で、自分が何すべきかと考える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スノーデビル隊の調査を手伝いながら、彼らとの徐々に絆を育むせっくんが出す答えは……? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『たとえこの先。苦しい現実が待っていても、俺はこの未来(ねがい)があると信じて、突き進む!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第10話、分岐 ~きずな~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりま次で本編を一旦区切り、幕問を書いていく予定だゾ。

幕問ではプロヴァンス以外にも登場させようと考えている本編キャラがいるにはいるけど、なにかいい考え(コンボイ)がありましたら提供オナシャス!センセンシャル。(ただし必ず反映させるとは言ってない)


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第10話 分岐 ~きずな~①

この辺にぃ、本編を一旦区切り、幕間を書いていく予定だとか言っといて今回の話が長くなりすぎて分割をした作者兄貴がいるらしいっすよ?

はい、というわけで書くのが随分遅れてしまった作者です。書いてく内になんか違うと書き直しまくって滅茶苦茶時間がかかってしまいました。首を長くして待ってた読者兄貴姉貴達、申し訳ナス!

ポンポンと文章が書ける兄貴姉貴達が本当に羨ましいゾ……。

あと今更感がするけど、UA7000と、お気に入り120突破ありがとナス!エタらない様に頑張るんでこれからもよろしくお願いします。


『俺が、レユニオンに……?』

 

 いきなりノヴァちゃんがそんなことを言い出したので、頭が理解に追いついていないゾ。どういうことなの……。

 

「そうだ。実力は申し分無く、性格は少々優しすぎるが…………、それ以外にこれといった難点は無い。会って間もないが正直な所、私はそれなりにお前のことを買っている」

 

 要するにヘッドハンティングってやつっすか。就職先が出来たよ、やったねせっちゃん! 

 

 けど、いきなりこんなこと言われても考えがまとまっていないから困る困る。確かに行く当てがないからその提案は今後の活動での指針が出来るとはいえ、流石にそんな話を鵜呑みするほど池沼でも無いゾ。それに彼女達はともかく、レユニオン自体に関しては襲われたこともあって懐疑的なんだよなぁ……。

 

「ああ、お前のその気持ちは最もだ。だから強制はしない。お前が行きたくないのならばそれでも構わない」

 

 これマジ? 随分と俺にメリットありまくりだな。普通ならそういうのって無理矢理にでも連れて行こうとするもんだと思うが?

 

 

 

 そんな俺の疑問に対しノヴァちゃんはフッと乾いた笑いを漏らしながら口を開く。

 

「無理矢理連れて行ったところでお互いのためにはならん。こうして話をして分かったが、仮に理不尽な命令されたとしても、お前は素直に聞かないだろう?」

 

 

    

(そんな命令をされたら逆らうのは)当たり前だよなぁ? この先人間扱いされなくなったらやめたくなりますよ~人生……あっ、状況的にはフェストゥム生だわこれ……。

 

 しかし、どうしたものか。俺にとっては情報を得られる数少ない絶好のチャンスだけど、世俗や情勢に疎いせいでレユニオンに対して色々と判断材料が少なすぎるのが痛いですね……、これは痛い。なんか良い折衷案ありませんかね? 

 

 

「そうだな……。なら明日私と兄弟姉妹達はここを出て他の廃村を巡回し、感染者の救助・調査に向かうのだが、その期間の間だけお前もついて来てみるか? それならお前は無理にレユニオンに入る必要は無くとも必要な情報も得られ、こちらも一時的だが今回の遠征でお前の力を借りることが出来る。その後どうするかはお前の自由だ」

 

 

 おっ、中々の提案やんけ。ええやん、気に入ったわ。でも俺が言うのもなんだがそんなことをしていいのか? 別れた後なんて俺がその気になれば、そちらの組織の情報を売る可能性もあるゾ。

 

 

「確かに普通なら情報漏洩の危険性もあってこんな提案はしない。だがお前の性格と危険を顧みず私を助けようとしたあの覚悟と行動から、お前は信用や信頼を反故しない奴だと思ったからな。少なくとも兄弟姉妹と同じようにお前を信じてみようと思っただけだ」

 

 

 はぇ~、すっこい好印象……。やっぱ人助けは一番だってはっきりわかんだね。

 

 そんな風に思っているとノヴァちゃんが「それに余程上手い奴ならともかく、欺くならわざわざ自分を疑わせることを言う理由が無いからな。もし騙されたなら、それはこちらが間抜けだっただけのことだ」と呟いた。まぁこちらも良い機会に巡り合えてるんで、こんな良いギブアンドテイクを破綻させるような真似はしないっすよ。

 

 

「ただし、私達はお前の答えを待たずに次に向かうのと、ついて来るならばしっかりと動いてもらう。ついて行くならばそこだけは気を付けろよ。では私もそろそろ休ませてもらう。すまないが手筈通り、火の番はお前に任せてもらっていいか?」

 

『かしこまりっ!』

 

 

 そう言って彼女は毛布で自身の体を包んで壁際の地面に横たわり始める。しばらくすると彼女の方から心地よさそうに寝息を立てているのが聞こえてきた。すぐに夢の中に入った辺り、彼女も今回のことでだいぶお疲れのようだ。

 

 ちなみに俺はさっきまで結構眠っていたおかげなのかあまり眠くないし、それを考えて事前に火の番を引き受けることを彼らに伝えておいた。パチパチと小気味良い火花の音を立てながら揺らめく焚火の焔を眺め、宴会の時に隊員からもらい、残していた酒を取り出してノヴァちゃんの言葉を思い返す。とりあえず明日彼女達について行くかどうかは、もうちょっと考えてみるか……。

 

 

 

 そんなわけでこの日の夜、俺は無い知恵を振り絞って明日の決断を考えながら焚火の焔を見つつ、もらった酒をじっくり味わいながら一夜を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___

 

 翌日

 

 

 

 オッハ──────!!!!!! 今日もいい天気(RU姉貴)

 

 

 朝、昨日の宴会ではしゃぎすぎたスノーデビル隊の皆さんはノヴァちゃんに怒られていました。俺はその光景に愉悦を感じながら眺めつつ、旅の支度を整えていきながら犬ゾリの準備とソリ牽引用のスノーファングという犬と戯れながら出発待機していた。お~よしよし、尻尾をブンブン振って愛い奴愛い奴。

 

 

 

 彼らと共にいる事から分かる通り、夜中じっくり考えた末に俺はノヴァちゃん達の調査について行くことにしたゾ。やっぱ生きるための情報が足りないのと、個人的に彼らともうちょっとお話しして仲良くなりたいのと、少しでも彼らの力になりたいという気持ちが強かったですねぇ! ちなみに同行することに関しては彼ら全員良しとしてくれた。断られなくてよかったゾ……。

 

 プロヴァンス……もといプロちゃん(勝手に名付けた愛称)の時は途中邪魔されたからな……。せっかく誰かと仲良くなれるのと情報が得られる良い機会を逃す訳にはいかんぜよ(土佐藩士並感)。

 

 ……それにしてもプロちゃん大丈夫かなぁ?あの事件でこっちが死んだと思って落ち込んでたり、援軍に来た猫耳達と仲違いしていなければいいけど。どうにかこっちの生存を彼女に伝える方法があればなぁ…。

 

 

 

 

 

 ……おっ、ノヴァちゃんが戻って来た。ちょうどお叱りも終わったようでそろそろ出発ですかねこれは。

 

 

「待たせたな。あの馬鹿共をお灸を据えるのに時間がかかってしまった」

 

 

 そう言う彼女の後ろにはフラフラと足元がおぼつかないスノーデビル隊達がこちらへと歩み寄ってくる。昨晩は飲んでた奴は結構飲んでいたからな~。おっ、大丈夫か大丈夫か? (煽り)

 

 

「くそぅ……頭痛ぇ……、飲みすぎた……」

 

「俺もだ……、あ痛たたた……」

 

「というかせっさんも度数が高いのを飲んでいたっすけど、何で平気なんすか……」

 

『おっ、あれかゾ? それなら飲んだ際、体内でアルコールがすぐに同化されちまって。おかげで酔わなくて済んだゾ』

 

 

 彼らの疑問に智将の威厳を醸し出して返答したら、酒飲んでた奴から「ずりぃ!」「せこい!」「貧弱下半身!」といった罵声を喰らった、何で? あと最後の奴、誰がKBTITだって? もう許せるぞオイ! もう許さねぇからな?(早変わり豹変)

 彼らの反論につい反応し、勢いに任せてドッタン、バッタン、大騒ぎ!することに。そしたら今度は俺までノヴァちゃんに怒られたゾ、ホント解せぬ……。こんなの嘘だと言ってよバーニィ! 

 

 

「いや、後半は煽ったせっさんが悪いんじゃないっすかね……? にしても酔わないのはちょっと羨ましいっすね」

 

 

 おっ、そうだな(すっとぼけ)。と言っても、あっちでは酒は弱くはないけど強くもなかったから、そんなに飲む機会はなかったんだよなぁ……。でも昨日飲んだあの酒はおいしかったから、そういった酒を今後デメリット無く飲めることが出来るようになったのはいいゾ~コレ。

 

 ……さて、ちょっとしたからかいにふけっていたが、そろそろ出発の時間だな。

 

 

「……最後に一応聞くが、このまま私達について来たところで、この大地に起きている悲惨な現実を知るだけだろう。もしかしたら知らなければ良かったと後悔するかもしれない。それでも、お前はついて来るのか?」

 

 

 それは愚問だゾ、ノヴァちゃん。

 

 この世界に転生した俺もこの大地に生きる以上、知らないといけないことやこの目で確かめないといけないことが山ほどあることが分かった。

 

 それらを知ってなお、俺はこの世界で何をしたいのかは自分で選んで決めたいんだ。

 

 むしろこう言わせてくれ。皆さん、ぜひ俺にも手伝わせてください。

 

「……なら私がこれ以上言うことは何もない。一時とはいえ、お前の力を当てにさせてもらうぞ」

 

 …………!!! ありがとナス! じゃあ善は急げってことで早く出発しましょうよ、()()()

 

「っ! フフッ、そうだな。では行くとしようか、新たな()()よ」

 

 

 では早速次の目的地である凍原に点在している別の村へと…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イグゾー! デッデッデデデデ! カーンwデデデデ! (+1145141919810点)

 

 

 

「……そのセルフBGMと謎の採点には何か意味があるんすか?」

 

(意味なんて)ないです。強いてあげるとしたらなんとなくの気分でやってるだけだゾ。なのでバーニィ君、そんなこと気にしなくていいから。(良心)

 

「えぇ……っす(困惑)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういう訳で俺は彼らの調査遠征に同行することになった。この数日、いや、数週間で様々な現実に直面し、時には気が狂いそうになったゾ。全部説明するととてもじゃないがこの小説に書ききれないため、(メタ発言)

 

 

 みなさまのためにぃ~。(ゆっくりボイス)

 

 

 

 こちらの簡潔なダイジェストでお送りしていこうかと思います。クッキー☆なんて流す訳無いだろ! いい加減にしろ! 

 

 

 てなわけではい、よーいスタート(棒読み)

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして始まったスノーデビル隊の遠征。それは決して楽な道のりではないが、得られた物もあり彼らについて来てよかったと、俺はそう思えた。

 

 

 

 ある時は強烈なブリザードの中を自らの巨体を活かして、仲間を守る盾になって進軍したり……。

 

「金ぴか、大丈夫か?」

 

『(フェストゥムのタフさは尋常じゃないから)大丈夫だって安心しろよ~』

 

「それならいいが……。すまないな、仲間のために身を挺してもらって……」

 

『(こっちもまだ余力はあるし、仲間の命の方が大切だから)まっ、多少はね? (後で休ませてくれれば良いって)それ一番言われてるから。ほら行くどー』

 

(……今回は彼のおかげで何とかなるが、次は自分達で何とかしないとな。しかし彼に助けてもらって情けないな、俺達も彼に負けないようもっと精進しよう)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある時は到着した他の廃村での捜索を手伝ったり……。

 

「ふぅ……、ここも生存者はいないか……」

 

「しかしここといい、先ほどまで訪れていた村でも感染者のなれの果てになった人以外に、最近殺された死体や荒らされた跡が見つかってなんか奇妙っす……」

 

「……なんかキナ臭いな。今後は気を付けたほうがいいかもしれんな」

 

「そうっすね……あっ、せっさん、村人達のお墓作りの方は終わったっすか?」

 

『もちのロン、あとは鎮魂歌を歌って、終わり! ……と言っても、こんなの気休め程度にしかならんがな……はぁ……めっちゃやむ(RAM並感)』

 

「……………………」

 

「……確かにお前の言う通りそれは無駄な行為なのかもしれないな」

 

「っ!? ペトロワ先輩! そんなこと言わなくてもいいじゃないっすか!」

 

『いいんだゾバーニィ。……ペトロワ先輩、続けてください』

 

「……それでも、俺はお前のやってることは立派だと思う。見知らぬ誰かでも、思ってくれる奴が居るだけで人は嬉しいんだ。お前は誰にも言われず自らの意思でそれを率先してやっている。亡くなった彼らはそんなお前を恨むことなんてできるか? 少なくても俺は恨みはしないし、むしろ嬉しく思うね」

 

『「先輩……」』

 

「だからセツ、お前の行為をこんなのとかで卑化するな、堂々としろ。そうでなければ弔われた彼らも浮かばれず、むしろ彼らに対する侮辱にもつながるから…………って何でお前らそんな不思議そうな目でこちらを見るんだ?」

 

「ヤダ……うちの先輩、普段はそうでもないのに今はこんなにもかっこいいなんて……っす」

 

『これはノンケもホモ化不可避、はっきりわかんだね』

 

「お前らなぁ……(呆れ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある時は身を守れる力を得るために彼らに頼み込んで戦い方の指導してもらったり…………。

 

「……動くと当たらないだろ? 動くと当たらないだろぉ!?」

 

「おい、打って来い打って来い。……そんなんじゃ虫も殺せねぇぞお前ら」

 

『野郎オブクラッシャ──―!!!!』

 

 

「……なぁ、金ぴかはともかく教官役を引き受けたあの二人もなんか言動おかしくないか? あんな台詞普段から言わねぇだろあいつら」

 

「あぁ、それか。何でもあの二人が「教官として自身と威厳があるようにするにはどうすればいいのか」とあいつに尋ねたら、いんむごろく?という言葉を教えて、形だけでもと彼らに自信をつけさせようとしたらしい」

 

「あの二人、実力は確かにうちらの中では上位で、読心でうちらの攻撃を躱していた彼によく攻撃を当てていたのは他でもない彼らだしな……。けど気迫や自身の無さに関して普段から悩んでいたからなぁ……」

 

「……だが性格が変わってこれはもう魔改造になっていないか? なんてもんを教えたんだあいつ……」

 

「あっでも、訓練以外は普通の状態に戻ってて、実生活には支障はきたしてないって。むしろ自信を付けさせてくれたことに二人は彼に感謝してたわ」

 

「「えぇ……(困惑)」」

 

 

 

 

「じゃあオラオラ来いよオラァ!!!!」

 

「おい、エンジン全開!」

 

『(≧Д≦)ンアッ──────!!!!』

 

 

 

 

「……やっぱ何かしらの影響が出てるだろこれ」

 

「「うんうん」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてある時はどうでも良い雑談に盛り上がったりと…………。

 

「姐さんに似合う服は女騎士コスだろ!?」

 

「いやいや、シスター衣装っすよそこは!」

 

「僕はナース服で一生看護されたいです……」

 

「まぁ待てお前ら、白の炎国ドレス(チャイナドレスみたいな服)が至高だろ」

 

「「「は? (威圧)」」」

 

「……ところでせっさんは何推しだ?」

 

『そうですねぇ…………。やっぱり俺は、王道を征く、バニースーツですかね』

 

「「「「!?」」」」

 

「……姐さんの種族を活かすのに最適なコスであるバニースーツだと!?」

 

「くっ……、確かにそれはシンプル故に強いぞ……」

 

「けど俺も自分の推しコスに誇りを持っているっす!」

 

「「「「「そうだ、そうだ!」」」」

 

『…………というかさ、みんなはさっきまで言ってた全てのコスを見たくないの?』

 

「「「「「見たいに決まっているだろ!!!」」」」」

 

『ならみんな、答えは一つじゃないか。論争なんかやめよう! 馬鹿らしいよ! ……ラブアンドピース! 平和が一番! 全部のコスを愛するってことで終わりっ! 閉廷! ……以上! 皆解散!』

 

「「「「「*言語化できてないウルサス語での歓声*」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、随分と長く仕事の手を休めて、何やら楽しそうな話をしているじゃないか」(#^ω^)ピキピキ

 

 

 

 

 ギギギギギッ……。(全員錆びついた機械のような動きで後ろを振り向く)

 

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ。(途轍もない威圧感を纏いながら仁王立ちするフロストノヴァ)

 

 

 

 

 

「「「「「『……ファ!? 姐さん!! いつの間に!?』」」」」」

 

「あれだけ大声で騒げば嫌でも聞こえる。……さて、お楽しみの所を邪魔して悪いがサボりは見逃せないな。早速お前達には私のアーツの練習相手(サンドバッグ)となってもらう。……なにか言い残すことはあるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうダメだ……おしまいだぁ……っす」

 

「ああ逃れられない!!! (逃れられぬカルマ)」

 

「お慈悲^~!!!」

 

「ヤメローッ! シニタクナーイ! シニタクナァ──イ!!!」

 

「違うんだ姐さん! これも全部乾巧って奴の仕業なんだ!」

 

『何だって! それは本当かい!?』

 

「「「「いや、アンタがツッコんでどうすんだ(っすか)!?」」」」

 

 

 

 

 

「…………問・答・無・用!!!!」

 

「「「「「『アッ──────!!!』」」」」」

 

 

 この後メチャクチャ氷像にされた。

 

 

 

 

 

 

 

 ダイジェストは終わり! 閉廷! 以上! 

 

 なんだこれは、たまげたなぁ……。淫夢語録や色んなネタを使いすぎてスノーデビル隊を布教(洗脳)しちゃってるじゃないか。(真面目だったスノーデビル隊が)あーもうめちゃくちゃだよ(他人事)。……一体誰のせいなんでしょうかねぇ? (お前じゃい!)

 

 

 

 ……とまぁ、セルフツッコミは置いといて、他にも源石に汚染された土地の一部を同化で浄化したり、小規模程度の天災?といったやつならワームスフィアで打ち消したりなど、この遠征中で色々なことをやった。中には感染者狩りという奴らに襲われて、身を守るために拳で抵抗したりもした。ただ、その時俺のやった秘策があまりにも拷問沁みていて怖いと、味方であるはずのノヴァちゃん達にドン引きされたゾ。

 

 ……えっ? 一体何をやったかって? 相手をひたすら殴って回復させての繰り返し(ハメループ)で、戦意喪失するまで蹂躙してやっただけですが何か? これなら全力全壊でやっても殺すことなく相手を打ち負かすことが出来てHE・I・WA的だな! 

 

 ……まぁ、やりすぎると相手の精神が崩壊したり、回復は俺自身に対象が受けた痛みを背負うという仕組みで行ってるため、下手すると()()()()()()()()()()()()()()()()()という欠点があるんだけどね。こればかりは背負うべき咎と思うしかないからしょうがない、その方が個人的にまだ気が楽だし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで何だかんだこの遠征では色々とあったが、まさか最終日に、俺は自身の運命を定めてしまうあるものを見つけてしまった。それを見つけた時には流石の俺も驚いたゾ……。

 

 それは一体何なのかは…………、次回に続く。  

 

 




正直今まで書いたのもこうして分割すれば少しはマシになったんじゃないかと思う。一話に収めようと意地になってたのが仇になりましたねクォレヴァ…。


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第10話 分岐 ~きずな~②

というわけで続きです。これでやっと、幕問や次の章に関する話に入れるんやなって……。

そうなると今までの話をまとめる章のタイトルも考えなきゃ…(使命感)


 遠征最終日、俺とノヴァちゃん達は予定通り最後の廃村へと辿り着く。直前に立ち寄った廃村とはかなりの距離があったため、こ↑こ↓に着く頃には辺りは漆黒の帳に包まれていた。

 

 

 

 村に着いた俺達は簡易的な拠点を作成する者、村の捜索に出る者へと役割を分担して調査に乗り出し始めた。この遠征の間、同じことをやってきた俺も手馴れたかのように村の捜索の方へと参入し、虱潰しに村中捜しまわった。

 

 

 

 

 そんな中、俺は村にある何の変哲もない小屋へと足を踏み入れる。スフィンクス型だから足は無いけど。中に入ると、一人の人間が壁に寄りかかり床に座りこんでいた。

 

 

 

 まだ生きているのかと思いすぐさま駆け寄ったが、座り込んでいた人間_悪魔の角が生えた中年位の見た目をした男性から生気が感じられず、既に息を引き取っていると悟った。見た限り死因は凍死で、間に合わなかったかと嘆き落ち込んでいると、彼の手に握られている羊皮紙の様なものが目に映った。死して尚力強く握り締められており、まるでこれが心残りであったと伝えているように思えた。

 

 不思議に思った俺は申し訳ないと思いながら彼の手から羊皮紙を抜き取り、それを広げて読み上げた。そこに書かれていたのは…………、

 

 

 

 

 

 

   

 

 

(なになに…………、ファッ!? 何でこれが書かれてんだ!?)

 

 目を見開く(目は無いけど)かの様に驚くのも無理は無かった。何故ならそこに書かれていたのは何処かの場所を示す地図と、何らかの文字で綴られた文章と意味不明な紋章。そして……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スフィンクス型のフェストゥムの姿が古めかしいイラストで描かれていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調査を終え、拠点に戻った俺はすぐさま彼らにこのことを伝え始めた。だがどうも信じられないと言わんばかりに眉をひそめていたので、証拠として羊皮紙に書かれたフェストゥムを見せる。すると流石に彼らも目を丸くして驚き、がやがやと騒ぎ始めた。

 

 

 念のためフェストゥムがこの世界に居ることが普通なのか聞いてみたが、やはり俺以外の個体は今まで見たことなく、それどころか「お前みたいなのが何体もいたら既に世界滅んでるわ!!!」とツッコまれてしまった。少々解せぬがそれに関しては俺も同意するわ。フェストゥムは色んな意味でヤバいし、しょうがないね。ネ○ロモーフよりかはマシ…………、いや、どっこいどっこいか。

 

 

 

 話がそれた。とりまこの古文書みたいな羊皮紙には何が書かれているのか皆に尋ねてみた所、幸いにも隊の中に一人だけこの紙に書かれた内容が分かる奴がいた。

 

そんな彼の名はノーチス、スノーデビル隊一の物知りさんとみんなから言われている。なんでも彼は以前考古学者の端くれとして大学で勉強していたらしいが、鉱石病に感染してからは大学は中退し、地元から迫害され、這う這うの体でレユニオンに加入したとのこと。加入後はノヴァちゃんの育ての父親の元で彼が所有してた伝承に関する書物の調査の手伝いをしていたらしい。その後スノーデビル隊に所属し、知恵袋として活躍している。

 

 

 

 さて、彼の紹介も終えた訳で、早速彼に古文書の解読をお願いした。快く引き受けてくれたのは良かったんだが、いかんせんこの羊皮紙が相当古く、書かれている文字が所々掠れていたり、彼も知らない単語で読めないところがあるわけで解読に悪戦苦闘していた。それでもある程度は読めたらしく、分かる所の内容を要約してもらうとこうなった。

 

 

 

 

『大昔。空より来たり者、とある土人の一族達である我らと交流し、命を学ぶ。来たる者は命を学ばせてくれたたお礼にと、我らのために楽園を作った。

 

 楽園は永らくの平和を築いた。だが突如、侵略者に襲撃され、楽園に住まう一族達は僅かな生き残りを残して滅びの一途をたどった。

 

 来たる者は僅かな生き残りを安全な場所に連れ、匿わせ、一人で侵略者に戦いを挑む。

 

 彼の者の行方は分からない。打ち勝ったのか、倒されたのか。

 

 だがもし、彼の者が生きていれば、我ら一族は楽園を復活させたい。命を学び、平和を好んだ彼の者のために、我らはここに楽園の場所を記そう』

 

 

 

 

(内容は)んまぁそう……よく分かんなかったです。かろうじて分かったのは昔フェストゥムがこの星に来て、交流して、この星に住み着いていたってことぐらいしか……。というかこれ本当なら、この星の住民達はよく滅ぼされなかったな? それに何故フェストゥムのことが現代まで知られていないんだ? 

 

 

 

 解読したことで分からないことが増えてしまったがそれはさておき、結構読めてんじゃんと思うかもしれないが、残念なことに肝心な楽園の場所や紋章についてはよくわからなかった。何かヒントは無いのかと思っていると、ノーチス君が重要なことを呟いた。

 

 彼曰く、「この土人って言葉なんですけど、もしかしてこれはドゥリン族のことを指してるんじゃないでしょうか」とのこと。

 

 

 ドゥリン族って何ぞや?と聞いてみると、地下世界という場所に住んでいる種族なのだがどういった暮らしをしているのかは不明で、せいぜい低身長であることと機械の扱いが優れているとしか分からないらしい。地下世界に行けば会えるんじゃ?と思ったが、どうにもその地下世界自体の行き方は不明らしく、どうしても行くとなるとドゥリン族を伝って行くしか無いほどだとか。

 

 

 そんなわけで古文書の解読から、謎が知りたければドゥリン族に会うしかない。だが残念なことにレユニオン内で彼らが知る限りドゥリン族は所属してないらしく、個人でレユニオン以外でのドゥリン族のツテが無いそうだ。つまりドゥリン族を探すところから始まるんだが、地上にいるドゥリン族は居るにはいるが、そこまで多くないらしく基本は地下世界に住んでいるらしい。

 

 

 解読を終えたノーチス君は他のやるべきことをやるためにこの場から離れていった。そんな彼の姿を見て俺は彼に解読してくれたお礼を述べた。他の隊員達も各自の持ち場に着いたり、栄気を養うために仮眠を取るなどして解散していた。俺は焚火付近に座り、この古文書の謎について一人考えていた。彼のおかげでこの古文書のことが少し分かったが、まだまだ分からないことが多すぎる。これ以上は調査しないと分からないしな、どうしたものか。

 

 

「……ところでセツ、お前はこの後どうする?」

 

 

 古文書の謎について頭を悩ませていると、突然ノヴァちゃんが近くにやってきて声を掛けてきた。え? どうするって……ああ、今後のことについてか。

 

 

「そうだ。行く当てのなかったあの時とは違って、今の所お前にはいくつかの選択肢が出来たはずだ。お前の選択次第ではここでお別れになる」

 

 

 そうだよなぁ……、これは俺自身の問題になるから流石に彼女達にドゥリン族捜しの同行は頼めないしな。彼女達もレユニオンでやるべきことがあると言ってるし、この古文書の謎を解き明かすとなればここで彼女達とはお別れか。

 

 

「ああ、だから今後のことでお前に言っておくべきことがある」

 

 

 ん? なんだゾ? 

 

 

「セツ、()()()()()()()()()()()。お前自身の意思で、為すべきことをなせ」

 

 

 ノヴァちゃん……? 

 

 

「……すまないな、最初に勧誘したのはこちらなのにこんなことを言って。だがこうでも言わないとお前は心の整理がつかないままレユニオンに来るかもしれないだろう?」

 

 

 うっ……、それは……。

 

 

「この旅の間、お前は感染者のためにできることをしてくれた。感染者の亡骸に対して泣いて弔い、感染者の迫害の実態に対しては強い怒りを表し、感染者狩りと戦ってくれた。私達のやってることが悪行だと知ってもお前はそれを頭ごなしに非難せず、私達の気持ちにどうにか歩み寄ろうとしていた。他にもいろいろあるが、私達はお前が優しさを持った立派な人物だと分かり合うことができたんだ」

 

 そうだ、俺は彼らから感染者の現状を学んできた。最後まで死に怯え、亡くなってしまった感染者の気持ちに悲しさが込み上げ、亡骸を抱き抱えて泣いた。人間である感染者(かれら)を人とは思わず、それどころか楽し気に殺そうとする感染者狩りに対して怒りを抱いた。そして、彼らの気持ちを理解すればするほど、レユニオンの活動を知ってやってることがテロといった悪行だと理解しても、綺麗事でそれらを否定することが出来ず、むしろ彼らに戦いを止めさせる方法が思いつかない自分に腹が立った。

 

 鉱石病が原因なら治せばいい。最初にそう思った俺はレユニオンに入り、治療を行うことを考えていた。俺の力が人として懸命に生きようとしている彼らの力になれるなら喜んで力になるし、戦争を止められると思っていた。

 

 けれど、それで万事解決出来るほど最早事態は甘くないことを彼らの話を聞いて、壁にぶち当たったかのような感覚に支配された。

 

 仮に俺の能力でレユニオン全ての人間に鉱石病を同化(ちりょう)したとしても、彼らの心に宿す積み上げられた長年の恨み辛みまでは消せず、それらが彼らを戦争へと駆り立てる。それによって非感染者も同じように考え、双方の怨念返しの連鎖となってその争いが今に至っている。ガン○ムUCの良いおっさん代表でも知られるZNNMNが言ってたように恨みや後悔は理屈では消せないんだ。

 

 仮に治療が成功したとしても、彼らが感染者ではなくなったとしても、本当に平和に生きていけるのだろうか? 感染者ではない彼らに怨念返しで生まれた恨みを持つ者が彼らを元感染者(犯罪者)のレッテルで蔑称し、再び迫害を起きるかもしれない。

 

 

 この世界で起きてる現実に悲嘆しても、彼女達がそんな辛い目にいるのを知った今、悲しいから自分だけ逃げてのうのうと平和に生きることはしたくない。例え結果的に無駄なことだとしても俺は──―。

 

 

「お前の優しさは嬉しい。だからこそ、お前がその優しさに囚われてしまうことを私達は避けたい。私達はお前を縛る枷にはなりたくない」

 

 

 ────っ。それでも……。

 

 

「そう不安気な顔をするな。私達はそう簡単にくたばらないし、死ぬつもりはない。それに、私はお前の選択を信じてみたい。そのおかげで私は助かり、兄弟姉妹達を悲しませる結果にならなかったんだ。だから……」

 

 

 ──―お前が信じた未来に在る「意味」を示してくれ。それがいずれ、私達感染者の希望になるはずだ。

 

 

 そう言って彼女は篝火に照らされた仮眠用のテントの方へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 …………俺は彼女達みたいな感染者を見捨てることが出来ないし、見捨てたくない。それは本心だ。

 

 

 だけど、彼女の言う通り、俺がレユニオンに入ることが本当に彼らのためになるのか? 

 

 

 彼女は気にするなと言った。それはレユニオンだとか、感染者だとかに構わず、今俺が為すべきことを為せと伝えているように思えた。

 

 

 

 何かを伝えたいのかと考えたその時、俺は手元の古文書の内容を見てハッと気づく。

 

 

 

 

 これはこの世界でのフェストゥムについての謎が示されているが、重要なのはそこじゃない。

 

 古文書に書かれている楽園。これがもし本当にあるならば、彼女達のように平和に生きたいと願う感染者が安心して暮らすことが出来るんじゃないか。そして楽園を探す鍵になっているのはドゥリン族と、フェストゥムとして生きている俺だ。そうなるとこれは俺じゃないとできないことになる。

 

 おそらく彼女はこれに一筋の希望があると気づいた。自分達の戦いよりも、より多くの感染者を救える可能性のために。感染者が悪だと常になってるこの世界に、彼らが安心して暮らせる居場所があることを信じて。それは儚い希望かもしれないけど、可能性は無いわけじゃない。

 

そして今の現状ではそれを為せるのは俺だけだと気づいて、俺に託そうとした。

 

 

 

 

 だったら俺のやることは一つ、楽園を見つけることだ。そして彼女達の様な平和を願う感染者のために、俺はこの楽園を使おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ありがとう、ノヴァちゃん。そして、ごめん。

 

 

 

 

 ここでお別れだ。

 

 

 

 けど、これは別れじゃない。

 

 

 

 

 

 

 再び会って、君達を安らぎの地に連れて行くために俺は旅立つんだと。

 

 

 

 

 

 

 たとえこの先。苦しい現実が待っていても、

 

 

 

 

 

 

 俺はこの未来(ねがい)があると信じて、突き進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日……。

 

 

『姐さん、スノーデビル隊の皆さん。お世話になりました! せっくん、未来を掴むために、行きます!』

 

 

 彼女達にお辞儀をし、そう言って俺は彼女達とは違う方向へと旅立つために背を向けて、歩み始める。

 

 

 こうして俺はこの凍てつく凍原にて彼女達と別れ、希望のために旅立った。

 

 

 これが俺の本当の旅の始まりだった。

 

 

 

 もしも俺と彼女達が生き残れるなら、この遠征で育まれた絆を忘れずに心に留めたい。

 

 

 

 またいつか、楽園にて会える、その日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideフロストノヴァ

 

 

「行ったか……」

 

 凍原の彼方へと進み、段々と小さくなっていく彼の姿が瞳に映る。

 

「寂しいっすね……、姐さん」

 

「最初は兎も角、あの後仲良くなっていって、俺たち全員あいつのことを認めるようになったからな」

 

「ひぐっ……えっぐ……、金ぴかさん……」

 

 別れた彼の姿に兄弟姉妹達は愁いを帯びた声で呟く。中には鼻をかみ、流れる涙を手や腕で抑える者が居た。

 

「けど、これでよかったんじゃないかと思うんだ」

 

「どうしてだよ? お前だって悲しい筈なのに?」

 

「あいつは優しいからな。もしレユニオンに居たら本来は関係無いのに戦争に関わり、心が荒んで、いつか壊れてしまうんじゃないかと不安だったんだ。だから、俺達の戦争を巻き込ませずに済んだことにホッとしている」

 

「ああなるほど。確かにそれなら納得だ。あの時もあいつが考えた秘策で出来た痛みを隠して平気な振りをしようとしてたし、その時の俺心配になったよ」

 

「むしろあいつは戦いから離れたほうがいいんだ。優しいあのままでいて欲しいし。幸い歌が上手いから、歌手としてやってけそうだと思うんだがな」

 

「それは同感だな。俺もあいつが歌う歌のメロディーが気に入って、時折口ずさむようになっちまった」

 

 全く、彼らからこんなに好かれるなんて、とんだ人たらしだ。

 

「では私達もそろそろ行くぞ。次会う時まで死ぬわけにはいかないのだからな」

 

「……そうっすね。別れる最後、せっさんが自分らの鉱石病の一部を肩代わりしてくれたっす。ここまでされて自分らがそう簡単にくたばるわけにはいかないっす!」

 

「ああ、俺達は俺達の戦いを終わらせて、むしろあいつが戻ってくるのを待とうぜ!!」

 

「「「「「「「「*ウルサス語での叫び*」」」」」」」」

 

 

 そうだ…………、これは永遠の別れではない。

 

 

 

 

 お互いの道のりが苦渋の痛みを伴うものだったとしても、

 

 

 

 

 私達と彼は生き続けなければならない。また会うその日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日、私達と彼が別れた時の空は、

 

 

 

 

 暗く凍てついた鈍色の雲が殆どな凍原では珍しく、蒼く晴れ渡っていた。




俺たちの戦いはこれからだ!(終わりじゃありません)

というわけでいったん本編を区切り、幕間へと入ります。しかしネタはあってもそれを書き起こせる力が無いのは本当に辛いのぉ、ヤス……。

読者兄貴姉貴達には再び首を長くして待ってもらう結果となりますが、お待ちしていただけることを願っております。


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幕間1 異変 ~のろし~

ウルサスの子供たちでホラホラほら胃ズーンされたので初投稿です。

一応大陸版の情報(ゲームのサイハテ)で重い内容だということは知っていましたが、訳で分からなかったところが今回のではっきり理解できてしまった部分が出てきて心がクゥーン…(子犬)になったゾ。


……ロサ?来てるわけないだろ!いい加減にしろ!

