私、転生は銀魂の世界がいいって言ったよね? (マリユリ)
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拝啓、私死にました
序章《一》




バカ元気な女の子、初めて書きます。

息抜き小説に見てください(´・ω・`)




目を開くとそこには・・・

 

「知ってる天井じゃない・・・」

 

知らない天井だ、とか期待した人ごめんなさい。すみません。知りません、それどころじゃないです。知ってる知らない以前に──

 

「天井・・・・無くね?」

 

はい。無いんです。あの、かの有名なセリフ言いたかったんですが。無いんです。無いものは仕方ないでしょう。さすがに言えないっす。

というのも、私に見えているのは天井でも空でもなく、白。

そう、白である。少女漫画でおなじみ。あの白(何とは言わん)。ウエディングドレスとかの白。もうね、真っ白。

 

「ヘェルプミィィィー!!」

 

私、叫ぶ。

え、他にすることなくない?目が覚めたら辺り一面真っ白よ?なんの色もないのよ?純白が狂気の色に思えてくるんだけど。

 

「おかしいって!!私何かした!?だーしーてーよー!!無理無理無理ぃぃ!!」

 

『うるっせえ!!』

 

突如辺りに響いた(私の声はさておいて)大きな声。それは後ろからだったので、振り向いてみる。

 

『ちったァ静かにしろよ!!何で見知らぬ場所で騒げんだよ!!』

 

自分勝手な理由で怒鳴る、黒髪黒目の男が一人。悔しいが、イケメンである。

 

「騒ぎたくもなるでしょ!知らない場所だよ!!真っ白な場所だよ!騒ぎたくなるでしょ!!」

 

『ならねぇよ普通は!!とんでもねぇ女だな!!』

 

「んだと!誰がとんでもねぇいい女だって!!」

 

『言ってねぇーよ!!!』

 

と、勝手に、一人で、盛り上がっているおと・・・・痛い痛い痛い!はい!私が悪かった!!私が悪ぅござんした!!だからアイアンクローは無し!!やめてくださいぃぃぃぃ!!

 

「まったくもー!会ったばかりの女子にアイアンクローとか、どんな躾されてたんすか」

 

『頭と耳がおかしい馬鹿に言われたくねぇよ。馬鹿』

 

「おかしくありませんー!あなたの言葉がおかしかったんですぅー」

 

『お前はいちいち腹立つなぁ・・・』

 

こっちのセリフじゃボk・・・ん?その手はなんだい?アダだだだだ!!またアイアンクロー!?痛い痛い痛い痛い!!

 

「中身がでーるー!!ヘルプミィィィー!!私死んじゃうー!!」

 

いい加減にしないか!!いたいけな、か弱い、美しい女子なアイアンクローなど!!

あ、ごめんなさい。離してください。私が悪かったっす。だから、離してくれたら嬉しいなーなんて。

私は黒髪から何とか抜け出そうと必死に暴れる。

が、次の瞬間、私の動きは止まることとなる。

 

 

 

 

 

 

 

『何言ってんだ。もう死んでんだろが』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ?」

 

え?死んだ?私が?なぜに?

え、ごめん。ソレマヂ?あ、マヂ?マヂですかぁ。

 

ってなるかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

「はぁ!?何で!!何で死んだの私!」

 

黒髪の胸ぐらを掴み、前後上下左右に激しく揺する。脳みそをグロッキーにしてやろう。

ふざけんなよ!!やっと鬼滅の●が完結して、今年の夏映画化だったんやぞ!!五等●の花嫁も二期やるとこだったんやぞ!!約ネバもリゼロも楽しみにしてたんやぞ!!

何より──

 

「まだ銀魂のアニメ、最終回までいってないのにぃぃぃぃ!!!」

 

『おめぇの人生それでいいのか!!』

 

黙れ黒髪!!私の銀魂愛を知らんくせに!!

