【出張版】CiRCLEスタッフ (スタ)
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さよならCiRCLE

細かいことは置いといてとりあえずパパッと始めます


それはある日突然訪れた

 

「いや〜本当よかったね、武道館ライブ」

 

「ええ、本当に…いい歳して泣きそうになりました」

 

 

ここはCiRCLE

 

 

ではなく、とある居酒屋

武道館ライブの後始末諸々で大変忙しく

ようやく全て片付いたとある休日

 

私ことスタッフとまりなさんは

ちょっと遅めの打ち上げでこうして呑んだくれていた

 

 

「いやー最後全員で歌うのは反則だよね〜」

 

「ええ、全く…思い出したら興奮してきましたね」

 

「ていうか、飲み過ぎですよまりなさん」

 

「細かいことはいいの!あ、すいません生追加で!」

 

 

やれやれ……これは朝までコースですね…

まあ連休だしいいんですけどね

 

「あ、すいません、私はハイボールで」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「うへぇ…呑み過ぎた……」

 

「そりゃそうでしょうよ」

 

 

そして休み明け、私たちは今日もCiRCLEでお仕事中

約1名使い物にならなくなっている先輩を除いて

 

「ねえ、もう今日君一人で回せるよね…帰っていい?」

 

「寝ぼけた事言わないでください、二の腕引きちぎりますよ」

 

「」

 

 

新人スタッフと言われていた私も今ではそれなりに仕事をこなせるようになり、我ながら成長を感じている今日この頃、まりなさんはすっかりあの頃の素敵なお姉さんという私のイメージも物色され、ただのポンコツなかわいいお姉さんと言う印象に変わっていた

 

まあ実際仕事は本当に出来る人なのでいつも頼りにしてはいるのだが、たまにハメを外してこうなる日がある

 

 

「というか、前から薄々思ってたけど、君ホントお酒強いんだね…意外…」  

 

 

「まりなさんが弱すぎるだけだと思いますが…」

 

 

「可愛くないなあ……キミ最近生意気だぞ〜」

 

「作者の趣味ですからこればっかりは…」

 

「何言ってんの?」

 

「こちらの話です」

 

「というか…」

 

「なんでしょう?」

 

 

「最近…みんな来ないね…」

 

 

「………」

 

 

みんなと言うのはポピパ、Roselia、アフロ、パスパレ、ハロハピ、RASの事である

 

あのステージ以来、彼女たちとは一切会っていない

と言ってもこの時期は学生側もテストやら卒業式やらで忙しいので私は特に気にしていなかったのだがまりなさん的にはなかなかにダメージが大きいようだ

 

 

「とはいえ気持ちはわかりますよ。けどまあそろそろ落ち着く頃でしょうし、今日辺りふらっと遊びに来たりするんじゃないですか?」

 

 

「だといいんだけどねえ…はぁ…」

 

 

ガチャリ

 

 

「あ、ほら、来たんじゃないですか?」

 

 

話をしているところに不意にドアが開く音がした

 

 

「いらっしゃいま…」

 

 

「邪魔するよ」

 

 

香澄さん辺りが来たのかと思ったらドアの先には思いがけない人物が立っていた

 

 

「お、オーナー?」

「都築さん!??」

 

 

そう、そこには元SPACEのオーナー、都築詩船さんが立っていた

てっきりあの子達だと思ったのに…

 

 

「期待外れで悪いけど、ちょっと話をしにきたよ、あと何回も言ってるけどアタシはもうオーナーじゃないからね」

 

「あ、ハイ」

 

 

そしてここからが今回の本題である

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「えええええーーーーーーーーー!?函館!!!!!???」

 

 

「そ、ちょっと手貸して欲しくてね」

 

 

端的に言うと、函館で新しいライブハウスが出来るらしく

そこの人手が足りず開店準備が大幅に遅れているとの事だった

そしてそのライブハウスと言うものがCiRCLE系列の店らしく、無事にしわ寄せが回ってきたという訳だ

 

ちなみになぜオーナー、いや、詩船さんがそんな事を知っているのかと言うと、お察しの通り詩船さんの名前はこの業界ではとても有名らしく、その辺に関してはかなり幅が利くらしい

 

 

「店が安定するまではけっこうかかると思うからしばらく帰ってこれないと思うけど、まあ向こうでの衣食住は安心しな、話つけといた」

 

 

「って言っても…そんな急に…うちのオーナーはなんて」

 

 

「二つ返事でOKだってさ」

 

 

「あの野郎…」

 

 

あの野郎とはCiRCLEのオーナーの事であるのはお察しの通り、姿は見せないくせにこういう話は知らないうちに平気で進めて振り回す、まあもう慣れましたが…

 

 

「でもここもそこまで人手は足りてないのですが」

 

 

と、まりなさん

 

 

「ああ、そこは追々。とりあえず1人早急に欲しいって事だ、まあ長期出張だと思って申し訳ないがそこは諦めてくれ、で?誰が行く?」

 

 

「そんな急に言われても…」

 

 

「私は立場上ここは離れられないし……」

 

 

「どうしましょう…」

 

 

しばらく私たちは話し合いをしたが一向に決まらず、痺れを切らした詩船さんが

 

 

「じゃ、あんただね」

 

 

そう言って私を指差す

 

 

「え、私…ですか?」

 

「ああ、まああんたなら大丈夫だろう、消去法だけど」

 

「」

 

 

正直しばらく彼女達に会えないのはなかなかに寂しい…が、これが社会というやつだ、戸惑いはあるがまあこれも経験

 

 

 

 

こうして私は函館へ赴く事になった

 

 

これから一体どんな出会いが待ち受けているのだろうか

 

 

 

 

不安半分、期待半分の中、スタッフの新たな物語がはじまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アルゴナビスもっと流行れ!!


ではまた次回


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ようこそ函館、一方その頃

ちゃちゃっとやっちゃいます


「本日からこちらでお世話になります。よろしくお願い致します」

 

「こちらこそ!いやあ助かりました。私がここのオーナー…になる予定の者です。遥々遠い所から感謝します!」

 

 

というわけであれから色々準備し、今日から新しく開店する予定のとあるライブハウスにやってきました

ぶっちゃけ今後のコンテンツ展開がまだはじまったばかりなので先が読めないので、ここのライブハウスの名前は伏せておきましょう

 

「早速ですが手を貸してもらってよろしいですか」

 

「はい」

 

 

 

さて、さっそく忙しくなりそうですね

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

一方その頃

 

 

【CiRCLE】

 

 

「まりなさーーーーん!!」

 

 

「あら、香澄ちゃん達、いらっしゃい!久しぶりだね」

 

 

本当に久しぶりに会うポピパのみんなをみてなんだかまた成長したな…

と不意に思う

と言ってもほんの数ヶ月の間だけだが、いつも来ていたあの頃を思い出すとなんだか感慨深いものがある

そうだよね…出会ってからもう1〜2年ぐらい経つのか…

 

 

「あはは、あれから卒業式とか期末試験とか入学式の準備とかで生徒会が忙しくて」

 

と、有咲ちゃん、やはりそういう事だったらしい、そういえば生徒会役員だったんだっけ?なんだか大変そうだな

 

 

「というこで、新学期一発目のスタジオ練習、いいですか」

 

 

「うん、そういえばおたえちゃんが言ってたギターの弦、ウチでも取り入れてみたよ、よかったら試してみる?」

 

 

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

 

おたえちゃんの相変わらずと言った感じがなんだか安心できる、最近はRASのレイヤちゃんとも時間を見つけてたまに遊んだりしているらしい、これは香澄ちゃん嫉妬しちゃうかな?なんて、もうそんな心配はないんだけどね

 

 

「あの、すいません、ウチから差し入れ持ってきたんですけど…持ち込んで大丈夫でしたか?」

 

 

「うん!もちろん!あ、でも機材の近くで食べちゃダメだよ。」

 

「あはは、わかってますって」

 

「そういえば沙綾ちゃん、ますきちゃんとこの前偶然会ったんだけど、たまにうちの店に食べに来てって言ってたよ」

 

「え、まっすーが?また新作の実験台かなぁ…」

 

 

RASのますきちゃんはあれから新作を試すために沙綾ちゃんに味見をしてもらっているらしい、パン屋だけど大丈夫なのかな…甘いものを食べるとしょっぱい物が食べたくなるっていうアレかな…

 

いつも通りの日常、いつも通りのメンバー、いつも通りのみんな、また新しい1年が始まる

 

 

「あ、あの…まりなさん」

 

「ん?どうしたのりみちゃん」

 

最後に入ってきたりみちゃんがもじもじしながら言う、うん、やっぱりりみちゃんは癒されるなあ〜

 

 

「これ、スタッフさんから借りてたCD、返したいんですけど、スタッフさんは?」

 

 

「そういやアイツいねえな、休みか?」

 

 

「あ、私もお二人に差し入れ持ってきたんですけど」

 

 

 

あ、そういえば……

 

 

「あ、私もスタッフさんに頼まれてたオッちゃんのアルバム持ってきたんだった」

 

 

「あ!私も新曲の歌詞見て欲しかったんだった!」

 

 

みんなはまだ知らなかったんだっけ…って、そりゃ久しぶりに会ったんだからそれもそうか

 

 

「ああ、あの子なら……」

 

 

…………………………

 

 

……………………

 

 

…………………

 

 

 

「「えええええーーーーーーーーーーーーーーー!?函館ぇーーーーーーーーーーーーーーーー!?」」

 

 

「うん、長期出張だから当分帰ってこないと思う」

 

 

事情を説明すると案の定みんな期待通りの反応をする、まあそりゃそうだよね

あれ、というかあの子みんなに連絡してなかったの?確かLI○E知ってるはずなのに

 

まったく、ちゃんと連絡しておきなさいって言ったのに、帰ってきたらお説教だね

 

 

「まじかー……」

 

「あはは、なんかいつもまりなさんとセットのイメージがあったからちょっと変な感じだね」

 

「函館ってまだ雪あったりするのかな!?」

 

「どうだろうね、それにしてもスタッフさん…大変そうだな…」

 

「うーん…函館…白いウサギ…食べたい…」

 

「恋人な」

 

「そのうちみんなで遊びに行きたいね!」

 

「ふふ、そうだね、お休みが取れたらみんなで会いに行ってみよっか!私が引率するよ」

 

「おおー!まりなさんさすが!!」

 

 

ここにはいなくてもみんなちゃんとあの子の事を見てくれてるんだと思ったらなんだか急に目頭が……

 

うん、そうだね、私も頑張らないと!君も…新しい場所で頑張って!