選ばれたのは、厨二病満足飛竜のシェー!!シャ君でした。




「はぁ……」

 

 一人の女性がポフンと自室に備え付けられたベットに倒れ込む。気分が浮かないのか、自慢の大きな尻尾も元気無く垂れ下がっており、手入れは欠かさず行っているのに毛艶も悪く見えてしまう。

 

 天災トランスポーターである彼女はいつもせわしなく仕事を務め、さらに自分から率先して環境美化に努めており、普段なら多忙な日々を送っている。そんな彼女にも楽しみとしている貴重な休日がある。本来なら誰かとショッピングやパーティーをしたりするが、今はそんな気分が湧き起こらない。

 

 普段とは違う主人の姿に心配なのか彼女と同じ青紫色の狼_グレープさんが顔を近づけて不安気な表情でこちらを見つめてくる。

 

 

「……あっ、僕は大丈夫だよ、グレープさん。うん……、大丈夫だから……」

 

 ロドスで天災トランスポーターとして活動している彼女、プロヴァンスはパートナーの頬を撫でながら、まるで自分に言い聞かせるように呟いていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの一触即発の後、僕達はロドスへと無事に帰還した。彼のことを誤解していたスカイフレアは僕の説明を聞いた後、普段は自信たっぷりの顔が徐々に青ざめていき、必死に謝罪していた。確かに彼女のしでかしたことは、とばっちりとは言え関係ない命を奪ったから許されることではない。

 

 

 

 許せない……けど、彼女が横暴な人じゃないのを僕は知っている。高飛車な発言でそそっかしいから勘違いしやすいけど、彼女は他人を見下すような人間じゃない。自らの過失には素直に反省する娘だ。

 

 そして彼はおそらく彼女のことを赦すんだろう。確信しているわけじゃないけど、彼女が僕を助けようとしていたのを彼は分かっていると僕はそう思う。

 

 

 だから僕は……、彼女を許すことにした。そして一つの条件を彼女に伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 彼_せっくんに会えたら、絶対に謝るようにと。

 

 

 ……何でそんな条件を言い渡したのかって? それはもちろん決まっている。彼がまだ生きているということを僕は信じている。

 

 

 あんな惨劇を見て何を根拠にと言いたいけど、それには理由がある。ロドスへ帰還する前に、僕は彼女達から少し時間をもらって、彼女の隕石の着弾地点を調べさせてもらっていた。

 

 最初は彼の生存の可能性が無いと悲しみに暮れていたけど、調べていく内に僕はこの場所に違和感を感じた理由が二つ出てきた。

 

 一つは焼き尽くされた焦土の状態だ。彼、もしくは地面に着弾した時を想定していた状態とは違って、地面の焦げが浅いことが分かった。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのような焦げ具合だと僕の直感がそう囁く。

 

 もう一つはあそこには彼の焼き尽くされた亡骸が無かった。彼の体が灰燼に帰したり、融けて無くなったということもありえなくは無いけど、それならそれで何かしらの痕跡があってもおかしくない。

 

 薪を燃やした際に灰が出るように、硬いガラスが高温にさらされて形が崩れ融けるように。太陽のような全てを飲み込む熱でも無い限り全てを燃やし、熔かし尽くすことは出来ない。いくらスカイフレアのアーツが強力でも、以前本人から流石にそこまでのことは出来ないと述べていたのを覚えている。だから、必ず何かしらの痕跡が残るはずなんだ。なのにあの焦土からは彼の、彼が燃やされたという痕跡すら一つもない。

 

 それらの考察から、彼はあの瀬戸際をどうにか切り抜け、脱出した可能性もあるはずだと僕は睨んだ。

 

 ただ、どうやって彼があの場から逃げ出せたのかは分からない。調べていく内に爆心地の近くにある湖が気になったので、湖に顔を突っ込んで中を調べると、湖底に何処かに通じる洞窟のような穴が存在した。おそらく彼はあの状況の中、湖に飛び込んでこの穴に逃げ込んだのか、はたまた僕達には考えられない方法で逃れたのか。どうやってこの場から離れたのかは分からないけど、少なくても彼が死んでないと希望を持てる材料が分かり、その可能性に信じ込みたかった。

 

 

 

 

 

 

 それでも、彼が生きている証拠もまた見つからない結果に終わった為、彼の生存を信じたいのにそれが邪魔をして、僕の心に不安を掻き立てる。

 

 そんな不安を掻き消したいがために、ロドスに帰還した後、僕はいつもの様に天災トランスポーターとしての仕事を務める傍ら、空いた時間は彼が生きている証拠が無いか調べていた。どんな些細な情報でも良いと、ニュース、新聞、果てにはトランスポーターの間で情報交換の場で有名な掲示板を使って彼について探していた。だけど、いくら調べてもこれといった情報は無く、さらに運の悪い出来事が今日起こった。

 

 

 あの事件から数日後、突然医療部門から緊急要請で僕が呼ばれた。

 

 普段は医療部門に呼ばれることは滅多に無く、仮にあるとしたらそれは鉱石病の深刻な事態について伝えることか、それに近い状況になる。だけど僕の場合、鉱石病は中期段階に入っているが症状自体は安定していて、むしろここ最近は何故か憑き物が落ちたかのように調子は良い方だ。だから深刻な異常で呼ばれたのではないと分かるが、それなら何事なのだろうかと僕は指定された医務室に向かった。

 

 

 部屋に入るとそこには、

 

 

 

 ロドスのCEOであるアーミヤちゃんと医療部門総責任者のケルシー医師、そしてロドスに在籍している医療オペレーターの中で古株なことで有名なワルファリンさんが神妙な顔で僕がやってくるのを待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 余りにも異様な緊迫感が漂う空気に体が強張る僕に対し、アーミヤちゃんはそんな僕を落ち着かせるように優しく語りかけてきた。

 

「お疲れ様ですプロヴァンスさん。実は──」

 

 

 

 

 彼女が言うには、この前の定期診断の際に僕の感染状況が今までの診察結果に比べ劇的に良くなっており、検査項目はほぼ全て非感染者と差し支えないレベルまで落ち着いていたとのこと。何故か鉱石病によって変異した尻尾はそのままだったが、身体に関して悪影響は及ぼしておらず、個人的にはこの尻尾は気に入っているので特に気にしてはいない。

 

 だがそれでハイおしまい、と言えるほど楽観できる事態ではなかった。何故なら不可能と言われている鉱石病の治療が起きており、異常ともいえる事態だ。この結果を見た医療部門の人々は前回の検査フローで何かの不手際が無かったのか、機器のエラーが無いかと入念に再チェックを行ったらしいが、それら全てに異常は見受けられなかった。

 

 

 この事態を重要視すべきと判断したロドス上層部は、念のため該当する患者の再検査と本人から詳しい話を聞きたいと意見が一致したことから僕を呼び出すことに決めた。

 

 

 

 

「────ということなのです、プロヴァンスさん。念のため再検査のご協力と、ここ最近、こうなった原因に思い当たることは無いでしょうか?」

 

 

 

 おずおずとアーミヤちゃんはお辞儀をして、僕にお願いする。彼らの話を聞いて僕は思い当たるのはあれしかないと即座にあの光景が頭に浮かんだ。

 

 彼が僕とグレープさんの治療を行ったあの時。彼は僕の体に蓄積していた源石を麻痺毒と一緒に取り込む……彼曰く同化という現象が今回の事態の要因だと推測する。彼は源石がどういったものかはあの時点で知らなかったのだろうし、それを詳しく知ったのは僕の説明を聞いていた時だ。少なくとも彼は意図的に鉱石病を治療したわけではないだろう。

 

 この話を聞いて僕は、知らぬ間にまた彼に命を救われていたことを実感し、熱が胸の中から込み上がってくるのを感じ取った。彼への感謝の思いと、そのことを彼に伝えることが出来なかった後悔。二つの感情が僕の胸の内を熱く満たしていった。

 

 

 

 

 ……ただ、僕にとって問題はここからだ。彼の情報は間違いなくロドス……いや、この世界に衝撃を与える程のものだ。今回のことを彼女達に話せば今後の鉱石病の治療に大きな活路へと導けるほどの情報。

 

 僕はロドスが全ての感染者のために精一杯尽力しているのは知っているし、僕もここで活動していてその苦労を共に分かち合っているから、彼らの力になりたいのは紛れの無い本心だ。

 

 

 

 だけど……、彼の情報を話してそれでいいのか? 命を二度も救ってくれた恩人に対しろくに恩も返せず、むしろ仇で返すようなことをしていいのか? 

 

 もし彼が生きているのなら、この情報によって彼はロドスに目をつけられ、息が詰まるような生活に強いられることになり、もし死んでいるのなら、彼の亡骸は鉱石病の治療のために貢献されるのだろう。

 

 いずれにせよ、このまま彼の情報を話せば彼にとって望まない未来が来るのは明白だ。それは彼の特異性を間近で見た僕が一番よく理解している。

 

 

 

 

 僕は彼のそんな未来を見たくない。それは彼の意思に関係の無いことであり、彼の在り方を踏みにじるようなものだ。

 

 ……鉱石病を患った感染者を救うためには仕方の無い犠牲? そんなのは理由にはならない。彼自身がこの世界の実情を憂いて選んだのならともかく、勝手に彼の運命を僕達が決めてはいけない! 

 

 人一倍優しい彼をこちらの身勝手に巻き込ませてはいけない。だったら僕がやるべきことは一つだ。

 

 決意を込めた眼差しで目の前の彼女達を見つめながら、僕は口を開き、語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(仮にもロドスのお偉方に対して嘘を言ったからなぁ……。これがバレたらおそらく僕はクビになるだろうね、ははっ……)

 

 僕は医務室で自分が言った言葉を思い出してプロ失格だと自虐気味に笑う。お偉方の前で要求している彼の情報を知っているにも拘らず話さなかったんだから当然だ。それでも僕は後悔していない。逃れられない死の運命から二度も命を救われた身なんだ、これくらい彼のためになるならどうということは無い。

 

 けど、これからどうしようかなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーミヤ、どう思う?」

 

 プロヴァンスが部屋を退出した後、ミステリアスな猫のような容貌を醸し出す白髪の女性、ケルシーが茶髪の兎耳、コータスの少女に問いかける。

 

「……少なくてもプロヴァンスさんからは、ロドスに協力する意思が伝わっていました。再検査の方は快く引き受けてくれますが、もう一方は……」

 

 コータスの少女、アーミヤはプロヴァンスが話した内容を思い出す。

 

 ―再検査にはもちろん協力するよ。けどごめん、原因の方は……―

 

(……彼女は原因は分からないと語っていましたが、本当は違うと私はそう感じ取れて、それと同時に、私達に対して申し訳無いという想いも伝わりました。でも一体どうして……?)

 

 アーミヤはプロヴァンスが嘘を言っていることが理解できたが、何故彼女があんなことを言ったのか理解できていなかった。嘘をついたのもロドスに対しての悪感情ではなく、何か強い決意があっての行動だと自身の能力で感じ取れていた。

 

 その疑問は何か? と考えていると別の声が部屋の中で響き渡る。

 

 

「にしても流石に嘘が下手ではないか? あれではあからさまに何か知っていますと言ったものだ」

 

「……元々彼女は仕事ではプロ意識が高く、実力もある優秀な天災トランスポーターだ。誠実で責任感があるからこそ、何かを隠そうとして嘘をついても歪に見えてしまう」

 

 髪も肌も雪のように白く、赤い瞳を持つサルカズ_サルカズの中でも特異個体であるブラッドブルードの女性、ワルファリンはプロヴァンスが語っていた嘘に痛烈な意見を述べていた。その意見にケルシーが淡々と答える。

 

 

「だがその歪さは、少なからず我々は彼女から信用を勝ち取れている証拠であるということだ。それは分かっているだろう?」

 

「しかしな……、鉱石病の治療に関わる重要なことだぞ。その情報の有無で左右される取り返しがつかないことが起きる前に、やはり少々強引でも──」

 

「それは駄目です、ワルファリンさん」

 

 ケルシーの言いたいことは分かるが、何処か納得できないのかワルファリンは強硬手段を進めることを提案しようとする。だが、話の途中をアーミヤがきっぱりとした声ですぐさま否定する。

 

 

「貴女の考えも良く分かりますが、それをすれば彼女はロドスに対して不信感を急激に募らせます。それはここまで築き上げた彼女との関係を壊し、また、彼女を含むロドスに協力してくれる皆さんから非難を浴び、組織全体を危うくする結果に繋がります」

 

「古株やエリートオペレーターに比べれば彼女はここに来てからまだ間もないが、ロドス内で多くの人達から持ち前の明るさと誠実さで信頼を得ている。そんな彼女に特に理由も無く何か異変があれば、彼らは真っ先にロドスに対し疑いの目が向けられるだろう。それはいずれロドスを崩壊させる傷跡に繋がる、違うか?」

 

 現在、ロドスに所属しているオペレーターは過去二年で吸収したメンバーが殆どであり、プロヴァンスもその一人だ。彼女はロドスの理念と天災に立ち向かう困難な状況を打破したいという彼女の意志が一致し、天災トランスポーターとしてロドスに力を貸してくれている。そしてケルシーの言葉通り、彼女がロドス内で構築した天災研究者のコミュニティは大規模の物に比べれば小さいながらもそれなりに力があり、無視できると言ったものではないと。

 

 

「それはそうだが……、なら彼女はどうするというのだ、アーミヤ?」

 

 流石にロドスの根幹を揺るがす事態に関わるならばと理解したワルファリンも反論もできず沈黙する。しかし彼女の処遇に対し納得する答えが聞きたいと思う彼女はアーミヤに問う。

 

 

「そうですね……。私は何もせず、彼女が本当のことを話すのを待つことにします」

 

「なんだと?」

 

「……理由を聞きたい、アーミヤ」

 

 アーミヤの答えに二人は疑問に思い、彼女に理由を尋ねる。

 

 

「彼女が嘘をついた時、彼女は本当のことを()()()()ことに私達に申し訳無く思っていました。()()()()ではなく、()()()()のです」

 

「……つまり、彼女が原因を話そうにも話せない、何か別の理由が関係していると言いたいのか?」

 

「はい。そしてこれは予想ですが、私達が介入するべきものではなく、彼女自身で解決しなければいけないことだと私は感じました。そうなれば私達の方で勝手にどうこうするべきではありません。ただ彼女を信じて待つしかないと」

 

「例えそれを待ったことで、取り返しのつかないことが起きてもか?」

 

 

 

 

 ワルファリンがアーミヤに鋭いナイフのような通る声で問いかけを下す。

 

「なにもおかしいことではない。待つと言ってもそれは何時になるか分からんのだ。3日? 1か月? 1年以上? いずれにせよ、待てば待つほどその間、多くの出来事が起こり、救えたかもしれない人々を見殺しになるという結果は当然だ。それでもアーミヤ、お主は彼女を、プロヴァンスのことを信じて待つのか?」

 

「待ちます」

 

 理屈を怒涛の勢いで並べ立てて問うワルファリンに対し、アーミヤはそんな彼女の問いに凛とした声で、意思のこもった瞳で応える。

 

 

「そのような結果が起きる可能性が分かっていても、彼女が、ロドスにいる皆さんが私達ロドスのことを信じてくれている限り、私は皆さんを信じます。私達が直面する困難は、協力してくれている皆さんと互いに補っていかなければ対処することが出来ませんから」

 

「そのために必要なのはロドスが彼らを信頼し、信頼されていくことだと私は思います。余程のことではない限り、少なくとも彼らが明らかにしてくれる秘密以外のことを勝手に暴いてはいけないんです。それを犯して彼らの関係が壊れるなら、私は彼らの意思を尊重し、話してくれるのを待ちます。幸い彼女はロドスに不利益をもたらそうとして嘘をついたわけじゃないことを分かっていますから」

 

 それに……っと、続けさまにアーミヤは言葉を綴る。

 

 

「私達もただ彼女を待って手をこまねくことはしません。彼女が希望を持って来るまでに私達はその取り返しのつかないことを必死に食い止め続ければ、救える人々を救うことが出来ますから」

 

 

 

 

 アーミヤの強い応えにワルファリンも両手を上げてやれやれと言った表情で口をこぼす。

 

「……わかったわかった、妾も意地悪なことを言った。お主がそこまで言うなら妾も言うことはない」

 

「ワルファリンさん……」

 

「ん? 何だ?」

 

「ありがとうございます、厳しいことを言ってくださったことを。おかげで私は協力してくれる彼女達のために何をすべきか見えましたから」

 

「ふん、礼などいらぬ。妾は医者として当然のことを問うただけのことだ」

 

 

 アーミヤの言葉にツッケンとした態度を取るワルファリンだが、それでもアーミヤは笑顔で彼女の顔を眺める。その後アーミヤが壁に立掛けられた時計を見ると何かを思い出したかのようにハッとして声を上げる、

 

「あっ、もうこんな時間、そろそろ次の仕事に行かないと。それではケルシー先生、ワルファリンさん、私も失礼しますね」

 

「ああ。行ってこい、アーミヤ。こちらのことは気にするな」

 

 

 二人の医師に退出の挨拶を述べた後、アーミヤは年相応な少女のように可愛らしい小走りで医務室から退出していった。

 

 

 

 

 

 

 

「……悪いな、憎まれ役を引き受けてもらって」

 

「なに、ブラッドブルードは他者から怖れられるのが常の存在だ、これくらい気にすることではない」

 

 二人だけになった医務室内で、ワルファリンに謝罪するケルシーに対し、ワルファリンは何ごとも無いと言った様子で答える。

 

「…………それにしてもお主はどう思う?」

 

「彼女が隠している秘密のことか……?」

 

「そうだ。何せ鉱石病の治療という前代未聞の事実、はっきし言って規格外な出来事だ。妾達が何もしなくてもそれはいずれ世界に台頭し、大きな注目を集める。そうなった際、それを巡っての世界を巻き込んだ大きな出来事、最悪な場合だと世界中を巻き込む大戦争が起きるだろう。そうなる前にこちら側でどうにか対策を考えておきたかったのだがな……」

 

「それは秘密を握っている彼女も分かっているはずだ。だからこそ、私達に嘘をついたのだろう。私達がその秘密に対し余計な手出しをしないように」

 

「どういうことだ?」

 

 ケルシーの言葉に違和感を感じたワルファリンは彼女に問いかける。

 

「彼女は中々見ないほど真摯な性格だ。その秘密を握っているのがもし人物だとしたら、余程ひねくれていない限り、彼女はそいつをロドスに協力してくれるよう上手く橋渡しをしてくれるはずだ」

 

「……おい、もしかしてお主は、彼女が隠している秘密が()()()()()()()()()()()()()()()だと言っているのか?」

 

「まだ推測の域だが、私はその可能性が高いと判断する。もし秘密の正体が土地や気候、植物や動物、鉱石といった自然由来の物だったら、野外の専門家である彼女がそれを知らない筈が無く、我々に注意深く説明するはずだ。それが無い以上はまずそういったことはありえなく、そうなれば別の何か、私としては人物ではないかと思っている。ただ……」

 

「ただ……?」

 

 言い淀むケルシーの言葉にワルファリンは疑問を浮かべる。

 

 

「仮に人物なら、社交性がある彼女が説明に困り、嘘をついてまで隠すことだからな。その理由が不明とは言え、そいつは()()()()()に違いない」

 

だが…、と続けさまに思案気な表情をしながらケルシーの口から言葉がこぼれる。

 

「彼女の様子からして、幸いにもそいつは彼女に気を許しているのだろう。そこに我々が介入すれば話が拗れてしまう可能性があり、最悪我々はそいつに敵意を持たれてしまえば、せっかくの希望をみすみす失わせる結果になるだろう」

 

「……………………」

 

 

 漠然としているがケルシーの懸念は最もだとワルファリンは無言ながらも同意する。もしそいつに敵意があれば、既にプロヴァンスは口封じとして抹殺されていてもおかしくなかった。仮にわざと生かしたとしても洗脳などの何らかの方法で彼女に対し自分のことを喋らせない、あるいはより性質の悪いことをしようとした線もあり得るが、アーミヤの言葉からその線は無いと思っている。

 

 とは言え、対人関係は良好な彼女でもそれの詳細が話せないとなると、下手をすれば厄介な存在だということ。そのため彼女は何かしらの理由を持って嘘をついたと思えば一連の行動は理解できる。

 

「……と言っても推測の範囲内だ、そもそもそれが人物かどうかは確信していない。だが、それの正体が分かったとしても私は、これらのことを唯一の繋がりを持つ彼女に任せてみたい。下手に第三者が関わるのは拙いと思っているからな、今の我々にできることは鍵を握る彼女の意志を尊重するぐらいだ」

 

「文字通り鉱石病の活路は彼女の手に委ねられた……か。やれやれ、彼女にはとんでもない重石を背負わせてしまったな」

 

「なに、もし彼女の交渉が上手く行き、……認めたくないが鉱石病研究者として名高い()()()も戻ってくれば、鉱石病の治療に大きな進歩が進むはず。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』というように多少のリスクは承知の上だ。……さて、そろそろ通常業務に戻ろうとするか。先に行ってるぞ」

 

「お、おい! 散々話しておきながら勝手に妾を置いていくな!」

 

 

 話したいことはすべて話し終えたと言わんばかりにケルシーはすたすたと部屋から退出し始め、その後ろをワルファリンが慌てだしい様子で後を追った。

 

 

 

 

 

 

 鉱石病によって引き起こされ続けている争いの連鎖の中で、一筋の祝福は彼らにどのような影響を与えていくのかは、まだ少し先の未来の話である。

 

 




元の本編キャラを書いていて思うのは、理由が無い時にキャラ崩壊させないような台詞にしているかどうか不安になりますね。前回みたいに語録を汚染させたスノーデビル達は意図的とキャラ付けとしてだから別にいいけど、今回そういう訳じゃないから中々難しいゾ。キャラ警察のお兄さん許して!

あと時系列なことを言うと、この小説ではまだチェルノボーグ事変は起きていません。一応うっすらとしたヒント(sideスカイフレア内で)は前々にありましたが。
この話は物語の半年~1年未満前から始まっている感じと思ってくれればOKです。


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幕間2 痕跡 ~てがみ~①

ミラ○レアス狩ってたり、セリエナ祭を満喫して初投稿です。

今回遅れたのはこれが原因なのがはっきりわかんだね。ちょっとミラボ強すぎんよ~。おかげで死にまくって結構時間と気力が喰われた。

土日は何かを進めるのにいい日だけど、どうしても何かすると時間と体力と気力的な問題で、他のことがあまりできないから困りモノだゾ。他のことしてぇ~なぁ~、俺もな~

一応幕問のネタを考えてはいても、文に起こせていないのも投稿が遅れる原因のひとつなんすけどね。





「うっひゃ~、ここが西北凍原か~。同じ雪国なのに私の故郷とは全然違うな~」

 

「僕の故郷であるイェラグとも違うね。広い平地だから地平の向こうまでハッキリと見えるよ」

 

 目の前に広がる白銀の世界に二人の少年少女が驚く。二人ともこことは違う雪国の出身であり、それぞれ森林地帯と山岳地帯の出身だ。

 

 目の前に何も無くただ広く水平線が見えるほどの雪原は彼らの故郷ではなかなか見られなかったため、驚くのも無理もない。

 

「カーディ、スチュワードさん。故郷を懐かしむのは良いですけど、周囲の警戒を緩めないでくださいね。特にカーディ!」

 

「ええっ!? あたしっ!?」

 

「まぁまぁアンセル、事実だけど言わぬが花だよ。俺も周囲を警戒しているけど、特に異常は見当たらないから安心して」

 

「うわーん! スチュワードくーん、二人がいじわるだよ~(´;ω;`)」

 

「ははは…………」

 

 薄桃色のコータスの少年、アンセルの辛辣な指摘に元気はつらつなペッローの少女、カーディが慌てふためく。それを頭上の光輪が左に傾いているサンクタの少年、アドナキエルが口にしたフォローにもなってない言葉がトドメになり、カーディは白いヴァルポの少年、スチュワードに対して妹のように泣き付く。任務中でもメンバーの相変わらずな光景にスチュワードは苦笑しながらも笑顔で彼らの姿を眺める。

 

「ごめんなさい……、プロヴァンスさんにご迷惑をおかけして……」

 

「ううん、大丈夫! みんな元気がしっかりあるから任務を問題なくこなせそうで安心しているよ。それに僕から見れば、皆はお互いに足りないところをカバーし合えているよ」

 

 彼らのチームリーダーであるワインレッドのフェリーンの少女、メランサが申し訳なさそうな様子でプロヴァンスに謝る。しかし、彼女は彼ら行動予備隊A4の雰囲気に問題ないと言わんばかりに元気よく答える。

 

 

 

 

 実際、彼ら行動予備隊A4は結成してから日が浅いが、優秀なチームのお手本としてロドス内で注目されている。

 

 

 明るさとパワフルさでメンバーを引っ張り、仲間を守る重装のカーディ。

 

 大人びていて慎重にアーツの支援を行う術師のスチュワード。

 

 どんな時でも落ち着いてメンバーの健康管理、治療を手掛ける医療のアンセル。

 

 淡白な印象が強いが、好奇心旺盛で観察眼に長けている狙撃のアドナキエル。

 

 そして、内向的だが優しく仲間思いな前衛であり彼らの隊長であるメランサ。

 

 

 彼ら全員の個性がメンバーの欠点を互いに補い合い、長所を遺憾なく発揮できる連携が取れている。実際に今まで参加した作戦はまだ数少ないが、どれも彼らと参加した者達から高評価であり、密かに今後の成長が期待されている。

 

「後は地道に経験を積んでいけば良いだけだから……って偉そうに言っても僕はこうした野外での活動しか教えられないけどね、ははは……」

 

「そんなことありません……。私達はこういった調査任務の経験はまだ浅いので……、プロブァンスさんのような野外調査のプロにご指導頂けて有難いです。こちらこそ頑張りますのでよろしくお願いします……」

 

「ありがとう。僕も先輩として、君達に失望されないよう期待に答えるからね!」

 

 

 今回彼らは彼女の任務に護衛兼調査任務の人手と訓練として参加してもらっている。何故こんなことになったのは少し時を遡る……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 医務室の出来事から数週間後、突如僕は任務でこの凍原の異変を調査することになった。なんでも最近、その地域一帯にある源石の塊が消失したらしい。それも最近に当たる出来事だという。

 この不可解な現象に対しロドスは原因を突き止めて欲しいと、僕に調査を依頼した。ついでに行動予備隊A4のメンバーに調査の実地訓練も兼ねて人手として連れて行って欲しいと頼まれた。

 

「それにしても……、目的地に到着しましたけど、報告通り源石が一つもありませんね……」

 

「そうだね。僕は主に荒野の調査が主だけど、基本的に大体の場所は調査しに行ってるのと、此処にはかつて天災で遺された源石があることも過去の調査情報から知ってる。けど今の場所には地表に源石の塊が一つも無いのは異常だ……」

 

(地面は見た感じ、源石が採掘された形跡は無さそう……。そうなると人の手という線は殆ど無い……)

 

 任務を受けてから数日後、僕達は無事に目的地に到着し広大な雪原を眺める。

 

 僕達の目に映るのは源石の塊が一つも無く、それどころか積雪の隙間から寒冷地でも生育できる植物や苔が所々群生している生きた大地の姿だった。少なくても天災後では一度も見られなかった現象がこの大地で起きていることがはっきりとわかる。

 

(まるで大地が息を吹き返したかのような……。まさか、もしかして……)

 

 この現象を見て一つだけ思い当たることが僕の脳裏に浮かびあがる。彼、せっくんの存在だ。少なくともこんな現象を引き起こせる存在など、この世界にそうそういない。

 

 

 そうなるとロドスが僕をこの任務に向かわせた理由が分かる。あの医務室での問答からその後、僕は特に何のお咎めを受けず、この任務を受ける前に僕は再びアーミヤちゃん達に呼び出された。

 

 彼女達の話から僕が嘘をついていたことはバレていたけど、内容が内容のため彼女達も大事にせず追求するのは難しいらしい。よって詳細を話すのは僕のタイミングで良いことになった。

 

 無理強いに彼のことを話さずに済んだことで彼の身を守れて安心したけど、それでも理由があるとはいえ彼女達に嘘をついてしまったことに変わりないので、申し訳ないと僕は再び彼女達に謝罪した。

 

 そして突如起こった今回の異変。源石の消失という事態に彼女達は僕の鉱石病の完治と何かしらの線がないか僕に詳細な調査を任せたんだと思う。

 

 ただし外部に今回のことを悟られないよう、表向きは調査任務の訓練と人手として行動予備隊A4にも同伴させ、任務のカモフラージュをすることになった。

 

 ちなみにA4の皆はアンセル君を除いて僕の鉱石病改善のことを知らない。アンセル君は医療チームにも所属しているため僕の体に起きた件を少し把握しているが、一応僕の症状改善の件については、情報漏洩による混乱を防ぐために、今のところ件に関わった医療チームの人間全員に緘口令を敷かれ、秘匿にされてる。

 

 今回快く協力してくれるA4の皆には隠し事をして申し訳ないと思っているし、もし彼のことを話すことが出来ればアーミヤちゃん達だけじゃなく、彼らにも話してあげたい。こうして協力してくれた彼らにはそれを知る権利がある。

 

 

 

 

 

 そして現地に着いた今、僕は少なくてもこの異変は彼が関係していると肌で感じ、今回の任務は何かしらの手掛かりを得ようと意気込む。

 

「……よし! さて、みんな! 気を引き締めて任務に取り掛かるよ!」

 

「「「「「了解(です)!」」」」」

 

「ワン!」

 

 A4の皆とグレープさんの返事が高らかに響き渡り、今回の任務は絶対に成功させようという気迫が伝わってくる。

 

(せっくん……、待ってて。今会いに行くから)

 

 こうして僕とグレープさん、A4の皆は西北凍原へと歩みを進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから僕達は凍原の奥へと進み続けた。道中サンプル用の土採取や異変の痕跡の写真等を取りつつ調査は進めているが、この事象の原因は分からないままだ。

 

 

 もしかして今回のことは彼に関係ないのか、はたまた原因は別の何かなのか、真相となる鍵は見つかっていない。

 

 

 

 そして調査が長引き、次第に周囲が暗くなって夜も更けてくる。僕達は暗闇で視界が厳しくなり、寒さも段々と厳しくなってきた状況から身を守るために地図上に記載されているとある廃村へと向かった。

 

 だが、廃村には暗がりながらも立ち昇る煙が目について、村の異変を感じ取った。廃村に何が起きてるのか分からない僕達は危険を感じ取りながらも慎重に村の中へと潜入することになった。一体何が起きてるのか分からない僕達は静かに廃村の奥へと進んでいく。

 

 そして村の中心と思われるような場所へと辿り着き、そこから明かりが出ているようだ。僕達は明かりの小隊を確認するために、倒壊した建物の物陰から覗き見たのは……、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬわああああああん疲れたもおおおおおおおん!」

 

「チカレタ……」

 

「ホントに……」

 

「(野外訓練)すっげえキツかったゾ~!」

 

 半壊した建物を利用して設置された拠点の中で焚き火の周りを囲んで座り、なんだかとても情けない声で嘆く白い外套を纏ったレユニオンの三人組の姿だった。

 

 

 

 

(……えっ? 何なのこの人達……)

 

(…………見た感じ彼らはレユニオン? それにしては何というか……、随分と和やかな雰囲気だね……)

 

(……何でしょう? 彼らと関わると碌なことにならないとしか思えません。特に私が)

 

(奇遇だねアンセル。俺もだよ……)

 

(僕もだ……。何だろうこの寒気……)

 

(……大丈夫ですか? アンセルさん、アドナキエルさん、スチュワードさん……?)

 

(ワフ……?)

 

 

 彼らの姿を見て僕たち全員はそれぞれ違った反応をする。僕とカーディちゃんは目の前の光景に不思議がり、男性陣は何処からか寒気を感じ、全員何故か無意識にお尻を抑えていた。そんな男性陣をメランサちゃんとグレープさんは心配そうに気遣う。

 

 

 

 隠れている僕達には気づいたような素振りは無く、三人組は談笑を弾ませ続ける。

 

 

 

 

「こんなのが続いたらやめたくなりますよ~、訓練~。早く終わらせてーなー」

 

「あっ、おぃ、待てぃ(江戸っ子)。まだ訓練は終わってないから、気を抜いていたら隊長に怒られるゾ」

 

「大丈夫だって安心しろよ~。ちゃんと休憩前に軽く偵察した感じここらに敵はいないってはっきりわかんだね。なので気を抜いていても怒られない、Q.E.D 証明完了」

 

 

 

((((((自慢気に言う彼には悪いけど、僕(私)(俺)達はここに居るんだけどね……))))))

 

 

 一番情けなさそうな声を上げる彼の話からすると、どうやら彼らは何かの訓練でここに来たようだ。彼らの目的は何なのかは分からないけど、レユニオンが居る今この状況でこの場から離れるか、あえて残って情報を聞き取るか僕は判断に悩ませていた。もしかしたらこの異変について彼らは何か知っているかもしれないと、このままみすみす逃がすのは惜しいと感じた。

 

 

 

 

 

 だが次の瞬間、僕はその選択は間違いだったと思い知らされる。

 

 

 

「まぁ辛いのは分かるっすけど、あとちょっとで今回の訓練も終わりになるっすから、もう少しの辛抱っすよ」

 

「「「!!?」」」

 

((((((!!?))))))

 

 

 

 盛り上がる三人組の雑談に突然割り込まれた声とともに、三人組の後ろから一人の男性が現れた。まるでそこに初めから居たかのような振る舞う彼の姿は三人組と同じだが、腕に青いスカーフが巻かれている。

 

 だが僕達が驚いたのは彼の姿ではない。物陰から目を離さないで様子を覗っていたにも関わらず、姿と気配を隠していた彼の技量に驚かされた。不可解さのあまりスカーフの人物に対して全員この場に霧散していた警戒心を起こして最大限に彼の動きを注視した。

 

 そして突然現れた彼に驚いたのは僕達だけじゃなく、三人組も驚いていた。

 

 

「「「……ファッ!? 隊長いつの間に!? 外の見回りに言ってたんじゃ!?」」」

 

「そんなのとっくに終わらせて、君が言ってた「ぬわ疲」の時にいたっすよ?」

 

「最初からじゃないか……(困惑)。隊長化け物かよ……」

 

「いやいや、自分が化け物なんて烏滸がましいっす。世の中にはもっと凄いのがうじゃうじゃいるっすよ?」

 

「えぇ……(絶望)」

 

 

 

 

 

(……アドナキエルさん、彼の動きは見えてましたか?)

 

(さっぱりだよ。油断してたわけじゃないけど、あの人の実力は本物だ。いつの間にどうやって……?)

 

(それにあの三人組……。あの隊長の存在と彼らがふざけているおかげで分かりづらかったけど、彼に気づいた時の反応と動きからして、単純な実力は僕達よりも上のようだ……。数的に有利とはいえ、もし戦うことになればこちらも無事には済みそうにないね……)

 

(それって見つかったらまずいよ! どうすればいいの!?)

 

 

 A4のメンバーが焦るのも無理は無い。今回の任務は探索がメインなため、強敵相手に逃げるは兎も角、戦うような本格的な装備は無い。流石にあれほどの手練れが居るとなれば、まともに戦うのは無謀だ。

 

 

(落ち着いてメイリィ……。プロヴァンスさん、少しよろしいですか……?)

 

(どうしたの?)

 

 危機的に近い状況の中、メランサちゃんが僕に声を掛ける。

 

(少なくとも相手の実力は未知数です。とりあえず急いでこの場から撤退して、ロドスに帰還した方がいいと思います……。今回の任務の隊長はプロヴァンスさんなのですが……、若輩ながらA4を纏めてる身として、失礼ながらも意見してみました。どうでしょうか……?)

 

(……そうだね、ここが引き時だ。ありがとう、メランサちゃん。よしみんな! 撤退するよ!)

 

 

 兎に角、相手がこちらに気づいていない今の内にこの場から離れるのが最優先だ。僕が皆にすぐさま指示を出してこの場から離れようと撤退の準備をする中、スカーフの人物が唐突に口を開き始める。

 

 

 

 

「けど全く……。確かに息抜きはするようには言ったっすけど、あくまで安全が確保できた時に行うのが基本っすよ」

 

「? どういうことだゾ?」

 

「それは……」

 

 

 彼の言葉を理解できてない三人組を余所に彼は無造作にナイフを取り出し、すぐさまこちらに向けてナイフを投擲する。

 

 ナイフは真っ直ぐと僕達の所まで飛び、隠れている障害物へと軽い音を立てて突き刺さった。

 

 

 撤退の準備をしていた僕達だが、彼の突然のナイフの投擲に反応したせいで身体が勝手に身構え、一瞬身動きを取れずにいた。そして彼が僕たちの方へと視線を向けると、

 

 

「……あー、コホン。そこの物陰にいる人達~! さっきのは威嚇っす! 両手を上げておとなしく出てくるなら命までは取らないっすよ~」

 

「「「!!?」」」

 

((((((!!?))))))

 

 

 彼は物陰に隠れてる僕達に向けて降参の勧告する。三人組は「何言ってんだ?」と言わんばかりな雰囲気で彼を見つめる。

 

 緊張感が無い間延びした声が響き渡るも、僕達の心はその声に落ち着けずバクバクと鼓動を早めていた。完全にバレていた事実に、全員の頬に冷や汗が流れる。

 

(バレてた!? いつの間に!?)

 

(どうする……。相手さんはこう言ってるけど、素直に出てくるのは拙いな……)

 

(だけど応戦しても勝てるかどうか……)

 

 彼の行動に息を潜めながらも動揺が隠せない僕達。どうにかしてこの危機的な状況をどう切り抜けると考えていると、再び彼の声が響き渡る。

 

「あ―、言い忘れてたっす! こっちに交戦の意思はないっすから、いきなり襲うような真似はしないことは約束するっす。そっちが戦うなら仕方なく反撃するっすけど、そうでないなら姿を現して欲しいっすよ!」

 

「いや、隊長。本当にいるんですか?」

 

「何言ってるんだゾ、隊長の探知能力はトップクラスだって言ってるじゃないか。多分……」

 

「多分なのか……(困惑)」

 

 

 ……どういうこと? どうやら相手は戦う意思は無い。……一体何が目的なんだ? 

 

 だがあの人物の言ったことが本当か嘘か関係無く、これなら少なくても彼らだけでもこの場から離れさせることが出来る。そう確信した僕はA4の皆に口早に伝える。

 

 

(……みんな、今から僕が出て時間を稼ぐからチャンスが来たらすぐにこの村から離れて)

 

(っ!? 何を言ってるんですかプロヴァンスさん!?)

 

(この状況を回避できなかったのは僕の責任だ。だけどみんなの命だけは何としても助けるのが僕の役目だ)

 

 

 僕の言葉にA4の皆は僕の提案に拒もうと首を横に振る。だけど彼らの命を守るにはこれしかないと僕は彼らを諭す。

 

 

(大丈夫……、危なくなる前に僕もどうにか逃げるから。グレープさん、皆を頼んだからね!)

 

(駄目です……! プロヴァンスさん、戻ってください……!)

 

(((((プロヴァンスさん!!)))))

 

 

 彼らの声を振り切って僕は物陰から姿を現し、両手を上げて彼らの前に現れる。暗がりから現れたため姿ははっきりと見えていないはずだが、本当に隠れていたことに三人組は驚いていた。

 

 

「ファッ!? 本当にいた!?」

 

「ポッチャマ……」

 

「なんであの時、誰もいないって自信満々に言ってたんですか……(呆れ)」

 

 

 だがしかし、スカーフの人物は訝し気な様子でこちらを見据えていた。

 

 

「……一人? 気配からして六、七人くらいはいると思ったんすけど…………? まだそこに隠れているっすか?」

 

 

 そして暗がりにいる僕のことを確認しようとランタンを持って僕の方へと近づいてくる。

 

 近づいてきた彼が持ってたランタンの明かりが僕の姿を照らす。敵意が無いとはいえ彼らの目的が何なのか分からない。

 

 けど、せめてA4の皆だけでもここから脱出させなければいけない。彼らの命と、ここで手に入れた数少ない情報を奪われないために、それが僕が今やるべきことだとこの身を奮い立たせた。

 

 

「まぁ、きちんと出て来てくれた以上、こちらは何もしないっすからおとなしくして…………んんん?」

 

 

 だが、決死の思いで姿を現した僕の考えとは裏腹に、予想できない展開が待っていた。

 

 

 

 明かりではっきりと僕の姿を目に捉えた彼は突然言葉が詰まり、何故か自分の目を疑うような動作を見せる。緊迫した状況には似合わない彼の行動に僕は、何故目の前の彼がこんなことをするのか理解できなかった。少なくとも僕に彼との接点は無い。なのに何故目の前にいる人物はこんなに動揺しているんだ。

 

 理解できない状況に困惑する僕に対し、スカーフの人は何度も目をこすって僕の姿を確認し、深呼吸して落ち着かせる。

 

 

 

 

 ……そして数分後、彼はおそるおそると僕に向けて問いかけてくる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もしかして、あなたがプロヴァンスさんっすか? せっさんが言ってたご友人というのは?」

 

 

 

 彼の発言を聞いたその瞬間、世界の時が一瞬止まったかのような感覚に襲われる。

 

 まさか彼の口から僕が捜している人の名前がこぼれるなんて僕には想像できるわけなかった。




次回! 雪怪スノーデビル小隊、冷の裏技(大嘘)



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幕間2 痕跡 ~てがみ~②

「作者は調子が上がらない!」

はい、特性スロースタートな作者です。いつものように遅いことに関してはすいません!許してください!何でもしますから!