漫画全巻はもちろん。小説、DVD、映画、実写のDVD、全てを揃えていたんだぞ!!グッズだって棚いっぱいに綺麗に飾っていたんだぞ!!春の映画も楽しみにしてたのに!!それを、銀魂を侮辱するのか!許さん!万死に値する!

 

「そこになおれぇ!たたっ斬ってやる!!」

 

『ならまず離せやぁ!!』

 

なんと生意気な!!私は再び前後上下左右に黒髪を振る。

よし決めた。グロッキーでは生ぬるい、ミンチにしてくれる。

 

それからおそらく数十分、黒髪と攻防を続け──

 

『ゼェゼェゼェ』

 

「ハァハァハァ」

 

──二人で形で息をして、完全にHPがなくなった。コイツやりおる!!

 

「な、かなか・・・やるじゃない・・・」

 

『お、お前もな・・・・・・・・・・・・・っじゃねぇよ!!!話を聞けよ!!何?死んだことよりアニメ!?マンガ!?何この無駄な時間!そーじゃねーんだよ!!』

 

「なら何さぁ。もう私帰りたいんだけどぉ。銀魂の二十四周目見ないといけないから」

 

『そんなに見てんの!?ってか死んだっつったろーが!!帰れねーから、帰さねーから!』

 

「帰さないですって!?何考えてんの!変態!!」

 

『お前が何考えてんだ!!オイ!止めろその目!』

 

「イチイチキュー・・・間違えた。イチイチゼロォーー!!ポリスメーン!!ヘルプミィィィー!!」

 

『話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!』

 

 

 

 

 

前略、お父さん、お母さん。

私、謎の空間で、謎の黒髪と喧嘩をしてます。

 

 






たぶん、直ぐに更新するはず・・・・



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序章《二》


うーん、連投なり。(´•ω•`)

ハハッ!月曜も考査だぜーい!!
↑高校最初の考査で赤点とる気満々な人。




 

 

『まず初めに、俺は神様だ』

 

目の前に仁王立ちして、自慢げに話す自称神様。私は正座をしたまま、ポカンと見つめる。

頭、大丈夫ですか?

 

「や、やっぱりイチイチキューしないと──」

 

──スパァン──

 

『これ以上ボケさせねぇからな』

 

私の頭を上から平手打ち。話を進めるために、実力行使に移ったようだ。クソっ暴力反対だ!!

 

『お前、何で死んだか覚えてるか?』

 

腕を組みなおし、覚えてなさそうだなという雰囲気を醸し出す自称神様。おい貴様、失礼だろ、決めつけるのは。

頭をグルグルと回転させるが、心当たりなどない。

 

「・・・覚えてないんだけど・・・赤信号で飛び出した子供を見て飛び出したのくらいしか・・・」

 

『それだそれだ!!しっかりくっきり覚えてんじゃねぇか!!』

 

「え?そうなの?」

 

ふざけただけなんだけど。え、私そんなことしたの?マヂで?そんなヒーローみたいなことしたの?

私の頭は???で満杯である。

 

『当てずっぽかい!!』

 

「はい!そうです先生!」

 

『返事すんなや!』

 

まあ、何はともあれ、私は子供を庇って死んだらしい。へぇーそうなんだ。へぇー。

 

『それを踏まえた上で聞け。神が集う会議の中で、あることが発覚した』

 

「え、何?神様って会議とかあんの?うわダル!よくそんなんやれるね」

 

『・・・それは、死神がとある間違いをしてしまったことでな』

 

神様や神様や、スルーは酷くないかい?私の心は傷ついたぞよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

『大変申し訳ないんだが・・・お前が死んだのは死神の手違いだった』

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・手違い?」

 

『ああ』

 

「何が?」

 

『お前が死んだのが』

 

「誰の?」

 

『死神の』

 

「手違い?」

 

『そうだ』

 

へぇー、神様の手違いで私は死んだのか。そーかそーか。私の命は()()()で終了したのか。

 

 

 

「つーかどんな手違い!!??」

 

 

 

なくね!?そんな重い手違い!は!?