 

そして帰ってきたら…また一緒にここを盛りあげよう…!

 

 

「あ、そういえばりみちゃん、あの子から借りてたCDって」

 

「あ、これです」

 

 

【GYROAXIA】って言うんですけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




特に終わり方に意味はないです


感想くれたお二方、とても励みになりました!本当にありがとうございます!!アルゴナビスもっと流行れ!!!


ではまた次回


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その日の夜

さらにコメント頂いた御二方、わかり手がいてくれて本当に嬉しいです!ありがとうございます

るるるんっとやっちゃいます


「お疲れ様でした!今日はここまでで大丈夫です」

 

「おや?もうよろしいのですか?お疲れ様でした」

 

「いやー本当助かりました、さすが都築さんのご指名」

 

「ハハハ」

 

消去法で仕方なくとは言いにくいですね…

とは言え本日の業務をなんとか終え、後は帰るのみ

ここも大きなライブハウスになりそうですね

 

 

「それではご案内致します」

 

「む?どこへ?」

 

「あはは、決まってるじゃないですか、スタッフさんの滞在中に使っていただく部屋ですよ」

 

 

おっとそういえばそうですね、一応住む場所の住所は詩船さんに頂いたのですが、地理は苦手なもので今夜は漫喫かどこかを覚悟していたのですが、これは助かりました

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「こちらが今日から使っていただくお部屋です」

 

「………」

 

「あれ、どうされました?」

 

「私、もうずっと函館でいいです…」

 

「?」

 

 

目の前にそびえ立つそれの屋上からは、かの有名な函館の夜景が全て観れるのではないかというほど高く立派な建造物、そう、マンションだ

本当に滞在中はここを自由に使っていいのだろうか…いや、いいに決まっている

だってなんてったって詩船さんの紹介なのだから!

思わず目をキラキラさせていると

 

 

「あはは、なんかよく分かりませんが、感動してもらえたようで何よりです、まだ出来たばかりでそんなに住居人もいないので心置きなく使って下さい」

 

「ありがたき幸せ」

 

「ちなみにここ、完全防音なのでバンド練習で使う子達も来たりしてるんですよ、まさに大ガールズバンド時代ならぬ、大バンドリ時代ってやつですよね、あはは」

 

 

さらっと凄いことを言ったような気がするのですが一体CiRCLEの経済力はどうなっているのでしょうか…

 

 

「それじゃあ自分はこれで、明日もよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、お疲れ様でした」

 

 

そう言ってオーナーはマンションをあとにする

さて、荷造り…は面倒ですね…休みの日にでもやりましょうか

と言ってもそんなに持ってきていないんですがね

とりあえず今日のところは布団だけ敷いてさっさと寝てしまいましょう

 

「あっ…でも腹は減りましたね…」

 

よく考えたらきて早々あれやこれやと動き回っていて気付いたらもうこんな時間

近くのスーパーは流石に閉店…となればやはり

コンビニ…ですかね

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「しかしまあやはり、まだ少々函館は肌寒いですね、まあ私の実家もこんな感じでしたけど…」

 

「今頃皆さんどうしてるでしょうか…あ、そういえばりみさんに貸してたCD…まだ返してもらってませんでしたね…まあ保存用にもう一枚あるのでいいんですが」

 

「あ、おたえさんからオっちゃんの写真集も受け取ってませんでしたね…山吹パン…出る前に食べておけば良かった…」

 

「香澄さんと有咲は……特にないですね、まあ元気でしょう」

 

 

っと、単身出張となると独り言が増えていけませんね、あ、でも山吹パンを思い出したらなんだかパンが食べたくなってきました…

 

 

「おや?」

 

 

歩いていると一軒まだやっていそうなカフェを見つけて足を止め

【Sudmarinen】達筆すぎて表記がよくわかりませんがおそらく

「さぶまりーな」…でしょうか…ふむ

 

ガチャ

 

 

「いらっしゃい」

 

「こんばんは、まだやってますか?」

 

「構いませんよ、どうぞ」

 

 

ドアを開けるととてもダンディなおじ様が出迎えてくれた

ほう…渋い…良いですね…おや?

 

店内を見渡すとバンドのステージが目に入った、楽器も一式揃っている

ほう…ここはバンド練習も出来そうですね…

なんだかCiRCLEを思い出します…

 

「気になりますか?」

 

不意にマスターに声を掛けられる

 

 

「そう…ですね」

 

「お客さん見掛けない顔だね、もしかして引っ越してきたとか?」

 

「引っ越しというか、まあ出張ですね。東京から」

 

「へえー、そりゃまたこんな所に遥々」

 

「いえいえそんな、あ、コーヒーとナポリタン頂けますか?」

 

「かしこまりました、少々お待ちを」

 

「にしても立派なカフェですね、こういう店ではマスター…で良いのでしょうか、もしかしてバンド、やられてるんですか?」

 

「うん昔ね、けど腕はまだ現役のつもりだよ」

 

 

そう言ってドラムを叩くそぶりを見せるマスター、なかなかお茶目な方のようだ、うむ…おじさんブーム…キてますね…

 

 

「お客さん出張って言ってだけど勤め先はもしかしてこの辺かい?」

 

「そうですね、少し歩きますが近日開店予定のそこのライブハウスに」

 

「ああ、あそこライブハウスになるのかい?これはあの子達にも教えてあげないとな」

 

 

マスターが気になる事を言いましたね、この辺りにもバンドをしている子達がいるようでなんだか職業柄うれしくなりますね、もう少し踏み込んだ質問をしてみましょうか

 

 

「あの子達とは?」

 

「ああ、最近知り合ってね、新しいバンドを作ろうとしてみたいなんだ、ほら、そこに張り紙してあるでしょ?」

 

 

言われて下げてあった掲示板を見てみると確かに真新しい張り紙が貼ってあった

ふむふむ

見た感じだとギターとベースは揃っているようだ

 

 

「大学生ですか」

 

 

「そ、2人とも情熱のある良い子達なんだよ、とりあえず今はボーカルを探してるみたいだね」

 

 

なるほど、ギターとベースが揃っているならまずはボーカルは真っ先にメンバーに入れておきたいというのは定石

しかし応募条件がなかなかのハードルの高さ

 

上手いのは当然、それでいて情熱があって何より馬鹿な奴ですか…

いや、バカって言い方もう少しあると思うのですが…

 

なんだかこうしてみると湊さんを思い出しますね…

あ、いや湊さんがバカと言うことではなく…いやでもあの人は割とポンコツが入っているから一概にそうとも言い切れないですね…

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

「っくしゅん」

 

「あれ?友希那、風邪?」

 

「いえ、これはなんだか噂をされたような…」

 

「無理はダメだよ、なんかあったらすぐ言ってね」

 

「わかってるわ、さあ、続きをやりましょう」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「面白いでしょ、応募チラシに馬鹿って書いちゃうなんて」

 

「ユーモアがあっていいですね、いつか会ったみたいです」

 

 

歌うこと以外興味のないバカ…って事なのでしょう、結成したら凄い事をしてくれそうですね

 

 

「けっこうウチにきてステージ使ってくれてるよ、さっきまでいたしね」

 

「なんと…タッチの差でしたか」

 

「お客さんもライブハウスで働いてるってことは何かバンドとか組んでたのかい?楽器は何弾いてたの?」

 

 

以外とぐいぐい来ますね…純粋な視線が眩しい…

 

 

「いえ、お恥ずかしながら楽器は全然…学生の頃にドラムとベースなら挑戦してみたのですが、秒で挫折してしまいましたね…」

 

「あははは、挫折するの早すぎるでしょ、もう少し頑張ってみたら良かったのに」

 

「ぐっ…今思うと仰る通りで…」

 

「けど、音楽は好きなんだね」

 

「それはもちろん、実用、保存用、布教用を買い分ける程度には」

 

「がはははっ、面白いね君、また来てよ、楽器がダメならマイクもあるし、ストレス解消にでも歌っていきなよ、ある程度の曲なら僕も叩けるし」

 

 

気の良いマスターですね、これからちょくちょく利用させて頂きましょう

他愛のない会話をしながら注文の品を食べ終え店から出て空を見上げると

満点の星空が輝いていた

 

「これは…キラキラドキドキが始まりそうな予感がしますね」

 

なんて、香澄さんに少々影響を受け過ぎたでしょうか

 

少し蒸気した頬をパチンと叩きながら、新たな何かが始まるような春の夜風に当てられながら帰路に着く私でした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…パン頼むの…忘れてましたね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この後本当どうしよう…


ではまた次回


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函館の星

ふわっとへにゃっとやっていきますね


今日も遅くまで頑張りましたね

さて、この後はサブマリーナにでもいきましょうか

 

「お邪魔しま…」

 

 

〜♪

 

 

「っ」

 

 

サブマリーナのドアを開けると轟音が鳴り響く

ステージの方を見るとマスターと見慣れない若者3人が演奏をしていた

みたところ大学生でしょうか?

