後ろの席の二宮飛鳥 (断花葵)
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キミとボクの境界線
1話 出会いは最悪


第九回シンデレラガール総選挙22位だ!
もっとアグニカポイントを集めなければ!


 唐突だけど皆は春が好きか?俺は大好き。

 日差しはポカポカしているし桜も綺麗。なにより出会いの季節でもあるからな。

 俺自身友達が少ないから新しい友達ができるのも嬉しい。

 ……まあ一人を除いてだけど。

 

 ♦

 

 俺があいつに会ったのは丁度一年前。

 俺はピッカピカの中学一年生で入学式が楽しみだった。

 ……まあそのおかげで寝坊したんだけどね。

 

 

 「うおおおおお!間に合え!」

 

 いけない~遅刻遅刻!

 俺、新崎速人。今日は中学の入学式なのに寝坊しちゃったの!

 そんなテンプレなセリフを想像しつつ通学路を一生懸命に走っていた。

 ……今考えると気持ち悪いな。

 

 何で寝坊したかというと……楽しみで寝れなかったから。

 ……おいお前!今笑ったな!

 てゆうかそんな事言ってる場合じゃねえ!

 パンを食べながらもはやボルト並みのスピードを出した。

 νガンダムは伊達じゃない!

 

 

 お気づきの方も多いと思うが皆さんは車は急には止まれないという言葉を知っているだろうか。

 スピードを出している車は突然の事態に対応できないという事だけど……

 

 一直線をダッシュで走ってた俺は横道から出てきた人に気づかずそのまま、

 

 『バァーン!!』

 

 いやJ〇JOじゃないけど。

 ……まあこうなるわな。

 もう漫画の世界じゃんと言わんばかりのお馴染みの曲がり角で衝突。

 

 「痛ったあ!すみません大丈夫です……か?」

 

 ぶつかった相手に謝る。

 こちらが悪いのは分かってたしもう中学生なんだから自分から謝罪しなくちゃな!

 曲がり角の方向を見るとそこには……

 

 「Oh……」

 

 相手は女だった。それもかなりの美人でしかも俺と同じ中学の制服。

 丁度いいタイミングなのか俺に対してぶつかったという形で相手は尻餅を着いただけだった。

 マジで助かった……俺がぶつかってたら死人が出てた。

 

 

 またまた此処でお気づきの方はいるだろう。

 ……勘のいいガキは嫌いだよ。

 この場面、構図的には相手が尻餅を着いた状態を俺が上から覗いている。そして相手は女。

 何が言いたいかというと……

 

 「……縞々か」

 

 「……!!」

 

 こうなるよね。

 見えてしまった……パンツが。

 女はすぐさま立ち上がるとキッと俺を睨みつけて、

 

 「……地獄に落ちろ」

 

 女はその場を立ち去って行った。

 ……ってちょっと待てい!なんだあの女は!確かに俺が悪いけど地獄に落ちろはないだろ!

 くそったれ朝から最悪だ!

 

 ♦

 

 「はあ……」

 

 あの後無事に入学式に間に合った。遅刻ギリギリだったけど。

 入学式が終わると教室に案内された。

 ここから俺の薔薇色の中学生活が始まるんだ!

 ウキウキした気分で指定された席に座ると、

 

 「……最悪だ」

 

 なんと後ろの席には今朝の女が。

 怖くて後ろを向けないがズキズキとした視線が刺さっているのが分かる。

 縮こまっていると自己紹介が始まったのか他の奴がしゃべり始めた。

 それをボケっと聞いてると俺の番が来た。

 

 「えっと……新崎速人です。こんな見た目ですが外国人じゃなくてクォーターです。趣味は……読書とか、よろしくお願いします」

 

 そう、自己紹介でも言ったが俺はクォーターだ。

 先祖返りだか何かで祖母ちゃんの血が濃いらしい。

 だから見た目がお前は外国人かと言わんばかりの金髪だ。

 それに親父譲りの鋭い目。これじゃあどこぞのギャングスターだからな!

 

 俺の自己紹介が終わると次はあの女の番だった。

 

 「……二宮飛鳥」

 

 それだけ言うと椅子に座る。

 ……え?これだけかよ。

 他の奴らもそう思ったのかザワザワし始めた。

 先生がそれを止めるがその状況に我関せずといった様子であいつは空を見ていた。

 

 ♦

 

 自己紹介が終わると一時間目は自由なのか雑談の時間になった。

 ……俺も誰かに話し掛けるか。

 

 誰かいないかと周りを見渡すとあら不思議。誰も俺とあいつに話し掛けようとしない。

 あいつはまだ分かる。幾ら美人だと言ってもあれがあった後だからなあ……

 でも俺に話しかけないのは何でだ!

 このままだと友達出来ないからな……あいつと話すか。

 まあ俺は大人だし!女には優しくしなきゃな!

 

 「よう、さっきはすまんかった」

 

 「五月蠅いよ変態」

 

 後ろを振り返り二宮という奴に話しかけるが第一声がこれと来たか。

 ……前言撤回。あいつ許さねえ!

 

 「はあ?こっちが悪かったがお前だって悪いからな!普通大通りに出るなら人が来ないか見るだろ!」

 

 するとあいつはため息を吐くと口を開いた。

 

 「……それが何だい?走る君の方が悪いだろう」

 

 売り言葉に買い言葉。

 此処から醜い言い争いが続く。

 

 「んだとコラァ!バーカバーカ!」

 

 「……君は幼稚な言葉しか言えないのか」

 

 「そういうお前は大人ぶりやがって!……だから下着も生意気なんだよ」

 

 「っ……へえ、変態がようやく白状したね。警察に連絡しておこう」

 

 「その前に俺が叩き潰してやろうか?」

 

 俺のこの手が真っ赤に燃えるぜ……

 立ち上がりファイティングポーズをとると後ろから肩を叩かれる。

 

 「んだよ邪魔しないでくれ!こいつは俺が倒すからな……」

 

 「へえ、じゃあその前に俺が止めなきゃな」

 

 ……嫌な予感がする。

 そっと振り返るとそこには鬼の形相の先生が。

 おっとこれはまずい。

 

 「新崎……お前後で生徒指導室な」

 

 「はあ!?なんで俺だけ「いいな?」うっす……」

 

 不幸だ……

 

 ♦

 

 ……とまあこれが俺と二宮の出会いだ。

 最初は険悪だったけどなんやかんやあって友達になった。その話はこれが続いたらな。

 

 新しい教室に入る。うちの学校はクラス表を張らないで自分のクラスだけ事前に通知されるタイプだ。

 ああ神様!あいつと同じクラスは嫌だ、スリザリンは嫌だ!

 さて、茶番もここまでにして今年はどんな奴らがいるかなっと!