 

そんな

「ごっめーん!三ツ矢頼まれたけど、コーラ買ってきちゃった✩」

的な感じで!?

「ごめんね○○、ジャンプじゃなくてコレ、赤丸だったわ」

みたいなやつ!?

 

『本っ当に申し訳ない!!謝って済むことじゃないが・・・この通りだ!!』

 

膝と手をつき、額を擦り付けて頭を下げられる。コレ、私が一番苦手なヤツだ。

 

「・・・具体的に、どういった間違いだったのか説明してくれるんだよね?」

 

これで断られたらミンチじゃ済まさんぞ。細胞をグズグズにしてやるからな。

とりあえず頭をあげようか。

 

『ああ、もちろん。もともとは赤信号になったのが間違いだった』

 

「信号が変わったのが、間違い?」

 

『ああ。死神は体と魂を切り離すために、常に大鎌を持ち歩いている』

 

私の脳裏には、黒いフードの骸骨で鎌を持った典型的な死神が連想された。うん、想像を裏切らないね。

 

『本来ではあそこで事故が起こるはずだったんだ。その魂の回収のため、死神は現場で待機をしてた』

 

私の頭では、行き交う車を空の上で無慈悲に見下ろす死神が出来上がる。なんか、カッコよくね?

 

『・・・信号機の上で』

 

「信号機の上で!?」

 

私の頭の絵は塗り替えられた。カッコ良さげな死神は消え、信号機の上で座って待機する、なんかカッコ悪い死神に。

 

『少し早く着きすぎたらしく、愛用の鎌を投げて遊んでいたら──』

 

「鎌で遊んでいた!?」

 

死神さん!?どうしたの!?え!?鎌を投げて遊んだの!?体と魂を切り離す鎌を投げて遊んだの!?

再び頭の絵が切り替わる。カッコ良さなどもはや無く、大きな鎌を中に投げて遊ぶ、お茶目な死神。うん、想像を裏切りすぎじゃね?

 

『手が滑って、信号機に当たってしまったらしい。それで信号が狂って・・・』

 

「・・・・・・」

 

つまり、事故現場に早く着いてしまった死神さんが、鎌で遊んでたら信号機に当たって、不思議な鎌のせいで信号機が狂って、周りが対応できないでいるうちに子供が道路へ飛び出して私がその子を庇って死んだ、と。

 

「それ手違いって言わねーよ!!完全完璧に不注意だよ!!」

 

『ツッコムとこそこかよ!』

 

神様曰く、死神は大変反省しているらしい。反省しすぎて、死のうとしたらしい。死神が。死神が、死のうとしたらしい。やめて、重い。

 

「で?私が庇ったっていう子は?生きてんの?」

 

『あ、ああ。軽傷で済んだ』

 

「ふーん。なら、あと私は言うこと無いよ」

 

『は?』

 

私、死んだ記憶なんてないし。思い出したくもない。死ぬ間際に私がどれだけ痛く苦しい思いをしたのだとしても、私はそれを覚えていない。覚えてすらいないのに、誰かを責めるなど酷。私、重いのは嫌いだ。

 

「んー・・・なんて言うかな・・・人間、いつかは死ぬじゃん。歳をとって死ぬか、病気で死ぬか、事故で死ぬか、殺されるか。そんなの誰にも分かんない。でもさ、嫌だったんだよね、私、歳とって死ぬの。体が動かなくなったり、腰が痛くなったり。長生きは良いことって言うけどさ、私は嫌だった。何もせずにタラタラ長く生きて、そんだけで死ぬのが・・・嫌だった」

 

世間じゃ長生きは良いことって言っているけど、私はそうは思わない。

だって、何もせずに長く生きて何が楽しいの?

働いて働いて。長く生きるために、老後のために働いて、何が楽しいの?