しかしこれはまたコアな曲を…

そしてボーカルの彼の声…これは…

 

「おっと、気づかなくでごめんね、いらっしゃい」

 

「どうもマスター、また来ちゃいました」

 

 

その凄まじい声量に思わず聴き入っているところで演奏が終わり、そこでようやくマスターがこちらに気付いたようだ

 

「コーヒーいただいても?」

 

「かしこまりました、ちょっと待っててね」

 

「ところで、彼らは?」

 

「ああそうそう、彼らがこの間言ってたギターとベースの子だよ、それともう1人…は…今日彼らが連れてきた子…多分ボーカルにするんじゃないかな?僕もこの前知り合ったんだけどね」

 

 

多分…ですか、あの声量…ボーカルだとしたらとんでもない逸材だと思うのですが…

しかしなるほど彼らが…あっちではガールズバンドでしたが、こちらでは堂々のボーイズバンド、なかなか面白い事になってきましたね

となるともしボーカルが彼になったとしたら残るはドラムと…キーボード……ですかね

 

「マスター、ドラムありがと!ところでこの人は?」

 

 

楽器を片付け終えた帽子の彼がこちらに来てそう聞く

 

 

「ああ、この人は最近函館に来た東京のライブハウスのスタッフさんだよ、ほら、この間話した近くに新しくオープンする予定の」

 

「ああ、あの話か!へぇー、そうなのか」

 

「オープンしたらもしかしたら君達とも長い付き合いになるかもしれないし、覚えておいて損はないと思うよ」

 

「そうなんですか、それじゃあ自己紹介ですね。ほら、ゆう、七星くん」

 

後から来たヘアピンの彼が2人を目の前に並ばせる

 

 

「俺は五稜 結人、ギターだ、大学1年生、バンド仲間募集中だ、よろしく!」

 

「僕は的場 航海、ベースを弾いています、同じく大学1年生です。よろしくお願いします」

 

「え、えっと…僕は…七星 蓮…です。大学1年生です…」

 

「これはご丁寧に、初めまして、スタッフと申します」

 

 

今時珍しい、挨拶がしっかり出来る若者ですね、関心関心

しかしボーカルの七星さん…でしたか、歌っている時とまるで別人のような方ですね…興味深い

 

ギターの五稜さんはやや楽観的な印象ですが、どっしり構えるその姿勢、どう見てもこのバンドのリーダーは彼なのでしょうね

 

そしてベースの的場さん、彼は差し詰め五稜さんの歯止め役と言った所でしょうかね、礼儀正しく誠実そうな方だ、若干ネガティブな思想をお持ちのようだがそれもみんなの事を思っての事と思えばある意味バンドのお母さんのような印象です

 

ツッコまない所を除けばどことなく有咲を思い出しますね

 

「ところで、スタッフさんって、東京のライブハウスの人なんですよね?なんて名前の店なんですか?」

 

「ああ、それはCiRCLEっていう店ですね」

 

「え?CiRCLE……って…あの武道館ライブの?」

 

「おや、五稜さんご存知でしたか」

 

「いや、ご存知っていうか…」

 

 

何かおかしなことを言ったでしょうか?CiRCLEの名前聞いた途端何やら皆さんの空気が変わりましたね

 

「へぇ〜、スタッフさんCiRCLEのスタッフさんだったのかい?」

 

 

そこへマスターの八甲田 健三さんが助け舟を出すように口を開く

 

 

「はい、というかなんですかこの空気、まあ確かに武道館は我ながら凄いとは思いますが!」

 

 

少しドヤ顔で言ってみました、数少ない自慢のひとつではありますのでそこは誇張させていただきますよ私は、ドヤ

 

 

「凄いなんてもんじゃないよ、あの規模のライブを開催した立役者のひとつとして今の時代、けっこう全国でも有名なんじゃないかな?」

 

 

なるほど、武道館が終わった直後からなんだか急に忙しくなった気がしていたと思ったら道理で…

 

 

「そんな人とこんな所で出会えるなんて……おいおい、これは…運命だ!!」

 

「はい?」

 

「俺、このバンドで凄え事やれそうな気がしてきた!」

 

「はぁ…」

 

「よーし!やるぞ航海!早くバンドメンバー集めて俺らもやってやろうぜ!!」

 

「まーーた始まったよ、ゆうの楽観主義、だからってそんな簡単にバンドメンバー集まるわけないでしょ、チラシの時も言ったけど」

 

「いいや、やれる!俺たち3人なら!」

 

「いやだから、まだ七星くんはメンバーに加入した訳じゃないってば」

 

 

ふむ…

 

 

「ボーカル、やらないのですか?」

 

 

彼らが盛り上がっている様子を他所に先程からずっと黙っている七星さんに聞いてみる

 

「えっと…みんなと歌うのは好きだけど…」

 

「煮え切らないですね、何かボーカルが出来ない理由でもあるのですか?」

 

「そういう訳じゃないけど…まだちょっと…考えがまとまらなくて…」

 

「今一歩踏み出せない…という事ですか?」

 

「うん…そうかも知れないです…」

 

「私は、良いと思いますよ、七星さんがボーカル」

 

「え…?」

 

「正直、君の歌を聴いたとき魅了されました」

 

「僕の歌が…?」

 

「はい、まさかこんな所でこんな人に出会えるなんて…と思ったのはむしろ私の方です、なんというか…星の鼓動…が聞こえたような気がしました」

 

「星の…鼓動?」

 

「ああ、すいません、やっぱり今の恥ずかしすぎるので忘れてください、そういう事を言う子が向こうにいたのを思い出したものでつい」

 

「はあ…」

 

「七星さん、私は少なくとも君のようなボーカリスト、とても好きですよ。そうですね…もし店がオープンしたらすぐにでも定例ライブをやって欲しいぐらいに。君の歌声をたくさんの人に知ってほしい。そう思います」

 

「ありがとうございます…」

 

「もちろんそれを決めるのは君自身です、やらないという結論に至っても誰も文句は言わないでしょう、私が思うに君はけっこう頑固な癖にいろいろ余計な事を考えすぎる所があるのではないですか?なんて私も人の事言えないんですけどね、はは…」

 

「………」

 

「一度頭を空っぽにして、自分の気持ちに素直に従ってみたらどうでしょう?と言っても、君の中で実は既に答えは決まっていそうな気はしますけどね」

 

「っ…」

 

「さて、そろそろ良い時間ですし、私は帰るとしましょうか。マスター、お勘定」

 

「ん?もう行くのかい?また来てね」

 

「もちろん」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「しかし…だいぶ恥ずかしい事を言ってしまいましたね…」

 

 

五稜さんと的場さんの議論がまだまだ終わる気配がしない中、私はひっそりと店を出て帰路へつく

 

それにしても今日は函館に来てから一番良い出会いをしましたね、彼らの行先がこれからとても楽しみです、どんなバンドになって、どんな大会に出て、どんな経験をしていくのか…考えるだけでわくわくしてきますね

 

 

「あの!」

 

「?」

 

 

突然後ろから聞こえた声に振り返るとハアハアと息を切らした七星くんが立っていた

 

 

「七星さん、そんなに息を切らして、どうかしたのですか?」

 

「あの…さっきはありがとうございました!あんな風に言ってもらえるのは初めてで…なんだか心が軽くなったような気がしました。もう少しで考えがまとまりそうです…それじゃあ…」

 

「ふっ、そうですか」

 

 

それだけ言い残してまた向こうへ走っていく七星さんをみてどうやら後は心配入らないようだとその背中が語っていたように感じた

 

 

 

まりなさん…こっちのバンドも彼女達に負けないぐらい盛り上がっていますよ

 

 

これは良い土産話ができそうですね…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




epsilonφは絶対ラスボス


では次回


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新たなる挑戦

そう言えば言い忘れていました…

これ…来年の劇場版で下手したら3年生組卒業までいくのでは…いったらいいなぁ…という予想で書いていました…


ここはCiRCLE、閉店間際のこの時間、本日最後のお客様の終わりを待つ

こんにちは、まりなです

あの子が函館へ行ってから早ひと月が経とうとしている頃

そろそろ本格的にバンドの季節が近づいてきました

 

 

「終わりました。まりなさん、お願いします」

 

「うん、ありがとう友希那ちゃん」

 

 

本日最後のお客様はRoseliaのみんなです

 

 

「いやー疲れた疲れた〜」

 

「今日も有意義な時間でした

 

「りんりん、紗夜さん!帰ったらNFOやろ!」

 

「うん、いいよ…あこちゃん」

 

「確か今日から復刻のイベントでしたね、取り損ねた装備があるので手を貸していただけたらありがたいのですが」

 

「全然ですよー!あたしも欲しいアイテムありましたし」

 

「紗夜もあれからすっかりハマってるね〜」

 

「そ、そう言う訳では…!」

 

 

そういえばすっかり言い忘れてたけど、あれからあこちゃん以外のみんなは卒業して大学生になりました、いやぁ本当、みんなまた逞しくなったな〜

 

 

「みんな待って、今日は少しRoseliaの今後の事で話したいことがあるの」

 

「へ?友希那、どうしたの改まって」

 

「なんだか真剣な話みたいだね、お店は閉めちゃうけど良かったらラウンジ使ってって」

 

「ありがとう、まりなさん」

 

 

一応先に帰るわけにはいかないので私も同席させてもらう事にした

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

「それで湊さん、Roseliaの今後の話とは?」

 

 

「まさか…みんな大学生になったから解散なんて話じゃ…!」

 

 

「落ち着きなさいあこ、そんなわけないでしょう?」

 

「よ、よかったぁ…」

 

「あたしもちょっと焦ったよ…こういう時の友希那は何言い出すかわかんないからな〜」

 

「私をなんだと思っているの…」

 

「それで…湊さん…話というのは…」

 

「ええ、単刀直入に言うわ、私たちの今後の目標…Destiny Rock Festivalを目指すわよ」

 

「「っ!?」」

 

 

「ディスティニーロックフェスディバルを…通称ディスフェスの事ですね」

 

 

「それ、あたしも流石に知ってる…毎年TV中継もされる夏の超大イベントだよね…全国から勝ち上がったバンドだけが参加できるっていう」

 

「その通りよ」

 

「しかしどうしてまた急に、Future World Fes は良いんですか?」

 

「……ここからは私の私情が入ってしまうのだけど…」

 

 

そう言って友希那ちゃんはスマホを取り出しとあるライブの動画を見せる

 

 

激しい旋律から放たれる暴力的なまでの演奏…何者も寄せ付けない圧倒的なスキル…その中心にいる銀髪の男性ボーカル

 

 

「これ…GYROAXIA…ですよね…」

 

「なるほど…合点がいきました…」

 

 

GYROAXIA…現在函館で活躍しているグループ、そして何を隠そういつかのFuture World FesでRoseliaが敗れ、いともたやすく頂点に立ったそのバンドが今再びRoseliaの前に立ちはだかる

 

 

「旭 那由多…おそらく…いえ、確実にディスフェスの予選を勝ち抜くはず…私は…彼にリベンジしたい…今の…更に強くなったこのRoseliaで…」

 

「湊さん……」

 

「お願い…みんなの力を貸して…!」

 

そう言って深々とメンバーに頭を下げる友希那ちゃん、なるほど…GYROAXIA…これは一筋縄じゃいかなそうだね…だけど…

 

 

「頭を上げてください…湊さん」

 

「全く…何を言うかと思ったら…」

 

「そんなの当然ですよ!友希那さん」

 

「そんなの愚問ですよ、私が目指すのは頂点…ならばこんな所で立ち止まっている訳にはいきません、さっさとそのリベンジを済ませましょう」

 

 

なんか紗夜ちゃんが凄く男前になってる…大学生デビューかな…ってそうではなく

 

 