ちなみにスズランガチャは大勝利しました。ここ最近6出てないから来るかな~と思って14連目に来ました。ピックアップ仕事してるやん!

でもいつか来るであろうWちゃんのために(星6確率アップを)残すのもありだった。これがなかなか、難しいねんな。


「いやー、まさかこんな所でせっさんが言ってた知り合いに早くも会えるとはっす! 幸先がいいというかなんというか……、世の中何が起きるのかわからないもんっすね!」

 

 

 ランタンを持ちながら快活な笑いを浮かべる青スカーフの男。カラカラと笑う彼からは先程までの警戒心が霧散し、まるで捜し人が見つかったかのような喜びに満ち溢れていた。

 

 一方僕は、突然の彼の変わりぶりに話が付いていけず、戸惑っていた。

 

 

「え、えーっと……。色々と聞きたいことがあるけど、とりあえず状況を説明してもらってもいいかな……?」

 

 

 僕の困惑した表情を見て目の前の彼は喜びからハッとした様子を浮かべ、話が置いてきぼりな僕に対し申し訳なさそうに頭を掻く。

 

 

「あー、そうっすよね、勝手に大はしゃぎしてすまないっす。実はせっさんから頼まれてあなたに渡したい物があるんすよ。

 ……とりあえず寒い外で立ち話というのもなんですから、自分らのキャンプに来ないっすか? もちろん先程言った通り、あなたと後ろのお仲間さんに手は出さないっすよ。こちらが手を出す理由は無いっすから」

 

 

 そう言って彼は自らの武器であろうボウガンとナイフを懐から取り出し、戸惑いも無く僕の方へと渡そうとする。後ろに控えていた三人組も彼に倣ってそれぞれ武器を外し、敵意は無いことを示すために僕の方へと武器を渡そうとしていた。

 

 少なくともこの行為から彼らに戦意は無く、疑う必要は無いと感じ取れる。わざわざ彼らと戦う理由は無く、むしろ相手からこのような提案を示してくれたのは僕達にとってありがたいことだ。

 

 それに言われてみれば、外は肌を突き刺すような凍てつくような寒さだ。調査が長引いたこともあって、A4の皆の疲労も蓄積している。ここから離れて何処か安全な場所を探すよりも、お言葉に甘えさせてもらって、彼らのキャンプにお邪魔して休ませてもらうほうが懸命だと。

 

 そして何より、彼はせっくんのことを知っている。もしかしたら今回の異変について何か重要な手掛かりを握っているかもしれないと僕の直感がそう呟く。

 

 彼の言葉を信用出来ると判断した僕は彼らの武器の受け取りをやんわりと断ってA4の皆とグレープさんを物陰から呼び出し、彼らのキャンプへとお邪魔させてもらった。

 

 僕達全員の存在を確認した彼は三人組と共に僕達を快くキャンプへと招いた。そしてキャンプに向かう途中、スカーフの人物は何かを思い出したかのように急に振り返る。

 

 

「そう言えば自己紹介してなかったっすね。自分の名前はバーニィって言うっす! 見ての通りレユニオンに所属してるしがないリーベリっす。そしてこっちの三人組は──」

 

「あ、待ってくださいよぉ、自己紹介ぐらい俺にもできますって」

 

 

 彼、バーニィが自身の自己紹介をした後、部下の三人組のことを紹介しようとした矢先、情けない声を上げていた隊員が彼の言葉を遮った。

 

 

「それもそうっすね。じゃあ後はハイ、ヨロシクゥ! っす」

 

「おかのした、そんなわけでじゃあ早速俺から行きますよーイクイク。俺の名前はタドゥーコロ。24歳、ループスです」

 

「オラの名前はミ・ウラだゾ。種族はウルサス、よろしくだゾ」

 

「僕はキムーラ、クランタ族です。よろしくお願いしますね」

 

 

 彼らの自己紹介を聞いて僕達もそれぞれ自己紹介する。警戒していたA4の皆も彼らの朗らかさに毒気を抜かれて段々と警戒を解いていく。こうして僕達は吹雪く暗闇の中、彼らの拠点へと立ち寄らせてもらうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らのキャンプ地に着いて一息ついた後、僕達は彼、バーニィさんから話を聞いた。

 

 まずこの任務の目的である今回の源石消失の異変についてだ。幸い彼らはその原因を知っていた。

 

 これはやはりせっくんが関わっていたらしく、以前彼らスノーデビル小隊とせっくんが訳あって共に行動しこの村に立ち寄った際、この地域一帯の源石を彼が同化したとのこと。そしてその副産物としてなのか、この地域の土は寒冷地域にしては珍しい位に肥えていて、気候に対応できる植物であれば農業するには十分すぎるほどの栄養価を持っているらしい。

 

 この事象については行った本人すらもなぜこうなったかはっきりと分からないらしく、複雑なフェストゥムの特性で意図せず起きてしまったのだと言うしかないとか。

 

 

 彼を知っている僕を除いて、この話を聞いていたA4全員はにわかに信じ難い表情をするも、実際に起きている現実を目の当たりにした彼らはただ驚くしかなかった。驚く彼らの気持ちは良く分かり、もし僕が彼らと同じ立場に居たら同じように驚いていたに違いないから。

 

 さて、詳しい状況を知らない彼らA4は彼のことを知る権利はある。だが、アーミヤちゃんにも言ってないせっくんのことを彼らに何処まで話せばいいのか難しく、僕はそれに頭を悩ませていた。

 

 そう迷っていたその時、バーニィさんが懐から何かを取り出しながら僕に近づいてきた。

 

 

「はい、これがせっさんに頼まれていた物っす」

 

 

 確かに渡したっすよ~、と言って彼が僕に手渡したのは折り畳まれた手紙のようなものだった。そういえば彼らは僕に何かを渡したいと言っていたんだっけ。ちなみに何故彼らがそれを持っていたのかと言うと、以前せっくんが彼らのリーダーの命を救ってくれたらしく、その恩義として彼の頼み事を快く引き受けたとのこと。

 

 

 

 なんでもスノーデビル小隊はせっくんに出会った際、彼を敵だと誤解してそのまま戦闘に入ったらしい。その後彼らが敬愛する姐さんが戦闘中に鉱石病が悪化したのを、彼は捨て身の覚悟で彼女を治療して命を救った。

 

 そこから戦闘の手を止め、彼らは彼とのコミュニケーションを図った。彼らの勘違いで彼が持っていたタブレットは壊れたために意思疎通は困難を極めたが、どうにかして相互理解は得られた。その後、どうにか彼が話せるようになったので、彼らは彼からより詳しく話をすることが出来た。

 

 

 結果的に自分らの勘違いで過ちを犯した彼らは彼に深々と謝罪を、そして大切な人の命を救ってくれたことへの感謝を述べた。バーニィさん曰く、「あの時せっさんをずっと敵として誤解していたら、お互い不幸な結末になっていたに違いないっす。だから勇気をもって姐さんを救ってくれたせっさんには感謝してもしきれないほどの恩があるっす」とのこと。

 そのことから彼からの依頼は恩を報いるためにも何があっても成し遂げようと彼らは意気込んでいた。

 

 

 

 だが、彼らは彼から僕の外見的特徴を簡単に聞いただけ、というより有力な情報はそれくらいなため、それ以外のことは全く知らなかったらしい。そんな中でこの広大な大地で目的の人を会うのは至難の業だ。それは彼も分かっていたようで、彼らに無理を言わなかったそうだ。

 

 こうして彼らが運良く僕を見つけられたのは本当に偶然で、幸運だった。

 

 だが、まさか捜し人がロドスの人間だとは彼らは思わなかったのだろうが、こちらも彼らが好戦的な人達でなくて助かった。おかげでお互いに目的は果たすことが出来るのだから。

 

 

 

 受け取った彼の手紙をよく見ると角の端っこに『プロちゃんへ』と小さな文字が拙く綴られていた。

 

 ……プロちゃんってのはもしかして僕のことを指しているのかな? 何というか彼のネーミングセンスの安直さに可笑しさが湧き出て、思わずほくそ笑みながら僕は手紙を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―プロちゃんへ―

 

元気にしてますか? こっちはあんなことがあったけど、どうにか生きてるゾ。

 

あの時きちんとお別れを言えなかったことに申し訳ナス! 本当なら直接会って謝りたかったが、後述の事情から直接会うのは難しいことになった。

 

だけど、せめてこちらの安否ぐらいは君にどうにか伝えられないかと良い方法を考えていた。

 

そこで賭けにはなるが保険として、訳あって出会った彼ら、スノーデビル小隊に手紙を託すことにした。彼らはあの時襲ってきた汚っさん共と同じレユニオンだけど、彼らは人として信用できるから怖いと思うけど安心してほしい。

 

 

 

 

 文字はかつて彼がタブレットで見せたものと同じ文字で綴られている。確か彼は違う世界からきて、その文字が僕には読めないことを考慮してここで初めて使った文字を使っているのだろう。文字自体は覚えたって彼が言ってたし。

 

 文面から見てともかく彼が無事が分かっただけでも嬉しい。

 

 

 

 

俺は今、ある理由で世界を見て回っている。君と彼らスノーデビル小隊から、俺は鉱石病や感染者といった世界の実情や常識を学ぶことが出来た。

 

君と彼らのおかげで、感染者は怪物ではなく、同じ人間なんだと知ることが出来たことに感謝している。感染者の中にもプロちゃんみたいに優しい娘や、スノーデビル小隊の様に馬鹿みたいに仲良くはしゃぎ合える奴らがこの世界にいる。

 

だけど現実は感染者を悪とみなし、君らのような良い人達が傷つく世の中だ。俺はその現実を知って、せめてこの世界で出来た大切な人のために何かできないか思い悩んだ。

 

けど、感染者問題が抱える混沌は思った以上に根深いものだった。俺が居た世界でもこういった差別問題は珍しいわけではないし、完全に解決しているわけではなかったけど、ここより酷いものは無かったと思いたい。もしかしたら俺、というより一般の人達が普段そういったことに意識してるわけじゃないから、あっちの世界でもここと同じような悲惨なことがあるかもしれないけど。

 

俺の世界での話は置いといて、感染者問題に対して最初は、俺の同化能力でどうにか解決できないかと考えた。だがそれは根本的な解決に繋がらず、下手をすれば最悪、新たな戦争の引き金にしかならないと悟った。

 

この争いの原因は鉱石病、正確に言えば鉱石病とそれに伴い迫害の歴史によって助長された負の感情が引き起こし、それは鉱石病を治療したからって簡単に消えるような代物じゃない。長い時間をかけてその人自身が折り合いをつけていかないといけない。

 

今の感染者に必要なのは色々あるが、今まで見てきた現状と歴史から最も必要なのは、彼らが心から安心して暮らせる()()()じゃないかと俺は思うんだ。彼らはただ人として生きたいだけで、それが出来る場所があれば別に誰かを害なそうとしたいわけじゃない。全ての感染者がそういう考えを持っているわけではないと思うけど、全ての感染者が争いを望むわけでもないと思うんだ。スノーデビル小隊から聞いた話でも、レユニオンに入った感染者の中にはそういう考えを持っている人たちがいる。

 

もちろん俺の同化能力以外で鉱石病を治療できる手段も見つかればいいが、それはあくまで鉱石病で生まれた心身の改善を繋げ、負の感情に向き合うためのサポートに過ぎない。それでも見つかることに越したことはないので、もし鉱石病の治療法の発見に俺の力が役立てるならその人や組織を見定める必要があるが、問題なければ喜んで協力すると約束しようと思っている。

 

 

 

 

 

 せっくんは考えていたんだ。この世界で苦しむ感染者を、この世界で出来た友人の幸せのために何かできないかと。

 

 本来なら関係無い彼はそれに時間を割く理由は無い。それどころか経緯も分からず何も知らない場所へ一人で来て、自身のことで精一杯で辛いはずなんだ。

 

 でも彼はこの世界の残酷さを知って見て見ぬ振りもできず、何もせずにいられないから何か出来ることが無いかと手がかりを探し回っている。そんな彼の在り方が人として立派な気高さを感じると同時に、何処か危なっかしさを感じる。

 

 僕は彼が自らの優しさで傷付いてしまうことが怖い。なのに彼はあの時みたいに自身のことを気にも留めず、誰かのために頑張ろうとしている。一体何が彼を駆り立てるのか、まだ彼のことを良く知らないからこそ疑問が尽きない。

 

 

 

 

 

 

長々と脱線してたが、何が言いたいのかというと()()()に関して最近とある情報を見つけた。

 

それはかつてはるか昔に、このテラにどうやらフェストゥムが来ていたという記録が書かれた古文書だ。スノーデビル小隊にいる考古学を嗜んでいる人に聞いてもそのような歴史は聞いたことが無いらしい。どうやら彼らは昔、この地に住む住民に命を学ばせてくれたお礼にテラの何処かに楽園を作ったという。正直眉唾物な話だが、俺にはどうもこの話が嘘には見えない。

 

原因不明でフェストゥムになってテラにやって来た俺と、この地に歴史として明るみにならず埋もれていたフェストゥムの情報。俺は神頼みとか迷信とかに熱心というわけでもないが、今回ばかりはこのことに如何も奇妙な運命があると思っている。

 

ぶっちゃけフェストゥムの秘密についてはそこまで重要視していない。俺にとって重要なのは、その楽園が本当にあるのかという事だ。

 

もしその楽園があるとすれば、その場所の状態や先住民のことを考える必要があるが、感染者が安心して腰を据えられる場所に出来ないかと思っている。それに元々この世界に来てしまった時、俺も何処か平穏に暮らせる場所を探していた。正直この手がかりは俺の当初の目的にもついでに沿っていて、渡りに船のようなものだ。

 

 

 

 

 フェストゥムがかつてテラに来ていた……? そんな事実、僕には聞いたことない。彼はその事実の中に見つけた楽園という存在に、感染者の()()()としてできないかと今捜している。

 

 その内容に何かヒントになる様なものは無いかとバーニィさんに聞くと、どうやらドゥリン族に何か関係があるとか古文書に書かれていた。

 

 ドゥリン族か……。確か行動隊A4のドゥリンちゃんと、彼女の誘いで最近ロドスにやって来たテンニンカちゃんなら何か知っているのかな……? 色々と気になるけど、何も手掛かりが無い今は後回しに、記憶の片隅に留めておこう。

 

 

 

 

そんなわけで我々(俺一人)は真相を探るべく、テラのあらゆる土地を歩き回ることになった。これが後述の事情であり、そんなわけで暫く会えるか分からないけど、そこはどうかすんません許してください! 何でもしますから! 

 

まぁそもそも、俺が街に入れる手段が見つかっていないのと、プロちゃんが何処に居るのか分からないのもデカいですねクォレヴァ……。確かロンドル……って組織に所属していたんだっけ? それも何処にあるかわかんないんで行ける当てがないっすよ~。

 

 

 

 いやロンドルって何……? 僕が所属してるのはロドスだって……。

 

 ロしかあってないよと言いたくなるが、あの目まぐるしく変わる状況の中で、馴染みの無い言葉を思い出せと言うのは余りにも酷だ。彼なりにどうにか思い出そうして頑張った結果なんだろう。

 

 そういえば彼の姿について気になったのでバーニィさんに尋ねると、彼は毛布で作ったマントとボロ布を腕とかに巻いてあの目立つ金色の姿を隠しているとのこと。確かにこれじゃあ街の中に入るのは厳しそうだね……。

 

 

 

 

あっ、そうだ(唐突)。もし俺のことに関係してプロちゃんの状況や命が危うくなりそうなら、遠慮せず俺のこと言っても構わないんで言って、どうぞ。

 

どうせあちこち動き回っていれば俺の存在がバレるのも時間の問題だから隠してもしょうがないし、おそらく組織で何かしらの報告しないといけないでしょ? 善意で俺の異質さを隠して君の首を絞めるようなことになったら俺は悲しいなぁ……。一応スノーデビル小隊にも同じことは言ってるから、これならお互いフェアだし多少はね。

 

だけど君の報告を聞いた人達が俺を捜し、運良く接触したとしても、その人達の行動次第では俺も君も不本意な結果になるのだけど、手を下さないといけない。こっちは戦いたいわけじゃないんで、そこんとこは注意するように言ってくれよな~頼むよ~。

 

 

 

 

 ……もう、あんな目にあったというのに僕のことを先に心配するなんて。もっと自分のことを心配してほしいよ。

 

 とはいえ彼のことを誰かに話すことが出来るのはこちらとしてもありがたい。彼の考えている懸念には一理あるし、それに彼に万が一のことがあった際に彼を守るなら、彼のことを理解してくれる味方が欲しい。

 

 なら僕は彼の味方を作るために、彼の情報をアーミヤちゃんやA4の皆など、信頼できる人達に伝えよう。そして今度は彼を助けられるように、こっちで出来ることを為すんだ。一応スノーデビル小隊にもこのことを聞いてみたけど、彼らも彼のことを他のレユニオンの人には話していない。

 

 ただし、信頼できる人として彼らの姐さんの父親には話してはいるらしい。彼ら曰く、その人は根っからの武人気質だが口が堅く、今回に限っては姐さんの命の恩人ということもあって、余程のことが無い限り絶対に誰にも言わないはずだと。

 

 

 

 

伝えたいことはこれくらいかな? もしどっかでまた会えたら、今度はゆっくりと色んな事を話したいものだな。お互い無事であることを祈る。

 

 

byせっくん

 

 

 

 

 

 …………うん、そうだね。今度はたくさんお話をしよう。だから、絶対に死なないでね。

 

 再び彼に会えることを切に願って手紙をしまおうとした瞬間、一番下に何か書かれているのが目に映った。見落としていたのかと思いすぐさまその部分を読んでみると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記

 

状況上仕方無かったとはいえ、あの猫耳いつか絶対シバく。    

 

 

 

 

 

 

 

 そこには怨念が込められたかのようにインクが飛び散り、乱雑に書かれた文章が残されていた。最後に書かれたこの内容を見て僕が言えることは一つ。

 

 

 

 

 

 ……ご愁傷様、スカイフレア。

 

 

   




そろそろファフナーの先行公開の最新話が始まるから、次投稿はそこらへんまでには間に合わせてぇなぁ…(届かぬ願い)


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幕間2 痕跡 ~てがみ~③

ほ、ほーっ、ホアアーッ!!ホアーッ!!(The beyond7,8,9話見にいってきた感想)


どうも作者です、金曜に有給使ってファフナー見にいってきました。

新OPの映像と曲が相変わらずの高クオリティだったり、話の展開のドッキドッキしてたり、ゴウバインだったりと待った結果、期待を裏切らない仕上がりでああ~~たまらねえぜ。

やはりファフナーは最高やで。こんな変態フェストゥムと同化あそびしないか。

同化あそびしたい奴は子宮(コアギュラ)、メールくれや。


 せっくんからの手紙を受け取った僕達は、その後彼らのキャンプ地で一夜を過ごし、異変が起きた該当地域の調査を再開した。

 

 翌朝、調査を再開する前に、彼らから調査の手伝いをしたいと申し出があった。いきなりの出来事に僕達はとても驚いたが、確かにここらの土地勘がある彼らの協力は、調査の際に非常にありがたい。

 

 けど、レユニオンとロドスは同じ感染者組織でありながら方針が相容れられず、良好的な関係とは言えない。それなのに協力していいの? と尋ねたら、

 

「お互いの組織の関係を考えれば、こちらの言ってることが確かに怪しいと思うのは当然っす。だから、信じてくれるかはそちらの判断に任せるっす。今回のは自分らの意思で、そしてせっさんのために協力したいから申し出たわけっす。

 

 おかしなことを言うっすけど、戦うことしかできない自分達よりも、戦い以外の道で感染者の現状を打開するあなた達の方が近い将来、せっさんの助けになってくれるかもしれないと思えるんすよ。それだけで自分らにとっては協力する価値があるっす」

 

 

 とあっけらかんと言ってのけ、他のメンバーもその言葉に偽りは無いとうなずく。彼らの真摯な態度に僕とA4の皆は、彼らのことを信じてみようと協力を受け入れることにした。

 

 

 ほんの数日間だったけど、実際に彼らのおかげで調査が捗り、僕達に色々と良くしてくれた。隊長のバーニィさんだけじゃなく部下の三人組も気のいい人たちで、特にまだ子供であるA4の皆とは、彼ら子供が戦いの渦中にいる現実を憂いながらも何かと気にかけていた。例えば――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁぁ!」

 

「行きます!」

  

「いいよ、来いよ! (攻撃を)胸にかけて胸に!」

 

「あっ、おい、待てぃ(江戸っ子)。二人とも、その動きは拙い……」

 

 

 

 障害物が無い雪原でタドゥーコロさんがメランサちゃんとカーディちゃんの二人同時を相手にして組手が始まっていた。二人が連携で彼に襲い掛かるのに対し、それは悪手だとミ・ウラさんが言いかけるも時はすでに遅し。

 

 

「……!!?」

 

「ちょっと(自分から)刃ぁ当たんよ~」

 

 

 メランサちゃんの攻撃が決まろうとした瞬間、攻撃が放たれる直前にタドゥーコロさんがわざと、メランサちゃんの刀を腕に着けた籠手で受け止める。まさか止められると思わずに硬直してしまった彼女の隙を見逃さず、彼は彼女を背負い込んでいく。

 

 

「お前のそこが隙だったんだよ!」

 

「えっ……きゃっ!?」

 

「メランサちゃん!? って、わぁぁぁぁぁ!?」

 

「あーもう、めちゃくちゃだゾ……」

 

 

 そして彼はそのまま彼女をカーディちゃんのいる方向へと背負い投げで投げ飛ばした。

 

 突然自分の方へと飛んで来るメランサちゃんに対し、カーディちゃんは慌てて攻撃を中断する。だが彼女を受け止めようとするもタイミングが間に合わず、そのまま飛んできた彼女のクッションとして押し潰された。

 

 そんな様子をミ・ウラさんは手で顔を覆いながら目も当てられないと言わんばかりな様子を浮かべていた。

 

 

 彼女達は空いた時間に彼、タドゥーコロさんに模擬戦をお願いしている。そのきっかけは朝、彼女達がタドゥーコロさんとミ・ウラさんが組み手を行っていたのを見て、訓練のご教授をお願いしたことに起因していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆が寝静まっている中で彼女達はまだ日が昇っていない早朝に目を覚ましていた。

 

 そんな二人の様子に気づいた僕もすぐに起きて何かあったのかと尋ねようとしたところ、薄暗い筈の外で何か小さな物音がすした。僕達は何事かと思いキャンプの外で出て、村の中を出歩くと廃村の広場にて二人の人影を見つけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 "……よし! じゃあぶち込んでやるぜ!"

 

 "オッスお願いしまーす!"

 

 

 僕達の目に映ったのは片手剣を携えるタドゥーコロさんと、素手で構えを取るミ・ウラさんの姿だった。

 

 二人から発せられる強い闘気が様子を見に来た僕達の肌をピリピリと震わせる。遠くで見ている僕達に気づいていないのか、二人は互いに対面する存在に意識を集中している。

 

 互いを睨み合う静寂はほんの数秒しか経っていないにも関わらず、あの場の空気だけがまるで長い時が流れているようだと僕達は感じていた。そして──。

 

 

 

 シュッ! バキッ! ドゴォンッ! 

 

 

 

 地を蹴る音だけが置き去りになったと思ったら、両者共に目で追えないくらいの動きで攻撃を繰り出し続け、お互いにそれをいなしていた。

 

 

 

 

 多方向から襲い来る剣閃を、拳で、脚で全て弾き返す。

 

 

 

 的確に急所を狙い澄ました拳の一突きを、紙一重で避けて距離を取る。

 

 

 

 

 当たれば訓練の怪我では済まない攻撃を二人は躊躇なく繰り出していく。少なくとも僕達の目には二人の攻撃は手加減しているように映っているとは思えない。

 

 

 

 "ホラ、見ろよ見ろよ!"

 

 

 "やりますねぇ!"

 

 

 

 ドガガガガガガガッ!!! パリィン!!! (廃村にあった一般植木鉢君が壊れた音)

 

 

 

 

 

 彼らの組手で鳴り響く物音で気づいた他のA4のメンバー、バーニィさん達も後から広場にやってきて、一連の様子を見たバーニィさんは何かを察したかのような顔をし、僕達に何かを伝え始めた。

 

 

 「そういえば普段二人は早朝に稽古してるんすよね。もし音で起きてしまったのなら申し訳ないっす、説明し忘れた自分の不注意っす」

 

 

 どうやら彼らが行っているのは組手だと言うが、それでもあの剣術と拳術の凌ぎ合いは訓練とは思えないほど激しい戦闘。それは最早組手という枠を超えていて、決闘か、もしくは死合いという表現が正しかった。目の前の光景はさながら剣と拳の暴風雨と見なしても仕方ないだろう。

 

 

 

 それでいてあんなに激しい動きをしているにも関わらず、両者の動きに隙が無く、それでいて華麗な動き、まるで舞を魅せられたかのような美しさを醸し出している。特にメランサちゃんとカーディちゃんはあの動きを一瞬たりとも見逃さないと言わんばかりな姿勢で二人の戦いに見入っていた。

 

 

 

 二人の組手に驚く僕達にバーニィさんとキムーラさんは、規模的にあれはまだ序の口だと呟いていた。なんでもカツラギさんとアキヨシさんと呼ばれる彼らの教官との訓練に比べれば114514倍はマシらしい。

 

 ……ところで114514倍という中途半端な数字は何だろう? というよりあれが序の口と言うなら、その人達との訓練はどれほど壮絶な物になるんだろう? 

 

 

 

 

 二人の組手に見惚れているといつの間にか終了していて、互いに健闘の礼を交わしていた。その時僕の傍にいたメランサちゃんとカーディちゃんはお互いに顔を合わせたらと思ったら、すぐさま組手を終えた二人の元へと駆け出していった。他の人達が呼び止めようとする間もなく二人は彼らの元へ近づき──、

 

 

 

「「お願いします! 私達に戦い方を教えてください!」」

 

 

 

 二人の前で彼女達は地面に頭を押し付けるかのように深々と頭を下げて、戦闘術のご指導をお願いしていた。二人の行動に男性陣は全員戸惑っているが、僕は二人がこんなことをする理由を知っていた。

 

 

 実は彼女達、今回の不測の事態を目の前にして何も出来なかったことに自身への不甲斐無さを感じていた。僕が囮になるのを見て、二人は本来前線で仲間を守るのが自分達の役目で、囮は自分達が引き受けるべきだった。だが自分達より強い強敵を前にして動けず、怖気ついたことに悔しくて涙を流していた。

 

 

 

 そんな心境の中で勇猛に、かつ冷静に戦う二人の姿を見たことで、自分達もあれだけ動けるように強くなりたいと。そして、今度はしっかりと仲間を守れるようになりたいと目標を持ち、彼らに戦い方の指導をお願いしたというのが事の経緯だ。

 

 

 

 

 だが、二人を指導するというのは彼らにとって敵に塩を送る行為に等しく、受け入れてもらえないかと最初は二人も、僕を含む他の人達もそう思った。

 

 突然の申し出に渋そうな表情をしていた二人だったが、一緒にいるこの期間の間だけでもいいならという条件で、彼女達を鍛えることを了承してくれた。

 

 意外にも引き受けたことにキムーラさんとバーニィさんは驚かず、二人は割とお人好しなんだと僕達に教えてくれた。最初の渋い表情については、子供である二人に戦い方を安易に教えて良いものかと悩んでいたのだが、彼女達の真剣な眼差しに宿る『誰かを守りたい』という意志を見たことで、少なくても力の扱い方を間違えなさそうだから大丈夫だと判断したらしい。

 

 

 

 

 

 ……ただミ・ウラさん、普段の彼の説明が結構わかりづらいらしく、本人もそのことを理解しているためか、指導役はタドゥーコロさんで行うことになったらしい。しかし彼は勘が鋭く、彼らの組手を見ていく中、時折思わぬ良い助言を彼女達に教えて修行のサポートに努めていた。

 

 その時の彼の状態を彼ら曰く【智将(ちしょう)モード】と言っている。ちなみに普段の時は【池沼(ちしょう)モード】って言うらしい。いや、同じ読み方で言ってるからどっちがどっちなのか分からないよ(困惑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とまぁ、このことをきっかけに、彼らの人柄の良さに触れて、A4の皆は思いの外に彼らと打ち解けていった。彼女達だけでなく男性陣も彼らと交流し、彼らから最初感じた悪寒は何かの間違いじゃなかったのかと思うくらいに仲良くなっていった。

 

 スチュワード君はアーツが使えるキムーラさんにより応用的なアーツの使い方を学ばせてもらっていたり。

 

 アドナキエル君はバーニィさんから咄嗟の時に使える小道具の作り方についてそれぞれ情報交換したり。

 

 アンセル君はミ・ウラさんと共に訓練しているメランサちゃん達の治療を一緒に行っていく内に、彼と家族の会話で話し合っている所を見かけたりした。

 

 

 

 何というか彼らは、一般のレユニオンとは何か違う感じだ。虐げられてきたことへの怒りに任せて人を傷つけようとはせず、真っ当な生き方を望んでいる姿勢は普通の人と何ら変わりはない。出来ることなら僕は彼らとは戦場で戦いたくない。それはA4の皆も同様で、ふと彼らと戦うことになる未来を考えたりすると、全員悲しそうな顔をしていた。

 

 

 

 そんな彼らとの日々はあっという間に過ぎ去っていくものだった。調査を終えた僕達は明日、ロドスへと戻らないといけない。その現実にお互いが別れを惜しみ始めてきた最終日前の夜、僕は彼らとのお別れに寂しさを感じながら火の番を務めていた。

 

 

「隣、失礼するっすよ」

 

 

 今回の旅の日々に思い耽っていると、バーニィさんが声を掛けながら火の番をしている僕の隣に座り込んできた。先程見回りを終えてキャンプに戻ったら、僕が火の番をしていたのを見かけ、こちらにやって来たとのこと。

 

 座り込むと同時に、真剣な表情で彼は口を開き始めた。

 

 

「プロヴァンスさん、今回は協力の申し出を受け入れてくれてありがとうっす。おかげで自分らはいい思い出が出来たっすよ」

 

「こちらこそ、君達のおかげで調査が捗って助かったり、あの子達に良い経験を積ませられることが出来たよ」

 

「そうっすね。A4の皆は子供なのに良く頑張ってるっす。でも本当は、あんな子供達が戦場に出ていることを思うと素直に喜べないっす。自分にとって子供は元気に遊んだりするのが一番だと思っているっすから、ああいうのは自分達だけで充分っすよ……」

 

 

 「このご時世でこんなこと言ってるのはおかしいっすけどね」と呟きながら、A4の皆を憂うその表情は彼の人柄が一番強く滲み出ていた。彼らは他人を思いやれる強さを持った優しい人たちだ。だからこそ僕の頭から疑問が湧き出てきてしょうがない。

 

 

「ねぇ、本当にロドスに来ないの? 君達だけじゃなくスノーデビル小隊全員で……」

 

「それに関しては本当に済まないっす。こればかりはどうしても譲れないっすよ」

 

 

 あの数日間、僕は彼らをロドスに来れないかと勧誘していた。彼ら皆良い人で、せっくんの知り合いだ。そんな彼らと僕は戦いたくない。

 

 けれど彼らは断固意見を曲げなかった。それは彼の部下達も同様に、隊長である彼の言葉ではなく自分の言葉で意思を示していた。

 

 

「本当は自分らもあなた達と、特に他でもないせっさんの知り合いであるあなたとは戦いたくないっす。けれど自分らは姐さんの元から離れるわけにはいかないっす。かつて鉱山都市で奴隷として働かされていた自分らを救ってくれた姐さんの力になりたいっすから…。

 

 

もし姐さんがロドスに入れば、自分らも心置き無くロドスに行けるっすけど、今は叶わぬ願いっす。レユニオンにはただ非感染者に報復・復讐をしたい感染者だけじゃなく、困窮の果てにレユニオンを拠り所にするしかない感染者もいるっす。姐さんはその人たちのことが気がかりなんすよ。

 

 

そんな優しい姐さんだからこそ、自分らは姐さんのために、この命を使いたいと心に決めたっすよ」

 

 

 

 彼から発せられる言葉には堅牢さを帯びていた。恩人のために、たとえ何者であってもその意思を曲げらせはしないと。

 

 そんな彼の言葉に僕は無力感に苛まれる。同じ感染者である彼らに何もしてやれず、戦うことしか道が無いことが歯がゆく、こぶしを強く握り締めていた。

 

 

「……あ~、そんなに気負わないでくださいっす。これは自分で選んだ道で、今までやったことへのけじめをつけるようなもんっすから」

 

 

 何とも言えない空気の中、気落ちしている僕に気づいたバーニィさんは僕を励まそうとフォローする。

 

 

「それに、自分らは別に希望を捨てたわけじゃないっす。あなた達と言い、せっさんと言い、世の中には感染者か非感染者かは関係無く、誰にも分け隔てなく優しい人が居るっす。

 

 

 自分らはそれが知れただけでも十分嬉しいですし、この世界で本当に必要なのはそういう人達だと思うっす。あの時も言ったっすけど、暴力でしか意思を訴えられないレユニオン(自分ら)とは違って、そんな人達が平和を望むために生きている感染者により良い未来を与えてくれるかもしれないっすから。

 

 

 ……だから迷わないで欲しいっす。自分らがやるべきことを為すように、あなた達は自分がやるべきことを為せばいいっす。それでもし、助けられる感染者が居れば、無理せず出来る範囲で助けてやって欲しいのが自分らのお願いっす」

 

 

 「長々と話してすまなかったっすね」と言い残してバーニィさんはその場を立ち上がり、テントの中へと向かっていった。

 

彼らは過酷な状況でも必死に生きて、足搔こうとしている。それは果たしたい思いを誰かが引き継いでくれることを信じているからだ。

 

 

 自分が為すべきこと……か。僕のやるべきことは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最終日、こうして僕達は彼らと別れを告げ、ロドスへと帰還した。

 

 

「スチュワード君……。私、あの人と戦いたくないよ……」

 

「カーディ……」

 

「だって無理を承知で私達の鍛錬を引き受けてくれたし、いっぱい面白い話をしてくれたいい人たちなんだよ。なのに戦うなんて私……」

 

 

 雪原を横断している中、カーディちゃんがスチュワード君に泣き付く。耳と尻尾が元気無く垂れ下がり、そこには普段元気いっぱいな彼女の姿は見る影も無い。

 

 彼女の様子にA4の皆は無理も無いと理解している。彼女は彼らと打ち解けて仲良くなったのに、彼らと戦う未来に苦しさに辛く感じている。それは他のA4の皆も同じように感じていて、彼らとは刃を交えたくないと思っている。  

 

 

 そんな彼女をスチュワード君はポンポンと頭を撫でて慰める。するとメランサちゃんが彼女の傍にやって来て──。

 

 

「メイリィ、私達はただ戦うんじゃない。彼らを止めるために戦うの……」

 

「メランサちゃん……?」

 

 

 たどたどしい口調ながらも、彼女の顔をじっと見ながら自らの思いを伝える。

 

 

「今のままだと、私達はあの人達を止めるどころか……、まともに戦うことすらできない。……だからこそ、強くなって仲間も、いずれあの人達も守れるように、強くなるしかないの」

 

「メランサの言う通りだ。彼らを守るには、彼らを止められるくらいに僕達が強くならないといけない。でないと彼らだけじゃなくて僕達や、他の仲間にも危険を晒してしまうからね」

 

「それにそんな思いはあなた一人だけじゃないですよ、私達も同じ気持ちです」

 

「そうそう、彼らを助けるためにもカーディちゃんはいつも通り元気よく俺達を引っ張ってくれなきゃ困るよ。何かあったら皆で助け合えばいいんだ」

 

 

 メランサちゃんの言葉を皮切りに、スチュワード君やアンセル君、アドナキエル君がカーディちゃんを励ます。彼らの言葉に暗い表情をしていた彼女の顔から徐々に明るみを取り戻していき、

 

 

「……うんっ、そうだね! みんなの言う通りだよ! ためらっていたら仲間も、あの人達も守れない!」

 

 

 彼らの励ましでカーディちゃんは元の明るさを取り戻し、元気いっぱいに声を張り上げた。

 

 

「よぉし! 私、ロドスに帰ったらドーベルマン先生により厳しい訓練を頼むよ!」

 

「その意気は立派ですけど。カーディ、あなた以前の作戦行動の筆記試験で赤点取ってませんでしたか?」

 

「うぐっ!? そ、それは~」

 

 

 アンセル君の一言により、決意を固めて意気揚々としていた彼女の口が吃る。ニコニコと凄みのある表情で微笑む彼から視線を逸らそうとするも彼女の顔から冷や汗が止まらない。

 

 

「あの人達をも守るんでしたら、こっちも頑張らないといけませんよね?」

 

「うっ……、メランサちゃ~ん……」

 

「メイリィ、頑張ろう……。私も手伝えるところは、手伝うから……」

 

「そんな~(´;ω;`)」

 

 

 チームリーダーであり、親友でもあるメランサちゃんに助けを求めるも、当の彼女からも一緒に頑張ろうと励まされるだけだった。そんな結果で情けない声を上げる彼女に対し、僕を含めた他の皆も思わず笑ってしまった。

 

 

 今回のことはA4の皆にとって間違いなく大きな経験になったに違いない。彼女達がこの先どう成長していくかは分からないけど、今後彼女達がオペレーターとして、人として立派な人物へと成長していくだろうと僕はそう信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして僕も、ロドスに戻ったらせっくんのことをアーミヤちゃん達に話そうと思う。どこかで感染者のために頑張っている彼の力になれるために、今僕が出来ることを為していこうと決意を固めた。

 




幕間が長すぎて主人公が一か月近くも出てないってこれマジ?


