この世界に、ネコは星の数ほどいるけれど、その中でも私はかなりのべっぴんさんだと思うの。
水たまりに映ったネコが自分なんだと知ったときは、それはもう飛び跳ねるぐらい驚いたものよ。
……勘違いされては困るから、一応付け加えておくけれど……飛び跳ねるってのは比喩だから。私はいつだってエレガントな女なの。わかった?
……本当かしら?
まぁいいわ。
ところで、あなたの方はどうなのかしら?
何がって……あなたがイヌの中ではどれぐらいカッコイイのかってことよ。
私の感覚からすると、あなたは中の中ってところだと思うのだけれど、あいにく、私にはイヌの美的感覚がわからないのよ。
……そう。考えたこともなかったのね。
まぁ、わかったところで私の感性が変化するわけでもないし、構わないのだけど。
……え? 何よ、またなの? もう! 前にも言ったじゃない!
私、それ苦手なの。できればもっとおしとやかな遊びがいいわ。ごめんなさい。
……特に代案がなければ、今日はここでお開きにしましょう。また明日ね。
(……だって、仕方ないじゃない……私はネコで、あなたはイヌなのだから)
・ ・ ・
はぁぁああぁあぁぁぁぁ~……暖かくて……気持ちいい……眠くなってきちゃう……やっぱり、冬のおこたは最高ね!
私たちネコは当然のことだとして、人間もおこたが大好きみたい。
わかるわ。
でも、先客がいるのを確認もしないで足を突っ込むのは止めてよね。まるでマナーがなっていないわ。この私を見習いなさい。
ま、いくら注意したところでわかってくれないのが人間だものね。もう諦めたわ。
こういうときにはあいつに愚痴を聴いてもらいたいのだけれど。
……んっしょ……はぁ、おこたの外は寒いわね。
さて、あいつはどこかしら……うーん……こっちではない……あ、いたわ……って、げ!
……こ、こほん。
あら、これだけ寒いのにお外で走り回っているなんて……やっぱり毛皮の違いかしら? ちょっとだけ羨ましいじゃない。
よく見たら雪が積もっているわね……ということは、肉球にも違いがあるのかしら?
って、そういう分析はしなくていいのよ!
まったく……ホント、あいつは元気でいいわね。
……お外、大好きだものね。
私は真逆よ。家の中でじっとしているのが好き。
だから、私とあいつは、反りが合わない。
・ ・ ・
私だって、散歩に出かけたくなるときがある。
ただのんびり歩いたり、狭いところを探したり、体型を維持するための運動をしたり。いつもそんな感じね。
でも、たまに下品なやつらと出くわすこともあったりして、そういう日はいつも以上に疲れちゃうの。
私がおでかけから帰ってくると、あいつはいの一番にお帰りと言ってくれて、そして、自分の水入れを私に使わせてくれる。
あいつにはそういうところがある。
他にも、人間が何かを失くしてしまったと騒いでいると、あいつはそれが何なのかもよくわかっていないのに、あちこちを探して回るのよ。
あいつはそういうやつだと、私は知っている。
・ ・ ・
私が塀の上でひなたぼっこしていたいとき、あいつは私を遊びに誘いに来るの。
私はそれに付き合ってあげる日もあれば、そうじゃない日もあるわ。
遊んであげると、私は決まって疲れてしまい、終わった途端に寝床へ向かって一直線よ。
それで、私は意識が落ちるぎりぎりまで、遊びに付き合ったことを後悔したり、感謝したり……。
そうしていると、こんな考えが思い浮かぶの。
私はなんで、あいつと遊ぶとこんなにも疲れてしまうのかと。
もしも……もしも最後まで疲れきらずにいられたのなら……毎日だって、あいつと遊んであげられるのに……。
そうしたらきっと……毎日が……もっと……楽しく……なる……のに……。
「……また遊ぼうね。おやすみ」
ヌコを飼ってみたいと思う今日このごろ。
短いお話でしたが、いかがでしたか。
これは自分が対人関係から想起した考えを擬獣化(?)した小説です。
ちなみに、このお話って変則型アルジャーノンなのでは? と思ったり、思わなかったりしています。
「アルジャーノンに花束を」は名作なので、読んだことがない方はぜひ読んでください。
そして知人に勧めるのです。
……なんで私は人様の作品をダイマしているんでしょうか?
以上。絵が描けたら絵本にしたい! 志賀雷太でした。
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