「みんな…ありがとう…」

 

 

そういって少し深呼吸をしたあと友希那ちゃんは静かに立ち上がり

 

 

「今年の夏こそは…勝つわよ…!!」

 

 

「「おう!」」

「「はい!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして新たなRoseliaの挑戦が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




11話見たかみんな……



では次回


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4人目

正直に言うと呑んだ勢いで書いたので頭使わず読んでいただけたら幸いです


本日は午前中で仕事が終わったということで函館観光へ勤しんでいます

実は兼ねてより函館へきたらずっと行ってみたいと思っていた店があったんですよね

 

 

「ここですか」

 

 

TVでも宣伝していた函館の有名な和菓子屋.その名も

 

 

「菊花亭」

 

 

とても趣きがあって良い老舗ですね…では…

 

そう言って店に入ろうとしたら

 

 

「時間の無駄だね、僕は帰る」

 

 

おや?聞き覚えがある声ですね

 

2回の窓から何やら揉めているような会話が聞こえてはいましたが…

そう言って店から出てきた声の主は

 

 

「おや、的場さんではないですか、おーーい的場さ…」

 

 

声を掛けようとしたのだが気づいていない様子でそそくさと道を歩いて行く的場さん

ふむ、何か怒っていたように見えましたね

これも青春ってやつですか

 

 

「おい航海!おーーい」

 

 

続いて出てきたのは五稜さん、そしてその後に続いて姿を見せたのが七星さん

おやおやみんないたんですね

 

 

「五稜さん、七星さん」

 

 

「ん?おー、あの時の」

 

「スタッフさん」

 

 

2人は私の呼び掛けに答えてくれました、うん、いい子達ですね

 

 

「こんにちは、何かあったのですか?二階から揉めているような声が聞こえたのですが」

 

「耳良いなあんた、まあそういう事なんだ、すまん、ちょっと急いでるからまた今度!」

 

「あっ待ってよ結人」

 

 

軽く会釈をして七星さんも五稜さんに続いて走り去っていく

 

 

「何かあったのでしょうか…」

 

「凛生ぼっちゃんのお友達が訪ねてきたのですが…何か揉めていたようですね」

 

「やはりそうでしたか」

 

 

店の前で立ち止まったまま考え事をしている私を見兼ねてか菊花亭の店員さんが話しかけて来た

 

 

「ん、凛生ぼっちゃんとは?」

 

「この菊花亭の御曹司様です、大学に上がったばかりでして…」

 

 

ということは彼らと同じ大学1年生ですか…

 

 

「すまない、うるさかったか?」

 

「い、いえっ!そんな事は」

 

 

少し店員と話し込んでいると店の奥から1人の若者が顔を出す

おそらくあれが凛生ぼっちゃんという御方なのでしょう

 

 

「あ、お客様でしたか、申し訳ありません」

 

 

「いえいえ」

 

 

視線に気付いたのか凛生ぼっちゃんが私を見てそう言った

というか…身長デカいですね…五稜さんより少し下ぐらいでしょうか…

ってそうではなく

 

 

「先程的場さん達が出て行きましたが…何かあったのですか?」

 

「なんだ、彼らの知り合いだったのか、まあ…ちょっとな」

 

「面白そうなのでよろしければお話、聞かせていただいても?」

 

「そう言われて話す奴がいると思うか?」

 

「まあまあそう言わずに」

 

「…ふっ…素直な人だな、少し話し込むが、いいか?」

 

「やった」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

バッティングセンターのベンチに座り込み、凛生ぼっちゃん、いえ、桔梗 凛生さんから事のあらましを聞いていた

 

 

「キーボード、ですか」

 

 

桔梗さんの話を要約するとこうだ

 

夜に五稜さんが大学を徘徊していたらピアノを弾いている桔梗さんを発見

これは4人目見つけたかもしれない

改めて自宅を訪ねたところすんなりOKした桔梗さん

しかし桔梗さんにはサークル荒らしという噂があり的場さんが問いただす

結果、本気でやる気がないなら迷惑だと激昂

そして現在に至る

 

 

え、なぜここまで聞き出せたかって?私、こう見えても人の話を引き出すのは得意なんですよ、ふふふ

 

とまあそれは置いておいて

 

 

「なるほどー、それは桔梗さんが悪いですね」

 

「ははっ、だからそう言ってるだろう、変わった人だなあんた」

 

「よく言われます」

 

「ま、そういう訳だ…俺にとって野球より熱くなれるもの…あるのかな…」

 

桔梗さんは野球をしていて甲子園へ出場した経験がある

しかし甲子園1回戦、打たれた打球が肩を直撃、当たり所が悪かったのかそのまま選手生命を断たれたらしい

 

うん…これは……思ったより重い話ですね…しかし

 

 

「桔梗さん、ピアノは弾けるし即席で作曲もできるなんて…五稜さんはいい人材を見つけたと思うのですが」

 

「俺は天才だからな、まあその事で揉めたりするのはもう慣れてるさ」

 

「なるほど、的場さんとつくづく合わないわけですね」

 

「おいおい…きっぱり言うんだな」

 

「デリカシーがないとはよく言われます、けど…」

 

「?」

 

「野球より熱くなれるもの…野球は私も好きなのであまり言いたくはありませんが、それはバンドかも知れない可能性もあると思いますよ」

 

「……」

 

 

「そうだ、確か的場さんは作詞ノートを持ってましたよね、それを借りて、その歌詞に作曲をつけて見るのはどうでしょう?」

 

「貸してくれるわけないだろ、それに、俺たちの話はもうあそこで終わってる」

 

「いやいや、それはまだわからないかも知れませんよ?それに、私は桔梗さんの作った曲、とても聴いてみたいですね、ええ」

 

「あんた…」

 

「では私はこれで」

 

 

「あ、おい…!…」

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「全く…変わった人だったな…」

 

 

 

「ねぇ!」

 

 

 

「っ!、君は確か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺はこの後作詞ノートを持ってきた蓮に思いをぶつけられ…新しい自分の居場所を見つけた…

 

 

今思うと、俺はあの人に上手いこと誘導されたのかも知れないと後になってから思う

 

 

熱くなれるものを探し続け、気がつくとサークル荒らしと呼ばれていた俺の人生はこうして変わったんだ

 

 

俺はこいつらとバンドをやりたい…これが今の俺の熱くなれるものだ

その事に気付く最初のきっかけをくれたのはあの人かも知れないな…

 

 

これから長い付き合いになりそうな予感に少々心を躍らせながら

俺はこのメンバーのキーボードとなったのだった

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ…菊花亭の和菓子…買うのを忘れてしまいましたね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誰か早くガルパ×アルゴナビス書いてくれぇぇ!!



では次回


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サブマリーナにて

常に予想の斜め下にいきたい…


ではどうぞ


「マスター、コーヒーを」

 

「いらっしゃい、そろそろかと思って入れておいたよ」

 

「さすがマスター、私よりも私の事をわかっていらっしゃる」

 

「そうなの…かな…?」

 

 

気付いたら毎日仕事終わりにサブマリーナに通うのが日課になっている今日この頃、そう言えばあれから七星さんと桔梗さんが正式にバンドに加入したそうです。と言う事は残りはドラムですね…さてさて、どんな方が最後のメンバーになるのか

 

 

「あ、それとナポリタンも」

 

「ナポリタン好きだね、かしこまりました」

 

 

ここのナポリタン、美味しいんですよね、野菜多めで栄養バランスもきっちり考えられているし体に優しい味がするんですよね…

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

先に出されたコーヒーを飲みながらまったりしていると聞き覚えのある声が入ってくる

 

 

「お、スタッフさんもいたのか」

 

「おや五稜さん、今日はお一人ですか?」

 

「まあな、レポート提出するの忘れてて居残っててさ」

 

「ああ…なんか納得しました」

 

「なんでだよ!?」

 

 

声の主はお察しの通り五稜結人さん、七星さんと桔梗さんが正式加入してからなんだかずっとご機嫌な様子なんですよね、まだドラムが残っていると言うのに少し心配になります

 

とは言えあれから一番会う頻度が高いのは五稜さんというのもまた事実、こう言った新しい土地での出会いと言うものは大切にしたいものですね

 

 

「はい、お待ち」

 

「お、ありがとマスター、んじゃスタッフさん、乾杯」

 

「あ、はい」

 

 

コーヒーで乾杯というのも何だか違和感がありますがまあそれはいいでしょう

 

 

「はいよ、ナポリタンもお待ち」

 

「ありがとうございます」

 

「お、ナポリタンか、マスター俺も」

 

「はいはい、少々お待ちを」

 

 

「そういえば五稜さん、残りはドラムですね、あてでもあるのですか?」

 

「ああーそれな、なかなか良さそうなのが見つからなくてな」

 

「あと1人ですからね、尚更慎重にいかないといけない気持ちはわかります」

 

「そうなんだよなー、マジでいい奴いないかな…」

 

「気長に待とう…と言うつもりはありませんが、焦ってもいい事ないですよ。五稜さんやメンバーが納得のいく人材が見つかるよう祈っていますよ」

 

「はは、サンキューな」

 

 

こうして人と他愛のない話をするのも久しく忘れていた高揚感というか居心地の良さを思い出す。私も何か協力できれば良いのですが…今はぶっちゃけ仕事が忙しすぎてそれどころではありません……申し訳ない

 

 

「あ、コーヒーおかわり」

 

「あ!私も下さい!あとポテト」

 

「かしこましました」

 

 

話し込んでいるうちに気づいたらコーヒーを飲み干してしまい、もう一杯頂く事にする

 

というかここ、ポテトまであるのですね…メニューまで豊富とは…

 

 

「はい、コーヒーのおかわり、それとポテトね」

 

「ありがとうございます」

 

「やったー!」

 

「ここのポテト美味しかったんだよね、この前収録の後に見つけて寄ってみたら楽器とかもあるし、なんかるん♪ってするカフェだよね!」

 

「全く相変わらずポテトが好きですね、日菜さんは」

 

「まあね〜、あ、お姉ちゃんにも教えてあげなきゃ!」

 

 

ふふ、相変わらず超がつくほどのシスコンですね日菜さんは

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なんで居るの!!!????」

 

 

 

 

「ん?どうかした?」

 

 

皆さんはお気付きになられただろうか、コーヒーとナポリタンを食しながら五稜さんと楽しくお話をしていました私ですがてっきり2人だけかと思ったらすぐ隣に自然に、それはもう本当に自然によく見知った人物が居座っていました