 

 勢いよく扉を開けるとそこには……

 

 「やあ速人。また同じクラスだね。……これも運命というやつかな」

 

 「勘弁してくれよ……」

 

 また後ろの席かよ二宮ァ!




 『新崎速人』その見た目から将来は某イタリアギャングのボスを約束された。こう見えてバリバリのオタク系。

 『二宮飛鳥』この頃は自分を「痛いヤツ」と称したりエクステは付けていなかった。だが中一にして中二病の片鱗が見えるため役満手前の状態。作者はそんな貴方が大好きです。

 『νガンダムは伊達じゃない!』 石ころを押し出すために宿敵も道具にする奴。

 『バァーン!!』 君がディ〇・ブランドーだね。

 『勘のいいガキは嫌いだよ』 胸糞注意。作者はお前が嫌いだよ。

 『地獄に落ちろ』 某赤い守護者の台詞。日常でよく使う言葉第21位。

 『……最悪だ』 天才物理学者。

 『俺のこの手が真っ赤に燃える!』 爆熱ゴッッドフィンガァァァ!

 『不幸だ……』 主人公はツンツン頭だから是非もないよネ!

 『スリザリンは嫌だ』 結局自分が行きたい所に行けるのらしい。

 『勘弁してくれよ……』 美嘉ァ!

 あとがき――
 ちょっと別の作品が行き詰って……つい手を出してしまった。
 許してください!何でもしますから!(何でもするとは言っていない)
 とりあえず話づくりや文構成の練習をしたいと思います。
 モチベ維持の為にお気に入り、評価下さい!何でもし((
 


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2話 二年目になるとこうなる

まさかのUAが一日にして1000越えとは……
これが二宮効果なのか。


 「で?またお前と同じクラスか……」

 

 「そういう事になるね。これはボクたちが運命共同体というわけだが……」

 

 「たかが二年同じクラスになっただけでんなこと言うな」

 

 本当にこいつは……

 

 ホームルームが終わって後ろの二宮と話す。

 二年生からは特に始業式でやる事はないからな。大体顔は分かっているし。

 いつもと変わらない風景だったが……一つだけ違うものがあった。

 

 「そういやエクステ?だっけ。前のとは違うな」

 

 「ああ、仕事でね。とは言えもはや趣味の一環だけど」

 

 エクステとか校則違反乙!と思ったそこの貴方。詐欺罪と器物損壊罪で逮捕します!理由はお分かりですね?

 この中学は比較的自由だからいいんだよ。……多分。

 

 エクステに視線を合わせる。いつ見ても凄い色だな……

 二宮が言う仕事とは何かというとこいつは少し前からアイドルをやっている。

 もう一度言おう。アイドルだ。

 地下アイドルとかV〇UBERとかそんなちゃちなもんじゃあねえ(他意はない)あの346プロ所属のアイドルだ。知ったのはつい最近だけど。

 

 「エクステって要は偽物の髪だろ?よくできてんな……」

 

 「そうだね。このエクステは化学繊維で作られているけど本物に近い素材でできているんだ。」

 

 「へえ……」

 

 そんな風に言われるとどんなものか気になるな……

 

 「なあ、触ってみてもいいか?」

 

 「駄目だ」

 

 dsyn-分かっていたけど。

 こいつはエクステを他人に触らせる事が嫌いだ。理由は分からんが。

 

 俺がショックだったのか二宮はため息を吐くと、

 

 「……まあ、キミがどうしてもというのなら話は別だけど」

 

 「え、いいの?」

 

 「……二度も言わせないでくれ」

 

 やったぜ。

 そういう事なら早速触ってみよう。

 

 「じゃあ……失礼します」

 

 「ああ……なるべく早くしてくれ……」

 

 では、推して参る。

 

 机に乗り出して二宮のエクステを触る。ほう……たいしたものですね。

 初めて触ったそれはサラサラしていて本物の髪の毛と区別がつかないほど似ていた。

 まじでこれ人工物かよ。本物そっくりじゃん。

 

 「……なあ、もういいだろう」

 

 「まだだ」

 

 試しに手櫛を通してみる。すると抵抗なく俺の指先を髪を通していく。

 時代はここまで来たのか……

 ……やっぱり実物と比べたいな。

 

 「ちょっとお前の髪も触らしてくれ」

 

 「それは駄目……っなあ!」

 

 返事も聞かず更に近寄ると二宮自身の髪を撫でる。

 エクステと変わらずサラサラとしているが女子特有かは分からないが柔らかさも感じる。

 あれやばいこれ何か変な扉開きそう。

 

 「この……いい加減にしないか!」

 

「ひでぶ!」

 

 二宮の叫びと同時に頬に鋭い痛みが。

 ぶったね!親父にもぶたれたことないのに!

 あいつの方を向くといつもは白い肌が真っ赤になっていた。

 

 「何しやがるお前!」

 

 「……周りを見てみろ」

 

 消えそうな声でそう言った。

 はあ?周りを見ろって言われても……おっふ。

 

 そういえば忘れてた……まだホームルームが終わっただけだったな。

 教室内には他の生徒がいるのは当たり前だ。

 そんな俺達のやり取りを男子は恨めしそうに、女子はキャーキャー言いながら騒いでいた。

 

 『新崎……!!!』

 

 クラスの男共から怨念が籠った叫びが聞こえた。

 待てお前ら。今さっき知り合ったばっかだろ!なんで団結してるんだ!

 

 『ヒャッハー!汚物は消毒だ!』

 

 畜生……ここは兎に角あれをやるしかない。

 

 「逃げるんだよお!」

 

 スモーキー!

 

 ♦

 

 「散々な目に遭った……」

 

 あれから担任が来るまでクラスの男子と追いかけっこをしてた。

 俺以外の全員と絆が深まったようで学校が終わった後カラオケに行ったそうだ。……俺を除いて。

 

 「あーあ、また友達作れなかったわ」

 

 「残念だったね」

 

 「元凶が何を仰る」

 

 本当にお前のせいだからな。

 睨みつけてると二宮は少し笑って、

 

 「いいじゃないか。ボクとキミは孤独を分かち合った仲なんだから」

 

 「それ理由になってないからな」

 

 全く……こいつちっとも反省してないな。

 二人並んで帰り道を歩くが……随分と周りの視線が痛い。

 

 「……なあ」

 

 「何だい?」

 

 「常々思っていたんだけどさ、お前アイドルだろ?俺と一緒に帰って平気なのか?」

 

 こいつアイドルだったわ。

 男と一緒に帰っていたら理由は何であれスキャンダルじゃないのか?

 

 「ああ……たとえ偶像という存在になっても誰も人の事なんて見向きもしないさ。キミだってそう思うだろ?」

 

 「いやまあそれはそうなんだけど……」

 

 良く分からないけど……まあヨシ!