そりゃあ誰かと笑いあったり、何かをして遊んだり、楽しいこともあるだろう。でも、長く生きて、動かない体に鞭打って、そんなの楽しいのだろうか。そこまでして生きる必要はあるのだろうか。

今の日本では、自殺は駄目な行いの一つとして見られている。でも、私はそうは思わなかった。

 

生きるのが嫌なら、死んだって良いんじゃないだろうか。

 

何故、本人の生死の価値を他人が決める?

本人が死にたいと言っているんだ。死なせてあげればいいじゃないか。

生きるのが苦しいのなら、生きるのをやめればいい。

単純なことだろうに。

走るのが苦しいなら歩く。

これと同じではないか。

まったくもって、不思議な国だ。

 

このように、私はそこまで生死にこだわりを持っていない。

強いて言うなら──

 

 

 

「私は意味のある死に方が良かったの」

 

 

 

意味の無い虚無の長い時間を過ごすよりも、意味のある充実した長い時間を駆け抜けたい。

 

「だから私は、意味のある死に方ができたんなら満足だよ。これで死神さんも同じ間違いはしないでしょ」

 

生きたい子供を助けて、二度と失敗させない意識をつけられた。私の死には充分に意味があった。私としては、それで満足だ。

 

『・・・後悔してないんだな・・・・・』

 

「助けたことなら、してないよ。未練はあるけどね」

 

私、死に方には満足してるけど、未練が無いわけじゃない。そう、私の未練とは──

 

「銀魂・・・映画とアニメ・・・」

 

『結局それかい!!』

 

仕方ないだろ!!私の生きがいだったんだぞ!!大学受験の時だって支えてもらったんだからな!!

今思い出しても最悪だった家庭環境。楽しい学校とは裏腹の家。お兄ちゃんが死んだときだって。

傾きかけていた私を支えてくれた。それが実在しない人達でも、私を支えてくれていた。

笑顔をくれた。心をくれた。知識をくれた。友達をくれた。強さをくれた。優しさをくれた。

私が今持つ感情のほとんどは、銀魂のキャラ達(かれら)から貰ったものだ。

結局、何が言いたいのかというと──

 

「銀魂尊い!」

 

『それでいいのか!?』

 

「え、何が?」

 

『いやだって。何か複雑そうじゃん!私の暗い過去に光をくれた的なアレだろ!』

 

「そうだけど?」

 

『それで尊い!?』

 

「うん」

 

『・・・・・・そうか・・・うん・・本人がいいって言ってんだ・・・・いいんだよ・・・気にするな・・・俺・・・・・』

 

突如、頭を抱えてブツブツ呟き出した。怖っ!えっ何?怖っ!やっぱりイチイチキュー・・痛い痛い痛い!!アイアンクローはなしだって!!アンタ好きだねアイアンクロー!

 

『で、話を戻すと、会議の結果、お前を好きな世界に転生させることになった』

 

やっと解放され頭をさすっていたら、とんでも爆弾が投下された。私、硬直。

 

『とりあえず、そんなに好きならそこに転生させてやるよ』

 

「いいの!?本当に!?ドッキリだったら殺すからね!?ひき肉にするからね!?」

 

『怖ぇよ!安心しろ。本当だ。その役目を俺が担わされた』

 

担わ()()()・・・・。さっきから、ちょいちょいイラつくんですが!うぬ〜・・・銀魂に行けるんなら我慢我慢。

 

『お前、確か今十九歳だろ?』

 

「そうだけど?」

 

はい。バリバリ大学生ライフ送ってますけど?それがどうかしましたか?