 

その名は氷川日菜さん、パステルパレットというアイドルバンドのギターを担当している天才少女、Roseliaの氷川紗夜さんの双子の妹である

 

 

「どうかした?じゃないよ!?なんで普通に居るの!?ここ函館だよ!?あなたなんでここに居るの!?おかしくない?」

 

 

「スタッフさんキャラが変わってるよ、いつもの話し方、どうしたの?」

 

「おっといけません、つい取り乱してしまいました…じゃなくて!そりゃ取り乱すわ!ツッコミどころが多すぎてもはやどこからツッコんだものか!!」

 

「あはは、スタッフさん相変わらずだね!実はね…」

 

 

話を聞くと、と言うかもう既に喋ってはいたのですが日菜さんはパステルパレットの収録で函館に来ていてその収録が終わり、自由時間になったところ暇を持て余した日菜さんはマネージャーやメンバーには何も言わずに勝手に函館を散策していたらサブマリーナを見つけて中に入ると知ってる人物、というか私がいたのを発見し、るんっ♪ときてそのまま居座っていたとの事

 

 

何を言っているのかわからないと思いますがつまり、そういうことだそうです

 

 

「いやあ〜まさかスタッフさんが函館にいたとは…ま、お姉ちゃんから聞いて知ってたんだけどね〜」

 

 

「ん?なんだスタッフさん、そいつ知り合いか?って言うか、パスパレの氷川日菜じゃん!」

 

 

そんなこんなであたふたしていたらずっと様子を見ていた五稜さんが話しかけて来ました、というかパスパレの事知ってたんですね

 

 

「こんばんは!私、氷川日菜!あなたは?」

 

「お、俺か?俺は五稜結人、あんたらと同じくバンドやってる大学1年生、ギター担当だ」

 

「五稜くんか!大学1年ってことは私と同い年だね!よろしく!」

 

「お、おう…」

 

「なんか…変わった奴だな…」

 

 

日菜さんに圧倒された五稜さんが耳元で私に囁く

 

まあ、五稜さんがそれを言うか…とは思いますが…

 

 

「ねえねえ、五稜くんはスタッフさんとどうやって知り合ったの??」

 

「俺?うーんと…そう言えばなんでだったっけ?気付いたら知り合ってた」

 

「へぇー!そうなんだ!私はね、東京にCiRCLEっていうライブハウスがあってね!」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「いやあー!楽しかった!」

 

 

あれから閉店までの間、日菜さんと五稜さんはなにやら打ち解けたのかずっと他愛のない話で盛り上がり、そこからようやく解放された私は一応心配なので日菜さん達の泊まっている宿まで送る事になった帰り道

 

 

「なんかすごい馴染んでましたね、同じ感覚派の人間だからでしょうか…」

 

「あはは!そうかも、ていうかそれより、スタッフさん酷いよ!なんでみんなに黙って函館に行ってるのさ!しかもあんな面白そうな人と知らないうちに知り合ってたなんて!」

 

「いやあそれは何というか本当に申し訳ない…」

 

「最初お姉ちゃんから聞いた時は本当にびっくりしたよ!通りでこの頃CiRCLEに通っても見ないなと思ったら」

 

「まあ私も日菜さんが急に現れたのはびっくりしましたし、、お互い様という事で」

 

「あはは、何それ、でもスタッフさんが函館でも相変わらずでよかったよ」

 

「そのセリフ、そのまま返させていただきます」

 

 

久しぶりのよりによってまさかの人物との再開で身の上話に花を咲かせながら歩いていると日菜さんが立ち止まる、どうやらここがパスパレの滞在中の宿のようだ

 

 

「あ、どうせならみんなに会って行かない?なんだかんだスタッフさんに会いたがってると思うんだよね!」

 

「はは、気持ちは嬉しいですが夜も遅いし遠慮させて頂きます」

 

「ええーなんでー?みんな多分まだ起きてるよ、彩ちゃんとイヴちゃんは仕事でいないけど…ねえ〜少しくらいいいじゃん!」

 

「大丈夫ですよ」

 

 

だって………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

ここ、私も借りてるマンションですから………いつでも会えるんだよなあ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後 隣の部屋だった事に気付くのはまた別のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お前かよ!ってツッコミ、お待ちしています


では次回


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船出の時

ちょっと本当に何も考えないでただただパパパッと流し見して頂けたら幸いです……


それは街を歩いていた時のこと

 

「ったく…やってられないよ…めちゃくちゃだ…」

 

 

通りがかったライブハウスから楽器を背負った若者がぶつくさと呟きながら肩を丸めて去っていく

何かあったのでしょうか…

 

と、そこへ

 

 

「ん?スタッフさんじゃないか」

 

「その節はどうも」

 

「おや、七星さんと桔梗さん」

 

 

何か探しているような様子の七星さんと桔梗さんにバッタリ会った

 

 

「最近よく会いますね、今日は2人ですか?」

 

「まあな、って…すまない、急いでたんだった」

 

「何かお探しのようでしたが」

 

「ああ、ちょっとな…よし蓮。入るぞ」

 

「うん」

 

 

そう言って先程若者が出てきた目の前のライブハウスに入っていく2人

 

 

「これは…何かありそうですね…!」

 

 

そして好奇心に正直な成人が1人その後へ続こうとすると

 

「あのー…」

 

「はい?」

 

くっ、いまいいところだったのになんと間の悪い…そう思いながら振り返ると

 

 

「あ!やっぱりスタッフさんだ!」

 

「お久しぶりです!」

 

まん丸ピンクとブシドーこと丸山彩さんと若宮イヴさんがそこに立っていた

 

「あ、どうも、それじゃあ」

 

「ええー!?ちょっと待って下さいよ!」

 

「ぐっ、離してください!今いいとこなんです!」

 

「何もないじゃないですか!せっかく久しぶりに会ったんだし少しぐらい話しましょうよ!」

 

中に入ろうとする私を思いのほか強い力で引き止めようとする丸山さん

この人のどこにそんなパワーが…

 

 

「アヤさん!落ち着いてください、注目されています!」

 

「でも〜」

 

 

それはそうだ、変装していてもパスパレのような芸能人がこんなところにいるとなったら周りはほっとかない、よくいる野次馬のような輩が出てきてもおかしくはないのだ

 

抵抗を諦めて私は好奇心を押し殺しながら2人と向き合おうとしたところに

 

 

「どうしたの?スタッフさん」

 

「随分と騒がしいようだが…」

 

 

ライブハウスから出てきた七星さんと桔梗さんが駆け付ける

 

「あ、2人とももうよろしいのですか?」

 

「ああ、用事は終わった、ところでもしかしてその2人は…パステルパレットの…」

 

「ば、バレてしまいましたアヤさん!ここは一時撤退です!」

 

「ええー!!?ちょっとイヴちゃーーん!あ、今後ともパスパレをよろしくお願いしますーー!!」

 

 

七星さんと桔梗さんにそう言い残し嵐のように去っていく2人の背中を見ながら呆然と立ち尽くす

 

「一体なんだったんだ…」

 

いや、本当にその通りである、まあ原因は私なのでしょうが…

 

「というか、スタッフさんの人脈は一体どうなってるんだ…」

 

「まあそこだけは自信あります、それより2人は結局何をしに入ったのですか?」

 

「ああ、実はな…」

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

ようやく落ち着いたところで改めて話を聞く

 

 

「なるほど、そんな事が」

 

「ああ、とりあえず今日のところは俺達は五稜たちに報告しに帰る。またな」

 

「さようなら!」

 

「ええ、ではまた」

 

 

さて、

 

 

つまり要約するとこう言う事らしい

 

 

5人目をどうするか相談していたところに最近、道場破りのような事をしているスーパードラマーがいるという噂を聞く

五稜さんがそいつを仲間にするぞと意気込む

とりあえずサブマリーナへ、するとちょうどメンバーに加入したいと言うドラマーが面接に

色々と問題があるという事で一時保留、というかほぼ不合格に

という訳で例のスーパードラマーを早速探しに行くことになりここへ

実はそのスーパードラマーの正体が面接に来た彼だった

 

 

 

 

 

という事らしい

 

 

「これは…なかなかにクセが強そうな方ですね…」

 

「ねえねえ、そこの人」

 

 

そう思いながら佇んでいるところへライブハウスから出てきた1人の若者が私に声をかける

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

「いまチラッと見てたんだけどさ、もしかしてあいつらの知り合い?」

 

「海よりも深く山よりも低い関係ですね」

 

「なにそれ、変なの」

 

「よく言われます」

 

「それで、あんたはあいつらと知り合いなの?」

 

「グイグイ来ますね、そうだと言っているでしょう」

 

「いま初めて聞いた気がするけど…まあいいや、それよりさ、俺バンドに入って金儲けしたいんだよね、あいつらに口効いてくんない?」

 

「む?その言い方からするともしや君がスーパードラマーの」

 

「そ、白石 万浬。よろしくー」

 

「私はスタッフと呼ばれています、よろしくやれるかどうかはちょっと怪しいですがとりあえずよろしくお願いします」

 

「めっちゃ警戒してんじゃん、ウケるね」

 

「いやウケねーですから」

 

「とりあえず早速質問が」

 

「どぞどぞ〜」

 

何かいちいち軽い奴ですね…まあそれは今は置いといて…

 

 

「白石さんでしたね、金儲けしたいと言うのは正直大事だしそこはむしろ同感です。ただ何故その為に選んだ手段がバンドなのですか?」

 

「それは今の時代だね、大バンドリ時代って言うの?そう言う感じ。ドラムなら叩けるし手っ取り早いと思って」

 

「え、それだけですか?」

 

「え、それだけだけど?」

 

「本当に?」

 

「うん。」

 

「何か事情があるとか」

 

「……別に?」

 

「金儲けの為だけにドラム、と言うことは、音楽事態は好きではないのですか?」

 

「もちろん好きじゃなきゃやってないよ、てかそれ、さっきも言われたんだけど」

 

 

「ふむ…」

 

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

「………」

 

 

「何だよ、何かあるなら喋りなよ」

 

 

色々思考しているところを痺れを切らした白石さんが少々不機嫌に私にそう言ってきたので

 

 

「本当は?」

 

 

こう切り返す

 

 

「は?」

 

「いえ、さっきから話をしていて思ったのですが、君はまだ何か隠している事があるような気がしたので」

 