てなわけで幕間は一旦区切って本編の続きと、キャラまとめのページでも作ろうかと思います。

早くangelaの『叫べ』をフルで聞きてぇな~俺もな~。


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2章
第11話 過去 ~おもいで~


またしばらく構想練るのに時間とられそうな作者です。

危機契約ももうすぐ終わりへと近づきましたね。

ちな作者は16級で止まってます。何と言うか大型の方は初めから契約全て選べないのが、時間の無い社会人にとってきついです。かと言ってβも#0の方もキャラが育っていないのもあって全然行けてなかったんですけどね。今もピンポイントに役立つ育てたいキャラが育ってないんすけど。

とりまデイリー契約は攻略動画見ながらきちんと取れているので、残りの分も無事に取っていきたいです。


 住宅街にある一軒家の玄関先にて、二十代成り立てであろう青年は、彼を見送ろうする50代くらいの二人の男女と、女性が抱えている猫に向けてお辞儀をする。

 

 

「宗おじさん、千夜おばさん、そしてアズキ。長い間お世話になりました」

 

「気づけば君ももう大人か……。時の流れは早いな……」

 

「そうね兄さん、ウチの陽介と同じくこんなに立派に育って……。この子の境遇から最初はどうなるかと思っていたけど……」

 

 

 ピシッと決めたスーツを着こなす青年を見て男性_宗おじさんは時の流れをしみじみと感じ取り、女性_千夜おばさんは自身の息子と同い年である青年が立派に成長したことを感涙にむせている。

 

 

「ああ、事故で亡くなったあいつから君を託された時、君はとても荒れていたからな。あの痛々しい君の姿を見て、自分達は君を助けてやれないのかと諦めかけていた時もあった。けれどこうして君が立派に育ってくれた。本当に、ありがとう……」

 

「お礼を言うのはこっちの方です。事故で身寄りの無い俺を引き取って、あなた方に散々酷いことを言ったにも関わらず、見捨てずに育ててくれましたから」

 

「……あんな悲劇が自分の身に起きれば誰でもそうなるさ。君がそう責任を負う必要は無い」

 

 

 男の気遣いにやっぱりこの人達には敵わないやと青年は思う。彼らは疫病神だと思われても仕方の無い自分をここまで育ててくれた。青年の目から自然と溢れた涙が頬を伝うのを感じ、彼らに心配させないようにと咄嗟に涙を拭う。 

 

 

「……なぁ~ご」

 

「……ん、アズキ? しばしのお別れだけど、落ち着いたらまた会えるからな。お~よしよし」

 

「ゴロゴロゴロ……♪」

 

 

 おばさんの腕に抱きかかえられていた黒猫_アズキが撫でろと言わんばかりに可愛らしい声で鳴きながら頭を俺の方へと差し出して催促をする。自由気ままな彼らのマスコットの変わらぬ態度に苦笑しながらも、青年は彼女の首元を丹寧に撫でる。撫でられている個所が気持ちいいのか、目を細めて首を伸ばしながら上機嫌に喉を鳴らす。

 

 

「それにしても陽介と言い、うちの旦那のと言い……、この子の門出に居合わせないなんて。まったくもう!」

 

「それはしょうがないよ。勝おじさんと陽ちゃんはこの日は大事なレースに出てるから。元はと言えば俺の引越しがそんな日と重なったのが悪い。もし俺のことで二人のレースを潰したら、俺の方が申し訳ないよ」

 

 

 千夜おばさんはこの場に居ない二人、彼女の夫である勝おじさんと、二人の息子で俺の親友でもある陽ちゃんこと陽介が居ないことに腹を立てていた。彼女の気持ちは分からなくないけど、あまり二人を責めないで欲しいと青年は彼女を宥める。

 

 この場に居ない二人は現在バイクレースの大会に出場しており、陽ちゃんこと陽介は、今若手の注目株のバイクレーサーであり、彼の父親である勝おじさんはかつてその道のプロレーサーであったことから、引退後は彼の専属コーチを務めている。

 

 

「だからって……、二人もあなたの門出を祝いたかったのは事実よ」

 

「知ってるさ。だから門出のお祝いにレースの優勝トロフィーを取って来いって二人に言ってやったよ」

 

「ははは、言うようになったじゃないか。千夜、彼がそう言うなら二人をそう責めないなくてもいいんじゃないか?」

 

「兄さんも! ……はぁ、うちの男達はどこかズレているというかなんというか……」

 

「まぁ、それくらいにして……っておっと、もうこんな時間か」

 

 

 お別れの挨拶が思いの外長引いたことで予想よりも時間が過ぎていたらしく、青年がふと腕時計で時間を確認すると、いつの間にか目的の電車が来る時間まで差し迫っていた。

 

 

「それじゃあおじさん、おばさん。二人には伝えといて! 行ってくる!」

 

「ああ、気を付けて行きなさい」

 

「向こうに行っても体を大切にね! 辛くなったらいつでも帰ってきなさい!」

 

「はーい! それじゃ、行ってきまーす!」

 

 

 青年はそう言って慣れ親しんだ家から離れ、ひたすら駅へと向かう。それは社会人として彼が新たな人生を踏み出す始まりの一歩だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……んん? ああ、夢か)

 

 懐かしい夢を見たなーとしみじみに思いながら寝ぼけている意識を覚醒させる。

 

 

 

 

 スノーデビル小隊と別れた後、テラを駆け回りながら旅をして三ヶ月、俺は旅の途中で睡眠をとっていたことを、未だ本調子に回転していない頭で思い出す。未だに『楽園』はおろか、ドゥリン族の情報すらない。けどこの三ヶ月の旅で、多くの出来事と経験を積んでいった。

 

 深く生い茂る密林地帯や、不気味な雰囲気が漂う海岸。熱砂が吹きすさぶ砂漠、何時の時代にて建てられたのか分からない遺跡やその残骸など、旅を通して多くの光景を目にしてきた。

 

 

 

 また、こういった光景だけではなく、旅をしていく中で人との触れ合いも僅かながらあった。

 

 

 

 辺境の地に集落を作って生活を営む村の人々や、その村で商売をする行商人。

 

 

 厳しい環境で自然の調査をする研究者や、ただ自分の知らない世界を踏破するために歩む探検家。

 

 

 

 地球よりも過酷な自然の中で、目的はそれぞれだがその土地で生き抜いている人達が居る。そんな彼らは明らかに怪しい俺を見て、驚きはしても理不尽に敵意を向ける人はそこまでいなかった。目立つ自身の身体を隠している理由を深く追求せず、むしろ一宿一飯の恩で歌を聞かせたら、ノリノリで合わせてくれてお祭り騒ぎになった。

 

 

 

 もちろんそんな良い人達ばかりと出会ったわけじゃないけどな。そういう人達を襲う野盗とか感染者狩りとかも出会ったし、そんな奴らから彼らを守るために色々と手伝ったりもして、時には血を流す結果になって悲しいこともあった。

 

 その時、成り行きで出会った探検家のアスちゃんからキツイ言葉で叱咤されたけど、その言葉が結果的にこの世界で生きようとする俺の助けにもなった。事態が解決した後、アスちゃんにはお礼として鉱石病を治療した。それを知った彼女は「余計なことをするな!」と毒づいていたけど、あれは彼女なりの感情表現だって今ならわかる。

 

 

 

 そんなこんなで旅の間での大きな出来事はいくつかあったけど、他に印象に残るものだとそうだな……、海岸で大ダコに襲われたり、獣の群れに襲われている天使の人達を助太刀で助けたら、何故かそいつらに攻撃を仕掛けられたことだな。

 

 

 前者は何かクトゥルーな狂気的なものを感じる大物だったけど、脚を二、三本切ったら逃げ出したし、そんなに大したことは無かった。ちなみにタコ足はタコ焼き作るために回収して体内にしまっている。フェストゥムの力を応用して体内に四次元ポケットもどきが作れて助かったよ。

 

 

 

 だが、後者に関してはどうも納得できない。良かれと思って腕を銃身に変化させることで銃撃による援護したら、何故か国の機密を持ち出したと容疑にかけられて、有無も言わさずにどっかに連れて行こうとしてきた。流石に旅が出来なくなるから即座に逃げ出したけど、そしたらター○ネーターみたいな天使に追っかけ回されるとかいう訳分からん状況になった。

 

 結構速いスピードで逃げたり、心を読んであいつの裏をかいたりして逃れようとしたけど、普通に追いかけて来るし。先回りされてしかも地雷まで仕掛けてくるわで、地の利はあっちにあるせいで最終的に追い込まれたよ。捕まる寸前にSDPの消失(ロスト)が発現したおかげで何とか切り抜けられたから良かったけど。

 

 その他にも旅していく内に新たな力が目覚めたり、色々な場所に転々してた所、休息のためにどっかの洞窟で眠っていたんだっけな。

 

 

 

 

 

 

 さて、旅のことをしっかり思い出せたので、今度はさっき見た夢の方へと話を戻そう。一応自分が何者だったのか、きちんと覚えているのか確認しないと安心できない。フェストゥムになって自我の消失は起こっていないけど、今後起きないとは限らないからな。

 

 

 あれは確か……俺が警察学校を卒業し、地方の巡査として両親の故郷へと赴任する際、宗おじさん達の元から離れた時だったか? 幼い頃事故で両親を失った俺をおじさん達は快く引き取ってくれたんだよな。一人っ子で、両親ともに親族が居なかったから、あの時おじさんが手を差し伸べてくれなかったらどうなっていたのやら。

 

 そして引き取った俺のことを彼らは実の息子同然に育ててくれたのに、幼い俺は両親を失った悲しみで彼らに当たって傷つけるだけだった。そのことを間違いだと気づいてからは今までの過ちを雪ぐために出来ることは何でもやったが、正直恩は返しきれていないと思っている。

 

 あと千夜おばさんの息子であり、俺にとって一番の親友である陽ちゃんにも色々と世話になった。最初はそりが合わなかったりして色々と喧嘩したりしたけど、なんやかんやお互いに良い所を認めていたし、事故のことで心が空っぽだった俺に趣味の作り方とか教えてくれたからな。おかげでアニメやゲーム、ギターとか趣味が出来たし、世界はこんなに楽しいことがあるって教えてくれたことには感謝している。

 

 ……まぁ、あいつの無鉄砲な行動に付き合うのは骨が折れたけど。サザ○さんのNKZM君みたいなノリで空手や剣道などの武道やバイクなど、色々なことに付き合わされまくった……。

 

 バイクや武道は警察学校で役に立ったからいいけどさ。挙句の果てには淫夢ネタを知ったからって、その元ネタを調べるために、わざわざビデオをレンタルして本編を見るか普通!? 

 

 さすがにその時のあいつの精神状態には疑ったゾ。俺の菊門の貞操がいかん危ない危ない危ない……(レ)。

 

 一応ホモだったからという理由じゃなくて、単純な知的好奇心が理由だったけど、そんなところまで働かせなくていいから……(良心)。

 

 それで色んなものを見た上に、最終的にあの汚いレストランのやつまで見た結果、お互いトイレでリバースする始末だったからな。その日の夕飯がカレーやミートソーススパゲッティじゃなくて助かったよ……(遠い目)。

 

 とりま俺が淫夢ネタを使えるのはあの馬鹿のせいだってことだ。ネタ自体は汎用性があって面白いから、教えてくれたことは許すけど、ビデオのことに関しては絶対許さねぇ。あとこんなことを言ってるけど、俺はれっきとしたノンケです。これだけはハッキリと真実を伝えたかった(TDN並感)。

 

 

 

 

 

 

 

 ……えーっと、何か話が脱線したけど確かあの夢の続きでは、俺は本当の両親の故郷で巡査を務めていたんだよな。

 

 と言ってもやることは交通安全を兼ねた見回りと、見回りついでの美化活動、時折揉め事の対処とか、迷子の子を親の所まで送り届けたりしたくらいだったな。あの町はのどかな田舎で、武道が役に立つことが無い位に平和なんだよなぁ。俺はあののんびりとした空気は好きだけど。

 

 ただ、いつかの行方不明の事件が起きた時は流石に肝が冷えたな。幸運にも、俺が勘で探していたら捜していた子供が早く見つかったから大事には至らなかったけど。

 

 自分で言うのもなんだが、どうも昔から人との巡り合わせの運に関しては凄く良いんだ。おじさんみたいな良い人と巡り合えたり、迷子になった子供を捜す際、何故か俺が見つけると早く見つかるんだよなぁ。その代わり大なり小なりと不運に見舞われることが多いけど……。

 

 あの事件をきっかけにニュースでも話題になって、地元の人はおろか、警察学校の同僚からも俺のことを「人探しのプロ」って言われたこともあった。ぶっちゃけ運というれっきとした実力で見つけたわけじゃないから、あまり誇れるようなもんじゃないけどな。運も実力の内と言うが、それは運を自在に引き寄せられる奴が言っていいものなんで、俺には不釣り合いだ。悪運も引き寄せちゃってるしな。

 

 そんでそういった功績と普段の行いの結果なのか、地方の警察署長さんから昇任の推薦もあったな。流石に経験が少なくて荷が重いと感じたから正規のルートで目指すと言ったけど、そしたら余計気に入られた。なぜ? 

 

 ……そういや俺がこの世界に来る直前、確か正規の昇任試験で昇任結果が決まって、試験の重圧から解放された自身のご褒美としてアニメ鑑賞会してたんだよなぁ。それで夜更かしをして、寝落ちしたんだっけ? いや、これでホント何で異世界転生したんだ? 

 

 

 あ~……、今まで意識しないように強がっていたけど、夢のせいでなんだか寂しくなってきた。昇任したお祝いにおじさん達の所へ遊びに行こうとしてたけど、もう会えないのかなぁ……。これがホームシックってやつか? 

 

 

 仮に向こうへ帰れたとしても、この見た目をどうにかしないといけないし、そもそも帰れる手段が見つかっていない。それにこの世界でやることもできたから、何も果たせず帰るわけにもいかないしな……。一人でどうしたらいいのやら……。

 

 

 ⦅( ̄・ω・ ̄)⦆

 

 

 あぁ、そういや今はお前も居たな、アルタ。この旅の間でお前も随分と表情が豊かになったよ。最初は三点リーダぐらいで意思を伝えるくらいだったのに。

 

 視聴者兄貴姉貴達にアルタについて簡単に説明すると、こいつは死にかけの時に出会ったもう一人の俺だ。詳しくは第八話を見てくれや。

 

 フェストゥムの俺であるこいつもまた旅の間に成長したのか、時おりこうやって感情を表現できるようになった。それでいつまでも(おれ)なんて言うのもあれだから、もう一人の自分ということでアルタという名前を名付けた。

 

 

 ⦅(・ω・ = ・ω・)⦆

 

 

 ……何? メタ発言よりも周りを見ろって? 一体どういうこ──

 

 

 アルタの一言に周囲を見渡してみると、

 

 

 

 

 俺が居る場所はごつごつとした岩肌のある洞窟ではなく、木箱やコンテナといった荷物が無造作に積まれた、まるで倉庫のような見知らぬ部屋にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 見知らぬ場所で目覚めたせっくん。調べていくとそこはリターニアへと向かう悪徳商会の小さな輸送艦だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が運び込まれた経緯を調べていくと、突然鞭を撃った音が響き渡る。何事かとみると、そこには一人の女性が痛めつけられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女を人質に取られ、何もできない女性は男達によって鞭を撃たれ続ける。その光景を見たせっくんは行動を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆さん、ご無沙汰しております。悶絶中年専属調教師のせっくんと申します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第12話、悶絶 ~KBTIT~

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 




せっくん『卍解~』


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第12話 悶絶 ~KBTIT~

復刻イベ美味しいです(゜д゜)ウマー

当時はそこまで熱が入っていなかったのでグラニちゃんを逃した作者はすぐさま確保し、強襲含めてガンガン進みました。やっぱキャラ強化は大事だってはっきりわかんだね。

ガチャはいつもの確定星5の後、10連チケット一枚で新規の二人すっぱ抜けました。嬉しいけどWちゃん確保用の石が(コーデ買うのも相まって)どんどん減って辛たん…。

…スカジ?知らん!(出なかった)


 こいついつも見知らぬ場所で目覚めてるな、で始まるフェストゥムライフ、はーじまーるよー。

 

 

 

 まず一言、どこだよこ↑こ↓?荷物は体内にしまってあるし、身に着けてるKBSマント(放浪の最中に修繕を繰り返してver4だがボロボロ)も、大丈夫そうだな。記憶ガバでもなく、確かに洞窟で眠ってたはずなんだか……、これもうわかんねぇな? アルタ、どう思う? 

 

 

 ⦅(´・ω・`)? ⦆

 

 

 アルタも分からんか。まぁ俺が寝てるとアルタも寝てるしな。交互に起きて見張ろうにも、何故か身体の主導権が俺の方に依存してるから、アルタに譲渡したくてもできないんだよなぁ……。

 

 にしても何故こんな場所に……? これあれか? クトゥルフでお馴染みの謎ワープってやつか? 

 

 確かに原因と思われそうなあのクトゥルーな大ダコの足を切ったけどさぁ……、それでもあれから1ヶ月くらいは経ってるゾ。祟りにしてはちょっと遅かったんとちゃう? 

 

 

 

 カツ、カツ、カツ……。

 

 

 

 

 ……ん? 何か遠くから足音がする。音が次第に近づいてくる感じからこの部屋に来そうだな。

 

 

 急いでこの場から離れようと思ったけど、この部屋を見た感じ、倉庫か物置みたいな場所だ。もしかしたら下手に動かない方がいいかもしれん。俺をこんな場所に置くとなると、少なくとも俺が生物だとバレていないはずだ。拘束具も何も取り付けられていないし。

 

 取りあえず情報入手のために寝たふり寝たふり……。

 

 

 ギギギと重量感がある扉が開けられる音と共に、二人の男が部屋の中へと入って来た。その見た目は傭兵と言うか何処かの作戦部隊のような出で立ちをしていて、振る舞いからはガラの悪さが滲み出ていた。

 

 部屋に入ってきた男二人は部屋中の箱を確認していく。そして最後に俺の所に近づき、マントをずらして俺のメタリックなボディを舐め回すように見る。

 

 

「おしおし、この黄金像も特に問題はないようだ。にしてもあの洞窟でこんな像が見つかるなんてツイてるな俺達」

 

「全くだ。この荷物は全部あの変態貴族の土産だから、もし何かあったら大目玉を喰らうの間違えないぜ」

 

「違いねぇ。あとアーツの実験用奴隷を欲しがっていたし、ちょうど荒野に彷徨っていたあの汚らわしいサルカズの感染者部隊をどうにかして捕まえたからな。捕まえるのにアーツを封じる装置を使ったんだ、たんまり報酬をもらわないと割に合わねぇぜ」

 

 

(…………ほーん)

 

 

 ゲラゲラと笑う男たちを余所に、俺は彼らの話から現在置かれている状況を確認していた。どうやら寝てる時に運悪く、こいつらに見つかってこの部屋へと連れ込まれたそうだ。運が悪いってレベルじゃねーぞこれ! 

 

 にしてもアーツの実験用奴隷に、感染者を侮蔑する発言とか、聞き捨てならないことを聞いたゾ。こいつらからきな臭さがプンプンするぜぇ~。

 

 

「そんじゃ、荷物に異常が無かったところで、俺達も戻ろうぜ」

 

「そうだな。目的地のリターニアに着いたら贅沢に食事でもしようじゃねぇか。あそこに美味い店があるらしいぜ」

 

 

 ギャハハハと笑いながら男たちが扉を閉めて部屋を後にする。彼らが向かう先はリターニアという場所らしい。周りをよく見たら部屋自体が少し振動しているため、ここは何かの乗り物の一室なんだろう。何かの輸送車、あるいは旅の途中に遠目で見た移動都市ってのに近いやつかな? 

 

 

 さて、男達が立ち去っていった今の内に、この部屋の荷物を物色しましょうね~。このままドナドナされていく状況を打開するために色々と探らせてもらうぜ。イクゾー(カーン)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フェストゥム物資漁り中)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うわぁ……、きな臭い所じゃねぇやコレ。真っ黒ですよ、真っ黒くろすけ出でおいで案件ですよクォレヴァ……。

 

 物資の中身が普通の品物や高級品である宝石や貴金属品に紛れて、麻薬や見るからに違法な薬物、見たことない特殊な武器が混ざっている。果てには変な首輪や腕輪、変な機械も見つけたし、それらを軽く調べたら機械の方は先程奴らが言ってたアーツを封じる効果に加えて、首輪や腕輪の方は装着者に洗脳あるいは従属させる効果みたいなのがあるやべーやつですわ。

 

 こんなものを運ぶあいつらは間違いなく悪徳業者ですし、依頼人の貴族も同様に人間の屑確定だな。目玉ほじくらなきゃ……(使命感)

 

 

 

 

 ……よし、粗方のことを調べ終えたところで他の場所への探索を開始するか。因みに消失(ロスト)が使えるなら、とっととこんな場所から逃げ出す手も考えていたけど、あれってあまり遠くに飛べないんだよね。一応無理すりゃ遠くまで行けるけど、地味に燃費が悪いから使うと凄い疲れるんだよなぁ……。

 

 それになんかこのまま逃げて奴らを放置しておいたら、後々厄介事を抱えて再び遭遇して来そうだから、対処出来るならやっておきたい。廻り回ってノヴァちゃんとか今まで会った人達に被害が来ないとは限らないからね。

 

 

 

 パシィン!! 

 

 

 

 部屋に出ようとしてドアに近づくと突然、扉の向こうから何か大きな音がこの部屋まで響きわたる。何事かと思いドアに付いてある覗き窓で向こう側の様子を覗き見ると──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おら、感染者風情が生意気な口を利くんじゃねぇよ!」

 

 

 

 パシィン!! 

 

 

 

 男の怒声と共に鞭がしなる。

 

 

「くっ……、う……!」

 

「「「親分! もっとやっちまえ!」」」

 

 

 

 鞭の一撃が頭部に悪魔のような角が生えた白髪の女性を襲う。様々な拷問器具が備え付けられていて、いかにも拷問室の様な部屋には何人かの男達が部屋の中心に集まっていた。そして部屋の中心にて、周りの男達から親分と呼ばれた一際高級な装備を身に着けた男が、女性を痛めつけるように鞭を振るっていた。

 

 鞭が当たる度に女性の口から呻き声が零れ、その声を聞いた男達は喜びのあまり狂乱した歓声が上がり、部屋の中は男達による吐き気を催す熱狂に包まれる。

 

 女性は両腕を天井に上げられたまま拘束され、彼女の白い肌は鞭で赤く腫れあがり、痛々しい傷として残っている。そして彼女の身体には感染者の証明であり、鉱石病の症状悪化の兆候である結晶が生え出していた。

 

 

「…………っ!」

 

「何だぁ、その目は? そんな態度を取るならこっちのチビにも鞭を与えてやろうか? おいっ!」

 

「お、おねぇちゃん……」

 

 

 男を睨みつける女性の態度にむかついた男が周りにいた者に指示を出し、小さな女の子を彼女の目の前へと強引に連れ出した。

 

 パシィンパシィン!! 

 

 鞭を持った男が少女の目の前で鞭を数回振るう。それは逆らえばどうなるかを女性と少女に見せつけていた。少女の目は恐怖に怯え、傷付いた女性を心配そうに見つめる。少女を見た女性は顔色を変え、男に呟く。

 

 

「っ! その子は……関係無い……!」

 

「そうかい。……ならそれ相応の態度があるってもんだろうが!」

 

 

 不愉快そうに男は先よりも大振りに鞭を振るう。

 

 パシィン!!! 

 

 

「ぐあぁっ…………!!」

 

「おねぇちゃん!!!」

 

「ひひひ……、さぁってもういっぱ────っ!?」

 

 

 女性の悲鳴に少女は悲痛に叫び、男はそんな彼女達の様子を見て愉悦に浸っていた。そして男が女性に向けて再び鞭を振るい始める。女性は次来る痛みを堪えるために目を閉じ、歯を食いしばった、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だが、その一撃は女性に当たらなかった。いや、正確には()()()()()()()()()()()と言った方が正しいだろう。

 

 

 痛みが来ないことに違和感を感じた女性は恐る恐る目を開ける。そして彼女の目に映ったのは現状で起こりえない光景だった。

 

 男が鞭を振るう直前、男の全身が突然霜に覆われて凍りつき、身動きひとつも取れなくなっていく。周囲にいた男達も突然の出来事に驚く中、彼らの全身も、いや、この部屋全体が瞬く間に凍てつき始める。例外として、何故か女性と少女の体には霜ひとつも付かずにいた。

 

 

 

 

 ミシッ、ミシッ……

 

 

 

 

 突然の事態によって部屋にいる全員が困惑している中、何かが潰れるような音が何処から聞こえる。音の発信源を探すために全員が見渡すと、その音は男達にとってよく知っている場所から聞こえていた。各地で集めてきた違法商品や希少品が積んである倉庫の方からだ。

 

 ただ、それはいつも見ている光景ではなかった。倉庫の扉には、まるで空間ごと引き裂いたかのような黒い裂け目が縦一文字に走っていた。

 

 男達はその光景に驚き、そして恐怖を感じていた。あの部屋は扉を含めて源石爆弾でも壊れない頑丈な造りになっている特別性のはずだ。

 

 それなのに、その扉からミシミシと潰れる音を立てながら徐々に裂孔を開き始めていく。開いていく裂孔の闇から黄金に煌めく手が這い出て、手は裂孔の縁を掴み、そのまま力を込めて扉を左右に押し広げて潰していく。

 

 男達にはその見覚えのある手の色にまさかと言わんばかりに表情を引きつらせる。そして──。

 

 

お邪魔するわよ~

 

 

 地の底から呻く亡者のような低い声とともに扉が完全に破壊され、倉庫から誰かが出てくる。それは3mほどの巨躯にボロ布を纏った人型の存在。その姿はボロ布で身体の大半は覆われていて全貌は分からないが、かろうじて人型だということと、下半身には人間のような足ではなく蛇のような黄金の胴体をしていた。

 

 女性と少女はアレが何者かは分からないが、男達はまさかと言わんばかりの表情を浮かべていた。あれは間違いなくこの前洞窟で見つけ、倉庫に置かれていたあの黄金像だと。

 

 異形の黄金像、もといフェストゥムのせっくんの乱入。それは部屋にいた全員が目の前で起きた理解出来ない不可解な現象、そして彼の者から発せられる威圧感に命の危機を感じ取り、緊迫した空気に覆われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とまぁ三文芝居なナレーションをしたけど、滅茶苦茶驚愕してますねこいつら。いやー、余りにも胸糞悪すぎてうっかり部屋ごと凍らせようと力んじまったわ。それでも彼女達には被害が被らないように調整してたから結果オーライだしいいか。

 

 

「な、何で黄金像が動いてんだよ!?」

 

「知るかよそんなの! それより体が凍り付いて動けねぇ!」

 

「誰か火のアーツ使ってこいつを溶かせよ!」

 

「今やってるけど全然取れねぇんだよ! 溶かしてもすぐに氷が生成されて間に合わねぇ!」

 

 

 おやおや、目の前の脅威に対してそんな醜態を晒していいのかな? そんじゃ、人質にされる前に彼女達を回収させてもらうぞ。

 

 

「あっ!? お、親分! 女とガキが!?」

 

「テ、テメェ! そいつを返しやがれこの盗っ人が!」

 

 

 お前らだけには言われたくないよ(MKDK並感)。さて、女性を傷つける悪いホモはお仕置きだど~。じゃけん新しく覚えた特技の実験体になってもらいましょうね~。

 

 

「な、何だよ……。おい! なにする気だ! 近づくんじゃねぇ!」

 

 

 うるせぇ、ちょっと眠ってろお前。というわけで堕ちろ! (願望)

 

 

「や、やめっ……!? ア”ァ”…………ヴッ……」ガクッ 

 

「「「お、親分!!?」」」

 

 

 堕ちたな(確信)。よし(現場猫)、じゃあ次行くど~(ゲス顔)。

 

 

「「「ひっ…………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あん? あの野郎何をs──!?」

 

 

 せっくんによって眠らされ、目を覚ました男がいたのは先ほどの拷問室ではなく、家具が燭台二つに、十字架が置いてあるだけの殺風景な部屋だった。男は「ここは何処だ?」、「一体何が起きたんだ」と自分の身に起きた不可解な現象に驚くが、それ以上に自分の身に置かれている状況に困惑していた。

 

 男は十字架に張り付け、いわゆる磔刑を待つ囚人のような状態になっていた。四肢は十字架に固定されてビクともせず、もがいても無駄に体力が消耗するのみ。

 

 それでも十字架から抜け出そうとしばらくもがいていると、突然緊迫感を掻き立てるような曲が部屋中に鳴り響く。

 

 

『皆さん、ご無沙汰しております。悶絶中年専属調教師のせっくんと申します』

 

 

 曲と共にこの部屋に入って来たのは存在に男は驚く。それもそのはず、先ほど自分を眠らせた存在、黄金像もといせっくんが道具箱とスタンド付きのビデオカメラを持ってきて目の前に現れたからだ。

 

 ……ただ先ほどのボロ布を纏っていない代わりに、その姿は何故かサングラスと茶髪のカツラ、パツパツな黒ベストを着ているのは謎だが。

 

 部屋に入って来たせっくんは磔にされた男を軽く一瞥し、ビデオカメラの設置をし始めていた。その態度にむかついた男は思わず怒声を放つ。

 

 

「なっ……おい、てめぇ!! 早く俺を解放しやがれ!!!」

 

『黙れや猿ぅ! 今収録中だろ!』

 

 

 パシィィン!!! 

 

 

「がっ、はっ……!!?」

 

 

 男の怒号に対し、せっくんは自らの腕を鞭のようにしならせ、男の体に叩きつけた。

 

 だがその一撃は自分が女性に与えていた物とは比較にならないほどの強烈な一撃だった。それを受けた男はその強い衝撃によって肺に溜めてた空気を全て吐き出し、全身の骨が軋むような感覚に襲われ気を失いそうになっていた。

 

 

『えー、先ほどお見苦しい物をお見せして申し訳ナス! さて、今回の悶絶中年大全集第一巻はいかがでしたでしょうか? 悶絶中年初期作品は、比較的オーソドックスなSMプレイがたくさん盛り込まれていたかと思います。そして、これからお見せする撮り下ろし映像も、基本的なSMプレイをお見せしたいと思います』

 

 

 そして何事も無かったかのようにカメラの前で淡々と語るせっくん。先程男に向けていた怒りは既に霧散しており、カメラの前で態度は既に一変していた。そんなせっくんの姿を、痛みで朦朧とする意識の中で見た男は自身の本能が警告する。

 

 こいつはヤバい。逆らってはいけない、と。

 

 あの痛みからして次にもう一度、あるいは本気の一撃を喰らえば今度は命は助からないと。今自分の命は奴の手のひらの上もある。ここは逆らわず奴の言葉に従順になればこれ以上痛めつけられることは無く、脱出のチャンスを窺えるまで乗り切ろうと男は判断する。

 

 

『今回調教する中年はまもるっ(大嘘)。ハンサムなマスクと、均整のとれた体ww(笑)』

 

 

 嘲笑う奴の言葉と共に奴の手が指し示しているのは自分。名前は違うがそんなことで口答えしたらまた攻撃されると思い、思わず言いかけた口をつぐんだ。

 

 先程の言葉の意味から奴は自分に何かしてくる。だが先ほどのようなものではないならいくらでも耐えられると男の意思はニヤリと不敵に笑い、余裕を保とうとしていた。

 

 

『まだアラサーギリギリのこの中年は、私の調教に耐える事が出来るでしょうか?』ゴソゴソ、(`・ω・´)ノ

 

「っ!?」

 

 

 だがその甘い考えはすぐに打ち砕かれてしまった。せっくんが道具箱から漁り、取り出す。それは30㎝ほどの長さとそれなりの太さを持ち、黒色に輝く振動する棒状のものだった。

 

 詳しい形態は(書けば色々とアウトな気がするため)省略するが、それを見た男はこれから待ち受ける現実を想像したくないものだった。間違いなく自身を肉体面や精神面、そして人としての尊厳を完膚なきまで破壊してくるものだと。

 

 

「お、おい……俺が、いや、私が悪かったです……。だから、やめてくれ……、やめてください……

 

 

 ウィィンと小気味良い音で振動する棒を持って男に近づくせっくんに、男は震えた声で言葉を繋げて懇願する。その言葉からは最初の荒っぽさが消え、まるで怯える子供のように、か細く呟くような呻き声に近かった。

 

 だがその言葉はせっくんには聞き入れてもらえず、むしろじりじりと近づくスピードが速まったと男は錯覚する。絶望のカウントダウンが刻々と近づくのを感じ、男はいつの間にか自身の股が温かく湿っているのを感じ取った。

 

 

「だ、誰か……、助けt──―」

 

『それでは、ご覧下さい(無慈悲)』

 

 

 救いを求める男の呟きを掻き消すかのように黄金像が言い放つ。そして──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!! (発狂♂)

 

 

 

 

 今まで男が犯した悪行が自分の身に帰って来たかのように、男の身に罰が与えられ、凄惨な苦しみを宿した叫びが男の口から溢れ出す。もし他の人がこの光景を見て、彼が放つ断末魔を聞けば自業自得とは言え、あまりにも無惨な結末だと誰もが口をそろえて言うのだろう……。

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 ファフナーでも総士君を眠らせるためにエスペラントのMRS君が愛用しているアイスティー(サッー!)を覚えたせっくん。それを駆使して見事男達を昏睡させて女性と少女を救う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女達は何者で、どうしてこんな場所に閉じ込められたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その理由をサルカズである感染者の女性はせっくんに明かす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、そういえば自己紹介をしていなかったな……。私の名は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第13話、泥岩 ~マドロック~

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 




(女性の正体が)バレてる!バレてる!


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第13話 泥岩 ~マドロック~

公開求人300回やってヴァルカン交換したので初投稿です。

復刻イベ終わって悲しい…、悲しくない?運営さんは早く次のイベ出してほら。


あとマドロックを早く日本でも出して?出せ(豹変) 


「あっ、ががが…………」

 

「や、やめ…………、うあああああああっ!?ウーン…(心停止)」

 

「もうヤダぁ……、お家帰るぅ……」

 

 

 ふぃー、工事完了です……。この部屋にいる奴らは全員アイスティー(淫夢)したので、これで安心だぜ! 

 

 見ての通りこいつらは今、ファフナー本編でもMRS君がやってたアイスティー(淫夢)の餌食になってもらいました。スノーデビル小隊の時に思いついた戦意を折るまで敵を殴って回復させるループ戦法、通称C・D(クレイジー・ダイヤモンド)戦法だとどうしても体に負担が来るし、実際に行った時の仲間のドン引きした眼差しが精神的にキツかったりと、欠陥がありすぎたんだよなぁ……。なので、新しい能力を覚えて敵を無力化させる方法を考えたということですね、初見さん。

 

 見せれる夢について? (大抵のものは)見せようと思えば(王者の風格)。

 

 

 

 

 ……と言いたいところなんだが、実は何でも(ん?)見せれるわけでもないんだよなぁ……。基本的に俺の記憶を元に、夢を見せてるから案外色々と見せれるわけでもない。

 

 今こいつらには淫夢本編を追体験させていて、俺が本編を見たことあるからできた荒技なんだよなぁ……。もしかして陽ちゃんはこのことを考えて、俺に淫夢本編を見せてくれた可能性が微レ存……? 

 

 

 まぁとにかく、こいつらに見せてる夢がろくなもんじゃないのは確かだな……。淫夢本編を軽く改竄したものを追体験させているが、やはり見せる夢の中に悶絶やピンキーはともかく、汚物レストランまで混ぜるのはやりすぎだったか? 

 

 

 にしても酷い光景だぁ……。大の大人が顔をぐちゃぐちゃに歪むくらいに泣き喚き、中には口から泡を吹いたり、お漏らしや幼児退行しかけたりと絵面的にアウトな光景が広がってるよ。一体誰がこんなむごいことを……(お前じゃい!)。 

 

 

「「………………」」

 

 

 ほら見ろ、目の前の光景のヤバさに彼女達二人も絶句してんぞ。こんなの見せられて生涯のトラウマにならないか心配だゾ。さて次は、先程まで鞭を打たれていた彼女の治療しないと……。

 

 

 

 

 

 ……あれ? めっちゃ嫌そうな顔をして避けてる? 何でこんな人畜無害なフェストゥムを避けるんすか? しょうがない、コミュニケーションしてどうにか落ち着いてもらうか。

 

 

『プルプル。僕、悪いフェストゥムじゃないよ?』

 

「…………!」

 

「しゃ、喋ったのです!?」

 

 

 おう喋るゾ。だから警戒解いてもらっていいかな? 彼女の治療をしたいんだけど? 

 

 

「…………分かった」

 

「おねえちゃん!?」

 

「大丈夫。この人……、人? は信じてもいいと思った。それに……」

 

「それに?」

 

「この人から私の友人と似た何かを感じる……。先程の振る舞いで錯覚していたけど、敵ではないと直感が私に訴えてる……。それを信じてみようと、私は思った」

 

「……わかったのです。そこの人! おねえちゃんをいじめたら私が許さないです!」

 

 

 おうおう威勢よく啖呵を切ってるなこの黒髪幼女。そんな心配しなくても傷を治すだけだから大丈夫だって安心しろよ~。んじゃ、同化(ちりょう)始めんぞ。はい、よーいスタート(棒読み)

 

 

「っ! これは……?」

 

「緑色の……、結晶なのです……?」

 

 

 あぁすまん、驚いたかもしれんが害を為してるわけじゃないから安心しな。ふむ……。

 

(にしてもひでぇ傷だなこりゃ……。先程までについた傷だけじゃなくて、化膿しかかってる傷もある。以前にもこんなことされていたのが見える見える。最悪遅れてたら致命傷になっていたのかもしれない……)

 

 

 

 とにかく彼女の治療に専念だ。ちぃ……、結構痛いな。見た目以上に傷が深いのか? 

 

 

「……? 痛みが、引いていく……?」

 

「凄いのです……」

 

 

 二人共何か驚いたりしてるけど、そろそろ治療の仕上げだ。さっきちらりと見たけど彼女も鉱石病に罹っているから、そいつも俺が持っていこうとしよう。ふんぬっ! 