 

『いや、あくまで"転生"だからな。赤ん坊からスタートだぞ』

 

「・・・・・・」

 

そ、そうか。あぁ〜でも、うん、大丈夫大丈夫。銀魂に行けるんでしょ?うん、軽い軽い。

 

「そんなん平気だよ!早く早く!転生したいしたいしたいしたいしたいしたい!!!」

 

『だから怖ぇよ!!銀魂で豹変すんの止めろ!!』

 

えー、そんなこと言ったってぇ。あんなに好きだった銀魂ですしぃ?そりゃあ早く行きたくなるでしょお。

つーわけで早くしろ紙。・・・違った神。

 

『ハイハイ。じゃ、頑張れよ』

 

神様がパチンと指を鳴らした。音の直後、足元に黒い穴があいた。どこまでも黒く暗い穴。

 

「誰に言ってんのさ!」

 

私は神様の顔を見る。もう二度と会うことはないだろう。この顔だけはいい神様ともおさらばだ。

 

『お前だろ』

 

「そーゆー事じゃないのだよ」

 

『ふんっ。さっさと行け!災厄娘』

 

「もちろん!早く行きます・・・よっ!」

 

言葉と違って優しい声音に背中を押された。私は思いっきり穴に飛び込む。

ただ、最後に一つだけ──

 

「私を出し抜こうなんて一億年早いよ、()()()()()!」

 

『っ!!』

 

──最後にお兄ちゃん(あなた)に会えて良かったです。私を愛してくれてありがとう。私のお兄ちゃんでいてくれてありがとう。

私を助けてくれて、ありがとう。

 

あなたのおかげで、私は新しい世界へ行けます。私の背中を押してくれたのはあなた。少し強ばってた体の緊張をほぐしてくれた。だから、ありがとう。

 

私も、お兄ちゃんが大好きです。

 

 



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拝啓、私転生しました
お兄ちゃん!大好き!!・・・・・・とか言うと思ったかビチグソ兄貴ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!




展開早すぎ?

分かんないや。




 

 

なんてね、思っていた時期もありましたよ。

 

あの瞬間、確かに私はお兄ちゃん大好きでした。

 

でもね、でもさぁ・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、目が覚めたの?あなたー、琴華(ことは)が目を覚ましたわよ」

 

「ホントか?ああ、可愛いなぁ」

 

 

私の顔を覗き込む一組の男女。とてつもない美男美女である。国宝級の顔が私を見下ろしているのである。

 

私、歓喜する。転生成功だ、と。

 

だが、どうしようもない違和感。何なのかは分からないけど、銀魂としては違和感がある。それでも転生できたことへの喜びが大きすぎて、その時は気付かぬふりをした。

 

(うぉっしゃーー!!銀魂ライフ満喫してやろうではないか!!)

 

こうして、私の楽しい楽しい銀魂転生ライフは幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜それから二年〜

 

はい、ここで最初に戻りまっす。うん。私ね、お兄ちゃん大好きだった。家族のうちで、私のことを唯一可愛がってくれた人だしね。大好きだった。大好き()()()のよ。

 

 

「さぁ琴華、ご飯だよぉ」

 

私の新ママがスプーンでご飯を差しだす。美人にアーン、一度はされたいよね。私、幸福を感じてモグモグ。

 

「いっぱい食べて大きくなれよ」

 

私の新パパが大きな優しい手で頭を撫でる。美男にナデナデ、されたら嬉しいよね。私、幸福を感じてニコニコ。

 

でもさぁ・・・

 

これさぁ・・・

 

 

 

おもっくそ現代じゃねぇかァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!

 

 

 

 

ンだよ、あの馬鹿兄貴ぃ!!期待させるだけさせといて!この仕打ちかよ!

この二人、着物じゃなくて洋服じゃん!出かけた時も、ターミナルとか空飛ぶ船とか天人とか二年間一度も見てないよ!!立ち並ぶ住宅、騒がしい学生の声、車の音。何もかも現代なんだよ!!

騙しやがったなビチグソバカ兄貴ぃぃぃぃぃぃぃ!!ひき肉じゃ生ぬるい、コネにコネてマッズイハンバーグにしてやる!この恨みはらさでおくべきかぁ!!