「何もないよ、バンドに入って金儲けしたい、それだけ」

 

「ふーーーーーーーん」

 

「その反応なんかムカつくな、なんなんだよ一体」

 

「よし、わかりました。少し君の身の上話を聞かせてください」

 

「はぁ!?意味わかんない、なんで初対面の人にそんな事まで話さなきゃダメなのさ」

 

「まあまあそう言わずに」

 

「………なんなんだこいつ………」

 

 

このまま問答を続けてもラチが開かなそうな事に観念したのか白石さんは諦めたように大きな溜息を吐き、承諾した

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「って言う事、もういいでしょ?」

 

 

率直に言うと、白石さんの実家は牧場か何かなのでしょう、そして色々あって現在は休業中、となれば結局お金が必要、自分が稼いでここを復活させたい

 

そう言う事らしい

 

 

「全く、そう言う事をまず彼らに話しておくべきでしょう、プライド高いですね。嫌いではありませんが」

 

「いきなり初対面の人にこんな事情だから入れてくださいなんて言える訳ないでしょ、かっこ悪い」

 

「私も初対面なのですが話してくれたじゃないですか」

 

「いやそれに関してはあんたがしつこいからなんだけど!?」

 

「???」

 

「はぁ…もういいよ疲れた…ま、どうせ不合格なのはわかってるし、また別のとこ探すよ」

 

「諦めるにはまだ早いかもしれませんよ?」

 

「それ、どう言う意味?」

 

「特に意味はありませんよ、そんな気がしただけです。こう言う時の私の勘はよく当たるんですよ。では私はこれで」

 

 

「ホントなんなんだあいつ…」

 

 

「…諦めるにはまだ早い……か……。ま、明日になっても何もなかったらまた他のとこ探すか」

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

後日、また私はサブマリーナへ足を運ぶ事にした

 

 

「さて、あれからどうなったのか…」

 

 

そう思いつつ店のドアを開けると

 

 

 

「それじゃあ、俺達の船出を祝して…」

 

 

「「かんぱーい!」」

 

 

ほら、やっぱり

 

 

 

「あ、スタッフさん、いらっしゃい」

 

「こんにちはマスター」

 

「お!スタッフさんか!聞いてくれよ!ついにバンドが完成したんだ!」

 

「どうやらそうみたいですね、五稜さん。おめでとうございます」

 

「おう、ありがとうな!」

 

 

さて、

 

 

「ね、言った通りになったでしょう?」

 

「そうみたいだね、悔しいけど…まああんたのおかげだよ。あんがと」

 

 

白石さんのところへ駆け寄り、こっそりと話しかける

 

 

「ん、なんの話をしてるんだ?」

 

「いえなんでも、それよりメンバーが決まったと言うことはバンド名はどうなったのですか?」

 

「ああ、それな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【Argonavis】って言うんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてここからようやく物語が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう今週で最終回なのか…


新たにコメントやお気に入り頂いた皆さん、本当に申し訳ない、そして本当にありがとうございます


では次回


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新風

なんとなく閃いた結果暴挙に出ました


「お世話になりました。」

 

 

「おう、お疲れさん!次の仕事先でも頑張れよ!」

 

 

「はい、お世話になりました」

 

 

そういって会社に背を向け歩き出す

 

 

「はぁ…本当いい加減ちゃんとした仕事探さないと…」

 

 

この台詞、今までどれだけ呟いてきたのだろう…

 

 

 

これまで色々な仕事をしてきたが実はこの男、どれも長続きせず、幾度となく職を転々とし続け、気が付けば20代も半ば

 

 

周りの友人たちは皆それぞれのやりたい事や分野で各々に活躍していたり、中には既に家庭を持っている者までいる。常に周りと比べ、自分にコンプレックスを抱きながら毎日を過ごしている。いやまあ、自業自得なんだけども

 

 

そして今日もまた就職活動に勤しむ

 

 

………

……

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

≪コンビニ≫

 

 

 

「いらっしゃいませ~~~」

 

 

 

相変わらず今日もゆるい口調だな…と思いながらコンビニへ来た。ていうかいつも思うけど本当あの子らみたいに学生の内にバイトとかしておけばよかった、いや本当に…まじで

 

 

「ありがとうございました☆またお越しくださいませ」

 

 

求人雑誌を手に取り店を出る。その後喫茶店で腰を落ち着けたところでページをめくる

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

《喫茶店》

 

 

「なんだこれは…どれもこれも全部最近俺が落ちたところばかりじゃないか…誰も採用する気が無いなら募集するなよ…」

 

 

色々と自業自得なのだが自分が落ちた会社の募集ばかりが目に入ると愚痴りたくもなる、が、そんなことをいつまで言っていても状況が変わるわけでもなく、仕方がないので、そのままページをめくり続ける

 

 

「お待たせしました。本日のケーキセットです。」

 

 

といったとこで、注文の品がきたので手を止め 食す

 

 

「(あの店員、若いのにてきぱきしてて凄いな…)」

 

 

さっきのコンビニでも思ったが最近の若者というのは本当にすごい、学生の頃から働くなんてなかなかできる事じゃないと思うし別にお世辞でもなんでもなく素直に尊敬している

 

 

「もう少しだけ、頑張ってみるか」

 

 

“頑張る”という言葉は正直好きじゃないがあんな姿を見ると不思議と励みになることもある

 

 

「(どんな形でもいい、色んな若者達を応援できるような職に就けたらいいな…)」

 

 

などと漠然とした事を思いながらページをめくっていくと、ある求人募集が目に留まる

 

 

『CiRCLE』

音楽を始める君へ!

学生、社会人応援キャンペーン実施中!

我々と共に今を生きる人々を応援しませんか?

 

 

 

 

 

「これだ…!」

 

 

 

俺は多分この時人生で初めて、考えるより先に身体が動いた、という言葉を体感した

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

《翌日》

 

 

「それでは面接は以上になります。結果は後日お伝えます。本日はありがとうございました。」

 

 

「よろしくお願いします。失礼しました。」

 

 

そういってCiRCLEを後にする

 

 

正直、手応えをあまり感じなかった。転職を重ねすぎただけあって心なしか面接の人が神妙な顔つきだった気がする。職歴に関しては同年代はおそらく自分には勝てないまである

 

 

しかも冷静に考えるとライブハウスって何をすれば良いのか検討もつかない、機材とかよくわからないし本当に勢いと気持ちだけで面接を受けてしまったことを帰りながら激しく後悔していた

 

 

せめてもう2~3年ぐらいはやくこういった物に興味を持っていれば良かった…

 

 

なんて悲観的になってしまっても埒があかないのでここは諦めて早々に見切りを付け、また求人雑誌を手に他の仕事を探すことにした

 

 

良くも悪くもこう言うときの俺は早い。落ちたと思ったらダメ、即、行動、これがモットー

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

そして数日後

 

 

 

≪ファーストフード店≫

 

 

 

「いらっしゃいませ。ご注文お伺いします。」

 

 

案の定、あれから連絡はない、やはり落ちたのだろう。だが職歴と面接に関しては人より場数は踏んでいる。このぐらいではまだめげない

と言うことで今日も就職活動に勤しみながらファーストフード店に入って一息ついていた

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

「私、そろそろ時間だから上がるね」

 

 

「函館から帰ってきたばっかりなのにもうレッスンなんて大変だね…無理しないでね」

 

 

ふとそんな会話が聞こえてきたので思わずページをめくる手を止める

 

 

「レッスンとな」

 

 

最近の若者は本当にすごい、バイトした後に更にレッスンしかも少し聞こえたが函館から帰ってきたばかりとは……これはたまげた、これが若さか… とは言っても自分もまだ20代、そう、まだ20代なのだが…それにしても最近の若者は実にエネルギーに満ち溢れている。どこまでも突き進んでいって欲しい

 

 

「(さて、今日はここまでにして帰ろう)」

 

 

そういってファーストフード店を後にした

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

≪ショッピングモール≫

 

 

 

「あ、新曲出てる…」

 

 

帰り際にショッピングモールに立ち寄ることにした

 

 

音楽は好きだ、なんだかんだカラオケ店員をやっていた頃がもしかしたら一番長続きしたかもしれない、音楽のある環境は良い、嫌なことがあっても好きな曲が流れてくるとそんな事どうでもよくなるぐらいには

 

 

「ありがとうございました、またお越しくださいませ」

 

 

ひとしきり目当ての物を買い漁り、店内をぶらついていると楽器店が目に入り立ち止まる

 

 

「………」

 

 

ふとCiRCLEへ面接に行った時の事を思い出していた

 

 

「………帰ろう」

 

 

あれから本当に連絡がこない、びっくりするほどこない、不採用通知すらこない、どんな形にせよせめてはっきりした結果が知りたい、やれ見切りを付けるだとか諦めるだとか言ったもののそれでも結果が出るまではほんの少しは期待しているのである

 

 

「だぁ~もう うぜぇ~!付いてくんな~!」

 

 

「待ってよ~~!何で逃げるのさ~!」

 

 

 

「青春だねえ…」

 

 

帰り道、すれ違った学生達を遠目に見ながら思う、とてもキラキラしていて眩しい、また少し元気を貰えた気がして頬が緩む、そして決心がついた、こちらから連絡してみよう。例えどんな結果であっても

そう思ってリダイヤル画面を開こうとすると

 

 

 

prrrrrr…

 

 

タイミングよく電話が鳴り

 

 

「もしもし…」

 

 

その相手は

 

 

 

「もしもし、私、 CiRCLEの月島と申します。お待たせさせてしまい大変申し訳ございません。先日の面接の件なのですが…」

 

 

「はい…」

 

 

唾を飲む

 

 

 

「採用ということにさせて頂きました。後日手続きのご案内をさせていただきたいのですが御都合のよろしい日はございますか?」

 

 

………

……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし、姉ちゃん…?俺、仕事決まったわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




察しが良い方はもうお気付きかもしれませんが、そういうことです


では


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働き始めたばかりのキミに

さらさらっとやっていきます


 

 

「機材のチェックOK、フロアの清掃OK……!よしっ。今日も1日お疲れ様!」

 

 

「お疲れ様でした」

 

 

「君がうちのライブハウスで働き始めて、どのくらい経ったっけ。どう? 慣れた?」

 

 

「まだそんなに経ってないけど…そうですね、少しだけですが何とか」

 

 

今話しかけてきている人は月島まりなさん、あの時の面接官である

 

 