 

 「でも……今日はレッスンの日だからね。キミとはここでお別れだ」

 

 「そっか、……終わったら()()()にいるのか?」

 

 「ああ、あの場所で待ってるよ」

 

 そう言うと二宮は大通りにある346プロダクションの本社へ入っていく。

 さてと……俺も一旦帰るか。

 

 ♦

 

 夜……といってもまだ20時ぐらいだけど。

 玄関の扉を開けるとまだ少し冬が残っているのかジャンパーを着ていても肌寒く感じた。

 

 「寒……」

 

 赤い革ジャンのチャックを締め直す。

 俺の日課……でもないけどあいつと出会ってから俺は時々夜の散歩をしている。

 同じ場所でも昼間とは違った世界。歩いている人も仕事帰りが多いのか下を向いている。

 程なく歩いていると目当ての場所にたどり着いた。

 

 「やあ、遅かったね」

 

 学校の屋上。

 裏口から校内に入って外付けの階段から侵入する。防犯カメラもこのルートには設置されていない。

 元々は俺のサボり場所だったがある日何故かこいつがいた。

 そこから俺とあいつの関係が始まったのだか……

 

 「で、今日は何かあったのか?」

 

 「特にはないさ……キミと話がしたかっただけだよ」

 

 珍しい。ここに来る時は大抵何かある事が多いんだけどな。

 

 「もしかして迷惑だったかい……?」

 

 「んなことねえよ」

 

 俺の態度が心配なのか寂しそうな表情をする二宮。

 そんな事一回も思ったことない。……いや最初は思っていたかも。

 ……もしかして今日のあれか?こいつ変な所で気にしやがって。

 

 「今日の事だったら心配すんなって。別に友達が居なくても何とかなるさ」

 

 「……うん」

 

 「それに……俺達は運命共同体だろ?」

 

 ……言ったそばから恥ずかしいなおい!

 

 照れた顔を隠すように「アーアー」と言いながら空を見上げる。

 こんなキャラじゃないのにな。

 

 「……キミはそういう奴だったな。……今も昔も」

 

 何を言ったか聞き取れなかったが同じく空を見上げる二宮。

 曇り一つ無い夜空。今日は満月だった。

 

 「月が綺麗だね。速人」

 

 「そうだな」

 

 月明かりが俺達を優しく包む。

 ふと彼女を見ると絵画から切り出した様に神秘的で、優しく微笑んでいた。

 

 ……やばい思わず見惚れてしまった。




『新崎速人』 一日目にして友達を作るどころかクラスの男子から目の敵にされた。しかし何で追いかけられたのか本当の意味で理解してない鈍感系男子。エクステを触れる事から彼女の好感度が高いことが判明した。

『二宮飛鳥』 最後の方に少しだけ勇気を出したが気付いて貰えず。少し主人公に対して依存してる節が見られる。薄い本が厚くなるな!

『クラスメイト』 主人公ズに対して様々な派閥があり、ゆ゛る゛さ゛ん゛!派と見守る派に分かれている。一応主人公ズの知り合いとして田村人志という人物がいるがそいつの出番はいつ来るのか……

『理由はお分かりですね?』 ワザップジョルノ。取り合えず汎用性は高い。

『やったぜ』 投稿者:変態糞土方

『ぶったね!』 その後の台詞も有名。19歳が殴った後に言う台詞じゃねえな。

『ヒャッハー!汚物は消毒だ!』一体いつからこの教室は世紀末になったのだろうか。

『逃げるんだよお!」 一体いつから1983年に(以下略

『ヨシ!』 分からないけど大丈夫な時に使える。これも汎用性高い。

『夜の散歩』 作者に物凄い影響を与えた空の境界から参考にした。

『夜の屋上』 警備がガバいのはご都合

『月が綺麗ですね』 これはググってくれ。

あとがき――
皆様見てくれてありがとうございます。
もはや感謝の極み、いや二重の極みです!
次回からは一話完結といった話になります。一応季節に合わせてやりたいなとは思っているので色々な案を下さい……

評価9をくれたオクスタン様、ありがとうございます!
是非皆さん感想、評価お願いします!今なら更新スピードが上がります(ガチ)


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3話 カラオケの曲選択は悩みがち

遅刻した!
お気に入りが30を超えました。ありがたやありがたや。


 時は流れて。

 今日は試験だったからいつもより早く終わった。

 こういう時は家に帰って寝るに限るな!

 

 いそいそと教科書をバックに仕舞う。

 ちゃんと持ち帰ってえらい!

 

 「なあ、今日は暇かい?」

 

 「暇じゃない」

 

 後ろから二宮が前のめりに倒れかかってきた。

 残念だったな。今日はもう用事が出来たんだよ!

 

 「そうか、今日は暇なんだな」

 

 「……なんで分かった」

 

 何やってんだ美嘉ァ!……っと別の人だったな。

 なんなのこいつ?もしかしてエスパー?

 

 「残念だけどもうエスパーは事務所にいるんだ」

 

 「まじかよ!?」

 

 やばいな346プロ。こいつもかなりの色物だし実は魔物の巣窟じゃないのか?

 ……まあアイドルはキャラ付け大事っていうからな。

 

 「で?なんか用事でもあるのか?」

 

 「今日はボクもオフの日だからね。何処かへ出歩こうじゃないか」

 

 珍しい。大体はレッスンだとかなんだでほぼ毎日忙しいんだけどな。

 

 「……拒否権はないんだろ」

 

 「勿論さ」

 

 「はいよ……お嬢様」

 

 バックを背負うと二宮の横に立つ。

 ……いつもの事だが視線が痛い。

 いや待てよ?何ならこいつらも誘えばいいじゃないのか?

 

 「なあ、折角だからクラスの奴らも誘おうぜ」

 

 その瞬間冷たい視線が一気に変わり男子から歓喜の声が。

 まあアイドルと遊べるならこうなるか。

 

 「嫌だ」

 

 何気ない二宮の一言が男子を傷つけた。

 ……これ俺が悪いの?

 

 「ほら、さっさと行くよ」

 

 打ちひしがれる男達をスルーし二宮は教室を出て行った。

 すまない……本当にすまない……

 

 その後を追うように着いていった。

 

 ♦

 

 学校を抜け出し中心街へ向かう。

 同じく試験だったのか昼の時間にも関わらず違う制服の人もチラホラと見かける。

 

 「それで何処に行くんだ」

 

 「そうだね、折角だからカラオケにしようじゃないか。キミも行きたがってただろう?」

 

 「帰る」

 

 なんで現役アイドルがいる前で歌わなきゃいけないんだ。唯の吊し上げだろ。

 それに俺が行きたいのは男友達とだ!

 帰らせて貰うぞ……って手を掴むな!

 

 「へえ……まさかキミがそっちの人だったとは。まあ理解はあるけど……」

 

 「いや違うから!是非とも二宮飛鳥様とカラオケ行きたいです!」

 

 「フッ、最初からそう言えばいいんだ」

 

 この速人様をコケにしやがって……

 やってやろうじゃないの!