 

二歳児がそんなことを考えてると知らない二人は、ニコニコと私に話しかけてくる。

 

「可愛いねぇ」

 

とか

 

「お前に似てな」

 

とか

 

「いやあなたに似たのよ」

 

とか。

私の中身が十九歳とは知らずに惚気けまくる。親の仲がいいのは喜ばしいが、こちとら二歳児、何も口は出せなんだ。イチャイチャに二年も耐えている私を誰かヨシヨシしてくれないかなぁ。

 

「あなた!琴華が全部食べたわ!」

 

「偉いぞぉ琴華」

 

「好き嫌いしないなんて、いい子ねぇ」

 

我が子にデレデレの二人に撫でまくられる。

うん。そうじゃなくてね。

 

このようにラブラブ夫婦に溺愛され、私は育つこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

~さらに三年~

 

 

おーい聞いてくれ。私ついに幼稚園デビューしたぞー。あれから変わらず親はラブラブ、言葉は楽々話せるようになり、すくすくと私は成長している。

いやぁ、喜ばしいことである。

 

 

 

 

じゃねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!

 

何これ!マジで普通の幸せ一本道!!まっしぐら!道が舗装されてるよ!コンクリートで固められてるよ!誘導員雇ってあるよ!めっちゃ整備されてるよ!

ふざけんなよ!中身はもう二十歳超えたんだけど!

 

二年前の三歳の誕生日に与えられた広い部屋の真ん中で、私は四つん這え状態。この世の終わりのごとく絶望している。転生して五年、何の音沙汰もなく、すくすくと成長しているのだ。

 

(私の転生の意味!!)

 

あれほど胸を高鳴らせた転生。全てがガラガラと崩れてゆく。あぁ、私の愛しき銀魂ライフ・・・・!

 

今日は家族で公園にお出かけだ。わざわざ大切な休みを私のような中身が二十歳越えの娘に費やさせてしまい、本当に申し訳なくぞんじております。

 

「うぅ・・・」

 

悲しみの涙を流しながら、立ち上がって周りを見渡す。

淡いピンクで統一されたThe.女子の部屋。パステルピンクの壁紙、白の勉強机、ピンクのハートのカーペット、白の薄いレースカーテンとピンクのカーテン、パステルピンクと白のタンスとクローゼット、白のベットにピンクの布団、真ん中には白い小さなテーブル、さらには可愛らしい鏡台まで。

全て、母上のご意向である。「やっぱり女の子はピンクよね!」と、私のために色々と買ってくれた。父上は女子同士に口は出さぬとカートを押してばかりで、暴走する母上を止めなかった。

勉強机とかまだ先じゃね!?早くね!?いくらなんでもさ!父上よ、何故母上を止めなかったのだ!!いやだよ、勉強嫌いだもん!!大学受験で終わりたかったよ!また1+1から!?あのクソめんどい九九から!?つーか何気に金持ちな!!一日で一式揃えやがったよ!

 

心で盛大に慣れないツッコミをしつつ、鏡台の椅子によじ登って鏡を覗く。真っ黒な長い髪と幼い顔の私が鏡に映りこみ、間抜けな顔がこちらを見つめる。だけど、真っ先に目につくのは・・・

 

(オッドアイってホントにあるんだなぁ)

 

左右で色が違う瞳だ。自分から見て右目が黒、左目がほとんど透明に近い水色だ。日本人離れしている瞳の色に初めは驚いたが、今ではさすがに見慣れた。

 

「琴華〜?あら、一人でお着替えできたの?偉いわねぇ」

 

ガチャッと扉を開けて母さんが入ってきた。爽やかな色の服を着ている母さんは、すれ違った人全てが振り返る可憐さだろう。私なら微笑まれただけで落ちる。

そんな美人に「偉いわねぇ」と抱かれてナデナデされる。

私、先程の絶望を忘れてデレデレ。

 

「えへへ、かぁさんだいすき!」

 

「まあ!」

 

はい。私、なんやかんや言いましたけど、母さんと父さんが大好きです。可愛くて、カッコよくて、美人で、イケメンで、優しいて。完璧やん。好きにならんはずないやん。

 

「おいおい、時間だぞ」

 

なかなか部屋から出てこない私たちを迎えに来た父さん。整った顔で苦笑いをしていらっしゃる。

 