「うんうんっ、それはよかったよ。ちょうど人手が足りなくなっちゃったところに君がきてくれて、私もすごく助かってるからね。」

 

 

第一印象ではわからなかったがまさかこんなにフランクな人だったとは思わなかった

 

 

最初は右も左も上も下も前も後ろもわからなかったがやってみると存外わかってくるもので今も何とかこうして続いている

 

 

「とは言ったものの…最近肝心のお客さんの入りがね……」

 

 

「良いところだと思うんですけどね、すぐそこにカフェテリアもあるし」

 

 

まあ個人的にはお客さんは少ない方があまり忙しくなくて済むのだがそうなったらなったで暇疲れしてしまうのも確か、もう少し刺激が欲しいなとは思っていた

 

 

「うーん……こんなんでイベント、大丈夫なのかなあ……」

 

 

「イベント?」

 

不意に月島さんがそんな事を口にする

 

 

「ん? そっか、君はイベントのことをまだ知らされてないんだ。もう、オーナーってば……それじゃ、私から説明するね。」

 

 

「はあ…」

 

知らされてないも何も、オーナー事態手続きの際1度だけ顔を合わせた程度だったことを思い出す

 

 

 

まりな「このライブハウスは元々、オーナーがこのあたりで活動しているガールズバンドを応援したくて作ったものなのは、知ってるよね、とは言えもちろん普通にバンドをやっている人達も含めてだけどね」

 

 

そうだったのか、人の情熱と言うものは凄い、ここのオーナーは一体何者なんだ

 

 

 

「それで、今度ガールズバンドを集めたライブイベントをやることになったの、今回で3回目ぐらいかな」

 

 

「参加資格はガールズバンドであること。実力やプロアマは問わず、やる気があれば出演可能! ……なんだけど……」

 

 

「肝心のバンドからの応募が1つもなくてねえ……ライブハウスとしての知名度は武道館の時もあってけっこう有名になってるはずなんだけど」

 

 

「オーナーからは『このイベントを成功させて、うちのライブハウスの目玉としてもっともっと続けていきたいから頼むよ!』って言われてるんだけど……どうしたものかなあ……」

 

 

オーナー、どうしてこの事を最初に言ってくれなかったんですか…

働き始めてまだ日も浅いと言うのにいきなりこんな重大プロジェクトを聞かされて早速もう続ける自信がなくなってきた

 

 

と、そこへ

 

 

 

「こんにちはー!」

 

 

「まりなさん!今日もスタジオ大丈夫ですか!」

 

 

「あ、香澄ちゃん!いらっしゃい!あ、そうだ、君、紹介するね。この子は…」

 

 

突然勢いよく現れた訪問者は“戸山香澄”さんと言うらしい、まさか日本にまだこんな積極的な若者がいるとは…見たところ学生だろう

 

 

「はー、はー……やっと追いついた……まったく、ほんっとに言うこときかねー奴だな。ちょっとは人の言うことを聞けっての!もう3年だろ!」

 

 

後を追って彼女の仲間と思わしき金髪の子とポニーテールの子が入ってきた

 

 

「……あ、あはは~! す、すみません、また香澄が急にお邪魔しちゃって……今日もよろしくお願いします」

 

 

「有咲ちゃん、沙綾ちゃんもいらっしゃい。もう慣れちゃったから大丈夫だよ」

 

 

 

「まりなさん、こんにちは」

 

「今日もオッちゃんについてお話が…」

 

 

続いて小動物のような愛らしさの女の子と長髪の美人な子が入ってくる

 

 

「あはは…りみちゃん、たえちゃんいらっしゃい。これでポピパちゃんが揃ったね」

 

 

どうやらこれで全員らしい

 

ポピパ、と言った彼女達のバンドの正式名称は“Poppin' Party” というガールズバンドらしい、そういえばこの子達みたことあるな、けっこう有名人のようだ

 

そしてこの状況に置いてけぼりを食らっている俺を見て後から入ってきた金髪の彼女がハッとした様子で月島さんに訪ねる

 

 

「ところでまりなさん、この人は?」

 

 

「ああ、この子は最近入ってくれた新しいスタッフくんだよ、みんなよろしくね」

 

 

「あー、あいつまだ函館だもんな…」

 

 

「あはは、お恥ずかしながらそういう事」

 

 

「なら、私たちも自己紹介だね」

 

 

ポニーテールの子を先人にそれぞれ自己紹介が始まる

 

「さっきそこの香澄からもありましたけど、私たちPoppin' Partyっていいます。私はドラムの山吹沙綾です。よろしくお願いします。」

 

 

「花園たえです。リードギター、してます」

 

 

「市ヶ谷有咲、キーボード」

 

 

「牛込りみですっ! えっと……ベース担当です!」

 

 

「ほら、香澄ももう1回ちゃんと挨拶しろっ!」

 

 

「はーいっ! 改めて、私は戸山香澄、ギターでボーカルですっ。キラキラ、ドキドキしたいって思ってた時に、このランダムスターに出会って……まあ色々あってみんなとバンド組んでます。バンドは毎日楽しいです!」

 

ひとしきり挨拶を終えたところで

 

 

「うんうん、ポピパちゃん達はやっぱり元気があっていいね!はい、という事で君も自己紹介!」

 

 

「あ、はい。えっと…こんにちは、まだ入ったばかりの新人ですが、ここのスタッフをやらせていただいています。よろしく」

 

 

「よろしくお願いしまーっす!」

 

 

香澄さん…本当元気だな…

 

 

「あ、そうだ!ちょうどいいところに!みんなにまた相談があるんだけど、いいかな?」

 

 

「どうしたんですか?」

 

 

と、香澄さん

 

 

「実はね…」

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

「というわけで、またお願いできないかな…」

 

 

「もちろん参加します!!」

 

 

イベントの内容を説明すると二つ返事で承諾する香澄さん

 

 

「お前もうちょっと考えてから返事しろっていつも言ってるだろ!」

 

 

同感である、この子はあれだ、書類をよく読まないで判子を押してしまうタイプだ、俺も人のこと言えないけど…

 

 

「まあ出るけどな!」

 

 

ツッこんでおいて結局あんたもかい、じつは有咲さんってノリがいいタイプなのかもしれない

 

 

「と、いうわけでポピパちゃんにはまたバンド集めをお願いしたいんだけど…」

 

 

と、月島さん

 

 

「もちろんです!」

 

 

「ありがとう!それじゃあまず After grow のみんなを集めてきてくれないかな…」

 

 

「蘭ちゃん達ですね!りょーかいです!!」

 

 

あふたーぐろー?蘭ちゃん?よくわからないが既にその子達とは皆は親しいらしい、なんだろう…この疎外感…いやいや、めげるな俺…!

 

 

「それじゃあみんな!行くよ!」

 

 

「はいはい、香澄は相変わらずだね〜」

 

 

そういって香澄さんを先頭にポピパのみんなが駆け出していく

バイタリティ溢れるその様が今の俺には羨ましくもあり微笑ましい、そして何より眩しすぎた……

 

 

「ほらっ!君もせっかくだから彼女達について行ってみんなと知り合ってくるといいよ!」

 

 

「え、俺もですか?仕事は…」

 

 

「これも仕事のうち!あの子達のことよろしくね!頼りにしてるよ男の子!」

 

 

そう言って月島さんは俺の背中を押す、なんか…本当に良い先輩だな…月島さんって…

 

 

「了解しました!」

 

 

なんだか背中を押されてやる気ぐ湧いてきた俺は彼女達の後に続きスカウトへと赴いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ありがとうございました、皆様の感想や評価?お気に入り?がとても励みになっております…いや本当に…

ではまた次回


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スカウトと帰り道

 

 

【スタジオ】

 

 

 

 

というわけでAfter growが使っているスタジオへついた訳だが

 

 

 

 

「あ、いたいた、おーーーい」

 

 

 

早速メンバーを見つけた山吹さんが声をかける

 

 

 

 

「お?さーやじゃん!久しぶりだなー」

 

 

「本当久しぶりだね、武道館以来かな?いろいろ忙しくてさ〜」

 

 

「それはこっちもだっての、期末試験とか期末試験とか期末試験とか…特にあこに教えるのが大変でさ…」

 

 

「あはは…でもあこちゃん無事に進級できたんでしょ?よかったよかった」

 

 

「まあな」

 

 

 

早速メンバーの赤髪の少女と山吹さんが話し込んでいた、めっちゃ仲ええやん………

 

 

 

「あっそうだスタッフさん、この人は宇田川 巴って言って、私たちと同じ高校3年生です。After growのドラム担当、ちなみに私たちは同じ商店街に住んでいるので昔から知ってるんです」

 

 

少々会話に入りづらいそうな自分を察してくれたのか山吹さんが話し掛けてきた、いい人だ…

 

 

「どうも、紹介に預かりました宇田川 巴です。ところでその人は?」

 

 

「この人は最近入ったCiRCLEの新人スタッフさん、私たちも最近知り合ったんだ」

 

 

「そうだったのか、って事はあの人もついに先輩になった訳か」

 

 

「あの人?」

 

 

まりなさんのことだろうか?でもあの人が一番古参の先輩だったような…はて…

 

 

「あ、スタッフさんはわからないですよね、実はスタッフさんが来る前にもう一人スタッフさんがいたんですよ、今はちょっと出張で函館にいってるんですけど…」

 

 

うーんと、考え込んでいるところに山吹さんが説明をしてくれた、なるほどそういう事か、俺の前にも一人いたのか…

 

確かに求人の欄に人員補充の為って書いてあったな…うん納得した……って…ん?函館?それって確か…

 

 

「ちょっと待って、函館ってどう言う事?」

 

 

「あ、蘭ちゃーん!久しぶり!」

 

 

そんな話を聞いていたら奥の部屋から黒髪に赤メッシュのクールな少女がラウンジに出てきた

 

 

「香澄久しぶり、それより函館ってどう言う事?」

 

 

「やっぱり蘭ちゃんも何も聞いてなかったんだね。あっそうだ、その前にスタッフさん、この子がAfterglowのギターボーカルの美竹 蘭ちゃん!私と同じパートです!」

 

 

「初めまして、最近入ったCiRCLEの新人スタッフです、よろしく」

 

 

「あ、はい…よろしくお願いします、美竹 蘭です…それで香澄、その話詳しく」

 

 

「うん、実はね」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「という訳で、今スタッフさん函館に行ってるんだ」

 

 

 