 

 

「っ! すまない……、そこでやめて貰って良いか?」

 

「おねえちゃん?」

 

 

 お、おう。どうした? まだ鉱石病を治して無いんだが。

 

 

「先程身体に妙な違和感を感じた……。まるで体から力が抜け落ちるような感覚が……。一体、何をしたんだ?」

 

「あ、あなた……!」

 

 

 待ってお嬢ちゃん落ち着いてステイ、ステイ、ステイ。ちゃんと話すから、だからその拳を下ろしてお願い。

 

 ……ふう、お嬢ちゃんが落ち着いたところで説明に戻るゾ。さっき傷の治療と同時に君の体にある源石を同化してたんだ。

 

 

「源石の、同化……?」

 

 

 平たく言えば擬似的な鉱石病の治療だと言えばいいのかな? その代わりその人が負ってた傷とか痛みとかを俺も受けないといけないという制約、いわゆる肩代わりがあるけど。

 

 

「「!!?」」

 

 

 おそらくさっき感じてたのは源石の消失による、鉱石病の恩恵が薄れたからなんだろうと俺の中では結論づけている。以前同じように感染者を治した時もそんな風に言われて、戦う力を失いたくないという理由で完治を拒んだ人を俺は知ってるから。

 

 

「……そうだったのか。驚いたとは言え、身を呈して助けてくれたことに感謝する、ありがとう」

 

 

 どういたしまして。それよりさっき途中で止めたから鉱石病は完全に治ってないがいいのか? 

 

 

「…………そうだ、さっきの様に治す力は残っているのか? 助けられた身で図々しいのは承知たが、力を貸して欲しいんだ……。私よりも治してもらいたい者がいるんだ……」

 

 

 その言葉にお嬢ちゃんはハッとした顔を浮かべ、俺の方へと振り向く。

 

 

「……そうです! あ、あの、先程失礼なことを言ったのは謝らせて下さい! どうか……、どうか私の妹を助けてくれてくれませんか!?」

 

 

 うん? どゆこと? 話が読めんからすんません、説明オナシャス! センセンシャル! 

 

 

「……実は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!? こいつらどうやって『ちょっと眠ってろ!』……ぐぇっ!?」

 

 

 拷問室を後にした俺達は、途中遭遇したさっきの奴らの仲間を蹴散らしながら、彼女達の仲間の元へと向かっている。地味に3m位の巨体が邪魔しているせいで、通路が狭いから上手く流動体になって進んだり、通路を無理矢理押し広げて進んでるけど、なんの問題もないね♂

 

 

 

 

 彼女達の話を聞くところ、角の女性の方はリターニアの荒野で放浪していた感染者で、仲間と共に傭兵の生業をしていた。リターニアは他の国に比べて、比較的に感染者に寛容だと聞き、安住の地を求めてやって来たとのこと。そんな時、彼女は感染者として故郷に追い出され、妹と一緒に旅をしていた烏のお嬢ちゃん達を見つけ、彼女の傭兵団で保護したとのこと。

 

 

 だが旅の途中である日、突然さっきの男達に襲撃され、迎撃しようとしたら何故かアーツが使えず、不利的な状況に陥っていた。どうやら奴らはアーツの発動を阻害する装置を使っていたらしく、奇襲も相まってそれを防ぐ術が無かった。

 

 それでもアーツが使えずとも彼女達の実力は高く、ただ単にやられずに戦いは膠着状態へとなったが、隙をつかれて奴らはお嬢ちゃんの妹に矢を撃ち込んだ。すると撃ち込まれた彼女の容態が急激に悪化し、苦しみ始めてしまった。どうやらその矢には源石を活性化させる薬品が塗り込まれていて、症状の抑制したければ投降しろと言われ、大人しく奴らに囚われることになった。

 

 

 

 投降後、妹さんに抑制剤は打ってもらえたが、あくまでそれは症状の抑制のみで、「あそこまで症状が悪化してたらもう助からねぇぜ。せいぜい依頼人の実験材料として役に立ってもらうんだなw」と奴らは不愉快な笑いを漏らし、それにキレた角の女性が奴らに反抗しようとした。だが抑制剤で足元を見られ、逆に反抗した罰の見せしめとして奴らの鬱憤晴らしに彼女は連れて行かれたのが事の顛末だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……さっき汚物レストランはやり過ぎだと思ったが前言撤回だ。むしろ汚物レストランでも生温い、今から源石レストランにでも変えてやろうか? 

 

 

 ふつふつと奴らに対する怒りを沸き立たせようとしていたが、今はそれよりも優先すべきことがあると自身に言い聞かせ、冷静さを取り戻す。

 

 彼女達に案内されて辿り着いたのは牢屋のような部屋が沢山ある区画だった。中には女性と同じく悪魔のような角が生えた屈強な男達が囚われている。

 

 牢屋にいた男達の一人が部屋に入って来た俺達に気づき、女性の姿を見た瞬間、驚きの顔を浮かべていた。

 

 

「マドロック!? 無事だったのか!」

 

 

 男の一人が彼女に向かってそう叫ぶ。その叫びをこちらの方を見ていなかった他の人も聞いて、一斉にこちらの方へと振り向く。そして彼女の姿を確認するや否やで歓声が湧き上がる。というか君、マドロックって言うのか。

 

 

「ああ、そういえば自己紹介をしていなかったな……。私の名はマドロック。……サルカズの傭兵で、僭越ながら彼らの隊長として傭兵団を率いている」

 

「そういえば私も自己紹介をしてなかったです。私の名前はフギンと言うのです。種族はリーベリです」

 

 

 そう言って彼女達、マドロックもといマドちゃんと、フギンちゃんは俺に向かって自己紹介をする。自己紹介をされたら俺も返すしかないよなぁ? 

 

 

(」・ω・)オッス、オラせっくん、何の変哲もないフェストゥムだゾ。よろしくな! 

 

 

 

 

 ……で、フギンちゃん。妹さんはどちらに? 

 

 

「っと、そうなのです。あの、妹は今どうなってますか?」

 

「落ち着け嬢ちゃん、妹は他の奴が看てくれているが……。状況はあの時の、いや、下手したら症状が進行し、悪化している。酷な事を言うが、もう助からないと考えた方がいい……」

 

「そんな……」

 

 

 牢屋にいた男が奥の方をチラリと見て申し訳なさそうにフギンちゃんに説明する。彼の説明を聞いた彼女は次第に顔面蒼白となり、唇が震わせながらポツリと呟いた。とりあえず状況的に不味く、一刻を争うことが分かったんで案内してくれ。

 

 

「あんた……、彼女から聞いていないのか? 彼女の妹は俺達も患ってる鉱石病……不治の病だ。それもアイツらのせいでその症状を悪化させられたんだぞ! 助かる可能性は……」

 

 

 ……一つ聞くけど、まだその子は()()()()()()()()()? 

 

 

「は? 何言ってるんだ? 生きていようがあれじゃどうにm「……妹は、妹はまだ生きているはずです!」嬢ちゃん!?」

 

 

 OK、それならどうにかなる。もし生きていなければどうにも出来ないからな。流石に死者蘇生はできないし、フェストゥムの力はそこまで万能じゃないんだ。

 

 さて、牢屋を開けて中へお邪魔するわよ~。肝心の妹ちゃんは…………むっ、これは…………。

 

 

 

 

 

 

 フギンちゃんに連れられ、牢屋の奥へと進む。男達を掻き分けて見つけた彼女の妹の姿は、それはとてもじゃないが生きているのかと言いたいものだった。

 

 源石の結晶が全身の体表でまばらに散らばり、突出した源石によって所々身体から血を流していた。特に少女の源石の中でも華奢な右腕と左目付近にある結晶は異様に肥大化し、本来持っているはずの愛らしさを大きく損なわせ、異形の姿に変貌しかかっていた。

 

 その姿は見るからにして生きているとは思えない。それでも必死に生きようと彼女の口から微かな呼吸の音がする。だが、結晶に邪魔されているのか上手く出来ていない。医者ではない素人目の俺でも分かる通り、はっきり言って今生きているのが奇跡と言っていいレベルだ。

 

 

 

 チラリとフギンちゃんの方を見やると、そこには焦燥とした表情で苦々しげに唇を噛む彼女の姿が。それは最愛で、唯一の肉親である妹の危機に何もしてやれない姉としての無力さに打ちひしがれているようだと目に映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かにこんな姿を見てかつ、鉱石病が不治の病という認識を持ってる彼らが生存諦めるのも無理は無い。……()()()()

 

 

『 …………………………』

 

「あの……、妹は、ムニンは……」

 

 

 ──────―なら…………、

 

 

「えっ?」

 

 まだこの子が生きている(ここにいる)なら、必ず助けだしてやるさ。だから君は、彼女がここからいなくならないように、しっかりと見ていてくれ。

 

 ⦅(`・ω・´)フンスッ!⦆

 

 

「…………っ! はい!」

 

 

 アルタもやる気十分なようで何よりだ。幸い彼女はまだここにいて、助かる可能性はある。姉妹の絆を守るためにいっちょやるしかないよな。

 

 彼女の妹、ムニンちゃんに手を伸ばし、彼女の身体にそっと優しく手に触れる。触れた箇所から緑色の結晶、ゴルディアス結晶が源石ごと彼女の身体を優しく包み込むように覆い始める。いきなり起きた異変に、何も知らない男達はどよめき始めるが、そんな彼らを見てマドちゃんが彼らを落ち着かせようと説明しているのがちらりと見えた。

 

 

 

 彼女の身体が結晶に覆われたのを確認し、俺は、俺達は彼女の鉱石病の同化(ちりょう)を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 sideマドロック

 

 彼があの子に触れた瞬間、彼女の体は優しく包み込むように翡翠色で煌めく結晶に覆われた。私と彼女の姉はそれを一度見たことがある。彼が私を治療してた時にも発生していた結晶だ。

 

 結晶から溢れ出す優しい光によってこの部屋一帯を照らす中、幻想的なこの光景を見た仲間達は何が起きているのかと動揺し、私に尋ねてきた。

 

 

「マドロック……、あいつは一体……、何をしているんだ?」

 

「彼は、鉱石病を同化しようとしている……」

 

「鉱石病の同化? ……つまり、なんだ……? あいつは鉱石病をどうにかしようとしているってことか? そんなこと出来たらすげぇけどよ……?」

 

「……これを見てくれ」

 

「ん? 何を…………っ!?」

 

 

 訝しげに思う仲間達に、私は自身の身体のある箇所を見せる。

 

 

「……マドロック。そこにあったはずの結晶はどこに行った?」

 

「これが証拠だ。彼は様々な事象をその身に宿して、肩代わりする力を持つ。鉱石病はまだ完治したわけではないが……、先程まで私が受けていた傷は全て、彼が持って行ってくれた……」

 

「マジかよ……。それはまた、とんでもないやつと出会っちまったな……」

 

「あぁ…。私も、敵として出会わなかったことに感謝したい……」

 

 

 彼はこの世界で最も特異的な存在だ。鉱石病を治す力などという前代未聞な力を有し、この世界で一筋の希望とも言える。そんな彼と戦わずに済んだことに、私は喜ばしく思った。

 

 

 

 

 仲間達と共に彼の同化(ちりょう)を見守る中、外を見張っていた仲間が慌ててこちらに向かってくる。

 

 

「隊長! この艦にいる奴らがこっちに押し寄せてきやがった。このままだとまずい!」

 

 

 おそらく、この艦に無力化されずに残っていた仲間が内部の異変に気づき、元凶であるここを攻め込もうとしているのだろう。

 

 彼は今、彼女の治療で手が離せない。ならば、私がやるべきことはただ一つ…。

 

 

「……わかった、敵を迎え撃つ」

 

「隊長!? でも武器が──―っ!?」

 

 

 敵の襲来に狼狽える仲間に対し、私はここに来るまで持っていた袋をこじ開け、中身を見せる。それは奴らの倉庫にあった私達の武器と、取り扱いが原則禁じられている違法な武器の数々だった。

 

 

「奴らの倉庫から私達の武器といくつか使えるのを取ってきた……。全員……、よく聞け」

 

 

 私の言葉に仲間達は一斉に気を張り始める。先程までのどよめきから瞬時に臨戦態勢へと入れるようにと気を引き締めていた。

 

 

「我々はこれより……、彼らを守り通す。先程の光景と、私の体を見て分かる通り……、この世界に芽生えた希望の芽をここで潰えさせてはならない」

 

「隊長……」

 

「彼は私の命、そして今、彼女を救おうとしている。……これは彼への恩義を報いるために起こした私の独断だ。もし戦いに参加しなくてもせめt「水臭ぇよ、マドロック」……レイアーム?」

 

 

 私の言葉を遮って、副隊長のレイアームが呟く。

 

 

「言ったはずだぜ、俺達はアンタに従う。何も俺達は全く考えてないわけじゃない。考えた上で最善だからこそ、アンタのやる事に従うんだ」

 

 

 彼の言葉に皆が一斉に頷き、各々が私に向かって言い始める。

 

 

「そうだぜ隊長。俺達はもう一蓮托生で、一緒に生きるために抗っているんだ」

 

「ひとまずあいつらを守ればいいんだろ? 俺達サルカズが守るとか柄にも無ぇが……、乗ったぜ」

 

「スモーキー…………、コック…………」

 

「あの時は虚を突かれて情けない醜態を晒しちまったが、今は違う。たかがアーツを封じただけでいい気になってるあいつらに、一泡どころか三泡も吹かせてやろうぜ」

 

「……ありがとう」

 

 

 全員が取り返した装備に手を付け、戦闘の準備を固めていく。そして彼らを、この部屋を敵から守るように陣形を整えていく。

 

 今回の戦いは今までの旅の間で感じていたような空っぽの戦いではない。偶然によって導かれた希望を守るための、戦う意味がある戦いだ。

 

 

「……戦士達よ、隊列を整え、進め。たとえこの命に代えても、彼らを死守せよ」

 

「「「「「──────────―!!!!!」」」」」

 

 

 号令と共に、戦士達は鬨の声(ウォークライ)を叫ぶ。それが我々の、戦いの合図となった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 鉱石病の治療に集中するせっくんと、敵の殲滅に向かっていたマドロック小隊。混乱極める艦内で、各々の役割を果たすために動く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その中で、リターニアで起きようとしている計画を知るせっくん達。それはリターニア貴族が考案した感染者を踏みにじる計画だった。それを阻止しようとするマドロックは危険に巻き込ませないように姉妹をせっくんに託し、自分達で敵の依頼元である貴族に立ち向かうことを決意する。それに対しせっくんは……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何勝手に突っ走ろうとしてんだゾ。俺も仲間に入れてくれよ~(マジキチスマイル)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第14話、深謀 ~ばけのかわ~

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 




リターニア貴族は絶対ろくなことしてないゾ(マドロックのサイドストーリーでの感想)

大陸版で先行に出ているマドロックのサイドストーリーを見たけど、彼女の部隊にいる右腕的なサルカズ戦士の名が分からないので、こちらで名付けました。スモーキーとコックは文面的に違うしなぁ…。


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間話 烏 ~いもうと~

もっと早く投稿したかったのに土日に色々と予定が入って投稿が遅れた作者です。

今年もあとちょっとで終わりですわ。来年は小説をより進めるようにできて、季節イベントを書けるようにしていきたいと思ってます。


ちなみに今日待ちに待ったWガチャで280連でやっとWちゃんを出迎えられました(吐血)。(お金が)アーイキソ…。





「薄汚いカラス共め! ここから出ていきやがれ!」

 

 

 感染者になったあの日、人々に石を投げつけられながらあたしと姉さんは故郷から追い出された。今でもあの時のことを、あたしは昨日のように鮮明に覚えている。

 

 あたし達の家族は父と母、そして姉さんとあたしの四人家族だ。皆、人が好すぎることを除けばごく一般的な家庭だった。あたしはそんな家族が好きで、幸せな生活を送っていた。

 

 

 

 

 だけどその幸せな時間は突然終わりがやって来る。家族全員でショッピングモールに遊びに行ったあの日、突然大きな爆発音が鳴り響き、崩れ落ちる建物の瓦礫と建物に仕込まれた爆弾の爆風があたし達を襲いかかる。後に分かったことだけど、どうやらあの事件は潜伏していたテロリストが源石爆弾を用いて都市を破壊していたらしい。そのテロリストはすぐに捕まったが、悪あがきとして仕込んだ爆弾を起動したとのこと。

 

 当然その時はそんなことを知りもしないあたし達は、何が起きたのか理解出来なかった。そんな状況で父と母はあたしと姉さんを守るために、迫り来る瓦礫からあたし達を逃がそうと安全な場所へ突き飛ばした。二人は後ろから迫る瓦礫に呑み込まれながら。

 

 突き飛ばされたあたしがすぐに後ろを振り返ると、そこには隙間から赤い液体が流れ出す瓦礫の山しか目に映らなかった。それを見たあたしと姉さんは声を枯らしながらも必死に叫んだ。二人は生きてるはずだと希望を胸に秘めて叫び続けた。

 

 しかし返ってくるのは静寂のみ。あたし達の呼び掛けに返事の声一つも聞こえてこない。その事実はあたし達にあって欲しくない現実を突き付けられ、ただ泣き崩れることしか出来なかった。

 

 さらに不幸が重なり、あの事故であたしと姉さんは鉱石病を患ってしまった。あの時爆風で飛び散った源石爆弾の破片なのか、瓦礫の中にある砕けた源石製品に使われた源石の欠片なのか、原因は分からない。

 

 

 

 

 

 

 だがそれが原因で、あたし達は更なる地獄へと落とされた。

 

 

 

 

 事件から翌日、なんの前触れもなく家に近所の大人達が押し寄せて来た。そしてあたし達が感染者という理由と、両親が事故で亡くなったのをいいことに、奴らはあたし達から全て奪っていった。

 

 

「どうして……、どうしてそんなことをするのです!? 私達は何も悪いことは──―!?」

 

「何も悪いことしてないだって……? はっ、お前達は感染者な時点でこの世の悪なんだよ!」

 

 

 感染者。この世界に蔓延る不治の病、鉱石病を患った者の総称。

 

 たったそれだけの理由であたし達は、この世の憎まれるべき存在になり、彼らを強盗へと成り果てさせた。彼らはかつて、あたし達の両親から世話になったことがあるにも関わらずだ。そこに倫理や人権、仁義というものは何も為さない。

 

 

 

 

 力の無いあたし達は奴らに奪うだけ奪われて、悔しさを胸に街の外へと追いやられていくしかなかった。しかし過酷な自然環境しかない外の世界で生き延びる術を持たない少女が放り出されれば、結果は火を見るよりも明らかだ。それでもあたし達はがむしゃらに生き延びた。いや、生き延びることが出来たと言った方が正しいのかもしれない。

 

 どうもあたし達は普通のリーベリよりもしぶとい生命力を持っていたらしい。過酷な自然にある不味くとも食べられそうな植物や動物の死骸、汚水などを口に入れることで生き延びることが出来た。

 

 しかし生き延びたとしても何処に行けばいいのか? 両親を失い頼れる人は無く、故郷は敵となり往く宛も無い。身体は日々衰弱していき、獣に襲われればひとたまりもない状況だったのは変わらない。そんな中でリターニアの荒野へと辿り着き、彷徨っていたあたし達は凶暴な獣の群れに襲われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴らの狡猾さで逃げ場も無く追い込まれ、もはやこれまでかと諦めかけたその時──、

 

 

「……沃土よ、巌よ、立ち上がれ」

 

 

 どこからか聞こえる声と共に獣の周囲に広がる大地が盛り上がり、人の形を成していく。土で出来た巨躯を持つ巨人はその剛腕を一振りすれば、獣の群れを塵のように薙ぎ払う。

 

 獣の群れが一掃された後、あたし達の前に全身重装備を纏い、頭部に角が出てる人が近づいてきた。これがあたし達姉妹とマドロックさんの出会いだ。マドロックさんは仲間と共に居場所を求め、傭兵団として旅をし、つい最近このリターニアの荒野に辿り着いたらしい。そんな中、獣に襲われていたあたし達を見つけ、救援として駆け付けたとのこと。

 

 最初は彼女を警戒していた。助けてくれたことに感謝するけど、彼女もまたあたし達を追い出した大人と同じように醜悪な存在にしか見えず、信用することが出来なかった。恐怖に怯え、拒絶するあたし達に対し彼女は反撃もせずその身で受け止め、自らも感染者だということを明かして親身になろうとしていた。

 

そんな彼女の態度にあたし達は徐々に警戒を解いていき、自身に起きた境遇を話した。彼女はそれを聞いた後、無言であたし達を抱き抱えた。その抱擁は両親のように優しく、暖かな感触だったのを覚えている。あたし達は感極まって堪らず彼女の腕の中で思う存分に泣いた。胸の内に秘めた辛い出来事を吐き出すように。

 

 

 

 

 

 それからあたし達はマドロックさんの傭兵団と共に行動することにした。もちろんおんぶにだっこという関係ではなく、雑用や戦闘など、出来ることは何でもやった。ただし戦闘面に関しては、残念なことにあたしはアーツに素質に恵まれず、逆に姉さんの方はアーツの才能があった。そのため戦闘では何も出来ない悔しさがあったけど、それでもあたしは持ち前の記憶力を活かし、他のことでサポートするなどして、足りない所を補う形で傭兵団に貢献した。

 

 それに傭兵団の人達はみんな優しい人たちだ。傭兵団を構成しているのは殆どサルカズの人達だったので、最初はその見た目から話しかけることすらも怖かった。けど、実際に話してみると気の良い人達ばかりで、あたし達のような子供にも親のように優しく接してくれた。彼らの優しさに触れたからこそ、あたしと姉さんは拾ってくれたこの人達の為に、出来ることを一生懸命頑張っていった。

 

 

 

 

 

 こうして新たな生活を踏み出して行ったあたし達だったが、またしても運命はあたし達を地獄へと叩き落としてくる。

 

 傭兵団と共に行動していたある日、野営中に敵に奇襲された。幸いすぐさま気づいたマドロックさんがアーツを発動させ、土の巨人を形成し迎撃しようとした矢先、異変が起きた。形成中の巨人が突然崩れ始め、ただの土塊へと戻ってしまった。更に他の人がアーツを発動しようとしても何故か発動出来ず、その隙を突かれて敵が攻め込んできた。敵はどうやらアーツを封じる手段を用いて襲ってきたらしい。

 

 それでもマドロックさん達は百戦錬磨として恐れられるサルカズの傭兵団。不意打ちにも関わらず、すぐさま前衛や重装兵が前に出て態勢を立て直し、足でまといになった術士を下がらせながら迎撃を開始した。あたしも姉さんも、後ろに下がりながら物資を投げ渡すなど後方支援に努めた。

 

 先頭は膠着状態になっているが、このままならいける。そう思ったその時、敵の狙撃手が守りの甘い場所に突然現れ、姉さんに狙いを定めて矢を放とうとした。

 

 それに気づいたあたしは咄嗟に姉さんを突き飛ばす。それと同時に背中に激痛が走る。奴の放った矢に撃たれたのだと理解するのはそう遅くなかった。

 

 撃たれたあたしに心配しながら駆け寄ろうとする姉さんとマドロックさんと、傭兵さん達。するとあたしの体に、突如異変が起き始めた。矢を受けた個所から源石の結晶が次々と身体の表面から飛び出し、全身を覆っていく。同時に全身が千切られそうな痛みがあたしに襲い、絶叫を上げる。姉さんとマドロックさん、傭兵さん達はこの現象に驚愕し、そしてあたしを見た敵は上手くいったと言わんばかりに盛大な声で嘲笑う。

 

 奴が言うには、先程の矢には鉱石病の症状進行を無理矢理速める薬品が仕込まれていた。奴らは依頼主からの試供品として受け取り、感染者の捕獲と共に実験として今回作戦で用いることを依頼されていた。それを用いて足手まといとなった術師を狙おうと、その矛先が姉さんに向かった。

 

 

 

 

 

 彼らの話を聞いた後、マドロックさんがすぐさま彼らを打ちのめそうとした時、敵は待ったをかける。敵は鉱石病の進行を一時的に止める薬を持っているらしく、降伏すればあたしに薬を打ってやろうと話を持ちかけた。そしてその薬は使い方が複雑で、自分らじゃないとうまく作用しないと言い放った。

 

 あからさまな罠だと思ったあたしはその話に乗っては駄目だと、痛みに堪えながらマドロックさんに叫んだ。あたしの言うことを聞いた姉さんは当然反対した。だけどあたしを心配する姉さんには悪いけど、何のとりえも無いあたしがみんなの足を引っ張りたくなかった。せめてあたしの命でみんなが生き残ってくれれば良かった。

 

 

 けれどマドロックさんはこれ以上仲間に手を出さないことを条件に降伏を選んだ。彼女の判断に傭兵さん達も従い、降伏することにした。敵はその条件を飲みながら、あたし達を連行していった。

 

 

 どうしてあたしなんかのために……と、あたしは彼女に問いかけた。すると彼女は──、

 

 

「君みたいな子供を犠牲にしてまで、私達は生き延びたいわけじゃない……。これは戦士として、君達姉妹を守れなかった私達の落ち度だ、本当にすまない……」

 

 

 彼女が謝ることなんてなかった。ただ自分が彼女や姉さん、みんなにこんな選択を選ばせた自分に悔しさしか込み上げて来なかった。こうしてあたしはみんなの降伏を引き換えに抑制剤を打たれた。しかし、症状の進行速度が予想よりも速く、たとえ抑制剤を打ってもあたしの命はもう助からないことを敵に嘲笑された。反抗したくても抑制剤のせいで足元を見られ、マドロックさん達は手も足も出せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから彼らに連行され日が進む中、あたしの身体は源石に侵食されていき、目も見え辛くなっていった。姉さんはあたしの傍にいて「ごめんなさい…、ごめんなさいなのです……」と自身に言い聞かせるように、嗚咽の混じった声で謝罪の言葉を呟いていた。

 

 マドロックさんは奴らに難癖をつけられ、見せしめとして奴らの憂さ晴らしを兼ねた拷問を受けていた。それでも奴らに屈さず、ぼやけた視界で映る傷だらけな体を気にせず、あたし達を安心させようと懸命に励ましていた。

 

 

 

 

 

 だけど鉱石病の進行は止まらず、ついに鉱石病はあたしの五感をも奪っていくようになった。それはさしずめ、暗い暗い闇の中へと身体が沈んでいくような感覚だ。

 

 この感覚になってからもうどれくらい時間がたったのだろう。何も見えず、何も聞こえないため周りがどんな状況なのかが分からない。抗おうにも源石によって身動きも取れず、声も出せない。

 

 

 ……あたしはこのまま死ぬのだろうか? みんなの足を引っ張っておきながら、挽回するチャンスにも恵まれず、おめおめといなくなることしかできないのか。

 

 あぁでも、もしあたしがいなくなれば、みんなあたしというお荷物を気にせず、あいつらを打ちのめしてくれるのかな……? だったらあたしはすぐに、ここからいなくなった方が──―。

 

 

『あっ、おぃ、待てぃ(江戸っ子)。何勝手に消えようとしてんだゾ』

 

「!!?」

 

 

 暗闇しかないこの世界にどこからか声が聞こえることにあたしは驚きが隠せない。どういうこと? 一体何が…? それにあなたは誰? 姉さんでも、マドロックさんや傭兵さんでもない、何者なの? 

 

 

『あー、自己紹介したいところなんだが、そっちが消えかけそうになっててまずいから後でいいか? 一応君を救うって、君のお姉さんに頼まれているんだ』

 

 

 姉さんが……? でも、わたしの体はもうどうしようもなくなって、このまま生きれたとしても……。

 

 

『大丈夫だって安心しろよ~。ちょっと君の源石を俺がワッーっと同化して、んでパパパッと消して、オワリッていう感じにするだけで、君には一切害は無いから。ヘーキヘーキ、ヘーキだから』

 

 

 ……なんだか説明があやふやで怪しそうに感じる。でも言葉から不思議と悪意は感じ取れない。

 

 

『んで、さっき消えたいって言葉が君から聞こえたけどさ、それはなんでだゾ? 君の姉さんやマドちゃんとか、周りの人は君が生きて欲しいって願っているゾ』

 

 

 だって……、あたしは姉さんに比べて役に立てずに、それどころかみんなの足を引っ張って……。

 

 

『いや子供がそんなこと気にしてどうすんの? 子供は大人に迷惑かけて当然なんだよなぁ?』

 

 

 …………………………。

 

 

『……俺も昔、育ての親に迷惑かけたことがあってな』

 

 

 ……えっ? 

 

 

『子供の頃、本当の両親が事故で失って、両親の親友に引き取られたんだよ。それなのに俺は両親のいない寂しさから彼らに八つ当たりして、傷付けてばっかだった。自身のことを思ってくれる人が傍にいるって気づかずにな』

 

『それでもその人達は俺を見捨てずに育ててくれた。ふと気になって、血の繋がった親子なわけでもないのに、どうしてそこまでして俺を育ててくれたのか聞いてみるとこう言ったんだよ』 

 

 

『「君の両親からの頼みという理由ももちろんあるが、僕達も幼い頃親を失ったことがあるんだ。それが君の姿が自分達に重なって見えて、とても他人には見えなかったんだ」ってさ。おじさんも昔両親を失って、妹さんと一緒に親無し子だったんだよ。その時彼らを励まして、支えになってくれたのが、うちの両親だったみたい。その時におじさんは両親に迷惑をかけていたけど、両親は笑って許していたんだとさ。その話を聞いて、自分が今までしてきた八つ当たりが何か虚しさが残ったんだ。自分が感じた辛い悲しみを持ってるのは自分だけじゃないと。それなのにそんな人の世話になっている身で我儘言う自分がさ、ちっぽけに見えてきたんだ』

 

 

………………………………………。

 

 

『 それに比べて君は凄いよ』

 

 

 ……凄い? 

 

 

『……先に謝っておくけど、少しばかり君の記憶を覗いちまった。君を助けるために同化という能力を用いているんだけど、今回みたいにより深く同化しなければならないことになると、副作用としてなのか知らんけど、どうしても他人の記憶が頭の中に流れ込んでくるんだよ』

 

 

 はぁ……。

 

 

『それで、話を戻すけども。君はその年齢で両親を失った悲しみにも負けずに、誰かのために頑張ろうと努力している。少なくても当時の俺が君と同じように行動を移せるとは思えないくらいにはね。君の周りにいる人達は、そんな君を迷惑だとは思ってないと俺は思うよ』

 

 

 そんなの……、本当にそう思っているかどうかなんて……。

 

 

『あまり大っぴらに言うことじゃないんだが、俺は他人の心、感情をある程度読めるんだ』

 

 

 心を、読む……? 

 

 

『全て完璧に読めるわけじゃないけどな。それで記憶の中で彼らの心を読んだけど、彼らの心からは慈愛と不甲斐無さの感情しかなかった』

 

 

 慈愛と、不甲斐無さ……? 

 

 

『要するに彼らは君と、君のお姉さんに家族のような愛情を向けているのと、君達みたいな子供に自分達の戦いに巻き込ませてしまった罪悪感が見えたんだ』

 

 

 待って、あたしと姉さんは巻き込まれたなんて思っていない。理不尽に虐げられ続けて、どこにも行き場の無いこの命を、あの時救ってくれた彼らに恩返しをしたいがために使いたいと選んだの! それなのにどうして彼らがそんな思いをしないといけないの! 

 

 

『悲しいけど君がそう思っても、彼らはそう思ってない。たとえ君が彼らにそう思っていることを伝えたとしてもね。それに、子供が戦うことに違和感を感じないなんて余程狂ってるか、まともな倫理感を持ち合わせていない限り、そう思わないよ。少なからずこの世界に生きる人にも子供が戦う事態があっても、それを違和感に感じる感性があって助かったよ。もしそれが無かったらこの世界はとんだディストピアだゾ……。(源石や天災、鉱石病で既に片足一歩踏み出してるとか言ってはいけない)』

 

 

 じゃああたしは……、どうすればいいの……? 

 

 

『だからこそいなくなるなんてそんなことしちゃあ…、ダメだろ!』

 

 

 えっ……? 

 

 

『彼らは君を救うためにあのファッ○ンDQN共に投降したんだ。その甲斐もあって成り行きで俺と出会い、まだチャンスがあると信じて彼らは俺に君を救うのを託した。それなのに君がいなくなったら、彼らのやったことが全部無駄になるんだゾ』

 

 

 それは……理解できるよ。けど、あたしは生きても良いの? 

 

 

『生きてて良いにきまってるんだよなぁ?何で生きてちゃいけない必要があるんですか?(正論)

 

それに今の君からは自責、後悔の念を抱いているのが強く伝わってくる。そういう感情ってのは生きてるうちじゃないと払拭できないもんなんだ。それなのに消えたいなんて、後悔しかない君の口からそんなこと言うのは、嘘っぱちにしか聞こえないゾ』

 

 

 後悔を、払拭する……。

 

 

『……こんなこと言ってなんだが、一応問うゾ。君はどうしたいんだ? 彼女の約束を反故するような結果になりかねないが、出来る限り君の意思に尊重しようと俺は思っている。いなくなりたいなら俺は止めはしない。それが君の納得できる選択なら、な…』

 

 

 あたしは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──―分かった、その選択に尊重するよ。だから後のことは俺に任せとけ。それじゃあ、おやすみ…』

 

 

 その言葉が聞こえると共に意識が遠くなるのを感じる。けどそれは不思議と恐怖は無く、むしろ安らぎを感じられる。

 

 

 あたしは再び目覚めるために、闇の中で眠りに着くのであった。

 

 

 

 

 




重めのストーリーって書くのムズイな。作者は基本頭ハッピーセットなので報われるハッピーエンドな話を書きたいです(書けるとは言ってない)。でも重めのストーリーも書けるようにしたい。


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第14話 深謀 ~ばけのかわ~

年収めなので二連投稿です。

そういや今回の新衣装で基地内の安心院さんを観察してると、魔女の宅急便してて草生えたw。ああいうモーションを眺めるのは結構好きっすよ。もっと増やして?増えろ(豹変)


『 ファイトォ……、イッパ―ツ!!!』

 

 

 リポビタンな叫びと共に巨大な緑色の結晶が砕け散る。そして砕けた結晶から現れた少女の姿は源石に侵食され、異形のようなおぞましい姿では無く、少女本来の愛らしさへと取り戻していった。

 

 しかしこうして見てみると、やはり姉妹なのか、フギンちゃんとよく似ているな。精々違う箇所を挙げるなら、髪の色で姉が青が少しばかり混じった黒色で、妹であるこの子は姉とは反対に赤が混じった黒色の髪をもっている。

 

 周りを見てみるとフギンちゃんといい、角の男達といい、まるで奇跡を見たと言わんばかりな表情で、目を丸くしながらこちらを見ている。中には小声で「嘘だろ……」、「本当に治しちまったのか……!?」と呟いてるのが聞こえるけど。

 

 まぁこの反応は当然と言っちゃ当然か。何しろ不治の病を治るのを目の当たりにしたんだから、驚くなと言う方が無理がある。

 

 

 

 

 ……それにしても、ぬわあああああん疲れたもおおおおおおおん!!! 

 

 ⦅(o´Д`)⦆

 

 

 

 どうにか同化(ちりょう)は無事に終えたけど、彼女の身体の大部分が源石と融合していて、源石だけを同化するのに神経使うはめになったゾ。おまけに彼女の意識が消えかけてたから、クロッシングで直接呼びかけたりして繋ぎ止めることもしたし、こんなに疲れるとやめたくなりますよ同化~。

 

 

「あ、あの!!」

 

 

 おっ、どしたのフギンちゃん。ちゃんと妹さんは助けたから安心していいゾ。もしかしてなんか異常でもあったか? 

 

 

「い、いえ、妹の容態に異常はないのです。それよりも……」

 

 

 そう言って彼女はがばっと勢いよくお辞儀をする。

 

 

「妹を助けてくれて、本当に……、本当にありがとうございました!!」

 

 

 それは良かった。無事に助けられてなによ──

 

 

 

 ビリッ!! 

 

 

 

「「「「!!?」」」」

 

 

 ん? なんか変な音がしたな? というか皆そんなに驚いてどうし…………あっ(察し)

 

 彼らの視線につられて自身の右腕を見ると、肩に巨大な源石が身にまとった外套を突き破って姿を現している。そして右腕全体を見ると、所々に源石が散らばって生え出していた。どうやら源石を完全に取り込めずにこうして出てきてしまったようだ。

 

 まぁノヴァちゃんの時よりも深刻な症状だったからこうなるのは予想してたが、右肩だけという結果に済んだのは意外だった。旅で鍛えられたり、源石を適度に同化して耐性が付いたからかね? それでも今回のように活性化してるやつは毒みたいにこちらの体を蝕んでくるけど、こんなの誤差だよ、誤差! 

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

 あ、やっべ。こっちはどうということは無いと分かってるけど、他の人から見れば異常事態に見えるよなこれ。その証拠にフギンちゃんの顔は青ざめてるわ、マドちゃんの仲間である男達もマスクで顔は見えないけど焦燥とした雰囲気を醸し出してるわで空気があーもう滅茶苦茶だよ。とりま落ち着かせないと。

 

 

 ……あー、コホン。右腕こんなことになってるけど気にするな。しばらくすればこいつも同化して消えっから。あれだよ、食べた時まだ食い物が胃の中に残っている感じだから、いずれ消えるゾ。

 

 

「で、でも……そんな……。妹のために腕を……」

 

 

 ホラホラ、そんな悲しそうな顔をしないで、妹が助かったことに喜ばないと。右腕一本で命を助けられたんだ、こんな湿っぽい空気になってると助けた甲斐が薄れちまうから、な? 

 

 

「おいおい、簡単に言ってるけどよ……。お前自身にも何かしらの代償があるはずだろ? 辛くないのか?」

 

 

 まぁ確かに痛みはあるし体を蝕まれていく感覚はあるけどさ、命には代えられないでしょ? 別に自分の命を粗末にしてるわけじゃないが、これくらいで命を救えるなら安いもんだよ。

 

 それに俺がTDN人間だったら、仮に同化能力が使えたとしても躊躇していたかもしれない。俺だって命は惜しいし。だけどフェストゥムとして存在()るおかげで誰も失わず、一時的な痛みを俺が負うだけで済む結果になったんだ。そこらへんはフェストゥムになってしまったことに感謝しているゾ。

 

 

「……ハッ、まさかサルカズ以上にイかれた奴に出会うとはな。見た目は怪物なのに中身は人間臭ぇ。それに自らの命をも顧みず誰かを救うとか、お人好しにもほどがある。どっかの聖人君子か、天使や神様気取りか?」

 

 

 悪いけど全てを救えるなんて思い上がった考えは無いし、全知全能として祭り上げられる程の存在じゃないよ。ただ自分が守りたいものを守ろうとするだけのTDNフェストゥム(人間)だ。逆にこっちも言わせれば、君らも見た目は悪魔のような風貌をしてるのにこちらの心配をするとか、随分ユーモアな人情があるじゃないか。 

 

 

「なんだ? 俺達が魔族らしく恐ろしくなくて拍子抜けしたか?」

 

 

 いんや、むしろ道理が分かる相手で安心したよ。そういう奴とは敵対したくないと思うし、俺としては君らと戦いたくないな。

 

 

「違いねぇ。こっちはアンタが恐ろしい程の力を持っているのもあるが、それ以上に恨みの無い恩人に刃を向ける程、俺達も性根が腐っちゃいねぇんだ。ま、アンタみたいな優しい奴が下手に余所の恨みを買うような真似はしなさそうだけどな」

 

 

 ──と、こんな感じでフギンちゃん、俺の方に関してあまり気にするな。今はただ、家族に寄り添ってやれ。そうしてくれた方が俺に対する罪悪感の対価になるから。

 

 ⦅( ・ω・)b⦆

 

 

「……っ! はいっ!」

 

 

 そういや今気づいたんだが、何か人少なくね? マドちゃんとか何処に行ったの? 