「あなた!琴華が母さん大好きって言ってくれたのよ!」

 

「分かった分かったから。ほら、早く出るぞ」

 

父さんは私を抱き抱えて玄関へ歩いていく。父さんは高身長なので、景色が全然違う。高い高いのセルフサービスごちそうさまです。

シルバーの普通車に乗って、目指すは公園。駐車場がある公園があるらしいのだ。もちろん私はチャイルドシート&シートベルトは装着済み。運転は父さん、助手席には母さん、後部座席は私。私、ボッチなり。

私はいつものように窓の外を眺めた。桜の街路樹、色とりどりの車、空っぽの公園。綺麗にうつり変わっていく景色を黙って眺める。私、景色を眺めるのは嫌いじゃない。見ていて飽きないし、綺麗だし。転生前も星空とか夕焼けをよく見ていたものだ。キラキラと瞬く星々、日によって違う夕焼けの空。瞼に焼き付けようと見たそれらは、思い出せないほど霞んでいる。

私がボーッとしていると──

 

「琴華、新しいお友達はできたか?」

 

父さんに声をかけられた。前を向いたまま、バックミラーで私を見ている。私がつまらなそうに見えたのだろうか。

 

「好きな子はできた?」

 

「ううん!まだー」

 

大きく首を横に振り、満面の笑みをお届け。私、幼稚園は初めてなので楽しんでます。転生前は保育園だった。よって初幼稚です。うん、楽しい。

というか母さん、五歳児に恋愛の話はまだ早いよ。さすがに私は恋できませんよ。ロリコンの烙印は押されたくない。

 

それからは公園に着くまで、家族でしりとりをして遊んだ。私を楽しませるために・・・!ありがとう!母さん、父さん!

ごめんね、子供らしくなくて!『おかし』で回ってきて『塩辛』と答えてごめんよ!!ビックリしたよね!!

 

 

 

「わぁーい!!」

 

漫画のセリフのようなセリフを吐いている私。現在、絶賛サッカー中。

父さん、運動が万能らしい。サッカーめっちゃくちゃ上手い。

母さん、そこまででもないらしい。ベンチでカメラを回しております。

 

到着した公園は、なかなかに広い場所だった。ブランコ、滑り台はもちろん。フリースペースとしてまっさらな広い敷地もある。夕方になったら高校生とかが部活の自主練をしに来そう。家からさほど遠くないから、ここに通い詰めようかな。楽しそう。

 

「そろそろお昼にするわよ〜」

 

「もうそんな時間か」

 

「ごはんだぁ〜!」

 

11時半を過ぎた頃、母さんから召集がかかり、お昼休憩。母さんのそれはそれは美味であるお弁当のお時間である。

三人でワイワイと食事を取り、お茶を飲んで少し休憩。だがしかし、活発な私がそう長くじっとしているはずがないのだ。分かってくれ、母さん父さん。

 

「わたし、あそびにいってくる!」

 

元気よく立ち上がり、両親の返事も聞かずに駆け出す。

 

「気をつけるのよ〜」

 

「何かあったら大きな声で呼ぶんだぞ!」

 

「はぁーい!」

 

うん、いい返事!偉いぞ私!!

私はそのまま一人で遊べる遊具の元へ向かった。

 

 

 

.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+

 

 

 

「うぅーん」

 

はい、母さんたちのところから抜け出してきて約二十分経ちました。ほとんど遊び尽くした。尽くしてしまった。

というのも、ここにあるほとんどの遊具が二人以上で遊ぶものが多いのだ。シーソー然り、あのジャングルジムみたいなグルグル回るヤツ然り。ブランコや砂場のお城、ターザンみたいにジャーってなるロープのやつ、ジャングルジムに長ーい滑り台。ほとんど遊び尽くした。

↑中身二十歳越えだろとかツッコんだやつ!ボコすから覚えてろよ!