細かいことは色々と省くが

香澄さん達が件のスタッフの説明をすること数十分

 

 

 

「へぇ…そうだったんだ…なんか大変そうだね…」

 

 

極々普通の相槌を売っている茶髪の大人しそうな子は羽沢つぐみさん、アフロ(勝手に略した)のキーボード担当で喫茶店を経営しているらしい

どこかでみたと思ったら就活中に入ったあの喫茶店の子か…なんかもう1人外人っぽい子にツッこんでたから印象に残っている

 

 

「にしても私たちに連絡もなく言っちゃうなんてひどい!スタッフさんめ…帰ってきたらお説教だ!」

 

 

「まあまあひーちゃん、そんなにやけ食いしてるとまた太っちゃうよ〜」

 

 

「今それは関係ないでしょ!!?」

 

 

そして漫才のようなやりとりをしている片方の発育のいい…ゴホン…ピンク髪の少女は上原ひまりさん、アフロ(勝手に略してる)のベース担当でこのバンドのリーダー、ファストフードでなんかテンパってたあの子か…その時はもう1人隣の子も一緒にテンパってて青っぽい髪の子にフォローされていたのが印象に残っている

 

 

「あ、ちなみにわたしはたまたま会ってその話は聞いてたよ〜」

 

 

「「なんで言わなかった!!?」」

 

 

「いやあ〜」

 

 

そして今みんなから総ツッコミを食らっているえらくゆるい口調が特徴的なこの子が青葉モカさん、リードギター担当、てかこの子あの時に入ったコンビニ

の店員の子だ……なんか蘭さん以外全員見たことある子しかいないんだけど……

 

というか段々その以前のスタッフの人の話がメインになっていって本題から脱線してきている…そろそろ戻さねば話が一向に進まないと思ったので俺は

 

 

「あの、それよりそろそろ」

 

 

「「???」」

 

 

半ば無理やりこの話を切る事にした

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「いやーすっかり忘れてた」

 

 

「ありがとうございますスタッフさん!本題を忘れるところでした」

 

 

「まだ会ったばかりでこんな事言うのもアレなんだけど…市ヶ谷さんの気持ちが凄く分かった気がした…」

 

 

「あれ?もしかして私バカにされてる??」

 

 

 

 

というわけでライブイベントの参加をお願いした帰り道、俺と戸山さんは帰る方向が同じだった事もあり山吹さんを送ったあと2人でそんなやりとりをしながら歩いていた

 

 

ちなみにスカウトの結果は二つ返事でOKだった、一体これまでの時間はなんだったのか…休みじゃなかったら俺の身体が死んでいたところだった…

 

あそこまで話が長引くなんて…例の先輩、一体何者なんだ…

そういえばうちの姉もいま函館にいるって言ってたな…元気でやっているだろうか…

 

 

 

「あ、着きました。ここ私の家です。スタッフさん、送ってくれてありがとうございました!」

 

 

「いえいえ、それじゃあ俺もこれで、またね戸山さん」

 

 

「はい!おつかれさまでしたっ」

 

 

後ろで手を振っている香澄さんを背に俺は家へ入る

 

 

そう、すぐ隣の家に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え…?スタッフさんの家って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つまり隣の家に住んでいた


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GYROAXIA 〜前編〜

「なんだ今の有様は…!!!やる気あんのか!?」

 

 

ダンッ! と壁に拳を激しく叩きつける音が響き渡る

 

ここはとあるスタジオの一室、ボーカルの青年がバンドメンバーに向かって怒鳴っている

 

 

「こっちもプロデビューがかかってんだよ!あるに決まってんだろうが!!」

 

 

すかさず隣でギターを弾いていたおそらく彼と同い年であろう青年が言い返すとボーカルの青年はもはや何を言いあっても無駄とでも言うように「チッ…」と舌打ちをし練習に戻ろうと後ろを振り返る

 

 

「はぁ…"那由多"、星々も言ってる。これ以上やっても効率悪いだけだ」

 

 

「同感、やる気はあれどそれだけじゃどうにもならないって」

 

 

見かねたようにベースを弾いていた青年はそんな彼を諌めるように声を掛けるとドラムを叩いていた長髪の青年もそれに続いて訴える

 

 

「お前ら……」

 

 

「那由多」

 

今にも飛びかかりそうなドスの効いた声でボーカルの青年が彼らに近づいていくとストップをかけるように眼鏡をかけたギターの青年、が那由多と呼ばれる青年の前に立つ

 

 

「連日の練習で皆もう限界だ、今日は解散しよう。次の練習はまたいつもの時間に始めればいい」

 

 

「あ?てめえ…」

 

 

「全員課題は充分に理解している。次の練習までに仕上げてきてくれるさ、そうだろ? "深幸"」

 

 

「………まだ見ぬかわいい俺のファンのため頑張るさ」

 

 

ゼェゼェと息を切らしながら切迫した顔で深幸と呼ばれたドラムの青年がそう答える

 

 

「里塚…何勝手に言ってやがる…!」

 

 

ついに沸点に到達した那由多が里塚と呼ばれる眼鏡のギターの青年の胸ぐらに掴みかかるが冷静に淡々と言葉を続ける

 

 

「那由多、お前の喉も限界だろ、これ以上酷使してライブ当日に潰しちゃ意味がない、これはあくまで提案だ。だが俺は【GYROAXIA】のリーダーとしてそれが最善だと思う」

 

 

「………いいだろう……今日は解散する…スタジオに残りたい奴ヤツは残ればいい」

 

 

さすがにそこまで言われると那由多は諦めたように一人スタジオを出て行く

 

 

彼らのバンド名はGYROAXIA、絶対王者の旭那由多をボーカルにし、札幌では知らない音楽ファンはいないと言われるほど有名なバンドであり

ギター担当にしてそのGYROAXIAのリーダー 里塚 賢汰

 

そして2人目のギター担当、旭那由多と同い年でよく彼と衝突する 美園 礼音

 

ベースを担当している不思議っ子 曙 涼

 

軽い発言が目立つが非常に練習にストイックな 界川 深幸

 

から成り立っているバンドだ

 

 

今回はそんなお話である

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 



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GYROAXIA 〜中編〜

 

「それではオーナー、お疲れ様でした」

 

 

「あ、おつかれ〜〜スタッフさん」

 

 

ガチャリとドアを閉め新設中のライブハウスを後にする

 

 

「なんか…だんだんあのオーナー馴れ馴れしくなってきましたね…(〜〜←主にこの辺)」

 

 

独り言を呟きながらの帰り道、ようやく作者の筆が乗ったのか久しぶりの登場で何なら明日は花の連休というわくわくの帰り道だと言うのに出てきたのがこんな独り言とは…あ、いえ何でもありません、こちらの話です

 

 

「まあ、職場は人間関係に重きを置きたい側の人間なので慣れてきたと言うのは良い事ですね」

 

 

などと呟きながら ハァ…と一息つき、空を見上げると雪がちらついていた

 

 

「しかし…まだまだ函館は寒いですね…」

 

 

何日か前までは絶好の春日和でArgonavisの皆さんとワイワイやっていたというのに(←別にやっていない)さすが北海道、油断しているとこんな天候になったりする…まあ雪は好きですが

 

とはいえさすがに今日は薄着でしたかね…風邪を引いてはせっかくの連休が台無しになってしまう…仕事を休むのには良い口実ですがそれとこれとは別です(←別ではない)

 

 

………。さきほどから何かにツッコまれているのがうるさいですね…まあいいです はやく帰ってコタツで暖まるとしましょう…

 

足早にマンションへと向かうその途中

 

 

「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」

 

 

「おや?」

 

 

通りかかった道で何やら歌声と歓声が聞こえ野次馬の血に火がついた私は早速その方向へ転換してみると一人のボーカリストがゲリラライブをしていた

 

 

「っ!あれはっ!」

 

 

ボーカリストの正体はこの界隈では知らぬ者の方が少ないほど有名なバンドのボーカリスト

 

そう、GYROAXIAの旭 那由多の姿があった

 

 

「マジですか!?これは幸先が良い!」

 

 

年甲斐もなく目を光らせながら子供のように観客の輪の中へとダッシュし、現場で会得したすり抜け術を使って最前へと到達する(※そういった場ではルールとマナーは絶対守りましょう)

 

 

「ああ…本物です…」

 

 

圧倒的な歌声、絶対的な存在感、漂うカリスマ性、まさに王者…いや暴君と言った方がいいのだろうか…とにかくすごいものを見ているという実感にただ胸が高鳴っていたのだが…

 

 

「♪♪♪ゴホッ♪♪♪ゴホッ♪♪♪♪♪」

 

 

「何か今日の那由多変じゃない?」

 

「調子でも悪いのかな?」

 

 

何か様子がおかしいという事に気付くのに大衆も私もそう時間が掛からなかった

 

音の途中に雑音が混じっている、これは…咳だろうか…

 

 

次の瞬間

 

 

「ゴホッ‼︎ゴホッ‼︎ゴホッゴホッゴホッ‼︎」

 

 

雑音が確かな音に変わり、次第にその音は激しさを増し、数秒間の轟音のあとバタンッと大きな音を立ててそのボーカリストは倒れた

 

 

「ちょっ!あれヤバイだろ!」

 

「大丈夫か!」

 

 

「誰か人を…!」

 

 

突然の出来事に観客達も混乱しだす

 

これはいけません!そう思うより前に勝手に私の足は動き出していた

 

 

「みなさん落ち着いて!まずは他の通行人の邪魔になるので今日はこのまま散って下さい!」

 

 

観客達はハッとした表情で各々その場を後にする

 

 

「次はそこの貴方!至急救急車を!」

 

 

「お、おう!わかった!」

 

 

近くに残った数名へはそのまま声を掛け留まらせる

 

 

「ゴホッ!!ゴホッ‼︎ゴホッ!!」

 

 

「しつかり!大丈夫です!ゆっくり呼吸を整えて、もう少しで救急車が来ますからね!」

 

 

「ゴホッ…ゴホッ…」

 

 

少し咳が弱くなったところで救急車が到着する

 

 

「救急です、患者さんはこの方ですね、早く担架を!それと誰か付き添いを!」

 

 

「私がいきましょう」

 

 

「ご協力、感謝します」

 

 

そう言って救急車へ同乗する

 

 

本来であれば通報した方が付き添いを要求されるのですが通報させたのは私なのでまあいいでしょう

 

 

全く……休日前から幸先が良いのやら悪いのやら…

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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