 

 ……あ、手は掴んだままなのね。

 

 ♦

 

 「カラオケとか久しぶりだな……」

 

 あいつは別にいいと言っていたが念の為に俺が受付をした。

 ファンに特定されたら困るだろ。

 学校に出る前に渡した変装用の眼鏡もあまり好きじゃなかったみたいだし。

 ……本当にアイドルとしての自覚あるのか?

 

 受付を済ませると指定された部屋に入る。

 そこには先に準備を終わらせたのか二宮がソファに座ってた。

 ……はえーよホセ。

 同じく入り口近くの場所に座り込む。

 

 「……どうする?俺から歌うか?」

 

 トップバッターを決めるのは結構大事だからな。

 その流れで曲選択も変わるし。

 

 「……先にボクから歌おうか。その方がキミも楽だろう」

 

 いや全然楽じゃないけど。

 寧ろその後に続くとか不安まであるけど。

 

 「折角来たんだ。ボクの曲を歌おうじゃないか」

 

 「……まじで?」

 

 そう言ってマイクを持ち、立ち上がった。

 此処にこいつのファンが居たら泣き出すんじゃないのか?

 バレたら刺されそうだな……

 

 「それじゃあ唄おうか」

 

 

 『共鳴世界の存在論』

 

 

 二宮が歌い始める。

 正直曲の内容は難しい言葉が多くて理解できなかった。

 

 「叫び続ける。ボクは此処に居る」

 

 だけど俺には……とても哀しい曲に見えた。

 

 まるで誰かを待っている様に。

 誰かの救いを求めているかの様に。

 

 突然あの日を思い出した。

 まだ俺があいつとこんな仲じゃなかった頃。

 ……あの雨が降る日を。

 

 

 「……そんな哀しい顔してどうしたんだい?」

 

 いつの間にか曲が終わっていたのか二宮が顔を覗いてきた。

 愁いを帯びた表情が見える。

 

 「そんな心配しなくてもあの時の様にはならないよ」

 

 「……そっか」

 

 思い込みすぎだったな。

 ……俺も歌うか。

 

 スマホで調べながらタッチパネルを交互に見る。

 ……これにするか。

 

 立ち上がって歌う準備をする。

 あいつが魅せたんだ。俺もそれ相応にやらなきゃな。

 ……逝こうか。

 

 ♦

 

 「……死にたい」

 

 時間が来たので店から出る。

 空は茜色に染まっていて光が目に染みる。

 

 「……まさかキミがあんなに音痴だったとは」

 

 「悪かったな」

 

 そう、俺は音痴だったのだ。

 あまり上手ではないと思っていたが二宮が言うには地声はいいのに音程が壊滅的とのこと。

 ……アイドルが言うんだから本当の事なんだろうな。

 結局一曲歌い終わったら後は二宮が歌っているのを聴くのに徹していた。……もうカラオケ行くの辞める。

 

 「……次はいつ行こうか」

 

 「お前本気か」

 

 死体蹴りかな?

 今さっき下手なのが分かったのに一緒に行く奴が何処にいるんだ。

 ……下手で悪かったな!

 

 「いいじゃないか、ボクは他の奴とは違うんだ。それに……」

 

 「それに?」

 

 そう言うと並んで歩いてた所から目の前へ歩き出した。

 

 「ボクだって好きじゃない奴と行こうとは思わないさ」

 

 視線が交差する。

 

 「キミとだから行きたいんだ」

 

 逆光だからか、二宮の顔がハッキリと見えなかった。

 だけどその顔は……

 

 夕陽と同じ様に朱く染まっていた気がした。




『新崎速人』 コ〇ンもびっくりの音痴。終始気づかない鈍感野郎。過去に何かあったご様子。

『二宮飛鳥』 孤高の歌姫。今があるのは彼のおかげ。

『男子』 今回の被害者。

『えらい!』 肯定ペンギン。

『美嘉、エスパー』 どちらも同じ事務所のアイドル。彼女らに出番は来るのだろうか……

『すまない』 ドラゴン必ず殺すマン。作者はアポを観て推しになった。

『はえーよホセ』 「あいつ何やってんだ?!」

あとがき――
短い上に遅くなりました。
いやーバイトが重なって書く暇がなかったです。皆はコロナに気をつけろよ!
今回は少しだけ彼らの過去に触れました。
書こうとは思うんですがタイミングガガガ。
そこでアンケート形式にして決めてもらおうと思います。
これって銀魂方式だから時系列バラバラでも多分大丈夫。

さて、皆様此処まで見てくれてありがとうございます。
是非とも感想、評価の方よろしくお願いします。
お願いします何でもしますか((お馴染み


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4話 違う、そうじゃない

大変申し訳ございません!!!
遅れましたアアアアアアアア!


 「ああ……いい天気だ」

 

 思わず独り言が出てしまった。

 今は昼下がり。今日は一日中ずっと太陽が出ているらしい。

 こんな日は屋上に限るね。……まあ今は授業中なんだけど。

 いやだって数学だからな。あんなの何処で役に立つんだよ。

 

 ポケットからイヤホンを取り出し耳に付ける。

 すると両耳からジャカジャカとリズミカルな曲が流れ出した。あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~

 さてと、曲も決まった訳だしひと眠りしようかなっと。

 

 「此処にいたのかキミは」

 

 「!?!?……ってなんだお前か」

 

 目を閉じた瞬間、入り口から二宮の声がした。

 危ない危ない、まだあいつで良かった。……先生だったら説教確定だしな。

 それはそうと何でお前がいるんだ。

 

 「ボクだって不本意さ。先生にキミを連れて来いと言われたからね」

 

 「俺は行かないぞ」

 

 「それだと居残りだね。ボクには関係ないけど」

 

 「……行かないからな」

 

 例え教師相手だろうがもちろん俺は抵抗するで。

 ……居残りかぁ。

 

 「まあ、ボクも授業は好きじゃないからね。偶には逆らうのもアリかな」

 

 「お前も居残りだな」

 

 「ボクは此処では優等生として振舞っているからね。これぐらいは大目に見てくれるさ」

 

 「……そりゃそうかい」

 

 それは差別すぎませんかね。

 

 二宮が隣に座る。

 もう夏が近いのかこうしてると暑くてしょうがない。

 こいつがいるため配慮として右耳のイヤホンのみを外す。

 

 「……何を聴いているんだい?」

 

 「おん?えっと……今何だっけ」

 

 イヤホンから流れている曲が気になったのか二宮が訪ねてきた。

 スマホのスリープを解除する。

 画面が明るくなると出てきたのは……

 

 「あーこれだ。『Rockin'Emotion』って曲。適当に流してたけど結構好きだな」

 

 邦ロックとかしか聞かないし。

 その瞬間周りの温度が下がった気がしたが気にせず話を進める。

 

 「……他にも『Jet to the future』とかも結構いい感じだな。歌と演奏がマッチしてて」

 

 更に温度が下がる。……何で?今日比較的高い気温のはずなのに。

 恐る恐る原因の方を向くとそこには。

 

 「へえ……」

 

 ……なんか後ろに修羅が見えるんだけど。

 やばい。目が笑っていないこいつ。

 

 「あれだけアイドルに興味がないと言ってたキミが。まさか同じ事務所の人の曲を聴くなんて……どうしてだい?」

 

 「いや……えっと……」

 

 え?これアイドルの曲なの?