 

 

「ああ、隊長はこっちに来る敵の迎撃しに行ったぞ。アンタの邪魔をさせないようにするためにな」

 

 

 これマジ? 同化(ちりょう)に集中している間にそんな大事になっていたのか……。じゃあ俺達もすぐに援軍として向かわないと……(使命感)。

 

 

「まぁ待て、俺達も傭兵としての意地があるんだ。あの時はお嬢ちゃんの命を盾にされて降伏せざるを得なかったが、あの程度の連中ならすぐに片がt「遅れてすまない、今戻った」──―なっ?」

 

 

 マジで戻って来たよ(困惑)、ちょっと早かったんとちゃう? いやそれはともかく、彼らを出迎えるとしよう、か……? 

 

 彼らの声が聞こえた俺は入り口の方へと振り向くと、視界に捉えた人物を見て絶句せざるを得なかった。

 

 

 

 

 なんせそこには、宇宙服のような重装備を纏った人物が先頭に立ち、仲間を引き連れてこちらへと向かってきたからだ。

 

 ……え? ちょっと待って? 先頭にいるあれ……、もしかしてマドちゃんなの? 

 

 

「あぁ、そういやお前は普段の隊長の姿を見ていないんだよな。隊長はいつもあの重装備を着ているんだよ」

 

 

ウッソだろお前www。

 

 にしてもはぇ~、すっごい変わり様……。初見だったら想像出来んわこんなの。

 

 

「……そんな物珍しげに見ないでくれ……。ここに捕まった時は無理矢理剥ぎ取られて、あの姿でいるしかなかった……(′・ω・`)」

 

 

 

 

 

 

ヌッ! (絶命)

 

 

 

 見た目はゴツイのに、中に可愛いおにゃのこがいるという事実でこうも尊く見えるとは……。これがギャップ萌えというやつですか? 

 

 

 

 まぁ茶番もこれくらいにして、そちらは大丈夫か? 怪我してる人がいれば治療すっけど。

 

 

「問題ない。あの拷問室で敵の主力が君によって封殺され、残りは大した力を持たない雑兵のみだった……。無事にここを制圧することが出来たのも、君のおかげだ」

 

 

 そういやあの部屋で周りの部下っぽい奴らが親分と呼んでる奴もいたな。ということは敵にとって主力のあいつらが俺によって殲滅されたことで、この戦況はもはや勝ち確同然だったのか。

 

 

「それよりも、君のそれは……。一体何があった?」

 

 

 そう言ってマドちゃんが震えた声で俺の右肩に指を指す。そういや制圧しに行ってたから、さっき起きたことは知らないよな。とりあえず簡単に説明すると──―、

 

 

 

 

 

 

(|フタエノキワミ、アッー!《フェストゥム自身の体質と鉱石病に関して説明中》)

 

 

 

 

 

 

 ──ということなんだが、おけ? 

 

 

「……事情は把握はしたが、すまない。まさかそんなことになるとは思っていなかった……」

 

 

 まぁ俺もそこんところ詳しく言ってなかったし、そっちが気に病むことじゃないよ。だからどんよりした空気は終わりっ! 閉廷! 以上! 皆解散! それよりもこ↑こ↓に関して何か手掛かりは掴めたの? 

 

 

「それならついて来てくれ……、見せたいものがある。ただ……」

 

 

 ただ……? 

 

 

「…………とても気持ちの良い内容ではない。特に感染者にとっては……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マドちゃんに連れられて俺は彼女の部下数人と共に艦内の探索がてらにとある部屋へと向かう。そこはこの輸送艦の艦長室、あの親分の部屋らしく、机の上に何らかの資料が散らばっていた。マドちゃんから手渡された資料を受け取り、内容を読む。そこには先程言ってた彼女の言葉通り……、いや、それ以上に吐き気を催す邪悪と言っていい内容が書き綴られていた。

 

 

 

 奴らの依頼人であるこのリターニア貴族はアーツを制御する道具であるアーツロッドを、感染者を媒体にして用いる研究をしていることが発覚した。この手の研究は禁忌と言ってもいい代物であり、普通なら調べるだけでも逮捕される案件だ。だがこの貴族はそれを悟られないように上手く隠蔽し、他者よりも権力を得ようと己が力を強大にするために、このタブーに手を付けた。表向きは感染者に寛容な政策を提案する貴族として知られているが、其の実態は自分の利益のために何も知らない感染者を利用し、喰い潰す外道というわけだ。これは奇妙な冒険に出てくるジッパーな兄貴がブチギレ不可避ですわ。

 

 

 しかもこいつ、今回マドちゃんの部隊を狙った理由もとんだくそったれな理由だった。なんと複数の感染者を使って天災を自発的に起こそうとする実験を試みようとしていたらしく、マドちゃん曰く彼女達の種族であるサルカズは鉱石病に罹りやすいが、その代わりアーツ適性が強力な者が多い。媒体としてはこれ以上に無い種族であり、おそらくこいつはそこに目を着けたのだろう。

 

 それにしてもこんな奴らからよくこんな重大な情報を得られたな、ちょっと情報セキュリティがガバなんちゃう? まぁ資料をよく見るとあいつらこの貴族から今まで数々の依頼をこなしていたらしいし、その高い実力から絶対に失敗はせず、情報を漏らさないだろうという傲慢(じしん)があったんだろう。さらに高い餌であいつらを口止めしてたんだろうな、書いてある報酬が馬鹿みたいに高ぇもん。

 

 

 

 推測だが、こんな研究がこいつ以外に誰かがやってないことなんてあるわけない。協力者や他の勢力とかでこの手の輩はまだいるのだろうが、今はこいつ以外の手がかりが無いため、誰が同じ穴の狢なのかは分からない。だがどちらにしろこのまま放っておくわけにはいかなくなったな。

 

 

「セツ……、少しいいか?」

 

 

 ん? どうしたのマドちゃん。資料は粗方読み終えたけど、なんかあった? 

 

 

「……君には返そうにも返しきれない程の恩をもらった。本当に感謝する、……ありがとう」

 

 

 お、おう。そんな改まらなくても……。なんかむず痒いゾ。

 

 

「それなのに私は、恩を返しきれていないのに再び君の力を頼らないといけない。申し訳ないが一つ頼みを聞いてくれないだろうか……」

 

 

 おっ、なんぞ? 可愛いおにゃのこの頼みだ、俺に出来ることなら何でもするからな~。

 

 

「ありがとう……。頼みというのは他でもない、あの姉妹を何処か安全な場所へと、連れて行って欲しい」

 

 

 ほいほ…………えっ? なんつった? 

 

 

「あの子達を、安全な場所へと連れて行ってほしいんだ。今回のことにあの子達を、そして本来なら関係無い君をこの諍いに巻き込みたくない。それが私達の望みだ」

 

 

 いやいや、ちょっと言ってる意味が分からん。君らはどうすんだよ。

 

 

「私達はこの外道らに鉄槌を下しに向かう。平穏に暮らしたいと願って、希望を求めてやってきた感染者の思いを奴らは踏みにじった。これは到底許せるべきことではない」

 

 

 だったら俺も手伝いに……「それは駄目なんだっ!」ファッ?! 

 

 

「……すまない、声を荒げて。だが君の存在を奴らに知られてはいけない。この短い時間で君は優しい心を持ち、この世界で最も異質な存在だと私は理解した。そんな君をもし奴らに知られたとすれば、奴らは君を付け狙うために手段は選ばないだろう。それは君に平穏の無い日々しか来ないだろう。私は恩人に、そのような目にあって欲しくない」

 

 

 

 

 …………………………。

 

 

 

 

「まぁなんだ、隊長の気持ちを分かってくれないか? 俺も隊長も、お前のことを結構気に入ってるんだ。だからこそ、こんな争いに関わって欲しくねぇ」

 

「それに悪名なら俺達サルカズにとって誉れみたいなもんで、思う存分暴れることしか出来無い馬鹿にはお似合いな称号だ。だがお前やあのガキンチョ達はもっと他のことが出来る。だからn『馬鹿野郎お前俺は認めんぞお前!』あん!?」

 

 

 

 

 全くこっちの事情も考えずにべらべらと言いやがってよ~、何勝手に突っ走ろうとしてんだゾ。(糞貴族ぶちのめすのに)俺も仲間に入れてくれよ~(マジキチスマイル)。

 

 

「さっき言ったことが分からないのか……? そんなことすれば……」

 

 

 生憎こっちは(この見た目と異質さからして)どうあがいたって世界に追われる身になるのは遅かれ早かれ確定事項なんだよぉ! それが早まった位でなんぼのもんじゃい! 

 

 

「それでもよ……、お前はまだ巻き込まれずに済むんだぜ。それなのに守れるはずの平穏を自分から捨てるのか?」

 

 

 そんなまやかしな平穏は投げ捨てるものだって古事記にも書いてある。真の平穏は勝ち取って得るものなんだよ! 

 

 それにこの外道に腹が立ってるのは何もお前らだけじゃないんだぜ。俺(とアルタ)や、おそらくあの姉妹も同様だ。確かにお前達が俺らを心配してあんなこと言ったのは分かるけど、俺もこいつに怒りを感じている今、尻尾を巻いて逃げるなんざできないってことだ。

 

 ⦅ヽ(`Д´)ノ⦆

 

 

 ……そして俺がいた世界にはこんな名言がある。

 

 

「「「……?」」」

 

 

 

 

 

 

やられたらやり返す、倍返しだ! (HNZW並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……とな。そんなわけでその頼みは引き受けんぞ、異論は認めん。

 

 

「………………(唖然)」

 

「うくく……。隊長、どうします? こいつはとんだ気持ちの良いバカですわ。一応アンタの方針に従いますけど、俺としては一緒に戦ってもらう方がいい気がしますぜ」

 

「…………はぁ、仕方無い。実力に関しては私も認める程だ。味方ならこれ以上無い頼もしい存在だというのは、分かっている」

 

 

 おっおっお、決まったかお? 

 

 

「あぁ、感染者のために、すまないが再び私達に力を貸してくれないか、セツ?」

 

 

 

 

 かしこまりっ! "無の申し子"とMNSR兄貴にそう呼ばれたフェストゥムの実力、見たけりゃ見せてやるよ(迫真)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、せっくんとマドロックが艦内の探索に向かっている頃──。

 

「う、うう…………、あたし……」

 

「おっ、目を覚ましたぞ! 嬢ちゃん、妹さんが起きたぞ!」

 

「っ! ムニン!!」

 

「うわ!? ね、姉さん!?」

 

 

 目を覚ましたムニンに気づき、姉であるフギンが涙で顔をくしゃくしゃにしながら勢い良く彼女に向かって飛び込む。ムニンは腹から来る衝撃と共に、体を強く抱きしめられる圧迫感を感じながら驚いていた。

 

 

「本当に……、本当に良かったのです!」

 

「姉さん…………」

 

「辛い思いさせてごめんなのです……。あの時私を庇わなければ貴女はこんなことには……」

 

「……ううん、姉さんは何も悪くない。むしろ謝るのはあたしの方だ」

 

「ムニン……?」

 

 

 実の妹である彼女のの口からぽつりぽつりと言葉が紡ぎ出される。

 

「あたし……、本当はあのまま死のうと思っていた。そうすれば足枷となってる自分が無くなって、みんなが奴らに反撃できると思って……」

 

「ムニン…………」

 

「でもあたし、死にたくなかった。みんなの足を引っ張って、何も出来ずに死ぬのが怖かった。たとえ役に立てなかったとしても……「バカ―ッ!!」うわっ!?」

 

 妹の独白に姉である彼女が大声で叫ぶ。それは妹である彼女でも見たことない位な剣幕だった。

 

 

「バカバカバカ! ムニンのバカ! お姉ちゃんはムニンにそんなことを言って欲しくないし、一度もお荷物だと思っていないです! こうして帰ってきてくれただけで、お姉ちゃんはうれしいのです!」

 

 

 彼女の叫びを耳に傾けながら、肩に水滴のようなものが零れ落ちているとムニンは気づく。彼女は本心で心配しているのだと。そして周りにいるサルカズの男達も彼女の言葉に同意するかのようにうなずく。

 

「それにムニンは昔から努力家なのです。いつも傭兵団の皆さんのために一生懸命働いてるのに、足手まといなんて言わないのです」

 

「まぁお嬢ちゃんの言う通り、お前さんは少し過小評価過ぎるんだよ」

 

「スモーキーさん……」

 

 姉の言葉に続いてサルカズの傭兵であるスモーキーがムニンに対しての意見を述べる。

 

「確かにお前さんはお嬢ちゃんに比べてアーツの才能には恵まれなかった。けどお前はそれでもいじけず、出来ることを探そうと知識と技術を上手く組み合わせて他の方面で力になれるよう努力しているじゃねぇか。そのおかげで助かったこともあったんだぜ」

 

「そうそう、嬢ちゃんが来たおかげで普段食ってる食べ物も、調理の仕方でよりマシな味になって来て、食事が嫌じゃなくなったんだよな」

 

「それ以外にも色々とそつなくこなせて……。悪く言えば器用貧乏だけど、俺達からすれば器用万能で代えの効かない大切な仲間なんだよ」

 

 

 スモーキーの意見と共に仲間のサルカズが次々に口を開き、彼女に対する評価と感謝を言葉に表す。それらを聞いたムニンは目に熱がこもるのを感じ、視界が溢れる涙で歪んでいくのを目にする。

 

 

「……とまぁ、誰もお嬢ちゃんが消えて欲しいと思ってる奴なんざここにはいねぇよ。むしろこれからもよろしく頼みたい方だと思っている」

 

「ムニン、これでもあなたは自分を役立たずだって言うのです?」

 

「あたしは……」

 

 ムニンは考える。自分を役立たずだと思ったのも姉に対する小さな嫉妬で生まれ、彼らの本心を聞こうとしなかった自分が原因じゃなかったのかと。嫉妬に駆られながらも、本当は唯一の家族である姉のことが好きで、あの時命がけで彼女を守った。でもその結果、もしあの声の助けが無ければこうして本心で姉と傭兵のみんなと話す機会が得らないまま死んでいったのかもしれない。

 

 ふと彼女は気づく。自分を助けてくれたあの声の主は何処なのかと。

 

「姉さんあたしね、声が聞こえたの。あたしのことを助けるって言って励まそうとした声が」

 

「もしかして……セツさんのことですか?」

 

「セツって言うの? あたし、その人にお礼が言いたい。何処に居るの?」

 

「あいつは今隊長と共にこの艦の探索に出てってる。だがもうそろそろ戻ってくる『今戻ったゾ~』……おっと、噂をすればなんとやらってか?」

 

 入り口から聞こえる声と共にムニンは入り口の方へ視線を向ける。そこにはマドロックとここにはいなかった傭兵の人達、そして──。

 

『ん? おおっ、目が覚めたのか。おいっす~☆(PKRN並感)調子どう?』

 

「あなたが……、セツさん……?」

 

『おうそうだゾ。そういやあの時自己紹介してなかったな』

 

 カラカラと笑いながら気さくな雰囲気で話しかける人外の存在が彼女の目に映った。その姿は上半身は人の形を取っているが、下半身は蛇のような胴体を持っていた。大きさは私はおろか、マドロックを含める大人達よりも一回り以上ある巨体を持ち、ボロボロな外套の隙間から金色の体色がちらりと覗かせる。

 

 でも先ほどの声はあの時会話した時と同じ声であり、あの時自分に話しかけてきたのは彼だと。

 

『では改めて……、(」・ω・)オッス、オラせっくん、何の変哲もないフェストゥムだゾ。よろしくな!』

 

「よ、よろしく……?」

 

 何というか見た面に反してフレンドリーな存在だとムニンは思った。お互い挨拶した後、ムニンが彼の肩にある巨大な源石結晶に気づき、問い始めた。

 

「あの、セツさん? その結晶は……?」

 

『ああこれか? 名誉の負傷ってやつだ。気にしなくていいよ』

 

 何ともないとあっけらかんに言ってのける彼に対し、姉のフギンが浮かない顔でムニンにあの源石に関してのことを耳打ちする。源石発生の一部始終を聞いたムニンは心配のあまり、どうしてそんなことを早く言わないのかと彼に強く怒鳴った。

 

 

『まぁまぁ、腕一本で命を救えるという最良の結果になったんだからそうカリカリしないで。それにしばらくすればこれも消えっから、安心して、どうぞ』

 

 

 彼女の剣幕に対しどこ吹く風と言わんばかりなせっくんの対応にムニンはいら立ちを募らせる。彼の能力上、あの源石は彼の命を脅かすものではないと、彼と姉の説明で把握はしたが、それでも命がけの行動をしていたという事実を本人が話さないのは何処か納得いかなかった。もし自分のせいで死んだら自分はどう詫びればいいのか分からないからだ。

 

『まぁこの辺お話は長くなるから一旦置いといて、二人には少し重要なことを話すよ』

 

 

 明るい声色から一変して真剣身を帯びた雰囲気で姉妹に語りかけてくる。何の前触れもなく変わった雰囲気に二人は身を引き締めようと体を強張らせる。

 

 そしてのっぺら顔の彼から言葉が放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これから大きな事件に巻き込まれる。今なら君ら二人は安全な場所に逃がすこともできるし、苦しい戦いに飛び込むのどちらかを選ぶことが出来る』

 

 

 

 

 

 

『選んでくれ、君らの意思をできる限り尊重したい』

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 糞貴族の企みを叩き潰すために敵の本拠地へと乗り込むせっくんとマドロック小隊達。

 

 

『心配するな、私にいい考えがある(キリッ)』

 

 

 せっくんが某有名な司令官のフラグ発言を出しながらも作戦を練り、彼らは強襲を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中、マドロック小隊(百戦錬磨のサルカズ部隊)せっくん(無の申し子)。現場には殺戮と狂乱が巻き起こらないはずがなく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第15話、災害 ~だんざい~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コン○イ指令のあの名言、実はほとんど成功フラグだってよ(どうでもいい豆知識)。


これで今年は終わりですゾ。それではみなさん、よいお年を~(・ω・)ノシ


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第15話 災害 ~だんざい~①

あけおめです(半月過ぎての新年あいさつ)。相変わらず遅いのは、ユルシテ…ユルシテ…。

一周年終わったと思ったら今度は復刻燃ゆる心さんとか、たまげたなぁ…。しかもしっぽ姉貴の水着が来るとかお財布壊れちゃぁ^~ぅ。来世はしっぽ姉貴の水着コーデにいる不動遊星(カニ)になりたいです…。


 満月が輝く闇夜、リターニアの人里から離れごつごつとした岩が広がる荒野。

 

 

 そこにせわしなく動く人の姿と声や作業音によるざわめきが生まれていた。荒野にはいくつかの車両が止められており、車両から何か重々しい機械が人の手によって運び出され、設置されていた。荒野で作業をしている人たちが行き交う中で、他の人達とは一際身なりの良い太った男が執事のような男に対し怒号を上げていた。

 

 

「……おい、今回の実験に使う感染者(ざいりょう)はまだ届かぬのか!!?」

 

「それが旦那様、捕獲に成功した報告が来てからこの三日間、連絡がさっぱりと……」

 

「チッ、あのゴロツキ共め。何処をほっつき歩いているのだ! 何としても実験のために捕獲しなければならないから支援してやったと言うのに……」

 

 

 彼に仕えている執事の発言が気に障ったのか、貴金属や高級な礼服を身に纏った中年程の貴族の男、もといデブ貴族が癇癪を起こす。その体にはでっぷりと肥えた贅肉を腹と顎に蓄えられ、まるで醜い豚のように肥えていた。怒りのあまり体中についている脂肪をプルプルと震わせながら激昂するその姿に、執事は「またか……」と言いたげな目で呆れてうんざりしていた。彼にとってこのようなことは日常茶飯事なのだろう。

 

 ここはデブ貴族が自身のアーツ実験のために拵えた野外研究場だ。建物はせいぜいプレハブ小屋のようなものしかないがこれには理由があり、もし建物とかで実験をする際にアーツで内部や機材が一々破壊されては規模のデカい研究は出来ず、修理なんかのコストがかかる。それと人の目が多い移動都市内なんかではそういった研究するには情報漏洩や人道による問題からの摘発といったリスクがある。

 

 そこで自然発生の天災というリスクもあるが、資源や設備も実験の際だけ必要最低限に用意し、かつ天災が来て破壊されても低コストで済むものを用いりながら野外で実験を行えば上記の手間はかからず、思う存分に実験が出来るとデブ貴族は考えた。幸いにもこの荒野は人里離れているために人目に付かず、研究で発生する音や光もアーツで出来る限り隠蔽しているため何の噂にはなっていない。天災も専属の専門家(天災トランスポーター)で回避し、彼の目論見は成功したも当然だった。

 

 たまに旅人等がここに迷い込んでやってくることもあるが、そう言った人物は口封じも兼て研究材料にしてしまえばどうということは無い。実際に今までも迷い込んだ遊牧民族や別の天災トランスポーターもこういった手段で始末してきたし、今も捕まえた奴らを()()()()()()としてわざと生かしている。

 

 それにこの前も珍しいことにドゥリン族の旅人がこの地に紛れ込み、しかも感染者なので丁度良く、今回の実験の材料としてそいつも捕えていた。後は巷で有名なあのサルカズの傭兵団、それも土と岩に関係するアーツの使い手だという奴らも良い実験素材になると考えていた。今回実験で発生させる天災は地割れや地震といった物のため、何としても欲しい物であった。

 

 

 だが来てないのなら仕方あるまい。無い物をねだる暇があるのなら代案を考えたり、今回使う装置の調整をしていた方がよっぽど有意義だとデブ貴族は切り替えた。

 

 

「……まぁいい、少なくても今日来ても良いように、とにかく実験の準備を進めろ! 儂は今回のために用意したあの機材の調整をしなければならないのだからな」

 

 

 そう吐き捨てたデブ貴族は大きな体を揺らしながら、静かに設置された一際目立つ巨大な機械の方へと向かっていく。

 

 

 ――あの機械はデブ貴族が今回の実験で用意したとっておき、一言で簡単に言えばアーツのエネルギー炉だ。内部に人を繋ぎ留めることで、人を電池のようなエネルギー源としてアーツのエネルギーを増幅させて、放出が出来る代物であった。

 

 感染者は体内にある源石を利用してアーツを放つ。この方法を利用して作られたのがこの炉であり、彼の研究の集大成。もし今回の実験が成功すれば、デブ貴族はこの技術をリターニア貴族の裏社会に売って権力を拡大しようとしていた。全ては自身のアーツに対する欲求を満たすために、富と権力を持って研究のための感染者(ざいりょう)をより得やすくするために。

 

 表向きは感染者に優しくしているが、それはあくまで感染者(ざいりょう)を得るために必要な経費に過ぎない。彼にとって人道や道徳なぞ研究の足枷にしかならないと断じていた。むしろ世界のゴミと言っていい感染者を上手く有効活用しているのだから、人々から褒められるべきだと断じている。

 

 性根の腐った彼の元で動く執事や仕入れを担当する輸送商団、彼に就き従う部下達も彼と同様の屑な人間達であった。デブ貴族と彼らの関係は、彼の命令には従うが、彼に対し忠誠の欠片すらも持たないドライな繋がりで成り立っていた。

 

 彼はそれを知ってか知らずかは分からないが、ただ研究の邪魔さえしなければ他はどうでも良かった。彼らもまた、彼に付き従う理由は大したものではなく、彼と共にいれば甘い汁が吸えると知って、彼が行う非人道な実験を見て見ぬふりをしていた。そのためならたとえ実験中に材料である女子供が泣き叫び、彼らに助けを請うたとしても、彼らは自身の欲のためならば良心の叱責も無く、平然とその懇願を切り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 炉の調整に集中するデブ貴族を余所に、執事は今回のことで僅かな引っ掛かりを感じていた。

 

 感染者(ざいりょう)を仕入れるあの輸送商団は自分らと同じ屑だが、こうも連絡を怠る様なバカではないと知っていた。もし何かあればこちらに連絡が来てもおかしくなく、ましてや捕獲成功の報告でこちらに到着するのに時間はかからないと言っていた。もし途中に突発性の天災とかあって音信不通になっているのならまだわかるが、この周辺で天災の兆し、あるいは天災が発生しているという話は聞いたことない。

 

 明らかに何かおかしい。執事か考えるには十分すぎる違和感だった。だが問題はどうするべきかだ。あの豚に進言して実験を中断させようとしても、おそらく聞く耳を持たないだろう。それどころか下手に不興を買えば、自分も実験の材料にされかねない。

 

 疑問の渦に囚われながらも、少なくてもこのままではマズイと長年の勘が警報する。目の前にいるデブ貴族はともかく、どうすれば自分だけは助かるのか…。

 

 

 

 

 そう思って執事は上を見上げた瞬間、思わずハッと目を見開く。上空で見たものに焦りを感じながら、すぐさまデブ貴族に忠告を放つ。

 

 

「旦那様! そこから離れてください! 上から何か迫ってきております!」

 

「なんだと……? ぬぅっ!?」

 

 

 執事の言葉に誘導されてデブ貴族も上空を見上げると、月明かりだけの闇夜に紛れて何かが自分の所に目掛けて降ってくるのが目に映った。執事の忠告と、意地汚い生存本能から何かが墜ちてくる前にすぐさまデブ貴族はその場から離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ズシィィィン!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 衝突により大地は割れるような轟音を響かせ、衝突地点周囲に周りが見えないほどの土煙を巻き上げる。その異変に遠くにいた作業員の部下達も何事かと、炉の方に視線を向ける。

 

 

「ケホッ、ケホッ! 何なのだ、これは!!?」

 

 

 デブ貴族が口に入った土煙に咳き込みながら怒声を放ち、何かが落ちてきた場所を目を向ける。土煙が立ち昇るその場所には、一つの巨大な影が佇んでいた。

 

 

「あれは何だ?」と影を見た全員がそう思ったのもつかの間、突如として影の方から何かが聞こえる。

 

 

『ふぃ~、とりあえず侵入成功か? ってか、煙いなおい』

 

 

 ノイズのかかった緊張感が無い声にデブ貴族や執事、周りにいた部下達は土煙の中にいる存在を訝し気に思いながらも警戒を緩めなかった。彼らにとって誰かがここに迷い込むならともかく、明確な意思を持って此処に侵入してきた輩はこれが初めてだからだ。

 

 彼らはここに侵入した存在が何者かとじっと影を睨みつけていると、煙が晴れていきその姿が露わになっていく。

 

 露わになったその姿を見た彼らは目を見開き、驚愕する。

 

 

『……ふむ、周りにはいかにも怪しそうな機械があるし、周りの奴らはそれで何か良からぬことをして、何だかまるで──』

 

 

 影から現れたその存在は周囲を見渡して独り言つ。その姿は3メートルほどの巨躯を持ち、灰色の汚れた外套を身に纏い、フードで隠されている顔から覗いて見えるのは鈍色に光る表情の無い無機質な仮面だった。仮面と外套のせいで目の前の存在の性別はおろか、何の種族かですらも分からない。唯一分かることは、驚くべきことはあの高さから墜ちてきたにもかかわらず、ピンピンしているタフさを持っていることだ。常人では出来ない真似をする目の前の存在に得体のしれない寒気が彼らに襲い掛かった。

 

 

『いかがわしい犯行現場に来たみたいだぜ、テンション上がるな~!(NHRHRS並感)』

 

「わ、儂の研究場の何処が犯行現場だ!? この不届き者め!」

 

『おっと、なんだいたのか。というかこ↑こ↓が研究場ってこれマジ? 周りには岩しかねぇし、どっちかと言うと化石とかの発掘現場にしか見えねぇんだけどw。それにさっき着地する時に見てたけどよ、俺から必死こいて避けようとするお前の姿はお笑いだったぜ(PRGS並感)』

 

「き、貴様~~!! 一体何者で、どうやってここに来れたんだ!?」

 

 

 仮面の軽口にデブ貴族がムキになり、その反応に仮面は面白半分に彼をからかう。高貴な者に向けるにはあるまじきな暴言にデブ貴族は茹蛸のように顔を真っ赤にして、怒鳴り散らした。

 

 

『何者か、ねぇ……。お前達のような感染者の命を持て遊ぶクソ共に名乗る名前は無いな』

 

「「「!?」」」

 

 

 

 

「……いや、何を馬鹿なことを言っている! 移動都市で儂が何をやっているのか知らんのか!? 感染者を救うために日々頑張ってる儂が、感染者に対してそんなことを──」

 

『あーはいはい、しらばっくれなくていいよ。お前らがやってたことは既に知ってるし、実際にその証拠が俺の後ろにある。…………アンタ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?人の命を何だと思っている?』

 

 

 飄々とした口調から一転し、怒気を含ませながら言い放つ。仮面の存在は背後に設置されている炉の方に振り向き、炉を手に当てる。すると彼の手に触れた個所から徐々に緑色の結晶が発生し、炉の表面を覆っていく。結晶の美しさに心奪われそうになるも、デブ貴族は何か良からぬ悪寒を感じ取っていた。

 

 

「おい貴様、何を──っ?!」

 

『こんなもの、世の中にあっちゃいけねぇんだ。……とっとと無に帰りやがれ!』

 

 

 叫びと共に炉を覆ってた結晶は砕け散る。それと同時に結晶が覆ってた個所は抉り取られたかのように何処か消え失せ、内部の構造が剥き出しになって破壊されていた。

 

 

 

 

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

『よし!(現場猫) 後は彼らの救出とこいつらをコロコロ(意味深)して──「こ、殺せぇ!! この不届き者に天罰を与えろぉ!!!」ファッ!?』

 

 

 炉を破壊されたことによるショックで言葉を失っていたデブ貴族だったが、すぐさま意識を切り替えて憎しみのまま目の前の存在を抹殺しろと部下に命を出す。上司の命により、この場にいた全員がボウガンとアーツロッドを仮面の存在に照準を合わせ、一斉に矢とアーツ弾を対象に向けて放たれる。

 

 矢とアーツ弾による弾幕は寸分の狂い無く仮面の存在に向かい、彼に襲い掛かる。その威力は防御に自信ある重装兵ですらもまともに受ければひとたまりもない威力だ。

 

 弾幕の衝撃によって地面も抉れて破壊されたため再び土煙が舞い上がるが、デブ貴族にとってそんなことはどうでも良かった。一刻も早くこの憎たらしい存在を跡形も無く消し去りたかったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 存分に弾幕が放たれた後、敵の抹殺確認のために一度攻撃を中断する。もくもくと巻き上がる土煙で姿は見えないが、全員はあの弾幕を受けて生きているはずが無いとそう確信していた。

 

 

 早すぎる勝利の安堵から全員が緊張の糸を切らしたその瞬間──、

 

 

 

 

 

 

 ──ヒュン! 

 

 

「ぐへぇ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 土煙の中からこちらに向かって何か飛来し、運悪く射線上にいた狙撃兵にそれが直撃する。小さい何かに当たったにもかかわらず、直撃した彼の体は大きく吹っ飛ばされた。

 

 何が起きたと吹っ飛ばされた狙撃兵を見ると、彼の体に異変が起きていた。何と右半身のほとんどが霜で凍てつき、指一本も動かせない程凍り付いていた。

 

 全員がまさかと思うのも無理は無かった。再び土煙の方を見ると、煙が晴れていきその先が見えるようになっていく。それと同時にあって欲しくない現実もまた、彼らは直視してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんなんだぁ……、いまのはぁ……?(BRL)』

 

 

 土煙から現れたそれは、まるで超野菜人の悪魔のような威圧感を出しながら、何事も無く平然と佇む仮面の存在が。そして起きてしまった現実により、彼らの心は既に絶望で塗り潰されたのも火を見るよりも明らかだった。不死身と言わんばかりな目の前の存在に対し為す術はあるのかと、彼らの顔はどんどん青ざめていき、士気も格段に下がっていた。

 

 この光景に流石のデブ貴族も自分が今相手にしている存在の恐ろしさを肌で感じ取り、己の愚行を後悔していた。あれは戦ってはいけない。戦えば最後、こちらが死ぬしかないと。

 

 

『なんだ、もう終わりか? だらしねぇな♂ ……じゃあ今までのちかえしを、たっぷりとさせてもらおうじゃないか(迫真)』

 

 

 じりじりとにじり寄ってくる仮面の存在に全員が無意識に後すざる。「やめろ、こっちに近寄るな」と言いたげに。

 

 そんな彼らの意なんか知らずに仮面は惨劇の始まりである合図を口にする。その声はまるで優しく確認を取る様な声色で聞こえるが、何処か恐怖を掻き立てるような嫌悪さも滲み出ていた。

 

 

『小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?』

 

 

 

 

 

 

『――さぁ、掃除のお時間だ』

 

 




Q.何であの弾幕で生きてんの?

A、第9話からボロ布になりながらも修繕したりして着ていたKBSマントで防ぎました。増幅(アクセル)で素材の耐久を強化しているけど強すぎひん?

※9話に出ていた初代は放浪の際にぼろきれになり、この時来ていたのは輸送艦に会った材料で出来た5代目です。初~4代目は描写されていないけど放浪の間で破かれたり修繕したりしていたという裏話。

ゲーム性能で言うなら一部の狙撃オペレーターの攻撃完全シャットアウト(範囲狙撃のような榴弾系等は無理)、術耐性アップと言った感じかね?


なおKBSマント無しで防御もせずにあの弾幕に直撃してたら、いくらフェストゥムの耐久力でも死にます(絶望)。それでも読心で躱せばいいんすけどね、初見さん(無敗)。



続きは書いてるからままそう焦んないで、お待ちください。


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第15話 災害 ~だんざい~②

どうも作者です。

復刻燃ゆるも終わり、危機契約に突入しましたね。とりま開始から一週間以内に18等級取るともらえる勲章はゲットできました。ファントムの分身や先峰での足止めと、イフリータの配置変更が間に合ってどうにかファウスト君を削れたゾ。キツカッタ……(小並感)。

小説の方も平日の仕事(いつもの)で時間取られたり、何かとまとめるのに悩みすぎて時間かかっちまいました。ほんとは一月末に一回出したかったのにスマソ。首を長くしていた皆さま、それでは本編をどうぞ。


 仮面の存在(セツ)がデブ貴族の研究場に侵入しているその頃、

 

 

 

 

 

 ──ズシィィィン!!! 