 

さて、次はどうしようかと辺りを見回す。

 

「あ!」

 

目についたのは登りがいのありそうな木。でこぼこも結構あるし、登りやすそう。

というわけで、登ります。

 

「んーと・・・」

 

木をマジマジと見つめて、登るルートを考える。え?ガチすぎる?ほっとけ、私は野生児だ!!

ある程度計画を立て終わり、私は木に足をかけた。

 

 

 

「うわぁ、たっかーい!!」

 

木の枝に腰かけ足をバタバタ、両手をバンザイ。父さんの高い高いよりも高い場所。私は、一番低い木の枝に座って景色を眺めていた。高さは・・・三、四メートルくらい?かな。

肺にいっぱい空気を吸って、いっぱい吐く。それだけで、少し気持ちがいい。葉がいい感じに日を遮ってくれるから暑くもないし、風が吹いているから寧ろ涼しい。

場所は全然違うけど、高杉と桂に出会った時は銀さん木の上で昼寝してたんだよね。

同じシチュエーションに胸が高鳴る。と同時に、現実を突きつけられる。転生失敗の現実を。

あ、ヤバい。腹立ってきた。

 

「・・・っもう!バカクソあにき!なぁにがカミだよ、ちゅうにやろー!ハゲちまえ!──ん?」

 

周りに聞こえないように少し小さな声で兄貴への愚痴を吐いていた時だ。公園の端──正確には入口付近で人だかりを見つけた。数名を大勢で囲んでいるらしい。だが、私にとってそんなことはどうでもよかった。その中心で異彩を放つ者達。

 

キラキラと光る銀色、フワフワした髪。

紫色に反射する黒髪、翡翠に輝く瞳。

 

私は思わず木から飛び降りて、そこへ駆け寄る。

諦めていた人、夢までに見た輝く魂、一度でいいから本物に会ってみたかった。

 

「なんだよ、おまえら!!」

 

「「・・・・・」」

 

近づいてみると、囲まれているのは先ほど目を奪われた二人で、囲んでいるのは五、六人であることが分かった。歳は今の私と同じくらい。

こんなに小さな時からイジメとか、お姉さん見過ごせませんよ。

ましてや、私の大事な人達に・・・何してんのさ・・・。

 

「ねぇねぇ!」

 

囲んでいる奴らに近づいて、()()()()()()()話しかけた。ホントなら、ドスの効いた低い声とかで脅したいんだけど・・・・うん、我慢我慢。

 

「っ、な、なんだよ!」

 

「なにしてるの?」

 

「おまえにはカンケーないだろ!」

 

首を傾げて子供らしく聞いてみるが、答えてはくれないらしい。まあ、答えられなくても分かるんだけど。

 

「ふーん・・・」

 

そこで私は囲んでる奴らを掻き分けて進み、目当ての二人に近づいた。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

私のことを珍しげに見つめる二人。何も言わないままだ。

片方はフワフワした銀髪で赤い瞳。

もう片方はサラサラした黒髪が太陽の光を紫色に反射している。

 

転生前に私を支えてくれた人達が、今、目の前にいる。

私はその事実に顔が緩んでいくのが分かった。

 

「こんにちは!わたしといっしょにあそぼ!」

 

 

 

──ごめんね、お兄ちゃん。クソ兄貴とか言っちゃって。やっぱり私、お兄ちゃんが大好きです!──

 






「はぁぁあ・・・やっと出会ったァ・・・」

はい、俺です。アイツの兄貴です。
これでも俺、頑張ってたからね。出会わせるために結構かなり頑張ってたから。なのに予測不可能すぎなアイツのせいで、三年間もロスした。

なんで、銀魂の世界そのものに転生させなかったのか。

理由は簡単だ。あんな死亡エンドありまくりの世界だと、アイツは絶対にすぐ死ぬから。
何のために転生させたのか分からないぐらい早死するだろう。そんな事態を避けるため、現代のパラレルに転生させた。

「ま、楽しめよ」

──俺の可愛い妹さん──



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