 いや知らないし!さっきも言ったけど適当に流してただけだから!

 というか最近のアイドルはこんな曲も歌うのね!

 

 二宮が俺を正面にして覆い被さってくる。

 ……この状態はまずいやつだ。

 

 そもそも俺はアイドルにあまり興味がない。

 何か恥ずかしいし。

 それもあって目の前にいるアイドルの曲すら聞こうとは思わなかった。

 その事をあいつはずっと気にしていたみたいだな。(他人事)

 

 「……何でボクの曲は聞かないのに他の奴の曲は聴くんだい?なあ……教えてくれないか。それとも何だい?ボクの事が嫌いなのか?哀しいなぁ……ボクはこんなにもキミの事を想っているのに」

 

 耳元から囁かれる。

 

 あ、これ終わった。

 言い訳しようにも目が狂気的で聞く耳も持たないのが分かる。

 迫りくる悪魔から逃げようとするが後ろは壁だ。

 

 「ソレナラオシエテアゲヨウ……カラダノオクカラネ」

 

 目の前が真っ暗になる。

 ざんねん!!あなたの ぼうけんは これで おわってしまった!!

 

 ♦

 

 「っは!」

 

 目が覚めると俺の目の前には空が広がっていた。どうやらいつの間にか寝ていたらしい。

 記憶が混濁してるのかさっきまで何をしていたのか良く分からないけど。

 ……まあ思い出さないって事はそこまで重要でもないって事か。

 

 「やっと目が覚めたね。眠りから覚めるのはお姫様が定石だが……まあこれもアリだろう」

 

 上から声がする。

 ……頭の後ろにあるこの感触はまさか。

 

 「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

 

 「何だい急に?」

 

 その正体は膝枕だった。

 アイエエエエ!ヒザマクラ!?ヒザマクラナンデ!?

 

 「行き成りキミが気絶するからね。必要処置って事さ」

 

 覚えてないけど絶対違うだろ。

 取り合えずさっさとどくからな。

 

 無理やり体を起こす。

 先程の障害か、少しふらつくがすぐに収まるだろ。

 

 「大丈夫かい?」

 

 「ん?まあ大丈夫だろ」

 

 特に実害もないし。

 

 『キーンコーンカーンコーン』

 

 授業終わりのチャイムが鳴った。

 気が付けばもうこんな時間になっていたのか。

 ……全く休んだ記憶がないけど。

 

 「それじゃそろそろ行こうか。ホームルームが始まるし」

 

 そのまま先に行ってしまう。

 ……え、俺の事置いていくの?

 

 「おい、ちょっと待ってて。()()!」

 

 飛鳥の後を追いかける。

 ん?今俺なんて言ったか?

 ……まあいいや。それよりも早く行かないと。

 

 一旦立ち止まるも頭を振り、考えるの止める。

 これから夏休みも始まる。

 俺達の戦いはこれからだ!

 

 ……いや続くからな?




『新崎速人』 今回の被害者。音痴な割には耳はいい。最後の方で変化が?

『二宮飛鳥』 今回の勝者。喜べ、ヤンデレだぞ。

『心がぴょんぴょんするんじゃあ』みんな大好き。ちなみに作者は本編を視聴していなくてMADのみの知識。

『もちろん俺は抵抗するで』 あの後どうなったかが気になる。

『目の前が真っ暗になる・ざんねん!』 全部ゲームオーバー。

『アイエエエエ!』ニンジャ〇レイヤー


あとがき――
 遅くなりました!その割に短いし……
 いやー仕事が重なってね……すみませんでした。
 今回はヤンデレチックなお話です。皆好きだろ?
 それとアンケートですがどちらも拮抗していて……取り合えず次は五話なのでその後に書けたらいいと思います。
 それとお気に入りが50人突破しました。評価10も下さいましたゆぅ☆♪様感謝歓迎です!
 後二人で色がつくんんだ……是非とも評価・感想・お気に入りの方よろしくお願いします。


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5話 逆襲の飛鳥

(;´Д`)はえ?急にどうしたんだ……
評価10 としたん様、達磨猫様
評価9 銀シャケ様、ダイタランシー様
他にも評価を下さいました皆様方、ありがとうございます!


Ask『なあ』

  『ちょっといいかい?』

 

速人『なんだ』

  『今忙しいから』

 

Ask『驚いたな……いつも暇なキミが』

 

速人『余計なお世話だ』

  『男子共と遊んでるから』

  『悪いが何か用なら後にしてくれ』

 

Ask『へえ』

  『夏休みに短いけどオフが出来てね』

  『何処かに出かけようか』

 

速人『ああわ』

 

Ask『……どうしたんだい?』

 

速人『いや違う』

  『勝手にあいつらが覗いてきたから』

  『打ち間違えた』

 

Ask『そっか』

  『じゃあ海にでも行こうか』

  『折角だし水着も着ていこうかな』

 

速人『なんでこの状態でそんな事言うんだよ!』

 

Ask『楽しみにしているよ』

 

速人『うわちょ』

 

 

 「フッ、いい気味だ」

 

 スマホの電源を落とす。

 

 今日はレッスンがあったから速人と居られなかったが……他に遊ぶ人がいたなんてね。

 ……別に嫉妬してる訳じゃないさ。

 あの場に他の男子もいたそうだが……別に問題はない。

 

 通知が鳴りやまないが無視する。

 ……それにしても。

 

 「水着か……」

 

 勢いで言ってしまったけど自分でも嘘みたいだ。

 まさか自分がこんな事を言うなんて……

 少し前じゃ考えられないな。

 

 「どうしよう……美波さんにでも聞いてみようかな」

 

 取り合えず探すところから始めないと。

 あの人ならセンスもいいし大丈夫だろう。

 

 立ち上がりレッスンを再開する。

 心なしかさっきより上手くいきそうだ。

 それは練習の成果か……それとも。

 

 「これはどっちだろうね」

 

 答え合わせは後にしよう。

 

 ♦

 

 やあ、俺だ。

 さっきまでカラオケでクラスメイトと遊んでいたんだけど今は違う。

 何処にいるかというと……

 

 『おい探せ探せ!』

 『あいつはそう遠くには行ってないはずだ!』

 

 空き部屋のソファの下に隠れている。

 何でこんなことになってしまったんだろうか……

 

 

 遡る事一時間前。まだ俺があいつらと歌っていた時になる。

 

 『お前本当に歌わなくていいのか?』

 「いいから。……俺音痴だし」

 『そっか、なら次歌いまーす!!』

 

 折角誘ってくれたのはありがたいけどな。

 

 一学期の終わり。

 今日は飛鳥がいないためクラスメイトと遊んでいた。

 ……久しぶりどころか二年になってから初めてじゃないか?