 

 

 

 

 

「……隊長、どうやら金ぴかが侵入成功したらしいな」

 

「……ああ」

 

「でもセツさん、一人で大丈夫なのです……?」

 

「姉さんの言う通り、敵はたくさんいるんですよね? それをたった一人で相手にするなんて……」

 

「心配なのはわからなくないが、あいつを信じようぜ。あんな異質な見た目をしていてそう簡単にくたばるタマじゃないだろ」

 

 

 研究場エリア周辺を潜伏待機していたマドロック小隊が鳴り響く轟音を耳にし、突入する機会を窺う。その中にはマドロックと彼女の部下、そして共に戦うことを選んだリーベリの姉妹もそこにいた。

 

 潜伏していた彼らは陽動として先に敵地へと突入したセツの身を案じていた。拷問に晒されていたマドロックの救助、鉱石病の治療など底知れない彼の力を目の当たりにした彼らは、彼の実力をいやでも認めている。

 

 とはいえ、彼が引き受けている陽動が危険なことには変わりない。仲間が危険な場所で今戦っている事実に対し、奇襲作戦のためとはいえ安全な場所にいることに彼らは歯痒さを感じていた。

 

 

「皆の言う通り彼が危険に晒されるのは、私も不本意だ……。しかし、彼が今回の陽動として成功のカギとなるのも事実だ。……今はただ、彼からの連絡を待とう」

 

 

 部下たちを励ましながら、マドロックはこの作戦の大元を立案した彼の言葉を思い浮かべる。

 

 

 

 

 

『今回行う作戦なんだが、不安要素を潰すためにとりま俺が先行して強襲、陽動してくるわ。心配するな、私にいい考えがある(キリッ)』

 

 

 

 

(……何故か失敗しそうな気がしたのは気のせいだと思うが、最終的に納得したのは私達だ。彼が無事に上手くやってくれることを祈ろう)

 

 

 どことなく感じるフラグ臭にマドロックは心配になるも、彼の作戦の成功を祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ホラホラホラホラッ、もっとかかって来いよオラァン!!』

 

 

「ぐぁ……、こ、凍った!?」

 

「ひぃ、つ、強すぎる! 何なんだよあいつはぁっ?!」

 

「何やっている! 奴をもっと攻撃しろぉ!」

 

「ンなこと言われなくてもわかってんだよ! だけどな、こっちの攻撃はあのマントで防がれて効かねぇし、それに奴の周囲に浮いているあの氷塊は何なんだ! 当たっただけなのにたった数秒で全身が凍り付くほどの威力なんて聞いてねぇぞ!」

 

「それでも貴様らは儂を守るために攻撃あるのみだ! ……それとも無理矢理言うこと聞かせぬと分からぬか?」

 

「…………くそぉ! やってやるよ畜生がぁぁぁ!!!」

 

 

 研究場ではセツが怒涛の勢いでデブ貴族の部下達を生み出した氷塊で凍らせていく。高台に陣取っていた狙撃部隊やアーツ部隊は既に全滅し、最初にいたはずの部下は既に二割ほど、氷像としてそこらに転がっている。

 

 嵐のような猛攻に対し部下達は怯え、主であるデブ貴族は肉壁として部下をセツにけしかけ、その間に自分が生き延びるためにこの場を切り抜ける対抗策を練っていく。歯が立たない相手に弱気になった部下を見れば、彼らの腕や首に着けている洗脳装置で無理矢理戦わせることを脅しにかけていた。感染者に無理矢理言うことを聞かせるために用いていたそれを、彼はもしもに備えて捨て駒となる部下全員にそれを無理矢理装備させていた。

 

 デブ貴族からの宣告に今までの甘い汁を啜ってきた自業自得が返ってきたことを理解しながらも、部下達は顔を青くし、半ば自暴自棄で特攻をかけていた。

 

 

 だがそんじょそこらの雑兵ではセツの相手にならないのは始めから決まっていた。僅かな期間だけとは言えあのスノーデビル小隊から戦い方を教わり、放浪している時には凶暴な獣や怪物等を相手にしてきた経験もあるのだ。加えてフェストゥムに元々備わってる戦闘力の高さも相まって、争いとは無縁だった彼も自身の戦い方が分かりつつある今では、大抵の敵には後れを取らない。

 

 

「くそっ、射撃戦がダメなら接近戦で──」

 

 

『遅いゾ、あらよっと』

 

「なっ、……ぐはっ?!」

 

「あん? ……ぐへぇ!?」

 

 

 せめて一太刀与えようとセツの懐に飛び込もうと接近する戦闘兵。しかし接近したまでは良かったが、その行動を読心で見抜いていたセツは腕を瞬時に伸ばして彼を掴み、適当な方向へと投げ飛ばす。投げ飛ばされた先にはよそ見をしていた別の部下がおり、投げられた部下はそのまま勢いに乗って彼にぶつかった。

 

 

 

 ちなみにぶつかって動けない二人を、セツはすぐに氷塊をぶつけて凍らせ、再起不能にした。無慈悲である。

 

 

 

 矢やアーツなどの遠距離は外套に防がれ、接近してもまるで先読みされたかのようにいなされ、反撃に凍らされてしまう。そんなスキのない相手に部下達の士気は下がる一方であったが、デブ貴族は敵の戦い方を見てある妙案を思いつく。

 

 

「……貴様ら、助かりたいのならしばらく儂を守れ! 執事、あれを全て持ってこい! アーツジャマーを起動させて奴のアーツを無力化させる!」

 

「全て!? しかしあれは効果は高いですが、一つでも貴重なもので……。それにそうすれば我々もアーツが使えなくなります!」

 

「奴のアーツを見ろバカもん! あの威力からして一機では抑えられないほどの力を持っている。出し惜しみしていれば一方的に負けるのはこっちじゃぞ! それにこちらのアーツが使えなくなっても、あの厄介な冷凍能力を封じればまだマシじゃ! はようせい!」

 

「……畏まりました」

 

 

 デブ貴族の作戦にこの場にいた全員は彼の命令に従うのは癪だと思いながらも、その作戦にわずかな希望を感じていた。デブ貴族が自身の研究を行う上での感染者対策として、その中で脅威だと考えたのはアーツだった。アーツで抵抗された時の損害は甚大ではないと考えた彼は、それを封じる手段もいくつか考案していた。

 

 こうして開発を重ね出来た彼の自信作の一つであるアーツジャマーは、今までの研究結果や他の研究資料、特性の似た装置から機能等をフィードバックし、完成させた代物である。マドロック達もデブ貴族が輸送艦の乗組員に渡していたこれによってアーツを封じられていた。

 

 

 彼らの目の前にいる敵は凍結能力に特化したアーツ使い。接近戦もそれなり出来るようだが、あのアーツが一番の脅威であり、多勢に無勢である状況を覆しているのだ。最初に見た緑の結晶の存在も不可解だが、あれもアーツの一種だと考え、とにかく敵の強力なアーツを封じてしまえばあとは数の暴力で押し切れる。しかも何故か敵は凍結による再起不能を狙っているばかりで、殺しはしてこないのだ。

 

 何が目的なのかは知らないが、不殺とかで舐めてかかっているならその余裕を歪ませてやると意気込む部下達は守りに特化した陣形を組み、セツの攻撃を凌ぐ。そして執事は奥の手であるアーツジャマーをデブ貴族の元へと持っていき、デブ貴族はそれの起動に急ぐのであった。

 

 一方でセツは敵の行動に変化が起きたことを知りながらも、気にせず彼らを順当に再起不能にしていき、数を減らしていった。

 

 

 

 そうして戦いは膠着状態になって数分後……、生き残っている部下の数が六割近く迫るその瞬間、意気揚々とした声が戦場に反響する。

 

 

「よし、アーツジャマー起動! お前の快進撃もここまでだ、化け物!」

 

 

 

 

 ────キィィィィ────―ン

 

 

 

 

『ん? 何だこの不快な金属音……、ファッ!?』

 

 

 デブ貴族の言葉と突然鳴り響く金属音を訝しげに思いながらも氷塊を敵にぶつけようと放った瞬間、異変が起きた。放った氷塊が瞬く間に砕け、塵となっていく。砕けた氷を目の当たりにして驚くも、セツは再び氷塊を生成しようとしたが、何故か生成が上手くいかない。しかもあの不快な音のせいなのか彼に身体が重くなったかのような感覚に襲われる。それでも何とか氷塊を生成しアーツジャマ―と呼ばれた機械に放つが、威力が格段と下がっており、機械に被弾しても先ほどまでの凍結力が無い。

 

 

「ぬぅ……、まだアーツを放つことができるのか……。ならば最大出力で──!」

 

『くそ……、力が、封じられた……? ぬぅ……』

 

 

 まだ悪あがきができるセツに対し、デブ貴族が装置の出力を最大に上げる。これでこのエリア全ての者がアーツを使うことが出来なくなったが、それと同時にセツの氷塊を生成することもできなくなった。そして無理に力を使った反動が来たのか、セツは体勢を崩してその場でうずくまった。

 

 

「よし今だ! あの不届き者を包囲し、そして奴を拘束しろ!」

 

「わーってるよ全く」ポイッ

 

 

 ──パァン!! ギュルル!! 

 

 

『 ちょ!? 流行らせコラ(離せコラ)!』

 

 

 完全にアーツを封じ、消耗したのを確認したデブ貴族はセツを包囲し、捕えようと部下に命令を下す。号令と共に部下の何人かはセツの周囲に立って包囲し、持ってる武器を彼に突き付ける。

 

 敵の動きに警戒しながら部下がセツの方へ何かを投げる。それは瞬時に破裂して中身から帯状の物が飛び出し、セツの身体を締め付けて拘束する。彼が投げたのは拘束用の手榴弾であり、内部に強化ゴムで出来たゴムバンドで目標を拘束する一品。

 

 

 バンドの締め付ける力が強く、抜け出そうにも過剰なまでの圧迫感がセツの動きを妨げる。そんな彼の姿を見てニタニタと笑みを浮かべる。

 

 

「ふっふっふ、ようやく追い詰めたぞ侵入者よ」

 

「お見事です旦那様」

 

「うむ、何所で儂らの所業を嗅ぎ付けたのかは知らんが、単身で来るだけの知恵の無い愚か者であったか。腕に自信があったようだが、自信の元であるアーツを封じてしまえばどうということは無い。全く馬鹿な奴だ」

 

 

 地に伏すセツを見下ろすように勝ち誇った笑みを浮かべるデブ貴族。それにつられて彼の部下達もスカッとした表情でセツを見下ろす。苦汁を舐めさせられた相手が封じられ、先ほどまでの余裕を歪ませられたと思うと全員が胸がすいた気分に包まれていた。

 

 

『ちぃ、拘束が……。しかも力が、でねぇ……』

 

「もはやこれまでじゃな。まぁ最初に儂らの肝を冷やさせたのは誉めてやろう。今後その力は儂の研究材料として役に立てるのを思うがいい」

 

『……ああ、全くだよ──』

 

 

 勝利を確信し、敵が目の前の事実を受け入れた瞬間、彼らは今度こそ勝利を確信していた。最初のあの時とは違い、敵は完全に弱り、拘束されている。もはや覆すことの出来ない状況にデブ貴族は部下に命じ、セツを完全に封じ込めようとしたその時──―、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──ここまで計画通りに事が進むとはな』

 

「「「「「「「……はっ?」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 上手くいったと言わんばかりにセツが呟き、その言葉に一同がその言葉の意味に疑問に思う。刹那、彼から突然眩いほどの白い閃光が爆ぜ、全員の視界が純白で覆い尽くされる。

 

 

 

 

 爆風のように広がるそれは彼の周りにいた部下全てを飲み込み、範囲外付近にいた部下がそれに触れると、触れた個所が瞬時に凍結し始めた。閃光だと認識していたそれが、極限までに冷え切った冷気であることを全員が気づくのは時間はかからなかった。そして冷気が晴れたその先に──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ふぃーよっこらせっと、いやー疲れた疲れた。猿芝居するのも一苦労だったよ』

 

 

「な、ななな‥‥‥‥!?」

 

 

 そこには氷像と化した部下達と、凍ったゴムバンドを砕きながら拘束を自力で解き、氷像となった彼らを押しのけて姿を現すセツが。しかも先ほどまで消耗していた姿は嘘だったかのようにピンピンしている。デブ貴族はあり得ない光景にわなわなと声を震わせて動揺し、それはここにいる彼の部下達全員が同じ気持ちを抱いていた。

 

 デブ貴族の側には相変わらず不快な金属音を立てているアーツジャマーが。それはすなわちアーツを封じる機能はまだ生きているという証拠。それなのにアレはアーツを使うことが出来ている。

 

 

「何故だ!? 何故アーツが使える!? アーツジャマーが作動しているんだぞ!!」

 

『ん~~? あぁ、そのポンコツのことか。確かに動いているからアーツは使えないな?』

 

「そうだ! だからこそ『でも、一つだけ言わせてもらうゾ』──む?」

 

 

 デブ貴族が捲し立てるようにセツに疑問をぶつける。セツはその反応に舐め腐った態度から真面目な雰囲気に切り替えながら彼の疑問に答える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()?』

 

「なん……だと……?」

 

『そもそもおかしいと思わなかったのか? 俺は既にアンタらの調べはついていると言った。ならお前達がアーツを封じる手段があるのは分かっているんだよ。なのにアンタら、何故そこまで考えが思い至らないんだ?』

 

「な、なら貴様が使ってきた能力はアーツではないとでも言うのか!」

 

『当たり前だよなぁ? でなきゃこんな馬鹿げた特攻なんてしないって、はっきりわかんだね』

 

「ば、馬鹿な……」

 

 

 彼らは小馬鹿にするようなセツの言葉に衝撃を受けていた。アーツが力として絶対的な常識であるこの世界に、まさかそのような異端なモノが存在するとは思ってもいなかった。だが今起きている現実を考えて、奴の言ってることが真実だと受け入れなければこの現象はどう説明すればいい。デブ貴族とその部下達は現実と自身らが培ってきた常識の狭間に困惑していく。

 

 

 部下は困惑する中、デブ貴族は命の危機を感じながらもある野心が芽生えていた。

 

 

 目の前で見せつけられたアーツでないあの力。そしてそれを操る謎の存在。あれは一体何なのか? 目の前に存在する者の謎に対し研究者としての血が騒いでいた。ぜひとも研究をし、この世の真理に近づきたいと。

 

 だがそれを解明するにも自信が生きてなければどうにもならないことを彼は理解していた。口調こそは穏やかだが、アレは間違い無く我々全員生かして返す気は無いだろう。最早部下やこの研究場の全てを捨ててでもしなければ生き残れることはできない。

 

 

 どう切り抜けるかと再び策を考えようとするその時、セツが再び喋りだす。

 

 

『そうそう、何でこんなにベラベラと喋っているのはな──―、こっちはもうチェックメイトってことだ!!』

 

 

 そう言ってセツがアーツジャマ―に目掛けて黒くて小さい何かを高速で放つ。そのスピードに誰も反応できず、機械に刺さったそれは楔状の黒い物体であった。

 

 機械に刺さったことに気づいたデブ貴族は執事と何人かの部下を連れて、楔を引っこ抜こうと機械に近づいたその瞬間──、楔が爆ぜた。楔は膨張し、爆風のように球状で広がる黒いエネルギー体はアーツジャマ―全てと、機械の近くにいた人間全員を飲み込もうと広がり続ける。

 

 

「何っ……、ぎゃああああぁぁぁぁ!!?」

 

「がぁあああああ!!? 旦那様ぁぁぁ、助け──」

 

「う、腕がぁ!? 俺の腕と足がぁ!!?」

 

「待ってくれ! 俺を置いてく──―」

 

 

 絶叫と共に広がっていた黒い球体が消えると、そこにはあったはずのアーツジャマーの機械が欠片一つも無く、地面をスプーンで掬ったかのようなクレーターしか残らなかった。同時に完全に巻き込まれた執事や何人かの部下はもうどこにも存在していない。何とか逃れて生き残ったデブ貴族と部下達も手足を失い、失った箇所から血を吹き出し、どくどくと流れ出していった。

 

 

『よしよし、アーツジャマ―ってやつは無事に全部消滅したな。それと迂闊に近づいて巻き込まれたのはご愁傷様なこった、同情はしないけど』

 

 

 一発の楔によって引き起こされた事態に淡々と述べるセツ。敵とはいえ人間を消したことに気に留めない冷徹さに、デブ貴族と部下達は吐き気を催すような恐怖に包まれた。

 

 

「こ、この人でなし!! 悪魔め!! なぜ儂がこんな目に合わねばならんのだ!!!」

 

『は? 何言ってんだお前? そっちこそ散々感染者を見て見ぬふりして殺してきたんだろう? それも女子供、助けを求めてる者関係無くな。身勝手な都合で関係無い人達を鏖殺しておいて、それはちょっと虫が良すぎるんじゃねぇか?』

 

「それのどこが悪い!? 感染者なぞ生きる価値の無いクズ共だろう! 儂はそのクズ共を有効活用しているだけで、むしろクズ共を処理することで面倒な感染者問題を解決してやってるのだぞ! 感謝して欲しいのものだ!!」

 

「感染者問題を解決、ね……」

 

 

 セツの所業にデブ貴族は非難の声を荒げる。まるで自分のことを棚に上げたかのような理論に、セツは苛立ちを募らせながら正論を吐き捨てていく。負けじとデブ貴族も反論するが、感染者を侮蔑した聞くに堪えないその内容にセツはまるで話にならないと言いたげな態度を取る。

 

 

(感染者を免罪符代わりにして自分は悪くないってわけか……。態度から見て分かっちゃいたが、最早救いようがねぇな。となれば──)

 

 

 

『…………あー、もういい。これ以上の話は無駄ってことが分かった。どちらにしろお前らは私欲で人の命を食い物にしていったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──―そう楽に死ねると思うなよ? 

 

 

「「「「「──ゾクッ!!」」」」」

 

 

 彼の身体から放たれる絶対零度のような鋭く、無慈悲な殺気。

 

 それはまさに蛇に睨まれた蛙のように、彼らの心をへし折るには十分だった。部下達は恐怖のあまり声が掠れて絶叫も出来ず、デブ貴族に関しては腰を抜かして放心しかけており、ズボンの股にじんわりと生温かいシミを作っていた。

 

 彼らは生き残るために、脳内に思考を張り巡らせる。このままでは殺される、逃げなくては。しかし逃げるといっても何所へ? 

 

 だが逃げるなら今しかない。あのデブは放心している。普通なら腕や首輪についてる洗脳装置によって操られるが、今はその心配は無い。後はあの怪物が追ってくることが懸念だが、そんなことに構っていられない。

 

 

 

「「「「「に、逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」

 

 

 無理矢理喉を動かし、掠れながらも精一杯出した絶叫と共に部下達は一斉に走りだす。一刻も早くこの場所から離れるべきだと、脇目も振らずに脱兎のごとく逃げていく。離れる間際に彼らはちらりとあの化け物を見やるが、追跡してくる気配はしない。

 

 何故追ってこないことに疑問に思いながらもその理由を考える余地は彼らには無かった。今は生き残るのが先だと、息を切らしながら走っていく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………逃げたか。はっ、殺される覚悟も無いくせにこんな惨い所業をするなら、初めからしなきゃいいんだ)

 

 

 セツは彼らの行動を眺めながら率直な感想を心の中で述べる。もし彼らが自身の行いに罪の意識を感じ、犠牲にした命の重みを理解していれば少しは温情は与えていた。

 

 だが実際は殺された犠牲者に対して何一つ思わないどころか、犠牲者は感染者だから何をしても自分達は悪くないという身勝手な理論を抗弁し、反省の色も無かった。この世界の常識による影響も大きいだろうが、セツにとってはそんな理由を、この世界の常識を認めたくなかった。認めれば感染者がより虐げられていく結末になってしまうからだ。

 

 

 だからこそ迸るほどの殺意を込めた怒りを奴らに向けた。犠牲になってる感染者が悪であることを否定するために、自分の知ってる優しい感染者達がこんな奴らによって犠牲にされる未来を否定するために。それこそ全て無に帰してでも────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ⦅(`・д・´)!!! ⦆

 

 

 

(──ッ!? ……悪いアルタ、助かった。()()やらかすところだったな……)

 

 ⦅ε-(´∀`*)⦆

 

 

 ドス黒い感情に支配されそうな所をもう一人の自分であるアルタの呼びかけで正気を取り戻す。よく見ると周りの地面が過剰なほどに凍てついたり、引き裂かれたかのような跡が残っていた。

 

 

 我に返ったセツは自身の力の強大さを思い出す。怒りのままにそれを開放すれば何も残さず、放浪していた時に一度そのミスを犯したことを。その時、危うく関係無い人も傷つける事態になりかねなかったのを覚えている。

 

 

(とりあえず逃げた奴らのことは放っておこう。まだここでやることがあるからな。……それに逃げた所でアイツらが()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

 冷静さを取り戻したセツは立ち去る逃亡者の方角に踵を返しながら、まだやるべきことがあると自身に言い聞かせながら思考を切り替えた。

 

 

 




果たして、逃亡者たちは無事にこの場から逃れることが出来るのでしょうか?(フラグ)


なおポロポロ出てきてるせっくんの放浪時の話は幕間である形で出したいと考えてます。


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第15話 災害 ~だんざい~③

ケオベローグライクキツスギィ!!

戦術分隊が最初のしか選べない初回クリアがかなりキツカッタ…。第二昇進がキツイお…。初回はウニをなんとか昇進させ、シーンちゃんめっちゃ頑張ってくれた。ウニ育ててよかった…。

二回目クリア時では他の分隊(突撃が優秀すぐる、道中何とかウニ兄貴を咥え入れれば昇進2の暴力が使える)が選べることもあって苦戦はそこまで無かった(ステージの運も絡むけど)。

けどまだ隠しには行けてませんゾ。もうやだぁ、おうち帰るぅ…。

では遅くなりましたが小説の方を、どうぞ。


「はぁ、はぁ…………、何なんだよあいつは!?」

 

「知るかよそんなの! それよりもヤツの気が変わって追って来る前にここから離れるのが先だろ!」

 

「くそっ……、どうしてこんなことになるんだ!」

 

 

 デブ貴族の部下であった男達は互いに口汚く罵り、喚きながらも全力で走り抜ける。あの怪物から一刻も早く離れようと、必死になって足を動かしていく。

 

 このままひたすら逃げて何処か逃げ続ければ、一生アレと関わらないで済むかもしれない。逃げてる際に報復として別の研究者やお偉いさんに奴の情報を売り、金を稼ごうという邪な思いも考えていた。だが、そんなことすればすぐ奴に気づかれ、殺されるのがオチだろう。

 

 命あっての物種だ、そんな危険を冒すよりこのまま見知らぬ都市、あるいは村などで細々と暮らすのもありかもしれない。幸い貯えはあのデブの金払いが良かったこともあって、それなりにある。

 

 何処か平穏な場所で暮らそうと夢見ようと足早に駆ける男達だが、突然先頭を走っていた者達が研究場の出入り口付近で突然立ち止まる。何事かと思い後に続いてた者も速度を落とし、彼らに詰め寄った。

 

 

「おい! 何止まってんだ!? あとちょっとでここから出られるだろうが!」

 

「あ、あれを…………」

 

「あん? あれってなん──―」

 

 

 自ら発した怒声に対して呆然とした表情で、前方を指で指しながら呟く仕事仲間。怒鳴っていた男も指の動きにつられて視線を前方に向けると、文句を言ようとしていた言葉を失う。

 

 

 男達が見たのは闇夜に紛れてこちらに近づく人影。ザッザッザっと雑踏を鳴らしながら、近づいてくる。暗闇で朧げな姿も近づいてくるにつれ、その姿は月明かりで少しずつ鮮明に見え始めていく。

 

 

「な、なぁ……、まさかあれって……」

 

「嘘だよな、おい……?」

 

「……最悪だ。よりにもよって何で……」

 

 

 その姿がはっきり見えたその時、男達は震えた声で呟き、その場に戦慄が走った。目の前にいるのは薄汚れた装備を身に纏い武装している傭兵の群れ。

 

 見たところ十数人で構成されてる彼らの中心に、一際重武装を纏っている者が先導していた。おそらくこの傭兵達を率いる統領なのだろう。男達もそれだけならば驚きもせず、ここまで怯えることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──彼らの頭部に生えている悪魔のような禍々しい角を見るまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………沃土よ、巌よ、立ち上がれ」

 

 

 ──ズズズッ!!! 

 

 

 男達が呆然と彼らを眺める中、彼らの統領が短い言葉を呟く。呟きとともに大地が盛り上がり、それは人の形となり、堅牢な岩石の巨人へと姿を変えていく。起き上がった巨人達は目の前にいる逃亡者の逃走を逃がさないと言わんばかりに立ちはだかる。男達は突然現れた巨人に驚き、足を竦ませていた。

 

 

 

 

「──何でサルカズの傭兵がここにいるんだよっ!!!」

 

 

 魔族と呼ばれるサルカズの襲来。本来ならありえない状況が目の前で起きたことを、男はこの世の理不尽さを呪い、怒りのこもった絶叫を上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ゴオォォォォォォォォォッ!! 

 

 

 

 

 ……あっ、この音はマドちゃんのガイアプレート君の雄叫びじゃないか! 召喚しやすくて戦闘に強い岩石族のエースであり、岩石コアキと組み合わせるとなかなか厄介だゾ(遊戯王並感)。

 

 

 

 

 軽口はこれくらいにして、どうやら彼女の部隊があいつらと遭遇したようだな。あいつらを逃がさないよう周囲に潜伏してもらっていた彼女達にこっそり連絡入れてよかったぜ。(逃げたあいつらは)もう抵抗しても無駄だぞ! 

 

 ぶっちゃけあいつらの状況的に前門のフェストゥム、後門のマドロック小隊だからな。媚び諂うことしかできない小物なあいつらじゃ、この状況を打破するのはこれ無理ゾ。

 

 

 

 とりあえず残党は彼女達に任せるとして、こっちは──。

 

 

「「「む~、むぐ~!!!」」」

 

 

 ……こいつらの処遇だな。氷で作った即席の牢屋に押し込めたはいいけど、ギャーギャー喚いて暴れたりとチンパン状態になっててうざかったので、手足や口元を氷でシュバルゴ! してやったゾ。

 

 

 さて、あえて殺さず利用すると言っても、研究資料などの犯罪に関する証拠品は既に押収済だし、先ほどちょっとクロッシングを応用でこいつらの記憶を覗いて資料の裏付けも取れたからもう用済みなんだよなぁ……。それに心を読んだ感じ、こんな危機的な状況でも心にドス黒い傲慢な感情を抱いているから、こんな爆弾を生かして放置はしたくない。

 

 

 

 それにしても奴らの証拠品である研究資料を見て改めて思ったが、あのデブと取り巻き共が本当に救いようの無い外道なのが改めてよく分かった。

 

 実験のためなら何人もの感染者の命を弄ぶマッドサイエンティストで、真相を知った者に対しては口封じとして実験の材料にしていた。たとえそいつが非感染者だったとしても、源石で無理矢理彼らを感染者にして材料にしていたほどにな。

 

 しかもあのデブ、もし今回の実験に成功したら貴族達に向けたパフォーマンスとして、北部で巨大な地割れを起こそうと計画していたらしい。資料に書いてあったが、そこにはヴォルモンドとかいう移動都市があるのにも関わらず、完全にその都市が巻き添えになる前提な計画を移そうとしていたことが分かった。

 

 まさに吐き気をもよおす“邪悪”としか言いようがない。少なくともそんな馬鹿げた計画が始動する前に、ここを潰せたのは良かった。

 

 

 

 それと嬉しくはないが、デブと同じ穴の狢がいることが資料から読み取れて分かったのも結構大きい収穫だ。こういう輩は百害あって一利無しなんで今すぐにでもコロコロ(隠語)したいのが本音だが、場所も遠いのと、ここには囚われている感染者がいるから、目の前にいる救える命を救うのが先だ。

 

仮に上記のそれらが解決し、一人で突貫しようにも流石に国一つに喧嘩売れば、敵も他国の協力とかでこちらを全力で潰しにかかるだろう。もしそうなったらチートなフェストゥムでも死にかねないな。スノーデビル小隊で死にかけた経験から自身の力に過信はしないゾ。

 

 裏の証拠という数少ない弱味を握ったからこれをリークしてあとはこの国の司法に任せるのも考えていたが、そうは問屋が卸さないらしい。そいつらは資料によるとあのデブ同様に貴族等の上流階級らしく、考え無しに情報をリークしても揉み消されるのがオチだ。かといって放っておくのはもっと駄目だから、いずれ報いは受けさせるために雌伏の時を待つしかないな。今はまだ私が動く時ではない(ニートなⅤ兄様並感)。

 

 

 話は反れたけど、とにかくこいつらを逃す理由はもう無いので、災いの芽を摘むためにもじゃあ、死のうか……(暗黒微笑)。

 

 

「む、むごぅっっ!??」

 

 

 おっとなけなしの抵抗とか、往生際の悪い事をするなよ~。というわけでブスリ♂っと。

 

 

「むっ!? ごぉぉぉっ!!?」

 

「「「むぅぅぅ!!?」」」

 

 

 痛いか? 痛いやろ~、源石で傷つけたからな、俺が。これでお前らも晴れて感染者や、嬉しいだルルォ? 

 

 

「むっ!? むぐ──―!!!」

 

 

 

 はっ? 何でこんな目に合わなければならないのか、だと? ……その言葉そのままブーメランで返してやるわ。

 

 お前達だって関係無い人を感染者にし、彼らを散々苦しませたんだ。それなのにお前達が彼らと同じ様に苦しまないなんておかしいよなぁ? 

 

 ……もしお前らの行動次第では俺もこんな手段を取らずに済んだんだが、己の浅はかさを呪うんだな。

 

 

「むっ?! むごぉぉぉぉ!!!?」

 

 

 うわ、侵食のスピードが速いな。ムニンちゃんから同化した源石を使ったとは言え、もう体の一部が血塗れになりながら源石が体表に現れてやがる。後はこっちが何も手を下さずとも、一日くらいで死ぬだろうな、これ。

 

 かといって生憎だが、こっちはやることがあるし、お前らの死に様を悠長に眺めているつもりはないんだよ。だからせめてもの慈悲として、今からお前らを消して楽にしてやる。感謝しろよ。

 

 

「むぅぅっ!! むぐぅぅぅぅぅっ!!!」

 

 

 助けて? 死にたくない? 

 

 まぁ怖いだろうな、死ぬということは。俺も死にそうな目に遭ったから、お前らが味わっている死の恐怖が分からない訳でもない。

 

 ……だけどお前らに殺された人達の方が、今のお前達よりもずっと死の恐怖に苦しみ続けたんだ。これくらい彼らの苦しみに比べれば屁でもないし、むしろ早く殺してやるんだから温情だと思ってさっさと死に晒してろ。

 

 

「むぐぐっ!? ……む~っ!!!」

 

 

 じゃあなクソ野郎共。そのまま自ら生み出した業を背負って、滅んじまえ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう吐き捨てて俺は奴らに向けてワームスフィアを解き放つ。無から放たれたワームは一瞬にして奴らを飲み込み、奴らが俺に向けた最後の眼差しは、絶望、憎悪、恐怖と言った感情をぶつけながら、痛みにもがき苦しんでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてワームスフィアが消えた先には、球体にえぐれた跡の地面しか残らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……正直、胸糞悪い結果に終わった、か)

 

 

 あいつらの因果応報とは言え、ぶっちゃけ俺のやってることは間違いなく悪だ。たとえ正義を振りかざそうとも、元の世界での倫理で考えれば殺人は悪として当然と言えるし、この世界も俺のいた世界に比べれば命が軽い世界だとは言え、類似した倫理が破綻されない限りはそう捉えることが出来る。俺自身、自らやったことに思うところが無いわけでもない。

 

 

 

 

 悪を滅ぼせたと酔い痴れる高揚感と、人殺しを決行した自身に対する不快感。

 

 

 

 

 矛盾した感情は俺の心のどこかにしこりを残していく。何かを守るために、悪を成敗するために、自らの手を汚して非道を為さざるを得ない現実に。それは必ずしも良い結果になるとは言い難く、時には守った人達から非難を受ける結果にも繋がるかもしれない。

 

 

 

 この世界に来てから命を奪うことをそれなりに経験してきた。人間慣れれば恐ろしいもので、殺すことに耐性がつき始めてきた。

 

 ……もしこのまま殺すことに対し何も感じなくなってくれば、俺はこの体のように無の申し子になるのだろうか? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――けどそんな未来は御免だ。俺は俺なんだと。

 

 

 心に感じるこの矛盾は俺自身を繋ぎ留める証なんだと。だからこそ、自分を見失わないよう俺はこの苦しみから目を逸らさないよう受け止め続けよう。

 

 

 

 ……なんかこんな哲学的なことを考えるのが多くなったな。フェストゥムになったからなのか、この世界に来たからなのかは知らないけど、少なからず何かしらの影響はあると思う。

 

 

 けどこうして考えることに悪い気分はしないし、自分の生命をどう使うか決める良い指針になってるからいいか。

 

 

 

(さて、後は囚われた人たちの救出を──)

 

 

 ―ザッザッザッ……

 

 

 ん、足音……? ……ってことはもしかしてまさか? 

 

 

「……すまない、待たせたな」

 

「はぁ、はぁ……。すいません、遅れました!」

 

「セツさん、手伝いに来たのです!」

 

「金ぴか、手伝いに来たぞ!」

 

 

 足音が聞こえる方へと振り返ると、そこにはマドロック小隊がこちらへ向かってきている。無事だったんかワレェ!! 見た所誰かが欠けたり深手を負ったとか無さそうだが、念のため異常は無いか確認しよう。おっ、大丈夫か大丈夫か? 

 

 

「私達の方は大丈夫だ……、問題無い」

 

「それに逃げた奴らは全員、こっちでしっかり始末したから安心しろ」

 

 

 そーなのかー(棒読み)、とにかく無事でなによりだゾ。こっちも主犯格のデブとその部下諸共、始末し終えたところだ。もちろん始末する前に必要な情報をゲロってもらってな。

 

 

「ゲロったというより……、お前の場合は覗き見たと言うべきだろ?」

 

「死体も無くあるのは意味深に残されたクレーター、……あっ(察し)」

 

「輸送艦で一度見てるとはいえ、あんな死に方は御免だな。記憶覗けるわ、跡形も無く消し去るわでお前と戦うことに関しては全力で避けたいもんだ。此処にいた奴らと輸送艦の奴らには、少しばかり同情するぜ」

 

 

 おっ、そうだな(他人事)。

 

 実際アレを見たら大抵の人はドン引きするし、我ながら読心とクロッシングを応用して記憶読み取れるとか反則じゃねこれ? やっぱり珪素のやべー奴じゃないか(おまいう)。その代わりクロッシングは現状、正確に読み取るには対象に触れ続けないと駄目だけど。

 

 

「……それでセツ、私達もここに来たはいいが何をすればいい?」

 

 

 あっ、そうだ(唐突)。マドちゃん達がちょうどいい時に来てくれたし、というわけで早速頼みたいことが、ハイこれ。

 

 

「……これは?」

 

 

 この研究場の地図で、印のある場所に囚われている人達がいるんだ。おそらく実験材料として囚われてた感染者達なんだろう。俺はあの機械に繋がれている人達の救助に当たろうと思うんだが、そっちは任せていいかな? 

 

 

「……そういうことか。わかった、こちらは任せてくれ」

 

「任せてくださいなのです!」

 

「あたしもそれでいいよ」

 

「なら俺達は金ぴかの方に回ろうか。それと何人かはあの輸送船から物資を持ってきてくれ、きっと必要になるはずだ」

 

「了解だ、副隊長!」

 

 

 決まりだな。じゃあ共に囚われた感染者達を助けに、はい、ヨロシクぅ! 

 

 

 

 イグゾー! デッデッデデデデ! カーンwデデデデ! (+1145141919810364点)

 

 

 

 

 

 

 

 今回はここまでです。ご視聴ありがとうございました(RTA並感)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……隊長? どうしたんだ?」

 

「……少しばかり、彼の様子が良くなかった」

 

「そうなのか? だけど見た感じ特におかしい所は無かったが……」

 

「体の方ではない、心の方だ……。表面上は上手く私達に隠しているようだが、腕が僅かに震えていた。本人は気づいていないようだが……」

 

「偶然じゃないのか?」

 

「いや、彼が輸送船の乗組員を消滅させた際にも同じような反応があった。私も最初は見間違いかと思ったが、今回ので偶然は無い。殺害という行為で起きるというのなら、おそらく彼は殺戮や死とは無縁な人間なのだろう……」

 

「まぁ、あいつは優しい性格なのは分かるぜ。俺達サルカズや感染者に対して嫌悪も無く、まるで同じ人として接するなんて珍しいからな。それなら隊長の言いたいことは間違いじゃないのは分かるぜ」

 

「だからって金ぴかの性格上、真面目に問いただそうにもはぐらかされそうな気がするんだがな。俺達に心配をかけないためにも」

 

「そもそも金ぴか以前に、俺達もこの後どうするんだって話だけどな。リターニアも結局他の所と変わりなく安住の地は無いんだ。ここの奴らを助け、奪った輸送艦があるにしても俺達は何所に向かえばいいんだが……」

 

「……では、故郷に帰ろう。帰って、静かな樹林を探して、そこで生き延びるんだ」

 

「……カズデル、か」

 

「ああ……。あの娘達とここにいる感染者達も、あの輸送艦で我々と共に一緒に行くことは出来るだろう。あそこは根無し草にとって唯一の居場所……。私達は生きるために、この大地と抗っているんだ」

 

「そうなると金ぴかとはここでお別れか? あいつも目的があって旅をしてるって言うし」

 

「そうなるだろう。……だが彼が私達と来るのであれば、私は拒まず迎え入れるつもりだ」

 

「それはあいつ次第ってとこか。まぁそれで他の奴らも異論は無いと思うぜ」

 

「欲を言えば一緒に来て欲しかったけどな、鉱石病を直す唯一の存在なんだぜ?」

 

「……あまり彼に負担を掛けてはならない。いくら彼が良いと言っても、無理強いさせるなら私が止める……」

 

「わーってるって、流石に他人が傷ついてまで生き延びようとは思わねぇよ。たとえそいつが平気だとしても、そんな犠牲を認めるのは人としての何かを捨てるようなものだ」

 

「むしろあいつはあいつでいるべき場所があるはずだ。戦うことしか出来ない俺達の側よりもいるべき場所にな。…まぁあいつの道は、俺達よりも過酷なのかもしれないけどな」

 

「……いずれにせよ、今の私達が彼に出来るのは、彼の武運を祈ることだけだ。叶うなら、この先の運命で彼が無事であることを願いたいものだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 次回予告

 

 

 断罪を為し、囚われた感染者を救い出したせっくん達。順調に感染者を救助していく中、その中で一人の重篤な感染者が見つかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その感染者を助けようと動くせっくん。その行動は彼に思いがけない出会いを果たさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはフェストゥム生に大きな歯車を動かすことになるとは、せっくんはまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お会いしとうございましたっ! 御使い様ぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次回、なんでフェストゥムはテラにいるんですか? 第16話、道標 ~ドゥリン~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたは、そこにいますか? 

 

 

 




(ロドスにいる合法ロリの方じゃ)ないです。ちょっと名前が紛らわしすぎんよ~。



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第16話 道標 ~ドゥリン~①

いつもの遅筆&ローグライク(裏ボスまでの)完走、出来ませんでしたぁ!