 まじで俺あいつ居ないとぼっちじゃん。

 

 「ヘイ!楽しんでいるかボーイ!」

 

 頭を抱えていたら田村が話しかけてきた。

 良かったな、出番が出来て。

 

 「余計なお世話だ!」

 「うるせえな……叫ぶんじゃないよ」

 「それより久しぶりだな遊ぶのは!……お前いつも二宮といるからな」

 

 知ってた。

 流石にまずいよなあ……次の学年であいつと一緒か分からないし。

 

 「全くもってけしからん!アイドルに手を出すとは!」

 「出してねーよ」

 

 何を言ってるんだこいつは。

 アイドルに手を出したら一発アウトだろ。

 

 コップに入っているコーラを飲む。

 そう言うと田村は唖然とした顔になっていた。

 ……どした?

 

 「え、お前マジで?本当に?」

 「んなことする訳ないだろ」

 「正直俺はもう付き合っているのかと」

 「ブハァ!」

 

 飲んでたコーラを吐き出してしまった。

 「おい汚ねえ!」という声が聞こえるがそんな事を言っとる場合かあ!

 付き合っているって誰と誰がだ!

 

 「いや……あれだけイチャイチャしてて付き合って無い方がおかしいだろ。お前らもそう思うよな」

 『勿論だ、大佐』

 『逆にあれだけしていて付き合ってないとか』

 『折角のはやあすが!』

 『ちくわ大明神』

 

 色んな方向から非難の声が。

 ……待て最後の誰だ!

 

 「……言っておくが付き合っていないからな」

 

 事実無根の事を言われる前に訂正する。

 ブーブー言われるが無視だ無視。

 大体噂になったらあいつに迷惑だろ。それだけはやってはいけない。

 

 『もうSNSでは噂されているんだよなぁ……』

 『おいやめろ!』

 

 何か聞こえたけどそれも無視。

 興味を失ったのか元の場所に戻っていく。

 すると田村がいきなり立ち上がって。

 

 「なら……ワンチャン付き合え「は?」……何でもないです」

 

 と同時にスッと座った。

 

 何勘違いしているんだ。

 さっきまで話していたことを忘れたのかお前は。

 大体あいつがそんなことする奴か?

 ……想像できないな。

 

 『りんごんりんごーん』

 

 突然スマホから通知が鳴った。

 ポケットから取り出し見るとまさかの飛鳥からだった。

 話を進めていくとどうやら予定を知りたいらしい。

 

 「誰からだ?」

 

 会話を続けていると田村がスマホを覗いてきた。

 

 「飛鳥から」

 「お前が二宮の事を名前で呼んでいるはこの際置いておこう。……監視の為に見させて貰うぞ」

 「はあ?」

 

 何を言っているんだこいつ。

 もしかしてさっきの事まだ疑っているのか?

 やれやれ……

 

 スマホに視線を戻す。

 するとそこには、

 

 『じゃあ海にでも行こうか』

 『折角だし水着も着ていこうかな』

 

 何を言っているんだこいつは。

 今この状態でそんな事を言ったら……

 

 「これはどういう事だ?」

 「……いや違うんだって」

 

 ほらこうなる。

 何故か金色のオーラが田村から現れる。

 お前はスーパーな野菜人か何かか。

 

 「さっき言っていた事は何だったんだ?ん?」

 「嘘じゃねえ!俺も今知ったんだ!」

 「嘘だッ!」

 

 お前はどこぞのひぐらしだ。

 その叫びに周りがざわつく。

 ……これはまずいな。

 

 「覚悟はいいか……俺は出来てる」

 「俺は出来てない!」

 

 田村から抜け出すとバックを持ち、部屋を抜け出す。

 後ろからは化け物と化したクラスメイトが追いかけてくる。

 

 「まじであいつ許さないからな!」

 

 此処にはいないあいつに向かって文句を言う。

 それよりも逃げるのが先だな。

 

 こうして俺の夏が始まる。

 さてどうなるやら……




『速人:新崎速人』逃亡者。あの後カラオケの店員に怒られた。俺は悪くねえ!

『Ask:二宮飛鳥』レッスン中。その後のレッスンはトレーナーが驚くほど完璧だったらしい。流石である。

『田村人志及びクラスメイト』非リア充。リア充の波動にやられてしまい狂暴化。バイオなハザードを繰り広げた。

『勿論だ、大佐』メタル〇ア。会話シーンから。

『何勘違いしているんだ』まだ俺のバトルフェイズは終了してないZE!

『りんごんりんごーん』シャドウ〇ース知ってる?

『嘘だッ!』ひぐらしの〇く頃に。

『覚悟はいいか』このシーンが一番かっこいい。

あとがき――
前回の発言からバーに一気に色が……しかも半分まで行ったし。
もう皆さまには感謝感激です!ありがたい……
お気に入りも80超えました!後はランキングに乗るだけだな!(馬鹿)
次回は過去編です。難産になりそうですが気長にお待ちください。
まだしていない方、評価感想お気に入りよろしくね!!


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閑話休題:過ぎし日の君に捧ぐ

 『ザーザー』

 

 屋上へ出る前は気づかなかったが扉を開けると雨が降っていた。

 まあ関係ないんだけど。軒下にいればいいだけだし。

 

 「面倒だなー」と独り言を呟く。

 別に雨は嫌いじゃない。

 こう雨の匂いというか空気というか……なんて言ったらいいか分からないけど兎に角天気の中では好きな方だと思う。

 ……そういえばあの時も同じ様な天気だったな。

 

 ♦

 

 「あーくそ暇だな」

 

 入学して程なくした頃。俺は授業をサボっていた。

 別に深い意味はない。単純に先公が嫌いなだけだ。

 あいつ俺にだけ難癖付けてくるからな……

 

 そもそもの原因がこの容姿だ。

 不良みたいな金髪。そのおかげで学校に変な噂が流れるわ生活指導に目を付けられるわ。生徒にも教師にも煙たがられる。

 髪染めてる人なんざ俺以外にもいるだろ!なんで俺だけなんだ!