ランダム性が強くて、平日デイリーこなすしか時間的にやる余裕の無い弊社ロドスでは期限付きとか無理ぽ。
ああいうのは新鮮味があっていいけど、じっくりやりたいから常設形式にしてくれませんかねYostarさん…。

次は情報的にアイスクリーム大好きレーヴァテインことスルトちゃんが来るのか…。太いシーチキン(スルト)が欲しいけど、石が無さ過ぎるッピ!
確か大陸情報では次のイベントはオムニバスで、そういや内容にマドロックのもあったような…(嫌な予感ビンビング)。




「お会いしとうございましたっ! 御使い様ぁぁぁ!!!」

 

 

 輸送艦内のとある仮眠室にて、大きな声を室内に響き渡る。

 

 部屋内にはベットの上で栗毛色の短髪を揺らしながら伏せる一人の少年と、珍しく人前で外套を外して姿を晒し、右肩に源石の結晶がまた生えた黄金の異形であるフェストゥムのせっくんが相対していた。

 

 少年はせっくんに対し、まるで伝説に出てきそうな存在と出会ったかのように驚きながらも、その出会いに喜びを嚙み締めていた。そんな少年を見ていたせっくんはと言うと──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何このショタ、いきなり俺のこと崇め倒してきたんやけど……(ドン引き))

 

 少年の豪快なリアクションに絶句し、引き気味で困惑していた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どーも皆さん、開幕何故か信仰されてるフェストゥムことせっくんです。

 

 あの後一体何が起きてたのか(俺も含め)状況が理解出来てない人達に簡単な説明するために、いきなりだが回想に入りますよ~入る入る。

 

 というわけではい、よーいスタート(棒読み)

 

 

 

 

 

 ~回想開始~

 

 話は少し遡って数日前、実を言うと研究場に囚われていた感染者の救助は滞り無く進めることが出来た。押収した資料の情報通り、牢屋や炉と呼ばれる機械から迷い込んだ旅人や遊牧民、天災トランスポーターや奴隷など、様々な境遇の感染者達が囚われていた。

 

 

 皆衰弱はしていたけど、命に別状は無かった。応急処置が間に合ったおかげで殆どの者は命を繋ぎ留められたのは不幸中の幸いだった。

 

 しかし彼らの中に一名だけ重篤な感染者がいた。そう、それが目の前にいるショタのことだ。

 

 囚われた人達の話によると、なんでも最近捕まってここに閉じ込められたのだが、無謀にも一人であのデブに反発し続けていたらしい。それが奴の怒りを買う結果となり、周りの者の見せしめも兼ねてムニンちゃんを蝕んでいた源石活性化の薬品を投与されてしまったんだとか。

 

 救助された彼の姿を初めて見た時には既に身体中に源石がびっしりと覆われ、俺も含め皆が彼はもう死んでいると錯覚していた。

 

 そう思っていた次の瞬間、驚くことにあのような状態にも拘らず微かに呼吸の音が聞こえ、彼がまだ生きている事実を俺達全員に知らせた。何故生きているのかは分からず、生きてること自体が最早奇跡としか言いようがなかったが、とにかくまだ助かると分かった以上すぐさま彼の同化(ちりょう)を始めた。(症状が重くて治すの)すっげえキツかったゾ~。

 同化(ちりょう)の際、周りにフェストゥムの力を見せたため周りがざわついていたけど、俺はそのことに構わず治すことに専念し、その間マドちゃんが皆をまとめてくれたおかげで救出作業は滞りなく完了させた。俺もショタの鉱石病の同化(ちりょう)を終えた後は、彼を輸送艦へと連れて安静にさせた。

 

 ちなみに重篤な鉱石病を同化したせいか、せっかく無くなりかけた右肩の結晶がまた生えたり、外套が破れた。ちくしょうめぇぇぇ!!!(総統閣下並感)

 

 収まりかけた源石結晶が再び悪化したためマドちゃん達に心配掛けてしまい、「無茶をするな(要約)」とこっぴどく叱られた。そして後始末は彼女達がやると言われ、俺は安静にするようにと輸送艦の一角にある部屋で謹慎することになった。手伝おうと思ったのに泣きっ面に蜂ですよクォレヴァ……。

 

まぁ感染源塗れな身体であちこちウロチョロされたらたまったもんじゃないからね、仕方ないね(レ)。

 

 

 

 

 

 

 そんなわけで輸送艦に戻り、部屋で謹慎しながら眠ってるショタのお守りをして数日後──、

 

 

 

 

 

 

「──―あれ、ここは……?」

 

 突如呟かれる声に反応してベットを見てみると、フラフラとしながらも寝ていたはずのショタが起きていた。

(ショタが)生きてる~! (意識が)帰ってこれたよッハッハッハ生きてる! ハッハッハ! 生きてるよー! 

 

「うわっ! おっきいお化け!? てかここは何処なんだ!?」

 

 彼が目を覚ましたことに喜ぶ俺に対し一方で、ショタの方は何が起こったのか理解出来ず、混乱していた。

 そら(薄暗い地下牢から仮眠室のベッドという周りの環境の変化に加えて、正体不明の外套被った存在が近くにいれば)そうよ。

 

 とりあえず(目を覚ましたけど体調は)おっ大丈夫か、大丈夫か? 干しブドウ(船にあった備蓄品)でも食う?

 

 

「あっうん、いただきます。……確かオイラ、鉱石病に蝕まれてはずって、身体にある源石が無いっ!?あんなに身体中に覆われていたのに!?」

 

 よしよし、大丈夫そうだな。鉱石病治ってることに驚いているだろうけど、ままそう焦んないで。今からじっくり説明するからな~。レーズン噛みながら聞いて、どうぞ。

 

 

 

 

(フェストゥム状況説明中)

 

 

 

 

「えーっとつまり、にーちゃんと一緒に来てるサルカズの傭兵団があの研究場に囚われたオイラ達を救出し、オイラの鉱石病もにーちゃんが治したってことか?」

 

 

 そゆこと。まぁ後者はにわかに信じられないと思うかもしれんが、信じるかはどうかはそっちの自由なんで。

 

 

「……うーん、信じられないけどこうしてオイラは生きてるのが何よりの証拠だし、にーちゃんの言ってることはとりあえず信じざるを得ないや。ひとまずオイラや皆を助けてくれてありがとう」

 

 

 どういたしまして。

 それにしても他の人から聞いたけど、お前も随分と無茶をしてたな~。もし俺がこの場に来てなかったら間違いなく死んでたゾ。

 

 

「うっ、それは……。でもあの豚野郎、感染者の命を弄んできたんだ。オイラどうしても我慢出来なくて、つい……」

 

 

 それでも死んだら元も子もないと思うんですが(名推理)。

 まぁでも、そのおかげで他の人達に矛先が向かなかったかもしれないな。自身に危険が及ぶのはあまり褒められるもんじゃないが、その心意気は気に入ったし、(俺達が来るまで)よう耐えた、それでこそ男や! 

 

 それにお前らの代わりにあのデブは俺達が仲間諸共始末したから安心して、どうぞ。

 

 

あっそうだ(唐突)、そういや自己紹介してオラせっくんって言うんだ。よろしくオナシャス!(先に自己紹介するフェストゥムの鏡) 

 

 

「あ、あぁ……。オイラはヴィト、ドゥリン族のヴィトって言うんだ」

 

 

 はぇ~、ヴィト君というのか……。オッスお願いしまーす! 

 

 ……ってちょっと待て!? 君今ドゥリン族ってイワナカッター? 

 こんな大人のお姉さんにお持ち帰り(意味深)されそうなショタがドゥリン族なのか!? 

 

 

「ん? そうだけど? ……それになんか子ども扱いしてるけど、こんな見た目でもオイラはしっかりと成人してるんだ。と言っても、種族としてはまだ若造な年齢だけど」

 

 

 マジかよ……こんな見た目で成人とかこれもうわかんねぇな? ロリコンショタコン歓喜やんけ。(色々と気になるけど話が脱線しそうだから)ままええわ。

 つかヴィト君は何で地上にいるんだ? こっちはドゥリン族に尋ねたいことがあって放浪してたから好都合だけど、ドゥリン族って確か地下で暮らしていて滅多に地上にいない種族だって聞いたんだが……。

 

 

「確かにオイラ達ドゥリン族の大半は地下にある里で暮らしているけど、オイラは夢のために地上で旅をして、探し物しているんだ。でもにーちゃんの言う通り、こうして地上に出てくるドゥリン族は珍しいのは普通な考えだよ? 

 

 

 ──ところでさっきドゥリン族を探していたって言ってたけど、オイラでよければ力になるよ? 助けてくれた恩としてはちっぽけかもしれないけど、少しでも返しておきたいし」

 

 おっ、良いのか? ならお言葉に甘えて、実は拾ったこれについて教えてほしいんだが? 

 

 

 

 

(フェストゥム古文書を見せる)

 

 

 

 

 

「えーっとなになn…………えっ?」

 

 

 旅先で拾ってこれを読めるのドゥリン族だって聞いたからさ、此処で出会えたのは運が良い……って、どうした? そんなに口をあんぐりと開けて? 

 

 

「な、なぁ……? これをどこで手に入れたんだ?」

 

 

 ん? 確かウルサスってとこで亡くなった探検家らしい遭難者が持ってたのを拝借(返す気/zero)したんだが。どうしてそんなに驚いてんだ? 

 

 

「驚くも何も……、これがオイラの探し求めていたものなんだよ! まさかにーちゃんが持ってたなんて思わなかったけど、なんでこれを持ち歩いてたんだ?」

 

 

 あーそれか、それは俺の姿に関係するんだ。ほれ、そこに人型の生物の絵があるじゃろ? 

 

 

「ん? 確かこれって……にーちゃんまさかっ!?」

 

 

 ふふふ、そのまさかだゾ。さあ見るがいい! 俺の真の姿を! (ラスボス並感)

 

 

 

(フェストゥム外套脱ぎ脱ぎ中)

 

 

 

 

「( ゚д゚)……」

 

 

 見よ! この黄金に煌めくボディを……ってどうした? 驚けと言ったがそんなに呆然されると調子狂うゾ? 

 

 

 

 

「……み」

 

 

 ……み? 

 

 

「…………御使い様ぁぁぁぁ!!? 伝説の存在が何故こちらに!!?」

 

 

 ………………はい? 

 

 

 ~回想終了~

 

 

 

 

 

 

 ──で、冒頭の話に戻るってわけだ。その後彼から話を聞くところによると、彼の一族は古文書に書かれていたフェストゥムと交流した者達で、彼はその末裔なんだと。そしてフェストゥムは彼らにとって敬うべき存在として語り継がれているんだとか。

 

確かにドゥリン族を探していたけど、まさか古文書に関係する人物に会えるとか、意外と早く出会えたな~。(嬉しい誤算)

 

 

 

「御使い様、知らなかったとはいえ先程の無礼な発言をしてしまい申し訳ございません! どうかお許しを、何でもしますので!」

 

 

 ん? 今なんでもって……いや、ネタかましてる場合じゃないな、とにかく君は落ち着け。さっきとは違って急に畏まった態度されても、こっちが調子狂うゾ。

 別に怒ってないし、さっきみたいにフランクに話してくれた方がこっちとしても気が楽なんだが。とりあえず顔を上げて?上げろ(豹変)。

 

 

「し、しかし……」

 

 

 そもそも俺はちょいと変わった事情があるフェストゥムであって、君らが言ってた伝説上の個体とは全く違うんだから、そう畏まるのもお門違いだと思うんだが? 

 それでも気が済まないならこちらの問いにさっさと答えて、どうぞ。こっちは君から色々と情報が欲しいんだYO! 

 

 

「……わかった。御使い様がそう言うのなら、オイラもそれに従うよ。それでオイラから何が聞きたいんだ?」

 

 

 うーんそうだな……。色々と聞きたいことはあるけど、これだけは一番ハッキリさせたいんだよな。

 こうして旅してるのはこの古文書に書かれてる“楽園”を探しているわけで、感染者が安心して暮らせる場所を作るためなんだ。それで今の旅が無駄骨になるのかどうかはっきりさせたいから聞くぞ?……古文書に書かれてる“楽園”ってさ、本当にあるのか? 

 

 

「……それなら断言するよ、“楽園”は実在するって。むしろそうしてくれないとオイラの方でも困るんだ」

 

 

 ……へぇ、その根拠は? 

 

 

「それなら、オイラの一族に伝わる伝説を話した方が早いかもね。ちょっと長くなるけどいいかな?」

 

 

 構わん、話せ。(DIO並感)

 

 

「わかった、そんじゃちょっと昔話をするよ。……先程教えた通り、オイラはドゥリン族の中で特殊なルーツを持つ一族の末裔なんだ。この古文書に書かれている通り、オイラの祖先は御使い様であるフェストゥムと、このテラで初めて交流したんだ」

 

 

「御使い様は祖先との交流で命を学んだって言われているんだ。御使い様は命を学ばせてくれたお礼として祖先達に超技術を伝えたんだ。それで祖先と御使い様は平和に暮らすための場所を共に創り上げ、島と呼ばれる大地を築いていったんだ。それが“楽園”と呼ばれるモノの正体だけど、今風に言えば移動都市みたいなものかなってオイラはそう推測している」

 

 

 

「それで安息の地を得た祖先達は、そこで外敵や天災に怯えることなく平穏に暮らしてたんだ。しかし平穏が続くと思っていたある日、島は侵略者に襲われて崩壊の一途を辿っていった。

 その侵略者が何者かはオイラにも分からないけど、その戦争で島は荒れ果て、多くの住民が亡くなったらしいんだ。僅かに生き残った祖先達は御使い様の手によって戦乱から遠い地下世界に運ばれ、御使い様は戦争を終わらせるために一人で向かおうとした」

 

 

「祖先達はこれまでの恩から御使い様について行き、共に戦おうとしたんだけど、御使い様から生きろと諭されたんだ。平和になったら此処に戻って再び島に帰ろうと言い残して、御使い様は戦場に赴いて行ったらしいんだ」

 

 

 

「祖先達は御使い様が戻ってくることを信じて地下世界で生き、御使い様を待った。

 

 

 

 

 

 ──でも何時まで経っても、御使い様は戻ることはなかった。確かめようにも地下世界から地上に出れば、外は天災と凶悪な外敵生物が蔓延る過酷な環境が多く、非力な祖先達ではどうにもならなかった」

 

 

 

「それでも祖先達は希望を捨てていなかった。いつか遠い未来、再び故郷に帰るために楽園があった場所をこの古文書に記し、命を紡いでいったんだ。御使い様との約束を果たすその日まで……。

 

 

 

 ──―とまぁ、オイラのじいちゃんから聞いた一族の伝説の話はこんな感じだけど、あまりにも年月が経ちすぎて真偽が不明で、今では単なるおとぎ話としか言えなくなったんだけどね。

 末裔の血筋も残ってるのが調べた限りオイラだけで、他に残っていたのもオイラに伝説と先祖について話してくれたじいちゃんと、父ちゃんくらいだったんだ。……二人はもう、寿命と事故で亡くなっちゃったけどね……」

 

 

 ……なるほど、そんな風な伝説が彼の一族に伝わっているってわけか。

 しかし知りたい情報を得るためとはいえ、言いたくないことを喋らせちまったな。亡くなった肉親を思い出させようとしてすまない……。

 

 

「気にしなくていいよ。もう昔のことだから割り切れてるし。

 

 

 

 それで話を戻して根拠のことなんだけど、実は里にいくつか変わった機械があって、それの仕組みがドゥリン族での技術理論では説明つかない物がいくつかあったんだ。オイラを含めて大抵のドゥリン族は技術者として卓越した才と技量を持ち合わせているのに、それでも納得出来る様な説明が出せないんだ」

 

 

 うーん? ……あーなんか読めてきたぞ、つまりこういうことか? それが楽園に眠っているであろうフェストゥムがもたらした超技術に関係すると言いたいんだな? 

 

 

「理解が早くて助かるや。それで疑問に思ったオイラはそれらを調べていった結果、超技術のルーツが件の伝説に関係すると行き着いたんだ。調べていくうちに島にあったとされる超技術に関する内容と例の機械に繋がる情報が多く、中には今で使われている理論の元となる情報もあったんだ。少なくともこれは外の、さらに言うならドゥリン族で生み出したものではない技術が紛れ込んでいるのではとオイラは仮説を提唱したんだ。

 …でも里にいた皆からはそれを信じず、むしろ反抗心を上げて今の自分達では理解できないほどの英知の結晶を祖先達が作ったのだと異を唱えて相手にされなかった」

 

 

 

 

「確固たる証拠はない以上、別に異を唱えられるのはしょうがないけど、確かめもせずに決めつけるのは技術の担い手としてどうかと思うんだ。だからオイラ、その謎の真実を知るために里を飛び出したんだ。今までの調査から“楽園”の在り処を見つけるための鍵がその古文書だったのが分かったんだけど、昔の祖先が紛失したらしくて、まずは古文書を探しに何年も色んな場所へと歩き回っていたんだけどね」

 

 

 そこに古文書を手に入れた俺がここに来て、偶然にも俺達は巡り会った、というわけか。(手がかりは無いにも等しいはずなのに諦めずに探していた彼の根性と探求者の姿勢は)これって、勲章ですよ……。

 むしろひょんなことから古文書を手に入れちゃってなんかごめん(・ω・`)。

 

 

「いやいや、結果オーライだから御使い様が謝ることは無いよ。むしろオイラの方が御使い様に感謝したいくらいなんだから、そう気に病むことなんてないよ」

 

 

 お、おう。そう言ってもらえるとありがたいな……。

 

 

「御使い様が聞きたいことはこんな感じかな?それで話変わるんだけど、御使い様にお願いがあるんだ」

 

 

 おっ、なんだお? 

 

 

「聞いた感じ御使い様もオイラも、“楽園”を探すという共通の目的があるんだ。……それでなんだけど、オイラを御使い様の旅に連れて行ってもらえないかな?」

 

 

 うん? 何だそんなことか。それなら別に構わないし、むしろ俺もそのことを提案しようかと思っていたから、こっちとしては願ったり叶ったりなんだが。

 

 

「本当!? それなら助かるよ!!」

 

 

 おおう凄い喜びようだな。まぁ(長年探していた夢が叶いそうになるからそう喜ぶのも)多少はね?

 

…まぁなんだ、これから共に行動する以上、こっちの目的の都合で君に凄く苦労を掛けるかもしれないが、とりまよろしくお願いするゾ。

 

 

「それを言うならこちらこそって話だよ。もしかしたら御使い様にしか出来ないことを頼むかもしれないし、これはお互い様ってなるかもね。……そういえば思わぬ事実で話が盛り上がったけど、オイラ一応重症の身で寝てたんだよね?こうして無事に目覚めた事実を一緒に救助活動してくれたサルカズの傭兵さん達にこのこと伝えなくていいの?」

 

あっ、そっかぁ……(池沼)、話が盛り上がる余りすっかり忘れてたゾ…。ヴィト君が目を覚ましたことを皆に伝えないとな。

 

――ここで待機する前に確かマドちゃん達、普段はブリッジにいるって言ってたな。とりまそこに行ってみるとしますかね、ほら行くどー。

 

 

「りょーかい…って御使い様、体大きいからドアとか通路に思いっきり引っかかりそうになってるけど大丈夫なの?」

 

 

大丈夫だ、問題無い(キリッ)。

 

……本音を言うと狭くて敵わんけどな。うーん、ここは疲れるけど消失(ロスト)使って一気にブリッジまで行くとするか。つーわけでちょいと失礼。

 

「えっ、ちょ――」

 

それではヴィト君を脇に抱えてブリッジへ、ポップ、ステップ、ジャーンプ!!

 

 

 

 

 

ヴィトが驚きの声を上げる間もなく、セツとヴィトの身体はワームスフィアに包まれる。ワームスフィアが二人の全身を包むと同時に消失したころには、部屋には誰も居なくなってた。

 

 

 




2021/12/31:お詫〇び

話の展開上、流れや内容などをリテイクさせていただきました。ボルガ博士、お許しください!(チャー研並感)



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第17話 道標 ~ドゥリン~②

まず一言、長くなってしまいすいませんでしたぁ!
理由は仕事仕事モチベ仕事ゲーム仕事奇稿と言うくっそどうしようもないことが満載です。おまけに話の展開上前話のリテイクもしてたし、色々とミスったゾ。
ぶっちゃけ今後も同じことが起きるのでしょうが、こっそりこそこそ~(ロープちゃん並感)で続けられるようしていきます。


前書きはこれくらいにしてはい、よーいスタート(棒読み)




「隊長、救助した奴らと話をつけてきたぞ。物資の配分はついてはこの紙の内容通りだ。あと、後は今のところ彼らも俺達と共にカズデルに向かうことを考えてるそうだ」

 

「ああ、ありがとう。……彼らとの話を任せてしまってすまない、レイアーム」

 

「気にするな。隊長が人不足な力仕事をカバーしてる以上、代役として副隊長の俺が交渉人として立つのは当然だ。それにこういう話し合いに関しては人生経験が長い俺に向いてるからな」

 

 輸送艦のブリッジにて、そこではマドロックと部下のレイアームが話し合っていた。研究場に囚われていた人達の救助後、マドロック小隊は不安な心境にいた彼らをどうにか落ち着かせることに尽力していた。最初はサルカズという理由で警戒はされていたが、しばらくしてこちらの誠意が伝わったおかげかほとんどの者はマドロック達を信用して指示に従うようになっていった。

 

「だけどまぁ、しばらくして大なり小なりにも問題が出てるのも事実だな。とは言え、大抵のはどうにかなるんだ、だが──」

 

「セツの、彼による同化での治療か……」

 

「ああ、今こそ落ち着いてはいるが心の中では燻ぶらせてるんだろう。……けどあの時は人命に関わってる以上、金ぴかが行動しなきゃあの感染者は亡くなっていたのは事実だったしな」

 

 レイアームの言葉にマドロックはあの時のことを振り返る。

 

 救助活動中に緊急事態とは言え、セツがあの重篤な感染者に対して公然とその場で治療をし、その様子を救助民達は見てしまった。不治の病である鉱石病が治るという在り得ない現象に、彼らが驚くのは無理もない。

 

 

 治療に関しては無事に終えることが出来た。身体に再び源石結晶が生え出したにも関わらず、セツは目の前の命を救えたことを自分のように嬉しく安堵していた姿は未だ脳裏に焼き付いている。

 

 けれど目の前の命を救おうとする善き行為であるはずのそれが、さらなる問題が起きる切っ掛けになりえてしまうとは皮肉なものでしかない。

 

 

 セツの同化を目の当たりにした救助民達はなりふり構わず我先に彼の元へと向かおうとしていたのをマドロック達は覚えている。彼らも治療を受けたいと思っての行動なのは分かっているが、もしあのまま通せば疲労している彼に殺到するのは目に見えて明らかだった。先程の同化で満身創痍な彼を無理させないために逸る気持ちでセツに向かう彼らを私達は食い止め、セツに関する事情を説明した。

 

 

「幸いだったのがあいつらのまとめ役が話の分かる奴だったことか。金ぴかの容態の異変と、あいつから聞いた同化の仕組みを伝えたら、快く諫めるのを協力してくれた。おかげで今のところは暴動になるのを防げている、が──」

 

「それも時間の問題、か……」

 

 マドロックもレイアームも、彼らが抱く心情が分からないわけではない。今はまとめ役の言葉に従ってはいるが、救助された感染者も心の中では鉱石病を治してもらいたいと。

 

 不治の病である鉱石病を治せるのを知って平静を保てる感染者は、果たしてどれだけいるのだろうか?自分達はその代償を知っているからどうにか理性で抑えているが、それでもと望むのが普通だ。本来ならそのまとめ役の者も話を聞いた上で彼らと同じ様に動いてもおかしくはなかった。

 

 理不尽な理由で迫害され日夜、命の脅威にさらされながら生活する苦しい日々を送る感染者。その原因を取り除けるのなら僅かな望みに縋って鉱石病を治療して欲しいと思うのは悪いことなのか?誰もそれを咎める権利は無く、咎められる謂れも無いはずだ。

 

 そしておそらく、セツというあのお人好しは快く引き受けるのだろうと二人は考える。相手が性根の腐った悪人でない限りは目の前の命を救おうと動く彼の奮闘する姿に、マドロック達は短い期間で垣間見た彼の善性を理解していた。

 

 しかしそのような考えが思い浮かぶと同時に脳裏に浮かび上がるのは、結晶が身体の内側から突出しているあの痛々しい彼の姿。彼に頼るということは、鉱石病を彼にただ押し付けてるだけではないのだろうかと思ってしまう。

 

 

 セツにとって、鉱石病はなんの脅威でもないのだろう。実際に彼が源石を同化した後に出来た右肩の結晶は、数日後には次第に小さくなり消失していった。全身を蝕んでしまうほどの膨大な源石の量でない限り、源石は消化するように同化してしまう力が彼にはあるのだろう。

 

 だけど源石を同化する度に、結晶が内側から身体を突き破られる痛みを彼は受けている。あれだけ大きな結晶による痛みを一回ならまだしも、何回も味わうとなれば痛みに怖れて他人のために同化(ちりょう)することなんてしなくなる。苦痛に喜ぶマゾヒズムではない限りそれが当然だろう。

 

 けれどセツはそういった趣味趣向は無く、同化の代償も承知の上で、快く感染者を同化(ちりょう)している。それはもう優しさを超えて、ある種の自己犠牲に近い。

 

 

「……本当に、自分達は無力で、やるせないものだな」

 

 

 自らの危険を冒してまで関係無い他人である自分達を助けてくれた。そんな恩人であるセツに対して、マドロックは何もしてやれないことにただ己の無力さを嘆きながら呟いていた。その瞬間──

 

 

 

 ──ズシィィィン!!!

 

「「!!?」」

 

 

 ブリッジ内の突如として起きた重みのある振動と音に二人が振り向くと、そこには外套を纏った大きな何かが彼らの目に映っていた。

 

 

『ぬわぁぁん疲れたもぉ~ん。目的地へたどり着くのに途中で別の場所にワープするとか、(消失(ロスト)は)練習しないと駄目だって、はっきりわかんだね』

 

「──セツ!?どうしてここに!?」

 

『あっ、マドちゃん。それにレイニキもオッスオッス。ちょいと用があったんでワープして次元の壁超えてきたゾ』

 

「いやそんな軽いノリで次元の壁超えてくんじゃねぇ!?……というかワープじみたことが出来るとか聞いてないぞ」

 

 何とも間の抜けたクッソ情けない声と共に、そこには外套を羽織った存在_セツが脇に何かを抱え込みながらこちらに手を振っていた。

 

『ままそう怒んないで。消失(ロスト)について秘密にしていたのは悪かったけど、奥の手として隠していたのと、意外とこれエネルギーの消費が激しくて疲れるんだよね。まぁ今回は通路での移動だと狭くて遅いし、すれ違った人の邪魔になりそうだと考慮したから使用するに至ったんだけど……まさかワープ先間違えて倉庫に行ったり外に出るとは思わなかった。後で練習しなきゃ……(使命感)』

 

「あぁうん、とりあえずお前が非常識な存在(バカ)だってのが分かったから、な?」

 

『なんでや!?確かに(見た目的な意味で)異形で非常識な存在だけど、中身はしっかりとした常識人だからな?』

 

「常識……人?」

 

『……え、待って?マドちゃん何でそんな疑問符出すの?……あ、ちょっと目を逸らさないで。心は硝子やからそんなことされると俺泣いちゃうゾ……』

 

「……そういえば、何か用があると言っていたが……?」

 

『あっ、そうそう。ここに来た理由なんだけど、実はあの時同化で治療した患者_ヴィト君が目を覚ましたんだよ。それで彼の挨拶も兼ねてここに連れてき──―ん?』

 

 レイアームから非常識認定され、マドロックもそれを否定してくれない事実に悲しくなり、不貞腐れて指で床をイジイジし始めるセツ。その後マドロックの一言に自分がここに来た理由を思い出すと同時に床を弄るのをやめ、早速その理由を話そうと脇に抱えていた少年を見やると、どうも彼の様子がおかしいとセツは気づいた。

 

「う、うぅ……」

 

『え、ヴィト君どうした?さっきまで元気だったのに……?』

 

「──まさか、鉱石病が再発したんじゃ……!?」

 

『いや、それはありえない。あの時きちんと同化したはずなんだが……?』

 

「み、御使……いさ……ま……」

 

 レイアームの一言にセツは否定するも少年の急変には気が気でなくのは確かで、陽気な声色から真剣さを滲ませていく。万が一にとセツはもう一度同化による治療を試みようとする。

 

 すると少年が苦しそうな呻き声をあげながらもたどたどしく言葉を紡ぎ合わせ、何かを伝えようとしていた。全員が彼の言葉を一句聞き逃さないよう耳に神経を集中させる。

 

 

「…………うっ、もうだめ。オイ……ラ……吐きそう……」

 

『えっ?ちょ、待っ──』

 

 オロロロロr────!!

 

 この先の展開に気づいたセツが待ったを掛けようとするも時すでに遅く、少年がリバース(意味深)をし始め、吐瀉物が飛び散る音がブリッジ内に響き渡った。

 

 そしてそれをモロに受けたクッソ憐れな犠牲者はどこぞの課長みたいな甲高いフェリーン声で阿鼻叫喚な悲鳴を上げ、ブリッジから響き渡ったとかなんとか。

 

 

 

 

 

 やぁみんな、合法ショタのリバース(意味深)という一部の界隈にとってご褒美のようなものをモロに受けたフェストゥムのせっくんだ。現在マドちゃん達に色々と経緯とかを諸々説明した後、ヴィト君から謝罪を受けています。

 

 ぶっちゃけ吐いた彼には全くの非は無く、むしろ今回の原因は俺ですハイ。そもそもヴィト君が不調だった原因なんだが、俺の消失(ロスト)によるワープの移動で酔ったということ。誰かと一緒に消失(ロスト)を使ってワープしたことが無かったとは言え、そこらへんの配慮を欠けていたのは事実なので、どう足掻いても俺が悪いです本当にry。

 

 

 ──とりまヴィト君、そんなに落ち込まなくていいから(良心)。今回に関しては全面的に俺のミスだし、むしろヴィト君が鉱石病を再発してないことが分かって安心したゾ。外套は犠牲になったけど洗濯すればいいし、これくらい誤差だよ誤差。

 

 

「うぅ……、すいません御使い様」

 

「というか経緯を聞いてる俺達でも明らかに金ぴかの自業自得以外に何も無いだろうよ」

 

 

 レイニキのさりげない辛辣な言葉に全俺が涙した。否定したくとも出来なくて悔しい……ビクンビクン。

 

 それはともかくほれヴィト君、マドちゃん達にお礼の挨拶するんじゃなかったっけ?

 

「あっ、そうだそうだ。サルカズの傭兵さん、この度は助けてくれてありがとな!オイラはドゥリン族のヴィトって言うんだ」

 

「ああ。私はマドロック、傭兵の長として率いている。……あの時、君の身体は酷いものだったが、こうして無事でいられて何よりだ」

 

「へへ、確かにオイラも死ぬかと思ったけど、御使い様のお陰で助かったんだ」

 

「……なぁ、ところでボウズは何で金ぴかのことを御使い様って呼んでんだ?」

 

 あっ、レイニキ。それは彼が俺の探していたドゥリン族のある一族の末の末裔で、かつてフェストゥムと暮らしていた一族の末裔なんだって。それで彼らにとってフェストゥムは崇拝する対象なもんだってよ。

 

「ほーん……、まぁ確かに金ぴかって奉られても仕方ないくらいに無茶苦茶なことしてるしな……常識ねぇけど」

 

 常識無いのをいじるのはもうやめてさしすせそ。こちとら異世界転生人なんだゾ(意味不明な文句)

 

 ──まぁとにかくおかげで俺は探し求めていたのドゥリン族であるヴィト君がここで見つかったという訳だ。そんでこれ以降は共通の目的である“楽園”を探すために、今後は彼と一緒に旅することになったんだお。

 

「そうか……。そうなると二人はすぐにここから旅立つのか?」

 

 あーマドちゃん、それなんだが…。

 

「……実は御使い様が持ってた手がかりである古文書がさ、相当古くてかつ劣化が激しんだ。流石にこの状態だと書かれてる文字を読めるオイラでも読むのに時間がかかりそうなんだ」

 

「……つまり、どういうことだ?」

 

 レイニキ、ぶっちゃけると俺らは今ここから旅立つにも大きな問題があるんだ。

 理由の一つはこのまま旅しても目的地にたどり着けないことだ。今は古文書とそれを解読出来る人という手がかりがある。けれど場所の目処は特定出来てないのでどこにあるかは分かっていない。何も手がかりも無い前まではともかく、手がかりが揃っている今で無暗に行き当たりで旅するのは時間と労力が勿体無さ過ぎる。旅してる間に偶然見つかるなんてGO運なんてそう何度も起きない物だ。

 

 そして次の理由が重要で、ヴィト君の安全が最優先であることだ。俺達の目的を達成するにはどうしても彼の力が必要になるので、彼が生存してなければならない。

 

 けれど今のヴィト君は長く囚われていたから体力も著しく落ちている。体調はあの時よりも多少マシになったとは言え、満足に回復しきってない今の状態じゃ無暗な長旅は逆に彼の危険にさらしちまう。

 それに旅の準備も十分に出来ていないのも痛スギィ!俺単体ならそんな準備はフヨウラ!だけど、ヴィト君はそうでもないからね、仕方ないね。

 

 

「──それでここに来るまでの途中で御使い様と話して決めたんだけど…………。マドロックさん、しばらくの間オイラ達も皆さんに同行させてほしいなってことなんだ」

 

「「なっ!?」」

 

 まぁ驚くよねそこは。本来だったら俺とマドちゃん達はここでお別れしてドゥリン族を探す旅を続ける予定だったからさ。けど俺もまさかここで探し求めていた人物に会えたというGO運によって手間が省けた幸運と、先ほどの問題が発生したおかげで急遽オリチャーを発動せざるを得なくなったんだ。

 

 そんでもって“楽園”の場所を特定するにも旅の準備を行うにも安全な場所が必要になる。それで最も安全な場所が──―

 

 

「この輸送艦、か……」

 

(言いたいこと理解してくれて)やりますねぇ!雨風も凌げて安心して落ち着ける場所なんて、艦から離れたこの広大な荒野では無いにほぼ等しい。一応地面に穴掘って地下シェルターでやり過ごそうってヴィト君の案もあったし出来なくは無いけど、モグラ生活は下手すると地震系の天災でお陀仏になり兼ねないからガチでどうにもならない時の最終手段にするべきだと判断した。

 

 てなわけですぐにここから出ていくよりもここに居れるなら、少し時間をかけてここにいた方がこちらの都合上まだマシってわけだよ。幸いにも俺とヴィト君は大事故(ガバ)を起こしてでも急いでるわけじゃない。早いことに越したことは無いが、物事は急ガバ回れで行った方が大抵良い方向に向かうってそれ一番言われてるから。

 

 ──そんでもってしばらくの間、俺達もここに相乗りさせてくださいオナシャスセンセンシャル!

 

 

「……共に行くことに関しては私は構わない。だがセツ、私達は現在カズデルに向かっている。それは君達の目的地から遠く離れてしまう可能性もあるが……それでもいいのか?」

 

 うん、おかのした。あくまで俺達は相乗りさせてもらってる身だからね、この艦の行き先に関して俺達は口を出さないことは約束するよ。

 

 

「すまない、そこまで気を使ってもらって……」

 

 

 いいのいいの。マドちゃん達が大変なのをこちらが無理に乗りかかってきてるもんだから、むしろ俺達は文句を言われてもおかしくない立場なんだ。とにかく受け入れてくれて助かったゾ。

 

 

 ……あっ、そうだ(唐突)。しばらくここに居候する以上、何か出来ることあれば手伝うゾ。なんかそちらの状況は大変そうだし、人手が多い方が良いんじゃないか?

 

「……良いのか?確かに我々には有難い提案なのだが……?」

 

 流石に休めないほどの過度な労働は勘弁願いたいが、そうでもなければ問題無い。炊事洗濯子守りに力仕事なんでもござれだ。

 

「うん、オイラも御使い様の意見に異論は無いよ。それにオイラは機械の扱いは得意だし、この艦のメンテナンスを行うことも出来るから皆さんの役に立てると思うよ?」

 

「──普通ならあまりにも上手い話過ぎて警戒するが……まぁ俺は信じてもいいと思うぜ。隊長はどうだ?」

 

「私も異論は無い。むしろ彼らの力を借りれるなら心強いものだ」

 

 お二人からこちらに対する信頼が見える見える……。やっぱ人助けは自分の身の為になるって、はっきりわかんだ「……ただ」──ん?

 

「──今この艦では色々な問題を抱えていて……その中でも特に大きい問題でセツの力が必要なことがある。

 

 

……だからセツ、協力するかはこの話を聞いてから慎重に決めて欲しい。その上で私達は君の意志を尊重したい」

 

 

 

 

 

 

(──マドロック、セツに救助民の実情を説明中)

 

 

 

 

 

 ──なるほど、ヴィト君の同化(ちりょう)の後でそんなことがあったのか。とゆーかマドちゃん達に結構迷惑をかけたようですまんかった。

 

 にしてもそっかー、そんなこと起きちまったのかー……。

 

「なぁ金ぴか、お前は救助民(かれら)のことを怒ってないのか…?」

 

 ――怒る?何でさ?

 

 

 確かに彼らの行動は乱暴なのかもしれないが、彼らの立場からすれば鉱石病を治してもらいたい純粋な思いで必死だったんだろう?それをどう怒れって言うんだ。むしろ彼らに対して誘惑に近い希望を見せた俺に責任があるよ。

 

「…よくそんな達観とした考えが出来るな。お前の立場的に普通なら怒るのが当然だと思うが…」

 

 レイニキの疑問は正しいし、俺も別に彼らの行動について何とも思ってないわけじゃない。

 

…けれど今回は彼らの真意が分かる以上は怒る気にはなれないし、怒りは自他善悪問わずに誰かを傷つけるだけの結果にしか生み出さない。怒るくらいなら、皆にとって良い結果につながる方法を考えた方がずっと得だゾ。

 

 ──さて、と。マドちゃん、救助民に関してだが全面的に俺に任せてもらっていいか?

 

「っ!? セツ、それは……」

 

 マドちゃんが言いたいことは分かってる。同化(ちりょう)すれば代償として俺が傷つくのは俺が一番よく知ってる。俺は別にドМじゃないんで痛いのは普通に嫌だお。

 

 ──けどまぁ、誰かが苦しんでるのを無視するのは俺の性分じゃないしな。しかもそれが現状俺でしか出来ないのならなおさらだ。

 

…関係が薄い他人も助けようなんてこの厳しい大地に生きる人では自殺に等しい甘い考えだけど、生憎俺は人間や先民じゃないしな。人外なりに出来ることをやってやるだけさ。

 

「――すまない、私達が力及ばないためにこのような選択をさせて……」

 

 謝るなって、マドちゃん達が俺のために気遣ってくれたのは分かったし、感謝こそあれど恨む気持ちは全く無い。それに最終的に決めたのは俺だからそっちがもう気に病む必要はないんだ。

 

 それに状況を把握したおかげでこっちもそれなりに考えがある。後は俺やマドちゃん達、そして救助民達が上手く折り合いがつくようやるだけ、なるようになるさ。

 

 

 

 

 ……一先ず救助民に関する問題に対する俺の答えはこんなもんかね。まぁ色々と話が長くなったが他に特に問題無ければ改めて、しばらくの間俺達はここでお世話になりたい。それでいいかい?

 

 

「あぁ。マドロック小隊、君達の意志を尊重し、君達を歓迎しよう。一時の間ではあるが、よろしく頼む」

 

 

――こちらこそ、どれくらい共にいられるかは分からないけどよろしく頼むわ。

 

 

 

 

 問答の末に、重装備のサルカズとフェストゥムが互いに握手を交わす。

 

 

 

 

それは果たさんとする各々の目的のため。

 

 

そしてこの残酷なほどに苛烈な大地の上で足掻いて生きるために、彼らは手を取り合うことを選び取ったのだ。




これで2章はあと幕間何個かで完結する予定。しかしキャラ設定みたいな奴結局書いてないしほんとどないしようか。

それとファフナー映画は公開日の次の日でしっかりと見に行ってきました。ビヨンド終わっちまった……。感想はホ、ホ、ホ、ホアッ―ー!!(とても良かった)。
じゃけんまだ見てない人は円盤で見ましょうね~。なお見るなら作品の最初(一期)の方から見る方が方がおすすめだゾ。

色々ありましたが今年ももう終わりだぁ!それではよいお年を


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