 

 ため息をつく。

 此処はつい最近見つけた俺のサボりスポットだ。

 普段は鍵が締めてあるらしいが裏技でチェーン自体が外れるようになっている。

 セキュリティとしてはどうかと思うがこうしてベストプレイスとなっている。

 

 コーヒー片手に空を見上げる。

 唯一此処だけが落ち着ける空間だ。

 穏やかな雰囲気に包まれる……がその時。

 

 『ガシャン!』

 

 屋上の扉が開く。

 やばい……閉めるの忘れてた……誰だ一体。

 慌てて身を潜めると目の前に現れたのは。

 

 「……なんだあいつか」

 

 二宮飛鳥。あいつとは入学当時からずっと険悪な状態が続いている。

 まああんなことがあったらそうなるか。

 ……それにしても一体こんな所で何やってるんだ?

 まだ授業時間終わってないはずだろ?

 

 腕に着けている時計を確認する。

 そこに記されている通りまだ放課後には早い時間だった。

 壁から覗くような形で見ているとこっちへ近づいてきた。

 ってまずいまずい……!

 

 「……何だキミか」

 「……俺で悪かったな」

 

 案の定遭遇してしまった。

 そりゃこんな閉鎖的な場所ならバレるに決まっている。

 

 「なんでお前みたいなのが此処にいるんだ……さっさとクラスに帰れ」

 

 いやマジで切実に。

 そもそもまだ授業中のはずだろ。こんな所に来るなよ。

 

 「……それはキミも同じだろ?自分の事は棚に上げて他人には偉そうに言うのかい?」

 「いいんだよ俺は。誰も俺の事なんて興味ないだろ」

 

 あの先公も俺の事嫌いだしな。

 最低限テスト受ければ赤点はないだろ。

 二宮が俺の近くに座ってきた。……というかこいつ俺の事嫌いじゃないのか。

 

 「そうか……ならボクも平気さ。……似たようなものだし」

 「あ?それはどういう事だ」

 

 納得がいかない。

 俺とは違ってこいつは普通に日本人だ。

 特に差別されるようなことは……ってああそういう事か。

 

 「ボクはこんななりだろ?だから他の奴らは奇特な視線を向ける。男は可愛いモノを見る目で見てくるし女はそんなボクを嫌悪の対象とする……だからこんな場所は嫌なんだよ」

 「……それが嫌なら普通の格好にすればいいだろ」

 「それは駄目だ」

 

 そう言うとあいつはいきなり立ち上がった。

 

 「ボクは自分に嘘はつきたくない。だから……誰が何と言おうがコレを辞めたりはしない。……キミも似たような理由だろ?」

 「……ああ、そうかもな」

 

 そうだ。俺自身今の環境が嫌なら髪を黒く染めればいいだけの話だ。

 だけど絶対しない。

 この金髪はばあちゃんから受け継いだ。俺の誇りだ。

 それをたかが教師から言われただけで染める?ふざけるな!

 

 こいつも似たような事情を抱えていたのか。

 ……こいつとなら上手くやっていけそうだな。

 

 「まあ、あの時の事は忘れないからね。許してあげるものか」

 「前言撤回。お前嫌いだわ」

 

 ♦

 

 「……最悪だ」

 

 ある日の放課後。俺は教師に呼び出されていた。

 その結果サボった罰として課題の提出を要求された。

 ……くそ教師め。

 

 あの後、俺と二宮は屋上で話し合う関係になった。

 と言っても知り合い以上友達未満な感じだけど。

 二宮も話し相手が出来た程度にしか思っていないだろう。

 

 廊下の窓から外の景色を見ると灰色の空が。

 さっきまでは晴れていたんだけどな。この様子じゃ雨が降りそうだな……傘持ってないけど。

 

 更に憂鬱になる。

 考え事をしていたせいか気が付くと目的である教室に着いていた。

 はあ……さっさと帰る『ガシャン!』

 

 開けようとするがその前に誰かに開けられてしまう。

 俺の目の前に立っていたのは二宮だった。

 

 「なんだお前か。こんな時間までどうした?」

 「……」

 

 何も言わずに立ち去っていく。

 教室の中には何人かのクラスメイトがいた。

 ……そういう事か。

 

 最近二宮はあるクラスメイトからいじめを受けている。

 事の発端は数日前。一人の男子から告白されたあいつはそれを断った。

 それが原因でその男子を好きだった女子が腹いせに行為に及んだとのこと。

 

 他の生徒はあいつが気に食わないのか対象にされたくないのか……それに関せずといった様子で傍観しているだけだった。

 俺も何回か二宮に聞いてみたんだけどな……何も話してくれない。

 ……取り合えず、

 

 「こっちが先だな」

 『……』

 

 教室に残っている奴らを睨みつける。

 別にどうこうするつもりはない。

 俺は関係者じゃないし。ここでしゃしゃり出るのは間違いだろう。

 

 「……まあ覚悟はしておけよ。あいつが許そうが俺は許さない」

 

 それだけ言うと教室を出る。

 俺だっていじめを受けていた側だしムカついている。

 だがあんな奴より二宮の方が優先だ。……何処に行ったんだ。

 

 ♦

 

 「ハァ……やっと見つけた」

 

 探し回る事数分。二宮は屋上に居た。

 外はいつの間にか雨が降っていたがそれに関わらずあいつは独り立っていた。

 

 「何してんだ?さっさと帰るぞ」

 

 返事がない。

 ……あームカつくな!

 雨に濡れるのも構わずに傍へ近寄る。

 

 「聞いてんのか?早くしないと風邪ひくぞ」

 「……ボクに構わないでくれ」

 「あ?」

 

 何言ってんだこいつ?

 

 「最初から分かっていたさ……ボクという存在は他とは相容れないという事に。それがはっきりと目に映っただけ。……それだけだ」

 「……」

 

 哀しそうに、自分に念じるように呟いた。

 結局俺はあいつの事を理解してはいなかった。

 

 ……お前がそういうなら言うことはない。

 何も言わずに屋上を立ち去る。さっさと帰って飯でも食べるか……

 

 「ってんな訳あるかよ!」

 「……っ!」

 

 二宮に攻寄ると肩を掴む。

 他とは相容れない存在?ふざけんな!

 それなら他の人とは違う俺はどうなる?!それは俺自身も否定する言葉だぞ!

 

 「なんだ?お前は他人に言われたからって簡単に諦めたりするのか?!……違うだろ!」

 「……ならどうすればいいんだ」

 

 二宮は俯きながら言葉を零す。

 

 「俺がいる」

 「……え?」

 「俺がいるって言っているだろ!誰が何と言おうとお前はお前だ!それを否定する奴がいるなら教師だろうが何だろうが相手してやる!」

 

 「俺がお前の存在を証明してやるよ!」

 

 ……勢いあまって言ってしまった。

 だが後悔はしてない。してたまるか。

 

 静寂に包まれる。

 聞こえるのは雨の音、二人の息遣い。

 先に話を切り出したのは二宮からだった。

 

 「……いいのかい?」

 「さっきも言っただろ」

 「……キミまで酷い目に合うかもしれない。それはボクが許さない」

 

 二宮は離れようとするがその前に速人は彼女を抱き寄せた。

 

 「別に今の状況も変わりはない。……俺を信じろ。お前を信じている俺を」

 「……ありがとう」

 

 ♦

 

 「……懐かしいな」

 

 結局教室にある監視カメラからいじめがバレたのか主犯である女子は別の学校へ転校した。

 ……加害者に優しい日本で良かったな。

 

 あの後俺達は友達になった。

 それからというものほぼ毎日飯を食べたり会話したりしている。

 そのせいで男子からは殺意の対象になっているが……

 

 「また今日もいるのかい?キミも物好きだね」

 「悪うござんしたね」

 

 こいつもこいつで俺としか話さないし。

 良くもやってくれたな過去の俺。

 ……っていつの間にいたんだ。

 

 「……さっさと帰るぞ。風邪をひいたらたまったもんじゃない」

 「そうだね」

 

 立ち上がって背伸びをする。

 空は雨に覆われているがいつかは晴れる。

 

 この痛い少女に祝福を。




あとがき――
色々と忙しくて遅れました……
その割にはシリアスな雰囲気となって困惑中な私です。……シリアス苦手なのにな。
今回は何か急ぎ足になってしまいましたが許して!!

さてと、今回は3000字いきました。ぱないの!
お気に入りも111人突破したし……やばいな。
評価9を下さいましたレヴィ0910様、Life〆様、一天地六様、その他皆様ありがとうございます!
もう感謝の極みどころか二重の極みです!

次回から夏休み編になりますが授業が始まった関係で更新ペースが落ちます。
……なるべく週一ペースでできたらいいな。
例のごとくアンケートを実施します。皆様の一票が次話になるぞ!
それでは皆様感想評価お気に入りよろしく!!


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My summer vacation ends in 7days after.
6話 別世界の彼女は


お久しぶりです。


 『ミーンミーン』

 

 入道雲とセミの鳴き声。

 照り出す太陽が夏を迎えたことを知らせてくれる。

 人だかりのせいか汗によって肌に服がへばりつく。

 さて、今俺が何処にいるかというと。

 

 「……こんなに人がいるんだな」

 

 沢山の人に囲まれながら埼玉スー〇ーアリーナにいます。

 ……なんで?

 

 ♦

 

 きっかけは夏休みも中盤に差し掛かった頃。

 田村に誘われて遊んだ時だ。

 

 「ライブ?」

 「ああ、一枚余ってな」

 

 一通り遊び終わった後に立ち寄ったファミレスでその話は持ちかけられた。

 ……いや誰のライブ?早く食べないとパスタ冷めるんだが。

 

 怪しい取引みたいに田村からチケットを渡される。

 えっと、『シンデレラサマーフェス』……ってまじか!?

 

 『シンデレラサマーフェス』とは346プロが毎年夏に開催しているコンサートだ。

 オールスター感謝祭と言ったら分かりやすいと思う。

 当然チケットの倍率も高くて中々手に入らない代物なんだけど。

 

 「……良く手に入ったな」

 「まあな。応募したら偶々手に入ってさ」

 

 本当にこいつの運は凄いな。

 ちょっと前にもゲーセンでPS0ゲットしたし……

 

 「なんで俺に渡すんだ?そこまで興味ないし、自分で行けばいいだろ?」

 「いやあ、丁度その日に家族旅行が入ってな。売ろうとしたんだが最近のは跡が付きやすいし……」

 

 最近のチケットは転売防止にシリアルコードとか付いているものが増えてきている。

 流石に転売目的で購入されるのは迷惑だしな。

 

 「と言う訳でお前にこれをあげよう」

 「……まあ貰えるなら貰っとくわ」

 

 改めてチケットを貰う。

 そういえば、飛鳥もこれに出演するのか?

 何かあれば俺を誘うくせに仕事関係だと全く言わないからなあいつ。

 ……内緒で勇士を見に行くか。

 

 「それじゃあさっさと飯食べようZE!冷めちゃうYO!」

 「うざいから止めろ」

 

 机に残ったのは冷めて伸びたパスタ。

 殴った俺は悪くない。

 

 ♦

 

 「それにしてもこんなに大勢のファンがいるんだな」

 

 並んでいたのは後ろだったが席が結構前の方だったから比較的早く入ることができた。

 後ろを振り向くと二階席までびっしりと人がいた。

 全員が全員熱狂的なファンではないとは思うが凄い光景だな。

 ……俺の隣とか法被まで着てるし。

 

 此処に居る皆がアイドルの出番を待っている。

 その彼女らの中にあいつがいるのか……

 

 「……もうそろそろか」

 

 腕に付けている時計を確認する。

 予定では始まる時間だけど……

 

 『―――ヒュン』

 

 鈍い音と同時に辺りが暗くなる。

 他の観客も驚いているのかザワザワしていた。

 すると突然。

 

 『バァン!』

 

 スポットライトと同時にステージからアイドル達が現れる。

 他のアイドルはあまり詳しくはないが唯一分かったのが。

 

 「―――いた」

 

 右側の所に彼女はいた。

 派手なエクステに橙色の髪。

 いつもと違うのはその身に包まれている衣装だけではなくステージでの生き様。

 あれが()()()()としての二宮飛鳥。

 

 「……綺麗だな」

 

 他のどのアイドルよりも俺には彼女が一番に輝いていた。

 

 ♦

 

 「……凄かったなあいつ」

 

 帰りの電車に乗りながら今日の事を思い出す。

 あまりアイドルに興味がない俺でも今日のコンサートはとても凄かった。

 飛鳥とあともう一人ツインテールの子が天井から降りてきた時はびっくりしたが。

 

 ポケットからスマホを取り出す。

 フォルダには田村の為にいくつか写真を残しておいた。

 まあ、飛鳥の写真を送るのは何か癪だからそれ以外を送るけど。

 

 「折角だから飛鳥にも送ってやるか」

 

 そのままRAINを開き飛鳥に写真を送る。

 どんな反応するか楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『何でキミがあの場所にいたんだ!!!』

 「いやごめんて」

 

 何故か怒られましたとさ。




―――あとがき
まずは謝罪から。本当に遅れました!!
私生活が忙しかったのも理由の一つですがそれ以前に一区切りついてしまった為作者特有の燃え尽き症候群にかかっていました。
いやー本当に申し訳ない。
今回はリハビリという事で少し短めに。
休業期間中に他の作品を見て書き方を勉強してみました。
小説は奥が深い……
次も多分というかほぼ確定で送れるとは思いますが気長に待ってて下さい。

感想くれたら意欲がましましになるかも|д゚)


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